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1971-12-07 第67回国会 参議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十二月七日(火曜日)    午前十時二十分開会     —————————————    委員異動  十一月十七日     辞任         補欠選任      石本  茂君     栗原 祐幸君      戸田 菊雄君     和田 静夫君  十一月三十日     辞任         補欠選任      棚辺 四郎君     原 文兵衛君      和田 静夫君     戸田 菊雄君  十二月一日     辞任         補欠選任      戸田 菊雄君     杉山善太郎君  十二月二日     辞任         補欠選任      原 文兵衛君     棚辺 四郎君  十二月三日     辞任         補欠選任      杉山善太郎君     戸田 菊雄君  十二月七日     辞任         補欠選任      河本嘉久蔵君     高橋 邦雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         前田佳都男君     理 事                 柴田  栄君                 嶋崎  均君                 成瀬 幡治君                 多田 省吾君     委 員                 青木 一男君                 伊藤 五郎君                 大竹平八郎君                 高橋 邦雄君                 棚辺 四郎君                 津島 文治君                 西田 信一君                 桧垣徳太郎君                 藤田 正明君                 小谷  守君                 竹田 四郎君                 戸叶  武君                 戸田 菊雄君                 松永 忠二君                 渡辺  武君                 野末 和彦君    国務大臣        大 蔵 大 臣  水田三喜男君    政府委員        大蔵政務次官   船田  譲君        大蔵大臣官房審        議官       中橋敬次郎君        大蔵省主税局長  高木 文雄君        大蔵省国際金融        局長       稲村 光一君        中小企業庁次長  進   淳君    説明員        大蔵省財務官   細見  卓君        大蔵省国際金融        局短期資金課長  淡野 勝己君        通商産業省貿易        振興局為替金融        課長       田口健次郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣  提出、衆議院送付) ○租税及び金融等に関する調査  (当面の財政及び金融等に関する件)     —————————————
  2. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十一月十七日、石本茂君が委員辞任され、その補欠として栗原祐幸君が選任されました。     —————————————
  3. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) それでは、租税特別措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。水田大蔵大臣
  4. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案について、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  政府は、アメリカ合衆国における輸入課徴金賦課等国際経済上の調整措置実施により、事業活動支障を生じている輸出関連中小企業者に対して総合的な措置を講ずるため、国際経済上の調整措置実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律案を提出して御審議を願っているところでありますが、これとの関連におきまして、税制上、純損失または欠損金の繰り戻しによる還付制度特例等を設けることとし、この法律案を提出いたした次第であります。  以下、この法律案につきまして、その大要を申し上げます。  第一は、純損失または欠損金の繰り戻しによる還付制度特例であります。  現在、青色申告書を提出する個人または法人につきましては、純損失または欠損金が生じた場合には、既往一年間の所得につき納付した税額のうちこれらに対応する税額還付する、いわゆる純損失または欠損金の繰り戻しによる還付制度が設けられているところでありますが、国際経済上の調整措置実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律により、アメリカ合衆国における輸入課徴金賦課等に伴って事業活動支障を生じているとの認定を受けた中小企業者及び資本金一億円以下の法人でこれに準ずるものについては、一定期間内に生じた純損失または欠損金に限り、繰り戻しによる還付既往三年間にさかのぼって認めるというものであります。  第二は、事業転換を行なら場合の施設償却特例であります。  すなわち、中小企業者が現に営んでいる事業転換するため、国際経済上の調整措置実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律により、事業転換計画について認定を受けた場合には、その計画に従って処分することとなる施設について、計画期間内に償却できることとしております。  以上、租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由内容大要を申し上げました。  何とぞ御審議の上、すみやかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  5. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) ただいま議題となっております租税特別措置法の一部を改正する法律案審査を一時中断します。     —————————————
  6. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 租税及び金融等に関する調査中、当面の財政及び金融等に関する件を議題といたします。  水田大蔵大臣から発言を求められておりますので、これを許します。水田大蔵大臣
  7. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これまでの十カ国蔵相会議における会議の模様、いきさつ等につきましては、すでにこの委員会で御報告をいたしておりますが、今回の第三回目のローマ会議におきましては、前回問題となりました通貨調整に対する話し合いの、いわば前提となるべきものとして、欧州諸国及び日本から示されておった課徴金をどうするか、これを撤廃してほしい、それから米国においてドル切り下げをこの際行なうべきであるという、二つの、九カ国の要望に対して、どういう態度米国が示すかということによって今度の会議進展が見られる。これが示されなければなかなかこの通貨調整の話は進まないだろうということでございましたが、今度の会議におきましては、劈頭アメリカ側は、やはり当初のように、通貨調整はこれだけの問題ではなくて、貿易問題、防衛費負担問題とか、こういうものとからんだ問題であるために、切り離して通貨問題の審議だけをするわけにはいかないということで、今日まで日本とカナダは貿易話し合いにすでに入っておる。これはいいが、欧州諸国とはまだ貿易話し合いに入れない。なかなかこの交渉開始ということがむずかしい状態にあるんだと、これではまだ米国考えを述べるわけにはいかぬ、ということで、アメリカ側考えが出てきませんでしたので、非常に会議劈頭において相当もめましたが、最後におきまして、EC側がやはり貿易問題について至急アメリカ交渉に入るということを決定しましたので、それによって米国側態度には変化が見られまして、課徴金に対する問題、それからドル切り下げ問題も、約束はしませんが、しかし欧州通貨交渉その他の情勢によって、こういうこともあり得るという可能性を示すということになりましたために、急に話は進展いたしまして、いままでなかなか軌道に乗らなかったこの通貨の問題が、初めてローマ会議の終わりごろから軌道に乗った、土俵に乗ったということが言えようと思います。  これがさらに日があって、引き続きこの交渉が続くようでしたら、ある程度結論を得るところまでいったと思いますが、これは時間の制約もございましたし、当初の日程がございますので、一応これを打ち切って、なるだけ遠くならない間に引き続き協議をしようということになりまして、次回は十二月の十七日、十八日にワシントン会合するということになりました。したがって、通貨問題が軌道に乗りましたので、うまくいけば年内決着が見られるかもしれぬ。各国とも早期解決を急いでおりますので、うまくいけば年内解決ということもあり得るという見通しは出てまいりましたが、しかし、問題はこれからまだまだ、前回から問題になっております米国調整さるべき赤字幅、したがって、各国レート調整幅というような問題の折り合いをつけ、そうして各国間のまたいろいろ均衡とか、あるいは各国が分担すべきこの通貨調整負担というようなものを、ほんとうにこれが最後的な合意を見るというまでには、なかなかむずかしい問題でございますので、はたしてこの年内決着をつけるところまで行き得るかどうか、まだ非常にむずかしい問題を残しておりますので、何ともいまのところ言えませんが、しかし従来の会議と違って、少なくともうまくいけば解決されるという見通しがここに出てきたということは大きい進展であると思います。こまかいいろいろの問題につきましては、一緒に行きました細見財務官がここにおられますので、これから私の説明に対する足らぬところを補足してもらいたいと思いますが、以上申し上げましたように、従来と違って今度は通貨交渉としての進展を相当見せたということでございますので、この点だけ御報告申し上げます。
  8. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) それでは速記をとめて。   〔速記中止
  9. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 速記を起こしてください。  ただいま議題となっております当面の財政及び金融等に関する件の調査を一時中断します。     —————————————
  10. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 再び租税特別措置法の一部を改正する法律案議題といたし、政府から補足説明を聴取いたします。高木主税局長
  11. 高木文雄

    政府委員高木文雄君) ただいま提案理由説明がございました租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、補足して御説明申し上げます。  第一は、純損失または欠損金の繰り戻しによる還付制度の繰り戻し期間特例についてであります。  この特例措置対象となる事業者の範囲は、まず、青色申告書を提出する中小企業者のうち国際経済上の調整措置実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律により今回の国際経済上の調整措置影響を受けたことにつき、都道府県知事認定を受けた個人及び法人とされております。この場合において、中小企業者とは、原則として、中小企業基本法に定められている従業員数及び出資金額の基準による個人または法人をいいますが、このほか、法人税軽減税率が適用されている出資金額一億円以下の法人も同様の事情があれば含めることといたしております。  次に、この特例措置対象となる純損失または欠損金は、個人については昭和四十六年及び昭和四十七年の各年において生じた純損失法人については昭和四十六年八月十六日を含む事業年度からその事業年度開始の日以後二年を経過する日を含む事業年度までの各事業年度において生じた欠損金としております。  なお、この特例措置に該当する法人にすでに申告期限の到来しているものについては、改正法施行日から三カ月間内にこの特例による還付の請求ができるよう経過措置を講じております。  第二は、現に営んでいる事業転換を行なう中小企業者施設償却特例についてであります。  すなわち、今回の国際経済上の調整措置実施により影響を受けた中小企業者事業転換計画について認定を受けた場合には、その計画に従って廃棄または譲渡することとなる機械装置等償却がその廃棄等のときまでに終わるよう加速度償却を認めることとするものでございます。  以上、租税特別措置法の一部を改正する法律案提案理由を補足して御説明申し上げた次第でございます。
  12. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 本案の審査を一時中段します。     —————————————
  13. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 租税及び金融等に関する調査中、当面の財政及び金融等に関する件を再び議題といたします。  質疑に入ります前に、細見財務官から発言を求められておりますので、この際、これを許します。細見財務官
  14. 細見卓

    説明員細見卓君) 先ほど大臣から御説明申し上げましたことに尽きるわけでございますが、私が若干補足して申し上げますと、御承知のように、八月十五日のニクソンの新経済政策対外部面といたしましては、ドル交換性の停止と、それから輸入課徴金の徴収ということがあって、それがいわば戦後の世界貿易通貨体制根本をゆるがすものであったことは御承知のとおりであります。  御承知のように、一九三〇年代は世界経済にとって最も暗い時代でございまして、各国は競って平価切り下げ競争をして、できるだけ有利な形で貿易をやろうとする、あるいはまた、関税をできるだけ高くして、外国品が入ってくることを防ごうとする、あるいはまた、武力その他の経済力を利用いたしまして、自分たちの独占的な市場をつくる、いわゆる地域経済、こういうことをやってきまして、それが第二次世界大戦に導きましたことは御承知のとおりであります。  そこで、第二次世界大戦という貴重な犠牲を払いまして考えられたことは、このような体制が再び起こることのないようにしていこう、つまり、平価調整というようなものは、国際的な合意によってやっていこう、あるいはまた、関税はできるだけ低いものにして、お互いにその貿易障壁を設けることはやめよう、あるいはまた、世界を無差別に自由な経済交流に基づく体系に組み入れまして、ブロック化するのを防いでいこう、これが一方ではガットであり、一方ではブレトン・ウッズ協定であったわけでありますが、その根本をなしました自由な、無差別な貿易、あるいは貿易制限は、これをかってにはさせないという原則を、アメリカがみずから自分の生み出した制度の精神ともいうべきものを破ったわけであります。したがいまして世界は、新しい通貨貿易経済のいわば、無秩序な状態に入ってしまったわけであります。  そこで、各国蔵相あるいは中央銀行総裁、これらの方々が、通貨面におきましてのこの混乱状態を解消しようとするために懸命の努力を払っておるのが、大臣の先般から申し上げておりまする数次にわたる十カ国の蔵相会議であり、IMFの総会であったわけであります。  一方、貿易面におきましては、先般、木村経済企画庁長官が御出席を願ったような形で、ガットにおいて再び自由な貿易体制、より低い関税のもとにおける貿易の拡大ということを考え会合が開かれております。現在までのところ、いずれもの努力が必ずしも十分な成果をあげておらないということは、残念ながらこれを認めざるを得ないわけであります。  そこで、通貨の問題に限って申し上げますと、ロンドンで第一回の会合を開き、引き続きましてワシントンで第二回の会合を開いたわけでありますが、そこでは議題の整理の域を出ない程度の議論でありまして、実質的な討議に入らなかったことは、先ほどの大臣の御説明のとおりであります。そしてパリにおきまして蔵相代理会議あるいはOECDの経済政策委員会の第三作業部会作業というものも行なわれまして、何とか世界経済の、あるいは世界通貨秩序立てのために考えられる方策はないかという努力各国真剣にやってまいりまして、一方、EC等におきましては、御承知のようにドイツとフランスとの間の対立というようなものにつきましても、懸命の妥協の工作が進められまして、先ほど申しましたように、アメリカを除く九カ国の態度は、大体、課徴金の撤廃及びドルを含むすべての通貨の再調整ということでほぼ意見の一致を見まして、そういう形でローマの十カ国蔵相会議が十一月三十日、十二月一日の両日に開かれたわけであります。  そこにおきまする成果は、先ほど大臣が申し上げましたように、大きな成果といたしましては、アメリカが強く要望しておりまする、あるいはまたドルの安定のために必要な条件でありまするアメリカ国際収支改善、そのために通貨調整と並んで貿易その他の面におけるアメリカ国際収支改善策というようなものが並行して議論できる状態になった。端的に申せば、アメリカECとの間にいままで議論されてはかどらなかった貿易交渉が、とにかくまじめに取り組んでいこうという形になり、近く開かれておりまするEC諸国と申しますか、NATO加盟国と、アメリカとの間のNATOのいろいろな軍事負担の問題、そういうようなものも一方取り上げられ、また平価調整につきまして、アメリカ以外の国が強く要求しておりますドルを含めての平価調整というようなことにつきましても、ドル切り下げることあるべしというようなヒントが与えられた、こういうようなことでかなりの前進を見たのではないかと思います。  しかし、各国とも具体的な詰めの段階に入りますと、まだ何も実はきまっておらぬわけでありまして、ドルに対して平価調整をするのか、金に対して交換比率調整をするのか、あるいはSDRに対してそれを行なうのかというような点もきまっておりません。あるいはまた暫定的に変動幅を広くする、いわゆる日本で言われておりますワイダーバンド、ワイダーマージンというものの運営につきましても、何ら国際的な合意が行なわれておるわけではございません。と申しますのは、かりに三%とかあるいは二・五%というような大きな数字でありますと、それが上下開きますと三%にすれば六%、二・五%としても五%というようなことで、従来考えておりましたような固定平価という観念とはかなり違った形の平価になるわけでありますから、しかもまたアメリカドルと金との交換性のない状態において平価をきめるわけでありますから、先ほど申しましたように、金に対してか、ドルに対してか、SDRに対してか、あるいは相互にレートをきめ合うというような、非常にむずかしい、しかも技術的な困難な問題を含んだ問題をどう処理するか。これはなかなかむずかしいと思う。さらにはこうして行なわれました平価調整の後におきまして、どうしても発生してまいりまする貿易上の余剰なり赤字なりというものを、どういう通貨で決済したらいいのかというようなことにつきましても、必ずしも論議が行なわれているわけではございません。現実問題といたしまして、ドルによって決済せざるを得ないと思うのでありますが、その場合に、いまのいわゆる金と交換性のないようなドルでは、はたして平価調整が行なわれたと言えるのかどうかというような問題、今後すぐには解決できないとしても、いつまでに解決できるかというような問題、これらの点もなかなかむずかしい問題でございます。  そういうような問題を考えてまいりますと、ただムード的に、何とかまとまりそうだということでまとめるのには、あまりにも多くの込み入った問題をかかえております。したがいまして、気運といたしましては、大きく前進してまとまる方向に第一歩を踏み出しましたことは事実でございますが、これをまとめ得るかどうかということは、かかって再びワシントンにお集りになる十カ国蔵相あるいは中央銀行総裁方々の英知と決断にかかっておるわけでございまして、なかなかむずかしい問題である、かように思います。
  15. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) それではこれより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  16. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 大臣説明をおくれて聞かなかったのですが、いま細見財務官報告を聞いた中で、今回の十カ国蔵相会議が、アメリカコナリー財務長官が来て弾力的な発言をした。いわば金価格引き上げ、もしくはドル切り下げ、それを思わせるような発言をした。このことが非常に会議の雰囲気を一変させたというようなことが伝えられておりますね。同様のいま報告があったわけですが、しかし、細見さんの報告を聞きますと、金でいくのか、ドルでいくのか、あるいはSDRの関係でいくのか、こういう点がかいもくわからないですね。ですから、日本の派遣、水田大蔵大臣はじめ参加をした皆さんが、どういう点で一体前進したと思うのか、これとこれだから前進をした、こういうことをひとつもう少し詳しく説明してもらいたい。
  17. 細見卓

    説明員細見卓君) 御質問の趣旨必ずしもよくわからないのでございますが、今回の世界通貨不安の根本となったものは、ほかに原因はもちろんございますが、やはり通貨上の不安は、ドル価値の低下、あるいは基軸通貨としてのドル役割りについて疑問が持たれてきたということにあるわけであります。したがいまして、世界通貨を建て直すというときには、ドルがそれなりに今日の生じておる事態に対して適正な地位を占めるということが必要なんではなかろうかというのが、これはおそらく皆の考えている意見であります。その意味で、ドル切り下げということが必要だろう。そのドル切り下げの方法につきましてはこういういろいろな議論がございます。しかし一方、御承知のように、ヨーロッパ諸国の中には金本位制をとっている国が数あるわけでありまして、そういう国におきましては、金とのつながりというものが非常に重要であり、ドル切り下げということは金を中心にすべきである、あるいは金にリンクしたSDR中心に動かすべきであるというような考え方が、これは現実として根強いわけであります。その意味におきまして金価格引き上げというようなことが、一番手っとり早いドル切り下げのあらわれであるというわけで、そのこと自体について拒否をしなくなった。あるいはそういう事態を仮定した議論が行なわれるようになった。そういうような意味前進である。こういうわけであります。
  18. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 その日本の場合ですね。この会議に参加する態度は、それぞれ検討されて行ったと思うのですが、アメリカの出方、いま報告された内容でどれが一番日本の場合メリットがあると考えているのか、その辺は蔵相はじめ日銀総裁細見さん等がそれぞれいろいろ相談されておったと思うのですが、それはどういう意味ですか。
  19. 細見卓

    説明員細見卓君) ドル価値の安定というものを望むのには、アメリカ貿易収支あるいは経常収支改善ということが不可欠であるわけであります。その場合におきまして、たとえばアメリカドル切り下げたということになりますと、それはアメリカ貿易全体に響くわけでありますから、ドル切り下げ幅は即アメリカ国際収支改善に寄与するわけであります。一方、日本をとって考えてみますと、日本の対米貿易は、御承知のように約三分の一であります。したがいまして、後進国発展途上国態度が未定でありますから、確たることは申し上げられませんが、もし発展途上国態度が、現状と変わらないといたしますれば、日本の円の切り上げというものは、アメリカに対して三分の一しか役立たないわけであります。つまり日本は、円を切り上げることによって、三分の二はアメリカ以外のほかの国に対する貿易条件を悪くしながら、三分の一をアメリカに貢献できるというわけであります。  ところがドルでありますと、先ほど申しましたように、一〇〇%アメリカ国際収支改善になるわけでありますから、いずれを選ぶかといえば、アメリカドル切り下げを求めるのが筋であろう、それが金であろうと、ドルであろうと同じである。と申しますのは、現状を見てみますと、百数十億の外貨を持っておるわけでありますから、そのドルが切り下がるということにおいては、一種の、何といいますか、考えなきを得ないわけでありますが、しかし、われわれが持っておりますドルと申しますのは、これは一たん対米貿易赤字になりましたときには、現在の一ドルは、アメリカに対しては、同じインフレによってアメリカドルがえらく減価しない限り、日本がどう評価しようと一ドルは一ドルであるわけですね。だから私どもは、ドル切り下げを求めることは、それが金であれ、ドルであれ、いずれもそんなに国益を害するものでなくて、むしろ円の切り上げ幅が適正であるということのほうが、国内経済の運用、あるいは国内経済に与える摩擦ということから考えればより望ましいと、かように考えるわけであります。
  20. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 ドル切り下げでいったほうが日本は、ことに百四十億ドル近い外貨を持っておるから、そういう意味からいっても得策である。あるいは貿易の総体から、割合からいって、アメリカは三分の一だと、あとの三分の二は開発途上国その他であるから、その点においても日本は得であろう、こういうことを言っておりますが、実際はアメリカドルは信頼をずっと低下さしてきて、言ってみれば基軸通貨はもう崩壊、単にいまやられておるのは決済だけですね、そういう中で、ますますアメリカの国内情勢を見ますと、失業もふえてくる、スタグフレーションも増大する、こういうことになると、ドルはますますずっと下がってくることになるんじゃないですか。そういうアメリカの経済情勢あるいは世界的な経済退潮、こういうものがおそらく近い将来やってくるんではないか、こういう見通しに立った場合においても、いま答弁をされたような損得の考えでいけば、日本はこれがメリットのほうが多いんだ、こういうことは言い切れますか。その辺どうですか。
  21. 細見卓

    説明員細見卓君) 今後の対米貿易あるいはドル貿易による、ドルによる黒字を累積していくことについて疑問を持ち、あるいは十分反省していかなければならないということは御指摘のとおりで、その意味でわれわれはレートをきめるのにあたりましても、今後なお黒字が無際限に累積していくような形でレートをきめることが必ずしも得策でないということは、いま戸田先生の御指摘のとおりでございますが、従来のドルをどうするかということにつきましては、金を通じてであれ、ドルそのものであれ、いずれにしても国際貿易におけるアメリカの信用改善には一番役立つ方法であろうと、かように考えております。
  22. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 当場をしのぐという意味合いからいけば、確かにいま言われたようなことになるかもしれませんけれども、それはIMF体制ですね、このいわゆる再建といいますか、そういうものが根底に、いろいろ会議意見は出されておりまするけれども、せんじ詰めていけばそこに帰結しておるんじゃないかと思うんですね。そういうためにいま十カ国蔵相会議でいろんな苦衷を互いに出し合って、そして何とかこの通貨調整していこう、こういうことが根本的な土台になっているんじゃないかというふうに考えるわけなんですね。そういうことだとすれば、いろいろ経過はありましたけれども、いまのIMF体制というものは、一つは何といっても一オンスの金三十五ドルの割合、外国の通貨、つまり政府と中央銀行の手持ちドルをいつでも金と交換をいたします。こういうことがやはりIMF体制の成立の一つのかなめ石になっておったわけでしょう。  もう一つは、やはり一ドル三百六十円で、通貨のいわば交換比率ですね、そういうものを設定しておる、それを為替レートにしいた場合には、日本の場合は三百六十円で固定為替相場制というものをしいて今日まで安定を保持してきたというのが、IMF体制の二大支柱じゃなかったんですか。そうだとすれば、IMF体制の立て直しということになれば、このこと自体が金本位制の土台の上に立っていることは間違いないですね。もちろんこれはいろいろな経過あります。一九二八年以降三三年大恐慌時に、いろいろこれが崩壊をして、あるいはそれ以降第二次大戦以前に地域ブロック体制もとられながら——一貫した歴史的な経過はありますけれども、いずれにしてもいまのIMF体制というものは、そういうところに根拠を置いて今日まで安定二十数年やってきた。ですから、そうだとするならば、基本はやっぱりそこに置いて金本位制で私はいくべきじゃないかと思うんですね。そういう点についてはどうですか。
  23. 細見卓

    説明員細見卓君) 世界貿易の伸展に伴いまして、金をもってその必要な流動性を確保するということができなくなったということは、おそらくこの委員会で国金局長その他から何べんも説明を申し上げておると思うのです。確かに何か金のようなものがありまして、それが全体の流動性というものにリンクして、必要な流動性というようなものにリンクして、発生したり消えたりするというようなものであれば、これはもうおっしゃるとおり一番目に見えるものであり確かなものでありますが、それでは流動性不足というものを生じで、SDRというようなものが発足してきたというのは御承知のとおりであります。そこで国内的に見ましても、かつては金本位制であり、あるいは銀本体制であったものが、自然物としての金とか銀というものの生産の増加と、人間の経済の発展のテンポとの不一致があるので、管理通貨というものが国内的に使われるようになったのであります。国内的ということであれば、一つの主権のもとにある管理通貨でありますから、それ自体経済政策の運営よろしきを得れば問題を起こさないわけでありますが、世界的管理通貨というものをつくるだけにはまだ、あるいは世界的中央銀行をつくって一元化した管理通貨をつくるだけにはまだ世界はいっておらない、金は若干足りないし、世界を一元化した管理通貨をつくるのには、まだ世界の国の間に残念ながらそこまでの相互信頼といいますか、世界は一つだというところまでいておらない、その悩みが今日の悩みでありまして、その意味におきましては、IMF体制——金ドル中心としたIMF体制がくずれて、新しい意味で、大げさに申せば人類がどう新しい時代を切り開いていくかという試練に立っておるときだと思います。
  24. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 その試練の見通し日本の場合はどういうふうに考えておりますか。十七、八日に再度これアメリカ会議が招集されておるわけですね。水田蔵相の声明ですと、やや七割方おそらく十七、八日の会議調整ができるであろう、こういう一つの発表を新聞等で見ているわけですけれどもね。その見通しはどうですか。
  25. 細見卓

    説明員細見卓君) 大臣のお話はそれながらに確たる見通しを持ってお話しになっていることだと思いますが、私はここで申し上げたいことは、一番悪いことは、うまくいくはずだ、いくはずだと言って、悪くいったときが一番世の中に悪いことでありますので、大事なことはやはり慎重に見通すことであろうかと思っております。
  26. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 どうも抽象的でわからないのですが、政治判断であるからそれは答えられないということですか、それとも内容として全然まだそこまで検討されておらない、あるいはまた会議の成り行きとして見通しが立たないということで、この判断ができると思うのでありますが、細見さんの場合はどういうふうにお考えでありますか。
  27. 細見卓

    説明員細見卓君) 確かにムードとしては何とかまとめていきたい、もうあきた、あるいは早くきめたいというムードは充満しておることは事実でございます。しかし当面の問題が、それではそういうムードに見合うだけ解決されておるかといえば、ほとんど解決されておりません。そういう意味で、私が申し上げたのは、いたずらに過大な期待を持って幻滅するほうが、期待しないときよりも害が大きいと、かように申し上げたわけであります。
  28. 松永忠二

    ○松永忠二君 ちょっとお伺いいたしますが、さっき大臣のお話だと、EC側のほうとはまだ貿易の問題、協議が十分できていない。しかし日本とカナダとの間にはすでにそういう話もできているのでと、こういうお話があったわけですが、アメリカ側の見方としては、日本に対しては一応もう最終的な結論を出すようなものはすでに話し合いはできていると、あるところまで煮詰まっているんだと、話し合いはできているんだと、そういうことを考えておるんですが、日本側は別として、アメリカ側としては、もう最終段階に入る、つまりその話し合いをある程度進められているという印象なり考え方を持っておられる、そういうふうにいま大臣説明だと感ぜられたわけです。そういう点についてアメリカ側はどういうふうな考えを持っているんでしょうか。
  29. 細見卓

    説明員細見卓君) ECアメリカとの関係を申し上げたほうがよりおわかり願えるかと思いますが、ECアメリカとの間では何べんも貿易交渉をやろうといたしまして、御承知のようにアメリカの対EC貿易というのは、日本に対する貿易とほぼ同じように、農産物の輸出が主になっておるわけであります。ところが御承知のようにECの結びつきの根っこは農産物、つまり小麦価格の統一農業政策であるわけであります。したがいまして、ECアメリカとの貿易交渉というのは、アメリカにとっては小麦をよけい買え、あるいはそのほかの農産物をよけい買えという話であり、EC側にとっては、それはECの紐帯を切り離すような話になるわけでありまして、今日まで何回かアメリカECとの貿易交渉が個々にも行なわれており、あるいはガットの場でも行なわれておるわけでありますが、いままでのところほぼ玄関払いになっておったわけです。ところが、御承知のように日本アメリカとの間は、日米閣僚会議というようなものがありましたり、あるいはまたそのほかにいろいろ貿易会議のようなものもございまして、貿易について話をするチャネルはできておる。カナダとアメリカにつきましては、日本よりもより密接に貿易関係が行なわれて、貿易交渉は行なわれており、すでにこの八月十五日以降におきましても、数多くの米加の貿易協定の改定が行なわれております。そういう意味日本とカナダ、あるいは日本アメリカ、カナダとアメリカという国においてはいつでも話をしようという、そのルートができております。ところがECとの間では、話し合おうとして会うけれども、玄関で別れてしまうということになっており、その違いを指摘したわけでございます。  で、今回ローマにおいてECも初めてアメリカと、それじゃ貿易交渉の中身を話しましょうというところになったと、こういうわけでございます。
  30. 松永忠二

    ○松永忠二君 私のほうは逆に、日本側のほうの問題を問題にするわけですけれども、そうすると日本側としては、この通貨調整をやる前にアメリカ側とその話し合いをしておかなければできない問題というものがまだあるんだと、そういうような認識を持っておられるのか。そういう点はどうなんですか。アメリカ側としては、そういうルートがあるから、その後の段階においてあるいは話ができるし、話の道があるというように考えているとしても、日本側としては、最終的な通貨調整をする場合には、まだこういう点とこういう点について念を押しておく、あるいは話をしておかなければできない問題があるんだという認識を持っておられるのか。そういうことについては一体通貨調整の最終的な段階を迎えるまでに、どういう一体手当て、方法を講じて日本側はやろうとしているのか。この点はどうですか。
  31. 細見卓

    説明員細見卓君) 貿易交渉は、御承知のように日米行なえば、日本側が、何といいますか、いろいろな意味アメリカの要求に耳をかさなければならないというのが従来の例でございます。したがいまして、と申しますのは、対米黒字というのはだんだんだんだん大きくなっておるわけでございますから、ですから貿易交渉といたしましても、それは日本側が、いわばいろいろな形で貿易アメリカに譲らなければならない交渉にならざるを得ないと思います、もし、双方の貿易をバランスするんだという話になれば。そういう意味で、われわれとしては、それはないにこしたことはないと思っておりますが、アメリカとしては、通貨をまとめる前に、ECとある程度まとめるときには、日本ともそういう話をしようと言い出してくる可能性も十分あると覚悟しておらなければならないと、かように思います。
  32. 松永忠二

    ○松永忠二君 そうすると、逆にいまのお話だと、日本側は別に話をすることはないんだ、話をすればそういうような問題が出てくるだろうと言っているというようなお話。しかしアメリカ側としては、日本とカナダとの間にはすでにそういう問題ができているので、EC側との間にこういう話ができれば、最終段階に行ってもいいんだというようなお話が、さっき大臣からそういうような意味のお話があったわけですがね。そうすると、アメリカ側としては、いま言ったような話を一体やらなければできぬと思っているのか。たとえば防衛分担金とか、そういうような、単に貿易問題だけでなく、いわゆる国際収支というようなものに影響するような、アメリカ側の課題というようなものについては、一応もうあるところまで行っているんだ。だからこの次の十七、十八日の段階で、ある程度最終的なものに出ていくということもあり得るという可能性をさっき大臣から話があったんですが、そうなると、その結論はいつ、どういう形で一体アメリカ側から提示をされてくるのか。それはアメリカ側から提示するという、さっきお話しのようなそういうものは、アメリカ側はきちっと持っているのか。この点は、逆にあなたのお話では、日本側のほうには問題がないような言い方なので、それじゃアメリカ側のほうで、いま言ったような問題について、きちっとしなきゃできないといったようなことをアメリカとして考えているのか、この点はどうなんですか。
  33. 細見卓

    説明員細見卓君) 大臣説明を若干補足いたしますと、大臣が申し上げましたのは、ECはいままで交渉を一切受け付けておらなかった。それが交渉するようになったということを言った。日本アメリカとは交渉ができるようなチャネルができている。そこが違うんだ。で、大臣の御説明必ずしも私が聞いておりましても意を尽くしておらなかった面がありますが、ECは、交渉はいやだと言っておったわけです。いやだと言っておったやつを交渉さすようにした。そこが日本とカナダとの間とは違うんだ、こういうことを申し上げたわけであります。
  34. 松永忠二

    ○松永忠二君 そうすると、なおお聞きしますがね、そうすると、十七、十八日の段階である程度の話が煮詰まるという前段階において、あるいはそれと並行して、いま言ったアメリカ側との問題は、アメリカ側から提示をされてある程度話し合いがなされなければここにはこないのか。日本側としてはある程度もうその段階は過ぎているという状況なのか。EC側との間では、窓が開けただけだから、これからやらなければならぬ。日本側としては、数回やっていることでもあるので、この問題は何も十七、十八日に結論を得るまでに、アメリカ側としてはどうしてもやらなければできないと思っているわけではないのかどうなのか、この点はどうなんですか。
  35. 細見卓

    説明員細見卓君) ECアメリカとの間では、そういうことでローマ合意ができまして、たしか今週からエバリーというアメリカの通商代表が、ブリュッセルにおいてECとの間に貿易交渉をすでに始めております。それから日本との間のことにつきましては、そういうことでわれわれはチャネルがあるのでありますから、チャネルを通じての交渉はあるいは起こるかもわかりません。しかし、事柄といたしまして、貿易交渉貿易交渉平価調整平価調整、およそ時期を分けて考えなきゃならない性質のものでございますから、平価調整というのは、いわば十カ国なら十カ国が集まってみんなできめないと安定を得られない問題です。貿易の話になりますと、これはいわば二国間で話をするということでありますから、話をする態度さえきまれば、その結果には、いろいろ双方の技術的な問題もございましょうから、そういうものは若干おくれて成果を見るということになるんではなかろうか。そういう意味で、日米の間にはチャネルがあるから、いつでもやれるのだから、アメリカとしては、日本との間の平価調整はやっても、貿易の話はまた別途できると思っておれば、この通貨調整の前にそういうことを申し出てくることはないでありましょうし、とにかくまあ何か、ECにもやっておるのだから、日本との間にも一応話をしておこうと。きまるきまらぬは今後の問題として、話し合いをしていこうというような態度だとすれば、あるいは申し出ることもあろう。それは今後のアメリカの出方によるわけです。
  36. 松永忠二

    ○松永忠二君 もう一つ。課徴金の撤廃とドル切り下げというものを約束したことは新しい一つの事実であって、こういう中から可能性が生まれてきたという大臣説明だったわけですね。このことについては、日本側としては全く新しい事実なんですか、あるいはこういうことはある程度日本側とは話を進められているということを——まあわれわれさっき大臣説明を受けた感触からいうと、全く新しい事実のようばかりではないように思うのですけれども、この二つの問題については、日本側との間の話し合いの中には、やはりこういうふうなものはある程度予想できたものがあるのですか。これはどうですか。
  37. 細見卓

    説明員細見卓君) アメリカ態度自身も必ずしも一貫しておりません。たとえば課徴金の廃止につきましても、一番最初のころは、平価調整ができ、アメリカの国際貿易収支状況が改善されたときにやめるのだというような、非常に抽象的なことを申しており、その後、ある段階におきましては、平価調整が行なわれても、貿易について対米協力といいますか、アメリカ側の望むような形でのいろいろな貿易上の取りきめが行なわれない限り、課徴金はやめないんだというようなことを途中で言った段階もございますし、それからその後、いま大臣が申しましたように、平価調整がある程度すんなりといけば、課徴金はやめてもいいというようなにおいをさすというようなこともございまして、アメリカ側態度というのは、終始そういうふうに、何といいますか、一定のプロポーザルとして一つにまとまったというようなものでなくて、かなりその辺に弾力的な流動的な扱いがあるようでありますので、日本もそのときそのときの段階におきまして、課徴金廃止を強く要請し、そのときのアメリカ側の受け答えというようなものは承知いたしておりますが、それらのものを見ましても、先ほどECあるいは公にされておるアメリカ態度というものは、ほぼ同じような推移をたどっておるようでありまして、日本だけがどう、ECだけがどうというようなことはない、アメリカ自身の態度がかなり流動的であったということであろうかと思います。
  38. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 いま話が出ましたけれども、ECの中で、特に米仏の対立が非常に激化しておる。しかし、やや今次の会議でもって氷解をしたというふうなことを聞いておるのですが、その対立の中身は何だったのでしょうか。  それから、氷解をしたという、その解決というか話し合いの主としたテーマは何だったのですか。
  39. 細見卓

    説明員細見卓君) 米仏の通貨に関しまする対立点は、フランスは、ドル切り下げ、しかも金本位制によるドル切り下げ、あるいは金にリンクしたSDRでありましても、いずれにしても、金を主軸にしたドル切り下げということを強く言い、しかもその場合には、フランは動かない程度のドル切り下げというような、つまりドルをあまり大幅でもなく、あまり小幅でもない切り下げというようなことを、フランスが言っておるんだというように伝えられております。これは必ずしも、フランス当局が明確な形でそう言ったわけではございませんが、フランスの言動を総合的に推察いたしますと、そういうような態度。とすれば、アメリカにすれば、アメリカドル切り下げて、いわばことばは適当ではありませんが、自分の国の通貨を動かした、フランは動かないんだと。見てみろ、フランが中心ではないかというような、政治的なプロパガンダに非常に使われやすいわけです。そういうようなことがあるいは感情的な対立の原因であったのではなかろうかということを考えております。  そのほか、アメリカとフランスのあり方につきましては、アメリカは、EC自分の経済圏と、自分とより密接に結びつけようとするし、フランスはどちらかといえば、ECECで独自の領域を築いていこうという考え方、しかも、そのECのいわば中心になりたいという考え方でありますから、政治的なイデオロギーというようなものにおいて基本的な対立があり、そういうようなものが、通貨問題では、いま申しましたような形であらわれておるのではないかというふうに推察されるわけであります。
  40. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 各般の政治工作が入ったことは間違いないわけですね。アメリカECに対する分断政策をはかろうとする、そういうものが根底にあったとかないとか、いろいろな情報が取りざたされておるわけですが、いずれにしてもフランスは、アメリカに対して金価格引き上げを迫ったということは事実のようであります。そういうことになりますと、日本の場合は、ドル切り下げもけっこうだということになると、特にEC体制日本との関係について、どのようにその辺の調整を見ていくのか、この辺の問題について、いろいろ会議の状況を見ますと、EC体制から日本は、何といいますか、集中攻撃を浴びて、結果的には円切り上げを迫られたとか、アメリカも同様に抗議を受けたとか、こういうようなことがいろいろ取りざたされておるのです、その辺の実相はどうであったのですか。
  41. 細見卓

    説明員細見卓君) 日本ECとも円満でございますし、アメリカとも円満に話し合いをいたしておりまして、孤立したとか、あるいは集中攻撃を受けたということは、私に関する限り一度もありません。
  42. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 そうしますと、EC体制ないしアメリカとも十分話し合い調整可能性も出てくる、こういう自信を持ったというのですね、結果的に。私はアメリカの、まあ細見財務官が言うように、ドル切り下げのほうが、日本としては好ましい、その好ましいドル切り下げをどの程度に一体考えておるのか。おそらく目下のところ回答できませんということになるのかもしれませんが、そして、また日本の円の切り上げ幅は、これもまた具体的に十七、十八日に出し合って詰めていかなければ、通貨調整はとてもできないだろう思う、そういう面についての見解をひとつ聞きたいことと、それから、もしかりに日本が、三百二十四円というと、一〇%ですね。この辺になった場合に、国内に与える各般の影響というものは非常に大きいと思うのですね。いわゆる為替差損、もちろん差益もあるでありましょうが、差損に対する範囲というものは、一体どういう状況になってくるのか、この辺の今後の一連の重大会議に臨むにあたっての総合的な考え方を聞かしてもらいたいのです。
  43. 細見卓

    説明員細見卓君) レートを幾らにきめるかということは、これは政治の問題でございます。と申しますのは、レートをどのようにきめるかということは、即日本の産業体制をどのように持っていくかということにつながるわけでございます。短期的には、戸田先生の言われたように、為替差損、差益の問題もありましょうが、差損、差益と申しましても、しょせん先ほど申し上げましたように、これからはドルというものが、金につながっておるわけでございません。したがって、一定の平価と、あるいは一定のパーマネントな価値というようなものを何に置くかということは、非常にむずかしい問題です。  ですから、差益、差損の問題につきましても、会計学的にはいろいろな議論がございましょう。しかし、外国貿易に伴いまするいろいろなリスクをどう評価するかという問題でございまして、そういう問題よりも、レートをきめるにあたって基本的に大事なことは、日本の産業というのを将来どう持っていくのか、あるいは日本の経済体質を今後どう持っていくのか、ドイツのように、切り上げをし、それがデフレにつながり、デフレによって生産性がある程度高まって、つまり経済の弱い部分がだんだん切り捨てられていくわけでありますから、ことばは適当であるかどうか知りませんが、そういう形で産業構造の改善が行なわれてだんだん強い経済になっていく。強い経済になっていくことが必ずしも国民福祉的にいいことかどうか、これはまた別な御判断があろうかと思いますが、そういうふうに、どういう経済の型をとっていくかという決断に迫られる問題でございまして、その意味で私どもはレートが一〇何%になるということでなくて、日本の経済をどう持っていくべきかということは政治家である皆さんがほんとうにお考え願いたいことだと思います。
  44. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 関連で。今度のローマ会議でのわれわれの受けた印象というのは——いままでは円の切り上げということが国際的には非常に問題だったわけです。たとえば二〇%の切り上げとか、二五%の切り上げ等が当初から出されている。ところが今度のローマ会議では、日本に対する要請というものは、いまの御報告の中でもあまり問題になってきていない。むしろいまの細見財務官の話では、日本アメリカ貿易その他についてはチャネルができているということでありまして、むしろ問題は、ECアメリカとの関係が解決すれば、一瀉千里に解決をしていくというような感じを受けたわけでありますが、この会議日本に対する要請というものは実際はあるんだけれども、もう日米間のチャネルでアメリカの言うことを日本は必然的に聞くようになっている、だからここにおいてはたいした問題はない。あるいは田中臨時蔵相代理が、たしか十二月の一日か二日であったかと思いますが、円の切り上げ幅を三百十二円ないし十五円というような発表をしておりますけれども、大体そのくらいの線で、アメリカのほうはもう日本に対する円切り上げの要請はそのくらいでいいんだ、こういうような考え方で日本に対する大きな要請はなかったのか、この辺が前回の蔵相会議と、今回の蔵相会議の非常に大きな相違点のような感じを私は持っているわけですが、その辺は一体どうなのか。  先ほど細見財務官の話でも、防衛費の分担にしても、貿易の問題にしても、もう日米間にはチャネルがあるんだ、それからあなたはさらに、日本側としては米側に譲らなくちゃならないという趣旨の御発言もいまの中でしているわけであります。そうすると、繊維交渉と同じような問題というものが今後当然起きてくる。家電にいたしましても、鉄鋼にいたしましても、その他でも同じような問題が起きてくるというようなことがすでに何か前提になっているような気もするわけですが、その間の日米の話し合いというようなものは一体どういう方向にあるのか、この辺も明らかにしなければ、一体アメリカ日本に対する円切り上げ圧力というものが、今度のローマ会議で非常に下がったという理由がどうも私どもよくわからない。その辺の事情についてひとつ御説明いただきたいと思います。
  45. 細見卓

    説明員細見卓君) もしローマにおいて日本に対する要求があるとかないとかいうような、弱くなったというふうに私どもの説明をお聞き取りになったとすれば、それは全く間違いでございまして、いままでロンドンとかあるいはワシントンとかで行なわれました会議におきましては、レートの話は出ておりません。それからローマにおきましても、具体的にはレートの話は出ておりませんが、いろいろな試案が出ておりますから、そういうのをみんなが頭に置きながら、遠回しにいろんな議論をしておったというわけで、ロンドンもワシントンローマも同じ基調でございます。したがって、ローマ日本があまり攻撃を受けなかったというのは、めでたいことといいますか、非常に特別なことであったかのように御説明をしておったとすれば、それは間違いでございまして、むしろローマ会議においては、アメリカEC貿易交渉に引き込むのに必死であった、その会合であった、したがって、それ以外のことにあまり時間がなかったというのが実情であろうと思います。
  46. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そういうふうな理解のしかただとすれば、先ほど大臣が言いましたように、まあうまくいけば年内解決もあるということに対する疑問というのは当然出てくるわけです。それとの関係はそれではどうなるのですか。
  47. 細見卓

    説明員細見卓君) 疑問は当然お持ち願うのが筋だと思います。
  48. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 疑問を持つのは当然じゃなくて、その疑問の内容ですね。なぜそうなるのか、それだけアメリカ日本に対するいままでの態度というものが変わらないというならば、何で年内解決というようなことがわれわれは理解できるのか、その間の御説明というのは全然ないわけです。疑問を持たれるのは当然だということだけでは、これは答弁にならない。何で、そういう年内解決可能性もあるという、その辺の根拠づけというものは全然ないわけです。それを説明してくれと言っているわけです。
  49. 細見卓

    説明員細見卓君) 先ほども御説明いたしましたように、貿易問題の決着というのは、二国間の問題であり、それを決着するのにはある程度日時を要する問題であるわけです。しかし、通貨調整というのは、十カ国で集まってある程度了解がつけばそこでまとまるわけです。したがって、貿易交渉を並行して進めながら、通貨は一応この辺でおさめておこうというふうにまとまればまとまり得るわけでありますし、貿易交渉のほうが一向進まぬから、もう少し様子を見たいということになれば延びるでありましょう。その意味で七公三分と申し上げたのは、大臣はその点を私より若干楽観的に考えられたからでありましょうし、私は、やはり過大な期待は禁物だと、かように申し上げたわけであります。
  50. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 関連細見さん、こういうふうに見ていいのか、ドル切り下げますと、円は切り上げますと、課徴金はそうしたら取りませんよと、こう言っておるわけです。そして対日本との関係でいえば、佐藤・ニクソン会談でも、松永君が指摘した防衛分担金の肩がわりであるとか、アジアヘの援助の肩がわりというようなことはもうできてしまっておると、それからもう一つ、貿易の問題に対しては、日本が、八項目政府が発表していますね、それを完全に実施しますと、こういうようなことが背景にあるんだから、単に多国間調整の中で円の幅だけが問題だ、もう一つはワイダーバンドを何%にするかというような問題だけが残されているんだと、だから日本アメリカとの間にはまあ問題は解決してしまっているんだと、その点のところが煮詰まればいいんだというふうに解釈していいわけですか。
  51. 細見卓

    説明員細見卓君) そのように解釈するのはやや楽観的に過ぎるのではないかと思います。と申しますよりは、日本態度は、言われておりますようなふうに、何もかもコミットしておるというものじゃございません。ただ、ECアメリカとの間のように、国際交渉が疎遠であったというのでなくて、日米には閣僚会議もございますし、そのほかいろいろなチャネルがあって話し合えると、だからそういう話し合いの場が残っておるということで、この際平貨だけきめておっても、今後の話し合いはできようというふうにアメリカが感ずれば、平貨だけ切り離す可能性はあろうと思いますが、そのことが、即日本アメリカの言うそういうような条件をのむとかのまぬとかいうことにはつながらない、それは別個の問題として今後論議していいんじゃないか。  平価調整ということになりますと、御承知のようにそれが各国貿易がこう入り組んでおりますから、日本だけ特別なレートにするというようなわけにはいかない。相互のバランスというものがおのずからあるわけでありまして、そういうものはそういうものとして、別途二国間にまたがる問題は、双方の首脳会議のようなものがひんぱんに行なわれているようでありますが、そういうようなところでも話ができるし、また閣僚級の会談もできましょうし、日米には御承知のように日米閣僚会議の席のコミュニケにもありますように、日米はなるべく早い機会にサブキャビネット、おそらく各省次官クラスの話し合いもやろうということがきまっておるようでありますから、そういういろいろ話の内容はどうきまるかは別としても、チャネルがあるということは、アメリカ側通貨の問題を切り離して日本との間ではきめておいても、あといろいろの話ができるなという安心感は持てる。ECとの間にはそれがなかったということが、今度ローマECとの間にもそれが一応できたと、したがってアメリカは、平価平価の問題としてある程度切り離して考えられるような事態に近づいたのではないかと、かように大臣は推測しておったというわけでございます。
  52. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 総体的にあまり明快な回答をいただいてないのですがね。さっき私が質問したような見通しはどうなんですかということをお伺いしたんですが、まだはっきりしたことは言われてないんですね。私はまあいまの時期では回答出ないこともわかるような気がするのですが。  それで要望しておきたいのですが、日本アメリカがいろいろといま折衝されておるのですけれども、アメリカの失敗については日本として何ら指摘をされておらないわけなんですね。少なくとも今回国際収支赤字に伴ってアメリカはああいう状態に追い込まれたということは、これはアメリカ自体の責任でしょう。言ってみればベトナム戦争ですね。大量のドル放出をやる、あるいは海外に資本流出をやって、逆輸入その他でもってまた赤字を出しておる。あるいは国内的にたいへんなイベントが起きて、そういうところから失業率がふえてきた、何かこういう目に見えたアメリカ自体の責任体制についてはいささかも触れられない。ですからこういう点はやはりアメリカ自体に十分反省してもらうことが私は必要だろうと思います。そこはやはり日本がむしろぴちっと言うことを言って、その上に立ってどうするかということを言わなくちゃいけないと思います。少なくともいまアメリカはIMF体制については、言ってみればドルの支配体制で、資本主義経済世界体制を保っていこうという、そういう考えでやってきたわけでしょう。あるいは第二次大戦以後のいわば世界支配、こういう各般の問題がやはりここから出てきたことは間違いないし、ことにいままでIMF体制が二十何年か続いてきたということは、一つはやはり大量に金を持っておった、世界の七割程度。そういう自信に基づいて金はドルと同じだといったような強圧的なことでIMF体制を支配して、あらゆる角度から、日本もちろんでありますが、EC体制にも強圧的な言辞でもって今日まで持続をしてきた。あるいは第二次大戦後におけるEC体制、あるいは日本の荒廃、そういった再建途上においてぼろもうけやったでしょう。こういうものが期せずしていままでIMF体制を保持してきたことは間違いない。そうしてまた自分の政策の失敗からみずからこういう状態になれば、同じように強圧的な態度日本に対して円を切り上げろ、こういうことで各般の犠牲をしいながら、再度困難を乗り切ろう。それが成瀬委員もお話しした日本の、言ってみれば片側貿易、全面自由化政策、こういう強圧的なことをやってきた。貿易関係については課徴金を設定して、実質的には輸入を規制していく、こういう面が何ら日本としてはアメリカに対して強く要請したということは聞いていない、こういうことは、今後の政策全般にも影響することですから、言いたいことはアメリカに対してはっきり言って、それで当面通貨調整全体をどうするかということを、やっぱり私はき然として言ってもらわないと、これはアメリカはいつまでものさばっていますよ。  だからそういう意味合いで、今後の調整について、十七、十八日の会議には、十分政府としての態度をきめて、そうして立ち臨んでいただきたいと考えます。これは主として大蔵大臣に対する要請になると思いますが、細見さんには申しわけないのですが、いずれ中小企業の税制特別措置等の問題がございますから、その辺の国内的な問題について、まあさっき国内の為替差損等の問題について触れましたが、確かに数字を追うだけでは私も確かにおっしゃられるとおりだと思いますが、やはり見通しの上に立って、それをどう一体被害を最小限度食いとめるかという政策判断が必要だと思います。ですから、そういう問題については次回に譲ることにいたしまして、その辺の見解をひとつき然たる態度を政務次官示していただきたい。私はこれで終わります。
  53. 船田譲

    政府委員(船田譲君) ただいま戸田委員からお話ございましたき然たる態度ということでございますけれども、これは全く私の個人的な見解でございますが、確かにアメリカが戦後二百三十億ドルをこす金の保有を持ち、ドルが金と同格の価値を持っておるという形で、このブレトン・ウッズ体制を指導してきたことは事実でございます。そこで、いろいろ寄る年並みでからだにがたがきておるということで、ある意味では、何といいますか、なりふりかまわず何とかしてくれというのが八月十五日のニクソン新経済政策の発表だったと思います。そうしてそのときは、たとえば賃金物価についての一種のガイドポスト政策なり、あるいは連邦行政費の削減なり、アメリカアメリカなりの国際収支改善努力の方途は示しており、またそれを徐々に実行はいたしております。そういう意味で、われわれももちろんアメリカに責めるべきところは十分責めなければいけませんけれども、同時に現状を見ましたときに、おぼれておる者に、なぜおまえは泳ぎをもっと習っておかなかったかということを言う前に、やはり一応今まで基軸通貨としてドルがきました以上は、国際的な貿易決済の基軸になるべき通貨に不安が非に大きいということは問題でございますから、それ相応の国際的な協力によって安定をしていくという努力をわれわれもしなければならぬ、こう考えたわけでございますが、戸田委員の言われました趣旨については十分大臣にお伝えする次第でございます。
  54. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 最後に。十七、八日の会議には、大蔵大臣日銀総裁、そうして細見財務官も再度行かれるわけですか、三名ですか。
  55. 細見卓

    説明員細見卓君) はい。
  56. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 ドル切り下げの幅なり円の切り上げの幅はいろいろと予想されておりますが、どこら辺の数字が出ておりますか。
  57. 細見卓

    説明員細見卓君) いまの日本の変動レート相場というものが大体一〇%ちょっとこしたくらいになっておりますから、それからそう大きく動かないという感じでございます。
  58. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 ドルはどのくらい。
  59. 細見卓

    説明員細見卓君) ドル切り下げ幅につきましては、まあ数%というのから、一〇%というくらいまであって、そういうような意見もございまして、その辺がまだ具体的な提案にはなっておりません。
  60. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 ワイダーバンドはどのくらいの話が出ておるのですか。
  61. 細見卓

    説明員細見卓君) 三%というのが一番高い率を主張する意見で、三では高過ぎる二・五がいい、あるいは二がいいというような意見がそれに若干ございます。御承知のように現行は一%でございますから、ワイダーという意味で二から三というぐらいのところに意見がばらまかれております。
  62. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 今後の見通しなんですがね。これでIMF体制というものはくずれたと見るのが普通です。そうしますと、金本位制が残っておるヨーロッパの国、それからそうじゃない国、いろんなことになってきますね。そうすると、続いてどういうような通貨体制というものを今後描かなくちゃならぬかという問題が出てくると思うのですね。ですから、したがって、この次十カ国蔵相会議が当然持たれると思いますが、そこへくるのはその問題が先に入ってくるのか、まだそこまでいかずに、たとえばECアメリカとの関係でいえば、チャネルが開かれた、こういうこと。この十七、八日までの間に相当大きな会議が持たれて、あるいは大筋は決定をして、それから細目に入るかもしれませんが、大きな問題はそういうようなところにいくわけですが、そういうような問題ですね。たとえばSDR本位制にいくとかなんとか、あなたちょっと触れられたが、そういうような問題まですでに議題にのっておりますか。
  63. 細見卓

    説明員細見卓君) まだそこまでいっておりません。むしろそういう意味欧州筋からときおり伝えられますように、ECだけで通貨同盟をつくっていくという動き、これはある意味世界通貨的にブロック化するということにもなるわけでありますから、そういうことにならないように、何としても今後の十カ国蔵相会議平価調整を成功させたいというのがやはり偽らざる気持ちであろうかと思います。
  64. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 非常にむずかしいところで、私も今後の動きのことですから、そうあんたが見通しを誤ったとか誤らなかったとか、そういう問題じゃなくて、確かにヨーロッパで通貨同盟なんかつくられてしまったら、全く、第二次世界大戦の反省の上に立っていろんなことが行なわれてきたということが、あのことが非常にいいことなんですから、それを発展させることが、逆の方向にいまきておるわけですね。それをアメリカにぶっつけて、アメリカも折れてきて、まあ一ぺんやろうじゃないかというところで、花が咲くか咲かないかということは今後のたいへんな努力だと思うのですね。ですから、どういうふうにおよその方向にいこうかとか、ヨーロッパが通貨同盟をつくるなんということは、フランスのある特定の人が考えたことかもしれませんけれども、世界に通用しない議論じゃないかと思っておりますが、ですから、もう少しそこらあたりについて何か話し合いが行なわれておるはずだと思うのですよ。そうでなければ、多国間調整をやったって意味ないですからね、また調整しなきゃならぬことになってくるのですから。ですから、そこら辺のところがやはりお互いに、あそこへ出てくる人は世界の指導者をみずからもって任ずる人でしょう、国内くらいじゃないでしょうから。どういう展望を持っておられるのか、その辺のところをお聞きしたいのですがね。
  65. 細見卓

    説明員細見卓君) 貿易なり通貨のあり方としては、固定平価が一番いいことは御承知のとおりで、しかもそのマージンが小さいほうが安定することは当然でございます。したがって、それが世界的にできれば一番いいわけで、それがIMF体制であったわけです。IMF体制がくずれていく過程で、皆がどういうかっこうに、どう分解していくかというのが非常にむずかしいわけで、それがブロックになるのか、あるいは相互がある程度、何といいますか、変動制に近いような形で動いていくのか、そこのところがECの団結力というようなものをどう評価するかという点にからむと思います。その意味では、ガットがすでにECの団結というものの前にやや無力になってしまったというのは、われわれとしては見のがしてはならないむずかしい局面を示唆しておると、かように考えます。
  66. 多田省吾

    ○多田省吾君 先ほど水田大蔵大臣から、ローマ会議のお話がありまして、その中で、通貨調整に対する前提といたしまして、EC日本課徴金撤廃またドル切り下げの要望というものが、EC諸国貿易問題を話し合うことによって、アメリカも柔軟な姿勢をとるようになった、こういう報告があったわけでございますが。  最初にお尋ねしたいのは、このEC及び日本課徴金撤廃のいわゆる条件というものがどういうものであるか、そのアメリカの感触をまずお尋ねしたいと思います。
  67. 細見卓

    説明員細見卓君) 先ほども申し上げましたように、当初の段階では、通貨調整が行なわれ、アメリカ貿易収支が具体的に改善の兆候を示したとき、それが課徴金撤廃のときなんだ、ただしかし、課徴金はあくまでも暫定的なものだというのがアメリカの言い分であったわけですが、その後、平価調整平価調整として、貿易上のいろいろな対米——アメリカから見て対米差別であるというようなものが取り除かれない限り、課徴金は廃止しないのだというような言い方が若干におった時期がございましたし、現在におきましては、その通貨調整が行なわれれば、それは課徴金の廃止につながる、廃止を考えていいというようなふうににおっております。いずれも明確な形で、つまり通貨調整といいましても、その調整の幅が、アメリカの要求するものになるかならぬかわからぬわけですから、ただ通貨調整だけでは絶対課徴金は廃止するとは言えない、こういうことでございます。
  68. 多田省吾

    ○多田省吾君 それから、一般に伝えられておるお話では、アメリカは防衛、貿易問題について六十日以内に二国間交渉を行なって決着をつけたいと言っておるようでございまして、   〔委員長退席、理事柴田栄君着席〕 そのうち課徴金につきましては、課徴金一〇%のうちで通貨調整で半分の五%、その後の防衛分担金とか貿易問題の決着で残りの五%の課徴金の撤廃が考えられるということも伝えられておりますけれども、その点は細見財務官はどのようにお考えでございますか。
  69. 細見卓

    説明員細見卓君) ただいま初めてお聞きしたことで、まだ意見ございません。
  70. 多田省吾

    ○多田省吾君 先ほどもお話があったわけでございますが、今度はドル切り下げ問題が最大の課題となると思いますが、いわゆる三つの案があるといわれております。一つは、金価格の切り上げ、それから二番目にはSDRに対する切り下げ、それから三番目には、IMF規約第四条八項を利用する考え方、この中で金価格引き上げという問題は、まあアメリカの議会対策もございまして、大統領選挙も控えておりますので、相当実行はむずかしいのじゃないかという考え方がございます。  また二番目のSDRに対する切り下げも、IMF規定を変えなければならない、SDRが国際通貨の基準となっておりましても、ドルSDR交換性をはっきりさせなければ意味がないということで、これもすぐ間に合わないのじゃないか。  三番目のIMF規約の四条八項を利用する案というものは、簡単にEC諸国が納得しないのじゃないか、いずれも非常に隘路があるわけでございますが、この中で、細見財務官はこの三つのうちでどれが一番可能性があるか、その感触をお聞きしたいと思います。
  71. 細見卓

    説明員細見卓君) ただいまのところで申せば三つとも可能性があって、どれだけが一番可能性があるということは申し上げかねます。しかしいずれにいたしましても、アメリカドル切り下げということだけを見ましても、それだけのむずかしい選択があり、そのどれをとるかというのが、SDR制度で将来いくのか、金本位制度でいくのかというようなこととも微妙につながるわけでありますから、したがいまして、ワシントン会議をあまりに楽観的に考えるにしては問題は根が深く、いずれもむずかしい問題をかかえておる、ムード的にはまとめたいというムードはあふれておりますが、そういう問題は多田委員御指摘のとおり、いずれをとりましても難問があり、要は最後の決断でございます。その決断をするだけの環境になり得るか得ないかというのがワシントン会議にかかっておるわけです。その決断はかなり国内的、国際的にも思い切った決断にならなければならない。その意味でお集まりの方々の英知と決断にかかると申し上げたのもそういう意味でございます。
  72. 多田省吾

    ○多田省吾君 この前のローマ会議も、コナリー財務長官は解決寸前であるというふうなことを言いまして——水田大蔵大臣細見財務官は、あまり過大な期待はできない、七分三分であろう、こういう慎重な言い方をされておりますのに反しまして、まあコナリー財務長官は解決寸前であると言っておりますけれども、これはコナリー長官一流のいわゆるはったり的な言い方なのか、それともアメリカが相当決断をしようという考えでそのように言っているのか、あるいはEC諸国話し合いが思ったよりうまくいっているのか、その辺のことはどう考えますか。
  73. 細見卓

    説明員細見卓君) この点に関して申せば、コナリー長官一流のはったりということよりも、コナリー長官の強い願望が早く決着をさせたいのだというふうになっておるのだと取りたいと思います。ただ、コナリー長官が、おっしゃっるように言明したというのは、一部報道機関の誤りでございます。
  74. 多田省吾

    ○多田省吾君 先ほど成瀬委員からも質問がございましたけれども、EC諸国の動向でございますけれども、まあポンピドー・ブラント特別首脳会談というものもありました。また、欧州EC諸国の将来につきましては、まあ経済通貨同盟の実現に今後努力するのだというようなことを言っておるようでございますが、細見財務官は、経済通貨同盟というものが将来実現するとお考えになっておるかどうか、可能な簡囲でひとつお聞きしたいと思います。
  75. 細見卓

    説明員細見卓君) やはりECなりにまとまっていきたいという願望は非常に強くて、御承知のように、域内関税は完全に撤廃になっておりますし、域内税制の調整につきましても、イタリア等が若干おくれてはおりますが、とにかくまとめていこうというような動きをしております。しかし、同時に半面、交通機関一つの統一につきましても、非常に各国の利害が対立してむずかしい問題を生んでおることも事実でございます。したがって、この通貨のような、いわば経済現象を、それによって経済を、それを軸にして動かしていくような重要な事柄について、ECがそれにしばられるような形の通貨同盟にまで発展し得るかどうかというのは若干の疑問もございますが、しかし、統合への意欲とか、あるいは統合へのいままでの歩みというものを振り返ってみますと、そういうものができていくことも十分あり得ると考えなければならないと思います。
  76. 多田省吾

    ○多田省吾君 EC諸国の中でも特にフランスは、このドル切り下げあるいは平価調整にあたっては、八月十六日以前の形に返る、すなわち金とドル交換性を回復するということに力を置いているようでございますけれども、まあ私たちの見るところでは、十二月十七、八日ですか、その会議におきましても、もし平価調整が行なわれましても、金とドル交換性というものは回復しないと見るのがこれは妥当だと思いますけれども、わが国の態度としては、この金とドル交換性につきましては、交換性なしでもやむを得ない、こういう態度で将来いくのか、それともフランスのように、極力金とドル交換性を回復するように強く主張していくお考えがあるのか、その点はいかがですか。
  77. 細見卓

    説明員細見卓君) 私どもも、金とドルとの交換性が回復されることが国際通貨制度上望ましいという考えは持っております。しかし、そのことのために、アメリカ経済にいろいろな制約、つまり自由なマーケットでなくなるようないろいろな制約が課せられるとか、あるいは日本に対する過大ないろいろな貿易上の要請がされるというのであれば、むしろそれよりも、次善の策として金の交換性についてはそれほど強く要求しなくてもいいのじゃないか、かように考えております。
  78. 多田省吾

    ○多田省吾君 先ほどの質問の中で、細見財務官は、まあアメリカ国際収支に一〇〇%寄与するためにはドル切り下げを求めるのが筋であると、このようにおっしゃったように思いますが、それはそれでその面に関してはよろしいでしょうけれども、そうなると思いますけれども、ただし、ドル切り下げというものは、日本がいま百五十億ドル近くドルを保有しておりますけれども、金の保有高は三億ドル程度しかない、こういう面かり見て、結局ドル切り下げになったとしても、日本にとってはそういう面では決して有利ではない点も残るわけでございますが、その点はどのようにお考えですか。
  79. 細見卓

    説明員細見卓君) 先ほども申し上げましたように、ドルを帳簿価額として評価をする限り、確かにドル切り下げを要求すれば円価額としてのドルは減価するわけでありますが、もし国際通貨の準備を一たん貿易収支赤字になったときの決済資金であるというふうに考えるといたしますれば、対米貿易赤字になったときには、従来のドルは同じようなドルになるわけでありまして、私どもはその点では、もちろんドルの価額が円の評価としても変わらないほうがいいにこしたことはありませんが、それは一義的な問題であり、評価上の問題でありまして、われわれはむしろ円の日本経済の競争力が、第三国との関係でより不利になるような円の大幅切り上げよりは、ドル切り下げを含んだほうが有利である、かように考えております。
  80. 多田省吾

    ○多田省吾君 先ほど成瀬委員から、ドル切り下げと円の切り上げの大体の見通しはどうなんだ、こういう質問に対しまして、ドルのほうは数%から一〇%、ワイダーバンドにいたしましても三%あるいは二・五%あるいは二%という考え方があると。また円の実勢、いまは一〇。七五%くらいだと思いますけれども、そう大きくも動かないだろうと、こういう御答弁がございました。これはまあなかなかはっきりは言えない問題だと思いますけれども、感触としましては、従来わが国では一〇%ないし一二・五%ぐらいがせいぜい円の切り上げ幅の限度ではないかといわれておりましたけれども、最近は三百十五円ですか、一五%ないし一四%あたりが攻防の山だというようなことをいわれておりますけれども、そういう世上伝えられるような考え方は大きく間違っていないのかどうか、その辺の考え方をひとつ。
  81. 細見卓

    説明員細見卓君) ドルのことにつきまして申しますと、御承知のように、アメリカの議会に一〇%以下の切り下げ政府に認めよという法案が出ておるわけでありますから、そういう意味で数%ないし一〇%ということがわりあい見通しとして申し上げられるわけでありますが、見通しといいますか、考えられておる数字として申し上げられ得るわけでありますが、円につきまして申し上げれば、これは全く今後の交渉の場に臨むにあたって、むしろ皆さんの御意見を承るのが筋でございます。私どもの考えといたしましては、円の適正な評価というものは辞すべきではないし、適正以上の評価はすべきではない、かように考えております。
  82. 多田省吾

    ○多田省吾君 何回も同じような質問になりますけれどもですね、また最初に戻りますが、まあ中小企業のいまのたいへんな姿等を見ましても、どうしてもこの平価調整年内解決というものが強く望まれておりますけれども、その反面、あまり事を急いで日本に不利になるような平価調整でもこれは日本の国益に反するわけでございます。で、そういう点で、先ほども細見財務官の御答弁の中でも、貿易面においては二国間調整で、これは並行してずっと長く続いていくのだ、その間においてある決断をもって、いわゆる十カ国がまとまれば、七分三分程度で平価調整は実現するだろう、こういう見通しでございます。しかし、平価調整が実現した場合でも、金とドル交換性がなしに平価調整されるというような、まだいろいろ問題がたくさん残ると思います。それでその場合、これは一つの推定になりますけれども、そういう問題で来年あたり——ことし年内に解決したとしても、再びこの平価調整の必要があるというように問題が再発する可能性がないかどうか、その辺の感触を。
  83. 細見卓

    説明員細見卓君) 従来の金ドルというような圧倒的に強い通貨にささえられてIMFの平価調整というものはわりあいに持続的にまいったわけでありますが、国際経済状態も非常に流動的でございます。それにアメリカ経済の将来も、後ほどいろいろ御議論もあろうかと思いますが、予断を許しません。したがいまして、われわれが戦後二十年間平価というパリティというものはある程度確固不動のものであるというような感じで経済を運営してまいりましたが、おそらくそういうことを将来に向かって期待するのは少し甘過ぎるのではなかろうか。今後は為替というものは文字どおり変動するものであり、ある程度のフラクチュエーションというものは避けがたいものだという考え方で対処していかなければならないと思います。  そういう意味で、平価調整が行なわれました暁には、現在のような為替管理のあり方につきましても十分考えて、為替のリスクというようなものが十分ヘッジできるような体制というものもあわせ考えなければやっていけないのではないか。と同時に、一度きまりましたレートというようなものも、経済体質あるいは経済構造の変化に応じまして適正に運営していかないと、いたずらにかたくなな形で、レート交換比率というようなものを守ることは必ずしも適当でない。来年になるかあるいは再来年になるかそれは予断を許しませんが、何十年も続くというふうに考えるのはおそらく無理な想定ではないかと現在のところ考えております。
  84. 多田省吾

    ○多田省吾君 ワシントン会議まであと十日間あるわけでございますが、その際各国間で打診があるのかどうか。当然EC諸国間においてはあると思いますが、わが国は十カ国間において打診し合うつもりかどうか。これはもちろん大蔵大臣の御答弁になると思いますけれども、可能な範囲でひとつお答え願いたいと思います。
  85. 細見卓

    説明員細見卓君) 必要な限りの情報の交換は続けてまいらなきゃならぬと、かように考えております。
  86. 多田省吾

    ○多田省吾君 もし年内平価調整が行なわれた場合、もちろんドル切り下げも含む平価調整になると思いますけれども、その場合、輸入課徴金一〇%は何パーセントかでも撤廃するということは考えられるかどうか。それとも、それはまた別の問題として、アメリカ日本との二国間調整において貿易やあるいは防衛問題等を話し合いながら輸入課徴金撤廃の方向に向かうのか、これはどうですか。
  87. 細見卓

    説明員細見卓君) 輸入課徴金があったままでありますと、輸入課徴金各国貿易に与えておる影響がばらばらでございますから、いわゆる適正な平価調整というのは理論的にできないわけです。したがって、平価調整が行なわれたときには、少なくとも理論的に輸入課徴金は廃止するということを前提にしなければならないと思います。現実にその廃止が何月から廃止になるとか、あるいは段階的になるとかいうようなことは、今後の交渉にかかることであろうと思いますが、適正な平価調整というのは、やはり輸入課徴金があっては算定できないわけでありますから、それは廃止するということを約束し、前提としなければならない。現実に廃止につきましては予断は許しませんが、一挙に廃止するということも不可能、あるいは夢ではないか——夢と申しますか、不当な要望ではないか、かように考えております。
  88. 渡辺武

    ○渡辺武君 もう十カ国蔵相会議も何回となく開かれて、先ほどの大臣のお話によりますと、今度のワシントン会議で一応のめどもつきそうだというお話で、かなり重要なところに来ておるんじゃないかというふうに思うのです。私は、こういう重要なときに問題の原点に返って考えてみることが非常に大事じゃないかというふうに思うのです。そういう意味で、今度のこういう国際通貨危機、これの起こった根本原因、これは何かという点を考えてみますと、先ほど多田委員もちょっと御指摘されましたけれども、やはりアメリカ国際収支の大幅な赤字、別なことばで言えばドル危機、これが非常に深刻になったというところに最大の原因があると思います。  さて、そのドル危機の原因を考えてみますと、何よりも大きいのは、アメリカがベトナム侵略を中心として全世界にわたって戦争と侵略の政策を続けておる。これは大蔵大臣も予算委員会での私の質問に対してその点は認めておられるので、細見さんもその点は異議がなかろうと思いますが、これが一番大きいと思うのです。これがアメリカ国際収支の大幅な赤字の最大の原因なんです。なるほど、貿易収支赤字というものも今年の第二四半期から起こってきてはおりますが、しかし、この点を考えてみましても、アメリカがベトナム侵略その他を進めるために、国内で軍事インフレーションがだんだん進行して、アメリカの国際競争力も劣ってくるし、またそれに加えて各国の競争力も強化するというような状態の中で、貿易収支赤字が大幅に起こりつつあるという問題が出てきたと思うのですね。ところが八月十六日のニクソンのドル防衛政策を見てみますと、このべトナム侵略の問題については一言も触れない。そして貿易収支赤字ということを盛んに宣伝をして、そして先ほど細見さんも言われましたように、金とドルとの交換性の停止あるいはまた輸入課徴金というようなことをやっていく。結局のところこれは最大の根源を隠して、そして外国の負担でこのドル危機を解決していこう、そしてベトナム侵略戦争、その他の戦争と侵略の政策を依然として追求しようという、軍事の面でのニクソン・ドクトリンの、経済面でのあらわれというふうにしか私は見えないのですね。  ところで、大臣及び細見さんのお話を伺っておりますと、いままでの蔵相会議で一応落ちついたところを見てみますと、まさにアメリカの思うつぼにはまってきておるんじゃないかという感じが非常に強いのですよ。  その点まず特徴を申しますと、たとえばいままで貿易問題を討議するということをEC諸国はがえんじなかった。特にフランスが相当強い抵抗を示した。そしてフランスの抵抗の中には、やはりドル危機の最大の根源はベトナム侵略戦争その他にあるということが背景にあって、問題の根源は貿易問題ではないのだというところがあったと思うのです。ところが先ほどのお話ですと、アメリカ輸入課徴金の撤廃を含みとして貿易問題の協議をするというようなことがもう行なわれてきている。さらにまたEC諸国NATO防衛費負担も受け入れるというような方向が出てきた。  それからまたドル切り下げも含むということになりましたが、しかし、各国通貨調整というものは、これまたニクソンの要求していたとおりの方向に行っているという状態で、一番根本問題であるベトナム侵略戦争の問題あるいはドルと金との交換性の停止という問題はまだ主要な問題になっていないということだと思うのですね。こういうことでは私は、やはり国際通貨危機は根本的に今度のワシントン会議でも解決はできなかろう、ある程度各国通貨調整がめどがついたとしても、根本的には解決できない。また再び同じようなことが起こるのではないかというふうに思うのですけれども、この点どうでしょう。
  89. 細見卓

    説明員細見卓君) 確かに国際通貨問題の解決は、一回の蔵相会議ですべて片づくというような問題にしては根が深過ぎ、今後ともわれわれがよほど引き締めてかからない限りいつ問題を再発させるかわかりませんし、また問題をより悪化させるかわからないという感じは持っております。
  90. 渡辺武

    ○渡辺武君 私は、細見さん含めての日本政府の代表が、こういう国際的な会議で何をやってきたのだろうとほんとうに率直に思いますよ。一体日本の国民の利益を守るという立場でやったのか、それともアメリカドル防衛政策に協力するということを第一にしてやったのか、非常に疑問です。日本政府の代表の、これら蔵相会議における基本的立場というのはどういう立場だったのですか。
  91. 細見卓

    説明員細見卓君) われわれは、IMFあるいはガットの自由無差別な貿易原則と、それから安定した通貨によって世界の経済が繁栄し、われわれはその世界の経済の繁栄とともに日本の繁栄が招来した、したがって、世界経済の繁栄をはかるということが日本の繁栄につながる、かように考えてやってまいったわけです。
  92. 渡辺武

    ○渡辺武君 抽象的にそう言われても、これはなかなか議論が複雑になりますので、具体的に聞きますよ。  たとえばアメリカドル危機の最大の根源がベトナム侵略戦争にあるということは大臣も認めているとおりですが、このベトナム侵略戦争をやめろと、これがいまの国際通貨危機の最大の根源を防ぐ道だ、なくす道だということについて、日本政府代表はこれ主張しましたか、また今後こういうことを主張なさるおつもりがあるかどうか、この点まず伺いたいのです。
  93. 細見卓

    説明員細見卓君) われわれはドルの問題を論じておるのでありますから、基軸通貨国としてドルの節度というものを強く要求して、それが国際収支の悪化につながらないようにあらゆる努力をしてほしいということは強く言っております。
  94. 渡辺武

    ○渡辺武君 そういう抽象的なことばで言えば、アメリカとしてはどうとでもとりようがあるのです。特にいまアメリカに対する日本政府態度を見てみますと、さっき大臣も、日本とカナダはもう早くから貿易問題については話し合いが進んでいるのでと、いままでEC諸国がその問題について討議に入っていなかったのが、今度討議に入るめどがついたというようなことを言われた。まさに日本とカナダはニクソンにとっては優等生。最大の問題であるベトナム問題、これを抽象的なことばでもってごまかして強く要求しない。そうしておいて、副次的な問題である貿易問題について、すでに日米貿易経済合同委員会その他で討議に入って、この間コナリーが来てまたやったらしいですけれども、そうして自由化を進めるとか、あるいはまた、これはまあ討議じゃないですけれども、沖繩の返還についても三億二千万ドルの金を払っていろいろな施設その他を買うとか、あるいはまた武器の買い付けをやるとか、あるいはまたアジア諸国アメリカに肩がわりして援助を出すとかというような話し合いを進めているじゃないですか。  そういうことを一方でやっておきながら、最大の根源であるベトナム問題、この点について一言も具体的に言わない。これはどういうことですか。私はやはりそれはベトナム侵略戦争に協力するという日本政府根本的な立場から、日本の国民の利益を犠牲にしてまでも、アメリカドル防衛政策に協力しようという立場からきてるんじゃないかと思う。どうでしょうか。そういう立場を捨てて、ワシントン会議ではっきりとそういうことを、ベトナム侵略戦争こそ根源だからやめなさいと、はっきり具体的に私は言うべきだと思う。そのおつもりありますか。
  95. 細見卓

    説明員細見卓君) 非常に政治的なことでございますので、渡辺委員からそのような御発言があったことを大臣によくお伝えいたします。
  96. 渡辺武

    ○渡辺武君 それからもう一つ、金とドル交換性の停止ですね、大蔵大臣も金・ドル交換性の停止、これが日本でのスペキュレーションなど各国通貨の動揺の根源になっているということを言っています。これは歴史的に私はそういう事実をはっきりと指摘できると思う。私、前にも言いましたが、一九六八年の例の金の二重価格制の採用、あれは事実上金とドルとの交換の部分的な停止だったわけですが、それ以来——それまではドル危機が進行すれば、いわゆるゴールドラッシュという名前で呼ばれている金に対する投機が殺到した。ところがあの二重価格制採用以来、国際的な投機というのは、金にも多少はいきますけれどもね、むしろ相対的に強い通貨であるマルク、円などに投機が集中する、こういう形になってきている。ですから金とドルとの交換性の停止、これをやめさせて、金とドルの交換を回復させない限り、日本に対する国際投機というものは今後頻繁に起こるだろうと思う、状況が少し違ってくれば。だとすれば、国際通貨の安定ということを願っているんだとおっしゃったけれども、特に円の安定をはからなければ、これは日本貿易問題にとっては大きな問題ですよ。だとすれば、日本の国民の利益という立場からしても、金とドルとの交換の回復、これを要求すべきじゃないでしょうか。ワシントン会議でこの点も要求なさるかどうか、どうでしょう。
  97. 細見卓

    説明員細見卓君) ワシントン会議でそこまで議題が及ぶかどうか別といたしまして、今後の平価調整が行なわれた以後の国際通貨の安定のためには、何らかの形で国際的に通用する価値手段としての貨幣が要るわけでありますから、それが金であるか、SDRであるか、それは今後の議論に待つところも多かろうと思いますが、いずれにいたしましても、完全な交換性というのが、自由で安定した通貨制度の基本であることは、私どももよく承知しておるわけでありますので、その観点を忘れて議論はいたさないつもりでございます。
  98. 渡辺武

    ○渡辺武君 その点については、日本政府SDRのほうを考えているんじゃないですか、従来のいきさつからいって。どうですか、その点は。
  99. 細見卓

    説明員細見卓君) 将来の望ましい通貨制度としては、何か金にかわる必要な流動性というものに対して、もっと弾力的に対処できるような制度考えられたらということは、われわれのかねて考えておるところであり、その意味SDRの発展というものをどこまでも押してみたいという考えは持っておりますが、現実の、いまの当面の問題として、金の問題というものも全く無視できないということも、われわれは承知いたしております。
  100. 渡辺武

    ○渡辺武君 SDRの問題については、これは、きょうは時間がないので詳しく申しませんが、あれはまあ金にリンクされているということになっているけれども、価値ということで。しかし、金と免換できるものじゃないし、言ってみれば紙幣——札が出るわけじゃないから、紙幣というのも語弊がありますがね、それも同然のものなんで、決して国際間の決済あるいはまたこの準備通貨というようなものに役立つものじゃないんですよ。これはやっぱり世界通貨としては金以外にない。金というのはそれ自体として価値を持っているものですからね。ですからその点はよく考えて、やはり金とドルとの交換の回復、これを私は要求すべきだと思う。アメリカが金・ドル交換性を停止しておいて、めちゃくちゃにドルを侵略のために使っているという事態は、これを封殺していく道に私はつながっていくと思う。その点は重ねてひとつ大臣によく言っておいてほしいと思うんです。  それからもう一つ伺いたいのは、アメリカ国際収支赤字各国負担せよという要求の中で、百三十億ドルという額を以前出しましたですね。この問題はどういうことになっているのですか。
  101. 細見卓

    説明員細見卓君) 百三十億の要求に対しましては、OECDの経済政策委員会の第三作業部会におきましても、皆の議論といたしまして、百三十億は過大である、大き過ぎるじゃないかというような議論、あるいは百三十億がかりに正しいとしても、そういうような数字を客観的に論証するというのは非常にむずかしい、感じとして正しいとしても論証するのはむずかしい、したがって、百三十億ドルというものをベースにしてレートの話をするということはやめようという感じでございます。
  102. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうすると、百三十億ドルということをベースにしないということなんですが、それじゃもっと減額した要求というのがアメリカからかわりに出ておりますか。その辺の感触はどうですか。
  103. 細見卓

    説明員細見卓君) アメリカとしては何らかの国際収支幅の改善を要求いたしております。それはいろいろな数字を試算いたしておるようでありますが、正式にはまだ——おそらくワシントン議題になるのではないかと思います。それはどのようなレートの対米切り上げになれば、それが大体アメリカ国際収支にどれほどの貢献をするかというのは、計算的に出てこようかと思います。それは百三十億ドルにつながるという話ではなくて、レートの切り上げになれば、およそこれぐらいがいいだろうということで出てこようかと思います。
  104. 渡辺武

    ○渡辺武君 そういう点の感触、あなたも代理会議やOECDの第三作業部会などに出席されてその辺の討議の経過などはよく御存じだと思うのですね。ですから百三十億ドルはまずいということになったとおっしゃるけれども、もう少し具体的にアメリカの次に打つべき手ですね、どの程度の要求を出すのかということのある程度のめどぐらいは私はつけているのではないかと思うのですが、その点はどうです。
  105. 細見卓

    説明員細見卓君) 相手方のあることでございますから、心中を推しはかるわけにはまいりませんが、アメリカとしては、少なくとも交渉の段階でありますから、ある程度多目の数字で切り出してくるであろうということを覚悟しなければならぬと思います。こちらとしてはどう対処するかということは別途考えなければならぬと思います。
  106. 渡辺武

    ○渡辺武君 あとちょっと。  どうもなかなか口がかたいようですね。じゃ別の角度から聞きますけれども、いままでいろいろ代理会議や第三作業部会などで、やはりそれぞれ各国がどのくらいの通貨の切り上げ、もしくは切り下げをするかというようなある程度の意向の判断というのはできたと思うんですね。日本と特に関連の深い西ドイツですね、あるいはフランスやイギリス、イタリア、この辺の通貨の切り上げ、もしくは切り下げの感触というのは大体どんなところでしょうか。
  107. 細見卓

    説明員細見卓君) EC諸国EC仲間での相互のレートということに非常に固執いたしております。それを重視いたしておりますから、ECの間でいまいろんな形で蔵相会議あるいは首脳会談のようなものを開いて議論をいたしております。   〔理事柴田栄君退席、委員長着席〕 私どもが新聞紙等を通じて聞いておりますことは、たとえばブラントとポンピドーの会談で、米仏の差は六%ぐらいにしたいということを言ったというふうな報道を聞いておりますが、真偽は存じませんが、まずEC諸国は自国間の通貨調整ということを、あるいは通貨調整の幅ということを第一義に考えておりますので、それらのものは現在のフロートしておるレートとそう大幅に違うことはないだろう、かように考えております。
  108. 渡辺武

    ○渡辺武君 日本の場合、これは具体的になかなか言わないでしょうけれども、けさの朝日新聞なんかを見ますと、一ドル三百十五円ぐらいが限度だと、だからIMF方式でいうと一四・二八五%ぐらいをぎりぎりの限度として、ワシントン会議で——きょうその関係の閣僚会議でそれを大体きめそうだというようなこと出ていましたが、どうですか。その辺ですか、日本の場合は。
  109. 細見卓

    説明員細見卓君) 私どもはいつも新聞に教わっておりますので、そういう新聞があるということを覚えております。
  110. 渡辺武

    ○渡辺武君 しかし、いままでよりも大幅になりそうだということで、すでにドル売りも為替市場でふえてきているというのが実情ですよね。これは非常に敏感なものだと思う。いままではほぼ一〇%ぐらいじゃなかろうかということで、通産省なども、もし円が一〇%切り上げられたら日本の輸出貿易は年間四十億ドル減るだろう、輸入課徴金が一〇%で三十五億ドル減って、合計七十五億ドルの減少というような試算までしているんですね。どうでしょうか。一四・二八五という具体的な数字まで出ているんですがね。そうしてまた、いまの実勢はもう一〇形をこえなんとしつつあるという状況ですね。そうすると大体その辺じゃないですか。どうですか。
  111. 細見卓

    説明員細見卓君) 大臣が申し上げましたように、ローマで初めて具体的な討議に入りまして、その会議におきましては、私どものような補佐官は全部出て、蔵相中央銀行総裁だけが集まって——約二十五、六人ですが、集まって会議をいたして、まさに白兵戦と申しますか、各国がそれぞれの国の利害をかけてレート交渉にいままさに入ろうとしておるわけでございまして、私どもも国内からいろいろ督戦していただくのはありがたいのでございますが、うしろからたまが飛んでくるような督戦だけは願い下げいただきたい、かように考えております。
  112. 渡辺武

    ○渡辺武君 うしろからたまが飛んでくる督戦というのは何ですか。初めから申し上げておりますように、日本政府態度は、日本の国民の利益の立場を離れて、アメリカドル防衛政策に協力する立場じゃないかということを言っている。何ですか、それは。
  113. 細見卓

    説明員細見卓君) 新聞などで具体的なレートが出ますと、アメリカは、日本はそう言っておるじゃないか、そういうかっこうで出てくるのは困る、こういうふうに申し上げているわけです。
  114. 渡辺武

    ○渡辺武君 冗談半分で言われたと思いますが、やはりことばは気をつけて使ってほしいと思う。最初変動相場制に入った当時はほぼ五%、円の実質上の切り上げは。いまはすでに一〇%近くまできている。そうして、これはあなたは言いたがらないかもわからぬが、もうすでにこういう朝日新聞などで非常にこまかい数字まで、一四・二八五だと、これが日本政府のぎりぎりの線だというところまで出てきている。いずれにしましても、私は、こういうふうに円が高く切り上げられるという方向に追い込まれてきている、その根源はどこにあるのかということを申し上げたい。  一〇%でも年間七十五億ドルの輸出の減だということになる。一四・二八五%も切り上げられたら日本の輸出貿易は深刻な打撃ですね。特に中小企業における打撃というのは私は非常に深刻だと思う。そういうところに追い込まれている根源は——必要なことはアメリカに要求しない。ベトナム侵略戦争やめろということは言いたがらない。円とドルとの交換性の回復も言いたがらない。そうしてニクソンの言うとおりじゃないですか。貿易交渉に応じちゃって、そうして自由化その他言いなり次第になっているというところに、こういう問題が起こってくる根源があるんじゃないですか。ワシントン会議にあなたも出られるならば、そういう立場はやめて、ほんとうに国益を守る立場に立ってやってもらいたいと思うのです。
  115. 細見卓

    説明員細見卓君) 先ほど私が申し上げましたのも、まさにその点でございまして、われわれは寡聞にして、内閣でレートをきめられたということを聞いたことございません。私が聞いておらないのでございますから、おそらく内閣ではきまっておりません。それが日本の新聞あるいは日本のいろいろな団体等でいろいろなレートが出ると、そうするとアメリカでは、日本国民がそう言っておるのだから、おまえらがのめぬはずはない。おまえは隠しておるのだろう。われわれはいま渡辺委員の言われたように、レートの切り上げということは、中小企業その他に少なくとも利益を減らすとか、あるいは貿易が困難になるとかいう打撃を与えるから、できるだけ低くきめるということは承知しております。にもかかわらず、国内できまりもせぬレートを、きまったかのごとく報道されるということが、いかに有害かということを申し上げたかったわけです。それをうしろからたまが飛んでくると申したわけであります。
  116. 渡辺武

    ○渡辺武君 最後に一言。具体的なレート切り上げの数字を言えと、もしそのことが発表できればおもしろい話だと思うから聞くのだけれども、私が聞いておる問題の本質はいま申し上げたとおりです。いまの日本政府態度では、不当に大幅な切り上げに追い込まれるおそれがある。ですから、やはりこれはもう今度の国際通貨危機の根源であるドル危機、これはアメリカ自身の責任で解決すベきだ、何も日本がそのしわ寄せを負って、また日本政府がそのしわは全部日本の国民にしょい込ませるということをやって、日本国民が深刻な影響を受ける、そんなことはやる必要は少しもない。アメリカ自身の自分の責任で解決させる、これが大事だと思うのです。それがために、何回も言いますように、ベトナム侵略戦争をやめろということ、ドルと金の交換性を回復せよということ、少なくともこの二点を強く主張すべきだ、その点要望してやめます。
  117. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 午後の会議は一時三十分から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時三十三分休憩      —————・—————     午後一時五十分開会
  118. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) ただいまから大蔵委員会を再会いたします。  休憩前に引き続き、租税及び金融等に関する調査中、当面の財政及び金融等に関する件を議題といたします。  質疑のある方は、順次御発言を願います。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  119. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 速記を起こして。
  120. 渡辺武

    ○渡辺武君 八月の二十七日に政府が円為替の変動相場制を採用したわけですけれども、その直前に起こった大規模な為替投機の問題が国民の疑惑を非常に招いているわけです。先日、衆議院の予算委員会でその一端である輸出為替前受け制度によるドル売りのおもな銀行、商社の具体的な名前の発表がありましたけれども、この顔ぶれを見ると、政治資金関係その他で、ある政党に関係しているような商社、大銀行が非常に多い。やはり国民はそれを見て、この当時の大規模なドル売り、円買い、これは政府が直接に結託してやったんじゃないかという疑いをますます深めたんじゃないかというふうに思うんです。いま景気の長期不況下、特にこの輸出関連中小企業の深刻な事態、国民は非常に大きな被害を愛けておりますけれども、その半面で、一夜にして為替スペキュレーションで大規模な利益をあげる商社、大銀行があるということについては、われわれはとうていこれは納得できない、どうしてもこの真実の究明をしなきゃならぬというふうに思っております。で、私は、きょう、この輸出前受け制度と並んで当時の為替スペキュレーションのもう一つの大きな要因になったと思われる問題点について一、二伺ってみたいと思うんです。  まず、日本銀行が変動相場制採用のこの直前の二十五日、二十六日の両日、為替銀行に対して外国為替資金貸しの期限前返済を認めたというふうにいわれておりますが、これが為替銀行に大量のドル売りを許す道を開いたんじゃなかろうかというふうに疑われます。  そこで、まず最初に伺いたいことは、実際二十五日、二十六日に外国為替資金貸しの期限前返済を認めたかどうか、またここにいう外国為替資金貸し制度というのはどういう制度なのか、これをまずお答えいただきたいと思います。
  121. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) ただいまの御質問でございますが、外国為替資金貸し、日銀のこの制度は、御承知のことと存じますが、元来輸出をするにあたりまして、それに日本銀行が低利で円金融を与えるという制度でございます。これは、まあただいままで輸出の促進にも非常に貢献をしてまいったわけでございます。当初はこの資金貸しの金利も普通の公定歩合よりも有利なレートを適用しておりましたが、その後情勢が変わってまいりまして、また世界のいろいろな批判もございますし、現在におきましては公定歩合と同じ率ということにいたしておりますが、こういう元来が輸出促進のための金融の制度であったと申すことができるかと存じます。
  122. 渡辺武

    ○渡辺武君 つまり為替銀行が輸出業者の発行した輸出手形を買う場合に、日本銀行から円を借りて、そして輸出手形を買うことができる制度だということですか。
  123. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) そうです。
  124. 渡辺武

    ○渡辺武君 この返済期限ですね、これは何できまるわけですか。
  125. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) これは大体、各輸出手形の期限となっておりますので、いわば日銀との間のネゴシエーションでございますが、大体四カ月から五カ月というのが期限でございます。
  126. 渡辺武

    ○渡辺武君 つまりこういうことでしょうね。輸出手形を買ったと、その買う代金として日本銀行から円を借りて手形を買った、ところが、その手形の期限が満期になって、そうしてドルの送金があった、したがって、その時点で日銀に借りた円を返すことができる、そういうことなんですね。どうですか。
  127. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) そのとおりでございます。
  128. 渡辺武

    ○渡辺武君 先ほど伺った変動相場制採用の直前の二十五日、二十六日の両日にわたって、その借りた金の期限前返済を認めたということは事実ですか。
  129. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 事実でございます。
  130. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうしますと、従来は手形が満期にならなければ日本銀行から借りた金を返すことはできなかった。ところが変動相場制採用の直前の二十五日、二十六日、まさに為替スペキュレーションたけなわのころですよね、そのころになぜ一期限前返済という特別の措置を認めたんでしょうか。
  131. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) この外国為替資金引き当て貸しと申しますのは、ただいま申し上げましたように、元来輸出を促進するための制度でございます。これはただいまも御指摘がありましたとおり、日本銀行に対する債務でございますから、したがいまして、元来ならばこの利益は債務者のほうにございますので、借り手のほうで先に返したいということがございますると、これはとめるわけにはいかないものでございますけれども、従来は——元来は指導によりまして、そういうことが行なわれますと同時に、逆に外国から、外銀から金を借りまして、そしてそれを決済をするということによりまして、この資金貸しのほうを返済するという道があったわけでございますが、それを認めますと、そういう意味での外貨の流入が起こりまして外準がふえる、これはそういう弊害が起こりますので、従来はそういう意味の期限前返済と申しますものは認めておらなかったわけでございます。これはしかし同時に、すでにことしの六月ぐらいでございましたか、だんだんといまのようなドルシフトというのもそれほど——ドルシフトと申しますのは、御承知のとおり外銀への金融に切りかえていくことでございますが、このほうもそれほど心配しなくてもいいという状況でございましたので、少しずついまのような、日銀といたしましては資金貸しの返済と申しますか、その残高の減ってまいりますのを認めるという措置を日銀としてはとってまいっております。  ところがこのニクソン声明のございましたあと、まあ非常に為替市場が混乱をいたしました際に、十八日に外銀の借り入れにつきましては残高規制を厳重にするという措置をとりました。したがいまして、その後はそういう道によりまする外国銀行からの借り入れというのは、いわば頭打ちといいますか、ストップすることに相なりましたので、そちらのほうからこの外貨の流入がふえるということは考えなくてもいいという状況になりました。他方、あの週におきまして、いま思い出しますといろいろ投機等のおそれの問題がございました。またへたをいたしますと、為銀としてはいろいろな規制を守るために、輸出手形の買い取りをしぶるというような事態も生じてまいりました。  そういうことでございますと、この当時はまだ為替の現行レートを維持していくという最高方針のもとに行動をいたしておりましたので、そういう状況におきましては、やはり為替市場が円滑に推移いたしませんと、これは長く日本経済としてはたえられないことになりますので、そういう意味でいまのようにこの点の資金貸しの返済を認めまして毛、片方で弊害が起こらないという見通しでございましたので、他方でこの為替市場の顧客に対しまする銀行の輸出手形の買い取りが円滑になりませんといけませんので、この点を両方勘案いたしまして、日銀といたしましてはいまの資金貸しを、限度において期限前に返済することを認めるという措置をとったわけでございます。
  132. 渡辺武

    ○渡辺武君 おっしゃることがよくわかりませんでしたが、こういうことですか。つまり円転換規制をやっておって、特に外国銀行からのドルの借り入れは、これはもう総額が規制されているので、期限前返済をやっても外国銀行からのドルの流入ですれ、為替銀行への、これはふえる危険はないというのが一方の理由。もう一つの理由は、期限前返済を認めれば外国為替の買い付けもふやすことができるので認めたと、こういうことなんですか。
  133. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) そういう趣旨でございます。
  134. 渡辺武

    ○渡辺武君 単刀直入に聞きますけれども、その理由ですね、ちょっとおかしいんじゃないですか。むしろこの期限前返済を認めることによって、大量のドル売りを可能にしたということが最大の理由になっているんじゃないでしょうか、どうでしょうか。  たとえばいただいたこの資料によりますと、八月十六日から二十七日の間の直物対市場の売買状況というのがありますね。それで八月十六日以来五億ドル、六億ドルというかなり大幅なドル売りがあって、日本銀行がこれは買い付けをした分だけですね。ところが二十四日、二十五日と、言ってみればドルは売り超過になっている、日本銀行の立場からいえば。それが二十四日、二十五日に期限前返済を認めた以後二十六日、二十七日とドル売りが急増している。これは出来高でいえばもっと大きいのですね。日銀が平衡操作で買った金額だけでも、二十六日は四億九千九百万ドル、二十七日に至っては一日で十一億八千五百万ドルというばく大な日銀のドル買いが行なわれた、こういう状況。これを見てみますと、まさにこの期限前返済を認めることによって、大量のドル売りが可能になったというふうにしか判断できませんけれど、その点どうお考えですか。
  135. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 日銀といたしまして、この期限前返済を認めるという措置は少しずつとられてきたわけでございまして、このときに一度にとられたわけではございません。確かに御指摘のように、このころ、先ほど申しましたような趣旨から、日銀におきましてそういう措置をとったことは事実でございます。したがいまして、結果において二十六、二十七日のこのドル売りが、二十六日で逆転をしたということにつきましては、まあそういうことが結果としては一部あったということは否定はいたしませんけれども、全くその趣旨といたしましてはいまのようなことで、当時市場が、銀行の窓口におきまする輸出手形の買い取りその他、あるいは旅行者小切手の、といってもこれはわずかでございますけれども、小切手の買い取りということがとまりますというと、これはとうてい、長期にわたりまして混乱なしに日本の市場を運営をしていくということができませんので、そういう趣旨で日銀がこの措置をとったわけでございます。ただいま御指摘の中で、平衡操作の買いの数字というふうに御指摘がございましたが、これは市場におけるドルの売買上の数字でございます。
  136. 渡辺武

    ○渡辺武君 どうもその辺がおかしいのですね。それじゃあ期限前返済がこの二十四、二十五日両日だけでなくて前から行なわれていたということですが、いつごろから行なわれていたのですか。
  137. 淡野勝己

    説明員(淡野勝己君) それでは御説明いたします。六月ぐらいから月々大体三、四億ドルぐらい返済をやっておりまして、この金額を限ってやっておりましたのは、先ほど局長から御説明申し上げましたが、期限前返済を認めますと、その分だけ外銀借り入れがふえる、ドルシフトが起こる、その結果外貨準備がふえるということでございましたので、金額を限ってやっておりました。八月におきましてはその当初合計四億ドルその返済を認める、日銀資金貸しの返済を認めるということを各銀行に通知をいたしました。したがいまして、二十四、五日ごろ急に日銀の資金貸しの返済を認めたわけではございませんで、その前から月々返済をやっておったわけでございます。
  138. 渡辺武

    ○渡辺武君 それは日本銀行総裁のこの委員会での答弁とちょっと違いますよ。日本銀行総裁は二回にわたって認めたと。一回はやってみたが実害が生じなかったようなので、二十五日にさらにそれを認めたのだということを言っています。あなたの答弁とちょっと食い違いますね。
  139. 淡野勝己

    説明員(淡野勝己君) 日銀総裁が御説明になられましたのは、私の記憶に誤りがなければ、期限前返済、これを八月二十四日だったと思いますが、金額を限りまして一ぺんやりました。それからその様子を見た上で今度は期限前返済を無制限に認めた。こういうことをおっしゃったというふうに記憶しております。
  140. 渡辺武

    ○渡辺武君 その期限前返済のことを聞いているのですよ。だから質問取り違えて答弁しちゃ困るのですよ、混乱してきますから。  つまり期限前返済を認めたのは二十四日、二十五日の両日でしょう。どうですか、あらためて。
  141. 淡野勝己

    説明員(淡野勝己君) 先ほど申し上げましたのは、金額を限ってやっておりまして、それが大体期限が来たもので従来はございました。六月以降月々返済を認めておりましたのは、大体三、四億ドルと申し上げましたが、日銀の資金貸しで期限の来るものは月々それを上回っておりましたので、たまたまそれは全部期限後のものになっておりました。そういうわけで、期限前返済は、八月の末に初めて起こったわけでございます。しかし、日銀の資金貸しの返済は月々三、四億ドルずつやっておりました。
  142. 渡辺武

    ○渡辺武君 資金貸しの返済が行なわれるのは当然のことじゃないですか。さっきも申し上げたとおり、為替手形の期限が来れば、満期になってドルが入ってくれば、自動的にいわば返ってくるのですよ、円は。問題をはぐらかしてはいかぬですよ。  ところで、その期限前返済によってどのくらいの円が日本銀行に返りましたか、返済されたんですか。
  143. 淡野勝己

    説明員(淡野勝己君) 期限前、期限後の区別をしておりませんが、八月二十五、六、七日の三日間に返済しました日銀資金貸しのトータルは、十二億六千七百万ドルでございます。
  144. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうしますと、わずか三日間にあなた、十二億六千七百万ドルもつまり日本銀行に円の返済があったというわけでしょう。いま稲村国際金融局長がちょっと一言言われましたが、この期限前返済がドル売りを可能にした点も多少あったというようなことをおっしゃいましたけれども、こんなに大量の円借り入れを日本銀行に返した。そうすると、その分だけは外国銀行からドルを借り入れることができる、もしくは、いままで借り入れたドルを売って、そのままで切り抜けることができるというような状態ができてくるんじゃないですか。  私は率直に聞きますが、この二十六日、二十七日ドル売りが急増しているということの一因、大きな要因ですね、一因といっても——日本銀行が、まさにこのドル売りのたけなわな、まっ最中ですわね、しかもその最終段階、そのときを前にして、わざわざ期限前返済を認めたという理由、そこにあるんじゃないかと思いますが、どうですか。
  145. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) ただいまの御質問でございますが、日銀が資金貸しの期限前返済を段階的に認めましたのは、先ほど申し上げましたような理由でございまして、御提出申し上げました各資料にございます。二十六日、二十七日にドル売りが多かったという点につきましては、これはなかなか分析がむずかしいのでございますけれども、大体二十六日は、二十五日にドルの買いに出ましたのが、二十六日に逆に市場への売り戻しになったわけでございます。それから二十七日につきましては、約十一億八千五百万ドルというドル売りがございましたが、これは、おそらく半分ぐらいは、大体月末、週末を目がけまして、何かあるのじゃないかという投機的な市場心理というのにあおられまして、輸出前受けが大量に入ってきたということが主たるあれであろうと存じます。ただし、いま申し上げましたとおり、期限前返済を日銀が認めたということは、先ほど申しましたとおり、市場の輸出手形の買い取りが不円滑にならないようにという趣旨でございますから、その意味ではそういう目的は達せられたわけでございますけれども、他方、そういうことは、同時に市場へのドル売りの余裕をつくったということは言えると存じます。
  146. 渡辺武

    ○渡辺武君 部分的に認められましたけれどもね、しかしあなた、考えてごらんなさいよ。あの、円の相場がどうなるのかわからぬというような時点で、輸出成約というのはほとんど中断しているのがこのごろの実情ですよ。みんな、これはもう、輸出も輸入もあのときには契約関係というのはほとんど中断している。先物相場さえ立っていない、ほとんど。そういう状況なんですよ。そのときに、輸出手形の買い受けを円滑にするために一これは確かに表向きは聞こえのいい理屈です。それで期限前返済を認めておる。結局のところ、あなたいま確かにドル売りを可能にした分野もあるという、まさにそれこそが最も大きな理由だったんじゃないですか、どうですか。
  147. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) ただいまの件でございますが、いまのは輸出成約の問題ではございませんので、これはまさに、ずっと前に行なわれております輸出成約に基づきまして決済が行なわれるわけでございます。あるいは四カ月前、五カ月前に成約いたしました輸出契約に基づきまして決済する問題でございまして、そういうものを業者が銀行の窓口に持ってまいります場合に、銀行がこれを買い取らないというような事態になりますと非常に重大でございますので、そういう意味で、その買い取りを円滑にいたしたということでございます。
  148. 渡辺武

    ○渡辺武君 それはおかしいですよ、あなた。決済じゃない。手形を切って出すときは決済じゃないのですよ、決済のときじゃない。そうでしょう。商業常識から考えてごらんなさいよ。手形を切って満期になって初めて決済が行なわれる。輸出契約をやって商品を送る。そのときに手形を切るのですよ。そうしてこれは為替銀行に買い取りを要求して、そうして円資金を手に入れて、為替銀行は、その円資金を調達するために日本銀行から前貸し制度でもって円を借りてきている。輸出手形の買い取り資金の問題でしょうが。決済の問題とは別問題ですよ。まさに当時は、なるほどそれは部分的に、あなたの言うとおり、従来の輸出契約で成約したものの手形がこの期間に切られたということはこれは確かにあり得る。あり得るけれども、それは、そう通常の輸出手形の発行高よりも急増するというような事態じゃない、あの当時は。いまあなたは、二十五、二十六、二十七日のこの三日間で十二億六千七百万ドルもの返済が日銀に対して行なわれたと。この月の一カ月間はどのくらいだったですか。どのくらいの返済が行なわれましたか、日本銀行へ。
  149. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) ただいま計算をいたしましてお答え申し上げます。  八月月初から八月二十七日までの資金貸しの返済額は十六億四千二百万ドルでございます。
  150. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうでしょう。三日間で返済された分差し引いてごらんなさいよ。四億ドルばかり、先ほどあなた方は大体月々四億ドルぐらいは返済がある。これが為替輸出手形の買い受け資金に回るんだというようなことを言っておられましたが、ほぼそれと見合っているんじゃないですか。つまり二十四日、二十五日あるいはまた二十六日、七日も含めまして、十二億六千七百万ドル日本銀行への返済が行なわれたというのは異常な事態です。これは決して輸出手形の買い取り用なんというものじゃない。通常の月ではあり得ないような事態がここで起こっている。これはあなた方どう釈明しますか。
  151. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 先ほどから御説明申し上げておりますとおり、この十六日から二十七日までというのは確かに異常な事態でございます。普通でございますれば、その為替市場が混乱して為替手形の買い取りがとまる、そういうような事態がなかったわけでございますが、ただ、御承知のとおりの事態でございまして、そのために八月十八日には外銀から借り入れをストップするというような措置もとったわけでございます。その上におきましてその次の週、つまり二十三日から始まります週が始まったわけでございまして、このときにおきまして、先ほど申し上げましたとおり、輸出手形の買い取りが不円滑になるというような事態でございましたので、日銀のほうで、私ども先ほど申し上げましたとおり、外銀からの借り入れはその前の週の十八日にストップいたしておりますから、その点で外貨の流入がふえるということはございませんでしたので、為替市場不円滑化を避けるという意味で、日銀の資金貸しの返済を段階的に認めるということを日銀としてとったわけでございます。     —————————————
  152. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 委員異動について御報告いたします。  ただいま河本嘉久蔵君が委員辞任され、その補欠として高橋邦雄君が選任されました。
  153. 渡辺武

    ○渡辺武君 つまり、輸出手形の買い取りを円滑にするためと言うけれども、その当時為替銀行は円資金に不足しているという事態じゃなかっかですよ。そうでしょう。大量のドル売りをやって、そうして円をたくさん持っていますよ。だから輸出手形の買い取り資金が不足して、日本銀行から借りている金を期限前返済さして買い取りを円滑にさせるというようなこと、そういうこと必要なかったですよ。ですから、あなたのおっしゃる理屈というのは一つ一つ通らない。どうですか。
  154. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) ただいまの件でございますが、輸出手形の買い取りをいたしますと、それだけ為銀の買い持ちがふえますので、その意味で、為銀としては買い持ちがそうでなくても多かったわけでございますから、その意味で買い取りをしぶるというような状態になっておったわけでございます。
  155. 渡辺武

    ○渡辺武君 それじゃ別の方面から伺いましょう。  この以前から政府は、日本の為替管理制度というのは堅固なもので、特にドルの投機的な流入と、円への転換については、円転換規制を行っているということを言っております。ところが、ふたをあけてみると、大量の投機的なドルが流れ込んで、そうしてあの時点で大量に売られて円にかえられたという状況が起こっているわけですね。いまの日本銀行の外国為替資金貸しの期限前返済、円転換規制との関係で見なければ私ははっきりしたことは見られないと思うのですね。あなたもいまその点言われましたけれども、円転換規制なるものの内容ですね。これは一体どういうものなのか、これを御説明いただきたいと思う。特に先ほど来問題にしております日本銀行の外国為替資金貸しとの関連ですね、これで御説明いただきたいと思います。
  156. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 日本銀行の円転換規制、これは現在行なっておりますものは、九月に入りましてからさらに規制を強化いたしておりますので、毎日残のベースでやっておりますが、当時は月末残と平残ベースと両方でやっております。その内容といたしましては、直物の外貨資産の残高、直物の——逆に申しますと、外貨負債の残高が、外貨資産の残高から次の三つのものの合計額を控除いたしました額を上回らないということになっておる。その三つの項目と申しますのは、要するにただいま問題になっております外為資金貸し制度によります日本銀行からの借り入れ金の引き当てとなっております輸出手形、それから二番目の項目が、外国為替資金特別会計との間でスワップによりまして取得いたしました外貨資産、三番目が、非居住者自由円勘定でございます。この三つのものを控除いたしました額を上回らないこと、こういうのが円転規制の内容でございます。これが八月中におきましては、従来同様月末残と、それから月中を通じます平残の両方でこういうふうな規制をいたしておりました。それを九月に入りましてから強化いたしまして、毎日毎日の残高でほぼ規制、毎日の残高ベースで規制を行なうということにいたしまして現在に至っております。
  157. 渡辺武

    ○渡辺武君 いま外貨負債と言われましたけれども、その外貨負債のおもなものは何ですか。
  158. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 外貨負債の大きなものは外銀借り入れでございます。その他ユーロの取り入れ等もございます。
  159. 渡辺武

    ○渡辺武君 外貨負債のおもなものが外銀借り入れ、それじゃ外貨資産のおもなものは何ですか。
  160. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 輸出手形、輸入手形、それから外貨預け金等でございます。
  161. 渡辺武

    ○渡辺武君 輸入手形も外貨資産に入るのですか。
  162. 淡野勝己

    説明員(淡野勝己君) 輸入業者に対する貸し付けが外貨建てになっておりまして、その関係で輸入業者が差し入れた手形が外貨建てになります。したがいまして、輸入手形を外貨建ての資産として申し上げたわけでございます。
  163. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうすると、つまり何ですか、輸入業者に対する貸し付けという意味と同じことなんですね。そうですね。  そうしますと、ほかの要因というのは、話が混乱するから一応おもなものだけで、ちょっと考えてみますと、一方に外国銀行から借り入れたドルがある、外銀借り入れが。そうしてこの外銀借り入れの額が——外貨資産のおもなものである輸出手形の買い取り額、これから日本銀行の外国為替資金、外資制度から借りた部分を差し引いた、これがイコールになるという意味ですか、この資産と負債。
  164. 淡野勝己

    説明員(淡野勝己君) こまかいアイテムを拾い出しますと、必ずしもそういうふうにはまいりませんが、大ざっぱに申し上げてそういう仕組みになっていると理解していただいてけっこうです。
  165. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうすると、それが円転換規制ですと、各月の末と、それから月じゅうの平均と、これでつまり外貨負債に比べて、外貨資産から日本銀行借り入れ分を差し引いた分が、イコールになっているというようにあなた方は指導しておったと、そういう意味なんですね。
  166. 淡野勝己

    説明員(淡野勝己君) 技術的な説明になって恐縮でございますが、為替銀行に対する指導といたしましては、直物資産と先物資産というものがございまして、直物資産に関する限り、直物の外貨資産が、先ほど局長から御説明いたしました資金貸し、自由円といったような部分に関する限り資産超過になるように指導していたわけでございます。
  167. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうすると、直物の場合だけでいえば、資産超過。直、先合わせるとどうなりますか。
  168. 淡野勝己

    説明員(淡野勝己君) 直先も資産、負債バランスが均衡するように、原則としてでございますが、指導してございます。
  169. 渡辺武

    ○渡辺武君 それで、具体的に伺いますが、それじゃ七月末ですね。七月末のバランスはどうなっておりましたか。
  170. 淡野勝己

    説明員(淡野勝己君) これは、先日提出いたしました資料にございますが、七月末で十四行全部で九億八千六百万ドルの買い持ち超過になっております。
  171. 渡辺武

    ○渡辺武君 買い持ち超というのは何ですか。
  172. 淡野勝己

    説明員(淡野勝己君) 外貨資産が外貨負債をそれだけ超過しているという意味でございます。
  173. 渡辺武

    ○渡辺武君 イコールになるというふうに指導しておって、どうして九億八千六百万ドルもの資産が超過になるのですか。
  174. 淡野勝己

    説明員(淡野勝己君) 先ほど、原則としてと申し上げましたが、ことしの五月にマルク危機といわれる通貨危機がございました。そのあと先物市場が非常が混乱といいますか、ドルが安くなりましたので、銀行がそういったふうに資産超過になる傾向がございました。そのときに円転規制をゆるめまして、直物で外貨負債をつくれるようにしてやれば、総合ポジションは均衡するようになるわけでございますが、それを認めますと、先ほど来申し上げておりますように、ドルシフトが生じまして、外貨準備がふえるということになりますので、それも認めず、結局こういう形で資産超過になっていたということでございます。
  175. 渡辺武

    ○渡辺武君 つまり、資産超過ということは、輸出手形の買いが、バランスという見地からいえば多過ぎたという意味ですか。もしくはその輸出手形の買って持っている買い持ちですね、買い持ち分から、日本銀行から借りた分を引いたものが、外銀から借りた分よりも、その分だけ多くなった、大まかにはそういうことですか。
  176. 淡野勝己

    説明員(淡野勝己君) 必ずしも輸出手形が超過でございませんが、おおむね先生がおっしゃいましたように、日銀から円を借りまして、それで外貨手形という外貨資産を持った場合は、直物資産に関する限りは外貨資産超過になるわけでございます。これが正常な状態でございますと、先物で売りをつくりまして、総合ポジションをゼロにするという操作ができるわけでございますが、異常な事態ではそれができませんので、そのまま資産超過となっておる、総合ポジションでも。という事情でございます。
  177. 渡辺武

    ○渡辺武君 なるほど、そうすると、当時の為替変動の見通しの困難なときに、直物市場がほとんど立たないというような状況で、日本銀行から大量の円を借りて輸出手形を持っているためにこういう事態が起こった、こういうことなんですね。
  178. 淡野勝己

    説明員(淡野勝己君) 直物とおっしゃいましたが、先物市場でございます。それは完全に機能が麻陣しておったわけではございませんで、ドルが非常に安かった、したがって、先で売ると相当損もするし、さらに先物の市場のドルのディスカウント幅がさらに広がりまして、何といいますか、円の実勢が誇張されて出てまいり、円の切り上げ圧力が高まるということもあって、銀行としてはそういったような行動に出たのではないかというふうにわれわれは思っております。
  179. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうしますと、円転換規制といっても、これはずいぶん幅のある円転換規制で、約十億ドルの幅が出てくる、たいへんなものですね。  ところで、八月末のほうはどうですか。どういう状態になっておりましたか。
  180. 淡野勝己

    説明員(淡野勝己君) これも提出しました資料に出てございますが、四億七千九百万ドルの資産超過になっております。
  181. 渡辺武

    ○渡辺武君 概略わかりましたが、ところで、先ほど外銀からの借り入れは制限しておったのだというふうにおっしゃっておりましたけれども、いただいた資料によると、外銀の借り入れ残高というのは、急増しておりましたがね。七月末は二十五億二千万ドル、八月末が三十五億九千八百万ドルというふうな、十億ドル近くも急増しておるというような状態なんですけれども、これはどうしてこういうことが出てきたのですか。
  182. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) ただいまの御質問でございますが、外銀からの借り入れ残高、これは提出申し上げた資料でも明らかでございますが、七月末二十六億四千五百万ドルでございまして、これに対しまして、この外銀からの借り入れにつきましては、通常の場合でございますと、そのワクの余裕がございましたので、この場合もワクを余しておったわけでございます。ところが、八月十六日に至りまして、ニクソン声明がございました。その十六、十七日の為替市場を見ますと、非常に大量のドルが売られてまいりました。これはおそらく、この外銀の借り入れのワクを十分に使って、消化して、どんどん借り入れて、そして売ってきたのではなかろうか、こういうふうに推測せられましたので、十八日に外銀借り入れをそこでストップするという措置をとったわけでございます。したがいまして、八月十八日現在の残高が三十七億七千万ドルとなっておりますが、これから以降は、そこで残高ストップということになったわけでございます。  ただ、この資料でごらんになっていただきますとわかりますとおり、若干銀行によりましては八月二十七日あるいは八月末、それが八月十八日の額よりも多くなっておるものもございますが、これは外銀からの借り入れ残高の規制が、外銀からの借り入れだけでなくて、他の項目もあわせて規制をいたしておりますので、他の項目の変動によりましてこういうことになっておるわけでございます。
  183. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうすると、八月十八日の数字が出ていますが、つまり七月末から八月十八日までのわずか二週間くらいの間に十一億二千五百万ドルも外銀からの借り入れをふやして、そしてそれをドル売りしたということなんですね。初期の間のことはわかりますがね。  さて、八月十八日までにこれほど外銀からの借り入れが急増して、そのときはどうだったんですか、あなた方の円転換規制のあれからいえば、資産と負債はバランスしておったんですか。
  184. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 先ほども御説明申し上げましたとおり、円転換規制は平残ベースと月末ベースの両方でやっておりますので、月の途中におきましてはバランスしているという、そういう規制はやっておりませんのでございます。最近は、先ほども御説明申し上げましたが、その後毎日ベースでやるというふうに強化をいたしております。
  185. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうすると、八月十八日の時点であなた方が予想した点はどういうことなんですか。この時点でずっと規制を強化していっているわけですね。何を危険だと思って円転換規制を強化したわけですか。外銀からの借り入れの総額もここで押えるという措置をとったのもこのときなんでしょう。
  186. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 八月十八日のときにとりました措置は、外銀の借り入れをその現在で押えるということでございます。同時にこの円転換規制のほうは、特に従来の規制を強めたということではございませんで、先ほど申し上げましたとおり、円転換規制は月末残とそれから月中の平残の両方で規制をいたしておりましたから、したがいまして、その月末までに、要するに月中を通じまして円転換規制は厳重に守れと、こういう注意は厳重にいたしました。しかし、これは新しい措置ではございませんで、いわば従来の円転規制を厳重に守れという注意を喚起したということでございます。新しい措置といたしましては、外銀からの借り入れ残高をそこでストップするという措置をとったわけでございます。
  187. 渡辺武

    ○渡辺武君 つまり何でしょう、この時点で外銀借り入れをストップしたということは、これはこれ以上ふえたら困るという判断があったからじゃないですか、どうですか。円転換規制上困るという判断があったからじゃないですか。
  188. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) ただいま申し上げておりますとおり、円転規制の関係とは直接関係がございませんが、外銀借り入れで借り入れたドルを市場に売ってくるという傾向が、ニクソン声明が出まして以来、初日、二日目等で多量に市場にドルが売りに出ましたのは、おそらくそれが原因であろうと推定されましたので、外銀借り入れの残高ストップという措置をとったのでございます。
  189. 渡辺武

    ○渡辺武君 それはちょっとおかしいですね。ここに大蔵省広報として「ファイナンス」という雑誌があります。これに淡野勝己さんですか、この方は国際金融局短期資金課長という肩書きの方ですけれども、この方の書いた「変動相場制移行前後の短資対策」ということの中に、詳しくは読みませんけれども、八月の中旬までに外銀借り入れが急増した、こうなっていますね。「ドルの先行に強い不安が持たれた八月十六日から十八日にかけての為替銀行のドル売りは、その多くがこのような売りであり、」つまり、外銀借り入れをふやしての売りだということですね。「このままの売持超過が続けば、月末には巨額の買持ちをしなければ規制を守り得ないような情勢になった。よって政府は、八月十九日に規制の遵守を為替銀行に対し要請した。」こういうことになっている。つまり、十八日の時点までに外銀借り入れが急増して、そうしてその借り入れたドルをどんどん売って円にかえた。こういう動きが出てきている。一方でそういう外銀借り入れがふえた場合には、今度は円転換規制の面で言えば、円転換規制を月末の時点で、つまり借り入れと、そして外貨資産ですね、これのバランスをとるという上からは、大量の輸出手形を買わなければならぬ、こういう事態が生まれてきた。そして規制をやったんだということがここに書いてある。あなた方は円転換規制をたてまえとしてずっとやってきて、それと何ら無関係に外銀借り入れにストップをかけるというようなことはちょっとあり得ないんじゃないですか。やっぱり円転換規制上好ましくないということで規制を強化したんじゃないですか。どうですか。
  190. 淡野勝己

    説明員(淡野勝己君) 私がそれを書きましたので私から申し上げますが、いまおっしゃっておられたこと二つに分けさせていただきたいと思いますが、確かに外銀借り入れがふえまして外貨負債がふえますと、円転規制を守るためには、月中で負債がふえた分をその埋め合わせとして月末までには資産をふやしてつり合いを回復させるということが必要になる。したがいまして、あまり負債を一時にふやしますと、資産を後ほどふやしてつり合いをとるということがあぶなくなるんじゃないか、むずかしくなるんじゃないかということが懸念される、円転規制を確実に守りなさいという意味は、負債をあまり長期間多額に持ち続けるなということを言ったわけでございますが、外銀借り入れ自体をストップしましたのはそれとは直後結びつきませんで、やはり市場に売りがふえまして相当市場が混乱する、まあ混乱したわけでございますが、そういった事態に際してドル売り資金源を断とう、こういうことでやったわけでございまして、事柄をちょっと分けて考えていただいたほうがよろしいかと思います。
  191. 渡辺武

    ○渡辺武君 事柄を分けて考えるにしましても、つまり八月十八日の時点までに急増した外銀借り入れ、これをこのまま放置しておくと、月末に至って外貨負債がうんと急増していくわけですから、円転換規制のたてまえから言えば、資産のほうをふやさなければならぬ。大量の買い持ちをやらなければならぬという状態が生まれたということもこれは心の中に入っていたわけですね、そういうことですね。
  192. 淡野勝己

    説明員(淡野勝己君) 当時必ずしも結びつけてやっていたというような記憶もございませんが、確かに先生のおっしゃるとおり両者必ずしも無縁ではないというふうに考えております。
  193. 渡辺武

    ○渡辺武君 いまこの答弁の段階に至ってそういうふうにぼかさなくても私はいいと思うのです。あなたの書いたことをすなおに読めば、いま読んだところでもはっきり出ていましょう。月末には巨額の買い持ちをしなければ規制を守り得ないような情勢になってきた。よって政府は八月十九日に規制の順守を為替銀行に対し要請した。つまり月末で資産、負債がバランスできなくなりそうだという情勢が八月十八日の時点で生まれた。その原因は、外銀から大量の金を借りて、そしてそれを売りまくっている、こういうところにあるわけですね。そういうことはちゃんと書いてある。  さて、ところが、八月の末になったらあなたの先ほどの報告によると、四億七千九百万ドルもの資産超過、つまり買い持ちが生まれている。こういう現象が生まれた。これは一体どこからそういうことが出てきたわけですか。八月十八日の時点では負債超過です。八月末の時点では資産超過だと。どうしてそういうことが出てきたのですか。
  194. 淡野勝己

    説明員(淡野勝己君) いま月中のポジション表ここに持ってきておりませんので、正確には八月の半ばにおける主要為替銀行のポジションはどうなっているか、ちょっとお答えしかねますが、八月末にこれだけ総合ポジションで資産超過になっておりましたのは、やはり月中にかなり負債超過になっていた時期もございましたので、その埋め合わせに買った銀行があったということは事実でございます。
  195. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  196. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 速記を起こして。
  197. 渡辺武

    ○渡辺武君 もう率直にあなた方も認めたらどうかと思うのですがね。とにかく八月十八日まで外銀借り入れが急増して負債が大きくなった。このままいったら八月末には相当買い持ちしなければならないような状態になった。そこで規制を強化したのだということをはっきり言っている。つまり八月十八日の時点では、明らかにこれが負債超過だった。ところが、八月末になったら資産超過になっている。これは一体どこからこういうものが生まれてきたのか。それは円転換規制の中で、この資産というものは、先ほどあなたもおっしゃったように、買った外国為替ですね、この金額から日本銀行から借りた部分を差し引いたものなんですね。この残高が負債と見合うというのが大体円転換規制の原則でしょうが。この資産の部分で、日本銀行から借りた部分をずっと減らしていけば、負債が多くても、同時にまたそれと見合う資産もふえてくるということになってくるでしょう。輸出手形を新たに買い入れなくても、すでに買い入れた輸出手形の中で、そこから差し引くべき日銀の借り入れ部分、これを期限前返済で減らしていけば、円転換規制の中で資産として計上される部分はずっとふえてくる。そうすれば、外銀から借りた負債と月末にいけば見合うという操作になってくる。まさに日本銀行が、このドル売りまつ最中に期限前返済を認めたというのは、これは為替銀行のそういう操作を、大量のドル売りをしてもなおかつ円転換規制の中で資産、負債がバランスするような、そういう操作をさせるためじゃないですか、どうですか。
  198. 淡野勝己

    説明員(淡野勝己君) ただいま御指摘がございましたが、確かに、この騒ぎが始まります前に、日銀から円を借りまして輸出手形を買っておりました。その部分は、直物としては確かにそのまま資産超過で持っておるということでございました。しかし、それは正常な状況であれば先物で売りまして、売りカバーをとりまして、総合ポジションとしましてはつり合いをとる、為替リスクをカバーするということができたわけでございますが、先ほども申し上げましたが、異常な状態でございましたので、そういうことができないまま、総合ポジションで大幅な資産超過でございます。それがかなり減りまして、それから月末ではふえた。これが、月中の平均でも規制しておりまして、月末の額も規制しておりましたが、あわせまして、月の平均が、負債超過の時期があれば、資産超過の時期もつくるということで、月が、ならしてみますと大体とんとんということになるよう指導しておったわけでございますが、そういったような指導によりまして、八月末の総合ポジションの額が、まだ相当程度買い持ちになっていたわけでございます。  次に、ドル売りができるようにするために、日銀の資金貸しの返済を認めたのじゃないかというような御質問があったかと思いますが、結局、先ほど局長からも御説明いたしましたとおり、手形の買い取りを為替リスクなしにやるためには、一番いい方法は、外国の銀行から金を借りてくる。それを市場で売りまして、その円で手形を買い取るということが一番いいわけでございますが、日銀の資金貸しでございますと、先生御指摘のとおり、それが円転規制上直物外貨資産として計算されませんので、それが返されまして——日銀の円でなくて、自分の円で外貨手形を持っているということになりますと、それは資産として円転規制上計算され、それに見合う負債ができるということでございます。そこで日銀の資金貸しがそういうことによって返されますと、それが円転規制上資産に勘定されますので、それ以上円転規制を守るために積む必要はなくなる。したがって、輸出手形の購入に回せるゆとりが出てくる。こういうかっこうでございまして、輸出手形の購入のゆとりが出ますと、その結果、やはり外国の銀行から借り入れが認められているワクの範囲内でございますが、市場に対する売りがふえます。したがいまして、その限りにおいて、市場に対するドルはふえるわけでございますが、それはあくまでも輸出手形の買い取りに使われたドルというふうにお考えいただければけっこうかと思います。
  199. 渡辺武

    ○渡辺武君 説明を、わざと混乱さしているような説明したら、これは答弁にならぬと思うんですね。大体、輸出手形買うのに、ドルで買うなんということやっちゃいないでしょうが。円で買っているでしょう、輸出手形は。そういう間違った説明をしてもらっちゃ困るんですよ。つまり、こういうことでしょう、あなた方の円転換規制からすれば、単純化して言えば、外国銀行からドルを借り入れて、為替銀行がこれをどんどん売って円に変えている、スペキュレーションのために。  さて、それは円転換規制のワクではどういう制約を受けるかと言えば、これは一方で輸出業者から買った輸出手形、これの買い持ち高の中から、日本銀行から借りた部分の額を引いたものが、外銀借り入れの額とバランスすることが、大体円転換規制のたてまえになっているのですね、あなたの説明によれば——直、先の区別をとって単純化して言えば、そういうことです。ところが、八月十八日までに猛烈な勢いで外銀借り入れをやって、そうしてドルを売りまくった。さて、そのしりはどうするかと言えば、円転換規制のバランスから言えば、それに見合う資産をふやさなきゃならぬ。ところが、当時のように為替の状態が非常に不安定なときには、輸出手形を喜んで買うなんという銀行はありやせぬです。また事実、私も実際業者から聞いたけれども、中小企業関係の輸出手形なんて、あのときは全然もう買ってくれもしない。そういう状態で輸出手形買ったのじゃない。そうじゃなくて、つまり減らすべく——円銀行から借り入れた分は差し引くわけだから、その差し引き分を減らした。そうすれば差額の資産がふえるから、外銀から借りた分とバランスがとれる、その操作をやらせるためには、どうしても期限前返済を認めなければその操作はできない。そこで、日本銀行は二十四日、二十五日の時点で期限前返済を認めた。そして十何億ドルというばく大な期限前返済をわずか三日間でやらした、こういう関係じゃないですか。あなた方からもらったこの十六日から二十七日までの間の直物対市場の売買状況、これもその関係をはっきり示している。  つまり十七日の時点まで外銀から借り入れて売りまくった。だから十九日ごろまでは非常に大量のドルが売られている。で、規制が強化されてだんだんドル売りがむずかしくなって、そして二十四日、二十五日にはもう月末も近くなって、そうして円転換規制で資産、負債のバランスをとるためには、むしろドルを買ってそして外銀に返さなきゃならぬ、借りた分を。そういう事態が生まれて、二十四日が七千五百万ドル、二十五日が四億二千二百万ドルも日銀はドルを売るというような事態が生まれてきた。為替銀行から日銀に対する突き上げが非常に激しくなったのはこの時点です。何とか救済してくれということで、日本銀行は為替銀行に対して貸した金の期限前返済を認めた、それが救済措置です。つまり、日本銀行は外国銀行のドル売りを追認した、この措置により。これが期限前返済の内容です。ただ追認したばかりじゃない。先ほどあなたがおっしゃったように、七月末の買い持ち超過は九億八千六百万ドル、八月末の買い持ち超過は四億七千九百万ドルという、この差額約五億ドル、これは外国銀行から借りた分にさらに上乗せして、いわば期限前返済をやり過ぎたものです。だから買い持ち超過が五億ドル減っている、その分だけはドルを売った。日本銀行があの大スペキュレーションに公然と手をかしたという事実はこれで明らかです。あなた方監督上この問題どうしますか。
  200. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 先ほどから説明申し上げておりますとおり、日本銀行がいまの外為資金貸しの期限前返済を認めました趣旨、背景というのは、先ほどからも御説明申し上げておりますとおり、決していま先生御指摘のようなことではございませんで、当時の状況に照らしまして、この為銀の窓口におきます輸出手形の買い取りが不円滑になるというようなことになりますと、日本経済の全体の長期的な市場の円滑な発展を維持していくという上におきまして非常に支障ができる、あるいは社会不安も起こるというようなことになってはいけません。他方円の平価は堅持するということで長期戦を覚悟しなければいけない、そういう状態でございましたので、そういう意味で、市場が円滑に毎日進んでいってもらいませんとこれは長続きいたしません。すぐいろいろと社会不安その他が起こりまして長くもたせるわけにいかないと、こういう状況でございましたので、日本銀行のそういう措置がとられたわけでございます。
  201. 渡辺武

    ○渡辺武君 時間がないから最後に一言。これでやめますけれども、そんなおいしいことばかり言っちゃいけません。輸出手形の買い取りといいますけれども、輸出手形は七月末、八月末でどのくらいふえておりますか。あなたのほうからの資料によりますと、四十九億九千五百万ドル、八月末は五十億八千四百万ドル、ほとんど一億ドルしかふえていない。その一億ドルの買い持ちをふやすために十何億ドルもの期限前返済を認める、こういう状態じゃないですか。明らかにこれはスペキュレーションに手をかした。あなた方納得しなければ、私はなお次の機会にさらにこの問題取り上げて事態を明らかにしたいと思う。これは重大な問題でございまして、輸出前貸し制度で大量にドルの入ってくる道を一方で残す。他方ではこういう日本銀行が公然と手をかして期限前返済を認め、ドル売りを追認、さらには増大させるというような措置をとっている。これはもう大蔵省及び日本銀行が、あの大商社の、この為替スペキュレーションに公然と手をかしているという結論しか出てこない事実だと私は思うのです。この点をはっきり申し上げて私の質問を打ち切ります。
  202. 淡野勝己

    説明員(淡野勝己君) 一言だけ御説明いたしたいと思いますが、輸出手形がいま七月末と八月末と比べてそれほどふえていないというお話でございました。これは当時ああいう状況のもとにおきましては、手形のアト・サイト化といっておりますが、期限つき手形を一覧払い手形に切りかえるのが相当ふえております。その結果として残高としてはふえていない、こういう事実でございます。
  203. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 中小企業庁の次長さんがおいででございますからお聞きしておきたいと思います。  ドルショックで、ドルショックと申しますか、ああいうニクソン声明でずっと動く中で、中小企業の人たちはいろいろ振り回されたような形になっている。一番こたえたといわれるのは、どんなことが中小企業の人はこたえたと言っておられるか。  それからもう一つは、前受け制度をとめましたですね、限界がございますけれども、すでにとめたということ、その辺のことをいまどんな動きがございますか。
  204. 進淳

    政府委員(進淳君) ドルショックで中小企業関係者が当時一番苦労いたしましたのは、御承知のように輸出成約が為替不安のために急に停滞いたしまして、したがいまして、その直後の私どもの調査では、大体通常ベースの二割程度まで落ち込んでおりました。その点が当時中小企業者としては一番痛かった問題であるといわれております。
  205. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 いや前受け金制度をああいうふうに制限いたしましたね、それについてはどういうふうな反応ですか。
  206. 田口健次郎

    説明員田口健次郎君) 御説明申し上げます。  御存じのとおり八月に大蔵省で円転換規制を強化されまして、原則として一万ドル以上の前受け金につきましては円転を規制いたしました。いま当省の考え方を申しますと、前受け金と申しましても、いわゆる通常手付金に該当するものもございますし、それから向こうのバイヤーから商慣習として前受け金の形で金融を見てもらうというのもございますし、それから場合によって、造船等の例でございますが、円建てで輸出をいたしましたような場合には、為替リスクは日本の輸出者がかぶりませんで、向こうの輸入者がかぶるということで、向こうのほうの外人バイヤーの事情で、早くお金を払わないと円が上がって、ドルが下がると非常に損をするということで、契約より少し時期を早めて、前もっていわゆる前受け金の形、向こうで言えば前払い金の形で早く金を払って、為替差損を逃げたいと、向こうのバイヤーの要求があるといったようなことがございます。それから為替管理法の四十七条には、輸出についての最少限度の規制をするようにというような思想もうたっておるわけでございます。そういったことで、貿易面から考えますと、あまりにも前受け規制をし過ぎますと、ほんとうの正直な者、中小企業は、先ほど申しました向こうのほうの事情で当然送ってきてしまうというようなことも、全部押えますとそういう不合理が出てくる。しかしながら、あまりにも前受け金が多くなってきますと、大蔵省のほうで、非常に為替平衡操作による、売りが多くなってレートの維持に困難を来たす。まあ為替レートの維持という領域で、場合によって利益が消失されてくるというようなことが申せると思います。  そこで、当初の考え方としては、実需、ほんとうに輸出を伴う——話を聞いても、商売上従来からもやっておるし、あるいはいろいろ先ほどの円建てのように、向こうの事情でやむなく送ってくるというようなことで、全部押えることは問題だけれども、しかしながら、あまりにも、ことによると実需の裏づけが十分ないかもしれないとか、あるいは非常に貿易のやり方として、貿易のやり方は正常かもしれないけれども、量的にあまりかたまって前受け金が入ってきて、為替市場を乱すということではいけないだろうということで、大蔵省が円転規制を強化したときに、当省としても賛成したわけですけれども、その後の足取りを見ますと、中小企業のほうから、やはり一万ドル以上の円転を規制するという現状では、中小企業といえども一万じゃなくてもう少し上の金額、大きい金額のやはり前受けが必要である、あるいは従来もやっていたケースもある、入ってこないと金融も困るということで、何とかゆるめてもらえないだろうかという御相談は私ども聞いておる次第でございます。
  207. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 変動相場制ですから、なかなかバイヤーとの間に幾らにするかと、ドルはどのくらいに切り下がるだろう、円は切り上がるだろうというようなことがあって、なかなか契約はむずかしい。ましてや今度はその前受け金の制度の問題になれば、とてもいかないというようなことで、中小企業がほんとうに物が売りにくくてしようかないわけです、中小企業の立場で言ったときに。それじゃ一万ドルをたとえば五万ドルに上げる、せめて二、三万ドルのことはやると。ことに中小企業でも、一日に一億やそこらはやるということはあたりまえの話ですから。  そこで打開策なんですが、片一方でいま言ったように、前受け金制度を前のように認めていれば、いま言ったように、どんどん出てきますね。そこの何か妥協点みたいなものが、そういうものがつくれぬだろうか。
  208. 田口健次郎

    説明員田口健次郎君) その点でございますけれども、先ほど中小企業庁の進次長から御説明なさったように、とにかく八月、特に九月、十月初めの時点では、中小企業の方が毎日のように当省に来られまして、値段が上げられないわけじゃないけれども、先行き為替レートがどういうふうに変化するかわからない。一ぺん成約しても非常に為替の差損が出るかもしれない。輸出の契約が非常に減ってしまって、将来どうなるかわからない、非常に不況になるかもわからない。それで何とかしてもらえないだろうかというようなお話がございまして、大蔵省ともいろいろ御相談をして、実際としては十月末というふうに聞いておりますが、中小企業の主要の業種、産地の製品に限りまして、一応先物を予約をする。先物については、現状の直物レートの三・六二五%のディスカウントはつけますけれども、今日のレートから年率で三・六二五%切り上がったレートで先物予約をする。しかし一たん予約をすればそれ以上為替のリスクはない。それだけを為替銀行にやらせますと、為替銀行で為替の差損が出ますから、そういうような事態になりませんように、外国為替特別会計からその手持ちの外貨を為替銀行に対して外貨預託をするということで、為銀も差損も差益も出ないという仕組みで、中小企業向けの先物の予約制度を認めさしていただいたわけでございます。約一カ月間で四億ドルくらいの規模の先物予約ができておるということは、四億ドルに見合う輸出成約がその制度のためにできるということでございます。一応その制度でもって中小企業の輸出成約と申しますか、輸出ができるというような、あるいは新規の成約を促進するというような制度をつくりましたので、一応そちらのほうでカバーするというかっこうでいかがだろうかと思います。
  209. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 前年対比にして伸びておりますね。そして問題が起きてから落ち込みましたね。いまどのくらいにいっておるのですか。
  210. 進淳

    政府委員(進淳君) 当初二割程度まで急減いたしましたのでございますが、現在では大体七〇%台、通常の例年のベースに比べますと、新規契約でその程度まで回復いたしております。
  211. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 七割というのは伸び率まで加算したのか、前年比の七割ですか。
  212. 進淳

    政府委員(進淳君) 前年の実績の七〇%程度でございます。七〇%台でございます。
  213. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 伸びる計画はありましたから、一応の二百五十億ドルくらいのベースで引き直していきますと、大体当初予想から見て六〇%台ということですか。そうすると成約ですか。
  214. 進淳

    政府委員(進淳君) 仰せのとおり本年度の伸びを想定いたしますと六〇%台になるかもわかりません。厳密に計算いたしておりませんが、七割を割るかもしれません。
  215. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 クリスマス関係の雑貨などでいえば、一つは十月ないし十一月、十二月がそのピークで、これから落ち込みになっていくわけですが、あなたたちの見通しで、ワシントンの十カ国蔵相会議が十二月の中旬に持たれる。そこで固定相場にかりに移行したとしたら、大づかみの見通しですが、一‐三月ぐらいはどういう見通しを持っておられますか。中小企業の関係だけに限って言えば。
  216. 進淳

    政府委員(進淳君) 為替相場が中小企業界の要望といたしまして、早く固定化することを望むという声が非常に強いわけでございます。もっともその率につきましては低いほうがいいということは言っておりますが、したがいまして、為替相場が固定いたしますと、現在でも大体次第に新規成約率は上がってまいってきておりますので、為替相場が固定いたしますと、大体従来の前年度実績程度に近づくのではなかろうかと私どもは推定いたしております。
  217. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私もアメリカに雑貨のストックがあるわけじゃない、大体切れてきた。非常に落ち込みがあるから、幅が非常に問題だと思いますけれども、ある程度の需要というものはアメリカにはあるのだ。ただ値段が非常にぐんと上がってしまうと手が届かなくなるということになるから、いま新聞紙上等で伝えられている幅くらいなら、私も実は強気な観測を立てておるわけですが、まあ前年同期に対して同じような率に伸びるのじゃないか。しかしそれには、いま言ったようないろいろな、どう言ったらいいか、変動幅に対するカバーのしかたなり、前受け金制度が極端に締めつけられてくるとちょっと困難なような見通しです。非常にその辺のところを、片方じゃまたこちらのほうで悪いことをする人もおるだろうから、それを助長するようなことがあっては困るのですが、そこら辺のところも何か見さかいを、けじめをつけるようなふうに、いまのような御答弁のあった対策でいいものなのか、もう一歩前へ進んだような対策というものが立てられぬものだろうか。それからもう一つは、ドル売りが実際にあっちゃ困るんですから、それが片方では押えられるというもろ刃の剣になるようないいものがないものかと思っておるんですが……。
  218. 進淳

    政府委員(進淳君) 中小企業の輸出関係につきましては、現在の制度で大体若干の手数料といいますか、リスク料は払いますものの、平均三カ月程度でございますから、約一%程度でございますので、その程度でございますれば、しかも私のほうで事務的にいま準備を進めておりますけれども、都道府県でその辺のチェックをいたしております。そう変なものがまぎれ込む余地は絶対にないようにいたしたいと思っております。そういたしますれば、大体中小企業関係の製品については、ある程度安定的な取引が条件としては整うであろうと存じております。そういうことで、そういうこともございまして、実際上七割程度まで回復したであろうと私どもは存じておるわけでございます。
  219. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 ちょっともう一つ。銀行は総ぐるみで相当なドルを外銀から借りて売ったということは確かなんですね、確かに売った。ですけれども、銀行もいろんな意味で債権をやはり持っておる。まあ何%に切り上がるかわかりませんけれども、銀行というのはおのおのによっては若干の差があるかもしれませんけれども、一体これで円切り上げに対して大体損をせずにカバーしたと見ていいものなのか、それとももうけておるものなのか、どんなふうに局長は見ておるわけですか。
  220. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) この前の変動相場制移行の前後におきまして、銀行が損をしたか、得をしたか、大体カバーしたかという御質問でございますが、大体におきまして、個々にはあるいは例外があるかと存じますが、おしなべまして銀行は若干の損をしたといいますか、ということで終わったのではないかと存じます。
  221. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 こういうことがある場合には、大体切り上げがあれば当然それ相当のものは銀行がかぶるわけですね。しかし銀行はかぶっちゃたいへんだから、それをカバーするというのがドル売りじゃないかというふうに見ておるわけです。元来ならばそういうことはできないんだというふうに、私たちは、為替管理法があってやられないんだ、円転規制もしておりますしやられないと、こう思っておったのに、カバーができてしまう、若干マイナスが残るんだということは、やはり法律をフルに生かしながら銀行はドル売りしたんじゃないか。そういうふうに解釈していいのか、法的には不法じゃないということは言える。不法だとは言えない。法律にはなるほど前受け金制度というものはあるんです。ですからいろんなものがありますから、結局そういうことなのか。
  222. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) それは非常にむずかしいことでございますけれども、大体われわれが見ております限り、先ほども御説明申し上げましたが、銀行は、このニクソン声明が出ます前には、相当の買い持ちと申しますか、あったわけでございまして、したがって、これが規制以上に、いわば規制をさらに十二分にというのはおかしいですが、規制すれすれではなくて、やや余裕を持って買い持ちであった。したがいまして、その後こういう事態が起こりますと、その規制の許す範囲で売り持ちを解消したい、ポジションの調整をしたい、こういうふうに考えるのはある意味では自然のことではなかったかと存じますが、その意味で多額の評価損が出るところを減らしたという意味はございますが、結果におきましては、やはり規制を守りましたので、各行とも若干ながら損が出たという結果に終わったのではなかろうかというふうに存じます。
  223. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 銀行が損をするとたいへんなことだ。そこで銀行が損をしないように、大蔵省の行政指導というものが、ある程度名前があったけれども、どうも行き届かなかったんじゃないかということが一つある。いまの銀行は損しなかったかもしれませんけれども、日銀はこれを全部受けたわけですから、日銀が損をしたということは、国が全体損をしたということになる。それで、そういうようなことを何か政府と日銀との問に、ちょうど参議院の決算委員会でも問題になっておったように、どうもぐるになってやったんじゃないかとか、日銀が損をすれば、国民の税金で、日銀の収益が減る。しかし銀行が損をすると、内容等に非常に影響してくるというような配慮があったんじゃないかという疑いをわれわれは持っておってどうもすかっとしないわけです。  これはあなたのほうはそれを認めるわけにいかぬだろうと思いますし、また実際そうであったかもしれないし、そうじゃないかもしれないのですけれども、そこら辺のところが非常に不明朗というのですか、片方では規制があるのだから、ここで日本の為替管理というものは非常に厳格で行き届いておって、そういうようなことは一切されないものだというふうに政府はしばしば答弁をしておったのです。われわれは実は安心をしておった、と言っては悪いかもしれませんけれども、そういうものだと思い込んでおったら、実は為替市場を閉鎖をしなければならないというようなところに追い込まれたというところに、私は非常に不信が出てきておると思うのです。ですから政府は、この際日本が為替管理云々でこういう逃げ道があったんだ、そこで前受け金を立てたんだという不明は、やはり政府はぼくはわびるべきだろうと思うのです、国民に対しても、あるいは国会に対しても。大蔵委員の人たちもそんなことはないと思っておったのです。そうしたら、不法ではないかもしれないけれども、不当なやり方をされたと言えるかもしれない。あるいは大蔵省の指導というものは、相当な強力なもので実はあるものと期待しておった。それがそうじゃなかったというようなことだったと思いますが、そういう点について政務次官に御答弁願うというよりも、国際金融局長は担当責任者としてどんなふうに感じてお見えになるか。
  224. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) ただいま成瀬先生の御指摘の問題でございますが、振り返ってみますと、当時、初めての事態に対処いたしまして、われわれといたしましても、非常にいろいろとこの対策の樹立につきまして悩んだわけでございますが、当時の最高方針と申しますか、といたしましては、ともかく平価を堅持する、市場を締めるわけにいかない。市場を締めますと、何回も大臣からも御説明申し上げたかと存じますが、ほかの国と違いまして、日本は大体外貨建ての取引がほとんど全部でございますから、したがって、貿易がすっかりストップしてしまうというようなことで、市場は開かざるを得ない。同時に、平価を堅持するという方針でございますと、その当然の帰結として、日銀はどんどん買わなくてはいけないということに相なるわけでございます。その間に、先ほども申し上げておりますとおり、為替管理の穴と申しますか、抜け道があってはいかぬということで、規制その他毎日情勢を見ながら、足りないところは補い強化していくということで、実は非常に毎日毎日緊張した日を過ごしたわけでございますが、その中で、確かに御指摘のとおり、従来考えておりましたよりも、一つの抜け穴と申しますか、予想以上のドル売りが出てまいりました一つの原因は、輸出前受けにあるということがはっきりいたしてまいりましたので、この点は私おくればせながら八月末に規制を強化するという措置をとりました。それがおくれたことに対しましては、先般も私といたしましても非常に反省いたしておるわけでございますが、銀行のほうにつきましては、先ほどから御説明申し上げておりますとおり、ある程度規制をこえて余裕をもって買い持ちになっておりました分を、規制の範囲内に戻すという点は、これはある程度やむを得ないと、われわれとしても当時からすでにその程度のことは国でできるであろうという予想はしておったわけでございますが、その前受けのほうにつきましては、それほど多額のものが出てくるであろうということは、実は予想しておりませんでした。その点におきましては、大いに反省をいたしておるわけでございます。  その後いずれも、ただ全体を通じまして、いわゆる外国におきますような非居住者からのホットマネーの流入というような、そういう意味の外からの投機は振り返ってみてもなかったということは、その意味では日本の為替管理は非常によくきいたというふうに言えるかと存じます。その輸出前受けにつきましては、そこに一つの抜け穴と申しますか、それがあったということは反省いたしております。その後その点は厳重に規制を強化いたしておりますけれども、これは今後の問題、さらに将来どうするかという問題につきましては、先ほど通産省のほうからのあれもございましたが、この通貨調整が一段落いたしますれば、情勢を見て、いままでこういう特別な通貨不安の情勢のもとに、非常に強く、ある意味では非常に強過ぎるというくらいの為替管理にいまなっております点は、情勢が静まって、特に強い為替管理を若干再検討してもいいという情勢になれば、むろんその点の再検討はいたしたいというふうに存じておる次第でございます。
  225. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 これ一問だけで終わりますが、今度のワシントン会議の前に、新聞等で予想されておる幅ですがね、どういうふうになるのか、私どもはよくわかりませんが、いま外貨建てでやっております。   〔委員長退席、理事柴田栄君着席〕 あるいはもう少し切り上げ幅が多くなりはしないかということがちょっと予測されるわけです。これは全くぼくの予想なんですから、どうなるかわからないのですが、となるともう一度ドル売りというようなことが想定されるわけなんですね。あの十七、十八日で結論が出るかもしれませんが、あるいは出ないかもしれませんが、そこらあたりを目途にして、ドル売りということがもう一度出てくるんじゃないかというようなことについては、何ら心配はないですか、それとも、そういうような点について何か対策を立てておられますか。もし心配だとするならば、対策がなきゃならぬと思いますが、その点はどうですか。
  226. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) ただいまの情勢は、実はわれわれといたしまして非常に率直に申しましてやりにくい情勢でございます。つまり十七、十八日にあるいは切り上げがあるかもしれないという、いわば先を示されておるようなわけでございますから、この意味におきましては非常に処理のむずかしい事態でございます。実はその意味でわれわれといたしましても、毎日毎日非常に注意深く市場の状況を見ておるわけでございますが、先ほど申しましたとおり、いままで抜け穴と申しますか、となっていたと思われる点は強化をいたしておりますので、それから先ほどの銀行のポジションにつきましては、今度はもはや毎日毎日の規制をいたしておりますから、その点におきまして大きなあれが出てくるということはまず考えられません。  ただ、今月に入りまして、非常に毎日、わりにドル売りが多くなっておりますが、これはその大部分が、先ほどちょっと話題になっておりました中小企業関係の預託を外為会計といたしましてやっておりますので、それが売りに出ておるというのが大部分でございます。先ほどちょっと数字が出ましたが、最近のところまででは、預託額は五億二千万ドルというくらいにすでになっておりまして、それだけ中小企業の成約を促進をいたしておるメリットがあるわけでございますが、同時にそれがやはりドル売りとなってあらわれているという、今日までのところそれが事実だろうと思います。  したがいまして、そのほかに何か大きなあれがあるかと申しますと、これは輸出前受けのほうは、先ほど申しましたとおり、いまは一万ドル以下のものはこれは自由でございますけれども、それをこえますものは規制をいたしております。まあ、造船の輸出代金の前受けにつきましては、これはあるいは若干、集中的に起こるかもしれません。いずれにいたしましても、そういう事態でございますと、いわゆる前受けということではなしに、本来のリーズと申しますか、海外の輸入いたします者と正式に折衝いたしまして、契約を早めると申しますか、受け取りを早めるようなこともあるいは起こるかもしれません。そういう意味の若干のリーズというのはあるいは起こるかもしれませんが、その意味におきましては全く安心であるというわけにはまいりませんが、八月のときのようなことにはならないのじゃないかという点は、それは大体だいじょうぶであろうと存じます。
  227. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私は、造船の三年間のものはほとんど返ってしまったんじゃないか。それから自動車等の売り掛け金の回収も相当いったんだろうというふうに判断しておるのですが、それで、あなたのほうではそういうものは全部調べてはお見えにならぬかと思いますが、まだ相当——造船も十年間なら十年間の延べ払いで売ったものは、三年間だけは取れるのですから、そういうものは相当残っておる。あるいは自動車等でも売り掛け金がまだ相当残っているのだ、あるいは商社も売り掛け金は相当持っておる。そういうものがまだ相当残っているという判断をしておりますか。
  228. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) ただいま申し上げましたのは、円建ての契約でございます。したがいまして、こちらから出したほうにとりましては、もはや為替リスクはございませんので、買ったほうで円のリスクがございます。したがって、早く払ったほうが得だ、こういう意味のことでございます。そういうものは若干あるのではなかろうかと思います。  前回と非常に大きく違います最も重要なポイントは、現在変動相場制になっておるということでございます。その点は、八月のときは要するに、平価を維持するというための考慮が一番初めに出てきておったわけでございますが、今回の場合は、相場制度自体が変動相場でございますから、したがいまして、その点ではやはり同じような売り圧力がきたといたしましても、これを全部買いささえる必要がないという意味におきまして大きな違いがあるかと存じます。
  229. 渡辺武

    ○渡辺武君 先ほど時間がきちゃったものですから、要求するのを失念いたしましたが、資料要求をひとつしたいと思うのですが、それは、この前私、円転換規制状況の詳しいのを資料要求したわけですけれども、出てきたものは、私どもしろうとが見ても、何だかさっぱりわからぬものですが、これでは、はっきりした具体的資料を出して、その上で審議さしてくれなければ、とうていこれは審議はなかなか進まぬですよ。私は先ほどあなた方の御答弁伺いましたが、これはとうてい納得できない。  それであらためて資料をお願いしたいんですが、きょういただいた四の一、「為替銀行の七月及び八月末の円転規制状況(月末残ベース)」というのがありますが、この月末残ベースと、それから月中の平残ベースですか、この両方について、つまり外貨負債が、どの項目のものがどのぐらいの金額あって、それから外貨資産のほうはどの項目のものがどのくらいあって、そうしてさっき御答弁のあった七月末買い持ち超過九億八千万ドル、八月末四億七千万ドルという数字が出るのか、その内訳を詳しいものをぜひ出していただきたいと思います。出していただけますかな。
  230. 柴田栄

    ○理事(柴田栄君) 本件につきましては、理事会において相談させていただきたいと思います。
  231. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 間もなく終わるそうですから二、三点について。  ことに成瀬委員関連において質問をしていきたいと思いますが。  その第一点は、確かにいままで、福田大蔵大臣時代から日本の為替管理制度というものは完ぺきである、だからいかなる場合でも、円の問題がここ三、四年問題になってきたのですけれども、そういうたびに、いや絶対にそういうことは心配ございません。こういうことだったわけですが、いまそれが、国際金融局長の答弁聞きましても、確かに前受け制度というものは欠陥があった、これは反省すべきだと、こういうことを言われておる。  それからもう一つは、為替差損、こういうものが今日出て、それが結果的には国民の税金に肩がわりをすると、こういうかっこうになるわけですけれども、そういう面も含めていろいろ考えますと、今後の問題としてひとつ検討事項として、そういう為替差損とか、あるいは為替差益でありますが、これはあとでちょっと数字がわかりますれば発表していただきたいと思うのですが、そういうものに対する制度上の検討ということは別に考えておりませんか。検討というのは、この際自由にやらせるならやらせていいんじゃないか、介入をやめてやる、そうすればこういうことは今後やはりずっと同じようなケースが、いま世界的な経済不況体制に入った今日ですから、さらにまたこういう事態というのが発生しかねないということも懸念されるわけです。そういう場合に、また同じことを繰り返されるということは困るのですが、その辺の対応措置まで含めて検討する必要があるのではないか、そういうことは一体考えられないか、これに対する見解を一つ。  それからまた、石油等は今回の円切り上げ等をめぐりましてやはりもうかっている。実質的にはその販売価格等はいささかも下がっていないのですけれども、こういう問題について一体その差益というものはどの程度あるのか。差損についてはたいへんな国民の負担に肩がわりをされるからいろいろといままで問題になってきたのですけれども、一体この差益はどのくらいあるのか。こういうものがもし今後現実の問題として相当数差益として出ており、業者の輸入品目その他にあるとするならば、それらに対する国内の物価政策、こういうものが当然これは値下がりをしていくのがあたりまえである、しかし、これはマルク切り上げ等をめぐってもそういう結果は出てきておりませんけれども、そういう点についても一体今後の具体的推移はどう考えておられるのか、その辺をまずひとつお伺いしておきたいと思います。
  232. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) ただいまの御質問は、非常に広範にわたっておりまして、私の所掌をはずれる部分があるかと存じますが、   〔理事柴田栄君退席、委員長着席〕 今後平価調整ができたという場合でも、この八月十五日までのような、あるいはいわゆるIMF登録平価バリューの制度に戻るというような、非常に固定的と申しますか、非常に安定した状態にはなかなか戻りにくいであろうということは、確かに御指摘のような点があろうかと存じますが、ただ現在のような変動相場制に比べますと、はるかに安定したものに戻るようにしたいと、そういうことがわれわれの念願でございますけれども、それによってその差益、差損がどうなるか、つまりこの企業の会計経理上の問題、あるいは制度上どうするか、税の扱い上どうするかという問題につきましては、ちょっと私の所掌じゃありませんので、申し上げかねるかと存じますが、いまの、たとえば平価が上がれば輸入品が安くなる、それは当然国民全般に還元すべきであるということはまさに御指摘のとおりであろうかと存じますが、すでに卸売り物価等につきましては、この変動相場制に移りまして、事実この円が切り上がってきておりますから、その影響もあるいはあるかと存じますが、若干すでにものによりましてはそういう徴候も出ておる。ただ小売り物価、消費者物価につきましては、これはまあいろいろと国内の流通問題等もございまして、この平価調整、円の切り上げがそのまま消費者物価になかなか反映しにくいという点もあることも事実でございますが、この点につきましては、大蔵省といたしましては、そういうふうなことにならないように、その切り上げの利益が一般国民に全体として還元されるようにつとめたいということで考えております。
  233. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 これで終わりますが、当初アメリカのニクソンのドルショックの声明があった当時、佐藤総理は、沖繩返還までは一切この変動相場制というものは考えられない、はっきり固定相場制、こういうことを再々委員会で答弁をされました。それが急拠この十七日になって、二十七日までああいう状態が続いたのですね。で、西ドイツとかあるいはフランスの場合は、直ちにニクソンの声明と同時に為替銀行の閉鎖を命じて閉鎖をしたのですね。一体ここが私は、いま結果論ですけれども、なぜ一体日本はもっと慎重に——大体佐藤さんが言ったことは全部宙に浮いちゃっているのですね、現行に至っても。だから、そういうことの経過を考えれば、やはり西ドイツなりフランスと同様に直ちに為替銀行の閉鎖をやって、最大限の安全の措置をとるべきじゃないか、こういう点が私はいまでも理解に苦しむ。そういうところからいろいろな疑惑というものが出ておるのです。政府がじかに介入をして、特定業者に対して、あるいは特定の銀行に対して、各般の措置というものを奨励をして、そうして国民の疑惑を招来せしめたのじゃないかというようなことなんですけれども、その辺の判断は事務当局としてはどのように一体考えておりますか、その辺をひとつ。
  234. 船田譲

    政府委員(船田譲君) まず私から答弁申し上げまして、あと金融局長から詳細の答弁をさせたいと思います。  これはまあ結果論になりますけれども、いまから考えますときに、あの時点で西ドイツ、ヨーロッパ並みに市場をたちどころに閉鎖をしたほうがよかったかなという気はしないわけでもございません。しかし、わが国としましては、昭和二十四年の九月でしたか、一ドル三百六十円の平価できまりまして以来ずっとこの平価を守ってまいりました。そういういきさつもございます。同時に西ドイツはその間に二度にわたってマルク切り上げといろ経験もありますし、またことしの五月に変動相場制に一度なりましたような経験も持っておりますから、対応もきわめて早かったということでございます。われわれのほうは対応に経験が足りなかったという点は、先ほど金融局長申しましたような、ある意味では遺憾な点もあったということでございます。  ただ、わが国の輸出がほとんど、その九割以上がドル決済で行なわれておるということを考えてまいりますと、市場を一たん締めましたときに、次にあけるまでの間の時間というものはあまり長くをとれないと思います。で、あけるときには何らかの新しい措置というものをあらためてやりまして、そしてあけざるを得ない。それによるところの、何と申しますか、混乱ということも十分予想しなければならぬというような心配もこれありまして、ずっと買いささえのまま平価を守るということが二十七日まできたものでございます。その間に、各外為公認銀行から、外貨の直物対市場売買額が、この提出いたしました資料のようになったわけでございます。この額というものは、おおむね通常において外為銀行が扱ってまいりました外貨の取り扱い額とほぼ比例をいたしておりますから、特にどの銀行が大いにドル売りに精を出してもうけたとか、どの銀行がぼんやりしておって損をしたとかいう、たいへんしろうとくさい言い方でございますが、そういうことはないと存じますけれども、また外為銀行としては、買い持ち、売り持ちのポジションをスクェアーにする、あるいは直物、先物の間をスクェアーにするためにカバーをとるということが、外為銀行本来のやるべき一つの義務と申しますか、これは預金者等に対する義務でございますから、これはあながち責めるわけにもいかないと私は思うのでございます。  しかし、いま先生が御指摘になりましたように、大蔵当局と銀行との癒着関係がどうこうというような、われわれから見れば、あられもない疑惑を多少なりとも世の中にお与えしたとするならば、これはやはり「李下の冠」「瓜田の履」ということわざがございますけれども、やはり避くべきであったという点につきましては、反省をしなければならぬ、こう考えておるわけでございます。
  235. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 差益はどのくらいあるのですか。
  236. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 政務次官からただいまお答え申し上げましたのに、特につけ加えることはございません。  差益はという御質問でございますか、ちょっと御質問があれでございますが……。
  237. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 差損のほうはおおむね数字が出ておる。政府から説明があって、このくらい円切り上げによって差損が出る。幅は幾らかということによっていろいろありますけれども、いまの実勢相場といった場合に、差益はどのくらい一体見積もられているか。その数字的なものがあればひとつ教えてください。
  238. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 差益と申されますれば、たとえば石油とか鉄鋼とか、そういうものの輸入がどのくらい安くなるか、実はその点につきましては、これは申すまでもございませんが、どのくらい平価が変わるかということだけでなしに、実はネゴシエーションもございます。輸入者と輸出者の間のネゴシエーションもございますし、単純にはなかなかできないものだと思いますが、長期契約のものでございましたら、あるいは出るかと思いますが、なかなかむずかしい計算で、ものによって非常に違うのじゃないかというふうに存ぜられます。
  239. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 ちょっと差損の場合はおおむね五千四百億という見当。それからそういう変動相場制に移行して、いま実勢相場でいって差益の場合は、たとえば石油などは値段が下がるのですから、当然差益としてはね返ってくるでしょう。こういうものについては野放し状況でしょう、いまの政府は。そういうものはあらかじめ勘案をして差損補償——これは差損については田中通産相も言っているように、おおむね中小企業が二千億見当の補償が必要だというようなことは、八月の段階に言っておるのです。そういうことからいえば、そういう面には政府が各般の金融税制でこういう問題の補償だけをやっていく。差益は野放しなんでしょう。だから、こういうものについては、一体どう政府考えておるのか。事務当局としても、その辺の判断はどういうことかということなんです。
  240. 船田譲

    政府委員(船田譲君) 必ずしも戸田先生の御質問も正確に理解していると言えないかもしれませんけれども、たとえば差益を生じる可能性のある企業についての法人税の問題につきましては、企業会計審議会の答申にほぼのっとりました国税庁の通達が出ております。そして輸出前受け金について、実際に船積みをして、引き落とした段階においてかりに差益が生ずるのであれば、それは法人税として出てくるということでございますけれども、石油の問題につきまして、ちょっと私もお答えできる立場でございません。
  241. 田口健次郎

    説明員田口健次郎君) 一課長でございまして、通産省全体の考え方というのもあれでございますけれども、まず差損につきましては、いろいろいま税制調査会あるいは企業会計審議会等で御審議願っておりますけれども、商社なりメーカーなりの差損と差益がございますけれども、差損から差益を差し引いた、いわゆるネットの差損分についての考え方といたしましては、税制ではこれに対して全面的に全額補償するという考え方でしに、一どきに多額の税金を払うと企業経営に支障を来たすのじゃないかということで、時間的にいろいろと繰り延べ、繰り戻しをするということで、一時に大きな欠損が出てくるというのを何とか緩和する必要があるのではないかということで、審議いただいておるわけでございます。そういうことで、差損をまるまる補償するという考え方を必ずしもしておるということではございません。  差益についてでございますけれども、私の記憶しております限りにおきましては、田中通産大臣は商工委員会で、やはり差益の出るものにつきましては、たとえば石油等については、できるだけ値を下げるように通産省としても指導していくというふうにおっしゃっておられたと記憶しております。ただし、石油について御存じのOPECが石油価格をまた上げてくるのではないかということもございますので、実際にどういうふうにするか私もちょっとそこまで詳しいことはわかりません。
  242. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 その辺の概数はまだつかんでおらないんですか、これは特別措置でいろいろ通産省には質問してまいりますが。
  243. 田口健次郎

    説明員田口健次郎君) 数字の問題でございますけれども、差損として出てまいります数字は、大部分は一年以上の長期の債権でございます。これは延べ払い輸出の承認が必要でございましたり、大部分は輸銀から金を借りるというようなことで、統計的に大体出ております。少なくとも船積みが済んだ分につきましては統計はございます。  しかしながら、輸入につきましては、どちらかと申しますと、延べ払い輸入というのは非常に少のうございます。CCC——コモディティー・クレジット・コーポレーション等から綿花のユーザンスを受けている等の例も一部ございますけれども、輸出と比べますと長期延べ払いというものは少のうございます。そこで輸入に関しましては、たとえば短期の現在輸入契約があったけれども、切り上がったあとで輸入をするときに支払う、そのときにはある程度差益が出てくるということのほかは、むしろ円で評価すると値段が安くなるということがございます。  数字の問題につきましては、輸出、輸入がまだ行なわれないうちの、いわゆる契約段階につきましては、法律上も何ら報告を強制しておらないわけでございます。そういったようなことから、差損につきましては一年以上で許可とか、そういった関係で数字がつかめるのでございますけれども、輸出入通じまして、短期のいわゆる四カ月ユーザンスであるとか、六カ月のユーザンスであるとかいったようなことは、標準決済の範囲内で輸出入が行なわれますものにつきましては、輸出入の段階で数字が出てくるだけで、前もって短期の支払いの形での取引が、長期契約としてどうあるかということは、公式にはまだつかみにくいわけでございます。  それから差損、差益の評価の面で、既契約があって船積みも入着も済んでおるというものがある、それで切り上げ後にお金が動く、そのときに円で換算いたしますと、差損なり差益が出てくるというものは、圧倒的に長期の債権が量としては多うございます。輸出のときには長期のほかに、若干短期のものもございます。輸入のものはむしろ短期債務がある程度あるわけでございまして、若干の差益が出ますけれども、多くはむしろ今後の契約といいますか、今後の入着するものにつきまして、むしろ円で換算すると——ドルは同じなんだけれども、円で換算すると、むしろコストが下がってくるという形で、ちょっと申しますと債権、債務の評価という、いわゆるキャピタルゲインを生ずるという部分と、むしろそうじゃなくて、これから実は物が動くのだけれども、レートの切り上げで円としては輸入については支払いが少なくなるという、二つのカテゴリーになるかと思います。  税制等につきましてはむしろ前者、つまり債権、債務の差額、すなわち純債権の評価損が出てくるので、その辺を繰り延べする必要があるのではないか。こういう問題があるというふうに了解いたします。
  244. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 一点だけ。  結局、結論的には各社ごとの決算が終わらなければ、正確なものはわからない、こういうことになりますか。
  245. 田口健次郎

    説明員田口健次郎君) 大体、そういうことになるかと思います。具体的には九月決算で、ほとんどの商社は差損は計上しておるわけでございますけれども、それから、現在たくさん成約がございますが、こういったものも、将来、輸出が済んで、金が入ってきたときに、決算の面であらわれてくるわけであります。そういうことでございます。ただし、一年以上の長期債権につきましては、いわゆる貸借対照表上にあらわれてくるわけでございます。そういうものが時価で評価すると非常に損が出る。これを時価評価するか、あるいは取得時の三百六十円のレートで評価しておいて、それで将来延べ払いの輸出の代金という形でお金が入ってくるときに、切り上がったあとの高いレートで評価するかという、企業会計上の処理の問題になるかと思います。
  246. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 本件に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  また、一時中断いたしておりました租税特別措置法の一部を改正する法律案に対する質疑は、これを後日に譲ります。  次回の委員会は、九日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時二分散会      —————・—————