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公述人(宮国
英勇君)
お答え申し上げます。順番に従って
お答えしたいと思います。
最初に、金融機関に、まあ私が約六千万
ドルの差損が生ずるというふうに申し上げて、
沖繩の金融といいますか、
沖繩におきまして差損の問題で直接はだで感じておられない先生方にはたいへんぴんとこないのもごもっともだと思います。といいますのは、実は、せんだっての十月の個人の預貯金の差損補償ですべてのことが事足れりというふうなことを、まあその当時は、
琉球政府も並びに各
住民も金融機関の
経済専門の
方々も
考えていたわけであります。というのは、御承知のように、金融機関では、借り方のほうに融資の貸し付け金がございますし、それで貸し方のほうに預金の負債がございます。したがって、
ドルが一
ドル対三百八円で、三百六十円よりも五十二円だけ切り下がりますと、両方の勘定が同じように減少しましてバランスがとれるわけでございます。しかしながら、そういうバランスがとれるというような観点から、
沖繩でも大体のほとんどの
方々が、金融機関には決して損はないというふうなことを言っていたわけでありますけれども、私がこれについて具体的に理論的に掘り下げまして、実は経営者協会から「経営」という雑誌がこういうように出ておりますけれども、先月、それの巻頭言の「道標」
——道しるべというところで理論的にこれを解明したわけでございます。そうしますと、先ほどから銀行の名前が出ておりますけれども、琉球銀行という銀行の崎浜という総裁が、君の言うとおりだと、まあ、これは論文出す前からそうおっしゃっていただいておったのですが、そういうふうなことから、琉球銀行からもさっそく具体的なあるいは詳細な調査を行ないまして、例の法人の二億
ドルの差損をはじき出したわけであります。まあ、話が前後しましたけれども、この銀行の約五、六千万
ドルの差損といいますのはどこから来るかといいますと、やはり両方の勘定がバランスを持って縮小するわけでありますけれども、これは均衡して減るというふうなことだけじゃなくて、やはり均衡縮小というところに意義があろうかと思います。すなわち、縮小ということは非常にこれは大きな問題です。
経済の規模が大きくなる、成長率が高くなるということはいいことで、成長率が低くなる、あるいはこれが逆に戻るということはたいへんなことであります。ちょうどマラソンでいいますと、一万メートル走るのに、五千メートルまで来てからこれをちょうど二割逆戻りする。すなわち、一千メートルだけうしろ向きに走る、すなわち、四千メートルまで戻るということはたいへんなことです。四千メートルまで戻ったところでは、一緒に走っている連中はすでに六千メートル走っております。そういうふうな
状態で、縮小均衡ということはたいへんなことである。こういうことから大体おわかりと思いますけれども、これをもう少し数字であらわしますと、大体
沖繩の銀行が、琉球銀行、
沖繩銀行の普通銀行二行と、さらに中央相互銀行という一行、それから信用金庫二行ございますが、これらの
資金量が大体七億
ドルございます。そこでまあ概算的にその一五%が円切り上げによって実質的に
ドルが切り下がるということになりますと、約一億
ドルの規模の縮小、
資金量の縮小、融資量の縮小というふうになるわけでございます。そうすると一億
ドルの
資金量が減って、それでもって融資が減るということになりますと、結局貸し付け金によって銀行は収入を得るわけでございますから、その一億
ドルの一割、大体年間一割金利と見まして、一割、約一千万
ドルの金利が入ってこないわけでございます。しかしながら、それと反対側にある預金の金利も払わなくて済みますから、預金の金利を大体年五%と見ますと、その五%、すなわち約五百万
ドル、これだけの金利を払わなくて済む。したがって、一千万
ドルの金利が入らないかわりに、五百万
ドルの金利が出ていかないわけですから、相殺しましてちょうど五百万
ドルだけの収入が減るということになります。すなわち、
沖繩の五つの銀行ないしは信用金庫でもって、年間で五百万
ドルの金利が入ってこないということになります。したがって、これが将来とも、
復帰時点、七二年の一年間だけでなくて、永久に入ってこないわけでございます。したがって、将来永久に毎年五百万
ドル入るべきものを現在価値に割り引きますと、大体年一割の利率で割り引いて現在価値に戻しますと、これがちようど〇・一で割りまして五千万
ドルというような金額になりまして、非常に重大な事実であるということを先生方も御認識の上、ぜひ
沖繩の一
ドル対三百六十円の交換は、いかなる困難、いかなる
日本本土の、あるいは
日本政府の損失があろうとも、これだけは何tかやってもらわなければ、
復帰自体が非常に暗い
沖繩のスタート第一歩になるというように私は極言したいと思うわけでございます。
それから第二点でございますが、先ほど私も、
復帰の目玉商品といたしまして、南部−北部間の縦貫道路をどうしてもつくっていただき、それによって
沖繩が、楽しい観光ルートとして、ドライブをしながらでもこれが観光できる。私、ハワイの二世の方で友達がおりますけれども、その方の言うことには、
沖繩は非常に景色もいい。それから、太陽の光線、海中景観
——海の中の景色もいいけれども、どうも道路事情が悪いし、ドライブが楽しめない。ハワイはその点非常にりっぱで、楽しいドライブができるというようなことをこの五、六年聞いてきたわけでありますけれども、そういうような縦貫道路ができましたら、よそ見しながら、
——これは非常に危険かもしれませんけれども
——とにかく楽しいドライブができるし、さらに密集地の
那覇の居住地を、むしろ山原といいますけれども、国頭、名護のあの辺に楽しい住宅をつくり、野や山でいろいろ人間らしい
生活をしながら
那覇に通勤もできるだろうというようなことを
考えているわけでございます。さらに海洋博
——国際海洋博覧会にしましても、会場を一つだけに選定しないで、むしろ名護、
那覇、南部、宮古、八重山というようにある程度これを散らしまして、何しろ海外からこの海洋博の六カ月の間に三百万人入ってくるというように概算数えられているようですから、一日一万五千人くらい入ってくる予定ですので、一カ所にこれを集積しますと非常な混乱が起こるというような意味合いでも、この国際的な海洋博覧会を成功裏に終わらせる意味でも非常によいことじゃないかと思っております。たいへんありがたい御
質問で、私も宮古の出身で、宮古といいますと、先生方御承知の方もおられると思いますけれども、一年間に大体台風が四、五回上陸します。そうして非常に干ばつの続くところでありまして、昔から非常に貧乏な島で、それだけに、われわれはどうしても学問で身を立てなければこれは成り立たないということで、一生懸命がんばってきておるわけでございますけれども、そういう意味で、宮古は非常に
経済的に貧しい。そういう自然の脅威の強いところでございます。せんだって宮古の下地島というところにSST
——スーパー・ソニック・トランスポーテーション、このSSTの飛行場ができるということで、相当額の
資金も落ちるようで、たいへんみなわき立っております。地主も、反対が少しあったようですけれども、みなもう
賛成しているようで、非常に今後の宮古の
経済を潤す。あるいは宮古の海岸が非常にすばらしい。砂浜も、約四キロくらい砂浜がありまして、砂も非常にこまかくて、まっ白できれいであります。しかも、サンゴ礁がその砂浜にはなくて、相当な距離砂が続いておりまして、本土から観光客を何十万人連れて来たって決してよごれないような砂浜を持っております。そういう意味で、宮古のほうにできれば観光客を本土から続々誘致したいわけでありますけれども、直接宮古に飛行機で行くのもいいでしょうけれども、この離島区を解消するために、
沖繩と宮古間にホーバークラフトなりそういう快速艇を、でき得れば観光あるいは産業の発展のために設置してもらえたら、私、願ってもないことだと思っております。
それから三番目に、時間の
都合で、長期的観点に立った
沖繩経済の
対策という面で縦貫道路しか申し上げられなかったのですが、もう少し、若干申し述べますと、二番目に
——一番目が縦貫道路で、二番目に、
復帰による
経済の落ち込みをカバーするつなぎの役割りを果たし、さらに、これから
沖繩に誘致される産業に貢献する
土地を造成するために、大きな、大々的な埋め立て地の造成を計画しその
資金援助をお願いしたいと、これは大体いま
沖繩で計画されているのが糸満の地区、それから浦添、西原、さらに金武湾、こういうところにまあ工場地帯あるいは観光地帯というふうなものがただいまいろんな
研究機関でゾーニング・プランによって
研究されております。そういう、大体、私の計算では約二千万坪埋め立ててもらいたい。これには三億
ドルくらいの
資金がかかると、私、理解しております。
さらに三番目に、七五年に
開催されます国際海洋博が終わったあとも、これにかかった巨大な投資、すなわち約十五億
ドルと民間並びに
政府の予算に計上されているようでございますけれども、これから計上されるのですが、そういう巨大な投資が
沖繩に投下されるんですから、これをそのまま取っ払って、その後全く中断して、全然
沖繩の
経済に貢献しないというふうなことでも、やはりそれに準拠した
沖繩のいろいろな
経済機構ができあがりますので、一たんそういう大きな資本が投下されたあと、これがぽつんと切れますと、非常に
沖繩の
経済を混乱におとしいれます。そういう意味で、かかることがないように、海洋博と同時に、国際海洋学
研究所を設置していただきたい。そして、その国際海洋学
研究所で毎年国際的な海洋学、海洋の
研究をしていただき、できれば天皇陛下にも年に一度
沖繩の非常に気候のいいころ来ていただいて、御専門の海洋の御
研究に御専念いただき、まあ明るい豊かな、ほんとうに南国らしい、すばらしい
沖繩の社会をつくっていただきたいと思っています。
さらに、この海洋博に関連して、
沖繩のサンゴ礁で輝くすばらしい海底資源を活用して海底に牧場をつくり、この海底牧場におきましていろんな魚介類あるいは魚、そういう海底資源を豊富にそこで養殖なりあるいは育成しまして、陸上の畜産に次ぐたん白資源としてもらいたい、こういう希望を持っております。
さらに四番目に、先ほどから
基地の問題が出ておりますけれども、やはり、
沖繩では
基地の面でいろいろなまあこれまで
苦労もしておりますので、早目に
基地の整理統合をしていただきたいわけですけれども、先ほどから申し上げておりますように、
米軍基地の収入は、いかんせん二億
ドルもある。そういう意味で、一ぺんにこれが二億
ドルがなくなってしまいますと、やはり
経済上問題がありますので、その
基地の整理統合とあわせて
経済政策をとってもらいたい、こういうふうに
考えておりますけれども、その
基地収入の減少を補う
経済対策の一環としまして、
現実的な問題があります。これは、現在、
沖繩で石油産業が非常に脚光を浴びておりまして、
沖繩でも大体いま三社、ガルフ、エッソ、東洋石油というふうな会社がありますけれども、そこの年間石油製品生産量が一千二百万キロリットルございます。これの精製、生産をやっておりますけれども、この輸送の問題がございまして、一千二百万キロリットルといいますと、
沖繩の年間貨物輸出入量約七百万トンのちょうど二倍に達します。こういうふうな量の石油製品が本土にあるいは東南
アジアに運搬されますので、それの海上における運輸をでき得れば
沖繩の地元の業者に、その五割なりあるいはその近辺のものを担当させてもらいたい。それによって相当量の収入が得られ、
基地収入からの脱却、
基地経済からの脱却が可能になると思います。
それから五番目でございますが、私が財政投融資を
復帰前に繰り上げ
措置してもらいたいというふうなことを申し上げたことに関連しまして、この財政投融資は一次産業がいいか、三次産業がいいかというふうな御
質問でございましたけれども、御承知のように、
沖繩はことしも非常に長期の干ばつで、かんがい用水どころか飲料水にまでこと欠いたような
状態でございます。そういう意味では、まずもって基幹社会投資が必要でございますけれども、それには北部の山にダムを三つほどつくっていただきたいというふうな基本的な要望がございます。さらに
経済の問題としまして、やはり
沖繩で第三次産業だけでは、これだけの人口をかかえるにはちょっと
経済収入が確保し得ないというふうな意味合いから、二次産業の誘致もいろいろ骨折っておるようですけれども、なかなか国際的な情勢あるいは
沖繩地元の問題で関連産業あるいは新しい産業の誘致が進んでいないようでございます。