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1971-12-18 第67回国会 参議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十二月十八日(土曜日)    午前十時七分開会     —————————————    委員の異動  十二月十八日     辞任         補欠選任      志村 愛子君     竹内 藤男君      加藤  進君     渡辺  武君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         長谷川 仁君     理 事                 鬼丸 勝之君                 楠  正俊君                 剱木 亨弘君                 丸茂 重貞君                 松井  誠君                 森中 守義君                 矢追 秀彦君                 高山 恒雄君                 岩間 正男君     委 員                 稲嶺 一郎君                 今泉 正二君                 長田 裕二君                 梶木 又三君                 片山 正英君                 亀井 善彰君                 古賀雷四郎君                 柴立 芳文君                 鈴木 省吾君                 園田 清充君                 竹内 藤男君                 西村 尚治君                 初村瀧一郎君                 宮崎 正雄君                 山内 一郎君                 若林 正武君                 占部 秀男君                 大橋 和孝君                 川村 清一君                 田中寿美子君                 宮之原貞光君                 村田 秀三君                 森  勝治君                 上林繁次郎君                 原田  立君                 藤原 房雄君                 栗林 卓司君                 渡辺  武君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  前尾繁三郎君        外 務 大 臣  福田 赳夫君        大蔵大臣臨時代        理通商産業大臣  田中 角榮君        文 部 大 臣  高見 三郎君        厚 生 大 臣  斎藤  昇君        農林大臣臨時代        理        山中 貞則君        運 輸 大 臣  丹羽喬四郎君        郵 政 大 臣  廣瀬 正雄君        労 働 大 臣  原 健三郎君        建 設 大 臣  西村 英一君        自 治 大 臣  渡海元三郎君        国 務 大 臣  江崎 真澄君        国 務 大 臣  大石 武一君        国 務 大 臣  木内 四郎君        国 務 大 臣  木村 俊夫君        国 務 大 臣  竹下  登君        国 務 大 臣  中村 寅太君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣法制局沖繩        法制参事官    系  光家君        内閣法制局第二        部長       林  信一君        内閣法制局第三        部長       茂串  俊君        内閣法制局第四        部長       角田礼次郎君        人事院総裁    佐藤 達夫君        人事院事務総局        管理局長     茨木  広君        総理府総務副長        官        砂田 重民君        公正取引委員会        委員長      谷村  裕君        防衛庁参事官   鶴崎  敏君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        防衛施設庁長官  島田  豊君        防衛施設庁総務        部調停官     銅崎 富司君        防衛施設庁施設        部長       薄田  浩君        防衛施設庁労務        部長       安斉 正邦君        経済企画庁国民        生活局長     宮崎  仁君        経済企画庁総合        開発局長     岡部  保君        科学技術庁研究        調整局長     千葉  博君        科学技術庁原子        力局長      成田 壽治君        環境庁大気保全        局長       山形 操六君        環境庁水質保全        局長       岡安  誠君        沖繩北方対策        庁長官      岡部 秀一君        沖繩北方対策        庁総務部長    岡田 純夫君        沖繩北方対策        庁調整部長    田辺 博通君        外務省アメリカ        局長       吉野 文六君        外務省条約局長  井川 克一君        外務省情報文化        局長       和田  力君        大蔵大臣官房審        議官       前田多良夫君        大蔵省主計局次        長        平井 廸郎君        大蔵省主計局次        長        吉瀬 維哉君        大蔵省主計局次        長        大倉 真隆君        大蔵省理財局次        長        小幡 琢也君        文部省初等中等        教育局長     岩間英太郎君        厚生省環境衛生        局長       浦田 純一君        農林省農政局長  内村 良英君        農林省農地局長  三善 信二君        農林省蚕糸園芸        局長       荒勝  巖君        通商産業省企業        局長       本田 早苗君        通商産業省公益        事業局長     三宅 幸夫君        中小企業庁次長  進   淳君        運輸大臣官房審        議官       見坊 力男君        運輸省海運局長  鈴木 珊吉君        運輸省港湾局長  栗栖 義明君        運輸省鉄道監督        局長       山口 真弘君        運輸省航空局長  内村 信行君        海上保安庁長官  手塚 良成君        郵政大臣官房長  森田 行正君        郵政大臣官房電        気通信監理官   柏木 輝彦君        郵政大臣官房電        気通信監理官   牧野 康夫君        郵政省郵務局長  溝呂木 繁君        郵政省貯金局長  石井多加三君        郵政省簡易保険        局長       野田誠二郎君        郵政省電波監理        局長       藤木  栄君        労働省労政局長  石黒 拓爾君        労働省労働基準        局長       岡部 實夫君        建設省計画局長  高橋 弘篤君        建設省都市局長  吉兼 三郎君        建設省河川局長  川崎 精一君        建設省道路局長  高橋国一郎君        建設省住宅局長  多治見高雄君        自治省行政局長  宮澤  弘君        自治省財政局長  鎌田 要人君    事務局側        常任委員会専門        員        相原 桂次君        常任委員会専門        員        鈴木  武君        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君        常任委員会専門        員        竹森 秋夫君    説明員        警察庁刑事局保        安部長      本庄  務君     —————————————   本日の会議に付した案件沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案(内  閣提出衆議院送付) ○沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○沖繩振興開発特別措置法案内閣提出衆議院  送付) ○沖繩における公用地等暫定使用に関する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○国家公務員法第十三条第五項および地方自治法  第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院の  地方事務所設置に関し承認を求めるの件(内  閣提出衆議院送付) ○沖繩平和開発基本法案衆議院送付予備審査) ○沖繩における雇用に関する特別措置法案(衆議  院送付予備審査) ○連合審査会に関する件     —————————————
  2. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ただいまから沖繩及び北方問題に関する特別委員会を開会いたします。  沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律案沖繩振興開発特別措置法案沖繩における公用地等暫定使用に関する法律案国家公務員法第十三条第五項および地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院地方事務所設置に関し承認を求めるの件、沖繩平和開発基本法案沖繩における雇用の促進に関する特別措置法案  以上の各案件一括議題とし、昨日に引き続き、質疑を行ないます。矢追秀彦君。
  3. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 初めに総理にお伺いいたしますが、総理所信表明で、「明るく豊かでそして平和な沖繩県を建設する」と、こういうことをお述べになりましたが、どのような沖繩にしようと総理はお考えになっておるのか、まず具体的に所信をお伺いしたいと思います。
  4. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) きのうもその点で私ども委員にお答えしたと思っております。これで明らかになったように、明るい、明朗濶達なまた同時に物質的にも恵まれた、豊かな、また平和な、これは本土と同じような、平和で、そうして生活が安定すると、こういうような沖繩県でありたいと、かように思っております。
  5. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 この平和な沖繩という問題についてでございますけれども日米共同声明の第六項におきましては、「現在のような極東情勢の下において、沖繩にある米軍が重要な役割りを果たしていることを認めた。」と、このようにありますが、いままで沖繩御存じのようにキーストーン・オブ・ザ・パシフィックと、このようにいわれてまいりましたが、これが沖繩返還により、沖繩戦略的価値というものはどのように変わるのか、あるいはその価値は減少するのか、さらに強化をされるのか。その点について伺いたいと思います。
  6. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 共同声明当時の情勢と今日の情勢は変わっておりますが、私ども繁栄への道をたどったのも、これひとえに日本が安全、平和であると、こういうことだと思っております。もちろんわが国民のまじめなまた努力、真摯な努力が結実したと、こういうことも言えますが、同時に、われわれが平和のうちに過ごした、これにはやはりわれわれが自衛隊を持ち、そういうその足らざるところを日米安全保障条約で補っている、ここらにもやはりわれわれが見のがすことのできないものがあるんではないか、かように思っております。私は、沖繩が祖国に返還されれば、同じような立場で、米軍基地は、今度は安全保障条約範囲内において、われわれが基地も提供する責務がありますから、同時にまた軍事行動——米軍軍事行動ですよ、これは自衛隊じゃございません——これが安保条約範囲内にとどまること、これを逸脱しないようにすること、これが必要だろうと思います。かように考えますと、安全保障条約というものは、その役割りは一体何なのか。私はたいへん戦争抑止力、かような意味に役立っておるんではないだろうか、かように思います。
  7. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 沖繩基地重要性という問題について——実はこれあとで持っていきますが——一九六九年それから七〇年、この二つの、外務省情報文化局から出された「目でみる日本安全保障」という、こういう資料がありますけれども、この中の三四ページから入りたいと思いますが、その前に外務大臣にお伺いしますが、このパンフレットはどういう目的で、どういうところへ、大体どれぐらいの部数が配られておるのか、その点をお伺いしたい。
  8. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 政府委員からお答え申し上げます。
  9. 吉野文六

    政府委員吉野文六君) 本パンフレット外務省情報文化局が作成しました通常の広報用パンフレットでございます。
  10. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いま聞いたのは、どれぐらいの部数で、どういう目的で、どういうところに配られておるかと、これを聞いておるんです。
  11. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これはすぐわかりますから、問い合わせまして、直ちにお答え申し上げます。
  12. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 その問題はあと回しにいたしまして、この三四ページをあけていただくとおわかりのように、「沖繩戦略的重要性」と、これは六九年も七〇年も中身は全く同じなんです。これで沖繩を中心として円が描かれておりますが、結局これはまあ去年のパンフですから、ことしは変えられるかもわかりませんけれども、結局沖繩戦略的重要性というものは、この考えに基づいて今後ともやっていかれるのか、その点、防衛庁長官
  13. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 御指摘の点でありますが、先ほど総理からお答えがありましたように、安保条約第六条にはこういうふうに明記されておるわけです。「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与する」と、こうあるわけですから、要するにそのための沖繩基地という形になりますから、これはわがほうに施政権が戻れば、いわゆる安保条約の適用は本土並みという、非常にこれは重要なところでありまするが、いまの六条の規定のようになる、こう思っております。
  14. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 最近総理は、情勢の変化ということも言われましたが、中国との問題も非常に論議をされておる中で、このように中国の中、奥深くまでF105の行動半径が入っておる、こういうパンフレットが、パンフレットとして出すことがいいのかどうか、その点いかがですか。防衛庁の中でこういうことがあるなら、まだまあ……。それでも私は反対ですけれども外務省としてこういうふうなかっこうのものを出すことは、平和自主外交を言っておられるたてまえから、中国等を刺激することにはならないか、その点はいかがですか。
  15. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この三四ページ、この図解はいろいろ誤解を招くおそれもあると、私は率直にさように考えます。これは概念的にこの程度のものを考え、しかも安保の性格から申せば、ただ防衛的な軍事力だと、かように考えればいいわけで、これは攻撃的な範囲だと、かように考える筋のものではないと思いますけれども、どうもやや図解そのもの誤解を招く節があるかと、かように思います。
  16. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いま総理から誤解を招くというお話がありましたが、その前の三三ページというのは、もう一つ誤解を招くわけです。これは沖繩ではなくて、本土を含めてでありますが、「米軍基地必要性」、こういう中に、北京から約一時間四十分、ウラジオストックから約五十分、ユージノサハリンスクから約二十五分と、こういうそのジェット機が東京を向けて飛んでおる絵がかいてあるわけです。片方では米国から約八時間、船で約十四日間、ハワイから約五時間、グアムから約二時間、沖繩から約一時間十五分、こういうふうに書かれてあります。これは明らかに中国——ここでは中共になっておりますが、ソ連仮想敵国とした上で、日本の安全を守るために米軍基地が必要であると、こういうことを非常に強調されておる図であると私は思うのですが、これは非常に問題である。私は特にこちらのほうがより問題ではないか。さらに続きまして、一ぺんに固めて言っちゃいますが、四二ページ、四三ページをあけていただきたい。これは「日本列島に接近する国籍不明機」の侵入経路等がかかれているわけです。これは全部ソ連に帰っているわけです、この飛行機は。しかも四三ページには「日本領空に接近したソ連製「バイソン」重爆撃機」と、しかもこの中の文章では、「日本領空には、国籍不明の航空機が毎日のように接近してきます。」そのあと自衛隊緊急発進のことが書かれて、「この緊急発進スクランブルと呼んでいますが、その数は年間三百回以上に達しています。」こういうことがあります。  それからもう一つ。全部問題なんですが、特に大きな問題だけを出しますと、五二ページでは「大きな商船隊・小さな護衛力」と、こういう図解が出ているわけです。その下の文章を読みますと、「幸い日本は充分な規模の商船隊を持っていますが、万一の場合それを護衛する海上自衛力の比率は、世界主要国の中では最低と言えましょう。」と、要するにこれは、結局、勘ぐりと言われるかもわかりませんが、マラッカ海峡防衛論等にもつながってくる。しかもこの一番最後、六〇ページ、パンフレットの「むすび」の一番最後のところでございますが、四行目から……。その前にいろいろ平和外交云々のことが出ておりまして、「しかし、だからといって「平和外交だけで、わが国の安全が守られてきた」とはいえないのです。」と、「わが国は、平和外交を推進するかたわら、わが国の安全を守るため、国力に応じて自衛力を整備し、足りないところを日米安全保障体制で補ってきました。」このカッコの中の「「平和外交だけで、わが国の安全が守られてきた」とはいえないのです。」と、非常にこの点を強調されておる。元来であれば平和外交が主体であるべきです。ところがこのパンフレット全体を通じて言えることは、これはもうどうしても私はいまの外務省平和外交という上で日本安全保障を宣伝されようとするパンフレットとはとりにくい。ほとんどこれ軍備関係ばかりです。これが防衛庁宣伝パンフならまだわかるのですよね。外務省宣伝パンフレットとしては、これは総理も率直にお認めになりましたが、非常に誤解を招くことが多い。しかもこれが六九年、七〇年と続いて同じものが出ている。しかも六九年には総理ニクソン大統領と会見をされて共同声明も出ております。沖繩返還もはっきりしておる。それからあとつくられておるわけです。しかも、まだ沖繩のこういった戦略的価値であるとか、こういうことが書かれておることは、結局いまの政府のとっておられる自主平和外交というものではなくて、むしろ中国が盛んに——それはオーバーに指摘をしておるかもしれませんが——軍国主義復活と。要するに軍備というものをかなり前に押し出した上の外交の姿勢と私は見ざるを得ない。しかもこのパンフレットは、あとから報告があると思いますが、総理のお持ちの六九年の一番うしろ電話番号がスタンプで押してありますが、——もう一つうしろです。その電話番号はこれは武蔵野市です。自衛隊募集事務所です。自衛隊募集パンフレットにも使われておるのです。この点、防術庁長官御存じですか。だから、外務省は何を宣伝されようとしているのか。これはもちろん日本の内部だけではなくて、どうせ海外へもこれはいろんな形で翻訳をされ、また外国の方もこれをごらんになると思うのです。そうすると、政府外交方針というものは、口には平和を唱えるけれども、実際はそうではない。それを裏づけるのが四次防であり五次防である。だから軍国主義復活といわれる。しかもソ連機の問題、あるいは北京から一時間五十分で飛行機が来るような、こんな仮想敵国としてある。非常に私は刺激をすると。この点について外務大臣及び総理から御答弁をいただきたい。
  17. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) わが国外交基本方針平和外交である。これはしばしば申し上げておるとおりであります。つまり世界じゅうが平和でなければわが国にも平和はあり得ない、世界じゅう繁栄しなければわが国にも繁栄はあり得ない、そういう地位を占めるわが日本国になってきたわけであります。ですから外交基本方針といたしましては、どこまでも平和に徹した考え方を進める。しかし現実の情勢はどうかというと、平和世界が実現されるという、その理想に到達するまでの間において、世界じゅう国々が、これは孔子さまだ、孟子さまだ、釈迦だキリストだというような国々だけになるということでありますれば、これはもう軍備は要りません。しかし、どういうよこしまな考え方を持つ国が出てくるかもしらぬ、気違いが出てくるかもしらぬ、あるいは激情というものにかられるような国が出てくるかもしらぬ、そういう可能性に対しましては、これは備えるところがなければならない。しかし、どこまでも他国を侵しては相ならぬ、過去のようなあやまちをおかしてはならぬ、そういうようなことで防衛的な軍備だけはどうしても持ちたい。これが自衛隊であります。しかし自衛隊は、それだけで国が守れるかというと、それじゃ足りない。やっぱりわが国の安全はわが国の周辺の安全までなければわが国に安全はあり得ない。火の粉をかぶると、こういうふうに総理は申しますが、そのとおりだと思うのです。そこで日米安全保障条約を結びまして極東の平和を維持するという義務をお願いしている、こういう状態です。そういうわが国の安全に関する立場をPRする、平和を基にする。しかし、それまでの過渡的な間におきましては、これは自衛隊の必要もある、また安全保障条約の必要もある、そういう立場を鮮明にしよう。これが私はこのパンフレット目的である。そういうふうに思います。最後の「むすび」をお読みくださいましたが、まさに平和だけではわが国の安全は守れない。平和は基本です、しかしそれだけでは足らないといみじくも言っている、そういうふうに思います。
  18. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまの外務大臣の答えでいいかと思いますが、このパンフレットを読んでみまして、私は矢追君が指摘されるような点はないように思います。ことに最初の三三ページ、これはソ連あるいは中国からは日本に対してたいへん近距離にあり、同時にわれわれが結んでいる安全保障条約の相手であるアメリカアメリカから本土へくるのにはこれだけの時間がかかる。それはそのままの事実を示している、こういうことでありますから、私は駐留することはこれはやっぱり安全保障条約を締結する以上、やはり必要ではないのか、かようにあえて私は申し上げたいのです。これをもって直ちに仮想敵国を持っていると、ソ連あるいは中国仮想敵国だ、かように言うことは、それは早計、また論法から申しましてもそこには飛躍がある、かように私は思いますですよ。とにかくただいまの状況で、そのあげられた二つの国はいずれも核兵器を持っておるんですよ。核兵器を持たない国が軍国主義で、核兵器を持っている国が軍国主義でないというような結論は、どこから見ても、皆さん方の主張から見ても当たらないんじゃないかと私は思います。またこの三三ページは、そういう意味でこれは駐留が必要だ、こういう意味の表現をしておると私は思います。  それから四二ページ、これはもう現にスクランブルしばしばやっております。またこのとおりわが国のほんとうに領空すれすれに国籍不明機が飛んできている、これは事実でございます。この点を、われわれが毎日のようにまた国民に知らせてそうして防衛熱でもあふっていれば、これまた軍国主義化するおそれありと、かような御指摘も当然かと思いますが、そうじゃなくて、この実態をよく把握してもらわないと、これまた間違いが起こるんじゃないだろうか、かように私は思います。むしろ実情を知っていることのほうが望ましい形じゃないか。  さらに、この商船隊とまた海上自衛力の関係もそういう意味でやっぱり理解されてしかるべきじゃないだろうか。ことに日本の産業、また日本の国のあり方から見まして、これはもう絶対にわれわれが平和に徹してこの商船隊を守る、そういう形でなければほんとうの繁栄はとてもできるものではない、かように思いますから、私は、どうも先ほど一番最初にあげられたものはいかにも範囲としてやや不適当じゃないか、誤解を受けるんじゃないか、かように思いましたが、ただいまのような点を次々に読んでみると、これは一貫していて、これこそ必要なことじゃないだろうか、かように私はどうも遺憾ながら結論としては矢追君のお尋ねにこたえるわけにいかない。これはただいま外務大臣が答えたように、こういうことが必要なんではないだろうか、かように私は思います。  ただ、こういうものが自衛隊の募集事務所の番号にまで利用されるというような、これはいかがかと思いますから、これらの点はくふうをする必要があるだろうと思いますけれども、そういう個々の問題よりも、総体としての考え方、これはやはり日本の置かれている国情、その実情をやはり十分国民が認識すること、これが何よりも必要だろう。その上に立って平和に徹する。そういう考え方が生まれてこないと、真の平和への努力というものは実を結ばないんじゃないか。こういう実情にあるから、右してもいいんだとか、あるいは左してもいいんだ、こういうことではなくて、こういう環境にあるんだ、そういう場合に日本はどうするか。われわれはどこまでも平和に徹する。しかし自分の身を守るための自衛力は整備していく。それも国力、国情に応じてやるんだ。格段の相違で、一躍強い自衛力を持とう、こういうわけではございませんから、それらの点は誤解のないようにお願いをいたします。
  19. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) パンフレットにつきましては、いま総理及び外務大臣の御答弁で尽きておると思うわけでありまするが、あれを自衛隊が使ったのか、その点でございますが、あのパンフレットそのものは日米安全保障条約を自動継続にするあの時点のパンフレットのようであります。したがいまして、日米安全保障条約の点にアクセントが強くなっておると思いますが、その説明にですね。そこで、いま調べてみましたところ、地方連絡部等々で募集業務に当たっておりまする事務所にあれを若干もらってまいりまして置いておきます。そして日米安全保障条約自衛隊の関係とか、日米安全保障条約とはいかなるものかということを、わかりやすく説明するために希望者に渡した、この程度のものであります。
  20. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いま総理からいろいろ弁明がございましたけれども、このパンフレットには、実にいまの政府のすべての考え方、方針が含まれておる。要するに、GNP第一主義ということが第一部には大きくうたわれている。これがまず問題です。これは非常に議論されている問題です。それから第二、第三部、第四部、要するに、このパンフレットの大部分は軍事的な問題。それで最後に貿易です。結局いまの政府——もちろん貿易はやらなければ日本の経済が持たない等の問題は当然でありますが——貿易至上主義、これが現在のドルショックを招いた大きな問題であります。それからGNP第一主義。そしてそれに加えていま私がずっと主張してきたような、そういった仮想敵国ではないと言われますけれども、これを見られたら仮想敵国と言わざるを得ないですよ。しかも、飛行機を飛ばしているかっこうが書いてないならいいですけれども、ちゃんとジェット機のマークが入っているわけですから、これは攻めてくるというかっこうなんですから。そういうことで、結局いまの政府の姿勢を端的にあらわしている。しかも、その中で特に強調されておるのが軍事の面である。こういうことで、私は外務大臣にお伺いしたいんですが、外務省でこういうのを出す必要があるだろうか。私は、防衛庁のほうでもよくないんですけれども、まあ万々譲って、やむを得ない。外務省というのはもっと外交でしょう。もちろんそれは安全保障外務省の大事な仕事だと思いますけれども、私は、先ほどからずっと総理が言われておる平和外交に徹するならば、もっといろんなことがあるじゃないか。対外援助なんかちょっとしか書いてない。もっともっと日本の国がアジアあるいは世界の平和に貢献できる、相当これから日本として、軍備を持たない日本としてやらなければならない——自衛力は持っておりますけれども、軍隊というのは持ってないわけですよね、やらなければならぬことがある。そういうことをどうして宣伝できないのか。留学生の問題とかいろいろあるわけです。そういうのが安全保障になるんじゃないでしょうか。軍事力を主体とした安全保障、これを外務省がこういう宣伝をするということは、私は政府のこれからの外交のいろんな上において、特にお隣の中国に対しては非常に問題が出てくるんじゃないか。中国軍国主義復活云々の問題になりますと、また議論が長くなります、あとの質問がありますから、これはまた別の機会に譲りますけれども、とにかくこのパンフレットのあり方は、私は今後は正しくないと思うんです。その点いかがですか。
  21. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま矢追さんはこの一つパンフレットだけを取り上げまして論じておりますが、わが外務省には情報文化局というのがあるのです。これは無数のパンフレットを出しておる。その中の一つであります。無数といいますか、その中の大部分は文化に関する問題、それから経済交流に関する問題である。しかし、一番外交で大事な問題は何かと言えば、平和です、国の安全をどういうふうに維持するか、こういうことです。こういうことに対する基本的な考え方、これも国民に知ってもらわなければならない、また外国にも知ってもらわなければならない。私は常々言うのですが、日本はGNPで非常に高い国になってきた。しかし、軍備はほとんど言うべきものを持たない。自衛力しか持っておらぬわけです。GNPに対する比率にいたしましても、ほかの国では二%、少なくもそんなものです。まあ中くらいで三%、四%。さらにアメリカのごときは六%も使う。そういうような状態です。ところが、わが日本はわずかに〇・八%しか使っていない。まあそういうようなことで、GNPの増加が何も軍事力の増加につながっていくというようなことはない。政府は、そういう軍事力を持たない余裕を国内の建設と、それから海外への援助に使うのだ、こういうことを言っておりますが、しかし非常に大事な問題は国の安全をどういうふうにするか、こういうことです。それについて外務省がPRをして悪いということはあり得ない、私はこういうふうに思います。     —————————————
  22. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) この際、委員の異動につきまして御報告いたします。  本日、加藤進君、志村愛子君が委員を辞任され、その補欠として渡辺武君、竹内藤男君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  23. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先ほどお尋ねのこのパンフレットの発行部数等につきまして、情報文化局長が参りましたから御説明いたします。
  24. 和田力

    政府委員(和田力君) これの発行部数は百万部でございます。それで、一般知識人、文化人、放送その他のマスコミ関係のメディアには私のほうから自主的に配付いたしておりますが、あとの大部分は先方からの要望に応じましてそれぞれの要望数を配付いたしております。自衛隊等にも要望に従いまして相当お送り申し上げております。
  25. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 まあいま政府安全保障に対する考え方の宣伝を聞いているのじゃないのですよ、私は。要するに、このパンフレットがいま百万出ていると。これは相当私は多いと思います。これはかなり上等ですから、だいぶ金がかかっているでしょうこのパンフ。百万部出て、しかもいま言ったようにかなり問題がある。政府の方針からいえば問題ないとおっしゃっておりますけれども、これは非常に問題ですよ、私は。こういう非常に刺激的な、しかも「日本安全保障」という絵が——もちろん安保条約ということがいわれている点はよくわかりますけれども、いまも総理だってお認めになったわけでしょう。外務大臣はちっともこれを今後改定するとも言われないけれども、また七一年、七二年にこれと同じものを出されるのですか。その点はどうですか。
  26. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま私は初めてこれを見るのです。しかし幸いに矢追さんがこの結論をお読みくださった。この結論がこの趣旨を表明しておると思います。平和だけではわが国の安全は守れない。そこで自衛力も必要だ、日米安全保障体制も必要だ。そのとおりだと思うのです。それを、防衛庁がそのパンフレットを出す、これは当然でありますが、防衛庁もさることながら、わが外務省も国際社会におけるわが日本国立場を解明する必要がある。そういうことでこのパンフレットをやめる考え、これはありません。ただ、内容につきましてはよく検討いたしまして、誤解を招くようなことがないように、それはひとつ努力をしたいと、こういうふうに考えます。
  27. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 これで押し問答しても時間がたつばかりですから、本来の沖繩の問題に入りますが、総理衆議院の非核決議あるいは基地縮小決議を順守すると、こう言われましたが、この基地縮小の問題についていまから質問いたします。  いままでの政府の発表によりますと、特に宣伝されておるのは、沖繩米軍基地が百三十四カ所が八十八カ所に縮小されて返ってくると、こう言われておりますが、現実問題として沖繩基地は縮小されないで拡張強化がいろんな場所で行なわれております。この米軍基地が現在拡充強化されておる、そういった個所について、政府は調査等を行なわれて状況を掌握されておるのかどうか、その点を最初にお伺いしておきます。
  28. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいまは沖繩米軍施政権下にあると、こういう状態でありますので、非常に詳細なことはわかりませんが、大ざっぱなことはつかんでおります。しかし、基地が拡張強化されておる状況だという判断はいたしておりませんです。B52、これはもう撤去された。あるいはメースB、これも撤去をされました。あるいはまあ近くいわゆる特殊部隊の一部もこれは撤去されるわけであります。さらには、この返還協定が成立いたしますれば核も全然ないという状態になる。また、残るところの米軍につきましても、その機能はもうまるっきり制約をされる。つまり、安全保障条約の制約下に置かれる、こういうことになるのです。基地が拡張されたという見方、これは私は、総合的に観察いたしましてさような状態ではない、かように考えております。
  29. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 しかし、現実に基地がいろいろ整備もされておりますし、いろいろな工事等も行なわれております。そういった点を先般来ずっと調査もしてまいりまして、予算委員会等でも同僚議員からも問題が提起されましたが、さらにそれに続きまして二、三の個所でありますが、やはり基地が拡張されておる、われわれとしては強化をしておると、こう見たい事実がありますので、それを具体的に申し上げて、そして政府考え方を伺っていきたいと、こう思うわけです。  一応きちんと資料を全部見やすいように整理もいたしました。それから、次の問題も含めましてカラー写真できれいに全部整理してありますので、これをごらんになりながら、こちらから問題を出していきたいと思います。  まず、写真ではなくて、一番上に出しました、最近補強拡大された基地、これを十二カ所あげてみました。で、これ、一々やりますと非常に時間がかかりますので、今回は二、三の基地だけをピックアップしてまいりたいと思いますが、いままで大体ざっと私たちが総合しましたところによると、いまの十二カ所の基地が強化されております。  それではカラー写真に移りたいと思いますが、そのナンバー1のこの写真は、これはボロー・ポイントの射撃場でありまして、この一と二の図、フィギュア1、フィギュア2、この一のほうは観覧席がつくられておるわけです。それから二のほうはこれは監視塔です。これが最近つくられたわけでありまして、非常にこの点も何か観覧席をつくって、監視所をつくったら、これは基地の強化だというのはおかしいと言われるかもしれませんが、要するに沖繩が返還されてくる、基地も縮小の方向へいかなきゃならぬのに、こういう工事をしておる。これが一つ問題であると、このように思いますが、このボロー・ポイント射撃場、これが一つです。  時間の関係上で、次へまいりますが、同じくこの写真の中にありますフィギュア4のほう、FBISの問題は、これはちょっと今回はずしますが、四番のほうは東恩納弾薬庫、これはそこにあるのはゲートでして、これが新設をされております。ちょっと見にくいですが。それから次は二番目のを見ていただくとキャンプ・シールズと書いてありますが、この一、これは建物が新しく新築されております。それから二番目がこれはトラクターです、ごらんのように。それで工事をどんどんやっておるわけです。それから五番目、電柱が新しく見えますが、これはキャンプ入り口の道路わきに毒ガスの移動が行なわれたあとから電柱が新しくつくられておる。そこのトラクターの写真にもありますように、現在トラクターがいろいろ仕事をやっております。それから次の三番目、これは東恩納弾薬庫多幸山裏でありますが、これはあとで申し上げます核の問題ともひっかかってまいりますけれども、これは新しく弾薬庫がつくられておると、こう考えられるわけです。特に、倉庫ナンバーが六百十一、六百十七、ちょっとよく見えませんが、これは六百十七が四番の図です。それから七番が六百十一、これは倉庫ナンバーです。これは核ではないかと言われておるわけですが、その次が四番目です。キャンプ・ヘーグ、これは戦車の修理工場であります。これは新設をされましたこの四番目。いままでには、沖繩では私の知っておるところでは、修理工場はなかった。これは新しく新設をされておる。それからこの戦車工場が非常に問題である点も、これはあとで問題になるのですが、一応申し上げておきますと、いままではこの戦車の修理は、相模原あるいはハワイ、アメリカ本国で行なわれておりましたが、今回新しく戦車の修理工場ができたわけです。これがただの戦車ではなくて、一番の図はこれは重戦車でありまして、しかも、これは核を装備できる重戦車であるわけです。そういうのが新しくつくられておるところに非常に問題があるんですが、その写真と一緒に見ていただきたいのが、これはジェーンという各国の軍備の年鑑でありますが、そこの右のほうの真中にある戦車と、そこの写真にある戦車の位置は同じものです。その左の下のほうに性能が出ておりますが、そこにアムニションとしてHE、それから最後の四番目のところにニュークリアと書いてあります。ごらんのように、核ということが書いてあります。この戦車は核をつけられる戦術核をつけるところの戦車、こういうことになるわけです。これが新しく修理工場ができた、その中にその戦車がいる。はたしてこれは弾頭がつけてあるかどうかはわかりませんけれども、つける可能性のある戦車です。この修理工場が新しくできたということ、これは非常に問題であるわけですが、一応いままでの四番目までのところでも、これは一部のピックアップでありますが、このように基地縮小を総理ははっきりわれわれに約束をされておりますが、現地におきましては、拡充強化がされておる。しかも、この返還がかなり先のものでありますならば、いろいろやむを得ない点があるかと思いますが、返還を目の前にした今日においてなおこのような行為が行なわれ、私は特に問題にしたいのは、弾薬庫の問題もございますが、この重戦車の修理工場、これを非常に問題にしたいわけなんですが、いま、基地は強化拡充ということはあり得ないと、おそらくこれは整理統合ということばをつかわれると思いますが、この事実の上からどのようにお考えになるか、どう判定をされるか、この点をお伺いしたい。
  30. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあ、いまみずから自問自答していらしたように、これはおそらく整理統合だと私は思いますが、いままでも、日本本土における米軍基地、これはずいぶん公明党の方は熱心に総点検をされて、そうしてつい最近にそういうものが実を結んで整理縮小されたと。これはもう神奈川県下における諸基地においても同様のことが言えると思います。私はこれはたいへん公明党の方の御協力の結果だ。政府に御鞭撻をいただいた結果、さような問題が最近になってここ数年の間に片づいたと、かように思っております。そういうことを考えると、どうも軍基地というものについては、絶えざる関心を持って、そうしてあらゆる機会にこれを整理縮小をするという、そういう努力を積み重ねないとなかなか効果はあがらないんじゃないだろうか。過日、衆議院における決議を受けました際に私の頭にも浮かんだのは、そのことであります。私もそういう意味で、これは衆議院の決議は受けたが、しかしこれに対しての取り組み方、これはたいへんむずかしいことです。しかし、政府はこれについて厳粛に政府所信を表明しなければ国民の皆さま方にこたえる態度でもないし、また不安を除くことはできないと、かように思って、当時私はあの決議に対しては政府所信を率直に、また厳粛に表明したつもりであります。私は、いま、沖繩、これが祖国に復帰する、その裏において——そのうちにおいてと申したほうがいいか、そのうちにおいてとにかく米軍基地はそのまま引き継がれると、こういうことで、たいへんな疑惑、疑念が残るだろう、不安があるだろう、かように思います。私どもがもう声を大にして、米軍基地はあるけれども、これは返ってくれば本土並みに、いわゆる安保並びに安保の取りきめがそのまま変更なしに沖繩に適用になるんですから、変わりますから、どうか御了承いただきたい、かように申しましてもなかなか納得がいかないと、こういうような点がございます。私はそういう意味におきましても、いま御指摘になった事柄、これらをおろそかに取り扱うつもりはございませんけれども、私はこういうような事柄が、やはり軍基地がある限りにおいて、またそれが近代的な形において整理されることはこれはやむを得ないことではないか。また、それでこそ初めて駐留さすだけの値打ちがあるんじゃないか。いずれも旧式な装備状況だけで基地があったんでは、私は日米安全保障条約の役をつとめないと、かように思いますので、ただ、それが逸脱してたいへんな攻撃的な装備だ、あるいは攻撃的な設備だと、かようになりますと、これは安保条約のワクを逸脱すると、こういう危険があると。政府が、事前協議の対象になるにしても一々さような問題に答えなきゃならないと、これはたいへんなことだと、かように私思いますので、そういうような、いわゆる攻撃的な設備、あるいは外国に脅威を与えるようなものであってはならない、かように思います。この辺は、置く限りにおいて、米軍の任務も任務でございますが、十分、連携をとりまして誤解の起こらないようにいたしたいものだと思います。そういう意味で、私は、基地の総点検が別にむだだとは思っておりませんし、またそれもお願いしなけりゃならないと思いますが、ただ、いま申し上げますように、われわれは、基本日米安全保障条約を必要とする。その日米安全保障条約そのもとにおいてわが国の安全を確保するのには、一体、どういうことが大事なことか、こういう点に思いをいたして基地のあり方についても考えていかなきゃならぬと、かように私は思います。
  31. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いまの総理のお話を伺いますと、総理のお考えになっておる基地縮小というのは、まず、安保条約が適用されれば安保条約一つのワクがはめられると、したがって米軍としては攻撃的なものは一切入れないであろう、そういう、まず、外にかせが一つはめられると。そのあと米軍が徐々に撤退をしていけばそれが基地縮小になる。で、装備の古いものが新しくなる、そういう点については、著しく攻撃用でなければかまわないと、こういうふうなお考えと言えると思うのですが、その点、そう理解してよろしいですか。
  32. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 大体いいと思います。
  33. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 そうなりますと、私は、いまの総理の発言は、基地縮小という問題について非常に甘くならないかと思うのです。要するに、国際情勢が変化してきたこともお認めです。中国との間の平和外交という面もいろいろ言われておる。この沖繩米軍基地は、私は沖繩全体が戦略的価値というものは減退をしていくべきであると、こうも思うわけでありますが、いまのお話だと、安保条約のワク内であれば幾ら基地を新しくつくりかえる、あるいは新しい兵器を入れてもかまわない、こうなりますと、いま現在、沖繩にある米軍というものは、本土とは非常に違っていろいろな部隊があるわけです。それは御存じのとおりです。要するに、問題は核と攻撃用だと、それ以外は何を置いてもいい、何を強化されてもいいと、こういうことになってくると、私はこの決議に対して非常に問題になってくると思う。特に、この決議については、政府は、沖繩米軍基地についてすみやかな将来の縮小整理の処置をとるべきであると、これを順守するとおっしゃっているのです。どうも、いまの話とこれとはちょっと違うような気がするのですけれども、この点いかがですか。
  34. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 基本的な考え方安全保障条約を否定なさる皆さんと、私ども安全保障条約を必要と考えておる、そういうところに相違があるのではないでしょうか。公明党も安全保障条約を必要とする観点に立っていまお考えいただくなら、私の考え方と同じようなことになるのじゃないか。よけいなものは持たない、外国に脅威を与えるようなものは必要でない、かように思いますが、しかし旧式なものが安全保障条約の役に立たない、こういうことも御理解がいただけるんじゃないか、かように思います。
  35. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 そうすると、ちょっと、総理安保条約を認めた上で考えろなんて言われますけれども、私先ほどから言っておるように、結局、沖繩米軍基地は依然としてそのキーストンになると。しかも沖繩自衛隊がいけば、かえって米軍基地が強化される。しかも私は、どう考えても、沖繩自衛隊が行くのは局地防衛だと言われますけれども、何か米軍を守りにいくんじゃないかという気もするくらい、自衛隊配備のあり方についてはいろいろいままで議論が出ましたけれども、疑義を感じておるわけであります。要するに、たとえば、いま一つの問題である戦車の修理工場、しかもこれは重戦車であり、戦術核をつけられると。つけてあるかないかは調査できませんけれども、こういうものが新しくできるということは、結局、米軍は、沖繩を返すとは言っておるけれども、なかなか、基地縮小、撤去ということを本気になって考えた上の返還ではない、これはアメリカの雑誌の中にもあるんです。沖繩の返還は米国の利益である、ドルの節約になったと、こういうことをはっきり論調として出ているものを私は読んでおります。そうなりますと、ほんとうに総理沖繩の返還を一つの大きな政治生命をかけておやりになったと、返ることはまことにけっこうでありますけれども、その返ってくる返り方は非常に問題がある。まあ、これは返還協定の問題でもいろいろ議論されました。いま国内法案についてこの委員会でやっておるわけでありますけれども、どうしてもいま私が示しました具体的な例からいって、米軍はやはりこの沖繩基地を返す——C表なんてたいしたことないんですからね。要するに、さらに拡張強化し、そしてアジアにおける一つのキーストンというものはどうしても保っていこう、こういう方針が貫かれているように思うんですけれども、その点はどうお考えになっておりますか。
  36. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御承知のように、本土における米軍、これは安全保障条約そのワク内にとどまる、また自由出撃はできないと、こういうことで、もう本土米軍についてはだれ一人その米軍基地について云々することはなくなったように思います。ただどうも基地がまだまだ不要なものを利用しているじゃないか、もっと縮小しろと、こういうような御議論はございますけれども、いまのように沖繩のような御議論はないように思います。  ところで、沖繩施政権が返還されると、今度は本土における取りきめ同様に、沖繩における米軍に対しても安保並びに関連取りきめがそのまま適用されるのであります。私はそのことを十分御理解いただくと、いままでのような状況ではない、おそらく基地は縮小されるであろうと、かように思いますし、また攻撃的な施設などはなくなるであろうし、現にその最も代表的なものが、いわゆるニクソン大統領と私が約束した核兵器の撤去であります。そういう事態がやっぱり出てくる、こういうところにやはりメリットを考えていただいて、そしてその方向に進むべきではないでしょうか。私どもはそういう意味施政権返還を心から喜び、迎えると、これによって米軍基地が、本土米軍沖繩化されるというような考え方では毛頭ございません。これはもう本土に返還されれば、これこそ本土並みになると、かように私は思いますし、またそうならなければならないのです。  条約その他から申しましてもそのとおりであります。昨日も社会党の方から第三の安保になるんじゃないだろうかと、こういうことを言われましたが、私がわからないのは、第三の安保とは何ですかといって聞いたのはそういう意味であります。私は別に現在の安保条約につけ加えるものは何らないし、またこれを変更するものも何ものもない、さように考えると、すなおにただいま申し上げるようにとって解釈すべきが当然ではないだろうか、かように思いますので、私はその危険はないと、とにかく矢追君のお話を聞いておると、たいへん危険があるようなお話ですけれども、さようなものではない、そのことだけははっきり申し上げておきます。
  37. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 外務大臣にお伺いしますが、いまの重戦車の修理工場ですね、これはどう思われますか、これ新らしくつくられたということは。  しかも、これは戦術核をつけられると、返還をすぐ前にしてできるということ、できておるということですね。
  38. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 矢追さんは沖繩における米軍施設の機能の強化される面、それだけをごらんになりまして、軍事力が強化された、したがって、総理基地は縮小整理されるんだと言うけれども実行されないんじゃないかと、こういうふうにおっしゃいますが、現実には基地は縮小整理されつつあるんです。もう繰り返して申し上げるので申しわけございませんけれども、B52は撤去されたじゃありませんか。メースBももうなくなったじゃありませんか。また各種の特殊部隊、これが帰っていくといっておるじゃないか、あるいは返還のときにはもう核はないということをきれいさっぱりこれを実現をすると、こういうふうに約束をしておるじゃないか。また、日米安全保障条約のワク内にきちんとおさまる協定になっておるじゃないか、そういう大きな基地縮小整理の流れの面はたなに上げておいて、そして戦車工場が何か強化されたというようなことを言われますが、私はその戦車工場のことは具体的には存じません。存じませんが、観念的にお答えいたしますれば、これは基地の上の施設、これは技術の近代化、そういうような傾向に沿いまして、いろいろ変化は出てくる、そういうふうに思いますし、そういうような一面が工場の形態の変化、そういうふうになってきておると思う。しかし、どこまでも申し上げ得ることは、核なんというものは、これはもう返還時にはほんとうになくなるのだ、これはもうほんとうに確信をしてもらいたいのです。これは確信し、納得していただけるような措置はとりますから、そういう前提を無視して、どうも大きな基地整理縮小の流れがあるのに、ただその建物が変わってきた、どうも工場の内容が変わってきただろうというようなことでこの流れを否定される、そういう考え方自体につきましては、私はこれは反論せざるを得ない、こういう立場でございます。
  39. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) お尋ねの戦車工場でありますが、いま防衛局長にも、どうかということをただしてみましたが、御指摘の戦車には核弾頭をつけるようなことはしない、ありません、こう言っております。詳しく御必要であれば説明をいたさせます。  それから基地の問題は、総理から詳細な答弁がありましたが、私実は協定委員会でも申し上げたことですが、軍人というものは、一度獲得した自分の基地というものを放したがらない、これは実際通有性があると思うのです。基地によって作戦を展開し、基地によってみずからの軍の命を全うする、今度のこの復帰協定によってベトナムが事実上の停戦状況ではあるが、核抜き日米安全保障条約本土並みで、というこれに合意をさせる、やはりアメリカ側にしてみれば、国務省当局の立場というものはたいへんだったろうと思うんですね。そこでわがほうに施政権が戻ってくれば、これは当然安保条約本土並みばかりか、基地のあり方についても私はだんだん本土並みに縮小をしていく交渉を展開することはできると思うんです。それからまたニクソン・ドクトリンというものが、もっぱら経済的事情とは申しながら、極東へのコミットメントをだんだん薄めていく、そういう方向にもあるわけでありまするから、国会の決議の線に従って、総理をはじめ外務大臣、私どもも協力等をして、御期待に沿うようにだんだんこの基地縮小の方向を実現してまいりたいと思います。またこれは施政権が戻ってから可能であるというふうに考えております。
  40. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 戦車の……。
  41. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 沖繩に配置されております戦車は九十ミリの大砲を積んでおります。アメリカの新しい戦車は百五ミリでありますが、御承知のように戦車の大砲は千数百メートルから二千メートルくらいの射撃距離を持っております。ところで海兵隊が核弾頭を装備し得る大砲というものは、りゅう弾砲で百五十五ミリ及び二百三ミリのりゅう弾砲、これは沖繩の海兵隊も持っております。この場合りゅう弾砲ですと一万数千メートル飛びますから、したがって核弾頭を積むことは可能でありますが、ただし海兵隊の司令官のチャップマン大将によりますと、現在海兵隊は核装備をしておらないというふうに申しております。
  42. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 じゃその写真の一番の戦車は百五ミリだというわけですか。私は、いま言った年鑑と合わせると、百五十五ミリだと思うのですが……。
  43. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 付言して申し上げますと、戦車はいま申し上げましたように核装備はできません。ただし、いま申し上げた百五十五ミリのりゅう弾砲は、これは自走——つまり古い戦車の車体に乗せることはあります。したがいまして、海兵隊はおそらく自走の百五十五ミリのりゅう弾砲を持っているということは考えられます。
  44. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 そこに出ているのは違いますか。
  45. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 私は、この海兵隊の百五十五ミリ、りゅう弾砲を見たことはありませんが、もしこれが百五十五ミリであれば、おそらく自走の百五十五ミリ、りゅう弾砲であろうというふうに思います。ただし、それは重戦車ではございません。
  46. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 はっきりしないわけですけれどもね。結局その年鑑と合わせると同じだと。そういうことで、核が積めるものだと。いま積んでいるか、積んでいないか、これは見ていないからわかりませんけれどもね。それと同じものだと思いますが、その点いかがですか。
  47. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) いまこの資料いただきましたが、ここに書いてありますように、百五十五ミリのハウィツァー、つまり、りゅう弾砲であります。私が申し上げましたように、これは戦車でありませんで、自走の百五十五ミリりゅう弾砲であります。
  48. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 その写真は、それをつけ得るわけでしょう。
  49. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) そうです。
  50. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 だから、私はさっきから言っているように、戦車の修理工場は大きな問題になると。だから、返還時に核がなくなると言われますけれども、こういう修理工場を米軍がつくるということ、しかも、そこに戦車が現在いるということは、非常にこれは問題にならないか、非常に疑いが出てくる。これに対してはどう処理されますか。
  51. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は軍事知識に乏しゅうございますが、いろんな兵器が、核にも使える、通常兵器にも使えると、こういう状態にあると思うのです。要は、核弾頭だとか何とかをつけない、そういうことだろうと思いますが、その点につきましては、一点の疑いも私どもは持っておりません。
  52. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 核は必ずとると、これは再三言っておられます。核撤去費用もきちんとそのために入っておるんだと、こういうことを非常にされておりますけれども、実際問題、われわれとしては、非常に、返還時に核が全部なくなるかどうかについては、かなりの疑いを持っておるわけです。  ひとつ、これも協定委員会でかなり議論になったことでありますが、この七千万ドルですね、この積算の根拠というものがちっともあかされないまま今日まできてしまいました。核基地に対するある程度の数、あるいは個所、それから数量等が大体どれだけの、わかっていなければそういう計算ができないと思うのです。一つの核倉庫から核弾頭を撤去する費用がどれだけということがある程度大ざっぱにでも計算できなければ、この七千万ドルなんというのは出てこないわけですけれども、その点については何の連絡、話もなしに、ただアメリカの要求どおりにこれをされたのですか。その点はいかがですか。
  53. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) アメリカの要求から見ると、この七千万ドルというのはずいぶん少ない額なんです。これは膨大な要求があったわけです。その要求というのは、まあ交渉の経過を申し上げますと、たいへん御理解がいいと思うんですが、まず、資産承継、これが一億七千五百万ドル、こういうふうに見当づけられたわけです。次いで、沖繩における米軍労務者、これの待遇改善費、これを七千五百万ドルと置いてみたわけです。そうすると、合計いたしまして二億五千万ドル、そうなる。ところが、アメリカ側の要求というものは、これはもう非常に多額なものにのぼりまして、とうていわれわれとしては承服しがたい。私は当時、大蔵大臣でありまして、これはとにかく金は少ないほうがいいと、こういうふうに思っておったのであります。しかし、この二億五千万ドルの上に何がしかを加えないと、この沖繩返還交渉はまとまらない。こういう困難なる事態に当面をいたしたわけであります。そこで私は大蔵大臣ではありまするが、とにかく核の問題、これは総理ニクソン大統領との間で厳粛に声明された、核は返還時にはもうありませんと、こういうことであります。これをこの支払いの問題を通じて明かにいたしたい。そういうことを考慮し、なお、これから米軍が逐次沖繩から撤去していきます。その米軍が投資した軍施設、これは非常に多額にのぼります。これはアメリカの計算によりますると、おそらく六億近いものがある、こういうことであります。これは資料として皆さんに差し上げてあります。そういうようなこと。それから特殊部隊につきましては、わがほうの要請によりましてこれを撤去せしめると。逐次これが行なわれておる。そういうようなことを考慮いたしまして、非常に多額な要請でありましたけれども、七千万ドルを二億五千万ドルに上積みをする。そうして総計三億二千万ドルを支払う、こういうふうにいたした次第であります。これは、沖繩返還という歴史的な大事業を実現させるというための大きな政治的決断だと、こういう性格のものでありますので……。そこで、核撤去費をこの七千万ドルの中で幾ら見ておるかというようなことは、これはその内容としてはないのです。つまり、七千万ドルのこの積算の内容いかんと、こういうことになりますが、これはいろんな要素が入っておるのであります。その要素につきましては、米軍の要求というものがあります。それはありますが、それを縮めに縮めまして七千万ドル、こういうふうにいたしたわけでありまして、この内容をどうだ、こう聞かれましても、その積算の内容というものは、これを解明することができない。そういう性格のものでありまして、一括して七千万ドルを二億五千万ドルの上に上積みをすると、こういう性格のものでございます。
  54. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 この支払い方法ですが、これはどういうふうにお考えになっているんですか。もし年内に返還協定が成立したと——自然成立ですから、しますわね。その場合に、四十六年度予算から予備費というような形ですぐに支払いを開始されるのか。もし、来年度予算に計上されるとした場合は、それは一般会計に計上されるのか、あるいは財投に計上されていくのか。その予算的処置というものはどうされようとするのですか。
  55. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 七千万ドルの中に、核撤去費が含まれる、こういうことになります。七千万ドルが、すなわち、核撤去費ではないんですが、その中に含まれる。その七千万ドルを加えました三億二千万ドル、これが、協定発効とほぼ同時に、一億ドル米国に対しまして支払いになるわけです。それから、事後、四年間にわたりまして五千五百万ドル、つまり、均等に支払いが行なわれる。そうして、五年間に合計して三億二千万ドルの支払いが行なわれる、こういうことになる。それじゃ、核の撤去費用はどういうふうな支払いになるかと、こういうお尋ねでございまするが、核撤去は、もう返還協定が実現される前に、もうアメリカの金でやっておるのですよ。そういう状態です。そういうことを考慮いたしまして三億二千万ドルを払う、こういうことでありますから、三億二千万ドル全体の中に核撤去費も入っておる。そういうふうな御理解を願いたい。
  56. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 そうすると、その核撤去費七千万ドルとしての支払いはしない。要するに、全部含まれたことしかやらぬと、こういうことですか。
  57. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そのとおりでございます。
  58. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 たとえば、かりに含まれておったとしても、いま言ったような支払いをする場合ですね、今年度の場合は予備費から出されるのですか。それから来年度はどうなんですか。
  59. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは大蔵省の所管の問題ですが、初年度は、つまり昭和四十七年度予算一般会計にこれを計上する、その他は均等で四年間に五千五百万ドルずつ計上する、こういうことになります。
  60. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 この場合に、今度は決算の問題でありますけれども、決算をする場合はどういうふうになりますか。会計検査院の方おられたら……。
  61. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 決算は、これはアメリカに、四十七年度で申し上げますれば一億ドルを支払ったと、こういう決算になります。
  62. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 それも予算と同じように核撤去費というのは出てこないわけですね。
  63. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 出てまいらない性格のものでございます。
  64. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 結局そのように、前から再三再四言われておりますように、この核撤去費なるものは非常にいいかげんな、結局政治的なお金であると政府が認められておりますけれども、結局アメリカの金で先にやってしまうと、あとはいろいろ交渉して、アメリカが一億ドルかかるか二億ドルかかるかわからぬけれども、わがほうとしては七千万ドルでかんべんしろというふうに値切ったと、こういうことでほんとうに核が撤去されたということをわれわれはまともに信じていいのかどうか非常に私は疑問を感ずるわけです。といいますのは、アメリカがそこまで値切ってくれたのはどういうあれかわかりませんけれども、せっかく写真持ってきましたのであと簡単に言いますけれども、核がいままであると言われておった知花弾薬庫あるいは辺野古弾薬庫以外にもかなり私たちが核があると疑わしいところが新しく出てきております。たとえば比謝川あるいは波平の弾薬庫、こういったところに核があるんではないかと。というのは、その写真にもありますように、軍用犬の絵のある標識、それから矢を握っておる赤い標識、この二つが知花の弾薬庫にありまして、そして弾薬庫の写真がはっきりあると。それと同じようなのがほかにもかなり見られまして、非常にわれわれが考えておった以上に核基地が多いと。結局、大体考えられますところが知花弾薬庫、辺野古弾薬庫、大浦岩壁、比謝川サイト、東恩納弾薬庫、波平弾薬庫、あとは嘉手納弾薬庫、瀬長島基地と、こういうことになるわけですが、非常に多い。ということは、かなり撤去費用にかかると、それを七千万ドルでかんべんしてくれたということは結局残すんじゃないかという疑問が出てくると私は申し上げたいわけなんでありますけれども、だからさっきも言ったように、アメリカからいままでは全然、大体どの辺にあるということ、発表できないかもわかりませんけれども、通告があったわけですか。大体これぐらいの数あるからこれぐらいうちとしては要るけれども、まあ日本政府も金が要るだろうからこの辺でまけておきますというような、そういうような話があったんですか、どうですか。
  65. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 核撤去費は先ほどから申し上げておりまするように七千万ドルもかからない、そういうふうに私どもは見ております。核撤去費を含めて七千万ドルと、こういうことなんです。まあ矢追さんは、今日この時点において核があると、こういうことをおっしゃる。そのとおりに私も思うんです。だからこそ七千万ドルという問題も起こってくる、そういうことなんです。しかし沖繩が一たび返還になりますと、その時点におきましてはもう核はきれいになくなる状態になりますと、こういうことになるわけなんです。その作業を一体どういうふうにアメリカがやっていくか、こういうことにつきましては、これはアメリカが全責任を持って沖繩県民の不安にならないように、こういうことを引き受けをしておる、これを信頼するというのが私ども立場でありまして、いま今日この時点におきまして核がないということは私どもは申し上げているわけではないのでありまして、それで、この時点においては核はあるだろう、しかしその核がどこのどの地点にどういうふうになっておるかということにつきましては、私どもも尋ねてみましてもなかなかこれを究明することができないというのが現状でございます。
  66. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 時間があまりなくなりましたので最後にもう一つだけ小道具を出して申しわけないんですけれども——これは毒ガスの撤出の際のことでありますけれども、いま核の問題言われておりますが、私は、この核が撤去される場合、はたしてきちんと、この間の毒ガスのときのような事前の通告もあり、核撤去をするからということできちっとした避難等がされるようなことは可能なのか、おそらく私はこれはないと思うんです。したがって、この間予算委員会でわが党の黒柳委員がいろいろ質問をいたしましたHE爆弾の問題、非常にああいうふうな問題を持ち込んだのも、要するに核撤去ということはたいへんな仕事であるし、非常に問題が多い、したがって、きちっと住民に対して、もし核撤去がある場合は事前にそれだけの体制をとらせるべきであると、こういうことでありますが、この核撤去については米国からきちんと通告を受けて、それに対する対策をきちんとした上で撤去が行なわれるのか、ある日突然にやられてしまうのか、その点はいかがですか。
  67. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 核撤去につきましては核の性格にかんがみまして、ガスの場合と異り、アメリカ側が全責任を持って沖繩県民の安全を確保するというたてまえで行ないたいと、かように考えます。
  68. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 ということは、通告はないわけですね。いつの間にか行なわれるわけですね。
  69. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そのとおりでございます。
  70. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 なぜいまのものを持っていったかといいますと、それは実は毒ガスを移動させる際に米軍の家族に配られたものなんです。要するに毒ガスがかかるとぐあいが悪いですからそれに対するいろんなパウダーであるわけです。これは米軍の家族にだけ配られて沖繩の人たちには配られていないです。要するにただまあ移動されただけなんですね。非常に私はこの事実からして、まあガスが漏れなかったからよかったようなもんですけれども、こういうふうに差別をしてきておるわけです、米軍は。だから核撤去の際も何もしないで、何にも通告もなく、何のそれに対する対策もされないまま撤去が行なわれる、四月一日になるか返還がまあいつになるかわかりませんが、その間いつかは行なわれるわけですよね、いつか。いまのままで核が撤去されるということは非常に私は問題が多いと、こう思うんですが、まずその毒ガスの撤去の際に米軍だけ配られて沖繩の人たちには配られなかった、この薬がですね、これはどう考えますか。
  71. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 政府委員からお答えさせます。
  72. 吉野文六

    政府委員吉野文六君) この点につきましてはわれわれもアメリカ側に照会しましたところ、アメリカ側は、米軍の家族に限りこれを配ったことはない、つまり家族に対しては配っていない、配ったことはないということを確言しております。
  73. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 だけれども、家族は持っていたんじゃないですか、これは家族からもらってきたんです。
  74. 吉野文六

    政府委員吉野文六君) これはアメリカ政府当局がわれわれに対して、米軍の家族に配ったことはないと、こういうことを明言しておりますからそれをわれわれとしては信じております。なお、もちろん撤去作業に従事しました米軍の作業員はこういうものを携帯しておりました。
  75. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 アメリカ局長、この内容をちょっと紹介してください。英語、簡単な英語ですから、どういうものか。
  76. 吉野文六

    政府委員吉野文六君) これはいわゆる消毒薬というのか解毒薬でございます。で、小さな袋は、これは皮膚に対する解毒剤が入っておる。それから大きな袋は、衣服だとかその他の物体を解毒し、かつそれらが将来また毒にさらされないようにする、防備する、防ぐと、こういうことです。以上でございます。
  77. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 表題。
  78. 吉野文六

    政府委員吉野文六君) これは解毒及びガスが入らぬように防備する、つまり雨なんかが入ってこないように、ガスが入ってこないようにする、こういう道具だと書いてあります。
  79. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 外務大臣、これどう思われますか。要するに米軍だけ配られた、あるいは米軍の家族だけに配られて沖繩の人には配られない、これでいいですか。
  80. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いまアメリカ局長の話を聞いておりますと、米軍の家族には配られておらないと、こういうことです。それから作業に従事した人には配られておるようだと、こういう話です。それじゃありませんか、これは。その作業員に対して配られた、そういうものじゃありませんかと、こういう印象を受けました。
  81. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 しかし、作業員でなくて一般の市民でもかなり、要するに毒ガスの輸送の際は近くに人間はいたんですね。そんな相当遠いところにいたわけでもないし、もし毒ガスが爆発したりなんかした場合は直ちに事故が起こるわけです。問題が起こるわけです。そんなに私は高いものじゃないと思うんですがね、これぐらい配られたっていいんじゃないですか。その道路に面したいろんな人たちがいたんですから、要するに作業する人だけが持って、それ以外の人は持つ必要がないようなものじゃないですよ、これは薬ですからね。その点、この毒ガスの撤去作業に対して政府のとった態度はあまりにも沖繩の人たちの立場からいえば、何か事故がなかったからよかったようなものの、非常に冷たいんじゃないか。あれだけ大騒ぎをしてジョンストン島へ移動した。しかも、まだ毒ガスがあるという話が一ぱいあるわけです。実際この写真も確証がありませんので毒ガスだとは言えませんけれども、実はその写真の中にも毒ガスがあるんです。見えているんです。  こういうふうな沖繩の人に対して政府は冷たい態度でおられる。これが今度さらに問題である核撤去になったら一体どうなるのか。しかも、何の通告もなしに、ある日突然になくなってしまっておる。メースBはもうないとおっしゃいますけれども、実はランチャーもあるんです。これもほんとうは論証したいんです。その証拠もそこにあるんです。時間がないのでまたに譲りますけれども、メースBは撤去されていません。それだけの論証できるだけの写真がそこにも一つ入っているんです。しかし、これはいろいろ議論になりますから次に回しますけれども、そういうふうに結局アメリカのことばを信ずるのはけっこうです。だけれども、やはりきちっと実証してもらわなければわれわれは納得できない。しかも、返還がいつになるかわかりませんけれども、早くて四月です、おそくとも七月でしょう、どっちかだと思うんです。まあ五月ということも言われておりますけれども、四月というとあと四ヵ月ですよ。非常にわずかな期間で、たくさんあるといわれておる核あるいは毒ガスの残り、そういったものを撤去する。大きな問題が出てくる。その際にいまのような大臣の答弁のように、いつかどけられます、アメリカがちゃんとそれだけのことを責任を持ってやると言っているから心配ないと言われますけれども、現にアメリカ軍がもうちょっと沿道の人たちにも、もしもこのことがあったらいけませんからこの薬をちゃんと持っておいてくださいと、これぐらいアメリカが誠意を持って沖繩の人たちにやっておるならまだいいですよ。それを何も家族に配っていないと言っておりますけれども、家族は持っていたわけですよ。それはおやじが持っていたものをもらったかもしれませんけれども、私はそういうことを政府がはっきりアメリカに言わないで、核撤去の費用が含まれておるから、アメリカがどけると言っているからどけるんだ、その一片のことばだけではまるまる信ずるわけにはいかないんではないか。  今後こういった核撤去に対する何といいますか、核の場合なら防護訓練ということばが適当だと思いますが、それくらいは何かの方法で考えないと沖繩の人たちは不安でしょうがないと思う。メースBの撤去一つだってこれはたいへんな事業なんです。あれはビル一つこわすくらいの作業なんです。ところが、現在のメースBのあるところでそんな大きな作業を行なわれたというのを目撃したのはだれもいないんですから、だから残っているというんです、まだ。一部はとられたんでしょうが、調査団も行かれたかもしれませんが、まだまだ残っているところが多いわけです。そういうふうにまだまだアメリカは誠意を持ってやっているようでありますが、実はそうではなくて、やはり自分たちの利益を、国益をどうしても考えております。いま言ったはっきり差別をしているんです、いままでの歴史が全部そうでしょう。だからこの毒ガスの薬の問題は単に一つの例です。こういうことは今後決してあってはならない。それに対して政府ははっきりとした態度をもってやってもらいたい。特に核撤去については住民の不安が絶対にないような処置をとらなければ私は納得できないわけです、核撤去は、実際行なわれているわけです。その点に対して明快な答弁をお願いしたいと思います。
  82. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ガスの場合につきましては周到なる準備体制をとった、これはわが国も協力してやったわけですが、その詳細は山中総務長官が中心になってやりまし九からお答え願ってもけっこうと思いますが、核につきましては、核の性格上ガスの場合とこれは手続が違う。しかし私が申し上げ得ることは、責任を持って沖繩県民のこの問題についての安全はこれを保持する、これはもう政府の責任を持って申し上げます。これは核の性格上どういうふうにしてどういうふうにして、これは申し上げられません。しかし責任を持つということだけははっきり申し上げられます。
  83. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 毒ガス撤去の場合は第一次の場合はもちろん調査団も派遣をいたしましたが、第二次以降は同じルートを通ることについて付近住民の非常な反対もありまして、したがって、撤去の道路も本土政府がつくったわけであります。費用を支出したわけであります。  なお、撤去にあたりましては、これは琉球政府と現地において高瀬大使も交えながら十分対策を話し合って、高等弁務官も太平洋司令官がまいりました日以外は連日最終便と始発便等に立ち会っておりまして、また琉球政府のほうも高瀬大使もみんな全部防毒マスクをつけないで一番交差点のところに連日立ってそれを監視していたというわけでありますから、その意味において撤去作業に従事する直接の兵士の諸君は確かにそういう防毒用のものを持っていたと私も思いますが、その意味において現地の最高のアメリカの責任者も琉球政府の主席も日本政府側の代表である高瀬大使も全部防毒面なしで立って安全であることを確認する、だから自分たちは立つんだということをとりましたので、その意味において私どものほうとして大体手落ちはなかったのではないかと思いますが、地域住民の方々のいわゆる恐怖感というものをそれを押さえることだけはできないということが現実の姿でございました。
  84. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 総務長官の話を聞きますと非常に乱暴な話だと思うんですがね。従事する人には配られた、しかし高等弁務官もマスクもつけないで立っていたから心配ないんだ、これはちょっと乱暴な話じゃないですかね。私の聞いておるのはどうして作業に従事する人に配られるなら、せめて沖繩の人にも配りましょうかというふうな誠意、配るという誠意をアメリカに示させてもよかったんじゃないかと思うんですよ。この点はいかがですか。
  85. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは、米琉双方が大体事前に相当詳しい、琉球大学の専門家等も参加して、この手段で輸送されるならば、いわゆる周辺に住む人たちにとってはだいじょうぶであるということは確認した上にそういう措置をしたものだと私は思っております。そのような報告で、大体において事故なく終わったということでありますが、ただ、作業をします兵士の諸君は、持っていたか持っていなかったかは私は確認はいたしておりません。おりませんが、あるいはそういうこともあったろうかということを申し上げた次第でございます。
  86. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 時間がなくなりましたので、最後総理に重ねてお伺いをいたしますが、この核撤去の問題については、いま、外務大臣からは、アメリカの責任ということを盛んに言われますけれども、それだけでは、ずっと沖繩協定委員会、この沖特委員会、衆参合わせましてずっとその点が一番問題になってきながら、いつもアメリカの善意を信ずるだけで要するに終わってきているわけです。しかも、もうあと四カ月という期間です。この間に核撤去が行なわれる、しかもそれが全部なくなるまで行なわれる——それに対する今後のスケジュール、いわゆるアメリカに対する要請、いろいろな問題があると思うんですが、それとは別に、やはりわれわれとしては、そういった真相究明も含めまして、いわゆる核問題の調査委員会というものも国会につくってはどうかと、こういう考えも持っておるわけでありますが、何らかの形とか、あるいは、米国の責任でやるから心配ない、じゃなくて、もっと具体的な形の上でこの核撤去を確認する、あるいは核撤去が行なわれると、こういったスケジュールなりプログラムなり、あるいはまたそういった調査委員会なり、そういったものがつくられていかなきゃならないと、こう思うわけでありますし、また、総理が今度ニクソン大統領ともお会いになるわけでありますから、その際にそういった問題も提起されてしかるべきだと思うんです。そういうことも含めまして、アメリカに対する態度も含めて、具体的にお伺いをして私の質問を終わりたいと思います。
  87. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 米軍基地についてはいろいろ問題があると思っております。しかしこれはどうも軍隊の基地——これは同盟国でもなかなか中身を見るということはそう簡単ではないと、かように言われております。しかし私はどうもいまの問題は、基本的な問題ではありますし、とにかく核撤去、これは確約をしておりますから、そういうことについては、もっと具体的に確証を得るような方法は何かないか——いわゆる軍事基地を点検するという、そういうことだと乱暴な言い方になりますが、もっと両国間で話し合いがつかないだろうかと、そういうことで何かいい方法はないだろうかと、かように実は言っておるわけであります。ただいま具体的な提案がありましたが、そういうようなものも一つの方法だろうと思いますけれども、これまた、国際法規から見まして、いままでそんなことがあったかないか、これあたりもまだ検討しなきゃならない、かように思います。  しかし、いずれにしても、私は、米琉双方、これが差別待遇をされておると、こういうようなことが他のレクリエーションの場でも言われておりますが——海水浴場でもそういうことが言われておる——まして人命に関するような事柄が差別的な処遇を受ける、これはとても日本人として耐えられることではありませんから、少なくともそういうようなことのないように、一様に取り扱われること、これを強く要望すべきだと、かように思いますが、そのことはそれなりに私も理解できますけれども、ただいまの軍基地米軍基地を点検すると、こういうふうなことになると、なかなかむずかしい、めんどうくさい問題じゃないだろうかと、かように思います。しかしもっと、それらの点については具体的にもう少し検討して、そうして皆さん方に現在より以上に安心のできる方法、それを何か具体的に考えてみたいと、かように思っている、そのことだけはこの機会にはっきり申し上げておきますが、ただ具体的にどうしたらいいかということが言えないので、どうも不十分だと、かように思います。  なお、先ほどいろいろ資料を出されましたが、いずれ係りのほうから御意見を伺うつもりですが、その資料もできますならいただかしてもらって、そしてさらに当方で検討すると、こういうことにしたいと、かように思いますから、その点もつけ加えて御了承を得たいと思います。
  88. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 一言だけ。さっき質問した中で、今度ニクソン大統領との会談が行なわれますが、その際は、さらにこの核問題で一歩詰められた議論はされるおつもりですか。
  89. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはもうたびたび話をいたしておりますので、誤解はないと思ったからつい省略させていただきましたが、これはもちろんこういうことをも含めてお話をしなければならぬと思っております。具体的には各党党首から、党首会談をいたしますから、その際に個条書きにでもしていただいて落ちがないようにいたしたいと、かように思っております。     —————————————
  90. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 次に、昨日保留いたしております松井誠君の質疑を行ないます。松井誠君。
  91. 松井誠

    ○松井誠君 昨日、留保させていただきました請求権の補償の問題の最後の点を、十分か十五分、時間をお借りをしてお尋ねをいたしたいと思います。  私は、きのう申し上げましたように、国内の補償の措置として総合的な補償のための特別立法をするべきだ、そういうときに、この間の大戦で同じ枢軸国として同じ戦敗国になったドイツやイタリーがどういう形で国内措置をしたかというのが一つの参考にもなろうかと思う。本来なら、それをお聞きをしてから話を進めたほうがいいかもわかりませんけれども、時間がございませんから、私のほうで簡単に申し上げますと、イタリーの場合、一九五四年でありましたけれども、やはり総合的な補償の立法ができて、具体的なその財政の負担というのはつまびらかではありませんが、大体一千億リラ、これは予定の大体半分、政府考えておった半分が、当時の昭和四十年ごろの数字で一千億リラくらいの請求の支払いをやったと言われておる。まあ公定レートで言うと五百八十億ぐらいになるんでしょうか——。それからドイツが何度もこういう補償の法律案を出してきまして、一番最後に、一九六三年か四年でしたか、いままで漏れた分を全部ひとつ洗うという意味の特別の立法措置をしようとした。それが六六年に一度廃案になった。廃案になったときの案は、約二十億マルクを予算措置として予想をしておる、大体千八、九百億ぐらいの財政負担を予想しておった。で、これが廃案になったのは、野党のほうからもっと大きく出せという要求があって廃案になった。その後それが一体、この法律案の運命がどうなったかということを私はずいぶん調べてみた。なかなか具体的なその資料が手に入らない、政府にないんですよ。やっと国会図書館で、六九年に出し直して六九年に成立したという法律が手に入った。先ほど申し上げましたようなこのいろいろな数字というのは、例の引揚者のための交付金の支給の法律をつくるときに、どういうように各国で財外財産の補償措置をしたかという、そういう調査があった。そして、そのときの資料が総理府に少しばかり残っておった。しかし、その後の資料というものはないんですね。いま私が言いましたように、六九年にできたドイツの最後の総合的な補償の法律、これは政府の資料としては、いまございませんでしょう。
  92. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 大体二つ問題があると思うんです。一つは、これは条約に国内に対する賠償条項を、補償条項を入れるという問題、それから、それに伴って、またそれと関係なくその国々におきまして、敗戦国におきまして国内の賠償をどういうふうに実行したか、こういう問題であると思いますが、前段の点につきましては松井さんがおっしゃるとおり、ドイツ、イタリアの場合におきましては賠償条項というものが条約として存在する、これはよくわかっております。  それから、それに関連し、あるいはそれに関連なく、ドイツ及びイタリアにおきまして、国内に対する戦争損害をどういうふうに補償したか、処置したか、そういう問題につきましては、これは国内の立法があるようであります。これらは大体外務省でも捕捉しておりますから、必要がありますれば政府委員からお答え申し上げます。
  93. 松井誠

    ○松井誠君 私が申し上げたいのは、この戦敗国——やむを得ず請求権の放棄をした、そして戦敗国として非常に経済的に苦しい中で、いま私が申し上げましたような財政措置をやっておる、しかもそれは条約にわざわざ補償義務というものをみずから書いてそれを履行するという形でやっておる。それは外務大臣が言われるように、条約に書いたからといって国民に対する義務が生ずるわけではない。しかし、それにもかかわらず、わざわざ書くというのが私は政治ではないかと思うんです。日本の平和条約の場合にはそれがない、きわめてまれな例だ。いわんや今度のこの地位協定のときくらいは補償義務をちゃんと書く、そのことによって沖繩県の人たちに対して政府のいわば心情というものを理解をしてもらう、そういう措置くらいは私はやってしかるべきだと思う。しかし、それがなくて、そして適正な措置をやるといいますけれども、具体的に出してくるのは例の講和前の補償のための見舞い金というこま切れな立法しかいまのところ出てこない。私はその基本的な姿勢を実は聞いておるわけです。  日本の場合に、じゃあ敗戦処理でどういうことをやったか、一番敗戦の痛手を受けた原爆の被災者に一体どれだけの措置をやっているのか。それと反対にこれも一種の敗戦処理だといわれたあの農地報償というものは一体何なのか。田中さんが大蔵大臣のときにきわめて気前のいい法律をつくられた。あるいは最高裁判所が正当な補償をしております、憲法上合憲です、そういう判決をしておるにもかかわらず、一種の敗戦処理としてあの農地報償というものをやられたじゃないですか。引き揚げ者の団体に対しては、非常に大きな長い間の運動の結果、どうにか一つの措置ができた。そういうように声のない、力のないものに対しては非常にやり方が冷たい。声が大きい、力の大きいものに対しては大きい措置をするというようなことでは私はいけないと思うんです。  この同じ日本政府に私はエコノミックアニマルなどということばを使いたくないんですけれども、しかし、ドイツやイタリアのこの処理のしかたを見るにつけても、一体、世界第二、第三の大国といわれるこの日本の経済力で、どうしてもっと気前のいい補償措置ができないのか。あのアメリカへ差し上げた三億二千万ドルがあれば、私はおそらくおつりがくると思うんです。そういうことを私は言いたい。  そこで、具体的に申し上げますけれども、先ほど来から施設庁長官が調査をしておる、調査をしておると言っておる。しかし、私はいま調査をして具体的にどれだけの数字があって請求権が何がしで、請求権のないものが何がし、そういうことの数字を出すなどという、そういう無理なことを言っているんじゃ決してないんです、何度も言いますけれども。そうじゃなくて、まず法律をつくったらどうなんだ、せめて琉球政府考えておるようなああいう要綱くらいは示してみたらどうなんだ、それは調査以前の問題としてできるはずなんです。いつか国会の委員会が沖繩へ行きましたときに、地元の新聞は、調査調査といって、一体国会は何しているのだという皮肉な記事が載ったことがある。そういう不信感を与えておるわけです。これは外務大臣がよく言うのですけれども、こういう請求権の問題というのは、まさに無数にあるくらいたいへんな問題ですよ。それを単なる一つの部局であるこの施設庁にまかしておくという姿勢そのものが私はうそだと思う。  ですから具体的に提言をしますけれども、せめてなるべく早急に総理大臣かあるいは内閣直属の機関をつくって、そしてその立法措置、調査、そういうものに対する本格的な取り組みを始める、そしてできるだけ早くこの補償についての基本方針、でき得べくんば法律の大まかな構想、そういうものを発表してもらう、こういうことを総理、ひとつお約束していただけませんか。
  94. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 終戦処理、いろいろの方法をやっておると思いますが、この場合に当たるか当たらないかわかりませんが、外地の引き揚げ者、こういう人たちに一体どういう処遇をしたか、これはまあ一つの手がかりだろうと思います。ことに沖繩県の方々は、戦中戦後を通じて長い米軍政下あるいは民政下において苦労を重ねてこられたのでございますから、その請求権をただ一方的に放棄したというだけではちっとも片づかない。その請求権が見舞い金の形にしろ、とにかく沖繩県同胞が持つその請求が生かされるような処遇を日本中央政府は当然すべきだろう。まあ満州から引き揚げた諸君に対してあれだけのことをしたのだ、これも調査したわけではないが、何かそういうことが考えられないか。いままで考えられておりますのは、ただ単に自治体をそこなわない、そういう意味においても中央からの交付金あるいは援助方式等が、いままでの地方と比べまして、あるいは十分の十だとか、十分の八以下とか、たいへん高率の中央からの援助と、こういうことになっておりますが、それだけではどうも済まない。こういうことが松井君の御指摘の点ではないだろうかと、ただいまになりまして——昨日どうもつかめなかったのですが、ただいまそういうようなことも考えるのでございます。私は請求権、今度見舞い金と、こういう形だけれども、それは見舞いということばが不適当だとおっしゃる——そういう意味に私も理解いたしました、昨日ですよ。しかしながら、もっと積極的な処置が何かとれないか、この点を具体的に言っておられる。全般としての気持ちがもっと生かされないのか、御労苦に報いるとか、あるいはあたたかく迎えるとか、口では言っているけれども、何ら具体的な処置がとられておらないじゃないか、こう言われると、やはりわれわれも考えざるを得ない。しかし、ただ簡単に、ただいまのお尋ねの点がよくわかりましたというだけでは答えにならない。しからば、どういうような方法をとるか、こういうことになりますが、私はまあ、沖繩の場合とあるいは満州から引き揚げてこられた方々、これはおのずから処遇が違うだろうと、かように思いますので、そこらの点はもう少し私のほうの考え方もまとめさす余裕を与えていただきたいと思います。私は、そういう意味でほんとうの終戦処理ができるかできないか、ここらに十分の考え方をまとめる必要があるように思います。
  95. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 松井さんのお話は、いまこの際、国家補償法というものをつくれ、そしてイタリアやドイツの場合の条約上の規定を引用されると、そういうわけでございますが、イタリアにおきましてはそういう補償条項が条約としてできた、これが一九四七年です。それから国内の立法が一体いつできたかというと、一九五四年になるんです。もう七年もたってやっと成立しておる。ドイツの場合はどうだといいますると、補償条項を含む条約ができましたのが一九五五年です。それを国内立法化いたしましたのが一九六九年になる。ずいぶん時間がかかっております。なぜ時間がかかったかという事情につきましては、そこまでまだ調べておりませんけれども、この賠償条項が条約として成立したそのときからそれだけの時間がかかっておるのだと、そこにどういう事情があったんだろうかというようなことは御推測を願えるんじゃないかと、かように思います。
  96. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) おょっと私からも補足さしていただきますが、施設庁がいま概算要求しておりまする沖繩に配備する人員は七百四十九名です。これは、もちろん土地所有者等と話し合いをするための人数でありまするが、そのうちの相当数をこの補償問題にさきまして、御意思を踏まえて十分誠意を持って調査をしてまいりたいと思います。  それから、まあ見舞い金というのは、さっき総理が言われましたように、ことばがいかにも見舞い金というふうでありまするが、これはもう御承知のように、高等弁務官布令六十号によって補償された人、講和前の人身損害の未補償分については、その布令に基づいて補償された人に遜色のないように措置しようと、これがまあ見舞い金の内容になるわけであります。現在申請がなされておる者は約三百八十名、その申請の金額は二億三千三百万円、こういうことになっております。その他、漁業補償であるとか、基地の復元補償であるとか、いろいろこれは外務大臣からもお話がありますように、問題が多岐にわたりまするので、前段に申し上げましたように、十分ひとつ施設庁において責任を持って調査を進めてまいりたいと思います。
  97. 松井誠

    ○松井誠君 いま答弁をいただいたことで、実はいろいろとお聞きをしたいことがございますけれども、お約束の時間が来ましたので、その点は、いずれまた、あらためてお尋ねをしたいと思うんです。  そこで、最後に、法制局長官に、ひとつお願いをしておきたいんですが、きのういろいろと御答弁をいただきました。しかし、もうあなた自身がおわかりだと思いますけれども、十三日の中谷君に対する答弁のときと、またいろいろな意味で違ってきておる。問いが違うごとに答えが違ってくるというような形になっておる。これではどうにも審議が進まない。そこで、私は、なるべく早い機会に、多くを求めませんけれども、一体その告示というものの法律的な性格は何なのか、そして、それが憲法三十一条との関係でどういう関係を持ち得るのか、そのことを、きちっとした見解を発表していただきたいと思うのです。法律的な批判にたえ得るような見解を発表していただきたいと思うのです。おそらく、私は、しかし、それはお気の毒ながら、できないのじゃないかと思う。しかし、それはあなた方の責任じゃないのです。あなた方の責任じゃなくて、法律的にきちんとした見解が出せないような、こういう仕組みをつくった、実は、政府に責任があるのです。そんな責任を、あなた方がどろをかぶる必要はないと私は思う。あなた方の役目というのは、やはりサギをカラスと言いくるめることではなくて、サギはサギ、カラスはカラスと、断固として主張することもあなた方の役割りなんですから、だから政策的な配慮なんかやめて、法律的な批判にたえ得るような、きちんとした法律的な見解を示してもらいたい。そのときにお願いをしたいのは、いままでこういう答弁をしたからという、そういうつながりは、ひとつ考えないでいただきたい、なまじっか、そういうものを考えると、ますます混乱をしてしまう。そういうものを考えないで、私も、いままでと言ったことが違うじゃないかなどということは申しません。申しませんから、ひとつ、新しい観点から、きちっとした見解を出していただきたい。そして、この中谷質問に対する議事録ができた段階で、その二つを土台にして新しく議論を始めたいと、そのことをひとつお願いいたします。
  98. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) お答えを申し上げます。  いろいろ御注意もございましたが、まあ、外から見ておいでになりまして、サギをカラスとかなんとかいうふうにおとりいただくのは、はなはだ残念でございます。私どもも、実は、そういう意味から、そういう気持ちでやっていることではない、少なくとも、それは確言申し上げられると思うのです。  それから、もう一つ、人によって答弁が違うという御指摘もございました。これは、とにかく、私ども、答弁あるいはどちらからかの質問、これは必ずしも的確につかめないこともあり得るわけで、中谷さんの御質問についても、その趣旨まで十分につかみかねた点もございます。しかし、いろいろ聞いていると、その質問の本旨は何であるかということもありますので、そういう点については、私どもが理解をするところに従って御答弁を申し上げたいと思っております。現に、中谷さんが再質問をされておりますので、この再質問について、従来の質問の本旨も、ほんとうにこの点こそが問題であるという点もわかった点もございますので、そういう点に中心を置いて、焦点を当てて御答弁申し上げたいと思います。むろん、政治的な配慮をしているつもりはございませんが、私が申し上げることが、あるいはそういうふうにとられたとすれば、まことに申しわけないことだと思います。その点で、もしそうであれば、おわびを申し上げたいと思います。
  99. 松井誠

    ○松井誠君 それができたときに、私がそういうことをいつお尋ねができるか、いまは日程が立たぬわけでしょう。だから、文書にしてもらわないと、それを土台にして質問をいっするかということはできないわけです。ですから、それはやはり文書にしていただきたいということです。
  100. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) この三十一条等の問題については、おそらく、本格的に御答弁すれば、何か、一つの論文みたいなものができやしないかということもございますので、御質問に応じてお答えをするというチャンスを持たせていただいたら、そのときに私は御満足がいくかどうか、そのときの御質問の方の御意向によりますけれども、そのときに御答弁申し上げることではいかがでございましょうか。
  101. 松井誠

    ○松井誠君 私がこんなことを申し上げますのは、あなたの御答弁がしょっちゅう変わるからなんですよ。ですから、きちんとした見解が土台にならないと議論が発展をしないから、だから言っておるのです。しかし、文書にするのに、私は、取り扱いをどうしたらいいのか、よくわかりませんけれども、とにかく、きちんとした文書ができたら、それを事前にお示しをいただけば、そして、それを委員会であなたが読んでいただけば、それを土台にして議論するということはできるでしょう。形式はどっちでもいいですが、とにかく、きちんとした見解を一ぺん統一的に、系統的に示していただきたいということです。それはいいでしょう。
  102. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  103. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記を起こしてください。  ただいまの松井君の要求につきまして、後刻理事会において協議することにいたします。
  104. 松井誠

    ○松井誠君 そのときに、いま補償の問題についていろいろ私からも注文を出しました、そのことを、あらためてまたお尋ねをしたいと思います。そのことを申し上げて終わります。
  105. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 午前中の質疑は、この程度にいたします。  午後は一時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時十分休憩      —————・—————    午後一時十分開会
  106. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ただいまから本委員会を再開いたします。  まず、連合審査会に関する件についておはかりいたします。  沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律案沖繩振興開発特別措置法案沖繩における公用地等暫定使用に関する法律案国家公務員法第十三条第五項および地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院地方事務所設置に関し承認を求めるの件、沖繩平和開発基本法案沖繩における雇用の促進に関する特別措置法案  以上七案件につきまして、内閣委員会、法務委員会、文教委員会からの連合審査会開会の申し入れを受諾することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。  なお、連合審査会開会の日時につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  108. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 御異議ないものと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  109. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 次に、沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律案沖繩振興開発特別措置法案沖繩における公用地等暫定使用に関する法律案国家公務員法第十三条第五項および地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院地方設置に関し承認を求める件、沖繩平和開発基本法案沖繩における雇用の促進に関する特別措置法案  以上の各案件一括議題とし、休憩前に引き続き、質疑を行ないます。高山君。
  110. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 沖繩問題の質問に入る前に、十一時三十分の情報だけと承っておりますが、情報によりますと、雑司ケ谷の官舎において土田警務部長の応接間に爆弾のしかけがしてあったと、そのために奥さんと十三歳になる子供さんが犠牲になられたと、こういう情報を聞くわけですが、すでに池袋病院に子供さんも入院しておると、こういうことでありますが、緊急のことでありまして情報も十分でないかと思いますけれども、一応公安委員長のほうから状況だけの御報告をお願いしたいと、こういうふうに思います。
  111. 中村寅太

    国務大臣(中村寅太君) お答えいたします。  本日、午前十一時二十四分ごろ、東京都豊島区雑司ケ谷の五〇、警視庁の土田警務部長自宅の応接間付近において突然爆発物が爆発しまして、警務部長の妻民子さん、四十七歳でございますが、死亡し、四男学習院中等部の恭四郎君十三歳が顔面火傷、頭髪火傷、下肢数カ所に負傷しまして、いま池袋病院に収容されているという事件が発生しました。  事件につきましては、目下、詳細捜査中でございますが、何らかの方法で爆発物がしかけられたものと一応考えられますようでございますが、しかけられたものであるか、あるいは郵送された荷物であったか、そこいらがまだいまの時点では詳しく、はっきりいたしておりません。最近の情勢から考えまして、過激派分子のしわざではないかということは考えられると思っております。この点につきましては、鋭意捜査いたしまして、徹底的に事犯を糾明いたしまして、犯人を逮捕して、そうして国民の皆さま方に不安のないように処置いたしたいと考えておるところでございます。
  112. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 まことに不安な情勢かと思うのであります。こういう問題が起こってまいりますと、国民ひとしく不安な状態が起こってくるのではないかと、こういう考えを持つわけです。どうか、警視庁も十分なる捜査をやっていただくことを私もお願いしておきたいと思います。  さらに、犠牲になられました方にも、心からおくやみ申し上げておきたい、こういうふうに思います。  ところで、沖繩の問題について御質問申し上げたいと思うのでありますが、すでに国会も六十日を経過して、衆参両院における質問もいろんな角度から御質問がなされております。ところが、こうした経過を見、かつまた政府の答弁をお聞きいたしましても、何だか納得のいかない答弁が多いんではないか、あるいは場合によっては国民としてどれが一体ほんとうだろうというような不安すら感ずるような答弁の要旨が出ておることをわれわれは痛感するのであります。したがって、きょうは、そういう面における問題をひとつ明らかにしていきたい、こういうつもりで質問を申し上げたいと思うのであります。  まず、この返還にあたっての問題でございますが、この自衛隊の派遣を直ちに日本がしなくてはならないという考え方自体は、アメリカの強い要請であるのか、それともまた、防衛庁長官等の答弁等を聞いておりますと、あくまでも日本の自主的なものであると、こういうことを言っておられるわけですが、協定の内容を見ると、そうではない感じがするわけです。  総理にお尋ねしたいんですが、実際問題として、米国から強い要請があってそういうことになっておるのか、それとも日本が自主的にやっぱり現段階では安保協定に基づいてみずからがそうした派遣体制をとらざるを得ないと、こうお考えになっておるのか、まず、この点を明らかにしてもらいたいと思うのです。
  113. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは後ほど防衛庁長官やあるいは外務大臣から補足されると思いますが、私は、これはどこまでも自主的なものだ、かように考えております。
  114. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) お尋ねの点でありまするが、主権が日本に戻ってまいりますれば、これは沖繩県として当然本土並みになるわけであります。したがいまして、通常兵器による局地防衛、民生への協力、それから災害の救助活動、こういう自衛隊法にありまする任務を帯びて当然沖繩県を守ると、そういうたてまえで配置をするわけでございます。
  115. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それでございましたら、これは非常に重要な問題であろうと思うのです。したがって、沖繩に直ちに日本自衛力の配置をする、返還と同時にそれをやるということは、少なくとも国防会議で結論が出ただろうと思うんです。その点は、この構成からいっても画期的な問題になりましょうけれども、一体、国防会議というものでほんとうに真剣に取り組んだ討議がなされたのかどうか、その経過をひとつ防衛庁長官からお聞きしたいと思うんです。
  116. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) この問題につきましては、防衛庁部内で慎重に検討をした結果、あの程度の配備をするということにきめたものであります。
  117. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 防衛庁部内で討議をした結果、派遣をするということにきまったということですが、それではちょっとあまりにも軽視した態度ではないかと私は思うんです。しかも、防衛庁設置法の第六十二条には、国防に関する重要な事項を審議する機関として、内閣に国防会議というものが設置されておるはずです。そうして内閣総理大臣は、国防の基本に関する問題、むろん防衛そのものの基本は変わらぬにしても、返還される沖繩にまで派遣して防衛の処置をするというのは大きな変わり方だと私は思うんです。そういうことを防衛庁だけが独自で計画の大綱としてきめていいものかどうか、この点に疑義をはさむわけです。防衛庁自身がこの計画の大綱をきめるのに、それでいいのか。総理、そういう国防会議というものは簡単なものなのか、その点、まず総理のほうからひとつ御答弁願って、防衛庁長官の回答を聞きたいと思うんです。
  118. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは技術的な問題でありまするから、私のほうから先に御答弁を申し上げて、もし補足の必要があれば総理からも御答弁いただくと、こういうことで御了承願いたいと思います。  内閣総理大臣は、国防会議について、次の事項については国防会議にはからなければならない。その一つが「国防の基本方針」、二が「防衛計画の大綱」、三が「前号の計画に関連する産業等の調整計画の大綱」、四が「防衛出動の可否」、五が「その他内閣総理大臣が必要と認める国防に関する重要事項」と、こうなっておるわけでありまして、沖繩県に配備いたしまするのは、なるほど沖繩県施政権は新しく戻ってまいったわけでありまするが、日本の主権が及ぶことになれば、北海道に自衛隊を派遣する、四国地区に自衛隊を配置するというたてまえと何ら変わらない、同じ国内という立場に立って配備計画をいたしたものであります。
  119. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまので一応御了承がいただけるかと思いますが、私は、どうも日本の防衛計画、これはもう来年度予算もただいま審議中でございまして、まだこれも国防会議にはかかっておりません。しかし、これもいずれかけなければならないことでありますし、また四次防云々がされておりますから、そういう場合に当然この問題を新しく考える。また、いま高山君の言われるように、沖繩は祖国復帰施政権返還後においていかなる扱い方をするか、これはやはり国防会議の議題にするのが適当だと思います。私、ただいままで防衛庁がいろいろ準備してくれておること、これはけっこうだと思いますけれども、やはり新たな事態、それに対して国が考えるということでありますから、在来の府県内の自衛隊の移動とは事変わって、新しい問題として国防会議の議題になるのが適当だと、かように思っております。  まだ、それらの点について十分の打ち合わせができていないことは、もうすでに会議を通じましても御指摘ができると思います。この点では早急に、予算編成等も関連がありますから、当然国防会議の議題とする、かように御了承いただきたいと思います。
  120. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 むしろ総理の答弁のほうが、今後の問題として、かけようとされるんですから、それに反対はできませんが、防衛庁の御意見、私は、そこらに政府沖繩県民、一億国民の見解の相違が大きく開いでおる。これを私は指摘せざるを得ないんです。少なくとも、沖繩は、御承知のように、いまさら言うまでもないのですが、戦前はそういう連隊もなければ何もなかったんです。全く戦争のためにそういう災害を受け、二十数年という今日に至っておるのであります。そういう戦後の事態から、いま日本に返ろうとするのに、ただ防衛庁の計画だけでこの問題を処理しようというような考え方自体に大きな感覚の開きがあるのではないかと私は思うんです。あくまでもそれが正しいとおっしゃるなら、これは防衛庁長官としてはあまりにも先の見えない見解ではないかという気がするんです。総理総理で当然国防会議にかける必要があるだろうが、新しく返ってくる、二十数年目に新しく返ってくる、それが内地と同様の状態に返ってくるのであるから、直ちに日本の防衛措置を沖繩に派遣してとったほうがいいという結論には私はならないと思う。この点をもっと防衛庁長官考え方を明らかにしてもらいたい。
  121. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 御指摘のように、沖繩県そのものに、いわゆる旧軍隊に対する拒絶反応というか、アレルギー式ないろいろな疑点があることは、私もよくわかるような気がいたします。しかし、新しい自衛隊の性格は旧軍隊とはこれは根本的に違うものでありますから、今後復帰の日まで、やはり琉球政府とも話し合いをしながら、当然この自衛隊のほんとうの姿というものを沖繩県民に納得してもらうべく、やはり粘り強く話し合いをしていく必要があると思います。これは自衛隊というものが配備されればそれでいいというものではなくて、やはりそこの住民の深い理解にささえられて初めて目的が全うされるものでありまするだけに、御質問のように、今後とも十分配慮をいたしてまいりたいと思います。  その数等につきましては、あの沖繩が離れた島であるという地理的位置、海、空等の局地防衛の問題、それから民生協力の問題特に災害常襲県といわれるきわめて不幸な地理的環境にあるだけに、そういった面の活躍等々を考慮してきめたわけであります。しかし、いま総理がお話をされましたように、予算措置その他、いま概算要求はいたしておりますが、その段階において国防会議の議に付する。国防会議は内閣総理大臣が統裁されるものでありますから、総理がそのようにおっしゃる以上、これはそういう場でいろいろまた角度を変えて意見を聞く。これはぜひそういうことで同調をしてまいりたいと思います。
  122. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 私は、防衛庁長官は大きなあやまちの発言ではないかと思うんです。一体、自衛隊というのをどう見ておられるんですか。災害、道路開発、そういうものが主体であって、万一の場合に、侵略者があった場合には防衛をしようということでしょう。そういう自衛隊というものを軽視した形の基本が間違いだと私は言うんです。自衛隊というのはそういうものじゃないということを指摘していますよ、自衛隊自体が。私らは、ことしのような災害の多かった年は、至るところに災害があって、自衛隊がつまり要請されて、いろんな努力をしておられます事実を知っております。けれども自衛隊自体のことばでは、われわれはそのためにおるんじゃないんだということもはっきり言っておる人もおるようです。だから、万一の場合は、日本を侵略しようという場合には、国民の財産、安全を守るための防衛処置の自衛隊であるということの基本には変わりはないんでしょう。——それならば、事前にどうして総理を中心とする防衛会議にかけないのか、自衛隊だけでそういうことをやっていいのかと、そういう点があいまいで、ことばをいつもにごしておられるところに国民の不安があるわけです。これはいかぬと思うんです、私は。もっとそういう点をはっきりしていただく必要がある。それほど重大な問題なんです。沖繩県民にとっても、日本本土国民にとっても、それだけ重要な問題だと私たちは考えるわけです。姿勢をもう一っぺん言ってください。わかりませんよ、そんな姿勢じゃ。
  123. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 私、先ほども申し上げたつもりでありまするが、自衛隊は平和確保のために局地防衛の任務にたち働く、これはもうもとより当然のことであります。ただ通常兵器における、通常兵器以下の局地の紛争解決のために働くと、こういうことになっておるわけですが、しかし、民生の協力、災害救助活動、これも本務であることに間違いありません。それは余技であるという性質のものではないところに新しい自衛隊の任務があるわけでありまするから、そのことを申し上げたわけであります。  それから、国防会議になぜかけなかったかという御指摘でありまするが、これは先ほども——まあ、法律をたてにとるわけではありませんが、ああいう形になっておりまするので、一応防衛庁としまして沖繩県に配備する必要最小限の配備を計画した。しかし、総理が、こういう新しい事態に直面した場合には国防会議にかけていこう、またその議に付することが適当である、こう思われれば、それに同調をいたしてまいりたいと思っております。
  124. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 いまの御答弁では、基本的な考え方にウエートがなくて、ただ災害あるいは今後の開発に自衛隊がこの協力をするという姿勢が望ましいんだと、そのために沖繩に派遣するのだという、その考え方のウエートが非常に答弁であいまいなんです。そこで重要さが変わってくると私は思うのです。  この点をはっきり先ほどから追及したわけですが、しからば、次に移りたいと思いますが、アメリカ政府日本に対して強制的な返還に対する条件の一つとして自衛隊の派遣を要望したのではない、これははっきりしておられるわけですね。ところが、一方においては、この久保・カーチス協定において、この協定を結んでおられるわけですが、これも単なる協定であって、メモ的なものであって、日本は何らその批准後には拘束を受けませんぞという判断に私が立ってもよろしいですか。日本国民はそういう認識をしてもいいですか。
  125. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 久保・カーチス協定は、従来アメリカの軍隊がおりまして、しかもまた、これが相当数残るわけであります。そこへ主権が戻ってまいりましたので、当然主権の及ぶところに自衛隊を配置するというわけでわがほうの自衛隊が入っていくわけです。そこで、アメリカ軍のおるところに自衛隊が行くのを何にも話し合いをしないで入っていったのでは、無益の混乱とか、場合によれば軍隊のことですから相手から衝突をしかける、まあそんなことはないでしょうが、そういう間違いがあっちゃならぬ。そこで、スムーズに自衛隊の配置ができるように技術的に調整をしたものが久保・カーチス協定と呼ばれておる協定であります。したがいまして、いま、これは何ら拘束されないのか、こういう最後にお尋ねでありまするが、私ども、拘束されるものとは思っておりません。配置をスムーズに行なうための技術的調整に基づくものでありまするから、しかし、信頼関係にあって日米安全保障条約を共同して推進していくというたてまえにある日本政府及び自衛隊としては、この協定に信を置いてやはりこたえていく必要がある。しかし、これは寸分動かすことができないのか、こう仰せられるならば、それは事情の変更、また相手を理解させることがあれば、これは変更することも不可能ではないものであります。
  126. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それでは、一つの例を私申し上げますが、これからの運営について日本に非常に不利益な状態があり、かつまた現地が非常に不安な状態にある、したがって、アメリカ政府に、この久保・カーチス協定の内容で一部この際向こう一年間延ばしてみてくれ、たとえば三千二百名、百名は連絡係としてやろうと、こういうことが可能ですか。訂正が可能と言われるのですか。
  127. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) ただ腰だめでどれだけ配備しますから協調してもらいたいとか、調整をするということできめたものではありませんので、もちろん協定にありまする数をわれわれとしては配置をしたいと思っております。しかし、何らかの大きな変化があって、両国とも納得のできるような事態があれば、これは変更は可能である、そういうことを申し上げたのでありまして、変更を前提にこの協定がなされておるものではありません。もちろんこの協定の線に沿って実行をしていきたいというふうに現段階では思っております。
  128. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そうなると、あんたの先ほどの答弁には大きな誤差があるのですよ。双方が納得すればということは、理解をするということです、そうですね。したがって、納得しないことは変更できないということでしょう。日本の実情でどうしてもこれはいかぬ、アメリカがどうしてもまたそれをやってもらっちゃ困ると言えば変更はできないことなんですよ。それで拘束がないとは何ですか。はっきりしてくださいよ。
  129. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) どうも私、そういうことを言ったように思いませんが、要するに協定ですから、しかも、われわれは、日米安全保障条約を相互信頼の上に締結し、今後もこの日米安全保障条約を推進するために、自衛隊配備も一面の任務として行なわれるわけですね。したがいまして、この協定の線で配備をしたいと思っておるわけです。しかし、どうしてもこれでなくちゃならぬのかと、これはやはり日本のまた事情によって、都合によって一個中隊派遣は何カ月おくらすこともあるとか、あるいは延期することもあるとか、その程度の弾力的なことは、これは私は可能だと、こういうことを申し上げておるわけなんです。協定はもうがんじがらめに縛りつけられて、この協定のもと自衛隊はにっちもさっちもならない、そんなものではありません。自衛隊は自主的に行動することができます。しかし、冒頭申し上げたように、これは信頼関係に立ってこういう協定を結んだんですから、いまからそれがくずれることを予想してお話するということはどうかと思うわけであります。
  130. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そういう内容のものであれば、やっぱり久保・カーチス協定については国会の承認を求めるという姿勢が正しいんじゃありませんか、それだけのやっぱり信義と理解の上に立って変更のできないというような協定を結ぶからには。当然四次防の問題にしてもですよ、防衛庁会議にかけて協議をして、結論を出して、そして国会の承認をいつも求めるんですよ。一体、四次防の問題も大事とお考えになりましょうけれども、やっぱりこの際は沖繩国民の希望というもの、昨日からいろいろ問題が出ておりますが、ほんとうにこれを重視しなくちゃいかぬと、これが返還の第一条件でなきゃならぬと私たちは思うわけです。  昨日の答弁でも、あんたがおっしゃっておるように、まだ自衛隊そのものに対して沖繩県民の方が十分な理解をしてないと、こうおっしゃっておる。あなたみずからが理解しておらないことを知っておられる。きょうの私の質問に対すると、いかにも沖繩県民も了解してくれるような答弁で、そうして拘束はないというけれども、実際には信義と理解がなければこれを推進することはできないと、こうおっしゃっているんだね。そこらの矛盾を私は感ずるわけです。それだけ重要な問題なるがゆえに、久保・カーチス協定というものをなぜ国会にかけないのか。単独なもののように思っても、それはそういうものではないではないか、こういうことをお伺いしたいと思います。
  131. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは、さっきも申し上げましたように、配置のための調整、きわめて技術的な打ち合わせ、こういうふうに理解いたしておりまするので、直接国会の御承認の場には出しておりませんが、しかし、今後当然予算審議の場等におきまして、沖繩配備をめぐりましていろいろまた御審議に供することにもなりまするし、また、いまこの場面でもこうしていろいろ御質疑に私どもも応答をするわけでありまするので、今後とも御納得のいく形で、いかなる御質問にも応じていくのは、これは当然だと思っております。  それから、沖繩県民は、これはいままで何といっても施政権が違っているものですから、そこで、自衛隊というものはこういうものだと口で説明をしてみても、やはり旧軍隊のイメージが先に立つ、どうしても旧軍隊のイメージが先に立てば、あの悲惨の極致といいますか、あの場面が浮かんでくるだろうと思うんです。そこで今度はそういう性格のものでないと、私、これは今後にかけて十分沖繩県民に知ってもらう必要があると思う。さっき御指摘のように、たとえば災害救済活動にしましても、民生協力にしましても、これは旧軍隊は余技としてやったかもしれません。しかし、今度の自衛隊は、自衛隊法に基づく本務として、局地防衛に任ずることはもとよりですが、そういったことも行なうわけでありまするから、たとえばことしのあの干ばつのような事態に見舞われたときには、自衛隊があそこにおったならばきっと自衛官を使って水を配給したり、もう果敢な活動を展開して、おそらく離島の沖繩県民からも喜ばれたのではなかろうか、そんな感じもするわけです。ですから、そういう雰囲気を極力理解してもらうように、われわれは十分努力していく、PRしていく、これはもう絶対必要だと思うのです。そうして協力のもとにスムーズに配置できることがまた自衛隊の本来の任務が達成しやすいわけでありまするから、今後、粘り強く、念入りにひとつ納得のいく努力をしてまいりたいと思います。
  132. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それで、結局、理解をさせる努力をする、こういうふうにおっしゃっておるのですけれども、実際は、また衆参両院の多くの質問の中にも出ておりますが、沖繩本土を中心にしても二二%という膨大な地域が施設になっておる。したがって、総務長官みずからもそう言われておるように、全くこうした大きな地域がそういう基地になっておるということでは、沖繩十年の計も困難性があるということを答弁しておられるんですよ。私は、何回も聞いております、そういうことを。けれども、それはそれとして、将来は撤去されるであろうという計画でもやれないことはないというような御答弁をしておられると私は思うのです。沖繩国民はそれを願っておるわけです。したがって、いまから理解させるのではなくて、これから一年なり二年なり、理解させてから自衛隊の派遣ということもあり得るじゃありませんか。それを直ちに防衛会議にもかけないで、しかも、国会にも、法的には何ら具体的なものがなくて、そうして久保・カーチス協定なんというものがひょこっと出ておる。これはあまりにも沖繩県民、日本本土国民にしても、こんな軽視されたやり方はないのではないか。これだけ大きく客観情勢が変わってきておるのに、こういう軽視されたやり方はないのではないかということを強く不満に思うし、また国民もそう思っておると私は思うのです。この点どうお考えになりますか。
  133. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは高山さんに議論を吹きかけるわけじゎありませんが、むしろ軽視じゃなくて、沖繩県を重視するからこそ一日も主権の及ぶ沖繩県を防衛の空白状況に置くことはできない。で、アメリカ日米安全保障条約に基づいて基地を持っておるということと自衛隊日本自衛隊として配置されるということとは、これはおのずから違うと思います。また、御指摘のように、基地が多いという点は、私もそのとおりだと思います。  これは午前中の矢追さんの御質問にもお答えしましたように、少なくともベトナムが停戦状況ではありまするが、しかし、まだ戦争継続の状況である。そのときに、核抜き本土並みという佐藤総理からの強い要請によって、これをアメリカの国務省あるいは大統領が国防省を説得することはなかなか骨が折れたろうと思うのです。そこで、国務省等にいたしましても、核抜き本土並みというところまでは説得できたが、もっと基地を減らせということについてはなかなか調整がむずかしかったのではなかろうか、これは推測ではありまするが。したがって、わがほうに施政権が戻りました上からは、安保条約の適用が本土並みであることは言うまでもありませんが、基地の態様についても、やはり本土並みにしていく努力総理はじめ懸命にこれは行なっていかなければならぬ。国会の決議もありまするし、当然これは私は可能だと思います。今後とも努力をしていきたいと思います。
  134. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それはね、その将来のことを私は言っておるのではないのです。実際問題として、こういう情勢下であるから、アメリカの強い要請でもなかったのだ、日本の自主的なもので、防衛庁だけの考え方で派遣することにしておるのだ、そこで、派遣するのには、あなたのほうではそれ相当の準備も要る、向こうとの話し合いも要る、そこに久保・カーチス協定というものができたのだと、こうおっしゃっておる。したがって、国会の承認も得ないと、こういう態度で来ておられる。そういうものであるならば、まず理解が先に先行しなければなりません、沖繩県民の理解が。あなたのいまおっしゃっておることは、いわゆる極東安全という問題から派生して将来を考えての配置じゃありませんか、それなら。そうじゃなしに、先ほどのあなたの答弁ならば、時期をずらしてもいいではないか。この六カ月以内に批准されたならば、三千二百人ですか、それだけの人間を派遣しなければいかぬと、こういうことの協定になっているが、それが百名になることもあるのですかと私が言ったら、それはなかなかできぬと、こうおっしゃる。そういうごまかし的な答弁をしておられるところに問題があるのだ。できるならできるように、百名にしてもいいです、千二百名でもいいのです、こういう答弁をしてくださいよ。協定は紳士的にやっておるのだから、あくまでも日本の自主的な問題だと、しかし、日本が希望を言うならば改正ができるとあなたはおっしゃった。それなら千名でも、あるいは百名でもいいのですかと言ったら、いや、そうはいかぬと、こうおっしゃる。いずれが正しいのですか、はっきりしてくださいよ。
  135. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 私は、そういうふうに申し上げたように思わないのですが、要するに、腰だめでこれだけの人員を配備するということをきめたわけではありません。これはやはり沖繩の、沖繩県の地理的環境、置かれておる状況、そういうものを勘案して、これが妥当であるということを熟議の上決定したものでありまするから、予定どおり配備をしたいと思いますと、しかし、その配備にあたっては、これはあくまで沖繩県民の納得を得なければなりませんので、その理解を進めるための説得といいまするか、説明といいますか、そういうことについては十分努力をしていきたい、こういうふうに申し上げておるわけです。
  136. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そういう重大な問題だから国会の議を経る必要があるのではないですかと、こう言っているのですよ。それはないのですか。国会の議を経る必要はない、自衛隊直接できることだと、こうおっしゃるのですか、はっきりしてください。この問題は大事ですよ。
  137. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは自衛隊として施政権の及ぶところへ派遣をするわけでありまするからできるわけですが、さっきも総理が、これは大事をとって国防会議にもかけようと、こういう御意思を表明しておられます。したがいまして、われわれといたしましても、当然これは予算措置その他をめぐりまして国会の議に供することになりまするし、すでに今日国会にも久保・カーチス協定に基づきましたこの概要書等々も参考書類として配付いたしまして、そうしてこの御審議を求めておるわけでありまするので、この御審議をもって御理解を願いたいと思います。
  138. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 まあ、そのことばかりこだわっても、どうも色よい返事が出ないのだが、一説にはですね、長官、久保・カーチス協定は、米側が国会の承認を得るための一つの付属資料として、この際派遣をしてやるのだというようなうわさも出ておるわけです。そういうためにその協定が結ばれたというようなことはないわけですか。
  139. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) そういうことはございません。ちょうどここへ久保・カーチス協定の久保防衛局長がおりますから、もし必要があれば久保君からも答弁を補足させます。
  140. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 要りますか。
  141. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 要りません。もう何べんも聞いておるから。  ところが、もう一つお聞きしますが、今回の返還について、VOAは、これはまあやむを得ない処置としてアメリカの無理を聞いたのだと、こういう答弁がなされておる節があるのです。これと同じようなことじゃなかったのですね。VOAは全くそのとおりですか。これひとつ確認しておきます。
  142. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) VOAは、これはわが国の統一電波行政に対する大きな例外をなすわけです。ですから、私どもといたしましては、最後まで、これは返還時にはお引き取り願いたい、こういうことを言ったのですが、アメリカ側の主張は、VOAは世男各地にある、平和的な機構である、ぜひ存置さしてもらいたい、しかも、永久に存置さしてもらいたいと、そこで、やむを得ず、五年と、こういうふうにいたしまして妥協した、こういうことでございます。
  143. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 総理、ちょっとお聞きしたいのですがね。自衛隊の場合は、日本独自の派遣だと、こうおっしゃっておるのですよ。一方、VOAのほうは、アメリカの言うことを聞いて、五年後には撤去してもらう、こういうことを言っております。しからば、そういう設備を日本に五年間も置くというならば、それこそ久保・カーチス協定のような協定が必要ではないかという私は感じがするわけです。いままでの経過を見ましても、いろいろな問題を起こしておることは、これは事実御承知のとおりです。一方は五年間も猶予期間を置いて、アメリカの言うことを聞いて置いた、それには何の拘束も協定もない。もし問題が日本に起こった場合には、日本が責任を負わなければいかぬじゃありませんか、日本のつまり施政権の中からそういう問題が起こってくるのでありますから。こういう問題こそ当然米国との間に協定があってしかるべきだと私は思うのです。それには何にもない。一方、自衛隊の場合は日本の自主的だと言いながら、これはもうどんどん協定が先に進んでおる。国会の承認も求めない。大臣、こういう行き方は一体国民が納得しますか。どうですか、総理
  144. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 自衛隊の場合は、まあ四次防がずいぶん議論されておりますが、新しく沖繩に駐留いたしましても、すでに皆さんの御承認を得た範囲内でやることでございますね、新しく定員がふえるわけじゃございません。したがって、配備そのものは、私ども自衛隊ができることだと、こう思います。ただ、私がさっき申し上げるように、これは重要な問題だと言ったのは、新たに施政権が返還になって日本に返ったと、そういう際の配備でございますから、いまの本土の府県内の配備とは事変わると、こういう意味で、これは慎重に、また重要な問題として国防会議の議題にすべきじゃないかと、かように申しておるわけであります。また、これについてアメリカ側とのいわゆる久保・カーチス協定、この問題でございますが、これもやはりわれわれの強い要望もある、米軍基地は縮小してほしい、これはまたいままで持っていたような米軍の機能、これは今度は事前協議、あるいは自由発進だとか、こういうようなことはできなくなる、こういうような点がございますから、これはやはり自衛隊本土防衛について、沖繩防衛について相互の理解を深めるというか、取りきめをすること、これは私普通の成り行きではないかと思います。  私は、むしろVOAについてもっと中身を具体的に取りきめる必要があるんじゃないか、こう言われるが、これはこれとして、さらにVOAの問題についてお尋ねになれば詳しい問題が出てくるわけです。これもただ五年間だけだ、こういうようなわけのものではございません。他に移り得るならば、二年たてばその際にさらに協議をすると、さらにまた五年たっても他に移らないというなら、これは結局それで消える、こういうような取りきめまでされていると、かように私は理解しておりますが、この点では、もうすでに高山君も御了承じゃないか、かように思っております。  私、先ほど来からのお話を聞いていて、とにかくわれわれが申し上げたいのは、ただいまの沖繩本土復帰されたと、新しい事態には違いありません。この潜在主権、これが顕在化するという事態、これは新しい事態だと、こういう点であり、また戦時中におきまして、戦前には連隊程度のものしがなかったのが、今度はあの陸軍が進出することによって本土防衛の第一線になった。そうして焦土と化した。こういう意味で、たいへん軍というものについては拒絶反応を示している、こういうのが現状ではないかと思います。したがって、私もこの席で申しましたように、名前は違っていても、自衛隊にしろ、これはとにかく出かけるについては、十分沖繩住民の理解を求めなければならないぞと、またその理解がなければ、せっかく出ていっても十分な働きはできない、その任務を果たすこともできない、かように私ども思いますから、そういう点では万遺漏なきを期すというのが先ほど来の防衛庁長官の説明でもございます。別にただいままで国防会議にかかっておらないからといって、私自身がそういう点について全然理解しない、それはもう新しいこと、私は知りませんと、かように申せば、これはたいへんな重大問題ですけれども、さようなことはございません。これはもうすでにいままでいろいろ話がされておりますし、また、正式に議題となってはおらないけれども、そういう問題について私自身が積極的にそれを停止するような発言もいたしておりませんので、この辺は十分御理解をいただきたいと思います。私は、ただいまの計画、これこそは米軍を減少さすというか、撤退さす、そういう意味においても久保・カーチス協定というものは非常に役立っているのではないかと、かように思いますので、これらの点をやはりメリットも考えていただいて、まあデメリットばかりじゃないんだ、そのメリットも考えていただいて、そうしてこれを評価していただきたい、かように思います。
  145. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 どうも何ですね、私は、久保・カーチス協定の問題とVOAの問題は、逆に協定があるべきじゃないかという質問をしたのですけれども総理はそれ以上の御答弁をしていただきましたが、私も時間がありませんので、これは簡単に答弁願いたいんですが、外務大臣、いま総理は、このVOAの問題については何か協定があるような、これから質問すれば何か出てくるんだと、こういう御答弁をなすったんですが、何があるんですか、一体。
  146. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、高山さんからお尋ねを受けた部分だけをお答えしたわけですが、なお、お尋ねに応じましては、この問題については幾らでも御答弁申し上げます。これは協定にもよく書いてあるし、またその協定付属文書にもいろいろのことが書いてある。その趣旨、またそのいきさつ、そういうものについてお尋ねさえありますれば、十分御説明申し上げます。
  147. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 逆に私のほうから聞きますが、もし日本に返還された後に他国から抗議を申し入れられるような放送は規制されてある、したがって御心配は要りませんと、こういうことでよろしゅうございますか。
  148. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) よろしゅうございます。
  149. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 防衛庁長官にもう一つお聞きするのですが、もしそういうことで防衛庁がやられるということであるならば——もしですよ、六ヵ月以内に三千二百人の派遣ができない、こういう事態が起こったとするならば、強制派遣をやるのですか、やらぬのですか。
  150. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 強制派遣ということはよくわかりませんけれども、そういう事態にならぬように、これは万全の措置をとっていきたいと思っておりまするし、そんなところで配置のために大衝突を起こすなんというようなことは、もちろん回避していかなければならぬと考えております。
  151. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 この問題について、すでに防衛庁はある程度の、何といいますか、優秀な派遣者を出したい、こういうことでいま人選をされておるというお話を聞くのですけれども、それはなされておるのですか、どうですか。
  152. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 今日の段階ではむしろ——もちろんその自衛隊配備についてもいろいろ計画は順調に進めておりますが、それよりも、いま申し上げたように、まず自衛隊を理解させることが先決であります。それから防衛庁自体というたてまえから申しまするというと、施設庁の要員をいっときも早く派遣をして、そうして土地使用についての取りきめを実行に移していかなければなりません。これはもう旺盛に活発にやらなければならぬわけです。  そこで、その人選については、私、本会議でも申し上げましたように、特に地主といろいろこの話し合いを進め、それこそ契約を結ぶこの第一線の任務を帯びた者が優秀でありませんというと、その者がいわゆる日本政府の顔に見え、また防衛庁の顔にも見えるでしょう。復帰した祖国の顔に見える。だから十分これは特訓を施してでも優秀なのを出せと、これは厳命をしておるような次第であります。
  153. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 その問題は、午前中ですか、御答弁もされたように、百名程度もう派遣をされているのでしょう。私はそれを聞いているのじゃないですよ。三千二百名あとから送ろうとする——協定の問題がいつになるかということもお聞きしたいのですけれども、いずれにしても、協定したら六カ月以内に三千二百名送るという協定をされておるわけだ。それをいまもうやっているのですか、やっていないのですかということを聞いておる。
  154. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 先ほどから協定協定と、こういうことになっておりますが、あれは取りきめでございます、正式には。  それから、当然配備するにつきましては準備をいたしております。
  155. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 取りきめ——協定とも出ていないようですから取りきめでもいいですが、これですね、一体その協定はいつごろになるというお考えなんですか、外務大臣
  156. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 協定発効の時期、これは、わがほうにおいては四月一日を希望し、アメリカ側では七月一日を希望しておる、こういう状態です。いずれにいたしましても、この準備が整わなければならぬ。わが国においてはまだ法的な準備が整っておらぬと、こういう状態でありまして、たいへんおくれております。  それから実体的の準備におきましては、アメリカ側にもかなりのものがあるようです。それらの準備が整ったところが協定の発効の時点と、こういうふうにならせたい。まあ四月一日から七月一日の間でしょう、おそらく。
  157. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 防衛庁長官、かりに四月一日ということになるとしますれば、六カ月以内にそれを実行するということになれば三千二百名の人選をしなくちゃいかぬということですよ。だからそれをやっておられるんでしょう。やっておればやっておる、やってなきゃやってないという御答弁を願えればいいんですよ。簡単に。
  158. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 当然これはやっております。熊本の西部方面部隊においてこれはやっておるわけでありまするが、さっき百名という話でしたが、いま防衛局長にただしてみますると、四十名、これは復帰までにできれば向こうへ派遣をしまして、そして自衛隊を理解してもらうべくいろいろ折衝をしたりというような準備に入らせたい、こんなふうに考えます。(「午前中の百名というのは食言ですか」と呼ぶ者あり)
  159. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それを私もいま言っておる。午前中、百名と、防衛長官、あなた言われたのですよ。どうしても優秀な人を百名やって、いろんな引き継ぎのための準備に必要だというので百名を派遣しなくちゃいかぬと、あなたがおっしゃったんですよ、議事録見て下さいよ。だから私はあなたが百名とおっしゃったと、こう言っておるんだ。いかなければ訂正してもらわなければ……。
  160. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) ただいま長官が申されましたのは、現在熊本の西部方面総監部に四十名ばかりの準備要員を編成いたしておりますということであります。  それから百名という数字は、返還日の前にできれば準備要員を派遣いたしたい、こういうわれわれの計画であります。
  161. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) ちょっと念のために申し上げておきますが、午前中はこの自衛隊の派遣についての質疑はありませんでして、いわゆる土地の問題等について、施設庁のこれはせびろです。シビリアンですが、これがいまのところ百名程度、厳密に言いますと百二十五名と、こう言っておりますが、その程度の者を先遣して、そして土地の契約等を結んでいきたい。要するに、あのせびろ組とユニホームとは違うわけですから、これは念のために御理解おき願います。
  162. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 私もそれを言っておるんですよ。優秀な人ということを言ったら、あなたは、それに対しては、施設の説得力としてやるんだとおっしゃるから、それは理解しておるんですよ、私も。そうじやなくて、またそれを訂正されるような四十名だとおっしゃるから、午前中のそれとはお話が違うんじゃありませんかと。私が質問しておるのは、三千二百名の中のつまり人選をいまやっておられると話を聞くわけで、至るところで。防衛庁でやっておるようですが、そこで全く希望者がないということを聞いておるんです。その点はどうですか。
  163. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 希望者がないというわけではありませんで、初め沖繩に派遣するのには沖繩出身の自衛官が適当ではなかろうかということで、出身者について当たってみると、必ずしも沖繩出身者は沖繩に帰りたいということではない、そういうことの空気が伝わったものと思います。なお、一般論的に申し上げれば、家族を持っている人たちは必ずしも好まないという空気があるやに聞いております。
  164. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それは沖繩県出身者は日本本土がいいというので、いままで出てきて日本でいろいろやっておられるんですから、それは帰りたくないというのは当然だと思うんですよ。沖繩県の方でさえ帰りたくないと、こうおっしゃっている。そこに持ってきて僻地手当もない、昇給昇格制度も何もない。そして三年間も離れていくということについては、全く自衛隊ではきらわれておるという話を私らは聞くわけですよ。そういう事実はどうですか。これこそほんとうの理解をさせなくちゃ……。もう四月だと、こうおっしゃっておるでしょう。四月に協定始まるなら、それから人選したんでは間に合わぬでしょう。三千二百名というようなものは強制はやらぬと、こうおっしゃっておる。納得をさせると言われるが、条件は悪いときておるわけだ。何をして一体やろうとするのですか。もっと筋立ててこうするんだというような具体的な問題を説明願わなければ、私は納得いきませんね。そんな答弁では。
  165. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 十分これはやはり準備を要することですから、これは今後にかけて努力をしていくわけです。それで、とりあえずは制服が四十名参りましてその下準備をする。それだけでいいものではありませんから、今後、機会あるごとに自衛隊というものはこうだと、また北海道にもこれこれ、九州・四国地方にもこれこれということなどをよく説明していけば、私は、沖繩県民の大多数の理解を得ることは可能だと思っております。
  166. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 沖繩県民の理解をいま聞いているわけじゃないんです、私は。日本自衛隊のことを聞いておる。自衛隊が希望者がないという話を聞くが、その理由には僻地手当もない、昇給昇格規程もないと、しかも、三年間も家庭を離れて行かなくちゃならぬというような悪条件の中で、しかも、一方においては四月ですよ。四月かりに協定するとするならば、少なくとも三千二百名というものを紳士協定だ、メモ協定だとおっしゃるけれども——それは申し合わせでもいいですが、それを実行するには、あなたできるのですかということを聞きたいのだ、むしろ。
  167. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは遅滞なくやっておりまするから、できます。それから希望者があるないという問題につきましては、これは事実自衛隊の隊員というものは恵まれない環境にありまするので、本来ならば御理解を賜わりたいわけですが、しかし、隊規は厳粛でありまするから、隊規に基づいてよく話し合いをし、説得をして希望者は充足し得るものと見通しております。
  168. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そうすると、強制もあり得ると、ある場合によっては、まあ納得さした強制といいますか、そんな強制はないと思いますけれども、あなたの論を借りるならば、理解と納得をさした上でやると、こういうことになるんじゃありませんか。
  169. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) どうもちょっとことばが私違うように思うのですが、さっきの強制というのは、地元が全然理解してないところへ強制的に自衛隊を配置するのかと、自衛隊を押し出すのかと、そういうふうに私受け取って、そういう強制的なことはいたしませんと、そういうことをしたのでは地元の協力を得ることもできぬし、今後自衛隊の任務を遂行する上にもこれは支障があるというふうに答えたのであって、自衛官そのものは、これはやはり厳粛な隊規を守らせる、これもやはり自衛官の当然任務の一つだと思いまするし、これは十分話し合いの上で希望者を充足させたい、こう思っております。
  170. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 沖繩の問題じゃないですよ、私は。自衛隊の強制的な派遣をされるのですかと、たとえば先ほど私が具体的に言ったように、僻地手当もなければ昇給昇格の制度も何にもないんだと、すでに四月からはもうやらなくちゃいかんのだと、こうおっしゃっている。協定調印するなら四月から実施しなくちゃいかんのだと、こう言われておるのだ。それの人選をいましておると、こうおっしゃっておる。人選をしておって、もしこういう状態で行けないという状態が生まれてきた場合には、隊を強制でも、おまえの連隊行けとか、こういうような強制でやられるのですかというのだ。沖繩の強制を言っているのじゃない。あくまでも希望か、どちらかです。
  171. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) よくわかりました。これはユニフォーム、いわゆる制服の中においては命令を守れということは当然であると思います。現在までも沖繩よりもっと僻地、もっと不便なところへ配置しておるということもありまするので、これは了承してくれるものと思っております。
  172. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 まあ、その問題についていろいろ大臣のお話を聞いておりましても、久保・カーチス申し合わせですか、それ自体が一方では拘束を受けておると、一方においては、日本は拘束を受けながらこれを何とかして自主的な防衛のためにやるのだと、こう逃げようとする。こういう感じしか私らはしないわけですよ。そうしてその隊員を三千二百名もやるとおっしゃるけれども、それの条件なんというものは、この国会で何にも出てない。今後やるといっても、もう四月きまればすぐその人員の選択をしなくちゃいけません。そのために私は希望者をとってやっておられると思うのですけれども、そういう点がどうも今度の問題については不明確であると同時に納得のいかない点で、私たちは全く信頼できないのであります。  そこで、私は、自衛隊の問題におけるところの最後一つだけお聞きいたしておきますが、先ほどの御答弁の中で、この協定そのものがほんとうに日本が拘束をされない協定であり、アメリカの理解を取りつけるならば、ある程度三千二百名を百名程度のものにして、そして実態をやっぱり調査もする、この期間は三千二百名を派遣するということにはならないんだと、しないと、そうして一年なりあるいは一年半なりの期間を何とかおいて、その間に、これは山中長官も言われるように、真に沖繩県民にやっぱり納得をさせる、そういう余裕ある政策を政府としてとるべきだと思うが、そういう考え方は全然ないのか、もうこのまま押し切ろうとされるのか、この点お聞きしておきたいと思います。
  173. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) このすでに御配付してある——これは先ほどから申し上げておりまするように、法的拘束のある何らそういうものではない、これを申し上げたわけです。しかし、ただ腰だめといいますか、概算でこうやるのだということを取りきめたわけじゃなくて、やはり日本自衛隊はこの程度必要ですから、こういうふうで配置をいたします、したがって、そちらのほうもこれに適合して行動を願いたいという取りきめなわけですから、われわれとしては、当然、復帰、そしてまた六カ月の時点では、御指摘のように、三千二百名を配置したい、また、そのためにはあらゆる努力をしていく、この方針に変わりはございません。
  174. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 山中長官に御質問申し上げますが、昨日、長官は、自治権の尊重という点についてはいろいろ御説明をしておられますが、この出先機関の充実ですね、これをやっていただくのと同時に、ほんとうに自治というものに介入はしないんだと、こういう御答弁をきのうもしておられるわけです。しかし、きのうの質問者も強くその点を主張されたように、だれが見ても、あまりにも自治権の侵害がされるんじゃないかという恐怖感を抱くような姿勢ではないかという感じがわれわれもするわけです。したがって、この点については、県民その他の御意見も十分お聞になっておると思うのですが、実際問題として、あくまでも運営そのものは地方自治体が優先で、その優先そのものを中央機関は聞く、そうして聞いた政府はそれに対してある程度示唆もする、全く内地の状態と変わらぬということが確言できるだろうと思いますが、その点いいですか、そう考えても。
  175. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 本土の都道府県知事並びに市町村長が持っている固有の事務、権能、そういうものを侵すところはいささかもございません。しかしながら、それだけでは、きのう来申しましたことで省略をいたしますが、沖繩県の新しい発展のために社会資本その他基礎的な条件の整備が困難であろう、そういうことが両政府合意の上、もし琉球政府の県知事あるいはそれぞれの港湾、河川等の管理者あるいは町村道等の管理者等、県知事、市町村長等が申請をなされた場合には国のほうでいたしましょうという規定の窓をあけたということでありますから、自治権は完全に認められた上の要請にこたえるために窓をあけたつもりでございます。
  176. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 これも昨日質問にお答えになっておりますから、ダブるかと考えますけれども、再確認しておきたいと思いますが、長官は、地方財政の百三十億ですか、百三十億数千万円の赤字がある、したがって、それは大体政府としては今度の予算にもう組んだ、したがって、めんどをみるつもりだ、こういうふうに考えてもいいですか。
  177. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 琉球政府が国政担当事務も行ないつつ、なおかつ本土の府県のように起債市場もなく、あるいは国の本土府県と同じような交付税制度もない中で、きわめて苦しい事務を担当してまいっておられますので、したがって、それらの事情を勘案し、今日までの累積赤字についてこの際されいさっぱりなっていただく、そうしてそれの、借り入れ金でございますから、元利償還については本土政府本土の予算をもって支出をいたしてまいりますという方針でございます。
  178. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 これは総理にお聞きしたいんですけれども、教育委員の任命権の問題ですが、御承知のように、沖繩は、過去二十六年間公選の立場をとって、しかも、日本と同様の教育のシステムを完全に守り抜いてきたと、それはいわゆるこの教育委員の公選に基づくその中心が確立し、またこのために守り得たんだと、こういうことを琉球政府も言っておるわけです。私は、この問題は、一昨年でしたか、文部大臣に決算委員会で質問したことがあるのですが、少なくとも、日本もこの教育委員の選出というものは公選でやったわけですね、それを任命権に変えたわけですよ。教育の基本を守ろうとするならば、その基本がもし間違っておった場合は、少なくとも地域住民がそれを判断する。いまの教育は間違っておる、教育委員の指示も悪い、こう思った場合は、少なくとも地域住民がこれを判断して、そうして正常に返す、これが民主的な教育であると同時に、あるいは一方的な詰め込み教育といいますか、イデオロギー的な教育も避けられるのではないか、これがほんとうの基本的なものではないかということで、私は決算委員会でも強く要望したことがあるんですが、いや、現状がいいという答弁しかなかった。どうですか。せっかく沖繩が今日まで守ってきたこの委員の公選制を、いま日本に直ちに帰るからといって深く閣僚の間でも討論もなされていないのじゃないかという気がしますが、もっと慎重にこういう問題をお考え願って、公選制をせっかく沖繩がここまで守ってきたというこの事実の上に立って、むしろ本土を改正すべきじゃないかという私は気がするのですが、総理の見解をひとつお聞きしておきたい。
  179. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この問題については、たびたび同様の質問、お尋ねがございました。  私は、沖繩の教職員の方々が米民政下においてあるいは軍政下において、とにかくりっぱな日本人をつくろうとして、この公選制のもとにおいてりっぱな教育をなすったこと、これについては私高く評価いたすものでございます。しかし、本土においても、もと公選制だったものが三十一年に任命制に変わった。そのときにはずいぶん国会で審議をし、与野党の激突までした。そういう状態はございますが、とにかく任命制にいたしたのでございますから、今回沖繩本土復帰すればこの制度だけをやっぼり本土並みにするのがいいのじゃないか、かように私は思っております。むしろ逆に沖繩をそのままにして、本土沖繩制に変えろと、こういうお話のように聞き取れますけれども、私は、三十一年に改正したときに、すでにそれらの議論は大よそ尽くされたような感がいたしますので、教職員の方々が米軍政下においてりっぼな日本人を教育する、こういって立ち上がられたそのことについては心から感謝し、敬意を表しますが、今回はどうか本土と同じような任命制、これに変わっていただきたい、かように思っております。
  180. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 総理は、沖繩でやったことは賛美され、まことによくやってもらったと、こう賛美されておるわけですが、実際の本土の問題になってくると、過去の歴史を言っておられるわけですが、私は、変えるべきだとは言っておらないわけです。考えるべきだと、こう言っておるのです。それは教育は私一人で教育問題の所信を出すべきでもありません。閣僚の中の十人や十二人で出してもらうべき問題でもありません。日本の百年の計を立てるためには教育こそ大事であります。したがって、沖繩が守ってきた実績、日本でも一部には変則的な不正が起こっておる。大阪の実例はそうじゃございませんか。これらは全く教育委員として恥ずかしいことじゃありませんか。こういう事実を見たときに、もう日本もむろん公選からこの任命に変えるときには問題がありましたでしょう。けれど、今日に至って国民ひとしく教育という問題には深い関心を持つわけでありますから、うんと世論を聞きながら、政府の方針としても、何とか沖繩が守ってきたような公選のほうが正しいんではないかという結論が出るならば、そこに持っていくべきじゃないか、これを強く私は主張したいのであります。かつて、私は、先ほども申しましたように、坂田文部大臣にもそれを主張しました。どうかひとつ総理、もう一回、私が考えておりますことに対してどうお考えになるのか。文部大臣もひとつ見解をお聞かせ願いたい。
  181. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 教育の問題は、高山君御指摘のとおり、これが基本でございます。われわれがいろいろ政治をするとか、かように申しましても、教育の問題を頭から離していろいろの施策は考えられません。このことは、はっきり申し上げることでございます。したがいまして、教育行政のあり方、これがいかにあるべきか、また教育そのものがいかにあるべきか、これは私どもの念頭をとにかく離れず、絶えずこの問題を考えながら諸施策を進めておる次第でございます。私も、偏狭にいまの制度を守り抜くと、かような意味ではございません。ただいま言われるように、これも高山君が御指摘になりましたように、これを変えろとは言わない、十分もっと弾力的な教育の問題のあり方を基本的に考えろ、かように仰せになることについては敬意を表します。私も、そんなにかたくなに教育方式あるいは教育行政、そういうものを考えておるわけじゃございませんから、それらの点では、もしいい方法があれば、それに移し変えることについてやぶさかでないことを申し上げておきます。  ただ、この際に申しますが、私は、今回の沖繩が祖国に復帰した際に、教育行政のあり方はいかにあるべきかと、かように考えますと、ただいまの教育制度、これは教育委員会の問題ですが、これは公選制よりも任命制、これがしかるべきだと、かように考えておる次第でございます。
  182. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) お答え申し上げます。  総理大臣から詳しく御答弁ございましたが、沖繩の教職員の方々があの施政権下にありまして、県民族の支配には屈しないという、これはほんとうの祖国愛から出たものである、沖繩の教育基本法の中に日本人として教育をするという条項をうたってございます。私は非常な敬意を表しているのでございます。もうおそらく占領二十六年もたちますというと全部英語に変わったかもしれません。それが日本語を守り通して、日本人としての教育をやっていただいた。ただ、今度沖繩本土に返還されるというこの時点におきまして、教育行政制度がある地点においては違った教育行政制度であるということは、国民の共通の基本的課題である教育行政制度のあり方としては適当でないと、したがって、現在の公選制を任命制に改めるということは、これは当然、これこそほんとうに沖繩復帰意味ではないかとすら考えているのであります。もちろんこの問題につきましては、昭和三十一年に法律改正の際に非常な御議論のあったことも十分承知をいたしておりますが、今日この際、日本の制度を改めて沖繩の制度に変えたらどうかと言われましても、この問題をすぐに、はい、さようにいたしましょうという御返事を申し上げるわけにはまいりません。
  183. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 誤解のないようにしてもらいたいのは、すぐ変えるということを私は言っているのじゃない。沖繩の公選制を尊重して日本の国内でももっと考えるべきではないかということを私は主張しているわけです。  そこで、これは文部大臣にひとつ言っておきたいと思うのですが、沖繩が守れたというその基本はどこにあったかということですよ。たとえば沖繩の首長あるいは市の首長、こういう人たちが任命権を持ったのでは、一人か二人を押えてしまえばこれはどうにでもなるんです。赤子の手をひねるようなものだ。あれだけの施政権の中にあっても、公選という沖繩県民のほんとうの意見で選んでおったからこそ防ぎ得たんですよ。教育はそれでなければならぬと私は思うんですよ。考えを間違ってもらっちゃ困るんだね。防ぎ得た理由は何か、これは公選で出ている教育委員であるがために、アメリカ施政権のもとにあっても防ぎ得た。これは一首長がどんなにがんばってみたってこれはだめですよ。おまえの任命はいかぬと言われると、それは施政権を握っているからどうにでもなるんですよ。そこまでやれなかったのが公選制の教育委員であったというところにひとつ眼目を置いてもらいたいと思うんですよ。私は、そういうことを主張しているんです。だから、いま直ちに変えろと言っても、それはおっしゃるとおり。沖繩を直ちに、そうして日本の国内を変えよと私は言っていない。公選制は考えるべきじゃないかということを主張しているわけですが、文部大臣、もう一ぺんひとつあなたの見解を聞きたい。
  184. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) お答え申し上げます。  高山先生御指摘のとおりであります。私も、沖繩の今日あるのは沖繩の教育のおかげであるということについては全く同感でございます。  ただ、教育行政制度につきましては、昭和三十一年に法律改正をいたしました際のいきさつもございます。非常に強い御反対になったことも承知をいたしております。その上に立ちまして、私は、ただいま教育行政制度をいま沖繩並みに変えるつもりはないと、かように申し上げたわけであります。
  185. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 時間がありませんから、ちょっと前に進みますが、人事院地方事務所設置に関し承認を求めるの件は趣旨説明があったわけですが、これで私は労働大臣にお聞きしたいんですが、国家公務員と称する人は、これに基づいて沖繩にそういう事務所を設置して、そうしてあらゆる検討をされて、国内の労働条件と変わらないような方向にいずれこれはなると、また、そのためにやってもらわにゃいかぬ。だからこの趣旨については私は賛成でございますが、ただ問題は、そうしますと、いま沖繩県民の中の全労働者の中で民間企業がございます。幾ら沖繩は産業がないといっても、かなり中小企業、零細企業というのがございます。こういう労働者はどこからもカバーされないわけですから、むろん国家公務員の給与が改正されますと、労働攻勢として私は生まれてくると思うんですよ。これは当然のことです。それは組合としてやるべきだろうと思いますが、ただ問題は、あまりにも沖繩の企業は企業としては零細である。したがって、国家公務員に保障がされるような労働者の条件が獲得できるかというと、私は不可能だと思わざるを得ないのです。したがって、労働攻勢は強くなるは、生活は物価が上がれば何とかして守らなくちゃならぬというので、そこに抗争が起こってきて、場合にはストライキもございましょう。私は、これに対する対策というのが何にもないと思うんですよ。これは労働省が組合に、おまえたちストライキをやれとも言えないでしょうから、組合の力でやってもらうという答弁をされるかもしれぬけれども、労働省として、零細企業における労働者をどう擁護するかという点には基本があってもいいじゃないか。たとえば通産大臣のほうで長期融資をするとか、十五年とか二十年の。あとで通産大臣に私お聞きしますけれども、何かそういう施策を立てなければ、沖繩の零細企業の労働者の生活は全く不安定であると同時に、人事院が移動していくと同時に国家公務員は保障され、一方においては劣悪な労働条件で暮さなくちゃいかぬという状態が生まれると思うのですが、労働省は、どういう指導をしようとしておられるのか、お聞きしたい。
  186. 原健三郎

    国務大臣(原健三郎君) お答え申し上げます。  沖繩の中小企業は多く、また、その他、最近の本土復帰とか、通貨問題等で労使関係が種々複雑になっていることは御説のとおりでございます。しかも、一番大事な沖繩の勤労者のためにいろいろ御配慮いただいておるその志に対して、私どもも同様で、まことに敬意を表するところであります。  それで、第一は沖繩振興開発法によって事業を大いにやってもらう、これが本質的なもので、これは法律等によっていろいろやることになっております。  それから、私どものほうといたしまして、労働省で何をやるかというんですが、第一、来年度、沖繩については、中小企業集団六集団について労務改善事業の助成の予算を要求いたしております。労務改善事業の助成の予算、その補助率は、本土では四分の一の補助をいたしておりますが、沖繩では四分の二、すなわち二分の一の補助をいたします。  第二は、労使関係安定促進事業についても、本土では二分の一の補助をいたしておりますが、沖繩においては三分の二の補助を予定いたしております。  第三には、沖繩における労務教育に対する援助がありまして、これは労働大学講座及び労働問題セミナーというようなものをこしらえまして、そこに講師を派遣などして、本土の各県から労働教育に対する手厚い保護を与えたり、それから沖繩の民間労働者、もう一つ——これは、まああとでお答えします。
  187. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 いまの産業融資補助、これは私はよくわかるんです。それはよくわかるんですが、通産大臣にちょっとお聞きしたいのですが、いま労働大臣も心配されておるようで、補助のほうは大体お聞きしましたが、ほんとうに沖繩の賃金を三割上げようとすると、企業の倒産が起こるんじゃないかと思うんですよ。人事院はどんどん国家公務員の賃金を上げていく。民間で三割の賃金をとろうと思ったらたいへんですよ、これ。これに対して労働大臣もおっしゃっておるように、何とか長期の特別融資みたいなものを通産省あたりでも考えなければ、労使紛争が起こって、混乱してからでは間に合わないと思うんですよ。そしてまた、当然民間企業の労働者といえども、労働条件を上げてやるべきだ。人事院の勧告に従ってやろうとするならば、一般民間企業もそれにならう方法をやるべきだ。逆に日本人事院勧告なるものは民間企業の平均が基準になっておるわけですから、今度は逆になってはいけません。そういう面で企業に特別長期融資、こういうことを通産省は考えてやるべきじゃないかと思いますが、通産大臣、どうですか。
  188. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 復帰後の沖繩の中小企業対策に対しては、特別な配慮をしなければならぬことは御指摘のとおりでございます。中小企業だけではなく、沖繩の産業自体洗い直して相当長期的な計画を立てることになっておりますが、十カ年計画を立てるにしても、よほど新しい立場から計画的に沖繩の新計画を立てなければならないというふうに考えております。  それはいつも申し述べますが、一次産業比率が非常に本土に比べては高いわけでございます。人口比率からいいますと非常に高いのにもかかわらず、所得比率から見ますと非常に低いということでございまして、一次産業そのものから本土においても十年間ないし十二、三年間について現在一六、七%のものが一〇%ぐらい二次、三次産業に流出をする傾向にあります。そうしますと、本土並みにすることをそのままに考えて計算をしますと、一次産業比率の人口比率からいうと、三分の二以上も転業しなければならないということになるわけでございますから、一体そういうような新しい産業形態が沖繩考えられるのかどうかという問題からまず掘り下げて考えていかなきゃならない。いまの状態ではどんどん本土に労働人口が移住をしておるということでございますから、まず沖繩の地場産業というものをどの程度レベルアップできるのか、それから本土からの沖繩進出企業を一体どうするのか、しかも、地場産業との調整をどうするかという問題まで考えて、その上で、その中に占める中小企業、零細企業というものの位置をきめて、そうして施策を行なわなければならないということで、たいへんめんどうな仕事でございます。しかし、現在ではもう御承知のことでございますから、簡単に申し上げますが、財政措置、金融措置、税制面の三方面から具体的にやってはおります。現在、二分の一の補助率を三分の二にするとか、それから金融措置にしましては、現在本土が六分五厘から七分七厘であるものを六分五厘から七分にするとか、八分二厘のものを七分三厘にするとか、償却率を引き上げるとか、いろいろなことをやっております。しかし、私は、いまきめておるものだけで万全なものではない。しかし、計画そのものがまだはっきりしておりませんから、この程度の暫定的な政策を実行しておりますが、もっと具体的な年次的なものを導入しなければならないということで、通産省も各省と連絡をとりながら、特に現地との問題、これは地域的にたくさんの島がありまして、特定なものでなければ導入できないというものもございますし、積極的な計画性のある沖繩の産業体制を整えるということで研究をし、同時に具体的に実行してまいろうということでございます。
  189. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 最後に、山中長官にお聞きしたいのですが、大体衆参両院でずいぶん騒いだものですから、この開発審の構成の問題ですが、最初は地方代表を含めて六名、そこに十三名ですか、官僚として十三名、それに今度五名おふやしになったわけですが、問題はその構成です。総理も、長官もこの前の本会議で、いわゆるこの学識経験者を五名ふやすことにしました、もうこれは明らかに言っておられます。私は、それはけっこうだと思うのです。ただし、その学識経験者の構成です。いまどういうことをお考えになっているのか。時間がよけいありませんから、ひとつ長官でけっこうですから、御答弁願いたい。
  190. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは具体的な人選の問題でございますので、明確に答弁はいたしかねますけれども、やはり沖繩で客観的に見て各界、各層を代表すると思われる人といえば、大体構成団体その他から浮かび上ってまいりますから、そういった方を中心に選考いたしますとともに、同じ純粋な学識経験者であっても、沖繩の出身者の方であって広く本土においても数多くの分野で指導者の立場を持っておられる人たちもおられます。そういう人たち等をかみ合わしてまいりますると、おおむね国会の御意思というものが実際の人選面において実現できると考えている次第でございます。
  191. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 わかったようには思いますけれども、希望として私申し上げて質問を打ち切りたいと思いますが、いまの学識経験者の中には、あらゆる団体の代表としてやはり参画させる必要がある、それが沖繩基本的な発展につながるのだ、こういう立場でひとつ人選をしていただくことをお願い申し上げて質問を終わります。
  192. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) この際、十分間休憩いたします。    午後二時五十二分休憩      —————・—————    午後三時七分開会
  193. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ただいまから本委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。  原田立君の質疑を行ないます。原田立君。
  194. 原田立

    ○原田立君 衆議院及び参議院でだいぶ議論がされておりますので重複する点等があるだろうと思いますが、ひとつ国民の皆さまに親切にお答えを願うと、そういう姿勢でお答えいただきたいと思います。  一番最初に、平和で豊かな沖繩経済を建設するため、第一義的には経済条件は自立経済の確立である。自立経済の確立であるというこの立場からいろいろ議論するにあたり、その最大の妨害物がいわゆる米軍基地の存在であり、自衛隊配備に伴う基地の拡充であると、このように思うのであります。で、もし総理が真に平和で豊かな沖繩経済を樹立するのだ、沖繩県民の心を満足させるために平和で豊かな沖繩経済を樹立させるというお考えがあるならば、政府は最大限どの程度まで基地の縮小が可能と考えているのか、この点をはっきりとお答え願いたいと思うのであります。
  195. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) たいへんむずかしいお尋ねでございます。ことに現段階においてどういうようにするか、こういうことを申し上げることは非常にむずかしいことです。これは、日本復帰してしばらくたった後なら、まあ基地の密度もだんだん見当はつくようになりましょうが、ただいまのところは日本に迎えようとする、施政権を返還してもらう、そういう段階でありますから、ただいま特別な状況下に沖繩があるという、そういうことを認識せざるを得ない。そういう際に、どのくらいの基地が適当ですか、こういうお話ですから、それはたいへん答えにくいということを申し上げざるを得ないのでございます。そうして、ただいまも言われるように、豊かな沖繩をつくる、沖繩県づくりをする、これはもう平和な基地のない、そういう土地が豊富であればそれに越したことはございません。ことに沖繩は島でありますから、そういう意味で軍基地である、そうして本土よりももっと濃い、濃度の深い軍基地がある。そういうことが平和産業を何か押えつけていると、何かこういうようなことが言われてもおります。でありますが、私は平和という、そういうことはうらはらになることですが、同時に安全だという、この土地ならばどこからも攻めてこられない、侵害されない。そうしていま本土のようにですよ、安全であるがゆえに平和産業でわれわれが経済的な発展も遂げ得たと、こういうことにもつながるのでございまして、これは基本的な条件だと、かように考えますから、とにかくその地域が平和である、安全である、そういうことでなきゃならないと、かように私は思います。ただそのことは、いまあるがままの状態を持続しろと、かように私は申すのではない。これはもちろん縮小されてしかるべきだと、過般も衆議院において基地の縮小、こういうことについての決議がございましたが、私もそれに対して厳粛にお答えをしたつもりであります。私はそういう意味で、ただいまの問題も、いまの段階で、こうの基地が多いじゃないかと、かような御指摘、そのとおりでございますけれども、いまのいわゆる核基地、そういうものは返還後においてはなくなる。これがまあ一つの大きな問題だと思いますし、また、そういう意味からも、特殊部隊あるいは特別な南方諸地域の訓練等もなくなってしかるべきだと思いますし、また、おそらくそういうことを考えると、日本安全保障条約のワク内に米軍の行動が制約を受ける、こういうことになりますと、おのずから縮小の方向に向かっていくのではないだろうか。私はまことに残念に思いますが、しばらく時間をかけて、そうしてその模様を見ないことには、ただいまのような情勢が、幾らが適当だと、こういうことは言いにくいと、かように思っております。
  196. 原田立

    ○原田立君 いま総理のお話の中にも、時間をかけて基地整理、縮小を検討すると、こういうお話のようでございましたが、何らかのめどは立てられないもんであろうかどうか、全く立たないのかどうか、あるいはその手続等についてもっとはっきりできないもんだろうか。また、縮小の段階的な目標を明らかにできないもんだろうか。はたまた少なくとも現時点あるいは近い時点において、返還の交渉を行なうというようなそういうスケジュール等は具体的にないのかどうか、その点はいかがですか。
  197. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうもこれらの点についても、まあ民社党のように有事駐留というようなことが言えれば、これはまた一つのはっきりした目標だと思いますけれども、私どもはそこまではまだいまの情勢はさようなことが言える段階ではないように思っております。しかし、ただいまはアジアの緊張緩和の方向に向かっておると、こういうようなことは、ただいま言われる基地整理の方向にもたいへん役立つんではないだろうか。私どもとにかく平和の方向に、緊張緩和の方向に努力を続けていけば、それらの点ももっと見やすい、わかりやすいような状況になるだろう。また、自衛力自身が国力国情に応じて増強されると、こういうようなことも並行して考えていくと、自然に外国の軍隊、それに依存する度合いが変わってくるんじゃないだろうかと、しかも、そういうことが本土の防衛にこと欠かない。しかも新しい憲法、これのもとにおいての整備でありますから、自衛力の整備でありますから、いわゆる軍国主義化というような非難も受けないで、ただいまのような状態がだんだん解消されるのではないだろうかと、そのことを私どもは希望し、また、そういう方向であるように、平和に徹する外交を進めてまいる、こういうことであります。
  198. 原田立

    ○原田立君 総理のお話をお伺いしていると、非常にあいまいもこといいましょうか、そういう感じを受ける。私がそう受けるんですから、国民大勢の人たちもそういうふうに受けると思う。その点非常に遺憾でございます。だけど、これ以上言えないというんですから、また、他の機会に譲るとして、私はまた別な観点から、特に沖繩経済は基地経済という特異の経済環境にあり、経済立地のすぐれたところは大部分が米軍基地内に存在している。沖繩県民の生活や福祉の向上のためにも、これら米軍基地内に存する経済的資源の確保に対して、積極的に使用の許可を保障させるべきだと思うんですが、返還後の沖繩はいかなる態様になっていくのか、これらをあわせてお答え願いたい。
  199. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 沖繩振興開発計画を策定いたします場合にも、一応冒頭に土地、公有水面を含む利用計画というものを盛っておりますけれども、しかし、きのうから議論しておりますように、おおよその一番いいところを取っている軍用基地、これをどうするかの問題については、やはりA表に入っておりますものについての設計をいま書き込めということは、私にとってきわめて困難な事業であります。しかし、他面、琉球政府においてはそれぞれの基地所在等の市町村の意向等もくんで、これは公文書としては扱っておりませんが、参考資料としてわれわれはこのように利用したいんだという、緑地帯あるいはレクリェーション地帯、住宅街とか、いろいろと設計されたものをいただいております。こういうものは十分に参考にしながら、今後復帰後も外交交渉は続けられるわけでありますから、外交交渉を通じて、私ども沖繩県の豊かな未来を建設するために必要な、そしてかつアメリカ側から見てももうそろそろここらは要らないところではないか、あるいは長年荒蕪地として放置している状態ではないか等の問題点を持っておりますので、それらの問題点を指摘しながら、積極的な外交の展開によって、私どもの進める沖繩県の豊かな未来の設計図の中に組み入れていく努力をしたいと思っております。
  200. 原田立

    ○原田立君 総務長官、要するに、米軍基地内に存する経済的資源の確保に対しては、積極的に使用の許可を保障させるように努力すると、こういうことですか。
  201. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) そこらになりますと、やはり外交折衝を通じて話をしてもらわないといけないと思います。しかしながら私どもから見ましても、黙認耕作地で基地でありながら——農民の方々に地料も払ってくれますが、その反面、耕作は黙認しておるというようなところ等もあります。これがはたして利用を絶対に確保しなければならないものであるか等については疑問がありますから、そういう問題等は逐次やはり外交折衝を通じてやっていただきたい。ただし、基地の中のある一定部分について、それをまあ基地といっても態様がいろいろありますから、状態によって違いますが、その村にとって、あるいは市にとってきわめて重要である。那覇市における牧港住宅街のごとく、そういうもの等については外務大臣等も積極的な努力をしようと、こう言っておられますので、その点についてはなお精力的に努力をいたしませんと、これを怠って努力をいたしませんと、沖繩の、ことに本島における経済開発計画というものは書きにくいということは、私は認めざるを得ないと思います。
  202. 原田立

    ○原田立君 総務長官、あなたに沖繩担当大臣としてお聞きしているわけなんだけれども、何度も申し上げるのですけれども米軍基地内にそのつど経済的資源の確保あるいはまたそれを積極的に使用の許可を保障させるような、そういう努力をしたいというお考えはあるのかどうか。また、それを積極的に外務大臣のほうに進言して、そういう方向で進めたいというふうに考えているのかどうか、その点どうですか。先ほどから努力する、努力するというんだけれども努力するというのは、そういう考えがあるのかどうかがはっきりしないので、その点お伺いしたい。
  203. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) もちろん努力をいたしております。先ほど牧港住宅街のことに触れましたが、これはリストのAの中に入っております。しかしながら、Bの注で、これに対して措置を別途できるようなふうに書き分けてありますのも一例でございますが、これについては、私は沖繩担当大臣として、県庁所在地となるべき那覇市の都市計画というものを考えた場合に、これは無視できない問題であるということで、愛知外務大臣にお願いをして、別途注に書き込んでいただいた。これは一例でございますけれども、今後もちょっと私の答弁が明確でないと思われる点がありますならば、御質問の基地の中の資源についてとおっしゃいますもんですから、たとえば飛行場等になっている場合に、それのどういうことを受けとめたらいいかということがよくわからないもんでありますから、ちょっと答弁が明確でないと思いますけれども、そういう努力はいままでも続けてりますし、なおまた、現時点においても外務大臣に対して、今国会中もいろいろと私が見た、沖繩にかける県民の立場から見て要望すべき事柄については逐次伝えておる次第であります。
  204. 原田立

    ○原田立君 具体的にということでありましたので申し上げるのですが、具体的には那覇のターミナルの石油供給基地の管理権、使用権、これが復帰後においてはいかなるようになるのかどうか。あるいはまた那覇ターミナルの石油供給基地はガリオア資金で建設したものであり、元来沖繩県民のものである、こう理解しておりますが、復帰後は沖繩県に当然戻すべきである、こう思うのです。それについていかに検討を進めておられるのかと、こう聞いておるのです。
  205. 吉野文六

    政府委員吉野文六君) カルテックス社のブラックオイルターミナルのことをおっしゃっておられると思いますが、これは那覇港湾施設、すなわちA表六十四の一部として提供されることになっております。なおこのオイルターミナルはカルテックス社によって運営されておりますが、復帰後は軍により運営されることになっております。もう一つのブラックオイルターミナル、これは返還されます。
  206. 原田立

    ○原田立君 また先のほうにいって具体的にお伺いしたいと思いますが、その前にわれわれ野党三党が共同提案しております沖繩平和開発基本法案、これについては総理もごらんになっているだろうと思います。その採用を強く私たちは要望するものでありますが、その法案の適用について何らかのお考えあるかどうか、いかに考えておられるかどうかお伺いしたい。
  207. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 総務長官からお答えいたします。
  208. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 沖繩平和開発基本法案は、私も衆議院の段階においても拝見をいたしまして、その内容についてもいろいろと意見を申し上げたこともあります。大体において、考え方として私ども基本的にはそういうことでありたいということを考えておりますが、たとえば第一章総則(目的)の第一条の軍事基地が全面的に撤去されることを基本として、というような場合に、これはまあ安保条約を認めるか認めないかということもありましょうから、本土のほうも軍事基地が完全にないことが前提ということは言えない状態になおいまでもありますので、沖繩で、このような考え方というものからはたしてこれを前提として私たちがいま作業を現実に政府としてできるかという問題になりますと、やはり安保条約必要性というような議論等になろうかと思います。そういうことを受けて、第四条の第三項、基本計画で、アメリカ合衆国軍隊の基地跡地というようなものを平和利用に関する事項として具体的に設定せよ、こういうようなことも書いてございます。これらはなるべくその方向について努力をしなければならぬと思います。また、意見の一致点としては、その他のところは大部分が意見の一致点があるわけでございますが、沖繩総合開発計画の案がつくられる段階で、沖繩県——知事と書いてございませんが、関係市町村の意見を聞いて案をつくれ、こういうことが書いてございます。これは実際上はそういうことにいまもなっていると思いますが、私どものほうは県知事がその原案を作成するということになるわけであります。それから第五条第三項で、その計画を決定した場合には、国会に提出してその承認を受けなければならないということになっておりますが、私どもとしては、やはり国会に提出して承認を受けるということにはやっぱり一定の、現在政府としてとっております法律の解釈においては類型がございまして、このようなものはちょっとなじまないのではないかという気がいたしますが、もちろん計画が国会で論議されるのは当然のことであります。  なお水道事業等について、電気事業も沖繩県に渡せというふうに書いてございますが、これは沖繩県のほうから県ではできないので国でやってくれ、こういう御要望がございましたので、これは県の御要望に沿った、沖繩の御要望に沿ったということで、それらの点はその事情がわかれば、この三党共同提案においても、あながち沖繩県がやれませんといっているものを沖繩県にやらせるということにはならないのであろうと考えます。  さらに審議会の構成等の十二条については、すでに衆議院でおおよその、野党は参加されませんでしたが、空気を入れた——院内の空気、各党の空気を入れたものとしての修正案が出されておりますから、それが可決されましたので、先ほども御答弁申し上げましたとおり、十分にその趣旨に沿うような人選をいたしたいと考えておりますので、私どもにとっても参考になる事柄がたくさんございます。
  209. 原田立

    ○原田立君 沖繩復帰対策要綱によると、新全総計画及び新経済社会発展計画については、復帰後所要の改定及び組み入れを行なうと、こういうふうにあるわけですが、その組み入れについては一体沖繩については何をどういうふうに組み入れようとするのか。
  210. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 沖繩復帰いたしますと、新全総計画の中で一つのブロックとして組み入れることになります。したがいまして、復帰後直ちに国土開発審議会を開催いたしまして、政府がそこに新全総計画における一ブロックとしての沖繩の計画を、振興計画を諮問いたします。その答申を得て閣議決定する運びになりますが、その大きな基本的方向といたしましては、まず第一に、やはり沖繩が自立的経済を確立することでございます。第二の問題といたしましては、これについて当然沖繩の特性を生かした産業開発をする。また、第三といたしましては、非常に沖繩の県民所得、また生活水準が本土と比較して格差がございます。これをできる限り早く本土に近づける。この三つの基本的方向でこれを行なうことにしております。もちろん、その組み入れにあたりましては、また計画の樹立にあたりましては、沖繩が長期に異常な条件下にありましたことを勘案いたしまして、県民の意向を十分参酌した計画の樹立をする、こういう考えでございます。
  211. 原田立

    ○原田立君 経企庁の長官も去年九月、琉球政府が策定した長期経済計画の内容を十分尊重してこれを取り入れていくと衆議院で御答弁なさっておられますし、また山中長官もまさにそのとおりと、こういうふうなお答えをなさっておられる。これらの答弁を総合して判断すると、沖繩県知事が振興開発計画の原案として琉球政府の長期経済発展計画の構想を取り入れた場合、本土政府はこれを改定することなく、これを十分尊重するのだと、こういうふうな受け取り方でよろしいのですか。
  212. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは改定することなくということと、尊重することとは一緒にならないと思うのです。やはり尊重ということはそれを骨格として、しかも、その原案というものに立脚をして、原案作成者も当然審議会の委員になられるわけでありますから、御相談を申し上げて、国としてでき得る限りの沖繩側の期待に沿う努力をするという意味の尊重でございまして、改定することなくと言われますと、現在の琉球政府の過去につくりました長期経済計画等が私どもから見てそのままでは、何べんも繰り返しませんけれども、十年後には基地経済はゼロであるというようなこと等が望ましいことであったにしても、それが前提とした作業ができない等の食い違いがございますから、そこらは当然尊重ということと改定しないと、そのままであるということになると、審議会も何も要らないことになりますので、そこは悪い意味で変えるのではなくして、その原案を尊重しながら合意を得るというふうに御理解を賜わりたいと思います。
  213. 原田立

    ○原田立君 そこら辺が御理解が賜われないところなんです。地元の沖繩県知事が一生懸命つくってきたと、その原案の提案権は確かに法律規定されております。だけども、そのあとの条文を読むと、次から次へだんだんへめぐっていってどこかで変えられちゃって、最初の原案とは違ったものになりはしないかと、こういう不安が非常に大きいわけです。プラスになっていくようなことならば、まあ大いにけっこうだろうと思うのです。だけれども、現地の要望に沿わないようなマイナスの改定になると、たいへんこわいわけです。そうなると、法律で幾ら知事の原案の提案権を認めたといったっても、これは総務長官、地方自治の侵害犯人だと、こういうふうなことをいわれても、これは返すことばはないんじゃないでしょうか。これは議論しようという意味じゃありませんけれども、そんなふうに思うんです。  それで、沖繩県知事が原案をただ作成するというだけじゃなしに、もっとそれを権威あるものにするために、私はひとつ提案したいと思うんですけれども、この沖繩、いわゆる地方ですよ、開発庁じゃなくて沖繩県地方において、地方における独自の審議会というものをつくって、そうしてそこに知事は答申する、それを県議会の承認、あるいは承認一致として開発庁に持っていくと、こんなふうな方向にすれば、十分これは民意を取り入れられたものになるんではないだろうかと、こういうふうに思うのですが、その点いかがでしょうか。
  214. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは、私は異存はございませんし、これをまた法律で審議会をつくれというふうに書くのもいまの段階ではちょっとおかしゅうございますから、それを立法院というものがあっても——まあ沖繩の現状においては少しぎすぎすし過ぎておりますけれども、その中で復帰対策要綱等県民会議というようなものをつくって、立法院も含めておりますけれども、それ以外の人たちの意見も参考にしようということでやっておられますから、それは立法事項でなくとも、県知事の原案作成の段階で、客観的に見て、そういう審議会なり懇談会なりあるいはそういう研究会なり等を当然またお持ちになるでしょうし、主席一人の考えだけでもきまるものでもありますまいから、知事を中心にそういうものがつくられるであろう、そういうことは私も想像できるところでございます。
  215. 原田立

    ○原田立君 まあ百歩後退して、総務長官は、そういう場合に、地方でつくられるものについては、それをさえぎるようなことはしないと、こういうふうに理解してよろしいかどうか。  それからまあ私はあえていえば、たとえば中部圏開発整備法この中には、中部圏開発整備地方協議会もつくって、そうして答申しなさいと、こういうふうにはっきりしているわけです、法律の中で。いま長官は、いまの段階でつくるのはどうかと思うというふうなことを言われたけれども、現にこういう前々の法律の中に地方、開発の地方協議会というものがあるんですから、当然これは現段階においても、改定してでも取り入れてしかるべきではないか、こう思うんですがどうですか。
  216. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) まず第一点、そういうものをおつくりになることを絶対に阻害はいたしません。それから、中部圏のことは建設省にお聞きいただきたいと思いますが、私の知っている範囲では、それについては、国の出先の機関の責任者も入ってそういうものをつくっておると思います。しかし、今回の沖繩においては、国の出先機関がそういう地方の構成員にならないほうがよろしいんじゃないか、純粋の知事の範囲内における原案提出のほうがかえってよろしいんじゃないかと思っております。
  217. 原田立

    ○原田立君 地方協議会は入っていませんよ。
  218. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 入っていないですか。
  219. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) 山中長官の御答弁に補足します。  中部圏の場合は各県にまたがっておりますので、法律事項として、そういうふうな協議会をつくれということがあり得たと思いますが、沖繩県の場合は、今度の開発は沖繩県でございますので、県の中に審議会をつくっていただくかどうか、原田委員御提案のようなことは当然県の中できめていただいて、おそらく県民の意思を反映さすために万全の策を講じられると思います。また、そのような審議会をつくられる場合は、地方自治法百三十八条に基づく条例によって十分できることになっておりますので、私はそれによって実現されるのではないか、かように考えます。
  220. 原田立

    ○原田立君 沖繩振興開発計画の基礎条件となるのは、何といっても土地の問題、あるいは労働力の問題だろうと思うのです。振興開発法第四条には、政府の振興開発計画は沖繩県知事作成の原案を基礎として決定されると規定しており、衆議院の審議段階で、琉球政府の長期経済開発計画を尊重すると答弁しておられます。ただいま申し上げたとおりでありますが、ところでこの長期計画は、基地の解消と豊富な労働力とを基礎として立案されていることは先ほど長官も言われたとおりです。したがって、振興開発計画の基礎として長期計画をほんとうに尊重するならば、基地の解消について当然そのプログラムがなければならないだろうと、こう思うのですけれども、どうですか、総務長官。
  221. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 基地の縮小の問題につきましては、先ほど総理からお答えをしたわけでありますが、まあ長期的に見ますると、どうしても極東情勢の緊張緩和、これだと思うのです。私どもは、外交政策の基本としまして極東の緊張緩和、これに努力をしたい、そういうことから、日中の問題、これも前向きに取り組みたいと、こういうふうに言っておるわけなんです。それからもう一つの問題は、これはアメリカの財政事情だと思います。アメリカがニクソンドクトリンというものを出しておる。これの背景にはアメリカの財政事情というものがある、なるべく海外派兵の軍事費を削減したい、こういうことです。アメリカの軍事事情がどういうふうに変化していくか。この二つ沖繩基地問題の将来に大きく響いてくると、こういうふうにまあ見ておる。そこで、われわれのなし得ることは何だ、こう申し上げますれば、その第一の問題である緊張の緩和である、こっちのほうに大いに努力をしてみたい。  それからもう一つの問題は、これは当面の問題でありますが、さて沖繩返還協定が発効する。そうしますと、A表に掲げてある基地を提供することになるわけです。この基地提供、これを見てみますると、皆さんからも御指摘もありまするけれども、私も沖繩の皆さんの心情を考えますると、その密度を重過ぎます。そこで、一応はとにかく提供することにはなりまするけれども、当面これらのA表に掲げるところの基地につきましてどういうふうにするか。私が特にいま関心を持っておりますのは、あの中部地区です。沖繩本島の中部地区に基地が集結をしておる、その中部地区には人口もまた密集しておるのです。そのことを考えております。それからもう一つの問題は何だと、こういいますると、これは、基地の機能を尽くす、それ以上にこの基地というものが設定されていやしないかという問題の検討、たとえば演習地のごとき問題、そういう性格のものがありはしないか。それからもう一つの問題は、レクリェーションの問題です。あるいはゴルフ場なんかの問題でございますが、そういう問題を、大きな展望のほかに、さしあたりの問題として考えてみたいと、こういうふうに考えておりまして、まだ沖繩返還協定は発効はいたしておりませんけれども、まあその前、すでにそういう内輪の話を進めておる。さらに来年一月六日、七日に日米両国の首脳が会談をされる、その際には、ぜひともこの問題を提起していただきたい、こういうふうに考え、そのおぜん立てもいたしておる、こういうことなんであります。しかし、全体といたしまして、この基地問題というのはアメリカの軍当局は非常に強い執着を持っております。アメリカ政府内部においてこの軍当局の執着は、執念とも申しますか、それをどういうふうに説得するか、かなりアメリカ政府の内部におきましても困難な問題があろうと思いますが、これはどうしても総理また大統領、こういうトップの段階におきまする話し合い、そういう話し合いを通じて切り開いていくほかはないんじゃないか、そんなような考えをしているんですが、とにかく精一ぱいの努力はいたしてみたい、そういう考えでございます。
  222. 原田立

    ○原田立君 総務長官、きのうある委員の質問に十年計画のことを内々でも出したらどうなんだということが提案されたら、それはあんたの場合押しつけになるからそれは出さぬのだ、こういうふうな意味合いの御答弁だった。だけれども、現実の問題としてそれが示されないために現地の不安も非常に高まっているという、そういう反面もあることは事実なんです。また、長官の答えの中にあることはあるんだけれども、まず、その発言のしかたに慎重を期しているんだというふうな意味合いのことがあった。そんな隠しだてみたいなことをしていないで、きちっと連絡すべきところは連絡しているんですか、その点。
  223. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私は、いま政府のほうで十カ年計画の原案を持っているとは申していないつもりであります。先ほど木村経企庁長官がお答えしましたように、やはり新全総の一環の中に沖繩が一ブロックとして入ってまいりますし、そしてさらに、社会経済発展計画の改定等にもつながりますし、そして沖繩県知事が新しく誕生した後の原案作成者の立場等もございますから、でき得る限り来年度はその十カ年計画の初年度に耐え得る予算にしたいということを私としてはいま考えているところでございまして、現実に私どもが十カ年計画を持っていても、それを隠しているというものではございません。
  224. 原田立

    ○原田立君 そうならば、いまも申し上げるように、そのビジョンが当然示されてしかるべきではないか、こう私は思うのです。それが示されないための現地の不安が非常に高まっているわけです。それは近い将来にわたって進める考えでいるんですか、どうですか。
  225. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 現地の不安にはいろいろございます。このままの違った社会構造、仕組みの中で、本土の違った全く異質の税制その他の中に入っていくことについての個人的な心配、会社単位、職場単位、こういうものもございますし、あるいは地方自治体としての県市町村の財政事情等の不安等もあると思います。しかしながら、われわれの沖繩は未来はどうなるんだろうという問題についての模索あるいは不安というものもあることは否定できないと思いますが、これに対しては、私たちは十分こたえ得る努力復帰後に作業としてしなければならないと考えておるわけでありまして、今日以後の沖繩について私たちが全く何にも考えていないというものでないことは、各種の私どもの今度の暫定措置なり、あるいはまた振興開発なり金融公庫なりというものに見せております姿勢、そういうものによってアウトラインというものが出てくると私は思うのであります。
  226. 原田立

    ○原田立君 振興開発特別措置法のほうでちょっとお聞きしますが、七二ページ、20番ですね。これは附則のところに入って第十九条のところに二十項目にわたって入っているわけですけれども、この第20は「政府は、沖繩における合理的な電気の供給体制を実現するうえでの会社の役割について検討を加え、必要な措置を講ずるものとする。」こうありますが、この中身は一体何なのか、これが一つ。  それから第五章でございまして、特に電気のことについて、三〇ページです。電気事業振興のための特別措置として一章起こしておるのに、最後のところにきて附則の十九条で、しかも二十項目にわたって附則をつけるというのはちょっと法律案をつくるにあたって粗雑な扱いではないでしょうか。
  227. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 二十項目というのはどういう意味でしょうか。二十という項においてですね。
  228. 原田立

    ○原田立君 六八ページから七二ページまでに1から20まであるでしょう。
  229. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは大体沖繩の電力については、第二節で沖繩電力株式会社について詳しく定めているところであります。これについて、これからさらに沖繩における合理的な電気の供給体制というものが、これからの新しい新規発送電の新規需要に対応する姿勢、あるいはまた、それに対する会社の役割りというのは、たとえば離島のほうのまだ八重山電力等が公社が一元化されておりませんから、そういうようなもの等も受け取っていかなければならない。こういうような役割りが公社の中に入ってくるということになるということでございます。
  230. 原田立

    ○原田立君 20項のところはそういうことですか、これは私は聞いているところによると二つ意味がある。それは七年後を目安として政府所有の株式を民間に譲り、特殊法人を民間法人に移行させるということ、あるいはまた二つとして、民営の移行が不可能であって本法が施行の後、すなわち十年後もなお特殊法人としての形態を維持せざるを得ない場合は、沖繩電力株式会社に関する別個の形で存続させる措置、この二つほどあるというふうに聞いておったのですが、これは違うのですか。
  231. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) それも違ってはいないのですけれども、それは一応通産省のほうで今後沖繩電力株式会社を所管するにあたって、私ども沖繩電力公社ということを考えていたのでありますが、やはり電力は原則として民営という通産省の基本的な立場がございます。したがって、資本金も株式会社という形にして国のほうでそのほとんどを持ち、そして県民が参加するという意味において、沖繩県がそのわずかな部門を持つことによってまず発足をして、それから現在の日本航空等で行なわれ、あるいはかつて電発等が行なわれましたように、逐次沖繩にあります民営の配電会社等が合併をして、そしてそれが受け取る体制を整えることができますれば、それに対して一挙に譲ることができなくても、株式の譲渡等の配慮をするということは、一応通産省としてそういう方針でありますので、それは了承しておりますから、私どもも、そういうこともこの中に入っていることを否定するものではありません。
  232. 原田立

    ○原田立君 民間の経済力がそれほど十年後になっても強化されるという予想はつかないだろうと思うのです。そうすると、特殊法人の民間法人への移行はかなりむずかしいと、こういうことじゃないだろうか、その点どうですか。
  233. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 当初は、復帰までに今年の七月一日に沖繩本島における五配電会社を一緒にして、一社に合併してもらって、そして場合によっては、資金その他のめんどうを見ながら民営で出発ということも考えたのでありますが、何しろ五配電統合ということが行なわれませんで、現在のところはもちろん見通しはない、復帰後のところも見通しが立たないというようなことをいっておられます。しかし、これは通産省の行政指導で、今後やはりあるべき民営の姿としての既存の配電会社の合併による——基点とした沖繩電力の受け入れの会社というものができますれば、国としては何も沖繩に対して国が電力の事業を直接やりたいという気持ちは毛頭ないわけでありますので、そういう意味においては、いつまでにできるかといわれますと、やはりこれは現地の会社間の関係、場合によっては人と人との問題等もありましてなかなかうまくいっていない現状でありますけれども、それはなるべく沖繩側が受け取る体制に援助もし、通産行政の指導もなし、また、それに対して必要な場合には資金の面等においても考えることがなければならない時期がくるだろうと思っております。
  234. 原田立

    ○原田立君 要するに、十年後、特殊法人そのものが民間法人へ移行できるのかどうか、その見通しはあるのですかということを聞いているのです。というのは、この振興開発法そのものが十年ということを目途にしておられます。十年たって、そうして民間法人に移れるような、そういう経済力が充実すれば、たいへんけっこうな話なんです。そうまたならなきゃならぬと思うのです。それで、経済力が十年後に民間法人への移行ができるぐらいなまでいけるかどうか、そのバロメーターの一つにもなるわけです。そういうことで聞いているのです。十年後あなたはできますかと、そういう見通しはありますかということを聞いているのです。
  235. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私もぜひ、十年間のうちには沖繩現地においてそういう受け取れるような力のある会社ができ上がってほしいと思っております。まあしかし、これは一応時限立法でございますが、たとえば、すぐ続けて別表がございますが、補助率等の特例がございます。政令でさらにこまかく各事業種目ごとにお示しをいたしておると思いますが、そういうことを十年後にぷっつりと打ち切って本土並みにするかどうかについてはいまのところは議論をいたしておりませんが、しかし、かつての奄美復興法が、前期後期十カ年、さらにまた振興法で前期後期十カ年の、計二十年に及んでいるということを考えますと、やはりこれは、もし不幸にしてできない場合は、望むところではないけれども、国のほうでめんどうを引き続き見なければならない事態が起こるかもしれない。しかし、原則は十年以内にやはりそういう受け入れる体制が現地の社会状態でできるようにしたいということは努力してまいらなきゃならぬと思います。
  236. 原田立

    ○原田立君 努力しなければならない、それで別表にあるような国庫補助を十分やっていく、まあこういうようなことですけれども、その点だいじょうぶですか。要するに、私は、十年後に民間法人への移行ができるような状態までするには、それこそものすごい努力をしなければならないと思う。財政的援助も十分やらなければいけないだろうと思います。そこら辺の裏づけなしに、精神論的にただやるんだというだけでは、何にもならないと思うのです。財政措置として十分な手当てをして、そして十年後には民間法人へ移行できるような、そこまで持っていくと、こういうふうに受け取ってよろしいのですか。
  237. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) まず、現在の予定しております沖繩電力株式会社そのものの健全な運営も必要でございますから、これはもうたびたび答弁しておりますので、燃料重油の免税とかその他数多くの税制措置、金融措置をとりますが、その反面においては、現在の既存の配電会社についても低利、長期の融資の対象としてその体質を強化していくという努力は金融公庫法の中でやるようになっておるわけであります。
  238. 原田立

    ○原田立君 別な問題に移りたいと思うのですが、沖繩にいま非常に石油基地がたくさんつくられようとしております。これは非常によくない状況であるということは、総理もお認めだろうと思うのです。というのは、石油コンビナートが行けば、貯蔵庫をつくれば油濁のおそれがある、海洋汚染のおそれがある。あるいは精製工場をつくれば亜硫酸ガス、大気汚染のおそれがある。日本内地ではできないからとうとう沖繩にまで持って行ったかなどと悪評さくさくたるものがあるわけです。そういうことがあってはならない。いわゆる今後公害のない美しい沖繩の維持をはかるためには、その石油問題は一体どういうふうになさるお考えですか。
  239. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 以前の沖繩は非常に公害のないすばらしい大気、太陽、緑の島だったわけでございますが、やはり最近いろいろな石油コンビナートその他がつくられまして、いささか空気がよごれてまいりましたことは事実でございます。しかし、最近調査しました数カ所の調査の結果を見ましても、幸いに硫黄酸化物は大気中で〇・〇〇二から〇・〇一九という程度で、まだまだ汚染されているというほどではないので、一応はけっこうな状態でございます。しかし、今後は、本土復帰に伴いまして、いろいろな石油コンビナートその他の工業がたくさん誘致されますので、これに対しましては厳重なやはり規制を行ないまして、ほんとうに公害のない沖繩にすることが大事だと考えております。現在沖繩には大気汚染防止法という法律がございますが、これは十二月から発効いたします。これによりまして、一応いろいろと規制をしてもらいますが、本土復帰後は本土の大気汚染防止法に準じまして規制をするわけでございます。もっともこの両方の法律はその組み立てはほとんど同じでございますので、あるいは経過措置を設けますかどうか、それは検討しますが、本土の規制方法に従いましてこれを十分に公害予防をしてまいるという決意をいたしております。  また、水質につきましては、これは御承知のように、川は比謝川と国場川という川が多少よごれております。これはいろいろな、家庭用水であるとか、あるいは工場の排水——製糖工場の汚水の排水によりまして多少よごれておりますが、これもできるだけ早く下水処理、そういうものを整えれば十分に、またある程度もとの状態に回復し得ると考えますし、こういうことで水質の汚染もある程度は防げると思います。ただ、海洋につきましては、まだ十分な方法がございません。今後沖繩の石油基地をどのような条件のもとにこれをつくり上げていくか、これが問題でございます。大型のタンカーがたくさんそこに寄港するか、あるいはその中継基地とするか、いろんなものの考え方がございましょうが、いずれにしてもこれは海洋汚濁の大きな原因となることはたしかでございます。ごれにつきましては、われわれも十分に心がまえをいたしまして、できる限り現在の海洋汚染防止法その他の法律を十分に活用いたしまして、できるだけ公害の少ない海洋にいたしたい、こう考えておる次第でございます。  ただ問題は、一番大事なことは、沖繩というところはいままで基地の経済であるといわれておりますが、今度これを工業を中心とした自立できる経済にしようという方針でございます。ただ、いままで沖繩は工業という経済にはなれておりません。したがって、この際急激に重化学工業が沖繩に持ち込まれますと、当然これは公害が起こってまいります。したがって、これに十分に心しまして、いろいろな工場の立地の条件であるとか、あるいは工業の種類であるとか、あるいはその設立のいろいろな時期的な段階とか、こういうものを十分に心がまえてやらなければならないと思いますけれども、さしあたって大事なことは、そのような工場ができる場合には、まず厳重な規制をすることが私は大事だと思います。いろいろ排出するものの規制をすること、新しい工場をつくる場合には十分な規制ができるはずでございますから、沖繩政府でこのような規制に十分心がけられまして、われわれもこれに対しまして十分な協力と助成をいたす方針でございますが、そのような心がまえで進んでまいれば内地に見られるような公害は防ぎ得るものと考えておる次第でございます。
  240. 原田立

    ○原田立君 環境庁長官はこういう大気汚染及び海洋汚染は絶対起こさないと確信を持って言われたわけなんです。その言われた範囲においては頼もしい限りであるのですが、実際問題通産省が非常に大きい石油基地をつくろうとしておる。あるいはまたアラビア石油もやろうとしておる。三菱開発も名のりをあげている。ガルフ社もやり始めている。ものすごい基地になりつつあるのですね。これはのんびりしていると、またたいへんな問題になるのです。それは、現地の状況は十分御承知なんだろうと思うけれども、調べたらまだ基準の濃度までいっていないから心配ないのだなんて、そんな問題じゃないだろうと思うのですね。たいへん心配だと思う。それはまさか環境庁長官は、沖繩において公害が発生していいんだなんて、そんなことを言うわけはないだろうと思う。絶対撲滅する決心があるんだろうと思うけれども、重ねてひとつ決意を聞かしてください。
  241. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 幸いに、いままではそれほど汚染されていないのがしあわせだということでございます。今後とも、よごされないように全力をあげて取り組んでまいる決意でございます。
  242. 原田立

    ○原田立君 那覇ターミナルの中の石油供給基地から走っているパイプライン、これは現在県民の私有地をも利用しているわけでありますが、復帰後は、これを補償なり、あるいは借地料を払うなり、その点はお考えですか。
  243. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 民有地を使用いたします場合には、賃借料を払うわけでございます。
  244. 原田立

    ○原田立君 払うということ、それをまた通すことについて合意を得た上で払うということになるだろうと思いますが、まあそれはそれとして、どうかひとつこういう問題について、県民の気持ちも先鋭化しているときでありますから、きちっとした処置を講じていただきたいと思います。  それから次に、物価のことでちょっとお伺いしたいのですが、政府は、沖繩県民の生活行政に関する調査というのを、総理府が四十五年三月中日付でその報告書を受け取っていると、こういうふうに聞いておるのですけれども、このことについて、この場で報告いただければ教えていただきたいと思います。
  245. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 受け取っておりますが、中身の報告でございますか、中身ですか——事務当局に説明させます。
  246. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) 沖繩県民の生活行政に関する調査、昭和四十五年の三月十日に経済企画庁並びに公正取引委員会関係の専門の方々にお願いをいたしまして調査をしてもらいまして、その結果の報告を受けたものでありますが、内容は沖繩の消費者行政の現状と問題点ということが第一点でございます。
  247. 原田立

    ○原田立君 簡単でいいです、簡単で。
  248. 岡部秀一

    政府委員岡部秀一君) それから第二点は、沖繩の物価問題に関する所見でございます。第三点は、沖繩におけるところの独占禁止、競争政策の現状と問題点ということに関しまして、行政面から見たいろいろな問題点及び今後の問題点等を解明いたしたものでございます。
  249. 原田立

    ○原田立君 この報告書の中で、財政援助の問題については、返還後は日本政府からの財政援助は単に、地方財政調整的な交付補助にとどまらず、沖繩経済振興、安定成長の持続といった、より高い見地からの配慮が必要になろう、こういう指摘があるわけですが、いま四十七年度の予算面のことをいろいろ新聞報道等で聞いておりますと、各省が要求している予算案が何かばたばた削られているような、そういう点を心配して見ているわけでありますが、この報告書のとおり十分な配慮がなされていかなければならないんじゃないか、現状は逆行しているのじゃないか、こう指摘するのですけれども、その点どうですか。
  250. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私どもは、専門の役所に出張してもらいまして、そしてその調査報告をいただきますと、たんねんにその問題点を研究をいたします。そして、その問題点についてどのような措置をなすべきか、税制、財政、行政上について、あらゆる面でおおむねこのような措置をすれば、この問題点の解明はできるということで、もちろん琉球政府との間にも十分の調査を済ましたものを一応暫定特例措置として、経過の措置並びにそれを振興開発法で発展させ、そして金融公庫でそれを裏づけていくという考え方に結びつけていったものでございます。
  251. 原田立

    ○原田立君 総務長官、円とドルとの交換問題、現在新しい情勢が進展しているわけですけれども、以前おきめになったこと、すなわち一ドル三百六十円のレートで交換するというようなお話がありましたけれども、その点間違いないですか。
  252. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは一ドル三百六十円の相場が基本になっておりますから、それの上下〇・七五%幅、そういうものの実勢に応じて大蔵大臣が内閣の承認を得てきめるということになっておるわけであります。しかし、その後本土政府が変動相場制に移行いたしましたので、それに対応するためには、そのようなことでは県民の実質上の経済上の混乱というものが救えないということで、総理の決断を得まして、そうして先般トルの個人の資産並びに資産性——個人の預金並びに現金性資産についてチェックをいたしました。これについては、チェックされたものは、復帰の時点においてたとえ一万ドルを持っていた人が一ドルに減っていても、その差額は復帰の時点における相場において交換される。その交付金は保証をされておるわけでありますから、今後復帰前に円とドルの交換ということは非常に困難でありますし、復帰する時点においては、先ほど申しましたとおり、内閣の承認を得て大蔵大臣が定める最も近い実勢の相場というものになるものと思われます。
  253. 原田立

    ○原田立君 ちょっとお聞きしますけれども、琉球政府は、預金が八億ドル、現金が六千八百万ドル、こういうふうにあるという調べをしてあると聞いております。ところが、総理府では、預金が五億六千八百万ドル、現金が六千百八十八万ドル、こうなっている。たいへん金額において違うわけなんですが、これがまた自治省にくると五億二千万ドルと、また多少減ってきている。大蔵省の予算の原案になると、これが五億ドルになっている。だんだんだんだん減ってきて、とうとう沖繩琉球政府の持っているものから見ると三億ドルもの差がついているというような、こういう数字的なことがわかっているのでありますが、その点どんなものなんでしょうか。
  254. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは十月九日にチェックいたしましたので、正確な数字が出ておるわけであります。それによりますと、確認された現金が六千一百九十一万五千ドルでございます。それから十月八日、ドル・チェックの前の日に押えましたので、その八日付で個人の純資産額これはいま作業中でございますから、あくまでも推定でございます。この推定をいたしますと、預貯金の推定は五億七千九百万ドル、それから債権債務の相殺をいたしますので、控除されるであろうと思う貨し出し金——これも推定にすぎませんが、今後電算機等を使ってこれは正確にやりますけれども、一億一千百万ドル、したがって、差し引きの純資産額は四億六千九百万ドル、個人の確認された現金と純資産の差し引き額を合計しますと五億三千一百万ドル、この確認に基づいて予算要求もいたしておるわけであります。
  255. 原田立

    ○原田立君 五億三千一百万ドル、これは確認された金額ですね。
  256. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 御説明申し上げましたとおり、確認されたものは現金でございますから、これは六千一百九十一万五千ドルでございます。それから、これから電算機等を使って個人別に名寄せをして、正確に債権債務を相殺をした後、これはいずれもいまのところは推定せざるを得ませんので、したがって、その推定でまいりますと、その推定に基づく差し引きの純資産額が四億六千九百万ドルで、これを合計いたしますと五億三千一百万ドルということでございます。
  257. 原田立

    ○原田立君 そのものについては、一ドル三百六十円のレートで全面的に補償してあげると、こういうことでよろしいですね。
  258. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) そのとおりでございます。
  259. 原田立

    ○原田立君 ドルショックの影響をまともに受けた沖繩では、経済情勢が次第に深刻になり、最近では、どうやら大手が二十社ぐらい倒れるんじゃないかと、こういわれております。総理もこの点御承知であろうと思うのでありますが、ところで、実際問題、琉球政府では、この景気回復策のきめ手がない。これは日本経済新聞に出ておった記事でございますけれども、琉球大学の久場政彦経済研究所長という方は、結局復帰後予定されている本土政府の公共投資を復帰前に繰り上げて実施してもらうしかない、こういうふうに訴えている、新聞報道されておりますが、これらのことについて政府はどういうふうに考えるか、お考えをお聞きしたい。
  260. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 確かに、現時点においては、沖繩の狭い市場において、軍の直接契約等に基づいております業者の人たちが、アメリカのドル政策によって、逐次、あるいは米軍の業者にかわられたり、あるいはまた計画の発生が取りやめになったりというようなことで、土建業界等を中心にして一部倒産等も見られるような現象のあることもわかるわけでありますが、他面、本土政府のほうでは、復帰記念主要五島循環道路とか、あるいは復帰記念国体のための大規模な投資等もすでに予算化いたしておりまして、本土のほうの送金もほぼ年度内のものは終わっておりますので、これらが、復帰までの間に、関連需要の喚起と相まって、一応のささえの役目を果たすであろう。しかしながら、これを長期的に見ますと、やはり一つの大きなプロジェクトとしては、海洋博覧会に備えての関連公共投資、あるいはその海洋博そのものの投資というようなものが、将来にわたっても、またその過程においても、沖繩経済に新しい付加価値を生み出すであろうと考えておるところでございます。
  261. 原田立

    ○原田立君 その海洋博、先の話じゃなくて、いまたいへんなんだと、こう言っている、いま。どうですか。
  262. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは、いまたいへんなものはいろいろありまして、干害、台風で立て続けにやられたキビ作農家の方々、あるいはそれの当然波及するキビ工場、そういうものの救済策も考えなければなりませんし、また、沖繩本島における軍関係の雇用、あるいは全体としての雇用事情の沈滞ぎみというようなことが、結局は設備投資というものの意欲を減退しておるということも、現実の姿だろうと思うのです。しかしながら、私どもとしては、予算を通じていまやっておりますものそのものも、やはり執行の中で、三月三十一日——四月一日復帰の前日までに、はたして全部これらの投資してもよろしいはずの事業が執行できるかどうかについても非常に心配をいたしておりますので、それらについては、既定予算の執行等についても十分の配慮をいたしてまいらなければならぬと考えておりますが、復帰後の想定された予算を、この時点で、復帰前に沖繩に予算として投資するということは、もうこの時点ではきわめて困難な時期かと存じます。
  263. 原田立

    ○原田立君 自治大臣、沖繩振興開発金融公庫への出資、これについて大蔵省と交渉なさっていると新聞報道で聞いておりますけれども、その点いかがですか。
  264. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) 開発金融公庫への出資は自治省の所管でございませんので、むしろ交付金の問題でなかろうかと思います。内地にあります一般財源としての交付金の問題でなかろうかと思いますが、この問題をいかに扱うかという問題につきましては、私たちは、当然内地に返ってまいりますのですから、内地の各種自治体に一般財源として出しております地方交付税交付金によって措置するのが当然でございますが、本土との非常に差もございますので、この制度になじみませんので、沖繩に必要なる財源を別途に臨時特別の交付金として当分の間は出すという一つの制度を考えまして、いま財政当局と折衝をしている、これが実情でございます。
  265. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) この際、運輸大臣から発言を求められておりますので、これを許します。丹羽運輸大臣。
  266. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) 御質問中はなはだ恐縮でございますが、ただいま、十五時四十三分、大阪発マニラ行きのフランス機727号が佐田岬上空におきましてハイジャックにあいまして、ただいま坊津中でございます。新田原基地から緊急発進がございましたので、はなはだ恐縮でございますが、私その取り調べのためにちょっと退席さしていただきたいと思いますが。
  267. 原田立

    ○原田立君 運輸大臣、退席なさるのはけっこうでありますけれども、どうぞひとつ、その措置に手違いがないように十分やっていただきたいと思います。
  268. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) 十分いたします。
  269. 原田立

    ○原田立君 海洋博のことについて若干お伺いしたいんですが、予算規模は当初計画では三百三十三億円程度と、こういうふうにお聞きしておりましたが、去る十二月六日の衆議院連合審査委員会の席上、田中通産大臣は、五百億程度の財政措置を明らかにしておられますけれども、これは当初の計画の変更、こういうことがあったのでございましょうか、その点はいかがですか。
  270. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 沖繩海洋博につきましては、現在まだ総体で幾らかかるのかという問題は決定いたしておりません。おりませんが、まあ常識的に考えてということで、おおむね五百億ぐらいをめどにしていろいろな準備を行なっておることは事実でございます。
  271. 原田立

    ○原田立君 田中大臣、当初私が聞いているのでは三百三十三億円程度と、こんなふうに聞いておったのですが、それはそういうふうな決定では全然なくて、ただ五百億程度のものでやっている、こういうことですか。
  272. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まだ、海洋博の申し出を事務局にいたして、競争相手がないので、このままでいけば自動的に決定をいたす予定でございます。その実施年次は昭和五十年度でございまして、まだ場所も、三、四カ所が立候補いたしておりますが、しかしその位置もきまっておりません。その意味で現在事業費をどの程度にということをきめるわけにはまいらないわけでございます。でございますので、懇談会をつくりまして、まあ大体五百億程度かかるだろうということで、いまの段階において通産省当局が五百億ぐらいということで、政府部内で公式、非公式の会談のときも大体五百億ぐらいかかるつもりでいまやっております。こういうことでございまして、積算をした数字ではないということを申し上げておきます。
  273. 原田立

    ○原田立君 沖繩における海洋博は、万博と違って地理的条件や交通対策の面で非常に赤字になるおそれがあります。通産大臣、この赤字財政対策ですね、この点はどういうふうになっておりましょうか。
  274. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 公共投資につきましては、国が補助をしてまいるわけでございますし、国自体が直営で行なわなければならないものもございます。その費用に対しましては、大阪万博で行なわれましたように、いま民間で懇談会をつくりまして、それが公益法人に転化をして沖繩海洋博の主体的な事業体となる予定でございます。で、政府は、次の国会では——はがきとか、また競馬の益金とか自転車振興会とか、そういうところにも協力を仰いでおります。お年玉はがきのような法律による寄金の募集も行なわれるようにいたしたいということで、いろいろないま計画をやっておるわけでございまして、沖繩の開発のためには有意義なもの、貢献をするものであり、沖繩復帰の記念事業にふさわしい規模であり実効のあるもの、そして沖繩にはできるだけ負担がかからないようにということを考えておるわけであります。
  275. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 関連。この海洋博を目ざしていまいろいろやられるのはけっこうですが、一応国際的な博覧会でありますから、かなり海外から多くの方が来られるわけです。そのときに、沖繩のあり方、特に米軍基地あるいは自衛隊基地のあり方、また沖繩の復興のあり方、復興といいますか沖繩の経済の成長等のあり方が全部諸外国から見られるわけです。やはりこれに対しては、もうあと五年しかないわけですから、かなり急ピッチなプログラム、スケジュール、特に私は基地の問題については相当アメリカに対する強い折衝等もしなければならぬと思うのですが、その点はどのようにお考えになっておるか、それだけお伺いしておきたいと思います。
  276. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 沖繩は山紫水明で、見る限り非常にりっぱなものであることは御指摘のとおりでございますが、世界で初めての海洋博覧会でもございますので、名実ともに山紫水明にふさわしい内容——見るとおり山紫水明でございますから、沖繩の内容もそれにふさわしいものにすべく、これから努力をしなければならない、こういうことでございます。ですから、海洋博の会場はいかにりっぱでも、その裏に、すぐ近くに非常にバラック建てがあったり、また社会施設が全くなかったりというようなことでは、これは世界じゅうにぼろを見せるようなことになりますから、そういう意味では沖繩自体を整備しなければならぬことは申すまでもありません。同時に、基地の問題に対しましても、これは海洋博などありますから、アメリカもきれいにするだろうと思いますし、日本もそういうことを要請するには実にいい機会であると、こういうことで鋭意努力をいたしてまいります。
  277. 原田立

    ○原田立君 いま海洋博のことでお聞きしたわけでありますが、沖繩が来年返ってくる、そのためにもということで、識者の間では、この際鉄道を敷設するようなことにしたらばどうかとか、あるいはまた高速道路をつくるようにしたらばどうかとか、こういうふうなことがいわれております。で、そういう面について、いま二つのことを提案しているわけでありますが、どういう検討がなされておられますか、その点をお伺いしたいと思います。
  278. 西村英一

    国務大臣西村英一君) 鉄道のことについては、私は所管ではございませんが、そういう意見もないわけではございません。しかし高速道路のことにつきましてはやや具体的になっております。まあいま那覇から宜野湾まで高速道路をやっておりますが、これはいわゆる高速道路になるかならぬかはわかりませんが、それが一部分使われると思っておりまするが、那覇から石川まで三十三・四キロの間、これは急速に高速道路をつくりたいと思っております。で、あと計画といたしまして、筋といたしまして一応引いておるのが、この石川から名護インターまでございますが、これをやるということになりますと、いま筋が引かれておるのは米軍基地を通るわけでございます。これでは、この五十年までやれといってもとうていできませんので、あるいはそれまでに基地が返らないというようなことになりますれば、その石川から名護、三十四キロありますが、東海岸を回ればどうかなるんじゃないかという考えは持っております。いずれにいたしましても、高速道路は中央に一本早く貫通したい、かような計画を持っておる次第でございます。
  279. 原田立

    ○原田立君 時間がありませんので飛び飛びの質問になってしまいますが、農業問題で若干お伺いしたい。沖繩の今後の農業の柱は一体何か、こうなればやっぱりサトウキビ、パイナップル、畜産、こういうふうなところだろうと思うのでありますけれども、昭和四十七年度の予算も重点的な投入がなされているであろうと、こう思うのでありますが、その状況はどうですか。
  280. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 沖繩のキビ作の農家戸数に占めるウエイートも圧倒的に高うございますし、また、それの沖繩経済に与える影響というものも、きわめて比重が多うございます。したがって、沖繩のキビ作については、今後重点を置いて振興策を講じていかなければならぬところでありますが、復帰してまいりますと、沖繩を甘味資源対策特別措置法の指定地域にもちろんいたしますし、また含みつ糖を現在の糖価安定法では買えないことになっておりますので、それらについては、琉球政府の現在までとってまいられました措置について予算補助をもって琉球政府の措置が続行できるような配慮をしつつ、キビの生産性の向上、そしてまたそれに伴う企業の合理化、合併等を促進しながら沖繩産糖のウエートをさらに高めてまいりたい、かように考えております。
  281. 原田立

    ○原田立君 具体的にいま昭和四十七年度の予算要求、あるいは四十六年現在でいろいろ実施していること、手厚くしているかどうか、もう少し数字的な面を加えて御説明願いたい。
  282. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 来年度の予算については、いま農林省で一応要求はいたしておりますが、主としてサトウキビ振興に関するものとして、栽培省力化のパイロット事業費五千八百万円、中型刈り取り機の開発事業費九百万円、土壌改良用機械開発事業費三千四百万円、サトウキビ原々種農場設置調査費五百万円、甘味資源生産対策推進費八百万円、こうなっておりますが、そのほかに、かんがい対策その他の土地基盤整備、あるいはダム等を行ないます。さらに砂糖対策としては、今日まで続けてまいりました沖繩のみに存在する特殊な条件を本土の買い入れ方法によって満たし得ないための臨時糖業振興助成費というものも、予算要求をいま本年度のものについて折衝中でありますけれども、一応予算としては本年度五億でございますが、これは来年度幾らになるかは、いまのところ、ことしは干ばつ、台風等もございまして、一応前年度並みの五億で要求をいたしているわけでございます。
  283. 原田立

    ○原田立君 財政的な面でしっかりめんどうを見ると言っていられるそばから、どうもあんまり財政的な面で力が入ってないような感じが持てるんです。まあそれはそれとして、今回の干ばつによりサトウキビは前年より三〇%も減収したと、こう聞いております。それで、この昭和四十六年度の糖価の買い入れ価格ですね、これはまだきまってないと、こう聞いておりましたけれども、現地のほうの意向では、奄美大島と同じ価格で、円建てでぜひ買うようにしてくれと、こういうふうなことが強い要望がありますけれども、その点はいまどんなふうな状況になっていますか。
  284. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) この問題は確かに例年より少しおくれておりますのは、沖繩の砂糖の買い入れ価格について、生産者価格を含めて、ドル建てにするのか円建てにするのかという議論が主として大蔵省からあるわけであります。しかしながら、その理論的な根拠は私もわかりますけれども、本日、大体その点はいままでどおり円建ての買い入れ価格にするということが決定をいたしまして、いま最終的にその価格を奄美大島並みにするような農林省の原案について折衝中でございますので、大体きょうじゅうにはまとまるものと考えております。
  285. 原田立

    ○原田立君 きょうじゅうにまとまるということでありますが、昭和四十五年のときには一トン当たり生産者からの買い上げ価格は六千五百七十円、四十六年は奄美だけきまって六千七百五十円。で、これと同じような状態できまると、こう理解してよろしいですか。
  286. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは全く奄美と同じ価格ということは、この工場の規模あるいはその他の各種コストの問題等もございまして、一律になかなかきめにくいんでありますけれども、しかしながら、それをカバーするものとしては、臨糖費等において実質そうなりますように措置をいたしたいと考えております。
  287. 原田立

    ○原田立君 実質的に措置するということでありますから、その点で納得したいと思いますが、私、聞いておるのは、サトウキビが、生産者からの買い上げというのは、いま長官は、その規模が違うとか工場が違うとかという話だったけれども、それとはちょっと全然逆になる、別な話だと思う。生産者からの買い上げというのは奄美であってもあるいは沖繩であっても同じだろうと思う。それでありますから、どうかひとつ奄美と同じような状況で決定になるように強い要望をしておきます。  それから、農地を手放す農家が非常に多い、何か五百万米平ぐらいもうすでに売られておる、こういうふうなことを聞いておるのでありますが、これは今後の農業という面から、沖繩農業という面からいって非常に重大な問題であると思うのです。それで、返還協定締結後からいわゆる現実に本土復帰する日までの間、この買い入れというのはどんどん増す傾向にあるのじゃないだろうか、実は心配しているわけでありますけれども、その点の現状の御説明を願いたい。
  288. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) まあ農地を手放す現象についてはいろいろあると思いますが、ことしの干ばつ等によりまして急激に多量の働き手が流出をしたというような背景等も一部にはあるようでございますが、また他面には、本土復帰後の沖繩の観光的な立地条件というものに目をつけて、背後には本土資本というようなものが関連がある、あるいは本土資本の現地設立された資本等が、観光立県の、企業としての、資本としての進出を開始しておる。そういうところで農民の方々が農地を手放されるところがあちこちあるようであるということは私ども聞いておりますので、先般調査団を派遣をいたしまして一応現状というものはつかんでまいりましたけれども、なお不明な点が相当ございます。これは琉球政府のほうで布令並びに琉球政府立法によって、非琉球人という表現でありますけれども沖繩居住者でない者が土地を取得しもしくは地上権、永小作権等を取得する場合においては主席の許可を要する、こういうことになっておりますから、したがって、いまのところ許可をされたというものでありますれば問題はないのでありますが、許可以前の状態でそのようなことがありますことは、私どもも今後の農村の経営に心配をいたしますので、琉球政府のほうにお願いをいたしておりますが、琉球政府もそういう立場から再点検をしておられるようであります。     —————————————
  289. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) この際、御報告いたします。  先ほどの運輸大臣の発言したハイジャク・コードの件は、フランス機があやまって発信したもので、現在マニラ方面に向かっていろとのことでございます。  以上でございます。     —————————————
  290. 原田立

    ○原田立君 環境庁長官にお伺いしますけれども沖繩公害衛生研究所というところの発表によりますと、DDTの許容量の三倍以上のものが学校給食用の野菜に含有されておる、こういうことが発表になっております。これは毒性の強いアルドリンあるいはディルドリン等であるわけでありますが、政府はただ単なる行政指導だけでなく販売中止を強力にすべきであると思いますけれども、その点はどうか。これがまず一つ。  それから、同じDDT、アルドリン、ディルドリンなどの有機塩素は土の中で半減するのに二、三年かかるために、いわゆる残留農薬の高い数値を示す。そういう耕地は土壌汚染が非常に大きい。そのために土壌検査をする必要があると思うのでありますけれども、その二つについていかがですか。
  291. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 前の学校給食の問題でございますが、そういう話があるということを聞きましたので、実は農林省を通じまして調べてもらいましたが、そのような事実には該当するものがないという返事でございます。なお、さらに念を入れまして調べますが、いまのところはそのような状態でございます。ただ、御承知のように、沖繩におきましては、農薬は別にこれを取り締まる法的なものがございません。行政指導によってこれを指導しておるわけでございますが、それでもやはり相当の効果はございまして、現在ではやはりDDTとかBHCというものは使わないような状態でございます。しかしエンドリンとか、そういうドリン系のものがまだ使われておるとすればこれは相当問題がございますので、今後とも厳重にこれを指導するように連絡をいたしたいと思います。  本土復帰いたしますと、当然本土の農薬取締法によって環境を保全する目的を中心として取り締まりが行なわれますから、毒性、残留性の強い農薬につきましては十分にこれを押えまして、内地と同じように心配のないような農薬の使用法を確立させたいと思います。  で、現在、日本本土におきましても、実のところはBHCとかDDTの使用によりまして多くの耕地が汚染されているのが現状でございます。まことに残念でありますが、それが現状であります。しかし、これは幸いに二、三年でその毒性が分解されてまいりますので、そういうことを、十分に農産物の毒性、残留性の問題を注意しながらこういう事態を早くなくしていこう、ことに汚染のひどいところは、やはり客土その他の土地改良によってこれを改良してまいろうという方針で進んでおるわけでございます。  沖繩につきましては詳しいことはわかりませんが、なるべく早く調査いたしまして、そのような御心配のなくなるように一生懸命努力してまいりたいと考えております。
  292. 原田立

    ○原田立君 環境庁長官、これをちょっと見てください、琉球新報。  時間がなくなりましたので、最後一つお伺いしたいのですが、それは沖繩航路のことでありますけれども、関西汽船が十月から就航したいわゆる大阪−沖繩間の航路についてでありますが、これは那覇を出航し、途中、知名、亀徳、それから名瀬に立ち寄って大阪及び神戸、最終港に至るのでありますが、どうもこれが問題になるのは名瀬への寄港なんでありますが、税関の所持品検査等を受ける那覇から、この手続の要らない奄美群島への寄港では、いわゆる武器や麻薬がフリーで本土に上陸することになり、非常に問題は大きいと、こう指摘されているわけでありますが、これは名瀬からの乗客に武器とか麻薬を船内で手渡せ楽にできる、こういう事実であります。こういう危険な航路を一体なぜ認めたかという、そういうような問題と、また、この取り締まりは一体どういうふうにしていくのかということ、この件は復帰ということよりか復帰に至るまでの間に起きる問題と、こういうふうにわれわれはとらえているわけでありますが、暴力団の持ってくる武器、あるいはまた麻薬の持ち込み、こういうような点で非常にこわい問題であるんでありますが、この状況の報告と、それからの現状、取り締まりは一体どうなっているかということ、この二点についてお伺いしたい。警察庁は、局長はいるでしょう。それから大蔵省、税関の関係でお願いします。
  293. 鈴木珊吉

    政府委員鈴木珊吉君) ただいま御指摘の航路でございますけれども、この航路は関西汽船が昭和二十四年に免許を受けまして、阪神から名瀬その他の南西諸島を通りまして茶花へ行っております。それからなお、茶花から那覇の間につきましては、これはいわゆる国際航路になりますので、これにつきましては運輸大臣の免許ではなしに運輸大臣に対しまする届け出というのが海上運送法によってきまっております。これは去る二十九年にその国際航路の区間につきまして運輸大臣に対し届け出が出ておるのでございます。  そこで、こういう航路につきましてそういう事件があることを承知しておるのでございますけれども、やはりこの航路は、たとえば奄美諸島から那覇、また逆に那覇から奄美諸島と、相当な数の旅客が利用しておりますので、やはりそういった面から、こういう航路は必要であるということでございます。したがいまして、そういうような事故があるからと申しましてこういう航路が悪いんだというふうには必ずしもわれわれは考えておらないのでございます。したがいまして、私どもから見ますれば、こういう輸送需要がございますので、こういう航路が必要であるというふうに私どもはいままで考えておる次第でございます。
  294. 本庄務

    説明員(本庄務君) ただいま御指摘のような事案が三月に一つございました。暴力団員と見られる者が、沖繩航路の定期船内におきまして拳銃五丁、機関拳銃一丁、実包百四十九発を不法に所持していた事件を本年の三月に検挙いたしております。本事件におきましては、この拳銃を沖繩から密輸出いたしまして、神戸税関の検査を免れるために、途中、奄美大島の名瀬から乗り込んだ仲間の暴力団員に拳銃を手渡したのではないかという容疑が持たれておりますが、この点につきましては現在捜査中でございます。  警察といたしましては、今後とも琉球警察並びに税関と緊密に協力いたしまして捜査を徹底して、定期航路が密輸ルートとされることのないように努力いたしたいと考えております。
  295. 原田立

    ○原田立君 総理、きょうは私は、沖繩振興開発特別措置法を大体中心にしてじみな国内問題を取り上げてやったわけであります。いろいろとまだ思いの至らない点等を意見を申し上げたわけでありますけれども、豊かな沖繩、平和な沖繩をつくっていくためにも、もっと手厚い処置を沖繩の人たちの心となってやっていかなければならないと、こう思うのであります。最後に、総理がもっと沖繩の県民の心を心としてやっていくことの決意をお聞きして、私の質問は終わりたいと思います。
  296. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私も原田君のお尋ねを静かに聞いておりました。また原田君の御意見をまじえてのお尋ねについては、私どもはさらにさらに勉強しなければならない点が幾多ある、これをみずから反省したような次第でございます。私は、ほんとうに豊かな平和な沖繩県づくりにこの上とも邁進すべきだ。それには、何といいましても県民の心に沿うという、そういう努力がなされなければならない。また、努力をするばかりじゃなく真にそういう実効があがるようなことでないと、なかなか納得できないのではないか、かように思います。  たいへん残念なことには、原田君の御質問中いろんな事件が起き、そういうものが一貫した質疑をどうも乱したろう、かように思いまして、その辺はおわびを申し上げます。     —————————————
  297. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 次に、森勝治君の質疑を行ないます。森勝治君。
  298. 森勝治

    ○森勝治君 私は、これからVOAを中心とする質問を行ないたいと思います。  先ほどのハイジャックの問題は、幸い誤報でお互いにほっと胸をなでおろしたところでございますが、私はこの誤報ほど当委員会にとりましても、また一般にとりましても電波の持つ威力をいやというほど知らされた問題はなかろうと思うのであります。したがって、私はそういう観点から以下諸問題について、真剣に総理以下関係大臣に御質問をしたいと考えます。  政府沖繩復帰が核抜き、本土並みで実現したと、こう強調しているところでありますが、私をもって言わしむるならば、これは全くの欺瞞はないかと思うのです。この協定の内容は、われわれが多年沖繩を返せと渇望していたものとはおよそほど遠いものでありまして、残念ながら対米従属協定であると断ぜざるを得ないのであります。世論調査の結果を見てもわかりますように、国民の大多数が不満を表明しておりますことは、先刻御承知のとおりであります。特に、沖繩県民は今後の生活に強い不安を訴えておりますが、その一つには、侵略的な特殊部隊の存置とともに、謀略放送の色彩の強いVOAや諜報部隊と密接な関連を持つ極東放送などのいわゆる特殊放送の存続が、つぶさに指摘をされておるところであります。このような外国政策機関による特殊放送がわが領域から昼夜を分かたず行なわれるということは、せっかく芽ばえましたアジアにおける雪解けムードというものを破壊するばかりでなく、とりわけ今後におけるわが国の自主独立、平和外交を阻害する大きな要因になるであろうことを、心から憂えるものであります。そこで、私は具体的な問題について入る前に、若干基本的な問題について政府の姿勢をただしてみたいと思います。  去る五月、愛知前外務大臣は、沖繩返還交渉に関する国会における中間報告におきまして、いま私が質問せんといたしますところのVOAの存在問題については、電波法上わが国の法制上のたてまえからしても、かかる外国政府の放送業務が国内で行なわれることが望ましくないことは当然である、と言い切っております。また佐藤総理の姿勢等から推察いたしましても、このVOAだけには強い態度で臨むという姿勢が、われわれは感知されたところであります。もちろん、わが党は機会あるごとにVOA施設というものは断固撤去せしむるべきであるということを、しばしば今日まで強調してまいりました。しかるに、政府は対米交渉の最終段階で大幅にこれを譲歩し、国内法のたてまえをくずし、しかも長期にわたってVOA施設の存続を認めることにしたのであります。一体これはどういう理由によるのか。外務大臣の強腰、郵政大臣の同じように強腰、さらにうしろから押すいわゆる佐藤総理の一番強い姿勢というものから、まさにこれは急転直下と申しましょうか、あまりにも、まあ豹変ということまでないでありましょうが、あるいはまた豹が猫のようにされてしまったのかもしれませんけれども、まことに変わり身の早いこの形というものを、私どもあ然として見る以外はないのでありますが、どうしてそういうふうに、ことアメリカに関する問題につくと、国内では大きな声をあげて強いことをおっしゃっておられるが、ずるずるといつのまにか相手方のベースに引き込まれてしまうということがしばしばありますが、この問題もまたしかりであります。だからして、その点について明快なる見解を承っておきたい。
  299. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 外交交渉は、申し上げるまでもなく相手のあることであります。わが国考えることがそのまま通らないという場合が間々あり得るのです、これは。VOAの場合もそうです。VOAは貴重なわが国の電波、これを外国に許すというのですから、これは大きな問題。私どもは何とかしてその統一電波行政というものをやっていきたい。こういうふうに考えまして、この返還交渉におきましても、何とかこれを返還時には撤去してもらいたいと、こういうふうに考えた、そういう強腰の要求をもって臨んでおったわけです。ところがアメリカ側は逆に最後までこれに粘りつきまして、そうしてしかも永久にこれをやらせろ、こういう態度です。つまりアメリカ側の主張というものは、これはアメリカ大統領府の機関である、この大統領府の機関であるところのVOA、これは平和的な施設である、世界各地でやっておる。友邦日本においてこれをやらしていただけないという理由がどこにありましようか、こういうことでございます。私どもはそういう段階において、テープもとってみまして、その放送内容なんか点検したのですが、まずこれは軍事的色彩じゃない、謀略的な放送でもない、アメリカの政策を広報する、こういうような性格である。そこでとにかく沖繩返還を早く実現をしなければならぬ。これはわれわれに与えられた最大の課題であります。そこでこのVOAにつきましては、その運営につきまして、これが平和的に使用されるように誤りなきを期すという歯どめをいたしまして、しかも五年という期間を限りましてこれを認める、そういう妥協をいたしたわけであります。これはまあ私どもの最初の主張からいうと、まことに残念なことでありまするけれども、また考えてみますると、沖繩返還という重大な、しかも歴史的な案件を処理するという上において、まことにやむを得ざる処置であった、かように考えております。
  300. 森勝治

    ○森勝治君 私は、基本的な問題という前提で御質問申し上げた次第でございますから、おそらく内閣を代表する総理からこの点についてのお答えがあってしかるべきもの、こういうふうに素朴に理解をもって質問したところでありますが、外務大臣なぜさっさと来られた。どうも失敬でありますが、昨日もそうです、他の諸君が総理大臣といってお願いしたら、あなたがしゃっしゃっと出てきた。これは一体どういうことなんですか。そんなに総理より早くおやりになりたいのかどうか、また佐藤さんがそこでがんばっている以上は、やはり総理をさておいてそれはできないのじゃないかと思う。角福といわれるあなたのほうではさっさと出る気になっている。きのうは失敬でありますが、大蔵大臣代理はどういうわけだか、あなたは先を切って走りたい。田中さんのほうは一番どんじりのほうをずるずるずるずるやっておる。佐藤総理のみがまん中でやきもきしている。これは閣内不統一ではないかと、こう思うのです。しかしそういうこと言っても始まりませんが、ただいまのお話では、妥協に終始した、まあ妥協という表現を用いられましたが、私は妥協とはほど遠いのだと思うのです。これは全く一方的に押されてしまったものと解さざるを得ないのであります。したがって、私はあらためて内閣総理大臣に御質問いたしますが、いま外務大臣は妥協という表現を用いられましたが、私どもをもって言わしむるならば、妥協ではなくして、これは力で押しまくられたという一語に尽きるのではないかと思うのでありまして、この点ひとつ明らかにしていただきたい。
  301. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま外務大臣がお答えをいたしましたのは、この返還協定の当事者として折衝に当たった、そういう立場で、そこからお聞き取りいただくのが一番いいだろう、かように思って私も立ちかねていたのでございます。まあそこで、ただいま外務大臣が率先してやったと、かようにはおとりにならないで、当の折衝の当事者であったから、その意味で説明したんだ、かように御了承いただきます。  私は先ほども、かねての主張ではありましたが、先ほど外務大臣が説明いたしましたように、折衝してみると、なかなか交渉の相手方があり、なかなかむずかしい状況だ、こういうことでずいぶん苦心し、苦労し、最終的には私のところにも持ってきました。こういうような状態で、どうも進みかねるがどうでしょう、こういうことですから、これはどうもやむを得ないだろう。しかしVOAは、これを無期限というわけにはいかない。だからその点で歯どめをひとつ考えようじゃないか、そういう意味のひとつ交渉をしてもらいたい、こういうことでいわゆる五年とはいたしましたが、まず二年、その辺でもう一度相談してみる、こういうような歯どめが一応できたものですから、私どももそれならやむを得ないだろう、また皆さんにも御了承願えるかと、かように実は判断を下した次第でございます。ただいまの点はそういう意味ですから、どうか御了承いただきます。
  302. 森勝治

    ○森勝治君 どうも総理は歯どめをしたというのですが、歯が抜けたようなお答えの気がしてならぬのであります。  そこで外務大臣、今度は間違いなくあなたに質問いたします。よろしいですか。VOA放送に対しましては、かつて共産圏諸国は約二千台もの通信機を動員いたしまして妨害電波を発射しておったと、こういわれております。現在でも相当な規模で妨害工作が続けられているようでありますが、この事実によっていたしましても、VOA放送なるものが共産圏諸国においてどのような形で受けとめられておるか、十分おわかりであろうと思うのです。一体あなたはVOAがどのような性格のものであるのか、またVOA沖繩の果たす役割りをどのように把握されておられるのか、認識されておられるのか、この点ひとつ明らかにしていただきたい。
  303. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) VOAは、これはアメリカ大統領直轄の機関である海外広報局の施設でございます。そしてアメリカの政策について解説並びにニュースの提供を行なう、そういう使命を持っております。
  304. 森勝治

    ○森勝治君 郵政大臣、この点について、あなたの所見をいただきます。
  305. 廣瀬正雄

    国務大臣(廣瀬正雄君) 所見という御意味がよくわかりませんけれども、VOAは、ただいま外務大臣が御説明されましたようにアメリカ政府の一機関でございます海外広報庁の出しております放送であります。したがって、日本の電波法では、外国の政府の放送は許されないということになっておるのでございまして、平素電波法、あるいは放送法を守っております私どもといたしましては、そのような放送が日本で行なわれということについては、もちろん反対であったわけでございまして、私、承っておりますが、前の郵政大臣の井出君も、そういうような姿勢でいろいろ努力をされたそうでございますけれども、先刻るる外務大臣からお話がありましたような沖繩本土復帰というその大きな日本目的のためには、どうしても妥協せざるを得ないというようなことになったものだと感ぜられましたわけでございまして、私どももさようであろうというように考えておりましたわけでございます。ただ、これが日本の法制下に入ってまいりますれば、その放送の内容につきましては、私どの責任になってくるわけでございますが、いろいろVOAの放送内容については、ただいま外務大臣からお話がありましたように、きわめて平和的な、穏やかなアメリカの政策を、沖繩の中継局は、アジアの各国の理解を深からしむるという使命を持った放送であると考えておったわけでございますけれども、国会が始まりまして、野党の皆さん方からいろいろなお話を承っておるのでありまして、そういうことを承りますと、いろいろ心配もございますけれども、ただいま申しましたように、日本の管理下に入りました以上は、私どもが責任を持って、御承知のように傍受もいたしておるわけでございまして、また交換公文には相当詳しく規定が設けられておりまして、ことにその放送の内容につきましては、日本政府といたしましては見解を述べることができるということになっておりますので、その日本政府の見解に対しては、アメリカ政府が尊重するというようなことでもありましたわけでございますから、そういうようなことを歯どめといたしまして、国民の方々の御心配にならないような放送が運行されるように努力してまいりたい、こういうように考えておりますわけでございます。
  306. 森勝治

    ○森勝治君 郵政大臣、重ねて質問したいのです。あなたの後段の御説明の点は、これからじっくり御質問をしたいと考えております。あなたはこの法案については反対だと、こういう郵政当局の立場を表現されましたね。これはよろしいですね、そのとおりですね。
  307. 廣瀬正雄

    国務大臣(廣瀬正雄君) そこは誤解のないようにお願い申し上げたいと思うのでございますが、電波法、放送法を守っております郵政当局といたしましては、最初そういうような考えを持っておったのございますけれども沖繩本土返還というきわめて重大な国家目的外交折衝のためには許さざるを得なかった、妥協に従わざるを得なかったというわけでございますから、さよう御承知を願いたいと思います。
  308. 森勝治

    ○森勝治君 申しわけありませんが、重ねてお伺いしたいのです、郵政大臣。反対であったけれどもしかたがないと、こうおっしゃるわけです。で、あなた方が反対されている基本的な問題は何ですか。終始反対を前大臣以来ずっと総理大臣も含めて、こぞってわが国は反対しておったが、あなた方の立場で言う本件についての継続反対というのは、どういう内容のものですか。
  309. 廣瀬正雄

    国務大臣(廣瀬正雄君) これは先刻申し上げましたように、電波法の第五条で外国政府の放送は日本では許されないというようなたてまえになっておりますので、その精神からいたしまして反対の意見を持っておったわけでございます。
  310. 森勝治

    ○森勝治君 佐藤総理福田外務大臣、さらにはただいまの郵政大臣等のお答えをかりますと、返還交渉をまとめるためにはVOAの継続は認めざるを得なかった、こうおっしゃっておるわけです。しかもVOAの放送は、共産圏諸国を刺激するものではなく穏やかなものである、こういうことを郵政大臣も言われておるわけでありますが、こういう御説明では、私どもはどうにも納得がいたしかねるのであります。米国におきましても、この点については盛んに議論をされておることは御承知のとおりでしょう。たとえば十月の二十七日の沖繩返還協定に関する公聴会におきまして、アメリカの上院外交委員会のフルブライト委員長は、次のように反対の意向を明言しております。「VOAは主として中国に向けられており、自由ヨーロッパ放送と同様、冷戦の産物であった。これらは、その当時始められたものであり、それが元来の目的であった。しかし、これらの放送は、非常な金をかけているのに、何をもたらしたのだろうか。それは、まさに冷戦の道具であったにすぎない。」と、こうきびしく批判をしておるんです。さらに同委員長は、ことばを継ぎまして、こう言っております。「対中関係を改善したいと言いながらも、その改善をはばみ、彼らを刺激し、あるいは冷戦を長引かせることをねらいとしたある種の活動を続けている。私は自由ヨーロッパ放送を保持することの有効性がわからないと同様に、なぜVOAを保持しなければならないのか、全くわからない。VOAも自由ヨーロッパ放送も、大体同じ種類の宣伝機関である。近代的な衛星通信をもってすればニュースに接することができないということはないであろう。」と、ロジャーズ国務長官に強い不満や疑問を投げかけております。郵政大臣は、特にこの点、御承知ですね。——うなずいておられますから、私は御承知のものと思います。私は、外交には協調と妥協が必要であることは否定をいたしません。ときにはそういうこともあるでありましょう。しかしながら、いままでのような皆さん方の説明では、一体、VOAに関する政府の認識が不十分だったのか。すなわち、甘かったのか、それとも、全面的にアメリカの要求に屈服したのかいずれか、さだかでない。すなわち、判断しがたい。したがいまして、一体、どういう認識に立ってこの施設の継続を認められたのか。総理から、ひとつ率直に、明快にお答えをいただきたい。
  311. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは御承知のように、いわゆる軍の機関ではございません。平和機関だと言われております。また、世界各地に実は放送、情報を提供するという意味で、同種のものを持っている、こういう説明が強くありまして、また日本側も、それをそのとおりに受け取ったのであります。ただいまフルブライト委員長の話が紹介されましたが、私は電波がいろいろ各方面から入り乱れて、いろんな問題をかもし出しておる。そういう際でありますだけに、森君から御指摘になることも、これはよくわかりますけれども、私は、先ほど外務大臣がお答えをしたとおり、また、いま私も立ってお答えをしているとおりです。まあ平和機関として存置を認めざるを得なかったと、御了承いただきたいと思います。
  312. 森勝治

    ○森勝治君 郵政大臣、私はアメリカの公聴会の点についての内容をかいつまんで申し上げたわけであります。アメリカでも責任のある地位の方が、こういうふうに害あって益なしという表現を用いておられます。いままで省をあげて反対した郵政省が、どうもあたかも総理あとにつくがごとく、失敬でありますが、符節を合わすごとく軟弱になってしまったその理由は何ですか。アメリカでさえもろもろの弊害があると認めておるのに、日本は平和だ平和だ、何も害がないのだとこういって逃げられようとしている。なぜ率直にもっと明快におっしゃらないのか、所管大臣としてひとつ御一言いただきたい。
  313. 廣瀬正雄

    国務大臣(廣瀬正雄君) 私ども郵政大臣が譲りましたのは、先刻来たびたび申し上げておりますように、外交には妥協もやむを得ないというような観点からでございます。
  314. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  315. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記を起こして。  ただいま運輸大臣から発言を求められていますので、この際発言を許します。丹羽運輸大臣。
  316. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) 先ほど委員の御質問中、ハイジャックの問題につきまして御心配をかけた次第でございますが、その後四時三十分、鹿児島の通常の位置通報を行ない、四時四十七分、パイロットの操作ミスである旨、東京管制部が沖繩管制部を経由いたしまして確認をいたしましたので、この旨御報告申し上げます。どうも御心配をかけました。
  317. 森勝治

    ○森勝治君 総理からそういうお答えいただいたんですが、どうも説得力というものを認めるわけにはまいりません。なぜならば、それはもうしかたがないのだ、しかたがないのだという逃げのおことば一手のみ、こんな気がしてならぬのです。  そこで、さらに総理にお伺いしたいのでありますが、たとい米国の中国政策というものがどんなものであったにしたといたしましても、先般の国連総会で中国を代表する唯一の合法政府は中華人民共和国であるということが国際的に確認された今日におきましては、佐藤政権にとりましても、佐藤内閣にとりましても、その好むと好まざるとのいかんにかかわらず、中国との国交正常化を推進せざるを得ないでありましょう。私はそう思うのです。しかしそういっておりながら、わが領域内となる沖繩からこのような問題のある放送を継続させることは、これからの日中の国交回復に大きな障害になるのではないかと、こう思われてなりません。重ねて総理の本件についての見解を承りたい。
  318. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私はこれを許すに際しまして、外務大臣は、特に謀略放送、そういうようなことは絶対にしないでしょうね、こういう念を実は押しております。またそういうことについては、VOAは、決して間違ったことはいたしません、謀略放送なぞはいたしませんと、かように申しております。またその点については、中華人民共和国からまだ何ら抗議めいた交渉、あるいはこれはもうもちろん電波ですが、そういうことはございません。そういうことなぞ考えますと、ただいま先ほど来申し上げておるように平和的なものだと、またそういうことがこれは必要なんだろうということで御了承いただけるんではないだろうか。私は、しかし日本の電波法、施政権日本に返った以上、日本法律が施行する、その拘束力を受けること、これは当然だと思いますので、これはもう特例中の特例、そういうことで期限を付したと、かように御了承いただきます。
  319. 森勝治

    ○森勝治君 総理、後段の特例中の特例とおっしゃったことばが、どうにも私はこれを日本語、まあ失敬でありますが、私流に解釈するとどういうことばになるんですかね。もう少し具体的に言ってくれませんか。
  320. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 本来、日本法律そのままやればこういうものは認められないと、こういうことでございます。しかしこれは条約でございますから、そういう意味で特例を設けたと、そういうことです。
  321. 森勝治

    ○森勝治君 それでは、VOAについて具体的な問題についてお伺いをいたします。  まず外務大臣にお伺いをしたいのでありますが、このVOAの施設につきましては、協定第八条で日米両国の取りきめに従い、五年間の継続運用を認め、二年後に将来の運営について日米間で協議する。さらに合意議事録におきましては、予見されない事情により五年間に代替施設が完成しない場合には、日本政府は完成するまでの間、継続について十分なる認識を払う用意があるという、いわゆる遅延条項が設けられております。ところで米国側の背景説明では、VOA沖繩は返還後も存続することが合意ができておる、いわんや五年たって撤去するなどという約束はしていない、また五年後に移転する気かどうかについても日米で協議することになる、こういう趣旨の説明があったと、こう報道されております。私どもはそう聞いておるのです。現に沖繩の県民は、一体このVOAの施設がいつになれば撤去されるのだろうか、その見通しすらもさっぱりつかめない、そういう点で深刻な不安にさらされておるわけでございます。したがって、このあちらの報道と申しましょうか、あちら側のそういう情勢日本側の外務大臣等の説明等は非常に隔たりがある。すなわち数段の隔たりがありますから、この点もひとつ明らかにされたい。
  322. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 日米両国の間に隔たりのあろうはずがない。これはもう条約にはっきり書いてあるのです。五年の期間を限ってこれを許します、しかしながら二年たったならば、その将来の運営につきまして相談をいたしましょうと、こういうふうになっておる。それから合意議事録におきまして、もし予見しないような事情が起こったならば、五年後のこれが存続について日本政府はこれを考慮すると、こういうふうに書いてあります。そのとおりでありまして、もう書いてあるとおりなんです。そこで、私のほうの気持ちを申し上げますと、二年後、五年というふうに区切ってある、そこで万一天変地異というような事情が起こりまして、これが代替施設ができない、そこで移転ができないというような場合におきましては、新たに条約を締結する必要があるわけであります。またそれに伴いまして、それに応ずるところの国内立法も必要になってくるわけであります。これはアメリカも条約に書いてあることでありますから、これは当然もう問題なく理解しておると、こういうふうに思います。ですから、五年ということはもう非常にはっきりしておる。  それからもう一つの問題は、二年という問題です。二年たったら将来のVOAの運営について協議をいたしましょうと、こういうふうに。私どもの気持ちを申し上げますと、この協議におきましては、五年という約束はしておるけれども、なるべく早く撤去されるようにこの協議に臨みたい、そういうふうな気持ちでございます。これを要するに、日米間でそういうようなことにつきまして誤りがあるというはずはない、すっかりこの条約並びに合意議事録に書いてある、こういうふうに御了承を願います。
  323. 森勝治

    ○森勝治君 重ねてお伺いいたしますが、それでは満五カ年間を経過した暁はVOAはわが国に存在をしない、これが原則である、そういうことですね。
  324. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そのとおりでございます。
  325. 森勝治

    ○森勝治君 それでは二年据え置いて、二年からその期間満了の間三カ年間に協議するということをせずに、直ちに次なる手を打てばいいんじゃないですか。もともと日本政府はこれの存在は認めたくなかったわけですから、当然その日から移転について日米が合議をするのが、一番すなおなあり方じゃないですか。
  326. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 五年というと、まあ短いようにも見えますし、しかしまた長い時間でもあります。ですから、その五年の中で二年はとにかくもう文句なしにこれをやってみましょう。しかし二年たったらこれをどういうふうにするか、まあ一番大きな問題はどこへアメリカが移転するかと、こういう問題です。そういう問題について相談を始めましょうと、こういうことであります。まあしかし実際上はおそらく郵政当局は、条約にはそうは書いてあるけれども、事実上はもう条約には書いてありまするけれども、二年を待たずしていろいろの相談をすると、こういうふうに私は見ております。
  327. 森勝治

    ○森勝治君 郵政大臣にお伺いします。外務大臣は郵政当局のことを心配されて発言をされた模様であります。私が想像いたします、推察いたしまするに、このことは協定の中の問題を、そのあとの具体的な問題をどうするかということのみであって、いま外務大臣が言われたように、移転を目的とする話が直ちに始まるはずはないと思うんでありますが、二年を待たずに郵政当局でおやりになるという外務大臣の言明ですが、そのとおり受け取ってよろしいですね。
  328. 廣瀬正雄

    国務大臣(廣瀬正雄君) 協定条約の問題は、外務省でおやりになりますわけでございますけれども、郵政当局の気持ちといたしましては、一日も早くVOAが日本から撤去されるようにという気持ちは強く持っておりますわけでございまして、協定に書いてあります二年が到来いたしましたならば、直ちに正式にもう早くどこかに移ってもらいたいという交渉はできると思うのでございますが、二年ということを特に出しましたのは、VOAの設備は相当大きな強力な設備なものですから、移転に二、三年はかかると、設備そのものの移転だけでも二年はかかる、場所を選定をするというようなことに一年かかるということになれば、それだけでもう三年かかるということになりますわけでございますから、それでおそらく二年ということにいたしたと思うのでございますが、ただいま森先生御指摘のように、また外務大臣から言われましたように、なるべく早くこのような日本において放送するということが好ましくないようなアメリカ政府の放送でございますから、日本から撤去してもらいたいという気持ちは当初から持っておりましたけれども、ぼつぼつそういうような気持ちで外務省にお願いをいたしてみたいと、かように考えております。
  329. 森勝治

    ○森勝治君 どうも理解に苦しむような発言をされて、どうも知識のない私としては困るんでありますが、「ぼつぼつ」ということばを、もっと平易なことばになぞえたらどういうことになりますか。まことに恐縮でありますが、私の頭でも十分理解のできるようにお話をしていただきたい。
  330. 廣瀬正雄

    国務大臣(廣瀬正雄君) 先刻申しましたように、二年を経過いたしますれば、正式に将来の運営についてアメリカと折衝ができるということになっておりますので、その前におきましてぼつぼつと申しましたのは、非公式に、機会あるごとに外務省に私どもからお願いをするという意味でございます。
  331. 森勝治

    ○森勝治君 ぼつぼつというのは、やるごとく、やらざるごとく、ということでしょう。間隔をあけるんでしょう。ぼつぼつと、こういうふうに、点でしょう。そうでしょう。ところが、外務大臣はそう言ってないんです。郵政大臣聞いておられましたか。片やには二年間据え置くと書いてあるけれども、郵政当局ではさっそく始めるであろうと、こう言っておるんです。あなたの言うぼつぼつというのでは、日が暮れて道遠しのたぐいでありまして、まことに迷惑ですから、もう少し外務大臣の発言とあなたの発言を、ぼつぼつ協議してもらいたい、打ち合わせしてもらいたい。
  332. 廣瀬正雄

    国務大臣(廣瀬正雄君) 私どもの気持ちを、外務省のほうから率先してごそんたくいただきまして、非常にうれしく思っておるわけでございますが、前向きで外務省にそういうことをずっと最初からお願いしてまいりたいと、こういう気持ちでございます。
  333. 森勝治

    ○森勝治君 ならば、二年間の据え置きを待たずに、直ちに作業にかかると、こう明言したと理解してよろしいか。
  334. 廣瀬正雄

    国務大臣(廣瀬正雄君) 毎日、ひっきりなしにそういうことをやるというわけにはまいりませんけれども、そういう前向きの姿勢で外務省と連絡をとって、しかも日米外交上に支障のないような方法でやってまいりたいと、このように考えておりますわけでございます。
  335. 森勝治

    ○森勝治君 本来、外交というものは、あげ足取りで恐縮でありますが、外交というものをうしろ向きにやったというのは、世界の歴史にないでしょう。押すか、押されるかでしょう。そうでしょう。しっぽを巻いて逃げて来たのですか。そうじゃないでしょう、やはり。よかれと願って、はかりごとをめぐらすのが外交でしょう。そうじゃないですか。しかるに、外務大臣の発言と郵政大臣の発言は、明らかに食い違っております。したがって、皆さん、委員長、お聞きのとおりでございますから、外務大臣と郵政大臣が意識の統一されるまで私はお待ちをいたしておりますから、ひとつ、よしなに委員長のほうからお取り計らいを願いたい。
  336. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、森さんはおっしゃいますが、さっそく——直ちにと言いましたか、さっそくと言いましたか知らぬが、さっそく交渉を始めますなんて、そんなことを言いません。私は、二年という期限がありまするけれども、その期限前といえどもこれは郵政当局としては返還の動きを始めるでありましょうと、こういうふう申し上げたわけなんでありまして、さっそくなんて言っておりませんから、その点はひとつ御了承願います。
  337. 森勝治

    ○森勝治君 そういうお話がありましたが、いずれといたしましても、私の受ける印象ですから、私の受ける印象では、両大臣、明らかにこの問題について食い違いを来たしておりますから、ひとつお話し合いをしていただきたい。
  338. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは、ここにたくさんの委員の方が聞いておられるので、私も廣瀬大臣の話を聞いておりましたが、全然食い違ってはおりませんです。期限二年とは限っておりまするけれども、その前提でも努力を前向きでいたしましょうと、こう言っておるわけであります。
  339. 廣瀬正雄

    国務大臣(廣瀬正雄君) 私の気持ちも、ただいま外務大臣がおっしゃったとおりでございます。
  340. 森勝治

    ○森勝治君 ただいま外務大臣は、大ぜいの人が聞いておられたと言われましたが、外務大臣、あなたの耳も二つ、私の耳も二つですよ。あなたが聖徳太子の子孫であったとしても、そんなにたくさん耳に入るわけはない。したがって、言うことは一つであります。だから、違うと言うんです。なぜ違うか、私が申し上げましょう。あなたは、二年据え置きということがあるが、二年を待たずにさっそく郵政当局でそれをやってもらいますと言っている。いいですか。二年を待たずに——二年というのは協定でしょう、あの約束でしょう。だから、二年間は動かさずにそっとしておくんでしょう、そっと。手を触れないというんでしょう。そういうアメリカと約束したけれども、郵政省では二年を待たずに始めると言っているんですよ。そうでしょう。それでは二年を待たずだっておやりになれるじゃないかと、だから郵政大臣にさっそくおやりになるかと言ったら、ぼつぼつとおっしゃるから、私は混ぜっ返したわけですよ。そうでしょう。筋道は立っているでしょう。あなたの耳は——私が聞いたこと、私が言ってあなたが聞いた、あなたが言ったことを私が聞いた、どこに食い違いがありますか。違わないでしょう。違うのは、あなたと郵政大臣の間の受け取り方が違うということでしょう。
  341. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私の発言と廣瀬大臣の発言は、いささかも食い違いがございませんです。私が郵政大臣でありましても、ぼつぼつと、こう言うかもしれません。
  342. 森勝治

    ○森勝治君 まあ、門の入口でこれ以上やり取りするのはどうかと思いますから、私は次の問題に移りたいと思うんでありますが、少なくとも協定では二カ年間据え置くということになっておりが、日本政府は二カ年間を待たずに撤去の方向に向かって作業を開始する、これは明確でございますね。
  343. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 作業ということは、これは私はそうは理解しておりません。ぼつぼつ話を始める、こういうふうに私も考えておるのであります。
  344. 森勝治

    ○森勝治君 私は作業という表現を広義に解釈したのです。広い意味にとったのです。話し合いも作業の一環だと私は思うのです。そうでしょう。何も、そろばんばかり持ってきてパチパチやるのが作業じゃないでしょう。話し合いを進めるということでしょう。そうでしょう。総理大臣うなずいておられますよ。だから、アメリカとは二年間まではそのままそっと触れないでおいておく、雪解けは二年間だけで塩づけにしておくということであるけれども、郵政省のほうではこの二年間を待たずに話を進めると、こういうことでしょう、あなたのお答えは。そうでしょう、外務大臣
  345. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 森さんはことばに非常にこだわられますから、私もこだわります。作業というと、普通は話し合いというようなことじゃなくて、何か工事でも始めると、こういうようなことに受け取られるようです。そういう意味においては作業ということはいたしませんと、こういうことであります。私どもが言っているのは、ぼつぼつ移転の話をいたしましょうと。これはまあ、廣瀬大臣と話の食い違いがあると言うから、私は、ことさらぼつぼつと、こういう表現を用いるのですが、非公式な話し合いはいたしますと、こういうことでございます。
  346. 森勝治

    ○森勝治君 外務大臣、語るに落ちましたね。いま後段に、あなたはいみじくも非公式な話し合いをするとおっしゃった。アメリカと二カ年間の塩づけの期間を待たず、塩づけの満了を待たず本件撤去の問題については非公式にアメリカと話し合いを進める、そういうことですね。明らかにしてください。
  347. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そのとおりです。
  348. 森勝治

    ○森勝治君 郵政大臣、お答えください。
  349. 廣瀬正雄

    国務大臣(廣瀬正雄君) そのとおりでございます。
  350. 森勝治

    ○森勝治君 私は、なるほど一見して「そのとおり」ということばをすなおに受けたのです。しかし、この「そのとおり」ということばを、対米折衝の間にあまり使われてはまことに困る。この点だけは総理大臣、ひとつあなたにお願いしておきます。外務大臣は先ほどの私の質問に答えまして、予見されざる事情という問題について若干触れられました。まあ天災地変などという表現を用いられましたが、この「予見されない事情」とはそもそもどういう場合を想定して言われておるのか、この点をひとつ明快にお答えをいただきたい。
  351. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 「予見されない」というのは「予見されない事情」でございまして、私どもの念頭にあることは、先ほど申し上げましたとおり天変地異、そういうようなことで工事が予定のとおり完成しなかった、こういう場合であります。
  352. 森勝治

    ○森勝治君 天変地変ということばを外務大臣は二度引用をされました。そこで私も、これはたとえにあるいは若干ずれるかもしれませんが、私の頭脳をもって、私自身質問しておる立場であなたのそのことばを納得する意味でお伺いをしたいのでありますが、たとえば天変地変等の問題ですと、労働基準法の三十三条の発動等については「災害」などということばがある。それで、この「災害」とはそもいかなるものかというときに、天変地変、公安、人命と、こういうようになっておりますから、そういうときの天変地変と同扱いをする、同義語である、同じ意味だと、こういうふうに理解してよろしいですか。
  353. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私が申し上げておるのは、その議事録に書いておりまするように「予見しない事情」と、こういうので、「予見しない事情」というのはいろいろあると思いますが、差しあたり私が念頭にありますのは天変地異等である、そういうことでございます。  なお詳細につきましては、この起草に当たりました政府委員がおりますから、お答え申し上げさせます。
  354. 井川克一

    政府委員(井川克一君) この八条の条文と合意議事録に書いてありますことが一つとして考えていただきたいと思います。  まず第一に、五年で終わるということでございます。五年で終わりまするが、先ほど来問題になっておりまするように、二年後に話し合いを始める。そして、かりに先方が五年以内でもやめるということがございましたらば、それではなはだけっこうでございます。しかし、われわれといたしましては、条約上は五年間までは協定によって認めなければならないと、こういうことになっております。そして五年終了時に、そこでやめてしまうということならば、これもまた問題が起こらないわけでございます。そこで二年後の話し合いといいまのものが非常に大きな意味を持ってまいりますのは、先ほど郵政大臣がおっしゃいましたように、予算を取ったり土地をさがしたりするということによりまして、それから建設ということで、もしよその国に移転しますならば相当時間がかかるということで、二年後に始めるということになっているわけでございます。そして、合意議事録をごらんになりまするとあれでございますけれども、合意議事録は「ヴォイス・オヴ・アメリカ日本国外への移転の場合において」と書いてあるわけでございます。繰り返して申しますが、沖繩でやめてしまうという場合は、それで問題が解決いたします。そこで、したがいましてここで適用になりますのは、そのやめてしまう場合でなくて、ただ日本国外への移転の場合のみでございます。移転の場合に、もうすでに二年あるいは、先ほど来のお話しによりまして、非公式にはその前から話が始まっているわけでございます。どこの地域に移ってどれだけ、どういうものを建てるという話し合いが行なわれているわけでございます。したがいまして、そこで「予見されない事情」ということは、ことにこの予見されない事情によって、その延長について、代替施設が完成するまでの間「運営を継続する必要性に対し、十分な認識を払う用意がある」ということになっておりますので、その終期におきまして「予見されない事情」というのは、もうまさしく外務大臣がおっしゃいましたように、天変地異以外にはあり得ないと、こういうことになるわけでございまして、普通私ども考えておりますのは、地震でありますとか火事であるとか、そういうことであるわけでございます。
  355. 森勝治

    ○森勝治君 いまのお話でやや明らかになりました。天災地変以外はあり得ない、こういう局長の答弁でございましたが、総理大臣、それでよろしいですね。
  356. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも、法文のことですが、私もそれでいいのかなあと思っていま聞いていたのですが、私の考えが間違っていたら、外務大臣が訂正するだろうと思います。よろしくひとつ。
  357. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 政府委員からお答えしたとおりです。
  358. 森勝治

    ○森勝治君 予見せざる事情とは天災地変、私は地変という表現をしましたが、外務大臣は天災地異ということばを出されましたが……。
  359. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 天変地異。
  360. 森勝治

    ○森勝治君 天変地異ですか。まあどちらでも同じでありますが、天変地異でけっこうでございます。天変地異以外はあり得ない。したがって、たとえば外国等に、局長も引例されましたように、国外へ移転の場合、用地取得等が何か難渋するとか、あるいは建物等の建築がおくれた等のごときものでこれが遅延するものでは何らない、そういうふうにあらためて確認をしたいのでありますが、そのとおりでよろしいかどうか。
  361. 井川克一

    政府委員(井川克一君) 先ほど来申し上げておりますように、正式には二年後に協議が始まるのでございます。そこに三年の余裕があるわけでございます。そして、こういうものをよそに移転し、構造物を建てる場合には、まず最初に土地を取得しなければならないということでございます。したがいまして、四年半たってから土地が取得されないというようなことは、予見されざる事情というのに全く該当いたしません。構造物が何らかの事情で遅延したというふうなことも、これは普通のプログラムに従っていきますれば大体わかることでございます。ただそれが、新築中に火事が起こって焼けてしまったというのは、これまさしく予見されざる事情に該当すると思います。
  362. 森勝治

    ○森勝治君 だから私は聞いておるのです。建物が焼けたということで天変地異という表現を用いることができますか。外務大臣明快にお答えいただきたい。
  363. 井川克一

    政府委員(井川克一君) 先ほど私は地震や火事と申し上げました記憶がございます。
  364. 森勝治

    ○森勝治君 あなたはそう言うけれども、私は確かに外務大臣と同じように天変地異という表現を用いて、それ以外はありませんとお答えになったはずです。ですから私は、あなたいまちょっと、私がたたみかけたからいま逃げておられる。もう少し明快にお答えいただきたい。
  365. 井川克一

    政府委員(井川克一君) ただいまの御答弁ではございませんで、その前に、私わりに長く八条と合意議事録との関係を申し上げましたときに、地震や火事のごとくということを申し上げたと思います。
  366. 森勝治

    ○森勝治君 天変地異以外は考えられないと言っておるのですよ。これは私と明らかに食い違いであります。私の頭脳の乏しさのなせるしわざかもしれません。したがって速記録をひとつ取り寄せるまで、私はこの質問を保留したいと思います。委員長、ひとつよろしくお願いします。だいぶん食い違いがありますから。
  367. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  368. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記をつけて
  369. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 。先ほどから私が申し上げておりますのは、予見せざる事情というのは、読んで字のとおりといいますが、これは天変地異などを含むわけであります。その「など」という中には、火災もまたこれを含みます。
  370. 井川克一

    政府委員(井川克一君) 外務大臣のおっしゃったとおりでございます。
  371. 森勝治

    ○森勝治君 だから私は労働基準法三十三条の点を持ち出して、かりそめにも三十三条の拡大適用ということはまかりならぬという見解があるわけですから、これと同じように、あそこにも「災害」と書いてある。で、これは三十三条を発動するときにはどういうことかと、それはやはり天災地変と、こうあるんですよね。天災地変、公安、人命と、こうあるんです。だから、それと同じかと言っているんですよ。そうしたら重ねて——私はこだわりません。大臣いいですか。こだわりませんけれども、三十三条の、いいですか、問題について触れてみてください。そうすればわかりますから。それで氷解すれば私は次に移ります。氷解しなければ、これは、より以上こだわりますよ。
  372. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は労働基準法第三十三条というのを承知いたしませんから、それに触れてのお答えはできませんけれども、要するに、予見せざる事情というのは天変地異などでありまして、この「など」という中には火災が入る、こういう意味であります。
  373. 森勝治

    ○森勝治君 そこに法制局長官、専門家がおられますから、三十三条の関係についてちょっとお聞きしたい。——労働大臣、来ましたね。
  374. 原健三郎

    国務大臣(原健三郎君) お答え申し上げます。  労働基準法第三十三条の一項にこう書いてある。「災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁の許可を受け」等々と書いてあります。「災害その他避けることのできない事由」、災害というのはいろいろありましょうが、天変地異等、もちろんあるいは大火災等も含まれておると解釈いたします。
  375. 森勝治

    ○森勝治君 そうしますと、この天変地異というのは、大上段に振りかぶっているけれども、「など」でごまかしてしまったというんですね。何でも拡大解釈ができますね。そういうことですね。そもそもこういう、この種のものは拡大を許さない。そうじゃないと、あとで双方の意見の食い違いを来たすから、その辺は明快にワクをはめておくのでしょう、そもそも外交というものは。ばくたるもの、等々などと言って、ばくたる、空々ばくばくたるものじゃないでしょう、その点は。そうじゃないでしょうか。
  376. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ですから、私が申し上げておりまするように、書いてあるとおりなんです、「予見しない事情」と。予見した事情を怠って、そうしてこの工事がおくれたとか、そういうような場合は含みません、これは。ですから、具体的にいえば何だと、こういうことになりますると、天変地異など、つまり「など」というのは天変地異に準ずるものである、こういうことだろうと思います。
  377. 森勝治

    ○森勝治君 まあ次に移りましょう。——いや、その点はですね、私は意見が不一致であります。しかし、そのことばかりやってもいけませんから次に移るのです。あとで、機会があったらただしてみたいと思います。  いまお話が出ました予見されない事態が発生する場合に、新たに条約を締結する、こういうお話でございましたね。さっきのこの天変地異でどこかに吹き飛ばされた感がありますから、この点ひとつ、もう一度御意見をいただきたい。
  378. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 条約上は五年となっております。したがいまして、五年の期限が延びる場合におきましては、両国間であらためて協定を結ばなきゃならぬ、かように考えます。
  379. 森勝治

    ○森勝治君 このVOAにつきましては、最初、政府のほうでは買い取り資産等に含めて交渉をしていた模様でありますけれども、またアメリカ側といたしましても、これの移転等につきましては膨大な費用がかかるという主張をされた模様ですね。ところで、いま天変地異のない限りですね、これは満五年間の期間満了を待って移転という、あるいは撤去ということばを使ってもよいのでありましょうが、そういう場合に、その撤去や代替施設の建設費等の問題は一体どうなるのか、お聞きしたい。
  380. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) その辺が非常にむずかしい交渉だったわけです。まあアメリカ側としては、日本が負担するというようなことも考えた時期があります。しかしまあわがほうはそれに対しまして、わがほうでは負担をしない、しかし、まあ五カ年間の存続を認めましょう、こういうことになった。その辺をひっくるめて、まあただいまのような移転費等はアメリカが全部負担をする、しかし存続五カ年間は認めます。こういう妥協になったわけであります。
  381. 森勝治

    ○森勝治君 移転費用あるいはまた撤去費用は出さない、こういうことだそうであります。そこで私は、この点念を押したいのでありますが、たとえあちら側から要求があっても、本件については一銭でも支払う必要はないと思うのでありますが、この点ひとつあらためて明快にしていただきたい。
  382. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) VOA移転につきましてわが国の負担をいたすような問題は起こりませんです。
  383. 森勝治

    ○森勝治君 次の問題に移りたいのでありますが、それは、この協定や、取り決め、あるいはまたこれを実施するための特別措置法には、いずれもヴォイス・オヴ・アメリカ中継局というこの字句を使用しております。それにもかかわらず、この施設が中継機能しか果たし得ない、つまり現地制作にかかる番組を放送してはならないという制限規定はどこにも見当たらないのであります。したがって、VOA沖繩がアジア地域にある他のVOA施設と同様に自主番組を放送できるものと解せられるとするならば、そういう解釈をされたとするならば、この協定には重大なきずがあるものと私は言わざるを得ないのでありますが、この点について外務、郵政双方の大臣からお答えをいただきたい。
  384. 廣瀬正雄

    国務大臣(廣瀬正雄君) 協定の第八条にうたっておりますのは、あくまで中継局の五カ年間の存続でございます。中継局の存続でございます。したがって、自主番組を放送するということは許されないものだと解釈いたしております。
  385. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま郵政大臣からお答えをしたとおりであります。
  386. 森勝治

    ○森勝治君 いまのお答えのように、沖繩におけるVOAは中継局であるから自主放送はしない、こう言っているわけです。しかし、法律上は自主番組を放送することができないという制限規定は何もない、私はこう思うんです。これは先ほど郵政大臣が言われたように、平和なものだというようなことを見せかけにするために、影響が少ないということを前面に押し出すための見せかけの道具にすぎないと思うのでありますが、郵政大臣重ねて見解を承りたい。
  387. 廣瀬正雄

    国務大臣(廣瀬正雄君) これは何度申し上げても同じことでございますが、協定で明らかに中継局の継続でございますから、かってに自主番組を放送するというようなことは認められない、協定そのものからかように解釈いたしております。
  388. 森勝治

    ○森勝治君 郵政大臣、重ねて質問して恐縮でありますが、もう一つ質問があります。  先般の当院の予算委員会におきまして、このVOA施設の取りきめの第六項に関連したいわゆる番組の歯どめ措置についての統一見解が表明されておりますが、それによりますと、VOA放送の傍受を実施する、なお番組内容の概要についてもあらかじめ入手できるよう交渉する、こういうことになっております。そのとおりですね。
  389. 廣瀬正雄

    国務大臣(廣瀬正雄君) そのとおりでございます。
  390. 森勝治

    ○森勝治君 ところで放送全般についてのモニターを実施するということは、技術的にも実際的にも非常に困難ではないかと私は思うのです。  また番組の中で歯どめを必要とするものは主としてニュース解説というような時事ものであると想像されるのでありますが、これらがワシントンのVOA本部で制作されるものに限られるとなりますと、事前に番組内容をわが国で承知することは、これもまた不可能であろうと思われます。先ほどの政府の統一見解についての具体的な担保措置を承りたい。
  391. 廣瀬正雄

    国務大臣(廣瀬正雄君) ただいま御指摘のように、VOAはアジアの各国に向けて放送せられるわけでございまして、したがって、非常に指向性の強い電波ということになるわけでございます。そこで日本本土あたりではどうも聞こえないようでございますけれども、幸いに沖繩の送信所のすぐひざ元と申しますか、足元と申しますか、ごく近いところであれば一カ所で全体の放送の把握ができるようでございます。そこにかなりの設備をしましてすべての放送を傍受する、聴取する、記録にとどめるというようなことにいたしたいと思っておりますが、なおそれから先の具体的な方法につきましては、ただいま関係の各省庁におきまして協議中でございます。  それからあらかじめ入手いたします資料は、たとえばプログラムというようなものについては入手ができるかと思っておりますが、この傍受を運行してまいりましてやってまいりまして、あるいはそれ以外に必要なものが出てくるかもしれませんので、そういうような必要な資料が、プログラム以外に入手しなければならないということになりましたならば、そういうことについてVOA当局と交渉をいたしてみたいと思っております。そのような努力をいたしまして、りっぱな放送——国際的にいろいろ友好を損ずるとか、あるいは親善を損ずるとかいうような放送を規制していかなきゃならない、かように考えております。
  392. 森勝治

    ○森勝治君 先ほどからいやいやながら押しつけられているというようなしろものを、いまおっしゃったように具体的に交渉ができ、私が指摘したような問題についての解決がすみやかになされますか。
  393. 廣瀬正雄

    国務大臣(廣瀬正雄君) そのことにつきましては、責任をのがれるというわけじゃございませんけれども外務省のほうにお願いいたしまして、外務省のほうから御交渉願うということに考えております。
  394. 森勝治

    ○森勝治君 郵政大臣の御希望もありますから、福田外務大臣、おそれ入りますがお答えをいただきたい。
  395. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 郵政省の要請を受けまして、できる限りの努力を、御協力をいたしたい、かように考えております。
  396. 森勝治

    ○森勝治君 郵政大臣、まだ私の質問にお答えにならぬ点が一部あるのであります。たとえばモニター等の問題については、技術的にも実際的にも困難ではないかと私は具体的に指摘をいたしている問題がありますが、この点についてもお答えをいただきたい。
  397. 廣瀬正雄

    国務大臣(廣瀬正雄君) それにつきましては、さっきお答えをいたしたつもりでございますが、送信所のごく近いところで適当な場所がありそうでございますから、沖繩の地点でございますが。そこですべての放送を記録にとどめたい、こういう考えでございます。
  398. 森勝治

    ○森勝治君 重ねて郵政大臣にお伺いいたしますが、私は技術的にも実際的にも困難ではないか、こう指摘をし質問をしているのですよ。あなたはその近くに一定の施設をつくってそこでおやりになると、こう言っておられるわけでありますが、これでは私の質問とあなたの答弁がやや隔たりがあります。したがって、もう少し、四、五メートルしかないのですから、もっと隔たりのない、身近な、ことばをかえますと、具体的な問題を指摘しているわけですから、その線に沿ってひとつお答えをいただきたい。
  399. 廣瀬正雄

    国務大臣(廣瀬正雄君) 話の筋道はただいま申したとおりでございますけれども、電波の専門に関することでございますから、事務当局から、政府委員から説明させます。
  400. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。先生御指摘のとおり、先ほど大臣も御答弁申し上げましたように、指向性がついているわけでございますので、日本国内で受信するということは非常にむずかしいわけでございますが、沖繩のVOAの近くに参りますれば、それが可能であるということが調査の結果わかっております。
  401. 森勝治

    ○森勝治君 調査の結果報告を聞いているのではないのですよ。この問題については他の方もよそで質問をされました。ところがその議事録等を拝読いたしまするに、この問題は完全に実施すると、こういうふうに、当初はそうでもなかった模様でありますが、会期末が近づくにつれそういうような、失敬でありますが、そういうお答えになった模様であります。したがって、この席上で答弁さえのがれればあとはどうでもいいということにはならぬと思いますから、くどいようでありますが、私は重ねて聞いているわけです。これだけのものをやるならば、規模の点、予算の点、なかなかたいへんだろうと思うのです。それをあたかも一片の紙きれのように簡単に、できますと、こうおっしゃっておる。そんな簡単にできるしろものではないのではないかと私は思うから、この点を重ねて聞いておるわけです。大臣おわかりですね。ひとつ、明快にお答えをいただきたい。
  402. 廣瀬正雄

    国務大臣(廣瀬正雄君) つくりますことは絶対間違いございません。郵政省関係の予算要求といたしましては四千六百万円要求をいたしております。外務省関係が一億、二、三千万円ではなかったかと思いますが、これは外務省のほうからお答えをしていただきます。
  403. 吉野文六

    政府委員吉野文六君) 外務省といたしましては一億二千四百二十万七千円の予算を要求しております。
  404. 森勝治

    ○森勝治君 予算規模の内容はつまびらかにされませんでしたが、そのような予算措置で十分この問題を解決することができる。ことばをかえますが、消化できる、こうはっきり明言されたものと解してよろしいですね。
  405. 廣瀬正雄

    国務大臣(廣瀬正雄君) そのとおりでございます。
  406. 森勝治

    ○森勝治君 郵政大臣、あなたの明快なるお答えを長く記憶いたしております。ゆめお忘れのなきよう一言申し上げておきます。  このVOA放送については、政府はもともと共同正犯になりたくない。しかし、さりとて放送内容にかんぬきをかけないわけにはいかない、こういう考え方から、これは私の推察でありますが、いわゆる歯どめの措置なるものを講じたわけであります。しかしこれは、歯どめ措置を講じたと、私は歯の抜けたようなものだと言って、外務大臣に失敬でありますが、そういうことばを先ほど呈上いたしましたが、これは法的な規制は何もないのではないですか、法的な規制がなければ、また実効も伴わない単なる気休めにすぎないものだと私は断ぜざるを得ないのであります。これでは国民を愚弄するもはなはだしいもの、こう指摘せざるを得ないのであります。一体、政府は、わが国の見解表明にどのような法的規制力があると考えておられるのか、また国益を害するような放送を一体どうやって食いとめることができるのか、申しわけありませんが、総理、あなたからひとつ明快なる御答弁をいただきたい。
  407. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは日米の取りきめにあるように思いますが、外務大臣からお答えいたします。
  408. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは、もう森さんよく御承知ですから、いまさら申し上げるまでもありませんけれども、「日本国政府は、必要と認めるときはその番組につき自己の見解を表明する権利を留保し、アメリカ合衆国政府は、日本国政府が表明した見解を尊重する。」、こういうふうに書いてあるわけでありまして、これが、この運営がわが国の政策意図に従って動く、そういう証拠であります。
  409. 森勝治

    ○森勝治君 法制局長官にお伺いしますが、私は法的効果のことについてお伺いしているわけですから、専門的な立場でひとつお答えをいただきたい。
  410. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 中身につていは、ただいま外務大臣が仰せになりましたとおりでございますが、その法的関連につきましては、これもすでに十分御存じのことだと思いますが、この協定の第八条をごらんになればわかりますように、「両政府の間に締結される取極に従い、」という規定がございます。これは、交換公文もまたこれを受けまして、「同条にいう取極を次のとおり」というふうになっております。したがって、先ほど外務大臣が言われました、見解を尊重するというのは、協定上の義務になっております。そういうことの関係を私は申し上げればよいかと思っております。
  411. 森中守義

    ○森中守義君 関連。これは協定委員会のほうで聞くべき内容のものかわかりませんが、ちょっと外務大臣に一、二問お尋ねいたします。  八条で示されている内容ですけれども、どうなんです、アメリカ側の意向は。どうしてもこの種の施設は沖繩でなければならないというのか、他の地域でもいいんだが、せっかくいままでつくっているから、五年たてばどっか直りましょうという意味なのか、つまり、VOAの置かねばならぬという地点は沖繩に限るというのか、よそでもいいというのか、この点、どうでしょうか。
  412. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) アメリカ側の意図は、五年先のことになりますが、五年先の時点までは沖繩に置きたいと、しかしその後におきましては、沖繩にあるこの施設を撤去しちゃう、やめちゃうと、そういう場合と、沖繩以外の地域に移す場合があると、こういうふうに考えております。
  413. 森中守義

    ○森中守義君 そうなると、合意議事録の問題ですが、この中身をちょっと見てみますと、何かすでにもう予防線が張ってあるのですね。だから私は、合意議事録の内容と本体の八条の関係を見ますと、一面においては沖繩でなくてもよろしい、他に直りましょう、一面においては沖繩でなければならない、こういう二つの読み方ができる。何となれば、さっき問題になりました予見せざる事情ということですね。これは裏返して言うならば、アメリカ考える特定の地域、たとえばグアムであるとか、あるいはその国の委任統治地帯であるとか、南洋群島であるとか、まあそれはどこであれ、ここにかわるべきものを用意する、そういうものがいやしくも前提にならないと予見せざる事情ということは生まれてこないんですね。一体世界のどこなんだと、こういうことを言う場合にはね。だからどこか、その文言からいくならば、いま申し上げるように、グアムであるとか、あるいは南洋群島であるとか、そういうどこか予定しているような気もするんですよ。したがって、そこに予見せざるという問題が生まれてくる。しかし後段において、そういう事情等のために、つまり予見せざる事情等のためにですね、代替施設ができないかもわからない、そのときには運営を継続する必要性に対し十分なる認識を払う用意がある、こういうことを言われている。だから五年というのは絶対的なものじゃない、ここにさらに延長する可能性がある。こういう、非常に含みが多過ぎてわからない。だから私は沖繩でなければならぬということを前提において、あとは適当にぼかすという意味、予防線を張るという意味で合意議事録というものが説明されているんじゃないか、こういう認識を持つわけです。ですから、沖繩でなければならぬということなのかどうなのか、この点をはっきりしてくれませんか。
  414. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 非常に端的にお答えいたしますと、沖繩でなければならぬと考えていないんです。もう五年たてばやめるか、あるいは他に移転するか、その二つしか考えておりませんです。
  415. 森中守義

    ○森中守義君 委員長、もう一問。そうなるとずいぶんたくさんの条約であるとか、まあこれに関する交換公文あるいは合意議事録、私は見てきましたがね。この種のものというのはあまり他に見当たらないのですね。予見するとか、あるいは将来のことをおもんぱかって一定の期間内に事がなし得ないという場合にはさらに延期するぞという、こういう、二国間であれ、あるいは多数国間であれ、条約あるいは合意議事録、交換公文、あまりこの種類はないのですよ、ほかには。おそらくこれに関する限りだというような気がしてしようがない。だから私は、まあこれはまたいずれ私の出番があればもう少しお尋ねしますが、ここでは沖繩でなければならぬのだというような、その前提がやっぱりある。それを適当に包まれている、どっかこの抜け穴をつくっているのじゃないか、こういう見解を私は強く持つのですがね。しかし、あなたはそうじゃない。どっか直ってもいいんだ、こういっておるようですから、これ以上答弁は求められぬかわかりませんが、少なくとも条約の本体といい、協定の本体といい、合意議事録といい、十二分にそういうことを推理するに余りある内容のものである、こういうことを御認識いただきたい。  それといま一つは、愛知さんからマイヤー大使に出された書簡がありますね。この中に実施細目は権限のある当局の間で合意する、こういうことですが、これは一時的なものなのか、あるいは五年間というものなのか。あるいは、たとえばそのこまかな内容等が付されておりますが、そういう技術的なものをいうのかどうなのか、これはどうなんです、この期間というのは。つまり私は、こういうことになりますとね、すでに設置されている日米合同委員会、こういうもので十分事が足りるのじゃないか、しかるにこれだけをわざわざ権威ある当局にということはどういう意味なんですか。まあさっきのとあわせてお答え願いたい。
  416. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 第一点は、森中さん、そういう推理も成り立つと、こういうふうにおっしゃいましたが、まさにそれは推理だと思います。私は、これをすなおに読みますれば、アメリカはもう五年後におきましては撤去するか、あるいは他の地域、沖繩以外、日本以外に移転するか、この以外には考えておらぬと確信をいたしております。ただ一つ場合があるのは、いまさっきから話にある天変地異等の場合であります。そのときは、その天変地異等によっておくれるその期間だけ沖繩におりましょうと、そういうことになるんでありまして、これはもう推理は私のほうの頭では成り立たぬ、そういう見解であります。  それから、第二点のほうは、これは局長からお答えいたさせます。
  417. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。第七項の「取決めの実施のための細目は、必要に応じ、両政府の権限のある当局の間で合意する。」ということでございまして、主として郵政省ということになろうかと思います。
  418. 森中守義

    ○森中守義君 ちょっとあと一言。これは外務大臣、推理になるのかどうなのか……。ある意味では時間が解決する問題でもありますが、たださっきから申し上げるように、天変地異、予見せざる事態というのはどこのどこなのかぐらいのことはある程度交渉の中なり、あるいはこの場で示してもらわないと、アメリカがかってにどこかにきめた、まあそこでわざわざそういうところを選んで、発生したときに、あそこにつくろうと思ったんだが、天変地異があったからだめになったと、もうこう言われちゃ困りますし、そこまでうがった見方をしていいかどうかわからぬけれども、しかし、これはどうしても合意議事録というものがこういうかっこうで出ている。私は推理じゃないと思う。ですから、交渉の中で、まあ大体どの辺に直りたいんだという程度の輪郭ぐらいアメリカが示してこなければそれをこういう合意議事録の中に載っけて予見せざる場合、どこに行くかわかりませんよということでは、ちょっとやっぱり日本政府としてはどうかという気がしてなりません。いわんや国会ではこれはおさまらない。だから、私は推理じゃない、断定的に沖繩でなければならぬ。それを適当に表向きに隠蔽をするために合意議事録等が生まれてきたんじゃないか、他にこういう例を見ませんからね。ですから、交渉の経過の中に何か出たのかどうなのか。
  419. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 交渉の経過の中でこの移転先はまだ出ておりませんです。そこで、そういう種類の話は、まさに協定に書いてあるとおり、二年たったら始めましょうと、正式に。そういうことなんです。二年先の話でありまするから、その時点に立ちましてどこへ移すか、あるいはやめてしまうのか、その辺のことはわかりません。しかし、いずれにいたしましても、アメリカが故意に天変地異をつくり上げて、そうしてまで沖繩に居直ろうと、そういうような考え方は持っておらぬと、そんなような考え方を持つというようなことになれば、これは日米間の重大な国交問題になると考えます。
  420. 森中守義

    ○森中守義君 ちょっと関連で恐縮ですが、ここにも、二年後というのはそういうことを意味するんですか。この文言に関する限り、将来の運営について協議に入る、こういっているでしょう。だから、これはまあ読み方はどうでもできますが、私はさっきから問題になっている、たとえば番組の問題であるとか、あるいは周波数の問題とか、つまり郵政が中心になるという技術的、内容的な問題のことを二年後というのじゃないですか。
  421. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま、この協定の起草に当たりました条約局長から聞きましたが、これは移転でありますとか、あるいはやめるとか、そういうことを意味しておるということであります。
  422. 森勝治

    ○森勝治君 政府が歯どめ措置を講じたい、こういうことはVOA番組というものが共産圏諸国を刺激する、そして、わが国の利益を害することがあるということを心配をしておられる。私はそうだと思うのです。しかし、政府は、おだやかなものだ、共産圏諸国を刺激するものではない。そうこう先ほどから盛んに主張をされておるわけでありますが、さっぱりつじつまが合わないような気がしてならぬのです。また番組の歯どめ等につきましても十分な対策を講じておると言いながら、その実効を確保する手だてというものは何一つ見当たらないし、何にもない。これは空々ばくばくたるものにひとしい。それで国民を納得させようといっても一体それは無理ではないかと私は思うのです。  そこで、佐藤総理にお伺いをしたいのでありますが、そもそもVOA放送は謀略放送である、そして、中国を刺激するものである。しかし、政府はこれをやめさせる手だてというものがない。こういうふうに率直にお認めになりますか。
  423. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、ヴォイス・オヴ・アメリカ、それはどうもいま言われるような謀略放送、そういうものではないように思います。いろいろ外国放送は私どももときどき聞きますが、あるいはモスクワ放送、あるいは北京放送、いずれも日本語放送でございますけど、VOAはなかなか私どもに東京にいてつかまらない。どうもそういうのは同じような放送かどうなのか、これは私どもつかめませんが、どうも話を聞いておるところでは全然違うようでございます。
  424. 森勝治

    ○森勝治君 それでは総理お答えになりませんね、話を聞いたところによれば全然違うと。だれの話を聞いたのでしょう。いま私の話を聞いてあなたがお答えになっておるんでしょう。私はそれは害があると申し上げているのでしょう。謀略放送じゃないかと具体的に指摘をしておるのですから、第三者の話云々となぞらえることはひとつおやめになっていただいて、私は簡潔に具体的な事項を示して質問しておるのですから、どうぞひとつ、申しわけないですが、私の質問の趣旨に沿って——もちろん見解の相違で、また別な見解がおありであろうけれども、それはそういうことにして議事進行に御協力していただけないと次の問題に移れませんから、ひとつお答えをいただきたい。
  425. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私の確かめたのは外務大臣からでございます。
  426. 森勝治

    ○森勝治君 ですから、外務大臣からそういうお聞きをしたであろうけれども、それは総理ですから事情を聴取する権限をお持ちですからおわかりでしょうが、私はいまことあげして申し上げているのですよ。ですから、そういうことをお認めになりますか、こう申し上げているのですから、答えを——失敬でありますが、総理に対してまことに無礼だと思うのです、しかし、これは非常に大切でありますから、どうも総理はお答えの点をぼかされていますから、「ほつぼつ」のその外のお話でございます。これではちょっと迷惑でございますから、ひとつ明快にお答えをいただきたい。
  427. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) VOAについての話は私外務大臣から聞きました。森君からいまこれは謀略放送じゃないかとおっしゃるが、VOAがいついつ、これこれの話をした、これは謀略放送じゃないか。こういうお尋ねなら私にも判断ができます。しかし、VAOは謀略放送じゃないかと、かようなお話だけならどうも私もお答えができません。またこれはその他の国からこういう謀略放送が沖繩にあっては困ると、かような話も私ども承っておりません。
  428. 森勝治

    ○森勝治君 VOAの海外施設の設置に関する米国とわが国以外の各国との協定においては、協定そのものの中に、米国は所在国の利益を害するような番組を放送しないようあらゆる努力を払うという一項が明文化されております。これは御承知のとおりであります。したがって、このような協定の前例に徴しましても、わが国の利益を害しない番組であることや、いまも説明のあった番組の歯どめ措置等については、当然第七項によって細目を取りきめすべきが妥当だと思うのでありますが、これは外務大臣、郵政大臣双方からこの点についてお答えをいただきたい。
  429. 廣瀬正雄

    国務大臣(廣瀬正雄君) 細目のことについて、この細目を活用して何か歯どめの規程を設けてはどうかという御意見であるかと思いますけれども、そういうような大きな問題については、もうすでに交換公文の本文に書いてありますわけでございまして、細目というのは周波数の承認の手続でありますとかというような手続的な規程をこれによって設けるということに私どもは解釈いたしておりますわけでございます。そこで歯どめについてはどうかということになりますわけでございますけれども、これは番組の内容について先刻来お話が出ておりますように、日本政府の見解を表明することができる、しかも、これをアメリカが尊重するということになっておりますわけでございますから、親善、信頼感の上に立っておりますアメリカ日本のことでありますし、もし日本政府がこのVOAの放送について国際親善を害するとか、あるいは日本の国益に反するとかというようなことがございましたならば、外交ルートを通じて誠意をもって熱心にアメリカのVOAの注意を喚起する。このことによって私は十分歯どめができるものだ、このように考えておりますわけでございます。
  430. 森勝治

    ○森勝治君 ただいまのお答えはこういうことですね、推しはかって恐縮でありますが、アメリカの善意に期待する以外ない、こういうことですね。
  431. 廣瀬正雄

    国務大臣(廣瀬正雄君) その意味はよくわかりませんけれども、私の申しましたのは、日米間そういうような状態でございますし、それに日本政府が誠意をもって交渉すれば、十分考えてもらえる、日本の見解というものは尊重しなければならないというように交換公文に書いてありますから、それで足りるというように考えておりますわけでございます。
  432. 森勝治

    ○森勝治君 琉球政府復帰措置に関する建白書の中でVOAは一千キロワットという超大電力を使用しているために、その周辺地域の住民はテレビ、ラジオ等の聴取が困難で、いわゆる聴取妨害を受けているばかりでなく、有線電気通信設備にも誘導障害を発生させたり、電話の設置にも支障をきたしていると訴えております。さらにまた、VOAは中波一、短波五十二、超短波十七、計七十波という膨大な電波を占有しているために電波障害や電波権益擁護という面からも問題があるとつぶさに指摘をしております。そこで、VOAによる電波障害の実情とその対策はどのように講じられてきたか、この点、外務大臣と郵政大臣にお伺いをしておきたい。
  433. 廣瀬正雄

    国務大臣(廣瀬正雄君) ただいま御指摘のことについては、琉球政府から提出されております建議書の中に書いてございますわけでございますが、まずこの電波の数から申しますと、VOAの使っております電波は中波が一つでございます。短波が八つ、それに連絡用——これは送信所と受信所の間を連絡するのがおもでございますが、これが十四ありますわけでございまして、したがって全部で二十三波ということになっております。琉球政府が申しております五十とか七十とかいう数は当たらないわけでございます。  それから、ただいまお話しのVOAの公害と申しますか、被害と申しますか、御承知のように、千キロワットの電力を使っておりますわけでございますから、近傍に電話がよく聞こえない、あるいは放送がよく見えないというような事実がございまして、それでこれはVOAと折衝をいたしまして、電力線あるいは電話線を地下に埋没いたしましたり、あるいは放送の共同視聴設備をつくりましたり、また今帰仁と申しますか、あそこにテレビジョンの中継所をつくったりいたしまして、そういう問題は一応解消いたしましてなくなっておるのでございます。将来またそういうようなことが起こるということになりますれば、混信その他のことで電波の妨害につきましては交換公文に、そういう事実があれば直ちにそれをなくする措置を講じなくちゃならない、必要な措置を講じなくちゃならないということがはっきり明記いたしておりますし、その他一般的な被害につきましては、VOA当局あるいはまたVOAにつとめております職員に対する請求、そういうものに対しましてはこれまた公正に迅速に解消することに努力していかなければならないというように交換公文にはっきり書いてありますわけでございますから、私は将来問題ないと、かように考えておりますわけでございます。
  434. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま郵政大臣がるる申し上げたとおりであります。
  435. 森勝治

    ○森勝治君 外務大臣も郵政大臣も問題はないというお答えと承りました。  そこで、私は総務長官にお伺いをしたいんでありますが、どうぞたばこをお吸いになって聞いてください。VOAの電波障害は非常に大きいのであります。たとえばテレビが火をふいた、やけどをした、牛が物干し用のコードに触れてひっくり返る、こういう事件が発生をし、民主団体や琉球立法院、琉球政府もこれを放置できないとして現地調査を行なっているはずでありますが、山中長官、その調査結果はどうなっておられるか、お伺いをしたい。
  436. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 大体郵政大臣が答えられたような措置を一応VOA自体も含めていたしておるようでありますが、ただラジオについて大体もともと難聴地域ではあるようであります。しかしながら、ラジオについての措置がいまだとられていない。その点は今後郵政当局を中心に現地側とよく実情について相談をいたしながら、ラジオについても電波障害のないような措置を講ずる必要があろうと考えております。
  437. 森勝治

    ○森勝治君 どうも政府では沖繩の現状というものを適切に把握していないもようであります。私は時間がございませんから、この問題について具体的なものについてのことあげすることができません、残念ながら。しかし、端的に申し上げましたように、たとえばコードに触れた牛だとか、テレビが火をふいたとか、そういうことで一、二を申し上げましたが、こういうことが数限りなくあるのであります。これは大臣は十分もう御承知のはずであります。所管の長として郵政大臣は御承知のとおりであります。まあ時間がありませんから、前に進みたいと思うのでありますが……。  こういうもろもろの問題がありましたが、これはいままでの沖繩の置かれた地位などから見ても、ある程度やむを得なかったことかもしらぬ。こう百歩譲って考えてみましても、しかし、返還後に一体これらの問題のみならず、こういうVOAの継続は反対だと多くの人は念願しているけれども政府が無理にこれを継続をさせるならば、取りきめ等第四項、第五項等によって、テレビラジオの受信障害に限らず、VOA施設の活動によって生ずる人畜の損傷や、物件の損害に対しても、政府は責任を持って施設者たる米国政府に完全な障害の排除ないし損害の賠償措置を講じさせるのがこれはもう当然のことでありますが、この点はいま私が申し上げたような内容で、アメリカがその措置をとる責任を持つ、こういうことで確約されたものと理解してよいかどうかお伺いしたい、郵政大臣に。
  438. 廣瀬正雄

    国務大臣(廣瀬正雄君) ごもっともな御意見だと思います。そのとおりでなくちゃならないと思っております。
  439. 森勝治

    ○森勝治君 郵政省から当院の逓信委員会に提出されました資料によりますと、六月一日のVOA放送の使用電波は中波一、短波八となっております。したがって、季節的な変動等を加味しても、この程度ならばたいした数ではないとこう考えておりましたが、琉球政府の建白書等を見ますと、五十三波、運絡用を含めると七十波、それもわが国で一番逼迫しているという短波が五十二波であるというふうに指摘されておりますが、郵政大臣、この数字は間違いありませんか。
  440. 廣瀬正雄

    国務大臣(廣瀬正雄君) これはただいま申しましたように、中波が一波、短波が八波、連絡用が十四波ということになっております。間違いございません。
  441. 森勝治

    ○森勝治君 いま大臣の言われたのは表向きでありますね。琉球政府は、現地でつぶさに指摘しているわけですから、現実は私がことあげしたような内容ですね。
  442. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。中波の一波とそれから先ほど大臣が申された連絡用の十四波はそのままでございますが、短波の人波というものは、これは御存じのように、季節によりまして、あるいは昼と夜によりまして、電波の伝わり方の相違によりまして、適当な周波数をきめなければならないということで、返還協定時には八波ということであったわけでございますが、その以前におきまして、それ以外の周波数もいろいろ使っている。そういったものの合計が五十数波ということになっておるわけでございます。
  443. 森勝治

    ○森勝治君 NHKはほとんど全世界を対象として海外放送を行なっておるわけでありますが、このNHKの割り当て電波はどのくらいの数字ですか。
  444. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。NHKは現在十八方向二十三カ国語でやっておりまして、先ほどVOAの五十波に対応します数字としましては八十数波、そういうふうになっておるわけでございます。
  445. 森勝治

    ○森勝治君 VOAオキナワの放送対象地域というものは中国、朝鮮、ソ連の一部、しかも、その重点はお隣の中国です。その使用電波数が五十三波、電力は十五キロワットから一千キロワットという超大電力であります。世界的規模で行なわれておりますNHKが三十三波でありますから、いかにVOAがぜいたくな電波の使い方をしているかということが、これをもってしてもおわかりだろうと思うのであります。  ところで協定第八条に基づく取りきめ第二項第四号によりますならば周波数、空中線電力などの基本的特性に関する事項については政府が現在の特性を基礎として承認する。その後の変更についても承認を要すると、こういうふうに協約しておりますが、この「現在の特性を基礎として承認する。」とはいかなる意味なのか。すなわち、占有している五十三波なのか、それとも現在の使用波数なのか。ひとつこれは郵政大臣でも外務大臣、どちらでもけっこうですがお答えいただきたい。
  446. 廣瀬正雄

    国務大臣(廣瀬正雄君) ちょっと専門的になりますから電波監理局長からお答えいたさせます。
  447. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。「現在の特性を基礎として承認する。」ということは、VOAが使用しております周波数のほかに電力、運用時間帯あるいは対象地域といったような諸特性につきまして、署名時における状態を基礎として必要な調整を加えて承認すると、そういうことでございまして、先ほど申し上げましたように、この短波の周波数はだんだんと変化しなきゃならないということがあるものですから、そういったものも含めまして、必要な調整を加えて承認すると、そういうことでございます。
  448. 森勝治

    ○森勝治君 米国が沖繩におきまして行使していました国際的な電波の割り当て権というか、周波数の管理権というか、電気通信条約上の主管庁としての権限は復帰と同時に日本側に引き継がれるのが当然であります。沖繩では、米軍の電波需要が多いために周波数事情は本土よりもかなり悪いと聞いております。しかるに、このような形でVOA施設の継続を認めるということは沖繩県民がVOAの電波障害に苦しめられているばかりか、今後の沖繩における電波利用に重大な障害になることは火を見るよりも明らかでありまして、ここでも琉球政府本土政府のこの電波権益についての無配慮ぶりを嘆いているわけでございます。したがって、私は佐藤総理に率直にお伺いするのでありますが、VOAに関する琉球政府の建白書をごらんになりましてあなたはどう感じられましたか、お答えをいただきた。
  449. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあいろいろ事実を報道されている面もあるし、また必ずしも事実そのものでもないと、かように私は相当懸隔があるように見ております。
  450. 森勝治

    ○森勝治君 この建白書によりますならば、この協定は、VOA一つをとってみましても、米国の要求をまるのみにした片務的なものであるばかりか、VOA存置に関する諸外国の協定と比較をいたしましても、いかに国益を無視したいわゆる対米従属の協定であるかがうかがい知れるとして協定のやり直しを主張しているのではありませんか。佐藤総理福田外務大臣の話を聞いておりますと、「星影のワルツ」という歌の文句ではございませんが、「仕方がないんだ」「仕方がないんだ」と、そのことばかり言って逃げておられるのであります。アメリカの声は届きましても沖繩の声は聞こえないふりをしているような気がして私はならぬのであります、失敬でありますが。いまのもろもろのお答え、私はもっともっと質問をしたいのでありますが、時間がありませんから私ははしょったわけでございますが、この沖繩政府の建白書を見てもわかりますように、現地の政府や住民はこのVOAの問題でたいへん困っているわけであります。したがって、そういうことで問題がない、問題がないというふうに、この問題をすりかえられるのはまことに沖繩の皆さんにとっては不幸なことと申さざるを得ないのであります。  そこで、最後に二点質問したいと思うんでありますが、米国広報庁はVOAの海外施設を活用して、無線テレタイプによる米国の海外出先機関や、軍部に情報を提供していることも周知の事実であります。わが国は、外交関係に関するウイーン条約で、通信の自由を保障している外交施設団の使用する無線局でさえも、周波数事情や相互主義を貫きたいという立場から、その国内的実施を渋っておるのが現状であります。しかるに、何らの代償も求めることなく、このVOA中継局の運営の継続に同意するとしているのは、こういう点から見ましても不平等もはなはだしいもの、私はこう断ぜざるを得ないのであります。これでは全く対米従属的な協定であると言わざるを得ません。重ねて佐藤総理の見解をいただきたい。
  451. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 対米従属ではございません。これは、対等な立場で返還協定その他の法案を整備しております。どうも遺憾ながら森君と所見を異にしております。
  452. 森勝治

    ○森勝治君 対等とおっしゃいますけれども、あなた方は当初の交渉では、非常に強気でおりました。それが途中で急転をしたわけでありますから、全く押されっ放しですから、対等という総理のお答えを私どもは容認するわけにはまいりません。時間がありませんから最後の問題にいたします。  米国広報庁はばく大な費用を投じ、十カ国十二カ所にVOAの海外放送所を設けまして、延べ数百波に及ぶ電波を占有使用しておりまして、連日連夜謀略まがいの反共宣伝を行なっていることは御承知のとおりであります。先ほど私が指摘をいたしましたように、米国上院外交委員会のフルブライト委員長でさえ指摘しておりますように、国際情勢は大きな変化を遂げております。したがいまして、対中関係の改善に重大な支障を及ぼすVOAを、米国に盲従してわが領域に存置させる必要はどこにありましょうか。それこそ頭越しの米中交渉、繊維問題以上の煮え湯を飲ませられる結果になるのが関の山ではないかと思うのであります。VOAは即刻アメリカに持ち帰ってもらわなきゃなりません。米国が全人類の共有財産とも言うべき電波を、米国の意のままにしている体制を打破すると同時に、VOAの電波を開放させ、そうして、国際親善に役立たせるような活用方策を推進すべきではないかと思います。この点恐縮でありますが、総理に重ねて所見をいただきたい。  さらに、私はもっともっと質問をしたいところでありますが、残念ながらその時間がもう切れたようであります。しかし、まだまだ質問がありますから、慎重審議のたてまえからいたしましても、この私の残った分はひとつ後日また発言の機会を与えていただきますようにお願いを申し上げて、私の最後の質問といたします。
  453. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも森君と私の間にはずいぶん開きがあるようであります。ただいまVOAは謀略まがいだと、こういう表現をされました。どういうわけで謀略放送だかおっしゃらないのですが、まがいというのはどうも聞き捨てならない、どうも確信のないような表現ですが、どうもこの点では私は納得ができない。私は、先ほど来政府が説明しておる、そのほうが私のほうはよほどはっきりしている。かように考えますので、この点ではどうも所見を同じくいたしません。
  454. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 本日の質疑は、この程度にとどめます。  次回の委員会は、明後二十日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時五十九分散会