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1971-12-21 第67回国会 参議院 商工委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十二月二十一日(火曜日)    午後一時十七分開会     —————————————    委員の異動  十二月二十一日     辞任         補欠選任      大谷藤之助君     中村 禎二君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大森 久司君     理 事                 川上 為治君                 剱木 亨弘君                 竹田 現照君                 藤井 恒男君     委 員                 赤間 文三君                 植木 光教君                 小笠 公韶君                久次米健太郎君                 中村 禎二君                 矢野  登君                 渡辺一太郎君                 阿具根 登君                 大矢  正君                 林  虎雄君                 原田  立君                柴田利右エ門君                 須藤 五郎君    国務大臣        通商産業大臣   田中 角榮君    政府委員        外務省経済協力        局長       沢木 正男君        通商産業政務次        官        林田悠紀夫君        通商産業大臣官        房長       小松勇五郎君        通商産業省貿易        振興局長     外山  弘君        通商産業省鉱山        石炭局長     莊   清君        中小企業庁長官  高橋 淑郎君        中小企業庁次長  進   淳君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○連合審査会に関する件 ○輸出保険法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 大森久司

    委員長大森久司君) ただいまから商工委員会開会いたします。  連合審査に関する件についておはかりいたします。  沖繩の復帰に伴う特別措置に関する法律案外六件について、沖繩及び北方問題に関する特別委員会に対し、連合審査会開会を申し入れることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大森久司

    委員長大森久司君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。  なお、連合審査会開会の日時につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 大森久司

    委員長大森久司君) 御異議ないと認め、さように取り計らいます。     —————————————
  5. 大森久司

    委員長大森久司君) 輸出保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本法律案についての説明はすでに聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 竹田現照

    竹田現照君 最初に、国際通貨調整に対する一般問題についてお尋ねしますけれども、十九日の政府声明によりますと、今度の円切り上げの幅は妥当なものだと、国内施策がよければ不況は克服できると、そういうふうに述べていますけれども、しかし予想外の大幅な切り上げでありますから、一般の国民感情からすればちょっと意外な感じでもあり、一ドル三百八円にきまって、今後の日本経済は一体どうなっていくのか、非常に疑心暗鬼であります。  そこで、政府は、来年度の経済をどの程度実質成長を見込んでいるのか。また、不況物価高が到来して、国民にこれ以上の犠牲をしいることがないのかどうか。十分な不況対策をとった経済政策を望んでいると思うのでありますが、この点について大臣の所見をまず最初にお伺いしたいと思います。
  7. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) このたびの円平価調整に際しましての感じを率直に申し上げますと、有史以来初めての多国間調整によって、十カ国に及ぶ通貨調整が行なわれたということでございますから、歴史的なものであることは事実でございます。また日本円平価改定につきましては、率直に申し上げて、多少引き上げ率が多いような気がいたします。  私は通産大臣として、一〇%、一二・五%、一五%というような計算をやってみたわけでございますが、輸出に及ぼす影響等を見ますと、一五%までなら何とかやっていけるかなという感じでございました。一七%になりますと、政策を行なわない限り、多少輸出横ばいもしくはドル建てでも下がっていくのじゃないかという感じを持っておったわけでございます。その後こまかい計算をいたしまして、一六・八八%の決定が行なわれた直後、四十七年度、ドル建てで対前年度比一〇%増程度輸出が確保できるようにならないかということで試算をしてみると、やはり横ばいもしくは下がるだろうという、どうしても下がる傾向の数字が出てまいります。これはしかし、ことしを見てもわかりますように、景気上昇過程における輸出の増進ではなく、景気が悪いために輸出ドライブが行なわれているような状態というものが続いておるわけでございますから、あまり楽観のできる状態でないことは事実でございます。ことしの経済成長率が四%台と見込まれておりますので、このままなら来年度も横ばい程度であろうと、こう経済企画庁でも私たち自身も見ておるのでございます。中には四%に満たないという数字を出す人もございますが、まあ四%台と、こう見ておるわけでございます。来年度は、七・五%の成長率を維持するために、財政政策税制政策、その他諸般の対策を行なってまいらなければならないと考えております。  特にこの円平価切り上げに対しまして、十カ国のうちアメリカを除く九カ国は、みんな多少切り上げ幅が大きいのじゃないかというふうに、日本と同じ感じを持っておるわけでございます。特に西ドイツなどは、日本の円との間は五%以上なければ承認できないといって閣議を開催しなければならないという状態でございましたし、フランスも、それ以上下げられては困るといって、あれだけ強くアメリカに対してドル切り下げを要求しておったものが、もうそれ以上切り下げられては困るんだという、フランス自身切り下げなければならないというような状態において平価調整が最終的に行なわれたわけでございますから、アメリカが五%ぐらいしか切り下げまいと思っておったものが、御希望でしたら八%でも九%でも切り下げますと言ったところに、多少の負担感がみんなあるわけでございまして、経済に及ぼす影響は全くないなどということはありません。そういう意味で、政策ほんとうにタイムリーに行なう必要がある、こう考えておるわけでございます。
  8. 竹田現照

    竹田現照君 大臣最初通産大臣としての所信を表明されたとき、この委員会で、円の切り上げが一〇%以上ではちょっと困るということを言われましたね。一二・五%という話があるけれども、これは一〇%という話があるけれども、これは一〇%と一五%の間をとったので、実際は一〇%以上じゃ困るという話もこの席上で言われましたですね。それで、この十九日の通産省見通しの、円の切り上げが一五%の場合は来年度の輸出は一〇%増だというようなことが新聞に出ていますね。それが二八・八八%ということになってくると、十九日の段階における一五%切り上げの場合の通産省見通しとどういう変化が出てくるんですか。約二%違ってきているわけですから、十九日現在よりは。これはどうですか。
  9. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ、いままでは非常にきびしく、これは通貨調整過程におけるものでございますから、きびしく見ておりましたし、また現在もきびしく見ておるわけでございますが、先ほど述べましたように、日本考えておったよりも二%程度上がったということをいま仰せられましたが、これは、アメリカを除く各国もみなそういう状態で幾ばくかずつの負担感を持っておるわけでございますので、対米問題を考えますと、いままでよりも、まあいままでは対米問題私たちが減る減るといっておりましたら、歴年で見ますと、ことしのニクソン・ショックがあったにもかかわらず、七十二、三億ドルという実績になっておるわけでございます。そういう意味で、私が日米繊維交渉を行ないますときも、一月になったらがたっと減りますよと、こう言ったのですが、どうも十二月、一月に、がたっと減るような状態にはなっておらないのでございます。そういう状態から考えますと、対米輸出という面は、ドル切り下げ幅が大きかったということをいま申し述べましたが、結果においては相当調整をされると、こういうふうに見るべきだと思います。その意味では、輸出に関する限り対米輸出が三〇%というウエートを持っておりますので、やはり輸出全体に及ぼすパーセンテージも全く関係ないというふうにはいえないわけでございます。
  10. 竹田現照

    竹田現照君 それで、この円の切り上げで、産業界の受ける影響というのはいろいろさまざまだと思うのですけれども、為替差損を受ける業界、それは勢い政府補償を求めてくると思います。また逆に差益を受ける、たとえば石油、こういうものに対して価格の引き下げの指導なども当然に行なわなければならないと思いますが、いろいろなことをいわれているけれども、それじゃ石油等の問題が、値下げが現実の問題として行なわれているかといえば、通産省物価対策特別委員会等でもいろいろ言われていますけれども、あまり変化がありません。新聞の解説によると、石油業界差益は千六百億円というようなこともいわれておりますけれども、OPEC値上げその他、差し引きゼロになってしまうのじゃないかというようなことも書いていますけれども、いずれにしても相当の差益を受ける状態にある。  そのほかにも、国際通貨調整後にとるべき経済政策がたいへんむずかしいと思いますけれども、いま来年度予算編成の最中で、年内編成もとやかくいわれていますけれども、そういういろいろな問題を含めて、景気振興策あるいはその他、損をするもの、得をするもの、こういうさまざまな問題を含めて、これらに対する通産大臣としての基本的な態度をどうとっていかれるおつもりなのか、この点をお伺いいたします。
  11. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 平価調整には二つの面がございます。これはもう、影響プラスの面に受けるものとマイナスの面に受けるものがございます。輸入品等は、原材料を諸外国から入れなければならない日本でございますから、総体的には輸入品は安く買えるということでございまして、これは物価対策にも寄与するはずでございます。しかし、もう一面においては、円平価切り上げられたことによって輸出はしにくくなりますし、国内景気もなかなか浮揚しないという大きな面の影響を受けるわけでございますから、中小企業等輸出業者においてはそのマイナス面影響を受けると見なければなりません。  この二つの面で、輸入品が安くなるので物価に寄与するというような面は、時間がやはりかかると思うのです。ところが、もろに影響を受ける、輸出が減るとか景気が浮揚しないとかという面は直ちに影響してくるということを考えて、区別をして政策をやらなければならぬというのが問題だと思うのです。たいへんだ、たいへんだと言っておっては、これはほんとうにたいへんになるおそれがございますが、しかし、たいへんにしないためには、タイムリーに積極的な対応策を行なっていく必要があるということでは、予算編成においては財政金融税制面等影響を受ける面に対する施策を遅滞なく行なうべきでございますし、これは行ない過ぎるということはないと思うのです。景気が非常に、考えた年率一〇・一%よりも半分にも満たない状況であり、もっと下ではないかと言われておる現状、来年もなかなか浮揚する要因が少ないというふうに見ておる現状に徴して、やっぱり政策は大き目に行なうべきだと思います。  それで石油等、端的に安くなるものにつきましては、いま御指摘ございましたように、OPEC値上げ等変動為替相場制の中でこれを吸収しておったわけでございます。ところが、後進地帯は直ちに反応しまして、この十カ国の平価調整が行なわれた直後、OPECは第二段階値上げ考えておるということが報道されておるのでございますから、いま申し上げるように、この平価調整による安く品物が入るというメリットが国民生活にすぐ結びつけられるかどうかということは、なかなかめんどうな問題がございますが、これは政策としてもどうしてもそうしなければならないし、通産政策そのものが、やはり自由化によってもなかなか値下がりにならないというようなことなら、もう少し通産政策そのものに対してもメスを入れなければならないということを真剣に考えておるわけでございます。
  12. 竹田現照

    竹田現照君 それで、この貿易に関連してお尋ねしますけれども、大幅な円の切り上げ、これは政府が従来とってきた輸出優先高度成長政策の結果だということは、もうずっと言われてきていますけれども、今後もこれと同じような態度を続けるとすれば、再び円の切り上げという事態が生ずるおそれが出てきます。そこでこの際、秩序ある輸出を求めるという通産大臣所信、これについてあらためてお伺いいたします。それと、大臣談話にもありましたが、わが国としてはこの機をとらえて諸外国に対し、保護貿易主義からの脱却と国際均衡実現のため節度ある態度を要請してまいりたいと考えております、こう言っていますが、外国にいま要請するのと、また日本自体がやらなければならぬ問題と、両方あるわけです。この点のからみ合いをどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、お伺いしたい。
  13. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 今度の平価調整がもしできないとしたならばどうなるかといったら、第二次大戦後つくられてきたIMF体制ガット体制というようなものが根底からくずれるおそれがあったわけでございます。説をなす人は、もうニクソン政策の発表の時点においてガット体制IMF体制はこわれてしまったんだというような極論をなす人がありますが、私はそう考えておりません。これはやはり今度の平価調整という、多国間協定によって有史以来の結論が出たことは、すなわち新しい意味での国際経済機構というものの維持をしたというふうに見るべきだと思います。そういう意味縮小均衡、無制限な経済戦争のようなものは、やっぱり歯どめができたということだと思うわけでございます。そういう意味で、このままにしていくとアメリカ課徴金は撤廃されない、またヨーロッパ課徴金制度をとるのじゃないか、カナダも立法措置をするのじゃないか、いろいろな危惧があったわけでございますが、一応課徴金は廃止をせられ、ヨーロッパEC諸国との間の新しい事態も回避できるということだと思います。これを永続的なものにするためには、やはりバランスのとれた貿易ということをしなければなりませんので、国内的にはいい品物を適正な価格でという、やはりオーダリーマーケティングという政策はどうしても進めなければならない問題だと、こう思います。  もう一つは、国内政策としまして、景気浮揚輸出というときに、不景気輸出増、不景気株高とか、不景気の中における物価高、スタグフレーションというような問題を起こさないように、これからの経済政策というものは、相当量的な面から質の面への転換を急がなければならないと、こう思います。だから、先ほど申し上げましたように、量をよけい出して輸出振興するのじゃない、いい品物を適当な利潤のもとに輸出をする体制をつくる。それがやはり国内産業体制もそうでなければならないと思いますし、それから公共投資そのものも、ただ景気を浮揚するためにむやみやたらにやるというのではなく、質的な改善策というものを前提とした投資が中心でなければならない。戦後の量的拡大から質の時代に、国際的協調を保てる質の時代にというスローガンが実践されなければならないと、こう考えております。
  14. 竹田現照

    竹田現照君 さき円対策項目について、今回の政府声明でも「率先して自由貿易を擁護するにない手になる」、こううたっておりますが、来年早々の日米首脳会談大臣も同行される。当然その中で話題になると言われている自由化の問題ですね、これはもう農産物等物価対策の上でも役立つと言われていますけれども、なかなか国内事情でうまくいかない。通産省電算機も同じことでしょうけれども、当面、来年の日米首脳会談アメリカ側から強く求められるだろうと言われているこういった自由化について、どういうふうに対処されようとなさっているのか。
  15. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) その後の国際的な事態は変わってはまいりましたけれども、日本自由化を促進するという基本的な態度は変わっておらないわけでございます。なお、ケネディラウンドの推進、いわゆる縮小均衡への道を選ばず拡大均衡を保っていくための応分負担応分の寄与はしなければならない、こういう考えでございますし、やはり無差別自由という究極の理想の実現のためにはあらゆる角度から努力をしようという、世界に向かって宣言をしておる基本姿勢は、ごうも変わっておらないわけでございます。  また今度は、八項目を国の内外に宣明をいたしましたが、これは平価調整の前段としてやったことであって、平価調整が終わったらもう考えないでいいじゃないかと極論する人がございますが、そうであるとエコノミックアニマル、こう言われるわけでございますので、そうでなく、やはり日本実情前提としながら自由化政策は進めてまいるということでなければならないと思います。日本もここ一、二年間、急速なテンポで自由化を進めてきましたが、まだ世界各国では日本商品が洪水のようになるということを言うのでございますので、そうではないのだという実情十分理解をせしむるように努力を続けながら、日本が公平な立場で見ても進めなければならない自由化その他に対しては、これはもう積極的に進めてまいる。そうでないと、これだけの平価調整を行なったにもかかわらず、まだ二国間協定をやろうとか、いろいろな問題が起ってまいりますし、そういうものを絶対に排除しようという考えでございますので、国益を守りながらも国際的な義務を果たしてまいるという基本的な姿勢でございます。
  16. 竹田現照

    竹田現照君 衆議院会議出席の時間もあるようですから、ちょっと大臣に対する質問は中断しなければならないと思いますが、中小企業に関連して今度の通貨調整でお伺いしますけれども、政府もお考えになっておられますし、各紙も一様に言っていますが、輸出関連中小企業に与える影響というものは非常に大きいと。今度の円切り上げは、これはこの影響というのはどのように予測をされているのか、この点を最初に伺いたい。
  17. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 影響はあります。まず、ありますということを先に申し上げておきます。しかし、影響のある面につきましては、やはりこれだけ円平価が上がっておるのでございますから、そして輸出の金額の中に占める原材料値下がり分というものだけではカバーできないわけでございますので、圧迫を受けるということは事実でございますので、対策は行なわなければならないということも申し上げたわけでございます。  と同時に、もう一つの面を申し上げましたのは、すでに変動為替相場制に入っておりましたし、課徴金が撤廃をせられたという面がございます。これは、日本には特に変動為替相場制というような、何というんですか、中途はんぱというか、固定相場制度の中で長い間なれてきた日本人には、変動為替相場制というものがなじまなかったわけでございます。ですから、中には早く切り上げてくれ、こういう議論、早く切り上げてくれという議論日本だけだったと思いますが、そういう議論が八月十五日以降マスコミにも散見をしたような次第でございます。なお課徴金も、一律的ではなく、相手が負担するもの、バイヤーが負担するもの、また輸出者負担しなければならぬもの、いろんなものがございまして、非常にめんどうだったわけでございます。そういう意味からいうと、幾らか高いような気はいたしますが、固定レートに近い円平価調整が行なわれたというプラス要因も確かにあるわけでございます。  そういう意味で、この両者を十分考えながら政策を行なうということでございますが、これは、出血輸出というものが行なわれないように十分考えてまいりたいと思うんです。これはもう国内景気を浮揚しないと、どうしても出血輸出になります。そうすれば、もう一ぺん円を切り上げなければならないような状態になります。そういうことにつながらないように、国内景気浮揚対策というものをまずやるということが一番の対策だと思います。もう一つは、やはり今度の日米繊維協定でもっていろんなリストアップをやる中で明らかになりましたが、スクラップ・アンド・ビルド、スクラップのほうにも、幾らかそういう面も避けがたいところもございますので、そういう調整も十分考え、事業の転換とか転廃業とかというものもやはり考えていくべきだと思います。黒字倒産しないようにということで、もう平価調整の問題から、なさなければならない金融政策とか、そういうものも考えておりますので、まあ私は政策さえよろしきを得れば、この円平価改定は乗り切っていける、乗り切っていかなければならない。  昭和初年の金解禁のときは一三・六%でございましたけれども、非常に問題がありました。これは前提条件が全く違うのでございまして、一次産業比率が高かったあの当時とは違います。二十四年四月、三百六十円レート設定のときには、三百三十円レートと四百円レートとあったわけですが、足して二で割ったわけじゃないのですが、三百六十円レートをドッジが採用した歴史がございます。まあ三百六十円レートで、こんなもので耐えるわけはないといっておったのが、何とか今日になったわけであります。今度は、いままでなったのだから、今度もうまくいくんだということではだめだと思いますが、業種別にきめのこまかい政策を行なうということでやっていけば、これはこの一六・八八%という対ドル円平価調整というのは、固定的なものにせしめ得るだろう、このように考えております。
  18. 竹田現照

    竹田現照君 何といっても日本中小企業のたゆみない努力というものが、今日の経済成長の原動力になっているわけですが、しかし、国際通貨調整段階で、大企業さき変動相場制移行の際に、いわゆるドル売りでもうけ、それから円切り上げを見越していわゆるかけ込み輸出、これで為替差損を回避しようと一生懸命やっておるというふうに伝えられています。そのかけ込み輸出の実態については後ほどお伺いいたしますが、しかし、中小企業はそのいずれもできない。そうして調整影響というものをもろに受けるわけですけれども、これに対して国による損害の補償、こういうものが当然起こってくると思いますけれども、それに対する見解をお伺いいたします。
  19. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 大企業は何とかして切り抜けてきたじゃないかという議論は、絶えず起こるわけでございますが、大企業というのは確かに耐用力も強いわけでございますが、しかし今度の平価調整におきましては、大企業でも、石油企業のようにとにかく値上げしないで済むという、利益を得る面もございますし、造船のように、延べ払い輸出をしておったものに対しては全部もろにかぶってくるというものもございます。機械の延べ払い輸出もそのとおりでございます。同時に、債務を持っておった者はこれはちょっと、みな利益を得ておるわけでございます。いずれにしても、延べ払い輸出をやっている企業、現に仕掛け品であって、ドル建てで契約をしておる、円建てにまだ転換しておらないものは困っております。こういうものに対する対策は、税制上その他で何らかの措置をしていかなければたいへんだと思います。  中小企業というのは、自分の輸出をしているときにも、なかなか変動為替相場制というようなものになじまなかったということもございます。それからもう一つは、下請をしておりますと、輸出価格が下がった分だけ下請を値切られてしまったのでは、これは下請は往復になるわけでございますから、ここらが通産省の今度一番深刻に考えて、実態を把握していかなければならない問題であると思います。これはやっぱり繊維の輸出などでもそうですが、相手にたたかれると、その分を下請を値切るということに持っていったのでは、これはほんとうに困るわけです。下請代金支払遅延防止法などというものでは済みません。ですから、そういう意味では下請にも税制上私は一番の問題があると思いますし、それから金融的な施策も必要でございます。下請代金遅延の防止に対しても当然でございますが、そればかりではない、平価調整のその差額が、中小企業、零細企業、下請企業に絶対にさや寄せにならないように、そういう政策、歯どめをやらなければいかん。それは大企業にも相当協力を求めなければならないと思いますし、しかし、協力を求めるだけではなくて、何らかの制度的なものも考えなければならないのじゃないかというようなことで、私自身もこういう問題に対しては、通産省を主体にしまして、十分誤まりのない政策考えてまいります。
  20. 竹田現照

    竹田現照君 いま大臣お答えのとおり、実際は下請その他、下へ下へとしわ寄せが非常にきつくなるわけですから、その点について十分なる監視と政策上の指導等、格段の努力をしていただきたいと思いますが、先ほどお答えがあったのですけれども、さきの国際経済調整対策措置法による対策だけでは明らかに不十分なものは、繊維産業並みの抜本的な中小企業対策、先ほどのお答えでは、たとえば設備の買い上げ等を含めてお考えになっているというふうに理解していいのですか。
  21. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そこまで申しますと、なかなかそうはいかないわけでございます。あらゆるものの設備を買い上げるというわけにはとてもまいらないわけでございますが、とにかく中小企業につきましては、この円平価調整というような問題を契機としまして、抜本的な対策が行なわれるきっかけにしたいということを考えております。ただ、すべてのものを日米繊維交渉による繊維の織機買い上げというふうに、すぐ結びつけてお答えするわけにはまいりません。これは千差万別でございますし、すべて共産圏のように政府が全部買い上げて調整を行なうというわけにもいきませんので、やはり一つ一つ実態を把握をしながら、対応する政策をタイムリーにやっていくということでひとつ御理解を願いたいと思います。
  22. 竹田現照

    竹田現照君 大臣衆議院の本会議だそうですから、しばらく大臣のほうは保留しますから。  それじゃこれは貿振局長になるのですか、いま大臣にお伺いしたかけ込み輸出の問題が新聞にも出ております。通産省は、かけ込み輸出といわれるものについてどういうふうに掌握されているか、お答えをいただきたい。
  23. 外山弘

    政府委員(外山弘君) 先般ニクソン声明が行なわれましたときに、しばらくの間、三百六十円レートのまま変動相場制に移行する期間の間がございました。その間に、御承知のように輸出前受けというふうなかっこうで、あらかじめ為替の変動に備えまして既契約の現金化という点で、いわばそういった輸出前受けの増大というかっこうの現象が見られたということは、御承知のとおりだと思います。今回の御指摘の点は、おそらくは、いろいろの国際会議が進展しているさなかに、近く平価調整が行なわれるであろうという予想のもとに、その際はドルが、いま自社レートというふうなかっこうでやっている為替相場よりももっと円高の相場になりはせぬか、その際には、いまのところ早く輸出の代金決済を急ぐといいますか、輸出契約を急げるものは急いだほうが有利であるという判断で、最近の輸出契約がかなりそういった傾向を含んでいたというふうなことが指摘できるのではないかと思います。  と申しますのは、八月以降新規契約というのは非常に減っていたというふうに把握されますけれども、九月以降まただんだんと取り戻してまいりまして、十月、十一月と、前年同期比二割をこえる輸出の船積みが行なわれたわけでございます。そういったことを見ますと、あるいは近く行なわれる平価調整に備えて、輸出の船積みのできるもの、つまり逆にいえば現金決済の可能なもの、それをできるだけ早く契約を完結しようというふうな動きになっていたということは、十分想像できるところでございます。しかし、どのくらいの割合がそういった傾向をあらわしているか、たとえば数字でそれを言うということになりますと、これはなかなかむずかしゅうございます。そういった傾向が含まれて輸出の船積み実績があまり落ちないということは言えるかと思いますが、どの程度がそれに寄与したかということになりますと、非常にむずかしゅうございます。その辺、数字的に申し上げるような勉強しておりませんけれども、ただそういう傾向があったということは指摘できるかと思います。
  24. 竹田現照

    竹田現照君 この輸出前受け証明書に基づく前受け制度の監視というふうなことについて、これは差益を明らかにもくろんでいるわけです。もくろんで行なわれていると予想されていることについて、何らかの手だてというか、あるいは行政指導なりいろいろなことを行なったのですか。
  25. 外山弘

    政府委員(外山弘君) 八月の終わりに変動相場制に移行いたしましたが、すぐそれに続きまして輸出前受け規制をいたしました。これは大蔵省令、つまり大蔵省が為替管理の立場からこれを強化したわけでございまして、一件一万ドル以上のものは円転換を認めないというふうなことをいたしたわけでございます。したがいまして九月以降、前受け金額と申しますのはほんのわずかの金額が毎日行なわれておりますけれども、すでに八月以前の、以前と申しますか、平常時における輸出前受け、つまり、普通の商慣行の中で行なわれております前受けの金額よりもずっと少ない金額の推移を、それ以来しているわけでございます。したがいまして、それ以降は特に目立った現象は起こっておりません。ただし八月の十五日から二週間の間の措置につきましては、その間、銀行、商社等に立ち入り検査をするとか、それから実際の契約の裏づけがあるかないかを厳重にチェックするというふうなことの行政指導は十分いたしましたけれども、あのような推移を見たわけでございまして、結局、円転換規制というかっこうでこれを押えたということで、九月以降は、特に問題のような数字の推移は示していないわけでございます。
  26. 竹田現照

    竹田現照君 十二月に入ってから、かけ込み輸出の問題について新聞に報ぜられておるわけですから、必ずしもいまのお答えのようにはならぬと思いますけれども、銀行側がどれだけもうけたかということは、まだはっきりしておりませんけれども、国会でもいろいろと問題になりましたが、いずれこの問題については、通産省でいろいろと調べればわかることですから、資料としていずれ要求をして、またあらためて質問したいと思います。  そこで、今度の円の切り上げにあたって、政府のいう「対外経済政策の推進」の中に、当然発展途上国における資源開発も含まれると思いますけれども、資源開発の問題は、単に輸出保険の対象にするということではなくて、国がもっと一次産品の開発輸入あるいは融資買鉱等の問題に取り組む必要があると思いますけれども、政府の海外資源開発に対する態度をあらためてお聞きしたい。これは大臣にお伺いしたいと思いましたが、ちょっと時間の関係がありますので、どこの担当になりますか。
  27. 莊清

    政府委員(莊清君) 海外資源開発は、今回の円の大幅切り上げによりまして、現在約十億ドル程度投資残高がございまして、その差損を受けるという痛手が実はあるわけでございますが、仰せのとおりわが国経済の安定発展のためには、今後ともやはり海外地下資源の開発ということに大いに力を用いなければならないと考えております。  それで、やはりリスクが非常に大きゅうございますので、探鉱関係の資金につきましては、現在ございます石油開発公団、それから金属鉱物探鉱促進事業団、この二つ政府機関がやはり中核になりまして、十分な予算措置及び業務の充実強化をはかりまして、民間の行なう探鉱事業というものを大いに推進するということが基本であると考えておる次第でございます。また、幸いに探鉱が成功いたしまして、いよいよ生産に移るという段階で、これまたきわめて巨額の資金が長期必要になりますので、現在行なっておりますように、輸出入銀行からの融資というものを中心に、民間資金も一部合わせまして、さらにこれに、先ほど申し上げました石油開発公団等が借り入れの保証に立ってやるという制度が現在ございますので、これを一段と強化するということで、生産関係の資金が円滑に手当てできるようにするということがまず何よりも基本であると、かように存じております。それで、これと並行いたしまして、海外で有望な開発事業をやっておる外国企業がある場合、これに日本企業が金を貸すという形で融資買鉱をする、製品である鉱物をそういう形で輸入するということは、今後とも非常に必要である。現在はきわめてこれは低調でございますが、今回の保険法の改正では、これの金融の円滑化をはかる上で今回の保険制度の改正は益するところが大きいものがあろうと、かように考えておる次第でございます。
  28. 竹田現照

    竹田現照君 それはあとでまた融資買鉱保険に関連してお伺いをすることにいたします。  そこで、法律の改正に関連してお尋ねしますが、先ほども大臣にお尋ねしましたが、国際通貨調整に伴ってわが国の輸出政策そのものを見直すべき段階に来ている。そのためには輸出金融あるいは税制の面から主として再検討をされると思うのですけれども、この輸出優遇策の緩和の方向に向かっていますけれども、今度の法律の改正は、延べ払いの輸出の優遇促進など、全体に輸出政策の方向とはちょっと逆行しているやに見受けますけれども、こういう国際通貨問題が提起をされて、いろいろと全世界的に一つのがたがたがあった段階で、この法律の改正案が、この沖繩国会といわれているこの国会に、無理をして出したとはおっしゃらないと思いますけれども、無理をして提案をしたように私どもは思うのですけれども、どうしてこの法律をこうまで急いで出さなければならなかったのか、この点についてお伺いします。
  29. 外山弘

    政府委員(外山弘君) まず第一点の、輸出優遇策の再検討という点では、御指摘のように税制並びに金融等を通じまして、従来でも、単に輸出の伸び率が高いことを慫慂する、あるいは輸出比率の高いことを慫慂する、そういった政策につきましての是正というふうなことを行なっていることは事実でございます。ただ、今後とも安定的な持続的な輸出がやはり必要であろう、そうしてもう一つは、国際協調の中で輸出が正常な伸びをしていかなければならないというふうな配慮のもとに輸出政策というものは考えてまいりたい、こう考えているわけでございます。  で、今回の輸出優遇になるように思われまする輸出保険法の改正は、プラント輸出の促進という点には確かに通ずるものがあるわけでございまして、今回のバイヤーズ・クレジットという点の改正点につきましては、私どもとしましては、これが輸出構造の質的な高度化といいますか、あるいは発展途上国が熱望しておりまする大規模プロジェクトの実施というふうなことのための長期の信用の供与というふうな、そういった要請にこたえる意味で、輸出信用供与形式の多様化あるいは経済協力の手段の多様化というふうなことの中で、こういった配慮を保険法の中でさしていただいたわけでございます。したがいまして、プラント輸出という、ほかの諸国に比べれば比較的日本輸出としては脆弱な部門でございますし、それから、先ほどのような対外姿勢から見まして、そういったものを通ずる政策がそれだけ妥当ではないだろうか、こういうふうに考えているわけでございます。  一方、なぜそれではこんな無理をしてとおっしゃる御指摘の点でございますが、先般の対外経済政策の八項目、その中には、日本経済的な国際的な責務というふうな角度から、いろいろな項目がうたわれているわけでございます。この中に、そういったことの一環として経済協力の拡大というふうなこととか、あるいはバンクローンの拡大とか、そういったことがうたわれております。つまり、日本がこれだけの経済の力を持ってきた以上、もっと多様な手段で、もっと積極的に発展途上国の要望にこたえ、かつ日本の国際的責務にこたえるべきである、そのためには、従来とかく消極的であったバンクローンの供与についてももっと積極的になるべきであるし、それから経済協力の中で、もっと後進国の要望にこたえられるようないろいろな多様な手段を用意すべきであるという項目が、各論としてうたわれているわけでございます。そういったことを実施するためには、保険法の改正、今回おはかりしたような改正というふうなことは非常に役立つ、ということは逆に申しますと、今回のような改正をいたしませんと、せっかくそういった対外態度の円滑化をはかるといいましても、うまくいかないのではないだろうか、こういうふうな配慮で、できるだけすみやかにそうした八項目の実施の円滑化に資したい、こういうふうなことで今回の国会におはかりした次第でございます。もちろん、もともと私どもとしてはこういった方向に保険法の内容を充実したい、こう考えていたわけでございますけれども、先ほどのような要請の中で、できるだけ成案がまとまり次第すみやかに出すことが、それだけ国民経済にとって必要なことではないだろうか、こういうふうな判断をした次第でございます。
  30. 竹田現照

    竹田現照君 支払い準備高が百五十億もいまある。ですから、いまのお答えとは逆に、むしろいまの輸出保険というものを全面改正をして、国による普通輸出保険あるいは輸出代金保険等というものを廃止してしまって、これを民間に移すなり、国の保険というものは、もっぱら海外投資保険の拡充なり輸入保険に限定すべきではないか、そういうような考えも持つのですけれども、これはどうお考えになりますか。
  31. 外山弘

    政府委員(外山弘君) まず第一点の、支払い準備率の点でございますが、これはことしの年度初めは二百二十七億でございます。ようやく〇・三五くらいの準備率になるわけでございまして、御承知のように昭和四十年、四十一年と大きな事故がございまして、一時非常に保険収支は悪化したわけでございますが、その際に、資本金の増額等をお願いすると同時に、その後、保険財政の健全化の方向をたどりまして、ようやく支払い準備率も次第にふえてまいりまして、まあ〇・三五くらいの準備率になってまいったわけでございます。しかし、これはまだ十分とは申せませんが、昨年、一昨年等に比べますと、次第に健全化の程度を増しておるということは申し上げられるかと思います。  そうした中で今後とも、今回の改正をお願いしているような件につきましての保険の支払いを含めまして、私どもとしては保険財政の健全化と同時に、こういった新しい保険の弾力的な運営ということを考えながら、保険財政を円滑に健全に運営してまいらなければならない時期でございまして、さらにそういった方向で収支の問題をとらえてまいりたい、こう考えている際でございます。そういった際に、保険の種別の問題につきまして、先生がいま御指摘のようなかっこうの大幅な改正というふうなことをするには、まだ時期が問題である。少なくとも、従来の昭和二十五年以来発足した保険が、現在、いままでの対外経済活動の多様化の中で、いろいろな種類の保険をそのつどふやしてまいりまして、国会におはかりしながら、現在は七種類の保険を運用しているわけでございます。それが、それぞれの対外活動にこたえて、まあ順調な発展を続けている際でございますから、いましばらく、やはりこういったそれぞれの保険の健全な運営ということに努力をしてまいりたい。  政府のやる保険をもう少し整理したらどうだろうかという御指摘がございましたけれども、確かにヨーロッパ等におきましては、政府が委託して民間にやらしているケースもございます。これはドイツの例でございます。あるいは公社というかっこうでやっている例もございます。これはフランスでございます。しかしイギリスは、日本と同じように、政府そのものがやっているわけでございます。で、政府がやることによって政策的な運営が可能になるという点が一つございます。これはやはり保険と申しますのは、海外投資とか経済協力とかプラント輸出とか、そういったものの対外活動の実態に応じて、それを補うような政策的な運営が必要でございます。そういった点では、政府がやることはかなりそれだけ距離が近くなるというふうにも考えますし、それから一方、そういった政策的な配慮が要るだけに、いろいろな各関係のポジションとの連絡が必要でございます。保険の引き受けにあたりましても、いろいろな政策担当の部局と相談しながらやっておるわけでございますが、そういった機構がかりに独立の公社みたいなものになりますと、それだけふえるということ、つまりそれだけ膨大な機構が要るということであります。それが保険料の上に悪影響を及ぼすとすれば、それは、それ自体問題であります。私どもといたしましては、やはりいまのようなかっこうでやるのが一番能率的ではないだろうか、こう考えている次第でございます。
  32. 竹田現照

    竹田現照君 考え方をちょっとお尋ねしたいんですが、経済協力に関係してお伺いいたしますけれども、わが国の経済協力は、金額の面でいまは一体どうなっているのか、数字でお答えをいただきたいと思います。
  33. 外山弘

    政府委員(外山弘君) わが国の経済協力の実績は、昨年度におきまして十八億ドルをこえるというふうなところに達しておりまして、援助実績という点で申しますと、GNPの比率で〇・九三%というところまでいっているわけでございます。それから、絶対額で申しましてもアメリカに次いで高い額になっているというような水準に達しているわけでございます。  しかし、その中身を見ますと、たとえば政府開発援助実績という点で申しますと四億五千八百万ドル、これはGNPの比率で〇・二三%ということでございまして、DAC加盟諸国の平均水準が〇・三四%でございますから、この平均にもいってない、そういう結果になっております。また援助条件というふうな上でもかなり平均よりも悪いということで、いつもDACの会議ではその点を指摘されているわけでございます。したがいまして、総額の上では非常に高いところにまでまいりましたし、例の一%目標ということに達するのもそう遠いことではないと思いますし、本年度はあるいは達せられるかもしれない、こう思いますが、中身でありまする政府開発援助実績、これをもっとその割合をふやさなければならない、あるいは援助の条件をもっと発展途上国に有利にしなければならない、こういう問題点をはらんでいるというのが実情でございます。
  34. 竹田現照

    竹田現照君 いまお答えになったように、中身は民間ベース資金の伸びのほうがずっと多い、開発援助の立ちおくれが目立っておるから、この点についてもう少し積極的な推進をはかる必要がある、こういうお答えです。私もそう思います。思いますが、具体的に政府経済協力の基本的な態度、この点についてもう一度詳しくお答えいただきたい。
  35. 外山弘

    政府委員(外山弘君) 経済協力の実績が、そういう意味で量の問題だけではなくて、質の問題で批判を受けているという点が一つございます。したがいまして、その点につきましての問題点をできるだけ早急に解決していかなければならないという点が、今後の一つ態度だと思いますが、同時に、わが国の経済規模が著しく拡大している、そして海外のわが国の経済協力に対する要請が非常に高まっておるというふうなこと、さらには、外貨の蓄積型から外貨活用型の経済に移行する必要がある、こういうふうなことが新たにそういった実情に加わっているわけでありまして、そういった意味でも、先ほどの質の充実に一そうの努力をしなければならないというふうな立場にあるわけでございます。そうしたことを背景にいたしまして、先般の円対策の対外経済政策項目におきましても、経済協力の拡充につきまして「政府開発援助の対GNP比を当面可及的すみやかにDAC平均水準程度にまで引上げるよう努力するとともに、引き続き財政力を勘案しつつ、国際的要請の水準まで高めるよう努める。」というふうな方針が打ち出されているわけでございまして、この方針に沿いまして私どもも全面的に努力をしてまいりたい、こう考えている次第でございます。
  36. 竹田現照

    竹田現照君 来年度予算に対する通産省考え方は、この点についてどういうふうになっておりますか。
  37. 外山弘

    政府委員(外山弘君) 経済協力の政府援助の拡大ということは、結局政府予算、財投に非常に響いてくるわけでございまして、ただ同時に、政府開発援助に関するそういった数字は、各省に分かれているわけでございます。あるいは各政府機関に分かれているわけでございます。たとえば経済協力基金の金額、あるいは輸出入銀行の金額等も重大な影響がございます。あるいは外務省等が行なっておりまする無償援助で、経済協力以外の文化的な協力、教育的な協力、そういったものに対する予算の増額ぶり、これも影響してまいります。私どもの立場では、たとえば技術協力の予算外国の研修員を招いてこちらでセミナーを開くとか、あるいはそういった技術協力に対する海外への専門家の派遣とか、あるいは海外の発展途上国のプロジェクトに対する専門的な知識の提供とか、そういった場合の技術協力予算、こういったものが一部私どもにございます。それから、同時にそのほかの、プロジェクトの事前調査といったようなことで、経済協力に対するいろいろな応援の予算は計上してございます。  で、私どもとしては私どもなりに、経済協力予算のふやし方を考えたいということで、実は御承知のように一般会計予算は二五%の頭打ちというふうなことがございますけれども、経済協力予算につきましては四二%の増加を現在要求しているところでございます。現在のところ、輸出振興予算のふやし方よりも経済協力予算のふやし方のほうに重点を置いて考えてまいりたい、こういうことで現在予算折衝をしているところでございます。
  38. 竹田現照

    竹田現照君 今度の法律改正の目玉でありますバイヤーズ・クレジット保険についてお尋ねしますけれども、これを採用することによって輸出代金保険引き受けの増加というものは、どのくらいに見通されるのですか。
  39. 外山弘

    政府委員(外山弘君) 輸出代金保険制度の拡充に伴いまして、わが国の輸出の中心として今後の、先ほど申しましたようなプラント輸出の伸張ということは考えられると思います。四十七年度の輸出代金保険の引き受け金額という点を申しますと、現在一兆五千六百億円と見込んでおりますが、このうちバイヤーズ・クレジット保険の引き受け金額を、約一千九百四十億円というふうに見込んでおるわけでございます。つまり代金保険の中の一部でございますので、総額として代金保険を大いにふやしていくというところが私どもの現在の見通しでございます。
  40. 竹田現照

    竹田現照君 この参考資料の「主要国の供与形態別輸出信用供与実績」、これによりますと、バイヤーズ・クレジットとサプライヤーズ・クレジットの対比が出ておりますけれども、アメリカの一九六七年、二六七六対八六〇、それが七〇年、一九六〇対一四二四、これはアメリカの競争力が弱まったというようなことも言われておりますが、フランスはこの逆ですね。それは、世界各国がこの新しいクレジット方式をとるから日本もこれに合わせる、こういうふうに言うんですけれども、資料による限りは、そのメリットというものはどういうふうに出てくるのか、ちょっと判断できかねますので、この表に基づいてちょっと御説明をしていただきたいと思います。
  41. 外山弘

    政府委員(外山弘君) これは、主要国のほとんどがすでにバイヤーズ・クレジットを設けているという点を数字で申し上げたのと、それから確かに御指摘のように、年度ごとにバイヤーズ・クレジットがふえているのと、それから減少の傾向にあるのと、両方あることも御指摘のとおりでございますが、ただ、国によりまして、バイヤーズ・クレジットよりもサプライヤーズ・クレジットの多い国もあるわけでございますし、逆の国もあるわけでございます。特にこの資料から、バイヤーズ・クレジット自体の問題点とか、各国の形態別の特色とか、そういった点はうかがい知れないのでございますが、バイヤーズ・クレジットそのものが、すでにどこの国にも制度として定着しておる、つまり、少なくとも六七年以来これだけの実績を示しておるということを、この資料で示したわけでございます。バイヤーズ・クレジットをどの程度の国が利用するかということになりますと、これは反面、バイヤーズ・クレジットを商慣行としているような国、あるいはバイヤーズ・クレジットになじみやすいと申しますか、そういう傾向のある国との貿易量が、多い国と少ない国でまたこの数字の状況は違ってくると思いますし、また歴史的にどれだけ定着しているかによって、ふえ方が横ばいになったり、若干減るというようなこともあるかと思います。  その辺は、この資料につきましても、さらに私どももいろいろと勉強していかなければいけないと思いますが、わが国の場合は、少なくとも現在までなかったわけでございます。そして、いろいろな要請例が非常にあったわけでございますので、今回、かねてやりたいと思っておりましたけれども、諸般の状況が熟したということで踏み切ったわけでございまして、わが国の場合は、これによりましてやはり中南米向け等の、そういった商慣行の中にバイヤーズ・クレジットを持っているような国との取引量は、このプラント輸出の面を通じてふえてくるのではないか、こういうふうに考えるわけでございますし、また、これによりまして、バイヤーズ・クレジット自体のメリットというものが、本来いろいろ制度としてのメリットがあるわけでございますから、わが国の場合はゼロからスタートするわけでございますので、かなりのふえ方をすると思います。しかし、それが全部サプライヤーズ・クレジットに振りかわるというような性質のものではないと思いますし、おのずから限界はあると思いますが、その限界に達した時点でまた数字の推移というのは違った姿を示してくる、こういうふうに予想するわけでございます。いずれにしましても、この資料につきましては、もう少し各国のいろいろ、バイヤーズ・クレジットについての問題点等も含めまして、そういった傾向等も十分勉強してまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  42. 竹田現照

    竹田現照君 今度の新しい方式というのは、あれですか、従来の輸出代金保険で輸銀によって担保として認められているわけですけれども、この方式もまた同様のものと解釈してよろしいですか。
  43. 外山弘

    政府委員(外山弘君) それは同様でございます。つまりサプライヤーズ・クレジットにつきましては、輸出者が被保険者であるために、保険証券に私権が設定され、担保として金融機関に差し出されているわけでございます。しかし、バイヤーズ・クレジットの場合は、金融機関自体がクレジットの供与者である、で、被保険者になるという形式上の差はございますが、実質上の担保力は全く同一である、こういうふうに考えております。
  44. 竹田現照

    竹田現照君 このバイヤーズ・クレジット方式というものは、今度の保険のほうはそうですけれども、現実に日本でも行なわれているんですね。その内容、どうなんですか。この輸銀の資料ではちょっと数字があれですけれども、それはどうですか。
  45. 外山弘

    政府委員(外山弘君) 今回おはかりしているような保険の付保というようなことがございませんでしたので、普通の民間銀行では、まだ供与した例はございません。で、例と申しますのは、現在までのところ、輸出入銀行が世銀と協調して行なうというふうな形式が多うございますが、そういった形式で行なわれておりますのが九件ございます。それからまたそのほかに、バイヤーズ・クレジットというふうなかっこうに、もっと狭い意味でのこれに当てはまるのが三件ございます。いずれも、世銀との協調というふうなことと、こちらの当事者が輸銀であるというふうなことで例があるわけでございまして、これは、そういった内容のものしか従来は供与例として成り立たなかったというのが実情でございます。
  46. 竹田現照

    竹田現照君 いまお答えになったのと今度の保険法との関係というものは、どういうことになりますかね。
  47. 外山弘

    政府委員(外山弘君) 今回のような保険制度を開きますと、輸銀ももちろん利用すると思いますけれども、一般の民間銀行も、これを機会に外国の輸入者あるいは銀行とつながりを持ちながらそうした信用供与が可能になるということで、非常にメリットが多くなるのではないだろうか、こう考える次第でございます。
  48. 竹田現照

    竹田現照君 そこで、先ほどもちょっと触れましたけれども、融資買鉱、これについてお尋ねしますけれども、海外資源の開発には相当大きな金が要りますが、そのほとんどが輸銀の融資にたよっておりますけれども、問題は、資金の借入の担保でありますが、現在、借入にあたっての債務保証、その状況はどういうふうになっているのか、最初に御説明いただきたいと思います。
  49. 莊清

    政府委員(莊清君) 資源開発の際の輸出入銀行からの借り入れにつきましては、石油開発については石油開発公団、それ以外の金属関係につきましては、金属鉱物探鉱促進事業団が借り入れ保証に立つことができることになっております。で、現在は業務方法書で保証は五〇%以上ということになっておりまして、ケース・バイ・ケースの運用がなされているわけでございます。
  50. 竹田現照

    竹田現照君 それで、開発資金需要の担保種別ですね、これについてひとつお尋ねしておきます。その内容はわかりませんか。
  51. 莊清

    政府委員(莊清君) ちょっと御趣旨がとりかねたのですが。
  52. 竹田現照

    竹田現照君 関連企業の連帯保証だとか、いまの金探事業団の債務保証だとか、あるいは自己資金だとか、証券担保だとか、その比率がありましょう。それを。
  53. 莊清

    政府委員(莊清君) ただいまお答えいたしましたのは、輸出入銀行あるいは市中銀行から借り入れる際に、公団等が保証に立つという面を申し上げたわけでございますが、それ以外のものにつきましては、もちろんいろいろあるわけでございますけれども、手元に資料がございませんので、後ほど御報告させていただきたいと存じます。
  54. 竹田現照

    竹田現照君 お聞きすることを言ってあったのですが、通じてなかったのですか。——それではあとでそれは出してください。  そこで、今度この新設される融資買鉱の対象というのは、どんなものですか。
  55. 外山弘

    政府委員(外山弘君) これは政令で鉱物を指定することになっておりますが、現在のところ、銅、鉛、亜鉛、粘結炭、鉄鉱石、それから石油、そういったものを一応当面の対象に考えている次第でございます。
  56. 竹田現照

    竹田現照君 そうすると、この法律案要旨の中に書いてある「長期契約に基づき輸入される鉱物の開発」云々という、その鉱物が、いまお答えになったものですね。そこで、先ほどもちょっと鉱山石炭局長がお答えになりましたが、この融資買鉱保険というのは、探し出していよいよ物が出てくる、そういう段階から対象になるわけでしょう。
  57. 外山弘

    政府委員(外山弘君) 開発のためというふうな法文になっておりますので、一応、開発のためということでございますから範囲としては広く入ると思いますが、保険の対象として考えるべき妥当性を持っているということになりますと、先生いま御指摘のような点が最も通常の対象になる、こう考えたいと思います。
  58. 竹田現照

    竹田現照君 その探鉱の成功率というのはどれぐらいあるんですか。日本石油開発公団でもいいし、金探事業団でもいいですけれども、あるいは先ほどお答えがありましたけれども、外国がやっておる、そういういずれにしても探鉱の成功率、これはものによって違うでしょうけれども、どれぐらいあるのか。どういうことなんですか。
  59. 莊清

    政府委員(莊清君) 探鉱技術の問題もいろいろあると存じますが、大まかに申しまして、石油の場合には非常にリスクが高い、つまり成功率が低いのでございまして、最近五年間の世界全体の統計では、二%程度というのが成功率になっておるようでございます。わが国の場合には、ごく最近始めたばかりでございますけれども、幸運ということももちろんあるかと思いますが、石油の場合でも、率はそれよりかなり高い一〇%台とかいうふうなことになっております。一般の金属関係でございますが、これは物理探鉱等でかなり正確にわかるような技術もあるようでございまして、石油の場合よりもかなり成功率は高いようでございますが、それでも一般の常識では、大体一〇%程度というのが普通の水準のようでございます。
  60. 竹田現照

    竹田現照君 その探鉱段階に、保険じゃなくて、金を融資するといいますかね、これはもう相当の危険があるから、とてもじゃないけれどもできないと言うのか。むしろ資源開発という、特に海外に求めなければならぬ日本現状からいくと、そういう危険性を十分覚悟しながらも、そういうところにかなり金を注ぎ込んでやる必要があるのじゃないかなと、私はしろうと考えで思うのですけれども、そういうことについてはどうお考えになりますか。
  61. 莊清

    政府委員(莊清君) 特に石油の場合が目下、最も差し迫った国家的な要請になっておるかと存じますが、世界石油の資源も、消費の伸びに応じまして次第に資源量が相対的に、徐々でございますが、減ってきておるというふうな、そういう事情もございますし、わが国としても、産油国でございますとか、あるいはいわゆるメージャー等から一方的にただ買う、輸入をするということではなく、やはりわが国もそれらの国々と、もちろん協調あるいは提携関係というものを基軸にしながら、やはりわが国の持てる力、その中に加わって開発に積極的に貢献していくということが、これは世界全体の石油資源の増加をはかるという見地、ひいては、わが国の安定供給をはかるという点からも、きわめて緊要なことであろうと思います。したがいまして、石油では非常に探鉱のリスクが大きいという点から、ぜひともやはり政府として、石油開発公団というところがございますので、そういうところを充実いたしまして、危険の高い段階は、政府の金で民間のそういう探鉱活動に対して積極的な支援をするということがかなり必要であろうと思います。このことは、若干の程度の差がございましても、メタル関係の場合にも全く同様である、かように考えております。
  62. 竹田現照

    竹田現照君 これは、いろいろとそれぞれの立場で見解が違うように報ぜられておりますけれども、石油の場合も自主開発三〇%といいますか、そういう方向で、むしろ外国の探鉱というのですか、採鉱というのですか、そういうものを強めていくことによって、日本の三〇%自主開発目標というものはむしろ低めてもいいのではないかという説も一方にあり、また、あるいは三〇%をそのまま維持をしていこうという、それぞれの審議会か何かの見解が違って、新聞によっては、来年度予算の折衝のいろいろなかけひきもあるのだというようなことを書かれていたということも、私ちょっと記憶しておりますけれども、そういう点はどうなんですか。自主開発に対するこれからの見通しといいますか、考え方といいますか。それを。
  63. 莊清

    政府委員(莊清君) わが国も世界石油資源の開発に積極的に参画するということの意義なり重要性は、申し上げたとおりでございますが、その場合、いわゆる自主開発ということが考えられますけれども、これは通産省自体といたしましても、日本企業が、どこかの国の鉱区をもっぱら独占的に取得いたしまして、そこでもっぱら日本のためにのみ石油を掘って持ってくるというふうな形の、いわゆる昔型の開発ということは、今後の開発としては、まず絶対にあり得ないということは十分認識しております。といいますのは、産油国が必ず五〇%は事業参加をすることが前提でございまして、それに応じない限りは、いかなる石油開発もまずあり得ないということでございます。そのほかに、欧米諸国等の企業と相携えて、ともに事業をするということもございますし、今回御審議いただいておりますような、融資という形でさらにやっていくというふうなものも含めまして、やはり全体ひっくるめて、昭和六十年時点で何とか日本の総必要量の三割程度を、そういう形でひとつ確保していきたいということでございます。  御指摘のように、そうは言っても、昭和六十年になっても、七億キロリッターから必要となる日本の原油の三割となりますと、約二億キロリッター、これは今日現在の一年間の総使用量にほぼひとしいのでございまして、そんなことはなかなかできまい、よほど運に恵まれても、なかなかそうは簡単にいかぬのじゃあるまいか、これは慎重に、やはり相当効率も考えながら進めるべきだという、財政当局での御議論もあったということは承知いたしておりますけれども、その場合でも、いわゆる先ほど申し上げたような意味での自主開発といいますか、参画開発といいますか、これの重要性自体は、やはり御意見としては完全に一致しておるというふうに認識しております。
  64. 竹田現照

    竹田現照君 海外資源開発についてあと二つお尋ねいたしますけれども、海外投資金融の中で、資源関係の融資比率というのですか、これは、石油は特例として八〇%ですね、これは先ほど貿振局長お答えになったようなものにも拡大をしていく。これは大蔵省か輸銀なんでしょうけれども、通産省としては拡大させたほうが、投資の面からいっても私はいいような気がするのですけれども、これに対するお考え方がありますか。もし拡大したほうがいいということであれば、来年度からでもそういうような方向をとられようと、大蔵省等と話を進められておるのかどうか、この点。
  65. 莊清

    政府委員(莊清君) 御意見、全く私どもも同様に考えておりまして、その線でいま鋭意努力をいたしておるところでございます。
  66. 竹田現照

    竹田現照君 これは大臣からお答えをいただいたほうがいいのだろうと思いますけれども、大臣にあと二、三しか質問する時間がありませんから、これはどこがお答えするのか、あれですけれども、外貨貸し制度ですね。これを、いまの外為特別会計が保有する外貨をこのほうに財政資金として貸し付ける道を切り開いてはどうか、そういうふうに思いますけれども、これは政策の問題にもなろうかと思いますが、むしろ大臣のほうがよろしいのですが、皆さんのほうでお答えがいただけるならお答えをいただきたい。
  67. 外山弘

    政府委員(外山弘君) 外貨貸しの制度の創設につきましては、さきの対外経済政策項目の中にも、この制度を検討するというふうに書いてございます。私どもといたしましては、外貨の有効利用という点がございますし、それから、やはり政策的に重要度の高いものにつきましては、そういった外貨貸しをやることによりまして、一つには外貨の有効利用にもなるし、長期的な投資に対しては特に為替リスクの変動対策にもなるということで、私どもとしては創設を熱望したわけでございます。  しかし一方、この制度自体はやはりいろいろな問題点がございまして、財政当局のサイドから見ますと、一つには、円と切り離した金融という面で二重金融になるというふうな問題点がございます。あるいは、外国為替資金特別会計というのは短期の運用をめざしているわけでございますから、こういった長期投資に外貨を運用するということになりますと、そういったほうの性格から見ての問題点もございます。そういうふうな問題点が指摘されたまま、現在までのところ、まだ成案を政府内で得るに至っていないわけでございます。  しかし、今回のような円の国際調整というふうなことを機会に、ここでもう一度やはり、すでに二十五年来の安定した為替相場というふうな体制に、少なくとも、完全に戻るわけではなくて、十年、十五年のような長期投資に対しては、どうしても為替変動対策というものを入れた長期投資が必要であるということになりますと、外貨貸し制度というものはあらためてその必要性が高いのではないか、こういうふうに考えるわけであります。したがいまして、これの制度の一般化というよりも、先ほど来御質問のございますような資源開発という公益性の高い政策には、こういった問題があっても、その制度の実現をはかるべきではないか、こういうような考え方を私どもはしているわけでございます。しかし、これはなかなか、先ほどのように問題点もございますので、現在、大臣もいろいろ大蔵当局ともお話し合いをしている最中でございます。いましばらくその状況を見て、私どももいろいろ事務折衝したい、こう考えている次第でございます。
  68. 竹田現照

    竹田現照君 これ、もし設けるとすれば、その実現の見通しというものはいつごろになるのですか。まあ来年度に間に合わなければ、明後年度というようなことで……。
  69. 外山弘

    政府委員(外山弘君) これは、いつと申しましても、なかなかはっきりした時期を申し上げるのはむずかしゅうございますが、少なくともできるだけすみやかな機会に結論を得たいというのが、いままでの大臣の御意見でございました。
  70. 竹田現照

    竹田現照君 大臣が来たら一、二点お尋ねすることにして、中小企業庁長官にちょっとお尋ねしますが、今度の政府声明ですね、特に円の切り上げに伴って「国民福祉の充実のために経済資源の配分を再検討し、とくに、住宅、生活環境、公害、老人問題などの諸施策に格段の努力を払う」、こういうふうに書いておりますけれども、経済資源配分の再検討とは、円の切り上げに伴って、国際競争力がなくなった中小企業は切り捨てもやむを得ないというふうに理解していいのかどうか。それから住宅、生活環境等充実した福祉型の国家を目ざすというのですが、中小企業対策は、こういうものにどういうふうに位置づけをなされようとしておるのか。これはこの通貨調整に伴ってお尋ねをしたいと思います。前もって言っておかなかったのですけれども、政府声明にはっきり出ておりますから、中小企業、関係していると思いますから。
  71. 高橋淑郎

    政府委員(高橋淑郎君) 決して中小企業を置いてきぼりにするとか、あるいは切り捨てにするというようなことを考えての声明ではないと確信をいたします。  それから中小企業対策の位置づけでございますが、これは声明の中にも重点として景気浮揚対策が掲げられておりますし、中小企業対策というのは経済政策の中で位置づけされるものと考えておりまして、具体的には、確か政府声明が出されました直後に総理が記者会見をなさいました際にも、中小企業対策について万全を期すという趣旨の御発言もございました。そういうことで、私ども担当の範囲内におきましても、このたび成立施行を見ました国際経済調整対策臨時措置法の運用による施策の充実を含めまして、十全な対策を講ずるようにつとめてまいりたいということでございます。繰り返し申し上げますが、中少企業を置いてきぼりにするというような考え方は毛頭ございません。
  72. 竹田現照

    竹田現照君 通産省が発表されている、住宅産業ですか、そういうものをかなり大きく来年度施策として出しておりますけれども、ああいう施策の中に中小企業をどう位置づけをされようとするのか。そういう分野というのはどういうところにあるのか。これはどうなんですか。
  73. 高橋淑郎

    政府委員(高橋淑郎君) お示しのようなたとえば住宅産業というのは、これから大いに伸びていくいわゆる将来性のある分野であろうと思います。この住宅産業に対していろいろ施策を講じていくということは、社会福祉政策の充実に役立つと同時に、またこの住宅産業分野においても、中小企業が受け持っていく分野が非常にたくさんあろうかと思いまして、私は今後中小企業の進んでいく、あるいは開拓していくべき分野の大きなもののうちの一つであろう、このように解しております。
  74. 林田悠紀夫

    政府委員林田悠紀夫君) ちょっと私からも。いまの御質問の点でございまするが、住宅産業をなぜ通産省が取り上げたかと申しますと、ドル・ショック以来景気が沈滞いたしまして、何としても早く景気を刺激しなければいかぬ。その場合に、いろいろ効果が大きいものを考えなければいかぬ。乗数効果を考えてみますと、住宅産業というものがきわめて大きい効果を持っている。そのほか、新幹線とかあるいは橋梁とか、そういうものはありまするが、何にしましても住宅産業が一番大きい。だから住宅産業を早く確立して、そうしてもっと庶民住宅を安く建て得るようにして、そうして景気を刺激していきたい、こういうことで取り上げた次第でございます。
  75. 原田立

    ○原田立君 今回の輸出保険法の一部を改正する法律案、法案の補足説明等も読んで、少々わからない点もありますのでお伺いをしたいと思います。  まず一番最初に、今回の輸出保険法はいわゆる日本国内法でありますけれども、これが国際的に、国際法との関係、また、とりわけて投資保証協定の締結、これらとの関係性についてはどういうふうになるのですか。
  76. 外山弘

    政府委員(外山弘君) ただいまお話しの投資保証協定と申しますのは、おそらく、二国間ごとに発展途上国と先進国が設けている例がよくございますが、その投資保証協定のことかと思いますが、これは投資保証協定があってもなくても、実は保険制度は、一律に世界各国を相手に適用しているわけであります。もちろん、投資保証協定があったほうがベターでございますが、これがなければ保険を適用しないというふうにいたしますと、投資保証協定自体が二国間で締結するのはなかなかむずかしいのでございます。したがって、そういったことを前提にするよりも、実際上、それぞれの個々の案件の状況というものを具体的につかみまして、それから同時に、その外国投資先の国の事情というものを具体的につかみまして、保険の付保を引き受けているわけであります。  ただもう一つ、先生御指摘の投資保証協定の、多国間の国際投資保険機構の問題かと思いますが、その点でございますと、これは実は多数国間でそういった国際投資保険機構を設けようという動きがございます。これはOECDの委託を受けまして、世銀が主として検討しているわけでございますが、先般チリ等で問題が起こりましたのを契機に、アメリカの海外民間投資保険公社、OPICと申しますが、それが非常に熱心でございます。これはやはり参加国がそれぞれ一定の金を出し合いまして、そして保険に対する態度を統一的にやっていこう、たとえば一つの国に対する投資保険が失敗した場合でも、それに対する回収と申しますか、あるいは付保と申しますか、そういった点につきましては、国際的に足並みをそろえていこうというふうな配慮に基づくものでございまして、その反面、危険があるかないかということの判断を国際的にすることにもなるという点はございますが、同時に、自分の国の投資でないことの失敗に対しても一定の金をつけるというふうなことにもなると思いますし、その点、損得の問題が別途あるかもしれません。現在、アメリカの保険会社あるいは世銀等を中心にいろいろな案が練られておりまして、わが国のほうにもいろいろ話し合いがございます。  私どもといたしましては、多数国つまり多数の先進国と多数の発展途上国が参加するというふうな機構が技術的にできるならば、それに対しては私どもも前向きに考えたいというふうに思っておりますが、現在のところ、そういった保険機構の問題点につきましては、なかなか先進国の中にも異論が多いのでございます。まだ成案を得るというふうなところまでは進んでおりませんけれども、私どもとしては検討を続けていきたい、かように考えております。
  77. 原田立

    ○原田立君 検討するということは、そういうふうな世界の情勢にマッチしていくのが通産省の方針である、こう理解していいのですか。
  78. 外山弘

    政府委員(外山弘君) 「発展途上国および先進国の幅広い支持を得た国際的な投資保証計画を設定することが望ましい」ということの態度を、基本的には持っているわけでございます。ただ、そういうふうなものが具体的に成り立つ過程において、私どもも技術的な検討を含めて考えたいということでございまして、目下、話し合いを向こうが申し込んできた段階で話し合いをしているということでございまして、基本的態度は、りっぱなものができればこれにはやはり前向きに考えなければならない、こう考えている次第でございます。
  79. 原田立

    ○原田立君 前向きに考えなければならないというのは、では、まだそこら辺、話は詰まっていないわけですね、省内としては。それでは、いいのができたら入るかもしれないし、入らないかもしれないというふうな状態なんですか。
  80. 外山弘

    政府委員(外山弘君) 先ほど申しましたような趣旨の国際投資保険機構ができるかどうかということについて、まだ私どもも技術的な点を含めまして問題点があると思います。したがいまして、そういった機構の実現するということについての明確な見通しを、まだ持っていない段階で先ほどのようなことを申し上げたわけでございます。したがいまして、どういうものができるか、またどういうものならばわれわれとしては参加できるかというふうなことを含めまして現在検討している、こういうことでございます。
  81. 原田立

    ○原田立君 ただその検討というのが、まさしく字のとおり検討だろうと思うのだけれども、だけれども、そういうのが、いいのができたなら参加するという、そういう基本方針、それもまだ確立されていない、まだずっと手前の検討の段階であるということなんですか。
  82. 外山弘

    政府委員(外山弘君) この参加の態度をきめるにあたっては、関係各省とも打ち合わせをしなければならないと思います。それから各国の動向ということについても十分突き詰めてみないといけないと思います。その辺につきましての、特にまだ先進国の有力な国が反対の態度を示しているというふうな実情にございまして、その辺の問題点もございますので、どういう趣旨のものが、要するに参加できるような機構ができるかどうか、まだ疑問が多いというのも、私どもの一つ頭の中にあるわけでございます。ですから、もう少し技術的に検討が進みませんと、必ずこれは前向きに考えたほうがいいというふうなものとして認められるかどうか、その点についてのまだ疑問があるものですから、先ほどのようなことを申し上げたわけでございますが、やはりわれわれも納得のいくような、そして国際投資保険機構としてりっぱなものができれば、これは前向きに参加するということになると思います。したがいまして、その辺の見通しをどうつけるかということの判断にかかっていると、こういうことだと思います。
  83. 原田立

    ○原田立君 先ほどもお話がありましたけれども、世銀の中にあるIIIAですね、それと今回の輸出保険法、この関係は一体どういうふうにお考えなんですか。
  84. 外山弘

    政府委員(外山弘君) まだIIIAの機構に参加しているわけではございませんので、私どもの輸出保険は自主的な運営をしているというのが現状でございます。
  85. 原田立

    ○原田立君 アメリカあたりで言っているいわゆる再保険及びそのIIIAの内容について、一ぺんでも検討したようなことがあるのかどうか。または今後の対応策についてどんなふうに考えているのか。
  86. 外山弘

    政府委員(外山弘君) 先ほど申し上げましたのは、いま原田先生御指摘のようなことを含めて申し上げたつもりでございまして、アメリカあたりの意向が強く反映しておりまする改正案というふうなものも、現在私どものほうに非公式ながら伝わっております。そういうものも含めまして検討しているわけでございまして、たとえば参加国の一つのケースごとに、その当事国の負担する割合と非当事国の負担する割合を変更してくれとか、それから直接の保険にするか再保険にするかとか、いろいろな点につきまして、IIIAのほうでもいろいろ修正点を頭に置きながら案を考えているようでございます。それが、いろいろわれわれのほうにも話を進めてきているものですから、したがいまして、先ほど申しましたことは、そういう改正案を含めて私どもは検討しておる、こういうことでございます。
  87. 原田立

    ○原田立君 ことしの夏のワシントン会談で福田外相は、多数国間による海外投資保証の協定について賛成と、こういうふうに言っていると報道されているのですが、その点間違いないですか。
  88. 外山弘

    政府委員(外山弘君) 先般の九月に開かれました日米経済合同委員会の共同声明におきましては「発展途上国および先進国の幅広い支持を得た国際的な投資保証計画を設定することが望ましい」、こういうふうに言っております。福田外務大臣が、いま御指摘のような時期にそうおっしゃったかどうか、私つまびらかにしておりませんが、一番新しい意見表明はそういうことでございます。
  89. 原田立

    ○原田立君 ところで、ことしのこの十一月のときに、外務省は、こういうことはやらない、IIIAは拒否する、こういうようなことを言っておるというのですが、その点はどうですか。
  90. 外山弘

    政府委員(外山弘君) それは私聞いておりません。
  91. 竹田現照

    竹田現照君 大臣、時間がありませんから一つだけ端的にお尋ねいたしますが、対中国貿易に対する輸銀使用の問題ですね。大臣も十一月の十六日の閣議のあとの記者会見で語っておられますけれども、去年の輸出保険法の改正の際にも、いろいろと衆議院でも論議をされて、当時の小宮山政務次官が、輸銀使用については百尺竿頭一歩を進めるというのじゃなくて積極的にやるように大臣に具申するつもりだと、こういうふうに答えられているんですけれども、去年とことしの中国問題はもう全然事情が国際的に違っておりますけれども十一月十六日の大臣の記者会見における発言と、前日の森外務次官の発言との間には、これは食い違いがあります。この点についてどうお考えになっておられるのか、端的にお答えをいただきたいと思いますし、それから中国の問題のあとは、朝鮮の問題が来年の国連では論議をされると思うが、いわゆる北鮮に対する輸銀の使用の問題も、通産省とそれ以外との考え方がちょっとニュアンスが違うように伝えられておりますけれども、この点について通産大臣として現在の考え方を端的にお答えをいただきたい。
  92. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は常に申し上げておりますが、これは私だけではなく、総理大臣も外務大臣も同様に、すべてケース・バイ・ケースでやりますと、こう言っておるわけでございます。しかし、この前、外務大臣が述べましたのは、いままでのバイ・ケースというのは、中国に関してはどうもうしろ向きのバイ・ケースでございました、今度は前向きのバイ・ケースでございますと、こう答えておるわけでございまして、そのように理解をしていただければいいと思います。  これはいつも、通産省は商売でございますから色はつけないのであって、チンコム、ココムの問題のときも、これははずそうという論者でございますし、また関税の問題やいろんな問題でも、貿易拡大をするためには前向き、積極的でございます。しかし、みないろいろな外交関係その他を考えて、政府としての統一見解が生まれるわけでございますので、外務大臣の発言は、私の発言を幾ばくかセーブするような形で出るのは、これはもう当然だと思います。これいま私が申し上げたように、通産省は絶えず前向きであるということが原則の省でございますから、色がついているから共産圏からなら原料買わぬでいいというようなことを考えておりませんから、そういう面で政府の中に不統一はないわけでございます。ですから、プロジェクトの申請がないというだけであって、あれば福田外務大臣が答えたように、前向きにということで理解していただいてけっこうだと思います。  北鮮の問題につきましては、これも同じようなことだったのですか、この間の韓国の非常事態宣言などの問題が起こりましたから——ちょうどあの日だったようでございますな。そういうことで、韓国の非常事態宣言なども起きました、新事態が起きましたので、このほうのバイ・ケースは、いままでどおりのバイ・ケースでございますというような発言になりまして、その後、私には答弁を求められることがなかったのでそのままになっておりますが、われわれがこういうプロジェクトをきめるときには、通産と外務が相談をして、しかるのちに大蔵を入れまして三省で協議をする。それでなおきまりがつかないときには、経済企画庁も入れて四省でもって話をするというようなことでございますので、中国に関しては前向きでということで御理解いただきたいと思います。
  93. 竹田現照

    竹田現照君 前向き前向きといつでも言うのですけれども、その前向きか一体、いつ前向きに実現をするのか、そこがやはり問題だと思います。
  94. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 出てくれば、これはすぐわかることでございますから、何かございましたら、どうぞひとつ。これは出てこないのです、まだ。ですから、これまではっきり言っておって、具体的な問題か出てこないというところに問題があるわけでございまして、これは、ここまで申し上げておりまして、出てきて結末がつかないなどということはないわけでございますから、ひとつ事態の推移を見つめていただきたいと、こう存じます。
  95. 竹田現照

    竹田現照君 それで、これは出てくればやると、そういうふうに理解していいですね、出てこないからやらないと、こういうことなんですから。重ねて。
  96. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) バイ・ケースでございますが前向きのバイ・ケース、というふうに御理解いただきたいと思います。
  97. 原田立

    ○原田立君 その問題も実はお聞きしようと思っておったのですけれども、大臣、トヨタ自動車の中国向け輸出については、輸銀使用は正式に許可したわけですね。
  98. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) トヨタの問題、まだ聞いておりませんが、具体的な問題がございましたら、御指摘いただきたいと思います。
  99. 原田立

    ○原田立君 ただいまの話の北朝鮮の、クラレのビニロン問題ですね、これについては、いま竹田委員がお聞きしたように、外務省では待ったをかけた。通産省では、政府としては「中国、北朝鮮両国向けの申請が同時に出た場合、中国向けを優先的に認める——との方針を非公式に明らかにしていた。」云々と、まあこれは新聞報道ですが、クラレの北朝鮮向けプラント、これについてはただいまの説明のあったようなことで、これはまだやらないということですか。
  100. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま御指摘の、正式な申請をまだ受けておらないようでございます。
  101. 原田立

    ○原田立君 ちょっとこれ、新聞の情報ですけれどもね、「政府筋が十六日明らかにしたところでは「中国向け輸出よりも北朝鮮向け輸出の商談が早くまとまったため、政府はクラレから申請が出れば北朝鮮向けビニロンプラント輸出に伴う輸銀融資を認める」としている」と。これは、ではまだなんですか。
  102. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 北朝鮮向け延べ払い輸出案件につきましては、関係各省と十分連絡をとりつつ検討を進めているところでございます、というのが統一見解でございます。まあ実際は、何かいろいろ話は聞いておるのですが、やはり業者も慎重にやっておるのだと思います。そういう意味で、いろいろな風説もございますし、こんなことをいま打診しておるんですというようなものもあります。競争相手もあるんですというようなものも幾つかあります。ここに書いてありますが、くだものの処理施設とか、ビニロン紡績設備、ポリビニール、アルコール云々というようなものがありますけれども、まだ正式なものとしては通産省に持ち込まれておらないというのが現状でございます。
  103. 原田立

    ○原田立君 正式に持ち込まれた場合には、輸銀使用の認可の方向に進んでいくと、こういう理解でよろしいのですね。
  104. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それはいま竹田さんに申し述べましたように、そのほうは少し、いままでどおりのバイ・ケースという表現を外務省は使っておるわけでございますが、これは現実問題として韓国の非常事態宣言がございましてから、非常に慎重にということにウエートを置いてございますから、いまの状態では、輸銀使用をいますぐいたしますということをお答えできません。
  105. 原田立

    ○原田立君 北ベトナムについての輸銀使用、こういうふうな問題が出た場合、どうですか。
  106. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 北ベトナム等には、いままで一件も輸銀使用をしたことはないようでございます。それから、きっとやってくれるならというようなものが何かありそうでございますが、これもそういううわさがあるというだけであつく正式な申し入れというようなものには至っておらないということで、これは北朝鮮よりももっと不確かなもののようでございます。
  107. 原田立

    ○原田立君 申し入れがないからまだ考えてないという大臣の答弁のようだけれども、申し入れがあった場合には十分考えるということですか。
  108. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは各省で十分検討いたしまして、十分連絡の上結論を出したい、こう申し上げておきます。
  109. 原田立

    ○原田立君 検討する、ですか。
  110. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) こういう申請が出ますれば、やらないとか、やるとか、何とか結論を出さなければならぬわけです。だから、その結論を出すまでには、政府間で各省十分連絡をとって結論を出したい、こう思うわけでございます。  これは通産省だけではなかなか結論が出せないのです。いままででも、プロジェクトでも通産省は大体、申し入れがございますと検討しまして、その契約状況等が妥当であると思えば、直ちにこれは認可をする方向でもって協議をするわけでございますが、大蔵省は、一つの国に片寄ってはバランスがとれないとか、また予算上の制約がありますとか、それから金利や延べ払いの条件がどうであるとか、頭金がどうであるとかいって、そういう面から大蔵省側の要求をいたすわけでございます。また外務省は、特に外交上のいろいろな立場から外務省としての発言をいたします。三省協議できましたときに、初めてそのプロジェクトに対しての延べ払い輸出等の条件が決定をするわけでございまして、いままでないものが新たに申請をされるということになれば、要請をせられた事案に対しまして政府は結論を出さなければなりません。そのときには、通産省が各省と十分連絡をとりまして、政府としての最終的な結論を出すべく努力をいたします、こうお答えをいたしておるわけでございます。
  111. 原田立

    ○原田立君 じゃあ、やるとかやらないとかいうことは全然別なわけで、出たら検討をする、それだけですね。
  112. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 北ベトナムに関しては、以上のとおりでございます。
  113. 原田立

    ○原田立君 大臣、あなた来る前にちょっと話をしておったのですが、ことしの九月、ワシントン会談において福田外相は、多数国間による海外投資保証の協定について賛成したわけです。ところが、数カ月たった後にはこれを拒否する、こういう状況を私知っているわけなんですが、先ほど局長はそういうことは知らないというお話だったのです。大臣は御存じだろうと思うが、その間のいきさつはいかがですか。
  114. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは、アメリカ側では日米経済閣僚会議のときにそういう話が出ました。これは正式な話ではありませんが、カウンターパートでございましたか、あるいはそうではなくて非公式なときでございましたか、それは、アメリカも各地でやられておりますなということですね、そういう話から国際投資保険という話が出ましたが、そのときに、私は考え方としては共同でもってやるという方向は一つ考え方でございますが、まあIMFが中心になるとか世銀が中心になるとかということで、これは世銀がからんでおれば当然そうなりますし、そういう多国間でやることはいいのですが、どうも日本にも、特に通産省でそういうような保険等をやっておりますので、具体的なこまかい技術的なものを詰めないと、にわかに、はいそうでございますかという、オウム返しにはなかなか言えない歴史があるようですよという実情を述べておるのです。  ですから、方向としては、何らかの政治危険とかいろいろなものが起こってまいりますので、何らかのものが必要である、そういうものを考えましょうやというので、多国間でどうしよう、それから世銀を中心にしてどうしよう、それも保険でいきますとか、そういう具体的な問題でやりましょうと言ったのではない、こう理解しております。なぜそれをさだかに覚えているかといいますと、私は帰ってきて、通産省の省議のときだと思いますが、安全に対してはいいのだけれども、通産省そのものはなかなかにわかに賛成しがたいという案件かなあ、ということを話し合っておったわけでございますので、福田外務大臣も私も、アメリカ側との話し合いはその程度の話だったと私は理解しております。     —————————————
  115. 大森久司

    委員長大森久司君) 委員の異動について報告いたします。  本日、大谷藤之助君が委員を辞任され、その補欠として中村禎二君が選任されました。     —————————————
  116. 原田立

    ○原田立君 そうすると、この多数国間による海外投資保証の協定という、そういうことについては、田中大臣はあんまり乗り気ではないと、そういう問題なんですか。
  117. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そういうふうではないのです。何かしなければならないということは、これはアメリカ日本も同じ考えでございますが、アメリカがいま考えておるような方法とやり方では、日本はそれにそっくり乗れるようなものではないのです。これは具体的に、アメリカ利益だけ守るようなものにはなかなか乗れないのであって、利害が違う問題が技術的に考えるとあるのです。そういう問題で、OPECの問題と同じことなんです。  実際において、後進国に鉱山やその他の投資を長期的にやっても、国営にして接収されてしまったり、いろいろな問題が起こり得ることは事実でございますし、それだけではなく、なかなかむずかしい問題もあるのです。ですから、われわれはいま、一つのルートを通じて石油の大半を搬入しておるというような問題もございますし、いろいろな問題がございますので、国際的な投資に対して多国間で何かしなければならないということだけは、これは方向としては同じでいいわけですが、具体化する段階になると、二国間でやるだけでは簡単に片づかない問題でございますので、この日米経済閣僚会議のときに出たのは、正式なテーマとして提案され合意に達したというのではなかったと思います。方向としてはもう異議なしということでございましたが、これは通産省からも人が行っておりましたので、通産省としては具体化に対しては腹案がありますから念のためと、こういうくらいな話だったと思います。
  118. 原田立

    ○原田立君 そうすると、多数国間による海外投資保証ということは、方向としては賛成である。ところがいまアメリカが言っているようなことについては、あまりにわかに乗り気でない、こういうことですね。
  119. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そうです。
  120. 原田立

    ○原田立君 まあアメリカ日本と二国間で、こういう問題は実はほんとうは話し合うべき筋合いのものではなくて、発展途上国と先進国の多数国間できめなければならない問題、それをアメリカに行ったときに、ちょろちょろとそういう話が出て、じゃあやめちゃうかなと言うのは、ちょっと軽率のそしりを免れない、こういう意見もあります。ですから先ほど、こういう多数国間による海外投資保証、その方向はすでに賛成なんだ、ただアメリカ考えているようなことについてはにわかに賛成しがたいと、これが現状だ、こう理解してよろしいですね。
  121. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そうです。
  122. 原田立

    ○原田立君 いろいろ新聞報道されてまいりますので、くるくる態度が変わるなんて、そういうようなことであってはまずいと思ってこの問題を取り上げたわけです。  それから、先ほどからいろいろと輸出保険に関する事件のこと、ちょくちょくお話がありましたけれども、最近、一体どういうふうなことが実際問題として起きて、それで通産省がちゅうちょする理由にしているんですか。
  123. 外山弘

    政府委員(外山弘君) 少なくとも、ただいまの御指摘の問題に関連して、ラテンアメリカにおきまするアメリカ企業がいろいろ接収された事例が幾つかございます。この辺は私どもの頭にあるわけでございますが、そういったものの接収のされ方の中で、私どもの保険自体の自主性と申しますか、そういった点がどういうふうに関係してくるかということを考えるわけでございます。  いまその事例を幾つか申しますと、一つは、チリ政府がフォードを接収した件がございます。これはチリ・フォードが、一九七一年度の販売価格の引き上げを含む生産計画を実行しました場合に、チリ政府に許可されない。それが、チリ政府に許可されないことが理由になりまして、七一年の一月から操業を休止しました。五月に至りまして業務を停止し、従業員四百人の解雇を発表したわけでございます。チリ政府は、これを違法といたしまして、国益をそこなう行為であるというふうに主張しまして、五月二十七日にフォード工場の収用に踏み切ったという事例がございます。  それからチリ政府が、同じくアナコンダを接収した例がございます。これは、六九年の六月にチリのフレイ大統領が、資源ナショナリズムというような観点からアナコンダ社の漸進的な収用、つまり株式の取得を漸次高めるというふうなことを行なったわけでございます。さらに一九七〇年の十月に就任した新大統領が、五大鉱山につきまして接収を表明しまして、七一年の七月の憲法改正によりまして国有化されたというケースがございました。  それからその次にペルー政府が、IPCつまりアメリカのインターナショナル石油会社、これを六八年の十月にペルー政府が接収したという事件がございます。これは、六八年四月に政府要人の関係する大規模な密輸事件が発覚しまして、さらに八月に、ペルー石油公団とIPCの石油利権に関する契約につきまして、政府態度が不明確であったために、十月の三日に現大統領による無血クーデタが起こり、IPCの接収ということになっております。  さらにペルーにおけるオナシス事件というのがございまして、ペルー政府はフンボルト海流というその地域のもたらす豊富な漁業資源を確保するために、領海二百海里を保持しております。一九五四年ギリシャ系船主のアリストートル・ソクラテス・オナシスの所有する捕鯨船団が、領海侵犯の疑いでペルーの数十海里ないし三百海里のところで傘捕されて、十億円に上る罰金刑を課せられている、こういう事件がございます。  さらに、キューバにおけるサバチナ事件というのがございまして、これは一九五九年一月に、キューバ革命に成功したカストロ政権が、アメリカのキューバ糖買い付けの削減に対抗いたしまして、六〇年八月にアメリカ企業二十八社を国有化したことに伴う訴訟事件でございます。  最近におきましてもそのような事件が幾つかございまして、たとえばチリの自動車工場の場合、わが国の場合はそういったケースを見ていないというような差がございます。アメリカの場合は海外投資が、御承知のように日本と比較にならない多額の投資をしておりますし、地域もまた日本とは比較にならない。たとえば中南米等における投資等は、アメリカと非常に違うわけでございます。各国投資事情、あるいは投資に対する態度、国情、そういったものの差というものを、やはりそういった加入の場合には技術的に検討してみないといけない。それが経済的にどういうような問題点を持ち、どういうふうなことならば合理化されるかというような点も検討の一つであるかと思いまするし、また、ドイツ等がこの投資保険機構に対して非常に消極的であるという点は、むしろ、ドイツが自主的な保険運営に自信を持ってやっているという点等から、こういったケースはドイツのほうにはあまりない。したがって、こういうことについての若干批判的な態度がドイツの政府にはあるのではないか、こういうような感じもいたしますが、そういったことをわれわれとしてはどういうふうに分析し、どういうふうに勉強するかというようなことも問題点の一つだろうと思います。いずれにいたしましても、最近の御指摘のありました事件としては、そのようなことを念頭においているということを申し上げておきます。
  124. 原田立

    ○原田立君 いま、いろいろと事件をお話いただいたわけですけれども、今回の輸出保険法の改正と、それとあわせて、これらの事件と同様の事故が起こる可能性が非常に多いわけですが、いまも対処をしていくというようなお話があったけれども、どういうふうなことをお考えですか。
  125. 外山弘

    政府委員(外山弘君) 私、先ほどはIIIAに加盟することに関連していろいろのことを申し上げたわけですが、今回の海外投資保険の改正部分につきましては、先ほど来申し上げておりますように、融資買鉱保険でございます。融資買鉱保険は、海外投資の中で、従来のように自主開発、つまり相手方の企業に対する、経営参加をしている企業に対する投融資は従来の保険で見られるわけでございますが、投融資をしていない、単に融資だけで物を買うということのケースに対応して保険をつけるわけでございます。もちろん融資だけでございますから、それだけ危険も大きいわけでございますが、しかし、この付保にあたりましては、同時に海外投資に対する基本的な問題、相手国の事情なり、その投資が真に相手国のために喜ばれるものであるかどうか、あるいはペイするものであるかどうか、いろいろの点を考えて判断するわけでございますが、この融資買鉱の場合は、やはり同様の事情を海外の諸国におきまして考えると同時に、資源開発政策の中の位置づけ、そういった点も考え、あるいは資源ナショナリズムとの関係から見て、その要請から考え、その国の国情から考えれば、融資買鉱のほうがよろしいというような判断、そういった諸点を考えながら、鉱山石炭局とも十分打ち合わせをしながら、融資買鉱保険、これを進めてまいりたい、こう考えておる次第であります。
  126. 原田立

    ○原田立君 中国の国連加盟なり台湾の問題が重要になっているわけですが、日本から台湾に進出している企業の中で、輸出保険の適用をしているものと適用していないものとの規模別、金額別区分がどうなっているか、これが一つ。それから、保険をかけていない台湾進出の企業について、今後どのように補償考えていくのか、これが二つ。それから、台湾からのいわゆる企業の撤収についてはどのように考えているのか。以上三つまとめてお答え願いたい。
  127. 外山弘

    政府委員(外山弘君) まず第一に、海外投資保険の中で、台湾向けの投資に対する保険の責任残高は、現在四十八億円でございます。これはおそらく一割以下ではないかと思いますが、ちょっといま台湾の投資保険の金額を見ておりますが、その程度にとどまると思います。もっとも投資保険自体は、御承知のように二年前までは従来の海外投資保険はあまり利用されておりませんで、先般、二年前にこの国会で改正をおはかりいたしまして、それによって現在の投資保険制度ができたわけでございます。それ以来、付保率がだいぶ高まっておるわけでございます。したがいまして、全体としてだんだんと高まってはおりますけれども、その以前の状態はあまり付保率が進みませんで、現在のところまだ全体としてはそう高くございませんで、台湾向けも非常に少ない付保率になっているかと思います。  それから、保険のついていない企業に対する、何といいますか、保険のついていない企業の問題でございますけれども、これは保険としてはどうにもならないわけでございます。その企業がやはりいろいろなリスクを、他の金融機関あるいは輸銀の資金といったものを投資して、そして台湾はあぶなくないという判断のもとに投資を続けたのだろうと思います。もちろん、保険の上での応援はできませんけれども、それなりに、企業ごとに具体的な事情を考えまして、将来の方針をきめていると思います。これは、保険をつけていない企業に対しては、保険ではいまさら保険上の手当てをするということはできない、こういうふうに考えております。  それから撤収の問題でございますが、どうも今回のような措置が行なわれましても、台湾に投資した日本企業がどういう動向を示しているかということになりますと、特にいまのところ著しい変化といったようなものは見受けられません。現在までに台湾に投資した企業は非常に多うございますけれども、それなりの運営を一応続けているようでございます。私どもにもいろいろ今後のことについて相談されれば、私どももできるだけ考えたいと思いますが、いまのところ目立った動きは聞いておりません。そういうところが実情でございます。  なお、台湾向けに対する民間投資の残高は、大体ドルにしまして八千万ドル程度のものが一応ございますが、先ほど申しましたような付保率でございますので、かなり低い付保率になっているかと思います。
  128. 原田立

    ○原田立君 まず、いまの台湾に進出しているところのいわゆる企業、それに対する撤収問題いまちょっとお聞きしたわけでありますが、非常に企業は多いけれども、いまのところこれといった動揺はないという局長の答弁だけれども、これからまたいろいろな動きになってくるのじゃなかろうかと、こう心配しているわけです。その点どうですか。
  129. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 中国と国交回復するまでの間、中国と国交が回復した後、将来的な展望と、こういうふうに分かれると思うのですが、日本と台湾との地理的な関係を見れば、これは絶無になるというふうには考えられないと思います。どんな状態になっても、やはりいま中国に対して友好商社がありますように、台湾友好商社というようなものは当然残ると思われるわけであります。これは、台湾と中国との間にいろいろな問題があることは、これはもう事実でございますので、国内問題としてまたある時期には処理されることが望ましいし、処理されると思います。しかし、台湾に投資をしておる企業そのものがたいへん混乱状態になるとかいうようなことは、大体考えられないと思われるわけでございまして、これは対中国との問題でいろいろな問題がありますことは御承知のとおりでございまして、これは企業自体がみずからの判断においてどんどんと処理ができる問題でございまして、意思ある者、現実的に台湾に進出しておる者で、台湾との交流を続けてまいろうという意思のもとにある者はそのまま認められていくだろうと、こうすなおに見ていくのが正しいのじゃないかと思います。
  130. 原田立

    ○原田立君 経済援助の問題でお聞きしたいのですけれども、中国、北朝鮮、北ベトナム、こういうふうなところの国に対して今後積極的に促進すべきだとこう思うのですけれども、また、その他の国々等についても十分考えられていかなければならないと思うのですけれども、どうですか。
  131. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 中国はお隣の国でございますから、これはもう交流を進めてまいりたいというのはわが国の政府考え方でもございますし、国民大多数の考え方であろうと、こういうことでございまして、中国とは、お手伝いをするとかそういうことではなく、これはもう貿易はどんどんと進め、友好は拡大してまいりたい、こういうことでございます。  いま御発言ございましたものを他の国に当てはめて申し上げますと、俗に言われる後進国援助という問題をさされると思いますが、これはDACの基準というものよりも政府ベースの投資額は少ないわけでございます。これはもう、基準までに引き上げなければならぬことは言うをまちませんし、特に日米間でも、いろいろな状態において後進国援助の問題これからもまた平価調整に続いて貿易自由化問題が第二にありまして、第三は後進国援助問題が控えておるわけでございますから、これは当然拡大していかなければならないと思います。それから、民間ベースを入れて国民総生産の一%という問題これはもう〇・九三%になっておりますが、これは一%にしなければならぬし、これから日本貿易の多様化をはかってまいらなければいけない、アメリカに三〇%もウエートを置くのはよろしくないと言われることから考えれば、これは原材料を受けておる後進国、というよりも将来の友好国として、これがレベルアップのために応分の協力をするというのは当然のことでございまして、日本の特性から考えても、貿易立国の特性から考えましても、これは協定のいかんにかかわらず、後進国援助というものはふやしていかなければいかぬ、こう思います。
  132. 原田立

    ○原田立君 そのふやしていくということは、先ほどあなたいないときに局長も言っていました。それで問題は、どれだけ、どのように、どのような時期にどのくらいの規模に持っていくかという、その内容の問題だと思うのですね。いまの大臣のお話は、そういうふうに持っていく気持ちだという、気持ちだけの話で、まだ具体的な、じゃあ、いつ、どのくらいということが出ていない。その点をもう少しはっきりしてください。
  133. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは日本としては、予算をつくるようなときにも、輸銀の資金ワクをきめるときも、また海外経済協力基金のワクをきめるときなども、当然一つの計画を持たなければなりませんし、そのときには、前年度からもう申し込みがあるわけでございまして、そのうち、来年度はどの程度のことを実行しようという、おおよそのめどはつくわけでございますから、これはやはり政府の中でも、各省とも出たとこ勝負ではなく、年々の実績に徴して、計画性を持った一つ予算的な対策を講ずる必要があることは申すまでもありません。ただこれは、援助援助と言って、これだけは出すのだと、こういうことになると、なかなか相手国との間にもうまく問題が解決しないというので、日本として政府部内で考えておることは、計画的にバランスのとれた後進国援助ができるようにしなければならない、こう思います。  それから、いまは、このドルに対する各国平価調整の前、変動為替相場制が起こったころから、もう急激に世界各地から日本に対する協力要請があるのです。いままであまり日本と交流のなかったような国からも相当ございます。これは今度円平価が一番よけい切り上げられたということで、そんな金持ちの日本ならぜひひとつどうぞというので、実際、そうなんです。私はこのごろ、ほんとう各国いろいろな国の大臣から、表敬表敬ということで申し込みが一ぱいあるのでございます。いままでほんとうにお会いもしたことのないような国の大使の方々からも申し入れを受けておって、まだ全然お会いできない人もたくさんございます。  そういうことで、私が七月に通産省に参りましてから、イランの石油の問題を解決したり、いまパルプの問題をやっておりましたり、それからアルゼンチンの鉄道の問題を片づけたり、これは一億ドルから三億ドルくらいのものが参っておりますし、その他の国からのものもございますので、やはりこういうものを、いままでは一年も一年半も未解決のままにほうっておいたようなことがございますが、これは今度、通産、大蔵、外務、経企というような関係省が集まって、一定期間が過ぎても事務的にきまらなかったならば、それはひとつ高い立場で内閣の責任で決定しよう、こういうことをきめましたので、その後は、短い間でございますが、相当スピーディに解決ができておるわけでございます。そういうこと自体が、やはり後進国援助というか、投資プロジェクトの合理的な投資であり、スピードアップをすることになる、こう思っております。輸銀その他は、来年度予算編成にあたっても十分この目的を達成できるような体制整備をいたしたい、こう考えております。
  134. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 大臣にお聞きしたいのですが、十二月の十九日に平価調整に伴う佐藤総理の記者会見がありました。そのおり佐藤総理の、繊維以外についても、これからアメリカとの関係において、対米譲歩をしなければならなくなるであろうというように受け取れる発言がありました。いままでの日米の経済閣僚委員会あるいはその後の通産大臣の発言内容などからしますと、やや趣の違う発言を佐藤総理なさっておるわけであります。この辺について、責任者として通産大臣はどのように考えておられるか、お聞きしたいと思います。
  135. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 佐藤総理がおととい述べられた記者会見の中で、いま御指摘にあった部分は、繊維に関して日米両国間の協定が行なわれる、それと同じように協定が行なわれるということを意味して発言をされたものでないと、理解いたしております。  これは日米間は、繊維をやってから非常によくなった、ということはもう繊維が第一であり、第二は、申し上げるとすれば今度の平価調整であり、第三は残っておると言われておる八項目の実施、それに伴う日米間の折衝、これは日本だけが譲るのではなく、日本自由化を進めるだけではなくて、アメリカに対しても要求するものはたくさんでございますから、これをやるというのが第三。第四は、先ほど原田さんから言われておりました、後進国援助という問題が大きな問題になっております。これは日本だけではなく、ECとアメリカとわれわれが、これは十カ国の蔵相会議のまた一番大きな問題にもなり、IMFや世銀やガットやDACの一つの最も大きなテーマである、こう思いますので、そういうようなスケジュールの中でこれからもまだ、これですべて終わったんだということではなく、やはり日米間で調整すべきものもありますと、こう述べたのだろうと思います。  私はいま、総理大臣と一緒に同じ質問を衆議院で受けてきたわけでございますが、私は、おおむね平価調整によって日米間の懸案は片づいたものと考えます、が、しかし、日米間の通商の基本といたしましては、すでに内外に宣明をした八項目の実施というものがございます、この八項目実施の線に沿った政策実現については努力をしてまいらなければならないと思いますと、こう答弁をしてまいったわけでございます。  その中では、今度の平価調整でコナリー財務長官が、ワンパッケージでなければ平価調整に応じない、ドル切り下げないということを強く言っておったわけでございます。これは日本についてだけではなくて、ECに対して言っておったわけであります。で、ECはついにこれをのんで、そして平価調整ができたわけでございます。そのときに、日本に対しては、日本アメリカとの間の経済問題に対しては非常に理解が進んでおるという、コナリー長官にしては珍しい発言をしておるわけであります。これは私はまあ、てまえみそに承るようでございますが、これはほんとうからいうと、繊維日米間交渉というのは済んでおりますから、これをさして言ったものだと理解しております。  あとの問題はどうかというと、子牛を、自由化はできなくとも輸入ワクを五千頭にしてくれないかとか、温州みかんのアメリカ輸入についてはこれを拡大していきますから、かんきつ類の輸入ワクを大幅にふやしてくれとか、そういう問題でございまして、電算機も多少何とかできないかという問題もございます、ございますが、この電算機に対して、私もいま質問に対して、電算機日本政府が決定をした従来の自由化スケジュールを変える意思はありません、こう述べてまいりましたが、そのほか、関税が高いものがある、この関税を少し下げられないかというような問題があります。そういう問題をワンパッケージだと言っているので、問題の中身としては、アメリカ対ECの問題よりも、日本アメリカの問題は、繊維交渉をやったときのような大きなものではない。これは両国が利益をやはり計算できるような状態において、おそくとも私は一月の六日、その前後には何とかきまる問題ではないか、こう思っております。
  136. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 十二日からホノルルで対米通商交渉が行なわれておったわけなんで、仄聞するところによれば、これは通貨調整を有利に展開するための側面的なものだと、それがワンパッケージということかもわかりませんが、ところが通貨調整がああいう形できまったときに、それまでの話し合いを一たん白紙に戻せ、白紙に戻して帰ってこいということで中断されたように新聞報道しておるわけなんです。そうしますと、このホノルルの会談では、いまお話にありました大臣のお考えなどと違って、かなり譲歩して、譲歩をしいられた形での話し合いが続いておったのじゃないだろうか。さらに、一月にこれがまた再開されるということでございますが、そうなりますと、その辺の動きがたいへん気になるわけです。その辺の経緯がどうであったか、一度お聞きしたいと思うのです。
  137. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほどから述べておりますように、アメリカはローマ会議のときには、右手では平価調整の交渉をしながら、左手では通商問題をやっておったわけでございます。それで、日本との間はどうなのか、日本製品がECに入ってくることこそこわいんだ、こういうものこそいま問題になっているんだと、当然そういう議論があったはずでございます。それに対応して答えたのが、日米間では片づけられるような状態になっておるし、それはもう大山は越しておるんだということの発言があったと理解すべきだと思います。  で、日本もその過程において、そのワンパッケージだというのが一体どこまでなのかというような気持ちも確かにあったろうと思います。しかしホノルル会談で四人、各省の次官を忙しい中をやったわけでございますが、最終的詰めができなかったということは事実でございます。その後また、私のところでは通商局次長、それから外務省も経済局長が出ております。それから農林省からも局次長がワシントンに出ております。そういうことで、日本だけが全く別個な行動をしたのではなく、ヨーロッパ諸国を含めた十カ国が、みんなやっぱり左手では通商交渉を行ない、右手では平価交渉を行なうという姿勢をとっておったことは、これはもう事実でございまして、それが非常に日本を高く評価をし、日本のためにもよかったということはこれはもう事実であって、これはそれなりの意義があったと思うんです。ただ、そこでもまだ結論が出なかったという問題でいままだ続けております。  これは率直に言って、少しならこちらもやらなければいかぬ。私は特に、繊維をやっておりますから、その次には、もうほかにいろんなものを持ってきても、そんなに簡単に一ぺんにできるものじゃないという考え方をとっているんです。しかし、日米間はバランスをとらなければならぬということもまた考えておりますので、こっちと向こう側との考え方がかみ合わなかった、五百頭と二百五十頭と言って、足して二で割って幾らになるのかというようなところにもいかない、まあ五百頭とでも言うならば、これは五百頭のまないことはないと思いますが、そこを五千頭と言うと、なかなかこれはたいへんな問題でありますし、私のほうでも一%と言うのならわかるんですが、そこを一〇%とこうくれば、なかなか一回では片づかぬという問題でございますが、繊維交渉ほどの大きな問題ではない。ないと言うのは、ICとか電算機等は、私がもう既定方針を変えないと、こう言っていることを前提にして申し上げているわけでございますが、そういうことでこれはやっぱり片づく問題だと思いますし、片づけなければならぬと思います。私はどうも少し甘いようなことを言っておるとすれば、まだ未確定な問題でございますから、両国で鋭意調整をいたしますという発言に訂正してもいいです。
  138. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 これは白紙に戻すように訓令が出たわけですね。
  139. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いや、そういうこと絶対ありません。
  140. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 これは新聞報道の間違いですか。
  141. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 新聞報道が間違いだとは言いませんが、白紙に戻せなどという訓令はないんです。ただ、まとまらなかった。事実まとまらなかったのです。それはいま私が言ったように、ちょっと開きがあったということでございます。
  142. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 経済閣僚委員会に臨む前に大臣は、繊維についてもきっぱりやってきてやるぞということで行かれたわけなんだけれども、いままたサンクレメンテにお立ちになるわけだけれども、きっぱり断わると、まあ今度の場合は信じてもいいわけですね、いままでの方針どおり。
  143. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これはとにかく繊維の問題のときに、あのくらい歯切れよくやっておったものが、君子豹変したと言われておるのでございますから、ほんとうに私も何とも申し上げようがないわけでございますが、なかなか相手のある話でございまして、初めから何でもやるよ、あげますと、さっき原田さんの質問にもございましたが、もうこれだけは後進国に差し上げるんですと言って全部公表したら、これは黙っておっても自動的に向こうへ行ってしまうんで、これはバイ・ケースで、あったら条件をきめて出しますよ、こう言うのはこれはあたりまえでございまして、国益を守る通商産業大臣としての責任を果たさなければいかぬということはもう当然でございますが、これは、前にそういうことがございましたからといって、信用ができないものだとはお思いにならないで、なかなか、苦慮しながら国益を守ることに対してこうべをめぐらしておるわいと、こういうふうにひとつ御理解をしていただきたいと思います。
  144. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 これはそれじゃ、すなおにそういうふうに理解しておきたいと思います。  ちょっと話題が変わりますが、これは通産大臣として、率直に申し上げて景気回復の時期を大体いつごろに見られるか、承りたいと思います。
  145. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) この景気回復というのは、まあ指数が上がってこなければならないわけでございますが、これは確かに六、七月ごろまで、非常に沈滞ぎみであったものが上向きかけてきたというのは、これは人為的にやらなくてもそうなっておったわけです。ところが、八月のニクソン・ショックでもって為替変動相場制に移行して、またがたっときた。そこへ持ってきて、今度は平価の調整でもってまたがたっとくるというわけですから、これはこのままでいけば、年率一〇・一%というのが四%台しかできないだろうと言っております。経済企画庁は、絶対に七%や八%はできる、それから五・五%になり、それから四%から五%の間であろう、このごろは四%に近いニュァンスを出しておるわけでございます。  来年度はどうなるかというと、横ばいである、こう言っておるわけでございますから、これは予算でもってどの程度景気浮揚が行なわれるかということになるのですが、いま年率四%台であるということになれば、これは前半も四%台なら、ずっと十二カ月を通して四%台というふうに見てもいいと思うんです。そうすると、来年は上半期から四%台になれば、とても年率七・五%なんかになるわけがないのでございまして、そうだとすれば下期には一〇%をこすようなものにしなければならない。そうなれば、昭和四十八年には一〇%平均にも確実にいくということになるんですが、そんなにはならないと思います。ですから私は、来年の一−三月、四−六月ぐらい、どうしてもいまの四十六年度の状態でいくのじゃないかと思います。それを政策的に押し上げる力を作用させることによって、まあ七−九月、十−十二月ごろ、下期には上がっていくようにしないと、もっと早く上がらないと年率七・五%というものはなかなか維持できないのですが、ことし一ぱい年率四%でもって、一体来年の上期に上がるのかどうかということは、これは相当政策的な努力が必要であるということでございまして、もう一週間ぐらいすれば、来年は景気はこういう事態でこうなります、そのための予算を組みますという経済見通しを発表いたしますが、いまは非常にむずかしいところでございまして、どうもはっきりしないことしか申し上げられないわけでございます。
  146. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 今度の平価調整によって、まあ施策のよろしきを得れば、輸入価格の低落で消費者にメリットがあるわけなんですが、いろいろ問題があって、いままでも、変動相場制の中でも直接的な消費者へのメリットというものは見られていない。これから三百八円という形が続く中で、メリットは十分生かしていかなければならぬわけだけれども、私の感ずるところ、流通段階でこの減分を吸収してしまって、そして消費者へは、結果的にはしわが寄っていくというようなことになるように思われてならないんです。その辺のところ、もう少し抜本的なてこ入れというものを考えられないものかどうか、その辺ちょっと承りたいと思います。
  147. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そういう、御指摘になられたようなところが一つこれからむずかしいところだと思います。これは利益を受ける面とマイナスを受ける面が、両面出てくるわけでございます。また、国全体とすれば、原材料の大半を外国から輸入に仰いでおるわけでございますから、ドル建てのものは全部プラスになるわけでございます。ですから今度のドル切り下げ円平価切り上げによりまして衝撃を受ける、マイナスを受ける部面が、それに対応できる体質をつくり得ることができるとすれば、これは円平価切り上げというものは、円の価値が出たのでございますから悪いことではない。総理がおとといも述べたように、これは日本の財産がふえることである。これは悪いことではないのでありますが、当面する問題から考えますと、これはなかなかマイナス面は大きいんです。マイナス面のほうがちょっと大きく見えるんです。それはもう中小企業輸出力が非常に押えられるとか、景気が浮揚しないとか、投資意欲がなくなるとか、いろんな問題がございます。  もう一つは、昭和初年のように、平価が切り上げられたときには月給も全部がたっとその分切り下げられるというのであれば、それはものが安くなると思います。昭和初年一三・六%切り上げられたと思うんですが、その月は月給は頭から一〇%引いて払ったわけです。ですから、それは物価にすぐ影響を来たすと思いますが、不景気も身にしみたわけでございます。このごろは価格安定とかいろんなことがあって、みんなかんぬきが入っておりますから、そういう意味では、ドルが下がったからといって、必ずしも直ちには消費価格影響しないということがあるんです。それは製品価格に対する原材料価格のウエートがうんと違っておりますし、それから今度見ておっても、こんなに不景気だから月給はうんと上げなきゃならぬ、相当大幅に賃上げをやらなければいかぬという要求があることを考えると、昭和初年とは全く条件が違うという問題もございます。ですから一様には考えられませんが、変動為替相場制の中において一つの現象があります。OPECであれだけ大幅の値し上げを要求されたにもかかわらず、最終的な価格は据え置いた。それは変動為替相場制のあの範囲内で消化をせしめたということになっておりますので、これはやはり究極には、一年とか一年半とか長い時間がかかれば、円価値が上がったものに対する輸入品は下がってまいる、消費者価格に必ず影響する、つながる、こう見べきだと思います。  もう一つ言いたいのは、これはもう少し時期的には前にやっておくべきだったかもしれませんが、これはもう少し自由化をしてもらわないと、どうも自由化をしても関税をうんと取るから、実際下がらない。牛肉は下がらない。これはもう小学生でもわかる議論でありますが、自由化をしたにもかかわらずさっぱり下がらないというものは、レモンなどそうだったのです。これは下がらぬ。そのうちに下がりますと言っておったら、この間からどかっと三分の一に下がった。あれは、持ちこたえられなくなってくれば下がるわけでございますし、そんなに特定の業者だけが輸入をしておって、倉庫の中に入れておって値上がりを待っておるなら無制限に輸入を許すということになれば、これはそうなるにきまっておるんです。しかし、そうなると業者の育成ができないということで、石油関税を石炭に戻しておるような、大なり小なり全部そういうことをやっているわけです。ですから、これは無制限な自由化をやったら経済が混乱をいたしますから、そんなにできないわけでございますが、やはり自由化の方向というのは避けがたい。そういう意味では、私は自由化が進めば消費者物価国民生活には必ず好影響があらわれる——好影響とは必ずしも言えるかどうかわかりませんが、影響があらわれてくる。ドルが下がっただけのものは下がってくる。こうならなければいけませんし、必ずなります、こういうことを申し上げておるわけです。
  148. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 ドル・ショック以来、中小企業、これは輸出関連の中小企業にかなりな滞貨があるわけなんです。せんだって、私もずっと産地を回ってみたんだけれども、たとえばタオル業界なんかの場合ですと、アメリカ輸出しておりたものが全然輸出がきかない。そうなってまいりますと、独特の染めをやっておるために、それを国内  に振り向けることができない。国内では需要が全然ない。滞貨としてそれを持っておるわけなんです。これは一つの例です。こういった滞貨を、一つには景気刺激のため、あるいはそういった中小企業を救う意味からも買い上げて、そうして後進国への商品援助というような形がとられないものかどうか。まあ後進国の援助というものはこれから一番大きな問題だということは、大臣がいまおっしゃったとおり。こうなると、非常に一挙両得といいますか、中小企業それ自体も非常に助かるし、そして現に印パ戦争などで見られるような、ああいった地域の難民を救済する意味からも即効性のあるもので、思い切ってそういった手を考えてもらいたいと思うが、どういうものですか。
  149. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) この商品というものを少し買い上げなければならぬかもしらぬということは、私は調印するころか、した直後か、私自身もそういうことを申し上げました、考えなければいかぬと。そういうことでもして、輸出の多様化ということをだんだんと拡大していくべきである、そのためには、もう難民救済にパンツでもつくって送ったらどうかと。大臣はそう簡単なことを言うけれども、アメリカ向けの厚いパンツを、とても南方に送れるものではないというような、いろいろな御注意も受けながら、しかし製品を一時買わなければならぬかもしらぬ、買ったものはやはり延べ払い輸出にするか、商品援助というものでやらなければならぬかもしらぬ。いままで商品援助に対しては相当な抵抗があったわけでございますが、今度フィリピンや東南アジア諸国に対して、いままでとすれば考えられないほどの商品援助比率を高めたのは、そういう事態を想定しまして、強く主張した一つの結果でもございます。これは要請も強くあったのですが、そういうことをきっかけにして商品援助比率が大きくなったことも事実でございます。  ただ、いま簡単に、商品援助にそれをいたしますとか買い上げますといって、買うならどこで買い上げるか。これは協会に国が出資でもしておいて、そして必要ならば買い上げさせて、利子補給でもしておいたらいいじゃないかというような、簡単な話が伝わっております。おりますし、やるとすればそうなるのでしょうが、簡単にはなかなかできない。なぜならば、二千億という救済をやっといまきめたばかりでございまして、これから織機の買い上げ、解体、いろんなことをしなければならないのでございます。  ですから、その上にいますぐ、何も買います、かにも買いますということは、なかなかむずかしいと思うわけでございますが、これはやはり通産省にそれを買って持っていなさいと言ったって、どうするわけにもいかないから、いま滞貨をしておるものがどのくらいあるのか業界でみずからそれをつかんで、いままでは同じ土地におりながらも系列別でみんな別にしておりまして、自分がどのくらいの製品を持っておるのか、全然教えないという状態であった。そういう状態がありますから、これは私は業界にも、そういうものをみんな洗いざらいひとつ計算してもらって、業界の力でもって、どこへはけばいいんだ、延べ払い輸出にすればこうなりますというような具体的なものを検討なさい、こう私も言っておるわけでございます。どこへも売り手のないところへ、どんどんどんどん政府が買うからといって製品をつくられたのでは、これはやはり国民の税金を無制限に使うわけにはまいりませんし、そういう意味で、いま過渡的にどうするのか、将来的にどのくらいの期間どうするのかという問題は、これから十分検討して勉強していく問題でございまして、いまにわかに私が、踏み切りますなどと申し上げられない段階でございます。
  150. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 予算が大体繊維に対してはきまったわけなんで、大臣もたいへんな努力をしていただいたわけですが、大臣もお気づきだったと思うのだけれども、約十四万五千ほど全国に繊維の事業場が散在しておる。十四万五千の事業場というのは他の産業には例がない。まさに米作みたいなものだ。しかも十四万五千ある事業場の中で、三百人規模以上の事業場というのはわずかに六百、実に十四万四千何がしは三百人以下の中小零細企業、これが実態です。これをただ単に救済救済といったところで、一つの産業の将来性というものを考えた場合に、困ったから織機を買う、あるいは融資するだけでは、本質的な対策にならないわけです。  そういう意味から、今度十億の出資金というものがあるわけですね。現在協会があるわけだけれども、この協会の機能をもっと本質的に、特別の臨時立法みたいなものを立てて、たとえば公団あるいは事業団というようなものを設置して、そして先ほど言った商品買い上げ、商品援助の窓口にもすれば、あるいは中小企業それ自体の本質的なてこ入れというものをそこにになわすというようなことも考えられると思う。現在の繊維工業構造改善事業協会というものは、過去からの流れを見ても、それほど大きな動きが現にできていないわけなんです。その辺のところを私は抜本対策としてひとつ、石炭のときのように公団あるいは事業団あたりを設置して、そして強力に体質改善をはかるというようなことをやるべきだと私は考えておるわけです。その辺のところを、通産省としてもいろいろ問題があるように私は事務当局には聞いておるわけであります。高度な政治的な判断でこの際繊維を手がけられたわけなんだから、三年ぐらいかかって一ぺんこれをやってみようというふうな踏み切りができぬかどうか。私の希望もかねてですね。
  151. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) あなたは繊維の専門家でございます。私はあまり専門家でないわけでございますが、それはむずかしいのです。繊維という企業自体が非常にたくさんのものであり、非常に高度なものでもありますし、もう、一人から何千人何万人というものまであるわけでございまして、そういう意味で私もそういう繊維が戦後——戦後というよりもやはり百年間の日本の歴史の中で、世界に窓を開いた状態において繊維が位置したものというのは、たいへんな歴史的な重さがあると思うのです。特に、全く貿易ができなかった戦後四分の一世紀に、先がけとなった、水先案内となったものが繊維ですから、そういう意味で繊維のたくましさというものも私はよく知っております。たくましさを知っておりますと同時に、なかなか通産省の繊維局あたりではやれるものじゃないのです。私自身が、通産省に行ったときに繊維局の諸君に、悪いけれども君たち繊維全体をやろうというのが間違いだ、これは一つの政治だ、非常にむずかしいものであると。それだけに私は二千億というものを——初めなかなかこれはたいへんな抵抗なんです、対米でとにかく一年間の貿易が二千億なんですから、その二千億を一年間でもって予算化すということがいかにむずかしいことであるか、私、大蔵大臣予算を三回も四回も組みましたが、非常にむずかしいことなんです。ですから、本予算とはずして二千億をきめてもらったということでありますが、それで終われりと思っておりません。  だから、いまの協会を活用しようということも考えておるのですが、繊維局が中心になったり、どうも戦後の鉱工品貿易公団とかというもの、そういうものではできません。これは私はやるとすれば、政府も出資をするとかいろんなことをしてお手伝いしてもいいんですが、やはり今度は繊維連盟が中心になってやるべきだと思うのであります。私は、通産大臣になど訴えてばかりいないで、ほんとうにそういうことを考えなさい、そう言っているんです、まじめに。ほんとうにそういうことでして、これはやはり繊維の本職が協会をやってもらわないと、とても始末に負えないような結果になるんだ。これはとても簡単にやれるものでもないので、相当な積極的な対策をやりましたけれども、一番ものわかりよくて一番合理的であるその製品をどうするかという問題に、あえて私は踏み切れなかったんです。これはやはり専門家がそういうものを、政府が税制上どうしてくれれば、金融上どうしてくれればこの問題一切お互いが共同の責任でやりますというようなことになれば、これはもう通産省も全力をあげて応援を申し上げる。これは二国間協定を行なった責任もありますし、そんな責任がなくても全力を尽くしますが、あまりにもむずかしい問題であるだけに、やはり専門家がどういう結論を出されるかを待たなければならぬ。こう思っておるのです。
  152. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 そうしますと、繊維を扱う者がそういったものを設置して、そして本気で取り組む姿勢を持つなら、財政金融上においては全面的にバックアップするというふうに理解して、これから少し施策を進めたいと思います。そのときはひとつよろしくお願いいたしたいと思います。  それから今度の輸出保険の問題ですが、新たに融資買鉱方式の保険制度がここに出ているのですが、経営に参加する開発方式と融資買鉱方式、この二つの方法があると思うのだけれども、私はやはり趣旨説明で述べられたように、安定的に資源の供給を仰ごうと思えば経営に参加した開発方式のほうがいいと私は思うのだけれども、現実に、現在の資源保有国が後進国に属するわけで、そこのナショナリズムというものもあるでしょうし、この二つの方式がどういうふうな動きになりつつあるのか、そしてまた通産省としてはどちらに今後ウエートを置いていこうとしておるのか、その辺のところをお聞きしたいと思います。
  153. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあこまかい問題、技術的な問題は事務当局から答えさせますが、いままでは、必要なものだけ海外から持ってこられたのです。ところが、なかなかそうならなくなったのです。これはこの間の日加経済閣僚会議で、日本にはこれだけ物を買ってもらおうと。日本はお得意じゃないですかと、やんわりと私はそう言ったんですが、しかし向こうは、いままではたいへんなお得意でございましたと言っておったカナダが、カナダから鉱石を持っていって日本で精錬をして、そのかわりに日本は巨大な利益を得ておるじゃないか、それでは困るんだ、だから原石は何十%かカナダの工場で精錬をして、そうすればカナダの国民が就業の場を得るから、そしてその二次製品を日本で買ってくれればいいのだ、その比率をきめなければ法律をつくります、こういうことを言っているわけです。今度イランから石油を開発しようとしますと、石油だけではない、現地で精製工場をつくってくれ、精製工場だけではなくて石油化学の工場もつくってくれ、それでワンセットでもって全部やってくれれば住民が就業して利益を得るのであって、物を売って代金だけをもらうことでは困るんだ、それでなければうんと高い値段で買ってくださいというふうに、みんなそういうふうになっているんです。  ですから、必要やむを得ないということよりも、そういうことでなければ、ワンセット開発でないと現地がなかなか応じられない、長期・良質・低廉というようなものがなかなか多量には確保できないということもありますし、お互いが了解し合いながら、和気あいあいのうちにお互いに開発のメリットを分け合うというふうになるには、どうしても、ストレートにほしいものだけを持ってきて、あとはそっちのほうでというようなものから、だんだん相互的なものに転化しておって、この法律などは、当然そういう現状に徴すればこういう方向でなければ開発できないということでございます。
  154. 外山弘

    政府委員(外山弘君) ただいま大臣からお話がございましたように、鉱物の開発につきましては、鉱物によりまして、また開発する国によりまして、それぞれやはり自主開発方式あるいは融資買鉱方式、どちらがいいかという判断が具体的にあるのだと思います。ただ、やはり御指摘のように、安定的な開発ということになれば自主開発のほうがいいにきまっていると思います。したがいまして、従来鉱山石炭局におきましてもそういう方向を可能な限りやってきたのだろうと思います。と同時に、鉄鋼石とか粘結炭については、早くから融資買鉱のほうが多かったという経緯も事実ございます。私どもといたしましては、それぞれの具体的な事情を考えて運用してまいりたいと思いますけれども、要は資源開発が大事でございますから、その方式についても多様化を加えていくと申しますか、いろんな方法が可能なように応援体制を整えていくことが必要であろう、こう考えている次第でございます。
  155. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 この投資保険の場合は政治リスクだけの保険ということになっておるし、今度の融資保険の場合には政治と信用両方のリスクをカバーしようということになっている。地下資源を開発するという特殊性から見て、非常に地下資源開発というものはリスクを伴う。投資保険の場合、政治危険のみということでは私は片手落ちのように思うのです。たとえて言うなら、コンゴのムソシ鉱山というのが一番大きな——これは御存じのとおりだと思う。ここの例を見てみると、開発なんです。開発だけれども、全部の資金が二百七十億ぐらい要しているわけだけれども、そのうち現地の法人の資本金が十八億ですね。こうなると、二百七十億ほどのうち資本として投下しておるのは十八億ほど、あとは言ってみれば融資だということになる。しかし経営に参加しておるからといって、融資したものについては保険の対象にはならない、こういうことですね。しかし、資源を開発する面から言えばこれが一番いい方法だということなんで、私はそういった面、現実にこれからも後進国に資本を投下する場合に、経営支配といっても、いままでの現状を見れば大体四九%でしょう。五一%というのはもう無理だと思う。五〇も無理、四九。それも、どんどん向こうは変えたい、しかも現地に経営者を送り込んでも、何年後には半減しろという条件がついてくるわけです。そうなってくると、片面では買鉱方式が進むというものの、長期安定的な資源を確保するために投資が必要だ、開発のほうがいいんだと誘導施策をとりながら、保険の面から見るとそれは政治危険だけ。多額の融資をしておりながら、その融資については対象にしないんだということなんです。  この辺を事務局にお伺いすれば、保険理論から見て、経営支配をしているところに経営リスクをカバーすることはできぬのだ、これが世界的な慣例だというふうにおっしゃるけれども、やはり資源のないわが国にとって、資源開発というものは何にもまして大切なら、もっと高度の政治的な判断でそれを何とか形づけなければ、私は開発ということが進まないと思う。しかもリスクが非常に大きいわけです。この辺を思い切って私は踏み切るべきだ、今度間に合わなかったら、次のときにでも改正してでも私はやるべきだと思うのであります。その辺のところをお聞きしたいと思います。
  156. 外山弘

    政府委員(外山弘君) 前段の点は、先生が御指摘され同時にお答えもしておられましたように、確かに海外投資というものを一般論でみた場合には、経営参加をしているのであるから、そこに信用危険まで担保するのはおかしいということになるわけでございまして、保険の大前提でございまする保険事故の偶発性と申しますか、支配不可能性と申しますか、そういった原則から見まして、保険によるカバーを信用保険まで与えることは、一般論としてはむずかしいというふうなことになりますし、世界各国の事例も、そのように制度としては定着しているわけでございます。しかし、一般論はそうでございますけれども、先ほど先生が御指摘のような、二百七十億の投資の中で十八億しか投資していない。そのほかにあるいは役員が派遣されているとか、いろいろな援助形態というものが伴っているかもしれませんが、ともかくもそういった実情からみると、はたして経営に参加している、つまりそれに伴う経営支配をしているかということになりますと、実質的にはもっと具体的な判断をしていかなければいけない、こういうふうに考えるわけでございます。で、海外投資と申しましても、各種各様の形態があるわけでございますから、一律の基準をもちまして経営支配の判断基準とするということはかえって不合理を招くということもあると思います。私どもといたしましても、単に出資比率だけで判断すべきではない、役員構成も考え、いろいろなことを考えて総合的に勘案して具体的案件ごとに判断をしたい、こう思っておりますし、その点は具体的な事情を鉱山石炭局ともよく御相談いたしまして、そうして経営参加、経営支配であるかないかということを実質的に判断してまいりたい、こう思っておるわけでございます。
  157. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 そうすると、それは弾力的に運用できるということですか。
  158. 外山弘

    政府委員(外山弘君) 決してその五〇%以上とか四九%とかということの一律の基準で運用はしない、こう考えているわけでございます。しかし基準ははっきりとさせたいと思いますので、その点は鉱山石炭局ともよく御相談をしたい、こう考えております。
  159. 柴田利右エ門

    柴田利右エ門君 それじゃ、時間もありませんので簡潔に二点御質問を申し上げます。  これは今回の改正と直接関係はないかもしれませんけれども、海外建設工事保険というのがありますね。これについて、発電所のダムだとか港湾施設、道路建設、こういうものでかりに一千万ドルなら一千万ドルの契約ということで仕事をしていく。その中でプラントの金額が八百万ドルだ。これは例ですから、数字は多少似つかわしくないかもしれませんけれども、現地の据えつけ工事等に残りの金額を振り当てる。こういう場合に、先に現地の人を雇ったりなんかする場合に、その用役費を先払いをする。こういう場合に保険の対象になるのはプラント代の八百万ドルだ、そうして用役費は保険の対象にならないのではないかというようなことも聞いておりますが、この辺がはたしてどうなっておるのかという点ですね。  それからもう一つは、七つの輸出保険の中で、全部にあるのか、その中の特定のものにあるのかよくわかりませんけれども、地域差料率というのがあるのではないかというふうに思いますが、これは船の場合見てまいりますと、籍のあるのはリベリアだとかバーミューダというようなところにあって、しかし実際は、何といいますか、実権者といいますか、従来の国のつながりというようなことで、いま申し上げたようなことであればイギリスに実際の実権がある。こういう場合に、ABCDEのランクがあって、そのランクからいけばCにランクされる、Dにランクされるということになるんですけれども、実権国の関係でいけば、まあイギリスというのはAになるかどうか、私もよくわかりませんけれども、そういう点で多少実体とふさわしくない面があるのじゃないかというようなことも考えられるわけですが、この二点について、時間があればもう少しお聞きしたい点もありますが、もう時間がありませんので、その二点だけひとつ。
  160. 外山弘

    政府委員(外山弘君) 第一点の建設工事保険につきましては、これはただいま御指摘の点は輸出代金保険一本でカバーしております。  それから第二点の問題でございますが、輸出保険につきましては、確かに地域差料率というものを適用しておりますし、先ほど御指摘のようなAということですと、まあ先進国が主として相手でございますが、若干安くなっているというふうな実情にございます。しかし、輸出保険の地域差料率と申しますのは、やはり輸出契約における仕向け国の政治経済情勢を判断して設定するというたてまえになっております。そうしまして、この観点からいたしますと、輸出契約の相手国である便宜置籍船国、そういったものについて実際の所有国の料率を適用するということは、ちょっと困難であるというのが現状でございます。
  161. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 きょうは時間があまりありませんので、私、質問も簡潔にいたしますから、ひとつ答弁も簡潔に要点だけ答えていただきたいと思うのです。  今回の法律改正案は、バイヤーズ・クレジットや融資買鉱における融資プラント輸出のフル・ターン・キイ契約を、新たに輸出保険の対象に加えておりますが、これはわが国の資本にとって好ましい海外進出の条件、より安全な環境をつくり出すものであると思いますが、そう理解してよろしいでしょうか。大臣、いいならいいというふうに簡潔に答えていただきたいと思います。
  162. 外山弘

    政府委員(外山弘君) それは、御指摘のとおりだと思います。
  163. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 通産大臣は、提案理由の中で、バイヤーズ・クレジットやフル・ターン・キイ契約について、プラント輸出の国際競争に対処すること及び発展途上国の開発プロジェクトの推進に協力することがその目的である旨のことを述べておられます。開発プロジェクトとは、どのような種類の、どのような規模のものをさしておられるのか、その点を。
  164. 外山弘

    政府委員(外山弘君) 開発プロジェクトと申しましても、単にたとえば石油プラント等を設置する場合から、その地域の開発計画、その中にいろいろわが国として協力できる部分があると思いますが、そういった大きな開発計画まで含めまして開発プロジェクトと言っておるわけでございます。
  165. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 ちょっと説明が抽象的だったのですが、種類並びにその規模ですね、どのくらいの規模のものを考えていらっしゃるかですね。
  166. 外山弘

    政府委員(外山弘君) 規模にもこれはいろいろあると思いますが、私どもが実際にいろいろ、この今回の措置に踏み切る前に要請例の実例をいろいろ調べてみました限りでも、いろいろな種類がございます。石油プラント、化学プラント、火力発電プラント等のプラント類が非常に多うございますが、全体として平均の金額が、その要請分の中では約二千四百万ドルくらい、つまり普通のサプライヤーズ・クレジットのプラント輸出よりはだいぶ大きな規模のものが平均して多うございました。
  167. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 規模としては大体二千四百万ドル以上のものと、こういうことですね。
  168. 外山弘

    政府委員(外山弘君) それが、ただいま申しましたように平均でございました。
  169. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 通産省の参考資料によりますと、諸外国のバイヤーズ・クレジットの保険引き受け条件は次のようになっております。それはここに私ももらってあるわけですが、イギリス、フランス、ドイツですね、そういうのをここにもらっておりますが、わが国は、この保険引き受け条件をどのようにするお考えなのか。
  170. 外山弘

    政府委員(外山弘君) 現在検討はしておりますが、大体私どもの頭にありますのは、一つは諸外国の基準を勘案いたしまして、普通の従来ございましたサプライヤーズ・クレジットに比べれば大規模のものを考えたい。それから第二は、相手国の経済開発に寄与するということ。特に船舶、車両といった単品の輸出よりも、技術を伴うプラント類とか、あるいは鉄道や発電プロジェクト、そういったインフラ部門の整備といったようなことを頭において運用いたしたい。さらに相手国の商慣行と申しますか、入札条件等でバイヤーズ・クレジットを特に希望しておるというふうな点も、もう一つの判断でございます。それから、そういったことを反映いたしまして、輸出者が複数である場合が多いのではないだろうか。こんなようなことを頭に置いて引き受け基準をつくりたい、こう考えておる次第であります。
  171. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 ここにもらっておる資料によりますと、イギリスは、「つぎのいずれかの条件を満たすこと」として「輸出契約額が一〇〇万ポンド以上で、期間五年以下、二〇%の頭金支払」「外国政府等の大規模プロジェクト案件(二〇〇万ポンド以上)」それから「外国政府経済開発計画のための市銀クレジット・ライン」とか、いろいろ出ております。これを一々読んでおりますと時間がかかりますが、百万ポンド、二百万ポンド以上とか、それからフランスの二千五百万フラン以上とか、それからドイツの五百万マルク以上とか、相当の金額だと思うのですが、日本ではこれ以上のことを考えていらっしゃるようにいま受け取ったんですが、そういうふうに理解しておいていいわけですか。年限などはどういうふうに考えていらっしゃるのか、金額はどのようなことを考えていらっしゃるか、条件としてどういうふうに考えているか。
  172. 外山弘

    政府委員(外山弘君) 先ほど申しました平均の二千四百万ドルと申しますのは、現在のサプライヤーズ・クレジットに比較しますと十数倍の大きさでございまして、平均としてもかなり大きいわけでございます。私どもとしましては、やはり諸外国の基準等を参考といたしまして、先ほど申しましたのは二年間の要請の実例でございまして、実際に実行した例ではありません。ただアンケート調査等をとりました際に出てきた例でございますが、とにかく大規模なものであるとは思いますが、それほど大きなものでなければ引き受けないというふうにすべきかどうか、これはさらに検討しなければならないと思います。つまり、大規模なものにできるだけこの運用を考えたいと思いますけれども、たとえば幾ら以下ではいかぬというふうな基準をつくる場合には、十分慎重に考えなければいけない。ただいま先生の、イギリスにつきまして輸出契約額が百万ポンド以上とこうなっておりますが、実はつい先月でございますか、イギリスもこれを四分の一、つまり二十五万ポンド以上というふうに引き下げております。あるいは運用に当たってそういうふうな配慮をする必要性が実際面から出てきておるんではないかと思いますが、その辺の諸外国の実例は十分参考にいたしまして、私どもとしては考えてまいりたい、こう思います。
  173. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、金額でいえばどれだけの金額とか、期限は何年間とか、そういうようなことはまだはっきりとはきめていない、これから諸外国のものも参考にしながらきめていくと、こういうことなんですね。
  174. 外山弘

    政府委員(外山弘君) そういうことでございます。
  175. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 鉱物資源の開発投融資でございますが、特に融資買鉱のための融資額が、通産省の参考資料ここにありますが、それを見ますると、昭和四十三年度から急激にふえてきておるんですね。現在どのような鉱物資源が融資買鉱の対象となっておるのか、なぜこのようにふえてきておるのかという点をお伺いします。
  176. 外山弘

    政府委員(外山弘君) 御指摘のように、融資買鉱につきましては最近非常にふえつつある傾向を、数字の上でも四十三年以来示しているわけでございます。いま担当の局がおりませんのでこの内訳はよくわかりませんが、私の知る限りでは、鉄鉱石、粘結炭等がふえている中のかなり多くを占めているのではないだろうか、こういうふうに考えます。
  177. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 これ、ずいぶんふえているんですね、この例で見ますと。四十年度は合計八百十万ドル、それから四十一年度が四千百三十万ドル、こういうふうにずっとふえてきて、もう四十五年になると二億五百四十万ドルですか、そういうふうにふえてきておりますね、数字計算してみますると。これは非常な増加率を示していると思うんですが、そのおもな理由は、いまあなたがおっしゃったような鉄鉱石、それから原料炭、それの増加による増加と理解するのですか、どうですか。
  178. 外山弘

    政府委員(外山弘君) そのほかに銅などもかなり融資買鉱はふえているのではないかと思います。いずれにしましても、四十三年ごろから、四十年の不況期を脱しまして、資源開発需要というものに対して非常に、何といいますか、国内的な要請もふえてきているし、そういったことに対する積極的な態度がここに反映されているのではないかと想像いたしますが、鉱山石炭局がおりませんので詳しい鉱種別の内容はいまございません。ただし鉱物としては、先ほど申しました鉄鉱石、原料炭のほかに銅とお考えいただければ、大体これに相当するふえ方の大部分を占めているのではないか、こう考える次第でございます。
  179. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私もこの点について調べてみましたが、ちょっと確認しておきたいと思うんです。鉄鉱石、原料炭、銅、それから鉛、亜鉛、ニッケル、こういうものがずっとこの融資買鉱の対象になっている、こういうふうに私は聞いておるわけなんですが、間違いありませんか。
  180. 外山弘

    政府委員(外山弘君) 鉱山石炭局がおりませんので正確には申し上げられませんが、たぶん間違いではないのではないかと思います。
  181. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それではあとからその詳しい人に聞いて、別に参考資料として出していただきたいと思います。  それから融資買鉱プロジェクトにはどのような例があるかです。また、どのような企業がそれを行なっているか、具体的に二、三の例をあげていただきたいと思います。
  182. 外山弘

    政府委員(外山弘君) これも実は担当の局に聞きませんと正確にわかりませんが、私の知る限りでは、たとえば鉄鉱石の開発については融資買鉱の例が多いと思います。これは鉄鉱会社が共同で開発融資を行なっているというのが多いと思います。そのほか、原料炭につきましても同様な、やはり鉄鉱会社がやっているケースが多いと思いますし、石油についても、どこの企業がやっているかはちょっと私知りませんが、これについても最近例があったように記憶しております。
  183. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 ここに通産省から参考資料として出ているんですよ、ちゃんと。だから、ぼくらに参考資料として出す以上、あなたたち知ってなきゃおかしいと思うんだな。答弁者が知らぬというような資料を何で出すのですか。私は、これをしっかり確認しておきたいから聞いておるんですよ。
  184. 外山弘

    政府委員(外山弘君) 私どもがこれをまとめましたのは、開発融資の総額を内容といたしまする数字の経緯でございまして、この中の個々の内容が、どこの会社がどんな鉱物をどこの国から買っているかという、こういう資料につきましては、実は私どものほうではわかりませんで、鉱山石炭局のほうにまとまった資料があると存じます。これは早急に鉱山石炭局のほうに連絡いたしまして、私どものほうでお答えするようにいたします。これはただそのトータルを教えていただいて、ここに鉱物資源の開発融資額がどんな推移を示しているか、つまり非常に需要が多くなってきているということをお示ししたくて、むしろ数字をお借りして、こういった四十五年度までの数字を年度別に比較してお渡ししたと、こういう資料でございます。
  185. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私、一例を言いますがね、石炭はないんですよ。だから、それがほしいのですY鉄鉱石や石炭がね。ここに私の持っているのは銅山です。トレドという銅山の開発です。それからリオ・ブランコ、これも銅山です。ブーゲンビル、これも銅山です。エルツベルグ、これも銅山開発。ローネックス、これも銅山。銅山の開発の資料だけしか、実はあなたのほうからここに出してきていないのです。そうして私が尋ねたいのは、トレド銅山開発、これに対する総開発費は三百九十二億円、それからリオ・ブランコのほうは五百六十四億円。そのうち日本側の融資額が、トレドは四十一億円、リオ・ブランコが百十六億円。ブーゲンビルのほうは総開発費が千百六十二億円で、うち日本側の融資額が百八億円。それで、これらに対する融資会社はどこかということですが、ここに書いてあるのですと、トレド銅山開発に対しては三菱金属鉱業が四十一億円融資している。それからリオ・ブランコのほうは住友金属、日本鉱業、三菱金属が百十六億円の融資をしている。それからブーゲンビルのほうには百八億円、三菱商事、三井物産が融資者。そうなっているわけなんですね。このように、日本の商社の融資金額は相当の金額ですね。これを私ははっきり知りたかったのです。それで、石炭も鉄鉱石も資料として出してください、これは銅だけしか出ておりませんから、ほかのものも出していただきたいのです。  そこで、発展途上国の開発プロジェクトに見合う信用の供与やプラント輸出、鉱物資源の開発投融資などの経済行為を実際に行なうことのできる力を持っているのは、現実にはそのほとんどが、私がいま申しましたように、わが国の大資本、大企業であると、こういうことがはっきりするわけですね。小さいものはできない。したがって、この改正案で恩恵をこうむるのは、もっぱらわが国の大資本、大企業であると私は思いますが、大臣、どうでしょうか。
  186. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 必ずしも大資本、大企業だけがということではありません。これは、いま通産省へ持ち込まれているようなものでも、それぞれの国との関係がある企業がいろいろな計画をいたしておるわけでございまして、大企業に偏しておるということではないと思います。
  187. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 大臣、大資本に偏してないとおっしゃっても、これだけの融資をできるのは大資本、大企業しかできないということですよ。中小企業やそんなものでは、とても融資できないじゃないですか。だから実際に融資のできるのは、いま申し上げましたように、銅だけをあげましてもそうなっているでしょう。だから、石炭なり鉄鉱などはもっと大きいことだろうと私は思うんです。だから私はそういうことを言うんです。何か中小企業者でこういう融資をしているところがあったら、例をあげて私に答えていただきたいです。
  188. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 大体において鉄鉱山、非鉄金属鉱山というようなものは相当な投資が必要でありますし、一定の規模、相当額の規模になりますから、そういう意味で大企業と言われるかもわかりませんが、私がこうオウム返しに申し上げたのは、共産党の方がいつも言っておられる大企業というような意味ではありませんと、こう申し上げたわけでございまして……。
  189. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 だから、私はこの法案で恩恵をこうむるのは、私たちが言う大資本、大企業が恩恵をこうむるのであって、中小企業などはこういう恩恵をこうむる立場にないということ、もしあったら、これを後ほど資料で出してください。  もう時間が過ぎますから次の質問に移っていきますが、政府は、わが国の資本はどんどん海外へ進出していきなさい、こういう方針ですね。その際の危険負担や損失のカバーは、今回の法律改正で一そう広く行ないましょう、こういう立場に立っておると私は理解します。  現在、発展途上国などは、わが国の独占資本の海外進出に対しまして強い警戒心を持っておると言われております。わが国の大資本、大企業の海外進出は、いわゆるエコノミックアニマルとかイエローヤンキーとか、こういうふうなことばで迎えられておるわけですね。それほど評判が悪いわけですが、政府もよくその点は承知していらっしゃる点だと思います。この現実は、一体何を意味するのかという点ですね。わが国の独占資本がきわめてどん欲に、なりふりかまわず利潤の追求に励んでおることにほかならないと、私は理解いたします。  日本の大企業のこのような海外進出のあり方を、政府は是とするのか非とするのか。政府はこのような日本の資本のあり方に対しまして、どういう考えを持っていらっしゃるか、ひとつお聞きしたい。また、このまま放置をしていくのかどうかという点です。
  190. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そういうふうに御指摘をされるような面が、全然ないというわけではありません。アメリカ資本の場合、ヤンキー資本ということで手きびしく批判をされておったり、また一部では国家に強制収用されたりしておるものもございます。エコノミックアニマルと、日本人自身が言っておるのもおかしいことでございますが、人の言うことを自分で言っているのもおかしいこのごろの風潮でございます。真珠湾を忘れるな、日本人を打つべしという意味をあらわすハバハバということばを日本人がハバハバと言っておったのと同じようなことで、私もあまり愉快なことばではありませんが、しかし、だれかにそういうことを言われるだけでも、注意しなければならぬということは当然でございます。  日本世界アメリカに次ぐというよりも、ある時期には、アメリカを越えるほどの資源を海外から輸入しなければやっていけない国であります。そういう国が、イエローヤンキーと言われるようなそういうことでは、もう日本人自身が困るのでありまして、やはりギブ・アンド・テークの原則、つまり公平な利潤をお互いが受け取るのだということでなければ、とてもそれはだめだと思うんです。ですから、私は先ほども申し上げましたように、ただ必要な原材料だけ掘り起こしてきて、こちらへ持ってくればいいということではなく、その原鉱石やそういうものを利用することによって、その国の利益にもなり発展につながるということで、お互いが非常に喜ぶというようなプロジェクトでなければならない。そのためには、やはりワンセット開発ということが望まれるわけでございます。そこで現在御審議いただいている保険制度の改正が付加されないと、ワンセット開発は成功しない、こういうことでございます。いままでの、一部批判されるようなものありとすれば、そういうものを直していくために必要な制度改正でもある、こういうふうに考えていただきたいと思います。
  191. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 最近の新聞報道によりますと、非鉄金属業界は原料鉱石の輸入削減を行なっておりますね。発展途上の資源保有国に失業増加などの経済不安や対日不信感を生むことが、私は必至の情勢になっておると思います。この現実は、田中通産大臣が提案理由の説明の中で述べた「資源保有国の経済政策、資源開発政策と調和のとれた資源開発という観点」とは、大きな矛盾があるように私には思われるのでございますが、どうでございましょうか。
  192. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それは全く一時的な現象でございます。いままで、二十九年から三十九年までの十年間の平均経済成長率は一〇・四%、その後は一一・一%、一〇%以上の経済成長がずっと去年まで続いてきたわけであります。ですから、そういうベースでもってずっと鉱石の採掘、輸入もはかっておったわけでございますが、ことしは四%台であるということで、がたんと経済成長が落ちておるわけでございます。その結果、輸出は相当好調ではございますが、国内的には、公共投資がおくれていることもあって、景気の沈滞が続き鉄鋼、石油化学、肥料等の主要業種で操短をしなければならない事態となっています。そういう事態のもとで非鉄金属鉱山会社等は、長期引取契約に基づいて海外で生産された鉱石等を日本側が引き取るために、引き取りのための共同会社をつくるか、海外に備蓄をするかについて、政府に対してしかるべき措置をとることを申し出てもおります。通産省としても、どうすればいいのか、どうしなければならぬのかということを検討しております。いまあなたが端的に指摘をされたように、現地とは仲よくやっていくつもりであると言いながら、掘った鉱石を放り出しておって、買ってもやらなければ相手は困るじゃないかということでございまして、そのようなことは絶対避けなければなりません。マクロ的に見ればそんなことは全然ないわけでございますし、過渡的、一時的なものであっても、不況感を発展途上国にも与えないように、何らかの措置をすべきでありましょう。通産省は、いまそういう対策を検討しておる次等でございます。
  193. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 もうこれで終わりますから。  通産大臣ね、いま申しましたように、後進国開発という名でどんどん資本を輸出して、それで安い労働賃金を利用して、それでどんどん物を持ってきて、もうけるだけもうける。ところが、一たんドル・ショックを受けるや、もう背に腹はかえられないというのでしょうけれども、もう向こうさんは向こうさんでほったらかしてしまって、もうけるときは、もうけるだけはもうけた。もうけたあとは知らぬぞというようなことでは、やはり日本の信頼なり、後進国は非常な迷惑をするだろうと私は思うんですよ。それではあなたのおっしゃっておることばとは違うではありませんかと、こういうことなんですね。  それで最後は私の意見にもなるかと思いますが、わが国の大資本、大企業の海外進出は、結局私は利潤追求を第一義とする資本の論理に貫かれていると、こういうふうに言わざるを得ないと思うのですね。これは田中通産大臣も、これには異議はないだろう。資本というものは利潤追求を貫いている、日本の資本は。で、進出先で労働者の低賃金を利用して、先ほど申しましたように後進国の低賃金の労働者を利用して、原材料価格を押えて、その国の富を奪うことを本質としておるから、好況のときにはどんどん掘る、不況のときには輸入を削減して相手にそのしわ寄せをする、こういうことになると思うのですよ。わが国ではドル・ショックのしわ寄せを労働者や農民、中小企業など弱い者に押しつけるのと同じことを、海外で行なっておることにほかならないと、こういうふうに私は思います。  私たちは、利潤追求を第一義とする大企業の海外進出には賛成できないのです。ほんとうに後進国の開発ということに情熱を燃やすならば、そういう後進国を搾取するという形じゃなく、やはりそれは、エコノミックアニマル、イエローヤンキーという悪名を受けなければならぬ、そういう結果に私はなると思うのです。だから、こういうことになるために、また、そのような大企業の進出をより一そう、先ほども申しましたように、より一そう進出をしやすいように、保護するように、利益を守っていくために、この法律が改正されておる。そういうふうに私はこの法改正を受け取るわけです。
  194. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それは間違いですな。
  195. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 いや、それ以外に理解のしかたがないですよ。日本の大資本、大企業しか融資ができないような、そしてどんどん資本を出せ、そして、おまえたち心配するな、まさかのときにはわれわれが保証するぞというのがこの法律じゃないですか。そうすれば、やはり大資本の利益の保証ですよ、これは。そして、大資本のやっていることは利潤追求で、エコノミックアニマルというようなありがたくない名前をちょうだいしなければならぬと、こういうことになっておる。それをより一そうカバーしていこうというのが、今度の私は法改正の精神だと思うのです。だから、私たちはこの法改正には賛成することができないんです。これは私の多少意見になりますが、私はこういうふうに理解するのです。
  196. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) お答えします。須藤議員の御議論、どうもそこが公式論でございます。日本は、海外から輸入しなければ日本人の生活はよくならないんです。ですから、日本原材料のほとんどすべてを海外の輸入に仰いでおるのでございます。ですから輸入をしなければならぬ。輸入をするために開発、開発投資をするのはあたりまえであります。あたりまえでありますが、現在の制度のままでは、必要なものだけを買ってくるということになって、現地に、日本が得るのと同じような利益を与えることはできませんから、現地は結局ワンセット開発を要求をしてくるのであります。ワンセット開発を要求してくるということになると、どうしても今度のような改正がされないと所期の成果をあげることができない。言うなれば、この法律改正というものは、いままで必要なものだけを必要なときに持ってきていたけれども、今後はそうではなく、地元の経済開発のためにも、ワンセット開発するために、つまりあなたのおっしゃるような、地元のために利益になるようなことをやるために改正をしているんです。それを大企業のためにとおっしゃるけれども、日本には、もう昔の財閥という意味での大企業はないんです。国民がみな、あなた方も全部資本家じゃありませんか、資本を幾ばくかみんな投資をしているという段階において……。
  197. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 あんたは資本家かもしれませんが、こっちはそうじゃないですよ。
  198. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いや、あなたは資本家じゃなくても、国民全体の利益を守っていかなきゃならぬ。しかも長い歴史の上で日本が、愛され信頼される日本として、イエローヤンキーと言われないようなことをするためには、好きなものだけをもらってくるわけにいかぬ。その地域の発展のために、利益をお互いが亨受できるようにするためには、こういう制度をほしいと、こう言っているのを、最後になったら、急にこう筆を曲げたような結論で御反対になる。これは御賛成いただきたいと思います。
  199. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 もう一つ大臣、それは私たちは輸入は必要ないなんて決して言っていませんよ。日本原材料のないところです。そのこともよく知っています。輸入はすべきです。だが、しかし、後進国を搾取するような形で投資をしてはいけない。そういうことですよ。
  200. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そのとおりでございます。
  201. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 だから、後進国に十分のことをして、そうして悪口を言われないような形でしなきゃいかぬと。しかし、この法案を見、また、どういう連中が海外に投資ができるかと言えば、大資本ですよ、みんな。大資本以外にできないんですよ。それを守っていくというのがこの法案だから、ぼくらは大資本の利益擁護の法案だと、こう言うのです。
  202. 大森久司

    委員長大森久司君) 他に御発言もなければ、質疑は終了したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  203. 大森久司

    委員長大森久司君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もないようですが、討論はないものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  204. 大森久司

    委員長大森久司君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決に入ります。輸出保険法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  205. 大森久司

    委員長大森久司君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  206. 大森久司

    委員長大森久司君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。次回の委員会は、理事会で御協議願いまして、追ってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時七分散会