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説明員(
斉藤一郎君) 十一月十四日、
極左暴力集団が
沖繩返還協定批准阻止の
闘争をやるということで、
全国においてかなり過激な
行動をしたのでございますが、その間において、
東京の
渋谷でもって
新潟県から
応援に来ておる
警察官が一人重傷を負いまして、昨夜に至ってついに死亡したという
事件が起きております。この殉職を
中心にして全体の背景、概況を申し上げたいと存じます。
まず、十一月十四日の
全国における
極左暴力集団の
動員状況でございますが、当日は、
全国八十カ所で一万六千人の
暴力集団が
動員されております。そのうち
東京都内に
動員された者が一万三千人、したがいまして、この差の約三千人が
地方でもって
動員された者になります。
地方で
動員された者は数も少ないことでございますので、さほど過激なことをやっておりませんので、
警備の過程で
逮捕者が合計八名出ております。北海道で二人、宮城県で五名、福岡で一名、そういう
程度で、かなり荒れはしましたが、さほど御
報告すべきような
事案もなく終わっております。
東京の
状況でございますが、
東京では、かねてから
暴力集団の各
セクトごとに
集会、
デモをやりたいという
状況がございまして、当日は六カ所において、正確に申しますと一万二千九百六十人の
極左暴力集団の
集会、
デモがあったわけでございます。そのうち一番過激な
行動をすると思われたのが
中核派と称する
セクトでございまして、これは今回の
沖繩返還協定の
批准阻止をする最大の山場は十一月十四日にあると、したがって、この日に全勢力を傾けて派閥の
全国根こそぎ
動員をやって
東京都であばれ回る。特に
連中の出しております「
前進」という
新聞の
号外を出しまして、十一月十四日は
渋谷周辺を
騒乱状態に
——コザにおける
暴動と同じような
暴動を起こして
騒乱状態におとしいれる。
渋谷駅それからあの辺の
銀行三井、三菱その他の
銀行、
ガソリンスタンド、
警察署、
交番、
NHK、そういった
施設を一斉にどれもこれも襲って
混乱状態におとしいれるのだということをかねて豪語しておりました。そこで
警察としましては、当日、社会党や
総評系あるいは
日共系の
デモもございましたので、
警視庁の
警察官一万人を
動員したのでありますが、まだ足りないということで、
東京近辺の各県から、
関東各県から二千人の
警察官の
応援をとりまして、一万二千人の体制でもってこれの
警備に当たったのであります。その結果、こまかく後ほど申し上げますが、
渋谷を
中心として三百十三人の
逮捕者を出しております。
警察官は
負傷者が四十五人、うち一人が昨晩死にまして、入院した者が七名ございます。
一般の人も十三人
けがをしておりますが、これは入院された方はないようでございます。そのほか
交番が八カ所襲われて、焼かれて、
窓ガラスが破損したというのがございます。
警察の車が五台焼かれております。そのほか
渋谷周辺の民家、
商店の板べいが破損したり、ネオンがこわれたり、車が焼かれたりしております。
先ほど申し上げたように、十四日の焦点は
渋谷にございますので、
渋谷周辺は、当日は日曜日でございますし、それから七五三の前の日曜日にあたっておるのでたいへん人が出盛る予定でございます。そこへ
中核派の
連中は
市民を巻き込んだ大
暴動を起こそうということを計画しておるということでございますから、
警察では、当日、
一般市民の方に迷惑のかからない
警備実施をやるということで
関係方面、ことに
地元の
商店街の方々にいろいろ
状況をお話ししまして御
協力をいただいて、デパートは休んでいただく。一日四億に近い売り上げが損になるそうでございますが、お休みになっていただく。それから
中小飲食店がたいへん多いので、なかなかまとまった
協力は得られなかったのでございますけれども、それでも皆さん自発的に
飲食店なんかもなるたけ閉鎖して、それから
ガソリンスタンド、これは火をつけると言っておりますので休んでいただく。それから
歩行者天国と称するところに
家族連れの方が出てこられて、
明治神宮からの七五三の帰りに出てこられて
けがをされてもいけないということで、
歩行者天国についても、なるたけ人が出盛らないようにというような
事前の
措置を講じ、
渋谷駅
周辺を主にして、要
所要所には
警察官を配置したのでございます。
警視庁警察官の大
部分の
主力を
渋谷周辺に充てた、そういう配備でございましたので、
過激暴力集団の
連中はなかなか
現場に近寄れない。
宮下公園で
集会をして、そうして
デモをするという届け出をしたのでございますが、それに対して
東京都
公安委員会は、以
上申し上げたような
情勢下では許可できないということで許可を出しておりません。にもかかわらず、計画どおり集まろうということで、
東京の各
周辺、
国鉄、
小田急線、
京王線、
地下鉄線、そういうものを利用して
渋谷に続々集まってまいります。
で、
中核派の戦術は非常に柔軟でございまして、当日は、
事案のあるたびに
状況が変わるんでございますが、十四日は、なるたけ
背広姿で出て行けという指令を発しておるという情報が入っております。そうして
一般市民と見さかいがつかないように、女子の人はミニスカートで出て行け。そうしてまぎれ込んでいって、どこかで武器を
じょうずに入手して、そうして荒れ回るということでございますので、
警察官のほうでも極力そういう
不審者の動向を前々夜
あたりから
警戒しておったのでありますが、当日までにかなり
火炎びんが隠されておるのを発見しております。また、当日になっても、早朝からいろんな
場所をさがして歩いて、
連中がひそかに隠しておった
火炎びんを千数百本近く発見しております。それにもかかわらず、砂地に水が通るように、どこからともなく集まってきて、そうして
集団となって荒れ回るという
状況でございます。
当日、
新潟の
警察官が殉職した
現場を少し詳しく申し上げますと、
NHKの
施設が襲撃されるということが、先ほど申しました「
前進」の
号外ではっきり宣言されておりますので
NHKの
施設の
周辺を守ろう。それで
主力は
渋谷周辺に置いたのでありますが、
施設に固定して守る
警備は、比較的走り回らなくても、
地理不案内の
部隊でもやりやすいということで、
NHKを守るのは、
管区機動隊といいまして、
関東管区内の各県の若い
警察官から編成されておる
応援部隊を充てて
警備を行なったのであります。それで二個大隊当たったのでありますが、そのうちの
川島大隊という
部隊の一個
小隊が
新潟から
応援の
警察官でございます。それが
NHKの
——地図がございませんが、
NHKのちょうど西北に当たるところに
神山交番というのがございまして、そこが襲われるという
状況も出ておりましたし、また
NHKを守るためには非常に好都合のところであるということで、そこに一個
小隊約三十人、正確に言いますと二十八人の
部隊がおったのであります。ところが、そこに、やにわに北の
方面から
代々木八幡の
方向になりますが、そっちの
方向から三百人ばかりの
白ヘルをかぶった
暴力集団があらわれてきて、手に手に
火炎びんを持って
攻撃をしかけてきた。そこで守っておった三十人ばかりの
小隊が、横に、道の上に
阻止線をこしらえまして、そうしてこれを撃退しようとしてかかったのであります。ところが相手は、一瞬ひるんだのでありますけれども、数が少ないと見て、三百人の者が
火炎びん、
鉄パイプを持って一斉に押しかけてきた。
それで殉職しました
中村という
巡査は、この
小隊の
ガス銃の係でございまして、
ガス銃を持っておって、この
暴徒の
集団に対して
ガスを発射したにもかかわらず、
火炎びんを盛んに投げて押し切って、衆寡敵せず、
部隊が負けて後退して、
NHKのほうに
本隊がいるので、大
部分の者はそっちへ退避したのでありますが、
中村巡査を含む八人だ
けが、いとまがなくて、
連中が通り抜けようとする
方向へまっすぐ逃げて、しかも
中村巡査は
ガス銃を発射しながら、
うしろを向きながら逃げたので足もとがあぶなくなってひっくり返った。それを
鉄パイプでもって襲いかかって袋だたきにした。そうして意識がなくなったところへ
火炎びんを
——詳細もっと調べないとわからない
状況でございますが、
最初五つばかり投げ、あとからまた
五つばかり投げた。そのころには
本隊の者が急を知ってかけつけたのでございますが、
暴徒の
集団はまっすぐ南のほうに通り抜けて逃げ去った。
中村巡査は
火だるまになって大
やけどをして、そして同僚にかつぎ込まれて、タクシーでもって飯田橋の
警察病院へかつぎ込まれたのであります。同時にそのほか三名の者が
負傷をしております。
で、どうしてこういうことになったのかということをまだこれからよく反省する必要がありますが、まず最近の
過激集団の
やり方は少し前とだいぶ変わりまして、ことしになってから極端に変わっておりますが、前は
過激集団の
連中が
デモをやってあばれると、それを
警察官が
警備しに行く、規制しに出て行くと、出てきた
警察官と
現場で
部隊と
部隊が衝突をして渡り合う。その結果乱暴をするというようなパターンが
一般でありましたが、ことしの初め
あたりから
部隊同士の渡り合いではもうかなわないと見たのか無
差別のゲリラに出てくるようになった。
新聞等で御案内のとおりでございますが、
警察官の住宅あるいは
警察施設、あるいは場合によったら
関係のない民間のところ、そういうところに爆弾をしかけたり
火炎びんを投げたり無
差別の
攻撃をしかけてまいります。
警察官に対しても、以前は
部隊出動しておる者だけに突っかかってくるということでありましたが、最近は戦争が始まる前の待機しておるやつをやっつけにくる、あるいは二、三人のあぶないから防備をしておるという者を、
警戒をしておるという者を襲いかかってやっつける。非常に
やり方が悪質に積極的になってきたし、無
差別の
攻撃をするという
状況がございます。で、この
渋谷の場合も、そういうことで
ヘルメットも何にもかぶっておらない
連中が無
差別に
攻撃をしかけてくるということでございますので、あらゆる
施設をまんべんなく守らなければならない。そのためには百人、二百人とまとまっておったのではしづらいので、つい三十人、二十人というぐあいになる。それを
じょうずに見分けて押しかけてくる。非常に戦術的にずるく巧みになったところがございます。そういうものに対してのわがほうの
警備のすきをねらって
攻撃をしかけてくるということがございます。
それから
火炎びんなんかはどうして
事前に取れないかということでございますが、これは先ほど申し上げたように、もう二日ほど前から、
警戒について
一般の方にずいぶん御迷惑をかける面もございますが、自動車を検問してトランクの中まで見るというふうなことをやったりしておりますが、その間隙を縫ってやはり何とかかんとか運んでくる。いま申し上げた
警察官が殉職した場面を、いま一生懸命捜査しておるわけでございますが、まだ正確なことはわかりませんけれども、
小田急線の
代々木八幡までは
国鉄を利用したり
小田急線を利用したりして、普通のかっこうをして
背広を着て
買いもの袋をさげてやってくるわけです。そうして電車の中で一斉に脱ぎかえて、
ヘルメットをかぶり
ゲバ姿になって
代々木八幡におりて、そこから殉職した
場所までは幾らもございませんので、一気かせいに風のごとく
部隊になって突っかかってくる。その間においてどっかで用意しておった
火炎びんを入手し、
鉄パイプを入手して突っかかってきたという
状況ではないか。しかも
機動隊をせん滅する、権力をたたきつぶすのだ、
自衛組織——渋谷の
商店街の
自衛組織なんかも全部たたきつぶすのだということを豪語しておりますので、意図的に計画的にやったのじゃないか、その結果、
中村巡査はたいへんひどい目にあった。
彼が収容された直後、おとといの晩、私、
警察病院に見舞いに参りましたが、
やけどというようななまやさしいものじゃございません。もう
人間バーベキューみたいなもので、
まつ黒焦げに、顔は口がザクロのようにふくれ上がっておりますし、手は炭化して炭になって指はございません。足なんかもすっかりやられて、そしてもう
危篤状態ですから、それこそ最後のうめきを上げておるのでございます。まことに見るも
むざんなような姿でございます。親、兄弟がごらんになったらどんなにかという気がしたのでございますが、そういう
むざんな状況に意図的にやったのだということは、
状況からして明らかでございます。
警察としては、まことに申しわけない結果になったのでございますが、この捜査も十分やりますし、それから今後、今回のこういった
事件を顧みてなお一そう、
警備の
やり方というものはたいへんむずかしいのでございますが、無
差別、しかも、
一般市民を装ってくるので、あの晩も、
新聞にいろいろ批判されておりますが、
宮下公園へこの
集団を集めて非常に長い
警備を
——お昼前から晩の十一時ごろまでですから長時間の
警備をやって、なおかつ
連中が退散しない。したがって、
公園の中へ追い込んで一挙に逮捕しようというので追い込んだところが、その中にほんとうのアベックがおられたり、あるいは
関係のないどこかの主婦がおられたりして、たいへん御迷惑をかけたんだということなんかを
新聞なんかで報道されておりますが、非常にやりづらい一面もございますので、なお一そう
やり方をくふうし、そうしてこういう
暴力集団の
連中がとうてい手足の出ないように十分な
警備をやりたい。あまりどれもこれもやって百点満点をとろうと思うと、小さな
交番もどれも守っておると急襲されるというので、ある
程度は
部隊活動をして捨てるところは捨てなきゃならぬようないろんなむずかしさがございますが、なるたけ御期待に沿うような
警備をやってまいりたいというふうに考えております。
以
上申し述べて終わります。