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1971-10-21 第67回国会 参議院 本会議 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十月二十一日(木曜日)    午前十時八分開議     —————————————議事日程 第三号   昭和四十六年十月二十一日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第二日)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  議事日程のとおり      —————・—————
  2. 河野謙三

    ○議長(河野謙三君) これより会議を開きます。  日程第一 国務大臣演説に関する件  一昨日の国務大臣演説に対し、これより順次質疑を許します。鈴木強君。    〔鈴木強君登壇、拍手
  3. 鈴木強

    鈴木強君 私は、日本社会党を代表し、総理所信表明演説と、外務大蔵大臣演説に対し、沖繩繊維中国経済政治姿勢の五点についてお尋ねいたします。  第一は、沖繩返還についてであります。沖繩を核も基地もない、平和と繁栄の島にして返せ、これが戦後二十六年の長きにわたり異民族支配のもとにあらゆる苦難に耐え忍んできた百万沖繩県民の心からなる叫びであり、一億国民すべての悲願であります。  しかるがゆえに、日本社会党沖繩の即時、無条件、全面返還要求し、その実現のため戦い続けてまいりました。この間、政府に対し、返還交渉にあたっては、一切の核兵器毒ガス攻撃用兵器特殊部隊VOA放送等撤去または撤退させること。米軍沖繩からの自由出撃は認めないこと。沖繩県民の諸権利を守り、沖繩経済の発展と県民生活の向上をはかること。形式のいかんを問わず秘密の取りきめは一切行なわないこと。以上の諸点を認めさせ、協定の中に明らかにして、国民に疑惑を与え、不満や不安を抱かせないようにすることを強く要求し、政府最善努力を求めたことは御承知のとおりでございます。いまここに政府批准承認を求めてまいりました返還協定内容は、日本民族の宿願とはほど遠いものであり、百万県民苦しみに報いるものではありません。もちろん、外交は相手のあることであり、必ずしもわれわれの要求のすべてがいれられるものでないとともよく承知しております。私は政府の今日までの御労苦に対しては敬意を表しますが、この協定に基づいて沖繩返還されることになれば、返還とは名ばかりで、返還後の沖繩は現在の沖繩の姿とほとんど変わらず、百万県民はいまと同じ苦しみを続けていかなければならず、返還の意義は全くないのであります。したがいまして、日本社会党は、まことに残念でありますが、この協定には賛成することができません。  以下、問題点を指摘しつつ政府の御見解を承ることといたします。  その一つは、核抜き本土並みについてであります。核抜きについて総理は、佐藤ニクソン共同声明にうたわれたとおり、協定第七条に明記したと言われておりますが、第七条のどこを見ても、核の「か」の字も見出すことができず、大きな疑問が残されたままになっております。中曽根元防衛庁長官は、本年五月の国会で、沖繩返還される際、核が取り除かれているかどうかを点検するよう努力すると言明され、総理もこれに同意されたのであります。この前の代表質問でわが党の加瀬完矢山有作議員がこの点について再確認の意味でただしたところ、総理は、核の点検米軍施設の中に入ってやることでありますので、米軍の同意を要することは当然であり、これ以上申し上げる必要はないように思いますと、わけのわからない答弁をして、前言をひるがえすような態度をとられたのであります。また増原前防衛庁長官に至っては、わが党議員の名ざしの質問に対し全く答えないという、不誠意きわまりない態度をとったのであります。  私は、総理が言われるように、ほんとうニクソン米大統領との間で核抜きが約束されているというならば、どうして国民によくわかるように協定の中にずばりと明文化してくれなかったのでしょうか。明文化していないから疑問が起こる。疑問が起こるから、事前の策として、点検によって核抜きを実証してくれと言えば、努力すると答える。時がたつとことばを濁してあいまいにしてしまう。これでは、総理がいかに声を大にして信用してくれと言われても、国民疑念を晴らすことはできないのであります。毒ガス兵器撤去は、政府努力米国の賢明な配慮によって、種々問題はありましたが、とにかく撤去が実現できまして、ほんとうによかったと思います。その際米軍は、現場に至るまで、日本自衛隊を含む調査員に調査させているのでありますから、核の撤去についてもできないということはないと思います。総理は、協定第七条との関連で、核抜きについては、予算の面でも配慮されているからだいじょうぶだとも言われています。なるほど、政府核兵器等撤去費として約七千万ドル米国に支払うことにしていますので、沖繩に戦略・戦術両面にわたる多くの核兵器のあることは、日米双方ともに認めているのであります。  総理は、日本は非核三原則を堅持しているから心配ないと申されますが、核の撤去米国を信頼する以外にないというのでは、あまりにも不合理であり、軟弱外交ではありませんか。  私は、沖繩が、核が撤去されたかどうかをあいまいにして返還されることは、絶対に避けねばならないと思います。したがって、総理は、あなたの政治生命をかけて、核抜き点検ができるよう最後まで努力すべきであります。もしも、このことができないとすれば、国民疑念は解けず、核隠し返還だと言われても一言もないでしょう。総理の御見解を承りたいのであります。(拍手)  なお、総理は、昨日の衆議院本会議で、核抜きについて、わが党赤松議員に対しては、確認できないと答え、公明党の矢野議員に対しては、何らかの方法で確認したいと答えていますが、一体どちらが本物ですか、はっきりさせていただきたいのであります。  また、核の再持ち込みについても、はっきりとした保障はありませんが、事前協議にかかった場合の答えはすべてノーだと確認しておいてよろしゅうございますか、あわせてお答え願います。  さらに、核撤去費七千万ドル内容と積算の根拠を明らかにしていただきたいのであります。  次に、総理は、本土並み返還だと言われますが、基地の中に沖繩があるといわれるほど、本土とは比べものにならない濃密な基地のあり方は、本土並みとは絶対言えません。加えて電波法上許されないVOA放送極東放送を認めたり、本土にない特殊部隊の存続を容認したりしておりますので、とうてい本土並み返還などとは申されません。むしろ本土沖繩化心配すら出てくるのであります。総理の御見解を承りたいのであります。  その二は、返還に伴う米軍基地についてであります。協定第三条に基づく了解覚書を見ますと、広大な米軍基地はほとんどそのまま残ることになっています。すなわち、基地リストによれば、A表返還されないものは八十八、B表の復帰後順次返還されるものは十二、C表の復帰と同時に返還されるものは三十四となっております。このリストA表は八十八になっておりますが、実際には、いままで百二十四あった基地を八十八に整理統合したものであり、たとえば嘉手納弾薬庫地区という新名称となった基地は、毒ガス貯蔵で問題になりました知花弾薬庫ほか八基地一つにしたものであり、コザ、石川等三市四村にまたがり、その面積は三千二百七十七万五千平方メートルに及ぶ大基地となっています。このような例はほかにもかなりありますが、これはとにかく基地の数を減らすことによって、風当たりを少しでも減らそうとする意図が露骨に出ているのであります。  外務省が本年六月発表した資料によりますと、沖繩の全面積は二千三百八十八平方キロメートルとなっていますが、このうち米軍軍用地の総面積は三百五十三平方キロメートルとなっており、沖繩全土に占める米軍基地の割合は一四・八%に当たります。この米軍基地は、返還後も、ただいま申し上げましたように、A表のとおり八十八カ所、二百九十四平方キロメートルが、引き続き米軍基地として使用されることになっています。結局、返還される基地面積はわずか五十平方キロメートル、二・五%にすぎず、復帰後も全体の一二・三%の米軍基地が残されることになります。  特に、戦術核兵器の積めるF105戦闘機や、SR71戦略偵察機が常駐する嘉手納飛行場、兵たんに重要な役割りを果たす那覇港湾施設核兵器の貯蔵がうわさされております嘉手納弾薬庫、広大な施設を誇る牧港補給地などの重要基地は全く手つかずで残っているのであります。  これでは、沖繩は返ってきても、それは形だけのものであって、実体は復帰前と同じではありませんか。どうしてもっともっと基地の縮小ないしは撤廃ができなかったのでしょうか、総理にお伺いいたします。  また、A表返還されない基地八十八カ所の中に、布令第二〇号によらない、いわゆる基地でない基地七カ所が含まれていますが、現地調査を十分しないでリストアップしたことは間違いであり問題だと思います。これらの土地は、当然地主に返還されるべきだと思いますが、お答えを願います。  その三は、軍用地強制使用の点であります。現在沖繩で布令第二〇号によって米軍土地を強制収用されたものは五万戸に達しております。そのうち、生活基盤をなくしてやむなく移転したものは一万五千戸となっているのであります。これらの方々は耐えがたい犠牲をしいられ、生活苦による多くの悲劇も生じて、大きな社会問題となっておるのでございます。政府はこのような重要な県民感情には目をおおって、こともあろうに、この国会に、沖繩における公用地強制使用に関する法律案提案したのであります。この法律案は、復帰後の沖繩に、米軍自衛隊軍用地を確保しようとするのがねらいでありまして、土地所有者が、日本政府借地契約に応じないときは、五年間に限り、従来どおり強制使用できることになっております。これは沖繩県民軍用地に対する感情に配慮を欠き、また、本土では六カ月間だけとなっております使用期間を五年間としたのは、不当な権利の侵害であり、さらに、自衛隊は平時において、土地を強制収用することはできないことになっておりますので、この法律案は不当なものであります。このように憲法上、重要な問題点が出てまいっておりますので、この法律案は撤回をして再検討していただきたいのであります。  なお、政府は、復帰後の沖繩に、自衛隊をどのくらい配置しようとしておられるのか、兵員、装備を含めてその計画をお示し願いたいのであります。同時に、自衛隊基地使用計画はどのようなものでございますか、あわせてお答え願います。  その四は、沖繩の開発についてであります。今日沖繩では未曾有の干ばつによって農産物は全滅し、県民飲料水にもこと欠き、ドルショックによる経済不安と物価高騰によって苦んでおられます。政府は、沖繩救済のためどのような手を打たれたのでございましょうか。私は、非常になまぬるいように思います。また、復帰後の沖繩開発計画基本方針は何か、明らかにしていただきたいのであります。  政府は、去る八日、沖繩県民の円の変動相場制移行による損失の補償措置をとられましたが、これは当然のことではありますものの、政府の勇断であったことは評価されてよいと私は思います。しかし、今度の措置沖繩県民手持ちドルに対する最終的な保護措置とはなっておりませんので、いろいろな矛盾も出ておるようでございます。琉球政府は九日の提示額を基礎に、通貨をドルから円に交換するように本土政府要求していくことをきめておりますが、私はこの際、政府はこの要求をいれて、矛盾解消のため、最善を尽くされるよう要望いたします。御見解を承りたいのでございます。  最後返還協定の再交渉沖繩の非軍事化についてお伺いします。十月七日に湯川秀樹氏をはじめ百六十八名の学者、文化人が、両院議長に対し、沖繩の非軍事化を求める声明文を提出しております。この声明返還協定の基礎となっている一昨年十一月の日米共同声明は、米中対決の冷戦の論理によって作成されているが、今日は、ニクソン大統領訪中決定など、アメリカの対中国政策が大転換しているので、この事情変更に基づいて再交渉すべきだとしています。特に沖繩を非軍事化することは、沖繩県民の平和と人権の保障にとって必要条件であるばかりでなく、アジア国民にとっても、日本軍国主義復活の懸念を解消することで必要だとしています。このために米軍基地全面撤去ずるだけでなく、沖繩への自衛隊配備も認めるべきでないと言っています。このため国会がこの旨を決議して、政府協定の再交渉を求むべきだといたしておるのでございます。  私は、この声明は、まことに時宜に適した、筋の通った意義ある提案だと思います。確かに二年前と今日では、アジア情勢世界情勢も大きく変わっておりますので、情勢変化に伴う再交渉ということは、当然考えてしかるべき問題だと思います。私は、協定問題点を幾つか指摘してまいりましたが、これらの疑念不満や不安がなくなって、一億国民が双手をあげて復帰を祝福できるような、りっぱな協定が結ばれるためにも、再交渉はぜひやるべきだと思います。  総理は、自民党の総裁でもあります。わが国政治最高責任者として、勇気を持ってこの湯川提案政治に生かし、永遠にその名を歴史に残す御決意はありませんか、お伺いいたします。(拍手)  このほか、対米請求権教育委員任命制、教職員の地公法適用等重要な問題がありますが、時間の関係で他の機会に譲ることにします。  第二は、繊維問題についてお伺いします。政府は、このたび三年越しの懸案となっておりました繊維問題について、業界の猛烈な反対と国会決議を踏みにじって、対米輸出規制政府間協定に仮調印したのでありますが、これは佐藤総理米国貿易上の国際ルールを全く無視した不合理きわまるおどかし外交に屈服したものであります。心から憤激を覚えるとともに、絶対にこの協定を認めることはできません。総理はいままで何回となく、政府間協定はやらないし、見切り発車もしないと、かたく国民に約束してきたのでありますが、それをすべてほごにして、繊維業界を死滅に追い込むような規制を、なぜのんだのですか。この問題については、早くから総理ニクソン大統領との間の密約説が流れておりましたが、今度のアメリカのかつてない強硬な態度とえげつないやり方を見ると、沖繩繊維との政治的取引があったのではないかとの疑いを強くするものであります。総理が、業界の反対と国会の議決を無視して政府間協定締結に踏み切られた理由は何か。また政府は、との協定は、国会承認は必要ないという態度をとっておられますが、このような、わが国貿易業界の浮沈にかかわる協定は、当然国会承認を要するものであると考えますが、いかがでございますか。さらに、協定実施によって生ずる損害の補償は、具体的にどのようになさるおつもりでございますか。また、この協定の締結によって、同様の規制が自動車、テレビ、家電等の業種に波及するおそれはないかどうか、お答え願います。  第三に、中国問題についてお伺いします。  ただいまニューヨークで今年度の国連総会が開かれておりますが、この総会の重要課題一つは、何といっても中国国連加盟問題だと思います。去る七月十五日ニクソン大統領が、わが国頭越しに劇的な訪中計画を発表したことによって、中国をめぐる国際情勢は新しい段階に入ったのであります。あれからすでに三カ月余を経過しておりますが、この間マスコミは、中国論議に明け暮れしたと言っても過言ではないと思います。また、政界、経済界からも多くの方々が中国を訪問して、日中国交回復への具体的行動を起こしておるのであります。特に関西財界代表団が、平和五原則政治原則前提として訪中したこと、富士銀行日中貿易四条件を受け入れたこと、地方議会が続々と国交回復決議をしていること、これらはきわめて注目に値するものだと思います。このように米中接近は、日中国交回復世論を急速に、しかも爆発的に高めているのであります。しかし、この高まった世論も、佐藤総理には通用しないようであります。総理裁断によって、わが国米国提案中国代表権についての複合二重、逆重要の二決議案共同提案国になることを決定したのであります。二決議案は、総理が何と弁明しようとも、一つ中国一つ台湾を認めたものであり、ひいてはこれに反対する中国を事実上国連から締め出そうとするものであります。日中国交回復中国招請内外世論に背を向けるばかりか、日中間国交正常化を困難にし、わが国の平和と国益に障壁をつくることになり、まことに遺憾と言わなければなりません。中国は、総理共同提案国になったことに対し、これは中国敵視政策であるときめつけております。そうして、佐藤内閣との間では、日中国交回復は不可能だとの批判をいたしておるのであります。総理は、共同提案国になったことは、中国政策の大転換であり、国益に合致した適切な措置であると述べられましたが、私は全くその逆だと思います。また総理は、中国一つであり、中国台湾の双方に議席を与えるということはあくまで経過措置であると強調されたのでありますが、このことは、中華人民共和国中国人民を代表するただ一つ合法政府であり、台湾中国領土の一部であるという御認識の上に立っての経過措置であるかどうか、また、経過措置というのは今回限りのものであるかどうか、お伺いいたします。  国連総会は十八日から中国代表権の討論に入っています。政府は、二決議案成立工作のため、急遽加瀬、福永の両氏を国連に派遣しておりますが、最近の情勢では、二決議案の可決はむずかしいと見られております。総理は、二決議案が否決された場合は、当然政治的責任をとられるものと思いますが、御心境を承っておきたいのであります。同時に、アルバニア決議案が可決された場合、わが国中国に対してどのような態度をとられるおつもりでございますか、お伺いをいたしておきます。  ニクソン大統領は十月十二日の記者会見で、中国を訪問したあと、来年五月にはモスクワを訪れ、ソ連首脳と会談することを発表いたしました。中国は、四つの敵の筆頭にあげていた米帝国主義者大統領を自国に迎え入れるという柔軟外交に転じているのであります。このように大きく転換する国際情勢の中で、わが国がいつまでも対米従属外交を続けていくことは、世界の孤児になることであり、これこそ国益に合致するものではありません。私は、わが国世界の大勢に乗りおくれることのないよう心から願うものであります。  私は、総理提案いたします。あなたは、中国代表権に示したようなあいまいな態度を捨てて、中華人民共和国中国人民を代表する唯一の合法政府であり、台湾中国領土の一部である、したがって、日華平和条約は破棄するという態度をはっきりときめられ、直ちに二決議案共同提案国からおり、中国国交回復の話し合いに入っていただきたいのであります。私はこのことが、いま日中国交回復への道を切り開くための残されたただ一つの方法だと思います。  福田外務大臣は、台湾政権を横目でにらみながら、一昨日の演説で、中国との国交が開かれていないことは不自然である。国交正常化のため真正面から取り組むと述べられました。これは次期総理を意識した発言のようにもとれますが、ほんとう外務大臣真正面から取り組むというのであれば、台湾政府を横目ににらんでおったのでは不可能であります。外務大臣の御所見を承ります。  第四は、経済問題についてお伺いします。  ニクソン米大統領は八月十五日、突如として金とドル交換停止、一〇%の輸入課徴金の徴収を内容とする新経済政策を発表して全世界を驚かせたのであります。この金ドル交換停止ブレトン・ウッズ協定の公然たる違反であり、IMF体制基本的前提を否定する背信行為であります。このようなアメリカの一方的措置によってIMF体制は事実上崩壊したものと言えましょう。  わが国経済は、昨年以来、長期にわたり不況を続けてまいっておりましたが、アメリカドルショックはその上に加えられたダブルパンチとなり、わが国貿易は混乱におちいり、経済界は深刻な先行き不安に包まれているのであります。政府は八月二十八日から変動相場制をとっておられますが、これは近い将来、円平価の切り上げによって固定相場制に移行するという前提のもとで機能しています。したがって、巨額の円投機のおそれがあるため、きびしい為替管理が行なわれ、その結果、貿易取引は困難となり、一〇%の輸入課徴金に加えて、輸出に対して大きな障害となっております。特に輸出関係企業の打撃は大きく、とりわけ中小企業の面では早くも倒産や転廃業が続出しています。また、輸出契約は事実上ストップ状態になっており、既契約をキャンセルされたり、商社から商業手形決済期日を引き延ばされたり、断わられたり、さんざんの目にあわされています。  ニクソン大統領は、アメリカ経済が五百万人の失業者を出し、消費者物価の上昇は五%をこし、国際収支の赤字も公的決済ベースで百億ドルの巨額に達し、ニクソンが公約した、七二年夏までに失業率を四・五%にし、物価上昇率を三%に押えるという政策が不可能となったため、来年に控えた大統領選挙に対する政治的危機感から今度のドル防衛政策実施に踏み切ったものと思います。政府米国の新経済政策実施事前に予測できなかったのでしょうか。また、当面ドルショックによって大打撃を受けている中小企業救済策はなまぬるいものではないかと思うのでありますが、いかがでございますか。  御承知のとおり、ドル防衛が発表されるやいなや、欧州各国外為市場を閉鎖したのでありますが、政府は、ユーロダラーのような思惑資金が流入してくる心配はまずない、また、ドル売りがあってもたいした額にはならないだろう、こういう判断から、ドルを買い上げても固定相場を維持することができるという過信から外為市場を閉鎖しなかったように思います。ところが、八月十六日、十七日の両日だけで十三億にのぼるドルが売られ、八月十六日から変動相場制に移行した八月二十八日までの十二日間で、日銀政府にかわって商社外為銀行から買い取ったドルは五十六億四千万ドルに達しているのであります。当時、円は変動相場制に移行して約六%切り上げられましたので、十二日間で、邦貨に換算しますと実に千二百億円、みすみす損をしたことになるのであります。こうして日銀外為会計に大きな穴をあけたのでありますが、この穴埋めは、国民の税金によって行なわれることになり、現に今度の補正予算日銀からの納付金が六百九十八億円減額補正されているのであります。政府為替管理に対する判断の甘さと国際感覚のなさがこのような損失を生じた原因になっておるのでありますから、その責任は重大と言わなければなりません。外為銀行中小零細企業輸出ドル手形の買い入れを停止しながら、大商社の手形は買い上げて日銀へ売っていたことは、見のがすことができません。ましてや、どさくさにまぎれてぼろもうけをした者がいたとすれば、全くけしからぬことだと思います。日銀が買い上げた五十六億ドル商社別銀行別の内訳を明らかにしていただきたいのであります。  また、日銀井上理事は、事もあろうに、変動相場制移行の前日、大手銀行を回って何かヒントを与えたことが問題となりて、すでに当院決算委員会でもこの問題は取り上げられております。井上理事は、水田大蔵大臣佐々木日銀総裁との間で最終的に変動相場制移行をきめたときに立ち会っていたともいわれているのでありますが、いずれにしても、あの時期に、めったに銀行には出かけない日銀の理事がわざわざ銀行回りをしたことは、そのこと自体非常識な行動ではありませんか。それでは国民疑念を抱かせるのは当然であります。国民の前にその真相を明らかにしていただきたいのであります。  今度のIMF総会コナリー米財務長官は、輸入課徴金の撤廃の交換条件として、日本の厳重な為替管理、なかんずく、平衡操作による市場介入をやめることを提案しているのでありますが、これは人為的市場介入をやめさせ、為替レートの決定を市場の自由な実勢にまかせ、実質的に変動相場の幅を拡大することによって大幅な円切り上げをねらったものだと思います。このコナリー米財務長官が十一月の初めに来日されるようでありますが、政府はこのコナリー提案を受け入れられる意思があるかどうか。また、変動相場制はいつごろまで続く見通しか。円切り上げの幅はどのくらいに落ちつくのか。同時に、崩壊したIMF体制を立て直して国際的な通貨不安を一日も早く解消することは緊急の課題であります。政府の新国際通貨体制に対する考えを承りたいのであります。  政府は十二日の閣議で、ドルショックによるわが国経済の不況を打開するため、景気浮揚策として、公共事業の拡大と年内減税を盛り込んだ二千四百四十六億円にのぼる補正予算と第三次財投計画二千六十四億円の追加をきめ、同時に、この裏づけとなる今年度経済見通しの改訂を行なったのでありますが、率直に言って、これが景気回復のための最善の策かどうか疑問に思うのであります。特に実質経済成長率を五・五%にし、物価の上昇率は従来どおり五・五%とそのままにしておりますが、最近の消費者物価は、九月の発表を見ても、前年同月比一〇・三%と異常な値上がりを見せておりまして、いかにこの改訂が政治的含みのあるものであるかがよくわかるのでございます。  補正予算内容も、新規財源の半分近くは赤字補てんに回されることになっており、円切り上げが必至の情勢の中で、沈滞する民間設備投資に活を入れる効果があるかどうか疑問であります。むしろ七千九百億にのぼる国債発行は金融緩慢を招き、社会投資という事業の性格もあって、地価の高騰をはじめインフレを助長し、卸売り価格が上昇に転ずるおそれが生ずることも考えられるのでございます。そして景気浮揚の効果をあげないままインフレを招来し、不況下の物価高という、総理の御心配になっている危険性が出てくることは必至と思いますが、蔵相の御見解を承りたいのであります。  総理の指示によって年内減税が行なわれることとなりましたが、減税の内容は、給与所得控除が見送られただけでなく、減税分の半分は年収三百万から七百万までの層に向けられておりますので、年間三百万以上の収入のある層は、給与と申告を合わせても、納税者全体の三%に満たないのでありまして、これでは景気振興策とはならず、高額所得者の優遇減税だと言われてもしかたがないのであります。消費需要の喚起ということなら、非課税の低所得者対策や、生活保護費、老齢年金の引き上げなど、社会保障の充実なども同時に取り上げなければ効果はないと思うのであります。(拍手)  わが国の景気はいつごろ回復する見込みでありましょうか、公定歩合の引き下げを含む金融政策はどのようにしようとなされておりますか、お伺いいたします。  最後に、総理政治姿勢についてお伺いいたします。  さきに自治省が発表した昭和四十五年分の政治資金収支報告によりますと、その額は実に三百三十二億円と史上最高を記録しているのであります。この報告を見て、いまさらのように驚かされるのは、与党自民党と財界、業界との政治資金面での密着度の高いことであります。今日国民の多くが、不信の目をもって政治を見るようになったのは、一つ政治と金との関係に不明朗なものを感じているからだと思います。いまこそ総理は問題の深刻さに目を開き、政治浄化のために、思い切った政治資金規制の強化を断行すべきであります。このための規正法改正を次の通常国会に必ず出すと約束していただきたいのでありますが、総理の御所見を承ります。(拍手)  次に、最近の総理政治姿勢を拝見しておりますと、中国代表権の裁断のしかたや繊維政府間協定の仮調印のやり方に見られるように、世論を無視した非民主的、独断的態度が強く出ていることはまことに遺憾にたえません。今日の世相は、まさに物情騒然たるものがあり直すが、この要因が、激動の時代を迎えた内外情勢に敏速、適切に対応することができない佐藤内閣政治姿勢にあることは間違いないのであります。国民はいま、毎日の暮らしの中で高物価、重税、公害によって苦しみ、悩んでいます。そして国民の多くは、総理の内政、外交両面の施策に深い失望を感じ、政治不信をさらに一段と強めているのでございます。  最近行なわれた毎日、読売、朝日の三大新聞の世論調査の結果を見ると、佐藤内閣の支持率はわずか二三%となっております。これは昭和四十一年九月のあの黒い霧事件当時の支持率二六%を下回り、史上最低の支持率となっております。私は、これらの世論調査から判断いたしますと、もはや佐藤内閣には内外の困難な問題を処理する力はなくなり、政権交代の時期に来ていると思うのでありますが、この際、総理の御心境をお伺いいたしまして私の質問を終わります。  どうもありがとうございました。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手
  4. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 鈴木君にお答えいたします。  まず、沖繩返還問題につきまして、鈴木君から、反対の立場を表明されながらも、政府の今日までの努力に敬意を表すると評価していただいたことに感謝をいたします。ありがとうございます。今後とも、党派を越えて、国運の伸展のため、お互いの責任を尽くしてまいりたいと存じます。  そこで、まず、沖繩問題について具体的なお尋ねがありましたので、順次お答えをしたいと思います。  核抜きの問題でありますが、御承知のとおり、日米共同声明第八項及び沖繩返還協定第七条で、沖繩核抜き返還は明確に約束されているのであります。この点については、もはや御疑問のないところだと思います。そこで、点検の問題でありますが、何ぶんにも国際法上の問題がありまして、強制することはできませんが、政府としては、日米間の信頼と友好関係に基づいて何らかの形で確認を得たいと希望しております。  また、核持ち込みについての事前協議の問題でありますが、復帰後、本土と同様、非核三原則が適用されることは申すまでもありません。  核撤去については、返還協定第七条の規定において、沖繩核抜き返還の義務が明確にされました。これは、日米共同声明第八項の趣旨を受けたものであります。しかして、沖繩返還に伴う対米支払いとして三億二千万ドルが合意されましたのでありますが、その中に約七千万ドル程度が核の撤去費用として含まれているものと御理解いただきたいと思います。(「中身を言え」と呼ぶ者あり)その中身を声えとおっしゃいますが、ただいまきまっていることは、ただいま申し上げる程度でございます。  また、返還後も基地の密度が濃く、VOA放送が残ったりして、本土並みとは言えないとの御指摘であります。沖繩には安保条約がそのまま適用され、米軍は、わが国の安全、極東の平和と安全に寄与するという安保条約第六条のワク内においてのみ、施設・区域の使用が認められるのであります。基地の密度の点については、本土の場合でも、時間をかけてようやく現在の姿になった点に思いをいたしていただきたいと考えるものであります。政府としては、今後、沖繩基地の整理縮小については、現地の要望をも十分に聞いて、真剣にこれと取り組む決意であります。  次に、米側の沖繩における土地等の使用権取得の方法としては、布令第二〇号によるもののほか、関係地主の代表たる市町村長の使用許可によるもの及び所有者との直接契約によるものがあり、復帰時に施設・区域として提供される設備・用地は、必ずしも布令二〇号に基づくものには限られないと承知しております。  次に、公用地等の暫定使用法案は憲法上問題があるから撤回してくれとの御要望がありました。しかし、この法案は返還前提ともなっているものでありまして、自衛隊及び米駐留軍の施設、並びに水道など県民の日常生活に不可欠な施設に関する土地または工作物について、その使用の権原を取得するまでの間、暫定的に国または地方公共団体が当該土地等を使用できることとしたもので、憲法に抵触するものではありません。もちろん、政府としては、公用地等の取得については、できるだけ地主等関係者の合意を得るよう最善努力を払う所存であります。  沖繩への自衛隊の配備計画基地使用計画でありますが、具体的にはただいま検討中でありますので申し上げませんが、沖繩本土復帰後、同地域の防衛責任は当然わが国が負うことになるので、陸上警備、民生協力、沿岸哨戒、港湾防備等及び防空の諸任務を達成するために最小限度必要な所要の部隊を配備する計画であります。このため必要となる施設については、それぞれ現に在沖米軍がこれらの用に使用しているものを引き継ぐことにしております。  次に、円の変動相場制によっての県民損失を補うため政府のとった措置について、勇断であるとのおほめのことばをいただきました。今後とも県民の福祉向上のために、開発計画や干ばつ対策等の対策は、政府としてできる限りの努力を傾ける所存であります。  沖繩問題の締めくくりの御意見として、湯川提案をいれて、沖繩を非軍事化するため再交渉に踏み切れとの御提案でありますが、私は、一日も早く祖国復帰を実現することこそが百万県民の長きにわたる御労苦に報いる最善の道であると信ずるものであります。今国会でぜひとも協定締結の御承認を得、関連法案を成立させていただきたいと念願しております。衷心より御協力をお願いするものであります。  次に、繊維問題についてお答えします。  まず、政府国会決議業界の意見を十分尊重する意向であることは、これまでの交渉態度で御了解いただきたいと思います。ただ、今回の措置は、米国のよりきびしい一方的輸入規制という新しい事態に対処して、これを防止ずるとともに、悪化している日米経済関係の改善のためにまことにやむを得ないものでありました。  なお、沖繩返還その他の問題とのからみでニクソン大統領との密約があったのではないかとの推測をしておられる向きもありますが、そのようなものは一切ありません。  次に、困難な事態に直面するおそれのある繊維産業に対しては、財政、金融、税制等各般にわたる援助措置を講ずることとしており、現在その準備を進めているところであります。  また、政府間協定国会の批准を受けるべきであるとの御意見でありますが、政府は、これを行政取りきめとして処理する方針であり、したがって、国会承認を得る必要はないと考えております。  次に、これが悪例となって他の業種に波及するおそれがないかという問題につきましては、今回の協定締結によって日米間の最悪の事態を避けることができ、これを契機として日米の経済関係が改善され、他業種への波及を抑止し得るものと、さように考えております。  次に、中国問題についてお答えします。  国連における中国代表権問題については、政府は先般、中華人民共和国政府国連の代表権を確認することに踏み切るとともに、他方、経過的措置として、中華民国政府国連議席は維持されるべきであるとの基本方針を決定いたしました。そうして、その後各方面の意見を十分聴取した結果、この基本方針国連において具体的に推進するには、米国をはじめ多数諸国が協議して作成したいわゆる変形重要問題決議案といわゆる複合二重代表制決議案共同提案国となってこれら決議案の採択のため努力することが、前述の基本方針実現のため最善であるとの結論に達し、そのように決断したものであります。(「最悪だ」と呼ぶ者あり)共同提案国になったことが間違いとは考えておりません。また、繰り返し申しているとおり、政府はあくまでも中国一つであるとの基本的認識に立っております。  今般二つの決議案共同提案国となることに決断したのは、中国で二つの政権が相対立しているという問題が、今後当事者間の話し合いによって円満かつ妥当な方法で解決されるまでの間、とりあえずの経過的措置として、国際関係の現状に目をそむけることなく、これを国連に反映させることが適当と考えたからであります。しかし、中国代表権の問題はあくまでも国連における問題であって、中国の領域の問題とは直接結びつくものとは考えていないのであります。  次に、問題の決議案が否決されたときの政府政治責任についてのお尋ねでありますが、本来、国連における中国代表権問題は、国連加盟国の票数の多寡によりきめられる問題でありまして、国連加盟国の多数による決定と、加盟国の一員としてのわが政府政治的責任とを直接結びつけて考えるのは妥当でないと考える次第であります。また、国連における中国代表権問題は、現に国連総会において審議されている問題であり、政府としては、わが国共同提案国となった二つの決議案国連加盟国多数の支持を得るようせっかく努力中であります。したがって、現段階においてわが国の支持する決議案が否決され、アルバニア型決議案が可決された場合という仮定のもとでの質問にお答えすることは適当でないと存ずる次第であります。  次に、米国の新経済政策実施に関連したお尋ねにお答えをいたします。  まず、今回の米国の新経済政策は、国内の失業とインフレに加え、国際収支の悪化という問題に対処するため打ち出されたものであります。政府としては、米国経済が安定した基礎の上に発展することは世界経済繁栄のため必要であるという観点から、米国政府努力が効を奏し、早急に健全な立ち直りを示すことを希望しているものであります。  ところで、このような措置事前につかめなかったかというお尋ねでありますが、このように大きな影響を及ぼす措置は、国際投機等の好ましくない動きを封ずるため極秘裏に準備されるのが通例であるということを申し上げておきたいと思います。  次に、わが国のみが外為市場を閉鎖しなかったことについてのお尋ねでありますが、わが国では、輸出入取引のほとんどが外貨建てで行なわれているので、市場を閉鎖することは輸出入取引に著しい支障を来たすことになるし、他方、為替管理により市場を開いても、欧州市場と異なり、非居住者からの投機資金の流入を抑制できると判断したので市場を閉鎖しなかったのであります。  なお、ニクソン声明以降、輸出前受けを中心として相当の外貨が流入いたしましたが、いわゆる非居住者からの投機的外貨の流入はほとんどなく、かりに市場を閉鎖した場合に予想される国民経済に与える大きな影響を考えれば、この措置は正しかったと私は考えております。  次に、いわゆる変動為替相場への移行の前後に、国が大きな損失を招いたのではないかとの御指摘につきましてでありますが、わが国の場合、輸出入取引の大部分が外貨建てで行なわれているため、かりに市場閉鎖を行なった場合には、対外取引は著しく阻害され、さらには経済界の動揺もきわめて大きかったということを御認識いただきたいと思います。また、直ちに変動幅制限の暫定的停止を行なった場合であっても、ドルの先行きについての強い不安と、変動幅拡大による大きな影響により日本経済が著しい混乱におちいったことは必至であります。買い取ったドルにつき円への換算価額で考える限り、損失を生じたように見られますが、単に買い取り資産の減価ということで国の損得をはかるのは適当でなく、広く国民経済的見地から判断することが必要であります。  また、日本銀行納付金につきましては、今年度下期の納付金は収入見込みがきわめて不確実であり、こうした不確実な歳入を見込んで財政運営を行なうことは適当でないので、上期分のみを見込むこととして、当初予算に対し六百九十八億円の減額を行なったものであります。  また、井上日銀理事行動は軽率だったとの御意見がありましたが、私は、日本銀行の外国担当理事としての当然の行動であり、軽率なものではなかったと承知しております。  次に、IMFの立て直しに対する質問についてお答えいたします。  従来のIMF体制は、一つの基軸通貨国にあまりにも大きな責任が負わされてきたことに問題があったと思われるので、今後はこの点を改め、SDRのようなものを中心に各国が共同でささえる国際通貨体制をつくり上げることが検討されなければならないと考えております。具体的には、IMFや十カ国蔵相会議等において国際通貨体制全般にわたって検討が加えられておりますので、これらの討議を通じ、世界貿易の拡大と、そのもとにおける日本経済の発展をはかる方向で国際通貨体制の再建をはかるべく努力してまいる所存であります。  次に、今回の補正予算により景気は十分に浮揚しないのではないかとの御意見でありますが、政府といたしましては、今回の補正予算による景気拡大策は、財政投融資の追加と相まって、本年度内にもかなりの効果をあげ、またその効果は来年度に入ってさらに経済の各分野に浸透し、わが国の景気は回復過程をたどるものと期待いたしております。  次に、国債の発行につきましては、大蔵大臣からお答えしたほうがいいかと思いますが、私もまた、インフレを招くではないかという御意見に対しまして、十分これに対して対処する、注意するということだけお答えをしておきます。  また、年内減税は高額所得者の優遇減税ではないかとのお尋ねにお答えをいたします。今回の所得減税は、当面の経済情勢にかんがみ、景気振興策の一環として、従来あまり例のない年内減税の形で緊急に実施しようとするものであります。減税の具体的内容については、所得税の負担感が特に強い面に留意しつつ、できるだけ幅広く減税の効果が及ぶように配意することとして、課税最低限の引き上げとともに税率の緩和をもあわせて行なうこととしたものであります。高額所得者優遇の非難は当たらないと思います。  最後に、政府資金の問題と、新聞の世調調査による私の支持率の問題に触れられました。政治資金規正法につきましては、御承知のとおり、これまでで竜幾たびか提案いたしましたが、いずれも廃案となっており、まことに遺憾に存じます。政府としては慎重を期し、各党間の合意を得られる案をつくり上げるために鋭意努力し、国民の期待にこたえたいと念願しております。  私自身の進退問題に関する御意見は謙虚に承っておきます。ありがとうございました。(拍手)  なお、その他の問題につきましては、それぞれ担当大臣からお答えさせます。    〔国務大臣山中貞則君登壇、拍手
  5. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 沖繩の先島を中心とする打ち続く干ばつ及び、さらにまた襲ってまいりました台風の影響による惨たんたる状態というものは、鈴木さんと同じように、私も非常に心配をいたしております。したがって、干ばつについては、すでに三億一千万円の国庫補助を支出し、さらに利子補給に伴う二億円の農家への融資を決定をいたしておりますが、さらに、もう干害を起こさない、干ばつを起こさないための施策というものは、これは明確に伏流水なりあるいはまた表流水なりを確保し、あるいは水ため等をつくらなければならない、塩水しか出ない島等の措置等について、明確な方針はきまっておるわけでありますでから、それについて、補正予算を待つまでもなく、すでに支出しました予備費の中の、調査をもとにして建設に着手するための費用をただいま検討中で、近日これを決定いたす予定でございます。  さらに、台風そのものの被害についても、さしあたり緊急な仮設応急住宅等に関します建設は、琉球政府においてどんどん進めておいていただいておりますが、具体的にまとめた予算要求については私の手元に一応上がってまいりましたけれども、琉球政府のほうで再調査し直すということでございまして、いまのところ具体的な金額の明示まで至っておりませんが、いずれにしても、このように累積いたしてまいりまする被災——台風あるいは干害というものが過去にも、重なってまいっておりますので、累積赤字をずっとかかえておる農家の方々復帰時にどのように処理できるか、いわゆる心から復帰を喜べるふところぐあいになれるかという、その問題にまで配慮をしなければならないだろうと考えておる次第でございます。  さらにまた、変動相場制を採用いたしたことに伴います、ドル圏に置かれておりながら貿易の大半は本土に依存するという、いわゆる日本国民であって沖繩に居住する人たちの、県民のみがこうむる被害にどのような手段による救済があり得るかについては、非常に慎重に、そうして、かつまた勇敢にこれを実行したつもりでありますけれども、一方、実行いたしました十億円の——差損ということばは使うわけにはまいりませんが、現地の方々が八月二十八日以前の状態の物価において生活ができるように、そのようなつもりで措置をいたしました予備支出が、学生の本土留学送金等を含めた十一億ございます。しかしながら、その後現地に参りまして私の見聞いたしました直接の体験から見ますると、単に生鮮食料品等を中心とした生活必需物資だけではこれはだめなんであって、公共事業費の執行その他にも支障が来ておるというようなこともわかりましたので、四百四十品目に拡大をいたしまして、本土との貿易の実質八四%というものはカバーできるように琉政とも品目において合意をいたしましたが、なお、学生についても、長期療養者あるいは入学金等について、いまだそこまで詰まっておりませんでしたので、これらも含めて不足する金額をどのような仕組みで、今後沖繩方々が、復帰されるまでの間に生活物資というものが値上がりしないで、あるいは日常の生活環境にかかる物資というものが変化を受けないで生活をしていかれるかについていま検討中でございますが、これもごく近日中に決定、発表いたすつもりでございます。  なお、通貨ドルの確認並びに復帰時の交付金の支給については、総理大臣の終始変わらない沖繩側に対する理解と、大蔵大臣外務大臣の御協力を得て断行いたしたものでございますが、(「ごまをするな」と呼ぶ者あり)しかしながら、この問題は……ごまではありません。これは実際のことを申し上げておるわけであります。私はごまはすりません。……実施いたしたわけでございますが、しかしなお、現地の方々の間には、復帰前に一ドル三百六十円で交換をしてほしいという御要望があることも私は承知いたしておりますけれども、しかし、これは、布令第一四号を改正して、少なくとも沖繩においては日本円のみを通貨とするか、あるいはアメリカドル日本の円とを相互に、二重に通用せしめるかの判断について日本側が対米折衝を開始いたさなければならない事柄でございまして、したがって、先般、抜き打ち的に行ないました確認作業に関する復帰時の交付金の交付のための作業は、布令第一四号、すなわち、米国沖繩の施政権の範囲にさわらない範囲、すなわちニアミスの危険をおかした程度でございますが、それを実行した手段でございます。これを復帰前にやるということになりますと、さらに基本的に対米折衝が要ります。その際における投機ドルの流入の阻止の手段、あるいはまた、沖繩における為替管理の問題等はきわめて困難である。これをただいまの現在において、復帰前に、さらに一ドル三百六十円で通貨並びに通貨性資産の交換を行なうというととは明言できないばかりでなく、その措置にかわるものとして先般の確認作業が行なわれたということを御了解願いたいと思います。(拍手)    〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手
  6. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) 経済問題と財政問題についての御質問、全項目、総理大臣がお答えのようでございますので、私から申し上げることはございませんが、ただ、国債発行とインフレとの関係ということについて御質問ございましたので、これにお答え申し上げます。  企画庁の今度の見方によりましても、民間設備投資の落ち込みは、当初の予定よりも二兆円下がっておるというような数字から見ましても、よほどの公共事業の増加をやっても、まだまだこれがいまのデフレギャップを埋めてインフレにつながるという状態にはならないと思います。また、相当量の国債を発行しても、民間が金融緩和の時代でございますので、民間の金融需要とこれが競合して経済を加熱させるというような心配もいまのところは全然ないということになりますというと、この程度の国債を発行しても、少なくともいまの財政法で許されておる範囲内ぐらいの公債を大きく発行しても、いまの経済情勢では、これがインフレにつながったり、物価高に結びつくような性格のものではない、この点は大胆に不況回復策を政府は講じても心配ないだろうというふうに私は考えております。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手
  7. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 鈴木さんは、私が日中問題にまつ正面から取り組むと、こう言いながら、国民政府を意識したのじゃ、それができないじゃないかと、こういうお話でございます。私はそのとおり考えて、まっ正面から取り組むという考えでございます。この問題は、歴史の流れであるとまで申しております。しかし同時に、この問題解決の過程で国際緊張を激化しちゃならぬ、また、国際信義に反するようなことがあってはならぬと、こういうことを申しておりますが、これはまさに鈴木さん御指摘のとおり、国民政府ということを意識しておるんです。国民政府はいま台湾、澎湖島に厳然たる一つ政府をなしておる。それとわが国は深い人的、政治的、また経済的交流をいたしておるわけであります。ですから、わが国は、中国との間の関係では、他のいかなる国にも増して複雑な関係にあるわけであります。しかし、この複雑な関係を乗り切っていく、これこそが私は現代日本政治家の責任じゃないか、そういうふうな意識を持っておるのであります。まあ話せばわかると、こういうようなことがありますが、私は日中両方の政治家もお互いに話し合えば必ずわかる問題である、こういうふうに存じます。十分に話し合ってこの問題を乗り切り、そうして、日中問題の打開、これに成功いたしたいと、かように決意をいたしております。(拍手)    〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手
  8. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 私からお答えをいたす問題は二点でございます。  その一点はニクソン政策事前に察知できなかったかということでございます。アメリカの金準備が減少傾向にございましたので、また、今年度の貿易収支が赤字に転落をするのではないかというような状態でございました。そういう見通しで、何らかの措置に出るのではないかと考えておりましたが、発表せられたニクソン政策はかなりわれわれが考えておったものよりも激しいものであったということは事実でございます。  第二点は、米国の課徴金等がとられた後の中小企業に対する対策についてでございますが、輸出関連の中小企業は大きな影響をこうむると懸念せられましたので、九月の二十三日、閣議で中小企業に対する特別緊急融資、信用補完措置、為替取引の安定化措置、税制上の特別措置などを内容にいたす当面緊急な中小企業対策を決定をいたしました。なお、行政的にできるものから順次これを実行いたしておるところでございますが、立法措置によらなければならない問題等につきましては、関連法案を今国会に提出中でございます。  以上。(拍手、「答弁漏ればかりじゃないか」「ごまかし答弁はだめだ」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手
  9. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) 答弁が抜けておったようでございますので、お答えいたします。  外為市場への介入はやめるのかという御質問でございますが、これは異常な相場というようなものが出るときには、これを適正なものにしなければ取引の円滑が妨げられるということになりますので、必要な介入というものは各国ともこれをしておるものでございまして、わが国におきましても、ほっておけば非常な相場の乱高下が行なわれる。市場にはいろんな投機的な要因が働きますので、それによって相場が激変するというようなことは取引を妨げますので、これを防ぐための介入というものは今後も当然これは続けることになろうと思います。  それから、そういう変動為替相場はいつまで続くかという御質問でございましたが、これは各国とも、やはり取引の安全、安定というものを期するためには、固定為替相場に戻ることがいいということは、各国のこれは希望でございまして、そのためのいま国際会議が始まっていろいろ相談をしているということでございますが、御承知のように、十八日、十九日、この二日間に行なわれましたOECDの専門部会ではなかなか話がきまりませんでした。この専門部会で何をやったかと申しますと、アメリカの赤字をなくするためにどの程度の協力を各国がしたらいいか、この調整さるべき米国の赤字幅を計算して、これが各国に与える影響がどのくらいになるかという作業をOECDの専門部会に委嘱してあったわけでございますが、この一応の計算ができたので、それをもとに各国が論議をしましたところが、なかなかむずかしい問題でございますので、とうとう結論がつかないでそのまま別れたということでございますので、この話がうまくつかない以上は、各国ともいまの変動為替相場は相当期間続くものであろうというふうに考えております。  それからもう一つは、二十八日為替変動制に移った以後の商社、為銀の売ったドル内容というようなものを公表してもらいたい。この要望は大蔵委員会からも提出されまして、そのとき御了解を得たことでございますが、個々の商社についてのこういう企業機密に属するいろいろなものは政府として公表はできない。そうでなくて、全体としてどういう傾向のものであったかというようなものについては、できるだけ資料を出すということで御了解を願っておるところでございますが、全貌を政府が発表するということは、これは非常にむずかしいことと存じます。(拍手、「まだ残っている」「切り上げ幅」と呼ぶ者あり)
  10. 河野謙三

    ○議長(河野謙三君) 水田大蔵大臣。    〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手
  11. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) もう一つ、円の切り上げ幅をどのくらいにするかという御質問だったそうでございますが、これがむずかしい問題で、いま各国の会議を開いておるところでございまして、これだけはいま私どもにもわからないという問題でございますので、御了承願いたいと思います。(拍手)     —————————————
  12. 河野謙三

    ○議長(河野謙三君) 塚田十一郎君。    〔塚田十一郎君登壇、拍手〕    〔議長退席、副議長着席〕
  13. 塚田十一郎

    ○塚田十一郎君 私は、自由民主党を代表いたしまして、わが国が現在直面いたしておる緊急の諸問題に関し、佐藤総理大臣並びに関係閣僚に対し若干の質問を行ないたいと存じます。  質問に先立ちまして、天皇、皇后両陛下には、先般、欧州諸国御訪問の旅を終えられ、つつがなく御帰国あらせられましたことについて、国民の一人としてつつしんでお喜びを申し上げます。(拍手)  質問の第一は、沖繩復帰についてであります。  沖繩は、わが国の中で、第二次大戦中直接の戦場となった唯一の領土であります。その戦闘は熾烈をきわめ、戦闘員はもとより、非戦闘員のとうとい生命までも数多く失われたのであります。その後沖繩米軍の占領下に置かれ、本土においては講和条約が結ばれ繁栄の道を歩むに至ったさなかにおいても、米軍の施政権下にあって祖国から切り離されて二十数年に及びました。四半世紀にわたる異民族の支配という経験は、日本民族の歴史始まって以来のものであります。このような異常な事態のもとで、言語に絶する辛酸をなめられた沖繩百万の同胞がこのたび晴れて祖国に復帰の日を迎えられることは、われわれの心から喜びとするところでございます。(拍手)  私は、このような大事業を平和裏にかつ外交交渉によってなし遂げられた政府、ことに佐藤総理大臣の御努力に深く敬意を表するものであります。それにもかかわらず、沖繩県民の間にも、また本土国民の中にも、復帰を喜ばないのみならず、返還の形式その他について異論を差しはさむ者があることはまことに遺憾と言わざるを得ないのであります。  しかしながら、ひるがえって冷静に事態を観察いたしますときには、沖繩県民の中に若干の不安を抱く者のあることは、あながちこれを責めるのみでは問題の解決とはならないのではないかと思うのであります。  沖繩県民復帰に際して抱く不安は大別して二つあろうかと思うのであります。  その第一は、経済的なものであります。すなわち、復帰によってみずからの生活が悪くなることはないのか、いなむしろ多少ともよくなるのでなければ復帰の意味はないのではないかとする懸念であります。私は、との点についての政府の従来とられた施策は、沖繩復帰対策要綱の策定、また、先般の沖繩ドル・円交換に関する特例措置等を含めて大体において適切であったと認めるものであります。ただ復帰はいまだ実現していない段階であり、したがって、沖繩県民の間に新たなる環境に移ることについて、何がしかのためらいがあるのは無理のないことと考えるのであります。よって政府は、この際復帰に際しては、本土一億国民並びに政府は総力をあげて豊かな沖繩の建設に努力を惜しまないと同時に、これを迎える基本の心がけは、沖繩県民長年の労苦に対して心からその償いをさせてもらうという方針であることを明らかにせられて、一そうその理解を深められるべきであると考えるのでありますが、この点についての総理並びに総務長官の御所見を承りたいのであります。  不安の第二は、国際緊張の面からくるものであります。確かにいままでの沖繩は、共産主義侵略の脅威に対する米極東戦略のかなめ石の役割りを果たしてまいりました。そのような地域が返還されるのでありますから、一気に完全にそれらの役割りを否定せんとするには若干の無理があろうかと思うのであります。したがって、返還協定内容が一〇〇%当方の満足すべき性格のものにならないこともまたやむを得ないと思うのであります。われわれとしては、むしろ北方領土の問題が、いまだ解決の曙光も認められないままにある今日、沖繩が平和裏に返還されるに至ったことについて、米国の善意と政府努力を高く評価するものであります。(拍手)  しかしながら、ニクソン大統領中国訪問は米中関係の緊張を緩和させ、ひいては極東情勢の安定をもたらすものと期待されております。これに加えてアジアにおける過剰な軍事的コミットメントを極力撤回しようとするグアム・ドクトリンの設定、ベトナムからの急速な兵力の大量な撤退、さらにまた朝鮮半島における南北間の対話の開始などから見て、米国アジア戦略は大幅に変更されようとしておることがうかがい知られるのであります。そうだといたしますならば、極東における重要な戦略拠点としての沖繩の意義もまた当然変わってくるのではないかと考えるのであります。このように極東にも平和のきざしが認められるこの際、政府においてもその方向にさらに一段の努力を傾けられ、軍事基地の縮小、その他沖繩県民の不安の解消につとめらるべきであると思うが、この点につきましての佐藤総理大臣の御所見を承りたいのであります。  質問の第二は、中国問題についてであります。  さきにニクソン米大統領中国訪問計画が発表されて以来、わが国はいまや文字どおり中国論議の中に明け暮れております。今日ほど内外に中国の国際社会への復帰を求める機運が高まったことも、かつてないようであります。これを契機として、わが国民の中に日中国交の正常化のため、政府の決断を要望する声が強まり、性急な政策転換を迫る向きも少なしとしないのであります。しかしながら、米中会談の行くえと、それが世界各国に及ぼす影響、さらにはまた国連における諸般の動きなど、そのいずれもが、なおいまだきわめて流動的であるこの段階において、事を急ぐのあまり、日中関係の将来への確固たる展望もないまま、いたずらに政府に対して早急な決断を求めることは、決して賢明な策とは言えないと思うのであります。外交は水ぎわまでというのが、政治の常識であります。一国の外交が成功するかいなかは、その問題についての国論がどの程度に統一されているかにかかっておるのであります。国論の統一なくして外交の成功は絶対にあり得ないのでありまして、この点は、いずれの党が政権を担当されても同様であると思うのであります。しかるに、わが国における日中国交回復についての世論は、残念ながらいまやまさに四分五裂の状態であります。したがって、政府は、日中問題の解決に乗り出す前に、まず国論の統一にこそ全力をあげられねばならぬと思うのでありますが、この点についての総理大臣の御見解を承りたいと存じます。  政府は、すでに中国一つであるとする基本的認識の上に立っていられるのであります。さらに、政府はまた中華人民共和国政府国連への加入並びにその安全保障理事会の常任理事国のいすにつくことについても賛意を表しておられるのであります。これは従来の政府態度からすれば、まさに一大転換であります。  そこでお尋ねいたしたいことは、第一に、今後とも事態の推移によっては、態度の変換があることを期待しておってよいのかどうかであります。この点に関連しまして、われわれは、政府が、このたびの中華民国政府国連における議席維持の努力を経過的措置であるとされておる点に留意するものであります。第二に、一つ中国と二つの政府の認識についてであります。これをどのように理解すればよいのかお伺いいたします。  ここで私は次のような歴史的な事実を想起するのであります。わが国は一九五二年四月二十八日、サンフランシスコ平和条約の効力発生の日に中華民国政府との間に平和条約の調印をいたしました。しかしながら、中国大陸では、日華条約調印に先立つ二年前、すなわち一九四九年十月に中華人民共和国政府が成立し、七億余の中国人民を有効に支配するに至っていたのであります。中華人民共和国政府中国を代表する政府であるとするのは、この歴史的事実に基づくものであります。一方、サンフランシスコ平和条約の締結が世上に取りざたされるに至った一九五〇年のころには、朝鮮半島においては南北の間に激烈な武力闘争が展開されておりました。南に味方した米国と、北に援助の兵力を送った中共との間に、当然のことに抜きがたい敵視関係が生まれたのであります。米ソ両大陸の支配する世界の中で、米国への依存の立場にあったわが国は、好むと好まざるとにかかわらず中華民国政府と平和条約を締結すべく余儀なくされたものであります。このようにしてわが国は、中華民国政府との間にすでに二十年近く友好関係を持続してまいったのであります。一方、中華民国政府は、国際連合創設の当初からその中心的メンバーの一員であり、かつまた、安全保障理事会の常任理事国の一つとして忠実にその職責を果たして今日に及んでおるのであります。このような歴史的事実に思いをいたしますときに、政府が中華民国政府の、国連の舞台における議席の喪失ににわかに賛成されがたい事情も理解できると思うのであります。  ひっきょうするに、中国問題においては、この段階に最も必要なのは国論の統一であります。われわれは、中華人民共和国政府並びに中華民国政府が成立するに至った歴史的な事実、これら二つの政府わが国との特殊な関係を深く理解し、国益尊重の立場に立って、大局的見地と互譲の精神をもって国論の統一に協力すべきであり、政府もその方向にさらに一段の努力を傾けらるべきであると思うのであります。  そこで、政府はこの際、国論の統一のため、広く院の内外に話し合いの場を設けられる御意図はないか。たとえば日中問題懇談会あるいは協議会のようなものを設けるのも一案かと思うのであります。  以上の諸点について、総理あるいは外務大臣の御所見を承りたいのであります。  質問の第三は、平価調整についてであります。  八月十五日、米国の発表したドル防衛をめぐる緊急対策は諸外国に大きな衝撃を与えました。しかも、この緊急対策の最大のねらいは、円平価の切り上げにあるとされているようであります。これに対して政府は、ある程度の切り上げはやむを得ないものと覚悟しながらも、多国間の調整並びにドルの応分の切り下げと同時に円の切り上げを行なわんと決意されているように見受けられるのであります。先般、十カ月蔵相会議IMF総会に出席された後、大蔵大臣は、固定平価がきまるまでには相当な時間を要するであろう、ここ当分は変動相場制でやっていく以外ないのではないかと、意見を発表されておりますが、そのため、輸出商談の取りきめに大きな障害を生じておることは、御承知のとおりであります。  そこでお伺いしたい第一の点は、平価切り上げの積極面についてであります。平価切り上げについては、世上、ややもすると、そのマイナス面のみが、しかも誇大に宣伝されておるように思われるのであります。そもそも、円の切り上げが要求されるのは、わが国経済力がそれだけ強くなったことを意味するのでありまして、当面生ずるいろいろな影響はともかくとして、長期的に見れば決して心配すべきことではないと思うのであります。  第二には、円平価の切り上げは、必ずしも外部からの圧力がなくても、行なってしかるべき場合があるはずだと思うのであります。私がこのようなことを申し上げますのは、現実の問題としても、アメリカの緊急対策が発表されるまでは、政府はしばしば円平価の切り上げは行なわないと言明されておりましたし、ある程度の切り上げはやむを得ないと覚悟されておるやに見受けられる今日においても、政府態度に、何となく、その引き上げ幅をできるだけ小さく押えようと努力されている意図がうかがわれるからであります。そもそも、一国貨幣の平価は、その国の持つ総合的な経済力と相手国のそれとの比較によって定まるものであります。しかして、一ドル三百六十円の現平価は、昭和二十四年に定められたものでありますが、当時に比較すれば、わが国経済力は飛躍的に伸長を見ております。一方、ドルの対外価値は、近年とみに低下しておるといわれております。そこで、この双方を勘案しての現段階における適正平価を定める何らかの目安はないものでしょうか。もちろん、私にもどの程度の引き上げ幅が、わが国の総合経済力から見て適正なものであるかを判定する何らの資料もないのでありますが、自由変動相場制を採用する一つの目的は、引き上げの場合の目安を得ることとされていると思うのでありますが、それにしては、日々の為替相場の成り行きに日本銀が介入しておるように見受けられるのは、解しがたい点であります。  第三には、どうしても円平価を切り上げなければならないものとすれば、必要なことは、一日も早くその決定がなされることであり、それと同時に、その場合には、一%や二%の幅を争うことなく、一度切り上げられたらば、その平価が相当期にわたって維持され得るものであるということが大事なのではないかと思うのであります。  この点で思い起こしますのは、昭和二十四年、現在の平価が決定された当時の事情であります。当時は、いわゆるPRS、すなわち円・ドルの価格比率制によって、輸出、輸入別、商品別に、それぞれ異なった交換比率が設けられておりました。輸出商品の中には、一ドル六百円というようなものもありました。したがって、一ドル三百六十円の単一レートが設定されたことによって、このような商品が、輸出の面で非常な不利な立場に立たされたことは申すまでもないのであります。昭和二十五年度の政府輸出計画目標は六億ドルでありましたが、単一レートの設定によって、輸出は二五%ないし三〇%の減少を見るのではないかと予想されたものであります。それにもかかわらず、二十五年度の下半期には輸出は著しく増進し、年間を通じては九億六千万ドル輸出を達成したのであります。単一レートの設定は、昭和二十三年の暮れのGHQ指令による、いわゆる経済原則に基づいたものでありました。この九原則が発表された当時は、われわれはそのきびしさに肝を冷やしたものであります。それにもかかわらず、日本経済はその困難を克服して、今日の繁栄をもたらしました。  今回平価調整の行なわれる場合に最も切り上げ幅の大きいのは円だというのが諸外国の共通した見解であり、したがって、ヨーロッパ諸国は日本の出方を見守っておるのが現状であります。政府としては、単独で円の切り上げを行なうわけにはまいらないでありましょうし、また、すべきでもないと思うのでありますが、すでに切り上げすべきものと覚悟された以上は、わが国がイニシアチブをとって平価調整の先頭に立ち、一日もすみやかに固定平価が設定されるように努力されることが、世界に対するわが国経済の信用を高めるゆえんではないかと考えるのでありますが、これらの点に対する大蔵大臣の御所見を承りたいのであります。  最後に、補正予算についてお尋ね申し上げます。  政府が本国会に提出されておる補正予算は、一般会計において二千四百四十六億、また、財政投融資において追加二千六十四億となっております。しかして、このような多額な補正及び追加を必要とする理由は、主としてドル・ショック等による景気の落ち込みを回復するための、財政面からの、てこ入れであるとされておるのであります。  そこで、お尋ねしたい第一の点は、この補正予算の性格についてであります。政府の説明によりますれば、この予算編成の目的は、人事院勧告に基づく公務員の給与改善費のほかは、主としてドル・ショックに基づく直接及び間接のもろもろな影響に対する対策のようであります。しかしながら、政府には、このたびの予算を契機として、公共投資と民間設備投資とのアンバランスを是正するきっかけとする御意図はないものでしょうか。由来、わが国経済におきましては、民間設備投資が著しく先行して、公共投資がこれに伴わないうらみのあったことは、識者のつとに指摘するところであります。そこで、たまたま民間設備投資が一時停滞をしておるこの機会に、本補正予算並びに四十七年度以降の予算において、この公共投資のおくれを取り戻されるならば、不均衡是正の絶好の機会となるのではないかと考えるのであります。  お尋ねいたしたい第二の点は、この補正予算の目的と、その内容との関連についてであります。立ちおくれておる公共投資のおくれを取り戻すという意味においては、計上された公共事業費、追加された財政投融資は、いずれも、それなりに意味を理解できるのであります。ただ、公共投資のおくれを取り戻すにしても、道路、治山、治水等のいわゆる公共土木事業のみに重点を置くことなく、それと同時に、社会資本の充実にいま一そうの配慮を払うとともに、減税の恩恵にも浴しない低所得階層の福祉の向上のために一段のくふうを払うべきではなかったかと考えるのであります。しかしながら、ドル・ショックによる景気の落ち込み対策として見るとき、この予算には、第一に、影響を受けた産業または階層と、この予算によって潤いを受ける産業または階層との間に食い違いがある。それと同時に、第二には、景気浮揚の効果を期待するにいたしましても、そこに大きな時間的のズレが起きるのではないかという心配であります。減税についても若干の疑問が残るのであります。一般に、需要創出に対する波及効果は、減税においては約一・七倍、公共投資においては二・四倍であるが、即効性においては減税のほうがより効果的であるとされております。その限りにおきましては、即効性の期待できにくい公共投資と並んで減税を計画された意図も了解できるのであります。ただ、今回の減税の内容が年収三百万ないし五百万の所得の階層に重点が置かれておる事実に見て、所得税の軽減がはたして消費の増大につながるものなのかどうかについて大きな疑念が持たれるのであります。  以上、疑問の諸点について解明をいただくと同時に、この予算がどのように景気を刺激して、どの程度の需要創出の効果を持つものかについて、大蔵大臣あるいは経済企画庁長官の御見解を承りたいのであります。  次にお伺いいたしたいのは、減税と公債発行の関係についてであります。そもそも財政のあるべき姿としては、必要な国家支出をまかなうべき財源として、まず租税その他の収入をもってこれに充て、なお不足するときにおいて初めて公債にその財源を求めるのが常道であります。ただ、国債の発行と減税とを同時に行なうことがここ数年来の予算編成上の慣習になっておりますので、ここでは財政の原則論に深く立ち入ることは差し控えますが、本補正予算のみについて申しますならば、公債の増発は七千九百億でありますから、おおよそ五千数百億の公債は歳入欠陥と減税財源に充当されるわけでありまして、この分は実質上の赤字公債といわなければなりません。このような赤字公債を発行してまで減税を行なうことがはたして財政のあり方として適切なものであるかどうか。さらにまた補正分を含めますと、昭和四十六年度の起債総額は一兆二千二百億に達し、予算中に占める公債依存度は二・六%の高率に達するのであります。昭和四十二年に財政審議会は、一国予算中の国債依存度は五%以内に押えるべきであるという建言を政府に対していたしておるのでありますが、これらの考え方とあわせて政府の御見解を承りたいのであります。  次にお伺いしたいのは、本補正予算昭和四十七年度以降の予算規模との関連についてであります。  今回の補正後の昭和四十六年度の一般会計予算総額は九兆六千五百九十億、また財政投融資は総計四兆九千三百十七億となるのであります。これに対し大蔵大臣は、先般大阪における記者会見において、来年度の予算規模は十一兆一千億円台、また財政投融資は五兆一千三百億円にのぼる大型なものを考えていると述べておられるのであります。そうなれば公債の発行規模も一兆五千億円をこえるものと予測されております。ここ十数年来のわが国経済は比較的着実な発展を遂げ、国家財政もこれに伴って健全な拡大を続けてまいったと考えられております。しかるに、今回のドル・ショックがきわめて異例な補正予算計上の必要を引き起こし、さらにそれが基準になって、昭和四十七年度以降の予算規模の飛躍的拡大を招来する傾向にある点に、私は大きな危惧の念を抱くものであります。もしこのような予算編成態度が財政の体質化したときに、いわゆる財政インフレの懸念はないものかどうか、大蔵大臣の御所見を承りたいのであります。  最後にお尋ねしたいのは、本補正予算が物価及ぼす影響についてであります。  経済企画庁の改定経済見通しによれば、この補正予算の結果は、卸売り物価は前年比〇・四%の下落である、消費者物価は五・五%の上昇という判断でありますが、これは国民の体験からくる予測とはかなり隔たりがあるように感じられますが、この点についての経済企画庁長官の御見解を承りたいと存じます。  これをもって私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手
  14. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 塚田君のお許しを得まして、その前に一言、鈴木君に対する答弁を補足さしていただきます。お許しを得たいと思います。  鈴木君から、核持ち込みについての事前協議を受けた場合にノーと言うか、こういうお尋ねがありました。それに対して私は、本土と区別はないのだから本土並みにすると、かように申したのでございます。全然答えなかったわけではありませんが、答えたのですが、やや不親切だったようです。私が申し上げるまでもなく、沖繩だけは特別な扱い方を受けるのじゃないか、こういう考え方が一部にあります。しかし私の主張したいところは、本土沖繩と何ら区別をしないというところをはっきり実は申し上げたかったからかような答えをいたしたのであります。私がいまさら申し上げるまでもなく、本土には非核三原則、これが適用されます。そのまま沖繩に対してもそれが適用される、かように御理解をいただきたいと思います。これでおわかりがいただけると思います。     —————————————  次に、塚田君は沖繩県民の立場に立って、きわめて建設的な幾つかの提案をされました。私も全くお説に同感であります。昨日、衆議院でも申し述べたのでありますが、戦時中そして戦後を通じ二十四年の長きにわたって辛酸をなめてこられた沖繩県民であるだけに、復帰に対する期待が大きいと同時に不安もまた大なるものがあることは想像にかたくないところであります。中でも、ドル生活から円の生活への切りかえを中心とした経済上の不安感を除くことは政府の重大な責任であると考えております。政府としては、長年の御労苦に報いるためにも、経済的な面でできる限りの援助措置を講ずる決意であります。さきに政府が行なった為替変動相場制への移行に伴う一連のドル対策もその趣旨に基づいたものであります。また、復帰に伴い、県民の生活に急激な変化を与え無用な不安を生じさせないように、復帰後一定期間、税制など各般にわたり特別の措置を講ずるとともに、明るく豊かで平和な沖繩県づくりのために、国として積極的に振興開発を推進していく所存であります。したがって、復帰後の県民の生活は一段と向上するものと確信しておりますが、この際、県民の皆さんにこの点を十分理解していただきたいと思います。政府としては、沖繩についての施策が県民に十分な御理解をいただけるよう今後とも積極的な努力を重ねる所存であります。また、返還が実現しても基地はあまり減らないというところからくる沖繩県民不満と不安については、私も十分理解しております。政府としては、これまでの交渉の過程において、沖繩の民生及び経済開発、発展のため、基地施設の移転について、住民の意向が十分反映されるよう鋭意努力してまいりましたが、今後とも復帰後の基地の整理、統合にさらに真剣に取り組む所存であります。  核抜きの問題については、しばしば述べるとおり、日米共同声明第八項、沖繩返還協定第七条によって明確に約束されております。また、核が撤去されたかどうか実際に検証したいという県民の要望については、国際法の問題がありますので、米軍に対し強制はできませんが、政府としては、日米間の信頼と友好に基づいて、何らかの形でそのことの確認を得たいと考えている次第であります。いずれにしても、塚田君御指摘のとおり、わが国としてアジアの緊張緩和に一そう主体的な努力を傾け、沖繩県民の不安を取り除くよう措置する決意であります。  次に、中国問題はわが国にとってきわめて重要な外交問題であります。政府としては、その解決のため、今後とも最善努力を払う所存であります。わが国は、中国大陸との間にも、また、台湾との間にも、他の諸国とは比較にならぬほど深い歴史的関係があるので、北京政府国民政府との対立が続く限り、わが国において中国問題に関して早急に国民的合意を得ることが困難な状況にあることも認めざるを得ないのであります。しかしながら、政府としては、今後とも各方面における建設的意見を十分尊重をしつつ、中国問題に関しできるだけ国民的合意が形成されるよう努力したい考えであります。いずれにしても、日中関係は末長い関係となるのでありますから、ゴールを見きわめながら一歩一歩着実に前進していくことが、結局は大局的に見たわが国国益につながるものと信ずる次第であります。  その他の問題につきましては、それぞれ所管大臣からお答えをいたします。(拍手)    〔国務大臣山中貞則君登壇、拍手
  15. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) ただいま御質問の冒頭にありました沖繩復帰を迎えるにあたっての本土側の心がまえである、すなわち償いの心を持って当たれという御要望どおり、担当大臣のみならず、本土全部の者が、そしてまた責任者の閣僚すべてが、それに対して同じ心がまえを持って、償い切れないかもしれないほどの大きな償いを償うための努力をしたい、かように考えておる次第でございます。  そこで、総理からお話のありました税制の部門等の重複は除くといたしまして、私どもとしては、沖繩が現在自分たちが好んで選択した道でない境遇のもとに置かれておるための特殊事情というものについて十分勘案し、たとえば、税制以上に、沖繩は、基幹産業としてパインとキビが知られているところでありますが、そのキビ作の地帯であるところの砂糖の消費者の方々に対して、消費税の十六円の免税だけでは、とても現在の特殊環境の中の安い砂糖は今後確保できませんので、したがって、一般の消費者の方々には、補助金までさらに出して、砂糖の価格を当分の間据え置きたい。なめるほうの砂糖であります、(笑声)を据え置きたいという措置をとったほどでありますが、その他についても、沖繩の未来を展望いたしまするときに、単に、よく使われます本土との格差是正というようなことばかりであってはならないのでありまして、それらのことは当然でありますけれども、沖繩の置かれた立地条件、気候、風土、こういうものの持っている特性というものを十分に引き出して、その優秀な点を、全国総合開発計画の一ブロックとして位置づけ、そしてそれらに対して国があらゆる努力を傾けて、本土において考えられるすべての条件の最も有利な条件を下回ることのないように、今回国会に法律を提案いたして定めておるわけでありますが、旧北海道開発、あるいは旧奄美復興、あるいは現在の新産、低開発、あるいは山村過疎、僻地、離島、これらのあらゆる補助率や融資の条件、融資比率、そのようなものをはるかにこえる条件をもって、沖繩の新しい未来の足取りに力強さを加えて差し上げたいということで、今国会に法案を提出いたしておる次第でございます。よろしくお願いをいたします。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手
  16. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) お答え申し上げます。  中国問題につきまして、国論の統一が必要である、こういうことを力説されたわけでありまするが、これは中国問題ばかりじゃありません。これは沖繩協定が本国会重要課題になっておりますが、これについてもまた同様である、かように考えます。とにかく、強力な外交は、国論の統一を背景にしなければ展開できない。諸外国におきましては、外交論議は水ぎわまで、こういうことさえ言われるわけでありまするけれども、何とかひとつ国会におきましても、国論の統一をはかられまして、強力な対外施策が実行できますように、ぜひとも御協力をお願い申し上げたい、かように存じます。  中国問題につきまして、政府においてもさらに状況の変化に応じまして弾力的な姿勢をとれ、こういうお話しですが、ただいま基本的な考え方といたしましては、私どもは日中国交の正常化をはかる、しかし、その過程におきまして、緊張の情勢を激化したり、あるいは国際信義にもとるようなことがあってはならないという、この二つのことを大きな内容原則としておりますが、もとより、との原則の適用にあたりまして、状況の変化に応じまして、弾力的な、また流動的な措置をとるということは、これはもちろんであります。できる限り諸般の環境を見合わしまして妥当な具体的措置を進めていきたい、かような考え方であることを申し上げます。(拍手)    〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手
  17. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) 円の切り上げの積極面をもっと重視すべきであるという御意見については、全く同感でございます。円が強くなるということは、それだけ国力が強くなったことでありますし、円の国際的な購買力が増大したということでございますので、円の切り上げということは、この実力に沿った新しい経済秩序の出発点に立つということでございますので、積極的に非常に意味を待つものでございますが、問題は、その切り上げ幅が妥当であるかどうかという点にあるだろうと思います。  で、かつて金解禁を行なったとき、昭和の初め、ああいう大きい不況を日本の産業界に与えたときの切り上げ率を大体見ますというと、二〇%前後だといわれておりますが、平価の切り上げというととは一国の経済に相当大きい影響を与えるものでございますので、妥当な範囲内における切り上げには積極的な意味が持てても、妥当の範囲を越したあとの影響というものは、相当私どもは消極的な問題として、これは慎重に考えるべき問題であろうと思います。  それなら、何を一応めどにしたらいいか、何らかの基準が、目安があるではなかろうかという御質問でございましたが、この目安が現在全くございませんので、そこで十カ国の会議を開いて、ここできめましたことは、まず各国がお互いに協力して、そうして分担し合おうと。そうして自国の平価変更の幅を、多数国の協議によって、お互いの了解によってきめようということをこの十カ国の会議できめました。それをきめるためには、一体アメリカの赤字を解消することについてどれ程度の協力をしたらいいのか、その幅がわからなければ目安がつかないじゃないかということから問題を出発させて、いまその作業に入っておるというところでございますので、これをきめることも、今後各国が自国の平価を変更するときの一つの目安になるということになろうと思います。と同時に、変動為替制度によってきまった市場レートも一つの目安になるのじゃないかという御質問でございましたが、確かにこれも一つの目安にはなろうと思いますが、先ほども申しましたように、各国とも完全に介入しない市場レートというものはどこにも出ていないということでございますので、これを目安にすることもむずかしい。それならば全部を自由にしたらいいかといいますというと、そうしましたら、投機的な要因に影響された、非常に急激に変動するいろいろなレートが出てまいりますので、それを目安にするというほうが、はるかにお互いの協調の問題としてはむずかしいことになる。さらに、このレートの背後には各国それぞれの経済事情がございます。たとえば日本で申しましたら、日本が不景気というために、この一月から六月までは不当に黒字が累積している。この傾向を見て、これを背景としたいまのレートをもって日本のレートの変更をどうこうしようということになりますというと、日本はこれは非常に異常なことに基づいた不当な負担をしなければならぬということになりますので、そういう異常な要素に基づいたものを目安にされるということもむずかしいということでございますので、各国ともこのフロート制によって得られた市場のレートをそのまま目安にして話し合いを進めるということのほうが、やはり現実的にははるかにむずかしいということでございます。したがって、OECDに委嘱したような、ああいう形から入って合理的な解決を求めるのがやっぱりいいのではないかというふうにいま考えているところでございます。  そこで、日本がイニシアチブをとってこの問題を解決すべきだということでございましたが、アメリカの赤字に対しては、一番責任があるのがいま日本という数字になっております。ドイツも非常な黒字国でありましても、ドイツとアメリカ関係から見ましたら、アメリカの赤字に対してマルクは一つも黒字をかせいでいないということでございますから、どうしても最後は日米間のやはり緊密な協議が必要であるということになろうと思いますが、そこまで入るためにはいろんな問題があって、米国と各国間の、二国間のまだ為替レート以外の解決すべき問題がたくさん残っておる、これがまだ熟していないところでございますので、直ちに日本がこの問題のイニシアチブをとって解決できる状態にあるかどうかというと、まだそこまでの情勢にはなっていないということでございますので、私は早くいってこの年内に解決できれば非常に成功だと思いますが、なかなかいまの状態では、年を越すことがおそらくあるのじゃないかと思うくらいむずかしい問題になっておりますので、しばらくこの状態で切り抜けていくことを覚悟しなければならないだろうと考えている次第でございます。  それからその次は、補正予算に関する御質問でございましたが、景気浮揚対策以外に現在のとっておる財政政策は別の目的があるということも御指摘のとおりでございます。いままで経済成長を中心にして行なったために、社会資本のおくれがございますので、これを取り返すのには、いまが絶好の機会であると思います。しかも、いま民間の設備投資が非常に停滞しておるときでございますので、このときに財政がかわって、おくれた社会投資を取り戻すにはいい時期でございますので、したがって、この財政の役割りを果たすために、民間の資金を動員するための公債を多額に出すということは、財政政策として私は最も時宜を得ている方法であるというふうに考えます。で、この公債を出して政府が財政によって仕事をして不況対策をするということと、一方、減税をして国民の購買力を刺激するということは少しも衝突しない。やはり相当大きい不況対策としての効果を持つものでございますので、減税をやることと同時に国債を発行することは少しも矛盾した政策ではないというふうに考えます。それじゃ、そういう公債を多額に発行することが将来の財政インフレにつながるんじゃないかという御質問でございましたが、私はこれは二年春三年も続けるべき政策ではないと考えております。不況の克服はおそくとも来年一年でもう勝負をつけてしまうという覚悟でなければならないと思います。これをだらだらやるようだったら非常にむずかしい事態が起こる。どんなことをしても来年一年で、ことしから来年一年にかけてこのニクソンショックは食いとめてしまう、そうして景気は下降させないというためにあらゆる力を政府はここで発揮すべきであり、そのためにはいわゆる超健全財政というような、いままでの事態に即する財政政策だけを墨守する必要はない。こういう非常時期に対しては非常的な考えを持った政策を実行しなければならぬと考えますので、さっきも申しましたように、非常に大胆な政策政府はとる必要がある。そのために財政法の許す範囲内の国債はもう勇敢に出していき、この不況に対処するということはいいことじゃないかというふうに私は考えております。  以上でございます。(拍手)    〔国務大臣木村俊夫君登壇、拍手
  18. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 今回の補正予算が景気の刺激、消費需要に対してどのような効果を及ぼすかというお尋ねでございます。  今回の補正予算における公共投資の補正予算計上額は、事業費ベースにいたしまして約五千億円の追加になりますが、このうち年度内の政府投資となるのは用地費を除いた約三千億円でございます。したがって、政府投資の乗数効果を二前後と見まして、一年間にこれがGNPを約六千億程度拡大するものと見ております。また、所得税の減税は千六百五十億円でございますが、これによる直接の消費支出への拡大は約千二百億円程度でございます。これが乗数効果を伴って一年間にGNPを約三千億円程度拡大するものと見ております。  以上のような補正予算による景気拡大策は、財政投融資二千六十億円の追加と相まちまして、本年度内の成長率を約一%引き上げるものと見ております。また、その効果は来年度に入りまして、さらに経済の各分野に浸透いたしまして、わが国の景気は回復の過程をたどるものと期待されるのでございます。  次に、今回の補正予算の規模が消費者物価上昇させる要因にならないかというお尋ねもございました。現在、景気沈滞下のわが国経済には、なお相当の供給能力が存在しておりますから、今回の補正によって直ちにこれが物価上昇圧力につながるとは考えておりません。また、国債の追加発行につきまして、市中消化には先ほど大蔵大臣が御説明いたしましたとおり、十分配慮しておりますので、この面からも物価の上昇を引き起こすことはないと信じております。しかしながら、最近における消費者物価の騰勢には依然根強いものがございます。先行き決して楽観を許しません。今後、消費並びに労働需給の緩和や先般の変動相場制への移行が物価安定にどのように作用するかをも十分注視しながら、各般の対策を強力に推進することによりまして、本年度消費者物価上昇率を見通しの線に極力近づけるよう、格段の努力をしてまいりたいと思います。(拍手
  19. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 御異議ないと認めます。  本日はこれにて散会いたします。   午後零時二十五分散会