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説明員(
細見卓君) 先ほど
大臣から御
説明申し上げましたことに尽きるわけでございますが、私が若干補足して申し上げますと、御
承知のように、八月十五日のニクソンの新
経済政策の
対外部面といたしましては、
ドルの
交換性の停止と、それから
輸入課徴金の徴収ということがあって、それがいわば戦後の
世界貿易、
通貨体制の
根本をゆるがすものであったことは御
承知のとおりであります。
御
承知のように、一九三〇年代は
世界経済にとって最も暗い時代でございまして、
各国は競って
平価の
切り下げ競争をして、できるだけ有利な形で
貿易をやろうとする、あるいはまた、
関税をできるだけ高くして、
外国品が入ってくることを防ごうとする、あるいはまた、武力その他の
経済力を利用いたしまして、
自分たちの独占的な市場をつくる、いわゆる
地域経済、こういうことをやってきまして、それが第二次
世界大戦に導きましたことは御
承知のとおりであります。
そこで、第二次
世界大戦という貴重な犠牲を払いまして
考えられたことは、このような
体制が再び起こることのないようにしていこう、つまり、
平価の
調整というようなものは、国際的な
合意によってやっていこう、あるいはまた、
関税はできるだけ低いものにして、お互いにその
貿易障壁を設けることはやめよう、あるいはまた、
世界を無差別に自由な
経済交流に基づく体系に組み入れまして、ブロック化するのを防いでいこう、これが一方では
ガットであり、一方では
ブレトン・ウッズ協定であったわけでありますが、その
根本をなしました自由な、無差別な
貿易、あるいは
貿易制限は、これをかってにはさせないという
原則を、
アメリカがみずから
自分の生み出した
制度の精神ともいうべきものを破ったわけであります。したがいまして
世界は、新しい
通貨、
貿易経済のいわば、無秩序な
状態に入ってしまったわけであります。
そこで、
各国の
蔵相あるいは
中央銀行総裁、これらの
方々が、
通貨面におきましてのこの
混乱状態を解消しようとするために懸命の
努力を払っておるのが、
大臣の先般から申し上げておりまする数次にわたる十カ国の
蔵相会議であり、IMFの総会であったわけであります。
一方、
貿易面におきましては、先般、
木村経済企画庁長官が御
出席を願ったような形で、
ガットにおいて再び自由な
貿易体制、より低い
関税のもとにおける
貿易の拡大ということを
考えて
会合が開かれております。現在までのところ、いずれもの
努力が必ずしも十分な
成果をあげておらないということは、残念ながらこれを認めざるを得ないわけであります。
そこで、
通貨の問題に限って申し上げますと、ロンドンで第一回の
会合を開き、引き続きまして
ワシントンで第二回の
会合を開いたわけでありますが、そこでは
議題の整理の域を出ない程度の
議論でありまして、実質的な討議に入らなかったことは、先ほどの
大臣の御
説明のとおりであります。そしてパリにおきまして
蔵相代理会議あるいはO
ECDの
経済政策委員会の第三
作業部会の
作業というものも行なわれまして、何とか
世界経済の、あるいは
世界通貨の
秩序立てのために
考えられる方策はないかという
努力を
各国真剣にやってまいりまして、一方、
EC等におきましては、御
承知のようにドイツとフランスとの間の対立というようなものにつきましても、懸命の妥協の工作が進められまして、先ほど申しましたように、
アメリカを除く九カ国の
態度は、大体、
課徴金の撤廃及び
ドルを含むすべての
通貨の再
調整ということでほぼ
意見の一致を見まして、そういう形で
ローマの十カ国
蔵相会議が十一月三十日、十二月一日の両日に開かれたわけであります。
そこにおきまする
成果は、先ほど
大臣が申し上げましたように、大きな
成果といたしましては、
アメリカが強く要望しておりまする、あるいはまた
ドルの安定のために必要な
条件でありまする
アメリカの
国際収支改善、そのために
通貨調整と並んで
貿易その他の面における
アメリカの
国際収支改善策というようなものが並行して
議論できる
状態になった。端的に申せば、
アメリカと
ECとの間にいままで
議論されてはかどらなかった
貿易交渉が、とにかくまじめに取り組んでいこうという形になり、近く開かれておりまする
EC諸国と申しますか、
NATO加盟国と、
アメリカとの間の
NATOのいろいろな
軍事負担の問題、そういうようなものも一方取り上げられ、また
平価調整につきまして、
アメリカ以外の国が強く要求しております
ドルを含めての
平価調整というようなことにつきましても、
ドルを
切り下げることあるべしというようなヒントが与えられた、こういうようなことでかなりの
前進を見たのではないかと思います。
しかし、
各国とも具体的な詰めの段階に入りますと、まだ何も実はきまっておらぬわけでありまして、
ドルに対して
平価の
調整をするのか、金に対して
交換比率の
調整をするのか、あるいは
SDRに対してそれを行なうのかというような点もきまっておりません。あるいはまた暫定的に
変動幅を広くする、いわゆる
日本で言われておりますワイダーバンド、ワイダーマージンというものの運営につきましても、何ら国際的な
合意が行なわれておるわけではございません。と申しますのは、かりに三%とかあるいは二・五%というような大きな数字でありますと、それが上下開きますと三%にすれば六%、二・五%としても五%というようなことで、従来
考えておりましたような
固定平価という観念とはかなり違った形の
平価になるわけでありますから、しかもまた
アメリカの
ドルと金との
交換性のない
状態において
平価をきめるわけでありますから、先ほど申しましたように、金に対してか、
ドルに対してか、
SDRに対してか、あるいは相互に
レートをきめ合うというような、非常にむずかしい、しかも技術的な困難な問題を含んだ問題をどう処理するか。これはなかなかむずかしいと思う。さらにはこうして行なわれました
平価調整の後におきまして、どうしても発生してまいりまする
貿易上の余剰なり
赤字なりというものを、どういう
通貨で決済したらいいのかというようなことにつきましても、必ずしも論議が行なわれているわけではございません。現実問題といたしまして、
ドルによって決済せざるを得ないと思うのでありますが、その場合に、いまのいわゆる金と
交換性のないような
ドルでは、はたして
平価調整が行なわれたと言えるのかどうかというような問題、今後すぐには解決できないとしても、いつまでに解決できるかというような問題、これらの点もなかなかむずかしい問題でございます。
そういうような問題を
考えてまいりますと、ただムード的に、何とかまとまりそうだということでまとめるのには、あまりにも多くの込み入った問題をかかえております。したがいまして、気運といたしましては、大きく
前進してまとまる方向に第一歩を踏み出しましたことは事実でございますが、これをまとめ得るかどうかということは、かかって再び
ワシントンにお集りになる十カ国
蔵相あるいは
中央銀行総裁の
方々の英知と決断にかかっておるわけでございまして、なかなかむずかしい問題である、かように思います。