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1971-12-17 第67回国会 参議院 公害対策特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十二月十七日(金曜日)    午前十時三十六分開会     —————————————    委員異動  十二月十六日     辞任         補欠選任     茜ケ久保重光君     加瀬  完君      占部 秀男君     杉山善太郎君      加藤  進君     塚田 大願君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         加藤シヅエ君     理 事                 金井 元彦君                 矢野  登君                 杉原 一雄君                 内田 善利君     委 員                 菅野 儀作君                 寺本 広作君                 原 文兵衛君                 加瀬  完君                 工藤 良平君                 杉山善太郎君                 小平 芳平君                 塚田 大願君    国務大臣        国 務 大 臣  大石 武一君    政府委員        環境庁長官官房        長        城戸 謙次君        環境庁企画調整        局長       船後 正道君        環境庁自然保護        局長       首尾木 一君        環境庁大気保全        局長       山形 操六君        環境庁水質保全        局長       岡安  誠君        食糧庁次長    中村健次郎君        水産庁長官    太田 康二君        水産庁次長    藤村 弘毅君        通商産業省公害        保安局長     久良知章悟君        海上保安庁次長  須賀貞之助君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        文部省管理局指        導課長      栗山 幸三君        文部省管理局助        成課長      松浦泰次郎君        農林省農政局参        事官       川田 則雄君        農林省農地局建        設部長      杉田 栄司君        林野庁指導部長  松形 祐堯君        通商産業省鉱山        石炭局鉱業課長  佐藤淳一郎君        通商産業省鉱山        石炭局石油業務        課長       根岸 正男君        運輸大臣官房参        事官       原田昇左右君        郵政大臣官房資        材部長      斎藤 義郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○公害対策樹立に関する調査  (公害対策樹立に関する件)     —————————————
  2. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) ただいまから公害対策特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨十六日、茜ケ久保重光君、占部秀男君及び加藤進君が委員を辞任され、加瀬完君、杉山善太郎君及び塚田大願君がそれぞれ補欠として選任されました。     —————————————
  3. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 公害対策樹立に関する調査を議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言をお願いいたします。
  4. 杉原一雄

    杉原一雄君 最初に、おそらく主として通産当局になると思いますけれども、昨年の五月の十八日に、全国を大きくゆり動かすような問題が公害を焦点として幾つかあったと思いますが、その中の一つに、富山県の日本鉱業三日市製錬所周辺田地汚染されて、米の中にカドミウムが相当量入っていることが消費地から暴露されて、大きな問題提起をされました。あわせて新宿柳町交差点の排気ガスの問題が時を同じゅうして大きな政治課題になった。それが一つの大きな動機となりまして、政府も重い腰を持ち上げて、ついに十二月の臨時国会に十四の公害法案を提出、これが審議、検討され、公害行政における大きな転機をつくったと思うのでありますが、そのうちの富山黒部市にございます三日市製錬所、これから発生するカドミウムその他汚染の問題があるわけですけれども、もうすでに一年半の時日を経過いたしております。  そこで、お伺いするところによりますと、十二月の三日に、通産当局は、鉱山保安法に基づいて一〇〇%操業、一カ月一万トンの生産をあげる、いわゆるフル運転を許可したということを伺っているわけでありますが、私、この種の問題の処理としては、きわめて早い処置を行なわれたものだと理解するわけでありますが、事そこまでに至る間、この問題について幾つかの屈折と波乱があったと思いますが、その屈折のポイントを押さえながら、通産当局がいかなる指導あるいは誘導、監督行政を進め、十二月三日に至ったか。それの資料も要求してありますが、この資料要求に基づいて、各委員皆さんにも御配付いただき、その説明方経過報告を冒頭お願いしたいと思います。
  5. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) 三日市製錬所につきましては、先生いまお話ございましたように、昨年の五月に、製錬所近傍の産米の中にかなり高い濃度カドミウムがあるということから問題が起こったわけでございますが、当時、同製錬所は、いわゆる独立製錬所というふうに私ども呼んでおるわけでございますが、この鉱山に付属した製錬所、付属製錬所でないということで、鉱山保安法適用外にあったわけでございます。この問題が起こりましてから、国会、それから富山県知事から要請がございまして、昨年の八月二十七日に省令を改正いたしまして、鉱山保安法適用の付属製錬所としたわけでございます。  お手元資料で申し上げますと、一番左に年月日、その次に内容、それからまん中通産省のとった措置、それから一番右側に鉱業権者のとった措置というふうに分けてあるわけでございますが、この七月の九日の日に、国会富山県から鉱山保安法適用について要請がございまして、八月二十七日のまん中の欄にございますが、鉱山保安法適用いたしました。そのときに、製錬所から出ますおもに鉱煙並びに排水に関します鉱害防止について二十五項目改善指示をしたということでございます。  この製錬所につきましては、ただいま申し上げましたこの二十五項目指示をいたしますと同時に、現在までには十数回の立ち入り検査をいたしまして、かなり強度の監督をしてまいったわけでございます。この間、企業——これは日本鉱業でございますが、自主的に一万トンの製錬能力を六千トンと、四割の操短を実施したわけでございます。この間、製錬能力をしぼるとともに、通産省から指示いたしました鉱害防止工事につきましては、約八億の資金を投じまして工事の完成につとめたわけでございます。  汚染米補償につきましては、四十五年度の産米につきまして約八千万円を支払うということで解決をいたしました。四十六年度以降の減収補償につきましても、年間二千万円を支払うということで解決を見ておるわけでございます。また、その他につきましても、黒部市長に一億円の金を寄託いたしまして円満な解決をはかったわけでございます。  それから公害防止協定につきましては、これは四十六年五月でございます。二枚目の資料に出ておりますのでございますが、黒部市長との間で、国の基準よりもかなりきびしい基準によりまして、協定を締結をいたしております。  それから製錬所の周辺農地につきましては、これは企業が約三億円を投じまして買収いたしました。その農地につきましても、地元住民の同意を得まして、農地の転用の許可を取りまして、グリーン・ベルトの設置の工事を現在進めておるわけでございます。  さような次第によりまして、企業側の積極的な公害問題の解決努力によりまして、公害に付随します事情というものは著しく好転をしたわけでございます。通産省といたしましては、このような経緯から見まして、六千トンの操短解除に必要な条件が十分整ったものと判断をいたしまして、富山県知事、それから黒部市長の意向も確認いたした上で操短解除のための検査に踏み切ったわけでございます。  検査につきましては、三枚目のまん中の欄にございますが、九月八日から十七日にかけまして、県並びに市の協力のもとに一万トンの規模での検査を実施したわけでございます。その検査の結果、SO2、それからカドミウム濃度というふうな問題の点につきましては、いずれも国の基準を下回る良好な成績でございましたので、本年十一月三日に、施設検査証——一万トンのフル能力操業しても差しつかえないという検査証を交付したわけでございます。  その結果につきましては、お手元資料の一番最後の表に簡単に書いてあるわけでございますが、四十六年三月と申しますのは、これは企業のほうで自発的に四割操短と申しますか、亜鉛について申しますと六千トンの能力操業しておった時期で、それから四十六年九月と書いてございますのは、これは一万トンまでスケールアップをいたしましたときの検査の数値でございます。  発生源のところで見ますと、これは鉱煙が直接出ます施設といたしましては、焼結炉電気炉精留装置、この三つの施設があるわけでございますが、たとえば焼結炉についていいますと、K値は、これは二〇・四という基準でございますが、これに対して〇・〇七あるいは〇・二というふうに、非常に小さな数字で出ております。それから、ばいじんにつきましても、これは基準は一立方メートル当たり〇・四グラムという数字でございますが、ごらんのように、〇・〇〇一九あるいは〇・〇〇二一というふうに、基準に比べますと、著しく少ない成績であったわけでございます。  それから回の環境基準のほうにつきましても、硫黄酸化物については——環境基準につきましては、御承知のように、これはいろいろな項目があるわけでございますが、四十六年三月、測点九の平均で〇・〇〇七PPM、四十六年九月につきましては、十五測点について〇・〇〇八PPM、これは年間平均の〇・〇五PPMに相当する一番近い正確なものであろうかと思うわけでございますが、基準に比べましてもかなり低い、ごらんのような数字であったわけでございます。  それから排水中のカドミウムにつきましても、この排出水についての基準は〇・一PPMでございますが、一万トンの場合に〇・〇三四PPM。それから黒瀬川河口環境水質基準につきましても、これは基準は〇・〇一PPMでございますが、一万トンの規模で〇・〇〇二PPMということで、基準に比べますと、かなり低いレベルに改善をされたということでございます。  このような次第で、十一月三日の日に、一万トンのフル操業を認めたわけでございますが、今後につきましても、年三ないし四回の監督検査を実施をいたしまして、このような良好な状態が将来維持されるように、厳重に監督をしていく所存でございます。
  6. 杉原一雄

    杉原一雄君 今後の対策を含めて報告を受けたわけですが、十二月三日から、きょうは十七日ですから、二週間経過しておりますが、私、そういうことを承知しているわけではありませんけれども、この環境基準環境検査データを上回るようなことなど、その後、一回か二回検査をされたことがあるかどうか。なければないでけっこうだと思いますが、あったとすれば、何かそうした問題について答えが出ておりませんか、お伺いしたいと思います。
  7. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) 私、先ほど十一月三日と申しましたが、先生おっしゃいましたように、これは十二月三日の間違いでございます。それ以降につきましては、まだ検査をいたしておりません。
  8. 杉原一雄

    杉原一雄君 それでは、いま局長が申しましたように、今後年三回ないし、できればこれより回数をふやしていただくことがより正確だろう、適切だろう、こう思いますけれども、通産当局努力を大きく期待したいと思います。  ただ、きょう、ここでこの問題が一年半かかって、一応この公害発生源である三日市製錬所が、いまデータが出たように、非常に基準以下というその企業努力がされている実績を私たちはまのあたりに報告を受けて、非常に心強く思うわけは、一つは、やはり通産当局が、発生、問題化して以来今日まで非常な御努力をいただいて、企業に対するきびしい監督改善命令、そうした検査等の御努力をいただいた点を非常に多とするものであり、あわせて県も市も協力をした事実を私はまのあたりに見ているわけでございまして、敬意を表したいと思います。あわせ兼ね、後ほど汚染田ということで問題を提起したいと思っておりますが、三井金属神岡鉱山、それによっておかされた神通流域汚染田、イタイイタイ病の問題、これと対比したときに非常に違った点を感じます。それはいろいろありますが、一つは、原因者が三日市製錬所であるとはっきりしているということ、しかも、それ以外の工場がほとんど関係がないという、この原因者が明確であり、ただ一企業であるというところに問題の煮詰め方、解決の方向が非常にきびしく、かつ迅速適切に行なわれたということがあり得たと思います。あわせて、私は、市民の皆さん最初は大きなショックショックから起こった激しい運動、これがやはり問題をこのような形に煮詰めていったと思うのであります。  そこで、もう一つ、問題はこれで一切がっさい終わったわけでございませんので、たとえば補償、賠償の問題、また残された後遺症と申しますか、幸いにして、まだ公害病患者とまで認定された人が発生しておりませんけれども、そうした人体に対する被害の状況は、やはり深く静かに潜行しているというふうに実は思いますので、これはそうした問題を担当する局、省等の御努力なりを期待するわけでありますけれども、いま明確に出てきているのは、田地田畑汚染しているという事実であります。  このことについて、それぞれの担当省、局から以下の問題について明確にしてほしいと思うのでありますが、現在、四十五年度、四十六年度、この両年度にまたがって、これは汚染の度合いがたいへんだと、昨年の十二月の国会で可決、決定いたしました土壌汚染防止法適用から考えて、これはたいへんだというその田地田畑面積と、それに対する四十五年度の対応、四十六年度の対応。中身はどういうことかと申しますと、言うまでもなく、休耕したのか、米をつくらせたのか、その他何かほかのものをつくったのかどうか。こうした実態をひとつまず明らかにしていただきたいことと、同時に、一緒に申しておきますが、四十五年度、六年度、ともにつくったと思います、汚染田に。そのつくった結果、どういう米が出てきたか。これは二・五ヘクタールが一検体地域だと思われますけれども、どういう細分のしかたをしたか知りませんけれども、相当の検体をもってした結果、お米ならば〇・四以上一・〇、一・〇以上何々、こういうふうに答えが出てきていると思いますが、そうした実態をひとつ明らかにしていただきたい。そして〇・四以上の米、一・〇以上の米が現在どこにあるか。どこにあるかということは、想像されることは農家の物置きにあるこれは保有米、農協の倉庫にあるこれは政府米、一・〇以上は、これは政府米ではないがしかしあると、こういう事実等を段階的に区分して、どの省庁か、担当省庁から明確にお答えをいただきたい、こう思います。
  9. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 私のほうから、実は四十六年度におきまして、黒部市、それから神通川流域におきまして、玄米の中にどれだけカドミウムの量が含まれているか、それからその土壌中にどれだけカドミウムが含まれているかという調査細密調査という予算をもちましてやりました。その結果が一応出ております。それを御報告申し上げたいというふうに考えております。  まず、黒部市でございますが、この細密調査対象面積は二百五十ヘクタールでございまして、先生お話のとおり、二・五ヘクタールにつきまして一点というような割合でもって調査をいたしたわけでございます。玄米中の濃度でございますが、検体数が集計されましたのが百十九点でございます。そのうち、カドミウム濃度最高のものが一・二一PPMということでございます。最低が〇・〇三PPM平均いたしまして〇・四七PPMということになっております。そのうち、一PPM以上のカドミウム玄米中に発見されました点数は一点でございます。それから〇・四PPMから〇・九九PPM、要するに一PPM未満でございますが、その検体数が七十五点ございます。残りは〇・四PPM未満ということになるわけでございます。  それから土壌中のカドミウムでございますが、その土壌中に含まれますカドミウムの量の最高のものが一六・四PPM、それから最低が一・一五PPMでございまして、平均いたしますと三・六一PPMということになっております。これはまあ、こういうふうに分類するかなかなか問題がございますが、大体一PPMカドミウム玄米中に含まれるというのは、通例の場合、その十倍の濃度カドミウム土壌中にあるという、こういうのが通例でございますので、そういうことで申し上げますと、土壌中に一〇PPMカドミウムがあった点数が百十九点のうち四点ございます。それ以外が一〇PPM未満ということになるわけでございます。以上が黒部市でございます。  それから面積でございますが、大体これから土壌汚染防止法によりまして地域指定にかかるわけでございますけれども、いろいろ関係その他を調べまして、現在県におきまして検討中でございますが、一つは、二・五PPM土壌というものをあらわすとしますと、大体一PPM以上の玄米が生産されたたんぼというのは一点でございますが、二・五ヘクタール前後ということになろうかというふうに考えております。  それから神通川でございますが、神通川につきましては、七百三十ヘクタールにつきまして調査をいたしました。その検体数玄米につきまして二百九十二点出ております。二百九十二点のうち、最高カドミウム含有濃度を示しましたものが二・三四PPMでございます。最低が〇・〇五PPMということで、平均が〇・五八PPMになっております。そのうち、一PPM以上の検体数でございますが、一PPMを越えたものが四十六検体でございます。それから〇・四PPMから〇・九PPMまでのものが百二十五検体あとが〇・四PPM未満ということになっております。それから土壌中のカドミウムでございますが、これは黒部市のほうとは違いまして、非常に土壌中のカドミウムが低いにもかかわらず高いカドミウム玄米中にあらわれるというような傾向がございます。先ほど申しましたように、一対十というような傾向ではございませんで、申し上げますと、土壌中に二PPM以上あったというのが一点でございます。それから一PPMから一・九PPM、二PPM未満カドミウムの量が土壌中から検出されました点数が五十五点でございます。あとが一PPM未満しか土壌中から発見されなかったということで、これは黒部市と違いまして、特異の相関関係と申しますか、関係を持っているということで、今後この関係は究明しなければならないというふうに私どもは考えておるわけでございます。  面積でございますが、これもまだ確定等は県が急いでおりますけれども、かりに一PPM以上の玄米が発見されました点数四十六に二・五ヘクタールを掛けますと百十五ヘクタールということになるわけでございます。  以上が現在わかったところでございまして、現在、県は、これの資料を基礎にいたしまして、土壌汚染防止法に基づきます地域指定その他の確定をいたしたいということで作業を進めておるという段階でございます。
  10. 川田則雄

    説明員川田則雄君) 御質問がございました四十五年度、四十六年度につきまして、そこでどのような土地利用が行なわれたかということでございますが、四十五年度は、黒部市は三十九・一ヘクタール休耕いたしたというふうに報告されております。それから四十六年度は、土壌汚染防止法が通りまして、それで土壌調査方法あるいは分析方法調査地点設定等につきまして詳細なきめができましたので、それに基づいて詳細な調査をするということで、四十六年度は休耕いたしておりません。  それから神通のほうは、四十五年、四十六年両年とも稲を作付いたしております。
  11. 中村健次郎

    政府委員中村健次郎君) 食糧庁で買い入れました両地域の米の在庫数量でございますが、四十六年産につきましては、現在、地域確定をいたしておりませんので、数量の把握を県と打ち合わしてやっておるところでございまして、確定した数字を申し上げかねますが、四十五年産米につきましては、富山黒部市のうち、黒部市の要観察地域指定されました地域で生産されましたもので、政府が買い入れいたしまして在庫としているものは、一PPM以上の地域のものが約百二十トン、一PPM未満地域産米が約四百四十トン、合計五百四十二トンでございます。  また、婦中町の汚染地域で生産されました四十五年産米のうち、政府がして保有いたしておりますものが——これは一PPM未満だけでございますが、千七百六十トンになっております。四十六年産米につきましては、先ほど環境庁から御説明がありました地域から買いました米について現在調査中でございます。
  12. 杉原一雄

    杉原一雄君 では、最初に県が主体になって今後の土壌汚染対策計画を樹立するわけですが、これは県の計画を待って、農林省はそれに対してアドバイスをするというものかもしれません。しかしながら、これはかなり全国的なケースとして、たとえば安中の問題、対馬の問題、各地にあるわけですから、農林省としては、財政力なり機構を総動員して、たとえば、どういう方法でそのあと地カドミをなくする、また、カドミがかりに存在するならば、存在したままこれをどういうふうに利用計画を立てなければならぬとか、そうした問題について一度農林省の参事官にお聞きしたことがございますが、それから一年以上の月日も経過し、真剣に農林省は取り組んでおられると思いますし、かつまた、地元としては、非常に一日千秋の思いで、残念ながら主体的な能力がございませんので、待望していると思います。だから、この席を通じて、農林省当局のそうした技術的な指導の熱意をも含めて、今後こうした地域どうなすべきか、何をつくり、どう作物転換していくかといういろいろな問題が想像されるわけですが、そうした点について、農林省のいまたどりついている見解、指導方針、そういうものがありましたら御披露いただきたいと思います。
  13. 川田則雄

    説明員川田則雄君) 先生からお話がございましたように、実態が明らかになってまいりますと、その実態に基づいて都道府県知事対策地域指定し、対策計画を樹立する。その対策計画に基づいて必要な措置を講じていくというのが土壌汚染防止法の順序になるわけでございますが、その対策計画の中は、これも先生御指摘のように、土地利用計画改良工事、その二つに分かれるわけでございます。土地利用のほうにいたしますと、まあ関係県とよく連絡をとって、その地域実態に即した作物の転換というのが一つでございますが、それと同時に、そういうような土地を直すという改良工事がそれに付随してくるというように考えております。  今後のことでございますが、県のほうともよく打ち合わせいたしてございますので、できるだけ早く対策計画が立てられて、内容が具体的になるように詰めをいたしたいと思っております。
  14. 杉原一雄

    杉原一雄君 次に、先ほどの報告の中で出ました米の問題ですが、農業倉庫に眠っているというものがあれば、あるいは個人の保有米として、これは保有米として残っているのじゃなくて、食べているのですね。そうした問題等について、これは何といったって食糧庁のほうの大きな権限の及ぶところでございますから、一体これはどうしたらいいのだということで、地元であわてふためいて保有米のこれを取りかえたり、いろいろ苦労しているわけですが、結局、それをやると今度は銭こがどこから出てくるかという問題がありますので、この原因者の問題がどうしても明らかにならなければならないという問題、後ほど、イタイイタイ病の問題でもまたお伺いいたしますけれども、黒部の場合はきわめて明瞭なんですけれども、しかし、神通川流域に関する限りはきわめてあいまいにされている。はっきりされていない。あいまいにされている。こういう事実等もありますから、その間の暫定的な措置として、食糧庁は、食糧管理の立場からどのような指導の手を伸べようとしておられるのか、実はお伺いしたいわけです。  その問題の提起をしたのは、衆議院でも問題になったかどうか知りませんが、十二月十四日の某新聞が大きく、富山汚染米を配給ルートに乗せる——汚染米というのは、おそらく農林省といえども、一・〇以上のものを配給ルートに乗せるというようなあやまちをおかすわけもありませんが、問題は〇・四以上の準汚染米だと思いますが、そうしたこと等がうわさされまして、私、富山の者でございますが、二、三日前に富山の農協の最高幹部と会いましたが、困ったというふうな訴えを実は受けましたので、その辺のところを農林省として答えを明確に、きょう、ここで出していただく。富山県の消費地の人たち、あるいはその他の人にも、その点——私は、おそらく〇・四以上の米を配給に回されるなどとは信じませんけれども、それはそうであればそうであるということ等について明確にお答えいただいて、食糧庁のルートを通じてその辺のPRの努力など実態的には行なわれているのかどうか、その辺のところをお聞きして、富山県の人、百万県民が、食べている者も現におるわけだし、また、その食糧を管理している者もある、販売しようとしている者もある、あらゆる階層に大きな影響を与えておりますから、その点を明確にお答えをいただきたいと思います。
  15. 中村健次郎

    政府委員中村健次郎君) 食糧庁といたしまして、カドミウム含有米の配給上の取り扱いにつきましては、昨年の七月二十五日に基本通達を出しておりまして、その方針はいまも何ら変更をいたしておりません。新聞報道で、あたかもこれが変更されたがごとく報道されたのでございますが、これはいろいろな新聞に、食糧事務所が新聞にいろいろレクチュアをした間の話の中からそういう誤解を生んだわけでございまして、まことに遺憾に存じております。しかし、食糧庁として何らの変更をいたしておりませんので、要観察地域の一PPM未満産米につきましては、これは食品衛生上は安全ではございますけれども、消費者感情等を考慮いたしまして、配給には回さないということは従来どおりでございます。なお、婦中町のような要観察地域以外の地域でございましても、何らかのカドミウムによる汚染がございまして、要観察地域に準じて扱うべき地帯の産米につきましては、要観察地域のものと同様に、一PPM未満の米も配給しない、こういうふうな方針をもって続けております。  なお、農家の保有米につきまして、一PPM未満のそういった地域の農家の方の保有米は、政府が、申し出があれば交換をするという措置もとっておりますし、また、保有米を食わないで配給を受けたいという方には配給もいたしますということで、そういった米を食べなくてもよい措置をとっておりまして、これも何ら変更はいたしておりません。
  16. 杉原一雄

    杉原一雄君 先ほどの農林省の方も——環境庁であったかと思いますが、汚染地域の問題でございますけれども、黒部の場合はきわめて明瞭です。ただ、神通川流域の問題で、今度、県が発表した検体検査の結果、この汚染されている地域がかなり広範にわたってきたわけです。その中で、特に今日まで地域住民としては、あそこには化学工場の大きなのがございますから、小平先生もよく問題提起をしていただいておるわけでありますが、その化学工場の近くからカドミが出たわけです。それが非常に濃度が高い。それは、おそらく日産化学という工場ですが、ここだろういう常識的な判断が、今度の検査の結果、くつがえったのじゃないか。要するに地域住民としては、その町内、町議会でも確認をしたことだと思いますが、上流から来ているのだ、カドミが。検体の分布の実態等から考えて、そういうことが大体常識的にいま判断されておるわけです。上流とは、私たちに端的に言わせれば、神岡鉱山、そういうふうに言いたいわけですが、その辺の県の報告を御検討いただいた農林省当局の現在時点における判断、それをお伺いしたいと思います。
  17. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 特に神通川流域につきましては、お話のとおり、一PPM以上カドミウムが含有されている米が発見された地域が非常に広範囲にわたっておるわけでございます。大体のところを申し上げますと、いま四十六点の分布でございますが、婦中町の上轡田、下轡口、塚原、羽根新、板倉、増田、それから富山市の羽根の南部地区というようなところに分布をいたしておるようでございます。私どもも非常に意外に思っておりますのは、先ほども申し上げましたとおり、土壌中のカドミウムが、たとえば〇・五PPM程度でも一PPM以上の汚染米が出ているというような実例が出ておりますので、これらの関係につきましては、土壌の状態だけが影響いたしましてこういうことになったのか、それとも、やはり用水といいますか、かんがい用水、または地下水がどのように影響しているのか、それらの点をもう少し究明をいたさないと、汚染の経路等も明らかにならないのじゃなかろうかというふうに考えまして、現在、県に指示をいたしまして、そういう経路もあわせて検討するようにということを指示をいたしておる現状でございます。
  18. 杉原一雄

    杉原一雄君 次は、カドミのことですから、相互関連をしながら、イタイイタイ病患者並びにそれに伴ういろいろな問題でございますけれども、ちょうど私の県の議会が十四日で終わりましたが、終わるにあたって幾つかの決議なり、意見書をあげているわけですが、その決議の中で、イタイイタイ病患者の救済等に関する決議をあげているわけです。これは要約して、「さきに本県議会では、再度にわたりイタイイタイ病患者の救済措置などについて意見書および決議を採択し、その対策の推進を強く要望してきたところであるが、いまだ根本的な解決を見ていない現状である。さる六月三十日、鉱業法第百九条に基づく損害賠償請求訴訟につき、原告勝訴の第一審判決をみたのであるが、三井金属鉱業株式会社の控訴によりなお引き続き係争中である。関係機関におかれては、イタイイタイ病患者および家族、ならびに地区住民の心情などにかんがみ早期決定および患者の救済ならびに汚染土壌の改良対策の徹底を図るべきである。」、こういう決議をしているわけであります。先ほどの質問に対する関係当局の答弁の中に、これに答えるものがかなりある。ただ答えられていないのは、これは私の質問していないことでありますが、イタイイタイ病患者の問題であります。  そこで、現在、イタイイタイ病が全国的に見てどういう形で分布されているか、しかも、それが公害病として認定されているもの、いないもの、いわゆる潜在的なもの、いろいろあると思います。そうした点について把握しておる点をまずお話をいただいて、しかる後に、私、また要望申し上げたいことがございます。
  19. 船後正道

    政府委員(船後正道君) 現在、イタイイタイ病患者として把握されておりますのは、神通川流域における認定患者九十三名でございまして、その他の地域におきましてはイタイイタイ病の患者は確認されておりません。
  20. 杉原一雄

    杉原一雄君 そこで、環境庁長官からお答えいただきたいのでありますが、先ほどの決議の末尾に「イタイイタイ病患者および家族、ならびに地区住民の心情などにかんがみ早期決定および患者の救済」とありますけれども、この早期決定という意味は、つまり原因者がだれで、責任がある処置をとるのはだれかということを明確にしてもらいたいということだと思うんです。  先ほどの汚染土壌の改良の計画等は、これは県知事がやりますけれども、最終的には費用の問題とか、いろいろ経理の問題等がついて回りますから、原因者の問題だと思うんですね。あるいはだれが原因者であるかということを明確に突き詰めていってもらいたいということだけれども、これは長官御承知のように、第一審が終わり、第二審が金沢で行なわれて、この二十日に、また証人調べ等があります。きょう十七日でございますから、きょう、県内該当地区の婦中町という町内では相当の人が集まりまして、第二審に対する要求、抗議の集会をもう午後から予定しておると思いますが、そういうことで、現地では、たいへんこのことでとまどいもし、憤激もし、何とかしてということで非常なあがきを実は見せているわけでありますが、もうすでに染染土壌調査結果も明らかになりましたし、イタイイタイ病患者の実態も大体私らの常識ではつかめるし、そして県議会みずからが与野党含めてこのような決議をするような段階まできておりますから、私の口を通して言わしていただけば、百万県民ひとしく希望していることだと思う。そういうことに対しまして、長官として、このようなことに苦しむ患者、同時にまた、地域住民のこうした要望にこたえて政治的な大きなアクションを起こしてもらいたいと思いますが、長官の決意のほどをお伺いしたいと思います。
  21. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) 神通川流域のイタイイタイ病の患者につきましては、私は、どのようなことをしてあげても、し過ぎることはないという感じでございます。しかし、残念ながらいろいろな国の規制があり、いろいろな法律の規制がございますので、現在は、国としては、でき得る程度のことしかまだしておりません。それもあまり大きくはありませんが、近い将来には、できる限り国としてでき得る措置はしてあげたいと心から願って努力しておる次第でございます。  当面の一番の大きな問題は、やはり裁判の終結だと思います。裁判所のきめたとおり早くこれが解決されることが一番望ましいと思います。私は、一審の裁判が原告側の勝訴に帰したので、あれを会社側ものんで実行してもらうことが一番望ましかったわけでございます。そしてまた、厚生省でも、前の内田厚生大臣は、そのようなことを希望されたようでございますが、それが実際言えば控訴ということによってできなかったわけでございます。その後、私も、新潟の阿賀野川の判決に関連しましても、でき得るならば、この裁判が早く両者の話し合いによって解決されることが望ましいと願っておりました。この委員会並びに衆議院の委員会におきましても、そのような委員の方の御要望もございましたので、私としては、もしできるならば、双方が一応承知してくれるならば、裁判を早く取り下げられるように、あるいは今後さらに高裁の判決があった際、それに従うように、そのような方向で努力してまいりたいと願って、そのような意思も表明しておりましたが、残念ながら、いままでのところ、会社側にこれに応ずる意思は全然ないようでございます。  先日は、御承知のように、なくなられた患者さんの遺影を持たれまして私のところにも患者さんの代表が陳情に参られまして、ぜひともこの裁判の問題を早く解決してほしい、その仲立ちをしてほしいというお話がございました。私もできるだけ努力しますと言って約束をしました。しかし、いまのところ、私、直接会社側の人々と折衝はしておりませんが、あのような国会における意思の表明を見られまして、しかるべき人を三人、三回にわたりまして、人は三人の人でございますが、介しまして、どうぞ介入しないでほしいと、当分の間手を出さないでほしいという申し入れがございました。その人々は、いずれもりっぱな社会的地位もあり、私たち、よく人柄も知っており、信頼できる人でございますが、まさに会社側の意向であると判断しまして、残念ながらいままでは黙っておったわけでございます。しかし、だんだん時期が切迫してまいります。ただ、これにはやはり適当なタイミングが必要だと思います。そういうわけで、できるだけ早い機会にいいタイミングを見まして、その時期に、もしできるならば、積極的にそのような仲立ちの労はとりたいと考えておる次第でございます。
  22. 杉原一雄

    杉原一雄君 それでは、この質問は一応終わりまして、後の質問に移るわけでありますが、その前に、長官がお立ちになったついででございますから……。  きょう、ある新聞で、長官は、宮中恒例のカモ猟に欠席をするのだということを御発表なさっておるのですが、事実であるかどうか。その長官の非常に次元の高い意図がどこにあるのか、その点をお聞きしたいと思います。
  23. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) どうも、これは個人の考え方であり、あまり新聞などで大げさに発表すべき筋合いのものではないと考えておりました。私は、前にもカモ猟に御招待を受けて、参ったことはございますが、近ごろ考えまして、やはりあのようなカモ猟には出席したくないと、これは個人的な感情でございます。理屈も何も、たいしたむずかしい、高い次元のものでも何でもない。自分の考えとしては、自分の経験に徴しましても、あまり行きたくないという考えを持っておっただけでございます。たまたま、宮内庁からの御招待がきのうですか、届いたようでございますが、それを私は見ないうちに、前に新聞記者の方々に今度のカモ猟に出ますかということを聞かれまして、今度は欠席する方針ですと、それは別に理由は何もございませんで、ただ、黙って欠席するという考えでおりますということを普通の雑談で話しただけでございます。あの記事のとおり、確かに出席しない考えでおりますけれども、それをいま天下に表明するとかなんとかいうことは、ちょっと私の考えとは違っておるようでございますが、そういうことでございます。
  24. 杉原一雄

    杉原一雄君 あとは、私たち政治家として推理をすればいいわけですから、長官としてはその程度でいいだろうと思いますが、意図は私はわかる。  次に、もうあと十分近くしかありませんから、問題を別にやりますが、ことしの十一月七日に、富山県高岡市の石灰山——石灰石を掘るところに大きな土砂くずれがあって、あるいは豚が四百も死ぬとか、田畑が荒廃し、河川がせきとめられるというような災害があったわけですが、大体十一月七日からきょうでもうすでに四十日ほど経過いたしておりますし、事件はそれこそ土砂くずれ以上の問題でまあがたがたいたしましたから、その経過を報告していただくと同時に、その対策等について御報告いただきたいのでありますが、時間がございませんから、ポイントをひとつ明らかにしてください。ポイントは、先ほどやはり例にあげました富山県の議会で、この問題について意見書を出しております。その一点は、ヤマツチと読むのかサンドと読むのか知りませんが、山土採取法の制定をしてもらいたい、「山土の無計画な乱掘採取は自然環境を破壊するばかりでなく、人為的な事故災害を多発する。このため政府では鉱業法、砂利採取法など現行法令で規制出来ない山土の採取を国土保全、民生安定の見地から法律で規制されるよう要望する。」、その次は、鉱業法の改正、いわゆる昭和二十五年にできた鉱業法、その後大きく改正されていない鉱業法でありますが、「石灰山土砂くずれの経験からみて、鉱業権の設定要件の強化、指導監督の徹底、法の適用にさいして地元の民意を十分反映しうるよう法改正を早急にはかられたい。」という意見書が決定されているわけです。でありますから、私がここで一まとめの、一区切りとしての石灰山という非常に小さい山の土砂くずれを問題提起するのもおこがましいのでありますけれども、鉱業権者が非常に問題の人であったという事実等もありますし、その後の事後処置に非常に市、県とも手間取り、通産省も非常にお困りだったと思いますので、ここにやはり政治的な、行政面からも法律の面からも大きく問題があると思います。この委員の方には御承知ない方が多いと思いますから、概略の経過、処理の説明をいただき、最終的にはこの意見書に答えていただきたい、通産当局から。このように考えます。  それで私の質問を終わりたいと思いますが、答弁のいかんによって再質問します。
  25. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) 先月の七日に、高岡市所在の国土興業高岡鉱山で、地山の崩壊によります土砂の流出という災害がございまして、かなりな鉱害を出したわけでございます。監督の衝にあるものといたしまして、恐縮に存じておる次第でございますが、先生のいまの御質問によりまして、ごく簡単に私から経過と対策お話を申し上げまして、あと法律の問題につきましては鉱山石炭局の鉱業課長からお答えを申し上げたいと思います。  十一月七日の日の地山崩壊によりまして出ました被害は、県道の埋没、それから谷内川という川に土砂が流入、それから豚が約四百頭埋没して死亡した。それから田畑、立木、それからお墓等に被害があったということで、金額に換算いたしまして約二千五百万相当の損害があったわけでございます。  通産省といたしましては、災害の発生と同時に、これは名古屋の監督部の管理でございますので、部長以下急行をいたしまして調査をいたしたわけでございますが、二次災害の発生のおそれが考えられますので、防止対策を実施するように、鉱業権者に対して緊急命令を出したわけでございます。それから県、市と相談をいたしまして対策協議会を設けました。県は、道路、河川の復旧、それから市は、被害の補償の各分担をきめたわけでございますが、一応流出いたしました土砂を被害者に譲渡をする、この土砂を販売することによりまして被害の補償に必要な金員を生み出すという方式で現在進んでおるわけでございますが、通産省といたしましては、鉱業権者に緊急命令を出したわけでございます。  先ほど先生お話にもございましたように、鉱業権者にこの命令を実施する意思がございませんので、十二月の九日に、行政代執行法に基づく戒告をし、送付いたしたのでございますが、これにも従いませんので、十二月十七日から排水路の設置、残壁の切り取りというふうな急迫の危険に対する代執行を行なう予定にいたしておるわけでございます。  以上、簡単な経過と対策でございます。
  26. 佐藤淳一郎

    説明員佐藤淳一郎君) まず、富山県会で御提出になりました二つの点のうち、第一点の山土の採掘の規制の問題についてでございますが、地下資源の採掘の規制は、採掘の対象となりますところの資源の種類によって関係の法規を適用しておるわけでございまして、砂利につきましては砂利採取法、岩石につきましては採石法、それから法定鉱物につきましては鉱業法で規制いたしておるわけでございます。今回問題となりました富山県の高岡市の場合は、採掘の対象の資源が石灰石ということで鉱業法の適用を受けまして、当然、保安法の対象にもなっておったわけでございますが、ただ、この用途が埋め立て用でございまして、いわゆる一般の法定鉱物の原材料の用途ということに比べますと、若干その面から見ますと、いわゆる土砂の採取というような実態でございまして、はたして鉱業法の適用が妥当かどうかという問題は、確かに御指摘のとおりであるわけでございますが、冒頭に申し上げましたように、資源の種類によって法律の適用ということをいたしておりまして、用途によって法律の適用はやっておりませんので、その辺若干問題のあることは事実でございますし、それから先生御指摘になっておりますところの山土というものにつきましては、いまのところ、いわゆる採掘の対象の規制という面におきますところの適用の法律は確かにないわけでございまして、まあ、ある程度の労働者をお使いになっている事業場では、あるいは労働基準法なり、あるいはまた一般的な公害関係法規はもちろん適用になるわけでございますが、採掘そのものについての規制は確かに現在のところはございません。したがいまして、今後かりに山上のようなもので大規模な採取が伴うというような場合の採掘についての規制については問題が残るわけでございます。これにつきましては、関係省庁と連絡いたしまして、どういうふうにしたらいいか、規制の方法につきまして検討してまいりたいと思っております。  それから、次が鉱業法の改正につきましての御質問でございますが、実は鉱業法の改正につきましては、昭和四十年に、特に他権益との調整あるいは鉱業監督の強化等につきまして、鉱業法の一部を改正する法律案を国会に提出したわけでございますけれども、当時の事情でその成立を見なかったわけでございます。しかし、その後いろんな法律的な問題が起きておりますし、最近の実態から見て、やはり現在の鉱業法の中でいろんな要望なり、われわれの行政指導によりまして、十分にその目的に沿うべく努力はいたしておるわけでございますが、なお、御趣旨につきましても、十分今後検討してまいりたいと思っております。  それから、特に今度の高岡の問題につきまして、特に現地から問題提起されました鉱業権の設定の場合におきますところの市町村長の意見が反映されていないんじゃないかという御指摘でございますが、これにつきましては、現行の鉱業法の二十四条で、鉱業権を設定する場合には都道府県知事と協議しなければならないということで法定されておるわけでございまして、本件につきましても、その手続は行なったわけでございますが、問題は、関係市町村のほうにまで意見を照会するということは、法律上規定がございませんけれども、実際問題としてのわれわれのほうの行政指導といたしましては、十分に関係市町村の御意見を聞いて、その意見の上に立って都道府県知事が各通産局長に御意見をお伝えを願うということをやって、実際上は運営いたしておりますけれども、今度の問題にかんがみまして、あらためて各通産局長に通達を出しまして、御趣旨を徹底いたしますようにいたす所存でございます。
  27. 加瀬完

    加瀬完君 私は、東京湾の千葉県側のノリ被害をおびただしく起こしました流出油の問題について伺います。  昨日、環境庁は、政務次官を千葉県に派遣いたしまして、いろいろと御調査をいただいたようでございますが、千葉県のノリ被害は流出された油によるものであり、その被害が九億円にも達しておるという点は、長官もお認めをいただきましたか。
  28. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) 昨日、政務次官に現地を見てもらいました。その報告を受けたわけでございますが、おっしゃるとおり、約八億か九億のいろいろな被害があるということは、十分こっちでも認識いたしております。
  29. 加瀬完

    加瀬完君 この被害は自然発生的なものではありませんで、人為的なもので、不可抗力というわけではなくて、監視が完全ならば被害は防げた、あるいは被害を減少させ得た、こういう種類のものであるということはお認めになりますか。
  30. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) そのように考えております。
  31. 加瀬完

    加瀬完君 そうすると、その監視責任はだれにありますか。
  32. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) その監視の責任がどこにあるか、まだ原因さえもはっきりわかっておりませんが、大体は予想ついておるようでございますが、明確なあれがきておりませんので、どこにあるか、いまはっきり申し上げられませんが、とにかくあのように防ぎ得た過失でもありますが、その後にいろいろな迅速な行動に欠けた点もございましょう。そういう点を究明していけば、おのずからそこに責任の所在が明確になってまいると思います。
  33. 加瀬完

    加瀬完君 東京湾の千葉県側で、過去五年間に油被害は十二件ございます。このうち、加害者の判明したものは四件、八件は不明であります。  長官といたしましては、とにかく海の汚染をさせない責任は海上保安庁にあるわけですから、保安庁の監視体制の強化が必要であるとはお認めになりませんか。あるいはさらに保安庁は、汚染監視にもっと重点を置くべきであるとは、この事案からいたしましてお感じになりませんか。
  34. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) これは海上保安庁の考え方が中心でございましょうけれども、私は、現在の体制では、必ずしも日本のいろいろな油の汚濁なり、それに対しての監視体制はまだ十分に整っておらないと思います。整っておらないということは、要するに、現在までのやはりこれは政治の貧困である。海上保安庁だけの責任ではなくて、日本全体として政治的にいままで貧困である、こう思います。
  35. 加瀬完

    加瀬完君 海洋汚染防止法には、海上保安庁のとるべき責任というものが明記されておりますね。それが行なわれておらなかったとすれば、これは当然責任が生ずるわけでありますね。  それで、逐次海上保安庁に質問いたしますので、長官、お聞き取りの上、はたして海上保安庁としての責任がなかったかどうか御判定をいただきます。  保安庁の次長いらしておるようでありますが、一部の新聞には、東京湾の重油流出は明原丸の犯行だと、こういう報道がありますが、そういう判定は固まったわけですか。
  36. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) 長官が衆議院の運輸委員会のほうへ出ておりますので、次長でございますが、お答えいたします。
  37. 加瀬完

    加瀬完君 簡単に願います。
  38. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) 明原丸に積み込んだ燃料油の製造元である東燃川崎工場のC重油と木更津沖に漂着した油については、目下分析を行なっておりますが、まだはっきりした結果はわかっておりません。
  39. 加瀬完

    加瀬完君 先般、海上保安庁の係官に伺った点では、汚染させた油と明原丸の航行用燃料油と似ていることは認めるという御回答がありましたが、似ているとは御判断をなさっていらっしゃいますね。
  40. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) 過失によりましてシーバースにおきまして漂流させました油と千葉県側にノリ被害を与えたC重油につきまして、いろいろ調査しておるわけでございますが、この件につきましては、その他の工場からも油を取り寄せましていろいろ調査しておるわけでございますが、そのほかのものに比べまして類似性が高いということは言えるのではないかというふうに考えております。
  41. 加瀬完

    加瀬完君 その扇島シーバースの油と木更津沖付近の油の汚染との間に因果関係があるという推定で調査をしているんですか。全然そういう推定はお持ちになっていませんか。因果関係があるという前提を一応仮定しているのか、全然関係がないということなのか、いずれなんですか。
  42. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) 先ほど申し上げましたように、すべての工場から油、C重油をいただきまして、これを調査したわけでございますが、その中におきまして扇島のシーバースにおきます油が最も似ているということが、いまの段階では言えるのではないかということでご、さいまして、その因果関係について、いまここで申し上げることはちょっと差し控えさせていただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。
  43. 加瀬完

    加瀬完君 少なくとも、因果関係ありとの疑いはお持ちですね。
  44. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) どの程度あるか、ただいまわかりませんが、ある程度はあるのではないかというふうに推察されるわけでございます。
  45. 加瀬完

    加瀬完君 流出原因の調査として千葉県側は外航タンカーなど四百四十六隻を調査いたしましたが、この油の該当者はおりませんでした。さらに重油を燃料とする船と思うのでありますが、四十六隻の当時航行したであろうと思われる船を調査いたしましたが、該当者はありませんでした。そこで、千葉県関係の船においては白という判定を下さざるを得ないという点を、これは海上保安庁にも申し出ているはずでありますが、これはお認めになりますか。
  46. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) ただいまいろいろ調査中でございますので、こういう段階において申し上げるのは差し控えさせていただきたい、こういうふうに考えます。
  47. 加瀬完

    加瀬完君 きのうやったことじゃないでしょう、あなた、もう一週間もたっている。そういうことを言うなら、あなた方のことをいろいろあとで言うけれども、これを認めるのかどうかということですが、責任は責任として明らかにしなければなりませんよ。  一日以降目撃者の調査をいたしまして、一日の午後十五時三十分F丸によれば、扇島の沖で長さ二千五百メートル、幅不明の油を見た、こういう証言はあなたのほうにもいっていますね。  さらに、十二月二日のG丸によれば、シーバース東方四千メートルの個所で処理した形跡のある油が木更津の方向へ移動しておったのを見た、こういう報告もありますね。  さらに、十二月三日のB丸によれば、十二時半、京葉シーバースにも一マイル、直径三メートル、厚さ三ミリメートルの油のかたまりが三百メートルの幅で長さは見渡す限り、こういう分裂状態の油がやはり流れておった、こういう目撃もありますね、これはお認めになりますか。これは保安庁行っているでしょう。
  48. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) 四日にノリ漁場に油が漂着して以来、千葉保安部におきましていろいろ捜査を続けておったわけでございますが、六日の早朝でございますが、長官の指示によりまして、これは非常に大きな問題であるということで、第三管区海上保安本部が管区をあげてこの捜査に当たるようにということでございまして、その後いろいろ聞き込みその他をしておりますが、情報は非常にたくさん得ております。いろいろな情報がありまして、先生のいまおっしゃいました件もその中の一部かと、こういうふうに考えるわけでございます。
  49. 加瀬完

    加瀬完君 これは新聞記者に昨日発表されたわけじゃないのですか。一応二十三件かの報告がありまして、その中の数件としてこういう点は発表しているんじゃないんですか。
  50. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) 私のほうの海上保安庁、それから横浜にあります第三管区海上保安本部、ここでは発表はいたしておりませんが、新聞によりますと、千葉の海上保安部において、まあ発表という形式かどうかわかりませんが、漂流が、聞き込みの結果、こういうところにいろいろあったということをお話ししたということは聞いております。
  51. 加瀬完

    加瀬完君 ですから、一日の未明からだんだん油が扇島のほうから千葉のほうに流れて木更津の方向に移動したということを一日から三日、四日と目撃者が証言をしておるわけでありますから、これから見ても、扇島シーバースの油と木更津のノリを汚染状態にさせた油というものは因果関係があるという仮説を立てなければ、捜査はできないじゃないですか。因果関係の疑いというものは十分濃いということがはっきりしているんじゃありませんか。どうですか。
  52. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) 先ほど申し上げましたように、千葉保安部で、発表かあるいは語ったかどちらかわかりませんが、いろんな聞き込みにより、こういうところにそのころ油が流れておったということでございまして、漂流しておる油の状況を申し上げたのであって、扇島と関係があるかどうかというようなところまではまだはっきりしないということが言えるんじゃないかと思います。
  53. 加瀬完

    加瀬完君 扇島のシーバースから出た油というのが、処理された形跡のある油という証言があるのははっきりしている。それがだんだんと東北のほうに移動をいたしまして、そして木更津の方向に、分裂した油がかたまりになって、見渡す限りの面積で流れているということを証言しておって、これでも扇島の油が木更津の油と関係がないということになりますか。  そこで、被害者は、海上保安庁なり、特に川崎海保の事件の処理というものに非常に不満を持っております。一例をあげますと、千葉県の海保出張所は、川崎海保から六十人の応援を得て、この調査に当たりましたね。これはお認めになりますね。——それもわかってないのですか。
  54. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) いま、ちょっと数字は覚えておりません。
  55. 加瀬完

    加瀬完君 これだけの事件があって、次長がどういう推移かという掌握をしないでここへ出てくるというのは不謹慎です。  そこで、応援隊を出動させて千葉の海岸からだんだんと油を追っていったわけですね。そして川崎管内で千葉海保班は、係留されている大平丸というのをどうしても押えなければ問題の解決ができないというので、この大平丸を押えようとしたわけです。そうすると、川崎海保はこれを阻止したわけですね、千葉班の入るのを拒んで、捜査を拒否した。海上保安庁として当然調査をしなければならないのを、一方の千葉班が捜査をしようとするのに、どういう関係か、これを調査させない。これは一体どういうことです。川崎の海保はこういうことをやっている。あなた、さっき第三管区をあげてと言っている。第三管区をあげて——あげてじゃない。漁民側は、もみ消しをしているという判断をしているわけです。政府の威信にかかわる問題だよ、これは。この船が出しただろうと突きとあて、その船を調査しようと思ったら、川崎海保はこれを拒んでいる。こういう事実をあなた知らないんですか。
  56. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) 千葉保安部並びに川崎保安署の両部署にまたがっておる事件でございます。まあ、いろいろ問題があったんではなかろうかということでございまして、その後、第三管区海上保安本部に統合捜査本部というのを設けて、管区でやる、こういうふうに決定したわけでございます。
  57. 加瀬完

    加瀬完君 それでは、川崎海保の措置については、まだ不審の点がありますから伺います。  まず、中和剤の処理能力について御説明いただきます。
  58. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) 油が流れたときの処理といたしまして、私のほうで指導しておりますのは、特に流れる前の荷役その他についてもそうでございますが、オイルフェンスを展張しておく、こういうことでございまして、また、そういう状態でないとき、オイルフェンスの外であった場合は、すみやかにオイルフェンスでこれを囲う。そして、これについて「むしろ」あるいは「わら」という吸着剤、それから処理剤、こういうものを投下してこれを処理する、こういうことで指導しておるわけでございます。
  59. 加瀬完

    加瀬完君 通常、この中和剤は、百五十から二百リットルで一トンの油を処理することができるということになっておりますね。この扇島シーバース付近で使われた中和剤は十八リットルのもの七百かん——かんというのは、いわゆる入れてある器のかん七百——ということは一二・六トンになりますね。一二・六トン使ったということは間違いないですね。
  60. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) 大体、油の五分の一ないし六分の一というものを使うというのが常識になっているようでございますが、先ほど先生がおっしゃったとおりでございます。十二トン程度になるのではないか、こういうお話でございまして、これはそういう基準でいけばそういうことになると思いますが、いろいろ緊急の事態においては、そういう基準どおりいっているかどうかということについてもいろいろ調査する必要があるのではないか、こういうふうに考えておるわけであります。
  61. 加瀬完

    加瀬完君 幾ら使ったかということを聞いているんです。一二・六トン使ったことは間違いありませんか。十八リットル、七百かん。
  62. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) 七百かんを準備した、その一部を使った、こういうふうには聞いておりますが、全部であるかどうか、いまちょっとつまびらかにしません。
  63. 加瀬完

    加瀬完君 ところが、おかしいんですよね。かりに一トンの油の処理剤が百五十リットルとすると、これは八十四トンの油を処理できるわけです。二百リットルとしても六十ミトンの油の処理ができるわけです。ところが、あなた方は、二・七トンだけしか油は流出しておらないと言っている。二・七トンしか流出しておらないのにどうして——若干残ったとしても、残ったか残らないかは調べたらすぐわかる。二・六トンも使うことになりますか。おかしいじゃないか。六十トンから八十トンの油が中和させられる中和剤の量を使っておって、流れた油は二・七トンということは、合わないでしょう。説明してくださいよ、説明できますか。
  64. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) 油が流れたということにつきまして、その直後において報告する義務があるわけでございますが、事業者のほうからの申し出によりますと二・七トンということでございまして、ただいま先生お話のような点につきまして、目下相手側を調査中でございます。
  65. 加瀬完

    加瀬完君 それでは、当日、川崎海保から現場に行った者の人員並びに氏名、時間、とった措置、上司への報告、それをつまびらかにしてください。並びに二・七トンの根拠。二・七トンしか流れ出しておらなかったという立証は、どこでつけたか。
  66. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) 報告を受けまして、朝七時に川崎保安署の巡視艇が出動いたしまして、これの処理を監視しておるわけでございます。それから二、三時間たちまして、また違う巡視艇に交代しております。それから、そのあくる日につきましても明原丸を監視しておるわけでございます。
  67. 加瀬完

    加瀬完君 海洋汚染防止法の四十五条には「海洋の汚染があると認めるときは、その汚染の状況について、地方公共団体の長に通知するものとする。」とありますね。千葉県知事は、千葉県側が汚染をされてから、どういう状況かというので、この状況をつまびらかに教えてもらいたいという依頼書を出してあるはずですね、保安庁に。ところが、依頼書を出しても返事がない。四十五条違反じゃありませんか、これは。あなた方のほうの責任ですよ。——これは長官にも聞いてもらいたい。海上保安庁だけの責任ではないというさっき御説明がありましたが、四十五条はぴったりこっちの責任ですよ。四十五条違反をやっている。これは許せますか。
  68. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) お答え申し上げます。  その件につきまして、千葉県のほうから、水産庁を通じまして、返事がないということでお話がありまして、すみやかに出すようにということで督促があったわけでございます。で、私どものほうといたしまして、第三管区のほうに電話をしまして調査をいたしましたところ、その日にちょうど持ってこられて、ここに調査依頼書を持ってきておられますと、いま十分か十五分前に来られたばかりですということでございました。これは十三日の夜のことでございます。現在において、まだ書類は出しておりませんけれども、いろいろ御説明は申し上げております。
  69. 加瀬完

    加瀬完君 依頼書が出されたら返事をするというものじゃないでしょう。海上保安庁として、汚染された状態があったら直ちに関係の地方団体に通知をするという義務でしょう。やっておらないですよ。これが一点。  さらに申し上げます。次長は事案の内容が明確でないようでございますので、次長でなくてもいい、知っている人が答えなさい。明原丸に最後に積み込みをした船は何丸ですか。——こっちで言います。第十五京丸。この船が最後の給油を終わって帰るとき、付近には油はなかったと説明している。この船は、零時十五分から作業を始めて、給油が完了したのは午前一時十分。それから帰るときには、まわりに油は出ておらなかったと証言している。油の流出はこれからあとです。そうすると、残った船は——これは最後ですから、明原丸と明原丸に給油するポンプ船の太平丸の二つの船しかない。二つの船から出たか、どちらかの船から出たか、原因はそれは限られておる。しかるに、この一番大事な一つの太平丸の捜査を拒否したというのはどういうわけですか。同じ海上保安部の千葉班が行って捜査をしようと思ったら、川崎班がこれを拒否している。どういうわけなんですか。汚染防止の責任は海上保安庁にあるのじゃないですか。二つの船しかない、その一つの船は出ちゃった、あと一つの船を調べようと思ったら、それを拒否している。どういうわけですか。それで、第三管区が総力をあげてといったって、拒否された漁民側にすれば、第三管区はぐるになって犯罪の陰蔽をしているという疑いを持つのは当然です。あなた方、そういう疑いを持たれているのですよ。これで職務が完全に遂行されたと認めることができますか。できるかできないか答えてください。こういう状態でどうするんですか。
  70. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) 千葉海上保安部と川崎保安署の間において、いろいろ先生お話のようなことがあったかどうか、その辺はつまびらかにしませんけれども、問題があり得るということで、統合的に第三管区に本部を移した、こういうことでございます。
  71. 加瀬完

    加瀬完君 それでは、海上保安庁は、油の流出量二・七トンで十二・六トンの中和剤を使ったということには疑問を持たなかったのか。とにかく七百かんを使ったんです。二・七トンの油の処理に七百かんもの中和剤を使ったということはおかしい。これはもっと油が出過ぎているのじゃないか。こういう疑問はお持ちにならなかったのですか。
  72. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) 二・七トンに対して七百かんというものは、非常に多いという疑問はもちろん持っております。そういうことにつきましては、緊急倉皇の間でありますし、どの程度使い、あるいはその油の濃度にもよるのでございますので、どういう状態であったかということを現在も捜索しておるわけでございます。
  73. 加瀬完

    加瀬完君 会社は、明原丸の補給量は六千四十四キロリットルだといっておるが、これを正しいと認定しているのですか。
  74. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) 六千トン程度であるということは言えると思います。
  75. 加瀬完

    加瀬完君 会社の各船からの給油量の額は間違いないとお認めですね、六千四十四トン、六千トン程度である。その程度では困るのです。十トンよけい油が流れたか、あるいは二・七トンしか油が流れなかったかという重大な問題のポイントですから、六千トン程度ではだめですよ。六千四十四キロリットルという報告を会社はしていますが、この給油額は間違いないと御認定ですね。
  76. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) 目下、その件につきまして詳細に調査中でございます。
  77. 加瀬完

    加瀬完君 それじゃ、調査中の内容に少し触れます。真野潤一という者から供述をとったはずだが、この人の身分あるいは供述は信頼できるとお認めですね。
  78. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) 捜査の内容につきましていろいろ御説明させていただくのを差し控えさせていただきたいと思います。
  79. 加瀬完

    加瀬完君 供述は信用できるか、できないか、それだけ言ってください。
  80. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) それは、まだ報告は受けておりません。
  81. 加瀬完

    加瀬完君 じゃ報告を受けてから、また質問をしますがね。会社の六千四十四キロリットルと、この真野さんの供述は食い違っておりますね。ゼネラル丸から五百五十五キロリットル給油したと会社は言っている。真野さんの供述は八百五十キロリットルと言っている。それから第二常盤丸、会社からの供述は五百七十キロリットル、真野さんの供述は五百七キロリットルと言っている、ここは大体合っています。そうすると、ゼネラル丸と第二常盤丸で、会社側の申し出は千百二十五キロリットル、真野さんの供述は千三百五十七キロリットル、二百三十二キロリットル差がある。二百三十二キロリットル、これがもし海に流れていたとすれば、どういうことになりますか。したがってですね、当然そういう疑問を持って捜査が展開されなければならないと思うわけですけれども、これは供述書を取っているんだから、ここまではこの会社とこの真野氏の——真野さんという方は、この油を給油した会社の責任者として来ていた方ですね。その方が、ほかの船は同じだけれども、二つの船については二百三十二キロリットル違っているという報告をしている。これが違っているということについては厳重に捜査をするということはお約束できますね。
  82. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) 捜査の内容につきましてこまかいお話を申し上げるのは差し控えさしていただきたいと思いますが、ただ、言えることは、これにほとんど関係のない聞き込みの場合で、この会社でもないし、この東燃の工場の人でもないし、あるいはそこに積みおろしをしておった船会社の人でもないというような、その漂流を発見したという人の言につきましても、いろいろその発見個所、時間その他についても非常に食い違っているという現状でございますので、そういう点についても、目下詳細に捜索を続けておるわけでございます。
  83. 加瀬完

    加瀬完君 これは聞き込みの捜査の問題じゃないですよ。海上保安庁が横浜のこの鶴見輸送株式会社配船課横浜出張所勤務というこの真野潤一さん、これはこのC重油を明原丸に積み込む責任者ですね、それを証人としてあなた方のほうは調書を取ったわけなんです。油を幾ら送ったのだと言ったら、その人は会社側の言い分と二百三十二キロリットルの違いを供述した。当然この二百三十二キロリットルというのは問題にならなければおかしいでしょう。  さらに次に進みます。  明原丸の三等機関士の平川隆而さんから海上保安官佐藤治夫君が調書を取っておりますね、これは間違いありませんね。
  84. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) 取っていると思います。
  85. 加瀬完

    加瀬完君 この調書の一部がインク消しで消されている、訂正をされていると伝えられておりますが、いかがですか。
  86. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) その詳細の点についてここで申し上げるわけにはいきませんし、私、現在存じておりません。
  87. 加瀬完

    加瀬完君 過失にしても、オイルフェンスを越えて油を流させたということになりますれば、これは刑事責任は立証されることになりますね。
  88. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) 立証できると思います。
  89. 加瀬完

    加瀬完君 「流レ出シタ油ハ」、その次が抹消されている。「越エテ海中ニ流レ出シマシタ」と平川さんは供述していますよ。「流レ出シタ油ハ越エテ」というのはおかしいでしょう。そこはインク消しで消したと思われる。黄色くなっている。私は、謄本で見た。「越エテ」の上に抹消をされた文字はということになると、これは常識上「フェンス」ということになるでしょう。「フェンスヲ越エテ」ということになるんじゃないか。したがって、フェンスを囲ったけれども、その上を越えて油が出ていくのをこの明原丸の三等機関士の平川君は見ている。したがって、次の機会に私の指摘したような点を明確にしてくれるかどうかだけでも、ここではっきりしてくださいよ。もし個人の供述書をインク消しで訂正したということになったらたいへんな問題でしょう、これは。少なくも謄本からすればそう推定される。これは厳重にこの点はお調べをいただけますね。
  90. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) 先生からのお話がございますまでもなく、われわれのほうでいろいろ調査しているわけでございますが、この内容その他につきまして目下捜索中でございますので、そういう点についても厳重に捜索してみたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  91. 加瀬完

    加瀬完君 明原丸は完全にオイルフェンスを施していなかったとお認めになりますね。船のまわりを全部オイルフェンスでは囲ってはいませんね。
  92. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) その点についても、現在捜索中でございますので、お答えを差し控えさしていただきたいと、こう思います。
  93. 加瀬完

    加瀬完君 捜索中と言ったってね、目撃者はいるんでしょう。太平丸は一緒にくっついて行ったわけじゃないのですから、その太平丸の船長が証言しているじゃないですか。何なら図をかいてみせてもいい。どこから油が流れ出したと言っていますか、太平丸は。
  94. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) たびたび申し上げて恐縮でございますが、いろいろ供述書その他情報も入手しておりますが、それらにつきまして、いろいろその数字が合わないとか、そういったようなことについて問題がございますし、現在捜索中でございますので、答弁は差し控えさせていただきたいと、こう思うわけでございます。
  95. 加瀬完

    加瀬完君 ブリッジ前から右舷側、舷側から油が流れ出したと言っているじゃありませんか。その舷の一部分にはオイルフェンスやっていないですよ。  それからもう一つ聞きますが、監視員はいましたか。明原丸に油を積むとき監視員はいましたか。
  96. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) 何回も申し上げて恐縮でございますが、現在捜索中で、いろいろ情報その他にも食い違った面があるのでございまして、そういった面につきまして現在鋭意捜索中でございますので、御了承願いたいと思います。
  97. 加瀬完

    加瀬完君 これは九億の補償の問題もからむわけですから、被害を受けた漁民側としては、明原丸から油が出たのか出ないのかということは重大な問題ですよ。そこで油の流出をした移動の状況、それからシーバースでどういうふうに給油作業が行なわれるかという状況、こういうものを漁民側もいろいろ調べて、ある程度の確証を得ている。それを海上保安庁がまだ調査中だの取り調べ中だなんて——それは取り調へなければならない、捜索しなければならないこともあるだろうけれども、オイルフェンスがあったのかなかったのか、油がどこから出たのか出なかったのか、監視員がいたのかいなかったのか、こういうこともわからないのはおかしいでしょう。だから、あなた方は隠しているといわれる。会社側とぐるだといわれる。そうでなければ、さっそく問題になっているところを突き詰めて、監視員はそのとき留任でしたと、こういうふうにはっきり言えばいい。マンホールから油が流れ出したのを発見したのは監視員ではありませんと、こういうふうにはっきり言えばいい。どうしてそこを一方的に油を出した加害者だけをかばうような態度をとるんですか。海上保安庁のやらなければならないことは、被害の出ないようにすることが責任でしょう。あなた方は、被害者に対する対策を何にも立てていないじゃないですか。どうですか、監視員がいたのかいなかったのかどっちですか。
  98. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) 漁民の方その他の方がいろいろなことを——もちろん正しいのではないかと思いますが、言われておりますが、私のほうといたしましては、犯罪捜査を非常に役所の立場として厳格に行なう必要があるわけでございまして、令状を執行しておりますが、まだ外部に公表する段階には至っていないという意味において申し上げているわけでございます。
  99. 加瀬完

    加瀬完君 それは、外部に発表してはまずい点もいろいろあることはわかる。しかし、調書をとって明瞭になった点は、これだけは明瞭になりましたと言えるんじゃないですか。犯罪捜査上隠しておかなければならないという点までここにあばき出せとは言わない。しかし、事実関係において調査の上で明らかになっていること、あなた方が検分の上で明らかになっていることははっきりさせたらいい。どうしてそれまで隠すか。捜査していると思われないという非難が当然出てくる。監視員はいませんでしたよ、このとき、油のの出たときは。そうなってくると、明原丸の責任ということが明らかになるでしょう。あなた方のほうにしても、海上を汚染した加害者はこれを十分に取り締まらなければならない対象ですよ。取り締まるべき対象は泳がしておく、加害者は保護をして被害者には背中を向ける、こんな海上保安庁を一体だれが信用しますか。そう言われているんですよ、いまあなた方は。もっと明確にしてくださいよ。
  100. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) 供述の内容その他についても、われわれはいろいろ現地からも聞いておりますが、数字の食い違い、それから内容の食い違いその他いろいろあるわけでございまして、先ほど申し上げておりますように、時間をかけて捜索する必要があるんじゃないかというふうに考えておるわけでございます。役所の立場として、特に加害者をかばうというようなことはないわけでございますが、現在鋭意捜査を続行しておるわけでございます。
  101. 加瀬完

    加瀬完君 この給油した油の温度は四十五度から五十度といわれておりますね。四十五度から五十度という油は、一体危険性はないですか。夜半の作業は、危険性がある場合は禁じられている。これは夜半ですよ、夜半から未明にかけて。そういう危険な給油状況をそのまま放置しておるんですね。あなた方の係官に聞けば、あれは夜半でございますけれども危険性がありませんからと。危険性なかったですか。九億にのぼる——九億といったって零細漁民の累積が九億ですよ。こういう危険をもたらしたではありませんか。ところが、危険がなかったといってあなた方は夜半の給油をやらせている。夜中の給油ですから、どこから油が出たかもわからない。今後もこういうことをあなた方はやっぱり危険がないといって許すのか。これがいままでの保安庁のやり方だよ。もしも夜半に、よくわからないために油の流出等があって漁民に迷惑をかけるという配慮があれば、こんな夜半の給油なんというものはやれるはずがない。二・七トンということでも、うそっぱちでしょう。まっ暗の中で二・七トンか二・八トンか、ミトンかわかりますか。そんな状態の中で平気で作業をやらせている。それが今度の被害の一番の原因ですよ。こういう点について将来どうするか、相変わらず夜の夜中にやらせるのか、給油を。
  102. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) 私のほうの係官がどういう御説明を申し上げたかわかりませんが、危険物でない、こう申しましたのは、私、察しますに、いわゆる爆発その他の危険、C重油はそういう意味の危険物ではないという言い方ではないかと思いますが、海洋汚染の防止からみて、爆発その他そういうものではなく、汚染するという意味から言えば危険なものだ、こういうふうに考えるわけでございまして、私どもは、民間の夜間におけるこういう作業の内容につきましていろいろマニュアルを使ってやっておりますが、われわれも、そこにオイルフェンスを展帳して、あるいは処理剤等を備えつけてやるというようなことを指導してやらしておるわけでございます。
  103. 加瀬完

    加瀬完君 それでは、今後こういう夜間給油、夜間といっても夜中の給油という、汚染のほうの危険性のある作業はさせないということは約束してくれますね。
  104. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) お答えします。先ほど申し上げました爆発その他の危険物というものがC重油のほかにあるわけでございますが、こういうものにつきましても、現在……。
  105. 加瀬完

    加瀬完君 危険物はわかった。C重油のようなものを夜間に積み込みするのは、一体どう指導するのか。
  106. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) そのC重油以外のものにつきましても、やはり厳重な許可のもとに積み込みあるいは積みおろしをさせておるわけでございます。C重油についても、そういうことを検討する必要が非常にあるのではないかという考えを持ちつつあるわけでございます。
  107. 加瀬完

    加瀬完君 時間がきましたので……。明原丸の容疑は濃厚だ、したがって追及に今後万全を期するのだと了解してよろしうございますか。
  108. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) たびたび申し上げておりますが、捜索中のことでございますので詳しいことは申し上げられませんが、先ほど申し上げておりますように、いろいろ各工場プラントからとりました油の中でノリ漁場にあった油に類似性が比較すると一番高いという意味においては関係があるのではないか、ある可能性があるというふうに考えられるわけでございまして、われわれも、そういう線からこの問題について最大の努力を払っておるわけでございます。
  109. 加瀬完

    加瀬完君 聞いたことをきちんと答えてください。いままでのいろいろ私が立証したことに対して、あなたは、何にもそうでないという解明はされなかった。したがって、明原丸の容疑は濃厚だ。それはだれか考えて認定しなければならない。どうも明原丸がおかしいという認定のもとに厳重な捜査をするということは約束できるでしょうか。
  110. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) お答えします。濃厚という意味の問題でございますが、先ほどから申し上げておりますように、二十近い工場から取りましたものの中では一番関係が深い性質のものではないだろうかということでございまして、その程度は比較の問題でございますので、そういうふうに御理解願いたい、こう思うわけでございます。
  111. 加瀬完

    加瀬完君 そんなことはもうとっくに終わっているんです。私の指摘したのは、供述者の——あなた方のほうで、責任者としてぜひ聞かなければならないという人を呼んだら、会社が荷積みしたという油の量と提供したほうの会社の油の量と違っておる、二百三十二キロリットル、しかもオイルフェンスから油が出たという表現と推定されるものを消しておる。こういうことであれば、明原丸の疑惑はますます深まるわけじゃありませんか。これを徹底的にやらないで、何かどこの話かわからぬような話をしておられたんでは納得できませんよ。とにかくいま目標にされるのは明原丸、徹底的に明原丸を調べて、白となってわれわれは文句を言うわけじゃない。とにかく一番疑惑は明原丸にあるんだ。徹底的に明原丸を調べるということをこれはお約束していただかなければおかしいですよ、あなた方の立場は。
  112. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) 先ほどから申し上げておりますように、容疑のうちの一つであることは事実でございます。ただ、海上保安庁としては昨日、サウジアラビアのほうに係官を派遣し、印パの戦争で航空の面でも非常にむずかしいところを現地の大使館等をわずらわしまして、僻遠の地に人を送っておるわけでございまして、そういう点からわれわれの熱意というものをくみ取っていただきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  113. 加瀬完

    加瀬完君 熱意は認められませんよ、率直に言って。これだけの資料を出して、当然、あなた方のほうで、もっと資料あったら貸してください、徹底的に調べますと言うのがあたりまえだ。なぜあなた方を信用できないかというと、海洋汚染防止法の四十五条できちんときめられていることを故意に隠しているとしか思われないような措置をしている。そして明原丸が油を出したということが一〇〇%間違いないとだれでも考えておるのに、相変わらず明原丸をかばっている。これは、殺人犯ですよと、ここに形式、内容とも容疑の濃い者がおるのに、違うかもしれませんからまわりのほうをいろいろ調べましょうと言ったら、一体それで世論が許しますか。同じことだ。したがって、この国会に機会を得られるか、得られなかったらこの次の国会にもう一回来てもらって、これはもう少し責任を明確にしていただきます。  環境庁長官にひとつお願いをしますが、四十五条違反をしているおそれが十分あるこういう政府機関に対しては、はたしてそうであったかどうか、これは厳重に調べてもらわなければ困ると思います。これは御希望を申し上げておきます。  そこで、これは閣僚としての長官に伺いたいのでございますが、十二月七日の閣議で、山中農林大臣代理は重油による漁業被害について、政府として特別金融措置など救済策を講じたい、これは主として新潟県の問題で御発言があったようであります。これは東京湾の汚染の問題についても同様に政府としては御考慮いただけるものと了解してよろしゅうございますか。
  114. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) 扱う法律の対象とか範囲は違うようでございますが、同じ国民の、漁民のこれは災害でありますから、当然、やはりわれわれとしても、できるだけの対策なり救助方法は講じなければならないと考えております。
  115. 加瀬完

    加瀬完君 千葉県は、この当面の救済策として一億円の県費負担をしておるわけです。この県費負担に対しましては、水産庁にしても農林省にしても、あるいは財源の補てんをされるそれぞれの政府機関にしても、いままでも何回かありましたけれども、少しも見ていただいておりません。五年間に十二件、ある年には続いて、四十二、四十三は四件ずつあるわけです、油汚染のためのノリ被害が。これは何年間に一ぺん来る天災どころではないですよ。一年に四回も汚染されては、地域によって多少の違いがあっても、ノリ漁業は成り立ちません。これは山中農林大臣代理の御発言をひとつ長官にもあと押しをしていただきまして、何とかひとつ救済策をお考えいただきたいと思うわけでございます。  海上保安庁の御答弁は、はなはだ不満であります。したがいまして、これはその後どういう調査を進められたか、あるいはどういう状態でこの原因の究明に解決を与えたか、こういう点で重ねて別の機会に御答弁をいただきたいと思います。
  116. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 午前の会議はこの程度にとどめ、午後は一時三十分に再開いたします。    午後零時三十五分休憩      —————・—————    午後一時三十九分開会
  117. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) ただいまから公害対策特別委員会を再開いたします。  午前に引き続き、質疑に入ります。
  118. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 私は、ちょうど数えてきょうで満十七日目になるのでありますけれども、新潟の——これには港の外と書いてありますけれども、これは法律的に、また慣行的に国際路線からいきましても、これは新潟の港域内でありまして、外国船が入ってきて、かってにアンカーを港にぶち込んでわれ関せずえんといっていたわけではなくて、いわゆる第九管区保安部長が港長でありまして、そしてここヘアンカーを置けということでありますので、法律的にも、国際的にも慣行上これは港の外でなくて、港域ということです。これはまあ事務当局も、そういう意味でひとつ重大なこれはポイントでありますから……。  御承知のように、十一月の三十日に、これは海岸でこの大きな事故を起こした。国際的に見ても、港内で二万重量トンというような、そして実質一万八千トン以上の原油を積んだ船が海難を受けて、そして大量の油が流出したということは、四年前に起きたトリー・キャニオンですか、あれは海洋の中で起きた大げさなやつでありますけれども、これは港内で、こういう一つの港域で起きたということは、歴史的にも、世界的にも大きな大事故であります。私は、この問題に関連いたしまして、三つの視点をとらえて、政府あるいは自治体、それから関係方面に向かって、被災を受けられた側のサイドに立って、要求といいますか、要望といったほうが穏当だと思いますけれども、意見を含めて……。時間は往復六十分であるそうでありますから。  だいぶマスコミにも取り上げられまして、朝日ジャーナルが、油濁ですね、油でよごれた海の上に浮かんでおる日本列島という記事を載せている。まさにこれは、私も実は船乗り上がりでありまして、日本列島がどのような状態に立地的に位置づけられているかということから、けだし当然だと思うんです。今日、油濁の海の上の日本列島、日本海水域においてもこのタンカーの大事故が発生しまして、起算してもうきょうで十七日目です。  そこで、この被害者といいますというと、具体的に言って、日本海沿線の漁民、それから内水面の漁業者、これは零細漁業者でありますが、それと関係業者ですね。さらに、大量の油がやはり日本海に流れておるわけでありまするから、海岸線も相当に油で汚濁をされてくることになるわけであります。で、政治の日が当たっておりませんから、夏にもなればせめてこの海水浴場へ行くということが庶民のレジャーで、たいへんに海岸線には浜茶屋もありますし、最近ではやはり釣りですね。私もいろいろ陳情を受けましてびっくりしたわけでありまするけれども、この日本海の沿岸では、釣り堀だとか、ああいうちゃちなものじゃないですよ。自然の環境相手に、水ぎわに行って釣りをする、それを商売にしておる人もあるし、また、レジャーに来ておる人々に対してもその釣り道具を売る。これは新潟だけでも年間二億五千万円くらいの道具を仕入れておるわけなんです。こういう人たち、それから関係地域の住民ですね。最近、直接の第一次公害を受けておられる人がだいぶ地域から陳情に来ておられまするけれども、これはひとり新潟県だけではなくて、当然富山であるとか、あるいは秋田にしても、それから山形にしても、だんだんと第二次公害は広がっていくものである。そういったような被害者サイドに立って一応若干の質問をしたいと、こう思うわけであります。  で、長官は非常にお忙しいと思いますので、まず私のものの考え方を申し上げたい。一体、日本海水域において大体油の基地というものをしいて言えば新潟、タンカーの入る数量からいきましても、それから油の輸送の総量からいきましても。それで、タンカーが入ってまいりますと、これは海洋汚染防止法でみんなが環境をよごすことになるからということで、技術的な規制も必要でありましょうけれども、そういっても、先ほど加瀬先生が言っておったように、この油、石油の扱いが、結局、評価の上では「油濁の海に浮ぶ日本列島」というようなことに回り回ってなるわけであります。  そこで、私は、どうしても日本海というものを死なしてはならないと思うのです。このままほっていけば、いま申し上げたような油の公害も大きく、第一次公害は、ともかくもいろいろな処置によって無難に越えましたけれども、その後においては第二次公害も当然出てくるのだ。かてて加えて、私は、実は多少の先取りはしておりましたわけでありますけれども、若狭湾で現に原子力発電が機能を発揮してございます。私どもは、いずれこれは新潟も例外でないのだというような形で、そうしてみまするというと、日本海は、御承知のように、一例を申し上げますれば、佐渡の島の両津湾に加茂湖というのがあります。これは日本海の水域に通じておるのでありまするけれども、今日、赤潮でカキであるとか海藻というものはもうほとんど、あの手この手を加えても、うまくいかぬようになってきております。日本海全体は、御承知のように、宗谷海峡とそれから対馬海峡にはさまれておりまして、これは一つの見方によっては静かな平和である湖であって、とにかく死の日本海にしてしまったらたいへんでありまするから、どうしても私は実は先取りをして、若狭湾や新潟その他、昭和六十年あるいは八十年と展望すれば、だいぶやはり自然保護地域であろうと公園であろうと、この原子力発電所のマークが……。だから私が恐れますのは、石油でそううるさいことになるならば、これは公害の少ないというPRで、ひとつエネルギーの科学化によって原子力にかえられようというようなことを私は心配して、それなりに見よう見まねで勉強しておったわけです。そこにもってきて、いまの石油公害が出ますのでたいへんだと思うのでありますが、日本海を死の海にしてはならない。少なくとも原形に回復しないまでも、そういう手だてをひとつ環境庁長官にがんばってもらいたい、そういうふうに考えておるわけであります。そういうようなわけでありまするから、具体的には一体その環境の問題について、いま加茂湖の例を一、二あげましたが、これが広がって日本海全体が、あるいはかてて加えて若狭湾の原子力の公害水等を含めて、もうコバルト60も出てきておる。そういうものが合体をしたならば、これはほっておけば海は死んでしまうということになります。そのほかに都市下水であるとか工場排水であるとか、あるいはタンカー船、大型、小型によらず、まあ新潟に限らず、富山でも、敦賀でも、舞鶴でも、どこでもタンカーはそのように入っておるわけでありまするから、やっぱりタンカー船から陰に陽に廃油が出てくるわけであります。ことに、まあかりにジ号と言いますけれども、ジュリアナ号、このようなものは、一度あったことが二度あっちゃたいへんだと思いますよ、実際問題は。たとえば水俣病の例にとりましても、これは熊本の水俣だけで済めば一番よかったのでありますけれども、これは行政も自己批判してもらわなきゃならぬけれども、第二の水俣病は阿賀野川で、まあ裁判、人権擁護委員会等々含めまして、とにかくここで食いとめるというようなことで、一度あることが二度ある、二度あることが三度あるというようなことじゃいけませんので、この非常な不幸な事態でありまするけれども、このジュ号がしかも港域内で海難をして、しかも、大きな石油公害といいまするけれども、もっと鉱毒の大きい原油が少なくとも、まあ四千トンとかなんとかいわれますけれども、実質は一万トン近い油が結果的には海に流れるということになると思います。そういうようなわけでありまするから、これはこれだけでとめていただく。一度あることは二度あるということがないようにするということが一つと、いま申し上げたところの環境を十分ひとつあの手この手で整備してもらって、生き生きとした日本海、そうして日本海の沿岸のすべての、今日的に被害を受けた人たちも受けない人たちも、ともかくもやはり被害者にならないように、特にひとつ大所高所から御配慮いただきたい。大局的な意味では、環境庁の長官にはその点についてひとつ見解と所信を承っておきたいと思います。
  119. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) いまの杉山委員の御意見には全く同感でございます。私も、いまのお考えの方針で、日本海のこのようないろんな災害なり環境の悪化ということを何としても防いでまいりたい、とう考えておる次第でございます。
  120. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 それで三つの視点といいますけれども、これは今度は運輸省、言うならば保安庁という関連で、きょう御出席の保安庁の次長さんと、それからどなたが来ておられますか、運輸省は……。  実は、まあずばりでお伺い申し上げまするけれども、新潟港の港内であるとか港域というようなものについての論議は、これはここでは差し控えていきたいと思いますが、大体重要指定港湾であることだけは御承知のとおりだろうと思います。相当にタンカーも入ってくる。具体的には、御承知だと思いまするけれども、昨年一年間でも二千百十八隻のタンカー船が入っています。そして運んできた石油というものは二百五十二万トンです。しかし、これは昨年のことでありますから、ずっと漸増しているわけであります。そうして、いわゆる廃油ですね、タンカーが入ってきて、つまりタンカー船がたれ流したというふうにきめつけられますけれども、こういう公害が起こらなくても、大体年間二千トンから三千トンの廃油で大体汚濁になっておるということが、これが自然の姿であります。そういうような状態でありますけれども、私がひとつ責任ある答弁をいただいておきたいと思いますのは、一体こういう港の性格上、いわゆる船舶の安全体制、それから防災体制、それとこういうような事故、海難がやはり起きた場合に対しての救難体制というものについて、具体的には、次元は違いましたけれども、いわゆるあのトリー号のような形が起きることがあったのでありますが、これは四年前でありますが、やはり日本は石油輸入国では世界第二であるから、そういうことをおもんぱかって、いま申し上げたような船舶の安全体制の問題であるとか、そういったような問題について、どのように一体配慮して今日対応策をとってこられたか、その辺のところをひとつ聞いておきたいと思います。
  121. 原田昇左右

    説明員原田昇左右君) タンカーの事故防止体制をどういうようにやっておるかという御質問だと思うのですが、運輸省としましては、今回の事故を契機といたしましては、油濁防止と事故処理のための機材の整備のための基準の設定とか、機材の開発促進とか、海上安全交通法の早期制定とか、それから運航技術の向上に関します関係国際機関への積極的な参加といったような対策をとりあえずきめたわけでございますが、もともと当省といたしましては、すでにタンカーの大型傾向が顕著になりました昭和四十年来の当初からタンカーの事故防止対策の強化に真剣に取り組んできておりまして、昭和四十一年十一月に、タンカーの大型化に伴う災害対策要綱というものをきめております。そうしてその推進につとめている次第であります。  その内容は、狭水道におきます安全対策、港湾におきます安全対策、原油輸入基地港湾の新設とか、船舶の安全性の強化、救難体制の確立、それから海上消防体制の強化等の各般にわたるものでございまして、現在もその実現につとめております。しかしながら、今後はいろいろ情勢が変化いたしますので、さらにきめこまかい狭水道の対策あるいはガス爆発事故の防止とか、そういった対策を作成いたしまして、これらの基本的な安全対策を部分的にも修正し、さらに強化していく所存でおるわけです。
  122. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 それは率直に、私は船乗りであるし、新潟地域から出ておるし、それではあんた、だめですよ。結局、私の言ったのは、船舶の安全性の体制について、さらに防災体制、現に防災体制がなっていないから、確かに突堤の外ではありますけれども、第九管区本部長の管理監督の圏内でひとつやりなさいというような形で、しかも、御承知のように、このジュリアナ号は三十日の午前七時半に入港しているのですよ。そうして海難が起きたのは、船がまっ二つに割れたのは十六時三十分なんですよ。この間の九時間の空白について、ほんとうに前者の災いを再び取り入れないという原点に立って防災体制がきちっととられたら、こういうことにならなくともよかった。災害は追っかけ主義ではだめですよ。防災体制は、あることを予測して、そうしてそれが防災体制だと、当然海難が起きれば、たとえば船員——これは中国系台湾人であります。あれは台湾だと言いますけれども、中国は一つであるという私たちは今日的には原則を踏まえておりますから、これは中国系台湾人でありますが、これは全部済んでおりますけれども、そのほかに港湾労働者であるとか、船員であるとか、関係水域、こういうような人たちをやはり救難、救うためのやはり救難対策という点について、事件が起きたけれども、しかし、これは起きる、起きないにかかわらず、重要指定港湾として、日本海水域におけるところの一つの拠点的なタンカー基地であると言えばそういうように位置づけることができるわけでありますから——きょうは、この公害対策特別委員会一つの手形を打ちつけて、年が変われば、私は予算委員でありますから、来年の予算で環境汚染等を含めてやりたいと思いますが、やはり港のある限り船が入ってくる、船が入ってくれば船舶の安全性、そうして防災体制、そうして救難というものは非常に重要なものだと思うのでありまして、これは運輸省の省、あるいは庁である海上保安庁の省庁にわたっておりますけれども、大切なことですよ、海の上においての日本列島としては。その辺に対しては、非常にどうも魂が入っていないのだ。  そういうことでありますから、これは次長のほうでも、運輸省のほうでも一ぺんその辺を考えて答弁してください。一体、あなた、運輸省でした、か、その辺はどうですか、重要港湾を指定して。  それじゃ、いま一つ言いますか、時間がたってしまいますから。これは御存じでしょう。海運労働者をもって組織している全日本海員組合が十二月二日付で九管の本部長であるとか、あるいは直接の港湾管理者の新潟県知事であるとか、海運局長にあてて申し入れ書というものを出しておるわけですが、御存じでしょうね。結局、この新潟のような体制の中では、日限を切っています。大体十一月以降来年の三月まで、わが組合員の乗る船舶に対しては、危険であるからここの入港を拒否するんだと、もう少し船舶の安全性と防災体制について姿勢を正してやってくれということを、この二日付の申し入れ書だけでなくて、ずっと前からやっているわけですよ、海員組合としては。結果としては馬耳東風で何もやっていないじゃないですか。と同時に、これは保安庁にも関係あるわけでありますけれども、大体、船長を、警察権を発動して、そして身柄を拘束して、現在は検察庁に送っているでしょう。それはそれだけのあれがあるでありましょうけれども、外交上の問題からいって、やっぱり慣行上、制度的にも大体海難審判優先がたてまえであるわけであります。しかし、事件によっては、それはされることもいいでありましょうが、これは申し上げておきますけれども、国際上の海難審判優先の原則の慣行が無視されて、そして船長が拉致されておる。しかも、今日的にはやはり起訴されておるんだと、仙台にある海難審判所からは調査官が来ておりますよ。しかし、これは同じやはり体制の行政の面でありまするから帰られたようでありますけれども、そういう点についても、海員組合が自分らの身の保全のために、やはりあの港はただでさえ体制がなっていないところへこういう事件が起きてというようなことでありまするから、その辺について——まあ、往復になるというと長くなりまするから、一応、私がしゃべるだけのことはしゃべりましたから、その辺についてあなたたちがひとつ答えてください。
  123. 原田昇左右

    説明員原田昇左右君) タンカーの事故防止の必要性は全く先生の御指摘のとおりでございまして、私どもも、対策としましては、まず事故を未然に防止するという線から、先ほども申し上げましたように、いろんな対策をやっておるわけでございますが、さらにその災害が不幸にして起こりましたときの措置、それからその後の被害者の救済という点についても着々最近対策を整備いたしております。  まず、海洋汚染防止法におきましていろいろな義務づけができますので、石油基地に対しましては、油濁防止の事後処理を万全にするために、中和剤とか、オイルフェンス等の機材の備えつけ、その種類、場所、数量に対して基準をきめまして、そして備えつけを勧告する。そして、同時に、こういった災害の防止技術というものの開発を促進するということをきめておるわけでございます。  それから、今後の問題といたしまして、海上の交通事故の防止をはかるためにはどうしても海上安全交通法の制定が必要であろうと思いますので、これについても早期に制定をするための準備をいたしておるわけでございます。  それから先ほど御指摘の船舶の油の恒常的な排出に対しましては、海洋汚染防止法で法的な規制措置が担保されておりまして、これは現在の油濁防止法にかわりまして来年の七月から施行になりますが、非常に大幅な規制の強化をいたすというようになっておるわけであります。
  124. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 海上保安庁のほうは、何も言いませんか。
  125. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) いま運輸省のほうからお話がありましたとおりの対策に沿って大いにやっていきたいと、こういうことで考えておるわけでございます。特に海上安全交通法の制定につきまして、できるだけすみやかに提出するように現在準備、努力中でございます。  なお、船長の身柄その他につきまして先生のほうから御指摘があったわけでざいますが、現在、保釈して東京のホテルにおるわけでございます。旅の身でありますから、できるだけ早くひとつ済ますように努力していただきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  126. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 どうもかみ合いませんね。それなら聞きますが——まあ、それはそれでいいです。それでいいですけれども、前段申し上げたように、検疫を受けるべくここへとにかくアンカーをおろして、それが午前七時半だと、それで九時間の空白について、これはまあマスコミのニュースライターやレポーターの方たちがこの九時間の空白を追及しながら答えが出ておるわけですけれども、本来からいくなら、大体入ったときにはやはり陸上のほうから風が吹いておったのだ、いよいよこれはいかぬなというかっこうで、今度は海上のほうから吹くようになってきたものだから変えておるというような形で、大体これはやはり船長のミスであるというようなふうに簡単に受けとめるべきではなくて、よって来たる背景にはいろいろあるので、大体この九時間にはどういう手を打っておられるか。
  127. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) お答えいたします。風の向きが変わりまして、前から発している警報が気象庁のほうから改定になっておるわけでございますが、これにつきまして、海上保安本部のほうにおきましてこれを受けまして、これを受け入れ態勢の民間機関のほうにも伝え、これを船長のほうにも伝えておるわけでございます。いろいろまああったわけでございますが、船員のほうではこれを受けておるということを供述しておる段階でございます。
  128. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 トリー・キャニオン号、この四年前の事件についても、それから今度の事件にいたしましても、海難一たび起きれば大きな当面の第一次公害、そして、これはまあ保安庁の長官は、おそらく中和剤をその必要なとき——つまり揮発性があって爆発性がある場合、ところが、実は防災体制の不整備から、その地域に速戦即応の体制の中和剤というものがほんとうに天井から目薬程度しかなかったから、それたいへんだというかっこうで、集中的にやるときには、もはや実際はこれは第二次公害を誘発するとようなことで、一つの毒物になるというような、そういう間の抜けた結果になっておるわけです、結果から観察しますと。そういうようなこともこれあります。それから情報の問題でありまするが、問題は気流ですね。重要港湾指定港であるし、相当な港でもあるはずでありまして、第九海上保安本部もありますし、管理者であるところの新潟県も、港には港の事務所を持っておる。こういう形でありまするから、最低限まあ言うならば気象ですね、海象ですね、海の状態ですね。そういったものを把握して、外国船であろうと、漁船であろうと、日本船であろうと、これは港域だから、やっぱりアンカーを入れて水先人が来るまでというような場合についてはだね。その体制というものの不備をもう暴露しておるのだというふうに私は指摘しておきます、きょうのところは。皆さん方、海洋汚染防止法ができて、これが六月に施行実施になるとか、それから交通法ということを言っておられまするけれども、そういうことじゃないのですよ。つまり海員組合が——あれはおとなしい組合ですよ。そういうものが二度、三度、そしてここへもう船を入れないぞといっておこるのはあたりまえなんですよ。それでそういう書いたもので出してきているんだ。それをあれをするんだ、これをするんだということじゃ手おくれだ、後手後手だということになるので、私は、それは納得しがたいのでありますが、きょうのところは……。  そこで、私は、先ほどまくらことばに言ったように、率直に言っておきますが、大臣にも伝えておいていただきたいと思うが、こういうネットワークじゃいけませんよ。かりに海象、気象、それから気流を含めて、そして多様な情報を収集する海洋情報センターというものを中央におつくりになって、そして各管区にネットワークを位置づけて、外国船が入ろうと漁船が入ろうと、日本船が入ろうと、公海中であろうと、もう少し情報をだね。しかも、公害は生命に関係するのでありまするから、海洋情報センターというものは金がかかる、金がかかることはあたりまえですね。それは幾らでも予算の処置の方法によって、公害を事前に防止する、人間の生命は地球より重いというようなぐあいに価値観が変わっておる状態でありますから、とにかく海洋情報センターをつくって全国の管区にネットワークでいく。それには気流、気象、海象、こういったものが位置づけられておるならば、とにかくあの港域内においてああいう海難事故なんか起きやしませんよ。海難事故なんか起きなければとにかくそんな石油公害なんというものは起きやせぬのですよ。  それで、もう一つは、これも言っていきますが、大体タンカーにしても、それから鉱石を積む船においても科学的に科学者の意見を聞いて構造を変えたらいいんですよ。コストを下げるために、いま大体五十万トンぐらいまで造船を許可しているんでしょう、とんでもないことですよ。これは試作、試験をしても危険ですよ、私どもは船乗りでよく知っておりますけれども。でありまするから、油船であるとか、それから鉱石船とかいうものの大型化の限界というもの、そして規制措置をだね、これは船主や船舶所有者は反対するかもわからぬけれども、とにかく人間が優先だという原点でとらまえれば、どこかで、海洋汚染防止法も必要でしょう、交通法も必要でしょう。ないよりましだけれども、その程度のものであればないほうがましだということになったらたいへんでしょう。でありまするから、船舶、タンカー、鉱石船については、いまのような状態ではいけないのでありまするから、それを規制することを私はやはり強く要求し、まあ要望しておきます。  そういう点で、これはこの程度にしていかないというと、これは手形で今後やるということを言っておりまするから、運輸大臣にも、そして保安庁のほうの長官にもひとつ伝えておいていただきたいと思うんです。信用しないわけじゃありませんけれども、先ほどの加瀬委員の質問に対しても、だれが聞いておっても、のれんに腕押しであって、大事なさわりについてはとにかく申されません、言われません。それはいいでしょう。われわれに調査権がある、質問権があるからといって、それをやるのに常識のものさしではかるというと限界ありましょうけれども、きょうは、運輸省の所管で省も庁も来ておられますから、保安庁の次長のほうから、何とか一つぐらい大臣に伝えていただくということを約束していただくということと、それから何とか言ってしゃべってくださいよ。保安庁長官は直接関係ないけれども、こういうことが重なれば、日本海は死んでしまいますよ。海は死にますから、ひとつ……。
  129. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) お答えします。保安庁の次長でございますが、運輸大臣のほうにもその旨をお伝えすることをお約束申し上げる次第でございます。
  130. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 まあ、時間は金ですから、視点だけははっきりのみ込んでおいてくださいね。海上の防災体制の件、安全性の件、救難体制の件、それから情報センターを金がかかるけれどもつくることが必要だということ、大型タンカー、それから大型鉱石船の構造と規制処置を、やはりわれわれも一生懸命で被災者側に立って要求しますけれども、行政の次元でも十分ひとつ考えてもらうように、そういうふうに要望をしておきます。  次には、このジュ号ですね。申し上げるまでもなく、このジュリアナ号のやはり海難によって発生した言うならば石油公害について、やはり受けたこの被害者というものについてのとらえ方がどうも真剣に——農林省あるいは水産庁でも、もちはもち屋でそれなりにとらえておられると思いまするけれども、のぼってこられる陳情団の方々を見ますというと、日本海の沿線については、大体この第二次公害、爆発は防がれたが、まだ引き揚げ作業が残っているでしょう、残った油の。これをどのように処置するかということも今後の問題でありまするけれども、たいへんまだ不安がっているわけであります。この処置についても十分注意してもらわなければなりませんけれども、問題は、環境という問題と不可分な関係で、被害者というものになりますというと、新潟水域を中心として山形、そして秋田も例外ではありませんけれども、この油の被害によってとにかく第二次公害というものが当然出てくると思いますが、その被害者は、新潟に限らず、日本海沿岸の水域の沿岸漁民ですね、それから内水面のやはりこの零細漁民というもの。それから先ほどもちょっと環境庁長官に聞いてもらったように、海のレジャーとしての釣り場であるとか、それから夏になれば庶民が手近で安くてレジャーができるといういわゆる海水浴場、それから浜茶屋、こういったようなものも、これは直接なり間接なりの被害者ですよ、実際問題。ただ、いま漁民だけのつまりつなぎ資金であるとか救済措置を出せばいいというような、そういうものではないんだというようなふうにとらえて、一次公害はこれこれだと、第二次公害は、たとえば非常にたくさんの中和剤をまいておられるでしょう、これは保安庁のほうでおまきになった。何種類くらいまいておられるか、いま時間がありませんから聞きませんけれども、まあ四十五、六の種類があるそうでありまするけれども、おそらく手塚保安庁長官のところへ若い青年学術会議の人たちが、こういうものは毒物ですから海を死なしたら魚が生活に困るからやめてくださいという、これも申し入れ書があったはずでありまするが、そういうような関係で、この油の公害の及ぶ第一次公害、第二次公害、そういったものを農林省の所管である水産庁は、これまたいろいろな水産研究所であるとか管区というものをもっておられるわけでありまするので、大体損害を——これは船主が出す、業者が出す、保険がかけてあるからというような、そういう数字論の遊戯ではだね、なかなか外国はそう甘くはありませんよ、実際問題。海難審判はどうなるとか、あるいは裁判にいくといったような場合については科学的な数字と裏づける根拠というもの、それはもちはもち屋で、水産庁のほうの所管で、この油はこういうようなぐあいでどういうような事故が起きてくるというようなこと、時間がないけれども、そういうことをとにかく答弁をしていただきたい。ひとつその点をやってください。
  131. 藤村弘毅

    政府委員(藤村弘毅君) 油及び油処理剤の被害の状態でございますが、これはもう済んだものでございませんし、これからあらわれるものも相当多いと考えております。そこで、水産庁といたしまして、基本的に基礎的な研究は、いままで水産庁の東海区水産研究所が中心となりまして、油及び油処理剤の致死限界濃度とか着臭限界濃度というものを研究いたしておりましたが、今回の事故につきましては、十二月八日に私が東海区水研と日本海区水研の者を連れまして日本海区水研に行きまして、日本海区水研で山形県水産試験所や新潟県水産試験場の係官を集めまして、これからどういう調査をしてこの被害額を出すか、影響がどこまで及んでいるかという調査を設計をいたしまして、今月の十四日からこの調査を実施しているところでございます。
  132. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) いまの答弁に補足いたします。  現状では、いま漁業がすっかりまいっております。とれた魚が油くさくて、もちろん売りものになりませんし、その区域外からとれた魚でもやはり売りものにならないということで非常に困っておるわけでございます。そのような漁民の被害はもちろんでございますが、おっしゃるとおり、それに付随するいろいろな業体にもいろんな迷惑をかけておると思います。昔の小ばなしに、江戸で大風が吹けば桶屋が繁盛するということがございますが、これは全くじょうずな、いわゆるいまのはやりのエコロジーですか、因果関係のことを述べた小ばなしでございますが、このような因果関係があって、われわれが思いもつかないようないろいろな被害もあることと思います。漁民に対しましては、御承知の当面のいろいろな低利長期の融資なんかを考えまして、それを実施することにいたしておりますが、それに関連しまして、やはりこれはいろいろな他の関連の被害につきましても、できるだけのめんどうは見てまいりたいと考えておる次第でございます。  なお、水産庁の次長からお話がありましたように、ただ、このような第二次の公害被害がどのような形であらわれてくるかということにつきましては何らの経験もございませんし、確信もございません。これを今後長期間にわたりまして追跡調査をして、基礎的なあり方をつかむことが一番大事だと考えております。そういうことで、水産庁との強力な連絡によりましてその準備を始めておるわけでございますが、幸い科学技術庁からも数千万円の試験調査費を取ることができますので、こういうものを基礎として今後研究を進めて、一日も早く対策を立ててまいりたいと考えております。
  133. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 どうも環境庁長官、これまあたいへん重要な勘どころと、つぼをつかんでおっていただいて、被害者の側に立っても、またその要望を矢のようにいろいろ受けているわれわれとしても、たいへんうれしいことでありますが、そこで——水産庁次長でいらっしゃいますね。いま具体的に、たとえば石油の流出公害によって海洋汚染地域調査であるとか、あるいは中和剤の海洋生体物に及ぼす影響ですね、たとえばプランクトンですね、植物性のもの、動物性のもの、こういったようなものが一体第二次公害としてどうこうというような基礎調査というような問題だとか、関係水域における漁業被害の状況というようなものについては、それは当然基礎調査としてあなたのほうがお出しになることがたてまえであるし、常識だと思うんですが、その辺についてはどういうような——だいぶ申し上げたように、もう十七日たっておるわけでありますから、手だてとしてはどういうふうにしておられますか。
  134. 藤村弘毅

    政府委員(藤村弘毅君) 従来から油及び油処理剤について基礎的な調査をやっておりまして、現在までわかりましたところでは、油については〇・〇一PPM以上の海水の中に魚がおりますと魚に着臭するおそれがあるということがわかっておりますし、分散処理剤につきましても、いままでの研究からいきますと、四十八時間の半数致死濃度と申しますか、四十八時間で魚が半分死ぬ濃度が、薬によっていろいろ異なりますが、七・五PPMから九千PPMとなっておりまして、とれの十分の一が嫌気性限界濃度で、これの百分の一が大体安全限界ではないかというふうに考えておりますので、今度の調査につきましても、油につきましては〇・〇一PPMの範囲、処理剤につきましては〇・一PPMの範囲を調査するように調査設計をいたしております。
  135. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 その調査区域は、いま、むろん水産海区がいろいろありますが、実際現実には油はすでに山形県境を越えて秋田に入って、それは粟島も含めて、これはしろうとが見てもそういうわけですから、そういう広範にわたって第二次影響の及ぶ範囲というものを具体的に物理的につかんで、そうして基礎調査をおやりになっておるというふうに理解をしてようござんすか。
  136. 藤村弘毅

    政府委員(藤村弘毅君) 現在、秋田県は加わっておりませんけれども、新潟県につきましては、「越路丸」、「苗場」、「弥彦丸」の三隻の調査船と監視船を使って採水採泥をいたす検討をいたしておりますし、日本海区水産研究所の「みずほ丸」を使いましてプランクトンを採取して調査をいたすことにいたしております。なお、山形県につきましては、「最上丸」と「月峰」という船二隻を使いまして採水をいたしまして調査をいたすという計画にいたしております。
  137. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 その中に、第一次公害の中で関係水域の被害の総額というようなものは、数字にならないまでも、数字になる推定でも、基礎というようなものは、水産庁の所管であるとかないとかいうことは抜きにして、そういうようなことは、全然それはなわ張りが違うとか、やってないとか、その辺のところはどうですか。
  138. 藤村弘毅

    政府委員(藤村弘毅君) 現在、まだ被害があらわれていないので、これからあらわれるところもございますし、いつまでこの被害が続くか、ちょっといまのところ推定できませんので、いま考えておりますのは、新潟以北、新潟県の二十組合の沿岸の漁獲量を推定いたしまして、それが現在考えられる被害総額というふうに考えております。ただ、これは来年三月までのことを考えておりますが、その後も被害があらわれれば、それが累積することになりますので、それの調査もいたしております。
  139. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 もう時間もありませんが、私もじきにやめますけれども、それは被害者の側に立てば非常に大事なことでありますので、それから運輸省も、きょうは環境庁の長官もおっていただきますから、こみで聞いておいていただくわけでありますけれども、被害者というのは、ただ新潟県だけの——いまは現象面では、新潟県の沿岸の零細漁業者であるとか漁民であるとか、内陸のやはりたとえばサケだとかマスだとかアユだとかいう稚魚もいろいろ放して、結局、米でいかなければこれでいかなければ、また、タニシ、ドジョウも例外じゃないですが、そういうものが被害を受けておるのでありますし、さらに先ほどのレジャーも大事なことですから、そういうものの被害の中で、これは国あるいは自治体でも連帯の責任というものをやはり把握しておいていただかないと、船が沈没した、石油公害が出た、損害保険から金をもらって払えばいいんだという、そういう資本の倫理一辺倒だけからいくならば、結局、やはりこれはいまの農林中金を災害に適用しただけの一つのつなぎ融資ですね、これをもらったほうの側では前取りとして、つまり補償の前取りとしてということの確認はしないでしょうけれども、とにかく、いずれにしても損害だけは補償してもらいたいという気持ちがあるし、昨日でも、たとえば自治体や、そうして新潟地域においては、保守だとか革新だとか乗り越えて、そうして国も含めて共同でひとつこの損害をというかっこうをだね、外国の船主や外国の業者や保険業者だけがそろばんでこれだけ数字が合うからということで、それに固執するというと越中ふんどし向こうはずれになりますよ。国の責任で、そうして自治体の責任としても、やっぱり加害者がだれであるというような点、そして当面の漁民や零細漁民だけでなくて、また、魚をとって、そしてそれをおかかの振り売りとしてやっている者も非常にたくさんあるんだと、そういう点もひとつ配慮をしていただいて、この石油公害に対して、油による影響であるとか、中和剤による油の拡散であるとか、二次公害が一体どうなって起きてくるやろうとか、あるいはすでに渡り鳥が海の途中で休んだのがみんな油にはさまれて死んでおる、それが波打ちぎわに上がっておるというような現象もありますが、一番大事なことは、動物性や植物性のプランクトンによって魚や海藻は生きていくわけでありますから、こういうものの調査と、最後にこの汚染区域における損失の予想額というものを的確につかんでいただいて、被害民の要望は要望として、そして山中長官が、衆議院の段階では、本会議の中で、緊急質問に適当に言っておられる、それはうそじゃないと思いますけれども、ただ、保険だけで足らなければ共同保険もあるぞと、そして人のふんどしで相撲とっちゃって、国も自治体も関係ないんだという逃げを打っちゃだめですよ。実際問題として、国としても、港湾管理者である——私も新潟県でありますが、新潟県知事に私もなりそこねましたけれども、ともかくいずれにいたしましても、いま管理者の知事というものにもこれは関係があるということを申し添えて——きょうは申し上げたように、往復が一時間でありますので、だいぶ時間を食い込んでおりまして、一時間ちょっとオーバーしたと思いますけれども、同僚の委員の方々に迷惑をかけたと思いますが、これは来年の予算委員会の中でひとつ厚まきでやりたい。環境庁の長官はおられるからいいけれども、運輸大臣や農林大臣、水産庁の長官——次長がおられるからけっこうでありますけれども、そういうぐあいで、一発主義ではいかぬと思います。  これで質問を終わりますが、まあ、きょうおられるうちでは一番環境庁長官が偉いと思いますから、ひとつ総括して何とかひとつ言っといてくださいな。
  140. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) いまの杉山委員のいろんな御発言をお聞きしておりまして、非常にあたたかいお気持ちで住民の側に立ってのいろんな御発言を非常に私はうれしく思います。われわれ同じ気持ちで、行政というものは国だけでやる、県だけでやる、町村でやるものでございませんから、みんなで一体になりまして、ほんとうにお考えのように、被害者の立場を十分に理解いたしまして、これに対して協力ができますように全面的に努力いたす決意でございます。
  141. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 私の質問、これで終わります。
  142. 工藤良平

    ○工藤良平君 各委員会で油濁の問題につきましてはいろいろと論議をされてまいっておりますので、私、できるだけ重複を避けたいと思いますが、特にいまお話がありました、十一月三十日の新潟沖合いにおけるジュリアナ号の事件が全国的に油の非常対策のおくれておるということを私は浮き彫りにしたのではないか、非常に特徴的な問題だと思っているわけであります。私ども、よく常々非常に簡単に考えているんですけれども、空が広い広いと思っておりましたら空で飛行機が衝突をするということが起こりますし、海は広い広いと思っておりますうちにいつの間にか海がよごれて、これはたいへんな状態になっているという状況であります。特に私は瀬戸内海の沿岸におりますので、杉山先生、いま日本海が死の海になるということでありましたけれども、日本海がなる前に、おそらく瀬戸内海がもっと早くなるんじゃないかと心配しているわけでありますが、きょうは、そういう点からこの問題をとらえてみたいと思います。  そこで、まず第一番が、いま非常に大型船舶が瀬戸内海に出入りするようになっているわけでありますが、この点について、特に瀬戸内海沿岸におけるコンビナートに、一体最高どの程度の船が各基地に出入りしているか。そしてまた日本全体の原油の取り扱い量、その中で瀬戸内海が一体どのくらいのものを吸い込んできているのか。そういう点について、これはどちらの関係——通産の関係ですか、運輸ですか、お伺いいたしたいと思います。
  143. 根岸正男

    説明員(根岸正男君) どのくらいの船が出入りしているかということにつきましては、あまり最近の数字はございませんが、最近、四十五年度で一番大きい船は、瀬戸内海といたしますと、水島に入港いたしました十和田丸が、これがデッドウエートで二十二万七千トンというのが一番大きいようでございます。ただ、御承知のとおり、瀬戸内海の水深の問題がございますので、実際にこういう大きいタンカーが入港いたしますときには、外洋の沖の基地で大体半分おろしまして、それから半分くらいに積載を減らして水深を浅くして入ってきているような状況になっております。  それから瀬戸内海の中にどのくらいの精油所があるかということになるわけでございますが、原油で約四千万キロ、これは大阪湾のほうは除いてあります。こういう状況でございます。
  144. 原田昇左右

    説明員原田昇左右君) ただいまの御質問につきまして、四十四年度の実績がございますのでお答えいたしますと、全国に入りました原油タンカーの隻数は二千四百五十六隻でございます。そのうち、約三割の七百三十五隻が瀬戸内海地区に入っております。  それから輸入量で申しますと、原油の輸入量が四十四年度実績で一億五千九百五十万トンでございますが、そのうち約三割の四千九十二万トンというものが瀬戸内海に入っていると、こういう状況でございます。
  145. 工藤良平

    ○工藤良平君 いま概略のお話を聞いたわけですけれども、たとえば水島には、いまおっしゃったように、二十二万七千トン、あるいは岩国基地には九万五千トン、徳山には二十五万トン、大分鶴崎には二十一万トン、そのほか姫路、松山、宇部と、こういったようなかっこうで、大阪を除きましても、相当瀬戸内海沿岸全体を取り囲むというような状態が現在の瀬戸内海沿岸における石油基地なんであります。これに、いまお話にありましたように、日本の全体の原油の量の約三割というものが吸い込まれているという状態であります。しかも、瀬戸内海というのは内海でありますから、そのまま二十二万トンの船が岸壁に横づけになるということでなくて、外洋で半分おろして持ってくる、こういう状況でありますから、これは事故発生の大きな原因になるんじゃないかと私どもは実は心配をいたしているわけでありますが、  そこで、具体的に、近年、特に瀬戸内海の汚濁というものが非常にひどくなっているわけであります。これは環境庁長官も先般ごらんになったということを私どももお聞きをしておりますし、先般の委員会でも瀬戸内海の汚濁について論議をされてきたところでありますが、汚濁のそれでは主たる原因は一体何なのか、その中で油による汚濁の割合というものは一体どういうかっこうになっているか、その実態について、もしわかっておればお知らせいただきたいと思います。簡単でよろしゅうございます。
  146. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) 瀬戸内海におきます油の海洋投棄並びに油による汚染程度はどの程度あるか、こういう御質問かと思いますが、油の投棄量と油による汚染の程度を明らかにあらわす明確な数値はございませんが、当庁が把握しました瀬戸内海におきまする油による汚染発生件数及びその全国比は、次のとおりであります。  四十五年の暦年でございますが、これが百二十五件でございまして、全国の約三六%近くいっております。それから四十六年の一月から六月までの半年でございますが、これは百四十件ということになりまして、四十五年暦年一年よりも半年のほうが多い、こういうかっこうになっております。全国比は二六%程度でございます。  以上でございます。
  147. 工藤良平

    ○工藤良平君 これは別の資料でありますけれども、瀬戸内海をよごす油の量は大体年間百五十万トンぐらいではないだろうかという予測も出ておるようでありますけれども、たいへんな数字でありますし、いまお話のように、四十五年一年より四十六年の半分のほうが件数にして多いというような状態で、非常に急激に大きくなってきているわけであります。  そこで、私は、油を中心にしていろいろな他の要素もからまって、瀬戸内海の汚濁というものが一体水産関係にはどのように影響しているだろうかと、このことを非常に心配するわけでありますが、現在の日本の水産業の水揚げの中で、いわゆる沿岸漁業による水揚げというのは一体年間でどのくらいで、何%ぐらいに当たるのか。それから瀬戸内海の——これは何年を基準にしたらいいのですか、大体十年前と現在と比較した場合にどういう減少傾向をたどっているのか、そこら辺のところ、たいへん重要と思いますので、もしおわかりになればお知らせいただきたい。
  148. 藤村弘毅

    政府委員(藤村弘毅君) 私、全体の沿岸漁業の資料はちょっと持ってきておりませんので、沿岸漁業として分けてお答えはできませんが、全国の漁獲高が四十年に六百九十万トンございましたのが、四十五年は九百六十一万トンでございます。失礼いたしました。沿岸漁業、分かれております。沿岸漁業と申しますのは十トン未満の動力船、それから定置網とか採藻、採貝を沿岸漁業と分けておりますが、それの漁獲高が昭和四十年には百八十六万トン。それから四十五年が百八十九万トンでございます。瀬戸内海について見ますと、魚類と貝類その他のイカ、タコ全部合わせまして、昭和四十年が三十万一千トンでございまして、昭和四十五年が三十七万四千トンとなっております。
  149. 工藤良平

    ○工藤良平君 私、ここに全国漁業協同組合連合会の方が分析をいたしました資料を持っているわけでありますが、これによりましても、沿岸漁業のパーセントが非常に大きく減少しているわけであります。これは日本の近海がいろいろな廃液によってよごされておるということだろうと思うのです。  そこで、瀬戸内海というものをとらえて見た場合に、たとえば海藻類、これは私たちの非常に重要な食糧源でありますけれども、海藻類をとって見ますと、相当大きく減少しているわけでありますね。この点について大体統計上どういうようになっていますか。
  150. 藤村弘毅

    政府委員(藤村弘毅君) ちょっと統計はございませんが、ただいま先生の御発言とちょっと違っておりまして、瀬戸内海におきましては、海草類はふえておりまして、昭和四十年生ノリが二万二千トンであったのが四十五年には八万トン、生ワカメは、昭和四十年には八百七十トンでございましたのが四十五年には五千トンとなっておりまして、これは瀬戸内海で養殖業が非常に盛んになったためにこうなっておるものと思われます。
  151. 工藤良平

    ○工藤良平君 それは、たとえば十年前あたりと比較をいたしまして、海藻類がふえておりますか、傾向として。
  152. 藤村弘毅

    政府委員(藤村弘毅君) 瀬戸内海においては、海藻はふえておる——十年前の資料を持ち合わせございませんが、ふえていると思います。
  153. 工藤良平

    ○工藤良平君 私、この全漁連の資料を見ますと、昭和十年あたりからいたしますと半分以下に下がっておるという統計が出ているのであります。これはぜひ調べていただきたいと思いますが、まあ、そこはあまり詰める必要はないと思いますけれども、ともかく瀬戸内海の沿岸漁業というものが、水産資源にいたしましても、あるいは繁殖場あるいは生息場にいたしましても、相当狭められてきていることは、私ども、現実にそういうことを知るわけでございまして、それは漁獲高が全体に非常に落ちているという状況からそういうように思うのでありますが、それともう一つ重要なことは、近ごろ瀬戸内海を中心とした沿岸でとれる魚が非常に有毒質の魚が出回っているということが言われているわけであります。これは外海の魚と比較をいたしましてそういう点が指摘をされているわけでありますが、そういう点について、農林省としてはどのように把握をしておりますか。
  154. 藤村弘毅

    政府委員(藤村弘毅君) 私は、瀬戸内海で油のにおいのついた魚がとれるという話は聞いておりますが、有毒な魚がとれるという話はまだ聞いておりません。
  155. 工藤良平

    ○工藤良平君 もちろんそれが直接いま直ちに人身、生命に影響を及ぼすということではなくて、外海のものと比較をいたしますと、それが相当有毒質のものを含有している率が高いということが言われているわけであります。これは、けさほどのNHKのテレビでもそういうことをはっきり言っておりましたけれども、十数倍の数値があらわれているということをやっておりましたけれども、私は、見て驚いたんでありますけれども、こういうことが当然予測されるわけであります。農林省としては、当然この量の減少と同時に、また魚の中に含まれている沿岸からとれる魚族につきましては相当やはり詳細な調査というものが今後必要ではないか、このように思うのでありますけれども、そういう点について、先ほど杉原先生の御質問に対しましても、農林省としてはあまり積極的な研究調査というものが行なわれていないような私印象を受けたのでありますけれども、そういう点に対する積極的な対策というものは、どういうことになるのでございますか。
  156. 藤村弘毅

    政府委員(藤村弘毅君) 毒性試験を特にやっているわけではございませんが、毒性試験につきましては、主として東海区水研を中心にいたしまして、薬物の漁業に及ぼす影響あるいは魚体に蓄積する影響等を東海区水研を中心にいたしまして実施いたしております。特に瀬戸内海につきましては、広島にございます南西海区水研が担当でございますが、毒性の基礎的なものにつきましては、主として東海区水研がやっている次第でございます。
  157. 工藤良平

    ○工藤良平君 現在、日本は水産国と言われておりますけれども、輸入はいたしておりませんか。
  158. 藤村弘毅

    政府委員(藤村弘毅君) 輸入は相当量いたしておりますが、数量につきましては、ただいまちょっと資料を持っておりませんので申し上げかねますが、相当量の輸入をいたしております。特にエビが一番多くなっております。
  159. 工藤良平

    ○工藤良平君 相当量ということですが、わかりませんか。——それじゃいいです。これは日本がこれだけ海を控えて、しかも、相当世界で指折りの水産国でありますけれども、それが大量の輸入をしているということ、これは沿岸漁業の衰退ということに相当大きな原因があるのではないかと思っているわけでありまして、極端に言いますならば、私は、農林省は沿岸漁業からいわゆる静かなる撤退をやるのではないか、特に瀬戸内海なんというのは将来もう魚なんかむしろとらなくてもいいんだという感じになっているのではないかという気が実はするのでありますけれども、これは言いかえますならば、この海水の汚濁あるいは川の汚染ですね、そういうものに対する対策というものが漁業を守るという立場から一体とらえられているのか。それは通産省環境庁や、そっちのほうでやればいいんだという非常に消極的な考え方になっているのではないか。沿岸漁業は静かなる撤退だと、こういうふうに考えているとするなら、私は、日本の漁民にとりましてはたいへん大きな問題だと思います。日本全体といたしましても大きな問題だと思うのであります。これに対して、これはもちろん農林大臣がおればはっきり大臣からお答えをいただかなきゃならぬわけでありますけれども、大臣にかわる次長でありますから、ひとつそこら辺、これからの沿岸漁業に対する姿勢、これはもちろん汚染に対する問題もありましょうし、あるいは漁港の整備なり、いろんな問題があると思いますけれども、そういう積極的な考え方というものも伺わしていただきたいと思うんです。
  160. 藤村弘毅

    政府委員(藤村弘毅君) 沿岸から漁業が撤退するという考えは毛頭ございませんで、先国会で成立いたしました海洋水産資源開発促進法に基づきまして現在作業を進めておりますが、沿岸漁業につきましては、各県におきまして、増養殖に適するところを開発海域として指定いたしまして、そこで増養殖に適するような目標を立てて、その水質の保全等も考えておりますし、やや沖合いにつきましては二県にまたがるところ、あるいは沖合いにつきましては農林大臣の指定海域、漁業の海域として確保していきたいというふうに考えております。また、特に瀬戸内海につきましては、構造改善事業の推進ということで沿岸漁業の発展をはかっておりますと同時に、特に瀬戸内海栽培漁業センターというのをテストプラントのようにいたしまして、大量の稚魚をつくって瀬戸内海に放流するという計画を立てて、昭和三十八年から実施いたしておりまして、昨年はクルマエビの放流数が一億をこえている次第でございまして、今後これを魚類にも及ぼすということで計画いたしておるところでございます。
  161. 工藤良平

    ○工藤良平君 そういうような措置をやりましても、結局、海がよごれてまいりますと魚族がすめる海域というものは狭くなるわけでありますから、たいへん大きな影響が出てくると思うんです。  そこで、これから運輸省や海上保安庁のほうにほこ先を向けていきたいと思いますけれども、農林省としても、ぜひひとつこの海水の汚濁の問題についてはやはり積極的な注文をつけてもらいたい。そういう必要があると思いますから、ぜひその点はお願いをしておきたいと思います。  そこで、先ほどから問題になっております海洋汚染防止法の関連の中でお聞きをいたしたいのでありますが、先ほど千葉のノリの問題が出ておりましたが、船の油につきましては排出の規制がございますね、これはきちんとうたわれておりますが、この規制によりますと、すべての油送船はすべての海域において油を出してはならないと、こういうことになっておりますね。その点は先ほど御説明がありましたけれども、従来の海水油濁防止法と変わった点はそういうことでございますね。一応これを確認をしておきたいと思います。
  162. 原田昇左右

    説明員原田昇左右君) 新しい海洋汚染防止法のこの油の排出禁止に関します法律の施行は、来年の七月からでございます。正確に言うと六月二十四日からになります。したがいまして、現在は旧海水油濁防止法適用になっておる、こういうふうに御承知願いたいと思います。
  163. 工藤良平

    ○工藤良平君 新しい法律が来年の七月から適用になると、そうすると、すべての海域ですべての船が油を流してはいけないという規制を受けるわけですね。
  164. 原田昇左右

    説明員原田昇左右君) お答えいたします。新法ができますれば原則全海禁止になりますが、ただし、適用対象船舶につきましては、タンカーについては全船舶、それから一般貨物船については三百トン未満は適用除外になります。つまり三百トン以上であります。
  165. 工藤良平

    ○工藤良平君 そうしますと、その法律の実施にあたりまして、それが確実に行なわれているかどうかという監視の態勢につきましては、先ほどお話がありましたように、海上保安庁がそれを実施をすると、こういうことになるのでありますか。
  166. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) そのとおりでございます。
  167. 工藤良平

    ○工藤良平君 その監視の体制については、現在の装備、陣容、それで十分に全体の船を全海域にわたって監視するということが可能であるのかどうか。
  168. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) 現在、海上保安庁では、瀬戸内海の海上保安部署に、巡視船十四隻、巡視艇七十三隻、それから航空機七機を配置しておりまして、油が流出した場合には、直ちにこれら船艇、航空機を出動させ、付近の航行船舶及び関係者に警告、通報を行なう一方、災害を局限するために事故船舶に対して流出防止措置を講ずることとしています。しかしながら、流出は多方面に大きな被害を及ぼすおそれがありますために、官民一体となって必要な資材、人員を迅速かつ組織的に動員し災害に対処する必要がありますので、石油コンビナート所在地に大型タンカー事故対策連絡協議会を設けまして、官民協力体制によりまして、資材の備蓄、整備をはかることとして事故対策を講じておるわけでございます。現在までにこういう体制ができたところが四十三基地あるわけでございます。なお、応急用の資材としてもオイルフェンスを二千五十メートル、油処理剤を二十五トン目下整備しているところでございます。さらに、瀬戸内海につきまして、船艇の代替建造、スピード化等でございますが、それから航空機の増備、油濁の監視用のためのヘリコプター等でございますが、これを積極的に瀬戸内海に振り向けているわけでございます。
  169. 工藤良平

    ○工藤良平君 そうしますと、この法律適用にあたっての監視体制は海上保安庁が行なうと、いろいろな設備につきましても海上保安庁が準備をすると。そうすると、先ほどお話がありましたように、ジュリアナ号は一万一千六百八十四トンでありますけれども、これがああいう事故を起こした。いま、四千トンとか五千トンとかいわれておる油がそこに流れ出た。その処理にあたって、今日までに十七日間になっておりますけれども、決定的な処理の方法というものはないし、まだ、現在も混迷しているわけであります。けさの新聞によりますると、若干また油が流れ出たということが言われておるわけでありますけれども、もし、瀬戸内海で、たとえば一万トンなりあるいは二十万トンなり、半分おろしたとしても、十万トンの船がもしも事故を起こしたという場合に、一体、海上保安庁の現在の体制の中で十分な対策が講じられるかどうか。狭い内海であるだけに、私は、たいへん大きな問題であると思うのでありますが、その点についてお伺いいたします。
  170. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) 新潟におきますジュリアナ号の事件でございますが、これは総トン一万トンの船でございまして、約二万トンの油を積んでおったということであれだけの事故になったわけでございますが、ただ、われわれの防備体制としては、全国的に十分だというわけにはいかなかったわけでございまして、率直に申し上げまして、東京湾あるいは伊勢湾、瀬戸内海というところに重点を置いておったというのが実情であるわけでございます。ああいうジュリアナ号、新潟に起きました事故につきまして、資料その他急遽これを新潟に、航空機なり、自動車なり、そういうもので運んで、一応爆発の事故なきを得た。こういうかっこうになっておるわけでございますが、瀬戸内海につきまして、大型のタンカーの数がふえ、しかも、ますます大型化するという時代に対処しまして十分かということになりますと、いろいろ設備その他資材をわれわれも準備し、増備し、また民間体制もさらに整えるということにしておるわけでございますが、これが万全を期し得るということは、われわれとしても言い得ないということでございまして、さらに、新潟には荒海という悪い条件があったわけでございますが、瀬戸内海におきましては、特に狭水道、島が非常に多いというようなことで、特別な措置が必要ではないか、こういうふうに考えておりまして、事故が起きてからじゃなくて、事故が起こる前に何らかの交通規制を行なう必要があるのではないかということでございまして、ここ数年来、海上安全交通法というものの立法を急いでおるわけでございまして、現在も整備を日を追って急いでおるわけでございます。  以上でございます。
  171. 工藤良平

    ○工藤良平君 この種の問題については、事故が発生いたしましてもたいへん大きな問題でありますし、これが企業に対しまして、そういう事故が発生をした場合の対応策、そういうものを一体どういうような形で義務づけているのか。たとえば、私のほうの大分の臨海工業地帯に石油コンビナートがありますけれども、この建設にあたりましては、たとえば消防艇とか、もちろん陸上における消防体制というのがとられておると思いますけれども、海上における消防体制、そういうものを企業に対して義務づけるということについて、どのようにお考えになっているか。非常に重要な問題だと思いますから、その点をお伺いいたしたいと思います。
  172. 原田昇左右

    説明員原田昇左右君) 海洋汚染防止法の第三十九条によりまして、第四項に、大量の油の排出があった場合におきまして、企業協力のために必要な措置を講ずるよう努めなければならない、こういう規定がございます。すなわち、当該港が当該排出された油の船積港であるときは、当該油の荷送人、それから第二は、当該港が当該排出された油の陸揚港であるときは、当該油の荷受人というものが協力して排出油の防除のため必要な措置を講ずるよう努めなければならない、こういう規定がございます。この規定に根拠を置きまして、私どもとしては、企業に、油の中和剤の常備とか、オイルフェンスその他、必要な措置を常時とれるように準備してほしいということを要請いたしておる次第でございます。
  173. 工藤良平

    ○工藤良平君 そこが問題なんです。要請ということですか。こうあってほしいということと、法律で規制をして、これこれを置かなければならないということとは、たいへん大きな違いがあるわけでありますが、常時タンカーが発着をするという企業につきましては、当然これはそういう義務を持たしてしかるべきではないかと思うんです。
  174. 原田昇左右

    説明員原田昇左右君) 法律の規定は努力規定でございますので、もし装備しなければ罰則がかかるという性格のものではございません。したがって、私どもとしては、企業に対しては、こういう協力をしてほしいという要請をいたしまして、もちろん、企業の側においても、現在そういうことについては積極的に協力するという体制になっております。
  175. 工藤良平

    ○工藤良平君 それと関連して、たとえば、地方自治体に対して、そういう港湾を持つものについては消防艇を置かなければならない、こういうようなことはどういうことになっていますか。
  176. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) ただいま運輸省のほうからお答えがあったわけでございますが、そのとおりでございまして、別に、特に規制をしておるという条文はないわけでございます。ただ、私ども海上保安庁としても、資材その他、すべてこれを全部うちのほうでまかなうというわけにいかない、できるだけのことはするけれども、民間のほうでもひとつ整備してもらいたいということでございまして、たとえて申しますと、オイルフェンスにつきまして申し上げますと、海上保安庁で九千七百メートルであります。それから民間のほうにおきまして百十キロありますということでございます。油処理剤につきまして、海上保安庁では百八トンでございますが、民間のほうで千百五十七トン、こういうことで、いろいろこちらのほうでも指導いたしまして、海上保安庁のみならず、資材についても、こういうふうに民間で整備をするように指導しておりますし、また、先ほど申しました四十三のところにできております民間の機関もさらに推し進めていきたいと思っておるわけでございますが、先ほどお話しがありました消防艇について申し上げますと、私のほうの艦艇が、すべてで三百隻ぐらいあるわけでございますが、そのうちの三隻が完全な消防専用の、五百トン型の大きなものでございまして、これは消防能力をフルに、そのために持っておるわけでございますが、そのほかに八十隻程度、一般の艦艇でも消防能力を持つようにしておるわけでございます。さらに、石油基地その他ができます場合に、これも海上保安庁のみでは、全域を広域的にこれの防備をするよりしようがない、個々のバース、個々の船といったものについて、われわれですべて責任を持つというわけにいかないから、民間において化学消防艇そのものを備えつけてもらいたいと、こういう指導をしておるわけでございます。
  177. 工藤良平

    ○工藤良平君 それは、もう指導というよりも、やはりこういう法律をつくった以上は、きちんと義務づけていくということがたてまえでなければならないと思うわけであります。しかも、大量の油を日常不断に動かしているわけでありますから、当然、そのことがあってしかるべきじゃないかと思いますね。こうあってほしいということは、これは何も拘束をされるということにはならないわけでありますから、あくまで行政指導でありますから。そうじゃなくて、きちんとやはりそのことを法律でうたうべきじゃないかと思うのであります。  それに関連して、たとえばこういう問題もありますね。いま、規制の中で、油の排出の規制がありますね、出してはならない、海に全然出してはならない。しかし、船には要らない油なんでしょう。どっかにやっぱり捨てなければならぬわけですね、そういうことがありますね。そうすると、それを処置するのは一体どこなのか。油の処理をするための施設をつくりなさい、施設をつくるについては、国が助成をしてあげますよということがありますね。船は必ずそこに持って行って、この処理場で、油については必ずそこで処理しなければならないということになっているのかどうか。そういうものをつくっておれば、処理をしなければならないということになっておれば、海に流すということはあり得ないと思うんですけれども、それはどういう規制の範囲になっておりますか。
  178. 原田昇左右

    説明員原田昇左右君) お答えをいたします。法律のたてまえをまず申し上げますと、船は油を排出してはならないということになりまして、したがって、船で不用になった油、つまり廃油はどこかで処理しなければならない。したがって、それにつきましては、廃油処理施設の整備を国は促進するという形になっておるわけでございます。廃油処理施設は、港湾管理者がやりますものと民間が整備するものと二つございます。そこで、その港湾管理者が行なうものについては国が補助いたして、これを促進いたしておるわけでございますが、民間の整備するものにつきましても、開発銀行の資金あるいはその他政府関係の財政投融資を行ないましてこの整備の促進をいたすことにいたしております。
  179. 工藤良平

    ○工藤良平君 法律で、船から油を流してはならないという規定を一方につくっておって、ここに施設があって、ここに持ってきて処理しなさいということであれば私は筋が通ると思うんですよ。全部処理をする、各港に船の入ってくるところにそういう施設があって、そこへ持っていきなさい、それで流した者については処罰するということであればわかりますけれども、全部それじゃ現在の船の油を処理できるだけの能力がありますか。ないとすれば、その責任はどこに帰属してきますか。私は大きな問題だと思うんです。
  180. 原田昇左右

    説明員原田昇左右君) 御指摘のとおり、現在廃油処理施設の整備につきましては、まだ必ずしもすべての港に全部あるという段階ではございません。しかしながら、私どもは、廃油処理施設整備計画を立てまして、着々と整備をいたしておるわけでございます。現在、私どもの計画によりますと、四十七年度末を目標にいたしまして廃油処理施設整備計画が立てられております。その四十七年度末までの港湾数で四十四港湾、六十七カ所に整備いたすことにいたしております。そして、特にその油の公害は、一番問題になりますのは積み出し港におきます整備でございます。これはタンカーが、特に国内の内航タンカーでございますが、それが入りまして、まあ、からで来まして、そしてそこで油を入れる、そのとき、からで航行いたしますと非常に危険がございますので、タンクの中にバラスト水を入れます。そのバラスト水が油で汚染されるわけでございまして、そのバラスト水を捨てて新しい製品の油を、重油等を積み込むというわけでございますが、そのバラスト水を受けるということは、海洋汚染防止のためには、この施設はどうしてもなければいけないということで、それを最も重点に考えておりまして、この計画が完成いたしますれば、その積み出し港はもちろんのこと、そのほか一般の大きい港については、ほぼ全部整備されるということになるわけでございます。  そこで、先ほどの御質問の、それと規制との関係でございますが、現在ございます海水油濁防止法によりますと、内航タンカーにつきまして、平水区域と遠海区域ですか、これを航行区域といたします内航タンカーにつきましては、こういう整備された施設整備港に向かっていく場合は当然規制がかかるわけですが、未整備港に向かって航行する場合はこの規制にかからないという法律になっております。この措置は、四十七年度末のこの整備を待って、これにあわせましてこの適用除外ははずれるということになりまして、全部その規制にかかるということになっておりますので、四十七年度末がデッドラインとして、私どもは、整備に着々と計画を遂行いたしておる次第でございます。
  181. 工藤良平

    ○工藤良平君 だから、結局、この法律というものと実際というものに開きができるわけでしょう、私はそう思うんですよ。おかしいと思うんですよ。今度の海洋汚染防止法を見ても、非常に問題が出てくるわけでしょう。一方ばかり責めて、責任については適当にのがれてしまう、こういうことでなくて、きちんとやっぱり入れるものをつくって、処理できるものをつくっておいて、そして法律で規制して、ここへ持ってきなさい、ここで処理しなければいけないという規定であれば私はいいと思いますよ。だから、これは来年の七月から適用して、全部そういうことがりっぱになりますか、処置できますか。ぼくは片手落ちがあると思うんです。
  182. 原田昇左右

    説明員原田昇左右君) いまの御指摘ごもっともでございます。まさにそのようになっておるわけでございます。先ほど申しました施設未整備港の沿岸タンカーの適用除外は、四十七年度末、つまり昭和四十八年三月末まででありまして、それまでに全部施設を整備する。したがって、その日以降は全船舶に規制がかかる、それと施設も整備されるというふうに、両方のバランスがとれてくるわけであります。
  183. 工藤良平

    ○工藤良平君 この問題だけを追及してもしようがないと思いますけれども、先ほどから二、三の問題について私は問題を指摘してきましたけれども、そういうようにやはり万全の対策を整えてやるということが私は必要ではないかと思うんです。通常ふだんにおける油の処理がそういう形でルーズになされていくということになりますと、監視をどんなにやってもどこかから漏れていくということになります。そういう体制については十分に整えていただきたいと思いますし、特に、私は、環境庁長官に最後の詰めとしてお聞きをしたいと思いますけれども、いま海洋汚染防止法の問題点について若干追及してまいりましたが、長官が先日衆議院の島本虎三委員の質問に対しまして、マンモスタンカーの建造については国際規制をやるべきであるというような御発言をなさっておるわけでありまして、まことに私はけっこうだと思います。それと合わせまして、運輸省の関係になりますけれども、第三港湾建設局が中心になりまして、瀬戸内海石油輸送体系調査委員会を設置いたしまして、瀬戸内海に大型タンカーは入ってこないように、紀伊水道、それから豊予海峡のどこかに基地を設けて、あとはパイプラインで送るという案を検討中だという記事を読みましたけれども、これは二つ関連いたしまして、特に瀬戸内海の汚染という問題につきましては、画期的な私は意義があると思っておるわけです。ただ問題は、これは運送業界、造船業界との関連の中で容易なことではないという実は考え方に立つのでありますけれども、しかし、日本の将来を考えますと、私は、このことは非常に大切だと思いますし、これは勇気と自信を持って、一政治家としての考えだということを何か言っているようでありますけれども、これは大臣として堂々とこういう大きな展望と構想を持って進めていただきたい。この決意のほどを特に私はお聞きいたしたいと思います。
  184. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) いろいろな励ましのことばをいただきまして、非常に恐縮に存じます。やはり瀬戸内海の汚染を防ぐにはいろいろなことがございます。また、その原因のすべてが究明されておるわけではございませんので、いま原因の究明に努力いたしておりますが、とにかくいろいろな船が入ってきまして油を流して汚染することも大きな原因だと思います。そういう点と、それからもう一つは、先ほど申しました事故の起こった場合のいろいろな危険な大災害を考えまして、やはり瀬戸内海には、運輸省におきましても、大きなタンカーはいれないという方針、これは非常にけっこうなことだと思います。ぜひそのようなことで、ただ、シーバースを外側へつくるとか、あるいはパイプラインをつくるということを申しましても、ずいぶん時間がかかる。金の面は何とかつきましょうけれども、なかなかそれを実現して、三十万、四十万トンという大型タンカーのそういう油をパイプラインで中へ取り入れるという時期がくるのは、二年や三年ではできないと思うのです。これにつきましては、私どもも、今後とも運輸省と協力いたしまして、そのようなことの実現に努力いたしますが、同時にタンカーの大型化につきましても、これは一政治家の私見として言っておきませんと、いま環境庁長官として運輸行政にあまり口を出すことになりますので、そういう資格で発言さしていただきたいと思うわけでございますが、やはり私は何としてもこの大型化はやめなければならぬと思う。それは日本だけではできませんから、やはり世界的に協調して、どの国でも、そのようなことがあったらどのような災害が起こるか、切りがなくなると思うのです。ですから、お互い話し合いをすれば、お互いの経済的なバランスのとれるようなことでいけば、私は、話し合いがつくんじゃないかと思いますので、ぜひそのような努力をみんなで積み重ねまして、あまりもう限度のない経済の発展ということがないように、やはりどこかである程度の締まった、締まったと申しますか、規制のできるような経済の発展でなければならないと考えまして、努力してまいる決意でございます。
  185. 工藤良平

    ○工藤良平君 それからもう一つ、先ほど長官ちょっと席をはずしておりましたけれども、私は、今度の海洋汚染防止法と、それから廃油処理施設の整備の状況、そしてまた廃油処理施設をどのように実際に利用しているかという問題ですね、これはやはり私たちが十分に監視をし、調査をしていく必要がある、このように思うわけであります。せっかく法律ができ、あるいは施設ができたとしても、それを利用せずに海洋に流しては意味がないわけですから、やはり利用の状況というものに十分にタッチしていく必要がある、このように実は思っているわけでありまして、この点については、ぜひ環境庁としても——これは運輸省の所管でありますか、環境庁としても、十分にこの廃油処理施設についての利用状況というものを監視をし、調査をし、対策を立ててもらいたい、こういうことが一つであります。  それからもう一つは、いま申し上げましたけれども、これからやはり石油基地をつくるにいたしましても、非常に大きなタンカーが出入りして大量の油を使うということでありますから、当然その企業に対しましても、いろんな施設なり、事故があった場合の協力をしてほしいということであるようでありますが、ほしいということではなくて、それはきちんとやはり法律の中で義務づけるということが必要ではないか、あるいは地方自治体に対しても、そういう措置についても万全の対策というものを義務づけする必要があるんじゃないか、このように思うわけでありまして、この点については、私は、ぜひひとつ次の法律改正等の問題につきましては十分な論議を尽くして、その改正にあたっても万全を期するようにひとつお願いをしたい、こういうことを申し上げておきたいと思います。
  186. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) ただいまの工藤委員の御意見は、私、全く同感でございます。とにかく油の海洋汚染ということは何としても防がなければなりませんけれども、これは日本の国が油で汚れる一つの大きな中心国であるかもしれませんが、日本だけで規制しても、必ずしもこれは海洋の規制はできません。やはりこれは何としても全世界的な、国際的なお互いの話し合いによってそれを守ること以外にございませんけれども、それはなかなか急にはそのような時代はまいらないと思います。ですから、せめて日本の近海を通る船、これは日本に寄港することになりますが、そのような船に対しては、やはり厳重な規制をすることが必要だと思います。それは外国の船であろうと何であろうと、日本に寄港する場合には必ず厳重な規制をいたしまして、たとえてみれば、港に入った場合には必ず廃油処理施設において全部廃油の処理をする、あるいはバラスト水を入れる前にタンクを水で洗って油を全部そこで処理する、そのような処理をしなければ出航させないというような規制をはっきりする、そうすればこの日本の近海の油の汚濁は相当防げるのではないか。これは一例でございますが、このようなことで厳重な私は規制をする必要があると思います。それから、このことに対しましては、企業においてもいろいろな協力をしなければならぬ。協力でございますから当然でございますが、現在でもこれについては訓辞的な規制はございますが、必ずしも強力なものではございませんので、これは法律で、いまどこまでいくか見当がつきませんが、いずれにしてもやはり十分な協力、全面的な協力をしてもらうようにさせなければならない、こう考えておる次第でございます。
  187. 工藤良平

    ○工藤良平君 最後に、これは保安庁のほうに申し上げておきたいと思うのですけれども、先ほどから私は千葉県の問題等につきましても議論を聞いておりまして、海上保安庁の姿勢がもう少しやはりき然とした態度で、この汚濁の問題については十分な監視をしていただきたい、このように思います。小さな漁船を追い回して、密漁等についてはよく検挙しておるようでありますけれども、もっと大きな魚を逃がさないように、この大きな船舶等につきましては、やはりき然とした態度でひとつ監視の体制を続けて万全を期していただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  188. 小平芳平

    ○小平芳平君 私は、塩化ビニール——PCBと普通報道されておりますが、PCBの汚染について最初質問したいと思います。  で、このPCBは、初め通産省のほうから、どの程度生産され、それがどういう用途に使われておるか、概略的な御説明をお願いいたします。
  189. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) PCBの現在の生産量についてお尋ねでございますが、年間当たり約一万一千トンの生産を昭和四十五年度にはやっております。
  190. 小平芳平

    ○小平芳平君 その生産している会社名と、それから用途、おもな用途についてお尋ねしているのです。
  191. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) 生産は二社で行なれておりまして、鏡淵化学と三菱モンサントでございます。それからおもなる用途といたしましては、電気機械、これが約六千トン、それから熱媒体といたしまして約二千トン、それから感圧紙に約二千トン、その他ということでございます。
  192. 小平芳平

    ○小平芳平君 特に私たちが身近な問題としてこのPCBの汚染について提起されていることとしまして、ノーカーボン紙はどうなっておりますか。
  193. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) ノーカーボン紙につきましては、三十七年ごろから四十六年の二月でございましたか——ことしの二月でございますが、約十万トンの原紙に相当するノーカーボン紙にPCBを使っておるということでございます。
  194. 小平芳平

    ○小平芳平君 郵政省——来ておられますか。郵政省では、このノーカーボン紙が健康に有害だというところから引き上げた、引き上げることをきめたというふうに報道されておりますが、実際問題、郵政省としては、ノーカーボン紙を引き上げられたのかどうか。引き上げられたとすれば、どの程度の損害になっているのか、あるいは直接に健康被害が出ているのかどうか、そういう点について明らかにしていただきたいと思います。
  195. 斎藤義郎

    説明員(斎藤義郎君) 郵政省が使用しておりますPCBを使っておるノーカーボン紙、これは十三種類でございます。それで、ことしの二月に、この毒性について九州大学の研究発表がありましたが、これに関しまして、厚生省では、東京医科歯科大学に研究を依頼したというようなふうに聞いております。郵政省としましては、その研究の結果を待って最終的な措置をきめたいと考えておりますけれども、とりあえず問題が提起されましてから、ノーカーボン紙の調達は即刻とりやめることにいたしております。在庫品につきましては、人体に触れるおそれの非常に少ないもの、たとえば窓口会計機という機械がございますけれども、それのテープ、これがノーカーボン紙でございますが、これが一ぺん装置してしまいますと一週間ぐらいそのままにして使う、あとまた取り出せばよろしいと、こういうぐあいに非常に人体に触れるおそれの少ないもの、こういうものにつきましては厳重に取り扱いを注意いたしまして使用することといたしております。その他の人のからだに触れるようなおそれのあるもの、こういうものにつきましては、全部使用を一時中止しております。それで使用中止しておる分の金額は約二千万円でございます。
  196. 小平芳平

    ○小平芳平君 郵政省では、二千万円のそういうノーカーボン紙の使用を中止していると言いますが、ほかの省はどうですか。ノーカーボン紙は六万PPMもあるそうですよ、PCBが。六万PPMも検出されるというそうしたノーカーボン紙を野放しにしておいてよろしいのですか、どうですか。
  197. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) ことしの二月に、このPCBによりますノーカーボン紙の汚染について問題が出てまいったわけでございますが、PCBを使います感圧紙は、三十七年ごろから、先ほど申し上げました約十万トンほど生産をしたわけでございますが、これはメーカーが四社というふうに限られておるわけでございまして、この問題が起こりましてから、四枚とも今年の二月末にPCBの使用を取りやめまして、三月からは他の薬品を使用したノーカーボン紙を生産しておる実情でございます。
  198. 小平芳平

    ○小平芳平君 生産は中止したけれども、すでに出回ったノーカーボン紙によるPCBの汚染、PCBは欧米でも問題にされ、そして体内に蓄積するとと、それから体外に排泄しがたいこと、それから魚や鳥に濃縮されること、東京湾の鳥、死んだ東京湾のサギを分析したら大量のPCBが検出されたと、こういうことが報道されております。そこで愛媛大学の立川涼助教授が、どうも六万PPMなんていうノーカーボン紙が使われていると、その結果、一体どこに汚染があらわれるか、そういう今度は古い紙を再生してちり紙をつくる、その再生されたちり紙の中からはこういうPCBが検出された。その一つはペーパータオル、これは国会でも使っておりますが、これは直接手をふくわけですから、非常にわれわれの日常生活、直接生命健康と関係のありますペーパータオルが二四〇PPM、それから普通の目のあらい落とし紙で一〇〇PPM、それからロール式のちり紙で五〇ないし四〇PPM、ティッシュペーパーという、これは大企業が直接故紙を使わないで製造するこの紙、これは一PPM。それからあの食品などを入れるダンボールの箱からは一〇PPMが検出された。そういうところから、今度はアメリカでは、ダンボールの箱へ入れておく食品にPCBが検出されているという、こういうような影響を出してきているわけです。これについて、環境庁長官、どのようにお考えになりますか。
  199. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) いまのお話をお聞きしますと、世の中というものは、どこにこわい落とし穴があるかわからないような感じがするわけでございます。実際、何と御返事していいかわかりませんけれども、このようなことは、われわれの生活においてはあってはならないことと思いますけれども、いままでは日常このような問題が幾らでもあったと思います。今後は、やはりこのようなことがないように新しい製品を、ことに化学的な製品をつくる場合には、これはやはり厳重な証明なり、実験なりを製造元で行ないまして、これが無害である、あるいは有害でないという証明がない限りは、これは簡単に使用なり販売の許可をしないようにすべきだと、いまこういう考えでおるわけでございます。
  200. 小平芳平

    ○小平芳平君 これは東京湾でサギとコサギ、これは新聞に報道されておりますが、東京湾のサギからは脂肪分で九五PPM、筋肉で三・七PPM、こういうふうに鳥が汚染されている。そこで、この毒性につきまして、慢性毒性、急性毒性につきましてはどのように把握しておられますか。
  201. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) PCBの毒性につきましては、主として慢性毒性であろうというふうに考えられておりますが、その実態につきまして必ずしもまだ明らかになっておらないということでございますので、今年度科学技術庁の持っております特調費のうちから約千八百万円ほどをもちまして、厚生省が現在その慢性毒性に関します研究班をつくりまして検討中で、私どもは、なるべく早くこれらの結果が出ることを望んでおりますが、大体いまの予定では、今年度並びに来年度も引き続きやはり検討を進める要があるのではなかろうかというふうに伺っております。
  202. 小平芳平

    ○小平芳平君 PCBの毒性については、日本の国ではカネミ油症事件ですね、ヨーロッパあるいはアメリカ、外国では、直接PCBの健康被害者はそれほど差し迫った問題として提起されておりませんが、日本の国では、不幸にもこうしたカネミ油症事件というものが起きまして、目下裁判が提起されて、原告は六百五十三人。実際の被害者は千人をこしている。あるいはこのカネミオイルを使った人は一万何千人というこの届け出があったということで、潜在患者を含めて、非常に大ぜいの人がカネミ油症事件で苦しい被害者になってしまった。普通、公害でしたら、水俣病、イタイイタイ病、要するに公害救済制度があるわけですが、これらのPCBによるカネミオイルの被害者の方々には、そうした公害被害者の救済制度すらないということ、それは大気や水による汚染ではなくて、直接の食品による健康被害なんだから公害とは違うんだというふうな説明もされますけれども、これは、長官、実際に病院へ通うこともたいへんな、御苦労をなさっていらっしゃる方々のために、裁判は裁判として進んでいくでしょうが、公害被害者救済と同じ何らかの救済措置がほしいと思いますが、いかがでしょう。
  203. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) いま小平委員の仰せられたことは、非常に同感するものがございます。ただ、いま小平委員の御希望の点は、被害患者の救済法による処置のことかと思いますけれども、現在の法律のたてまえは、やはり公害病としてそのような患者を認定する場合に、残念ながら、原因とか、そういった因果関係がわからない場合——これは何としても原則はそのような原因者である企業に責任を全部持たせるということになっておるわけでございます。で、そういうことで、いままでのような原因あるいは因果関係というものが明確でないものに初めてその制度が用いられまして、そうして、いま、そのような公害患者の指定が行なわれてきたのでございますけれども、この場合は原因がはっきりいたしております。これは当然その企業体が直接すべての救済の責任を持つべきである、そういうことで、いまのところは会社側に責任を持たして、全部の医療費なりあるいは医療手当なり、そういうものを出さしておるわけでございます。  しかし、考えてみますと、これもやはり大きな意味での公害でございます。ことに、日本では、そのようなおそろしい化学製品による公害がたくさん出ております。これは世界で例のないことなんです。これほど経済も進み、文化あるいは学問も世界で一流に進んでいる日本の国に、なぜこのような化学製品の生体実験がこのように行なわれておるのか、実にふしぎな気がいたします。これはどこかに大きな欠陥があると思います。これは、ものの考え方とか、あるいは政治のあり方や、あるいは経済のあり方に大きな欠陥があると思いますが、実に残念なことでございます。これはどうしても十分に究明いたしまして、そのようなことの絶対にないように、ほんとうにやはり明るい健康な日本の国のあり方を一日も早く探求することが一番大事でございまして、そういうことで努力してまいりますが、いまのところは、カネミ油症患者については、いわゆる公害患者扱いをしておりませんけれども、何とかやはり将来いろいろ考えまして、こういう人は何の責任も罪もとがもない人でございますから、国としても、できるだけめんどうを見るような方向で考えてまいりたいと思っております。
  204. 小平芳平

    ○小平芳平君 長官が、国としてもめんどうを見る方法を考えるとおっしゃいますので、私としても、それ以上の御答弁は無理かと思いますが、因果関係につきまして、イタイイタイ病にしても水俣病にしても——水俣病は、実際日本チッソの有機水銀かどうか、あるいは昭和電工の有機水銀かどうかということで争われたわけですけれども、これは裁判でも有機水銀が原因であるというふうになったわけです。あるいはイタイイタイ病はカドミウムが原因であるということに第一審ではなったわけです。したがいまして、カネミオイルの場合も、どうして公害被害者救済のルートに乗らないかですね。実際問題、カネミという一社のやったことだから、そうすりゃ水俣病もチッソという一社がやったことだし、まあ早く発見された。因果関係が早く明らかになったということでは、カネミオイルの場合は因果関係の究明が早かったわけですが、因果関係の究明が早ければ公害病に乗らないのか、その辺ちょっとすっきりしませんが、いかがでしょう。
  205. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) 私も、小平委員のおっしゃるとおりの感じがいたします。やはりこれはもう少し慎重に考えまして、公害で扱ってもいいような気がいたしますので、もう少し時間をかしていただいて、検討さしていただきたいと思います。
  206. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから環境庁としましては、このPCBによる環境汚染、この環境基準の設定が必要だと思いますが、それからまた分析法、分析法も必ずしもまだきまっていないというふうにも聞いておりますが、その辺の検討はどうなっておりますか。
  207. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) PCBにつきましては、先ほど慢性毒性につきまして約一千八百万円の経費をもって今年度研究を進めているというふうにお答え申し上げましたけれども、いまお話しの分析方法につきましても、これは純粋なPCBだけを分析する方法はあるわけでございますが、他の物質と混在していたり、また、汚泥その他の中にあるようなものの分析の方法につきましては、必ずしもまだ確立された方法が見当たらないということでございますので、今年度、これもやはり科学技術庁の経費をもちまして、厚生省が中心になりまして、これはできる限り今年度中に分析方法が確立されるようにお願いいたしまして、現在研究を進めているわけでございます。  それからもう一つは、PCBによります環境汚染実態とか、それの汚染のメカニズム等につきましても明らかでない点が多々ございますので、これにつきましては、水産庁と厚生省で共同いたしまして現在検討を進めております。  そこで、私どもは、これらの検討が済みまして、いろいろなものが明らかになりました暁におきましては、やはり健康被害といいますか、健康法の中にこれを取り入れまして、環境基準として設定をし規制をするという方向に持ってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  208. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうしますと、分析方法については、今年度——来年三月ごろまでにきまるということですか。それからこの健康被害による調査、それから環境基準の設定、これはおよそいつごろになりますか。
  209. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 分析技術につきましても、私どもは、なかなかむずかしいとは思いますが、なるべく早くということで、四十六年度一ぱいを目途にお願いをいたしておるという現状でございますので、それ以外の慢性毒性とか、それから汚染のメカニズム等につきましては、今年度一ぱいではなかなか困難であるということを伺いまして、来年度も引き続きこの二つにつきましては現在予算を要求をいたしておる段階でございます。したがいまして、やはり今年度、それから来年度等の研究、調査の結果を待たなければ、私どもといたしましては、この際、いつまでに環境基準として設定するというお約束はいたしかねるというふうに考えております。
  210. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから、通産省では、ノーカーボン紙は別の薬品でつくるようになったと言われましたが、このPCBのノーカーボン紙は、新しいものはできてこないでしょうけれども、すでに出回っているもの、文房具はこれはまとめて買いますから、すでに出回っている商品について何らかの指示をするつもりがあるかどうか。ノーカーボン紙については、すでに出回っている商品についての指示をするお考えがあるか。  それから、先ほど電気その他の使い道が述べられましたが、私も、もっと詳しいのを持っておりますが、もっと国の産業全体として、こうした地球そのものを汚染していく、そして南極のペンギンからもPCBが検出されるようになったというような、こういう地球全体を汚染していくようなものについては、何らかのかわりのものを早く発見するなり、かわりのものをつくるなり、何らかの措置が必要じゃないかと思うんですが、いかがですか、この辺の見通しは。
  211. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) ことしの三月に、このPCBを使いますノーカーボン紙については製造を中止したわけでございますが、いま先生のお尋ねは、文房具その他として手持ちのものに対して何らかの指示をするかどうかということであったわけでございますが、現在、私ども、このPCBを使用しております感圧紙につきましては在庫がもうほとんどないというふうに考えておるわけでございまして、手持ちのものに対して新しく指示をするということは考えていないわけでございますが、問題は、やはり先ほどもトイレットペーパーその他の再製紙の中にPCBが若干発見されたものがあるということでございますが、やはり故紙でPCBの入ったものが出回っていくというところに問題があるというふうに考えておるわけでございまして、この点につきまして、十一月の三十日に、故紙につきましては故紙直納業者の団体といたしまして全国製紙原料連合会というのがあるわけでございますが、ここを通しまして、この連合会傘下の六百の故紙の集荷、それから流通関係の会員に対しまして、ノーカーボン紙を故紙として買い集めるということをやめるように通達を出したわけでございます。  それから、先ほどPCBの用途といたしまして、大きなものには電気機械、それから熱媒体、それから感圧紙というふうなものがあるということを申し上げたわけでございますが、四十六年の三月に、感圧紙につきましては使用を中止したわけでございますが、可塑剤、それから塗料等につきましても、これは四十六年度中にすべて使用を中止するよう行政指導を行なっておるわけでございます。
  212. 小平芳平

    ○小平芳平君 トランスとかコンデンサーは、閉じ込めた製品ですが、いまお述べになったようなノーカーボン紙とか塗料、印刷インキ、こういうものに使われている。トランスやコンデンサーの場合は閉じ込めた製品ですから、外部へ散るおそれはぐっと減るわけですが、しかし先ほどの鐘化と三菱モンサント、この二社は依然としてPCBを生産しているわけでしょう、大量に。ですから、それをいつまでも生産を続けていたのでは地球全体の汚染が進むことになるわけです。コンデンサーといい、トランスといい、これも永久に閉じ込めておくわけじゃない、古くなれば洗ったり取りかえたりするわけですから。そういう点いかがですか。
  213. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) 先ほどメーカー二社あるということを申し上げたわけでございまして、この二社からどういう用途にどの程度のPCBが出荷されておるのかということは、先ほどお話し申し上げましたように、数量としてはっきりいたしておるわけでございます。先ほどの可塑剤、塗料というふうな面に対して使用中止の行政指導を行なっておるわけでございますが、それと同時に、やはりメーカーのほうからも出荷中止の状況をこれは年内に文書で提出させるということでチェックをしていくことにしておるわけでございます。  それから、ただいま電機について、これは容器と申しますか、ベッセルの中に、先生おっしゃいますように、閉じ込めて使うものでございますので、最近は裂罅防止の装置もついておりますし、非常に長く使えるということで、直接あぶないところにこれが廃棄されるということのチャンスは少ないわけでございますが、やはり可能性としては当然考えなければいけない問題でございますので、これはやはりPCBを焼却して処理をするという必要があろうかと存じます。ところがこのPCBは非常に安定な化合物でございまして、焼却いたしますときにもかなり高温にしないと分解しないという点がございますので、この点はやはりPCBのメーカーにある程度責任を持たせるということで、メーカーにPCB焼却の専用炉をつくらせるという方針で進んでおるわけでございます。鐘淵化学につきましては、現在すでに完成をいたしております。それから三菱モンサントは、ただいま建設中でございまして、その間ドラムかん詰めをしてPCBの廃液を一時保管をするということでやってまいっておる次第でございます。
  214. 小平芳平

    ○小平芳平君 環境庁にお尋ねしますが、先ほどの環境基準は、まあ健康に対する被害の状況をいま検討中であるということ、したがって、この環境基準もそれから後に検討するということでございますが、やはり先ほど私が指摘いたしましたように、ペーパータオルから二四〇PPMという、これはわれわれが——われわれがということないですが、みんな使っているペーパータオルから二四〇PPMものPCBが検出されていた。安全なのかどうか、そういう点ひとつ環境庁で総点検していただきたいと思うのです。で、私たちも、党としてこの問題と取り組みまして、そうして非常に環境汚染の激しいようなところは総点検しつつありますけれども、何といっても政府が本腰を入れて、こうした大都市周辺環境汚染、それからそういう製紙工場の環境汚染、それから製造工場は三菱モンサントと鐘化の二社がもとですが、それをさらにコンデンサーやトランスを製造する工場、そうした環境汚染、そういう点を総点検する必要があると思いますが、いかがでしょうか。それから長官がお答えいただくなら、こういうあぶないものは、あるいは地球全体を汚染するといって焦点になっているものはなるべく使わないで済むような、そういう政治に立っていかなくちゃならないと思うのですが、いかがですか。
  215. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) 大体御意見のとおり努力してまいりたいと思います。できるだけ通産省とも協力いたしまして、そのようないろいろな総点検のようなことを行ないまして実態を把握いたしたいと思います。ただし、御承知のように、分析の方法がまだ確定いたしておりません。また、どのような実際健康被害があるのか、そのような研究、まだ少し成果が残っているわけでございますので、こういうものを早く見当をつけましてから、一日も早く環境基準を設定いたしまして、これについての対策を進めてまいりたいと思います。  それからあとのお尋ねでございますが、これは先ほどもちょっと申し上げましたが、やはりいろいろな、ことに化学——ケミカルのいろんな製品を発売する、あるいはわれわれが使用する場合には、やはりこれは十分な実験をして無害であるという証明を得たものでなければならないと思う。いままでは、そういうことが法律でもありませんから、しかたがありませんけれども、ごく近い将来にわたってそういう規制を十分に考えまして、やはりこれが無害であるという実験をなさる、あるいはこれを除去できる、このようにしてこれが無害にできるんだといういろいろな対策の考えられない限り、そういうものを添えてこない限りは使用を許可しない、発売を許可しないような規制が私は必要ではなかろうかと、こう考えておる次第です。
  216. 小平芳平

    ○小平芳平君 私は、PCBは以上で終わりまして……。
  217. 内田善利

    ○内田善利君 関連。このPCBのことについて一言お聞きしておきますが、コンデンサーとかトランスの場合は密閉されておるから大丈夫だと、そしてそれはメーカーで焼却させるようにするという御答弁があったんですが、実際はテレビの中、ラジオの中等にもコンデンサーがあり、トランスがあるわけです。あの中にもPCBがある。こういったものはメーカーに返ることなしに廃品として、廃棄物として海に出ていく、そういう危険性が非常に強いわけですが、こういったものに対する何といいますか、処理方法対策も考えておかないと、ただ発生源のメーカーだけで処理するということでなしに、もういまは全世界じゅうにPCBは充満——充満と言うとなんですが、至るところに存在するということである以上は、廃棄物処理についても考えていただきたいと、このように思いますが、いかがでしょう。
  218. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 廃棄物につきましては、特にまあPCBも考えまして、私どもも、先般廃棄物の処理及び清掃に関する法律の政令をつくる場合、いろいろ検討いたしたわけでございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、現在PCBに対します分析方法その他必ずしも明らかではないということで、まっ正面からPCBを含む廃棄物につきましての処理方法は書いてございません。ただ、大部分が絶縁体その他のもので使われてるのが実情でございますので、それが油の中に混在をしているというようなことをとらえまして、私どもは、油は絶対に海や川に捨ててはならないというふうにしておりますし、また、油につきましては、焼却しなければ地中に埋めることもまかりならないというような基準をつくりましたので、大体、ほぼPCBに対します廃棄物からの汚染は防ぎ得るものというぐあいに考えておるわけでございます。ただ、おっしゃるとおり、小型な電気機械その他につきまして、中に含まれておりますPCBその他につきましては、今後やはりメーカー、それぞれの販売店を通じてのメーカーの処理を通じまして産業廃棄物の処理対策の確立というような方法でもって処理してはいかがかと実は考えておるわけです。
  219. 内田善利

    ○内田善利君 もう一つは、鶏卵の中にPCBが相当量あったということを聞いておりますが、御存じですか。
  220. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) ちょっと、私承知いたしておりません。
  221. 内田善利

    ○内田善利君 鶏卵の中にもあったということを九大の倉恒教授が言っておられます。そういうことと、もう一つは、人体の中に、一四PPM人体の脂肪の中にPCBが件ったら危険になると、このようにも言っておられます。われわれ普通人が一PPM程度、少し入った人で四PPM、五PPM程度というふうに言っておられます。これはやはり脂肪分の中にどんどん蓄積していくんだということですから、どの辺でわれわれの体内のPCBがふえていって、どの辺で危険になるのかということになりますと、もうすでに危険性がだんだん出てきたんじゃないかと、そういうふうに感じますので、まあ先行き行政といいますか、もうこういったものはできるだけつくらないようにする、代替の製品で代用できるようにしていく、そういう方向に進んでいただきたいということを要望して、私の関連の質問を終わります。
  222. 小平芳平

    ○小平芳平君 PCBは以上で終わりまして、今度は、新潟の十一月三十日、ジュリアナ号タンカー事故についてですが、この点については、私は、去る十四日の社会労働委員会でずいぶんいろいろ質問いたしましたので、ほんの一、二点だけ質問いたしまして、はっきりお答え願えれば簡単で済むわけです。  まず第一に、保険金は取れるわけですか。このリベリアの船ですね、保険金がどのくらい取れるのか、だれが交渉してくれるのか。
  223. 原田昇左右

    説明員原田昇左右君) 新潟事故の第一義的な補償の責任者は船主でございます。そこで、船主につきまして調査いたしました結果は、損害賠償責任を担保いたします船主責任相互保険というものにも加入いたしております。それから、なおTOVALOPと申しまして、これはタンカー船主の自主的な協定でございますが、政府の行なった掃除費用及び船主の行なった掃除費用に限りまして担保いたす保険でありますが、これにも加盟いたしております。さらにタンカーに関します油濁事故につきましては、各国の石油会社等が共同出資して設立いたしました国際的な損害補償機構がございます。通称CRISTAL協定と申しておりまして、CRISTALと呼んでおります。これは頭文字をとった通称でございます。このCRISTAL協定は、先ほど申し上げました船主責任相互保険ですね、これとTOVALOPの保険でカバーできないものについて、さらに三千万ドルまでの範囲においてカバーできるというものでございますが、これについては、この機構にこの荷主でありますシェルが入っておる。そこで、被害者の救済に要します費用は、こういう保険機構でわれわれは十分カバーできるのではないかと思っております。
  224. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから、船長ですか、船主関係が幾らで、シェルが幾ら、そして無限に出すわけじゃないでしょう、向こうが。ですから、実際に幾ら取れるのかですね。それから、その交渉はだれがしてくれるか。
  225. 原田昇左右

    説明員原田昇左右君) これはいまの保険の代理人としてシェルが保険会社のほうで指名されております。シェル石油が指名されております。同時に必要な手続として、船主と荷主から事故の通報が保険のほうに行っておりますので、この代理人との交渉で必要な被害の金額が認められればカバーしてもらえると、こういうように了解しております。
  226. 小平芳平

    ○小平芳平君 幾らですか。
  227. 原田昇左右

    説明員原田昇左右君) 限度額でございますか……。限度額について申しますと、PIと申しますか、船主責任相互保険機構の場合は限度額が一千四百四十万ドルになっております。それから、TOVALOPと申しまして、先ほど申し上げましたタンカー船主の自主的な協定のものは一千万ドルでございます。それから、それをこえましてなお足りない分はCRISTAL保険というのがございますが、これは三千万ドルのものでございます。
  228. 小平芳平

    ○小平芳平君 以上全部シェルが責任持って取りますと、こういうことですか。
  229. 原田昇左右

    説明員原田昇左右君) そのこまかい手続については、私ただいま存じておらないわけでございますが、いずれにいたしても、船主がその保険会社の必要な措置をとる代理人として指名されておりますので、その間においてその保険の手続がなされれば支払いが行なわれる、こういうふうに了解しております。
  230. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 関連。その代理店ですね、これはもうリベリアというのは御承知のとおり、地図で見ればありますけれども、独立国でありますね。そこに本籍を置いておりますけれども、非常に追及してみると複雑多岐な、とにかくあれなんですよ。だれが入手するか、入手先はわかっていますね、シェルですね。精製は昭和石油でありますけれども、新潟のですね。でありますけれども、ほんとうの窓口は、日本の代理店は東京にあるはずなんですが、これは昭和ビルですか、の中に実務を担当する協興、協力の協に興すの興すだと思いますけれども、それが確かに窓口であるのかどうかはわかりませんけれども、なかなか科学的な物理的な根拠というのがないというと、保険がこれこれで再保険があって、入っておれば間違いないというような甘い考えじゃ非常に危険だと思いますので、いま小平委員がその点がどうも不安だという意図の上に立って聞いておられると思うので、私は、実際に国なりあるいは県、自治体なり被害者なりは共同して連帯で、しかも、結局ここまでくると、政府かだれかが道をつけていただかないと、その辺に当たりをつけておられるかどうか、その点をひとつ確認の意味でお答えいただきたいと思うのです。
  231. 原田昇左右

    説明員原田昇左右君) 運輸省の海運局で十分この点は御指導申し上げるようにいたしたいと思います。
  232. 小平芳平

    ○小平芳平君 じゃ、運輸省の海運局が窓口になって、そして漁業並びにその他の被害の補償の保険の請求をし、そして外国であっても、リベリアであってもどこであっても、そこから間違いなく補償金を取りますと、保険金を取りますというふうに理解してよろしいですか。
  233. 原田昇左右

    説明員原田昇左右君) ただいまちょっと誤解があるかと思いますが、私どもの海運局は指導する立場でございまして、保険の手続に基づきまして、保険の請求人は被害者ということになろうかと思います。しかしながら、その間おそらく弁護人も立つことでございましょうし、円滑にいくように、われわれとしては万全を期したいと思います。
  234. 小平芳平

    ○小平芳平君 それからですね、シェルから取ればいいじゃないですか、シェルなら日本にあるから。そうはいかないんですか。
  235. 原田昇左右

    説明員原田昇左右君) シェルは単なる代理人でございますので、直接賠償責任を問うわけにはいかないわけでございます。
  236. 小平芳平

    ○小平芳平君 窓口をはっきりさせておいていただきたいのですがね。  それからもう一つは、中和剤とか処理剤とか、乳化剤といって大量に海へ投げ込んだ物質、これはこの前の十四日の委員会でとことんやってまいりますと、結局きわめて毒性が強いということ、そしてきょう午前中の答弁にも出ておりましたが、わずかの一PPMとか、そういうわずかのものでも魚が死ぬ、「モ」が死ぬというようなものもひっくるめて、海の中へ投入されたということ、これは私は、社会労働委員会では、厚生省に対して、もう一時間かかってどれだけの毒性があるかということでやりましたが、結局、厚生省としても、海上保安庁としても、生物に対する影響はわからない、わからないまま緊急の措置として投入したのだ、こういうことしか出てこないわけです。ですから、これこそ大きな環境破壊であり自然破壊である。ですから油送船の事故があった、そらとばかり界面活性剤ですか、そういう中和剤と称するものを投入することはやめるべきだと思うのですね。環境庁長官はそういう意見に賛成だと思うのですが、要するに毒性がはっきりしないが毒があることは間違いない。そこで、なかなかこれも渋ってつくってくれなかったのですが、こういうものが投入されたのですということを聞きましたので、それを調べてみると、こういう本には、ネズミが二十日で死んでしまったとか、そういう毒性が述べられております。したがって、新潟では、いま現在ではそういう中和剤は投入しておりませんが、現在としましては非常に原始的ですが、吸着材——吸着材ということばもちょっと変ですが、布みたいなものを海へ落としまして油を吸わして、引き上げてこれを焼却するということをやっておりましたが、そういう点、環境庁長官としまして、あるいは海上保安庁としまして、そうしたわけのわからない中和剤、成分を明らかに公表しない、あるいはどれだけの動植物に被害を与えるかわからない、そういうようなものを大量に投入することは原則として禁止をするということでなくてはならないと思うのですが、いかがですか。
  237. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) 私は、そのような場合の中和なり吸着なりの手段につきましては存じませんので、何とも申せませんが、そのような二次公害を起こす危険のあるものは使ってはならないと思います。そういう意味で、なお、しかし、その中和剤を毒性のないものになし得るならば、これは十分研究開発して使うべきだと思います。幸いに海上保安庁でそのような努力は続けてきたようでありますが、今後さらに、われわれとしては、こういう研究を水産庁と共同でいたしまして、幸い二千万円ほどの科学技術庁の研究調整費と申しますか、そういうものも取れそうでございますので、そういうものを一応土台といたしまして、新しい研究開発で努力してまいりますから、やはり危険な、そのようなはっきりした毒性なり、あるいは対策なりのわからないものは、やはりできるだけ——できるだけじゃなくて使わないように、他の吸着材か何かで間に合わせるように、もっともその前に事故を起こさないようにあらゆる努力をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  238. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) 処理剤につきましていろいろお話があったわけでございますが、今回、新潟事故の場合につきましては、テトラポットから約三十メートル、陸岸から百数十メートルというところに七千トンの油をそのまま保有し、約五千トン程度の油を流しておるという船尾部があります。さらに海上のほうにおきまして、約三百メートルくらい離れたところに船首部があるという状況で、割れた時点におきまして、真っ二つに割れておりますので、相当濃度の濃いものが流れたわけでございます。先ほど申し上げましたように、陸地から非常に近い。しかも、人口約四十万という大都会の密集したところから非常に近いところでございますので、これは爆発のおそれその他そういう可能性が十分あったわけでございます。そこに船艇が近づいて、煙突から出る火花によりまして火災を引き起こすといったような、室蘭の事故のような場合もあるわけでございまして、こういう場合を考えまして応急的に処理剤を投入したというかっこうでございますので、これはいろいろこの前も申し上げたんでございますが、ロンドンとかニューヨークとか、あるいはロッテルダムといったようなところからもいろいろそういう専門家がやってきたわけでございますが、これはある程度やむを得ないという結論を出しておられたわけでございますし、さらに、われわれがその後——これも一週間でやめたわけでございますが、その後におきまして、いろいろ瀬取り作業その他の面におきましても、その外人等もまじえまして、全知全能を傾けて海中にある油の処理に当たったわけでございます。で、けさ八時に、船尾部におきましては全部油を吸い上げた、こういうかっこうになっておりまして、きょうから船首部の瀬取り作業に移ることになっております。
  239. 小平芳平

    ○小平芳平君 あまり全知全能でもないんだ、これ、やり方はね。海岸でポンプでやったら、海なんかへ行かないで、みんな陸へ風で吹き上げられちゃったとか、ヘリコプターでまいたって、風が強いからどこへいくかわからないじゃないですか。それから今度は、あのかんに穴をあけて、かんのままほうり込んであるじゃないですか。ですから、そんな全知全能どころじゃないですよ。そこで、実際問題、これはそういう突発的な場合で、もう海上保安庁の指示自体がくるくる変わっているじゃないですか。ですから手の打ちようがわからなかったのだ。手の打ちようがわからず、やむを得ずあの毒性の強いものを投げ込んだのですが、それが先ほど杉山委員からも言われましたように、その影響を精密にキャッチしなくちゃいけないのです、これはね。私たちもできるだけの廃油ボールとか——廃油ポールも、それは沖繩に流れついた廃油ボールと、新潟のあの村上市に流れついた廃油ボールと、分析してみなければわからないでしょう。はたして中和剤なるものの毒物が廃油ボールに入っているかいないか、そういうものを明らかにしなくちゃならないでしょう。水産庁がおやりになるということをこの前答弁なさいましたから、それはいいですけれども、そういう点を海上保安庁も、いま環境庁長官が述べられたように、毒性のわからないもの、影響のわからないもの、それはもう原則として投入しないという姿勢でなくちゃならないと思いますが、どうですか。
  240. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) 処理済につきまして、できるだけこれを投入したくない、緊急の真にやむを得ない場合に限りたい、こういうふうには考えておるわけでありますし、さらにこの処理剤につきましても開発を行ないまして、できるだけいいものをつくっていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  241. 内田善利

    ○内田善利君 私は、地盤沈下についてお伺いしたいと思いますが、まず全国の地盤沈下状況を教えていただきたいと思うのですが、建設省の国土地理院でつくられました全国地盤沈下地域図を見ますと、もう日本全土が沈下している。この図でいきますと、太平洋に沈んでしまうのではないか、極端に言えばそのような感じがするのですが、この地盤沈下の現況を簡単に、時間がありませんので、お願いしたいと思います。
  242. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 従来から地盤沈下が著しい地域というふうにいわれておりましたのは、東京、大阪、新潟を中心とする地域でございまして、このうち大阪、新潟地域におきましては、地下永の採取規制の効果がございまして、最近では地盤沈下が大幅に鈍化をしているという状況でございます。ただ、東京でも、その周辺地域におきましては、昭和四十年前後のピークに比べまして多少鈍化してはおりますけれども、やはり地盤沈下が続いておりますし、その地域もだんだん拡大をするという傾向にございます。それから、さきの調査によりますと、以上のような地域のほかにも、たとえば濃尾平野、佐賀平野、石川県の七尾、仙台、福島、平塚、鳥取、岡山、広島、高知、その他にもございますけれども、そういうようなところが地盤沈下が伝えられている現状でございます。
  243. 内田善利

    ○内田善利君 その地盤沈下の原因ですね。原因について大まかに教えてください。
  244. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) いろいろ地盤沈下はむずかしい機構になっているようでございますんですけれども、大体、主たる原因と思われますのは地下水のくみ上げというふうに考えられるわけでございます。地下水のくみ上げは、御承知のとおり、工業用水、それから上水、それから農業用水等のためにするくみ上げ、それからビル用水その他の雑用水のためのくみ上げ等もございますし、さらには天然ガスの採取のためにする地下水のくみ上げというものもございます。しかし、大体がやはり地下水のくみ上げによる地下水位の下降によりますものがおもな原因ではなかろうかというふうに考えております。それ以外にも局所的にはいろいろその他の原因によります地盤沈下もあるというふうに聞いております。
  245. 内田善利

    ○内田善利君 この工業用水あるいはビル用水を含む地下水ですね、これは規制がしてありますから、先ほど報告があったように、大阪周辺、それから新潟ですね、こういったところは非常に規制のために鈍化してきたという答弁があったわけですが、農業用水については、現在規制がないわけですね。したがいまして、この農業用水によって地盤沈下しておるところは、対策がなくて非常に困っている状況なわけですが、いま言われました中で、佐賀につきましても、私は、地盤沈下の状況を見てまいりました。非常にひどいわけですね。ところが健康被害がないからまだいいようなものの、農業、たんぼの地盤沈下による割れですね、これは棒をずっと差し込みましたら三メートルくらい入っていった、そういう状況です。それから自動車整備工場とかの床がずっと割れている。その周辺の整備工場も行ってみましたが、どこも壁が割れたり、コンクリートが割れておる。そういう状況で、学校にも行ってみましたが、学校の地盤沈下状況は非常にひどいわけですね。二、三日前も江東区の学校の地盤沈下状況が報道されておりましたけれども、全く同じ感じがしたわけです。白石平野の中学校あるいは有明中学校、行ってまいりましたけれども、非常にひどいわけですね。そういった原因が農業用水だということになりますと、水を使わないわけにはいかないし、しかし規制をしなければたいへんなことになるというようなことで、地盤沈下のことについては、公害対策基本法には、きちっと典型公害一つとして騒音あるいは悪臭等と同じように並んでおりながら、規制の諸法令が何もない。工業用水とビル用水等ありますけれども、農業用水については規制がない。そういう状況ですが、これについてどのように考えておられるのか、お聞きしたいと思うのです。
  246. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) まあ農業用水のくみ上げによります地盤沈下は、そう全国ざらにあるわけではございませんで、一番ひどいと思われますのがいまお話しの佐賀県におきます白石平野ですか、この地盤沈下が主としてこれは農業用水のくみ上げによるものであろうというふうに私ども考えておるわけでございます。ただ、その隣接いたします佐賀市におきましても地盤沈下がございまして、これは大半が工業用水、ビル用水、水道用水をくみ上げることが原因ではあるまいかというふうに考えております。そこで、その白石平野の地盤沈下と、それから佐賀市とその周辺の地盤沈下は、その下のほうの水脈、地下水脈が相互に密接な関連があるんではなかろうかというふうに実は考えられておるわけでございます。したがいまして、この佐賀におきます地盤沈下対策はやはりこの両地帯といいますか、白石平野と、それから佐賀市周辺の両地帯の地盤沈下の原因やメカニズムをもう少し調査をしてみないと、どういうような手を打ったらはたして地盤沈下がとまるかということも必ずしも明らかではないのではなかろうかというふうに実は考えているわけでございます。もしそういう調査の結果、やはり農業用水が有力な原因であるということがわかりましたならば、おっしゃるとおり、現在法律的に規制する方法はございませんので、その規制につきましては、別途やはり法規制の必要の有無というものは検討しなければならぬと考えております。
  247. 内田善利

    ○内田善利君 農林省のほうは、どのように把握しておられますか。
  248. 杉田栄司

    説明員(杉田栄司君) 先生御承知のように、白石平野の地層というのは、いわゆる有明海の北部でございまして、非常にやわらかい有明粘土層という地層でございまして、地下水のくみ上げがちょっと過剰になりますとすぐ沈下を引き起こすというような地帯でございます。そういうところに昭和三十年から急速に深井戸が、これは機器も非常に発達しました関係で、たくさんできましたので、非常に顕著な地盤沈下が起きてきたということで、農林省といたしましても、かねて非常に憂慮をいたしておったわけでございます。いろいろそれを回復するための、いわゆる地下水に逆に地上から注入するとか、その他試験もやってみたわけでございますが、いま申し上げましたように、非常に粘土質な微細な粒子の地質でございます関係で、なかなか成功しない。したがいまして、抜本的にはこれはどうしても地上から、地上水を用意をいたしまして農業用水をまかなう、いわゆる地下水によるかんがいをやめさせる以外に方法はないということになってまいっております。したがいまして、そのための方法といたしまして、あるいは筑後川から導水するなり、あるいは嘉瀬川にダムをつくりまして持っていくというような抜本的な解決以外に方法はないというふうに思っておるわけでございます。そのための調査も進めておるわけでございまして、近く実施に持ち込みたいというふうに考えております。ただ、この規制につきましては、実は非常に日本でも有数な水田地帯であります関係で、非常に困難である。ただ、増加をすることは、これはどうしても防がなければならないということで、県にも強く指導をいたしまして、現在は増加はとまっておるという状態でございます。
  249. 内田善利

    ○内田善利君 建設省は来ておられますか。——見えていないですか。  いまの答弁を聞いていて、農林省として、農業用水は深さ大体一番深いので二百メートル、そして吸い上げ用のポンプが大体二百本以上でくみ上げているわけですね。そしてかんがい期の、一番農繁期といいますか、かんがい用水の一番多い渇水期の六月、七月、この期間に非常にくみ上げられて沈下が激しいわけですね。そういったことは御存じだと思うのですが、まあ年間平均すればくみ上げておいてどこかため池にためておくとか、何かこう方法を講ずればあんな地盤沈下はしないのじゃないかというような声も聞いておるわけですが、いま筑後川から引くとかダムをつくるとか、あるいはせきをつくってとめるとかいろいろお話がありましたけれども、環境庁のほうでは、検討して明らかに農業用水であればということですけれども、あの白石平野は、もう明らかにあれだけのポンプであれだけの深さからくみ上げておれば、これはもう農業用水のくみ上げによる地盤沈下だということははっきりわかるわけです。佐賀市のことは、私は聞いておらないわけですが、有明海は干満の差が激しい、約十メートルぐらい、そして標高はあの白石平野は大体一番高いところで六・五メートル、そういう非常に平地で、しかもいまおっしゃったように、表面はそういう沈下しやすい土壌であるとかいうことで、このまま放置していたらたいへんなことになるのじゃないかと、東京の江東区のようなゼロメートル地帯にしまいにはなってしまうのじゃないかと、そのような危険を感ずるわけです。そういったことから、白石平野の農業用水の規制、こういったことも当然のことながら法律の上でもやはり規制しなければならないのじゃないか。規制すると同時に、農業用水として農民がくみ上げたことによって地盤沈下するわけでありますから、そういった代替の水を用意するという対策ですね、こういうことがなされなければならぬ、そのように思うのですが、いかがでしょう。
  250. 杉田栄司

    説明員(杉田栄司君) 御説のとおりでございまして、農業用水をくみ上げて農地が地割れするというような、みずから首を締めるような形に現況はなっておるわけでございますが、年間五センチないし十センチというような沈下率でございまして、これが長く続きますと、先生おっしゃいますように、非常にゆゆしき事態になる。現在もその他の農業以外の施設にも被害を及ぼしているという問題もあるわけでございますけれども、大被害を起こしかねないということで、いま申し上げましたように、抜本的な対策を講ずる必要がある。ただ、その際に佐賀平野の地帯は、古くからいわゆる淡取水と申しますか、佐賀平野のほうは淡取水でもって、クリークで水をとめまして、それをかんがいに使うというような自然のやや形に合った形で農業用水がまかなわれているわけでございます。白石平野のほうもクリークはあるわけでございますけれども、何分外から引く水がないために、不足分を地下水に依存しているということでこういう事態が起きているわけでございます。  そこで先ほど申し上げましたように、佐賀平野の淡取水も、実は農業の近代化から見ますと、非常にクリークがたくさんあることは問題がございます。そういう農業の近代化に関する問題も解決し、なおかつ地盤沈下というような問題についても抜本的な対策を立てるという観点から、筑後川から導水する。なお、それだけでは若干不足いたしますので、嘉瀬川の上流にダムをつくりまして、主として農業用水に使うダムをつくりまして、それを白石平野に持っていく。なお、これは相互にやはりある程度連携がとれておることが水の利用上有効でございますので、適当な連絡の方法を講じて、佐賀平野、白石平野を通じてこういう問題の防止につとめてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  251. 内田善利

    ○内田善利君 クリークが非常に困るというお話でございますけれども、ボーリングができるまでは、あのクリークを利用して農業用水に使っていたわけです。いま論議されているそのクリークで子供が一人、老人が一人、非常に堤防がずさんなためになくなったという事件もあるわけです。これに対する対策もお聞きしたいわけですが、時間がありませんので聞きませんけれども、クリークを活用するというようなことも、くみ上げに対する私は対策一つではないか、このように思うのです。それと農業用水の規制はぜひひとつやっていただきたい、このように思うわけです。そういう点はいかがでしょう、環境庁長官。
  252. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) やはりそのような地盤沈下を広範に引き起こすならば、当然、これはやはり規制する必要があると思います。ただ、規制すると申しましても、やはり一挙にすぐには進まない。ある程度のこれにかわる何らかの方策を至急にでも考え出さない限りは、急にそれを全面的にストップするような規制は、これは十分考えなければならないと思いますので、そういうような点を勘案して、いま、せっかく農林省でも大きなあれを初めて思いついたようでございます。内田さんにしかられるかもしれませんけれども、以前は、クリークを利用したが、確かにクリークをたくさん使っていれば、いわゆる大型の機械化をするような、集約的な農業近代化が困難と思いますから、そういう点からも地下水をくみ上げることを考えついたと思うんでありますが、それも少しやはり先の見通しの足りなかったやり方だと思うんです。初めて今度は大きな本格的な農業近代化の行なえるような土地改良に移るわけでございますから、一日も早くそれを成立させるということ、そして、それができ上がるまでおそらく七年も八年もかかると思いますから、その前に、やはり一部局部的にでも前のクリークが利用できるものであれば利用させながら、地下水のくみ上げをできるだけ規制してまいるということが当面の問題ではなかろうかと思います。
  253. 内田善利

    ○内田善利君 文部省——見えてますか。この江東区の学校の問題もありますけれども、私が現に行ってきたその白石中学校、有明中学校、これは一期工事、二期工事やっておりまして、一つのほうは二十メートルのくいを打ってつくった。こっちのほうは何か砂の上につくる建築法でつくったんだそうです。こっちのほうはいま年間五、六センチとおっしゃいましたけれども、八十センチから九十センチはもう地盤が下がっておる。そのために、校長のお話では、炊事をするような部屋——割烹室ですか、そこに通してある水道パイプ、それからガスパイプ、これはねじれて、江東区の小学校、中学校と同じです。ねじれて非常に危険だと、その修理費には毎年一千万円かかっているというお話です。それから、こっちの校舎からこっちの校舎に渡るときの渡り廊下があるわけですが、建ったときにはスムーズに渡れたわけですけれども、一方は下がって一方は残っておるという、そのためにこっちからこっちへ渡るときに、頭のほうに頭上注意という標示がありまして、しかも、廊下を途中から切って階段をつくっておりていくようにつくり直してある。そして講堂とか体育館などは、もう砂を持ってきて盛り土してある。そうでないと床に水が一ぱいたまるという、そういうような非常に危険校舎。また教室に入りましたら、まん中がちょうど文化祭みたいなことをやっておりまして、机をずっと並べていろんな作品を置いてありましたが、まん中が落ち込んでしまって、机がまっすぐ並んでない。少しこうちょっと見たときには目まいがするような感じがしたほど落ち込んでおる。校長先生も非常に困っておられる。そういうことで、文部省としては、調理室だからわれ関せずということじゃなしに、また対策もないということじゃなしに、四十一年、四十二年、学校環境調査をしておられるわけです。そのときには大気汚染関係をやられたわけですが、この地盤沈下関係はなさっていない。したがって、地盤沈下関係に対しては国庫補助も何もないと、こういう状況ですが、こういった学校がまだたくさんあるんじゃないかと、このように思いながら二校だけ見てきたわけですけれども、この間の新聞によりますと、江東区では百数十校の学校が被害を受けていると、こういうことですが、学校の地盤沈下対策はどのようにされるおつもりか、お聞きしたいと思う。
  254. 栗山幸三

    説明員(栗山幸三君) ただいま先生のおっしゃられた白石につきましては、私どもこの五月に現地に参りまして、つぶさにその被害の状況を把握してまいりました。確かにあのくい打ちの工法と、それからサンドドレーン工法を併用したことについては、やはり非常に結果的には問題があったと思います。しかし、当時の設計としては、まだああいう地盤沈下ということに対する専門家も少ないし、なかなかそういうことができなかったという事情もよくわかっております。そこで、私どもは、昨年の春から、実は地盤沈下に対する対策をいろいろと検討してまいりました。何せ地盤沈下については広域にわたるので、とても文部省限りではできない面が多いわけでございます。しかしながら、文部省限りでできる対策についていろいろ検討してまいったのでございますけれども、私どもは、指導助言をするに際して、大体骨子として次のようなことを考えております。  まず第一番には、情報の収集、調査等の実施をうまくやらなきゃいけない。具体的に申しますと、各教育委員会と公害のセクションとがどうもつながりが非常に悪くて、公害のセクションに行けば地盤の沈下の状況がうまくキャッチできるのに、そういうことがなされていないというような実態もわかりましたので、できるだけそういう関係者がよく緊密な連絡をとるような方策を一つ指導の材料にしたいということ。  それから第二番目には、それに関するいろいろ資料ですね。沈下量とか、地層とか地質、そういうような資料を的確にやはりそれぞれの地方自治体が持ち、それをうまく活用するということが第二であります。  第三番目には、やはりそういう資料をもとにした公害地図といいますか、そういったようなものを明確にしておくということ。  それから第四番目には、各学校の定期的な検査をする必要があると、これをちょっと解説いたしますと……。
  255. 内田善利

    ○内田善利君 いや、もういいです。そういった地盤沈下した学校に対して補助金を出すか出さないかということを聞いているわけです。
  256. 栗山幸三

    説明員(栗山幸三君) その経費のことに関しては助成課長からお答えいたします。  そういうことで、いろいろ私ども対策について考えておりますので、できるだけ早い時期に具体的に各県に指示をしてまいりたいと思っております。
  257. 内田善利

    ○内田善利君 簡単に。
  258. 松浦泰次郎

    説明員松浦泰次郎君) そういう地盤沈下等の状況がはっきりいたしております場合には、最近の鉄筋校舎等を建てます場合には、くい打ち等の必要が生じてまいりますが、これにつきましては、地盤の上の建物の単価にくい打ちに必要な経費を上乗せしまして、それに建物と同じような補助率で補助を行なっております。  それから設計関係につきましても、これは建築基準法の確認を要するわけでございますが、文部省としましても、そういう補助学校につきましては、設計図等につきましてできるだけの指導をいたしまして、そういう地盤沈下でございますとか、先ほど先生からお話がございましたように、非常に長い建物をつくりますと、不同沈下ということで、部分的に落ち込むような場合がございますので、そういう設計指導などもいろいろやっておるところでございます。  それから、そういう地盤沈下に対しましては、根本的にはそういう原因をなくしますことが必要でありますが、さらに具体的な被害が生じます場合に……。
  259. 内田善利

    ○内田善利君 そこだけ聞いている。被害を生じた場合にどうするかということを聞いている。
  260. 松浦泰次郎

    説明員松浦泰次郎君) できるだけ対策を講じまして、そういう修理等につきましては、維持管理費の一部としまして、現在では設置者負担というような原則で処理いたしております。それから非常に被害が著しくなりまして、実際に校舎が使用できなくなったというふうなものにつきましては、木造でありましても、鉄筋造でございましても、危険校舎の改築の一環としまして国庫補助の対象にいたしております。
  261. 内田善利

    ○内田善利君 大気汚染と同じように、地盤沈下にも出してもらいたい、こういうわけなんですよ、質問の意味は。いいですか、出していただけますか。三分の一ないし三分の二、大気汚染環境調査をやった結果出しているけれども、それと同じように、地盤沈下も出すか出さないか、それだけ答えればいいんです。
  262. 松浦泰次郎

    説明員松浦泰次郎君) 部分的な修理につきましては、現在は補助対象にいたしておりませんが、建物全体が非常にひび割れて危険であるというようなものにつきましては、危険校舎の改築の一環として補助の対象にいたしております。
  263. 内田善利

    ○内田善利君 時間がありませんので、環境庁長官にお伺いしますけれども、工業用水法ですね、工業用水法の目的は「工業の健全な発達と地盤の沈下の防止に資することを目的とする。」と、このようになっているわけですね。ビル用水法のほうは、その目的が「国民の生命及び財産の保護を図り、もって公共の福祉に寄与することを目的とする。」と、このようになっているわけです。そして、工業用水法はあとは井戸のことばかり書いてあるわけです。だから、ほんとうに水を規制するという法律でないように思います。したがいまして、農業用水の規制と同時に、やはり地盤沈下という典型公害公害対策基本法にうたってあるんですから、悪臭公害防止法と同じように、あるいは騒音防止法と同じように、地盤沈下対策の一元化した法律をつくるべきじゃないかと。これではこういった地下水のくみ上げに対する規制、そういったことはできない、地盤沈下対策はできないと、そう思うんですけれども、これに対する検討をなされておるのかどうか。なされておるとすれば、いつまでにされるという目標等があればお聞きしたいと思うんです。  それともう一つは、地盤沈下に対するやはり総点検といいますか、そういうものがなされるべきじゃないかと、このように思います。白石平野の地盤沈下について、私は、あっちこっちへ電話して聞きましたけれども、これを的確につかんでいるところはないわけですね。ですから、総点検をどこかでやっていただきたい。環境庁でやっていただくなりしていただきたいと、この二点お伺いしたいと思います。
  264. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) この地盤沈下が一ついま重大な問題になっておりますので、やはりこれは何らかの一元化した全面的な規制を考えなければならぬ時期がまいっておると考えまして、われわれは、そのような準備を進めておるわけでございます。ただ、いま一番気にしておりますことは、完全に原因がまだよくわからない、おそらく地下水のくみ上げ、くみ過ぎ、くみ取りが大部分を占めるだろうけれども、まだいろいろな要因がありはしないかということに気を使いまして、その要因をつかまえてからやりたいというような気持ちがまだ残っておるようでございまして、そこにやはり一元的な総合的な規制がなされておらない状況だと思います。しかし、いまお話がありましたように、工業用水につきましても、規制というものはごく弱い力しかございませんし、ビル用水もそのとおりでございます。また、天然ガス採取の場合の地下水のくみ上げも、これは自主的な規制しかございません。これではどうにもなりませんので、できるだけ早い機会に一元的な地下水のくみ上げを規制するような、そのような体制をつくり上げたいと念願して、いま準備を進めておる最中でございます。私は、もうある時期が来ましたならば、いつまでもそれ以上の——なかなか原因究明と申しましても、ほんとうにすべての要因をさがし出すには一年や二年じゃなくて、十年も二十年もかかるかもしれません。ですから、わずかであるかもしれない要因に気を使ってこのような規制をやらないということは正しくないと思いますので、やはり地下水のくみ上げを対象とした規制をやはりきちんとつくらなければならぬと考えておる次第でございます。  それから総点検につきましては、やはりこれは必要だと思います。いままでは、あんまり問題が多過ぎて、われわれのほうでも手が伸びなかった、こういうことを申し上げたいと思いますが、実際にはあまり伸びなかったわけでございます。今後、大体そのような問題が発生するだろうと思われるような個所、あるいはそのようなくみ上げをやっておるような場所については、やはりすべて広く点検する必要があると思います。これにつきましては、厚生省とか建設省とか、農林省とか、いろいろなほうと十分に連携をとりまして、協力によってこの日本国土の正しい地下水の採取のあり方を考えられるような方向に進めてまいりたいと考えておる次第であります。
  265. 内田善利

    ○内田善利君 地盤沈下については以上で終わります。  次に、自然保護の問題、時間がある限り質問したいと思いますが、今日ほど自然の保護の重要性が問題になっているときはないわけですが、いま大石環境庁長官は足を運んでこれらを見て歩いておられるわけですけれども、ところが、現在日本のあらゆるところで大量伐採が行なわれておる。自然保護あるいは鳥獣保護という観点から考えるときに、あるいは緑の保護というようなことを考えますときに、非常に大事な問題だと、これはやはりわれわれ日本国民の緑に対する、自然に対する共有の財産じゃないかと、このように考えるわけです。そういった自然保護の立場から、伐採計画を林野庁は当然再検討する必要があるのじゃないかと、このように思います。また、環境庁はこの点についてどのようにお考えになるか、まずお聞きしたいと思います。  その次に、ひっくるめて質問しますが、この二点ですね。この点と、その次は、一例として申し上げるんですけれども、これは具体的にお願いしたいと思いますが、鳥取県と兵庫県の県境に氷ノ山後山那岐山国定公園があるわけですが、その中の扇ノ山という山ですね、この辺は日本でも有数のブナの原生林があったところです。ところが、現在では、もう山頂の特別保護地区付近にわずか残っている。ほとんど完全に伐採されきってしまったわけです。いま残っておるのは、それと氷ノ山のほうに、北西部に一部残していると、このような完全にもうはげてしまった山である、こういう状況になっておりますが、こういったことに立ち至った経過について林野庁に報告していただきたいと思うのです。こういったところまでブナの原生林をしてしまったということについて環境庁はどのようにお考えになるか、この点についてまずお聞きしたいと思います。
  266. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) いま非常に自然の保護に対する高邁な御意見を、あるいはあたたかい愛情を承りまして、非常にうれしく思う次第でございます。私も、何とかして日本に豊かな——近ごろはだいぶこわされましたけれども、豊かな自然を何とかりっぱに保存して、われわれの子孫に残してまいりたいと考えておる次第であります。ただ、そのためには、やはり日本の自然の一番の中心は何と申しましても森林でございます。この森林というものは、一番大事な中心であります上に、われわれの環境保全のためにはなくてならない重大な資源でございます。しかし、同時に、そのような森林ができ上がりますには何十年、何百年という歳月が必要でございます。そういう意味で、この森林というものは、単なる材木としての伐採するだけの見方ではなくて、やはりこれはわれわれの生存するための環境を保全する一番大事な資源であるという考え方からこの森林の取り扱いについては検討してまいりたいと思うわけでございます。現在におきましては、残念ながら、林野庁とわれわれとの間の森林に対するものの考え方が違っております。意見の調整が十分できておりません。したがいまして、われわれは、いま何としても残したいと思いますけれども、いままでのような行政のあり方、権限のあり方によりまして、まだこれを十分に規制することはできません。きわめて残念だと思いますが、何とかして日本の行政の方向を変えまして、この林野行政とわれわれの自然保護の行政の考え方が一致しまして、ほんとうにお互いの協力によって、いま林野庁が日本の国有林を支配しておるのでありますから、これもやはり自然保護の見地から日本の森林資源を保全するように、ただ単なる日本の資源を木材として、ものとしてだけ見ないで、ほんとうのわれわれの豊かな国民性をつくり上げる大事な資源としてこれを見てもらうような考え方で、われわれと同じような方向で進んでもらいたい、これが私の願いでございまして、そのように努力してまいる考えでございます。  あと、こまかいことにつきましては、ひとつ自然保護局長からお聞き取りを願いたいと思います。
  267. 松形祐堯

    説明員松形祐堯君) お答え申し上げます。  鳥取県の扇ノ山地区の国有林の伐採等につきましていろいろお話しございました。扇ノ山の国有林は約二千四百ヘクタールでございます。現在、人工林といたしまして植林されておりますのがそのうち七百五十ヘクタール程度でご、さいまして、その残の約千六百ヘクタール程度が天然林として残っておるわけでございます。この地帯は、一般的に生産性の低い老齢過熟の天然林の多いところでございまして、現在、自然保護とか国土保全とかいう問題の調整等をはかりながら、生産性の高い山をつくろうというようなことで森林施業を進めておるところでございます。  今後の伐採等につきましては、河川とか林道とか、あるいは峰筋とか、そういう施業上の要請から保護地帯を設けるとか、あるいは学術上の大事なところに保護林を設けると、そういうことで処理してまいりたいというふうに考えておりますが、ただいま長官からお話しございまして、森林に対する諸要請というものが現在非常に高まってまいっております。したがって、今後は、この地帯の伐採等につきましても、この区域の分散とかいうようなことを十分配慮しながら進めてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  268. 首尾木一

    政府委員首尾木一君) 全体的なことにつきましては長官のほうからお話がございましたので、扇ノ山の地域につきましてのお答えを申し上げます。  この地域につきましては、先ほど長官からお話がございましたように、ここの扇ノ山の地区の計画をつくりました際は、その地域区分といたしまして伐採の進められておりますところは第三種特別保護地区ということに両省の間で話がきまっておる地区でございます。そういう意味におきまして、現在は、林業との調整上、伐採はやむを得ないという地域に一応形の上でなっておるわけでございまして、そのような点からこの伐採が行なわれてきたということでございます。しかしながら、先ほど長官のお話しにもございましたように、森林というものについての考え方というものは、今後、やはり自然保護の上から非常に重大な問題でございますので、従来の計画地区につきまして、保護のみならず、全体的にやはり再検討を行なっていくという必要があるというふうに考えておるわけでございます。十分林野庁当局と協議をしながら適正な自然保護をはかってまいりたいと考えておるところでございます。
  269. 内田善利

    ○内田善利君 この扇ノ山の北西部のほうは、残っているところをまだ切るのか切らないのか、この点林野庁どうですか。環境庁は、切ってもいいですかね、この点をお伺いしたいと思います。
  270. 松形祐堯

    説明員松形祐堯君) ただいま環境庁局長のほうからお答え申し上げましたように、この地帯の国定公園といたしましての地帯区分等が環境庁との間でなされまして、現在私どもが実行いたしておるのは、その協議のととのいましたことによって進めておるわけでございます。現在私どもがやっております施業計画というようなものをつくりまして、これが本年度から実施されることになっておりますが、その計画等の編成の場合は、地元あるいは関係町村、さらには、国定公園でございますので、環境庁との協議がととのわない以上は、施業方法なり、あるいは伐採する区域それ自体もきまらないわけでございます。そういう協議をいたした範囲の中で動いておるわけでございますけれども、ただいま自然保護とかいろんな要請等が出ておりますので、先ほど申し上げましたように、今後注意をしながら、また、その伐採区域を分散しながら、配慮しながら実施をしてまいるというふうなことを考えておるところでございます。
  271. 内田善利

    ○内田善利君 これは最後に残されたブナの原生林ですからね。四十六年、今年度から始めて、四十六年−四十八年ですか、三年で伐採するということですが、地元の要望も入れてということですけれども、地元は反対しておるわけです。ですから、ぜひこの辺で、せっかく残ったブナの原生林ですから、少しは残していただきたい、そのように思うんですが、この点をもう一度環境庁と相談の上で残していただきたいと思うんですが、いかがですか。
  272. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) 私は現地を見ておりませんけれども、やはり大きな百年、二百年、三百年とたった天然林であり、原生林というものはできるだけ残してもらいたいと思います。  最近、私は、東大の北海道の富良野にある演習林の所長をしておられる高橋延清、通称「ドロ亀」さんと言っておりますが、この人の「林分施業法」という本を読みまして非常に感激いたしました。あのような森林に愛情を持って、そうして天然林は天然林としての本質を生かしながら、天然林と人工林とを調和していく、こういうやり方が今後の正しい行き方じゃないかと、私はしろうとですが、そう思います。ただ経済的に考えまして、皆伐主義——全部機械を使って切っちゃったらば一番簡単でありまして、利益もあるかもしれませんが、このようなやり方では山が荒廃することは間違いございません。そういうことで、ひとつ林野庁と今後十分相談いたしますけれども、そのような愛情を持って、いままでと違う、日本は経済本位で動く国ではいけませんから、やはり今後の森林行政というものを愛情を持って森林の特質を生かしながら持っていくように、林野庁ともよく協議し、あるいは林野庁でもそうせざるを得ないような事情がございますればその事情を幾らかでも緩和するように協力してまいりますので、そのような方向でいきたいと私は考えております。
  273. 内田善利

    ○内田善利君 もう時間がまいりましたけれども、もう二問だけまとめて質問いたしますので、簡単にお答えいただきたい。  一つは、スーパー林道のことについてですけれども、私もスーパー林道のあちこち見てまいりましたが、材木を切って運ぶだけならいいんですが、ここを一般車が通りまして非常に危険なわけです。ただ道路をつくったというだけで、自然に立っていても、上からごろごろ石が落ちてくるというような非常に危険な様相を呈しているわけですが、現に大山の国立公園の船上山付近のスーパー林道、開発か保護かということで問題になった。全国至るところでこういった問題があるわけですが、このスーパー林道をつくるに際して、政府において包括協議されるわけですね、その包括協議する際に、やはり自然を破壊していくわけですから、専門の学者を入れるとか、そういったことをして協議する方法をとって、やはりあとで乱伐といいますか、自然公園が破壊されるというようなことにならないように、頂上につくった、いや下がよかったとか、こういうことにならないように、よく一つ協議していただきたい。これをどのようにお考えになるか。  もう一点は、やはりどんどんどん乱伐されるということは、やはり林野庁の独立採算制にも原因があるのじゃないか、このように思うわけですが、この点については、環境庁長官も、箱根のティーチ・インでこのことについて触れられているわけですが、こういった独立採算制の問題も、やはり関係がないとすれば——むしろ、あると私は思うのですが、この点について、政府としては、どのように林野庁と話し合いをしていかれるおつもりか。これは環境庁長官がこの間ティーチ・インでおっしゃったことですけれども、具体的にどうされるおつもりか。  この二点お聞きして私の質問を終わりたいと思います。
  274. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) 世間では、林野庁がみな皆伐によっていろいろ切りまくっている——これは世間の話でありますから、そういう乱暴なことばをあえて使いますが、切りまくっているのは、一つは、大きな原因は林野庁の独立採算制にある、膨大な家族をかかえて、材木が安くなり、値段が下がって四苦八苦しているために、とにかく手当たり次第切らなければならない現状であるというのが世間の話でございますが、私は、それはどの程度までかわかりませんが、林野庁の行政の中で、独立採算制ということが大きくのしかかっているのは確かでございます。そういう意味で、このような面は十分われわれも考えまして、日本の林野行政なり、あるいは日本の政治の方向というものは、だいぶ変わってきていると思いますので、こういうものはやはり十分検討して、ほんとうに愛情あるりっぱな林野行政が行なわれるように、やはりその障害は取り除かなければならないと、こう考えます。私も、国務大臣の一人として、そのような方向で正しい森林行政が行なわれるように協力してまいりたいと考えておる次第でございます。
  275. 松形祐堯

    説明員松形祐堯君) お答え申し上げます。一般的に林道の開設事業等を行ないます場合には、私ども、先ほど来問題になっております自然保護とか国土保全というようなことの重要性を十分認識いたしまして、路線の線形とか、あるいは捨て土の問題、さらにのり面の安定とかいうような面を考慮しながら施工方法をとっておるわけでございます。特に、自然保護、国土保全等の法律上のいろいろ網のかぶった地帯につきましては環境庁との協議が要ることでございまして、その点につきましても、関係省庁との協議をさらに十分進めてまいりたいと、かように考えておるわけでございます。  なお、ただいま特別会計についてのお話でございましたが、私ども、現在、国有林を含め民有林でもございますが、緑の価値観というものに対する変化に対応した政策というものを検討いたしております。したがって、その中で国有林の果たすべき使命、あるいはその存在意義、そういうものも総ざらいいたしておりまして、現在、制度的にも、あるいは機構的にも、そういう特別会計というような問題も含めて鋭意検討いたしている段階でございます。
  276. 首尾木一

    政府委員首尾木一君) 国立公園あるいは国定公園、そういったような重要な景観地における道路の建設等につきまして従来いろいろ問題があったことは、事実として否定ができないところだというふうに考えておるわけでございます。スーパー林道につきましても、その施工方法等につきましていろいろ問題があったことも、これも事実であろうというふうに考えておるわけでございます。今後、私どもは、やはりそういったような道をつけるにつきましては、自然についての学術的な調査も事前にいたしまして、十分そういったような観点から、つけるべきであるかどうか、あるいはつけるとした場合にどういったような措置を講ずれば適当であるかといったようなことにつきまして、事前の調査を十分に申請の側にもお願いし、また、私どものほうとしましても、それを十分行なっていきたいと、かように考えておるわけでございます。
  277. 塚田大願

    塚田大願君 私は、このたび発生しました新潟のタンカー事故について質問したいと思います。  御承知のように、今度の事故は、日本の海難史上最大の原油流出事故であった。きのうも関係漁民の代表の方が陳情に来られましたが、この漁民の方々は、海は死んでしまったと、こういうふうに非常に端的におっしゃっておられました。私もその気持ちは非常によくわかります。と申しますのは、実は、今度の事故の起きました新潟市の日和山海岸というのは、私が少年時代に育ったところでございまして、たいへんなつかしいところでございます。今度の事故が起きまして、すぐ私も、去る四日、五日、六日、現地調査に行ってまいりました。全く想像以上にひどい状態でございました。海はまっ黒になるし、浜はべとべとになっているし、岸壁の岩ノリはまっ黒くなっているし、廃油ボールがあがってくると、こういうことで、ほんとうにこの少年時代過ごした海がめちゃくちゃになっているという現実を見てまいりました。  そこで、私は、政府に御質問申し上げたいのでありますが、事故発生以来十七日たった。六千トンの油が流れ出し、そしてこれがいまどんどん北上して、山形県の周辺まで行っている。まことに事態は重大だと思うわけでありますけれども、一体、この事故発生以来、政府あるいは運輸省、海上保安庁、関係省庁がどういう対策を講じたのであるか、いかなる措置を行なったのか、これをまず簡潔にお話し願いたいと思うわけであります。先ほどのような全知全能なんという宣伝がましい話がありましたけれども、そういう話ではなく、具体的な措置について私は質問したい。
  278. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) お答えします。事件発生以来、海上保安庁は、自衛隊、消防機関、民間関係者等々と一致協力しまして、人命救助を——これは四十七名でございますが、行ない、また、引火防止など、被害の局限措置に全力を注いできたわけでございます。また、船からの油の流出は今日まで約五千トン前後と推定されますが、現在は、船尾からの流出はもちろんとまっておるわけでございまして、これは、先ほど申し上げましたが、けさの八時で七千トンの油の陸揚げを終了いたしております。ただ、半分に割れた船尾部は油はなくなっておりますが、そこに水を入れておりますので、それは、いわゆるバンカーオイルじゃありませんが、タンクの中の壁にまだへばりついた油はあるかと思いますが、一般に油は吸い取られたというかっこうになっているわけでございます。船尾部につきましては、非常に少量でございますが油の膜があるという程度でございます。現在、吸着剤その他によりまして油処理を行なっておるわけでございます。この間、約二万九千かんの処理剤を投下して、これは一週間でございますが、八日以後はこれを行なっておらないわけでございます。船首部につきまして、まだ油が相当量入っておるということで、これの抽出作業を行なっておるわけでございます。船尾部につきましては、いわゆるテトラポットから三十メートルないし遠いところで七十メートルのところでごいまして、これが砂に全面的に、半分ほど埋まっておると、しかも船尾部の甲板は全部出ていると、こういうかっこうでございまして、これは、天気のいい日は、瀬取りと申しますか、小型タンカーを、内航タンカーを海のほうから近づけまして、これで取っている。それから、天気のよし悪しにかわわらず陸上にパイプを敷きまして、新潟港内に、約パイプの長さで言いますと千数百メートルでございますが、ここで船に積みかえて昭和石油に送ったということで、先ほど申しましたように、けさ完了しております。ただ、割れた船首部は、半分は船首部のうちの船首のほうを上に向けておりまして、これが水面に出ておりますが、まん中に近いところは海の中にもぐっております。したがいまして、幾つかのタンクに分かれておりますが、このうちの船首のほうのところは海面から出ておりますから、これは瀬取りができるというふうに考えておりますが、中央部に近いところにつきましては海面からこれを出して行なわなければならないということで、しかも、これは相当、船尾に比へれば岸からまだ遠いということで、船によるしかしようがないということで、きのうまでにこの準備は完了しておるわけでございますが、天候のいかんによってこれができると。きょうは、幸いにして天気はいいということでこれは行なっておるはずでございますが、天気のいい日で約十日か十一日かかるということでございまして、努力をいたしまして年内に何とか片づけたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  279. 塚田大願

    塚田大願君 海上保安庁は流出原油量五千トンというふうに固執されておりますけれども、新聞によりますと七千トン流れているともいわれておる。ですから、私は、そのまん中をとって実は六千トンと申し上げたんですが、とにかく五千トンだけではないことは事実です、いろいろ漏れがあるんですから。今日でもまだ少し漏れているといわれているぐらいですから、十七日もたって相当やっぱり漏れていることは事実だと思います。ですから、少なくとも五千トン以上であることは間違いない。  そこで、まずその量の問題はいいです。とにかくこれだけの大量の油が広がって、そして流れにまかされておる。こういう状態、これが一番問題ではないか。本来、タンカー事故のありましたときには、まず船体から流れた油が広がるのを防ぐ、これが原則だと思うんですね。そのためにオイルフェンスを張って、その囲みの中で油を回収する、これがいわば国際的な経験から生まれている常識であり、また原則だと思うんです。ところが今度の場合には、とにかく広がりっぱなし、流されっぱなし、こういう状態なんですが、なぜ今度の場合にその措置ができなかったのかということですね、油の広がりを防ぎ得なかったのか、それは一体どこに原因があるのか、それについてお答え願いたい。
  280. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) お答え申し上げます。油の流出につきましての海上保安庁の体制といたしまして、重点を東京湾、伊勢湾あるいは大阪湾を含む瀬戸内海、こういうところに置いておったわけでございまして、機材その他もそういうところに集中して配備しておったというのが事実でございます。もちろん新潟地方にもあったことはあったわけでございます。ただ、従来、瀬戸内海、それから東京湾等でオイルフェンスである程度の効用を果たしておったということで、これをもってやっておったわけでございますが、今回新潟で事故が起きました際に、現地にあるもののほかに、表日本のほうからも相当多量オイルフェンスも持ってまいったわけでございます。いずれにしても、オイルフェンスというものが、いままで表日本で経験したことのない波の高さ、あるいは風速十七メートルというものに耐え得られなかったということでございまして、オイルフェンスの性質そのものにもよりますが、水面上三十センチ水面下四十センチと、こういうものであるわけでございまして、この長さだけが問題であるかどうか、その質の強さといったものも相当大きな関係があるかと思いますが、従来の表日本で使っておったものでは新潟その他の強風のところではあまり効用が発揮できない、裏日本であっても天気がそれほど激しくないといった場合には役に立つけれども、そうでない場合には非常にむずかしいということであるわけでございます。
  281. 塚田大願

    塚田大願君 実は、今度の事故の場合に海上保安庁の第九管区にはオイルフェンスはなかったんですね、それで急遽東京から取り寄せて、翌日昼ごろついた。しかし、もうそのときには油が六十キロも北のほうへ流れていた、こういう状態で後手になったと思うんです。そこで、いまその機材の整備がとにかく太平洋岸にだけ集中して、日本海をおろそかにされたという話はありましたけれども、東京湾から持っていったオイルフェンスは、これは一キロ半くらいあったはずですが、一・六キロぐらい。この国産のオイルフェンスというのは、大体一メートルから二メートルぐらいの波の高さのときに役に立つのであって、いわゆる港湾内のようなところに役に立つのであって、日本海のような荒海では何にも役に立たない、せっかく張ったけれども、もうすぐ流されてしまった、こういう結果になったわけですね。  そこで、お聞きしたいのですが、こういうほんとうに油の事故を防ぐための基本的な機材であるオイルフェンスの開発ですね、研究ですね、これは一体どういうふうになっておるのですか。その予算はどういうふうになっておるのですか。
  282. 原田昇左右

    説明員原田昇左右君) 運輸省では、かねてからこの問題につきまして——国際的にも、これは非常に荒天時あるいは湾内におきます流出に対処する方法をみんなで研究しようじゃないかという会議がIMCOで話が出ておりまして、そこでいろいろ情報を持ち寄ってやっておるわけですが、国際的にもなお荒天時におきます有効な対策というものは、なかなか現在のところ決定的なものがないというのが残念ながら実情でございます。そこで、われわれとしては、とにかく日本におきましては何とかその開発をやっていこうということで、日本海難防止協会というのが社団法人でございますが、ここに調査研究を依頼いたしまして、油の拡散状況とか廃油処理方式、オイルフェンス等の研究をやってもらっております。さらに新しい処理剤の有効性とか、油処理剤の散布剤の有効性、それから処理剤の水中動植物への影響等について研究してもらっておるわけでございますが、なお、今回の新潟事故に関連いたしまして、さらにこれを政府レベルにおいても強力にやろうということで、科学技術庁から約二千万円ぐらいの特調費を本年度じゅうに出していただきまして、これの研究をさらに強化しようということにいたしております。もちろん農林省その他とも十分御相談をいたしまして、各省で協力して研究を進めていきたいと、こう考えております。
  283. 塚田大願

    塚田大願君 いまの話ですと——これからのことは別ですよ。いままでは、とにかくほとんど政府は何にもやっていなかったと、日本海難防止協会、いわゆる民間の団体に頼んでやっていたというお話なんですね。こんなお粗末な話では納得できませんよ。私の聞いているのは、政府がどのような開発研究をやったのか、そのためにどのぐらいの予算を使ったのかということをお聞きしたのです。その辺をはっきりしていただきたいと思うんです。
  284. 原田昇左右

    説明員原田昇左右君) 日本海難防止協会というのは民間団体でございますが、その予算については、運輸省であっせんいたしまして、日本船舶振興会という、これはモーターボートの上がり金が入ってくる団体でございますが、その予算をそちらに振り向けるような行政指導をいたしておるわけでございます。  それから、なお先ほどちょっと申し落としましたけれども、船舶技術研究所におきましても、油の——これは運輸省の付属機関でございますが、油の出た場合にそれを吸着する方法とか、ポンプの開発とかということについては、わずかでございますけれども、予算をさいてやっておるわけでございます。
  285. 塚田大願

    塚田大願君 いまの日本海難防止協会の研究の予算が私の手元にあります。一体、ここで使った予算は、四十三年度はわかりませんが、四十四年度は二十万円、四十五年度がゼロ、四十六年度が四十万円です。こんな金でこれだけの大事故を防ごうなんて、それはとんでもない話ですよ。使ってないのとほとんど変わりはありません。それから、いま政府がやったものとしては、運輸省の船舶技術研究所の研究がある、確かにあります。しかし、それにいたしましても、ここに、私のところに資料があります、科学技術庁研究調整局から出しました。ここに書いてある。これによりますと、四十二年の十一月から四十三年の七月にかけましてこの船舶技術研究所でいろいろ研究をした。しかし、それはただオイルフェンスの有効性という問題と、それから海上流出実験、二つやっただけです。全体の予算が六百二十八万九千円、非常にわずかな金です。これがただ唯一の政府の研究結果でしかないんです。しかも、この研究の内容を見ますと、ここに書いてありますが、オイルフェンスは一メートルから二メートルの波の高さを想定してやった研究でしかないんです。日本海へ持っていって役に立たないのは、これは当然のことなんですね、最初基準がこういうふうに低くなっているんです。これじゃ、もう今度の場合には全くお話にならぬ。この日本海というところは、もう昔から荒波だということで有名なんであって、いまさら荒波になったわけではないんで、なぜ一メートルから二メートルのオイルフェンスしか研究してないのか、なぜまたその後この研究が続行されてないのか。とにかく四十二年にやったきりです。ことしは四十六年、しかも、その後タンカー事故はどんどんふえている一方。そういう時期に、こういうまじめな研究ですね、ほんとうに積極的な研究というものがほとんど見られなかったのがまことにふしぎでしようがない。なぜそうなったのか、私は、その辺のところを率直にひとつ聞かしていただきたいと思うんです。
  286. 原田昇左右

    説明員原田昇左右君) ただいまたいへんおしかりを受けて、まことに申しわけないと思いますけれども、何ぶん予算に限りがございますので、私ども、一生懸命予算を取る努力をいたしたわけでございますが、従来十分でないことは確かにそのとおりでございます。しかしながら、海難防止協会の予算につきまして、いま御指摘の数字につきましては、私、手元に現在資料がございませんので確認の方法がないわけでございますが、なお後ほど調べまして、いろいろな項目がございますので、もう少しいろんなことをやっているんじゃないかと、実は予算額的にはもう少しあるんじゃないかという感じもいたしますので、後ほど調べさしていただきますが、いずれにしましても、御指摘のように、必ずしもわれわれ自身が十分であるとは考えておりません。  それからまた、世界のこの技術開発につきましても情報交換をやっておるのでございますが、なかなか好天時におきますいい方法が見つからないというのが現状でございます。そこで、まあ従来の不十分は率直に認めまして、今後の体制としては、大いに世界各国の情報も交換しながら、わが国としても自主的な開発を強化してまいりたいと思います。
  287. 塚田大願

    塚田大願君 国際的にそういう技術的な開発がまだ生まれていないとおっしゃるのですが、私も専門家でないから、よくわかりませんけれども、アメリカでは、十メートルの波に耐えるオイルフェンスがすでに開発されているということを聞いております。たしかこの事故が起きた直後の新聞紙上にも、それがかなり具体的に発表されております。専門家はみんなそれを知っているのだと思うのですよ。ですから、技術水準が低いなどということはないし、またかりに外国がどうであろうと、日本は日本の状態の中で開発していかなければいけない。なぜならば、日本はいま石油の原油の輸入国では世界第一位でしょう。日本がむしろそれを開発して、外国に普及してやるだけの責任があるのじゃないか。それが相変わらずそういうふうな消極的な態度では、私は、やはり今後の事故の根絶というものを期することができない、こういうふうに考えます。まあ、オイルフェンスのことだけ質問できませんので、オイルフェンスのことはこのくらいにしますが、とにかくこのオイルフェンスの問題一つとりましても、こういうタンカー事故対策というものが全くいままでゼロに等しい、全くほってあった、いわば行政の怠慢がやはりここにはっきり出たのじゃないか、これが今度あれだけの大きな被害を生んだ最大の原因だ。決してこの日本海の波が荒いからいけないのだと、波に責任を押しつけたり、天候に責任を押しつけるわけにはいかないのじゃないか、あるいは外国船の船長だけを責めるわけにはいかないじゃないかと思います。この点を私はひとつはっきりさしておきたいと思うのです。  次に進みます。次は中和剤の問題です。中和剤の問題につきましては、先ほどいろいろ御質問がございましたが、これはもう非常に毒性がある。二次公害の危険性があるということは、もう一般有識者がみんな知っていることです。今度の新潟のタンカー事故のときにも、海上保安庁が中和剤をまいた、すぐ学術研究会議では抗議をいたしましたし、地元の漁民は全部反対の決議をいたしました。保安庁も途中でその使用をやめられたようですけれども、とにかく一般にもうそういうふうに毒性があるといわれておるこの中和剤の、一体使用上どういう基準皆さんがおつくりになっているのか、その使用上の基準というのはどこに置かれているのか、それをまずお聞きしておきたいと思うのです。
  288. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) お答えいたします。タンカーに油をとったり出したりするといったような場合に、油の濃度が濃いのがこぼれるといったような場合に、これはオイルフェンスで囲ってこれの処理を行なう、こういったようなこと、それからそれも含んでいるわけですが、爆発あるいは火災を起こす危険性のあるような場合、これは緊急の場合でございますが、その他海岸にそれほど近くないところにおいてはこういうものを使う、こういうことにしておるわけでございます。
  289. 塚田大願

    塚田大願君 どういうときに使うかということはそれでわかりますけれども、一体、この毒性がどういうもので、だからこういう毒性があるから緊急やむを得ないときにしか使ってはいけないのだという、そういう確固たる基準というのはないのですか。
  290. 原田昇左右

    説明員原田昇左右君) ただいまのところ、毒性の問題につきましては、先ほど申し上げました海難防止協会等で検討をいたしておりまして、東大にその調査研究を依頼中でございます。そこで、今回の新潟事故の経過にかんがみまして、われわれとしても、このままではいけないということで、科学技術庁の特調費を利用いたしまして、油処理剤に関する使用基準といいますか、そういったものをぜひこの際つくりたいということで、さっそくこの研究に取りかかる準備をいたしております。
  291. 塚田大願

    塚田大願君 私の手元農林省水産庁の南西海区水研年次報告、昭和四十三年度というのがありますが、ここにわずかでございますけれども、「石油汚水による漁場汚染に関する研究」というのがございまして、その中で「その間油処理剤を使用し浄化の説も出たが、乳化剤の毒性による養殖生物のへい死が考えられたので中止の指示をした。」と、これは実験の報告でありますけれども、こういうふうに農林省の機関の中でやはりいろいろ問題が提起されていたと思うんですけれども、こういう研究がなぜいままで握りつぶされて、さらに発展させられなかったのか。これは農林省どうでしょう、水産庁。
  292. 藤村弘毅

    政府委員(藤村弘毅君) 水産庁といたしましては、四十三年に海難防止協会から処理剤の毒性についての実験、研究の委託を受けまして、四十三年に十種類の処理剤の研究をいたしておりまして、それが魚にどういう影響を与えるかということでございますが、半数致死濃度が幾らであるかという調査をいたしております。その場合の結果は、四十八時間の半数致死濃度で一番濃度が低くてそういうふうになるのは七・五PPM、一番濃い濃度は九千PPMという結果が出ております。その場合、魚は全部淡水魚のヒメダカを使ってやっております。それから、その後もウニの卵等で、卵に対する致死濃度等を研究いたしておりますが、今度こういう事故が起きましたので、あらためて海産魚について実験を進めたいというふうに考えております。もちろん普通の半数致死濃度の実験は、一般にはヒメダカが一番使いやすいので、ヒメダカを使ってやっているので、海産性の魚についてもそう大きな違いはないのではないかというふうに考えております。
  293. 塚田大願

    塚田大願君 この問題については、もっと科学的に具体的に追及してみる必要があると思うのですが、時間がありませんから、私はもう一つの問題を出します。去る今月の四日、海上保安庁長官、手塚長官ですか、新潟に行かれて、ちょうど私が参ったときですけれども、このときに長官は新聞記者会見をやられまして、この乳化剤は毒性が少ないのだ、だからまいてよろしい、こう言われたのですね。ところが、その後地元の反対、学術会議の反対がどんどん起きてきた。そうしたら今度、ほかのものは悪いけれどもシェルのLTという製品は毒性が少ないからこれを今度使うのだということを九管区の対策本部長がやはり新聞記者会見をその後やったのです。ところが、はたしてほかの中和剤は悪いけれどもシェルの製品は毒性が少ないというのについては、だれしも納得しなかった。一体何を根拠にそういうことが言われておるのか。この点ですね、一体、海上保安庁は、どういう基準で、どういう根拠でシェルLTという製品が無毒であるということを言われたのか、そうしてその後もずいぶんまかれたのか、その問題についてお答え願いたいと思います。
  294. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) お答えします。従来の処理剤、これはトリー・キャニオン時代からの分があるわけでございますが、それから漸次——いろいろおしかりは受けておりますが、相当改善はされてきておるということでございます。その当初におきまして、われわれが採用しております処理剤、これはメーカーがたくさんあるわけでございまして、品種もたくさんあるわけでございますが、そのうちから十三種類というものを持っていったわけでございます。これはいままでわが国において非常に——非常にと申しては過言かと思いますが、比較的いいのじゃないかというものを使っておったわけでございます。まあ、世界的に見まして、シェルが今度の事件に関係もしておりますし、この八月でございますか、ロンドンで最も進んだものとして売り出された、こういうものをこちらで採用いたしました、これを持ち込んだと、こういうことでございまして、これは界面活性剤あるいは溶剤といった両方から問題が出ておるわけでございますが、そのおのおのについて毒性の最も少ないものに調製されておる、こういうふうに聞いておるわけでございます。
  295. 塚田大願

    塚田大願君 その成分については、独自に研究されてそういうふうに判断されたのですか、どうですか。
  296. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) この分につきましては、界面活性剤で非イオン系エステル型を用いております。それから溶剤といたしましては、芳香族の少ない特殊な炭化水素系でございまして、先ほど水産庁からお話がありました半数致死濃度につきましては、これは非常に少ない、結果のいいものとしてなっておるわけでございます。
  297. 塚田大願

    塚田大願君 幾らですか、濃度は。
  298. 須賀貞之助

    政府委員須賀貞之助君) お答え申し上げます。英国のシェルの毒性研究所において試験をした結果は、半数致死濃度につきまして、エビにおきまして三三〇〇、カ二一万、ヒラメ一万、カキ五〇〇〇、こういうことでございまして、これはすべて四十八時間でございます。
  299. 塚田大願

    塚田大願君 私は、政府が、また責任のある海上保安庁がこんなものを根拠にして判断されるとしたら、これはまことに危険なことだと思うのですね。実はこれ私も持っております。会社からもらいました。現地の民間対策に行きましたときに、シェルの会社の方からもらいました。ここに分析があるのです。分析はあるけれども、大事なことは書いてないのです。みんな企業秘密だということになっておるのです。成分の具体的な内容なんか何もないのですよ。ただ半数致死量がどうだとかなんとかということは書いてあるのですが、この研究はロンドンの研究所で、シェルの研究所でやったのでしょう。つまり自分のところでやったのですよ。会社が自分の製品の宣伝のためにやった分析なんです。こんなものがどうして信用できますか。もし責任を持っておるなら日本の政府が独自で分析して、自分で研究して、これでいいかどうかということの客観性を証明しなければならない。人のものをもらってこういう状態ですなどと言ったって、これは何も信憑性はございません。しかも、これは魚のエビとかカニとか、ヒラメ、カキだけのことであって、人体にはどういう影響があるかなんということは何もわからない。これでどうしてみんな信用できますか。こんなもので毒性がないなんてどうして言えるのかということ、何ら科学性がないわけです。客観性はありません。そういう状態だと私も想像しておりましたから、わざわざこういうものをもらってきたんですが、あなたのおっしゃるのは、シェルの会社の宣伝をやっているというだけです。しかも、今度のシェルは荷主でしょう。今度の事故のいわば加害者なんです。ですから、新潟の漁民は言っていました。シェルの油で被害を受けて、今度はまたシェルの中和剤で被害を受ける、ずいぶん皮肉な話だなあというのです。ばかみたいな話ですよ、これは。ですから、この問題についてはやっぱり海上保安庁、運輸省、政府はもっとこの中和剤の問題については責任のある方針を持たなければいけないと思うんです。  それから時間ありませんから、進みます。こういう中和剤、ところが、そのまき方がまた、散布のしかたがひどいのには私は現場に行って驚きました。この民間対策本部に行きまして、民間会社の方々からこういう中和剤の散布のしかたを聞きました。そうしたら、こう言われました。あの中和剤は水で薄めて、そしてあめ状にして散布する、そして散布したあとは船やなんかのスクリューで攪拌して初めて効果が出る、で、私どもはそうやっておりますと。なるほど民間会社の雇ったヘリコプターはちゃんとそのようにやっておりました。大きなタンクの中でといた中和剤を入れて散布して、そしてあとかきまぜる。ところが、海上保安庁のやっておられるやり方というのは、皆さん、どういうやり方をしていたか御存じですか。おそらく御存じない。こういうやり方です。自衛隊の大型ヘリコプター頼んできまして、中和剤のかんをたくさん積みまして、これをそのまま海にばんばん投げるのです。見ていますと、ちょうど自衛隊が爆撃訓練しているのと同じです。ぱんぱんぱんとしぶきが上がるのですよ。あれは何だと言ったら、いやあれは散布しているんだ、石油かんを散布しているのです。しかも、それ全然、歩けてから散布するのじゃないですね、とじたまんまやるんだそうです。そうすると、海面にぶつかって衝撃したとき、これが割れるのですね、それで流れると、こういう方式なんですよ。こういう無責任なやり方では、害があって、あなた方、緊急な場合にとおっしゃるけれども、何の役にも立たない、こういうことです。私、ここに写真持ってきています。これは委員長、この自衛隊が投げた石油かんがつぶれて、これが約六十キロぐらい北の村上の辺の網にひっかかったんですね、漁民の。そして上がった。これは船で市場へ運び込まれたときにちょうどぶつかりましたので、とってきた。ひどいですね。これが網にかかると網が破れるのです。もう二重、三重の被害がここに出てくる。こういうやり方なんですね、全く非常識もはなはだしいと言わなければならない。こういうやり方をして、先ほどの話じゃないけれども、全知全能を尽くしましたなんというような、とんでもない話だと私は思うんですね。しかも、そういう油が、これは漁船が魚群探知機でとって、新聞にも発表されたんですけれども、かなり新潟から離れた地域で、深さが五十メートルぐらいの海ですけれども、ちょうど海面から十四、五メートルのところでこういう層があることが探知機にレーダーで映ったのですよ。これは海上保安庁も御存じだと思うのですね。しかし、海上保安庁はこれを否定されて、これは油じゃないといわれておるそうです。じゃ、な何だというのですね。漁民にすれば、こんなに探知機に出る魚なんというのは、いままで想像もできない、もうたいへんな魚群だと、魚だとすれば。これは明らかに油以外にないのだと、はっきり言ってるのですけれども、こういう状態がとにかくこの海面に、海域にどんどんどんどんあらわれているわけです。時間もありませんから、あれもこれもお話できませんけれども、実情はとにかくひどいものだということです。だから漁民の皆さんは、もう海は死んでしまったとおっしゃるのは無理がないと思うのです。  私、この辺で環境庁長官に、せっかくおられるのでお聞きしたいのですが、こういう事態をどういうふうにお考えになっているか、この深刻な事態、そして一体責任はこの場合にどこにあるのだということですね。海上保安庁のお答えはいまお聞きのとおりなんで、事実とはずいぶん食い違っているし、内容も全く具体性がない、科学性がない、こういうことなんですが、この点で、環境庁長官の大臣としてのお考えをひとつ聞かしていただきたい。今後、この中和剤の使用基準、こういうものを明確にしていただいて、その成分などもちゃんと発表していただく、企業秘密だなんといって、実はたいしたことなくても、みなそういっているのですね。そんなかってなやり方をひとつ許さないような措置をお願いしたいと思うのですが、この辺のお考えをお聞かせ願いたいと思うのです。
  300. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) 私は現場を見ておりませんし、また、調査にやりました者の報告を聞いただけでございますが、もし、ここでいま議論されましたような実態であるとすれば、これはまことに政治の貧困でございまして、申しわけなく思います。このようなことでは、われわれは責任を持って国民の行政をあずかるというわけにまいりませんので、さらに引き締めまして、もっと正しい、真剣な、先を見通すような行政をやらせるように、私も心がけてまいりたいと思います。  で、中和剤につきましては、先ほど何べんも申し上げましたが、これはやはりはっきり毒性なり、ある程度の、効用は適当でけっこうですが、少なくとも有害性がないということ、毒性がないということ、ここだけはっきり明確になってから使わなければならぬ、そういうことを考えておりまして、そのためのいわゆる研究をいまこれから進めることにいたしておりますので、その点御了承願いたいと思う次第でございます。
  301. 塚田大願

    塚田大願君 まあ、環境庁長官のお話は、これからのお約束ですから、これからもぜひひとつ、そういう点では、私どもも、十分お話が実現できるように見てまいりたいと思うのです。  時間がございませんから、次に補償問題についてお伺いしたいのですが、先ほどもちょっと出ましたが、現地の漁民の皆さんが緊急の特別融資をしてくれ、六億九千万円の特別融資を求めておられるのに対して、十四日の閣議では、天災融資法並みの三分利息の緊急融資をするということがきめられたかに聞くのですけれども、それは閣議の決定となったのですか。どうなんですか、その点をまずひとつお聞きしたいと思うのです。
  302. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) これは閣議で決定する性格のものではございません。大蔵省とか農林省の折衝だけでできるものでございますが、あえて山中農林大臣代理から閣議に報告がございまして、皆さん喜んで了承したわけでございますので、当然、これは大蔵、農林省の間で解決したものと思います。
  303. 塚田大願

    塚田大願君 じゃ、さしあたりの融資としてはまず、これは当然のことだろうと思うのですが、問題は、やはり先ほどから出ました油濁保険、国際的なPI、TOVALOP、CRISTAL、この保険の問題でありますが、これはいかなる被害者の——この補償の問題ですけれども、どういう被害者にこの保険が払われるのか。つまり直接的な被害ですね、たとえば魚介類、こういうものに被害が起きる、これに対して当然これは補償されなければいけないと思うのですけれども、いわば間接的な被害というものに対しては、どういうふうになっておるのか、ひとつお聞かせ願いたいと思うのです。間接的といいますと、たとえば魚がもう来なくなった——学者はそう言っています。学者は、魚は来なくなるといっております。それから漁獲高が減ってくる、当然。おまけに、とにかくもう魚価が非常に暴落する。こういうことも一つございましょうし、また、網や漁船というものが非常に被害を受ける。特に網など、私、今度行きましたら、定置網——あの辺は定置網が盛んなところですけれども、定置網は、一回張るのに六百万円かかるそうですね、借金をしてやった。ところが、とたんにこれはやられた。たいへんみんな困っているのですが、こういう漁網であるとか漁船の被害がどうなるのか。それからさらに魚の小売り商ですね。あの辺は、先ほども話が出ましたが、かあちゃん連中がてんびんで魚を売り歩いている、漁師のおかみさんたちが。こういう地域でございますけれども、そういう人たちなどに対する補償はどうなるのか。さらに大きく言えば、日本海全体が汚染をされてくる。私は、農林省の日本海区水産研究所で聞いたのですけれども、日本海というのは、いわば湾のような形になっている、出口が非常に狭い、だから一回汚染されたらもうほとんど回復はできないんだと、こういうふうに農林省の技術者は言っております。だから、そういうことを考えれば、この被害というものはたいへんなものですが、こういう間接的な被害についてはどういうふうに支払われるのか、それをお聞きしたいと思います。
  304. 原田昇左右

    説明員原田昇左右君) ただいまお話の間接的被害でございますが、この点は、私どもとしては、研究課題でございまして、だれが見ても今度の油の事故によって受けた損害であるということが第三者的に立証される被害であれば、当然これは支払われるべきものであろうかと思います。さらにその間接的なものについて、はたしてうまく支払い対象になり得るかどうかということについては、今後の検討課題ではなかろうかと思います。
  305. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) こまかいことは別といたしまして、基本的にはやはりでき得る限りの、直接被害も間接被害に対しても、政府は責任を持って解決してやらなければならないと思います。この補償の問題は、先に損害賠償をとることでございますが、これはもちろん運輸省が一応その窓口でございましょうけれども、運輸省だけに押しつけてはたいへんでありますから、政府自体の問題として取り上げまして、でき得る限りのりっぱな補償をしてあげなければならぬと思います。そして先ほど杉山委員からお話のありましたような問題を考えまして——これもとのような補償ができるか、具体的なお答え、いまわかりませんけれども、それもあわせて、せめて融資でも何でもけっこうでありますから、めんどうできるような方法において政府は責任を持って努力いたしたい、こう考える次第であります。
  306. 塚田大願

    塚田大願君 すみません、もう時間もきましたが、もうちょっと。  この補償の問題は、漁民の皆さんが非常に関心を持っておりますので、聞かせていただきたいと思います。この三つの保険のうち、TOVALOPとCRISTALは、今度新しくできた保険であります。今度の事件が最初適用のケースだそうですね、世界で初めて適用されるケースに当たるんだそうです。それだけに非常に重要な関心が持たれているわけですが、いま環境庁長官、積極的な姿勢を示されたので、この際、私は、こういう場合にもひとつ大いに考えなきゃいけないんじゃないかと思いますのは、現地へ行きましたら、聖籠村の亀塚浜というところでございますけれども、漁業権は実際は持ってないで、そして漁業をやっておるという方がおられたわけです。これは、なぜ漁業権がないかというと、新潟の東港ができましたときに、土地をみんな買い上げられたり、漁場を買い上げられたりして漁業権を失ったという人なんですね。しかし、生きていかなければいけないから、あの周辺で漁をしているという、こういう方々が四十世帯、約二、三百人いらっしゃるのですよ。この方々が、われわれは補償がもらえるのかもらえないのかということについては、非常に真剣に考えている。とにかく漁場も農地も失って、そしてようやくいま漁で生活しているのに、今度またこの漁場が汚染されたということで、とにかくこういう漁業権のない方々がおられるのですが、私は、こういう方々に対してもやはりあたたかい手を差し伸べる必要があると思うし、また、その他事故現場付近の民家は、あの事故が起きましたときに、あの強い風で油が全部家にかぶって、たいへん家そのものが汚染されたような地域がございます。これは室町地区というのですけれども、何百戸かございます。こういう方々、あるいは先ほど出ました海水浴場の浜茶屋の皆さんの問題、こういう問題を考えますと、非常にたくさんございますので、やはりこういう方々に対してもひとつ積極的な手を差し伸べる必要があるし、また、政府は、こういう方々にも補償が渡るように、御努力願う必要があると思います。  そこで時間もございませんから、もう一つお聞きしたいのですが、この被害額の算定というのは、一体どこでおやるになるのでしょうか、この国際保険については。最終的な被害額の要求額算定。
  307. 藤村弘毅

    政府委員(藤村弘毅君) 漁業につきましては、漁業者が要求額を自分で算定する責任があると思いますが、その算定のための科学的根拠なり影響の程度なりを私どもとして調査いたしまして、漁業者に対して十分な指導をしたいと考えております。
  308. 塚田大願

    塚田大願君 そこで、提案が一つあるのですが、先ほど杉山先生も、これについて関連したようなことをおっしゃったと思うのですが、私は、今度の被害額を算定するのは政府や県だけでやるのではなくて、やはりこの被害者の皆さんですね、あるいはこの漁民の代表の方々であるとか、あるいは専門学者、あるいは国や県の研究機関、専門的な研究機関あるいは関係団体、こういう大規模な被害実態調査機関のようなものを設けられまして、今度はとにかく日本で最大な事故なんですから、しかも相手が外国の会社ですから、やはり相当大規模で民主的にできた機関で調査を徹底的にやっていただくと、そしてまた同時に、これは急ぐ必要があるのですね。というのは、TOVALOPは、御承知のとおり、請求期間が一年しかないのですね。このTOVALOPという保険は新しい保険ですが、ぐずぐずしていると、期間が過ぎたら請求権をもう失ってしまうという危険性がある。それだけに、早くこういう機関を設けてひとつやっていただきたいと思うのですが、その点については大臣どうでしょう。
  309. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) ただいまの御意見に同感でございます。私も、かねてそのような主張をいたしまして、できるだけすみやかな調査なり対策を立てるように努力してまいりたいと考えます。
  310. 塚田大願

    塚田大願君 そこで、この補償問題について、最後にひとつだけ聞きたいのですが、この支払いがいつ行なわれるのか、この期間の問題、これは何しろ国際的な交渉になりますので非常に長期になると思うのですが、しかし、困るのはこれはやっぱり漁民なんですね、漁民が困るのです。ほかの人は直接困らないかもしれないのですが、関係漁民は非常に困って、しかも、あの地域は私の郷里ですからよく知っておりますけれども、非常に零細な漁民の皆さんなんです。ですから、今度も年越しを控えてどうしたらいいかというのでとほうにくれられておるような、そういう状態です。したがって、私は、この支払い補償、この国際的な保険の支払いについては、先ほど論議されましたが、シェルが石油の代理店になったと、今度の三者——荷主、船主の代理店になったということを聞いておりますが、このシェルにその補償を立てかえさせる、そういうことはできないのかどうか。またかりにそれができないとしたならば、むしろ政府がこの際立てかえ払いをしたらどうだと、国際的に取れるものならば。そのくらいやらなければ、実際この被害漁民に対する適切な援助ということにならないと思うのですけれども、その点はどうでしょうか。大臣ひとつ。
  311. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) けっこうなお考えと思います。そういうものを一応十分参考にして検討いたしたいと思います。
  312. 塚田大願

    塚田大願君 じゃ、時間ございませんから、最後に一つ聞かせていただきます。  私は、まだたくさん申し上げたいことがあるんです。たとえば今後の対策の問題なんですが、これは一つには、この問題点としましては、日本海の汚濁をどうして回復するかという問題が一つと、それから今後このような事故を起こさないという問題が一つ、この二点じゃないかと思うんですね。  この第一の汚濁、汚染から日本海を回復させるという問題につきましては、これはもう環境庁長官、先ほどからいろいろな立場でお話しになっておるんですが、これは単なる一般的な方針ではなくて、具体的に進めなければいけないと思うんです。それで、たとえば水産庁関係では日本海区水産研究所がございます。私、参りまして、所長さんその他からいろいろ意見も聞きました。ところが、ここへ行って驚いたことには、資源部と海洋部はございますが、水質部がない。水質部というのは、あれは東海区ですか、どこかにはある。しかし、新潟には水質部、化学の部門がないんですね。だから今度の汚染、ああいう事故が起きても全く手の打ちようがない。技術者もたった十七人しかいない。所長さん以下非常に嘆いておられました。私は、こういうお粗末な研究体制ではなくて、もっと調査、研究体制の拡充のためには、予算を大幅にひとつふやしていただいて、こういう研究を常時やっておくということがどうしても必要なんじゃないかと思うんです。  それから二番目の再び事故を繰り返さない問題といたしましては、先ほどからいろいろ御意見がございました。海洋汚染防止法の改正であるとか、海上安全交通法の問題であるとか、タンカー建造の規制の問題あるいはタンカーの入港制限、こういう問題がございますが、それはみんな私も同感でございます。ただ、私は、最後に申し上げたいし、きょうは、これは通産大臣からお答え願えればよかったと思うんですが、環境庁長官、最後に一つこれだけ聞かせてくれませんか。タンカーのこの事故の最大の原因は何かといえば、単に技術上の問題でなくて、やはり政府のエネルギー政策のあり方が非常に関係するんじゃないかと思うのです。と申しますのは、御承知のとおり、石炭産業はつぶれ、あとは全部石油オンリーだ、タンカーがどんどん建造されて、日本国じゅうタンカーが押し寄せてきたら事故が当然起きる。ここにやはり大きな問題がございますので、このエネルギー政策を石油一本の、しかも、アメリカに依存して急所を握られたようなそういうエネルギー政策でなくて、もっとすべての総合的なエネルギーを開発する、そういう政策が必要じゃないかと思うのです。たとえば……。
  313. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 簡単に願います。時間がございません。
  314. 塚田大願

    塚田大願君 水力、ガス、電力その他原子力も含めまして、総合的なエネルギー政策をとって初めてこういうタンカー事故、石油公害というものを根本的になくすることができるのじゃないかと思うのですけれども、これについて、ひとつ最後に御所見をお聞かせ願いたいと思います。
  315. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) これはあまりにも大きな問題でございまして、私は、なかなか適切な判断もつきかねると思います。ただ、おっしゃるとおり、やはりエネルギー政策については、いろいろと先の将来のことも見通しまして、十分にこれを確立する方法が必要だと思います。どのような方法でいいか、石炭あるいは水力発電というのは大体限度がきていると思いますから、やはり今後は伸びるところは結局原子力発電、原子力エネルギーということになってまいりましょうけれども、そういうときに、また、安全性の問題とか、いろいろな技術的な問題、なかなかそれが大きなエネルギーを持つまでの年月がかかりましょうから、そういうものも十分にしかるべく検討してつくらなければならないと思いますけれども、おっしゃるとおり、基本的には、やはりエネルギー政策につきましては、十分に遠い先のことまで考えたことを確立する必要があると私も思います。
  316. 塚田大願

    塚田大願君 どうもありがとうございました。
  317. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 皆さん長時間どうも御協力くださいまして、御苦労さまでございました。  では、本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後六時十五分散会      —————・—————