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国務大臣(
田中角榮君) 第一の
輸出輸入のバランスをとるというのは、これはもう二国間でいまとられておるものは、共産圏貿易は、これは
輸入と
輸出というものはきちっとバランスがとられております。まあ
アメリカもその程度にしてはどうかと、共産圏貿易のように
数字をぴしっと合わせなければならないというほどではない、ないが、お互いにやはり二年、三年というバランスの上では、お互いがバランスがとれるようでなければならない、こういうことでありまして、その
一つが繊維交渉になっているわけです。こっちは二〇%増しを五%増しで押えているのですが、
アメリカから見ると、
アメリカの製品は
日本には六割しか入っていないじゃないか、せめて去年並みに入れるようにしなさい、入れるものがないじゃないか、
日本向けのものもつくらないで何を言うか、
日本でつくればうんと金のかかる飛行機でも何でも買えばいいじゃないか、電子
計算機でもみんな
アメリカ製品で間に合うじゃありませんかと、こういうことで、二国間でいろいろ交渉が進んでいるのは、バランスをとろうじゃないか、バランスがとれないと、やはり長期的にお互いが友好
関係を続けていけないということですから、これも当然ある程度のことは
考えなきゃいけない。
日本のように年率三〇%ずつも伸ばそうなんというのは、こんな
ことばかりやっていると、やはりイエローヤンキーと言われたり、たぶん
日本のエコノミックアニマルと言われるような
感じから抜け出せないということですから、これはオーダリーマーケティングというものを前面に打ち出さなければならないということは、御指摘のとおりでございます。
第二は、
日本の国内的な構造を抜本的に変えなければいかぬ。これは、生産第一主義からもっと社会保障とかいろいろなものを言いますけれども、これはもう
考えてみると、
アメリカで言われておったことが、そのままわれわれ反省しなければならない。こんなに
日本がたくさん
アメリカ向けに
輸出をしているけれども、そんなにもうけておらないじゃないですか。言うなれば、出血
輸出じゃないか、ダンピングじゃないですかということですね。これは私が繊維業者の一部にも言ったんですが、糸は三年半分もお出しになったんですが、利益も三年半分積み立てましたかと言ったら、いや利益のほうはさっぱりないんです
——と言うなら、これは汗ばかりかいて、人にきらわれるほど
輸出をして利益はなかったかと、こういう
——まあそれほどだとも思いませんが、それではノーマルな経済環境を保持するわけにいかないわけです。なお、住宅はない、道路は三分の一であるとか、社会資本の蓄積率においては四対一じゃないか
——確かにそうです。
アメリカ並みにするには、
日本の都市の道路は三倍にならなきゃいかぬ。まあ下水とか、あらゆる面がそうでございますから、戦後急速に拡大をした社会保障の面といえどもまだ指摘される面もあるということで、そういう国内的な
均衡をはかるために投資を行なわれなければならないということは、言うまでもないことでございます。まあ月給も高い、高いといって、確かにおととしは一八・二%、去年も一五・何%まあ上がってはおりますが、しかし
アメリカの四千
ドルに対しては半分でしかないということですから、これは上げていかなきゃならない。そういう面にやはりウエートを置いた分配というものも
考えながら、国の資産も蓄積をしていくという面に重点を置いた
政策を実行すべきであるということは、当然だと思います。これからほんとうに長期的な視野で見て、国際競争力を培養したり、コストダウンにするためには、それは、もう鉄道も、レールを
一つかえても、三十七キロが五十キロになり、五十キロが七十キロになれば、時速は十キロずつスピードアップするわけでありますから、そうすればこそ流通
機構も改正されるおけですし、コストダウンにつながるわけなので、そういうものとか、住宅の建設とか、港湾のキャパシティをあげるとか、いろんなものがあります。都市の公害除去のための投資を行なうというような面がありますから、そういうものに急速に変えていかなきゃならないんですが、それもやはり一年でできるわけはないんで、五カ年、十カ年、十五カ年という長期的な計画を持っていくべきだと思います。特に財政インフレというものを絶対に招来しないような投資でなければならないということを
前提として
考えていくべきだと思います。ところが、そんなことを言っても下水などに予算をつけても仕事ができない。仕事ができないことはないです、ほんとうは。これは
政府にも
責任があるんですが、
政府でみんな直轄工事を行なったり、図面を書いたり、仕様書を書いたりするからめんどうなんでして、これは民間には非常な、
政府よりもはるかに高い技術も能力もあるのでありますから、そういうものを総合的に
考えていけば、この程度の社会資本の充実が
日本の中でできない、そんなことは全然ありません。それでなければ、年のうち半分遊んでいる人もたくさんあるんです。ですから、特に季節労務者が大都会に全部出てこなければ働くところがないということを
考えれば、こんなものが消化できないようなことは絶対にない。こういうことで、予算とか制度の問題でございます。特にあなたが御指摘になった地方の問題は、
大蔵省ここにおりますが、地方債というものにワクをかけておりましたので仕事ができなかったわけですが、今度は地方債というものも相当大幅に認めなきゃならないし、市場の
状況は非常にいいと、こういうことでありますから、そういう
意味では、私は、今度は文句を言われないように、まあ自民党も責められないように、
政府もやる気だなあとおほめにあずかれるような方向で、ひとつ
大蔵省に予算を組んでもらおうということで、いまお願いをしておるわけでございます。
それから、公定歩合の引き下げは、これは新聞に出ておりますから、やるんだと思います。私もきのう長短金利の引き下げというものを要請いたしておきました。これは一六・八八%も円
平価が
引き上げられたときに、同時に私どもは行なわるべきだと主張しておったわけであります。特に、私は
大蔵大臣臨時代理でありますから、臨時のうちにどうもやるのも悪いから、ほんものが帰ってきてからやってもらおうということで、きのう要請をしておきました。これは去年から約一年の間に公定歩合は一%下がりました。この間に一番高いところは一・七五%下がったところもあるのです。
アメリカとか、
西ドイツとか、いまの
平価調整の中で
日本とぶつかるのは一体どこかと
考えればすぐわかるわけでありますから、そこが一・七五下げているのに、
日本が一%だけ下げておって、規制金利に〇・三しか下がっておらぬという状態で、私は計数整理ができるとは思わないんです。そういう
意味で、やはり早急に金利を引き下げるべきであるという要請をしたわけでございますが、近く長短金利も下げるということが新聞にも出ておりましたし、先ほど
水田大蔵大臣にどうなんだいと聞いたら、大体その方向ですなあと、こういうことでございますので、公定歩合などは引き下げられるその瞬間まで
大蔵大臣さえ
発言をしないことでございますので、私もよくわかりませんが、新聞を見るとそういう方向であるということでございます。