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1971-11-30 第67回国会 参議院 社会労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十一月三十日(火曜日)    午前十一時十八分開会     —————————————    委員の異動  十一月十六日     辞任         補欠選任      石本  茂君     栗原 祐幸君  十一月十七日     辞任         補欠選任      栗原 祐幸君     石本  茂君      和田 静夫君     戸田 菊雄君  十一月三十日     辞任         補欠選任      戸田 菊雄君     和田 静夫君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         中村 英男君     理 事                 鹿島 俊雄君                 高田 浩運君                 大橋 和孝君     委 員                 石本  茂君                 上田  稔君                 上原 正吉君                 徳永 正利君                 中山 太郎君                 須原 昭二君                 杉山善太郎君                 田中寿美子君                 柏原 ヤス君                 高山 恒雄君    政府委員        文部省大学学術        局審議官     安養寺重夫君        文部省管理局長  安嶋  彌君        厚生政務次官   登坂重次郎君        厚生大臣官房審        議官       江間 時彦君        厚生省医務局長  松尾 正雄君        厚生省薬務局長  武藤き一郎君        厚生省社会局長  加藤 威二君        厚生省保険局長  戸澤 政方君        厚生省年金局長  北川 力夫君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        厚生省児童家庭        局障害福祉課長  金田 伸二君        自治省財政局公        営企業第二課長  神崎治一郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○社会保障制度等に関する調査  (精神薄弱児対策に関する件)  (薬務行政に関する件)  (精神病院に関する件)  (医科大学の新設に関する件)  (老人福祉対策に関する件)     —————————————
  2. 中村英男

    委員長中村英男君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  社会保障制度等に関する調査を議題といたします。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 石本茂

    石本茂君 たいへん不勉強でございまして、枝葉末節にわたることをお伺いするわけでございますが、二つのことをお伺いしたいと思っています。  その一つは、心身薄弱者対策に関する問題でございますが、私が今日まで方々見てまいりまして、重度症の場合ですとかなり国の政策あるいはその措置等がだんだんと色濃く届いてきているように思うのでございますが、重度症以外のいわゆる心身薄弱児に対しまする対策を見ておりますと、もちろんこれは医療じゃございません、単なる療育だと思うのでございますが、その設置要件などを拝見いたしますと、そこには栄養士は置くことができるとか、それからまた、てんかんでございますとか、あるいはぜんそく等子供かなり多いのでございますのに看護婦等設置は全然考慮されておりませんので、その辺に対しまして、当局はどのようにお考えになっておりますのか、この福祉法ができました時点と今日とかなり違ってきているように思うのでございますが、設置要件につきまして、いま申しましたように、要件の中に、そういうような医療の場ではありませんけれども疾病等を持っている児童がたくさん入っておりますので、その養護措置をどうされるつもりなのか。いま保母さんが一生懸命になって看護しているのが実態ですし、看護婦保母という名前で入っているのも事実でございますので、その辺お伺いいたします。
  4. 登坂重次郎

    政府委員登坂重次郎君) 仰せのとおり、精神薄弱児について、重度心身障害児については、政府においても従来ともそれなりの施策考えて、また、その充足のために努力してまいったのでありまするが、いわゆる精神薄弱児施設に関しましては、先生仰せのとおり、あるいはまだ不十分な点があることも事実でございます。そこで、医療もまたふだんの保育もあわせ兼ねなければならない。そういうわけで、看護婦等についても、特に今後考えなくちゃいくまい。また、栄養士についても、将来は考えたいと思いまして、来年度については、児童収容数が百人以上の精薄施設については栄養士を置くと、こういうふうにただいま予算の折衝中でございます。また、医療の必要な場合においても、医療機関と連絡して、なるべくそういうほうの健康にも留意するように措置するよう努力いたしておるわけでございます。  なお、こまかい事例等、あるいは今後のそういう場合についての施策は、事務当局より説明させます。
  5. 金田伸二

    説明員金田伸二君) ただいま政務次官から答弁ありました点、若干補足させていただきますが、心身障害児につきまして、ただいま石本先生からお話しございましたように、重度心身障害児重症心身障害児等につきましては、重度心身障害施設ということで、医療機関医療法上の病院であると同時に、また児童福祉法上の施設である、こういった意味で手当てをいたしておるわけでございます。そのほか、肢体不自由児という児童福祉法上の施設につきましても、医療法上の病院であり、かつ、児童福祉施設であるということで、医療法上の体制が完備しているわけでございますが、そのほかの一般的な児童福祉施設、特に御指摘のありました精神薄弱児施設等につきまして、従来、施設最低基準ということで、この医療体制につきましては、この施設嘱託医を置かなければいけないということにいたしまして、この嘱託医施設に入っている子供たちの日常の健康管理等につとめる。特に、からだの弱い子供たちですので、何かありましたときには直ちにそういった医療体制が行なえるというふうな形にしておるわけでございます。そういうことで、特に、最近、施設に入っている子供たちがだんだん重度化していくというようなことで、私どもも、この内容医療体制を整備してまいりたいということで、ただいま政務次官から答弁ございましたように、この施設保健婦を置けるように、重度等については保健婦設置できるように予算要求をいたしております。また、その中に入っている入所者栄養面についても十分配慮しなければいけないわけでございますが、そういった点からも栄養士設置できるように予算要求をいたしているところでございます。
  6. 石本茂

    石本茂君 御配慮いただきつつあることはわかりますが、さっき申されました百床以上には栄養士を置くというふうに将来は規則を変えていくと申しておられますので、これはたいへんうれしいのですが、その機会に、嘱託医は、これはみなおりますが、嘱託医との連携をとる段階で、その子らを保護できる専門的要素が多分に現実に必要でございます。毎日、けが人も出ておりますし、ぜんそくも起こしておりますし、てんかんを起こして引っくり返っておりますというのが現実でございますので、いま保健婦云々も出ましたが、ぜひ保健婦看護婦、いずれでもけっこうですが、これはやはり置かなければならないというふうに規定をお変え願いたいというのが私の念願でございます。これは単に見て言っているのじゃございません。現場の者の声でございますし、現に保母という資格看護婦が入っておる。この者も保母の待遇でございますから、そういう専門性はもちろん重要視されておりませんし、たいへん困惑しきって、非常な困難を乗り越えて、ここで言っちゃいけませんが、医師法違反を犯すようなことまでして現在仕事をしているのが現状でありますから、どうか実地について十分に御調査くださいまして、百名以上に置くというような規定直しをなさるのなら、その時点でぜひともこの実現方について私は御考慮願いたいという希望を述べておきます。ぜひ実現してください。お願いいたします。
  7. 登坂重次郎

    政府委員登坂重次郎君) お説のとおり、健康に恵まれない弱い子供たちでありまするから、保母さんの過重な負担というものは、私ども行ってよく見てわかります。お説のように私ども努力いたします。
  8. 石本茂

    石本茂君 次に重ねましてお伺いしたいのですが、この子ら、あるいはこの人と言っていいですか、のためには、いまだにどういうのでしょうか、精神薄弱者福祉手帳のようなものが発行されておりませんために、ちまたには、かなり人員家庭の中にいるのでございますけれども実態がつかめないというのが現状のように伺っておりますし、また見ているわけでございますが、こういう福祉手帳のようなものを交付されることはできないのでございますか。それとも、したいけれども何か原因、経過がありましてできないということなのでございましょうか。あるいはまたなさる意思があるのかどうか、このことをお伺いいたします。
  9. 登坂重次郎

    政府委員登坂重次郎君) 身体障害者には手帳があり、精神障害の場合に対しまして、あるいは薄弱の人に対して、そういう政府責任をとる。また政府が、どういう状態にその人があるか、またその人をどういうふうに今後措置しなければいけないか、手当てを加えなければいけないか、そういう責任体制を確立するためにおいても、そういう手帳制実態を確かめる上においても必要なことはお説のとおりでありまして、来年度においても、精神薄弱児についても手帳を交付する予算措置を講じ、来年度から実施したいと、こういう意向でおるのであります。
  10. 石本茂

    石本茂君 ぜひひとつ実現してください。  かつてはやはり父兄の方々がそういう子供家庭にあるということを非常に考慮いたしまして、世間に知れることをいやがっていたと思うのですが、もうそういう時代は過ぎまして、その父母の会が非常にそのことを希望しておられますので、さらにつけ加えておきます。  もう一つ、これはこうした子供たち在宅対策でございますが、いまの交付の件もそうでございますけれども在宅しております子らに対しましてのいわゆる奉仕員制度ができておりまして、おそらくまんべんなく要求を満たすように奉仕活動をしていらっしゃると思うのでございますが、との活動実態をお聞きしたいのでございます。お願いいたします。
  11. 登坂重次郎

    政府委員登坂重次郎君) 事務当局から……。
  12. 金田伸二

    説明員金田伸二君) 在宅重度心身障害児家庭に、心身障害者家庭奉仕員制度という制度が設けられておりまして、それは現在千百八十二人の予算上の数になっておりますが、こういったホームヘルパーという方たち重度心身障害児家庭に参りまして、家事の手伝いであるとか、あるいは子供の介護であるとか、買いものであるとか、そういった各般家庭に対するサービスをやっておるわけでございます。私どもとしては、この家庭奉仕員というものがスタートしまして、ことしで二年目になるわけでございますけれども、こういった奉仕員制度奉仕員という名前をとってはおりますけれども、やはり何と申しますか、こういった方たちが十分な仕事をしていただくためには、その奉仕員に対する手当てというものもやっぱり十分に配慮していかなければならないんではないかというふうに考えております。それで、この奉仕員方々家庭サービスに回る実態は私どもとしては大体一人の人が六世帯を受け持っていただきまして、週一回この家庭に回っていただく。そうして、先ほど申し上げましたようなサービスを提供していただくというふうに考えておるわけでございます。まあこのホームヘルパー制度はスタートしてまだ日も浅いことでございますので、私どもその内容充実等については今後とも十分努力してまいりたいと、かように考えております。
  13. 石本茂

    石本茂君 ぜひこの制度を、まだ新しゅうございますので、成果のいかんはともかくとしても、手をおつけくださいましたのですから、より効果的に、各家庭がそれを待つ、期待するというところまで増強していただきますことをこの機会にお願いいたしますし、それから、もう一つ関連でございますが、十五歳以上の人を入れるための国立コロニーが非常に大規模で目下仕事を始められましたし、これからもさらに進められるようでございますけれども、いま子供の問題ですと「秩父学園」が一カ所非常に小規模なものが国立としてありますだけで、あとは全然国立がないのでございますが、国立機関としてこういうものをおつくりになるんじゃなく、現在のように篤志家の、どう言いますか、意思と、あるいはそうした人々気持ち国家が甘えて、そうして、こういう身体障害者、いわゆる軽度かもわかりませんけれども心身障害児はその方面にまかそうと、国はこのことにはあまり気をつけていかなくていいんだというように見受けるのでございますが、その辺はどういうようにお考えになっておりますのか。あの小さな秩父学園だけではとてもこれはもう国立と申されましても私恥ずかしいような気がして見ているのでございますが、そのことを一点伺います。  それからなお国立コロニー現状をもあわせてちょっとお伺いしたいと思います。
  14. 登坂重次郎

    政府委員登坂重次郎君) お答えいたします。  心身障害児に対しましては厚生省としては来年度は重点施策考えて、老人対策及び重度心身障害児対策というものを重点施策考え予算措置をいたしておるわけでございますが、また施設等に対しましても緊急整備計画を立てて、そういう施設関係充実をはかっておるわけでございます。その施設増強、また職員養成等もございますので、ただいま国立コロニーをつくりました。定員は五百五十名でございまするが、これを基本的によく研究し、考え充実さして、それをできるだけ将来の計画基準にして早急に整備したいと、こういう意向でおるわけでございます。  なお国立コロニー実態については事務当局から説明させます。
  15. 金田伸二

    説明員金田伸二君) 国立コロニーの「のぞみの園」はことしの四月に開所したわけでございますが、何ぶんにも国として初めての試みでございますので、この施設運営につきましては慎重を期しておるわけでございますが、七十万坪というような広大な土地に新しい生活の場をつくるということで、職員並びに入所者が円滑にその新しい生活になじめるようにということで、当初予定をしております五百五十名という定員を一挙に入れるのはかえって運営の混乱を招くだけではないかということで、現在職員採用を徐々に行ない、その職員採用状況をにらみつつ入所者、園生を入れていく。こういった方針をとってきておるわけでございますが、現在までに三百六十七名の入所者が入っております。十二月中にさらに三十名の入所者を予定しておりまして、大体年内に四百名に達する、そうして年度内に定員一ぱいにいたしたいと、かように考えておるわけでございます。  それから先ほどのこういった心身障害児に対する国の考え方についての御質問ございましたが、私どもとしてはこういった心身障害児に対して国、地方公共団体が、こういった障害児の親御さんたちとともにこの子供たちのしあわせをはかっていかなければならないのじゃないかと考えておるわけでございますが、施設といたしましては、一応国立それから公立社会福祉法人立とございます。私ども何も社会福祉法人——民間にのみにまかせているということではございませんで、施設の数としては公立社会福祉法人立、いずれもございます。国立は御指摘のとおり「秩父学園」と当コロニーということでございますが、考え方としては一応「秩父学園」は特に重度精神薄弱児あるいは普通の民間あるいは公立等ではなかなか治療の、ケアの困難である重度あるいは盲ろうあ等重複障害児というもの、そういった障害を持った子供たちを保護するということにしておるわけでございます。国としては御存じのとおり措置費ということで、都道府県知事がそういった障害児施設に収容して保護した場合には、その十分の八という費用を公費で負担しておるわけでございます。今後こういった障害児重度化といいますか、施設に入ってくる子供たち重度化に伴って、そういった面での国の施設内容充実していかなければならないのではないかと、かように考えております。
  16. 石本茂

    石本茂君 この問題は、精神薄弱児対策につきましてはいずれまたよく勉強いたしましていろいろお伺いしたいのですが、ただいま政務次官も申されましたように、来年度の国家予算の中で、老人対策それからこの心身障害者対策、特に重度子供対策ということを申されておりますけれども、そういうものが大きく幅広く深みをもってまいりますと、ただでさえいま病院などでも医療従事者——医師もそうです、看護婦もそうですが、非常に足りませんために大きな問題を起こしているところでございますけれども、さらにそういう福祉増強ということでワクがますます広がっていくのでございますが、御当局医務局のお立場もあると思うのですが、どのように一体これらの職員対策をお考えになっておりますのか、お伺いしておきたいと思います。
  17. 松尾正雄

    政府委員松尾正雄君) 社会福祉関係施設に従事いたします方も含めまして特に看護婦関係の不足というものは著しいものがございます。したがいまして、従来からもしばしばこの強化についていろんな御激励もいただいているわけでございます。制度面の上で大幅にこの看護関係需給のバランスをとりたいと考えたわけでございますが、これは若干御承知のとおりずれてまいっておるわけでございます。しかしながら、全体としてのやはり養成計画需給計画というのはあくまで強化しなきゃなりません。大きないま私どもプランで申し上げますれば、昭和五十二年末約五十一万五千人の、看護婦准看護婦を含めまして看護職員の確保をしたい。現在四十五年末で三十万三千人の就業者がいるわけでございます。したがって、残りをこの期間に養成をしたい、こういうプランを立てておるわけでございます。したがいまして、五十二年末までに約二十一万二千人の増加をはかる、こういう計画でございますが、この点は現在のままの養成力というもので推移いたしましても、五十二年までに約二十一万七千程度の増になると思います。しかし、その後にざらに約六万近い新規増というものをはかりたい。しかし、御承知のとおり、一方退職者というものもあるわけでございます。それらを差し引きますと、養成増というものは、約十八万という数を、その中の内訳として組んでおるわけでございます。そのほか御承知のとおり、看護婦資格を持って家庭等におられる方々がおられます。こういう方々子供さんが成長されたり、そういったような場合には、やはりできるだけもとの職場に戻っていただきたい。こういう潜在看護婦の活用ということも三万人程度を見込みまして、冒頭に申し上げましたような五十一万というような就業者を確保したいと考えております。したがって、この計画が実現できますように、来年度の予算等各般の努力をしてまいりたいとかように思っておるわけでございます。
  18. 石本茂

    石本茂君 御計画を承りまして、そうぜひしていただきたいと思います。同時に、現実を見ておりますと、病棟がございます。医師も何とか手がそろっておりますのに、看護婦が足りないということで、からベッドになっているというところがかなりございますけれども、先ほど来お話しておりました福祉関係になりますと、子供を入れるベッドがあるのに、看護者がおりませんために遊んでいるのがかなり目に立ちますので、どうか来年度盛ってあります予算等の執行に当たりましても、建物だけつくればいいのだというような考え方ですと、かえってその状態にあります人々が悲しみを多く持つわけでございますので、いま局長が申されましたが、ぜひ必要な人員養成獲得方法につきましては特段の配慮をお願いしたいという気持ち一ぱいでございます。よろしく御配慮をお願いしたいと思います。  なお、この関連になると思うのでございますが、医療費の問題が現在十二月から改正になりますとか、いや一カ月おくれて一月になるなどとか、いろいろ言われております最中でございますけれども、将来の抜本改正等を含めまして、いま現在、外来はともかくといたしまして、病院入院費の中に基準看護という特定条件を持っておれば別でございますが、さもありませんと、看護の職域を通しまして、必死になって寝もやらないでサービスをしておりますものが、一体どれぐらいの料金になっておりますのか、要しますに、入院費の中に、医療費の中に含まれている看護料金というものの設定というものが、一体どのように考慮されておりますのか、現実をお尋ねいたしますと同時に、将来に向かってどういう考えを持っていらっしゃるのか。看護料金なんというものは生活の一部だから、そんなものは特別考えなくてもいいんだ、基本入院料がかりに千円なら、千円の中に入っているだろうという現状でございますと、せっかく増員対策を叫びましても、ニッパチ闘争等をいたしまして人を確保いたしましても、方々に参りますと、院長さんのおことばに必ず出るのは、人がふえてサービスが濃厚になればなるほど病院は赤字になるのだ。であるから、基準看護なんというものはとても考えられないし、ニッパチ闘争で増員してみたら、病院運営はますます苦しくなるんで困ったものだ、なぜ看護料というものをおまえたち看護婦はやかましく言わぬのかということで、かなりの御批判とおしかりをいただいておるのが現状でございますので、その辺政府当局のお考えを聞かしていただきたいと思います。お願いします。
  19. 江間時彦

    政府委員江間時彦君) お答えいたします。御承知のように、現在入院の場合の看護料でございますが、これは普通の看護料の場合におきましては、原則として入院料の中に入っているというふうに考えられているわけであります。したがいまして、入院料の中のどの部分看護婦さんの部分に相当するかということは、必ずしも明らかでないわけでございます。ただ、いま石本先生が御指摘になりましたように、技術料評価するという観点からしますと、入院サービスの中にこういうものが入っておるということは、必ずしも適当でないという考え方もあると思います。現に中医協で診療報酬審議がなされておるわけでございますが、その中で医師会要求されました中にも、看護サービスをほかに特掲して出すべきだという考え方が示されておりますし、一般論といたしましても、やはり技術評価を高くする、そのためにどの部分技術評価部分であるかということを明らかにすることのほうが適当だと思われます。現在ちょうど審議が行なわれている最中でございますので、はっきりしたお答えができないのは残念でございますけれども、おそらくそういう方向審議が進められるだろうというふうな感じはいたしております。
  20. 石本茂

    石本茂君 いま申されましたように、そういう方向に向かってぜひ結論が出ることを私お願いしたいのでございます。といいますのは、やはりこの職場におりまして、私は仲間でございますが、毎日言っておりますことは、必死になって汗水たらして働いても、自分のした仕事評価がさっぱりわからない、からの手形で仕事しておるということに対して非常に大きく不満をだんだん持ってきておりますので、ぜひこのたびの改正には間に合いませんでも、抜本改正時点には、何としてでもこの問題だけは解決願いたいことを重ねてお願いいたします。  私以上で質問を終わります。
  21. 須原昭二

    須原昭二君 きょうは衆議院のほうにおける沖繩問題で、大臣がお見えにならないことは、非常に残念ですが、物理的にこれはいたしかたないことでございまして、管理者一体の原則でありますから、大臣がお見えにならなくても、政務次官で事足りるであろうと実は思います。そういう視点から、ひとつ私の質問に対しては的確にお答えをいただきたいと思います。時間の関係もございまして、たくさんの問題点持っておりますから、ひとつ御答弁のほうは簡明率直に、時間かせぎをしないように、前もってお願いしておきたいと、かように存じます。  まず第一点は、きのうも実は中医協が夜九時ごろで解散をし、結論の出ないまま経過されているような状態でありますが、それに関連をして実は薬価基準の問題について全面的な改正、いわゆる二十五日に告示がすでになされております。この問題について若干お尋ねをいたしておきたいと思うわけです。過般の社労委員会において、私は保険薬価と実勢価格に大きな差が出ておる、この点を具体的な事例をもって、きびしく指摘をいたしたことは、すでに御案内のとおりでありまして、すなわち添付の廃止からさらに値引きの競争の激化、商取引の慣習上といいますか、若干は認められても、きわめて異常な状態になっておることを、具体的な事例をもって御指摘をいたしたわけでございます。すなわち、私の計算から言うならば、高いやつは四〇%ないし七三%というような値引きがなされているから、総体的に言うならば、平均して三〇%の値下げは必要である。したがって、昨年三%内外の値下げ率では、実はコンマが一つ足りない。すなわち、三〇%くらい値下げしてもいいんだ、こういうことを私は指摘したことをいま覚えておるわけでありますが、こういう状態から考えますと、現実にむだな医薬品の使用の阻止あるいはまた薬価と実勢の格差の縮小をぜひ行なわなければならないと言ったにもかかわらず、今回、二十五日の告示は実は平均三・九%、私が指摘をしたとおり四%内の値下げに終わっておる。まさに遺憾と言わなければ私はならないと思います。特にこの問題については、医療機関診療報酬との見合いがあり三・九%に押えられたといわれておりますけれども、私は、医師技術料というものを正しく適正に評価せずしておいて、なお薬の乱用の大きな原因となっておるところの薬価の利ざやかせぎを黙認するという状態をここに見のがすわけにはまいらないわけであります。特に、三・九%の値下げ率によって国民の負担は安くなるんだ。こういう御指摘があるように聞いておりますけれども、この三・九%の値下げによって、医療費は一・七%ダウンすることはもちろん言うまでもありません。これを否定するわけではありません。すなわち二兆五千億になんなんとする総医療費から四百二十五億ぐらいは減る計算になるわけでありますが、これが即国民の負担の軽減をする方向にいくかといえば、そうではないわけです。医療機関は、三・九%薬価の値下げがなされたといえども、その分だけ多く薬を国民に使用することができるわけでありますから、多く使えばよいという声すら実は下部の医療機関にあることをわれわれは指摘をせざるを得ない。御案内のとおり、医療保険に占める薬代というものは、十年前には二〇%です。最近では四〇%をこえております。欧米諸国においてはいまでも二〇%前後といわれておるのが常識であります。したがって、医療報酬との見合いというならなぜ薬価改定だけ二十五日に優先告示をしたのか。しかも、期限が切ってない。こういう点についてまずお尋ねをいたしておきたいと思います。
  22. 登坂重次郎

    政府委員登坂重次郎君) 薬価基準については、御指摘のとおり厚生省においても何とか単価の実態をつかみたいというわけで薬務当局努力いたしておるわけでございまするが、いままでの調査の結果、なかなかその実態がつかみかねているというのが実情であろうと思います。先生指摘のとおり診療報酬の中で薬価の占める割合が非常に大きいということについては、大臣も私どもも非常にその点は何とかできないかと事務当局を督励いたしておるわけでございまするが、今日の調査の方法として、また中医協との関連性においてこのたびの基準価格ができたということでありますが、その実態については事務当局から詳しく説明させます。
  23. 江間時彦

    政府委員江間時彦君) 先生指摘になりましたように、わが国の総医療費の中で占める薬剤費の割合が四割をこえているということは事実でございまして、これが国際比較をしてみますと、非常に高率に及んでいるということも事実でございます。  実勢価格と薬価基準との乖離の問題につきましては、われわれいろいろ耳にいたしております。ただ、われわれ、現行法令のもとにおきましては、薬価調査を行ないまして、そして、それを基礎にいたしまして薬価基準の改定をするということになっております関係で、この二月に実施いたしました薬価調査の結果がいま先生の御指摘になりました薬価基準よりも平均して三・九%低いものに出たということでございます。われわれ、現在の仕組みのもとでは、やはりその率が高いとか低いとかいう評価の問題ございますけれども、現在のたてまえでは、それを基礎にいたしまして薬価基準の改定をせざるを得ないというのが実態でございます。これにつきまして各方面から問題が寄せられております。われわれこれにおきましては、十分これから熱心に検討しなければならないと思っておるわけでございます。  それから、診療報酬の改定に先立ちまして、今回の薬価基準の告示を早期いたしましたのはきわめて技術的な理由によるものでございまして、中医協の申し合わせによりまして、診療報酬の改定の実施と、それから、薬価基準の改定の実施の時期をそろえるということになっておりまして、その場合に、大体十一月中の審議の過程におきまして、どうも十二月一日に間に合わせるためには官報の印刷その他の都合もございまして、薬価基準の告示を同時にいたしましたのでは間に合わないというような技術的な理由もございまして、実施の時期は追って定めるということで告示のほうを先にやったわけであります。
  24. 須原昭二

    須原昭二君 その優先告示の問題については私は非常に遺憾だと思うのです。それから、三・九%というような過小な値下げ率についてきわめて私は不満です。この点だけはまずもって訴えておきたいと思うわけですが、いま政務次官並びに理事者の皆さんから、薬価の調査の方法によったんだと——このたびの改正は、さきの社労委員会でも私は言及したわけでありますけれども、本年二月に医療機関向け業者の全部——約三千軒だそうでありますが——及び抽出された医療機関約千二百軒ですかを対象として、自計体系によって、いわゆる相手を信用して、そして書かしたものであって、その抽出調査によるんですからきわめて実態を掌握していない。この点はこの間指摘をしたとおりです。私は三百六十五日いつでも、その関係者にいつでも立ち入り調査ができるように、そういう権限を持つような制度をつくるべきである。これは大臣も善処すると約束をしております。しかし、去る十一月の二十七日全国都道府県薬務主管課長会議というやつが開かれているはずです。そのときに松田企業課長は、今回の三・九%の値下げ幅は国会からの批判も出てくる予想だけれども、二月時点での調査から出た数字は数字としてあくまでも告示をする、こう公言をされているわけです。われわれの言った発言というものは何も考慮しないのか、そういう点をまず一つお尋ねをしておきたいと同時に、しかも、来年度の調査実施は例年のように二月を目標とすることを確認したと言明している。善処すると言いながら、われわれの考え方は一顧もされておらない、あまりにもばかにしておるような発言ではないかと実は私は指摘をせざるを得ないのですが、その点はどうなっているんですか。
  25. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) 薬務課長会議で企業課長が、ここに、うしろにおりますけれども、二月に行なうように予定をしておるようなことを話されているという御指摘でございます。この点は、例年の調査のしかたによれば例年は二月というふうに申したわけでございまして、来年の問題をお約束したわけではございません。
  26. 須原昭二

    須原昭二君 いまの御答弁を信頼していいんですね。したがって、来年二月というような固定したものではなく、あるいはまた従来の方式によってやるということではなくて、さきの社労委員会で大臣が善処を約したような、そういう体制を確立をするように努力をしておると解釈をしていいんですね。
  27. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) 来年の二月に予定されているということは現在きまってないということでございます。
  28. 須原昭二

    須原昭二君 その方法についてもですね。
  29. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) 方法等につきましては、先生承知のように薬価調査の方法は中医協においてきめられることになっております。したがいまして、そのきめられた方針に従って当局が保険局と相談いたしましてやる予定でございます。
  30. 須原昭二

    須原昭二君 中医協とおっしゃいますけれども、中医協というのは諮問機関なんですよ。したがって、厚生省から原案というものをまず出して、そして中医協の意見を聞くのがほんとうなんです。したがって、あくまでもそれはあなたのほうから、こういうふうにしますがどうですかと伺いを立てるべきなのが本筋だと私は思います。そういう点で、その点はひとつ善処を要求しておきます。  さらに、値引き、添付品の問題については調査中だが、実態調査の結果、添付、値引き行為が断定できる品目あるいはまた銘柄は薬価基準から削除する方針であると松田課長は言っております。これは断定できたときに直ちにやるのかどうか。いつ、どのような方法で薬価基準からはずすのか。そのつど中医協にはかるのか、あるいは職権でやるのか、この方法についてお尋ねをしておきたいと思います。
  31. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) 値引きの問題に関連しました発言は、私はこういうふうに記憶しております。異常な医薬品の値引きはいわゆる添付類似行為と同様であるとする意見もあるので、この点につきまして検討を行なっているというのが当日の発言でございます。それからこの異常な値引きが行なわれているということは、薬価基準との比較においてのことでございまして、両者の間に非常に開きがある場合には建て値を改正すべきである、そして値下げをすべきであるという趣旨を申し、それから、その線に沿って私どもは業界のほうに早く建て値を改正するようにたびたび指示をいたしております。
  32. 須原昭二

    須原昭二君 値引きについてのこの発言は、私はいい発言だと思うんです、逆に。ですから、これはやっぱり削除するように、そのくらいの権限を持って進むのが正しいのではないか。そうなければ、いつまでたってもこの値引きだとかあるいは添付制度というのはなくならない、この点を指摘しておきたいと思います。  さらにこの登載品目の整理の問題ですね。今度の基準を官報で見ますると、内用薬が三千五百六十四、注射薬が二千六百八、外用薬が八百五十九、歯科用薬二百五、計七千二百三十六となっておりまして、旧薬価基準から見ると二百六十ぐらい少なくなっている。この二百六十はなぜなくなっているのかと調べてみますると、調査の段階で医療機関に販売されてないもの、こういうことだということです。したがって、この整理の段階では、薬効だとか、副作用だとか、あるいは品質類似品など、いわゆる薬の特殊性を技術的に科学的に検討したものではない、機械的に整理をされただけであると思うけれども、その点はどうなっているか。
  33. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) 先生の御説明のとおりでございます。
  34. 須原昭二

    須原昭二君 まあ私が指摘をしてから時間の関係から物理的にできなかったかもわかりませんが、この点はやはり整理をすべきことは、私はかねがね強調しているわけです。  さらに、それに加えて、最近日医の武見会長が十二月一日から処方すると言う新薬五十品目、これはどうするのか。医師会の会長すなわち武見さんがやれと言えばみんな登録するのか、その点をひとつ明らかにしておきたいと思います。医師会の会長がやれと言えば、入れよと言えばみんな入れるのか。そういう性質のものか。そういう点を指摘しておきたいと思います。  また、さらにそれに加えて、聞くところによると、新たに四百品目後日追加されるといわれております。先ほどの武見会長が言った五十品目、そして今度さらに四百品目後日追加すると、こういう計算になりますと、整理どころか登載品目はさらにふえることになる。整理する気持ちがあるのかどうか、その点を、まず、お尋ねをしておきたい。  以上、三つです。
  35. 戸澤政方

    政府委員(戸澤政方君) 従来も、新薬につきましては、それが保険診療の上に必要であり、適正な価格が設定された場合には、ほとんど漏れなく登載する方針をとっております。これは医師会から言われるからどうということではなくて、医師会とも相談しまして、保険診療に非常に必要である、国民医療に非常に効果的であるというようなものにつきましては、これを登載する方針をとっているわけでございます。したがいまして、毎年、新薬がたくさん許可されるに従って薬価基準登載品目もだんだんふえてくるという事情にあることは事実でございますが、やはり保険医療、国民医療にとって効果的であるというような薬につきましては登載せざるを得ないというような事情でございます。
  36. 須原昭二

    須原昭二君 そこで、武見会長は、中医協の診療報酬の引き上げが早くやられなければ十二月一日から五十品目の処方せんを薬局へ出すと言っている。いま、御案内のとおりに、特例の医師の調剤権が認められている、それが本旨になってしまっているわけです。したがって、医薬分業というものの、実は実態はそうなっていない。そうすると、処方せんを出すということになると、五十品目、薬局は、くるかこないかわからぬけれども用意しなければならない。この五十品目を明らかにしてもらいたいということと、さらに四百品目後日追加されると言われておりますけれども、これを資料として提出をしていただきたいことを委員長からお願いをしておいていただきたいと思います。
  37. 中村英男

    委員長中村英男君) 資料、いいですか。
  38. 戸澤政方

    政府委員(戸澤政方君) この新しい薬品の薬価基準登載につきましては、中医協の了解としまして、ただいま中医協で審議されております医療費改定の実施と同時に実施するという了解になっております。医療費改定のほうがおくれておりますために、いまだ、薬のほうの登載が実施できないというわけでございますが、医療費の改定がきまりますれば、それと時期を同じうして告示しまして実施することになっております。したがいまして、それまではどこにも発表することのできないものでございますので、この点は、ひとつ、御了解を願いたいと思います。
  39. 須原昭二

    須原昭二君 そんなばかな話はありますか。五十品目といったって、登載するかしないか、第二表として出す出さぬということは、原案としてはあくまでも厚生省から出すのでしょう。中医協の皆さんがわあわあ言って、これもこれもこれもと言ったって、出すんじゃないのじゃないですか。あなたのところに資料があるのでしょう。それをお出しなさいよ。  重ねて委員長から資料要求をしていただきたいと思います。
  40. 中村英男

    委員長中村英男君) 資料出せますか。
  41. 戸澤政方

    政府委員(戸澤政方君) ちょっと資料は出すことはぐあい悪いと思います。薬価基準に登載する品目につきましては、お話しのとおり、これは、特に治療指針に関係のない薬品につきましては一々中医協の了解を得る必要はないわけでございます。これは厚生大臣の権限でもってできるわけでございます。しかし、いまこれを登載しようとしておる品目につきましては、値段の交渉とかなにかを薬務局でやっておるところでございまして、したがって、現段階におきまして、品目につきましても、申請のあるものを全部載せられるかどうか、その点は未定でございますが、まだちょっと公表するわけにはまいらないというわけでございます。
  42. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 関連して。  まず薬価基準の登載を官報で早く告示しておる、私は、これは中医協の中で同時に改定する必要上、便宜的におやりになったということはよくわかると思いますけれども、ところが、実施期日も示さずに官報に掲載されたということは今度初めてですね。いまだかつてそういうことはやられていなかった。したがって、結局は、診療費を上げる時期と、それから薬価基準を改定する時期とを合わせたいという気持ち、もうそれは中医協で論ぜられたようですから、それに合わせる準備だということを、先ほど来御説明があったのを聞いておりましたけれども、私はやはり、そういうことに踏み切られていくということが厚生省の中にあれば、この薬価の問題ももう少し主体的に厚生省考える必要がある。きょうは大臣にもその考え方をひとつただしたいと思っておったんですが 大臣おられません。次官がおいでになるので、よくお話していただきたいと思うんですが、その薬価基準をそういうふうにして引き下げていく引き下げ幅の問題もいま論じられておりましたが、私は、こういうふうな状態で、一体全体厚生省は、その薬価基準を引き下げて、何%にできるやつが何%じゃないかと、いろいろ議論されていますけれども、私は、そういう状態で製薬会社にそれを許しておっていいのかと考えます。まだ引き下げる余裕があるのに引き下げられぬ。したがって、言いかえれば、余裕をもつ薬であっても、その薬が薬価基準に登載されて、そして、それが処方されて病人がそれを引き受けるわけです。最後は病人がその金を支払うわけです。そういうことになりますと、いままでは、製薬の段階では野放しにされて、どんどんもうけほうだい、あるいは広告しほうだい、あるいは処方におきましても、先ほど品目が多過ぎるんじゃないかという議論がありましたけれども、それはいろいろ観点はありましょう。ですけれども、何といいますか、薬価基準が下がっていけば、それにプラスアルファをつけた処方をしたもので、そしてまた、新しく処方されたカプセルなり錠剤なりが出れば、それがまた新しく登載されていくということですから、これは薬価が押えられたとしても、これにプラスアルファをつけて、何ぼでもこれは循環されますから、言うなれば悪循環をしていくわけですよ。こういうような状態をそのままに置いて、それで何%に下げた、今度は薬価基準をこれだけに下げました、これを論じてもらうのは、中医協の場で論じてもらわきゃなりませんということで出てきた話が、薬なんかはまだまだ製薬の段階では大きな利益がある。こういうものをやはり病人が病気をしたときに引き受けるわけですから、私は、こういう状態を続けることは、非常にたいへんな悪いことの循環であって、薬価基準を何ぼに引き下げましょう、あるいはまた、薬価基準をいつやりましょうということよりは、根本的にもっと大きな問題が残っておるんじゃないか。こういう状態に目をつけないで、いま、薬価基準の問題をいつも中医協まかせ、中医協から出てきたら——中医協によってそれをきめますという状態では、私は、いま国民の健康を管理している厚生省、ことにいま皆保険といわれておる保険の体制の中で、私はこういうことをいつまでもやっておっていいのかということが非常に心配になるわけです。ですから、いまの須原委員との話し合いの中で考えましても、私は、こんなことで、中医協まかせで、まあ中医協で一緒にやりなさいと、期限もつけないで、薬価基準を下げることだけしておる、根本的な問題はそのままにしておる、こういうような状態では、私はたいへんじゃないかと思います。私は、先ほど須原委員が言われたように、薬価基準をもっと実勢価格に下げるべきだと思います。それだけに厚生省は目を向けて、いまの医療費問題を解決していいのかどうか、私はこのごろ、じっと見ておりまして疑問に思います。ですから私は、やはり技術は技術としてよく分離をし、あるいはまた、実際の製薬の過程においても、薬というものが、ほんとうに必要なだけ、やはり研究費なら研究費を、あるいはまたそれを開拓するための何なら何ということで、もちろん利潤も要りましょうから、そういうものを考えた中で、きちっとしたものでなければならぬ。また、下げても下げられるようなもののままで、それを患者に処方し、患者にそれを支払わしていくということは、非常にたいへんだと思う。特にこのごろは、言うならば広告でも何でも、そこに占めているウエートが非常に多いので、薬の広告を一切やめさせたならば、非常に大きなところに波紋を来たすと言われておるいまの現状です。私は、そういうところから考えましても、そういうところにもいまから十分な目を注いでやらない限り、との薬価の基準の問題、これはいかに論じても、もう堂々めぐり、またこちらで下げられてもこちらで上げる薬をつくる、また、こうやっていけば下がるやつが幾らあっても、次から次に出てくるということで、製薬業界の現状からいっても、いま須原委員が言ったような幅があるわけですね。そういうことをそのままで薬価基準に持っていくということは間違いである、こういうことに対して、一ぺん省内でもきちっとしてもらって、そして、中医協なら中医協にきちんと諮問して、そういうところからやはりいまの医療費の赤字の問題をすぱっと考えればまた変わってくるのではないかということまで考えているのですが、お考えを伺いたい。
  43. 登坂重次郎

    政府委員登坂重次郎君) お説のとおり、私のほうでも内部的に大臣を中心に、いかにしたらそれが正しい薬価のあり方か、調査の方法かといろことは、真剣にこれは考えております。また討論もいたしております。今日まで薬価基準調査内容について私自身も疑義を持っておりまして、大臣もそういう方向事務当局にもう一ぺん検討するように、調査方法を再考するようにということで、われわれも内部的には調整をしつつあります。お説のとおりであります。また、新薬登載について、私も新薬登載については厳重に注意せよということは、私ども大臣も申しております。ただ私どもは、国民の健康を預かる立場におきまして、こういう薬がきくんだと、こういう薬がいいんだということが申されて、それを使いたいという医療側の、医療機関の申請がありました場合、これをノーと言うことはなかなかむずかしいわけで、そこに国民健康保険を預かる厚生省といたしまして矛盾を感ずるわけでございますが、たてまえとしては、先生仰せのとおり、そういうことで進んでいることは事実でございます。
  44. 須原昭二

    須原昭二君 実は、いま討論をしている段階ではないわけで、もっと誠意をくんで、やっぱり努力してもらわなければだめだと思うんですよ。中医協まかせで、何か薬価の問題は中医協が隠れみのになっている。この点を私は憤慨にたえない。したがって五十品目あるいはまた四百品目という名前が出ておりますが、これは中医協、中医協と言わずに、あまり秘密行政をやらずに、この際は品目だけでも明らかにすることをひとつ要求して、いけないと言っても、この点は保留しておきます。後ほどまた論争いたしましょう。  そこで、薬価の問題は、やっぱり私は原価形成の過程まで踏み込まなければ本来意味がないと思う。こういう点を特に指摘をしておきたいと思うんですが、同時に、これに関連をしてくるわけでありますが、今日の薬業界の実態について皆さんに特にお尋ねをしておきたいと思います。  最近、物価問題懇談会から派生していわゆる薬の値段が下部において高い、こういう実は議論がなされたようです。したがって、それを踏まえて、いわゆる薬局等の適正配置の問題についての廃止の問題が、適配懇というところから答申が出てきているわけです。すでに先輩議員の皆さんもご案内のとおりでありますが、三十八年、議員立法によって成立した法律、すなわち薬局等の適正配置、薬事法の一部改正でありますが、これは欧米諸国の立法及び実情をつぶさに視察研究した結果、わが国でも必要であることを理解された上で、また憲法論議もありましたけれども、薬局などの適正配置は決して憲法二十二条に違反しない、こういうことを確認して衆議院では全会一致、わが参議院においては、聞くところによると一名か二名反対された方があったかもわかりませんが、これまた絶対多数で可決成立した議員立法なんです。しかも、この立法は都道府県の条例によって実施するという、いわゆる地方自治体の自治権にまかせるものとして施行され、今日まで八年間その実効を徐々にあらわしているわけでありますが、特にこの物価問題懇談会の論議から、四十五年八月に薬局等配置問題懇談会が生まれたわけでありますが、その答申案を実は私は読んでみまして感じたことを率直に申し上げたいと思うんです。  その発端は、ただ物は安ければよい——先ほどは高い高いと言って論議をしました。私は今度は安いということで論議をするわけですが、先回の社労委員会でも、薬というものの特殊性から、すべて高いものがよくて安いものが悪い、こういう意味ではないということも指摘をいたしたとおりでありますが、ただ物は安い物がいいのだと、自由競争をやれば物は安くなるという単なる経済的な側面から強調されているきらいがあると思うわけです。適配懇の答申は、経済的な側面と、いま一つは薬の特殊性という医療行政の側面からも十分検討する必要があると思うんですけれども、その点はどうお考えになっておるのか。その点をまずお尋ねをいたしたいと思うんです。  さらに、答申は配置規制の問題について、配置規制はこれを撤廃して、医薬品の小売り業間の自由競争原理を導入することが望ましい、こういうことを言っております。これは、薬は安くなればよい、薬の特殊性を考えない、ただ物と考えているというきらいが私はあるような気がしてならないわけですが、特に自由競争で実は下部が安くなるかどうか、この問題でありますが、もともと薬の値段というものは数社の大きなメーカーが独占的に決定しているわけです。しかも、独占のために再販価格制が適用されておって、一般市場の自由競争によって安くなるという仕組みには私はなってないと思う。もちろん、薬の価格は若干自由競争をやれば乱売あるいはまた過当競争によって安くなるではありましょうけれども、薬の価格の下方硬直性という、むずかしいことばを使ってますけれども、私は、この薬の価格の下のほうにおけるところの値段が固定をしているということではなくて、上のほうにおけるいわゆる独占メーカー、生産者の側面において非常に硬直性があるということを指摘をせざるを得ないんです。この点はどうお考えになっておられるか。この点をまずお尋ねをいたしておきたいと思います。
  45. 登坂重次郎

    政府委員登坂重次郎君) 先生のお話は、再販価格維持行為の問題点にも触れるかと思います。私も再販価格については、前に衆議院の物特におりました関係上、よくその特質というものを存じております。また、この議員立法の趣旨も、私は当時としては時宜を得たものと思います。でありまするから、これが直ちに私は全面的に物懇の言うとおり、あるいは実施しなくちゃならぬというまでも強くは考えておりません。しかし、人口の移動あるいは需要の急激な増加を来たすような場合、そういうときにはこの配置の規制もやや考える必要があるのじゃないか、全体的に法の精神をゆるがせるようなことは、いま直ちに考えるべきではないと、かように私は考えております。特に中小企業対策でもありますし、それから、医薬の特殊性というものを、先生の言うとおり私も率直に受けとめまして、これをただいま厚生省として法の全面改正とか、大幅な緩和という措置を直ちに行なうという方針はとっておりません。地方自治体の施行でありまするから、地方自治体においてそういう法令が改正ある場合はやむを得ないけれども、物懇の言うとおりに急激な人口の増加とか、あるいはそういう需要の要求されるようなところ、そういうところにおいては、これまた考えざるを得まいと、そういう方針で厚生省もいま事務当局に指示しております。事務当局もそういう意向で善処したいと、こういう考えでおります。
  46. 須原昭二

    須原昭二君 わかったようでわからないのですけれども、実は先ほど言った再販価格制といっても、私が言うのは独占のための再販価格制ですよ。ですから、公取をもっと権限を強くして取り締まっていく、そういう方向を私は強調すべきだ、そういう基本的な体勢を変えないで、ただ小売業者間の自由競争原理を導入することは、かえって乱売、廉売行為を続出させて市場を混乱させるばかりか、医薬品本来の使命が失われて、やたら消費者の購買意欲を誘い、薬の乱売、乱用につながると私は思うのです。したがって、薬の特殊性と相いれないいわゆるいま問題になっております各地に出ておりますスーパーマーケットあるいは売らんかな主義の大量販売店の続出を促す結果になると思うのですが、こういう大量販売店の続出、こういうものにどういう規制をしていくのか、そういう気持ちがあるのか、その点をお尋ねしておきたいと思うのです。  それから、漸進的に緩和措置をとっていくと言われておりますが、現在やはり法律がきちんとあるわけです。したがって、薬事法改正をしてやっていくつもりなのか、あるいは行政指導でやっていくつもりなのか、あるいは地方自治体の自治権をどう考えておるのか、その点をひとつお尋ねをいたしておきたいと思うわけです。あるいはまた、機能分化、機能分化というものを指摘をされておりますが、これは医薬分業とどういうふうな関連を持たせて考えておられるのか、その点を重ねてあわせてお尋ねをいたしておきたいと思います。
  47. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) 最初にスーパーその他のいわゆる消費を助長するような売り方の問題でございますが、この問題は法律的にこれを規制するということは、現在のところなかなかむずかしいわけでございますが、できるだけ県当局、地方当局とも連絡をとって、そういうふうな乱売問題が起きないように指導をしたい。それから、そのために先生と次官との間にお話がありました再販制度等があるわけでございますので、そういう面の規制の妥当性というものを公取方面でも現在考えておられるようでございますので、そういう方面で考慮すべきではないか、かように考えます。  それから、懇談会の答申の中身に先生お触れになりましたけれども、まずこれを法律改正をするのか、あるいは緩和策をどういうふうな態度でとるかということでございますが、この点は、私どもは現在、いま政務次官からお話ございましたように、慎重に検討しておるわけでありますが、まだ最終的に結論は出ておりません。しかしながら、やはり地方にまかすといいましても、あまり各県の間でバランスがくずれると、またいろいろ問題がございますので、そういう点はある程度調整をいたしたい、かように考えております。
  48. 須原昭二

    須原昭二君 この機能分化の問題と医薬分業との関連ですけれどもね、特に適配を廃止する期限を三年後としているわけですね、答申は。したがって、その時点で医薬分業というものがどういう形になっているのか、この関連性を特にわれわれは関心を持っているわけです。この間八月六日でしたか、石館日本薬剤師会の会長と斎藤厚生大臣と会談が持たれたわけですね、それは新聞で見たわけですが、大臣からの要請で、厚生大臣から、医薬分業を推進し、医療体制の整備をはかるために日本薬剤師会も具体策を提示してほしいという要請があったそうです。その要請に基づいて、日本薬剤師会は具体策を鋭意検討して、だいぶん作業を進めて、この間、十一月八日でしたか、すなわち医薬分業実施のための具体策を大臣に提示されたということを、私は巷間聞いております。それをいまどのように受け取られておるのか。厚生大臣がお見えになりませんから、これはここでは質問しても確答が得られないかもしれませんが、この点は後ほど政務次官なりから大臣にお聞きをいただいて、あるいはまた省内をまとめていただいて、御答弁を、次の機会でけっこうですから、御指摘をいただきたい。同時にまた、その具体策を提示をされたときに、厚生大臣は日薬の積極的な姿勢を評価されて、日薬のこのたびの対策は自然分業の形をとっていると思われるが、いま一つきめ手がほしいと、たとえば年限を切るとか、地区を指定するなどの対策が望ましいと意見を述べられたということを、ちょっとよそから聞きました。こうしたことは、この期限を切るとか地区を設定するというような問題を具体的に出すというよりは、これは一日本薬剤師会がきめるまでもなく、やはり厚生省自体、行政の府が医療制度の具体策を一日も早くつくることが私は至当だと思うんです、したがって、この検討を公的にすみやかに行なうために、先ほど申し上げました適配懇というような諮問機関もあるわけです。適配懇と医薬分業との関連もございます。したがって、適配懇以前の問題として、やはり厚生大臣の公的な諮問機関として、医師、薬剤師あるいは歯科医師、あるいは学識経験者、医療機関の代表あるいは公益代表などを加えて、網羅した医薬分業推進懇談会の設置を早急に私ははかるべきである。こういう点について、どのようにお考えになっておられるのか。政務次官ですから御答弁いただけないかもしれませんが、もしいただけなければ、次回でもいいですから、大臣にひとつお伝えをいただいて、御答弁をいただきたい。もし内示がありましたならば、御答弁をいただきたいと思います。
  49. 登坂重次郎

    政府委員登坂重次郎君) 先生指摘のとおり、斎藤大臣はじめわれわれも医薬分業については積極的に考えております。大臣が特に日薬会長石館さんに申し入れたのもその趣旨でございます。何とかして医薬分業を確立したいというのは、大臣の率直な明言でございます。でありまするから、それに対して受け入れ側の態勢がどうなっているであろうか、日薬の真のお考えはどうであろうか、そういうことをこの間お聞きをした。これはわれわれの会議の席上でも、大臣は常にそう申しておりますから、医薬分業はぜひ実施したい。それをどういうふうに実施すべきかということを日薬の会長にお尋ねしたわけでございます。ですから、将来、できるだけ早く具体的にその案を得るように、大臣も考慮されておりますし、われわれ事務当局もそういう方向で進んでおることは事実でございます。
  50. 須原昭二

    須原昭二君 その諮問機関をつくるということ、この点についてどうですか。
  51. 登坂重次郎

    政府委員登坂重次郎君) これは、いまお述べになったことを大臣に伝えます。
  52. 須原昭二

    須原昭二君 これはぜひつくるように、早急にひとつ大臣にもお伝えをいただきたいと思います。  時間の関係もございますから、薬の関係だけもう少しやって、休憩をしていただきたいと思います。  副作用の問題です。今度は厚生省は十一月十六日、各都道府県を通じて、医薬品メーカーに副作用を報告せよという通達を出したそうですね。これはあくまでも行政指導で、罰則もなく、メーカー側にお願いするだけのようにわれわれは受け取らざるを得ないんです。つくっているメーカーに指示して実効があがるかどうか、私は疑問だと思います。したがって、この際、医師、歯科医師、薬剤師に報告を求めるような、そういう方法もひとつ考えてもらいたい。この点がまず第一点。  この際、最近、たとえばサリドマイドあるいは心臓病のコラルジル、整腸剤のキノホルムあるいは肺結核薬のストマイ、IDUですか、点眼剤の奇形児の発生あるいはビタミン剤の中にも副作用があるというようなことも指摘をされているんですが、これら副作用として問題になっている薬剤の、いま巷間伝えられているもの、訴訟になっているもの、あるいは社会的にいろいろ問題になっているもの、そういうものの事例を全部ひとつ資料を出していただきたい、この点をひとつ要求をしておきたいと思います。  さらに、サリドマイド裁判についてでありますが、国や大日本製薬は和解を申し出たといわれておりまするけれども、申し出られたことは事実かどうか。和解するには、どのような内容をもって臨まれるというのか。  第三番目には、時間の関係がございますから、全部一緒にやってしまいますけれども昭和電工のように、裁判の一審でいかようにあろうとも上訴権の放棄を宣言したことはすでに御案内のとおりです。昭和電工は放棄をしました。このように、実は多くの問題が起きてきた。サリドマイド裁判においても、被害者、家族を今後これ以上苦しませる必要は私はない。したがって、やはり対策上、こういう裁判の問題については、どのように対処されるのか、この点をお尋ねをしておきたいと思います。  特に私が言いたいことは、訴訟患者の意向というものは、患者が受けた精神的な、あるいは肉体的な苦痛に対する賠償を求める意思が私はそのすべてであるとは思っておりません。私の感じでありますが、それ以上に、ルーズな今日の薬務行政に反省を求める、こういう薬害が二度と起きないようにしたい、こういう立場から裁判をやっているというのが私たちの受け取り方であります。そういう点にあると思いますから、早急にこの対応策を考えなければならないと思いますが、その点に対してのお考えをお尋ねをいたしておきたいと思います。  それから、副作用に関連をして、薬の——最後でありますが、まだそのほかにもありますけれども——広告の問題です。広告の基準改正をこの間やられました。それで医薬品のPRはきびしくなったように感じます。しかし、いままでは一般消費者に向けての宣伝、広告の規制に重点が置かれておって、今度は医療機関関係者に向けても規制をするということに変わってきたことは、私は非常に前進だと思います。その点は評価をしましょう。しかし私は、薬は、やはり医師とか薬剤師とかとの信頼関係において、国民がこれらの人たちから薬の知識を受けるべきであって、国民が、患者の皆さんが、広告や宣伝を見たり聞いたりして自己判断をして薬を使用するという傾向は、やはりやめさせなければいけない、そういう行政指導が必要だと思うわけです。その点は、特に私たちは重視をしておかなければならない問題でありますが、私は、ここに持っている官報、先ほど申し上げました薬価基準改正、あるいはまた、薬だけではございません、「除権判決関係」、「会社その他」の公告事項も出ておる十一月二十五日の官報号外第一三八号、この中に、薬の広告が六つも書いてある。下部機関に、患者の皆さんに、国民に、あるいは医療機関のすべてに広告を厳密に規制をしなさいと言っておきながら、この官報の中に、「プロメチン」「山之内」「純国産」云々と、それから「鎮痛・消炎」「ポンタール」、これは「三共」。それから、ここに「アプラクタン」「エーザイ」「しびれ感麻痺をとる」「脳率中にわが国初めての厳密な試験を実施」。でかでかと「リファジン」、これは「第一製薬」「新発売」、こう書いてある。「武田の新しい鎮咳剤」「コーベン」。「ノリトレン錠」ですか、「大日本製薬」「新発売」「抑うつ感情、抑制、不安をすみやかにとり除く」こういう大々的な宣伝を官公庁が出しておる官報に記載をするとは何事ですか、これは。下部末端に対してはやっておっても、横の関係について何らやっていないというようなことで広告の規制ができますか。まず皆さんが横の連係を密にすることが大切だと私は思うのです。その点はどう考えておられるか。いろいろ各省においても非常にたくさん出版物が出されております。それらを見ましても薬の広告がよく出ておる。ましてや官報の中に広告を出すということは言語道断だと私は思うのですが、その点どうなっているのですか。
  53. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) まず副作用の問題から御答弁申し上げます。  副作用につきまして各メーカーに指示をいたしましたけれども先生の御提案は薬剤師、医師等にももっと求めるべきではないかという御意見でございますが、現在二百の大学病院国立病院から副作用の報告をお願いしておるのでございますが、この点につきましても条件が整えばさらに拡大していきたいと、かように考えております。  それから、サリドマイドほか数々の訴訟が現在係属中でございます。今後こういうふうな問題が起きないように私どもはいろいろ現在まで努力しているわけでございますが、サリドマイドにつきましては本年初めから現在まで数々の証人が出ておりまして、まだ現在訴訟係属中でございます。  しかしながら、私どもとしては諸外国がすべて全部現在のところ和解して解決しておりますので、そういうふうに早く問題が解決できるようにということで、二月の初めにそういうことを裁判所のほうに申し出、現在もその意思には変わりはございません。  それから、副作用につきましての今後の対策でございますが、今後はやはり国際的なレベルでいろいろ副作用情報交換等もすべき必要がございますので、明年度からWHOの副作用モニター制度にも私どもは加入したいということで、現在予算その他の準備を進めております。  広告の問題につきましては、先生指摘のとおりでございまして、先生の御指摘のとおりの点につきまして、この前基準その他も改正したわけでございます。その方向で今後とも厳重にやっていきたいと思います。現在、ただいま先生指摘のあった官報の問題でございますが、はなはだこれは遺憾でございまして、各社にこういう点につきまして厳重に注意いたしまして、官報等にこういう薬の掲載を行なわせないように指導したわけでございます。今回の点につきましては非常に遺憾に思っております。
  54. 須原昭二

    須原昭二君 午前中の質問はこれで最後にしたいと思うのですが、副作用の問題について、先ほど名前をあげただけでもたくさんあるわけですが、そのほかにもたくさん社会的に問題が、あるいは疑惑を持たれている問題がたくさんあります。したがって、そういう話題になり、あるいは裁判になり、あるいは報道機関の記事になったものが、みんな厚生省では収録されておると思うのです。それをひとつ資料として提出を願いたいというのと、それから、裁判の問題については司法権の内容にタッチすることになりますから、私はこの際避けたいと思います。上訴権を放棄するというような問題についても、その裁判の審理過程を左右するような影響もあると私は思います。したがって、この際は確答を迫りませんけれども、やはり積極的に考えなければならない、特にサリドマイドによるところの障害児がたくさんおって、もう十幾つになっておるわけです。今後のこの身体障害児のやはり教育の問題、生活の問題、あるいは就職の問題、就学の問題、多くの問題が出てくるわけですが、何か、裁判でやっていればそれはあと回しというようなきらいになっているのです。したがって、こういう対策を前向きでひとつ御検討願いたいと思うわけです。  さらに次官にお願いしておきますが、官報の問題でありますけれども、官報以外に各省は多くの印刷物、出版物を出しているわけです。こういう問題について私は一々指摘をしませんが、代表的なものを出したのですが、そのほかにもたくさんあります。こういう問題は一ぺん閣議できちっと整理をしていただいて、そういうものが一ぺんも出ないようにひとつ厳密な対策を講じていただきたいと思います。  以上、申し上げて、午前中の質問は終わりたいと思います。
  55. 中村英男

    委員長中村英男君) 午前中の質疑はこの程度にとどめ、午後一時二十分まで休憩をいたします。    午後零時四十五分休憩      —————・—————    午後一時二十八分開会
  56. 中村英男

    委員長中村英男君) これより社会労働委員会を再開いたします。  午前に引き続き、社会保障制度等に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  57. 須原昭二

    須原昭二君 午前中は、実は薬の問題についていろいろ御質疑をいたしたわけですが、その中で資料要求の問題だけは後ほど最終的にまたお願いするということにして、実は私たちも非常に関心を持っておったわけでありますが、いわゆる悪徳医師の問題であります。悪徳医師といいますと、何か全部お医者さんがみんな悪いような感じを率直に受けるきらいがありますから、私はこの際お断わりをしておきますが、医師に限らず、歯科医師においても、われわれ薬剤師の中においても、非常にそういう悪徳的な存在があることだけは事実です。したがって、この問題を取り上げたからといって、全般的にお医者さんがみんな悪いのだというような印象のないように、ひとつ事前に御理解をいただいて質問に入りたいと思うわけです。というのは、要するに犯罪を犯した悪徳医師の氏名を慣例のために公表しなかった。そしてマスコミ等による、あるいはまたいろいろ諸団体によって世論の批判を浴びたことはすでに御案内のとおりです。この問題については、おくればせという表現が私は至当だと思うんですが、厚生省は去る十一月の二十四日に免許取り消しを含む四人の医師の氏名を初めて公表されました。私はいいことだと思います。やはり悪いことをした人たちに対しては当然な制裁であると同時に、この問題は、多くのやはり再びこういうことを医師が起こさないことを前提として、他の人たちの教育上にも非常にいいことである。特に今度の発表は歴史的にも画期的であったと私は思うのです。そこで医道審議会が二十三年発足してから初めてのことだと私は聞きますが、なぜ二十三年間もの長い間の沈黙をあえて破ったのか、何が障害であったのか、この点をまずお尋ねをいたしたいと思います。
  58. 松尾正雄

    政府委員松尾正雄君) 医道審議会におきまして医師の行政処分を審査いたしました結果を公表しなかったということにつきましては、特に非常に深いわけがあったというふうに私どもは理解いたしておりません。従来からも医道審議会の開催ということは、いわばオープンのもとでと申しますか、開催すべき日取り等についてもよく関係者にもはかった上でやっておるわけでございますが、ただ一つ従来の慣習として考えられますことは、この処分を行ないましたいろいろなケース、ケースによりましては、いわば前に一つの、裁判所において事件の判決を受けておる。そういう方々について、さらにもう一度追いかけて医師法上の行政処分というものが行なわれたというような関係で、そこまではやらなくてもいいんじゃないかという空気があったのではなかろうか。それから、もう一つは、その発表のしかた等におきましても、内容で、ただいま先生が御指摘のように、その事案が非常に強く受け取られるということのために、かえって必要以上に本人の名誉を汚すということはないだろうか、こういう配慮がたぶん働いておったろうと私ども考えております。しかしながら、このこと自体はあくまで処分でございますので、他の厚生省のほかの身分法上のいろんな処遇というものもあわせまして検討した結果、今後は医師、歯科医師のみならず、さような行政処分については一応最小必要限度のものは公表すべきである、こういう結論に達したわけでありまして、特に従来ひた隠しに隠さなければならぬという態度でこの問題を扱っていたという気持ちは全くございません。
  59. 須原昭二

    須原昭二君 実はいまの御答弁を聞いて一応納得をいたしますが、巷間伝えられるところによりますと、医道審議会のメンバー、十人からなっているように聞いておりますが、医道審議会のメンバーにお医者さんがきわめて多い。したがって同業意識がここに働いておるのではないかというような世論があるわけです。この点についてどうお考えになっておられるのか。さらにまた、いまお話では今後差しつかえなければ公表していくというお話でありますが、これは制限つきの公表なのか、無制限に公表していくのか。すべてを公表していくのか、あるいは要求がなければ公表しないのか、その点を明らかにしていただきたいと思うわけです。われわれ薬剤師の中においても麻薬取締法違反だとか、あるいは薬事法違反だとかいうことによって免許停止をされ、あるいはまた業務停止をされた仲間がおります。これは堂々と公表され、新聞紙上にも発表されておる現実はすでに御承知のとおりです。したがって、何か医師だけを特権的に扱っているような印象を国民に与えるというところに問題があろうかと思いますが、このメンバーの問題、あるいは今後公表していくか、要求がなければ公表しないのか、その点をひとつ冒頭に明らかにしておいていただきたいと思います。
  60. 松尾正雄

    政府委員松尾正雄君) 第一点の問題は構成の問題でございますが、これは御承知のとおり事案によりましては、かなり医学的なと申しますか、医療上のいろいろな配慮のもとに判断すべきものもございます。そういう意味で、かなり権威の高い、いわゆる思想堅固と申しますか、非常に正しい姿勢をお持ちの方々というものが医師関係、歯科医師関係で占めるということは、ある程度この審議内容から見まして当然のことかと思っております。ただ、私も内部に入っておる一人でございますけれども、毎回この審議に出ておりましても、この方々の姿勢というものは非常にきびしい態度でございます。したがいまして、外見上さような疑念をお持ちになるということは、私もわからぬわけではございませんけれども、この方々の従来の議論あるいは態度というものは非常に厳密であるということを、私も自信を持って、身をもって体得しておる次第でございますので、当面直ちにそういうことでこれに大きな修正を加えるというような必要はないのではないかと判断いたしております。  それから、第二の、公表問題でございますけれども、これは一応ルールといたしましてきめたことでございます。医師、歯科医師のみならず、他の職種につきましても、公表すべき問題として処分をした部分については、すべて、要求があろうとなかろうと関係なしに行なう、こういうつもりでございます。ただ、先般の医道審議会のときに、その結果についての件数だけをわれわれが申し上げたわけでございますが、これは御承知のとおり、審議会自身のはまだ一種の答申でございますので、ほんとうの行政処分は、いわば大臣決裁が終わった段階、こういうことで、その間に審議会と処分の間には若干時間があるということは当然のことであると思います。その点をどうか御了解を賜わりたいと思います。
  61. 須原昭二

    須原昭二君 ただ疑問に残った点は、医道審議会の答申の中に、この問題について公表しないという何か付記がついておったというふうに聞いておるわけです。そういう点がやはり国民の疑問を抱く原因になるのではないか、こういう点を私は指摘をしておきたいと思うわけで、いまの医務局長の御答弁は非常に前向きですから、そういう形で、少なくとも人間の命と健康に携わる、きわめて重要な立場にある医療機関の担当者については、厳密にやっぱりやっていく、この基本方針をくずさないようにひとつしていただきたいということを要望しておきたいと思います。  さらに、それに関連いたしまして、いわゆる悪徳医師というものは実はあとを断っておらないわけでありまして、実は私の地元の問題で恐縮でありますが、この三日前の十一月二十七日の朝日新聞の朝刊に大々的に出ておりますが、もう現地では実は九段抜きの記事で地方版ではその大半を埋めているわけです。「また恐怖の精神病院」、「重患見殺し、私刑横行」、「警察も乗出す」、「診療、無資格医まかせ」と、こういう大きな記事が出ているわけです。この問題については、私は実はことしの二月ごろ私の耳に入りました。しかし、この問題については、事、人権の問題にかかわるし、いまおっしゃる医師の名誉との問題もありますから、あまり軽々に動くべきではない。こういう考え方で実はその病院の勤務者皆さんに、自主的に内部で、院長等々と当該者と話し合って、そういうことの絶滅を期すように実は指導した経験を持っております。しかし、なかなかそれでも改善をされない。そういう中から朝日新聞がスクープしたのではないかと実は考えるわけでありますが、これは言うまでもなく、もうすでにお読みになっておると思いますけれども、無資格の医者が十年近く診療を続けているということ、その精神病棟に入る性格異常者であるボスの患者がほかの患者にリンチをするような、いわゆる病棟支配が行なわれている。一部の関係者に言わしめると、精神障害者の収容所そっくりだと言っているほどなんです。これは一宮市の佐藤神経科病院で、現在地元では人権問題、人間性無視だというようなこの新聞記事によって大きく論争をされておるわけです。無資格医は——はっきりここには「A」、「K」と書いてありますけれども、久野信行、三十六年ごろケースワーカーとして佐藤病院に就職をして、約一年後から患者の診察、注射、投薬の指示、けがの縫い合わせなど、無資格なのに診療を始めて、実は佐藤院長もこれを認めておるというおそるべき状態なのであります。特にこの四月の二十二日午前十一時四十分ごろに入院しておった——ここには「A君」と書いてありますけれども入院しておった十一歳の森尾友則君が麻痺性腸閉塞ですか、これで死んだわけです。しかし、この佐藤院長は、男子閉鎖、児童両病棟を実はこの久野信行にまかせておりまして、無資格の久野が森尾君を担当しておるわけです。同君が死んだときは強心剤の注射あるいはまた高圧かん腸などはしたんですが、佐藤院長の診療や指示は、従来からそうでありますから、診療、診察や指示は求めておらないのです。森尾君は病院の中で無医師状態で死んだと言っても私は過言でないと思うわけです。この問題については、実はたまたま私の近くにもう一人ケースワーカーとしてここにつとめておった一宮女子短大の教授だったと思いますが、この人が一応ケースワーカーとして嘱託におるわけで、この人は山田光遵という人でありますが、との人の歌にこういう歌があるわけです。「一人の医師にも診られずこくこくと血をはきて死ぬあわれこの児は」と、こういう和歌をこの間私は見せてもらったわけですが、実に遺憾千万と言わなければならないわけです。  一件だけではないのです。この七月の十七日、またこの三カ月前に精神分裂症で入院した三十二歳の女性患者でありますが、これがなくなっております。しかも、それは入院してから七カ月後、肺結核だと診断されたのはなくなる一週間前です。こういう結核で死ぬというのだったら一週間前にわかるようなばかなことはないわけなんで、診療が十分になされておらなかった事実を裏書きするものです。  また四月中旬ごろには、森尾君がなくなって間もない深夜、容体が悪化した女性一人が、死んでからあとでわかったのですが、放置されたまま息を引き取っておる事件があるわけです。  さらに驚くことは、この病棟管理がきわめてずさんです。病棟から配ぜん室まで非常に遠くて、体力のない結核患者が雨の漏る渡り廊下で食事を立ち食いをするような状態です。去年の秋にはふろ場で他の患者から熱湯をかけられて患者が死んだこともあります。無資格の久野なんかは、無意識状態で担架で運ばれてあばれる患者をくつで踏みつけるというようなことが数限りない。これは内部の従業員が証言に立つと言っておるわけです。まさに収容所でも余りあると言わなければなりません。こんなことが白昼堂々と行なわれている病院というものは、私は言語道断と言わなければならないわけです。  特にこれは医療法の立場からいって考えますと、佐藤病院は、入院患者は実に現在でも二百人ぐらいおります。医療法から言えば医師定員は十六名要るんでしょう。しかし、現状では院長と日勤のパート四人のお医者さん、これだけです。しかも、看護婦さんは医療法から言うならば定員は三十九名必要です。現状は十七名。こういう人員の配置状態でいいかどうか。この点をまずお尋ねをしておきたいと思うわけです。さらに時間の関係がございまして、他の先生方にも御迷惑をかけますから、全貌を明らかにしてまいりたいと思いますが、病棟では毎日の検温、二週間に一回の検尿はありますけれども、血沈検査は実は結核患者のみだ、最低限の診療体制も確立されておらない、こういわれてもいたし方がないと言うんです。まさに医療荒廃の典型である。こんなひどい病院は私は診しいと思うわけです。しかも、特殊なものだと考えるにはまだまだ私は早いわけでありまして、他の精神病院や内科あるいは外科の、あるいは救急病院などの病院でも重症患者がいても忙しいといって看護婦さんにその処置をまかしておることが多くの病院にも見られるわけでありまして、この際私はこういう医療法にのっとらない、医療法から見て体制がきわめて不十分な状態というものは再点検すべき必要があると思うわけです。特に精神病院においては、相手が気違いでありますから、気違いであるからこちらはまともだから相手はどうでもいいんだというような、人権が無視をされている事実がここに顕著にあらわれていると思います。この際すべての精神病院を総点検をする必要があると私は感じますけれども厚生省の御見解をひとつお聞かせをいただきたいと、かように思います。
  62. 松尾正雄

    政府委員松尾正雄君) ただいま御指摘のような実態がございますことは、まことに私どもといたしましても残念至極でございます。御指摘のような医療法上の定員等も、そういう実態であればまさに不足状態でございます。医療機関全般についてまず申し上げますれば、御承知のように医療法に基づきます医療監視という形でほとんどすべての病院については毎年一回各都道府県を通じましてそれぞれの事項について点検をいたしておるわけでございまして、その際指摘すべき事項についてはそれぞれ指摘をいたしまして改善をさせる、かようにしておるわけでございますが、中でも特に非常に重要な違反、悪質な違反と思われるようなものにつきましては、その後の状況次第によっては不意に立ち入り検査をやれ、それも抜き打ち検査をやれ、こういうことを昨年度も指示いたしておりまして、事前に通告をして調査をするということではないいわばほんとうの抜き打ち検査をやれ、こういうことも指示をいたしておりまして、さような事態ができるだけ防除できますように努力はいたしておるわけでございますが、いまのような事態がございますことはまことに残念でございます。特に精神病院関係につきましてはいろんな——火災の問題もございましたし、また、ただいまの御指摘のような人権無視と思われるような問題、あるいは治療上のきわめて不適当な状態等々かなりの問題がございますので、精神衛生法を担当する公衆衛生局並びに私どもと共同いたしまして、これらについてもさらに——重点的な対象といたしまして精神病院をあげてまいりましたが、その中では特に人命に最も大きな被害を与えるような火災予防的な問題については、すべて総点検ということを昨年度も指示いたしました。しかしながら、それも一応進んでいる段階かと思われますので、今後さらに従来以上に内容に立ち至りました点検は、十分にひとつ行き渡りますように配慮いたしたいと存じます。それから、もちろんこういうような、ただいま御指摘のような問題については、それぞれ私ども実態を十分調査した上でしかるべき措置をとりたいと、かように考えております。
  63. 須原昭二

    須原昭二君 実はこの病院の院長は私のかつて県会議員当時よく知っておる男でありまして、彼も県会議員を二期つとめた男です。現在もつとめているわけです。しかも愛知県の精神病院の協会の顧問、あるいはまた愛知精神薄弱児の団体であります「手をつなぐ親の会」の愛知県の会長なんですよ。ただ単なるお医者さんじゃないんです。指導的な立場にある人なんです。ですから愛知県の衛生部もこの事件を前々から大体知って感づいているはずです。感づいているはずにもかかわらずこれに手を入れておらない。この記事にも出ておるように、そういううわさも聞いておりましたといって衛生部は言っておりますが、これは看過しておったと言っても私はいいと思うわけです。特にこういう指導的な立場にある人たちがこういうことをやってるということは全く遺憾千万と言わなければならないわけであります。  たまたまその二日前、十一月の二十五日、今度は大阪府の歯科医師会の会長ざん、山崎会長が経営する病院でも、二十年間もつとめておるところの中島という技工士に、四十四年一月から四十六年の九月まで患者の診療に当たらせていたと、いわゆるもぐり医師を使った事件が、これまた毎日新聞の夕刊に十一月の二十六日に出ておる。この方も会長ですよ。しかもこの方は市会議長をつとめられた方、きわめて指導的な立場にある方です。こういう問題がたまたま出てまいりますと、医師会の中には裁定委員会というものがあって、あるいはこういう不名誉な問題、あるいはまた被害者との間の苦情処理の問題、そうした問題は裁定委員会で一応内部的に論議をする。この論議と相まって県の衛生部なり都道府県の衛生部がこれと連絡をして、そして処置をしていこうというような、そういう空気が多分にあることをわれわれは看過するわけにまいりません。この点はどういうふうに指導されておるのか、この裁定委員会と県の衛生部との関係はどうなっておるのか、都道府県の関係は、その点について具体的に御説明を願いたい。
  64. 松尾正雄

    政府委員松尾正雄君) 各医師会等の中に裁定委員会がありますことは私も承知いたしております。また、その裁定委員会が私どもかねがね言っておりますように、かような専門団体として自律的にみずからの力でいろんなモラルを確立するために十分活用さるべきだということは、私もそういう方向であるべきだと思いますが、しかし、行政上のいろいろな判断をいたします場合に、都道府県の立場がさような裁定委員会と連絡をとり、その判断によって左右されなきゃならぬというようなことは、私実はただいま初めて聞いただけでございまして、われわれはさような指示をいたしたこともございませんし、また、それとは独立にやはり判断をすべきものだといまでも考えております。
  65. 須原昭二

    須原昭二君 実は私も県会議員当時交通事故が、ある私の知人がやりまして、救急病院にかつぎ込まれた。そうしたら、その被害者は実は四十時間後ぐらいになくなった。その請求額が実に四十数万というような請求額が出まして、その問題はあまりにも不法であるということで、私はたとえば県の衛生部に指摘をして、この際カルテを出せ、どのような診療内容であるのかこの点を厳密に一ぺん計算をせよと言った場合に、実はそういう問題は県の外科医の協会ですか、そういう中の裁定委員会がありますから、そちらのほうで……、そちらのほうからこちらのほうへまた逆に陳情が来るというような、実はそういう私は経験を持ってるから、老婆心ながらそういう問題を指摘をしたわけです。特に先ほどから二件にわたって代表的なものを、最近取り上げられたこの悪徳医師の記事の問題を取り上げたわけですが、悪徳医師はやっぱり今日の医師の倫理からいって、医師の名誉からいってどうしても看過するわけにまいりません。医師の名誉、倫理からいって強い態度で臨むべきである、こういう点から考えて、先ほどの厚生省が悪徳医師の公表を避けてきた過去のケースから見ても、何か符合するような感じがしてならないわけであります。どのようなこれからこういう問題については行政措置をしていくのか、決意のほどを伺っておきたい。
  66. 松尾正雄

    政府委員松尾正雄君) 厳密に厳正な態度でかような方々に臨むべきであるという点は、私も先生の御指摘どおりだと思います。特にただいま精神病院等についての事例もあげられましたが、これについてはやはり事実関係を十分調べた上で、また、この病院運営管理としてきわめてこの人が院長として不適格であるということであれば、単に司法上の問題のみならず、医療法上から管理者の不適当命令なり、さような問題もとり得るわけでございます。こういうような措置もあわせ、また、その事実関係いかんによっては当該医道審議会にもかけまして、しかるべき処分をするというようにしてまいりたいと思います。で、少なくとも私どもはやはり懸命にやっておられる多くの医者の方々、歯科医師方々に対しても、さような不届きな事例については厳正なしかもきびしい態度で臨むというのが当然の行き方であると考えております。
  67. 須原昭二

    須原昭二君 私は疑いを持つわけではないのですが、非常に老婆心ながら感ずるわけです。たとえば大阪の歯科医師会の会長さんは市会議長をやったような政治的にも指導者です。あるいは愛知県の一宮の佐藤医師は、これまた県会議員で現職です。社会保障制度委員会の委員長もつとめております。そういう公職にある人たちになりますると、どうしても地方自治体のお役人さんは弱くなるわけです。こういう点を私はその人の立場によって左右されるようなことがあってはならない。どんな肩書きが多くある人であろうと、どんな平凡な一市民であろうと、法の前には平等でなくてはならない。この点を私は特に強調したいわけでありまして、この際ですね、やはり地方自治体だけにまかしておくのではなくして、監督権を持っておる厚生省自体がやはり現地に行って一ぺん調査をして適切な指導をする、そのくらいのやはり強い態度で臨むべきであるということを要望しておきたい。  いま一つ精神病院、たまたま一つあげたわけでありますが、この精神病院におけるところの人権問題というのは多くの問題があります。たとえば薬の問題から言うならば、これらの患者に飲まして人体実験をやっている事例もたくさんあります。こうした人権を無視されておるところの精神障害者に対する対策というものはきわめて私は看過されているきらいが非常に多いわけであります。したがって、この際厚生省は全国におけるところのすべての精神病院の総点検、これをぜひやっていただかなければならない。この点を要望しておきたいと思います。要望しておきたいと思うのですが、やられるか、やられないのか、一ぺんその御意思のほどをお尋ねをしておきたいと思います。
  68. 松尾正雄

    政府委員松尾正雄君) 先ほど申し上げましたように、特に精神病院につきましては角度こそ違え、いわば一種の総点検ということを指示してございます。しかしながら、いま申されましたような問題はわれわれも当然の意識を持っておるわけでございまして、その内容をどういう点に置くかということも十分ひとつ検討した上で、できるだけ早い機会に自主的であろうと、あるいは他動的であろうと、すべての精神病院についてそれぞれ点検できますような措置を考えてまいりたいと思います。
  69. 須原昭二

    須原昭二君 この問題についてはいま司直の手においていろいろ調べられておりますから、その結果を待ってまた論及をしてまいりたいと思いますから、きょうはこの程度にして、特に厚生省のき然たるひとつ態度をお示しをいただくように心から要望しておきたいと思います。  さらに、もう一点だけお尋ねをしておきたいと思うのですが、このお医者さんといわゆる医師会との関係の中でお尋ねをしておきたいのですが、たとえば優生保護法に基づく指定、あるいは救急病院の指定、そうしたものは個人から申請しても受理をされなくて、医師会の推薦がなくてはならぬようなことを聞いておりますが、その点はどうですか。
  70. 松尾正雄

    政府委員松尾正雄君) 優生保護法の指定は法律にはっきりと医師会のたしか推薦だったと思いますが、そういうことが法律に明記してございます。したがいまして、それは当然法律上の行為として医師会が認定をする、こういうことになります。しかし、その他の救急病院の指定等につきましては、特に医師会の具申なり何かがなければならないということはわれわれは考えておりません。
  71. 須原昭二

    須原昭二君 そのほかですね、医師のそういう権利の問題についてですね、医師会を通じなければ——推薦がなければならないような、そういう問題点はほかにありますか。
  72. 松尾正雄

    政府委員松尾正雄君) 法制上あるいは制度上の問題としては、私の記憶するところはもう優生保護だけだと存じます。しかし、そのほか実態的に何か意見を通したほうが判断に便利だというような場合、あるいは金融措置等をやりますときにはっきりしたその裏づけというものを証明してもらうとか、そういうことはいわば行政上の便宜とでも申しましょうか、そういうことでは若干あると存じます。
  73. 須原昭二

    須原昭二君 そこで問題点は、要するにいま総辞退問題のあと始末といいますか、保険医の総辞退の際に辞退しなかった医師にいろいろ各地における除名騒ぎがある。この点について実はお尋ねをしたいわけです。除名された人たちはどういう被害をこうむるのか、この点が問題点です。実は、この総辞退の問題について是か否かという問題についてはいろいろ論議のあるところです。私は、公益法人として医師会考えるならば、このような極端な方法でなくて、もっと方法があったのではなかろうかと思う。同時にまた、それ以前の問題として、厚生省のこの保険医に対する、あるいは中医協におけるところの審議を通じても、この保険医の対策について健康保険法の改正の問題についてあいまいもことしているところに主なる原因はございますが、その派生的に起きてきた総辞退の問題に関連をして、この実は辞退をしなかった医師について各地における除名騒ぎが実は起きているわけで、たとえば私が行きました、調べてまいりました静岡なんかへ参りますと、処分の対象となっているのは初めから総辞退に参加をしなかった緑町、牛臥、沼津中央三病院と、そのほか二つの医院、それから七月十一日までに辞退しなかったものが実は四病院あります。この問題について、実は会の決定に従わなかったんだということで、いわゆる先ほど言いました裁定委員会にかけて除名処分にするとか、あるいはまた謝罪文を書けとか、いろいろな要求をして、そこで内部紛争が起きている。これだけではありません。たまたま私が行ったのはこの静岡の沼津のあたりですけれども、東京にもあります。千葉にもあります。神奈川にもあります。多くの都道府県の中における医師会の中の紛争が絶え間ないわけであります。はたしてこうした問題点で除名されるとどのような被害を受けるのか。私が聞いておりますと、産婦人科なんかは堕胎ができない、優性保護法の指定医にはなれない、あるいは救急病院の申請を医師会が削ってしまう、あるいはまた看護婦養成学校があるけれどもそれは医師会が建てておるから自分のところの見習い看護婦はそこへ就学ができない、あるいはまた先ほど言いました医療金融公庫の申請ができない。こうしたあまたの不利な条件が振りかかってくるわけです。さらに強いところでは、言うならば支払い基金に対してこの辞退をしなかった医師に対しての請求額については厳密に監査をするというようなおどかしすら実は起きているような現状なんであります。したがって、私はこの際この人方が除名になったときの制裁の問題について厚生省はどのようにお考えになっておられるのか、行政指導の面から御意見を承っておきたいと思います。
  74. 松尾正雄

    政府委員松尾正雄君) 団体を構成しておりますときのその団体の内部の問題でございますので、実は私どもの立場から非常に何かはっきりしたことを言うのは非常に言いにくいような感じの問題だろうと思います。それはやはりそれを構成している団体というもののいろいろな判断というものはあるわけでございます。ただし、私どもとしては、やはり総辞退の問題のかぎは、先ほどおっしゃったような問題はあるといたしましても、医師会自体というものが、それぞれの医療関係者というものが、その中に医者がみな入りまして、そうして、やはり医療全体の向上ということを目的にいろいろとやっている団体でございます。したがって、多少のそういうような事例があったといたしましても、やはり多くの立場からそういう方々を中において、そうしてその団体全体として、地域全体の医療がうまくいくように配慮するというようなことは、私は当然の行き方だろうと思います。したがいまして、私は、さような点についてはひとつ行き過ぎがないように、さらに私どもも都道府県を通じまして事情を聞いた上でまた指導してまいりたいと思います。ただ、私どもも、先ほど来の処分問題にも関連いたしまして、いわゆる医師会自体が非常にいわゆる悪徳だと言われるような医師を特にみずからの手で除名処分するといったようなことは、むしろこういう専門団体としては積極的にやるべき問題だ、かように考えておりますので、それぞれの事例にもよるかと思いますが、いまのような御指摘のような問題は多少行き過ぎの点もあるのじゃないかと感じますので、十分ひとつ調べました上で、また個々に指導していきたいと存じます。
  75. 須原昭二

    須原昭二君 この問題についてはこの総辞退を拒否した方々の言い分を聞きますと、まあ彼らは患者のためを思って保険医を続けた。あるいはまた財団法人なんかの病院なんかは、院長、お医者さんだけの意思で総辞退ができないわけです。役員会にかけてやらなければいけない。そういうものまでも処分の対象にしているわけです。こういう点は私は遺憾としなくてはならないと思います。自主的な団体ではあるとは言うものの、これは医師会は社団法人ですよ。公益、福祉を前面に立てた団体でありますから、この自主的団体、任意団体とは違います。どうぞひとつ行政指導を的確にしていただきたいと思うわけです。特にこの保険医を続けてきた人たちの言い分を聞きますと、除名されればしかたがない、しかし、自分からは開業医をやめるつもりもないし、謝罪文も書くつもりはない、いまはこのような内部紛争をしているときではない、医師はもっと患者を思い、患者に信頼される医療を行なうべきである。この後段の意味ですね。この後段の意味が私はもっとも重要な問題であって、総辞退が是か否かという問題についてはこれは第二義的な問題であって、私はその総辞退がいいか悪いかの問題はこの際避けたいと思います。ただ、起きている現象について、やはり厚生省は非常に力をもってこの内部の紛争を一日も早く急速にやめさせるような、そうした行政指導を強められることを私は特に要望しておきたいと思います。時間が長くなりましたから、あまり委員長を苦しめてもいけませんから、このあたりで終了いたしたいと思います。どうもありがとうございました。
  76. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 私はきょうは少し、最近医者不足というのが非常に大きく話題になって、次から次へ大学が新設をされつつある。この問題について少しお伺いをしたいと思うのです。実はきょうはこの問題についてはもっとひとつ深く考えてみたいので、きょうはまずその初めに、この問題についての厚生省のお考え、それから後にはそれについてのいろいろな資料的なものをいただいて、次回にはもっといろいろと詳しく御意見を伺いたいと思うわけであります。  それで、特にこのごろでは無医村も非常にたくさんありまして、医者の需給関係がうまくいっておらない。だからして、非常に保険は充実いたしておりますけれども、ほんとうにそれに医療が伴っていない。保険があるけれども医療がないというような、いろいろキャンペーンをされているわけでありますが、事実やはりこの無医村解消のためにも非常に大きな問題があろうと思うわけであります。そういう非常に大事なときでありますので、この医学教育という問題をひとつどのようにお考えになっておるのかもお尋ねしたい。  また、文部省の方はお見えになっていませんか。——文部省の方まだおいでになっていませんから、厚生省のほうから先にお伺いしていこうと思いますが、そういう関係で非常にお医者さんを十分に充足するためにはどうするか、おそらく厚生省でも非常な悩みになっていらっしゃることだと思うわけでありますが、特に私は、最近大学がたくさんできまして、そうして、これからも申請がたくさんあるやに聞いておりますが、その間について、やはりどのような根拠でこれを考えておられるのか、外国の医者と人口との比率、これもいろいろございまして、あるいはアメリカあたりでは十万人に対して百五十人、ソビエトでは二百二十人とかいっておりますら、非常に多いことでありましょう。けれども、イギリスだとかフランスあたりは百十何人でありまして、日本はおそらく百二十七、八人じゃないかと思うのです。ですから、絶対人口の比からいえば、私は、そんなにものすごく欠乏してない、ほかの国々に比べてみますと、そう大きな数の上で差がないというふうにも考えられますけれども、しかし、現実においては無医村がたくさんあるわけです。また逆にいえばどっかに集中をして、そしてまた過密状態になっているようなところもあると考えるわけでありますが、そういう点なんかはどこに標準を置かれるのか。前の質問で何か厚生省の意見を伺ったときには、アメリカ並みの人口十万人に対して百五十人くらいにすることをめどにするんだ、という局長のお話も聞いたやに思っておりますけれども計画を立てられて一体、どれだけの日本の状態では大学をふやさなければならないのか、あるいはまたふやすためにはどうするのかということをひとつ、今後の見通しと現在の段階でどうであるかということを少しお伺いしたいと思います。
  77. 松尾正雄

    政府委員松尾正雄君) わが国、日本におきます医師は、先生指摘のようないろんな現象から見ましても足らないものだと考えております。特に、ただいま外国の人口比等も出てまいりました。人口比率におきましては御指摘のように、必ずしも日本が低いというものではございません、英仏並みあるいはそれをこすという程度状態でございますけれども、ただ私どもは、日本における患者の出方、患者の受診のしかたというものは、世界でも類例がないほど高い国だという、いろいろな資料から判断をいたしておるわけでございます。特に、御承知のとおり毎年行なわれております患者調査というものをもとにいたしましても、昭和三十年に一日に医療機関にかかった患者の数が二百九十五万という程度のものが、昭和四十五年にはすでに七百三十三万、二倍をはるかにこすような形で患者が医療機関にかかっておるという実態がございます。したがいまして、医師一人当たりの取り扱います患者の数も年々ふえてきているというのが実態でございます。したがって、これはもう先生御専門でいらっしゃいますが、患者が非常に多くて医者が少ないということは、患者にとりましても決してプラスではございません。短い時間に診察が受けられない、あるいは患者が殺到して重症な患者に手が回らない、いろんな点で問題が起こるわけでございます。したがいまして、やはり適当な数というものは、これは早く確保しなければならぬ、これは厚生省の基本的な見方でございます。  しからば幾らにするかということで、いろいろな研究等も長期続けてきておるわけでございます。これも世界じゅうで、人口対比等にいたしまして幾らにすればいいんだという確たる説があるわけではございません。したがって、私はただいま申しましたように、日本特有の患者のあらわれ方、増加のしかたというものに着目をいたしまして、少なくとも皆保険が始まります直前、いわば昭和三十五年当時の患者と医者との比率といったものを、最近のように増大してきました患者の中に置きかえて見まして、そのとき程度の、皆保険直前ぐらいの受け持ち患者数に直すというためには、一体どれくらいあったらいいかというような試算をやってみたわけでございます。それがたまたま人口十万人に約百五十人という数字になりました。それは、偶然にも現在のアメリカとほぼ匹敵をしているというだけでございます。決してアメリカの数字をそのままわれわれがとったというつもりではございませんが、逆にやってみたら、たまたまそういうふうな数字になったということでございます。当面、私どもは文部省とも十分御相談をいたしまして、少なくともこの点を早急に確保する。昭和六十年の段階で、人口十万人に対して百五十人程度、約十八万三千人程度の医者の数になろうかと存じますが、その程度の医者の数が確保できるように、医学部の増設なり、定員の増加なりということをはかるべきである、こういうことを文部省にも、また文部省の調査会の中でもそういう御検討をいただいて、中間報告もいただいておる、かような状態でございます。  ただ、私どもは今後将来、医者の養成には時間がかかりますので、とりあえず昭和六十年を目標にいたしましたけれども、その昭和六十年段階あるいはそれ以後において一体、日本の患者の変化、医療事情の変化、あるいはそれからコンピューターその他が導入されまして、どういうふうに評価されてくるのかということを、これは明確にいま予見するということは、ほとんど不可能に近いわけでございますので、一応ただいまのような計画を立てて進めていただきながら、やはり適当な時期にはもう一度再検討し直す、適当に修正すべきものは途中でも修正をする、こういう含みでこの計画を進めていただきたい。こういうことで、ただいま文部省とも話し合っているというのがわれわれの基本線でございます。
  78. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 いま局長言われましたように、十年前——三十六年にさかのぼって考えられる、こういうわけでありますが、私も、この十年間の患者数の推移、医者の数、それからまた教育されて年々出てきた数、それからその時分の大学の定員、そういうようなものをひとつ文部省と厚生省とに資料として私はあとでいただいておきたいと思います。十年間にわたってずっと、そういったものをひとつ伺わしていただきたい。  それから同時にまた、最近の調査はそういうような十年前から換算をして百五十人にたまたまなったとおっしゃいましたけれども、文部省と厚生省でやはり、その需給調査をずっと、年別のいまの数に含めてどの時点でどういう調査をされたかという、その調査の項目、どういうふうにして、医者の数やら、開業医なんか一応やってもらった項目の、調査時期に対して、どういう項目を文部省はどういうふうに調査されたかという、その調査内容も少し知らしていただいたらたいへんありがたいと思います。  それから、ここでひとつお尋ねしたいのは、一体、国立大学の医学部についての経営あたりは、文部省のほうからお聞きしたいのですが、どういうふうになっておるのか。四、五年間の間に各項目別にどのくらい出されてきたのかということを、定員とあわせて経理状況を一度資料として出していただきたいと思います。特に医学部の定員はどのくらいになっておるか、あるいはいま各学部の、特に聞きたいのは、研究費だとかいろいろ細目にわたったものが知りたいわけでありますが、そういう点をあわせてひとつ資料で出していただきたいと思います。
  79. 松尾正雄

    政府委員松尾正雄君) 前段の、過去十年間のいろいろな患者数なり、その調査項目あるいは医者の数、あるいは卒業生の数等は、これは私のほうで調査をして提出をいたします。  それから、文部省の方まだお着きでないようでございますので、私のほうから文部省のほうに、ずっと年報も出ておるようでございますので、調製できるものと存じますので、私から伝えておきます。
  80. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 それでは私は医務局長のほうにお願いしてお尋ねしたいわけですが、国立大学に——私はあとから文部省が来られたらこれをお尋ねしたいと思うのですが、いわゆる、国立大学の定員を増加する。そうすると自治省の病院が足らなくなると思います。国立病院も付属病院並みに研究室や何かを充実していく。その付属病院をふやすくらいにいまの国立病院を変えていくとしたならば、一体どのようなものになり、どのくらいかかるか、こういうことを御試算になっていないかもしれませんが、ひとつ試算をしていただいて、仮定的にこれができたらどのくらいかかるかということを資料として出していただきたいし、いま医務局長が考えられて、そういうことにするためにはどのくらいかかるかということを、ほぼ見当がつくならば、その概略だけでも聞かせていただきたい。
  81. 松尾正雄

    政府委員松尾正雄君) 大学の増設等に伴いまして国立病院などを学生の学習病院に使うということは実は画期的な御提案だと存じます。従来わが国の医学教育は御承知のとおり、学生の教育につきましては、もっぱら大学病院だけであるというたてまえでございます。しかしながら、例の美甘委員会等が文部省にできまして大学病院のあり方等についていろいろ御検討された結果を見ましても、現在の大学病院ですらも学生等の実習のためには不足だという結論が出ております。特に、そういった点でわが国の医学教育の中で特に臨床教育を重視しろというと、やはり答えにくい要素を持っておるんではなかろうかと思います。したがいまして、私どもも昨年来この国立病院のみとは申し上げませんが、その他の病院を十分に整備いたしまして、これを大学病院と連携しながら、いわゆる教育病院として活用するという方針をむしろとるべきではないか。これは諸外国でもいろいろやっておることでございますので、そういうことを提案いたしまして、ただいま文部省の中でも、調査会の中でも、具体的にその検討をしていただいているような段階でございます。いまそれのためにはどれくらい金がかかるかという問題は、やはり単純にいまの国立病院をそのまま使うんではなくて、もっと充実整備してその上でなければならぬ条件と存じますが、私もそのとおりだと存じます。ただこれは、大学によってどの病院を使うかということによりまして、それぞれ積算のしかたが違うはずでございますので、実は全部について幾らだという計算はいたしておりません。ただ、しごく近々でございますが、例の自治省の設置したします僻地用の医者をつくるといういわゆる自治医科大学、この設置に関しまして国立の栃木病院を暫定病院として認めてほしい。また、さらに大学がスタートしましたあとは、栃木病院を学生のための研究病院として、教育病院として活用してほしい、こういうような申し入れもございまして、この辺を話し合いをいたしておるわけでございますが、その栃木病院に、たとえば現在の規模の中に、学生のためのいろいろな控室でございますとか、あるいは討議をいたします部屋でございますとか、その他診療機能等についてもそれぞれの学生の教育に必要なものを強化する。こういう観点から非常に詰めたものではございませんけれども、試算いたしますと約七億円程度の費用を追加すればとりあえずはいいんではなかろうかという答えが出ておるわけでございます。したがいまして、この方式でいくならば、まあ国立病院を整備するといたしましても、相当な金が全国ではかかると思いますけれども、しかし、一つの大学付属病院をつくるよりも、金だけの面でいえば、はるかに安いものに終わるだろうという見通しはつくわけでございます。
  82. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 自治医科大学ですか、その問題についてはあとからお尋ねしたいと思いますが、いまこういうふうな病院を改装して、七億とおっしゃいましたけれども、これはほんとうにその場だけに必要な問題ではないかと思うわけでありまして、やはりそんなことではおそらく付属病院の形態はなかなかむずかしいのではないか。防衛医科大学の問題につきましては、何か二百億ほど予算が組まれているようでございますし、その他私立大学でもいろいろ内容を聞いてみると、やはり百何十億という巨額でございますから、相当その中でウエートを占めておるのが付属病院であって、付属病院が十分できないから非常にその設置にも問題があるというふうに聞いているわけでありますけれども、付属病院のウエートというものも非常にあると思っておりますが、ちょうど文部省からおいでになりましたので、ちょっと私文部省のほうで行なわれております新しくできました医科大学、これは私立が非常に多いようでありますが、医科大学、それからこの次にまた幾つか予定されていると聞いておりますけれども、これに対しまして私きょう第一番目に文部省にお願いしたいのは、そういうものは、できた大学では、一体どういうふうな予算の割合、あるいはまたいろんな設備費の問題、あるいはまた教授の内容、こういうようなものが、一応やはり設置基準に従って出されておりますところの、言われておるところのものがそろっておそらく許可になったわけでありますが、そういう内容を持った資料をひとつ表にでも出していただきまして、いままで許可されたものの資金関係、あるいはまたいろいろな予算、あるいはまたいままで使用された部分というものについて、ひとつ詳しくそのデータをいただきたいと思います。それはできますか。
  83. 安嶋彌

    政府委員(安嶋彌君) 私立の医科大学についてでございましたら、私どものほうで用意をいたします。
  84. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 私いま申し上げたのでありますが、文部省のほうではやはりいま大学を設置して次々許可をしておられるのでありますが、どういうふうな内容で、いわゆる、どういうところに根拠を置いて大学をどのようになるまでふやしていくのであるのか、あるいはまたその大学の審議会で、設置基準に合ったらなんぼでもふやされるのか、それをとめることはできないのかと聞いておるわけでありますが、そういうことについてどんなふうなお考えですか。
  85. 安養寺重夫

    政府委員安養寺重夫君) 医師養成の拡充の問題につきましては、ことしの夏どきから文部省の中に医科大学(医学部)設置調査会というものを設けまして、関係先生方の御賛同を得ましていろいろと医科大学設置要件なり配置の方針等を現在検討中でございます。これより先、最初の問題といたしましては、医者の必要数とその養成計画をどう把握するかということについて検討がございまして、この部分につきましてはすでに九月の半ばに中間報告というような形でまとめました見解が公にされておる次第でございます。  いまお尋ねの、医者の養成計画等の考え方でございますが、この中間報告にあらわれました点で御披露申し上げまして、現在の医師不足というものが、絶対数の不足と地域的偏在と、いま両面に原因があるのじゃないかというような把握をまずいたしまして、その養成数等につきましても、いろいろ現在また今後に向かっての医療水準の向上ということを含めば相当数の医者の必要数が推測されるというような設定をいたしまして、当面四十七年度から向う五年間のうちに千二、三百というものはまず増員をしてはどうか、なお、まあ今後に問題は残るわけでございますが、当面のさしあたっての課題として、そういうような計量的な提案がなされており、文部省はこういうことも含めまして現段階の措置としましては、この中間報告にでも申しておりますような手法に沿いまして、医大、既設の医学部の入学定員増をやりたい。それから医学部等が全然ない、その他新たな医科大学なり医学部を新設するにふさわしいような地域には新たにそういうものをつくっていいのじゃないかというような考え方のもとにさしあたり国立で五校程度設置の準備をいたしたいというような概算要求をいたしておるわけであります。
  86. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 あとから資料をいただいてさましたら、その資料でいろいろ検討さしていただきたいと思いますが、国立は五校程度、それからまた私どもちょっと聞いているだけでも、いままでに許可したのが四校、今年で二校されますと六校ですか、それから今後来年度、四十七年度にされようというのが八校あるわけですね、九校ぐらいございますか、あるわけだと思いますが、こういうような形で開校が予定されております。そういう意味からいったら、いま、お答えではかなりまだふやさなければならぬからというお話のようでありますが、私この中で見てみますと、非常に私立学校が多い。そうして、私立学校の中でいろいろ調べてみますと、やはり入学時の寄付金と申しますか、あるいはまた負担金と申しますか、そういうことで行なわれておる。もう六五%が寄付によって——その寄付の総額はこれは明確ではございませんけれども、八十三億五千二百万円、これくらいの数字も出ておりますし、その七〇%が——四百万とか六百万とかいう高額な寄付金が取られておる。また、最高では二千万円もこしておるというふうな話も聞きます。あるいはまた、言うならば、あれはもうほんのうわさですからはっきりしたことはわかりませんけれども、ある人から私は聞いた話でありますが、それなんかでは、秋田やら山形のほうへ行って、そうしてもう高校の一年生ぐらいから大学に入るためのそうした寄付のあっせんをしておる人があるというふうなことも聞きますと、非常に私は私立大学がたくさんできることが、やはりその運営がほとんど寄付金によってまかなわれておる、ことに既存の私立大学でも、かなりそういうウエートが高まっておる。  この間うちからいろいろそういう話が出まして、国会の中でもそういうことが議論されまして、もう少し国がそうした私立大学に対しても非常にたくさんの補助金を出すべきではないか、あるいはまた私立学校の、いろいろこれは中、高も含めてでございますけれども、非常に月謝が高くなってきておるから、月謝を高くするのももう限度だ、だからもう少し国から補助してもらいたいというふうな運動も盛んに行なわれておるようであります。そうなりますと、すべて私立学校はそういう傾向ではございますけれども、特にこの医学部が、最近私立の大学がたくさんできて、しかも巷間そういううわさをされる。私はそういうことを考えますと、今後の医療を担当する医者が、最近はまた非常に悪徳医も出ておると、いろいろなことが批判されておる中で、やはり私は、こういう教育の場が初めからゆがめられたままでいってはいけないのじゃないか。こういうことに対して、やはり基本的に文部省はどうとらえられておるか。私は一ぺんこれは総理大臣からよくお気持ちを確かめたいと思っておりますが、いずれまたいろいろな資料を集めた上で、もっともっと詰めて、あっちこっちの御意見を伺おうと思いますけれども、いまそれを担当しておられますところの文部省の方々の御意見をちょっと伺っておきたいと思います。こういうふうな私立大学のあり方をどう把握しておられるのか。いや、そういううわさはあるけれども、そうではないんだ。これで非常に教育の上においても支障のない方向に指導していけばいかれるのだ。こういう御自信があるのか。そのためにはどういう指導をしておられるのか、どうしておられるのかということを具体的にお話ししていただきたいと思います。私も非常にいろいろなことを聞かれまして、答弁にも困る場合があるわけです。
  87. 安嶋彌

    政府委員(安嶋彌君) 私立医科大学の認可が近年多いということは御指摘のとおりでございますが、四十七年度開校予定ということで現在申請が出ておりますのは、医学部が六校ございます。で、この認可の省内におけるちょっと分担について最初に御説明を申し上げたいと思いますが、私立医科大学は、大学局におきまして、大学設置基準に適合しているかどうかという審査がございます。これは主として教員組織、施設設置の面についてでございまして、この点につきましては、大学設置審議会という審議会がございまして、ここに諮問をして、その答申に基づいて結論が出されておるということでございます。一方、その私立医科大学の経営面につきましては、私立学校法の規定に基づきまして、学校法人としての審査、特に資産、経理の面についての審査が行なわれるわけでございまして、その面につきましては私立大学審議会というのがございまして、そこに諮問をいたしまして、その答申に基づいて認可をいたすという仕組みになっております。  ただいまお尋ねの点は、主として資産、経理の面についてでございますが、御承知のとおり私立医科大学設置するということは、非常にまあ大きな仕事でございまして、資金的にもばく大な金額を要するわけでございます。もしこれが十分な準備なしに出発をするということになりますと、教育、研究の水準も低下するでございましょうし、また学生その他に対する負担も加重きれるということでございますので、私どもといたしましては、厳重に審査をいたしておるつもりでございます。特に近年、私立医科大学に対する非難も非常に高まってきておりますので、そうした点につきましては特別に気をつけてやっているつもりでございます。  それで、一般的に申しまして、学校法人の設立と申しますのは、これは設置者、まあ発起人と申しますかの寄付が根幹でございます。そのほかにその趣旨に賛同した方々の寄付ということが最初の出発点であるわけでございますので、したがって、設立の際に寄付財産あるいは寄付金というものが、その何と申しますか、土台になって学校法人ができるということは、これはやむを得ないといいますか、当然なことであろうかと思います。ただ、私どもが非常に注意をいたしておりますのは、そういうふうにまとまったお金が、まあ俗なことばで申しますと、いわゆる見せ金であるというようなことでは、これは法人の基礎がきわめて薄弱なものになるということでございますから、はたして真に寄付されたものであるかどうか、あるいはその寄付金に不合理な妙なひもがついていないかどうかといったような点は、特に厳重に審査をしておるつもりでございます。特に本年二校の医科大学をすでに認可いたしまして、近く一校につきましても審議会の諮問を得まして認可手続をとる予定でございますが、それらにつきましては、そういう点を厳重に確認をいたした上で認可をいたしておるつもりでございます。  ただ、いま御指摘の点は、この大学が認可されましたあと、入学の際にばく大な寄付金をとっておるということがいま問題になっておるわけでございますが、私どももそういうお話を国会等でも承りましたので、初めてでございますが、先般調査をいたしまして、ことしの春、入学時の寄付金総額約八十三億というものの実態を一応つかみ得たわけでございます。ただ、残念ながら、一、二の例外はございますが、これはすべて任意の寄付金である、決して入学の際の入学の条件として寄付されたものではないということでございます。で、そういう条件のつかない寄付金でございますならば、これは法的にもチェックすることはできないかと思いますし、かつまた私立学校に対して寄付命を抑制するということは、私立学校の存立自体を危うくするようなものでございますから、ひものつかない、何と申しますか、ほんとうの浄財でございますれば、これを規制する方法もございませんし、また、適当でもないと思います。そういう観点から、本年度認可されました医科大学につきましては、特に入学時におきまして入学の条件として寄付金を取ることは絶対にやめてもらいたいということを認可の条件にいたしております。したがいまして、入学の条件として寄付金を取っておる大学は、昨今認可されたものの中にはないというふうに確信をいたしております。来年開校いたすものにつきましても、その点につきましては特に誓約書をとりまして、念を押しておるつもりでございます。  それからなお、各地で特に開業医の子弟で、将来医学部に進学することを希望するような者に対しまして寄付金が集められておるというようなうわさも私は耳にいたしますので、そういう点につきましては、個々にそういううわさの対象である学校なり、あるいは申請者なりに照会をいたしまして、特に、たとえば公証人役場に届け出た誓約書でもって、間違いのないことを誓約させるといったような形をとって事柄を処理しておるつもりでございまして、その点はまあ十分気をつけておるというふうに御了解をいただきたいと思います。
  88. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 いま、その点もよくわかるんでございますが、私は、ここでちょっと文部省及び厚生省の方にお尋ねしたいと思うことは、考えまして、またあとから資料いただきますから。設備なりいろいろなことに対してどれほどお金が要るかということは、詳しいことはデータいただけると思いますが、私の聞き及んでいるところでも、百億なり百五十億なり、防衛庁あたりでは二百億も組んでおられるということでありますから、相当金がかかるわけであります。こういう非常に金のかかることが初めからわかっておる問題を、それはいまもおっしゃったように、寄付でもってちゃんとできていく、そういうものは非常にけっこうなことでございますけれども、私はもう少し国のほうの側から考えたならば、医者ができるまでにお金がかかるようなシステムではなくて、医者になるのに金がかからないでできるような形をもっと国がつくり出さなければいけないという観点から見ますならば、私は、それじゃ新しい大学をつくることと、先ほどちょっと医務局長にも聞きましたけれども、いまの大学の定員を少なくとも倍にする。百二十名国立でとっておるとすると、それを二百五十名にする。そういうふうにするとしますと、まあふえ方はいまでも百ないし百に足らない程度定員でいま大学が新設されているわけでありますからして、いま既存の大学が定数倍になれば、ほぼ同じぐらいの数になっていくんじゃないかと、私は自分ながらに計算をしておるわけでありますけれども、それはまた別といたしまして、そういう形で、少なくとも定員を倍にするために要る費用、こういうことを考えると、先ほどもちょうど自治体の自治医科大学をつくられる構想の中で、医務局長からお聞きしました金額は、非常に少な過ぎると私は思いますが、まあそういうふうになっておるわけでございますが、そういうような定員をふやすために付属病院どれだけ要ると、それをいまの付属病院と同じような設置基準に合わしたような病院に、いままでの国立なりあるいはまたそういう病院を改組をしていくというような形でいくならば、もっと私は充実をした、しかも、あるいはまた非常にばく大な金がかからないでいくんではないかと思いますが、文部省のほうで、私はひとつそういう構想のもとでやったとしたならば、どうなるかということをひとつ試算をしていただけないかと思いますが、またそういうことを考えられたことがあるんではないかと思いますが、とにかく新しい大学を設置する前に、いまの定員をもっとずば抜けてふやすことに対していままで考慮をされたかどうか、またこれから考慮されようとすることはどうなのか、またそういうことに対する試算というものができているのかどうなのか。できていれば私はそれをひとつ聞かしていただきたい、資料としてもいただきたいと思います。
  89. 安養寺重夫

    政府委員安養寺重夫君) お話しのように、既設の医学部を増強いたしまして、可能な限り定員増をやるというのはまことにけっこうな話でございます。先ほど申し上げました調査会でも、ぜひそれをやれという御指摘もございました。私どもとしましては、直接まあ国立学校につきましては、そういうことの御賛同を得るべく、いろいろと夏の予算編成の時期に努力をいたしたつもりでございまして、現在七つの国立大学それぞれ二十名ずつ、上限は百二十名に至るまでということで、合計七大学百四十名の医学定員増を取り運ぶというように措置をしております。今後、何もかも定数だけで申しますと、国立大学だけで申しますと、どの大学も百二十名にするということになりますと、まだ六百名程度ふやす余地はございます。しかし、これには現在キャンパスがこれ以上もう両方に伸び切れないという物理的問題、その他もございまして、幾つかの大学はこの上限にかなわないということもございますから、すべてが可能だとは思いませんが、いまお話のようなことで努力するつもりでおりますし、引き続いて各大学に呼びかけておるわけです。  公私立大学につきましても、特に公立大学は入学定員が少のうございますので、いろいろその大学のお考えもありますし、物理的な条件もございましょうけれども、現に明年度は二大学でそれぞれ定員を若干ずつふやしたいというお話もございます。これはけっこうだというぐあいにお答えしておるような状況でございます。いずれにいたしましても、既設の大学の入学定員増を、他の諸条件をいろいろ整備しながらふやしていきたいということは考えております。  先ほど来百二十名、百二十名と私申しますのは、実は現在の医学部長あるいは病院の院長さんの国公私立大学全体のお集まりでも、一つの医学部の教育研究の規模として、まあせいぜい百二十名が限度だというようなお話もございまして、それならば百二十名を上限としていくということでやっていくわけなんで、その状況をお話ししたわけでございます。  なお、これに関連いたしまして、それでは、しかし、当面の課題、なお引き続いてお医者さんが必要だといういまいろんな問題に対応できませんので、しからば適当な、いまだそういう専門の学校のないところは徐々に条件をつくりながら新設ということでやってきたようなわけで、国立はそういう必要部分の相当部分を担当しておるという考え方で引き続いて作業をやる考えでおるわけです。
  90. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 大体一つの大学の規模が最高で百二十名くらい、そういういろいろな御意見があるわけですが、研究の結果、あるいは調査の結果だろうと思うのですが、私ちょっと新しくそこで申し上げているのは、すでに学校教育、これは大学紛争の発端は医学部教育から出てきたわけであって、それがいまほぼ終息しつつあるところで、その医学部の教育方法を振り返ってみますと、ひとつここらで私は医学部の教育というのは、やはり一つの新しい大学をつくっていくのも一つの新しい方法でありましょうけれども、もう少し教育のやり方をすっかり変えて、そして一大学の一付属病院がやっているという姿ではなくて、先ほどちょっと触れて医務局長にも聞いたわけでありますが、もっと周辺に教育の実習ができる病院、いわゆるベッドサイドティーチングが十分にできるような病院を、いわゆる付属病院並みの研究機関を持った病院をもしたくさん、増設といいますか、設備を改善してもらうというか、そういう形ででき上がったとしたならば、もっと私は定員を増加して、そして、教授がふえて、そうして、いろいろな形でその教育をしながら、大学で二百五十名なら二百五十名、そういう大ぜいの方々を教育しながら、各病院でやはりベッドサイドティーチングをやる。また教育と同じような教授がそこへ戻っていくという形で、もう少し何か大学のあり方というものを変えたならば、私はそういう非常にお金のかかる大学をどんどんつくるということよりは、もっと内容のあるような、また教育を別の面でしやすいような方向が出てくるのじゃないかという構想を持ちながら、私はいまいろいろ新しく病院が、大学ができるのを見つめておるわけです。  いままでのあり方だけで考えるならば、まあよけい数をつくらにゃならぬようになるかもしれませんが、これをつくるのには、非常に当局もそう思っておられるだろうと思いますが、われわれ第三者から見ますと、相当のお金がかかるのだ、このお金は私立でやられたならば、やはり寄付はもちろんあるでありましょうが、何かの形でそれが教育を受ける本人たちにも負担になっていくわけでありますから、やはり私は将来の医療制度のあり方、あるいはまた今後の医育教育の考え方ということを考えてみると、ここのところでひとつ、あのトラブルのもとになりました医学教育のほんとうのあり方をもう少し変えてみてこれを考えたならば、非常に大きな金をつぎ込む大学がたくさんできるよりは、もっとおもしろい教育体系ができるのではないかという、関係者を含めて私はいろいろ予算的に比較をしてみたいと思うんであります。  そういうようなことから考えますと、やはり私は厚生省にもちょっとお尋ねしたいんでありますが、いまの厚生省のいわゆる病院は、かなり国立病院として内容もりっぱであるわけでありますが、ここにその大学設置基準あるいはそういうものに含まれておる付属病院としての研究機関、そういうものすべてを盛ったものにしていくという、それはいま栃木病院を、その自治医科大学の付属病院として改組するということでお考えになって、ほぼいま金額は聞いたわけでありますが、それにもっと加えましても、私はいろんな意味でこういう設備の上でうんと充実させながら、それほど大きなお金がかからなくて、そして、しかも、いいぐあいにできていくんではないか。  英国の様子なんか聞きましても、一校に対して十億円ぐらいの国から補助をいたしておりますね。そういうような点から考えれば、日本で十六校あれば百六十億出さなければならぬということですから、こういうことからいきましても、いまできましたこの私立の大学も、国からもっともっと多くの補助を外国並み、イギリス以上に出さなければ内容充実した、しかも、あまりお金がかからないで医者の教育ができるというところにはならないだろうと思います。現在でも私立大学に対して非常に補助をすることが叫ばれておりますし、当局もその増額をしようということで前向きにいま考えてもらっておるようにわれわれも聞いておるわけでありますが、そういう観点から言えば、これからつくられようとする、このたくさんの大学、これにはもっともっと今後国から補助金を出さなければ、その大学がうまく運営ができないというところに追い込まれていくとすれば、私はその大学をつくることが、もう、一つの国民の負担の大きなものにそれが転嫁されていくんではないか。したがって、私は、いまつくられているのがいけないというわけではありませんけれども、いまこの大学がつくられようとしておるときに、あるいはまた医療という制度、医育制度というものがどうあるべきかということが検討されて、この医療制度なり、あるいはまた保険制度なりが抜本的に改革されようとする現段階にあるとするならば、私は、ここのところで医学教育というものを、文部省及び厚生省でもう少ししっかり考えてもらうべきところではないかと考えるのでありますが、この点はまた大臣のおられるときにもっと詳しいデータのもとに議論をしなければならないことだと思いますが、   〔委員長退席、上原正吉君着席〕 きょうちょうど両担当責任の方がおいでになっておられますから、その方々の御意見をちょっと伺っておきたいと思います。
  91. 安養寺重夫

    政府委員安養寺重夫君) お話しのように、医学教育というのは、在来特別の形でやっておったわけでございまして、紛争を契機にしていろいろ改善すべき問題も摘出されたわけでございまして、そういう意味でございませんで、在来からやっておったわけでございますから、そういう中で明らかになりました問題点もあわせまして、現在文部省の中に医学視学委員会というのがございまして、そこで鋭意問題を検討いたしております。これは世界をあげて医学教育については現在いろんな問題が検討されておるさなかでございます。わが国のあり方というものも、その中でわが国らしいあり方を把握したいということで鋭意検討中でございます。まあ、くだくだしく項目を申し上げる時間もございませんけれども、この経緯を見守りまして、われわれといたしましては、その結果できるだけ早く新しい医学教育というものの改善に取り組みたいと思っております。  また特にその中でも、付属病院につきましては、別途にすでに専門の調査会が大学の付属病院のあり方について新しい見解を提案されておりまして、これも現在関係の国公私立大学の関係者の中でいろいろ討議をしていただいているものでございまして、これもあくまで中間的な見解発表ということでございますので、いずれまとまりますれば、その方向で新しい付属病院のあり方、特にこれに関連いたしまして、俗に関連病院と申しておりますが、こういうようないわば付属病院だけでなしに、公的病院を包括した医療の研究と教育の体制を拡大していくというような意味での、新しい医学教育を模索中というような状況でございまして、いずれこういうものがまとまりますれば、また御批判をいただいたりしたいと思いますが、何せいま検討中でございまして、鋭意急いではおりますが、現状だけを、きわめて一般的な話で恐縮でございますが御紹介いたしました。
  92. 安嶋彌

    政府委員(安嶋彌君) 私立医科大学に対する補助につきましてちょっと御説明申し上げたいと思います。  四十五年度から私立大学等に対します経常費の補助金の制度が発足をしたわけでございますが、四十六年度、今年度におきましては医科大学関係といたしましては約三十四億円ばかりのワクを用意をいたしておりまして、一校平均にいたしますと約二億六千七百万円程度になります。こうしたお金が私立の医科大学に対して国から補助されるわけでございますが、先ほど御指摘がございました、多額の入学時寄付金が徴収されているというようなこととも関連をいたしまして、かつまた、医学教育の今後の充実向上をはかりますために、さらにこれを増額をいたしたいということで、明年度は経常費の補助金におきまして六十億、それから私立医科大学の特別な助成金といたしまして、三十七億足らずでございますが、計九十七億円を要求をいたしております。もしこれが要求どおり通りますならば、一校に対しまして約七億四千八百万円の補助ということになるわけでございます。このことによって、入学時の寄付金がすべて解消されるというふうに期待することはちょっと困難かと思いますが、しかし、かなりそれを抑制する効果はあろうかと思います。かつまた、研究面につきましても、施設、設備の面につきましても、ある程度の改善が期待できるのではないかと考えている次第でございまして、今後とも努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  93. 松尾正雄

    政府委員松尾正雄君) 医学教育の改善につきましては、ただいま文部省からもいろいろな現状、検討段階のお話があったわけでございます。私どものほうの厚生省としましても、非常にこの問題については重要な関心を寄せざるを得ないわけでございまして、具体的なことはいずれ教育の内容をあずかっております文部省にお願いするわけでございますが、私どもが従来から日本で言われているようなことを振り返ってみますと、日本の医学教育は、いわば講義を主として、しかもデモンストレーションをそれにつけ加える、こういうことで成り立っていると指摘をされているわけでございます。したがって、いわゆる医者として大事な臨床教育というものが非常に欠けている。これが日本の医学教育の一口で言える特色ではなかろうかと思います。しかしながら、医者として育つためには、若いときから一人の患者について、その経過をたどっていくということも必要でございます。またその場面で、患者がいかに生命というものを守るために戦っているのかという患者の苦悩、苦痛といったようなものも若い学生のうちに身をもって学んでおくというようなことが、その人の医の倫理と申しましょうか、そういうものをつちかう上でもきわめて必要である。  外国等におきましても、まだ何ら医学を知らない学生をいきなり病院にほうり込みまして、いわば看護婦並み以下の知識しかない人をわざわざその方面にほうり込んでいるといった例もありますが、そういったことは、いわば感覚的にもそういう臨床のとうとさというものを教えるという機会かとも存じます。しかしながら、わが国では、先ほど申しましたように、講義を主とし、あるいはデモンストレーションというような、患者を見せるという程度のことが中心である。この点は、やはり臨床教育という面から見れば改善をすべきではなかろうか。そのためには、先ほど先生指摘のように、現在の付属病院だけでは、すでに報告が出ておりますように非常に不十分でございまして、回りの病院を十分、そういう研究と申しますか、教育に値するように整備いたしまして、その場を広く使って、いわゆる大学以外の病院も大学の教育に協力をする、こういう形で、その一人一人の若い医学生を育てていく。こういう形をつくり上げることが、一口に申し上げて、日本の医学教育改善の大きな一つ方向ではなかろうか。厚生省ではかように考えておりまして、先ほど来申し上げました教育病院の整備というような方向につきましても、大きな方針として努力をしてまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
  94. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 やはり僻地で医者のいないところがなお非常にあるということを解消する目的で、医者の不足を何とかしようというのがスタートなんでございまして、先ほど来いろいろ聞いておりますと、いろんな条件もあります。いま新しく願い出ておるような大学を見ましても、十六ほどですね、大学のない府県もあるわけでありますが、そういうところにはあまりマッチしないで、やはり都会に集まった大学からたくさん出ているという形に、実際から見ておりますと、そういう傾向にあるわけでありますが、文部省あたり、あるいはまた厚生省あたりでは、こういう問題に対してはどんなふうに考えておられるのか。新しく設置する場合に、そういうふうな方向になるような何か指導をされているのか、されていないのか、その点は一体どうなんでございますか。
  95. 安養寺重夫

    政府委員安養寺重夫君) 当面調査会でこれは議論をいたしましたが、医者の不足ということは、僻地へ行かないというような原因からもきております。お話しのように、そういう地域には医学校をつくってもらいたい——要するに、そこで学校経営をしますと、卒業生の定着率がその地域に高くなるといわれますし、またそれが実際でもございますけれども、そういうことから御要望が当然ございます。現在国立で建てるというごとにつきましては、現にないところは当然ぜひわがほうにというような御要請が強くございます。文部省は国立学校のことを差配しているわけでございますが、そういう点につきましては、先生指摘のような要素を十分考えまして、今後、いろいろたいへんむずかしい問題ではございますけれども、ぜひそういう地域を適地として選んで、新しいものを国立としてつくっていったらどうかという方向で検討いたしております。  これに関連いたしまして、公立関係は、これはいろいろ問題もございますけれども公立としての、国立と違ったいろいろ役割りを果たしておるわけでございますから、別にない県はおつくりになってはというおすすめまで、そう積極的にはできませんけれども、そういうようなお話を申し上げたり、できることであれば、現在あります、たとえば北海道の札幌医大などは、当然そこに国立をつくることもよろしゅうございますけれども、それとあわせて、道立の定員増などはどうかというようなすすめもしておるというようなことでございます。  さらに、私学につきましては、これはどうもわしがつくりたいんだというようなお申し出があって初めて文部省も、あなたがおつくりになるんですかというようなことでございますので、その方に、東京へつくらないで、ぜひ北海道へどうですかと言うわけにもまいりませんので、そのあたりはあまりたいしたことはやっておらないわけでございますけれども、国公立につきましては、お話しのような趣旨を自分たちも大いに体して、いままでもやってきたつもりでございますが、今後つくるものにつきましても、そういうことで実現をしたいと考えております。
  96. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 私は、国立の立場で大学での教育を担当しておられる方が、やはり私立のところまではタッチはできないんでというのは、これはもっともだと思うんですが、私が言うのは、もしそういうようなことで、国立の教育に携っておられる方であれば、少なくとも僻地は国立の大学で引き受けられるというぐらいの程度一つのマスタープランを持たれることがいまにおいて必要じゃないだろうか。一校について定員は最高百二十人ぐらいがいいと言われているから、百二十人ぐらいしかふやさない。もちろんそれもわかりますが、しかし、そこのところを現在のままで考えているからそういう状態である。少なくとも僻地の解消は、厚生省と文部省の両方の責任においてこれをやってのけられるようなプランが立てられない限り、私立学校にそれをおんぶしてもらって、無医村解消をしていこう、あるいはまた皆保険下のすべての医療をつかさどる診療所をやっていけるかということに対しては、もう少しやはり私は前向きに国立の段階で考えるべきではないかと思うわけなんです。そういうことで、国立が主体となって、あと私立の大学の応援を得て、こういうふうなプランを立てるんだということになるのがほんとうじゃありませんか。むしろ末端から、医者不足であるからつくってほしいということが起こってきたのは、大学のない県からも起こってきたわけでありますが、そういうことに対する声というものをもう少し当局がつかんで、そうして、そういうところに医者が送れるようなシステムをつくらなければならぬ。  私は、先ほども私見をはさんで申し上げたのでありますが、教育病院というものが、ほんとうに大学の付属病院並みのものがある程度まんべんなくその地域にできたとしたならば、その地域の教育病院が主体となって、その近くにあるところの僻地の無医村地区を解消させるための一つの大きな役割りをするというならば、そこで研究が十分できて、そこでほんとうに勉強ができる。若い学徒の医者が集まったとしたならば、私は、一年なり半年なりそういう僻地に行くということはかなりできるようになってくるのではないか。いまでは僻地にやられたら永久にほったらかされるので、僻地に行くのを逃げて回るというような状態ではなかろうかと思うわけでありまして、いまのような教育病院ができましても、もっとそういうところに目を配らない限りは、私は、過密なところに医者が非常に多くて、非常に足らぬところは依然として足らない。こういうようなことが私は起こってくるのではないかと思うわけでありますが、大学当局としてどうお思いになりますか、また医務局長あたりのお考えも聞きたいと思います。
  97. 松尾正雄

    政府委員松尾正雄君) ただいまの先生の御提案、全く私どもも同感でございます。私どもに、大学の設置の場所については文部省からお話がございましたが、厚生省という立場から考えましても、その地域全体の医療水準が上がる、その大学の設置によって上がるということが非常に望ましい問題でございます。したがいまして、そういう意味では、いわゆる大学のない県というところに、さらにつくるならばつくってほしい、それによって地域全体のいろいろなレベルが上がる。こういうことを私どもとしては期待をしてお願いをしているわけであります。  しかしながら、私どものほうのいろいろ研究班でも、あるいは文部省の調査会にも資料を提出してございますけれども、検討いたしました結果として、大学がありさえすればそこに必ず医者は定着するか、こういう資料がございますが、必ずしもそうは簡単に言えないのでございまして、やはり大学以外に、ただいま御指摘のような教育病院のようないろいろ整備された病院がその県内にあるかどうか、これによって卒業生がその県内に定着するか、しないかがかなり大きく左右されているという実態が出ております。したがって、大学をつくるということは、最初に申しましたような方針でお願いしたいと思っておりますが、それだけでは不十分である。今度は厚生省のサイドから言えば、あくまでもそういうところに定着できますためには、先ほども先生の御提案の教育病院というようなものの充実をほかの病院ではかる。それがやはり定着をさせ、かつそういう病院が僻地関係につきましても、いわゆる基地と申しますか、中核の病院として活動する。こういう形で進むというのが私どもの最も合理的であり、また最も妥当な線ではなかろうか。したがいまして、厚生省としても、ただいまのような線に対してひとついろいろな病院の整備計画というものを進めなければならぬ、かように存じております。
  98. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 文部省ではどういうふうに考えておられますか。
  99. 安養寺重夫

    政府委員安養寺重夫君) 主として僻地のお話でございましょうが、僻地に医者がいるとか、僻地に医療が行き届くというためにも、その地域に、拠点になり、研究のセンターになるようなりっぱな病院医療機関があるにこしたことはないわけでございます。お話しのように、それをもって医学部の付属病院に期待するということにはなかなかまいらないと思いまして、新しく現在でも関連病院というような議論を部内においてしておるわけであります。お話しのように、われわれといたしましても、それを具体的にどのようにしたらいいかということの的確な手だてというものをまだ発見しておりません。くどいようでございますけれども、現在医学部では、病院を含めまして、卒前教育と卒後教育をやっておるわけであります。そういうもののあり方というようなことにも関連をいたすような問題でもございます。そういうことを含めまして、しかし、先生の御指摘のような方向でみんなが議論していることは確かではないかと、私自身も認識をしておりますので、今後もそういうような問題に早く着手できるような手だてを、管理面一つをとりましても早くいたしたいと努力してまいるつもりでございます。
  100. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 これはまた妙な質問ですが、文部省のほうとしては、厚生省のほうも関連してお聞きしたいと思いますが、教育の中で、付属病院というものが非常に大きな役割りいをたしておりますが、この医科大学では、むしろその付属病院というのも診療をやっておるものがあるわけでございます。それでベッドサイドでティーチングをするわけでありますが、こういうものを私は文部省からすっかり切り離して、付属病院といえども国立病院と同じようなぐあいに全部厚生省にまかせる、うといほうは文部省のほうでしっかりやってもら教育のうような、思い切ったやり方というものは、今後の医科大学の教育のあり方で何か考えられないか。そういうことになりますと、関連領域がずっとできて、付属病院と同じような機能ができるとすれば、教育をして、そして講義はひとつそこでする。またベッドサイドティーチングもしなければならないのは、その大学の教授が、その付属病院の医長であるということであれば、そこでやはりベッドサイドティーチングもできると、こういうような形で、いわゆるその大学のそういう付属病院、あるいはまた国立病院、教育病院というものの医長は、同時にまた教授であるというふうな形を持てば、講義するときに、その大学でカリキュラムなり、あるいはまたいろいろな方針が立てられていく、そこで講義に行くというような形ができるとすると、私はもっとまんべんなく付属病院というものがぴったりとでき上がるのではないかと、必ず大学のもとには付属病院が要るということになれば、付属病院が非常に都会に集まって、そして、非常にぐあいが悪い。だからして、ある程度そういうようなことが、まんべんなく教育病院ができ上がるとするならば、その教育と、それから実習の場、あるいはまたその臨床指導というものが、場所こそ変われ、同じ一つのシステムの中で循環ができるということになると、私はもっとこういう大学をつくるときの経費、あるいはまたむだが非常に省かれ、そして一人の医者をつくるための費用というものがそんなにかからなくて済む。非常に合理的に動くのではないかと思うんですが、そういうようなことに対して、その考えはとんでもないということになるのかどうか、御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  101. 安養寺重夫

    政府委員安養寺重夫君) 先生御専門の立場からの御意見でございまして、将来に向かって大いに検討すべき要因があると思います。ただ私きわめて役所的な立場から現況を申し上げますれば、少なくとも現在の医学教育に、大学という立場で従事されておるお集まりでは、やはり教育と研究と診療と三位一体の大学教育というような立場から、どうしても最小限度必要な病床というものは自分のものとして持っておきたい。それがどれほどかという大きさの問題につきましては、いろいろ人によって違いますけれども、最小限それは持っている。そうしてなおかつそれに関連をいたしまして、他に公的な病院と連携をするというようなことで教育の場を広げ、あるいは診療の範囲を広げていくということはあってもいいんじゃないかというような議論はございます。そうしてまたその方法がどういうことであるかということは、検討しなければならぬというのが現況でございます。外国にも付属病院を持たないというような医学教育をやっておる学校もございますので、日本の現在われわれがいろいろと議論をしておる仲間の間でも、いま申し上げましたようなことで何とかいい方法はないかということで検討中でございます。
  102. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 私ちょっと自治省のほうからお見えになっているので。  今度自治医科大学の構想を私ちょっと勉強さしていただきました。非常に変わった形で、知事さんたちの会合でも要望があってでき上がったと聞いております。これもまた数校これからできるという計画のように聞いております。私はこの医学教育、先ほど申し上げましたように、国立とか、あるいはまたこういうふうな公立でもっておやりくださることが最も望ましい姿だと思います。ことにこの自治医大の構想は、専門学校的なカリキュラムをつくるというところから出発されて成長したというような形で、自治医大という大学教育というようなことになったようでありますが、私は、この中の考え方にも非常に、何と申しますか、理想的ではあるようであって、医学教育の中に段差をつけるものがあるというふうに考えます。私は、この医学の教育を受ける過程において、やはりこういうふうな考え方一つ考え方ではあろうけれども、将来、医療制度の面から申しまして理想的ではないように考えております。  そういう点から考えましても、私は、今後この自治医科大学の構想そのものに非常に懸念を持っていろいろいま調べておるところでありますが、この自治医科大学の構想に対しまして、その予算だとか、あるいは様子を聞かしていただいておりますが、特に一点、いま一つ計画されておる、来年の四月から発足されるようでありますから、このいわゆる施設費、いろいろ運営費、すべてのこまかしい、先ほど文部省のほうに、厚生省のほうにお願いしましたような形で、どうぞひとつ付属病院に至るまで、その他すべての表を資料としていただきたいし、同時にまたいま考えておられますところの、この自治医科大学の構想をひとつちょっと御説明をしていただきたいと思います。私の偏見でありては困りますから聞かしていただきたい。
  103. 神崎治一郎

    説明員神崎治一郎君) ただいま先生からお話のありました自治医科大学は、僻地やその他過疎地域におきます医師不足というのが、先刻来お話のございますようにきわめて深刻な問題でもございますので、これらに対応する施策として、都道府県が共同設立をいたします学校法人によりまして医科大学設置をするということに相なっておるわけでございます。これは入学定員百名ということでございまして、入学資格なり、あるいは修業年限などにつきましては、他の一般の私立医科大学と全く同様でございますが、この特色と申しますのは、先ほど申し上げましたように、僻地その他の過疎地域の地域医療の確保という意味での医師養成でもございますので、在学生に対しましては入学金とか授業料、その他の修学に要する一切の経費を都道府県が負担をいたしまして学生に貸与してまいりたい、かように考えておるわけであります。したがいまして、これは学生と学校法人との貸借契約に基づいて貸与するわけでありますが、卒業後は一定の期間公立の僻地病院等に勤務をしていただく。そうして、その期間勤務をした場合には、在学中に貸与いたしました修学資金は返還を免除してまいりたい、こういう考え方に立っておるわけであります。  それで、さらに僻地等におきます医療の確保ということでございますので、特に新しく日進月歩する医学に対応するような臨床的な実力を養成するということにつとめることはもとよりでございますけれども、あわせて人格形成というような面についても十分な配意を加えてまいらなれけばなりませんし、かつまた卒後の教育との関連におきましても、大学卒業直後の非常に医師として修練を重ねていかなければならない重要な時期に、公立病院等に勤務をしていただくわけでございますので、公立病院等につきましてもその施設なり設備等についても十分な整備をはかってまいる。そうして、これらの医師方々が、都道府県の中心的な病院、あるいは僻地にあります一般病院なり診療所等との勤務の関係につきましても、十分合理的な形で勤務できるような配意を行なう、あわせてまたこれらの病院についても十分な機能的な連係を保ち得るような形で公立病院の整備というものを考えてまいりたい。かようなことを考えて現在進めておるところでございます。きわめて簡単でございましたが、以上でございます。
  104. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 その構想なんかを聞きましてずっと考えてみまして、私はやはりこの医大を増設され、国としては今後五校ぐらいは国立の大学をつくる、また自治省もそういう意味で自治医大をつくられる。こういうようなことで無医村解消というふうな方向に向かわれたことは私は一歩前進だと、こう思っておりますが、そういうところでひとつほんとうに無医村というものを解消するためには、先ほどから医務局長のほうからもお話がありましたように、もっとそういう病院を拡充し、また自治省のほうも自治体病院を拡充していくということでそういう解消ができるというふうな方向は私もそうだろうと思うのでありますが、しかし、私は心の中で、いま自治省の医大、それからまた私立の医大、それから官立の医大、こういうふうにあるわけですが、これで私考えるのは、一人前の医者になるために父兄の負担は国立ではどれくらい、自治体で考えておられる自治体医大ではどれくらいであるか、私立あたりではどれくらいかかるかという父兄負担、一人前の医者になるために要する費用、こういうものをいろんな面から割り出して考えていただきたい。そういうもののひとつデータをいただきたいと思うわけであります。同時にまた私は、ある程度国立並みにしようと思うならば、私立あたりに対してはどれくらいの補助金を出すようにしていかなければ、いわゆるああいう寄付金だとかあるいはそういうものを解消さすためにはどれくらい要るだろうかということの試算も一ぺんしていただきたいと思うわけであります。そして、ほんとうに医学教育の中で医者を一人前にするまでの費用というものを概算をして、ことに厚生省のほうにおいてもひとつ医者というものを、教育の課程でどうなっていくかということもひとつ考えていただきたい。それで各省からデータを出していただいて、そして、できるならば医学教育に金のかからないように国が負担するとすると、どういうところにどれくらい要る、自治体病院に対してはどういうふうになる、あるいはまた国立病院についてはどれくらい要るということでひとつ概算をやってみていただきたい。こういうデータがあればひとつ聞かしていただいて、私今後の勉強にさしていただきたいと思います。  それから、もう一つ考えたいことは、今度は自衛隊の病院をつくるといわれておりますが、あれも見てみますと、自衛隊のいまの何と申しますか、医者の数、それから自衛隊員の数から申しますと七百二十人に一人くらいに当たるわけでありましょうし、いま一般の医者と人口とをやってみますと、九百人に一人くらいになるわけでありますから、実際問題としていま現在自衛隊におられる医者の数というものは、そんなに他に比べて少なくないと思うわけでありますが、これに対しましてもこの自衛隊の医大ができる、こういうふうに考えますと、先ほどもちょっと触れましたが、自治省では自治医大がある、官立がある、私立がある、また自衛隊があるというふうな形で内容が変わってきますと、やはり医学制度の一貫性から考えて、私はどうしても先ほど申したように国にもう少し責任を持っていただいて、国でそういう教育を最終的に持っていただくということにならないと、まあそれは自治体でもあるいは自衛隊でもある程度税金でまかなわれますから、公的であることは公的であろうと思いますけれども、そこのところにバランスのとれないものがあるとすれば私は教育上非常に問題があろうと思いますので、こういう意味からも、私は自衛隊病院そのものについて、教育そのものの責任者ではないと思いますけれども医務局のほうでこの医療制度の中のあり方としてどういうふうに考えられるのか、そういうような点について御検討いただいておきたい、こういうふうに思うわけです。特に私はここでまたあとからいろいろと詳しくは議論を進めさしていただきたいし、大臣のおられるときにもいろいろ伺いたいと思うわけでございますけれども、きょうはざっぱくないろいろな資料をいただいたり、概括的な質問の第一陣として終わらしていただきたいと思いますので、そうした程度にとどめさしていただきますが、もう一つ最後に資料をいただきたいのは、最終的にいろいろ文部省で取り組んでおられますところの、国立大学に対するいままでの何年間かの補助あるいはまた経費、こういうようなものが国立大学ではどれくらい要っている、私立ではどういうふうにされている、それからまたほかの自衛隊なりあるいはまた今度の自治体医大をつくられる場合のすべてのつけ合わせとして内容がわかるような、詳しい各項目についての費用の点をひとつお知らせ願いたいと思いますが、よろしくお願いいたします。
  105. 上原正吉

    委員長代理(上原正吉君) 各省、ただいま御要求のありました資料は差しつかえなく出せますか。
  106. 安嶋彌

    政府委員(安嶋彌君) 御要求の資料は提出さしていただきたいと思いますが、ただ私立の医科大学の場合は比較的単科大学が多うございますので、経費のとり方が比較的簡明でございます。国立の場合は総合大学がほとんどでございますので、したがいまして、その医学部、病院だけの経理というものを区分けすることがかなり問題でもございますので、したがいまして、ある程度と申しますか、かなり推計の入ることをあらかじめ御了承いただきたいと思います。
  107. 須原昭二

    須原昭二君 いま大橋委員から資料提出のお話がありまして、その関連で、先ほど実は議論の中であいまいもことなっている資料提出の問題、実は薬務局長、保険局長がお見えになりませんから、政務次官から、ひとつお願いしておきたいと思います。  先ほど申し上げましたのは、医師会の武見会長が十二月一日から処方せんを出すと言っております五十品目、これは医薬分業の受け入れ態勢からいっても、薬剤師側が一応用意しなければならない品目でもある。そういう点からいえば、それが提出できないということは私は非常に疑問に思うわけです。中医協にはすでにその問題の論議をされておるようにも聞いておりますし、当然中医協に出されておるものがわれわれに見せられないという理由はないわけでありまして、この点はぜひとも提出していただくように委員長から……。  さらにキノホルムあるいはアクロマイシンとか、サリドマイドとかあるいはIDUですか、点眼剤その他多くの薬剤の副作用がいま訴訟なりいろいろの団体で指摘をされ、新聞記事になり、そうした社会的に問題になっている副作用の薬剤の一覧表を一ぺん収録をして資料として提出を願いたい。しかも、その推移がどうなっているのか、この経過措置についても加えて提出を願いたい。以上二件について、後段の問題については異論がなかったようでありますが、前段の問題については資料提出ができないようなことを言っておられましたけれども、さらに加えて委員長を通じて提出方を要望しておきたいと思います。
  108. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 いまの問題に関連をして率直に申し上げますけれども、もうちょっと三、四年前でありますけれども、新潟県の阿賀野川の有機水銀性の問題について、私は当時やはり社労委に議席を置いておって、われわれに質問権もあるし調査権もあるわけでありますけれども、当時の公衆衛生局長、もういまおりませんけれども、御承知のように疫学班がやはり仕組まれて、そうして加害者が、言うならば真犯人はこの辺だろうという、大体相当な国の費用と大がかりな調査団と権威ある学者が集まって一つの結論が出たわけだ。そこで厚生省としてもやはり問題を今度は通産省であるとか科学技術庁で合議をする、それが国の最終的な結論だと、そういう一つの過程すべき過程の中で、食品衛生調査会の中で、大体五十名ぐらいのメンバーの中から専門家の専門家をすぐって、そうして、十名の人間を選差する場合について、それをどうしてもその人たちが権威ある良心をもって、そのことがきめ手になるんだからねということで、当時は坊厚生大臣だったわけでありますけれども、徹底的に追及して、ぼくは当時の理事も追及して、これは調査権や、とにかく質問権があるにもかかわらず、とうとう最後まで酢のコンニャクのと言って、当時うじゃむじゃになってしまった。結果はどういうことであるかというと、大山鳴動して、最初の疫学班が出した結論が、結局、回り回って人権擁護局とか、裁判の結論は新潟で出ましたけれども、そういう関係でありまするから、行政と質問というものと、その企業というものの連帯感というものから、今日的にいまいろいろなそれはありましょうけれども、こういう機関の中で、国会議員の当然の権利の質問権であるとか調査権というものに対して、あと下がりして、出すがごとく、出さざるがごとくではいかぬのです。この点だけは、きょうは厚生政務次官も来ておられますけれども、はっきりといまの問題に関連をして、重大ないまポイントですから、どうしてもそれは出すようにひとつ慣行をつくってもらいたいと思います。
  109. 上原正吉

    委員長代理(上原正吉君) 御答弁がありますか。
  110. 登坂重次郎

    政府委員登坂重次郎君) 国民の健康、保健をあずかるわれわれといたしましては、国民のためになるものなら、鋭意、前向きに検討したい。厚生省として、どういう、私も、薬価という、専門部門に対して、これまでの慣例とか、あるいはそれが国民に公表していいものかどうか、そういうことをよく検討しまして、後ほどお答えいたします。
  111. 上原正吉

    委員長代理(上原正吉君) 須原君それから杉山君の資料御要求に対して、資料は出ますか。
  112. 神崎治一郎

    説明員神崎治一郎君) 御指摘の資料を提出するようにつとめさせていただきたいと思います。
  113. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 私、きょう時間いただきまして、年金のことと、それから老人福祉施設の整備費、措置費、こういう二つの点についてお聞きしたいと思います。よろしくお願いいたします。  まず、年金のことについてですが、公的年金の基本的な考え方についてお聞きいたします。と申しますのは、公的年金制度は非常に種類も多く、年金額あるいは支給開始年齢、掛け金の期間、こうしたものに違いがございます。これをどのように総合調整を行なおうとしているか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  114. 登坂重次郎

    政府委員登坂重次郎君) 年金制というものは、私はこう考えております。国民の生活を安定、向上させるための基礎的な、国としての最低の保障すべきものを年金でお支払いする、こういうことであります。ですから、病人、生活力が弱い人、できるだけそれらの人の生活安定のために使う。ですから、子供心身障害児とか、あるいは身体障害者あるいは老齢、退職後の生活の保障、その他、不幸にして生活の能力を奪われたような場合、そういう方々に対しまして生活の補助あるいは生活を幾分なりともお助けをしていく、でき得るなれば、そういう方々生活一切を見るというような方向でいくべきである。しかし、今日まで日本の経済がなかなかそこまでついてこなかった。ですから、経過的な措置として、いろいろな発生した年次あるいは経過にかんがみて、ただいま仰せのとおり、いろいろの種類に分かれていることは事実でありますが、将来は、やはり生活の安定のために、一体、最低の国民生活は幾らになるべきか。そういうことを想定し、また、そういうふうに近づけるべきだと、かように私は考えておる次第でございます。
  115. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 いま、政府のお考えが最低の生活を保障するための年金というようなおことばがちょっとあったように思いますが、私、年金というものはそういう考え方ではたしていいのかどうか、貧窮対策ではないんじゃないか。むしろ、年金は、国のために、また国家の繁栄のために働いた国民に対して、国がそれに対して老後の安定をほんとうにしてあげる。むしろ、年金をもらえることが喜びであり、年金によって老後をほんとうに楽しんでいけるというような行き方でなければならないんじゃないか。スウェーデンなどを見ますと、非常に豊かな年金が支給されておりますし、   〔委員長代理上原正吉君退席、委員長着席〕 また、年金をもらえるような立場に自分はなったということで、本人も喜び、また、まわりのものがお祝いをするというようなことになっているそうでございますけれども、私、いまのお答えに対して、不満を感じまして、もっともっと年金の問題は積極的な行き方で考えていただきたい。特に、いま、日本の国が非常に経済的に豊かな国になった、こういわれておりますが、国民の一般の生活は、非常にそれに比べて、貧しい。こうした点を、豊かな年金制度によって、国民の生活を世界に誇り得るようなところにまで持っていくよう努力していただきたい、こういうふうに思うわけでございます。
  116. 登坂重次郎

    政府委員登坂重次郎君) 仰せのとおり、年金がだんだん増額され、そうして、望ましい国民生活の安定が得られるようにすることは、これは政治の目的である、課題である、こう考えております。
  117. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 次に、公的年金の中でも最もおくれているのが国民年金の老齢福祉年金になっております。非常におくれているわけです。そうして、その金額は現在までたった二千三百円、来年度厚生省が三千六百円の要求をいたしましたが、私は、なぜ月額五千円の要求をしなかったのか、これをお聞きしたいわけでございます。
  118. 登坂重次郎

    政府委員登坂重次郎君) 私どもできるだけ月額五千円というのを目標にして、来年、再来年を目途としておるわけですけれども、やはり一気にそういうふうに予算措置ができることが望ましいのでありますが、財政対策上と申しては申しわけないのでありまするが、いままで千円からスタートして十年で千三百円の増、来年度は一年にしてその十年分をアップするわけですから、厚生省としては老人対策に重点を置いたということをひとつ御了解を賜わりたい、こう思います。
  119. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 いつも厚生省要求の態度が私弱いんじゃないかと、それは大蔵省で必ず査定の段階で、これをいつも不満足な査定をしております。それが毎年わかり切っているんですから、私、遠慮がましく三千六百円というような金額じゃなくて、五千円と、こうした金額を思い切って出していかなければ、また大蔵省の査定によって消極的な結果になっていくんじゃないか、こういうわけで、この要求額をもっと大きく出していただきたい。また、三千六百円がきまったとしても、はたして三千六百円という金額が所得保障の名に値しているかどうか。老人たちにお会いしまして聞きますと、施設の中に入っている老人ですらぜひ月額五千円にしてもらいたいと言っております。また老人クラブにいる老人方々も同様でございます。また、私たちのところに非常にたくさん要望書が来ておりますが、その中に必ず、二年間でなどというなまぬるいことではなくて、直ちに月額五千円にしてもらいたいという要求が全部でございます。こうした老人たちの切実な願い、要求、そして周囲の者も、当然そのくらいにしてもいいという、そうした意見に対して、厚生省がもっと強腰になって本気になって、せめて一番おくれているこの国民年金の中の老齢福祉年金だけでも老人に満足していただけるような金額をかちとっていただきたい、そうした点、何かいまの御答弁ですと、弱腰じゃないかと、はたして三千六百円も押しまくれるのかどうかということも心配なような感じさえするわけでございますので、もう一言、まかしておけという、そういう力強いおことばがいただきたいわけです。申しわけありませんとか、こうなった次第でございますなんということにならないように、ひとつよろしくお願いいたします。
  120. 登坂重次郎

    政府委員登坂重次郎君) いろいろ御意見もありましょうが、ただいまの財政対策という観点からばかりではなくて、厚生省福祉行政全般についてバランスのある考え方を持って、その他の年金も種々ございますので、そういう権衡の問題等もありますけれども、老齢福祉年金は特別早急に年老いた方々の老後の安定の一助にと思って請求したわけでございます。今後も前向きで検討することにはやぶさかでございませんし、早急にもっと増額をはかりたいというのがわれわれの偽らざる熱意でございます。
  121. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 同じく老齢福祉年金の問題で年齢についてお聞きしたいと思います。  この老齢福祉年金は、七十歳から支給されておりますが、六十五歳からにすべきであると思います。せめて六十五歳からにすべきである。その理由は、二級障害の寝たきり老人は六十五歳から支給されるのですから、こうした七十歳からとか六十五歳からとかというような区別をつけないで、全部六十五歳からにできるのではないか、ぜひしてほしいと、こう思います。またもう一つの理由は、拠出制との均衡もあります。これは金額は拠出と無拠出との差はやむを得ない、ですから支給される金額に差はあっても、受給開始の年齢は同一に六十五歳にするのが当然だと私は思うわけでございます。この点ぜひ六十五歳という老齢福祉年金にしていただきたいと思います。
  122. 北川力夫

    政府委員(北川力夫君) ただいま先生おっしゃいましたように、年金の支給開始年齢は個々の制度によって違っておるわけでございます。特に拠出制の場合におきましても、厚生年金は六十歳でございますが、たとえば共済組合の場合には、五十五歳という例もございますし、それから、国民年金の拠出制の場合には六十五歳、いま問題になっております老齢福祉年金は七十歳でございますが、御承知のように拠出制ではございませんで、全額国庫負担による年金でございます。しかも、だんだん数がふえてまいりまして、三百万人ぐらいの方々がこの支給の対象になっておられます。そういうわけでございまして、確かに一つのお考え方としては、老齢福祉年金の支給年齢を引き下げるという問題もあるわけでございますけれども、何ぶんにも全部が国の負担によるということもございますし、そういった観点から考えまして、ただいま先生が御指摘のとおり、今月から法律改正を御承認いただきまして、障害老人、いわゆる寝たきり老人等につきましては六十五歳からというふうな改善をしてまいったわけでございます。で、仰せのような問題は、やはり老齢福祉年金だけではなくて、障害福祉年金あるいは母子福祉年金等、福祉年金全般の問題もございますし、その中でどういう問題を最優先に考えるかと、まあおそらく先生も問題にされるでありましょう所得制限の撤廃という問題もあるわけでございますから、そういった老齢福祉年金全体の中での、何と申しますか、優先の度合いを勘案をいたしまして今後処理に当たってまいりたい。  そうなりますと、やはり一番急を要する問題は、何と申しましても老齢福祉年金の額を大幅に引き上げるということが最優先するのじゃなかろうか。そういう意味合いで、私どもは決してそういう問題をおろそかには考えておりませんが、やはり全額国が負担するという、そのワク内での優先度合いということもこの際は念頭に入れて処理をしていくべきじゃなかろうかということで問題を踏んまえているような次第でございます。
  123. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 六十五歳から老齢福祉年金は支給される方向にいかせようというあまり御意思がうかがわれないのはたいへん残念でございます。  それで、これは特に私、老人ホームに参りまして、そこに収容されているお年寄りたちの間に、非常にこのことが問題になっている。年金をもらっている者ともらっていない者とのアンバランスです。これが問題になっております。せっかく仲よく暮らしていかなければならないああした中で、しかも、国の費用をたくさん使ってああいう施設はつくられているわけですから、ただ六十五歳という、老齢福祉年金の年齢に差があるために、拠出制は六十五歳、老齢福祉年金の者は七十歳だと、こうした年齢の差から感情問題が起きている。これは六十五歳から福祉年金を支給すればある程度は解決すると思います。こうした現実の問題があるということを厚生省方たちは御存じかどうか、これいかがですか。
  124. 北川力夫

    政府委員(北川力夫君) ただいま仰せのとおり、国民年金もことしから初めて十年拠出のいわゆる十年年金、五千円年金の支給が始まりまして、現在まですでに九万人以上の受給者が出ております。そういった関係にございますので、まあ拠出をいたした者と、それから、そうでない方々との間には、先生も御指摘のとおり差があって当然だと思いますけれども、やはりこの年金をめぐる環境というものが、十年年金の支給によっていわば具体的な皆年金体制に入りましたので、そういう関係から申しますと、同一の施設で同一の年齢、若干の年齢の違いで、一方は老齢福祉年金の支給があり、一方はない。あるいはまた一方は国民年金五千円の支給があり、一方はないと、こういう施設の現場における現象的なアンバラと申しますか、そういうものにつきましては、私どもも心情としては十分に理解をしているつもりでございます。ただ何ぶんにも国民年金制度が発足をいたしました当時のいろいろな経緯から申しまして、たとえば十年年金あるいは五年年金という制度をつくりましたけれども、まあ加入をしていらっしゃらない方々がありますとか、そういった年金制度プロパーの問題もございまして、そういうことで現在経過的にはそういう施設等における違和感というものがあると思いますが、できるだけ今後年金の成熟という意味で多くの方々を年金保険につながせる、また受給の額をできるだけ改善をしていく、こういう努力は今後も十分にやってまいるつもりでございますが、一つの経過的な現象といたしましてそういったことが生じておりますことにつきましては、はなはだ遺憾ではございますけれども、一律に年齢引き下げによってこの問題をカバーするということになりますると、先ほど申し上げましたように非常に多額の経費も要しまするし、いずれが老齢福祉年金の範囲内で優先すべきか、そういう観点からやはりこのことの処理に当たっていかなければならない、このように考えているのが率直な現在の気持ちでございます。
  125. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 この点は私は東京都はやはりこうした問題を取り上げて、その解決策として施設入所者老人にお小づかいという名目でずっと月二千円ずつあげているわけです。こうしたきめのこまかいことは私はできるのではないか、こう思います。全体の老人にというわけにはいかないでしょうけれども施設に収容されている老人といえば数も私はそんなに多くはないのではないか、この点いかがでしょうか。
  126. 北川力夫

    政府委員(北川力夫君) ただいま東京都の実例がございましたが、これは一応公共団体としての東京都が非常にボランタリーな施策として行なっていらっしゃることでございまして、われわれも非常にこういった点は好ましいことだと思っております。ただ先ほども申し上げておりますとおり、国として福祉年金の範囲でつかまえます事柄があまりにも多うございますので、地方団体の範囲をこえて全国一律にそういったしかけのことをやることにつきましては、やはり先ほどから繰り返して申し上げておりますような、福祉年金制度の改善の中の優先度合いという観点から申しまして、いまの段階では非常に困難な問題ではなかろうか、したがって、優先度を考えながら早急に改善をしていくような考えであることを御了承願いたいと思います。
  127. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 次にお伺いしたいことは、扶養義務者の所得制限があるために、この福祉年金の支給を受けられない者がたくさんおります。この扶養義務者の所得制限は即時撤廃すべきだ、こういう声も強いわけでございます。私も即時撤廃すべきだと思います。しかし、これには非常にやはり大蔵省の査定の段階でむずかしいとは思いますが、これに対してぜひ前向きに、そして、大いにがんばってこうした所得制限を取り除いていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  128. 登坂重次郎

    政府委員登坂重次郎君) 老齢年金に対して所得制限を加えていたというのがいままでの暫定措置として、われわれもこれはまことに遺憾に思いまして、来年度からは所得制限を取り払うような予算措置を講じております。所得制限撤廃の方向で解決をしてまいりたい、こう思っております。
  129. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 いま私お聞き申しましたのは扶養義務者の所得制限の問題でございます。その点いかがでしょうか。
  130. 登坂重次郎

    政府委員登坂重次郎君) 扶養義務者と申しますと、いままで扶養義務者の中に、所得百八十万円以上あると老齢年金がもらえなかった。そういうようなわけでありましたが、その百八十万円という所得があったにしても、老齢年金は支給すると、こういう方向で参ります。
  131. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 その内容は、そうしますと、どんなふうになっておりますでしょうか。
  132. 北川力夫

    政府委員(北川力夫君) 所得制限には二つございまして、本人の所得、本人に所得がある場合と、それから、扶養義務者に所得がある場合と、二つあるわけでございます。本人に所得がある場合には、これはやはり従来から都道府県民税の非課税限度までについては所得と見なして支給制限をするということでございますので、これは従前のベースで改善をしていきたいと思っております。  それから扶養義務者のほうは、たとえば四十四年、四十五年で申しますと、扶養義務者に百三十五万の所得がある場合には支給制限をする。今年度は相当大幅に改善をされまして、百八十万までになったわけでございますけれども、やはり、先ほど政務次官からも申し上げましたが、現在のような国民皆年金体制が具体化いたしました段階におきましては、拠出年金に加入できなかったものを対象にする福祉年金につきましても、できる限り拠出年金と同様な考え方を取って、全額国庫負担の福祉年金でございますけれどもこういったものは撤廃をすることが公平の見地にかなうと申しますか、実際の受給者の現状に合ったような傾向じゃなかろうかと思っております。さらにまた、一般的な世間の傾向といたしましても、扶養意識が低下しておりますとか、さらに核家族化が進行しておりますとか、そういう状態でございますので、そういったことを勘案いたしまして、来年度はぜひ撤廃の方向予算の実現をはかりたい、このような考え方でございます。
  133. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 この撤廃は、家族何人で収入幾らと、そういうことは何にもないのですね。
  134. 登坂重次郎

    政府委員登坂重次郎君) そうです。
  135. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 国民年金の拠出制ができましたときは、いまからちょうど十年前、五十歳から五十五歳の御老人方を対象にして任意制で加入ができた。しかし、それ以上の年齢のものは何の救済措置もしなかったために拠出制に入る道がなかったわけです。そうした方が今日六十六歳から六十九歳までになられて、そしてその数は二百五十万と聞きました。こうした方々がいま公的年金の支給のない現状になっております。これを思いますと、発足当時またその後においてなぜ改善を考えなかったのか。その間十年間も年月があるのですから、何かできたのではないかと思いますので、その点お聞きいたします。
  136. 北川力夫

    政府委員(北川力夫君) ただいま柏原先生おっしゃいましたとおり、国民年金制度の発足当時の仕組みから申しまして、高齢者は年金制度には加入できないようなたてまえになっておりました。ただし、高齢任意加入と申しまして、いわゆる十年年金に加入できる道は開きましたし、また前回の四十四年改正の際に新しく五年年金を設けまして、十年年金、五年年金というかっこうで実は高齢者の救済を考えたわけでございます。しかし、結果的には十年年金に加入されました方々は約百万人、それから五年年金に加入された方々が七十四万人でございまして、結果的にいま先生指摘のような二百五十万人くらいのブランクが出ているのが現状でございます。で、私どもはこういった方々について、先ほど先生もおっしゃったような、それではそういったものはすべて老齢福祉年金の年齢引き下げをしてやればいいじゃないかというふうな一つのお考えもあろうかと思いますけれども、何ぶんにも非常な経費がかかる仕事でございますし、いかにしてこういうものを救うかということで考えましたのが、今年十一月からのいわゆるこういったグループの中でも寝たきり老人については老齢福祉年金を差し上げると、こういうような一つの解決の糸口をつくったようなわけでございます。それ以外の問題につきましてどういう方策がございますか、明年度は福祉年金のワクの引き上げ、扶養義務者の所得制限撤廃を目途にするという大きな二つの柱がございますので、いまおっしゃいましたような空白地帯の処理は引き続いてどういう方途が一番いいか、私どもは慎重に検討してまいりたいと思っております。
  137. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 もう一つ老人福祉施設の整備費についてお伺いする前に、もう一点、先ほど扶養義務者の所得制限が撤廃されるわけです。そうしますと、どのくらいの人数がそれによって救われるか。また予算をそのためにどのぐらい大蔵省に要求しているかおわかりでしょうか。
  138. 北川力夫

    政府委員(北川力夫君) 明年度で要求いたしておりますのは、例年、扶養義務者の所得制限の緩和の問題が五月からでございますので、五月実施ということで、百十九億でございまして、対象人員は五十三万人でございます。
  139. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 次に、老人福祉施設の整備費についてお伺いいたしますが、その一点は、建設単価が非常に低いために経営主体、特に法人の場合でございますが、超過負担となっております。これを実情に合ったように改善すべきであると思います。この点どのようにお考えでしょうか。
  140. 加藤威二

    政府委員(加藤威二君) 老人ホームの整備費の補助単価が安いという御指摘でございますが、これは確かに実績と比べますと施設によって若干異なりますけれども、やはりその八割ぐらいしかカバーしていない。二割前後が超過負担になっているという実態がございます。これは私ども年々引き上げに努力いたしておりますし、来年度もそういう努力をいたしたいと思いますが、問題はやはり、たとえば特別養護老人ホームでございますと、これは病院の単価に準ずるというような形で、そういった病院の単価と一緒になって上げる。こういうことでございますので、やはり病院のほうを上げてもらわなければいかぬというような状況でございますので、これはやはり厚生省だけではなくて、ほかの役所にもあるいろんな施設との関連もあると思うんでございますけれども、これはむしろ建設省、大蔵省がこういう問題にさらに積極的に取り組んでもらいまして、全体的にこういった超過負担のないようにつとめてもらわなきゃならぬわけでございますが、厚生省といたしましても、各局で足並みをそろえて、そういった方向にもっていきたいというぐあいに考えております。
  141. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 いま建設単価が非常に低いということは御存じのようでございますが、どのぐらい超過負担がかかっているかということに対して、八割はカバーしている、二割ぐらいが超過負担だと、こういうふうにおっしゃいましたけれども、私、実際にこれは法人の場合の方から但ったのですけれども、これは作業室をつくった例なんです。それで基準が坪十万円。だけど実際は二十万円かかっている。その作業室は二十坪ぐらいの作業場をつくった。これ計算してみますとはたして八割カバーになって、二割負担になっているかというとそうじゃなくて、非常に自己負担が多い結果になっているんです。こうした事実を聞いて、そして、厚生省の方の御意見を伺うとあまりにも違い過ぎるんじゃないかなと私は思います。この点こちらの計算のしかたが間違っているのか、またどうなのか、ちょっと疑問に思いましたので、実際例を申し上げて、もう少し詳しくお聞かせいただきたいと思います。
  142. 加藤威二

    政府委員(加藤威二君) 先生指摘のように、個々の例を考えますと、相当超過負担についても差があると思うのございますが、私ども全国的な、一応平均的な数字でとらえておるわけでございますが、たとえば特別養護老人ホームにつきましては、四十五年度の、これは一平米当たりの単価でございますが、四万三千六百円というのが、これが役所のほうの補助単価でございますが、これに対しまして実績が五万二千二百八十円ということで、実績に対しまして補助する単価は八三%ぐらいという数字が一つございます。そういうように、この一つの例でございますが、また、養護老人ホーム等につきましては若干さらに補助単価の割合が低いという例もございます。そういうことで、全体といたしまして私が先ほど申し上げました二割前後と申しますのは全体としてそういう傾向である。したがいまして、個々をとりますと、いろいろまたそれよりもはるかに大きいような負担をしておるというところもあろうと思います。
  143. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 この自己負担が平均して超過負担ですね、平均して二割という数に対して、それは当然だと、そのくらいでしょうと、まあ、いろいろそこに差がありますというお話でございますが、私、老人福祉施設をずっと回ってみますと非常にお粗末なんですね。で、法人の場合は超過負担は自分でそれを解決していかなければならない。はっきり言えば借金をするわけです。こうした施設は絶対金もうけなんかできない。できる見込みがない。借りることは借りても返す見込みがなければ思い切った借金は私はできないと思うのですね。そうなれば、もうほんとうにぎりぎりの線でその施設をつくっていくのじゃないか。それをあたりまえみたいに厚生省で計算して二割負担が平均ですなんて言っているのじゃなくて、単価が低いということは認めていらっしゃるのだし、施設にいらっしゃれば、ああ年をとってこんな粗末なところにいなければならないかと、こういう悲哀を感じさせるのじゃなくて、ああ、ほんとうにいいところに住まわせてもらってうれしいというように、せめて施設に入る方たちぐらいには私はできるのじゃないかと思うのですね。その建物というものは、そう何回も何回も建てているわけじゃございません。建てればそれでいいわけですからね。そういう点、狭いところに四人も、あっちのすみとこっちのすみとうしろ向きになってすわっている。何か食べるときには押し入れの中に首を突っ込んで食べている。そうした状態はどこに行っても見られるわけです。また老人のためにあたたかく考えてあげなければならないいろいろな取りつけるものですね、つかまるところだとか、またいろいろあると思うのですね。そういうことはやってあげたいけれども、少なくとも法人の場合はできないというのが現実だと思うのですね。さっき例に引きました作業室をつくった、実際に坪二十万の費用をかけてやったという、この法人の場合は非常に熱心な、自分の土地を売って、そうして、自分たちはもうほんとうに寮母さんと同じようによごれた着物を着て、夜も寝ずにやっている人たちだから、坪二十万のお金を惜しげもなく出しているわけです。ですから、そういうところをお考えいただいたならば、私は、単価が八割ぐらいカバーしています、二割が超過負担ですなんて言ってないで、もっともっと私は超過負担は多いと思います。その点ぜひこの建設単価をもっとふやしていただきたい。で、これを強く申し上げますと、いや厚生省だけではそういうわけにいかない、学校もそうなんだ、みんなその建設単価は低いんだからというようなことをよくおっしゃるんですが、そんなことを言ってないで、老人のもうほんとに余命幾ばくもないそうした人たちにもっと優先的にあたたかい、そして、行き届いた福祉施設をつくっていただきたいと思いますので、重ねてお願いする気持ちで私申し上げているわけでございますので、どうかひとつよろしくお願いしたいと思うんです。
  144. 加藤威二

    政府委員(加藤威二君) 超過負担が平均して二割ぐらいあるという事実を申し上げましたので、それで当然であるというわけではございませんので、先生指摘のようにやはり福祉施設ではそういった建築費で借金をいたしますと、それを返すのにまたたいへんな苦労でございます。営利事業をやっておればもうけた金でそういう減価償却ができますけれども、こういう福祉施設ではなかなかそれができないということで、確かに御指摘のとおり施設の整備については一応補助金で大体いけるという形にするのが望ましいと思います。で、そういうことで私どもも努力してまいりたいと思いますけれども、まあ言いわけみたいになりますけれども、さっき申し上げましたように、いろんな施設とリンクされて査定されますので、それを突破すればいいわけでございますが、これがなかなか簡単にいかないという点がございます。しかし、決してこれでいいと思っているわけではございませんので、今後できるだけ努力してまいりたいと思います。
  145. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 それからもう一つ視察して感じましたことは、特別養護老人ホームにハーバートタンクが備えられているところがたくさんございます。で、とてもこれは喜ばれておりますし、すばらしいなと私も見てまいりました。また特別浴槽、こうしたものが補助の対象になっていないんですね。これはぜひ補助の対象としてやっていただきたいと思います。これは、やりましょうというおことばをいただきたくて申し上げておりますので、これはいかがでしょうか。
  146. 加藤威二

    政府委員(加藤威二君) そういう点につきましても前向きで努力をしてまいりたいと思います。
  147. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 前向きに善処するということは、やらないと、そういうことばだそうでございますけれども、そういう意味の前向きじゃございませんね。どうぞはっきりとおっしゃってください。首だけ振ったんじゃ速記録に残りませんから。
  148. 加藤威二

    政府委員(加藤威二君) 予算の補助の対象になるように努力いたしたいと思います。
  149. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 措置費基準定数を増加すべきだということを非常に感じてまいりました。で、ぜひこれはそうしていただきたい。この点どのように今後なさろうとしていらっしゃいますか。また来年の予算ではどれだけの増加を見込んでいらっしゃるか、お聞かせいただきたいと思います。
  150. 加藤威二

    政府委員(加藤威二君) 私ども来年度予算要求一つの大きな眼目といたしまして、こういった福祉施設職員の処遇の改善ということを一つの大きな項目として掲げておるわけでございます。その一つは、処遇の改善と申しますのは、給与引き上げという問題もございますけれども、同時に職員の数をふやしまして、非常ないまオーバーワークになっているところの職員の数をふやして、何とかそういうところを合理化していこうと、こういうことでございます。  特別養護老人ホームにつきましては、現在寮母と収容者の数が五対一ということで、数年前まで入対一であったわけでございますが、それがだんだん少なくなってまいりまして現在五対一、これは病院入院の患者とそれから看護婦さんの数が四対一でございますので、一応これはこれ以上増員要求ということはなかなかむずかしいというぐあいに考えております。したがって、特別養護老人ホームにつきましては寮母よりもむしろ調理員とか、そういう人たちの増員をはかりたいというぐあいに考えております。  それから養護老人ホームにつきましては、現在四十六年度で寮母さんと収容者の老人との関係が、十八対一ということでございます。昨年は二十対一だったわけでございますが、ことしは十八対一と若干減ったわけでございます。来年度はこれを十五対一に持っていこうということで予算要求いたしております。  それから軽費老人ホームにつきましても、これは現在二十三対一という、寮母さんでございますが二十三対一でございます。これも昨年までは二十五対一ということだったわけでございますが、来年度は二十対一に持っていこう。こういうことで、それぞれ施設によって異なりますけれども、一番中心となります寮母さんの数をできるだけふやしていくという方向で来年の予算要求をやっております。  その他調理員等につきましても、養護施設で一名ずつ増員する。それから軽費老人ホームについても一名増員というような要求をいたしておるわけでございます。
  151. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 そうしますと、特別養護老人ホームの寮母さん五対一はそのままですね。それで、養護老人ホームは四十六年度十八対一を来年四十七年は十五対一にするというふうに努力しているというわけですね。これは私努力しているとは思いません。これは四十六年に十入対一、四十七年に十五対一にする、これは前に打ち出したことで、当然それをすべきですね。そうしないほうがおかしいわけです。それ以上に私努力をしていただきたいわけなんです。というのは、特別養護老人ホームの寮母さん五対一というのは、これは非常な問題なんですね。むしろ特別養護老人ホームの寮母さんの問題を先に考えてあげたいくらいに思っているわけなんです。で、寝たきり老人状態というものは重症心身障害児以上ですね、子供ならまだ始末がいいんですけれども、おとなですから。その重症心身障害児ですら二人に一人という割合になっているにもかかわらず同じような、むしろ一つの部屋にそういう老人をたくさんお世話していかなきゃならない寮母さんが五人に一人ということは、もうとうていこれは手が回っておりません。何とか間に合っているならいいですけれども間に合っておりませんし、見るにほんとにお気の毒なんですね。しかも、忙しいときはものすごく忙しいんですね。ただ寝たきりだから五人静かに寝かしておけば、順々に世話すればいいだろうというようなものじゃなくて、私あそこに行ってみましていろいろ見てきました。厚生省の方もそんなことは知っているよと、こうおっしゃるかと思いますけれども、私ぜひ、これは視察もしてまいりましたので、これをわかっていただきたいと思っていろいろ書きとめてきたわけなんですが、これは西伯特別養護老人ホームですね、九十九人収容しておりますが、そこでハーバードタンクに入れる御老人が三十八人、そうして一時間に八人入れなければならないと言うのです。一時間に八人というと十分もかけないでこのタンクに入れて入浴させているわけです。で、時間は午後やったとすると一時から五時までもうそれにつきっきりでやるわけですね。そうした労働をやっているわけなんです。また朝がたいへんなんですね。一人で三十三人のおしめを取りかえている看護婦さんもおります。ほとんど寮母さんがそれをやっているわけです。けれども、片っ方では朝食を食べさせなければならない。二人で四人ないし五人を食べさせる。どんどん、どんどん口の中に入れてあげればどんどん食べるような、そういう御老人じゃないので、非常に時間がかかる。片一方では一人が三十三人のおしめを一生懸命取りかえている。二人の寮母さんはそうした食事を食べさせている。もうほんとうにたいへんなんですね。また普通の養護老人ホームだったら元気なおじいさん、おばあさんがいて、ところによると手伝いをさせられているところもあります。そういうので間に合わせているところもずいぶんあるのですね。ところが寝たきりの御老人を扱っている特別養護老人ホームというのは、もうほんとうに寮母さんの手にかかっちゃっているわけです。また、このおしめの洗たくがたいへんなんですね。二人で一日かかりっきりで洗たくをしているというところもありますし、一日四百枚から五百枚のおしめを洗うのだ、シーツ五十枚と。私はこういう洗たくをほんとうにしなければならないのだということは、あそこに行ってわかったのですね。こういう仕事は寮母さんのやる仕事じゃなくて、むしろ作業員かなんかがいればそうした方にやっていただいて、そして、寮母さんはもっともっと老人の健康のためとかあるいはやってあげたいような身の回りのお世話もあると思うのですね。こういう点、実際に行けば、五人に一人なんていうことをのんびりと考えている厚生省が一体真剣にこの老人のしあわせを考えているのか、また老人のことをお世話しようとしているあの献身的な人たちのために何とか骨を折ろうとしているのかどうかということを私は疑問に思うのです。自分があそこに一日行ってみたら、とうてい続かないのじゃないかと、こう思います。そういう点、五人に一人という数を一日も早く三人に一人ぐらいの割合で働けるようにしていただきたいと思うのです。その点もう一度、そんなことは承知の上だとおっしゃるかもしれませんけれども、私がくどいようにいろんな事実を申し上げて言ったことに対して、何とかそれじゃそっちのほうをやりましょう。——また特別養護老人ホームはこれからどんどんつくっていかなければならないわけなんですね。そういうところは建物はつくっても、中で働いている人のことを考えないというのじゃ、私は単なる施設主義だ、建てりゃいいんだろう、中はやるものがしっかりやれというような、そんな冷たい行き方じゃならないのじゃないか。こういうように思いますので、こうした措置費の問題は来年は大いに力を入れているという厚生省の姿勢に対して、私、さらにさらにがんばっていただきたいと思って申し上げるわけでございます。もう一言、受けて立つという姿勢でおっしゃっていただきたいと思います。
  152. 加藤威二

    政府委員(加藤威二君) 確かに特別養護老人ホームの寮母さんというのは、まあたいへんな労働というか、仕事だろうと思います。ただ、私も若干施設を見てまいりましたけれども、特別養護老人ホームにつきましても、これは全部の老人がもうベッドに寝たきりというわけでもないようでございます。もちろんそういう老人が多いわけでございますけれども、ある程度動ける方もおられるというようなことで、まあそういう実態、それは施設によっていろいろ違うと思いますけれども、私の見ましたのはそういう施設だったわけでございます。  それから確かにハーバートタンクに入れるというのも、一人で入れるのはなかなかたいへんでございますが、これも大体一週間に二回ぐらいという回数が普通のようでございますので、確かに入れるときはなかなかたいへんだろうと思いますけれども、毎日々々ということでもないわけでございます。病院は四対一ということでございますが、病院はやはりいろいろな注射をやったり、看護婦さんなんかも医療行為を相当やっているというような実態の上で四人に一人で、特別養護老人ホームというのは確かにおむつの取りかえとか、あるいは食事をさせてあげるというようなところで非常に手がかかるわけでございますけれども医療行為そのものは、全然ないとは申しませんけれども病院なんかに比べるとそれははるかに少ないわけでございます。そういった点につきまして、確かに先生の御指摘の点を否定するわけじゃございませんけれども、大蔵省との折衝で、病院は四対一だったけれども、特別養護老人ホームはこれを三対一にしてくれというような折衝は、私どもとしてはそれが簡単にできるというぐあいにはなかなか考えられないわけでございます。そういう意味で非常にたいへんだろうという気持ちはいたしておりますが、それから、現に施設のそういった関係者の方々の御要望を聞きますと、一番切実なのは、やはり給与をもっと上げてもらいたいという要望が非常に強いわけでございます。そういうことで人員の整備につきましては、これは先生指摘のように四十六年度、四十七年度二年計画である程度やっているわけでございますが、給与の改善ということに来年度は、予算要求の最大の重点を置いておるわけでございます。それから、寮母の方々も非常に御苦労が多いわけでございますから、そういった方々にできるだけの手厚い給与を差し上げたいということで、そういった面でできるだけカバーをしていきたいというふうに考えております。
  153. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 いま特別養護老人ホームの中には元気な人もいるというお話ですけれども、それはそういうところもたまにはございますけれども、ほとんど病人ですよ。ですから、私は特別養護老人ホームというのは病院と同じように考えていいのじゃないか。ですから、むしろ病院の隣に建てなければ、ほんとうに特別養護老人ホームの機能を発揮できないというくらいに思っているわけなんですね。それを厚生省のそちらの方たちは、元気な者もいる。そんな考え方で、寮母さんはたいへんだろうと思いますなんていう、たいへんさの程度というものを私はおわかりになっていないのじゃないかと思うのですね。どうなんでしょうか。しかも、特別養護老人ホームに入れたいけれども入れられないで養護老人ホームにベッドを並べて寝ている老人だってたくさんいるんですよ。そんな寮母さんにあまり世話をかけないで元気だなんという人が特別養護老人ホームに入っているわけはないと私は思います。そういう点もう少し特別養護老人ホームの内容というものはそんな甘いものじゃないのだということを私は知っていただきたいと思います。それに対して御意見を承る必要はございませんけれども、ぜひもう少し実態を知っていただきたい、こう申し上げるわけでございます。  次に、最後の質問として、先ほど待遇をいろいろ考えてくださっているということで、たいへんうれしく思いましたが、職員に長く安心して働いてもらうためにはもっと待遇をよくする必要がある。特に法人の場合にそれが言えるわけなんです。措置費の中に定期昇給を含んでおりません。定期昇給分をぜひ計上すべきではないか。これを一点お願いするわけでございます。  またもう一つは、長く勤めている方々が退職するときに、もっと十分な退職金をあげたいものだ、こう思いまして調べてみましたら、社会福祉施設職員退職手当共済法という法律によって、そこでお金がつくられているようでございますが、もっと充実した退職手当を出すべきじゃないかと思います。せっかくあそこで仕事になれて、そこで自分も生きがいを感じているにもかかわらず給料が安い、昇給しない、退職しても老後の保障がないということでは、不安でそういうところにいないわけですね。ですから、職員が年じゅうかわってしまう。この点いかがでしょうか。
  154. 加藤威二

    政府委員(加藤威二君) さっきの特別養護老人ホームで、私は元気な老人が入っておるということを申したんじゃなくて、病人に準ずる方だと思いますけれども、全然身動きがならぬ人ばかりじゃない、いろんなものにすがってなりに歩けるような老人もおられるという話をしたわけでございます。元気な老人という意味ではございません。  それからいまの御指摘の点でございますが、給与の問題について、定期昇給でございますが、これは御指摘のとおり私ども措置費の中に定期昇給分を入れるべきであるということで、来年度の予算要求ではこの点について要望も非常に強いわけでございます。職員の要望も非常に強いわけでございますので、この定期昇給の財源を組み入れてもらいたいということを第一の要望として、来年度予算要求をいたしたいと思っております。  それから、退職金につきましても、御指摘のとおりこれは国家公務員の退職金に比べまして非常に割り安になっておりますので、そういう点を是正いたしまして、少なくとも国家公務員並みの退職金に近づけるようにということで、これも予算要求をいたしております。
  155. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 以上でございます。ありがとうございました。
  156. 中村英男

    委員長中村英男君) 他に御発言もなければ、本件に対する本日の調査はこの程度といたします。散会いたします。   午後四時三十一分散会      —————・—————