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政府委員(外山弘君) 少なくとも、ただいまの御指摘の問題に関連して、ラテン
アメリカにおきまする
アメリカ系
企業がいろいろ接収された事例が幾つかございます。この辺は私どもの頭にあるわけでございますが、そういったものの接収のされ方の中で、私どもの保険自体の自主性と申しますか、そういった点がどういうふうに関係してくるかということを
考えるわけでございます。
いまその事例を幾つか申しますと、
一つは、チリ
政府がフォードを接収した件がございます。これはチリ・フォードが、一九七一年度の販売
価格の引き上げを含む生産計画を実行しました場合に、チリ
政府に許可されない。それが、チリ
政府に許可されないことが理由になりまして、七一年の一月から操業を休止しました。五月に至りまして業務を停止し、従業員四百人の解雇を発表したわけでございます。チリ
政府は、これを違法といたしまして、国益をそこなう行為であるというふうに主張しまして、五月二十七日にフォード工場の収用に踏み切ったという事例がございます。
それからチリ
政府が、同じくアナコンダを接収した例がございます。これは、六九年の六月にチリのフレイ大統領が、資源ナショナリズムというような観点からアナコンダ社の漸進的な収用、つまり株式の取得を漸次高めるというふうなことを行なったわけでございます。さらに一九七〇年の十月に就任した新大統領が、五大鉱山につきまして接収を表明しまして、七一年の七月の憲法改正によりまして国有化されたというケースがございました。
それからその次にペルー
政府が、IPCつまり
アメリカのインターナショナル
石油会社、これを六八年の十月にペルー
政府が接収したという事件がございます。これは、六八年四月に
政府要人の関係する大規模な密輸事件が発覚しまして、さらに八月に、ペルー
石油公団とIPCの
石油利権に関する契約につきまして、
政府の
態度が不明確であったために、十月の三日に現大統領による無血クーデタが起こり、IPCの接収ということになっております。
さらにペルーにおけるオナシス事件というのがございまして、ペルー
政府はフンボルト海流というその地域のもたらす豊富な漁業資源を確保するために、領海二百海里を保持しております。一九五四年ギリシャ系船主のアリストートル・ソクラテス・オナシスの所有する捕鯨船団が、領海侵犯の疑いでペルーの数十海里ないし三百海里のところで傘捕されて、十億円に上る罰金刑を課せられている、こういう事件がございます。
さらに、キューバにおけるサバチナ事件というのがございまして、これは一九五九年一月に、キューバ革命に成功したカストロ政権が、
アメリカのキューバ糖買い付けの削減に対抗いたしまして、六〇年八月に
アメリカ系
企業二十八社を国有化したことに伴う訴訟事件でございます。
最近におきましてもそのような事件が幾つかございまして、たとえばチリの自動車工場の場合、わが国の場合はそういったケースを見ていないというような差がございます。
アメリカの場合は海外
投資が、御承知のように
日本と比較にならない多額の
投資をしておりますし、地域もまた
日本とは比較にならない。たとえば中南米等における
投資等は、
アメリカと非常に違うわけでございます。
各国の
投資事情、あるいは
投資に対する
態度、国情、そういったものの差というものを、やはりそういった加入の場合には技術的に検討してみないといけない。それが
経済的にどういうような問題点を持ち、どういうふうなことならば合理化されるかというような点も検討の
一つであるかと思いまするし、また、ドイツ等がこの
投資保険機構に対して非常に消極的であるという点は、むしろ、ドイツが自主的な保険運営に自信を持ってやっているという点等から、こういったケースはドイツのほうにはあまりない。したがって、こういうことについての若干批判的な
態度がドイツの
政府にはあるのではないか、こういうような
感じもいたしますが、そういったことをわれわれとしてはどういうふうに分析し、どういうふうに勉強するかというようなことも問題点の
一つだろうと思います。いずれにいたしましても、最近の御指摘のありました事件としては、そのようなことを念頭においているということを申し上げておきます。