○中村利次君 私は、民社党を代表して、
政府から
報告のございました
ローム斜面の
崩壊実験事故に対しまして
質問をしようとするものであります。
〔
議長退席、副
議長着席〕
この
川崎市の生田
公園で
科学技術庁が
中心になって
実施した人工
がけくずれの
実験によって、
実験担当者や
報道関係者など十五名の
方々が死亡をされ、十名の重軽傷者を出したという
事故は、
政府機関によって引き起こされた大
惨事であるというところに事の重大性があり、断じて見のがすことのできない一大不祥事であります。私は、つつしんでなくなられた
方々の御冥福をお祈りするとともに、この取り返しのつかない失態を演ずるに至った
政府の
対策について、
佐藤総理並びに新しくその任につかれた
科学技術庁長官及び
関係大臣の
所見をただし、その
責任を明らかにしたいと存じます。
このたびの
事故で、私たちが最も重視しなければならないのは、この
実験が、
科学技術庁国立防災科学技術センターを
中心として、
建設省、通産省、消防庁等、いわゆる国の
研究調査機関が三年にわたる
実験研究の結果
実施されたものであるにもかかわらず、その
計画のずさんさと
安全対策の無策から、起こすべくして起こした重大な
人災であるという事実であります。
最近相次いで起きた重大
事故に対して、
政府は、そのつど遺憾の意をあらわし、二度と繰り返すことのないよう確約をしてこられたのでありますが、またまたこのような重大なミスを犯されたのみでなく、
政府みずからが惨劇惹起の主役となられたのでありますが、このような事態に対し、はたしてどのような償いと、どのような
政治責任をおとりになるおつもりか。加えて、
技術開発と
安全性の問題について
政府の基本的姿勢をまず
佐藤総理にお伺いをいたします。
今日、庶民大衆にとって、わが家を建てるということはきわめて困難になっています。東京周辺に例をとりますと、都心から一時間半程度の通勤距離で十万円台以下の
土地を求めることは不可能であります。これは、
勤労者が三十年、四十年と一生をささげて働いて得た退職金では、わずか五十坪の
土地すら買うことができないということなんです。
総理、よく聞いてください。庶民生活に縁のない
人たちには、庶民大衆が真剣に働いて、そして生涯かかってなおかつわが家すら持てないあせりが実感としておわかりにならないでしょう。だからこそ、庶民の納得できる
住宅政策や
勤労者の立場を考えた
土地対策はいつまでたっても生まれてこないのであります。何とかして安い
土地を求めたいという庶民があまりにも多過ぎるところから、そこに安全を無視した不動産業者の
土地造成の必然性が生じ、今度の
実験が緊急切実な問題として取り上げられたのではありませんか。もちろん、狭い国土の有効開発をはかることは当然であり、否定されるべきことではありませんが、このたびの
事故の真の
原因を探求すれば、
佐藤内閣の
住宅政策、
土地対策の貧困に起因するのでありますが、この機会に、私は、
政府の
住宅政策、なかんずく
土地政策について、これは先ほど衆議院の
予算委員会におきましてわが党の和田議員が具体的な問題提起をしておりますけれども、これを抜本的に見直し、天井知らずの
土地の値上がりに有効な
対策を講ずる意思がおありかどうか。
建設大臣に
お尋ねをいたします。
しかも、今度の
事故は、この貧困な
土地政策のひずみから生じた事態に対して、近代
科学技術を
政府の手によって動員し、結果して、決定的とも言える醜態をさらして、
国民にいわれなき不安と
科学技術に対する不信感を与え、もって、本来前向きであるべき
科学技術の振興に重大なブレーキをかけることになったのでありますが、一体、このような事態をどのようにお考えになり、そしてどのような
対策をおとりになるのか、明確な
お答えを要求いたします。
わが国の
科学技術は、六〇年代において目ざましい進歩を遂げ、
技術革新時代を現出し、
技術的にはみごとな
成果をあげつつあることは事実であります。しかし、きわめて遺憾ながら、これを
人間福祉の面から見れば、公害問題をはじめさまざまなひずみ現象を露呈していることは、何人もこれを否定できないところであります。
政府もまた
科学技術白書の中で、「従来の
技術革新の展開において、
配慮が十分でなかった自然との調和、
人間との調和をはかることが不可欠である」と述べ、「そのためには、
人間や社会に与える影響などの
社会的要因も重視し、
国民の価値観、要請の多様化に十分こたえられるような態度で
技術開発を行なうことが重要である」と言っています。しかし、この白書でなぜこのようなことを言わなければならなくなったのか、その
原因についての反省は全く見られないのであります。
先ほども触れましたように、歴代自民党
内閣の非庶民的な体質が、元来
人間のためにこそあるべき
科学技術の開発を、高度経済成長
中心のものにすりかえた結果が、あるいは公害となり、あるいは社会的なひずみとなって、今日多くの
国民的な問題を引き起こしているのではありませんか。その意味では、今度の
事故も、
実験関係者の安易な姿勢から
計画違いや
安全対策が足りなかったということだけでは済まされないものがあります。
総理は、機会あるごとに
人間尊重を口になさいますが、たとえば
事故現場に私も行ってつぶさに実情を見ましたが、だれが見ても、まさにお粗末千万と言う以外表現のしようがないほどの安全設備のもとであの
事故が起きているのであります。この事実が安全追求や
人間尊重にどうつながるのでしょう。また、このような
事故に対する不信感が将来の
科学技術の正しい振興にどのような影響を与えるのか、お考えになったことがございましょうか。もし、
人間尊重、
事故絶滅がただ単なるスローガンでないとおっしゃるならば、今度の場合、あらかじめ小
規模な
現場実験を行ない、その
実験データに基づいて大型
実験に移るのが当然ではなかったでしょうか。また安全の追求は、万分の一、百万分の一の可能性に備えるべきのもであって、結果して安全設備がむだになるほどのものでなければいけないと思いますが、
予想外の
速度とくずれ方であったということだけでは納得できないものがあると思います。あの
事故では、この安全上の不可欠の絶対条件が全く無視されているのであります。
私は、この
実験に対する
予算の裏づ
けが不十分であったことをここに
指摘しなければならないと思います。この
研究、
実験に充当された
予算は、三年間にわずか五千五百余万円なんです。
科学技術庁の
お答えによりますと、
予算は十分だったということであります。しからば、なぜ完備されるべき安全施策を怠ったのか。そして安全無視の危険をおかした結果、現実に重大な不祥事を起こしておきながら、ぬけぬけと
予算は十分だったとおっしゃるということは、一体これはどういうことなんでしょう。
安全対策費がゼロで、
人命軽視、生産
技術中心を強行するのが
佐藤内閣の本質とでもおっしゃるのでしょうか。私は、結果的に見ても、今度の
予算措置は不十分なものであり、
誤りであったと思いますが、今後、国策上の巨大
科学のみでなく、じみで目立たない
国民の日々の生活に密着した
科学技術の推進に思い切った
予算を投入する意思がおありかどうか。
総理及び
科学技術庁長官の
所見をお伺いいたします。
以上、私はこのたびの
事故について、
国民のやり場のないふんまんの一部を、短い時間で申し述べたつもりであります。
政治の末期的症状は諸悪を生み、百難一時に来たるといいますが、
国民は、いまや
佐藤内閣の末期的症状をまのあたりに見るここちになっているのではないでしょうか。私は、この救いがたい症状に
総理がどのような処方せんをお持ちかお伺いをし、国会でのやりとりだけでなく、ほんとうにこのような
惨事を断じて繰り返さない
体制の確立を
国民とともに心から希望をして私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣佐藤榮作君
登壇、
拍手〕