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1971-12-07 第67回国会 参議院 社会労働委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十二月七日(火曜日)    午前十時十一分開会     —————————————    委員異動  十二月三日     辞任         補欠選任      戸田 菊雄君     杉山善太郎君  十二月六日     辞任         補欠選任      和田 静夫君     藤原 道子君      高山 恒雄君     藤井 恒男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         中村 英男君     理 事                 鹿島 俊雄君                 高田 浩運君                 大橋 和孝君                 小平 芳平君     委 員                 石本  茂君                 上田  稔君                 上原 正吉君                 川野辺 静君                 徳永 正利君                 橋本 繁蔵君                 山下 春江君                 杉山善太郎君                 田中寿美子君                 藤原 道子君                 小笠原貞子君    国務大臣        厚 生 大 臣  斎藤  昇君    政府委員        厚生政務次官   登坂重次郎君        厚生大臣官房審        議官       江間 時彦君        厚生省公衆衛生        局長       滝沢  正君        厚生省環境衛生        局長       浦田 純一君        厚生省医務局長  松尾 正雄君        厚生省薬務局長  武藤一郎君        厚生省社会局長  加藤 威二君        厚生省児童家庭        局長       松下 廉蔵君        厚生省保険局長  戸澤 政方君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○社会保障制度等に関する調査  (サリドマイド児対策に関する件)  (筋無力症対策に関する件)  (水道の維持管理等に関する件)  (保育所に関する件)  (看護婦不足問題等に関する件)  (低肺機能者対策に関する件)     —————————————
  2. 中村英男

    委員長中村英男君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  戸田菊雄君、和田静夫君、高山恒雄君が委員辞任され、その補欠として杉山善太郎君、藤原道子君及び藤井恒男君が選任されました。     —————————————
  3. 中村英男

    委員長中村英男君) 社会保障制度等に関する調査を議題といたします。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 藤原道子

    藤原道子君 まず、質問に先立ちまして、厚生省に申し上げておきます。質問時間の制限がございますので、答弁は誠実に、しかも簡潔にお願いしたい。ごまかさないようにお願いいたします。  私は、きょうはサリドマイドの問題についてお伺いするのでございますが、それに先立ちましてお伺いしておきたいことは、最近薬害がやかましく論議されております。これらについて厚生省はどのような対策を持っておいでになるのか。実はサリドマイドのときからはじめあらゆる機会に薬問題について私は質問いたしております。そのつど、今後は方針を改めましてこのようにいたしますというような答弁幾たびかいただいておりますが、一向に改められていないように私は思いますが、このやかましい薬害に対して当局はどのような対策をもってお臨みになるのか、これをまずお伺いしておきたいと思います。
  5. 登坂重次郎

    政府委員登坂重次郎君) 先生御心配のとおり、たいへん薬害の問題については国民保健上重大な問題でありますので、厚生省におきましては、薬価基準設定認可にあたりましては特に慎重を期すように、また薬効の総点検というものをただいま実施いたしておるわけでございます。事務的なこまかい問題は政府委員から説明させます。
  6. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) 医薬品安全性有効性、品質の問題について、どういうふうな厳格な態度で臨んでいくのかということでございますが、昭和四十二年サリドマイド事件が勃発しましたあと、昭和四十二年からは非常に厳重な基礎的な条件を付しまして、現在まで安全性につきましては審査を行なっております。そのほか、副作用モニター制度を発足さしておりまして、それは全国の国立病院大学病院等二百カ所選びまして、そこから副作用情報を集収するようにしております。そのほか、外国からの情報に基づきまして副作用の問題を処理しておりますが、最近本年度に入りましてからは、ことしの正月から試験方法による実測値をつけさせますとか、それから七月からは、従来新薬につきましては副作用報告期間を二年間にしておりましたが、これを三年に引き延ばしたほか、吸収、排せつ、それから経時変化等資料をさらにきびしくとるようにいたしております。それから、この秋十一月でございますが、現在の医療機関からとっております副作用モニター報告機関の拡大を将来は検討いたしますけれども、それまでに全メーカーに副作用報告義務を指導いたしました。  以上のような安全対策につきましては、今後きびしくする予定でございますが、できますれば、WHOにも副作用モニター制度というのがございます、こういうものにも条件が整いますれば私どもとしては入りたいと、かように考えております。  それから、有効性の問題につきましては、今年の七月に懇談会答申が出まして、直ちに中央薬事審議会特別部会を設けまして、この十月から再評価の検討を開始しております。部内的には、副作用安全性を主管いたします製薬第二課というのをこの八月から発足せしめております。  薬務行政の中ではこの安全性有効性の問題が一番大切な問題でございますので、今後とも厳重な方向に私ども行政の改善をいたしたいと、かように考えております。
  7. 藤原道子

    藤原道子君 わが国では、主として急性毒性を有するものを毒物、劇物としてその安全使用を確保しているが、慢性あるいは蓄積性毒性を有するものについては放置されている。最近、チクロ等添加物の問題とか、さらに薬品のもたらすさまざまの公害問題について国民の関心は非常に高まっておりますが、わが国ほど薬品取り扱いのルーズな国は他の文明国には見当たらないのではないかという意見が非常に強いようでございます。薬品公害は、薬そのものに対する不信であると同時に、それをつくっておる企業薬事行政に対する国民不信でもあり、それは、一般公害問題について企業や政治に国民不信感を持っているということは全く残念な問題でございます。  高度成長の波に乗ってばく大な設備投資をした医薬品産業は、その生産額が約一兆円、世界第二位といわれておりますが、輸出はわずかに三%足らず、国民一人当たり八千円ないし九千円の薬を飲まされていることになっております。ために、ペニシリンショックであるとか、サリドマイド抗生物質による耐菌性、最近国民の体質も変わりつつあるとさえいわれておりますので、この薬に対しましてはよほど重大な決意を持って臨んでほしいということを強く要望いたしておきます。  と同時に、わが国サリドマイド発売されたのは昭和三十三年の一月から発売されておりますが、それから四年後の三十六年十一月には、西ドイツで注目すべきレンツ博士報告が起こりました。そのような情勢にあって、わが国ではサリドマイドがそのまま発売されていたのです。このレンツ博士発言により、ドイツは一週間以内で回収された。そのほかの国々も回収しております。そこで私は、このときに、わが国でもサリドマイド発売を禁止し、回収すべきではないかということを主張いたしましたが、政府は、わが国にはあまり奇形児は生まれていない、はたしてサリドマイド関係しておるかどうかを今後至急に実験をさせて、その結論を待って態度をきめたい、一度発売したものを禁止するということはなかなか容易ではない、というようなことを言われて、放置をしておった。したがいまして、外国では三十七年度にはぐうっと減っている。ところがわが国では九カ月も十カ月も放置してたために三十七年度はピークなんです、サリドマイド被害児がですね。三十七年度にたしか三百何十人も、三十八年度にさらに二百四十名ぐらいだと思うんです、そのぐらい発生しておる。私はこのときに、試験をしておるということはけっこうなことだが、このまま続けておると奇形児が生まれる可能性があるんだから、実験が終わるまで一時中止して、白という結果が出たら再び発売したらいいじゃないか、とにかく重大な問題だから一時結論が出るまでストップしなさいということを主張いたしましたが、取り上げてはいただけませんでした。その結果、諸外国でも非常にこれが批判されておるということは、残念なことだと思いますが、こういうふうなことになってる。しかも、このサリドマイド申請を出したときに、新薬調査会審議はわずかに一時間半くらいで終了してる。しかもこれを薬事審議会にもかけないで許可している。これ一体どういうことなんですか、何としても納得がいきませんので、この点について明らかにしてほしい。
  8. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) サリドマイドの問題が起きたときの状況でございますが、三十六年の十二月にドイツではレンツ博士の警告によりまして回収等が行なわれたわけでございますが、その当時ドイツでは非常に奇形発生が多く、因果関係は必ずしも明確に証明されてはいないけれども、社会的な問題となったというようなことで回収が行なわれております。で、その当時の状況につきましてはただいま先生からお話があったとおりでございまして、わが国では因果関係についても資料はございませんし、奇形発生についてもその当時はわかっていなかったわけでございます。それで、専門家意見を聞きまして動物実験に着手したわけでございまして、その後の状況措置をとったわけでございます。  審議会にかけないで一時間半で処理したじゃないかと、こういうお話でございますが、この問題は、審議会の中にあります新医薬品調査会におきまして審議時間は先生指摘のように一時間半でございましたけれども、これには前もって資料を提出して各委員には検討の上調査会審議をいたしたわけでございまして、単に一時間半で処理をしたということではございません。それから、この新薬調査会と申しますのは、薬事審議会の中の新薬許可する一つの専門部会でございまして、従来から専門部会新薬調査をするようになっておるわけでございます。
  9. 藤原道子

    藤原道子君 いろいろ言いわけはやられるようですけれども、とにかくこれはあまりにもルーズであったということは認めなさい。なぜかなれば、アメリカではこの申請があって、業者からの抗議や上からの圧力があったにもかかわらず、これに対しましてはあくまでも担当者であるケルシー女史がその見識をもってサリドマイド発売許可しなかった。そのために——あなた方は何かと言えばサリドマイド関連性があるということはまだ明らかでないとかなんとか言って逃げておりますけれどもアメリカでは奇形児発生してないのですよね。わずか、たしか四人くらいかと記憶いたしますが。売った国では相次いで発生したために、イギリスやオーストラリアなども、このレンツ発表と同時に、それとは別にその奇形との関係を発見して、ドイツにおくれること一週間くらいで販売を停止したにもかかわらず、日本は長きにわたってこれを放置しておった。いまあなたは当時はあれがなかったようなことを言われましたけれども、すでに日本では六百名近い奇形児が生まれていたやに私は聞いておる。だから、諸外国では三十七年度にはぐっと減って、三十七年暮れにはほとんど出生皆無という状態になった。ところが、日本は三十七年度はピークじゃありませんか。こういうことに対して国は責任がないとあなた方はあくまで主張されるのですか。真剣に検討していけば、アメリカケルシー女史のようにあくまでもこれを拒否して、不幸な子供発生を防ぐことができたじゃございませんか。その点について私は国に責任ありと考えておる。こういう点からして私は幾たび答弁を聞いたけれども、きょうまでほとんど放置されているということが残念でならないのでございます。きょうはその点も詳しく質問する予定でございましたが、二時間の質問時間を要求したのにたった一時間しかくれない。だからこの点をはしょらなければなりませんけれども、とにかく私は国に責任ありということを強く主張していきたいと思うのです。  そこでお伺いしたいのでございますが、私が園田大臣の当時、国には責任がない、あるいは製薬会社にも云々と逃げていたけれども、これに対して責任追及をいたしました。ところが、園田大臣は、国にも製薬会社にも責任があるということをはっきりここで言われたのです。いまあなた方はどういうふうに考えているか。
  10. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) 当時におきます製薬許可その他の措置については、私どもとしては法律的には問題はなかったというふうに考えております。しかしながら、現実に外国ではすべてこの問題につきましては、ドイツ初めイギリス、スウェーデン、オランダ、その他では全部和解によって問題が解決もしくは解決方向に向かっております。したがいまして、私どもとしては関係者に対しまして、やはりいつまでも法律上の問題として処理しないで、早く福祉措置を講ずる必要があるということで、今年の初めでございましたけれども関係者裁判所を通じまして和解の呼びかけを行なったわけでございまして、現在もその気持ちには変わりありません。
  11. 藤原道子

    藤原道子君 すみませんがもっと大きい声で確信を持った答弁をしてほしい。  私は、わが国では製薬——製造発売許可された医薬品は約十万。保険診療薬価基準に取り入れられているものが約八千と聞いておりますが、この洗い直しは必要だと思うけれども、一体どうなのか。と同時に、わが国ではとかく製薬企業とのくされ縁が非常に強いという批判がありますが、このくされ縁をどのように断ち切るつもりか、政府の所見を聞きたいのです。とにかく在庫品といいますか、そのようなものが隠されていて、それが随時使われているというようなこともあり得る、こういうことも聞いておりますが、これは一体どうなんですか。一度許可したものは取り消すことが困難だというような答弁も私聞いておる。だから、一部ではサリドマイドでも十カ月ですか、あれおくらせたために六億くらいもうかったというのですよ、製薬会社は、そういう批判も出ています。それと人間の命とどっちが大事かという立場に立って、しっかりした御答弁を伺いたい。
  12. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) 薬事法上今日まで承認をいたしました薬の数は約手万でございます。しかしながら、現在出回っております医薬品は約四万でございます。この四万につきまして、先ほど申しました薬効問題懇談会結論に従いまして現在洗い直しの作業をやっております。  それから医薬品許可あるいは承認等の取り消しは絶対できないのか、こういうお話でございますが、これは明らかに有害と断定できるものにつきまして、これは条理上取り消し得ると私は考えております。そのほか、現在出回ってなくて製造しないというものにつきましては、現在廃止届け申請が出ておりまして、まだ集計に至っておりませんが、おそらく一万をこすものと、かように考えております。  それから、何か厚生省企業との間に癒着があるようなお話でございましたけれども、最近のみならず、いろいろ厳重に行政措置あるいはその他の措置をとっておりますので、そういうことは全くございません。
  13. 藤原道子

    藤原道子君 どうも私は、あまりはっきりしないな。  最近いわゆる大衆保健薬生産が非常にものすごい勢いで伸びているのですね。それで、市場にははんらんしている、行政的には野放しの状態と思われます。はたしてきくのかきかないのか、一体どのような基準に基づいて製造販売許可されているのか、全く私どもにはわかりません。食品だか飲料水なのか一向わからないようなものが販売されている。都道府県知事に委任したかぜ薬基準だけについても、半年にもわたってすったもんだの騒ぎ、ようやく妥結したようなものができ上がったというような次第。ところが政府先国会において追及をかわすために薬効問題懇談会なるものを設置したといわれますが、この会がきょうまでやったことを知りたいと思う。その委員の中に薬の審議会関係の人が何人いるのか、厚生省はこの会に何を期待し、何をしようとしているのか、その点をお聞かせ願いたい。
  14. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) 薬効問題懇談会答申はもうすでに出まして、その答申の趣旨に沿いまして、この十月から抗生物質、ビタミン、それから精神関係調査会を発足させまして、この三つのグループの再検討に着手したばかりでございます。  それから先ほど医薬品食品との境界線で非常にあいまいなものが多い、こうおっしゃいましたけれども、この問題につきましては、ことしの六月に、この医薬品にまぎらわしい食品につきましての取り締まり基準は、先生の御指摘のように各方面から要望がございまして、はっきりとした基準通知も流しまして、この十二月から実施に移しております。
  15. 藤原道子

    藤原道子君 その委員の中にどのくらいおるか、薬の審議会
  16. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) 薬事審議会の、再調査を行なう委員は、大体ほとんど全部大学先生でございます。大学の教授が中心でございます。
  17. 藤原道子

    藤原道子君 薬事審議会関係の人はどのくらい入っているのですか。
  18. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) 薬事審議会で現在検討を行なっておりまして、懇談会答申を出して一応解散になっております。
  19. 藤原道子

    藤原道子君 私は、時間がだいぶ切迫してきたのでいらいらしますがね。とにかく疑わしいものについては迅速に、かつ強力に措置をしてほしい。結果が出るまで、出るまでと言っているうちにいろんな問題が起こるのですから、そういう点を明らかにして、強力な態勢を進めるということは、サリドマイド事件においても大きな教訓を残しているはずでありますから、せめてサリドマイド事件子供たちに対する供養にもなると思いますから、この点は明らかにして薬の対策を急いで強力にやっていただきたいと思います。  さて、私はサリドマイドのことについてお伺いをしたいと思いますが、その前に、それなら、コラルジルとか、心臓病ですね、いま問題になっている。あるいはキノホルムとか、これは胃腸病とか、スモン疑いがある。それからストレプトマイシン、結核の薬ですが、難聴になるというようなことが言われておりますが、これに対しての見解と対策はどのように進められておるか。
  20. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) スモンの問題は現在調査会のほうで検討をされております。その中でキノホルムが原因ではないかというような疑いが持たれまして、昨年の九月にキノホルムは全部製造禁止販売禁止措置をとっております。  それからコラルジルの問題でございますが、これも阪大の、先ほど申しました副作用モニター先生から肝臓に問題があるという御指摘がきました。昨年の十一月に製薬会社のほうで自主的に販売をとめまして、現在は出回っておりません。  それからストレプトマイシン、この問題は、もう当初から、いわゆる使用した場合に耳に異常がくるということはわかっておりまして、そういう点は使用上の注意というものをはっきり指摘してありますので、担当の医者がその点は十分注意をしておられると思いますけれども、異常が起きた方がある程度あるようでございます。これらスモンコラルジル、ストマイにつきましても一部の方は現在訴訟に訴えられております。
  21. 藤原道子

    藤原道子君 これらを合わせまして早急に結論を出してもらいたい。  そこで、サリドマイドの問題でございますが、この前私は当委員会で、サリドマイド裁判レンツ博士その他原告側、また被告側も学者を招聘して裁判をやるというようなことが新聞記事に出ておるが、いままで外国からこういうことで証言を呼んだということもあまりないし、ばく大な費用もかかるじゃないか、あるいは裁判が続けられておりながら、諸外国においてはすでにその和解が成立しておる。これらについて、政府はなぜいまさら外国からこれらの人をお招きするのか、あくまでサリドマイド関係がないという立場からこの裁判を続行するのかどうだという質問をいたしました。そのときに、諸外国では長く裁判をやっておりますが、わが国ではまだ正式に裁判が始まって審理がおくれておりますのでこういう態度をとりましたというような答弁があった。そこで、この裁判に最近梶井さんあるいはレンツ博士等証言裁判が続けられておるのですね。この裁判に対して、裁判所の問題だからこれに関連したことはなるべく遠慮いたしますけれども、私どもが見ておると、厚生省被告側立場に立ってのみ動いておって、厚生省そのもの被害児、これらの対策福祉、リハビリテーション、これらに対してはほとんど何もやっていない。これ納得いかない。厚生省はこの問題の原告としてのみ存在する。厚生省はそうじゃない。起こった不幸な事態に対しての対策、これらに対して放置されたままになっておりますが、一体これはどうなのか、どういうふうな被害児に対しての対策が行なわれておるか、この点をお伺いしたい。
  22. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) ただいま御質問のございましたサリドマイド児——いまサリドマイド影響によるといわれております障害児は、先天性四肢欠損あるいは耳介欠損を来たしておる。通常フォコメリーというような名前で呼ばれておりますが、これはサリドマイド影響であるといなとを問わず、そういった先天性四肢欠損、ことに上肢欠損あるいは萎縮が多いわけでございますが、そういったフォコメリーに対しましては児童福祉法の規定によりまして生活能力の向上とか社会自立の促進をはかるという意味で、まず医療の可能な人に対しては育成医療の給付をいたしております。それから、補装具交付、特にこれは先生すでに御案内のとおり電動義手の開発を進めておりまして、すでに過去におきまして電動義手を給付した人もございます。そういった電動義手とか、あるいはその障害の程度に応じまして各種の補装具交付、あるいはそういったものの修理を行なっております。それから施設といたしましては、肢体不自由児施設あるいは症状の重い人につきましては、一部、重症心身障害児施設に入っておられる方もございますけれども、そういった施設におきまして治療、訓練等を行なっておる。そういうような状況でございます。それから経済面の問題につきましては、これは障害の重い、特に上肢欠損のある方は当然身体障害者福祉法の等級でも一級に該当いたしまして、したがってそういった家庭に対しましては特別児童扶養手当が支給されるというような経済面措置も行なわれておるわけでございます。特にいま申し上げました電動義手等につきまして、特殊な障害でございますので、昭和四十三年度からこういった子供のための障害状況とか身体発育状況等に応じまして適当な補装具を開発するということで特別研究をいたしております。昭和四十四年度以来引き続きこの研究を進めております。特に電動義手につきましてその性能をあげるというような問題、それから、並行いたしまして一定の施設におきましてその装着訓練をする、あるいはそれを装着しての全体的な機能訓練をする、そういった施策を進めております。それから、さらに将来の職業的自立、これはそういう障害でございますので、特殊な技能を持ちませんとなかなか自立がむずかしいという事情もございます。そういった人たちのために、これはまだフォコメリーでは年齢が比較的小さい子供が多いのでございます。  今後の問題といたしまして、身体障害者更生援護施設、これは社会局所管の施設でございますが、あるいは労働省で所管しております身体障害者の職業訓練所、そういったところとも連絡いたしまして、そういった子供たちに適した職業の開発、訓練というようなことも進めてまいりたい、あるいは、日常の生活が不便でございますので、来年度は一部予算要求もいたしてございますが、特殊な便器の給付、そういったことも今後考えてまいりたい。そういうふうに考えております。
  23. 藤原道子

    藤原道子君 ちょっと待ってくださいよ。サリドマイド事件が起きてから何年たつんです。私は当委員会で再々質問をしている。サリドマイド事件が起こってから十年たつ。それから、裁判が提訴されてからは六年たつ。そうして、口頭弁論が始まってから約十カ月ですか。で、現在に至っておる。その間に補装具等の問題でもたびたび質問している。いまあなたは電動義手を支給していると言う。何台ぐらい与えておりますか。私が見たところによりますとごく一部でございます。私が園田大臣質問したときに、日本の義手は非常に重い、だから、ドイツでガスですか何かによる発明をしたそうだからこれを輸入して、そうして子供たちに使わしたらどうだ、一体これは幾らするんだと言ったら、四百六十万円すると答弁なさっている。いや、実はこれだけすると思いますが、日本では徳島大学で目下電動義手を開発しております。これが近く成功するはずでございますから、これをすべての子供に使わせよう、こういう考えで開発を急いでおりますという答弁があった。それから何年たちますか。電動義手の現状はどうなっておるか、どれくらいのものを子供に与えておるか、これを明らかにしてほしい。
  24. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) 先生指摘のように、現在だいぶよくはなってきておるのでございますが、残念ながら電動義手はなお重いのであります。両方合わせまして大体電池等を含めて三キロぐらいの重さがございます。それともう一つは、非常に困りますのは、子供のことでございますのでどんどんからだが大きくなる、それに合わせて義手を交換していかなければならぬというような事情も出てまいりまして、なおいまのところ症状によりまして全部の子供に対して実用化し得るような義手というところまでまいっておりませんが、いま御指摘の徳島大学を含めまして義手の研究を進めてきております。現在交付しております電動義手は二十五人でございます。
  25. 藤原道子

    藤原道子君 むろんこれは支給しているんでしょうね。
  26. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) 支給済みでございます。
  27. 藤原道子

    藤原道子君 それから伺いますが、難聴児がいますね、これらに対して補聴器を与える。ところが国が出しているのは非常に古いんですね。年寄りが聞くのと同じようなもので子供は非常に不便だ。子供に即した補聴器、こういうものをお考えになったことがございますか。あるものを与えればいいんだ、こういう考えで放置されているんじゃないか。私はこの間その補聴器を使っている子供の親たちとも会ってお話ししたんですが、一体どういう考えでやっているんですか。
  28. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) 補聴器の問題につきましては、これは、老人であるから子供であるからというよりも、同じ難聴の中でも障害状況がいろいろでございます。高音が聞こえないとか低音が聞こえないとか、そういった問題は、オーディオ・メーター等を使いまして、児童相談所あるいは身体障害者更生相談所等におきましてその障害の判定をいたしました上で、それに適する補聴器をできるだけ支給するというふうに指導しておりますが、もし御指摘のような不十分な点があるといたしましたならば、今後さらにそういうことのないように指導してまいりたいと思います。
  29. 藤原道子

    藤原道子君 それでは、そうした与えられたものが不備である場合、使用がうまくいかないために、みずからそういうものを手に入れているような人たちに対しては、申し出ればそれに合わしたものが与えられますか。
  30. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) 現在の身体障害児、難聴児に対する補聴器の交付児童福祉法の規定によって行なわれておりまして、したがって、現在の補聴器を含めて補装具交付につきましては一定の予算の規格基準が定められております。したがって、その範囲内で可能なものでありましたら、先生の御指摘のようなことは当然できると考えております。
  31. 藤原道子

    藤原道子君 電動義手はいつごろ完備するんですか。大体裁判を起こしておるのは四十五家族ですか、それだけではなく、全国には約二百五十余家族がいると見られておりますが、これらにとっても、そういうものは与えられているんでしょうね。
  32. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) 先ほどお答えいたしましたように、現在、今年度におきましても二千万円程度の研究費の中で、この電動義手研究を進めておりまして、一番大きな問題点は先ほど御指摘の軽量化の問題でございます。だんだんよくなっておるという報告を受けておりますが、こういうものは、いつどうなればそれでいいという性質のものではございませんので、ちょっといつになれば完全なものができるかというお答えはいたしかねるのでございますけれども、今後とも改善の状況ににらみ合わせまして、できるだけいいものが支給できるように並行して進めてまいりたいと考えております。
  33. 藤原道子

    藤原道子君 あなた方はドイツに対してたびたび事務官を実態調査というんですか、そういうことで派遣されたということを聞いておりますが、それらの人が帰っての報告は、どのような報告がなされておりますか。さっきの御答弁の中に、リハビリテーションですか、こういうこと等についても考えているようなことを言われたんですけれども日本ではどういうことがなされておるのか。外国では、特に西ドイツあたりではどういうことが行なわれておるか、その報告をちょっとこの際伺っておきたいと思います。
  34. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) 多少所管外のことになりますけれども、これはことしの春に厚生省から欧州に参っていろいろの社会保障その他のことを勉強してきた事務官が二人ほどおりまして、その二人の事務官がドイツ、これはたしかケルンだったと思いますが、それからハイデルベルグ、これは医科大学だと思いますが、ここで短時間ではございましたけれども、そこでいろいろ、現在またはかつてサリドマイド児に、いまの電動義手の問題とか、その他の生活指導とかの問題で、どういうことが問題であるかということの報告を受けたわけでございます。詳細は、またいずれ調査の上、児童局長からでも御報告さしていただきますけれども、私が記憶しておりますのは、なかなか個人の能力差があって統一的なそういう器具とか、あるいは訓練というのは非常にむずかしいと、したがって個々の子供の能力なり、あるいは手足のぐあいを見て、それに合うような、あるいはその残存機能を活用するような方向でいろいろ努力をしておるということで、先生指摘のように、なかなかドイツでも思うとおりにはいかないという状況を聞いたわけでございます。まあ一口で申しますと、そういうふうな報告を受けております。
  35. 藤原道子

    藤原道子君 向こうへ行ってもろくな調査をしてきてないんじゃないかしら。私が調査したところによれば、ドイツでは各学校でも特別に運動の面において、あるいは何というか、このごろの運動の名前よく知らないのだけれども、うんと飛び上がって下が網になっているものがありますね、ああいう運動もさしたり、あるいはあたたかい指導のもとに自信を持たせるように、卑屈にならないようにというようなことが配慮されてやられている。あるいはまた生活に対しましても、裁判裁判、しかし、福祉福祉だという立場から非常にあたたかい補助がなされている。それによって子供の両親も安心して子供たちに力が注いでいける、こういうふうなこと。子供サリドマイドだからといって差別することはなく、あたたかくこれを見守って指導しておるというふうに私は聞いている。これらについて、日本では何ら補助はしていないでしょう。あるいは最近は四肢何とやら児というようなことにして、サリドマイドと言っていけば、これは健康保険の対象にもならない。それで顔面のここに何かできたりするのありますね。目が悪いとか、耳が悪いというようなことがやられている。あるいは耳の手術をしたいというようなことを申し出ても、サリドマイド児である場合には保険の対象にならないというので、非常に高い金を取られる。こういうことで福祉が欠除しているのみならず、その子にとってはどうしても必要である医療の面においてもあたたかさに欠けておるのです。何というのですか、これは先天性四肢欠損症と呼ぶのですね、あなた方は。サリドマイドと言っちゃいけないんですってね。これはどうしてそういうことになるんですか、そして、なぜそれによる手術が美貌のための整形手術だということで、サリドマイドによる耳の欠損、難聴、これらについて手術しようとすれば、それは美貌のための整形手術だから保険の対象にはならない、ばく大な金を取られる。サリドマイドによって起きた損傷なら、たとえ耳であれ口であれ、当然心のこもった対策をしてやるのがほんとうではないでしょうか。この間、私は泣かれたですよ、親から。対象にならない、耳が欠損して、ないのです、これね。これを何とかしたいと思って医者へ行ったら、これは美貌整形手術だから保険の対象にはならない、ばく大な金額を言われてびっくりしている。これに対してどういうふうにお考えになりますか。
  36. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) ただいまの御質問の、サリドマイド児ということばでなくて、先天性四肢欠損症児ということばを使っておるということでございますが、これはいま行なっております調査のことだろうと思います。これはそういった症状のある子供を全部調査いたします意味で、原因のいかんを問わず、そういった障害があれば当然国としても地方公共団体としても福祉措置をしなければなりませんので、お話のようなサリドマイド児ということばを使いますと、その原因によらないものは調査の対象にならないというような問題が起こってまいります。そういう意味でそういうことばを使っただけでございまして、別に他意はございません。  それから耳介欠損医療でございますが、これは別にサリドマイド児だから保険の適用にならぬということではございませんので、御趣旨のように保険の点数に入っておりません。一般的にまあやけどとか、あるいは外傷による耳介欠損も幾らもあるわけでございます。そういうものが保険の対象になっていないために、点数表がないから保険の対象にならぬというだけで、これも別にサリドマイドであるから、ないからという意味があるわけではございません。ただ、子供の場合は耳介がないと、同時にこれは難聴を伴っておる場合が多うございます。そういうような意味で、難聴一般の医療といたしまして、症状のいかんによりましては耳介の整形も含めまして、児童福祉法によって育成医療の対象に考えることも可能であろうと思うのでございます。いまのようなお話は、私どももケースによりまして、よく都道府県のほうとも相談いたしまして、できるだけ子供福祉がはかれるように進めてまいりたいと考えております。
  37. 藤原道子

    藤原道子君 それでは伺いますが、それは美容整形だからだめだといわれたような場合には、どこに相談に行ったらいいのですか。当然これは国が対策を立ててあるべきはずだと思いますが、そういう場合にはどこに行ったらいいのか。かなりこれは全国的に泣いている親が多いと思うのですよ。
  38. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) いまの問題は児童相談所——各都道府県の設置しております児童相談所に御相談いただけばけっこうでございます。
  39. 藤原道子

    藤原道子君 そこで、あれをやる、これをやると言いながら、たびたび大臣がかわりましたね、サリドマイド事件が起きてから。ところが、それが一向に行なわれてないのです。やってます——一つや二つはやっているかもしれないけれども、全般的な対策というものが非常に欠けておると私は思うのです。もっとその身になって、最初危険だと外国では処置したのに日本は放置した。結論が出てないから、出てからするといって、その間にたくさんの被害児が出ておる。こういうことも厚生省のミスです。そういうことで、外国に比べて死亡の率も日本は非常に高いのですよ、生まれた数からいって。しかし、現在二百五十名内外の子供がいる。その子供をかかえた親の立場に立って、社会の不安に対して厚生省としてはもっと思い切った措置がとられなければいけない。ただ被告で、どう言いのがれるかだけにきゅうきゅうとしないで、どうしたらその子供たちがしあわせになれるか、親の苦労をどうしたら少しでも少なくすることができるかというような立場に立って、厚生省本来の使命に立ち返って、対策を立ててほしい。また同じような質問を何回となくやるのは、私はいやでございますから、まずサリドマイドに対して、大臣としての考え方をお聞かせ願います。
  40. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) サリドマイド児を含め四肢欠損、こういった児童をかかえておられる家庭の気持ちになってみましても、また御本人になっても、いまおっしゃるとおりだと存じます。こういった子供たちに対する福祉、これは十分やってまいらなければならぬ、かように考えております。いま問題はサリドマイドの原因である薬との関係において損害賠償といったようなものをどうするかというのは、これはまた別の問題でありますが、それと離れましても、いわゆるそういったふしあわせな子供、その子供を持つ家庭に対する福祉のあり方というものは、いままでもやっておりますが、まだ十分徹底しないところもあると考ますので、これは一そう進めてまいりたいと存じます。  また損害賠償の問題につきましては、ただいま訴訟中でもございます。本年の初めですか、前大臣のときに和解の申し入れもいたしましたが、訴訟はそのまま進んでおりますので、訴訟の状況を待って、国のこれに対する損害賠償といいますか、和解といいますか、そういった事柄については訴訟の進行を待ってきめてまいりたい、かように考えております。
  41. 藤原道子

    藤原道子君 裁判の結果を待って云々ということは、それは補償であるとかなんとかであるということですね。いまの段階で私が伺っておりますのは、国としてこれらの子供に対する福祉対策をもっと強化すべきではないか。大臣はこれに対してどう考えますか、もう十年たっているんですからね。
  42. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) その点につきまして私は前段でお答えを申し上げました。最善を尽くしてまいらなければならぬと考えます。まだ十分でない点があるようにもただいま伺っております。十分調査をいたしまして、遺憾なきを期してまいりたいと思います。
  43. 藤原道子

    藤原道子君 どうか約束したことは守るというあれを続けてほしいですね。  このうち特にリハビリテーション関係については焦眉の課題であり、国として当然推進すべき義務を負っているといえますが、三十八年六月にした計画はその後どういうふうに具体化されているか、その点を伺いたいと思います。  それから、高校進学児の差別をなくするとか、障害に適応した職業訓練の実施であるとか、電動義手の開発であるとか、ケースワーカーの配置が必要であると思いますね。ホームヘルパーの派遣であるとか、あるいは奨学資金であるとか年金制度の実施であるとか、こういうことを国として当然考えておいでになると思いますが、この構想を伺わせてほしいのです。  第一、私が一番心配しておりますのは、さっきもちょっと便器のことが言われましたけれども、学校へほとんどの子供がいま行っておりますけれども、どういうふうにして用を足しているのかと思うと、ほんとうに胸が一ぱいになります。あるおかあさんは学校の用務員として学校へつとめさせてもらい、そうして子供の世話をしておるという人もありますね。そのため中学へいったら、その中学の用務員にひとつまた転職をしていきたいということを言っておられますが、それぞれの家庭で、全部のおかあさんがそういうことができるとは言えない。それに対する政府の考え方はどのように進められておるか。  職業訓練等についても、特殊な子供でございますから、特殊な訓練が必要だ、あるいは奨学金等に対してもお考えがあると思いますが、こういうことはいまどういう構想を練っておいでになるかをお聞かせ願いたいと思います。
  44. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) ただいまの、今後の具体的な福祉措置、リハビリテーションの進め方という御趣旨であろうと思いますので、いま御質問の項目について申し上げたいと思います。  義手の開発につきましては、先ほど申し上げましたような方向で、極力軽量化ということを主にいたしまして努力いたしておりますが、同時にああいうふうないわゆる手のかわりに何にでも使えるような義手の開発とも並行いたしまして、いろいろな意味で、たとえば、字を書くのが不自由であれば、タイプライターを打つだけの義手を開発するとか、あるいは衣服の着脱等に使えるようないわゆる、補装具的なものを開発する、こういうことも十年もたっているではないかというおしかりを受けまして、たいへん恐縮なんでありますが、技術的に特殊な障害でございますために、研究は進めながらも、むずかしい点がございまして、おくれている点は申しわけないんですけれども、これは早急に進めてまいりたいと思っております。  それから、年金ということでございますが、経済保障につきましては、先ほど申し上げましたように、大部分の子供さんたちが、心障の一級、二級に該当するという重度の障害でございますので、これは特別児童扶養手当の対象になりまして、お聞き及びのように来年度は大幅な増額の要求もいたしております。そういった面におきまして、経済的な負担をできるだけカバーしていくように考えたいと思っております。  それから、ホームヘルパーにつきましては、現在置かれております重度の心身障害児のためのホームヘルパーが非常勤でありますため、なかなか能率も十分でないというような点がございます。こういった点につきましては、来年度は常勤の給与を出して、フルに活動できるような体制をとることによりまして、こういった子供さんたちに対する家庭訪問指導ということももっと力を入れられるようにしてまいりたいと考えております。  それから、高校進学、奨学命等の問題につきましては、これは文部省との関係もございますので、今後文部省とも十分に話し合いたいと思います。これは文部省全体の方針といたしましても、今後こういう心身障害児のためのいわゆる特殊教育について力を入れるという話も聞いておりますし、話し合いもすでに進めております。なお、特殊な障害でございますので、今後配慮してもらうように考えてまいりたいと考えております。  それから、職業訓練の問題。これもこれからいよいよ職業活動に進んでいかなければならない子供さんが多いわけでございまして、この点は文部省と労働省両方に関係があると思います。十分に連絡をいたしまして、私どもとしても実態をできるだけ把握して、こういう配慮が必要であるというようなことを向こうにも申し出まして、そういった線で進めてもらうように努力いたすつもりでございます。
  45. 藤原道子

    藤原道子君 私は、その点は特にお心をあたたかく用いていただきたいということを要望いたします。  まだいろいろこの点についても追及したい点はあるんですけれども、時間がなくなってまいりました。そこで、三キロとおっしゃるけれども、あの小さな子が三キロ、四キロのものをしょっているんですよ。より軽く、より優秀なものを開発するように国はけちらないでがんばってください。これはぜひお願いしたいと思います。  そこで、十年ぶりに突然今度厚生省が全国調査を始めるんですね。どうも私おかしいと思うけれども、やらないよりはいいんですよ。けれども、これによってはたして調査がどういうふうに行なわれるかということには、私としても幾多の疑問があるんですが、先天性四肢欠損症児等実態調査というわけですね。これの実態調査をした結果を研究班が検討するということになっていますね、資料を見ますと。その研究班について、実態調査のやり方についてのあなた方の考え方。それから、学校へ行っている子、あるいは何といいますか、いろんな施設にいる子供、こういう者はわかりますが、しかし、いなかではともかくまだ世間に恥じてあまり公にしないという家庭もあるし、いろいろ事情がある。そういう実態調査はどこまで完全に行なわれるかということについてのお考えとあわせまして、研究班というものは、それぞれ人選を進めているわけでしょうと思いますが、その人選等のあらましもお伺いできればけっこうだと思います。また、それをきめるまでにはどういう方法でおきめになるかということをちょっとお聞かせ願いたい。
  46. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) 今回行ないます先天性四肢欠損症児等実態調査、この名称につきましては、先ほど申し上げましたとおりでございまして、非常に特殊な障害でございますので、これを先ほどから申し上げておりますとおり、いろいろな研究開発、福祉措置を進めてきておるわけでございますが、いま先生からいろいろ御指摘がありましたように、特殊な配慮がいろいろ必要でございます。そのためにはやはり実態をまず把握いたしまして、何がほんとうに必要なのか、医学的な意味でも、社会的な意味でもあるいは教育的な意味でも、そういうことをもっと詳しく知ることが必要であるという考え方で、との調査につきましては、前々からいろいろと、サリドマイドとの関係も一つの契機ではございますが、薬務局と私どものほうとで相談をして計画を進めてきたわけでございます。技術的にもいろいろむずかしい問題もございますし、経費的な面でも手当てがなかなかつかなかったという事情もございます。多少おくれたことは恐縮でございますけれども、やっと今回施行の運びになったというふうにお考えいただきたいと思います。  それからやり方といたしましては、まず対象としていまの学齢——小学校一年から中学校三年までの学齢に該当する児童全部ということを対象にいたしております。この学齢全部をとりましたのは、全数を学籍簿によりまして把握することが一番可能であるということで、その漏れがないということを主にして考えまして、この学齢全部を対象にしたわけでございます。  調査の方法といたしましては、各都道府県におきまして教育委員会と連絡をとりまして、御指摘の学校に行っておる子供につきましては全部学校のほうで調査をいたします。それから、児童福祉施設に入っておる子供は児童福祉施設調査をいたします。これは児童相談所とか保健所等も全部連絡をとって把握するようにいたしております。  それからなお、いまの御指摘の、就学猶予あるいは免除を受けまして、施設にも入っていない、家庭でそのまま療養と申しますか、在宅のままになっておるという子供につきましても、これは戸籍がなければ別でございますけれども、戸籍の届け出がなされております限りは、一応そういうためにも就学猶予や免除の手続をとらなければならないので、そういう意味で教育委員会で必ずわかるわけでございます。それを端緒といたしまして、家庭訪問等の方法によって全部を把握して調査する。そういうような方法をとって、一〇〇%ということはなかなかむずかしいかもしれませんが、とにかく大部分のこういった障害がある子供さんについては調査の対象にいたしたい。そういうふうに考えております。  それから、第二次調査は、御指摘のように、専門家によります調査班をつくりまして、その御意見によって個々の子供たちについていろいろと医学的なあるいは心理学的な調査を行なうわけでございますが、その調査班につきましては、まあ四肢欠損症児というようなことで、医学の分野から申しますと、大体整形外科的な障害というような分野が多いわけでございますので、整形外科の泰斗である慶応大学名誉教授の岩原寅猪先生——現在国立村山療養所の所長でございますが、その岩原先生を中心といたしまして、いま人選を進めておる段階でございます。人選にあたりましては、私どもとしては整形外科、小児科、あるいは耳鼻咽喉科、そういった部面のほかに、遺伝学と申しますか、奇形学と申しますか、そういった方面の専門家も加えまして、各方面から、現在の症状の究明、それから発生原因の究明、今後の福祉対策に対する配慮、そういったことが総合的に調査できるような人選をいたしたいと考えております。
  47. 藤原道子

    藤原道子君 まあ十年経過して初めておやりになることですから、そこは公平におやりにならなければならない。  そこで、現在裁判が進行中であり、しかも、厚生省が被告であるという立場を考えるときに、非常に危険性を帯びるのではないかという心配があるわけなんです、この調査に。したがって、厚生省としてはサリドマイド問題に関しては中立的な第三者ではない。したがって、国の責務として調査を施行するにあたっては、まず何よりも調査の公明正大をはからなければならない。それから、調査の方法、得られた結果の公開はもとより、調査の目的と具体的な政策立案の展望とについてその考えを明らかにしておかなければならないと思うのです。これは私のよけいな心配なようでございますが、森永の問題のときにいろいろ問題があとを引いているのです。したがって、厚生省は、それをまたここで変な疑いを持たれるような行動を排除され、あくまで公明正大に、そうして得た結果は公表するということを私は強く要望するのです。  ところが、厚生省は、この調査をあたかも四肢奇形の一般的な調査でもあるかのように発表して、サリドマイド被害家族及び関係者に何ら相談もせず、秘密裏に進めておいでになるというこの二点から見て和解に向けてデータを集めようとしておられるのじゃないか。紛争の一方の当事者がその権利を利用して意図的な調査を行ない、しかも、その結果を一人占めした場合、和解なるものが、いかにも恣意的、差別的に行なわれる結果を見るのではないかというふうな心配がございます。したがって、調査を行なうに当たっては調査の目的、データの処理方法、製作、その他の関係調査条項の具体的な内容、それから、判定基準調査担当者、いわゆる四肢欠損研究班、第二次調査担当の専門委員、判定委員について明確にしなければならないと思います。特に判定委員については、現在厚生省サリドマイド奇形の特殊性を否定し、従来の四肢奇形と同列祝しようとしているのではないかと、だれが見てもそういう疑問を持つわけでございます。ということについての公平なお考えをこの際明らかにしていただきたいと思います。  それから、薬害厚生省対策の立ちおくれ、スモンに続く問題、その他いろいろあるのですが、とにかく今後の調査についての私のこの懸念に対しての御見解を大臣から伺いたい。
  48. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) ただいまサリドマイド児の裁判進行中でございますから、そういう疑いを持たれることはあるいは必然であろうかと考えます。しかしながら、この調査は、先ほどから局長が説明しておりますように、もちろんそういうことにも、結果としてサリドマイドのための四肢欠損であるかどうかということも、よく把握できるわけでございますが、本来、こういった児童の福祉ということを中心にいたしまして、そうして、実施をすることに相なったわけでございます。この点は私も良心を持ってお答えをいたします。私もそういう方針で、何もサリドマイド児に限って調べるのではないということをはっきり申して、この調査を進めることに私もいろいろと指示をいたしたのでございます。したがいまして、これにつきましては、先ほど説明しておりますように、市町村等の教育委員会の力もかりる、文部省の力もかりるというようなわけで、こっそりとやるというようなことではございませんで、全く公開の調査であり、そうして、そういった児童の福祉のために、またどういう原因がもとでそういう児童ができるかということも究明をいたしたい。ただ、四肢欠損というだけではなしに、あるいは指が先天的に欠損をしているとか、いろいろなそういう児童ができるわけでございます。したがいまして、そういう原因も究明をいたし、今後そういう児童の生まれないための措置も考えたい。かように考えて、幅広く調査をいたすことにいたしておるわけでございます。どうぞその点は誤解のないようにお願いをいたしたいと存じます。調査の結果は、これは天下に公表し、天下一般の方々からもいろいろとお知恵を拝借をするという資料にいたしたいと思っております。
  49. 藤原道子

    藤原道子君 私は、この点は大臣もお約束されたわけでございますから、実行してほしいということ、公明正大にやってほしい。それから、森永のときの、あの後遺症の問題のときのお医者さんのメンバーを選ぶというところがあとまで尾を引いたのですね、その厚生省のやり方について。したがって、研究班というものの人選につきましては、よほど慎重におやりをいただき、きまりましたら、これも公表していただきたいということを強く要望いたします。  もう時間がなくなりました。そこで、諸外国は、ずいぶん裁判に争いました。結局、最後は和解ということになった。ドイツも最近和解。これについて、あなた方はどういうふうな解釈を持っておりますか、この和解裁判について。それをお聞かせ願いたい。
  50. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) 簡単に申しますと、外国で、西ドイツイギリス、スウェーデン、ノルウェー、すべてこれは和解が行なわれております。やはりこの原因、因果関係の問題とか、過失問題とかということをいろいろと議論しておりますと、これは長期の裁判になるという前提で、おそらく外国も、早く児童の福祉をはかるという観点から、この和解原告、被告とも同意したのだろうと、かように考えております。
  51. 藤原道子

    藤原道子君 それでは、サリドマイド因果関係、こういうものについては、あなた方どういうふうにこれを解釈していらっしゃいますか。
  52. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) この点は、現在裁判がまだ継続中でございますので、ここでかりに個人的な意見でありましても、申し上げることは差し控えさしていただきたいと思います。
  53. 藤原道子

    藤原道子君 いや、あなたの個人的な意見——外国の例、外国和解、これの結果を、あなた方は、これは因果関係が立証されないからだとか、あるいはいろいろ解釈のしかたがあると思うんです。それに対して、個人的意見でいいから聞かしてください。
  54. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) 私は、裁判ということになると、その因果関係が非常に厳密になってまいります。ただ、一般的に、いわゆる薬からきたその例が多い、多分にそういう点が多いのじゃないかと——これは通俗的に考えてですよ。しかし、裁判になると、そういう例証が多いからというだけで、その子供がはたしてそうであったかということは、これは非常にむずかしいことになるんじゃないだろうかと私は思います。したがって、まあ通例非常に多いんだから、そこで和解ということになっているのであろうと、かように考えます。もう薬以外にサリドマイドは絶対に出ないかというと、そうでもない。しからば、その子供はどうであったか、こうなりますと、この裁判は非常にむずかしいことになってくるので、そこで和解ということになるのじゃないだろうかと、かように考えます。
  55. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 関連。その因果関係ですがね、具体的な問題として、いまの大臣のお話しでありますが、たとえば卑近な実例といたしまして、大体数年の時間を要したかと思いますけれども、新潟県の阿賀野川における有機水銀の、これはやはり人権擁護委員会であるとか、裁判という過程をしながら、結局また厚生省でも相当な調査班をして、大体、調査の結果はかくかくである……。それを国の段階で判断をする場合に——関連は通産省であるとか科学技術庁にありましたが、最初の、結局厚生省調査団をつくって出た結論が、結局裁判で大体位置づけられたわけです。真犯人は、阿賀野川における上流の昭和電工である。その立証の段階で、昭電側の立場に立った弁護人は、塩水くさび説、具体的には、たとえば新潟の地震の際に、たとえば農薬の倉庫が海に流れて、そうしてそれが阿賀野川に逆流していったのだと。そういう塩水くさび説と、それから調査の結果に基づいて出た結論は、どういう結論が出ましたかというと、とにかく原告が勝ったというのは、その有機性水銀中毒を、たとえば被害を受けた沿線のとにかく被害者が、ずっと探ってみるというと、昭電の工場排水に有機性水銀が流れたんだ、それが魚の中に蓄積されて連鎖反応でそういう結果を起こした。その場合にはそういう科学的な立証がなくても、その毒水というものが昭電の中から流れたのであるから、昭電は流れたけれどもそういうことになったんでないという証拠をその被害者側が出すべきである、それを立証できない限りにおいては、これは現実にそういう有機性水銀によって死んだ人もあるし、不治の病になった人もあるわけだから、これは当然昭電が真犯人だという結論が出て、昭電をあれだけ死の商人といわれるような立場の人が、裁判権を放棄して一つの結論が出るのでありまするから、こういうような問題について裁判はいたずらに時間がかかるとかかからないということは、過去のどこかに一つの欠陥があったのでありまするけれども、近代的な側に立っては裁判官も公正な判断をする場合については、原因があるから結果があるんだ、加害者があるから被害者があるんだという場合について、被害者の側がかくかくの証拠があるなしにかかわらず、むしろ加害者のほうで、私のほうでは有機性水銀を流しておりますけれども、それがメチル水銀化している、そうでないという証拠を被告者側が示せ、こういうことになるのでありまするから、いま藤原先先のサリドマイドについても、やはり製薬会社が厳然としてこれは被告になっておるわけでありまするから、原告側がこれはいたずらに長引くからというので諸外国の前例だとか、新しい、つまり被害者サイドに立って厳密にいくように、やはり行政ルートで十分推していくべきだと、そういうふうに私は関連をして見解を申し上げます。長引くから、めんどくさいからというような、そういう行政のやり方はいかぬと思います。
  56. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) 裁判が長引くから和解を延ばしているというのじゃございません。私のほうはなるべく早く和解にいつでも応じますということを言っておるわけであります。原告側はどこまでも裁判でやるということでいま裁判中である、こういう現状でありますから、行政といたしましては、私はそういうものは早く解決したほうがいいんじゃなかろうか、御承知のように熊本の水俣の問題も私は裁判が長引くから何とか厚生省が中心になってやってくれというので、いろいろあのときに問題がございましたが、それじゃそういった方々のひとつ話し合いの場をつくろうというのでまあ、半分ぐらいの人が——七割の人は一応それで会社と話をつけた。しかし、どこまでも裁判でやるという人は裁判に持っていくということでありまして、行政といたしましては私はなるべく早くそういう苦境から脱しられるようにしていただくほうがよろしい、かように考えております。お説のとおりに思っております。
  57. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 関連の関連ですけれども、その問題の原点は熊本県の水俣でありますけれども、これも新潟ではとにかく民主勢力が結集して、一度あったことが二度ある、二度あったことが三度あってはいかぬのであるから、そこで新潟ではあらゆる被害者サイドに立ってやろうというかっこうで結論が出たでしょう。比べてみると、いま客観的な、また主観的な情勢としては熊本の水俣の被害者やそれから和解を受けた人たちは非常な怒りを持ってもう一度やり直そうというわけで現にチッソの総会においてもああいう暴力団的な、つまり総会屋というようなものが出てその真実を力でゆがめようとしているものでありまして、たとえば水俣で和解が出て、あんな和解というものは、大臣の前で言いますけれども、あれは率直に言うならばナンセンスですよ。これは別な事件の問題でまた一応いたしまするけれども、あんなものをやっていいなんというようなことは、よりましではあるけれども、決して真実を突いた被害者側の立場に立ったものではないということだけは申し上げておきます。もうこれで関連だからやめます。
  58. 藤原道子

    藤原道子君 そこで私は新聞等であなた方の談話等を見て、この和解が成立したのはサリドマイドとの因果関係がはっきりしないから云々というようなことを読んだことがある。で、私もおかしいと思っていた。今度のドイツ和解についてもそういう批判が一部にあったようでございますが、ちょっとお聞きしますが、皆さんは「西ドイツサリドマイド刑事事件裁判打切決定書」というのですか、これですね、これ、ごらんになりましたか。
  59. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) 法律雑誌に現在掲載中でございますが、これを一読いたしました。
  60. 藤原道子

    藤原道子君 これ私もずっと読ましていただいたのですけれども、これは因果関係、明らかになっていますよね。因果関係が明らかになっているのです。時間があれば私ここでずっとしるしをつけてきているのですけれども、これをきょうはもう時間の関係で続けていけないことが非常に残念でございますが、「当裁判所のとる上述の見解は、サリドマイド奇形児発生の原因であるという見解を前提としてはじめて成り立つ」、こういうことを最初のほうに書かれておるのです。で、このサリドマイドが始まってから奇形児がずっと発生した。サリドマイドを禁止してからその後の奇形児は生まれていない、こういうしろうとわかりのすることでも明らかである、こういうことも書かれておるのです。ところがそれに対して最後のほうに「過失の程度、情状」というところに、最後に出ておるのですけれども、「レンツ教授が疑惑を公にしたのち相当な短い期間内にサリドマイドの連邦共和国領域内からの回収が行われている。他方、外国において責を負うべき者は、たとえば日本においては、回収の決定をずっと長期にわたって躊躇したのであった。」、日本のことがここにまで、ドイツ裁判の決定書にまで載せられておる。しかも、その内容をずっと点検してまいりますと、サリドマイドとの因果関係は私どもしろうとが読んでもあきらかにわかるような審理が行なわれ、その結果がこのときにはこうである、このときにはこうであるということがこれだけにまとめられておる。それで、「連邦共和国領域内からの回収が行われている。他方、外国において責を負うべき者は、たとえば日本においては、回収の決定をずっと長期にわたって躊躇したのであった。」、これが記述されているのです。非常に私は残念だと思いましたが、事実だからしかたがない。こういう点に立って、もう明らかにサリドマイドとの関係、これがここに証明されておるのです、裁判書の判定書に。ということを考えて、これによって生じたところの奇形児、その親たち、その人たちの納得のいくような解決が私は望ましいと考えておる。と同時に、解決ができるまではいつも厚生省は放置しておくのですけれども、カネミ油にしてもあるいは水俣病にしても、スモン病にしても、それに病んでいる人はどんなに苦しい思いをしておられるか、これに対する愛情ある手が差しのべられるように強く要望いたしますと同時に、法律雑誌に出ておるのを読んでいらっしゃるというけれども、いま二回出たのです、今度三回目が出るのです、これをお読みいただければ内容は明らかにおわかりいただけるだろうと思うのです。私どもにさえこういうものが手に入るわけでありますから、続いてどうか精読をしていただいて、どういう結果になるか、苦労しておりまする親御さんたちが安心ができるように、不幸な子供、手のない子供が今後どうして生活していくか、親のないあとはどうなるかというようなことを考えますとき、やはり人の子の親として胸の痛むものがございます。で、政治家の怠慢というようなことも社会からは批判されておる、これを考えるときに、この重大な時期に、社会から信頼されるような厚生省であってほしい、社会から信頼されるような政治の確立のためにお互いに努力していかなければならないということをしみじみと私は痛感しながら、きょうは新聞の切り抜きからいろんな本——こういう本も出ておりますが、こういうものも参考にして質問したいと思いましたが、他に御質問なさる方も大ぜいいらっしゃいますので、時間の割り当てを三十分超過いたしました、こういう点で、私はこの程度でおきますけれども、一日も早い円満な解決を大臣の責任においてなされまするように、ひとつ心から要望いたしまして、その御決意のほどを承らしていただきます。
  61. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) 御趣旨の点は藤原委員のおっしゃるとおりに私も思っております。全力を注いで御期待に沿うようにいたしたいと思います。
  62. 藤原道子

    藤原道子君 もう一つ最後に、政府が今度調査を始められたのは和解に持っていく下準備であるというようなうわさも飛んでおりますが、そうですか。
  63. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) 先ほど申し上げましたように、そんな下準備というようなつもりではございません。
  64. 小平芳平

    ○小平芳平君 いまのサリドマイド調査ですが、児童家庭局長からはこれこれしかじかの趣旨ですという御答弁がありましたが、なぜ薬務局がそこへ加わるわけですか。それからもう一つは、先天性四肢欠損ですか、先天性四肢欠損症の原因まで調査をなさっているわけですか。その二点。
  65. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) 私からお答えをいたします。  原因ということになりますると、やはり薬の公害ということを考えなければなりませんので、そういう意味から薬務局も一枚加わったのでございます。さように御承知を願います。
  66. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうしますと、どういう調査をなさったか、それはちょっとわかりませんが、京都ではもう拒否するという新聞報道もありましたが、先天性四肢欠損症の児童の福祉のために政策を立てようという場合、なぜ薬務局が加わったわけですか。それがいかにも、いま藤原委員指摘されているように裁判和解のため、裁判和解の下準備だということならばその調査は拒否すると、そういうようなことはありませんか。新聞報道で私は見ただけですが。
  67. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) 薬務局と共同の調査になりましたのは、先ほど藤原先生にもお答えいたしましたように、原因のいかんを問わず先天性四肢欠損症あるいは耳介欠損、難聴も含めましての障害児調査でございますが、やはり諸先生指摘のようにサリドマイド影響と考えられる児童、いわゆるサリドマイド児がこの中に相当含まれておるということは事実でございます。それで、いま大臣からもお答えいたしましたように、第二次調査といたしましては、専門家の御意見によりまして、何よりも将来こういうような障害児ができるだけ生まれないようにするということが福祉の基本でございますので、その原因究明、これはなかなかむつかしいことであろうと思いますけれども、そういったことも並行して行なわなければならないと考えております。そのためには大臣からのお答えのとおり、薬あるいは風疹のようないろいろとビールスの影響等もございますが、とにかく先天性のものでございますから、そういった原因究明の段階におきましても薬務局系統の協力が必要であるというような問題、それからサリドマイドとの関連が一つの調査の契機になっておることは事実でございまして、そういう点で薬務局系統におきましてもいろいろと資料も持っておられるというような点から、なるべく全部のそういった障害児を把握いたしまして将来の福祉が完全に行なわれるようにしたいということで、関係のところと省内で相談いたしまして知識を持ち寄って調査をする、そういう考え方でございまして、先ほどのお答えのように、訴訟とは直接の関係のあるものではございません。
  68. 小平芳平

    ○小平芳平君 京都の……。
  69. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) 失礼いたしました。  京都におきましては、いままで報告を受けております限りでは、やはり親御さんの一部に釈然としない向きがあるということで、府全体として調査を拒否するというような問題ではございませんが、できるだけ円満に調査が行なわれるように、説得方のいま相談をしておる段階でございます。
  70. 小平芳平

    ○小平芳平君 大臣ですね、製薬会社が薬を製造し、それでこれこれの効能がありますと言って売り出した、それを国が許可をした、ところが製薬会社の言っている効能とは似ても似つかぬ、とんでもないこうした副作用なりあるいは健康に被害が発生したというような場合は、国と製薬会社責任をもって補償すべきだという、基本的にはどうなんですか、そう考えてよろしいですか。
  71. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) 先生御承知のように、薬には当然副作用があるわけでございます。その副作用がどういうものであるかということを審査の段階で、そのときの学問上のいろいろのデータあるいは臨床データ等をとりまして私ども許可をしているわけでございます。その場合に、知られざる副作用によりまして先生がおっしゃったように事件が起きた場合に責任があるかという問題につきましては、現在この事件が裁判にかかっておりますように私は非常にむずかしい問題だと、かように考えております。したがいまして、いま先生のように直ちに——故意、過失がその当時あれば私は責任を負うべきだと思いますけれども、そうでなければ直ちに先生がおっしゃるようには私はならないんじゃないか、かように考えます。しかし現在は裁判等で争われておりますので、その点につきましてはやはり明確にここでお答えすることははばからせていただきます。
  72. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうしますと、いま売られている薬は当然副作用がある、そうしていま売られている薬はそのことによって健康被害が生じても、要するにこの実験も、動物実験その他も一応やることはやったけれども、そこまでの被害は気がつかなかったというようなものが現に製造され、販売されていた場合ですね、そういう場合は、それじゃ泣き寝入りですか。
  73. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) 先生指摘のように、薬には副作用がございまして、つまり副作用と効能とのバランスの問題で薬は私は使われる、その場合に専門家の手によってその副作用が最小限に押えられて、そして薬の効能が的確にその健康なり生命を助けるということでなければならないと、かように考えております。ただ非常に重篤な病気であります場合は、当然わかっておったこの副作用も是認しながら薬の使用をしなければいけないというようなことも私はあり得るというふうに専門家から話を聞いております。したがいまして、先生の御指摘の点は非常にむずかしい問題でございますが、この問題につきましてはたびたび国会でも——そういう場合に知られざる副作用、あるいは知られている副作用でも、これは医療過誤との問題で非常にむずかしい問題がございますけれども、何らかそういうような被害があった場合に何らかの救済的な制度というものは考えられないかというような御指摘がございましたので、現在部内でもいろいろ検討を進めておるところでございます。
  74. 小平芳平

    ○小平芳平君 その救済制度がなければ、とても一々裁判は出し切れないわけですから、そういう点をひとつ進めていただきたいことと、それから、先ほどの藤原委員質問の中で、ドイツ調査に行った人がいるでしょう。昭和三十八年の初め、製薬課長、レンツさんに三十分お会いして、あくる日動物園で会ったと新聞によく出ていましたが、この方はその後どこへいかれているのですか。
  75. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) 現在三楽病院の薬剤部長をやっております。
  76. 小平芳平

    ○小平芳平君 その前はどうなんですか。
  77. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) 藤沢薬品に勤務しておりました。
  78. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうすると、厚生省をやめて藤沢薬品へいって、藤沢薬品をやめていま三楽病院ですか。  それから、この前の製薬課長はどこにいらっしゃいますか。
  79. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) 喜谷氏だと思いますが、喜谷氏は現在中外製薬につとめております。
  80. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから水野課長はどうですか。
  81. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) 水野氏は喜谷氏の前任課長でございまして、現在山之内製薬につとめております。
  82. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういうことから、何かこうおかしいように感じませんか。私たち一般国民の感覚からしますと、とにかく製薬会社から新薬厚生省、それから薬事審議会、それから、その窓口になる課長さんは、窓口が、事務担当がどういう運営になっているかよくわかりませんけれども、その課長さんがどうしてよりによって製薬会社へ続けていくわけですか。
  83. 武藤き一郎

    政府委員武藤一郎君) 私も新米でございますので昔のことはあまりよくわかりませんけれども、やはり薬剤の専門家でございますので、薬のことをやっているところにいくのはあるいはやむを得なかったんではないかと、かように考えます。しかしながら、先生が御心配のように、何かそのために現在薬務局がそういう関係で問題があるんじゃないかというような御懸念につきましては、私どもはそういうことは絶対にないと確信しております。
  84. 小平芳平

    ○小平芳平君 それは、そのためにそうした直接国民に健康被害が発生するようなことが起きたらたいへんなことですけれども、そういうように課長さんが製薬会社へ次々と入っていくから、だからルーズになるものかどうか、あるいはそういうことによって事務がかえってスムーズにいくものかどうか、その点どうなんでしょうか、大臣。
  85. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) いまおっしゃいますように、一般的に見ますとちょっとこれはどうなんだろうという感じはされると思うのでありますが、しかし、御承知のように、製薬課長ほとんどみなこれは薬剤師でございますが、定年がきて、そして後進に道を譲らなければならない、さてあとどうして食っていこうかということになりますと、自分のところで薬局を開くか、あるいはどこかの病院の薬局長にでも雇ってもらうか、そうでなければ製薬会社にいくかとか、いわゆる生活の問題になるわけでございますから、そういうことはあまり望ましいことと思いませんが、まあ薬剤師の退職後の生活の門戸は非常に狭いということもひとつ御同情をいただきたいと、かように思います。
  86. 小平芳平

    ○小平芳平君 それは御同情いたします。ただ、そのサリドマイド以外にもキノホルムその他そうした問題がいま起きているわけですが、そういう場合、一体国の薬務行政というものは信用していいのかどうかということが問題になっているわけです。したがって、とても、裁判まで持っていけることのほうがきわめて少ないと思うのですね。ですから、そういう点で、生活のためだからということは一つあるとしましても、国民に信頼される厚生省であり、薬務行政であり、薬事審議会であっていただきたいと、これは大臣当然じゃないでしょうか。
  87. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) ただ、やめたあとの就職を、これは法律か何かで本人のあれを拘束するというわけにもまいらず、これはちょっとまことに困ったことだと思うわけでありますが、ただそういうことでいわゆる薬事行政にまずい点があるということであれば、これはもう厳に戒めていかなければなりません。そういうことのないように、われわれも厳重な何といいますか新薬が出てきた場合には、それを認めるのには薬事審議会という専門家審議会にかけて、そして初めて許可をするというようなことにもなるわけでありますし、それらの点については遺憾のないようにやってまいらなければなりませんし、またやってまいっておるつもりでありますが、なお足らないところがあれば十分正してまいる所存でございます。
  88. 小平芳平

    ○小平芳平君 それじゃあ、その問題はまた別にやるといたしまして、私は前回の委員会で筋無力症という——大臣はそのとき御出席なかったのですが、予算委員会へお出になっていらっしゃったわけですが、この筋肉に力がなくなってしまう、ある日突然人間がクラゲのように力がなくなってしまう、それで発病なさってもう十六年、十年という方がいらっしゃる。ここにもいま傍聴に来ていらっしゃるわけです。そうした原因不明の病気、治療方法もない、そしてなおった人もない、こうした原因不明の病気については、厚生省がいままでは要するに何もやっていなかった、知らなかった。けれども来年度の予算には相当な予算も取り、確保し、そして緊急に治療に当たるということでしたが、そのときはそうしたばく然とした回答だけだったわけですが、その後どうしましたか、局長
  89. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 筋無力症のみならず難病対策につきまして、四十六年度は特にスモン病を中心にいたしまして治療研究費を約一億六千万投入いたしまして実施いたしておりますが、筋無力症につきましては、おっしゃるとおり大学等におきまして比較的少ない治療、困難な病気として研究が続けられる程度で、厚生省研究費としての措置はなされておりませんけれども、四十七年度には厚生省に特定な難病等を担当する部屋を設けまして、そこに担当者を置き、十億の研究費を要求いたしまして来年度の厚生省の重点施策の一つに取り上げておりますので、当面われわれはこの十億の研究費をぜひ獲得いたしまして、先般もお答え申し上げましたように、非常に関連の深い難病が医学的原因では関連が深い問題がございますので、これを大型の研究プロジェクトをつくりましてこれに研究費を投入し、個々の疾患につきましてもそれぞれに治療の必要のものについては治療、研究という形でスモンと同様の対策を講じてまいりたい、こういうように考えておる次第でございまして、筋無力症につきましては、文献等によりましても比較的まだ原因の模索があいまいと申しますか、非常に学者が確定した方向、これならいけそうだという方向がまだ見つからない非常にむずかしい病気の一つであることも承知いたしておりますので、おそらくこれは筋無力症につきましては、重点的な研究課題の一つになる、こういうふうに担当責任者としても私考えておる次第でございます。
  90. 小平芳平

    ○小平芳平君 その御答弁で大体了解いたしますが、要するに四十六年度はスモンですね、スモン等々という表現でしたが、来年度の十億にはスモンも入るでしょうが、筋無力症も入りますというふうに了解してよろしいですか。
  91. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) いまお答えしましたように、きわめて研究課題の中心になる疾患の一つであるというふうに考えておりますので、当然これは入らなければならぬと考えております。
  92. 小平芳平

    ○小平芳平君 大臣、十億の要求も大蔵省に出した要求であって、これからの折衝、それから、いま局長が重点施策の一つとして取り上げていくと答弁されましたので、大臣の大蔵省に対する折衝その他取り組む姿勢についての御決意を伺いたい。
  93. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) ただいま局長の申し上げましたように、これは厚生省の今後の重点施策の一つでございます。私も十億必ず取りたいという気持ちでただいまおりますので、できるだけひとつ御支援をお願いいたしたい。
  94. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは、あれこれ質問が飛んでしまって恐縮ですが、水道についてですが、大阪府豊中市では四日の夜殺菌用のガスボンベの取りかえ中に塩素ガスが吹き出した。付近の全世帯の方が避難、住民が重症を負ったということが報道されておりますが、これについての御報告をお願いいたしたい。
  95. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) 御報告申し上げます。  大阪府及び豊中市水道局から聴取いたしました報告でございます。  まず場所は、豊中市の水道局柴原浄水場内でございます。日時は昭和四十六年十二月四日午後九時四十五分ごろと推定されます。  事故の発生の概要でございますが、消毒用の塩素の一トンボンベ、これの取りかえ作業中に、元バルブと補助弁の接続部がはずれまして塩素ガスが噴出いたしました。そのため付近の民家等約五平方キロメートルにわたりまして一ないし五PPMの塩素ガスが広がりまして、その結果、付近の住民の方二百六十八名が豊中市民病院等で診断、治療を受けたということでございます。  この塩素中毒患者の発生状況でございますが、事故発生直後の診断及び治療を受けた者は二百六十八名でございます。当日入院いたして治療を受けた患者さんが八十五名でございます。これが漸次その後症状が軽快いたしまして、五日の日には六十七名、六日の日には十三名、七日の午前九時現在では十一名がなお入院加療中でございます。  さて、入院患者あるいは治療を受けた方々の回復の見通しでございますが、その症状はせきなどを主徴といたしました気管支炎様の症状でございまして、十二月六日現在入院中の十三名につきましても、一両日中に退院ができる見込みであるとのことでございます。現在のところ後遺症のおそれはないというふうに聞いておりますが、一定期間後には精密検査を行なって、その点は慎重に確かめてまいるという予定でございます。  事故後の措置でございますが、事故直後、消防署及び警察署に事故の発生を連絡いたすとともに応援を求めまして、住民への避難命令の警報及び患者の病院への収容ということについて協力を要請いたしてあります。  それから、事故発生直後は浄水場の機能を全面的に停止いたしまして、給水は大阪府営水道に切りかえてございます。  なお、十二月五日午前二時十分、住民の避難命令が解除されました。  以上、概略御報告申し上げました。
  96. 小平芳平

    ○小平芳平君 一ないし五PPMの塩素が充満して流れたというわけですが、大体全国でどのくらいこうした塩素を使っているか、そしてまた毒性ですね、どのくらいの濃度によってどういう健康被害を受けるか、そういう点についてはいかがですか。
  97. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) 全国における液体塩素の使用量は、昭和四十五年度におきまして三万五千二百三十ミトンでございます。これは水道用で、使っている総量でございます。全国的には四十三万一千五百トン余りでございます。したがいまして、水道用に使用しているものは約八・二%ということになります。以上は通産省の「化学工業統計月報」による資料でございます。  次に、塩素ガスの毒性でございますが、もちろんガスの濃度とそれから作用時間などによっても違いますが、たとえば特定化学物質等障害予防規則というものによりますと、職場におきまする抑制の濃度は一・〇PPM以下に保つようにというきめもございまして、文献などによりますと、三・五PPM程度では三十分から一時間くらいの作用時間でかなり重篤な、たとえば呼吸困難といったような障害は起こさないといわれております。しかしながら、一四PPMから二一PPM、この辺の濃度になりますと、同様に三十分から一時間ぐらいの作用でもって、場合によっては生命に危険があるということが報告されております。  それから、今回のような最高四ないし五PPM程度の塩素ガスでございますと、粘膜の刺激症状といたしましてのせき、あるいは咽頭の灼熱感、それから目に触れますと流涙、それからやはり全体として息苦しいといったような感じ、そういったことを主要な症状としております。
  98. 小平芳平

    ○小平芳平君 どうも文献の説明がよくのみ込めなかったのですが、三・五PPM以下なら何ともないということですか。それから、そうしますと、一四PPMから二一PPMで、三十分から一時間で生命に影響を生ずるということですか。そうしますと、三・五PPMということは百分の三・五ですから、よほど薄くても、あるいは一四PPMは百万分の一四ですから、よほど薄くても相当の被害が発生するということですね、結局は。
  99. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) 説明の順序が前後いたしまして恐縮ですが、大体二〇PPM前後で三十分ないし一時間という時間塩素ガスを吸入しますと生命の危険が生じます。それから、それ以下でございますと、たとえば三・五PPMという段階でございますと、これは、いろいろな障害は起こしますけれども重篤な障害を起こすまでには至らないということでございまして、今回のような、最高五PPM以下ということになりますと、幸いにも——不幸中の幸いでございますけれども、一応人命を失うといったような事故は起こさなかった。その場合の症状としては、せきとか、あるいは目に触れた場合に目が痛いとか涙が出る、あるいは息苦しいといったような症状が起こるということでございます。
  100. 小平芳平

    ○小平芳平君 これはよほど安全対策をあるいは管理体制を厳重にしておかないと、要するに一トンボンベ一本でこれだけの事故が起きたわけですから、それが水道だけで三万五千トンというのですから、三万五千本が一年に使われる。そうすると、東京の浄水場でも、大阪の浄水揚でも、名古屋の浄水場でも、よほどの管理体制、安全対策がしかれていなければ、絶えずそういう事故が起きる可能性があるわけですから、浄水場付近の住民はそういう危険にさらされていることになるわけでしょう。
  101. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) 塩素ガスは確かにそのような猛毒性を有している物質でございますので、十分にその辺の取り扱いについては念を入れる上にも念を入れるという態勢で管理されなくてはならないと思います。  法律的な立場から申しますと、塩素ガスの消費場所として上水道の浄水場があるわけでございますが、この保安管理は高圧ガス取締法という法律によっているところでございます。また、一部表示などにつきましては毒物及び劇物取締法によっているところでございます。それから、塩素ガス取り扱い者、作業員でございますが、これの安全につきましては、御案内かと思いますが、労働安全衛生規則及び特定化学物質等障害予防規則というものによって厳重に取り扱いを注意し、労働者の安全保護並びに周囲への被害の防止ということにつとめているところなんでございますが、厚生省といたしましても、当該関係法規の順守については日ごろ行政指導してまいっているところでございますけれども、今回のような事故が起こりましてまことに遺憾であり残念に思っている次第でございます。今後とも、このような指導を一そう強化いたしまして、再び事故が起こらないように十分に監督指導してまいりたいと思います。
  102. 小平芳平

    ○小平芳平君 大臣としては、いまのような経過でこうした事故が起きたということ、それで、今後の方針としましてお考えをお述べいただきたいと思います。
  103. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) 水道の塩素ガスの取り扱いにつきましては、ただいまも局長が申し述べますように、扱い自身についてはもう用意周到な扱いを規則規定等でいたしておりまするし、また扱い者は常時二名常勤をさせるということになっておるわけであります。したがいまして、法規その他の面においては十分であると、かように存じますが、現にそれを扱う者が、何といいますか、いつも緊張した態度をもってそうしてあやまちのないように、現に一般にはつとめているとは思いますが、さらに注意を喚起しておきたいと、かように思います。
  104. 小平芳平

    ○小平芳平君 付近の住民に迷惑がかからないように、労働安全規則できまっているとおり実施しているというのですが、労働安全規則できまったとおりやることと、それから、そうして付近の住民に迷惑を及ぼさないようなそういう措置はどうですか。
  105. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) 付近の住民に迷惑をかけないことはもちろんでございます。しかし、この扱いがそうであって、そうしてボンベから他の装置につなぐ際の措置を誤った。それが漏れれば、むしろ扱い者自身が生命に危険があるというくらいのものでございます。したがいまして、先ほども申しますように、扱いは、このたびのものを見てみますると、ボンベから元せんにつなぐときに手がどうかなって、そうしてそそうを起こしたということでありますが、こういうことのないように十分気をつけさせる必要がある、かように思っております。
  106. 小平芳平

    ○小平芳平君 今度は、水道の水源についてですが、だんだん水源が濁ってくるからこうした塩素の需要もふえてくるのじゃないかと思うのですが、具体的に、私が昨日質問をいたしますと言いました岐阜県の高山市の水道についてですが、この岐阜県高山市の水道の場合、水源に廃坑があるわけですね。その廃坑も単なる廃坑というような感じのものではなくて、見渡す限りというか、要するにおそらく四キロ四方ぐらいにわたって廃滓が積まれているのじゃないか。しかもそれが、四つの砂防の堰堤をつくりましたが、たちまちそれはもう埋まってしまっている。そうして川の両側、両河岸が崩壊したあとが見える。そうして、何キロかのその川、黒谷川というその川には、魚一匹全然住んでいない。水産試験場が来て検査したけれども、全然魚一匹住んでいなかった。ですから、水源まで行って見れば、こんな水を人間が飲めるかと、もう黒光りしているような水なんですね。それでも基準に合うからいいということで、今月からもう開始しようということで地元では大いにもめているわけです。厚生省のほうへはどのような報告がきておられますか。また厚生省としてはどういう処置をとられますか。
  107. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) 御指摘高山市の上水道第二次拡張事業でございますが、事実関係を申しますと、昭和四十五年の三月三十一日に認可をいたしておりますその拡張事業によります水源が先生指摘の神通川水系小八賀川取水地点から約二十六キロメートルの上流に鉱山の廃滓が山積しておるということでございまして、これから通ってくる水を原水とした場合にいろいろと健康上の障害があるんじゃないかという御指摘だったと思います。先生からの御指摘並びに現地のほうの状況の聴取などをいたしまして、私どものほうはさっそく——さっそくと申しますか、先月でございますが、水道課のほうから技官を現地に調査に派遣いたしていろいろと実地に立って調査をさせておりますが、またいままでの原水の水質の検査の結果、これは県並びに市の水道局が行なっているわけでございますが、現在までの検査におきましては、原水としては適当な水質であるというふうに判断いたしております。しかしながら、御指摘のように、将来災害時など、そういったときに廃滓が流出するといった危険もないとは言えませんが、水道の通水開始にあたりましては原水の水質検査それから上流等も含めました監視体制の強化並びに浄水処理の技術上の万全ということを期しまして、そうして、安全を確保するように指導してまいりたい。したがいまして、現在のところでは当初の予定どおりに通水を開始いたしましても差しつかえはないのではなかろうか。開始できる見通しを持っておるところでございます。
  108. 小平芳平

    ○小平芳平君 やはり局長、取水地点で水道法による基準を上回ってはおりませんでした、私たちが分析したのもですね。しかし、取水地点でカドミウム、亜鉛、鉛、銅、砒素、こういうものが〇・〇〇二、あるいは〇・〇三というようなものが取水地点でも検出はされているわけですよ。検出は。そうしてこれが坑口ですね。二十六キロ上流の坑口から吹き出している水。特にその水と一緒に流れ出すヘドロ状のこまかい沈でん物、このヘドロ状のこまかい沈でん物などが坑口の前に一ぱいたまっておるわけですが、その沈でん物の中からカドミウム二・四七、多いのは銅一九八〇PPM、砒素六九〇PPM、こういうようなものが検出される。その水が流れてくる。そうして、坑口から何キロかの間は、水産試験所がさがしたけれども魚一匹いなかった。虫が二匹いたそうですけれども、そういう水を常時人間が飲むわけです、これから。こういう場合はもう少し何か厚生省条件をつけてやる必要がありませんか。これは私は前に奈良県の水道について指摘したことがあったのですが、奈良県の水道の場合は上流において水銀が魚に蓄積している。魚は一PPMをこしているから、厚生省は奈良県のその魚食べちゃいけないと言う。魚食べちゃいけないと言いながらその水は人間がどうぞ飲んでけっこうです。片方は魚に水銀があって魚は食べられないと言う。高山の場合は魚が一匹も住んでいないという水を原水にするということ。ほかに水源がないならともかく、ほかに水源が近くにあるという。したがって、ただ現時点でだいじょうぶですというだけじゃなくて、ほかの水源をさがすなりあるいはこの安全対策のためのダムをつくるとかなにかしてからという、そういう条件つきということはできないですか。
  109. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) 確かに先生の御指摘のとおり、水道原水は清ければ清いほどそれだけあとの浄化作業も簡単で経費も安く済みますし、望ましいことであろうと思います。この高山市の水道の件につきましては、すでにダムが建設されて近く通水を開始するという予定でございますが、御指摘のような点につきまして、かなり市当局としても、ことに取水口につきましての水質の検査については慎重を期しているようでございます。また、私どもの調べた限りでも、その点はただしゃにむに推し進めるという態度ではないようでございます。さらに、上流の、先生の御指摘の、まあ土砂くずれが起こるといったようなことにつきましても、市当局はそれの防止対策を考えておるようでございますし、私どものほうからも強くこの点については指導してまいりたいと考えております。  それから、監視体制を十分にいたしまして、少しでもそのような人体に有害なものがそこに、まあ地震その他で流れ込むといったような場合には、これはやはり取水を停止するなりあるいはさらに場合によっては新しく水源を求めていくということもこれは当然考えておるところではないかと考えております。
  110. 小平芳平

    ○小平芳平君 大臣にあと一問伺って終わりますが、いま、申し上げておるような現状にあるわけです。それで、まあそれは、水源はきれいなほどいい。問題は重金属ですね。いま指摘しますような重金属。で、これは、重金属の場合は、目に見てああ銅が流れておるという感じがしないのです。目に見てああ砒素が流れておるという感じはもちろんしませんが、何PPMということで検出されるという。しかも、上の上流へ行けば一目見ただけでもうとてもこんな水は飲む気がしないというような現状にあります。したがいまして、このいま局長の説明では、市当局が考えておると言いますが、これはその市当局じゃもう手に負えないわけです。この円生川村という村になるわけです、もっとその上流は。したがってむしろ農林省、建設省、厚生省、むしろ砂防地域だからこういう意見もあるし、いろいろな意見があって、まあ私は的確に農林省か建設省かわかりませんが、そういう点を大臣きびしく指導していただきたいと思うのです。いかがですか。
  111. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) 全く御意見のとおりに存じます。まあ常識的に考えておっしゃるような危険のあるような水道をどうしてつくろうと高山市がしたかということだと思うのですが、これにはいろいろ調査の結果、取水の場所においては差しつかえないということを十分科学的に調査をした結果であろうと、かように存じます。しかしながら、上流のほうにそういうものがあるということは、いつどういうことが起こるかわかりません。したがいまして、厳重に毎日水質検査をやらせまして、その中に少しでもいまおっしゃるようなものがまざってきたということがあればその取水はとめさせる、こういうことにいたしたいと、かように思います。
  112. 中村英男

    委員長中村英男君) 午前中の調査はこの程度にいたします。    午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十一分休憩      —————・—————    午後一時三十九分開会
  113. 中村英男

    委員長中村英男君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  午前に引き続き、社会保障制度等に関する調査を議題といたします。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  114. 石本茂

    ○石本茂君 初めに保育所関係いたしますことを二つ三つお伺いしたいと思うのですが、来年だけじゃなく、今後ともますますこの保育所の増設等についてはお考えになっていらっしゃることでもございますが、私が聞きたいと思いますのは、だんだんとふえてまいります保育所の中で、夜間保育というものが一体どの程度行なわれておりますのか。それから、さらに来年の増設、御計画等についてやや具体的にお伺いできたらと思うんでございますが、お願いいたします。
  115. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) いま御質問のございました夜間保育の問題でございますが、現在の保育所におきまして、原則的に地域の保育所で保育を行なっておりますのは、大体朝の八時から夕方の四時ごろまでという昼間の、おかあさんが働いておる、あるいは病気というような場合の子供さんを預かるのが通常の形でございます。ただおかあさんの勤務の形態等によりましてある程度夜間に及ぶ、夜間と申しましても一晩じゅうというケースは非常にまれでございますが、少しおそくまでかかるという例は間々あるわけでございまして、こういった点はそれぞれの保育所のくふう等によりまして、全部の子供がそういうかっこうになるわけじゃございませんので、交代勤務等によりまして保育時間をある程度延長して、おかあさんの実情に合わせるという形はかなり広い範囲でとられております。ただ、ほんとうに夜間に及ぶ、つまり子供の場合ですと夕飯を食べさせるとか、あるいは入浴をさせるとか、さらに夜寝かせておくというような時間にまで保育が及ぶということは、児童福祉の観点から考えますと、これは非常に保育に欠ける者の保育を行なうという観点から考えますと、子供の心身の発育にとりまして非常に大きな影響があるわけでございまして、原則的には夜間保育ということは人格形成の基礎をなす乳幼児期におきましては好ましくないというふうに考えております。したがって、私どもといたしましてはいろいろな対策を考えまして、できるだけ家庭におきまして、少なくとも夜間には保育ができるように、そういうことを主眠におきまして施策を講じておるわけでございまして、したがって、地域の通常な保育所におきまして夜間保育は原則として行なっておりません。ただ、特殊な業態、たとえば病院の看護婦さん等におきましては病院の中に置かれております、いわゆる職域の保育所におきまして何らかの形で夜間保育が行なわれているという例は、これは職業の性格、公共性から申しましてやむを得ない点でございまして、こういった職域の保育所におきましては私ども別の形態といたしまして、今後労働省とも御相談しながら助成を進めてまいりたい、そのように考えております。
  116. 石本茂

    ○石本茂君 御趣旨は一応わからぬわけじゃない、わかるんですが、ですけれども、これは前々からたびたび私が、今期ここに出てきたのは初めてですが、厚生省当局には言ってきたわけですけれども、保育に欠ける者の保育ということをおっしゃいますし、それからまた、児童福祉という面から考えまして家庭で夜間といえども保育ができる保育という、生活を見守っていくことのできるという条件なら何もこの夜間保育は期待しないし、希望いたしません。ですけれども、そうじゃなくて、一番子供にとって、夜間の勤務に従事しなければならない、あるいはときには父親もいないかもしれない、ほんとうに一人ぼっちの幼児を、それを他人に預けて、そして、夜の勤務に従事しているというのが現状でございます。ですから、これは多くの子供じゃございません。ごく一部の限られた職種におります者の子供ということになると思うわけでございますが、そのことがいまから数年前にもそういうことをおっしゃいましたし、現在なおたてまえとしてはいたしません、しかし、特殊な状況だから、その特殊な職域の保育所であるならばやむを得なくやるでしょうというようなお考えでございますと、私がいま申しておりますごく一部かもわかりませんけれども、そういう職域にある者の子供のために、じゃ国は一体何をお考えいただけるのでしょうかというような多少の反論を試みたくなるわけですが、将来とも好ましくないからこれらの子供については考えない。それは特殊なところでやればいいということでございましょうか。それからもう一つ、私自身知っておることは、非常に特殊な型の保育所では、夜間といえども預かっていただいて非常にめんどうを見ていただいておりますけれども、そういうのは国の今日までの調査の中で何カ所かあるのでしょうか、どうでしょうか、数なども聞いておきたいと思うのですが、それからもう一つ、いまおっしゃいましたように、将来に向かってそういうことをやはり現在のままで考えていきたくないということでございましょうか、その辺ちょっと聞いておきたいと思います。私は働く母親のために言っておるのじゃないのです。そういう特定条件を持つ母親の子供が全く福祉から見放されて現在いるということを言いたいわけでございます。お伺いいたします。
  117. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) 多少御説明が足りなかったかと存じますが、いま申し上げました、原則的に地域の保育所で夜間保育は行なわない方針である、これは全体といたしまして子供のためには好ましくない事態であるという前提で申し上げたわけでございます。ただ、それともう一つの事情といたしまして、地域におきまして、その地域の子供たちを、保育に欠けておる限り、どこでも入れるということ、だれでも入れるということになりますと、原則的にはやはりおかあさんの勤務をしておる状態というのは昼間でございます。そうすると、ごく少数の児童のために保母を置くとか、あるいは夕食を支度するために調理士を置くというような事情も起こってくるわけでございまして、通常の措置費をもってまかなわれます保育所の勤務形態と非常になじみにくいという技術的な要素もあるわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、大体夜間の勤務を要する業態というものは特殊な業態に限られておるわけでございますので、そういった業態におきまして、私どもは事業所集団保育施設というようなことばを使っておりますが、そういった業態の保育施設につきまして、これは同じ答弁であるという御質問でございますが、実は来年度におきましては、そういった事業所内の施設につきましても助成費を新たに要求いたしております。これは労働省と御相談いたしまして、ぜひこれは実現させたい。それを考えております理由は、そういったところではやはり何と申しましても、その中で預かられる子供さんのために保育の内容をよくする必要がある。そういう前提で補助金を要求いたしておりまして、そういったような形で実情に沿うような実施をしてまいりたい、そういう趣旨で申し上げたわけでございます。それから病院につきましても、これは任務の関係でございますが、病院の中の保育所につきましていろいろと助成指導を考えておるわけでございます。そういったような形で実態に合うようなことをいたしたい。ただ基本はやはり子供福祉でございますので、やはり総合的な対策といたしましては、できるだけそういうことがなくても済むような施策を幅広く講じてまいりたい、そういう趣旨で申し上げたわけでございます。
  118. 石本茂

    ○石本茂君 基本的には、何も私はあらゆる保育所の中にそういうものを置いてくれと言っておるわけではございませんので、ごく一部かもわからぬけれども、そういうものを国がやはり育成する必要がないのかという意味で聞いたわけでございますし、いま局長はそれに対しまして、そういう特殊な集団を主体とするところの保育所についても援助していきたいというようなおことばでございますので、これは将来に向かって、そういうような特殊な事業所に働く女子労働者のためじゃなくて、そういう人たちの子供のためにさらに夜間保育等につきましても、研究なさるだけでなくて実現していきたいとおっしゃっておるという意味に受け取っていいのでしょうか。そうでなくて、それは好ましくないので、考えてあげるけれどもできないということでございましょうか、それをはっきりもう一ぺん確認しておきたいのです。
  119. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) まあ、はっきりしないような答弁でたいへん恐縮なんでございますが、問題が児童の福祉に関することでございまして、専門的な御意見からいたしますと、長時間の夜間に及ぶ保育は原則的にはなるべく行なわないことが望ましいというのが一点。それから、先ほど申し上げました、いまの通常の認可保育所の形態の中で、これを技術的に行政のルートに乗せますことが非常に困難な問題があるというような点から、現在検討を続けておるという段階でございますが、私ども先生の御指摘のように、そういう、非常に一部ではあっても、子供さんのために、だからといって放置しておいていいというわけにはいかない実情があることもよく承知をいたしておりますので、御趣旨を踏まえまして、今後何らかの形でそういった需要ができるだけ満たされるような方向検討を進めてまいりたいと考えております。
  120. 石本茂

    ○石本茂君 そういうふうに承りまして、ぜひこれは私は、随所にという意味ではございませんで、そういう特定のものに対してやはり国がしっかり目を向けてほしい。児童福祉法だ、児童憲章だと幾ら言っておりましても、あまねくというわけにはまいりませんでしょうけれども、ごく一部でありましても、そういう特定につながる家庭の子弟がやはりかわいそうな条件の中にいるということ、それから、もう一つは、これは働くものの立場からですが、四時に終わります、五時に連れにこいということになりますと、せっかく保育所に預けておりましても、なかなか安心して仕事もできない。それからまた、ひとりぼっちになった子供もかわいそうだというようなこともありますので、私は、深夜とは申しませんが、もう少し六時とか七時とか八時とかいうような、ずれた時間までの保育体系というものを将来ぜひ実現していただきたいと思うわけでございます。これは私の要望でございます。
  121. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) いまの時間の延長の問題につきましては、これは相当数の保育所で、先ほど申し上げましたような数が少なくなりますので、交代制勤務等を活用いたしまして、大体六時ごろまでは相当の保育所ではやっていただいておりますし、私どもも、きびしい労働条件の中でございますから、全部ぜひというわけにはまいりませんが、地域の実情に応じて可能な限りはそういうことはやっていただくようにお願いはいたしております。その点は将来また、より実情と見合って人員の要求等々とも見合わせまして、できるだけ進めてまいりたいと考えております。
  122. 登坂重次郎

    政府委員登坂重次郎君) ただいま石本先生お話を承り、また感ずるところがありまして、やはりどうしても働かなければならない、またそういう職種を選んでおる母親も多いわけでありますから、子供福祉という観点からいえば、母親の手元が一番よろしい。しかし、生活のため、環境のためにどうしてもそうしなくちゃならぬという実態が多々あると思います。それをどこへどうして置くかというようなことは、またこれからの問題といたしましても、やはり今後の社会福祉の増進という観点から考えれば、先生の御趣旨のとおり前向きに検討する必要がある。こういうふうに私のほうでも今後の研究課題にし、前向きで努力いたします。
  123. 石本茂

    ○石本茂君 それから、先ほどちょっとお話の中にありましたけれども、承りますと、国立病院が主体になるのだと思うのですが、来年度予算の中に病院の中の保育所という意味で設置なさる予定のように聞いております。これも予算化されなければ実現できないと思うのですが、その場合の規模ですね、どういうふうな構想といいますか、そういうものを承ることができましたら承りたいと思うのですが、お願いいたします。
  124. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 国立病院の中では、すでに職場におきまして一部保育所を設置いたしております。それについても、当然これは助成して育てていかなければならぬと存じておりますが、もう一つ、いま松下局長からも先ほど来お話がありましたように、国立病院以外の病院におきましてもそういう、共同でと申しますか、先生御承知のように、一病院だけでその保育すべき子供の数が標準に達するということがなかなかむずかしゅうございますし、また年によって非常に子供の数の増減がある、あるいは一病院だけではとてもそういうことは維持できない。こういういろいろな実情があって、従来希望があっても実現が非常に困難であった実情がございますので、いわば幾つかの病院が共同でもいいんじゃないか、こういう形でどこかしかるべき病院の中にそういう保育所を持つ。それに対して国も助成し、またその内容につきましても児童局に児童行政立場で、内容がしっかりするような監督もお願いする。こういうことをひとつ来年から始めたい、こういうような予算をいま出しておるわけでございます。
  125. 石本茂

    ○石本茂君 そうしますと、これは単に国立病院だけではなく、いま申されましたように、その地域にあります民間の病院、あらゆる医療機関を含めてという意味に理解してよろしゅうございますでしょうか。  それからもう一つ重ねて伺いますが、その場合の保育の条件でございますが、先ほど私が申しておりました夜間、深夜に及びましてのなお保育ということになるのですか。それともやはり一般保育所並みに、午後八時ごろになりましたら打ち切りということになるのでしょうか。その辺の構想をちょっとお伺いしておきたいと思うのですが。
  126. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 第一点の質問、国立以外の病院ということで、国立以外の一般的な県立病院なり市町村病院なり日赤なり済生会なりいろんなところを対象にしていきたい、こういうことでございます。  それから、その場合の保育の時間の問題等は、これはやはりその実情によって私どもは何時に締めなければいかぬという気持ちも持っているわけではございませんが、いろんな理由で、先ほど来児童局長お話のように、子供のほんとうの保育という観点から、維持できればそれは時間を十分とるということは私は十分あっていいのじゃないか。特に看護婦さん方の場合にはやはり勤務の終わる時間というのはほぼ一定していますから、特に夜勤に入ります前の時間までせめて置いておけば、その間連れて帰ってもいいというような事情もあろうかと思います。これは一律にただこうあるべきだということを規定することのほうがむしろ私は不合理じゃないかと存じますので、そういうせっかく実態に応じまして、こういう保育所をつくる目的はそういうことでございますので、そういう実態に即した運用というものがはかれるようにして処理してまいりたいと存じます。
  127. 石本茂

    ○石本茂君 まあ実態に応じまして勘考していただけるということでたいへんありがたいのですが、私のこれは一つの希望でございますけれども、特に病院等で看護婦が定着しにくいことは育児の問題がありますし、同時に夜間勤務、特に深夜勤務時点での子供の問題が一つ出てきておりますので、非常に少数な人数の子供になるかもわかりません、その時間におきましては。しかし、この時間帯にありましても、たとえ二人であろうが三人であろうが、やはり責任を持って保育を預かるというふうなことをどうぞひとつ考えていただけないか。これは私の希望でございます。そうしませんと、やはり夜間勤務ができませんということが次々出てまいっておりますので、このことを、病院の中にせっかくそういうものを御計画いただけるのですから、他の一般保育所ではできない、あるいはすることをよしとしておりません深夜勤務を含めたいわゆる保育ということをお考え願いたい、それをお願いしておきたいと思うわけでございます。  それから、なおもう一つ保育問題でお聞きしたいのは、許可を得ておりません、いわゆる認可を得ておりません保育所、今回幸いに病院ではそういう国の認可を受けた保育所が部分的にできるかもわかりませんが、現在でございますと、ひそかにどこか陰部屋のようなところで何人かの子供が、とても保母さんとは考えられない、まあ高等学校を出たのかなと思うようなお嬢さんのような人が、はっきりいえば守をしているという実情なんですが、そうしてそこで子供が遊ばされているというか、何となしに預っているというのか、預けられているというのか、ほんとうに寒心にたえないようなものが幾つも私どもは承知しております。これは病院だけじゃございませんで、いろんな企業体、特に中小企業に類似するわけでございますが、そういうところにまいりますと、いま私が申しておりました陰部屋のような、あるいは日陰の、日の当たらないところで子供のために何か設備は一応整えてありますというようなものがあるのですが、何かこういうものに対しまして、国はこれは無認可だから一切責任はないのだ、そんなものはかってにやっているのだからわしは知らぬということで済むのでしょうか。それとも将来に向かってそういうところに対しましても、何らかの措置をしようというお考えなのかお聞きしたいと思います。
  128. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) 基本的な考え方といたしましては、やはり保育所子供のための施設でございます。したがって、児童福祉法及びこれに基づく省令でも定められております最低基準を満たして、子供を保育するのに十分な物的人的な施設を備えていなければならない。それが原則であろうと考えております。したがって、国の制度によって認められる保育所といたしましては、最小限度そういう条件を備えておることが前提になるわけでございまして、現在いま御指摘のような形の保育施設があるということは残念ながら事実でございまして、私どもも結局これは公的な認可された保育所が数が足りないために、そこへ預けることができないおかあさんたちの実際的な御要求によって生じておるわけでございまして、基本的には、ですから現在行なっております整備計画をできるだけ早く進めまして、地域の認可保育所に全部の保育を必要とする乳幼児が収容される、入所するという形をとるという方向に向かって努力すべきであるというのが、私どもの基本的な考え方でございます。ただ実際に現在御指摘のような状況にあることも事実でございまして、こういった施設をどうするかという点につきましては、施設自体につきましては最小限度の要求を満たしておっても、定員の面でなかなか基準に合わないというような事情のところもあるわけでございます。そういったことのために、最近は従来は六十名以上の定員を要求しておりましたのを、三十名定員の小規模保育所という制度もつくりまして、それによって規模の小さいものにつきましても、ある程度しっかりしておれば認可をするという方針をとっております。これに対する特別な措置費も算定されておるわけでございまして、特に過密地に多いそういった無認可の保育所につきましては、できるだけ公的な助成指導を加えまして、そういった小規模の保育所についても、とにかく認可を受けて正式の措置費によって処理できるようにしたい。そういう方針で整備を進めておる段階でございます。
  129. 石本茂

    ○石本茂君 たいへんうれしい、明るい将来の希望が見つけられたように思うのですが、もう一つさっきもちょっと申しました来年度に向かいましても大幅な増設計画を持っていらっしゃるようでございますけれども、私やはり心配になりますのが、そういうところに働く保母有資格者といいますか、この保母の確保といいますか、そういうものがあらかじめ予想の中に入っての拡充でございますのか。保母さんはまあ建物ができて子供が入ってきてから考えましょうということなのですか。その辺も現にあります保育所に参りましても、なかなか有資格の保母さんは手に入らないというようなことを聞くもんですから、たいへん心配をしておりますし、なお公的なところと、何といいますか私設のところとの比較を見ますと、働いております保母さんの労働条件、賃金体系にもかなり大きな格差がございますので、その辺につきましても当局ではどのように御検討されておりますのか、お聞きしたいと思います。
  130. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) 御指摘のように、やはりいい保育を行ないますためには、基本的に一番大事な点は保母さんの資質でございまして、現在進めております保育所の整備計画、それに見合います保母さんの養成というのは不可欠の問題でございます。保母養成施設を卒業いたします新規資格取得者の数が、四十五年の三月で約一万三千人、それが四十六年——ことしの三月におきましては一万六千人、これは年々増加いたしております。現在の学生定員がこの四十六年——ことしの四月一日現在の養成施設は、個所数が二百七十一カ所で学生定員が四万百九十人、これは二年制でございますから、原則的には。約二万人の卒業生が毎年出るということになります。それから、もう一つは保母試験による資格取得がございまして、この資格取得者は昭和四十五年度で約九千人、したがって、四十五年度の数で申し上げましても新規資格取得者が二万五千人という数にのぼるわけでございまして、これはまあ絶対数から申しますと相当ふえましても十分な数ではございます。ただ実情としては、いまの保育所で働いておられる保母さんの中で、なお資格を持っていない方が一一%くらいあるという実情もございますし、やはり女性のことでございますから、結婚、家庭等々の関係で比較的在職期間が短いというような点もございますので、なお、特に保母さんの養成施設を出たしっかりした素養を身につけた方が望ましいことは申すまでもございませんので、今後の方針といたしましては、保母の就学資金制度を改善いたしまして、現在の貸し付けの額を三千円を五千円に上げる。さらに特別貸し付けの制度を創設いたしまして、七千円まで貸し付けられるようにするというような方向で予算の要求をいたしまして、保母の確保をはかっておるところでございます。
  131. 石本茂

    ○石本茂君 ありがとうございました。ぜひこれは基本的な問題でございますので、ひとつ厚生省所管の養成所だけでなく、方々に保母養成所がございますので、そこの卒業生ができるだけ保育所のほうに来て働きたいと言えるような環境づくりをぜひお願いしたいと思います。幼稚園には非常に希望者が多いのだけれども保育所にはどうも来手がないということをしばしば聞いておりますので、大切な子供の問題でございますから、ひとつよろしくお願いいたしたいと思います。  次に続きましてお伺いしたいのは、これまた人間の問題になるのですが、先日私社会福祉関係とか老人対策、特に心身障害問題等含めまして、非常に看護婦等の需要が大きくなってきている。現に病院等の医療機関でも足りないのでありますが、一体それはどのような御計画でしょうかとお聞きしましたとき、医務局長さんのほうで大体昭和五十年をめどにという大づかみな人員のワクをお示しございました。それで私、できますことなら、机の上の計算で数はどんなにでも設定できるのでございますけれども、たとえばどういう学校、どういう養成所、何十のものからこれぐらい出る。そうして、定着率は大体これぐらいだろうというような、具体的なといいますかそういう計画書がございますなら、私、後日ぜひ手に入れさせていただきたいと思っておりますが、何べんでもしつこく同じことを言っているようでございますけれども局長さんいかがでございましょうか、来年の厚生省の予算の概算を仄聞いたしますと、たいへん大幅に伸びるようですが、その際に求められます保健婦、助産婦、特に看護婦が非常に大きいように私は思うのですが、この辺の局長さんのお考えといいますか、厚生省自身の御見解等伺っておきたいと思います。つくってみた、建物はできた、人が来た、さあそれを世話する者おらぬということではあまりにもみじめでございますのでお伺いいたします。
  132. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 前回非常にマクロ的な需給の数字を申し上げました。それをもちろん算定いたしますのは、非常に荒っぽい形だけではとうていそれはできないわけでございます。したがいまして、これは非常に中身は複雑でございまして、いろいろな過程もございますので、そういうものについてこれをふやし、何年度に建物を建て、その次の年にそれが入学をし、それがそれぞれ三年なり二年間の課程で卒業すると、こういうふうなことを積み重ね、また一方先ほどからお話しのように退職していきます数というものも、これは就業の人口から差し引いていく、かようなことになりまして、また准看から進学コースに入るというもののはじき方、これもいわば実働部隊が増加にならない期間があるわけでございますが、そういったことも全部織り込みました上で積み重ねてくるというのが、先般申し上げましたような数字でございますので、それは中身は非常に入り組んでおりますけれども、御必要でございましたならば別途資料として差し上げたいと存じます。
  133. 石本茂

    ○石本茂君 それは私ちょうだいできましたらぜひちょうだいしたいと思っておりますし、それから、なおこれは関連でございますが、私は来年とは申しませんけれども、この看護婦の養成等につきましていつも申し上げておりますように、民間では医療費の問題などが今度はどうなりますのか。赤字でボーナスも出ないといっておりますような病院に看護婦養成所などがついているわけでございますけれども、ああいうところの育成費は、本年度は幸いに二億八千万というお金を取っていただきまして、わずかではございますけれども、その養成費をちょうだいしまして、たいへんよかったといっておりますけれども、こういうもののふくらみを将来どの辺まで増強していただけますのか。たちまち来年のことがあるのでございますが、その辺の当局のお考えと、それから並びに例の奨学資金でございますか、これもかなり大幅に、有効に、いわゆる効果的に今日まで利用されてきたと思うのですが、ああいう面におきましてもどのように今後さらに御決定いただけるのか。たとえば、ところによりますともう満ぱいになりましたというような県もないではない。特に准看の人でございますと、裏日本にまいりますともう准看護婦は一ぱいでございます。しかし、まあ看護婦は足りません。そういうところにさらにあの将学資金を出しまして、足どめをしてみたってどうしようもないんじゃないかというような、これは私の憶測でございますが、そういうこともございますので、この二つのかね合いを厚生当局としまして将来に向かってどのようにお考えになっておりますのか、お伺いしたいと思います。
  134. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 運営費、特に民間の養成機関に対します運営費は、ただいま御指摘のとおり、ことしから初めて実行し始めたわけでございます。来年はもちろんさらに三倍近い額にしたいということで要求を出しておるわけでございますが、私どもやはり医療機関のいわば診療報酬というものを基礎にした養成ということは、できるだけこれは少なくしたい。もちろん国等におきましては全部こちらがもっておるわけでございますので、そういう形でつくっていかなければならない、そういう方向で努力したいと存じます。ただ、この場合には、すでに御承知かと思いますが、看護婦の養成所ではございますけれども、いわゆる私立大学等の補助金の体系というものが別にあるわけでございまして、それとのやはり足並みと申しますか、つり合いと申しますか、そういうものはどうしても考えざるを得ないというものがございます。したがいまして、看護婦の場合でも、私立の形の大学というようなものがあり、一方では養成所がある。かようにいたしましたときのそのバランスというものが当然出てくるわけでございますので、これは、一方ではただいま申しましたような方針でまいりますけれども、同時に、私学のそういう運営費の助成のあり方というものをにらみながらやはり進んでいくというのが実態的であろうかと存じます。  それから、もちろん奨学金につきましても、先ほど児童家庭局長さんから保母さんについて御説明いたしましたように、これは、私どももやはり増額をして、努力をいたしております。ただ、若干運営の問題について御指摘があったようでございますけれども、確かにこの金額を上げるということがひとつは奨学金をさらに有効にしていくというためにやはり不可欠な条件であろうかと存じます。しかし、これの配分その他の実行につきましては、やはり県内におけるそれぞれの需要の状態、供給の状態というものとも十分相談をしながら、やはり合わせていくのが妥当であろうかと存じます。
  135. 石本茂

    ○石本茂君 ただいま私学とのかね合いもあるのでということでございますが、私学私学といいましても、非常に国家、国民が必要としている人材を求めている学校もあるでしょうし、まあおざなりと言ってはしかられますけれども、その学ぶ人の、どういいますか、本能意識を満足させるためのような学校もあるかと思うのですが、この看護婦教育の場合ですと、国民がこぞっていまその必要性を認めておりますし、それから、先ほど来申しておりますように、単なる医務局所管の医療機関だけではなくて、厚生省が全面的にぶつかっておる福祉の万般にわたっても要望されているこれは人材でございますので、私はそういう他との比較ではなくて、もう一つプッシュを入れていただいて、大幅に、医療の問題もあろうかと思いますけれども、ほんとうに大きくここで羽ばたくような看護婦教育というものをぜひひとつ打ち出していただきたいと考えているのでございます。そういう意味で、来年はぜひとも、お出しになっております——三倍と申されましたけれども、三倍は全部といっても無理でしょうけれども、少なくとも本年度の倍以上はぜひ獲得していただくように、ここに政務次官もおられますけれども、これは大臣に直接申し上げられませんで残念でございますが、何としてでも獲得していただきますことを切に私は希望いたしておくわけでございます。  それから、なおこの機会に医務局長さんに特にお願いしておきたいと思うのですが、その足りないということが根っこになりまして、まあ場当たり的に、日本国民医療をどうしようかという基本的な条件もあるかと思うのですが、私ども立場から見ておりまして、あれはほんとうに国民のいわゆる生命管理ということを考えてのお考えなのかなあという、ちょっと疑問を持つような、これは制度に関連することですが、増員対策とは言えませんかもわかりませんが、そういうものが過去にもありました。現在もなおそういう声をたまたま聞くのでございますが、どうかお願いでございますから、来年度予算にほんとうにごくわずかのたかの知れた予算となっている例の制度調査費というものが組み込まれているようでございますが、これはまだ今日まで予算化されておりませんので、私はほんとうに残念だと思っておりますが、こんなわずかな、事務サイドで入ってくるようなけちな予算だけはぜひとも確保していただきまして、正々堂々とこの制度問題、増員対策を含めました制度の問題と取り組んでいっていただきたい。特にお願いしたいのは、もう場当たり的な、その場の思いつきのような、ああ足りないか、それではまあここへちょっと持っていこうかというような、過去にありましたようなものが現在なおそれが何となしに生きていると思うのでございますけれども、そういうお考えだけは、私はこの際、国民に対しましても、その仕事に従事する者に対しましても、ぜひともこれはそういう考えはなくしていただきたい。そうして、堂々と取り組むような将来に向かっての、どう言いますか、ほんとうによい意味の国民医療国民保健というものの真の向上発展を願うのだというような看護婦制度の改正ということに向かっていただきたいことを希望し、同時にそのことについての御意見を承りたいと思います。
  136. 登坂重次郎

    政府委員登坂重次郎君) 石本先生お話しのとおり、今日わが国で最もおくれているのは社会福祉関係でございます。今日日本の経済が急速な高度成長をしたその陰のひずみが大きく出ている。これはいなめない事実でございます。で、特に厚生省におきましては、医療従事者の待遇改善、並びにその充実ということは、本年度の予算においても精一ぱいできるだけこれを実行に移すということで、大臣以下、挙省、あげてただいま努力中でございます。もちろんこれで満足するものではございません。早急に医療従事者確保のために、私も人事院に参りまして、待遇の改善、定員の増加増強、そういうものも含めて人事院にも折衝いたしたわけでございます。なお、予算折衝にあたりましては、これを最低線と思って大いに予算獲得のために努力いたします。
  137. 石本茂

    ○石本茂君 これはもうほんとうにみんな何もかも全部大事でございますけれども、私はやはり福祉の問題、医療問題の根幹になるような問題だというふうに、思い上がりかもわかりませんが、考えておりますので、どうか枝や葉を茂らせなさると同時に、根っこのことについてもぜひともきびしい目を向けていただきまして、その方面に御努力いただきたいということをもう一ぺんお願いいたします。  それから最後に一つ聞きたいのは、いま、これは文部省関係でございますが、女子教員の方々のいわゆる有給の育児休職制度を制度化しようということでたいへん高まってきております。おそらく今度の国会あたりに出てくるのじゃなかろうかと私は期待いたしているわけでございますが、女子教員とは多少立場が違いますけれども、やはり一つの資格要件を整えまして、足りない足りないと言われておりますいわゆる看護婦や保健婦、助産婦、准看護婦、あるいはこれは保母さんのことも含まれますけれども、そういう厚生省所管の業界におります者につきましても、この育児休職制度というようなものをどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。これは将来の展望になるかもわかりませんが、御見解を承っておきたいと思います。
  138. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 医務局のお話が出ましたので、まず私からお答え申し上げておきます。  私どももやはり看護婦関係というものを見ましても、まあ先ほど来夜間保育等の問題もございまして、そこにはいろいろむずかしい問題がある、児童の立場からいってもむずかしい問題があるということも児童家庭局長からお話がありました。そういったような問題をすべてながめましたときに、やはり子供さんを持たれた一定期間、特に乳児期というのは保育もきわめて困難でございますし、また保育所に置いたとしましても急性の伝染疾患その他の問題等考えますと、これは御承知のとおり、非常に気をつけなければいかぬ問題でございます。また母乳栄養というような一点から見ましても、保育所におりますと必然的に人工栄養に落ちてしまうというような点も当然厚生省立場からも考慮すべき問題があろうかと存じます。そういった点から見まして、やはり私どもも育児休暇制度という内容がこれは導入されることが最も望ましい一つの制度である、かように考えております。本年も人事院に、大臣の名前をもちましていろいろな改善を申したときも、これは人事院のプロパーの問題でないかもしれませんが、特にいま御指摘のように、国の病院、療養所、こういう関係から人事院にもその点は考慮方をお願いしたというようなことでございます。したがいまして、私どもとしては基本的にやはりそういうものが導入できれば、これは育児の面からもまた母体保護の観点から申しましても非常にいい方向になるのじゃないかと、かように考えております。
  139. 松下廉蔵

    政府委員松下廉蔵君) 児童福祉の観点からいまの質問のございました女子労働者の育児休暇と申しますか、育児休職と申しますか、公務員制度ではたてまえが違うわけでございますが、総括して育児のための休業制度という点は、先ほど保育所の問題で御説明いたしましたように、乳児期あるいは幼児期の初期におきましては、特に母親がスキンシップをもって子供を育てるということが人格形成上非常に必要なことはもう定説でございまして、そういう意味からいたしまして児童福祉の観点からこれは今後の方向といたしましてはできるだけそういう制度がとられることが望ましいということは、児童行政の所管といたしまして、全般として考えておるわけでございます。それと、いま御指摘のございました、特に保母さんというような社会的、公共的な職種にある方につきましては、やはりできるだけ長い経験を積んで一人の人に長く働いていただくということが、これはその保母さんの接する児童福祉の観点から申しましても重要なことでございますし、そういう意味から申しましても子供を育てるために職場を去ってそのままになってしまうというようなことは非常に問題がございますから、こういう育児休業制度というものが全般についてまだできないという事情がありましたならば、看護婦さんあるいは女子の教職員と同じような意味で保母さんにつきましてもできるだけ早く何らかの制度が行なわれまして、実際上、保母さんの育児に対する母親としての義務と、それから、子供を保育する、子供の世話をするという社会的な義務とが両立して、いい保母さんが長く確保できますような方策が講ぜられることが望ましいことと考えております。具体的な問題につきましてはいろいろな他省との影響もございますので、積極的な方向で話し合ってまいりたいと考えております。
  140. 石本茂

    ○石本茂君 いま両局長さんの御意見承りまして、将来、おそらく女子教員が一歩先へ行くと思うのですが、並みとして実現していただけると考えておきたいと思います。  まだいろいろ聞きたいと思いますが、時間もそろそろきておりますので、私はきょうは一応これでやめます。ありがとうございました。
  141. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 きょうは、予算の編成も間近に控えておりますので、国立病院の運営あるいはまた看護婦などの医療従事者の処遇の問題、あるいはまたさらには国立病院の統廃合の問題につきまして、取りまとめて数点御答弁を願いたいと思いますので、明確なひとつ御答弁を賜わりたいと思います。  大臣おられませんから、大臣のおられないところは次官においてどうかひとつ取りまとめて大臣のほうに強く要請していただきたいと思います。  第一には、第二次の九%の定員削減計画でございますが、政府のほうでは本年の八月十日に第二次の定員削減について閣議決定をされましたが、この中で国立病院と国立療養所の削減計画はどのようになっておりまするか、その内容についてひとつ御説明を願いたいと思います。
  142. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 第二次の定員削減の非常にこまかい点につきましてちょっと手元に資料がございませんので、直ちに取り寄せた上で後ほどお答えいたしたいと思いますが、すでに御承知のように、大きな法則としましては、一律に病院関係の職員というものを削減をするというのではございません。医師とか看護婦とかいうものにつきまして、一番医療機関で必要なものにつきましては、削減率もきわめてわずかであるというような配慮がなされておりますので、それらの全部ウエートをかけたものが国立病院、療養所にかかってくるものだと、こういうことになります。  こまかい数字につきましては、取り寄せてまたすぐお答え申し上げます。
  143. 登坂重次郎

    政府委員登坂重次郎君) 各省行政整理に伴う定員の削減について大臣とも相談いたしまして、医療従事者についての定員減は極力、これは大蔵省にまた行管に折衝いたしまして、その率は逓減するようにこちらからも強力にお願いいたしまして、行管のほうの了解を得てそのパーセンテージにおいてはきわめて最小限度、こういうことにしたことを御報告申し上げます。
  144. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 この削減が、いまお話では、看護婦とか医師のほうにはあまり影響をしないというふうな話し方なんですけれども医療法で定数規定というものがあるわけでありまして、医師、看護婦など医療関係を機械的にもし削減されるということになりますならば、国がこのようなことで国民の生命とか健康を守る立場を貫くことができないのではないかと思うのでありますが、どの程度になっておるのか。この削減は事実上は行政職(一)及び行政職(二)のほうに集中して、そして、患者やその他の国立病院、療養所の運営に行政職(一)、(二)の削減でも私は影響するだろうと思うのであります。だから、そういうような意味から申しましても影響力を及ぼしておるのではないかと思います。同時にまた、看護婦や医者のほうは非常に少ないと言っておられますけれども、これもやはり削減をされておるわけでありますので、これはいまの定員の上からいっても、定員をなかなか満たしておらないというのに、こういうようなことがあり得るということがあってはならないと思うのでありますが、その点はどのように考えておりますか。
  145. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 御指摘のように、先ほど申しましたようないろんな計数というものがございますので、医師とか看護婦については、これはもうきわめてわずかにとどめるということをまず中心にいたしております。たとえば行政職等については、それよりも多い数が削減される、総ワクの中で、これはやむを得ないことでございます。ただ、一方において、こういう全体の大きな方針としての削減問題があるわけでございますけれども、ただいまいろいろ御指摘のように、国立病院、療養所においては別途増員というものはこれは別のファクターとしてたくさんあるわけでございます。したがいまして、一般のそういう三カ年計画等の行政の定員削減とはいわば独立に新しい増員として要求をしてやっていく、こういうことでやっておりますので、実態としてはむしろふえるというような傾向で事はおさまってくる、こういう方向で毎年計画しておるわけでございます。
  146. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 これを見てみますと、厚生省関係の削減数二千五百二十九人といわれております。そのうちで国立病院、療養所では千六百名が含まっておると、こういう数字が出ておるわけです。  また療養所の削減率を見てみますと、医療の(一)、医者、医療(三)、看護婦ですね、これも一%削減することになっております。ことに医療(二)の薬剤師、放射線あるいはまた検査、栄養士などの分は三・五%の削減になっておる、行政職のほうで、いわゆる事務のほうですが、あるいはまた現場の行政職(二)でありますが、これは九%削減されておる。保母さんとか、看護助手なんかに至っても六%の削減になっておる。こういうような数字を見てみますと、これはかなりの削減がいま療養所の中では行なわれておるわけでありますね。そういう点からいってこういう削減を行なって実際問題として、やっぱり局長の先ほどの御答弁の中を見てみますと、あまりにも影響はしないように考慮されているやに答弁が聞こえたわけでありますけれども、実際問題としてやっぱり看護婦さんやら医者にまでも機械的に削減ということがあるとすれば一%にしてもいまじゃそんな状態じゃないんではないかという感じも持たれます。それから、先ほど私が申しましたように、行政職であってもこれだけの削減をやって、いまのパーセンテージのような削減をやってほんとうに患者さんに対して影響がないのかどうか、私は心配するわけでありますが、その点は局長とされましては影響ないというように断言できますか。
  147. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 私どもこの定員の問題についてはいま御指摘のように患者さんに迷惑をかけないということがやはり医療機関としての基本でございます。したがいまして、いろんな削減はいたしますけれども、しかし、先ほど来申しましたようにもっと厚く定員を盛らなきゃいかぬというような、たとえば療養所におきましても重症心身障害児のようなものを毎年担当してまいったわけでございますが、これに対しましては一般よりもはるかに高い率での増員というものをお願いしてきておる。そういうようないろいろなところに増員の要素というものがございますので、私どもはやはり増員のほうを強く出して、それで十分にカバーできるようにしたいということで、それを基本に置きまして努力をいたしておる次第でございます。
  148. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 まあその影響のないことを中心にしておると言われておりますけれども、私はこの影響は非常に多大だと思います。特にこの六月に国立療養所の所長連盟からもあるいはまた国立病院長の協議会からも削減反対の要望書を関係各方面に送って訴えておられるように聞いておりますが、そうじゃございませんか。この点についてもひとつお話しをいただきたい。特にその中にも述べているとおり、現在でもこの定員は著しく不足をしておる。しかも、国立病院は脳卒中だとか、ガンだとか、心臓病あるいは糖尿病とか、いわゆる成人病の治療及び研究はもちろんのことでありますが、激増をしている交通災害あるいは労働災害、こういうものに対しまして救急医療機関としてその任を果たす、あるいはまた過疎に悩むところの無医地区に対しましても、この無医地区医療対策に対しては、そのにない手となっておるわけでありますから、またこの国立病院は非常に医師の臨床研修指定病院ともなっております。あるいはまた看護婦さん、あるいは助産婦その他の医療技術者なんかの養成機関としても、あるいはまたその使命の遂行にあたりましては積極的にこれらが取り組んでおるわけでありますから、このような使命と任務を考えたときには、第一次削減に引き続いてこの第二次の削減でこの責務は全うされるかどうかということが私は心配になるんです。こういうようなことにつきましても私はきょうは大臣にもその所信をうんと尋ねたいと思ったのでありますが、まだ大臣来られませんから、この点大臣来られたらまた時間があれば一緒にお話を承りたいと思いますが、少し政務次官のほうからもお話を聞かしていただきたいと、こういうふうに思っているわけであります。
  149. 登坂重次郎

    政府委員登坂重次郎君) 今日医療従事者の不足、国民保健の見地からしてぜひともこれは私のほうとしても人員の確保、またさらには増員をしたいという希望で人事院にその待遇改善及び人員の増加をこちらからも別途お願いいたしておるわけでございます。
  150. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 これは現場の院長やらあるいはまた療養所長が差しつかえておると言っているのですけれども、これはもちろん第二次の削減はしないということにしてもらいたいと思うんですが、局長及びこれは大臣にどうしても聞きたい要点ですが、あとから聞くことにしましても、やめてもらいたいと思うんですが、どうですか。
  151. 登坂重次郎

    政府委員登坂重次郎君) 私のほうとしても先生と同じそういう気持ちで今後善処したいと、こう思っております。
  152. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 局長もその意味でいいですね、ぜひともやめてもらいたい。
  153. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 私どもも、いま政務次官が答えられたのと気持ちは全く同じでございます。ただ結果としては先ほど申し上げたような結果が起こっておるということを事実として申し上げただけのことでございます。
  154. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 気持ちだけじゃだめなんだ。気持ちは全くそのとおりでございますけれども、やることは違いますという答弁じゃこれは受け取れません。局長自身がやっぱりその気になってもらわぬと、せっかく政務次官が前向きで答えておっても裏づけにならぬと思いますから。これはほんとうに大事な問題だと思うんですが、もっと詳しくデータを言えとおっしゃればたくさんデータ持っていますから申し上げますけれども、ただいろんなことを申し上げますが、こういうような状態ではとてもとてもいまの運営はできない。いわゆる行政職のほうを見ましてもこんな九%だの何だのというような大きな削減をされるわけで、私はやっぱりここらが必要だと思うんです。いま私がるる申しましたようにいろいろな救急的な患者もあるし、脳卒中、いろいろな手のかかる問題があるわけですから、やはり特にレントゲンなりあんなパラメディカルの職の方々も減らすことでいいということは——第二次では、三・五%も減らされるわけですね。こういうようなことについてはひとつほんとうに前向きな姿勢で、第二次だけはやらないというくらいのことを打ち出さなきゃいかぬので、いま次官のほうからはかなり前向きの決意を示してもらったけれども局長は何だか気持ちはそうだけれどもということではならぬので、特に私はその点をひとつ注意していただきたい、特にお願いをしておきたいと思います。この要望の趣旨を見ましても、局長も御存じだと思いますが、所長やら院長あたりが実際現場を取り扱っておってそれを訴えておられるわけでして、こういう現場の気持ちというものは相当尊重しないと今後医療の問題には影響いたしますし、また、そういうことである程度国立病院がそういう姿勢でやってもらわなければ、いわゆる国立病院は将来教育病院としてかなり教育の面にも大きな役割りがあるわけでありまして、むしろ国立病院そのものは研究なりあるいはまたそういうふうな施設を完備していくために充実をしてもらいたいという時期です。それと全然正反対の削減ということが先に向かっていったのでは何かやろうとする意向と実際運営される方法とは逆効果なんですね。だからこういう矛盾をどんどんと表に出してやっておられるような厚生行政であっては、われわれ国民の健康なりあるいはまた生命なりというものを考えて、それを充実さしていくという考え方、あるいはまたこれから医療制度というものをいろいろ抜本的に考えていく場合に、いわゆる国立病院がどうやっていくかということがこれは一つの大きな主軸になって考えられるはずだと思うんです。ですから、そのうしろ向きの削減なり何かを一律に受け入れてやるということ、まあその合理化云々の問題もわからぬこともありませんけれども、しかしそういう姿勢では私は真にこれから医療を抜本的にそれをよくしていこうという立場から考えてみるならば、何か錯誤といいますか、矛盾といいますか、そういうものを感じざるを得ないわけです。そういう意味からひとつ局長さんも、しかとした前向きの決意をもってがんばっていただきたいと思います。そういう意味では私きょう、押して大蔵省の主計局のほうにも来てもらって、いろいろまたこの問題の話も聞き、大蔵省としてもそういう方向で交渉がいく場合に、これに対しては前向きに予算をつけていくように、削ることはとどめるようにという形で、こういう話は一切聞いてもらって、大蔵省の意見も伺っていきたいと考えておりましたけれども、大蔵省のほうではきょうちょっと何か、おいでにならないそうでございまして、非常に私は不満でありますけれども、その点は、ひとつ局長のほうからも、私はこの質問の中で大蔵省のほうにもそうした意見を申し上げたいということを伝えてもらって、どうかひとつその上で特に御配慮していただきたいと思います。特に局長の決意のほどをもう一ぺん前向きで答弁しておいてください。
  155. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 私も所長連盟や院長方から御指摘を受けるまでもなく、ただいま先生指摘のように、これからの国立病院というものを考えましたとき、とうていいまのままの数で決してこれで私はいいなんて思っていない人間でございます。また、そういう気持ちを例といたしまして、たとえば重症心身児、筋ジスを引き受けましたときにも、御承知のとおり定員はきわめてわずかでございました。しかし、私ははっきりと、これは施設をつくってもいいけれども、それに伴う人をつけない場合だったら私はその施設の予算を全部返上するということを公言した人間でございます。そういうつもりで私も努力したいと考えておりますので、今後とも御激励を賜わりたいと思います。
  156. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 一例を私いまここで思い出しましたので付加させてもらいたいと思うんですが、京都の宇多野の療養所に筋無力症あるいは進行性の筋ジストロフィー、こういう施設をつくってもらって、あそこは五十床の病院をつくってもらった。ところがあそこの現状でも看護婦さんが足りない。そして医者も足りない、そういう筋無力症あるいは筋ジストロフィーは非常に抵抗力が弱っています。ところが結核病棟で見ている先生がそこへ行って見るわけです。結核でももしうつったら——うつらないだろうと思いますけれども、もしうつったとしたら抵抗力が弱いから非常にたいへんなことだと思います。宇多野の療養所の先生方が非常に心配しておられる。そこの病棟へ行くためには一々ズボンからあるいはまた白衣をかえて行かなければならぬ、こういうような状態になっている。また勤務たるや、そういう方々でございますから非常に手がかかる。やっぱり定員がないためにそれが十分できていない、こういう訴えも聞いたことがあるのでありまして、こういう一つの例を見ましても、一つの療養所の中には一律に削減するどころじゃなくて、もっと増員をして、あるいは看護婦さんもまた先生も特別に筋ジストロフィーの方々の世話をする人がいなければならぬという状態にあるわけですから、こういうものも含めてみますと、いま局長から御答弁をいただいておりますけれども、特に私はこの医育機関特に国立療養所あるいはまた病院あたりの削減問題じゃなくて、むしろいろいろなところに目を配って増員をするならば、あるいはいろんなそうした前向きの改善をすべきだと考えておるわけです。こういう点から申しまして、私はぜひひとつこの削減問題に対してはきびしくこの第二次をやらないという線で大きく打ち出していただきたい。ことに念願をいたしておりますので、どうぞひとつ次官のほうから大臣に強くそれをされまして、大蔵省のほうに対しても十分に対処しながら、むしろたくさんの予算を大蔵省から出してもらって、そしてむしろそういうところには逆につけていくという方向に行ってもらいたいと思います。
  157. 登坂重次郎

    政府委員登坂重次郎君) 先生仰せのとおり、私も医療確保、給与改善については人後に落ちない努力をいたす覚悟で、この間から人事院にも私も単独で参りました、また、行管のほうにもそれぞれ連絡をいたしまして、定員削減どころかうちのほうは増員してもらいたい、またお医者さんの待遇も非常に低いからもっと給与改善してくれということを給与局長に私も単独で申し入れましたら、人事院でも非常に深い理解を持ってくれまして、さっそく医務局長、もう一ぺん具体的な交渉を行なってくれと言って、私はこの間局長とも相談し人事院とも処遇改善については鋭意努力いたしております。そういうわけで、まず医療の確保、国民の保健の責任を持つ厚生省といたしましては当然の仕事と心得ております。今後ますます先生の御期待に沿うように、いな厚生省のこれは念願でありまするから十分に努力いたします。
  158. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 次に、看護制度について少しお伺いいたします。  いままででも、看護婦さんの夜勤制度等を含む看護婦さんの労働条件、労働環境の改善につきまして、私も本委員会で、過去に十数回にわたっていろいろと質問させていただきました。まだ、いまだにその改善はなかなか進んでいないわけであります。昭和四十年の五月の人事院の判定の基礎は月平均夜勤が九・四日、一人夜勤七一%になっていたものの改善であったのでありますが、しかし、五年たった昭和四十五年におけるところの全医療労働組合の調査を見てみますと、月平均夜勤の回数は九.一日であります。そして一人夜勤が六〇%と、五年もたったのに一向に改善をされていない。この実態を踏まえてみまして、やっぱり厚生省のほうではどうお考えになっておるのか、あるいはまたどのようにこれを改善を具体的に進められようとしているのか、私は五年たっていま考えてみると、こういう条件が改善されないということは非常に遺憾に思うわけでありますが、その点いかがでございましょうか。
  159. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) まず全般といたしましては、四十年に出ました人事院のニッパチ勧告というようなものを実現するというためには、これは私から申すまでもなく、相当多数の看護婦というものが用意されていないと実現がされないという状態でございます。したがいまして、先ほど石本委員の御質問にもお答え申し上げましたああいうよな計画の中に、私どもは当然ふえてくる需要の中におきましても、ああいう勧告が実現できます要素を織り込んだ上で算出をして、それを目標に養成計画も進めたいというつもりでございます。しかし、また一面そういう全体の不足の条件の中でも、できるだけのことはこれは改善しなければなりません。国立病院等におきましては、御承知のとおり四十七年度の予算の要求というものをもちまして、一応その最初の三カ年計画の増員要求が終わると、こういう要求を出しておるわけでございまして、これは最初はそういう需給関係をにらみながら、わずかな数で始めまして、第二次の増員のスピードを上げるということで、最後の点は、私どもとしてはここで打ち切ることなく全額そのまま要求を出しておる、こういうことでいま折衝中でございます。そういうことによりまして、私たちもやはり早急にこの必要な部分についての条件が達成できますように努力をしていくつもりでございます。
  160. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 いまちょうど局長も触れられましたが、昭和四十四年の六月十日のこの委員会においても、これは「看護職員不足対策に関する決議」としまして、決議案を決議いたしたわけであります。各会派が賛同して、いま局長のおっしゃるように、三年を目途に改善をうたったわけですね。それでこれをやったならば、もう来年の五月までにはほぼそれが完了しなければならぬ、そういうような年限になっているわけですが、それは各項目について、ほんとうに改善はもう五月にはほぼできるという自信がおありなのかどうなのか、ちょっとお伺いしたい。それを目ざして努力しておられることはわかりますが、たいへんこれは問題があるのじゃないかと思います。
  161. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) あのように、御指摘のように、両三年を目標にという御決議をいただきましたので、私たちもそういう線に沿えるように計画を立てまして、ただいま申し上げましたような人員の要求というようなことを行なってまいったわけでございます。したがいまして、私どもの要求が満たされるならば、これは私どもがねらっておる線においては条件が完全に実現できると存じますので、先ほど申し上げましたように、最後の一番大事な増員要求という年に今後かかってくるわけでございます。私どももその点に全力をあげて努力をいたしたい、こういうことでございます。
  162. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 この四十四年の六月の参議院の夜勤に対する増員の必要数、八日夜勤と一人夜勤の解消というこの問題で、国立病院で二千八百六十九名、国立療養所で七千百七名、合計九千、こほだけの増員が必要だということが資料提出をされて出されたということがあるわけでございますが、しかしこの夜勤制限のための実際の増員措置は四十四年で二百六十一、四十五年で三百五十七、四十六年で六百二十八、累計いたしまして千二百四十六名、このようなことで三カ年の増員は千二百名に過ぎないわけでございますけれども、実際の数からいえばほど遠いわけでございますが、厚生省の算出した必要増員に対して大きくかけ離れているような感じを私どもは持っているわけでございます。そのような計画が示しておりますように、公務員としての看護婦さんの労働条件は大きく侵されておると、国公法に基づきましても、人事院判定はやっぱり看護婦さんの労働条件として、人事院規則をもって制度化するよう要求したりしておるわけでありますが、実行にも必要な人員を定員化するように強く要望されているわけであります。こういった意味からいって、私はまだまだ局長の話を聞きますと、ほぼそれでいけるというふうな考えでありますけれども、このようなことを勘案してみると、まだまだ実際とはほど遠いような感じがするんですが、その間はどうなっているんですか。
  163. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 当時たしか私どもが一つの試算として申し上げましたことには条件がついておったと存じます。  国立病院や療養所の重要な単位を全部切りかえるということを目標にして試算をしたものだというふうにたしか申し上げた記憶があるわけでございます。ただその人事院の判定自体、当時そういうことを申し上げましたのは、単にマクロでぽんとつかみ上げたような数ではいけませんので、個々の病棟、看護単位に積み上げて考えていかなければならないということが前提にあったはずでございます。で、人事院の判定でも全病棟、同看護単位についてそれが実現するということを勧告としては出されているわけではございません。必要な個所についてはこれを実施するというのが最後の判定であったと存じます。したがって、私どもはその後いろいろな各病棟等について重症の度合い、その他の患者の程度というようなものをいろいろ勘案をし、積み上げました後において一つの計画というものを立て、それを三カ年計画で実行に移しておるということでございます。  先ほどあげられました最初の年の二百六十一という増員の数はこれは私どもの立てる前のときの増員でございまして、これをはずしました三百五十七以後の来年に至りますまでがほんとうの意味での積み上げの計算、こういうふうに私は要求しておるつもりでございます。
  164. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 それから、もう一つここで伺いたいことは、その看護婦さんの数、あるいはまたそれの問題もさることながら、もう一つ私は実際療養所あるいは国立病院で働いておる看護婦さん、これが正看護婦さんあり、准看護婦さんと制度上に二つの差異があるわけでございますが、実際この病棟における看護婦さんの業務に区別がついていない、これは実際区別することが不可能であろうと思うんですが、事実上やはりどこかで区別をされておるかどうなのか、実際から。私らはいまこの問題を尋ねたいのは、正看護婦さんであっても、あるいはまた准看護婦さんであってもこれはそんなに仕事の中に差がない。特に看護婦さんが——准看護婦さんが長く勤務していて、かなり実際的に働いている。そこへ新しい正看護婦さんが入ってこられると、准看護婦さんとの待遇上の問題は、非常にそこに格差がある。しかし、実際にやっている問題は准看護婦さんも一緒である。こういう点からいくと、何かそこのところに大きな矛盾があるように私は感ずるわけであります。そういうことに対して、やはり国立病院なり療養所なりではどういうふうにそれを運用しておられるのか、そういう点についてちょっと一ぺん具体的に伺ってみたいと思います。
  165. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 御指摘の点も、その業務区分というものがはっきりできないはずじゃないかとおっしゃられているとおり、御指摘の点が実はこの看護問題の一番むずかしいところであると存じます。制度の上では確かに正看、准看というような形がございまして、准看は看護婦の指示を受けて、看護業務を行なうというのが法律上の定めでございますけれども、ただいまあげられましたような経験年数の長短、あるいは人間の成長度合いというものを全部含めますと、なかなか御指摘のようにそこの点が割り切れない。そういった点がいま制度としていろいろ考えますときに、実態等が一番違っているということを感ずるところでございます。しかしながら、実際の業務といたしましては、私どもはやはりこれは一つのチームとして、一つの看護単位の中の全体がチームとしてそれぞれの分担をしながら仕事をしていくというたてまえでございまして、そういう意味ではチーム全体がその指示に従いましてよくチームワークをとってやっていくということをたてまえとし、指導しておるつもりでございます。しかしながら、一方実態としましてはそういう区別が困難なような仕事をしていながら、待遇その他に差別があるのではないかということの御指摘であったと思いますけれども、その点が実態から見た場合のむずかしい問題であろうかと思います。少なくとも私どもはこういう観点の中で、特に准看の方々が相当長い経験年数を持ちましても、ただいまの給与の体系の中では上の俸給に上がれないという性格がございます。こういった点はいろいろ御指摘のような実態から見ましても、どうしても突破をしたいと、かように考えまして、ただいまいろいろと人事院とも折衝をその点については続けておるような次第でございます。
  166. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 私はここで少し看護婦のそういう制度等の問題について一ぺん厚生省のお考えを聞きたいと思います。  非常に先ほどから述べたようにいろいろ増員の問題もここにあり、あるいはまた看護婦さんの働く条件、ほんとうに看護婦さんの働く意欲が燃え上がるような職場環境というものもつくらなければなりませんし、そういうことに対して抜本的な改善をしてもらわなければならぬ、労働の条件をうんと高めるための割り出しをしてもらわなければならぬわけで、いまのニッパチやら一人夜勤の問題が出てきておるわけでありますし、その改善をしているといいましても、いま私が申し上げましたように非常に改善をされていない、こういう状態であります。それからいま申したように私はただ正看、准看という制度を一方にぱっとつくっておきながら、実態の中に入ればそれがちゃんぽんにされてしまう。あとから私お伺いしようと思うわけですが、それは給与表の問題もちょっと触れてみたいと思いますが、それはまずあと回しにしましても、私はそういうような状態で看護婦不足ということが非常に大きな原因でもあるし、あるいはまたその条件も非常に悪いわけでありますから、働く条件をよくしなければならぬ、これは何度も議論をされておるし、もう百も承知であるわけであります。だから一体いまのような状態でそれでいいのか、私はいま国立の療養所なんかを主体にしていろいろ議論をしておりますけれども、一般の病院に至ってはもっともっとひどいわけです。国立ですらそうなんですから、一般の病院に至ってはなおさらひどい、こういうことがわかっていて、一体厚生省では看護婦さんの今後のあり方——看護婦制度なり、あるいはまた看護婦さんに対するそういう条件の取り組み方は一体どういうふうにこれを改良されていくのか、いまではそういうようなことはいろいろ検討してやっています、やっていますというような答弁だけではもういかぬような状態になっておる。これによってはなかなか国民の健康、あるいはまた生命というものをほんとうに保障することができない状態になってきておる国立病院でもいま看護婦さんが足らないために病棟を開設してないところがたくさんあります。また、公立病院、市民病院なり、あるいは県立病院あたりでもたくさんございます。あるいはまた私立の診療所、病院でも看護婦さんの足らないためにその十分な病床をフルに使うことのできないような状態がある。一方には患者さんは入院ができないでたくさん待っておる、こういう矛盾が一ぱいあるわけです。だから、私はあまり議論をしている立場じゃなしに、一体看護婦さんをふやすためにはどうするかということを抜本的に考えてもらって早く打ち出してもらうべきではないか。私は予算が編成されるたびごとに問題を出して、厚生省の皆さん方にお願いを含めていろいろ議論を申し上げたり、意見も申し上げて積極的にやってもらうことをお願いをしておるけれども、先ほど私が申したぐあいに、五年たっても一〇〇%の改善はあまりうまくできてない。局長の話を聞くと、こういう方向でこういうふうにできていますという御答弁はいただいておりますけれども、われわれ国民の側から考えてみるとそんなふうにいっていると受け取ることができないわけです。こういう点からいって、私はここらで一ぺん看護婦さんの問題だけについても積極的にこうやります、こうやるから大蔵省のほうからこれだけの予算をほしいということをひとつやってもらいたいと私は思いますが、その点はどう考えておられて、いまのあれはどうなっているか、ひとつ具体的に示してもらいたい。
  167. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 看護婦の問題にはいろんな側面というものがございます。  第一にいま指摘されております、また病棟閉鎖等が行なわれているじゃないかというような御議論、またそのほか質の問題にも関連いたしますけれども、看護婦さんたちが学校でいろいろ訓練を受けたことがそのまま実現できないではないかという内部的な御意見等もいろいろ従来からお聞きしてまいりました。そういった問題の一つは、やはり前々御指摘のように看護職というものの量が全体としてまだ足らないんだという点に、これはいやおうなしにあるわけです。これは現在の状態から見ますと、何とか早くこれを上げなければならぬ、この点が一つあるわけです。私どもがそういった点で、しかしながら同時に質というものも考えなければいかぬ、こういう二つのいわば相反するような条件、こういうことが看護婦問題の解決に対して与えられている条件のような気がいたしております。そういう観点からいわば基礎レベルを上げるという上に立って、高等学校を准看制度におきましても基礎に置いてとっていきたいというようなことを提案申し上げましたけれども、これは時間の関係もあって審議未了のままになっておったわけでございます。そのときもわれわれ考えましたのは、一方においては量を解決しなければならぬのだという大きな命題に対して、それを解決するということ、同時に看護という問題がだんだんに複雑になりつつあります。そういった意味合いにおきましては、その基礎学力というもののレベルを高めていくということは、これは将来のいろんな改善をはかるにいたしましても必要じゃないか、こういうことを実は強く考えた上での提案を申し上げたような次第でございます。ああいう形になりまして、しかも相当われわれの提案に対しては、率直に申し上げていろんな方面から、われわれの説明不足の点もあったと存じますけれども、相当の激しい抵抗もあったというのが現実でございます。私どもはその後もやはりこういう問題をいろいろと十分に話し合いながら関係の方々がほんとうに納得する方向というものをやはり探していかなければならぬのじゃないか、こういうことで専門の方々等と現在でもいろいろとかなり詰めた話をいたしております。こういったことのためには、これから養成をしていくという問題、これについては私どもはたとえば先ほど来申し上げておりますように、来年度予算におきましても少なくとも現在の制度はそのままにしてでもこの養成力の拡充だけは大幅にやりたい、こういうことでことし五十四億の予算を、来年百八億の予算要求を出しておりますのもそういった点からとにかく制度をどうこうする前に現実の問題として養成力の拡充だけはどうしてもはからなければならぬ、また潜在看護婦等の問題、また先ほど来御議論がございましたように保育所といったようなものも活用することによって離退職を食いとめるとか、あらゆる点をそこへ集中して、とにかく早く量的にも質的にも整備をするということを念願してきておるわけでございます。そういったようなことは一方においてどうしてもないがしろにすることのできない問題として追及をいたしておるわけでございますが、さてそれでは将来の考え方というものについて一体どういうふうに考えるのかという問題になりますと、これは関係団体との間でまだ十分話し合いは詰まっておりません。それは将来のいろいろな御意見としては看護制度は一本化すべきだ、こういう大きな流れのあることは十分承知いたしております。したがって、一本化するとすれば、既存の二本建てというものを一体どういう時点でどういうふうに整備をしていくか、こういうもののやり方というものは、これもまた先生十分御承知のように、いろいろな案というものがあるわけでございまして、その案につきましてもいろいろな意見が分かれておったということも御承知のとおりだと存じます。したがって、私どもは大きな方向としてはそういうことが十分望める、しかしながら、同時にそれがわが国における看護職員の確立ということのために、量的にもダウンするようなことであっては相ならないのではなかろうかということで、検討をいまわれわれとしても続けております。しかし、来年度は、さらにこういうものについてもっと正式の予算等もとりまして、多くの方々の御意見によって早急に結論を出すというような検討調査費というものをあらためて要求いたしておるわけであります。そういうものが実現しましたならば、多くの方々の御参加をいただいて、早急にひとつ大方のめどをつけてみたい。ただいまは残念でございますけれども、いろいろな周囲の情勢から見て、私どもはいまそういう段階にきているということを御報告申し上げます。
  168. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 看護婦さんの養成ということの考え方を十分前に出してもらっておっても、いま現在なかなか進んでいないというのが現状だと思います。私、これ個人の意見も含めてでございますけれども、医者も不足しておるというので、このごろはあちらこちら一ぱい医科大学が新設されます。私この間もちょっとこの問題について触れさしてもらって、文部省からあるいはまた厚生省からお話を承りました。まだいまいろいろ審議の中であることでありますから、私はあまり決定的な意見を申し上げてはちょといけないかもしれないということで、非常にそうしたことを配慮しながらの質問をいたしましたので、十分なところまではいっていないのでありますが、私はいまのように看護婦さんの不足を考えましたときに、この医者の不足を解消するためのいまの大学の設置ということに対しても、非常に私は危機を感じておるわけです。おそらくこの看護婦さんの教育に対しましても、ひとつ誤れば同じようなことが出てくるのではないかと思いますが、この間もちょっと触れましたけれども、医者の大学をつくるために、何と申しますか、三つの方向が出てきた。たとえば自治医科大学をつくるためにはこれはお金を貸す制度をこしらえて、そして九年間何かそういうことにつとめれば棒引きにして、今度は非常にお金がかからなくて医者になれるコースができた。一方私立大学のほうでは非常にこの設備をりっぱにしなければならぬから、高額な負担金といいますか補助をもらって、そしてそれを運用していかなければならぬのだ、こうするのがあたりまえではないかということでおそらくスタートされておる。こういうことが一方でできております。それで官公立がいままでの中間をいくというような形で、医学教育そのものの中に三つのシステムができておる。私はこれは非常に格差があると思うのです。差がある教育の体系になってくると思う。医者をつくる上において、こういう三つの差があっていいのかどうなのか、私はこれは非常に将来に大きな禍根を残すことになるのではないかというふうに考えます。またそこへ防衛医大もできて、今度はまたそれをやる、二百億もほうり込んでやる。こういうようなことになって、この医者をつくるためにもそういう三つの方向が出てきて、ばらばらのことをやって、そして、出てきた医者は一緒だ、こういうことになるわけです。こういうようなことで、私は言い過ぎかもしれませんけれども、ほんとうに国民が信頼することができる医者の教育がどうあるべきかどうかということが心配である。ということは、いま私立大学の月謝をまた上げなければならぬ、これは物価が上がってきますからそれもあるでしょう、そうなってくれば相当の月謝のアップになるというようなことがいわれておる。だからして今度政府のほうから、国民の税金から、国から、私立大学に補助をしなければならぬ、これも私は一つのやむを得ない方向だ、こう思います。そうなってみれば、私立の大学が去年は三つですか、ことしは二つ、来年以後に出てきているのは七つ八つくらいある、九つくらいあるということで、これは私立大学がたくさんできますから、これはみな高額の寄付をもってやらなければ採算が合わない、成り立たないようになるわけでありますから、これに対してもみな考え方をひとしくやろうと思えば国から補助を出さぬならぬ、補助を出さぬならぬものを無秩序につくる、無秩序じゃない、それは大学設置審議会の一つのルールに乗ってきたものはどんどんそれでやらざるを得ない、こういうような形になっておるわけであります。いままで既存の私立の大学でも、やっぱりこれは歯科大学から医科大学を見ましても、みな幾らかの、高額といっていいのか、中額といっていいのか知りませんけれども、相当な施設に対する父兄負担がなければ、これが運営できないような状態になっているわけですね。こういうようなことを考えますと、やはり私は医者の教育に対しても非常に暗い反面を感じて、もっと教育をするならば国がまともに取り組んで教育に当たらなきゃならぬ、こういう趣旨で私はこの間質問をしたわけでありますが、そういうことに対しては特に私は厚生省としても、あるいはまた文部省としてもかなり責任を持って先のことを見通さないと、私はそこから出てくるお医者さんがどうなるのかという心配があるわけであります。この看護婦の問題でも私は同じことが言えると思うわけでありまして、看護婦が不足だから、この前出されたように高校卒業して一年ぐらいで准看にしたらどうかという、私はいま先ほどからちょっと触れさしていただきましたけれども、准看あるいは正看というものをつくっておいて、実際業務の中では差別がないわけですね。同じように使っているわけであります。同じように働かしているわけであります。こういうことから考えますと、私はそこに非常な大きな矛盾を感ずるわけです。そしてまた、その看護婦さんをつくるための施設、この間も石本さんも指摘されたようでありますけれども、私系統のところでは医療費の中に組み込まれている、せざるを得ぬような状態になっている、独立採算でやっているということになってまいりますからして、これは言うならば、一面では看護婦さんをつくる費用まで患者さんが負担しているという状態になる、こういうようなことが一方にはあるというふうな状態であって、しかも看護婦さんのレベルはある程度保たなきゃ、国民は健康、命をまかせることができない状態にある。一方では間に合わせに高校一年で済まそうかという法案も出たわけであります。また今度はどうせ、いろいろPRが足らなかったからというようなお話ですから、それに似たようなものが出るとするならば、私はまたこの看護教育という問題に対しても同じことが言えると思う。これは一本化しようということで高校卒業して三年の教育をして、そして看護婦さんのレベルを最低に保つという意向があるわけであります。私はそのくらいのことがあってしかるべきだというふうに思います。私はそれ以上に四年制の大学に看護婦さんの課程をもっとふやして、そこで研究室でもつくって研究してもらって、看護婦さんの養成するための先生といいますか、資格を持った人をうんとつくらなければ、看護婦学校つくろうといったって看護婦学校つくれない。教える人も少ない。そういう意味のことを考えてみますと、私は非常にいまの取り組み方としてよほど積極的な気持ちを持ってやってもらわぬ限り、私は看護婦さんはふえないと思うのです。私は先ほどから申したように、私見を含めてということで、これはほんとうにまだ私の私見でありますから、まだいろいろ批判をしてもらいたいと思いますけれども、もっと看護婦さんという、正看、准看いうようなものを廃止したらどうなのか。たとえば国家公務員というのは何々公務員。何々公務員で差別はなくて公務員ひとりであります。私は同じような業務をするんだったら、やはりいまの状態で名前は看護婦さん一本にしたらいいと思う。そして、その中で、公務員の中でも高等学校出た公務員もいれば、また短大出た公務員もおれば、東大のエリートを出られた公務員もいられる。しかし、この公務員といえども、たとえば警官なんかを見ましても、大学出た人でも初めは平の巡査から始まる。公務員であっても初めは平の公務員である。学力があり、あるいはまたいろんな点があれば昇進も早いし、あるいはポストグラデュエートにおいても教育ができるというシステムがあれば、下からこれらた高等学校程度の公務員でも局長にもなれるという道が開かれて私はいいじゃないか。こういうことを考えますと、看護婦というものの考え方をもっと抜本的に考えて、そしてそのあとの教育というものをもっとどんどんとやって、いま正看護婦の資格をとったら永久に正看であって、正看よりもよく間に合うような准看もあるじゃないか、こういう状態であってはならぬわけでありまして、やはり正看といえども、今後いろいろな勉強過程、研究過程を経て、そしていい地位にどんどん抜てきされる、やはり男女同権でありますから、女でも男でも同じじゃありませんか。そういう観点からいえば、やはり大学出のそうした看護婦さんができて、これが院長以上の働きをしてもよかろうし、そして、必ずしも医者の下に看護婦が働くというような昔の考え方は一切切ってしまって、ほんとうに大学院出て進んでいかれるところの看護婦さんがあらゆる方面に活躍して教育に当たり、あるいは指導に当たり、そして看護業務のほんとうに大きな地位を獲得していくというような形をもっとぴっちりとつくることのほうが私は大事じゃないか。そうするためにはたとえば小学校を卒業した、あるいは中学校を卒業した、義務教育を終えた人でもそういうところにいけるようなシステムをぴっちり打ち立てて、たとえば夜間大学を出るなり、あるいは働きながらでも夜間大学を出て、そういう形にするには、もっと制度化をする必要がある。私は看護婦養成所だとかいうものでなくして、いままで立てられた学校教育の中にぴっちりと入れて、ほんとうにその教育を受けてその地位を獲得してもらう、こういう道をもっと開くならば、私はできぬことはないのじゃないかと思うのです。ですから、厚生省のほうとしても、大蔵省との折衝あるいは文部省との折衝の中で、看護婦さんをつくる、たくさん補給をする意味において、私立大学もまねてくれという意味でなくして、もっと大学教育を受けられるような、私立大学の中にもそういう看護科を新設できるような運動をするとか、もっと着実な方法が考えられるのじゃなかろうかということを考えますときに、私はもうとみこうみせずに、この問題に対してはひとつやってもらいたい。それに対してはいまの医学教育のようなミステークをしないようなやはり地位を獲得できるような、あるいはまた機会平等で、どういう人でもそういう地位に上がっていけるような新しい方法を考えてもらいたい。こういうぐあいに私は思うわけでありますが、こういう点につきまして、一ぺんとくと考えて、大蔵省と打ち合わせ、文部省と打ち合わせて、ほんとうに厚生省が中心になって動く、こういうようなことをひとつ徹底的にやってもらいたいと思うのですが、その点いかがでしょうか。
  169. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) ただいま先生、私見と申されましたけれども、私はやはりいま申されましたお考えというものは、非常に現実性と申しますか、今後の看護問題の整理ということについては非常に貴重な一つの御意見ではないかというふうに考えたわけでございます。その中でやはりわれわれも先生と同じような議論をかなり繰り返しております。その中にも、御指摘がございましたように、わが国のいろいろな養成制度というものが一定の免許試験を受けるまでのことということに非常にこだわりをもちまして、それで資格を取りましたあと、そのあとはいわばポストグラデュエートと申しますか、そうしたことについては特別な職種以外はほとんど大きな関心が払われていないといったようなところが実はこれらの身分制度につながりがあるように私ども理解をしてまいりました。したがって、いまのような形で一つのいわば看護の名称というものを総括をする。しかし、その中にその後の教育、われわれはいろいろ議論の中で、たとえば看護の中にもICU関係をやるような人もおりましょうし、あるいは子供や老人看護といわれるような特有な領域においてベテランになるというようなことも必要でございましょう、また精神衛生等の問題になればこれはまた格別の勉強を要する分野でございまして、いわばそういうような専門看護婦といったようなものがさらに育っていく道を、基本的なベースの上に立ちながら、さらに継ぎ足していく、こういったようなことが将来のいわば医療従事者、特に看警婦さんについての発展というものにつながるのじゃないか。われわれもそういう感じを非常に強くして、内部でも検討しておるところでございます。しかし、そういう方向に進めていくにあたって、いわば既存のいろいろな制度というものをどう整理するか、先ほど申しましたように、この方向については誤りのない方向というものを具体的に教育技術的にも可能なものを見出していく。それで初めて核心ができましたときにその全貌というものが具体案としてお示しできるのではないか。ただいまも先生指摘のような方向は非常に大きな整理のためのポイントになる点であろう、たいへん貴重な御意見として承ったわけでございます。
  170. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 それじゃこれから具体的に二、三の点をちょっとお伺いしたいと思いますが、看護婦さんの夜勤は準夜と深夜に分かれているわけでありますが、いずれも勤務交代時間は午前零時より午前一時前後である。こういうようなところでありますので、時間的にいずれも通勤の交通機関がもうぼつぼつとぎれてしまっておる時期に交代をしなきゃならぬわけであります。午後八時前後に通勤場所に到着をして、さらに勤務後も帰宅が不可能なために、病院でかりに睡眠をとっておる、こういうようなものはかなり実態的に多いんじゃないかと思うのであります。で、看護婦さんの勤務で夜勤の人を車で送るということは、これは当然予算上で、あるいはまた制度上に組み入れておかないと、やはりこれは病院の中でかりに睡眠をとるような状態では休まらないという状態が、これはまだ依然として続いてるわけでありますね。これは来年度の予算でこれをどんなふうに取り入れるお考えですか、この点をちょっと伺っておきます。
  171. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 深夜あるいは準夜の勤務に出ます場合あるいは終わって帰ります場合に、非常に交通関係が遠いような場合があって、夜一人で帰るわけにいかないような事情がございますこと、特に最近家庭を持たれた看護婦さんがふえたということから、従来と違ってこういう要望が非常に高くなってきたということはわれわれも十分承知いたしておりますので、来年度はいわゆる制度というよりも予算の上においてこういうことができますように、予算を要求をいたしているところでございます。
  172. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 非常にこれはいままでからもかなり問題になりましたけれども、これがなかなか実行されておりませんので、非常にいろんな意味でもこういうことも一つの大きな、何と申しますか、労働条件の向上のためにはどうしてもとらなきゃならぬ状態だろうと思います。これはひとつこの国立でそういうものをやってもらうことが他の診療所にも影響するわけでありまして、やはりこの働く看護婦さんの労働条件改善のためにはほんとうに大きな意味を持つと思います。これはもう何とかして実行してもらいたい、即時実行してもらいたいことの一つであります。  それからまた、その次に、先ほど石本委員からも触れられましたが、この国立病院なり国立療養所では全国で二百五十二施設があります。そのうちの三十九カ所の施設には保育所が建てられておるわけであります。これはパーセントにしてみますと非常に少ない。もう先ほどの石本さんの質問のときのやり取りを見てましても、もっとこういうものなんかは国立で少なくとも全個所にこしらえられるくらいの意欲があって初めて、私はまこれが累を及ぼして他の女性の働かれる場所に保育所を設置するということになるわけでありますから、私はこの設置の問題に対してもひとつ大きな前向きな方法で来年度の予算の中には具現をしてもらいたいと思う一つであります。この必要性はいまごろ何にも言うことはありませんけれども、この施設内の保育所の設備費がこれは十万円と聞いております。これは一カ所一年間で計上されてる金額です。これは実に少ないもので、十万円くらいの補助でもってこれをやるということではとても私はたいへんだと思います。そういうことでこの運営の実態はもう一つ調べてみますと、こんな状態になってるので私は非常に驚いたわけでありますが、これは職員と労働組合の手で共同に保育をやってる形をとられてるところが非常にたくさんあるというわけであります。そうすると結局、これは国が予算をとってその保育所を運営して当然であるのにかかわらず、これがやっぱりその職員と労働組合の手でやられておるというようなことになっては、これはもう実にお粗末ではないかと私は思うわけです。少なくともその働く労働条件をよくするという観点から見るならば、当然これはそれをやってもらわなきゃならぬというふうに思うわけでありますが、非常にこの点残念に思ってるところであります。で、最低一カ所当たり人件費は六十万円、設備費が二十万円、計八十万円ぐらいは必要だという報告を聞いてるわけでありますが、働く婦人とその子供さんを守る上から言いまして、私は潜在看護力の掘り出しという点から申しましても、十分なこの対策をされることがここで必要であると思いますが、予算的にはこれをどう処理されるのか、ひとつ伺っておきたいというふうに思うわけであります。
  173. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 病院、療養所の中の保育所関係につきましては、いままではただいま御指摘のようなかなり少額でございました。これもたしか四十五年度に初めてそういう設備についての芽を出したと存じますが、やはり御指摘のようにこの中身というものはもっと改善をいたさなければなりませんので、来年度は金額にいたしまと約三千七百万近い増額を要求いたしております。この中で、特に保育所の中では保母さんの人件費をどういうふうにカバーするかということが、子供の数の変動等によりましていろいろ御苦心のあるところでありまして、したがって、そういう保母さんの雇い上げというようなことについてこちらのほうでめんどうを見られるようにしたい、こういうことで骨子につきましてただいま申しましたような額の要求をいたしております。
  174. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 特に私はいま申したように、この保育所の運営というものに対してやはり厚生省のほうでしっかりとそうした問題を踏んまえて——私はきょうはそういうこともやはり大蔵省にも聞きたいと思いましたけれども、大蔵省の主計官おいでにならないようでありますから、どうかひとつそういう観点で厚生省のほうから特にそれを押し上げていただきたい。ちょうど大臣がおいでになりましたので、大臣にもひとついろいろなそういうような意味で、この国立病院あるいは療養所内の保育所関係を、その職員やら、あるいはまた労働組合の手で運営するようなことではなくて、しかも、それが一年間に一保育所に対して十万円というような情けないことじゃなくて、もっと運営をひとつ厚生省の手で、いわゆる病院の中ですっかりこれを運営していくような形で、潜在性の看護力を掘り起こしたり、あるいはまたほんとうに働く環境をよくする意味では、とくとくに私はお願いをいたしたいと思います。  それから、次に私は現在医療職日の俸給表は、総婦長を除いては、婦長、看護婦、准看護婦はそれぞれ一つの等級にくぎづけられている。この現状は、昇格制度が実質的に賃金改善の役割りを大きく果たしている俸給表のもとでは、きわめて私は不当な差別と言わなければならぬと思うわけであります。人事院は、総婦長にだけは一等級の上にさらに特一等級を新設しましたけれども、看護婦さん、准看護婦さんに対しては三、四等級だけで、昇格を認めていないのであります。すみやかに私は看護婦さんに対しては二等級、それから准看護婦の方に対しては少なくとも三等級への昇格の道を開くように措置すべきじゃないかと思いますけれども、その点はいかがでしょうか。
  175. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 先ほどもちょっと述べたかも存じませんが、特に私どもいま重点に置いておりますのは、そういう全体の俸給表の合理化の中で、特にかなり年数たたれた准看の方が四等級のままで三等級に進めない、これをまず突破口といたしまして何とか実現をしたい。これはかなり精力的に話を詰めているところであります。そういうことで御了承いただきたいと思います。
  176. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 それから、ちょうど保険局長がおいでになっておりますのですが、保険病院と言いますか、保険局の——京都あたりで言えば鞍馬口の保険病院というぐあいに、保険を主体にやっておられるところがあるのであります。あすこに私はちょっと、神戸のほうにも参りましたが、調査をさしてもらったことがあります。やはりあそこらでおやりになっている中にも、こうしたいまの保育所関係、あるいはそういうものは全然やられておりませんので、近所のほうで保育所を特約をして、そうしてやはり職員や看護婦さんたちと、多少それに労働組合が応援をしたという形で運営をしているのを見ました。そういう点から申しましても、私が特に感じましたことは、保険のワク内でこういうような問題をやろうと思うからこそできないわけでありまして、私は今後医療の抜本改正の中では、こうした看護婦さんたちの労働条件の改正をしたり、あるいはまたそれを教育をしたりという問題はせめて保険制度のワク外に出して、そしてやはり公費でやるなり、あるいはまたその他のいわゆる教育の機関でやる。それから、保育所の問題なんかに対しましても、何か独立採算の中に入れて、いわゆる医療費の中で支払われるというようなことのないようにしなければならぬということを考えるわけでありますが、こういうパラメディカルのすべての教育、こういうような教育というものは一切私はそういう保険制度の中からは出して考えるべきだと考えますが、そういう点についてひとつお考えをお尋ねしておきたい。
  177. 戸澤政方

    政府委員(戸澤政方君) 非常に大事な問題でございますので、直接保険庁のほうの問題でございますけれども、よく伝えまして、保険でもって解決すべき、診療費の中で解決すべき問題、それができない問題はそういうほかの手段をもって善処するような方向でやはり考えなければいかぬと思います。
  178. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 たいへんくどいようですけれども、つい保険診療費の中にこういうようなものが取り入れられているものが、ずっと調べてみますといろいろなものがあるわけですね。そこはひとつ一番初めに手をつけてやってもらいたいことは、やはり保険のいわゆる診療のワクからはほんとうに病気をなおすだけに持っていくというようなことを徹底的にしてもらって、以外のものはまた別で国費なら国費、あるいはまた別ワクでこれをやってもらうというようなことにしないといかぬと思うのでありますが、こういうものはひとつ、特に今度の医療制度あるいは保険制度というものをまくってもらうときには第一番目に考えてもらいたい、しなければならぬことだと考えるのでありますが、大臣いかがでございましょうか。
  179. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) ただいまの御意見は、私全く同感でございます。現に病院等でやっております看護婦の教養施設、学校、これらも医療費の中から出すという考え方は、これは間違っている、かように思いまして、来年度予算も大幅に補助を要求いたしております。将来は全額補助にいたしたい、そういう方向で進めてまいりたい、かように考えております。
  180. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 これはついででまことに申しわけないと思いますが、私はついでに申し上げたいことは、パラメディカルのすべての教育ですね、これらのものをいまの大臣のおっしゃいましたようなところに入れていただいて、そうしてほんとうに信頼のできる、レベルの高い教育を筋を通してやっていただく。都合によれば、私はいつも思っているのでありますが、そういうパラメディカルの総合大学というような形で、それが中学を、義務教育を終えた高等学校から順番にそういう教育を終えていく。そうして、そういう教育を、高等学校でやめた人はまた次の夜間のどこかの大学に行けるとかというような形で、機会を均等に与えられるような一つのシステムを打ち立ててもらって、そうして、ほんとうに医者も看護婦もその他パラメディカルのすべての人が一定の基準に従ってりっぱに教育をされていくというような一つのシステムをこの辺で立てていただかないと、いろいろな問題が解決できないような感じがいたします。特に、大臣もそのようなお気持ちでやっていただくようでありますから、特にそのことを大臣にお願いしておきたい。第一番目に手をつけるときにはそこらから手をつけていただいて、何となればその人が一人前になるには数年を要するわけでありますから、私はそういうことに先に手をつけなかったならばどうしてもだめだ。まあ私はきょうは国立病院、療養所にしぼって質問をさしていただいておりますけれども、こういうところを改善するときには、もうその問題がひっかかっているわけでありますから、国立の病院なり療養所というのが国の中のサンプルでありまして、私は最近国立病院なり療養所をあちらこちら見せてもらっておりますが、私はここ数年の間にやはり国立病院というものは非常によくなったと思います。これはやはり厚生省のほうでそういう前向きの姿勢があったからこそと私は思うわけでありますけれども、これをもう一歩徹底さしてもらえれば、私は将来日本医療のあり方の一つの基幹になる、柱になるものだと考えられますので、私は意欲をすぐって方向づけをして、私はあちらこちらを、国立病院なり国立のガンセンターなりガン研なりを見せてもらって、非常によくなった、あるいはそういうような、ほかにもまだ国立のいろんな諸施設、そういうようなものを見せてもらっても、私はよくなりつつあると思う。そこでもう一つ、いまのような区分けをして、きちっといけるような制度をここで推し立ててもらったならば、もっともっと国民の期待に沿えるんじゃないかというような感じがいたしますので、特にこの点をお願いしておきたいと思います。  最後にこの問題でお尋ねしたいのは国立療養所の統廃合の問題であります。これにつきましても、いままで何回となしにいろいろ問題としてお尋ねをしてまいったのでありますが、昭和四十三年度の国立療養所の特別会計法の成立の際の附帯決議はいま尊重されておるんでしょうか。これにつきましてちょっと局長のほうから。
  181. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) むやみにそういうことをやらないということにつきましては、慎重に検討してそれによってやっているつもりでございます。
  182. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 七項目にわたる附帯決議の中で、第三項には、国立療養所の大幅な整理統合はしない、こうあったわけでありますが、それはいま局長のおっしゃったとおりでありますが、この昭和四十三年以来の統廃合はどのようになっておるんですか。実際の問題をちょっと聞かしていただきたい。
  183. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) その後におきましては、たとえば新潟における統合、それから九州におきまして別府の三院、福岡における二つ、それから南九州に一カ所と、四十三年以後はたしかそれだけであったかと思います。あるいはもう一つ島根、松江の統合がございます。
  184. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 これは、四十三年度には兵庫の中央、これは兵庫県の中で行なわれて、これは二つのものが一つになってますね。それから、西新潟では内野と有明といいますか、これが二つが一つに統合されておる。それから東名古屋では梅森というのですか、八事、これが二つが一緒になっている。それから南九州では加治木と帖佐といいますか、西別府でも石垣原と別府荘と光ノ園、これなんかも一緒になっているようですね。それから南福岡では屋形原と厚生園、松江でも島根と松江、こういうようなことを考えてみますと、すでに十五施設の統廃合が行なわれて、八施設が廃止されてしまっているわけであります。これは大幅な私は統廃合ではないかと思うわけでありますが、それ以前にも東京の病院あるいはまた大阪の療養所あるいは福岡の療養所なども統合がありますけれども、国立療養所の施設数は縮小の一方をたどっておるように私は思うのでありますが、この点はいかがでございましょう。そして、また先ほども国立病院の責務等を述べてまいりましたが、このような縮小統廃合は、国会決議の、何かこう少し無視のようにも感じます。今後の統廃合計画は全面的に中止すべきのように思うのでありますが、むしろ先ほどからも申したように、国立がこの医療の中核をなしていくというようなことを考えるならば、特に私は統廃合をむやみにすべきでない、むしろ中止すべきだと思いますが、大臣、お気持ちはいかがでございましょう。
  185. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 先ほどから国立施設の使命というようなことをいろいろとお述べいただいたわけであります。先生も御承知のとおり、やはり今後のこの療養所、特に療養所の持つべき使命は、非常に私は従来よりもむずかしくなると存じます。特に重症患者といったようなものが、最後の拠点と申しますか、日本における結核の問題の非常にむずかしい部分を引き受けなきゃならぬ、こういう機能を私は持つという予感を前からいたしております。そういう点から、現状におきます国立療養所の機能というものを見ましたときに、ただいまおあげになりましたいろいろの点にも、お互いが一緒になることで、むしろ非常に機能的にも設備の上からもよくなる、こういったようなものが、非常に小さいものもそのままに残しておいて、それで新しいいろんなことをやっていけといわれましても、なかなか実態はむずかしいんでございまして、そういうような、むしろ結核対策自体の内容というものを強化しなきゃいかぬと、そういう観点から、むしろ慎重にこれを配慮していくべきものだと私ども考えております。ただ数を整理すると、そういった表面的なもので、これは考えてはいかぬと私ども考えておりますので、今後のやはり結核対策の推移というものを療養所の負うべき使命として一体どういうふうな機能づけをしていくのか。この点ひとつ時代の動きを考えながら私は進めてまいるべきだと、こういうふうに思っております。
  186. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 私はもちろんそういうふうな機能の内容からして統合される場合でやむを得ないという場合もあり得るということはよくわかるのです。わかるのですが、私がいま申し上げておることは、国のほうで、国の機関で療養所なりあるいはまた病院なり、こういうところでもって非常にむずかしい病気、あるいはまた非常に手のかかる病気、たとえば京都の例をとってみるならば、京都のほうでは、京都療養所の中には、いまの重心障害児を入れられた。宇多野の療養所には筋ジストロフィーとか筋無力症の患者を収容できるようにされた。同時に、やはりそれは京都の大学のほうでいまその方面の研究をしておられるから、そこへつくればよりいいだろう、また宇多野の療養所は京都の大学先生方がたくさん出ていられるから、そういう環境からいいだろうということで、私はそういうやり方に対して好意を持ったわけであります。私はそういうようなことから考えますと、せっかくある療養所を統合するということは、よほどの、いま局長がおっしゃったような特別の内容があるときには別といたしまして、私はむしろそれはこれをもっとまんべんに広がってあちらこちらにつくる必要がある。特にちょっと、少しは僻地であるからして、独立採算としては少しまずいかもしれないということで、それがほうられていくという傾向があるやに私どもは感ずるわけでありますが、そういうところにこそもっと金を入れて、そして研究もでき、いい施設をこしらえればそこへ医者が集まってくる。その医者がそこに定着すれば、そこからまたその周辺の無医村にも少しずつ行っていただけるというふうなことをするということが、私は無医村解消の最も大事な方法ではないかというふうに思うわけですね。いま先ほどもちょっと触れたように、大学をむやみにつくり、医者をよけいつくれば、無医村を解消すること明らかである。そういうことは幾らかは効果はありましても、私はそういう大学からたくさんの医者が出てくれば、よけい勉強するために中央で勉強できるところへ集まるわけでありますから、むしろ過密過疎がよけいできてくるというふうに思います。私はむしろそれよりは、局長の先ほど答弁の中にありましたように、国立で、国の力で地域的にうまく配分をしたところに、そしてそれに充実した研究もできるといい病院をつくるということが、それがひいてはその周辺の無医村解消に必ずや大きな影響を及ぼすだろう、こういうふうなことを考えますときに、私はいまむやみに統廃合を、いま申したような例を見てみましても、昭和三十年には百八十五あった、それが三十五年には百八十四になり、四十五年には百五十に減ってきた、こういうふうな表の出ておるのをいただいておるわけでありますが、いろいろ考えるならば、それがいま局長がおっしゃったように、一緒にしたほうが同じものでいいという場合もあったでしょう。しかし、そういう数にしては少し多過ぎる。いま私が申し上げたような観点からいえば、独立採算上おもしろくなくてももっと国から金を入れて、そしてそれをよくすることが、やはりいま言うような役割りにも大きな影響を及ぼすと私は思うのですね。ですから、そういう点で、私はいまの時点ではこの統廃合をむやみにやるのではなくして、あるいはまた、定員削減をむやみにやるのではなくして、むしろそれを前向きにしてもらって、そして、それをほんとうの国の医療をになう一つの柱として私はむしろ充実してもらうことのほうがより必要であり、僻地の無医村解消という意味においても重大なことだ。そういうことをひとつ踏まえて、いまの予算の審議に入る前に、どうかひとつ大臣、そこのところに重点を、力を入れてもらって、統廃合だとか人員削減ということにせずに、もっと前向きに大蔵省にはどんとひとつ請求をしてもらって、それの充実をはかってもらいたい、これが私の念願でありますが、どうかひとつその点についてお答えをいただきまして、また時間が迫っておりまし七、私資料をたくさんきょうは持ってきておりますが、一時間ということで、一時間をちょっとオーバーしておりますので、ここで終わらしていただきたいと思います。大臣の決意をひとつ。
  187. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) 国立療養所のあり方は、今後の日本医療供給体制のあり方というものにマッチしたものでなければならない、かように思います。いままでの統廃合計画がもし誤っておりますならば、そういう観点から是正をいたしてまいりたい、かように思います。
  188. 藤原道子

    藤原道子君 関連。ちょっとお伺いしたいのですが、たいへん国立病院もりっぱになったと大橋さんからおほめのことばがございまして、まことにけっこうだと思います。ところが公立病院等において医療従事者、特に看護婦さんが足りないために空床というのですか、ベッドを使わないでいるというようなところがだいぶあるように伺っておりますが、どういうような状態なんでしょうか、もしお聞かせ願えたら聞かしてほしいのです。
  189. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 看護婦不足のために病床を使わないのが全国で何ベッドありますか、そこまで実は詳しく調べてございません。しかしながら、御指摘のように、看護婦がいないためにその全体が開けないというのは、まあ一つや二つという数ではない、若干あると私は思っております。
  190. 藤原道子

    藤原道子君 いますぐお答えくださいというのは無理だろうし、言いにくいと思いますが、もしわかりましたら資料でもけっこうでございますからお聞かせ願いたい。その対策等についても伺いたいのですが、きょうは関連ですから、この程度にしておきます。
  191. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) それではわかります範囲を調べまして、お届けいたします。
  192. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 結核に対しては予防医学の発達、また治療医学も発達したという、そういう中で、もうすでに結核というのは過去のもので、もう解決をしたと言われるような方もあるようになりました。しかし、現実にその結核がどういうふになっているかということを考えてみると、非常に大きな問題が残されておるということを私も非常にいま痛感しているわけです。手術をして、そうして生き返ることができた。本来ならば生きてうれしかったと言えるはずなのに、いま、生きてしまったというようなことばで悩まなければならぬ人たちが生まれている。これがいわゆる低肺機能者といわれるたくさんの患者さんたちであります。そうして、その患者さんたちなぜこういうことになったかという原因を調べてみますと、これはまさに医療発達の段階においてつくられた犠牲者だと私は言うことがきると思うのです。私もせんだって清瀬の東京病院その他をおとずれまして、そうして、患者さんから直接お話を聞き、また、お医者さん、看護婦さんなどからお話を聞きました。こういう方たちのお話を聞いたとき、ほんとうに力一ぱいここに来て訴えたいという気持ちたくさん持っていらっしゃると思います。だけれども、なかなかそれが体力的にもできないということで、私はどうしてもその患者さんたちの心からの願いを代弁して質問したい、そう思いました。本日はそういう患者さんたちが、たいへんな中からたくさん傍聴に来ていただいおりますし、また医療行政の貧困の中で、良心的にいい医療をしたいと言いながら悩んでいらっしゃるお医者さんや、また一生懸命苦労していらっしゃる看護婦さんたちも来てくださっています。私はそういう方たちに、きょうはまた大臣も御出席いただきましたことですし、やはり何よりも重い人の命というものをどう考えていただけるか、そのことを真剣に考えて、私に質問させていただきたいと思うのです。  まず第一にお伺いしたいことは、こういう低肺機能者が現在全国でどれくらいいるのか、そういう調査をされたことがありますか。またこれからの推移として、今後こういう方たちがどういう傾向をたどっていくというようにお見通しになっていらっしゃいますか、その点についてお伺いしたいと思います。
  193. 加藤威二

    政府委員(加藤威二君) 低肺機能者の調査でございますが、昭和四十五年十月に身体障害者につきまして実態調査を実施いたしました。そこで低肺機能関係障害者についても調査をいたしたわけでございますが、全体で四級以上の低肺機能の身体障害者が全国で二万三千名でございます。そのうち一級の程度の障害の方、これは呼吸機能の指数が一般の人に比べまして二〇%以下に落ちている、こういう方々でありますが、これが千名、それから三級該当者、これは呼吸機能の指数が二〇%から三〇%までに落ちているという人が三千名、それから四級の、これは呼吸機能の指数が三〇%から四〇%という人々が六千名、なお四級以上ということはわかっているけれども、その障害程度が不明というのが一万三千名おられます。で、合計二万三千名、こういう実態になっております。こういう方々の将来というものにつきましては、これは非常にそういう低肺機能でございますので、将来の生活その他についてはなかなかたいへんだろうということが想像されるわけでございます。
  194. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それで、そういう低肺機能者の方々、いろいろな段階があると思いますけれども、それぞれ一様に自分たちも何らか自分たちでできる仕事をしたいという意欲を持っていらっしゃるわけなんですね。で、そういうふうな方たちの、低肺機能者の労働能力を含めた総合的な調査研究——それに対する研究というものをいままでお持ちになっていらっしゃったでしょうか。
  195. 加藤威二

    政府委員(加藤威二君) 私ども社会局の立場でございますので、医学的な総合的な検討というのはいまのところ残念ながら完全に行なっていると、そう申し上げるだけのものはないわけでございますが、しかし、全国に一応二十九カ所のそういった低肺機能その他の内部障害の方々の更生施設をつくりまして、現在千四百名ばかりの方々が入っておられますけれども、そういうところでリハビリテーションという、一応そういう場を提供しているというのが現状でございます。
  196. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 社会局のほうではそういうことかと思いますけれども、それじゃ医務局のほうでしょうか、医学的な立場から、こういう低肺機能者の方たちが医学的に見てどういう程度でどういう程度の仕事ならできるというようなことで調査をなさった総合的な調査、そういうようなものをお持ちでいらっしゃいますか。
  197. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 直接の労働条件というものによって患者の分類をしたと、こういうふうな資料は、特別な調査はいたしておりませんけれども、医学的に見ますと、たとえば肺活量というものが三〇%以上というものであれば——それはまあ程度によっていろいろでございますけれども、一定の保護的な条件があればある程度の仕事はできる。その場合には当然——専門的になりますが、一秒率というような別の指数もこれの中に加えるという配慮も必要でございますが、そういうことで一応医学的にはそういうことが可能である。それから、肺活量のパーセンテージが二五程度であれば、これは保護的な状態であってもなかなか仕事につくということはむずかしい。しかしながら、家庭内で生活するということは可能である。しかし、それをさらに下回るような場合であれば、これはむしろ医学的なケアが必要である、こういうふうな一応の専門家たちの一つの判断というものがございます。そういったものをかりに私ども国立病院だけに当てはめてみますと、ただいま申しました三〇%以下というものが——毎年一定の時期に調査を行なっておるわけでございますが、全体二万七千百四十四人の中で千八百七十四人というような数字が三〇%以下と、こういうふうになっております。そういったことから、いま申し上げました基準と組み合わせていけば、大体の推測というものは国立病院に関してはできる、こういう状態でございます。
  198. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 先ほど二十九カ所で内部障害者の更生施設で千四百人いま入っているというようなお話がございましたけれども、この千四百人の中で低肺機能者のどの程度の方たちが現在入って、そうして作業などの訓練ができるようになっておりますか。
  199. 加藤威二

    政府委員(加藤威二君) その内部障害者の更生施設に入っておられる方、これは主として結核の関係の方々でございます。もちろんそのほかの方も若干おられます。心臓等の機能の低下された方もおられますけれども、主として結核関係でございます。  それで、障害程度でございますが、これは昭和四十五年十月一日現在でございますが、一級が五十六名、それから三級が二百四十二名、四級が二百三十五名、あと五級が百七十五名、六級二十一名、その他七百三十一名、こういうことでございます。  それから、ちょっと補足して申し上げますけれども先生の先ほどの御質問で、身体障害者、結核回復者の適職について何か研究みたいなものはないかという御質問もあったかと思いますが、これは労働省の職業安定局で昭和四十五年度——これは毎年やっておるようでございますが、結核回復者の適職研究に関する報告書というのを労働省のほうでもつくっておるようでございます。で、われわれ今後こういった問題につきましては労働省ともよく連絡をとってまいりたいと思います。
  200. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 いまおっしゃいました四十五年で一級が五十六人という数、その一級というのは低肺者で、たとえばさっき言われたような指数が二〇%以下という、その人たちのことをおっしゃっているんですか。
  201. 加藤威二

    政府委員(加藤威二君) そこのあれが必ずしもはっきりいたしません。この一級という中には、非常にこれはレアケースだと思いますけれども、内部障害がありながら同時に外部的な身体障害があって、そっちのほうが一級であるという場合もあるかもしれませんが、そこのところははっきりいたしておりません。
  202. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そこがはっきりしていないとごまかされちゃうわけなんですよ。私はいま低肺機能者の問題を聞いているわけなんです。その低肺機能者が、そういう内部障害者更生施設があります、そこに現実に千四百人入っていますと言われれば、その人たちがみんな入って、そこで何とかやっていけるように見えるわけなんです。しかし、低肺機能者に限って私は質問をしている。そうして、その低肺機能者でも、先ほどおっしゃいましたように、労働省の調査によりましても、また東京病院の植村先生なんかによりましても、三〇以下だったらまず労働はできない。病院から出て、そうして働くなんということはとってもできない、ほとんど病院からは出せないというような状態なんですね。そういう人が一級五十六名います、三級二百四十二人いますなんと言われると、これはごっちゃまぜになっちゃって、問題が全然すりかわってしまうわけですよ。だから、私が聞いたのは、こういう低肺者の数が先ほど言われましたね、二〇以下の指数の人が千人、二〇から三〇以下の指数の人が三千人と、こういうたくさんいるという人たちがどういう施設があってどういうふうに守られているかということを伺ったわけなんです。
  203. 加藤威二

    政府委員(加藤威二君) 確かに御指摘のように低肺機能が一級あるいは三級程度になりますと、これはなかなかからだを動かせないというような方が多いと思います。ただここに私どものほうの調査では、一応内部障害者の更生施設ということになりますと、やはり内部障害者が大体多数入っておられるということでございまして、ただその一級が五十六人というのは、確かにそこのところが若干矛盾があるといいますか、更生施設というのはある程度リハビリテーションで若干の仕事もやるような施設でございますので、そうすると全然動けない人がそういうところに入っているかどうかという問題になるわけでございます。そこのところの調査が若干不十分でございますが、一応私どもの考えといたしましては、非常にそういう重度のほとんどからだを動かせないという程度の低肺機能の方に対するそれをどうするかという問題は、やはり今後さらに真剣に考えていくべき問題だと思います。
  204. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 私のほうで調べましたら、現実にこの低肺機能者の方たちが働きたいという意欲があっても、その方たちに適応したような施設は全国にありません、私のほうで調べましたら。そういうような状態だから、いま患者さんたちは、決して遊びたいというわけではない、なまけたいというわけではない。働きたいんだけれどもそういう施設がない。そういう施設でなくほかへ出れば死んでしまうということのために非常に悩んで、いろいろといままでも厚生省と交渉なさったり、陳情もなさっていらっしゃると思うんですね。そういう意味で、調べ方としては、役所のほうではこういうふうな調べ方をいたしましたからというのではなくて、こういう真剣に生きるということを考えている低肺機能者の方たちが、この人たちは一体どの程度の仕事ができて、どういう施設があれば生きていけるんだというような、そういう低肺機能者の患者さんたちの立場に立って、そして、生きるということを保障されるような医療行政であるべき厚生省立場としてのそういう調査を私はしていただきたい。いままでできていなかったからけしからぬというだけでは積極的になりません。そういうことができなかったということも、いままでのことはしかたないとして、今後そういうような総合的な調査を早急にしていただきたいという考えに私は立って質問しているわけなんです。  大臣もいらしていますので、ぜひお伺いしたいと思うんですけれども、私がいま言ったような、そういう患者さんたちの立場に立った調査をぜひしていただきたいということについて、どうお考えになっていらっしゃるか。それからまた、低肺機能者というのは決してもう全体大きな問題になっているというわけではございませんが、しかしこの方たちは、ちょっとした気候の変化、温度が低いとかいうようなちょっとした問題でも、すぐかぜをひいて、それがこじれてというように直接死に結びついていく、そういう非常に危険な、毎日が死と直面した立場に立たされていらっしゃるわけなんですね。そういう立場に立って、いま私が申し上げたような総合的な調査をぜひしていただきたいということについての御答弁をお願いしたいと思います。
  205. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) 身体障害者の方々のリハビリ、同時に仕事をなさりながらということが私は非常に必要だと存じます。したがいまして、その身体障害のありようによって職業も違えば、あるいは働く環境も違う。あるいは医療を加えながらということも必要であろうと存じます。ことに低肺の方々はなおさらさようであろうと存じます。したがいまして、身体障害者の中の低肺の方々はどういうようにやったらいいか、心臓障害の方々はどういうふうにやったらいいかというようなことをさらに今後詳しく調査をし、検討を進め、そして適当な仕事を適当な場所でやるという方向検討いたし、進めてまいりたいと、かように思います。
  206. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 今後は当然そういう立場で積極的にお進めいただきたいと思うんですけれども、総合的に全国的に大規模な徹底したということがいま無理でありましても、たとえば東京病院なんかではこの問題が非常に大きくなっておりまして、植村医長さんなんかがこれについていろいろ問題を提起していらっしゃるわけなんですね。そういうふうに個々の病院やお医者さんの中で、一応の中間的なものであろうと、調査をして、そして、こういうふうにあるべきだという方針が出されているものについて、一応いまの段階でもこういうものを取り入れて、そして、何らかの方針を立てたいというふうに考えていただけるかどうか。考えていただけるかどうかじゃなくて、ぜひ考えていただきたい。将来の根本的なものの前に、当面そういういまできておるものをまとめて、当面の何らかの対策を立てていただきたいと思うんですけれども、いかがでございましょうか。
  207. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) さしあたってすでにそういうことのやりやすいところからとおっしゃることも、これはごもっともだと存じます。東京療養所につきましても、私まだよく承知いたしておりませんが、あるいは局のほうで承知しておるかもわかりませんが、よく事情を調べさせまして、そして、手早くやれる問題は手早くやってまいりたいと思いますし、特に予算を要求する必要があれば予算も要求いたし、一歩一歩でも早くやってまいりたい。全国の調査、全国規模の調査をやらなければ進められないということでもありませんし、またそれではおそいというふうに思います。
  208. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それから、この問題に関しまして、いろいろ厚生省にお伺いしたり、御相談に乗っていただいたりというようなときに、一番患者さんがお困りになる。私もきのういろいろ伺ってみたら、それぞれたいへんお困りになっていらっしゃるようだったのです。たとえば結核という病気に関しては医務局だ。しかし、病気というものはなおったのだという立場に立つと、今度は社会局の立場に立つとか、公衆衛生局の立場に立つとかということで、厚生省の一体どの部局がこういう問題を責任を持って扱う窓口になっているのかということで、たいへん困るわけなんですね。で、その問題について大臣はどういうふうに考えていただけるでしょうか。こっちへ行けばここじゃない、あっちだと言われるし、あっちへ行けばこっちだと言われるし、結局たらい回しになってしまって、責任のあるところがわからないのですね。いま現在だったら、責任のある窓口として私たちはどこへ伺えばいいのか。それとも、なければ、今後どういうふうにしたいと考えていただけるかお伺いしたいと思います。
  209. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) これはひとつ社会局のほうにおいでいただいて、そうして、御相談をいただきたいと、かように思います。ただ治療中の方は、これは治療のほうが重きをなしますけれども、伺いますと、いろいろな保護は加えなければならないけれども、もう治療としては済んでおるという方は、やはりリハビリでございますから、したがって、厚生省社会局更生課のほうで扱わせたいと、かように思います。
  210. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それじゃ次にお伺いしたいのですが、低肺者が急にきのう、きょうパッと出てきたというわけじゃなくて、そういう結果出てきたわけなんですけれども行政担当される当局として、こういう低肺患者というものが出る、こういう問題が起きるということを予測されていたでしょうか。もし予測されていたとすれば、いつごろから予測されて、いつごろからこういう問題はたいへんになるなというふうにお考えになっていたでしょうか。
  211. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 結核の治療につきましては、長い経過がございますけれども、たとえばこの低肺機能の原因になっておりますいろいろの外科的治療というものは、歴史的に見ますと、かなり古くから、戦前から外国では行なわれ、またわが国においても戦前から行なわれておったのでございますが、その後化学療法等が出てまいりましたけれども、必ずしも化学療法で十分な治療ができない場合、ケースによって積極的な外科療法を加える。この場合に、やはり外科療法を加える場合に、病気はなおしたけれども、その健康をそこなっておるということでは、これは医学の立場からは全く問題にならないわけでございますので、われわれ専門家意見を聞きましても、外科の適応療法をきめるときには、肺活量その他の検査の結果大体一五%ないし二五%——せいぜい二五%減のところまで見込みが立ちませんと、積極的な治療は施しがたい。こういうようなことで個々のケースにはやってまいっておりますけれども、やはりその途中でいろいろの合併症が起こる、あるいは肋膜炎等によって癒着が予想以上に激しくなる。こういうようなことでいわゆる低肺機能というような結果が起こったわけであります。  具体的にお尋ねのこの問題につきましては、私の局が担当いたしております結核予防審議会というのがございまして、これが内部疾患をいわゆる身障法に入れる認定の基準をひとつきめてくれないか、こういう御相談を受けて答申申し上げたのが三十九年の七月でございます。
  212. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 じゃ、そのときからこういう問題というものが起きるということは予測できたわけですね。
  213. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) いつの時点からという、医学的な学会等の論議等の記録を厳密に検討いたしますと、やはり低肺機能という問題はいつごろから社会的にあるいは学会的に取り上げられたかということは言えると思いますが、さっきお答えした私の気持ちの中にはもう当初から外科的な積極療法を加えるとするならば、低肺機能の問題はやはり問題の根本にあったと、こう見るべきだと思います。
  214. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 確かにそうだと思うのです。そうだとすれば、それからいままで相当時間がたっているわけですから、当然私はその間にこういった問題についての対策というものも立てておかれるべきではなかったか。いまの時点になってもまだこれが根本的な調査というものも行なわれていないし、施設というようなものもできているわけではない。これからそれじゃやりましょうというお答えでは非常に行政当局としての厚生省責任としても、私は怠慢ではなかったかと言いたいわけなんですよね。そういうことですから、いままでのおくれを取り戻す立場に立っても、やっぱりこれから緊急に積極的に対策を立てていただきたいと、そう思うわけなんです。私も、先ほどおっしゃいましたけれども、労働省のほうでお出しになっています身体障害者の適職研究に関する報告書というものを読ませていただいたわけなんですけれども、ここで言えば五〇以上だったらまあまあだ。四〇〜五〇、重労働はできない。三〇〜四〇ではかなりの制限を受ける。三〇以下ではまず労働力がない。だから、一般労働市場への就職あっせんは適当でなく、特に保護された職場または保護雇用施設で就業せざるを得ないというふうに認めていらっしゃるように、三〇以下ということになれば、一般の中に入るということはたいへん死と直面する困難性があるわけなんですね。そこで具体的に、私はいまできるという問題で、大臣にもぜひ責任を持って何とかしていただきたいと思うわけなんですけれども、たとえば、東京病院で例をとってみますと、東京病院でも現在低肺機能で退院不可能だと認定された者は三十四人いらっしゃるわけなんですよ。ところが、これは医学的には病気はなおったのだということで、退院しなさい、こういうふうに言われるわけなんです。そうすると、退院してしまうと、それこそ、いざというときに呼吸困難になって、酸素欠乏だということになれば、それこそ十分も離れちゃっていれば、それが死につながっちゃうということになるわけですね。だから、結局、退院しなさいということは、それはもう死んでもしかたがないんだという、死の宣告とひとしいということになるわけなんです、患者さん自身にとっては。もうそれが一番いま困っていらっしゃるわけです、自分の命にかかわることで。いろいろ私もお話を伺ってみましたら、たとえば具体的にお名前をあげてもいいんですけれども、たとえば一三の方ですね、三〇以下どころじゃない一三の方、一七%の方、そういう方に対しても退院しなさい、退院しなければベットが回転しませんというようなことで、強制的な退院というのが行なわれているわけなんですね。まあそう言うのでしかたなく退院させられた。そうしたら倒れちゃった。また今度は入院するという繰り返しが、それが死んでしまうというケースになってしまいます。そういうことになりますと、これはたいへんなことなので、いますぐやっていただける問題としては、そういう方たちに強制退院をさせるということは、非常に残酷だと思うんですね、死ねということを言われるのと同じだから。だから、強制退院は、そういう方たちに対してはさせないでほしいということを私はお願いしたいと思うんですけれども、大臣、どうお考えになるでしょうか。
  215. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) いま御指摘のように、肺活量指数が十幾つだというような場合でございますと、先ほど来のお話しにもしばしば出ておりましたが、これはむしろ医学的に見て退院させられないケースではなかろうかと思います。したがいまして、先ほど来、いろんな数字があげられておりましたけれども、われわれのほうの中の調査でも、東京病院には三〇以下で、現在はマイナスでございますけれども、そういう方が三十四人いると。おそらくこれは、そういうメディカルなサイドから見ても、いろんな機構上の条件その他があると思いますけれども、やはり退院がさせられないと、そう判断しておるものと私は理解をいたしております。
  216. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それじゃあ、そういう退院を強制するというようなことはないというふうに考えていいわけですね、重ねて、すみませんが。
  217. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 治療機関でございますから、やはり医療というものを中心にして考えていく。しかし、その場合に、先ほど来のお話のように、やはりほかに行っても可能のような場合、あるいはそういう場所と、医療のケアというものが、万万一の場合がありましても安全にできるんじゃないかと、かような判断があり、そういったような条件が整っておれば、これは場合によって退院させられるということは決して不可能でもないし、場合によっては御家庭その他の御希望もあるから、ですから、そういうことを一律にやらないということはどうかと存じますけれども、先ほど来申し上げたように、そういう条件がないということであれば、やはり医学的には、なかなか退院させることは困難な実態でございまして、また、そういうことで差しつかえないのではないか、こういうようなことを申し上げたいと思います。
  218. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 たとえば、東京病院の植村内科医長さんもそうおっしゃっていますけれども、結核予防会の回復者の相談室で、ずっと追跡調査を十年間されているわけですね。その十年間されている中で、肺機能が三〇%以下の低肺者という方が外へ出て行った場合には、半数が十年間で死んでいるわけなんですよね。それがちゃんとした病院にいるとか、また、いまおっしゃったような、ほんとうに保護されるような、いいアフターケアでもあってそこに入ってられればみんな生きていける、こういうわけで、実績が出ているわけなんです。ですから、いまおっしゃいましたことばで、たいへん患者さんたちも喜ばれると思うんですけれども、みんな、そういうような人たちに出て行けと言うことは、当然厚生省立場としても言えないし、そんな指導はなさらないということで、精神的にでも幾らかは気を楽にして、一日も早く回復していただけるということで、たいへんありがたい御答弁だったと思います。  それから、もう一つまた問題なんですけれども、そういう方たちに出て行けと言わなければならないというのは、病院側としてもいろいろと御苦労もあると思うんですけれども、東京病院にあいた病棟がございますですね。この間私も行って見てきました。それはもう何年も使わないというのじゃなくて、ちょっと手を入れれば使えるという、そういう病棟でございます。ですから、そういう病棟を、ちょっとスチームを入れて——パイプは近くまできていますから、ちょっとパイプを通して、そうして病室にできるようにして、その病棟を低肺者の病棟として開放してほしいということを私言われました。私はそれは当然——そうして外に出て行くという施設もないときですし、いまおっしゃったようなお考えから考えても、当然なことだと思うわけなんですが、そういうことについてお伺いしたいと思います。
  219. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 私は具体的には、その東京病院の全般としてのいろんな条件を十分承った上で判断すべきだと存じております。と申しますのは、低肺機能の方を一カ所に集めるということは、設備の点もいろいろと考慮いたさなければなりません。特に温度の下がり方というものは、私たち健康な人に比べると急激に響いてまいります。そういう条件もあれしなければなりませんし、肺性心でございますとか、いろいろな状態に立っておられる方でございますから、いわば治療という、最も安全の期せられるような体系の中に置いておかれるということをやはり主眼にすべきでございますので、はたしてそういうことが、古い病棟を使うことによって可能かどうか。看護力の問題その他、いろんな問題がございますので、そこはひとつ専門的な立場で、病院の意見もよく聞いた上で判断さしていただきたいと思います。
  220. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 この病棟については、せんだって患者さんたちが厚生省へ行かれましたときに、もしも医学的に必要ならばその問題について干渉しないという御答弁があったということを聞いて帰られて、私も報告を承ったわけなんです。それにしても、いまおっしゃいましたように、たいへん温度が下がるというようなことではまた故障が出るといけないということなので、当然、そのあいた病棟に設備を、ちょっとお金をかけていただくということで開放していただければ、その三十何人という方たちが、安心して入れるということになるわけなんで、これは新しい病棟をまた土地をつくって建てるという問題とは違って、わずかな費用でできるわけで、具体的な解決の一つの方法だと思うんです。そういう問題は早急に御検討いただくと一緒に、それについての費用というものも大した費用にはならないと思いますので、ぜひここのところで何人かの人たちを救うということで奮発していただきたい、臨時に支出していただきたいという気持ちで、大臣、何とかいいお答えをしていただきたいと思います。いかがでございますか。
  221. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) 私、具体的によく把握いたしておりませんので、よく事情を聞きまして、場合によれば東京病院の院長なり部長なりと当局とよく検討をいたさせまして、その結果判断をいたし、できる限りのことは何らかの方法を講じたい、かように考えております。
  222. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それじゃ、ぜひ早急にその問題を、皆さん期待していらっしゃいますし、これで何人かの命が安心してということになれば、たいへん私もうれしいことなのでぜひ早急にそれぞれの御調査をいただいて解決をしていただきたいと思います。  それから、この低肺機能者の問題を考えますと、どうしても関係してくるのが心臓のほうとの関係でございますね。そうしますと、肺性心だとかいろいろの問題が出てまいりますが、こういうふうな調査になりますと、相当な医学的な立場からの調査も必要になる、こう思うわけなんですけれども、そういうような肺と心臓という問題と関連させての調査とか——いままでなさったというようなものがありますでしょうか。それともないとすれば、その問題について今後どのようにお考えになっていただけるか、それから、そうするためにも予算というものが伴うと思いますけれども、その予算措置はどういうふうになっているのかお伺いしたいと思います。
  223. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 肺と心臓との関係ということでございますけれども、先ほど私、肺性心ということばを使ったわけでございます。いわゆる肺による心臓の疾患、この問題は実は調査といいますか、全国的にどういう数であるかということはいま直ちにお答えできませんが、少なくとも肺疾患の担当者としてはかなり前から肺性心の問題は非常に注目をされてきた問題でございます。したがって、学会の論文その他をいろいろとめくりますれば、そういう報告は相当かなりのものを集め得ると思います。ただ、そういったもののためには当然国立の療養所、結核担当の方でも先ほど来申しましたような低肺機能というものを現にかかえておるわけでございまして、そういう心臓との関係も含めましていろいろな測定なり、個々の患者さんについてのいろいろな検査なりということが十分やれるようにしなければならない。こういう点はわれわれもやはり今後の結核療養所のさらに重点的になる機能の一つであると考えておりますので、今後とも努力は続けたいと思います。また、さような状況から、今後呼吸器の障害といったものも幅広く国立病院や療養所の中でも共同してさらに研究していくという必要性をわれわれも痛感をいたしております。すでにことしから国立病院も入る、これはガンセンターも入っております。ガンセンターも御承知のように肺のいろいろな問題になってきますところの呼吸器の障害あるいはそれによる心臓の問題というものもあるわけでございますので、そういう国立のガンセンターをも含めた療養所、病院内に共同研究班をことしからつくりまして、研究の打ち合わせをやっておるような次第でございます。そういう方向で私どもはさらに医療技術的に見ましても十分こういうものが行き届きますような努力は続けたいと思います。
  224. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 いま承りましたが、それで予算的な措置、裏づけとしてどういうふうに進めていますか。今年度の予算ではどういう要求なさっていますか。
  225. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 特にこの問題だけの肺性心とか、心臓と肺のためだけに幾らということは私どもとしては計上いたしておりません。ただ先ほど来申しましたように、結核療養所というものにいろいろな機械等を整備するという場合には、当然いままでもそういう呼吸器の検査、いろいろなものの整備ということを重点にやってきておるわけでございまして、したがって、そういうものの一環としてさらに今後新しいそういう肺性心等の問題にも必要な機械があれば次第に整備をしていく、こういうつもりでございまして、これはいわば療養所の基本的な機能の一つというふうに考えていただいていい問題だと御理解いただければありがたいと思います。
  226. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そうしますとね、先ほども伺ったわけですけれども、一応この低肺者というような問題がいまちょっと日の目を見そうになってきたところなんですけれども、もうずっと谷間で日が当らなかったわけですよね。その人たちはいまこういうふうに真剣に命の問題として取り上げてきているし、私も国会でこうやって質問するという立場に立ちました。それで先ほどは今後調査もしたいとおっしゃるわけですね。調査もしたい、今後やりましょうとおっしゃるけれども、いまの答弁を伺えば、この低肺機能者に対してというものはないわけですね、具体的にこれについて。結局全般の中で突っ込んでやられているということになるわけでしょう。そうしますと、やりますとおっしゃったけれども予算もない。具体的にそれじゃどういうふうなプログラムでやっていくかというプランもないということになれば、おっしゃったけれども具体的には何もないということになっちゃうような気がするのですけれどもいかがでしょうか。
  227. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 私が申し上げましたのはいわゆる対策として——社会的ないろいろな対策とかそういったようなものについては私の範囲外でございますから、そうじゃなくて国立療養所の中で、こういう先ほど来お話がございました肺性心のような問題の研究も進めたい、あるいはこういう方々のさらに機能の検査というものをもっと充実させていく、いろいろな問題がたくさんあるわけでございます。それはむしろいま療養所の置かれた立場から言いますと、療養所の本来もうプロパーに取り組むべき問題であるし、私は医学的に考えておりますので、したがって、療養所のいろいろな整備、機械の整備というようなものの中には当然それは含めて考えていきます。こういうことを申し上げたわけでありまして、そのほかに看護という問題から見ましても、たとえばICUのようなものも必要かと存じます。そういったものは、やはり今後全体の予算の中でわれわれはそれぞれの実施計画の中においてやってまいりますので、その中で十分配慮していきたい、こう考えております。
  228. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そこでまた区分がわからなくなっちゃって、私はしろうとで困るのですけれども、そういうような低肺の問題について調査をしましょうという予算も組まれるというときに、そういう問題について予算化して、こういうふうな調査をしたいというようなところはどこの責任で進んでいくのですか。
  229. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) 先ほど申し上げましたように、もう病気はなおった、そして低肺のために療養所みたいなところにおりながら何か仕事をしていくというようなことにつきましては、これは社会局の更生課の仕事でございますから、それを中心としてやらしてまいります。低肺と心臓の関係とか治療という面につきましては、これは医務局で医療という面からやってまいります。で、この後者のほうは医療担当している以上はそれもすでにやっておりまするし、新しいこれからの学術の進歩等に伴って必要な機械なりそういうものは補ってまいります、こういうように答えておりますので、いま伺いましたところによりますと、いま欠けているのはまあリハビリ、御承知のとおりそれを兼ねた仕事、それをやってもらいながら、リハビリかたがた仕事をやってもらうということは、これはまあいままであまり及んでいなかった新しい仕事であろうと思いますから、これは手近なところから始めまして、そしてできたら全国的にも及ぼしてまいりたい、かように考えております。
  230. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そういうふうに全国的にいくまでに——当面の問題はすぐに考えていただくとして、今後全国的にどれだけ要るかというような状態調査しなければならないわけですね。そういうものを大体どれくらいの期間をもって、今後といったら長いわけですから、具体的にこれくらいのめどでもってこういうふうに調査をして、その結果として出てきたものについてこういうふうな施設まで伸ばしたいという、こういう全体の見通しを持ったプランというものを考えていただきたいと、こういうわけなんですけれどもね。そういうような問題を考えていただくのにどれくらいの時間というものがかかりますのですか。
  231. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) 先ほども申し上げましたように、一番手近な問題は東京病院をモデルにして考えればどういうことができるであろうかということをまず考えまして、こういうことならどのくらいかかるであろう。どういうふうにやっていこうということでありますから、いま全体の計画はすぐ私頭に浮かんでくるわけではございませんし、係にも浮かんでいないと、かように思います。したがいましてまず手始めに、具体的に検討を早く進めて、これならこういうようなやり方をやっていけばいいんじゃなかろうか。そういう計画が立てばそれをもとにしてやってまいりたい。かように存じますので、一年になるか、二年ぐらいになるか、そこまではもうちょっとお許しいただきたいと思います。
  232. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 たいへんむずかしい問題みたいですけれども、また、そういうわけで国としてもやってもらわなゃやならない。それから、自治体としても、また民間の療養所なんかについても、お互いに協力し合ってそういうふうな患者さんたちの立場に立った施設というものもつくってほしいと思うわけですけれども、東京都で伺ったところによると、内部身障者収容授産施設というような考えをお持ちになっていらっしゃるということを伺ったわけなんですけれども、東京都でもそういうような考えをお持ちになっているとすれば私はたいへんけっこうだということで、ぜひそれを積極的に進めるようにというふうに厚生省としても考えていただけるだろうと思うんですけれども、当然そうだと大臣おっしゃると思いますけれども、いかがでございますか。
  233. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) 私が申し上げました研究の中身は国だけでやるのが適当なのか、すでにこういう団体がある、あるいはこういう機構がある、その中でやってもらうのがよろしいか、一諸にやるのがよろしいか、全部込めまして検討さしていただきます。
  234. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それで現実には東京ではそういうふうに考えているということになれば、やっぱりそれは患者さんにとっては非常に切実な要望でもあるし、私はそれだけでもとにかくやれるものならやってというふうに大臣のほうからも積極的な意思表示をしていただければ、私ももうそこで大いに東京都がんばってほしいという気持ちでそういう質問をしたのですけれども、そういうふうに大臣も考えていただけると思うんですが、それでよろしゅうございますか。
  235. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) さように御了解をいただきたいと思います。
  236. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 ありがとうざいます。  それでいろいろ聞きましたらやっぱり土地の問題がたいへんで、予算としても第一年度土地を買うお金ということのように私伺ったわけなんですよ。そういうことを考えましてもやっぱり国として、たとえば国有地だとか、東京病院とか、一ぱい土地があるわけです。あの辺を見ますと、ものすごくたくさんの土地がある。それは、土地は何とか国のほうで世話してやろうということになれば、土地の問題はひとまず解決して、次に建物だというふうに一歩前進するわけなんで、その辺のところ厚生省としても土地の問題を積極的に検討していただいて、援助するというようなことを考えていただけないかどうか。その辺のお考えはどうでしょうか。
  237. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) まあ具体的に、新しい土地のところに新しいものをつくらなければならない。私は具体的に知りませんし、まだだれもそこまで研究していないだろうと思います。先ほどおっしゃいました、病棟のあいているところを使えばそのほうが早道であろうということもあります。また近間のところでそういう施設に利用できるところがあればということでございますから、すべてを含めまして− しかし小笠原委員、非常に事情に御通じのようでございますから、具体的に、こうこうこれだけの材料を持っておるということがございましたら、また後刻局のほうにもお示しいただきまして、それも参考にさせてやってまいりたいと思います。
  238. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 大臣たいへん積極的な御意見いただきましてほんとうにありがたいと思いますけれども、私のほうといたしましても実態をいろいろ調べまして、そうして、当面できる、先ほど言いました、病院を開放してもらう、あいた病棟の問題それから具体的に土地の問題なんかについてもいろいろと意見をまとめてまた持っていきたいと思うのですけれども、その病棟を開放してもらうという問題についてはそんなに時間かからないで大臣のほうから結論を出していただけると思うのですけれども、大体それはどれくらいかかりますか。いまちょっと忙しいかもしれないけれども、まあ命の問題でございますし、毎日それを心配していらっしゃるという問題もあるので、東京病院も近くにございますので、医長さんや何かお呼びになるのも簡単に済むと思いますので、年内といってもたいへんでしょうから、たとえば一月一ぱいとか、まあ一月は国会のほうはお休みになると思いますので、一月一ぱいには何とか考えようとか、その辺の大まかなめどを伺わせていただきたいと思うのです。重ねて、たいへん恐縮でございますけれども
  239. 斎藤昇

    ○国務大臣(斎藤昇君) 私はなるべく早く、私自身で行って見るわけにもなかなかいかぬと思いますが、できたら一ぺん私もあそこも見たいとほんとうは思っておるわけなんです。ところで、いろいろな事情や条件等もございましょうから、なるべく早く、年内に東京病院の院長なり部長なりと一ぺん局のほうで話し合いをしてもらうということぐらいはできると思います。それを出発点といたしまして、そうして検討いたしてまいりたいと思います。その点は御了承をいただきたいと思います。
  240. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それじゃ、いまの御返事いただきまして安心いたしました。私のほうもいろいろ具体的な問題を持ってまた今月中にでもぜひ伺いたいと思いますので、ほんとうに、きょうも私は病気になって倒れられたらたいへんだと思いましたけれども、自分たちの命の問題なんだからどうしても来たいとおっしゃって、患者さんたちも見えまして、積極的な御返事もいただけたと思って感謝いたしますが、今後ともこれから大きな問題になると思います。結核に対する医療行政がこの辺でひとつ変わっていかなければならない。そういう問題にもなると思いますので、この低肺機能者の問題について今後ともいろいろとお力添えいただきたいと思います。  以上で質問終わりたいと思います。ありがとうございました。
  241. 中村英男

    委員長中村英男君) 他に発言もなければ、本件に対する本日の調査はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十七分散会