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衆議院議員(細谷
治嘉君) ただいま
議題となりました、日本社会党、公明党、民社党、三党共同
提案にかかる
沖繩平和開発基本法案の
提案理由と、その要旨を御
説明申し上げます。
沖繩が
本土より分離せられ、アメリカの軍事優先支配に組み込まれて以来、すでに二十五年余の年月が経過しております。過ぐる太平洋戦争により、
本土の防波堤として、約二十万人にものぼる民間人の犠牲と国土の荒廃を余儀なくされた
沖繩とその
県民にとって、その傷のいえぬまま、二十五年余の長きにわたってアメリカの異民族支配に放置せられたことは、何としても納得のいかぬことであります。しかも、この間、朝鮮戦争を契機として、アメリカ軍によって
沖繩の戦略的機能は太平洋のキーストーンとして、著しく強化されてきました。
この結果、面積わずか二千三百八十八平方キロメートルしかない
沖繩で、その一二・五%もの広大な
土地が軍事基地として占有され、人口が一番密集している
沖繩本島では二二%以上となっており、いかに軍事基地の占める割合が高いかがわかります。しかも、これらの基地は、
沖繩全島の平たん部を占有しており、経済的に開発可能な
地域はすべてアメリカ軍が握っていると言っても過言ではありません。
こうして、開発可能な
土地をアメリカ軍の手によって奪われ、
生活の基盤を失った
県民は、好むと好まざるとに
関係なく、生きるために、年とともに巨大化するアメリカ軍基地に基地
労働者となって働かねばなりませんでした。基幹部門たる第一次、第二次
産業の停滞と、第三次
産業の異常な発展は、すべて巨大なアメリカ軍基地の存在によるものであり、これが基地依存経済と言われる
沖繩経済の根源であります。
しかも、この基地依存経済のもとで暮らす
沖繩百万同胞の
生活はきわめて不安定であるとともに、
本土における
国民所得の七割にも満たぬ所得水準は、必然的に、
福祉、
医療、社会保障等、
県民生活のあらゆる部面においても低水準の状態を余儀なくされております。こうした
沖繩県民の
生活を向上させ、基地依存経済からの脱却による平和経済への転換は、日本
政府と
本土国民に課された
義務であります。そのためには、アメリカの軍事基地の全面撤去がはかられなければなりません。
政府が去る六月に調印した
沖繩返還協定によるアメリカ軍基地の全面的存続のもとでは
沖繩経済の平和的発展は全く不可能であります。
沖繩を戦争の恐怖とアメリカの軍事的重圧から解放するばかりか、さらに
沖繩の平和的開発を推進し、
沖繩百万県民の
生活を物心両面にわたって豊かなものとすることは、
国民総生産第二位を誇る日本経済にとっては可能なことであります。
したがいまして、ここに
提案しました
沖繩平和開発基本法案は、
沖繩の経済、社会を平和的に開発するため、開発の
目的、主体、
手続、開発
計画の
内容及び開発行政機構の基本を定め、もって国の責任を明らかにしたものであります。
次に、その
内容の概略について御
説明申し上げます。
まず、第一章におきまして、
沖繩を戦争の恐怖と他国の軍事的重圧から解放し、進んで日本の
沖繩として平和開発をはかるため、軍事基地の全面的撤去がその基本であることを明らかにいたしております。
さらに、
沖繩の平和開発は、
本土との格差をすみやかに解消するばかでなく、同時に、東南アジア諸国の平和開発に寄与することを基本方針としております。そして、
政府は、
沖繩の
自治権を
地方自治の本旨に沿って尊重しつつ、必要な法制上、財政上及び金融上の
措置を講ずべきことを明らかにいたしております。
第二章におきましては、
沖繩総合開発
計画の
内容と、その策定、
手続を明らかにいたしております。すなわち、
沖繩総合開発
計画は、アメリカ軍基地のあと地その他の
土地の平和利用に関する事項、
産業基盤
整備に関する事項、生産
条件が
沖繩に適する農畜産物の
振興・流通機構の
整備及び価格安定に関する事項、林業の
振興と利用に関する事項、遠洋漁業及び沿岸漁業の育成に関する事項、製造加工業の育成及び輸出増進に関する事項、
中小企業の共同化、
近代化に関する事項、観光資源の開発及び旅行
関係施設の
整備に関する事項、社会
福祉、
医療施設の
整備及び医師、
看護婦の確保に関する事項、
生活基盤
整備に関する事項、僻地を含む
学校教育
施設の
整備及び社会教育
施設整備に関する事項、離職者の技術再教育及び
職業紹介の推進に関する事項、公害防止と環境保全に関する事項、その他
沖繩の開発に関し必要な事項を定めることとし、長期
計画及び年度
計画とすることを明らかにしております。そして、この
沖繩総合開発
計画は、
沖繩の
離島の開発について十分考慮を払うと同時に、東南アジア諸国との経済的、文化的交流に特に
配慮すべきことをうたっております。次に、
沖繩総合開発
計画策定の
手続につきましては、
沖繩県は、
関係市町村の意見を聞いて
沖繩総合開発
計画案を作成し、
政府は、
沖繩県の
計画案に基づき、
沖繩開発
審議会の議を経るとともに、国会の
承認を受けなければならないこととしております。また、国は、
沖繩において、
沖繩の
自治権の確保と東南アジア諸国との交流をはかるため、水道
事業、電力
事業を県営化するための必要な
措置及び亜熱帯農業調査研究
機関の設立に必要な
措置を講ずることといたしております。
第三章におきましては、
沖繩の平和開発を推進するために必要な
行政機関の
設置について明らかにしております。すなわち、
沖繩の平和開発に関する
施策を総合的かつ積極的に推進するため
計画の調整
機関としての
沖繩開発庁と、その付属
機関として
委員三十三名以内からなる
沖繩開発
審議会の
設置をするとともに、
沖繩の平和開発に必要な資金を調達融資するため、
沖繩開発金融公庫を
設置することを
規定いたしております。
なお、念のため申し上げますと、本
法案に基づいて、
沖繩県及び市町村の財政力を充実強化し、戦後の格差解消と行政水準の向上をはかるため、
各種補助率の大幅引き上げ、
地方交付税の強化、
特例交付金の支出等を
内容とする
復帰に伴う
沖繩の財政
特例法案、及び、
計画の調整推進と
事業執行の
沖繩県への委任を
内容とする
沖繩開発庁
設置法案、及び、
沖繩にある琉球開発金融公社、大衆金融公庫及び
琉球政府の
各種特別会計を一本化し、それに
政府資金の出資による
沖繩開発金融公庫を設立し、その監理、運営について
沖繩県の意思を反映させる等を
内容といたします
沖繩開発金融公庫
法案の三
法案を
提案する予定でございます。
以上が本
法律案を
提案する
理由並びにその要旨であります。
何とぞ慎重御
審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。