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1971-11-01 第67回国会 参議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十一月一日(月曜日)    午前十時四分開会     —————————————    委員の異動  十月二十六日     辞任         補欠選任      高田 浩運君     小山邦太郎君      河田 賢治君     渡辺  武君  十月二十九日     辞任         補欠選任      金井 元彦君     小笠 公韶君      中津井 真君     平島 敏夫君      柳田桃太郎君     山本敬三郎君      吉武 恵市君    久次米健太郎君  十月三十日     辞任         補欠選任      河口 陽一君     川上 為治君  十一月一日     辞任         補欠選任      三木 忠雄君     沢田  実君      向井 長年君     高山 恒雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         徳永 正利君     理 事                 白井  勇君                 玉置 和郎君                 西田 信一君                 初村瀧一郎君                 若林 正武君                 松永 忠二君                 山崎  昇君                 塩出 啓典君     委 員                 稲嶺 一郎君                 小笠 公韶君                 長田 裕二君                 梶木 又三君                 川上 為治君                久次米健太郎君                 楠  正俊君                 熊谷太三郎君                 小山邦太郎君                 古池 信三君                 世耕 政隆君                 土屋 義彦君                 内藤誉三郎君                 長屋  茂君                 平島 敏夫君                 山崎 竜男君                 山本敬三郎君                 山内 一郎君                 片岡 勝治君                 神沢  浄君                 沢田 政治君                 戸叶  武君                 羽生 三七君                 藤田  進君                 宮之原貞光君                 森 元治郎君                 安永 英雄君                 沢田  実君                 多田 省吾君                 矢追 秀彦君                 木島 則夫君                 高山 恒雄君                 岩間 正男君                 渡辺  武君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  前尾繁三郎君        外 務 大 臣  福田 赳夫君        大 蔵 大 臣  水田三喜男君        文 部 大 臣  高見 三郎君        厚 生 大 臣  斎藤  昇君        農 林 大 臣  赤城 宗徳君        通商産業大臣   田中 角榮君        運 輸 大 臣  丹羽喬四郎君        郵 政 大 臣  廣瀬 正雄君        労 働 大 臣  原 健三郎君        建 設 大 臣  西村 英一君        自 治 大 臣  渡海元三郎君        国 務 大 臣  大石 武一君        国 務 大 臣  木村 俊夫君        国 務 大 臣  竹下  登君        国 務 大 臣  中村 寅太君        国 務 大 臣  西村 直己君        国 務 大 臣  平泉  渉君        国 務 大 臣  山中 貞則君    政府委員        内閣官房内閣審        議室長内閣総        理大臣官房審議        室長       小田村四郎君        内閣法制局長官  高辻 正巳君        公正取引委員会        委員長      谷村  裕君        防衛庁長官官房        長        宍戸 基男君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        防衛庁経理局長  田代 一正君        経済企画庁調整        局長       新田 庚一君        経済企画庁国民        生活局長     宮崎  仁君        経済企画庁総合        計画局長     矢野 智雄君        環境庁水質保全        局長       岡安  誠君        沖繩北方対策        庁長官      岡部 秀一君        外務省アジア局        長        須之部量三君        外務省アメリカ        局長       吉野 文六君        外務省経済局長  平原  毅君        外務省経済協力        局長       沢木 正男君        外務省条約局長  井川 克一君        外務省国際連合        局長       西堀 正弘君        大蔵省主計局長  相澤 英之君        大蔵省主税局長  高木 文雄君        大蔵省理財局長  橋口  收君        大蔵省銀行局長  近藤 道生君        大蔵省国際金融        局長       稲村 光一君        国税庁長官    吉國 二郎君        文部省管理局長  安嶋  彌君        厚生省保険局長  戸津 政方君        社会保険庁年金        保険部長     八木 哲夫君        農林大臣官房長  中野 和仁君        農林省農林経済        局長       小暮 光美君        農林省畜産局長  増田  久君        農林省蚕糸園芸        局長       荒勝  巖君        水産庁長官    太田 康二君        通商産業省通商        局長       山下 英明君        通商産業省貿易        振興局長     外山  弘君        通商産業省企業        局長       本田 早苗君        運輸省港湾局長  栗栖 義明君        運輸省航空局長  内村 信行君        建設大臣官房長  大津留 温君        建設省計画局長  高橋 弘篤君        建設省道路局長  高橋国一郎君        自治省税務局長 佐々木喜久治君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君    参考人        日本銀行総裁   佐々木 直君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十六年度一般会計補正予算(第1号)  (内閣提出衆議院送付) ○昭和四十六年度特別会計補正予算(特第1号)  (内閣提出衆議院送付) ○昭和四十六年度政府関係機関補正予算(機第1  号)(内閣提出衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和四十六年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十六年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和四十六年度政府関係機関補正予算(機第1号)  以上三案を一括して議題といたします。  まず、理事会において三案の取り扱いにつきまして協議を行ないましたので、その要旨について御報告いたします。  質疑順位は、お手元に配付いたしました質疑通告表順位といたします。各会派への割り当ては、自由民主党及び日本社会党はそれぞれ二百分、公明党八十分、民社党及び日本共産党それぞれ四十分、第二院クラブ二十分であります。  以上御報告いたしましたとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  三案審査のため、本日、日本銀行総裁佐々木直君を参考人として出席を求め、意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 徳永正利

    委員長徳永正利君) それでは、これより質疑に入ります。藤田進君。
  7. 藤田進

    藤田進君 私は、社会党を代表いたしまして、主として沖繩あるいは中国問題、その他経済外交物価公害等につきまして、包括的にただしたいと思うものであります。  総理も御承知のように、当院参議院におきましては、四カ月前に半数改選を行ない、国民政治に対するいろいろな不信感等を率直に受けとめて、国民の期待に沿えるような参議院に形づくっていきたいと、参議院の改革を現在模索中であります。その第一の手始めといたしましては、議長、副議長党籍離脱、ことに議長野党を中心とする絶大な支持によって河野議長が誕生いたしました。従来の審議の非常な非能率等も問題になっておりますが、本日、本予算委員会におきます議論を含めて、国会能率的な運営をはかっていくべきではないだろうか、かように思いますので、従来間々聞かれないことは答えないし、聞かれてもなるべく答えないようにというはぐらかしとか、そういうことのないように、まず劈頭お願い申し上げておきたいと思うんです。何か痛いところにさわるとすぐおこり出すというような閣僚も中にはあるように思うのですが、これでは審議能率を非常に阻害をいたします。  そこで、まず第一に、総理は、当院並びに衆議院会議等を通じまして、もう政治責任その他の関連から辞任したらというような意見もあり、いろいろ反省へのむちが打たれたように思うのであります。佐藤さんのいわゆる佐藤内閣は三十九年十一月の九日成立あと一週間で満七年という、かつてない長期内閣担当だと思いますが、私は、まず劈頭、佐藤総理が当面する諸問題、特に国内におきましては、物価はもう申し上げるまでもない非常な大幅な値上がりを示しております。国民生活の破壊であります。公害もまた人の命をむしばみつつあるのであります。あるいはその他当面する内政については交通あるいはまた医療等大幅値上げが控えております。外にあっては、御承知のごとく、逆重要事項指定方式も敗れ、佐藤総理とされては、ここに三たび大きなショックを受けられたことだと思うのであります。また沖繩につきましても、現地の模様をいろいろ調べてみましても、現在きめられている協定その他、御答弁の限りでは、なお多くの不安を持ち続けております。  私は、これらを見て、内政外交ともに、かつてない重大な危機に直面していると思います。ここにおいて政治貧困外交貧困ということが叫ばれているように思います。過去七カ年を顧みて、今日のこういう帰結に対する総理のいつわらざる心境等を、まず反省をしたいという今国会冒頭からの御意見でもございましたし、ここでひとつ率直に、時間がかかってもよろしゅうございますから、お伺いをしておきたいと思います。
  8. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 藤田君のお尋ね、過去七ヵ年の佐藤内閣の歩み、これを静かに顧みまして、私は、幾多反省すべき点もあるが、また同時に、われわれのとってきたこの政策、必ずしも誤っていない、かようにも思うのであります。  ただいま当面する事態は、まことに内外ともに多事多端でございます。しかし、その間に経済的成長をしたこと、これはそれなりにすなおに率直に認めていただきたいと思います。私は、GNPだけを申すわけじゃありませんが、国民所得の向上の点においてもすばらしいものがあるのじゃないだろうかと思います。かつて低賃金、ソシアルダンピング、そういう言い方をされてまいりましたけれども、いまや賃金水準欧州先進国のそれに匹敵しようとしております。まだまだもっと豊かな実りある生活を実現しなきゃならないと思いますが、そういうように変わってきたこと、この一事をとってみましても変わっておると、かように思いますし、私は、これが佐藤内閣の功績だとすぐ言うわけじゃありません。もちろん国民の営々としての努力のたまものだと、かように思います。  しかし、私がまことに遺憾に思いますのは、かような点は、経済発展はいたしましたものの、私が内閣を、政局担当いたしました当初において指摘いたしましたように、社会資本の充実の面においては非常な立ちおくれがございます。ただいまこの面をさらに推進しようとしておる。新しい問題の公害問題もそういうような観点に立って解決すべき、取り組むべき問題だと思います。ただいまの物価の問題がまずあげられますけれども、国民所得がふえ、消費もまた伸びてまいりますと、ただいまのような状態も起こりがちでございます。これが決していいと言うわけじゃありません。いいと言うわけじゃありませんが、起こりがちである、起こりやすいと、こういう問題を指摘するのであります。こういう点において、何と申しましても、まあかつて消費は美徳なりと、かように言われたことがありますが、やはり経済運用に当たって国民消費、その点が大きく影響しておること、これはいなめない事実でありますから、そういうことをも考えながら、やはり生協その他の協力を得て、物価の問題とも真剣に取り組まなきゃならないと、かように思っております。いま御指摘になったことにあえて弁解するわけではありませんが、非常な経済発展がいろいろの問題を引き起こしておると、それに対する対応策が十分立てられておらない、こういうことが言われるんじゃないかと思っております。そういう意味における内政上の反省ももちろんあります。また最近アルバニア案国連において採決された。こういうことを見まして、外交政策が非常に間違ったんじゃないかと、かように言われますけれども、私もしばしば他の機会で説明いたしましたように、戦後の国際経済、とかくサンフランシスコ条約当時のあの体制のもとで推移してきたことが今日の幾多の乗り越え得ないような事態に当面しておるのだと、新しい時代にただいま突入しようとしておるのだと、そういうことに思いをいたさなければならないと思います。いろいろこれらの点についてはさらにお尋ねがあろうかと思いますが、私は、さような意味において、これらの問題についても、皆さま方の御指摘を待つまでもなく、十分みずから反省し、そして今後誤らない道をいかに歩くべきかと、かように考えておる次第でありまして、その方向を申すなら、われわれはどこまでも平和に徹すると、そういう考え方でございますが、同時に友好諸国、いずれの国とも仲よくしていく、こういう意味で、ただいまのような平和を守っていく。政治体制が違おうが、イデオロギーが違おうが、そういうことにおかまいなしに友好親善をはかっていく、そういうのがわれわれのこれからとるべき道ではないだろうか。具体的に申すならば、ただいま国連に加盟をきめられた中華人民共和国との国交の正常化に取り組む、これが刻下の、ただいまの急務じゃないだろうかと、かように私は思っておるような次第であります。  あらましのお話を申し上げまして、あるいはお尋ねの点、私は、そらしたつもりはございませんけれども、なお不足の点があれば重ねてお答えいたします。
  9. 藤田進

    藤田進君 承りまして、かなり大きなずれがあるように思います。これは私のみならず、一般国民の最近佐藤内閣に対する評価等数字でも出ていると思うのです。佐藤内閣成立当初の参議院会議におきまして、七年前に私は当初施政方針演説に対する質疑をやっているのを全部調べてみました。当時、佐藤さんのキャッチフレーズとしては安定成長池田内閣あとを受けて、何よりも安定成長であるということを看板にして政局担当されております。以下サブスローガンがいろいろございますが、はたしてこの七年間に当初公約せられましたわが日本経済、その他安定的成長も、あるときには二〇%という成長を示すといったようなきわめて不安定な、あるいは佐藤さんも当時言っておられましたようなひずみ、これがさらに深化してきたと私は思います。  なるほど国民所得が逐年若干ずつ実質上がっておりますが、これは微々たるものですね。池田さんは、自分のところへ来るのがみな昔はくつ下の破れていたのをはいていたが、いまは、くつ下は破れちゃいないじゃないかというようなことをあの人は言っていましたが、くつを脱いで見せたものかどうか。くつ下が戦後かなり強くなっていることは御承知のとおり。テレビが各戸にあるじゃないかとか、そういう単なる現象面、これで国民所得あるいは生活がきわめて安定したという認識は根本的に間違いがあるように思うのです。物価の急激な上昇にようやく追っついていったかどうかということであろうかと思います。したがって、私は、いま反省の中から何かくみ取りたいと思いましたが、まだまだ一般国民なり、われわれの立場から見ると、大きなずれがあるように思われてなりません。  そこで、なぜこのような七年間——一年や二年で国政あるいは外交について特段の飛躍的方向に、りっぱな方向に持っていくということは困難かもしれません。しかし七年という長期にわたる政権担当の中から、今日当然の帰結というか、出てきたものがあまりにも国民に対して情けない状態であると思うのです。これらの原因はいろいろありましょう。私は、組閣された当時のこの予算委員会でも、全体をまとめていく内閣総理ではあろうけれども、国の統治機能としていま経済企画庁とかありますが、いかにもこの金の面では、財政金融では大蔵大臣が握っているというような現状だから、これをもう少し人的にあるいは機構的に強化されたらどうでしょうかという提言もいたしましたが、これは従来どおり。そうして組閣以来の数次にわたる改造等々を見ますと、大体、今日七年間継続して所管を担当した大臣というのはいないですね、佐藤さんただ一人が。ですから、早くやめた人は何カ月かでやめております、何人も。非常な入れかえです。なるほど人事の佐藤ということがここに出ていると言える。政策佐藤とか、そういう外交佐藤とか、経済佐藤とかいうよりも、非常に首のすげかえというものがおびただしく行なわれております。私は、この辺にも、各省庁担当する責任者国務大臣として、はたして一貫性のある政治というものが、議会において本会議予算委員会を通して国民に訴えたその公約というものが、はたして機能してきただろうかという点に非常な心配を持つわけであります。ほとんど機能していないように思う。そうして今日の公害についても、閣僚間においてかなりニュアンスが違う。大石環境庁長官、かなりやっているという評判ですが、また、それにはそうでない、逆行的な立場の人もありましょう。そういういわば各省にこもってしまったところの——いや、田中さんのことを言っているわけではないが、あなた、非常に反応を示されるから、案外そうかもしれませんですね。これは各省庁ばらばらで、これを統轄する総理としては、能力というよりも、そこまで神経が届かないのかもしれない、こういうふうに私は思います。その観点から論じましたが、総理、いかがでしょうか。
  10. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私が総理をやっていて、たいへんりっぱな政治ができていたと、必ずしもかようには思っておりません。しかし、七年も続いたという、これは一体どういうわけだろうと、私も暮夜ひそかにそれを考えるのです。やはり国会議会政党といわれている、その議会政治、その運用において、やはり与党諸君努力が非常に私をささえてきてくれていると、そういうのがやはり長い政局担当ということになったんじゃないだろうか。また、野党諸君からも非常な御鞭撻や御叱正を受けますが、しかし、それまた、ただいま申し上げるような長期政権、こういうことには役立ちこそすれ、これが後退の方向にはまだなかなかいっておらないと、そういう点を考えながら、議会政治というもの、そのもとにおいて佐藤内閣は逆な方向で行っているだろうか、これは行ってないと、かように思います。また、先ほども冒頭に申されましたように、野党諸君も、今回は参議院能力を上げるように、治績を上げるように、皆さん方野党諸君が主になって議長をつくったと、かように胸を張って言われますが、私は、これなどは大いに今後の治績に見るべきものが出てこなきゃならないんだと、かように思います。  私は、内閣というものも、さような意味において、皆さん方の御鞭撻を得、また与党勢力支持されて今日まで続いてきていると、かように思いますので、これは申すまでもなく、逆に言うならば、国民支持を得ていると。最近の新聞の世論調査では、たいへん下がったといわれておりますが、今日までのところは、ただいま申し上げるような結果、それが政局を長く続かしたゆえんではないだろうかと、かように思うのでございまして、以上のような点をも反省しながら、ただいま政局と取り組んでおると、かように御了承いただきたいと思います。
  11. 藤田進

    藤田進君 いろいろ言われましたが、私は、いろいろありましょうが、今日、佐藤内閣が続いた、あるいは——失礼ですが、自由民主党、前回の総選挙衆議院選挙で相当ふえた等々は、これは与野党のいわば選挙場裏における力関係、言いかえれば政治資金日常を含むそういった政治資金の影響というものが、非常に大きいと思っております。だから佐藤さんは、小骨一本抜かないと言いながらも、政治資金規正法に取り組もうとしない。しかしこれに取り組んで、スタートラインを同じにして、与野党がほんとうに選挙法にあるような日常を含めての政治活動ということになりますと、様子は相当変わってくるように思うわけであります。だから、政治資金規正法に取り組まない。あれほど世論がやかましくてもですね。いかがですか。
  12. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 政治資金だけで過去の選挙の結果がきまったと私は思いません。国民はもっと英知を持っております。民主主義がどういうものであるか、これは十分考えておるはずであります。私は、そういう点に立って、選挙の結果をすなおにそれなりにやはり尊重していく、こういうことでないといかぬように思います。もちろん選挙資金、この制度にも欠陥はありますけれども、私は、過去に行なわれた選挙が全部この選挙資金がルーズだと、そういう結果がもたらした成果だと、かように評価することはいかがかと思います。私は、その点では、藤田君と所見を異にするものであります。
  13. 藤田進

    藤田進君 それじゃ、この問題、もう一点聞きますが、すると、いまの世論調査についてはどうお考えですか。いま二三%という数字も出ておりますね。これはやっぱり国民英知がここに具体的にあらわれたと、世論調査は別だということになりましょうか。
  14. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 世論調査それなりに評価すべきものだと私も思います。ただ、その時期、時期によって支持率は変わってくるだろうと思いますので、相当長期的なやっぱり世論調査の結果を見て、しかる上で判断すべきものだと、かように思います。
  15. 藤田進

    藤田進君 次に、沖繩に関する問題について若干お尋ねをいたします。  アメリカの上院外交委員会における公聴会等も済みましたが、これらをいろいろ検討してみますときに、沖繩をアメリカがわが日本に返還するというそのきめ手、これは私の見たところでは、現内閣の熱心なアメリカに対する働きかけということよりも、むしろ、まず第一には、一連に出ておりますようなドル防衛、海外軍事基地を縮小して、そうして現地それぞれに肩がわりをする、いわばニクソン・ドクトリン。また、沖繩におきましては、基地の無償貸与、提供等、幾多のメリットがある。あるいはまた、ロジャーズの上院証言の沖繩返還の理由を二つあげてみましても、もう異民族の占領という状態は、現地沖繩ではこれが受け入れられなくなってきた。ランバー上局等弁務官のごときも、もう七月を経過すれば、これは基地としての機能に影響を及ぼすだろうと、こういういわば危惧が、現地の返還への戦いというもののむしろ成果というか、そういったものが非常に強くアピールされているように思います。ポツダムやカイロ宣言等々から見てももちろんでございますが、私は、こういう返還のいわば要因、動機というものも、返還を受けるわが日本としては十分検討してみる必要があるんではないだろうか。恩恵的に、アメリカがわが日本に当然返すべきではないものをこの際平和的に返してきたんだというニュアンスの強い総理においては、特にこれらの事情は十分踏まえた上で具体的対処をする必要があるんじゃないだろうか、かように思いますが、いかがでしょう。
  16. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 藤田君とはやや私は違いますが、しかし、あえて議論はいたしません。ただいまのお説も一つの理由だろうと思います。
  17. 藤田進

    藤田進君 さて、私は、そういう一つの理由としてはお認めになったわけでありますが、だとすれば、もう小し沖繩の返還、いわゆる核抜き本土並みについて、国民が、ことに現地沖繩県民がなるほどという線を打ち出してもらえなかったものだろうか、あるいは残された問題についても、これからひとつ特段の努力を必要とするのではないだろうか、こう思います。  特に基地について、外務大臣は、岸さんが行かれるときに自分は頼んだんだ、その返事はコナリーが行くから、あれに十分幅広くまかしてあるからそれと話してくれということになっておるようだから、来たら頼んでみようと思うというようなことが出ておりますが、どのように対処されますか。
  18. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 岸元総理がニクソン大統領と会うと、こういう話でございますので、その際は、私は、岸元総理に対しまして、いま沖繩の返還協定が審議されようとしておるが、まあ非常な大きな問題として基地問題がある、この基地につきましては、とにかく協定附属文書でA、B、C表がきまっておる、きまっておるが、しかし、なおさらに考えてみられる余地はないか、こういうことをぜひひとつ大統領自身にお願いしてもらいたい、こういうことを頼んだわけです。岸元総理はそのとおりに頼んでくれたようです。その大統領の回答というものは、いま藤田さんからお話があったような次第でございますが、近くコナリー財務長官が来る。財務長官ではありまするけれども、そういう話を聞く権限を与える、こういう話でありますので、十分話をしてみたいと、かように考えております。
  19. 藤田進

    藤田進君 その発想が出てきたところは、なるほど議会なり、国民世論等から見て、本土並みではない、その質、量において。基地の密度、そういう反省から、一たん結んだ協定に対してその修正を求める、これを岸さんにお願いする、こういうことになったとすれば、あまりにもどうも軟弱であった、協定に至るまでの過程が。なぜ事前にもっとそういう点を強く押して、現在、一衆議院議員ではあるけれども、その責任的立場にはない人にあなたがお願いしなければならないか、あまりにも情けない姿であるように思うのです。いかがですか。
  20. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 協定段階では、申すまでもなく、これは最大の努力をしたんです。その結果、A、B、C表ができ上がった。しかし、私は、この段階におきましてA、B、C表を動かすということは、これは困難だと、こういうふうに見ております。しかし、沖繩における百万県民の感情等を考えますと、実行上において何か考えられるのじゃないか、そういう感じを持ったわけなんです。まあ私は、当時は大蔵大臣で、直接この問題には接触はしませんでしたが、愛知外務大臣が最大限の努力をしてあれまできたんだと、こういうふうな認識を持っておるので、どうも努力が足らなかったんだというようなお話でございまするけれども、沖繩協定全般から見まして、まずまずわがほうといたしましてはベストを尽くしたと、こういうふうに私自身見ております。
  21. 藤田進

    藤田進君 コナリー財務長官が来たら頼んでみようということで、いま答弁もそうでございますが、これが間々沖繩問題と関連して、円の切り上げだとかあるいは輸出貿易に関するいろいろな大きなひもがついたりといったようなこと、今度は兵器を買えとか、何を言われるのかということがいま大きな注目の的でございますが、しかし、それにもかかわらず、そういう努力をしてみようという外務大臣の意向である以上、何かそこに曙光を見出し得る感覚がなければならぬと思うのです。見込みはいかがですか。
  22. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 岸元総理はニクソンと、これは非常に親しい関係にあるのです。またニクソン大統領もわが国を八回も訪問している。これはおそらくアメリカの大統領として、日本に関する知識を持っておることにおきましては、いまだかつてない大統領であると、こういうふうに思います。そういう大統領が親しい岸さんからそういう話を聞いた、これは私は響くものが必ずある、こういうふうに考えたわけなんです。大統領も詳しい知識を持ち合わせなかったものですから、おそらくコナリーに話してくれと、こういうふうにお答えになったのだろうと思いますが、コナリー長官から私は返事が聞けるとは思わない。しかし、私どもの考えるところ、意のあるところを大統領に率直に伝えると思う。大統領がどういう判断をしてくれるか、いい判断、少なくともいい影響はあると、こういうふうに考えております。
  23. 藤田進

    藤田進君 外相としては、基地縮小の具体的案を引っ下げてコナリー会談をされるわけでしょうが、その縮小、A、B、Cについての余地はないようにも言われるし、どういう内容なのか、この際明らかにしていただきたい。
  24. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 内容をここで具体的に申し上げるのは、これはなかなかむずかしい問題です。ただ、一般的に申し上げますれば、A表ですね 実行上におきましてもう少し考える余地はないか、またいずれ沖繩における米軍は逐次撤退をするであろう。撤退をするであろうが、今日の段階におきまして考えても、たとえばゴルフ場が少し多過ぎやしないかとか、そういうようなことは考えていただく余地があるのではなかろうか。実行上ぜひそういう問題を考えてもらいたい。幾つかの問題点をあげまして話し合ってみたい、かように考えております。
  25. 藤田進

    藤田進君 基地の縮小ということは、A表ということでは非常に意味が薄いですね、基地そのものを論じます場合。ですから、私は、基本的軍事基地というものにわたる折衝を持つべきだと思います。  そこで、返還後基地の縮小はできるんだと、こういうことを特に自民党の皆さんはいろいろな会合等でも表明されております。とにかく返ることが大切である、返ったあと引き続き基地は幾らでも縮小できるじゃないかと。しかし、アメリカ国会、上院等における証言は、従来とは全然基地機能その他変化はないんだという、将来にわたってこれを保証しているような発言があります。これはアメリカのロジャーズ国務長官等を先頭に言われております。ここに大きなまず——いろいろありますが、返還後基地の縮小は可能であるということは、単なる宣伝ではないのだろうか。この点は、外相いかがですか。
  26. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 基地の機能を縮小するかどうかというのは、これは国際情勢、ことにアジアの情勢にかかってくると、こういうふうに見ております。しかし、機能をそこなわずに基地を縮小する、たとえばいま設例のゴルフ場というような問題、これは私は可能であると、こういうふうに見るわけですね、分離して考えられる問題である。そういう問題をまず取り上げたいのだと、こういうふうに思います。それから、さらに極東情勢が変わってくるということに見合わせまして、米軍の機能問題、機能を低下していいのかどうかという問題が起こってくるだろう。そういう院には、さらにそれに関連して基地の整理という問題が起こってくる。それに対しましても、今日この基地問題に臨むと同様な態度で接してみたい、こういう考えです。
  27. 藤田進

    藤田進君 ところが、アメリカの議会においては、ニクソンの訪中等をはじめ、極東の情勢はかなり雪解け、対立緩和の方向に向いているじゃないか、いまなお沖繩に軍事基地を維持しなければならないということはおかしいじゃないかという質問なんですね。これに対して、ニクソンの訪中等、そういう事態であればあるほど、基地の重要性というものが浮かび上がってくるのだという趣旨の答弁をパッカードその他がしておりますね。極東における、特に日本をめぐるアジアの情勢は、いかが分析されておりますか。かなり緩和している、あるいは緩和の方向に向いている、したがって、軍事基地を持つという、さらに従来全くそのままの機能を維持するということに対する外務大臣の意向。
  28. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いままさに極東情勢は転換期だと、こういうふうに私は見ておるのです。その転換期にあたりまして、私は、たまたまこの間の合同委員会の機会に大統領とも会う機会ができた。私は、大統領と会ってどういう話をしたか、これは詳細には申し上げる自由を持ちませんけれども、私は、一体アジアの情勢をどういうふうに大統領は見ておるんだろうか、また、アメリカ当局といたしまして全体といたしましてどういう認識を持つんだろうかと、この捕捉に私は特に重点を置いたわけなんです。私がそれらの会談を通じまして得た心証、これは、確かに、大統領の北京訪問という事態が起こった、これは一つの新しい動向を示すものである、こういう認識を米当局は持っております。しかし、会談の結果一体どういうことになるのか、あるいは会談の結果というものがいつどういうふうな形で具体化されていくのか、これについては、まだ見通しも立たない状態である、今日この段階では、軍事情勢につきまして変わったという判断はいたしかねる、したがいまして、沖繩におけるアメリカの態度、こういうものにつきまして重大な変更を加えるという見方、それに対してはなかり抵抗を示しておる、抵抗感がある、というふうに受け取ってまいりました。  しかし、問題は、私はそこじゃないと思うのです。それもある。それも今後の問題としてありまするけれども、今日においても、とにかく沖繩の人があれだけ祖国に復帰したいということを念願しておる、その念願を早く実現さしてやる、この問題。その際に、基地について多少の不満がある、こういうこともよく承知しています。しかし、そういう問題につきましては、これからわが国の施政権下に移ったもとにおいて、逐次また精力を込めて取りほぐしていく、こういうことが実際的じゃないか、現実的じゃないか、そういうふうな認識に立っておるのであります。
  29. 藤田進

    藤田進君 総理にお伺いしますが、ニクソンとの共同声明、四十四年十一月二十二日ですね。これにうたわれているのは、「韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要である」、それから同時に、「台湾地域における平和と安全の維持も日本の安全にとってきわめて重要な要素である」。これらについては、本会議等を通じて、あれはあの当時の声明である、いまは様子は変わってきたとも言われております。いかがですか。
  30. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 共同声明で言っている、わが国と韓国、わが国と台湾、そういう関係は今日も変わりはございません。ただ、その当時、声明をしたときのような背景と今日の背景は変わっておる、かように御理解をいただきます。
  31. 藤田進

    藤田進君 その背景というのはどういうことでしょうか。
  32. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御承知のように、中華人民共和国が今日国連に加盟を許されるとか、可決されるとか、アルバニア案の可決、さらにニクソン大統領が訪中を発表しておる、こういうような事柄がただいまの国際情勢の変化を意味するものではないかと、こういうことでございます。
  33. 藤田進

    藤田進君 そのことが「台湾地域における平和と安全の維持も日本の安全にとって」ということに変化を生じますか。当然生じるでしょう。
  34. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、日本の隣の国に、あるいは隣の地域に問題が起きたときに日本が安閑とはしておれなくなるのじゃないか、その  ことはいつも心配でございます。さような意味で、すべてが問題なしに推移することを望んでおる、経過することを望んでおる、こういうのが私の心境でございまして、隣接の区域に問題が起きても全然関係なしと、かようには私は考えておりません。
  35. 藤田進

    藤田進君 ロジャーズ国務長官等はこの点を大きく取り上げて議会で答弁をしているのであります、御承知のとおり。この韓国あるいは台湾地域の、総理がここに声明しているこのことは、単に、近所が騒げばどうもやかましいわいというようなものではなくて、このことが沖繩の基地の維持あるいは核その他の装備あるいは兵員等の大きな、重大な変更に対して、事前協議等、決して「ノー」と言うことはない、その認識が日本総理大臣にはあるのだからと、こういうことを指摘しておるわけですね。ですから、単にいま言われるような軽い意味ではなかったと思う。これが、協定への道を開くにあたって、やはり沖繩の軍事基地の維持強化、むしろ強化という点につながっているように思います。いかがですか。
  36. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、問題のとらえ方がよほど違うと思います。どうしてアメリカについて、もっとそこの大事な点を剔抉することができなかったのか、言いかえますならば、沖繩が祖国に復帰した、日本に復帰する、その暁においては、沖繩に駐留する米軍も本土に駐留する米軍も同じように安保条約の制約を受けるのだ、安保の取りきめそのものは本土であろうと沖繩であろうと全然同じなんだ、かように考えれば、ただいまのような状態はよほど理解しやすいのです。何だか、アメリカの主張そのものが、沖繩だけ特別な扱い方でもされるかのような表現でいまのように説明されますが、私は、これは納得がいかない。これはもうたびたび明らかにしておりますように、沖繩が祖国に復帰すれば、その際は本土と同じ安全保障条約が沖繩にも適用される、安全保障条約についての諸取りきめもそのまま沖繩に適用される、こういうことでございますから、沖繩は本土並みになるということであります。この点で、どうも社会党諸君は、沖繩が本土並みになるのでなくて本土が沖繩化するのだと、かように説明されますが、私は、そのほうが間違っておるのじゃないか、ただいまのように、はっきりした問題でございますから、この点は御訂正なすったほうがいいのじゃないだろうか、かように思います。
  37. 藤田進

    藤田進君 アメリカの議会でロジャーズその他が答弁したのは、あれは議会向けにやっているのだと、こういうことを政府筋は言っておりますがね。日本の場合がむしろ議会向けにやっているようにも思うのです。これは、あの日韓条約のときに、竹島は、向こうで言えば、もうくれたのだ、佐藤さんと総理官邸で内外記者がいるところで、もうはっきり約束したのだと、こう言っている、向こうの速記録に。同じように並行して日韓条約を審議しましたがね。いや、あれは日本のものだ、国際司法裁判所云々の議論があったけれども、そんなことをする必要はもうないのだ、明らかなものだという……。いまどうなっておりますか、現在。こういう、いわば議会における単なるテクニックで答弁されているように思うんで、いま、アメリカ議会における証言と佐藤さんの日本議会における答弁とは大きな食い違いがあります。この声明、いま二点を指摘しましたが、これがもう最大の、返還しても軍事基地機能というものは失わないんだ、いままでと変わらないんだ——いままでは事前協議も何もなかったはずですね。今度、いま言われるように、本土同様、事前協議、しかも「ノー」もあるということであれば、従来と変わらないという証言ができるはずがありません。  具体的に聞きますが、核は返還時にはないんだということですが、この確認の方法、さらに再持ち込みに対する−政府は、非核三原則、持ち込まない、持ち込ませないんだと、みずからが持ち込むんじゃない、人にも持ち込ませないんだということだろうと思うんですが、これはもうはっきりと、核の再持ち込みについては、持ち込ませない、「ノー」だと、ここで約束できますか。
  38. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 結論から申せば、もちろん、約束できます。これははっきりしています。また、ロジャーズ国務長官が国会で証言しておりますのも、今度沖繩日本に復帰すれば、それは安保条約の適用になります、また、それは事前協議の対象になりますと、そういうことをはっきりロジャーズも言っているじゃありませんか。それで、なぜ本土と沖繩と特別な扱いをされると、かようにお考えですか。——ロジャーズは私が言っていることと別なことは言っておりません。したがって、この点では本土並みになる、かように御了承いただきます。これはもうロジャーズそのものが証言している。
  39. 藤田進

    藤田進君 いや、そこまではそのとおりなんです。だから、この共同声明でも、アメリカの利益を害さないためにという、ちゃんと前置きのもとに、そのもとに事前協議だと。その事前協議の場合には、アメリカのほうはアメリカの利益を害さないという大前提があるから、「ノー」ということはないんだということを示唆しておるんですね。これははっきりしているんですよ。だから、岸さんが今度行かれて、伝えられるように、次の内閣はだれになるだろうか——これは、ニクソン、心配なんですよ。いまのようなことについて答弁を受けて、社会党内閣なら、いやそれはだめですよと、こうこられたら、これは骨抜きになっちゃう。そうなんです。これが大きな問題であります。ですから、事前協議の場合には、核のみならず、こういうことも言っているんですね。韓国あるいはその他の地域に沖繩から攻撃に出ることもできるんだと。これはやっぱり、あれじゃありませんか。従来の解釈では、たとえばB52が北ベトナムを爆撃するとか、そういうようなことも、これはよろしいんですか。
  40. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 従来のような関係と、祖国に復帰した後とは、これはせつ然と区別しなきゃいかぬです。いままでは、なるほど沖繩にいる米軍は自由出撃をしております。これは、米軍自身の施政権下にあることでございますから、私どもの関与することじゃございません。しかし、日本に返ってくれば、ここから出撃するというような場合には、当然事前協議の対象になる、このことは、はっきり変わるのであります。このことは藤田さんもよく御承知じゃないでしょうか。この点を御承知じゃないとは私は思わないんですよ。いかがです。
  41. 藤田進

    藤田進君 いや、よく知っているから心配なんで、今度は、パッカードにしても、日本から攻撃とは言わないで、出るわけですね。出て、現地で散開することについては安保条約上一向差しつかえございませんと、これははっきり言っているじゃありませんか。これはごまかしになります。  それから、時間の関係もありますから……。返還については、何か、アメリカでは七月一日を考えておる。政府は、四月一日と従来言ってこられた。これはどうなります。
  42. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 政府といたしましては、七二年中なるべく早い時期と、こういうふうに考えておるんです。で、パリで愛知・ロジャーズ会談が行なわれた。ごれは御承知のとおりでございますが、そのとき、日本側としては、四月一日にできないものかなという見解を述べたようでありますが、しかし、諸般の事情を考えてみますると、準備です。これは、沖繩返還、その日からわが国の施政権下に入る沖繩、これが、豊かな明るい沖繩という方向の基礎固めを踏んまえまして出発しなければならぬ。ですから、準備万端が要るんです。そういうことを考えますと、あるいは四月一日というパリの愛知前外務大臣の見解、これは、私は、そうやさしく、容易に実現する、また、それがいいというふうな考え方を持っておりません。しかし、アメリカは、まあ年度の関係もあるんでしょうか、そういうので、七月一日ということを言っておるやにも聞いておるのでありますが、その辺は、私は時間的にはそうこだわった考え方は持っていないんです。とにかく、準備万端を急ぎまして、急いで、なるべく早く実現すると、こういうこと。ですから、それが、あるいは準備万端の関係上、七月一日というようなことになる、そういう場合がないとも限らぬ。しかし、なるべく取り急いで、早く実現を期したいというのが私の立場でございます。
  43. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまの外務大臣は、あらゆる可能性というか、ポシビリティ、そういうものを考えて非常に慎重な答弁をしたんだと思いますが、私どもは、何と申しましても、一日も早く、祖国復帰、これを実現することが望ましい、かように思いますから、ただいまのところ、米側は米側、日本側としては四月一日、それを目標に最善の努力をしていること、これは御了承願いたいと思います。
  44. 藤田進

    藤田進君 これはどっちがほんとう。担当大臣は、日にちにはこだわらぬ、七月というなら準備して七月でもそれはいいと思う、総理は、従来どおり、やはり、アメリカはアメリカ、日本としては四月一日を期して返還せしめるように努力する、こう言うんですがね。
  45. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私も七月一日ということを言っているわけじゃないんです。これはなるべく急いで、取り急いでやるんだと、これが私の立場であると。しかし、準備万端ですね、そういうことを考えますと、四月一日というふうに考えてきたのでありまするけれども、必ずしも四月一日に間に合うかどうか、今日まだ自信はついていない、しかし、なるべく早く取り急ぎます、そういうことを申し上げておるわけです。
  46. 藤田進

    藤田進君 七月一日というのは取り消しますか。
  47. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 七月一日というのは、アメリカがそういうことを言っておるということと、準備万端の状況によりましてはそういうこともなしとはしないんだと、そういうことを申し上げたんです。しかし、私としては、速記録をよくごらん願いたいんですが、とにかく、準備万端早くなし遂げまして、一刻も早い実現を期しておる、こういうことでございます。
  48. 藤田進

    藤田進君 速記録を見てくれと言うんですが、七月一日になってもやむを得ないと思うというんだから。これは、三カ月といいますがね、これは行政処理上の大きな問題です。もう十一月です。かれこれ、あと六ヵ月あるなし。  まあ、総理と外務大臣が食い違う状態で、非常に困るですが、重ねてお伺いいたしまして次に移りますが、この沖繩については、いわゆる安保条約の本土並み適用ということで、核はもとより、直接戦地に赴くような部隊の移動等々については、これは「ノー」だというふうに御答弁があったとして間違いございませんか。
  49. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 核の問題は、私どもは、非核三原則、これは、つくらず、持たず、持ち込みも許さない、こういう原則を取っておりますから、事前協議されましても、これは「イエス」を言うことはないと、かように御了承いただきます。これは、はっきり申し上げておきます。ただ、出撃の場合に、これは全部が全部「ノー」だと、かようなわけではないんで、いままでも言っておりますように、事前協議、それこそ「イエス」もあり、「ノー」もある、こういう形で私どもはこれと協議する。こういうことですから、その点はもっとゆとりがあるように御了承いただきます。
  50. 藤田進

    藤田進君 従来しばしば行なわれた北爆、沖繩基地からB52等、これは「イエス」ですか。
  51. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 過去の例は、アメリカの施政権下にあるのですから、これは自由出撃をしておると。これから後一体どうなるのだ、こういう問題です。それは、ただいま返ってきた後に、出撃するかどうか、戦闘作戦行動に出るかどうか、そういう点をそのときの状態で十分勘案して考えないと、これは結論が出ないことであります。私が最もおそれているのは、これを事前協議をして「イエス」を言った場合、それが戦争に拡大される、日本が巻き込まれる、そういうことは厳に慎まなければならないと、かように思いますから、わが国の安全の確保という、その観点に立って、そのことが必要かいなかということを十分に考えていく、こういうことであります。
  52. 藤田進

    藤田進君 じゃ、これは「イエス」も「ノー」もありということですか。
  53. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) さようでございます。
  54. 藤田進

    藤田進君 次に、中国問題に移りたいのですが、一点だけ、尖閣列島について、今度、防空識別圏からはあそこをはずすんだということが伝えられておりますね。これは、台湾も、それから中国も自国の領土だと言っているし、日本はもとよりわが領土と言っているわけですが、現内閣の方針、確認はいかがでしょう。
  55. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 尖閣列島につきまして、国民政府、中華人民共和国、そういう方面からいろいろ意見が述べられておるようです。しかし、政府といたしましては、これはもう疑問の余地もない、わが国のものだと、こういうふうに考えております。それは条約上も、経緯度をもって今回返還される領域がはっきりしておりまするから、これは全くもう法的に争う余地のない問題であると、そういう認識を持っております。
  56. 藤田進

    藤田進君 争う余地がなくても、争いになっていると私は認識しておりますね。どう処理されます、今後、外交上。
  57. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) わが国の領土、完全なる領土であるという主張を一貫して貫き通す考えであります。
  58. 藤田進

    藤田進君 いや、それは聞いたんだけれども、中国は自分のほうだと言うんだから、どう処理しますか。一貫して貫いただけじゃ、これは解決しないんです。
  59. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 異論はいろいろあるにいたしましても、わが国の主張は、これはまぎれのないところなんです。この主張で最後まで押し通すほかはない問題である、こういう考えであります。
  60. 藤田進

    藤田進君 いやいや、主張しただけじゃだめなんで、だから、そういう場合の処置、向こうは向こうだと言うんですし、やがてこれを地下資源その他に使うといったようなことになりますと、現実に予期しない紛糾ないし行動というものがあり得ると思うのですね。だから、どうするか。
  61. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これは、わが国の正しい主張を押し通しまして、御意見のある国々の御納得を得るほかはない、そういうふうな見解でございます。
  62. 藤田進

    藤田進君 わかっているのだけれども、納得しないですよ、相手はね。  中国関係ですが、アルバニア決議案が圧倒的多数で可決されたあと内閣の方針はかなり変わったようにも見えるし、また、そうでないようにも見えるしいたします。特に台湾についての日華条約等を通じては、今後の正常化の中で、その経過の中で話すのだということのようです。しかし、カナダの方式でいくのと、あるいはイタリーその他、いろいろ態様は違いますが、わが日本の場合に、これからのプロセスをお示しいただきたい。これは外務大臣
  63. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は、カナダやその他の国々の様子を見てみますると、あっせん者、仲人がおってカナダと中国との接触が始まるというような経過をとっておるようでありますが、そういう必要はないと思うのです。私は、わが国を代表するもの、または中華人民共和国を代表するもの、つまり政府間折衝、これを堂々と押し進める、こういう方式でいいのじゃあるまいかと、こういうように思います。ただ、政府間交渉を始める、そこまでにどういうふうにこぎつけるか、こういうことが非常に大きな問題である。こういうふうに考えますが、しかし、前提として、私は、日中両国の間には、相互不信というか、そういう状態があると思う。ことに中国側におきましては、日本がまた戦争をしかけるのではないか、経済大国になった、これは必然的に軍事大国への道である、こういうような考え方を持っているのじゃあるまいか。その辺、よほど解明をしておく必要があると思う。これはもう総理もしばしば言っているとおり、わが国は経済大国ではあるけれども軍事大国には絶対にならぬ、こういうことを言っているわけです。その辺、徹底した誤解の解明というものがありませんと、日華間のいまの気分と日中間の気分というものがほぐれていかないのじゃないか。そういうふうに考えます。  また、もう一つの問題は、これと関連する問題でありまするけれども、日中戦争、これに対してわが日本がどういう認識を持っておるか、こういう問題が提起されているようです。衆議院でも、総理大臣が、遺憾であったということを申し上げておりますが、とにかく、あれだけの大軍を大陸に進める、わが国はそれによって中国の国民にたいへん御迷惑をかけた、これは私は申しわけないと、こう言うべきだと、率直に言うべきだと、そういう気分のお互いの理解、その辺からまず始まっていかなければならぬ問題であろうと、こういうふうに思うわけであります。  それで、次いで問題がありますのは、中国は一つなりや二つなりや、こういう問題、これも大きく中国側から争われておる問題でありますが、わが国は、総理大臣がはっきりと、中国は一つである、こういうふうに申しておる。その中国がどういう一つになるかという問題は、どうかこの二つの政府の間で話し合ってもらいたい、こういうふうに申し上げておるわけなんです。ですから、わが国としますと、具体的な問題になりますと、いろいろ日中間、日台間に問題があるわけですが、特に重要で、わが国の考えのもとにきめなきゃならぬ問題は、日華条約という問題であると思う。これは中国と国民政府との間の問題じゃない。国民政府とわが日本の間の問題なんです。二国間の問題なんです。この問題をどういうふうに考えるかという、いま大きな問題がありますが、これは私は、日中政府間折衝、政府間会談、そういう過程においてこの決着をつくべきものである、そういうふうな認識を持っているわけであります。いずれにいたしましても、正々堂々と、わが国は主体性を持って中国と話し合うべきだ、そういうふうな考え方を持っております。  その日中政府間交渉、それをどういうふうに開始するか。私は、中華人民共和国は、公明党の代表団の話によりますると、もう再び日本と戦争しないと、こういう固い決意を持っているという話を聞きまして、たいへん欣快に存じておる次第でございますが、わが国もまた、再び中国と戦争するというようなことは断じてあってはならぬというふうな認識を持ち、決意を持っておるわけです。そういう決意、また、両国間にわたるところの問題につきましては、ただいま申し上げましたような考え方を持って、一刻も早く政府間の接触が始まる、これが私は大事なことじゃあるまいか。そういうプロセスをどういうふうに進めていくかということに、いま頭を砕いておる、こういう現状でございます。
  64. 藤田進

    藤田進君 いや、そこに、再び戦争しないとか、いろいろ言われますが、先ほど触れたように、総理大臣はいまもこれは生きていると言う台湾地域における平和と安全、これが日本にとってきわめて重要な要素だとね。これは明らかに安保体制で、いわゆるいまの台湾政府、これに対して影響がある場合に、米台条約等によって何か起こる、そういう場合を想定しているわけですね、これは。そういうものを一方に持ち、そして一方、中国との国交を正常化しようというところに、中国としての懸念があるように思うんです。ですから、いろいろ言われますが、どうなんです。佐藤内閣ではとてもこれは日中の正常化、国交の再開ということは困難だと、もう見きわめをつけておられるのじゃないかと思われる節が非常に多いです。いかがでしょう、総理大臣
  65. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 佐藤内閣あと余命幾ばくもないと、こういうような言い方もされますから、そういうところから、いまのような御議論が出るんじゃないかと思います。私は、国交の正常化は早いにこしたことはないと思っております。先ほど沖繩返還についても申しましたが、早くやること、ただいまがその好機到来だと、チャンスだと、私はもう一日も早く国交の正常化をはかるべきだと、かように思っております。ことに、中国と日本との間には、それ以外の幾多の解決を要する問題が山積をしている。そのもとになりますためには、これらを解決するためにも、国交の正常化をはからないで一つ一つが解決されるわけでもない。私はいままで積み重ね方式を主張してまいってきました。いままでは積み重ね方式でございました。しかし、今日、アルバニア案が可決された、こういう暁において、われわれはいままでの考え方のような積み重ねというような、けちなことを考えないで、真正面から国交正常化と取り組むべきだ、そういう時期が到来している、かように私は思っておりますので、佐藤内閣の寿命がどうとかこうとかいうようなことでなしに、とにかく、命ある限りこの国交正常化に積極的に取り組むべきだと、かように私は思います。
  66. 山崎昇

    山崎昇君 ちょっと関連。  総理に、関連して、お聞きをしたいと思います。いま、日中の国交回復については政府としても政府間接触を持って積極的に進めていくという答弁がございましたが、しかし、この日中の問題は、台湾の扱いが何と言っても私は一つのポイントであろうと思うんだが、あの二十六日に、国連決定がなる寸前に台湾は脱退をしましたね。ところが、その後の集会で、蒋介石さんは、大陸反攻というものについて述べられている。言うならば、佐藤総理は、この台湾と中華人民共和国とは話し合いをやってもらいたい、こう、あなたは強い希望を述べられるんだが、一方の台湾は、あくまでも大陸進攻をやるのだ、最後まで戦うのだと、こうなっておるわけですね。そこで、あなたは、一体台湾の処理をどういうふうにやられるのか。どういう話し合いの過程を日本がとるのか。これは、私はたいへん疑問だと思う。その辺について具体的にあなたの考え方を聞いておきたい。
  67. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 日中国交正常化の一つの大きな問題は台湾問題だと、これは山崎君御指摘のとおりだと思います。このもとの起こりは、何と申しましても、過去において私どもが日華平和条約を結んだ、その相手方であります。その当時を顧みると、国際的にも、中華民国は代表にふさわしい承認国の数を持っていたと思います。しかし、さような点は今日大きく変わってきております。今日の状態においてこれがいかに取り扱われるか。しかし、これは私どもがとやかく言うべき筋のものではない。私どもが言うことは、中国は一つだという、その立場において、中国はどういうようにこれを処理なさいますかということだけであります。私は、日中正常化におきまして、正常化の過程においてこの問題が取り上げられると、かように思い、同時に、また、そのことを期待するものであります。私どもがとやかく言うべき筋のものでないことだけは、この機会に、はっきり申し上げておきたいと思います。
  68. 山崎昇

    山崎昇君 とやかく言うべきものでないというあなたの考えは私もわかる気もします。だが、日本がそういう希望を持っておったといっても、あなたと一番深い関係にある台湾は、大陸の反攻を再び述べておるわけです。大衆の面前で蒋介石が言っておるわけです。そして、この点は、最後まで戦うと、こう言う。そうすれば、あなたは希望だけ述べておるけれども、一体この台湾に対して日本はどういうふうにするのか。あなたは説得するのですか。あるいは、そういうことをやめなさいと言うのですか。だから、この台湾の扱いは、きわめて私はむずかしい問題だと思うけれども、あなたの希望と全然違うことが台湾からいまも起きつつある。そういう点について、もう一ぺん、ひとつ、あなたの考え方を聞いておきたい。
  69. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 何度お尋ねになりましても、私の答えは同一であります。しかして、私は、おそらく、大陸反攻を呼号しても、さような事態は起こらないと、かように思っております。ただいままでの経過から見ましても、さようなことはあろうはずはないと、かように固く信じております。私は、さようなことがあっては、また、ならないと、かように思っております。
  70. 戸叶武

    戸叶武君 関連。  先ほどの藤田さんに対する福田外務大臣並びに佐藤首相の答弁というものは、きわめて、ある意味において明快で重大な転機を表明しておると私は思うのです。福田さんが三つに問題を分類しまして、中国は一つだと、はっきり言い切りながら、そのあとで、やはり二つの政府があるという現実の上に踏まえて、しかしながら中国と政府間協定、政府間会談を進めるという点にしぼっていった点は、やはり、台湾と北京という形でなく、この国連で決定したところの線で政府間交渉を進めようという決意を明らかにしたものだと私は思いますが、その点をもっと明快にしてもらいたい点、それから、中国もそうだが、日本は断じて戦争などのことは考えてない、やらないという断言、このことはきわめて重大な断言です。そうなるとすると、沖繩におけるところの前の佐藤・ニクソン声明なり、ニクソン・ドクトリンの考え方とは、国際情勢の変化、国連の中における変化において、日本のそれに対応する姿勢というものを外務大臣がみずから私はよく打出したと思う。それのときに佐藤さんにここで考えてもらいたいのは、やはり、近衛さんが、かつて、蒋介石を相手にせずと言って中国問題解決をどろ沼におとしいれたじゃないですか、あのことがあるから、中国は遠慮して、佐藤さんじゃいやだなと思っていながら、佐藤さんの次には福田さんかだれかわからぬが、その次くらいには何とか日中関係の国交は正常化になるであろうという、周恩来さんが遠慮深い表現をしているのも、早く日中国交の正常化をはかりたい——相手にせずとは言い切らないが、私は、相手にしたくないのがほんとうだと思うのです。選手交代によって、国連における、この国連史上において画期的な転換がなされたときに、日本も顔を洗い直して、またも出ました三角野郎じゃだめなんだ、やはりはっきりとした、私はこれは(「関連だぞ」と呼ぶ者あり)いや、私は福田さんと総理に質問しているのだ。私は放言だと思う。その民謡の中にも示されているように、私は、新しい気持ちで、新しい日本と、新しい極東の危機を打開する責任を持つ人が政府間協定に当たらなければ、政府間会談というものは押し進められないのではないかと思うので、表現において幾らか行き過ぎがありましたら、その点は私は取り消しますが、とにかく重大なときです。福田さんなり、佐藤さんなり、もっと中国側が政府間の話し合いができるような、みずからの政治姿勢を、この際、せっかくここまで来たのだから、はっきり国民にわかるように、また、中国の国民にもわかるように、説明してもらいたいと思います。
  71. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私の発言に関連してのお尋ねと思いますので、私からお答え申し上げますが、私は、過日本会議でも申し上げましたとおり、中国とわが日本は隣り組だと、しかも、長い歴史も持っているし、また、アメリカやその他の国々には見られないような激しい人事交流があり、また経済交流がある。これはもう、中国といたしますと、飛び抜けて世界第一のシニアをわが日本との間に持っている、そういう国がらなんです。その中国とわが日本との間に国交が正常化されていない。これはきわめて不自然なことである、そういう認識を持っているのであります。なぜだろう、こう言いますと、それはまあ、世界の情勢にもよります。よりますけれども、両国間に、これはやはり相互に不信という問題がある、こういうことは私は争えないと思うのです。その不信というのはどこから来ているのかというと、私は、日中戦争、これから来ておるのではあるまいか、こういうふうに思うので、その辺の、ですから、解明を始めなければならない。そして、帰するところは、私は、堂々と政府間説得をやったらいい、交渉をやったらいい、こういうふうに思っておるのであります。これは、いま戸叶さんから重ねての御質問でございまするが、はっきりと、ほんとうに権限を持った日本の代表と、また、権限を持った中国政府の代表とが、ほんとうに、はだかでぶつかるべきである、こういうふうに、まあ考えておる次第でございます。まあ、国連における事態がいうふうに変わってきておる、そういう事態を踏んまえまして、中国問題の処理、両国の正常化というものに対しては、ほんとうに真剣に取り組んでいきたい、かように考えていることを、はっきり申し上げさせていただきます。
  72. 松永忠二

    ○松永忠二君 関連して。  二点ほど、ちょっとお伺いいたします。  いま総理も言われているのは、中華人民共和国政府は中国を代表する政府だと、台湾は中国の領土であり、すなわち中国は一つである、そして二つの政権が存在することは歴史的な事実であるので、これは経過によって、経過措置によって考えていきたい、そういうのが基本的な態度だと思う。これはアルバニアの決議案が通らぬときからそうであり、いまもまたそういうことを言っておられるのですね。私は、アルバニアの決議案が通った現在において、これをやはり改める必要があるのではないか。いま出てきている中国を唯一のやはり代表する政権だと見べきではないか。  それからまた、経過措置だと、こういうことであるならば、これは両者の間の努力にまつというような話をいまも言われたので、山崎委員が、それなら、片方が異議を唱えているのではないか、ここをどうするのだ、こういう話も出たと思うのです。これは、経過措置であっても、これを判定するものは日本政府でなければできない、日本政府がこれを判定をする、しかも、アルバニア決議案が通っている以上、その国連外交を尊重するという立場から判断の基礎は出てきているわけです。したがって、従来のような中華民国政府は中国を代表する政府であるという判断を変更すべき根拠はもうすでに出てきている。しかも、それを両国の協議によってやってもらいたいなどという情勢ではないということも、いま指摘をされておる。したがって、政府みずからが判断をすべきだと思うが、その点についてはどうか、何らこれは変更する必要がないのかどうなのか、この点を総理からひとつお答えをいただきたい。
  73. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) アルバニア決議案が可決された、これは国連との関係においてはたいへん明確な、はっきりした事実であります。しかし、二国間の問題はこれによって解決されるものではないことは、松永君も御承知のとおりであります。私どもは、中華人民共和国とただいまから国交を正常化にはかろうと、こういう段階に立っている、こういうことを申しておりますが、いままでは中華民国との間に日華平和条約があった、これは私どもは有効な条約だと思っておりますが、中華人民共和国はこれを否定している。これは無効なものだ、かように言っておることも承知しております。しかして、中華民国も、中華人民共和国も、ともに、中国は一つだと、かように申しております。この点が一つの問題でありまして、私どもは、過去において条約を結んだ限り、やはり権利義務があると、しかし、その権利義務は、今後の、国際的なものではありますが、中華人民共和国と国交の正常化をはかる、その段階においてこれの取り扱い方をきめるべきだと、かように思っておるのでございまして、先ほど説明したとおりであります。
  74. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 松永君。簡単に願います。
  75. 松永忠二

    ○松永忠二君 それはおかしいと思うのですよ。それを判断するのが日本政府だ。しかも、国連中心であって、そういう外交を進めるということを強調している以上、その判断の根拠はすでに出ているわけです。だから、経過措置であるからといって、それを当事者同士にまかせるということであるならば、これはいつまでたっても際限はつかない。それに対して外務大臣政治的な折衝を始めていくと、こう言っているわけです。したがって、どうしても、この際、アルバニア決議案が通った段階において、従来言った経過措置というものをやはり検討する必要があるのではないか。それと、総理の言っている経過措置というのは、当事者同士がそれをやるということが、結論が出るということを経過措置として言っているのかどうか。いかなる形の中で、日本が中華人民共和国政府を唯一の政府として判断をするという時期が来るのかどうなのか、どういう形でそれは出て来るのかということを聞いているのであって、中国は一つであると、こう言っておるならば、その一つであるという判断をするのは日本政府である。その政府の基準はすでにでき上がってきているし、それを、そうでないというならば、いつ一体その経過措置が完了するのかということを明確に答弁をする責任があると私は思う。先のほうだけ説明をして、あとのほうを説明しないから、国民もみな、わからぬわからぬと言っているのだから、そこを明確にすべきだ。  関連でありますから、私は以上で終わりますが、できるだけひとつその辺を明確に答えてください。また機会を見て、ひとつ……。
  76. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 松永君御指摘のように、国際世論はきまったと、こういう前提がございますから、(「国連だよ」と呼ぶ者あり)国連における国際世論はきまったと、こういう前提がございますから、われわれはそれを基礎にして日中国交正常化をはかる、いわゆる中華人民共和国と正常化について話し合う、その段階において、いままで交渉を持っていた中華民国との関係もその段階で解決されるべきものだと、かように実は申したのでございまして、先ほど来申したことがわかりにくいと言われるけれども、これは非常にわかりいい説明のように思います。どうぞ御了承いただきたい。
  77. 藤田進

    藤田進君 これは、ますますわからなくなるですね。まあ、どうせ自分の時期に、任期中にこれはアプローチすることもないだろうという考え、発想に立てば、こういうことにしておけば一番無難ですよ、それは。その話し合いに入った中でやるんだ……。入らないですから、大体。  さて、そこで……。
  78. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そんなことはない。
  79. 藤田進

    藤田進君 そうなんですよ、どう考えてみても。  そこで、外務大臣昭和二十六年十二月ですね、吉田書簡としてダレスに送った書簡がありますね、日台条約に関する。これは前提条件になっております。ちょっとそれを読んでみてください。
  80. 須之部量三

    政府委員須之部量三君) かなり長い部分でございますが、どこからどこまで……。全部、よろしゅうございましょうか。  拝啓   過般の国会衆、参両院における日本国との平和条約及び日米安全保障条約の審議に際し、日本の将来の対中国政策に関して多くの質問がなされ言明が行われました。その言明のあるものが前後の関係や背景から切り離されて引用され誤解を生じましたので、これを解きたいと思います。   日本政府は、究極において、日本の隣邦である中国との間に全面的な政治的平和及び通商関係を樹立することを希望するものであります。   国際連合において中国の議席、発言権及び投票権をもち、若干の領域に対して現実に施政の権能を行使し、及び国際連合加盟国の大部分と外交関係を維持している中華民国国民政府とこの種の関係を発展させて行くことが現在可能であると考えます。この目的のため、わが政府は、千九百五十一年十一月十七日、中国国民政府の同意をえて日本政府在外事務所を台湾に設置しました。これは、かの多数国間平和条約が効力を生ずるまでの間、現在日本に許されている外国との関係の最高の形態であります。在台湾日本政府在外事務所に重要な人員を置いているのも、わが政府が中華民国国民政府との関係を重視していることを示すものであります。わが政府は、法律的に可能となり次第、中国国民政府が希望するならば、これとの間に、かの多数国間平和条約に示された諸原則に従って両政府の間に正常な関係を再開する条約を締結する用意があります。この二国間条約の条項は、中華民国に関しては、中華民国国民政府の支配下に現にあり又は今後入るべきすべての領域に適用があるものであります。われわれは、中国国民政府とこの問題をすみやかに探究する所存であります。   中国の共産政権に関しては、この政権は、国際連合により侵略者なりとして現に非難されており、その結果、国際連合は、この政権に対するある種の措置を勧告しました。日本は、現在これに同調しつつあり、また、多数国間平和条約の効力発生後も、その第五条(a)(III)の規定に従つてこれを継続するつもりであります。この規定により、日本は、「国際連合が憲章に従ってとるいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を与え、且つ、国際連合が防止行動又は強制行動をとるいかなる国に対しても援助の供与を慎むこと」を約している次第であります。なお、千九百五十年モスコーにおいて締結された中ソ友好同盟及び相互援助条約は、実際上日本に向けられた軍事同盟であります。事実、中国の共産政権は、日本の憲法制度及び現在の政府を、強力をもつて顛覆せんとの日本共産党の企図を支援しつつあると信ずべき理由が多分にあります。これらの考慮から、わたくしは、日本政府が中国の共産政権と二国間条約を締結する意図を有しないことを確言することができます。  以上であります。
  81. 藤田進

    藤田進君 総理もお聞きのように、吉田書簡の中心は、やはり、台湾が国連に加盟している、これが大きな根拠をなしております。その状態は、すでに総理指摘されるように、事情は全く変わってきました。世にいう虚構であります。ですから、日台条約の基礎的なものがくずれてしまっている。ですから、これは、そういう認識に立って、そして日中間の正常化の過程でこれを廃棄する、こういうことになりますか。
  82. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そういうことになります。
  83. 藤田進

    藤田進君 外務大臣はどうですか。
  84. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 総理がそういうふうなお答えでございますので、私から重ねてお答え申し上げる必要はないかと思います。
  85. 藤田進

    藤田進君 答える必要がないと言って答えている。外務大臣総理のとおりですか、どうなんですかということです。
  86. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 総理大臣のお答えのとおりでございます。
  87. 藤田進

    藤田進君 そうだとすれば、問題は、日台条約——日華条約と総理は言うのだが、これを廃棄するという腹はもうすでにきまっていると解していいのですね、土台がくずれているのですから。
  88. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そこになると、簡単に、土台がくずれているから条約は無効だということにはならないのです。条約のあることは現実な問題でございます。その意味において、国際的な権利もあるが、同時に義務もある、これはもうはっきりしているのでございます。だから、問題は、その問題と、いまのような前提がくずれたということとは、これはもう別な問題であります。
  89. 藤田進

    藤田進君 同様に、外務大臣、所管大臣のほうが詳しいかもしらぬけれども、いまのはロジックが合いませんよ。もう土台がくずれて、だめなんだが、これはまだ有効なんだというのは、私には理解できない。
  90. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 土台がくずれたと総理が申し上げましたが、これはまあ事実上の関係を申し上げておることかと思います。法的に言いますれば、国連の決定が二国間の関係を制約するものじゃないのです、これは。ですから、二国間の日華平和条約、これはあらためて考え直さなければならぬ問題である、そのあらためて考え直す態度はどうか、こういうことに総理がお答えになっておる。それは、日中——今度は日中です。日中国交正常化、この過程において話し合うべき問題であり、おのずから結論は出てくるであろう、こういうふうに考えております。
  91. 藤田進

    藤田進君 いや、それは、二国間条約に直接影響を、直ちに、アルバニア案が可決されたから二国間条約が全部ゼロだと、そんなことを私は言っているわけじゃない。吉田書簡は、お聞きのように、すでに基礎が国連加盟ということが前提条件になっている。だから、それがくずれている。とすれば、日中正常化をはかる以上、真にその方針である以上は、日華条約というものの処理をしなければならぬ。その処理は、これを廃棄する以外にない。日中の国交再開に関するいわば平和条約なり、同時に日華条約の存立というものは許されないのが、これは現実論としても、そうなんですね。したがって、経過中にという、経過中にこれを廃棄する、日台条約を廃棄する、こう理解していいでしょう。
  92. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そういうふうな具体的なお尋ねになりますと、私の答弁も慎重にならざるを得ない。つまり国連の決定は、日華両国の、二国間の関係を拘束するものじゃないんです。しかし国連におけるあの表決によりまして、国民政府をめぐる国際環境が非常に変わってきているということは、これは私もよく承知しております。そういう情勢を踏んまえ、これからまた日中の政府間接触を始めなきゃならぬと、こういう事態を迎えておるわけでありますが、この政府間接触におきまして、日華関係を一体どういうふうにするかということが、おのずから結論が出てくる、こういうふうに考えております。
  93. 藤田進

    藤田進君 ですから、そのときは廃棄するという腹がまえなんじゃありませんかというのがポイントなんですよ、私の質問の。
  94. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まあ総理総理一流の非常に含みのあるお答えを申し上げておると、こういうふうに私はいま聞いておったんです。あまり私はそうそこまで突きとめるのもどうか、こういうふうに思うんです。そういうことがはたして日中間を、また日華間を、円満に収拾していくという上において、これは一体メリットになるのかデメリットになるのか、聞きながら私も疑問を感じたわけでございますが、いずれにいたしましても、日華平和条約の問題につきましては、日中国交正常化の過程においてこれは解決される問題である。
  95. 山崎昇

    山崎昇君 ちょっと関連質問。  いま、私ども、このやり取りを聞いていまして、何か総理の一流の言い回し方と言うのだが、どうも、総理の言うことと、それから外務大臣の言うこととで、私ども多少違いがあるんではないかと思う。したがって、この問題については、統一見解をきちっとしてもらいませんというと、私どもますます混乱をしてしまう。そこで、できればひとつ御相談願って、そして統一的な、一流という中身がわかりませんから、きちっとしてもらいたい。それまで暫時休憩にしてもらいたい。
  96. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも佐藤一流だと、こういうことに外務大臣は表現したようですが、私はいま、先ほど来お尋ねになります日華平和条約を無効にすると、こういうことなのか、こう言われると、私は、そう簡単にこれはできないんだということを先ほど申し上げたはずであります。われわれは国際上の権利義務がある、義務もあるんだと。そのことを忘れちゃならないということを申しました。有効にこの条約は成立していることは、国会の承認も経ているんですから、いまさら効力を云々する必要はないと思います。だから私は、そのことは皆さん方それなりに事実を認めていただきたい。しかし今日国際世論は、中国の代表として中華人民共和国、これに国連の議席を持たすべきだ、こういうことを可決されたのであります。さような状態のもとにおいて、私どもも国連の議決をもとにして、いろいろ中華人民共和国と国交の正常化をはかっていこう。そういう際に、ただいま問題になっておる日華平和条約その他の台湾との交渉の関係を調整していく、それがこれからの問題ではないか。私は国交正常化に、この問題に触れないで、カナダがとったような態度でこの問題が解決されようとは思いません。今日の国際世論と、カナダが中華人民共和国を承認したときと、これは非常な変化でございますから、そういうことを踏んまえて交渉しようと、こういうのでございますから、これでおわかりじゃないかと思っておりますが……。私、別に、先ほど来言っている、外務大臣と私との間に非常な相違があるようには思いません。そればまあ表現の力点がどこに置かれているかと、こういうことで、過去の経過を全然無視するようなおとり方をされても、私の真意でないこと、それだけははっきり申し上げておきます。
  97. 戸叶武

    戸叶武君 関連質問。  藤田さんの質問した要点は、重点が吉田書簡にかかっていたと思います。この吉田書簡の問題が、今日、中国と佐藤さんのもつれの中心ですよ。あなたの私的な使いとして野田武夫君が北京に行こうとしても北京が受け付けないのは、このこじれからであります。池田内閣の末期から佐藤さんのところヘバトンが渡る段階において、高碕達之助さん、岡崎嘉平太さん、野田武夫君が北京に行ったときに、この吉田書簡の問題に対して、岡崎さんは池田さんと話し合って、あれはあのときだけの問題だということによって三者が話し合って、北京にもその話は伝えてあるはずであります。野田君もわかっているはずであります。証人として岡崎嘉平太氏なり野田氏なり喚問をしてもこのことは明らかになると思いますが、国際信義というものはそういうものなのです。池田さんから佐藤さんに、はたしてそのバトンが正確に伝えられていたかどうか疑問でありますが、その岡崎さんは再三——四回少なくとも佐藤さんにこの問題をめぐって私は会っていると思います。そこいらに非常に取り方の違いというか、見解の相違といいますか、そういうことが——このパイプの役割りをするにしても、中国は信義を重んずる国であります。うそをつくのは大きらいです。一貫性がなけりゃならないのです。そういうところに問題があると思いますから、私は今日藤田君が、やはりこの吉田書簡というものがずるずると引きずられて、今日日中間を悪化したきっかけになったところの、その高碕達之助、岡崎嘉平太、野田武夫君たちが北京と折衝した段階におけるもつれの発端からあらためて別に究明しなければならないと思うのです。  国際関係のパイプというものは、私は万事さようなものであって、手品師によってはパイプの役割りは果たせない、どうぞ言動を慎んでもらいたいと思います。——答えてください。
  98. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも戸叶君は、ただいま意見を述べられたように思いまして、私は答える筋でもないかなと実は思ったのです。  大体ただいま議論されておる、引き合いに出されたダレスあての吉田書簡、またそれに基づいて締結された日華平和条約、その日華平和条約が締結されたその当時の承認国、国際的な承認国です、その数は私も明確には覚えておりませんが、たしか中華民国を承認している国が四十数カ国、北京の中華人民共和国を承認している国は二十数カ国、この国際世論に基づいて吉田さんは日華平和条約を結んだと思います。  私がこの際にここで強調しておりますのは、条約を一たん結んだ以上、その条約の行くえというものは、やはり相手方にも責任がありますが、われわれにもそれを守る責務がある。だから、権利も主張するが同時に義務も履行しなければならない。これが今日の日華平和条約の姿であります。しかもこの条約は、国会において承認された、そういう厳然たる事実もあるのであります。そういうようなことを考えると、ただいま日華平和条約、これを簡単に無効だと、無視すると、こういうわけにいかないことはおわかりがいただけるだろうと思います。その点を先ほど来申し上げておるのでありまして、私は、あえてその点には触れなかったが、いま申し上げるような経過のあることを御了承いただきたい。しかし、今日は世界の世論が変わっておりますから、ただいまの状況のもとにおいては、われわれは中華人民共和国と国交の正常化をはかること、何よりもまず第一にやるべきことだ、かように思っております。その過程において日華平和条約の取り扱いなぞも問題になるだろう、かように申し上げておるわけであり  ます。これは非常に論理的な話をしておるので、疑問の余地なし、かように思います。どうぞよろしくお願いいたします。
  99. 藤田進

    藤田進君 いま触れられたように、吉田書簡で明らかなごとく、国連に加盟して諸般の権利を保有している多数が承認もしている、それから一方、吉田書簡によれば、中共はこれは侵略者の非難を受けている、だからこちらだと。しかしそこ基礎というものはくずれたのじゃありませんかと。それはくずれたとこう言われたので——そこは言い直したですか、やっぱりくずれたですか。
  100. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そこがくずれたから、中華人民共和国と早く国交の正常化をはからなきゃいかぬと、かように申し上げたのであります。
  101. 藤田進

    藤田進君 くずれたとすれば、国会では非常にやっかいものになっているように本会議では聞くです。これは国会はもう断じて日華条約を廃棄その他してはならぬというような結論は出ませんよ。ちゃんとこれは廃棄したということを持ち出されると、私はこれはもう圧倒的多数でそれでよろしいと可決すると思うのです。どう思いますか。
  102. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ちょっとその想定をしろと言われても、これは国会の問題ですから、政府でとやかく言う筋のものじゃないように思います。
  103. 藤田進

    藤田進君 だから、そういう提案があればですが、提案するしないはあなたの権限ですから……。提案しませんか、もう任期中に。
  104. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま新しい事態について私どもは取り組もうとしている、そういう状態でございますから、新しい事実、これをすなおに解決しないような提案はすべきではない、かように思っております。
  105. 藤田進

    藤田進君 すると、あなたの方針でいくと、日華条約については中華人民共和国との間に平和条約を論議する過程でこれは霧消するだろうというふうにも聞こえるのです。両立させる気はないのでしょう。ですから、その過程で日華条約は廃棄する、こういう手順になるわけでしょう、いかがです。
  106. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) さような結論はただいまのところでは出してはおりません。これは私が北京との交渉においてどういう結論になりますか、まさか台湾の独立を承認するわけでもないだろう。中国は一つだと、そういう立場において、そこらに矛盾のないような形に進みたいと思います。一番問題になることは、日華平和条約、戦争はやんだと言われております。私はこの事実だけはぜひともわれわれの主張としてもこれは貫きたいと思っております。そういう問題が、日華平和条約は無効だと、これは不法なものだと、かような意味でただいまなお戦争が続いているという、そういう事実にはわれわれは納得がいかない。このことは非常にはっきりした事実の問題であります。
  107. 藤田進

    藤田進君 どうしますか、日華条約。
  108. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) だから、そういう問題は、それぞれが相互の立場において、相互の話し合いによって解決さるべき問題だと思っております。今日からとやかく言う筋のものではないように思っております。
  109. 藤田進

    藤田進君 これに対する相手国、中国の出てくる態度をどう期待されていますか。
  110. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まず、北京も私どもに対して呼びかけていただきたい。われわれも、いつでも、いかなる方法でも、いかなる場所でも会談を開始する用意のあること、そのことをはっきり申し上げておきます。
  111. 藤田進

    藤田進君 いや、私が聞いたのは、日華条約について向こうがどういうふうに出るか、どういう期待をされているかと。日華条約のアプローチの問題じゃないんです。何べん言ってもそこを答えないから……。——立ったら時間になっちゃうからこれはそうはいかぬ。日華条約について相手国の期待をどう期待されているか、そういうことなんです。
  112. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 中国の出方というものにつきましては、私どもも目を配っております。日華平和条約につきまして、中国がどういう出方をしてくるであろうか。これにつきましては、おそらくこれはその廃棄を要求すると、こういうふうに思います。
  113. 藤田進

    藤田進君 だから、廃棄を要求するというふうに出てくるだろうというんでしょう。それはほんとうは期待しないのかもしれないが、そうくれば、その経過の中で日台条約というものは、当然の帰結としてこれを廃棄する。捨てるというのが悪ければ、やめるということになりませんか、総理大臣
  114. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 日中接触が始まるということになると、わが国はわが国の主体的立場に立ちましていろいろ言うこともあるわけです。また中国からはこれまたいろいろなことが言われると思うのです。それらの問題をどういうふうに処理するかということが話し合いなんです。話し合いの始まる前から、もう中国の言うことは一から十まで、あるいは一から百までいかなければ話し合いが始まらぬと、こういうようなことじゃ、私は日中の国交の正常化という問題にならないのじゃないかと、こういうふうに思うのです。ですから、これはまあ問題点としては日華平和条約をどうするのだ、こういう問題も大きな問題として取り上げられることになるであろう、こういうふうに思います。そういう問題は、この日中の政府間の話し合いの過程において結論が出てくる問題である、こういうことを申し上げておるのです。いまから予断して、日華平和条約をどうするんだというような態度をとるということが非常にむずかしい問題であるということは、藤田さんも御理解をいただけるのじゃあるまいか、そういうふうに思います。
  115. 森元治郎

    ○森元治郎君 関連、総理大臣に。  衆議院参議院を通じて総理の御説明が足りないから、一つ一つもっとていねいにやれば質問と答弁がかみ合うと思います。どこが違うか、どこが合っているか。その点は総理は世界の世論が変わっている、中華人民共和国と国交正常化をはかるその過程において中華民国の取り扱いも問題になろうというのが一貫した御答弁ですね。そうすると、この御答弁の趣旨は、中国が、佐藤内閣が国交正常化の話をしようと言って、オーケーを向こうが言ってくれたならばその場の話し合いで台湾の取り扱いについても意見を交換していこうということを言っているのか。  もう一つは、向こうは、台湾、日華条約は不法であり不当である、この前提がなければ話し合いに入らぬと言っておるのですね。そうすれば、おっしゃった国交正常化をはかるというが、向こうはこの前提がなければだめだと言う、この前提を交渉の中でしゃべろう。大へんこの御説明は全然実現不可能なことを一方的に言っているだけの話しではないか。その二点を……。
  116. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまのように、中華人民共和国の主張がはっきりしている。これはなかなか私どもと話し合っても結論は出ない、あるいはまた話し合いの道も開けない、かように思いますが、私は、そうでなしに、やはり中国も隣の国、日本が頑迷不霊にしても、とにかく話し合わなければこれは進まない、かように思うだろうと私は期待するのです。その点では、いま言われるように、一顧だも与える資格なしと、かようには言わぬだろうと私は思っております。だから、そこはそれでいいだろうと思いますが、その場合に、すでに申しますように、私どもの主張、これは中華人民共和国が中国は一つだ、こういう前提で私どもは交渉するのでございますから、そういう意味においては全然別な方向で話し合うわけでもありません。おそらくただいまのようないろんな結論が出てくるでしょうが、その場合に、過去は過去として、認めるものは認めると、こういうような結論であってほしいと思います。そのものをいつまでも続けていくかどうか、これがいま問題になるので、過去の歴史的な事実はそれなりに評価されてしかるべきじゃないかと思います。もしも、それを全然無視すると、こういうことだと、それこそずいぶん——無理な、事実を無視することですから、それはずいぶんできないことじゃないかと思っておりますが、そういうような意味で、とにかく門戸を開いて話し合いをすること、これが何よりもまず第一じゃないか、そうして話し合いをして、それから先がどうなるのか、かように言われますけれども、私はいままでの過去の経験等から見ましても、それは必ず隣国としての話し合いが実を結ぶものだ、かように私は確信をしております。先ほど来外務大臣も話をしておりますように、日本自身がこれから軍国主義化すると、かようなことはございません。また、日本は平和を愛好する国であり、共存の関係に立つこと、これはもう申し上げてもいいと、同時にまた過去の軍閥の残したつめあと、これについての深い反省もあると、こういうことを前提にして話し合いをしようという、こういう事柄については、私は中華人民共和国も虚心に話を聞いてくれるんじゃないか、かように思っております。
  117. 森元治郎

    ○森元治郎君 関連ですから……。
  118. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 簡単に願います。
  119. 森元治郎

    ○森元治郎君 そうすると、総理、簡単なことばで言えば、あなたは不法無法と言うけれども、その台湾問題について会ってくれるならば、そのとき話しましょうと、こういうことですね、簡単に言うと。あまりかってだからだめだとは思うが、その点。
  120. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 簡単に申しますと、そのとおり、それらの点を話し合わなきゃなるまい、それをよけて通るわけにはいかない、かように思っております。
  121. 藤田進

    藤田進君 これがまあ、はぐらかし答弁ですよ、最初戒めたように。そうでしょう。それは、土台がくずれた、日台条約の土台がくずれた、これは認めたわけですね。それから中国との国交再開、正常化したい、これは、二国間の平和条約というか、承認をして、これも認めた。そうなると、その過程で話をする以上、当然の帰結として日台条約——二つの中国ではないんだから、日台条約というものはこれは廃止されることになりますね、運命として。そして中華人民共和国との、中国は一つなりの理論で国交が正常化される、こういうふうになりますかと、こう聞いているんです。もう一ぺん答えてください。
  122. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 話し合いが始まる、これはよろしいですね、話し合いが始まる。そうしてその段階でいろんな問題にぶつかると、まず第一のぶつかり方は台湾の処遇だと思っております。これはおそらくそれぞれの国にはそれぞれの主張がありますから、それこそ十分日本はいままでの経過、どういうことでやってきたか、そういうこともよく話をし、理解し、求めなければならない問題だと思っております。私はその結論がどうなるということは申しません。ただいま話し合いをしなければならない問題だ。また中国は一つだというその原則を無視しようとは考えておらない、これは一致しておると、かように私は思っております。だからそういう立場で過去の戦争その他、いろいろの問題から、いまの台湾問題についても話し合いが行なわれると、これは大いに期待されてしかるべきだと思っております。
  123. 藤田進

    藤田進君 いかに佐藤内閣での日中正常化が困難か、というよりも不可能であるかという印象を国民は非常に深くしたと思います。そんな甘い状態ではない。しかも国内の経済のみならず、隣国との平和、アジアの平和という崇高な目的を達成するためにも、世界の孤児となるような外交ではなくて、すみやかに中国八億との国交正常化をする、親善関係を結ぶ、これが国民の圧倒的世論だと私は思います。それを肯定する以上は、平和条約締結の呼びかけをするなり、当日本のほうから過去のいろいろのつめあとを論じられる以上呼びかけて、そして日本政府がアプローチしていくという積極的姿勢がなくて日中の国交打開というものは私はあり得ないと思うです。外務大臣のごときは向こうから呼びかけてもらいたいというような及び腰、これは実に問題だと思うです。まことに日本の悲劇です。佐藤政権のために一億の国民が隣国との関係に非常な不安を持たなければならぬということはまことに遺憾でございます。もし私のいま申し上げたことが言い過ぎならば、そうではないという点をこの際明確に総理からしていただいて、この問題を打ち切りたいと思います。
  124. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 外務大臣は中国側からの呼びかけを待っておるんだと、こういうふうにおとりになっておりますが……。
  125. 藤田進

    藤田進君 言ったじゃないか。
  126. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いや、そうじゃない。そうじゃなくて、もう呼びかけておるんです。もう国会を通じてもわが国の態度というものは明らかにしておる、日中国交正常化というものはこれはもうま正面から取り組むとまで言っておるのでありまして、これはもう国会を通じてのそういう発言ですから、最も大きな呼びかけだと思うんです。しかし、それで足りるかというと、足りないかもしれない。そこでいろんな手を尽しながらいま呼びかけをしておる。向こうからこれに対するこたえ、まあ、こだまのはね返り、それを待っておるというのが現状でございます。
  127. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま外交の直接の衝に当たっておる外務大臣からも、外務大臣は向こうから呼びかけてくるのを待っていると、そういうものでないことをるる説明をいたしましたから、佐藤内閣の中国問題に取り組んでおるその態度については御理解がいただけただろうと思います。私は、これがいろいろ野党諸君から、佐藤内閣じゃだめだとか言われますけれども、私はだれが損するのかと、こういうことを考えると、日本国民であり、中国国民だと、かように考えます。与党野党もないことじゃないかと思います。今後もし政府にその力がないならば、これをひとつ鞭撻すると、そういうことが野党諸君にあってしかるべきだと思います。国民のためにそうしていただきたいと、私はそういうことをお願いをして、ただいまこの問題を打ち切ると言われますから、最後に私の希望を申し上げて、この上とも御叱正、御鞭撻を賜わりますよう心からお願いいたします。
  128. 藤田進

    藤田進君 それでは、さっそくそれにこたえまして一つの提案をしてみたいと思います。  いまのような国会を通じて呼びかけている、ただし、日台条約については温存しながら、交渉の中でということでは、これは打開できません。アプローチすらできません。したがって、わがほうから内閣の意思として中華人民共和国に対してま正面からこれを承認し、かつ、平和条約を締結したいと、ついてはその中で日台条約については話し合いたいが、中国は一つですと、それぐらいなら言えるでしょうから、これをまっ正面からやはりこちらからアプローチ、提案したらどうですか。まずそれによって反応を待つ。これは私だけではありません。今日の世論はそういう動向になっております。総理、いかがですか。
  129. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まさに藤田さんのおっしゃるとおりだと思う。そういうことを踏んまえながらいろんなアプローチをしておるんです。まだそのアプローチの実態というものをここで明らかにすることはできませんけれども、実際そういういろんなアプローチに努力をしておる、こういうことを申し上げている。どうも藤田さんのお話を聞いていますると、それにもかかわらず、中国の主張する、その主張を容認しなけれりゃそんなことをしてもむだじゃないか、こういうようなお話のようでもありますが、かりに先ほどお話のある尖閣列島、あれはわが国の領土だということを承認しなければもう国交正常化の話に入らないのだというようなことになったらそれを承認するんですか、私は、そんなことはできないと思うんです。また、わがほうにはわがほうとして、中国政府は一体中ソ不可侵条約をどうするんだ、こういうようなことも聞いてみなければならぬ点だろうと思うんです。いろいろこっちにもこっちの言わなけりゃならぬこともあるんです。そういう問題を全部テーブルにさらけ出して話し合う、これが政府間折衝なんで、それを始めたいのだということを表から、あるいは裏からいろいろ呼びかけておる。その裏の呼びかけ、これにつきましてはまだこの席で申し上げる段階にまでなっておらぬということは御理解いただけるだろうと、かように考えます。
  130. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま藤田君が提案なすったことは私がかねてから申し上げておることと違わないようでございます。私はそのことをただいま呼びかけておる。これは国会の場を通じて、非常に限られた場にしろ、そういうことをみな声を大にして呼びかけておる。これはもうすでにお聞き取りのようでございます。私は、問題はやはり各方面の理解ある国民のコンセンサスを得て、こういう問題が進められなきゃならないと、かように思っております。ただいま国民は中華人民共和国と国交を開け、大多数がそういうように考えておる、かように思いますと、ただいま言われたような点で必ず国民支持を得るものだ、政府はたいへん勇気を持って取り組めと、かように私は思っております。さらに、ただどういう人がそれでは使いに出ていくのか、こういうような具体的な問題になってくると、やはり相手方にするのには不足かしらないが、外交の問題は政府が担当せざるを得ない、そういう意味で先ほども政府に対しての御鞭撻をお願いしたような次第でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  131. 藤田進

    藤田進君 いや、私が言っているのは、国会で答弁すればすぐこれが外交交渉のレールに乗っていくというものではない。ニクソンも乗り込んで行くと言ったでしょう。あるいは乗り込んでいけないまでも日本政府として正式にこれを中華人民共和国に対して提案をする、これは日中に関する決議案もいま両院でもいろいろ取り運ばれていることですから、議会の意思を無視したことにはなりませんから、おやりになったらどうですかと、こう言ったに対して、それをやるのですか、やらないのですかという答弁を求めたわけですが、外務大臣は何だかんだわけのわからぬことを言っているわけです。総理はややわかるんですが、それは議会を通じてやっているんだと、議会を通じただけでああそうかというわけにはいかないだろうと私は思う。これをもっと正式に持ち込んだらどうですか、直接。
  132. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただ私、先ほどのお尋ねをちょっとはき違えておりました。国会で国交正常化についての決議をしろ、こういうお話ならわが党はわが党の案を持っておりますし、野党諸君といろいろ話をしている最中だと思っております。こういう事柄はやはりコンセンサスを得る上から見まして最も必要なことだ、これが政府にどれだけ力を貸すかわからない、たいへん無限の力を貸すものだとかように思っておりますので、どうかひとつそういう意味で……。
  133. 藤田進

    藤田進君 直接アピールしませんか。中華人民共和国に提案をする……。
  134. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 国会の決議は決議として、また私どもは私どもとして政府のやるべき事柄はそれぞれがやられておる、かように御理解いただきたいと思います。もちろん、それが一体どういうようなルートで、どういうようにやっておるのだと、かようにまだ言う段階ではございません。ございませんが、キッシンジャーが出かけてニクソン大統領の訪中の諸計画を具体化しつつある、こういう段階でございますから、もうニクソンが行ったというようなわけじゃないので、まだこれから行くのですから、そういう意味でもわれわれもやっぱり出かけなければその話はつかないだろう。そのくらいのことは私自身もわかっておりますから、十分われわれも多数の外交官、大公使を使っておりますし、また総領事その他の外交機関もあるし、また民間人もそれぞれ多数出かけておりますし、またことに国会では各党の有力な議員の方々が次々に北京を訪問しておられますから、もう事は、手には事足りないというような状態ではないのです。でありますから、ただいま言われるように、これはおれの手柄だとかいうようなことさえなければ、もっとコンセンサスでどうしても日中間の国交の回復が必要なんだ、こういう意味で、どうも聞かない佐藤内閣はひとつ鞭撻もし、聞かないならこれを倒してでもこれをやろうと、こういうようなことになれば話は非常に積極的に前向きに進むのじゃないか、かように思いますが、私は日中国交回復はそのくらいの力がなければできない問題じゃないか、かように思っておるような次第であります。どうぞよろしくお願いいたします。
  135. 藤田進

    藤田進君 いろいろ言われておりますが、どうも日中打開の本腰とは受け取れませんが、あるいはニクソンに託して橋渡しをというようにも聞こえますが、そんな姿勢はもう改めてもらいたい。対米追随外交といいますか、隷属外交というか、今度だってアルバニア云々の、これはアメリカのほうが先にきめたから結局国連に招請する、いや、常任理事国だと、こういうようになったようにみんな理解しておりますね。改めていただきたいと思います。  さて、残された問題を国内の当面する重要な問題二つに限ってみたいと思いますので、これは所管大臣からも積極的に御答弁いただきたい。  その一つは公害衆議院でも議論されましたが、特に十一県に関連する瀬戸内海汚染、これはもう死滅状態になってきた。これは協議会をつくっておられるが、いつごろこれに有効な手を打つのか。ただ委員会で小田原評定しておる段階ではないと思うのです。明確にお答えをいただきたい。  もう一つは、国鉄といわずタクシーその他一連の物価上昇機運を示し、対前年度すでに八%をこえております。経済見通しは五・五%でしょう、経企長官、こんなことが可能ですか、いま。だれが考えたって、これは早急に手を打つ必要がある。公取もきていただいておりますが、公取の権限を強化し、法改正をして人員も充実する。質、量さらに立法的にも公取の権限強化をする必要があると思うのです。総理からもお答えをいただきたいと思います。さらに、いま大学等私学の学費値上げは相当大幅です。軒並みきておりますね。これはたいへんなことだと思うのです。学園紛争にもなるでしょう。したがって文部大臣、いま四百億ばかりわずか助成金の予算要求をしておりますが、こんなことではどうにもならぬと思うのです。また私学振興財団の融資関係も、これではどうにもならぬと思うのです。これらについてお答えいただきたい。
  136. 大石武一

    国務大臣大石武一君) 瀬戸内海の汚染につきましては、お話のとおり、実に目に余るものがございます。で、これを何とか一日も早く日本の代表的景観であり、産業の中心地である瀬戸内海を清浄化すべく、政府はいま懸命の努力をいたしております。このことにつきましては、すでに衆議院予算委員会の勧告もあり、また総理の御指示もございまして、一日も早くその効果をあげようという考えで、各省間の調整連絡をとることを目的にいたしまして、御承知のように、先日瀬戸内海環境保全対策推進会議をつくりまして、私がその長となって責任を持ってこの清浄化に当たる努力をいたしております。第一回の会合もすでに終えまして、その答申をいまきめつつあるわけでございます。  ただ、御承知のように、現在の公害対策と申しますか、環境保全の方針は、大体が各県が中心になって、その対策、行政をしているような現状でございます。しかし、このように十一の府県がこれに加わりまして広範にわたります以上は、各県ばらばらではとうてい十分な対策はできません。したがいまして、強力な総合的な対策を立てる方針でいまおるわけでございますが、それには、いままでの行政にないような新しいものの考え方、新しい行政のあり方も考えまして、十分にその目的を一日も早く達成するように懸命の努力をいたす決意をしておるわけでございます。
  137. 藤田進

    藤田進君 いつごろのめどかを聞いておるわけです。
  138. 大石武一

    国務大臣大石武一君) めどと申しますと……。
  139. 藤田進

    藤田進君 手を打たなければならぬ。もう公害は出ているんです。
  140. 大石武一

    国務大臣大石武一君) おっしゃるとおり、この対策につきましては何と申しましても、一つの問題といたしまして赤潮の問題がございます。この赤潮は、残念ながら最近は多発いたしまして、また定着をいたしております。これを何とか一日も早く退治しなければなりません。これにはいろいろな原因がございます。まだ原因も完全には究明されておりません。幸いに、わが政府におきましては、すでに昭和四十二年から三年にわたりまして、科学技術庁が中心となりましてその原因の究明をいたしましてある程度の原因はわかりました。さらに本年度は環境庁がそのあとを引き継ぎまして、中心となって原因の究明をいたしております。この究明も一日も早く行ないまして、そしてその対策を立てなければなりません。そういうことで、その原因としては、すでに御承知のように、燐酸とか窒素とか、そういうものが土台となった、いわゆる瀬戸内海の海水の富栄養化が一つの大きな基盤であることは間違いございません。こういうものがその基盤からどのようにしてあのようなプランクトンの急激な増殖が起こるのか、ここまでがまだわかっておりませんが、これも早く究明させる決意でございます。同時に、その基盤である富栄養化をなおすためには、御承知のような下水とか、あるいは汚水、そういうもの、あるいは屎尿たれ流しをさせないように徹底的な対策を立てることが必要でございます。そういうことでこの汚水の、要するに下水道の一日も早い整備であるとか、あるいはし尿処理の整備であるとか、こういうものをできるだけ急ぎまして、その基盤をこわしてまいりたい、こういうことを考えておるわけでございます。
  141. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 藤田先生が、私立学校の授業料が上がらぬためには私立学校に対する助成金を思い切ってふやすべきだという御意見、私ども全く同感でございまして、御承知のように昭和四十五年に百三十二億円から出発いたしまして、ただいま百九十八億円、来年は四百二十億円を人件費、あるいは教育研究費、設備費等の補助に回したい。同時にまた、財政投融資におきます貸し付け金、これも四百億以上のものにいたしたい、かように考えて予算要求をいたしておるのであります。  ただ、問題は、ただいまの私立学校を現状のままで置きますというと、なかなかそれだけでは容易じゃございません。貸し付け金の問題にいたしましても、条件をもう少し緩和してやるというようなことを考えなければ、ただ貸し付けるだけで私立学校の経営が健全化するわけのものでもございませんので、極力その方面に力を入れてみたい、かように考えておる次第であります。
  142. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 物価の安定、もちろんこれは経済運営の最大重点を置いてやっております。最近特に目立ちますのは生鮮食料品の物価の値上がり、また公共料金の問題でございます。公共料金の問題につきましては、従来と同様、これに対してきびしい態度で臨むということを基本方針としております。また、生鮮食料品、特に野菜が非常に値上がりを生じております。ただ、これは九月においては非常に一時的な異常原因で上がったのでございますが、この十月になりまして幸いにも八・二%くらいの値下がりを生じております。しかし、先行き冬の野菜については決して楽観は許されませんので、農林省を中心にして、いままでのような中途はんぱな野菜についての行政を改めまして、根本的なひとつ洗い直しをしようというので、一生懸命に取り組むつもりでございます。
  143. 藤田進

    藤田進君 公共料金——タクシーとか国鉄とか……。
  144. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 公共料金の中でいま問題になっておりますのはさしあたりタクシー料金の問題でございます。これにつきましては私ども実はいろいろ苦慮しております。一がいに公共料金といいましても、その公共性の程度、内容によっていろいろございます。特にタクシーは公益事業として認可制をとっておりますし、またその運賃も認可制にしておりますが、ただしこれをもしこのまま放任して事業が健全な運営ができないために都民の足に非常に迷惑を及ぼすということであってもならない。しかしながら安易な経営態度はもちろんこれは許されません。そこで、もしこれを許す場合において、扱う場合において、一部の利用者についてのこのタクシー運賃を、一般の納税者の負担による財政措置でやっていいかどうかということは、もうおのずからその公平観念から申しましてもこれは無理がございます。そこで、やはりこの事業の健全な運営をはかるためには、ある場合にはこの値上げも認めざるを得ない場合があるかもしれません。しかし、その場合におきましても従来のようなサービス改善の実績を見ないでやるとか、あるいは安易な経営にこれをゆだねるということは一切いたすわけではございません。もし万一これを値上げを認めざるを得ない場合におきましても、これは国民皆さん方の納得のいくような方法でやりたい。すなわちサービス改善が十分にはかられ、かつまたその料金の認定の場合には、第三者にその調査を依頼するとか、納得のいくような公開の原則に立ってこれは扱いたい、こういう方針でございます。
  145. 谷村裕

    政府委員(谷村裕君) 私どもといたしましては、現在与えられております私どもの職責をできるだけ忠実に実行してまいるつもりでおりますが、なお経済情勢の変化等に対していかなることが必要であるかということも考えてまいりたいと思っております。その一つといたしまして、たとえば不当景品類及び不当表示防止法にかかわる仕事の一部を、これは国民生活とも密着しているものでございますので、都道府県等にその事務の一部をお願いするというふうな方向も考えて、行政府——中央・地方全体を通じてそういうことのうまくいってまいりますように進めたいと、さようなことを私自身としてはいま考えております。
  146. 藤田進

    藤田進君 権限強化すべきではないか、それを聞いているのです。
  147. 谷村裕

    政府委員(谷村裕君) 権限強化といったような問題も当然そういう問題の一つとして、ただしそういう問題は公取という形においてやるか、あるいは行政府全体の中における一つの問題として考えるか、いろいろの考え方があると思いますが、少なくとも公取的なものの考え方を行政府全体の中において考えていくという、そういう方向は私は必要であろうかと思っております。
  148. 藤田進

    藤田進君 まあ、お聞きのとおり、これというきめ手がなくてまことに残念ですが、今度の施政方針演説でも産業基盤、輸出優先という、こういう従来の政策を転換して、国民生活基盤、生活中心に予算その他の政策をとっていきたいということであります。ところが、実際問題としては非常な物価の上昇傾向を示す、一方また、社会保障あるいはいま指摘しました私学等中心の教育費の非常な増高、こういったことを考えますと、ここ数年で国民生活は、いまの貨幣価値の暴落状態からすれば私は数年で大体家計費は年間一千万必要になるように、こういう傾向がコンピューターで出てきております。これは容易ならぬことだと思うのです。いま二十三、四の人が六十五まで生活するためには、これは四億必要だろうと、これも銀行筋が出しておりますね。この事態、また実感、物価値上げというものは非常なものであります。これらについて私は、この際特段の政策をとらなければ国民生活の破綻になる。すでにもうそういう傾向が出ております。所得の格差は非常に激しい。これらについて総理をはじめ今後の取り組みについてお答えをいただきたいと思います。  それから、いま文部大臣は私学振興について四百二十億要求していると言うけれども、これはもう実にわずかなものですね。米軍の核撤去だけでも七千万ドル、これだけ見てもたいへんな邦貨であります。で、大蔵大臣はいまの文部大臣の要求していることについて、物価あるいは国民負担、生活基盤といったような政策に沿って、少なくとも要求は全額これを認めるということにならなきゃ、これは文部大臣と一般の御主張とが食い違ってくるように思うのです。これはひとつ大蔵大臣からもこの点にしぼってお答えをいただきたいと思います。  それから文部大臣はいま言われたこの私学振興財団の融資に触れられましたが、これはもう査定単価、公示単価はもう問題になりません、これでは。それから助成金の配分、これは実に非公開主義であり、結局自力のあるところは四億ないしそれ以上のものが助成され、そうでないところには、非常に弱っている、もたもたしているところには金が出てこないという矛盾もありますから、これらも十分勘案される必要があるかと思います。厚生大臣も含めて社会保障、人間基盤中心にどう今後お考えか、医療費は値上がりになるともいわれておりますが、お答えいただきたいと思います。
  149. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) たいへん御激励をいただきましてありがとうございますが、実は御指摘のように補助単価の基準は、実は私立と国立との間に相当の格差があることも承知いたしております。できるだけこの格差をなくしたいと、来年度におきましてはこの格差をなくすることに努力をいたしたいと考えております。  それから御指摘のように私学振興財団の運営審議会でもって配分をいたしておりますその配分の内容についても検討すべきものがたくさんあると思います。この問題については御指摘の趣意を十分考慮いたしまして、できるだけほんとうに困っているところに金を出すように努力をいたしたいと、かように考えております。
  150. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私学の授業料はもうおそらく限度に達しているというふうに思いますので、そうしますというと、この経常費の補助ということがやはり当面必要なことになると思いますので、本年度相当多額の要求が出ておりますが、これはそういう、必要であるという線に沿った査定をするつもりでございます。
  151. 藤田進

    藤田進君 全額認めなさい。
  152. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) わが国の社会保障制度またその内容等がまだ非常に不十分であるということは一般にいわれているとおりであります。これから年金制度の完備をはかり、また児童手当も成熟してまいれば相当の振替所得が計算をせられると、かように考えますが、ことにその他の老人対策やあるいは障害児対策、乳幼児対策、やらなければならない点が多々ございまするし、総理の所信表明におきましても、これからは社会福祉を目当てにした政策の転換をやるという所信表明もしておられるわけであります。そういう方向で今後一そう努力をいたしたいと思いますので、よろしくひとつ御支援をいただきたいと存じます。
  153. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 以上をもちまして藤田君の質疑は終了いたしました。  午後は一時より再開することとし、それまで休憩いたします。    午後零時三十七分休憩      —————・—————    午後一時十二分開会
  154. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  午前に引き続き質疑を行ないます。稲嶺一郎君。
  155. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 私は、自民党を代表いたしまして質問をいたしたいと存じます。  私、この予算委員会の質問の席に着きまして、感慨無量なものがあります。日本に対する復帰がいま私の目の前に近づいているような感じがいたします。そういう意味におきまして、私はさらに一まつのさびしさを感じてやみません。と申しますのは、私どもがこういう感激に浸っているときに、北方領土はまだ解決しないということであります。どうか国民の力によりまして私どもの持っているところのこの喜びを国民一億の同胞が北方領土の解決によって再び味わえますようお願いいたしまして、私の質問に移りたいと存じます。  私の質問は、中国問題、それから沖繩問題、経済問題の三つに分けてやりたいと思います。ただいろいろと重復する面があるかもしれませんが、これについては総理はじめ関係大臣の御意見を確かめる上においてもぜひやりたいと思っておりますので、この点あらかじめ御了承願っておきます。  まず最初に、最近の極東情勢についてお尋ねいたします。ニクソン大統領の中国訪問に関する報道以来、日本国内では中国問題が大きくクローズアップされ、一種の中国ブームを巻き起こしております。ニクソン大統領が中国を訪問して周恩来首相とどういう話し合いをするか、その結果米中関係がどうなるのか、いまの段階でははっきりした見通しを立てることはできないでありましょうが、少なくとも、これまでのような米中関係、すなわち冷戦の状態は、これからは緩和していくのであろうというのが一般の見方でございます。そういたしますと、米中間の冷戦状態を基軸としてきた極東の情勢は、今後相当に変化するのではないかと思われます。しかるに、総理は、今国会冒頭衆議院の本会議におきまして、極東情勢に本質的な変化は生じないだろうという情勢判断をお示しになりました。しかし、それは中国の国連加盟が決定する以前のことでありますので、中国の国連加盟が決定した今日においては、なお総理は極東情勢に本質的な変化がないというふうにお考えでございましょうか、それとも本質的に変化が起きると見通しておられるのでございましょうか、総理の御見解をお伺いいたします。
  156. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 国連における中華人民共和国を迎えるというこの決議が成立する以前と成立した後ではよほど変化があると思います。あるいはもっと正確に申せば、われわれも昨年における国連の場における扱い方とことしの国連の場における扱い方ではもう格段の相違がございますから、その相違に対して、もうすでに御承知のとおり、われわれも、中華人民共和国を国連に迎え、そうして安保理の常任理事国にすること、これを勧告した。この辺はアルバニア案と同様でありましたが、ただ違っているのは国府の取り扱い方の問題でございました。しかし、ただいまでは国連においてアルバニア案成立いたしたのでありますから、成立する前と成立後と変化のあることはこれは当然と言わなければなりません。
  157. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 総理は、所信表明演説におきまして、中華民国の国連からの追放はアジアにおける緊張激化の要因ともなるおそれがあるとお述べになりました。ところが、国府はすでに国連から追放されてしまいました。総理が危惧されていた事態が現実のものとなってしまったのでございます。そこで、総理のおっしゃった緊張激化ということ、たとえば国連から追放された中華民国政府がそれを不満といたしまして今後極東における緊張を強めるような行動に出るとお考えになるでしょうか、あるいは逆に北京政府による台湾のいわゆる武力解放が起きるかもしれないとお考えでございましょうか、総理の御所見をお伺いいたします。
  158. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 台湾を武力解放するとか、あるいは台湾が大陸反攻をするとか、いろいろ取りざたがございます。そういうことは、私も耳に入らないわけでもございません。午前中の藤田君の質問にもさようなことがございました。しかし、私は、さようなことがあってはならない、かように思っておりますし、またこれが、私が心配したいわゆる緊張激化のおそれなしとしない、こういう私の心配の点でもあります。しかし、そのことは、ぜひとも当事者等におきまして十分善処されんことを心から願っておるような次第であります。
  159. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 総理は、一九六九年十一月のニクソン大統領との共同声明の中で、韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要であり、また台湾における平和と安全の維持も日本の安全にとってきわめて重要な要素であるというふうにお述べになりました。この点は、特に中華人民共和国の首脳者を刺激したようでありました。日本の軍国主義と称する彼らの非難は、特にこの点が取り上げられているのであります。今日、ニクソン訪中は行なわれようとしており、また国連において非常な多数をもって中華人民共和国が国連に迎えられようとしている現段階におきまして、総理はなお同じようなことが言えるとお考えでしょうか、あるいは一九六九年十一月の段階と今日とでは事態が非常に変わったのであるから当事において適当であったことも今日では多少考え方が改められなければならないとお考えでしょうか、この点についてお伺いいたします。
  160. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私はあまり変わっているとは思いません、今日も。朝鮮半島において、あるいはまた台湾において問題が起これば、いわば近火——隣りが火事になったと、かように思う次第でございまして、われわれはやっぱり、火事は延焼しないこと、そのために気をつけるのでありますから、気を配るのでありますから、したがって、隣りが火事を起こさないように、火事にならないようにこれを心配するのは当然のことと言わなければならない。私は最もわかりやすい例を取り上げて申し上げた次第です。
  161. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 先ほどの質問にありましたのですが、総理衆議院における質問にお答えになられて、日華条約——これは混乱を避けるために今日においては言い方を変えて日台条約と言ったほうがよろしいかと思いますが、日台条約を維持していくつもりだということをニュアンスのあるおことばで、あとにおいて解決するというようなことを言っておられますが、日台条約を維持するということと日中関係の正常化ということは両立するものでございましょうか。一方で日台条約を維持しながら日中関係の正常化をはかるのには、非常にむずかしい外交技術が要るのじゃないかと思っております。どのような手順でこの外交をお進めになっていかれるか、お尋ねいたしたいと存じます。
  162. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 稲嶺君に申し上げますが、やっぱり条約は正しい呼び方をしないと誤解を受けるように思います。したがって、われわれは、いままで締結したのは日華平和条約、これが当時の状況においては間違いはなかったと、かように思います。これは藤田君にもけさほどお答えしたとおりであります。こういう条約を締結いたしますと、国際法上では、権利もありますが、同時に義務も生ずる、こういう関係でございますから、それが情勢が変化したと、これだけで直ちに無効だとか、あるいは取り消されるとか、こういうものではないので、やっぱりそれ相応の手続を踏まなければそういうことはできないと思っております。これがやはり国際信義の問題だと、かように思います。
  163. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 中国の問題は、この問題私はグローバルに考えていくべきじゃないかと考えております。困難なる問題がきわめて多く、あるいは日中関係、あるいは米中関係、あるいはソビエトの関係、あるいは日韓、あるいは日台、あるいは南方問題と、いろいろ相錯綜しております。まあその中でどうしてこの問題を解決していくかということはきわめて困難なる問題じゃないか。その意味におきまして、私は今後の外交政策についてお尋ねいたしたいと存じます。世界の情勢は終戦以来今日まで米ソ二大国を軸として回転してきたのでありますが、中国の国連加盟によりまして世界の情勢も米ソ中三大国を中心とする多様化の方向に進むものと考えられます。このような国際情勢の流れに対しまして、総理はわが国外交の基本を変える必要があるとお考えでございましょうか。少なくとも今後は、これまで以上に自分の置かれている立場を十分認識し、主体性を持ち、将来を先取りする方向で国際間の諸問題に取り組むべきだと思うのであります。わが国は、他の国々と違いまして、米ソ中三大国に囲まれております。ほかにそういう国はヨーロッパにもどこにもありません。どこか一方に片寄ることなく同等に接し、さらに他の諸国ともこれまで以上に緊密な関係を深めていかなければならないなど、むずかしい局面に立たされているのでございます。このようにむずかしい局面におきまして、総理はどのような方針のもとに今後のわが国外交を展開なさろうとしておられるか、お尋ねいたします。
  164. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 米ソ二国外交、今度は中国を入れて米ソ中三極外交と、こういう言われ方をしておりますが、私は外交は軍事力だけで展開されるものではないように思っております。やはり経済力その他あらゆる面を考えて、しかる上で外交は展開していかなきゃならない。私は、多極化した国際情勢、このことは言えると思います。ただいま言われるように、米ソ中、さらにEEC、日本、そういうようないわば五極外交とでも言うべきか、そういうような状況になりつつある。とにかく多極化しつつある。そういう意味で、なかなか外交を展開することはむずかしいことだと思います。しかし、そういう場合におきましても、われわれがとってきた平和外交というか、平和に徹するというか、そうして各国とも繁栄への道をたどると、こういうことは変わりがないように思います。私は、ただいまのような多極外交の場合でも、やはり一国の安全を確保するということは必要だと思っております。したがって、軍事力のない日本、こういうものが、従来の日米間の安全保障条約、そのもとにおいて安全を確保し、そうして繁栄への道をたどるということ、これはやはり基本的に変わらない外交方針ではないかと思っております。これを具現していくことはなかなかむずかしいと、ただいまも御指摘になりましたように、日本くらい大国の間に処してこれから行動しなければならない国はほかにはないんじゃないかと、こういう御指摘、これもしかし、ただいまのようなスピードの時代になってくると、ひとり日本ばかりではない、欧州の諸国も同様の感がするのではないだろうか、EECもそういう意味では日本と同じような立場に置かれておるんじゃないだろうかと、かように思いますから、私はあえてこの点を御披露したわけであります。これからの多極外交に向かってわれわれは外交を展開していく、その場合に大事なことは、自分の安全を確保しながら平和に徹して、そうして繁栄への道をどうしてたどっていくかと、こういうことが外交の基調になると、かように御了承いただきたいと思います。
  165. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 総理の今後の日本外交の基調ということをお伺いいたしましたが、それにつきまして、私は東南アジアの国々がどういうふうに中国や日本を見ておるかということを考えることもこの際私どもにとっては非常に意義があるんじゃないかというふうに考えております。それで、私が東南アジアの指導者の諸君と話をいたしましたときに、彼らはこういうふうに言っております。東南アジアにとって二つの脅威がある、一つは中共の七億の人口である、一つは日本経済力であると言っております。この二つの脅威の圧力の前に常に不安を感じておるのが、これらの諸民族、諸国家でございます。彼らは長い長い間不自由に満ちた歴史から、問題の解決は常に強者的な、強い者の発想法でもって問題が解決されたという体験を持っているのでございます。彼らは中共や日本が強者の発想法によって今後の国際問題を解決していくんじゃないかという不安を持っているのでございます。そして、中共の巨大なる人口が圧力なく、日本経済力が脅威にならないような解決の方法はないかというのが、彼ら数億の国家民族の祈りでございます。   〔委員長退席、理事初村瀧一郎君着席〕 わが日本は、戦敗によりまして、戦いに負けたことによって、真に東南アジアの諸君の悩みが十分理解できるんじゃないか、その理解のもとに、今後の日本外交というものは、弱い者の立場に立ってものを考える新しい発想法によって、つまり北方的な考え方でなしに南方的な考え方でもって進むということが私は今後の国際外交を展開する意味において非常に意義があるんじゃないかというように考えておりますが、これらに対する総理の御見解をお伺いいたします。
  166. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 稲嶺君のいまの御意見でございますが、私も、いわゆる大国主義というものは、排される、批判を受けると、かように思っております。最近国連の場においての小国のとった態度等におきましても、これが率直にあらわれておる。また、いままでは、三極あるいは四、五極とかように申しましても、それらの大国の自由になるんじゃないのかと、こういうような考え方があって、大国のかってにはさせないと、こういう国際的に風潮のあることは御指摘のとおりであります。その場合に問題になりますのは、やはり中国は大国だと、七億と言われるけれども八億だと、こういうような考え方がありましょうし、また、日本は平和国家とはいうけれども、ただいまの経済力、この経済力はいつ、未来永劫に軍国主義化しないという、そういう保証があるのか、かような疑問を持つ、これは当然のことだろうと思います。これはまあ過去の日本の行き方等においてわれわれがいま深く反省しておるところであります。そこでいま言われるように、強者の立場でものごとをいろいろ考えてもなかなか多数の国からは歓迎されないと、弱者の立場に立って十分ものを考えろと、こう言われる。これは一つの反省に基づく御意見だと私思います。私は別な方法でこのことを申し上げているのですが、まあ、たとえば、開発途上国に対する経済援助にしても、日本にそれだけの力があっても、一国だけで対外援助と取り組むならば、ただいま言われるような誤解を招きやすい。やっぱり国際的な、他の国と協力して、日本が力に相応した対外援助をいたしますならば、これはそれなりに理解されると、かように私は思うのでありまして、たいへんかってな言い分のようだが、やはり日本経済力そのものが当然評価され、喜ばれるような方向で使われなければならない。それにはただいま申し上げるような一国だけで云々しないで、多数国と協力してやることがまず第一だろうと思います。しかしながら、アジアにはアジアの行き方がありますから、アジアの行き方を全然無視するわけにはまいりません。過去の特別な、特殊的な関係もございますから、そういうようなことを考えながら、開発途上国に対する経済援助、これは十分理解を得た方向でまいりたいものだと、かように考えておる次第であります。
  167. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 外務大臣にお伺いしたいのですが、実は私いろいろな国々を回りまして感じるのですが、特に、こういうような国際外交が複雑になっている場合において、外務省においても大いに考えていただかなければならぬじゃないか。と申しますのは、今日まで経済使節団がずいぶん外国に行っております。ところが、文化使節団というものはあまり行ったということを新聞などに見たことがありません。東南アジアにおきましても日本の宣伝が非常に不十分である。アメリカの場合においては、重要な、たとえば、インドネシアにおきましては各都市に文化活動を展開しておる。日本の場合は一つもない。今日のような複雑な外交情勢において、自分の国を理解さして、その上に立って、国際外交を展開していこうというときに、外務省の今日までの文化活動というものは非常に何かもの足らないものがあるように感じるのでございます。これは予算が足りないかどうかわかりませんが、ところが、現在のような百三十億もドルがあるようなときにおいて、予算がないということは絶対言えないと存ずるのでございますが、今後この文化活動をもっと積極的に展開するという姿勢を示してもらえないかどうか、これらに対する外務大臣の見解を聞きたいと思います。
  168. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) わが国の諸外国との接触のしかた、これにつきましては私も実は反省と申しますか、考え直しをしておるのです。どうもいままでは経済が中心になりまして、わが国とほかとの国の、特におくれた国々との接触というものが進行しておる。こういう形を続けておりますと、これはせっかく善意をもって与えるところの経済援助が経済侵略だと、こういうふうにもとられがちなんです。非常に残念なことでありますが、そういう傾向さえ見えるケースがあるのですが、私は、そうであってはならない。やはり経済協力をする、経済援助をするという以上は、それがありがたがられ、感謝されるようなものにならなきゃならぬ、そういうふうに思いますが、その基盤をつくる必要があるというふうな考え方、つまり、やはりその経済援助を通ずるところのわが国とおくれた国々との接触、これはその背景として、いま稲嶺さんがおっしゃられるように、これはどうしても心と心とのつながりというものを両国民の間に打ち立てなければいかぬじゃろう。わが国の事情についても深い理解を相手国に持ってもらう。相手国の事情についてもわれわれはそれを体得をする。そこに初めて私は感謝され、ありがたがられるところの経済援助というものが成り立っていくのじゃないか、そういうふうに考えまして、私は大蔵大臣のころからすでにそういう考え方を取り入れべきであるということを考え、アジア開発銀行の総会の私の冒頭演説におきましても、そういう考え方で今度いくのだということを打ち出しておるわけです。水田大蔵大臣の深い御理解を得まして、その方向を何とか来年度の予算あたりからかっこうづけていきたいと思って、いまいろいろ考えておる最中でございます。
  169. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 水田大蔵大臣から……。
  170. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 前大蔵大臣の事務引き継ぎのときに、特に言われて引き継いでおる事項でございます。   〔理事初村瀧一郎君退席、委員長着席〕
  171. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 外交問題につきましては、今後文化活動について外務大臣も水田大臣も大いに力を入れられるというお話を聞きまして非常に力強く感じました。また、これから大いに日本外交の威力を発揮するのじゃないかというふうに感ずる次第でございます。  中国問題はまあざっとこのぐらいにいたしまして、沖繩問題に移りたいと存じます。  現在、沖繩の県民は復帰に向かっていろいろな不安を持っております。この不安の一つは経済問題でございまして、もう一つは軍事的な問題でございます。今度の返還協定によって復帰はいたしますものの、今後基地の問題、あるいはその他の問題、いろいろと伏在しているのでございます。それで、私どもとしていま考えておりますのは、将来の極東の軍事情勢がどういうふうになるかということでございます。今度の極東における米中関係あるいはその他の関係によりまして緊張の緩和がされて、これが沖繩の問題にあるいは基地の問題その他に好影響を与えるのじゃないかというように考えておりますが、これらについての総理の御見解を承りたいと存じます。
  172. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 冒頭に稲嶺君が、沖繩はいよいよ祖国に復帰する、目睫の間にそれが迫った、まことに感無量だと、こういうお話がございました。私どもはそういう立場でただいまの復帰問題と取り組んでおります。まず第一に、皆さん方がこうして国会に出てこられて、そうして沖繩の復帰問題をみずから御審議願えると、これはたいへんなできごとであります。私はこういうことも考えながら、ただいま御指摘になりましたこれからの情勢の変化に一体いかに対応すべきかと、これがただいま沖繩県民の方々の一番の大きな関心事だろうと思います。生活様式がドルから円に変わるということ、これもたいへんな問題でありますが、あれだけの米軍基地を持っていて、われわれは祖国に復帰するが、どういう変化があるだろうかと、われわれには軍事的なその変化は一切ないのじゃないのかと、これが一番の御心配な点だろうと思います。ことに、さきの戦争で沖繩は焦土化し、沖繩住民はすべてが戦争の惨禍に見舞われた。そういうことを考えると、一日も早く平和な島になってほしい、かように念願するのは無理からないことだと私は思います。  そこで、いろいろ議論しておりますのは、今度沖繩が祖国に復帰すれば沖繩は本土並みになるのか、本土並みとは何だ、基地がこれだけあって、本土並み、そんなことが言えるかと、こういう問題があろうかと思いますが、沖繩にも本土に適用されている日米安保条約並びに諸取りきめ条項が、何らの変更なしに、特例なしに、そのまま適用されるということであります。したがって、本土における米軍と沖繩における米軍、その間に性格上の差はなくなるのであります。自由出撃、さようなことはございません。事前協議の対象になる。これはけさほどもいろいろ社会党の方と論戦をかわしたような次第であります。私は、そういう事柄をも含めて、現在の状態ではなお軍基地が非常に多い、これを今後さらにわれわれは縮小する方向に進まなければならないと思うし、また、平和な島と思えばこそ、自衛隊の配備も必要なしと、かように考えられる方もおありだと思いますが、私はしかし、祖国に復帰した沖繩は、これは沖繩県民、同時にわれわれと、ともどもに守るべき祖国の一部だと、かように考えますので、それらの点については具体的に沖繩県民の御了解を得られるような方法で駐留もきめていきたいと思います。問題は、ただいまいる米軍、その米軍が、祖国に復帰した暁は、すべてが安全保障条約、そのワク内において行動する。したがって、ワク内における諸取りきめが本土と区別されないでそのまま適用になる、かような点を御了承いただきたいと思います。さように考えてみますると、ただいまの状態ではどうも密度が高い、こういう状態はそのうちに解消さるべき筋のものではないかと思っております。  私は、沖繩は太平洋における防衛のかなめ石だと、米軍自身がさように考えておると申しますが、最近の国際情勢、この変化もありますし、また同時に、戦略戦術等も変わってまいりますから、これらの点は改正されるべき筋のものだと、かように思っております。いましばらくごしんぼう願いたい。そのことを心からお願いし、一日も早く祖国復帰を実現して、そうして、本土との間にある現在の格差をなくするように努力することこそ本土のわれわれの責任だと、かように実は思っておるような次第であります。  どうも、これらの点について、この機会に、おそらく沖繩皆さん方は、稲嶺君が質問するそうだというのでみんな聞いておられると思いますが、私は、このマイクを通じて、われわれの考え方を十分に理解していただくよう、その点を申し上げる次第であります。  なお、詳細については、説明を必要とするような点は、山中君が今日まで祖国復帰と取り組んでおりますから、さらに補足していただきたいと、かように思います。
  173. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 軍の基地の問題につきましては、各方面から、あるいはいろんな方々が、寄ると話をし、質問をいたしております。  時間の関係もありますので、私は、経済の問題にしぼって御質問をいたしたいというふうに考えております。  政府は、これまで再三にわたりまして、豊かな県づくりを強調されておりますが、復帰を目前に控えた今日、いまなおその具体的な内容が明らかになっていないのでございます。復帰に向けて沖繩経済は萎縮する傾向にあります。人口も減少しつつありますが、さらに加えて、基地労働者の整理、基地関係業者の転廃業等によりまして、復帰時点におきましては、数万人にのぼる失業者群が出てくるんじゃないかという懸念さえ持たれているのでございます。このような経済の混乱、先行き不安を解消し、豊かな沖繩県を建設していくことが政府の方針であろうかと存じますので、この際、政府は、豊かな県づくりの青写真ともいうべき経済開発計画を明らかにされ、県民の不安を解消すべきではないかと存じますが、この点につきまして総理の御見解を承りたいと存じます。
  174. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これらの点については、山中君が答えたほうが適当かと思いますが、ただ一言、私は、いまのお話で感ずるのでありますが、片一方で、今日まで経過したのが米軍基地依存の経済であります。この基地依存の経済、これを脱却しなきゃならない、かような面で今日まで戦ってきております。このやっぱり基地依存の経済、これから脱却する。そこにただいまのような多数の失業者を生ずる、こういうようなことですが、われわれは、平和な沖繩と、かように考えるから、基地依存の経済からほんとうに平和な産業への移行、これを考えていかなければならない。それらの意味において、山中君のところでいろいろくふうしておる。詳細はお聞き取りいただきたいと思います。
  175. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 今国会に御提出いたしております沖繩県関係の開発法案というものの中に、詳細にそれの計画図を示しておるつもりでございますが、最も大きな問題は、切りかえ時すなわち、待望の祖国への復帰に際して、生活のすべてが切りかわるために起こるであろうショック、これについての経済的な混乱を防止するための諸法案も準備いたしておりますし、さらに、未来に向かって沖繩県民がどのような方向を志向すべきであり、そしてそれに対して国家はどのような努力をささげていくかについては、私どもは、沖繩復興開発特別措置法の中で、十カ年計画を前提とし、その前提のもとに、あらゆる補助率、あるいはまたそれを受ける開発金融公庫の沖繩県のみに対象とされる地域金融機関を設立することにより、あらゆる地域の本土の立法よりも優先、そしてまた優遇された融資条件その他を設定することにより、新しい沖繩県の未来、すなわち直接的には、俗に本土との格差といわれております諸基盤の整備のおくれを急速に取り戻すと同時に、そうして沖繩県が新しく日本列島に長い弧状の付加価値を提供することの立地条件上のプラス、並びに備えておる亜熱帯地域としての気候風土等を十分に利用したところの、新しい角度からの開発計画というものの策定をいたしたいと考えておるわけでございます。沖繩における一次産業は、キビ、パインを中核とはいたしておりますものの、いずれもやはり本土政府においてもっと保護をしなければならない一次産業の中の主要なる部分でございまするし、共済法の適用等もございませんので、これらの問題も前提としながら、生産者の段階、さらに車の両輪ともいうべき、それを同時に製品とするところの企業の段階、これもあわせ振興策の一環として考えてまいりたいと思いますが、さらに一次産業の大部分の漁民の方々の現状は七〇%くり舟であるという、まさに近代化大型化を必要とする前近代的な漁法でもございますので、この漁業の宝庫の中にある沖繩県の立地条件から考えて、これの大型化近代化を中心とする漁業振興ということも、一次産業の大きな柱にしてまいりたいと存じます。三次産業が七〇%をこえるという実態の裏には、一次産業と三次産業との間にはさまって二次産業が非常に脆弱であるということを証明しておると思います。すでに外資ではありますけれども、ガルフ、エッソ等の会社、あるいはまた沖繩における民族資本と本土の日本法人との共同設立による東洋石油等もそれぞれ進出してすでに行動を開始いたしておりますが、沖繩において私たちがもっともっと、労働力がわりに豊かでありますので、これの労働力の供給を吸収できるような企業、造船とかあるいは電子産業とかそういうもの等を念頭に置きながらいま努力をいたしておりますけれども、しかしながら問題は、復帰とともに、あるいは復帰に伴い、自然に法制の変化や、あるいはアメリカの軍事力の再転回、あるいは基地の閉鎖、日本側でいえば返還でありますが、あるいはそれらに伴う米軍の機構の縮小等によってやはり解雇状態に立ち至る人たちがおられます。これらの人々については、やはりわれわれとしては特別の措置をしなければなりませんので、念頭には、かつて日本の基幹産業でありました産炭地がエネルギー革命によって非常な危殆に瀕しましたときに措置しました産炭地振興法あるいは炭鉱離職者対策臨時特別措置法等の法律を念頭に置いて、今国会に法律の中に特別に沖繩の労働者、すなわち失業していく運命にある労働者の人々に対して手帳を給付して、あらゆる再就職のための援助をしたい、こういうふうなことも考えておるわけでありますが、要するに結語として、沖繩の長年の犠牲に報いるために本土のできる限りのことをやらなければならない、それを前提として法案も作成をいたしました。また、まだ明確になっていない点があると言われますが、これは今国会審議の過程において、政令にゆだねられている点も、大体はほとんど全部、県民の各位が、自分は、そして家庭は、職場は、そしてわれわれの県はという疑問に全部答えられるような政令を具体的な例をあげてわかるように説明してまいるつもりでありますので、県民の皆さま方に、今国会のこれから予算が済んだ後始まるであろう沖繩返還諸法案の具体的な審議の内容を、つぶさに私のほうからも積極的にこれを語りかけてまいりたいと考えておる次第でございます。
  176. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 総理それから総務長官がからだを張って沖繩の問題に取っ組んでおられるということを私はよく感じておりますが、あいるはドル・ショックの問題につきましても思い切った措置に出られた、この点については深く敬意を表しているものでございます。そして政府が沖繩の復帰に際しての経済混乱を最小限度に食いとめるために特別な暫定措置を講じておられることも、今日までの復帰要綱の作成を通じてよくわかっているつもりでございます。ところが、ただいま長官が言われたように、前向きの姿勢において取っ組んでおられることはよくわかります。しかし、この特別措置法だけでは、沖繩経済の問題は解決しないというふうに考えておりますが、ただ、私が非常に疑問に思うのは、一つあるんですが、これは、沖繩振興開発計画の中にあるんですが、「振興開発計画は、昭和四十七年度を初年度として十箇年を目途として達成されるような内容のものでなければならない。」こと、それから振興開発計画の決定の段になりますと、「沖繩県知事は、振興開発計画の案を作成し、内閣総理大臣に提出するものとする。」と、四十七年度を初年度にいたしますと、県知事の選挙は、あるいは六月かあるいはまあ八月か、九月かになると思います。そうしますと、県知事が生まれてから振興計画の発案作成をするということになりますと、次の、次年度における予算案になってからしか、沖繩の振興開発計画はあらわれてこないのでございます。そうしますと、四十七年というのが、この振興法案には四十七年となっておりますが、実際においては四十八年からということになりまして、そこにわれわれとしては、これはどういうわけかという疑問を持っているのでございます。この点についての総務長官のお考えをいただきたいと存じます。
  177. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 表面的に見ますと、そういう疑問が確かにあると思いますが、この法律は十カ年計画をもって前提としておりますから、その初年度はすなわち四十七年度である。ところがその四十七年度の予算は、例年でありますれば今年の十二月末までに決定をするわけでありますし、ましてや復帰後知事選挙が五十日以内に行なわれるという事情もありますから、沖繩県知事が原案を作成して提出するという行為が行なわれないではないか。これは確かにそのとおりだと思いますが、一方法律の中においては、この四十七年度の予算において措置されたものは十カ年計画の初年度とみなして振りかえていくような配慮をしておるわけでありまして、これが実質上の初年度たるべきためには、また沖繩県の自治が尊重されるためには、来年度予算の編成にあたって、十分十カ年計画の初年度としての出発に値するものであるか、その手続等についての連絡も、十分に現在の琉球政府と連絡をとって進むつもりでございます。なお、この法律の終結の時期は、したがって明確に「昭和五十七年三月三十一日限り、その効力を失う。」と、こういうことになっておるわけでございますから、四十七年度予算をもってその第一年度と実質なるような手続をとるつもりでございます。
  178. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 経済というのは生きものでございますので、やり方いかんによっては相当の欠陥も出てくる。その点におきましては、政府としてはきめのこまかい対策が必要じゃないかと思っております。まあ、私の持っておる疑問と心配が杞憂に終わるように、総務長官においては十分に実施されんことを希望いたしまして次に移ります。  それから私ども沖繩経済を関係いたしてまいりまして常に感じておりますのは、基本施設が非常に貧弱だということでございます。水にいたしましても、これは非常な大きな問題でございます。去年の予算におきまして、政府においては水の調査を実施いたしております。ところが、今度沖繩においては異常干ばつがございまして、宮古、八重山においては多くの被害が出ております。これも水の処理がもし十分に行なわれておれば、未曽有の干ばつだといっても、おそらくあのぐらいの被害は出なかったんじゃないかというように考えるのでございます。この水の問題は、飲料水の問題、それからかんがいの問題、それから工業水の問題等、いろいろございますが、この点については徹底的な調査の上、根本的な計画を立てる必要があるんじゃないか。また空港におきましても、今後の日本の南方の入り口といたしましてジャンボ時代に備えた空港の施設が必要でございますし、さらに離島におきましても今日までYS11が動いておりますが、あるいは本土に復帰した場合においては、YS11は通らないんじゃないか、飛べないんじゃないかというふうな疑問も持っているようでございます。そういうふうな不安のないように私どもはぜひ希望いたしておりますが、それは漁港等にいたしましても整備されなきゃならぬのがたくさんありますし、また沖繩経済活動そのものから見ましても新しい港湾というものが必要じゃないか。これはことしの予算委員会におきまして私の質問に橋本運輸大臣がお答えになりました、東部のほうに新しい港湾をつくろうというお答えを賜わった次第でございますが、また道路等にいたしましてもまだ不十分な面がございまして、こういったようないろんな公共施設を含めまして、大いに今後経済発展に向かって施設をやらなければならないものが多いと存じております。これがネックにならぬような措置を、この十年計画の中にぜひ含めていただきたいというふうに考える次第でございますが、これに対する通産、運輸、建設各省の大臣方々の御意見を承りたいと存ずる次第でございます。
  179. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 沖繩の立ちおくれております社会資本の整備ということは、何よりもましての沖繩の未来を展望する場合の基礎条件でありますから、ただいまの御指摘の水、電力、港湾、空港、道路それぞれにバランスのとれた開発計画というものを定めておるわけであります。  水については、干ばつの例を引かれるまでもなく飲み水、それから農作物のために必要な水、そしてまた未来への工業用水、こういうようなもの等を考えまして、工業用水は主として本島でありますから本島北部の現在の完成しつつある福地ダム、安波川、普久川等のダム、あるいはダムから石川浄水場までのメーン送水パイプ、こういうようなものを全額国費でもって沖繩側の新しい未来への飲料水、工業用水の供給に資したいと考えておりますし、離島においてはすでにかんがい対策において伏流水、あるいは表流水等、あらゆる利用できる水は全部利用できるための、すでに補正予算より前に支出もいたしておりますが、たとえば石垣の轟川、宮古の袖山地区、その他具体的に水の送水のために必要な西表、新城、黒島間の海底送水パイプの調査費、あるいはまた宮古から多良間に至る、宮古から来間に至る海底送水パイプ、あるいは勝連半島から津堅に至る送水パイプ、こういうようなものを調査費をつけて、なるべく早く具体的な完成ができるように努力をしておるところであります。  さらに、電力の問題については、幾変転はございましたが、現在の米民政府の持っております琉球電力公社を、これを本土が特殊法人として管理することにより、優先的に沖繩県の出資を一応中に受け付けよう、ただし財政上も問題がありますから本土政府が実質九九・九九%は出資をするということで、まあはっきり言えば沖繩側には形だけの〇・〇一ぐらいの出資はしてもらいますが、そのかわりその出資を前提として株主の資格を持って沖繩県の未来の電力の開発、あるいは現在の電力のあり方の検討等についての参画をしていただきます、というような考え方を持っておるわけであります。  空港については、復帰いたしますと、空港の基準で、なるほどYS11をそのまま飛ばせる空港として認めるには、なお整備不足の空港が離島等にございますが、しかし、少なくとも那覇空港の国際空港並みの整備を前提として、中心として宮古、石垣はもちろん、久米島あるいは与那国等々の飛行場、南大東、それらについてもやはりYS11でなければなかなか困難である事情がありますから、すでに飛んでおることでもありますし、その整備のほうに努力を傾ける方針をとってまいりたいと思っておりますが、さらに多良間、北大東等の弁務官資金によってつくられました簡易飛行場の恒久飛行場化という点についても、来年度予算で措置してまいりたいと考えるわけであります。これらのものはいずれも全額国が百分の百の補助をもって行ないたい、ということにいたしておるわけであります。  なお、港湾については現在、全部那覇港も覇那新港も、泊港も西海岸でございますから、橋本運輸大臣の答弁がありましたごとく、中部海岸の泡瀬を一つの候補地区としてフリーゾーン等も念頭に置きながら、来年度は調査費をもって具体的な設計に取りかかってみたいと考えている次第であります。  道路については、おおむね本島の大部分の、琉球政府との間の調整を済ませました道路については、国道に編入をいたすことにしておりますし、その次のランクのものは主要地方道に認定をする方針も合意できておりますので、沖繩県の交通、港湾あるいは空、水、電力、このような問題も大体において今後解決の方向に、しかも急速に進展するものと確信いたしておる次第でございます。
  180. 西村英一

    国務大臣西村英一君) 総括的に長官からいまお話がございましたが、建設省としましては、河川、道路、住宅等の担当でございます。  大体はお話がありましたが、河川でございますが、ざっくばらんに申し上げまして、やはり河川の整備は相当やらなければならぬと思っております。それから水をつくり出す上におきまして、いま小さなダムで送っておりますが、三十万トンくらい送っております。あと福地ダムができますと十万トンプラスになります。その他いま山中長官がいろいろな河川を言いましたが、その他のダムで十二、三万トンできましょうから、おそらく五十二、三万トンの——五十二、三万トン・パー・デーですね、一日の。そのくらいは本島におきましては十分用意ができます。ただ問題は、やはり島でございます、島嶼でございます。私どももいま島嶼に対して、特別にどういう方法をとるかということをやっております。幸いに台風の常襲地帯でございますから、水は雨が降るのですから、やり方によっては十分、間に合わせられると思います。  道路の問題につきましては、いま山中長官からお話がありましたが、やはりおもな軍用道それから政府道そういうようなものは本土とはあまり変わりはありません。ただし、町村道これがやはりまだ非常におくれておると思います。なおまた、縦貫道路をつくってもらいたいというような希望も十分承知をいたしております。住宅の問題も、相当世帯の困難な戸数は東京と同じような程度でございます、四十五年の国勢調査の結果。したがいまして、住宅の点につきましても相当に力を入れたい、かように思っておる次第でございます。
  181. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) 空港また港湾の整備につきましては、山中総務長官が大体お答えになりましたとおりでございます。那覇港をはじめとする重要三港、また地方港を合わせまして七十六港につきましては、五年間で三百五十八億という大体の予算を立てまして、そうして港湾の整備に十分当たる、また観光港あるいはまた工業港につきましても、将来整備をしていくという方針でただいま進んでおりますところでございます。  また空港につきましてお話がございましたが、那覇空港につきましては、将来におきましては、ただいまは本島連絡または離島間の連絡でございますが、沖繩の局地性にかんがみまして、御承知沖繩振興開発特別措置法にうたってありますとおり、国際港並みにひとつ整備をしていくと、整備は政府でもって引き受けまして、そうしてやっていくというつもりでやっております。ただ、ただいまの航空機の離発着の状態が大体宮崎県と同じくらいに匹敵するような程度でございますので、これまた御承知おき願いたいとこう思っている次第でございます。将来の発展状況に応じまして、またこれらを特別に整備をしてまいります。以上のように思っている次第でございますので、御承知おきを願いたいと思う次第でございます。  また、ただいまございましたYS11をぜひ使いたい。宮古島、石垣につきましては、これはもうすでにさしつかえございません。しかしながら、やはり本土の空港と比較いたしまして、あるいはランウエーその他につきまして、まだまだ整備を要するところが多々ございます。たとえばその他の空港につきましては、これをYS11をそのまま飛ばしますると、非常に航空保安上も問題があるのがございまして、それらの点につきまして、これをやはり滑走路を延長するかどうかという点につきましては、保安林あるいは農地その他の関係がございますので、地元と十分よく相談をいたしまして、そうしてYS11を飛ばすことが適当であるか、そして非常にまた機数の少ないあとの二港につきましては、これはまたSTOL機を飛ばす、あるいは小型機を飛ばすというほうが便利であるかどうかという点も十分検討いたしまして、島民の皆さまの航空に支障なからしめるようにやってまいりたい、こう思っている次第でございます。
  182. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 沖繩経済発展をもたらすための目標というものは、まず基本的に考えますと、基地依存経済から自立経済に移さなければならないということが根底でございます。また、基地の縮小のためにはじき出されるおそれのあると御指摘のありました相当数の離職者、これを沖繩に定着せしむるような就職の場を用意をしなければならないという、具体的な恒久策があるわけでございます。第二は、沖繩は工業比率が非常に低いわけであります。二次産業比率が低い。いうならば、一次、三次産業の比率が高いわけでございますから、復帰後の沖繩は工業化の促進、本土からの企業進出をはからなければならない。そうすることによって、本土各県との二次産業比率の平準化をはかるということを当然行なわなければ、沖繩からの労働力は本土に流出をするわけでございますから、沖繩県民の生産性及び所得を上げるために、二次産業比率の増大化をはかってまいるということでございます。  そういう基本的な立場に立ちまして、今国会沖繩振興開発措置法及び同金融公庫法を提案いたしておるわけでございますから、この結果、用地、用水、電力等、基本的な条件を整備をするつもりでございます。なお、日本軽金属等、特定の日本を代表するような企業が沖繩進出をはかっております。こういうものに対して現行法制だけでもって沖繩が有利であるから進出をするようようになるのかどうか。これは本土よりも有利な条件を法制上つくってやらなければ進出をしないわけであります。少なくとも四分の一世紀にわたる沖繩経済発展のマイナス面ということありとせば、それを十分取り戻せるように沖繩経済発展をはかってまいるということを基本にいたし、具体的な施策を行ないつつあるわけでございます。
  183. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 次に、建設大臣お尋ねしたいのですが、先ほどの従貫道路の問題でございますが、これは前に総務長官もこの問題に触れたことがございますし、またこの前の新聞を見ますと、建設大臣沖繩を御訪問された場合に、この問題について触れた記事もまあ読ましていただいたわけでございますが、私はこの縦貫道路というものが沖繩経済発展の先導的な役割りを果たすのじゃないかというふうに考えております。ところが、この建設がおくれますと、それだけまた沖繩経済建設のほうには重大なる影響を与えるのじゃないかと、こういうふうに考えます。だから、どうしても復帰と同時にこれが建設が着手されるようにならなきゃならない。これはまあ予算に計上されているかどうかわかりませんが、その点についての建設大臣の御意見をお伺いいたしたいと存じますが。
  184. 西村英一

    国務大臣西村英一君) 沖繩本島の縦貫道路でございますが、これはやはり現在も自動車相当ありますし、将来も相当にこれがふえていくだろう。したがいまして、那覇からまあ少なくとも石川ぐらいまでは、やはり平面交差をやらない高速道路をつくる必要があるのではないかと私は考えております。で、まあ調査費もそのためにあるのであります。したがいまして、これは最終的に決定したわけじゃございませんが、必要があるのじゃないか。少なくとも那覇から、ことに那覇周辺につきましては相当に利用者も多いから、やはり平面交差のない道路が石川から以北について、あるいは那覇から以南については、これはまあ将来のことになろうかと思っておりますが、そういうふうに感じましたから、これを前向きでひとつ十分検討していきたいということで、いま調査団を第一回に派遣いたしましたときも、十分その点を技術的に可能であるかどうかというようなことを十分いま調べさせておる最中で、取りまとめておる最中でございます。それがまとまりますれば、関係のところとまた接触しまして進めたいと、かように考えておる次第でございます。
  185. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 建設大臣にもう一度お尋ねをいたしますが、いつごろこの計画はできるのでございますか。
  186. 西村英一

    国務大臣西村英一君) 今年度中くらいには、その実施計画まではわかりませんが、基本計画をつくるのは今年度くらいまでにできると思います。いよいよ実施計画というときになりますれば、もっとそれはかかると思います。
  187. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 次に、通産大臣お尋ねいたしますが、アルミの問題は、私ども長い間かかりましてこれをぜひ沖繩に誘致したいという考え方を持っていたわけでございます。まあ沖繩アルミという名称の会社ができることはできたんですが、その後どうなっているか、なかなかはっきりしない。これについての今日までどういうふうになっておりますか、お伺いできますれば幸いだと存じます。
  188. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) もう二カ月くらい前かと思いますが、日本軽金属の関係者から沖繩進出の話がございました。しかし、その当時には法人税が一体どうなるのか、沖繩進出ということがやっぱり企業にとってもメリットがなければならないし、内地と沖繩との条件の差というものもありますので、そういう前提条件が具備されれば、沖繩側でも要請をいたしておりますので、進出をいたしたいということがございました。まあ、その後、私も現地等の状況をつまびらかにいたしておりません。おりませんが、下請だけ出ていくというようなことでは、沖繩経済的基盤が確立できないと思います。私はやはり基幹産業が沖繩に進出をするということこそ望ましいということを考えておりますので、これからも軽金属のみではなく、沖繩を適地とするような工場が考えられるわけであります。そういう意味で、沖繩の皆さんとも十分御相談をしながら法制の整備等をいたして、内地から優秀な企業が沖繩現地へ進出可能になりますように、前提条件を整備してまいりたいと、こう考えておるのでございます。
  189. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 私どもの希望といたしまして、ぜひ政府のほうにおいて前向きの姿勢でこの問題を取り上げられて、できるだけ早く具体化するように希望いたす次第でございます。  次に、海洋万博の問題についてでございますが、去る十月二十二日に、昭和五十年に沖繩海洋万博を開催するという閣議の決定を見ました。沖繩百万県民は非常に喜んだのでございます。おそらく最近において、暗いことが非常に多い中において、この海洋万博の沖繩における昭和五十年の開催については、沖繩百万県民がもろ手をあげて喜んだことじゃないかというふうに考えております。それで、私はこの海洋万博こそは、沖繩の長い暗いイメージを明るいイメージに切りかえるものになるというふうに確信を持っているのでございます。  それにつきまして、私は二、三の提案を行ないまして、せひこれが実現をはかっていただきたいというふうに考えているのでございます。  一つは、海洋博を沖繩の陸海両面の地域開発に役立てること、二は、日本の海洋開発技術の飛躍的向上に資すること、三は、沖繩の海洋博を記念してアジア海洋文化センターと世界的海洋研究所とを設置すること、四は、海洋時代にふさわしき日本国民の海洋精神を育成するため大海洋青少年センターを設置することでございます。  私がこの海洋青少年センターの設置を極力要請いたしますのは、現存世界は海洋時代だといわれております。ところが、どうも最近の日本の潮流を考えてみますと、何かしら大きなほがらかな、世界に向かって羽ばたくという精神よりは、むしろ内輪で戦うという精神の方向に向かっているんじゃないか。私はこの点について、日本の将来に対して非常な危惧の念を抱くものでございます。それでこの海洋博を記念いたしまして沖繩に一大海洋青少年センターをつくり、そしてぜひ船を一隻あるいは二隻チャーターして、順繰りにこの海洋センターに行って、そこでほんとうの海洋精神を涵養する、これが私は日本の将来にとってきわめて重大なる意義を持つというふうに考えておる次第でございます。その意味におきまして、ひとつ総理はじめ総務長官あるいはまた通産大臣が御理解を示されまして、この海洋博に対しましては私の意見が十分に満たされんことを希望いたす次第でございます。総理、それから通産大臣、総務長官の御意見をお伺いいたしたいと存じます。
  190. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 沖繩海洋博は、先般閣議の決定を求めまして、近く二、三日うちに本部へ申請をいたすつもりでございます。  これは国際法上に基づく博覧会でございますから、大阪の博覧会の小規模なものとお考えいただければいいと思います。御承知の、琉球政府からも非常に強い御要請がございますし、沖繩選出国会議員あげての御要望でございましたので、政府も沖繩復帰の記念事業として踏み切ったわけでございます。  これは最低四百億、内容によっては五百億程度が予想せられるものでございます。しかも、世界で最初の海洋博覧会ということでございますから、意義あることは申すまでもないわけでございます。また、これを開催するにしては、いま御指摘にありましたように、意義あらしめるために幾多の目的を達成せしむるよう内容を充実せしめなければならないことは申すまでもありません。また、財界等におきましても、これが応援のため懇談会等を設けて、もうすでに準備に入っていただいております。政府も、国民あげてのこの事業完成に御協力を求めてまいりたいと、こういう考えでございます。  いずれにしても、この海洋博覧会が世界最初のものである、また沖繩という地域から見ても画期的なものでありますので、この内容が、ただ沖繩復帰記念事業ということではなく、科学的にも技術的にも内容のあるものとして評価をされるようなものにいたしたいということで、いまから鋭意準備を進めてまいるつもりでございます。  なお、海洋センターその他につきましては、御意見もございますし、これをもととしてアジア各国の御協力をいただき、そのような問題解決に努力をしてまいりたい、このように考えます。
  191. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 田中通産大臣のお話で尽きておると思いますが、沖繩復帰を記念して、世界で開催されたことのない特別博覧会としての海洋博覧会を沖繩において昭和五十年に開くという決定は、沖繩のみならず本土にとってもこれは大きなニュースの一つであることは間違いございません。したがって、これを行ないまするには、その投資のあり方についてよほど慎重にきめてかからなければなりません。すなわち海陸にわたってというお話でありますが、もちろん海陸ともに含めた設計がなされましょうし、そしてこれが願わくは、平和で豊かな沖繩県の未来の大きな柱の一つである観光立県の柱になり得るように、その施設その他についても、未来にわたって沖繩県の観光に大きく貢献するようなものとして、大阪万博のように、あとは取りこわしてしまって、まあ土地柄緑が不足でありますから公園にするのも一つの案でしたけれども、沖繩の場合はそのようなことでない、すなわち、海洋博覧会の施設そのものが、今後の沖繩の持つ最も大きな資源である観光の柱の拠点となるようにしたいと考えておるわけであります。  なお、この際に稲嶺議員にもお願いをいたしたいし、琉球政府、市町村あるいはそれぞれの地域についてもお願いをしたいのでありますが、この開催地の場所の決定にあたって、私どもは私どもなりに通産省と相談をして立地条件その他を精査いたしますけれども、その希望と申しますか、場所の決定について、現在残念ながら沖繩の中において合意が得られておりません。北部は北部、中部は中部、南部は南部、いずれも市町村長会単位、議長会単位でそれぞれ名のりを上げて争っておりますので、これらのところはよく琉球政府、議会、そして選出国会議員を含めて、また協力者側である商工会議所等の民間の公的な団体、そうして市町村長会、議長会等の公的な世論を結集して、なるべくすみやかに開催地についての場所の決定をしていただきたいものである。この投資は急速に行なわれますので、それについて受け入れ態勢が逡巡することのないように、また、狭い沖繩の中で地域ごとに争って一向に場所がきまらないことのないように御指導のほどをお願いしたいと存じます。
  192. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 海洋博については、両大臣からお答えしたとおりであります。これはそれなりにひとつ評価していただきたいと思います。私は、最後に提案なすった海洋青少年センター、これはたいへん意義のあるものだと、かように思いますので、これについて私も賛意を表して、ただいまの取り扱い方をどういうようにするか、これはひとつ山中君のところでよく考えていただきたい、かように思います。
  193. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 ただいまの私の提案に関しまして、総理から御賛成の御意見を賜わりまして、今後の、おそらく世界的に羽ばたく青少年が、沖繩において海洋精神を涵養されることを私待望をしながら、次の問題に移りたいと思います。  これは、沖繩の干ばつと、それから台風による被害についての問題でございます。御承知のように、宮古では、前古未曽有の干害あるいは災害がございました。これに対して、政府においてはいろいろと施策はやっておりますが、まだこれが徹底していないうらみがあるのでございます。先日、私も宮古へ参りまして驚いたのでございますが、約一年くらい孜々営々として育てたサトウキビが、全部枯れてしまった。これを主婦が焼いている。一年あるいは一年半の収入が皆無というふうな状況下に置かれておる。ところが、これに対する政府の施策、これは琉球政府でございますが、なかなか地についていない。もっと根本的な対策が必要じゃないか。  それで総務長官にお伺いいたしたいのですが、これについては、ぜひ実際に即したところの、また、農民が自分の農業に対して再生産につながる、それからまた、家屋を失ったような諸君に対しては適切なる方法でもってこれを考えてやるというふうに、もっときめのこまかいような政策が必要じゃないか。あまりにも、この前見た私の感じからいいますと、どうも真に農民のことは考えてないような感じがいたすのでございます。その点について、総務長官の御意見をお聞きいたしたいと存じます。
  194. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 干ばつというもののきわめておそるべきものであることは、これが根から枯れてしまうということにおいて、壊滅的な打撃を農作物に与えるということで、これは明白なことであります。しかもまた、百年来絶えてなかった干ばつでありますから、おっしゃるとおり、キビもすべて枯れ果てておるような状態であります。他面において、宮古の袖山地区あるいは石垣の一部管水のできておるところなどは、青々として、例年どおり私どもの背たけよりも一倍半ぐらいに伸びておるところを見れば、明らかに宮古においては伏流水がありますし、あるいは石垣においては表流水があるわけでありますから、これらについては、すでに三億一千万円の干害対策費と、並びに二億円余の農民への緊急融資の利子補給を含めて、予算措置もいたしました。  さらにまた、恒久的な措置としては先ほども申し上げたのでありますが、石垣の轟川あるいは宮古の袖山地区等について、恒久的な施策を中心とし、あるいは各離島において、少なくとも貯水タンクを二十カ所設ける。そのほかに屋我地の愛楽園、らい療養者の方々の収容施設でありますところでは、現在でもなお、日に二時間給水という気の毒な状態にございますので、これも緊急支出をもって、百トンの貯水槽をつくるように措置をいたしているところであります。  さらに、そのような状況に追い打ちをかけたのが、台風二十八号でございます。これは、しかも家屋まで壊滅的な被害を与えましたし、せっかく、やや少し雨が降ったために、大急ぎで少し時期おくれの夏植えの、少ない種苗を採取して植えておられましたキビが、また塩水をかぶって洗い流されて、壊滅的な状態になったということは、農家の人々にとっては、現在の自分たちの住んでおる住宅、畜舎、農機具小屋、こういうものがことごとく倒れた状態意味しますし、また、収入の面においては、ことしのみならず来年まで収入は見込みが立たない、キビ工場は操業不可能であるという状態になっておることは、これはもう明らかな事実でございますので、現在、琉球政府から本土政府への要望を出されておりますが、先月の十八日に手元に届きましたので、ただいまそれに対する査定と、同時に現地に専門の各省からの査定官を派遣を、あと三日後でございますが、いたしまして、そうして、すみやかに琉球政府にその措置についての財政的な裏づけをしたい。ただし、琉政にもやはり災害対策費並びに予備費は政府予算としてあるわけでございますので、緊急に仮設住宅等、あるいはまた、集団移転をいたしました開拓農家等においては、単にこれを緊急仮設住宅ではだめである、それはまたこわれることを意味するから、この際鉄筋の恒久住宅にしてくれという要望もありますから、これらの問題等も踏まえながら、取りあえず琉球政府のほうで、すでに現地において米軍の仮設住宅とともに、少しおくれましたけれども、琉球政府限りでやっておいていただきたいという了承のもとに、すでに発注をいたしまして、落札をして建設に着工しておる状態でございますので、幾らあたたかいところとはいえ、住むに家なしという状態を、いつまでも集団移転等をいたしました開拓の農民の方々に忍ばせることは不可能な、でき得ざることでございますから、これに対して万全の策を、しかもすみやかに講ずるべく、いま作業いたしておるところでございます。そうして将来は、台風は避け得られないものとしても、干害は政治の力において水さえ供給できる施設をつくれば避け得るわけでありますから、これを私たちは人災であるということを確かに肝に銘じて、二度とこのような状態に、ことに先島の農民の方々をこの苦しみをあわせることのないように、万全の策を講ずるつもりでございます。
  195. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 ただいま総務長官の御所見を承りまして、今後、台風災害あるいは干害に対して思い切った措置を講じられるということをお聞きしました。たいへん感謝いたす次第でございます。ただ総理はごらんになったことはないと思いますが、これは総理、干害でサトウキビを焼いているところでございます。サトウキビを焼かなければならないというふうな状態までなっておりますが、それに私非常に、北海道のほうと実は沖繩のほうと、同時に、片一方は干害あるいは台風、片一方はまた冷害によって、歴史的に前古未曽有の冷害を受けておる、この事実からしまして、ぜひ政府におかれましては、北海道における冷害に対してどういうふうな措置をとっておられるか、また、これに対しても万全な対策を立てるように希望いたしまして、関係大臣の御所見をお伺いいたしたいと存じます。
  196. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 北海道の冷害にとられます措置は、もちろん、沖繩に対して同じような予算上の考え方のできますものは、全部適用いたすわけであります。たとえば先般の干害対策の場合に、キビの種苗に対して二分の一補助をいたしましたが、これは四十一年に北海道の冷害がありましたときに一回だけとった例外措置でありますけれども、その後は、あるいはそれ以前は行なわれていなかった制度でありますが、しかし、北海道において一回だけとったことがある。しかし大蔵省として、これはどうも疑問であるから将来とる意思はないということも、内々の話としてはありましたけれども、沖繩の場合において、やはり種苗の確保ということが、まずこの干害の対策の基本的な問題だということで、同意を得てもらったいきさつもあります。これは一例でございますけれども、沖繩について、現在は本土の激甚法あるいは局地激甚等の手段も届いておりませんが、しかし、沖繩の法律の中で、災害復旧については、沖繩県ではありますが琉球政府という立場において、いわゆる国家的な形において七五%補助の対象になっておるものがずいぶんございまして、本土のほうでは、激甚でありましてもそのような補助率になっておりませんが、ここらのところは、沖繩について特例的に何らかの措置をいたしたいと考えて、努力をいたしておるところでございます。
  197. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 沖繩の問題はこれで終わりまして、次に、わが国の経済政策についてお伺いいたしたいと存じます。  第一点は、経済運営の基本についてでありますが、わが国の経済政策は、これまで経済成長を第一義にとらえ、国際競争力強化、輸出の伸長を中心に運営してきたのでございますが、その結果は、毎年十数%の成長率を示し、貿易収支は非常な黒字となり、現在ではアメリカの第一の目のかたきとなっている次第でございます。他面また、今日のような不況期におきましても、消費物価が下がらないというふうな矛盾に直面いたしております。このようなことからいたしまして、この辺で経済政策と外貨獲得第一主義の政策をやめて、安定成長を第一義とし、社会資本の充実、公害防止、社会福止の向上を求め、さらに経済援助と国際通貨の安定をはかる方向経済政策の転換をはかる必要があるのではないかと思われますが、今後の経済政策並びに経済運営について、総理の御見解を承りたいと存じます。
  198. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) いま御指摘のとおりでございまして、GNP世界第三位、国民所得もいまや千六百五十ドル、国際収支におきましても百四十億ドルと、こういうような情勢を踏まえまして、こういう成果を国民生活に直結できるような経済政策の転換、これはもとより最も大きな課題でございます。政府におきましても、この情勢を絶好のチャンスといたしまして、いま御指摘になりましたような、いままでの輸出第一、民間設備主導主義、あるいはそういう面から、これを国民生活に直結する福祉生活への転換をはからなければならぬ時期であろうと思います。
  199. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 私どもの今後の日本経済政策については、根本的に変えるような段階にきておると思いますが、さらに、発展途上国に対する経済援助の問題につきましてもお伺いいたしたいと存ずる次第でございます。  わが国平和外交の基礎をなすものは、やはり私は経済援助じゃないかと思っているのでございます。ところが、相当の経済援助をなしているにもかかわらず、わが国は常にエコノミックアニマルというふうにいわれているのでございます。それはどういうことかといいますと、私、各国の諸君とよく話し合うのですが、常にどうも自分のほうにそろばんをはじいている、他国の、外国の被援助国の身になってあまり考えてくれない、そこに日本がエコノミックアニマルといわれるゆえんがあるのじゃないか。そういう意味におきまして、私は、今後、アジア各国に対するわれわれの従来の貿易のあり方を、幾らかあるいは相当大幅に考え直しまして、日本の現在の工業状態から考えまして、いろいろな問題が惹起しておる状態でございますので、この工業化の問題をグローバルにとらえ、日本さらに東南アジアを含めて、アジア諸国にも工業を興すというような考え方でもって臨むべきではないかというように考えますが、との点についてのお考えを承りたいと存じます。
  200. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まことにそのとおりだと思います。先ほども申し上げたのですが、わが国の経済外交のあり方、これは少し転換をしなければならぬ。いままで、何と言っても経済協力と並んで貿易の伸長、それを非常に重要視したわけですが、これを今後といえども捨て切るわけにはいきませんけれども、同時に、お話のように相手の立場を考える。いま量的にはかなり経済援助は進んでまいりましたけれども、質的な面ですね、つまり条件でありますとか、相手に感謝されるような、また喜ばれ得るような、そういう援助方式、これに切りかえなければならぬ。それから二国間援助は、どうもややもするとまた経済侵略的な感触を持たれがちでありますので、なるべく国際機関を通ずる援助、こういう方式、これを推し進めなければならないのじゃないか、そんなふうに考えております。考えは全く同じでございますので、そのような方針をさらに進めていきたい、かように考えます。
  201. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 ただいまの経済援助の問題と相関連することでございますが、実は十月二十九日のアメリカの上院の本会議におきまして、対外援助支出権限法案を否決し、対外援助を大幅に縮小するのだということが新聞に載っておりますが、これは、経済援助によって大幅に発展してまいりましたこれから発展する国家にとりましては、重大なる問題じゃないかと思っております。これに対して、私は、日本といたしましては、何らかの形においてこれを補ってやるという考え方を持つべきではないか、そうすることによってアジア諸国の方々と一緒に、お互いに相寄り相助けて、アジアのりっぱな国々をつくっていくというような方向に進むべきじゃないかと考える次第でございますが、これについての外務大臣のお考えを承りたいと存じます。
  202. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) わが国は、戦後のような弱小国というか、四等国だ、五等国だ、あるいは十二歳だといわれるような国であれば、これは格別でありますが、今日アメリカに次いで自由世界第二の経済国であるというような地位にまできますと、もう、日本自体の繁栄ということを考えましても、日本自体のみが栄えるという考え方は、もう行き着きというように思うのです。つまり、世界じゅうを豊かにする。特に、おくれている国々を豊かにする。それによってわが国もともに発展するという、そういう考え方をとらないと、わが国自体はもうやっていけないのじゃないか、そういうように思います。そういうような考え方のもとに経済援助、先ほども申し上げましたように積極的に進めるという姿勢でございますが、ただアメリカの援助ですね、私どもは非常にショッキングに見ておるのでありますが、おとといですか、おとといのアメリカの上院は、アメリカ政府の提案いたしました対外援助法案、これを否決しているのです。こうなるとどういうことになるか。アメリカは世界で一番量的に多くの援助を与えている。大体、毎年毎年三十億ドルくらいのものを与えておるわけであります。今度の提案も、いろいろ変遷がありましたけれども、最後には二十九億ドル、その議案が否決されたということになる。これは、とても日本がそれを背負い切れるほどのしろものではない。日本はずいぶん努力努力を重ねて、今日なお十八億ドルベースの援助であります。ですから、やはり私どもはアメリカに対しましては——まあアメリカ政府自体がいま努力をしております。何とかしてこの否決された法案をまた復元をさしたいと、こういうことですから、これに期待をかけなけりゃなりませんけれども、アメリカはアメリカとしても、わが国はまあやっていかなきゃならぬが、アメリカがそういう事態になったら、とても日本の国力ではそれを肩がわりするというようなわけにはまいりませんし、肩がわりするというようなそういう考え方も私はよくないと思うのです。アメリカにかわってやるのじゃないのです。わが国はわが国の国益のために、またわが国の、国の力を踏んまえて世界に貢献するという、わが国自体の立場国際経済協力というものは振興させていかなければならぬ、さように考えております。
  203. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 経済問題について、私、これで質問を終わりますが、最後に、返還協定につきまして、私の意見を開陳したいと思っております。経済問題についてはもっとたくさん質問したいことはございますが、時間が足りなくなっておりますので、この問題を最後にいたしたいと存じます。  いろいろな批判もありますが、私ども沖繩県民は、佐藤総理が今度の返還協定に対して尽くされた誠意と御努力に対しては深く感謝いたしているものでございます。これは、私は、実は、この返還協定というものが、いま、いいか悪いかというのが、だいぶ問題になっておりますが、私の考えとしては、ベストではない、だがベターである。それから、不満な点は、復帰によって百万県民の肩の重荷を一億の国民が肩がわりした後においていろんな不満な点を解決していいじゃないか。今日まで二十数年間、アメリカのあの重圧というものを私どもは百万の県民だけによって背負ってきた。私どもの背負っておる荷物を軽くしてやるということは、私は一億の同胞の責任だと思っております。そういう意味におきまして、私は、復帰対策もベストではないんだが、これもベターだと思っております。それから、復帰をおくらすことによって、いま問題になるのは、だれが損するんだということであります。私は損するのは百万の沖繩県民だと思っております。その意味におきまして、私は、ぜひこの復帰協定、それから、この法案が早く両院を通過することを希望しているものでございますが、まあ私どもにとりまして、いつも考えることは、いろんな人権の問題が起きております。去年は、総理も御承知のように、糸満で起きたところのあの人権問題がコザ事件にまで発展いたしてまいりました。私どもは、こういったことを二度と起こしたくありません。その意味におきまして、私は、ぜひこの問題が早く解決されることを希望いたしております。そして私は、返還が一日も早くなるということを、私は沖繩県民多数が望んでいることだと考えております。いろんな今日までの選挙の結果を見ましても、復帰協定後の選挙の結果を見ましても、またこの前の沖繩の立法院議会における決議を見ましても、私は明らかに沖繩県民の多数が賛成を表しているんじゃないかと思っております。ランパート弁務官は七月一日でなければあるいは復帰は可能じゃないんじゃないかというふうなことを言っておりますが、私どもといたしましては、七月一日と言わず、四月一日に復帰できるように、佐藤総理はあらゆる努力を払っていただきたいと考えています。これに対する総理の御所見を拝聴いたしたいと存じます。
  204. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 沖繩の復帰問題についての基本的な考え方、ただいま言われるように、県民百万、これが背負ってきた今日までの重荷を今度は一億国民が荷を軽くする、こういう意味で、ともにその責任を負うと、私はたいへん表現が率直であり、そのとおりだと思っております。私はただいま復帰協定そのものに調印した今日でもなおこれが何ら遺漏のないものだ、完ぺきなものだと、かようには私もまだ考えることはできません。しかし、何よりも早く祖国復帰を実現すること、そうして、この上とも本土並みにわれわれが努力していく。今度はほんとうに県民ともどもそういう考え方で取り組んでいくべきだと、かように思っております。したがいまして、ただいまの結語としてのランパート弁務官の七月一日復帰のそういうものも現にあったようでありますけれども、私どもはできるだけ早く復帰を実現するという、その立場に立ちまして、七月を待たず、四月一日の復帰のもとに、復帰を実現すべくただいま鋭意努力している次第でございます。  私は過日の琉球立法院における決議にいたしましても、また県民多数の方々が心から望んでおられるのは、一日も早く復帰を実現することにある。かように確信をしておりますので、そういう意味で最善を尽くしてまいる決意でございますから、何とぞよろしくお願いいたします。
  205. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 以上をもちまして稲嶺君の質疑は終了いたしました。
  206. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 次に羽生三七君の質疑を行ないます。羽生三七君。
  207. 羽生三七

    ○羽生三七君 きょうは、内政中心にお尋ねをするつもりでおりますが、それより前に一言だけ中国問題に触れてお尋ねをいたします。  総理は、この三月当委員会での私の質問に答えられて、自分の在職中は日中改善せぬという前言を取り消されました。また七月の臨時国会で、衆議院におきまして訪中もあり得ると答えられましたが、それに対する私のこの参議院における、それは中国に対する公式呼びかけと理解してよいか。こういう私の質問に対して、そうとられてしかるべきであると、こういうお答えがありました。実を言うと、私は人の言うことを正直にまともに受け取る人間でありますから、文字どおり首相の言を受け取りまして、ひそかに期待をしていた一人であります。多くの人々が佐藤総理のもとでは日中打開は絶対にあり得ないと言われる中で、私はひそかなる期待を持ってきました。したがって、私は自分の過去の質問の中で、しばしば日中打開に希望を託せるようなこの総理の御発言がございましたので、この際あらためて所信をお尋ねする資格があるように考えます。  そこで第一にお尋ねしたいことは、一つ、中国を代表する唯一の合法政府は中華人民共和国である。二つ、台湾は中国の一部である。これは従来の御答弁でそのとおり理解してよろしゅうございますね。
  208. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 羽生君にお答えいたします。台湾が中国の一部であるというこのことはもうすでに説明をいたしておりますから、あらためては申し上げません。また、アルバニア決議案が通過し、国連における中国の代表権が決定された今日でありますし、われわれもこの国際世論の動向を踏んまえて、そうして、日中回復をはかる決意でございます。そういう場合に、中国を代表するものは中華人民共和国と、こういう立場でなければ交渉もできないことも、そのくらいのことは承知しております。
  209. 羽生三七

    ○羽生三七君 そこでですね、午前中の質疑応答を要約すると、日本と中華人民共和国と国交を回復するようになれば、当然日華条約は廃棄される。問題は、先に破棄を宣言することはできないので、話し合いの過程でそういう結論に達することもあり得ると、こういう理解でよろしゅうございますか。
  210. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 中華人民共和国と国交の正常化をはかる、これは私どもの努力目標であります。ただいまそういう観点に立っておる。中国は、中華人民共和国は私のこの気持ちをどういうように理解してくれるか、これは別でございますが、とにかく私は一日も早く国交の正常化をはかりたいと、かように考えております。  第二の問題。いままでわれわれは日華平和条約、これによって中国との間の戦争はなくなったと、かように条約を解釈しておりますが、これについて中華人民共和国が、あれは不法なものであり、根拠のないものだと、こういうことで否定しておる、その事実は全然知らないわけではございません。それは知っておる。しかし、ただいま分けられたように、このものが当然無効になる、あるいは廃棄さるべきものだ。かようにいわれることには、まだもう少し段階的なものがあるんじゃないか。私が申しますのは、中国、いわゆる中華人民共和国と国交の正常化をはかる、そういう際に日華平和条約というものがどういう扱い方を受けるか、その際に十分相談して、協議してきめるべき問題だと、かように思っております。
  211. 羽生三七

    ○羽生三七君 問題ははっきりしておるのでありまして、中華人民共和国と国交を回復する場合には、私が申し上げたように、話し合いの過程で日華条約の廃棄もあり得るということですね。それでなければ国交回復できっこないんですから、これははっきりしておる。  そこで問題は、この日華条約でありますけれども、私どもは国連アルバニア案が通過した以上、これは午前中の質問にもありましたが、これは、当然日華条約は廃棄されることだと思いますが、しかし総理としては、結局これを日中正常化交渉の過程で解決したいと、こう言われておるわけです。そうだとすれば、中国とどうして交渉の道を開くか、これが問題のポイントだと思いますね。どうして交渉の道を開くか、これがポイントです。ところが、相手国が絶対にこれは受け入れなければ問題になりません。もしその可能性がある場合でも、遠回しに相手の気を引くようなやり方、小手先のアプローチで道の開ける可能性は絶対に私はないと思います。今日この段階では、ストレートに首相か外相、あるいは党代表の名にふさわしい人物、これが直接訪中する以外に道はないと思います。しかも、相手が訪中を受諾した場合であることは、これも言うまでもありません。はたして受諾するかどうか、これもわからないですね。受諾をした場合のことであります。その辺を考えれば、おのずからアプローチのしかたがあると思うんです。この段階では、もはやメンツなんか言っている時期では私はないと思います。したがって、どういうアプローチのしかたをするか。つまり衆議院では自分の——佐藤総理ですよ。佐藤総理の自分の訪中もあり得るとお答えになったんですから、そんな人の気を引くようなやり方じゃないと思いますね。ストレートの、首相なり外相なり、あるいは党代表の名にふさわしい人の訪中もあり得る。その橋渡しをする場合はどうするかということは、これから私はあとから申し上げます。そういうこともお考えになりませんか。
  212. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま羽生君の言われる御意見のとおりであります。私あるいは外務大臣、あるいは党の、そういう意味において党を代表するような人が出かけると、こういうことでなければ正常化ははかれない。その前の段階でアプローチはいろいろあるだろうと思います。そのアプローチのしかたはどういうような方法になりますか、ここらにいろいろ腐心しているということであります。とにかく長い間の断絶がございますから、われわれ政府といたしましては、その断絶を乗り越えて国交正常化と取り組むのでありますから、そのためにはまだ相当の手数がかかるのじゃないかと思いますけれども、できるだけ早い機会にさような手続を経たいと、かように思っておる次第であります。
  213. 羽生三七

    ○羽生三七君 中華人民共和国と国交を回復した場合でも、台湾が消えてなくなるわけじゃないですね。したがって、台湾の処遇がどういうことになるかという、中国の一省としての取り扱いというようなこともあり得るでしょう。そういう場合のことも踏まえて原則をある程度確認しながらアプローチしなければ向こうは絶対に受け入れる可能性はないと思います。ここが非常に重大なところですね。そうでなしに何か気を引いてみて、うまい話が行けばあるかもしれぬというようなことで中国が訪中を受諾するということはほとんどないと思います。したがって、その辺が非常に重大だと思う。特に日本外交の基調は国連中心主義だったわけですね。しかも、歴代の首相と外務大臣がそれを日本外交の基調として言われてきたわけです。ところが、国連においてすでに問題の決定があったわけですから、むしろこの際は国連の決定にすなおに従って、国民政府——国府に対して世界の大勢とこの理のあるところを説いて新しい選択の道を選ぶよう私は国府に率直に言うことが大事だと思います。そして、やはり原則というものを踏まえて中国に対してアプローチをしていく、それでなければ絶対に私、打開の可能性はないと思うのでありますが、いかがでありましょうか。
  214. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 羽生君のただいまの、一つの見識だと私は思いますが、私はこの漢民族、それはちょっとわれわれの日本人的な感覚ではなかなか考え方が及ばない点も多いように思っております。とにかく偉大なる漢民族の考え方でありますから、ただいままでの状態でも、二つの政府がありましても、それが武力解放だとか、あるいは大陸反攻だとか口でこそ言っておりますが、実際には行なわれないで今日まで来ている、そういうことも考えなければなりません。また、過去におきまして日本と戦う場合に、国共合作は二回も行なわれておる。そのようなことも考えなければならない。なかなか漢民族の考え方というものにはわれわれは、なじまない点もあるんではないだろうかと思います。したがって、ただいまのような状態、あまり早急に結論を出すと間違ってくるのじゃないか。私が接触をして、そうして、みずからが意見を交換することによって結論を出すというのはそういうような点をも考えてやりたい、そういうことでございます。ことに、いろいろ中国の大きな、広大な領土、領域から見ますると、特殊な行政組織もあるようでございますから、どういうようにものごとが運ぶのか、そこらには非常にわれわれがちょっとうかがい知ることのできないものがありはしないか、かように思っております。そういう点をも含めて接触すること、その場合の基本的には、何と申しましても中国は一つだというその原則に立つこと、その一つの中国を代表するものはだれかという、そういう立場に立ってこれを進めていかなければならない。このことはすでに国連において国際世論が決定をしたことであります。私はこの事実を踏んまえてこれから交渉すべきだと、かように申し上げておるのでございまして、なるほど日本の場合は中国の隣である。アメリカのような場合とは違うとか、あるいはソ連とも違う、あるいはイギリスとも違う、まあいろいろのその違い方を説明している向きはございますけれども、しかし、私どもが過去において日華平和条約を結んだこと、これは事実でありますし、また台湾との関係、ずいぶん長い友好親善が続いてきております。それではその間中国大陸とは一切交渉がなかったのかというと、そうでもありません。すでに貿易額は八億二千万ドルにも達している。おそらく、ことしなどはもっとオーバーするだろう、多額になるだろう、かように思いますし、また人の交流も、他の国のどこよりもたくさん交流している、そういうような状態でございますから、私は、むずかしく考えると、いろいろむずかしい点もありますけれども、もっと率直にわれわれの意見を表明することによって、両国の間の理解は案外心配なしに進むのではないだろうかと思います。しかし、いままでのような態度では、これはなかなか納得いれられないと、そのぐらいのことは私も知らないではない。したがいまして、今回の国連における国際決議と申しますか、そういうものを踏んまえて進むという、そういう態度でありたいと思っております。
  215. 羽生三七

    ○羽生三七君 結局ですね、まあ総理なり外相なり、党のしかるべき代表が訪中するということは、これは事情によってはあり得るということは、これは明らかなようです。だれがそういう呼びかけをするかということですね、最初に中国にアプローチするかという。ところが、これも、先ほどもいろいろな方々が訪中しておるからと言われましたが、そんな、人を頼んで、ちょっと気を引いてみるというようなことじゃだめですね。そのやり方です。これは福田外相が、先日テレビの討論でも水鳥の例を引かれて、上は静かに見えておるが、水の中では大いに泳いでおると言われて、それから、そのうちに皆さまに御披露するようなこともあるかもしれぬということを言っておられました。期待して待つようなことが何かあるんですか。
  216. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 確かにそういうふうに申し上げたんです、アヒルの水かきということがありますから。その水かきの成果につきましては、また御報告申し上げる機会があるかもしらぬと、こういうふうに申し上げましたが、いま一生懸命水をかいておるという最中でございます。
  217. 羽生三七

    ○羽生三七君 いやいや、私の言うのはそんな微妙な、だれを派遣するとか、そんなことを私聞いたって、ここで答えられるはずはないと思うが、それはわれわれが期待して、この日中打開に役立つほどの、成果を上げ得るほどの内容を持つものと期待をしていいのか、そういう接触のいま方法を進めておるのかという、そういうことを聞いておる。人の名前まで聞いておるわけじゃない。
  218. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 相手のあることでございまするから、これはまあ、はっきりこうなるんだということは申し上げかねます。しかし、まあ私は先方がほんとうに日中の間に平和関係を確立しようという意図であるならば、これを受けて立つという十分の理由のある行動をとっておると、こういうことははっきり申し上げていいと思うんです。私どもとしては、まあできる限りの知恵をしぼっておると、こういうふうに御理解を願います。
  219. 羽生三七

    ○羽生三七君 これは言えるでしょう。それは日本人か、外国のだれかかという……。
  220. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) それは日本人であります。
  221. 羽生三七

    ○羽生三七君 そこで、これでこの問題を終わりますが、非常に失礼なことを総理にお伺いするかもしれません。御了解をいただきます。  先ほど申したように、佐藤総理では日中打開は絶対に不可能という、こういう評価が多いわけですね。しかし、総理としても、一部の人々の評価は別として、各方面から歴史の歯車を逆転させる人、あるいは国益よりも個人の感情を先行させて誤った道を選択しておるという、こういう好ましくない評価に甘んぜられておるとは思いません。しかも、そういう評価の中で、長い任期の最後の幕を閉じることに満足されておるとも思いません。そこでまあ、国府に信義を果たしたということで満足をされておるのか、さらに先ほど来お話あったように、ほんとうに日中打開をおやりになるという場合、しかし世間では、沖繩返還協定の成立に全力をあげて、あとは後継内閣にまかせるという、そう割り切って言っておる人もあるわけですね。世間の評価です、これは。しかし私は、あれだけ熱心に今日まで幾たびか日中打開を自分の在職中でもやると答えられた総理が、そういうことで当面を糊塗しておられるとも思いたくない。ですから、そういう一般の疑問ですね。これは私だけじゃない。おそらく日本国民、皆、感じておると思うのですね。そういう疑問に対してこの機会にお答えをいただいて、私は次の質問に移りたいと思います。
  222. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) なかなか聞きにくい点をずばりと聞かれたのですが、私は、大体いま政局担当しておる。その立場におきましては、いついつまでの寿命だと、こういうことは考えておりません。きょうの夕方にはもう死ぬのかもわからない。しかし私は、総理である限りにおいては、総理としての職責を尽くすことに万全を期すと、これが私の信念でもあります。  そこで、ただいまの中国問題、これはこの時代の政治家が当然取り組むべき問題ではないかと思っております。私は政治家ということをあえて申しましたが、しかし、もっと具体的に申せば、政局担当する者が矢面に立つ、そういう決意でなければこの問題は解決できないと思います。私は、その矢面に立つ政治家が同時に政局担当する者であること、これは当然のことじゃないだろうかと思います。そういう意味で、いろいろの各方面からの御意見も出ております。私は、政治が独立して単独で、また独断で、こういうような重大問題が行なわれるとは思っておりません。午前中もいろいろ申し上げたのでございますが、やはり国民のコンセンサス、その上に立って政治が行なわれるという、外交が展開されると、そういうことでなければならないと、かように思っております。また、私の政治的な生命、これはいつまで続くか、そういうことには関係なしに、ただいまある姿において最善を尽くす、これが私の信念でもございますから、どうかいろいろの御批判もおありだと思いますが、なお、足らない点は御鞭撻賜わるよう心からお願いをいたします。  ことに私は、外交の問題については、与野党でそれぞれの立場から、それぞれの議論は展開されております。しかしながら、外交の問題についての争いは水ぎわでと、そういうような議論もされております。私は国益ということを考えると、これこそ与野党を越して、やっぱり中共あるいは中国問題、同時にこの問題を解決すべき、それと取り組むべき、それが必要なんじゃないかと思っておりますので、そういう意味で謙虚に皆さま方から御叱正と御声援をお願いする次第でございます。
  223. 羽生三七

    ○羽生三七君 この問題は、論じておるとこんな持ち時間ではできないので、また他日を期して、次の経済問題に入ります。  まず最初に、個々の質問に入る前に、日本経済の基本的な認識についてお尋ねをしたいと思います。若干のシグザグはあったにしましても、戦後久しく順調な拡大を続けてきた日本経済が、さきのドルショックを契機に大きく激動を始めたわけでありますが、GNP万能、あるいは輸出第一主義、設備投資主導型の日本経済のパターンは、いま大きく波に洗われていると、こう言えると思います。それにしても、そういうドルショックがなかったにしても、日本経済はみずから何らかの変革を行なわなければならない時期に来ていたと思います。たまたま、それがドルショックということで顕在化したにすぎないと思います。そういう観点から今国会の補正予算を検討し、さらにこれに関連して財政、金融全般にわたって、いささか所見を述べながら政府の見解をお尋ねをしたいと思うわけです。  今回の補正予算は、景気対策上当然であるといわれておりますが、しかし、多くの問題点を持っておりますし、さらにこれを四十七年度予算、蔵相の言う十五カ月予算の一環として考える場合には、一そう多くの問題をかかえているように思います。私は九月二日、ドルショックの問題を審議した本院の大蔵委員会での関連質問で、政府のとらんとする景気対策が、従来型の成長政策を踏襲し、その繰り返しであるならば、再度重ねて円の切り上げを求められるような性格のものになるであろう、そういうことを指摘し、生活優先への徹底した政策転換を求めて、蔵相もまたこれにほぼ同意されたのでございました。これは御記憶と思います。  今回の補正予算が、公共投資や、あるいは年度内減税ということを中心にして景気回復を意図されていることはこれはわかります。こういう場合でも、公共投資というものの中身、あるいはその公共性の性格が十分吟味されることが必要でありますし、また減税という場合でも、すでに指摘されているように、低所得者層の減税とか、あるいはさらに減税の利益を受けていない階層に対する対策が必要であると思います。総理は、先日の所信表明でこう言っております、この景気対策は単なる高度成長への復帰を意図するものではない、またさらに、活力に満ちた福祉社会の建設に向かうことが基本的な課題である、さらに続いて、この切りかえを円滑に進めるためには、制度や心がまえの面でもそれに対応した改革が必要である、こう言われております。この部分に関する限りは、表現に関する限りは、私がもし何か言うとしてもこのとおりだと思います。完全にコンセンサスが得られておると思います。問題はことばだけではなく、それをどの程度深く認識しておるか、戦後日本経済のパターンの変化、単に現象形態としてだけではなしに、主体的に変化としてより、むしろ変革としてどの程度にとらえ、またどれだけ実体の伴った実践を進めていくかということにかかっていると思うのであります。  前置きが少し長くなりましたが、実はこれが基本的な問題であります。また、十五カ月予算という場合に、さらに今後の日本経済方向をきめる場合の、これは四十七年度予算との関連で非常な重要な課題になると思いますので、とりあえずこの基本的な認識についてまずお伺いをさしていただきます。これは総理から最初に基本認識を承って、それから大蔵大臣から……。
  224. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま私の施政方針の演説を引き合いに出されまして、そうして数点あげられて、羽生君ももししゃべるならこのとおりしゃべりますと、かように言われました。私は、取り上げ方としてはそれで問題は尽きておる、大体御賛成を得たと、かように思っております、ただ、ただいま言われますように、力点の置き方、あるいは規模の大小等、それぞれまだまだ意見の一致しない点もあろうかと思いますが、それらの点について、さらに私ども具体的な問題は、これから御審議をいただくことによって明らかにしたいと、かように思っております。
  225. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) おっしゃられるとおり、ドルショックがあったからこういう財政政策の転換をするというのではございませんで、もうこの財政政策の転換は、当然日本経済の内在的な要請からもしなければならぬときに遭遇しておったと思います。したがって、政府が前にいわゆる対外政策八項目というものをきめたときにも、すでにこの根底はやはり財政政策の転換を意味しておりますし、また七月私が財政政策について大蔵委員会で所信を述べましたときも、このことをはっきりしておったのでございますが、そのあとで、いわゆるニクソンショックというものが起こってきたと、そうなってきますというと、どうしてもここで緊急の課題として不況対策をしなければならぬ、その不況対策が同時にこの経済政策の転換、いわゆるおくれた社会資本の充実ということと実際において反するものではなくて、同時にこれが行なえる、一石二鳥の政策として行なえるというところに、私どもは非常にむしろ環境としてと申しますか、条件が成熟しておるということで、政府の政策としてはやりいいところにぶつかっておるというふうにも考えています。したがって、公共投資を大きくする、同時に、しかたにおいても、国民生活に関連した環境の整備という方向へ、産業基盤の整備よりもむしろそちらのほうに力を入れるということも一緒に不況対策としてできるということでございますので、今度の補正予算でも、そういう方面へ力を入れ、これが来年度の予算編成方針にもつながっていくというふうに考えております。
  226. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  227. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  228. 羽生三七

    ○羽生三七君 私は、本年三月当委員会で、四十六年度の民間設備投資は、政府見通しの一二・六%の伸びを下回るのではないかと、こう質問しました。これに対して政府側は、私の再三の質問に対してこう答えております。われわれの見通しとしましては、下半期にだんだん設備投資は回復してまいる、それから非製造業部門においては依然として相当高い投資意欲がある、これらを総合いたしましてあの見通しはいささか低きに失すると、こう答えられております。ところが、低きに失するどころではない、ゼロでしょう、設備投資の伸びは。ゼロになりました。これはどういうことかというと、このことは、ドルショックがあったにしても、基本的にはこの経済の基調変化を過小評価していた証拠ではないかと思う。いかがでありますか。そのときは水田大蔵大臣じゃなかったですが。
  229. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私は、もう不況になってからあとお引き受けをしたものでございますが、私は、このまあ政策も、政府の批判ということになっては失礼でございますが、やはり私どもも、いままでやったところにどこに間違いがあったかということは、財政政策としては反省しなきゃならぬと思って、いろいろいままでやったあとをたどって勉強しましたが、昭和四十四年度のときの政策においてもう少し考えるべきだったと思っております。国際収支がよくて、そうしてしかも経済が好況である、この二つが重なったということは、いままでの日本経済のパターンとしてはなかったと、初めての経験にぶつかったときでございますから、これはなかなかその対処のしかたがむずかしくて、民間にもいろいろ議論が出ますし、政府の部内にもいろいろ議論があった。結局何かこのままではいかぬからというので、用心することにしくはないといって、そのときに引き締め政策をやったんだ、しかしいまから考えたら、このときが政策の転換期であって、この生産力をふやす設備投資を少し抑制して、このときに公共投資に切りかえて大きく仕事をするんであったら、これは生産力へはね返らないし、そうかといって一方不況へも落とさずに何とか需要をささえたというようなことにもなると思いますので、あのときが一番むずかしい時期じゃなかったかと思いますが、あとからそういうことをしましたが、その転換が少しおくれたということが、やはり今日の不況に私は若干関係があると思っておりますので、おくればせながらこの不況を取り戻すことに全力をあげれば、まだまだ十分間に合う段階だと私は思っております。
  230. 羽生三七

    ○羽生三七君 率直な御答弁でありましたが、中にはドルショックでこうなったんだといって逃げる方もありますが、それは間違いですね。というのは、私が質問した以降ドルショックまでに再三公定歩合の引き下げ、あるいは財投の追加支出をしておりますね。それは様子が悪くなったからやったわけですね。そこで私がこういう見通しを申したのは、自分の見通しが正しかったことを誇示するためじゃないんです。問題は次のようであります。これは、この前の質問のときにも申しましたが、下村治氏が指摘しましたように、次のことであります。設備投資の増加速度は年とともに伸び率が減る方向に進み、大きな歴史的減速過程が始まったのであり、これはいわゆる循環ではなく——これが大事なところですね、これはいわゆる循環ではなく、大きな富士山のような山のすそ野におりる過程と、こう見るべきではないかということであります。もちろん若干のジグザグはありましょうが、方向としては、この設備投資についてはいま下村氏が言うように、歴史的な減速過程に入っている、ジグザグはありますよ。要するに、基本的な問題として政府の見解を私は聞いておるんです。いま、大体大蔵大臣の御答弁で、まあそこに外務大臣がおらぬのは残念ですがね、これ。ほんとうは全部前大蔵大臣にこれは聞くべきことで、聞いておってくれなければ困るんです。どこへ行ったんですか。
  231. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  232. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を始めて。
  233. 羽生三七

    ○羽生三七君 いまのところまでもう一度繰り返しますが、いまのところまで繰り返します。いま、前大蔵大臣がおられなかったので、おると思って質問しましたから、もう一度繰り返します。要するに、私が民間設備投資の伸び率は——四十六年度ですよ。伸び率は政府見通しよりも下回るのではないかと言いましたときに、これは経済企画庁長官ですけれども、十二・六%でもなお低いと、もっと伸びると、一三%ぐらい伸びると言ったのにゼロになりましたね、横ばいで。これは、日本経済の基本的な認識に誤りがあったんではないか、ドルショックもあったけれども、結局設備投資は歴史的な減速過程に入っておると、そういうことに対する過小評価があったのではないかということを言ったわけですね。それに対して、そのときの答弁は、企画庁長官でありましたけれども、大蔵大臣もそばにおられました。それで、やはり日本経済の基本的なパターンの変化に対する基本的な認識を非常に過小評価して誤っているんじゃないでしょうか。これは率直にお聞かせいただきたい。そうでないと、これからいろいろやっていく議論もかみ合わないことになるのです。それが正しかったということになれば、それはもう全然話は別になるわけですね。
  234. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は、過去佐藤政権のもとにおける日本経済の発展、これは高く評価されるべきであると、こういうふうに思っておるんです。ただ、成長政策も資源の問題がある、輸送の問題がある、労働力の問題がある。あんな高い高さを続け得ないと、こういうふうに考えて、それで、さればこそ成長を下げるという考え方で縮小政策をとったんです。まあ、それがたまたまドルショック、それと時期を一にしてくると、こういう状態になりまして、非常に下降の行き過ぎというような状態になりましたが、成長は、私はそういうボトルネックがない限り、それを克服して進めなきゃならぬ、それを進めないと、公害対策も、何もやるという、何というか、資源力、経済力、こういうものが出てまいりません。それは進めるけれども、同時に成長の中に内包されている諸問題、物価の問題、あるいは国際収支の問題とか、いろいろな問題を見詰めなければならぬし、同時に、この成長がかもし出すところのもろもろの国内の不均衡の問題、これを十分見詰めて成長のかじとりはしなければならぬと、こういうふうに考えているわけでありまして、まあ、この前私も記憶ありますが、羽生さんから話のありましたその話の大体の傾向につきましては、私はそう違ったところはないように思ったのです。むしろ私は新経済社会発展計画ですね、これで昭和五十年までの間に一〇・六%の成長ということを一応考えておったわけですが、これでいくとどうもいろんな摩擦が、壁にぶち当たるのじゃあるまいか、また国際社会でさあ、一〇・六でいった場合に昭和五十年には一体日本経済のスケールはどうなるのか、四千億ドルというような巨大な経済になる、一人当たりの経済所得を見ても世界で二、三というようなところまでいきそうだ、そういうようなものに対する反発、それからそれだけの経済力があるならば、GNP一%という約束をしているわが日本、その日本は四十億ドルの経済協力をなすべきである、そうすると、わがほうにはこれだけの期待ができるというような計算までしてわが日本に迫ってくる、こういうようなことを考えますと、どうもあの成長の高さというものにつきましては、私自身は個人としては多少疑いを持ち、これは近い将来どうしても改訂を必要とする、率直に言いましてそういうふうに考えた矢先のドルショックということなんでありまして、まあ結論的に言いまして、羽生先生のおっしゃるあの考え方とそうかけ離れた考え方を私自身は当時といえども持っておらなかったわけでございます。
  235. 羽生三七

    ○羽生三七君 それで非常に残念なことは、ドルショックがあって日本経済はどうなるであろうかという客観的な見方が多いわけですね。どうあるべきかという主体性を含めた発想というものは非常に少ないということです。それはとにかく、具体的に問題申してみたいと思いますが、日本経済の従来の設備主導型あるいは輸出第一主義あるいはGNP万能型から生活優先型へと軌道修正をしなければならぬことは、これは当然でありますが、そこで現在民間設備投資が減ってきたので、景気対策として公共投資が前面に出てきたわけです。この場合公共投資が地価の値上がりとかあるいは技能者の不足というようなことで、景気回復に即効的な波及効果が期待できないとも言われております。もちろん財政支出をする以上効果が期待されなければならぬことは当然でありますが、しかし私は、ここで特に指摘し、かつ強調したいことがあるのです。それは景気対策上直接プラスとなるかどうかその効果が決定的には言えないケースがあっても、人間優先、生活優先という基本的な立場から絶対に必要な条件が数多く存在しているということです。たとえば各種の公害病あるいは長期療養を必要とするような病気、さらに国の援助なしには十分な療養のできないたぐいの病気ですね、あるいは身体障害者あるいは病院や看護婦の問題あるいは保育園、老人対策、さらに年金問題などのケースがそれに当たります。たとえばこの新聞でごらんになったでしょう、先日の新聞には、身体障害児を持った父親が施設に入れることができなくて、疲れはててついに父親が自殺しました。入れない人がまだ十万人も順番を待っているというのです。こういうことがそのまま放置されているわけですね。幾らかずつ毎年予算はふえているでしょうが、ほとんど言うに足りない。ですから、そういう問題、これらの対策は景気対策上波及効果がどれほどかは不明であります。私はかなりあると思いますけれども、そんなものはあってもなくてもこれは人間の優先という立場からストレートにこれは考えなければならぬ私は重要な問題だと思う。これは個々のケースをだんだん承っていきますけれども、その前に総理としてこれをどういうふうにお考えになるか、基本的な考えをお伺いして、次の問題に移っていきます。
  236. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 公共投資ばかりじゃなく、いわゆる社会福祉のいろいろの施設の充実をはかるという、これは一つの眼目でございます。私はいままでもたびたび申したんでございますが、福祉なくして成長なしと、こういうことばを使っております。そういうような意味で、われわれが豊かな社会、またしあわせの社会というのはそういうところにあるんじゃないかと、かように思います。このことはまことに抽象的ではありますが、そういう意味努力する考えでございます。
  237. 羽生三七

    ○羽生三七君 そこで、この設備投資主導型から福祉型経済へ軌道修正をしていく場合に、いま前大蔵大臣も触れられましたが、経済社会発展計画における成長率はどういうことになるかということです。私の知りたいことは、国民総生産の構成比を福祉型に変えていく場合に、それは成長率にどういう影響を与えるかということです。結果としてどういうことがあらわれてくるか、これを知りたいわけですね。もちろん福祉型、企業型というように明確に区分をすることは困難な場合もあります。あるいはウエートのかけ方でも事情が違ってまいります。そうではあるが、またそれとともにそういう関係でこの成長率を計量することは非常にむずかしいということも知っております。しかし、そうではあるが、実は長い間これが私の心の中にあった問題ですね。福祉型に変えていく場合、軌道修正を根本的にやる場合、それは従来の経済社会発展計画の成長率とどういう関連性を持つであろうかと、どの程度下がるのか、あるいは下がらないのか、非常にこれは重要な問題だと思いますね。この点について、一体経済企画庁なり大蔵省で試算をしたことがあるのかどうか、また試算がなければ、おおよその考え方でもいいから、政府としては設備投資主導型をいわゆる福祉型に軌道修正した場合に、それは成長率にどういう影響を与えるかということ、もしわかっていたらひとつお示しをいただきたい。私のようなしろうとがそういうことをまじめに考えておるのに、政府が何にも知りませんじゃ私は通らぬと思う。
  238. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いまのような新しい構想による新経済発展政策の見直しをここですると、この準備作業にただいま企画庁も入っておるということでございますので、非常にむずかしい問題でございますので、大蔵省としては今回の場合、この作業をいまのところやっておりません。
  239. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) いま大蔵大臣からお答えいたしましたが、昭和四十四年度の国民総支出の中で大体御承知のとおり、政府出資が八・一という実績になっております。そこで、いま大蔵大臣が申し上げましたとおり、現在新経済社会発展計画の見直し作業に着手しておりますから、その中で今後の経済運営のあり方あるいは今後政策転換という大きなテーマを踏まえまして、私どもはその中における政府固定資本形成の率を、いままでの現計画では九・五になっております、昭和五十年が九・五になっております。これではとても足りないので、これをある割合で高めたいと、こういう作業をしておりますが、まだいろいろ流動的な国際情勢、国内的な面もございますので、現在まだ断定的なことは申し上げられませんが、九・五ではとてもだめだと、せめて一〇ないし一一ぐらいには上げなきゃならぬと、おおよその見当はつけておりますが、これは経済社会発展計画の見直し作業のうちで今後具体的にまた御報告することがあろうと思います。
  240. 羽生三七

    ○羽生三七君 これは、池田内閣時代に、高度経済成長政策の批判をここでやりまして、そのとき以来私の胸中にあった問題です。私がこう言うと、中には誤解して、成長率を下げることを目的に議論しているように受け取る人があるのですが、そうではないんですよ。成長率も非常に高いか低いかは重大な影響があるが、軌道修正をした場合にそれが成長率にどういう影響があらわれるかということを聞きたかったわけですね。したがって、一〇・六%という成長率はなかなか高いのではないかというのは、低くせよというのじゃないんです。福祉型にした場合にそれを維持することが困難ではないのかと、こういうことですね。ただいま前大蔵大臣はそう言われましたが、水田大蔵大臣はどうお考えになりますか。
  241. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) このいわゆる根っこがどんどん大きくなるんでございますからして、したがって、率としては前年度と同じような率を維持しようとしたらばたいへんなことになりますので、当然成長率というものは今後少しずつ下げるということをしなければならぬと考えます。
  242. 羽生三七

    ○羽生三七君 改訂するということですね。経済社会発展計画は改訂すると理解してよろしいですね。
  243. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いまちょっと木村長官からも触れられましたが、外国の統計が日本の参考にならないということは、すでに外国では社会資本の蓄積というものが過去において多いために、GNPの中へ占める構成比というようなものが非常に少なくなっておりますが、日本においてはそうはいかないと、いままでおくれておりますから、これから予算措置においても相当の比重をそこに与えるようにしていかなければならぬと思いますが、過去四、五年の統計を見ますというと、設備投資は四十年の一番不況なとき構成比は一六・五%、それからことしは二〇・五%というふうに、十六から二〇の比率になっておりますし、一方、政府の固定資本形成というほうは九%から八%の辺をずうっと一貫しておるということで、平均してこの五年間で八・六%ぐらいの率でございますが、そうしますと民間の設備投資の半分ということでございますが、この形をやはり変えるという作業を合理的にやっていく。一つの目標はやはりこの数字をもう少し直すということを考えなきゃいかぬと思うのですが、それがはたして一〇%でいいのか一二%でいいのかという基準をここへつくるということは非常にむずかしい問題でございますので、財政事情に応じ経済事情に応じて、とにかくこの政府の固定資本の構成比というものを大きくすることに財政運用を心がけるということをやりたいと思っております。
  244. 羽生三七

    ○羽生三七君 企画庁長官、改訂もあるのですか、経済社会発展計画の。
  245. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) これは、いま大蔵大臣がお答えしましたとおり、当然、昭和五十年度を目ざして私どもは経済社会発展計画を見直し作業に入りますが、その中で、設備主導型から政府財政主導型に移ります以上、当然経済成長率は鈍化せざるを得ません。したがいまして、現計画では  一〇・六という経済成長率を設定しておりましたが、すでに、ことしの二月には、それを一〇・一と、今年度の成長率を訂正しております。したがいまして、昭和五十年にかけての平均成長率と申しますか、当然、これは一〇%、私ども、これは個人的な感触でございますが、一〇%を割らざるを得ない結果になるであろう、こういう観測でございます。
  246. 羽生三七

    ○羽生三七君 今回のここにいま提出されておりますこの改訂経済見通しはこう言っております。「対外的諸条件が一応現状のまま推移するとした場合の暫定試算」と、こうなっております。これは、課徴金とかあるいはフロート等の対外的諸条件が現状のままでということだと思います。そうでしょう。そうだとすれば、円切り上げの場合には再改訂もあるのかどうか、それを伺います。
  247. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) いま御指摘になりましたのは、先般補正予算を編成します際に、それを企図して一応暫定的に試算をしたものです。したがいまして、ほんとうの意味の見通しの改訂は十二月末にもう一度やりますし、また、政府としての本格的改訂は、例年どおり一月下旬にやることになっております。したがいまして、いま御指摘のように、この流動的な国際情勢、まだ今後の政策展開もさだかでない時期につくった一つの暫定試算でございますので、いまおっしゃったような数で表示をしております。これは当然平価切り上げがありとすれば、その点において、その点も含めてもう一度見直し作業をやらざるを得ないと、こう考えております。
  248. 羽生三七

    ○羽生三七君 再改訂がある場合には再補正はございますか、これは大蔵大臣。これは大きな影響が出てきますよ。
  249. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 来年の三月までに起こり得る需要そのほかはもう計算してこの補正予算を組んだものでございますので、途中で円の切り上げというような事態があるというようなことによって再補正の必要というものは私はないと思います。
  250. 羽生三七

    ○羽生三七君 改訂経済見通しでは、年度末——年度末というのは、先日ここで提案理由説明のときに承りましたが、年度一ぱいということですね。年度末までを見通してと、こういうことでありましたが、ところが、この見通しによる輸出は二百二十八億ドルですね。ところが改訂見通しは四億ドル減になっておるのです。そんなことで済むんでしょうか。
  251. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 二百二十四億ドル、これは最初の見通しでございましたが、(「二百二十八億ドルです」と呼ぶ者あり)その後上期の実績を見ますと百十四億ドル、したがいまして、これは年率に直しますと約二百四十億ドルということになります。下期におきましては、いろんなドルショックその他の影響を受けまして、まあ私どもの見通しではいま百六億ドルぐらいである、そういう見通しを持っております。そうしますと、それを合わせまして、一年にいま御指摘のような二百二十四億ドルというような数字が出てまいります。改訂見直し作業の暫定試算ではそれを示しております。
  252. 羽生三七

    ○羽生三七君 民間でいろいろ計量した場合、ドルショックによる輸出減は三十億ドルに達するであろうといわれております。これは民間の計算の誤りでしょうか。大蔵省、経企庁、おわかりになりませんか。そんなに民間が間違うのかどうか。
  253. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 数字を少し申し上げますと、当初の見通しは二百二十八億ドル、対前年比一六%プラス増でございます。それが上期の四月−九月の実績をとってみますと、百十八億ドル、先ほど百十四億ドルと申し上げましたが、数字が誤っておりました。訂正いたします。これは前期比十三%増になります。したがって、これを年率に直しますと、二六%増、たいへんな増になります。そこで、その後ニクソン・ショックその他で非常に、御承知のように、輸出が鈍化してまいりました。そこで私どもとしましては、十月の時点で下期の改訂試算をやった場合に一体どうなるかということをはじき出しましたところ、いろんな計算の要素がございますが、百六億ドルぐらいではないか、すなわち、これは前期比マイナス一〇%ということになります。したがいまして、いま申し上げた上期の百十八億ドルという実績と下期の見通しの百六億ドルを加えますと二百二十四億ドルと、こういう数字が出るわけです。したがいまして、その間に四億ドルの差が出ると、こういうことになります。おそらくいま羽生先生おっしゃっておりますのは、全体を通じてそれぐらいのものになるであろうということの御推計だろうと思いますが、上期に非常にこれが片寄って大きく出ましたものですから、下期におけるマイナスをカバーしてなお四億ドルの減ということにとどまったわけでございます。
  254. 羽生三七

    ○羽生三七君 これは、円の切り上げ等があれば、私はこの民間の指標がかなり当たるんじゃないかと思う。その場合には輸出乗数は三となって——私はしろうとですから、民間のものを聞いたのですが——三となって、三兆円の購買力不足となるといわれておる。そうすると補正の公共投資、減税等によるこの乗数効果は一兆円といわれる。差し引き二兆円の購買力不足となるといわれておりますね。もし事実そうなるとするならば、先ほど私が言ったような諸問題ですね、ほんとうの意味の人間優先、福祉型のものにたっぷり予算をつける客観的な根拠が十分私は出ると思うんです。単にわれわれのような野党の主観的な希望だけじゃなくて、客観的にもそういうことが十分言い得ると思うんですが、大蔵大臣、いかがでしょう。
  255. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 先ほどちょっと言われましたが、たとえば年金とかいうような問題、このデフレのギャップを埋めるための方法というものは公共事業、減税、そのほか社会保障費の支出ということでございますので、むろんそういうことも考えていい問題だと思いますが、しかし、社会保障の問題は、これは各項目間、みな一応の均衡がとれておる問題でございまして、一つだけこれを不況対策のために、一時的な対策にこれをどうこうするということは非常にむずかしい問題だと思います。長期的な改革をしてそういうことに対処するならよろしゅうございますが、不況対策というような一時的なものに個々の社会保障のいろいろなものを入れるということは、非常に政策間のバランスを失しるし、むずかしい問題が起こりますので、私どもは今回の場合は、こういうものは来年度の予算編成のときに統一的に考えるという方針で、補正予算に考えるべき問題じゃないというふうに考えて、実は省いたということでございます。
  256. 羽生三七

    ○羽生三七君 私も補正予算と言っているんじゃないんです。それは十五カ月予算といわれますから、明年度予算の編成に際してということを頭に入れてものを言っておることですね。ところが、けさの新聞を見ますと、経済企画庁は明年度予算を積極大型にして、一発勝負できめるというようなことが出ております。それこそ私は一発勝負で、来年−四十七年度予算で大型積極化をやれば、それで今後、コンスタントに日本経済が順調にいくのかどうか、むしろ私のほうが質問したいですね。これどうなんですか。これは経済企画庁、そういう計画を立っておるんですか。一発勝負で何をおやりになるんですか。
  257. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) けさの新聞の報道、私も見ましたが、実はこれは経済企画庁の所見でもまた意見でもございません。私の監督不行き届きかもしれませんが、庁内の意見が一部出たものだと、こう考えております。
  258. 羽生三七

    ○羽生三七君 一発勝負でなくてもいいんです。これはコンスタントに人間優先型の予算づけを四十七年でやって、漸次拡大していってもらいたいということです。  そこで景気回復機能がいろいろいわれておりますが、ここで、減税は少な過ぎるとか、あるいは減税の利益を受けない標準世帯年収百万円以下というような人をどうするかということのほかに、住民税の課税最低限を引き上げるべきではないか。これは地方財政が困りますから、もちろん地方交付税で補てんしてもらわなければ困りますが、これは、自治大臣、住民税の課税最低限を引き上げるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  259. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) 住民税の課税最低限の引き上げは当然考えていかなければならないことでございますので、毎年これを行なってまいりましたことば羽生委員も御承知のとおりでございます。また、本年八月に税制調査会の長期税制のあり方の答申におきましても、国民生活水準の向上に伴い、個人住民税の納税義務者数の推移並びに地方財政の状態を総合的に考慮して検討すべきである。そのことが必要であるという答申を得ております。しかし、住民税は地方団体にとりまして基幹的な税目であり、また課税最低限の引き上げは地方財政、ことに市町村の財政に大きな影響が及びます。いま羽生委員も御指摘のように、地方財政、いまたいへん苦しい立場にありますので、ただいまの現段階におきまして、直ちに昭和四十七年度において住民税の課税最低限を引き上げるということの見通しを立てることは困難でございますが、御意見の点は十分考慮しながら、来年度地方財政の総合的なあり方の一環として検討さしていただきたいと存じます。
  260. 羽生三七

    ○羽生三七君 それは、私、財源上地方自治体が困るのはわかっているので、地方交付税で付与しながら引き上げるべきだと、こういうことを言っているわけですね。それから、これは考慮にならぬということじゃ困ると思う。ぜひやってもらいたいと思うんです。強力に大蔵当局と折衝してもらいたいと思います。  それから、ちょうどいまお話が出ましたが、地方財政が非常に困難しておるようですが、これはドルショックだけでしょうか。それとも、地方財政を長期に見通した場合におおよそ考えられる趨勢であるのか。その辺はどうでしょうか。
  261. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) 経済の情勢が地方の税収に影響を及ぼすことは当然でございまして、ドルショックだけでなしに、昭和四十五年度以来景気が非常に下降いたしております。政府といたしましても、これに対しまして景気の浮揚策をとってきて、ようやくその効果があがろうといたしましたときにドルショックが起きたということは事実でございます。来年からは公共投資の増大というものも行なわれます。また給与の引き上げに伴いますところの経常経費の負担等もございます。したがいまして、地方財政もそれらの動向についてたいへん困難な状態になるということも考えられますので、今後一そう経費の節減効果等もあわせて考えていかなければならないと、このように考えておりますが、本年度はとりあえず予算に出しておりますような措置によりまして、財政運用の万遺憾なきを期しましたが、四十七年度におきましても、十分これらの点を配意しながら地方財政の運営に万遺漏なきを期してまいりたいと考えております。
  262. 羽生三七

    ○羽生三七君 時間の関係で、本問題は同僚委員にまた後の機会に十分論議を尽くしてもらいたいと思います。  そこで、次は、物価上昇は貨幣価値の下落を意味しておるんですから、物価上昇に応じて年金をスライド制に改めるべきではないかと、こう思うわけです。  実は福田さん、去年の当委員会で私がこの問題を提起したときに、同僚議員から関連質問が出ました。そのわれわれに対して、福田、当時の大蔵大臣は、それは敗北主義である、こう言っております。それはどういうことを答弁されておるかというと、敗北主義であると言って、「羽生さんは、物価はだんだん上昇が拍車がかかるというようなことを前提にしてまあ議論を進められておるようでありますが、そうじゃない。政府のほうは、着実にこれを下げるように努力をする、その実効を期す、こういう前提に立っているわけです。」そういうことで、年金のスライド制は必要でないと言われました。ところが、物価は、着実に下がるのじゃない、着実に上がっているわけですね。だから、私を敗北主義と言ってきめつけた大蔵大臣——大蔵大臣ですね、どうですか。むしろ責められるべきはあなたのほうじゃないんでしょうかね。われわれの同僚議員全部をやっつけたわけです。どうです。
  263. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 敗北主義と申しましたのはあるいはことばが適当でなかったかもしれませんが、私の真意は、物価はこれはいま上がる形勢にある。しかし、これはほんとうに真剣に取り組まなければならぬ問題なんだと。物価が上がるから諸政策をそれにスライドさして運営していこうということになりますると、これは物価政策を放棄したようなものになりはしないかと、こういうことを申し上げたかったわけなんです。いまでもその考え方には変わりはございません。
  264. 羽生三七

    ○羽生三七君 大蔵大臣、スライド制どうですか、年金のスライド制。
  265. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) スライド制それ自身にいろいろむずかしい問題がございますので、長い間懸案になっておってもなかなか実行ができないということで、いま物価が上がるということを前提にして云々というお話でございましたが、それともう一つ、制度それ自身として検討すべきところがまだ残っておると私は思っております。
  266. 羽生三七

    ○羽生三七君 これは問題提起としてまたあとから同僚議員にお願いしたいと思いますが、そういうことで、まあ財源にも関係するし、それからそれを制度化することに問題があるということでありますが、その関係で実はこの物価上昇あるいは財源の不足、これはあとから申し上げますが、そういうことから付加価値税が日程にのぼってくるような気がするんですが、そういうことはないですか。その心配はありませんか。
  267. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 欧州各国がこの税制をとっておりますし、北欧も採用しておる。さらにまたECに加入したイギリスもこれを採用するというようなことでございまするので、私どもはこの制度を二、三年来から政府としても研究しておりますし、また税制調査会におきましても、長期的な問題として、税制問題としてこれを検討すべしということになって、ここでもこの研究と取り組んでもらっておるということでございますので、私は、将来やはりこういう一般消費税的な間接税というものをいまの日本の税体系の中に取り組んでくる必要が将来必ず出てくるんじゃないかと、こういう予想を持っておりますが、しかし、この税金は御承知のように非常にむずかしい税金でございまして、私どもが欧州の諸国で調べたときでも、どこの国でも二、三年の準備期間を要すると、ことに、これはこういうものだといって国民がほんとうに納得するのでなかったらなかなか実効をあげにくい税制である。欧州ではすでに売り上げ税的なものが行なわれておりましたから付加価値税に切りかえることもわりあいに簡単にできたんですが、その下地のない日本においては、よほどこの準備期間を置かなければならぬということも忠告を受けてきましたが、私はやはりそうだと思います。特に、言われましたが、この税制ほどまたむずかしいものはなくて、特に国会において与党野党意見が十分一致して国民が了解するというところまでいってから実施しないとむずかしい。税金のことでございますから、野党にとっては一番反対しいい税金で、もうこれを野党側にじゃんじゃんやられたんじゃかなわないというのが欧州各国のみなの経験談でございまして、しかし、ほんとうに理解するというと、悪い税制じゃない。しかし、これを反対しようとすれば幾らでも理屈がつくので、これはへたをやると選挙を負けるから用心しなさいという忠告まで受けたんですが、それはともかくとしまして、私は、まじめな問題として、これはいまのような直接税主義で日本が将来やっていけるのか、この直接税はもう少しどんどん軽くして、負担を軽くしてこういう間接税に移行することを考えなければならぬかというまじめな問題として私は将来研究すべき問題であると思います。それにはじっくりもう与野党この問題に取り組みますし、国民に対してももう十分説明がいって、これなら確かにいいだろうというところまでいかなければ、なかなかすぐに実施するということはむずかしい税金だというふうに私は考えております。
  268. 羽生三七

    ○羽生三七君 いずれあとで、時間が許せば、日本財政の将来のあり方ですね、これに関連して、いま大蔵大臣がお答えになったことに触れてお尋ねをしたいと思います。  そこで、防衛庁長官の時間がおありのようですから、ここで私は防衛費の徹底的削減を要望したいのです。これは例によって野党がまた始まったかと、こういうふうにお考えになるかしれませんが、私は四十七年度から始まる第四次防において、ドル・ショックがあったから少し手かげんをするという、そういうことでなしに、このアジア情勢の変化だから、すぐ来年はどうとは皆さんおっしゃらないでしょう、おっしゃらないが、私はこの軍国主義の批判等もあるさなか、あるいはアジア情勢の変化等からいって、しかも日本の財政が非常にこれから収入減、支出増、しかも財政の硬直性が一そう激化する中で、これはちっとばかりのことじゃない、大幅の削減をやるべきだ、それは単なる野党の抽象論ではなしに、私は現実的な意味を非常に持ってきた、こう考えるので、この機会に防衛庁の長官の所見を伺っておきたいと思います。こんな小手先でちょっと景気対策のために、財源がないから来年は少し控えるなんということじゃないと思うのです。私は根本的な問題として、ひとつこの機会に伺っておきたいと思います。
  269. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 来年度の予算は、私どもといたしましては、四次防の第一年度を予定して概算要求をやっておることは御存じのとおりであります。そこで、四次防に対する姿勢と申しますか、考え方を申し上げますと、アジアにおけるいわゆる情勢をどう認識するか、これが一つであります。それからいま一つは、防衛力の整備計画はやはり財政問題でもありますから、その両面からこれは見ていかなければならぬ、これは御理解いただけると思います。そこで、アジアの情勢というものをどう見るか、私どもはあくまでも国力は、私らのやっているのは軍事でございませんで自衛力——自衛力を国力、国情に応じて漸増してまいる。現在の自衛力は十分じゃないかという、それがどういうふうな判定で国内的に見るかというと、御存じのとおり、ゼロから出発しまして二十一年にちょうどなります自衛隊でございます。したがって、まだその装備についてきわめて古いものがある。具体的な例を申し上げますと、たとえば陸上自衛隊の戦車のごときは、この間たんぼに落ちました。落ちますと、ガソリン車でありますから燃えちゃう。こういうようなものがまだ五割であります。こういうような点を考え、それから、したがって装備というのはやはり古いじゃないか、手入れはいいけれども古いじゃないかというのが、レアードが参りましたときも、しているんであります。決してアメリカのお指図を受ける意味じゃありませんけれども、現実にそうでございます。そこで、やはり装備というものは、国力、国情に応じて更新はさしていただかなければならぬ、こういう観点。しかし、アジア情勢が緊張緩和した——確かに私はこの緊張緩和は歓迎すべきものだと思います。しかし、それではニクソン訪中でどういう形が出てくるか。南北朝鮮で赤十字の会談があった、これだけで、ただすべて自衛力というものをそれでは減らしていいという判定は出ない。あるいは現状においてはいいという判定は出ない。したがって、よりどころとしては、アジアの情勢を見ますと、いま一つはニクソン・ドクトリンによって地上兵力、あるいは来援の、応援の兵力というものはぐっと後退いたします。そこに自主防衛努力という考え方も加わってまいるわけであります。そこらを勘案いたします中におきまして、従来の四次防は御存じのとおりドル・ショック以前のGNP等を中心にやっております。また、大体各省の概算要求もそのとおり八月に概算要求を最終的にされたわけであります。したがって、来年度の予算そのものは、第一年度ではありますけれども、おそらくこれから当分の間見られる見通しの中で、経企庁なりの見通し、財政当局の考え、もちろん自衛力でありましても、他の施策と調整を十分とってもらう、この中で予算編成をやってもらう、四次防自体は、私どもはしたがって、現在の五兆八千億と言われるあの中には、六千億円はベースアップの費用でありますから、五兆二千億円が一応の原案である。そのうちの半分近くは食糧費であり人件費でございます。それから残りの四分の一ぐらいのものは、維持費であったり、隊舎であったり、被服であったり、軽装備であります。残りの四分の一強は、具体的に数字は的確ではありませんけれども一兆数千億円がいわゆる重装備であります。そこいらをどういうふうに調整して私どもはいくか、しかもこれを五年に分けてまいるわけであります。しかも、いつも、かりに防衛力整備計画が閣議決定いたしましても、これは実行上においては、財政上その他の状況を見て実行していくという条件が必ずつくのでございます。そういうふうな御理解の中で、私どもは今回の四次防というもの、来年度の予算というものをひとつ政府内部において調整をはかりながら進めてまいりたい、これが私の考えでございます。
  270. 羽生三七

    ○羽生三七君 これは安全保障のあり方に関する根本的な論議をしなければ解決する問題ではありませんから、これは機会をみて、根本的な論議をさせていただきたいと思います。そこで、私は出すほうのことばかり先ほど言ってきましたが、収入のほうもこれは考えなければいけないので、たとえば財源措置として、租税特別措置法の改廃、あるいは法人税率の引き下げの据え置き——引き下げを行なわないということ。私はむしろさきの国会で法人税率は低きに失するという意見を出しましたが、これは引き下げないように現状程度、交際費課税の強化——交際費課税を強化すること、それから大口脱税の徹底的捕捉、ギャンブル課税、これは政府が言い出したことのようですが、これもいいと思います。そういうように、政府が財源捕捉上なすべきことが相当あるのじゃないでしょうか。そういうことをいいかげんにしておいて、そして財源がないとか、あるいは公債以外に入るところがないというのは私はどうかと思う。したがって、これはあとで触れますけれども、財源捕捉のためにもつと積極的な対策をとるべきではないか、たとえば一例としていま私はこれらの問題をあげたわけです。お答えをいただきます。
  271. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 中小企業関係はさらに特別措置を新たにつくらなければいけないという問題も出ておりますので、したがって、もう効果を果たした措置というようなものはどんどんこれを改めていくということもやらなければならないと思いますし、まあ交際費の問題は、ことし六〇%から七〇%課税にしましたので、その結果をもう少し見てもいいんではないかというふうに思ってはおりますが、しかし、所得税はすでに御承知のように来年度相当大きい減税を、来年度につながる減税を行ないましたので、歳入をふやす税制はいま検討中でございますが、これはまとまったら一括して税制調査会にこれは相談して、来年度の税制をきめたいと考えております。
  272. 羽生三七

    ○羽生三七君 この景気回復がいつになるか、これは別として、日本経済のパターンの変化から、税の自然増収が年々減っていくと思うのですね、伸び率が減っていくと思うのです。あまり過大な期待は望めない。そこで、自然増収の推移について、四十年以降の数字をお示しいただきたい。私は持っておりますが、間違っておるといけないから政府のほうからやってください。
  273. 高木文雄

    政府委員(高木文雄君) 四十年以降の当初予算に対しますその後の自然増収の数字を申し上げます。
  274. 羽生三七

    ○羽生三七君 パーセンテージを出してください。
  275. 高木文雄

    政府委員(高木文雄君) 最初に数字で申します。四十年度四千六百四十七億円、四十一年度千百九十億円、四十年度が一六%、四十一年度が三・六%。四十二年度が七千三百五十三億円、二三%。四十三年度が九千四百七十六億円、二四・九%。四十四年度一兆一千九百五億円、二五・三%。四十五年度一兆三千七百七十一億円、二四・〇%。四十六年度の当初の見込みでございますが、一兆四千九百六十五億円、二一・六%でございます。
  276. 羽生三七

    ○羽生三七君 私の数字とは若干違うようですが、いずれにしても年々減っていくわけですね。四十七年度も、われわれの想定が間違いなければ四、五千億程度になるのじゃないでしょうか、額にして。  そこで、税収の伸びが以上のようであるのに、他方歳出の規模は年々増大していくわけです。しかも、財政の硬直性は一そう強化されていきます。これを早急に是正する可能性はほとんどありません。したがって、増税でもやれば格別、公債の依存度がいよいよ高くなっていくという、こういうことになると思うのです。こういうようなことから、税収の伸びは低くなる——伸び率ですよ。財政支出は多くなる。財政の硬直性は一そう激しくなっていくという、そういう中で、今日の日本経済のこういう動向から見て、今後どのような予算編成、財政のパターンというものが予想されるか。実は、これは八・九年ほど前に当時の田中蔵相と私、この問題で論議したことがあります。これはある新聞が特別に記事にいたしております。それは、税の自然増収が増加するからそんな御心配はないということでありましたが、まあ、局面は少しいま変わってきておりますが、昔のことはとにかく、どういうことが予想されますか。非常にめんどうなことになっていくと思いますが。もっとも率としては減っても、全体の規模が大きくなってきますから必ずしもパーセンテージであらわせるとは思いませんが、少し大蔵省の所見を聞かしていただきたい。
  277. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 前に、公債の依存度を、五%前後が好もしいという答申が出て、当初予算として一六・九%でしたか、大きい公債を出してから、逐次自然増収が多いのに従って公債の依存度を減らして、去年は四・二%というところまで落ちてきたんですが、これは自然増の多いときの原則としてそういうこともいいと思いますが、いよいよ自然増がないというときになりますというと、今度はやはり弾力的な運営ということによりまして、公債の依存度を、これはその期間は上げざるを得ない、こういうことになろうと思います。したがって、来年の税収を見ますというと、非常に落ち込むということが予想されます以上は、来年公債の発行額は相当大きくなるということは予想されますが、しかし、それによって不況が回復する、回復の方向へ向かって自然増が多くなるに従って公債の依存度というものは減らすということを当然やるべきでございますので、したがって、公債が今後はずっとふえる方向で定着するというようなことも私はないと、要するに経済情勢によって運用を弾力的にやればいいんじゃないかというふうに考えております。
  278. 羽生三七

    ○羽生三七君 国債依存度が十数%になって、発行額が一兆円あるいは一兆数千億ということになり、しかも財政にそれが定着した場合、四十年代後半の日本財政というものは一そう私は硬直化がはなはだしくなると思うのです。そういう場合に、国債依存度のそういう趨勢を長期で見た場合ですね、国債依存度を低下させて次の景気後退に備えるというような余力ができるのかどうか。そういう説明で四十年度発行したわけでしょう、公債を。次の景気後退に備えるという、この長期の見通しは可能でしょうかどうでしょうか。
  279. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そこで問題なのは、いわゆる3K問題と言われるようなああいう財政硬直化が一番大きい原因になっているものをもうここであのままおくわけにはいかない、一挙に除去するようないろいろの方法をとらなければいけないということが来年度以後の財政に課せられた緊急の課題になるだろうと私は存じます。そういうことを解決して、いま国家予算に見られる赤字のたれ流しといったようなものを全部ここでやはり整理して、ほんとうの健全財政の姿に立ち直らせるということをやって、いまおっしゃられるような余力を出すということに努力をすべきだと考えております。
  280. 羽生三七

    ○羽生三七君 私は3K問題では、政府の考えていることと所見を異にいたします。しかしそれは時間の関係でここでは申し上げません。  そこで、公債の償還計画は立っておるんですか。
  281. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは、御承知のように、減債制度というものができておりまして、償還基金の中へ毎年一般会計から百分の一・六繰り入れる。それから前年度の剰余金の半分を繰り入れる。それから必要に応じて別にこの基金に繰り入れる。これをもって減債基金とするという制度ができておりますが、これは結局公共事業をする建設公債、これによって国民の財産ができるのでありますし、その財産の耐用年数の平均というものが大体六十年という計算になっておりますので、六十年の間には完全にこの公債を消化するという計算の上でできた制度でございますが、しかしその財政の事情によって、中途でいろいろ償還の方法をとりますから、何年たってこれが返済できるということははっきりとは言えませんが、さしあたりいま今年度発行された最初の四千三百億円は、これは七年の期限でございますので、七年たったときが償還の日でございますし、あとの今度の追加する七千九百億の国債は、十年債を出すつもりでございますので、償還の期限は十年先になると思います。それまでにどれだけ現金償還が行なえるか、あるいはそのときになってどれだけの借りかえをすることになるか、そういう計画は、これはそのときの財政事情によることでございますので、そのこまかい計画というものは立っておりません。
  282. 羽生三七

    ○羽生三七君 四十年のときの特別立法と今回のやり方の違いは、過去の福田蔵相のときの説明、歳入欠陥補てん国債という説明が間違っておったのか、そんなめんどうなことを言っておっては公債発行が順調にいかないということなのか、それはどういうことですか。
  283. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 四十年のときの公債は特例法によって出したものでございますが、あのときは御承知のように、当初予算で国債の発行を考えておりませんでした。したがって、建設公債を補正予算のときに出そうとしても、当初予算で出しておりませんでしたから、総則において公共事業費の範囲というものを国会の議決をとってないということでございますので、これを発行しようとすれば、そういう問題で公共事業費の範囲をはっきりきめて、国会の議決を願わなければならぬというようなことを、年度の最後にいってそういうことをして、建設公債を出すかということが問題になりました。財政法ができてから初めての建設公債なんだから、四十一年度からそういう点をはっきりして出すことにして、四十年度の公債は建設公債によらないで、特例法による公債を出すことがいいというふうな考えで出したんですが、その当時においても、これは財政法上は建設公債を出すのが本筋であって、特例法の公債を出すのはおかしいという議論もありましたが、いま言ったような事情で、四十一年からはっきりした建設公債を出す、これと区別しようということでああいう措置をとったということでございますから、今回私どもの出したときとは事情が全く違うということでございます。
  284. 羽生三七

    ○羽生三七君 これは特例法を出さなくてもいいという先例をつくることになりませんか。
  285. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 戦前の公債の出し方を見ましても、戦前もやはり許された公共事業費をまかなう公債を限度一ぱい出して、なおかつ歳入不足というようなときに、使途を指定しない公債を出すというような運営もやっておったことでございますので、財政法四条ではっきり公債の歯どめがある、無制限に公債を出してはいかぬ、この範囲で建設公債が出せるというんですから、その範囲の公債を出して、それでなおかつまかなえないという事態が起こったというときには、私は特例法による公債もやむを得ないと思いますが、そうでなければ、これは四条による公債を出すことが財政法の趣旨にかなったものである、そのほうが歯どめを持った健全なやり方であるというふうに考えます。
  286. 羽生三七

    ○羽生三七君 これは、いろいろ御説明になっても、結局四十年のようなことでいけば一括現金償還、建設公債でいけば六十年借りかえでいけるという、そういう安易さがあるために、私は、この道を選んだだろう、こう思いますが、それはとにかく、今日の局面を打開するために必要な限度を守りながら、公債発行より道がないとすれば、ある場合にはやむを得ない処置かと思います。私は全面的にすべて公債政策に反対しているわけではありません。問題は、景気の大きな波動が遠くない将来に再発せぬという保証はどこにもないわけです。つまり、先の公債が償還できぬうちにまた新しい要因が起こって、結局公債が利息の支払いのために公債発行というような心配は絶無なのかどうか、そういう意味でこの数年間の経済動向をどう見るか、これはぜひお聞かせをいただきたい。  ただ私は、これはたぶん私の杞憂だと思います、たぶん私の心配にすぎない。なぜ私がこんなことをあえて申すかといえば、最近では公債発行がどうであろうかとか、あるいはその懸念を表明するなんということはとんでもない話だ、全く放漫財政あるいは硬直化を招きかねないようなことが幾ら起こっても、そんなことは何でもないんだといわぬばかりの議論が横行しているんですね。したがって、私は、財政の将来の健全性を考えながら、たぶん私の懸念に終わるだろうと思うけれども、一応そういうことを警告の意味で申し上げているわけです。つまり、日本経済は将来、ここしばらくコンスタントに順調な発展をしていく。またいまのような局面が再度近い将来起こって、前の公債について償還の計画も何ら立たないときに、また新しい要因が起こってくる。そういう心配はあるのかないのか。たぶん私の懸念であろうと思うけれども、お伺いをしておきます。
  287. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そういう心配があったら私はたいへんだと思います。したがって、この公債政策も、たびたび申しますように、依存度を一〇%以上もこすような公債の発行というものを何年も続けるべきものでございませんで、いまの不況克服策としてここ一、二年こういうことをしたにしましても、これが経済が回復してくれば、すぐに公債の依存度はまた縮めるという、少なくするという運営をすべきでありますし、また同時に、財政法の制約だけではなくて、市中消化を原則とするということをやっておる限りは、これはりっぱな歯どめであって、心配はないと思います。めちゃくちゃに公債を出そうとしても、市中で消化しないということになれば、公債は現実的には出せませんから、そういうめちゃな公債の発行ということはできないわけでございますが、いまの金融事情を見ましたら、今年度及び来年予想されるような公債はりっぱに市中で消化できるというふうに私どもは思っています。消化できるというだけ、それだけ結局不況要因が強いのだということでございますので、やはり短期の政策として、公債政策を、この際思い切った公債政策の活用をするということを考えますが、しかし、これを長く続けて、そうしていま心配されるような事態を起こすというようなことは、これはもう絶対避けなきゃならぬと考えています。
  288. 松永忠二

    ○松永忠二君 関連。  四十年度における財政処理の特別措置に関する法律でいわゆる歳入補てん公債というのを出している。そのことについて、いま審議会等に諮問をしていきたいということで考えておられるようだが、いまの答弁があまりに非常にあたりまえかのごときような答弁でありましたので、私は少し関連をさして質問をさしていただきたい。  この前の四十年のときの法律の提案の理由を読むと、いまと全く同じことです。昭和三十九年下期以降の経済動向を反映して昭和四十年度において租税収入の異常な減収が見込まれるに至ったので、これを補てんするためにということの提案理由の説明をされているわけです。それで、前回のときの四十年の歳入欠陥というのは二千五百九十億です。当時の、いまいわゆる公債発行が認められていると考えている一般会計の公共事業費、出資金、貸し付け金が約六千六百億です。したがって、六千六百億のいわゆる公債発行のワクがあったわけでありますが、それを、歳入欠陥が二千五百九十億であったので、二千五百九十億の歳入補てん債を発行したわけです。これは全く筋の通った話である。当時は総則等がなかったから特に出したのだというけれども、歳入欠陥が明らかであったから出したのだ。今回は一兆六千八百二十二億の中に四千七百五十七億の欠陥があったのだ。そこで一兆二千億という総額に当たるものを出した一今度七千九百億を出した。七千九百億の財源の使い方は明らかにいわゆる減収に見合う分、そういう歳入補てんである性格のものと、いわゆる景気浮揚策としての公共事業の関連の費用を出しているわけであります。だから、明らかにこれは、歳入の補てんの性格のものと、それから景気浮揚策としての公共事業投資の資金、公債を出すことのできる性格のものと、二つに分けられる性格のものであったわけであります。だから、明らかに今度の場合でも、いわゆる公共事業、景気浮揚策として総則に認められているものは、従来のいわゆる建設公債を出すとしても、歳入補てんに見合うものについては、赤字公債的な性格であるので、明らかに歳入補てんの公共を出すべきである。これを安易に、いわゆるワクがあるからいいんだということになるならば、それこそ野放しのことになってしまうということになるわけであります。しかも、四十年のときには、関連のワクの四〇%であったのにかかわらず、明らかに歳入欠陥を出している。ところが、今度は認められたワクの七〇%、公債を出しているわけだ。そういう不健全な、いわゆる公共投資の事業をほとんど公債でまかなっていってもそれでかまわないのだというような考え方が一つあるという、そこに歳入欠陥の性格のものと、公共投資、景気浮揚の建設公債とを区分けをして出さないで、ワクがあるからいいというやり方は、これは明らかに四十年と違うということを言っているわけであります。しかも、また、羽生委員指摘をされたように、その際には、明年の、昭和四十一年の公債発行のワクまで法律できめてあった。四十一年度は四十年の歳出予算の翌年度繰越額の範囲内に行なうことができるということを第二条の三項に決定をしておる。しかも、その二千五百九十億の公債については、お話があったように、償還の計画をちゃんと立てていたんです。ところが、今度大蔵大臣の言っている償還の計画というのは、七年目と十年目に公債の期限が切れるということであって、従来、四十年度の歳入欠陥以外は、みんな時期がくればこれをただ借りかえをしていただけであります。何にも歳入——いわゆる償還の、四十年における償還の計画のようなものは全然ないわけであります。だから、いろいろな面からいって、明らかに性格が二つのものであるならば、はっきり財政法に認められた公債と、歳入欠陥の公債のワクを区別をすべきではないかということが一点であります。  また、償還の計画があると言うけれども、二千五百九十億を出した当時でも、来年の公債の発行のワクをきめ、事実上の金を返す計画までを出しておいたのに、今度の場合には七千九百億になり、一兆二千二百億の公債になるのにかかわらず、事実上の償還の計画が全然ないというようなことは、はなはだ不健全ではないか。  もう一つは、いわゆる公共事業というようなものは、一般会計の中である程度のワクを取っておくべきで、配置をされてこそ、一般会計の性格からいって健全であるのに、一般公共事業の限度まで全部赤字を出してもいいんだということになれば、どこで一体一般会計で公共事業のワクを確保するんですか。そんな不健全な、一般会計の中に占める公共事業のワクというものは全部公債でやっていいんだなんという、そんなことであっては、一般会計の健全なる構成を維持できないではないか。  以上、三点について、すでに疑義があるからこそ審議会にかけたので——実は、本委員会の当初、きょう入る段階において、この前あなたから出された説明では不十分であるのでこれを質問しようとしたわけでありますが、審議会にかけていくという段階になっているので質問をとりやめたのでありますが、いま、羽生委員の質問に対してまことにずさんな、あたりまえのようなことを答弁をするので、私は、この三点について——今度の公債の中には歳入欠陥の性格のものと、それからいわゆる景気浮揚の公共投資いわゆる建設公債に認められた二つの性格がこの金額の中にあるのかないのか、こういう点が一つ。それからもう一つは、償還計画が事実上できておったのに、今度の公債は全然性格が、償還の計画が違っているという事実を認められるのかどうか。一般会計の中の公共事業のワクというものは一般会計の中である程度保持すべきものであって、これを公共事業の公債のワクがあるからといって全部それに転化をしていくというのは健全なる一般会計の構成ではないと考えるが、それについてはどういうふうに考えるのか。この三点を明確にお聞かせをいただきたい。
  289. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) あとでこの問題の取り扱いについては私のほうから御了解を願うつもりでおります。したがって、質問がないかと思いましたが、ちょうど質問されましたので、質問されますと——この問題はあとにしまして、とりあえず、いままで言っておった政府の見解だけは述べておかなければと思って述べたわけでございます。  その続きを少し言わせていただきますと、かりに、当初予算のときに大きい減収を予想して、そのときに公共事業をまかなう建設公債の発行額を多く予定しておったと、早い話が今度の場合、一兆二千億をもし予定しておったという当初予算を組んだということでございましたら、これだけの歳入欠陥があっても、予算の補正はしなくても済むという事態でございますが、これは予想しない原因による減収でございますので、補正の必要が出てきたと、その場合に、一般歳入の不足なんでございますから、その一般歳入を公共事業に充当するのを予定しておった、その予定を変えて、その分を建設公債でまかなってもらうということにすれば、そこから一般歳入の余裕が出ると、この余裕をもって公務員のベースアップもまかない、必要な費用をまかない、そして所得税の減税をやった、その減税をまかなうということができるということでこの公債を出すのでございますから、この公債は赤字に使うのじゃなくて、発行した額全部を公共事業費に充当するのだということでございますので、その点は、私は、財政法の範囲内であるんなら違法ではないというふうに考えていままでいろいろ答弁してまいりましたが、しかし国会からこれについて疑義が出されたということは事実でございますので、もし、疑義があるとしますというと、これは簡単な問題じゃない、軽い問題ではございません。  たとえば、地方財政においても同じような地方財政法がございまして、それによって歳入の不足分は全部地方の公共債の発行によっていままでは対処しているということでございますから、もし、この財政法の運営に疑義があるとしますというと、いままでの地方財政の運営に全部疑義が出てくるということでございますから、これはやはりここではっきりと疑義をなくすることをする必要が今後のためにあると思いますので、私は、政府の見解は見解としていままで主張していましたが、その政府の見解だけじゃなくて、ここで財政制度審議会の専門家の意見を徴してその意見によって国会でこれの最後の解釈をきめるというようなことをすれば、今後この問題に疑義が出ないということになると思いますから、この際そうしたいということを言って衆議院のほうで御了解を求めてきましたので、この参議院委員会におきましても、そういう運営をしたいと思いますので御了解を願いたいと思います。
  290. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  291. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  292. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) それから償還計画は、そのあとで公債を本格的に発行するということになれば、この減債制度というものをはっきりしなければいけないということで、あとから制度をつくって、いずれにしましても、その借りかえのときにそれまでに現金償還がどのくらいあって、借りかえのときに、どれくらいの借りかえをするという事態が起こるかどうかは別としましても、いずれにしても、この発行した公債は六十年間には全部完済されるという一つの制度をつくってございますので、この点の御心配はないことと思います。
  293. 松永忠二

    ○松永忠二君 一般会計の中で、いわゆる公債でまかなう公共投資というのはある程度ワクがあるのではないか、それは全部公債で……。
  294. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これはワクはありません。これは公債を無制限に出すことは問題でございますので、したがって建設公債はこの範囲においてしか出せないという、財政法でそこに歯どめをしてございますので、その歯どめの範囲内における公債の発行は差しつかえございません。
  295. 松永忠二

    ○松永忠二君 一体公債でまかなう、一般会計の公共事業の中で公債でまかなう金額というのは一体歯どめがないのかということです。
  296. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 一般会計の中で公共事業費をまかなうために出す公債の限度というものは歯どめを置いておるということで、そのほかの歯どめはございません。
  297. 羽生三七

    ○羽生三七君 いまの論議は、まだあとからお話があると思いますが、日銀総裁の時間の都合があるそうですから。私は日銀が公債の引き受けをやるとかやらないとか、あるいは買いオペを一年捉え置きを半年か三月にするのかというようなことはきょうは一切時間がないから申しません。問題は、先ほど申したように、この公債発行について歯どめ論やあるいは懸念を表明するほうがおかしいという、それほどに積極論がいま盛んになっております。そういう中で、こういう風潮の中で、必要やむを得ざる場合に、所定の原則を守りながら、最小限発行ということは私はやむを得ざる措置だと思います。それは認めるが、財政のこの放漫財政あるいは硬直化を私たちはおそれて、日銀としても十分な姿勢をもって、大蔵省の要請があればというだけじゃなしに、日銀の中立性を守るためにも十分な公債に対する基本的な考え方を持って臨まなければいけないのではないか、こういう大局的なことだけを時間の関係でお伺いしておきます。この一点だけであります。
  298. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいま御指摘のありましたように、最近経済の先行きの見通しが非常に暗いと、当面何か手を打ってこういう危機を救わなければいけないという意識が非常に民間に強いために、何かこの際強い回復策を要望する一般の気分がございます。そのために国債の発行を何か当然のように考えている傾向がございますが、これは中央銀行の立場から申しますと、はなはだ警戒すべき態度であると思います。やはりその時の経済情勢、金融情勢に従いまして国債の消化額というものもきまってくるわけでございます。したがって、そういう点が十分勘案されないで国債に安易に依存することになりますと、これはインフレにつながる道でありまして、それは結局日本経済に悪い影響を与えることになると思います。ただ当面は、先般来の外為会計の支払い超過、それから国内における設備投資資金の需要の減退等々から、金融市場の資金需給が非常に緩和しておりますので、今回の補正予算についての国債の発行は市中消化が可能なものと見通しております。  しかしながら、そういう意味で、国債の発行に歯どめを与えるという意味から、すでに御説明のございました財政法第四条の規定、それからまた日本銀行としていまとっております国債の直接引き受けはしない、それからまた発行後一年未満の国債あるいは政保債の買い入れは、これは右から左に消化するという印象を与えるということで、やっぱりそこに歯どめの効果を持たすために一年未満は買い入れをしない、この二つの原則は日本銀行として強く維持していくつもりでおります。
  299. 徳永正利

    委員長徳永正利君) よろしゅうございますか。  それでは佐々木参考人には、たいへん予定の時間が延びまして申しわけありませんでした。どうもありがとうございました。
  300. 羽生三七

    ○羽生三七君 もう時間がないので、ほとんどが割愛せにゃならぬことになりましたが、物価の問題で、四十六年度の改訂では、当初見通しの五・五%以内にとめるため物価安定に格段の努力が必要であるとされております。これは私は非常におかしいと思うんですね。改訂見通しではなく、これは努力目標ですね。したがって、当局としては改訂見通しの策定にあたって何らかの試算をしたはずであります。試算の結果、格段の努力をしなければ当初見通しのとおりにはならないという、そういうことで努力目標を掲げたんでしょう。こんな改訂見通しというものは私はないと思います、格段の努力を必要とするなんという。これはやはり試算をしたらこうなったという試算の数を出していただきたいと思います。
  301. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 先ほども御説明いたしましたとおり、補正予算編成を機として暫定の見通しをいたしました。したがいまして、正確なる意味の見通しではございませんけれども、私どもといたしましては、まだ半年残っておりますこの時点で、直ちに五・五という消費物価の見通しをこの際改訂することはいかがかと、まだまだわれわれとしては政策努力を傾けるべき時期が残っておるではないかと、こういうような、確かにいまおっしゃったような政策努力を非常に加味した見通しということになっております。
  302. 羽生三七

    ○羽生三七君 試算はしなかったのですか。
  303. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 試算はいたしましたが、まだまだ……。
  304. 羽生三七

    ○羽生三七君 それを教えてください。
  305. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) たいへん流動的な点でございます……。
  306. 羽生三七

    ○羽生三七君 流動的でもいいから、出た試算を教えてください。
  307. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) これはきわめて大胆な試算でございますけれども、もし十月以降——十月は、御承知のとおり、全国物価が前月比八・二、〇・八下落いたしました。十月の全国の指数がまだあとで出ますが、それを一応東京都区部の〇・八下落を全国比に大体推算いたしまして、まず十月はその程度で推移するということの前提のもとに、十一月以降の大体推定をいたしますと、下期で今後四%の平均を保ちますと五・五におさまるわけでございます。なかなかこれは困難であることはもう当然でございます。  そこで、私どもとしましては、第二の試算としまして、これはまだ外には出しておりませんけれども、十一月六%、十二月もその程度、一月から三月は例年消費物価が下がる、低落傾向の月でございますから、これを大体四・八から五・二くらいの間に押えるとすればおよそ六・二、三%になるではないか、こういう試算は一応持っております。
  308. 羽生三七

    ○羽生三七君 それは、灯油の値上がりや、先ほどもお話のあったタクシー料金や野菜の問題等、次から次と値段を上げながら、低くなるなんということは、五・五でおさまるなんということは予想できませんよ。  そこで、実はここに古い新聞を持っておりますが、これは、昭和三十八年、いまから八年半前に、私、この委員会で、物価をどうしたら下げることができるかという八項目の提案をして、池田総理が全面的にこれを承認しました。いま政府が出しておるようなものは、八年半前に、全部私、八項目として出しております。池田首相も積極的にやると言われた。新聞の社説なんかでも、これを取り上げてくれたことがあります。ところが、依然として問題は解決しておらない。そこで、私はこう思うんですね。外交問題とか、あるいはスキャンダルとか、大事故があったとか、こういうときには政府の政治責任は問われるんですね。ところが、物価問題で政府が政治責任を負うこともないし、また問う場合があっても、ただ個別的な問題として扱われておる。しかし、これはいまの国民にとっては非常な重大な問題になっております。なぜこういうことになるかというと、物価が少しくらい上がったって、収入がふえればそれでいいだろうという考えが政府にあるのではないかと思う。しかし、収入増よりも物価の上昇が上回った場合、あるいはインフレ懸念のある場合、一体その責任はだれが負うのか、そういう点で私はもっと深刻にこの問題を考えてもらいたい。特に減税の利益なんかを受けない人たち、この人たちにとっては切実なこれは問題です。そういう意味で、もっと物価問題で政府が責任を感じていいのではないか、関わるべきではないか。これは総理にこれについての所見を伺いたいと思います。もっとその意味で積極的な対策をとるべきではないか。何かいい知恵があったらと言いますが、時間をくれるならば私たちの見解を述べます。
  309. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま物価問題こそほんとの政治家の責任をとるべき課題だと、かような御指摘でございます。私もたいへんむずかしい問題ではあるが、これはもっと真剣にこの問題と取り組まなければいかぬと、かように思います。ただ、気持ちだけでは具体的なその効果が出てこない、これは責められてもしかたがないと、かように思いますので、ただいま関係省庁におきましてもいろいろくふうしている最中でございます。私はさらにインフレ傾向のあるこの際でございますから、また過日もお話をいたしましたように、景気下降の際に物価高、そういう状態が起こることは、もう諸外国もそういう状態で非常に苦労しておりますから、そういう同じような状態がわが国にも出てくる危険が多分にございますので、そういう意味からもこの問題と積極的に取り組まなければいかぬと、かように思います。ただいまおしかりを込めての御鞭撻をいただいたと、かように私は判断をいたします。
  310. 羽生三七

    ○羽生三七君 最後に、これはまとめて申し上げますから、大蔵大臣から。  国際通貨の問題ですが、ここで円切り上げ幅が幾らとか、その時期はいつかなんて聞いたって、これはお答えがあるはずがありませんから、これは申し上げません。そこで多国間調整できまるのか、日米二国間調整が中心なのか、あるいは多国間調整のあとにそれを日米が合意することになるのか、その辺はどういうことでしょうか。少しお聞かせいただきたい。
  311. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 平価調整の問題は多国間調整でなければきまらない問題でございます。それじゃ各国ともそれぞれ利害を持っておって、なかなかこの意見を一致させるということがむずかしいのに、多国間調整でうまくいくかということになりますというと、実際問題としましては、ちょうどきょうGテンの代理会議議長をしておるオッソラ氏の言っているとおり、これはたとえば日伊とか、米独とか、独仏とかというふうに二国間のいろんな話し合いが行なわれて、それが一つの根回しになって、最後に全体的なまとまりができるということになるだろう、それは十一月の末ごろから、そういうことが各国間に活発になることを期待するというようなことをきょう述べておるようでございますが、やはり各国間でいろいろな話し合いが行なわれ、そうして最後に全体の場できまるということになるだろうと思います。  それで、やはりきょうの新聞でございますが、コナリー長官が日本へ来られると、何か日本で単独で話し合いをしてきまるだろうというようなうわさを聞いておるが、よその国に相談しなきゃ、二国でこんな話はきまるものじゃないということを欧州でも言っているというようなことでございまして、これは二国間でこのほかの問題はきまりましても、通貨調整の問題は最後は多国間調整によってきまる問題だというふうに考えます。
  312. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと受け取り方が違うと思うんです。私の言うのは、多国間調整できまった中に、その多国間の中にアメリカが入る、その場合ならわかります。そうでなしに、一応日独、日仏とか日英とか、そういう多国間で、先進国の中で、一応の方向、あるいは十カ国蔵相会議とかがありますが、そこできまったものに日米で合意をするのか、その中にもうアメリカというものは入っておるのか。つまりアメリカの、日米間の二国間交渉というものはプラスアルファになって、そこに、たとえばアメリカでは百三十億ドルの国際収支の赤字があるといいますね、OECDの見解は別として。そういう場合に、この基礎的不均衡に対して、日本が何らかの責任を負わされるのかどうか。その場合になると、先ほどちょっと話がありましたが、防衛分担金、兵器の購入、韓国のアメリカの援助に対する肩がわり、さらにアメリカの中期債の購入、そういう問題がさらにプラスアルファで出てくるのじゃないか。だから多国間の調整で、それもアメリカも含めた多国間調整一発で片づくのか、多国間調整のあとに、なおさらそれにプラスしてアメリカの要求が出てくるのか、これは非常に問題だと思います。時間がないので、その中の一つ一つの内容について触れることはできませんが、基本的な問題だけをお聞きしておきたいと思います。
  313. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) アメリカに対する問題だけは、各国とも二国間交渉でこれはきめるということになっておりますが、この平価の調整は、アメリカを含めた全部の国の合意によってきめるというのですから、いまのところはこれをきめる機関は大体十カ国蔵相会議ということになろうと思います。
  314. 羽生三七

    ○羽生三七君 もう一問だけ……。  そこで、きまったあとに、そのアメリカの基礎的不均衡を解消するために、軽減させるために、日本が新しい負担をプラスアルファで負うのかということです。
  315. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) きまったあとという……。
  316. 羽生三七

    ○羽生三七君 間でもいいですよ、あとでもいいですよ。
  317. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そういうことじゃなくて、そういう二国間交渉などの様子を見なければ、最後の平価調整というものはできないのだという立場をいまアメリカがとっておりますので、したがってレートの問題について、各国とも直接アメリカと交渉してきめるという方法はない。アメリカは、二国間でそういうものはきめないという方針でございますから、アメリカとすれば、欧州諸国に対する希望もございましょうし、いろんな希望もあって、そういうものを見てから、レートの相談は最後にしようという方向だろうと私どもは考えています。
  318. 羽生三七

    ○羽生三七君 以上で終わります。
  319. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 以上をもちまして羽生君の質疑は終了いたしました。  明日は午前十時に開会することとし、本日はこれをもって散会いたします。    午後五時八分散会      —————・—————