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森中守義君 私は、社会、公明、民社、共産、二院クラブ、以上全野党を
代表いたしまして、今回の近畿
日本鉄道の衝突事故についてお尋ねいたしたいと思います。
それに先立ち、不慮の犠牲となられた二十五名の死亡者の御冥福を祈り、遺族につつしんでお悔やみのことばを申し、また二百数十名の重軽傷者の全快を念じ、心からお見舞いを申し上げます。
さて、今回の衝突事故は、列車事故の中で最も悪質なもので、社会正義の名において糾弾さるべきであり、徹底的にその
責任が追及さるべきものであります。
まず
総理にお尋ねいたします。
本年に入ってからの交通
関係事故は、航空
関係で、ばんだい号遭難での死者六十四名、引き続く自衛隊機による全日空機の墜落事件での死者百六十二名、また、私鉄
関係では、富士急行脱線事故での死者十四名、これら痛ましい重大事故が続発をいたしております。
これら重大事故の根本原因を要約いたしますと、経済優先のためには
国民大衆の犠牲はやむを得ないとする
佐藤内閣の
政治姿勢そのものによるものであります。
総理がいかにそうではないと言われても、客観的な事実がこれを立証いたしている。今回の
近鉄事故はその典型であります。何となれば、近鉄は新幹線を競争目標とし、スピードアップと過密ダイヤによる安全性を無視した結果、事故が発生したものであります。その犠牲の代価はあまりにも過大であります。本来
佐藤総理は、自衛隊機による墜落事件により
政治責任をとるべきでありました。
国民はそれを待望したのであります。しかるに、今日まで漫然と
政権の座にすわり、国際的には
中国問題で
国際社会の潮流にさからって孤立化を深め、そしてまた、重大事故の発生を招き、内外ともに
佐藤内閣不信の声はいまや頂点に達していると断言できます。
総理はかかる現状に対しどのように
考えておられるのか。また、今回の
近鉄事故に対しどのような
政治責任をとろうと
考えておられるか。そしてまた、あなたの言う人命尊重の精神は、今回の事故に対し、どのように改めようとされるのか、今後、事故再発を絶滅すると約束できるかどうか、その
見解をお伺いいたします。同時にまた、今回の犠牲者に、この
答弁を通じ、謝罪さるべきと思いますが、いかがでございましょうか。
次に、具体的な問題について運輸大臣にお尋ねいたします。
政府は、昨年十月私鉄運賃値上げに際し、輸送力増強と同時に、安全対策の確立を条件に認可したはずでありますが、そのことは今回の事故により、全く裏切られた結果になりましたが、一体運輸大臣は、認可に際し、いかなる安全対策を指示されたのか、その具体的な内容を明らかにされたいのであります。また、その指示に対し、私鉄各社は今日までどのような安全対策を実施してきたのかもお伺いいたします。また、その指示の中に、今回の近鉄の事故地区の複線化計画が入っていたかどうか。もし入っていなかったとするならば、運輸大臣の
責任は免れません。
次に、私鉄に対する運輸大臣の行政指導の基本
方針についてお尋ねします。私鉄の
わが国交通輸送分野における使命はきわめて重要であります。その公共性も強く、大都市周辺における輸送人員は国鉄をしのぎ、約五〇%を私鉄が分担をいたしております。それだけに、運輸大臣の私鉄に対する行政指導も、公共性の堅持と安全確保の面からきびしい
態度で臨まなければなりません。しかるに、今日の私鉄経営の実態を見ますならば、収益性の少ない鉄道部門への投資を避け、収益性の高いデパート、ホテル、不動産等あらゆる方面に惜しみなく投資を続けています。ために、鉄道部門の安全対策が犠牲になっていますが、
政府は、兼業部門の規制を強め、私鉄が本来の鉄道事業に専念し、もってその安全が確保されるよう、強力な行政指導が必要であると思いますが、運輸大臣の所見をお伺いいたします。
次に、近鉄の安全に対する基本姿勢についてお尋ねいたします。近鉄は、
昭和二十三年花園駅事故での死者四十九名、これをはじめ、
昭和三十七年より今回の事故を含め八件の大事故を発生せしめました。死傷者は何と五百十七名の多きに達しています。他面、
昭和四十五年の収入は五百六十三億円、そのうち兼業部門収入は百八十億円であります。一体このような実情にある会社が公共性を持つ健全な私鉄会社と言えるでありましょうか。また、今回の事故に際しての会社側の
措置はきわめて不当であります。いやしくもすべての被害者が憤激している事実は、企業の傲慢不遜さを見せつけたようなものでありまして、絶対に容赦できません。衝突事故といい、穏当を欠く
措置といい、近鉄の社会的
責任を運輸大臣はどのようにとらせようとされるのか、明確な
お答えをちょうだいしたいと思います。
次に、近鉄複線化の問題についてでありますが、昨日の運輸委員会で、今回の
近鉄事故線区をなぜ今日まで複線化ができなかったのかとの
質問に対し、運輸当局は、あの場所は山岳地帯で建設費が非常に高くつくためにおくれていたという趣旨の
答弁がありました。今日なお、近鉄においては、全線に対し四四・三%、大阪線区で一六・一%の単線区間が残っております。兼業投資の一部でも、これらの複線化に回し、事故発生線区が複線化していたならば、今回の事故は当然防げたはずであります。運輸省の今日までの行政指導が業界の過保護により適切かつ敏速な
措置がとられていなかったことに対する強い不信の声が高まっています。いまこそ行政指導の姿勢を正すべきだと思いますが、運輸大臣の
見解はどうでありましょうか。また、近鉄の複線化計画をも同時に明らかにしてもらいたいと思います。
次に、今回の事故原因として、ブレーキの故障、ATSの故障、運転手の不注意などがあげられていますが、いずれも安全対策上きわめて
原則的要因に基づくものでありまして、日ごろの運輸省の指導、また、安全に対する会社の姿勢に重大な欠陥があったと私は思います。それに加えて、営利追求のための過密ダイヤの編成であります。私は、この際、ATS万能主義的安全対策を根本的に改善をするとともに、特に会社幹部職員の安全に対する教育訓練の徹底をはかるべきだと思いますが、運輸大臣の所信を伺います。また、過密ダイヤに対する安全面からの再検討をする必要があると思いますが、あわせて
お答えいただきたい。
次に、私は、国鉄、私鉄会社等に対し事故絶滅を将来約束できる安全総点検を、この際、
国会を通じて約束してもらいたいと思う。それは、
政府が重大事故発生のたびごとに、点検を行なってきたとは言いながら、あとを断たない重大事故の発生からして、何ら効果があがってはいないからであります。今回の事故を見ますると、その危険性は、単に近鉄のみに限らず、ひとしく全鉄道部門が内蔵している要因であるといっても過言ではありません。この際、徹底した総点検を実施し、その結果、不良会社に対しては、厳重な警告と同時に、改善命令を出すべきであると思いますが、運輸大臣の
決意をお伺いしたい。
また、近鉄に対しては、この際、特別監査を実施すべきでありましょう。運輸大臣いかがでございましょう。
なお、総点検実施の結果と、とられた
措置、一連の経過について、当然
国会に報告を求めたいと思いますが、お約束できますか。
最後に、死傷者に対する補償の問題についてであります。今回の事故は、近鉄の
責任に帰すべき事故であることは、言うを待ちません。もちろん近鉄が万全を期すべきことは当然でありましょう。同時に、
政府もまた、その
責任において特段の配慮がなさるべきであると思います。その所信を
最後にお尋ねいたしまして、私の
質問を終わりたいと思います。(
拍手)
〔
国務大臣佐藤榮作君
登壇、
拍手〕