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1971-11-12 第67回国会 参議院 公害対策特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十一月十二日(金曜日)    午前十一時十分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         加藤シヅエ君     理 事                 金井 元彦君                 矢野  登君                 杉原 一雄君                 内田 善利君     委 員                 田口長治郎君                 寺本 広作君                 原 文兵衛君                茜ケ久保重光君                 占部 秀男君                 工藤 良平君                 小平 芳平君                 加藤  進君    国務大臣        国 務 大 臣  大石 武一君    政府委員        環境政務次官   小澤 太郎君        環境庁長官官房        長        城戸 謙次君        環境庁長官官房        審議官      鷲巣 英策君        環境庁企画調整        局長       船後 正道君        環境庁自然保護        局長       首尾木 一君        環境庁大気保全        局長       山形 操六君        環境庁水質保全        局長       岡安  誠君        厚生省公衆衛生        局長       滝沢  正君        厚生省環境衛生        局長       浦田 純一君        厚生省薬務局長  武藤き一郎君        通商産業省公害        保安局長     久良知章悟君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        警察庁刑事局保        安課長      関沢 正夫君        法務省刑事局刑        事課長      前田  宏君        工業技術院産業        公害研究調整官  佐々木 亮君        海上保安庁警備        救難部長     貞広  豊君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○公害対策樹立に関する調査  (公害対策樹立に関する件)     —————————————
  2. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) ただいまから公害対策特別委員会を開会いたします。  公害対策樹立に関する調査を議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 杉原一雄

    杉原一雄君 きょうは、主として瀬戸内海環境破壊実態について、その現状並びに今日までとられてきた対策処置、それからこれから進めようとする行政政府の基本的な考え方、プログラム、そうした問題について質問をしていきたいと実は思います。  この前の委員会では、山の問題、鉱山の問題を中心として通産当局にいろいろなことをお尋ねしてきたわけですが、とにかく日本列島は山には山の憂いあり、そうしてまた、平野にも、川にも、悲しみが満ち満ちておる。そうした山と平野と川と、そうしてまた集中的に汚染ないし環境破壊が行なわれているのは海だ。しかも、日本は全体が海で囲まれているというこの地理的な環境条件のある中でも、特にこの瀬戸内海は、周辺これみな陸地であり、なかんずく、その陸地が最近新全総あるいは新産都市計画等開発計画に従って工業周辺に興ってきて、工場が建設されている。しかも、それはそれぞれが連絡もなしにどんどん行なわれているということが、結果的に瀬戸内海がたいへんな状態になっているということを聞かされ、いろいろ見てまいっておるわけですが、環境庁も思いをいたしまして、長官政務次官も、特に出身地関係とキャリアにものをいわせながら、非常に情熱を傾けて、実態把握に御努力になっていると思いますが、その辺のことを踏まえながら、瀬戸内海汚濁現状ということについて、できるだけ詳細にその現状を御報告いただきたいということが第一点であります。  そして、しかも、それはきのう、きょうの問題でございませんから、環境破壊の年次的なつまりデーター、状況等把握があれば、年次的な経過をひとつこの場で詳細に御報告をいただきたい、これが第二点であります。  でありますから、そうした調査の結果から、おのずから想定されることは発生源の問題になるわけですが、一体、発生源はどこだ、犯人はだれだ、確実につかまれているものについて、そのことを付して御報告をいただきたい。できれば、資料として、瀬戸内海周辺のそうした発生源汚濁状況を示すような資料を付して説明をいただければ幸いだと思います。  これが大きな意味の第一点でございますので、総括的な言い方をしてすみませんけれども、御報告をいただきたいと思います。
  4. 小澤太郎

    政府委員小澤太郎君) 瀬戸内海汚濁現状は、私も、先般、視察をしてまいりましたが、杉原先生御指摘のとおり、まことに憂うべき状態にございます。お話しのように、最近特に工場沿岸に多数できました。そのことと関連いたしまして、都市への人口集中が急激に行なわれました関係もありまして、工場排水、それからまた屎尿投棄あるいは生活排水であります下水流入、それからまた船が油を流すというような事実、こういうことがありまして、非常に汚濁が激しくなっております。ただ、その工場地帯あるいは都市地先だけでなく、もはや瀬戸内海全体が汚濁されているという状況でございます。これがいわゆる富栄養化、窒素や燐等排出もかなり多い状態でありまして、そのために、国民の生活環境が阻害されておりますのみならず、赤潮発生を見まして、漁業の被害が非常に大きな状態になっておるような状況でございます。  これは、いままでこのような環境保全ということに対する配慮が十分でなかったという結果でありまして、まことにおそきに失するうらみはありますけれども、今日早急に、早きに及んでこの対策をしなければならぬと、このように環境庁におきましては考えておりまして、施策を進めてまいる所存でございます。  なお、ただいま御要求のありました詳細な事柄につきましては、政府委員からお答えをいたしたいと思いますが、この対策として、私から概括的に申し上げますと、先ほど申しましたように、この原因者は、工場排水、それから屎尿投棄下水流入船舶あるいは工場等から出される油の流入、こういうものが中心になっておるのでございまして、それに対しまして、その原因を押えていくということがこの対策であると存じます。工場排水につきましては、環境基準の水域の当てはめを促進いたしまして、同時に、排水については、厳重にその基準を強化いたしまして監視してまいりたい。屎尿投棄につきましては、これは将来これを廃止する、一切やらせないという措置を講じたい。また、下水につきましては、これまた、遺憾ながら、瀬戸内海沿岸の府県におきましては、全国の現在の下水道の普及の率よりもかなり低い程度の県もございますので、こういう県につきましては、特にその終末処理施設等の促進をはからせることにいたしまして、これを少なくとも全国水準まではもっていきたい、このように考えておるような次第でございます。さらに、なお調査を十分にいたしまして、その原因あるいは汚濁メカニズム、その他の十分な調査を進めると同時に、政府全機構をあげてこの問題に取っ組みたいと、かように考えまして、先般閣議了解によりまして、瀬戸内海環境保全推進会議というものを環境庁に設定いたしまして、これの対策を進めることにいたしておる次第でございます。
  5. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 瀬戸内海におきます水質汚濁の全般的な概況につきましては、いま政務次官からお答え申し上げたとおりでございますが、多少数字にわたりまして補足さしていただきたいというふうに考えます。  いまお話ございましたとおり、瀬戸内海は、面積にいたしますと、大体一万八千六百平方キロメートルということになっておりまして、周囲の人口が現在二千七百万人ということで、全国の約二七%が集中をしておるということでございます。この周辺におきます産業活動でございますが、工業出荷額が約十八兆円ということで、これも全国の約三〇%の地域ということでございます。したがいまして、最近におきます瀬戸内海汚染は、最近の臨海工業地帯の活発な産業活動ということと、それから都市への人口集中ということによりまして、臨海工業地帯地先海面におきます水質汚濁が非常に進んでいるということと、それから問題のもう一つは、瀬戸内海全体が富栄養化の方向に進んでおりまして、赤潮が最近非常に頻発をしておるというようなことが問題の大きなところではなかろうかというふうに考えているのでございます。  そこで、最近の水質変化というお話がございましたので、まだ十分現在資料が整っておりません。したがいまして、とりあえず、私ども手元にあります資料につきまして申し上げますと、これは瀬戸内海の内海についての調査ではございませんで、主要な港湾の中におきます水質変化を御報告申し上げたいと思っております。多少年次が精密でございませんで恐縮でございますが、手持ちの資料から申し上げますと、まず神戸港でございます。神戸港につきましては、四十四年度と四十五年度につきまして比較いたしますと、まずPHでございますが、四十四年度は最小が七・九、最大が八・六ということでございます。それから四十五年度に至りますと、最小が七・五、最大が八・一と、多少の変化が見られるわけでございます。CODにつきましては、四十四年度で最小が一・三PPM最大が五・五PPMということでございます。四十五年度にいきますと、最小が〇・二PPM最大が一・四というふうに、非常によくなっているというような傾向を示しております。油分につきましては、四十四年度の調査がないわけでございますが、四十五年度におきましては、最小が〇・二PPM最大が七・二PPMという状態でございます。  次が姫路港でございますが、これは四十三年度と四十五年度を比較いたしますと、PHにつきましては、四十三年度、最小が七・九、最大が八・七、それから四十五年度におきましては、最小が六・三、最大が八・二と、多少の推移がございます。それからCODでございますが、これは四十三年度、最小が二・〇PPM最大が六・五ということでございますが、四十五年度におきましては、調査時期の関係もあろうかと思いますが、最小が一・七、最大が一七・四というような大きな数値を実はこの調査では示しております。油分につきましては、四十三年度は、最小ではほとんど検出されないという状態で、最大が九でございますが、四十五年度におきましては、最小最大とも、ほぼ検出をされないような状態でございます。  それから、次は水島港でございますが、水島港が、四十二年度と四十五年度の比較でございます。PHにつきましては、四十二年度の最小が七・五、最大が八・四でございますが、四十五年度におきましては、最小は八・〇、最大が八・三ということになっております。それからCODにつきましては、四十二年度、最小が一・六PPM最大が五・七PPMでございまして、四十五年に至りましては、最小が一・〇、最大が二・四というふうに、よくなっております。それから油分でございますが、四十二年度、最小がゼロ、最大が一・二ということでございます。それから四十五年度は、最小がゼロ、最大が一・六というような、ほぼ横ばいを示しております。  それから福山港でございますが、福山港が四十二年度と四十五年度の比較でございますが、四十二年度のPH最小が五・〇、最大が八・三、四十五年度は最小が六・〇、最大八・一でございます。CODでございますが、四十二年度、最小が一・八PPM最大が一PPMでございます。それから四十五年度は、最小が一・九、最大が一四PPM、ほぼ横ばいでございます。油分に対します調査は、これはちょっとございません。  それから徳山下松でございますが、これが四十三年度と四十五年度の比較でございます。四十三年度のPH最小七・〇、最大八・九、四十五年度が最小七・五、最大八・二というふうになっております。CODにつきましては、四十三年度、最小が〇・七PPM最大が七・五PPM、それから四十五年度が最小一・一、最大が七・四、ほとんど横ばいでございます。それから油分につきましては、四十三年度、最小がゼロ、最大が五・八でございますが、四十五年度は、すべて〇・三PPM以下ということになっております。  それから宇部でございますが、四十四年度、四十五年度の比較でございます。四十四年度のPH最小が一・六、それから最大が八・五でございますが、四十五年度は、最小が七・〇、最大が八・六というふうに、これは改善をされておるようでございます。それからCODでございますが、四十四年度、最小が〇。四PPM最大が一三・二PPM、四十五年度におきましては、最小が〇・六、最大が六・四ということで、これも改善が見られます。油分でございますが、四十四年度、最小がゼロ、最大が二・五PPMでございますが、四十五年度におきましては、すべて〇・三PPM以下ということになっております。  広島湾でございますけれども、四十二年度と四十五年度の比較でございます。まず四十二年度でございますが、PHにつきましては、最小が七・九、最大が八・一でございますが、四十五年度は、最小が七・一、最大が八・三、大体横ばいでございます。それからCODにつきましては、四十二年度の最小が一・二PPM最大が六・六PPMでございますが、四十五年度、これも調査時期の問題だと思いますけれども最小が〇・四、最大が二〇PPMという、非常に大きい数値を示しております。油分につきましては調査がございません。  以上のように、これは港湾でございますので、いわば瀬戸内海の中で一番よごれていると見られるところの推移でございまして、多少まあ時期の変化によりましょうけれども、悪化しているところもございますが、総体的には、少しずつではありますが、よくなっているというふうに見られるのではなかろうかというふうに考えております。  それから赤潮発生状況を申し上げますと、二十五年から三十年におきましては、大体四件から五件というのが赤潮発生件数でございましたけれども、三十五年以降急速に増加をいたしております。これも経年的に多少申し上げますと、三十五年が十八件でございます。それから四十年が四十四件、それから飛びまして、四十二年が四十八件、四十三年が六十一件、四十四年が六十七件、四十五年が七十九件というふうに、件数が非常に増加することと、もう一つ特徴的なことは、一件当たりの発生継続日数が相当増加いたしておりまして、やはりこれは広範に赤潮発生をしているということを示しているのではなかろうかというふうに考えております。  それから、この原因でございますけれども、なかなか現在確実なことを申し上げる段階ではございませんで、目下——後ほど御説明を申し上げたいと思っておりますけれども瀬戸内海環境保全対策推進会議というものを設けまして、いろいろ原因究明に当たるということにいたしておりますが、多少推定も入りますし、誤差もあろうかと思いますので、その点は御了承を得たいと思っておりますが、私どもの現在の推定におきましては、大体瀬戸内海排出されます工場排水、これは四十年度におきまして九十七億トン程度というふうに推定をされております。これが四十三年度で百二十二億トン程度というふうに、相当増加をいたしておるのが現状でございます。これをBOD換算をいたしまして、家庭下水との割合、これも推算でございまして、必ずしも正確なものであるというふうには考えられませんけれども、四十四年度におきましては、その比率が一六対八四といいますか、その程度、大体そういうような比率で、家庭下水が一五ないし一六程度工場排水が八四ないし八五程度BOD換算によりますシチュエーションというふうになろうかというふうに考えております。家庭下水のほうもやはり相当ふえておりまして、家庭下水そのものの量を必ずしもうまく把握いたしておらないのでございまして、資料として不備で恐縮でございますけれども、私ども工場排水家庭下水との合計が、四十二年度と四十四年度でどの程度伸びているかというのを推算をいたしておりますが、大体、合計額で三〇%ぐらいはふえているというふうに実は考えております。  したがいまして、汚染原因工場排水家庭下水というようなものが考えられますが、それ以外にも、瀬戸内海におきましては、特殊な事情がございまして、屎尿投棄というのが瀬戸内海におきまして現在行なわれているわけでございます。これが四十五年の三月末でございますけれども、大体、日量にいたしまして、三千キロリットル弱というふうに私どもは推計をいたしております。  それから、それ以外の汚染原因といたしましては、やはり瀬戸内海を航行いたします船舶からの油の排出というのがありますし、それからやはり廃棄物、ビニールその他の廃棄物瀬戸内海相当汚染をしているというふうに考えているのでございます。以上が全体的な瀬戸内海におきます汚染現状でございます。  なお、お手元に図面をお配りいたしまして、それぞれ瀬戸内海周辺におきますおもな工場地帯の名前と、それからその下に数字がございますが、この数字は、その地先におきます海水のCODの値を書いてあるわけでございまして、これは四十五年十月から四十六年三月までに各県が行ないました観測の数値を書き入れたわけでございます。  後ほど、それぞれもし地帯別に御質問ございますれば、地帯別現状等はまた詳細に申し上げたい、かように考えております。
  6. 杉原一雄

    杉原一雄君 瀬戸内海というのはどこまでをいうのか知りませんけれども、いまのいろいろPHなり、それぞれ宇部とか、広島湾とかいうことで説明があったわけですが、四国側一つも出てこなかったんじゃないですか。それはどうですか、資料がないという意味ですか。
  7. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 実は、対比して経過を示せという御質問でございまして、ちょっと適当な資料がございませんでしたので、申し上げなかったわけでございますが、四国のほうも、ここにございますとおり、やはり相当汚濁状況はあらわれております。ごらんのやはり燧灘におきます東予新居浜の沖合いにおきましては、CODの値が東予におきましては〇・一PPMから最大一五PPM、それから新居浜におきましては〇・三PPMから最大一一PPMというような汚染がございます。これはちょっと経過資料として不備でございますので、御報告申し上げなかったわけでございます。
  8. 杉原一雄

    杉原一雄君 先ほど政務次官のほうから、屎尿投棄は、これをとめるんだということではっきりおっしゃったわけですね。経済企画庁からいただいて資料の中で、あるいは淡路島の東と西といいますか、それに紀伊水道あるいは各地に屎尿投棄をしてもいいという、これは表向き認められた地点が現在あるわけでしょう。  それで、いまお開きしたいのは、そういうところがその後の政府指導一つずつつぶされているのか、それとも全面的にまだ現状屎尿投棄を認めておるので、近い時点でこれを全部禁止をする、そういう意図なのか。次官のおっしゃる期待として考えているならば、行政処置としてもうすでにとっているのか、とっていなければ、いつとるのか。段階的にこれまでもやってきていると、そういったことが次官の答弁では若干あいまいですから、それをはっきりしていただきたい。
  9. 小澤太郎

    政府委員小澤太郎君) 屎尿投棄につきましては、ただいま局長から申し上げましたように、瀬戸内海全体で一日に三千トンの投棄をやっているわけでございまして、これはもうああいう封鎖した海域に毎日そんな投棄をしておりますれば、海がよごれることは当然でございますので、そこで、投棄する場所を実はきめております。大阪湾燧灘、それから山口県の甲島の南方、それから周防灘、そこにいま投棄をしております。それで、行政指導といたしましては、四十八年には少なくとも半分にしろということで指導いたしておりまして、おおむねそれに沿うて努力しているところもございますし、ところによりましては、努力の認められない点もございます。  そこで、これは私の考えでございますが、先般、瀬戸内海を回りましたときに、関係の知事に会いまして、いろいろ意見を聞きましたし、私の考えも述べたわけでありますが、昭和五十年を目途にして、われわれとしては、屎尿投棄はもう認めないということにもっていきたいが、できるかということを確かめてまいりました。必ずそれをやりたいという意欲が相当強いことを私見てまいりました。そのためには、屎尿処理施設を整えなければなりません。これには財政的な援助も要ると思いますが、その問題につきましては、われわれとしても、関係各省と協力いたしまして努力しますが、何といっても地方の自治体がみずからの問題としてこれに対処しなければなりませんので、その意欲を求めたわけでありますが、おおむね私はいけるんじゃないかと思いましたので、一応めどとしましては、五十年にはこれを禁止するというところまでもっていきたい、こう考えておる次第でございます。
  10. 杉原一雄

    杉原一雄君 かなり明確な政策目標あるいはプログラムを示していただいたわけですから、これを可能な限り短縮していただく努力をしていただきたいという希望を付して、この辺のところは終わっておきます。  いま、岡安局長のほうから赤潮の問題が出たわけですが、傾向として非常に急増しているということだけは、全体として掌握できたわけですが、主としてどの辺に発生をしておるのかということを——いま全部の委員にいただいたこの図のところで簡単に御指摘いただければいいと思いますが、一体、どこの辺が赤潮発生が非常に多いのか。それを示していただくことと、あわせて今日時点で、いろいろ政府機関研究機関等動員した赤潮原因究明についての中間的な何か報告ができればしていただきたいと思うのです。  同時にまた、その赤潮が景観としてきれいとか、きれいでないとかでなしに、いまひとつ漁業の面との関連ということについて見解を明らかにしていただきたいと思います。
  11. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) まず、四十五年におきます赤潮発生海域を図によりまして大体申し上げますと、東からまいりまして、大阪湾はほとんど全域いろいろ発生をみておるようでございます。それから神戸の西の高砂の沿岸姫路、それから相生、岡山の地先に至りまして、これはずっと沿岸発生がみられます。それから小豆島の東の海面、これが相当発生しているようでございます。それから、次はもう少し西へいきまして、福山の東、児島湾の西からずっと尾道、三原の東のほうでございますが、その辺がずっと発生地帯。それから南の四国燧灘沿岸——観音寺新居浜、西条、今治に至る沿岸がやはり発生地帯でございます。それから西にいきまして、呉から広島、岩国というようなところの広島湾の北部がやはり発生地帯ということでございます。それから西にいきまして、光、下松徳山、それから防府、山口の沖、それから宇部のところの沿岸地帯、これが発生地帯でございます。それから西にいきまして周防灘沿岸一帯、門司からずっと南のほうまで発生をしております。あと局所におきましてはいろいろあるようでございますが、そういうところがおもな四十五年度におきましての発生地帯というふうにいわれております。  それから、それに対する対策その他の研究状況でございますが、実はなかなか赤潮メカニズムを明らかにするということは困難な事情もございまして、科学技術庁を中心に、四十二年度から四十四年度までの三カ年間、各省協力いたしまして調査をいたしまして、先般、四十三年度の中間報告が出まして、これも公表いたしたわけでございますが、四十四年度まで一応完了をいたしております。ただ、その結果を概略申し上げますと、赤潮原因というものは、窒素及び燐が相当豊富になった海域につきまして発生するということが明らかなようでございますが、ただそれだけではなくて、それ以外の別の因子、いわば引き金が作用いたしまして赤潮発生を見るというようなメカニズムが明らかになっておりますけれども、その引き金につきまして、必ずしもまだ的確な究明ができておらないというような現状と聞いております。そこで環境庁といたしましては、本年四十六年度におきましても、科学技術庁、水産庁と相談をいたしまして、水産庁を中心にさらに赤潮発生メカニズムの解明を深めるというような調査を現在いたしております。それから四十七年度におきましても、予算要求におきまして、さらに赤潮発生原因究明のための予算の要求をいたしておるというのが現状でございます。  それから、漁業に対する被害でございますが——ちょっと漁業の被害、後ほど調べまして御答弁いたします。
  12. 杉原一雄

    杉原一雄君 あとの対策の問題、たとえば次官がおっしゃった瀬戸内海環境保全推進会議というところの今後の作業その他については、またあらためて質問いたしますが、そこで、結局、いま申し上げたような諸問題について、部門的にいろいろ検討されると思いますから、その時点でもう一度、その問題についてのプログラムとか、いろいろなことについてお伺いするわけですが、ただ、国際シンポジウム等でいろいろ国際的な交流なり、情勢分析をした、そういう経過等を若干伺っているわけでありますが、そういう中で、海の汚染の問題、汚濁の問題、その原因究明、きょういただいたこの表による沿岸対策、いわゆる工業排水、産業排水、こうしたものが主たる原因であることはわかっておりますが、あわせかねて、赤潮原因がわからないというところに何かまだ他の要素があるようにも思われるし、非常にささいなことだと思うけれども、いま農薬があるいは河川に流れ込む、それが海に注ぐ、あるいはまた農薬が大気の中に蒸発していって、雨とともにそれが海に落ち込んでくるといったようなことについて、今日まで、それぞれの政府研究機関の中で、そうした問題についてのデータなり、今後の研究の何と申しますか、テーマ設定等が行なわれているのかどうか、この辺のところを一応聞きたいと思います。
  13. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 先に、漁業被害についてわかりましたので、お答えいたしますが、四十四年度におきます漁業の被害を申し上げますと、この瀬戸内海におきます全体の漁業生産額が七百五十一億円というふうに推定されておりますが、そのうち、四十四年におきます被害額が約三十四億円、四・五%というように報告されております。  それから、次に農薬の問題でございますが、実は農薬につきましては、先般の農薬取締法の改正によりまして、危険な農薬につきましての登録の取り消し、使用の規制その他を現在いたしておるのでございますが、それは主としてやはり農地から生産されます農作物、また農作物を経由しましての畜産物等に対します被害を予想いたしましての規制でございます。もう一つは、直接たんぼから河川に流出いたしました際の河川におきます魚族に対する被害等も考慮しまして、一過性農薬の指定もいたしておりますが、それが流れ流れいたしまして海のほうに出まして、さらにそれが海底等に堆積をするというような状況が言われておりますが、現在、それに対します詳細なデータを手持ちいたしておらないのでございます。そこで、私どもは、来年度におきましては、予算要求をいたしまして、農薬を農地にまいた場合には、それがどのように分解をし、それがどのように流出をするかという、いわば収支機構、これも必ずしも明らかでないわけでございますので、それらの調査をいたすべく予算要求をいたしまして、そこから始めまして、結局、現在のように、農薬が散布された場合に、まずどれだけ流出をするか、その流出がそれぞれどういうふうに沈降をし、堆積をするかというようなメカニズムをこれから実は調査をする段階でございます。
  14. 杉原一雄

    杉原一雄君 そうしますと、もう一度申しますが、あるいは広島湾の底にこういう状態になって蓄積されているというようなことなどは、まだ明確に実証できる段階ではない、瀬戸内海全般でもそうなんだというふうにとっていいわけですね、これからだということですね。
  15. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 現在の状態を明らかにするような資料を持っておらないわけでございます。
  16. 杉原一雄

    杉原一雄君 そこで、これは想定できることですから、政府としていま予算にそれを何しまして、これからひとつやるんだということなんですが、やはり本格的に取り組んでいただけるわけでしょう。もう一度確認したいと思います。
  17. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 実は、来年度予算におきましては、農薬だけではございませんで、私ども考えておりますのは、農薬、肥料を含めまして、農地にインプットされるといいますか、投与される物質がどのような形で、どのような時期にこれが出ていくかというような収支を明らかにいたしたい。これが必ずしも明らかでないわけでございます。そういうことを明らかにいたしまして、農薬、肥料等の第二次、第三次汚染の経路を調べたいというふうに考えて、それらの予算を現在要求しておるということでございます。
  18. 杉原一雄

    杉原一雄君 それでは、また問題をころがしていきますが、今後の対策ということで、次官のほうからも大体触れられた点もございますので、重なると思いますけれども、先ほど次官がおっしゃった、十月の八日に発足しました瀬戸内海環境保全対策推進会議、こういうのが設置されて、大臣並びに次官中心になって積極的に瀬戸内海環境破壊の問題に取り組むという意欲的なものだけは、私承知できました。  そこで、重ねてもう一度私たちに、推進会議の目的とか、それから今後の作業工程、どういう作業工程をもって進められるか。できれば、具体的にはっきりお知らせいただければと思います。
  19. 小澤太郎

    政府委員小澤太郎君) ただいまお話のありました会議を持ちましたのは、御承知のように、関係各省庁の総合的な協力を得まして、最も総合的な、効果的な施策を進めるにはいかにすればいいかという具体的な方法を編み出せるかということが目標でございまして、それには、先ほどからお話のありました瀬戸内海汚濁の実況、実情、またはその原因等の究明を進めることはもとよりでございますが、これの対策の具体化を進めるために四つの分科会を設定いたしました。水質汚濁の分科会、赤潮対策、さらに自然保護の対策、それに加えましてマスタープランをつくるという分科会をつくりました。この分科会においてそれぞれ専門的に掘り下げてまいります。  そして、一応のめどといたしましては、昭和四十六年度、四十七年度において実施すべき事項につきましては、少なくとも今年じゅうにその結論を得たいと、こういうスケジュールで進めておるような次第でございます。
  20. 杉原一雄

    杉原一雄君 四つの分科会を設定されて、マスタープランを最終的にはつくりたいということでして、答弁の中で、最後に四十六、四十七年にどうあってもやりたいことはすみやかに結論を出すことという受けとめ方をしたわけですが、きわめて弾力的な効力のある方法だと思うんですが、しかし、ほんとうに政務次官が、すばらしい海に戻ったといって、もう一度汽車の窓から望んで、うるわしの瀬戸内海だという方向に持っていくためにはプランができなければならぬわけですが、これには何か年次的なめどをつくっておいでになるのかどうか、ひとつ出たとこやってみてということなんですか。これをここで紹介することができれば——先ほどの下水道のやつは、五十年で勝負をするというようなことをおっしゃったわけですが、次官のほうで、このプランを推進会議で何年度までひとつがんばってみたいというような目標年次があればお示しをいただきたいと思います。
  21. 小澤太郎

    政府委員小澤太郎君) マスタープランの分科会で総合的に将来のひとつ絵を描かなければなりません。これは、実は環境庁の企画調整局で担当しております。もう一つの大きなプラン、いわゆるビジョンをつくり上げると、こういう作業と関連をいたしておりますし、さらにまた、先ほどお話になりました政府の新しい全国総合開発計画、あるいはまた経済社会発展計画と、こういうものとの関連も考えながらやらなければなりません。  で、元来からいうならば、そのようなマスタープランができまして、そのめどが立った、それに合わせて施策を進めていくというのが一つの進め方であろうかと思いますけれども瀬戸内海現状は、そのようなスケジュールでは、むしろ追いつかないのではないかと、そこでマスタープランを立て、これもできるだけ近い年度において——総合的なビジョンは一応六十年を目標にいたしておりますけれども、六十年の目標では、瀬戸内海に限ってはそこまで延ばすわけにもまいりません状態でございますので、このマスタープランをできるだけ近い年度のうちに解決できるような努力をいたしますとともに、他の分科会におきましては具体的な施策を進めてまいる。たとえば赤潮の問題につきましても、いろいろ原因というものがあると思われます。先ほどもお話がありましたように、引き金が何であるかという究明が、まだそのメカニズムがはっきりいたしておりませんけれども、少なくとも海の水が富栄養化しておるという状態、この状態があるために赤潮が起こるという条件を提供しておりますから、その条件を消すということで、先ほど申しました工場排水の規制を厳重にするとか、屎尿投棄は五十年でやめさせるとか、下水の処理は早急に充実させるというようなことを具体的に進めてまいりたい、こういうような考えでやっておるわけでございます。
  22. 杉原一雄

    杉原一雄君 十一月の二日の日であったと思いますが、ブルガリアの科学アカデミーのストイッチエフ博士と二時間ばかり懇談会を持ったわけですが、向こうは、御承知のように、陸と陸との国境でございますから、特に河川などのときには、隣の国から流れて隣の国に入り込むという結果になりますので、ダニューブ川の汚染は、かなり上流で河川が汚染すれば下流ではそのために被害を受けるというような、直に国際的な関連を持つ公害問題、公害処理という問題がついて回るわけですね。そういう話を聞きながら瀬戸内海を思うときに、瀬戸内海もまた一県や二県や、三県や四県の問題でございませんで、非常に各県とも大きな関連を持ち、しかも、それはまた時と場合によっては日本海に流れ込み、また太平洋に流れるといったような、水は万国に通ずるということわざどおりの被害が拡大するおそれがきわめて大きいのであります。せめてこの瀬戸内海というワクの中で、いま六十年度という目標年次を定めながら、それぞれ四分科会に分かれて努力目標を設定されておるわけですが、これはきわめて強い国民の要望であり、あるいはこうした問題に心を砕く者としては、政府努力に大きな期待を寄せたいと思いますので、ひとつ全力を傾けてがんばっていただきたい、このことを要望申し上げます。  次に、先般四十七年度の予算案について、企画調整局長から説明を受けたわけでありますが、その中で、特に瀬戸内海大型水理模型の建設と、そのおもなるねらいということで、模型の建設について十二億ばかりの予算を大蔵省に出しておるのだという説明を実は受けたわけであります。  そこで、そこに担当の方がおいでになっておると思いますが、この水理模型の建設ということについて、すでに東京湾の経験も実はあることでありますから、かなりねらいというものは、はっきりしておるだろうし、かつまた、これからマスタープラン建設への大きな示唆をつかみ出すための年次的な目標等もあるだろうと思いますので、これの主たるねらいはどこにあるのか、また想定される期待は何であるかというようなことなど、詳細にお示しいただければと思いますので、この問題にしぼって質問集中しますが、お答えをいただきたいと思います。
  23. 佐々木亮

    説明員(佐々木亮君) 瀬戸内海周辺は、今後とも工業的な非常に重要な役割りを果たす地域でございますが、工業活動が同地域の環境破壊をもたらすことのないように、各種の施策を早急に講ずる必要があるということは申すまでもございません。そこで、正確な科学的データに基づきまして各種の施策を早急に講ずる必要があるわけでございます。その正確な科学的データ収集のためには、部分的な模型では海域の特性を十分把握できない。先生も御承知のように、複雑な地形をもっておりますところの瀬戸内海全域の大型水理模型によりまして海水汚染の影響等を調査研究することが必要であるということでございまして、昭和四十六年度に広島県の呉市に設立されましたところの中国工業技術試験所の中に瀬戸内海の大型水理模型を建設いたしまして、海水の拡散、海流現象の研究を行なう予定でございます。  現在は、その大型水理模型の敷地等を整地しておるわけでございますが、四十七年度に完成予定でございます。予算的には、四十六年度におきまして三億八千八百五十九万一千円というのが認められております。先ほど先生のお話にもございましたように、四十七年度におきましては十二億四百三十七万一千円というものを要求いたしておるわけでございます。本水理模型の規模につきましては、水理模型自体の面積は七千五百平米でございまして、縮尺は水平縮尺が二千分の一、それから垂直縮尺が二百分の一というものでございます。実際の大きさは、長さが約二百二十メートル、最大幅が約百メートルというものでございます。それで、この模型を中に入れますところの実験所の建屋の面積といたしましては一万七千平米ということでございます。  現在、資料の収集——これは現在ありますところの河川の状況あるいは工場等状況、そういった資料の収集、解析、それから相似論、実際よく相似しておる、相似技術の研究等をやられておりますけれども、本水理模型が四十七年度に完成いたしますが、それから後は汚染の予測の研究、それから瀬戸内海全般の海水交換がどの程度の期間で行なわれるか、あるいは排水の拡散並びに海流現象に関する研究が生態的になされるものと思っております。
  24. 杉原一雄

    杉原一雄君 先ほどからいままでの質問は、広い広い瀬戸内海全体の問題で薄く広くいろいろな状況報告なり、対策を承ってまいりました。今度は、そのうちのある局部を特に指摘いたしまして、その状況等把握から、これまた全体の対策にも通ずると思いますので、特に私がこれから質問したいのは、この図で示されている新居浜東予、観音寺、多度津、この辺のところに焦点を合わせながら調査実態対策、今後の展望等を実はお聞きしたいと思います。  なお、同僚の工藤委員から大分周辺の問題について後ほど質問が展開されると思いますので、とりあえず伊予三島なり、川之江の周辺状況について実は質問をしたいと思うのであります。大体、いまも指摘しました海域汚濁の主たる産業汚水、排水を流しているのは、これは紙パ、そこにも紙パと書いてあります、パルプであると思います。工場の名前も実はわかっているわけですけれども、その辺の発生源者である会社、工場、一体、何をつくり何を流し、結果的には海域をどのような状況汚染をしているかといったようなことについて質問をしたいわけです。  それだけまず回答いただいてから、いまの問題で質問を続けたいと思います。
  25. 小澤太郎

    政府委員小澤太郎君) ただいま御質問の伊予三島、川之江地域には、私も先般行って見てまいりました。お説のとおり、あの海域汚濁いたしております汚濁源といたしましてはパルプ製紙業等がございます。そこからCOD、SSを多量に排出いたしておりまして、そのために付近の海岸が、沿岸の水域が広範囲に汚濁しておるという実情を見てまいったわけでございます。
  26. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  27. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) それじゃ、速記を起こしてください。
  28. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 概況は、いま政務次官からお答えしたとおりでございまするが、具体的に申し上げますと、ここにおきます製紙のおもな工場は四つございまして、大王製紙、丸住製紙、四国製紙、愛媛製紙というのが大規模な工場でございますが、それ以外にも中小の工場が相当立地いたしておるわけでございます。ここから出ます排出量は、大体排水いたしております日量約四十万トンというふうにいわれておりまして、その排水によりまして沖合いが相当汚染をいたしておるというのが現状でございます。
  29. 杉原一雄

    杉原一雄君 それだけしかわからないですか。詳細という意味は、そういうことではだめなんで、いま工場面のことは正直におっしゃられましたが、四十万トンの水が流れておるからよごれておるというだけでは詳細な説明にならぬと思いますが、一々指摘しなきゃならぬなら指摘しますよ。しかし、私は、やはりその影響で海水浴ができないとか、特に漁業は漁民がおかへ上がったのでしょう。かっぱがおかへ上がっちゃったのでしょう。そうした経過をも含めてあるわけですが、一体どういう状態になっていて、対策もほんとうは聞きたいわけですが、詳細にやりましょうか。とにかく紙パルプ工場排水があって、いまおっしゃったように、たくさんの排水が出る、海はよごれていると、ここまでは見に行かぬでもわかるのですよ。私が聞いているのは、どういうものが流れているか。紙パルプだから何が出るか見当つきますよ、しかし、いろいろな因果関係がございまして、海のよごれはこういう関係でよごれたんだということで、他の因子を引っぱり出すのは企業家の常套手段ですから、そういうようなことなど、十分点検していただいた結果を聞きたいわけです。それでなければ対策は出てこないだろうし、また海の水は流れているわけですからね。これが瀬戸内海全般に及ぼす影響も大きいですから、ひとつ原点をしっかりと押えていかなきゃならぬと、そういう意味で、私は、海域汚染状況ということで簡単に質問をしたけれども、内容はそう簡単な答えでは済まされないと思うんですよ。もう少しはっきり聞かしてください。
  30. 小澤太郎

    政府委員小澤太郎君) 私が現地へ行って見てまいりましたので、私の知っている限り御報告申し上げたいと思います。  ただいま御指摘の大きな規模のパルプ工場、小規模の紙の工場はたくさんございます。それから排出されます排出物があの港を汚染しておるばかりでなしに、それが流れまして隣の香川県の沿岸に押し寄せてまいっております。あの燧灘は、御存じのように、瀬戸内海のちょうどまん中にありまして、東西の水道から入ってまいりまする潮があそこで停滞するかっこうになっております。それが、潮のかげんもありまして、燧灘の香川県側の沿岸にもずっと押し寄せてまいります。これが原因となって、漁業関係者から聴取したところによりますと、あの地域の海のモがすでになくなってしまっておる。したがって、その関係から、魚の繁殖する場所がなくなってきておる。そのために底魚等が絶滅に瀕しておる。かてて加えまして、燧灘屎尿投棄その他の原因が重なりまして赤潮発生しておると、こういう状態で、香川県側の——もちろん愛媛県側もでございますけれども、主として香川県側の漁民が大きな被害を受けておるというのが現状でございます。  そこで、両県の問題でありますから、両県ともいろいろ協議いたし、原因の究明等をやっておるれけでございますが、両県の話し合いによりまして、水産資源保護協会と申しますか、そこに依頼いたしまして、第三者から客観的な調査を求めたわけでございます。その結果は、この工場排水が寄与しておる、寄与率が五〇%をこえるんじゃないかと、こういうような報告が出ておるわけでございます。そこで、漁業者としては、原因工場排水にあるということを信じておりまして、そのために、会社等に対しましての補償の要求等、両県といろいろ話し合った上でやっておるわけでございまして、話し合いがまとまらないために、中火の公害審査委員会に持ち出して、提訴しておるというような、調停をお願いしておるというような状況でございます。  私が聞きましたのはそういうような事情であるということを御報告申し上げます。
  31. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 先ほど対策お話がございませんでしたので申し上げなかったわけでございますが、いま政務次官から申し上げましたような漁業被害を中心とします被害がございましたので、大体これらによりまして汚染される海域は、沖合が約四キロ、東西約十キロぐらいに及んでおるというふうに私ども考えましたので、これに対しまして、経済企画庁——当時の経済企画庁でございますが、四十五年の十月に、推進会議に伊予三島・川之江の部会を設置いたしまして御審議を願いまして、四十六年の一月の二十日に水質基準というものをきめていただいたわけでございます。それから、環境基準につきましては、四十六年の五月二十五日に閣議決定をいたしまして環境基準をきめたわけでございますが、その考え方を申し上げますと、先ほど政務次官からお話がございましたとおり、この汚染が香川県との県境であるということで、他県への影響とか、水産業、また利水の現状等を十分勘案いたしまして、先ほど申し上げました汚染海域、沖合い約四キロ、東西約十キロに及んでおります汚染海域を、四十八年度までにはその汚染海域を沖合い一キロ、東西四・五キロ程度に縮小するというような目標で環境基準並びに排水基準をきめたわけでございます。その規制が、実は各企業の公害防止施設の建設の状況その他を勘案いたしまして、一般的には、規制が発効いたしますのは四十七年の一月の二十日でございますし、CODにつきましては四十七年の四月の一日ということになっておりますが、それらの規制が発効いたしますと、CODにつきましては、現在日量で約三百トン、COD換算三百トンの負荷量が出ておりますが、その七割を除去いたすという目標にいたしておりますし、ヘドロの有力な原因でございますSSにつきましては、これも負荷量に換算いたしまして、日量約百六十六トン程度出ておりますものを、やはりこれも七割程度圧縮する、七割カットをするというようなことをねらっておるわけでございます。これらの規制に対処すべく、愛媛県におきましては、現在、水質汚濁防止法によります上のせ基準の準備もいたしておりますし、各企業におきましても、それぞれ期限は厳守できるように施設の整備をいたしておる現状でございます。  以上、御報告を申し上げます。
  32. 杉原一雄

    杉原一雄君 まだ前段の汚染状況などについて不十分だと思いますから、重ねて質問いたしますが、いまの答弁なさった中の一番最後の関係ですね、四十六年の一月二十日に出された排水水質基準ということなんですけれども、大体、目標年次もあるいは基準の内容も概略御説明いただいたわけですが、その際、大王製紙にしぼっていったら、大王製紙に要求すること、期待するところはどんな基準といいますか−そういうものなど、一月二十日のその時点ではっきりきまったんじゃありませんか。もしその資料があれば——私、ここに資料があるんですよ、正直なところを言ったら。いろいろ調べてみて知っているんですが、公的な機会ですから、明確にしてほしいと思うんですが、それはなぜかと申しますと、ことし一月、知事選挙があったときに、ぼくは現場に行ってきたんですよ。ところが、現場に行ったら、衆議院がすでにここを調査していっている、衆議院議員がですね。行政視察として調査していっているわけですから、そのあとはやはりわれわれ議会側としてきちんと追い詰めていかないといけないと思う。私は、現場のあの状況を見て、議員の一人としてそういうことを強くみずからの心に誓ってきたんです。  そういう意味もあって、この問題をしつこく申し上げるわけですが、いま一月二十日の水質基準のこの決定の段階において、特に伊予三島、川之江水域ということになると思いますけれども、その中でも、四十八年度を目標に、あるいは百八十トンに減少することを見ているなどというような、CODなどに対するいろいろな規制の目標も示しているわけですが、最後に大王製紙のところは、どういうふうにそこできまっているんですかね、それを聞きたいと思います。
  33. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 大王製紙につきましては、現在、日量排水量にいたしまして十五万トン程度排水をいたしておりまして、規制のかかる前におきましては、ほぼその水質は、CODにいたしまして千二百三十PPMというような水を排水いたしておるわけでございます。これを負荷量に換算いたしますと、百八十五トンということになるわけでございます。これは来年の四月からかかりますCODの規制は、PPMにいたしまして二〇〇PPM以下にする。一二三〇PPMを二〇〇PPM以下にする。それからこれを負荷量に換算いたしますと、百八十五トンの負荷量のものを三十トン以下にするということになるわけでございまして、大王製紙につきましては、八割カットをしなければこの基準達成に至らないということになるわけでございます。大王製紙は、これに対処いたしまして、沈でん池、それ以外の工程改善の工事その他をやっておりまして、約三十八億六千万円程度の投資を予定をいたしまして、現在、その工事を進めているというのが現状でございます。
  34. 杉原一雄

    杉原一雄君 それで私の持っている資料と一致いたします。ただ、最後の段階で年次を示し、かなりきつい規制を加えていかれるわけですから、これは地域住民の立場から遠慮会釈なく申し上げれば、ほんとうにもっともっと厳正にやっていただきたいと思います。  ほんとうは海の汚濁汚染だけじゃなしに、大気汚染があって、これは杉の木はないわけですけれども、松の木が枯れているわけですよ。そういう問題にも触れたいわけですが、実は、きょうは瀬戸内海ということでしぼっておりますから、水から上へ上がらないようにつとめて努力しまして、水の問題にしぼっていくわけですが、そこで、先ほどの説明の中で、いまのように、いろいろ指摘すればお答えがいただけるわけですけれども、私は、ばく然とこの川之江、伊予三島周辺燧灘その他の海の汚染状況はどうかと、こう申しましたから、先ほどの答弁では、きわめて不満なんです。そうした答弁ぐらいなら、私も、簡単に手に入れようと思えば入れられますから。愛媛県にしても、香川県にしても、特に該当県の愛媛などは、県独自の立場でいろいろ調査もし、あるいは大学の先生に委託をして、その調査の結果が六月三十日に発表されたということも資料として持っておるわけですから、ただ、そういうことを私がわかっているというだけではだめなんで、皆さん自身がいろいろな機関を総動員して把握していただいて、それを行政ベースに載せていただきたいという期待がありますから、重ねて、どこの工場からどういうものが出て、海の現状はどうなっているんだというようなことをお聞きしたいわけですが、たいへんやっかいな質問をしますが、岡安さん、どうですか、お答えいただけるでしょうか。
  35. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) それでは、おもな工場につきまして、私どものわかっております資料を申し上げますと、大王製紙につきましては、先ほど申し上げましたとおりでございますが、次にやはり大量の水を排出いたしております丸住製紙につきましては、日量排水量が約七万トンでございます。これの水質CODで六〇三PPMということでございまして、それを負荷量に換算いたしますと四十二トンということになるわけでございますが、これがCOD規制は、工場の規模からいきまして、また製紙法からいきまして一四〇PPM以下にするということでございまして、負荷量に換算しますと十トン以下ということで、これは四分の一以下にカットされるということになるわけでございます。  それから四国製紙でございますが、これの日量排水量は一万五千トンということでございまして、その排出水質は二二四PPMCOD換算で二トンということになりますが、これは規制後は、PPMにしまして七〇PPM、負荷量換算で一トン以下、約半減をするということになるわけでございます。  それから愛媛製紙が日量一万二千トンの排水量でございますが、その排出水質が一八五〇PPMでございます。との負荷量換算は二十二トンでございます。これは規制値が一〇〇PPMということになりますので、これは相当カットしなければならない。その規制の負荷量が一トン以下ということでございますと、相当カットしなければならないということになっているわけでございます。  それから水質状況でございますが、私の多少手持ちがございますので、二、三申し上げますと、これは伊予三島の地先海域におきまして、四十五年の八月とことしの四十六年の九月において同地点を観測いたしました結果で、DOとCODにつきましての数値を二、三申し上げますと、これは十一点ばかりやっておりますが、そのうち二、三御紹介申し上げますと、第一の測点というものでありますが、これが四十五年におきましてDOが上が八・一、中が九・三というものが、四十六年におきましては七・八と六・四になっておる。CODにいたしましても、上が二二・八、それから中が八・八ということでございますが、それが四十六年には六二、七・一というふうに減っております。もちろん減ったのが、工場にもそれぞれ段階的に規制をいたしておりますので、規制の関係であるか、あるいはいろいろ高潮その他の現象もございましたので、そういう海流等の変化によるものであるか、必ずしも明確ではございませんで、そういう解析はまだ十分いたしておりませんけれども、そういうような数値を示しております。  測点の二につきましても、同じように申し上げますと、簡単にCODだけ申し上げますと、四十五年におきましては、上が四・六PPM、中が一・六PPM、それが四十六年におきましては一・一、一・二というふうに変化をしております。大体が非常に減った数字を示しておりますが、測点の六というところでは多少ふえておりまして、それが六・八から一・七というのが七・七から二・五というふうに、これはふえております。しかし、概況といたしましては、相当減った数値を示しているというのが私どもの測点におきまして測量いたした結果でございます。
  36. 杉原一雄

    杉原一雄君 それで、いろいろ海水が汚濁すればわれわれの生活に影響があるわけですが、直接的に一番影響を受けるのは漁業ですね。言うてみれば魚です。この辺のことについて、たしか昭和四十五年の八月に愛媛県が調査をしたデータがここにあるわけです。これによりますと、結論が出てくるわけですね。海岸寺川尻付近にかけては、沖合い二十メートル以内は底に底棲物ゼロである。結論として伊予三島、川之江市境の契川といいますか、を中心とする半径二キロの海域は水産動植物が生息しがたく、漁場として好ましくないという状態にある、こういったことなど、県自体の調査の結果、発表しているわけですが、これに対する判断ですね。つまり環境庁の判断は、そのことをこれは肯定しているのかどうか。もし肯定するとすれば、そこから起こる今度生活の問題、産業の問題、つまり漁業の問題ということになってくるわけですから、この辺のところは、今日までどういうふうに県なり、そこらでとらえてきたか、企業はどういうふうに処理をしてきたか、それが妥当であるかどうか。そうした問題について報告なり、県ごとの資料があればお示しをいただきたい。
  37. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 水産との関係で私の聞き及んでおりますのは、おっしゃるとおり、地先水域におきます被害というものは、これは争いがほとんどないようでありまして、地先漁業権を持っております協同組合、または漁業者に対しましては、毎年あるいは期間を定めまして、パルプ側から補償といいますか、金が支払われておりまして、一応それぞれの約束でもって落着をいたしておると聞いておるわけでございます。  問題は、いま先生のおっしゃいました一キロないし二キロの地先海面ではなくて、それより沖合いでございまして、沖合いにつきまして共同漁業権がございまして、愛媛県のみならず、香川県の漁民もそこに入っている。共同漁業権の場所につきまして、なかなか現在までそういう補償措置が行なわれておらない、こういうところに現在争いがあるというふうに実は聞いておるのでございます。それにつきまして、先ほどもございました愛媛県でも、また香川県といいますか、香川県側の漁業協同組合でも、それぞれ別途いろいろ権威ある機関に調査を委託いたしまして、沖合いの漁場が異常減少してきた原因が何にあるのか、それはヘドロの異常堆積であろうと、先ほど政務次官からお話ありましたとおり、そこらの周辺におきましては、海藻その他がなくなってきたり、異常な状態になっておるんでございますが、そのヘドロの対策につきましての見解といいますか、それが必ずしも一致をいたさないものですから、沖合いの漁業に対します措置が現在行なわれておらず、争いになっておる。それにつきましては、現在、香川県側の漁民から中央公害審査委員会のほうに過去におきます損失の補償の要求が出ておりまして、その要求の内容を簡単に申し上げますと、補償金といたしまして十億二千二百万円を支払え、それから堆積をしましたヘドロを除去をしてほしい、それからヘドロの除去までの間は操短をしてもらいたい、こういうような要求が中央公害審査委員会に提示されているというような現状でございます。
  38. 杉原一雄

    杉原一雄君 岡安さんね、先ほどの答弁の中で、もう一度念を押したいことがあるんですね。いま、大王製紙に限ることは何ですけれども、愛媛——四国全部に通ずるわけでございますけれども、先ほど非常に具体的でございましたから。大王製紙の場合、CODが平均二〇〇PPM以下、SSが平均七〇PPM以下に押えなければならない、これは向こうの報告の、一月二十日の経済企画庁長官のこれに対する指示だと思うんですが、それによって大王製紙が施設改善をするならば、三十八億円が要るだろうと、こういうわけでしたね。  これについてもう一度申し上げますが、そうした方向に従って、監督行政と申しますか、そういう形で通達なり指示なりを、県とともに、当企業者に対して出してあるのかどうか。それを追っかけて、今後監督指導していかれるわけですがね。私のところの富山の日本鉱業三日市製練所が、大体、今月末で一〇〇%OKが通産から出るだろうと想定されるんですが、しかし、これには二十六の改善施設、八億円の経費で、かなり企業も一生懸命やったと私は思っているんですが、大王さんもそういう形で、今後、監督行政の立場から追い込めていくような態勢にあるのかどうかということですね。これは大王だけを言うわけじゃありませんよ、別に大王に私憎しみがあるわけじゃありませんから。その辺のところを明確にしておいてほしいと思います。
  39. 小澤太郎

    政府委員小澤太郎君) 大王製紙へ私行ってまいりまして、排出の正常化をはかる、これは何といいますかね、クラリファィアーというのか、シックナーというのか、そういう施設を建設中でありまして、二重にやって、一ぺんやったやつをさらにもう一つのところでふるい出すという、かなり努力をしておる姿を見てまいりました。これは来年の一月までに完成させ、四月からの適用に十分間に合うということでございますから、なお、重ねて私からも十分注意をいたしておきます。  で、問題は、先ほどから話がありますように、今後の出さないという対策については、ある程度企業も誠意をもってやっておるようであります。もちろん、これはそのまま手放しにまかせるわけにはいきませんから、常時私ども監督するつもりでございますが、問題は、それよりも中小企業の製紙業者、これが排出するものが直接海に出ずに川に出ております。これは中小河川で、府県が管理する川でございます。底に相当のヘドロがたまっております。また、その排出を押えるための措置も、愛媛県も非常に努力してその中小企業と話し合っております。これのしっかりした対策もまだめどがついておりません。こういうものは、極力指導いたしまして、大規模のもの、また、小規模の数の多いもの合わせて、あの水域の汚濁をなくそう。そうして、たまったものにつきましては、これまた何とか処置をしなければ、これは海の潮の動きによって出かけていったり返ってきたりするわけですから、これを除去する方法について、もちろん、港の問題は、港の機能を十分維持あるいは拡張するために、港湾管理者でありまする県が運輸省と協力して、ある程度これに協力しながら、もちろん会社の責任も十分に持たせながらやっていかなければならぬ。中小企業の場合は、これは河川でございまして、これは県の管理する河川でございますから、これまた県ができるだけこれにタッチいたしまして、協力してヘドロをのけていく。ここで困ったことは、もっと小さい川でございまして、市の管理する川がございます。それが相当よごれております。これも中小企業が流しておるものです。こういういろいろ複雑な問題がございますので、政府が県と協力、また、企業と協力いたしまして、今後、現にいままで累積されたものに対する措置もあわせてやりたい、こういうような指示をしてまいったわけであります。
  40. 杉原一雄

    杉原一雄君 重ねて、くどいことを申す必要はないんですが、いま私が私自身の意欲として、意図として、そういうものを実は持っているわけですから、今後、かりに大王製紙なら大王製紙、四国製紙、愛媛製紙ということで定めて、この問題の行くえを今後見ていきたいと思います。最終的には、県民の期待する方向に改善されることを目標にして、私も、じっと経過を見ていきたいと思います。同時にまた、瀬戸内海全体の問題としても、次官が構想を述べ、後ほど大臣にもその点を確認をしておきたいと思いますが、環境庁中心となって、そうした瀬戸内海をきれいな海にする、国際的な海洋公園として今後ともほんとうに誉れ高い海にしていきたいという念願を込めながら、私は、瀬戸内海に関する限りの、きょうの一応の質問をこれで終わって、この後、今度は部分的に質問を続けていきたいと実は思っておるわけです。  大臣の出席も間もなくだと思いますが、私は、一応大臣の質問部分だけ残しておきまして、工藤委員のほうにバトンを渡したいと思います。
  41. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  42. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 速記を起こして。  では、暫時休憩いたしまして、午後は一時半に再開いたします。    午後零時四十分休憩      —————・—————    午後一時三十九分開会
  43. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) それでは、ただいまから公害対策特別委員会を再開いたします。  午前に引き続きまして、質疑を行ないます。  質疑のある方は、どうぞ御発言をお願いします。
  44. 工藤良平

    ○工藤良平君 私は、直接環境庁に、あるいは公害の本委員会で取り上げるということは、どうかと思いますけれども、主として難病奇病といわれておりますスモンの問題について、若干お伺いをいたしたいと思っているわけであります。  もちろん、本委員会で公害によるいろいろな対策が打ち立てられておるわけでありますが、人間の生命、健康に及ぼす影響というものが、直接的というよりも、むしろ大気あるいは水質汚濁によって、それが自然環境を破壊し、人間のからだに影響を及ぼしていろいろな被害が出ると、こういうようなことになっているわけでありますけれども、私は、そのような間接的な問題と同時に、近ごろ、非常に大きく問題になっております直接人間の病気をなおすために与えられた薬によって、その病気より以上の副作用というものがあらわれてきつつある。こういう問題について、今日まで本院におきましても、あるいは衆議院のほうにおきましても、問題が提起をされておるようでありますけれども、非常に重要な問題でありますので、この点に限定をして御質問をいたしたいと思います。特に、このように医学の発達した今日において、このような弊害をつくり出したその最も主要な原因というものは一体どこにあるのか、その点をまず大きな立場からお伺いをいたしたいと思っております。
  45. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 先生のおっしゃいますように、医療に関係して、むしろ、なおそうという意図でありながら、結果的にはそれが害になる。これを医学界の中では、医原性疾患あるいは医原性——いわゆる医療の医と原因の原を使いまして、医原性ということばを使っております。これには非常に広い意味でいろいろの使い分け方がございますが、先生のおっしゃったような、本来、薬というものは、その人のからだにないものを外部から入れるのでございますから、治療ということの目的であっても、端的に申して、やはりそれが過量、いわゆる量が過ぎて使うというようなことがあれば害になる、あるいは適量であることによって、本来、人間が持っておる自然治癒する力を援助して病気をなおしていく。最近の抗性物質のように、かなりばい菌に直接働くことによって非常に劇的な治療効果をあげるような薬もできてまいりましたけれども、一般的にはそういうものでございますから、薬というものは、やはり基本的には害のある性格を持っておる。それの有用な使い方をしないと、やはりそれは医原性、いわゆる医療が原因になってかえって疾患を起こす、こういうことはあり得るわけでございます。
  46. 工藤良平

    ○工藤良平君 私も、現在の医学の中で、たとえば結核をはじめといたしましてかつて不治の病といわれておりましたものが不治の病でなくなった。われわれ人類にとりまして、非常に貴重な今日までの人間社会に大きくこれが貢献をしてきたということは十分に認めるわけであります。しかし、近ごろのように、直接的に薬の投与によってこのような被害が続発をしてくるということになりますと、いまのお説のように、基本的な点についてはわかるのでありますけれども現状というものを私ども考えてみますときに、薬というものの性格と、それから営業という、いわゆる薬を製造していく、販売していく営業というものとの関連の中において、どうも私は問題があるような気がするわけでありますが、これは後ほど具体的にいろいろお聞きをしてまいりたいと思いますけれども、そういう点について、厚生省としては、どのようにお考えになっているか、もう一度お伺いいたしたいと思います。
  47. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) たいへん率直に申し上げて恐縮でございますが、薬品そのものの行政の問題になりますと、薬務局長でないと適切なお答えができないのでございまして、私、きょう、スモンの担当の公衆衛生局長という立場で参っておりますので、薬事行政につきましては、たいへん失礼でございますけれども、ここでお答えすることができないというふうに御理解いただきたいと思います。
  48. 工藤良平

    ○工藤良平君 これは、厚生省のほうには出席をお願いしてあったんですけれども、もし、おいでになっていなければ、その点については、最後のほうで再度お聞きをいたしたいと思いますが、それでは、スモンの具体的な問題についてお伺いをいたしたいと思います。  現在、ことしの五月にスモンについて第一次の訴訟がなされておりまして、第二次、第三次ということで、十一月に入りまして百五十数名という方々が訴訟に踏み切ったようであります。この訴状を私は詳細には読んでおりませんけれども、それによりますと、もちろん被告とされておりますのは製薬会社あるいは医師、そして国に対する賠償責任ということがいわれているわけでありますけれども、これについて、厚生省としては、この扱いは非常にむずかしいと思いますけれども、どういうように考えていらっしゃるか。まず基本的な点からお伺いをいたしたいと思います。訴訟に対する基本的な考え方。
  49. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 訴訟の主管は薬務局でございますが、しかし、この原因問題等がスモンの研究協議会で議論されておりますので、私の所管に基本的にはつながる関係もあるわけでございます。  先生のおっしゃいますように、最初の二件につきましては、医師も含めて訴訟が起こされておりますが、最近の第三次の訴訟につきましては、まだ訴状は受けておりませんけれども、新聞報道等によりますと、おっしゃるとおり、百五十五名の者が、医師を除きまして、国及び製薬会社を相手にして提起されておるということでございます。  この背景は、御存じのキノホルムがスモンの原因である、こういう研究班の方々の業績の中身が発表されて以来、この問題が非常に大きく取り上げられたわけでありますが、現在、私のほうで所管しておりますスモン研究協議会は、約百名の学者によって構成されておりまして、四十四年から三千五百万、四十五年が五千万、四十六年が五千万の研究費をもちまして、組織的な研究を実施いたしております。その途中におきまして、昨年、キノホルム原因説が出てまいりましたが、一面、また根強く初めからございます問題に、ウイルスによる感染説というものがございまして、この点については、現在でもまだ結論に達しておりません。この一回目の訴訟、二回目の訴訟は、キノホルムを使ったということで医師がその相手に入っておりますけれども、第三回目は、医師を除いて、国と製薬会社ということになっておりまして、その原因について、やはりキノホルムが主要なるものであるという観点に立っての訴訟と考えるわけでございますが、私は、研究の背景から申しまして、との問題は、原因論をめぐって、必ずしもキノホルムが唯一の原因であるかどうかということをめぐりましてかなりの論争があってしかるべき性格のものであると、学問と研究の立場からは、そのように理解しております。
  50. 工藤良平

    ○工藤良平君 お説によりますと、いま二つの説があるということで、そのために画一的な治療方法というものはもちろんまだ明らかにされていないだろうと思うのでありますが、そういたしますと、実際にスモンという病気にかかった患者にとりましては、そういうような状態が今後なお一そう続くということになりますと、これは非常に大きな問題でありまして、これは緊急な対策として、なるべく早くそういう原因を突きとめる、因果関係を突きとめてやる、そして治療方法の画期的なものを見出してやるということがもちろんこのたてまえだと思いますけれども、論争をするあまりに、やはり患者に対する態度というものが非常にあいまいにされ、あるいはおくれてくるということになりますと、これまたたいへんな問題である。過去の公害の対策につきましても、水俣病とかあるいはイタイイタイ病等につきまして、その因果関係を究明する段階で、きわめて長期の時日を要したということは十分承知をいたしておるわけでありますが、そのようなことが非常に人間の不幸というものをさらに大きくしていく状態というものが今日までの過程の中であったのであります。したがって、厚生省の立場としては、公判は公判という立場から、訴訟が公判という立場を通じて明らかにされていくでありましょうけれども、やはり医療を担当していく立場として、この問題をとらえていかなければならないと私は考えるわけです。したがって、現在の病状、いろいろな病状というものがあるようでありますけれども、その中で私たちが最大限にやってやれることは一体何なのか。これは後ほどまた詳しくお聞きをしたいと思いますけれども、そういうようなことを考えてみますと、やはり現在キノホルムというものが主要な原因ではないか、こういうように考えられておるようでありますが、この点について、先ほど説明がありました百名近い科学陣をもって検討されておる審議会ですか、この具体的な内容についてちょっと触れてみたいと思うんであります。  これは先般の朝日新聞の記事によりますと、この調査研究協議会の保健社会学部会、部会長が宮坂東大医学部教授となっておりますけれども、この保健社会学部会が四十六年の調査研究結果というものを協議会に報告をした。その際に、特に岡山県の井原地区の集団発生に対する報告というものが出されているわけでありますが、この報告というものは、一体、私どもとしてどのように解釈をしたらいいのか、その点についてちょっとお聞きしたいと思います。
  51. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 先生のただいまの御質問が各方面にわたっておりますので、若干それにお答えする意味で、資料について申し上げますと、現在、われわれがスモン協議会を通じてつかんでおります患者数は八千九百十一名ということになっておりまして、これが四十一年以前には、数としては千三百五名でございますが、四十二年が千三百五十五名、四十三年が千七百五十九名、四十四年が二千三百五十一名、四十五年が千五百七十四名。それで、キノホルムの説を強調する一つの根拠になっております問題として、四十六年の患者数は九名でございます。御存じのように、四十五年の九月からキノホルムの使用を禁止いたしておりますので、これが非常に大きくキノホルムの影響説につながっておるわけでございます。  それから、いまのような論争をそのままじんぜんと過ごすことによって患者の対策ができないではないかと、確かにそれが原因であることによる補償とか、そういう問題については時間がかかると思いますが、患者の治療につきましては、われわれとしては、決して放置できない問題でございますので、先ほど申しました五千万の研究費のほかに、四十六年度から患者の治療研究という面を含めまして、患者の自己負担の軽減を若干はかり、治療研究を促進するという意味で約六百名の入院患者を予定いたしまして、五千万の治療研究費を投入いたすことにいたしております。これは治療の対症療法が主でございまして、下痢あるいは足のしびれ等の神経症状がきて、最悪の場合には目などにきてめくらになる。こういうような一連の、結果的に運動機能障害、特に足の機能障害等を残しますので、これのリハビリテーションは、本来の、最初に申し上げた研究費を組んでおりますし、入院中のそのような神経症状に対する治療につきましては、それぞれの担当医が研究的な意味も含めましていろいろの試みをいたしております。特に一つ変わった治療法といたしましては、高圧の酸素タンクの中にスモンの患者を入れて治療することによって、かなりの効果をあげたという報告等もございまして、対症療法につきましては、それぞれ新しい、できるだけ有効な治療法を開発するように御努力願っておるところでございます。  で、協議会の一部門でございます宮坂班が岡山県の井原地区の問題について取り上げて、社会的な原因説と申しますか、とらえ方によっては薬害——薬による害である、それは要するにわが国の医療の一つの集約された結果のあらわれであるというような表現で見解としては述べております。しかしながら、岡山地区の井原病院、あるいは岡山大学等を中心とした研究班の一部の報告では、スモンの症状があらわれて、キノホルムを使う前にすでにスモン病として診断されたものは二八%いるというような数字とか、いろいろ必ずしもキノホルムと因果関係があると思われないような患者の例についての報告も井原病院等からされておりまして、この点につきまして、いまのような統計で、四十六年は急激に患者が減っておるという事実等もございますが、一面、学問的に、スモンという病気は根っこにあって、キノホルムの使い方が悪い、あるいは使うことによってさらに病状を悪化させたという考え方も、要するにスモンとキノホルムとは二つの輪のように、一部でもって重複しておるのだけれども、それぞれ別の分野の影響があるのだ、こういうような考え方もございます。そのようなことでございますので、現状研究班に最終結論を出していただくには、まだ若干の時間を要するのではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。
  52. 工藤良平

    ○工藤良平君 私は、この保健社会学部会の報告というものは、キノホルムとの因果関係についてかなりきびしい報告がなされておるようでありまして、これによりますと、はっきりと医師の誤診と、やはり投薬というものが誤っていたというような感じに明らかに受け取れるのでありますが、これについて、スモン調査研究協議会の会長の談話というものも出されておるようでありますけれども、しかし、一応調査に当たった部会が出した報告というものがどの程度の協議会に対する報告の価値があるのか、それを受けての厚生省の考え方は今後どうなっていくのか。いまのお話によりますと、まだ早々に結論が出せない、もちろん過去のむずかしい病気を見ますと、そう簡単に軽々に出せないと思いますけれども比較的明らかにこういうことが出されておる。これは重要視していきたいと思うわけでありまして、このような部会の報告がなされ、これが全体的に協議会の中でもしも問題がぼかされるということになりますと非常に問題でありますから、私は、非常に貴重な問題としてこれは見ていきたいと思うのであります。もう一度その辺を……。
  53. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) いまの問題は、ごもっともな御見解だと思いますが、部会は実は五つぐらいございまして、それぞれに活動いたしておるわけでございますが、それぞれの担当部会の結果につきましては、正式には総会に報告されまして、そこで総会として全体を取りまとめました最終見解を私のほうでは期待いたしておるわけであります。  しかしながら、それぞれの部会にキノホルムを中心としたかなり有力の見解があることも私は承知いたしております。それから一部の病理あるいは原因部会の中では、先ほど申し上げたウイルス説、京都あるいは岡山大学等にウイルス説等が根強くある。両方にそれぞれ根拠があるというような見解もございまして、いま申し上げましたように、病状の悪化あるいは病状をスモンとして、下痢をしたときにキノホルムを使う、それによってさらにはっきりとした病状がキノホルムの影響で出てきておる。しかし、その根っこに、下痢が始まったときにスモン病という根本の問題がある。こういうことがございまして、これが最終的にどういうような見解として、われわれのほうに研究協議会から公式に御回答があるか、この辺のところは、私も、いまの段階では申し上げる立場でもございませんけれども、最終的なそういう見解について期待いたしておるわけでございます。
  54. 工藤良平

    ○工藤良平君 もちろん、いまの段階で私が厚生省にそのことを明らかにせよということを期待しても、それは無理だと思います。思いますけれども、しかし、ここで明らかにされておりますように、それがもしも誤診ということによって、あるいはキノホルムという薬を投薬ずることによって起こったとするならば、非常に大きな問題だと思うんですね。もちろん、私は、この際医師の誤診というものの責任を責めようとは思いません。思いませんけれども、これは現在の医学の中における非常に大きな問題だと思うんです。これはいま二つの学説がある、その一つの学説をとることによってたいへんな問題が出てくるということもあるし、またその学説を適用することによってあるいはよくなるということもあるかもわからない。そういった意味から、この治療の方法というものが画一的に確立されていないという、こういう状態の中で医師の責任というものを追及するということは確かに問題だと思います。それはわかります。ただ、キノホルムというものを人体に大量に長期的に投与した場合に、これが被害として出てくる、こういうことはお認めになった上で実際に薬の販売というものを中止をされただろうと思うんですね、それ以降起こっていないということでありますから、非常に少ないということでありますから。その点についてのひとつ見解をまずお聞きをしたいと思います。
  55. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) キノホルムのこの使用の禁止等につきましては、これはWHOにも報告いたしまして、諸外国にもこの連絡をいたしておりますが、外国等では、現在かなり使っておる面はあるようでございます。  この禁止措置に踏み切ったのは、必ずしもそのキノホルムというそのものの薬品が害があるというよりは、やはりそのスモンの原因というものが、権威のあるスモン病研究協議会からそういう正式な見解が出たものですから、やはり薬務局といたしましては、その疑わしい問題のある薬品について使用の禁止をしたというので、この点につきましては、従来、もうキノホルムそのものは非常に長い問わが国においても使用され、かなりの整腸剤としての効果を発揮してきている薬でございますけれども、その使い方には、いろいろ個々の医師なり、個々の患者に対する問題はあるにいたしましても、そのような見解が出たために、あの使用の禁止に踏み切ったものと、こういうふうに理解いたしております。
  56. 工藤良平

    ○工藤良平君 まあ、私も医師でもありませんし、専門家でもありませんから、そこら辺のことはあまりよくわかりませんけれども、私は、患者の方にお会いをいたしまして要請を受けましたので、その方とも、ずいぶんこの問題でいろいろと議論をしてきたわけでありますけれども、このキノホルムというのは、一体、いつごろそれじゃ日本の国に、製薬会社に許可をされて、そのキノホルムというものを許可する過程の中で、副作用というものがどの程度あるかということについての認定といいますか、認定をどういう形でなされているか、どのような理解というものがその当時なされたか、これについてお伺いをしたいと思います。
  57. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 薬品そのものの基本的に製造許可等につながる御質問のようでございますので、先ほどの問題も含めまして、薬務局関係者が御答弁できれば、使用許可その他の手続上、あるいはどういうデータに基づいてこれが許可されたか——ただ、記録としては、大正二年にこれが販売されて、昭和十四年に第五改正日本薬局方に収載されたという事実がございます。それから、先ほど申し上げましたように、四十五年の九月八日をもってキノホルムの回収をし、使用を禁じておる、こういうことでございます。ただし、外科的治療その他にもキノホルムが一部使われておりまして、キノホルムの薬品そのものは少量でございますけれども、製造はされておる。しかし、内服薬としての使用は禁じられ、回収されておる。私は、こういうふうに理解いたしております。
  58. 工藤良平

    ○工藤良平君 これが製造を許可されたその当時、説明原書によると、このキノホルムの一日の投与量〇・六ガンマ以上使用すれば神経に副作用をする、こういうようなことが明らかにされているということを私は患者から直接手紙をいただいているわけなんですけれども、その点について、厚生省として、明らかにこの説明原書の中にそのことが書かれている、しかも、これが当時殺菌剤として輸入された、それがいつの間にか整腸剤と変わっているのだ、こういうような大きな問題点を患者としては持っておるわけでありますが、これをやはり明らかにしてやらなければいけないと思うのであります。こういう点についてひとつ明らかにしていただきたい。
  59. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 薬品そのものの製造許可の問題につながることでございますので、後段の点につきましては、どうもお答えする立場でございませんけれども、前段の使用量等については、研究協議会の記録あるいは研究協議会の先生方のいろいろの資料等によりまして、先生おっしゃるように、〇・六という数字は、私も記憶いたしておりますし、それ以上の量で、量が多量であり、なおかつ使用日数でかなり長期にやった、これがかなりスモン病というか、スモン病の症状をあらわすのに影響しておるという記録は報道されておりますし、われわれも、研究者のいろいろのお話の中から承知いたしております。
  60. 工藤良平

    ○工藤良平君 そこで、薬務局のほうがいないと、どうも議論がかみ合わないわけでありまして、どうもこれはちょっとうまくないようでありますけれども、このキノホルムという薬が一般にも出回って、整腸剤として使われてきた。そういたしますと、これは一般的に薬という問題について、私も、常時薬を医者から飲まされているわけでありますが、その飲んでいる薬自身も長期的に大量に毎日飲まなければならぬわけです、何年も続けて生涯にわたって。そうすると、私の飲んでいる薬がいつ、どこで、どういうような副作用を起こすかということは、いまの状態考えてみますと、たいへん不安になるわけであります。したがって、もしもこの説明原書の中に、こうこうこういう副作用がある、こういうようなことが明らかにされているとするならば、その薬が一般に使用され、市販されるときは、そのようなことは当然明らかにされなければならないと思うわけでありますが、もちろん現在のような医師とそれから薬との関係等も、これはもちろん当面の問題として私ども検討してまいらなければならないと思いますけれども、一般に市販されている薬の中で、副作用があるという問題について明らかにされて患者にそういうものが販売されているのかどうか、大きな疑問が残ってくるわけでありますが、この点について、いかがでございますか。
  61. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 一般に薬品のその製造の許可がされ、市販される場合に、その注意書きが一つの条件になっているように承知いたしております。それによって、その副作用等の問題についても注意書きに書いてある。これを医師が医療にその薬品等を使うについては、医師もこれについてやはり注意を守る必要がございますし、一般大衆薬等についても、これを施用する人はこれの注意書きを守っていただくということを一応条件にしてあるようでございます。先ほど申し上げましたように、薬というものは、本来、人間のからだにないものをからだに入れるのでございますから、それが全く無害であるということは、今度逆に言えば、病気をなおすのに有効に働かないものであるということで、いわゆる病気に有効に働くということは、かなり微妙な有害性を背景に持っているのが本来薬である、したがってこの限界を守っていただかないと、この薬としては副作用を起こしがちになることがありますという意味で、一般的には注意書きが製造許可の場合の条件の中に入れられていることを承知いたしております。
  62. 工藤良平

    ○工藤良平君 そのことが具体的に製薬、そして販売の過程の中で手落ちなく行なわれているのかどうか。この報告書によりますと、井原の集団発生における井原市民病院等に対する見解として、医師が副作用に対する注意をひどく欠いていた、こういうようなことまでも指摘されておるようでありますけれども、そういたしますと、病院で使っている薬そのものについて、医師がその副作用というものについて注意を怠って投与したというような現実があるとするならば、これはたいへん大きな問題です。これは監督官庁としての厚生省としても、責任というものは当然免れないと思うのでありますが、一般的に薬について副作用のあるものについて、いまおっしゃるように、注意書きがきちんとなされ、しかも、それが明らかにだれが見てもわかるような形の中で薬の扱いが行なわれておるかどうか。その点について手落ちのないものであるかどうか、私は、もう一ぺんお聞きをしておきたい。
  63. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) いまのように、一般論としての注意を守ることは、大衆薬などでは、その施用する本人そのものも御注意願いたいということで注意書きが入れられておりますけれども、医療上の患者対医師という立場で、その注意なり、あるいはその使用量をどう判断して使うかという問題につきましては、この医療用の薬品等についても、注意書き、使用方法等は一般的に書かれております。これはこのキノホルムとスモン病との関連を一応離れましてお答えいたしますと、われわれも、医師として多少の経験がございますけれども、その処分をする場合、その人なり、病状によって最初はかなりの量を投与して逐次減らしていくとか、あるいは逆にだんだんふやしていくとか、そういうことを含めまして、一つの医師にはやはり判断の許容されておる限界はあると思います。問題の限界はあると思いますけれども、それによって、先ほど最初にお話しございましたように、それが原因でいろいろの事故を起こすということになれば、それは医師本人の判断なり、あるいはその治療行為の正常な注意を怠ったということになるかもしれませんけれども、一般的には、その薬に書かれておる量ということ、一般大衆薬としては、それをお守りいただきたいという概念で書かれておりますけれども、医療に関係のある薬品につきましては、注意書きはありますけれども、その使用の量その他の判断は、一般的に申しまして、かなり医師によってあるいは患者によっていろいろの判断がなされておる。これは事実でございます。今回のその井原病院ばかりでなく、一般的にキノホルムの量の使い過ぎその他の問題につきましては、これは医学の場でやはり議論されてしかるべき問題であって、われわれがこの段階で一つの判断的な見解を申し上げるのは、いま申し上げましたように、医師が判断して医療に使う場面の問題でございますから、これが医学界としてあるいは医学の立場から議論されるということであって、その見解をここで申し上げることは、私の立場ではできないのでございます。
  64. 工藤良平

    ○工藤良平君 確かに、いま御説のような点も、私もわかるわけであります。それぞれの病状によりまして、医師が判断をして投与する、これはおそらくあらゆる病気でそういうことが言えるだろうと思います。特にこのスモン病のように、原因が明らかでないという場合には、そのような非常にむずかしい問題があるということも十分わかるわけであります。ただ、先ほどから申し上げておりますように、このスモンという問題の大かたの意見は、キノホルムというものが主たる原因ではないだろうかという、このような方向が出つつある段階でありますから、厚生省が今日とってきた、たとえばこのキノホルムの販売を中止をする、こういう点についても、私は、もちろん適切な措置だったと思うわけであります。ただ、このように病院そのものにおいて、キノホルムの副作用について非常に軽いといいますか、そういう考え方というものがあったんではないか。そうすると、私が一番心配することは、現在のこの医療行政の中で、あるいは薬の製造過程の中において、あまりにも現在のように多種多様の薬が市販されているという状態の中において、私たち健康の者でも、やはり栄養剤一つ飲むにいたしましても、非常に不安な状態で今後この薬というものを見ていかなければならない。こういうことになるだろうと思うのですね。この医療と薬との関係をもう少し制度的にも明らかにしていかなければならないという点も、いろいろと議論をされておるようでありますけれども、現在の段階で私たちがいまやらなければならぬことは、一体どういうことなのか。緊急課題、そういう意味でこのキノホルムに対する先ほどのこの輸入された際の考え方といいますか——薬務局長、参ったようでありますから、ひとつこれは一般的に、そしてまたキノホルムという問題についても考え方を明らかにしていただきたいと、このように思います。
  65. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) 薬の副作用の問題でございますが、最近いろいろ問題が起きておりまして、昭和四十年からは、薬の承認につきましても、いろいろの動物実験を義務として課して、また、全国の二百の大学病院、国立病院等に副作用モニター制というものを設けまして、副作用が出た場合には、その報告によって、中央薬事審議会に副作用調査部会、それから安全特別部会というものが設けられておりますが、そこで学者の意見を聞きまして、いろいろ使用上の注意等を改善するなり、あるいは新しく制定するなり、いろいろ努力をしておるわけでございます。  したがいまして、今後ともこういう点の強化をはかりますと同時に、薬の問題は、国際的にもいろいろ問題がございますので、たとえばWHO等の情報等をもっと積極的に活用するとか、諸外国とのいろいろ学会との情報を広く検討するとか、そういう点につとめていかなくちゃならないと、かように考えている次第でございます。
  66. 工藤良平

    ○工藤良平君 武藤薬務局長の御答弁、これは十月十二日か三日の衆議院の社労委員会における御答弁と全く同じようなことが言われているわけでありますけれども、具体的にモニター制度なり、各公立病院あるいは国立病院等に委託をいたしまして、確かにそういう検討がなされていると、こういうことはすでに何回かおっしゃってきているようでありますが、そのような状況の中でこれが十分な措置ということが言えるのかどうかということですね。厚生省として、その報告というものを基礎にしてさらに検討が加えられて、慎重な中でこの薬の製造なりあるいはその許可をされているのか。機構なりあるいは陣容なり、そういうものについて問題はないのか、こういう疑問が出てくるわけでありますけれども、そういう点についてもう少しお伺いいたしたいと思います。
  67. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) 先ほどお話ししました以外に、最近は薬の薬効の問題も非常に問題になっているわけでありますが、先生御承知のように、薬はこの薬効と安全性とのかね合いの問題でございます。したがいまして、ここ一年来、薬効問題につきまして専門家の学者の検討が行なわれまして、薬効懇談会というものがこの夏に厚生大臣に答申をしたわけでございますが、それによりまして、薬効の問題もあわせて、従来約四万の薬が現在出回っておりますけれども、そういう問題につきましても、安全性とのかね合いで再検討を全部行なうということで、中央薬事審議会に薬効の再検討の専門部会が設けられまして、現在検討が行なわれようとしている次第でございます。  それから、また、機構の問題につきましても、従来は製薬課でその承認、許可、それから安全性の問題、それから薬価の問題すべてやっておりましたけれども、この八月にこれを分けまして、安全性の問題を主管する製薬第二課というものをつくりましてこの問題に取り組んでいるわけでございます。しかしながら、やはり人員あるいはその他の面でも不十分でございますので、今後とも、この点につきましては改善の余地があるので、さらに努力を続けたいと、かように思っております。
  68. 工藤良平

    ○工藤良平君 時間が迫ってまいりましたから結論を急いでまいりたいと思いますが、このスモンの問題については、さっきお話がありましたように、この研究協議会によりまして近く結論が出されるであろうと、こういうことが言われておるようでありますが、もしその見通しがおわかりになれば明らかにしていただきたいと思います。  特に患者にとりましては、この因果関係が明らかにされ、その治療方法というものが明らかにされるということがいま最も望ましいことではないか、このように思いますので、その点についての厚生省の見解をお聞かせいただきたいと思います。
  69. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) ただいまの問題につきましては、問題が研究の結果が出るという重大な問題でございますので、単なる予算上の拘束をする立場だけでこれを論ずるわけにはいかないと思いますが、一応われわれの期待としては、四十四年、四十五年、四十六年と三年間で、一応治療研究費も含めまして一億八千万程度研究費を投入いたしておりますので、少なくとも四十六年度の研究費によってその結論が出ることを期待いたしてはおりますけれども、これはきわめて役所的な感覚で申し上げるのでございまして、研究というものはそうあっていいというものではございませんので、できるだけ早く結論を出していただくことを期待いたしてはおりますし、また、会長その他にもその点は御要望申し上げてございますけれども、やはり研究の結果でございますから、その研究者の御意向なり、結果の内容に応じて、これについて対応しなければならない、こういうふうに考えております。
  70. 工藤良平

    ○工藤良平君 まあ、一応のめどとしては、今年度じゅうにはできれば出していただきたい、こういうような考え方と理解をしてよろしゅうございますか。
  71. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) そのように御理解いただいてよろしいわけでございますし、そのように御努力願いたいと思いますが、いま申し上げたような次第でございますので、どうなりますか、その辺のところは、非常にまだ見通しそのものも十分立てがたい状態である、こういうことでございます。
  72. 工藤良平

    ○工藤良平君 そこで、私は、具体的にもう少しお聞きをしたいと思いますが、先ほどからいろいろと議論もしてまいりましたけれども、この種の病気は、自分の不注意というよりも、むしろ薬の副作用によって病気というものがよりたいへんな病気になってしまったという状態だろうと判断をいたしているわけでありますが、そういうようなことから、特にこのスモンにかかった患者に対するこの治療の対策は、一体どうするのかということが非常に大きな問題だと思います。しかも、その治療の方法というものがまだ完全に画一的なものになっていない。もちろん原因、因果関係が明らかになっていないわけですから、そのとおりだと思うのですけれども、しかし、だからといって、これをこのまま放置しておくわけにはまいらない。先ほどの御答弁によりますと、本年度入院患者に対しまして、一人月一万円ですかの補助をしているというお話でありますけれども、もちろんそれもけっこうなんです。しかし、実際の患者が八千名をこすという状態の中で、この入院患者に対するさしあたっての月一万円ということも、私は、前進ではあると思います。前進ではあると思いますが、問題は、一応入院患者というものに集中してやるということも、気持ちはわかるのですけれども、在宅患者の中でも、かなり重症患者がいるのではないか。これは、現在の医療制度なり、あるいは生活の状態等からいたしまして、入院はしたいけれども経済的な問題で入院できないという患者さんがいるということを私たちは現実に知っているわけです。このような人たちに対して、一体どのような手だてを講じているのか。非常に私はたいせつなことではないかと思うので、この点について御意見を聞かしていただきたいと思います。
  73. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) おっしゃるとおり、本年度の治療研究費は、一応入院患者に限定いたしております。それはこの性格がやはり研究ということで、このようにまだ原因その他必ずしも確定していない疾患であり、研究を推進している立場から、現状の措置といたしましては、治療研究という立場で、在宅等の患者につきましては、やはり患者の観察その他治療の判定、生活条件というようなことも加味いたしますと、やはり研究には、病院で観察し、掌握する、しかも、重症な患者を対象にすべきだ、こういう御議論に基づきまして、今回の予算に限定もございますけれども、一応入院患者を対象にしたわけでございます。在宅の重症の患者がもし経済的理由等で入院できない事実がございますれば、今回の措置は、多少なりともその入院を促進する上に役立っておるというふうには理解いたしておりますが、ただいま各県に——これは県の御協力もいただいてやっておりますので、各県の入院患者数、予算を希望しておる数、そういうふうにいたしますというと、先生の地元の例を引いて恐縮でございますが、大分県は、大体八名県が希望してきておりますので、これは県の希望どおりの人数の予算を流すということにいたしております。これは当初は四名というお話でございましたが、つい最近になりまして八名を希望してきましたので、これは場合によっては、いままでの四名が——最近は大分にスモン病患者が出ておるというような情報を聞いておりませんので、新たな発生は聞いておりませんので、場合によっては在宅の患者が入院に踏み切っていただくことができるということがこの人員の増に若干つながっているのじゃないかというような期待を持っておるわけでございまして、これで十分とは思いませんけれども、当面は、治療研究費の性格上、重点的に重症入院患者にしぼっておる。そして在宅のそのような重症で経済的理由等、これはもちろん所得制限は設けておりませんけれども、やはり重症者等のこれによって入院が促進されるならば、われわれとしても、多少なりともお役に立っておる、こういうふうに理解いたしております。
  74. 工藤良平

    ○工藤良平君 私のほう、実は八十八名の患者がいるという報告を聞いているわけでありますけれども、もちろんこれは私の県だけの問題ではなくて、全体的な問題でありまして、入院をしたいけれども入院できない、なぜか。結局、健康保険で負担をされる部分、こういう難病の場合には、どうしてもいろいろな薬、新しい薬を使わなければならぬということだが、薬に対する規制というものがある。したがって、それを越えて治療しようとすれば個人負担がふえる、こういうことになるわけでありまして、入院患者の中にも、相当部分のやはり多額の自己負担をしなければならぬということから、やむなくやはり在宅の治療に切りかえざるを得ないという話も私は現実に知っているわけであります。  そういうことからいたしますと、やはりこの難病、奇病というものに対する根本的な対策というものを医療制度の中でも考えていく必要があるのではないか、このように私は思うのであります。もちろん、現行規定の中でやれるだけのことはおそらく厚生省はやっているとは思いますけれども、かつて小児ガンに対する負担というものを、健保以外の負担については国と県と半分ずつ持って本人負担をなくするという、このような措置もとられたようでありますけれども、私は、そのようなことがより大きく他のこういう難病に対しても拡大されていくということが全体的にいまの医療の制度を改革する大きな要素になってくるのではないか、このように思っておるわけでありますが、いろいろな手だてというものが現状の中でもっともっと拡大されていくべきだ。このスモンという病気を対象に拡大をしていくということがさらに他の病気にも広がっていくということにもなるでありましょうから、この点に関して、この入院患者に対する月一万円の助成もありがたいことでありますけれども、さらにそれをもう少し広げていって、やはり入院さして治療を早くしてやるということが必要ではないだろうか、このように思いますので、その点に対してのひとつ決意のほどを——これはもちろん大臣がいれば一番いいんですけれども、ぜひお聞かせいただきたいと思います。
  75. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 全く先生のおっしゃるとおり、スモンだけにこの対策がいまのところ限定されておりますが、たいへん問題が同様に重要であるべーチェット病あるいは重症の筋無力症等、各般の難病について、世論も非常にこの問題の対処を要望しておるわけでございまして、従来、厚生省は、研究のそれぞれの担当にふさわしい課、局がこれに対応いたしておりましたけれども、これについても窓口を一定にすべきであるという御質問等もございました。当然のことと思いますので、来年度は、私の局にこの特定疾患の対策室を設けまして、予算要求も、厚生省の重要政策の一つとしてこの問題に対処するように、かなりの増額要求をお願いしてございます。  先生おっしゃるように、この問題は、小児ガンは小児ガンとしての社会的な、たとえば子供でその親が若く経済的にも恵まれない、しかも、小児ガンというものは、死亡にもすぐつながる非常に重症な問題だ、高額医療、こういうようなことで、スモンのように、原因そのものにまだ問題がある、しかも、子供にないおとなの病気で、もちろん家庭の条件などいろいろあって経済的な負担のこともありますが、金額的に確かに小児ガンとスモンではこれは率直に言って違いがある。こういうようなこともその判断の上に加えておりますけれども、やはり先生おっしゃるように、小児ガン形式がとれれば、それは望ましいことだと思っております。したがって、その方向は、われわれも十分検討させていただきますけれども、やはり今回の小児ガンとても、予算の性格そのものは、あれは治療研究費でございますが、実質上正式に国と県で二分の一ずつ負担して、そして、かかった医療費を見るという仕組みであること、スモン病と違うことは確かでございます。したがいまして、これはスモン等に限らず、この難病全体について、健康保険等の抜本改正にからんで、どう公費負担はあるべきか。いわゆる長期の心臓病のような高額医療あるいは長期療養の医療というものは、社会保障制度審議会等の、やはり保険優先の上に自己負担分は公費で見るべきだと、こういう御答申も中にはあります。そういうことも含めまして、健康保険の自己負担のあり方とも関連いたしますので、この点については十分検討いたしまして、いま申し上げたような来年度以降の姿勢で対処してまいりたい、こういうふうに考えております。
  76. 工藤良平

    ○工藤良平君 大体割り当ての時間がまいりましたわけですが、もう一、二点お聞きをしておきたいと思います。いまの厚生省の考え方も、ぜひひとつ積極的に進めていただきまして、これらの問題の解決に当たっていただきたいと思います。  ただ、私は、たとえばいま非常に大きな世論の問題になっております公害でありますが、この公害病に認定をされている患者の数、そういうものとこれを比較をしてみますと、この種の病気というものは、いままで表には出なかったけれども、たいへん多くの数にのぼっているということであります。したがって、そういう意味から考えまして、公害というものがいま世論の前面に出ているけれども、そこに隠された大きな問題がたくさんある。しかも、人間の病気をよくするために投与した薬によって、より苦しい病気というものにおかされているということになりますと、これはたいへん重大なことでありますので、この点については、私は、やはり現在の医療制度の中で最大の関心を持って取り扱っていくべきではないだろうか、このように思っているわけであります。そういう意味合いから、この難病、奇病に対する対策基本法の制定というものがいろいろと議論されているようでありますが、これらにつきましても、心身障害者に対する対策基本法ができたように、厚生省としても、これに努力をしていく必要があるのではないかと思いますので、この点を一つ最後にお聞きをいたしておきたい。  それから、薬務局長のほうには、これは途中で参りましたので、もっと早くくればもう少し議論をしたいと思っておりましたけれども、時間もまいりましたので、先ほどもお話がありましたように、この医薬品の安定性というものは、非常に現 在の状態の中において大きな問題だと思いますし、これらにつきまして万全の対策を講じていく 必要がある。このように私は考えるわけでありま して、そういう意味から、機構なりあるいは制度等につきましても十分な検討を加えていただきまして、万全の態勢をとっていただくようにお願いを申し上げまして私の質問を終わりたいと思います。よろしくお願いいたします。
  77. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 基本法の問題につきましては、べーチェットに関連いたしまして、これを援助する医師の部会等からその素案というか、こういうものをつくったらどうかというようなものまで含めて、われわれを見さしていただいておりますが、基本的には、身障基本法等も、各制度なり法律があった上に身障各症にまたがる身障問題の基本法というものがようやく生まれた、こういうことでございまして、やはり基本法が先か、実態が先かという問題もございましょうけれども、私は、率直に申し上げまして、一応局長の立場では、この難病奇病を担当いたしておりまして、診断基準が必ずしも確立していない疾患等もたくさんございますので、これを基本法として全般的に援助すべきだというような、そういうことを法律というか、国の姿勢として掲げることはけっこうでございますが、現実にそれを処理していく上に平等公平に、しかも、それが問題なく処理されるとなると、たいへんむずかしい問題がございますので、私は、回りくどい言い方をいたしましたが、基本法そのものを事務当局としてつくることは、現状は非常に困難である、また、諸般の公費負担制度、保障制度等の関連においてやはり考えるべきではないか、こういうふうに考えておりますが、対策そのものを進めることは当然必要でございますが、基本法というそのものを制定することについては、事務的には、現状ではまだむずかしい、こういうふうにたいへん率直な申しようでございますが、考えております。
  78. 武藤き一郎

    政府委員(武藤き一郎君) ただいま先生の御指摘のように、薬の問題につきましては、あらゆる角度からいろいろ批判があるわけでございます。これは日本のみならず、国際的にもいろいろ問題が起きております。したがいまして、この薬の問題につきましてのいろいろの制度の改善なりあるいは安全性の問題につきましては、国民的立場に立ちましていろいろ制度の改善なり検討を加えていきたいと、かように考えております。
  79. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  80. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 速記を始めて。
  81. 杉原一雄

    杉原一雄君 午前中から小澤次官中心に、瀬戸内海汚濁現状並びに対策、そして今後のこれに対する対策等についてお伺いしたわけですが、大臣がおいでになりましたから、重ねてお伺いします。  きょう、瀬戸内海の環境汚染実態等について政府報告を受けますと、いよいよもって危機的状況にあるということが確認されたわけです。政府としては、十日八日の瀬戸内海環境保全対策推進会議の設置、また、四十七年度予算要求に見るように、瀬戸内海の大型水理模型の建設など、かなり積極的な努力の方向が逐次具体化されつつあるということに対しては、一応敬意を表し、大きな期得をかけておきたいと思いますが、最終的に長官として瀬戸内海をどうあらしめたいか。この間は空でごらんになったようでありますが、地上におりて、大臣としての抱負、そして今後のビジョン——今後の問題の中では、私は、午前中の質疑応答の中で非常に難問だと思われますのは、赤潮原因究明と、これに対する対策だと思います。そうしてまた、きょうの極部的な問題として、大王製紙の施設改善の問題が具体的に三十八億円の資金を投入してやるのだということなど、当局の説明の中で明らかになったわけでありますが、そうしたこと等につきましても、大臣が本腰を入れておやりになっていただけると思うけれども、その辺のところの決意を明らかにしていただきたい。  第二点は、この瀬戸内海の問題を解決する場合に、何といっても、海に面する各府県の知事の協力と努力が必要だと思いますので、これらに関して、いろいろな問題で連絡協議をなさることがあると思いますけれども、やはり瀬戸内海をよくする、世界の公園としての瀬戸内海を再度実現する、環境保全のための知事としての相互連絡、努力、なかんづく、地域開発の問題等について、出たとこ勝負の会社、工場をつくるのではなくて、この海に面する周辺の各県がそれぞれテーマを持ち寄りながら、海を保全し、きれいにするということを大前提にしながら、知事会議等、今後の連絡会議等の招集計画等について、大臣としての所信があるならば明確にしていただきたい、こう思います。
  82. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) どうもおそくなりましたが、衆議院の特別委員会の都合で、まことに恐縮に存ずる次第でございます。  午前中の委員会で、政務次官からいろいろと瀬戸内海の問題についてお聞きと思います。御承知のように、政府部内に、各省間の総合的な対策を立てるために、瀬戸内海保全の会議をつくりまして、私が議長でございますが、特に政務次官が一生懸命にその中心となって働いておるのでございます。いま、いろいろお尋ねがありましたことについて、まとめて申し上げたいと思いますが、赤潮につきましては、これはすでに御承知のように、科学技術庁におきまして、昭和四十二年からですか、三年ほどの継続で調査をいたしてございます。その結果、その原因の一部は究明されたわけでございます。ただ、どうしてそのような爆発的なプランクトンの増殖が起きるかという、そのいわゆる引き金については、まだはっきりしないところがありますので、今後もう少し努力すればその原因がおそらく究明されるのではなかろうか。また、原因を一日も早くさがさなければならぬと思います。その原因をさがすことが何よりも大事だと思います。そういうことで力を入れますが、同時に、その赤潮の一番発生の何といいますか、基盤でございますが、基盤というのは、何といっても瀬戸内海の海水の富栄養化にございますから、その栄養化を減らすためには、やはり何と申しましても、工場排水処理とか、屎尿処理下水道の処理といったような、いわゆる下水道の汚水策対をまず一番強力にやることがどんな場合にも必要だ、こう思いまして、そういう方面にも懸命の力を入れたいと考えている次第でございます。  われわれは、瀬戸内海がいま非常に汚染されまして、すばらしい景観も失われつつございます。しかし、何と申しましても、瀬戸内海はやはり日本の代表的な地域だと思います、景観におきましても、すべての点において。ですから、やはりわれわれは、日本一つの象徴として瀬戸内海をできるだけ清潔な、そうしてりっぱなすばらしいものに復元して残したいものだと心から願って、このような対策を進めているわけでございます。はたして何年かかってこのような希望が達成されるか、また、どの程度まで復元ができるか、これは自信がありませんけれども、とにかく努力さえすればある程度の効果はあがる、こう信じまして、全力をあげて働いてまいりたいと、こう願っておる次第でございます。  大王製紙の問題もございましたが、これなんかも、伊予三島では、あそこの海水汚濁の非常に大きな汚染源になっているわけでございますが、幸いに、世論に従いまして、これも一生懸命に対策努力するということでございますので、それは政務次官から御報告があったと思いますが、そういうことで、われわれも多少意を強くして、希望を持って努力したいと考えておる次第でございます。  次に、瀬戸内海沿岸には十一の府県がございます。この府県がやはりばらばらに、いまの状態では、すべて公害防止対策というものは各県単位でやることになっておりますから、このような考えで各県ばらばらに対策を行ないましたのでは、どうしても大きな効果をあげることはできません。したがって、これらを打って一丸とした総合的な組織をつくりまして、そうしてまた、そこに対策も総合的な強力なものをやらなければならないと考えております。そこで、私は、いま考えているのですが、何か新しいひとついままでになかったような行政機構をここに考え出しまして、たとえてみれば、小さな考え方ですが、よく各町村が集まりまして一部事務組合をつくってやりますように、十一府県の公害に関する一部事務組合をつくろう。そういったようなひとつ構想をもちまして、新しい行政機構をここへ考えまして、それを中心にやらなければ効果をあげ得ないと考えているわけでございます。そういうことで、先日のこの会議の第一回の会合の前に、この関係府県知事の方にお集まりを願いまして、いろいろと政府の態度、決意も申し上げて御協力を仰ぎ、理解をいただいたわけでございますが、そのおりにも、兵庫県知事から、ぜひともその十一府県を集めた中に何か一つの連絡機関を置いて、政府との連絡機関を置いて、意見の調整につとめたいという御希望がございました。これもけっこうだと思います。そういうことで、やはり十一府県の方々から代表的な駐在員なんか出してもらいまして、地方にわれわれのほうからも人を派遣しまして相談をしながら、いわゆるその新しい行政機構のつくり方にまでもっていけるような基盤をつくりたい、こう私はひそかに考えておるわけでございます。  そういうことで、ぜひ一生懸命がんばりたいと思いますが、いままでのようなやり方で、お互いに自分の市、自分の関係する地域、自分の県の地域はできるだけりっぱに復元したい、環境保全をしたいと希望しながら、一方では、そう言っては、はなはだしく悪いことばでございますが、かってに島や入り江を埋め立てたり、めちゃくちゃに環境をこわしているのが現状でございます。これはいろいろな経済発展のいままでの趨勢でやむを得なかったと思いますが、こういうことも今後は自覚してもらいまして、たとえば新全総におきましても、あの計画を見ますと、大阪湾なんかもほとんど半分くらい埋まってしまいます。周防灘も、大分県とか、山口県が埋め立てしますと、半分くらい埋まる計画でございますが、こういうことでは、ほんとうに瀬戸内海環境保全はできないと思います。そこで、こういうふうな新全総にも十分に環境保全、そういったような考え方を今後取り入れてもらいまして、新しい瀬戸内海の正しい開発、一番自然保護と公害とを防ぐことのできるような開発、そういうものをあわせて持っていけるような形に進めてまいりたい、こういうことを念願している次第でございます。
  83. 工藤良平

    ○工藤良平君 ただいまの質問に関連をするわけでありますが、特に海水汚濁の中で、いま杉原委員からも御質問がありましたように、パルプの廃液というものが非常に大きな問題になっているわけであります。従来、この種の問題があまり大きく取り上げられなかったということは、これが直接人体に影響を及ぼすということがあまりないものですから、結局、扱いとしてこういうことになっているのではないかと思いますが、近ごろ、特にこの市民運動の大きな盛り上がりと同時に、このパルプの廃液という問題が非常に大きな問題になりまして、私のところでも、興国人絹の廃液が非常に長い間、もう二十年来の懸案事項になっておりまして、今回、水質汚濁防止法に基づきまして県が興人に対しまして改善命令を出した。この改善命令は出したが、はたしてその改善命令というものが、もちろんこれは企業のどの程度の良心に待つのか大きな問題になりますけれども、一応改善計画というものを出されるのでございますが、それがなかなか計画どおりにいかないという実態がありまして、それがより大きく汚濁を拡大をしていくということになっておるわけでございます。特にこの問題につきましては、いま長官のほうからお話がありましたが、各県の努力というものが非常に大切になってくるわけでございまして、それと同時に、環境庁として、その改善の監視の体制というものをどのような決意で取り扱われていかれるのか、その点をひとつお聞きをいたしたいということ。  さらに、先ほどちょっと問題が出たようでありますけれども、特に関西のほうに参りますと、瀬戸内海沿岸でもそうですが、松のマツクイムシによる被害というものが非常に大きいわけであります。これは大気汚染関係もありましょうけれども、私ども調査した範囲におきましては、特にこのマツクイムシの繁殖というものが外材の輸入と非常に大きな関係があるということがいわれておりまして、パルプ材として入ってまいりましたその中のマツクイムシというものが大きく現在のあの美しい緑の松を侵食をしておるということがある程度明らかにされつつあるわけでございます。ただ、この対策というものが全然まだ未知数のものでありますので、これはもちろん農林省の所管にあるいはなるのではないかと思いますけれども、特にこの瀬戸内海沿岸におけるあの美しい緑の松というものを守っていくということは、私は、非常に大切じゃないかと思いますし、この全体的な対策というものを環境庁がぜひひとつ統一的な観点から十分な措置を講じていただきたい、このように思います。  また機会をあらためて、私は、ゆっくりとこの汚濁の問題については御質問したいと思っておりますけれども、きょうの段階では時間もありませんから、その点について御質問いたしたいと思います。
  84. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) いろいろな公害がいまなかなか思うように監視の手が届きませんで、非常にもどかしい思いを皆さまされておるだろうと思います。私自身も、この四カ月ほどこの仕事をしてまいりまして、あまりに公害が多過ぎますし、それとあまりにそれに対して無力であるということに対して、非常なもどかしさを感じておるわけでございます。しかし、考えてみますと、この公害に対する行政なり政治の動向というのは、近ごろ初めて変わってきたばかりでございます。やはり日本がもう七十年、八十年、長い間産業優先ということに日本の政治の動向が進んでまいりましたので、そのようなものの考え方になっておるのが多いと思うのです。それがこの二、三年、幸いに人間尊重の政治に変わってまいりまして、それに従って公害の予防、公害の対策と、力強くとなえられてまいりましたのでございますから、非常にけっこうなことでありますけれども、やはり頭の切りかえとか、いろいろな体制というものが必ずしも一ぺんに全部できるとは考えられません。やはりある程度の時間をかけなきやならないと、私は、近ごろそう思うようになりました。実は、ことに水質汚濁につきましては非常にひどいものがございます。それがまた環境基準なり、排出基準というものも相当甘いような感じがするのです。こういうことで、私は、水質保全局長にもずいぶん文句を言ったのでありますが、水質保全局長に事情をいろいろと聞かされますと、なるほどいまの急にはできないんだということがだんだんとわかってきたわけでございます。しかし、幾ら事情が急にはできないといっても、気をゆるめれば、またもとに戻るおそれがございますから、これはできるだけやはりきびしい態度で、きびしい考え方で基準を高め、監視をやっぱり強めてまいることが必要だと思います。監視は、御承知のように、一応県の段階にみなまかしてございます。ですから、県としてやはり全責任を持って、正しい力強い監視をしてもらわなきゃならないんでございますが、県としても、新しいこれは行政でありますから、必ずしもなじまない点もございましょうし、またそのような強力な体制が整わない点もあると思います。そういうことで、われわれから見ても、皆様から見ても不満の点がたくさんあると思いますけれども、これも一日も早くその監視体制を整えまして、われわれも十分に指導、連絡、調整をいたしまして確立したいと思うのですね。そうして監視体制が強化されますようにがんばってまいりたいと願っている次第でございます。そして、様子を見まして、その都道府県にまかしました監視体制が必ずしもそう効果をあげ得ないような場合には、別なやはり一つ行政の強化と申しますか、そういうものをいまひそかに考えているわけでございます。これはまだ公にするほどのまとまった形にはなっておりませんので、いずれその必要が出ましたら、そういうものについても考えてまいりたいと考えておる次第でございます。  それからマツクイムシでございますが、これはほんとうに困ったことで、私、向こうへ参りまして、みんな松が枯れておる。ことにこの前屋島へ参りました。遠くから車で見ますと、向こうの松の間に、ちょっと私、近眼なもんですから、見ると、モミジのようなのが一ぱい見えるのです。あすこにいいモミジがありますねと言ったら、みんな、ははあと変な顔している。行ってみたら、モミジではなくて、マツクイムシで枯れた松なんですね、それが赤くなっている。実にひどいものです。すぐに林野庁にも注意しましたけれども、こういうところが至るところあったようでございます。ほんとうにこれは困ったことだと思うのです。御承知のように、対策が何にもございません。枯れたものは早く切って燃やしちまうよりないということで。外材との関係があるとのお話でございますが、私は、よくわかりませんけれども、そうなると、やはり外材の輸入の場合の植物検疫というものに対してやはり相当に力を入れなきゃならぬと思います。しかし、日本の趨勢では、外材はやっぱりたくさん入れなきゃならぬでしょうから、これはとめるわけにまいりませんが、やはりこれは予防的な、検疫的な措置を強固に力強くやることが必要であろうと思います。このマツクイムシの対策につきましては、まあ、これはあまり公の話ではありませんが、たとえば一日内閣で宮崎へ参りましたときに、宮崎の大学の学長が、これは必ずできます、できますからわれわれに研究をまかしてくれないかというような話もございました。そのときは文部大臣、ほかの大臣もおりましたが、これはおそらく文部省の所管だと思います。文部大臣、ぜひこれは認めて予算をとって、これを委託しなさいということを話しましたが、そういうことは、たとえば長野に参りましても、各地の大学の人は、できるんだと、やれば早く見つけ得るんだということを申しておりますから、ひとつみんなで協力して、そのような対策に対して、天敵を利用するとか、天敵の話が出ましたけれども、いろんなことを考えましてこのマツクイムシの予防に対しても、ある程度の予算をさいて、これの予防を講ずるような手段をしなきゃならぬと、こう思っております。それから関西を見てまいりましたあとで、林野庁長官に対しまして、とにかく国有林であろうと民有林であろうと何でもいいと、林野庁が中心となってそのマツクイムシの対策指導しなきゃならぬ、めんどう見なさいということを話したわけでございますが、そうなことで、まことにもどかしいわけでありますけれども、このマツクイムシに対してもいまのような現状でありまして、はなはだいい御返事もできませんが、こういう状態でございます。
  85. 小平芳平

    ○小平芳平君 長官お忙しいところせっかくおいでいただいて、しかし限られた時間でございますので、二点だけお尋ねいたしたいと思います。  第一点としましては、公害病認定患者が五千七十七人になった。あるいは十月一カ月だけで川崎では五人の認定患者の方がなくなった。しかし、この公害認定患者はごく一部であって、われわれ国民全体が有毒ガスを吸い、有毒の粉じんを吸っているんじゃなかろうか、非常にこうした国民は公害に対する生命の危機感を感じております。けれども、私がいま指摘したい点は、第一には、従来の政府の政策が公害に対してあまりにも手ぬるかったではないか。それからもう一つの点は、私たちが直接実地調査をしました大企業のたれ流し、こういう毒物を大企業が平気で流しているという、そのような二点について私は質問したいわけです。  長官のお時間の都合がありますので、まず第一に従来の政府の姿勢についてですが、四十六年六月二十一日の排水基準をきめた総理府令、これはぜひ再検討していただきたい。それといいますのは、かつて人の健康にかかる環境基準というものを政府がきめた。政府環境基準を設定した。にもかかわらず、あの公害国会が開かれ、多くの法律が成立をしたが、具体的な規制は政令に一任された。そうして規制するその政令の四十六年六月二十一日の排水基準をきめた総理府令では、カドミウム、鉛、六価クロム、砒素、これはいずれも十倍にきめてあるわけですね。私はそうしたPPM規制だけで公害がどうこう言っているわけじゃありませんけれども、とにかく十倍の排出基準を政令できめるということがいかにも非常識ではないか。ということは、毎時五千トンの排水が出る大企業の水、それが五万トンの水にどこで合流できるかという点ですね。それからもう一つは、さらにシアン、それから有機燐もそうですが、検出されてはならないはずのシアンが一PPMできめられたということ、ところが一PPMでシアンがどんどん流れますと、基準内だといっても魚が現に死んでおります。そういうような点からして、このときの総理府令は再検討する必要があるではないか、このように考えますが、いかがでしょうか。
  86. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) 公害病認定患者に対しましても、確かに先ごろまでは手ぬるい点があったと思います、私も。多少、何といいますか、ひとつ遠慮がちな救済の姿勢ではなかったかと思いますので、御承知のように、先般の水俣病患者の認定の問題に関しまして、環境庁としても、新しいものの考え方をして、公害病患者をできるだけ救済しようという方針にいま進めておりますし、来年度の予算においては、その手当もある程度の増額をいたそう、こう考え努力いたしている最中でございます。  ただいまの排水基準の問題でございますが、おっしゃるとおり、私も、いまの基準では非常に手ぬるいと思います。ただ、このような基準とか、きめた場合のいろいろな法律関係は、前の国会と前後して急に急いできめたものでございますし、やはりこれはほんとうに深い検討をしたその実験の成果が必ずしも加わっておらないと思います。そういう研究はあまりないと思いますから、いろいろな世界の例とか、そういうものから大体よかろうということでつくられたのが相当あるのじゃなかろうかと思います。そういう意味で、おっしゃるように、排水基準も必ずしも妥当ではない。当時、新しい試みでありますから、多少甘くつくられたのはやむを得ないと思うのでございます。しかし、このままでは指導できませんから、やはりこれは強化してもらわなきゃならないと思います。ことに、おっしゃるように、ただ排水口のPPMだけではだめだと思うのです。総量の問題が必要だと思います。ですから、やはりどれだけの量を流すかという、PPMの問題と同時に、どれだけの量を流すかという問題をやはりあわせて考えていかなきゃだめだと思う次第でございます。  ただ、残念ながら、いままで水に関しましては、あまりいろいろな機械が開発されておりません。非常に能率が悪いのでこのようになっておりますが、こういうこともできるだけ早く解決をいたしまして、おっしゃるとおり、もっと基準を高めること、それから監視を強めることと、同時にこのPPMだけではなくて総量で検討すると、こういう方向に進めてまいらなきやならないと覚悟しております。
  87. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから、次の点といたしまして、この点は通産省からほんとうは発表していただくといいのですが、時間の都合で、通産省から発表していただく時間がないわけですが、鉄鋼業あるいはコークス製造業、これはもう世界的に有数なメーカーばかりですが、こうした鉄鋼業やコークス製造業で、いまだにシアンは何の処理もしてない、シアンはただそのまま薄めて流しているだけ。その結果は、この通産省のほうで急いできのうから調べてくださったデータによりましても、住友金属の和歌山工場、川崎製鉄の千葉工場、これは何の処理もしてない。それから、私、直接行った新日鉄名古屋工場、これもシアンは何の処理もしてない。しかし、きょうの通産省の資料では、何か暫定的な方法をとり始めたというお話ですが、しかし、先月行ったときには、何の処理もしてない。あるいは住友金属鹿島工場、これは正直に、半分は処理して、半分はただ流していますと、このようなことを言っておられました。したがって、そういうふうにシアンを海へ流した結果はどうなったかと申しますと、鹿島の海では、三月ごろからたびたび死んだ魚が浮かんできた。そうして、県あるいは公害技術センターが四月二十一日、五月七日合同調査をやったその結果、死んだ魚からシアンが検出をされた。明らかに死んだ魚はシアンが原因であると断定した、こういうふうになっております。したがって、私としましては、例の昨年の公害国会のときに、当時の小林法務大臣が、そういうように毒物を流して汚染されて魚が死んだ、それがこの公害罪適用になるのだ。その魚を食べると健康に危険があるから、それが公害罪適用になるのだというふうに、小林法務大臣はきわめてはっきりと答弁をしているわけです。しかし、まあ、この公害罪そのものの施行が七月からだから、三月、五月に死んだのは入らないのだそうです。入らないのだそうですが、この県の調査によりますと、排水口では〇・九九PPM、まあ、一PPMを下回っているわけですが、しかし、何回にもわたって大量に魚が死んだというふうな被害だけ出してですね、そうして基準内だからそれでいいんだということにはならないと思うのです。したがって、長官として、今後県の行政の上で、そういう場合は公務員には告発をする義務を課されておりますから、刑事訴訟法で。告発をしても、そうしたたれ流しはきびしく戒めていくようにやっていただきたい、指導していただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  88. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) 御趣旨わかりました。そのようにさっそく通産省に連絡いたしまして、適当な措置をとりたいと思います。  この名古屋の新日鉄工場につきましては、公明党の岡本議員その他からもいろいろと委員会で御質問がございまして、これはすでに本年度内に十分それを改良するという誓約をとりまして、いま着行しているようでございます。また、鹿島の問題につきましても、あれはおそらく住友金属だと思いますが、県で基準を強めまして〇・一PPMまでの基準を強めた、かさ上げしたように聞いておりますが、いずれにしましても、そういう事態がたくさんあることは困りますから、よく通産省と連絡いたしまして適宜の措置をとってまいりたいと思います。
  89. 内田善利

    ○内田善利君 一言お聞きいたします。  いまの製紙関係と同じでしょうけれども、この表を先ほど見せていただいたのですが、CODに関する瀬戸内海汚染状況なんですけれども、この表で見る限り、CODに関する限りまだ清らかな瀬戸内海だと私は思うのです。ほとんど基準以下のCODで、これだけだったらりっぱな瀬戸内海じゃないか。ところが、先ほどの答弁を聞いておりますと、水質が二二五〇PPMだ、そしてそういう大王製紙の場合は、昭和四十七年の四月から二〇〇PPM以下にするんだ、二〇〇PPM以下にしても、環境基準はすでにこのように非常にきれいなCOD状態で、ほかにも岩国の山陽パルプなども同じサルファィトパルプをつくっていて、昨年の公害国会のときにも質問したわけですが、そういう一二三〇PPM生活環境基準との隔たりがあまりにも私は大きい。こういう排出基準のSP−サルファイトパルプに改善命令が出て改善するということですが、サルファイトパルプをつくらないようになるだろうか、あるいはつくっておりながら二〇〇PPM以下にすることができるだろうか。そのようなことも感じておったわけですけれども、さっきの質問でもありましたように、環境基準排出基準関係ですね。私は、もう環境基準イコール排出基準にすべきじゃないか、このように思うわけです。そうでない限り、この汚染状態は、公害はよくならないんじゃないか、このように思うわけですが、先ほど総理府令の改正の要求の質問がありましたけれども、何とかこの点ももう一度再考をお願いしたい、このように思いますけれども、いかがでしょう。
  90. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) 環境基準排出基準とが一致するような事態が将来望ましいと思います。そういう事態が来れば、公害のほとんどがなくなるような事態だと思いますが、そういうことに来るような希望を持って努力してまいりたいと思う次第でございます。お話のように、もっと環境基準排出基準をきびしくせいというお話のようでございますが、同感でございます。  ただ、いろいろな事情を聞きますと、やはりある場所では、やむを得ないということも感じられますけれども、そういうことではやはりなかなか進歩しませんから、できるだけきびしく、早くきびしくする、早く監視の体制ができ上がるように一生懸命に努力してまいりたいと思います。
  91. 加藤進

    加藤進君 再質問の時間等はございませんから、一言でお答え願えるような問題だけをひとつしたいと思います。  私のところに、長官に聞いてほしいという希望や依頼がたくさんございますけれども、その中で環境、むしろ自然の保護の問題について二つだけ聞きたいと思います。  ともに国立公園の中でこれから起こるかもしれないという問題でございます。その一つは、三重県の多気郡にある、御承知の大杉谷の問題でございまして、これは吉野・熊野国立公園の中にあるものでございますが、これが三重県の計画によりますと、中南勢総合開発計画のために必要な水と、それから電力のためのダムによって水没する、こういう重大な問題が起こっているわけでございまして、私は、環境庁長官であるならば、直ちに、そういうことはやらせない、こういうふうに返事をされたと思いますけれども、まず環境庁長官のお答えをひとつ願いたいと思います。  それから第二の問題は、南アルプス立山でいま起こっている問題でございますが、これは御承知かもしれませんが、立山高原パークラインという観光ルートができております。そのうちの一部の富山県側でございますけれども、美女平というところから追分に至る間がまだ舗装されておりませんし、道路も狭くて、ぜひこれを拡幅して二車線にする、舗装をしたい、こういう要望が県の側から出ているわけでございます。これは県道でございますけれども、この問題に関連しまして、もし道路舗装をやり、二車線にするということを認めるにしても、もしここに無制限に自動車が入ってきたら、どういうことになるだろう、こういう問題が一つ出ているわけでございます。この問題については、自動車の規制をぜひやらなくてはならぬし、現在認められているのはバス路線だけでございますから、これを今後とも引き続いてやっていただきたい、こういうのが一つの希望でございます。それから、もう一つは工事にあたって、できるだけ環境を保全し、自然を大事にして、それに何らかの犠牲を与えることのないような工法をとってほしい、こういう問題でございますので、ひとつ簡単にお答えを願いたいと思うのでございます。
  92. 大石武一

    ○国務大臣(大石武一君) 最初の大杉谷の問題でございますが、これはわれわれもすでに自然を愛好する団体からいろいろ陳情を前にも聞きました。そうして事務当局にも実態を私は聞きました。まだ、私見ておりませんが、黒部に次ぐ重大なりっぱな渓谷だと聞いておりますので、何としても残す決意でございます。また、県のほうからこれをどうしようという申請は参っておりませんが、すでにわれわれのほうから、これは一切許可しないということを通告いたしてございます。ですから、そういうことで県のほうでもとまどっていると思いますが、十分に考慮して、そういうような考え方はいたさないと思います。私自身の決意ばかりでなく、自然保護事務当局の決意もずいぶんこれは固いと思います。御趣旨のとおり守ってまいりたいと思います。  それから立山の美女平から弥陀ガ原にずっと通る道路、私も、先年、通って登ったことがございますが、あすこがずっと室堂までバス道路ができることは残念でございますけれども、いまとなってはしかたがないことでございます。これにつきましても希望が出ております。これを事務当局で十分に検討いたしましたが、これは結果的に申しますと、許可する方針を私きめました。と申しますのは、ほとんど大部分が二車線ができ上がっている。一部非常に危険な区域だけがまだ一車線に残っておりますが、それを広げて二車線にいたしたいということでございまして、実態はやむを得ないと思います。おっしゃるように、バスしか入っておりません。これはあくまでもバス以外は一切入れないという条件でこれを許可するということになっております。おっしゃるとおり、工事にも十分注意させまして、あのような地域は自然そのままに残すわけにはいまになってまいりませんから、自然を保護しながらある程度の人に利用させるような地域にいたしたい、こう思いまして、御趣旨のとおり、十分注意してまいりたい、こう考えております。
  93. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 長官、どうもありがとうございました。
  94. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは、最初に法務省刑事課長、先ほど公害国会のときのことを引用しましたように、シアンによってというのは、明らかに工場排水によって魚が死んだ。   〔委員長退席、理事杉原一雄君着席〕 県当局は、この魚は毒があるから食べちゃいけないということを住民に指示をした。そこで、あの当時の委員会の答弁の趣旨は、大体魚が汚染されたら、もう死ななくても、魚が汚染されたら捜査を開始すべきだということだったわけです。ところが、今回のような汚染されたどころか、死んでしまっていて、その死んだ魚を食べないようにという指示を県が出している。そういうことが今後起きますと、そのときの小林元法務大臣は、これは従来は魚が死んでも捜査ができなかった、健康の被害が発生するまではできなかった、今後はこの法律ができることによって捜査が開始できるんだというふうに答弁をいたしておりますので、今後、そうした明らかに工場排水によるそういう被害が発生した場合は捜査が開始されると、このように受け取ってよろしいですか。
  95. 前田宏

    説明員(前田宏君) お尋ねの、先ほど出ましたような鹿島の問題につきましては、小平委員が先ほどもおっしゃいましたように、公害罪の施行前のことでございます。したがいまして、当時、公害罪適用の面からの捜査ということが実際行なわれないわけでございます。現に行なっていないわけでございますが、それに関連いたしまして、今後の問題はどうかと、こういうお尋ねだと思います。  それにつきまして、若干、余分なことを申すようでございますが、御指摘の昨年の十二月の公害罪法案の審議におきます連合審査会での当時の大臣の答弁につきましてでございますが、いまおっしゃいましたように、魚が死んだ場合には捜査を開始するというふうな趣旨に最後のほうでなっておりますけれども、その質疑、また答弁には、さらに先立つ問答があるわけでありまして、それらを通じて見ますと、当時の答弁の趣旨は、魚が死んだというだけで直ちに公害罪になるという趣旨ではないというふうに御理解いただけるのではないかというふうに思うわけでございます。と申しますのは、当時、公害罪法の審議を続けております際に、例の「おそれ」の点が問題になりまして、いろいろな御質疑を受けたわけでございますが、その際に設例として取り上げられましたのは、まあ水俣病等の例からいたしまして、水銀等が大量に海なら海に出された、そうしてその水銀によりまして魚がまた相当ひどく汚染した、その魚を付近の住民の方々が相当な頻度で、いわば常食的に食べておられるというような、そういう要件を前提とした設例の上での御議論があったわけでございまして、そういう場合には、現にその付近の住民の方がその魚を食べて水銀中毒になっていなくても、その前段階の魚の汚染という段階で公害罪法にいう危険が生じたというふうに認められるだろう、そういうふうに認められますならば当然捜査を開始すべきだ、こういうふうな段階を経た議論であったように記憶しておるわけでございます。したがいまして、魚が死んだという場合に、もちろん、この公害罪法の要件が、公衆の生命または身体に危険を生じた、つまりそういう危険な状態が具体的に発生したということを要件にしておりますので、そういう要件に当たるかどうかという問題が当然事実問題として前提になるわけでございますから、魚が死んだということから、それ自体危険な状態があるということになりますれば、当然実害発生前で捜査を開始する、こういうことになろうかと、さように考えております。
  96. 小平芳平

    ○小平芳平君 要するに、この公害罪のほうは、魚が死んだと、そうしたら、それを食べるか食べないかというのですが、魚は食べるにきまっているじゃないですか。  それで、特にシアンが出て魚が死んだとなれば、食べる魚も食べない魚も、全部死んじゃうわけですから。  まあ、それはそれとしまして、先ほど長官から総理府令の改正は検討するという御答弁でありましたので、私の質問は、その点についてはそれでもうけっこうです。  そこで、ひとつシアンについてですが、鹿島では粉じんからシアンが見つかった、分析されたということで、さらにもう一つの問題が起きております。したがいまして、シアンは排水の規制だけじゃなくて、今度は粉じんの規制をやらなくてはならなくなったのじゃないか。そういう点で、私たちも分析をしてみたわけですが、同じような製鉄工場で粉じんからシアンが検出された。それは川崎とか、八幡とか、こうしたところの粉じんからシアンが確かに検出されたということになると、先ほど長官排水についての規制を答弁なさったのですが、今度は粉じんのほうをどうするかという問題になるわけです。この点についてはいかがでしょう。
  97. 山形操六

    政府委員(山形操六君) 先生御指摘の粉じんの中のシアンの問題でございますが、従来、シアンの検出の問題については、私ども、十分な調査が行き届いておりませんで、そういう結果を存じませんでした。その理由のおもなものは、非常に微量なシアンといいますか、有毒無毒一緒にしてトータルのシアン量で検出されるものですから、水に溶ける部分が大体毒が強いと言われておりますが、それが排水のほうの池のほうに出てしまって、あとコークス炉なり何なりから漏れるもの、あるいは難溶性のものが空気中に上がっていく。しかし、労働衛生のほうの事業場の中では一〇PPMという一応のきめはございます。一〇PPMという濃度ではございますが、一般の大気中のシアンということになりますと、その検出が非常にむずかしゅうございます。今回、住友金属の外のほうで粉じんの中に見つかったという点と、それから機械を使いまして長い時間吸引をいたしまして、その濾紙に入った粉じんと一緒に検出して、どのくらい出たというのがわかったわけでございます。しかし、それを今度人体影響等のいろいろな関係から換算してみますと、大気中にシアンが含まれているという濃度は、またこれ非常に微量になってしまいます。したがって、そういう意味で、私ども環境基準と申しますか、こういったものについて、従来、シアンというものについては、まだ考えておりませんでした。それで、法律のほうでは、シアンはこれを特定物質といたしまして、事故があったときだけの処置で、事故があったときにはすぐ手当てをし、設置者に対して、再びそういうことがないように、早く手当てをするように知事からいろいろ言わせる、そういう措置がしてございます。したがって、シアンの検出の問題、私どもこれからいろいろ勉強してまいって、もし環境基準を設定する必要があれば、十分これは検討していこうと考えておりますが、従来、そういう成績がほとんどありませんでしたので、これからの問題として取っ組んでいくつもりでございます。
  98. 小平芳平

    ○小平芳平君 それぞれ、次に同じくシアンについて通産省にお尋ねしますが、中小零細企業、メッキ工場などである程度のシアンが検出されたら、すぐ操業停止ということになった例がたくさんあるわけでしょう。何件かあったと思うのです。しかし、こうした先ほどの川崎製鉄とか、住友金属とか、新日鉄とか、こういう大企業は一向そういうことにおかまいなく、いままでただ薄めて流していたというような点、非常に私たちは疑問を持つわけです。どうでしょうか、そういう点について。
  99. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) シアンの濃度、先生のお尋ねは中小の場合には、ある一定以上の濃度をオーバーしておれば操業を停止する。それから大手の場合にはそういうことはなかったのではないかというお話でございます。実は四十五年にメッキ工場につきましてシアンの状況調査いたしたわけでございます。メッキの専業工場二千八百、それから兼業工場が約二千あるわけでございます。両方で、まあ五千工場でございます。その中から専業工場にいたしまして三百二十、それから兼業工場と申しまするか、それを含めまして八百七十二を抽出いたしまして調査をいたしたわけでございます。御承知の一PPMという排出基準をオーバーしておるものは専業の場合が百五、兼業の場合が百五十二、専業で申しますと、検査工場の約三三%、専業工場で申しますと一七・二%、まあこういうふうな工場で一PPMという排出基準をオーバーしておったという事実があったわけでございます。それから大手工場につきまして、先ほど先生からも、この中には無処理のまま、ただ希釈をして放流しておるというものがあるという御指摘があったわけでございます。確かに、残念ながら現状で数工場もそういうところがあったというのは事実でございます。  現在、このシアンを流しております大手工場と申しますのは、鉄鋼業、それからコークス製造業、それからガス供給業、それから石油化学の中のアクリロニトリル製造業、そういうような特殊な業界に多いわけでございます。私ども調査でそこの四つの業種で、工場の数にいたしまして五十一の工場があるわけでございますが、そのうちの四十六については処理施設をつくっておる。何らかの処理施設をつくっておるわけでございます。それから、この処理施設につきまして、やはりシアンを対象に考えました場合には、この活性汚泥による処理が一番完全な処理ができるわけでございますが、各業種とも活性汚泥による処理工場というものを、大体まあことしから来年にかけましてつくり上げていこうというふうに馬力をかけておるわけでございます。現在、この五十一の工場の中で排出基準PPMというものをオーバーして濃いシアンを含んだ廃水を流しておるというものはないというふうに私ども聞いておるわけでございます。
  100. 小平芳平

    ○小平芳平君 排出基準内だからといっても、先ほど鹿島の例のように〇・九九PPMで、県の調査ですが、魚が死んでいるということ、そういう問題のあること、それで環境庁政務次官にお尋ねして、これで私の質問を終わりますが、要するに、中小企業などで、メッキ工場などで非常にシアンとか、クロームの設備をつくって、あるいは団地化して非常に公害防止に力を入れてりっぱなメッキ工場団地ができているわけです。そういうところがあるわけです。にもかかわらず、先ほどの名古屋の新日鉄の場合なんかでも、十一月九日、海上保安庁が発表したのによっても、埋め立て地の三角池、要するにあすこの工場施設が何もなかったわけですね。処理施設がほとんどないと同様で、埋め立て地の池へ放流していた。その埋め立て地の池からシアンが三・九PPM、あるいは三・六PPMというものが海上保安庁の発表では検出されたといっておる。したがって、これからの公害に取り組む基本的な姿勢としまして、大企業、大工場という、こうした企業の代表の方は公害防止に力を入れるんだというような談話とか、討論会とか、座談会とか、意見は十分あちこち発表しておりながら、実際、中小企業のほうがはるかにりっぱな公害防止施設をやっているのに、自分のほうはただ工場の埋め立て地に池を掘ってそこへ放流しているだけだったというようなこと、そういう点について、やはり大企業だからといって、そういう目をかすめられるようなことがないように環境庁として十分やっていただきたいと、このように思いますが、いかがでしょう。
  101. 小澤太郎

    政府委員小澤太郎君) 先生のおっしゃるとおりでありまして、公害防止の施設をやり得る能力、技術を持ちながら、それを怠っておったということは許すべからざることだと思います。で、私も二、三鉄工場、新日鉄の工場を見てまいりました。たまたま、私が行ったところが一生懸命になってやっている。行かなかったところにそういうところがある。で、私どもとしましては、中小企業でさえていろいろとくふうをいたしてやっておりますにもかかわらず、大企業がそのような状態では、もはや事業として、私は企業家として存立を許されない状態じゃないかと、こう思います。したがって、厳重にこの点はわれわれとしては指導を進めてまいります。  また、排出基準につきましても、先ほど長官から答弁いたしましたように、これは基本法の中にも逐次これを確立していってということがありますので、そういう観点から、私どもはこれからもさらにきつくやっていくと同町に、それにふさわしい、それに匹敵するような措置をさせるということ、ことに大企業に対しては厳重に臨むつもりでおりますので、御了承いただきたいと思います。
  102. 内田善利

    ○内田善利君 本論に入る前に、関連して質問したいと思いますが、粉じん内にシアンが入っておったということが鹿島で発表になったわけですけれども、コークス炉からは煙突からシアン青酸ガスが出ておることはもう既定の事実であって、いまさらそんなことがあったというのはおかしなことじゃないかと思います。コークスを使って高温の炉の中で処理をすれば、空気中の窒素とコークスの炭素が結合してシアンができる、それがシアンガスとなって煙突から出ることは当然の理屈でありまして、青酸ガスとして煙突から出ているわけですけれども、住友金属鹿島工場の場合は、脱シアン装置ができて、それを水で洗ってほとんど一〇〇%近いほど取っておるわけです。しかし、あの煙突からまだまだシアンが出ておるということなんですけれども、いままで大手コークス炉のある工場は、先ほどお話がありましたように、全然そういうものをつくってないところがあって、相当量、粉じんとまじって青酸ガスそのものであるか、あるいは金属と結合した錯イオンのような形で出ているのか、その辺は私はよくわかりませんけれども、たぶんそうだろうと思います。それならばあまり危険はないかもしれませんが、そういったいままでのコークス炉工場からは相当量にシアンが出ておるのじゃないか。私も洞海湾のことをいまから質問するわけですが、この間、二月から始めた洞海湾浄化対策委員会調査した結果によりますと、シアンの排水状況をずっと見ていきましたら、一番多いのが八幡製鉄の排水口にある、そこから出ているシアンが一番多いんです、三〇・二八PPM。これは北九州港湾管理組合が清浄化対策委員会に委託して出てきた結果です。このような一番多い鉄工場にしても、コークス炉があるところは相当量のシアンが出ている、こう思うんですね。この点、いままで全然知らなかったという先ほどの答弁でございましたが、私はメッキ工場よりも、こういったコークスの工場が一番シアンを出しているのじゃないかと、このように思うんですけれども、この点いかがでしょう。
  103. 山形操六

    政府委員(山形操六君) 私、先ほど申し上げた点、ことばが足りませんで失礼いたしましたが、いま先生のおっしゃったとおり、コークス炉からシアンガスが出るのは事実でございます。大部分水をかけまして、それを排水口のほうへ流しておりますが、幾ぶん漏れるシアンガス、こういうもの、これが実際大気中にどのくらいあるか、その排出口、あるいは環境状態、その各炉の不均衡等についての直接のシアンガスとしての測定というものについて、従来あまり設備がなかったと、私申し上げたのでございます。それから、今回は粉じんにまじって住宅等のところで検出されたシアンという発表がございました。これについても、おっしゃるとおりに形態がどういう形でなっておるかわかりませんが、ごく微量のシアンが降下大気中にまじって検出されることも、これもあり得ることだと思いますが、それを、今度、大気中の粉じん中にどれくらいあるかということで、実験的に機械を使って粉じんをうんと吸収いたしまして、それからきちんとはかったシアンの量を今度検査したわけでございます。それらも数字が出ましたが、しかし、これを大気中の問題として環境基準というような考え方で、そのシアンを見ていく場合には、それは非常にごく微量なものになってしまいますものですから、シアンのガス体としての出ることはわかりますけれども、そういった問題について、環境基準的なものの必要性ということから、このシアン問題に取っ組んでおりましたような研究成果が、いままで整っていなかったということを、私申し上げたわけでございます。
  104. 内田善利

    ○内田善利君 ごく微量であったと言われますが、どの程度ですか。
  105. 山形操六

    政府委員(山形操六君) これは大気中の浮遊粉じんの中の、先ほど言いましたように、五十時間空気を吸引した中の一番大きい数字が六PPM、六・一〇PPM、低い数字が一・〇九PPMでございます。これを大気中一立方メートル当たりにどのくらいあるかというふうに計算してまいりますと、〇・の〇〇がたくさんつく、百万分の一あるいは一千万分の一くらいのシアンの濃度になってしまいます。そういう検査成績が今回出ました。
  106. 内田善利

    ○内田善利君 このことに時間をかけたくないんですけれども、粉じんが一〇ミクロン以下で入っていくのですね。この粉じんにくっついたシアンが一〇ミクロン以下の粉じんと一緒に肺の最後まで入っていくわけです。SO2の場合は途中で溶けてしまいますけれども、粉じんについては、シアンあるいは酸化窒素というようなものは、非常に私は人体に悪い影響を与えるのじゃないかと、このように思うわけです。ですから、粉じんについてのシアンについては、これは各工場調査する必要があるのじゃないか、このように思いますが、そのなさった調査だけでいいでしょうか、そういう成績がないと仰せのようですけれども、将来調査されるお考えがあるかどうかお聞きいたしたいと思います。
  107. 小平芳平

    ○小平芳平君 関連して一緒に答えてください。  いまの粉じんですが、従来の公害は有毒ガスが健康被害を発生する非常な一つのねらいだったと思うんですが、しかし、私たちが各地で公害地を回りまして聞きますお話の中には、有毒ガスプラス重金属じゃないか、シアンを含んだ粉じん、あるいはその他の重金属、したがって、亜硫酸ガスの規制だけじゃなくて、そうした粉じんの規制こそ新しい公害病発生を防ぐ非常に一つの大きな要素じゃないかということを強く公害地のほうからも訴えられます。この点についても今後の対策をお答え願いたい。
  108. 山形操六

    政府委員(山形操六君) 粉じんとの関係で先にお答えいたしますが、おっしゃるとおりに、いま一〇ミクロン以下ということで浮遊粒子状物質といっておりますが、この環境基準をいま急いでつくっている作業に入っております。両先生おっしゃるとおりに、重金属の問題と粉じんとのからみの質の問題が非常に大きい問題になるのでございますが、いま私どもの作業の進め方としては、質の問題の環境基準的なものはこれは人体との影響で非常にむずかしいので、ともかく先に浮遊粒子状物質の環境基準をつくって、これで押えていこう、それからその次に、たとえば窒素酸化物、あるいはオキシダント、あるいは重金属では鉛というふうに個々的なものの環境基準をつくっていく、こういう作業になっております。ただいま先生のおっしゃるとおりに、粉じん中にいろいろな重金属が入ってそれの相乗作用、相関作用ということになりますと、これはなかなか学問的の研究がそれをいま区別してできておりません。したがって、粉じんは粉じんとして化学的な問題を離れて物理的な大きさの問題だけをきめまして、それでまず粉じんの規制をしていこうというのが考え方でございます。それからシアンの毒性の問題に関しましては、これはPPMの濃度だけで申しましたので、絶対量の問題が入ります。したがって、呼吸気中経口的肺吸入等によって毒性のあることは十分承知しておりますが、あくまでも絶対量でございまして、吸収したシアンはこれは生体内で直ちにチオシアン酸グリコレートに分解されて尿中に出されるということがございますので、量によって当然これは急性な刺激になりますけれども、先ほど私が言いました程度PPMの濃度ですと、これは人体との健康被害には影響ないという数字がこの前の検査の結果から出たのであります。
  109. 内田善利

    ○内田善利君 本論に入って質問したいと思いますが、昨年、公害国会で十四法が成立したわけですが、法律が成立しても施行までにある期間があるわけですね。この間が私は非常に大事な期間じゃないか。政令、省令となって施行されるまでの間にたいへんなことが起こっている、このように思うわけですね。私はきょうは産業廃棄物の処理について質問するわけですけれども、確かに九月二十四日から施行される、それまでの産業廃棄物に対する規制は——清掃法はありますけれども、ほとんどないような状況のように思うわけです。したがいまして、非常に驚くべき廃棄がなされておる。このように私は感ずるわけですけれども、これは洞海湾の奥に日炭の鉱山があるわけですが、その鉱山が閉山になりまして、廃坑ができたわけですが、その廃坑に化学工場の廃油ドラムかんが数千本投下された。その結果、それの因果関係はよくわかりませんけれども、その近くの井戸から水面上約一メーター、油のようなものが出てきて飲めない状態、こういうことが起こっているわけですが、因果関係ははっきりしませんけれども、非常に軌を一にしておるわけです。これに対する行政的な措置というようなものが何らなされていない。また、なすべき方法も非常にむずかしい、こういう状況のようです。このことについて御説明をお願いしたいと思います。通産省にお願いしますけれども、この日炭はいつ閉山になったのか。それから鉱業権の消滅はいつなされたのか。この日炭の廃鉱の中にこういったドラムかんが投棄された事実、これについて御説明をお願いしたいと思います。
  110. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) 日本炭礦の閉山時期はいつか、どこをもって閉山とするかという問題がございまして、閉山がいつかということについて、何月何日というはっきりしたお答えがちょっとできないわけでございます。問題の第六立て坑につきましては、三月の中旬から下旬にかけまして坑口の閉塞工事をやっております。そして鉱業権、白炭としての鉱業権消滅は三月の二十五日にやっておるわけでございます。三月の中下旬に第六立て坑という問題の閉塞をやったわけでございますが、その工事の中途、三月の二十日前後、あるいはまた一つは三月の二十二日というふうな報告をもらっておりますが、立て坑の中に、いま先生がおっしゃいましたポリエステルの繊維を合成しますときの低重縮合の生成物と申しますか、廃棄物を約六百五十トンほど、これを主にいたしましたドラムかんを投下いたしております。それから、そのほかこれは私ども昨日この事実を初めて知りまして、福岡のほうに照会をいたしました結果わかったわけでございますが、七月の二十九日の日の西日本新聞に、「民間の井戸から油、若松で坑口地下に旧坑道」というふうな見出しで、この件に相当するものが出ておるわけでございますが、この新聞記事によりますと、坑木に防腐剤として使った油のようなにおいと申しますか、それではあるまいかというふうな新聞記事があるわけでございます。いずれにいたしましても、そういうポリエステルの合成過程に出る廃棄物を主成分にいたしましたドラムかん、約三千本以上にもなるようでございますが、六百トン以上のものを立て坑を閉塞いたしますときに、ボタと一緒に捨てた。あるいはまたそのほかにも何らかの廃棄物を一緒に捨てたのではあるまいかというふうなことも考えられるわけでございます。
  111. 内田善利

    ○内田善利君 この投棄に通産省は立ち会ってはおられないわけですね。いま、きのう初めて聞いたということですから、通産省関係はどなたにも立ち会っておられないと思いますが、そういう工場からわざわざ瀬戸内海を通って、そして洞海湾の奥に捨てたということなんですけれども、これをどこに相談して捨てたのか。通産省は相談の相手にはなれなかったわけですが、海上保安庁がこのことについて、海上輸送ということで立ち会っておられたわけですけれども、海上保安庁にその間の事情の説明をお願いしたいと思います。
  112. 貞広豊

    説明員(貞広豊君) 私どももきのうその話をお聞きいたしまして、現地の機関に調査を命じました。その報告によりますと、確かにことしの三月二十日ごろ倉敷市の倉レ玉島工場から水島海上保安署に対して、工場廃液を洞海湾の奥の廃坑に投棄しようと思うが、どうかという相談がございました。当保安署におきましては、本件は陸上のことなので、海上保安署の関知しないところではありますけれども、運搬中、瀬戸内海投棄しないようにと、このように指導いたしまして、その後、いま申されますように、倉レでは日本炭礦若松鉱業所と契約をかわしまして、同炭礦若松鉱業所第六立て坑口に当該物を埋めることとして、是則運輸株式会社と二島鉱業株式会社に依頼をして輸送いたしました。投棄した量はポリエステル低重化合物ドラムかん入り三千百十四本と聞いておりますが、投棄の方法は先ほど説明がございましたとおりであります。輸送の方法としましては、瀬戸内は約三百トン以内の三隻の船で送りまして、陸に揚げましてからは石炭運送用の、ダンプカーで運送いたしております。そのような報告を受けております。
  113. 内田善利

    ○内田善利君 海上保安庁の水島保安署には連絡があったようですけれども、こういった廃棄物を三千二百本もドラムかんで捨える、そういう廃棄をするという場合に、監督官庁である通産省には相談はないものなのか、この点はいかがですか。
  114. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) ただいま海上保安庁のほうからお答えございましたように、倉敷レイヨンと日本炭礦の両当事者の間で相談の上、討議をいたしたのが事実でございます。私どもへの連絡、相談というものは一切あっておりません。それから投棄に対しての立ち会いというようなことも全然いたしていないわけでございます。
  115. 内田善利

    ○内田善利君 当事者同士で、産業廃棄物の処理法が九月二十四日から施行されますそれ以前のことですから、どこも所轄するところもないし、届け出るところもないということですが、清掃法によりますと、やはりこういうものを捨てることはよくない、こういうものを指定地域以外に捨てる場合は、特に、いま文句を忘れましたけれども、そういったことで、ある程度の精神的な規制はしてありますけれども、こういったことは公害法が制定になって、九月二十四日の施行までの間に大きな工場がどうして三千数百本のドラムかんを捨てたのか。また、その鉱山の中の状況を知った上で捨てたのか。この廃坑は奥洞海の海に面し、あるいは響灘に面する近いところにずっと坑道を掘っているわけです。そういうところに捨てて害はないかどうか、そういったことの検討はおそらくされたと思うんですけれども、通産省にも相談することなく、また、福岡の鉱山保安監督局とて全然知らなかったと、こういうことですが、こういうことでいいのかどうかということですね。重ねてお伺いしたい。
  116. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) 先ほどお答え申し上げました事情でございますが、やはりこういうふうな公害の原因になる可能性のあるようなものを坑内に、閉山に当たって入れるということは好ましいことでもございませんので、今後につきましては、さっそく全鉱業権者、それから私ども所属の監督部局に通知をいたしまして、こういうことが二度とないようにしていきたいと考えております。
  117. 内田善利

    ○内田善利君 厚生省にお聞きしたいと思いますが、産業廃棄物処理法は厚生省の所管でございますので、この清掃法の措置、これと、制定されて九月二十四日から施行になるわけですけれども、この間の措置の方法、廃棄物を不法投棄して、それによって井戸水等に被害があった場合、との措置方法は何もないのかどうか、この点をお聞きしたいと思います。
  118. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) 旧清掃法の関係でございますが、旧清掃法のもとでは七条あるいは八条の規定によりまして、多量の汚物及び特殊の汚物を排出するものに対しまして市町村長が運搬または処分を命ずることができることになっております。それで、この命令に反した場合には罰則も課せられることになっています。必要に応じましては代執行を行なうことができるというきめもございます。先生の御指摘のように、九月二十四日に旧清掃法は廃止になりまして、新たに廃棄物の処理及び清掃に関する法律が施行されたわけでございますが、この廃棄物の処理及び清掃に関する法律におきましては、産業廃棄物という規定を設けまして、事業者に対しましては処理責任、保管の責任を課しております。ともに生活環境保全上支障のないように措置するということがきめられております。これに違反した場合には必要な措置命令を出しまして、さらにこの命令に反した場合には罰則が課せられるということになっております。
  119. 内田善利

    ○内田善利君 そうすると、この場合は厚生省としてはどういう措置をなさるんですか。
  120. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) 私どももこの事実関係を承知いたしましたのは昨日のことでございまして、十分その辺の事情を調査しなくてはなりませんが、この廃棄物の処理は原則的には市町村長の責務、また今度の新しい法律では一部都道府県知事の責務に課するところがございますが、そういうことでございますので、当該都道府県を通じまして市町村のほうにこのような違反のないように厳重に取り締まるとともに、万一このような事実があった場合につきましては、しかるべき措置をとるように指導してまいりたいと思います。
  121. 内田善利

    ○内田善利君 この投棄したものは一体何なのか、通産省にお聞きしたい。
  122. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) まだはっきりと何かということがわからないわけでございますが、倉レが投棄いたしましたものの主成分にあたるものはDGペーストというふうに呼んでおるようでございますが、私どもがポリエステル繊維というふうに俗に呼んでおります、この合成繊維をつくりますときに、これは縮合重合をしてつくるわけでございますが、このヂエチレングリコールとテレフタール酸、こういうものを使って縮重合をいたすようでありますが、この場合に重合度が低いために繊維の形成能力がないというふうなものがある程度出てくるわけでございます。これは本質的にはポリエステル繊維と同じだというふうに聞いておるわけでございますが、そのもの自身は化学的に不活性で水に不溶で、それから常温で酸、アルカリ、有機溶媒には溶けない。それから常温では固形である。それから臭気がない。色は薄茶色だというふうな物質であるわけでありますが、この投棄につきまして両当事者間で話し合いをしましたときに、クラレのほうから日本炭礦に話したものの報告では、ポリエステルの低重合度物を主成分とする不活性のものだ、毒性はないというふうに聞いておるようでございますので、DGペーストが主成分であったことは事実であろうかと存ずるわけでございますが、そのほかにどういうものが入っておったのかという点に問題が残っておるわけでございます。  それから先ほど私ちょっと申し上げましたように、このほかに何かほかのものも入れて投棄をしたのではないかというふうな可能性も考えられるわけでございますので、そういう点につきましても今後詰めていきたい、そういうふうに考えておるわけでございます。
  123. 内田善利

    ○内田善利君 このポリエステル繊維をつくっている工場全国で幾らありますか。そしてその同じ廃棄物はどういうふうに処理しておるか、これをお聞きしたいと思います。
  124. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) 私ども聞いておりますところでは、八工場ございます。東レの三島、帝人の松山、旭化成の延岡、東洋紡の岩国、三菱レイヨンの豊橋、日本エステルの岡崎、鐘紡の防府、こういう工場でございます。それからこの工場全部がどういうふうな処理をしておるかということは正確にはまだ私どもわからないわけでございますが、相当部分については海洋投棄をしておるのではないかというふうに考えられます。
  125. 内田善利

    ○内田善利君 海洋投棄しているわけですが、海上保安庁としては、こういうものを捨てては困るということで陸上に捨てたということになるわけですけれども、海洋投棄をしてもいいことになっているわけですか。
  126. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) ちょっと私、いま海洋投棄と申し上げましたが、ここに資料がございまして失礼申し上げましたが、ほとんどが焼却でございます。焼き捨てる、焼却処分をしておるということでございます。
  127. 内田善利

    ○内田善利君 ほとんどが……。
  128. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) この表で申し上げますと、東レの三島ができ得る限り回収する、最小限度が焼却であります。それから帝人の松山は焼却処理、一部は燃料として利用する。旭化成の延岡は現在は自社工場敷地内に埋め立てる、今後は焼却の予定。東洋紡の岩国は焼却処理。それから三菱レーヨンの豊橋は焼却処理。鐘紡の防府工場が不明でございます。それから日本エステルの岡崎が焼却処理でございます。
  129. 内田善利

    ○内田善利君 そういうふうに焼却できるものをどうしてわざわざ三千数百本のドラムかんを瀬戸内海を通って捨てに行ったのか。また、現地もどのような廃棄方法をもって捨てたのか。その辺どうなんですか、御存じないですか。焼却処分を私はするのが−現在、公害問題がこのように叫ばれておるとき、また十四法律が成立して九月二十四日には施行になる、そういうことを前にして、しかも日にちを考えますと、先ほど答弁がありましたが、二月二十二日に第六立て坑の廃止がきまって、そして三月十一日には一ぺん中間検査に——どこが行ったんですかね、一ぺん中間検査を三月十一日にやっておる。これはどこが中間検査をされたのか。そして三月二十一日から二十四日の間に立て坑に全部埋めた、そしてあくる二十五日に鉱業権の消滅登録がなされた。この辺非常にぴしゃっとやっているわけですね。この廃坑に捨て終わって、鉱業権の消滅登録がなされたというようなことは、疑えば幾らでも疑えるわけです。そして二社で相談があって、捨てた。その辺に金銭の授受があったのかなかったのか、その辺知りたくもありませんけれども、疑えば疑えるわけです。そういったことを監督庁の通産省は全然お知りにならない。福岡の鉱山保安監督局もお知りにならない。そういう中で行なわれたということは、私は行政の怠慢といいますか、それと同時に、法律が成立したあと、施行までの猶予期間にやることは非常によくないということを痛切に感ずるわけですが、この点いかがでしょうか。
  130. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) このDGペーストにつきましては、倉レでは昭和三十九年四月から約七百トン近くこれが出てきたわけでございます。現在まで工場内にこれを積みましてたくわえておったわけでございます。いよいよ敷地一ぱいになりまして、処分をせざるを得ないということになりまして、一部を海洋投棄いたしたわけでございますが、そのときに若干のトラブルがありまして、その結果、海洋投棄をあきらめた。たまたまそのときに日炭の閉山ということを知りまして、両当事者の間で相談をしたのではないかというふうに考えられるわけでございます。  それから、ただいま先生三月十一日の日に検査をしたということを言われたわけでございますが、これは日本炭礦が閉山をいたしますと、鉱業権を消滅をいたしますと、石炭鉱業合理化事業団が閉山交付金を交付するというたてまえになっておるわけでございます。その交付金の手続の一環といたしまして、同事業団が検査に行ったということでございます。
  131. 内田善利

    ○内田善利君 私は、この間の行政の怠慢といいますか、猶予期間にこういう不法投棄がなされるということは非常によくないと思うんですね。事業場が、企業がこういう廃棄物を廃棄するときに、その種類ですね、何を投棄する、そして数量は幾らだ、どこに捨てるということを、一体事業場はどこに報告すればいいのか、どうですかこの点。かってに捨てていいわけですか。どこかにやはりしないと、不法投棄は九月二十四日までに、やろうと思えば——もう終わりましたけれども、どうなんですかこの点は。これをつかめないというのはおかしいと思うんですね。厚生省かな。
  132. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) 九月二十四日以前におきましても、清掃法の第十一条によりまして、「汚物の投棄禁止」ということで、汚物を特別清掃地域内等に捨てるということは、実は法律をもって禁止されているわけでございます。それで、もしも、先ほど申しました七条、八条によりまして、特殊あるいは多量の汚物を生じた場合には、事実上このような当事者は困るわけでございますので、これらに関しましては、市町村長がその廃棄物排出者に対しまして、運搬あるいは処分をしろというふうに命じることになっております。これはつまり、排出者に責務があるという意味でもってそのような規定がございまして、これに違反した場合には罰則があるということは先ほど申したとおりでございます。したがいまして、その実態把握、あるいは届け出ということになりますと、それがどのようになるかということかと思いますが、従来の清掃法の体系では、特別清掃地域内に排出されまするごみその他の廃棄物につきましては、市町村長のいわば責務ということになっておるわけでございまして、その限りで事業者の責任にしたほうが妥当な場合には、市町村長の責務からはずれるという意味において、市町村長にその当排出者にいろいろ命ずることができるという権限を与えておるわけであると思いますので、これは相対的な立場にあろうかと思いますけれども、この法律を承知しておる限り、またこの法律がある限りは、そのような場合には、当然市町村長の指示を受ける、また市町村長はこのような事実を知って、しかるべき処置を命ずるということによって不法投棄が行なわれない、環境衛生上支障が生じないというふうに措置すべきであると考えております。
  133. 内田善利

    ○内田善利君 鉱山監督局は見えておりますか。あそこの第六立て坑の構造はわかりますか。
  134. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) 実は私第六立て坑に何回か入坑したことがありますので、記憶で申し上げるわけでございますが、白炭の、洞海湾の奥に石炭を搬出する日本でも非常に大きなベルトの斜坑があったわけであります。その斜坑から約四キロでございますか、北のほうに排気と申しますか、ガスのまざった空気を地上に排出するための特別の立て坑を掘ったわけでございます。たしか約七百メートル近いところに長い水平坑道がございまして、その水平坑道まで一−たしか立て坑の深さにして六百六十メートルというふうに聞いておりますが、直径六メートルのコンクリートの立て坑でございます。
  135. 内田善利

    ○内田善利君 ここにあるこれが近くの井戸に出てきた油なんですがね。透明に見えますけれども、これは取ってにおいをかぎますと、タールのようなにおいがするという人もいましたし、二硫化炭素のようなにおいがするとおっしゃった方もあります。あるいはエステルのようなにおいがするという方もあるんですが、これをにおいをかいでみられるとわかると思いますけれども、これが約一メートル、井戸の水面に出てきたんですね。近くのたんぼや、みぞに油のようなものがぶつぶつ出たので、うちの井戸はだいじょうぶかなというので見にいったら、すでになっていた。これを上からにおいをかぎますと、つうんときて少し頭が痛くなると、こういうことなんです。それから衛生研究所に持っていこうということで、これをくんでポリエチレンの容器に入れたわけです。そしたら、四、五時間で穴があいた。写真にとってあります。だから、相当ポリエチレンを溶かす溶剤があるに違いないということもわかるわけですね。そういうもので、これがポリエステルの廃棄物だけであるかどうか、あるいはこれはまた別のほうからもきたのか、あるいは三千数百本のドラムかんが、先ほど説明がありましたように六メートルのコンクリートの六百何メートルの立て坑ですから、落ちていくときはどかん、どかん、どかんとものすごい大きな音がして落ちていったと、そういうことですから、相当ドラムかんはこわれておるということが想像されるわけですね。そうして下には水がもう行き渡っている。その水に廃棄物が入っていく。そしてこのような状態で、このように透明のような形になってしみ込んで出てきたわけです。私は行く前までは、そんな油ならばタールのような黒い色をしているのかなと思っておりましたけれども、実際はこういう色、しかし、においをかぐと、またさわってみるとよくわかります。そういうものが出てきておるわけです。もちろんその井戸水は使えないし、そのまま放置されておる。その近くには、大体四百メートルぐらい行ったところに頓田という工業用水池があります。この工業用水池も、その水底は付近のたんぼよりもちょっと低いので、もし地下水からそうして出てくるとするならば非常に危険なわけです。しかも、これは四十トンで、約十二トンを工業用水として使って、あと二十八トンは飲料水として、工業用水でありますけれども使っておるわけですね。そういう状況にありますので、これは非常に大至急調査を要するんじゃないかと、このように思いますが、この点、厚生省、いかがでしょう。
  136. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) 関係の各省とも十分に協議いたしまして、至急に調査に当たりたいと思います。
  137. 内田善利

    ○内田善利君 これを持っていったら、官能検査だけで、あ、これはタールじゃと言ってそのまま返されておるわけです。こういう事情を知ったならば、もう少し私は行政当局は親身になって調査をすべきじゃないかと、このように思うわけです。一つの井戸がそのようによごれているわけですから、そういった意味では、早く厚生省のほうで現地の保健所等に対して私は即刻調査を命じるべきではないか。調査して、そうして早くこの対策を講ずべきじゃないかと、このように思うんですが、いかがですか。
  138. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) できるだけ御意思に沿うように、また事態が事態でございますので、早急に関係の各省とも十分に連絡をとりまして、市でございますから、市を通じさらに実態調査をしたいと思います。
  139. 内田善利

    ○内田善利君 警察庁は、この点についてどのようにお思いになりますか。まあ因果関係ははっきりしないと思いますけれども、住民の井戸が汚染されておる、どこが原因かわからない、こういった問題についてどのようにお考えなのか、お聞かせ願いたいと思います。
  140. 関沢正夫

    説明員(関沢正夫君) お答えいたします。  警察といたしましても、実は率直に申し上げて、先生から御指摘がありまして、きのう、きょうと急遽、関係府県に調査を命じまして、大体、いま御指摘のような事実があるということを知ったわけでございます。詳細は実はつまびらかにいたしませんので、ここで明確なことを申し上げかねるのはまことに恐縮でございますが、いずれにしましても、もし犯罪の容疑があることであるならば、これは当然のことながら捜査いたしたいと、こう思います。ただ、現在まではそれに対する被害の発生は幸いにしてないようでございますし、水道の汚染している状態そのものでどういう犯罪になるか、これはやはり詳細に検討いたしませんと、ちょっと何とも申しかねますが、もし犯罪の容疑があるということが明らかになれば、当然のことながら捜査するのはあたりまえだと思います。
  141. 内田善利

    ○内田善利君 産業廃棄物のこういった大量不法投棄については、現産業廃棄物処理法で処理するということになりますが、先ほども言いましたように、いまから事業者が廃棄をするというときに、そのものの性質とか、あるいは数量とか、あるいは廃棄場所とか、投棄場所とか、こういうことはどこに報告すればいいのですか。その点お聞きしまして私の質問を終わります。
  142. 浦田純一

    政府委員(浦田純一君) 今度施行されました廃棄物の処理及び清掃に関する法律におきまして特に一章を設けまして、第三章として産業廃棄物の処理に関する規定が設けられております。その中で、都道府県におきまして、主として広域的に処理することが適当であると認められる産業廃棄物の処理をその事務として行なうという、いままで市町村単位でしか遂行されなかった清掃事務を都道府県が手をつけるという余地を開きましたとともに、第十一条におきまして、「都道府県知事は、当該都道府県の区域内の産業廃棄物の適正な処理を図るため、産業廃棄物に関する処理計画を定めなければならない。」という規定がございまして、すなわち、都道府県知事はその当該区域内にすべての産業廃棄物排出状況把握するということが必要になるわけでございます。裏返して申しますと、これに基づきまして、各工場あるいは事業場から出ます産業廃棄物は都道府県のほうに届けなくてはならない。都道府県のほうは、逆に、それらについて十分な把握をしなくちゃならない。こういったような関係に相なるわけでございます。
  143. 内田善利

    ○内田善利君 通産省はこういう廃棄物の処理については何らタッチしないのですか、所管の工場の。
  144. 久良知章悟

    政府委員久良知章悟君) 法的な取り締まりその他は厚生省のほうで行なわれるわけでございますが、私どものほうといたしましても、行政指導によりまして各工場が間違いなく操業する上に、廃棄物のいろいろな処理につきましての資金のめんどうその他の技術指導というふうな面については責任があるわけでございますので、この点については今後とも努力していきたいと存じます。
  145. 内田善利

    ○内田善利君 海上保安庁にもう一言お聞きしますけれども、一カ月ぐらい前に洞海湾並びに響灘方面に原因不明の油が流出しているということで追及しているということでしたが、この辺の事情をお聞かせ願いたい。
  146. 貞広豊

    説明員(貞広豊君) そのお話を承りましてさっそく調査いたしましたけれども、それに心当たりがあろうかと思われまするのは、ことしの八月二十四日に海上保安庁の公害監視航空機が飛行中に、若松の防波堤沖に浮遊油を発見しております。直ちにこれを保安部に通知し、巡視船が行きました。巡視船が行きましたときには——飛行機からは報告はあったけれども、行ってみたら見つからなかった、そういう事案はございました。そのほか心当たりのところはいまのところないのであります。  なぜ、飛行機が見て、船が行ってわからないのかという疑問が起こるかと思いまするけれども、この海面に流れた非常に薄い油というものは、飛行機から見ますと、上から見ますと、光線のぐあいによると非常によく見えるのです。ところが、さっそく間髪を入れず巡視船がその現場の中に行きましても、肉眼ではなかなか発見できないということがよくございますので、そういったような事例ではなかったかと考えられます。
  147. 加藤進

    加藤進君 瀬戸内海汚染の問題について、午前中、杉原委員からの質問がありました。これに答える環境庁側の答弁について、私は率直に言って非常な不安を感じました。というのは、瀬戸内海汚染現状について、はたして環境庁の方たちはほんとうにその実態を認識しておられるのだろうか、どうなのか、こういうことであります。  私の手元にある少しばかりの資料をお読みいたしましょう。工場排水ですか、この瀬戸内海に流れ込むのは年間百四十万トンから四七十万トンに及ぶと言われております。そして、この工場排水によって汚染されている川にも、海にも非常に有害な金属の物質で一ぱい。これは環境庁の出した水質汚濁総点検の結論としても出ています。この瀬戸内海水質汚濁の地域と言われるのが、五十八、百七の市町村に及んでいます。その上に屎尿はといえば一日三千トン、これが流れ込みます。こういう事態によって、いわば瀬戸内海は企業のための産業運河に使われている。要らない物はどんどんこれに捨てる。捨て場になっている。その結果が、赤潮はもう極部的なものではなく、全地域にわたって頻発している。こういう事態が簡単な数字からでも出てきておると思います。しかも、瀬戸内海は普通の港湾と違いまして、御承知のように、入り口は三つしかありません。もしこの瀬水内海の水をかえるとするなら、おそらく五十年から六十年かかるだろう、こう言われているような瀬戸内海であります。しかも、船はといえば、備讃瀬戸を通る船舶だけでも一日千五百隻をこえると言われております。海難事故は三日に一件は起こるところであります。こういう状態瀬戸内海を、いかにきれいにしてよみがえらせるか。これが私は環境庁の今日行なわなければならない重大問題だと思います。環境庁ももちろんだまっておられるわけではないことは存じています。十一月八日に発足いたしました環境保全対策推進会議もけっこうです。また、瀬戸内海のモデルをつくっての実験、これもけっこうでございますけれども、何か根本に抜けておる問題があるのではないか。その第一は、こういう重大な事態にまで深刻化して、いわば瀬戸内海が瀕死一歩手前だと言われるような状態にあるという認識、この認識をまずしっかり持っていただくことがなければ、その上に対処だとか、あるいはビジョンだとか言っても、いわばそれはくずれやすい砂の上での考えごとにしかすぎないのじゃないか。私はこの点をまず第一に憂うるものでありますけれども、この点、次官から所信をお聞きしたいと思います。
  148. 小澤太郎

    政府委員小澤太郎君) 私どもは、いま加藤先生のおっしゃったとおりの認識に立っておるわけであります。ことに私は山口県でありまして、瀬戸内海を私の庭の前に持っておるようなものであります。これは十数年にわたって見ております。これではいけないという、もう非常な深刻な状態にあるということを十分認識いたしましてやっておるつもりでございます。
  149. 加藤進

    加藤進君 その決意を聞きまして、やや安心いたしました。  そこでお聞きしますけれども、では、どうしてこの汚染を解決するのかと言えば、まず第一に環境庁としてなすべきことは、しっかりとした法的な規制を行なわなくてはならぬということだと思います。ところが、今日までの、あのような深刻な公害をもたらしてきたものには、決して法律がなかったわけじゃない。こういうさまざまの公害防止のための法案がありました。これもつくったままだというようなことではなしに、現に実施されていたと思います。にもかかわらず、このように公害が深刻になったというところに、一体問題はどこにあるだろうかという反省が私は必要だと思います。その第一は、いまの法律さえきわめて不備であって、ことばで表現するなら、ざる法に近いような状態にある。ここに私は一つ問題があるのではないかと思います。  例を申し上げます。瀬戸内海に流れ込む六百の河川のうちで、もとの水質法によって規制を受けている水域というのはどれだけあるのか。私の手元資料によりますと、それは三十二しかない。あとは野放し。これがいままでの水質法のいわば規制だったと思います。新しく水質汚濁防止法ができて、その規制は強まった、こう言われるかもしれません。しかし、今度できた水質汚濁防止法によっても、その規制は、先ほどもある委員が指摘されましたように、これは排水の中に含まれる有害物質の量できめられている。もし意図的にやるなら、有害な物質はたくさん含んでおるけれども、これは海の水で薄めて流してしまえとなれば、もうこれは法的規制はないんじゃないでしょうか。こういうことが今日、現に瀬戸内海汚染をますますひどくしている、この根源にあるのではないかと、私はそう感ぜざるを得ません。  それからもう一つあります。とりわけ、海洋汚染防止法であります。いま、この汚染防止法によって規制を受けてはおりますけれども基準以下ならどれだけ廃油してもいいことになっているのじゃないでしょうか。港湾や、それから廃油処理施設のないところでは、捨ててもかまわぬことになっておるのじゃないでしょうか。しかも、この法案は今日ではまだ完全に実施されるのでなしに、完全に廃油を投棄してはならぬという規制を受けるのはまだあとのことだというようなことが、一体どうして法律の上で許されておるのでしょうか。こういう点について、私は率直に申し上げるなら、もっとこの法的規制をきびしくして、法律によって規制できるようなしっかりとした法案、法律をつくり、その権限をもって汚染防止法の仕事に取りかかっていただきたいと、こういうことを私は希望したいと思いますけれども、その点はどうでありましょうか。
  150. 小澤太郎

    政府委員小澤太郎君) 加藤先生御指摘のとおり、今日まで、あのような状態になりましたことは、これは政府、企業含めて、いままでの姿勢がきわめて不十分であり、この問題に真剣に取っ組んでおらなかったということを先ほど長官が申し上げたとおりでございます。過去を振り返ってみて反省すべきことが多々あります。その反省に立ちまして、御承知のとおり、昨年の臨時国会において法律をつくり、通常国会もあわせまして今回の行政の機構と法律の体制をつくったわけであります。御指摘のとおり、その法律の中にはまだ十分に働いておらないものもあります。先ほど御指摘の海の汚染を防止する法律、これはまだ施行されておらないというような状況でございまして、急にこのような事態に応じた法制上あるいは行政上の措置を講じてまいりました関係もございますし、それからもう一つは、私、環境庁に参りまして実にふしぎに思ったことがございます。これほど科学技術が進んでおって、人間が月に往復するような時代でありながら、人間の健康に直接の関係のある科学的な、物質の健康被害に関する研究とか、あるいはそれのいろいろなメカニズムとか、こういうものの研究が非常におくれておる。したがって、この研究を進めながらこの対策を講じていくというような、まことに何と申しますか、遺憾な状態でございます。しかし、これはそのまま現状がこうであるからというわけで手をゆるめておくわけにはまいりませんので、できるだけ現実に即した措置を積み重ねていくというのが私どもの態度でございます。また、先ほどお話のありました水質基準の問題、排出基準の問題等につきましても、先ほどちょっと申し上げましたように、基本法においても逐次現状に合わせるように強めていくということをうたっております。私どももそういう気持ちでやっておるわけでございますし、ことに水質汚濁につきましては、量の問題を考えなければ、ただ濃度だけで事足れりというわけではございません。したがって、一応濃度の問題は全国一律に考えておりますけれども、現実に具体的な場所についてはその排出の量というものを合わせて上乗せの基準をつくらせるというような措置をとっておりますが、これがまだ十分にその基準がつくられておらない現状でございます。こういうことで、いま加藤さんのおっしゃったような方向で私どもは真剣に取っ組んでいく、こういうことでございますので御了承いただきたいと思います。
  151. 加藤進

    加藤進君 続いて公害の行政について、私は全般的にここで質問する時間はありませんが、特に監視体制の問題、これは廃油一つとってみても海上保安庁自身が嘆いています。幾ら巡視艇で追っかけてみてもとうていそんなことは不可能だと、現実はそういう事態です。工場排水一つとってみても、一体どれだけの有害な排水が特定の企業から出されておるか、それも今日つかまれておらない。こんな状態で一体どうして水がきれいになるでしょうか。私はその点から見ても監視体制を強化する、摘発を強化する、このために必要な措置をどんどんとっていかなくてはならぬと思う。そういう点からいうなら、予算の問題も当然だと思いますが、同時に、いまたとえば先ほども出ましたようなあの製紙工場のヘドロの問題、そのためにもう海では操業ができぬといって陸へ上がっておられるこの漁民の諸君が、よし、環境庁がその気ならわれわれも協力しよう、海上パトロール隊でもつくろうか、工場の監視をやろうかと喜び勇んでいく、こういういわば漁民や、あるいは公害の問題について真剣に取っ組んでおられる地域の人たちの協力——自治体の協力も言うまでもありませんけれども、こういう態勢を全地域にわたってしっかりつくっていく、こういうことを公害行政の一端としてぜひひとつ参考として取り上げていただきたい、このことを申し上げたいのですが、いかがでしょうか。
  152. 小澤太郎

    政府委員小澤太郎君) この監視を厳重にやらなければならないということは仰せのとおりであります。海上の問題は海上保安庁において努力をしていただいております。先般、東京湾を私見てまいりました、ヘリコプターを飛ばしましていろいろ努力をしておりますが、夜やられるやつはなかなかまだキャッチできないというような状況でございます。その技術の問題、方法の問題にまだ問題点がたくさんあります。これも予算の問題ももちろんございますが、これを何とかして完全になくさせる、海上投棄、不法な投棄をさせないようにするということの努力はさらに積み重ねてまいりたいと思います。  それからまた、工場排水につきましても、先ほどもちょっと触れましたように、遺憾ながら常時測定ができるというような器材の開発がまだできておらない、あるいは何でこれを把握するか、CODとか、BODとか言いますけれども、どういうことで把握するかという検討もまだできておりません。それは逐次環境庁中心となっていま進めております。そうなりますと、常時監視する体制は整います。しかし、それを待っておってはなまぬるいのでございますので、現実にできるだけ監視する場所、測定する場所をふやして、その頻度をふやすということによって厳重に監督をしてまいりたい、かように思っております。しかし、何よりも、こういうことを申してはどうかと思いますが、必要なのはやはり企業なり一般国民のモラルの問題だと思います。こっそり捨てておいて、そうして知らぬ顔をするということは許すべからざる問題であります。これは法律の改正に上りまして企業に対する直罰の規定もできております。こういうものも十分に運用しなければなりませんけれども、まず第一にモラルの確保、これをぜひともやってもらわなければ、ただ行政権力に基きまして監査、取り締まりをするというだけでは足らないではないか、こういう協力も得たいと思いまして、そういう面におきましても、環境庁としてさらに国民にも訴えて企業には特にきびしく臨んでいきたい、こう考えておる次第でございます。
  153. 加藤進

    加藤進君 時間がありませんから、こまかい質問はきょうは省略いたしますが、先ほどの推進会議会ですか、会議の発足される直前に、大石長官が記者会見でこういうことを言われているのを私は新聞報道で見ました。政府の新全総開発計画瀬戸内海の大幅埋め立てを予定しているが、埋め立てば内海汚染を助長するもので再検討が必要である、こう言われております。これはおそらくきょうも発言の中にあったと思いますけれども環境庁自体として政府が進めていこうとする新全総の開発計画について、何らかの手直しを行なうべきである、こういう意見の表明であろうと思いますけれども、その点は確認してよいのでございましょうか。
  154. 小澤太郎

    政府委員小澤太郎君) そのとおりであります。
  155. 加藤進

    加藤進君 いま瀬戸内海は阪神工業地帯を東に、また西の端には北九州工業地帯、こうして日本の四大工業地帯の半分がここに集まっているわけです。そうして、御承知のように全国二十一の新産都市と工特地域のうち、瀬戸内海にあるのはその三分の一ですね。こういう状態の上になおかつ新全総開発計画が進められる、これが現実の私は事態だと思います。そうしてこれに合わせて各府県にもそれぞれ開発計画がある、こういうのが現状でございます。いま内海臨海部での既設工業地帯のほかに四十六カ所の新しい工業団地の建設が予定されているそうでありますが、これは昭和六十年に至ると、沿岸工場出荷額は現在の四倍になる、これが沿岸知事市長会議で出されたデータだと、四倍もの工場出荷額がこの瀬戸内海沿岸で行なわれる事態、このことは言うまでもなく、さらに瀬戸内海の水を汚染し、空にも排気ガスを充満させ、そして環境をますます悪くするということの実際の姿ではないかと思いますが、この中での特に周防灘計画、あるいは阿南地域の計画等等を見ますと、この計画はおそろしく大規模ですね。周防灘計画の総埋め立て面積が五万八千ヘクタールあるそうでありますが、これは六十年代の瀬戸内海の埋め立て総面積の三・二倍に当たるそうであります。このような状態で計画されている新全総計画を、たとえ手直しをする、埋め立てに一部規制を加える等々の小手先のことでは、私は瀬戸内海を真によみがえらせることは不可能だと思いますが、その点についての所見をお願いしたいと思います。
  156. 小澤太郎

    政府委員小澤太郎君) この本日の委員会の当初に私も申し上げたと思いますが、新全総計画、これを新しい観点に立って改定をすべき機運に達しております。また、御承知のように、経済社会発展計画は四十八年にこれを改定するという機運であります。また、そうせざるを得ない状態であります。それに合わせまして環境庁におきましては、これも先ほど申し上げました長期ビジョンに立った、一応六十年を目標としたところの一つの計画を立てよう、こういうような考えでございます。したがいまして、この三つのプロジェクトが互いにミックスいたしまして、そこに合理的なものをつくっていこう、こういうことで政府はあげて努力をするつもりでございます。したがいまして、いま先生のおっしゃいましたような現状で、いままで考えておったようなことがそのままいくはずはございませんし、それを多少手直しをするような程度のことで事足りるかどうか、こういう問題については私どもは強い主張をしてまいりたい、ことに瀬戸内海に限って申しますならば、これもまた先ほど瀬戸内海環境保全促進会議におきまして四つの分科会をつくりまして、その一つにマスタープランの分科会をつくっております。これは先ほど申しましたような大きな一つの目標のもとに具体的な問題として取り組んでいきたい。さらにもう一つつけ加えて申し上げたいのは、これまた長官がたびたびこの委員会でも申し上げておりますけれども、自然保護法といろ考え方も持っております。でき得べくんば今度の通常国会に提出いたしたいと思います。これらもまた自然保護の見地からいろいろの立地に対する制約を加えていきたい、こういうふうに考えておりますので、それも合わせまして、この政府の新しい全国総合開発計画、これに対する十分な関与をしていく、こういうつもりでございますので、御了承いただきたいと思います。
  157. 加藤進

    加藤進君 そこで、私は、具体的な提案を申し上げたいと思いますけれども、いまの次官お話にもありました工業開発計画を根本的に再検討されるということはけっこうです。したがって、その再検討される内容についてでありますけれども、ぜひとも瀬戸内海の公害を防止する、環境を保全する、これを優先する立場を貫いてほしい、こういうことがまず第一であります。そうして今後の埋め立て及び公害産業の新立地については、これにその観点から規制を加える、この立場をひとつしっかり確立してほしいわけであります。特に業種的に言うならば、公害の発生源である石油精製、化学、鉄鋼、紙パルプ、火力発電などは今後これを押える、こういうことをひとつ積極的にやってほしい。そして特にいまの計画の中に原子力発電所が予定されておるそうでありますけれども、これは海洋や大気の汚染、熱公害、放射能、こういう公害をもたらすことは今日の状況ではやむを得ないことになっていて、しかも建設に当っても安全性は保証されておらない、こういう状況でございますから、原子力発電所などというものを誘致するようなことは絶対やめていただきたい。そうしてこの瀬戸内海は無公害の産業が発展していく、海には豊かでそして栄養価のある日本でもまれな漁場が発展していくような方向をはっきりと打ち出していただく、そして世界公園といわれるような瀬戸内海の美しい風景を背景にして、国民が喜び楽しめるような観光レクリエーション地帯をつくり出していただく、こういうビジョンをぜひとも全面に掲げて、このような新全総計画の再検討と手直し、こういう点に踏み切っていただきたいということを私は心から要望いたしまして、またその点についての次官の所信を最後にお聞きして質問を終わりたいと思います。
  158. 小澤太郎

    政府委員小澤太郎君) 御提案は率直に承ります。もとより公害を防止し、環境を保全するということが私どもの仕事でございますから、そういう観点に立って政府の中で政治を進めてまいるということはもとより当然でございます。ただ、具体的の問題につきましては、その事態事態をとらえまして、ただ観念的に何はいけない、これはいけないということでなしに、先ほど申しました私どものよって立つ基本的姿勢に照らしまして、これを処理してまいる、そのような提案をいたしたい、かように考えております。  御承知のように、公害対策基本法の経済条項を削ったという国会の態度、政府の態度、こういうものは明らかにいま御提案になったことの精神を示しておるものと思います。このように考えます。繰り返し申しますが、ただ具体的に何をやっちゃいけない、これをやっちゃいけないということにつきましては、これはもっと具体的に考えていかなければならぬ問題だ、このように考えておる次第でございます。
  159. 加藤進

    加藤進君 私は、具体的な提案を申し上げましたので、これを直ちに実施してもらいたいのでありますけれども政府としても検討の余地は十分にある、十分に検討して、私の趣旨の積極的なところを生かしていただきたいということを要望して質問を終わらしていただきます。
  160. 杉原一雄

    ○理事(杉原一雄君) 本日はたいへん御苦労さまでした。  本日の調査をこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時五十八分散会      —————・—————