運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1971-12-22 第67回国会 参議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十二月二十二日(水曜日)    午前十時二十一分開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         長谷川 仁君     理 事                 楠  正俊君                 丸茂 重貞君                 松井  誠君                 森中 守義君                 矢追 秀彦君                 高山 恒雄君                 岩間 正男君     委 員                 稲嶺 一郎君                 長田 裕二君                 梶木 又三君                 亀井 善彰君                 柴立 芳文君                 鈴木 省吾君                 園田 清充君                 山内 一郎君                 占部 秀男君                 田中  一君                 宮之原貞光君                 内田 善利君                 喜屋武眞榮君    事務局側        常任委員会専門        員        相原 桂次君        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君        常任委員会専門        員        竹森 秋夫君        常任委員会専門        員        中島  博君    公述人        明治大学教授   一泉 知永君        東海大学教授   田中 直吉君        東京家庭相談        員        金城 芳子君        会  社  員  金城 幸俊君        評  論  家  梶谷 善久君        三越相談役    瀬長 良直君        民社中小企業政        治連合本部長  武藤 武雄君        元日本医師会常        任理事      遠藤 朝英君        弁  護  士  新里 恵二君        法政大学教授   永田 一郎君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案(内  閣提出衆議院送付) ○沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○沖繩振興開発特別措置法案内閣提出衆議院  送付) ○沖繩における公用地等暫定使用に関する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○国家公務員法第十三条第五項および地方自治法  第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院の  地方事務所設置に関し承認を求めるの件(内  閣提出衆議院送付) ○沖繩平和開発基本法案衆議院送付予備審  査) ○沖繩における雇用促進に関する特別措置法案  (衆議院送付予備審査)     ―――――――――――――
  2. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ただいまから沖繩及び北方問題に関する特別委員会公聴会を開会いたします。  本日は、沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律案沖繩振興開発特別措置法案沖繩における公用地等暫定使用に関する法律案国家公務員法第十三条第五項および地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院地方事務所設置に関し承認を求めるの件、沖繩平和開発基本法案沖繩における雇用促進に関する特別措置法案、以上の各案件につきまして、午前四名、午後六名の公述人方々から御意見を伺います。  この際、公述人方々一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、年末でもございます。まことに御多忙のところ御出席いただきまして、深く感謝申し上げます。  本委員会は、付託されております沖繩関係法案につきまして審議を進めている次第でございますが、本日は、本問題について皆さま方のそれぞれの立場から忌憚のない御意見を賜わりまして、今後の私どものこの本委員会審査の参考にいたしたいと存じておりますので、よろしくお願い申し上げます。  なお、本日は、名古屋におきましても地方公聴会を開いておりますので、ごらんのとおり、非常に出席が少ないようでございますけれども、委員十九名がそのほうに出席しておりますので、あらかじめ御了承願います。  これより公述人方々に順次御意見をお述べ願うのでありますが、議事の進行上、お一人十五分程度でお述べ願いまして、公述人方々の御意見の陳述が終わりましたあと、各委員の質疑を行なうことにいたしたいと存じますので、御了承願います。  それでは、まず、一泉公述人にお願いいたします。
  3. 一泉知永

    公述人(一泉知永君) ただいま御紹介にあずかりました明治大学の一泉でございます。この重要なる本委員会において私見を述べさしていただきます機会を得ましたことをたいへん光栄に存じます。  限られた時間でございますので、たくさん申し上げたいことの中で幾らも申し上げかねるかと思いますが、まず、今日の沖繩問題は、基本的にはアメリカの軍事的な破綻ドル経済的破綻、この二つ破綻がもろに沖繩にしわ寄せをしておるという面であります。そのあらわれが沖繩基地の問題でありますし、また一つには今日ドル被害という形で沖繩が苦しめられておる、この二つの問題が現実に露呈してきているわけであります。  まず、一番目に、円切り上げによるところのドル被害という問題につきましては、過般十月九日に、非常に不十分な形でしか処置が行なわれておりませんけれども、ところが、円切り上げによるところの物価騰貴とその反対所得の減少という二つの面から沖繩がいま苦しめられておる。で、今日、琉球政府におきましても緊急に通貨対策本部が設けられたというニュースを聞いておりますが、実は法案の中にございますのは、通貨交換及び債権債務の決済の比率だけが明示されておりまして、所得ということばないしは概念は全然含まれておりません。ことに物価騰貴転嫁先を持たない賃金労働者に対する所得問題には一切触れられていないということがまずあげられなければいけないかと存じます。ことにこの補償問題が不十分であるということは、沖繩の苦しめられておる現地人々立場からいたしますと、一日も早く円に切りかわりたい、すなわち本土復帰したいという気持ちをあおり立てる。あおり立てることは、一面けっこうでありますが、そのことは復帰問題を静かに考える物質的余裕と時間的余裕を与えないという、非常に政治的な効果をねらった意味があると私は理解しております。  それから、第二番目には、基地問題でありますが、これは多く言われておりますように、今度の復帰問題が軍事優先である、と申しますことは、わずか百万の沖繩に六千八百人という自衛隊が配置され、なお現にアメリカ軍が四万五千人もおると言われている。これを本土の一億に直してみますと、自衛隊で六十八万、米軍で四百五十万に相当する。こういうことは、本土では想像もできないことでございます。また、自衛隊配備に関しましての予算が、聞くところによりますと、約一千百億と聞いておりますが、これは琉球政府の歳入から見まするところの財政規模約七百億に比べましても約倍近い金額でございます。しかも、四次防の予算が――変更があるやに聞いてはおりますが、かりに大ざっぱな計算をいたしますと、年割り約一億一千万になりましょう。そういたしますと、沖繩への軍事費というものはその一〇%に当たります。ところが、人口は一%でございます。一%の人口のところに一〇%の軍事費が支出されるということは、密度にして十倍のものが沖繩におおいかぶされていくということで、このことを見ましても、軍事優先であるという形に理解する以外にはないと思います。  それから、土地暫定使用の問題に関係いたします中でも、基地リストが御承知のようにA、B、Cと発表されておりますけれども、そのA、B、Cそれぞれが総面積幾らであるかということは、さっぱり明示されておりません。そういうような総面積も明示されないで、しかも、それが収用という形で強制されるということは何としても納得できない問題であります。  それから、この暫定使用につきましては、憲法学者あるいは土地法学者からいろいろな点につきまして疑義が出ておりますので、あえて私はここでは触れませんが、このように、基本的には基地の存続には絶対反対でありますけれども、ただ現実問題といたしまして、日本政府がやった解決のしかたは、軍用地代の大幅な値上げという形で現実を処理しようとしておられる。そのようなやり方は、実は残念ではございますけれども、現在あるその状態をそのまま継続するか、もとの状態に回復されるかというような選択を認めませんで、軍事的な自発的な提供であるか、あるいは軍事的な強制収用であるかというような、軍事的使用のワクの中でのみ選択を認め、そして聴かなければいわゆる事前手続なしに強制収用する、こういう形で出てまいっておりますが、このことは、実はかつてのプライス法案をめぐりますところの沖繩土地闘争の中で地主住民が一体となって戦ったあのエネルギーを、住民地主を分断する形で事を解決しておる、こういう形で、言うなれば金づるでもって沖繩を分断していったというような形で解決されておる。もちろん具体的に、現実的には補償は多いにこしたことはございません。ところが、かりにこれを認めるといたしましても、今回六倍の値上げと申しましても、本土基地軍用地代に比べてはるかに低いものであります。そのような形で事を解決するということは、沖繩基地危険性――核があるとか、あるいはガスだとか、諸危険の度合いから見まして、決して本土と同じような計算基準のもとで土地軍用地代が算定さるべき性質のものではない。したがって、そのような形でなされるものは、実は本土以上の基地公害補償金をそれには当然つけ加えらるべきだと考えております。  ざらに、この土地問題に関連いたしまして、ただいま申しましたのはいわゆる軍事的な側面の土地問題でございますが、他面において平和的な土地問題と申しますのは農地法適用の問題がございますが、実はこれにつきましては、沖繩では一ヘクタール余を小作地制限面積というふうにしてございますが、この一ヘクタールは、鹿児島、宮崎、大分、あるいは九州平均に比べましても大きいのです。しかも、沖繩土地所有零細土地所有が非常に多いのです。片一方に零細土地所有がたくさんありながら、他面に九州平均よりも高い形での制限面積を認めるということは、他方において本土以上の大地主の存在を認め、かつ存続させるという形になります。これにつきましては、戦後、日本民主化過程の中で、財閥の解体と労働組合結成の自由と、もう一つ農地解放があるわけでございますが、前二者につきましてはとにかくも、沖繩経済開発をやっていきます中で最も重要なものは土地と水でございますが、その土地について、戦後過程を欠落さした沖繩をそのまま本土にジョイントすると申しますことは、結局、そのような農地解放民主化過程沖繩だけは欠落さして、戦後に体質をそのまま残したまま復帰させるということを意味するわけでございまして、これは平和的な土地使用の面に関しての重要な問題が含まれておるように思います。  それから、沖繩振興開発の問題につきましては、御承知のように、沖繩県知事計画案をつくります。ところが、これに関連いたしますところの開発庁設置法によりますと、総合計画開発庁がつくりまして、案を知事がつくる。案よりはもちろん計画のほうがコンクリートな段階の問題でございますから、力が強いわけでございます。そして、御承知のように総理大臣がこれを決定するわけでございますが、この場合に、沖繩総合事務局がつくられ、事務局長沖繩におることになるわけでございますが、そのときに、県知事総合事務局長との権限がどういうふうになるのか、あるいはその両者の間の考え方に、そご抵触が起こったときに、これをどういう形で調整するのか、これが全然触れられておりません。ただ、一面この救済処置といたしましては、審議会が設けられることになっておりますが、審議会そのものについてはあとでちょっと触れるといたしまして、とにもかくにも、このような本土に例を見ないような形の総合事務局ができて、その中で仕事がどんどん押しまくられていく。しかも、総合計画をやってまいりますときには、当然、小さい島でございますから、その中には市町村長との連絡という形が相当出てまいります。そういたしますと、知事頭越しと申しますか、あるいは背中越しと申しますか、直接開発庁事務局長市町村長と結びつく形が出てまいりましょう。そういう形で出てくるところの現地パイプは、頭の頂点では日本政府にそのままジョイントされておると、そういうふうな形になりますと、知事がたな上げされて、いわば飾りものになる可能性ないしは危険が十分にあると考えます。このことは、露骨なことを申しますと、言うなれば知事選挙対策という意味を持っておるのじゃないかとさえ推測されるわけでございます。それで、他面におきまして開発資金が出ていくときのパイプということと結びつきます。そういう金の力で現地知事が操作されていくというような構造がございますと同時に、そのことは、過般、自衛隊問題につきまして治安出動はないということが新聞に報ぜられてございますけれども、もしも日本政府が、おれがやったのではないのだというような免罪をやるために、現地知事への操作を通じまして、知事によるところの要請出動ということが、もしもこのような構造である場合には、そういうことさえも予想されかねないわけです。そういう形で出てまいりますと、かりに、もし再度コザ事件みたいなことでも起こりますれば、これは一体どういうことになるのか、たいへん危険なものを感じます。まして、御承知のように、大ざっぱに一括して申しますと、沖繩には保守、革新を通じまして残念ながら本土に対する不信感は濃厚でございます。たまたま利害その他で通じ合う場合もございましょうけれども、そういう小カッコでは通ずるところがあっても、大カッコではそこに不信というものがある限りにおいて、もしもここに沖繩を全然知らない、ないしは行ったことのない、初めて行かれる方が現地治安という形に接触をいたしますと、同じ沖繩人間同士ですと、これは方言でことばも通ずる、あるいは身内、親戚という血のつながりもございましょう、何らかの形のインフォーマルなつながりがございますけれども、そういうインフォーマルなつながりもない、ただ組織的な対立関係だけが沖繩に持ち込まれた場合には、これはたいへんな悲劇になるのではないか。まして、今日までは、言うなれば物理的にも感覚的にも日本人アメリカ人という識別がはっきりしておりますが、ここで顔の色も、ことばも全く同じような日本人同士がこういうふうな争いをするということになりますと、まさにニクソン・ドクトリンのアジア人をしてアジア人と戦わしめるということが沖繩の中で行なわれる。さらに沖繩の世論が分かれてまいりますと、沖繩人同士を戦わせるというふうに核分裂をしていく形での代理戦争が行なわれかねない。こういうことだけは何としても私は起こらぬようにしていただきたいと考えますし、またそのような方法はあろうかと存じます。  さらに、さき申しましたところの審議会の構成につきましては、過般、二十五名が三十名になるという変更がございましたそうでございますが、この中を見ましても、やはり沖繩側のウエートは依然として低いということを感じます。  最後に、意見でありますと同時に希望でもございますが、対米請求権が強引に放棄させられた、このことにつきましては何としても納得がいたしかねる次第でございます。これにつきましては、過般の琉球政府建議書の中に、対米請求権特別措置法立法化が希望されております。その考え方に私も全く同感でございます。しかも、さらにつけ加えますならば、対米請求だけではございませんで、沖繩戦における被害、それによるところの沖繩が持つところの対日請求権の問題も私はあり得るとも考えております。  それから、最後に総括いたしまして、返還協定、あるいは厳密に言って沖繩協定、これの筋道は大体既定されているレールを走らされておるような感じでございます。そのことにつきましては、私がきょう意見を述べるにつきましても、実は心の中に非常にむなしさと無念さと、気持ちが複雑でございます。  最後に、この批准書交換の前に県民の声を聞いていただきたいと、これで終わりにします。
  4. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ありがとうございました。     ―――――――――――――
  5. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 次に、田中公述人にお願いいたします。
  6. 田中直吉

    公述人田中直吉君) 今回の沖繩臨時国会におきまして、最も重要な案件審議されておりますこの参議院のこの委員会におきまして、私が公述人として意見を述べる機会を得ましたことを、まことに光栄に存ずる次第であります。  私は、沖繩における公用地等暫定使用に関する法律案に関しまして、主として国際的な背景について申し上げたいと存じます。なぜならば、この法律案は、沖繩返還協定やあるいは日米安保条約とも密接に関係があり、単に国内的な事項のみを規定した法律案でないと思うからであります。また、私は、国際政治学を研究してまいりました一学徒でありまして、本日午後には、私のかつての同僚であり、法政大学教授永田一郎教授行政法立場から法律関係については詳しく供述される予定になっております。私と永田先生との間で供述の範囲の分担をきめた次第でございます。  第一に、沖繩戦略的な地位重要性について申し上げたいと存じます。その戦略的な地位というのは、沖繩の地理的な位置とその戦略的な環境によって決定されるのであります。すなわち、沖繩の地理的な位置は、御承知のごとく、東アジア西太平洋のまん中にあります。東京、ソウル、マニラへは約千五百キロ、台湾へは大体その半分の距離にあります。沖繩本島から平壌までが千四百五十キロ、済南までが千五百五十キロ、武漢までが千四百キロ、広東までが千五百五十キロ、いずれも戦闘爆撃機行動半径に当たるわけであります。戦略的には、この東アジア西太平洋は、一言にして言えば、海洋圏自由諸国であり、共産諸国大陸圏を占めておるわけであります。沖繩戦略的な環境は、そのときどきによって変化いたします。今日におきましては、日本韓国台湾フィリピンというような、いわゆる自由諸国を守るためには非常に重要な戦略的地位を占めておるのでありまして、沖繩戦略的な価値というものは非常に高いものが現在でもあると思うのであります。  あの太平洋戦争におきまして、アメリカ戦略として、台湾を攻略するかあるいは沖繩を攻略するかということについて、戦争意見が戦わされたということを調べたことがあります。やはり沖繩のあの悲劇というものは、沖繩のこの比類のない戦略的な価値というものからきておるように思うのであります。また、朝鮮戦争あるいはベトナム戦争におきましても、沖繩アメリカのきわめて重要な基地としてその役割りを演じたということは、御承知のごとくであります。だから、アメリカは、戦後、沖繩に十五億ドル以上の巨費を投じて、そして巨大な基地を建設してきたのであります。やはり今日におきましても、アメリカは、日本韓国台湾フィリピンその他の自由諸国を必ず守るという決意を示しておるだけではなしに、戦略的にも重要な沖繩基地を十分に備えておく、これが東アジア抑制力を大いに高めておるのでありまして、それがやはり東アジアの平和と安全を維持しておると思うのであります。もしも沖繩返還協定や、あるいはこれに関連する法律案反対される方々の言われるように、沖繩からアメリカ基地を全面的に即時撤廃したら、一体どうなるでありましょうか。アメリカ抑止力は非常に減退されるのでありまして、単にアメリカ本土にあるICBMその他だけでは、極東の局地的な侵略に対処するのには不十分であります。この意味におきまして、私は、この法律案が暫定的にアメリカ基地の維持を定めておることに賛成するものであります。  第二に、最近米中の接近、ことにニクソン中国訪問によりまして、この沖繩戦略的な地位というものが大きな変化をしておるということが言われます。この問題について一言したいと思います。今日、わが国の新聞あるいは一部の人たちが申しますように、アメリカ米華相互援助条約を廃棄し、アメリカ台湾防衛保障を撤回する、日本がこのアメリカに追随いたしまして日華平和条約を廃棄し、あるいは日本台湾を完全に見捨てるというようなことがあれば――もしもそういうことが現実に起これば、沖繩戦略的な地位というものは大きく変化するということを予想するのであります。いま、沖繩だけではなく、アジア全体の国際情勢は大きな変化を生じ、あるいは大混乱を生ずるかもしれないのであります。なぜか――その理由をごく簡単に三つあげておきたいと思います。  一、台湾に対するアメリカ保障日本経済協力がもしもなくなれば、おそらく国民政府は、結局、中国に屈服するか、あるいは国共合作の道を選ぶだろうと思います。今日、中国軍事力について詳しく申し上げる時間がありませんが、中国台湾海峡を渡って侵攻するだけの十分な海空軍を持っておるとは私は思いません。しかし、長期にわたって台湾海峡をはさんで戦闘が続けられるならば、台湾の兵器あるいは燃料の補給に私は問題があるように思います。また、中国は今日中距離爆撃機あるいは中距離ミサイルを持っておるのであります。台湾に対する核攻撃の能力を備えております。したがいまして、米国その他の核保有国保障しない限り、中国の核のおどかしに対して国民政府がはたしていつまで耐え得るか、また、台湾住民がそれをいつまで耐え得るかどうか、疑問であると思います。現在、台湾には約千四百万の住民がおり、そしてもともと台湾に住んでおる人々も、あるいは大陸から来た人々も、共産主義支配下に入ることを必ずしも望んでおるとは思いません。しかし、彼らが生活が苦しくなり、あるいは長期にわたって紛争が続くということになれば、国共合作あるいは中国に屈服するという道を選ばざるを得ないのではないかというふうに思うのであります。そうなりますと、東アジアにおける自由陣営防衛線であります日本島から台湾フィリピン、インドネシアに連なる連携は断ち切られてしまうおそれがあるのであります。  二、もしもアメリカがこのように米華相互援助条約を廃棄するというふうなことをするとすれば、アジア自由諸国アメリカ集団防衛体制に対して全く信頼感を失いまして、アジア自由諸国はおそらくばらばらになるだろうと思います。このことは、単にこのアジアのみならず、アメリカが全世界に張りめぐらしております集団防衛体制に非常な大きなひびを生じさす。あるいはNATOあるいは全米相互援助条約というものに対してもひびが生じてくるのではないかと思います。  三、もしも国民政府がこのような状態に追い込まれるようなことがあれば、おそらくソ連軍事援助を受け入れ、ソ連台湾防衛を引き受ける可能性が大きくなってくることであります。皆さま方も御承知のごとく、第一次の国共合作当時におけるソ連国民政府との関係、あるいは日中戦争当時における国民政府ソ連との関係を見ますならば、中国共産党が存在しておったにもかかわらず、その関係は決して悪くはないのであります。また、現在もアラブ連合あるいはインドは、国内体制においては反共の線をとっておりますが、しかし、ソ連から軍事援助を受けておるのであります。九月十九日に訪米いたしました周書楷国府外相がNBCの放送のインタビューで、この台湾立場が絶望的になった場合にソ連との同盟関係を結ぶこともあり得るということを述べておるのであります。ソ連にとりましても、中国を包囲する一環として、台湾戦略的地位というものを利用することは非常に価値が大きいのであります。ソ連のその海軍力が外洋に進出する場合、あるいはインド洋への補給を確保する場合、台湾価値は非常に大きいと思うのであります。このような可能性が予見されるとすれば、おそらくアメリカは、国民政府の否認だとかあるいは台湾保障を撤回するということは、決してアメリカの国益、ナショナル・インタレストに合致するとは思われないのであります。中国にとりましても、このような可能性が予見されれば、急激に台湾を窮地におとしいれるということは、おそらくやらないだろう、中国の国益から考えてそういう処置はとらないのではないかというふうに思うのであります。したがいまして、ニクソン訪中によって、あるいは米中の国交が樹立されるというふうなことがあるかもしれませんが、米国が米華相互援助条約を廃棄し、アジアにおける海洋圏大陸圏の比較的バランスのとれた状態を切りくずすということは、おそらくなかろうというふうに判断しておるのであります。このような前提におきまして、私は、沖繩戦略的地位というものは、ニクソン訪中によってもあまり大きな変化はなかろうと思うのであります。したがいまして、沖繩返還協定や、あるいはこれに関連する法案ニクソンの訪中までたな上げせよとか、あるいはそれまで凍結せよというふうな意見には賛成することができません。  第三に、返還協定成立後におきまして、わが政府は、沖繩米軍基地の縮小整理に関しやはり積極的にアメリカと交渉をする必要があると思うのであります。今日沖繩にある米軍基地は百三十四カ所、そのうち近い将来を含めて返還されるもの四十六、返還されないもの八十八。したがって、現在の軍用地面積三百五十三平方キロのほぼ七分の一、約五十平方キロが返還されると聞いております。これだけでは、おそらく現地沖繩方々に非常な御不満があるということは当然だと思います。私もアメリカの軍事基地の現状を決して満足に思っておるものではありません。ことにVOAだとかあるいは特殊部隊の撤去というものは、わが国が沖繩の施政権を回復してから、沖繩だけのためではなしに、日本全体のために自主的な姿勢において交渉をすべきであります。また、この交渉態度はけんか腰ではなしに、誠意を尽くして交渉しなければならないと思います。  沖繩返還協定を阻止し、関連法案反対すれば、復帰が半年か一年おくれても、基地のない平和な島として沖繩日本に返ってくるというふうな甘い観測をなさっておる方があります。沖繩本土との米軍基地の根本的な相違は、前者は米国施政権下にある基地であります。後者は日本の施政権下にある基地であるという点であります。あのサンフランシスコの講和条約の発効当時、昭和二十七年の四月二十八日には、本土米軍基地は二千八百二十四でありました。ところが、今日ではこれが百二十四に縮小されておるのであります。沖繩にある米軍基地が今後五年も十年も現在と同じような状態でなければならない、こう断定することは現実的ではないのであります。今後、必ず五年以内には沖繩米軍基地というものがかなり縮小整理されるであろうということを私は期待するものであります。  第四に、沖繩日本の領土として返ってまいりますと、自衛隊沖繩に配備されることは全く当然のことであります。復帰後の沖繩は、沖繩防衛の第一次的な責任をわが国が負うのは当然であります。自衛隊による局地防衛、民生協力、災害救済等を実施することは、わが政府の当然の責務であります。しかしながら、自衛隊の配備につきましては、あくまでも住民の感情を慎重に考慮し、できるだけ住民のよりよき理解を得ることによって返還に伴う自衛隊の配備が円満に実施されることを希望いたします。  第五に、この法律案は、あくまでも暫定的であり、例外的であり、でき得べくんば、この法律を適用する前に地主と国、県との間に円満な契約が成立することを希望いたします。  最後に、今回の沖繩の施政権返還が平和的な外交交渉によって実現しようとしておることは、わが国の戦後の外交において最も意義の深いことと思うのであります。これを審議されております国会におきましては、さらに慎重審議の上、最後の焦点と思われるこの法律案をすみやかに可決していただき、一日も早く沖繩百万の同胞が復帰されることを念願して、私の公述を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  7. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ありがとうございました。     ―――――――――――――
  8. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 次に、金城芳子公述人にお願いいたします。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  9. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記を起こして。
  10. 金城芳子

    公述人金城芳子君) 御紹介にあずかりました金城でございます。  私は、沖繩の出身でございまして、東京に出てまいりましてもう五十年になっておりますので、沖繩から離れてもう半世紀もたっておるわけでございます。ところが、沖繩の今日の状態を見ますと、やっぱし沖繩の心というもの、それを先生方によく御了解いただかなくっちゃ、これは沖繩がまたたいへんなことになるというふうな危機感にかられまして、沖繩の女の人は全然公述人としたりあるいは参考人として出て来ておりませんので、私の友だち――東京にはたくさん私たちのグループ、集まりがあるんですけれども、このままでいたら困るんだ、だから沖繩の女の心というのを皆さんには訴えなくっちゃいけないじゃないか、だからひとつ勇気を出して、良識の府である参議院にはわかっていただけるかもしれないから、出ていってくれないかということで実は参った次第でございます。  この前、そういうわけで、衆議院のときにも、からだ全部を耳にしたり、目にしたりして、一生懸命沖繩の運命がどうなるかということを考えておりましたんですけれども、何だか社会党の議員さんが岩国の基地の核の話をなさいましたら、その後に何だかざわざわざわめいているようでございまして、何が何だかわからないうちに協定が強行採決されたということになりまして、私たちは、実はたいへんあっけにとられてしまいました。それで、議会制民主主義というのはこういうものかしらなんて、たいへん疑いを持った次第でございます。それにつけまして、もう公聴会も現地で開くということだったし、それから沖繩選出の議員さんもお二人とも質問に立つというはずだったんですけれども、それもふいになり、それから屋良主席が建議書を持ってくるちょっと前に、もうこういうことできまってしまったというもんですから、これから私たちが公述人として出てきて一体どうなるんだろうなんという気がして、何だかたいへんむなしい気持ちになりました。ところが、やっぱしわかっていただく方にはよく沖繩気持ちをお伝えしておかないと、またこういうことがあったらますますこれは困るじゃないかということで、勇気を出して参ったわけなんでございます。  それで、私が沖繩の女といたしまして、先生方に知っていただきたいことは、沖繩の女の歴史みたいなものでございます。古い時代に、沖繩は、祭政一致と申しまして、まつりごとと神ごとが一緒でございまして、女が神官で、「のろ」というのがございまして、沖繩にも群雄割拠みたいな時代があって、武将が戦っていたわけなんですけれども、そのときにいくさ船に、やっぱし兵隊と一緒に女が乗りまして、そして祈りをして戦勝をかち得たということがたびたびございまして、そういうことから沖繩の女はいくさのさきがけというふうに言われております。それから、沖繩はたいへん支那貿易で栄えまして、それで支那貿易をしております間に、夫は貿易で支那に行きますもんですから、一年も、二年も帰ってこないということがあって、家は全部女が家計をまとめていた。その間にいろいろな仕事を覚えまして、布を織るとか、沖繩独特の反物なんかございますけれども、ああいうものを織ったりして家の生計を維持し、そして夫が帰ってまいりましたら、たいへんに貿易でもうかりますもんですから、「とういちべい」といって、唐に行くと二倍の利益があるということで、たいへん栄えておりました。それで、たいへん自由にいろいろなもののくふうをいたしまして、女もいろいろの創意くふうをやって黄金時代があったわけでございます。そういうのを、日本が江戸時代の鎖国の時代に、薩摩がその貿易の利潤の上がるのを見て、これは自分たちのものにしなくちゃいけないということで、密貿易の具に沖繩をするために沖繩入りをいたしました。そのために沖繩は、もう薩摩が売ってこいという品物しか唐に持っていくことができないで、その支那からの利潤は全部薩摩が取り上げてしまいまして、それが一つの奴隷みたいな形になってしまいました。それを沖繩では第一の琉球処分といっておるわけなんでございます。それから明治政府になりましてから、一応奴隷解放みたいなことになったわけですけれども、結局、今日と同じように、高位高官、施政官はみんな本土のほうから行きまして、そして沖繩の人は全然使ってくれない。結局はやっぱし不自由な身分になりまして、そういうことで沖繩の第二の琉球処分ということになって、沖繩の人はちっとも利益を得なかったわけでございます。それからずっと皇民化といって、日本的にならなくちゃいけないというんで、みんなが勉強したり、あるいはことばを覚えたりして皇民化をいたしました。そして、お国のためにみんなも犠牲にならなくちゃいけない、国のためなら、天皇陛下のためなら死んでもよろしいというふうな、たいへん忠誠な気持ちになって、だんだんそういうふうにならされていきまして、結局、日本の軍国主義の中に全部はまり込んでいったわけなんでございます。  そういうことで、私は、ひめゆり部隊の先輩になるわけなんで、私たちは十五回の卒業生でございます。ひめゆり部隊は最後の子供たちでございます。私たちが沖繩にいたころは、ちょうど十六、七で――非常にきれいな海、きれいな空、そして人情豊かな雰囲気の中でたいへん青春を楽しんでまいったわけなんですけれども、それに比べまして、ひめゆり部隊のあのかわいそうな散華の状態を見まして、たいへん胸が痛くなるわけなんでございます。そうですけれども、それを去年なくなったある評論家の先生が、沖繩のひめゆり部隊の散華は、あれは動物的忠誠であったと言われまして、沖繩にたいへん物議をかもしたわけなんでございます。それはやっぱし皇民化の一つのあらわれで、軍国主義で教育された者が日本のためにということでああいうふうな目にあったわけなんでございます。  そういうことがありまして、沖繩の女性たちは、もう二度とこういう目にあうまいと、二度と自分の夫、自分の子供、自分のきょうだい、こういう人たちを戦地に送るまいという決心がたいへん強いんでございます。そういう意味でしょっちゅう、沖繩でいろいろの問題が起きてまいりますと、隊をつくって東京に、それは超党派でもっていろいろな団体の婦人たちが集まって参りまして、国会あるいは大臣方に陳情しているのはそういうわけでございます。沖繩の、そういうふうな悲しい最期を遂げました娘たち、それから現地の女たちは、結局、報いられることなく、二十五年間、やっぱし同じように異民族の下でもって人権は無視され、あるいは殺され損、傷つけられ損、暴行されてもそれが別に裁かれなかったというひどい目にあわされてまいりました。そういったやり切れない気持ちでもって、みんながいろいろのむずかしい問題にぶつかりますと東京へ出てまいります。それを私たちは迎えまして、そして一緒にお願いにまいったりするわけでございます。  それで、とにかく基地が二七%も占めておりますので、もちろん戦争態勢でございます。その中で女たちはまともな仕事につけないわけなんでございます。ですから、結局、自分のからだを張って生活をしていく、これが売春婦になるわけなんでございます。沖繩で売春がたいへん多いということは、そういうことから来ているんじゃないかと思います。それから少年非行も、やっぱし基地があって、ベトナム帰りの人やら、それから朝鮮戦争のときの人たちがみんな帰ってきて、そして沖繩でほんとうに戦地と同じような気持ちで暮らしているものですから、どうしてもその雰囲気の中で、子供たちがそういう様子を見て、だんだんとそれに染まってきて非行におちいると、たいへん近ごろは凶悪な事件がもうたくさん起こっております。結局、教育効果というのは、やっぱし環境が大事でございまして、私が沖繩に行きましても、なるほどこれじゃ幾ら教育しても、幾ら少年をよくしようと思ったところで、これはやっぱし雰囲気がだめだという気持ちがいたしました。売春防止法もこれから実行に移すんでございますけれども、それもどうも危ういことなんでございます。  こういうことで、基地ということについては、私は、東京都の家庭相談員といたしまして、その前は児童相談所におりまして児童相談を受けておりましたので、ケースワーカーでございます。ですから、こまかい一人一人の気持ちというものをたいへん尊重して仕事をしていたものでございます。ただいまは家庭相談員といたしまして、やっぱし日の当たらない困った人、そういう人の相談を受けているわけなんでございます。そういうようなケースワークでございますね、一人一人の気持ち、それを尊重する仕事でございますので、私は、そういう見地から、沖繩の女の人たち、そういう人たちが自分の子供、それから夫、そういった大事な人たち戦争の中に巻き込ませるということをたいへんに心の中で、アレルギーほどに心の中に焦げついているわけなんでございます。それで、自衛隊が今度また――基地に兵隊が五万以上もいる、家族を合わせれば何十万になるそうでございますけれども、その上にまた自衛隊が七千近く入ってくると、そうすると、ほんとうにこういう環境の上塗りになってしまうわけなんでございます。そして、もし何かいろいろ戦争とかなんとかいうことが、きっかけが起きるといたしましても、一番ねらわれるのは基地であり、自衛隊のいるところでございますから、また同じように、私たちのきょうだいへ私たちのはらからは、さっそくその一番先頭に立ってまた同じようなことになるんでございます。そういうことはもう沖繩の女たちは絶対許さないということで、強い決心と強い団結力を持ってこちらに向かっているわけなんでございます。ですから、よく沖繩の女の心というのをお含みいただきまして、やっぱし歴史的ないろいろな伝統があるものですから、それを十分御審議いただいていろいろの施策を施していただきたいと思います。  それから、最近は、本土でもGNPを脱却いたしまして、人間福祉に方向転換をするということになっております。国益と申しますことは、人間を尊重されて、そして全国民の福祉が向上することが私は国益じゃないかと思います。ドルショックにいたしましても、それから切り上げにいたしましても、ドルを通貨としている沖繩に一番最初に急激に響いてまいりました。生活必需品は八割を本土から輸入しているようですけれども、物価の上昇は五、六%から二〇%までに上がっているようでございます。こういうことでございますので、どうしても家計をあずかっている女性が一番矢面に立つわけなんで、たいへん苦労しております。ですから一日も早く復帰したいという心はやまやまなんでございますけれども、こういった返還協定の内容にはほんとうに不安なものがたくさんあるわけなんでございます。もちろん、基地、それから土地収用、それからいろいろな開発の方向、そういったものがほんとうに沖繩の人のためのものであってほしいということでございます。それで、沖繩の心をよくくんでいただきまして施策をいたしませんと、やっぱし、この心の問題、感情的にアメリカ日本アメリカ沖繩、それから日本自衛隊沖繩人たち、こういうもののうっぷんというんですか、そういうものがたいへんこわいわけなんでございます。たいへん小さいようで、何でもないみたいに思うんですけれども、人間の心というものは、とても簡単に変えられるものではないわけなんでございます。ですから、コザ事件だって、あれはうっせきが、うっぷんが、ああいうふうな爆発になったと思いますので、こういうことが、先にいってどのくらい起きてくるかということが、私はたいへん心配なんでございます。そういうわけで、中国日本との関係やら、アメリカが佐藤さんを肩透かしして中国へ行くということやら、そういうことが、もうすでに行なわれておりまして、もう少しアメリカにも、沖繩でこういう感情のもつれが起きると将来どういうことになるかということをわかってもらえば、もう少しアメリカさんも譲歩して考えてくれるんじゃないかと思うのでございます。アメリカは民主主義の国でありますから、話せば何とかわかるんじゃないかと、そして話さないのがいけないんじゃないかしらと私は思います。もっと沖繩は、アメリカさんと対等で、しょっちゅう何か話し合いをやったりして、発言が大いに自由にやっているようでございますけれども、何だか日本の大臣さん方はたいへん御遠慮なさっていらっしゃるような気がいたします。そして、沖繩では、どうしてああいうふうに大臣方は遠慮するのだろうというふうなことを、しきりに言っております。それは、向こうの現地では、身をもってアメリカさんと対等に話しているものですから、そういうことが経験上言えるんじゃないかと思います。そういうことで、もう一ぺんそれをやり直せとかなんとかということをあんまり強く言うわけでもないんですけれども、もう少し話し合っていただいていいんじゃないかというふうな気がするわけなんでございます。  たいへん長々と、私一人で……。私は、一つ一つの問題に対してはそう詳しくはないんで、ほんとうに女の心という気持ちで、このたびの返還に対する姿勢でございます、そういう気持ちを訴えて、先生方の御参考に供したいと思いました。  どうもありがとうございました。
  11. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ありがとうございました。     ―――――――――――――
  12. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 次に、金城幸俊公述人にお願いいたします。
  13. 金城幸俊

    公述人金城幸俊君) 御指名にあずかりまして参りました金城でございます。私のつたない意見が、沖繩返還協定及び関連国内法案審議されている皆さま方の御参考になれば、たいへんしあわせに存ずる次第でございます。私は、個々の問題についてはたいして専門家でもございませんので、主として若者の防衛論、国防論というものについて意見を述べたいと思います。  先週の新聞を見ておりまして、こういうことを感じました。ちょうど、インドとパキスタン紛争というものがもう終局に来ておりまして、パキスタンのダッカが陥落寸前の記事が写真入りで出ておりました。で、それを見ておりまして、ずいぶんむごいことだと私は感じたわけですが、一方、社会面に目を通しますと、ちょうど日本のデパートの写真が出ておりまして、たくさんの人たちが年越しの買い物に殺到しておるというのを見まして、この二つの写真を見比べまして、非常に複雑な気持ちになり、あわせて、自分は何とこう、しあわせな国の、しあわせな一市民だろうと感じたわけであります。それで、私は、平和というものを、そのときまたあらためて感じたわけですけれども、平和というものは、決してただ漫然とすわっていれば向こうのほうからやってくるものではないんだということを感じております。そういうことは、やはり自分のほうでもそれなりの努力をしなければ、平和というものは決してもたらされるものではないというふうに感じまして、平和というものに対する認識をあらためてまた強くしたわけであります。  私どもが今日、平和な国で、GNPで自由世界第二位の地位を占めて安穏としておられるということは、それは、私どもが、たとえば日米安全保障条約があるとか、あるいは日本がそれなりの努力をしてきたということもありましょうけれども、さきの大戦において幾多の人たちがとうとい生命を失ったということも、またその礎になっているのだろうと私は考えます。この人たちがとうとい生命を散らしたことによって、われわれはもう二度と戦争をしちゃいけないというようなことを身をもって感じて、それからすべての戦争というものに対して否定的な考えを表明し、また、その努力もしてきただろうと思います。しかし、われわれがそういう心情的に戦争を否定するということだけでは平和というものは回復されない、平和というものはもたらせないのだというふうに感じます。たとえば、われわれの周辺諸国を見ていただきたい、周辺諸国において戦争と直接間接関係のない国といえば、おそらく日本だけじゃないでしょうか。朝鮮半島、台湾海峡、東南アジアの諸国を見ましても、常に戦火というものがぎらぎらとぎらついておりますね。ところが、日本は、そういった戦争というものに対しては直接何も、いまのところ、脅威を感じていない。一部外国において、たとえば日本のGNPが世界第二位になって、対米輸出がどんどんどんどん強くなっていくに従って、アメリカあたりからも、有力な民主党の指導者あたりからも、日本は軍国主義になるおそれがあるというような懸念を表明しまして、国内の人のほうでも日本は軍国主義になるのじゃないかというような意見を言う人がずいぶんおりますけれども、しかし、われわれは決して軍国主義にしちゃいけないと思います。それには、やはり、われわれが常に自衛力というものに対して監視していかなければならない、コントロールしていかなきゃいけないと思います。  かつてわれわれの日本国というものは侵略者でしたね。海外に進出していくことを目的としていた。たとえば、豊臣秀吉の朝鮮征伐ですとか、あるいは明治時代に入りまして日清、日露、それから太平洋戦争と、いずれも海外へ進出していくことを目的としていたわけです。そういうイメージが、いまだにわれわれの中にでも焼きついておる。ところが、そういうことは今後はあっちゃいけない。日本は外国へ出ていくようなことがあっちゃいけない。国際的な紛争をまき散らすようなことがあっちゃいけないというようなことを私は強く感ずるわけです。それで、それならば、われわれはどうすればいいかということになりますと、やはり、絶えず国防というものに対して、まじめに取り組んでいかなければならない。国の自衛というものに対して絶えずまじめに取り組んでいかなければならないと思うのです。  それで、本土復帰に伴いまして、自衛隊沖繩に移駐するということに対して、たいへん不満の、あるいは不安の意を表明しておるということが、現地のほうからの新聞報道等におきましても、もたらされておりますけれども、それはまさに、過去のイメージというものがあまりにも強烈だった、過去の旧日本陸軍というものは、沖繩人たちをおよそ人間として取り扱わないという、そういうようなことをやったものですから、そういうイメージが非常に強いわけです。それでまた、自衛隊というものもそういうようなものじゃないかというふうに考えまして、たいへんに不安といいますか、そういう感じが強い。ところが、自衛隊は、御承知のように、われわれ、自衛隊の広報パンフレットですとか、そういうものを読んでおりましても、自衛隊というものは専守防衛ということですね。つまり、守りを固めるということ、野球で申しますならば、守備要員ですね、守備だけをする、決して打撃にいかない、前に出ていくようなことはしない。われわれはそういうことを自衛隊に望みますし、また、そういうことでなければいけないと思うのです。ほかの国へ侵略していくとか、あるいは進出していくというようなことがあっちゃいけない。そういう意味におきましても、沖繩本土復帰しまして、その防衛の一環として自衛隊が向こうに行くのは、これはもうあたりまえのことだと思うのです。ただ、その人数が多いとか何とかいわれますけれども、頭数をあるいは算術級数的に割りまして、それで六千何百名が多いじゃないかとか、本土の各県に比べると云々というような意見もありますけれども、しかし、そういうことで割り出せないと思いますよ。防衛というものは、そういう単純なものじゃないと思う。まして、沖繩のように、本土に来るよりも、どちらかといいますと、宮古、与那国あたりはもう台湾に近いですね。その台湾に近い島の周辺にたくさんの島々がある。その島々さえも守っていかなきゃならない、そういうことを考えますと、やはり人数が多いということにはならないと思います。  それから、それに伴いまして、いろいろ基地公害があるんじゃないかとか、あるいは公用地等使用法案の使用期間が五年間というのは長いのじゃないかという意見がありますが、しかし、これなんかも、いろんな沖繩のいまの基地の現状ですとか、対米関係ですとか、そういうものを考えますと、そう長いものじゃないんじゃないかと、私は、しろうと目ですけれども、そう感じております。もちろん、本土復帰によりまして基地が整理縮小されていくということは、当然、私もそれを強く望みますし、また、その努力もしていただきたいと思っております。  一部に、本返還協定及び国内法案審議の際に、基地の全面撤去返還論というものが、反対の、批判的な人たちの論拠だったと思いますけれども、これなんかは、ぼくは、きわめて現実無視の暴論だろうと思います。やはり、いまの沖繩基地の機能とか形態というものをよく見てみますと、一朝一夕に取り払うことはできない。現実に、基地従業員というものが、組織労働者で二万人、関連業者もひっくるめますと、おそらくその倍はいると思います。そういう人たちの今後をどうするのかというような意見がたいして出ていないわけです。もちろん、プランとしてはいろいろ出ておる。出ておるけれども、しかし、もしかりに、来年四月一日もしくは七月一日ですか、来年中に返ってきて、基地がおいおい整理縮小されていったときに、この人たちの生活というものをどうするか。それは当人にとっては死活の問題です。何しろ生活がかかっている。生きていかなければいけない。理想論を言ったって、生きていかないことにはどうにもならない。そういうことを考えますと、やはり基地はおいおい整理縮小する、それに見合って、本土企業とか、そういうものを整備育成していかなければならないと思います。もちろん、基地経済というものは、経済形態としては好ましいものじゃないと思います。それよりも産業経済のほうがはるかに健全です。  それでは、いま沖繩に目ぼしい産業があるかといいますと、たいして目ぼしい産業はないわけです。従業員にしてもおそらく五十名以内の企業が大半だろうと思います。これでは、本土に比べますと小企業の下です。そういうものが沖繩では主たる企業になっている。今度本土から企業が進出するということで、これはだいぶいろいろと政府のほうでも、進出企業に対しては、税制とか財政とか、その他の面で優遇しようじゃないかというようなプランです。それが出ておりますけれども、たとえば大手家電メーカーが沖繩の糸満市というところに土地を入手しておりますけれども、こういうものが企業化されることがたいへん望ましい。公害も少ないし、また、従業員もたくさん雇用するような企業形態ですから、たいへん望ましいのですが、このメーカーなんか、だいぶとまどっているわけです。それは、一つには、たとえば若年労働者が本土にあまりにも行きすぎておるというので、現地調達がなかなかむずかしいということと、水だとか電気だとか、そういった資源といいますか、そういうものがどうも確保されそうもないということで、だいぶ逡巡しておられる。そういうことに対して、日本政府は、たとえば租税を軽減するとかなんだとかいう話もあるみたいですけれども、しかし、その企業を積極的に育成していくだけの理由をたいして示しておらないわけです。そういうことを見ますと、やはり、沖繩本土復帰することに対して、戦後二十六年もの間異国の施政権下で苦しんできていた沖繩県民が本土に返るといって喜ぶ半面、あすの生活に対して非常に不安がある。それに対して日本政府がもっともっと積極的に施策を講じていただけないものだろうかと、ぼくたちは思うわけであります。  沖繩県民というのは本来非常に陽気で、人なつっこく、きわめて従順な人たちなものですから、時の権力といいますか、中央政府というんですか、そういうものに対して非常にすなおである。先ほどの話もありましたように、古くは薩摩時代ですとか、あるいは明治・大正・昭和の前期、それから戦後は異国の施政権下というように、非常に目まぐるしい変転の年月を過ごしてきたわけです。その人たちが、ぼくもそうですけれども、本土へ返るということをたいへん喜んでいる。一日も早く本土へ返りたい、そういう希望を、事あるごとに、昭和二十年八月十五日終戦と同時に、そういうことを表明してきたわけです。ところが、それが二十六年目にして、ようやく返ってくることができるんだと喜んでいる半面、経済問題ですとか基地問題ですとか、いろいろな面で懸念を表明しているということを、どうぞおくみとりいただきたい。そうして、こういった大きな戦後の世紀の一つの決着になるでしょうけれども、そういうものにおいては、多少のひずみといいますか、そういうものが出てくることは、これはやむを得ないと思うんです。しかし、それを最小限度に食いとめる、そうして一日も早く沖繩の再建、新生沖繩県をつくるために皆さま方のお力をかしていただきたい、そのように思うわけです。  沖繩県の今後の行き方としましては、基地経済からの脱却、産業経済県を早期に達成する。それと、沖繩の海といいますか、そういった天然現象というのは、きわめて珍しいものでございますので、そういう利点を生かしまして、観光というんですか、観光立県としても進んでいったほうがいいんじゃないかと思うわけです。ただ、観光といいましても、たとえば戦跡地あたりに、むやみやたらに人が繰り込んできて、何か、戦跡地を荒らすような観光というのは、たいしてよくない。それと、本土の観光業者ですか、そういう方が戦跡地周辺の土地を買い集めてゴルフ場にするとかなんとかいうのは、あまり好ましい現象じゃない。やっぱり、そこは一つのとうとい生命が失われた場所でございますので、ちゃんと国なら国が管理していくというような、戦跡公園みたいなものをつくっていただきたいと思います。  いろいろとりとめのないことを申し上げまして、御参考になりましたかどうか、はなはだ心もとないのでございますけれども、戦後二十六年間もアメリカの施政権下に置かれまして、たいへん苦しい思いをしてきた、そうして、東南アジアのいろいろな、たとえば昭和二十五年ですか、二十四年ですか、内戦状態中国に中華人民共和国というのが成立し、また翌年朝鮮戦争が始まるとか、あるいは東南アジアベトナム戦争とか、その他周辺の紛争があるたびに、アメリカの有力な政界とか、あるいは現地の高等弁務官というような人たちが、沖繩基地重要性というものを絶えず強調し、基地は離さない、本土へ返すということもあり得ないというようなことを言明するたびに、私どもは、これはひょっとすると返ってくることはできないんじゃないかというような、何ともむなしいような年月を過ごしてきたわけでございます。そのような年月を過ごしてきた私どもが、昭和四十年ですか、佐藤さんが沖繩を訪問されまして、沖繩復帰が終わらない間は戦後というのは終わらない、日本にとっても戦後は終わってないんだというようなことを言われましたときに、私どもはほんとうにそのとおりだ、日本が、神武景気だとか岩戸景気だとか、あるいは東京オリンピックとか、そういうものを開催し、国力を充実さしておるにもかかわらず、沖繩というものを見離していては決して戦後は終わっていないんだというようなことを強く強く感じたわけでございます。それで、昭和四十四年ですか、佐藤・ニクソン共同声明というのが発表されまして、七二年中に本土にその施政権を返還するというようなことが声明されましたときは、今度はもう間違いない、間違いなく七二年中に返っていくんだと、夢にまで見た本土へ、もう返っていくというようなことを感じまして、私どもはずいぶんうれしく思いました。で、その七二年というのが、いよいよもう、あと十日もしますと昭和四十七年になりますけれども、本番でございます。四月一日になりますか、七月一日になりますか、まだはっきりしませんけれども、一日も早く――私が望みますことは、やはり四月一日を期して新生沖繩県に出発したいと思うわけでございます。いろいろと、それに対して、国内法案審議が――もう今国会もあと数日になりますけれども、まあ無事成立可決され、来年の四月一日に沖繩県が誕生しますように、どうぞひとつ、慎重なる御審議をお願いしたいと思います。  それから、これは余談になりますけれども、さきの衆議院沖繩返還協定特別委員会というところで、ああいったような、可決と言うんですか、騒然とした中で可決されまして、そのテレビフィルムがわれわれの目に入ったわけですけれども、非常にふんまんやるかたないわけですね。と言いますのは、やはり、沖繩返還という、きわめて重大なその案件が、いかなる理由にもせよ、ああいった騒乱状態、混乱状態の中で可決されたということはまことに残念だと。まして、たいへん見苦しい姿がありましたね。その議員の方、どなたかがテーブルの上に乗りまして、ワイシャツのすそも出しておる。それを見て、われわれはほんとうに情けないと思います。反対反対でよろしい。賛成は賛成でよろしい。しかし、そういうものは、やっぱり平然とした中に可決されていかなきゃならないと思うんです。そういうもめごとの中で解決されていくということは非常に残念なことだと思います。  以上をもちまして私の意見を終わります。
  14. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ありがとうございました。  以上で、午前の公述人各位の御意見の陳述は終わりました。     ―――――――――――――
  15. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。なお、質疑は各自の御自席からお願いいたします。
  16. 占部秀男

    ○占部秀男君 簡単に先生方にお聞きしたいと思うのですが、まず、一泉先生のお話の中に、ドルの問題が出ております。復帰措置法の中であったと思いますが、確かに、通貨の交換、債権債務の問題、これが出ていたんですが、そういえば所得の概念はなかったんですが、そこでお聞きしたいことは、こういうことですか、その所得の概念がないのは心配であるということは、たとえば、いま琉球政府の職員は、今度は、復帰すれば、ある部分は国家公務員になり、ある部分は地方公務員になるわけです、県の職員に。こういう場合に、給与の切りかえをしなければいかぬ。その場合に、国家公務員法あるいは地方公務員法の適用下の給与の切りかえということになります。で、そのときに、復帰した時期がかりにきょうだとすると、そうすると、三百六十円建てじゃなくて三百八円建てで切りかえなどが行なわれるようになると、向こうの公務員としても非常に損をするんじゃないか。そういう点が心配だと、一口に言えば。こういう意味合いであるかどうかと、こういう点をお聞きしたい。  それから、田中先生にお聞きしたいのは、確かに今度の国内法の問題は、安保、日米共同声明、これに関連があることは事実である。そこで、この委員会でも、たびたびそういう問題が起きておるんですが、たとえば公用地等暫定使用に関する法律にしても、あるいは開発法にしても、憲法違反と見られるようなところが、われわれの立場からいうと相当あるわけです。そこで、先生に国際政治学上の立場からお伺いしたいのですが、私は、諸条約よりは憲法が優先すると思っておるんですが、憲法が優先するのか、あるいは国際関係では条約が優先するのか。こういう点についての御意見を承わりたいという点が一つです。  それから、最後には金城芳子さんにお伺いしたいのですが、この家庭相談員ですか、相当いろいろな家庭について経験を積まれておると思うのですが、そのあなたが、非行少年が出ないようにしなきゃいかぬ、女の方も変なまねはされないようにしなくちゃいかぬと、いろいろ具体的に言われたことは、非常に胸に突き刺さるような思いがするわけです。そこで、あなたのおことば最後に、環境が大事だと言われた。私は、沖繩をあなたの言われるような意味環境にするには、何よりもまず軍事基地の問題の決着をつけなければ沖繩環境は変わらぬのじゃないか、こういうふうに思うのですが、そういう点についての御意見があったらお聞かせいただきたい。
  17. 一泉知永

    公述人(一泉知永君) お答えいたします。  給与の問題につきましては、公務員の問題ももちろんでございますが、それも含めまして、一般の所得が、たとえば三百八円で換算をされるのか、あるいは三百六十円で換算されるのかという問題になろうかと思います。と申しますのは、経済学の概念で申しますと、言うなれば、売るべき商品を持っている者には、普通にいう商品の所有者と、労働力の所有者と、二つに分けられるわけですが、一般の普通商品を持っている所有者の場合は、レート改定によるところの物価上昇は転嫁先を持つわけです。ところが、一般の、労働力以外に売るもののないという形の労働者の場合は転嫁先を持ちませんので、言うなれば、一般商品は三百六十円が貫かれるわけです。労働力の価格は三百八円で貫かれていく。したがって、そこにアンバランスが起こるということでございます。
  18. 田中直吉

    公述人田中直吉君) お答えいたします。  この法律案が憲法第十四条に反するとか、あるいは二十九条に反するとか、あるいは三十一条に反するとかいう説があるようでありますが、私は憲法の専門でありませんが、しかし、第十四条におきましても、これは、すべての国民は法の前に平等である、身分だとか門地では差別されないという条項でありますけれども、別に沖繩地主にのみ負担をかけたとは言い得ないのでありまして、平和条約が発効いたしましたときにも、やはり暫定的な処置を、使用権の処置をとっておるわけです。そのほか、公用地等の暫定措置法が憲法第二十九条に反する、すなわち「私有財産は、正當な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」とありますが、これもやはり、これは暫定的に国がその土地の使用をしたものでありまして、必ずしも憲法第二十九条の第三項に反しないものと私は理解しておるわけであります。で、三十一条につきましても、私は別に憲法に反するとは思わないわけなんです。  で、国際法が優先か憲法が優先かということにつきましては、国際法学者の間ではいろいろ説がありまして、国際法が優先するという説もありますし、憲法が優先するという説もありますし、あるいはどちらが優先するというようなことは間違いだという説があります。私は国際法が専門じゃないんです。国際法と国際政治学とは非常に密接な関連した学問でありますけれども、国際法の専門家にその点はお聞き願いたいと思います。
  19. 金城芳子

    公述人金城芳子君) ただいまの環境と子供の問題なんでございますけれども、私が沖繩に帰りまして、そしてコザとか、そういった基地のある町を見まして、どうしてもこれはピンと来たわけなんでございます。私は三十年も、児童相談とか、それから家庭相談をやっておるものですから、その勘というんですか、そういうものが来るわけなんでございます。たとえばアメリカの兵隊さんは、結局戦地のつながりのような気持ち沖繩で暮らしているわけなんでございます。ですから、戦地におきましては、大体人を殺したって、強姦したって、人を傷つけたって、それは全部許されるわけなんでございますので、そういう、何というか、雰囲気の中で、気持ち沖繩では暮らしているわけなんでございます。ですから、そういった環境ですね、それでもって子供たちに対し、それから女性に対するものですから、子供たちだって、幾ら家の中でこういうふうにやるんだといって教育をし、学校でも教育をやっておりましても、やはり、社会がそういうふうな社会でございますので、そこに引っ張られてしまう。環境と教育、それから遺伝というもの、この三つが人間形成にたいへん大事なことなんですけれども、どうしても沖繩のあの状態が、そういう子供たちあるいは売春婦をつくるということに非常に大きな力をいたしていると思うんでございます。ですから、私が申し上げたいのは、もちろん、幾ら売春防止法をつくったところで、それから少年法をいろいろやったところで、基地のあのままの姿であれば絶対に効果はあがらない、そういう気持ちを持っているわけなんでございます。ですから、とにかく基地というものは人間を悪くするということに私は尽きると思います。もちろん、何か経済的とかなんとかいうのはあるんですけれども、やはりそこを克服して、ほんとうに完全な生産をやるところにするとか、それから環境をりっぱにして、子供たちの成長を見ませんと……。  まあ私、コザでもって、基地をそのままにしなくてはいけないという、あるたいへん強力な運動をしている活動家がいるんです、基地をそのまま残せということの運動なんです、その方と私車に一緒に乗って、いろいろ話し合ったんですけれども、その人の話はたいへん矛盾するわけなんです。「先生、子供たちが悪くなってしょうがないんだけれども、どうしたらいいんでしょう」なんて言うわけなんです。「それはあなた、基地があるからそういうことになってしまうんだから、基地をなくすればいいじゃないの」と言いましたら、そのときは口を閉ざして、だまってしまいましたけれども、結局、自分自身がそういうような感情をみんな持っているわけです。ところが、食うためにはしようがないというところにくると思いますので、そういうところをじょうずに調整して、早く基地をなくするという、縮小からだんだんとなくするということでもけっこうなんですけれども、そういうふうな関連があるわけなんです。
  20. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  21. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記をつけて。
  22. 森中守義

    ○森中守義君 社会党です。最初に田中さんに一、二点伺います。  先ほどの御所見を承っていますと、ダレスのドミノ理論と全く同様の繰り返しでございます。そこで、その論法からまいりますと、沖繩基地というものは何としても核戦略ということが一つの基調になるだろう、こういう認識に立たざるを得ない。  そこで、アメリカの上院における公聴会のロジャーズ証言。これは公開の席上では言いにくい、表向きには核はない、しかし、秘密会にしてもらえるならばいろいろ述べたい、こういうことをロジャーズは言っている。そこで、あなたの理論からいけば、当然核がなければその価値はないという、こういう認識に立つのですが、どういったようにお考えなのか。これが第一点であります。  それからいま一つは、アメリカは他の諸国の諸地域にずいぶんたくさんのこの種基地を確保しております。ところが、沖繩に似たようなところが他の地域のどこにあるのか、あるいはまた、協定もしくは取りきめ、こういうものが沖繩以外のところに発見できるかどうか。つまり、沖繩と比べてみてどうなのかということが第二点であります。  それから、昨今、ペンタゴンのほうでは、さっき言われたように、沖繩が「かなめ石」とはいいながら、他の特定の地域にこの種同様の基地を移転してもよろしい、ないしは移転すべきではないか、こういう意見等もしばしば聞かれておりますが、その地点とは南洋群島をさしておるようです。そこで、国内における、ことに沖繩現地基地反対の猛烈なる運動の展開ということが将来予測される。この運動と基地というものは両輪のようなものだと私は思う。むろん、上院の証言におきましても、住民の協力なくしては基地の機能はあり得ない、こういうことがしばしば言われておりますが、その辺の将来の展望はどうなのか、これが第三点。  その次に、しばしば国会でも議論されてまいりましたが、おそらく、台湾の問題はいずれ何らかの形で決着がつくだろう。先ほどそのことにお触れになりました。そこで、台湾と尖閣列島の大陸だなの関係、これはどうしても領有権の問題に関係せざるを得ない。この将来をどういったようにお考えになるのか。つまり、日中の国際的な紛争の種になりはしないのかということを私はおそれます。この点についての見解はどうなのか。  それから、一泉公述人にお尋ねいたしますが、昨今、いろいろな読みものの中に、沖繩アメリカが――あくまでもこれは仮定ですけれども、もろに交渉をやった場合には、おそらく、今回の返還協定、こういうものとは比較にならないような前進があったのではないか、言いかえるならば、沖繩の心を日本政府は踏みにじった、むしろアメリカの側に回って沖繩を押えた、こういうことがしばしば言われておる。私もそのとおりだという、こういう見解に立つのです。  そこで、五二年立法院の決議四十二号及び六二年の決議三号、いずれもこれはワシントン政府にあてたものであり、国連にあてたものであり、しかも国連加盟各国にあてたものであります。私が要約すれば、この二つの決議というものが、条約三条に決着をつけようという、これを根拠にして国際法上の問題の処理、あるいは加盟各国に対する沖繩の心を訴えたものではないか、言いかえるならば、この二つの決議がほんとうの沖繩の心だ、こう思うのです。こういうことが、はたして今回の政府及びアメリカの二カ国間の交渉の際における日本政府の交渉の節度あるいは基調、どこにこういうものが含まれているのか、そういう交渉にあたっての日本政府の基調と節度とは何であったか、このことをお答えいただきたいと思います。  以上です。
  23. 田中直吉

    公述人田中直吉君) お答えいたします。  私の見解が、故ダレス国務長官に非常に似ておるということは非常に光栄であります。私は、国際政治はやはりパワー・ポリティックスだと、権力政治だという観点に立っております。で、このことは、ダレスのみならず、コスイギンあるいはブレジネフの見解とも私はそう変わってないというふうに思っておる。  で、第一点は、沖繩に核がなければ意味がないというふうな御質問であったと思いますが、御承知のように、今日アメリカには本土にICBMがあり、そしてそれが堅固化されておりまして、また、ポラリス潜水艦が太平洋、大西洋、あらゆる地点におるわけであります。だからして、沖繩に核がないということでアメリカの核抑止力というものが無意味になったとは言えない。しかし、私は、沖繩に核があるほうがそれはアメリカとして局地的な核抑止力は有効であろうと思います。だからして、アメリカは何とかして核を沖繩に置きたいと思ったに相違ありません。私は国防総省と関係の深いアメリカのある学者といろいろ話し合いましたけれども、彼らは率直にそのことを申しました。   〔委員長退席、理事丸茂重貞君着席〕 また、沖繩基地を自由に使うということは、これはもうアメリカの生命線だということを強調いたしました。しかし、それをあえて譲ったのは、やはり日本との将来の友好関係を維持したい。すなわち、軍事面においてはマイナスであっても政治面においてプラスを得ようというねらいであったように思うのであります。で、沖繩に核があるかないか、これは私は存じません。こういうことはアメリカの人にお聞きになってもむだなことであります。それはアメリカの原子力法によって、そういうことは言えば罰せられることになっております。で、これはお互いの夫婦関係であれば、女房が月経だと言うておるのに、そのときに探ってみなきゃわからぬというものじゃないと思うんです。私はそれは信用すりゃいいんだと。それがないんなら同盟関係をやめたらいいんです。  第二点は、米国の核は――第二点は、私正確には少し忘れましたので、恐縮でありますがもう一度言うていただきたいんですが、第三点は、やはり沖繩住民の協力がなければ沖繩の軍事基地としての役割りを果たせないことは当然のことであります。アメリカもそのことは十分知っておりまして、それで、今後長く続けましても、施政権を持っておっても協力は得られない、だからして、できるだけ日本との協力関係を確保するために、私は沖繩返還協定に同意したものだと思います。  それから第四点は、おそらく日中関係において、私は、今後、台湾の問題あるいは沖繩の問題についていろいろ問題が起きるだろうと思います。そのときにやはりわれわれが中国に対して土下座外交をやったり、中国の主張をうのみにするようなことでなしに、やはり日本の国益に基づいた主張を堂々とやるべきであって、おそらく沖繩の問題につきましては、すでに明治のとき以来のこれは日中国交間において問題があったわけでありまして、将来こういう問題が起きないとは限りません。このときにわれわれが主張すべきことは堂々と主張し、そして中国と正常な関係を持っていくということは、これは当然のことでありまして、その基本方針を失わないように交渉すればいいというふうに考えております。
  24. 森中守義

    ○森中守義君 二番はこういう意味ですよ。   〔理事丸茂重貞君退席、委員長着席〕 沖繩は御承知のような状態だと。ところがアメリカ日本以外にもたくさん基地を持っておる。こういうところが、たとえば今回の返還協定、あるいは条約三条による占領状態、そういったような状態と比べて沖繩はどうなのか、こういうことをお尋ねしたわけです。
  25. 田中直吉

    公述人田中直吉君) 御承知のように、沖繩は、アメリカが占領して、そして、とにかく施政権下に置いた地域でありまして、こういう地域は世界にはありません。アメリカフィリピン基地を持っているとか、あるいはスペインに基地を持っているとか、あるいはトルコに基地を持っているというふうな例、あるいは西ドイツに基地があるという例はございますけれども、しかしアメリカが施政権を持った地域に基地を持っているという例は、おそらく、米西戦争の結果得ましたあのキューバの基地それからあるいはパナマの基地、これがやや近いかと思うのです。しかし完全に沖繩と同じような基地というものはありません。
  26. 一泉知永

    公述人(一泉知永君) お答えいたします。  私、さきにも触れましたように、実は、基調と節度と申します点につきましては、あらゆる点につきまして重要な点は、日本政府アメリカ政府に押し切られた、アメリカ政府のおかげで、たとえば沖繩及び本土の中小企業その他一切でありますが、そういうものは、一切アメリカのせいであるという形をとることによって、日本政府被害者の立場に立った形で自分を免罪していくのが私は一貫した政府の態度だと思います。したがって、それは沖繩の側から見た場合には、日米ともに加害者であるという認定がすべてのポイントだろうと思います。それにつけ加えますと、最後に先ほど触れましたように、批准書の交換の前に、たとえば沖繩の声を聞くというような具体的手続の附帯決議を当院でやっていただければ非常に幸いだと考えておる次第でございます。
  27. 岩間正男

    ○岩間正男君 一泉公述人田中公述人にお伺いいたすのであります。  一泉公述人に公用地暫定使用法案について二、三点お聞きいたしたいと思います。  その第一は、この法案の第一条によりますというと、あくまでも地主と協議をする、できるだけ話し合いでこれをやりたいと。ところが、そうは言っていながら、五年がくれば結局は、応じなければ強制使用すると。こういうことは、一体、協議ということになるのでしょうか。協議というのは、これはイエスもあればノーもある、事前協議の場合、そういうふうに政府は答えておりますけれども、つまり、拒否する権利があってはじめて協議ということは成立するのだろう。したがって、第一条の規定というのは全くの欺瞞にしかすぎないのであります。ことに、先国会におきまして、前愛知外務大臣はこう言っておるのですね。――あくまでこれは地主と相談をすると、その承諾をいただかなければこれは米軍に提供できない。そういうようなたてまえにこれはなっておる。――こういうことまで言っておるのです。これが今度じゅうりんされた、その理由は何か、これが第一点。  第二点は、今度の法案のやり方を見ますというと、憲法違反の問題はないと言っていますが、実際はこれは数々あげることができると思います。しかも、その一番大きな問題は、やはり戦時立法的な性格を持っているんだ。この前の戦時中のあの土地収用よりももっとこれはひどいという点では、告示を一つとってみても、そういう点ははっきり指摘することができます。そうなりますと、これは平和憲法下の法体系というものに完全に違反するということになります。平和憲法下の法体系がこの一角でくずれるということは、日本の法体系を考えますときに、実に重大な問題を持っていると思うのです。これが第二点です。  第三点は、したがって、沖繩復帰します、そうすると、日本領土の一部で行なわれているこのような法律は、今度は本土において行なわれないという保証があるのかどうか。これは非常事態になるというと、いまは口を緘しているけれども、こういう法案が生かされたというにがい経験を日本のいままでの国民は持っておるわけです。ことに、来年度は本土における米軍基地が、ほとんどこれは民法上の契約の二十年の期限が切れる、どうしてもこの契約を更改しなければならない、そういうときになっております。そうすると、今度なぜ一体沖繩でこんなに急いでやるかと言ったら、寸時も余白を許さない、こういうことを言っている。本土基地の場合は、寸時の余白を許されるのかどうか。こう考えますというと、この法案が波及するというおそれがあると思う。この三点についてお尋ねいたしたいと思います。  それから田中公述人にお伺いいたしたいことは、先ほどから御意見がございました。私も十分聞かしていただきました。結論としては、結局は、アメリカの核戦略を維持固定する、これが最大の至上命令だと。このためには、沖繩の県民の生活や権利や平和へのそういう願いというものは、これは第二だと、こういうふうにしか聞かれなかったわけであります。そこでお聞きしますけれども、一体今度の沖繩返還というものは、だれのための返還なんでしょう。何のための返還なんでしょう。私は、返還の名に値するなら、当然沖繩百万県民の、これは民主的権利が守られ、そうして平和への願いが守られ、当然生活の向上の方向にいきたいという、この要求を貫く方向こそが返還の最大の眼目でなければならない。ところが、そのために、逆にアメリカの核戦略体制を維持するということを至上命令に考えれば、いまのこのいろいろな民主的権利や平和への願いというものは、じゅうりんされざるを得ない点がたくさんに起こってくると思います。昨日、私たちは沖繩の公聴会に参りました。帰って来たばかりでありますから、なお身にしみてこれを聞いてきたばかりでありますが、その点についてどうお考えになるのか。私は、この点が非常に重大な課題だと考えますので、先ほどの御証言と照らしてこれはお聞かせ願いたいと思います。
  28. 一泉知永

    公述人(一泉知永君) お答えいたします。  御質問の三つの問題は、実は一括いたしまして、要するに沖繩に平和幻想を与えたという事実でお答えできるだろうと思います。と申しますのは、返還促進をやっておった沖繩人々が、なぜ反対という形に回ったか。この脈絡がおそらく本土では理解しにくかろうと思います。したがって、沖繩の心に浮かんでおった日本と、現実日本のギャップが認識されたということであります。そこに平和憲法の問題が出てまいることでございましょう。私は憲法学者じゃございませんので、専門的なお答えは十分にはできませんが、私が学んだ限りでの憲法の理解においても、十二分に疑わしきものがたくさんあると、私自身考えております。申し上げればたくさんございますが、一言だけつけ加えて申しますと、沖繩の戦後の復帰運動の中で、革新団体が日の丸を掲げておった時代がございました。本土の革新団体には戦後一度もない姿が沖繩だけにはあったのです。ところが、佐藤首相が沖繩にお出かけになられました前後から、革新団体から日の丸が消えていったのです。言うなれば、逆説的に申しますと、佐藤首相は、沖繩に行かれることによって、沖繩の心から日の丸を追放した。これがすなわち平和幻想という形で証明された。これが反対運動、復帰反対の理由であるし、心情でございます。ですから、復帰反対するのではなくして、復帰意味する中身に反対だということで、お答えになろうかと思います。
  29. 田中直吉

    公述人田中直吉君) お答えいたします。  もしもアメリカソ連と中共との間で核戦力を全廃するとか、あるいはアジアの核について共同保障するとかいうふうな事態がくれば、それは沖繩だとか日本は、核保有国からの核の脅威というものに対して安全を保障されるわけでありますが、残念ながら現実のいまの東アジアの国際政治では、アメリカソ連中国というものが、三つどもえの格闘をしておるわけであります。これは最近のインド・パキスタン戦争においても明らかであります。そういう事態のもとにおいて、アメリカの核戦略を頭から否定してしまったのでは、私は日本の安全も沖繩の安全も確保できないだけではなしに、アジアの平和と安定が確保できない、私はこう思うわけなんです。それで、もちろん沖繩の返還は、日本の一億の国民と、それから沖繩の百万の同胞、そのためのものであることは言うをまちません。しかし、国が滅んでは、われわれの生活はないのであります。国が滅びないことをまず考えるのが施政者として当然の責務だと私は信じております。
  30. 内田善利

    ○内田善利君 私は、田中公述人と一泉公述人に一点ずつお伺いしたいと思いますが、田中公述人のほうに質問いたしますが、ただいまのお話をお聞きいたしましても、先ほどのお話も、沖繩台湾戦略的な位置づけということを、るるお話しになったわけですが、それに反して沖繩の県民の心――太平洋戦争で第一線に立ち、しかも二十六年間苦悩の生活を続けてきた沖繩の県民の心を、どのように把握しておられるのか。県民の心というものについて、先生の御意見をお伺いしたいと思います。  それと、あの戦略体制というお話をお聞きしまして、本土並みに基地も少なくなるんだと、二千八百二十四の基地が百十二の基地になったじゃないかと、沖繩もそのように基地は縮小されるというふうに受け取ったのですけれども、先生のお話を聞いておりますと、これではますます基地は多くなる一方じゃないかと、核も絶対になくならないと、このように私は受け取ったのですけれども、この点について……。二点お伺いしたいと思います。  一泉先生には、軍事優先の返還であるがゆえに、沖繩の開発はおくれるのではないかと。豊かな沖繩どころじゃないじゃないかと。水も基地に奪われておる。土地もなかなかない。そういった状況で、用水も用地もない状況で、はたして豊かな沖繩が確保できるのか、このように思うわけですが、先生のお話の中に、沖繩振興開発の点がお聞きできなかったので、この点について簡単にお願いしたいと思います。
  31. 田中直吉

    公述人田中直吉君) お答えいたします。  沖繩の歴史につきましては、先ほどからお話がありましたが、なるほど沖繩は御承知のように薩摩藩が征服をいたしましたり、また、明治以来、日本沖繩とを差別してきたこともあり、あるいはまた、あの太平洋戦争の非常な災害は沖繩にのみ集中をした。もちろん本土も災害を受けましたが、しかし、それより何十倍に及ぶ災害を沖繩は受けた。これらの点については、私は同情するとかなんとかじゃなしに、非常に私自身も沈痛するわけなんです。しかし、住民のそういう気持ちだけにとらわれて、そうして国家の百年の大計を私は忘れてはならない。だからして、その意味においても、やはり沖繩のいまの基地というものは、暫定的にはやむを得ないというふうに思うわけであります。  それから沖繩基地が、本土並みになるかどうかという点でありますが、あるいはアメリカは、将来、アジア防衛線をあるいはマリアナ諸島まで撤退するかもしれない。また、日本がほんとうに自主防衛の力を持つならば、それぐらいは期待しても、アメリカは納得するのではないか、そういう事態にならない限りは、沖繩においてアメリカ基地が非常に減少するということはあり得ないと思います。また、将来において私は日米安保条約は将来改定しなければならない時期が必ずくるのではないかと思います。そういう時期に、やはりアメリカ基地日本から撤去する、すなわち民社党が言われておりますような有事進駐というふうな形が私は望ましいというふうに考えております。そういう事態がこない限りは、沖繩基地というようなものも、そういますぐ急速に減るということは期待できない。しかし、五年、十年の先を考えれば、現在のままであるということは言い得ないのではないかと思います。アメリカ戦略体制というものも、おそらく七五年以降においてはかなり変わってくる傾向があるというふうに私は見ておるわけであります。  以上です。
  32. 一泉知永

    公述人(一泉知永君) お答えいたします。  経済開発につきましては、実はもう皆さんよく御承知のとおり、全然具体的なプランが示されていない。その予算のめどを私も私的に知りたいと思いまして資料を集めようと思いましても、さっぱりわかりません。にもかかわらず、自衛隊の配備の頭数まではっきりしておる、金額もはっきりしておる、こういうふうなことがまさに軍事優先である、こういうふうに理解するわけです。ただ、今後の問題といたしましては、よくいわれますことは、言うなれば援助資金とかあるいはお助け資金というような発想で資金が供給されるという姿勢、しかし、これは過去の補償という形で考えるべき金額が相当ある、これは本質的には補償であってお助け金ではないんだという姿勢で資金が供給されるべきなんであって、金さえ多ければ文句を言うなという形でなされるべき性質のものではない。もしそうであるならば、まさに沖繩の心を踏みにじるものである。もちろん沖繩県が決して豊かな県だとは私自身思っておりません。それだけに、物を与えるのに、こじきに物を与えるような姿勢だけは、やめにゃいかぬということであります。もっと学者としてことばを慎まにゃいかぬかもしれませんが、私は別のものにも書きましたが、どろぼうにはなってもこじきはするなという気持ちであります。これは非常に不穏なことばでありますが、私の言わんとする意味をくみ取っていただければ幸いに思います。  ただ、最後意見と申しますか、お願いと申しますか、おそらく沖繩に対する援助資金は相当の額にのぼるだろうと思います。そのときに、だんだん沖繩が忘れられていく段階で、日本全体の世論、一般の市民の心の中に、沖繩がしんどいんだ、めんどうだ、やっかいだという心がだんだんしみ込んでいくというときに、むしろいまの政府のやっておる程度はあれで上できだったという心が生まれやしないかを心配するわけであります。ですから、願わくば今沖繩国会が済んで沖繩が終わるんじゃない、沖繩問題はすなわち日中問題そのものずばりでございますから、そのときになって、沖繩がしんどいという形をお持ちになるとは思いませんが、どうかその世論形成の中の一環をになっていただきたいとお願いする次第でございます。
  33. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 田中公述人にお聞きしたいんですが、先生のお話を承りますと、私、民社党ですが、この戦略的地位という立場から今度の沖繩の返還がなされておるんだと、こう断定しておられるんだと思います。そうなりますと、先生の基本的な考え方からいきますと、結局、日本もその中にあって、安保協定の中にあって、ややもすると、東アジア地域においては自由陣営としてばらばらになっちゃう。そのことはまあ日本の国民としても許すべきではない、こういう姿勢のお話を承ったと私は思っておるのです。ところがそうなりますと、政府は、今度の返還に対してあるいはイエスもあるノーもある、これをはっきり言っておられるわけです。私たちは、日本がそのアジア全体を守るために日本基地から出兵をするというようなことは、あくまでもノーだ、これはもう基本原則としてノーだ、ノーでなければならぬ、平和を守るために。こういう原則をわれわれは持っておるわけです。したがって安保の改定をすべきだと、こういう強い要望を私たちは持っておるわけですが、先生の御意見からいきますと、そうじゃなくて、やはりアジア地域はアメリカの核のかさの下におって守っていかなくちゃいかぬのだという考え方で、およそ違うように私は思うのです。したがって、今度の沖繩の返還に対して、自衛隊をいま直ちにやるよりも、アメリカをもっと縮小させて、それは直ちにはいかぬでしょうけれども、漸進的にこれを縮小させるのが賢明ではないか、こういう主張を私たちはしておるわけですが、そういう点についてはおよそ先生の御意見と違う点が多いように私は思うのです。どうしても日本はそのアジア地域の自由陣営というものを守っていかなければ危険性が多いと、こうお考えになっておるのか、この点をひとつお聞きしたいと思うのです。
  34. 田中直吉

    公述人田中直吉君) 私は、前から日米安保条約を、できれば七十五年くらいには改定をしたい、その場合には、できればいまの軍事条項を薄めて、そうして民社党が言われているような常時駐留でなしに有事駐留の線まで持ってくる、そしてアメリカの核のかさだけじゃなしに、あるいはソ連、中共との共同の核のかさというようなことも望ましい、あるいはアジアの非核地帯の設置ということも望ましい、しかし、それがいま急に行なわれるとはどうも思えないのです。そういたしますと、やはりアメリカ日本とそれから韓国と、あるいは台湾を含めますかどうかということも問題でありましょうが、やはり自由陣営がばらばらになったのでは、これは集団防衛体制としても非常に不利だと思うのです。現在の状態ではもちろんアメリカ日本との日米安保条約、あるいは米華相互援助条約、米韓相互援助条約というのは二国間の条約でありますけれども、アメリカにおいては、これを多角的な多辺的な条約にせよとかというふうな意見もあるわけであります。今度の沖繩の問題は、そういうアメリカアジア戦略と関連しておる面もあるし、あるいは日本との友好関係をそういうバランスの上においてやはり維持していきたいという気持ちが強くて、そして沖繩返還に同意するというふうに決断を下したのではないか、そういう政策決定をしのたではないかというふうに思うのです。日本といたしましては、やはり現在のきびしい国際情勢のもとにおいては、アメリカとの軍事的な協力関係というものを直ちに切ることは、私は日本の国策上不適当だという判断をしております。しかし、これはアジア国際情勢変化あるいは世界の核戦略変化というものに応じて柔軟的に対処すべきであるという見解であります。
  35. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 時間もありませんので、田中先生に端的にお尋ねします。長い御説明は要りませんので、端的にお答え願いたいと思います。  結論は、先生の公述を聞きまして、どうしても納得がいかない。こういう前提に立っての質問であります。  第一点は、国家百年の大計を忘れてはならない、こういうことであります。その国家百年の大計とはどうお考えになっているか。これが第一点。次に沖繩の実態をどのように把握しておられるか、沖繩の現状を。それと関連して、沖繩県民の心を、沖繩の心をどのように理解しておられるか。次に、沖繩返還の意義をどのように理解しておられるか。それから、自衛隊の配備については沖繩県民の県民感情を考慮しなければいけない、こうおっしゃいました。その県民感情を考慮するということはどのように、考慮する内容です。以上お願いいたします。
  36. 田中直吉

    公述人田中直吉君) 国家百年の大計と申し上げましたが、それは国家の生存、これが根本だと思うんです。国家なくして憲法もありません。日本の国家を守るということは根本だと思うんです。その意味で、私は、防衛問題がやはり国においては最重点を置くべきだというふうに思っております。  第二に、沖繩県民の心とおっしゃいますが、沖繩県民もやはり日本人でありますが、それでわれわれと同じ同胞だというふうに考えております。別に私は、沖繩を差別しようとか、そういうようなことはひとつも考えておりません。現に基地は、非常に沖繩に多い。それは、沖繩が置かれておる戦略的な地位、そういうところからきてやむを得ない状況であって、日本の国内においても県別にいえば、神奈川県なんかは、ほかの県から比べれば非常に密度が高い。そして、沖繩人口の比率からみましても、むしろ神奈川県のほうが人口が非常に多いのに、かなり基地が多い。それは、やはり神奈川県は、首都防衛、そういう戦略的な要請から基地が多いという状態に置かれておると思うんです。  それから、今度の沖繩返還の意義は、これは国際政治の上において、いまだかつて平和裏に領土が返還されたという例はありません、ほとんどありません。あのフィンランドが、御承知のように、ソ連に対して第二次世界大戦中にカレリア地峡などを奪われたわけです。そして、フルシチョフがスターリン批判をいたしましたあと、フィンランドの首相がフルシチョフに、フィンランドの領土を返してくれと申しましたときに、ソ連は、力で奪ったものは力で取り返せと言うたと聞いております。そういう意味において、この返還の意味は、国際政治学的に言うて非常に大きな意味がある。平和裏にこれが返還されるということは、大きな意味があるというふうに考えております。また、自衛隊沖繩へ配置される、その場合には、自衛隊の任務は、直接侵略及び間接侵略に対処することが第一であって、治安出動というようなものは、私はすべきでないという意見であります。かつて七〇年安保のときにも、自衛隊治安出動について私書いたことがありますが、治安出動は、これは極力避けなければならぬ、その意味において沖繩においても、そういうことは厳重に自衛隊として心すべきではないか、しかし、沖繩は、御承知のように、台風が非常にしばしば襲うところでありまして、だからして、災害救助あるいは民生という方面において自衛隊のなすべき役割りは多々あると思うのです。その面に重点を置くならば、沖繩の皆さん方の御理解を得ることも決して不可能ではない。これは戦前の陸軍と、あるいは軍と現在の自衛隊はかなり本質的に変わっております。私は、防衛大学校で八年間講義しておりますし、それから全国の各隊においても、自衛隊にはずいぶん講義に行きます。そのときにも、必ず自衛のための自衛隊たれということを主張してきたわけであります。以上です。
  37. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 田中先生ね、ますます不安になったものですからちょっとお伺いしたいのですが、簡単に聞きますが、アメリカ戦略的地位立場を持ってやったとしても、日本はそれに入ってはいかんと私は思っているのですが、その点はどうですか。
  38. 田中直吉

    公述人田中直吉君) お答えいたします。  もしもアメリカの主張を根本的に反対立場でいけば、私は、沖繩は返ってこないと思う。それは一昨年アメリカの学者が私のところに参りまして、それはちょうど一昨年の一月でありましたが、そのときに、私が、沖繩問題アメリカはどう考えているのかと聞きましたら、アメリカ人たちは九〇%までは沖繩問題なんていうものに関心はない。日本では騒いでいるかもしれないけれども、沖繩がどこにあるか知らない人がアメリカには多い。それから、その一〇%の関心のある人でも、沖繩返還に賛成している人は非常に少ない。日本に伝えられているのは、これは親日的な人たちだけの意見であるということを聞きました。そうして、私に言うのに、もしも日本アメリカとが立場が逆だったら、あなたはどうしますか、もしも、あの太平洋戦争日本がハワイを取った、そのハワイを占領した場合に、アメリカから返せと言われたときに日本はハワイを返しますか、こう逆襲されてきたわけであります。アメリカでは非常に戦略的な立場から物を見ている。つまり国防総省なんかの力が相当強いんです。そういう学者の説のほうが非常に強いんです。これはハト派の学者よりも、私は、アメリカのタカ派の学者と意見を交換いたしましたが、その人たち意見も無視することができないんじゃないかというふうに思うのです。日本日本立場があります。しかし、アメリカのそういう立場というものを頭に置いて御審議願いたいと思うのです。それでないと、アメリカでは、この返還は気にいらんからと返したら、これは永久に日本に返すつもりはないと言う人もあるわけです。以上です。
  39. 長田裕二

    ○長田裕二君 自由民主党の長田でございます。時間がないようですから、簡単に御質問いたします。  一つは、金城さんにお尋ねいたします。先ほど切々たるお話をつつしんで承ったのですが、今度の沖繩復帰につきましては、沖繩方々のお気持ちとしまして、一つは、戦争体験、及びそれにも連なっておると思われる基地によるいろいろの弊害をお考えになるもの、それからもう一つは、異国人の施政権のもとにあるということ、その二つの面があるのじゃないかというふうに考えております。第一の面につきましては、実はアメリカが今日基地という面で沖繩が要らなくなったから返すというところまで到達しておらないその段階で返すということで、現在のところ、大部分のものがそのまま残るということで、それにつきまして、あるいは日本自衛隊が派遣されるということにつきましての御感想を承ったわけでありますが、異国人の施政権のもとから今度は戻ってくるということにつきましての御意見なりは、あまり承らなかったような気がいたします。それにつきましての御意見なり御感想なりをひとつ。  それから一泉さんにお伺いいたします。  先ほどの御意見の中に、公用地等暫定使用に関する法律に対する御批判の一つといたしまして、その使用面積が不確定だということをあげておられたような感じがいたします。私どもの承知しておりますところでは、この面積はまず米軍が現在使っておるものの範囲内で、一つは、自衛隊が引き続き使うもの、それから第二は、米軍が今度は日米安保条約に基づいて使うもの、それから第三は、米軍が返し自衛隊が使うものというふうに承知しておるわけで、復帰後は現在よりもその面積はある程度減る、それから今度は減るその内容の中で、大部分は所有者との契約に基づいて土地が使用される、残ったものについては海外に所有者がおったりしてなかなかはっきり交渉ができない、あるいはまた沖繩に在住しておる人の所有だと思われても、権利が十分確定していない、争いがあったりするもの、それから使われることを承知しない方々、そういうふうに承知しておりますのですが、その面積が不確定と言われることが大きな御批判の理由になっている点について、私、十分理解できませんので、その点をもしさらに重ねて御説明いただければと思います。以上二つでございます。
  40. 金城芳子

    公述人金城芳子君) あまり急ぎましたので、そういうことに触れなかったわけなんですけれども、実は沖繩の心でございますか、アメリカに対してたいへん敵がい心を持っておりますけれども、実は日本本土に対しても不信感を持っているわけなんです。現に戦争のころに日本の軍人が結局沖繩を守ってくれなかったというんでございますが、戦中だったものですから、あるいは日本の軍人がそういうふうなお気持ちになったのかもしれないんですけれども、住民が防空壕をつくってその中に隠れておりますと、戦争のたびに、私たちの命が大事なんだから、君らは出ていけということで出されたということもあるそうでございます。いままで黙っていたんですけれども、そういうことをみんなが漏らしているわけなんです。そういう意味と、それから薩摩の政策でもって沖繩は結局支那の属国だというふうな形にしちゃって、密貿易をしたわけでございますので、沖繩はいかにも日本本土じゃないというふうな印象を日本本土の人に持たした、それは政策上だったと思うんですけれども、とにかく歴史から申しますと、何かこう支那の服装をさせて都大路を練り歩かせたというふうな歴史も残っておるわけなんで、そういう意味でたいへんその時代に沖繩日本本土じゃないというふうな印象を日本の皆さんに与えてしまったということで、それがずっと長い間に何だか沖繩は異民族、日本の民族じゃないみたいな感じを持たされてしまって、何か沖繩を見る目がちょっと差別的なところがあったわけなんでございますが、それは若い人にはわからないんですけれども、私たちが東京に出てくるころも、まだ私たちは沖繩人というんで、ちょっと小さくなるようなことがございました。そういうことのたいへん長い歴史的なものがあって、また戦争のときにもそういうことがあって、ちょっと不信感があるわけなんでございます。そういう意味自衛隊が確かにわれわれを守ってくれるかということは、それに対して疑惑があるし、それから自衛隊が入って来ましても、いざというときには目標にされるのはまた沖繩だということで、もう沖繩人たちは二度とそういう犠牲には協力させられたくないという強い感情をみんな持っているわけです。それでよろしゅうございましょうか。
  41. 一泉知永

    公述人(一泉知永君) お答えいたします。  実は土地面積につきましては、いろいろに調べましても、正直のところ、総面積さえもいろいろな数字があって、どれがほんとうだかわからぬという実情でございます。しかしながら、とにもかくにも総面積は一応出ておるんです。ところが琉球政府で把握されておる基地面積防衛施設庁で把握されておる基地面積の総数にも差がございます。ところがその差がいかような理由によろうとも、総額が出ているからには、その中身が合計された数字であるはずなんです。したがって、その所有者の確認であるとか、あるいはつぶれ地その他というふうに現実で認識できない、認定できないという現実問題はございましょうけれども、とにかくもそのような土地強制収用するわけでございますから、結局、具体的には個別的に基地面積はあるはずなんです。内部事情のむずかしさは私も十二分に承知しておりますけれども、個別的な一つ一つ面積が把握されないでなぜ合計が出てくるか。そういう非常に単純な問題が何にも説明されておらない。そのような数字にも、いろいろ私まあ持っておりますが、損する者があり、かつその中身がわからぬで、かつ、先ほども御質問もありましたように、協議するとか相談するとか言いましても、一片の公示通告だけで持っていってしまう、一体どこの何を持っていくのか、それさえ実はわからぬというのが私の感じであります。おまえの感じは間違っておるというなら、具体的な数字を私にお示し願いたいということでなくて、沖繩及び日本人全部にお示し願いたいということなんです。
  42. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 他に御発言もないようですから、これにて質疑を終わります。  公述人方々には、本日はお忙しいところ本公聴会に御出席賜わりまして、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、ここに厚くお礼申し上げます。  午前の会議はこの程度とし、午後は一時二十分から再開いたします。暫時休憩いたします。    午後零時四十八分休憩      ―――――・―――――    午後一時四十五分開会   〔理事丸茂重貞君委員長席に着く〕
  43. 丸茂重貞

    ○理事(丸茂重貞君) ただいまから沖繩及び北方問題に関する特別委員会公聴会を再開いたします。  午後は、六名の公述人方々から、沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律案沖繩振興開発特別措置法案沖繩における公用地等暫定使用に関する法律案国家公務員法第十三条第五項および地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院地方事務所設置に関し承認を求めるの件、沖繩平和開発基本法案沖繩における雇用促進に関する特別措置法案、以上の各案件につきまして御意見を伺います。  この際、公述人方々一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところを御出席いただきまして、ほんとうにありがとうございました。  本委員会は、現在、付託されておりまする沖繩関係法案について審査を進めている次第でございますので、本日は、本問題について、皆さま方のそれぞれの立場から忌憚のない御意見を賜わり、今後の本委員会審査の参考にいたしたいと存じておりまするので、よろしくお願いをいたします。  なお、本日は、名古屋におきましても地方公聴会が開催されておりまして、委員十九名がそのほうに出席いたしておりますので、この点は、あらかじめ御了承をお願いする次第でございます。  これより公述人方々に順次御意見をお述べ願うのでありますが、議事の進行上、お一人十五分程度でお述べ願い、公述人方々の御意見の陳述が全部終わりました後に委員の質疑を行なうことといたしたいと存じますので、御了承をお願いいたします。  それでは、まず、梶谷公述人にお願いをいたします。
  44. 梶谷善久

    公述人(梶谷善久君) 政治とは変化に対応することであるとは、ほかならぬわが佐藤総理の哲学だと承っておりますが、国際情勢の大きな変化に伴う沖繩軍事基地の性格の変化を検討し、その変化に対応する政治と外交はいかにあるべきかについて所信を申し述べたいと思います。  沖繩返還協定は一昨年十一月の日米共同声明を基礎とするものでありますが、それ以後の国際情勢の激変の基調は、一言で言えば、冷戦構造の崩壊でありましょう。ヨーロッパでは、西ドイツのブラント首相が本年度ノーベル平和賞を授けられたことで象徴されますように、雪解け現象はその量と速度を増してきております。ソ連が、最も警戒しておりました報復主義、軍国主義から脱皮して、西ドイツはすでにソ連との間に、昨年は武力不行使条約を結び、ことしはベルリン協定が成立いたしました。ソ連を仮想敵とする北大西洋条約機構と、これに対抗するワルシャワ条約機構とは、ともに軍事色を薄め、東西両ヨーロッパの首脳の交流がしきりに行なわれております。ヨーロッパで第三次大戦が起こると考える人はほとんどないでありましょう。  実際に戦火がほうぼうで燃えておりますアジアにいたしましても、緊張緩和の大勢は否定することができません。本年度の十大ニュースのトップはニクソン米大統領の中国訪問決定であると見られますが、ここにアジア情勢の大きな変化が集約されております。実は、大統領が訪中を決意することによりましてアジア変化が起こったのではなくて、中国をめぐる潮の流れが大きく変わる一方で、ベトナムその他におけるアメリカの軍事介入が行き詰まり、またその国内の諸矛盾が激化する中でニクソン大統領はまだ国交もない中国へみずから出向いていくという決心をせざるを得なくなったのであります。アジアへの軍事過剰介入政策を修正し、なかんずく中国封じ込め戦略の転換を余儀なくされたのであります。米中対決から米中対話へと移ろうとしているのであります。  なお、ここでインド、パキスタン戦争にちょっと触れておきたいと思います。今度のインド軍の勝利はその軍事力がパキスタンに三倍、五倍したのが原因である。中立政策や平和外交よりも、結局は武力がものをいうという見方が出ておりますが、それはきわめて皮相の見解と言わなければなりません。実は東パキスタンを差別し、収奪してきた上に、昨年十二月の総選挙の結果を無視して議会を開かないばかりか、バロット(投票)に報いるにパレット(弾丸)をもってしたのがことしの三月から始まったパキスタン政府の軍事弾圧であります。パキスタンに送り込まれた政府軍は、ベトナムに派遣されたアメリカ軍と同じように民衆の敵意の海に取り囲まれてしまいました。アメリカ沖繩基地建設に投じた費用は十億ドルと見られておりますけれども、それに倍する二十億ドル軍事援助をパキスタンに与えております。そして一九四七年と一九六五年のインド、パキスタン戦争の際にかなり善戦したパキスタン軍が今度は一敗地にまみれたのであります。これは軍事力よりも民衆の動向が重要な決定要素であるということの証明を新たにつけ加えたものであって、軍事力強化の必要を説く材料にはなり得ないと考えます。  さて沖繩は、太平洋戦争の末期に本土防衛のたてとなり、三カ月半にわたる敢闘の末、沖繩県民の中学生、女学生の死体が洞穴に重なり、海岸に散乱するという惨状の中で、米軍の占領となりました。そしてここに軍の基地をつくったアメリカは、戦争が済んで後、これを対日監視基地、対日爆撃のための基地として残したのであります。この見方はいささか奇異の感じを与えますけれども、第一次大戦後に復讐のやいばをといで、再び連合軍に第二次大戦をしかけたナチ・ドイツの先例もあり、アメリカは軍国日本の報復を極度に警戒しておりました。帝国陸海軍の解体、軍需生産の禁止などとともに、沖繩基地を強化したのであります。ところが、今度の大戦中に連合国としてファシズム打倒の戦友であったソ連とは冷い戦争によって敵となり、一九四九年には中国に中華人民共和国が成立するに及んで、アメリカの対日政策は日本アジアのスイスとするのではなく、反共基地として利用するという逆コースに変わったのであります。  この間、アメリカ戦略は全面核報復戦略、共産圏周辺戦略、柔軟対応戦略などと、いろいろその目標を変えたのでありますけれども、一九五一年のサンフランシスコ条約第三条で沖繩アメリカの全面的占領にゆだねて以来、今日まで、沖繩の軍事基地が一貫して持つ役割りは対中国戦略基地であります。  このほど国会でも審議されましたように、外務省のパンフレット「目で見る日本の安全保障」は、F105戦闘爆撃機沖繩からの行動半径内に中国を入れております。それに対して別に中国を仮想敵とするものではないとの政府見解が示されました。これは在日アメリカ軍自衛隊も戦力ではなくて抑止力である、自衛力であるといういい方と軌を一にするものであります。沖繩は、中国大陸の対岸までわずかに八〇〇キロの戦略要点にあって、メースBなど中距離弾道弾の射程内にあり、B52戦略爆撃機をもってしなくてもB47中型爆撃機で往復爆撃が可能であります。それ自身が不沈戦艦であり、朝鮮戦争ベトナム戦争で実証されましたように、アメリカ軍のための突進、補給、修理、通信、情報、訓練基地として太平洋の軍事的なかなめ石の役割りを果たしてまいりました。  さて、今度の沖繩返還協定は、核もない、基地もない、明るい平和な島をという沖繩県民の願いを踏みにじって、米軍基地を半永久的に残し、日米共同戦略体制のかなめ石とするばかりでなく、中国のわき腹に突きつけた短刀として、日中復交の大きな障害になるおそれを持っております。返還される基地のうち那覇空港を除きましては目ぼしいものは少なく、嘉手納空軍基地や知花弾薬庫など主要基地はそのままに残り、また国頭実弾射撃場や新たな弾薬庫建設など強化される面があることも指摘されております。  沖繩の核兵器はなくなるのかどうか、また本土にも核兵器や毒ガスがあるのかどうかということも論議の的になっておりますが、これに対して防衛庁や外務省あたりが何ら実地検証を経ていないにもかかわらず、そういうものはあるはずがないと想像上でものを言い、あるいは米軍アメリカ大使館の言明をそのままうのみにして、国民の疑念をはぐらかしているように見えますのはたいへん遺憾に思います。アメリカでは、法律によって、原子力兵器の有無を探ったり、あるいはそれに言及することさえ禁じられております。たとえ高官といえども、核兵器があるともないとも責任あることばをもって言えないことを知らねばなりません。  基地縮小の展望はあるのかないのか、返還時の核撤去を確認できるのかどうか、その後B52戦略爆撃機やあるいはポラリス潜水艦によって核持ち込みがはかられた場合に、事前協議でノーと言うのであるかどうか、そうした疑問点が解消されないままに返還協定と関連法案の成立を政府自民党は急いでおられるようであります。  関連法案のうち、沖繩における公用地等暫定使用に関する法案にぜひ言及しておきたいと思います。米軍自衛隊が現在の米軍用地を切れ目なく強制的に使用できることをきめるこの法案は、米軍による不法な土地収用を追認するものにほかなりません。一応、法としての形を整えておりますが、この土地強制収用は、国会における強行採決と同じく、実質的には憲法違反の疑いがきわめて濃いものと言わねばなりません。  また、沖繩県民の要望によってではなく、防衛庁の久保防衛局長とアメリカ大使館のカーチス中将との協定によりまして自衛隊の移駐を予定しております。かつて沖繩日本軍隊が平時常駐したことはなく、徴兵された沖繩県民は九州の連隊に入隊しておりました。しかも、現在の人口比が全国の一%の沖繩自衛隊の二・五%が配置され、その兵器装備ともに本土より高度であります。なお、十二月八日、大阪での公聴会で、自衛隊の災害出動任務を強調する発言がありましたが、それはその任務をすりかえるものに過ぎません。実際に沖繩の災害救助とか民生安定をはかるためならば、ジェット戦闘機、戦車、護衛艦に膨大な費用を食う自衛隊を送り込むのではなくて、もっと有効適切な社会投資に予算を振り向けるべきでありましょう。  これから結論に入ります。わが国の外交は、国連を尊重する、アジアの一員として行動する、アメリカと協調するという三本の柱を立てておりましたが、   〔理事丸茂重貞君退席、委員長着席〕 実際には対米協力に終始したようであります。沖繩の軍事的役割りもまさにアメリカ中国封じ込め戦略の中に据えられておりました。ところがニクソン大統領が日本頭越しに対中接近をはかるに至って、日本の対中国政策は置いてきぼりをくった形であります。沖繩の軍事面についても、アメリカ中国封じ込め政策の転換によって抑止基地といい、あるいは作戦発進基地と言い、いかなる呼び名をいたすにいたしましても、沖繩の軍事的価値が少なくなるはずであるにもかかわらず、依然として米軍基地がそこに残るばかりでなく、自衛隊によってこれを増強するとは何事でありましょうか。つまり、沖繩は新たに日中離間の道具に供されようとしておるのであります。多極化時代に処して、アメリカ中国との間を緩和すると同時に、パートナーよりも、むしろ手ごわいライバルとなった日本を牽制しようとしております。この際、バランス・オブ・パワーを保ちつつ、分割して支配するというのが大国の伝統的政策であります。  返還後の沖繩の軍事基地の態様は、中国が日米結託のもとに日本の軍国主義化という攻撃をいたす上の大きな材料になっております。ここから一発のミサイルも撃たれず、一機の爆撃機も発進しなくても、それが存在することによって中国に対する直接の脅威と感じられるのでありましょう。冷戦と反共の路線から脱却し、日本の安全とアジアの平和を確立するためには、沖繩の非軍事化こそ当面の急務であります。それに逆行する返還協定及び土地強制使用法案自衛隊の移駐には強く反対せざるを得ません。沖繩の軍事基地を残し、防衛力を強化して中国との敵対を深めていくか、それとも沖繩の非軍事化をはじめといたしまして日米安保体制の廃棄へ向かい、日本中国との国交を回復するか、いまこそアジア情勢の変化に応じた政治の選択が必要であると強調して、私の発言を終わります。
  45. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ありがとうございました。     ―――――――――――――
  46. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 次に、瀬長公述人にお願いいたします。
  47. 瀬長良直

    公述人(瀬長良直君) 沖繩におきましては、返還を前にして非常な不安がみなぎっております。その不安の中には、核の問題、基地の問題もございますけれども、核は、返還時におきましてはちゃんと、ないようにするということをたびたび佐藤総理は言明せられております。また、基地については、返還後、話を詰めていって、だんだんと沖繩県民の期待に沿うようにするということを言明しております。私は、その総理の言を信ずるものであります。したがって、いま沖繩において何が一番大事かと申しますると、沖繩の経済の問題であります。はたして沖繩日本に返って豊かになるかどうか、そういう不安を持っております。したがって、その沖繩が豊かになるためには、この関連法案が非常に重大な意義を持っておるものでありまするので、私は、簡単に沖繩の経済の現状をお話しして皆さんに御批判を願いたいと思います。  いま、沖繩におきまして一番大きな問題はドルの問題であります。一ドルで三百六十円のものが買えたものがこの前の変動相場制によって一ドルで三百二十円前後のものしか買えなくなり、現在では一ドルで三百八円のものしか買えなくなっております。しかも、十月九日の手持ちのドル及び預貯金をチェックしまして、その額については返還後といえども日本政府は三百六十円を保証いたしましたけれども、その後に入手したドル及び法人使用のドルについては何らの保証もないのであります。したがって、沖繩人たちはたびたび集会をしまして、五十万人の有権者の人が記名調印して、どうしても早くドルを円に交換してもらいたいということを陳情に来るということを聞いておりますけれども、これは沖繩にとっては死活の問題でありまして、いろいろ困難な問題は多いと思いますけれども、日本の政府は善処して、どうしても沖繩県民の期待に沿っていただきたいと思います。また、佐藤総理も議会において、誠意をもってこの問題は取り組んで、何とか沖繩を期待に沿うようにしようという、抽象的ではありますけれども、そういう答弁をしておられます。  この問題は、言いかえれば、もはや沖繩の人――全県民はドル圏内より円圏内に移行しようという考え方になっておると思います。言いかえますると、早く日本に返って、日本の国民として円の国に返りたいというような面が一そう強くなっておると思います。一部におきましては、この返還協定並びに関連法案に不満の人もあって、延期してもよろしい、あるいは返ることがもっと将来になってもいいという意見を述べた方もありますけれども、現在におきましては、私は全県民が一日も早く日本に返りたいと思っておるとかたく信じております。  私は、たびたび沖繩に参りましていろいろな人に会い、いろいろな人と討議をしましたが、昔はやはり基地が豊かで消費が相当にあって、そうしてその基地経済の豊かさの温室の中において豊かな暮らしをしてきた沖繩人たちが、だんだんとアメリカドル防衛のために緊縮してまいりまして、これから先はどうしても祖国日本に返って生きていかなければならないという自覚を沖繩県民は強く持つようになったんだと思います。  その次には、私は、いま沖繩は非常に金融が逼迫しております。だんだんと預金の歩率は低くなってきて、そうして貸し出し率は非常に多くなって、もはや金を貸す余裕がないほどフルに金を貸し出して、銀行は非常に金融逼迫におちいって、日本と逆になっております。したがって、中小企業はこんぱいして、そうして中小企業においては、労使の紛争が方々に起こっておる現状であります。また、そのほかに、沖繩におきましては軍の労務者がだんだんと失職する、その失職する人たちをどうして収容するかという大きな問題にもなっております。  したがって、日本でありますれば景気の浮揚策として大きな金額の公債を発行したり、あるいはまた公共投資をしたり、社会資本の充実をしたりして、景気の浮揚策を実行できるのでありますけれども、沖繩におきましてはそういうことはできません。復帰前といえども、日本沖繩の景気浮揚策に何か手を打つべきでありますけれども、しかしながら、施政権がアメリカにありまして、日本が施政権下の沖繩においてやれる限界があります。どうしても早く返って、日本沖繩にいまいろいろの関連法案できめたような施策を実行して、そして沖繩を豊かな県づくりにする必要があると思います。この法案にありますようなことを実施して、その効果が発揮されて沖繩の県民が潤って非常に生計が豊かになるためには、私は、数年を要すると思います。したがって、沖繩の返還が一日おくれればおくれるほど沖繩人たちは非常にこんぱいする期間が長くなると思います。そこで、私は、沖繩のほんとうの心を理解せられて、この法案が参議院において一日も早く採決せられて円満に国会が終わることを願っておるものであります。  そこで、この関連法案を見ますると、まことにりっぱにできておりまして、微に入り細に入り、沖繩の心を心として、沖繩の繁栄に、沖繩の福祉に、あるいは沖繩の今後の進み方に、あるいは自治の尊重その他を非常に配慮せられてつくられたものでありますゆえに、これが実行せられなければ沖繩に反映するような施策はできません。ぜひともこの法案が成立して、そして実行せられて、沖繩に大きな公共投資をされて、たとえば港湾や道路、電力、水道その他多くの公共投資をされまして、それが景気を浮揚し、そしてまた離職した人たちを吸収して、だんだんと沖繩が繁栄を取り戻すきっかけになると思うのであります。  一番問題になっておりまする自衛隊の問題でありますけれども、やはり自衛隊沖繩に進出して局地防衛のため、また、日本を含め、東南アジア防衛のために――そういう法律にきめてあるような土地の使い方を私は是認するものであります。先般も、沖繩には、から手という武道がありまするが、から手に先手なしということを防衛庁の長官が言いましたけれども、日本の武装は先手なしで防御のものでありまして、決して積極的に出るような軍備ではないと、私は固く信じております。  そこで、私はいまほんとうに沖繩のことを思うならば、沖繩人たちをどうして豊かにさせるかということを考えることが沖繩返還の根本の問題だと繰り返して申し上げる次第であります。  また、終わりになりましたけれども、昭和五十年には沖繩に海洋博が催されます。これは、大阪における万博と違いまして、その施設を残して沖繩を世界に紹介し、日本に紹介し、沖繩が脚光を浴びる千載一遇の機会であります。そして、その施設を残して将来の経済発展の基盤にし、あるいはまた観光沖繩をつくるための施設に利用して、それを契機として沖繩を繁栄に導こうという日本の配慮に対して、私は、沖繩県の出身者として、日本政府の配慮に対して深く敬意を表する次第であります。  これをもちまして私の陳述を終わります。
  48. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ありがとうございました。
  49. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 次に、武藤公述人にお願いいたします。
  50. 武藤武雄

    公述人(武藤武雄君) 私は、与えられました時間がわずかでありますから、要点をしぼりまして意見を述べさしていただきたいと思います。  第一は、VOA放送の問題であります。政府は、国会の答弁の中で、VOA放送は電波法の適用を受けない、そのために放送法からも除外をされると、こう説明をいたしておるのでありますが、これは沖繩復帰後に重大な禍根を残すおそれがあるのではないかと考えます。それは憲法の精神にも抵触する重大な問題であると考えております。放送法の第一条には、「左に掲げる原則に従って、放送を公共の福祉に適合するように規律し、」となっておりまして、第二には「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保する」と、この基本を明確にしております。しかるに、政府答弁では、アメリカ側の説明を引用いたしまして、これは戦略放送といっても非常に幅広いものであるから必ずしも軍事目的ばかりではないと、こういう答弁でその本質をごまかしておるのであります。  しかし、VOA放送がアメリカの極東向け謀略宣伝放送であることは、過去の実態あるいはアメリカ議会における政府、軍関係者の軍事委員会等における説明でも、これは明らかだと思います。たとえば、民社党の曽祢委員の質問で明らかになりましたように、一九六六年の二月七日、米下院の軍事委員会で、「沖繩は米国の戦略的にとっても重大であり、一例をあげれば沖繩にはVOAの重要施設がある」云々と報告されております。また、六六年三月二十三日、下院軍事委員会の聴聞会における証言録でホルト陸軍次官代理は、「沖繩西太平洋におけるわれわれの安全上の公約を守るための兵力展開に三重の目的を果している。いわく、兵站基地、輸送基地、重要な通信輸送の中心地、さらにはVOAの重要な活動地点である」と、こういうふうに説明をいたしているのであります。また、最近、米国上院外交委員会におきまして、フルブライト外交委員長は、「いまや中国に対するアメリカの態度及び政策を変えつつあると期待し、それを信じているが、そうなるとVOAの継続はいかなる理由で正当化できるのか」ということで、政府に鋭く詰め寄っているのであります。これを見ても、VOAは明らかにヨーロッパの自由放送と同じく冷戦の産物であることは間違いありませんし、特にこれが中共に対してその封じ込め作戦にその主体があったことは、これはもう当然だと思います。  しかるに、今日、そのアメリカが対中国政策を大転換をされようといたしております。そのやさきの沖繩返還でありますから、どうしてこのようなVOAの施設が残されなければならないかということについて、われわれはわからないのであります。特に電波法の特例除外という形においてこれが処理されるのであります。電波法は、御承知のように、単に外国法人に免許を与えるかいなかといった技術的問題によって出ておりますが、その特例除外をし、そのため肝心の放送法の適用も除外されるということになりますと、前に述べたように、憲法の精神にのっとる放送法の憲法ともいうべき基本が侵されるおそれが出てくるのではないだろうか。今度沖繩は、日本に返ってまいりますと、日本本土であります。その日本本土から軍事目的の謀略宣伝放送がまかり通るおそれが当然出てくるのではないでしょうか。それは大きな問題であります。だとすれば、これらの施設を撤去することをアメリカに要求することは、アメリカの政策からいっても当然ではないでしょうか。また、どうしてもそれが一定期間できないというならば、当然日本の国内で規制されておりまする電波法、放送法、そういうものと抵触しないように、どうしてこれを、それが抵触する場合には、取り押えるかというような法的措置も当然必要が伴ってくるのではないでしょうか。政府答弁のごとく、VOA、これについてはアメリカ政府がその責任において放送をすることになっておるから――こういう説明だけでは納得できないのであります。当然、VOAは撤去さるべきであって、本協定のごとく、五年間継続して、しかも、その五年後においては、そのときの状況によってあらためて取り扱いを協議するということになりますると、これは半永久化のおそれが出てくるのではないでしょうか。これでは、政府が言っておりまするように、沖繩本土化するというのではなくて、逆に、沖繩復帰によって本土がある面においては沖繩化されるという現象が出てくるのではないでしょうか。  その次に、今度の協定の中にありまする沖繩土地収用の問題であります。沖繩公用地等暫定使用法案については、沖繩県民やわれわれ本土国民を問わず、本土並みの返還ということは、でき得れば基地についても本土並みにしてほしいというのが、当面これらの真摯な要求ではないでしょうか。しかるに、現在沖繩にある百数十カ所の軍事基地のうち、今回返還されるのはわずかに二十二ヵ所にすぎません。沖繩には、なお総面積の八・八%に達する膨大な基地が存続をするのであります。いわゆる基地の中の沖繩といった表現が今後とも続くということに相なるわけであります。しかも、本法によると、本土法では地位協定による特別措置法ですら六ヵ月に限定されている暫定強制使用が五年間となりまして、十倍も延長されるということであります。しかも、従来軍施設を「公共」の範囲に入れることは適当ではないと、かつて河野さんが建設大臣のときもそういうことを言われたようでありますが、そういう軍の施設を、いわゆる本法に便乗いたしまして、自衛隊の使用地までもこの法案の対象にするという考えのようでありますが、まさに強権の悪乗りと言っていいではないでしょうか。しかも、沖繩土地の地籍調査がまだまだ不十分のままこういうことが行なわれるということは、悪乗り便乗も、はなはだしいと言わなければなりません。国民の基本的な財産権に対する大きな侵害になってくると思うのであります。  何よりも政府が今日一番留意をしなければならぬことは、戦争長期占領といった不合理な圧迫下に長い間呻吟をしてまいりました沖繩県民に、この際少しでも土地を戻してやるためには、米軍基地の大幅縮小こそ最重点に考える。その意味でも、当面、基地本土並みに近づける努力をすることが日本としては先決ではないでしょうか。さっぱり返ってこない、わずかな返還地まで便乗強権によって取り上げるなどということは、言語道断ではないでしょうか。  また、先ほども公述人の方の言及がありましたが、ちょうど沖繩返還は、ドル・ショックにおける日本経済の非常な困難な事態の中で、返還前の状況、返還を予想される大きな転換期の中で、沖繩の県民は非常な不安と現実の生活にあえいでいると思うのであります。特に労働者につきましては、人事院勧告等の本土並み適用によって公務員は救済をされるでありましょうけれども、一般民間の企業の労働者、特に中小企業の労働者等は非常に困難な状態におちいるのではないでしょうか。特にドルの交換等による非常な損失が、これら中小企業に甚大な影響を与えるということになりますと、労使問題というものは非常に深刻な状態になってくるということが予想されるのであります。したがいまして、返還の前と返還後の対策とにこだわらず、もっともっと沖繩に対するこれらの真剣な配慮が、この際必要ではないだろうかと考えるのであります。  沖繩の早期返還は県民のひとしく望むところでありまするが、そのため、大きく日本の国益をそこね、沖繩県民に大きな犠牲を、なお継続してそれをしいるような協定は、拙速にして批准を急ぐということではなしに――衆議院で行なったような、あの混乱の中からこの法案が参議院に回ってまいったのでありますから、参議院におきましては、本法のごとく、特に沖繩県民に身近な影響を与える、しかも憲法の精神をもそこねるような重大な内容を持つ法案については、参議院の良識にのっとりまして、国家百年の国益に重きをいたし、政府に再交渉あるいは再調整等の機会がとられるべく、慎重な審議で参議院においてこれが解決されまするよう心から念願をいたしまして、私の公述といたします。
  51. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ありがとうございました。     ―――――――――――――
  52. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 次に、遠藤公述人にお願いいたします。
  53. 遠藤朝英

    公述人(遠藤朝英君) 今度、懸案になっております七法案、これを検討した結果、二、三をピックアップいたしまして、私の見解と、今後ぜひ実現していただきたいと思う意見を申し上げたいと存じます。  沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案についてでございますが、この法律案は、沖繩沖繩県になるについての当然の経過措置と、大体五年を期限としての各種の保護措置とが盛り込まれております。  沖繩復帰の実現の可能性が見え出しましたころ、東京在住のわれわれ沖繩出身者の間では、沖繩県民が不安なく、しかも生活レベルを落とすことなく復帰を迎えるにはどう対処すればいいかという問題について、しばしば意見の交換を行ないました。このとき、事業家や財政関係者は、経済と産業とが最も重要な問題であり、生命であるから、これへの対策を考えればよいとの意見を強く出されておられました。しかし、私は、その考えはあまりにも鋭角的に過ぎると思い、経済、産業の開発保護対策はもちろん重要ではありますが、それだけでは、われわれのスローガンや要求としては十分ではない。沖繩現実は経済、産業はもちろんのこと、厚生、環境、消費生活、文化、福祉等あらゆる面において特殊である。その現実に立って、日本政府に要求すべきは要求すべきであるとの見解を出しました。どんな法律にも改正の際には経過措置が伴うから、必然的な経過措置は当然出てまいります。しかし、われわれとしましては、この経過措置のうちで最も重大視して意思の疎通をはかっておかねばならないことは、それを必要とするあらゆる面で保護措置を要求することだと主張したのであります。この保護措置は、五年とか十年とかの時限立法でもいいではないかという意見も出しました。そして在京の沖繩県人の有志は、沖繩復帰については、経済、産業の開発対策はもちろんのこと、厚生、文化等あらゆる面で開発対策を樹立し、保護措置を講ずべきものは講じていただきたい旨を文書にもし、また口頭でも関係者にお伝えしてまいりました。  今回国会に提出された沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案の中には、われわれが提起し、要求した趣旨が織り込まれているまとは感慨無量でございます。先ほど瀬長公述人は、沖繩の心を心としたと言われましたが、私も、この点ではそのように感じる一人でございます。ただし、保護措置がこれで十分だというのではございません。あと意見として申し上げるように、まだまだわれわれが要求する要求はたくさんございます。しかし、要求はありましても、これは衆議院で佐藤総理が言われた行政運営の面で配慮するとのお約束を信頼して、私は、この法案そのものには賛成でございます。  第二に、沖繩における公用地等暫定使用に関する法律案でございますが、これは沖繩においても、国会においても論議の的となっているようなので、第二番目にこれを取り上げます。核抜き・本土並み、日米安保条約の尊重という日米両政府が確認した原則の上で沖繩の施政権の返還が実現を見ます以上、この法案の生まれるのは当然ではないかと思います。  東京在住の沖繩出身者の中にも、この法律は、土地強制収用であるとか憲法違反であるとか主張する方もあります。私は、憲法学者ではございませんので、法律論はわかりませんけれども、しかし、国民良識として判断してみますと、違憲論には納得のできないものがございます。私は、むしろこの法措置には地主への保護の一面もあると思いますし、この点については日本政府を信用したいと存じます。  自衛隊の配置についてでございますが、実は、この問題については自分の専門とする厚生や医療の問題に次いで真剣に考えました。私も戦争反対でございます。今日の科学の進歩や、核兵器を幾つかの国が持っているという世界の現実を考えますと、戦争反対しない人は日本国じゅうに一人としていないと存じます。しかし、地球上の何カ所かで戦争やら国内紛争やらが起こっている実情を見ますと、日本が自衛力を持つことを理解し得ない人もまたいないように思います。したがって、自衛隊沖繩に配置することによって戦争に直結するとか軍国主義の復活だとかの論は、私には理解することができません。世界の先進国の学者の間では、イデオロギーを振りかざしてのいわゆる対決時代はもう過ぎた、最適社会を建設し、福祉国家を目ざせが合いことばとなりつつあります。今度世界戦争が起これば世界は滅亡だくらいは世界の常識となってまいりました。この常識からも、私は、自衛隊の配置が戦争につながるとの意見は理解できません。  自衛隊の任務でありますが、これは、主務大臣をはじめ関係者は、他国攻撃ではなくあくまでも局地自衛と民生協力、災害救難などの実施が目的だと言われております。自衛隊の民生協力、災害救難について、私は、その恩恵を受けた経験のある人の意見も聞いてみました。たとえば、伊勢湾台風や大雪災害にあった友人がおりますが、それらの人々意見は、自衛隊はそのとき神さまのように見えたと言っております。沖繩は、台風や干ばつなどが常襲の土地柄でございます。大戦争の勃発よりも、むしろ自然災害の発生のほうに可能性が強いとは、私の沖繩の友人のことばでございます。私は、これはもっともだと思います。また、沖繩基地経済の土地柄であるとの現実にかんがみまして、復帰に伴う基地周辺業者の不安や失業を考えますと、むげに自衛隊配置を退けるわけにはいかないと存じます。これもまた一つ沖繩の心ではないでしょうか。  私は、郷土沖繩を無上に愛しております。同じように日本という国柄も愛しております。それには、日本政府を信ずることが大事だと存じます。私は、したがって沖繩における公用地等暫定使用に関する法律案も支持いたします。  第三に、沖繩振興開発特別措置法案でございますが、これは十三項目にわたる振興開発計画を内容としておりますが、これこそ復帰後の沖繩から不安を除去し、沖繩を豊かにするとのスローガンに直結する基幹法であると存じます。そしてわれわれが二、三年前から要求してきたその要求が実ったとの印象も強うございます。ただし、一、二注文がありますので、あとでこれを申し上げることにいたします。  なお、衆議院の段階でこの法案で修正がなされておりますが、その中で、沖繩振興開発審議会委員二十五人以内が三十人以内となり、その増員実質が学識経験者の六人を十一人にしたことにある点に関し、私は敬意を払います。  以上、参議院で御審議中の復帰に伴う七法案につき、特に重要だと思われる点につき申し上げましたが、私は、返還協定はもとより、懸案となっておりますこれら七つの関係法案が一日も早く参議院を通過することを望むものでございます。  以上は法案に対する私の意思表示でございますが、次に、民生関係について私の希望意見あるいはまあ注文と申しましょうか、そういう点について申し上げたいと存じます。  第一に、厚生、医療関係から申し上げます。経過措置において日本の健康保険、国民健康保険の制度をそのまま適用するかの印象が強うございますが、これはきわめて危険でございます。これでは制度の導入のみに終わって、医療の質と医師の確保は漏れてしまいます。私は、この医師の確保のできないことを一番おそれるものでございます。沖繩の医療の質は、アメリカ日本の医学、医療が混在しておりますので、世界的に見ましても決して低くはございません。文章の上では医師不足の解消が可能なように今度の法案にはなっておりますが、本土においてさえ医師不足は深刻でございます。医師の増加一・一倍に対し、患者の増加一・七倍が本土の実情。もし、全国の保険医が不満だらけの保険医療制度を、一本化の名目のもとに、そのまま沖繩へ流し込むと、沖繩の医療従事者の確保はできなくなると存じます。こまかいことは申し上げませんが、日本の診療費にプラスアルファを加える保護措置が絶対に必要でございます。日本の保険におきましても、たとえば国民健康保険におきましては、当初の国民健康保険には特別保護の道が講じられております。この点も御考慮に入れていただきたいと存じます。また、国民健康保険のスタートにつきましては、立法院において自由民主党が修正し、医療三団体も了承して、立法院で可決を見ました国民健康保険法案の実施を考えられたいと思います。もう一歩突っ込んで申し上げますならば、国民健康保険の実施の整備条件が整うまでは現行の期限つき延長も考えられると存じます。さらに、沖繩には医介輔という特別な医師を助ける職種がございますが、今度の医療法を見ますと、この医介輔の制限された医療行為を許した反面、これを医師とみなすという一項がございます。私は、これは将来大きな混乱を起こすものと予想いたしますので、ぜひともその表現は参議院の御良識によって御一考いただきたいと存じます。  沖繩のらい病の罹病率は本土の二十倍と言われております。戦前には、沖繩と熊本はらい病の罹病率の高いことで日本一を誇っておりましたが、今日は格段の相違となってまいりました。これは予防処置が行なわれなかったことに原因があるのでございまして、世界的に標準ワクチンとして認められておりますわが国のBCGワクチンを接種することによって、すみやかにらいの予防に効果をあげていただきたいと存じます。なぜならば、結核BCGは、らい予防にも有効だからでございます。  次は、土地使用についての注文でございますが、軍用地の地主現地では三万七千人、まあこれは三万数千人と表現してもよろしゅうございますが、三万七千人。このうち三千人ないしは五千人が土地使用反対だということでございます。土地暫定使用に関する法の実施にあたっては、多くの沖繩現地人々から切実な意見として出ていますように、強制によることなく、あくまでも話し合いによる契約をお取りつけになり、たとえ反対派といえども説得なさる御努力が必要かと存じます。これこそこの特別措置を生かす根本だと私は存じます。契約して土地使用に応ずるとの地主団体は、地代を現行の約七倍にするよう――実際は六・九倍だと存じますが、約七倍にするよう要求しているようでありますが、これは二十六年間の低額地代――低額の貸し地料と、その低額からくる損失補償とを勘案いたしますと、私は、当然の要求のように存じます。ぜひこの要求はかなえていただきますよう政府・与党ともに御努力賜わりたいと存じます。  次は、民生関係のうち中核とも言うべき水の問題を申し上げます。上水、下水の現代化は、沖繩にあっては産業の開発、生活環境の清浄、公衆衛生の向上、公害対策、日常生活等、おおよそ民生に関連のある諸問題と重大な関連がございます。産業の誘致開発のごときは、水の問題が解決を見ない限り私は公害排除の手は打てないのではないかと存じます。ところが、水の問題に関する対策は、たとえば沖繩北部に水源を求めるとのアイディアを見るにすぎません。私は、これだけでは沖繩本島においてさえ水の問題は解決しないように存じます。沖繩は干ばつの頻発する土地柄であり、離島も含めての対策が必要でございます。私は、総合対策として海水を真水にする研究とその量産化の開発を行なわねば、沖繩の民生問題は明るくならないと考えます。海水を真水にすることはコストが高くつくとの理由だけでこの問題を見送ることは怠慢でありますし、少なくとも非科学的だと存じます。国費をもって海水を真水にする研究とその量産化への踏み切りをお願い申し上げる次第でございます。  沖繩振興開発特別措置法案にちなむ沖繩振興開発審議会の構成についての私の希望でございますが、前に述べましたように、二十五人以内を三十人以内にした修正に敬意を払いますが、その構成、特に学識経験者十一人以内の中には、本土の学識経験者ばかりではなく、中央にある沖繩出身の学者並びに現地沖繩にいる学識経験者をも重点的に登用していただきたいと存じます。これは沖繩の心を生かすゆえんだと考えるからでございます。  沖繩現実を分析いたしまして、海洋産業の開発研究は非常に重要でございます。沖繩アジアや東南アジアの玄関口だとの関係者のことばは、まさにそのとおり。ならば、沖繩に海洋産業開発研究所を国立としておつくりいただきたいと存じます。  最後の要求意見として申し上げたいのは、ドルショックの件、これは瀬長公述人もお話しになりましたが、私は、今月の一日から四日まで沖繩へ参りましたが、沖繩はすみずみまでドルショックとドル不安に襲われております。ドルショックへの対策につきましては、一ドル三百六十円の交換値はもちろんのこと、きめのこまかい点まで御勘案の上、早急に手を打っていただきたいと存じます。  以上を申し上げ、総括結論として懸案の全法案の一日も早い参議院通過を念願いたしまして、私の公述を終わらしていただきたいと存じます。
  54. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ありがとうございました。     ―――――――――――――
  55. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 次に、新里公述人にお願いいたします。
  56. 新里恵二

    公述人(新里恵二君) 新里でございます。  私は、一九二八年に沖繩の那覇で生まれまして、一九四四年の四月まで沖繩で生活いたしておりました。その後、本土に在住しているわけですけれども、一九五五年ごろから沖繩の歴史の研究に手を染めまして、これまでに沖繩の歴史、民俗、文化といったようなことについて二冊の書物を出版しております。それからまた、沖繩問題について、そのつど自分の意見を論文にしたりあるいは口頭で発表してまいりました。かたわら、私は弁護士でもありますので、沖繩の問題を法律的な側面から検討する、研究するということをやってまいりました。たまたまことしの六月に那覇が市になってから五十年になる、那覇市制五十周年ということで那覇市からお招きを受けまして、私、二十七年ぶりに沖繩に帰ってまいりました。その後ことしの十二月五日から約一週間、これは同僚の弁護士十四名と主として沖繩基地問題、軍用地問題について調査のために参りまして、一行が帰りましてからも、私、三日ばかり残留いたしましたので、今月の十四日に沖繩から帰ってきたわけでございます。そういうわけでありますので、私、沖繩県出身者の一人として、それから沖繩の歴史、沖繩問題の研究者として、あるいは弁護士として、そういう立場から若干の意見を申し上げまして、御参考に供させていただきたいと思います。  それからもう一つ、私、きょうは、共産党の推薦で公述人ということで参っておりますけれども、共産党の政治的な主張をこの場で代弁するということよりも、むしろ、沖繩の県民百万が沖繩協定とその関連法案についてどういう不満を持っているのか、あるいはどういう点で疑問を持っているのかということを代弁するという基本的な立場で公述をさせていただきたい、かように考えております。  沖繩の県民の不満と不信を代弁するわけでありますから、あるいは言辞やや非礼にわたる、あるいはお耳に痛いことを申し上げることもあるかと存じますが、もしそのようなことがございましたら、戦後二十六年の間、異民族支配のもとで苦しんだ沖繩の県民の屈辱感と憤りということに思いをいたされまして、非礼の点についてはあらかじめ御寛容をお願いしたいと、かように考えております。  まず初めに、沖繩協定とその関連法案についての総括的な意見でございますけれども、一昨日でございましたか、この委員会審議をテレビで見ておりましたら、たまたま江崎防衛庁長官でありましたか、政府自民党が非常に困難な条件の中で今度の沖繩協定をかちとったのだ、その努力については一応評価していただきたい、こういう発言がございました。私は、それを聞いておりまして、一体これを沖繩の県民が聞いたらどういうふうに聞くのだろうかと考えました。と申しますのは、私の意見では、アメリカが曲がりなりにも、しぶしぶながらでも施政権の返還に同意せざるを得ないところまで追い詰めたのは一体だれなのか。これは決して私に言わせれば政府自民党ではございません。むしろ政府自民党は、これまで私どもが復帰運動を続けるにあたって、いつもいわば妨害者の役割りを果たしてきたというふうに私は考えております。  だれがそれでは沖繩をしぶしぶながらでも施政権の返還だけでもせざるを得ないところまで追い詰めたのか、これは明らかに沖繩県民百万が中心になって、そして本土の国民と呼応して戦ってきたからであります。  私、ことしの六月に沖繩に帰りまして、「カクテルパーティ」という作品で芥川賞を受賞した大城立裕さんと酒を飲みながら話をしたわけでございますけれども、そのときに大城立裕さんは「うっちゃりの力学」ということばを使っておりました。「うっちゃりの力学」というのは、私なりにふえんして申し上げますと、要するに、沖繩県民を含む日本国民が二十六年間の長い、苦しい戦いの中で、いわばアメリカ日本の支配層の沖繩政策というものを押しまくり、突きまくりしてきた。そこでどうしても土俵を割らなければいけなくなったアメリカ日本の支配層が徳俵に足がかかったところで、押してきたその力を逆用して、さか手にとって、それを安保体制あるいはサンフランシスコ体制の侵略的な再編強化に利用しようとした。それが今日いわれている沖繩返還ではなかろうか、こういうふうに私は考えております。  政府・自民党の方々はよく、沖繩協定に不満だというのだったら、それじゃ沖繩が帰らなくてもいいのか、こういうふうな設問のしかたをなさいます。しかしながら、私は、こういう二者択一、設問のしかたというものは全く欺瞞に満ちたものであると考えます。沖繩県民を含む日本国民の前にいま置かれている政治的な選択は何かといえば、日米共同声明と沖繩協定にに基づく返還か、それとも沖繩県民が真に望んでいる即時無条件全面返還か、この二者択一があるのであって、決して、現状維持か、それともこの協定に基づく返還かということではないと思います。  しばしば論をなす方々は、この沖繩協定が批准されなかったら、あるいは関連法案が通らなかったら沖繩が返されなくなるじゃないかというふうなことをおっしゃいます。しかしながら、歴史的な経過をごらんになるならば、アメリカの上院におけるロジャーズ証言を待つまでもなく、そのような前提自体が誤っているということは一目りょう然だと思います。  たとえば一九六七年の二月二十四日に教公二法の反対闘争というものがございました。一千名の警察官隊が立法院を取り巻いていたわけですけれども、約三万のデモ隊が警官隊を物理的にも支配し、制圧し、排除して教公二法をとうとう廃案に追い込んだわけです。また、一九六六年の一月以来、アメリカ沖繩で一坪の土地も新規接収することができないでおります。全軍労という労働組合は、御承知のように、布令でストライキを禁止されている組合です。にもかかわらず、数次にわたってストライキが敢行されております。こういうことは、一体何を意味するか。アメリカが現状のままでは沖繩を支配することができなくなっているということだと思います。そのためにこそ日本の独占資本に片棒をかついでもらって、日本の政府に片棒をかついでもらって基地の支配を安定させなければいけなくなった。そのことがいまの返還になってきているのだと私は考えます。  したがって、私は、率直に申し上げますけれども、どうぞこの協定あるいは関連法案を批准しない、廃案にしていただきたい。そうするならば、われわれは二年や三年と言わず、いまより一そうアメリカを苦境におとしいれて、われわれが希望するような返還をかちとることができる。少なくとも、今日のような返還ではない、今日のような屈辱的な、侵略的な返還協定ではない返還をかちとり得ると、かように確信を持って、沖繩の県民の二十六年間の長い苦しい戦いの経験を踏まえて、歴史家として申し上げることができる、かように考えております。  次に、関連法案でありますが、公共用地の暫定使用法案について意見を申し上げさせていただきたいと思います。  関連法案全部について、もし時間が許せば、私は、二時間でも三時間でも意見を申し上げたいわけですけれども、国会の慣例とかで時間的な制約があるそうですから、公共用地の暫定使用法案についてだけ申し上げます。  この公共用地の暫定使用法案というものは、われわれ法律家の常識から言いますと、全く憲法違反のかたまりのような法律であり、近代法の常識からすれば、考えることのできないような暴案であるというふうに考えております。御承知のように、沖繩における軍用地の問題は決して昨今に始まったわけではございません。もともと本土と比べての特色ということで申し上げますならば、一九四五年の六月二十三日に日本軍の組織的な抵抗が終わりました。そのときに、米軍は、沖繩じゅうのすべての土地を占拠したわけです。わずかに民間人が使用することを許されていたのは、北部にありました幾つかの捕虜収容所だけであります。金網で囲んで、そこに沖繩の県民を囲い込んだわけでございます。その金網以外のところは全部米軍が占領したわけであります。一九四六年の秋になりましてから、それぞれもとの市町村に帰ってもいいということで帰還を許されたわけですけれども、その場合にはすでに米軍土地を囲い込んでありまして、米軍に不必要なところは住民が住んでもいいという形で軍用地の取得が始まったわけです。このような軍用地の取得は明らかにヘーグ陸戦条約に違反するものであります。その後、朝鮮戦争が激化する中で新たな土地接収が行なわれるわけであります。たとえば、一九五二年だったかと思いますけれども、真和志村銘苅の武力接収、五三年十二月の小禄村具志部落の武力接収、五五年七月の宜野湾村伊佐浜部落の武力接収、そして伊江島の武力接収という形が続くわけです。そういう中で、米軍は何をしたか。たとえば具志部落の武力接収の場合でありますと、武装した米兵が出動してまいりまして、床尾板でもって農民をなぐる、ける、たたく、そして、たとえば伊佐浜の場合ですと、民家に火をつけて焼き払ってしまう、ブルドーザーでこわしてしまう。お墓をこわすものですから、人骨も出てくる。こういったいわば文明社会では考えられないような強奪、暴虐な行為を、そういういわば強盗行為をやってこの土地を確保してきたわけであります。もちろん、事後に布令その他を出しましてこの事態を合法化しましたけれども、これはいわば銃剣をもって制圧しながらの契約でありまして、決して自由な状態での契約ではないわけであります。暫定使用法案は、御承知のように、公示によって土地の使用権を取得するということをきめております。これは、私に言わしめるならば米軍のいま申し上げましたような暴虐行為を追認するものである、そして、布令による土地収用をいわば日本の国内法によって代用するものでしかない、こういうふうに考えます。かりに日本政府沖繩の県民に対して日米交渉のいきさつをすべて公開して、その上で、日本政府の力が足りなかったからどうしてもこういう協定しかできなかった、まことに申しわけないけれども、三万七千人の軍用地主方々米軍基地を提供してくれないだろうかと、これが私はおそらく日本政府のあるべき姿だろうと思います。ところが、そうはしないで、いま申し上げたように、日本の非力のためにどうしてもこういう協定しか結べなかったのだ、がまんしてくれないかとお願いをすると、こういう立場日本政府なり自民党がものをおっしゃるのでありますならばまだしも、沖繩の県民は、そうか、しかたがないというふうに考えたかもしれません。ところが政府は逆に居直って、あたかも自分たちの功績であるかのようにおっしゃる。佐藤首相に至っては、戦争で一ぺん失った領土を平和のうちに回復するのは世界史的な壮挙である、こういうことをおっしゃる。これは沖繩の県民がどうしても容認できない。  この暫定使用法案については、法律的にもさまざまな問題があります。憲法の各条項に違反する。たとえば、憲法九条、二十九条、三十一条、三十二条あるいは九十五条、各条項にそれぞれ違反するということは、すでに法律学者あるいは在野の法曹が指摘しておりますので、私は、これ以上繰り返しませんけれども、ただ申し上げておきたいことは、地積の確定すら十分にはできていないということであります。つまり、どこにあるどの土地を、だれの所有の土地を提供するのかということすらはっきりしていない。たとえば、私ども訴訟を起こしますときには、どこどこの何番地にある宅地何坪というふうに申します。そうしますと、登記簿謄本と公図がございますから、どの土地かということが特定できるわけです。ところが、この法案によりますと、要するに、たとえばイ、ロ、ハ、ニ、ヘ、トの点を結ぶ線というふうなことでおそらく公示がなされるはずであります。こういうふうな提供土地のきめ方でもし裁判所に訴訟を起こす、あるいは賃貸借契約を結ぶということになりますれば、裁判所は、当然、これでは物件の特定ができていないと、こういうふうに言うに違いないわけです。御承知のように、一九五一年に沖繩では地積の測量が行なわれました。これは戦争で公図や登記簿などの公簿が全部なくなってしまったからであります。しかしながら、当時の測定器具はきわめて幼稚でありましたし、測定技術も幼稚でありましたから、琉球政府に聞きましても、あるいはまた軍用地主連合会に聞きましても、現在の公簿、公図というのはきわめて不完全なものである、特に基地の中の測量立ち入りができなければどうにもならないくらい混乱しているんだということを申しております。また、沖繩では所有権喪失者というふうに言っておりますけれども、いわゆる公簿、公図漏れ、つまり一九五一年の地積測量のときに申請をしなかったために、あるいは申請ができなかったために、実際に土地を持っていながら地主としては登記されていないという方々もたくさんあります。そうしますと、この法案に基づく土地収用というものはどういうことになるかと申しますと、収用の客体すら特定しないままで行なおうとしている。これは賠償請求権の場合でも同じであります。つまり、日本政府が二十六年の間に沖繩の県民が受けたさまざまな損害、そういうものを全部調べ上げまして、そして、これは賠償請求できないもの、あるいはこれは賠償請求できるもの、あるいは賠償請求はできるけれども政治的な配慮から放棄するものということをきめたのではございません。何の調査もしないで、あらかじめ一括して賠償請求権を放棄するということをしているわけであります。それと同じように、米軍に提供する土地自衛隊に提供する土地、それがどこにあって、だれの所有であって、何坪あるのかと、こういうことも確定しないままでこういった法案を準備している。このことに対して、法律家として全く非常識きわまるということを申し上げるほかない。  日本弁護士連合会の調査報告が最近出ましたけれども、この中でもこの暫定期間が長期にわたる、あるいは五年にわたるというのであれば、それはもはや暫定ないし一時使用の域をこえて、不当に私権を侵害するものであるということを申しております。言うまでもなく、日本弁護士連合会――日弁連と私ども申しておりますけれども、日弁連は決して左翼的なあるいは革新的な立場の弁護士からだけなっているわけではございません。自民党の支持者もいますし、他の政党のそれぞれの支持者もいるわけで、あるいは無党派の人もいるわけです。その日弁連ですらが、法律家としての常識に立って考えるならば、このような法律はとうてい容認できない、われわれの法律的な常識から逸脱するものであると、こういうことを言っているわけです。論をなす人によりますと、この暫定使用法案は、法のもとの平等、憲法十四条に違反しないんだと、こういうふうに申しておりますけれども、しかしながら、それは、いわばあとからつけた理屈でありまして、むしろ先に米軍に対して何としてでも土地を提供しなきゃいけないという現実があって、それを合理化するためにさまざまな理屈をこねているんだとしか私には考えられないわけであります。  次に、自衛隊沖繩配備の問題について意見を申し上げます。  沖繩戦の中で、沖繩の県民はさまざまな被害を受けたわけでありますけれども、特に沖繩の県民がいまなお記憶して忘れていないことは、日本軍による残虐行為であります。たとえば壕に入っておりますと、日本軍がやってきて、われわれがこの壕を使用するから君たちは出ていけということで、壕から追い出す。あるいは壕の中に赤ちゃんを連れてきておりますと、赤ちゃんが泣き声をあげますので、その赤ん坊を軍人が殺してしまう。飢餓に瀕している民衆からその食糧を日本軍兵士が奪ってしまう。枚挙にいとまのないほどの事例があります。スパイの嫌疑を受けて虐殺された同胞もいます。沖繩戦の中で沖繩の県民がいまなお胸に刻んでおることは、帝国主義的な軍隊というものは決して民衆を守ってくれるものではないということです。具体的な知恵として言えば、日本軍の近くにいたほうが生命身体の危険が倍加するということです。だからこそ沖繩の県民は、ことしの六月に「琉球新報」の調査によりますと、四七%の人たち自衛隊の配備に反対しておるという調査結果が出ております。私は、沖繩県民の一人として、このような自衛隊の配備に対しては断じて反対したい、かように思っております。  最後に、私は、ごく最近出版されました「サンデー毎日」に、「琉球新報」の社長の池宮城秀意さんが書いておる論文の一節だけ読み上げて、皆さん方の御参考に供したいと思います。御承知のように、沖繩には「沖繩タイムス」と「琉球新報」というのが二つ現地紙として大きな新聞でございますけれども、その片一方の「琉球新報」の社長の池宮城秀意さんです。表題が「だまし続けた「お上」へのこの根強い不信感」というふうになっております。一節だけ読みますと、「国会での政府と議員との応答からすれば、そのようなことはないであろう、」――「そのようなこと」というのは、げたを預けて逃げ出すのじゃないかという不安感ということでありますけれども、――「そのようなことはないであろう、と考えるのが常識であろうが、日本の政治と政府が必ずしも信頼できないというのが、過去の事実であったことを国民は十分に知らされているから面倒である。ことに、長い歴史の中で痛めつけられてきた沖繩県民には「お上」というものへの信頼度がきわめて薄い。明治百年の時代に日本政府とその役人たち沖繩県民=沖繩人の信頼を裏切る数かずのことをしたということ。それが大東亜戦争一日米戦争――日本の敗戦から二十五年の間も脈々とつづいてきて今に至っているのである。それは沖繩に限ったことではない、といわれるかも知れないが、沖繩の場合、それが特別にひどかったということである。国会、その他の場での沖繩問題の「もつれ」の根源が、そのような「歴史的」でかつ「心理的」なところに発していることを知るべきである。」、こういうふうに言っております。またこういうふうにも池宮城さんはおっしゃっておる。「外国、あるいは、自国の政府の「都合」で、被害者になる可能性のある国民の合意なしに「ことを決める」ということは現代においてゆるさるべきではなかろう。沖繩国会での佐藤首相以下の政府答弁には、どこをとってみてもその場のがれの文句にしかなっていない。「どうせ、なってみればわかる。下手なことは言わないに限る」という政府の腹の底が見えすいている。「俺たちは三百余りの議席を持っているのだから、共闘野党がいくらじたばたしても、行きつくところは見えすいている」との態度は口にしないが、はっきりとあらわれている。」――こういうふうに「琉球新報」の社長の池宮城さんがおっしゃっております。これはおそらく沖繩県民の心であるに違いない。  先ほどから沖繩県民の心ということについて、立場を異にするさまざまな方から公述がございました。先輩である瀬長さんの意見も拝聴いたしました。しかしながら、自民党の推薦で基本的に賛成だとおっしゃっておる方でも、沖繩県出身者の発言の中には何かしら言外に……。沖繩の悲しみを訴えるような響きがあったことをお聞き取りいただけたのじゃなかろうかと私は考えております。  これで私の公述を終わります。
  57. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ありがとうございました。     ―――――――――――――
  58. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 次に、永田公述人にお願いいたします。
  59. 永田一郎

    公述人永田一郎君) 私は、行政法立場から、沖繩における公用地等暫定使用に関する法律案をまず妥当な、りっぱな法律案だと思って、賛成の立場をとりたいと思います。  四点について申し上げます。  第一点、自衛隊基地というものは、土地収用法三条の三十五種類の事業内容に入るかという問題、その三十一号によりますと、「国又は地方公共団体が設置する庁舎、工場、研究所、試験所その他直接その事務又は事業の用に供する施設」、この中に入ると思います。というのは、「事業の用に供する」ことのパブリックユースが自衛隊基地にはあると思います。それから、手続については、必ずしも土地収用法にすべてがよるものではない。たとえば都市計画法、住宅地区改良法、安保条約六条に基づく土地等の使用等の特別措置法での収用法の事業認定手続には必ずしもよっておりません。ですから、本法もその例によってきわめて妥当だと思います。それから、防衛庁演習場は三十一号に入るという昭和二十八年十一月十六日「建設総計二十八号」事務次官回答、これに私は賛成したいと思います。ですから、たとえば国の施設であっても、競輪場のような場合は三十一号には入らない、そのかわり自衛隊演習基地は入ると思います。  第二点、本法二条二項にいう本法施行前告示の必要、その問題について申したいと思います。その一として、復帰前は日本の施政権が沖繩に対しては欠除でございますから、いわゆるデュー・プロセス・オブ・ローというものはやれません。復帰前はアメリカの布令二十号で、地主との直接契約ないしは米軍手続による土地使用で一応解決済みのものと考えられます。たとえその点、デュー・プロセスが不十分でありましても、日本の責任ではございません。本法の使用とは、新たに使用するのではない、承継した施政権の範囲内の土地の使用地域そのままの受け継ぎでありまして、新基地を拡張するものではありませんので、こういう手続でまずよかろうと思います。過去のダメージについては、それでは不満の地主さんたちはどうするかというと、返還後もやはり布令二十号に照らしてアメリカに対する損害賠償請求をするほかはないと思います。つまり、日本は損害賠償の承継はありませんで、過去の瑕疵の違法の責任については、返還後といえどもアメリカが免責と言えない筋合いであろうと思います。日本は要するに、基地の使用権が完全に設定されたそのままの返還でありまして、設置上の原因の違法については処分時としてアメリカの解決義務があろうと考えられます。  さらに、二条二項の本文の告示ということは、これは非常にポイントでございまして、土地収用法の事業認定、土地細目の公告、通知相当のものと思われます。こういったことは、収用法の裁決によらずとも、復帰手続上、本法のままでまずデュー・プロセスとしてよかろうと思います。というのは、二条一項の本文によりますと、本法施行後「土地又は工作物について権原を取得するまでの間、使用することができる。」ということばがありまして、このことは、将来いわゆる日本側が正式の手続でもって地主との賃貸契約ないしは売買契約を結ぶことを極力努力する、そしてやむを得ないときには土地収用法によって公の必要上地主さんから土地を取り上げることができるということの確約があるのでございまして、復帰措置として手続上可であろうと考えられます。  それから、二条一項の一号ないし七号を見ますと、使用主が明示されていることもいい規定であると思います。つまり、自衛隊アメリカ軍、水道公社、電力公社、飛行場、電気通信設備、航路標識、道路敷地の七種に限定されまして、決してこれは軍事のための使用ではない。たとえば水道、電力のようにきわめて民間人にとっても必要な公益上のものをこの土地使用の暫定法に書いてありますので、軍事用のものばかりではございません。  それから、告示を本法施行前にやるということの意味は、きわめて、収用法十六条の事業の認定のデュー・プロセスとしてのいわゆるノーティス・アンド・ヒヤリングということについて照らしてみても、まず妥当と考えられます。もっともヒヤリングのほうは相当不十分であるのですが、これはやはり従来からの引き続き使用権を承継する立場上、ヒヤリングが不十分でもやむを得ないと思います。そもそも事業認定の性質について学説上、確認処分説と設権処分説があります。イタリア憲法四十三条などは、国がこういう公共的な土地その他の原始資源を当然持っているという考えが強うございますが、その憲法の条文のみにかかわらず、世界の憲法上そういうことは承認されておりまして、本質的に、収用権を中心に考えますと、確認処分説が正しいと思われる。ところが、設権処分説というのは収用の効果によって公にかわって公共のために土地を取り得るという意味でございますが、本法の場合は、つまり返還後のアメリカ軍土地使用状態のそのままの継続の使用でございますから、使用主がアメリカから日本にかわったという変更にすぎません。ですから、確認処分説的に考えてよかろうと思います。そして、収用法二十一条の土地管理者、関係行政機関の意見の聴取がありますし、土地収用法二十二条は専門的学識経験者の意見聴取、それから土地収用法二十三条の公聴会、二十四条の縦覧ということがございますが、本法はその点十分でございませんで、政令などでいろいろなこまかい、まかされる点が多少補完されるかもわかりませんが、やはり布令二十号によって使用された使用権の承継上、この土地収用法二十一条以下の詳細手続の省略もやむを得ないと私は考えます。  それからさらに、本法二条三項は、土地等の使用方法の所有者、関係人に対する通知義務であります。この条項は、まさしく収用法三十三条の土地所有者、関係人に対するいわゆる公告ないしは通知と同じ意味でございまして、ノーティス・アンド・ヒヤリングということは、さっき言ったとおり、ヒヤリングのほうは完全でございませんが、継続使用権なるがゆえに、これはやむを得ないものであって、これでよかろうと思います。  さて、本法の言うこの公布ということの効力いかん、これは官報によらずともよいかという問題ですが、これは最高裁三十二年十二月二十八日の判決、最高刑集十一巻十四号三四六一ページにありまして、法令の公布は官報で行なうのが通常であるが、国家がこれにかわる他の適当な方法で公布すればそれでもよいと、そういうものがありまして、本法の場合は本法施行前公示するわけでありまして、この附則によりまして公布日即施行日でございまして、特に二条でこの問題についてはそうなっておりまして、琉球政府に対する日本側からの通知義務がありますんですから、官報によらずとも琉球政府に対する通報で効力要件の手続として妥当であろうと考えられます。  さて第三点、本法の公布に行政処分性があるかどうか。ということは、これによって行政訴訟が起こせるか、権利侵害があるかどうか、救済が十分あるかというと、行政不服審査法における申し立てもできるし、出訴も可能であろうと思います。すなわち、行政訴訟の要件であるところの違法処分があるかどうか、具体的権利侵害があるかどうか、訴えの利益というものがあるかどうかということについて、地主さんたちはそういう諸要件を具備しているものと考えられます。  若干判例を見たいと思います。東京地裁四十年四月二十二日行政裁判例集十六巻四号七〇八ページ、健康保険療養費用算定方法改正告示、これは具体的な不利益を与えますから、いわゆる健保組合の出訴が可能でございます。第二の判例、東京地裁四十二年十二月十二日行政裁判例集十八巻十二号一五九二ページ、旧安保三条に基づく行政協定に伴う土地等使用等特別措置法五条による内閣総理大臣土地等の収用使用認定、これは出訴が積極でございます。本件は、総理大臣の認定内容が適正かつ合理的と、そういうふうな判決が出ております。同種の判決、東京高裁三十一年七月十八日行政裁判例集七巻七号一八八一ページ、東京地方裁判所三十八年九月十七日判決、行政裁判例集十四巻九号一五七五ページ、事業認定は土地細目公告後は権利侵害がありますんで、それでいわゆる権利侵害者は出訴が可能である。こういう判決例を見ましても、本公布について地主さんたちは出訴が可能でありますから、いわゆる権利侵害については十分な措置がとられていると考えられます。  しかしながら、反対の判例もございます。有名な奈良東大寺――文化観光税を取るという奈良県条例の公布そのものについては、処分ではないという判決例が大阪高裁四十一年八月五日行政裁判例集十七巻七、八合併号八九三ページにございます。  さて、訴訟の結果はどうなるか。私は、たぶん地主が負けると思います。  第一の理由、いわゆる統治行為論としまして、司法権がないというわけではないが、司法権がこういう国際関係の問題について、みずから制限するという論理が、この場合にも適用される余地があるのじゃないかと思われます。  第二は、行政事件訴訟法三十一条の事情判決によって、損害賠償に転嫁されて、原告が出訴しても敗訴になると思います。というのは、最高裁三十七年七月二十五日民集十二巻十二号の、いわゆる土地改良区の設置認可について違法の瑕疵がある。ところが、その後土地改良が進んだあとで、土地改良の処分によって不利益を受けたが土地改良区設置認可の瑕疵の違法につき訴訟請求をしたところが、土地改良事業というのが公益事業だから、相当程度進んだ場合は、事情判決によって、あえてその原告を勝訴とせずに、原告の請求を棄却するかわりに、違法宣言をして損害賠償で解決する、そういうことになって、地主さんは損害賠償は取れるかもしれませんが、やはり判決上勝ち得ないと思います。  それから、板付基地返還請求訴訟というのも、地主さんが負けています。これは最高裁四十年三月九日の判決でございまして、大体の理由は、いわゆる飛行基地のようなものは、既設設備の費用も、その他物資もばく大であって、明け渡し費用も多額に要します。そして比較考量上地主の権利侵害があっても、その請求をすることは権利乱用である、そういう最高裁の判決があります。三つの判決によって地主さんはたぶん訴訟しても負けると考えます。その判決に大体私は賛成したいと思います。  それから四番目、受忍限度というものが財産権にはあります。公共のために用いるということを日本の憲法その他世界の多くの自由主義憲法は認めます。というのは、財産権には受忍ということがありまして、それに限度があることは財産権の本質であって、その受忍限度を超過したものについてのみ、いわゆる損失補償が支払われます。有名な奈良県ため池条例の判決が三十八年六月二十六日、最高刑集十七巻五号五二一ページにございます。ため池、堤塘に竹木、建物等の設置行為が禁止され、それが無償収去されて、そうして、しかも罰則が伴っている。というのは、何人といえども財産権に関する公共の福祉のための受忍義務があって、本条例は二十九条二項、三項に反しないというのが最高裁の判決で、この判決にはだいぶ批判がございまして、私もあまり賛成しがたい点があるのでございますが、とにかく本条例が財産権の受忍義務を強調していることは当然でございます。ただ、本条例は正当補償なくして財産権の受忍限度内ならば無補償でかまわないというくらい現代の最高裁の態度並びにその他の学説でも財産権の公のために用いるという点については了承されております。したがって、本法の土地使用は受忍が当然である。しかも、補償が三条一項にありますので、なお十分な措置であって、特に損失補償の手続は、本法三条一項から五項まで土地収用法の手続によらしめていて、デュー・プロセスとして取り上げる場合よりも、使用の補償の点については手続としてりっぱであろうと考えられます。  さて、問題は、これは立法論としてこのドラフトには出ておりませんが、都市計画法五十六条などは大いに参考になると思います。というのは、都市計画法において都市計画区域が設定された場合、住民土地が値下がりされ、そして建築許可を願い出てもほとんど建築基準法によって不許可処分になることが多いわけなんです。ところが、そうすると、いわゆるヘビのなま殺しというのですか、そういう状態になりまして、中には土地の所有権者ないしは賃借権者として、それならば早く――都市計画というのが五年も六年も引っぱられたらつまらぬから、早く政府で買い上げてくれないか――従来それで困った場合は、新しい都市計画法五十六条で、その場合国家として買い取りの義務が載っております。こういう都市計画法五十六条のようなものが、いわゆる沖繩における公用地等暫定使用に関する法律案にこれが改正でもしも加わったら幸いと、私は思うわけです。  結論として、私はこの法律に賛成したいと思います。以上でございます。
  60. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ありがとうございました。  以上で、公述人各位の御意見の陳述は終わりました。     ―――――――――――――
  61. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。なお、質疑をされる方は、公述人方々に、所属会派、氏名をお述べ願って、質疑に入るようお願いいたします。
  62. 占部秀男

    ○占部秀男君 社会党の占部ですが、瀬長先生にちょっとお伺いしたいんですが、お話の中のドルの問題ですが、この前チェックしたやつのあと、つまりその後のドルについての補償の問題がはっきりしてない……。
  63. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  64. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記を起こして。
  65. 占部秀男

    ○占部秀男君 この前、チェックしたそれ以後のこのドルについて補償がないじゃないか、こういう点のお話がございましたが、おもにどういうような場合、そういうようにその後ドルが県民の手に渡った事情がわかりましたら、ちょっとお知らせを、簡単でいいですからお願いしたい。
  66. 瀬長良直

    公述人(瀬長良直君) それはつまり十月の九日に急に、急にですよ、琉球政府から手持ちのドルと、それから預貯金を調べるという布令が出まして、持っている人はみな銀行へ行ってドルにしるしをつけてもらって、どれだけ持っているという証明書をもらったのです。銀行に預金のある人はそれで手持ちのドルがわかったわけなんですよ。それはその証書があれば復帰後三百六十円、たとえばそのとき為替相場が三百八円であれば、五十二円だけは何かほかの方法で弁償するかもしれない、とにかく補償をするという証書を取りつけたから、その人たちはそれで安心なんですよ。ところが、その後沖繩の人もどんどん働くでしょう。働いたそのドルは申告してないから、幾ら働いてもこのドルは一ドル三百八円にしかならぬじゃないかという考えがあるわけです。それから同時に企業が持っておったドルは、それは何にも手をつけてないわけなんですよ。それはなぜそうなるかと申しますると、これを実は日本の政府は全部かえてやりたいという意向のあることは私は十分にわかりますけれども、いつ幾日かえるということをいえば、外国から多くのドルが入ってきて、沖繩の人を助けるよりも、そういう投機の人のふところを肥やすことになるので、それでそういう措置をとったのだと私は解釈しております。ですから、将来もこれはどういうふうに技術的に沖繩の人を助け、ほかの投機の人の利益を排除して沖繩を助けることについては、なお日本は検討して、適切なる措置をとるということを私は信じているわけであります。
  67. 占部秀男

    ○占部秀男君 ありがとうございました。よくわかりました。
  68. 瀬長良直

    公述人(瀬長良直君) それで、もう一つは、そのドルのために、私はさっき申し上げませんでしたけれども、一ドルが三百八円にでもなれば、その輸入品がうんと高くなっているのですよ。ところが、いま日本政府から三十億円、その物価抑制のための援助金がいってるのですよ。それは沖繩の物価を安くさせるために適切にそれを運用して使ってくれといっておるけれども、その三十億円が適切に使われないままに物価は騰貴をしておる。もう日用品のごときは二割、三割も。その物価騰貴というやつは実際の騰貴するはずの率よりもいつも高くなるのが普通の経済の状態です。ですから、それが沖繩住民を圧迫している。圧迫しているから沖繩住民は非常に収入はふえないで、物価が高いからその生活は苦しくなる。その生活を守るためには、まず早く返ることだということを私は申し上げているわけであります。
  69. 占部秀男

    ○占部秀男君 わかりました。どうもありがとうございます。  それから、永田先生にちょっとお伺いしたいのですが、施政権下の基地から新しい基地はふえてないのだ、したがって、先ほどの今度の法律はこれでいいじゃないかというお話だったと思うのですが、御案内のように、この前の  この前というより、現在の基地の法的根拠といえば、平和条約の第三条ですね、今度これが安保条約の六条にかわるわけですよ。したがって、安保条約六条には例の米軍基地収用についての法律があるのだから、何も新しい問題の多い、こういう法律をわざわざつくる必要はないじゃないか、それをそのまま適用すれば、それが一番まあ妥当な道じゃないかと、こう思うのですけれども、この点はいかがでございますか。
  70. 永田一郎

    公述人永田一郎君) 御質問の趣旨、私もそうとも思えるのでございますが、やはり先ほど他の公述人もおっしゃったようでございますが、たとえば地主なんかの状態、氏名も中にははっきりしない、海外の地主もいるようですし、それから土地の地目地積もはっきりしない点もあるし、それからその他、損失補償なんかについて三条あたりに相当詳しい規定もあるし、それからさらに土地法律についての公布について、具体的に今後とにかく権利義務というものを拘束するわけでございますから、そういう点については、やはり相当度の具体性を持ったこういう法律がないと、やはりこの条約そのものとか、そういうものからの権利侵害に対する訴訟ということが十分できにくいと考えますので、私は、こういう法律があったほうがよろしかろうと存ずる次第でございます。
  71. 占部秀男

    ○占部秀男君 ありがとうございました。
  72. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 梶谷公述人永田公述人にお伺いしますが、初めに梶谷先生にお伺いいたします。  先ほど、沖繩がこれから日中離間の道具といいますか、そういったものに供されるかもわからないと、こういうようなお話がございましたが、これは新たなる問題提起ではないかと私は思いますが、そういう可能性が見られるアメリカの高官の発言とか、あるいはアメリカの政策がそういうふうに沖繩というものを、返還後はそういうふうなものにしていこうという方向と見られる流れといいますか、そういう先生が結論に達せられた根拠となる点をもう少しお聞かせいただきたい、これが一つです。  それからもう一つは、沖繩の非軍事化のことを強調されましたが、これは私も大いに賛成でございますけれども、沖繩が返還された場合、安保条約の適用下に入るとしばしば政府も言っておりますし、まあ、おそらくそうなってしまうんではないかと思いますが、たとえば基地がなくなる、米軍基地がなくなる、あるいは自衛隊が配備されない、そういう事態が一まあ、いまの政府ならなかなかやれそうもありませんが、かりにそうなったとしても、安保条約というものが適用されておる限りは、その範囲内にあれば、ほんとうの意味での非軍事化にはならないのじゃないか。要するに、そのもとである安保条約そのものをなくしていかなければ、ほんとうの意味での非軍事化ということにはならないのではないか。で、安保条約が適用されておる中であっても、先生は、基地さえなくなっていけば、いろんな中国との間の緊張緩和というものに役立つという上で、米軍基地あるいは自衛隊基地がないほうがいいと、こうおっしゃっているのか、根本の安保条約からなくすという上での非軍事化ということなのか、この二点をお伺いいたします。
  73. 梶谷善久

    公述人(梶谷善久君) 沖繩が今後日中離間の道具に供されるのではないかという点でございますが、御承知のとおり、これまで日本アメリカ中国を押え込むという政策をとってまいりました。それが今度は、米中でもって日本を押え込む政策に変わるのではないかという懸念を申し上げたのであります。この際、アメリカの高官のことばを引用することはそう困難ではございませんけれども、私はそういう事態の進展を説明いたします場合に、アメリカの偉い人がこう言ったということはあまり効果がないと思うのです。それよりも、むしろ現実アメリカがいかなる政策をとっているか、その政策に基づいていかなる行動を起こしているかという点が重要かと考えます。今日、ニクソン大統領の中国接近政策といい、あるいは日本に最も衝撃を与えますドル防衛政策といい、さらに繊維交渉といい、円切り上げ問題といい、あるいは資本・貿易の自由化といい、すべて日本をむしろ牽制する、日本の政治、経済活動を押えるという方向にいっておることは申し上げるまでもありません。しかも、その一方におきましては、たとえば日本と同じ共同提案国になって、逆重要事項指定方式、あるいは二重代表制をもって中国の国連復帰をはばむがごときゼスチュアをとりながら、しかも、その間にキッシンジャー大統領補佐官を再び中国へ訪問させる、二月には大統領みずからが中国へ乗り込むというような形において、日本を全くないがしろと申しますか、頭越し中国との接近をはかっておる。こういう現実そのものが、米中でもって日本を阻害し、押えていくという状況を示しておると思うのであります。この分割し、支配するという政策に対しましては、団結して抵抗する以外にないのであります。私は、中国と団結するという言い方は少し言い過ぎであると思う。けさの朝日新聞の周恩来のことばの紹介の中にある団結ということばは言い過ぎかと思いますが、少なくとも中国とは敵対しない、中国とは離間しないという形でいく以外に日本の安全はないと考えるものであります。  次に、安保条約と沖繩の非軍事化の問題でありますが、私は、安保条約の中身は日本の安全を守る、アジアの平和を守るとなっておりますけれども、冷たい戦争の体制の中で、アメリカ軍の駐留を認める、アメリカの軍事基地日本に置くということが本質だと思っております。ですから、本土並びに沖繩におきまして、アメリカ軍がいなくなる、アメリカの軍事基地がなくなるということになれば、たとえ法制上は安保条約が残っておりましても、たとえば今日におけるSEATO――東南アジア条約機構と同じでありまして、それはすでに死文化したものと考えます。そうではなくして、本土あるいは沖繩アメリカ軍がおり、軍事基地があるということは、この安保条約というものが、日米安保のみならず、アメリカ韓国との間の米韓条約、アメリカ台湾との間の米華条約の結び目としての沖繩アジアにおける日米戦略体制の結節点としての沖繩を考えるものであります。したがって、御指摘いただきましたように、本土並びに沖繩米軍がおらず、軍事基地がなくなれば、たとえ法制上の安保条約はありましても、それは事実上空洞化し、死文化したものと考えます。私は現実にそのような状況が起こることを望んでおりますけれども、その前に政府・与党におかれましても、安保条約を再検討され、安保条約からの脱出の道を真剣に考えていただきたい、こう思うものであります。
  74. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 永田公述人に対して質問が抜けましたので……。  あとからまた、公用地についてはいろいろ議論が出るかと思いますが、一つだけ私がお伺いしたいのは、先ほど自衛隊のは公用地に入るということですが、いつも議論されております、かつて河野大臣から入らない、自衛隊は別だというふうな発言がございましたが、それはどう解しておられるのか。  それから、憲法違反ですね、非常に数多くの憲法違反を重ねておる公用地法といわれておりますが、それを一切憲法違反でないという見解をおとりになっておるのか、その辺を――二つお伺いしておきたい。
  75. 永田一郎

    公述人永田一郎君) 第一番の問題、第二番の御質問、関連性があると思うのでございますが、結局、根本は憲法九条において自衛隊がいわゆる違憲か合憲かというところに尽きると思いますが、これはまあ、政治的、法律的に両方考えられまして、法律的には、いろいろ政府側の答弁で、自衛権ということを根拠にいわゆる戦力ではないとか、いろいろな言い方で合憲論をとっている。私はやはり無理だと思うのですが、ただ、憲法論というのはただ法律論だけでは考えられない。たとえば有名なアメリカのニューディールなんかも、最初はずっと最高裁で違憲判決が出ていたまま、結局裁判官が交代して合憲になったようなわけなんでございますが、やはり自衛隊が違憲だということになると、この法案だけでなくて、その他いろんなものが全部ひっくり返っちゃうような状態になるので、私は法律学者で、こういうことを言うのは変ですが、政治的に見て、まあ自衛隊は合憲とせざるを得ない。あるいは安保条約も、したがって、その他いろいろな不備な点があったり、そういういろいろな問題――憲法が優先するか、条約が優先するか、いろいろな問題がありますが、時間の関係上そういう点を捨象いたしまして、一応私は賛成する立場に立てば、いまの先生の御質問について、自衛隊基地なんというもの――土地収用法三条の三十一号の趣旨は、やはりさっき私が申したとおり、競輪場とか、そういうような公共的でない、国のいわゆる営造物に入りますが、自治法の公の施設には入らないようなものは消極である。しかしながら、いわゆる自衛権があって、自衛隊が憲法上問題があるが一応合憲の範囲に入るとすれば、やはり直接その「事務」あるいは「事業」という中に入るという考えを私は持ちたいと思います。
  76. 岩間正男

    ○岩間正男君 三公述人にお伺いしたいと思います。  第一に、永田公述人にお伺いしますが、先ほどの陳述の中で、一番重要な問題だと思うのですが、本法の「使用」とは、新しく使用するものでない、いままで使用しておったものをこれは継続するんだから差しつかえないんだと、こういうような趣旨の御発言があったわけです。ところが、実際は、この点が沖繩返還の中で非常に重大な問題ではないでしょうか。つまり米軍が、これはまあ、戦後二十数年の長きにわたってここを実際は占領しておった。そして、アメリカのこれは極東戦略のもうほんとうに「かなめ石」として、しかもあらゆる核兵器をはじめとしまして、そういう戦略的な軍隊をここに置いておるわけですね。そうして、ここにもベトナム戦争になってから一体どういうことが起こっているか、こういう事態をひとつ考えてみたいと思うのです。あのソンミ虐殺事件というもの、これは世界のなまなましい記憶でありますから、これは御存じだと思います。特に最近マクナマラ報告によりまして、あのトンキン湾事件というのは、全く虚構の上につくられたアメリカの侵略の暴略であったということが明らかになったわけです。あげればたくさんありますけれども、これはあげないにしても、こういうためにつくられた一体米軍基地、そうして百万県民を犠牲にして軍事監獄的支配のもとに置かれてやってきた沖繩の百万県民は、もうがまんができないのでしょう。だから、これは無条件で返してほしいのだと、この叫びですよ。これは血の叫びですよ、平和の叫びですよ。こういう現実を無視して、そうしていまのような、何といいますか、ほんとうに形式的な暴論によってこの問題をやっていったらたいへんな事態になるのではないか。そういう点からこのような沖繩の心ということが先ほどから言われておりますが、これはほんとうに一体、こういう問題について触れる必要がないだろうか。これがやっぱり中心課題です。具体的に問題を論及しなければなりません。それを単なる、いままでのブルジョア的な法解釈によってこれをごまかしていくということは許されない問題ではないかと思います。  さらに、もう一つ反対したいのだが、しかし最後には、反対しても強制されるのだからまあしかたがない一ここで一応いままでの基地使用を認めようと。そうして実際は、これは現地の声を私たちこの夏行って調べました。地主連合会の話も聞きました。そういう中では、もうたくさんの農民たちが委任状を結局これは求められる、相当強制的にこれは求められている。そうしてその委任状を書くような会合が至るところで実際は行なわれた。そうして多数の人たちがこれに賛成する方向がとられていった。この背後には大きな策謀があったんだという実態も、これは忘れていないのであります。こう考えますと、結局は、当然これは強制的に最後には取られるのだから、それよりは補償を高くして、そうして何とかいままでのものを認めよう。こう考えるところにいわば持ち込まさせられたというふうに考えることができる。しかし、基本的な願いは何なのか。この県民の中に潜在しているそういう願いというのは何なのか。平和の願いというのはないのかどうか。こういう点について今日私は具体的な事実として触れざるを得ない。これがまず第一点です。これは永田公述人に、この点に対しまして明確な答弁をお願いしたい。  それから第二点は、新里公述人にお伺い申し上げますが……
  77. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  78. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記を起こして。
  79. 岩間正男

    ○岩間正男君 お願いしますが、第一に、ずいぶん詳細な公述がございましたから、私は重ねてお聞きしませんが、先ほど布令の法律化だと、こういうお話がございましたが、これは非常にやはり重要な問題になると思います。返還というものはどういうものか。この占領政策の継続かどうかということは、具体的にこの問題を追及するために必要だと思います。  第二点としましては、自衛隊に対する反対、県民の配備反対の世論が非常に盛んなんでありますね。これは現地に行ってみても、そういうことをはだをもって感じることができます。そして、そのためにはあの戦時中の、ことに県後の場面における旧軍隊の残虐ないろいろな体験もお話がございました。こういう体制の中において、いま配備される自衛隊というものは一体どうなのか。これはよく民生安定のためだとか、それからこれは民主的に組織された軍隊だとか、この議場でも答弁されております。しかし、もっとこれは悪い軍隊になるのではないか。ということは、日米共同作戦体制の中にある軍隊である。そうしてこの軍隊は現にいまこのアメリカ基地を守る、そのような任務を背負わされている。それだけでなくて、実はさらに新しいニクソン戦略による軍事複合体というような体制で実は米軍と共同作戦をとる。しかも、米軍の指揮下にこれが行なわれるという実態を、私たちは、たとえば松前・バーンズ協定一つの適用から考えましても、そういう性格というものを当委員会で追及してまいりました。はたして一体これはどういうふうに県民を守るところの組織なのかどうか、こういう点についてお尋ねしたいと思います。  第三点は、これは経済面でございますから、瀬長公述人にお願いしたいと思います。  振興開発のことが言われておるのでありますが、私たちこの法案審議するにあたって非常に重大な問題は、やはり公害の問題です。いま御承知のように、新全総の計画をさらに拡張してこのたびの計画が行なわれることは、これは明らかであります。ところが、新全総の規模でなくてさえも、従来の生産増強の計画でさえも、これは日本列島は、御承知のように公害列島、世界でも名だたる公害列島という不名誉な状態に落とされている。私は、昨年、八重山に参りました、宮古にも参りました。これは軍事公害は沖繩にある、この軍事公害はたいへんなことだ。しかし、これに産業公害を重ねることができるだろうか。これをやったら一体どうなるんだ。ところが、中城湾あるいは金武湾、こういうところに参りますというと、すでにもうガルフが進出を始めておる、エッソも入ろうとしている。東洋石油は中城湾にすでにもう拠点を設けている。石油、アルミ、このような重点産業が今後あそこに集中することによって、軍事公害だけでもうたくさんのところに、産業公害をまた重ねるのじゃないか。私は、また数年前に四日市へ行った。あの四日市のがまんのならない、そうしてもう小学生が注射を打たなければ学校に通えない、漁師たちが病院から注射を打って漁に出て行ってまた病院に戻ってくるという、こういう姿を一体沖繩に再び実現させることができるかどうか。これが今日この振興法案と対決して、私たちははっきり明らかにしていかなければならない問題だと考える。こういう問題について、一体この振興開発局を、先ほどお話がございましたが、どういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。また八重山に参りまして、裏山を回りました。そうするというと、ガジュマルの葉をゆらす風がある。しかし、そのうしろにはもう人の住んでいない廃屋がたくさんあるのです。これはキビとパインが買いたたかれているからじゃないですか。大体十年ほど前には一トン当たり二十八ドルぐらいの価格で買い上げられたキビが、現在では十五ドルぐらいの価格で買いたたかれている。こういう実態の中で、一体ほんとうに真の沖繩の復興というのがあり得るのか。こういう問題に対して、たとえば沖繩のこの生産をどうするかという課題、こういう問題についてどのようにお考えになっていらっしゃるのか、この点について経済人の瀬長公述人からお伺いしたいと思います。  以上、三人の公述人の方に私はまとめて御質問を申し上げます。よろしくお願いいたします。
  80. 永田一郎

    公述人永田一郎君) 私に対する質問についてお答えしたいと思います。  先生の御指摘のとおり、私はブルジョア法学的な立場の解釈かもしれませんでございますが、過去の布令二十号においてアメリカがいかにめちゃくちゃなことをやったかということは、先生の御例証を聞くまでもなく、私どもよく存じております。こういう問題については、私も、日本共産党の宮本さんの論文に賛成するところがあります。たとえば、中共に対しては最も日本共産党が日本の自主独立を主張されている論文などに、私は非常に敬服をしております。ですから、日本は、アメリカに対しても、中共に対しても、ソ連に対しても、きわめて政府が弱腰であるということは、私は、大いにその点だけは日本共産党の立場に同調したいと思います。ですから、このアメリカの布令二十号に対するむちゃくちゃなやり方については、沖繩県民として大いに今後日本復帰後もどんどんアメリカに対して請求すべき筋合いがあろうかと考えます。ただ、私は法律学者として、現在の時点において沖繩復帰促進するという立場に立つ以上は、この本法でいいということを法律論として申し上げた次第でございます。ですから、将来はこの本法に書いてあるとおり、正式の交渉において地主土地収用がいやならばそれを拒否する、土地収用法がいやならば、それに対して反対して、土地収用法改正運動などを起こされてやるよりほかしかたがないと思います。それから最後に、たとえば日本でやっている食糧管理法のような、ああいう選挙対策的な意味で妙に公金を乱費するような妥協的なやり方は、私はあまり賛成ではございませんが、沖繩の場合、やはりアメリカの責任を追及するといっても不可能ならば、日本アメリカの布令二十号に対する損失に対して沖繩地主さんその他の被害者に対して、何らかのアジャストメントとしての報償みたいなものを出すような措置で、過去の問題でございますから、そういう国家賠償とちょっと違うかもしれませんが、それと同じような趣旨で解決するか、それとも沖繩県民が日本頼むに足らずと、よく琉球処分ということを聞きますが、日本に対して独立運動を起こされたら一番いいんじゃないかと、私、個人の私見を持っております。
  81. 瀬長良直

    公述人(瀬長良直君) ちょっとただいまの御質問の前に、さっきドルの問題で重大なことを申し落としましたが、そのドル日本の円にかえられないもう一つの原因は、一体ドルというものは一国の象徴であって、ドル沖繩においてアメリカの施政権のシンボルになっておりますことから、それをアメリカのメンツにおいて、いま復帰前に自分の施政権下に円の流通を許すことはメンツに関することだということで、そこで日本政府としては、外交折衝によってそういうことを取りきめなければならないという困難さがあるということも、一つの原因であるということを申し添えておきます。  なお、いまの御質問は、ごもっともでありまして、私も、沖繩に企業を誘致するのに大きな公害があるということのおそれを十分に持っております。したがって、私たちは、沖繩に企業を誘致する際には、企業公害の少ない、人手をよけい要する、また水をあまり要しない、現在においては、そういうような企業を選定して誘致したらいいだろう。それでは具体的にどういうものかと申しますると、実は、現在沖繩が企業を誘致するといっても、企業を誘致するような環境ができていないんですよ。いろいろ話はあるけれども、沖繩現地へ行ってみて、その環境が、どうも行ってもメリットが少ないといって二の足を踏んでいるのが現状であります。たとえば松下電器のごときも出るといって沖繩も喜んだんだけれども、ちょっと足踏みをしている状態であります。電機のような事業であれば人手を要するし、あまり公害がないんです。同時に私は、公害とともに、沖繩の景色やりっぱな環境を害するような企業であってはいけないと、こう思っております。  それでは、どういうふうなことが考えられるかと申しますると、沖繩が東南アジアの経済の中継基地として知識産業も考えられるじゃないか、知識産業と申しまするのは、やっぱり一つの情報センターを持ってそういう知識産業を開発する、あるいはまた海洋博を開催する機会にですね、海洋開発の事業をここで一ぺん研究して、そういう開発の事業をやったらいいではないか。それから同時にそういう施設を応用して観光沖繩、東洋において東洋一の観光地にするということも、まあ公害のわりあいに少ない沖繩を復興させる唯一の事業ではないかというふうに考えております。現在あそこにガルフという石油の貯蔵所がありますよ、宮城島に。私は、それを行って見てきました。またそこからパイプが割れて油が流れて公害になったことも承知しておりますので、必ずしも、石油基地をですね、日本から行ってどんどんあそこにするということには、あんまり私は賛成いたしておりません。それはお説のとおりに、非常に研究して公害のないもの、また、公害が少しでもある事業であるならば、その公害を排除する用意と準備をして、そうして沖繩の人が納得した上で出るべきであるということを考えております。
  82. 新里恵二

    公述人(新里恵二君) 私、先ほどの公述の中で、公共用地の暫定使用法案については、これはアメリカ軍が布令でやったことを日本政府法律にかえてやろうとするものだという意味のことを申し上げましたけれども、この公共用地の暫定使用法案の第三条には、土地使用に伴う損害の補償について書いてある。権利者との協議ができないときには、土地収用法九十四条に定められている収用委員会による補償の裁決の申請ができるというふうに書いてあるわけですけれども、土地強制収用そのものを争う規定はないわけです。これはもう布令二十号と全く同じでありまして、布令二十号も補償の条件についてのみ琉球列島米国土地裁判所に訴願することを許すと、土地を政府が使用することの是非は、琉球列島米国土地裁判所に与えるものと解してはならないと、こういうふうになっておるわけです。ですから、布令二十号のかわりにといいますか、それを継続した形でこの公共用地の暫定使用法案というものが設定されている。基本の問題は、要するにアメリカ沖繩を二十六年間にわたって占領し、支配し、先ほど私が申し上げましたように、武力による土地強奪をやった。そのことをいまの時点であれは正しかったんだと、合法的だったのだというふうに認めるか、そうではなくて、あれは違法で不当だったのだ、だから沖繩の返還にあたってはすべて元に戻して、国際法上の原状回復の原則にのっとって元に戻すかどうか、それが私はやはり考え方の基本だというふうに考えます。  それから、自衛隊の配備の問題ですけれども、これは自衛隊がどこに配備されるのか、どこの基地米軍から受け継ぐかということを検討すれば一目瞭然でありまして、要するに、自衛隊沖繩の県民を守るために配備されるのではない。そうではなくて、米軍基地を守るために配備されるのだということは、どこに自衛隊が配備されるのかということを地図を広げて点検していけば一目瞭然だというふうに考えます。そうでないならば、六千八百名もの自衛隊を短期間に沖繩に駐留させるという理由はないというふうに私は考えております。  それから、先ほど、これはしばしば本委員会でも出る議論ですけれども、公共用地の暫定使用法案によって使用されるのは新規の接収ではないのだ、従来の継続だという意見が出るわけですけれども、そこが私は一番問題だと思うのです。つまり、従来の継続だということは、米軍のこれまでの布令に基づくあるいは強権に基づく政治というものをそのまま基本的に承認して、その状態復帰後も引き続き継続しようということですから、ここのところがやはり一番問題ではなかろうかというふうに考えております。
  83. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 遠藤公述人にお伺いしたいのですが、民生関係の医療制度に対しての最後に、希望御意見として承ったのですが、現在、本土でも、御承知のように、医師が不足して、無医村がたくさんあるということは、もう長年の懸案でございます。したがって、沖繩が現在の日本の現状の医療制度そのままの保険を適用するということになると、さらに沖繩では不足するから困る、こういう御意見かと私は思うのでありますが、しからば、その間の取り扱いは、現行沖繩でやっておる方法でやったほうがいい、あるいはまた、医師の確保ができてからですね、日本の制度を沖繩に実施したほうがいいんだと、こういうふうにお考えになるのか、そこらがちょっと私も不鮮明、私が聞き取れなかったのかもしれませんが、詳しくお伺いすればけっこうかと思っております。  なお、武藤武雄君にお願いしたいんですが、御承知のように、この中小企業の問題は、国内においても三月あるいは六月が一大危機で倒産も増大するんじゃないか、こういうことが言われております。特に昨日、沖繩の公聴会でも、現地公述人の話では、例年にない倒産も事実起こっておる。したがって、これに対する対策は何としても考えてもらわなくちゃいかぬ、いわゆる国民生活の均衡がとれない、中小企業等においては国民生活の均衡がとれない、これが世論として出てきた場合には問題が起こる。こういう意見がきのう出ておったんですが、一体、中小企業としての、国内でもそうでありますけれども、沖繩には特別の方法をやっぱり考えたほうがいいと私たちは考えておるんですが、何かお考えがあればお聞かせ願いたい、こういうふうに思うんです。
  84. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) どうぞ自席で願います。どうぞそのまま……。
  85. 遠藤朝英

    公述人(遠藤朝英君) 先ほど、沖繩の医療保険の問題で保護処置として、大体、私は二つの方法を御示唆申し上げたつもりでおります。その一つは、実際は沖繩には皆保険を施行するだけの基礎準備ができておりません。その体制もできていないように存じます。七十幾つかの島がありまして、有人島が約五十ございますけれども、この有人島の中で産業の自主確立、あるいは医療等の確保のできる島というのは、ほんの数えるきりないわけであります。あとは、かりに皆保険を施行なさいましても、保険料だけ払って医療がかかれないという実情にある島が多うございます。したがって、このような島が皆保険を施行することによって医療の恩恵に浴するという準備と体制化というのが、私はいまの段階では一番急務ではないかと存じます。正直に申し上げまして、沖繩医師会、歯科医師会、薬剤師会もこの点を重要視いたしまして、しばしば琉球政府へこれを要請してまいったんでございますけれども、いかんせん今日なおその準備ができておらない。で、復帰にあたりまして、いきなり医療保険を日本の制度のまんま導入したといたしますと、私は、沖繩におけるせっかくの医療レベル、これがうんとダウンするだろうと思います。なお、医師の確保がますますむずかしくなるということで申し上げたわけでございます。したがって、皆保険を受け入れる体制の整備とその基礎条件の準備が、どうしても必要ですので、それを完成し、あるいはその見通しのつくまでの保護処置といたしまして、もし、いまのものを少し延長できるんだったら、そうしていただきたいということと、それからどうしてもこれを皆保険の姿へ持っていくというならば、自由民主党が修正をして立法院を通過させました経営主体を県に置くという国民健康保険のスタート、これを医療団体とよく御相談の上でスタートしていただいたらいいんじゃないか、こう申し上げておる次第であります。その場合に、医師を確保し、医療内容のレベルを保持するためには、日本の医療保険の診療費にプラス・アルファが必要だ、こういう意見を申し上げたわけでございます。したがって、そこらの関連がちょっと私のことばが足りなかったかと存じますので、いま補足して申し上げた次第でございます。
  86. 武藤武雄

    公述人(武藤武雄君) 先ほどもちょっと触れましたけれども、特に日本の国内ですらも、ドルショックに伴う来年度の経済危機というようなものが、相当労使関係の面にも出てくるということは、いまから予想されておるわけでありまして、特に沖繩の場合には、本土自体が非常に大きな経済の転換期、国際経済競争にどうこれから勝って、打開していくかというような非常な困難な時期にまた復帰の準備が行なわれ、復帰がされるわけでありますから、したがいまして、特にドルそのもので生活をしてまいりました沖繩の県民、特に中小企業、それに働く労働者の諸君が非常な不安と、困難な経営の中にだんだんと追い込まれていくということは、もう火を見るよりも明らかであります。でありますから、国内法的に考えますと、いろいろ問題はあろうかと思いますけれども、いわゆる沖繩復帰の準備期間も含めて、これら中小企業を中心とする特別の金融制度、たとえば本土に従来やってまいりましたような近代化設備資金というのがありますけれども、これなぞはもう長期間無利子で融資を行なってまいりました。これはもう必ずしも沖繩の場合には設備近代化というふうな形に執着をいたしますと、それはその制度の効力が薄れてしまうと思いますので、とにかく大きな返還という変動期、あるいはドルというこの対策の中における二重の大きな転換期に、何らかの形で中小企業を救済するという特別な、そういう時限的な低利融資制度、あるいは場合によったら、近代化資金のような形における援助の融資制度というものが、この際真剣に考えられていいんではなかろうか。かつて特定の大企業に対して、無期限、無利息、無担保というようなああいう大幅な国庫の金を援助した近い経験もあるのでありますから、沖繩百万の県民のこの犠牲に対して、しかも非常に困難な状態に追い込まれつつある中小企業に対して、そういう大胆な制度を、この際本土として考えていくのは当然ではなかろうか、ぜひそれをひとつ国会の皆さん方において御検討を願いたい、こういうふうに考えます。
  87. 松井誠

    ○松井誠君 最初に、永田公述人にお尋ねをいたしたいと思います。いろいろ実はお尋ねをいたしたいことがあるんでありますが、何せ非常に早口でございまして、よく理解ができなかったものですから、まず正確に理解をするところから始めなきゃならぬと思いまして、最初にお尋ねをいたしたいのは、適正手続、デュー・プロセスの問題です。これは、先ほどのお話がよく理解できなかったのでありますが、返還前のアメリカの適正手続の瑕疵ということについては、われわれは責任はないんだ、しかし、そのあと適正手続の問題についていろいろおっしゃられたところを聞きますと、公用地収用に全然適正手続が要らないのだという趣旨ではなさそうなんですね。そこで、やはり施政権返還を機会に、日本政府は一種の公用収用でありますから、やはり適正手続というものは必要だ、そういう、まず前提はおありなのかどうか、そこからお尋ねをいたしたいと思います。
  88. 永田一郎

    公述人永田一郎君) どうも早口で申し上げまして、時間のことばかり気にしまして、この際謝罪したいと思います。  デュー・プロセスということについて、日本の憲法でいいますと三十一条の規定でおわかりだろうと思うのでございますが、返還前の瑕疵について日本政府としては責任がないが、アメリカの布令二十号については徹底的に県民皆さんが追及すべきであろうと思いまして、これはつまり題名からして「暫定使用」という、この返還に伴う佐藤総理のおことばにもあるとおり、いろいろ日本政府が、不満な方もあるでしょうが、それなりにずいぶん苦労されてここまでこぎつけたわけですから、多少政治的な論になりますが、一応完全かどうかは、私も十分言えません。少なくとも法律的には基地使用権というものが完全な形ということを一応想定したまんまの返還でございますから、これについては、過去のことは適正手続としてアメリカ軍に対して請求する。それから今後については、二条本文における、将来「土地又は工作物について権原を取得するまでの間、使用することができる。」ということは、将来、正式に地主との賃貸とか、売買契約によって地主さんが権利を主張し、そしてまた、それについてアメリカ軍ないしは自衛隊がどうしてもその土地の継続使用を望みたい、また、私もそうなると思いますが、そのときは土地収用法で当局はやると思うし、あるいは三里塚闘争みたいに、地主さん方は最後まで闘争したければ、やはりああいう形で争うと、そういうふうにこれはなろうかと想像するわけで、私は、適正手続が絶えず必要だろうと思う一人でございます。
  89. 松井誠

    ○松井誠君 そうしますと、日本の政府による使用権の設定、これについては適正手続というものが要る。そしてその適正手続のいわば具体的な内容としては、いま先生がおっしゃいましたように、通知とヒヤリング、聴聞ですか、というものが要る。そういう前提でのお話だろうと思うんですね。そこで、われわれも、三十一条あるいは適正手続との関係一つの問題点にしておるんでありますけれども、なぜわれわれがそれを問題にするかという一つの理由は、この使用権の設定そのものは、御存じのように、施政権が返還をされなければできない。しかし、施政権返還と同時に、そういう手続を始めておったのでは空白が生ずる。この法律は、御承知のように、告示というものだけを先行さしておるわけですね。これを先行さしておる告示というものは、しかし、日本にまだ施政権が返ってこない、そういう段階での日本政府の行政行為でありますから、したがって、それが日本の憲法が要求をする適正手続というものに一体なり得るんだろうかどうなのだろうかということに基本的な疑問を持つわけです。そういう観点からのお尋ねなんです。  そこで、先ほど先生のお話でたぶん二条の三項の通知の話だったと思いますけれども、通知があって、これは通知があるから適正手続だというような趣旨がございましたけれども、これはまあ御承知のように、使用権が設定されたあとの通知ですね。ですから、事前救済としての通知とは全然違う。事前救済としての通知という効力を、一体、告示というものは持ち得るのであろうかどうだろうか、この点をまずお伺いいたしたい。
  90. 永田一郎

    公述人永田一郎君) その点で、私も、いまの先生のおっしゃったとおり、暫定法のこの返還時について空白を防止するというような意味を十分申し上げなかった点は、おわびしたいと思うんですが、そういうことを含めまして、先ほどもちょっと申したとおり、将来、正式の地主とのちゃんとした契約とか、そういうことに期待して、そして返還時については多少不十分であっても、私が例もあげたとおり、たとえば日本のほかの法律においても、都市計画法や住宅地区改良法、これは相当権利を侵害するんで、たとえば東京都内なんかにおいても、都市計画を設定して十年ぐらいほったらかして、実際地価は相当下落して、しかも、建築基準法の建築の確認処分を願い出れば、これはこういう建物はいかぬ、ああいう建物はいかぬといって、だから実際坪十万円の土地であっても、それが四万か五万ぐらいにしかならない場合がずいぶんある。そういう意味で、時価よりずっと下回るような取り扱いを受ける例は、国内法でもずいぶんございまして、それで最後に申したとおり、都市計画法の新しい去年できた五十六条は、そういうときは所有者の申し出によって国に買い取り義務がある、そういう規定を参考までに申しましたとおり、そういう日本の国内法においても、都市計画決定すぐ即日施行というわけにいかない場合があるくらい、いわゆる財産権の受忍の例を私は奈良県溜池条例の例で申したとおり、最高裁もある程度認めております。ですから、そういう沖繩の過去の地主の場合、ずいぶんひどい目にあったから国内の土地所有権とはわけが違うんだという、そういうことを言われれば、これはまたちょっと話が別になりますが、法律論としては、相当財産権の受忍という点を考えまして、それから収用法二十一条から二十四条までのような手続が十分出ていない点も、暫定法というものは、空白状態を、先生のおっしゃった防ぐという意味で、これはやむを得ないもの、そういうふうに私考えております。
  91. 松井誠

    ○松井誠君 時間があまりありませんし、私お尋ねしたいことがたくさんございますので、ひとつお答えをできるだけ簡単にいただきたいと思うんです。  いま受忍ということばがございました。いわば、耐え忍ぶということですね。受忍という問題にしても、しかし、告示がどうして受忍を強要することになるんだろうか、施政権が返ってきていない段階で。逆に言えば、施政権が返ってきてない段階で、告示で受忍を一体強要することができるというような立場日本政府はあるのだろうか。私は繰り返して申し上げますけれども、この告示というのは、事前の通知という意味を持ち得るためには、つまり、告示で御本人たちに通知ができる、御本人たちが了知ができる、そういう法律的な可能性というものが前提になければならないわけでしょう。しかし、そういう人たちはほとんど沖繩に住んでいる。それに対して、これはもう通知という法律的な効力が生ずるはずなんです、通知という法律的な効力というよりも、つまり適正手続を満たすような、そういう通知になり得るのだ、そういう日本の憲法上の、いわば要件を満たすようなことを、沖繩におる人たちに一体できるのだろうかという疑問なんです。これから、あと、新里公述人にも同じ問題を、永田公述人の御答弁といいますか、お答えに対する批判の意味も含めて、お尋ねをしたいと思いますので、ひとつお聞きをいただきたいと思うのです。  繰り返しますけれども、告示というのは、そういう事前手続としての通知というものの意味を持ち得るのか、いま言ったように、沖繩という、そういう特殊の関係で、使用権設定という、そういうものがない、この法律のまだ施行されてないという段階で。こういうことがまず一点なんです。
  92. 永田一郎

    公述人永田一郎君) その問題について、私もさっき申したとおり、告示、いわゆるノーティス、それから特にあとのヒヤリングというものが大体英米法の判例上、いま申した三十一条の適正手続の要件になっているようでございまして、そうして、先生ははっきりおっしゃいませんが、この布令二十号でインチキな取り方をずいぶんしているということを十分お含みの上の御質問だろうと思うのでございますが、そういう点は、私、やはり暫定措置ということと、それから返還時の空白を避けるとか、それから、アメリカは実力的に相当強力国でございますから、そういうことを日本が国家として相当がまんしなければならないとか、そういうものを十分前提とした上で、相当不完全なものがあっても、やはりある程度将来正式な地主との契約をやれるということ、あるいは土地収用法で取ってもいかぬというような、そういう意味があれば別ですが、一応そういうことがないと思えば、やはりこの場合はこれでやむを得ないものではないか。たとえば、自衛隊ことばかりを思うと、いかにも軍国主義的な意味を考えますが、水道や電力なども、やはり民需として公益上の意味もございますから、そういうことなども考え、あるいはその他先ほど申しました都市計画法などのことを考えて、ですから、沖繩が従来ひどい目にあったということを前提とすれば、私の申し上げることは不十分かもしれませんが、そういうことをやはりアメリカに追及するというような、そういう点を私は特に強調しまして、法律論としては、私は、やはりそれで一応適正手続が、やむを得ないが、しかたがない、そういうふうに考えております。
  93. 松井誠

    ○松井誠君 新里公述人には、このあとで、いまの問題についてお尋ねをしたいと思いますが、私のお尋ねとずいぶん食い違うもんですから……。具体的に申し上げますと、たとえば、先生は、この告示というのは、それに対して行政訴訟の対象になり得る、あるいは不服審査の対象になり得る、それはなぜかといえば、この告示が権利侵害をしているからだ、こういう意味でおっしゃった。いろいろな例をあげましたけれども、その中の一つに、土地収用法による、いわば細目の公告、こういうものが行政訴訟の対象になり得るのと同じに、この告示も行政訴訟の対象になり得る、こういうお話がございました。しかし、告示は、収用のときの公告の細目と違って――収用の細目の公告というのは、それによって土地の現状の変更を禁止をするという、現実に権利侵害という状態が出てくる。しかし、この告示というのは、御承知のように、施政権返還までは、具体的に目に見える形での権利侵害というものは何もない。それで一体行政訴訟がどうしてできるのだろう。つまり、そういう意味で施政権が返ってこない段階でのこの告示というものの特異な性格、そういうものをお認めになった上でのどうも議論ではなさそうに思うものですから、その点を、つまり、私が先ほどから施政権返還前の告示というものの性格を問題にしているのは、たとえばそういうところに出てくるわけです。そのことは、永田公述人と新里公述人とにお願いしたいと思います。
  94. 永田一郎

    公述人永田一郎君) 私の言い方が、どうも時間ばかり気にして不十分だったんでございますが、現在の行政事件訴訟法は、事実行為についても出訴できますんです。ですから、この本法公布ということについて、附則において、これを琉球政府に対して日本が通知する義務がございますから、官報というものが、たとえ沖繩に対して、いわゆる本法施行前は行き渡らなくとも、琉球政府に対する通報でもって、琉球政府としてその地主の皆さんに何らかの形でその通知なり公布が行き渡ると考えられます。そういう点において、この事実行為が――事実行為といっても、警察官にぶんなぐられたのは、これは事実行為がその場で終わりますから、国家賠償でやるほかしかたがございませんが、土地アメリカの布令二十号で違法、不当に瑕疵を持って占有されている状態が継続するという事実行為をこの公布によって知った地主は、それをやはり事実行為の権利侵害として出訴できると私は考えます。
  95. 新里恵二

    公述人(新里恵二君) 憲法三十一条の適正手続のことが話題になっておるわけですけれども、憲法三十一条が規定している法定手続の場合には、単に告知だけではだめなんでありまして、告知、聴聞、防御の機会というふうに普通にはいわれております。つまり、権利侵害をするほうが、こういう処分をするぞということを通知する、そうしますと、権利侵害を受けるほうが不平不満を言う機会を与える、あるいは防御の機会を与える、こういう機会が与えられなきゃいけないというのがデュー・プロセスだと私は思います。そういう意味では、聴聞、防御の機会が全然ない。つまり、接収される軍用地地主が、私の土地米軍に、もしくは自衛隊に使用されるよりも、たとえば都市計画なら都市計画に従ってこういうふうに使用したい、あるいは、周辺が宅地化しているから私はこれを返してもらって宅地として使用したいといったふうな弁解、防御の機会を与えて、そしてその上で、なおかつ国家的な利益のほうが優先するという判断を、何らかの公平な第三者機関でやって、その上で収用が行なわれるというのが、おそらく法定手続というものだろうと思います。  それから、告示の先行ということに関連して申し上げますと、この行政訴訟ができるかどうかということについて言いますと、私どもは、当初、行政訴訟はできない、というのは行政処分がないからだというふうに考えておりましたけれども、衆議院審議の段階で、政府側の答弁で、いや、抗告訴訟もできるんだと、こういうふうなことが言われているわけです。そういたしますと、告示というやつは、一体だれを名あて人としているのかということが、まず問題になるわけです。通常、行政処分の場合ですと、名あて人がはっきりしているわけですけれども、この場合は名あて人がはっきりしていない、ばく然とした軍用地主と、こういうことになっているわけです。それからまた、いま問題になりました、琉球政府に通知をすると、琉球政府は何らかの周知の機会を与えるだろうということになっておるわけですけれども、一体、個々の軍用地主は、かりに行政訴訟を起こすとすると、権利侵害があったということを立証するためには、告示にある、おそらく図面かなにかで、地図の上で、この部分は米軍基地に使う、この部分は自衛隊基地に使うということをやるわけでしょうけれども、その図面の上での区域の中に自分の土地が存在するんだということをみずから立証しなきゃいけないのかどうかという問題も出てくるかと思います。  それから、土地収用法の問題が出ましたけれども、これはもう、衆議院以来、たびたび議論されていることで、現行の土地収用法が一九五一年に改正されましたときに――旧土地収用法には、たとえば天皇の陵墓でありますとか、そういうもののために土地収用ができる、あるいは軍用地のために土地収用ができるというのがあったわけですけれども、これを一九五一年の改正のときに削除したわけです。そのときの政府委員の説明の中では、こういう条項を設けることは新憲法の精神に違反する、つまり、天皇が君主じゃなくて象徴になった場合に、天皇の陵墓のために土地収用するということはどうも新憲法の精神に反する、憲法九条との関連で、軍用地のために土地収用を許すのはよくないということで削ったわけでありますから、本来、土地収用法によっては自衛隊のための用地の取得はできないはずだというふうに私は考えております。  それから、もう一つ、今度の公共用地の暫定使用法案は、米軍土地だけじゃなくて、自衛隊土地強制収用できるというふうになっているのが一つの特徴ですけれども、周知のように、本土では自衛隊のための土地収用土地収用法が使われた例はないわけです。これは、現に、たとえば茨城県の百里の場合でありましても、あるいは北海道の長沼の場合でありましても、あるいはまた、地位協定に基づいて実際には自衛隊が使っている北富士演習場にいたしましても、土地収用法の発動はないわけです。ところが、沖繩に限って、いわば潜脱工作のような形で自衛隊のための用地を取得するというふうになっているわけですから、これは明らかに法律的に問題があるというふうに私どもは考えております。
  96. 松井誠

    ○松井誠君 告示には、あて名がございませんけれども、一般処分も、この個々の権利に直接関係するというような場合には行政訴訟の対象になり得るわけですから、それは必ずしも問題にはならぬかもしれないと思うのですが、永田公述人に、これは繰り返しになって恐縮でありますけれども、確かに事実行為でもこれは行政訴訟の対象になり得る、そういう考えはありますし、そのことを私はいま問題にしようとは思いません。しかし、政府は、この告示というのは、いわば準法律行為的な行政行為なんだという説明をされておるわけです。しかし、それじゃどういう法律上の効果がある行政行為かというと、いろいろありますけれども、そのことは私はいま省略しまして、かりに事実行為でもけっこうです。事実行為でもけっこうですが、この告示が具体的にそれじゃ権利侵害というものを引き起こすのかどうか。行政訴訟の対象になり得るような権利侵害というものを告示の段階で引き起こすのかどうか、起こすとすれば一体どういう具体的な権利の侵害というのがあり得るのか、何を一体権利の侵害と見られるのか、そのことはどうなんですか。
  97. 永田一郎

    公述人永田一郎君) いまの先生のお話のとおり、事実行為に対する訴訟については、これは明文上もありますし、やれるということを御質問者の先生も御承知のようでございますけれども、大体、事実行為の違法の発生時というのはきわめて不明確なんで、これも学説が分かれておりますが、とにかく、現状として事実行為がある場合、つまり、これは訴訟が、処分のあることを知った日から三カ月という、知った日との関連で出訴期間を失って、訴訟しても却下されるおそれがある。ですから、事実行為の出訴というのは非常にむずかしいのでございますが、本件に対して言えば、やはり――先生が施行前の告示ということを非常に疑問視されています。やはり、告示のことを知った日から、つまり、琉球政府を経由して知った日から事実行為の起算点が始まる、それから三カ月とか。そういうところにおいて、警察官にぶんなぐられた場合と違って、事実行為が継続状態でございますから、しかも、行政事件訴訟法九条カッコ書きを含めて、原告適格並びに訴えの利益を非常に広く解しておりますから、そういうふうな意味で、訴訟をやる上に告示ということがきわめて重要な役割りを果たすと私思いますし、それから、権利侵害の地主さん関係がどういう立証をするかということは、これは立証責任の分担論として訴訟法上もいろいろ意見が分かれてますが、こういう場合に、先ほどの公述人の諸先生の御発言もあったとおり、沖繩の場合は非常に特殊な問題で、たとえば、従来の登記簿なんかがなくなっているとか、その他、アメリカ軍が布令でもって、インチキにいろいろ取り上げちゃったなんというので、地主の立証責任が多少困難でありますが、そういうところは裁判上のいろいろの準備書面なんかにおいて、相当地主さん側として立証困難な事情を述べれば、そういったことはやはり裁判官としての判決上の、いろいろ裁量上のしんしゃくが及ぶと思うので、そういう問題についての不利益などはカバーされるのではないかと私は期待しております。
  98. 松井誠

    ○松井誠君 実は、私がお尋ねをしたのは、事実行為かどうかということよりも、権利侵害という、何かそういうものがなければ訴訟は起こせないわけで、告示というものは具体的にどういう権利侵害を起こしておるんだろうかということをお尋ねしたんですから、そのことだけでけっこうです。
  99. 永田一郎

    公述人永田一郎君) 事実行為が継続していることが告示によって――つまり、一応沖繩が返還されます、つまり、従来の使用主がアメリカ軍から日本に変わるという、その使用主が変わったということの通知が、新たに何らかの意味で訴訟上の起算時とか、そういうことにおいて先生が非常に気にされておりますのは、私はあるんじゃないかと思うのでございますが、どうもちょっと御期待に沿いかねて恐縮でございます。
  100. 松井誠

    ○松井誠君 もう先生十分この法律をお読みになっておいでいただいたと思うんですが、告示というのは施政権返還前に行なわれるわけですね。そして使用権の設定というのは施政権返還と同時に行なわれる。ですから、使用権の設定という意味での権利侵害は、告示の段階ではないわけです。ですから、何を権利侵害と言われるのかということをお尋ねをしているわけです。おわかりでしょうか。行政訴訟をやれるとすれば。そのことです。
  101. 永田一郎

    公述人永田一郎君) どうも私の申し上げ方が不十分で、先生の御趣旨に沿いかねるかもわかりませんが、たとえば、測量違いなんかで都道が私道を、私宅なんかの土地を侵害しているという場合も、やっぱり権利侵害は何かというと、気がついたときとか、何かそういう自分の意思として権利侵害――たとえばこれが権利侵害だったということに気がついたか気がつかないかという、きわめて心理的、意識的なものだろうと考えるんです。ですから、やっぱりこの場合は、それじゃ従来の場合、気がつかないかというと、従来も気がついていたけど布令二十号でどうにもしょうがない。それで、今度は本土復帰によって日本の新しい暫定法ができるので、その暫定法に伴う――もちろん先生の御指摘のとおり、施行前の場合ですが、前ということも、事前にあるからこそ、その間その事実行為の権利侵害の状態ということが今後も継続するぞということを、琉球政府を経由して通知してくるということにおいて、法律的に知ったものとして考えられると私は思うんですが。それでどうも不十分でしたら、ちょっと何とも言えませんが。
  102. 松井誠

    ○松井誠君 法廷じゃありませんから、私もそうあまり詳しくお尋ねをしたいとは思いませんけれども、そうすると、いまちょっと言われたのは――事実行為によって権利侵害が起きるか、行政行為によって権利侵害が起きるかという、そのことを問題にしているんじゃなくて、権利侵害の事実ということは一体何なのかということをお尋ねをしているわけですが、そうすると、いまの永田先生のお話をちょっと聞きますと、何か、施政権返還前にアメリカによる権利侵害があった、その権利侵害のずっと継続だから、日本政府の告示という段階でこれは権利侵害ととらえてもいいんだと、そういう趣旨ですか。
  103. 永田一郎

    公述人永田一郎君) そういう趣旨ですかと言われると、あれでありますけれども、つまり、権利侵害状態を、布告の段階では、その布告が効力が継続してあって、それが返還に伴って、返還前の告示によって、新たに今度は日本の司法権によって争い得るという意味での権利侵害の状態を知ったと、そういうふうに私は考えたいと思います。私も間違っているかもわかりませんが。
  104. 松井誠

    ○松井誠君 告示というのは――それは知ったということも起算点になるかもしれませんけれども、私は、起算点がどこかということをお聞きしているわけではなくて、権利侵害という事実が告示によって起きると言うものだから、新たな権利侵害があるというように常識的には思うわけです。しかし、どうもその辺がはっきりしませんが、これはもう別に政府に対してものを言うんじゃありませんから、それでけっこうです。  で、もう一つ、われわれが憲法の問題でこの問題をやっぱり非常に重要視をしているのは、先ほどもちょっと言われましたけれども、二十九条三項の問題なんです。それで、その前の、施政権返還前の違法か不法かというようなことは、われわれ施政権を引き継ぐほうの日本政府としては関係がないんだという話がありましたけれども、私はやっぱりそこのところが、この二十九条三項を考えるときの一番重大な問題に実はなるんじゃないかと思うんですよ。二十九条三項でわれわれが何を問題にするかといえば、一つは、先ほど来お話が出ておりますように、自衛隊あるいは米軍基地も含めて、これは一体「公共の」ということになるだろうかどうだろうかという問題が一つあります。しかし、これはもう議論が双方、問題点がはっきりしていますから、それはもういま言いませんけれども、かりにそれが「公共の」ということになって、この自衛隊なら自衛隊もそういう意味収用が、自衛隊のために収用ができるんだという前提でかりにあっても、土地のほうの公用収用の基準の原則は何かといえば、土地収用法からもうずっと書いてあるように、「適正且つ合理的」でなきゃならぬということが書いてある。その「適正且つ合理的」という基準をこの法律の仕組みそのものは初めから頭に入れてないじゃないかということが、私たちが二十九条三項違反だと考える最大の理由なんです。  そこで、先ほど先生が一番最初に言われました問題に戻るんですけれども、施政権返還前にアメリカが何をやったかというようなことはわれわれに関係がないというふうに言われました。しかし、施政権返還前の土地の取り上げがいかにひどいものであったかということは、先ほど新里公述人がよく言われた。そういうものをそのまま引き継いで、それが「適正且つ合理的」だと、日本法律、法制のワクの中で、土地収用というものの基準、「適正且つ合理的」な基準に合っているというように一体どうして見られるかということが一つです。その場合には、その施政権返還前の問題は一切抜きにして、どんな形であろうと、とにかく、いままで使っておったのだから、「適正且つ合理的」であると見なきゃならぬというような言い分をするのは、実は政府の言い分なんです。そういうことでいいんですか。
  105. 永田一郎

    公述人永田一郎君) いま先生の御指摘の問題は非常に重要な、占領七年間の日本の国内法でいいますと、きわめて大きな問題に関連していると思うのですが、これは、私の考えでございますが、農地解放なども違憲だと思います。それですから、ああいうものは日本の裁判権がないと思うのにかかわらず最高裁は判決しているわけでございますが、そういう占領中の強制によってやったものが、どういうふうな権利侵害であるかどうか。ですから、暫定法で、とりあえず、ここでとにかく受け継いで、そしてその後、あと日本政府側が被告になり地主さんたちが原告になって――くどいようですが、二条一項の本文にある「土地又は工作物について権原を取得するまでの間、使用することができる。」ということの反対解釈をして、将来、正式に、地主さん対日本政府との、いろいろの管轄大臣との折衝なり、そういうことで解決する。過去の占領中の問題というのは、これは沖繩は、ずいぶん長いのでございますけれども、やっぱり布令二十号については十分改めてくれないかもわかりませんが、そういう問題については、何か別個の法律でもって、土地収用だけではなくて、日本の問題を離れての、占領中の沖繩だけについての米国軍から受けたあらゆる損失補償、これは事後補償みたいなかっこうなんですが、総合的に、何か特別立法で解決するという、そういう立法政策の問題なら別として、現在出ているドラフト関係では、ちょっと私何とも言いかねる問題じゃないかと思います。
  106. 松井誠

    ○松井誠君 それじゃ、具体的なお尋ねをいたしますけれども、さっきもちょっと言いましたが、土地の公用収用の基準というのに「適正且つ合理的」だというのは、日本土地収用の場合の基準ですね。その基準というのはお認めになった上での話だと思いますが、そういう基準をお認めになって、さて、アメリカ軍基地をそのまま日本が引き継ぐときには、日本政府としては「適正且つ合理的」であるかどうかというフィルターにかけるチャンスが全然ない、チェックをするチャンスが全然ない。それなのに、日本の法制のワクの中で「適正且つ合理的」だという、この基準に合っておるというお考えにもしなるとすれば、一体どういう理由であろうかということです。
  107. 永田一郎

    公述人永田一郎君) ですから、私の考えでは、あくまで暫定的だというところに重点を置きまして、先ほども、私の不十分な話で恐縮でございますが、とにかく、ヒヤリングなどについてもきわめて不十分であるし、それから土地収用法のいろいろな条文などの点も非常に省略してあるし、そういう点はきわめて遺憾な点が多い。それから日本の国内において、新たに――たとえばアメリカ軍土地を取る場合は、安保条約六条に基づく土地使用等の特別措置法には、やはり判例や何か条文でも、先生のおっしゃった「適正且つ合理的」ということが出ておりますのですから、そういう点では、新たに日本の国内においてすらそういうことがいわれる。それで、沖繩の場合は、これが布令二十号でインチキな取り方をうんとしている例があるということは私も知っておりますが、そういう場合、とにかく、沖繩が返るということにおいて、やっぱり比較考量上、暫定措置としてやむを得ないと、そういうことを申し上げるほかしかたがないと思うのです。
  108. 松井誠

    ○松井誠君 やむを得ないというこの法律的な意味はよくわかりませんけれども、たとえば、こういう場合には、「適正且つ合理的」という基準は要らないんだという趣旨なのか、あるいは「適正且つ合理的」というものをチェックをする機会が全然なくっても、これは「適正且つ合理的」だと見なきゃならぬというような、あるいは推定しなきゃならぬというような趣旨なのか。それが法律的な概念として――行政法学者であられるものですから、一体、それをどうお考えなのかという、やむを得ないということじゃなしに、その基準との関係でどういうことなのかということをお尋ねしたい。  最後に、新里公述人に、もうあらためて意見をお伺いすることもないと思いますけれども、ひとつこの二十九条三項との関係について、あるいはこの法律と憲法とのかかわり合いの、その他の何か問題がありましたらお伺いをしたいと思います。
  109. 新里恵二

    公述人(新里恵二君) 先ほど告示の性格について若干御質問があったかと思いますけれども、もし私の解釈に誤りがなければ、この告示は事実行為であるか行政行為であるかということは別にいたしまして、停止条件つきの行為だろうと思うのです。つまり、この法律の効力の発生が、沖繩協定が発効して沖繩の施政権の返還がなされたときに発生する。そうしますと、権利侵害と言うからには加害者があるわけですけれども、加害者は別に米軍ではなくて日本政府であるということになると思います。そういたしますと、先ほど御質問があったように、権利侵害というのは、来年の四月一日かあるいは七月一日か現実沖繩協定が発効して施政権が返還された日に現実のものになるんだという解釈が一つできるかと思います。したがって、われわれは、先ほど同僚の公述人から御意見がございまして、訴訟を起こしたら負けるだろうという御判断がございましたけれども、私どもは弁護団を編成して、場合によってこの法律の違憲無効ということを主張して訴訟に持ち込みたいということも考えておりまして、その場合に、もし日本の裁判所がほんとうの意味で司法権の独立という立場に立つならば、沖繩の軍用地主の方を勝たせるに違いないと、こういうふうに思っているわけですけれども、かりに来年四月一日返還ということになりまして、来年二月一日にこの告示がされて、私どもが訴訟を起こしたとして、裁判所がそのときにどういう判断をするか。権利侵害が現実になるのは返還後ではないか、だから、返還後に出訴するならともかく、今日出訴することは権利侵害の発生という要件を充足していないというふうな判断をすることはやはり一つ考えられるんじゃないか。そういう意味では、憲法の三十二条が規定している裁判を受ける機会を奪う法律であると、かように考えることもできるかと思います。ただし、このあたりは全く珍妙無類な、先ほど私言いましたけれども、少なくとも法律家の常識では考えられないような法律でありますから、政府が公権解釈としてどういう解釈をとるのか、このあたりは今後の質疑の中でぜひ野党の先生方が追及していただいて、一体この告示の法律的な性格は何なのか、権利侵害というのはいつ発生するのかということについては明らかにしておいていただきたい、かように私としては考えております。  それから、御指摘がありました二十九条三項との関係について言えば、これはもう私が申し上げるまでもなく、こういう手続が「適正且つ合理的」なものであるということは私ども法律家の常識ではとうてい言えない。それからまた、暫定使用でやむを得ないというふうな御意見などもございましたけれども、普通われわれが法律暫定使用と言うのは、大体六カ月とか一年とか、そういうのをいわば法律上一時使用とか暫定使用とか言うわけでありまして、五年間もの長きにわたって私権に対する制約を加えるというものを暫定使用と言うことはできない。したがって、本法案でも、なるほど表題には暫定使用法案と書いてありますけれども、条文の中には暫定使用とか一時使用とかいうことばは出てこなかったです。これは当然のことだと思います。  そのほかに、日本国憲法とこの公共用地の暫定使用法案についてはさまざまの問題がありますけれども、たとえば一九五二年に講和条約が発効いたしましたときには、もう本委員会でもすでに御承知のとおり、やはり同じような暫定使用法が出ておりまして、九十日以内に通知をして六カ月をこえない範囲で暫定的に使用することができるというふうになっていたと思います。そうしますと、沖繩県の場合だけ十倍にする根拠は一体何かということが当然問題になる。法のもとの平等に反しないかということが問題になる。そして、沖繩県だけにこの法律を施行するということになれば、当然憲法九十五条の地方自治特別法として沖繩県民の承認を得なければいけないという問題が出てきます。ところが、政府はそういった問題については一顧もしないという態度でいるわけですから、そういう意味でも憲法の条項に抵触するという問題が出てくるかと思います。一体、本土の場合六カ月だったのを沖繩の場合だけ五年にする、十倍にするというのはなぜかということを考えますと、別に何も合理的な根拠があるわけではないわけでして、言ってみれば沖繩における軍用地主の抵抗が強いから、それを抑圧するためにはこういう法律を準備しなければいけないんだということだと思います。先ほど、海外移住者がいるとか、あるいは名簿漏れの地主がいるとかということが話題に出ましたけれども、そういうことはこの法律を合理化する理由にはならないわけでありまして、そういう例外的な場合については例外的な立法だけをすればいいわけで、それからまた道路とか水道とかいろいろの関連の問題が問題になりましたけれども、これはもう立法の経過からしましても、もともとは軍用地だけについてこういう法律をつくろうとしたのを、それでは世論の批判が強いからということで道路の問題であるとかその他の公共用地の問題を加えたわけで、看板は公共用地の暫定使用法案というふうになっておりますけれども、私どもは、実質的な中身から見れば軍用地の強奪法案でしかないと、かように考えております。
  110. 永田一郎

    公述人永田一郎君) 私に対する問題は、その最初の部分、あるいは二十九条三項の部分まで入るかどうか、ちょっと私、御質問の範囲の点がよくわかりませんが、最初の部分ということよりも、何でございますか、いまの公述人のお話にもありましたわけなんですが、つまり権利侵害が――先ほど先生の御質問にもあったとおり、施行前で、それから実際上法律が施行されたという、そういう問題があるのでございますが、これが従来引き続いてアメリカ軍に占領されておるからそういう問題はございませんが、これが新たに公用使用する場合ですと、たとえば都市計画の例ですと、都市計画にかかっただけで地価が下がる、そうしてまた実際上都市計画事業が行なわれたと、そういう権利侵害される蓋然性自身もまた一種の権利侵害であると同時に、具体的な権利侵害の事実性と両方ひっかかるんではないかと思うんです。この場合、特に事実行為的要素が深いですから、たとえば二月一日に告示がなされて、そうして具体的に施行が七月一日になりますと、なるほど二月一日からかかると出訴期間が徒過して憲法三十二条に反するということがあるかもしれませんが、いわゆる告示がなされたときは権利侵害の蓋然性みたいなもので、そうして具体的な権利侵害は施行された日取りだ、そういう場合に何というんですか、出訴のやり方はいろいろありましょうが、出訴期間が徒過――いわゆる主観期間が三カ月で客観期間一ヵ年というようなものが技術的に見ますとありますから、そういったことは何らかの形で却下されたままに終わるということは私はないと思う次第です。  それからあとのほうのつまり受忍の問題、それから正当補償の問題、これはいろいろの考え方がありまして、私がさっきあげた、溜池条例なんかについても反対評釈がずいぶん多いし、最高裁の態度は私どもはずいぶん問題であろうと思う点があるのでございますが、やはり実際上何といっても、軍事基地が――自衛隊に限らず、アメリカ軍もそうですが、そういうことのいわゆる普通の公共という意味とは違いますが、やはりまた憲法論の根本論に戻りますが、私ども法律学者として、憲法九条二項というのは相当度無理がありまして、そうしてやや政治的な意味、自衛権ということをどうしても主張する以上、これはアメリカによることが自衛権かどうかという、そういう批判はいろいろの政党の立場であると思いますが、事実上そういうことが全部違憲だといえばそれでおしまいになるんですが、一応そういったことを違憲でないと考える以上は、やっぱり自衛隊ないしアメリカ軍基地というものの普通の公用性でない――たとえば土地収用法が戦前といまとでは違うという御指摘がありますが、戦後でもやはり実際上は、憲法前文なんかによりますと、日本は要するに片方のほっぺたをひっぱたかれても、片方の、諸国間の信義と公正に信頼する云々ということばに事実上なっておりませんし、この間のバングラデシュの問題もありますし、ある程度の自衛権としての措置が必要だと思います以上は、この自衛隊土地収用法三条の三十五種類の中の三十一号として、これはどうしても私は入るだろうと、そういうふうに考える以上は、何と申しますか――しかもこれは補償の手続について、先ほどの公述人のお話にもありますとおり、補償については布令でもいっているし、この法律でもいっている。取ったこと自身についてきわめて不十分な点があるということは、私もそういうふうに考えられますのですが、そういうところで補償として争うとか、あるいは事実上の争いとしたら、たとえば三里塚闘争のような形、あるいは砂川基地闘争のような形で争うとか、そういうようなことはいろいろありますが、法律論としたら、まあこういうものでやる以上、私はしかたがないと、そういうふうに考えております。
  111. 松井誠

    ○松井誠君 おしまいにするつもりだったんですけれども、私の質問にお答えいただけなかったので、これを最後にしますけれども、私がお尋ねをしましたのは、こういう状況の場合にはしかたがないというお話だったものですから、それはつまりどういうことを意味するんだろうか、「適正且つ合理的」というその基準は、こういう場合には要らないという趣旨なのか、あるいはそうではなくて、「適正且つ合理的」という基準は、こういう場合にはこれでなおかつ適正かつ合理的だという趣旨なのか、ということをお尋ねをしたんです。これは表示が違うだけでなしに、ずいぶん考え方そのものも違うわけで、「適正且つ合理的」という基準は、あくまでもやはり公用収用の場合には維持し続けていくべきだというたてまえであるとないとでは、ずいぶん違うわけですから、やむを得ないというのはどういう趣旨かということをお尋ねしたわけです。それだけでけっこうです。それだけをひとつお答えいただきたい。
  112. 永田一郎

    公述人永田一郎君) 先生の御趣旨によると、私は後者だと考えます。
  113. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  114. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記を始めて。
  115. 森中守義

    ○森中守義君 梶谷先生に少しくお尋ねしたいと思います。  一九六二年ですね、立法院で「施政権返還に関する要請決議」というものが行なわれている。これがアメリカ政府及び国連並びに加盟各国あてに出されまして、このときに、アメリカの政府においては直ちに統治機構の改革というものを出しておるのです。そこで私は、今回の返還の原動力が、四十四年における佐藤・ニクソン会談にいかにも端を発したという、こういうことがしきりに印象づけられておる。私は、こういうような見解としてはそうではないと考えている。むしろ六二年における、あるいはさらにその十年前の五二年における、二回にわたっての、平和条約三条はすでに放棄すべきだ、その性格を消滅をした、こういう決議に対するアメリカの反応であったのではないか、こういう見解を持つのです。したがって、返還の原動力は一体何であったのか。つまり佐藤・ニクソン会談が原動力になったのか、その以前、先ほど申し上げる二つの決議、このことが原動力になったのか、このことをどのようにお考えであるかというのが第一点であります。  それと、返還の中身の問題ですが、第一点でお尋ねしたことがいずれかになることによって中身は変わってきたであろう。つまり要約して申し上げるならば、日本政府の返還に対する諸要求、諸条件、こういうものをこの返還の内容というものは受け入れているのか、どうなのか。逆説的に言うならば、すべからくアメリカの経済的並びに軍事的、この二つの独自な判断によって返されたと見るべきではないのか、こういうふうに私は考えるのですが、いかがでしょう。  それから、共同声明の十項の中で、協議委員会のもとに準備委員会をつくる。その準備委員会の顧問に主席を迎えよう、主席を準備委員会に顧問として迎えることにより、沖繩現地で渇望されるもの、求められるもの、これらのことが余すところなく準備委員会によって消化される、こういうことが実は共同声明の十項の中に明記されているわけですね。ところが、結果においては相当分厚な、しかも重要な、全体にわたる建議書というものが出されました。一体、この建議書ということがある限り、また、建議という状態沖繩の諸問題を解決をしなければならぬという主席の立場というもの、これが、はたして準備委員会の中にどう消化されてきたか。したがって、むしろ共同声明十項ということは死文になってしまった。屋良主席が準備委員会にものを言う、ものを求める、こういう機会が封殺をされた結果が、いわば建議書という形であらわれてきたのではないか。ですから、このことが、沖繩の心というものは何一つ返還内容には適合するものになっていない、こういったように私は認識をしているのですが、いかがでございますか。
  116. 梶谷善久

    公述人(梶谷善久君) 沖繩の施政権返還が実現いたしましたおもなる原動力は、二十六年にわたる異民族の軍事支配に抵抗する沖繩県民の努力、並びにそれを結集した立法院の決議であると思います。一九六九年の日米共同声明に基づくと申し上げますのは、むしろそのワク内にとじ込められた遺憾なる返還協定であるという意味であります。すなわち、日本の政府は沖繩県民の意向をくみ上げることをせず、あるいはいま御指摘ありましたような、準備委員会に主席を顧問に加えながら、その意向が十分消化されていないという現実であります。しかしながら、外交交渉はオール・オア・ナッシングではないのでありまして、そのワク内においてもできるだけの努力をすべき、あるいはできるだけの成果をあげるべきかと考えます。本院におかれましてたいへん熱心に御討議をいただきますことも、たとえこの返還協定の中での返還でありましても、その返還の実質的内容を少しでもよくしていこうという努力かと存じます。一そうの御協力をいただきたいと存じておる次第であります。
  117. 森中守義

    ○森中守義君 これは議論の場所でございませんから、もう一つお聞きいただきたい。  せんだって来の、たとえば繊維問題、あるいは今回の円・ドルの問題、そうして返還協定、いずれもが、少なくとも独立国家としての日本の外交という観点からいけば、どう考えてみても対等の立場で対米交渉が行なわれたという、こういう認識には立てない。そこで、これはいろいろなファクターがあるでしょう。けれども、返還交渉は、もちろん、ありとあらゆるものが、事対米関係ということになると、一つも、国益を利するという、少なくとも返還協定について沖繩の希望にこたえる、願望にこたえるという、そういう内容がない。ですから、一体なぜ日米の交渉の際に、かくも日本は姿勢が低く、得るものがなく、多少これは寡聞であるかわかりませんが、失うものが多過ぎるような交渉にならねばならぬか、この辺を、つまり、日米という二国間の関係において何が問題であるのか、それを、戦勝者と敗者という、こういう位置づけとして考えていくべきなのか、その辺はどういうふうにお考えでありましょう。
  118. 梶谷善久

    公述人(梶谷善久君) 私は、戦勝者と敗者との関係というふうには考えません。その点は、むしろ終戦直後における日本の外交が、あたかもアメリカに甘えたようなかっこうでありまして、勝者が敗者にあわれみを持つ、あるいは寛大なる心情を持つのが当然のように考えたのは、むしろ間違いである。国際間の外交というものは、最も冷厳なる国益に基づいて行なわれるものだと、こう考えております。ところが、いま御指摘なさいましたように、繊維といい、円・ドルといい、返還協定といい、あるいは米中接近といい、さらには、アメリカが諸国の首脳と会談いたしますにも日本がどんじりにアメリカに呼びつけられるという形、すべて、日本の国益ないし威信をそこなうものである。なぜそのような外交を継続しなければいけないかということにつきましては、私も非常に疑問を感じております。  その点で私なりに理解いたしますことは、アメリカは、たとえその政権がきわめて腐敗したものである、あるいはきわめて国民の利益に反するものでありましても、反共的であり親米的である限りはこれを支持するものであります。このようなことを申し上げましては、現在の政府・自民党に失礼でありますけれども、国民の利益の点からはとにかく、その党の利益から申しますならば、アメリカとこのような外交をすることを有利とお考えになっているのではないかと、このような疑念さえ持つのであります。
  119. 森中守義

    ○森中守義君 あと二問ですが、これも午前中に他の公述人にお尋ねしたことなんですが、その一つは、おそらく太平洋戦略機構、戦略構造ですね、主要な戦力というものはやはり核であろう。そこで、衆議院以来参議院に至るまで、返還時には沖繩から核はなくなる、はたしてその保証がどういうかっこうであるかは別といたしまして、しばしばそういうことを総理は言明をしてまいっております。しかし、おおむねアメリカが極東に、アジアに展開をする今日の戦略体制からいけば、核というものを取り除いて一体何の価値があるか、これがいまや戦略上の一つの常識だと、こう思うのです。そこで十月の二十七日以来、アメリカ上院におけるロジャーズ証言等考えてみますると、公開の席ではなかなか言えない、だから、核の問題は秘密会に移してほしいということを、しばしばロジャーズ国務長官は言明している。で、その裏からのぞいてみれば、表向きには、ありません、いわんや安保が適用される、ついては事前協議の対象になるということで、表づら裏づらという二つの側面があるのじゃないか、こういうように思うのですが、戦略的に核がほんとうに沖繩から抜けるものかどうなのか。むろん、第七艦隊の隷下にある第三海兵師団がこの中心になるでありましょう。それらの艦隊にいやしくも核弾頭があるということは、これはもう周知の事実だと思うのです。したがって、一体沖繩から核が抜けるものかどうなのか、これが一点であります。  さらにアメリカ日本以外の各地域に展開をしているこれら軍事基地あるいは戦力、それを提供している各国、沖繩と同等のもの、協定、取りきめ、あるいは戦力の内容ですね、これ以上のもの、これと同等のものが他にあるかどうか。この二点をお尋ねして質問を終わらしていただきます。
  120. 梶谷善久

    公述人(梶谷善久君) 沖繩における核兵器が撤去されるかいなかということは、二つの判断があると思います。一つは、返還協定において、日本の政策に背馳しないといったことばを拡大解決いたしまして、おそらく沖繩には核がなくなるであろうという判断であります。もう一つは、冷厳かつ現実的な戦略目的に沿って核が置かれるのでないかと、そういう判断であります。甘えを除きまして、ごく普通に考えますと、後者の判断に立つのが常識ではないかと考えます。  もう一点、沖繩の軍事基地でありますが、それは安保についても言えることでありまして、安保条約のように、区域並びに施設を供与する場合に、何らその具体的な限定がない、いわば日本全土がアメリカ基地になってもしようがないような決定ということは、たとえばアメリカとイギリスの協定はもちろん、アメリカフィリピン、タイ、韓国台湾その他の協定においてもないのであります。クラークフィールド飛行場でありますとか、あるいはサタヒップ空軍基地とか、具体的な名前があげられております。そのような性格的な差もさることながら、まさに沖繩におけるほど膨大かつ重大な意味を持った軍事基地はないのであります。この点におきまして、このたびの返還協定の内容を見てまいりますと、非常に危険かつ残念なものが多いと思います。
  121. 森中守義

    ○森中守義君 新里公述人一つお尋ねいたします。  御承知のように、今日の事前協議というものは交換公文に基づいておる。そこで一体、交換公文というのは、条約あるいは協定という、こういったものにランクづけられるかどうか、過去にずいぶんこれは議論いたしてまいりました。ところが、この交換公文に定められている.事前協議では、まことにその内容が抽象的。抽象的であるものを、たとえば重要な装備の変更等は、かくかくの部隊の変動であるなどと政府のほうではいろいろな答弁をされておりますけれども、これは一つもきめ手になるようなことがない。そこで、今日のこの事前協議という問題は、この際、意見としては、いま少し細部的な協定、細目協定等が必要だろう、そうしなければ、いかに核の点検をやれといってみても、きわめて現実性に乏しい、こういう意味で、この交換公文の中にある事前協議を、間違いなく歯どめになり得るという解釈であるかどうか、この点をひとつお答えいただきます。
  122. 新里恵二

    公述人(新里恵二君) 一九六〇年に新安保条約が審議されましたときに、与野党の間で最大の問題になったのが、この事前協議に関する交換公文は歯どめになるかならないかという問題だったと思います。ところで、六五年の二月に、いわゆる北爆、ベトナム民主共和国に対する爆撃が始ったわけですけれども、あの直後に、横田にいた戦闘爆撃機が一斉にいなくなりました。どこに行ったかというと、沖繩に行ったわけです。もちろん沖繩を経由してベトナムに行ったわけです。ところが、政府自民党の説明によりますと、横田から沖繩に移動するのは単なる移動である、そして沖繩からベトナムに出撃するのは、これは戦闘作戦行動ではあるけれども、沖繩は施政権の範囲外であるから問題にならないのだと、いわゆる二段飛び出撃を是認するような議論があったわけです。ところが、日米共同声明と沖繩協定、それからそれに関連する国会論議なんかを見ておりますと、従来の、事前協議については原則としてノーであるという政府回答が、だんだんだんだん変わってまいりまして、日本の国益に照らしてイエスと言う場合もあるし、ノーと言う場合もあると、こういうふうに変わってきた。のみならずナショナル・プレスクラブにおける佐藤首相の演説では、韓国に対して武力攻撃が発生したような場合には、前向きかつすみやかに態度を決定すると、こういうふうに言っている。この前向きかつすみやかにというのは、御承知のとおり、ポジティブリー.アンド・プロンプトリーというふうになっていまして、むしろ積極的にかつ遅滞なく――遅滞なくというより、むしろ、時を移さず、間髪を入れずという感じのことばだろうと思いますけれども、そういたしますと、今度はナショナル・プレスクラブの演説で、沖繩だけでなく、本土基地からも直接の戦闘作戦行動についていわば口約束を与えている、こういう性質になるかと思います。このナショナル・プレスクラブの演説というのは、別に佐藤首相が口から出まかせに思いついたことを言ったわけじゃないわけでありまして、ジョンソン国務次官の背景説明の中では、きょうの十二時から佐藤首相はプレスクラブで演説をする、その演説の中で佐藤首相は、これこれこういう発言をするはずである、ただし十二時以前に記事を書いてもらっては困るというふうなことを言っておるわけです。そうしますと、おそらくプレスクラブにおける演説の内容というのは、日米共同声明と同じように、テキストのすみずみに至るまで厳密にニクソン大統領との合意がなされて、そして発表をされたというふうに考えざるを得ない。そういたしますと、先ほどの繰り返しになりますけれども、沖繩だけでなく、これまでは沖繩からは直接の戦闘作戦行動は可能だった、ところが沖繩だけでなく、本土基地からも、たとえばかりに朝鮮戦争が発生したとすれば、板付からも岩国からも佐世保からも直接の戦闘作戦行動が行なわれるということになる。そういう意味で事前協議条項というのは、日米共同声明とこの沖繩協定によって全く空洞化してしまうし、いわばそういう意味で全土の沖繩化が達成される、そういう意味では安保条約が全く変質してしまうことになるのではないか。条文自体は変わらなくても、その体制の果たす機能というものは変わってしまう、こういうふうに思います。その場合に基本になるのは、いま御指摘がありましたように、一体この事前協議における、事前協議に基づく監視ですね、これをどうして実効的にするかということで、もちろん細目の協定をつくるということもたいへんけっこうだと思いますけれども、基本は先ほど午前中の公述人の公述がございましたけれども、一体アメリカを信頼するのか信頼しないのか、向こうが口約束で核は持ち込みませんと言ったら、それを信頼するのかどうか。これは私ども法律家でありますけれども、法律家というものはもともと相手を信用できないからこまかく取りきめをするわけです。契約にしても、相手が債務を履行しない可能性があるからこそ文書での契約をしております。憲法でありますれば、これはジェファーソンが言っているように、憲法の精神というのは政府に対する不信を基本にするのだということを言っております。そういったものを、いわばアメリカがそう言うのだからそれを信用しなさいという態度でこの事前協議の運用が行なわれるとすれば、たいへんに危険であると、こういうふうに私は考えております。   ついでですけれども、もしかりに事前協議条項に基づいて事前協議を求められ、日本政府がイエスと言うということになって、本土基地からも発進が行なわれるとすれば、これは相手方は当然に沖繩を含む全土の米軍基地をいわば反撃する権利を与えられるということになるかと思います。そうしますと、六〇年の安保の審議のときに、例のU2機の事件という問題が起こりました。厚木から飛んでいった飛行機がソ連の領空で撃墜されたのですけれども、あのときに、ソ連の国防相でありますマリノフスキーも、もしこのような事態が続くのであれば、われわれはロケットでもっで直接在日米軍基地を攻撃する権利を留保するといった意味の警告を発しましたけれども、その場合に藤山愛一郎外務大臣が、もしそういうことになれば安保条約五条を発動する、そうして自衛隊は米国と共同行動をとるのだ、こういうような意味の答弁をいたしましたけれども、こうなりますと、いわば日本の国民が全く何にも知らない間に、寝耳に水のような形でアメリカ戦争にわが国が巻き込まれるということになるわけですから、これは日本のいわば主権に属する宣戦布告の権限を、アメリカにまるごと委任する、一億の日本国民の命を、どうにでも自由にお使いくださいというような形でアメリカに差し出している、そういうふうな屈辱的な性格を持っているのじゃないかと、かように私は考えております。
  123. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 他に御発言もないようですから、これにて質疑を終わります。  公述人の方に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、お忙しいところを本公聴会に御出席を賜わりまして、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。なお、本日は、委員会の開会が予定よりたいへんおくれまして、皆さまに御迷惑をおかけいたしまして、申しわけございませんでした。  委員会を代表いたしましてここに厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。  これをもって公聴会を散会いたします。    午後五時十四分散会