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1971-12-07 第67回国会 参議院 商工委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十二月七日(火曜日)    午前十時三十八分開会     —————————————    委員異動  十一月一日     辞任         補欠選任      向井 長年君     田渕 哲也君  十一月八日     辞任         補欠選任      田渕 哲也君    柴田利右エ門君  十二月六日     辞任         補欠選任      小野  明君     辻  一彦君      藤井 恒男君     高山 恒雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大森 久司君     理 事                 川上 為治君                 剱木 亨弘君                 竹田 現照君     委 員                 赤間 文三君                 植木 光教君                 小笠 公韶君                 大谷藤之助君                 矢野  登君                 山本敬三郎君                 渡辺一太郎君                 阿具根 登君                 大矢  正君                 辻  一彦君                 林  虎雄君                 中尾 辰義君                柴田利右エ門君                 高山 恒雄君                 須藤 五郎君    国務大臣        通商産業大臣   田中 角榮君    政府委員        通商産業政務次        官        林田悠紀夫君        通商産業大臣官        房長       小松勇五郎君        通商産業大臣官        房審議官     牟田口道夫君        通商産業省企業        局長       本田 早苗君        通商産業省重工        業局長      矢島 嗣郎君        通商産業省繊維        雑貨局長     佐々木 敏君        中小企業庁長官  高橋 淑郎君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    説明員        労働省労働基準        局監督課長    吉本  実君        労働省職業安定        局業務指導課長  関  英夫君        労働省職業訓練        局訓練政策課長  山口 政治君    参考人        国民金融公庫総        裁        澤田  悌君     —————————————   本日の会議に付した案件国際経済上の調整措置実施に伴う中小企業に  対する臨時措置に関する法律案内閣提出、衆  議院送付) ○参考人出席要求に関する件 ○産業貿易及び経済計画等に関する調査  (日米繊維問題に関する件)     —————————————
  2. 大森久司

    委員長大森久司君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  議事に先立ちまして、理事会打ち合わせ事項を御報告申し上げます。  速記をちょっととめてください。   〔速記中止
  3. 大森久司

    委員長大森久司君) 速記を起こしてください。  委員異動について御報告いたします。  昨六日、小野明君、藤井恒男君が委員辞任され、その補欠として辻一彦君、高山恒雄君が選任されました。     —————————————
  4. 大森久司

    委員長大森久司君) 国際経済上の調整措置実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。田中通商産業大臣
  5. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 国際経済上の調整措置実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  去る八月十六日、ニクソン米国大統領により発表されました輸入課徴金等の新経済政策、また、その影響のもとに行なわれたわが国における外国為替相場変動幅制限停止は、わが国経済に大きな影響を及ぼすものと考えられますが、中でも、企業体質脆弱性を残し、経済環境の変化により影響を受けやすい中小企業は、輸出関連企業中心として、特に深刻な影響をこうむることが憂慮されておるのであります。  政府といたしましては、このようなわが国経済の現状にかんがみ、この際、敏速かつ機動的に施策を講じつつ事態に対処することこそが、国民経済安定的運営と円滑な成長、発展をはかるため重要かつ緊急な課題であると考えておる次第であります。  このため、去る九月二十三日の閣議におきまして米国輸入課徴金制度実施等に伴う当面の緊急中小企業対策に関する決定を行ない、そのうち為替取引円滑化措置、緊急融資等行政的にとり得る措置についてはすでに実施したところであります。本法律案は、この閣議決定内容中、法律的措置を要する事項及びその他必要な対策の迅速かつ適切な実施をはかるため立案されたものでありまして、その概要は次のとおりであります。  本法律案におきましては、まず第一に、かかる国際経済上の調整措置により相当数中小企業者がその事業活動支障を生じている業種または産地告示により指定し、この指定に基づき、都道府県知事が今回の事態により影響を受けた中小企業者認定中小企業者として認定することといたしておるのであります。また、指定された業種または産地に属さない中小企業者であっても、個別企業として判断した場合において、国際経済上の調整措置により、影響を受けていると認められる場合には、同じく都道府県知事認定を受けることができることといたしておるのであります。これらの認定中小企業者を対象として、中小企業設備近代化資金償還期間延長措置及び中小企業信用保険特例措置を講ずることにより、その経営の安定をはかることといたしておるのであります。  第二に、この事態に際し、事業転換を行なおうとする認定中小企業者は、都道府県知事から転換計画が適当である旨の認定を受けることができることになっております。政府は、これら転換を行なう認定中小企業者に対し、資金の確保、税制上の特例措置及び中小企業信用保険特例措置を講ずることにより、その転換を円滑に進めることといたしておるのであります。  第三に、政府は、認定中小企業者が行なう事業に従事していた者に対しまして、職業訓練実施就職あっせんその他雇用の促進に関する措置を講ずるよう努めることといたしております。  これが、この法律案提案理由及びその要旨でございます。  何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  6. 大森久司

    委員長大森久司君) 次に、補足説明を聴取いたします。高橋中小企業庁長官
  7. 高橋淑郎

    政府委員高橋淑郎君) 国際経済上の調整措置実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を補足して御説明いたします。  政府は、米国輸入課徴金制度実施わが国における外国為替相場変動幅制限暫定的停止等事態に対処するためには、これらの事態によってわが国中小企業がこうむる影響等を把握することが何よりも必要であると考え、輸出関連中小企業が集中している産地を重点に影響の実態を調査いたしました。その結果は、まことに憂慮すべきものと考えられましたので、即時に実施し得る応急の対策についてはこれを逐次実施するとともに、政府部内で総合的な対策の検討を進めた結果、去る九月二十三日の閣議におきまして、米国輸入課徴金制度実施等に伴う当面の緊急中小企業対策に関する決定を行ない、そのうち為替取引円滑化措置、緊急融資等行政的に実施可能な措置についてはすでに実施してまいったところであります。本法律案は、この閣議決定内容中、法律的措置を要する事項その他必要な対策について、その迅速かつ適切な実施をはかるため立案されたものであります。  本法律案におきましては、第一に、米国における輸入課徴金の賦課、本邦における外国為替相場変動幅制限停止その他これらに準ずる国際経済上の調整措置により、輸出が減少し、または減少する見通しがあるため相当数中小企業者がその事業活動支障を生じていると認められる業種または産地を、主務大臣である通商産業大臣及び事業所管大臣告示によって指定いたします。この指定に基づき、主務省令で定める基準によって、都道府県知事またはその権限の委任を受けた市町村長もしくは特別区長が、国際経済上の調整措置によって影響を受ける中小企業者認定中小企業者として認定いたします。また、主務大臣により指定された業種または産地に属していない中小企業者であっても、その中小企業者が、一定の基準に照らし、個別企業として国際経済上の調整措置によりその事業活動支障を生じていると認められるときは、同じく都道府県知事認定を受けて認定中小企業者となることができることといたします。  第二に、本法律案は、これら認定中小企業者に対して、中小企業設備近代化資金償還期間について二年をこえない範囲内において延長を認め得ることとするとともに、金融認定中小企業者に対して円滑に行なわれるように中小企業信用保険法による輸出中小企業関連保証特例制度を新設することとし、これら認定中小企業者経営の安定をはかることといたしております。  第三に、この事態に対処して認定中小企業者事業転換をしようとする場合には、その転換先事業内容等事業転換に関して必要な事項を記載した計画都道府県知事に提出し、その計画が適当である旨の認定を受けることができることといたしております。  第四に、政府は、この転換計画認定を受けた認定中小企業者が、その転換計画に従って行なう事業転換を円滑に進めることができるよう金融税制面等において所要の措置を講ずることといたしております。すなわち、金融面におきましては、共同で事業転換を行なう者に対しては中小企業振興事業団から高度化資金を融資することとし、個別で事業転換を行なう者に対しては、中小企業金融公庫から低利の特別貸し付けを行なうことといたしております。また、信用補完の面におきましては、先ほどの中小企業信用保険法による輸出中小企業関連保証特例制度を利用できることといたしております。さらに、税制面では、転換前の事業の用に供していた減価償却資産について、短期間に償却することを認めることといたしております。  第五に、政府は、認定中小企業者が行なう事業に従事していた者の職業及び生活の安定に支障が生ずることのないよう、職業訓練実施就職あっせん中高年齢失業者等求職手帳有効期間延長を行なうことその他の措置を講ずるようつとめることといたしております。  第六に、本法律案有効期間を施行の日から三年間とするとともに、認定中小企業者昭和四十六年十月一日以後その認定を受けた日までの間に、経営の安定をはかるのに必要な資金についてすでに信用保証協会から中小企業信用保険法上の保証を受けた場合には、中小企業信用保険法による輸出中小企業関連保証特例を遡及して適用することといたしております。  以上、この法律案につきまして補足説明をいたしました。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  8. 大森久司

    委員長大森久司君) 以上で本法案についての趣旨説明及び補足説明の聴取は終わりました。  自後の審査は午後に行なうことといたしたいと存じます。     —————————————
  9. 大森久司

    委員長大森久司君) 参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  産業貿易及び経済計画等に関する調査のため、本日、参考人として国民金融公庫総裁澤田悌君出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 大森久司

    委員長大森久司君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  11. 大森久司

    委員長大森久司君) 産業貿易及び経済計画等に関する調査議題とし、日米繊維問題に関する件について質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  12. 辻一彦

    辻一彦君 私、繊維とたいへん関係の深い福井県の出身でございます。福井県は、基幹産業はいままで米と繊維といいましたが、この二つがどちらもいま頭を打っている。こういうことで、福井県の状況は非常にたいへんな状況にあります。そこで、きょう私、福井繊維の事例をあげながら、全般的な繊維の問題につきまして、主管大臣並びに担当者の皆さんの御見解をお伺いいたしたい、このように思うわけであります。  まず第一に、十月の十五日に、田中通産相の手によりまして、アメリカケネディ特使との間に日米繊維協定仮調印が行なわれたわけであります。これは日本繊維業界はもちろん、また、私たち野党のほうも強く反対をいたしておったのでありますが、それを押し切って仮調印が行なわれた。そこで、十一月の下旬には日米繊維専門家会議等も開かれておるわけでありますが、本調印に向けて、どういう段取りと見通しを持っておられるのかということを、まず大臣からお伺いをいたしたいと思います。
  13. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 十月の十五日にイニシャルを行ないました日米繊維協定は、その後、外交ルートに移されたわけでございます。まあ調印するまでの間、これが条文整理等十分日米両国間で意思疎通をはかっておきたいということでございまして、牛場駐米大使を窓口といたしまして、アメリカ政府との間に協定案文をつくるまでの間、いろいろ協議を行なっております。  なお、正式なものといたしまして、十一月二十二日より、ワシントンで第一回の専門家会議を開こうということになったわけでございます。これは、協定が発効してから毎月一回やるということが原則でございましたが、まあそんなに、日米間の間でございますから、こだわることもない、そういうことは特にひんぱんに行なうことが望ましいということで、第一回の会議ワシントンで行なったわけでございます。通産省からは牟田口審議官中心としまして、第一線の課長三人同行しまして、そして外務省と一体になってやったわけであります。外務省は、特に御承知繊維協定に関しましては牛場フラニガン会談が過去にあったわけでございまして、牛場駐米大使は、ある意味においては日米繊維の事情はよく知っているわけでございます。特にそういう意味で、こちらからも人を派遣をしまして、そして各条文、特に第七項の弾力条項、死にワクの活用というような、牛場フラニガン会談で問題になりついに協定に至らなかったもの、また衆参両院で、この第七項の弾力条項というものはうまく活用できるのかどうか、できなければ過去の綿製品協定と同じくなるおそれがあるという、この協定目玉条文でございますので、こういうものを両国の間で詰めようということで、第一回の会議を行なったわけでございます。  そういうものが何回もやられておりますから、また、やるつもりでございますので、初めは、まあ十月の十五日といえば、十月の末か十一月の初めには正式調印という気組みであったのですが、国会でもいろいろ御心配もございますし、私もできることなら可能な際限一ぱい、この協定が行なわれるまでの間、国会でもって議論されたような問題が、また、私が答えたような問題が、答えたような方向で解決することが望ましい、そのためには全力をあげて努力しようということでやっておりますので、十一月の末になり、すでに十二月の初旬でございますから、いま考えられることは、このままで行くと、やはり年内に協定ができるかなと、こういうところでございます。これは十月一日からスタートしておりますから、正式協定というものの調印を急ぐということよりも、日米間に協定までに誤解があったりしては困るので、いろいろひとつ努力をして意思疎通をはかるということがポイントだと、こう思っておるわけでありまして、一日二日のことを言いなさんなというのが、日本側の態度でございます。
  14. 辻一彦

    辻一彦君 どういう見通しを持っておられるかということは、一応それでわかりますが、そこで、いま御発言のありましたように、日米繊維協定了解事項の覚書では、日米相互間にも受けとめ方についてある程度の相違があった、あるいは業界の間にも、政府の間にも、受けとめ方についていろいろな相違があったということを承知をいたしております。そういうことを明らかにするために今度の専門家会議アメリカで持たれたと思います。そこで、いまたまたま大臣から目玉条項が出たのでありますので、以下五、六点、どうしても私たちがまず質疑の前に確めたいという点につきまして御質問をいたしたいと思います。  第七項の弾力条項でありますが、これと第六項の問題は、いわゆる死にワクをほんとうに生かすことができるか、そういう点で非常に重要な点であると思いますが、たとえば化合繊維、糸、メリヤス、ニットの生地、ニットのズボン、こういうものの契約残高というものは、基準実績、七〇年四月からことしの三月の五倍程度に、いろいろ見るとふえているというわけでありますが、こういう契約残規制より除外をされているのかどうかということが一つ。  第二は、第六項に、これは日本が他の国より不利益を受けないという点で、日本第三国に比べて実質的に不利な立場に置かれないという項目でありますが、たとえば西ドイツは、ことしの一月から七月に合化繊繊維、糸を四億五千万平方ヤード大体出している。日本は一月から七月、こまかい数字は略しますが、同じく二億五千六百万平方ヤード、こういうふうに言われておりますが、第三国よりも不利な状況に置かれないということで、西独並みのたとえば糸の輸出についても要求が実現できるのか、どうか。  まず、目玉条文という御指摘でありますので、その二点についてどういうようになっているか、お伺いをいたしたいと思います。
  15. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いままでのものは、対前年度実績の五%増しというのが自主規制でございます。自主規制は総ワクで五%ということでございますが、しかし今度のものはシフトトリガー規定がございますので、化合繊は五%、毛は一%というふうになっておりますので、その中では、いままでの自主規制よりもきびしいものであることは言うまでもございません。しかし、あまりきびしくしますと、減るものは一年間にうんと減りますし、それで、ふえるものは五%で頭打ちにしますので、総ワクからいたしますと対米輸出が減る。これは、綿製品協定で十年間余で四〇%減ったということでございます。ですから、今度の場合も綿製品協定のように減っては困るということで、弾力的に、毎年毎年実績に見合って両国がコンサルテーションを行ない、そういうものを協議をして、なるべく減らないように、お互いが理解をし、調整をいたしましょうという調整事項を書いたわけでございます。  そういうことでございますが、いま御質問ございました、もうすでに非常にたくさん契約をしておるもの、そういうものは一体どうなるのかということでございますが、これはやはり新しい協定数字の中で規制を受けるものであるということでございますから、これは全然除外をされておるものではありません。ただ、いままでもうすでに協定以前に出てしまったもの、四十六年四月一日からいままでのうち、もう、ずっと出てしまって、糸のように去年の実績よりも三年半、四年分も出てしまったもの、これはどうするかということでございますが、これは後年度のワクの中でもってお互い調整をしましょう、こういうことを言っているわけでございます。しかし、あまりにも出たものが多いものは、とても中へ入らないじゃないかということもありますが、そういうものは、この協定制度としては、はみ出すものはどうにもならないということになりますが、そこはそれ、死にワク等がありますから、そういうものの状況を見ながら、両国でもって柔軟に何回も何回も話し合おう、これは法律をきめて、判決のように動かせないものではないのだと、日米間の基準をきめたものだから、お互いがそういうものに対してはひとつ、前文を引用しながら話し合いをしようという柔軟性を、こちらは持っております。持っておりますが、正式なお答えとして、いままで契約をし、もうすでに出そうとしておるものはこのワク外になるのかということになると、ワク内でございますと、こういうお答えをする以外にはないわけでございます。  第二は、第六項の、外国との問題が比べてみて不利にならないようにというのは、これはもう、この協定精神規定であり、そういう両国姿勢をうたったものでございまして、西ドイツが糸に対してはどうだからこれはそのとおりというふうには、解釈はできないと思います。  それはいろいろ事前に議論もしてみたわけでございますが、じゃあ、いいところばかりとりまして、中には絶対協定に応じないという国も出てくるわけでございますが、そういうところでもってうんと出たところのものだけ全部とってやるなら、それはいまの自主規制の五%を上回ることもあるわけでございますから、そういうものは、お互い両国間の正常な貿易を確保するための協定であるという前文精神と、六項、七項というものを全部突き合わせて、そうしてこの協定をやったことによって——いまだ協定を行なわないものがあります。それはEC諸国は行なっておりません。アメリカは、今度の平価調整等を引っくるめてワンパック政策を絶対行なうという姿勢をとっておりますが、その間の、もうすでにイニシャルを行なった日米と、全然これから交渉案件になっておるECの問題とは違うわけでございますから、どうも、西ドイツは糸が出ておるから、化繊も出ておるから、日本も全部はずせ、これは業界にあります。業界には強い。そこらを、協定までにもっと大臣がんばりなさいということで、私も、事務当局を督励をいたしておりますが、しかし第二の御質問の問題として、正式に、第六項の規定を前提として、西ドイツが出す糸に対しては、化繊に対しては、日本化繊を全部出せるのかというと、そういう規定にはなっておらないということでございまして、これは日米間が、こんなに、ほかの国を押えることができなくておって、日本だけ押えてけしからぬじゃないかという、声を大きくする材料にはいたしますよ、そのときにはアメリカも柔軟な態勢で出なさいよ、ということは厳重に言ってございますが、しかし多国間協定になっておりませんので、これも、初めから各国のいいところを全部とって、これを日本がそこまでは確実に出せるのだというふうには、答弁ができないというのが実情でございます。  こまかい問題、ございましたら直接繊維局長から答えていただきます。
  16. 辻一彦

    辻一彦君 こまかいのは、またあと一緒にお願いしたいと思います。  いまのに関連しますけれども、この全体の伸び率を五%にするために、輸出があまりさえないワクは、よく出る輸出ワクでもって置きかえていくといいますか、シフトといいますか、そういう点が緩和されているわけですが、今度の日米専門家会議におきまして、そういう問題が話し合われて、現実に保証されたかどうか。それからもう一つは、ある品目に輸出が集中すると協議に移す、自動的に押さえてしまうという、トリガー方式というのがあるのですが、これが専門家会議の中でどういうようになっているのか。この二点を伺いたいと思います。
  17. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 具体的な問題は、繊維局長または出席者から答えさせますが、まあ私が国会において、この協定綿製品協定とは違うのです、違うようにすることを両国は申し合わせてございます、こういうことを申し上げましたが、それと同じことを向こうも考えておるようでございます。ですから、これはほんとうに意地悪くこの条文を全部そのまま適用して、綿製品協定のようにするというのではない。ですから、前文に書いてあるように、日米間の正常な貿易というものの基準お互いにきめておいてということでやったものだから、第七項等の運用に関しても、お互いが理解をできるように、ひとつ十分意見の交換をしておきましょう、運用に対しては注意をお互いにいたしましょう、非常にその意味では、出席をした牟田口君も、やっぱり国会でもって大臣が答弁をされたことは、向こうにも十分響いておるようでございますと、こういうことでございます。  大体、そうでなければ私はイニシャルをしないはずでございますから、そういう意味綿製品協定のときとは違うということで、できれば、国会で私も問責決議案もいただいたわけでございますから、私が答弁した趣旨に沿ったくらいな、どうも個人書簡でもいいから田中通産大臣あてによこさぬか、というところまで話をしておるわけでございまして、まあ、この書簡が来るか来ないかはわかりません。わかりませんが、そのくらい、そういうことも必要でございましょうねと言うくらいに、この種のものとしてはかつてなかったぐらいにアメリカ側も非常に慎重であるし、これによって日米間が悪くなっては困るということは、十分前提として両国が考えておるということだけ、基本的な問題だけ私からお答えをします。  具体的な問題、これからずっと交渉が続いてまいるわけでございますから、一部もう受けてはおりますし、これに対する具体的な折衝の方法も考えてはおりますし、指示もしておりますが、事務当局からお答えいたします。
  18. 辻一彦

    辻一彦君 その前に、いまの書簡ですね、そういうものを実際取りつけられる見通しはありますか。
  19. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ですから、私も書簡が現実的に得られるかどうかは、さだかではございませんが、書簡ぐらいよこしたらどうですと、この書簡がないために、私が不信任案などをいただいておるわけでございますから、それくらいのことはやってください、それはそうでしょうな、というところまでは両国で話し合いをしておるということでございます。  これは、雰囲気をそのまま申し上げておる。ですから、書簡が来ても、それが公表できるようなものになるのかどうか。これは多国間、アメリカとほかの国との交渉もいろいろありますから、私は、お互いのこの協定の運営が、納得ができるような運営さえできれば、私は必ずしも文書にしなければならぬとも考えておりませんし、何もアメリカから一札もらわなければいかぬ、こういうようなことは考えてはおりませんが、しかし、そういうような雰囲気であるということだけ申し上げておきたい、こう思います。
  20. 高山恒雄

    高山恒雄君 関連。非常に大事な問題ですから、私は念を押しておきますが、先ほどの大臣のお話を聞いておると、非常に五%というものが幅があるように見ておられる。たとえば、ABCという三つの品目に分けまして、それが一〇〇ずつです。その一〇〇の五%が伸びると、一五%になります。いいですね。したがって、もし流行が適切にアメリカの市場に当たって、Aが一五五出ます。一方、Bの製品は、流行におくれたために六〇しか出ません。そういうことになった場合、この一五五出ました製品は、認めるのですか、認めないのですか。この点をお聞きしたいと思います。
  21. 佐々木敏

    政府委員(佐々木敏君) 第一に、一般原則でお答えいたしますと……。
  22. 高山恒雄

    高山恒雄君 原則は要りません。いまのを答えてください。
  23. 佐々木敏

    政府委員(佐々木敏君) その場合には、特掲品目でございますと、十八品目の分類に入っておるものでありますと、シフト率がきまっております。最高のもので、五%のほかにシフトがさらに一〇%、さらにカテゴリー間では三%、という限度までは行き得るわけであります。特掲品目でない一般品目につきましては、一〇%に達しますと、米側はトリガーを引き得るという規定になっております。それを、大臣の交渉の結果によりまして、弾力条項が入りまして、トリガーにつきましては、その一〇%になっても、運用上、別に満たせるものがあれば、それをシフトしたいという協議の対象になり得るかと思います。以上であります。
  24. 高山恒雄

    高山恒雄君 したがって、協議しなければきまらぬということでしょう。その点をはっきりしておいてもらわぬと、大臣のお話聞いておると、どうもその辺が幅があるような答弁をされておりますから、誤解ないようにひとつ。
  25. 辻一彦

    辻一彦君 いま、関連質問でも御指摘になったんですが、大臣の答弁は非常に楽観的な見通しがあると、私も思います。さっき御説明になりましたような、たとえば第七項にしても、第六項、こういうものがなかなかうまくいかないとすれば、輸出の伸びというものがはたして五%とか、必ずふえるのか、どうか。私は、こういう条項が実現されない場合には、やはり繊維業界等で指摘をされておるように、全体の輸出は三割とか、あるいはひどくなれば四割とか、落ち込む、そういう可能性のほうが強いんじゃないかと思いますね。その点はどうですか。
  26. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 自主規制を行なったのが、対前年度の総ワク五%増しでございます。今度は、それを協定にしたいということでございます。協定にすると、シフト率やトリガー規定が入りましたので、結局——総ワクで五%以内であれば、あるものは百倍になってもよろしい、しかし、あるものは百分の一になっているなら、それは五%増しの範囲でならばいいということが自主規制でございましたが、今度はそうではなく、シフト率をこまかく規定をいたしましたし、トリガー規定がありますので、どうも五%以上にはならないということでございます。これは間違いなく言えると思います。  しかし、これは死にワクの活用が行なわれないと、綿製品協定のようになって、十年間に四〇%減ってしまう。十年間に四〇%減るということは、一年間に平均四%ずつ減るということになるわけでございます。そうなるおそれがあるからこの協定には反対だと、こういうのでございますから、私はこの協定、すなわち牛場フラニガン会談を通じまして二年余もやってきた問題でございますが、これはもう、厳密に綿製品協定と同じく運用せられるならば、この協定はいたしません、こういうことで私はがんばってきたわけです。それによって、これは漸減する協定ではないという前文を入れよう。もう一つは第七項に弾力条項を入れよう。そうすれば、綿製品協定のようにどんどん減るものはない。こういう一つのかんぬきが入ったわけでございます。  かんぬきが入ったということはどういうことかというと、私は、少なくとも、上限は五%増しの自主規制であっても、下は対前年度の実績を下回るということになれば、これはもう九九・九%になっても、減ったじゃないかということになるわけでございますから、そうすると、少なくとも対前年度の実績というのは、総ワクにおいて、弾力条項を運用することによって確保しなければならぬ、こういう考えを、個人である私は持っている。同時に、私とケネディ特使との間には、そういう問題になったら困るんだぞということの意思疎通は、はかられておるわけでございます。ですから、去年の実績自主規制の五%増しという、間の五%というものをいかに大きくするかということが、この弾力条項日本がいかにうまく使ったかということになるわけです。アメリカは、去年の実績は確保しても、なるべく実績に近く押えられれば協定のメリットはあったと、こういうふうに、利害はお互いに別でございます。  そういうことであって、私が考えるのは、私は自民党の繊維対策特別委員会の諸君にもいろいろ詰められたときに、だから、五%の中というものでなるべく被害が少なくて、これが四・五%増しまでいったら、なるほど田中の言うとおりであったというふうに理解をしてもらわなければいかぬ。これが、少なくとも去年の実績の九九・九%でも、減ったら、君の言うよりも減ったじゃないかという、こういうことを言ってもらっても、私は甘んじて指弾を受けますけれども、受けるだけでなくて、私もそうならないように交渉いたします、そのときに通産大臣でなかったらどうするか、私が行って交渉してきますと、こういうふうに答弁しているわけでございまして、そこらがこの協定の第六項の幅、弾力条項だと、こういうふうに理解していただく以外にないと思います。
  27. 辻一彦

    辻一彦君 時間の点がありますので、次に進みたいと思います。  これはいままでかなり論議されたことでありますので、簡単にお答えいただければいいと思います。  一つは、輸入課徴金の問題ですが、これはもう御存じのとおりに、ピーターソン大統領補佐官がはっきりと、繊維に対する課徴金はすべての国に免除すると、こういうふうになっておるのが十月の、たしか十八日だったと思います。で、あの協定が成立したときの大臣の談話に、課徴金を免除するように意向を表明さしたということが大きな成果の一つのように、この談話を私は読み取ったのでありますが、現在になると、これは非常に問題があると思うのですが、この輸入課徴金が全部の国に免除されるようになった場合、どういうふうにこの問題を考えておられるか、お答え願いたいと思います。
  28. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) アメリカが、一方の手にケネディラウンド政策を推進をしながら、他方の手で輸入課徴金一〇%という、全く相反する政策をとらなければならなかったことは、アメリカにとっては悲劇だと思います。そういう輸入課徴金一〇%というものは、それはアメリカの悲劇だけではなく、日本としてもたいへんなことでございます。ですから、この一〇%の課徴金を取りやめるという言質をアメリカから引き出したということは、私はやっぱり、それなりの評価はあると思います。  ただ、いまの段階において、アメリカはローマ会議において、ECとの関係もあって、課徴金は全廃してもいいですと、こう言ったじゃないか。そうすると、いまの時点から考えると、それほど大きな問題じゃなかったじゃないか、この協定でもって対日だけの課徴金が免除されて、ほかのほうは免除されないならばメリットがあったにしても、いま全部に半年ばかりの後にはやめるというときになると、免除にならないじゃないかというのですが、それは、日米間の貿易繊維だけではない。繊維はわずか六億ドルであり、対米輸出は、もうすでに一月から十一月まででもって七十億ドルを突破しておるという考え方から見ますと、それは日米間の交流というのは非常に大きいのです。そればかりじゃなく、日本輸出は二百三、四十億ドルという大きな世界的な輸出をしておるわけですから、そのときに、対ドルの平価調整がどういうふうに行なわれるのか、しかもパッケージ政策でいっておるわけですから、パッケージでなかったらこの課徴金も免除しないと、こう言っておるのです。  課徴金は、アメリカのいうように、アメリカ日本アメリカとカナダの間には経済的な問題に対しては意思の交流がありますから、これはお互いの間で友好裏に片づいてまいります。ところが、ECの諸国とは全然関係がないのだから、ドルは切り下げません、しかも、課徴金は撤廃いたしません、こういうことだった。ところがローマ会議の最終の日に、ではこちらも課徴金の撤廃もやるし、そしてドル平価も切り下げるから、その場合にECの国は平価の調整を行なうか、米国との間に、二国間で、日本との間に行なっておると同じような経済的な調整を行なうか、行なえばやりますと、こう言っているのですから、これは新聞に報道されておる現実だけを見てではなく、日米間に繊維協定をやったと同じことをアメリカは言っているので、現にイタリアとは、はきものをやるのだ、こう言っておるのです、はっきり。イギリスとは、こうしなければ防衛分担金をやりますということを、非常に明確に言っておるのであって、それは、日本の平価がそのためにどのように調整されるかという最終的な段階において考えらるべきであって、まあ、私は繊維協定をやったことが、日本のほんとうにただ取られたようなマイナス要因だけ数えるということは間違いで、これは半年もたつと、やっぱりタイムリーにやったのだなというくらい、ひとつ評価をいただきたいと思います。
  29. 辻一彦

    辻一彦君 私の時間が往復一時間しかないので、大臣、簡単にひとつ申しわけないが答えてください。  それで、私の伺いたいのは、一つは、課徴金のこの根拠法が、六二年通商拡大法の規定で、一国に対してある品目の免除を認めることは自動的に全世界に対する免除を意味するのだと、こういう項目があるということを御理解の上で、輸入課徴金の問題を詰めておられたのか、どうなのか。そのことだけ、ひとつ簡単にお伺いしたいと思います。
  30. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) アメリカは非常に現実を基盤にいたしまして、法律精神というよりか、違法性がなければ現実解決のためには何でもやろうということで、繊維製品の対米輸出調整も緊急銀行法をもってやろうとしたわけでございますから、それは、精神的にはよくわかります。私も課徴金問題いろいろやったのですが、しかし、日米経済閣僚会議のときには、一〇%をもう五%上げるかもしれぬと言って、その後上がりました。大統領に権限を付与して、そしてアメリカ協定をしたものに対しては一五%免除をする国もあるし、品物によっては一〇%免除する、七・五%免除する、五%免除する、免除しないのは一五%の課徴金を取ろうと、こういう現実的政策をとったわけでありますので、われわれがアメリカの政策やアメリカ法律問題いろいろ研究して、いろいろ交渉はしたのですが、アメリカ法律アメリカが運用いたします、それによって世界の各国から非難を受けるならば、非難はアメリカが弁解いたしますと、こういうことまで言っておったわけでございますから、そういう間の事情を申し上げて、御理解を得たいと思います。
  31. 辻一彦

    辻一彦君 時間の点もありますので、私この問題はひとまず留保して、いま福井の例をちょっとあげてみたいのですが、これは新聞の写真ですけれども、福井には毎日、こうやって機をつちで打ちこわす音がこだましております。この中にも書いてありますが、政府が買い上げた織機をスクラップ屋さんがハンマーで打ちこわす。そのそばに機屋のおやじさんがおみきを供えて、長い間がんばってくれたと、こう言って待っている。薄暗い電灯の横には若い織り子さんが涙ぐんでいる。こういうふうに、いま残念ながら福井では、この十一月に八千五百台の機が買い上げになり、それから三百五十四の業者、機屋さんが廃業する、こういう状況にいまなっておるわけです。さらに、今年で大体二千五百人の離職者、来年の春には三千人に福井のような小さいところでもなるだろう。そして機屋さんは、いま十二月くらいまではある程度注文を持っておりますが、来年の一月からはほとんど注文がない。こういう状況の中で、これからいよいよ日米繊維協定が実質的に動いていくわけでありますが、さらに影響を与えるということになれば、私は非常に福井県の繊維業界というものは、壊滅的なと言ってもいいような大きな打撃を受けるのじゃないか、こういうように思います。  これは福井だけではなくして、福井合化繊輸出の四五%を生産しておりますが、石川四〇%、二つで八五%生産している。織機も全国の大体三分の二、七五%を北陸三県で持っておるというような状況であります。したがって、今度のような場合には最大の被害、影響というものは、私は福井、石川で受けると思いますが、しかしこれは福井、石井の問題だけでなくして、産炭地でいわゆる縫製工業が起こされて、そこでどんどん起こっている問題、あるいは大臣の地元の新潟にもあるでしょうし、あるいは毛製品のそれぞれの生産地にもあります。こういう状況を私は見て、たいへんな状況になっているのじゃないかと、こう思うのでありますが、まず、こういう写真をごらんになって、担当大臣としての御感想をひとつ伺って、その上でこの問題に入りたいと思います。
  32. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私も非常に悲しい思いをいたしております。特に、一体繊維の機械を買い上げたものをこわさなければならぬのかどうか、というところまでいま考えて、封印しただけでいいんじゃないか、封印しておって、ながめておってもこれはいいじゃないかということで、何か繊維局でも考えられないか、これを全部こわして、スクラップにして確認をしなければ金は払えないということは、精神的にもどうも耐えがたいという感じでございます。それは私自身が、いま福井の問題、石川の問題、もう一つは新潟県の、私の選挙区でございますが、栃尾、見附、五泉、村松、小千谷、十日町、これらは三つの大きな産地でありますから、その実態はよくつまびらかにいたしております。おりますし、現状に対してはそうでございますが、実際的に、私は感傷的なものだけではなく、具体的に私は日本の経済の実態として考えなければならないものは冷厳に考えなければならないと思っておる。  なぜかといいますと、対米自主規制五%増しで七百五十一億というのは、これはお互い了解をして、大体理解のできる対策であったわけであります。ところがその後、先ほど申し上げたとおり、今度は二〇%、二五%減らすというんじゃない、対米輸出に関しては、対前年度実績自主規制の五%の差額、まるまるいっても五%です。この五%を対象にしてわれわれは日米繊維交渉の結果というものに対しては責任を負わなきゃならないんだと言っておるのですが、それは一五%、二〇%を対象にした七百五十一億よりもはるかに大きな金を出しても、繊維対策にはならないと言うのです。それは、三〇%増し、四〇%増しだったものを五%までに圧縮したときのものは七百五十一億、五万三千台の織機だったのです。今度わずか五%の圧縮のものに対して、さしあたり十万台買いますと、こう言っておるものに対して、一体どういうような要求があるか。織機の例をとると非常によくわかるんです。七十万台の保有織機のうち約三十五万台を買い上げられたい、こういう要求であります。  どういうことを意味しておるか。率直に言って、日米繊維交渉の結果というものも確かにありますが、これがなくとも繊維はやっぱり考えなければならない状態にあったことは事実でございます。これは鉄鋼が減産のため不況カルテルの申請をしております。肥料がそうであります。繊維がそうであります。石油化学もそうであります。ポリエステル工業も全面的にそうであります。そういう意味で、五%とか一〇%とかというものではなく、私自身がいまこまかく通産省に勉強さしておるのでございますが、私は七月の五日からそういうことを指摘をして、全国の通産局長にもそういう指令を出しておるわけでありますが、米だけが減反政策を行なっておるのではなく、すべての二次産業というものが減反政策を行なわなければならないような状態にある。大なり小なり石炭と同じような状態にある。特に繊維は、いまの状態でこういう状態でありますが、これからあとはどうなるかというと、日本繊維がカナダやEC輸出されているので、ECやカナダは法律をつくってこれを押えようとしております。ところが、台湾や朝鮮や香港から日本への繊維輸出の問題、この場合、日本は現在のアメリカと同じ立場に立つのです。中国大陸と交流を始めた場合、繊維については日本が被害を受ける立場にある。目の前にあるのであります。  私も昭和初年の女工哀史をずっと読んでおります。私自身も無縁の者ではない。私はそういう意味で、非常に真剣にこれらの問題を中まで掘り下げておるんですが、日米繊維交渉というものでクローズアップをされ、それに焦点を当てられて計算をされておるけれども、通産省自体で厳密に数字を調べてみると、日米繊維交渉というものかきっかけにして、大きなスクラップ・アンド・ビルド政策というものを進めなければいかぬ、そういう実態にあるということを、私はすなおに申し上げておきます。これに対する数字は全部ありますから。これはもう、五%とか一〇%とかいうものではない。半分以上スクラップ化されなければならないという状況。そういうものに対する、いま対策をどうしなければいかぬかということで、私がとにかく五万三千台に対して、さしあたり十万台と言うのは、無責任な発言じゃありません。そういう実態を前提にして、これはもうとにかく、これを機会に繊維企業というものが、十年、十五年にまた同じ道を歩いて、さいの川原のように、積み重ねたものをまたこわす、またこわすという、代々にわたって百年間やってきたような、そういう実態から脱却しなければならぬ。そのために通産省はどういう政策を行なわなければならぬかという、真剣な気持ちで取り組んでおるという基本的な姿勢だけ申し上げておきます。
  33. 辻一彦

    辻一彦君 一つの産業が転換をしていく場合に、これが時間をかけて行なわれる場合と急速に行なわれる場合とでは、非常に受ける姿勢というものが変わってくると私は思うのです。たとえば農業にしても、親が農家をやっておって、子供さんの世代にかわっていく。こういう場合に、急速に農村から何割かの人口をはじき出す場合、受け入れる姿勢がだいぶ違うと思う。その辺も一つ指摘をして、その上に立って大臣の答弁を聞けば、繊維業界の皆さんが、これは行政訴訟等によって、協定反対だと、こういう運動をやっておるにしても、これは私は当然であると思いますが、それにしても私は救済は救済として、こういう急激な変化を起こす以上は政治的に配慮しなくてはならないと、こういう考えを持っていると思いますが、その点ちょっと確認だけしたいんですが、どうですか。
  34. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それはもう、私は繊維企業の実態というものが、いま申し上げておる日米繊維交渉だけによるものではない、必然的なものであると思います。が、しかし、私は日米繊維交渉というような、これくらい国民的理解を得られておる事態でありますから、これは禍を転じて福となさなければならぬ。ここでもって思い切った救済対策を行ない、転廃業や、そういうものまで徹底的にこれを機会にやりたい、こういうことであって、救済、それから助成政策等もあわせてまいりたい。  私はもう一ぺんここでもって、専門家ばかりでありますから申し上げますと、いま買い上げておる繊維機械は、これは実際的に国際水準の機械じゃないんです、私が言うまでもなく。これは早晩、スクラップを積極的に推進しなければならない機械であって、ヨーロッパの持っている機械に比べて、国際競争力上問題があるのであります。全然性能が違う。これは日本人の低賃金とか、日本人の勤勉さによってカバーされておるにすぎない。そういうものが今日の段階においてスクラップ化が行なわれるとしたならば、これこそ真の構造改善でもある。こういう考え方で、私自身はこれを機会に、何とか責任が果たされれば済むんだというのではない、繊維企業はこれから十年、十五年後に、世界の繊維企業の中でどういうシェアを日本が確保して、日本がどういう位置を占めて、どういうふうに世界に売っていくか、こういうことをちゃんと計算の上の青写真を前提としたスクラップ・アンド・ビルド政策をやろう、こういうことを考えておるのであって、これは当然国民が理解をされて、それもみんな日米繊維交渉のワク内の問題であるというような理解が得られる範囲内であるならば、思い切った政策をかねた救済政策をやりたい。これを基本的姿勢として明らかにしておきます。
  35. 辻一彦

    辻一彦君 すでに具体的な救済の問題、特に過剰織機の買い上げという問題に触れられておりますので、これについて、私具体的な質問をいたしたいと思います。  で、政府の買い上げは二十五万円ということになっておりますね。福井県の、これは日銀の支店が調査をしたものによりますと、公の政府関係等から借りている資金でありますが、中心に調べますと、機一台に五十六万円借金しているというのが、福井県の大体実情なんです。一台の織機に五十六万円。そうしますと、二十五万円で買い上げたとしましても、借金が全部返せない、こういう声が非常に強いわけですよ。特に、中にはやはりこういう状況の中で仕事を変えてみようという方もある。だから、もし借金が返せたらやめたいという人も現実にあります。しかし、二十五万円ではどうしても借金が返せぬから、だから無理に続けてるんだと、こういう方も現実に私はかなり多いと思うんですよ。  それが一つと、もう一つは、綿の場合には、管巻機だけで大体用が足りるようですが、福井のような合化繊のところでは、たくさん準備機があります。たとえば、御存じのとおりでありますが、ねん糸機、それから整経機、管巻機、下ごしらえ機、仮より機と、こういうたくさんの準備機があるのですが、こういうものを持っておれば、機一台だけを二十五万円で買い上げたとしても、これらの準備機が何とか買い上げの対象にならなければ、実際問題としてこの政策が効をあらわさないと思いますが、時間があまりないので、ごく簡単でけっこうですが、この二つについて、まずお答えいただきたいと思います。
  36. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 確かに、今度のいろんな救済政策を考えてみますときに、いままでは繊維局が中心になって、こういうことをやりましょうということでございましたが、実際、繊維企業の中にもいろいろ利害は相対立をしているんです。中には、政府間交渉をやってくれたから、これでやっと助かったわいというのもあるんです。一年早くやってもらえば、うちの借金は半分で済んだものを、何で一年間引っ張ったんだと、いまになって強硬なことを言ってくる人もあるんです。何で繊維連盟でやらなかったんだ、やったって取り上げられなかったんだと、こういうくらいのものもあるのであります。  私は、ほんとうに救済政策をやるときに、どうも繊維局だけですべてのものをつくるといっても、なかなかできません。ですから、今度は私は、労働組合からも、各政党からも、各中小企業や零細企業、全部、自分が最もやってもらいたいもの、買い上げてもらいたいもの、それから融資をしてもらいたいもの、税制上やってもらいたいもの、そういうものを出してください、全部。とてもこれは第一回でもって、一発七百五十一億をやっておいておしまいですよというような対策じゃありません。ですから、必要があれば、これは四十七年度予算に計上することは当然でございますし、これはとにかく予備費をどうしても使わなければならないというときがあれば、これは与野党の理解を得て支出をすれば、あるのでありますし、また、これが二年とか三年とか、場合によっては繊維企業として五年かかるよと——いま転換しろといっても、もう少し台湾とか朝鮮の動きや中国の動きを見ないと、どうも捨てがたい、もうからないんだが、どうしてもやっていたいというものもあるので、時間がかかる。だから五年かかるという正式の申し入れもある。  ですから、われわれは、いますぐやらなければならないもの、これから三年間でやらなければならないもの、ほんとうに五年間必要なものはひとつやろうということで、政府対策本部をつくって、じっくりと腰を落ち着けて、まず業界要求は全部ひとつ一応集めよう、そして、すなおな気持ちでこれを再検討して、必要なものからやっていこうと、こういうことになっているんですから、そういう意味で、いままでのように織機が二十五万円といっても、それはもっと大きなものもあるでしょう。平均二十五万円というのですから、安いのは七、八万円もある。帳簿価格ゼロというのもあるし、もっと大きいものもありますから、こういうものが、二十五万円できまっているからそれでおしまいというのではなく、大きなものがあるならば、それの実態に合うような買い上げ価格にしなければならない。こういうことであって、それは画一、一律的にこだわっておらないということだけ申し上げておきます。
  37. 辻一彦

    辻一彦君 簡単に一言ですが、準備機について買い上げをされる意思があるのかどうか。どうなんですか。
  38. 佐々木敏

    政府委員(佐々木敏君) 現在まだ、業界の御要望等も聞きまして検討中でありますから、結論が出ておりません。ただ、先生のおっしゃいましたような仮より、ねん糸等の機械につきましては、対象として考えたいと思っております。
  39. 辻一彦

    辻一彦君 ねん糸機と仮より機については対象として考えておるのでありますね。これは福井産地の強い声でありますが、借金が返せるだけの買い上げをしてほしいということと、準備機もひとつ一緒に、買い上げるならば買い上げてくれと、こういうことであります。  それから、もう時間も迫っておりますから、ずっと並べて私質問しますから、まとめて御答弁いただければいいと思います。  一つは、やみの織機の問題も非常にむずかしいのでありますが、これは一体どういうようにお考えか。石川県では、工場の八〇%を監察した結果、五万三千台の中に三千七百台のやみ織機があったということが立ち入り検査で出た。それから福井県の場合は、四十五年の十一月に三千二百三十九台、これを六百台にまで追い詰めた。しかし、ほうっておけばまたふえるということになっております。ところが石川の場合でも、調査によると、三千七百台のうちに、登録申請中は八百台、それを希望するのが二千五百、態度不明四百台、こういう計数が出ておりますが、こういう問題も、やみ織機、無登録の織機の問題も非常にむずかしい問題でありますが、これをどういうように考えておられるか。  それから第二に、金融の問題に私大急ぎで入りたいと思います。で、救済金融の問題も、七百五十一億は補正の中に入っておるのでありますが、二千億、だから差し引き千二百億か千三百億出すという、そういう考えを聞いておりますが、具体的に総ワクは一体、千二百億とか千三百億とかいわれますが、幾らを考えておられるのか。あるいは、それをどういうように配分と申しますか、分けていくのかというような問題。  それから、救済の問題の一つでありますが、ほんとうに借りたい人が借りられないということもあります。これはどういうことかといいますと、たとえ政府で千二百億のワクを出してくれても、もう下のほうでは、担保に全部入れ、そうして借りられるだけ借りてしまった。新しい機械を買うために借りられるだけ借りた。だからワクをくれても、このままでは担保もなし、借りられないという状況が、現実に下のほうで起こっております。たとえば福井では、この前四十三億ですか、この資金ワクがあったときに、三億はどうしてもこの中で十分消化ができなかったということで、日絹連のほうに使ってもらったという、こういうことも聞いておりますが、せっかくワクができても使えない。借りたい人も借りられない。これをどういうふうにするのかということですね。極端に言いますと、ほうっておいても構造改善等で設備を自分で更新してやっていけるような大きなところには、安いお金がどんどん流れて、どうしても借りたいというところが借りられないというのが、実際、現実の姿にかなり私はなっていると思う。こういうものを、借りたいという人にどういうように借りられるようにするかということ、こういうことを、私は金融の問題として指摘をしたいと思うのです。  それから、一括して大へん恐縮ですが、実は、きょうは国民金融公庫澤田総裁の御出席をいただいておるわけなんです。時間があればゆっくりお伺いしたかったのですが、その時間がないようでありますが、たとえば国民金融公庫は、私が聞いた点では、金融ベースにあまり乗らない中小企業に対して経営資金を貸すというのが国民金融公庫の大事なポイントであるということ、こういうように「国民金融公庫」というプリントにも出ておりますが、そういうような御説明を伺っております。しかし、中央のほうでどういう御指導をされておるかわからぬのでありますが、地方のほうへ参りますと、全部きちっと金融ベースにはまらないと、なかなかお金が借りられないという現実があるわけでありますが、金融ベースに乗らなくても借りられるには、一体どういうふうにすればいいのかということですね。こういうことをひとつ総裁のほうからもお答えを願いたい、こういうように思うわけであります。  それからもう一つ、新しい機械を買って構造改善をやって、まあ一年据え置き十五年返済となっておりますが、福井では、三年間もしこの協定が続くということになれば、結局経営がうまくいかなくて赤字が出て、なかなか元金を返すだけの余裕がない、余力がない。そこで福井繊維業界の皆さんは過日お集まりになって、三年間であれば、政府関係三機関の資金は三年たな上げをしてほしい、もちろん利子は払うにしても、たな上げをしてほしい、三年ということは、協定が三年であるならば、三年の間は赤字になりやすいのであるから、三年はたな上げにしてほしい、こういう強い要求を出されておるわけでありますが、私は一部聞きますと、政府筋では中小企業庁長官のほうから、二年は、というような内示が福井業界のほうに流れているということを聞くのでありますが、三年のこの期間というものがあるならば、これは三年この救済のために元金をたな上げすべきではないかと、こういうように思うのでありますが、これらの点について、ひとつまとめて御答弁をお願いしたいと思います。  なお、もう一つありますが、労働省の皆さんにもおいでをいただいておりますので、最後に労働者対策として、非常に倒産や、それから離職者が出ます。そうなりますと、退職金を払うことができない企業が出る。それからまた賃金を払うことができない企業が出まして、いわゆる労働債権というものが出てくるのでありますが、これがかなり広範囲にこの産地には出る可能性がありますが、どういう対処をされるのか。もう一つは、離職した人が新しい仕事を求めるとすれば、訓練所等による再訓練の施設とか、そういう内容というものが非常に充実しなくてはならないのでありますが、残念ながら福井県、石川県等における状況は非常にまだまだ不十分でありますが、これらの問題を労働省としてもどう考えておるか。  さらに通産省として、石炭の不況時における臨時立法が行なわれましたが、私は繊維関係についても今度大規模にこういう状況が起こるとすれば、やはり石炭対策に匹敵する臨時立法をもって、企業とそして労働者の対策を行なうべきであると思いますが、これらについてのひとつ御見解をまとめてお願いいたしたいと思います。
  40. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) やみ織機の問題、非常に問題になっておるのでございますが、いま慎重に検討いたしております。これはもう慎重にということ以外にありません。この種のもう特性でございます。私もよく知っておりますが、父祖三代にわたっておりますと、とにかく十台持っている者は、五台は蔵の二階に置いておきたい、こういうことでございます。これはもう、出したがらないのであります。そのうちにいいときがあると。こういうことがずっと過去続いてまいりましたから、そういうことでございますが、私はそういう状況では今度はないのではないか。先ほど申し上げたように、いまの織機そのものがもうスクラップ化の運命にある。これは、構造改善をやっていけばほとんど全部が入れかえなければならないような織機そのものを、蔵の上へ上げておって、また時が来たらうまくやろうというような、もう、そういう情勢ではないと私は思います。ですから、今度は織機は、買い上げの対象になれば全部さらけ出してくるなという感じでございます。そのときに、無登録のものは一切受け取れぬ、買わぬということができるのかどうか、それが一体、救済対策になるのかどうかという問題もありますし、今度は、買った以上、これからふやされてはかなわないので、これをどうするかという問題があるので、そういう一つだけでもって片づかないのです、そこらは。なに、政府はせつなくなれば買ってくれるから買っておけということになれば、これは国民の税金を使うのに、そんなに甘く使えるはずはありません。そういう意味で、現にある織機を、まだその中で全部登録しようとしていない、幾らか登録して、幾らか無登録のままにしておこう、こういう業態のむずかしさからくる問題でもあるし、これは業界の歴史的な問題からくるものでありますので、これは慎重に検討いたしておりますので、結論はいずれにしても出したい、こう思います。  それから第二の、七百五十一億はもう全部大体うまく出ておりますし、この中で六百億の融資も、十一月で四百億以上出ましたので、これは十二月の年末までには全部出る、こういうことでございます。それから五万三千台の買い上げ、百十一億に対しては、これはむろん順調に進んでおるということでございます。ただ、先ほど御指摘のように、いろいろな週刊誌などのグラビアで紹介をされて、ほんとうにいい気持ちではない、こういう問題が残っておりますが、いずれにしても予算は執行せられております。  それから四十七年度予算につきましては、いま大蔵省に折衝中でございまして、ざっくばらんに国会で御答弁申し上げておりますように、二千億、それは、私自身がこの種の問題のむずかしさを前提として考えた金でございますが、まあ対米輸出が六億ドル弱でございますので、ラウンドな数字で申し上げると二千億でございます。一年間全部、年間五%ずつ減っていけば綿製品よりも減るわけです。四%ずつ減れば綿製品と同じくなるのです。そんなにはしませんと、こう言っているのですが、いずれにしても、理由のいかん、状態のいかんを問わず、政府国会も、この繊維の救済に対して一年間の対米輸出の全額くらいのものをやれば、いかに何でも理解はいただけるだろう、政治というものはそういうものだという私の考え方に立って二千億、こう言ったわけであります。これは大蔵省も、相当荒らっぽい議論であると言っておりますけれども、二千億から七百五十一億引けば、大体千二、三百億になるわけでございますから、これは千二、三百億何とかしてくれ、その中で織機対策十万台、二百五十億は、もう私は国会で答弁しているからこれは法律だ、こういうことで大蔵省と話をしているわけですが、二百五十億の十万台に対しては、これは承知いたしましたと、これはもう予算編成前であっても、けっこうでございますと、こういうことでございますが、そのほかに、まあその千二、三百億をどういうふうに計上できるのか、それが年度間というよりも、先ほど申し上げた業界のむずかしさであるので、ずっと後年度に、これで済むわけじゃありませんから、業界は四千八百億と、こう言っておりますし、これは三年間でやれるのか、一年間でやれるのか、二年になるのか、五年になるのか、四年になるのかというものでひとつ計算をしよう、こう言っているのでございますから、これは四十七年度予算編成の間に十分大蔵省と理解を深めてまいろう、こういうことでございます。  それから、借りたい人には金を貸さない、借りられない、これは担保やワクがないという具体的な問題でございますが、これは私のところにももうたくさんございますが、今度は工業組合とか協同組合とか企業合同体とか、こういうものがやはりだんだん出てこないと、無担保、無保証ワクをはるかにこしておって、そうして今度出しておる法律等でもって救済をされる、担保を持っておらなくても信用提供によって借りられるもののそのワクをこえる金でございますし、時借りとか、生産をするまでの間、物をかかえておる間だけつなぎたいという、つなぎ資金という問題で、これは個々にみんな違う問題でございます。これは無制限に無担保、無保証ということができるわけではないのであって、やはりおのずから限度があるわけでございます。まあ私は、四十七年度予算の中で、どうせ予算案に計上をして、法案も提案をしなければならないというようにきまったものについては、やはりその間のつなぎ資金をどうして出すのかというので、県とか市とか、ちょうど新潟の燕でもって、三分の一に減る業態に対して何とかスクラップ・アンド・ビルドを進めていくためには、もう地方公共団体が介入せざるを得ないというところまでやっておりますから、いろいろな具体的な救済的な手段を考えていかなきゃならぬと思います。制度上、無制限に無担保、無保証ということは、それは考えられないことであって、ものには際限がある。その際限をどうつかむかということで、皆さんの御意見も伺いながらやってまいりたい。これはもう無制限に、際限のない話ということがありますが、そういうわけには、国民の税金を使うわけにはまいりません。しかしながら、限度一ぱい、際限内の問題として効率的なことを考究してまいりたいと考えます。  あと、国民金融公庫中小企業の問題は、私が答弁した問題と同じようだと思いますが、これは具体的な立場からお答えを申し上げます。  第五点、日米協定が三年間、たな上げ三年というのは、これはまあ理論的に合う話でございまして、これは何かひとつ通産省でも知恵を出せと、こう言っておるのです。これも全部が全部、三年間たな上げして、転業する人が三年間は転業しないでがまんしてもらうというのでは、ますます混乱するわけでありますから、何か組合とか業界が整理をして、企業合同をするものに関しては、この基準ワクに入る、いわゆるスクラップにならないビルド部分のものに対してどうするかということは、これは、何か結論を出さなきゃならない問題だと思って、いま検討いたしております。  最後に申し上げることは、石炭のように臨時立法を行なえということでございますが、これは必要があればそういうふうになるわけでございまして、これはまあ繊維業界の実態というものを通産省はどう把握するかというので、来年度の予算や、金融や、税制上どうできるかということで、立法が必要であれば当然いたします。いまも御審議いただいておるのはそういう趣旨法律でございますから、そういう意味で、何も立法を避けるような気持ちはありません。  ただ、繊維の問題は、ここでお互いにひとつ考えていただきたいのは、まあ、われわれ子供のときから問題になっておるわけです。戦争が始まった昭和の初年ごろは、安かろう悪かろう、今度は、よかろう安かろうということであって、これはたいへんな問題だ。日米間だけではなく、日韓、日台、日本と香港との間をどうするか。中国大陸の問題を考えるときに、避けがたい問題である。私はそういう意味で、今日これを取り上げて、これがうまく処理ができれば、長い歴史の上から見れば、早くてよかったなということになると思うので、これは私は率直に言って、専門家の皆さんおられますが、去年この問題が起こっておれば、私はもう千億少なくても、まあ出す金の千億じゃないんですが、業界の苦しみは半分で済んだと私は思います。そういう計算を、いま私は通産省でやっているんです。無責任な発言はしておりません。私が実際そういうことを考え、それは、石炭においても同じことが言えるわけであります。私はそういう意味で、まじめな立場で、これだけ両院において注目をされておるのでございますし、繊維対策に関してはひとつ完ぺきだと言われるものをやりたい、こういう考えであることを念のため申し上げておきます。
  41. 澤田悌

    参考人澤田悌君) お答えをいたします。先ほどの御質問金融に関しましては二点ございますかと思いますが、一つは、国民金融公庫の融資の性格と申しますか、それと窓口におきます実際の取り扱いの弾力性の問題、手ごころというようなことに関する御質問かと存じます。  御承知のように国民金融公庫の貸し付けにつきましては、市中金融機関から融資を受けることが困難な資金というのが、一つ大きい制約になっている。ということは、一般の金融ベースでは首をひねるようなものが少なくないということになるわけでございますが、他方、これは政府資金を運用部等から借りてまいりまして金融をいたすのでございまして、単なる救済融資であってはいけないという制約もございますわけでございます。それで、私どもの対象は、御承知のように中小企業と申しましても非常に小、零細企業の、非常にたくさんな資金需要者を相手にいたしておるわけでございまして、その二つの制約の間のぎりぎりのところを苦心をいたしまして、窓口で審査をいたすわけでございます。そのときどきの情勢によりまして、おのずとそこに弾力的な扱いが加わってくることは申すまでもございません。単純に一般原則で、安全であるとか、貸し出しが回収が確実であるとか、そういう基準では一切いたしておりませんで、現在非常に危殆に瀕している企業でも、これを貸すことによって先行き立ち直る見込みはどうか、そういうことまで掘り下げまして、実情に合うように極力対応いたしておるような次第でございます。  それからもう一つの御質問の点は、借り入れ金の返済について、弾力的な考え方がどのように行なわれているか、というような御質問と考えておりますが、ただいま問題になっております繊維関係緊急融資制度、それから輸出関連緊急融資制度等によりまして、公庫は零細な資金を数多く取り扱っておりますけれども、この繊維関係のもので申しますと、二年据え置き、それで期間七年でございます。ですから、現在直ちにその返済についての問題が起こっているというわけではございませんが、将来、状況によりまして、公庫の返済は御承知のように月割りで返しております。これが実行できないというようなときには、実情によって弾力的に対応してまいります。現に既往の貸し出しにつきましては、そういう事例がかなり出ておりまして、条件の変更というものを、実情に合わせて実行いたしております。たとえば、既往貸し出しで、本年九月から十月の二カ月におきまして、返済の猶予を認めた事例は、全国で千二百九十件、十億円弱ございます。一例を具体的に申しますと、三百万円借りたけれども、十月から経営がぐあいが悪くなって、しばらく毎月返すことを猶予してくれというような事例がございまして、十一月から一年間返済を猶予するというような取り扱いをいたした例もございます。こういうふうに、状況に応じて、しかも制度の許すぎりぎり一ぱいのところで弾力的に対応してまいりたいと存じている次第でございます。どうぞよろしく。
  42. 吉本実

    説明員(吉本実君) お答えいたします。  賃金、退職金等の不払いの問題でございますが、この問題につきましては、私ども問題の早期発見、早期解決のたてまえに立ちまして、情報の迅速な把握につとめ、そういったときにおきましては、その不払いにつきまして是正措置なり、あるいは支払い計画を立てさせるようにして、監督指導を行なっているわけでございますが、今後の問題につきましては、さらに企業に対します特別な融資を行ないましたときに、労働者の賃金等の債権に優先弁済するように、関係機関と協力いたしまして指導してまいりたいと、かように存じております。
  43. 山口政治

    説明員(山口政治君) 離職者の職業訓練につきまして御答弁させていただきたいと思います。  日米繊維政府協定実施に伴いまして、離職者が余儀なく生じました場合には、本人の希望等を十分に伺いまして、その再就職を容易にするよう、積極的に公共職業訓練施設におきまして、その能力再開発の訓練体制を整えております。そのワクの拡大を現在考えておる所存でございます。それからまた、期間等が長くなりますとたいへんですので、集中的に出る地方につきましては、短期の速成訓練の実施及び公共職業訓練施設以外の適切な施設への訓練を委託する等、実情に即しまして、十分に職業訓練実施体制を行政の上で整えてまいりたいという所存でございます。
  44. 辻一彦

    辻一彦君 時間がたいへん超過いたしまして、どうも……。これで終わります。
  45. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 私は、通産大臣に一番最初に、大蔵大臣に聞くのが当を得ているかもしれませんけれども、けさ、平価の調整について閣議のほうでお話があったようですが、いよいよ平価調整も、新聞等の情報によりますと、大体大詰めにきたような感じがあるんですがね。政府の今後の見通し閣議でもお話があったと思いますけれども、時期、見通し等ですね、そういう点を最初にお伺いしたい。
  46. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) なかなかむずかしい問題に対する御質問でございますが、本日、閣議終了後、経済閣僚会議で月例報告を検討いたしました。その後、関係閣僚、経済閣僚だけ集まりまして、ローマの十カ国蔵相会議に出てまいりました水田大蔵大臣から、その間の状況の報告を受けたわけでございます。受けたにすぎません。  これは、平価調整が必要であるということは報道せられておったわけでございます。もうすでに三回、十カ国蔵相会議が行なわれたわけでございます。特に、日米経済閣僚会議後に三回行なわれたわけでございます。その二回までは、どうもアメリカと各国との間の意見が全然合わなかったようでございますが、今度のローマ会議の最終段階において——アメリカとフランス側との間の対立が一番深刻であったわけでございます。平価調整の必要性はお互いに理解をして、応分の協力はしなければならないというところまででございますが、理解をしておっても、具体的な問題に対しては一歩も出ておらなかったわけでございます。  それは、アメリカ側がワンパッケージでなければならないということ、そのワンパッケージの中には、平価調整だけではなく、経済政策貿易政策も全部協定をしたいと、こういうものが前提になったことが一つ、もう一つは、金とドルの関係に対して、金価格の引き上げを行なわない、すなわち一オンス三十五ドルの交換価格は変えない。その他の何らかの方法によるドル価値の切り下げも行なわない、こういうことでございますから、話は進まなかったわけでございます。これは、対立するフランスがドルの切り下げを伴わない平価調整はあり得ない、こういうことでございます。ワンパッケージという対米貿易問題に対する調整は、おのずから別だという立場をとっているECとの間に、議論がまとまらなかったわけでございます。  日本は、そういう状態においては日米繊維交渉等、日米間には水が通っておりますから、日本は経済問題においてアメリカの抗議の対象にはなっておらないわけでございます。そういう意味で、アメリカ及びEC等の意見の交換を見ておるという立場であったわけでありますが、最終段階において、円の各国通貨調整が行なわれるならば、ドル平価の引き下げ、これは金価格の引き上げではなくて、何らかの形によるドルの引き下げということを考えてもいいということになり、経済政策は、では話し合いましょうという、二カ国間交渉になるわけでございます。日本アメリカとの間に繊維交渉を行なったと同じ問題が、十カ国の残り八カ国とアメリカとの間に行なわれるという態勢が確認をされたとおりであり、では年内にもう一ぺん、第四回目の蔵相会議を開こうということになり、今度は十七日、十八日の両日、ワシントンにおいて第四回目の十カ国蔵相会議が開かれるということになったというわけで、そこまでの間には、専門家のいろいろな検討が行なわれると思いますが、そこまでいけば、これは急転直下、平価調整が行なわれるかもしれないというのが現状でありまして、この問題、これから日本でも慎重に検討しなければなりません。大蔵大臣は十七日、十八日の会議にはこれは当然出席するわけでございます。日本政府の中で、いま、相手のあることでございまして、どのくらい日本の平価が調整されるのかという具体的な数字は、全然問題になっておりません。  ただ、私が考えるのは、ニクソン・ショック、一般的不況、それに日米協定、その上に平価調整と、こうきたら、これはどこからどこまで、繊維の状態などがどこからどこまで、どういう理由によるのかということは、全然区別できないわけですが、すべてが君が責任者としてやった日米両国政府間交渉の結果であると、こう、まあ言われてもしようがありません。ありませんけれども、実際、これはもうたいへんなことだと思っておりまして、私自身、簡単に平価調整などということで、これは実際日本の経済に及ぼす影響日本の各産業界お互いの生活に及ぼす影響ということを、慎重に考えながら、政府としては対処すべきものであるという考え方を明らかにもしておりますし、私自身もそういう気持ちで対処してまいりたいと、こう考えておるわけであります。
  47. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 大体お伺いしましたが、それで、まあ政府の目標として、一二・五%あるいは一五%近く切り上げなければならないということも、新聞等の報ずるところに出ております。なおまた、いまもお話しがありましたが、ドルの切り下げの問題など多少弾力的なことが出ておるようですが、その辺のところをもう少しお話し願いたい。
  48. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま申し上げたのがすべてでございまして、これから申し上げるとすれば、それは全く想像にすぎないわけでございまして、これはもう全然いま申し上げたことがすべてであって、これから十七日、十八日の第四回目の蔵相会議に出るまでの間に、大蔵大臣、日銀総裁等が慎重に検討した結果、御相談があると思います。  われわれは通産省として、これはもう日本の産業に影響をする、これはもう輸出影響すること甚大であります。これは実際、いまアメリカが、年間二十億ドルくらい出超じゃないかということを言っておりますが、そんなに出超でない、こう私はコナリー氏が来たときも、日米経済閣僚会議でも、声を大にしたわけでございますが、十二月、一月、二月、三月、来年の年度末までには対米輸出は非常に減ると言ってもおりますし、私もそう思っております。思っておりますが、歴年で見ますと、一月から十一月までで、すでに七十億ドルをこすという状態でございますので、アメリカのいうやはり二十億ドルくらい、ことしはやむを得ない。来年はもっとずっと減ると思いますが、そういう状態でございます。しかし、そのくらいのものは、平価調整のいかんによってはすぐ飛んでしまうということでありますので、これはいまの繊維問題よりもはるかに大きな、もう貿易収支そのものを逆転せしむるということになります。そういう意味で非常に慎重を要する。その間においては、もう通産省としてのデータは確実に出して、私たちは主張すべきは主張しよう、こう思っておるのでありまして、いまここで申し上げられるような、御報告できるような状態にはない。大蔵大臣をお呼びになっても、ないということでございます。どうぞ御承知いただきたい。
  49. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 もう一つ、いやな質問かもしれませんけれども、いま自動車業界自主規制の問題がちらほらと出ておるのでありますが、それもどうも、平価調整の面で日本要求アメリカにやらなければならぬ。ですから、はっきり言いますと、自動車の自主規制をするかわりに、平価調整のほうで、多少はひとつこちらのほうに有利になるようにやってもらえぬかというようなことが、ちらほらと出ております。その辺のところ、粗漏はなかろうと思いますけれども、大臣のお考えをひとつ、この際に明らかにしてもらいたい。
  50. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 個別の問題と平価調整の率の問題等を取引をしたり、交渉しておるという実態には全くない。そこまでいっておらない。もっともっと手前にある。これはアメリカ自身でも、ドルは一切手を触れませんで、ほかの国だけ調整しなさいと、こう言っておったわけでございますから、日本は特に最も高く要求されておるような立場で、とても、いろいろな交渉をするとか、日本が切り上げる用意がございますとか調整の用意がございますというようなことは、絶対にいままでも言っておりません。これは全く多国間協定の中で、国際流動性を確保し、それから経済の拡大基調を確保していくために、最小やむを得ざる各国の応分の負担を行なうという基本的な発言以外は全くしておらない。日米間においては、コナリー長官が来られても、日米経済閣僚会議でも、個別にやったということは全然ございません。これは全くないということを申し上げておきます。  それから自動車は、確かに指数で見る限り大きいのです。十一月の末で見ても、対前年比二〇〇をこしておるわけでございますが、これは特異な面もあるわけであります。ビッグスリーがみな日本に来ておりまして、アメリカ日本と共同して自動車の開発を行なおうということになっておりますし、しかもアメリカ人の嗜好もそうなっておるということでありますし、特に日本は価格をうんと引き上げております。アメリカにおける市場価格、売り出し価格をぐんと引き上げております。将来的にも引き上げることをちゃんと予告をしておりますので、こんなに高い状態というものは、いままでのやはり港湾ストとかいろいろな問題で、また平価調整などもあるということで、見込み輸入というものがあったと思うのです。ですから、これがノーマルな状態に戻れば、私はそんなに心配することはないだろう。こういうことで、アメリカ側との話し合いのときも、アメリカ人が二台に一台、奥さん用の車は全部日本製の車にしてくれるという意思が前提でなければそんなにふえないと、こう言いましたら、まあそうはならぬからなあということでございまして、十二月一ぱいくらいは、私は相当やはり数字的には伸びると思います。しかし、来年に入れば、正常な状態になるような前提として値上げをしておりますから、それで、もう向こうの特約店は一切ふやさぬということにいたしております。そういういろいろなことが実態として出てまいりますので、心配はないのではないかということでございまして、自主規制の問題そのものも、業界まかせということでございます。
  51. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それでは輸出の問題ですが、いまも多少話がありましたが、これは新聞にも出ておりますが、十一月の輸出認証額は前年同月より三一%の急増をしておる、それから対米輸出もほぼ同じ程度の伸びを記録しておる、この調子だと、ことしの対米輸出総額は七十億ドル台、前年は五十九億ドルですね、七十億ドル台に乗ることが確実になってきたと。その次にこういうことが出ております。コナリー米財務長官に対して田中通産大臣は、対米輸出が二〇%増を上回ったら米国商品を何でも買いましょう、このように伝えたが、これはほんとうにそうなりそうである、こういうのが出ておりますがね。今後の輸出の、これも円の切り上げを一〇%あるいは一二・五%、一五%と仮定した場合の今後の輸出の減の見通し、それからことしと来年度の見通し、そういうことをひとつお伺いしたい。
  52. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは暦年でもってやっておりますから、年度間になるとまた数字が変わってまいります。私が申し上げたのは、一月、二月、三月は、がくんとくるんですと、こう言っておりますから変わってくると思いますが、一月から十一月までの数字によりますと、前年同月比は全部約二〇%以上ずつ伸びております。これは九月が一九・七、十月が一七・三という、二〇%を割った数字がございますが、十一月にはいま御指摘の一三一でありますから、そういう意味では、これを伸ばすと全部一二〇以上に、二〇%増し以上になっております。ですから、輸出見通し数字は、大体考えたような数字でいっておるわけでございます。対米も一月から、一月の一九、二月の一七、三月の三二、四月の三七、五月の三九、六月の四三、七月の三五、そこで八月のショックになり、一八に減ったわけであります。九月は前年同月比ほとんどゼロ、これは一〇一・六%というところになって、この数字を主体にして、こういうふうに激減をするのです、こう述べておったわけですが、十月に二一・七、十一月には三七・一という数字になったわけでございますが、これは港湾のストとかいろんなものがあるのです。  特に、これがアメリカと私とのこれからの大仕事になると思いますが、三七年、四〇年、ずっと見ておりましても、日米というのは、日本の経済が非常に不景気であってアメリカが景気上昇ぎみのときは、アメリカからの輸入はうんと減るわけです。輸出がうんとふえるんです。輸出ドライブになったようなかっこうになります。それは十月の実績を見ますと、アメリカに出たものは一二一・七でありますが、入るものは六一である。対前年度約半分近くしか入ってないということでありますので、その開きはますます大きくなるわけです。日本の景気がそれだけに低いということ、一〇・一%が五・五%になり、それが四コンマ台である。こういうことでありますから、日本の景気が非常に悪い。それが対米とか輸出でささえられておるということでありますのでこういう数字が出るのであって、来年度になって景気を浮揚しなければならないということになりますと、これは対米の貿易バランスは変わってくる。変わらないから何か協定をやろうという話、協定が必要でないかというアメリカ側の話に、日本からの輸出がうんと減って逆転するかもしらぬものを、そんなことができるわけがない、というのが私の主張だったのです。もしふえたらどうするか、まあふえないと思ったものがふえれば、それは何か買ってやらなくちゃいかぬでしょうな、こう言っただけの話でございまして、それも必要でないものを買うというのじゃないのであって、これはもう、いまオーダリーマーケティング、輸出秩序の確立というのは、世界各国全部がそうなのでありますから、日本だけが三〇%も五〇%も輸出がふえて、あたりまえだというわけにはいかないわけです。  そういう意味で、それはここではっきりいたしておきますが、対米出超になったら、余った金で全部何でも買うというのではなく、そうはなりませんということを強調するための私のそういう発言であって、その見通しもつかないうちに、第二の繊維交渉のようなものをやれるはずはありません、そういう強い意思の発表として申し上げたのであって、そう何でも買うというわけじゃありませんから、そこをひとつ御理解いただきたい。
  53. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それじゃ繊維の問題で若干お伺いしますが、いま辻さんのほうからも詳しくありましたので、要点だけ再確認の意味で聞きたいと思います。  それで、この自主規制で六百億の融資と百五十一億のいろんな買い上げの対策があったわけですが、その点、今度の政府協定で、先ほどお話がありましたように、十万台の織機の買い上げ、二百五十億。それから融資の額が幾らでしたか、四千八百億。それで、まず当面の来年度はどうされるのか、この融資の問題と初年度ですね。その辺のところ、ひとつ明確にお伺いしたい。
  54. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 今年度の補正予算までで、御承知のとおり七百五十一億の計上をいたしたわけでございます。まあ私はもう少し、もし、これはもしもの話でございまして、これは国会における発言でございますから慎重にせにゃならないわけでございますが、ほんとうは私は、繊維企業の対策が必要であるなら、年度内にでも何でも、とにかく予備費でも——予備費も、これは野党の皆さんでも、必要があれば、国会がないときであればそれがちゃんと認めてもらえるんだし、国会があれば補正をしてもらえばいいのだし、繊維のために第二補正とかいうようなことを申し上げるわけじゃないんですが、しかし、そのくらいの誠意のある態勢というものが必要だということで、いずれにしてもこの七百五十一億を計上した。  それから後のことから来年一ぱいというと、まあ十五カ月予算くらいになるわけですが、十五、六カ月の間に二千億マイナス七百五十億というものを、千二、三百億、千二百億ぐらいを何とかしてくれというのを、いま大蔵省に対して要求しているわけです。ところが大蔵省は、そんなには使えませんよと、そんなには使えないんで、それよりも、それが四十八年度というところまでいろんなことをやるとそうなるかもわかりませんが、これは四十七年度に、四十六年のまん中から四十七年度で二千億も、対米貿易の全額に値するものなど、それは使えないですよ、というようなところでいま折衝しておるわけです。そのほかに、なお業界は、全部入れて、四年間で四千八百億というような数字を出しておりますが、これは私は五年間かかるのか、四年間かかるのか、三年でいいのか、そういう問題はこれから業界との間に交渉をして詰めよう、こういう考え方をしておるわけでございまして、まあ私は七百五十一億を含めて二千億くらいという数字を大蔵省に要求しておる。ですから全部が全部実現するかどうかわかりませんが、とにかく最大の努力を続けておるというのが実態でございます。
  55. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それじゃ確認しますけれども、第一回は七百五十一億と。それから二百五十億の十万台の買い上げ、それから千三百億の融資ですか。その点明快にひとつ、ごまかさないで言ってください。
  56. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私が申し上げるとそれは別のものとして計算をされるところに問題がございまして、それは、七百五十一億はございます。その次には私がさしあたり十万台、こう言ったものがございます。十万台。そうすると二百五十億である。そうすると、二百五十億を含めて二千億。ラウンド二千億というのはどういう数字かというと、これは積み上げた数字では必ずしもないのです。ただ通産省事務当局から言うと、非常にいい数字である、大臣の勘で言う数字は積み上げると非常にいい数字であるということで、私も大体そうだろうと思っておりますが、この二千億というのは、六億ドルというもの、対米輸出の年間の金額というものが頭にあって、そういうものを土台にしてやっておるわけでございまして、積み重ねて大蔵省との交渉にいったら、その中から落とすものとか後年度に譲れるものもあるでしょうから、それはいろいろあると思いますが、まず大ざっぱに言って融資、一般会計全部含めて二千億、その中から七百五十一億引くと千二百億ないし千二百五十億、その中から十万台の二百五十億を引けば千億の融資ということになるわけですが、それは融資だけでなく、その中には今度協会をつくってそれに出資をするとか、いろいろなものがありますから、そういうものを大蔵、通産でもって詰めて、一体、一般会計は幾らになるのか、一般会計と言ってもそれは二百五十億円をすぱっと四十七年度予算に計上するということになれば、通産省の予算が全部でもって千億ぐらいしかないものに、産業立地で二百五十億、繊維で二百五十億、とにかく五〇%増しになる。このように膨大な予算は一挙に見られないということであれば、それはもっと前のほうに繰り上げて出すことを考えたらどうかということで、私も大蔵大臣を二、三年やってきたので、まんざらしろうとでもありませんから、大蔵省が予算技術上できる範囲内で、しかも繊維産業に対して万全な措置を講じられればいいという考え方で、いま私は折衝を続けておるわけでございます。
  57. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それじゃ、この織機の買い上げの件ですが、一台二十五万円、これが非常に安い、結論を言いますと。構造改善のまだ途中でもあるし、償却もしてない。それから税金がかかるのですね、これは。救済措置で買い上げたのに、これにまた大蔵省はがっちりと税金をとる。この課税対象になっているのは、要するに二十五万円の半額ですか、半額に対して税金をかける。さらに今度は仕事をやめる人は組合のほうに保証金を三万円ぐらい出さなければならない。そういうようなことがありまして、幾らも残りがないじゃないか、こういう声があるのですが、ただ二十五万円二十五万円と、そう大ざっぱにおっしゃるけれども、それを三十五万円ぐらいに買い上げてもらったらどうか、こういうような業界の声もあるのですが、その点はどうですか。
  58. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 五万三千台の平均値が二十五万円だということを引用して、私も二十五万円、大ざっぱに二百五十億になるということで、大蔵省にはそう言っておるわけでございますが、そういういろいろな具体的な問題はこれから、専門家がおるわけでございますから、大蔵省と通産省との予算編成の過程においていろいろ詰まる問題だと思います。  それで、いまの税金の問題は、これは、それが利益になって当然利益計上すべきものであるにもかかわらず、そういうことの措置をすることによって不当に利得を得たということであれば別ですが、そうではなく、この種のものはあるのです。家を売らなければ相続税払えない。売ったら、売った譲渡所得にまた税金がかかる。こういうことで、実に困る例があります。ですから、これは債務を保証したために、保証人としての義務を果たすために不動産を売って、それをそのまま全額国庫に納入される場合には、課税対象からはずされているわけです。そういうものは、やはり内容によって違うわけで、何でもかんでもはずしてしまうというわけにいかぬと思うのです。しかし実際において、そういうものを半分対象にしたほうがいいのか、状態によっては全額やったほうがいいのかという問題は、これは当然考えなければならない問題だと思う。ですから今度二百五十億、十万台をやるときに、立法が必要なのか、したほうがいいのかということになれば、そのときまでにはこの問題は結論を出そう、私も地元を見て、三十五万円のものを二十五万円で売って、それでやっと金繰りをつけようと思っているが、あとから税金がくるときには会社がつぶれておったらどうしますか、こういう問題がありますから、そういう問題、十分勉強したいということでございます。
  59. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 勉強してもらわぬと困るのですよ。とにかくこれは、繊維協定は通産大臣のあなたの責任なんです。それと同時に、今後非常に景気が見通しがよくない。したがって政府は、補正予算におきまして年内減税まで、今年の四月までさかのぼって減税をいたしましょうということでやったわけでしょう。あわせて、購買力を強めて景気の一環対策もやろうと、そういうときなんですから、時勢が。とにかく所得税というものは、いくら税率がそうであろうと、もうからぬものまでもらおうとは思っていないという意味の御発言でありましたが、だから二分の一であろうと、それだけ所得のない人にはかからぬのかというような感じがしたわけですけれども、政府のそういった減税対策から見て、繊維業者を救済しようというのに、こういうのをかけるということは、どうもうまくないと思うのです。筋道が通らぬような感じです。だから、そういう点を今ごろ研究しておくなんていうのは、田中通産大臣らしくないと私は思うのです。やはり、その点ひとつ強力に大蔵省と交渉して、がんばってもらいたいと思います。  それから、先ほども未登録織機の問題がありましたが、私もちょっとこれをお伺いしてみたいと思いますが、こういうケースがあるのですがね。これは尾西の毛織物工業組合ですが、ここは、結論を言いますと、やみ織機が約三千台ぐらいある。そして、この未登録織機を持っておる人は組合のほうにそれを届ける。そして年間六千円のお金を、これはあっせん料というのですか、組合に出すわけです。  もう少し詳しく言いますと、要するに、遊休施設を持っておる組合員から組合のほうに届けを出すわけです。片方、未登録織機を持っておる人からも組合のほうに届けをして、そして六千円、年間出すのですけれどもね。それが、その名目は登録のあっせんということらしいのです。ところが組合のほうは、それによって準登録織機あるいは認定登録織機として、登録織機と同様のいろいろな、まあ便宜をはかろうと、そういうことなんです。だから、届けをした未登録織機の方は、年間六千円納めてあるから登録織機と同様に扱ってもらえると、そういうところで今日まで来たところが、今回の買い上げ、融資、そういう恩恵はひとつもなかったと、ごまかしではないか、そういうようなことで問題が起こっておるようでありますがね。まあこれは、それは組合のやったことだから私のほうは知らぬと、そうはいかぬと思うのです。やはり大臣の監督権下にあるわけで、実情はそういうことです。ところが、こういう人たちが、それでは国民公庫なりどこなり金融のお願いに行くと、あなた方やみだからだめだと、行きようがないと言うのです。これはほうっておくわけには私はいかぬと思うのですが、その点いかがですか、そういう問題に対するところの大臣のお考えは。
  60. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは全く任意で行なった組合内部の問題でございますので、政府は関知しないというのが法律的な結論でございます。ところが、無籍ものの織機はどうするかという、さっき御質問があったわけでございますが、無籍ものの織機というのは、この種の業界の問題としては長いこと問題になっておりながら、明確な結論は出ていないわけです。ですから今度は、無籍ものの織機というものをここでどうするか、という結論を出さなければならない時期を迎えておる。その意味で、慎重に考究中でございますという前の答弁が生きてくるわけでございますから、そこらでひとつ御理解をいただかないと。  これ、明確に、やあ何でもやりますと、そういうような無責任な発言はできないわけです。ですからそれは、登録をしても登録をしなくても同じじゃないかということになっては困るのであって、これはやはり登録のないものと登録のあるものとの差は、おのずからあるわけでございますが、いつまでも同じことばかりやっておっても困るので、これをどうするのか、これを整理するときには、今度はどうする、してはいけませんよということにするのか、今度はどうするかという、そのときに登録のものとどう差をつけるのか、何もしないで済むのかという問題がありますので、これはやはり政府は関知せず、無籍織機を組合に登録したということは全く任意な行為であって、そこまで法律的には責任を負えないというのが、四角ばった答弁になりまして恐縮でございますが、しかしそこは実態に即応するように、慎重に検討いたしておりますということがあるのですから、これをあわせてひとつ御理解をいただきたいと思います。
  61. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 私が言いたいのは、石川や福井の場合と違うわけです。これは何にも金を払っていないでしょう、組合に。こっちは六千円取られたのですから、はっきり言ったら。その辺が多少問題点が違うのであって、しかもこれを納めた人は、認定織機と称して登録織機と同じように利便を与えると、こうなっているのですよ。だから、それは組合がやったので知らぬと言うが、それは私は監督をする立場の通産省があまり冷たいのでは、うまくないと思うのですね。
  62. 佐々木敏

    政府委員(佐々木敏君) ただいま先生のお話しのような実情につきましては、尾西の組合のみならず、一、二の組合でしておるようでございます。私ども、法律的にはまことにまずいことでありまして、県等を通じまして指導をいたしております。ただ、組合内部の問題といたしまして、いろいろな事業をやっておるわけでございまして、そういった関係から、無籍の織機から若干の金を取っておるということは非常にまずいわけでございますけれども、私どもそれ以上の、これの廃止、停止等については措置ができない次第であります。ただ、これをやっておりますからといいまして、今後の通産省の行政には関係はないと、かように考えております。
  63. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 これで終わりますけれども、あなた、最後の、通産省行政とは関係のないということは、これはあなた行き過ぎですよ、そういうことは。どうですか、大臣
  64. 佐々木敏

    政府委員(佐々木敏君) 無籍の問題、全体としては大臣が申しましたような措置を今後とる予定であります。ただ、お金を徴収しているがゆえにということでもって、法律的に特別な差等を設けるということはございません。
  65. 高山恒雄

    高山恒雄君 ほとんど意見が出ましたから、私は関連で質問したかったのでありますが、一つ大きなあやまちを大臣おかされたと、私は信じて疑わないのですが、この課徴金の問題の先ほどの御説明ですね、何か繊維政府協定で課徴金が全面的に免除されたということが、大きく国際的にも利益になっておるとか、国内の今後の産業にも利益になっておるとかと言うことは、ちょっとおかしいと思うのです。そういう問題は、少なくとも大臣発言の中では、国際的な問題であるという立場で処理すべきだと私は思うのです。これはあまり言われると、外へ行って、大臣こういうことを言っているとよく聞かれますから、ひとつそういうお考えは改めてほしい。国際的な問題で、政府の取りきめではないのだ、こういう考え方のほうが正しいのじゃないかと思いますので、私はこれをあえて指摘をしておきます。  それから、他産業に波及するかしないかという問題ですが、この問題について、大臣は、しないだろうという見通しを持っておられるようですが、ちょっと甘いじゃないかという気がしますが、どういう根拠があって、ないだろうという考え方ですか。
  66. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まず第一番目に、繊維協定というものをやったけれども、そのかわりこういうメリットがある、私はあまりそういう論じゃないのです。ですから、もしそういうふうにお聞こえになったら、それは答弁書にはいつでも、課徴金はたいへんだったけれども、ということがちゃんと書いてあるからということであって、私は課徴金をとったからこの協定をしたというのではない。この協定というのは、日米が不可避でやったというところに私のウエートがあるのであって、これは課徴金がどうだとか、そういう問題は、私自身が考えてあまり意識しておらない問題でございますから、そういう意味で、繊維政府間交渉は課徴金を取っ払ってそういう取りきめをしたと言う気はありませんから、そういうことをお感じになっておったら、それは今度、私もそういうことを言わないようにいたします。  それから繊維協定をやったことによって、ほかに影響を及ぼさないのか、この種のことを要求されないのかというと、確かに要求されないなんというあれはないので、向こうは言ったのですから。向こうは、自動車も電卓も電子計算機もこんなにふえているじゃないかと。それは特殊な状況でふえておるので、とにかく日本業界輸出秩序の確立ということで当然こういう数字はノーマルなものになるのだから、現在の状態を前提として政府協定やいろいろなものを結ぶことはできない、第一、繊維だけでも三年もかかったじゃないですか、少なくとも次にいろいろなものを要求しても、そんなことはできませんよ、三年かかりますよ、私はそのときには通産大臣じゃおりませんよ、こういう非常に深刻なことを言っておりますから、そういう意味で、現実問題として、政府協定というようなものを出してこないだろう、出してきてもなかなかまとまるものではない、という認定を申し上げておるのでございまして、それは、アメリカがヨーロッパに対して、平価調整経済政策とワンパックだと非常に強く言っておって、そうでなかったら、わしのほうは課徴金を一五%に引き上げ、当分いまのままでおります、こういう強い姿勢をとっておるので、わずか一〇%のシェアしかないECでも、やはりそれに乗らざるを得なくなっておるということでございますから、やっぱり、そういうものはアメリカ日本に対する考えとしては、当然強いものが幾つかあると思いますし、これからも出てくる危険性はないとは言えないと思うのです。  ただ、それはもう日米間の話し合いによりまして、日米間のお互いの友好な、正常な貿易という範囲内で片づけられるべきものであって、私は、二回目にまた政府協定をやろうというようなことは、とてもそれはたいへんですよということは、非常に強い意思を発表しておりますし、業界に対しても、値上げをしなさい、値上げをしなさい——糸などは三年も四年も出ておるから、繊維業者はみんな三年分くらいもうけておるかと思ったら、全部政府側が救済しなければならないくらい、品物をよけい出してしまって、もうけておらないじゃないか。ここにダンピングと言われるところもあるのだから、これはもっと値上げをしてもらいたいと。それで、自動車などは一〇%以上も値上げをしたり、一切代理店を設けないということにしようとか、こういうことをやっておりますので、現実問題として、繊維と同じような状態で政府協定を求められるということは避けていけるだろう、こういう感じを申し上げているのです。
  67. 高山恒雄

    高山恒雄君 その点も、大体民主政治というものは世論の政治でございまして、アメリカ繊維も、単にニクソンだけががんばっておるだけじゃないと思う。労働者も経営者も、両方ががんばっておる。したがって、それに応じなくちゃならぬという公約をしております。これは言うまでもございません。したがって、一つの例をつくれば、歯どめをとってしまえば、他の産業に波及しないということはだれも予言できません。これはもう当然だろうと思う。その点の認識が足らぬのじゃないかという気が私はしています。これは一つの私の考え方を申し上げておきます。  それからもう一つ、今度の協定で、いま政府から専門家が行って調整をしておられるようですが、一体、これの品目別区別、さらに国内における生産割り当てのできるような細部的な処理が、いつまでかかるのか、そうして、実際にアメリカ協定したその数字輸出がいつ軌道に乗るのか、この見通しをちょっと伺いたい。
  68. 佐々木敏

    政府委員(佐々木敏君) 先ほど大臣から申し上げましたように、専門家会議を二十二日から一週間ばかりいたしまして、基本的な、弾力条項の具体的なやり方、あるいは先ほど御質問ございましたような、いままで相当延びております毛製ニット生地とかニット衣類とか等々の取り扱い、あるいはチーフ・バリューを米国基準としてやっておりますが、わがほうはチーフ・ウェートでありますが、その辺のブリッジの問題、あるいはその他、品目の定義等といたしましてアクリル長繊維の織物、短繊維の織物が日米の統計上非常に違っております。あるいはメリヤス衣類が非常に数多い品目がございまして、その区分けといいますか、等々につきまして……。
  69. 高山恒雄

    高山恒雄君 それは私はわかっておるので、いつごろまでにできるのかという、いつごろにそれが制度化できて、その輸出の軌道に乗るのか。時間がないので。
  70. 佐々木敏

    政府委員(佐々木敏君) そのうちの基本的なものについて協議の前段階が終わりまして、なお個個の案件につきましては、なお相当期間かかろうかと思います。しかし、現在、十月一日から具体的な輸出規制はいたしております。大部分のものは、従来の自主規制の方式でもって現在いたしております。したがいまして、逐次こういった項目につきまして明確化いたした場合には、逐次その段階で新しい方式に変えていく、かような方式でやっていきたいと思います。
  71. 高山恒雄

    高山恒雄君 ちょっと答弁がはっきりしないのだが、総体的に終わるのはいつかということを聞いたんですけれども、それはよろしい。ただ問題は、見通しがわからぬようでありますならば、いま自主規制でやっておられる、この自主規制でやっておられて、超過輸出実績になってしまう。それでは滞貨は、最近は国内には相当ダンピングがやられておる。こういう場合が起こり得ることが一つ。もう一つは、いまの自主規制でいくと、品種別の区別があまりしてありませんから、非常に、アメリカがこの規定の中で希望しておる以上の生産をいまやっておるわけです。したがって、それ以上の生産が、あるいは来年の三月まで、かりにもう一ぱいの輸出になっておるからとめるというような場合に、大きな損害を招く場合があります。したがって、そういう場合の製品の滞貨、それからもう一つは、そういう場合の遊休しなくちゃならないという実情に対しては、政府は補償する考え方を持っておりますか。千三百億の中にはそれも含まれておりますか。こういう点をはっきりして、これは大事な問題です、それは大臣、言ってくださいよ。千三百億の中にそれが入っておるのか、入っていないのか、それを言ってもらわなければ、犠牲になりっぱなしじゃないですか。
  72. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 一千二、三百億というのはラウンドの数字でございまして、まだ中身はきまっておらないわけです。いま繊維局にいろいろなものを持ち込まれてきて、繊維局もその中で必要なもの、これはもうどうしてもやらなければいかぬという、技術的に考えて役所でも当然だというものは、すぐ大蔵省に持ち込んでいるわけですから、そういうことでもって詰めて、十二月末までにはきちっとしたものをつくろう。それからはみ出したものは、また次の機会に考えようという、非常に柔軟な、合理的なことを考えているわけです。  いまのようなもの、これは、これから起こってくる業界の非常に専門的な問題でして、そういうものが出てきた場合には、それをコンサルテーション等で、まあそんなことを言ったところで、これからまた先にこういうものが減っていくでしょうから、これはひとつゆるやかに、後年度ともあわせながら調整をしよう、というためには、この第七項の弾力条項というのは非常に、私はいままでのものと違って、日米間で非常にぎくしゃくしないようにやっていけると、こう思うのです。ただ、まあ業界に頼んでやっておるわけですから、実際は、これはもう全部通産省の役人がやるわけにいかぬのですから、いままでどおりやはりやらざるを得ないわけです。だから、それだけうまくもいっており、それだけに業界でも、自分で通産省の役人になったようなつもりで一年間を見直す——専門家ですから、通産省の繊維局よりもずっと専門家がやっておる仕事ですから、そういう意味では、ちゃんとこの協定でバランスというものをとりながら、調整しながら、うまく出してくださいよ、そして、その中で少し出たり入ったりするものは現実的に起こりますから、それは数字を見ながら、実態を見ながら、通産省がしかるべくコンサルテーションのほうでもって片づけていくということ以外にはないのです、あまりにもむずかしい問題ですから。ですから、それでなお起こってくる現象に対してどうするかということは、いま、千億とか千二、三百億の中に入っているとか、入っていないとかいうほど、具体的には固まっておらぬわけですから、そういうものが出た場合には、それをどういうふうにして救済をするか、どういうふうにして調整をするか、その後に予算的な措置をしなければならぬのか、そういう問題は、業界と通産省でもうほんとうに一体になって、国益を守るためには、もう産業界と通産省はほんとうに一体にならなければ国益を守れない仕事でありますから、そういう意味でこん然一体となって、その実態に合うような措置をとっていこうということでございますから、あんまり織機が、うんと製作をしたら仕事は全部手あきになったというようなことがないように、そういうことにはならないと思いますし、十分そういうことも事前に調整をしてまいろうということでございます。ですから、これは款項目の中に入っております、これは融資です、これは一般会計です、というほど具体的になっている問題ではないということを申し上げておきます。
  73. 高山恒雄

    高山恒雄君 繊維の犠牲というのは、もうどんどん出ておるんですよ、通産大臣。まあ福井にありますけれども、あそこは縫製並びにメリヤス、織物、染色ですね。ところが、紡機という問題はもう現実に起こっておるのです。これは、かりに買い上げるとしますか。買い上げただけでは、もうどうにもならないのです。したがって、これから出てくるいろいろな、いま生産計画の中で仕掛かりから何から一切含めますと、少なくとも商品別規制ということになりますと、多くの犠牲が出てくる。それは、かつて私が陳情に行ったときも大臣がおっしゃった、そういう滞貨のあるものは買い上げる以外にないとおっしゃったが、これは公式の席上で、ほんとうに買い上げてやるという腹をくくってもらわないといかぬと思いますがね、どうですか、大臣。むろん微に入り細に入り、こまかい問題はございましょう。けれども、アメリカ政府協定をしたために起こってくる過剰生産、滞貨、これは商社もあります、これはまあ買い上げざるを得ない。そうして政府が、後進国なら後進国、あるいは目下事変の起こっておる国へ救済品として出すとか、大臣は一応そういうことをお考えになったんじゃないですか。その点をはっきり言っていただきたいもんですね。
  74. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 中小紡についての問題でございますが、紡績機械も買い上げる対象にしたいといま考えております。  それから、まあこれはいまなかなか予想できないことでございますが、やはり品物がストックしたり、そういうものが出てくるわけです。その場合は、今度はひとつ業界とも十分連絡をするが、連絡調整をしても余るものもあるし、どうしても滞貨融資をしなければならぬものもある。滞貨融資だけではなく、それは買ってやらなければいかぬものもあります。そういう意味で、この間私も非常に主張をして、フィリピンに対する商品援助の額をふやしたい、また、いまもそういう考え方を進めておるわけであります。ですから、商品援助に向くようなものを、やはりつくるときにアメリカ向けだけでつくられちゃかなわないんで、この間もちょっと私はある人と話してみたら、これは余っているんだから半分でどうですかということで、すぐ商売人的にたたかれたんじゃ、国民の税金をむだにできませんから、いろいろなことはございますが、やはり、いままで対象としておったもの以外に、商品援助に使うとか、救済に使うとか、これはやはり別にシェアを開拓していく、そういうこともあわせてやりたい。その意味で、私が先ほどちょっと申し上げたのは、協会などで買い上げるようなことができないか、そうすれば、政府の出資金等も必要になりますし、ということで、正確にまとまっておるわけではないんです。ともかく、省議できまってこういう状態でございますというのではありませんが、対策として考えられることは何でも考えなさいということでやっておる中に、そういう状態に対する対応策の一つとしても、いろいろな状態を想定をして考究をしております、ということを申し上げたい。
  75. 高山恒雄

    高山恒雄君 したがって、まだ、それは買い上げますとはおっしゃらないんですが、これはひとつ買い上げてもらいたいと、私は希望を申し上げておきます。大臣は、答弁になると、そういうことになるとお逃げになるんでね、それで非常に困ると思う。  そこで、大臣に私もこれはちょっと確認をしておきたいんですが、十万台の二百五十億、これは三十五万にするか、二十五万にするか別にいたしまして、私は三十五万円で買い上げてやるべきだ、税金も免除するような方法をとるべきだ、こういう意見も強く要望しておきます。  したがって、追加分として一千三百億、一千二百五十億ですか、この中にいろいろな問題がございますが、たとえば輸出縫製、これは全く中小企業、零細ですね、大体七十五億ぐらいの希望意見を出しているようですが、これは御承知のように、通産省としてもこういう実例があるわけです。この七十五億という希望は、いままでの設備を遊休するとか、そういう損失の補償をこれは言っておるわけですね。ところが、機械買い上げも何もないわけです、これは。それからいま縫製産業も、プレスから一切含めますと、一台で一千数百万円の機械はたくさんあるわけです。何の対象にもなっていない。そういう要望も出ていない。一体、ミシンは登録制でやっておるのかというと、通産省はそれもやっていない。これは指導の誤りだと思うのだね。そういうこともひとつ反省に入れて、今後は企業として、たとえば裁断機を中心にして、縫製機が何台あるか、ミシンが何台あるか、あるいはプレスが何台あって、どのくらいの規模になるかということを算出すれば、ちゃんと出るのですよ。染色加工と一緒ですよ。それをやっても、今度の場合は、もし閉鎖しなくちゃならぬような場合は、何かの方法でこれは救済方法を考えなくちゃいかぬと思いますが、そういう点は検討の中に入っておるのか。大臣はどうお考えになっておるのか。これこそ、全く私は中小企業の中でも零細だと思っている。大体平均して三十人前後、しかし、かなりのやはりプレスも入れております。この点ひとつお聞きしたい。
  76. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 輸出縫製のミシン等も買い上げの対象にいたしたいということを考えておりますし、特に縫製は産炭地等に進出企業として慫慂をして出てもらって、あとすぐこういうことになったということになれば、たいへんな困難な状態でございますから、こういうものにまで必ず手が届くような配慮をすべきであるという考えでございまして、実態の把握と、だから、こういう問題に対しては、縫製業者の代表にも、実態を政府がつかめるように繊維局にいろいろな問題を申し出られたいということで、いま繊維局は、いままでの役所としてはめずらしいほど、何でも持ってきてください、持ってきて、ひとつ実態をきわめてから適切な処方せんを書きますと、こういうことを言っておるわけですから、そんなに、いままでのように役所の立場だけでもって考えて、そういうものは知りませんというような態度をとっておらないということで、ひとつ御理解をいただきたい。
  77. 高山恒雄

    高山恒雄君 これで、時間が多くありませんから申し上げませんが、さっき、やみ織機の問題が出ましたが、五千円は安いほうです、これは。しかし、これは組合のいろいろなお世話にならなくちゃならない日本の経済機構でございますから、法律がきまっても組合外におっては何の仕事もできないというのが今日の現状なんです。そこに追い込まれて、組合はまたそのめんどうを見る限りにおいては、ある程度補償を出してくれなければやれぬというのは、これはまたやむを得ない処置であったと思うのですよ。  なお、大臣が先ほど御答弁なさったように、もしこの協定が一年前、二年前に行なわれておったら、これはもっと軽くて済んだのじゃないかと、こうおっしゃっていますけれども、品種別が問題である。いかにこれは困難かということが、ちょっと認識を新たにしていただかないと、政府がいまだにまだこれを区別することができない。二十人や三十人じゃできませんよ。ちょうど日本に進駐軍が進駐しておったときに、原綿の割り当てをして生産割り当てしたのと一緒なんです。アメリカのために生産割り当てを食うのですよ、大臣。しかし私は、三年して協議するということを大臣は言っておられますけれども、五年やらざるを得ないでしょう。  そこへ持ってきて、日本はもう一つ大きな打撃を受けている。それは、後進国の韓国、台湾、香港の規制ですよ。朝鮮へはほとんど出ません。現状のままですよ。いまや日本の企業で何十億かけて十トン生産をやっておる化学繊維は、もたないですよ、少なくとも日産三十トンの生産をしなければ。こういうことを自然の流れの中でやらせたというならいいけれども、突然やろうとするのですからね。一千億や二千億で事が済むという考え方では、私は多くの犠牲が出ると考えてもらいたい。これは、全繊同盟なんか二十万人と言っておりますがね。これはもう当然だと私も考えております、あまりにも実態がわれわれにはわかるために。それで、先ほど申しましたように、現実はどうかというと、もう、一万錘くらいの化合繊紡績が、十二月までの割り当てはありますけれども、それから先の割り当てはわからないのですよ。一月からの割り当てはわからないですよ。閉鎖するのか、綿をくれて糸を紡ぐことができるのかと、こういう実態。この点をひとつ深く政府側としては認識の上に立って、私はこの予算措置については万全を期してもらいたい。  したがって、初年度の予算が一千三百億でもよろしいが、これからの追加ですね、いままできまったのは七百五十一億、そのほかに二百五十億、さらに一千三百億ですね、それだけの金をやっぱり初年度は組んで、次の年度もやっぱり救済をするということで、はじめて大臣が言われる、今日日本繊維は、後進国の追い上げ、先進国のつまり貿易開発地域の秩序、こういうことを守ろうとするならば、やらなくちゃいかぬのだと言われる、その趣旨には、私は来るところに来たなという感じはしている。ただし、極端にきめたところに問題がある。でありますから、私は先ほどやみ織機の問題が出ましたが、これは実際問題として同格というわけにはいかぬかもしれませんが、何かの処置で、大臣の理想とされる繊維生産秩序と貿易秩序を確立するために、何かの形でやるという一つの基本がなければ、大臣の言われたこととマッチしないのですよ、実際問題として。この点はひとつお考え願いたいと思います。  それからもう一つ、これは質問と意見も含めますが、実は、五月の二十四日の閣僚会議で、この繊維自主規制に対する対策としての特別融資という処置をとられました。ところが、これが十月の中旬になってもまだ地方にはおりてないのです。いま、この法律もやっぱりそういうことになると思いますが、十月の四日の地方県会あたりでやっておるのが実情です。ところが、先ほども申しましたように、一方、紡機等においてはもう直ちに響いてきた。こういう点を考えていただかないと、非常に重要な時期だと私は考えておりますので、こういう点もひとつ政府としてお考え願いたい、こう思っております。どうかひとつ、私の希望意見もございましたが、そういう点に対して、政府はほんとうにえりを正しながらやっていただけるのかどうか、御答弁願いたいと思います。
  78. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 時を移さず迅速なる措置を必要といたすということは、もう御指摘のとおりでございまして、確実に施策が実行できるようにつとめてまいります。  それから、予算やその他の施策に対しても万全の態勢をとるし、それはほんとうに私もそう思っております。これは私は、繊維というものが日米間でそういう問題になりましたが、これはやっぱりほかの産業の秩序保持のためには頂門の一針になったと思うのです。そういう意味一つの先駆として道を開いたものである。それだけに政府が、ちゃんとしなければならないものだと思っております。同時に、まあ百年の歴史の中で繊維の持った地位というものは非常に大きいと思います。戦後、自由な貿易を拡大して、日本貿易収支や国際収支の基礎をつくったものも繊維である。だからやっぱり、石炭が戦後のほんとうに経済再建の基礎をなしたものであるということで、石炭に対して特別の対策がとられたと同じように、繊維に対しても私はやはり合理的な、また万全な対策をとるべきであると、こういう考えを前提にいたしておるわけでございます。ですから、まあ、政府も一生懸命でやりますが、野党の皆さまも、あなた方は非常に、私よりもはるかに専門家であり、繊維業界に対しては説得力があるわけであります。そういう意味では、先ほど非常にいいことを言われたと思いますが、これは一つの時を迎えておると、避けがたい段階だったと思います。ですからそれは、そのがたんときたというやり方も、なだらかにもっと誘導しなければならなかったということは考えられますが、ただ、避けがたい一つの時代であったことは、私は事実だと思う。  それは、新潟県の燕というところに洋食器があるのです。これは二千五百万ダースから二千七百万ダースくらい、つくれるんです。実績は千九百万ダースから千九百五十万ダースあるのです。これを、九百万ダースに自主規制要求した。私は自民党の幹事長でございましたが、あらゆる手を使ってアメリカ側と折衝したわけであります。友人代議士にアメリカに行ってもらったりして、通産省の協力を得まして、さんざんやっていただいた。それでもうアメリカの駐米大使館は、だめですと言うもので、九百万ダースできめたいというときに、私が一腰入れて千百万ダースまで上げたんです。話半分できめて、日米の友好は確保できるか、とやったんです。ところが、それをやってみても、やはり六割、七割というものが遊休になって、非常に困っておるのです。私自身も、これは私の選挙区じゃありません、ありませんが、まあ繊維もこんなになっちゃ困るということが、私の繊維に対して踏み切る一つのきっかけにもなったわけであります。  そういう意味で、政府も一生懸命でやります。だから、やはり繊維企業が、円満な合理的な整理といいますか、スクラップ・アンド・ビルド——スクラップということばを使いたくなかったわけでありますが、私は七月に通産大臣に就任すると同時に、正式な当委員会で、スクラップも考えざるを得ないかもわかりません、ということを申し上げたわけでございますが、そういう意味で、ひとつ政府も懸命なる努力を続けるだけに、ひとつ皆さんの御理解も特に得たい、こう思います。
  79. 高山恒雄

    高山恒雄君 労働省にちょっと聞きたいのですがね。大体もう現実に起こっておる問題ですが、職業訓練の場合ですね、これを拡大したいという先ほど答弁もございました。ところが、たとえばそれは広域的なことを考えておるのか、あるいは地域的なことに求めておるのか、この点をひとつまずお聞きしたい。
  80. 山口政治

    説明員(山口政治君) 職業訓練につきましては、地元で訓練することもできますし、それからまた広域的にやりまして、総合訓練校におきまして、寄宿舎その他ございますので、いずれにおいてもできるように考えております。
  81. 高山恒雄

    高山恒雄君 それでしたら、実際問題として広域的な職業訓練というのをやはり主体にしてやっていかないと、たとえば、私は現実を見てきたんですが、男子の方、平均年齢三十二歳なら三十二歳としますか。百人やめたのです。地域では職業訓練所にはいれませんよ。これは皆さんは両方考えておるとおっしゃるけれども、現実にもう、そういうのがあらわれています。ある染色会社ですが、二百人の構成人員であったのが、女性が半数、男子が半数で、そして百人の人間を職業訓練所に入れようとしたら、なかなかこれは入る余裕がございません。指導者も足りません。それともう一つは、日本の経済情勢が、ドル・ショック以来あらゆる問題で、どの産業も非常に不安定な状態のために、職業訓練を受ける以外にないのだ、こういう観念に労働者が立っております。そこで、何とかいまの失業保険をもらっている間に、あるいはまた自分でひとつ考えて、自動車の教習所にでも入って運転だけでも免許をとりたい、こういう考えが個人的にやっぱり出るわけです。そうなると、補償は打ち切っちゃう。職業訓練所に入っておるとそれだけの補償がもらえるけれども、個人で自分がもらった退職金の中からみずからやろうとすると、それが打ち切られる。こういう問題はどうなっておるのですか、その点ひとつお聞かせ願いたいと思う。広域の問題と。
  82. 山口政治

    説明員(山口政治君) 広域の問題につきましては、御質問のとおり、われわれのほうといたしまして、できるだけ広域にも受け入れる体制でやってまいりますし、またできるような状態になっておりますので、希望に応じましてそれを進めてまいりたいと思います。  それから地元で訓練を受ける体制でございますが、これにつきましては、できるだけ訓練手当等を出しまして、失業保険金を受けた後も訓練手当を出しまして、訓練をすることを進めております。  それからまた、先ほど申しました短期的の自動車の委託等につきましても、速成訓練あるいはまた委託訓練等をやることになっておりまして、これらにつきましても、これらの問題と関連しまして、現在、積極的に地方のほうにそういうことを進めるような体制を整えております。
  83. 高山恒雄

    高山恒雄君 委託訓練を受ける場合とか、訓練設備の中で訓練を受ける場合には、あなたのおっしゃるように、ある程度の費用を負担してやっておるわけです。ところが、そこにはいれない、設備がないからそれ以上はいれないというのがあるわけだね。隣の市ではあいておるかもしれませんが、あなたのほうは広域的な考え方を持っておると言われるけれども、実際そのなわ張りというものは、そんなことはないのだと言明されるのかどうかですね。実情はなかなか、なわ張りもあるようです。したがって、行けないために、本人らが自主的に運転技術を身につけておきたい、万一のために。そうした場合は何の補償も、むしろ補償をくれておったものを取ってしまう、こういう傾向なんだが、これはどうなるのだということを聞いておる。
  84. 山口政治

    説明員(山口政治君) そういう問題に対しましては、ワクの拡大を——現在の訓練校におきましては、中高年等を中心とする能力再開発訓練としましては、若干の施設の余裕がございます。しかし御指摘のように、必ずしもそれが全部アベレージになっているわけではないという事情もございます。したがいまして、そこでできない場合はよそのほうに行ってやるというような体制を整えてまいるつもりでございます。
  85. 高山恒雄

    高山恒雄君 まいるつもりでなくて、指示がしてあるかね、そういうふうに。
  86. 山口政治

    説明員(山口政治君) ただいま、今回の問題等を通じまして、地方のほうにそういう指示……。
  87. 高山恒雄

    高山恒雄君 通達を出しておりますか。
  88. 山口政治

    説明員(山口政治君) 通達を近く出すことになっております。
  89. 高山恒雄

    高山恒雄君 そうだろう。出してもらわなければならぬ。はい、よろしい。
  90. 大森久司

    委員長大森久司君) 他に御発言がなければ、本調査に対する本日の質疑はこの程度にいたします。  午後二時再開することとし、これにて休憩いたします。    午後一時二十九分休憩      —————・—————    午後二時二十三分開会
  91. 大森久司

    委員長大森久司君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  国際経済上の調整措置実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律案議題といたします。  本法案についての説明はすでに聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言をお願いいたします。
  92. 林虎雄

    ○林虎雄君 御承知のように、わが国中小企業の問題は、普通でさえも他の自由諸国のそれに比較いたしまして、かなり非近代性、非合理性、後進性というものを持っておる。かつ、きわめて複雑なものがあるのであります。それに、去る八月十六日のニクソン大統領の声明、いわゆるニクソン・ショックによって混迷をさらに加えておるという実情は、御承知のとおりであります。ただ、このニクソン声明にあたりまして、政府はこれを予見できなかったのかどうか。もちろん駐米大使館もあり、それから通産省のほうも係官が駐在をしているはずであると思いますが、特に親米方針に徹しておりますはずのわが国政府が、事前にこれを、ヒントなりあるいは何らかの情報をキャッチできなかったかどうか、なぜ、できなかったのか。この辺の事情をまずお聞きいたしたいと思います。
  93. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) アメリカがドル防衛に対して何らかの措置をとるであろうということは、大体だれでも考えておったことでございます。しかし、あのようなショッキングな状態で無通告でやってくるということを予期した国というものは、非常に少なかったと思います。  これは御承知のとおり、三十八年にアメリカが、ケネディ大統領のときでございますが、世界に向かって、キーカレンシーとしてのドルの価値を維持するためには、ドル防衛政策を行ないますということを宣言し、シップアメリカン、バイアメリカン政策をスタートしたわけでございます。そうして、そのときに、ドルがキーカレンシーとしてその位置を確保していくことが必要であれば、各国はこれに協力をしてもらいたいということでございまして、そうでなければ、四五年第二次世界大戦後につくられた、平和維持機構としてのIMFや世界銀行や第二世銀やガットやDACというものの存立も危うくするようになっては困るので、新しい通貨制度に踏み切ってもらうか、何らかの処置を考えて、国際流動性の確保を考えてもらいたいということを正式に提案したわけでございます。翌三十九年に、東京総会という歴史的な総会があったわけでございまして、ここでSDRの制度が採用され、それから世銀債を自由市場で発行しまして、そうして、新通貨というものに踏み切らないで、中途半端でございましたが、一応ドルをささえようということで進めたわけでございます。  その後、私はずっといろいろ国際情勢の変化に対応できるようないろいろな指標は勉強しておったわけでございますが、六、七月ごろでございますか、アメリカのドルの保有高が百二億ドルということになったわけであります。IMF報告で百二億ドルということは、百億ドルを割っておるということでございまして、これは何かあるな、何かしなければならぬなと思っておったときに、ちょうど通産大臣になったわけでございまして、もう少し勉強しておけばよかったなということをしみじみ感じたわけでございますが、まあEC諸国も、あんなドラスチックなやり方で新政策がワンパックで出てくるとは思わなかったというのが、公式な発言になっておるような状態でございまして、アメリカ政府部内にさえも知らせなかったと言っておるのでございますし、キッシンジャーによる北京訪問の次は、サンクレメンテにおけるこのニクソン・ショックであると、大統領みずからが言っておるのでございまして、これに関与しておったのは六人しかいない。その六人に、日米経済閣僚会議のあと、会ってまいりました。そういうことでございますから、日本外務省の出先もどうもうかつだったというけれども、それを責めることはできぬと思います。これは全然政府機関を通しておらないものでございますので、いかんせん、ということでございますが、大きな流れの中に、何かあるということに対しては当然予測しておったことでございます。
  94. 林虎雄

    ○林虎雄君 それはそれとして、この法律案は三カ年の時限立法となっております。政府は、おそらく三カ年たてば景気の立ち直りといいますか、安定といいますか、浮揚といいますか、そういうことを予想されておると思いますが、言うまでもなく、世界経済もきわめて流動的で、大きな変動期に立っておると思いますが、大臣として、ドルショックから一応立ち直って、そして安定するという時期をいつごろになると、想定といいますか、予想されておられるか。むずかしい問題と思いますが、お考えを承りたいと思います。
  95. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) この御提案、御審議いただいております法律は、これは長くやるべき問題ではなく、新しく起こった事態に対処する応急的な特別法でございますので、これを五年も十年もというわけにはまいらないと思います。しかし、半年か一年で一体効果が発揮できるのかということになると、経済問題は非常に複雑多岐にわたっておりますので、まして国際的な影響によって起こる現象が非常に大きくなっておる、相手のある話でありますので、できるだけ短いことが望ましいわけでございますが、どうも一年二年というわけにはいかない、その効果が考えられないということで、まあ三年ということにしたわけであります。三年以上ということになると、これはもう、三年も五年もそんな状態をほうっておくのかということになりますので、法律は、もうできるだけ早くノーマルな状態を招来すべく、それを目途といたしておるわけでございます。  中小企業の問題、私は率直に申し上げて、三年間でこの法律が要らなくなっても、理想的な日本中小企業対策というものはほんとうにできるかどうかということになると、この点、明言はできないということでございまして、世界に例のないこと、特殊な中小企業、零細企業でございますので、これはやっぱり相当積極的な施策を行なう必要がある、こう考えております。
  96. 林虎雄

    ○林虎雄君 この法律案は、ドル・ショックを直接または間接に受けた中小企業対策と理解いたしますが、今回のドルショックは、この対象からはずれるであろう中小企業あるいはその労働者、一般国民、これは全体が次第に影響を受けてくるものであろうと思います。したがって、この法律案内容説明等を見ますると、かなり業種なりあるいは産地なりの認定のほか、対象についても弾力的な考え方を持っているように見受けるわけですが、この認定といいますか、指定といいますか、この場合に、私はかなり思い切って幅を広めた解釈によって、そしてこの法律の対象になりがたいような零細企業もありましょうし、小売り業者等も広範な層もありますが、これを、直接ドル・ショックでない、間接のまた間接になるにしても、影響を受けることは今後予想されるわけでありますが、こうした対象外になるおそれのあるものに対して、この法律はどの程度に運用といいますか、拡大解釈といいますか、できるかどうか、大臣の一応のお考えを承りたい。
  97. 高橋淑郎

    政府委員高橋淑郎君) 基本的な考え方は、できるだけ幅広く、かつ弾力的にこの法律を適用していきたいということでございまして、業種指定いたしますときに、基準の考え方につきましても、輸出比率のとり方につきましても間接輸出を含めて考えるということが一つのあらわれでございまして、これが基本でございます。  ただ、お尋ねのように、輸出関連の全然ない中小企業者に対しての措置ということは、本法が国際経済上の調整措置に伴って影響を受ける輸出関連中小企業者に対する緊急措置ということから、おのずからそこに限定があるわけでございます。
  98. 林虎雄

    ○林虎雄君 とにかく、ドル・ショックによって、直接間接でないものまでもショックを受けていることは事実なんです。ですから、この法律が成立しましても、他の面においても十分に零細企業等に対しては対策が考えられていかなければならないと思います。  次に、ドル・ショックは、いわばアメリカの御都合主義といいますか、政治・経済政策の行き詰まりによりましてこうなったものであろうと思います。いわばブレトン・ウッズ体制の破綻とでも申しましょうか、アメリカのIMF取りきめの違反であるとか、あるいは基軸通貨の特権を乱用した対外政策、あるいはこれに追随した現在の日本の佐藤内閣の経済政策が今日の混乱を招いたものである。つまり、アメリカを信頼し、アメリカに追随し過ぎたというところにもその原因はあろうと思うのであります。そしてわが国は、いわゆる政府輸出競争力の拡大強化、あるいは価格競争の面にのみ力を入れて、輸出産業育成という平面的な近代化を中心としたところに原因があるように感じるわけであります。  それは、大企業が下請け企業の低賃金にささえられて、その犠牲の上に今日の貿易の拡大があり、またそれは、今日のドル・ショックによって中小企業は全く行き詰まりを招いている、いわば政府中小企業政策の破綻であると、少し言い過ぎかどうかしりませんが、そのように思います。したがって、従来とってきたいわゆる輸出競争力の拡大というような、こうした考え方を改めて、従来のわが国経済政策というものの基本というものを、抜本的に転換する時期に迫られておるのではないかというふうに思いますが、大臣のお考えを伺いたい。
  99. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 基本的には、日本の宿命は、宿命ともいうべき日本の置かれておる立場は、変わっておらないわけでございます。百年前、九〇%以上という一次産業比率の中から、百年の歴史の中に今日の日本が成長してまいったわけでございます。その後半四分の一世紀というものは、戦争の痛手から、全く無一物から立ち上がって、今日の国民総生産を築いたわけでございますから、その意味では世界に例のない、この短い間に、国民総生産の拡大はすなわち国民所得の増大という、同義語でございますが、そういう意味から考えると、これは成功しておると見なければならないわけでございます。しかし、この百年の中には、戦争という大きなマイナス面もございましたし、まあ今日、少し行き過ぎたという面から、これをノーマルな状態に引き戻す過程における混乱も起こったわけでございまして、まあそれなりに評価もすると同時に、改めるところは改めていかなければならない、こう思うわけでございます。  しかも、そのもとをなしたものは何かと言うと、これは輸出唯一であります。膨大な原材料を海外から輸入してくる。それに国民的英知を加えて輸出をしたことによって、百年の国民所得が増大をしてまいったわけでありまして、それ以外に、日本で原材料のあるものを輸出をしたり何かして日本の国力が大きくなったわけではないわけでございます。ですから、原材料のある国と、ない国がハンディをしょいながら、一面においては女工哀史のような、実際、低賃金低コストの悲惨な歴史もございましたが、いずれにしても、そのハンディを克服しながら今日を築いてきたことだけは事実でございますし、戦後の状態は全くそのとおりだと思うわけでございまして、私は、大筋において日本の政策が誤っておったとは考えておりません。われわれ、はだしだったものが、とにかくだんだんとくつをはき、着がえの服を持ち、バラックの国会だったものがこういうふうによくなってきておる。民主政治そのものもこうしてだんだんと成長しておるわけでありますから、私は大筋では間違いでないと、こう思います。  しかし、具体的な問題、いろんな問題から見ますと、それは自由主義経済の中にあっても、中小企業や零細企業に対しては、少なくとも計画性を導入しなければならなかった。そうすれば、今日のような大きなショックを受けるようなことはなかったであろうというような問題、これは当然御指摘のとおりでございまして、自民党政府として申し上げられることは、少なくとも六、七%の安定成長を続けようと思っておったのが、前半は一〇・四%になり、六〇年代後半からの十カ年間を計算すると、二・一%にもなりましたので、実質的に非常に、われわれが考えておったことよりも、十五年間、二十年間の間では二倍、三倍という数字になったところに、メリットも大きかったけれども、今日ではデメリットが計算されるような状態になりましたので、これはひとつ政策をもって穴埋めしてまいります。いままでは国の力がなかったからたいへんでございましたが、高度成長という過程において、そういう実態に対応できるだけの力だけは持ってまいりましたので、この国民が築き上げた蓄積エネルギーをもって、バランスのとれる新しい日本の産業形態というものをつくってまいりたい、こう言っておるわけでございます。  ただ、最後に一言申し上げるのは、輸出第一主義であり、生産第一主義であり、また重化学工業が重点であったという考え方は、これはいなむわけにはまいりません。ですから、そういう意味では、総理も施政方針演説でも申し述べましたように、これから生活第一主義、まず、よき環境、よき国民生活を目標にし、前提として、大きくは日本人全体のレベルアップを考えるようにいたしますと、こう述べておるのでありまして、おおよその方向だけは間違ってないということだけ私が申し上げますので、こまかいところで、もっと目張りをしたり、修正をしたりすることに対しては、御意見は十分拝聴してまいりたい、こう考えます。
  100. 林虎雄

    ○林虎雄君 いまの大臣の言われますように、明治百年の今日、これだけの大きな経済成長を遂げ、いわゆる先進国の一員となったということは、それぞれ国民の努力、また、それぞれの当事者の努力の積み上げだろうというように思いますが、特に日本のような資源の乏しい国においては、輸出に依存せざるを得ない。しかし、それも限界がぼつぼつ来た。これ以上さらに従来の方針をとっていくならば、好むと好まざるとにかかわらず、いわゆる帝国主義的といいますか、そういう方向にいかなければ貿易をどうすることもできないということで、いま大臣の言われましたように、国民生活中心といいますか、貿易ももちろんありますが、国民生活中心に経済生活を切りかえる——切りかえるという言い方は極端でありますが、そのほうに重点を志向していく必要がある。同時に、発展途上国といいますか、後進国といいますか、そういう国々への援助というものも、わが国はだいぶ伸びているようでありますけれども、これは国際的に見ても、ややもすると、ひもつきになって、そこに政治的ないろいろな問題が起こって、それが国際的な紛争の原因にもなりつつある、過去の実情から見て。国としても、いわゆるひもつきでない、発展途上国に対して手を伸ばして、精神的な恩を売る、物質的な恩を売る、そうして将来それはまた日本に戻ってくることでありますから、そういう意味で従来の経済成長、輸出貿易一本やりといいますか、その政治の方針を、国民生活を豊かにする、GNPをただ誇るだけでなくして、国民生活の水準を高めるという方向に努力をされるというように大臣お答えがあったと、こう理解してよろしゅうございますね。
  101. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ようございます。
  102. 林虎雄

    ○林虎雄君 次にお伺いしたいことは、中小企業庁のあり方についてでございます。  通産大臣の管轄下に中小企業庁というのがありますが、もちろん、そのほかにも各局があります。いわば中小企業庁というものは通産省の外局的なものでありますが、実質においては局と変わりがない、予算の面において違うかもしれませんが、大臣の管轄下における任務というものは、あまり変わりはないというふうに思うわけでありますが、この中小企業庁と各局とのウエートは、大臣の考え方ではどの程度中小企業庁を見ておいでになるか、その位置をどの程度に考えていらっしゃるか、承りたい。
  103. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 中小企業庁をつくりますときには、中小企業省の議論がやはり先行しておったわけでございます。私もその当時、衆議院商工委員長の職にございましたから、私も、ひとつ中小企業省をつくろう、中小企業省をつくって、そうして、できれば通産省を分割して、貿易省とほんとうの国内産業省というものと分けたいということを考えて、正面から取り組んで勉強したことがございます。でございますから、そういうものの結論が中小企業庁になったわけでありますから、内局の局よりもはるかに大きいものという考え方で、外局というものは独立して権能を行なえる、いいところを持ちながら、そうして全然別なものになってしまうと通商産業省と別個になって、元請のことを考えない中小企業庁というものはないわけでございますから、そういう意味では、通商産業省の中で外局として中小企業庁がありながら、通産商業省とは、全く内局とは一体である。しかし、内局よりも独立して権能を行なえるというような、中小企業省にいく前提としての中小企業庁であったはずでございます。ですから私は、いまの状態からいうと、内局よりも機構の大きなもの、これは通商産業省を見ていただけばわかりますが、工業技術院にしろ、特許庁にしろ、独立した、どうも大臣に聞くよりも長官に聞いたほうがよろしいということの、いろいろ特性がありますから、私は中小企業庁というのは、とにかく私でもあなた方でも政治の中心的な課題でありますから私がちゃんとお答えをしてまいりますが、特許庁になりますと、特許庁の長官の発言のほうがウエートがあるというような違いがございまして、この中小企業庁はほんとうに、外局ではございますが、通商産業省の一番大事な一つの部局である、こういう考えでございます。
  104. 林虎雄

    ○林虎雄君 お考え、よくわかりますけれども、私の感じとしては、通産省であるから中小企業だけを分けるとおかしいという点もありますが、まあ、かなりウエートは高いのだというお答えに承りますけれども、この通産省の仕事というものは、これはどうしても貿易関係もあり、大企業中心ということに、その仕事の内容がならざるを得ないと思うのです。これは別に大企業をえこひいきしているという意味ではなくて、好むと好まざるとにかかわらず、通産省の仕事というものは大企業に偏向せざるを得ないような性格を持っておるのではないかと、こう思うわけであります。  大企業が今日、経済成長の非常な発展を見てまいりました反面には、先ほど申し上げましたように、中小企業の役割りは大きいのでありますが、しかし、今日においては、実際としては大企業と中小企業というものは、それぞれ任務を帯びて生産に従事しながら、内容には対立的な関係が相当ございますね。たとえば、親企業が下請けに対し、あるいは下請けがさらにその下請けの孫請けといいますか、そういうものに対して、常に利害関係の対立がある。対立があるものを、通産省は中小企業と大企業をかかえておるというところに、非常にやりにくい、また矛盾があるのではだかろうか、というように思います。  例を申し上げますと、下請け関係が、中小企業の力がまだ大企業と対等でなくて、独立した力がまだ不十分だという点もあろうかと思いますが、実際に、大企業に対しては常に不利の立場に置かれているのが中小企業である。こういうことは大臣も先刻御承知のとおりだろうと思います。まあ、不離一体のほうが好ましいようにいまお話しでありますけれども、御承知のようにわが国中小企業というものは、全企業の九九%をこえ、それから従業員数も全関係労働者の七七%を占めている。あるいは出荷額では四十四年度の数字で四九%、輸出額では四〇%という、もう大企業に匹敵するだけの輸出額等を持っておるわけで、いわんや、その従業員数において圧倒的に多いのが中小企業でございます。このように、大企業に比べて劣らない生産量を持っておる中小企業が、この元締めである中小企業庁が、通産省の一部局であるというところにどうも問題があるように思います。  これは、私ども省を独立させろという意見を持っておりますけれども、この点は今後の課題としても、別に政治的な意味ではなくて、真剣に考えていただく必要があろうと思います。もちろん、大企業と中小企業との間の生産活動というものは不可分の関係にありますから、一本でいい、通産省一本のほうが好ましいという、こういう議論は議論としては成り立つかもしれないけれども、その規模、構造、利害関係等から考えて、むしろ独立させることのほうが中小企業者としては非常に活動がしやすくなり、伸びていく一つのゆえんになるのではなかろうか、このように思うわけであります。  たとえば、さきに制定された下請代金支払遅延等防止法という法律がございますけれども、これはもう何年もたちますけれども、全くざる法である。こういう法律がありながら、しばしば中小企業庁は、各事業所やその他に向けて、支払い代金のすみやかなる支払いをするように、手形の、法律で命ずるところの期日に近づけるようにというような、非常に弱い通牒でありますけれども、そうしたことをやっておるように、これはざる法として、全く、法律はあるけれども、実現ができない。これを強く下請のほうで文句を言えば、これは親企業から捨てられてしまう。そういう弱みがあるから、泣く泣く手形の決済が延びても忍んでおるというような状態であります。たとえば、下請企業が親企業に対して製品を納入した。そうして検査をするわけですが、検査をして、そこで通知が来るわけです。通知が来たときに初めて手形が発行される。法律ではどうなっておるか知りませんが、とにかく法律では、六十日以内の手形の決済ということを命じておるわけでありますけれども、現実には、まずまず普通において百五十日、あるいは二百十日、最近私が知ったことでありますが、極端なのは一カ年という、こういうむちゃな手形さえ発行されておる事実がございます。これでは、納入代金を親企業にたたかれ、そうして長期手形で金利を負担させられる、そうして泣き泣き、泣き寝入りをしなければならないというような、弱い者のみじめさというものを、私はしばしば地方において見聞をしておるわけであります。その上に、このドル・ショックにおいて、犠牲はさらにのしかかるだろうと思います。  中小企業庁長官お答えでけっこうでございますが、この下請代金支払遅延等防止法というものがありながら、これは全く空文で、から回りをして、親企業はほとんどそれにそっぽを向いておるというのが実情のようでありますが、これに対するもっと積極的な、具体的な対策というものはないだろうか。弱い者は金利で泣き、製品の踏みたたきに泣いているというような現状でございますので、特にこのドル・ショックというものがそれにのしかかってくるんですから、たいへんなことだと思います。これに対する政府中小企業庁の積極的な対策というものがなければ、どんどん倒産していくおそれがあります。この点について、最近の状況を長官に承りたい。
  105. 高橋淑郎

    政府委員高橋淑郎君) 最近の状況についてお答えをいたします。  今回の輸入課徴金の賦課、円の変動相場制移行など、こういう緊急事態にかんがみまして、いま御指摘もございましたが、通産大臣、公取委員長から、下請取り引きの適正化について親事業所あてに警告し、かつ、引き続きまして中小企業庁長官名をもちまして、親事業者団体はじめ多くの関係機関に対して、下請企業への不当なしわ寄せの防止、それから資金供給の円滑化について、いろいろとこまかい要請をし、かつ通達をいたしました。なお、年末の資金繰りの窮迫が心配されますので、一両日中に再び、通産大臣と公取委員長の連名で、同様の趣旨で関係方面に通達を出していただくということを考えておる次第でございます。  しかし、基本は、やはり下請中小企業の体質を強化するということが大事であると考えまして、先ごろ制定を見ました下請中小企業振興法に基づきます振興事業計画の策定を急ぎまして、設備の近代化をはじめ、また親事業所が発注分野を明確にするというようなこと、いろいろ項目はございます、それを推進して、目的を果たすようにつとめてまいりたい、このように考えております。
  106. 林虎雄

    ○林虎雄君 大臣もお聞きくださったと思いますけれども、とにかく、いま申し上げたような、はなはだしい下請企業の不利な状況というものをどうしても打開しなければならないと思います。前国会でありますか、下請中小企業振興法という法律が出たわけでありますが、これも発足間もないので実績は承らなくてもよいのでありますが、私は、このわが国中小企業政策というものが、中小企業の特質や産地の特性を生かさないで、画一的に企業のメリットを追求してきた、そういう施策の結果であろう。そのために設備は過剰になり、過当競争になる、そういうふうに考えるわけであります。つまり、その産地の特性なり、あるいは企業の特質なりというものをよく見きわめていかないと、一律、画一的に行なってきたという、そういうきらいがあるように感ずるわけであります。  私も先年、自由主義諸国を若干見て参りました。そのときの印象でございますが、たとえば西ドイツのゾーリンゲンの刃物、それからイタリアの靴であるとか、あるいはイギリスの服地、スイスの時計というようなものは、おおむね中小企業でございますけれども、その高い技術というものを世界に輸出していると理解していいと思います。業績が安定しているので、したがって労働者の賃金も高く、いわゆる産地の特色を生かしているわけであります。  低賃金と、そうして古い設備過剰の結果として、日本としては、輸出ダンピングをしていると思われるようなことも余儀なくなされている。こういう中小企業を先進国並みに持っていきますためには、いま申し上げたEC関係の国々のような、いわゆる産地の特性を重点的に生かすということ、特質を生かすということ、そういう方向に中小企業の方向を持っていかなければならないのではなかろうかというふうに考えるわけであります。従来の画一的な中小企業対策、思いつきの対策ということではなくして、もっと日本も、全体の地方の特徴というものを、そういうものを生かす。それに高い技術を持たせていくことによって、中小企業というものは安定し成長していくものであろうと思いますが、そういう画一的な方針を一てきして、新たな施策に対して、どうしようというような考えを、お持ちかどうか。企業庁長官から具体的なお答えを願いたいと思います。
  107. 高橋淑郎

    政府委員高橋淑郎君) 従来からも、必ずしも中小企業政策を画一的に進めてきたとは思いませんが、しかし、御指摘のように、業種別あるいけ産地別に一つのビジョンを描いて、そうして近代化あるいは合理化をはかっていくということが、進むべき方向であると思います。  まず業種別の近代化につきましては、中小企業近代化促進法を四十四年度に改正をしていただきまして、従来の指定業種の中から、特に構造改善を急速に行なう必要があるという業種につきまして、構造改善業種というものを指定することができるようにいたしまして、現在二十二業種指定されておりますが、さらにこの業種をふやすことを考えております。で、こういうふうな指定業種につきまして、その業種、業態に応じた近代化計画がございます。これについての、やはり新しい時代に即応して見直しを行なうことが必要であるということで、作業を進めております。それから、いま申しましたように、構造改善業種につきましても、構造改善計画の見直し作業が要ると考えまして、必要な見直しを行なうべきだと考えております。  産地別の近代化につきましては、たとえば中小企業振興事業団高度化資金の融資制度というのがございます。これを活用しまして、産地業種の構造の高度化をはかっていくということが一つ考えられますし、都道府県の総合指導所の産地診断を活用していくとか、あるいは、いま申し上げました近促法による構造改善事業につきましても、産地の実情をよく勘案して、業界ぐるみの構造改善の推進を行なっていくということが必要であろうと考えまして、今後は、こういうような施策の拡充強化をはかって、そして産地業種の振興を考えるという方向で進んでいきたいと考えております。
  108. 林虎雄

    ○林虎雄君 中小企業のいろいろ新しい転換といいますか、国民生活、国民福祉の方向に力を入れられていることは先ほど大臣も言われておりましたが、これからの、中小企業にかかわらず、企業というもの、輸出貿易というもの、国民の消費というもの、こういうものを考えていくには、若干国家統制的といいますか、計画的といいますか、そういうものがかなり織り込まれてこなければならない。すでにわが国でも、いわゆる中期経済計画とかいろいろ計画はありますけれども、名称は経済計画という表現をいたしております。社会主義圏では逆に計画経済といって、区別されておることは御承知のとおりであります。しかし、現在私ども見るところによりますと、あるいは共産圏においても必ずしも計画経済一本やりではないし、自由圏においても、ただ自由放任の自由競争でもない、こういう時代になっておるような気がいたします。  したがって、これからのわが国の経済計画あるいは計画経済といいますか、何か社会主義と資本主義と混合経済的な、そういう方向があらわれているように思います。たとえばソ連のリーベルマンの利潤論争のように、これまで否定しておった利潤というものを取り入れている傾向というようなことを見ても、共産圏も自由圏も、やはりその国の利益といいますか、国民のためになるようなことを、それぞれ長所を取り入れてきているような傾向になっておる。それが世界的な傾向のように感じられるわけであります。  そこで、中小企業などは御承知のように寡少過多、そして雑多であります。そしてまた、過当競争で倒産も多いけれども、また新たに何とかやってみようなんということで、ろくに資本も持たないで企業に新規参入するものもあるというようなことで、倒産がある反面で新たに企業に参入、また倒産をするというような、そういう繰り返しで、非常に中小企業というものは不安定であるわけであります。これは日本だけの中小企業の特質というか、他の諸国を見てもわりあいに安定しているような感じがいたします。これは外から見るから内容はわからないのでありますが、そういう感じを受けるのであります。たとえば商店などを見ても、小さい小売り業などが午前九時に開店して、正午には店を閉めて、二時ごろまで休んで、また夕方も早くしまう。それで完全に経営が成り立つ、生計ができておるという、こういうところを見ると、それぞれの技術というものの高さ、まねのできないよさがあって、利潤があるというふうに思うわけであります。  そういうことを考えてみますと、もちろん職業選択の自由というものは、これは大切でありますから制限すべきではないのでありますが、簡単に経営能力のない者が、あるいは資金もろくにない者が新規に企業に参入してくるということは、結局、だれでもできるというようなことを行なっている。つまり、高い技術なりあるいはすぐれた特性というものを持たない企業があまりにも多過ぎるのではないか、こう思うわけであります。そこで、法律による規制はもちろんこれは好ましくないのでございますが、中小企業の今後のあり方として、何らかの指導、そしてまた資金も持たないで、リヤカーでもあれば商売をやろうというような、そういうような考え方の人が新たに参入して、いたずらにまた過当競争の中に落ち込ませるようなことをしないで、何か一定の、中小企業に対する計画性の指導といいますか、方針といいますか、そういうものを考える必要がないかどうか。それには当然、力の弱い、昔でいえばてんびん棒があれば商売を始めるというような、そういう人たちに対しては、むしろ社会保障制度の完備、これは通産省の所管ではございませんけれども、そういうものとあわせて考えて、やはり中小企業の数なり性格なり、そういうものを安定させる必要が、もう今日来ておるのではないかと、こんなような気もいたすわけであります。中小企業が、ある程度の設備を持ち、あるいは技術を持っていないと簡単に新規参入ができ得ないということになりますから、やはり日本中小企業の体質をもっと高めるということが大事だと。したがって中小企業庁は、そうした方面にもっと力を入れるべきであると思いますが、何かこれに対してお考えを持っておるかどうか、承りたいと思います。
  109. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま、中小企業の一番めんどうな問題にお触れになっておるわけでございます。中小企業というのは日本における一つの特性でございますが、この中小企業ありせば、あったからこそ、百年間でこんな日本にもなったわけです。また戦後の、考えられないような成長も、中小企業というものの結果だと思います。私は、そう言っても過言でないと思います。  ところが、考えてみると、中小企業というのは、あなたがいま指摘されたように、てんびん棒一本持っておったらもう事業者になりますから、そういう意味で非常にたくましい、だから、いまの制度の中では、大企業に比べては中小企業はほんとうに恩恵が少ないと言われておりながら、その中からたくましく、コストダウンをはかり、新しい発明を行ない、技術革新を行ない、技術を発明し、とにかくこれだけの経済成長をやってきているわけです。しかも、さいの川原のように、何年に一ぺんはガラを食って、もとのもくあみになり、また立ち上がってきている。ロスの多いことも、中小企業、零細企業ほど多いものはあまりせん。しかも、中小企業や零細企業が一人前になる過程においては、これは同族会社であるということをもって、一般の企業よりも高い税金を納めねばいかぬ。そういう過程を通りながら、零細から中小企業へ、中小企業から大企業へと、こう飛躍をしてきているわけでありまして、これはたいへんなものだと思います。ですから今度などは、これを契機にして、やはりロスのないような中小企業という合理的な制度を確立したい、そうしなければならないということは、御指摘までもなくわれわれもそう考えております。  しかし、そこは非常にむずかしいのでありまして、社会主義計画経済の国でも、全くそれだけでは生産が上がらないと、こういうことで困っておるわけであって、多少の自由な思想を入れなければいかぬし、私有権も入れなければいかぬと言っております。同時に、全く自由経済というものを基調にしておる国でも、調整は行なっております。これは、日本においては中小企業でも、政府に関係するようなものはちゃんと合理的な調整が行なわれておるわけです。酒屋を免許するときとか、切手の売りさばき所を免許するときとか、たばこ屋を免許するときとか、ちゃんと合うような、免許をしたらそれだけ税金も納められるような計画によって認可をしておるわけであって、これはちゃんと調整が行なわれておる。もっとこれが自由経済のもとで合理的に行なわれておるのが、戦後のドイツであります。これは労働組合が生産管理をちゃんとして行なっておる。これは絶対に、一カ月なら一カ月以上在庫するような品物はつくらない。非常に合理的に行なっておりますが、これは生産が総体的にがた落ちになってしまったというので、みんなプラスもマイナス面もあるわけでございます。  ですから、一様に私は理想的な姿というものはなかなかできないと思いますが、そうかといって、いまのように、いいときは非常によくてベンツを乗り回している中小企業のおやじさんが、一年もたたないうちに給料も払えなくなってしまうというようなことに、政府や自民党のように長く政権を持っておる人たちが何も責任がないかというと、これはやはり責任があると思うのです。これは制度の上でやはり誘導政策をやったり、金利政策を行なったり、助成政策を行なったりしなければならない。それがやはり調整権であり——計画経済であるということを私は必ずしも考えておりませんが——やはりころばないように、事前に交通整理をしてやる。そうして、レベルアップをしなければなならいものはレベルアップができるように、制度で助成していくということでなければだめだと思うのです。  いまの中小企業や零細企業対策は、自然発生は全部認めて、全部中小企業にして、全部大企業にしようと、どうもそこにめどがないという感じ。これは、私のほうから質問するようで申しわけありませんが、やはり間引くものは間引き、調整するものは調整するということでないと、てんびん棒一本持てば、すぐ零細企業対策としてすべて金を貸さなければいかぬ、すべて政府が補償してやらなければいかぬということじゃ、これはもう中小企業がほんとうに、いままでより以上に大きなけがをするような中小企業、零細企業対策になるのでございまして、これは私も縁があって通商産業大臣の職を奉じたわけでございますから、これは今度はドル・ショックやその他でもって、中小企業、たいへんな状態になります、なるおそれがある。そういう意味で、やはり将来の中小企業というものの位置、それから青写真、そういうものをかいて、あまり、魚がもうかるといったら魚とりに全部なってしまう、繊維がもうかるとなったら、みんな繊維業者になってしまうというのじゃ、どうしようもありませんから、一定規模の場合にはやはり税金を少し高くする。高くすれば、そちらのほうには営業は進まない。少しこちらは安くする。そうすれば、こちらのほうに営業が進んでいくというような、やはり助成それから調整というようなものを十分考えなければいかぬ。  それでいま、私が八月ごろから通産省で、産業立地政策、六十年を展望した通商産業省が何をするかという青写真をかいて、いろいろな計算をしておりまして、その中に、中小企業や零細企業はどう位置するかという図面ができましたら、ひとつ皆さんに御披露して、必要があれば修正をしていただくという、こういうつもりでございまして、これはほんとうに一党一派、一政府のよくなし得る仕事じゃありませんので、国民的課題として、学問的にも、いろんな問題からこれを積み重ねて、また十年後に、いまよりももっと大きなドル・ショックのようなものが絶対に起こらないようにいたしたい、これは希望であり願望でございます。しかし希望と願望だけじゃなく、私はその責任の衝にありますから、現実を把握しながら、そういう方向を確立してまいりたいという意欲に燃えておることだけを、ひとつ申し上げておきたいと思います。
  110. 林虎雄

    ○林虎雄君 この法律案の要点は、倒産防止対策としての金融の問題、信用補完の問題、それから為替取引の安定、税制に対する措置事業転換の円滑化等の措置、それに下請代金支払遅延の運用強化というようなもの、この法律内容はそういうことであろうと思います。ただ、数字も承っておりますが省略いたしますけれども、その程度で、はたして当面の中小企業対策としてこの混乱を切り抜けることができるであろうか、こういう点を懸念するわけであります。これによりますと、結局金融をする、あるいは信用補完に対して地方の信用保証協会の立場をもっと有利にしてやって円滑化をはかる、あるいは税制の、過去にさかのぼっての欠損の戻入といいますか、欠損の期間を遡及するというような、いろいろな措置のようでございますが、要するに金を安く貸しつける、信用の補完をする、税制、というような点だけでありまして、これは他の施策に比べて少し片手落ちではないかという感があるわけであります。  それは、たとえば米が増産され、米がたいへんに余って困っているというので、農家の休耕に対して補償をしておる。あるいは今回の繊維機械の政府の買い上げ廃棄措置等にも予算措置をしておる。つまり、金をただくれている、と言えばことばがおかしいですが、農業に対しましても、あるいは繊維に対しましても、そういうことをやっておる。したがって、この中小企業対策にもそのような、単なる金を安く貸せるというだけで、あるいは長期に貸せるというだけでなくして、業態いかんによって、転業するという者に対しては、かなり、他の農林関係や繊維関係、あるいは前に産炭地の政策がございましたが、そういうような思い切ったことをやるお考えはないかどうか。まだ今度の法律案は、この大きなショックに対してもの足りない、そういうことです。
  111. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) この法律案一つの手段として御審議をいただいておるわけでございますが、必要があれば、また、政策の方向がきまれば、それに対応する法律は、これから御審議をいただこうと思っております。その意味では非常に積極的でございます。  これは、ただ廃業するという、いま繊維の問題等で転廃業も措置を考えておるわけでございますが、ただ廃業するだけじゃなくて、廃業するときには特例法によって措置をしてやる、救済をしてやりますと、やります限りにおいては、今度何でもまた企業を始めるということではなく、一ぺんやめさしたら、当分の間そういうことはできないようにしなければならないということもありますので、やはり、先ほど申し上げたような長期的な見通しとビジョンがきちっとできておりまして、それでそういうものに誘導していって、何年か後には非常に理想的な姿ができるのだというような政策の一環として行なわなければならないと、こう考えておるわけでございます。ですから、産炭地のとき、私は特に例に引くわけですが、産炭地でもって非常に困ったわけです。ですから、縫製工場を持っていって、ここでやりなさい、新しい工場をつくらして、新しい機械を入れてやったんです。何年もたたないうちに、全部やめです、と。これでは幾らいっても、通商産業大臣一生懸命やっておりますといったところで、万全とは言えない。やっぱりこれは誘導する場合には、そういう青写真のもとに何年か計画で、きちっとこうなるというようなことで考えるべきだと思います。  ですから今度、通商産業省でも、必要なものに対しては、これはもう当然職業訓練も行なうし、転廃業の場合には税制上の問題、特に立ち上がり資金とか、別に転業するために財産整理をするときにどうするか——この間、北鮮帰還の問題のときなど、帰りたいんだけれども借金を整理するためには何年かかります、ということがあったので、それでは法律をつくって、朝総連が全部まかなうということにすれば、売れたら、そのまま余ったら送金できるというような特例法があればやれるということを考えたのですが、これは中小企業、零細企業でも、転廃業の場合などはやはり法律はどうしても必要である、こう思って、いま研究いたしております。ですから、業態別でもってこれはみんな画一、一律的にはいきませんから、そういう意味事態の進展に即応いたしまして、必要であり、また、そういう政策メリットが国民の理解を得られるような見込みがつけば、立法として御審議をわずらわす、こういう前向きな姿勢であることだけ申し上げたい。
  112. 林虎雄

    ○林虎雄君 中小企業が、年末になってかなり金融の円滑化に対して期待をしておる、希望を持っておるので、地方団体なども県費を出したりして年末融資に対してやっております。政府関係三機関、三つの金融機関を初めとして地方銀行等も、それぞれ金融機関は年末対策を進めておりますが、やはり中小企業にとっては、だれでも金が借り得るというものではない。したがって、信用保証協会がありまして、信用保証協会保証によって借りられるのが非常に多いわけです。したがって信用保証協会というものの役割りは、大臣どの程度にお考えか知りませんけれども、非常に私は大きいものがある、地方の中小企業金融の上に大きな役割りを果たしていると思います。ところが信用保証協会は、御承知のように県費あるいは市町村の出捐金、それから各金融機関の負担金というもので資金造成をしておるわけでありますが、国は先ごろ資金強化のために、助成金ですか、これは地方団体を通じて出したと聞いておりますが、これはどの程度出しておりますか。
  113. 高橋淑郎

    政府委員高橋淑郎君) ただいま全国に信用保証協会五十一ございますが、この五十一の保証協会に対し、各都道府県を通じて合計一億円の補助を予算計上をいたしました。
  114. 林虎雄

    ○林虎雄君 一県一億ですか。
  115. 高橋淑郎

    政府委員高橋淑郎君) 全体で一億円でございます。
  116. 林虎雄

    ○林虎雄君 大臣、いまお聞きのように、信用保証協会資金強化ですから、相当の金を助成費として出してよろしいと思いますが、いかがですか。いま聞けば五十一団体に一億円だそうです。ですから、一団体当たり平均二百万円に足りないわけですね。それで資金強化になるかどうか。ないよりはましですが、しかも、たしか五十一の保証協会は中央に連合会を持っておるわけです。連合会の負担金というものをそれぞれ出しておるようです。この負担金が、一機関当たり二百五十万円ぐらい出しておるようです。ですから、資金強化の金が二百万円国からいっても、中央のほうへ二百五十万円の負担金がいけば、パーになるというか、それよりまだ出し越しになってしまう、足を出してしまう。こういう状態は、あまりにも信用保証協会の仕事の重要性というものを認めなさ過ぎるのではないかと思います。  これは、将来の問題として考えていただきたいことは、もちろん再保証がありますから、保証協会が代位弁済をしましても、その何%——今度の法律改正におきまして、てん補率七〇%が八〇%に引き上げられるわけでありますけれども、それにしても、それぞれ資金力が小さい保証協会はたいへんなんですね。ですから、政府が直接行なわなくても信用保証協会というものが中小企業のために非常に働いておるし、また大きく寄与しておるという、その現実を十分にひとつ理解していただいて、ほんとうの意味資金強化をしていただきたい。二百万円というようなはした金で、はした金と言っては申しわけないけれども、まあそういうものをやっておるということは、あまりにもひど過ぎるのではないか。私は、少なくとも一団体に一億円ぐらいの助成金を出して、もっと強化して、もって中小企業——中小企業は金がほしい、その金を容易に借りられるということでありますから、この保証協会の活躍ぶりは、それは目ざましいものがあると私は見ておるわけであります。そういうわけですから、大臣もこれに関心を持たれて、もっと強化できるように、ひとつ今後の問題としてお考えおきを願いたい。積極的にひとつお願いをいたさなければならないと思います。  長官に承りますが、この際、それぞれ地方団体あるいは金融機関が、保証協会に出捐金あるいは負担金を出しておりますね。政府関係の三機関の中で、国民金融公庫だけが負担金を出しておらないようでありますが、これはどういう理由に基づくものでありますか、御承知ならば承りたい。他の商工中金その他は出しておりますが、これだけ出しておらない。何か理由があるかどうか。
  117. 高橋淑郎

    政府委員高橋淑郎君) 申しわけありません。不勉強でございまして、商工中金の出損金の額はわかっておりますが、国民金融公庫がなぜ出していないかということについては、私よく存じておりませんので、すぐ調べます。
  118. 林虎雄

    ○林虎雄君 時間がないから先へいきます。  各金融機関ですね、信用保証協会保証をした金融機関は、万一貸した金が返らなくなっても、いささかも損失はないわけですね。そうですね。代位弁済いたしますから。ですから、保証協会の保証したこの借り入れ金に対して、当該金融機関というものにはほんとうに安心した保証になるわけですから、したがって、金利等もかなり安くする必要があるのではなかろうか、こういう点を考えますが、別に特に安くしておるような様子もないわけですが、金融機関としては全く申し分のない保証人ですから、取りっぱぐれがないわけですから、中小企業対策として政府がこれだけ力を入れているのでありますから、政府関係の三機関はもちろん、一般の金融機関も金利の引き下げといいますか、特別の取り扱いをすべきではないかという、そういう指導をする、あるいはそういう措置をとるように積極的に働きかける、こういうお考えございませんか。
  119. 高橋淑郎

    政府委員高橋淑郎君) 保証協会の保証つきの融資につきましては、その貸し付け金利の低下ということにつきまして指導をいたしまして、歴年比べてみますと、貸し出し金利は保証協会の保証つき分については低下をいたしております。また、今後ともさらに努力を重ねるように、関係金融機関に対して、大蔵省とも話し合いまして、指導を続けてまいりたいと思います。
  120. 林虎雄

    ○林虎雄君 今度の法律案の中にある税制措置でありますが、これは過去にさかのぼって三カ年、従来は一カ年を、三カ年にさかのぼって欠損金の繰り戻し還付制度というものを強化しておるわけです。これはけっこうなことでありますが、実際としては、この恩典に浴するものは中小企業といっても中企業で、中企業というのはどの程度の線が適当か知りませんけれども、弱小企業などはこの恩典にはほとんど浴さないのではないかと思います。これは帳簿等もずさんでありますし、いろいろ原因もありましょう。しかし、やらないよりはましでありますけれども、そういう弱小企業も恩典に浴するようなことも考えていく必要が中小企業庁としてはあるのではなかろうか。  次に、事業転換の円滑化の措置が最後にございますが、これもなかなか簡単にはいかないと思います。先ほどもちょっと申し上げましたように、へたに転換をすると、なれないことに転換をすると非常にロスがあり、それから転換先において再び過当競争が誘発するという、そういうことがある。だから、何といいますか、りこうな人というか、事業者によっては、しばらくじっとここでがまんをしていればまた一陽来復のときがくるであろう、半年後か一年後か。だからその間は休業していたほうが、労働者にも失業手当が出て、休業していたほうがむしろ心配がないのではないかと、そういう考え方もかなりあるようです、へたに転換するよりも。そういう休業に対する措置というものはここにないようですが、長官のほうで何かお考えになっておりますか。
  121. 高橋淑郎

    政府委員高橋淑郎君) 仰せのとおり休業をしばらくして様子を見るという中小企業の方々に対して、もしこの法律にいう輸出関連中小企業としての対象者となる場合は、保険の特例措置、それからまたこのたびの緊急融資の対象となりますが、それ以外の特別の措置は考えておりません。
  122. 林虎雄

    ○林虎雄君 田中通産大臣は、今後の中小企業転換労働者の転換先については、頭脳産業に入れたいという表現をされたように記憶しておりますが、この頭脳産業という表現は抽象的で、それはコンピューターとかいろいろたくさんのものがありましょうけれども、そういうものは結局新たに訓練をしなければならないわけですね、職業訓練を。したがって、現在労働省で行なっておる職業訓練所というようなところでは、とても大臣の考えておられる頭脳産業向けの訓練をするだけの施設なり人的指導者なりが整っておらないと思いますが、頭脳産業転換ということについて、一応いまお考えになっているビジョンといいますか、それを承りたいと思います。
  123. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それは中小企業転換ということだけを前提として申し上げておるのではなく、いままでは重化学工業偏重ともいわれるほどの状態でございましたが、だんだん原材料の本土に対する搬入量もふえてまいりますし、また船も錯綜してまいりますし、これからは同じ原材料を使うにしても、より高い精密な製品にすることが望ましいということは、日本のように原材料を海外から一〇〇%に近く運び込まなければならない国としては、当然考えなければならないことだと思っておるわけでございます。それは東欧諸国やスイスなどが、その顕著な例でございます。そういうことで、日本も雇用水準が上がってまいりましたから、いままでの重化学工業中心から知識集約産業型にだんだんと移っていかなければならないだろう、こういうことを申し上げているわけでございます。また、中小企業でいろいろ離職をするような人も、離職して全部家に帰って百姓をするといっても、また農業人口そのものも余っているわけでございますし、減反政策を進めている状況でございます。それでまた、失業すると全部公共事業というようなものに携わらなければ救う道がないのだということでも、これはもう転換ができないわけでございますから、これからやはり訓練所施設等は、新しい要請にこたえ得るような中高年層、また知識集約的なものにも携われるような職業訓練内容に整備していかなければならないということが第一でございます。  それから知識集約産業というと、時計をつくったりめがねをつくったりいろいろなことでありますから、精密精巧ということで、ちょっと転換がきかないのじゃないかということでございますが、これは西ドイツの部品工業ということを考えればすぐわかるのであって、これは組み立てるところは非常に、ある程度のレベルと精巧さを必要といたしますが、組み立てる前の単一な部品工場というものは、そんなものではないわけであります。いまも日本でも、家電製品などの部品はほとんど、大きなナショナルでも日本電気でもどこでも、みんな単一部品は地方でつくって、これをあるところに集めてきて組み立てておるわけでございます。また電気計算機や電卓等も、部品は全然別なところでもってつくりまして、それを組み立てれば、いまアメリカ市場を席巻するような電卓製品になるわけでございますから、具体的に全部が全部、こういう青写真によってこういたしますということは申し上げられませんが、やはり、昔のように離職をしたら土方になるんだということでは、これは全くそのときだけの問題であって、これは石炭産業の労働者が全部別なところに、あれだけ心配をしましたけれども、職業訓練をうまくやることによって再就職が全部できておるのでありますから、私はこれからの中小零細企業の転業の労働者というものに対して、政府がやる気になり、組合やいろんな産業体も、これに対して前向きに協力するという体制をつくれば、新しい産業人としての再就職は十分可能である。私は、そのくらいこなせるような、これからの日本の大学に行く人、高等学校に入る人がべらぼうもなく多くなっておりますから、これらの人が知識集約産業に、ちょっと教えればすぐみんな転換できる、こういう世界に例のないほどレベルの高い日本人である。とにかく、高校卒業してから労働者をやっているのですから、こんな国は世界じゅうにないというくらいに、日本人の実態というものをよくつかんで、職業訓練その他の制度を充実させるべきだ、こう考えております。
  124. 林虎雄

    ○林虎雄君 労働省に、職業訓練の関連でお聞きしますが、今回のドル・ショックによって中小企業の失業者がどれほど出るかという、そういう数字、大体見当つきましょうか。
  125. 関英夫

    説明員(関英夫君) お答え申し上げます。  現在までのところ、多少の求人の減とか、あるいは新規求職の増というような傾向が出てまいっておりますが、まだまだ、従来の労働力不足の傾向を反映しておりまして、求人のほうが求職を上回っておる。ただ、その上回っている状態が、以前よりも多少悪くなってきて、現在では、いわゆる求人倍率といいますか、一求職当たりの求人数は一・六倍になっております。そういうぐあいになっておりますが、今後の見込みにつきましては、これはなかなかむずかしい問題でございまして、的確な予想は困難でございますが、現在、主要な産地の実情というようなものを地方から聞いておりますし、また中央職業安定審議会の委員の先生方に実情調査等をお願いいたしておりまして、現在、鋭意その情勢把握あるいは対策等を検討中でございます。
  126. 林虎雄

    ○林虎雄君 今度は訓練政策課長伺いたいと思いますが、先ほど通産大臣お答えになったような、いわゆる頭脳産業といいますか、知識産業といいますか、そういう訓練も将来積極的に考えなければならないというお答えがありましたが、現在の職業訓練所は、その地方地方によって異なるであろうと思いますが、私、長野にいた当時に、職業訓練所というものを国の方針でつくって、それぞれ地方に向く職種を与え、職業訓練を与えたわけですが、現在の職業訓練所で、大臣の言われました知識産業的な高度の訓練というものはどんなものがありますか。いろいろあると思いますが、特に近代的なものがあったら、一音承りたいと思います。
  127. 山口政治

    説明員(山口政治君) ただいま通産大臣からいろいろお話ございました知識頭脳産業でございますが、労働省の職業訓練職種におきましても、その内容におきましても、技術革新の進展に即応し対処し得るよう、漸次配慮いたしております。たとえば、ただいまの御質問お答えするのに必ずしも十分とは言えないかもしれませんが、機械製図科あるいは工場管理科、電子機器科あるいは航空整備科、化学分析科等といったような、また、今後の時代の要請に即応し得るような科目を漸次ふやしております。また今後、公害検査科といったようなことも検討中でございます。でき得る限り技術革新の進展に即応するよう、訓練科の増科を配慮いたしております。
  128. 林虎雄

    ○林虎雄君 いままでいろいろお尋ねをしてまいったのでございますが、中小企業問題というのは、大臣も御承知のように、複雑多岐にわたっており、この対策というものもなかなか容易に解決するものではない。これは私もわかっておるつもりであります。したがって、先ほど来申し上げたように、大きな責任を持っておりまする大臣をはじめ中小企業庁が、よほど真剣に取り組みませんと、この困難な時を乗り切ることができないだろうと思います。ぜひひとつ積極的に、解決困難な問題ではありますが、取り組んでいただくことを希望いたします。幸い、政府内で最有力の一人である、実力者であられる田中さんが通産大臣でありますから、この困難な時に当たられるということには、非常に力強いものを感ずるわけであります。大いに期待を持って今後の政策を見守ってまいりたいと思います。大臣の御自愛、御研さんをお祈りして質問を終わります。
  129. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 時間がだいぶ過ぎましたので、二、三点ちょっとお伺いいたします。  いまも問題になりました、中小企業転換期に来ておる、だから将来のビジョンだ、あるいは青写真だというようなことを検討していると。そのお話も、ずいぶん私は本会議やあるいは予算委員会等でも、また、ただいまも聞いたのでありますけれども、もう一つよくわからぬのですがね。ですから、中小企業は、御存じのとおり非常に多種多様の業種もありますし、あるいは近代化、集約化、構造改善、いろいろと叫ばれて今日まで来た。それを今後どういうような、ただいま知識集約型にというような方向でとおっしゃったのですけれども、そう頭脳産業ばかりあるわけじゃありませんし、どういうようなふうにしていくわけですか。その点、もうちょっと具体的にお話ししてください。
  130. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは非常にむずかしい問題であるし、これが政治問題だと、ほんとうに政治問題だと思います。ですから、中小企業というものに対しては、いま中小企業審議会がございますから、まずここで各界の意見をまとめてもらうようにしておるわけでございます。中小企業の定義というものが、いままでの五千万円、三百人で一体いいのかという問題からまずやってきておるわけでございます。ですから、いままでの制度の中で、もうこれだけの国民総生産になってきた以上、日本中小企業はこういうものであるというようなものをきめてもらうことは、そんなに私はむずかしいことではないと思うのです。これは五千万円にまでやったのを、税法では一億円にしておるから、それまでを中小企業といって、中小企業の恩典をあまねくそこへ与えるほうがよろしいということになれば、それで済むわけでありますから、これは中小炭鉱をどうするか、大炭鉱をどうするかという問題と同じことであって、それほどたいしたことではない、きめようとすればきめられることで、またマイナスにある時期になれば直せばいいわけであります。  だから、それはそれでいいですが、日本中小企業、先ほども林先生から御指摘がございましたように、とにかく輸出の大半部分が中小企業の製品であります。また日本の企業の数から言って、中小企業が全く、大半などというものではなく、数から言えば九〇%以上である。こういう中小企業というものをどうするかということが、そのまま日本の産業形態をどうするか、産業構造をどうするかという議論につながるわけであります。ですから、そういう意味においては、私は先ほども言ったように、あまり中小企業を、すべての零細企業という自然発生するものはすべて是認するのだ、これにはすべて無利子の、無担保、無保証でもって金を貸していくのだ、こういう制度を続けていくと、私は、全部中小企業にしていくようなものであって、これは解決の方法にはならないと思うのです。  ですから、やはり昭和六十年——私がいま考えているのは、私も、もう来年で代議士二十五年になるわけでございまして、中小企業というものに対して一つの青写真ぐらいかかないで、どうして一体通商産業大臣の責任が果たせるのだ、こういう考えで、昭和六十年度の国民総生産が幾らになるかということをまず確定をしていく。それは、去年の七十二兆円をベースとして、一〇%ずつ積み重ねていくと三百余兆円になります。これは算術的計算をすれば三百余兆円になる。それが日本のドル・ショックやその他の国際経済の動きでどうなるのだ、どういう数字になるか。一〇%は高いというならば何パーセントになるかということで、そういう修正数字をつくっておるわけであります。そうすると、国民総所得が幾らになるかということが、計算すればすぐ出てまいります。それでまあ、みずから日本の工業生産の、用地から都市化の現象から全部計算をしてまいりまして、さて、その中で東京や大阪というものを中心にして中小企業というものがこう自然発生をしてまいるのでございますが、全国的な青写真をかいて、二次産業技術の平準化が六十年までに行なわれるとしたならば、中小企業はどうなるだろうか、ということをいま計算をしておるわけでございます。  それには、いまの経済社会発展計画を、去年改定しましたが、私は来年また改定が必要だということを経済企画庁——この間経済企画庁長官臨時代理を短い間やりましたので、経済企画庁で、来年はぜひもう一ぺん経済社会発展計画を改定しよう、そしてそれに六十年展望に立った日本の産業図に合わせるような社会資本の増強計画をやろう、そして、いままで五年、十年、全然別々にスタートをしております港湾五カ年計画とか道路十カ年計画というものを、全部四十六年度を初年度として計算し直そう、そうすれば、アメリカ日本の四対一の社会資本比率も、四十六年から五十年、五十一年から五十五年、五十五年から六十年までに、こういうふうに縮まってまいります、社会環境がこのように整備をされます、中小企業からレベルアップするのもこうなりますという、いま、そういう計算はしておるわけでございます。  ですから、これを省議にかけ、審議会に提案をし、ここで発表できるようにしなければならない、こう考えておるわけでございますが、これは通商産業省だけではなかなかできるものではないわけでございます。しかしこれは経済企画庁が応援しようということでございますし、公害問題の基本などは、こういうものができなければ私は対応策ができないと思うのです。そういう意味で、望んだわけではありませんが通商産業大臣になったわけでありますから、この在職中にそういうものだけは何とかかき上げて、後任者にバトンタッチをしたい、このくらいの意欲に燃えておるというだけでございまして、これでまだ、こまかく数字を申し上げられないことははなはだ遺憾でございますが、やる気であるというその姿勢だけは、ひとつここで申し上げておきたいと思うのであります。
  131. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 だから何べん聞いてもわからぬ。これはあなた、今後の経済の発展計画は、国民総生産が幾らと、それをばっとあげる。それなら、いまの話の結論はどこだというと、ないのですからね。だから、結論は別にここで正しく示せとは私は言っておらぬですよ。大臣も御存じのとおり、中小企業は、あなたの地元の燕市に私も行きましたがね。家の中へ機械を入れて、がっちゃんがっちゃんスチールの板を打ち抜いている。あるいは名古屋の一宮へ行きますと、洋服の生地なんかつくっておりますが、あれなんか一番近代化がおくれておるそうですけれども、話を聞くと、洋服の柄というものは、同じものばかり機械でずっと、近代化でつくったのではうまくないので、いろいろと柄が違うところに特質がある。あるいは関市の刃物にしたって同じことですね。そういう業種を一体、近代化がおくれているけれども、どういうふうにしてやるのだろうかと、私はその辺が聞きたいのですけれどもね。しかし、まあこれはいいですよ。これを詰めてみたって、いまお答え出ませんので、青写真、まだこれからでしょうけれどもね。  それから信用保証協会のこと少しお伺いしたいと思うのです。  今度、信用補完措置が、中小企業信用保険公庫の保険引き受けのワク、これが下半期は五千億追加して二兆三千億と、こういうふうになったわけですね。この総ワクを、五十一の信用保証協会に割り振りが行くと思います。どういうふうにしてそれを割り振りするのか。それが一点と、さらに保証協会は、保証協会の保証ワクというものがありますが、各県の保証協会の保証ワクですね、このワクというのはどうやってきめるのか、この両者の関係性はどうなっているのか、その辺のところをひとつお伺いしたい。
  132. 高橋淑郎

    政府委員高橋淑郎君) 各五十一ございます保証協会の保証引き受けワクの策定は、基本財産をもとにしまして、定款倍率で五十倍とか六十倍ということで定めております。それからお尋ねになりました保険の引き受けワクは、一兆八千億円を五千億円追加して二兆三千億円にするというように、予算総則の改定を行ないました。で、五十一の保証協会に対する配分は、いままでの実績基準にして配分を行ないます。
  133. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 ですから、その関係性ですね、保証協会の保証総額は、いまおっしゃったように基本財産の二十倍から五十倍、これは各定款によってきまるわけでしょう。それと、いまおっしゃる下半期の二兆三千億を各県に割り振るわけでしょう。それは上半期の実績、前年度の実績を勘案して割り振りをする。この両者のかね合いですね。これはどうなんですか。かね合いというか、片方は基本財産の何倍、それで総ワクが、各県の保証協会の保証ワクがきまるでしょう。こっちは二兆三千億を県に割り振りするのですね。そのかね合い。
  134. 高橋淑郎

    政府委員高橋淑郎君) まず五十一の保証協会に対する制限ワクをきめまして、そしてそれで足りない場合、協会によっては保証引き受けの額が多くなって足りない場合に、その倍率を限度一ぱいまで使う。さらには、使えない場合はまた基本財産をふやす、というようなかっこうでそこのバランスはとっていく、そういう関係になろうかと思うのです。
  135. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 その基本財産の一定倍率というものは、これは定款にも載っておりますが、各県の保証協会かってにきめるわけにはいかぬでしょう。大蔵大臣の許可が要るわけですね。それで、それによって制約されますから、今度二兆三千億というものを、全国的な総額をその県にさらに追加して割り振るとしても、五十倍なら五十倍という限度がその県の保証協会に来ておれば、これはもうふやせないわけですか。
  136. 高橋淑郎

    政府委員高橋淑郎君) まず第一に、定款を変えます場合は認可が要ります。それから、いままで五十倍であったものを六十倍とか、あるいは三十五倍であったものを四十倍ということで、個々の申請に応じて定款の変更を認めつつございますので、保証の引き受けワクが不足するというような事態は、いまのところ避けられておると思います。
  137. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 ですから私が聞きたいのは、基本財産の倍率が、その倍率の限度一ぱい来たら、それは大蔵省の認可を得なければその保険のワクの追加というのはできない。そうすると、申請して認可を受けるまで、また時間がかかるのですね。その辺のところなんですがね。
  138. 高橋淑郎

    政府委員高橋淑郎君) 説明が不足いたしましたが、引き受けワクを広げるというためには、いまの定款倍率を上げる。これは足りなくなってからではございませんで、大体の見通しがつきますので、前もって申し出なりあるいは相談がございます。前もって中小企業庁のほうで大蔵省のほうと内々相談をいたして、そうして引き受けワクが小さ過ぎないようにということでいままで措置をいたしてきております。
  139. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それで、その定款倍率の一番最高は幾らになっておるのか。代表的な東京、大阪、名古屋とか京都、こういった六大都市はどの程度になっておるのか、具体的にひとつ。
  140. 高橋淑郎

    政府委員高橋淑郎君) 最高六十でございます。
  141. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 どこですか。
  142. 高橋淑郎

    政府委員高橋淑郎君) 大阪でございます。
  143. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 大阪だけ……。あと六大都市をちょっとおっしゃってください。
  144. 高橋淑郎

    政府委員高橋淑郎君) 大阪、京都が六十倍でございます。そのほか大きいところは五十倍……。
  145. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 大阪、京都といっても、私は京都だけれども、京都の保証協会は五十倍と言っていましたよ。それが五十三倍くらいになった。六十倍になっているのですか、どうですか。
  146. 高橋淑郎

    政府委員高橋淑郎君) 京都につきましては、六十倍の申請が近くございまして、それを認める予定にいたしております。
  147. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 いいかげんな返事は困りますね。それじゃ、六十倍に来ておるならば、この際大蔵大臣もおるのですから、認めてもらえるのですな。いろいろな事情もありましょうけれども、京都は西陣の零細な企業がありまして、したがって、やはり保証協会の強力な保証を府としても望んでおるわけです。その点いかがですか。
  148. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 大蔵省と了解済みだそうでございますから、申請が出てくれば、六十まで認めるということになっているようでございます。
  149. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それから代位弁済の全国平均、それから一番多いところはどのくらいあるのか。それは件数と金額、パーセント、それが一つ。  それから信用保険公庫に再保険を保証協会はしているわけですけれども、保険公庫に、代位弁済をした分の申請が出ておるのですが、なかなか、書類を出してから保険公庫から保証協会に保険の金がおりるまで時間がかかる。一カ月くらいかかるとか。この期間をもう少し早くしてほしいと、これは現地の要望でありまして、その点はいかがですか。
  150. 高橋淑郎

    政府委員高橋淑郎君) 代位弁済をしたあとの保険金の支払いについては、申請後一カ月以内に手続が終わるように極力指導し努力をいたしております。  それから直接お答えにちょっとなりませんが、代位弁済額は、昭和四十六年の一月は、前年に比べまして六・五%アップになっております。それから四十六年の一月の代位弁済の件数は、千九百十四件でございます。
  151. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それは一月分ですか。
  152. 高橋淑郎

    政府委員高橋淑郎君) はい。いま申し上げましたように、四十六年一月に一千九百十四件でございます。件数でございます。
  153. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 ですから、一月分だけですか。
  154. 高橋淑郎

    政府委員高橋淑郎君) はい。
  155. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 去年一年のは幾らですか。四十五年度は年度分で幾らですか。保険の総ワクが幾ら、保証の総額は幾ら、件数が幾ら、それから代位弁済が金額で幾ら、それから代位弁済の件数のパーセントは幾ら、金額のパーセントは幾ら、そういうのはそこに出ていないのですか。
  156. 高橋淑郎

    政府委員高橋淑郎君) 昭和四十五年度の保証承諾の金額は三千六百四十二億六千二百万円、うち代位弁済二百五十億四千二百万円でございます。
  157. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それはちょっとまとめて、速記録に載るから、いいかげんな数字じゃ困る。あとでそれはまとめて最後にお伺いしますからね。  それからもう一つだけちょっとお伺いしますけれども、下請振興法というのは去年できたわけですね。これは初年度で予算措置が十五億円、それから四十六年度から三十五億円の予算がついているわけですが、この下請企業振興協会の仕事はどういうふうに進んでおるのですか。予算は取ってあるけれども、私が調べましたところ、全然仕事がないというようなことを言っておりましたね。少しPRが足らぬのじゃないか、こういうことも考えております。その辺の実情をひとつお伺いをしたいと思います。
  158. 高橋淑郎

    政府委員高橋淑郎君) 現在、下請企業振興協会ができておりますのは十七でございまして、来年度予算でさらに三つの協会に対する補助を考えて予算要求をいたしております。実は、下請中小企業振興法が成立いたしまして以来、振興基準はでき上がっておりますけれども、振興事業計画の策定につきましては、幾つかの親企業それから事業協同組合の間で話が行なわれておりますけれども、最近おくれが出ておりまして、まだ現実に下請企業振興事業計画が策定、実施されるまでに至っておりません。下請企業振興協会の活動もまだ十分とは言えない状況でございますが、極力、振興事業計画の策定、実施を急ぐようにいたしまして、かつまた振興協会が、下請受注のあっせんその他について活発に活動が行なわれるようにいたしたいと存じております。  なお、先ほど申し上げました下請企業振興協会に対します四十六年度の補助金は、四千二百万円でございます。
  159. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 ですから、法律ができましてすでに一年近くなっておりますけれども、予算だけはこうしてついているのですけれども、事業計画実施されないということは、これはどういうことですか。
  160. 高橋淑郎

    政府委員高橋淑郎君) このたびのいわゆるドル・ショックによりまして、設備投資意欲が減退する等、まあいろいろ従来親企業と下請事業協同組合との間で話し合いがそれとなしに行なわれていましたのが、停滞をいたしておるという現状でございますが、しかしごく最近、振興計画がまとまって一件申請が出されてくる見通しになっております。
  161. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 何でもかんでもドル・ショックで片づけられたんじゃ、まずいと思うのですよね、ドルショックを受けないのもあるのですから。自転車産業なんか非常に景気がよろしいし、カメラにしてもね。ですから、法律ができて一年にもなって、まだ一件しかないというのはちょっと怠慢ですよ。もう少しPRをして、せっかく十五億、三十五億の予算もついているのだから、もう少し活発にひとつ、中小企業庁としてやってほしいと私は思います。
  162. 高橋淑郎

    政府委員高橋淑郎君) 仰せのとおりでございまして、法律そのものの趣旨の一そうの周知徹底をはかるということが、まず第一でございまして、この点については、仰せのとおり積極的に指導をいたしていきたいと存じます。
  163. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それじゃ最後に一つ、これは附帯決議とも関連がありますので、お答えいただきたいと思います。  官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律ができたわけですけれども、各年度別の契約実績はどうなっているのか。それから官公需について、ドル・ショックの影響を考慮して、それの対策を何か用意をしておるのか。この二点お伺いします。
  164. 高橋淑郎

    政府委員高橋淑郎君) 契約実績でございますが、昭和四十一年度四千八百九十一億円、四十二年度五千九百三十九億円、四十三年度六千六百八十一億円、四十四年度七千四百三十六億円、四十五年度七千六百五十億円、四十六年度は、目標額として一兆四百億円を掲げております。  それから官公需対策につきましては、先般閣議で、官公需受注の確保についてどうやって具体的に推進するかという方針を決定し、種々の方策を積み重ねておりますが、今回のドルショックとの関連におきましては、去る十月一日に各省庁あてに、一そうの官公需確保についての協力を要請いたしまして、かつまた十一月二十九日に、関係者で構成いたします官公需確保対策推進協議会を開きまして、重ねて、こういう際でございますから特段の協力を要請をいたしまして、今後とも一そうの努力を各省にお願いをいたしておるところでございます。  先ほど私、信用保証の件につきまして、数字につきまして答弁を間違っておりますので、訂正さしていただきます。  四十五年度保証承諾額一兆三千六百四十三億円、代位弁済二百四十六億円、それから件数にいたしますと、保証承諾は八十三万一千七百三十六件、代位弁済二万五千四十二件でございます。
  165. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 パーセントは。
  166. 高橋淑郎

    政府委員高橋淑郎君) パーセンテージは約二%でございます。
  167. 高山恒雄

    高山恒雄君 時間がありませんから、できるだけ簡明に御答弁願いたいと思います。  私も簡単に質問したいと思いますが、今日、中小企業並びに零細企業が、このドル・ショック並びに課徴金というような問題を含めて、実際問題として、とほうにくれておるというのが中小企業の現況じゃないかと思うのです。したがって通産省は、この問題と関連して、まあここに中小企業対策の一環として法律を出しておられますが、問題は、中小企業が生きる道を擁護しようとするならば、何といっても景気の見通しだと思うのです。先ほど、見通しについて大臣から答弁がございましたけれども、一体、先行きは政府は明るいと見て、どの程度の期間さえあれば何とか挽回するのではないかという見通しなのか、この点は、中小企業にとっては非常に大事な点だと私は思うのです。たまたま大蔵大臣も経験された通産大臣でもありますし、いろいろ閣議でも協議されておると思いますから、もっと見通しをひとつはっきりしてもらう必要があるんじゃないか、こう思いますが。
  168. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 今年度当初見通しは一〇・四%、実質でございます。それが、十月に入ってからのことでございますが、八月半ばのニクソン政策発表以後、また、変動相場制を採用いたしました以後の状態を計算いたしまして、五・五%程度であるという改定見通しを経済企画庁が出したわけでございますが、どうも、その後また試算をいたしますと、五%台を確保できないということで、現在四・五%ないし、五%には満たないということでございますから、まあ四・五%ないし五%という数字を計算しておるわけでございます。しかし、この上に円平価の改定ということが起こってまいりましたり、それからアメリカとの間に課徴金全廃という問題が起こってまいりますと、数字も違ってくるわけでございます。  それでなお、来年度の予算の状況によりまして、どうしても来年度は、景気を財政において下ざさえをしなければならないというような見通しでございますので、財政刺激という方向であろうと思うわけでございます。まだ予算編成大綱もできておりませんし、予算編成の前提である国際情勢も未確定でございますので、八月三十一日に概算要求をし、大蔵事務当局はいま整理を行ない、一応の積算は行なっておるわけでございますが、さだかに来年度の経済見通しをどうするということはできないような状態でございます。しかし税収を見通しますと、大体五千億から五、六千億という程度でしか伸びが見込めないということでありますので、財源としては、公共投資等の財源として国債等の収入も見込まなきゃなりません。ベースが非常に大きくなっておりますので、いまの状態では国民総生産を財政刺激でささえるとすると、一%に五千億という数字が大体精算をされるわけでございますが、規模が大きくなりベースが大きくなってくると五千億ないし六千億、六千億で計算をいま私はしておるわけであります。通産省としてはどうしてもそういうことになるわけでございます。  通産省の見方としては、来年度横ばいじゃないかという感じであります。いまの前提条件によって違いますが、大ざっぱに考えて、ことしを横ばいさせるにも相当な政策を行なう必要があると考えております。その上に、一〇%成長を目途としてきたわけでありますし、過去二十年間を見ますと、前半の十年は一〇・四%、後半の十年は一一・一%、それが、ことしはがたんと四%台になるというのは、たいへんな影響があるわけであります。来年はどの程度になるか、もちろん決定はいたしておりませんが、五%と一〇%の中間というと七・五%ということになります。通産省としては、七・五%程度の国民総生産の確保が前提でないと、非常に、いろいろな障害が起こってくるだろうということでございまして、なだらかに、転廃業したりいろいろな整理をしたりということ自体もむずかしくなるだろうという感じでございまして、来年一ぱい七・五%程度の予算を組んで、そういう状態で政策を行なう。しかし、来年の上半期にそのくらいの高さで成長がいくような状態には、ならないと思っております。  ただ私ども通産省の見方と、経済企画庁、大蔵省の見方は多少違います。これは三十七年、四十年のパターンで計算いたしますと、ここまでくると、半年後には景気は上向くだろうという見通しをしている向きがございますが、通産省の指数で見る限りにおいては、私はとてもそういう態勢は考えられない。来年の下期になっても、よほどこまかい施策を的確にやっていかないと、ことしの横ばい程度しか確保できないのじゃないかという懸念を持っておりますので、これから予算編成が終わるまでの間、短い間でございますが、その間には日米の話し合いもございますし、通貨の問題もきっと、いまよりもさだかになると思いますので、やはり積極的なる予算、積極的なる政策を行ないたいと、こう考えております。
  169. 高山恒雄

    高山恒雄君 通産相お考えになっているのは、横ばいで、来年の下期もむずかしいのではないかと、こういう予想ですから、そうだろうと私たちも考えておりますが、そこで、中小企業金融に対するあらゆる措置をとっておられるわけですが、たとえば一つの例を私申し上げます。今度のいろいろなショック、特に繊維なんかの場合、紡織機械製作所ですね、紡織機械。これはもう閉鎖するか、杼を見ている以外ないわけですね。先の見通しは何にもないわけですよ。こういう産業が、繊維だけではない。たとえば、私は岐阜県ですが、御承知のように木工もそうですよ。ちょっと見通しつかぬ。陶磁器もそうです。繊維がそうです。それからもう一つ、いまの関の刃物、それと洋食器類ですね。何一つ取り上げても、いいことはないですな。  そうしますと、これは一体見通しが、いま大臣がおっしゃるような見方をせざるを得ないと思いますが、その間、倒産が出ざるを得ないという現状じゃないかと思うんです。そこへもってきて、信用保証協会を裏づけとする金融というものができる道が開けておるわけでありますが、ところが、いまは信用保証協会では精一ぱいの、もう抵当物件として借りられるものは大体尽くしておるといっても過言でないと私は思うわけですよ。こういう現実を大体私たちも調べてわかっておりますが、いろんな数字を言うことはきょうはやめますけれども、そういう現状で、いかなる法律の改正をしようとも、救済措置をとろうとも、実際に金が借りられないという、このことでは、長期にわたる不況というものから考えてみて、倒産する以外ないんじゃないかと、こういう私は観点に立つのですが、こういう点について、大臣どうお考えになっているかですね。
  170. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は、指数で見る限りは、六月から十月までの倒産件数を見ますと、対前年度比一五・七、一二・七、一三・三、一〇・二、九・八、これは全部前年度よりも減っているわけです。減ってはおるし、金額も減っております。しかし、これは実態でないと私は見ております。  これはなぜかというと、その間に公定歩合が、一年間ばかりの間に相当なスピードで下げられました。他の先進工業国に比べては、まだまだ〇・五%も高いんじゃないかという見方もございますし、私もまだ高いと思っております。思っておりますが、ドル売りで円が非常に散超になっておるということ、そういう意味で、市中金融は伸び切っておるわけであります。中小企業は、金利負担の問題等たいへんな問題でございますが、しかし、せつなくなってくると、金利よりも、質よりも量ということが中小企業や零細企業は当面する問題でありますから、そうすると、年末を控えておりながら倒産がそんなに起こらないというのは、市中の金融が非常にゆるんでおるという特殊な状態があると私は思うんです。同時に、政府も中小三金融機関等の資金ワクを拡大したり、いろいろなことをやっておりますから、両々相まって、実際、不況の姿というものは倒産の面にはあらわれておりません。  ところが、在庫が非常に多くなってまいったり、それから生産・出荷もぐっと減っております。ですから、私はやっぱり、一−三、四−六というものに実態がだんだんとあらわれてくるのではないか。それまで、われわれは実態を把握して、それで最悪の事態にならないようなことを、これからやらなけりゃいかぬ。しかし、これから予算編成期であり、一−三月は国会でもって予算審議の期間でございますし、実勢があまり数字として出てこない。こういうことを考えますと、四−六において、一ぺんに出てきては困るので、これは出先ばかりじゃなくて、いろいろな機関を通じて、二カ月おくれでもって統計数字をつかむということでなくて、月のまん中でも、あらゆる数字をつかめ、こういうことを下部にも強く求めておるわけでございますし、私自身がいろいろな数字をつかんで、対応策に遺憾なきを期してまいりたいということを考えております。  大蔵省にも、この間、私は大蔵大臣臨時代理でもございましたので、そういう意味で、税の方面からもこれは実態数字をつかまなきゃならない。また、経済企画庁長官臨時代理でもございましたから、どうも来年度の経済見通しは甘くないぞという私の考えは、十分述べてございましたので、これから大蔵、経企、それから通産、三省とも緊密な連絡をとりながら、実態把握を進めてまいりたい、こういう気持ちでございます。
  171. 高山恒雄

    高山恒雄君 おっしゃるように、年内の倒産は、もう数字も私も十分承知をいたしております。地方自治体の減収もわずかなものです、いまのところでは。ただし、来年ですよ、来年の四半期並びに六月までの落ち込みですね、これがやはり問題になるわけです。そういう景気だから、中小企業が一体、そこまで持ちこたえることができるかという不安が出てくるわけです。  そこで私は、中小企業金融措置について、いわゆる保証協会というものは、もう根抵当もなしに、精一ぱい借りておる。したがって、借りようと思っておってもなかなか、その点は手続その他、根抵当がないために借りることができない、こういう現状を考えますときに、私は少なくとも通産省としては、地方自治体に、ある程度地場産業育成の基本的なものを立てさせる必要がある。たとえば、いままでも高額の金を借りております。福井の例が午前中もお話が出ましたが、高額の返済ができない。それは、少なくとも市なりあるいは県なりが資金政府にお願いをして、そうして救済措置を考えていく。あるいは、これだけの金があればこの救済をすることができて、倒産のうき目を見なくてもいけるんだと、これは地方自治体は地場産業擁護のためにそういう方法でやるんだ、こういうことを、私は少なくとも長期の不況というこの事態の中では、通産省はそういう措置をとるべきじゃないかという考え方を持つんですが、大臣はこの点についてどうお考えになりますか。
  172. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) とにかく、どうするかという具体的なものを全部きめるには、多少時間がかかるわけでございます。今度の繊維産業に対しましても、私のほうから繊維企業に対して、ひとつ要求をしてくださいと、こう言っても、いますぐどこまで踏ん切れるかわからない。そういう意味で、やはり相当長期かかる。その時期、時期に分割して予算要求があってしかるべきだと、こういうことでございますし、私自身もいろいろなものを見ておりますと、確かに三カ月、半年、一年つないでやることによって円満に処理ができ、社会的混乱を起こさないで済むという問題が十分あります。地域ぐるみ、町ぐるみという問題に対しては、地方公共団体がてこ入れをしなければならないという面もございます。これはあなたは御存じだと思いますが、新潟県の栃尾とか、見附とか燕とかいうところは、もう繊維産業はつぶれている。実際においてもう町もつぶれるという状態でございますから、町がつなぎ資金保証をしておるという実態でございます。これはもう、町も企業も死なばもろともというたいへんな状態でございますし、私の地元でもございます。これはそういうことで、つなぐものはつないでもらわなければいかぬ。そうなれば、あとは、その間の利息だけをどうするかという問題だけ片づけば済むわけです。  ですから、私はこの間早急に、さしあたり十万台ということで織機の買い上げを言ったのは、政府が十万台買い上げということを宣言をすれば、十万台に対する二百五十億だけはそのままたな上げになってしまう。そうすると、期限が来てもその範囲だけはたな上げになって、あとは利息はだれが負担するかを考えればいいので、応急の措置として大蔵省と協議をしてこういう発言をしたわけですから、何でもかんでも全部、というわけにはいきませんが、いま申し上げたような特殊な問題に対しては、自治省とも十分ひとつ連絡をしてまいろうと思います。  なぜ私はこんなに深刻に考えておるかといいますと、どうも幾つかのいろんなものが重なってまいります。円平価の切り上げというものは、われわれが戦後経験しないことであります。しかも、変動相場制でこのくらい困るといっておりますけれども、長いこと固定相場制の中になじんできた日本、こういうものが、ニクソン・ショック以来いろいろなものが重なってまいりまして、同時に、日本の国内全体が、もう鉄、パルプ、肥料、繊維、石油化学など、みんな米と同じように減反政策をやらなければならないようになっているわけです。へたをすると、昭和初年のような縮小均衡的なものに、もしつながっては困るという考えを、私は通産大臣としてまじめにそういう考えを持っている。そうなるとほんとうに、物価が引き下げられるというようなものではなく、社会的な不安を醸成するおそれもあります。そういう意味で、私は新しい第二のスタートに対して、スムーズに合理的に第二のスタートにつなげていかなければならない。それが当面する産業政策だ。これはへたをすると、理屈は合っても、現実問題では混乱が起こるという危険を感じますので、私はこのごろ、その意味では非常に深刻な気持ちで、事務当局とも、甘い考えではいかぬ、これは万全の対策をとっていってそれまでにならなければ、それはほんとうによかったことである、そういう気持ちで、深刻な気持ちで対策を進めようと、財政当局にも、そういう立場を私は強く主張しておるのであります。
  173. 高山恒雄

    高山恒雄君 そこでまた繊維に関係することを言うわけじゃないのですが、より糸というのが六十一億、小幅の織物が二百五十億、ひもが六億三千万、メリヤスが百五十五億、そのほか染色七十五億、毛繊維が八億、大体こういう数字を見ますと、午前中もお願いしましたけれども、大臣、一千二百五十億では足りませんよ。これを出さなければ、景気の挽回なんかできないと私は思うんです。  この点はなぜかと申しますと、ことしは、先ほどおっしゃるように、倒産は数字的には出ておりません。これはもう大臣のおっしゃるとおりですけれども、大臣もまた確言しておられるように、来年の前半期も無理だろう。けれども、秋には挽回させなくてはたいへんな事態がくるという、私は予想をするわけです。それは何かと申しますと、国内消費がとんざします。今期まではみな、一時金にしてもあるいはベースにしても、ちゃんとやっております。したがって、来年の前半期にもし落ち込んで秋に挽回しないということになったら、今度は国内消費が落ちますよ。私は、予算委員会でも、時間がなかったから簡単に申し上げたんだが、いま私が労働構成、いわゆる労働集約的な産業という見方をしてまいりますと、日本の主体性を持つ集約産業というのは、繊維工業、機械工業、農業、この三つで約五千五百万人の人口になっておるんです。これがもし落ち込むということになれば、いかにせよとも国内消費は伸びるということは言えません。そこへもってきて、外国への輸出に対する秩序というものは、大臣みずから、何とかやっぱりこれを秩序を確立しなければならないと。世界各国が自給自足の立場をとっている。こういう立場から考えますと、これはやっぱり非常に見通しが暗いという見方をせざるを得ないのです。だから、私は先ほど申しましたように、業界からもいろいろ要望が出ているようですが、千二百五十億なんていうようなけちなことを考えないで、思い切った施策をとって、少なくとも来年の秋に、落ち込みが何とか前向きに変わってくるという施策をとってもらうことを切に要望して、私の質問を終わりたいと思います。考え方をお聞きしたいと思います。
  174. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私はいままでほんとうに、友人とも議論をいたしますが、どうもいままでのずっと数字を、政府の統計数字をもととして立論をしておられるのですけれども、学問的な立場におられる経済学者などは、このままいくと来年の下期には上がるだろうと言いますが、私はいまの数字を見ておりますと、どうしてもそういう数字が出てこないと思います。ですから、通産当局へも、もうそういう意味で出先の通産局長の出してくる数字や、金融機関から金を借りるために修正した数字などを見てもだめだから、自分で行ってみて、どれだけ稼働できるかという実態をつかまないと、実際の調査はできないということを言っているわけでございます。  やはり千二百億以上の繊維というのも、私は十万台先にばんと出しまして、二千億から七百五十一億引くと千二百四十九億、まあ千二百五十億だと、こう言っておるわけでありますが、大蔵当局は、これは三年間の数字ですか、というようなことも言っております。しかし、そんなことではないのだ、これはもうやらないと、ほかのものもみんな一緒になって、何もかもみんな一くるめにやらなければならないようになるおそれがあるので、一つずつやっておくべきであるということを主張しておりますから、これは予算確保のために万全を期していきたいと思います。  もう一つ、通産省で私は産業立地という問題をやっているわけです。これは道路や、鉄道の複線電化とか、レールの交換とか、クレーンを大きくするとか、いろいろの問題があります。これはコストダウンのための政策を中心的にやるつもりでございますが、そういうものだけではなく、やはり都市に過度集中をしておって、これから公害防止施設に投資をするというと、どうしてもコストアップにつながってコストダウンにつながらないという企業は、産業立地の政策を進めることによって分散しよう、こういうものを思い切って来年度はやらないと、これは総生産が上がってこないし、ただ建設省や農林省だけのものではなかなかうまくいかないだろう。だから将来の国際競争力の培養や、コストダウンにつながる産業自体の体質改善、構造改善に至るものの大型のものを進めようといって、二百五十億の予算要求をやっておる、特別会計の新設を求めておるということは、こういうものとワンパッケージで来年度は進めてまいろう、こういうことでございます。繊維に関してだけ特別に千二百億とか千三百億、千五百億になるという景気のいい御答弁は申し上げられませんが、しかし、各般の政策を進めることによって、ただ景気を上げるというだけではなく、いま、ちょっとぐらい一人に三千円、五千円の減税をしても、それが国内消費の拡大につながるかと言ったら、とてもつながらない状態でございます。ですから、もうこうなってくると日本人は賢いので、ちょっと何かあるとレジャーも抑制して、預金高がぐんと伸びるという現実の面が、もうすでに現われているということを考えますと、どうしても財政を中心とした政府主導型、地方公共団体主導型の景気刺激というものを推進してまいりたい、こう思います。
  175. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 朝からいままで、自民党の実力者田中通産大臣の抱負をずっと聞いてきたわけですが、そこで少し質問をいたしたいと思いますが、通産大臣は、この間新潟のほうへ行って、こういうことを新聞記者会見でおっしゃったというのですが、帳簿外の織機を一切整理する必要がある、買上げ対象は三十万台ほどになると思われるということを言っていらっしゃるのですが、今日もなおその気持ちをずっとお持ちなのか、これをことばどおり実行なさるのか、ひとつ、まず聞いてみたいと思います。
  176. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま、予算でどのような処置ができるかということは、まだ明確にはできません。が、しかし、私は通商産業省に参りました直後、いろいろなことが言われておるが、私の知る限りその程度のものではないと思う、七十万台の織機のうち、五万三千台とか八万台とかいうものではない、約半分、三十万台ないし三十五万台ぐらい買い上げなければならないというのが実態だと思うから、地方通産局長はその実態を把握せられたいというのが、第一回目の地方通産局長会議における私の発言でございます。そのときは、ちょっとたまげたようであります。驚いたようであります。これだけ専門家が詰めて、五万三千台で済んだものが、三十万台ないし三十五万台とは、大臣は何を言うのかということでございましたが、その後、私の数字に対して異議を唱えないという状態から考えますと、まあ相当、実態を調査をしてみると、三万台や五万台では済まないのだということが、よくわかってきたようでございます。  それから、新潟の業者が、特に見附、栃尾の諸君が、私たちだけではなくこれは福井、石川その他の業界全体の意見でございますが、というので私のところへ持ってきた織機買い上げの要求書には、七十万台だと申し上げておりましたが、無籍ものを入れると七十七万台から八十万台近くになると思います、そのうち三十五万台ぐらいは買い上げてもらいたい、という書類を持ってきたわけです。それは正式な書類を持ってきたわけです。私はそれを通産省繊維局に回付をしておきました。私が言ったことばが正しかったというのではなく、これだけの事態に対して通産省はやはり万全の対策を講じなければならない、こう言ったのでございまして、いま予算でもって三十万台買うと、こう言ったら、七百五十億をどこから出すのかと、こういうことになりますから、すぐには申し上げられないことでございますが、そういう実態を把握すべく努力をしてみると言ったことは事実でございます。
  177. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 実力者田中さんが、そのくらいの積極的な気持ちを持っておれば、必ず私は実現可能なものと思います。なおそういう方針で、今後大臣が大いにがんばってもらいたい、こういうことを申し添えます。  それから、日本の外貨獲得の面で中小企業が占めておる比率ですね、ちょっと教えていただきたい。
  178. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 四十四年度ベースで申し上げますと、百五十六億ドルのうち六十三億ドル、二兆二千五百億でございます。それから対米輸出で申し上げますと、四十八億ドルのうち二十一億ドルでございますから、四三・三%、円に直しますと七千五百億ということでございます。この数字は、大体比率は四十五年も四十六年も似通ったものであって、一、二%上がり下がりがあるというだけでございます。
  179. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そこで通産大臣に考えてもらいたいことは、この間のドル・ショックの問題で、大きい銀行なりまた貿易商社、これはドルを売って、ちゃんと何百億かの円をかせいでいるわけですね。ところが、中小企業の人たちは、これだけの、対米だけでいえば約半分のものを中小企業がかせいでいるわけですね。ところが、中小企業の人たちは手持ちのドルというものがないわけです。だから、円が上がるとドルが下がるということがわかっておっても、売るドルを持っていないわけです。そのために、大企業のようなことにはならなかったわけですね。しかし、これだけやはり日本の外貨獲得には大いに貢献しておるのですから、これだけの仕事をやっておるのですから、だから、政府当局としても、このドル・ショックについて、中小企業の困難については私はよほど責任を感じてもらわなければいかぬと思うのですね。だから、特に中小企業のドル・ショックに対しては、私はこの際、政府はよほど積極的な対策を立ててもらいたい、こう思うのですが、大臣どうですか。
  180. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) でございますから、もう八月十五日以降やっているのは、中小企業対策だけをやっているわけです。これはもう、大企業対策などは三兆円、四兆円近く債権もございますが、これに対して変動相場制の為替差損に対して何かやってくれと。そのうち何かやらなければならぬと思うが、いまは中小企業だということで、中小企業対策に専念をいたしておるわけでございます。
  181. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は午前中質問ができなかったわけですが、要するに、いわゆる無登録の織機の問題でも、大体日本の無登録織機が占める比重というものは非常に大きいと思うのですね。だからやはりそういう点でも、無登録織機でも政府が買い上げるという方針を積極的に進めることは、私は正しいと思っております。おそらく田中通産大臣もそういうことを考えていらっしゃるだろうと私は思いますから、この点はもう時間もありません。あまり私は質問する時間がないのですが、積極的に大いにやろうと言ってほしいということを申し添えて、それで次の質問に入りますが、この法案の信用補完制度の問題、特に小零細業者にとって関連の深い特別小口保険の問題について、私は質問をいたしたいと思うのです。  この法律をつくる、制度を拡充する目的は、困っておる中小業者金融の道を開くためである。政府はもとより、信用保証協会金融機関は、中小業者のためにできる限り資金を貸し付けるようにつとめるべきであると思いますが、通産大臣、どういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  182. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それはもう中小企業で一番重要なのは、下請の代金が円滑に払われること、それから債権は必ず確保されること、もう一つは、つなぎ資金が円満に供給されること、この三つが一番大きな問題でありますから、中小企業がつなぎ資金を得るためには、また、ある時間かせぎをしたり、いろいろな短い間に合理化を行なったりする場合でも、金融という問題は、これは非常に中小企業や下請は、特に質よりも量だということをすぐ言うことを見ると、量の確保というのは非常に重要なことだと、このように思っております。
  183. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そこで、通産大臣がそういう気持ちを持っていらっしゃっても、実際そのとおりいってないということが私は問題だと思うのですよ。信用補完制度を改善して、困っておる中小企業者にお金が流れていくようにしても、その出口のところ、出口は信用保証協会ですね、ここががんばっておって、水道のじゃ口のせんを締めておるために、思うようにそれが行なわれていないという事実があるわけですね。いわゆる信用保証協会のところで選別強化が行なわれて、金融の道を非常に狭めておる、そういう事例が幾つも起こっておるわけです。これではせっかくの制度が生かされないと、こういうように私は思いますが、大臣はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか、そういう例がたくさんあるわけです。
  184. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それは制度が効率的、合理的に運用せられることが望ましいということでございます。実際問題としていろいろあることは、私も承知いたしております。実際にあるのですし、選別をしないで無差別でなかなかやれないというところにも問題がございます。そういうところを調整するのでワクをつくる、それから、必要なところへ必要なときに、必要な量だけいくように、やはり必要度に応じたウエートをちゃんととってもらいたいということを、うまく行政指導しているはずでございます。窓口はうまくやっているはずですが、なかなか、中には御指摘のようなものがないわけではないんです。それは、君には実績がないじゃないかと。しかし、実績があるといって今度借りる番になっている人は、こんなものを借りなくたって、普通の銀行からも借りられる人じゃないか、自分にこそ貸せろと、こういう問題。私もよく知っておりますが、なるべく制度が運用されるように望んでもおりますし、そういうふうに具体的に運用されることを期待をいたします。
  185. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 御参考までに申し上げるわけですが、神戸のケミカルシューズの産地ですね、ここで自治体が融資のワクを広げても、信用保証協会がそれを締めつけるわけです。そうして、こう言うんですね、返済できる見込みのないところは貸さぬ。こういう態度をとっておるし、それから特別小口のところは無担保、無保証で借りるということにきまっておるわけですね。それにもかかわらず、保証人をつけないと貸さぬと、こういうことを言うわけです。実際にそういう事例がたくさんあるわけです。言い分がふるっているのですが、保証人もつけられない商売人には金は貸せぬと、こういうことで窓口でぽんとはねてしまう。これは私はずいぶんおかしいことで、こういうことはあってはならないことだと思いますよ。それから愛知県の一宮市でも、特別小口に保証人をつけないと貸さないという事例が、たくさん報告されておるのです。  特別小口を借りる場合は、二つ省令にありますね。これは大臣も御存じでしょうが、一つは、事業税を納めておるという受け取りを持ってこい、それからもう一つは、住民税を納めておるという、このどちらかがあれば貸すということに省令はなっておるはずだと思うのですが、ところが、兵庫県西宮市では、事業税の納付書を出さないと住民税の納付書では貸さぬと、こういうことを言って断わられた事例があるわけです。これは無担保、無保証制度の否定だと私は思うのですね。大臣の考えでは、ないとおっしゃるけれども、事実はこういうことがたくさんやられておる。実際には無保証、無担保でやってないという事例がたくさん出てくるわけですね。これは明らかに私は省令違反であると、こういうふうに思うのですが、大体、このようなことが何で起こるのか、どこに理由があるのか、どういう理由か、そうして、このような事例につきまして、政府はどういうふうに処置をされようとするのか、その点を伺っておきたい。
  186. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) この制度精神がすなおに運用されるべきであることは、言うを待ちません。公平でなければならない、へんぱな行動があってはならない、これは当然のことでございます。が、しかし、あくまでも金融であるということが、そこに問題がある。  私も、中小三機関の中で保証人をつけなければ貸せませんという例を幾つか知っております。これだけ完備しているものがと言うと、やはり理由があります。その理由があなたにそのまま答弁になると思いますが、やはり百口貸せられるところに九十五口しか申し込みがないという場合には、この法律どおり自動的にいきます。ところが、百口のワクのところへ三百口の申し込みがあるということになりまして、中には、もう何回も何回も貸した人もある、中には当然初めての人もあるということになりますと、順位を付してずっと整理をしてまいりますと、もうあなたのところへは、これ以上は貸しても返らないようですね、こう言いますとね、これは交付金じゃないので、補助金ではないので、あくまでも金融であるということで、そのたてまえ上からいうと、確実に返るということのほうを優先せざるを得ないのです。こう言うと、法律で、そういう場合には、三回も四回も貸したならば、五回目に貸せる者を優先しなさいというようになっておれば別ですが、やっぱりそうでない。私は金融機関の窓口としては、国損を来たさないように、やっぱり必要なものを要求するということはひとつやむを得ないのではないか、ということになるわけでございます。  ですから、原資が無制限にあると、さあいらっしゃいということになるのですが、どうもそうではなく、原資が十億のところへ五十億の借り入れ申し込みがあると、やはり確実な者から順繰りになってきて、そしてもうこれは全然あぶないという者に対しては、必要以上というか、法律で求める以上に、金融機関の配慮として担保を要求し、人的保証要求するということを聞いてみますと、これは国民の金なんだから、それもしょうがないな、ということにならざるを得ないわけでございまして、そこをあまり言うと、では、それは予算で交付金としていただきたい、こういうことにもなるのであって、やはり金融ベースにはおのずから限界があるということ、あなたが納得するようなお答えでありませんが、これは、とにかくそれ以外には制度上ないわけでございます。
  187. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうするとね、この省令自体に偽りがあるということになりますよ。そこには、これだけのワクしかありません、このワク内ならばこういうことをやりますとか、そんなことは何も書いてないのです。それから、借りに行く人が、あなたのおっしゃったように何回も借りに行く人とも限らぬわけです。あなたの言うことを聞いていると、何でもっと金融ワクを広げぬか、政府の責任じゃないか、こういうことになるわけですよ。そのワクがあっても、こういう法律があれば、国民はこの法律のたてまえ上、事業税の受け取りあるいは住民税の受け取りを持っていけば貸してもらえるものとしていくわけです。ところが、それでいかぬとなれば、これはあなた、政府のほうがうそ言っていることになるじゃありませんか。そうじゃないですか。
  188. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これはですね、申し込む権利を有する、また、借りることの権利を有するということであって、それは住民であることを証明する証明書をよこせと。これは所定の用紙で申し込めば、それから手数料を払えば、印紙を貼付すれば必ず交付しますというものではないのです。これは、これだけの法律に基づいて資金を用意してございます、それでこの条件に当てはまる者はお申し込みください、申し込んだなら、国損を来たさないように選別をいたしますというので、これは無制限ではないのであって、やはり予算でもってきめられた範囲内しか、中小企業金融公庫でも、三機関でも何でも、貸せられないのですから、それは選別して、やっぱり順位があるので、これは百人あって百一人目は来年度のワクにしてくださいということは、これはやっぱり起こるのであって、政府にもっとワクをふやせということは、これは当然の御発言だと思いますが。
  189. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それは、実力者田中さんの言うことじゃないですよ。だって、選別するという、それを法律に書いてありますか。どこに書いてあるのです、法律のどこに、選別すると。
  190. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) その点あなたもちょっと……。これは須藤さんね、学校のあれで、高等学校の卒業生は大学に入学する資格があるというだけであって、大学は入学の定員外は採るわけはいかないのであって、これは精神はわかりますけれどもね、無制限に、申し込み者は全部貸せろということを言っても、それはちょっと無理だと思う。
  191. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 大臣ね、せっぱ詰まって、倒産するぎりぎりで何とかこの金で生き延びたいという、そのような切実な気持ちを持って金を借りに行くのと、大学の入学試験と同じように考えるなんておかしい。あなたの頭のほうがよっぽどおかしい。そんなことは実力者の言うことじゃないですよ。それでは、このようなことの起きないように、政府は一体、どういうふうな対策を講ずるおつもりですか。どのような実効ある措置を考えておるか。制度をつくる以上、それが実際の運用面でよく生かされるように、中小企業者が十分活用できるように、政府はそこまで見届ける責任があると思うんです。いまのあなたの話を聞いていると、ものにはワクというものがあってだめだと、実に簡単に片づけられている。それじゃぐあい悪い。いまの、答えてくださいよ。
  192. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 精神はあなたとごく似たりでございますが、しかし無制限に、来る人は全部意思どおりにいたしますというようには、制度がなっておらないんです。ですから、これは国民に対して政府がなさなければならない問題として、国会の議決を経て、それでこういう公庫をつくります、これで零細企業者が金を借りられるようにいたします、それは民間よりも手続は簡単にいたします、簡単だけではだめだから、 コマーシャルベースではだめなもの、この中の一定のワクは無担保、無保証という恩典を与えます、こういうことをちゃんと国会の議決によってきめておるわけですから、これからやはり要請がたくさんあれば、原資をふやすのに全力をあげて努力をいたしますと、こう言う以外にないですね。
  193. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 最後にもう一問ありますが、これは大いに田中さん、ワクを広げて、できるだけ困難な人に私は要望にこたえてもらいたいと思うんですよ。  これはちょっと別の話になりますけれども、この間、東京の品川にあるクリスマス用の豆電球の方が、ドル・ショックで非常に困っているという訴えを持ってきたんですよ。そこで通産省のある人に来てもらって話をして、ドル・ショックのためにこの人たちが非常に困っておる、何とか融資をしたらどうだという話をしました。そうしたら、その通産省の役人のいわく、本人の前でですよ、通産省が融資をすることはしますが、その融資によって起き上がれる人、将来望みのある人には融資をしますが、そうでない人には融資はいたしません、だから、そういう人たちはもうこの際、門戸を張ったそういうところをやめてしまって、店をしめてしまって、転業するなり、また一労働者になってよその店に行って働いてもらいたい、こういう答えをしましたよ、本人のいるところで。それで私は言ったんです、それは通産省の、ほんとうに役人の回答だと。そういうことをわれわれは官僚の答弁だと言っておるんだ、そうではないんだ、ほんとうに困っておる人たちを、それを立ち上がれるようにしていくのが政治というものじゃないのか、君たちの答弁を聞いていると、全く政治じゃないぞ、ほんとうに事務的な答弁しかしてないじゃないか、それではこの人たちはがまんがならぬぞ、と私言ったんです。おこって帰りましたよ。通産省はおれたちを労働者になってしまえ、おれたちの店をつぶしてしまえという回答にしかならぬじゃないか、起き上がれる余力を持っている人は、そういう通産省の世話にならなくても自分でも自立できる、われわれ、せっぱ詰まって困っておるから、政府に対して、立ち上がれるように、生き残れるようにしてくださいということを言っているんじゃないか、それに対してああいう回答じゃ、がまんがならないと言って、おこって帰りましたよ。私もそのとおりだと思うんです。  そこで、輸出関連中小企業は、中小企業全体の中で二割程度を占めております。現在の不況は戦後最大の不況になるということが言われております。不況の波は輸出関連中小企業にとどまらず、すべての中小企業に私はかぶさってきておると思うんです。けさの朝日新聞の報道を見ましても、十一月の倒産はやや小康を示しておるということが書いてありますが、しかしドル・ショック倒産は増加しておる、年末から来年三月ごろにかけてかなりの倒産が出る、こういうふうに予想されておると、こういうふうに朝日新聞も書いております。で、政府中小企業対策は、輸出関連中小企業はもとより、不況の中で苦境にあるすべての中小企業を救済するよう具体策を打ち出すべきであると私は思いますが、通産大臣のお考えを伺っておきたいと思います。
  194. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ドル・ショックやその後起こった状態、また、これから起こり得る問題に対して特別な施策をとらなければならないことは言うをまちません。しかし、そうかといって、そういうものだけをやっておって、一般の中小企業対策、零細企業対策というものは積極的にやらないでいいわけではないのであります。これは先ほども私がその例を申し上げておりますのは、今度はニクソン・ショックだけではなく、また変動為替相場制だけではなく、日米繊維政府間交渉だけではなく、必然的に、戦後四分の一世紀をここらで洗い直さなければならないようなときを迎えておる。ですから同時に、鉄鋼でも、それから肥料でもパルプでも、繊維でも石油化学でも、すべてが半分設備が休まなければならないようになっておる。特に、繊維などは半減しなければならないようになっておる。残る機械でさえも、西欧に比べると全部スクラップ化されなければならないような状態である。現にそうだ、ということを述べておるような状態でございまして、そういう意味では近視眼的ではなく、非常に広範な立場で中小企業というもの、日本の産業の実態というものを把握をして、中小零細企業対策には適切なる施策を必要とする、こういうことでございます。
  195. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 最後に。あのね、田中さん、私は先ほど日本の外貨獲得の比率ですね、中小企業の占める比率をお尋ねしたのはそこにあると思うんですよ。日本の外貨の半分は中小企業がかせいだものですよ。営々とかせいで、そうしてためたのが日本の外貨の半分ですよ。それが今度のドル・ショックで、大企業はそれを円にかえるとかなんとかすることで難をのがれることができたが、中小企業はそれができなかったんです。まるまる、まる裸にされたと言って私はいいと思うんです。ドル・ショックをまともに受けたのは中小企業なんです。その中小企業のことを、大企業のことばかり考えないで、もっと考えなさいというのが、私の言うことなんです。大企業はほっといてもちゃんとやっていきますよ。中小企業こそ、私は政府が手厚い手当てをしなければならないものと思うんです。しかも、日本の企業の大半は中小企業が占めているんですから、だから、そこを通産大臣として特に考えていくべきじゃないかというのが私の意見です。おそらく、あなたも賛成だろうと思うんです。賛成なら賛成と言ってください、それで終わりますから。
  196. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 賛成であります。賛成でありますから、このような中小企業法律をつくって、第一に御審議を願っておるわけであります。
  197. 大森久司

    委員長大森久司君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  198. 大森久司

    委員長大森久司君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  199. 大森久司

    委員長大森久司君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  国際経済上の調整措置実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律案を問題に供します。本案に賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  200. 大森久司

    委員長大森久司君) 全会一致と認めます。よって、本案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  竹田君から発言を求められておりますので、これを許します。
  201. 竹田現照

    ○竹田現照君 私は、ただいま可決されました国際経済上の調整措置実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党、四党共同の附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。  以上でございます。
  202. 大森久司

    委員長大森久司君) ただいま竹田君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行ないます。本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  203. 大森久司

    委員長大森久司君) 全員一致と認めます。よって、竹田君提出の附帯決議案は、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、田中通商産業大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。田中通産大臣
  204. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 政府は、決議の趣旨の実現に対して最善の努力をいたしたいと存じます。
  205. 大森久司

    委員長大森久司君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  206. 大森久司

    委員長大森久司君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午時五時三十分散会      —————・—————