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政府委員(
笛吹亨三君)
佐々木委員の御質問の点で、
保護関係のことについて申し上げたいと思いますが、吉岡が出所いたしましてからの行動、いろいろこれあるんでございます。私
たちは、いま
矯正局長が申し上げましたように、吉岡をいかにして
社会の健全な一員として
更生させるかということで非常に心配いたしまして、この人間が確かに過去には非常な大罪を犯した、しかしながら、仮出獄をしてもいいとわれわれが認める程度に改俊の情があるというような
状態になって、仮出獄を許可したものでございますので、これが、先ほど
矯正局長から申しましたように、いろいろなマスコミの興味本位といいまするか、対象になりまして、騒がれますと、ただでさえも
社会から十七年以上も拘束されておって、
刑務所の中から一般
社会へ出たという者は非常に心情が不安定でございます。この心情の不安定な者に対して、マスコミその他のものがわいわいと言って、寄っていきますと、はたして、これが心情は安定できるでございましょうか、われわれはそれを心配したんでございます。吉岡をいかにして正しい人間に
更生させていくか、
改善させていくかということがわれわれの義務でございます。それをマスコミあたりが、あるいはまた、阿藤その他のもと一緒に起訴された連中でございましょうが、そういった
人たちがそこへ集まって、いろいろ過去の古傷にさわり、そうしてまた、それが一般の
社会の人にわかるようなことになってまいりますると、吉岡の心情というものが非常に乱れてくるわけでございます。現に吉岡はそういうように言っておるのであります。非常に神経過敏になっております現在、なぜ、こんなにまでしなければいかぬのかと、私はそれを訴えたのでございます。先ほど弁護士にも合わさないとか、あるいはまたマスコミに会わさないというような御質問といいますか、というようなことがございましたですけれども、これはそういうところから出ておるわけでございます。弁護士に会わさないというのは、原田弁護士が――実は私
たちの知っておるところでは、十月の十八日か十九日ごろに、本人が原田弁護士の宅に行って会っております。原田弁護士のほうから電話で呼ばれたんだろうと思います。原田香留夫弁護士です。これは本人が行くというので行かしたわけでございますが、行ったところが、報道
関係、マスコミの記者が来ておって、そこでいろいろと過去の古傷を尋ねられ、そしてまた、そのとき手記を渡すというような
状態に相なったんだろうと思いますが、そういったように、まずここで接触があったわけです。その後、二回、三回原田弁護士のところへ行っております。
その中で、特に私申し上げたいのは、原田弁護士から、手紙を取りにくるように本人をよこしてくれ、こういうように本人を預かっておる者のところに連絡があったそうであります。本人を行かしたら何も手紙がない。手紙がなくて何か旅館のようなところに連れていかれて、阿藤とかそういった元の共犯の疑いで起訴された元の連中と会わされた。そこで録音もされ、また、写真もとられたというような事情があるんでございますが、弁護士――昔、事件当時には弁護人になっていただいた弁護士さんでありましょうが、なぜうそを言ってまで本人を呼び出さなければならないんでしょうか。そしてまた、そう言ってその報道機関になぜ無理に会わせなきゃいかぬか。また、元の古傷にさわるようなことをしていただかなければならないのだろうか。私は、吉岡をいかに
更生、
改善さそうかということにわれわれ
保護関係の者が一生懸命になっているときに、そういうことをしていただくことは、非常に妨げになるということから、これはひとつ御遠慮願ったほうがいいと思う。また、吉岡自体も、こういった報道機関に会うのをいやがっておるのでございます。そんなところで騒がれるのはいやがって――今後はどうかわかりませんが、いままではいやがっておるのであります。聞くところによると、フジテレビの何に出たので、弁護士さんから、お礼に、現金がいいか、物がいいかと聞かれて、物をもらったということは、真偽のほどはわかりませんが、聞いておりませんが、そういうようにすれば、あるいは、だんだん報道機関に会うようになるかもしれませんが、とにかく現在はいやがっておるのであります。そういう者を、わざわざそういうふうにして
更生しようとしている者を、心を乱していただきたくないというのが、われわれ
保護関係の者の一致した希望でございます。
それから、先ほど課長が取り調べをしたというようなお話でございまするが、これは取り調べというと何かいかにも犯罪捜査のような感じがするわけでございますが、そういう意味ではなくて、事情を聞いたわけです。課長といいましても
保護観察官でございます。
保護観察に付せられておる者でございますので、
保護観察官が事情をいろいろ聞くのは、これは当然でございます。また、行動の自由を拘束されたといいますが、そういう事実はありません。本人が行きたいというところであれば、それは変なところへ行くのは――先ほどの順守
事項の基準を読み上げましたように、変なところに行くのは制限しますけれども、そうでなければ、本人が行きたいというところで、適当なところであれば、何も拘束することはいたしておりません。またそういった
関係で本人がこうしたいとかどうしたいとかということを拘束するというような、何といいますか、自由を拘束するというようなことはいたしておりません。ただしかし、これは
社会に出ましたけれども、満期で出所したものじゃございませんので、仮出獄中のものでございますので、
保護観察を受けておるという
一つの制約がございます。したがいまして、
保護観察中に順守
事項違反をすれば、これは、先ほど
佐々木委員から質問がありましたように、仮出獄の取り消しをされる場合もあるということは、これは
刑法の二十九条に記載されておるとおりでございまして、そういった制約がございますけれども、それ以外に特に本人の自由を拘束したといったようなことはないはずでございます。