運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1971-12-26 第67回国会 参議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十二月二十六日(日曜日)    午後四時三十七分開会     —————————————    委員異動  十二月二十六日     辞任         補欠選任      藤原 房雄君     黒柳  明君      加藤  進君     渡辺  武君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         長谷川 仁君     理 事                 鬼丸 勝之君                 楠  正俊君                 剱木 亨弘君                 丸茂 重貞君                 松井  誠君                 森中 守義君                 矢追 秀彦君                 高山 恒雄君                 岩間 正男君     委 員                 稲嶺 一郎君                 今泉 正二君                 長田 裕二君                 梶木 又三君                 片山 正英君                 亀井 善彰君                 古賀雷四郎君                 柴立 芳文君                 鈴木 省吾君                 園田 清充君                 竹内 藤男君                 西村 尚治君                 初村瀧一郎君                 宮崎 正雄君                 山内 一郎君                 若林 正武君                 占部 秀男君                 大橋 和孝君                 川村 清一君                 田中寿美子君                 田中  一君                 宮之原貞光君                 村田 秀三君                 森  勝治君                 上林繁次郎君                 黒柳  明君                 原田  立君                 栗林 卓司君                 渡辺  武君                 喜屋武眞榮君    委員以外の議員        議     員  佐々木静子君        議     員  春日 正一君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  前尾繁三郎君        外 務 大 臣  福田 赳夫君        厚 生 大 臣  斎藤  昇君        建 設 大 臣  西村 英一君        自 治 大 臣  渡海元三郎君        国 務 大 臣  江崎 真澄君        国 務 大 臣  山中 貞則君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣法制局沖繩        法制参事官    系  光家君        内閣法制局第二        部長       林  信一君        内閣法制局第三        部長       茂串  俊君        内閣法制局第四        部長       角田礼次郎君        人事院事務総局        管理局長     茨木  広君        総理府総務副長        官        砂田 重民君        防衛庁参事官   鶴崎  敏君        防衛庁長官官房        長        宍戸 基男君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        防衛施設庁長官  島田  豊君        防衛施設庁総務        部長       長坂  強君        防衛施設庁総務        部調停官     銅崎 富司君        沖繩北方対策        庁長官      岡部 秀一君        沖繩北方対策        庁総務部長    岡田 純夫君        沖繩北方対策        庁調整部長    田辺 博通君        法務省刑事局長  辻 辰三郎君        外務省アメリカ        局長       吉野 文六君        外務省条約局長  井川 克一君        大蔵大臣官房審        議官       前田多良夫君        大蔵省理財局次        長        小幡 琢也君        厚生省環境衛生        局長       浦田 純一君        建設省道路局長  高橋国一郎君        自治大臣官房参        事官       森岡  敞君        自治省行政局長  宮澤  弘君    事務局側        常任委員会専門        員        相原 桂次君        常任委員会専門        員        鈴木  武君        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君     —————————————   本日の会議に付した案件沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案(内  閣提出衆議院送付) ○沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○沖繩振興開発特別措置法案内閣提出衆議院  送付) ○沖繩における公用地等暫定使用に関する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○国家公務員法第十三条第五項および地方自治法  第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院の  地方事務所設置に関し承認を求めるの件(内  閣提出衆議院送付) ○沖繩平和開発基本法案衆議院送付予備審  査) ○沖繩における雇用促進に関する特別措置法案  (衆議院送付予備審査)     —————————————
  2. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ただいまから沖繩及び北方問題に関する特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動につきまして御報告いたします。  本日、藤原房雄君及び加藤進君が委員を辞任され、その補欠として黒柳明君及び渡辺武君が選任されました。     —————————————
  3. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律案沖繩振興開発特別措置法案沖繩における公用地等暫定使用に関する法律案国家公務員法第十三条第五項および地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院地方事務所設置に関し承認を求めるの件、沖繩平和開発基本法案沖繩における雇用促進に関する特別措置法案  以上の各案件を一括して議題とし、質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。占部秀男君。
  4. 占部秀男

    占部秀男君 委員長議事進行でお願いがあるのです、委員長に。——これは二十分の中じゃない。往復二十分ですから何にも言えないですよ。そこで、私も急所の点だけ簡潔に質問しますから、はっきりとわかるようにひとつやってもらいたいと思うのです。それだけひとつ委員長のほうで議事運営で気をつけていただきたい。  私は、総括質問のときに、沖繩開発法案について、憲法九十五条の取り扱いの問題を質問しましたが、いろいろと答弁はありましたが、なかなかまとまった形になっていなかった。特に質問に対して回答のなかった問題もあるわけですから、この際、ひとつ念を入れて御質問したいと思いますが、その前に、この間の回答はなぜ九十五条における「一の地方公共団体」、こういう扱い方をあの法案の中の沖繩県あるいは県下市町村についてとらないかと、こういう点については三つ答弁があったと思うんであります。一つは、これはあの九十五条に規定しておる地方公共団体には当たらない、こういうことが一つですね。公共団体そのものの問題でないから当たらないということが一つ。もう一つは、国から財政措置その他の援助措置があるが地方自治制約をしてないんだ。したがって、これは九十五条のものには当たらない。三つ目は、現在沖繩には憲法適用されていない。そこで、適用されていないその現実の中で、住民投票が行ない得るかどうかということは疑問である。この三つが結局は皆さん答弁結論であったと思うんでありますが、この点をひとつまず確認をしておきたいと思います。どなたでもけっこうです。
  5. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 私の記憶では、いまおあげになりました三つのうち、実体的な関係特別法には当たらないのではないかという点と、手続的な面からいって、まさにさっきおっしゃったような点ですが、これもそれを実施するのに問題がありはしないかということを申し上げました。  もう一つ指摘になりました財政法上のことを、いま財政関係観点からも何かあったようにおっしゃられたように思いましたが、あるいは……。
  6. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) それは、私が答弁したんです。
  7. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) ああそうですか。いまの二点については、私そのとおりでございます。
  8. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) いま一つの点は、国が直轄で行なうことができる規定についての問題でありましたから私から答弁をいたします。  それは法律に明示されているごとく、県もしくは市町村あるいは管理者等申請した場合にのみ国が直轄で行なうものであり、それがいやであった場合には、申請をしなければ、強要するものでもなく、また、十分の十の補助によって行なわれる補助、それが行なわれないというものでもありませんので、その意味では、いわゆる九十五条の手続を必要とするような規定ではないという点について、私が申し上げた点をもう一ぺん申し上げる次第でございます。
  9. 占部秀男

    占部秀男君 そうすると、三つ目最後の点は、地方団体制約するものでなく、かえって利益を与えるものであると言われたあなたの答弁ですね。それは仮定の答弁であって、申請ということに力点が置かれた答弁であると、かように言われるわけでありますか。
  10. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 利益の何のというのは、これは実体論だと思います。ですから結局まともに言えば、市町村長なり管理者なり知事というものが自分たちでやりたいのに、国のほうが無理じいして直轄でやるということはありませんということを裏返しに申し上げたわけでございます。
  11. 占部秀男

    占部秀男君 そこで、第一に、この憲法適用されていないから住民投票をするということには疑義があると、こういう問題でありますが、これは沖繩住民国政参加特別法の例がありますように、必ずしもそれだけで、この問題は否定できない問題ではないかと私は思うわけです。特に、今度は沖繩返還協定に伴う問題でありますから、外交上の問題として、何かそういうふうなことをしなければならない点があるのか、あるいは法的に制約があるから住民投票ができないのか、そういうようなはっきりした何か理由がありますか。
  12. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 私さっき二点について御同意を申し上げました。それから、御質問の趣旨がつかみ切れなかったわけでありますが、同意に基づくという点については、いわゆる振興法に関しては私も申し上げました。それでございますので、おそまきながらその点を申し添えておきます。  それから、憲法施行関係でございますが、一般的にいいまして、憲法九十五条の住民投票が行なわれますのは、憲法現実規定がまあ前提となるわけです。これはまあどうしてもそうなると言わざるを得ません。ところで、今度の沖繩復帰について整備すべき法律案はいろいろございますが、これは復帰と同時に施行されるべき法律の案であるわけでございます。これは皆さんに御審議していただいている法律案にそのとおりに書いてございます。復帰に先立っての制定に意義を持つということにもなります。そこで、この法律が制定される時点において、沖繩復帰前であるということは、言いかえれば、その時点において、沖繩憲法九十五条が現実には適用がないということにこれまた論理上そうならざるを得ないわけでございます。住民投票を実施すべき、そういう意味ですべもないというのが私前から申し上げておることでありますが、九十五条は申し上げるまでもなく、住民投票に付してから実は法律成立すると、国会の両院の議決だけで成立する普通法と違って、住民投票に付された後にそれが成立をするということになっておりますので、そういうことに相ならざるを得ないのではないかという疑問を持っております。  で、これは疑問というようなえらく歯切れの悪いことを申し上げますが、これはいずれにしても、普通法であるか、特別法であるかをやはり立法過程で御決定になるのは内閣ではなくて国会であるという気がするものですから、あまりえらそうなことを申し上げるのもどうかと思って、私が感じていることを率直に申し上げておるわけであります。
  13. 占部秀男

    占部秀男君 内閣よりは国会であるというならば、国会議決できめてもいいんですけれども内閣がきめたっていいわけだ。法律提案権内閣にあるのですから、そういうことは問題にならぬ。それからもう一つは、施行されるのは、返還されたとき以降が施行になるわけであります。そこでその間は、いわば蔵の中にストックされておるような問題だ、つまり実効がないわけですから。そうでしょう。それですから、その施行された日以降に住民投票をすれば——何もできないわけではないわけであります。それを制約する法律は何かありますか、ないかあるか、簡単に言ってください。
  14. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 簡単に申し上げますが、施行された後に住民投票に付するということは、住民投票に付されないと施行をされないということになっておりますものですから、普通の法律と違いまして住民……
  15. 占部秀男

    占部秀男君 ぼくが言うのは、憲法が……
  16. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) ええ、憲法上。
  17. 占部秀男

    占部秀男君 憲法適用されるわけでしょう、復帰したその日に。憲法適用されるから、それに基づいてこういうような住民投票の問題をそれからやったらいいじゃないかということなんです。
  18. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) ただし、そうなりますと、法律成立は返還の後になるということになるわけであります。
  19. 占部秀男

    占部秀男君 つまり、問題は、法的にできるできないの問題ではなくて、内閣政策の問題になる。つまり、それをやるかやらないかは政策上の問題である。これが公用の土地の問題であるならば、基地をそのまま引き継ぐという、そういうような日米間の外係交渉のいろいろな問題があると思う。これにはそういうことはないのですから、したがって、総理はほんとうに沖繩県民のためを思い、沖繩県民の意向をいれるというならば、これはやはりそういう扱いをするのがぼくは佐藤内閣にとっては、百万県民のためにやるべき姿ではないかと、こう思うのですが、総理いかがですか。
  20. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも私に解せないのですが、まあ、すべての法律はこの国会で御審議をいただいて、そうしてそれが公布される、そういうことで直ちに効力を発生すると、こういうもののように思っておりますが、特に、地域住民に特別な損害あるいは利害関係を持つと、こういうものならば、そういう際にこそ地域住民に問うと、こういうことが必要だろうと思いますけれども、私はまあ今回の場合にはその必要はないのだろうと、これがまあ政府の考え方でありまして、皆さま方に御審議をいただいた筋でございます。
  21. 占部秀男

    占部秀男君 沖繩人たちはおこりますよ。いままで十五本ばかりいわゆるこの種の法律があるわけですが、そのうちの十三本は住民投票をしておる。その内容を見ると、いずれも、たとえば首都圏整備法でも、首都圏における県や市等の権限を縮小するのじゃなくて、国からの財政措置をして、よりよい方向へやってやろうという法律です。それを住民投票しているのですよ、十三本もみな。内容を調べていただけばはっきりわかる。それなのにこの沖繩の問題だけは、いま総理が言われたようなことで、これをまま子扱いするということにはわれわれは納得できない。しかし、これは時間がないから、この次やります。  それから、高辻さんが「一の地方公共団体のみ」というその公共団体に当たらないというのは、この法律内容公共団体そのものの問題ではないからであると、かようにあなたは言われましたが、それでよろしゅうございますか。
  22. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 憲法九十五条の規定を見ますと、「一の地方公共団体のみに適用される特別法」と書いてございます。したがって、特別法適用対象地方公共団体であるということは、もう必然的にわかるわけであります。したがって、私どもは、その適用対象である地方公共団体組織運営一般的方式なりあるいは権能について特別の規定を設けるもの、これが当たると考えております。ただし、学説にはいろいろな見解がございますが、地方公共団体適用対象とするものだということにおいては、まあ大体において一致しているんではないかと考えております。
  23. 占部秀男

    占部秀男君 そうなれば、今度の法律は、一の地方公共団体のみに適用する法律になるじゃありませんか。たとえば道路にしても、河川にしても、港湾にしても、それは地方固有事務です。固有事務ということは、御存じのように、その地方団体の存立に関する事務事業、この事務事業を国の直轄に持っていこうというのですから、したがって、一の地方公共団体組織運営並びに権能関係のある問題じゃありませんか、どうなんですか、その点は。
  24. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) この憲法九十五条の問題は、私ども提案をいたしております法律案のいろんな法律案について御意見が出ておりますので、その際に、一般的なことを申し上げておりますが、占部さんは特に、前回もそうでございましたが、この沖繩振興開発特別措置法案についておっしゃっておるようでございますが、その点については前回も申し上げましたとおりに、また、山中総務長官が言われましたように、やはり、この国の側の一方的な意思によって、県道あるいは市町村道新設改築等を行なうことを定めるものではなくて、この二項の規定による道路管理者申請に基づいてのみこれらの行為を行なうことができるといたしておりまして、みずから管理する道路新設、または改築道路管理者自身で行なうか、これを国に行なわせるか、どうこれをするかということについては、道路管理者の自由な選択にまかされているわけであります。それは法律規定をごらんになればわかると思います。したがって、この規定は、沖繩道路管理者たる地方公共団体権能をいささかも規制ないし縮減をするものではない。これらの地方公共団体の自主的な判断に基づいて、その発意に基づいて国がこれにかわって工事を行なうことができることになっているものであって、一方的に、この地方公共団体権能を害するとかいうようなものではないというのが一つでございます。  それからもう一つは、これは先生御存じかと思いますが、前に議員立法でこの種類の——これよりももう少し協議がととのった場合というのがちょっと変わっておりますが、つまり、このほうが一そう発意を大事にしておると思いますが、それが住民投票にかけられないで成立したということも考え合わせまして、やはりその結論でいいのではないかと思っておるわけであります。
  25. 占部秀男

    占部秀男君 そうすると、時間がないからだめ押しをしておきますが、振興法の場合には、いわゆる沖繩県なら沖繩県それ自体の問題である、こういうようにはっきりと解釈ができる、こういうように考えてよろしゅうございますか。
  26. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) ともかくも、一般の他の法律案と違って、まさに御指摘のように、県道なり市町村道の問題がそこに介在をしてまいります。これはそれぞれの地方公共団体事務でありますので、その事務観点から申し上げていることは確かであります。
  27. 占部秀男

    占部秀男君 だから、一の地方公共団体のみに適用されるという、その一の地方公共団体のみという団体沖繩県県下市町村はなりますね。
  28. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 地方公共団体権能に対する例外をあたかも規定しているように見える、しかし、実質はそうでないということを御説明申し上げたんですが、そういう意味では問題になるということをお答え申し上げます。
  29. 占部秀男

    占部秀男君 そこで最後の問題は、市長知事が自発的に申請をする、こういうところが九十五条の住民投票が要らない原因になっておる、かように考えてよろしゅうございますか。
  30. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 相済みません。いま、よその方が見えて話を聞かされておりましたので……。
  31. 占部秀男

    占部秀男君 一つ、二つの問題はもうそれでいいとして、あとは、知事市町村長申請を自発的にするから、こういうことでいわゆる一の地方公共団体のみということばは当たらないのだと、こういうふうにあなた方は考えているのかということを聞いたわけです。
  32. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 先ほどその点は申し上げたのでありますが、ともかくも、法律地方公共団体権能等に関して一方的に規制を加えているというのではない、これはその地方公共団体自身発意に基づいて国がやってくれという場合に国がやりましょうということでありますので、九十五条の問題にはならぬだろうということを申しておるわけであります。
  33. 占部秀男

    占部秀男君 そこで、山中さんか、建設大臣か、自治大臣か、どちらでもいいんですが、管理者申請というのは、道路なら道路の場合には一体だれがどういう形でどんな手続でやろうとしておるんですか。法律の中にはまるっきりそういう点が書いてないんで、その点をひとつ教えていただきたい。
  34. 西村英一

    国務大臣西村英一君) その事務手続ですが、申請申請手続をするわけでございまして、申請がありましたら、それを建設大臣開発庁長官協議して区域をきめるわけでございます。現在の道路法にしましても、河川法にしましても、北海道で大体特例があるわけです。特例がありまして、それは北海道についてもやっておるわけでございまして、そういうことになっておるんです。
  35. 占部秀男

    占部秀男君 大臣特例特例と言うけれども北海道特例特例にならぬですよ。あれは議員立法であって、港湾だけの問題なんです。ところが今度は道路河川港湾、およそ公共事案の中心的な問題が全部国の直轄でやることができるということなんですよ。だから前の議員立法とは質が違うんです。時間がないからそういう問題はいいけれども。  そうすると、知事なり市長なりが、つまり現地の開発総合事務局と話し合って協議をして申請をする、こういうわけですか、手続の上では。
  36. 西村英一

    国務大臣西村英一君) それは占部さん誤解ですね。現在の河川法にしても、道路法にしても、北海道についての特例があるというんです。議員立法じゃないんです。現在の河川法でも道路法でも特例があるんです。
  37. 占部秀男

    占部秀男君 それは前の北海道庁の、いわゆる北海道開発局のやつですか、それともあと議員立法ですか。
  38. 西村英一

    国務大臣西村英一君) いや、そうじゃないのです。現在の法律です。
  39. 占部秀男

    占部秀男君 いずれにしても、申請手続はどうなっておりますか。
  40. 高橋国一郎

    政府委員高橋国一郎君) 沖繩振興開発特別措置法の第六条に、振興開発計画に基づきまして行なう県道または市町村道改築でもって、沖繩振興開発のため特に必要があるものとして建設大臣沖繩開発庁長官協議して指定した区間にかかるものにつきましては、建設大臣が代行できるというふうな規定になっております。これは、御承知のように、沖繩振興開発計画というものは沖繩県知事が作成いたしまして内閣総理大臣に提出されるものでございます。内閣総理大臣は……
  41. 占部秀男

    占部秀男君 時間がない、時間が。それはわかるから、申請の具体的な手続はどうやるのかということを聞いているんですよ、そんなことはこの前からやっているんだよ。——どうも時間がいかぬな、二十分。
  42. 高橋国一郎

    政府委員高橋国一郎君) ただいま申請は、当該の道路管理者、つまり、市町村道でございましたら市町村長、それから都道府県でありましたら都道府県知事道路法の第十八条第一項の道路管理者でございますけれども、そのほうから大臣のほうに指定の申請が出るわけでございます。
  43. 占部秀男

    占部秀男君 固有の道路河川あるいは港湾という非常に重要な事項の申請に、なぜ県の議会あるいは市町村の議会を、つんぼさじきに置いておくんですか。これは非常に大きな問題ですよ。いまあなたは、知事なり市長なりが総合事務局と話し合いをしてそれをやるというが、総合事務局と話し合いをして、こういろ扱いのできる種類の問題ですか。内容道路河川その他の固有事務の問題です。
  44. 西村英一

    国務大臣西村英一君) たとえば市町村道ですと、市町村長がこの区間はこれは自分のほうでやれないから直轄でやってもらいたいと言えば、市町村の考えによって市町村の議会にかけて、そうして沖繩県知事を経由して建設大臣に出てくるというような手続になろうと思います。建設大臣開発庁長官協議してやることになると思うわけです。また、県のほうなら、県のほうで特定の区間をやりたいと言えば、県知事がそれを県会にかけてやって、それで建設大臣申請をしてくる、こういうことになると思います。
  45. 占部秀男

    占部秀男君 時間がありませんから、これでおしまいにしますが、そこを、ぼくは聞きたかったわけです。この法律には議会の同意を得るとか、あるいは——議会は御存じのように、議決権もあれば同意する権利もあるが——議会の議決を得るとか、同意を得るということは書いてないじゃありませんか。これをこのままでやっていけば、そのままほおかぶりされてしまうんですよ。いま、建設大臣が言われたような扱いならば、この法律の中に、当該県議会あるいは当該市議会の議決なり同意なりを得て申請をするということを、なぜ書かないのです。書いてくれるわけですね、この法律の中に。はっきりしてください、その点は。
  46. 西村英一

    国務大臣西村英一君) それは、事柄によると私思います。その当該知事なり市町村長がそう考えれば、重大だから議会にかけようと思えば、それはかける。かけなくてやれるという場合はかけなくて出てくると思います。
  47. 占部秀男

    占部秀男君 それだから、ぼくは念を入れてやるんです。私がそういう意味を突っ込むと、あなたは、かけなくていい場合と、かけていい場合とある、こういうふろに逃げてしまう。それでは、さっきの答弁が何にもならないじゃないですか。固有事務というものは、かけない場合もあるし、かげる場合もあり得るという、そんななまはんかな事務じゃないんですよ。憲法が保障して、その地方団体の存立に関する事務事業は、これは固有事務、その固有事務法律では自由になる。あなた方はどう思っておるか知らぬけれども、一定の限度があるのですよ。憲法が定めておる自治の本旨、つまり、住民自治と団体自治ですか、この住民自治、団体自治のこの原則を、はみ出すような法律をつくることはできないのですよ。だから、私は、この場合に具体的に言えば、県議会あるいは市町村議会で住民を代表するものの賛成を得るか、それでなければ——そういう手続をとらないならば、住民投票をして、いずれにしても主権者である住民の意向というものを反映しなければならぬということを言っておるのです。これは、私は、自治大臣は相当苦しいだろうと思うから、自治大臣には私は質問しませんけれども、こんなばかな、あなた、法律がありますか。どうです、山中さん、当該議会の同意議決ぐらいは得るようにしてやってくださいよ。それでなければ、地方自治は、もう何というか、一つ一つくずされていくことになりますよ。その点、ひとつ、どうですか、最後に。
  48. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) まあ、私もそのところを別段異論があるわけじゃありませんが、たとえば過疎地域対策緊急措置法をつくりましたときも、市町村が県に申請をして、県道として一応工事をやってくれる場合には国が七割を持ちましょうというものもありましたので、特別に議会の同意を経なければ絶対にできないというような——その市町村が、あるいは都道府県なり管理者が不利益をこうむることを議会に相談しなかったというものにはならないと思うのですね。しかしながら、議論は、固有の本来の事務であるべきものを国に上げるわけですから、その固有事務の執行について国にゆだねることについて同意を事前に得べきではないか、このことは私もよくわかりますので、実際上は建設大臣のお答えになりましたようなことになると思いますが、法律に書いていないという点については、そこまで書く必要はないということで書かなかったということであります。
  49. 占部秀男

    占部秀男君 時間がないからしようがない、区切りますけれどもね。法律に書く必要がないから書かなかったのだということになると、すべての法律がそうかというと、そうなっていない。やはり議会の同意を得るとか、議会の議決を経て出すという法律は幾らでもある。これはもう、時間があれば私はこれで引っ込まないのだけれども、時間がもう九分も出ちゃっているから、しようがない。このまま切りますよ。切りますけれども、あなたは、そういうようなことは、もう少し考えてやってもらいたい。     —————————————
  50. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 松井誠君。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  51. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記を起こして。
  52. 松井誠

    ○松井誠君 私は、前回、それこそ希代の悪法だといわれる、いわゆる公用地法案、これをもっぱら憲法の二十九条と三十一条との関連で追及をしたわけです。そのときに、三十一条の関係で、法制局やあるいは防衛施設庁長官のいままでの衆参を通しての答弁が非常にあいまいでございましたので、文書にするということをお願いをしまして、それが、きょう皆さんに配られましたので、そのことを中心にしてあらためてお尋ねをいたしたいと思います。  その前に一言申し上げたいのでございますが、私がもっぱら法律的な側面からものを申しますのは、この法律の政治的な不当性というものの裏づけを——政治的な不当性というものを法律的な違法という裏づけで立証をしよう、そういうことであります。ですから、何か、あれこれ法律の手直しをして、一応形の上で斉合性を得ればそれでいいんだというような条件では、もとよりない。いまのこの法制をいろんな意味で踏み破っておりますから、おそらく、どう手直しをしても、法律的に統一的な理解ができるような——いまの法制のワクの中で理解ができるようなことにはならぬと思いますけれども、かりになったにしても、それは政治的な不当性というものを少しも軽減するものではない。そういう意味で私はお尋ねしておるということを、あらかじめ申し上げておきたいと思うんです。  そこで、最初に、憲法三十一条との関係でお尋ねをいたします。衆議院で中谷君の質問主意書に対する答弁があり、それに基づいた衆議院委員会での議論があり、そしてそれを引き継いで、中谷君の第二次の質問に対する答弁が出て、それに、私の先般の要求を含めた三十一条との関係を補足をした文書が出てまいりました。とにもかくにも、ここで一応の土台ができました。議論をする土俵が一応確定をしましたので、そのことからお尋ねをいたしたいと思うんです。  この前、私は、いままで法制局でいろいろ言ったことについて、いままで言ったこととの関係についてはもう聞かないということを申しました。しかし、出てきた答弁書を見ますというと、やっぱりそれは一言聞いておかなきゃならぬことがある。非常に法律的な議論になって申しわけありませんけれども、それは、いわゆる停止条件付処分という問題であります。  御承知のように、最初、島田長官も、この告示というのは停止条件付きの処分だという趣旨の発言があって、その後いろいろと経緯があって、これはやはり準法律行為的行政行為であって、停止条件付き処分ではないというようなニュアンスにとれる発言があった。そして総理は、まあ、御記憶かどうか知りませんけれども、そのように、再答弁の際には、前向きに検討しますという趣旨の答弁総理自身の口から出ておる。ところが、出てきました再度の答弁書には——中谷君は、停止条件付処分という第一次の答弁書に書いてあることばは明らかに間違いだから削除すべきではないか、こういうのが第二次の質問主意書であります。ところが、依然としてその点には触れないで、今度の答弁書が出ておる。それは、私に対する、この委員会に配られた資料と前半は同じでありますから、それを見ていただけばわかりますけれども、この告示というものが停止条件付処分であるかないかということについては、依然として触れておらない。そこからまずお伺いをしたいんですが、中谷君がそのことに焦点をしぼって、そのことについて削除すべきではないかということを言っておる、そのことについて何も答えていない、これは一体どういうことなんですか。
  53. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) この中谷さんに対する答弁書も、それからこの間御注文がありましたのにおこたえしてお配りしたものも、実は、法律案の構成における実体を書いたつもりでございます。これを停止条件とか、あるいは今度もわざわざ抜かしたわけでありますが、準法律行為的行政行為であるとか、何にあたるかというよりも、その実体を申し上げたほうがいいだろうというわけで、今度の答弁も、中谷さんに対する今度差し上げた文書も、中谷さんに対する答弁も、その点は触れておりません。あえて御質問があれば、その点にお答えしなければなりませんが、準法律行為的行政行為と申しましたのは、例の告示の法律的な性格として、学理上一般処分的性質のものとか、あるいは行政立法の性質のものとか、あるいは準法律的行政行為とか、そういうような一般的な分類がございますので、その告示というものを、本件の告示をそれにあてはめて言えば、それは準法律行為的行政行為であろうということを申しました。それから行政庁の処分ということをよく言っておるのでありますが、これはあるいは処分ということを言ったこともございますが、これは訴訟法の救済手続との関係で論ずる場合にしばしばそういうことばを用いまして、行政庁の処分として、それは訴訟救済の対象になるであろう、また、そう考えるべきであろうということを申し上げましたが、答弁あるいはお話をしている過程で、それらが一緒になりまして、御疑問をさらに誘発したのかもしれませんが、本意は、いま申し上げたとおりであります。
  54. 松井誠

    ○松井誠君 依然としてわかりません。それじゃ、具体的に言いますけれども、この告示というのは準法律行為的行政行為、それは条件付行政行為ですか。
  55. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 告示というものを、先ほど申したように、抽出して、その法律との関係で申せば、準法律行為的行政行為であるということであります。
  56. 松井誠

    ○松井誠君 条件付きかどうか。
  57. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 条件付きということは、そういう意味では考えられません。
  58. 松井誠

    ○松井誠君 条件付き法律行為ではない、しかし条件付き、停止条件付き処分である、このこと自体は全く論理的に矛盾をしているわけです。そうでしょう。それじゃ、こういう聞き方をしましょうか。これは停止条件といいますけれども、一体、条件なのか、期限なのか。衆議院の段階で、期限であるかのような御答弁もなさっておりますね。これを、まずお聞きをいたしましょう。
  59. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) それは、お答えするには、ちょっと時間がかかるわけでありますが、この告示に表示された土地等についてこの法律案で使用権が生ずるのは、沖繩の施政権の返還の時点であるわけです。そういう意味で、それはまさに時点でございますが、しかし、ある土地等がこの告示に表示されていたとしましても、そのことから当然に沖繩復帰時点にその土地等に使用権が生ずるわけではない。その際に、暫定使用法所定の要件が、つまり、現に供され、引き続いて供する必要があるという要件が充足されていなければならぬわけであります。これは言うまでもありませんが、その意味で、使用権の対象たるべき土地あるいは使用の方法をあらかじめ確定するこの告示が、沖繩復帰の際に、暫定使用法の規定と一体となって使用権設定の効果が生ずる、やっぱり一定の要件の充足ということが必要である、この条件というのは法律的にどうかということがあるかもしれませんが、要するに、そういうものが、もしその要件が充足されているとすれば、この返還の時点において、それは条件といっても差しつかえないのではないかという気がいたします。しかし、そう言うと、告示に条件があるかという御質問がまた出ると思いますが、それは違うのであって、いまのは法律の実体との関係において御説明申し上げているということを御理解いただきたいと思います。
  60. 松井誠

    ○松井誠君 法律の実体、実体と言いますけれども法律の実体は、告示があって、そうしてその告示に基づいてどういう法律上の効果が生ずるかは、法律の実体ということばがあんまり法律的じゃありませんけれども、まさにそれと一緒になって生ずるものでありましょう。私が言っているのは、条件か、期限かと言っているのは、つまり、条件というのは、将来そういう時期が来るかどうかがはっきりしない、期限というのは間違いなくやってくる、そういう違いがあるわけですね。条件なのか期限なのかという衆議院での質問のときに、期限があるかのような答弁をされておるわけです。この場合に停止条件付きということが問題になっておるのは、施政権返還というものをきっかけにしている。施政権返還というのは必ずやってこなければならない期限なのか、施政権返還というのは、やってくるかこないかわからない、そういう不安定な条件なのか、それが一つの問題でしょう。そのときに、期限であるかのような言い方をしているものだから、施政権返還というのは不確定な要素があるものだから——批准されてしまえば別ですよ。批准されてしまえば二カ月以内に効力を生ずるのだから、これは期限になる。しかし、批准されるかどうかという問題は、依然として不安定な要素になっておる。したがって、法律的には依然としてこれは条件ということにならざるを得ない。であるのに、期限と言っているものですから、ますます話がこんがらかるのでありますが、これはまあ、わき道ですから、もうやめます。ただ、問題は、この条件付きというのが施政権の返還をきっかけにして——それを条件と言うか期限と言うかは別として、そういうものをきっかけにして使用権が生ずるのだという意味で条件付きと言っておって、そして、準法律行為的行政行為というのは条件はつけられないのだ、そのことがはっきりしたものですから、今度は停止条件付きという問題を撤回せざるを得なくなった。しかし、撤回するということはたいへんなものですから、いまだに何かこれに固執をされておる。考えてみると、一体、これが条件付きかということ自体、つまり、行政行為の付款であるかどうかということ自体が実は問題。つまり、これは法定条件であって、条件ではないのじゃないか、初めから。したがって、かりにこれが準法律行為的行政行為であったにしても、これはまさに条件付きじゃないのだから付款はつけられないという、その行政法の教科書に書いてあるそのこととはちっとも矛盾をしない。ですから、何も、法制局は、この停止条件付き云々ということを訂正する必要は初めからなかったのじゃないか。どうですか。
  61. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) おっしゃる意味はわかっているつもりでございますが、要するに、この条件付きとか停止条件付きとか、そういうような言いかえた言い方を抜きにしまして、実際に法律の構成上どうなっているかということを実は申し上げたいわけであります。それで、それを期限と言うことについて、あるいは条件と言うことについては、それぞれ私どもの、何といいますか、求められれば、説明が要るわけでありますし、また、申し上げられると思いますが、たとえば、この告示というものを取り出して、準法律行為的行政行為である、これは私は間違いないと思います、告示を中心にしてものを考えれば。それに条件がつけられるかといえば、そうではないと言わざるを得ない。これは学理上当然の結果として、そうだと思います。しかし、またたとえば、さっき申し上げたように、法律上の要件、これが必ず復帰の際に実現するとは限らない、これはわれわれ法律家の悪いくせかもしれませんが、この告示があった土地等の使用を沖繩復帰の日までに米軍がやめたというようなこと、これは全く仮定の議論にしかすぎませんが、そういう議論をすれば、あるいはそれは条件になるかもしれません。そういう意味で、あちこち乏しい頭を向けながら、いろいろな角度からの御質問に答えて、法律用語を考えながらやるとなると、その場面に応じた御答弁が出るわけでありますが、要するに、言いたいことは、中谷さんに対する答弁あるいは今回お配りをしましたその実体、それがわれわれの言いたいことであります。
  62. 松井誠

    ○松井誠君 どうも、乏しい頭じゃなくて、頭があり過ぎて、つまり、政治的にものを考え過ぎるものだから、こういう非常に混乱したことが生ずるのじゃないか。普通常識的に考えれば、これは、告示というのは施政権の返還までは効力を生じない。だから停止条件付きだろうと一応は考えられるわけです。しかし、それではその告示に対して行政訴訟が起こせるかどうかわからぬのじゃないか、そうなりますと、憲法三十二条の裁判を受ける権利を奪うということになるのじゃないか、それではたいへんだ、だからひとつ、停止条件付きとは言ったけれども、しかし、告示は公布と同時に効力を生ずるという形にしなければなるまい、そういう形でまた変わってくる。そういう政治的な効果というものを先に頭に置いて理屈を考えますから、こういうことになるのだと思うのですよ。  しかし、そのことはもう繰り返しになりますからやめますが、この「法律上の効果」という、この文書に書いてある「法律上の効果」、これはまた、あなたが言われるような、そういう表示行為ですね、「土地の区域等及びその使用の方法を具体的に明らかにして表示する行為である。」、これが、言ってみれば、その法律効果ですね。ところが、この法律上の効果として考えれば、土地の区域等を明らかにする、そのこと以外にはないのではないですか。あなたがよく言われる使用権の設定という、つまり、「告示のよつて立つ基盤」、この文書のことばを使えば「よつて立つ基盤」、それに基づいて使用権が設定をされる。法律上の効果というのは、これは告示そのものの法律上の効果ではないわけです。告示そのものの法律上の効果というのは、かりにあるとすれば、地域等を具体的に明らかにして表示をする、そういうのが法律上の効果と言えるかどうかは、また別です。  また、お尋ねをしますが、告示だけのことを私は聞いている。しかも、その告示が施行された——公布をされたそのときの法律上の効果を聞いている。そうすると、せいぜいあるとしても、土地の地域等を具体的に明らかにして表示をする、将来使用権が設定をされるべき土地の区域、そういうものをはっきりさせるという法律上の効果しかないのじゃないか。それであるのに、さらにそのあとにこの使用権設定という法律上の効果というものをくっつけるものですから、ますます議論がこんがらかる。私の聞いている告示の法律的性質というものは——法律上の効果というものは何かといえば、ここに書いてある「表示する行為である。」、ここで切ってしまえばいいんじゃないか。
  63. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) おっしゃるように、切ってしまえばいいんだということをおっしゃるわけでありますが、告示そのものだけを、ここに書いてありますように、取り出して言えば、表示行為であることは間違いございません。間違いございませんが、しかし、それだけではこの告示は意味はないわけです。この告示は何のためにするかと言えば、使用権の設定のためにするわけです。要するに、そういう法律効果を発生するための法律要件である。すなわち、その告示は要件事実である。このことを抜きにして告示を論ずるわけにはいかぬものですから、そういうことを申し上げているわけです。
  64. 松井誠

    ○松井誠君 要件事実ではあっても、少なくとも使用権が設定されるまでは、単にこの区域を確定するという法律上の効果しかないわけです。この法律上の効果が、しかし、そういう意味でさえも、生ずるのかどうか、私はきわめて疑問だと思う。つまり、沖繩の土地というのは、日本の政府の管轄権にはない。その土地の処分権というのは、いかなる意味でも全然ない。そういう処分権のないところの土地について確定をするということ自体、そのことが一体日本の国家行為としてできるのかという疑問がある。使用権の設定は、もちろんできませんね。使用権の設定ができないだけでなしに、将来施政権が返ってきたときに、ここの土地の使用権を設定するのだという、そのことを確定をするという行為自体、これは広い意味で、やはり処分権の一種だと思う。そういう処分権の一種、広い意味での処分権、そういうものを日本政府は現在持っていないわけです。だとすれば、区域を特定をするというそのこと自体——地図の上ではできるでしょう。頭の中ではできるでしょう。しかし、法律上の効果を持ち得るような区域の特定、それを、自分が全然管轄権のない土地について、現在日本の政府ができるか、そういう問題があるんじゃありませんか。
  65. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 言うまでもないことですが、現在は法律案審議していただいている段階でございますから、いまにおいてそういう効果が発生するなんということが言えないことは、むろんそうでありますが、この法律案が、もしもやがて国会成立をされますと、法律として厳として成立するわけであります。そうしてまた、施行の時期については、告示とほかの規定施行の時期は違っておりますが、しかし、法律を根拠とした告示というものがなされ、その告示が、さっき言ったような意味があるということをお認めいただけなければ別でありますが、それをお認めいただけるならば、この告示があったというのは、さっき申し上げましたように、この告示があったことによって新しい暫定使用法の法律効果を発生するための法律要件たる要件事実が実現したということだけは言えると思います。それをまた、ほかの文書で述べておりますが、いままでのことばにあわせて言えば、要件事実というものがそこでできたということが言えるであろうと思います。
  66. 松井誠

    ○松井誠君 私は、現在、そういう効果を持ち得るかということをあくまでも聞いておるわけです。あなたは、施政権返還ということが頭にあるもんですから、そうして、それは、まるで条件でなくて期限であるかのような、何月何日という日時と同じように、必ずやってくる、そういう期限であるかのような頭がありますから、そういう議論になるのかもしれませんけれども、しかし、施政権の返還というものは不確定なものである。来るか来ないかわからない。その来るか来ないかわからない前の告示、したがって、特定をするという、そういうことが将来できるかどうかさえも実はわからない、日本の政府としては施政権が返ってこなければ。だから、そういう段階で告示が具体的な何か法律上の効果を持ち得るはずがないじゃないかというのが私の考えなんです。  なぜそういうことを言うかといえば、もう言うまでもありませんけれども、事前に告示をしようという、このことが、いままでの日本の行政行為の、いわば理屈から言えば、きわめて異例で、この告示という行政行為だけが先に施行されるという、このこと自体もきわめて異例で、そうして、この異例なことをやらなきゃならなかったという、その背後の政治的な不当性というものを私は言いたいのですよ。私は、そういう意味では、この告示というのは、少なくとも現在は事実上の効果しか何にもない。将来使用権を設定しますよという、そういう事実上の効果しか何にもないと思うのです。  したがって、それが沖繩にどういう効力を及ぼすかというようなことは、私としては、もう議論する必要はないと思うのでありますけれども、しかし、お尋ねをしたことでありますから……。このいただいた文書で、その適正手続憲法三十一条の適正手続との関係で、一体これは「事前の告知」というものに値するかどうかという、そういう観点から書かれたのは、この文書の四という項目ですね。この四という項目のところに、四のまん中以下、終わりに近いんですけれども、なぜその告示をせざるを得なかったかという理由について、最初のほうにはいろいろ書いてあって、そして終わりのほうに、もう一度書いてあるのですが、むしろお尋ねをしたほうが早いかもしれません。この告示という方式をとらざるを得なくなった理由というのは、ここには二カ所にわたって書いてあって、私をして言わしめれば矛盾だと思うのですが、この告示という方法をとらざるを得なくなった理由が書いてありますね。そして、現在の場合では、適正手続との関係では、これでまあ、がまんをしてくれというような言い分を書いてある。これは、時間がありませんから簡単に願いますが、どういうことですか。
  67. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) すべて法律案についてはそうでありますが、原案を各省庁でつくってまいりまして、私のほうで審査をするわけです。審査をするときには、あなたがいまおっしゃったようなことを、すべて申したわけではありませんが、たとえば、告示等を中心にしたいろいろな論議がなされております。その実態に応じて、これは告示でやむを得ないのではないかという結論になるわけです。その実態については、施設庁のほうからお聞き取りを願いたいと思います。
  68. 松井誠

    ○松井誠君 それでは、もう少しお尋ねをしますと、四の最初のほうには、「復帰前の施政権外における調査にも制約があって、正確を期するには多大の時間が必要である」、したがって、個人通知ができなくて、告示の方法によらざるを得なかったと書いてある。つまり、これは時間がたくさんかかるということが理由であるかのように書いてある。つまり、事実上の事情といいますか、そういうものが原因であるかのように書いてある。ところが、終わりのほうでは、「施政権返還前に行ない得る手続面からの制約」ということが書いてあるわけです。これも同じ趣旨だとすれば、それでいいのです。そうではなくて、少なくとも、いままでの答弁からは、その通知をやることは事実行為としてできるでしょう。しかし、その通知が、日本の憲法上の適正手続という、そういう要件を満たし得るような効力、そういうものを持ち得るためには、沖繩という土地に対する通知ではだめなんだという、いわば制約があって告示をやった。施政権返還という法律的な壁があるために告示をやらざるを得なくなったというように、いままで政府は確かに答弁をしておりましたし、私もそのように理解をしてきた。しかし、これを見るというと、そうではなくて、何か、たくさんの時間がかかって、やりづらい、だから、この告示にせざるを得なかったというような趣旨に書いてある。そうであるのかどうか。
  69. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) ここに書いたとおりに御理解を願いたいと思います。
  70. 松井誠

    ○松井誠君 つまり、「多大の時間が必要である」、時間がたくさんありさえすれば個別通知はやれた、そして個別通知というのは、日本の憲法の要求をしている事前の告知という、そういう法律上の効果を持ち得た、こういう意味ですか。
  71. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) これは、読んでもよけいなことかと思いますが、ここにありますように、土地の権利関係の把握に、まあとにかく、いまのような状態だから正確を期するには時間が必要であるということで、この告示の方式によらざるを得ないというふうに書いてありますし、また、そのとおりに御理解を願いたいと思うわけであります。その実態について必要であれば、施設庁長官からお聞き取り願いたいと思います。
  72. 松井誠

    ○松井誠君 実態というよりも、法律的な観点からの答弁がもし違う意味でありましたら、施設庁長官、お願いいたします。簡単にたのみますよ。
  73. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 別に違いございません。
  74. 松井誠

    ○松井誠君 そうすると、もし地主の数が少なければ、日本政府は施政権返還前に通知をして、そうしてその通知は憲法上の要請にこたえるような通知になる、そういう解釈ですか。
  75. 島田豊

    政府委員(島田豊君) あらかじめ通知をいたしますについて「多大の時間が必要である」という、この実態面でございますが、まあ個々の権利関係者を個別的に把握することは、一つは居所不明者、海外居住者等が相当いるということ、それから売買、分筆、相続等によります個人の権利関係の変動につきまして、これを把握することが非常に時間がかかる、それから所有権以外の権利者についてその実態を把握することが非常に時間がかかる、こういう趣旨でございます。
  76. 松井誠

    ○松井誠君 で、いままでの考え方、通知というものは、法律上の効力というもの、本土法上の法的効果を伴う通知というものにはなり得ないんだという、そういう立場からの議論とは変わってきたのです。しかし、これはもう時間がありませんから、きょうはやめますけれども、とにかく、この告示というのは、普通行政行為というのは、法律があって法律に基づいて行政行為がある。したがって、行政行為だけが先にあって、肝心な法律はうしろにあるというのはきわめて異例ですねそれも調べてみましたけれども、行政行為が先に施行されて、その根拠となる法律のほうの施行あとになる、それは全然例がないわけではないようです。しかし、そういう場合には、こういう権利を奪うというような形のものは一つもないのです。権利を奪うというようなときには、やはり法律がまずあって、それに基づく行政行為というのがあるのが当然なんです。ところが、法律というものの施行あとで、そして権利を奪うという、そういう、いわば前提になる、行政行為だけが先に行なわれる——行政行為というのは、元来、法律に基づいて行なわれる、法律のワクの中で行なわれる、その法律施行をされていないときに行政行為だけが施行をされる、こういうばかな仕組みになるというのも、いまの法制というものを破ってでも何でもやろうという、この基地引き継ぎという政治目的に一切が従属をされておる、そこから来るわけです。  そこで、時間がなくなりましたから、憲法二十九条との関係で、同じような観点から一つお尋ねをしたいのです。  憲法二十九条の三項は、「適正且つ合理的」ということばはありませんけれども、土地の公用収用の場合に、「適正且つ合理的」でなければならぬという、そういう理屈、これはもう政府が認めておるとおりですね。ところが、この施政権返還前のアメリカ軍の土地の接収のしかたが決して「適正且つ合理的」ではなかったという、そのこと自体は、これはもう衆目の見るところだと思うんです。それを、しかし、日本政府が引き継いできたときに、この日本本土の法律によって「適正且つ合理的」というワクの中に一体どうしてはまるのかということを、この間もお尋ねをした。時間がなかったからやめましたけれども、そのことについては、アメリカ軍の基地が日本のこの施政権下に戻ってくる場合に、日本の法律における「適正且つ合理的」という、そういう一つ一つをチェックをするんですか。チェックをしないで、いままであったから全部それは「適正且つ合理的」と認めましょうと、こう言うのですか。
  77. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) お答え申し上げます。  いまお話の前段にありましたように、暫定使用法の二条一項、これが使用権設定の実体的要件を規定しているものだと私ども見ておりますが、要するに、その各号で、基地、水道あるいは施設用地、道路敷地、これはもう大事なものですから、要らないわけにはいきません。そういうものを区分して、沖繩復帰の際に、沖繩においてこれらの公用あるいは公共の用に供されていた土地等が、復帰後引き続き、従前と同一あるいは同趣旨——これはまた御質問が中谷さんからございましたが、そういうような公用、公共に供せられるものであることを使用権が設定される土地等の要件として定めている点をとらえまして、まあ「類型として」というふうに言っておることは、前段御指摘のとおりであります。この法律自体において「適正且つ合理的」であることの要件を類型的に判断しているということが言えるわけでありますが、さて実際のときに、実際の場合には、さらにそれだけでそれじゃ供されるのかといえば、これは、それぞれの法律規定に従って、たとえば施設区域であれば合同委員会にかけるというような、それぞれの法律に従った、必要があれば、そういう手続がそこに介在してくるということが言えます。
  78. 松井誠

    ○松井誠君 最後のところを一言言っていただけばよかったんですよ。つまり、アメリカ軍の施政権下にあるときには「適正且つ合理的」という基準はおそらくなかったと思うんです。かりにあったところで、それは日本における法律の概念とは違うかもしれません。したがって、日本の施政権下に返ってくるときには、日本の法律における「適正且つ合理的」という、そういうスクリーンは必ず通らなきゃならぬ。もしそれの前提をお認めになるとすれば、そういうものは、すでに行なわれたんですか。一つ一つの基地について、これは「適正且つ合理的」だという日米合同委員会のスクリーンを通してきたんですか、これは。具体的に聞きましょうか。つまり、返還協定にリストがありますね。あのリストというものをつくる段階では、全部あれは「適正且つ合理的」だという、そういうスクリーンを通ってきたんですか。
  79. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 私が先ほどのお尋ねに対して、そういう提供なら提供の手続として合同委員会の議を経るということがありますと、その中身については、ちょっと私には直ちにわかりませんので、あるいは施設庁長官からお聞き取りを願います。
  80. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 返還協定の了解覚書のA表のところに、両国間で別段の定めをしない限り、「第二条の規定により、現在の境界線内で又は備考欄に記載するところに従い、合衆国軍隊が沖繩復帰の日から使用する施設及び区域として合同委員会において合意する用意のある設備及び用地である。」、こういうことでございまして、一つ一つについて「適正且つ合理的」ということを吟味をしたということではございませんで、こういう用意のある設備及び用地というものにつきまして、これを法律の第二条の要件に合致させまして、その、要件に適合しているというものについては、一応これは土地を新しく使用するというものでございませんで、従来使用されておった土地についての引き続きの暫定的な使用でございますので、そこにはやはり「適正且つ合理的」という考え方がそこに働いておる、こういう考え方でございます。
  81. 松井誠

    ○松井誠君 法制局長官の答弁と違うじゃありませんか。つまり、従来使っておるものは「適正且つ合理的」だという考え方が働いておるというのだけれども、働いておるという保証が一体どこにあるんですか。働いているかどうか、あなたは実態を調べてみましたか。先ほど喜屋武さんが泡瀬のゴルフ場のことを言ったでしょう。あれが一体「適正且つ合理的」ですか。冗談じゃないですよ。つまり、そういうものをほんとうに日本の本土法によって「適正且つ合理的」と言い得るためには、日米合同委員会で協議をして、一つ一つチェックをして、そしてこれは「適正且つ合理的」だと認めるという手続を経たというんなら、それでいいです。そうなんですか。
  82. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 一つ一つの施設につきましてその判断をするのは、これからの問題でございまして、復帰前に行ないます日米合同委員会で検討するわけでございます。そこで、従来米軍が使用しておりました土地につきましては、そこにやはり「適正且つ合理的」だという、まあそのものずばり、要するに、特措法の三条にありますようなものの考え方そのものずばりが、これに当てはまるわけではございませんけれども、「適正且つ合理的」というような一つの法理といいますか、これは米側が従来使用しておった土地については認められると、こういう考え方で今後手続を進めるわけでございます。
  83. 松井誠

    ○松井誠君 それは、まあ法律的に考えれば、一体それは一応「適正且つ合理的」と推定をするという意味なのか、これは必ず「適正且つ合理的」だと解釈しなければならぬという意味なのか、わかりません。  時間がないから、はしょりますけれども、「適正且つ合理的」というのは、そうすると、この覚書のAリストをつくるときにはそういうチェックはなかった、したがって、「適正且つ合理的」であるかどうかは、いつチェックをするのか知りませんけれども、チェックをして、したがってAリストは変わるという可能性はあり得る、こういうこ’とですか。
  84. 島田豊

    政府委員(島田豊君) Aリストを復帰前に変更するという考え方は、いまのところございません。したがいまして、少なくとも提供するということについての用意があるということで両国間に合意を見たものにつきましては、「適正且つ合理的」という精神がもうすでに働いておると、こういうふうに考えております。
  85. 松井誠

    ○松井誠君 そんな精神が働いておるわけ、ないじゃないですか。とにかく、包括的に全部引き継いで、それから「適正且つ合理的」かは、そのあとでひとつ判断をしましょう、そういうことになるわけだ。そうすると、少なくとも「適正且つ合理的」かどうかという判断は施政権返還の当時にはないということですよ。つまり、不適正なものも米軍基地として使用されるということですよ。その米軍のためのあの使用の特別措置法というものに違反をしたものも、この法律ができれば、あるいはこの協定が通れば、そのまま無条件に全部「適正且つ合理的」という推定で来るけれども、しかし、実際は日本の法律に違反をした土地というものができる、こういうものを、あなたの答弁自身が認めておるということになりはしませんか。
  86. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 特別措置法の第三条に規定しております「適正且つ合理的」、これは、今後具体的にこの法律適用いたします場合におきまして、その判断がなされるということでございまして、今回の場合には、従来米側が使用しておりました土地につきまして、それを引き続き使用するものについての暫定的な使用法案でございますので、特別措置法三条にいいます「適正且つ合理的」というものがそのままこの場合に当てはまると、こういう考え方ではございませんで、一応今回の法案は、従来米軍が使用しておったものを引き続き使用すると、こういう考え方でございます。
  87. 松井誠

    ○松井誠君 どういうことなんですか。つまり、「適正且つ合理的」という、この地位協定に基づく特別措置法、これはこの場合には働かない、つまり、「適正且つ合理的」でない基地が引き継がれることはあり得る、そういう趣旨なのか、あるいは、この場合には「適正且つ合理的」というスクリーンは全然要らないんだ、つまり、この法律適用を受けないんだといろ意味なのか。しかし、少なくともこの施政権の返還と同時にある沖繩における米軍の基地——そのまま認めようとする米軍の基地、これは、この特別措置法による法律に違反をするかどうかは当然検討しなきゃならないものでしょう。そういうものを検討しないで、いきなりやってくるから、こういう矛盾が出てくるんじゃないですか。
  88. 島田豊

    政府委員(島田豊君) この問題につきましては、すでに中谷先生の質問主意書に対する政府側の答弁書にございますように、「その暫定使用が同条に定める要件に該当している限り、そのうえにさらに適正かつ合理的であるかどうかが争点としてとり上げられるべき性質のものではない」、こういうような考え方でございます。
  89. 松井誠

    ○松井誠君 だから、その理由を、合理的な理由を、はっきりさせなさいよ。つまり、いままで使っておった、そしてそれは暫定期間がある、目的は同じである、引き続きである、そういう条件があれば、これは「適正且つ合理的」だと解さざるを得ないんですか。なんとかいう文句がありましたね、そういうことを法律的にきちんと説明してくださいよ。説明できるわけ、ないじゃないですか。
  90. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) いまの御質問の点、おそれ入りますが、要点をもう一回お願いします。ちょっと話をしておりまして……。
  91. 松井誠

    ○松井誠君 「適正且つ合理的」という原則は認めるわけですよね、本土における土地の公用収用の場合に。しかし、アメリカ軍の基地をそのまま引き継ぐという、全然そのチェックをするチャンスがなしに引き継ぐとすれば、それは日本の法律でいう「適正且つ合理的」だという保証は何にもないじゃないですか。どこかで一体チェックをするのかしないのか。しないでも「適正且つ合理的」だと、日本の法制における「適正且つ合理的」だと言い得るのかということです。
  92. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) この法律案は、まず第一に、新たに使用を始めるというものではなくて、これはまあ、くどくどと言うことはありませんが、ああいう法定の関係にあるものについて使用権を設定しようとするものであるということ、適正かつ合理性との関係について申せば、個々の使用がこの二条に定める要件に該当する限りは、類型としては、これは適正かつ合理性の要件を満たしているものだということは、さっき「類型として」というところでお話を申し上げました。で、「類型として」というのは、一般的に、パターンとして、そうして、この例は実は初めての例ではなくて、地位協定の実施に伴う土地等の使用に関する法律がございますが、あの法律でも、新たにこの使用権を設定しようという場合については、適正、合理性ということを一様に要件としておりますが、従前の用地を使用するについては、その要件は特段に規定をされておらないということから見ましても、一般的にあの関係に立つものは適正かつ合理性があるものというふうに認められるであろうということは先ほども申しましたし、施設庁長官もそれを述べているわけです。  で、先ほど手続としてほかにあるかということでございましたが、それは、合同委員会の合意もあるし、それから水道なんかについては、水道法等による行政行為がそこに介在をするというような手続があるという意味で、事後の手続もないわけではないということを申したわけであります。
  93. 松井誠

    ○松井誠君 なお、きりがありませんから、総理に、これは別に法律的にむずかしい判断の要る問題でも何でもないのですよ。つまり、日本で土地を取り上げるときには「適正且つ合理的」という基準が要る。これはアメリカ軍に使用させる場合も同じです。ちゃんとそれは法律に書いてある。しかし、沖繩の返還前の基地というのは、「適正且つ合理的」であったという保障はちっともない。ないにもかかわらず、それを全部もろに引き継ぐわけでしょう。当然、日本の法律のワクをはみ出したような基地があるはずです。それなのに全部一まとめにして、類型なんてむずかしいことばを使っているけれども、全部一まとめにして、これは「適正且つ合理的」だと、そういうように推定するということがわかりませんけれども、そういう理屈が可能ですか。もし不当に取り上げられ、それがかりにアメリカが何年使っておったって、何十年使っておったって、その不当性が直されるというものじゃないでしょう。治癒されるものじゃないでしょう。どういう法律の理屈を言うのかしりませんけれども、そういうことが当然であるかのような、沖繩人たちの神経をさかなでする理屈ですね、そういうものを聞いていて、おかしいと思いませんか、総理
  94. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私のは全然法律論にならぬと思いますが、私は、ただいま米軍が使っている基地、それをとにかくそのまま認めざるを得ない、そうして今度日本に返ってきたら、今度は当然、適法、適正な処置をとる、こういうことで直してかからなければいかぬ。だから、在来のままでそれを存置する、こういうことだと、これは問題がありますが、私は、その際に適正なものに変え得る、かように思っております。
  95. 松井誠

    ○松井誠君 法律論でないという前提でしたから、私も言いませんけれども、少なくとも、施政権返還直後には「適正且つ合理的」でないものがたくさんあるわけですよ。そのことをやっぱり率直にお認めになるべきだと思うのです。  それから、もう時間がありませんから、もう一点、一つ大事なことをお聞きをしたいんですが、私は、この自衛隊に提供する基地とアメリカ軍のいままでの基地を引き継ぐのと、ここでは同種と書いてありますけれども、全く同種ではないということをこの前申し上げました。そして、そのときに、このアメリカ軍の基地は、とにもかくにも安保条約という法律上の、国際上の義務としての提供だという面がある。しかし、自衛隊の場合には全然ないじゃないかという話をしたんです。そこで、ちょっとお尋ねをしたいんですが、この返還協定です。これは外務大臣になりますか、条約局長になりますか、返還協定のこの覚書のBリストですね、このBリストには、日本にいずれは返還をされるというリストが載っておる。そのリストのところに、つまり備考欄の記載に従って返還をされると書いてある。その備考欄というのは何が書いてあるかといえば、自衛隊に「引継ぎの際」と書いてある。つまり、自衛隊の引き継ぎという、そういうものを含めて、いわば、そういう条件で返還をされるというように、これは読まざるを得ないと思うんです。わざわざ「備考欄に記載するところに従って」と書いてあるんだから。備考欄というのは、元来、あってもなくてもいいものでしょう。その備考欄というものに、自衛隊の「引継ぎの際」とちゃんと書いてある。そして、わざわざ前文で、「備考欄に記載するところに従って」返還をされると書いてある。つまり、自衛隊の引き継ぎと返還とはどういう関係になっているんですか。
  96. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) このリストのABCというのは、いずれにせよ、返還の際に……
  97. 松井誠

    ○松井誠君 施政権返還の際。
  98. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) 施政権返還の際に、日本側とアメリカ側とが次のような表に従って基地の提供なり返還を行ないますと、こういうことでございますから、そのときになって日米双方合意すると、こういうことでございます。  で、B表につきましては、もちろん、いまこの段階において言い得ることは、自衛隊に引き継ぐというたてまえでB表の提供をする、すなわちA表の提供をする、これはA表とB表とは同じものでございますから、A表の提供をすると、こういうことになっているわけです。
  99. 松井誠

    ○松井誠君 ですから、その返還と自衛隊の引き継ぎとは論理的にどういう関係になるのかというんです。全然関係がないのかというんです。つまり、返してもらった土地を自衛隊が使おうと使うまいと、それは日本政府のかってだという意味なのかというんです。もしそうであるとすれば、備考欄の記載に従ってなどということを一体なぜ書いたのかというんです。
  100. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) これは、A表の中から、自衛隊の配備につきまして、自衛隊のために必要とする基地というものを返還してほしいと、こういう形でわれわれも折衝したわけでございまして、先方も、自衛隊が引き継ぐというならば、そういう前提で返すと、こういうことになっておるわけでございます。
  101. 松井誠

    ○松井誠君 少なくとも、経過は、もしこれを自衛隊が使うならばお返しをしましょう、逆に言えば、自衛隊がこれを使ってくれないなら返しませんよという交渉経過があったということにならざるを得ない。とすれば、論理的に、自衛隊があそこへ行かなければ返還をしてくれない。返還とこの自衛隊の引き継ぎというのは、まさに交換条件といいますか、あるいは、返還をしてもらうためには自衛隊の進駐が義務になったといいますか、そういうことになるわけですか。
  102. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) 自衛隊は、沖繩が返ってくれば、われわれとしては配置して局地防衛に当たらなければいかぬわけでございます。そのためには、やはりそれだけのスペースが必要であるわけです。したがって、その意味で、自衛隊配置に関して、われわれとしてはやはり先方の基地の返還をしてほしいと、こういう経緯がありまして、B表の一部がきまったわけでございます。
  103. 松井誠

    ○松井誠君 条約局長か、あるいは大臣か、どちらかが私の質問に答えてください。事実上の経過のことじゃないのです。でき上がったものを法律的にどう解釈するかという問題なんです。
  104. 井川克一

    政府委員(井川克一君) ただいま、経過はアメリカ局長が申し上げたとおりでございます。したがいまして、そのような経過に基づきまして、運輸省なり自衛隊なりが行くので、よこせというものがB表に入ったんでございまして、したがいまして、当然、そのようなことを前提としていることは事実でございまするが、あのような表の性格からいたしまして、これが完全に法律的の条件であるというふうなことにはならないと思います。
  105. 松井誠

    ○松井誠君 前提というのは、どういう意味ですか。総理は、よく前提、前提というふうに、法律について前提ということばを使われる。同じ意味ですけれども法律的に言えば、条約的に言えば、どういうことですか。
  106. 井川克一

    政府委員(井川克一君) 先生御存じのとおり、あの表は完全な条約でもございません。了解覚書と書いてあるわけでございます。いままでの実地の事務人たちの討議点をまとめたものでございます。したがいまして、そのような経緯を踏まえますれば、そのような話し合いに基づきまして、ああいうB表というものができたということでございますので、それを私は前提と申し上げたわけでございます。しかしながら、あの文書はあくまで了解覚書でございまして、法律的な、私たちのやっておりまするいわゆる条約、協定と違うものでございますので、そのような意味におきまして法的義務ではないと申し上げた次第でございます。
  107. 松井誠

    ○松井誠君 この覚書の基礎になっている協定の三条、この三条と条約というものは、いわば一体のものでしょう。三条に基づいてこの覚書というものができてきた。したがって、覚書の法律的な効果を論ずるためには、やはり三条の問題に帰らざるを得ない。そういう関係にあるんじゃないですか。三条と覚書は全然別じゃないでしょう。
  108. 井川克一

    政府委員(井川克一君) 先生のとおりだと思います。この了解覚書の一番前に「三条の規定に関し日本国政府とアメリカ合衆国政府との間で行なわれた討議の結果を示すものである。」、こう書いてある次第でございます。
  109. 松井誠

    ○松井誠君 そうしますと、前提ではあるけれども、国際的な義務を負ったものではない、そういうことですね。  それじゃ、返還というのは、これによってアメリカから返ってくるという返還は、アメリカが日本に対して義務を負ったことには、なるんですか、ならないんですか。これはやっぱり、ならないんですか。
  110. 井川克一

    政府委員(井川克一君) C表でございますか。
  111. 松井誠

    ○松井誠君 B表でもC表でも……。
  112. 井川克一

    政府委員(井川克一君) 私が先ほど申し上げましたのは、完全な意味の義務ではない、これはやはり、完全な法律行為といたしましては、合同委員会における決定というものが必要でございます。提供につきましても、解除につきましても。そのような意味におきまして、これは単なる了解覚書でございます。そして、こういうような筋でやろうという意味で、それが前提になっておるわけでございまするが、したがいまして、両者の合意によりまして、この自衛隊の九番を、たとえばどっかに移すとか、この運輸省を自衛隊にするとかということは当然可能でございまするから、これが完全な意味で法的義務にはなっていないということを申したわけでございます。
  113. 松井誠

    ○松井誠君 そうしますと、三条と覚書とが一体だということはお認めになる。そうして返還というのは、いまのところは義務ではないけれども日米合同委員会を通れば当然義務になる、これはあたりまえのことですね。そのときに、この前提ということばを、もう一ぺん問題にせざるを得ないんですけれども、そのときには、この返還と、前提である自衛隊の引き継ぎというものとは、ばらばらに日米合同委員会で審議ができるんですか。日米合同委員会というのは、アメリカ軍の基地の問題だけを審議をするのでしょう。自衛隊が行くかどうかは、日米合同委員会の議題、権限の中にあるんですか。
  114. 井川克一

    政府委員(井川克一君) 申しわけありませんが、私、ちょっと理解できませんでした。B表も、いずれにしてもA表の一部でございます。したがいまして、そのまま施設区域として合同委員会で提供するものでございます。そのとき、自衛隊云々というのは入りません。
  115. 松井誠

    ○松井誠君 いま、どうにか、その法律的な仕組みがわかりました。私は、この自衛隊の配備というのが、日本の政府がアメリカに負っておる実際上の義務だろうと思うんですよ。それがこの覚書のB表というものに出てきておる。そうすると、いわば、それの具体化としての久保・カーチス協定というものがある。そういう意味では、久保・カーチス協定はそういう意味での行政協定、実体的には。そう思うんです。しかし、もしそうでないとするならばなおさらのこと、この自衛隊の進駐というのが日本政府の義務でないとすれば、先ほど言いましたけれども、安保条約上の義務を負っておる米軍の引き継ぎとは質的に違う。安保条約上の義務を負っておる、そういう米軍に提供というのは、まさに日本政府が、安保条約というものがあれば、われわれが反対しようと、どうしようと、提供の義務があるでしょう。しかし、それと、提供の義務が何にもないという政府の説明のとおりであるとすれば、この自衛隊というものと、この米軍の基地というものとは、その提供は、基地の引き継ぎという形では、全く異種のものです。それを一緒くたにして、同種であると、一つは義務であり、一つは何にも義務がない、それを同種のものとして引き継がせようとする、そういうロジックですね。それは初めからうそなんです。それはそれで、私ははっきりさせたかった。それはもう、しかし御答弁は要りません。  最後一つ総理に、お願いよりも、お尋ねをしたいんです。これはいま申し上げたことじゃございませんで、この間、請求権の補償の特別立法のことを申し上げる際に、最後に一言申し上げました。つまり、防衛庁がこの請求権の補償の調査をやっておる。それはそれでいいでしょう。しかし、人権の回復だといわれるこの請求権の補償のための立法、それを、人権意識というものが一番欠落をしている防衛庁がやるというのはおかしいじゃないか。むしろ、やはり、内閣なり、総理府なりに、ちゃんと置いて、大がかりなそういう対策準備室というものをつくって、そういうことを具体的に発足してくれないと、沖繩人たちは、また食い逃げではないかという心配をしておる。その点の御見解はどうでしょうかという私は質問をした。しばらく時間がほしいという総理の御答弁でありましたから、お伺いをして、終わりにしたいと思います。
  116. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この、どういうようにしたらいいか、ずいぶん私も苦心いたしました。ただいまの、防衛庁ではどうも不適当だということは、それはわかります。しかし、請求権の問題等にもからみますので、法務省がずいぶん担当するものが多い、これも一つの考え方であります。しかし、どうもこの種の問題は、窓口とすれば総理府が適当ではないだろうか。そして、それぞれの所管省にそういう問題を割りつけるといいますか、そういう世話をすることのほうが望ましいのじゃないだろうか。どうも問題が非常に広範で、また根深いものもございますから、さように考えると、事態を総理府自身で取り上げる、こういうことが望ましい。まだ十分固まっておりませんが、そういう形なら一体どうだろうか、ただいまの松井君のお尋ねに対しても、まあ相談をしてみたいような気持ちもするので、私、まあ松井君の御意見だけでなしに、野党全体としての、こういう問題をいかに行政的に処理するかと、こういう意味だろうと、かように考えておりますので、そういう意味で大事に考えておりますが、ただいま申し上げるように、総理府がとにかくそういう問題の全責任を持つ。そして具体的な処理については、それぞれの担当省があるだろう、かように私考えます。いかがなものでしょうか。
  117. 松井誠

    ○松井誠君 委員長、これでよろしゅうございます。     —————————————
  118. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) この際、おはかりいたします。  佐々木静子君、春日正一君から、委員以外の議員として、それぞれ発言を求められておりますので、これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  119. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 御異議ないものと認めます。  それでは、佐々木静子君、春日正一君の順序で発言を許します。  佐々木静子君。
  120. 佐々木静子

    委員以外の議員佐々木静子君) 先に、法務大臣、ちょっと前の列にお出になっていただきたいんです、時間がもったいないですから。  この間、十二月二十日のこの連合審査会で、裁判の効力、協定第五条の裁判、特に刑事裁判についての引き継ぎのことを伺ったんでございますが、特別措置法律案の第三十条によりますと、昭和二十七年の四月二十八日前に確定した——これは平和条約締結前の裁判、あるいは昭和三十年の四月十日前にしたアメリカ民政府の刑事に関する裁判は、これを引き継がないということが、応急措置法案できまっているわけでございますが、そうすると、引き継がない裁判については効力がないのだから、再審の対象にならない。再審の対象になって、再審で裁判が取り消された場合には、これは日本の刑事訴訟法によって、当然、刑事補償法の適用が受けられる。再審の対象にならない事件については、刑事補償法の適用がないが、それに対する救済はどうするのかということを、法務省に伺ったわけです。そうすると、これは私にとっては全く意外な御答弁だったんですが、これはもう一度確認したいと思いますが、これは法務省としては関知しない事柄であるという御答弁をいただいたわけなんです。裁判の引き継ぎというような重大な問題を法務省が関知しないというのは、私は、これはどういうことかということです。裁判が取り消される、あるいは裁判が無効とされた場合に、それが消えてなくなったといっても、裁判を受けて刑に服した事実は、永遠に残るわけです。それを取り消すといっても方法がないから、そういう場合は、当然、国がその分を——金銭で補償できるものではないけれども、補償するというのが、これはもうあたりまえのことなんですけれども、この応急措置法案を考えられた法務当局、頭のいい方がそろっておられるんじゃないかと思うんですけれども、そのことにだれ一人気がついておられなかった。そうして法務省の管轄じゃないと言われるから、それじゃ、どこでも管轄の大臣、お答えくださいと言うのに、だれも黙ってお答えにならない。それだったら、しかたない、佐藤総理、お答えくださいと言うと、総理も横を向いてお答えにならない。それで最後に、山中総務長官がお答えになった。そのお答えしてくださったことに対しては、私は非常に敬意を表しているわけですが、その内容がですね、一ぺんこれを申し上げてみますと、「ただいま法務省当局の答弁によれば、法務省としては関知し得ない分野である、こういうことでありますから、それでありまするならば、沖繩県民について関知しなければならない者はまず私でありますので、その点について」どうこう言って、そうして「その事実については検討をしてみたい。いまの段階では、とっさのことでありますから、とりあえず、私の分野で検討するということを申し上げておきます。」という御答弁なんです。これ、とっさにですね、三年間もの長い間、これは何千人という人が服役しているわけです、アメリカ軍の裁判で。それに対する応急措置をですね、これは総務長官から答えていただいたことについては、いま申し上げているように、敬意を表しているわけですが、とっさに考えていただいたんですがね、これじゃ沖繩県民が泣くんじゃないか。私は非常にびっくりしたわけなんです。でございますので、それからあと、おそらく各大臣は御検討になったと思うんでございますけれども、御検討になった結果を、法務大臣、代表してお答えいただきたいと思います。
  121. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 引き継がないために、したがって、これは全く事実行為といいますか、犯罪とか何とか、そういうものとわれわれ考えていない。そこで、非常な権利の侵害とか、あるいは人権の問題があるということになりますと、やはり請求権の問題だと思います。で、請求権の問題について、はたして権利として認むべきものであるか、あるいは率直に申しまして、見舞い金であるか、あるいは戦災と同じように考えていくべき問題であるか。したがって、法務省としては関知しないということは、要するに事実、犯罪と見ないんでありまするから、そこでその後の事態につきましては、まあ私は、山中君のところで補償を例の請求権の問題として御検討願うのが妥当ではないかと、かように考えておるわけなんです。
  122. 佐々木静子

    委員以外の議員佐々木静子君) これは調査するということで、調査をして事例があり得るならば、検討するというふうに山中長官は答えていらっしゃるんですが、これは、裁判があって、違法な——日本の裁判所で引き継ぐこともできないような効力のない裁判があって、それによって刑を受けた人がたくさんあるということだけは、これは調査するまでもなくはっきりしているわけです。この米軍政府の裁判所で裁判を受けて有罪で服役した人、それは、いま総務長官のところで総数なり、どういう刑を受けたかということがわかっておられるんですか。調査するといいましても、自分が何年か前に非常に不当なはずかしめを受けたということで、補償されるということがわかっておれば、名のりを上げる人はたくさんおるでしょうけれども、補償を受けたくても、自分が無実だのに警察で調べられた、裁判で苦しめられたというようなことは、社会でいま社会人として生活している人は進んでは訴えていかないというのが、これは常識でわかるじゃないですか。米軍裁判を受けて服役した人の数、それから服役した事件名、あるいは刑罰、そういうものは責任を持って長官がアメリカのほうから資料を手に入れられ、あるいは琉球政府のほうからでもけっこうです。責任を持ってその資料収集を政府のほうでやっていただけるわけですか。
  123. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) そのようにもちろんいたします。この前に、私どもも一年数カ月をかけて、各省庁の分も全部責任を持っているつもりでありますが、しかし、こと民事刑事裁判等の問題については、あまりにも専門の分野でございますので、佐々木委員質問を受けましたときに、私自身がそこに気がついていなかったことについて重大な責任を感じました。しかし、法務省の所管ではないというならば、やはり事前にこれは法務省の所管でない問題でこういうことがあるのだということを連絡しておいてもらえばよかったと思いますが、しかし、そういうことがなかったものでありますから、すべての責任は担当大臣たる私にあると考えます。したがって、ただいまのお話は、もちろん法務当局あるいは現地の法務局の御加勢、あるいは法務関係者の御加勢をも得なければなりませんが、全責任をもってそれらの事態について調査をいたします。
  124. 佐々木静子

    委員以外の議員佐々木静子君) いま山中長官から御答弁をいただいたのですが、法務大臣として——これは裁判のことで非常に専門的なことなのでということを長官も言っていらっしゃるのですが、法務省としては、これはあくまで関知しないで、全然もう責任を回避されるおつもりなんですか。やはり法務省としても、これは裁判に関することだから、ほうっておけないということで、それを担当なさるおつもりがあるのかどうか、それを伺いたいと思います。
  125. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 担当はいたしませんが、お互いにこれは協力をして、いろいろ検討していかなければならぬ問題だと思っております。
  126. 佐々木静子

    委員以外の議員佐々木静子君) この昭和三十年四月十一日より後のアメリカ民政府の裁判、あるいは琉球政府の裁判所に対して、これは憲法に定められた日本国憲法の人権保障の適用を受けていない。米軍の軍事的な権益の保護を目的とした布令、布告によって支配された法支配のもとの裁判であるから不当であるということに対して、これは再審によって十分に救済されるというふうに法務大臣は御答弁になりましたが、再審理由というのは先日も申し上げたように、きわめて範囲が狭いわけです。その理由に特例をお設けになるおつもりがあるのかどうか、そこを伺いたいと思います。
  127. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 別に特例を設ける考えはありませんが、現在の再審の規定によりましても、さきにいろいろ例をあげておられますように、通訳をつけなかったとか、いろいろの問題から考えますと、ほとんど再審の適用があると、また再審がかなりあると私は予想しておるわけであります。実際問題として私は十分これで間に合うと、かように考えております。
  128. 佐々木静子

    委員以外の議員佐々木静子君) これは、再審について判断するのは裁判所であって、立法や行政と全く関係のない全然別個の裁判官の個々の判断によるわけでございますが、これは法務大臣が再審の理由があるとおっしゃっても、裁判官がないと判断されればこれは取りつく島がないわけですが、いまこの再審理由に該当すると思うと法務大臣はおっしゃいましたが、この刑事訴訟法四百三十五条と四百三十六条に再審理由が規定されておりますが、そのうちの何条あるいは何項にこれは該当するとお考えになるのですか。
  129. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) お答えします。  大部分の事例は刑事訴訟法四百三十五条の六号に該当して審理が行なわれる場合が多いであろうと思うのでございます。その理由でございますが、先般来法務大臣答弁されておりますように、民政府裁判所の訴訟手続はアメリカの連邦の訴訟形式によっておるわけでございます。御案内のとおり、アレーンメント制度とか特殊な制度もあるわけでございまして、そういう場合には日本の裁判の場合と違いまして、記録がたいへん少ないような事例も多いわけでございます。そういたしますと、再審の場合に証拠の新規性と明白性ということが要件になっておりますが、その新規性という点において該当する事例が相当出てくるのではなかろうかと、かように法律の解釈としては考えておるわけでございます。
  130. 佐々木静子

    委員以外の議員佐々木静子君) そうすると、法務省とすると、これは再審申し立てできるのは、検察官ももちろんできるわけですが、この理由でもってそれに該当するものは責任を持ってどんどんと再審の申し立てをするということを確約されるわけでございますか。
  131. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 積極的にやるつもりであります。
  132. 佐々木静子

    委員以外の議員佐々木静子君) 積極的にやるというお話を承って、非常に喜ばしいと思うのでございますが、これはぜひとも責任を持ってやっていただきたい。実は、私、この二十日の日の政府の御答弁内容沖繩の友人——沖繩で弁護士をしている人と電話で話をしたのです。そうすると、彼はもう泣き声をあげまして、そんなことじゃ沖繩県民はたいへんなことだ、もうこれはたいへんなことだということで非常にびっくりしたわけなんです。まあそういうふうに、実際に司法を担当している人間は、この間の政府の御答弁のままではほんとうに人権を守ることが、まずもうほとんどできないという状態なわけでございますから、積極的にやるとおっしゃったそのおことばを、ぜひとも復帰直後に責任を持って実行していただきたい。それを重ねてお願いするわけでございます。  それから、私、この法務行政というものを人権を尊重してやるという御答弁で、先日の御答弁を伺うまでわりに安心しておったのでございますが、非常にこれじゃどうにもならぬということをつくづく感じるわけなのです。例の登記の問題につきましても、いま沖繩では御承知のように戦場になって一家全部死んでしまったというのが、やっぱり沖繩県民にはたくさんいるわけなのでございます。そして、その人たちのもう所有者がない土地、相続人もない土地、あるいは相続人もない家というものがたくさんあるわけでございますが、そのような場合、日本の民法でいくと国庫にその財産は帰属することになっております。ところが、沖繩のこの実情、特に一家全部死に絶えなければならなかったということは、日本国政府の責任において行なわれたととであり、そして死に絶えた結果、国がその財産を全部取り上げてしまうというのじゃ、踏んだりけったりもはなはだしいことだと思います。その場合に、法定相続人以外の相続人を草の根を分けてもさがし出して、その人に所有権登記をするというような特例の立法を考えておられるかどうか、法務大臣に伺いたいと思います。
  133. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは、私のほうから先にちょっと答弁さしていただきたい事情がございます。それは、ただいまのお話のような点で、全滅家族は、幾ら草の根分けても、今日まで完全にとだえてしまった家族の方が、不幸にして相当ございます。したがって、部落の中にあき家があり、屋敷あとがあり、あるいは圃場が荒らされてそのまま残り、たいへん胸の痛ましい状態で、私は賞勲行政もやっておりますが、その方々に何らかの栄典行為なり、あるいは援護法適用等についても、厚生省でもだれも引き取り手がない、受け手がないという状態でありますので、私昨年、屋良主席にお願いをしまして、これは本土法令は——法律は非情でございますので、このまま返りまして国庫に帰属いたしますと、国が部落のまん中に二、三軒のあと地や家を取ったりなんかすることは、まことによろしくないことでございますから、復帰前にぜひ部落の方々で集まっていただいて、畑、たんぼ、それぞれみんなで相談をして、みんなで合意した人に譲って、その適正な代金を積み立て、あるいは屋敷はみんなで相談した人がそれを受け取って、その代金を積み立てて、そうしてそれぞれの帰属を定めて、それを永代供養料その他にして全滅家族を弔ってあげる金にされたらどうでしょうか、ということをお願いしてございます。私はきっと復帰までにそれをしていただくと思いますので、その点は私のほうで事前にお願いをしておりますことが実現をすれば、そのような沖繩にとって冷酷非情な法律適用が行なわれないだろうと、そういうことを願っております。
  134. 佐々木静子

    委員以外の議員佐々木静子君) 山中長官がいろいろと沖繩県民の権利が守られるように努力していただいているということについて、非常にけっこうなことだと思いますが、この琉球政府がそのように長官の意を受けて復帰までに完全に実行できなかったような場合、あるいはそれが実行漏れになったような場合、これに対する救済策というものは政府として考えておられますか。
  135. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ただいまのところは考えておりませんが、いろいろな実情で、また山中君のただいまの答弁がありまして、必要があれば立法を考えていいと思います。
  136. 佐々木静子

    委員以外の議員佐々木静子君) これは、総務長官もむろんいろいろと御努力いただいていることはわかりますが、何といっても登記のことは法務省の所管でございますので、法務省としても、これも積極的に、所有者のわからない場合は、法定相続人以外の者でも、多少とも縁故のある者にはそれの所有権を認める特例、あるいは相続人も、また縁故者がだれもわからない場合には、それをその村落すなわち地方自治体の所有に帰するということを認める特例というものを、ぜひつくるように推進していただきたいと思いますが、法務大臣においてお約束していただけますか。
  137. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) そういう必要があれば、これは当然やらなければならぬ。しかし、ただいまのお話のとおりに、率直に申しまして、地籍の問題は法務省の問題ではありません。登記の関係——所有権とかそういうのじゃない。権利関係を表示するだけが法務省の問題で、そのいろんな処理をどうするかという問題は、単なる法務省の問題でないと思います。
  138. 佐々木静子

    委員以外の議員佐々木静子君) その単なる法務省の管轄ではないということでございますと、山中総務長官のほうでも一生懸命そのことはやるということをいま言明されたわけですが、どこの管轄かはっきりしないということであれば、総理大臣にお答えいただかなければならないと思います。
  139. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 総理から私に答弁をしろということでございますから、したがって答弁をさしていただきます。(「質問者は総理と言っておるよ」と呼ぶ者あり)総理から私に答弁しろという名ざしでございますので、答弁をさせていただきます。いけないのなら、答弁をやめます。
  140. 佐々木静子

    委員以外の議員佐々木静子君) 山中長官の御言明はさっき伺いましたので、私も非常に喜ばしいと思っているわけです。しかし最高の責任者である佐藤総理にぜひともお述べいただきたいと思うわけです。
  141. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私が立ちかねたというわけでもございませんが、先ほど山中君がはっきりお答えをいたしておりますので、これは内閣を代表してその意見を話してくれたと、かように思っておりますから、私が立つまでもないと、かように思いましたが、私も立った以上、山中君の言明を私が確認すると、こういうことでございますから、どうぞ御協力願います。
  142. 佐々木静子

    委員以外の議員佐々木静子君) まあ総務長官の御言明の上に総理に確認していただいたので、私も安心したわけでございます。ぜひとも、これは各省あげて実行に移していただきたいと思うわけです。  それから法務大臣にもう一言、伺いたいんですが、これは先日の法務委員会のときにも私申し上げたんですが、司法制度に関する事柄は、法務省、最高裁判所、日本弁護士会の三者協議の上できめるということが、これは参議院の法務委員会の附帯決議で明らかにされているわけです。これは協定のことはそこまでいかないにしても、国内法においては、少なくとも法務委員会の附帯決議というものが生きていると思うわけでございますが、今度の司法制度に関する事柄について、最高裁判所あるいは日本弁護士会に法務大臣として協議をなさいましたか、なさったとすれば何回なさったか、お答えいただきたいと思います。
  143. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 協議は十分重ねておるつもりであります。
  144. 佐々木静子

    委員以外の議員佐々木静子君) 何回やったかと伺いましたので、やられた回数とその日時をお答えいただきたいと思うんです。と申しますのは、日本弁護士会から相当この裁判問題について要望書が出ているわけですが、伺ってみますと、そのほとんどと言っていいくらい法務省においていれられておらない。一体どういう協議をなさったのか、伺いたいと思うからです。
  145. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ずいぶん回数を重ねておりますので、何回というような回数はわからないそうでありますが、繰り返してやっておるそうです。
  146. 佐々木静子

    委員以外の議員佐々木静子君) これは沖繩の、この返還のことに関しての協議でございますか。それを重ねて伺いますが、ずいぶんじゃ比較の問題がありますのではっきりいたしませんから、おおよそ何回ぐらいということをお述べをいただきたいと思います。
  147. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) これは法務省の官房の司法法制調査部というところが司法制度の行政的な所管部局でございます。で、沖繩の返還に際しまして、この司法制度の問題につきましては、すでに一年以上前から司法法制調査部におきまして、最高裁判所の事務当局及び日弁連の関係当局としばしばこれは話し合いをいたしまして今日に至ったわけでございます。
  148. 佐々木静子

    委員以外の議員佐々木静子君) この回数を伺えなかったのは非常に残念なんでございますが、あくまでしばしばで、お答えにならないのかどうか。できましたら、それほど何回もやっていらっしゃるなら回数をおっしゃったほうが法務省もいいんじゃないかと私思うんですが、どうなんですか。そして今後もずっと協議を続けていくおつもりかどうか、そのところをはっきりしていただきたいと思います。
  149. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) ただいまお答え申し上げましたように、この協議は一年以上前から何回もやっておるわけでございまして、突然の御質問のために回数をはっきり明言できないことははなはだ遺憾でございます。また、これは、法律成立いたしました暁には、新しい司法制度の運用といたしまして、今後とも官房の司法法制調査部が中心になりまして、最高裁当局、日弁連当局と十分相談をしてまいるはずでございます。
  150. 佐々木静子

    委員以外の議員佐々木静子君) 結局、今後この法律を正式につくるについて十分に日本弁護士連合会と協議をして、その意をいれて法律をつくっていくということを約束されるわけですね。
  151. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ただいままでにずいぶん繰り返し協議をしておりますので、協議すべき問題が残っておることには考えていないそうでありますが、もちろん、必要があればどんどん協議をいたしていきます。
  152. 佐々木静子

    委員以外の議員佐々木静子君) それでは十分に今後協議を重ねていただいて、そして人権保障の面においても抜かりのないように法律をつくっていただくということを要望いたしまして、私の質問を終わりますが、これは一言で回数をお答えいただいたら四分間節約できたわけなんです。これは政府のほうの責任によるものであるということを申し上げて、私の質問を終わります。     —————————————
  153. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 春日正一君。
  154. 春日正一

    委員以外の議員(春日正一君) 先日の連合審査会のときに、佐世保市の水道局と佐世保の米軍との給水契約の問題についていろいろお聞きして、特にその中に、第十三条というところに、条例、規例とこの契約の規定条項の不一致があるときには契約の規定が優先するという条項があることについてお聞きしたところが、その点については調べて後刻返事をするということになっておったんですけれども、お調べになった結果を聞かしていただきたいと思います。
  155. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 昨日は突然でございましたので、たいへん失礼いたしました。調べましたところ、第十三条で条例、規例というようなことばを使っておりますが、原文を見ますると、コンストラクターズ・ルールズ・エンド・レギュレーションズとなっておりまして、第五条ではプリスクライブド・バイ・レギュレーションズ・プリスクライブド・バイ・ロー・オア・バイ・ザ・サセボ・シティー・カウンシルとなっておりますので、これを見ますると、第五条は明らかに法律並びに市の条例に従っている。それから問題の第十三条は、ただいま申し上げますようなことばになっておりますので、これは市水道局の内部規定ないしは取り扱い規定、こういうように解するのが適当であると、かように考えます。日本の訳文は必ずしも適当でない、かような結論に達しましたので、御了承をいただきたいと存じます。
  156. 春日正一

    委員以外の議員(春日正一君) じゃ、私は英語はあまり強くないので、まあそう読まれてみたところで、ほんとういえば英語の専門家に鑑定してもらわなければ、それで承知したというわけにはいかないのですけれども、しかしまあ英文の文を私は聞いたのではなくて、日本語の文章、しかもこの文章に、御承知のようにはっきりと、佐世保市の水道局長あるいは佐世保の市長がきちんと署名をしておる。だから、少なくとも佐世保市当局は、誤訳であろうとなかろうと、そういう条例に優先するという文句が書かれたものに署名しているわけです。これは間違いないと思う。そうすれば、そういうものに署名したということでそれが正当だといって通そうとすれば、当然これは市長は市議会できめたことを越えた契約をしたわけですから、背任の責任を問われなきゃならぬだろうし、もし誤訳であったというなら、これは改めなきゃならぬだろう、その点は当然問題としてそこに残るわけですよ。原文がこうですからという問題はあとから問題にしますけれども、とにかく日本語で書いたものにそういう条例に優先するということが書かれて、判こが押してある。そういう契約を佐世保市がしたわけですから、日本の役所ですから、日本語をやっぱり優先に考える。そうすればそうなる。それをどうされるか。
  157. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 佐世保市役所におきましても、私が申し上げましたような意味に解して運用しているようでございまするから、ただいまおっしゃいますこともまことにごもっともと存じまするので、これは訳文を改正をすべきであると、かように思いますので、適当な機会に改正をするように指示をいたして、そういたしたいと思います。
  158. 春日正一

    委員以外の議員(春日正一君) そこで、一番問題なのは英文が優先すると。いまの大臣の報告を聞きましても、原文を調べましたらと言う。つまり英語の原文にめくら判を押した、そういう結果になっているわけです。この問題はあとで問題にしますけれども、それにしても、いま大臣の報告されたように、条例ではなくて規則、内部規定だと、こういうふうに解釈したとしても、しかし、佐世保市で市民に水を供給する場合には、市の水道のそういう規則や内部規定に従って供給されておると思うんですね。だから、当然アメリカ軍といえども住民と同じ条件で給水するということにならなきゃならぬはずです。というのは、御承知のように水道法には米軍を特に優遇するという条項はありませんよ。当然これに基づいて行なわれるなら住民と同じにしなきゃならない。ということになれば、そういう契約書の中に、この契約書が佐世保市の水道のいろいろな内部規定なり規則というものに優先するというようなことを書く必要もないし、書いてはいけないことだと、そういうふうに思います。ところが、そういうことを、優先するような契約を定めるということはやはり問題があるんじゃないか。水道法にはそういう規定はないはずです。水道法に従ってやれば、当然そういうものがあっちゃいけないことだと私ども考える。その点はどうですか。
  159. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 水道法、条例に従うということは第五条にはっきり明定をいたしております。ただいまの点は、この契約の内容を見ますると、たとえば、金は円で支払うとか、あるいはまた領収書はどういうようにするとか、検針はどういうようにするとかというように、これはやはり米軍の支払い規定といいますか、それにもマッチしなければならないからというような点が多々あります。そういう点は、やはり市民から徴収する徴収規定と違ったような規定を書いておるように見受けられます。これらの点は、私は事実上、権利に関することじゃございませんから、手続上の規定でございますから、アメリカとの契約の場合にはアメリカの支払いに適当するような事柄を書くというのも、私はあながち違法、権限を逸脱した行為ではないと、かように思います。
  160. 春日正一

    委員以外の議員(春日正一君) アメリカにはアメリカの支払い規定がある、そういうことですけれども、それはアメリカの軍の内部の問題であって、たとえば日本の市役所の水道局に金を払うという場合には、やはり日本の円で払うのだし、その規定に従って使うということにならなければ、これはいけないのじゃないか。それが何かあたりまえのように、この文書なんかはアメリカが作った文書ですよ。それに判こを押すというのは、私は、占領中の習慣がそのままずうっと持ち越されて、いまでもこれがあたりまえでまかり通っておるということじゃないかと思うのですよ。  そこでもう一つさらに進めて言いますと、こういうものを読んでみますと、非常に私どもとしてはひっかかるものがたくさんあるわけです。たとえば、有効期間は米軍の随意によって終結するまでと、こうなっておる。アメリカが要らぬと言うまでは——ちょうどサンフランシスコ条約三条の規定と同じですね、無期限じゃないけれども、アメリカが欲する限りは無期限なんでしょう。そういう規定になっている。一条(b)項ですね。それから給水の量と質は、アメリカの契約官の通告で変更できるといって、随時にこれだけの質のこれだけの水というように言ってくれば、それに応じなければならぬみたような契約になっています。それから、相互で解決できない問題は米側の契約官が決定する、その異議については米軍の司令官あるいは陸軍長官が決定すると、十一条(イ)項ですね。それから先ほどの不一致の条項では、内部規定と改められましたけれども、規則や規定に契約が優先するというようなことが書かれておる。しかもこの契約の最後を見ますと、驚くべきことに、この契約に水道局長が署名をし、調印し、さらに市長がそれを裏書きする署名調印をしても、アメリカの陸軍省の調達官がこの契約を承認しなければ成立しないと、こうなっているのですよ。一体これはどういうことなのか。主権国家として、言ってみればアメリカというのは、アメリカ軍というのは日本の土地を借りておる借地人みたいなものでしょう。私どもが地主であり主権者でしょう。総理もそうだと言っていますよ。その主権者が、アメリカ軍の言いなりの文書に従って、アメリカの言いなりにいたしますというような契約をすることが許されておってよろしいのか。その点、厚生省としてこういうものをこのまま続けるのか、こういうことはきっぱりやめさせるのか。当然これはやめさせるべきだし、そして日本文を正文として、そうしてアメリカのほうが日本語が読めないならば、翻訳して英文にして読む。問題があったら日本語が正文なのだということにするのが、主権国家として当然のことでしょう。そこをひとつ……。
  161. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) おっしゃるとおり、大体この契約書は、占領当時の書き方をずっと踏襲してきておるように私も思います。いろいろ調べてみても、そういうなにが残っております。おっしゃいますように、先ほど——まあアメリカの支払い規程とか、いろいろなものにも合わなければなりませんから、向こうの要望も入れなければならないと思いますが、日本の関係当局とアメリカ関係当局との契約でありますから、したがって日本語の契約書と英文の契約書と両方を正文にするというように私は指導していきたいと存じまするし、これは今後施設庁の、何といいますか、お世話も願って、やはり一種の調達行為でございますから、そういうように指導するようにいたしたいと、かように思います。
  162. 春日正一

    委員以外の議員(春日正一君) 施設庁のほうが直接当たると思うのですけれども、この問題についていま厚生大臣は、こういうものは改めるようにしていきたいというふうに言われたのですけれども、施設庁としてはどうなんですか。まあ、あなた方は直接いろいろと関係することですから。
  163. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 施設庁はこの問題につきまして直接関与はいたしておりませんが、まあ契約を結ばれる場合におきまして、われわれとして専門的な見地からいろいろ御協力できる点は、関係機関と御協力を申し上げていきたいと、かように思います。
  164. 春日正一

    委員以外の議員(春日正一君) そういうことは可能ですね。御協力申し上げたいじゃなくて、そういうことは可能ですね、見通しとして。つまりアメリカに対してこういうものを改めさせるということは。
  165. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 私どもから米側に申し入れることは可能であると思います。
  166. 春日正一

    委員以外の議員(春日正一君) そういうことにしていただきたいと思いますし、これはやはり非常に大事な問題ですから、総理からも先ほど何か同感されたようなちょっと私は感触を得たのですけれども総理のひとつそれについての考え方を、この際はっきり聞かしておいてほしいと思います。
  167. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 事柄は、誤訳であったという、厚生大臣の言っているとおり。これはしかし、共産党から御指摘がないとそのまま見過ごされていたと、そういう意味では、共産党の御指摘はたいへん当を得ていた、適切なる御協力を得たと、私ほんとに、こういうことこそほんとうに改めるべき大事なことだと思います。おそらく契約当事者は、占領当時やったことをそのままの例に引き継いで、毎年それを更改している、こういうようなことが続いてきているのじゃないかと思います。これはただ単なる誤訳であったという、そこらであまり問題もなくいままできたことは、これはしあわせだったと思います。したがって、御注意もありましたから、厚生大臣も今度指導して、こういうことのないようにしようと、こういうことを申しております。そういう際は、おそらく施設庁長官もさっき答えたように、日米両国のものを正文とする、今回の行政協定みたように、双方のものが正文になる、こういうことではないかと、かように思いますので、これは至急に改めて、そうして御注意になったような点、これが改められることは望ましいことであり、日米友好の上にもそれは役立つことだと、私はさように思います。ありがとうございました。
  168. 春日正一

    委員以外の議員(春日正一君) 総理からたいへんお礼を言われたんですが、しかし、いままで厚生省、自治省、それから施設庁も、こういうことを知らなかったということは、やはり政府当局も、そういう占領時代の一つのやり方にそのまんまなずんできたというか、悪くなれてきたというか、そういうことがあったと思います。  そこで、もう一つお聞きしたいのですけれども、きのう厚生大臣は、米軍の給水にも水道法が適用される、こういうふうに答弁されました。そうなりますと、水道法が適用されるということになれば、米軍との給水契約というものは、県の水道公社ではなくて、各市町村がその給水区域の基地のある所へ契約するという形になるのじゃないかと、そういうふうに思います。ところが総務長官のほうは、県がやるか、あるいは場所によっては市町村で供給するというような所もあるというようなふうに言われて、これは食い違いがあるのです。だから、そこをはっきりしてほしいと思うのですけれどもね。
  169. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは食い違いがあるわけではなくて、まだきまっていないわけでありますから、県が、沖繩県の水道供給公社として運営をされていく形になるわけです。しかし、それが一部の市において、沖繩県との間において、自分のところは市町村が直接やりたいというようなことがあったら、話し合いができたらそういうこともあり得るでしょう。しかしその場合においては、いまの広域水道としてのパイプ等のつなぎ方等については、新たなる経費を要する場所もありますというふうに申し上げたので、食い違ってはおりません。
  170. 春日正一

    委員以外の議員(春日正一君) そこが違っているのですよ。水道法でいきますと、第三条「用語の定義」というところで、「この法律において「水道用水供給事業」とは、水道により、水道事業者に対してその用水を供給する事業をいう」と。だから供給公社ということになれば、これは供給者であり、さらに第五項で「この法律において「水道事業者」とは、第六条第一項の規定による認可を受けて水道事業を経営する者をいい」といって、この、水を直接供給する業務ですね、これを水道業者といっておる。だから、公社が供給業者であるとすれば、市町村におろすのであって、市町村は水道事業者に——水道法上のものになってくるのじゃないかと、私はそういうふうに解釈したのです。そういうふうになりますと、水道事業者、が水を直接あそこの米軍基地に供給するわけですから、各市町村がそれぞれ契約しなきゃならぬと、こういう問題になってくると思うんですけれども、その点どうなんですか、厚生大臣はその管轄をしておいでになるんですけれども、水道法からいって。
  171. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 今度、県の水道事業を、ただ供給業者だけにとどめるか、あるいは、いまおっしゃいました水道業者と二枚看板でやるか、これは実態に応じてやりたいと思って、いま検討中でございます。
  172. 春日正一

    委員以外の議員(春日正一君) そうすると、まだその内容はきまってない、こういうわけですね。きまってなければ、むしろその内容について議論しなきゃならぬですけれども、時間がありませんから、私はその内容については言いませんけれども、しかし、いずれにしても、県がやるにしても、あるいは総務長官の言われるように、ところによっては自治体がやるというようにしても、あらためて契約をするということになるわけですから、その際にやはり、これは自治省のほうでも指導されるだろうし、厚生省のほうでも指導されると思うのですけれども、いま私の申したようなこういう契約ではなくて、やはり総理同意されたように、主権者である日本の自治体なり公共企業体がアメリカと契約するという形で、主体性のはっきりしたものを契約するというように指導してほしいと思います。その点ひとつお返事いただいて、私の質問を終わります。
  173. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) おっしゃるように、今度は新たに米軍とそれから水道供給業者あるいは水道業者と、契約を新しくいたさなければなりません。ちょうどいい機会にいい例を出していただきまして、非常に参考になったと思いますので、先ほど御答弁申し上げました趣旨に基づきまして、りっぱな契約の取りかわしのできるように指導いたしたい、かように思っております。
  174. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) 地方公共事業に対しまして、助言指導を行なう立場にある自治大臣といたしましても、御指摘の点、誤りのないよう十分指導してまいりたいと考えております。
  175. 春日正一

    委員以外の議員(春日正一君) じゃあ、これで質問を終わります。
  176. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) この際、暫時休憩いたします。    午後六時五十八分休憩   〔休憩後開会に至らなかった〕