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1971-10-27 第67回国会 参議院 本会議 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十月二十七日(水曜日)    午後一時五分開議     —————————————議事日程 第五号  昭和四十六年十月二十七日    午後一時開議  第一 緊急質問の件     ————————————— ○本日の会議に付した案件  一、請暇の件  以下 議事日程のとおり      ——————————
  2. 河野謙三

    議長河野謙三君) これより会議を開きます。  この際、おはかりいたします。  鈴木力君から海外旅行のため、来たる十一月二日から二十五日間請暇の申し出がございました。  これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 河野謙三

    議長河野謙三君) 御異議ないと認めます。よって、許可することに決しました。      ——————————
  4. 河野謙三

    議長河野謙三君) 日程第一 緊急質問の件  阿具根登君から、国連におけるアルバニア決議案の採択に関する緊急質問が、渋谷邦彦君から、国連における中国問題に関する緊急質問が、向井長年君から、国連における中国代表権問題に関する緊急質問が、河田賢治君から、中国国連代表権回復問題に関する緊急質問が、森中守義君から、近鉄事故に関する緊急質問が、それぞれ提出されております。  これらの緊急質問を行なうことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 河野謙三

    議長河野謙三君) 御異議ないと認めます。順次発言を許します。阿具根登君。    〔阿具根登登壇拍手
  6. 阿具根登

    ○阿具根登君 私は、日本社会党代表し、昨日の国連総会におけるアルバニア案決議に対する政府責任を追及し、緊急質問を行なうものでありますが、その前に、二十二年間の長い闘争により、七十六対三十五の大差をもって国連に復帰した中華人民共和国に対し、日本社会党代表して、心よりお祝いを申し上げるものであります。(拍手)  わが社会党が叫び続けた中華人民共和国中国唯一合法政府であるという正しい主張国連で認められましたが、そのこと自体よりも、あまりにも歴史流れに逆行した日本政府のみじめなあがきにも似た国連での動きとその結果について緊急質問をせねばならぬことを残念に思うものであります。  国連における佐藤総理のとった今回の措置責任ないと言われる総理態度に、私は憤激さえ覚えるものであります。政党政治は常に責任が伴うことを考えるべきだと思うのであります。うわさによれば、この逆重要事項指定はアメリカに対し日本が提案したとさえいわれておるし、また、それを裏書きするような愛知代表以下の人々の国連内の行動をどう説明されるか。総理は、衆院の予算委員会等で、日本の真意を話すのはあたりまえだと言っておられます。しかし、その言っておられること自体が、一つ中国一つ台湾ということになると思いますが、いかがですか。総理の御見解を承ります。  中華人民共和国は、中国一つであり、台湾国連に籍を置く限り国連に出席できないと言っておることは御承知のとおりかと思います。それならば、台湾追放に反対することは中華人民共和国国連復帰を阻止することであり、一方で中華人民共和国国連に迎えると言いながら、一方でこれを拒否することになると思いますが、いかがでしょう。  今日まで佐藤内閣がとってきた政策は、一貫して中華人民共和国に対する敵視政策でありました。それにもかかわらず、中華人民共和国を訪問したい等々、ニクソン大統領訪中発表後、機会あるごとに言っておられますが、左の手で中華人民共和国をなぐり、片一方の手を差し伸ばすごとき態度は、かえって中華人民共和国よりびん笑されていることを御存じでしょうか。  佐藤総理予算委員会で、国連アルバニア案が決議されたなら国連決定を尊重し、それは中華人民共和国との国交回復につながるものだと言明されましたが、みずからが何の反省もなく敵視政策をとり続け、それに敗れたなら中国国交回復を行なう等の、まるで他力で国交回復ができるような考えでは私は不可能だと思います。中華人民共和国佐藤内閣を相手にしないだろうと思います。しかし、七年近く政権を握り、叫び続けた総理考え方の間違いは、第二十六回国連総会において世界国々が指摘してくれました。総理は、いまこそ佐藤内閣では中国との国交回復が不可能であることを銘記すべきであり、その意味においても、この際、責任をとって総理の職を辞すべきであると思いますが、いかがでしょうか。また、それが、国連における日本の勧誘についてきた国々に対しても、中華人民共和国に対しても、日本の平和とアジアの平和を守るためにも当然のことであると私は思います。もしそうでないとするならば、日中国交回復についていかなる具体策があるのか、はっきりと御答弁を願います。その具体策をお聞かせいただきたいと思います。たとえばきょうの新聞にあるごとく、台湾とこれ以上深入りしないため、台湾に対する新規円借款をたな上げする等と言われておるが、これを中止する考えはないか。また、日中の経済交流を妨げておる吉田書簡は廃止すべきであると思います。なお、貿易制限ココムチンコム協定等も廃止すべきであり、特恵関税中国に適用すべきであると思いますが、総理信念はいかがでしょうか、お伺いいたします。  もちろん国交回復をするためには日中両国戦争状態の終結及び平和条約が結ばれなければならないと思いますが、中国一つであることは、カイロ宣言を受けてポツダム宣言が出されたが、それを無条件で受けたときより台湾中国に帰属しておる。その一つ中国平和条約二つあることは許されないと思います。それでは日華平和条約を廃棄する以外にないと思いますが、いかがですか。  総理は、感情的とも思われるほど、日華条約破棄しないと強弁しておられますが、それでは、アルバニア決議を尊重すると言われたことや、中国との国交回復をどうしようとするのか、お伺いしたい。  あるいは総理は、日華条約自然消滅とか、日中平和条約ができた時点で日華条約破棄されるというような御答弁があるかもしれませんが、それは中国を知らぬ人の言い方で、それは経過的であるにもせよ、二つ中国を認めたことになる。こういうことでは国交回復は不可能だと思いますが、総理の御答弁を願います。  私は先般、日中国交回復促進議員連盟一員として中国を訪問しましたが、その際、四つ基本的考え方共同声明で発表いたしました。  その一つは、中国はただ一つであり、中華人民共和国である中華人民共和国政府中国人民代表する唯一合法政府であると言っております。これは申すまでもなく、昨日の国連決定で認められましたので、佐藤総理も異存はないと思いますが、いかがですか。  その二つは、台湾省中華人民共和国領土不可分の一部であり、台湾帰属未定論台湾独立の陰謀に強く反対する、台湾問題は中国の内政問題であって、いかなる外国の干渉も許さない。これも当然と思うが、総理考え方を伺いたい。  その三つは、日華条約中華人民共和国がすでに成立したあとで調印されたものであり、したがって不法であり無効であって、廃棄されねばならないとなっております。これが佐藤総理と大きく考えの違うところで、さきに指摘したところですが、いかがですか。  その四つは、国連の機構における中華人民共和国のあらゆる合法的権利を回復し、台湾代表国連から追放しなければならないとなっておりますが、これは申すまでもなく、国連決定されて、そのとおりになりました。私どもは、この基本的な考えなくして中華人民共和国との平和条約は結べないと思いますが、今日までの総理政策行動を見る限り、佐藤内閣中華人民共和国との国交回復は不可能と思うのであります。総理の御答弁を願います。  次に、福田外務大臣質問いたします。外務大臣は、衆議院において不信任案が提出されておるようでございますので、御答弁なければ総理に御答弁を願います。  佐藤内閣には外相不在だといわれておりますが、外相が就任直後病気をされたことを決して責めるべきではありません。逆に同情申し上げておりますが、病気中にニクソン大統領訪中が発表され、頭越しだと日本じゅうが大騒ぎしましたが、外相代理として木村長官がその責めに当たり、また、この国会沖繩国会といわれ、当然のことながらその責任はほとんど佐藤総理が当たっておる。一方、世界歴史が変わったといわれる中国問題では、愛知外相以下がその責めに当たっておられるようです。さらに、国内の最重要といわれる日米繊維交渉においては、三年越し交渉に宮澤前通産大臣愛知外相が矢面に立っていたが、このたびは、田中通産大臣が一人で政府間交渉に踏み切って、その責任を問われている。こう見てくると、外相はいつも陰の人のようである。傷を負わないためにやっておられるといううわささえありますが、外相不在といわれてもしかたのないことであると思います。特に、アルバニア決議についての責任の所在をはっきりしていただきたいと思います。  最後に、佐藤総理国民の反対を押し切り、逆重要事項指定、二重代表制日米共同提案国になられたのは、あるいは長い間の台湾との関係によるのかもしれないと思いますが、国連では、はっきりとそれが否決され、間違いを指摘されました。かかる重大なる事項を決断し、国連の場において実行した場合、当然その政治生命をかけてのことと思うのですが、いかがですか。共同提案国となり、その指導的役割りをした日本が、国連民主主義の場であり、勝つこともあるが負けることもある等のごときは、信念のなさと責任の回避もはなはだしいと思います。日本の将来のためにも、中国との国交回復促進のためにも、政治責任をとって佐藤総理がいさぎよく退陣されることを強く要望して私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  7. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 阿具根君にお答えいたします。  政府としては、国連加盟国多数の意思を今後の国際協調と国際平和に結びつけるためにわが国役割りを積極的に果たすことこそ、その責任の最たるものだと考えております。中国問題についての政府態度は、すでに明らかなとおり、中華人民共和国政府国連参加を歓迎し、同政府国際社会における枢要なる一員としての立場から行動することを期待するとともに、日中両国関係については、相互尊重相互理解原則に基づいて国交正常化のための政府間交渉に応ずることを強く望むものであります。  ところで、「一つ中国一つ台湾」そういうことを考えているのではないかと、かように言われますが、中国大陸中華人民共和国があり、台湾国民政府のあることは、これは現実の問題であります。そうして、その二つとも、中国一つだと、かように申しております。外国から、中国一つ、あるいは一つ台湾、かようなことを言う資格は、われわれにはないはずであります。これは中国自身できめられる問題であります。政府が本年の国連代表権問題について経過的措置をとることをきめたのは、国際情勢現実をありのままに認めようとしたものであります。わが国単一民族国家であり、さき戦争で敗れたとはいえ、国民が結束することによって今日のような世界でもユニークな国柄をつくり上げることができたのでありますが、他の国の場合、国の大小を問わず、民族内部の問題としてそれぞれの悩みをかかえているのであります。それをすべて自分たちの尺度ではかることができない点のあることは理解しなければならないと思います。中国の場合、同一民族の中に二つ政権が存在しており、わが国はその一つ条約を結んで戦争状態を終結させ、今日の発展の基礎を築いたことは厳然たる歴史的事実であります。政府は、この歴史的背景に基づいて国連に処する方針をきめたことを特に御理解いただきたい。問題はこれからだと思います。中華人民共和国政府中華民国政府にかわって国連という国際社会に登場したのでありますから、政府としては、この事実を踏まえ、日中間国交正常化に積極的に取り組む決意であることを申し上げたいと思います。国際社会において一国一政府というのが原則であることは、私が申し上げるまでもなく、御承知のとおりであります。中国の場合、いずれが正統政府であるかをきめるのは、本来、中国自身であります。先ほど声を大にして申したとおりであります。わが国中華民国政府中国代表政府としてまいりましたのは、それを合理的にする歴史的経緯があり、これを踏まえて、国会の承認を経て平和条約を締結したのであります。二国間の問題は、国連での代表権の問題とはおのずから異なるものでありますから、現時点で直ちにこれを無視することができないのは当然のことであります。われわれも、十分過去の歴史も、また国会で承認したことも、よく反省してみなければならないと思います。日華条約破棄する、かようなことは私は考えておりません。  次に、輸銀使用に関する吉田書簡について、繰り返し申し述べているとおり、元来、吉田書簡なるものは私信であり、これを廃棄するとかしないとかいうような問題は起こりません。この点はしばしば説明したとおりであります。  また、ココムについては、参加諸国間の合意に沿って行なっているものであり、国際協調観点からも、わが国だけ特異な立場をとるべき事柄ではないと、かように考えております。  第三の、台湾に対する新規借款については、中国をめぐる国際情勢の推移を見きわめながら慎重に検討してまいります。  次に、政府としては、今後日中関係正常化を進めるにあたっては、主体的で、かつ広範な国民的合意基礎の上に立ち、日中双方にとって受諾され得る新しい原則を確立する必要があると思います。その場合、政府としては、日中議連訪中団の四原則中国の平和五原則等十分参考にしたいと考えております。一つ一つについてはお答えをいたしません。  次に、私の責任について、佐藤内閣では日中打開はむずかしいとの御指摘でありますが、国際関係の調整は一内閣や一政府のために行なうべきものではありません。もちろん政府国民のために、国益の伸長という観点から責任を持って行なうべきものであると、私はかように考えております。  最後に、私の責任を追及されました。私は謙虚に阿具根君の御意見を伺っておきます。  以上でお答えといたします。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫登壇拍手
  8. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私に対しましては、衆議院では不信任案が出ておるようでございまするが、参議院では信任をされておる福田でございますので、あえてお答えを申し上げます。(拍手)  いまお尋ねがありましたので、ざっと私、計算をしてみたのでありまするが、私は七月の五日に外務大臣に就任いたしました。自来、今日まで百十三日になるのです。ところがその間、病気のため五十日、またさらに、日米日加会議のために十一日、さらに陛下御外遊のお供といたしまして十八日、合計七十九日国を留守にいたして、外務省を留守にいたしてきたのであります。しかし、その間といえども、終始、私はその責任を尽くすために細心最大の努力をしてきております。この間、いろいろな問題がありましたが、私は、これらの問題に対する、留守中のできごとといえども、一切の責任を負うつもりでございます。ことに、私が陛下お供から帰りました十四日、これからは、共同提案国になりました二つ決議案の通過に全力を尽くしてきたのです。しかし、不幸にしてこれが敗れ去った。このことははなはだ残念であります。これを支持されました各位に対しましては、まことに申しわけないと、かように存じます。しかし、もう国連中国問題につきましては審判が下ったのであります。下りました以上は、私がかねがね申し上げておりまするとおり、日中正常化は、これは歴史流れである。私はこれと真正面から取り組む決意である、こういうふうに申し上げておるわけでございまするが、思いを新たにいたしましてこの問題と取り組んでいきたい、かように考えます。  しかし、一言申し上げたいのです。敗れたりといえども、この決議案提案国となりましたことによりまして、わが国信義に厚い国である、また筋を通す日本国であるということを広く国際社会において認識せしめ得たということ、このことにつきましては全国民が誇りを持ってよろしいことである、かように確信をいたしております。(拍手)     —————————————
  9. 河野謙三

    議長河野謙三君) 渋谷邦彦君。    〔渋谷邦彦登壇拍手
  10. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 私は、公明党を代表し、昨日、国連において可決されたアルバニア決議をめぐり、総理質問いたします。  歴史流れ世界の潮流にさからい、政府米国に同調して提案した逆重要決議案はみごとに否決され、アルバニア決議案が圧倒的多数で予期されたとおり可決されましたことは、全く厳粛な歴史的事実であります。  このような動かしがたい客観的情勢の急変により、日本の置かれた立場はきわめて困難なものになることは否定できないと思うのでありますが、どうでありましょうか。今後の日本の進路をきめる上で重大な岐路に立たされた現在、いかなる展望を持って日中国交正常化への道を開こうとするのか。単なる抽象論ではなく、具体的な構想を明らかにすることこそ、民主政治に立脚した政治姿勢ではないかと思うのでありますので、虚心たんかいに述べていただきたいのであります。  一昨日の衆議院における予算委員会総理答弁、あるいは昨日の衆議院会議緊急質問における答弁、ただいまの阿具根議員に対する答弁を伺いましても、全然釈然としないわけであります。私が釈然としないわけでありますから、国民皆さま方は、たいへん失礼な言い方ではありますけれども、釈然としないのは言うまでもありません。だれですか、頭が悪いと言うのは。たいへん失礼なことを言うね。何を言う。とんでもないことを、言うな。ばかやろうとは何ですか。(「ああ、ばかやろうじゃねえか」と呼ぶ者あり)もっと冷静にこっちの言うことを聞いたらどうだ。とんでもない話だ。何だ。(発言する者多く、議場騒然ばかやろうという発言を修正さしてください。(「懲罰だ、懲罰だ、ばかとは何だ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  11. 河野謙三

    議長河野謙三君) お静かに願います。
  12. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君(続) 訂正さしてくれ。議会の品位を知っているのか、君は。(「懲罰かけろ、懲罰かけろ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然
  13. 河野謙三

    議長河野謙三君) 不穏当な不規則発言は厳に慎まれまするよう、議長として要望をいたします。  ただいまの今議員不規則発言につきましては、議長において適当な措置をとります。(拍手
  14. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君(続) どうも失礼しました。  あらためて政府態度を再確認しながら伺ってまいりたいと思います。  まず、国連において中華人民共和国国連復帰が正式に決定したいま、言うまでもないことでありますけれども、国際社会一員としての権利義務が保障されたと見るのは当然でございます。その反面、台湾政府が獲得していた一切の保障は必然的に全く失ったと見るのは、これまた言うまでもないことでありますが、あらためて政府当局がこの関係についてどのような見解を持っておられるのか、お示しをいただきたいと思います。  政府は、北京も台湾中国一つだと言っておることを論拠に、中国一つであるとの見方を示してまいりました。先ほどの答弁もその繰り返しのようでございましたが、一つ中国二つ政府を認める以上、これは二つ中国あるいは一つ中国一つ台湾を是認し続ける何ものでもないと思うのであります。その考え方はいまなお変わっていないかということを確認しておきたい。そしてまた間違っているならば答弁を願いたいと思います。  国連意思決定を尊重するという政府方針が明らかになった以上、しばしば論争の焦点であった日台条約は何らの効力を持たないと解釈されるのであります。だれが見てもそうとられるのは当然ではないでしょうか。なぜならば、すでに追放決定した台湾政府との間に締結された日華条約第六条、すなわち、「日本国及び中華民国は、相互関係において、国連憲章第二条の原則を指針とする」とあり、「国連憲章原則に従って協力する」とあるのが事実上全く無意味になるからであります。この点を総理はどうお考えになりますか。  政府国連中心主義という従来の基本的な外交方針にのっとってみましても、必然的に政策の大転換が求められる時期にきております。どう一体これから対処されるのか。日台条約破棄につきましては、政府が頑強に反対している背景として、国際信義また歴史的経緯を重んずるがゆえに、ということを繰り返して答弁されております。しかし、時代の趨勢にさからい、国益に反する事態を招くことがあっても、順応性のない考え方を今後も貫くつもりなのかどうか、明らかにしていただきたいと思うのであります。  政府が、遅疑逡巡して見通しを立てないまま、引き続き台湾政府関係を持ち続けるとするなら、言うまでもなく、表向きは中華人民共和国政府国交正常化を望みながらも、依然として中国敵視という政府・自民党の一貫した考え方に何ら変わりがないことになるのではないかと思うのでありますが、どうでありましょうか。  ことに、日台条約作成基礎となりますと見られております第一次吉田書簡、つまり一九五一年十二月二十四日付ダレス国務長官あての内容によれば、「日本政府中国共産政権と二国間条約の締結する意図を有しないことを確言する」、このように言明しておるのであります。そうした意味からも佐藤内閣は、米国との国際信義を重んずるというたてまえをくずさない限り、この方針に沿う何ものでもないとうかがえるわけであります。そうであるからこの日華条約は継続されるのであり、そのために中華人民共和国政府との国交樹立は、完全に阻害されることになりはしまいかというおそれが出てくるのであります。どうでありましょうか。重ねて申し上げますが、いずれにせよ明らかなことは、台湾中国一つの省であり、中国領土不可分の一部であり、台湾問題は中国の内政問題であって、いわんや台湾帰属未定論などという説は全くナンセンスであります。少なくともこの認識の上に立たなければ、日中国交回復への道ははるかに遠いものになることは論を待たないところであります。いかがでありましょうか。  次に、総理は、中国大陸を支配しているのが中国代表するのは当然だ、また中国唯一合法政府中華人民共和国であると言明されております。けれども日華条約破棄は困るというこの矛盾に対する説明を鮮明に国民の前に示していただきたいのであります。(拍手)  政府自身も、中華人民共和国政府原則論を重んずる国であるということについては理解をされておられると思いますが、いかがでありましょうか。確かに中国側のしばしばの言明を通してみましても、いささかの変更もなく、原則論を堅持しておりますことは疑う余地のないところであります。政府間交渉を行なう用意があるとしながらも、政府中国側原則論にどう対応できる原則を持っていらっしゃるのか。ただ話し合えばよいという甘い判断は絶対に許されない状況であると思いますが、いかがでありましょうか。すでにわが党との間にかわされた共同声明でも明らかにされておりますとおり、日本政府共同声明主張を受け入れ、しかも、そのために実際の措置をとるならば、日中両国戦争状態は終結し、日中国交を回復し、平和条約を結ぶ用意があることを示しているのであります。政府間交渉を始めたいといたしましても、この事実認識に立たなければ国交正常化への突破口は開けない、このように思うのでありますが、いかがでございますか。  次に、中国側は絶えずいろんな角度から言明しております。その中で特に周総理のことばをかりて申せば、イデオロギーを乗り越え、信頼と誠意に基づいた友好関係こそ非常に大事なことだとしております。しかし、福田外務大臣等答弁を伺っておりましても、政府はいままでの日中間における不信感というものが災いをいたしまして、話し合いはなかなか困難だと言われております。ならば政府はいかなる方法によって信頼を回復する接点を求めるおつもりなのか、お尋ねをしたいのであります。  また、日中関係正常化につきまして、福田外務大臣は、前向きの発言をしておられるようであります。つまり、外務省筋も、第三国の仲介や、日中双方の出先公館があるところで接触を試みるなどと言われておりますが、総理が真に日中関係の正常化に取り組もうとされるならば、いまこそ明確に、そして具体的にその方途を示さなければならないと思いますが、いかがでありましょうか。  最後に、アルバニア決議決定は、申すまでもなく、世界の動向を大きく変えようといたしております。このきびしい情勢変化を的確にくみ取れず、日本がアジアの孤児になりかねない現状を思いますときに、政府責任はきわめて重大と言わざるを得ないのであります。のみならず、たび重なる外交政策の失敗、これはもう顕著であります。そのことは、ひいては国の進路を誤らせることにもなりかねないわけでありまして、この点を政府当局は厳粛に見詰めながら、その政治責任を避けて通るわけには絶対にいかないのでありますので、総理自身も、すみやかにその責任を負うて退陣することが最も道理にかなった姿ではないかと思うのでありますが、総理決意を求めまして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  15. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えをいたします。  御承知のとおり、日華平和条約は、中国わが国との間の戦争状態を終結させるために、国会の承認を得て締結した条約でありますから、これを破棄するとかしないとかいう問題は生じないと言えるのであります。しかし、日華平和条約について、北京政府は、これを不当なものとして、これを認めない態度を打ち出していることは、政府承知しているところであります。したがって、政府としては、この問題をも含めて、中華人民共和国政府との間に、政府間の話し合いを行ない、相互理解に達したいと考えております。  中華民国との関係については、中国をめぐる国際情勢を見守りながら、わが国国益を守り、かつ、アジアの平和に寄与する、こういう観点から慎重に対処してまいりたいと思います。  政府中国政策は、国連代表権問題に対する方針を策定する段階ですでに大きく転換しております。政府は、御承知のように、日中関係の正常化を強く希望し、アジアの緊張緩和をはかりたいと念願しております。  なお、一九五一年当時の、吉田総理から米国のダレス大使にあてた書簡は、当時の日本政府が、わが国中国との正常な関係を再開するための二国間条約の相手方を国民政府とすることを明らかにした、いわば歴史的な書簡であって、今後のわが国中華人民共和国との関係を阻害するような性質のものではありません。政府は、昨日、国連の決議を尊重することを明らかにいたしましたが、すでに中華人民共和国政府国連代表権を確認し、同政府が安保理常任理事国の議席を占めることを勧告する方針をきめていたことは御承知のとおりであります。もうすでに国連でこのことは決定されたことであります。私どもがとやかく言うことではございません。  また、中国一つだというその立場から、中国代表権問題ははっきりしてまいったと思います。国連代表権問題と日中二国間の問題とは、おのずからその性質が異なることは申すまでもありません。中華人民共和国も祝福されて国際社会に参加したのでありますから、隣国であるわが国との国交正常化には大きな関心を有するものと私は考えるものであります。日中間には各種の問題があり、わがほうにはわがほうの立場がありますが、広範な国民的合意の上に立って政府間の話し合いを積み重ねていくことができれば、相互理解相互信頼がもたらされ、日中関係は大きく前進するものと確信しております。  次に、政府の強調する歴史的背景自体が矛盾の産物ではないかとのお尋ねでありますが、わが国日華平和条約を締結した一九五二年当時は、中華人民共和国が成立してから僅々三年足らずであります。その当時の中共承認国——中華人民共和国承認国は二十六でありまして、国府の承認国は四十七であります。圧倒的に国府承認国の数が多かったのであります。したがって、当時の政府としては、中華人民共和国を無視したわけではありませんが、中国をめぐる国際情勢が当時と現在とでは基本的に異なる事情にあったことを御理解いただきたいと思います。  政府としては、公明党訪中団の五原則日中議連訪中団原則など、その趣旨を十分検討し、参考にすべき点はこれを大いに活用して、日中国交正常化のための具体的措置を講じていきたいと考えております。  日中関係の改善は、政府としても、もとより望むところであります。政府としては、日中双方が、相互立場を尊重するという原則のもとで、まず政府間の話し合いを行ない、それぞれ相手の立場とその主張理解し合うことが重要であると考えるものであります。  結論的に申しますと、中国問題は、わが国にとってきわめて重要な外交問題でありますが、わが国は、中国大陸との間にも、また台湾との間にも、他の諸国とは比較にならぬほど深い歴史関係があることは、あらためて認識しなければなりません。しかしながら、いまや政府は、心を新たにして、日中関係正常化問題に積極的に取り組む時期に来ていると考えております。このため、政府としては、北京政府が応ずるならば、日中関係正常化の問題を含め、双方に関心のあるあらゆる問題につき政府間の話し合いを行なう用意があり、北京政府がこれにこたえることを期待しているのであります。重ねて申しますが、ゴールを見きわめつつ長期的展望に立って対処してまいりたい、かように考えております。  以上お答えをいたします。(拍手)     —————————————
  16. 河野謙三

    議長河野謙三君) 向井長年君。    〔向井長年登壇拍手
  17. 向井長年

    向井長年君 私は、民社党を代表いたしまして、昨日の国連総会において逆重要事項指定決議案が否決されまして、アルバニア決議案が可決に伴い、政府の今後の進路とその責任について総理質問をいたしたいと存ずる次第でございます。  本論に入る前に、私は総理にお願いをいたしたいと思います。それは、昨日衆議院緊急質問答弁を、私も傍聴席で拝聴をいたしたのであります。まことに失礼な表現で、表現は適切でないかもしれませんけれども、総理答弁は、全く興奮の中で論理が空転、支離滅裂、全く冷静さを欠いていたように私は感じたのであります。先ほどの阿具根君なりあるいは渋谷君の両議員質問に対しましても、論理が合っておりません。政府・自民党が過去二十年間とってきた経過を振り返るならば、よしあしは別であります、無理からぬ事情はわからぬことは私にはありません。しかしながら、こういうときこそ総理は冷静に今後の展望に立ち、国の行く手をきめなければならない重大な責任があるのであります。私たち野党も、常に総理が言われる国の安全と国益考えての率直な意思であり質問でありますから、そのつもりで答弁をお願いいたしたいと存じます。  まず、中華人民共和国世界の大多数の国々意思に基づいて国連に迎え入れられ、しかも安保理事国の議席を得たことは、戦後の国際政治の一大転機を画するものであり、われわれはこのことを国際社会の将来の発展のため心から祝福するものであります。このことは、世界の大多数の国々が、八億の国民を有効に統治している中華人民共和国が現存しており、しかも、それが中国代表する正統政府であることをありのままに、率直に認めたことにほかなりません。それは、国際政治、そして外交の鉄則そのものであります。しかるに、佐藤内閣はこの鉄則を無視し、中国代表中華民国政府であるとのフィクションにあくまでもしがみつき、そのあげくの果てが、米中接近のショックとなり、はたまた今回の国連総会での敗北となったのであります。われわれは、数年前よりこのことを予測して、国連代表権問題で、中華人民共和国がその代表権を獲得するのは時間の問題であることを、政府に対し再三にわたり警告をしてきたのであります。しかるに、政府がこうした警告を無視してきた結果が、今回の敗北となったのであると言わなければなりません。同じ敗北といっても、逆重要事項指定決議案責任国たるアメリカは、さき世界中国問題に対する趨勢を見通し、アジア政策の転換をはかる決意のもとに、すでにニクソン訪中決定し、さらにキッシンジャー特別補佐官の訪中を通じて、その最終的な根回しを終わっているのであります。これは、すべてアメリカ自身がアメリカの世論と国益考え措置と言えるでしょう。しかるに、わが国政府国際情勢をいかに把握してきたのか。昨年のアルバニア決議案が、二票の差が、本年は四十一票の差で大勝したこの事実、この一年間の情勢の変化に目を開かなかった鈍感さであったのか、または、台湾政府に対してあまりにも盲目的な国益考えない義理だてが、現在アメリカと異なって、日中国交回復のパイプはいまだ開き得ないのであります。いわば世界の孤児、現代のドン・キホーテとなってしまったと言っても何ら過言ではありません。  総理総理は、今回の国連総会の表決は国連加盟国の多数によってきめられたのであるが、その結果は、わが国政府政治責任には直接結びつかないと今国会で強弁されておりますが、もとより形式論理としてはそうでしょう。しかし総理、この形式論理で国民を納得させることはできませんよ。これは何人が見ても、これまでの佐藤内閣中国政策の破綻であることは明らかであります。総理、この中国政策の破綻をはっきり認められるかいなか、また認められるならばその政治責任を明らかにすべきと考えるが、所見をお伺いいたします。  今回の国連総会で可決されたアルバニア決議案は、そもそも中華人民共和国政府中国代表する政府であり、同時に、台湾中国領土であるという二つの基本原則に立つ決議案であることはすでに明らかであります。そして、この決議案国連意思となった今日、総理国連決定を尊重すると言われておりますけれども、それは中国問題についての二つ原則を認めたということにならなければ、総会の決定を尊重することの意味が一貫しないのであります。総理はこの二つの基本原則を認めることに踏み切ったのかいなか、お伺いいたしたいと思います。  総理は昨日、衆議院においても答弁されておりますが、一つには、国連決定は尊重する、二つには、中国一つである、三つは、日華条約破棄しない、と答弁されましたが、これは論理が合わず、大きな矛盾ではありませんか。この三点をどう組み合わそうとするのか、納得のいく答弁をお伺いいたしたいのであります。  また、さき総理は、今国会冒頭での施政方針演説において、今回の国連代表権問題については経過措置であり、それは当事者間の話し合いによって解決されるまでの措置であると述べられたのはすでに周知のとおりであります。しかし、総理、いまや総理のいう経過的措置という現状糊塗策は見る影もなく破綻をしてしまいましたね、そうでしょう。もはやそのような小手先の政策では日中国交回復は一歩も前進しないことは多言を要しないところであります。総理国民はいまや、あなたの日中国交回復への決断と行動を注視しておるのであります。そしてその大前提は、重ねて申し上げますけれども、中国代表する政府中華人民共和国であり、しかも台湾中国領土であることを明かに認め、日華条約は廃棄されなければなりません。  私は先般、国会議員の超党派で組織されておりますところの日中国交回復促進議員連盟一員として、各党の同僚議員とともに中国を訪問いたしました。中国政府並びに中国国民の皆さんと会う機会が多くあったのでございますが、中国国民の口をそろえて話されることは、中国日本歴史的なつながりがある、イデオロギーが異なっていても、一日も早く国交を回復をして、日本の皆さんと友だちになりたいと願っておるのであります。私は二十日間、政府首脳をはじめいろいろな人とも会って話し合いましたが、年配の戦前を知っている人は、当時の日本の軍国主義の犯した罪悪に対してさぞかし恨んでいることであろうと思っておりましたところが、その人たちいわく、過去は過去である、今日の日本国民がいけないのではありませんと、その気配は毛頭ないのであります。また政府首脳陣も、若干これは皮肉を込めた言動になるかしれませんけれども、今日、中国を統一できたのは、当時の日本軍国主義に対して反面、教師として感謝していると言っておるのであります。したがって、日本国民を恨んでおるというようなことは、毛頭ございませんと言っております。次に、これは政府間交渉の問題になろうかと思いますけれども、中国首脳陣は、日中議連藤山愛一郎会長に対して、日中国交回復に伴う中国に対する今後の賠償問題を要求する考えのないことを、国民の皆さん方に伝えていただきたいと言われたのであります。  かかるように、中国も、一日も早く日本国交正常化をし、そして現状を克服したいという、この考え方、この上に立って、この際、総理は、過去は過去として、今日からは日中国交回復に向かって具体的な行動を直ちに起こすべきであると考えますが、その意思があるならば、この際お示しをいただきたいのであります。  もし、この基本的原則確立を今後の具体的行動に示されなければ、世界の潮流に逆行し、国民の大多数の意思に反して、政府日中国交回復への意思がないものと断ぜざるを得ません。もしそうであるならば、この際、国民意思に反する内閣はいさぎよく退陣すべきであると考えるが、総理の所見をお聞きいたしたいのであります。  最後に、私は外務大臣に一言質問をいたします。  あなたは、先般来のテレビ座談会等の発言を聞いておりますと、国民の受けておる印象は、すべて総理が、政策の誤り、悪者の矢面に立ち、外務大臣は別のことを考えているかのごとき感じがいたすのであります。これはまことに見苦しい、聞き苦しい。当面の直接の責任者はあなたであります。その責任を痛感しておりますか。私は、外務大臣責任を追及すると同時に、あなたの、今後日中国交回復のためにまず何から始めようとするのか所見を伺いまして、私は質問を終わりたいと思います。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  18. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まず最初に、私に対して、冷静にしかも今後の展望の上に立って、そうしてその重責を全うすると、その重責を果たしていけ、そういう意味で、答弁についても冷静であることを要望されて御注意がございました。できるだけ、私はそのつもりでお答えをするつもりであります。ただ、地声が少し大きいので、そのために興奮しているんじゃないかというような誤解も生じておるかと思います。さようなことはございませんから、声が大きいからといって、私が冷静を失っている、かようにはお考えにならないようにお願いします。  わが国中国政策は、さき戦争終結以来、さまざまの歴史的経過を経て今日に及んでいることは、向井君御承知のとおりであります。国連代表権問題の表決が一つの転機になりましたことは、私宅十分承知しております。政府は、国連決定を尊重し、中華人民共和国国連参加を歓迎し、これを契機として、さらに積極的に日中国交正常化に取り組む決意でありますが、国連における問題は、その多数意見を今後の国際協調と平和維持にいかにして結びつけていくかということであります。政府は、このような角度からわが国役割りを果たしていく方針であり、むしろ、このような努力を尽くすことが本来の責任を果たすゆえんであると考えております。ただいま、ニクソン大統領あるいはキッシンジャーの再度の北京訪問などの例を引き合いに出して、日米間でそれぞれ異なったアプローチのしかたをしておることを御指摘になりましたが、そのとおりでございます。アメリカは、キッシンジャーが再度訪問いたしましても、貿易額は日本のとは比べものになりません。人の交流も、今回の広州交易会などに出かけておる商社の数等を見ましても、これまた問題にならない。したがって、日本日本らしい接触の方法をとっておる。かように御理解をいただきたいと思います。  そこで、中華人民共和国政府中国代表する政府であることは客観的事実であります。また、台湾中華民国政府の存在することも具体的事実であります。一国一政府というのが原則でありながら、その原則どおりいかないのが中国現実の姿であると思います。また、両政府とも、中国一つであると主張しておりますから、この点に関する限り、中国一つであることには疑問の余地を残しません。このことからも明らかなとおり、日中正常化問題を進めるにあたって、台湾問題が大きな関門であることは申すまでもありません。政府としては、長期的展望に立ち、かつ、現実を見きわめつつ対処してまいる決意であります。中華人民共和国国連決定によって近く正式な代表団を国連に派遣する意向と伝えられておりますが、中国国際社会参加によって、日中間の接触の幅は今後大いに広まることが予想されます。政府は、これを契機に積極的な接触を呼びかけ、政府間の交渉を進めたいと考えている次第であります。  私は、所信表明演説でも述べましたとおり、今日の国際社会は戦後体制の転換期に来ているとの認識を持つものであります。このような見地から、日中二国間の関係につきましては、広く国民合意を得られる新しい原則のもとに政府間の交渉に入り、相互立場相互考え方を十分に述べ合った上で、真に安定した関係を築き上げるべきだと考えております。昨日以来両院で論議の対象となり、かつ、各党から出された意見の多くは、今後の話し合いの過程で解決されるべきものであると思います。政府としても、この論戦を通じて問題点を確認することができたことを多としております。今後、これらを参考にしながら、アジアの平和と国益の伸長という観点から日中関係の正常化に取り組んでまいるつもりでございます。この意味におきまして、一そうの御鞭撻と御理解を賜わりたいと思います。以上。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫登壇拍手
  19. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私の発言総理発言ののりを越えておる、こういうようなおしかりですが、私は、外務大臣として、総理の言うとおりのことを言っておったのじゃ、これまたおしかりを受ける。そこで、補足、ふえんをするわけであります。たとえば、きのうあたりは、新聞社など十社、テレビ三社から要求がありまして、そういう席で、どうもきのうの本会議総理答弁を聞いておると反省の色がない、正常化を本心で考えておるとは思えない、こういうような話がある。それに対しまして私は、これはもう日本じゅうで一番総理がほんとうに真剣に正常化を考えているのですと、これはことばは足りぬかもしれませんけれども、ほんとうに考えているのは佐藤総理なんだと、こうほんとうに理解してその一吉一句を見てもらいたいのだと、こういうことを申しておる。そういう点に何か悪い点があるのかどうか。  また、こういうことがあります。総理は、きのうはどうも興奮し過ぎて支離滅裂な答弁をした、こういう話がある。私はそれに対しまして、ああいう議場であるとどうしても声が大きくなりますよ、これは自然じゃありませんかと、こうもお答えをいたしておるのですが、まあそういうような程度のことでありまして、私が二元外交をやっておるとか、二重外交をやっておるとか、そういうようなことは断じてありませんから、その点は御安心願いたい。(拍手)  なお、私がこの日中間をどういうふうな手順で進めるかと、こういうお尋ねでございますが、私は、政府間折衝が一番いいと思うのです。何もこそこそと人を使って話し合う、そういう方式なんかを使う必要はない。これはもう堂々と、わが国代表する総理の信託を受けた人、また北京政府の信託を受けた代表者、これが相互にぶつかる。そして、横たわるところの諸問題を話し合う。その話し合いの過程において、いろんな問題が提起されるでしょう。それらの問題を解決していく。その解決していく姿勢というものは、きのうの国連総会でああいう決定があったわけですから、ああいう決定を踏まえてやればそれでいいのだ。それで日中国交正常化というものはできるのだ。初めから、一から十までか一から百までか知りませんけれども、中国側の言い分全部を受け入れなければ日中間の折衝が始まらぬという態度じゃ、私は、これは日中間の接触というものは始まらぬ、こういうように思うのです。要は、この折衝というものは、先方の言い分も十分理解しなければならない。しかし、わが国にもわが国主張立場もある。主体性はあくまでも持たなければならぬ。こういうように思います。私は、そういう考え方で、ぜひすみやかに日中間政府接触を始めていきたい、かように考えております。(拍手)     —————————————
  20. 河野謙三

    議長河野謙三君) 河田賢治君。    〔河田賢治登壇拍手
  21. 河田賢治

    河田賢治君 私は、日本共産党を代表して、国連総会決定した中国国連代表権回復問題についての政府見解をただすものであります。    〔議長退席、副議長着席〕  世界注視のうちに開かれていた国連総会は、昨二十六日、アメリカ政府日本政府などの執拗な妨害にもかかわらず、ついに中華人民共和国国連議席並びに安保常任理事国の議席回復、蒋介石かいらい政権追放という歴史的な決議を参加国の圧倒的多数で可決しました。このことは、二十二年前に中国人民から追放されて以来、アメリカ第七艦隊を中心とする軍事力とドルの庇護のもとに存続してきた亡命政権、一地方政権にすぎない蒋介石かいらい政権が、不当にも国連中国代表を僣称してきたという虚構がついにくずれ去り、同時に、国連本来の加盟国である八億の中国人民を真に代表する正統政府は、中華人民共和国以外にはないという当然の真実が世界の前に立証されたのであります。しかも今回の国連決議が、七十六票対三十五票という加盟国の三分の二以上の圧倒的多数で可決されました。このことは、二十余年にわたってこの虚構の上に必死にしがみつき、世界を欺き続けてきたアメリカと、それに追随してきた自民党政府の外交政策が国際政治の舞台で重大な政治的審判を受け、歴史的な大敗を喫したものであります。佐藤内閣政治責任はきわめて重大だと言わなければなりません。しかるに、総理は、昨日の衆院本会議で、多数が得られれば可決され、少数ならば否決されるのはあたりまえだなどと公言し、国連総会で示された世界の厳粛な審判にごうも反省の態度を見せておりません。  総理に伺います。あなたは、わが国がかつての長年にわたる侵略戦争中国人民の生命、財産に対し、はかり知れない損害を与えた加害国であることをよもやお忘れではないでしょう。この厳粛な反省の上に立てば、日本世界に率先して中華人民共和国国連復帰を推進するのが当然であり、これこそが国際信義というものではないでしょうか。しかるに、佐藤内閣は、これとは全く逆に、中国国連復帰最後最後まで必死に妨害し続けた最悪の役割りをにない、しかも、このみじめな敗北を招いたのであります。これこそ、佐藤内閣中国八億人民に加えた新たな政治的犯罪行為であります。同時に、日中国交回復を心から願う圧倒的な日本国民への背信行為でなくて何でありましょう。これに対する総理責任ある答弁を求めるものであります。  第二に、日中国交回復についての佐藤総理態度の問題であります。総理中華人民共和国代表権回復についての国連決議を尊重すると言われる以上、直ちに蒋介石政権と手を切り、不法不当な日台条約を廃棄し、日中国交回復に大きく踏み出すべきが当然だと思います。しかるに、総理は、昨日の国会答弁でも、台湾との関係は、歴史的経緯を踏まえて慎重に対処するとか、日台条約についても、日中の戦争状態を終結させた条約であり、何ら破棄すべき筋合いのものではないなどと、依然として蒋政権とのくされ縁に固執する立場をあらためて再確認するという反動的態度をあえて表明しました。しかしながら、今回の国連総会が、中華人民共和国代表権を回復し、これとともに、蒋政府国連から追放する決議を行なったことは、佐藤総理、あなたが逆重要指定方式の唯一のよりどころにしたいわゆる経過的措置なるものが何ら尊重するに値しないという国際的な評価が下されたのであります。  そこで総理にお尋ねしたい。まず、日台条約をもって日中戦争が終結したとするあなたの主張は、蒋政権中国人民代表する正統な政府と見なすものであります。蒋政権を事実上中国人民代表しない地方亡命政権として追放した今回の国連決定とどのように両立すると考えられるのか、明確な答弁を求めたいのであります。  さらには、日本政府のいわゆる経過措置そのものが、国連の大多数の意思で否認されたにもかかわらず、なお、総理は、日台条約の存続と蒋政権擁護に固執されているが、どのようにして国連決議を尊重されるのか。中華人民共和国代表権回復の障害の最大のものは、実に蒋政権そのものである。これとの友好関係を続けながら、総理国連決議を尊重し、中国との国交回復を望むと言っても、それはことばのごまかしにすぎないのであります。したがって、新たに中国との国交回復をはかるためには、佐藤総理の即時退陣以外に道はないと考えるが、佐藤総理決意を伺いたいのであります。  第三に、今回の国連総会の決議は、戦後四分の一世紀にわたり社会主義国を敵視し、アジア諸民族民族自決の運動に干渉し、国連をその侵略政策遂行の道具としてきたアメリカの政策が、いまや重大な破綻を来たしていることを明白に示しています。そしてこのアメリカとサンフランシスコ平和条約、安保条約を結び、これを戦後政治の重要な柱としてきた歴代自民党政府の対米従属外交をいまこそ根本的に打破し、転換させなければなりません。そうでない限り、日本はますます世界の孤児となり、大きな誤りを犯すことになるのであります。ところが、佐藤総理は、国連総会台湾の蒋政権追放という世界の圧倒的多数の意思が示されたあとも、なお国連追放は、アジアの緊張激化の要因などと述べ、米、日、韓、台の軍事同盟化を目ざし、韓国、台湾日本の生命線とする日米共同声明路線を推し進め、その具体化である沖繩協定を今国会で強行成立させようとねらっておるのであります。  そこで総理に伺いたい。台湾の蒋政権国連からの追放や、日台条約の廃棄がどうしてアジアの緊張激化などと言い得るのか、その根拠を具体的に示されたいのであります。もしアジアの緊張激化の要因というのであれば、それは国府追放などにあるのではなく、逆に、いま政府国会に提出している沖繩協定こそ、極東の平和と安全の名に隠れてニクソン・ドクトリンに基づくアメリカのアジア戦略のもとに日本を組み込ませ、沖繩、台湾を結ぶ秘密海底ケーブルや、VOA、SR71、核、特殊部隊の存続など、露骨なアジア侵略政策をとろうとしていることにこそ要因があると言わねばなりません。これこそアジアの緊張を激化させる最大の要因であり、同時に日中国交回復を一そう困難にするものにほかなりません。この観点からも、われわれは沖繩協定の批准をやめて交渉をやり直すよう強く要求するものであります。  さらに、政府は、国連総会共同提案国となり、積極的に推進してきた逆重要事項、複合二重代表制が否決された現在も、敗れたりとはいえ、わが国国益に沿うものであったなどと、何の根拠もない強がりを言って、世界国民の世論にさからう態度を示しているが、いまや世界の潮流、世論の動向は、歴史の歯車を逆転させるようなことを断じて許すものではありません。もしも政府が、国益を口にするなら、日本外交の重大な行き詰まりをもたらしている対米従属一辺倒の外交から脱却し、中国はじめアジア諸国との平和、友好の自主外交に大きく転換させることこそが、緊急にして必要であることを認識すべきであります。  特に、日中国交回復を目ざす立場に立つならば、不法な日台条約をきっぱりと捨て、中華人民共和国中国人民代表する唯一正統政府であることを明確にして、日中両国間に、領土、主権の尊重、相互不可侵、内政不干渉、平等互恵、平和共存の平和五原則に基づく国交を樹立すべきであることを要求して、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  22. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 河田君にお答えいたします。  わが国は、本年度は逆重要事項及び複合二重代表決議案の提案国になりました。中華人民共和国国連に迎え入れ、さらに安保理事会の常任理事国の議席を与えることに踏み切ったのであります。これはたいへんなわが国の外交路線の変更であります。不幸にしてこの決議案は成立するに至らなかったのでございますが、国連の場における決議案の成立、不成立、これは先ほども言っておられるように、票数の多寡によるものでありまして、そのことから直ちに共同提案した政府政治責任、これにつながると、かようには私は考えておりません。国際常識に反しないようにお願いいたします。  次に、国連におきましてアルバニア決議案が成立した事実は、これを踏んまえて日中国交正常化の努力を行なっていく所存であります。日華平和条約をいま直ちに廃棄せよと言われますが、政府にはその考えはありません。そのことは、先ほど来の御質問にもお答えしたとおりであります。この問題は、日中国交正常化交渉の過程において解決されるべき問題だと私は考えております。  なおまた、私に対する退陣要求が出ておりますが、これはただ要求として、御意見として聞きおくということにいたしたいと思います。特にお答えはいたしませんけれども、御意見は謙虚に承っておきます。  第三の問題、中華民国は今回国連を脱退することになったが、台湾に有効な支配を及ぼし、厳然と存在していることは否定し得ない事実であります。(「声が小さい」と呼ぶ者あり)あまり大きい声をすると興奮だと言われますから。かかる客観的事実を無視して急激な変更をはかるというようなことは、アジアの緊張を激化しこそすれ、緊張緩和に資するものではないと私は考えるのであります。現状の変更、そのことに十分力点を置いてものごとを考えていただきたい。現状は間違いなしに経過しておるのであります。また、緊張が激化すると、こういう状態ではございません。これが変更を来たすということになりますと、そこにいろいろの心配が生まれるのでありますから、そういうことのないようにと、かように申し上げておく。  沖繩協定の交渉をやり直せ、これもどうも質問ではなくて御要求のようでありましたが、私は、政府としてはやり直す考えはありません。むしろ早急にこの協定は成立さしていただきたい、このことをお願いしておきます。  次に、これはどうも共産党と私、偶然の一致ですか、いわゆる平和五原則、これにつきましては全く私も同感であります。領土、主権の相互尊重相互不可侵、相互内政不干渉、平等互恵、平和共存、これは全く私も異存はございません。要求されたとおり、どうか御支援のほどお願いいたします。(拍手)     —————————————
  23. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 森中守義君。    〔森中守義登壇拍手
  24. 森中守義

    森中守義君 私は、社会、公明、民社、共産、二院クラブ、以上全野党を代表いたしまして、今回の近畿日本鉄道の衝突事故についてお尋ねいたしたいと思います。  それに先立ち、不慮の犠牲となられた二十五名の死亡者の御冥福を祈り、遺族につつしんでお悔やみのことばを申し、また二百数十名の重軽傷者の全快を念じ、心からお見舞いを申し上げます。  さて、今回の衝突事故は、列車事故の中で最も悪質なもので、社会正義の名において糾弾さるべきであり、徹底的にその責任が追及さるべきものであります。  まず総理にお尋ねいたします。  本年に入ってからの交通関係事故は、航空関係で、ばんだい号遭難での死者六十四名、引き続く自衛隊機による全日空機の墜落事件での死者百六十二名、また、私鉄関係では、富士急行脱線事故での死者十四名、これら痛ましい重大事故が続発をいたしております。  これら重大事故の根本原因を要約いたしますと、経済優先のためには国民大衆の犠牲はやむを得ないとする佐藤内閣政治姿勢そのものによるものであります。総理がいかにそうではないと言われても、客観的な事実がこれを立証いたしている。今回の近鉄事故はその典型であります。何となれば、近鉄は新幹線を競争目標とし、スピードアップと過密ダイヤによる安全性を無視した結果、事故が発生したものであります。その犠牲の代価はあまりにも過大であります。本来佐藤総理は、自衛隊機による墜落事件により政治責任をとるべきでありました。国民はそれを待望したのであります。しかるに、今日まで漫然と政権の座にすわり、国際的には中国問題で国際社会の潮流にさからって孤立化を深め、そしてまた、重大事故の発生を招き、内外ともに佐藤内閣不信の声はいまや頂点に達していると断言できます。総理はかかる現状に対しどのように考えておられるのか。また、今回の近鉄事故に対しどのような政治責任をとろうと考えておられるか。そしてまた、あなたの言う人命尊重の精神は、今回の事故に対し、どのように改めようとされるのか、今後、事故再発を絶滅すると約束できるかどうか、その見解をお伺いいたします。同時にまた、今回の犠牲者に、この答弁を通じ、謝罪さるべきと思いますが、いかがでございましょうか。  次に、具体的な問題について運輸大臣にお尋ねいたします。  政府は、昨年十月私鉄運賃値上げに際し、輸送力増強と同時に、安全対策の確立を条件に認可したはずでありますが、そのことは今回の事故により、全く裏切られた結果になりましたが、一体運輸大臣は、認可に際し、いかなる安全対策を指示されたのか、その具体的な内容を明らかにされたいのであります。また、その指示に対し、私鉄各社は今日までどのような安全対策を実施してきたのかもお伺いいたします。また、その指示の中に、今回の近鉄の事故地区の複線化計画が入っていたかどうか。もし入っていなかったとするならば、運輸大臣の責任は免れません。  次に、私鉄に対する運輸大臣の行政指導の基本方針についてお尋ねします。私鉄のわが国交通輸送分野における使命はきわめて重要であります。その公共性も強く、大都市周辺における輸送人員は国鉄をしのぎ、約五〇%を私鉄が分担をいたしております。それだけに、運輸大臣の私鉄に対する行政指導も、公共性の堅持と安全確保の面からきびしい態度で臨まなければなりません。しかるに、今日の私鉄経営の実態を見ますならば、収益性の少ない鉄道部門への投資を避け、収益性の高いデパート、ホテル、不動産等あらゆる方面に惜しみなく投資を続けています。ために、鉄道部門の安全対策が犠牲になっていますが、政府は、兼業部門の規制を強め、私鉄が本来の鉄道事業に専念し、もってその安全が確保されるよう、強力な行政指導が必要であると思いますが、運輸大臣の所見をお伺いいたします。  次に、近鉄の安全に対する基本姿勢についてお尋ねいたします。近鉄は、昭和二十三年花園駅事故での死者四十九名、これをはじめ、昭和三十七年より今回の事故を含め八件の大事故を発生せしめました。死傷者は何と五百十七名の多きに達しています。他面、昭和四十五年の収入は五百六十三億円、そのうち兼業部門収入は百八十億円であります。一体このような実情にある会社が公共性を持つ健全な私鉄会社と言えるでありましょうか。また、今回の事故に際しての会社側の措置はきわめて不当であります。いやしくもすべての被害者が憤激している事実は、企業の傲慢不遜さを見せつけたようなものでありまして、絶対に容赦できません。衝突事故といい、穏当を欠く措置といい、近鉄の社会的責任を運輸大臣はどのようにとらせようとされるのか、明確なお答えをちょうだいしたいと思います。  次に、近鉄複線化の問題についてでありますが、昨日の運輸委員会で、今回の近鉄事故線区をなぜ今日まで複線化ができなかったのかとの質問に対し、運輸当局は、あの場所は山岳地帯で建設費が非常に高くつくためにおくれていたという趣旨の答弁がありました。今日なお、近鉄においては、全線に対し四四・三%、大阪線区で一六・一%の単線区間が残っております。兼業投資の一部でも、これらの複線化に回し、事故発生線区が複線化していたならば、今回の事故は当然防げたはずであります。運輸省の今日までの行政指導が業界の過保護により適切かつ敏速な措置がとられていなかったことに対する強い不信の声が高まっています。いまこそ行政指導の姿勢を正すべきだと思いますが、運輸大臣の見解はどうでありましょうか。また、近鉄の複線化計画をも同時に明らかにしてもらいたいと思います。  次に、今回の事故原因として、ブレーキの故障、ATSの故障、運転手の不注意などがあげられていますが、いずれも安全対策上きわめて原則的要因に基づくものでありまして、日ごろの運輸省の指導、また、安全に対する会社の姿勢に重大な欠陥があったと私は思います。それに加えて、営利追求のための過密ダイヤの編成であります。私は、この際、ATS万能主義的安全対策を根本的に改善をするとともに、特に会社幹部職員の安全に対する教育訓練の徹底をはかるべきだと思いますが、運輸大臣の所信を伺います。また、過密ダイヤに対する安全面からの再検討をする必要があると思いますが、あわせてお答えいただきたい。  次に、私は、国鉄、私鉄会社等に対し事故絶滅を将来約束できる安全総点検を、この際、国会を通じて約束してもらいたいと思う。それは、政府が重大事故発生のたびごとに、点検を行なってきたとは言いながら、あとを断たない重大事故の発生からして、何ら効果があがってはいないからであります。今回の事故を見ますると、その危険性は、単に近鉄のみに限らず、ひとしく全鉄道部門が内蔵している要因であるといっても過言ではありません。この際、徹底した総点検を実施し、その結果、不良会社に対しては、厳重な警告と同時に、改善命令を出すべきであると思いますが、運輸大臣の決意をお伺いしたい。  また、近鉄に対しては、この際、特別監査を実施すべきでありましょう。運輸大臣いかがでございましょう。  なお、総点検実施の結果と、とられた措置、一連の経過について、当然国会に報告を求めたいと思いますが、お約束できますか。最後に、死傷者に対する補償の問題についてであります。今回の事故は、近鉄の責任に帰すべき事故であることは、言うを待ちません。もちろん近鉄が万全を期すべきことは当然でありましょう。同時に、政府もまた、その責任において特段の配慮がなさるべきであると思います。その所信を最後にお尋ねいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  25. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 森中君にお答えいたします。  相次ぐ交通事故、まことに私は残念に思っております。今回の近鉄の事故によりまして、二十五名のとうとい生命を失われた方々に対して、心から弔意を表すると同時に、御遺族の方々に対しまして、つつしんでお悔やみを申し上げる次第であります。  また同時に、二百数十名の重軽傷者の方々に対しましても、心からお見舞いを申し上げ、一日もすみやかに全快されるよう祈ってやまない次第であります。  私は、申し上げるまでもなく、いわゆる行政の最高責任者であります。そういう意味で、国民に謝罪しろとおっしゃったんだと思いますが、私は、その意味においてまことに責任は重大だと思っております。もちろん直接の取り締まるべきそれぞれの機関はございますが、最高責任者として私自身がみずから省みざるを得ないと、かように思いますので、その点は御了承をいただきたいと思います。まことに残念なことである、かように思っております。  もともと私自身が、人命尊重ということについては、何よりもこれを大事な問題として、(「口先だけだ」と呼ぶ者あり)口がすっぱくなるほど申し上げております。口先だけだと言われますが、それも口にしないような方よりか、私のほうがよほどましなんだ、このことを御了承いただきたいと思います。  私はただ、森中君から、経済優先の、その立場においてこういう事故が起きたと言われることは、何だかどうも合わないような感がいたすのであります。経済優先……もちろん便益を供与する、これは交通機関の使命でありますから、そういう意味から、交通機関が国民に便益を供給する。その場合に一番考うべきことは、まず第一に安全でなければならないということであります。そういう点において欠くるところがあれば、これは運輸大臣から十分注意するだろうと思いますが、さらにまた、意見を述べられると思いますけれども、こういう点において大きな抜かりがあったと、かようなおしかりを受けること、これは私どもがこれから気をつけていかなければならないことだと、かように思っております。この点を私自身誤解のないように申し上げておきまして、以上、答弁といたします。(拍手)    〔国務大臣丹羽喬四郎君登壇拍手
  26. 丹羽喬四郎

    国務大臣(丹羽喬四郎君) 御答弁を申し上げるに先立ちまして、去る二十五日に近畿日本鉄道の列車衝突の事故によりまして、不幸、とうとい生命を失われた二十五名の方々並びに御遺族に対しましてつつしんで哀悼の意を表しますとともに、負傷せられましたる二百四十七名の方々に心からお見舞いを申し上げる次第でございます。また、運輸大臣といたしまして、その責任の重大さを痛感をしておりまして、深く遺憾の意を表する次第でございます。ただいま森中議員からいろいろ御指摘と御叱正をいただいた次第でございますが、まことに申しわけない次第でございまして、ごもっともな点が多々ある次第でございます。  御質問につきまして順次お答えをいたしたいと思う次第でございますが、まず最初に、昨年の私鉄運賃の改訂に際しまして、政府は急増する輸送需要に対してどういう輸送力の増強工事並びに運転保安工事の遂行に対しまして指示をしたか、その内容についての御質問でございますが、まず複線化の工事、また駅のホームの延伸及び配線の変更等の工事、また車両の新造、変電所、工場、車庫等の新設、増設の工事、線路の立体交差化、踏切保安設備の新設、改良等の工事を命じた次第でございます。それらに対しまして運輸省に報告がございましたところ、各私鉄はその計画どおり、ことに保安設備に対しましては実施をしているところでございまして、近鉄につきましても、ちょうど四十二年から五カ年計画を実施をしておりまして、その計画は一〇〇%実行しているという報告でございます。  また、ただいま御指摘がございましたあの大惨事を起こしました個所における複線化は、その範囲に入っているかという御質問でございますが、四十二年からの五カ年の計画には遺憾ながら入ってない次第でございます。東青山から榊原温泉間は入っておりませんが、ただいまも御指摘がございましたように、近鉄の幹線でもございますし、そしてまた、非常に山岳地帯でもございますので、最もやはり緊急を要する地点と感じている次第でございまして、これらも含めまして、早急にこれらの実施計画を樹立させまして、これを実施に移させるように指示する所存でございます。  次に、行政指導に対する基本方針につきお尋ねがございました。ただいま総理から答弁がございましたように、私、運輸大臣に就任いたしましたときから、総理から、交通は安全対策が第一である、安全第一主義で進めということを強く御指示を受けておりました。私も「ばんだい」事故のあの六十八名のとうとい人命を損傷いたしましたその直後に就任をいたしました次第でございまして、非常にその点を痛感をいたしまして、事あるたびに運輸省の幹部にも語り、また、現業をしている各交通機関に対しまして、幹部をはじめ従業員にそれが徹底するように常に指示し、そしてまた施設の面におきましても、また運輸省といたしまして、それらのほうで国費を要するものにつきましては、予算獲得の面におきましても十分配意するように常に私は申しておりましたところでございました。いま申しますと、事故を起こしましてからでは、非常に弁解ではございますが、一日事故がないことが、ほんとうにきょうはよかった、ほっとしたということを常に考えておった次第でございますが、私のほんとうに微力なために、国民の皆さまに御迷惑をかけまして何とも申しわけないと思っておる次第でございます。したがいまして、ただいま森中議員からいろいろ御指摘がございましたが、私、その点をほんとうに謙虚に、率直に反省をいたしまして、自後事故の絶滅を期する覚悟で進むつもりでございます。  また、その基本方針といたしまして、ただいま申しましたような方法によりまして私つとめている次第でございまして、ことに鉄道事業は、その公共性から申しましても、非常に国民にとりまして大きな関心の機関でございますので、これが安全を確保いたしますことが、まずあらゆる非常に最近望まれておりますスピード化であるとか、多量輸送化であるとか、定時性を確保するとかいうことの一番の根本にこれがある次第でございまして、もしどうしてもその安全性を確保できなければ、安全性を確保するためにあらゆる他の条件はこれは当分の間お預けにしてもしかたないという私は強い決心で進んでいる次第でございまして、今後も、いま森中先生の御叱正のとおり、その覚悟で進むつもりでございますので、御鞭撻をお願いをしたい、こう思う次第でございます。  また、ただいま御指摘がございました営利本位に終わっているんではないか、やはり運輸省はそれを認めておるんじゃないか、こういうことでございますが、先ほど私が申しました行政の基本姿勢、基本方針につきまして御了解をいただきたいと思う次第でございますが、しかしながら、最近の鉄道事業、ことに私鉄事業は収益性が非常に減少してきている次第でございまして、これは皆さま方も十分おわかりと思う次第でございますが、それゆえに、私どもこれは将来の問題といたしまして非常に問題でございますが、新線建設に対する意欲がなくなってまいりまして、国民の足を鉄道によっていかに確保するかということに苦慮している点でございまして、そういう点におきまして、最近の私鉄事業におきましては、付帯事業をいたしまして、それによりまして、そうしてそれの収益によりまして鉄道の収益性の少ないのを補うというものが非常に多くなっている次第でございます。私は、その点は今日の情勢上やむを得ないと思う次第でございますが、しかしながら、それによりまして、あるいは、そういったような非常に利潤の多い事業のほうに力を入れまして、いやしくも国民の足であるところの、一番の元であるところの鉄道事業のほかに重点が置きかえられては、これはえらいことであるということを常に考えておりまして、その点につきましては、ただいまの御指摘のとおり、私ども、そういうことのないように、まず第一番の私鉄経営の重点はあくまでも国民の輸送である、そしてその根本は安全第一であるということを考えまして、これを強く指導してまいりたいと思っている次第でございます。  安全に対する幹部の姿勢、またその従業員に対する訓練でございますが、私は、やはり経営をする幹部の心がまえが一番大切であると思っている次第でございます。これはただに私鉄だけでなく、われわれ運輸行政を担当する運輸省といたしましても、最高幹部が常にその姿勢になりまして、安全第一の心がまえであることが一番大切であるということを常に言っている次第でございまして、われわれの心がまえが私鉄に通じ、私鉄の経営者の心がまえが現業員に通じてくるということが一番大切でございまして、実は本日の省議におきましても、また再び重ねてそれを強く申した次第でございまして、ただいまの森中先生の御指摘どおりでございますので、私はこの点も十分心してやってまいるつもりでございます。  また、従業員に対する教育訓練はもちろんでございまして、それらをやはり私ども行政指導によりまして、具体的に従業員の教育訓練をいかに各私鉄会社が実行しているかを監査し、そうしてこれの足らないところがございましたらば、指導してまいるつもりでございます。  また、過密ダイヤにつきましてのお尋ねがございましたが、あの運転度数の制定につきましては、陸運局におきまして車両の性能、車両編成の長さ、信号機間隔等を十分勘案をして認可している次第でございます。事故の発生した単線区間の運転度数は、一時間最大上下で十六本となっておりまして、自動閉塞方式、ATS等が設置されまして、これが十分活用されておりますれば、十分安全であると報告を受けている次第でございますが、しかしながら、それらの故障のために今回の事故を起こした次第でございますので、私どもは、ただに御指摘のようなATS方式万能という考えで進むことなく、ダイヤのまた編成につきましても、これが過密になっているかどうかということを、せっかくただいま佐藤政務次官を、私の代理といたしまして現場に派遣をいたしまして調査をさせておりまして、再検討を命じている次第でございます。  また、国・私鉄に対する安全面からの総点検を行なってはどうかという御指摘でございますが、これにつきましては、昨日も私その点を直ちに事務当局に命令をいたしました。総点検を行なうような実施方法を直ちに樹立するように指令をしている次第でございます。  近鉄に対する特別監査は、佐藤政務次官が帰りまして、その報告を受けましてから後、直ちにこれを実行に移したいと、こう思っておる次第でございます。また、国会に対するその監査の結果の御報告もいたしたいと思う次第でございます。  以上の事情でございますので、御了承のほどをお願いいたします。(拍手、「補償、補償」と呼ぶ者あり)  答弁漏れがございましたので追加をいたします。  死者、負傷者に対する補償でございます。これはもとより近鉄の責任でございますが、これがほんとうに十分遺族の御納得がいき、負傷者に納得がいきますよう、十分強く指導するつもりでございますので、御了承願います。(拍手
  27. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 本日はこれにて散会いたします。   午後三時二十七分散会