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1971-12-28 第67回国会 参議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十二月二十八日(火曜日)    午前十一時八分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         長谷川 仁君     理 事                 鬼丸 勝之君                 楠  正俊君                 剱木 亨弘君                 丸茂 重貞君                 松井  誠君                 森中 守義君                 矢追 秀彦君                 高山 恒雄君                 岩間 正男君     委 員                 稲嶺 一郎君                 今泉 正二君                 長田 裕二君                 梶木 又三君                 片山 正英君                 亀井 善彰君                 古賀雷四郎君                 柴立 芳文君                 鈴木 省吾君                 園田 清充君                 竹内 藤男君                 西村 尚治君                 初村瀧一郎君                 宮崎 正雄君                 山内 一郎君                 若林 正武君                 占部 秀男君                 大橋 和孝君                 川村 清一君                 田中寿美子君                 田中  一君                 宮之原貞光君                 村田 秀三君                 森  勝治君                 上林繁次郎君                 黒柳  明君                 原田  立君                 栗林 卓司君                 渡辺  武君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  前尾繁三郎君        外 務 大 臣  福田 赳夫君        大 蔵 大 臣  水田三喜男君        文 部 大 臣  高見 三郎君        厚 生 大 臣  斎藤  昇君        通商産業大臣   田中 角榮君        郵 政 大 臣  廣瀬 正雄君        労 働 大 臣  原 健三郎君        自 治 大 臣  渡海元三郎君        国 務 大 臣  江崎 真澄君        国 務 大 臣  大石 武一君        国 務 大 臣  木村 俊夫君        国 務 大 臣  中村 寅太君        国 務 大 臣  山中 貞則君    事務局側        常任委員会専門        員        相原 桂次君        常任委員会専門        員        鈴木  武君        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君    説明員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣法制局第二        部長       林  信一君        警察庁刑事局長  高松 敬治君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        防衛庁装備局長  黒部  穰君        防衛施設庁長官  島田  豊君        法務省民事局長  川島 一郎君        法務省刑事局長  辻 辰三郎君        法務省人権擁護        局長       影山  勇君        外務省アメリカ        局長       吉野 文六君        外務省条約局長  井川 克一君        大蔵省理財局次        長        小幡 琢也君        林野庁長官    松本 守雄君        水産庁長官    太田 康二君        日本専売公社総        裁        北島 武雄君     —————————————   本日の会議に付した案件沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案(内  閣提出衆議院送付) ○沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○沖繩振興開発特別措置法案内閣提出衆議院  送付) ○沖繩における公用地等暫定使用に関する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○国家公務員法第十三条第五項および地方自治法  第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院の  地方事務所設置に関し承認を求めるの件(内  閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ただいまから沖繩及び北方問題に関する特別委員会開会いたします。  沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律案沖繩振興開発特別措置法案沖繩における公用地等暫定使用に関する法律案国家公務員法第十三条第五項および地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院地方事務所設置に関し承認を求めるの件以上の各案件を一括して議題といたします。  前回に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。村田秀三君。
  3. 村田秀三

    村田秀三君 総理に初めにお伺いをいたしたいと思うのでありますが、実は私は、主としては農業問題、そしてまた漁業補償の問題についてお伺いいたしたいと思っております。  それらの本論に入る前に、ここ二、三日の経過の中から私が感じましたことを素朴に——まあ私は東北でありますから、まことに朴訥であります——沖繩の人の気持ちになって素朴に総理に話しかけて、そうして、まわりに多く人がいるなどということを気にしないで、ほんとうのとこうどうなんだろうという、そういうことをちょっと聞いてみたいと思ったわけであります。そのことは、別に前もって質疑の通告をしておいたわけじゃございません。ただ、総理個人の問題でありますから、そういう意味で質問することをお許しいただきたいと思うのでありますが、まあ、新聞を見ますると、総理は、関係法案会期内議了継続審査というのは困る、こういうことをおっしゃられたと新聞に出ております。一月にアメリカに渡られるわけでありますが、復帰時点というのはまだ確定はいたしておりません。来年の中ごろであろうと、中ごろというのは六月であろうとか、いろいろ言われてはおりますけれども継続審査ということになりますると、私どもは、いままで主張してまいりましたものは、これは慎重審議、そして国民、とりわけ沖繩人々疑念を晴らすためにも、その疑念というものが残りなく解明されて、しかる後であるならば、われわれはこれを通すということについての異議を、さらに、はさんでおらないわけであります。もちろん、土地に関する法律案憲法違反の問題である、こういうことでありますから、これはまあ決定的な問題でありましょう。しかしながら、それ以外の問題は、疑念が解明をすれば、それまであくまでも廃案だなどというようなことは、私は言っておらないと思うのです。なかなかその疑念が、幾ら質問しても解明されなかったところに、今日まで延々と続いた大きな理由があるのではないかと思うのでありますが、慎重審議通常国会においてその疑念を一点の曇りもなく晴らしたといたしましても、復帰時点までには、これは通常国会会期は五月の末になるでありましょう、これは間に合うわけであります。なぜこれが継続審査では不満なんでありますか。まあ、一説によりますると、サンクレメンテに行く際のおみやげだなどといううわさが聞かれるわけでありますが、その真意をひとつ聞かしていただきたいと思います。
  4. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御承知のように、沖繩祖国復帰返還交渉、これは、アメリカ側ではもうすでに審議を終えております。私ども、その受け入れ側でこれが審議が未了であるということは、まことに残念だと。ことに、十分の日数をとって臨時国会を開いて、この臨時国会沖繩国会といわれた、その国会で中身についての十分の御理解を得ないとしたら、これはたいへんな問題だと、かように私は思います。したがいまして、今回のような異例な御審議まで皆さん方にもお願いし、私ども政府としては、十二分に説明のできることは説明し、そうして見通しを早く立てること、これが何よりも沖繩県民に対する私ども気持ち、これを率直に伝えるゆえんではないだろうか、かように思うのでございまして、私は、皆さん方がこうして閉会中も審議をなさること、これは、ただいま申し上げますように、閉会中でもこうして御審議をいただくことも、この問題が重要であるからこそ皆さん方も異例なる審議をなすっていらっしゃると、かように思います。私は、そういう意味で、別にサンクレメンテに出かけるみやげだとかなんとかいうものじゃなくて、本来、アメリカ側のほうで審議が終わった、受け入れ側のほうで審議が終わらない、こういうことはまことに残念ではないか、かように思って皆さん方に御無理をお願いしておる、これが私の率直な、また素朴な意味における感じでございます。私は、沖繩の問題についてかような熱意を示しておりますのは、戦中に最後沖繩から本土に発せられた守備司令官のあの電文、これはほんとうに、いまなお思い起こせば、私どもの胸を打つものがあります。私どもは、いままでのような沖繩祖国がほうっておいていいというものでは絶対にない。これはやはり、本土防衛の第一線となって戦った沖繩県民の心を心として、私どもはあたたかく迎える、それが不十分にしろ、その気持ちでわれわれは準備をしなければならない、これが私の胸を打っておる唯一のものでございます。私は説明が不十分でございますが、また説明を十分尽くすことを得ませんけれども、ただいま申し上げるような気持ちで、皆さん方も一致してこの問題に取り組んでいらっしゃるのだと、かように私は理解したいのであります。ただいまも閉会中この審議をやり、次の通常国会にまでつながって、開会劈頭に問題を片づけようとなすっていらっしゃる、これは議長のあっせんもさることながら、各党とも、ただいま申し上げるような気持ち皆さん方も一致して立ち上がられたと、かように私は理解するものでございます。
  5. 村田秀三

    村田秀三君 まあいろいろお伺いをいたしました。で、沖繩が一日も早く復帰をしたい、そうしてわれわれも迎え入れたい、このことは、これは何びとといえども変わりはないと思うのです。がしかし、沖繩出身喜屋武議員が先般申しておられたのでありますが、ただ返ればよろしいというものではない。沖繩の問題に関連して伏在する、あるいは顕在化されているところの多くの問題を解決することが必要なんだということを言っておるわけであります。協定は、これはすでに自然承認ではございませんけれども承認をされた形になってしまったわけでありますが、だとするならば、それに関連する法案というものは、質疑の中で明らかにされないもの、あるいは修正してもよろしいというものは、すなおにそれを受け入れて、そうして次の国会に追加して立法措置を講ずる、あるいは政令を書きかえるということがなければ、これは、われわれが何ほど時間をかけて慎重審議したとしても、それは慎重審議にはならないと思うのですよ。こう実は、私は思うわけでございまして、総理気持ち自身としては、確かにきれいさっぱりしてニクソン大統領と話をしたいという気持ちはあるでありましょうが、しかし国際的な義理もさることながら、国内の世論を統一的方向に持っていくということが私は最も大切だろうと思う。だとするならば、来春アメリカに渡る前に、すべての法案を成立さして行かねばならぬなどということは考えないで、通常国会会期は長うございます、五月の末まであるわけでありますから、必要な立法措置もこの中で講じて、そうして可能最大限措置を講じて、沖繩人々了承をしてもらう。いま四〇%であるとするならば、それを六〇%に近づけるなり、あるいは七〇%に近づけるという方向措置することが、われわれに与えられた義務ではないかと私は思うのでありますが、総理は、この点、どう考えますか。
  6. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 村田君の言われることもわからないではございません。しかし、私は、沖繩国会に提案いたしました諸法案は、最低限度これは必要な法案でございます。また、これから先、沖繩祖国復帰すれば、われわれが足らざるところを補っていく。これは会期もうんとございますから、そういう意味で、これは十分な立法措置も、また皆さん方提案権もわれわれは尊重していかなければならない、かように思いますので、これは政府だけの問題ではない。かように思いますから、次の国会における問題は問題として、私ども最小限度復帰に際して必要な法案、それだけはぜひとも沖繩国会で成立させたい、かような気持ちで御審議を願ってまいったのであります。どうも説明が不十分で、野党の諸君の全部の方々の御了承を得ることができなかった。それで今日のような状態に立ち至ったということは、まことに私残念でございます。  以上のように考えますので、これが全部終わった、沖繩対策はこれで万全だと、かような状態ではございません。
  7. 村田秀三

    村田秀三君 まあ少なくとも来春の渡米にこだわることなく、これは責任を果たすという、そういう考え方の上に立って措置されるよう、強くこの点は要望しておきたいと思います。  それでは本論に入るわけでありますが、漁業補償の問題について、防衛庁、それから外務省、そして外務大臣に少々お伺いしたいと思うのでありますが、この請求権の問題は、衆議院でもそうでございますし、また、本院におきましても相当論議をされました。そして、この請求権に関連をいたしましては、われわれの言わんとすることも、ある程度了としていると私は善意に解釈をしておるわけでありますが、復帰調査をして、そして立法措置が必要であるならば立法措置もするというように受けとめてまいっておるわけでありますが、その点、この立法の問題になりますると防衛庁関係するのかもしれませんが、防衛庁長官にひとつ御答弁をいただきたい。  そうしてまた、これは前回論議されたわけでありますが、どうもこの請求権の問題を防衛庁だけが処理するというのは、これは問題だろうと思うのです。あくまでも、この復帰業務に当たっておりますところの総理府所管、これは防衛庁の場合は軍事基地関係をするもののみであります。アメリカの民政に移行されまして以降の問題とするならば、基地以外の諸問題というものは、これは総理府に所属されるべきものでありますから、の点では、もう明らかに区別して私は考えていただきたいと思う。  まず、防衛庁答弁をいただきたいと思います。
  8. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 御指摘の請求権の問題でありまするが、これはもう、しばしばここで議題になっておりまするように、漁業補償の問題から、人身損害は言うに及ばず、まあいろいろなケースがあるわけでございます。復元補償の問題も御承知のとおりこれは一律に復元補償といいましても千差万別だと考えられます。そこで、事情は琉球政府のほうでも十分つまびらかにしないものも現時点にあるわけでございます、現時点においても。そこで、やはり施政権が戻ってまいりましてから、しさいに調査をしまして、そしてそれぞれに見合う対策を立てていく。そこで立法措置が必要であるということになれば、これはその時点でまた立法措置を御審議願うということになるわけですが、この千差万別をきめこまかにいこうとしますと、勢い、そういうことにならざるを得ないと思うわけであります。どうしても、施政権が現在ありませんので、調査が行き届きません。この点はぜひ御了承を賜わりたいのであります。  それから第二点として、防衛庁のいわゆる施設庁だけがこの補償問題等々に前面に出るのはどうであろうか。これについては、前回のこの審議の場で総理大臣からも、あるいはどなたでしたかに、それは考慮の余地があるように思うと、こういう御発言もあったわけであります。したがいまして、内地でも、まあ比較的施設庁がそういう補償問題等々は従来の経緯から見まして、なれておりまするので、まあ何といってもこの補償問題というのは千差万別、いろいろあるわけですから、なるべくなれた者が扱うことが、特に本土並みに事を処理していこうという場合には、比較対照するのにも便利なわけでありまして、施設庁が望ましいと思うわけですが、御趣旨の点は確かに一理あるわけでありまして、総理もこれについては耳を傾け、将来の問題として考えていこう、こういう御答弁でもあったわけであります。したがいまして、同じ政府部内でありますし、特に沖繩復帰問題に最初から取り組んでこられた総理府総務長官のもとで、いろいろ防衛庁とが緊密に打ち合わせをしながら協力体制に立つということは、これはまことに望ましい、好ましいことだと思いまするので、そういう方向で御趣旨に沿う努力をしてまいりたいと思います。
  9. 村田秀三

    村田秀三君 答弁を聞いておりまして、なぜ不満なのかということなんですが、率直に申し上げまして、そう答えざるを得ないのかなとも思いますが、それをどうしても承知できないのだ、まだ不安が残るのだということは、いろいろな形があるが、その形一つ一つどうなんだろうという、政府はいまはそう言いのがれをしておるけれども、結果的には、調査したけれどもこれはむずかしいから、だめでございますということで逃げられるのだろうという、そういう疑念が残っているからですよ、これは。だから、回りくどい言い回し方を必要といたしません。私は、冒頭申し上げましたように、通常国会で必要な立法措置はすべきである、こういうことを申し上げたわけでありますが、この請求権の問題で、調査してみなけりゃわからないなどというものではない。明らかなんですよ、現実の問題としては、だから、なるほどいろいろ問題があるから、これは今度の国会立法化しますよということをはっきり言えば、これは沖繩方々了承できると思うのです。その点はいかがですか。
  10. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 御趣旨の点はよくわかります。そこで、われわれとしましても、これは事こまかに調査するわけですから、その上で立法措置が必要なものはしますし、また、立法措置を要しないで処置できるものも数々あると思うのです。それからまた、アメリカ責任を持って処理していく問題、これなども不当なものがあれば、施政権がこちらに戻るわけですから、こちらが助言をして、これじゃちと不当じゃないかというようなことも施設庁派遣職員米側に言うという場面もありましょうし、これはひとつ調査の上の処置ということで御了解を賜わりたいのですが、もちろん、立法が必要だというときには、すみやかに立法をいたしまして、御審議に供したいと思っておりまするので、どうぞひとつこれは御理解を願いとうございます。
  11. 村田秀三

    村田秀三君 そうしますと、これは人がかわりましてなぞということに、あとでなったのでは困るわけでありますが、総理がかわりましたからこれは責任持ちませんということになったのでは実は困るわけであります。しかし、それを前提といたしましてお伺いするわけでありますが、かりに協定四条二項以降の問題、これは日本には関係ないとおっしゃられるかもしれません。これは当然アメリカ側責任があるのですよと、こういう問題もあろうと思うのであります。そして、ずっといままでの論議経過を見てまいりますると、これは、国は請求権を放棄はしたけれども、しかし個人請求権は残るのだ、権利として残っておるのだということは、論議の過程で確認されておると思いますね。そのことをひとつお答えをいただいて、再確認をしたいと思いますし、同時にまた、つまり四条二項の問題でアメリカが処理すべき事項であると協定上はうたってあるけれども、いま防衛庁長官最後におっしゃられました、つまり、アメリカの手続や結論というものが不当なものである、日本の常識、法令の中で考えてみて不当なものであると理解した場合には、それをアメリカに対して、これは不当であろう、不正であろうという外交保護義務を果たされるのかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  12. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 協定第四条第二項においてアメリカが受け持つと、こういう部面があるわけであります。これに該当するものにつきましては、もうすでにアメリカ提訴しておるものもあります。たとえば、先ほどお話がありました漁業権、これのごときは、十七件ですね、土地裁判所に対して提訴をしております。しかし、その中で読谷村というのがありまして、その漁業組合提訴、これは拒否されまして、いま米国政府に対して上訴中であると、こういう状態であります。いまこの問題は、とにかく仕分けをいたしまして、アメリカ側が受け持つもの、しからざるものは日本政府が処理するもの、そういうふうになっております。そこで、アメリカ側が拒否したと、これには拒否するいろいろ理由があろうと思いますが、その拒否した理由等もまあ参考にしなきゃならぬ。しかし、また同時に、わが国本土において扱っておる状態、こういうものもよく考えなきゃならぬ、そういうことを考えまして、その拒否が最終的に行なわれたと、こういう際には考えなきゃならぬと、こういうふうに考えています。しかし、お尋ねのその間の状態におきましては、わが国といたしましては当然外交保護権というものがあるわけですから、十分その保護権というものを行使していきたいと、こういうふうに考えております。
  13. 村田秀三

    村田秀三君 それは十分にひとつやっていただきたいと思います。少なくとも現地では、アメリ方がだめだったら日本が何とかしてくれないかという気持ちはあるようであります、率直に言いまして。しかしながら、第一義的にはこれはアメリカの問題であるということも、また現地の人は考えておる。この請求権の行使、これはもう、沖繩人々は、復帰運動というものは権利を確立するところから実は始まっていると私は考えておるわけです。だから、沖繩県民権利であるからアメリカ、何とかせいと、こういう主張の中から復帰運動が起こってきておると、こう私は見ておるわけでありますが、そこで、私は、内容的に沖繩人たちが請求していること、そのことが妥当なものかどうかということについて、政府の判断をこれから聞いてまいりたいと思います。  いま外務大臣がおっしゃられました読谷の問題、漁業補償の問題は、これは十数件出ておりますが、扱われておりますのは読谷漁協組の問題だけでありますね。その読谷漁協組請求事件の内容を、把握している限り、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  14. 井川克一

    説明員井川克一君) 十七件の訴願一つでございますが、読谷漁業協同組合漁業補償請求訴願は、旧漁業権が一九四七年一月三十一日期間満了により消滅した後、その再付与が得られなかったこと及び琉球漁業法施行後も従前の水域米軍の射爆演習水域となっていたため、同水域については漁業権が付与されなかったことの両点を理由として、一九六六年二月に琉球列島米国土地裁判所に係属されたものでございます。そしてその額は当初要求額が五十五万五千二十四ドル二十一セント、それから年間損失額が四万二千六百七十四ドル十七セント。それを足しますと——その後の請求額は、年間でございまするから六五年から七二年四月二十七日までで二十九万 八千八百五十九ドル十九セントでございます。その結果も申しますか。
  15. 村田秀三

    村田秀三君 はい。
  16. 井川克一

    説明員井川克一君) それが、土地裁判所はこの十七件のうち読谷にだけ裁決を下しまして、昨年の十二月の十四日付の裁決で旧漁業権期間満了に伴う再付与が行なわれ得なかったことにつき米国に法的責任はなく、かりにあったとしても平和条約十九条により請求権は放棄されており、また、問題の水域が一九四七年以降の時期においては非漁業目的に使用されていたので、琉球政府漁業権を付与する権限を有せず、したがって漁業権の侵害もなかったとして、本件訴願を却下いたしました。そこで、読谷漁業協同組合は、右裁決を不満とし、琉球列島米国土地裁判所訴訟手続規則第四十二条の規定に従い、本年一月十三日付で本件を米国国防長官に対して上訴いたしております。
  17. 村田秀三

    村田秀三君 まさにいま把握されている、おっしゃられたのは、まあ承知はしておるでしょうが、まさに概略ですね。それで、その土地裁判所が決定した判決文といいますか、私、それを見ていろいろと考えてみたわけでありまして、その中で非常に疑問に思いましたのが、主としては漁業権の存在の問題であります。いまも話しになりましたけれども、これをもう少し詳しく申し上げますると、この読谷漁協は、戦前日本漁業法の適用を受けて漁業権を持っておったわけですね。そしてアメリカが占領をいたしまして、ニミッツ布告を出した。一応日本の行政権、施政権というのは切断したけれども、しかし漁業権の問題として米軍はニミッツ布告の中で本土法の継続適用というものも認めておるわけです。だから、判決の中では二十二年の一月三十一日まで漁業権の存在というものを認めておる。講和前補償がまああとで行なわれるわけでありますけれども、その講和前補償の中に読谷漁協の補償もなされて実はおるようであります。認めておったからこそ補償したのじゃなかろうかと、私は実は推測をしておる。そこで、この判決文を見ますと、まあ日本本土法は昭和二十四年に新しい法律が、新漁業法が制定をされておるわけでありますが、もしもニミッツ布告の精神からするならば、本土法の漁業の問題については、継続適用を認めるとするならば、本来、日本政府漁業権の設定について申請しなければならないわけでありますね。当然してもよろしいはずなんであります。ところが、施政権が切断されているとして、その措置は当然とるべくもないわけであります。それからずっと経過いたしまして、講和発効後、昭和二十七年に、これは十月でありますけれども琉球政府は新漁業法を制定をしておる。そしてその漁業権の設定について申請をいたしましても、これは演習区域に指定をされておるわけでありますから、制限海域でありますから、制限海域には漁業権の設定はできないということで、これは当然許可をしておらないわけであります、琉球政府自身も。こういう経過が実はあるわけでありまして、本来あり得べき漁業権施政権の切断という問題から存在をしなくなった。琉球において新しい漁業法が設定をされたけれども米軍の必要によって海域を制限されておるために、漁業権の設定が現地法令の中ではできなかったという事実があるわけであります。本来、二十二年の二月一日から尋常な手続をとり、そして施政権下にあるとするならば、当然、存在した漁業権——漁業権がないからこれを補償することはできないという、そういう解釈というものがあるんだろうかどうかというのが一つ日本政府の判断としては、施政権が当然継続してあるとするならば、漁業権もあったであろうと判断するのかどうか、この点ひとつお伺いしたいと思います。
  18. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま条約局長から申し上げましたように、米側の主張は、一九四七年から漁業権がないんだと、ないものに対して補償するということはできないと、こういうのが主張のようでございます。しかし、村田さんのいま御指摘のような事情もあったかと、こういうふうに思うんです。ですから、私どもといたしましては、この上訴が一体どういうふうになるか、最終的な結論を見た上でこの問題を考えてみたいと、こういうふうに思っているんです。ただ、いま裁判が係属中でございますものですから、これがどこがいいの悪いのと、こういう批判をすることは、また妥当ではないんではないか。成り行きの結果を見た上で妥当な措置わが国としては考えると、こういうことじゃないかと思います。その妥当の措置一つには、先ほど申し上げました外交保護権の行使ということももちろんありまするけれども、しかし、それで片づかないという場合もあります。そういう際におきましては、わが国自体の立場においてこの問題を考えなきゃならぬと、こういうふうに考えております。
  19. 村田秀三

    村田秀三君 どうも全部こう一つ一つ区切って聞くと理解できるところもあるんですが、おしまいまで全部まとめて聞くと、これはわけがわからなくなってしまうんですね。そういうところに、いままでの審議でも、これはすとんと落ちない不満が残る、そういうものが私はあるんじゃないかと思うんです。このアメリカ土地裁判所の判決というのは、漁業権がないからと、こう言っておるんです。補償の対象にならない、上訴はしておるけれども……。それじゃ上訴してアメリカの国防長官漁業権があったんだという判断を示すことができますか。するはずがないでしょう。問題ははっきりしているんですよ。本来、日本であったならば漁業権は継続してあった。あったとすれば、当然やっぱりアメリカはこれに対して補償すべきである。補償すべきであるから、日本外務省アメリカに対して外交保護権を果たすために、これは漁業権があったんですから補償しなさいとアメリカに言いますよと、はっきりこれを言うことが一つ。そして、それをやったけれども、外交は力関係、いままでの経過から見ても、その主張が通るとは考えられない。考えられないとすれば、日本政府はその漁業権を尊重して、そして、これは見舞いではない、沖繩漁民の大義であるということを明らかに認めた上に立って、補償の額はともかくとしても、幾らになるかというのは今後の問題でありましょうが、補償しますよという態度を明らかに出せば、そうすれば沖繩人々も安心するだろうと思うんです。そこまではっきり言わないからだめなんですよ。はっきり言ってください。
  20. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 非常にはっきり申し上げているつもりですが、外交保護権は、これは行使します。それから外交保護権を行使いたしましても解決しないという際におきましては、わが国において調査の上、適正なる処置を講ずると、こういうことでございます。
  21. 村田秀三

    村田秀三君 それじゃ重ねてお伺いします。そうすると、ここが肝心だと思うのですが、当然漁業権は継続されるべきであったと、したがって、沖繩の人の権利だと、この事例の場合は認めるという、そういうことに理解していいですか。
  22. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そういうことが実際問題として事実であったかどうか、そういうことをよく調べた上、わが国としては適正な措置を講ずると、わが国においても、ただ主張があったからそうすると、こういうふうな考え方でないんです。一々今度は調べまして、これはこういういきさつなんだと、本土ではこういう扱いをしておると、これはこういうふうな扱いをすることが妥当であると、こういう判断に立ちますれば、当然妥当な措置を講ずると、こういう考えでございます。
  23. 村田秀三

    村田秀三君 それじゃ、さらにお伺いいたします。まあしつっこいようですが、ひとつその辺のところを明確にしないと、これは何もならないわけであります。読谷の側を私は申し上げたのですが、これは私の観念からすれば、事実だという認定の上に立って質問をしているわけです。ところが、いま実情をよく調べてということでありますが、実情をよく調べて、読谷の問題があったと、その経過は事実として認定をすると、認定をした上に立って、それじゃ権利と判断をするかどうかです。漁業権があったものだと認めるのかどうか。アメリカ施政権の中にあって空白になったその漁業権というものが、アメリカ軍政なかりせば、民政なかりせば、当然漁業権があったものと認めるのか、認めないのか。権利として認めるのか、そこが私は問題だと思います。だから、それを認めますと、読谷経過がかりに実際にありましたと、でありますから、それじゃそれは事実であるから当然日本責任をあとで負わざるを得ない、こうつながってくるわけでありますから、そこが肝心。そこをぼやかしておるから、だれもが不安を感ずるということなんです。
  24. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ここは裁判所でありませんから、ここで具体的な判決をするわけにいかないんです。しかし、よく事情を調査いたしまして、そうしてこれはアメリカに対する権利があったんだと、しかし、アメリカからこれを拒否されたんだと、こういうような判定に立ちますれば、それ相応の適正な措置を国内において講ずると、こういうことははっきり申し上げます。
  25. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 具体的処理はこちらになるわけですが、これはやはりそういう実情を的確に把握しているわけじゃありませんので、そこでベテランをやりまして的確に把握する。そして、なるほどということになれば、これは当然措置をするという対象にして、やはり相談に乗るという形でいきたいと思っております。
  26. 川村清一

    ○川村清一君 関連。  ただいまの漁業権補償の問題は、これは将来、北方問題のときに大きな問題として出てくる重要な問題でありますので、関連してちょっとお尋ねいたします。  村田委員の質問は、いわゆるアメリカとの問題の中において、いわゆる旧漁業権と、それから施政権がなくなって、アメリカの軍政下においてアメリカの演習やその他によって漁業権が行使されなかった。その二つの問題があるわけです。それで何とか村の、いま裁判にかかっている問題を中心にしてやっておりますが、これは旧漁業権に対する補償というものは、裁判とか何とかに関係なく、これは大きな問題なんです。  そこで、山中農林大臣代理にお尋ねいたしますが、アメリカ沖繩へ入ってくる前に、いわゆる戦争でやられる前の沖繩の中において、いろいろ漁業協同組合があったと思うのです。その漁業協同組合は、それぞれ定置漁業権であるとか、あるいは専用漁業権であるとか、あるいは入り会い漁業権というものを持っておったろうと思うのです。これらについて調査されておるかどうか、それをお尋ねいたします、まず第一点。
  27. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 先ほど村田委員の質疑応答の中でも、また判決の提起のしかた、裁判の提起のしかた、判決の主文の中の柱ですね、私はこれは漁業権ということでやると、やはり問題がやや解決しにくいんじゃないかと思っています。というのは、川村委員の御質問にも関連をもって答弁をするわけですが、やはり漁場を制限されたことによる本来あるべき漁獲に対する損失というものの争いに私は重点を切りかえていったほうがいいんじゃないかと思うんです。ということは、今度は北方領土については十億の交付公債の中の大部を、一応漁業権とは言っておりませんが、本土において行なわれたような漁業権補償というものが北方領土について行なわれなかったことも念頭に置きながら、その大部分を財源として見るということにしておるわけでありますが、今度沖繩についても、返ってまいりますと、沖繩漁業協同組合連合会とよく相談をいたしまして、この漁業権の論争というものはきわめて困難である、そこで、それに漁業権論争の結局は決着として、沖繩で最近つくられました漁業県信連ですね、漁信連に対して十一億五千万、漁業権そのものであるとはいわない、しかし、それらの経緯にかんがみ十一億五千万の基金を国が積みましょうということで話が完全に合意いたしておりますが、これらの経緯を考えますと、やはり漁獲高、いわゆる漁民の制限された水域における漁業収入の減に対する適正なる補償、そういう形に、やはり今後の経過の中で持っていったほうがいいのではないか。権があった、ないという議論をすると、いまのアメリカの一応土地裁判所の判決のようなことで、法律という言い方をすれば全く二者択一の議論ということになってしまいますから、私は、そういう意味で、かりにこの裁判がただいま外務大臣防衛庁長官等から話がありました、結果が沖繩の漁民にとって得るところがないことになった場合は、やはりその間の漁業の漁獲に対する補償という考え方でめんどうを見てあげるべきが至当ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  28. 川村清一

    ○川村清一君 関連でありますからやめますけれども、いずれ私の時間あるいは沖繩北方対策委員会等で詰めてまいりますが、北方に例をとって申し上げます。一九四五年に戦争が終わりまして、四六年の二月に連合軍の最高司令官からいわゆる覚書が出まして、北方領域、すなわち国後、択捉、歯舞、色丹、この地域は施政権が及ばなくなった。いわゆる日本政府施政権が及ばなくなったということで、漁業権というものがそこでもう消滅してしまった、消えてしまった。そして本土におきましては、昭和二十四年に新漁業法が施行せられた。その二十四年に新漁業法が施行せられたときに、本土においては全部、たとえば北海道におきましては、島を言うならば利尻、礼文、天売、焼尻、奥尻——同じように島ですね、これは全部漁業権補償されておる。ところが同じ固有の領土でありながら歯舞、色丹、国後、択捉、この島の漁業協同組合を持つところの漁業権は、いわゆる施政権がなくなったからそこで行政権が及ばない、行政権が及ばないので旧漁業法というものがそこでなくなってしまったんだ、消滅してしまったんだと、だからこの四つの島の漁民に対しては漁業権補償できないんだと。私は、これを数年来委員会で詰めておる。何としてもここはできないんだ、政府の統一見解だ、それならいつできるんだと言ったならば、北方領土がわが国に返ってきたときにおいてあらためて検討すると。いま山中農林大臣代理は十億と言った、あの十億と同じようなふうに考えては——全然問題が違います、あれは。あれはあの北方の島に住んでおった旧島民に対する生活の援護措置のために十億をやったんだ、あの十億を旧漁業権補償に切りかえてあなた方が考えられているような発言をされておりますが、全然あれは質が違うということをまず御認識いただきたい。  そこで、私がいま村田委員の発言に関連して申し上げますことは、あの沖繩においても、アメリカ軍によってもう施政権がなくなったんだ、しかしながら、当時は、日本漁業法というものを認めてきたのです。そうして昭和二十四年から三年後に今度の新漁業法と同じような法律琉球政府によって公布せられたのです。しかしながらアメリカがこれを補償しないとするならば、当然その旧漁業法に基づいて持っておった漁業権というものを、昭和二十四年に立ち返るなり、あるいはその後新漁業法が沖繩琉球政府によって公布せられましたそのときに立ち返って、この漁業権というものを補償しなければ、本土の漁民と全く差のついた措置となってくるわけです。したがって、私は、一体農林省はその占領されない前に沖繩にはどれだけの漁業権があったか、それでその漁業権の行使によって当時どれだけの生産があがっておったか、その生産に基づいて補償されるのですから、そういうものが一つも現在調査されておらないとするならば、これは怠慢である、こう言わざるを得ないと私は思うのです。したがって、北方については、との北方領土が返ってきたときにおいては政府補償すると言っておるのです。これは沖繩が返ってくるのと同じでない。沖繩はもともと施政権があるのです——いや、施政権はいっているけれども日本領土であることは北方とまた性質が違うのです。片方は平和条約第二条、片方は第三条、質が違うのです、初めからもう主権があったわけですから。この時点において、それはどうとかこうとかでなく、完全にその額はどうかわかりませんよ、額はどうかわかりませんが、旧漁業権補償いたします、こうはっきりここで答弁していただかなければ、このことは将来北方の問題に重大な関係が起きてまいりますから、はっきり言ってください。
  29. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) いまの政府の統一見解の中で、北方領土が日本復帰した場合においては漁業権補償を改めてやるのだということに見解が統一されておることについて、私は残念ながら存じておりませんでした。それから十億の中には漁業権補償にかわるものとしてのものは入っていないとおっしゃいますが、これは積算の基礎の中にはそれを念頭に置いたものが入っておるということは、私はそれは事実だと思うのです。  そこで沖繩の今回の十一億五千万についても、沖繩側における漁獲高年次別のいろいろのものをとりまして、それを何年の時点に置きかえてみたりして、いろいろと作業をして沖繩側において最大限に、大体ここらならばと思われる基礎的な数字を詰め合った結果、十一億五千万というものに折り合ったわけでありますから、決してそれは全然われわれが一方的にやったものではない。したがって、年次の漁獲高その他について詳しく説明を要するならば、水産庁長官説明をいたさせます。
  30. 村田秀三

    村田秀三君 午前の部は正午ごろ終わるのだそうでありますが、その前にいまの山中長官が言われたことはちょっと認識が違っているのじゃないかという感じがするので、確かめておきたいのですがね。私がいままで読谷のことで論議を続けてきておるのは、土地裁判所の判決が漁業権のあるなしを言っておるからなんですよ。だから、読谷漁協が請求をしておる問題は、漁業権補償請求じゃなくて、あなたがいまおっしゃられるいわゆる損害補償なんです。魚がとれなかったから補償してくれとこういう要求なんですよね。しかし、アメリカ漁業権がなかったのだから補償する必要はないのだと、こう言っているのですからね。混同して考えられたんじゃちょっと困ると思うのです。この点一つ言っておきます。
  31. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私も混同はいたしておりません。だから琉球政府が与えていないんじゃないかと、漁業権を。そういう論争ではいけないのじゃないか。そういうことでない、漁民の失った損失に対する補償というものでもって争うべきであろう。そうして話がつかなかった。そうして本土政府外務大臣防衛庁長官の言われるような措置をとる場合にも、そのことを念頭に置いてやるべきであろうということを申したわけでありますから、意見は違っておりません。
  32. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 午前中の質疑はこの程度にいたします。  午後は一時から再開することとし、暫時休憩いたします。    正午休憩      —————・—————    午後一時五分開会
  33. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ただいまから本委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。
  34. 村田秀三

    村田秀三君 休憩に入りましたので、午前の分とダブる面もあると思うんですが、御了承いただきたいと思います。  そこで、山中長官にお伺いしますが、先ほど漁業権の問題ではなくて損害の問題で論議したほうが妥当であると、まあこういう言い方。私は、まあこの判決文の中で漁業権の問題の存在を明らかにしないと結論を導きにくいので、その論議に拘泥をしたわけでありますが、その問題は先ほど防衛庁長官外務大臣答弁、まことに不十分ではあると思いますけれども、まあしかし公式の場を離れて話をしてみると、もっと具体的なものが出てきたりいたしまして、その点は、私はある程度、了承はできないけれども、触れないでおきたいと思います。  そこで、損害の問題として考えてみた場合に、この判決文を見て私が非常に不思議に思いますのは、昭和二十二年——ここは日本でございますから私は昭和の年号を特に申し上げますが——二十二年の一月三十一日までは漁業権を認めているんですね。そして講和前の補償は、これは外国人損害賠償法によって一応なされているわけです。これなんかも、大ワクの頭金をきめて、そして民政府がきめたものをそれに文句を言わないで了承して、今後問題にしないということがわかれば、文句言わずに判こを押せと、こういうようなやり方でありますから、まことにこれは人権を侵害している。ずっとアメリカの公文書を見てまいりますると、あれはスキャップ指令、このスキャップ指令の中にも、民主的にすべてを措置しなさいということが書かれているんだけれども、実際はそういう補償のやり方をやっている。しかもこれは恩恵的支払いだと言っている。補償じゃないですね、恩恵的支払い。アメリカが幾らやると言ったものは文句言わずに受け取れと、いやなら支払わないぞと、こういうことでありますから、私はまことに不満であります。沖繩の人が、これは人権の問題としておおこりになるのは、しごく当然であります。その当然の上にわれわれがいろいろと判断をしなければ、これは判断の間違いを起こすと、私はこう思うんですが、時間の関係上、それには触れません。ほんとうは触れたいところでありますけれども、触れませんが、一月三十一日までの漁業権は認めておる。そして講和前の恩恵的支払いは実はいたしておるわけですね。判決の中には、漁業権がないから損害を補償する必要はないんだ。請求ということが起こってくるのがどだいおかしいんだと、こういう言い方ですね。そしてまた講和前は、講和条約十九条によって日本は放棄しておる。放棄しておるからなおさら支払いする必要がないんだ、こういうことなんです。この相互関係をずっと見てまいりますと、いわゆる講和前の恩恵的支払いというものは二十二年の一月三十一日までの分であろうと推測するわけです。あるいは昭和二十七年の四月二十人目まで含んでおるのかどうか。その辺は、私は実は調べようとしても調べ切ることができなかったわけでありますから、その間の事情がわかっておれば、これは政府委員でもいいですから、ひとつ答えていただきたいと思います。
  35. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 提訴をしました補償要求のとき、全部累積分として全部を計算しておりますから、おそらく全体は、年次のいわゆる漁業権があったとみなされる期間とか、その後とか、漁業者は分けていないと思います。したがって、その累積は一千六百三十九万八千三十九ドルということになっております。しかしながら、それから訴願した以後も、年間における漁業被害——これは金額ですから被害だと思いますが、その被害は、おおむね百十八万ドルちょっとでありますが、その程度に毎年のぼっているんだと、こういう訴えでありますから、これは期間は分けていないと思います。したがって、問題は、判決の中にそういうことを言っていることが問題なんですから、これはやはり今後、私どものほうでも、本土政府としても、裁判の要求のしかた等について、やはり相談に乗ってあげる必要があるんじゃないかと思っております。
  36. 村田秀三

    村田秀三君 その答弁も適切ではないと思うんです。私が聞いているのは、判決文を読んで、そうして一応恩恵的支払いをしたのは——これは四十三年ですからね、ずっとあとです。四十三年に支払いをしておる。そうして昭和二十二年の一月三十一日前の漁業権は認めて、それ以降は漁業権がないんだから、これは請求すること自体がおかしいんだという言い方をしておるんです。そうして、一応支払いをしておって、その支払いの期間というのは、講和前支払いと一般的にいわれておるわけでありますから、つまり昭和二十二年の二月一日から講和発効に至る前日、二十七年の四月二十八日までの間は、この判決の中でどう扱われているのか実はわからない。わからないから、それを知っている人に聞きたいということなんです。そこで、かりに、その判決を全部ずっと見てまいりますると、どうしても二十二年の一月三十一日までの恩恵的支払いだとしか理解できないわけですね。しかも、講和前の問題、つまり昭和二十七年の四月の二十八日までの分は、日本政府が講和条約十九条によって請求権を放棄したんだから、米国政府責任ではないと、こう言っているんですよ。そうすると、この二十二年二月一日から二十七年四月二十八日までに至る間の、日本政府が放棄したその請求権というものはですよ、これは日本政府が条約とは関係なく処理をする責任があると、こう実は考えるんですが、外務大臣、どうですか。
  37. 井川克一

    説明員井川克一君) 講和前補償、講和前の請求権を十九条によって放棄したと、日本政府が。それについて、日本政府責任があると、こういうお話でございますですね。それにつきましては、すでに御承知だと思いまするけれども、確かに講和前の請求権は十九条で放棄いたしました。しかしながら、その後、施政の任に当たっているものはアメリカ政府でございますので、つまりアメリカ政府がこれを処理する必要があるということを、住民の方々も、また日本政府アメリカに要請したわけでございまして、その結果といたしまして、布令六十号というものが行なわれ、また日本政府も約十億円のお金を見舞い金として差し上げたわけでございまして、その責任の、つまり請求権放棄の問題と、またその後の責任の問題というのは別になっておるわけでございまして、アメリカ政府といたしましては、請求権が放棄されていると、平和条約によって放棄されていると、しかし、何らかのことを恩恵的にしなければならないというので、布令六十号という結果になったわけでございます。
  38. 村田秀三

    村田秀三君 どうも答弁がやっぱし不分明だと思うんですね。私が聞いておるのは、これは土地裁判所の判決をもとにして申し上げているわけですね。結局、私がこの判決を見て、非常に疑問だと思うことは、昭和二十二年の一月三十一日までは漁業権の存在をアメリカも認めておるわけです。認めておるから、それは補償する必要があるんだという関係が出てくるんだと思うんですね。そして、それ以降、全然漁業権の存在を認めていないということなんだけれども、それを二分して言われておるわけです。つまり講和前、昭和二十七年の四月の二十八日までの分は、これは日本政府が講和条約十九条によって請求権を放棄しているから、これは米国の関知するところではないんだと、それ以降については、漁業権が何ら存在しておらないんだから、これは問題外だと、こういう二つに分けて判決されているわけですよね。でありますから、当然、この判決をそのまま読み取って考えてみる限りは、これは講和前補償の問題は、日本政府がその請求権を認めて処理をしなければならない義務が出てくるのじゃないかと、こう私は考えるわけです、これは。それははっきりしておるわけでしょう。そして、いま十億とかなんとかいうのは、それは漁業権の問題ですから、漁業権漁業不能、魚がとれなかった補償の問題というのは、先ほど山中長官が言ったとおり、それは別個の問題です。だから、いわゆる昭和二十二年二月の一日から講和発効の昭和二十七年の四月二十八日までの漁業損害に対する補償というものは、日本政府責任に帰属するものである、条約上の問題を理解しても、この判決をもととして考える限りですね。もう一ぺん御答弁願います。
  39. 井川克一

    説明員井川克一君) この判決によりますと、「訴願人の主張によると、一度漁業権が設定されると、それは土地の所有権に似て恒久的な財産権であり更に権利期間満了及びその後同区域の公共的ないし非漁業目的の使用にもかかわらず同人等は補償を受ける権利があると云うのである。」……
  40. 村田秀三

    村田秀三君 時間がないから、ポイントだけひとつ頼みます。
  41. 井川克一

    説明員井川克一君) それから判決になるわけでございまして、しかし漁業権というものは、「その存続期間は有限であり、期間の更新は確定的ではない。」、それから「訴願人は又、被訴願人が訴願人に対し講和前請求権補償を若干支払ったのであるから被訴願人は結局訴願人が一九四七年以降でも補償の対象となる権利を有していたと認めたことになると主張した。」、しかし、それに対して米国政府は……
  42. 村田秀三

    村田秀三君 全部それを読まれたんじゃ、これは時間がかかってしょうがない。
  43. 井川克一

    説明員井川克一君) それは「根拠にはなり得ず、」「同年以降」……
  44. 村田秀三

    村田秀三君 委員長、そんな判決文全部ずらずら読まれたんじゃ、時間ばかりかかってしょうがない。
  45. 井川克一

    説明員井川克一君) ということになっておるわけでございまして、確かに、四十七年一月三十一日まで権利があったということ、しかし、その後のことについては、何ら本判決は触れておりません。
  46. 村田秀三

    村田秀三君 まあそういう答弁じゃ、とても理解するもんじゃないんですね。こういうふうにあいまいなところがあるから、沖繩の人は条約に反対だと、こう言っておるわけです、はっきり申し上げまして。そうでしょう、これは明確じゃないんですから。皆さんだって、聞いていて、おかしいと思いませんか。おかしいんですよ、やっぱり。そういうおかしいものがあるから、これは沖繩県民の人権というのはどうなんだと、こんなに人権を無視されては困るじゃないか、アメリカは出ていけよ、本土復帰しなくちゃならぬというところにこれは発展をしておるわけですから、この権利というのは、やっぱり人権というのは尊重しなければならぬですよ。そういう意味で、この問題はいまここでやったんじゃ時間を食ってしようがありませんから、保留にいたしますが、保留いたしまして、ちょっと事務局とさしで話してもいいですから、よく詰めてみましょう。これは問題なんですよ、外務大臣、いいですか。  委員長、そこのところは頼みます。
  47. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記をとめて。   [速記中止〕
  48. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記を起こして。
  49. 井川克一

    説明員井川克一君) 講和前補償漁業関係につきましては布令六十号による支払いが総額、漁業権の問題につきましては漁場荒廃でございますか、そういう理由で総額五十四万一千七百二十九ドル、アメリカ側から支払われておりまして、そのうち読谷漁業協同組合は五万二千九百十三ドルになっておるわけでございます。講和前補償といいますものは、御存じのとおり、沖繩側とアメリカ側の熱心な交渉の結果、双方のあれででき上がりました布令六十号によって一応の解決がこれでいつておるわけでございますけれども、なおその後の問題につきましては——その他の問題につきましては水産庁のほうから御説明申し上げます。
  50. 太田康二

    説明員(太田康二君) ただいま条約局長からお答えがありたわけでございますけれども、昭和二十二年一月三十一日から新しい漁業法ができるまでの問題につきましては、先ほど山中長官からもお答えになりましたように、なお私どもといたしましては実情調査の上、実態に即した処置をいたしたいと、かように考えておる次第でございます。
  51. 村田秀三

    村田秀三君 これは、私の質問と答えと、内容が違うんですよ。ましていま水産庁長官答弁ね、これは聞きましても、実態に即してなんて言ったって、何のことだかわからないでしょう。そういう答弁を続けているから、だらだら審議をしなくちゃならないし、また反対だということになるんです。理由があるんだ。何も初めから反対だから反対だといっているしろものじゃないんですよ、この経過を見てもおわかりのように。総理、そうでしょう。どうしてもそう私は思います。だから、いまとてもここでもって答えを待っていたんじゃ、いつになるかわかりませんから、私の考えを明確にここで述べておきます。それをよく検討して、文書でひとつあとで御回答願いたい、正しく。  こういうことなんですね。アメリカ側の判決を見ますと、一貫して昭和二十二年の二月一日からは漁業権は存在しないから請求すること自体がおかしいんだという却下ですよ。いいですか。そして重ねて言っていることは、二十七年の四月の二十八日まで講和前補償、いや講和前補償はこれは日本政府が放棄しているんだ。だから、アメリカの関知するところではないんだと、こういう言い方をしている。これが二つ。そして、いわゆる講和前補償というのは、布令六十号によって読谷には五万数千ドル支払いました。五万数千ドル払われたこと、これも知っています。そうすると、この講和前補償という、これは恩恵的支払いです。補償じゃありません。恩恵的支払い。これが講和前ということであれば、アメリカ漁業権の存在を認めた昭和二十二年の一月三十一日までの分であろうと、こう私は理解するわけです、判決の内容から言えばね。恩恵的支払いであろうと、いわゆる二十二年の二月一日から二十七年の四月の二十八日までの分は入っていないと、こう理解するわけです。だから先ほども申し上げたように、そこは私も実際に調査はしておらないし、聞いてもおらないし、調べようもないんでわからない。だから、その間を知っているならば答弁をしてくれというのが一つあったわけですね。それに答弁がない。そこで私が推測を前提として言うならば、講和前補償という限り、二十七年の四月二十八日までの分も入っているとすれば、事実上二十二年二月一日から漁業権を認めたことになるし、講和後もその認めた補償を要する事実というのは継続するであろう。だから、これはアメリカの言うところの判決というのは間違いなんだと、こういうことです。そうして実際問題として、その講和前補償が二十二年の一月三十一日までの分であったとするならば、そうしてまた判決が言うように、講和前のものは日本政府が講和条約十九条によって放棄したのであるから、アメリカの関知しないところであると、こう書いてある。だとすれば、二十二年二月一日から二十七年の四月二十八日までは、日本政府が処理をする責任があるじゃないかと、四条二項にいま全部入れるなんということにはならないと、こういう意味なんです。いいですか、山中長官はおわかりのようです。外務大臣、わかりましたか。防衛庁長官はわかっておる。総理のほうがむしろわかっているように私は見受けます。そういうことでありますから、これに対してどうするのかということをひとつ明確にお答えいただきたい。
  52. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 一応施政権が戻りましたあとは、私どものほうが責任を持つわけですから、私から明確に御答弁を申し上げておきます。講和前の、御承知のとおり人身損害については、これはまあ見舞い金という名前ですが、布令六十号によってやるわけですから、やはりこの漁業の問題等につきましても、これはやはり十分調査しまして、できるだけひとつこれらの問題を政府側としても善処できるように、今後調査を厳重にしていきたいと思います。御期待にこたえ得るものと思います。
  53. 川村清一

    ○川村清一君 関連。  防衛庁長官ね、全然あなたは村田委員の質問の筋を違えておる。山中さんのほうがようわかっているんですよ。先ほど申し上げましたように、村田委員の質問は、そういう米軍のどうとかこうとか、損害を受けたとか、そういうような人身補償とか、そういうものと全く別個のものなんですよ。だから私が申し上げましたように、これは漁業の問題であって、旧漁業権は、旧漁業法で漁業が行なわれてきた、その旧漁業法によって漁業権の免許、許可をいただいている。したがって漁業権を行使してきたんです。それが昭和二十四年に新しい漁業法に切りかえられた。そこで、その新しい漁業法に切りかえられたときに、本土の、日本中の漁業協同組合等が持つ、漁民の持つ漁業権というものが全部なくなった。そうして新しい漁業法に基づいて新しく免許された、そのときに新しく、このいままで持っておった漁業権を国は全部買い上げたというか、全部補償したわけですよ、わかりますか。ここはわかりますか。そこで、私が北方に例をとって言ったように、北方の四島では、漁業、これは沖繩と違うくらいの、たくさんの生産をあげておるんです。ところが、一九四六年二月の連合軍最高司令官の覚書によってそこに行政権が行使されなくなった。日本政府の行政権が行使されなくなったことによって、漁業法に基づくところの漁業権というものが消滅してしまった、死んでしまった、消えてしまったのです。そこで、そこのところからもう消えてしまったところの漁業権に対しては補償はできない、こう政府は言っているのです。これと同じことなんです。沖繩にいわゆる漁業権が存在していたのです。アメリカ軍が入ってきて、そうしてその漁業権がなくなった。もう日本法律がそこに行使されなくなったのですから、そこで二十四年に新しい漁業法が行使されたけれども、その古い漁業法に基づいて行なわれておった漁業権が消滅してしまったから、日本政府沖繩漁民に対してその漁業権補償していないわけだ。そこで琉球政府においては、それから三年おくれて、日本でいうと昭和二十七年に、日本と同じ漁業権というものをここへ出したわけですよ。だから、村田委員のおっしゃっていることは、これから昭和二十七年のこの時点までの漁業権というものを、これは法律的にはだよ——法律論と政治論があるのだよ。法律論で言えば、もう日本の行政権がないのだから、日本法律がそこになくなったのだから、その日本法律に基づいて行なわれておった漁業権補償することはできない、法律論でいえばそういうことになるわけだ。ところが、それじゃあまりむごいじゃないか、だからこれは政治論的に、政治的に解決しなければならないことじゃないか、だから二十七年までのこの間の漁業権を当然国が補償すべきであるという論点に立ってお尋ねしているのですよ。それをあなたは、人身損害だとか補償だとか——そういうものとは全く別個なものなんだよ。その論は、今度はアメリカが入ってきて、新しく漁業権を取得して漁業権の行使をしたでしょう。ところが、米軍が海軍演習や爆弾演習をやって、全然もらった漁業権を行使できなかったでしょう。そうすると、その漁民は、これは損害だと、その損害補償はこれはまた考えておくと、その損害補償と、前の漁業法に基づいていたその権利をなくした、それを補償してくれというのと二つあるのだよ、問題は。村田さんのほうは、前のほうを言っているのだよ。それをあなたがそんな答弁するから納得できない。山中さんのほうがよくわかっている。
  54. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) どうも、何せ新米でして——よくわかりました、御質問の趣旨が。ですから、そういう問題については、やはり農林省側とも十分打ち合わせをしながら善処してまいりたいと思います。
  55. 村田秀三

    村田秀三君 私の言っていることを認めた上に立って善処するのかどうか、これを聞きます。
  56. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは川村委員の言われるとおり、二つの問題があるのですね。ただ、読谷漁協の例をいまとっておりますから少し混線しているのですけれどもアメリカの判決に漁業権ということをたてにとってものを言っているから、そこでこんがらかるわけです。したがって、沖繩漁業権全体については十一億五千万というものをもって、北方領土において七億五千万とったような措置をとることで妥結をいたしましたと、しかしながら、係争中の土地裁判所にかかっておる読谷漁協のその判決理由にある漁業権の問題からすると、いま川村君の言われたとおりのことが存在する。したがってその問題は、やはり漁業権で向こうは判決をしようとしている。そうではない。これは漁獲ができなかったための収入減の補償であるという請求のしかた、あるいはそのような判決でなければ承服できないという係争のしかたにしなければいけないだろう、私はそう思っているのです。そういう意味で、そこで、そこまでまいりますと、大体両論がそこで帰結点は一致すると思います。
  57. 村田秀三

    村田秀三君 その両論が帰結した上に立ってどうするのかということなんですよ、問題は。そこで、質問の趣旨は御理解をいただいたようでありますし、また防衛庁長官も善処するということでありますから、私の主張を了承して善処すると、こう理解をしてこの問題は打ち切りたいと思いますが、もう一度御答弁いただきます。
  58. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 十分参酌をしてまいります。
  59. 村田秀三

    村田秀三君 総理に申し上げたいと思うのですが、以上論争を聞いていておわかりのように、その辺が非常にあいまいで条約が結ばれておって、しかも、いま条約局長がいろいろ答弁しても、その内容をよく理解していないのですよね。内容を理解しない上で交渉をして、そしてそれらの諸問題がどうなっているのかさっぱりわけがわからぬ、いくら国会論議しても適当な答えが出てこない。反対だと言うのはこれは当然なんです。そういうのがいっぱいあるということです。だから私は、今後このような問題の処理にあたりましても、単に恩恵的なものと考えてはならないと思います。贖罪という言い方ですら私はよくないと思っております。よく、沖繩の心と、こう言うのでありますが、沖繩の心というのは何だろう、われわれが骨肉の情をもって考えるということであり、だとすればこれは人権を尊重するという、そういう前提に立ってやらなければならないのじゃないかと思うのですが、その点についてどうですか、総理、御答弁いただきたいと思います。
  60. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ようやく意見が一致したその段階ですが、私は、沖繩の方は、いわゆる請求権、これはもう当然の自分たちの権利だと、幾らの金額にきまるか、これは別ですが、いわゆる請求権というものは、われわれが権利を侵害された、そういう立場に立って当然要求するのだ、それを見舞い金というような処理、それはどうも困るという、金額はよし少なくとも、当然の権利権利として認めろと、これは基本的主張だと思います。私は、いままでも見舞い金で処理はいたしますが、見舞金にそういうような当然の損害賠償的な意味もありますということを答えたこともございますが、そういうことでなければ、何か恩恵的な処置だと、見舞い金と言うから恩恵的な処置ですよと、こういうことでは納得はしないと思うのです。これは当然県民が侵害を受けた、損害を受けた、そういうことに対する賠償、補償、そういうような意味合いのものだ、これでなければならないと、かように思いますので、その点は、私は、誤解をいたしておらないつもりでありますし、また、政府自身もそういろ取り組み方をいたしますから、金額は必ずしも要求どおりではないかわかりませんが、その処理のしかたは、ただいま言われるような方向で当然やるべきだ、かように思います。
  61. 森中守義

    ○森中守義君 議事進行。いまの総理答弁ですと、意味合いはわかる、ところが三、四日前に福田外務大臣が、このことについてではなかったのですが、見舞い金だというように言明されたことがある。それとの関係はどうなりますか。福田さんが見舞い金と言い切られたが……。
  62. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) さて、私、見舞い金ということばを使ったかどうか覚えておりませんが、私は、終始適正な処置をいたします、そういうことを申し上げておるわけです。いわゆる請求権と申しますが、これは調べてみると、請求権と言えないものもあるようです。ですから、その実態に応じまして適正な措置をいたしますと、こう終始申し上げておるわけでございます。
  63. 森中守義

    ○森中守義君 これはちょっと私の記憶もそういうように思い込んでいますから、あとでそのことは速記録をよく調べてみましょう。そういうことで一応関連質問を留保しておきます。
  64. 村田秀三

    村田秀三君 それでは、次に農業の問題に入るわけでありますが、今日までも沖繩の農業問題はさまざまなことが言われてきておりますが、要は沖繩の農業というものを日本農業の中でどう位置づけるであろうかという規定のしかたによって、これからの対策というものがいろいろと変わってくると思います。そう思いますので、ひとつ農相代理にお伺いしたいと思います。
  65. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私は、沖繩においてこそ亜熱帯地域でどのような有利な営農が営めるか。したがって、本土の各県がまねをしようとしてもできない農業の形態と、高い収益とをあげる方向にいかなければならないという気持ちでおります。したがって、その基本的な姿勢は申し上げましたが、それをしかし、そのままの島内消費だけではこれはだめなんでありますから、やはり東京、大阪等の大消費市場に直結をして、そうしてそれが……、まあ戦前でも、沖繩県は野菜の移出県でございました。それらの実績等もすでにあるわけですから、それをより合理化、近代化して、流通経路等について大消費地に直結した、いわゆる売り手市場の有利な、他県のまねのできない沖繩県農業形態ということを大前提として設計していかなければならないというつもりでおります。
  66. 村田秀三

    村田秀三君 それを具体的にどうなんだということを実は聞いてみたいと思うのです。しかし、御存じのとおりなんですね、時間がまことにこれは切迫をするわけでありますが、考えてみますと、実は私も沖繩にこの前当院の派遣団の一員として参りました。いろいろと見てまいりますると、これは荒廃そのものだと言わざるを得ないと思うのですね。総自給率は九五・六%、しかしサトウキビやパインを除くと、自給率は四六・九%ですよ。そうして米に至っては一〇%だけです。十分の一、こういうことですね。考えてみますと、これはよく基地経済、基地経済と言うけれども、まさに植民地農業なんですよ、これは。私も南方にいたことがありますからよくわかるのでありますが、ゴム園がずっと続いている。しかし米をつくることを規制して、そうしてそのゴム園ならゴム園で働かせるために、米を得るためにはゴム園で働かねばならないように実は仕向けられて、現地人たちはまことに貧しい生活をしている。安い労働力。この植民地経済、基地経済、これから脱却することがまず第一の要件だろうと私は思うのです。米はつくろうと思えばできるのですよ、これは。戦前は三〇%をこえる自給率であったそうであります。パインやサトウキビはふえたけれども、しかし米はなくなってしまった。だから、持ってこなくちゃならない。これをまずひとつ断ち切ること。基地経済の中の農業、植民地農業というものを断ち切る、脱却するというのが私は第一要件でなければならないと思うのです。そうして沖繩農業の自給率を高めながら——パインやサトウキビを含めた自給率じゃありませんよ。高めながら、しかも、いわゆる亜熱帯地域——熱帯地帯と言ってもよいくらいに思うわけであります。とにかく作物が生育する二十度の温度、これは年間でいうと七・五カ月から九カ月、こう承知をしておるわけであります。十五度——通年平均にするとですね、きわめて条件のいいところです。いま長官が言われたように、きわめて農業としては条件のいいところであるから、そうして冬、国内でできないものは沖繩から持っていくことができるという、そういう農業をつくっていくという、そういう考え方が必要だろうと思うのです。どうですか。
  67. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) まさにそのとおりなんですが、ちょっとその点少し——米の問題で自給率を高めていくということについては、なるほどかつては三万トンぐらいできたこともあります。しかしながら、その後何の操作なしに米というものがキビ、パイン等にかわりつつあります。現在は出荷四千トン弱、総生産量も一万トン弱というようなことでありますから、これは沖繩については減反政策その他はとりません、らち外といたしますが、そのかわりキビ、パイン等の永年作物に転換して、そうして水等は干ばつのことしの経験もありますから、米の水を畑かん的なものに総合的に広く利用するというほうに視野を転向してもらって、そして現在対象品目になっておりません転作奨励金の交付されるものを、減反は押しつけないけれども、しかしキビ、パイン等にかわる場合については、永年作物としての転作奨励の対象にしようという政策をとっているわけであります。
  68. 村田秀三

    村田秀三君 米の論議をここでするつもりはありません。ただしかし、一〇%というのはどうであろう、それを五〇%、六〇%にするかしないかという、そういう論議ではなくて、少なくとも米自体にしろ、これはもう少し高めていくという、そういう方向でものごとを考えながら、しかもなおかつ沖繩で特別にとれるもの、特殊地域の特性を生かしながらやっていく農業というものを発展させなければならぬと、こう言っておる。それでいいんでしょう。米にこだわっちゃいませんよ。一〇〇%米をつくれなどという言い方をしておらない。  そこで、続けるわけでありますが、実は石垣島に熱帯農業研究センターの沖繩支所があります。これは二、三年前に法律案審議しましたので覚えているわけでありますが、そこへ行ってまいりました。まあ行って沖繩に上陸した時には、台風のあとでもありますから、これはひどい、ここで農業ができるんだろうかと思っていろいろ聞きました。あんな狭いところでどうなんだろう、サトウキビだってこれはもう自由貿易の中では太刀打ちできないんじゃないか、国の保護がなければできないんじゃないかというような言われ方をしておりますけれども、しかしその研究所へ行きまして所長からいろいろ聞きました。そうしますと、荒廃している原因というのは、やはり今日まで何も対策がなかったということです。早い話は、現在のつくられておりますところの品種を見ましても、水稲はこれは昭和五年の原種です。昭和五年、四十一年前の原種をそのままずっとつくってきておる、改良されておらない。それからサトウキビにいたしましても、これは二十年以上も前に導入したものをそのまま植え継いでいるだけです。改良前進がさらにないですね。それからパインにしろそうです。これは昭和二年に導入したものですよ。これじゃ何ほど生産性を上げるなどと言っても上がらない。  それから沖繩は狭いところだと言う人に私はひとつ申し上げたいんだけれども、確かに本島それ自体は狭いかもしれない、一戸あたりの耕作反別というのは非常に少ないかもしれませんが、宮古、石垣に行きまするというと、三町歩をこえる農家が相当にありまして、内地とは比較じゃないのです。だから、石垣や宮古は離島というふうにいうのかどうなのか、政令でどうなのかわかりませんが、いずれにしろそういう地域別に適地を求めて集団化をしながら、土地の改良、基盤整備、これは基盤整備するということで、山中長官もだいぶ張り切って、ダムをつくるとあれだということを言っておるわけです。しかし考えてみますと、ダムというのは主として多目的ダムですよね。土地改良をする、土地改良をすれば、そこへ工場が来るかもしれない、どうにでもなる。農業のためだとばかりは言えない。だからこの農業を、冒頭長官が話したような、そういう位置づけをしながらこれを発展さしていくためには、私は、足りないものがあると思うのです。それはやっぱり研究機関ですよ。  とにかくその土地に適合した品種改良をしながら、そして——現在一般農家は、大体、サトウキビですと七トンから十トンですね、豊作年で十トン程度です。しかし研究機関は、現在はこれは十トンから十五トン、それで、とりわけの篤農家がおりまして、その篤農家は二十五トンとっているのがあるそうです。だから、品種改良をして基盤を整備するならば、そこまで生産をすることができる、このことは私は言えるんじゃないかと思うのです。水稲でもそうですよ。現在二百キロから三百キロだそうです。ところがこれは試験研究機関は五百キロ。稲というのは大体向こうのものですからね、やればもっとできるはずなんです。だから試験研究機関を充実しなくてはならぬ、そういう考え方に実は立つわけであります。  そこで、沖繩のこれは要求としてパインの原原種農場であるとか、畜産牧場であるとか、試験場ですとか、いろいろな要求が出てきているわけですが、予算を見ると、パインの原原種農場の調査費だけはついているんですね。四十七年に。ところが、そのほかはゼロです。この一番大事な試験研究機関、あるいは各離島にも気象台を一つ置いてくれ、こういう要求なんかもありました。そういうのも別に予算の中にはないわけですが、一番大事なものが抜けちゃおりませんかというのが私の質問ですが、今後どう考えますか。
  69. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) キビについては、お話のとおり、品種改良についてもまだNCO等を採用しておりません。したがって、ことしの予算から原原種農場の調査費をつけているわけです。したがって、原原種農場というものをつくるために、あと一年調査費をどうしても農林省が要るということで適地をさがしておるわけでありますが、必ず原原種農場はつくって、新品種並びに矮化病等に対応する、また台風常襲地帯でありますから、風などによる倒伏等に強い、そういうものの品種改良を絶対やらなきゃなりませんし、一方また非常に恵まれた条件が逆に反収を低くしている原因のもとになっている奇妙な現象があります。それは非常に適したところでありますために、株出しは三年が限度だと思うんですけれども、四年以上の株出し、いわゆる安易なるキビ作にたよっているのが石垣では五〇%に達しているというような実情がありますから、人手の問題その他もありましょうけれども、やはり今後価格維持方式等をよく考えながら、そしてまた共済等も検討しながら、それらの品種改良について意を用いていかなければならないことは当然だと思うんです。ただパインの原原種農場については、ちょっと日本でも初めてパインというのが本土の圏内に入ってくるわけでありますから、すぐに原原種農場に行くべきなのか、あるいはいまおっしゃったような基盤整備ですね、そういうものからまず着手していくべきことなのか。ちょっと原原種農場にはキビのようにすぐに着手できないという私も実感を持っておりますので、将来はそういうことも考えて、なぜ台湾なら六ドル五十セントでできて、沖繩なら八ドル八十セントかかるか、単に人件費の問題ばかりでない問題がそこにありますから、これらは十分研究して沖繩からパインを絶やすことはできないというならば、それに対応する措置は試験研究機関としても当然考えていく前提で調査をしていきたい。しかし、いまのところはやはり基盤整備が先決だなという感じがいたします。
  70. 村田秀三

    村田秀三君 まあこの問題はずっと続く問題でありますから、そのつどやってまいりたいと思います。  それから食管法に関係してでありますけれども、まあいろいろございますが、一つだけお伺いいたします。食管法は、ほとんどこれは適用除外ですね。そして生産者価格、これはいままでの例から言いますると、沖繩の場合は一万八千六百九円。本土では、これはことしの生産者価格でありますが、五等で一万九千二百五円と、こうなっております。そこで、沖繩方々は生産者価格は本土並みにして、そして米の生産を安定してもらいたい、こう言っておるんですね。少しの差であるから、これはひとつそうしてやってもいいじゃないかという感じを持つわけでありますが、その点いかがですか。
  71. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) その前提に、沖繩で現在行なわれている仕組みの中の検査の等級の格づけがありますね。これを本土の検査規格に合わせますと、沖繩産米は現在は五等ないしは等外米の大体ランクづけになるのではないかと思われる大体のいままでの実績があります。そうすると、本土の検査法の規格を適用いたしますと、等外米は災害等の場合でなければ買わないようなことになりますので、そうすると五等の部分がかろうじてそれに入ってくるということになりますから、四千トン足らずとはいっても、やはりそこに生産農家で出荷して、農協から後払い制度の中で代金を——逆ざやになっておりますけれども、それを後払いでもらうという仕組みで一応ささえられておりますから、当分の間というのを五年間ということでその仕組みを見ましょう。しかし、本土の生産者米価が上がった場合には、その分はまた現地でもそれに応じた値上げをいたしますよ。しかし、今度は一定期間を過ぎた後——これは復帰対策要綱等にはそこまで触れておりませんが、過ぎた後も一ぺんにぽんと本土並みにしては、これはまた消費者米価の関連も出てきますから、さや寄せ期間というものが両方要るのではないかということの関連で、いまのようなことに一応落ちつけているわけでございます。
  72. 村田秀三

    村田秀三君 いろいろこれはまた農水委でやってみたいと思います。  消費者米価も、これは現地の現在の相場を維持してもらいたいという要求がありますね。そこでそう希望するわけでありますが、それと同時に一つ疑問に思いますことは、これは沖繩人々を別に不正なことをすると、こう言うつもりはございませんが、本土の現在の流通道徳などというものはまことに心外なものもないわけじゃございません。沖繩の米は非常にこれは生産者米価が安い。内地へ持ってくれば高くなるということも考えられる。それから消費者米価は向こうは非常に安い。これは消費者米価の価格差というのは、五万六千ぐらいだと思うんですね。沖繩で小売り屋から買って日本に持って来ても、これは相当に利益になるという問題があるわけですね。それはどう考えて、どう措置をするのか。法律や政令の中には何も出てこないわけですね。
  73. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは現在琉球法で、輸入米のこともありまして、流通段階のきわめてきびしい法律がございます。それで秩序は保たれているわけですが、今度適用除外をしましても、これはその沖繩の需要量というものがきまっておりますから、それの島内産の出荷量に対する不足分を本土から持っていくわけでございまして、外米は入らないということでございますから、その分だけ向こうで消費されないと、現地の需給というもののバランスから不足する。したがってそれを大量に現地で受け取って、本土までまた船賃をかけて持って来て、いわゆる俗称やみ米といいますか、自由米でもよろしいですが、そういうものでさやをかせごうというようなことはちょっと考えられませんが、しかし行政上はそのようなことのないような措置はとるつもりでおります。
  74. 村田秀三

    村田秀三君 これは協力して、はしょることになるわけですが、まあまたあとでひとつやりましょう。  もう一つの問題についてお伺いしますが、これは防衛庁にお伺いいたしますが、黙認耕作地ということがよく言われます。これはこの間も、私のほうの辻委員がちょっと触れたわけですが、防衛庁の出された資料の中でもこれは黙認耕作地となっているわけですね。よく調べてみたら、これは布令二十号で許可されているんですね。アメリカが緊急に必要なものでなくて、そして沖繩の経済に利益するならばということで、特権として許可をする、こうなっております。特権を与えられておる、許可ということはありますがね。これは黙認じゃないんじゃないか、これは許可なんで、黙認耕作などといって現地の人が小さくなっておる必要はないんだ、一つの条件はついておるけれども一つ権利であるというふうに私は理解をしたいわけですが、防衛庁はどう考えますか。
  75. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは御承知のとおり、まあ全基地の一九%ぐらいあるわけで、事実上そこで耕作権を行使しておるのは七彩程度、一九先のうちのですね、そういうふうに承知をいたしておるわけです。これは権利でない、権利じゃないんです。なぜ権利でないかといいますと、賃貸料を米軍側が所有者に支払いまして、そしてまあ耕作を黙認しておるわけでございますね。したがって、もし米軍側で必要な場合にはいつでもこれは耕作権を中止するということもできるわけですから、そこで賃貸料を受け取って、しかも耕作をしておると、こういうあたりに権利というわけにいかない点があるというふうにわれわれは理解しております。
  76. 村田秀三

    村田秀三君 権利じゃないと、こう言いますが、布令第二十号一項a項を見ますると、「合衆国に緊急な必要がなく、また琉球経済の最上の利益に合致するならば、合衆国はその規定した条件のもとに賃借土地を一時使用する特権を所有者又はその他の者に許可することができる。」となっているんです。だから、許可された限りはその人の権利になるわけでしょう、特権を与えられているんですから。別の人が黙ってそこを使っていいということにはならない。とすれば、一つの私権だと私は理解するわけです、条件はあっても。法制局長官がいなくなってしまってあれですが、これは……。
  77. 島田豊

    説明員(島田豊君) ただいま防衛庁長官から御説明ございましたように、一応なるほど特権ということばを使っておりますけれども、合衆国はその自由裁量により、いつでもこの特権を取り消すことができるということで、この一時使用は、いわば米国側の自由裁量による一つの使用許可と、こういうふうに見られますので、したがいまして、この権利につきまして、別に登記をいたしておるわけでもございません。大体その所有者に優先して使わしている、しかし、所有者以外の第三者も使用しているということで、これは事実上の行為として耕作するものを認めておる、こういうふうに考えるわけでございます。
  78. 村田秀三

    村田秀三君 だから、地位協定上の問題というのは復帰してからの話になるわけです。私が言っているのは、布令二十号によって許可をされているんです、特権として。そうすれば、いつでも返しますという条件はついているけれども、これは条件つきではあるけれども個人権利だ、私権だと、こう理解せざるを得ないんですよ。借りた人がそれじゃだれでもかまわない、だれでもつくってよろしいなどというものにはならないわけでしょう。借りた人がちゃんとおれが借りて許可されているんだから、おれがつくれるんだと、専用権を持つわけです。どうですか。
  79. 島田豊

    説明員(島田豊君) 実際上は、市町村長に米側が一応許可いたしまして、その市町村長が土地の所有者に優先して耕作なりあるいはまき木の採取をやらしておるということでございますので、個人個人一つ権利を取得したと、こういうことにはならないのでございます。
  80. 村田秀三

    村田秀三君 これは、私も法律家じゃありませんが、確かにこういう特殊な事例というのはどこを見ても何もないんです、これは率直に言いまして。私も、だから困っているわけですが、しかし、政治的、常識的に判断すればそういうことになるでしょう。総理大臣どうですか、総理大臣答弁さしてまことに申しわけないんですがね。そうならなければおかしいんですよ、これは。ほかの人がだれでも使ってもよろしいということにはならないわけでしょう、これは。
  81. 島田豊

    説明員(島田豊君) 土地の所有者の場合には現実に本人が耕作いたしますので、その関係はよくわかりますが、第三者がこれを所有者から一応承諾を得て使っておるというようなことで、その間に使用料が払われておるかどうか、ちょっとこれは実態がよくわかりませんけれども、とにかく一つ権利として、これをたとえば登記いたしまして、それが一つの物権的なものとして確保されるというものではないのでございますが、ただ、われわれとしましては、今後の問題といたしまして、長年こういうふうな耕作を継続してやっておるというこの実態、それから農民の方々が広大な農地を米軍基地として取られておるというこの実態に即しまして、今後の取り扱いにつきましては、たとえばその区域を米側に提供いたします場合に、その一つの提供条件として従来のこのような黙認耕作を認めきせると、こういうふうな形でこの問題を継続して処理していきたいと、かように考えておるわけでございます。
  82. 村田秀三

    村田秀三君 この権利を有するか、有しないかという問題はしばらくおきます。  そこで、これは復帰をしてまいりますると、今度は地位協定上の問題になって防衛庁が直接扱わなくちゃならぬのですね。その際に布令二十号で許可したその条件は継承されるべきものだと私は理解するわけです、これは。そこで、権利なのかどうかということをこだわって私は申し上げているわけですが、防衛庁としてはどう扱っていきますか。それと同時に、時間がありませんから、これは続けて聞きますけれども、その際に自衛隊が今後使用するもの、これはいま反対はしておりますけれども、結果的にそのようになった場合には、自衛隊が使用する区域の中にも同じものがあるわけですね。そうしますと、これは施設庁米軍に提供する基地内における耕作地と、それから自衛隊が国内の問題として処理をしなきゃならぬものとあるわけですね。そうすると、アメリカ軍は確かに布令二十号で、おれのほうで必要なときにはいつでも取り消すぞという条件がついているわけでありますが、防衛庁としてやる場合には今度はなかなかそうはまいらぬという問題にもなりますので、その辺のところを一度考え方を聞かせてください。
  83. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは、前回の御質問の経緯で私もちょっと研究してみたわけです。そうしますと、大体こういう地域というのは弾薬庫の距離を広くとるためにある地域とか、飛行場の余剰地域とか、そういうところが多いわけですね。そこで権利ということはやはり賃貸借で米軍側が賃貸料を支払い、いわゆる使用権を持っておるわけですから、私は権利とは言えないと思うのです、やはり。しかし、一つの習慣上の許可を得ておるわけですから、御指摘の点については、これはやはり施政権が当方に戻りまして、その上で米軍が従来とも黙認をしておったところは、これは何も黙認できないというものじゃありませんね。ですから黙認をしていくことが望ましい。ただ自衛隊の場合は本土では実はそういう地域はないわけであります。したがって、これを解約するかどうするかというような問題も出てくるかと思いますが、従来賃貸借関係にあって、賃貸料をもらって、耕作も認められておったという、そういう優位の立場にあるわけですから、やはり沖繩の特殊性等を考慮しまして、本土にはないからと、必ずしもそういうしゃくし定木なものをはめて、きびしく律していくことはどうであろうか。これは今後の研究課題でありまするが、十分血の通うように、そのあたりをあんばいして措置してまいりたい、こういうふうに思っております。
  84. 村田秀三

    村田秀三君 農林大臣代理にお伺いしますが、これは農地法との関係を私は考えてみるわけです。で、農地法上この五千六百ヘクタールもある、まあ実際に耕作しているのは確かにそれよりもずっと少ないということは間違いありませんが、一応耕作地として許可されているわけです。それは農地なのかどうかですね、問題は。農地と認めるのかどうか、農林省としては。
  85. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 提供施設の中ですから地目は農地、で、現状も農地ということですから、たとえばその地主たる黙認耕作者というものと小作人との関係があったとしますと、それは私は農地法の適用を受けることになると思います。取り上げるとかなんとかいう場合にですね。しかしながら、米軍——先ほど来防衛庁長官なり島田施設庁長官が言っておりますように、耕作者との関係に、地主、小作人の関係としての農地法、これを適用できるかどうかについては私は問題があると思います。しかし、それが適用されないことによって、現状として、まあ施設庁長官は、基地提供の条件にいままでどおり耕作を黙認するようにというようなことも交渉したいと言っておりますから、解決はするでしょうが、それを違約をした場合に、それに地主対小作人の農地法がかぶるかというと、これは少し問題だろうというふうに思います。
  86. 村田秀三

    村田秀三君 いまの答弁を聞きますと、これは農地法の適用を受けるというわけです。だからつまり、アメリカ軍といわゆる許可されたものの関係の中では農地法云々という問題にはならないかもしれないけれども、その外では適用されるというわけです。つまり地主以外の人に小作として出しておった場合は、これは小作地であり、農地法の適用を受けるということになりますね。農地法の適用を受けるほどの土地がだよ、権利がないというのはどういろわけなんだろうという疑問が出てくるわけです、逆に言えば。そうでしょう、防衛庁長官。これは、私は私なりの考えがあります。それはどう理解したらいいんですか。もう一ぺん明確に答えてください。
  87. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは私の言い方が足りなかったかもしれません。というのは、米軍との関係に直ちに農地法の適用は困難だろうと。しかし、それを黙認耕作をしておる地主という人が、今度その黙認耕作にかかる土地について小作に出している形があるわけですね。そういうような場合において、一方的に取り上げるとかなんとかいう問題が発生すれば、それは地目も農地で、現状も農地なんだから、それは沖繩県民間の問題については農地法というものが適用されるということを申したわけです。
  88. 村田秀三

    村田秀三君 でありますから、農地法の適用を受けるところの小作地なんです、これはね。だから、小作地であるのに、これは耕作権がありません。私権じゃありません、こういろ防衛庁答弁はおかしくなるんですよ。権利関係が不明確なものに農地法を実施するなんということができますか、法律上。どうですか。
  89. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私の答弁からそういう議論に発展したと思うんですが、私はやっぱり米軍の都合で一方的にいつでも解約できるという条件で黙認耕作地というものがある。そのことで防衛庁が言っておるんだろうと思うんです。したがって農地法も、その問題がありますから、直ちに適用は困難かもしれない。しかし、その条件で許可をされて耕作をしておる人、あるいは地主である人が自分の意思で小作に出しているという関係は農地法の適用になるだろう、こういうことを言っておるわけでありますんで、ごちゃごちゃになったようでありますけれども、私の言っていることは、農地法上は明確に区別をしておるということであります。
  90. 村田秀三

    村田秀三君 決して私の認識ではごちゃごちゃしてないつもりなんですが、その辺のところがまだきちんとしないということですよね、率直に言って。これは日本にないものが今度出てくるわけですから、日本の中でその権利関係、法的な措置、これをもう少しきちっとしなくちゃならぬという問題ではなかろうかと思うんです、これは。いずれ後日これは農水委でまた一つやってみます。答弁をあとで文書にしてもらいたいと言いたいところでありますけれども、それはやめますが、いずれにしろ、私がここでお願いしたいことは、現に耕作をしておる、それはアメリカ軍がいつでも取り消しできる条件である、しかし、その条件というのはばく然としているわけですよね。そうすると、いまつくっておる者の権利——権利と言うと、あなた方はこだわるかもしれないけれども、私からしてみれば、これは許可をされて、そして一種の権利が生じたのだと、本人からしてみるならばそう理解をするわけです。使わないのにいつでも取り上げるということにはならないと思う。何か条件がなくちゃならぬ。したがって、その条件というのは、結局、日本外交保護権をもって——日本復帰した場合には、米軍との間にそれらの耕作者を保護する意味の何か一つの申し合わせなり、取りきめというものが必要になってくるというような気がいたします。と同時に自衛隊の管理する地域、これも継続するわけでありますから、これは米軍との関係じゃなくて、国との関係になるわけでしょう。明らかにこれは小作地として国とその人が契約をしなくちゃならぬという関係が当然出てくるわけです、自衛隊の場合は。そういうことになるわけでありますから、あくまでも耕作権を——私が言うのは耕作権です、私の認識の中では。その耕作権を保護するという立場に立って処置をしてもらいたいということ、そして、これは黙認ということではない。沖繩の人がこそこそこそこそやるようなものではない。特認なんだ、特認。こういうように名称の書き方も、言い方も変えるくらいのつもりで、これはやってもらわないと困るような気がするのですが、その点はどうですか。防衛庁長官と山中長官にお伺いします。
  91. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 解釈のしかたについては、さっきから申し上げておりまするように、多少食い違いはありまするが、これはやはり運用の面におきまして御趣旨が生きるように努力をしてまいりたいと思います。
  92. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私の基本的な姿勢は、法的な農地法とか、そういう耕作権とかいう問題は一応議論しなければなりませんが、そのような形で永年基地であるという、図面の上ではそうですけれども、耕作を認めておるということは、そろそろ返していいじゃないかということだと思うのですね。農業政策上からも、いまのような、黙認耕作のような状態では、土地改良その他の基盤整備等も実際上はできないわけです。したがって、農業の近代化等もできませんから、そのような基本姿勢からいけば、やはりどうしても提供しなければならない場合は、施設庁長官が申しましたように、それらの人々は、権利でなくとも、永年の耕作という実態を持っておるのであるから、その実際の自分たちの収益というものを確保できる条件を提供条件にしたい、こういうことを言っておりますから、ぜひその線を貫いてもらいたい。そうして自衛隊の場合は、沖繩担当大臣から言うならば、日本の自衛隊でありますから、そういう耕作をさしてもいいようなところは返してほしいものだと思います。
  93. 村田秀三

    村田秀三君 そういうことを言うから・それは日本政府はむしろアメリカよりも冷たいのじゃないかなということになりますよ。自衛隊に来てもらっては困るという、そういう問題も出てくるわけですよ。最後の部分はそうじゃないのですよ。むしろ、不用であるならば返せというのが主張ですよ、基本的な。私は、そういう論議は前にもされておるから、そこは抜かしながら、何とか沖繩の人が現在沖繩の経済の利益のために利用できるところはどこでも利用させるべきであるという観点に立って、それを保護せよという意味でもって私は申し上げておるわけですよ。これは最後に言ったような、返してくれというのではますますだめですよ。自衛隊反対ですよ。そういうものの考え方なんというのはおかしいですよ。
  94. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) いや、私の言ったのは、担当大臣として、日本の自衛隊が使うことになる土地の中で、なお耕作権を——耕作を認めてあげてもいいようなところがあるならば、将来の姿勢としては所有者に返してもらいたいと私は思いますと、こういうことを言ったのです。しかし現実には、賃貸料と、そうして耕作の作物の収穫と、両方とれることであって、個々の農家にとっては、たてまえと実際の収入の面とはいろいろ議論があることは、私は、現地でよく知っております。しかし、たてまえ論をちょっと申しましたので、これは私がよけいなことを言ったのかもしれません。
  95. 村田秀三

    村田秀三君 それは私の勘違いでした。返せと言うから、取り上げるというふうに思ったんです。これは逆ですね。所有者に返すということですね。そういうたてまえでやるという、それを確認いたしまして私の質問を終わります。      —————・—————
  96. 長谷川仁

  97. 田中寿美子

    田中寿美子君 私は、沖繩の婦人の要求を代弁したいと思うわけなんです。婦人の要求を代弁してアメリカ施政権のもとで婦人の人権が踏みにじられてきたことに抗議をして、婦人の人権回復を要求するという立場から、幾つかの人身損害事件についての請求権の問題とか、あるいは裁判権にもいくらか触れると思いますし、売春問題などにも触れたいと思います。それからもう一つは、沖繩の中で差別されてきた労働者の中でも、特に婦人労働者の立場に立って主として御質問したいと思っております。  私は、何べんか沖繩を訪れたわけなんですけれども沖繩の女性が祖国復帰にたいへんな熱情を持っているその状況に打たれて、そしてやむにやまれない気持ち復帰運動に一緒に連帯活動をしてまいりました。沖繩の女性が米軍基地を撤去してほしいということを強く求めておる、それから自衛隊の配備にも激しく反対をしているからといって祖国復帰したくないと思っているなどということは、これは全く沖繩の女性の心を冒涜するものです。よもやそのようなことはおっしゃらないと思うのですけれども、過去の沖繩の歴史を振り返ってみますと、平和で基地のない祖国復帰したいという渇望はどうしたってわかっていただかなければならないと思うのです。  実は、今年の二月、那覇で復帰協ですね、祖国復帰協議会、現地にありますところのあらゆる団体を含めております。自民党支持であるところの地域婦人団体連合会も入っております。この祖国復帰協とそれから本土での沖繩連ですね、復帰運動を一緒にやっておりますところの沖繩連の者が一緒になりまして、那覇で「新しい沖繩をつくる国民集会」というのを持ちました。そのとき婦人の分散会でたくさんの要求が出てまいりました。そこで、私たちは、それではこの要求を貫徹するために、復帰を前にしてたくさん出てきた要求を貫徹するために、八月に本土で集会を持ちましょうという約束をしました。それで、この八月の十日に沖繩の各婦人団体を代表しますところの三十人の代表の婦人と、それから本土の十六団体の婦人が一緒になりまして、そして「婦人問題を解決する沖繩本土連帯集会」というのを持ちました。そのときに出されました要求というのは非常に広範なものです。たとえば母子福祉あり、労働保護の問題があります。産業の開発、人権を守れと、うこと、あるいは沖繩の民主教育を守ってほしい、公害対策、物価対策、非常に広範な部門に及んだのですけれども、一番基本的な立場は平和への強い願いだったわけなのです。そのためには米軍基地がなくならなければだめだということ、自衛隊の配備には反対するというようなことが基調になっておりました。私、その翌日、大会集会の翌日八月十一日各省にその婦人の代表が出向い、て参りまして、その要求を持って参りました。私も一緒に幾つかの会に参りました。たぶん山中長官は覚えていらっしゃると思います。あのとき、山中長官——総理府防衛庁には、ほとんど全部の沖繩の婦人代表が一緒に参りました。まあ山中長官は一番沖繩をよく知っていらっしゃいますから、ですから大ぜいが来たけれど拒みはなさいませんでしたし、それからみんなが立っているから自分も立っていると言ってすわらないで相手をしてくださったので、婦人は非常に純情ですから感動しておりました。西村前防衛庁長官は居留守を使われましたものですから、私は、在室しておられることを突きとめたもので、とうとう一時間もつかまえることになりました。そのときに婦人たちは切々として、米軍基地米軍人軍属、軍隊によって受けてきた損害、被害を訴えたわけですね。基地がある限りこういうことになるのだということを訴えたわけなのです。総理大臣ね、なぜ沖繩の婦人がそのように、核も基地もない、平和な沖繩を取り戻したい、そういう本土に帰ってきたというふうに恋い焦がれているか、よくおわかりになりますでしょうか。
  98. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはもう平和を愛好する婦人にとりまして、かつての戦地、戦場になったと、これが本土防衛の第一線になったと、こういうともかくもたいへんショッキングなできごとが幾つもあります。ことにひめゆり部隊等のことを考えると、これはもう平和を愛好すると、そういう立場でぜひありたいと思う。さらにまた米軍政下において米軍人が、敗戦国とでも申しますか、沖繩の婦人の処遇について、これは口にするだにいまわしいような事柄が次々に起きている、そういう事柄の思い出、これはなかなか簡単には拭い去れないと、かように私は思いますので、婦人の諸君が、特に米軍の一日も早く撤退することを、同時にまた軍そのものについても、自衛隊であろうが何であろうが、名前は何とつこうが、その種のものについて非常な憎しみを持つというか、嫌悪を持つ、憎しみというよりむしろ嫌悪と言ったほうがいいかと思いますが、そういうような感じを持っておること、これは私にも容易に想像のつくことでございます。
  99. 田中寿美子

    田中寿美子君 そういう気持ちがあることをよく御存じでございますけれども総理大臣御自身、心の中で、またこのこともよく御存じのはずで、そうして沖繩の婦人もよく知っている。つまり今度の協定によっては米軍の機能は縮小されはしない、安保は永久化される、そうして台湾、朝鮮、フィリピン、本土アメリカの反共軍事同盟の三角形の一番かなめのところに沖繩があって、そうしてそこの基地を縮小するような話し合いではないということは、共同声明で、あるいはそのあとで佐藤総理御自身が記者会見で説明なさったり、その背景説明を愛知さんがなさったり、ジョンソン国務次官がなさったり、またそれに続いてサイミントン委員会だとか、あるいは最近の上院での外交委員会の審議なんかでも、米軍の機能は縮小されはしないのだ、そして自衛隊をもって強化していくのだということですね、これを沖繩の婦人はよく知っているのです。ですから、またこれから同じことが繰り返される、その心配を持っているわけですね。佐藤総理米軍基地は縮小していけるというふうにときどきおっしゃる。それからサンクレメンテにいらっしゃったらいろいろなことを相談してみよう、ここの委員会で幾つか出された問題ですね、いまさっきの黙認耕作者のことも、そういうことがあるなら話してみようとか、あるいは幾つかおっしゃいましたですよね、漁業の問題でも。婦人が切にそのことを望んでいるということがおわかりになっているなら、その気持ちもぜひ伝えてもらいたいものだと思いますが、いかがですか。
  100. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、ただいまの田中君とはちょっと立場が違いまして、私どもは、日米安全保障条約、そのことは必要だと、かように考えておりますから、沖繩の県民もそれだけは理解してもらいたい、かように思います。いままでの米軍、米基地、それが今後は日米安全保障条約のワク内に、その行動なり、それらがとどまるんだと、そういうことを理解していただくならば、それもやがては縮小されるだろうと、こういう期待につながると、かように私は思います。これはもう現に本土がそのとおりでございますから、そういうことになることを期待する。したがって、まずそのことを考えていただくことが一つの基本的な問題であります。同時にまた、幸いにして来週早々、もうあと一週間もすれば私がサンクレメンテニクソン大統領と話をするのでございますが、ことに沖繩についての話には、これは十分の時間をとるつもりでおりますので、ただいま言われるような諸点、さらにまた、これからも出てくるのだろうと思いますが、いわゆる婦人問題以外にも麻薬等の問題もありますから、それらの点についても話を触れるつもりでございます。それらは、ただいままで各党党首会談を予定しておりましたが、なかなか時間がはたしてとれるかとれないか、そのほうもちょっと心配になりましたから、私、この際にはっきり申し上げておくのは、この委員会を通じての皆さん方の御意見、これらを取りまぜて、ニクソン大統領には十分話をして、そうしていままでのあり方についても反省を求めなきゃならないと、かように私は思います。
  101. 田中寿美子

    田中寿美子君 そういう議論をしておりますと、協定の問題にもなりますので、これは避けます、基本的に立場が違うものですから。  ただ、私は、人権の保障を要求する、それから米軍軍人、軍属による女性の人権侵犯、それから不法行為、犯罪などに関して、その損害の補償を要求するという立場から少しお尋ねをしてみたいと思っておりますが、記憶に新しいことを具体的な事例をあげてみます。いままで請求権の問題に関しては、松井委員が法理論的に非常にきびしい追及をなさいましたし、それから裁判権のことは佐々木さんもなすったし、先ほど漁業権の問題も請求権に関して相当詳しく議論をされたんですけれども人身損害についての問題にしぼりたいと思うのです。  記憶に新しいところで、昨年の五月二十八日に、あの第二兵たん部に勤務している沖繩の婦人労働者、基地の軍労働者が出勤の途中で米軍の軍人の暴行を受けて、そしてひどい目にあったという事件があった。そしてすぐその二日後に、例の前原高校の女子生徒、これが白昼具志川市で米軍人の暴行にあって、抵抗したために腹部から頭部に二カ月の重傷を受けたのです。そこで全県民が抗議運動をし出して、高校生も抗議に立ち上がった。そして、そのときにみんなが要求したのは、こういうことが次々起こるのは基地があるからなんだから基地を撤去してほしい、それから裁判を公開にしてほしい、犯人を厳罰にしなさい、それから捜査権や逮捕権、裁判権を民政府側に移してほしい、被害者に完全な損害賠償をせよということを要求したのですが、この軍人は、何年かの刑を軍の裁判で受けたけれども、本国に送還されてしまって、もうどうなったかわからぬ。これが沖繩で起こる犯罪のたいていの形でございますね。婦人や子供がたくさんこういう損害を受けているわけです。こういうことは、やはり基地があるためだというふうにお思いになりませんか、佐藤総理
  102. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この人道上の観点についてのいろいろの問題は、これはその基地、安全保障条約を承認するとしないとにかかわらず、同一の立場で、私ども皆さん方と同じ立場で、権利の確保、これについて十分要望するつもりでございます。御遠慮なしにそういう点はお話しください。
  103. 田中寿美子

    田中寿美子君 米軍基地があるからだとお思いになりませんかと言ったのですけれども、それは言いにくいかと思いますが、そこで、いままでの請求権に関していろいろ皆さん方が質問をされたことについて、ひとつ私は確認をもう一ぺんしておきたいと思うのですが、協定第四条で請求権をまず放棄した。これは国が協定の効力発生前のものは全部放棄するということが最初に書いてあって、そして例外として、合意議事録で六項目請求権を要求できる項目というのが出ておりますね。その中で、人身損害関係するところは三項、四項、五項——六項の「その他の請求権」というのもその範囲に入るかとも思うのですが、そこで協定四条で、米国の施政権下の米国人による作為または不作為から生ずる民事または刑事上の責任は問わない、こういうことになっておりますね。これは政府として放棄することであって、そして個人請求権は認めるということ、これは何回か福田外務大臣も言われた。沖繩人たちは非常にそういうたくさんの損害を受けてきたけれども、講和条約と同時に、まず平和条約の十九条の(a)でまた国の請求権は放棄したのですね、(a)項で。その場合もやはり個人請求権は生きていると、そういうことですね。
  104. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 講和前と講和後に分ける必要があるのです。講和後につきましては、米軍が引き続いてその補償の責めに任ずる、こういうことでございます。それから講和前のものにつきましては、講和後に布令が出まして、その布令で補償をしたのです。しかし、いろいろな事情で補償漏れがありました。それにつきましてはわが国がそれを救済をしようというので、ただいま法律案を提案いたしまして御審議願っておると、こういうことでございます。
  105. 田中寿美子

    田中寿美子君 その講和前の補償については、布令六十号というのを出したのも、あれは国が放棄したけれども県民が一生懸命になって要求したのですね、たくさんひどいことがあったから。それでその結果、講和前夫補償者連盟というのができて、その人たちが要求して、その結果布令六十号になって、幾らか補償するようになったわけですけれども、それでも一ぱい補償漏れがありますね。あの条件は、私言っている時間がありませんから、言いませんけれども、期限的にも短い期間であったり、それから区切られた期間の中に請求していなければだめだったり、たいへんめんどうくさい条件があるから、補償漏れが一ぱいあった。その補償漏れを今度は政府が支払うわけですね、防衛庁が支払うわけですね。それはさっきも見舞い金というのはおかしいという話だったけれども、そうしたら、佐藤総理だったと思いますが、請求権と考えてもいいようにおっしゃったけれども日本政府が払うのだったら請求権権利の主張じゃないわけです。請求権というのはアメリカに対する請求権ですから、どうしてもアメリカに対する請求権の請求はいろいろ条件がむずかしくてできない、あるいはアメリカがやる気がない、こういうところでやむを得ず国が補償するものだと、こういうふうに考えてよろしいですね。
  106. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) やはり親心と申しますか、当然、そういう補償漏れについては見舞い金ということばを使っておりますが、現実処理としては、布令六十号で補償をされたその程度のものと見合って、漏れた人たちにいたずらな損失にならないように考えていこう、こういう姿勢でいままででも答弁を申し上げておる次第であります。
  107. 田中寿美子

    田中寿美子君 そこで、講和前の補償漏れの件数と請求額はおわかりになりますか。
  108. 島田豊

    説明員(島田豊君) 琉球政府の資料によりますと、未補償者、これは四十六年の九月末現在でございますが、人員で三百八十名、申請額が六十四万七千八百二十二ドル九十六セントということでございます。
  109. 田中寿美子

    田中寿美子君 そこでお尋ねしたいことがあるんですけれども、これは大蔵大臣どうでしょう。みんなドル建てで講和前の補償漏れの請求がされておって、そして金額がきめられているわけですね。で、今度復帰してまいりますと、たいへんドルのレートが違うわけなんですけれども、こういうことは、これ防衛庁長官もだと思うんですけれども、ちゃんと考慮して金額をベースアップなさるおつもりなんでしょうか、それは。
  110. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いま概算要求になってきていますのは二億五千九百万という要求になっております。これは支払いの筋としましては、新しいレートで支払うのが筋だと思いますが、しかし布令六十号で前に払ってある人との均衡問題もございますので、この点については、もう少しこれは実際問題として考えなければならぬところがあるんじゃないかというふうに考えています。
  111. 田中寿美子

    田中寿美子君 ドルが三百六十円のときはそれでよかったんですけれども、今度それはたいへんな幅が出てくるわけですから、それはほんとうにいまの六十四万七千八百二十二ドル九十六セントという、これは計算し直していただかなきゃいけないと思うんですが、どうお思いでしょうか、防衛庁長官責任でしょう。
  112. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは十分考慮に値する問題だと思いますので、大蔵大臣と相談をしまして妥当なところにきめたいと思います。
  113. 田中寿美子

    田中寿美子君 そういたしますと、講和後の外国人損害賠償法によって補償されたもの、これもたいへん漏れが多いです。あの条件は、外国人損害賠償法を読みますと、親米的な人でなければいけないとか、満足して受け取る人だとか、たいへんあれは植民地的な法律だと思うんですね。ですから、これから漏れているものは一ぱいある。これに対して、防衛庁、やはり適当と思われるものは払うということになっているわけでしょう。これなんかも、これまでの支払いに見合ってとか、それから外国人損害賠償法は一万五千ドルを上限にしているわけです。これなんかはいまやっぱり交渉してもらわないとおかしいと思う。復帰までの間に受け取る場合ですね、一万五千ドルの値打ちというのはずっと落ちていると思います。それから最高が一万五千ドルで、最低はもっとずっと低いわけですね。そういうものを受け取るのに対しても、これは計算し直さなきゃいけないし、それから今後、親心とおっしゃったけれども、当然しなきゃならないことで、政府が講和発効後、返還までの間の外国人損害賠償法で賠償されることから漏れたものにいわゆる見舞い金を出すときにも、それと見合ったなんというのは、どっちに見合わせるんですか。円の価格で考えるようにしてもらわなきゃいけない。これは予算要求なんかやり直さなきゃならないところがたいへんあるんじゃないかと思いますが、いかがですか。
  114. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) いま大蔵大臣もこの問題については少し時間をかしてもらいたいと、こう言っておりましたが、私、御指摘の点はごもっともな点だと思うんです。通貨交換だけ済めばあとは新レートでいいというものではないようにも思えまするので、ちょっと時間をかしていただいて、現実に予算措置をするときまでにはしっかりとした結論に到達をしたい、こう思っております。
  115. 田中寿美子

    田中寿美子君 それはぜひやっていただかなければならないことだと思います、相当複雑だと思いますけれども。それで戦争のときの遺族というのは女子供が多いわけで、沖繩には非常に母子家庭が多うございます。それから共かせぎも多いし、子供を持って働いている女が非常に多いわけなんですが、そういう人の中に見舞い金を受け取る人も多いわけです。ですから十分その辺を考えていただかなければならないと思います。  そこで、この防衛庁特別措置法の中の第三条ですね、これの中で、「国は、沖繩において、昭和二十年八月十六日から昭和二十七年四月二十八日までの間に、」云々と書いてあるのですがね、布令六十号なんかは講和前という場合には昭和二十年八月十五日なんですよ。なぜこれここのところだけ十六日になっているのか私はお聞きしたいわけなんですがね、全部講和前とか講和後というときは昭和二十年八月十五日なんです。防衛庁のこの法案では昭和二十年八月十六日になっているんですね。これは故意にそうされたのでしょうか、ちょっと伺いたいのですけれども
  116. 島田豊

    説明員(島田豊君) 今回の法律案措置しようといたしますのは布令二十号の例に準じてやることになりますので、なるほど布令二十号ではそういう日付になっておりますが、これはまあ英語の読み方でございまして、アフターとかいうことばは正確に日本的に直しますと法律案に書いてあるようなことになりますので、実体的には布令六十号の場合とは全く同じでございます。
  117. 田中寿美子

    田中寿美子君 ということは、八月十五日からということですか。布令六十号なんかとか、いままでのは全部八月十五日と訳してありますね。じゃ、これは直せばいいんじゃありませんか。
  118. 島田豊

    説明員(島田豊君) 布令六十号は八月十六日からと、こういう趣旨のことでございますので、それと全く同じに取り扱ったわけでございます。
  119. 田中寿美子

    田中寿美子君 じゃ、布令六十号その他それまでに出ているのはみんな八月十五日だけれども、布令二十号が十六日だということですか。——それじゃね、ちょっともう一問。八月十五日の日に損害を受けたら、それはどうするのですか。
  120. 島田豊

    説明員(島田豊君) 八月十五日、まあ英語でアフターということばを使っておりますが、このアフターということばは八月十六日から、おそらく八月十五日はまだ戦闘状態が続いておりましたので、その関係で十六日から、日本流で言いますれば十六日から、こういうふうに布令がなっておるわけでございます。(「六月二十二日じゃないか沖繩は。八月じゃないよ。」と呼ぶ者あり)
  121. 田中寿美子

    田中寿美子君 それでね、私、いまの八月十五日以後に第一問題があるんです、いま森中さんもちょっと言われたけれども。実は、講和前の補償と講和後の補償ということを言われるけれども、そして講和前という場合は昭和二十年の八月十五日からあとというふうに言っておられるけれども沖繩は六月二十二日に終戦になったわけです。あそこは戦闘をやめたわけです。それからあとの沖繩における残虐行為は、これは米軍日本軍も両方やったようですね。最近「沖繩の証言」という本がたくさん出ておりますけれども現地人たち——きのう喜屋武先生が、自分は戦争の生き残りだとおっしゃって、証言ができる、証人だと言われたけれどもほんとうにまだ証人は一ぱいいるわけなんです。それで八月十五日以前の人身損害なんかはひどいものがありますね。私も、きょう、本は持って来ないけれども、一ヵ所に集結させて、そして射撃してしまったり、まあ日本軍も悪いことをしていますね、私は読むにたえないところがありました。たとえば上がって来た兵隊のために学校の校舎を慰安所に設けて、そして兵隊が行列をしていて、そして沖繩の娘を慰安の対象にして、二十八人目で死んでしまった、その娘は。こんなことがあるのですね。ですから講和前という場合には、その辺を一体どうするつもりなのか。戦争中にも——これはもうそこまで言っていると時間がありませんけれども、戦争中にも、戦争中の国際法規に触れるようなことをやっぱりアメリカもしている、そして上陸して来てから後もそういうことをやっている。もしそれを沖繩人たちが要求したら政府はどうなさるのですか。講和前というのは、あくまで昭和二十年八月十五日からあとのことだけしか言っていらっしゃらないが。
  122. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 御指摘の意味もよくわかりますが、一応従来は八月十五日以降と、こういうことになるわけでありまするが、現実に沖繩はもう早く降服したわけですから、そういう問題等についてはなお十分検討をしてみたいと思います。御意見はわかります。
  123. 田中寿美子

    田中寿美子君 検討なんということじゃあ困るのですね。総理大臣、いまおわかりになった——総理大臣もさっき残虐なことをされたとおっしゃるけれども、それは米軍施政権下のことをおっしゃっているのでしょうが、その前のことが一ぱいあるわけですね。これは米軍もあるし、日本軍もやっている。沖繩の県民に対してやっぱり両方とも。米軍に対しては請求権ということになるか、あるいは日本に対しても。これは前に在外資産の補償というようなことをやったでしょう。これは財産に関してやったわけですけれども、人間の生命やそれから生活を脅かしたことに関して、もしその人たちが請求してきたら、要求したら、これはどうなさいますか。
  124. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほどもお話しいたしましたように、戦中、戦後と、かように申しました。戦中はもちろんアメリカの兵もさることですが、日本兵の残虐行為も幾つもある、それはただいま御指摘になったような状態だと思います。過日、喜屋武君が、そういうことを自分はそれは証言してもいい、ここまでも言われております。私は、そういうようなことをも含めながら、ほんとう沖繩方々はお気の毒だと、これが本土防衛の第一線にみずから焦土と化したその沖繩で行なわれたと、かように考えますと、ほんとうに私どもはあたたかくこれを迎えなければならない、そういう結論に達するわけであります。私ども、この償いは償いのしかたがない、かように思う次第でございまして、ただいま言われるような点について、われわれもいかにすればいいか、そういうことは物質的に問題が片づく問題じゃない、かように私は基本的に考えるものであります。その気持ちでは、田中君と私の気持ちも同じだろう、かように思っております。
  125. 田中寿美子

    田中寿美子君 であればあるほど、基地からのがれたいという沖繩の人の気持ち、これをよくわかっていただくならば、今度の協定なんかもほんとうはああいう形で結んでいただきたくなかったということを私は意見として申し上げておきます。  それから請求権が与えられるものの中に、合意議事録の第四項目目に労働災害の補償があります。これはわりあいときちっと、米軍のもとで働いている人に対する災害の補償請求権としてきめているわけですが、それはただ、私がちょっと不審に思いますところは、米国が返還前に事由の発生した労働災害に関しては補償をする、そこまで言っているわけじゃないけれども、それに対して——説明書のほうですね、参考資料の中にそういう文章が出ておりますけれども、返還前に事故なら事故、あるいは病気の事由が発生したものに関しては返還後もアメリカが労働災害補償をずっと支払っていく、それから返還後に事由が発生したときには、これは本国の政府が払うということになっております。そこのところ、ちょっとその事由の発生というのは、返還前に起こって返還後にその現象があらわれるということがあるわけなんですが、その辺なんかをきちっと話し合いをしていられるのかどうか、労働大臣に伺いたい。
  126. 原健三郎

    国務大臣(原健三郎君) 返還前に労働災害が起こった場合においては、それは使用者であるアメリカ政府において労働災害を補償する、これはちゃんと文書で交換してきちっといたしております。  それから第二のお尋ねの、返還後にそういう災害の病気が起こってきたような場合、この場合においては日本の労災保険でこれは補償申し上げます。
  127. 田中寿美子

    田中寿美子君 それはわかっているのですけれどもね。じゃあその返還の前に原因があるということがあるでしょう。たとえばむち打ち症なんというのはあとになって起こってきたりするわけですね、あるいは内部疾患なんかもそうだと思うのですね。そのときはどうですか。
  128. 原健三郎

    国務大臣(原健三郎君) いまお尋ねの内部疾患あるいはむち打ち症のような、返還前にそういう災害があって、実際にあらわれてきたのは返還後であるというような場合においては、日本の労災保険で補償申し上げます。
  129. 田中寿美子

    田中寿美子君 そこがね、私、ちゃんと請求権を保証しているのに、そういうふうに譲らなければならないのか、おかしいのですね、もちろんこれによりますと、アメリカからちゃんとした職員を派遣して、補償に関しては、請求権に関しては事務所ができて、そうしてその事務を取り扱うようなことになっておりますね。これなんかについて、まだこまかい話し合いはできていないのかもしれませんけれども、向こうが補償すると請求権を保証しているものをこっちが譲る必要はないように思うので、その辺は相当強く、つまり返還前・に原因があったものについては、全部米軍のほうに支払わせるべきだと思うのですけれども、いかがですか。
  130. 原健三郎

    国務大臣(原健三郎君) お答え申し上げます。  返還後におきましては、米軍の担当官と日本の担当官において相談いたします。そうして事案のはっきりしたものはアメリカでやってもらうし、その他のことについても、どちらかにおいてきちっと話を煮詰めて、責任を分担してやるようになっております。
  131. 田中寿美子

    田中寿美子君 全部政令にまかせるものですから、まだきちんときめていないようですね。こういう問題をつっついていますと幾つでもありますので、これは私は、労災補償、これがとれただけよかったと思います。非常にきちんと請求権をとったので、とろうと思えばとれるんじゃないかという気がするのですが、もっとほかのほうでもですね。それはとったのはよかったと思うのですが、しかし返還後にそういう話し合いが残っている部門に関しては、やっぱり対等の立場で向こうに請求していくということをぜひ実行していっていただきたいと思います、いかがですか。
  132. 原健三郎

    国務大臣(原健三郎君) 田中先生御指摘のように、対等の立場で担当官同士責任をもって善処するように運ぶ考えであります。
  133. 田中寿美子

    田中寿美子君 それでは次に、女、子供に対する犯罪まあ米軍軍人・軍属、それから軍隊そのものがあるということによって起こりますところの犯罪とか損害ですね、不法行為。そういうものを少し具体的に申し上げて、これはどういうふうにされるかということを伺いたいわけなんです。  犯罪統計、これは琉球政府の法務局のですか、警察局のですか、こういうものを見ますとたいへん少ないのです。これは米国軍隊の軍人及び軍属の不法行為に基づく損害賠償の統計です。ちゃんと賠償を要求したものだけの統計を見ますと非常に数が少ないですね。このことは非常に請求しにくいし、それから賠償もしてもらえないケースが非常に多いんであって、これを見ただけで犯罪が少ないなんて考えたら大間違いだと思います。  で、一九六一年から六八年まで、七年間の統計だけで見ましても、二十数件賠償しているのですがね、米軍のほうが、その中で、たとえばもう女、子供が多いですね。これは六一年ですが、上運転カメさん、五十八歳、この人は川崎での飛行機の墜落事故で命を失っている。それからコザ市の交通事故で死亡した山城ユリコさん、松田チエコさん、これは十一歳と十二歳の女の子です。それからトレーラーの落下事故で棚原タカ子さん十一歳。宜野湾の交通事故で菅山シゲ子さん、五歳。金武村におけるホステス殺し、これは有名な話なんです、上原シズさんですね。三十四歳です。それから読谷の主婦殺し、伊波とみさん、五十二歳。コザ市におけるホステス殺し、ホステス殺しというのが一ぱいあるのですけれども、賠償されているのはこれ一つです。それから交通事故による死亡というのは、これはトレーラーが突っ込んできたりして死亡して、そして、そういう場合にそのまま逃げられてしまったり、それから公務執行中だということで犯罪にならなかったりしているのが一ぱい。これは女の人や子供が一ぱいあります。それで数が少ないということは——賠償された件数が少ないということは、迷宮入りしているものが一ぱいあるということなんですね。犯罪件数、これは私は政府委員の方に尋ねますと、これはみんな総理府総務長官のところの責任なんだから、自分たちはあまり関係ないように言われるのですけれども復帰してまいりましたあと、法務省やら、警察庁やら、公安委員会なんかみんな責任を持たなければなりませんので、もっと本気で調べてもらいたいわけなんです。あれは軍政下で、施政権下でつかみにくいということがあるかもしれません。ですから出ている統計は本物じゃないというふうに思われるのです。その中で見てもどうですか、非常に凶悪犯がどんどんふえている。それから強盗、強姦、盗犯、この検挙率は幾らですか。公安委員長さんおわかりですか。
  134. 中村寅太

    国務大臣(中村寅太君) 刑事局長から答えさしていただきます。
  135. 田中寿美子

    田中寿美子君 言います。検挙率がたいへん低いのですね、凶悪犯一七・五%です。あるいは二〇%、その次の年は——これは七〇年。それで民間の犯罪のほうの検挙率は、凶悪犯は七九%ですね。米軍の軍人のほうの検挙率は二〇・三%、このくらいつかまえにくいのです。なぜつかまえられないのか、その理由をおっしゃってください。
  136. 高松敬治

    説明員(高松敬治君) 現在琉球警察の統計によりますと、確かに凶悪犯についての検挙率は民間のものにつきましても七九%、本土の検挙率に比べて約一〇%低い。それから米軍人の関係の検挙率についても、これは非常に差があるわけでございます。一つは、それは現在、琉球の警察は米軍人に対する犯罪の捜査権を持っていない、ごく限られたものしかそれがないということ。それから、まあ米軍自身として検挙された率というものは琉球警察にはわかっていない点がある。こういうふうなことであろうと、かように考えております。
  137. 田中寿美子

    田中寿美子君 いま御説明がありましたように、米軍人・軍属の犯罪に対して、これは捜査権が非常に限られているわけですね。それで現場で、現行犯のところで警察官がつかまえなければいけないし、それときに、もしアメリカのほうのMPがいたら一緒にやれるわけですね、あるいはMPがいない場合にはつかまえにくいということですね。本人の面前で犯罪行為が行なわれて、そしてMPのいないときだけしか逮捕しない。MPがいたらMPがつかまえる。そしてそれは米軍に連れていってしまうわけです。ですからつかまえにくいわけですね。それで、こういうような状況の中で、たくさんの犯罪の犠牲者が出ているわけなんです。一体、そういう人たちをどうするかということなんです。  それで私は、一、二の例を申しますけれども、有名なメードの殺人事件です。これは迷宮入りしてしまっているから件数の中に、賠償件数なんかとか犯罪統計の中に出てこない。これは一九六八年の三月、米軍基地の兵舎の中の浴室でメードが死んだわけですね。これは渡慶次キク子さんという人、三十五歳。これの現場検証なんというのはCIDがやって、二時間後に警察を呼んで、死体の解剖だって家族も立ち会わしてくれない。そうして全身に打撲傷があったり、たくさんのけがをしている。それにもかかわらず、そして容疑者らしきものがわかっているのに、その容疑者の身体検査なんということはもちろん許されもしない。そしてその容疑者はアメリカに帰っていってしまう。こういうことを数えあげると限りなくたくさんの事例があるわけなんです。私がお伺いしたいのは、こういうふうなことをされた人たちに、今度の返還後、何か救済の道がありますか、法務大臣いかがですか、人権の問題です。
  138. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 結局、やはり請求権の問題になるのじゃないかと思います。
  139. 田中寿美子

    田中寿美子君 どうするおつもりですか。請求できますか、請求権の問題になりますか、これ。一ぱいあります、もし言うならば。
  140. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 犯罪を構成しておれば、それに対して外国人賠償法、そういうようなものが適用されるわけです。犯罪になっていないということになりますと、これはなかなかそう法務関係としては救済できないと、こういうことになると思います。
  141. 田中寿美子

    田中寿美子君 私のお尋ねしているのは、返還後のことなんですよ。外国人賠償法というのは返還時までしかこれは適用されないものでしょう。
  142. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 返還後であれば当然われわれとしましてはその犯人なり何なりを、要するに公務中のものであればアメリカの裁判権とこちらの裁判権とが競合する場合があります。しかし、公務中であれば向こうのものが優先する、こういうことになるわけであります。
  143. 田中寿美子

    田中寿美子君 たいへん答えは当たっていないわけなんで、つまり、問題は、施設権下で起こったのです。だけども、裁判も何もできない状況で、犯人は本国に帰してしまっている、これは一ぱいありますよ。女給さん殺しなんというのは数え切れないほど。みんなこれはベッドで殺しているのですよ。米軍の軍人なんですね。それだけれども、みんなこれは幾ら要求したって未解決のまま葬り去られている。これは、こういうものに対して返還後裁判を起こせますか。
  144. 辻辰三郎

    説明員(辻辰三郎君) 沖繩におります米国軍人が復帰前に沖繩で犯しました犯罪につきましては、復帰後といえども日本国としては裁判権はございません。
  145. 田中寿美子

    田中寿美子君 ですから、裁判権がないわけでしょう。そうすると、被害者ばっかりあって、加害者がなくて、この被害者たちに救済する道はないかということを聞いているわけで、どなたかお答えいただきたい。外務大臣どうですか、外務大臣
  146. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) それこそむずかしい請求権問題の一つ、しかもその中でも非常に扱いのむずかしい問題かと思います、事実がはっきりしないですから。しかしまあ事実が……。
  147. 田中寿美子

    田中寿美子君 事実ははっきりしているんですよ。
  148. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) その後、日本の手によってはっきりするというようなことになりますれば、それに応じて何らかの措置をするということにしなきゃならぬと思うのです。これはもう当然のことだと思います。ただ、事実の確認ですね。これがなかなかむずかしい問題じゃないか、そんな感じがするわけです。
  149. 田中寿美子

    田中寿美子君 事実の確認をさせないわけですよね、施政権下で。事実殺されているけれども、それをみんな向こうは拒否して、そして犯人とおぼしき者はみんな本国に帰しているんですから、返還後といえども、これは事実の確認のしかたはないだろうと思うんです。そういう場合に、この人たちが泣き寝入りして、この遺族もそのままなんでしょうか。それとも、それには何か方法を講じなさいますか。
  150. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) さような問題も当方においてできる限りの調査をしまして、これはどうもお気の毒な状態だなという判断でありますれば、それに応じた措置を講ずると、こういうふうにいたすべきかと考えます。
  151. 田中寿美子

    田中寿美子君 だから、福田外相は適切な措置というたいへん便利なことばをいつも使っていらっしゃるんですね。これに対して適切な措置というのは、もうなみなみならぬことです。そして私は、やっぱりこれは、公安委員会も警察庁も、それから法務省も人権の問題として本気に取り組んでいただきたいし、そういう人たちの声を聞いて、もう一ぺん人権を取り戻すための努力をしていただきたいし、それからこれに対する損害の補償というようなことが法律的に成り立たないんなら、別途何か国は、戦前、戦後通じて非常なひどい目にあってきている者に対する救済を考えてほしいと思うんです。総理大臣いかがですか。
  152. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 事情はよくわかりますし、いま田中君の御要望も私は当然のことだろうと、かように思いますので、そういう事件に当面すれば、その事前の対米折衝の間において十分尽くして、なお米国側においてそれについての事態の解決に誠意がないような場合は、それは日本政府がそういう方に対して十二分に慰めると、こういう措置をとりたいと思っております。
  153. 田中寿美子

    田中寿美子君 この種の問題で、刑事事件じゃなくて、民事的なものも一ぱいあるんです、実は。ですから、請求権の問題なども数限りなくあって、適切な措置をとるとおっしゃったけれども、ぜひ外務大臣もよく頭に入れていただきたいと思って、私はこの婦人の問題をとりたてて申し上げているわけですね。  沖繩には置き去り妻というのがあります。特殊な名前ですね。置き去られてしまった妻、内縁関係アメリカの軍人と一緒にいて子供を持つ。そして認知の要求をしてもいない。そうして養育料も慰謝料も何にも払わないで帰ってしまうというのが一ぱいある。だから沖繩の母子世帯の比率はたいへんなものですし、それからいわゆる未婚の母といいまして、結婚しないで子供を生んでいる母親の比率なんか、本土にはわずか一・何%なんですけれども沖繩は一九%もいる。このくらいあるわけですね。で、こういうものの中に、たとえば提訴中のものもあります。これはある一人の婦人ですけれども米軍の軍人と夫婦生活に入って子供を生んだ。認知の要求をしたら認知したわけですね。一たん国に帰ってから結婚すると言って帰って、呼んでくれなくて、向こうで結婚してしまった。こういうような問題に対して、アメリカまで出ていって裁判をすることはできないですね。こういうのはどういうふうにしてくださいますか。あらためてアメリカで、アメリカ人ですからアメリカで裁判をしなければいけない。国がそれのかわりに何かやってくださいますか。法務省——人権擁護局ですか。
  154. 川島一郎

    説明員(川島一郎君) 沖繩におりまして、そうして結婚した相手がアメリカに帰っておると、まあこの場合には離婚をしたいということになろうかと思いますが、この離婚をするには、まあ相手が合意しないと、承諾しないという場合には、これは離婚の訴えを起こして、訴訟によって離婚するわけでございまして、この……。
  155. 田中寿美子

    田中寿美子君 結婚していないのですよ、正式に。
  156. 川島一郎

    説明員(川島一郎君) ああ、正式に結婚していないわけですか。その場合には離婚の問題は起こりませんので……。
  157. 田中寿美子

    田中寿美子君 あたりまえです。
  158. 川島一郎

    説明員(川島一郎君) 問題は慰謝料の請求ということになろうと思います。この慰謝料の請求は、まあ相手がアメリカにおりますと、これはやはりアメリカで起こさなくちゃならないということになろうと思います。
  159. 田中寿美子

    田中寿美子君 どうやって助けますか。法務省はどうやって助けてくださるのですか、こういう人は。
  160. 川島一郎

    説明員(川島一郎君) これは沖繩に限りませんで、すべて個人関係の問題として、何らかの方法によって相手に請求するという以外には特別な措置というものはないわけでございます。
  161. 田中寿美子

    田中寿美子君 人権擁護局なんかは、そういうことをするところじゃないですか。
  162. 影山勇

    説明員(影山勇君) 人権擁護の立場からいたしますと、御承知のように、人権擁護委員あるいは法務局の職員がおりまして、これに、そういう場合にどういう方法をとったらいいかということを指示することを——そういう形で援助をいたしております。  なお、訴訟のような場合に、非常に貧困者の場合には、訴訟援助ということを、これは弁護士会が設立しております財団法人の法律扶助協会というところで取り扱うことになっておる。そうしてその団体には政府から補助金を出すという仕組みになっております。
  163. 田中寿美子

    田中寿美子君 その一般的なことは承知してますけどね、まあアメリカに行ってしまった人に人権擁護局がそれを訴訟を起こす費用まで手伝ってくださるかどうかというと、非常にまあ困難なことで、結局みんな泣き寝入りしてしまうという、そういう現実だということを知っていただきたいわけなんです。  そこで、人権に関連して、私は売春の問題に少し触れたいと思うのですが、沖繩基地の密度が非常に高いものですから、産業の構造が自然サービス業のほうに傾斜しております。卸売り、小売り、サービス業、第三次産業のほうに傾斜しておるわけで、それで売春が非常に多い。売春の統計を見ますとですね、法務局がとられた、あるいは警察局ですかがとられた統計で見ますと、売春婦とおぼしき者というのが七千三百何人か出ています。で、そのほかに、まあ実際には一万人近くの者が売春によってかせがなきやならない。それで母子世帯もたいへん多いわけなんです。で、この間佐々木委員がその売春事犯に対する政策をお聞きになっておる。私はそういう観点じゃなくてですね、売春防止法というのがもうすでに本土とほとんど同じものが沖繩でもできたわけです。で、完全に施行されるのが来年の七月一日からですね。で、実は私は本土の売春防止法ができるときに、事務局的な仕事をした関係で、わりとよく知っているのですけれども、あの当時私たちが考えたことは、このすべてのものが商品化されている資本主義の社会で、肉体を売る女の人が出てくるということを、これをほんとうに根本的に防止するのには、みんなが健康な仕事があって生活が保障されなければならないということがあると思うんです。ですから、ねらったのは、女の人に売春をさせて、肉体を売らせて、それを搾取する管理業者ですね、管理売春業者、これを罰することを目的にしておったものなんですね。で、私も沖繩に何回か行って——あそこには吉原がありますね、いまだに。新橋もあれば吉原もある。赤線地域です。そして、そのほかにコザには米軍人、白人と黒人を相手にするバーやキャバレーがいろいろ分かれている。売春防止法が直ちに適用される場所というのは、その吉原とかいわゆる赤線地域の業者たちだと思うんですね。そこでそういう業をやる女の人も、これは保護処分を受けるようになるわけなんです。沖繩の売春の中で、私は一番問題なのは、一体この業者の対策をどうするのかということです。この業者は、赤線が閉鎖されても別にちっとも困らないだろう。バーやキャバレーをやればいいわけです。そしてバーやキャバレーの中で個人的な契約で売春をすることができるわけです。それで、本土の場合は、その業者に転換させるための資金の融資をしたわけなんです。数を見ますと、昭和三十四年でしたか、法務省の統計で見たら一億一千何百万を転業資金に使った。今度も業者がそういう転廃業の資金を要求しているかどうか、そしてそれを出すつもりなのかどうかというのが一点です。まず、それから伺いたいと思います。
  164. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) では、私のほうから……。そういう店をそのままで、いわゆる管理売春業者が、売春というのは禁止されますから、まあ普通のバー、キャバレーになる場合ですね、いまはアメリカ人相手だけのいろんな店内装備と申しますか、そういうような装飾等でなっておりますから、普通のいわゆる日本人がなかなか立ち入らない形になっているわけです。したがって、私が聞いております範囲では、米軍が撤退をした関係でほとんど閉店状態になっておるところを、普通のバー、キャバレーにしたい、そういう場合の店内改装を日本人向きに改装するための費用というものが、金融公庫の場合に、沖繩の特殊事情は各種ございますが、その対象になるだろうかという相談がありました。私は、それらのものがやはりサービス業として、管理売春でなくて、そして日本人向きの店内改装費が正当であるという場合には、その対象になるであろうということをいま回答いたしておりますが、金融公庫ではそのような場合も予定しておかなければならないやはり沖繩の特殊事情かと思っております。
  165. 田中寿美子

    田中寿美子君 どのくらいの予算要求をしているかおわかりですか。
  166. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) この部分だけ幾らという、そんな正確な要求も、実はあまり見通しが立ちません。したがって金融公庫法の読み方の上から見ますと、基地の縮小あるいはまた本土法令、あるいは復帰に伴ういろんな変化によって転業を余儀なくされる者、あるいは廃業する者、失業する者、それらの人たちの転業資金あるいは従事者であった者の独立資金——もちろんその中には、特殊婦人といわれる人たちの労働政策上の婦人対策の上からは別にして、職業のための、自立のための援助というようなものも総合的に含んでおりますので、業者対策に幾らというふうにはいまあまり計算ができておりません。
  167. 田中寿美子

    田中寿美子君 それで、こういう問題はよく調べてもらいたいわけなんです。で、営業数五千百十九、これは風俗営業、旅館、飲食店で実際にそういう接客婦を雇っているところですね、警察局の調査によりますと、従業員が一万五千五百七十、売春婦と思われるものが七千三百六十二、そのうち管理売春されているものが千三百というような数字を私は現地からもらったんです。それで、特にこれは那覇、コザ、石川、嘉手納、普天間、具志川、宮古などに多いんですね。基地の多いところにやはり多いわけなんです。ところが、業者に対する転業資金の融資というようなことをするのには、よほどほんとうのことを調べてもらわないと私はたいへん危険だと思っております。というのは、前借金の制度がもう非常に沖繩では広がっているわけですね。警察局の調べはたいへんあいまいで、最高は吉原あたりで二千ドル、最低二百ドルなんというようなこと調べているようですけれども、具体的な事例を私向こうの人権協会の資料で見ますと、これはたいへんなことですね。コザの吉原のバーに初め二百ドルの前借金——この前借金というのは売春をするということを目的にして前借させているわけです。そして、その家に入れたあと、衣類から生活用具を買うその金はみんな借金に入れます。それから、前借をしているからといって給料を少しも与えないで、生活費として五十ドルずつまた借金に加えていっている。だから、六月に入って十月には一千ドルになってしまっているんですね、二百ドルの前借金が。それで転々とバーをかわっていくたびに追っかけていって暴力団がさがしてくる。つかまえてくるための捜査料二百ドル、これもまた前借金の中に入れてしまう。そのあげくの果てには四千八十六ドルになっちゃったんです、一年くらいの間に。   〔委員長退席、理事丸茂重貞君着席〕 こういう事例がもう山のようにあるわけなんです。  法務大臣の御判断を伺いたいんですけど、一体どこまで前借金——前借金というのは本土では最高裁の判決で棒引きにしたんです、売春の問題のときに。ですから、これは労働法規の中にもあるように、人を強制労働さしちゃいけないとか、公序良俗に反するとか、一ぱいいろんな理由から棒引きにさせているんですね。それで、沖繩の場合は非常に複雑だと思います。最初売春させるというのは二百ドル、そのあといろいろな生活資金やら何かを加えていっているわけでしょう。着物を買うたびに加えるとか、あるいは食費といって五十ドルずつ加えていく。逃げたら逃げ賃——逃げ賃というより捜査賃ですね、二百ドル入れる。こういうふうなことをして、一番ひどい人は七千八百ドルまで上がっちゃった。こんな大きなお金を女の人がしょって、そうして、売春防止法が完全施行されたからといって自由になるかどうか。これを一体どういうふうにして帳消しいたします。どこまで前借金とみなして棒引きしてくださるか。
  168. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ただいまお聞きしておるようなものについて考えますと、これはもちろん消費貸借で金を貸したわけでありますが、公序良俗に反しますから無効のものだというふうに考えていかなければならぬと思いますが、ほんとうの実費賠償というようなものがあるかどうか、ちょっといまのお話ではあまりないような感じがいたします。
  169. 田中寿美子

    田中寿美子君 ちょっと意味がわかりませんでしたけれども、棒引きにできますか、どうですか。
  170. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 返還請求権がないわけですね、雇い主のほうからいえば。返してくれという請求権はないわけですね。要するに棒引きだと思います。
  171. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうしますと、棒引きにしてくれということを婦人のほうが要求できますか。
  172. 川島一郎

    説明員(川島一郎君) 売春を行なうことを条件として金を貸したということになりますと、売春行為そのものがこれは公の秩序に反する、良俗に反する行為でございますから、その契約自体が無効になるというふうに思われます。それとまあいわば一体的に金を貸した、まあ前借金を渡したということは、これは消費貸借でございますが、この消費貸借契約と、それから売春をするという契約、これは不可分に結びついておりますので、両方とも無効であると、こういうふうに考えられるわけでございます。  で、判例といたしましては、昭和三十年に、これは売春行為ではございませんけれども、酌婦としての雇用契約、これが公序良俗に反して無効である場合には、それとまあ一体をなして、いわばその酌婦としての働きによって得た収入から前借金を返していく、こういう契約はすべて無効である。で、最初に渡した前借金というのは、これは民法七百八条の不法原因給付に当たるから、この返還も請求できないと、こういう判例がございます。この判例の趣旨から考えますと、ただいま御質問になっておりますような場合には、その契約はすべて無効であり、前借金の返還を求めることはできないと、こういうふうに考えられるわけでございます。
  173. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうしますと、いまあの辺のサービス関係で働いている婦人の中には、もうたくさんの借金でがんじがらめになっていて、売春行為からのがれられない人たちがたくさんいるわけですが、それのそういう借金に関しては、法務省の指導で、業者からは請求させない、棒引きにさせるということをお約束してくださいますか。
  174. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 返還後についてはもう当然やります。また、現在でも沖繩にもすでに売春禁止法はできておるわけでありますから、おそらく琉球政府も人権擁護委員か何かを使って、そういうことを明らかに宣伝すべきだと思っております。
  175. 田中寿美子

    田中寿美子君 まあ法務省、あんまり沖繩のそういう婦人の人権問題について深く携わっていらっしゃらないというか、調査が不十分なような気がするのですね。ぜひよくこれは調べていただきたいのです。いまのような前借金、それからこれは労働基準法に照らしても、前借の金と賃金と相殺しちゃいけないのでしょう、労働大臣。それから強制労働をさせてもいけないという法律が幾つも重なっておりますから、私はそういうひどい借金から解放してやらなければ女性は楽にならない。ただ問題は、しかし業者はさっきのように企業の転換だといって融資を求めてくると思うのです。ですからその辺を私はよく調べてほしいというのです。それを調べるのはどなた、どこですか。   〔理事丸茂重貞君退席、委員長着席〕 業者の転換は、ほんとうに転換するのか、あるいは擬装転換で、やはり女の人を使っていくのか、そのための店舗の改装に金を貸せというようなことになるのかどうかですね。
  176. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 総括しては沖繩振興開発金融公庫法案でございますから、いま、金融公庫ができればそういうことになると思いますが、まあ環衛等の予算の範囲の中での問題であろうと思いますけれども、それらのいま棒引きしたものは、それはいわゆる貸し出しをいたします際に、それがどのようなことに使われるかということがはっきり確認されなければ貸し出しができないわけでありますから、その対象にはならないということであります。
  177. 田中寿美子

    田中寿美子君 そのようにぜひほんとうにやってもらいたいと思います。ただ何度も言いますように、米軍基地があったら、こういう業態はなくならないということですね。ですからいまの本土だって、そういうことはたくさんありますように、ほんとうにそういうものをなくすためには、たくさんのことをしなければいけないので、つかまった売春婦を保護処分にして更生指導することも大事ですけれども、非常に問題は基地であるがために起こる、そういう意味の人権侵害がたくさんありますので、私は法務省がぜひもっともっと力を入れてほしいと思います。それから公安委員会なんかも十分実態を把握していただきたいということを希望いたします。  次に、少し労働の問題をお尋ねしたいと思うのですが、沖繩の労働者というのは、本土では戦後すぐに憲法もでき、労働基準法もでき、労働三法ができて権利が守られたのですけれども、ほったらかされていた状況の中で、自分たちで一つ一つ権利を獲得してきたものでございますね。ことに軍労働者なんかというのは、布令百十六号、悪名高い布令百十六号といわれておりましたけれども、あのもとで非常ないろいろ圧迫を受けて、労働基本権は否定されてきたわけですけれども、どうしてもこれは基地があまりたくさんあるということから、産業がゆがんでおりますですね。どうしてもサービス関係だとか、卸売り、小売り、基地に依存するところの産業や職業が多くならざるを得ないと思います。これに対して、新しく開発していく、雇用を拡大していくということも盛んにおっしゃるけれども、そういうように、一体簡単にできるかということを私は非常に心配しております。その労働者の中でも女性は非常にサービス関係に働いております。それからお店や卸売り業、小売り業に働いているわけですが、そういうところの女子労働者を含めて、一体労働省が、失業者を吸収するという方針を立てていらっしゃるのですけれども——五千人ずつですか、失業対策の人員を考えていらっしゃるようですが、全体としてどれくらいの失業者が出て、そうしてどういう方向に、公共事業というけれども、それを向けていこうとしているのか、それを伺いたいと思います。
  178. 原健三郎

    国務大臣(原健三郎君) 基地が縮小されるし、その他制度が法律によって変わってまいります。それで、それらによって当然離職者が発生するということは予想されます。それで幾ら出ますかということは非常にむずかしいので、労働省でも鋭意それを調査研究を進めてまいりました。大体復帰後直ちに——どれほど基地が縮小されるのか、アメリカ軍が帰るのか等々のことがはっきりいたしませんので、なかなかその離職者の数は非常に把握することが困難でございますが、現在、直接米軍基地や制度の変更によって影響をこうむる従業員の数というのは、およそ五万でございます。これが私どもの見るところにおいては、まず一割程度が出るのではないだろうかと、こういうことを考えております。現在沖繩で昭和四十六年度平均で、完全失業保険の受給者というのは二千二百人くらいになっております。こういうところからこういう失業数が出るのであろうということを考えて、いま対策を講じておるところでございます。
  179. 田中寿美子

    田中寿美子君 米軍はあまり減らないですね。昨日も喜屋武先生がおっしゃっていましたけれども、パッカード国防次官がアメリカの上院の外交小委員会で発言しているところによりますと、現在米軍五万、一体どれくらい減らすのかと言われたら二千七、八百人くらいしか減らしません。そうすると、米軍基地機能は縮小するわけではない。人員がそんなに減らせるはずのものではないけれども、しかし合理化することによって、あるいは自衛隊を派遣することによって、一部補充もできるだろう。あるいは防衛施設局があっちに行くから、本土のほうからも何人か行くだろう、こういうことになるかと思うのですが、それにもかかわらず軍のほうでは、昨年も、ことしも、解雇通告が出ておりますね。ことし三千人ですか、昨年二千五百人ですか。で、労働省が、一体幾ら離職者が出るかというのをつかめないのは、私は、もうそれは無理ないと思うのです。あたりまえだろうと思う。というのは、一体、その軍労働者を、軍の機能を縮小しもしないで、そんなに減らせるかということ。問題は第一種、第二種、第三種、第四種軍労働者とありますけれども、一種、二種、つまり米軍が賃金を支払わなければならない労働者を、四種に切りかえて請負業者のほうにおろしていってしまう、こういうやり方をしていると思うのですね。  それで私は、軍労働者の問題は、もうちょっとあとで質問を、時間の関係でしたいと思いますけれども、その前に、女子労働者の問題ですね。  女子労働者は、ちょうど本土でもそうなんですけれども、賃金格差がありまして、男性の五三・二%ですか、いま平均の賃金が、沖繩で八十八ドルですか、三万一千六百八十円、三百六十円換算で。で、男子が百十九ドル、四万二千八百四十円。これは七〇年の賃金です。で、沖繩の婦人というのは、非常によく働きます。これは山中長官なんかよく御存じだと思いますが、共かせぎが多うございます。それから母子家庭が多いから、みんな低所得ですから、みんな働かなければならない。それから市場なんかにも那覇の中央のあの川の上の、ガーブ川の市場なんか、みんな女の人が自分でつくった縫製品を持ってきて売るというようなことをして、働いているわけなんです。そこで、こういう女子労働者だけじゃない、男子の労働者とも、本土とは格差があるわけなんですけれども、賃金のこの格差を、一体公務員の場合や軍労働者の場合は、私は、本土並みにある期間の間にするんだろうと思うのですけれども、民間のそういう賃金の低いのをどうやって引き上げるおつもりなのか。これは、労働大臣、何かいい案がおありになりますか。非常に格差がありますね。
  180. 原健三郎

    国務大臣(原健三郎君) いまお尋ねのように、御指示にありましたように、男子勤労者と女子の勤労者で、沖繩においてはことに格差が多いのでございます。まことに残念なことでございますが……。  それで私ども復帰後に婦人勤労者の賃金の男子との格差を少なくするために、女子の賃金の上昇をはかるために考えておることは、第一は、この婦人労働に対する適正な一般の人の認識をもっと深めるような啓蒙とか、行政指導をやっていきたい。  第二には、いわゆる婦人に対してもう少し、何と申しますか、能力を開発していきたい。それには職業訓練を強化したい。それで、総合職業訓練所も一カ所新設するとか、婦人のたとえば和裁、洋裁、ミシンその他タイプライター等々の業種を今度ふやして、職業訓練を強化していく考えであります。  それから、田中さんよく御承知のように、労働基準法第四条には、男女同一賃金の原則というのがございます。これが適用されますので、厳正な監督をいたし、行政指導も強くやっていきたい、こう思っております。
  181. 田中寿美子

    田中寿美子君 私がそもそも言いたいことを先おっしゃいましたけど、でも、私がお尋ねしたことは、女子のことだけではないんで、全体の民間の賃金が非常に低いのだけれども、これを本土並みに引き上げていくのは容易なことじゃないが、何か特別な政策を講じるんだろうかということをお伺いしたいわけです。これは、やっぱり山中長官でしょうか。
  182. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは、今後沖繩の振興開発を設計する上において、やはり労働集約型の産業というものに重点を置いていかなければならないと思います。まあドル・ショック等の影響によって松下電器産業あたりが出なくなった、ちょっとストップ、足踏みしているということはたいへん残念でありますけれども、ああいうものは、やはり女子労務者のほうがほとんど大部分を占めるであろうと思われる職種でございますし、そういうもの等をなるべくよけい考えながらいけば、沖繩の婦人の人たちは、時には糸満あたりは形勢が逆転しておりまして、昔から婦人のほうがたくましい生活力と申しますか、家計も全部にぎっているというようなこと等もあって、本土よりもむしろ女性の働く能力あるいは力というものが慣習的に相当ございますから、そういうものがやはり沖繩において活用されるような振興計画をつくっていきたいものだと考えております。
  183. 田中寿美子

    田中寿美子君 私はいま、女子労働者だけのことでなくお伺いしているわけなんですけれども、それで本土並みに民間企業の賃金を上げるということは容易なことでないと思いますけれども、それじゃたとえば軍労働者なんかやっぱりこれもドルでもらっているわけなんですが、これはいつの期間かにやっぱりベースアップしていくのか、返還のときにドルの関係でこれも変えなきゃならないものでしょう。そうすると、本土並みの賃金体系にして、いままでのドルの賃金は全部御破算にしてしまうわけですか。
  184. 島田豊

    説明員(島田豊君) 現在軍労働者につきましては、復帰本土並みのいわゆる間接雇用形態に切りかえるということで、日米間で協議をいたしておりますが、ただいまの円・ドルの関係につきましては、私どもとしても米側と十分協議をいたしてまいりたいと思いますが、まだこの問題につきましては結論を得ておりません。関係機関と十分今後協議してまいりたいと考えております。
  185. 田中寿美子

    田中寿美子君 それで女子労働者の職場で、私は非常に注意してもらいたい職場が幾つかありますので、そのことを申し上げたいと思いますが、これ沖繩の振興開発関係で自由貿易地域をつくろうということを言っていらっしゃいますね。私も、保税加工貿易地帯というふうに向こうで呼ばれておりましたが、見に行ったことがありますけれども、ちょうどトランジスターラジオの組み立てをしておったのです。これは本土の部品を入れて、アメリカのバイヤーが沖繩の安い労働婦人を使って、そして沖繩の企業家がやっている。税関の外で、三角貿易で、あそこからアメリカを経由してベトナムや、朝鮮やなんかにいっておりました。最近調べてみましたら、これがふえていっておりますね。私が見ました当時は、トランジスターラジオとか、グローブ、カメラなんか——いまはくつ下とか、だいぶふえていっておる。そして政府の方針も自由貿易地域を広げていこうという方針でございますね。こういうところでは臨時雇用のような形で、男子時間給十八セント、女子十七セントというようなことで非常に低かったわけです。身分の保障も何もなかった、雇用契約もちゃんとしていない、こういうふうな状況だったわけなんですが、こういうところをよく監督してもらわないと、自由貿易地域というと、香港かなんかのように、何かはなやかな歓楽地帯でもつくり、外国資本がどんどん出てきて、沖繩の経済に寄与するかのような考え方があるんじゃないかと思うのですけれども、どうですか、それは。
  186. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) なるほど会社の数はいまふえたのですが、その後倒産がまたありまして、実際にはどうも那覇港のそばの自由貿易地域というものは、いまの形態ではむずかしいような気がしますが、しかし復帰後あるわけですから、保税地域にしなければならぬと思いますが、これから考えますものは、決して低賃金地域において考えられたような自由貿易地域ではなくて、税制その他の恩典をその特定の地域に集中的にやることによって、沖繩において雇用事情に貢献し、そして付加価値が沖繩に落ちていく、労賃も含めてですね。そういう意味で、まあそうたいして、国全体としてはそこまでしなくても、輸出振興にもつながるわけですけれども、そこまでしなくてもいい環境にありますが、現在あることと、沖繩が持っております日本の一番南の立地条件ということを考えまして、もちろんやるときには、その場所をきめるについても、関係地域の市町村長の意見を聞いて、知事がここの場所ならよろしいというようなことをやった場合に、場合によっては全額国で埋め立てなどをいたしまして、それを無償で貸し付けたりすることもあり得ますので、これは来年は調査費でございますから、法律では、別に定める法律によって特殊法人みたいなものでやるかもしれない、こういうことを書いてございますので、いまのような形態でそのままやっていこうという気持ちはございません。なるべくいままでの概念よりか進んだものにしてみたいと考えております。
  187. 田中寿美子

    田中寿美子君 沖繩は資源が少ないとか、産業がなかなか進出して来ないとかいうことで、前に大来ミッションがアメリカの民政府の依頼によって調査したときも、自由貿易地域をつくれというような勧告をしているんで、政府もその方針だと思いますけれども、これが本土の、あるいは沖繩の地場産業を圧迫するようなことがないようにすることと、私が特に皆さんによく見ていただきたいと思うのは、そういうところの労働条件というものも完全に監督を強化してほしい。で、このことはもう少しあと、ほかのものと一緒に労働大臣に、時間の関係お答えいただきますけれども。  もう一つ、私は婦人の職場で問題にしたいと思いますのは、パイナップル産業の工場なんです。で、私が見たのは大東パインという本島の中部のほうにある——ちょうどあれは季節労働でございますね。季節作業で三百人ぐらい、その付近の農家の主婦が働いておりました。その中に六十人ほどちょっと感じの変わった集団があった。これが台湾の女子労働者ですね。それは沖繩の女子労働者の賃金の六〇%で働く集団労働者です。この人たちは宮古とか南のほうの石垣島とか、どんどん収穫を追ってやって来て、そうしてあそこで働いていた。非常な低賃金で、小屋のようなところに泊まって、自炊をして、そうして一年働いて嫁入り道具代をつくって帰る。台湾まではたった六百キロしか離れておりません、たいへん近い。この女子労働者が、これまで沖繩の女子労働者の賃金切り下げの役をしていたと思う。しかしある意味では、季節労働ですからなかなか労働力が手に入らない。だからやむを得ないということだったと思うのです。今度の屋良さんの建議書にも、当分はパイン産業やサトウキビの産業に中国人労働者を使うことを認めてほしいというようなことがありましたし、政府の方針もそうなっているようです。一体これは、失業者が一方に出るわけですね、沖繩には。それでカバーできないのは、この地理的な条件があると思うけれども、いつまでこういうふうに台湾の渡り鳥の女子労働者を使っていくようにするのかどうかということ。それからこういう労働者に対しても、さっきの保税加工貿易、自由貿易地帯の女子労働者に対しても、労働基準法の適用をきちんとするための監督をしてほしい。これは労働大臣にです。ですからパインのほうにいつまでもこういう——パインとかキビですね、こういう産業に相当数おりますね。外国人労働者が六千二百三十四人のうち、台湾人四千百五人、これはみんなそういう女子労働者がおもです。これはどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  188. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 沖繩本島のほうはごくわずかなんですが、離島のほうに参りますと、キビの刈り取り時期、パインの収穫時期、工場の操業時期、これは全く季節的なものであります。したがって、非常に、島じゅうあげて集中的に働くわけですけれども、それでもなお追っつかないということで、これはもう島をあげ、あるいはキビ作農家をあげ、あるいは政府をあげて、台湾の労務者というものにずっと長い間加勢してもらってやってきているので、それが来ないと困るということで、一応はそういうふうに出入国管理の特例で認めてくれといわれておりますが、その方針でいくにしましても、やはりこれは生産のあり方、操業のあり方を近代化、合理化する。たとえば南大東なんかも圃場は、農家一戸当たり平均五町歩も持っているようなところであって、それが機械化されていないから、ただいま言われたような掘っ立て小屋みたいなところへ季節的に来てもらう。まあ非常にありがたがっておられるわけですけれども、しかしやっぱりそうばかりいきませんので、これはことしから大型刈り取り機を入れまして、まあ道路も一種道路をつくったりいたしまして、そうしてキビ、パインの耕作、刈り取り、あるいはまたそれらの企業の合理化、近代化のためにこの資金を使って人手を減らしていくようにすると、いわゆる沖繩県民——島民だけでそういうものが生産性の高いものとして営まれるということを生産段階からやっていけば、そういつまでもお願いをしなくてもよろしいのではないかと思って、その計画を着実にいま進めつつあるわけでございます。
  189. 原健三郎

    国務大臣(原健三郎君) 私のところへもパインの季節労働者をぜひ何年か認めてもらいたいということを琉球政府からたびたび陳情を受けて、そういう事情でございますならけっこうなことであると、こういう答弁をしております。いま田中先生の御意見もあるし、総務長官の御意見もありますから、なるべくこれが沖繩の人で充足されるようにすることがけっこうであると思います。  それから自由貿易地域等は、こういうパインの労働者等については労働基準法——いま現在の沖繩の労働基準法が適用されております。しかし返還後は日本の労働基準法が直ちにこれに適用されることになって、全体——自由貿易地域であろうと、どこであろうと、区別なく日本の労働基準法が適用されることになります。
  190. 田中寿美子

    田中寿美子君 外国人労働者も同じ基準でそれを適用すべきだと私思うのですね。それから、失業者が一方に出るんですから、これは交通機関のこととかなんとか考えたり、工場の場所なんということを考えて、沖繩の人が沖繩の産業につくことができるようにするというのが私は正しい方針だと思います。いつまでも、そのお願いしてというのをいまおっしゃったけれども、私はこういう形というのはあまり好ましくないことだろうと思います。まあ日中関係の問題もあるかもしれないと思いますが、それは今後はそういうことじゃなくて、島内でやっていけるようにしてほしいと思っております。  それからもう一つは、女子労働者の多いところはたばこなのです。で、沖繩には三つのたばこの工場がございますが、民営です。で、沖繩のたばこがオリエンタルと琉球煙草と沖繩煙草と、この三つ。この工場は私もみんな行きました。それで女子労働者と話もしたんですけれども、生産設備なんかは古い。しかし沖繩のたばこが民営であるということは、別に沖繩の県民が頼んで、望んでしたわけじゃなくて、これはアメリカの占領下で、本土のたばこは専売公社のもとにあるけれども沖繩の場合は民営——専売を許されなかったわけですね。で、今度この専売法が適用されて、そしていま大体六百二、三十人の女子労働者がこの三つの工場に働いて、まあ女子労働者というより、そのうちの六〇%が女子労働者でございます。で、今度専売法が適用されて、初めはこの工場三つともつぶしてしまう、本土だけでも生産は十分だということだったのですけれども、しかしこれも軍労働者が間接雇用にしてほしいというのと同じような意味で、特殊な事情で民営のもとにあったたばこの労働者ですから、返還前に専売公社の職員にみんなして、そしてこの人たちの就職の対策をすべきだと思うのです。で、その意味できょうは専売公社総裁においでいただいておりますが、どういうふうにいまされるところまで来ておりますか、お話しいただきたいと思います。
  191. 北島武雄

    説明員(北島武雄君) ただいま御指摘のように、沖繩にはたばこの製造会社が三社あるわけでございます。まあこれが、沖繩本土復帰いたしますということになりますと、沖繩県だけ民営の会社を置いておくわけにいかないということもございますので、製造三社とも適切な補償金が得られるならば復帰までに廃業したい、こういう申し出がございますので、それを前提として法案ができているわけでございます。現在、三社合わせまして六百人程度の人員がおります。まあ正確には、ことしの四月ですが、六百一人ということになっております。御指摘のように、そのうちの約六割が女性でございます。この方々につきましては、一応、専売公社といたしましては、この際他に転業したいと、あるいはまた家庭に帰りたいと、こういう方々に対しましては、会社規定の退職給与金のほかに、専売公社といたしまして、国家公務員の整理退職並みの基準によるところの金額に、プラス給与の六カ月分の額がお支払いできるような、退職手当をひとつ加算しようじゃないかと、こういうことで、ただいま大蔵省に予算要求いたしております。  そうしてそれ以外の方々、専売公社に就職したいという方々につきましては、まず第一に考えられますのは、沖繩に当社の出先機関を置く予定でございますから、その出先機関に適当な方、それから本土の工場につとめたいと、こういう方々はぜひ本土にひとつ来ていただきたい。  それから、なおかつ、どうしても沖繩を離れられないと、沖繩でたばこ事業に従事したい、こういう方々に対しましては、専売公社といたしましてもやはり工場を一つぐらいは存置いたしまして、これはまあ規模から申しますと、現在の国内の生産性から考えまして、非常にまあ問題はあるのではございますけれども、一応百五十人程度の工場を設置いたしまして、そうしてそういう方々をお迎えいたしたい、こう考えているわけであります。
  192. 田中寿美子

    田中寿美子君 三つの工場の補償要求が出ておりますね。それに対してどのくらい補償されるつもりか。  それから百五十人くらいの規模の工場を置くとしますと、あとの大体四百人ぐらいですか、に対しては、やはり専売公社の職員の整理退職並みの補償をされるわけですか。
  193. 北島武雄

    説明員(北島武雄君) ただいま予算要求いたします金額は二十四億というより、むしろ二十五億に近い金額でございまして、これは当初、業者の方々は百六十億円程度の補償要求でございましたが、これはまあ沖繩・北方対策庁が中に入りまして、そうして調整しました結果、業者の方も納得して、いま修正された数字で、それをそのまま財政当局に要求いたしているわけでございます。  それから専売公社に就職なさるという方々、これはもちろん、当社の職員になるわけでございますが、一応新規採用ということではございますが、従来の前歴加算の制度がございますから、前歴を拝見いたしまして、そうして公社の職員としてお迎えするわけであります。  それからなお、この際他に転職したい、あるいは家庭に帰りたいという方々に対しましては、いままでの各会社が持っております規定の退職手当のほかに、さらに、ただいま申しましたような国家公務員の整理基準の場合の退職手当に給与の六カ月分を加算した金額の退職手当がお支払いできるような金額をただいま要求しているわけであります。
  194. 田中寿美子

    田中寿美子君 もう少しお伺いしたかったんですけれども、時間があれですから、最後に、軍労働者の中のメードの話を少し伺いたいと思います。  米軍の労働者の数は統計によっていろいろ違ってくるんですが、まあいまのところ、二万一千四十五というのが第一種と第二種。それから第四種が二千九百十二人、計二万三千九百五十七人というのがいわゆる全軍労という軍労働者の組織に入っている人たちです。で、このほかにメードがいるわけです。メードというのは、大体八千人から一万人くらいいることになっております。ですから、もしそれを入れますと、三万四、五千人の軍関係の労働者がいる。もちろん、このほかに軍の周辺にはいろいろ業者があって、そこで雇われている人もいるわけですから、軍関係の労働者というのは非常に多いけれども、狭い意味の軍関係労働者といいますときには、メードを入れれば三万四、五千。この中で、昨年もことしも解雇の通告が来ている。しかし、一体さっき米軍がそんなに縮小もしない、そうして家族も来ている。そういう状況の中では、メードも必要でございますし、それから軍労働者も必要だろうと、その場合に、さっきもちょっと申しましたけれども、第一種、第二種というような、米軍が直接支払ったり、米軍の軍人たちが賃金を支払うようなものから請負業者のほうに移していくようなことが次々と行なわれているわけですね。たとえばクリーニングだとか、庭師だとか、本来メードや庭師は第三種軍労働者だったわけなんですけれども、これははずしてしまって、メードは個人雇用、家族従業者、家事使用人ですね。それですから、非常に保護が与えられない状況になっている。ところが、メードというのは仕事がたいへんなんですね。しかし、沖繩の女子労働者にとっては、月五十ドル、六十ドルという収入はやっぱりいいほうなんです。ですから、メードとして今後も仕事があるなら働きたいというような意識、世論調査すると、そういう答えが出てきている。この人たちをまず第一種、第二種、まあ三種はいないことになっちゃって、第四種、つまり請負業者に雇われている人、それからメードと、これだけを含めて、本来ならば私は間接雇用にするべきだというふうに思うんですけれども、いかがでしょう、防衛庁長官
  195. 島田豊

    説明員(島田豊君) 御指摘のように、現在、布令百十六号で一種から四種までございまして、三種は具体的に人がおりません。そこで今後復帰時点におきまして間接雇用に切りかえるにつきましては、これは地位協定の適用を受けることになりますので、現在の一種、つまり米軍から直接雇用されている者、あるいは二種——食堂とかPXとか、そういういわゆる機関に雇用されている者、これが地位協定の対象になるわけでございます。そこで四種につきましても、これは現在本土にもそういう請負業者に雇用されているという者はおるわけでございますけれども、これは地位協定の対象になっておりません。それからメードさんも、これも本土にも当然おられるわけでございますけれども、これにつきましても一応いま地位協定上の対象になりませんので、しかもこれは個々の軍人、あるいは軍属との雇用契約と申しますか、そういう関係でございますので、ちょっと私どもとして、メードさんについて何らかの規律をするということが、どうも私ども役所のたてまえからいきまして、これはむずかしいと、したがいまして、これは一般的なやはり労働対策として労働省でいろいろお考えいただくという部類に入るものではないかと、かように考えておるわけでございまして、この点は沖繩の場合にも同様だと考えます。
  196. 田中寿美子

    田中寿美子君 第四種の場合はどうですか。四種というのは、いままで二種におったわけですよね。それがたとえばメスホールだとか、ミルクプラントだとか、そういったところで働く人たち、サービス関係の人が多いわけですね、クリーニングとか。全く同じ形でいままでどおり働いているのに、いつの間にか身分は第四種に切りかえられてしまった。これはドル節約のためにアメリカは賃金を払うのが惜しいからで、それで第四種の請負業者というのは、たいへん賃金をたたいて安く使っているわけですね。そして第四種の中にまた女子労働者が多いわけなんですがね。四種も布令百十六号の軍関係離職者等臨時措置法の対象になるわけでしょう。法文の中には入っていますね。だから、私は、四種も間接雇用と同じ扱いをして、間接雇用にして、そしてこの人たちの離職する場合の保障をするべきだと思うのですけれども
  197. 島田豊

    説明員(島田豊君) この四種の扱いにつきましてはたいへんいろいろ問題がございまして、本土の場合におきましても四種という人たちがおるわけでございますが、これは地位協定の対象にならないということでまいっております。しかしながら、御指摘のように、かつて一種、二種であってその後米側のいろんな合理化等のために四種に切りかえられたということで、一種、二種並みの待遇なり保護を受けない、こういう形態があるわけでございます。そこで復帰時点におきまして四種の方々を直ちに一種、二種に切りかえるということにつきましては、これは日米間の今後の協議の問題でございますけれども米側はいまのところ、引き続き請負業者に業務を委託いたしまして、その四種の関係はやはり請負業者との関係である、こういう原則でまいっておりますので、四種の方々を直ちに一種、二種に切りかえて間接雇用にするということは非常にむずかしいわけでございます。しかしながら、これは個々のケースにつきましては、私どもとしましても、四種で一種、二種に切りかえられるものがあれば、これは日米間で協議してまいりたい。そこで沖繩の場合におきまして、一種、二種であって四種に切りかえられたためにいろいろ待遇面で格差があるという方々について、これをどうするかということにつきましてはいろいろ問題がございますので、とりあえず、私どものほうは、来年度の予算で、その待遇の格差というものについて何らかの形でこれを補いたいということで要求中でございます。そこで、その対象範囲をどうするか、またどういう形でその格差を補てんをするかということについては、今後、財政当局とも十分話し合って、現在四種の方が四千人くらいおられますので、できるだけそういう方々にそういう待遇といいますか、処遇の面で均てんをいたすような方向で協議いたしてまいりたいと、かように考えておるところでございます。
  198. 田中寿美子

    田中寿美子君 第四種の中には、これは請負業者で、非常に無責任な使い方をしているのが多いわけです。賃金の不払いがあったり、療養補償のなかったり、休業補償がなかったり、基準法の適用なんてものも十分ない状況ですから。これは今度まあ防衛庁のほうにも、あるいは労働省のほうにもよく見ていただきたいと思うし、いまおっしゃった四種の中で、間接雇用に切りかえられるものをぜひ入れるように努力をしていただきたい。それからメードなんですが、メードさんというのは、軍労働者の底辺にあって、ほんとうにひどい扱いを受けている。個人によっていろいろ違いますけれども、一日八時間労働で二ドル五十セント。これなんかもみんなベースアップしなければだめだと思いますけれども、母子世帯の人、中高年の人、長年働いている人が多いわけなんですね。ですから、こういう人たちを守ることを、これはもし軍の間接雇用者にできない場合には、これは労働省が徹底的に離職対策なんかも見なければいけないし、それから労働条件を守ってもらわないと困るわけなんです。で、よく突如として解雇される例がございます。これは個人がするのだからといえばおしまいになってしまうのですけれども、たとえば嘉手納の空軍基地の将校クラブのウェートレス、これは雇われて働いていて、三カ月ぐらいで突如として退去命令を受けた。その理由はといったら、本人は空軍当局が認めない団体に所属しているというのが理由なんですね。一種の保安解雇みたいなものだと思います。それから、あるもう一人の人は嘉手納のエアクラブに勤務している。それで調査の結果、経歴の中で虚偽の陳述をしたというのが理由で解雇された。虚偽の陳述とは何かといいますと、夫がソビエトに旅行した、そのことを隠していたということなんですね。こんなようなことで、メードは何か個人に雇われているみたいで、実はそうでない。それから、四種の労働婦人も、クラブで働いている場合に、そのような解雇がたびたびあるわけですね。こういうことはやっぱり米軍基地のもとで起こっていたものだと思いますので、今度復帰します場合には、これは政府のほうで十分見なければいけないものだと思うのです。その点で女子労働者というのは、これは本土でも賃金の格差は  さっき労働大臣は本土より格差がひどいと言われたけれど、実はそうではなくて、本土のほうが賃金格差はもっとひどいです。しかし、全体の賃金が本土より沖繩のほうが低いから、その低いうちの五三%ということは、本土の女子労働者よりはるかに低くなっていくわけですね。賃金の面からも労働条件の面からも、これからの雇用の見通しからも非常に不安なことが多うございます。ですから、女子の労働者の問題、それからきょう最初から申し上げました婦人の人権の問題なんかは、私は、もう復帰前さっそくにも、もう来年早々にも、どんどんもっと本土の各省の方が行ってよく実情を見ていただきたいのです。こまかいことが一つもちゃんときまっていないというのは、あまりに法案を急がれまして、ほんとうの準備ができていないわけですよ。それで特に法務省なんかの方は、いや、全部総理府でやっているものだから、自分たちはいままでは関係がなくて、復帰したら関係が出てくるみたいなことを言っておられる、こういうことでは人権は守られません。どうか、そういう点で、きびしい現実の調査と、それからそれに対する対策をしてくださいますことを要求いたしまして、沖繩の婦人の声の一端を——私はきょうはいろいろあるのですけれども、一端だけお伝えし、そうして、私ども本土の女性もそれと一緒になって、これからこの人権の問題、請求権の問題、その他まだ長くやらなければならないことだらけですので、政府にも要求してまいりますし、皆さんのよい政策を要望いたしまして質問を終わります。(「総理の見解」と呼ぶ者あり)じゃ最後総理——じっと聞いていらっしゃいましたから。
  199. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私も、田中君の御質問を通じて沖繩の婦人問題はいかに深刻であり、また人権擁護の上からも、また人道的にも、このままにほうってはおけない。たいへんその要点に触れた——わずかな時間ではありましたが、お尋ねでありまして、その点大いに啓蒙された、一そう私の平素の主張である人間尊重の観点に立って、この問題と取り組み、またこれはひとり沖繩の婦人ばかりじゃございません。婦人労働というものが差別的待遇を受ける、受けやすい、こういうような点に思いをいたして、全体の地位の向上についても一そう努力するつもりでございます。     —————————————
  200. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 黒柳明君。
  201. 黒柳明

    ○黒柳明君 私は、まずさきの委員会におきまして米軍の書類を提示しまして、横須賀の米軍基地に毒ガスがある。こういう点につきまして調査を依頼しました。調査が保留になっております。さらに、本日は、その後横須賀のみならず、追浜、岩国、佐世保等々にも大量にやっぱり毒ガスが持ち込まれていたという書類を提示しまして、新しい問題も提起したいと、こう思っております。  まず最初に、先般の協定委員会で私が提示いたしましたシッピングオーダーにつきましての調査、その点につきまして御報告を求めたいと思います。
  202. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 御指摘の問題は、きわめて深刻であり、しかも確かに御提示の書類に関する限り疑わしい点もある。こういう見解にわれわれ立ちまして、直ちに外務省を通じましてアメリカ大使館から早急の調査を依頼したわけであります。で、たまたまクリスマスとか、日曜日とか、そういうものが間にはさまっておりましたために、急いで実は回答を待ちたいということで、その後防衛庁から直接、人を派遣いたしたりなどして回答を急がせたわけであります。  まず、黒柳議員御提示の送り状についてでありまするが、きわめて疑わしいわけですが、これが一体本物かどうか、これが第一点であります。もし、それが本物であるとするならば、本物である以上は、これは実際にそこに書いてある物品が輸送をされたという事実があるわけですから、そこで、まあ詳密の調査を要求したわけであります。で、今日まで米側から大使館を通じまして外務省に入りましたその回答について、以下私読み上げてみたいと思います。  第一、御提示の送り状の信憑性については、相当以前のものであるため、なお引き続いて調査したい。これが第一点です。  それから、第二、当該文書に記載されている物品、すなわち「SET GAS TOXIC M1」これは化学戦防護訓練用のものであって、訓練生に各種の毒剤のにおいを識別させるために用いる器材のセットを意味するものである。このようなセットは、いわゆる武器とか弾薬に該当するものではない。  第三、このような器材は、船積み、貯蔵及び使用の場合の安全対策上、万一をおもんぱかって、毒性または致死性という危険区分を付しているが、使用の実態は訓練生がその中を横断して吸入するというような訓練に使っているものであって、こういうことから見ても、毒性や致死性はきわめて微弱なものである。  なお、このような器材は、米軍では現在ほとんど使用されていないものである。  それから、第四、当該文書のうちC「G CLASS XI−A」というのは——XIはX1じゃなくて十一だそうですが、コースト・ガードの危険区分であって、致死性化学弾薬やガスが入った訓練器材等を示すものである。また「430 POIS A」、これは米国州際取引委員会の危険区分であって、以上申し上げたのと同様の意味を示すものである。  第五、当該文書のうち、輸送統制番号欄の「5153」は一九六五年五月三十一日を示し、入手希望期限欄の「198」は一九六五年、すなわち同年の七月十五日を示している。また、発送日付欄の「032」は翌年の二月一日を示すものと判読することができる。  第六、いずれにせよ、日本本土に化学兵器を貯蔵しないことが米国の政策であるので、この旨回答を申し上げます。  こういう回答がまいっておるわけであります。御了承を願いたいと思います。
  203. 黒柳明

    ○黒柳明君 まず第一点。これは引き続き調査する、これが確かに本物であるかどうかの問題——こんなに種があります。これは全部あとで提示します。これ全部を——これがにせ物であるという根拠、論証、これをあげてもらいたい。まず総理の見解を聞きましょう。ここで徹底的にやりましょう、そういう答弁なら。徹底的にここでやりましょう。そのうちの一つです、これが。それが全部にせ物だという反証をあげてください。さらにこっちにもあります、もっと具体的なのが。その一枚だけがにせ物でつくれますか。全部同じ書類です。
  204. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 黒柳さん、私がにせ物と申し上げたわけじゃないので、要するに、アメリカ側の回答書に相当古い物であるから、なお継続して調査をしたい、こう言っておることを御紹介したわけですから、この点は御理解願いたいのです。
  205. 黒柳明

    ○黒柳明君 その回答を踏まえて防衛庁長官の見解を聞かせてください。回答を踏まえた見解を。
  206. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 私は、前回審議切れのあの場面でも申し上げましたように、相当疑わしい物である、こういうふうに踏まえております。
  207. 黒柳明

    ○黒柳明君 疑わしい物であるということは、一週間の調査期間があったんでしょう。防衛庁としてはこれをどういう分析をしましたか、防衛庁の分析。
  208. 久保卓也

    説明員(久保卓也君) 米側の回答は、ただいま長官が申し述べられたとおりであります。そこで、私どものほうでは資料に当たって調べてみました。一部専門家の解説も入っておりますが、これによりますと、「SET GAS TOXIC  M1」というものは、マスタードの四オンス入りガラスびん、これの四個が一つの金属容器に入れられております。それが六つ合わさりまして、鉄製の円筒コンテナに入っている。そのコンテナのふたは鉛のパッキングを使用してボルトで締めて密封されている。これで七セットあるようになっておりますから、計算をいたしてみますると、あの表の中では八七〇ポンドとありました。つまり、これはほぼ四百キログラムになりますが、いまの四オンスを基準にして計算をしてみますると、大体一八・五キログラム、これが内容物になります。それから用途については、これは化学戦防護の係隊員にマスタードの性状を教えるものでありまして、その量が微量でありますので、兵器としての機能は果たし得ない。そして、また特にこの器材は、これは写真もありますけれども、マスタードを広地域に散布するための炸裂性あるいは放射機能を持っておらない。したがいまして、いわゆる致死性化学兵器、兵器といううちには入りません。それから用法といたしましては、金属管の容器から取り出してガラスびん入りのマスタード、これをまいてそのにおいを体験させる。それから除毒剤によって毒性を除いたりする。あるいはガス検知器でもって検知訓練を行なう、こういうことで通常行ないます場合には、いまのガラスびんに入っている四オンス、約百グラム強でありますが、その程度をまいて訓練を実施する。したがいまして、人に危害を及ぼさないようになっている。それから、この器材の性格上はマスタードを砲弾などに入れて実用に供することはほとんど不可能であるということであります。
  209. 黒柳明

    ○黒柳明君 そして、そういう書類上からあったと判断するかどうか、その点どうですか。
  210. 久保卓也

    説明員(久保卓也君) 長官も申されましたように、非常に重要な問題であり、私どもが判断すべきではなくて、やはりアメリカ側——その結果を見るべきであろうと思います。書類だけから私どもが判断すべき性質のものではないというふうに私は考えます。
  211. 黒柳明

    ○黒柳明君 書類からどう判断するか。だから、書類を貸したじゃないですか。書類分析をしてみればわかるじゃないですか。
  212. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 書類上から見れば、私やはりきわめて疑わしいと思います。
  213. 黒柳明

    ○黒柳明君 疑わしいということは、あったと、こういう判断もできるという、当然そうだと思います。ということは、外務大臣、いままで少量、いま盛んに訓練用、訓練用とおっしゃった、訓練用の致死性毒ガスならいい、実戦用の大量の毒ガスは悪い。アメリカがこう言った例があるか。あるいは日本政府が少量の訓練用ならいいんだ、大量の実戦用は悪いと、こう言った例があるか、どうでしょう。
  214. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、少量の毒ガスならばいい、多量ならば悪いと、そういうことを言ったことはありません。ありませんが、アメリカ政府は六九年に、日本には化学兵器は持ちませんと、こういうことをはっきり言っております。
  215. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、致死性毒ガスについては量の問題じゃない。実戦用とか訓練用とかの問題じゃない、絶対にないんだというのがアメリカの言質だ、当然そうですね、外務大臣
  216. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) アメリカが申しておりますのは化学兵器ということであります。その兵器となるかどうかという判断は防衛庁において判断すべき問題であると……。
  217. 黒柳明

    ○黒柳明君 毒ガスのことをぼくは言ってるんだよ。
  218. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 毒ガスにつきましてもそうです。化学兵器であります。その化学兵器であるかどうか、これは防衛庁で判断すべき問題である、こういうことでございます。
  219. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、いままで総理大臣、非核三原則は厳守、絶対核はないんだ、持ち込ませないんだ。毒ガスはどうか。事前協議だったってこんなのすることがないくらい日本にはないことがあたりまえなんだ。佐藤内閣は八年間、歴代の外務大臣防衛庁長官が繰り返しております。総理もおっしゃっておる。いいですか。ある、非常に疑惑がある。防衛庁長官の意見ですね。この少量でもあったということは、いままでの政府答弁が全部インチキじゃないですか。どうですか、総理外務大臣、政治責任じゃないですか、そうなったら。あったですよ。
  220. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま黒柳さんの指摘の問題は六五年の話であります。そこで、私どもが申し上げておりますのは、この化学兵器につきまして、わが日本にはこれは存在いたしませんと、こうはっきり言明いたしましたのは六九年七月のことである。七月以降はこれはアメリカ日本に化学兵器は持っておりませんと、こういうことを申し上げているわけであります。
  221. 黒柳明

    ○黒柳明君 ぼくが言ったのは政府の見解を言ってる。もう次に話は進んでおります。政府の見解……。
  222. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 友邦アメリカが言っておることであります。私はそれを信頼をいたします。
  223. 黒柳明

    ○黒柳明君 ぼくは政府がそう言ったでしょうと、その返答がイエスかノーかいただきたいと言っているんです。アメリカのことは終わっています。政府が言ったかどうか。
  224. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 黒柳さん、何を政府が言ってるんですか。
  225. 黒柳明

    ○黒柳明君 何をですかとは何ですか。いまその答弁でやってたんじゃないですか。ちょっと時間とめておきなさい。
  226. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私の知る限りにおきましては、昭和四十四年夏以前において毒ガスの問題につきましては触れておりませんです。しかし、四十四年に問題が起こった、そこで初めてアメリカ政府の見解を求めた、その返答がただいま申し上げているとおりであると、こういうことであります。
  227. 黒柳明

    ○黒柳明君 四十四年以前のことは関知しないと、佐藤内閣、そうですか、総理大臣総理大臣ですよ。かわってますから、外務大臣総理の見解を……。
  228. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いや、関知しないというわけじゃないんですが、私の記憶する限りにおきましてはそういう問題に触れたことはないと、こういうことを申し上げているわけであります。
  229. 黒柳明

    ○黒柳明君 もしこの問題に触れて、そういうものは持ち込ませません、事前協議すら問題ないくらいないんですと、そういう答弁の議事録があったらどうしますか。絶対ないんですか、そんなことは。四十四年以前ないですか。
  230. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、過去のことを調べておりませんから、はっきり申し上げられませんが、私の知る限りにおいては、これは四十四年以前においては問題になっておりませんと、こういうことであります。
  231. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから総理答弁願いたい。知らない、外務大臣。だから総理答弁願いたい。総理責任です。総理答弁ですよ。四十四年以前、ありませんね、絶対にそういう答弁が。ありませんね、絶対に。総理ですよ、総理だ。おかしいよ、総理でなけりゃわかんないじゃないですか。いま外務大臣は四十四年以前はわからないと、外務大臣責任じゃないと。総理じゃないですか、そうなったら。佐藤内閣のもとでの責任じゃないですか、この問題は。おかしい。政治責任ですよ、総理答弁によっては、これは。いいですか、あるんですよ、資料は全部。政治責任ですよ、変な答弁したら。総理やりなさい、答弁。(「委員長、指名々々」「どうして指名しないんだ」「総理答弁」と呼ぶ者あり)
  232. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ちょっとお待ちください。
  233. 黒柳明

    ○黒柳明君 変な答弁したらね、たいへんですよ、これ。佐藤内閣きょうでおしまいですよ。除夜の鐘聞かないでおしまいになっちゃいますよ。四十四年以前は絶対触れておりませんか、そういう問題は。まだ二年前ですよ、二年前。とんでもない話だ。もう一回外務の答弁総理がやってください。総理答弁してください、外務大臣の答えを。わからない、外務大臣は。
  234. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私自身、先ほど申し上げたとおり、私の記憶ではない。しかし、まあ総理大臣もそれを知っているはずが私はない……。
  235. 黒柳明

    ○黒柳明君 そんなことない。
  236. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) と思うんですが、まあ比較的この問題にタッチしてきた吉野アメリカ局長説明させます。
  237. 黒柳明

    ○黒柳明君 これだけの致死性毒ガスがあるかないか、重大問題ですよ。その問題で——外務大臣確かに知らない。しようがないと思います。外務になったばっかりです。総理大臣はそうじゃない。この七年間総理として終始一貫して非核三原則、そして、毒ガスの問題、私、耳にたこができるくらい、いたく聞いてきました。だからこそ野党は国を憂え、国民を憂え、沖繩を憂え、精力的に、社会党だって核の問題で調査したじゃないですか。公明党だってやってきて今日に至っているじゃないですか。それに対して政府答弁、どうですか。一蹴ですよ。ノーだった。何のために私たちやってたか。今日を待っていたんです、きょうくるのを。そうして、野党、力を合わせて何とかしてこの最終の段階で結論を出したいと、こちらの精力的な調査のですね。そのためには総理が中心ですよ。総理責任なんですから、七年間。やってください、答弁を。おかしい、おかしい。総理大臣だ。
  238. 吉野文六

    説明員(吉野文六君) ちょっと補足説明いたします。
  239. 黒柳明

    ○黒柳明君 いや、総理大臣。待ってください。委員長、待ってください。
  240. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  241. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記を起こして。
  242. 吉野文六

    説明員(吉野文六君) 補足説明をさしていただきます。
  243. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) アメリカ局長の話をまず聞いてください。
  244. 吉野文六

    説明員(吉野文六君) 昭和四十四年夏、沖繩に毒ガス漏洩事件が発生するまでは、米軍による毒ガス兵器の保有だとか有無ということが問題化されたことは、われわれの記憶では——私の記憶ではございません。したがって、この問題につきまして米側に照会することも、われわれの記憶ではございませんでした。  そこで昭和四十四年七月八日に沖繩でガス漏れ事件がありまして、これに関連しまして本土においても毒ガス兵器の有無が問題になりましたので、これを米側に照会いたしましたところ、七月二十日、米国大使館のオズボーン公使が日本側に対しまして、米本国の訓令によるということで、口頭で、致死性の化学兵器は日本本土には存在せず、またこれを日本に貯蔵する意向もないということを伝達しまして、これを外務省の情文局も公表いたしました。  それから、さらに、例の米陸軍の相模原補給所に相当の塩素ガスボンベがあるということにつきまして、問題がこの議会でも提起されましたもので、これが毒ガスかどうかということにつきまして、われわれはさらに米側に照会いたしましたところ、塩素ガスは消毒用だ、飲料水ないしはプールの消毒用であって、毒ガスとは全く無関係である、こういうような説明を受けました経緯があります。また四十四年の八月四日に楢崎議員からやはり質問の主意書がありまして、これに対しても毒ガスはないというような答弁をいたしました。いろいろの経緯がございましたが、本年三月非致死性ガスの保有の有無——すなわち致死性ガスがないことはわかった。しかしながら、その他のガスはあるかどうかと、こういうことにつきまして照会いたしましたところ、三月十六日、米国大使館のマイヤーズ参事官より、いわゆる非致死性ガス、すなわち枯葉剤は日本には置かれていない。在日米軍が保有するものは、いわゆる催涙ガスのみであると、こういう返答がございました。  それから、本年の十一月、岩国基地における核兵器存在問題が提起された際に、もう一回在京大使館に問い合わせましたが、化学兵器は日本に全く貯蔵されていないということを再び言及しまして、これは当時プレスリリースとして出ました。こういうような経緯がございまして、四十四年の夏まではその毒ガス兵器の保有の有無は、私の知る限りでは問題になったことがなかった、こういうことでございます。
  245. 黒柳明

    ○黒柳明君 総理大臣
  246. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) ちょっとお聞きください。いずれ総理からも御答弁があろうと思いますが、これは黒柳さん、いかがでしょう。いまアメリカ局長が申し上げましたように、いわゆる兵器としての毒ガス、これはもう人道上の問題ですし、これは私絶対否定しなければならぬと思います。ただ問題は、先方がこの回答の第二で申しておりまするように、この物品は化学戦防護訓練用のものであって、訓練生に各種の毒剤のにおいを識別させるために用いる器材のセットだ。このようなセットは、いわゆる武器とか弾薬に該当するものではない。こういうわけですね。そこで、これは兵器ではないと認めるか、この訓練用をも毒ガスと認めるか、論点はここのように思うわけですが、向こうの回答をすんなり理解すれば、これは弾薬とか、兵器とかというものではない。こう言っておるのですから、なお今後ひとつ念入りな調査を継続することによって御理解を賜わりたいと思いますが、いかがでございましょう。
  247. 黒柳明

    ○黒柳明君 ぼくの言っているのは、そういうことじゃないのですよ。全然違いますよ。
  248. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この核兵器については、これはいままでもたびたび問題になり、いわゆる核はつくらず、持たず、持ち込みも許さない。どんな場合でも持ち込みは許さない。事前協議の対象になるが、そういう場合にはいつでもノーだ、こういうことをはっきり申しております。ところが、いわゆるCB兵器について、これは一体どうなっているか、これがいままであまり問題にならなかったのは、おそらくさようなものは日本に持ってきておらない。こういう関係からそういうことが問題になっておらなかったんではないかと思っております。これがもし問題であるなら、沖繩における毒ガスの撤去の際に、同時にこれは問題になったはずであります。私は、そういう意味からも、本土にはこの問題はない、またこれが事前協議の対象になるようなものではないので、これこそ、それぞれがいわゆる日本の場合は、ジュネーブ条約、これを批准しておりますから、そのほうの関係ではないと思いますが……。
  249. 黒柳明

    ○黒柳明君 答弁が全然違う。
  250. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) アメリカの場合は、私は、そういうことはないように思いますから……
  251. 黒柳明

    ○黒柳明君 ぼくは政府の見解をさっきから聞いておるのです。アメリカのことは終わったのです。
  252. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) だから、政府の見解、しては、こういう問題はないと、かように私は考えております。
  253. 黒柳明

    ○黒柳明君 昭和四十四年以前に外務大臣は触れたことはありませんと、さっき言っている。非核三原則は厳守します、つくりません、持ち込ませません、持ちません。政治責任をかけます。当然毒ガスは事前協議の対象にするまでもなく、ありません。——いいですね、あったら政治責任だ、政治生命をかけるとおっしゃっていますね、これもいいですね。それを外務大臣、四十四年以前はそんなことを言ったことはない。四十一−六六年の話じゃないか。こう言っておる。だから四十四年以前に言ったことないですか。一つは念を押しておるんです。その答弁外務大臣はわからない、個人的に。  それから、もう一つ少量ならばいいのかということをいま言ったでしょう、私は。量が多い少ないは問題ないのか、そんなことかまわないのか。
  254. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、いままで、問題になった核兵器があったらそれはたいへんです、私の政治生命をかけております、こういう話はいたしましたが、いわゆるCB兵器というものは、その際にはあまり問題になっていないから、さような私の意見を表明するはずはないように思っております。
  255. 黒柳明

    ○黒柳明君 外務大臣はおっしゃっていますね。
  256. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私の知る限りにおきましてはという前ことばがついておりますことを、これを御了知願いたいと思います。二回、そう申し上げました。
  257. 黒柳明

    ○黒柳明君 私の知る限りったって、外務大臣日本の外交問題の最高責任者ですよ。いまは何の問題をやっているんですか。冗談言っちゃ困りますよ。しかも、一週間の調査期間があったじゃないですか。それだけの期間を置きながら、私の知る限りでは知らないとか、CBRのうちR、核については言っているけれども毒ガスについては知らない。——アメリカでも毒ガス事故が起こったじゃないですか。沖繩でも毒ガス事故が起こったじゃないですか、日本にもそれがあったんですよ。それについていまの答弁何ですか。それでありながら、さっきも人間尊重ですって、田中先生におっしゃったじゃないですか。それで何が人権尊重ですか。だからヤギだって飼ってあるんじゃないですか、毒ガス漏れがあるから。沖繩で現にあったじゃないですか、アメリカにもあったじゃないですか、事故が。横須賀であったらどうです。このマイクだっておこっていますよ。横須賀で過去にそういう事故が起こらないからまだいい。あったらどうします。笑いごとじゃないですよ、この年の暮れにきて。この問題は外務大臣総理大臣責任ですよ、外務と総理の。私の知る限りは——これはいろいろ知らない点もあるでしょう。そのために、これだけの優秀なブレーン——ちょっと英語に弱いんですけれども外務省の役人がいらっしゃるから。しかしながら、この問題は私がというような形容詞をつける問題じゃない、致死性ガスですよ。しかも、少量とか何とかいったって——ここに、いいものをつくりました。ここにありますこれが実物大。こういうものが七つあります。四百キロ。一つ大体七十キロ。総理ぐらいの目方ですかね。この中に毒ガスが入っている。十八・五キロとおっしゃった、いま防衛局長は。どれだけの威力があるか、これはウ・タントの国連の毒ガス調査委員会の報告ですよ、マスタードガスで一立方メートルの中に〇・一グラムあれば一分で機能を失う、一・五グラムで致死量ですよ。十八キロだったらどれだけですか。一キロで一グラムの千倍、十キロで一万倍、十八キロでは一万八千倍ですよ。一立方メートルの中、一・五グラムで致死量、十八キロある、いいですか、たいへんなことじゃないですか。少なくありゃしない。——防衛局長、もういいです、どうぞごゆっくり……。総理大臣、少量だなんというわけにいきませんよ、これは。十二分にこれこそ、京阪神の人命を、事故が起こった場合には失うに余りある分量ですよ。それを、私はいままで核兵器のことは言ったけれども、毒ガスは言わない、外務大臣、私の知る限りではとは何ですか、その答弁は。それじゃ何のためにこういう資料を見せて、そして一週間もの調査期間をかけて、皆さん方に私は何とかこれを、これからの少なくとも日本沖繩のためにと思って真剣にやっているんですよ。私の知る限りは、そんなことは毒ガスについて言ってない。——もっと前向きに答弁したらどうですか、これを。思い切って前向きに。そんなインチキな答弁じゃまだ出しますよ。さっき言ったでしょう、佐世保でも岩国でも、追浜にまで毒ガスが持ち込まれているのがあるんです、ここに。これがそうですよ。英語です。おわかりになったかならないか、ちゃんとこう赤ワクをつけました。いいですか。量まで出ております。どうですか、総理大臣、こういう問題。あまりにもそれは答弁がゆる過ぎて……。
  258. 長谷川仁

  259. 黒柳明

    ○黒柳明君 総理大臣、だめ、総理大臣です、この問題は。
  260. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 私にさせていただくわけにはいきませんか。
  261. 黒柳明

    ○黒柳明君 総理大臣。いや、私はもうここまで答弁を詰めた。私もいたずらにこの貴重な時間を過ごしたくない。過ごしたくありませ。総理大臣に答えてもらいましょう。
  262. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま、私が先ほど申しましたのは、皆さんからもやかましく核の持ち込みということについて保証があるかという、そういう話がずいぶん詰められました。それについては明確に答えている。しかしCB兵器は、これはないということだけで、こんなものは大体済んでいたと、私はさように思っていたんですが、あるいはただいまのように送り状そのものをつげられて、これは一体どうだと、こう説明されると、これが薄めてあろうが、訓練用であろうが、それはたいへんだと、私どもの認識はそこまではなかったと、それは正直にその点は白状せざるを得ない。しかし、私はこの問題が、ただいま、まあマイクまでおこるような状態ではないだろう、かように思いますので、たいへん冗談を申して相すみませんが、この事柄はそういうようには過ごされない。まあ先ほど来その主管——防衛庁長官からもいろいろ意を尽くしておりますし、また自衛隊のほうからもその実際についての話をいろいろしておりますから、この実情はおわかりだろうと思います。
  263. 黒柳明

    ○黒柳明君 じゃ、外務大臣どうぞ、先ほどの答弁を……。
  264. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私も、このガスの問題は非常に重大な問題だと、国民が非常に心配している問題だと、そういうことでまあ非常に関心を払っておるわけであります。そこで、まあいろいろ調査をした。そうすると六九年七月、アメリカ大使館より先ほどアメリカ局長からお答えを申し上げたような答えがあったと、なおそのあとの状態につきましてもフォローをしたと、これもアメリカ局長から報告のとおりであります。まあ今後ともこの問題は重大な関心事でありますので、米軍のガスは日本本土には置かないと、沖繩が返還されてくれば沖繩等にもこれを置かないと、こういう方針を貫いてまいりたいと、かように考えております。
  265. 黒柳明

    ○黒柳明君 総理大臣、まあ先ほど認識されてなかったと、いまここで重大なことを認識したと、こうおっしゃったわけでありますが、非常に防衛庁長官発言ですと、疑惑が濃いですね、これについて。まあこれは中間報告らしいですね、アメリカの。私は、ここで結論出なかったら、あしたまた質疑を続行したいと思うんです。総理大臣、こういう事実を認識した上でどういうふうな処置をとられるか。
  266. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、まあ先ほど申し上げようと思ったんですが、どうも事態についての認識を欠いておると、こういうような実情ですから、どうも黒柳君がせっかくお尋ねになって的はずれのお答えでもすると、またマイクがおこるかと思いまして、慎重に扱っておるのですが、私、重ねて申しますが、核兵器については、これはもうたびたび問題になっておりますから、この点ではもうどんな場合がありましてもこれはノー、事前協議の対象になればノーと、また今日、持ち込まれておるような事態はございません。このことははっきり申し上げ得ると……。  まあCB兵器については一体どうなのかと、こういうようなお尋ね、これはまあ返還前に沖繩からガス兵器を、毒ガスを撤去する、こう言うアメリカでございますから、私はよもや日本に毒ガスが持ち込まれておるとは思いません。しかし、先ほど来問題になりましたような資料を突きつけられて、それが少量にしろ、また特別な消毒用にしろ、そういうものがあったとすれば、これはこれについて私どもも事前に十分この実情を知る必要がある。また認識を新たにして、そういうものと取り組まなければならないと、かように思います。ところで、この問題は、私が申し上げたいのは、日本の場合はジュネーブ条約をちゃんと批准しておりますから、毒ガスを一切使うとか、持ち込むとかいうようなことはないはずでありますけれどもアメリカ自身はまだこの批准を終了しておりません。したがって、私は、沖繩にもあったように、大量の毒ガスを持っておると思う。そういうものが日本の国内に簡単に持ち込まれては困ると思います。私は、そういうものこそ、これは事前協議の対象になる以前の状態、そういう状態で物事がきめらるべきものだと、かように実は思っております。国際的に禁止されている状態、そういうものはこれは事前協議の対象以前の問題である。しからば、日本の場合は一体どうするのだと、これは事前協議の対象ではございませんけれども、われわれは随時協議するという、安全保障条約に基づいて当然の権利がある。したがいまして、さようなものが持ち込まれるとかいうような危険がある、そういうおそれがあるという場合には、直ちにわれわれは事前協議、そのもとにおいてそれを拒否するという、これは当然のことではないだろうかと思うのでございまして、そういう意味のことを私はこの際に確認しておきたい。これは政府の厳粛な声明でございますから、そういう意味でお受け取りをいただきたいと思います。
  267. 黒柳明

    ○黒柳明君 量のいかんにかかわらず、当然それは実戦、訓練用いかんにかかわらず、あるべきものではないし、今後はそういうものは一切日本の国土からないようにしたいと、こう理解してよろしいですか。
  268. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、事前協議の結果、それが訓練用であるということが確認され、訓練用に限られると、こういうならば御了承をいただきたいと思いますが、そういうような危険をかもすような場合には、これはやはり訓練用のものにしても、限定的に地区を限るとか、何か特別なもっと限定的な保障がないと私はたいへんな問題だと、かように思いますので、これは随時協議の際にそういう点を明確にすると、こういうことを申し上げておきます。
  269. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、少量、訓練用ならば、何らかの制約をつけて随時協議にのせて、そして、これから検討するということなんですが、さっき絶対やらないと言ったんじゃなかったですか。
  270. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、今日までこれをやっておりますから、そういうことが必要ではないかと思います。というのは、現在の状態で一切さようなものがこの世からなくなると、こういう状態ではただいまのところないと、かように思いますので、ただいまのような誤解を受ける、そういうことのない処置がとられるなら、その点は大目に見て御了承もいただきたいと思いますけれも、こういうことは皆さんともっとひざをつき合わして相談をすべきことだろうと、かように私は思います。
  271. 黒柳明

    ○黒柳明君 それはやっぱり政府がきめることですよ。皆さん相談にあずかったって、採用しないじゃないですか。これだけのもの、資料出したって採用なんかしないじゃないですか。それは政府責任できめてもらう問題ですよ。ですから、その点について、少量ならいいのか。訓練用ならばしようがないのか。こういうことを私は聞いているんです。というのは、この先、まだあるのです、この行き先が。だから聞いているんです。
  272. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) いま総理からだんだんの御答弁がありましたが、全く私も同感でございます。  そこで、いまのこれは重要な点なんですが、毒ガス兵器、これは大量であろうと少量であろうと、これはいけませんですね。これは絶対禁止と、またあり得べからざるものというふうにわれわれ認識いたしております。  ただ、問題は、さっき申し上げましたんで繰り返して申しませんが、この訓練用は毒性や致死性が薄いと。要するに、まあ防衛局長なんかにも、私、何べんも念を押しておるんですが、薄めてあるということを言うわけなんです。そこで、まあ訓練用なのだと。で、それは禁止兵器であるが、もし相手が使った場合に、これはどういうガス攻撃を受けたかということを判断するために、この訓練をするものだからと、兵器とは言わないと、また毒ガスとは言わないという注釈。しかし、これは、御指摘のように、非常に不安を伴うものでありまするので、私ども、その一片の回答をもって満足するものではありませんから、なお今後も引き続きまして、この回答を求め、責任者からの明快なやはり回答を待つということで、ひとつ御理解を願いたいと思います。
  273. 黒柳明

    ○黒柳明君 長官のおっしゃること、わからないこともない。しかしながら、それは米軍の一方的回答でしょう。それで、薄められているかどうか、だれもチェックしたわけではない。しかしながら、この正式書類、これには、いま言った「十一−A」というコースト・ガードの識別書を見ると、これは致死性である、これしかわからない。私たちは、こうであると断定したい。それをくつがえす何ものも、政府の資料もない。そして、アメリカに問い合わせれば、いや、これは訓練だ、薄めてあるんだと、これがいままでだったわけですよ。そして調査してなかった。ところが、今度はそういうわけにはいかないわけですね。それをまた同じく、薄められているんだから、向こうが言ったんだからかんべんしてと。私はいい。だけど、国民がそれでかんべんするという気持ちになるか。ますます政府の態度は何だという疑惑が増すばっかしではなかろうかと、私は、むしろ皆さん方のために憂える、その点について。はっきり出ているんですから、致死性だということが。これを薄めているとか訓練用とか、なんとかいうものは何にも裏づけがない。さらに、これが佐世保が受け取り人でしょう、佐世保へ行ってるわけです。しかも、四月には浦郷が佐世保に越しているんでしょう、全部、横須賀の爆薬庫が。そうなれば、佐世保にあるんではなかろうかということがまたここに大きな疑惑として出てこざるを得ない。どうですか。米軍の回答がノーだから、そんなことじゃ済まなくなっちゃうんじゃないですか。との疑惑があるならば、連続物語です、これは。当然、これは船に乗って佐世保に行っているんです。まあ歌の文句みたいですけどね、船に乗って佐世保に行っているんですよ。佐世保にあるわけなんです。しかも、四月に浦郷倉庫が全部佐世保に越しているわけでしょう。だから、せんだっても、私は、佐世保に疑いがある、その程度も出てないでしょう。訳しましたら、ノーだった。いまの時点ではそんなわけにいかないですよ、この佐世保の問題にしたって、どうですか。米軍の回答でノーとかなんとかいうことじゃないって言うんです、私は。
  274. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 御指摘の意味、全くよくわかります。  そこで、これは私どもも非常に重要視しております。したがって、この一片の回答を信頼するわけにまいりませんので、なお、ひとつ念入りな調査をし、その回答を確かめて、随時、ひとつ黒柳議員と御相談を申し上げていくという形をとってまいりたいと思います。
  275. 黒柳明

    ○黒柳明君 私はね、相談必要ない。一億国民の皆さん、百万沖繩島民の人に相談して、明快な回答を出していただきたい。私は、そのために代弁者として立っている。いつ出ますか、その答えが。もう暮れだ、二十八日だ。
  276. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) まことにどうも時が悪うございましてですね、先ごろはクリスマスイブから日曜日とこう続きますしですね、また、これ年末にかかって全く——しかし、国民的不安がこのままでなおざりにされていいものではありませんので、やはりクリスマスのまつ最中でも人を派遣して、ようやく実は二十四日の夜、まあ向こうでいえばクリスマスのまっ最中ですが、一とおりのまず口頭の回答を得、二十五日、日曜日には、続いてまた重ねての回答を得た。こういうわけで一生懸命こちらもやっておりまするので、引き続いて、ひとつよく調査をいたしたいと思います。
  277. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御承知のように、沖繩でも毒ガス撤去をいたしたのでございます。私は、国内でもさようなものがあってはならない、かように思います。まあ、先ほど来、やや少しゆとりのあるような話をして、これでたいへん黒柳君の期待に沿わないようなことになったと思いますけれど、私自身は、真意は、ただいまのような毒ガスが持ち込まれていいというわけじゃございません。これは、しかし、事前協議の対象になる以前の問題、したがって、われわれが随時協議の対象にして、疑わしき場合には、その実態をつかまえて、そうして、それを確認する、こういうことをいたしたいと、かように思います。
  278. 黒柳明

    ○黒柳明君 いままでは岩国、横田、厚木、まあ佐世保は私は知らなかった、すぐ返事が返ってきた。まあ、確かにクリスマスでしょう、暮れでしょう。だけれど、いままでのと同じに、この問題は重大問題じゃないですか。なぜ、この問題だけが、たとえクリスマスをはさんだとしたって、一週間かかる理由がありますか。いままでは、政府みずからがノーだという回答を持ってきたじゃないですか。これだけ、なぜ、ノーという回答が出るならば、出てこないのか。中間報告だと、その点がまずおかしいじゃないですか。  まだ十八分あります。私は、もうこの段階ですから、ほかの委員の質問時間に迷惑をかけたくありませんけれども、何としても、これで往復していたってしようがない。委員長、何とか、政府答弁をまとめさしてくださいよ。これじゃ、ちょっとね、わずかですけれど、これから続行したってしようがない。もうちょっとしっかりした答弁をまとめてくださいよ。
  279. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  280. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記を起こして。  ただいまの黒柳君御要求の件につきましては、総理より政府の統一見解について答弁を求めます。
  281. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 政府の統一見解をお答えいたします。  いわゆるCB兵器のうち、R、これはすでに事前協議の対象となっておることは、これはもう御承知のとおりであります。C及びB、これは化学兵器及び生物兵器でございますが、これらはジュネーブ条約で使用を禁止されております。この条約は、わが国は批准済みであります。米国は、ただいま調印済みで、批准待ちという状態であります。したがいまして、CB兵器につきましては、事前協議以前の問題であって、核は、一切事前協議の場合でもノー、一切ノーでありますが、他にはイエスの場合もあることを前提として事前協議制にはなじまない、かように御理解をいただきたいと思います。  日米安保条約には、事前協議のほか、随時協議の制度がありますので、使用禁止のCB兵器について、わが国に持ち込まさないことについて、この随時協議の機会をできるだけ早い時期に積極的にその機会を持ちまして、あらためて確認することといたしてまいります。
  282. 黒柳明

    ○黒柳明君 何をおっしゃっているんだか、私、頭が悪いものですから理解しかねるのですが、またニクソン大統領とお会いになるわけです。その機会を通じて、非常にいい機会だと思いますが、この点どういうふうにこれを処置してくるのか、総理のその前向きな御見解。それからもう一つはやっぱり政治責任、これをどうするのか。私は、外務大臣答弁防衛庁長官答弁、ここでがたがたしても、また、二、三分で私のほんとの時間が切れますので、質問を留保したいと思いますが、問題がまだまだある。しかしながら、総理最後の統一見解とおっしゃったことは、あるいは、その統一見解がどんな意味だか、わかりませんものですから、まずサンクレメンテの機会をどういうふうに利用して——現実にあった、佐世保にもある、そういう毒ガス兵器、毒ガスに対して、どういうニクソンと話し合いをするのか。それから、あったという、この問題に対しては、これはどういう責任をとられる所存なのか。  この二点だけ私は質問して、質問を留保します。これに……。
  283. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま統一見解を申し述べましたが、私は、ただいま御指摘になりますように、サンクレメンテで来春早々ニクソン大統領と会いますので、たいへんいい機会だと思います。それぞれのCB兵器、これは核兵器をもとにして、同時にCB兵器でございますから、これの取り扱い方について、日本は絶対にかようなものを入れないから、その点を十分理解してほしい、こういう申し入れをするつもりでございます。ただいま沖繩自身については撤去された、これはたいへんけっこうだが、なお残っているという、そういう心配もあるようだし、本土においてなおこういうような送り状その他が出ているようでは、日本国民はなかなか安心しない。それが希薄なものであろうがどうであろうが、そういう点についてたいへんこれは重大なる問題だと思います。かように思うから、今後は一切誤解を受けないような、そういう措置をひとつとってほしい、またとるべきだと、こういうことを強く申し入れをするつもりでございますし、また、その要望をかなえるつもりでございます。
  284. 黒柳明

    ○黒柳明君 政治的には何にもこの責任を感じませんですか。
  285. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 政治的の問題につきまして、私はもちろん感じますが、しかし、そういう問題はただいまの答弁でお許しを得たいとお願いをいたします。
  286. 黒柳明

    ○黒柳明君 感じますということですが、それに対してどういうふうに、現実に具体的に、感じた責任をとるかということがやっぱり責任ある総理としての立場だと思いますので、私、きょうの質問を留保いたします。済みません。委員長、以上です。
  287. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) この際、六時三十分まで休憩いたします。    午後五時二十二分休憩      —————・—————    午後六時四十二分開会
  288. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ただいまから本委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。宮之原貞光君。
  289. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 総理は、十一月九日の予算委員会で、沖繩出身喜屋武眞榮君のいままでの沖繩を抜きにしては復帰後の沖繩はあり得ない、将来の沖繩ということも、当然それは現在の沖繩を無視してはあり得ないと思うが、総理の見解はいかにという問いに対しまして、過去を語らないで未来を語るわけにはまいりません、また、今日の現状は過去の続きであります、喜屋武君のものの見方、ものの考え方と同感でありますと、こう答弁をされておりますが、この答弁趣旨は、沖繩の歴史的現実を正確に認識をし、それを十分尊重して復帰の具体策を立てると、こういう意味だと理解をいたしたいのですが、いかがでございましょうか。
  290. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 抽象的には、そのとおりかと思います。
  291. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 ところが、政府復帰の具体策を見ますと、どうひいき目に見ましても、この答弁と大きな隔たりがあるということを、私は断ぜざるを得ないのであります。そして、そのことはまた、現地のアンケートにあらわれておりますところの現地住民の声を見ましても、そのことは明確に裏づけられるのであります。それで私は、それでは困る、やはり一国の宰相たる人ですから、先ほどおっしゃられたような立場から、これは復帰対策を立ててもらわなければ困る、そういう強い念望をこめながら私はまず教育の問題について触れてみたいと思うのであります。総理は今日までの沖繩の教育ということについてどういう評価をされているか、まずお伺いいたしたいと思います。
  292. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、沖繩の教育は、まあ施設その他不十分であるにかかわらず、また、外国の施政権下にあるにかかわらず、また、戦時中のあの痛ましい事態に当面しながらもよく教職員の皆さん方が教育を守ってりっぱな日本人をつくろうと、こういって教育に精出されたことについて、高くその努力を評価するものであります。また、私自身がいわゆるまあ若い生徒、これを代表していると、かように考えまするいわゆる豆記者諸君に毎年会っておりますが、それらの諸君がときにはずいぶん私の答えにくいような問いも発しますけれども、きわめて最近のこれらの諸君の私に対する願望、これはたいへんすなおな、また、健全な方向でいろいろ発言をしております。そうして、その多くが沖繩の学校の施設がいかにも古いと、もっと本土並みにしてほしいと、たとえば、標本室がないとか、あるいは図書室がないとか、あるいはまた屋内体操場がない、プールがない、そういうような本土並みの施設をぜひとも沖繩にもつくってくださいと、こういうことを言っております。私は、いわゆるテレビがないという、まずこの豆記者諸君からそのテレビについての訴えを聞いて、それでテレビの約束は一応果たした。しかし、まだまだ先島の諸君の希望にはずいぶん答えることができない。しかし、いまのような学ぶ自分たちの学校について本土の子どもたちと環境を異にしておると、そういう事柄について訴えている素朴な主張、これは私どももそのまま受け入れなければならないと、かように実は思っておるのであります。私は、それらの点でほんとうに最近のいわゆる子供さん方がすくすくと成長しているということは非常に喜んでおる一人であります。とにかく戦時中また戦後を通じての外国の施政権下のもとにおいてかようなりっぱな子供が、内地の、本土日本の児童と同じような立場で教育しているという、それはもうほんとうに私ども頭の下がるような思いがしております。
  293. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 一応私は、現在の答弁の限りにおいては妥当な見方をしておられると思いますが、私はやはり沖繩におきましては、教育基本法共び公選制の教育委員会の制度のもとに異民族の直接支配下の中で劣悪な教育条件のもとで、私は、やはり総理が指摘をしたような、いわゆる教育を守ると申しますか、日本人としての教育をやったと、そのことと同時に、教育をやはり不当な支配に服することのないようにがんばってきたという、その点もやはり正当に理解をしてもらわなければ困ると思うのです。それだからこそ、これは総理御存じのように、一九六一年のワトソン高等弁務官時代の例とか、あるいはまた六三年のキャラウェー高等弁務官時代におけるところの教育を、やはり干渉からの不当な支配を廃止して打ち立てていったという、その沖繩の教育を守る、日本の教育を打ち立てようとする沖繩人々の教育に対するところの心、ここのところをやはり私は明確に理解をしてもらわなければならないと思う。こういうことこそが、私はやはり沖繩県民の教育の面におけるところのいわゆる沖繩の心が遺憾なく出ておるものだと理解をしているのでありますが、いかがでしょうか、それはおそらく総理も私は同感だと思いますけれども
  294. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) だんだん宮之原君と違うような面も出てくるようです。私は、先ほどのは教育の実態を申したのですが、ただいまの宮之原君のお説の中には、教育行政、そういうあり方についてもお触れになったと、かように思いますが、これはとにかく施政権日本にございませんから、こういう立場においてのものの見方はずいぶんこれは変わった状況であります。しかし、何よりもうれしいことは、沖繩施政権アメリカにあったけれども日本人だと、その教育をしたと、そういう意味で、やはり日本語教科書も使われておる、こういうようなことがやはり本土を思い起こしておるのではないだろうかと、私は、まことに子供たちそのものは環境を、何といいますか、率直に、すなおに受けとめますから、やはり自分たちが使っている教科書が日本の教科書であれば、日本とは一体何ぞや、まずそういうことを考えるのだろうと思います。それがやっぱりこの復帰に対して願いを込めるというようなことにも成長したのではないだろうか。子供自身の純真さ素朴さ、そこらにも私は恵まれておると、かように思っております。
  295. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 だいぶ総理は先回りをして予防線を張った答弁をされておりますが、もっとすなおにやはり聞いてもらいたいのです。少なくとも沖繩の心というのは、それはあなた、この間去る四日ですか、衆議院の本特別委員会でも答弁されておるように、それはほんとう日本人の心なんだと、こう答弁をされておりますね。その意味は、それならば、その日本人の心は何かというと、沖繩では少なくともこれは反戦、平和、民主教育を志向するという、その心なんです。すなわち、祖国日本の憲法と教育基本法の精神にのっとったところの教育を忠実に行なおうとしたところのその教育こそが、私は、沖繩ほんとうの教育だと理解をしておるのですが、これと違いますか。大臣、そうでしょう。
  296. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ちょっと違うようですね。
  297. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 違う、異存があると言うと、おかしいじゃないですか。沖繩のあなたいままでの教育をどう理解されておるのですか。沖繩に現行するところの教育基本法にはどう書いてありますか。少なくともそこには、祖国日本の憲法と教育基本法に沿った教育をわれわれとしてはやろうと書いてあるのです。それこそが、日本人の教育に対する心じゃないですか。それをあなた否定されるのですか。違うとおっしゃいますが、どうぞはっきりおっしゃってください。
  298. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 宮之原先生のお話のとおりであります。沖繩の、私はこれは教職員の皆さんが非常な努力をされて、異民族の支配下から脱却して日本人としての教育をやろうとお考えになっておったその熱意というものは、総理大臣が先ほど申されたとおり確かにそのとおりであると、これこそ沖繩ほんとうに守ってくれたのは沖繩の教職員の皆さんであったという理解の上に立っておるものであります。
  299. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 だから日本人の心を、私は、ま、さらに具体的にかみ分けて聞いておるのです。少なくとも、沖繩の教育基本法は日本の教育基本法と全く同じなんです。しかも、日本人としてということが書いてある。その教育基本法の精神というのは何かというと、日本国憲法と教育基本法の精神に沿ったところの教育なんです。それこそが日本人としての教育の中身なんですかということを私は聞いておるんです。おそらく私は、これは文部大臣にしても、総理大臣にしても相違はないと思うんです。これはもう総理は否定されないと思いますけれども、しかも、この沖繩の教育というのは、ただ日本のように、この理念というのはいわゆる教わったものじゃないんです。あの沖繩戦でみずから戦い、親兄弟を失った中から、ほんとうの教育はこうでなければならないという確信それこそがまた、日本国憲法の示すところの憲法と教育基本法の精神だといって、みずからが血の中であがなったところのものなんです。そういうやはり沖繩県人の心というのが、教育にあらわれておるところのその面を私は文部大臣といえども総理大臣といえども否定はされないと思うんですが、いかがですかと尋ねているんです。そこのところをそうならそうだと、違うなら違うと、はっきり答えてもらいたい。
  300. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 私は、宮之原先生の御意見に同感であります。この点に関する限りは、私ども本土の人よりはもっと深刻に、日本人はどうあるべきかということを真剣に考えたのは沖繩県民であろうと思っておるものであります。
  301. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そしてこのような、総理もあるいはまた大臣も高く評価をされておるところのこの沖繩の教育というものをささえてきたところの教育行政制度というのは、これは公選制の教育委員会制度であったということを、私は、よもや否定はされないだろうと思いますが、いかがでございますか。
  302. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 私は、前段に申し上げましたとおり、異民族支配のもとに日本人の教育はできないという心情から、信念から、任命制を公選制に切りかえた当時の沖繩の教職員各位、私は、これに心から敬意を表しておるものであります。ただ、先生がいま言われております公選制というものが、今度沖繩本土復帰いたしまする場合に、そのまま存続することがいいか悪いかということについては、いままでの教育のところでは私はあなたと全く同感でございます。
  303. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 ぼつぼつ聞きますから、そのものずばりに聞いたときに答えてください。何か予防線を張ってあげ足をとられる、それじゃ私は困ります。いままでの沖繩の教育をどう評価されておるかということを私は聞いておるのですから。少なくとも、いま大臣もお認めになったように、その沖繩の教育をほんとうにささえてきたというのは、これは教育委員会公選制でしょう。  私は、そこで聞きたいのです。最初、総理にお尋ねしたように、いわゆる沖繩の心を大事にする、しかも、過去の沖繩というものを尊重しなければ未来の沖繩ということもあり得ないという総理答弁と、法案として提出されたところの教育をささえるところの行政制度の問題とは非常な違いがあるのです。こうなりますと、総理に最初に私が質問でお聞きしたところのものの考え方というのは、実際政策の面では生かされておらないんじゃないだろうかという疑点を持つのですが、その点はどうなんですか、総理
  304. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) さっき文部大臣がお答えしたように、とにかく私は沖繩の心これを心として教育をしなきゃならないと、かように思っております。その点では前段は同じなんだと、日本施政権が返ってきたら、今度は日本政府のもとで沖繩の教育が行なわれるはずであります。これはもちろん中央集権的な教育をやろうというわけじゃありません。しかし、いままでの異民族のもとにおける日本人教育とはおのずから変わっていると、そこのところをやはり区別して考えていただいて、沖繩の心を心とする、また、昨日の沖繩があるから今日の沖繩がある、また、明日の沖繩があるんだと、こういうことは言えますが、それと事情が変わっている、こういうことだけは、教育の行政の大家である宮之原君にもおわかりだろうと思います。
  305. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 どうもすれ違うようでございますけれども、じゃ、一つまた別に尋ねてみましょう。総理衆議院のやはりこの委員会において、教育と教育行政は違うんだと、これはあたかも別個の問題のようなものの言い方をされておるのです、議事録を拝見をいたしますと。また、文部大臣もそのような答弁をされておるのですが、私は、教育と教育行政とは別個のものだというふうに考えること自体、どうもふに落ちないのです。少なくとも、これは教育基本法やあるいは文部省やいろいろなところ、教育関係法案を見るまでもなく、教育行政というものは、教育の本来の目的を達成するためのものなんでしょう。したがって、教育と教育行政、制度が別だというものの考え方はできますかどうですか。私は、まあ文部大臣でもよろしいですが、その衆議院におけるところの答弁を拝見いたしまして、全く奇妙な教育論だと思いながら読ましていただいたのですが、どうなんですか、やっぱり違うのですか。
  306. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) これは、衆議院の木島先生に対する私の答弁をおそらく宮之原先生がお引きになってのお話だと思いますが、教育基本法第十条の「教育は」ということに対して、これは教育行政だけを意味するものではございませんということを申し上げた。私は、教育が教育行政と不離一体のものであり、教育の手段としての教育行政であるという認識に立っておるものでありまして、これが別々のものであるというような考え方を申し上げたつもりではございません。
  307. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そういたしますと、衆議院におきますところのこの少なくとも議事録にあらわれたところの御答弁、あるいは総理は、また同じ特別委員会で山中議員の質問に対しましても、そのような答弁をされておるのです、教育と教育行政と一緒くたに考えていらっしゃるんじゃありませんか云々と。違うなら読みますけれども。これは、いまやはり文部大臣が教育と教育行政は不離一体のものだと、このように訂正をされたわけなんですからね。それならば、もう何ほども言うことはないんです。これはもう申し上げるまでもなく、あなた、教育基本法の十条というのは、少なくとも御存じのように、(教育行政)という見出しがついているのです。(教育行政)という見出しがついて、教育はこういうものだ、教育行政は、このことを自覚してやりなさいと書いてあるので、少なくとも、教育基本法の十条というのは教育行政のあり方を指摘しているのですからね。それを衆議院におけるような答弁をそのまま踏襲されるということになったらたいへんなことになりますけれども、いまおっしゃったように、訂正をされたからいいようなものですけれども、その点はじゃ一致しますね。——はあ、わかりました。そのことを私はまず明確にしておきたいと思うのであります。  さらにいま一つ総理にお尋ねをいたしたいと思いますが、総理は十一月二日の本院予算委員会におきまして、わが党の安永英雄君からの質問に対しまして、こう答えておられます。いわゆる沖繩の公選制の問題と関連いたしまして、「事柄は教育問題ですし、たいへん重大なる問題だと、かように思いまして、政府はこの結論を得るまでには、たいへんあちらこちらの意見も徴したわけでございます。」云々と、こう言われておるのでございますが、そのことはまあ間違いないでしょうね。間違いないとするならば、具体的にどういう方面の意向を——少なくとも、これはたいへん重要な問題だと思うからあちこちの意見を聞いたということになるわけですから、具体的にどういうようなことの意見を徴されたか、お聞かせ願いたいと思います。——いや、私は総理に聞いているんです。総理お答えですからね、山中大臣にはまたあとからたっぷりお聞きしますから、この問題について。まず総理、答えてください。あれはことばのあやだとおっしゃるなら、ことばのあやだと端的におっしゃっていただいていいんです。
  308. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは山中君からもいま答えたいと言っておりますが、山中君から私は聞いておるものもありますから、山中君の話をひとつお聞き取りいただきたい。
  309. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 ちょっと待ってください。それならば、後ほど山中さんからもお聞きしたいと思うのですが、ついでに尋ねましょう。じゃ、それならば、大臣に一緒にお聞きいたしたいのです。長官は先ほどの同じ委員会で、やはり安永君の質問に対しまして、この問題について、こう答弁をされておるんです。沖繩復帰対策要綱を閣議決定いたしました時点においては、琉球政府との間には意見の相違がありませんでした。私自身があるいは私ども本土政府というものが沖繩の意に反して閣議決定をしたという事実はございませんと断言をしておられますが、これは事実、この点間違いこざいませんか。
  310. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) そのとおりでございます。琉球政府の公文書を沖繩事務局を経由して任命制移行に伴う、それに対する経過措置の要望として、原則としては任命制移行を肯定した公文書をいただいております。
  311. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 その閣議決定したのはいつでしたか、第一次要綱を。十一月の二十日でしょう。二十日ですね、十一月の。間違いないですね。しかし、閣議決定をするまでは全然意見の相違がなかったつでほんとうですか、それ。私は、その点をまず確かめてみたいと思うのです。しかも、またこの問題について、こうあなた答弁しておるんです。安永君とのやりとりの中で、あたかも閣議決定後に現地で反対の声があがったかのように、次のように答えている。「しかしながら、その後革新団体、あるいは教職員組合その他の御要望等がありまして、現時点において主席以下の関係者の態度は、できれば残してもらいたいという御要望」があります、云々と答弁されておるんです。これも間違いないですか。
  312. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) そのとおりです。
  313. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これは、私はたいへんだと思うんです。これは事実と大いに違います。少なくとも、あなたは沖繩大臣という異名を持っているくらいに、事、沖繩の問題については一番詳しい方なんですから、しかも、沖繩現地の動きというものは刻々御承知のはずなんです。それを、たとえばその後に、あれがきたから、その後に初めて革新団体、いろいろな団体が任命制は困ると、こう言ったとか、あるいは屋良主席はできれば残してもらいたい云々と、こう言っておると言いますけれども、これはあれなんじゃないですか、少なくとも、この復帰に関するところの建議書を見てごらんなさい。大臣、いいですか。これは建議書の六四ページから六七ページにかけて非常に書いてあるです。「琉球政府もそれを強く要請してきました。」とか、「今やその存続要請は沖繩の決定的な世論であります。」とか、あるいはこうも言い切っているじゃないですか、「私たち沖繩県民は、この際本土において、現行教育制度の非をあらため、沖繩祖国復帰を契機として本土法も沖繩と同様な制度に改正されるよう要求するものであります。」とさえ言い切っているんです。あなたの前の答弁をお伺いいたしますと、「できれば残してもらいたいという御要望」等がありますなんて、こう言っておるんです。どっちがほんとうなんですか。この建議書はうそなんですか。
  314. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 建議書は、さようにそのあときたものであります。
  315. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 建議書はそのあときたと言うのですけれども、あなたの答弁を見てごらんなさい。閣議決定した十一月二十日以降も「その後」云々ということを、しかも現時点におきましては主席以下の関係者の態度は、できれば残してもらいたいと、答弁されておるんです。これはやはり勇み足でしょう、あなた、少なくとも。それはやはり率直にお認めになられたらどうですか。現時点においてできれば残してもらいたいと、こう言っておるのですか、いまだ、沖繩の皆さんは。それは間違いでしょう。何なら議事録でも読みましょうか。
  316. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) この建議書を一条一条全部やりとりをいたしますと、やはり私どもとしては、琉球政府との間に長い時間をかけて詰めておりますから、そして、それを了承をとってすべてきめておりますけれども、そのあとですね、いろいろと問題点が提起され、部内で論争をされて、さらに意見が開陳をされたり、あるいはまた最終的には、これはまた私どもと何らの相談もなしに、建議書というもので一方的な意見を、琉球政府としての意見のみを持ってこられたわけでありますから、その段階ではもう何ら意見の打ち合わせば行なわれていないということですから、それは私は何も勇み足とか何とかというものではないと思うのですが……。
  317. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これは、あなたの議事録をすなおに読んだらわかるでしょう。少なくとも、あなたの最初の答弁は、閣議決定をしたところの当初においては違いありませんと、それはなるほどあなたとしては、琉球政府の一応、正式の文書を見るということだけがたてまえなんだから、これを骨子とすれば、その時点においては正しいでしょう。しかし、その後あなたの答弁は、いろいろ現地からあがって、現時点においては少なくとも——これは十一月の何日ですよ、ことしの。あなたの現時点というのはあの時点でしょう。その時点においても主席はできれば残してもらいたいと言っておる云々、これはだいぶ事実と違うじゃありませんか。だってその後の十一月十九日ですよ、これは。おたくの閣議決定までには間に合わなかったかもしれませんけれども沖繩の主席のいわゆる正式の文書、低姿勢のやつが出ましたね。その中にさえもすでにこれらは困ると、こう出ておるのです。あるいはその翌年の三月の衆議院のいわゆる沖繩派遣団の皆さんが行ったときにも、明確に建議書として出ているのです。それですから、少なくとも、あなたが先般答弁をされたところのその時点に云々というのは、これは事実と違うでしょう。そのことを私はあなたに尋ねておるのです。
  318. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 違わないのです。主席と私と会ったらそういう表現をされるわけです。
  319. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 しかし主席は、それはどういうものの言い回しかもしれませんけれども、少なくとも公文書でき、建議書できているものは、これはあくまでもふさわしいと見なければならぬでしょう。それならば、あなたが十一月二十日の第一次の閣議決定をしたときには、文書でもってそのとおり確認したから違いませんと、こう言っておって、今度は都合が悪くなると、これは主席のことばどおりですと、それからそれが正しいですとは、ちょっとこれはいかにあなたでもそう曲げて言えぬでしょう。これはやっぱりそうでしょう、常識的に考えて。その点は私は、やっぱりそれはちょっと言い過ぎなら言い過ぎだと、こう言ってもらえればいいのです。少なくともそうなりましょうが、これは。  それで私は、その問題にあまり時間をとりたくありませんから、続いて申し上げますが、しかも、十一月二十日決定される前の二カ月間という間の沖繩現地で、この公選制の問題については非常に反対だといういろいろな団体なりいろいろな教育委員会の決定というものがされておる。そのことは私は、少なくとも、これは担当大臣のあなには御存じだったと思うのです。それも全然知らないで、あの文書だけを自分は承知しておったというわけにはまいらないのです。その動きについては御存じなかったですか。
  320. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) それはよく承知しておりますし、喜屋武さんあたりも教職員会長もしておられましたから、直接に話したこともありますし、したがって、喜屋武さんあたりの御意向もやはり、これは一ぺん文書が出たかもしれないけれども、そのあとはみんな関係者は心配して反対しているので、沖繩における沿革はこういうことだったから、あなたはわかっているはずだから、これだけは何とか残せないかと、いろいろな話し合いもしたこともあります。したがって、それらの動きについてはおっしゃるとおり、私も承知しております。
  321. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 それならば、この間の予算委員会みたいな、いささかもそごはありませんと、止まり私は、大上段におかまえにならぬほうがいいと思うのです。私もいろいろ新聞をずっと調べてみたのです。これは閣議決定されたところの二カ月間のものを順を追うてこう、日を日付ですべて見てみましても、これはたいへんなものです。たとえば九月十七日、坂田文相が沖繩に来て、教委制度は七二年復帰時点までに公選制は廃して、本土同様任命する、こういう言明をされたときの現地の反対の声ですね。さっそくその翌日には、中央教育委員会が抗議声明を出しておる、あるいは九月の十九日には、琉球政府の中山文教局長がわざわざ記者会見をして、坂田文相は何のために一体来島されたんだろうか、われわれ琉球政府には連絡なしに、教育視察もされないで、来られた翌日はさっとお帰りになった、おそらく選挙運動で来られたんでしょう、しかしながら、ああいうことを言われては困りますと、これは文教局長が談話で発表しているんです、九月の十九日の新聞に。さらに、十月四日に初めていわゆるおたくのほうへ出したという正式文書が沖繩でわかってきたんです。これは聞いてみると、秘密裏に出されているんです。これはあなたも一番御存じだと思いますが。それがようやくけしからぬものを出したということが沖繩県民にわかった、この時点で。それで現地は、これはたいへんだ、一体だれの意見を聞いてどうしたんだということで、これからもう非常な追及が始まりましたのです。だから屋良さんもその世論に抗しかねて、十月の五日には、わざわざ屋良さんは記者会見を求めて、あの報告はあまりにも軽率過ぎた、遺憾だった、その責任を感じますと反省をして、公選制維持の方針を明確にしたいという特別の声明書も出されている。同時にまた、中山文教局長ですか、この人も同じようなことをされている。あるいは十月の九日には、わざわざ中央教育委員会が臨時の教育委員会を開いて、そこで、やはりこれでは困るというきちんとした決定をして、琉球政府にそれを申し入れて、それを本土政府琉球政府の意見として伝えてもらいたいということになり、それが先ほど申し上げたように、皆さんのところに渡ったということも事実なんです。こういう事実は、私は、山中大臣ですから、一番御存じだと思うんです。それを、あの閣議決定まではこれはいささかのそごもなかったと強弁していつまでもこの問題を押し通されるような問題ではないと思うのです。私から言わしむれば、むしろ政府自体が初めからこれは本土並みに教育委員会制を改めなきゃならぬという、そういうちゃんと腹組みをもっておって、それでもっていろいろなところで圧力をかけて、それで世論化しようとした。それがたまたま、あとからわかったことですけれども、あの琉球政府が五月二十七日付でおたくのほうに出したところの文書、あれは主席も判こを押さなかったとか、いろいろなあとから問題が出てきたくらいに軽率だったと、いろいろな問題が出てくるくらいに、責任問題が追及されるくらいに、正式なルートを通ったかどうかということさえも現地で問題になっておる。そういうようなことから非常に混乱をしていった。私から言えば、何も勘ぐりじゃなくて、むしろあれぐらい沖繩のことをわかっておるところの山中さんが、あの報告書をたてにとって、閣議決定されるところの時点においてもいささかも違いなかったと言うのは、ちょっと私は牽強付会過ぎやしないかと、こう思うのです。そういう意味では、むしろ、私はあの出されたところの、五月二十七日付で出されたところの文書をこれ幸いとばかり既成事実として押しつけようという気持ちでされたのじゃないですか。そこらあたりが本音じゃないですか。どうなんですか、それは。
  322. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは幾らやりとりしても同じことですが、何も圧力をかけて、こういう文書を書けとかなんとか、そんなことはもう全くありません。ただ、そういう事実は、やっぱり公文書ですからありますから、したがって、そのあと屋良主席が自分が軽率だったというようないまお話があったようなことを、私はそこまで言うつもりはありませんでしたが、そういうことのあった経過も私は承知いたしております。したがって、そういうようなことはありましたけれども、その後公文書として、その建議書みたいに明確にそういうことがなされたということではないということであって、いわゆる建議書というものは最終的に持ってこられたものでありますから、その内容は私ども持ってこられてから知ったと、こういうことになるわけであります。
  323. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 あなたはそうおっしゃるけれども、これはあなた十一月の十九日に、沖繩の連絡事務所を通じて低姿勢のやつがきておるでしょう。本土法適用に関する準備措置と、こういうものがちゃんと、いわゆる沖繩の連絡事務所を通じていっておるのです。どうもあなたの答弁を聞くと、これがあって初めてわかったと、これはことしです、つい最近です。これは少なくとも、六九年の十一月にこの低姿勢の建議書をちゃんと公文書で出しておるのです。それについては金然知らなかったとはこれはおかしいじゃないですか。しかも、私が言っておるのは、こういう公文書を書けと、あなたが圧力をかけたと言っておるのじゃない。有形無形のやはり既成事実が——本土政府の意向はこうだという政治的な圧力をかけたということは事実でしょう。ちょっとそこらあたりが、あたかも沖繩県民の意見を尊重して、これをやったやったと言いながら、もう既成事実でどんどん進めておいて、あとからつじつまを合わせたにすぎないんじゃないでしょうか。そこのところをはっきりおっしゃってください。
  324. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 圧力もかけておりませんし、確かに主席から電報はきております。それがいまおっしゃった日付ですか、たしか電報はきておりますが、それまでは、そういうことはなくて、ただ、琉球政府が決定して持ってきた文書についていろいろと異論があって、そして、主席も困っておるらしいということは私もわかっておりましたし、お会いしたこともありました。しかし、閣議で決定するときに琉球政府と正面から対決をして、そして圧力をかけてやったというものではないし、その考え方は、教育行政ですから、これはあとは文部大臣の話ですけれども、何も私ども琉球政府にペテンをかけてやったとか、圧力をかけたとか、そういう経過はございません。
  325. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 それは、あなたはそういうつもりはないと言ったって、現地では率直に言って、やはりペテンにかけられたという気持ちは強いんです。だから反対の声がある。しかも、第一次の要綱をきめたときは、あれは六九年の十一月二十日でしょう。現実に法案として出されたのはつい最近でしょう、ことしになってからでしょう。そのようなやはりいろいろな経緯があるとするならば、あなた方は謙虚に沖繩県民の意向についていろいろ考えてみようとおっしゃるならば、一たん閣議決定されたからといって、二年も前のやつが絶対にこれは修正も何もできないということもないでしょう。それをあたかもその後にやったんだやったんだと、こう言われたんでは、私は、これは全く事実と違うと思うんです。しかも、少なくとも政治的圧力がかかってきたということは、これは否定できない。たとえば、私申しましょう。九月の十七日に坂田文相が来て発言したことは先ほど紹介したとおり、十月の十一日には愛知外相も沖繩を訪問しています。そのときも飛行場で、自衛隊の配置と教委制の本土並みは当然と、もうすでに閣議決定する前に沖繩でアドバルーンを次々と上げておるんです。そればかりじゃない、あなた自身も言われたでしょうが。あなた自身記憶があるでしょう。おそらくそうでしょう。しかも、あなたは少なくとも、これはきめない前の五月の二十五日に沖繩の飛行場で言ってるでしょう。その二、三日前には、沖繩の未来への展望という、沖繩県民の心をくすぐるような非常にいい話をされたその山中大臣が、飛行機の帰りぎわにはぼんと本土並み当然だと言う、このものの言い方、少なくとも、あなたは沖繩においては、佐藤総理以上に沖繩県民の心をよく知っているという評判の言い方でしょう。そのあなたが、閣議決定されないところの五、六カ月も前からこういうアドバルーンを上げて、政府の首脳が入れかわり立ちかわり向こうへ行ってアドバルーン上げているじゃないですか。そういうことをしておいて、これは沖繩県民の意向と少しもあの時点においては変わりませんと言ったって、幾らあなたが言われても、聞いておる人はそう思いませんよ。さては、これは政府は初めからそのことはもう既定方針だときめておいて、ただつくろったとしか思えぬでしょう。この事実はあなた否定できないでしょう。これが実は、沖繩人々がなおこの教育委員会の任命制度というものに対しまして非常な憤りを持っているところのゆえんなんです。それは、ほかの者は入れかわりずっと行き来があったでしょう、いろんな過程の中で。ありながら、事、少なくともこの問題と自衛隊の問題——自衛隊の問題は別にしましょう。この問題だけであなた方入れかわり立ちかわり行っているんです。それでもって、いささかもあの時点においては沖繩の皆さんと変わりなかったと、こうおっしゃったって、これは沖繩県民は納得しませんよ。その事実はあなた否定できないでしょう。
  326. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私は、何も事実について否定はしていないんで、私も沖繩に行ったとき、教育委員会制度はどうなりますかと言われま、すから、それはやはり教育制度というものは日本に返れば一緒に本土各県並みになるでしょう、そういうことを飛行場で言って、そこにはまだ国会議員でなかった喜屋武さんもおられましたし、政党の党首の人たちも皆さん、与党、野党みんないらっしゃったのです。沖繩では与野党が逆でありますけれども。主席もそこにおられたわけです。ですから、別段何もそこでそうしなさいとも、そんなことも何も言っていませんし、その場では別段議論もありませんし、ただ、坂田元文部大臣が行ったときに、そういう議論が、また波紋が広がったという事実だけは確かにあったようです。それはまあいろんな時期の問題等もあったでしょう。ですから、何も隠したり、こっそりやったりしているわけじゃありませんで、それはもう黙ってそのままいけば、本土法が復帰の日に適用されるわけですから、そのままになっちゃうということで、そういうことじゃなくて、やはり一応公選制というものの残りの任期というものが、最初の期限が来る日までは、何とかそれらの人たちの……。
  327. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 それは、もう法律に書いてありますからいいですよ。
  328. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) じゃ、それは教育行政の中身ですから言いませんが……。
  329. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 少なくとも、あなたが前の予算委員会で答弁をされておったように、その時点まではいささかも違いありませんでしたということは、これは事実と違うということだけははっきりしておる。しかも、あなた方自体も最初からそういう既定方針を持っておって、いかにしてこれをのますかということにやっきになったというにしかこれはすぎないのです。ここが、私が指摘しておきたいのは、沖繩のこの公選制の問題が非常な県民の怒りを買うておるという大きなやはり要因になっておるという、このことだけは明白に申し上げておきたい。したがって、私はやはりこの件について、たとえば、同じ年の十月十九日でしたか、朝日新聞の社説の中で、「沖繩教育の本土なみ復帰を排す」という見出しのもとに、沖繩の教育環境は劣悪だ、この分野におけるところの本土との格差是正にこそ全力を尽くすべきだ。ただ、そのときに財政援助をえさに沖繩の民主教育を失うとするならば、それこそ教育の中立性に反すること、これに過ぎるものはない云々と、こう当時の朝日の社説にも出ておるのでありますが、私は、先ほど各大臣の入れかわり立ちかわりのあの談話の発表等から見れば、そのものずばりじゃないと、こう言いたいのです。むしろ、私が評価すべきは、皆さんからそう言われたけれども、依然として沖繩県民はそれに屈しないで、この建議書にあるように、あれでは困る困ると、やはり公選制を堅持してもらいたいというその声をこそ、あなた方は謙虚に私は聞くべきだと思うのです。そのことについては耳をふさいでおって、さっきみたいに、ただ形の面で、文書がきたからこうしましょうということでは、私はいつもの山中さんの答弁みたいにこれは聞こえません。だからその点はやはり明確にしてください。  ここで私が一つ伺っておきたいことは、実は閣議できめる前に、たしか総理府だと思うのですが、おたくのほうだと思うのですが、対策要綱決定を一応仮決定をした。しかしながら、閣議で決定をする前に、これは自民党の力で押し曲げられたということが当時の新聞に出ているのです。たとえば、こう書いてあります。十一月十八日、自民党政調会の審議会で、政府原案には教委制の一本化が明確にされていない、おかしいというクレームがついた。教育正常化特別委員会、これは私はどういう委員会か知りませんけれども、世の中では自民党のタカ派グループの委員会だと言われております。その特別委員会の森山欽司代議士からこの点が出され、そのために第一次要綱にこの点を明確にするようになったと、こう新聞は報じているのです、十一月十八日に。これは閣議決定前二日です。それであわててあなたは手直しして、閣議決定をした。ああいう文書にしたと、こういうかっこうになっている。これは事実なんですか、どうですか、お聞かせ願いたい。
  330. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私ども政府、与一体でございますから、与党のほうでこういうことを入れるべきだとか、あるいはこういうことは削れとかということは、予算編成なんかでもいつもやっておりますし、それは与党との間にそういう問題について意見の交換があったということは、そのとおり事実であります。
  331. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私は、こういう事実こそ、まさに沖繩住民の意思を考えながらものごとをやろうとするものに対するところの、政党のやはり教育政策に対するところの介入だと言いたいのです。これに過ぎたるものはないです。いろいろな状態を配慮しながら、ある程度この点は、おそらく私は山中さんのことですから、いろいろ沖繩現地の反対もあるから、政治的に配慮しながら調整をしようと、こう思っていたと思うのですけれども、そのものずばり言われているから、先ほどのような苦しい答弁をされるわけなんですけれども、こういうようなことこそ、私は、これは政党から一つの圧力を受けたところの要素だと言わざるを得ない。私は先ほど来、具体的にいろいろな問題を指摘しながらあなたにお尋ねしたのは、総理の言われるところの沖繩の心を尊重すると、こう言いながら、やることは、少なくとも公選制の問題については、沖繩県民の世論に全く耳をかさない、既定方針の問答無用方式を押しつけてきている。ここに、私はやはり、言いたくなくても言わざるを得ないのは、政府の教育政策に対するところの強引さというか、問答無用さというものがあると思うのです。これはまた後ほど触れたいと思いますが、ここに、私は一つの問題点があると思う。私は、沖繩の問題については、この教育問題ばかりではないのであります。少なくとも、これは政府が一応きめながら、先ほども例にあげましたように、与党の力が一たび加われば、すぐにこれは本土並みということばであらわされる。それではすべてが本土並みかというと、いままで本委員会でもすでに明らかにされてきているように、これらの問題に都合のいい基地の問題とか、VOAの問題とか、あるいは公用地等の問題については、これは沖繩がいままで置かれたところの現状を、しかたがないからがまんしてくださいと、一方ではそう言いながら、自分たちのやりたいものだけは、本土並みだと、こう押しつけてやっておる。ここに、私が冒頭に佐藤総理にお尋ねしたところのいわゆる沖繩の心をくむ云々と言いながらも、いわゆる問答無用式の教育政策をまた沖繩に押しつけようとする。そこに、また、沖繩県民が非常な憤りを感じているところの要素がある。この点を私は明確に指摘をし、もう少しあなた方に考えてもらいたい、その点をここで申し上げておきたい。  引き続きまして、私は時間もありますので、高見文部大臣にお聞きをしたいと思います。大臣、戦後の教育行政の特色でありますところの教育委員会制度の生まれたところの背景、理由というのはどういうものでございましたですか。
  332. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 戦後の教育委員会法が成立いたしました当時の文部大臣は森戸辰男先生でございました。この森戸先生が提案の理由の御説明の中で、民主主義教育というものを非常に強く強調をせられたことは、私が指摘するまでもなく皆さま先生方がよく御承知のとおりであります。ただ、その後いろいろな経過がございまして、昭和三十一年にこの教育委員会制度にかわる制度をつくりましたいきさつも御承知のとおりであります。今日まで十三年間これをやってきておるわけであります。
  333. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 もういいですよ、そこらあたりで。時間がありませんから簡明率直に、質問されたところに答えてくださればいいのですから、それに限って。私がいまお聞きしたのは、戦後の特色であるところの教育委員会制度が最初できたところのいきさつはどうですかとお尋ねしたのですから、まあ、その前半だけでもいいのですが、これは少なくともこの教育基本法を制定いたしましたところの第九十二回帝国議会ですか、これらの当時の議事録の中にも明確に出ているのです。少なくとも、やはり戦前の国家主義、軍国主義教育へのきびしい反省の中からこの点が生まれたということは、私は大臣もこれは否定されないし、また、同意を示されておると思いますが、ときに大臣、それならば、いまそういう過程の中で生まれたところの最初の教育委員会法、最初と言うと語弊があるが、教育委員会法、この立法の目的というものはどういう目的だったのですか、それをお伺いいたします。
  334. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 教育委員会法を制定いたしました当時の目的は、教育の独立性というものをはっきりしよう、教育の民主性をはっきりしようというところに主眼があったと理解をいたしております。
  335. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これは、当時の教育委員会法の第一条に明示されております。これは大臣にも共通の理解を持ってもらいたいから読んでおきますけれども、少なくとも、こう書いてあるのです。「この法律は、教育が不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきであるという自覚のもとに、公正な民意により、地方の実情に即した教育行政を行うために、教育委員会を設け、教育本来の目的を達成することを目的とする。」と、こう出ておるわけでございますから、その点は、これは明白でありまするから大臣も否定はされないと思う。  それで、続いて私がお尋ねいたしたいのは、教育委員会法の目的というのは現行の地方教育行政の組織及び運営に関する法律にも引き継がれておると見るんですが、いかがですか。
  336. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) この精神は今日も生きておると思います。ただその内容、形態におきまして、法律の改正が行なわれたということは、これは宮之原先生が御承知のとおりであります。これにはいろいろないきさつがあったことも御承知のとおりであろうと思います。
  337. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これは引き継がれておることは明白でございます。三十一年、二十四通常国会で例の教育二法事件があったときに、当時の提案者が清瀬文相でした。当時の議事録です。昭和三十一年三月十九日、衆議院の文教委員会の議事録を見ますと、こう出ておるんです。この法案に対しまして、当時のわが党の河野正議員から清瀬文相に次のように質問した。この法案は設立目的が明確でない、何かと、こういう質問をされたのに対しまして、清瀬文相は、目的は旧法とはいささかも変わっておりません、ただ、教育基本法の十条にも明示されているから、同じ文句を繰り返すのはどうかと考えまして削除しました、言うならば、この法案の上に教育基本法はかぶさっているのです、こう答弁をされておるわけですから、その点は、私はいかに時が移り変われりといえども大臣は否定されないと思いますが、いかがでございますか。——よろしゅうございますね。そうなりますと、これは教育委員会制度のあり方という問題の政府と私との争点は——それならば、委員の選出方法はどうあるべきかという問題が争点ですね。ほかのところは違いませんね。そういうことになりますね。  そこで、その点は御確認願いましたら、さらに引き続いて、それならば、この教育委員会のこの委員の選出方法やいろいろな問題と関連をして、この運用の中で一番その際最も重要な基準というものをどういうふうにお考えですか。この教育委員会制度の運用において、今日は法律は変わっていますけれども立法趣旨は変わらないというわけですから、その運用の基準というものの一番大事な点はどういう点だとお考えになりますか。
  338. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) これは一つだけ申し上げておきたいと思いますが、精神は変わっておりません。ただ、法律の内容の中で変わりましたのは、財政二本立てが地方行政の首長の権限下に入ったということであります。選出方法が変わったということなんであります。
  339. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 少なくとも、先ほどお互いに確認したところの委員会設置の目的からしますれば、これはやはり現行の教育基本法の十条にいう教育は不当の支配に服することのないように教育の中立性が守られなければならないということと、国民全体に対し直接責任を負うと、そこのところが私は最も大きな基準になると思いますが、いかがでしょう。
  340. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 私は、あの制度ができましたときに十分な民意の反映ということが一つの大きな柱であり、いま一つは、教育の中立性の確保ということが一つの柱であったかのように理解をいたしております。
  341. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 だから、いまののを文章で読めばそういうことになりましょう。それはお認めになりますね。それで、まあ珍しくここまでは文部大臣と合意に達してきておるわけですから、もう少し私は——それならば、教育は不当の支配に服されない云々ということで、一番強く戒めなければならないことは何だとお考えですか。  まあ時間がありませんので、はしょって言いますけれども、大臣は十二月四日の衆議院特別委員会で、こう答えている。教育の中立性を維持するためには、国家権力が教育内容に立ち入って不当な支配をすることのないようにすることだと、その当時答えられておる。十二月の四日の新聞見てもね。全く私もそのとおりだと思いますが、その点はよろしゅうございますね。
  342. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 私が国家権力の不当の支配と申し上げましたのは、その前段に、戦時中のような超国家主義的な国家的権力という意味のことを申し上げておったその国家的権力の支配と、こういう意味であると御理解をいただきたいと存じます。
  343. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 それはよけいなつけ加えことばです。この議事録を見てごらんなさい。あなたはこのように明確に答えているんですよ。「教育の中立性を維持いたしまするために、国家権力が教育の内容に立ち入ることが不当の支配だということを考えなければならぬと思うのであります。」、こう答えられておるんです。妙な前置詞をつけないでそのものずばりに私は聞いている。そうでしょう、変わらぬでしょう、それは。それともまたこれは修正されるんですか。
  344. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 私の御答弁が前段に、その前に申し上げたことばの中に、戦前の超国家主義的な不当の支配ということを申し上げておりましたから、それを受けて申し上げたのでありまして、国家が教育に関与するのは、教育という共通の仕事に国家が関与するということは私は当然の仕事であると、かように考えております。
  345. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これはだいぶあのときの答弁を修正されているんですけれども、時間がありませんから私はこれ以上追及しませんけれども、少なくとも、私はやっぱり終始一貫してもらわなけりゃこの問題は困ると思うから、もう一回ひとつ議事録をきちんとして、私はやはりこのことは留保しておきたいと思うのですが、もう一つの基準は、少なくとも、国民全体に対し直接責任を負うということもやっぱり一つの基準になると思うのです。このことは議事録を拝見いたしますと、まあ、質問者とのやりとりの中に若干ずっと横に発展をしたところの要素もありますけれども、そういういわゆるやりとりじゃなくて、これは当時のよく大臣の言われるところのすなおな心で読めば、国民全体に対して責任を負うということですから、これは少なくとも、いわゆる民主主義とはというと、国民の、国民のための、国民の手によるものだと理解するのが私は常識だと思うのです。しかもそのことは、当時の文部省の官僚の皆さんでつくっているところの研究グループでも明確に言っているんですよ。当時の教育法令研究会、この研究会の著書で、当時の文部省の調査局長の辻田力さんと、それから現在の最高裁の長官田中二郎さんが監修をして、当時の課長の皆さんでちゃんとつくっている。その中にそのことは明確に言っている。それは国民の、国民による、国民のための教育云々ということで、明確にこう出ているわけです。ですから、このことを私はあなたといえども否定されない。それで問題は、「直接に責任を負って行なわるべきものである」と、ここのところは、あなたは直接というのは間接も直接の意味もあると、こう解釈をしたいなということだと思いますが、その点はそういう理解ですか。
  346. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) この法律で「直接に」ということばを特に入れましたのは、教育の重要性にかんがみて、教育が一つの社会全体、国家全体に対する奉仕であると、一つの社会、一つの派閥、一つの宗教、そういうものに奉仕するものではないということを強調する意味において「直接に」ということばを使ったものであろうと、こういうような私は理解に立っておるのであります。
  347. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これは、私が先ほど紹介いたしました少なくとも、文部省の指導の基本になったこの著書であるところの「教育基本法の解説」の一三〇ページから一三一ページにこう書いてある。国民の意思と教育とが直結することが大切で、その間にいかなる意思も介入してはならない。国民の意思が教育と直結するためには、現実的な一般政治上の意思とは別に国民の教育に対する意思が表明され、それが教育の上に反映するような組織が立てられる必要がある。そして、このような組織として現在米国において行なわれる教育委員会制度は、わが国においてもこれを採用する価値がある云々と、こう述べている。しかもまた、これと同じように、田中耕太郎さんの著書の「教育基本法の理論」、この中の八六八ページにも書いてある。国民は自己の意思を代表者たる国会議員を選挙することによって表明する以外にはない。しかし、教育に関しては、これと国民とのつながりは、このような間接的なものだけでは満足することができない。国民は自己と教育との間に中間的な介在者を経ないで、これと直結されることを要求している。これすなわち法が教育をもって国民全体に対し、直接に責任をもって行なわれるべきものとするゆえんであると、こう述べておるんです。この表現、これを読めば、これはあなたが政治的な偏見を持たない限り、すなおに読んで公選制をさすということがはっきりしているじゃありませんか、どうですか、それさえも否定されますか。
  348. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 私、田中先生の著書にあることを読んでおります。読んでおりますが、それは、教育委員の選出の方法が直接であるか、間接であるかということは別な問題であります。選出手段の問題でありまして、いままでの選挙制度と今度の任命制との間で違いますところは、何が違っておるかと申しますというと、(「わかっている」と呼ぶ者あり)おわかりになっておることだと思いますから重ねては申し上げませんけれども、私は、選出の方法が違っておる、したがって、教育の中立性というものは、少なくとも、知事部局の中にありましても別な存在であるということだけは御承知のとおりだと思うのであります。
  349. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これは、まあ大臣はここではあまりすなおということばを出されないようですが、議事録を見ますと、至るところにすなおに解釈していただきたいとある。おそらくいまから出るだろうと思いますが、すなおにこれを読んでごらんなさい。少なくとも、ほかの国民が意思を表示する場合には、自分たちの代議員制度で、国会議員というもので代表されることが必要だけれども、事、少なくとも教育というものは、やはり介在されるよりも、直接訴えるというのがこの法の趣旨だというならば、これは間接選挙ではなくて、直接選挙だということは明白じゃありませんか。これは少なくとも、この法律を見れば、あなた方の意見の相違はあるにしても、それは明確ですよ。私は、大臣の苦しそうな答弁を伺って、論理的にはあなた賛成しながらも、政治的な配慮だけが先走っているから、そういう答弁をせざるを得ないと思うのです。それならばお聞きしますが、たとえば、その選び方にしても、あなたは教育の中立性を守るとか、あるいは不当な圧力を受けないようにするために、これが大事だというならば、地方自治体の長あるいは議会議員というのは、政治上の自分の政策を選挙民に訴えて、それによって選び出されたところの政治家ですよ、地方の首長とか議長とかあるいは議会議員というのは。その政治家たちの多数の意向で、若干の制限はありましょう。特定の政党とか何とかという制限はあるにしても、そういう人たちの意向によって選ばれた者で構成されるところの教育委員会と、もう一つは、地方住民に直接教育のことを訴えて、私は教育行政についてこうしたい、教育はこうあるべきだということを考えて、その立場に立って選挙民に信を問うて選び出されたところの人でつくった教育委員会、この二つを常識的に比べてみて、だれが公権力からの介入というものを排除するに一番力強くいけると思いますか。いまの教育委員会制も、それ見たかと、こう言われると思って別に答弁されることをよしにして、純理論的に考えてどうですか。それは少なくとも後者のほうが正しいでしょう。どうですか、大臣。
  350. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) これは選任方法でありまして……。
  351. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 選任の方法を聞いておるんです。
  352. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 選任の方法でありまして、直接選挙するということと、それから地方住民の意思を反映して、それを十分生かして教育委員を選ぶという現行法と、制度の上の是非については御議論のあるところは、私も承知をいたしております。承知をいたしておりまするけれども、すでに法改正後十三年間定着をして今日に至っておる。これは今度の沖繩の返還に関して、少なくともこの論議を繰り返すべきものでは私はないという感じがするのであります。
  353. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 少なくとも教育行政上二つのカテゴリー、これを考えてごらんなさいよ。政治的な思惑は別にすれば、少なくとも教育について私はこれが正しいと思います。どうですと住民に訴えて教育のことをつかさどるということが、より民意が反映をし、また不当な公権力の圧力というものを排除できるというのは、これは当然じゃないですか。それをやっぱりあんた、否定されますか。
  354. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) これは昭和三十一年に法改正をいたしましたときに、教育委員会法というもののいろいろの欠点というものを踏まえましてこれを是正したのであります。そういう趣意で変わったのでありまするので、御議論はあるんであろうと思いまするけれども、私は今日の制度で差しつかえないと、かように考えております。
  355. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 まあその変わった経緯の理由として、大臣は、政党的な色彩が強くなるからいかないとか、推薦母体がなければ選ばれないとか、膨大な選挙資金を要するからこれはぐあいが悪くて改めたんだと、こういう答弁をされていますけれども、少なくとも教育の本質、教育理論からいえば、これは全くとるにたらない、つけたしの理屈にしかならぬですよ。ほんとうに教育ということを考えていただくならば、いまさっき私が申し上げましたところの観点から、一体どういうことが正しいのかと、謙虚になって教育のことを考えるのが私は正しいと思うんです。だから、そのことを、ただ十三年前きまったんだからびた一文動かされないんだという考えでなくて、もう少しやはり教育というものについても、論理的にと申しますか、教育行政上どっちが正しいかという、そこのところを私はやはり考えながらこの問題をやらなければ——先ほど理由があげられたんだから——角をためて牛を殺したというたとえそのものじゃないかと私はこう思うんですが、そこはまあ大臣と大きく意見の相違するところですが、内心ほんとはあんたもそう思っているんでしょう。けれども、それはいろいろな経緯の中から私はそういうあれが出たと思うんです。  それでまあ、時間がありませんから急ぎますけれども、大臣、ときに、沖繩の現在の教育委員会制度というものと三十一年まであったところの日本の教育委員会制度と同じものなんですか、どうなんですか。違いがあるとするならば、どういう違いがあるんですか。
  356. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 沖繩には、中央教育委員会、その下に地方教育委員会がありまして、中間に連合教育委員会というものがございます。ただ、連合教育委員会だけは実は直接選挙になっておらないという違いがあるわけであります。
  357. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これは、直接公選制によるものは、いわゆる教育区の教育委員だけですね。連合区は互選、中央委員も互選と、しかもまあそれにいろいろな権限の問題についても案分をする。これは、少なくともこの沖繩の教育委員会法が生まれたときには、本土ではちょうどなくする時点だったでしょう。本土の当時の教育委員会法の持っておったところの弱点、問題点というものを是正をし、しかも教育の本質、教育基本法の本質から私は一番妥当なこの方式を選んだものとして高く評価しておるのですが、どうですか大臣、これは従来の本土にあったところの教育委員会法とも違うけれども、非常にやはり検討に値するところの値打ちがあると思いませんか、どうですか。直ちに本土並みにするせぬは別にいたしまして、どうですか、このもののあり方というのは。
  358. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) お話のように、教育委員会制度については、私は謙虚にものを申し上げておるつもりでおります。すなおに考えました場合に、この場合は本土並みにということを申し上げておるのであって、教育委員会制度の是非についての意見は確かにあるということは承知の上で申し上げておるつもりでおります。
  359. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 どうもそう質問をはぐらかされたのじゃ、私も困るのですけれどもね、時間は過ぎるし。それはそれでいいでしょう、大臣は。  それで、総理に私は最後にお聞きいたしたいのですが、教育の問題について。いまのやりとりの中でも、私は総理はお聞きだと思います。しかも、総理は、先般の本委員会におきますところの民社党の高山議員の質問に対して、いろいろ検討する、今後の検討課題だということもおっしゃられておったのですが、事、教育問題は、私はやはり日本ではあまりにも教育が政治的に取り上げられ過ぎてきたという要因があるのじゃないかと思います。ここの中に、今日の教育委員会制度の非常に大きな問題があったということも私は指摘せざるを得ないのです。そのことはよく、二十四国会の中ですでにきまったものだ、こうおっしゃるけれども、あれのきまり方はどうですか。あれに反対したのは教員団体だけじゃないですよ。全国の教育委員会から、市町村から、それから青年団から、あるいはPTAの協議会から、あるいは東西の十大学長から、各新聞、世論がこぞって、現行法を守るべきだと、こう言ったのを、当時の皆さんがこれは野党を押し切ったんですよ。しかも、その国会でのやり方を見てごらんなさいよ。全くもう、何と申しますか——当時鳩山内閣だったでしょう。出されたところのたくさんの重要法案があった。憲法調査法案とか、あるいは教科書法案とか、あるいは教育制度審議会設置法案とか、それから小選挙区法でしょう、そういうものはみんなかなぐり捨てて、これ一本にあなた方はしぼってきて、この参議院では六月の初めまで国会を延長して、警察官を五百人も中に導入して、それで有無を言わさず押しつけてきたんですよ。それで、あれはできたんだから、できたんだから、こう言って、これに従え、従え、こういうしろもの、言うならば、あの教育委員会の制度、今日の教育行政制度の基本をなしたところの現行法をきめるとき、政治的な皆さん方の暴力的な圧力があったことははっきりしているんですよ。そういうものでできてきた。ここにそもそも、私は今日の教育の大きな問題点が内在すると思う。少なくとも、総理、教育というのは国家百年の大計でしょう。しかも、この教育の問題について、一番国民的な合意を必要としなければならない問題ですね、これは。いかに時の政治権力がどうだといえども、そういうしろものをああいう過程の中で生んできた、それを沖繩の皆さんはよく知っているんですよ、沖繩の皆さんは。今日の教育委員会法のもって生まれたところのゆえん、あるいは教育委員会法ができたところのあとはどうですか。現行教育法の地方教育行政の組織及び運営に関する法律ができた後はどうですか。勤評の問題、学テの問題、教科書法の問題、数えればきりないぐらいに常に教育の問題が政争の具に供されてきておるんです。しかも、それは強引に議会民主主義というものを踏みにじった形で通過させられているというのが今日の教育です。言うならば、国会というものは男を女にするとか女を男にする以外のことは何でもできる、多数さえ握れば。そういう気持ちでもって教育までやってきた、そこが私は国民の、特に若い層が政治不信、政治不信と言う要素を生んでいるところの一つの要素でもあると思います。それだけに、教育の問題については、国民の協力が得られるように、常にしんぼう強く相互の意思の疎通をはからなければならないと思うんです。中教審の答申が出ていますけれども、おそらく来年はまた問答無用に私はやられるに違いないと思うんですがね。もし、それだけは別ですというなら、はっきり総理の話も聞きたいんですけれどもね。そういうもの腰で生まれたところの今日の日本の教育というものを沖繩皆さん方は知っておるんですよ。それだけに、先ほど申し上げたように、自分たちが血であがなってようやくできたところのあのりっぱな教育を、また本土復帰する時点ですべてが御破算になりはしないかと、その心配が先立つのは、これは当然じゃないですか。そこのところに非常に根深い反対の意思があるんですよ。そういう一つのものだという考えなしに、これを問答無用に押し切ろうという、ここのところを私はやはり反省すべきだと思う。もちろん、この問題については、すべてが政府や自民党の皆さんに非があるとは言わぬ。それは私ども考えなきゃならない点があるでしょう。しかしながら、時の政治権力を握っているのはあなた方でしょう。あなた方が謙虚になって初めて、教育の問題について合意が得られるようにこうしようと考えて、いろんな問題をしんぼう強く出される。その中からこそいろんな問題で合意の線が出てくるんじゃありませんか。事、少なくとも、今日までの日本の教育行政あるいは教育というものはそういうものの中から出てきたところに、沖繩県民は不信を持っているんですよ。そういうことがないとするならば、これは今後は絶対にそういうことがないということを明確にしない限り、これは沖繩県民はこの問題について非常な不安と不満を持つのは当然じゃないでしょうか。総理、いかがなものですか、この事、教育の問題についてどうお考えになりますか。
  360. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 宮之原君の御意見を聞いていると、国の教育の問題を論じておられるのだと思いますが、どうも具体的には沖繩の教育委員会制度いかにあるべきか……。
  361. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 関連するじゃないですか。
  362. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) こういうことで、ただいま関連だとおっしゃるが……。
  363. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 同じじゃないですか。
  364. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) それはやっぱり十分区別して考えていただきたい。これは先ほど申したでしょう。沖繩がああいう教育区、それと別に自治体という制度がある。そこらにもうすでに問題があります。しかし、この自治区のもとで選挙制をやったということは、一体異民族の支配下において教育を守ったんだと、これは私は高く評価している。しかし、今度はそういう問題じゃなくって、祖国日本に返ってくる。そうしたら、日本の考え方、そういうものと歩調を合わしてしかるべきではないか。そこで、いまの選挙制がいいのか、あるいは任命制がいいのか、それがいろいろ議論されるんだと、比較考量されるんだと、私はかように思っております。どうも宮之原君の話を聞いていると、この沖繩の教育が日本人の教育を守った、どうもこれはあの教育委員会のせいなんだから、それをそのまま本土にもやれと、こう言われるのは、ずいぶん論理的に飛躍があるんじゃないかと私は思います。私は、教育の問題、もちろんこれはじっくりかまえて議論すべき問題だと思います。私は、過去においてそのきめ方が強引であった等々の御批判はございますが、しかしながら、三十一年の改正以来、これは定着してきているんです。だから、そういう問題を全然無視して、この際これは間違ったんだと、あの改正がけしからぬのだと、こう言われることは、どうも納得がいかない。私は当時のことを考えながら、いまだにその事態が続いているが、その間においてこの問題の任命制についてはうまく運用されていると、かように私は考えますので、どうもただいままでの御意見を聞きながら、これは御経験を生かしての御議論だと思いますけれども、どうもそのまま私賛成できないなと、かように思っておる次第でございます。
  365. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 それは、その当事者の総理ですからね、強引にきめてきたのはね。それがここで反省しますと言うことは、それこそ首が吹っ飛びますから、それはあなたこんりんざい、心の中で思われても、言わないでしょう。しかしですね、総理、少なくともあの教育委員会法というものが強引にきめられたあと、あなた、事がないと言うけれども、教育の問題が政争の具にされなかったという年というのがありますか。常にあなた、トラブルの対象になってきているじゃありませんか。それはみんな君たちが悪いんだと、こう言いたいでしょう、あなた。そうではないですよ、やはり。問題はやはりそこのところにあるんですよ。そのことを沖繩の県民はよく知っているだけに、これはやはりこのままの適用ということは困るんだと、そう出てくるのは当然じゃないでしょうか。そういう心ということをあなたはひとつも理解しないでもって、ただ沖繩とこれと離せと、こう言われたって、これは論理的なあれも成り立ってこないですよ。教育というもの全体をこう考えてごらんなさい。お互いに謙虚に反省してみましょうじゃないですか。そうした場合には、教育のあり方という問題についてはたいへんな問題がある。いみじくも、たまたまここでの論争は沖繩の公選制の問題ですけれどもね、公選制の是非の問題に端的にあらわれているんですよ、教育のあり方の問題が。だから、この点を私はやはり明確にして、次のところに移っていきたいと思います、時間がありませんから。  次は、角度を変えまして、沖繩の経済開発の基本問題についてお伺いをいたしたいと思います。政府は来年度を初年度としますところの十年計画を沖繩経済開発の方針できめて、各省から二千九百九十五億と、こういう予算要求をされておるようですが、大蔵省にですね。まあ、これだけの予算要求されるには、おそらくそれぞれの各省なりの構想というのがおありだと思う。しかし、構想はどうですかとお尋ねしますと、はね返ってくるところの答えは、それは新しい知事がきめてくるんですと、こうお逃げになるでしょうから、そこは尋ねませんが、角度を変えて、こうお聞きしましょう。  これは、いままでの答弁の中で、政府——これは山中大臣にお聞きしますが、沖繩の長期経済開発計画、これはまあ尊重してやりたいということを何回も言われておったんですがね。この中身の問題について——尊重されるという中身の問題について、私は具体的にお聞きしたいと思います。たとえば、開発計画は、八〇年には人口九十九万から百九万とするという前提に立って、所得を三・七倍するとか、あるいは県民一人当たりの所得を三・三倍にするとか、ずっとこう出ておりますですね。あるいはまた、産業構造の問題にしても、第一次産業四・八%とか、第二次産業三六・八%とか、第三次産業五八・七%に持っていくと、こういう構想がありますがね、そのことについてどういう政府としてはお考えを持っておられますか、その構想についての所見があったらまずお聞かせを願いたいと思います。簡単でよろしゅうございますが。
  366. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは、人口問題などは、私が一番心配しております人口流出、これをどのように食いとめていくかという経済政策の問題、沖繩の未来図の設計の問題に関係がありますので、まあ国勢調査をことし初めて戦後沖繩でやったんですけれども、私どもが考え、琉球政府が考えておりましたよりも、やや伸びが鈍っておりまして、九十五万を割っております。この点は非常に心配をいたしておりますが、やはり沖繩が人口もふえ、そうしてふえるには、沖繩から流出しないで済む島になるということのために、全力を尽くしたいと思います。  所得の増加の目標、あるいはまた二次産業のウェートの増加、あるいはいびつな形で発展した三次産業の地位を少し低下させる、あるいは一次産業はやや従事者を少なくして所得をふやす、そういう考え方の基本は前提として、一応私はその線を尊重しながら進める具体的な考え方であろうと思います。
  367. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 その計画の、いわゆる土地利用の基本構想ですね、十年後の。これを見ますと、本島の北部と先島の一次産業はどうする、二次産業はと、ずっとこう計画が出ていますね。この青写真については、一体どういう見解ですか。これで正しいと、これでいいと、こういうようにお考えですか、どうですか。
  368. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) そこらの具体的な問題も、沖繩本島において軍事基地というものを、まあ念頭から一応、十年後にはもうなくなるんだと、経済依存度も、軍事基地の収入はゼロと考えて、依存度はゼロと考えていいという、そこらのところが、私たちはちょっとそこまで長期計画を前提として作業をしていいかどうか、そこらのところが、まあ安保条約を認める立場と認めない立場との違いもありましょうが、私たちとして、十年後には全然ないということを前提の経済開発計画というものはちょっと書きにくいのではないか。しかしまあ、方向としては、その方向に縮小整理されていくべきものである。これはたびたび申し上げているとおりであります。
  369. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そうしますと、あの長期経済計画は、若干の問題点はあるけれども、あの開発計画の実現に政府は積極的に協力していきたい、こういう考え方だというふうに理解してよろしゅうございますか。
  370. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) この作業をやった諸君と、私は、これを前にして、いろいろな意見を交換しましたが、非常にまじめに熱心にこれを作業しているのですね。私はその熱意に非常に打たれまして、やはりこの作業というものの内容も、これだけの純真な作業の上に積み立ててあるわけでありますから、現実的でややむずかしい問題等については今後相談していきながら、なるべく尊重していくという気持ちでおります。
  371. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これは大蔵大臣にお聞きいたしますが、この計画でいきますと、大体財政上から考えてどれくらいの投融資と申しますか、そういうものになるのか。特に重要なポイントは、公共事業をどれくらい積極的にやるかというような問題、いろいろな財政上の問題点があると思うのですがね。この財政上の問題から見て、あの計画をどういうふうに見ておられますか、大蔵大臣。まだ大蔵大臣のところまで来ぬのですか。来ないとなれば、これは山中大臣が大蔵大臣になるわけじゃなくて、金の裏づけがなければ何にもならぬわけですからね。どうなんですか、まだその問題については真剣に大蔵省として検討されておらぬのですかどうですか、ちょっとお聞かせ願いたい。
  372. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 産業開発の問題は、いろいろな方面からこれから総合的に検討されると思いますが、沖繩については、私はやはり何をおいても産業開発の基礎が工業用水の確保であるというふうに考えています。したがって、開発を中心にしているいろいろな経費の要求も、沖繩についてはほとんど大部分がやはり工業用水に関する問題が多いというのが現状でございますので、この水源の調査ということと、工業用水の事業費——事業費も二十億以上のいま要望が来ておりますが、沖繩において来年度私どもが産業開発に関係して予算的措置を重視すべき点は、やはり工業用水確保に関する一連の問題の費用ではないがというふうに考えております。
  373. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 この開発公庫に対してはどれだけ出資をするという腹づもりですか。これはだれにお聞きしたほうがいいのですかね、山中さんですか、それともやっぱり大蔵大臣の話を聞かなければ、これはから手形になりますね。
  374. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは、私はいま予算要求しているわけです。一会計から百五十億並びに別に九億ありますから百五十九億、他の借り入れ金等で大体六百億台の新たなる事業資金として活用できるように考えておりますが、何ぶん法案衆議院段階で継続になってしまいましたし、予算はすぐきめなければならない目の先に迫っておりますので、非常に苦境に立っておりますが、なるべく大蔵省の協力を得たいと思っております。
  375. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 大蔵大臣はいかがですか、これはやっぱり大臣のから手形では困りますから、どの程度考えておるか、まあ何も額を聞きやしません、前向きで考えられるかどうか、ちょっとお聞きしておきたいと思います。
  376. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 御承知のように、いま沖繩の予算も査定の最中でございまして、できるだけ実情に沿った予算の計上をしたいと、いま編成の最中でございまして、まだ金額ははっきりいたしません。
  377. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 非常に抽象的な、しかもとらえどころのない答弁をされるのは、非常に困りますね。これは現地の皆さんはおそらくがっかりしておられるのじゃないかと思いますが、それは別にして、通産大臣にお聞きしたいと思うのですが、これは私が指摘をするまでもなく、沖繩は、第一次産業が所得の面では九%、第二次産業が一八・七%、第三次産業が七二・一%、典型的な基地経済ですね。それを、先ほど私がお聞きいたしましたところの一九八〇年に第二次産業を一気に三六・三%に持っていくといたしますと、これは実に年間二二%の生産所得を上げていかなければ追っつかぬわけですね、ここまでにはね。そのためには、私はこれはもう沖繩の開発というのは重工業開発を重点に持っていく以外にはここに達しられないと見ておるのです。また事実、開発計画を見てみますと、戦略産業の開発というふうに名を打って、重化学工業に重点を置いておりますね。私は、この構想は、かつていままで本土でたどったところの道、言うならば、新全総でもきびしく批判をしておるところの拠点開発方式というものがそのまま、私はこのままの計画でいくならば、沖繩で踏襲されていくとしか——この計画から見れば、考えられないのですよ。十年後には第二次産業をそこまで持っていくというのにはね、そういうようなことにしか考えられないのです。言うならば、本土の高度経済成長政策の沖繩版がこの開発計画の一番ポイントであるのではないかという一つの心配点を持つのですが、どうなんですか、この点は、通産大臣は。できるだけ簡単にひとつお願いします、時間がありませんから。
  378. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 現在九%近い所得比率をあげておる人口比率が三八・九%、この十年後の二次産業比率を本土並みにするというのでありますから、三九%近い一次産業の人口比率を二〇%くらい二次産業に移さなければならないということになるわけでございます。本土の四七・三に対する三次産業の人口比率は四六・五ですから、これはもう一ぱいだと思います。そうすれば、一次産業比率を二次産業比率に移すということでしかないわけであります。しかし、その内容の問題でございますが、いままで本土が重化学工業中心でございました。ですから、公害問題等いろいろなものが起きているわけですから、このままのものを沖繩に持っていけるのかどうか、これは沖繩の地理的な条件、また沖繩の特性等から考えて、本土と同じものというふうには考えておりません。知識集約産業にだんだんと本土が移っていかなければならないと同じように、方向としてはそのような方向でなければならないということが一つ。もう一つは、労働力が豊富でございますので、知識豊富な労働力を前提とした企業というものを考えなければならないと、このように考えております。ですから、比率で見ますと、本土のようなことではなく、八〇年に大体既存企業の三倍に当たるものが工業出荷額として予定されておるわけであります。その状態を見ましても、石油化学や石油精製、鉄鋼、造船、アルミというようなものは比較的小さいものでございまして、機械工業とか二次加工工業とかいうもの、いわゆる労働力の集約的なものというような新しい二次産業形態というものを考えております。これはすぐどのようなものがどこでというわけにはまいりませんが、計画を立てるときに、この沖繩に適応する企業というものを計画をし、推進をしていくということになるわけでございます。
  379. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 通産大臣ね、通産大臣は沖繩に「計画を立てるときに」と、こうおっしゃっていますけれどもね。先ほど山中大臣から代表して言われたように、あの長期経済計画を一応尊重するということになりますと、あれはあんたの話とだいぶ違うんですよ。少なくとも、戦略産業と名を打って、石油コンビナート地帯をここにつくって、これを重点にしてこうして上げるのだと、こう出ておるのです。そういうものは尊重すると言いながら、いま通産大臣の話を聞きますと、あれは小規模にしていわゆる沖繩に適したところの二次産業を起こしたいということだと、あの長期経済計画と私はそごがあると、こう思うのです。そこらあたりを、いまから計画を立てるったって、御承知のように、もう沖繩はどんどん進んでおるでしょうが。たとえば、あんたが御承知のように、石油資本の進出を見てごらんなさい。カルテックスの問題、ガルフの問題、エッソの問題、あるいは三菱グループの問題、アラビア石油の問題と、あの東海岸にたいへんなこれは石油産業の進出じゃありませんか。日本で有数の石油化学工業のコンビナートができようということで、もうすでに既成事実が発生してどんどん進んでいるでしょう。これはあとから環境大臣にも聞きますけれども、いわゆる公害の問題にも具体的な問題になってきておるんですよ。そういうように、片一方ではどんどん進んでおるのに、これは、あなたがこの間参議院の本会議で答弁された、今後の日本の経済構想を変えていくんだと。そしてやっぱり知識集約型の産業形態に持っていくんだ、それを沖繩にやるんだという衆議院での答弁などを見ますと——事実は違った形でどんどん進んでいるんですよ。一体このそごはどうされるっもりですか、どういうような指導をされるんですか、そこをひとっ具体的にお聞かせ願いたい。
  380. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) この計画に対しては、沖繩県知事が、地元の要請を受けながら、適地、適正な二次産業計画というものをつくってくるわけでございます。しかし、それが出ないうちは全然想定する数字もないのかということでは困りますので、琉球政府は一応の数字を試算しておるわけでございます。この数字のとおりになるかならないかということでございますが、まず想定される数字は、石油精製が八〇年において四億三千二百万ドル、石油化学が九千九百万ドル、鉄鋼が六億六千万ドル、造船が九千五百万ドル、こういう数字をきちんと出しているわけでございます。なお、二次加工にして、アルミ精錬が八千七百万ドル、機械工業にして三億八千四百万ドル、合計十八億七千六百万ドル、既存事業の六億八千万ドルに対して大体三倍ということでいま計算をしております。これはやっぱり予想数字を持たないでスタートするわけにはまいりません。しかし、計画経済でもってやっておるわけではありませんから、一応の計画でスタートはいたしますけれども、適切なる行政指導も行なわなければなりませんし、調整も行なわなければならない。特に公害問題ということがありますので、これらの問題に対しては、まあ計画を立てるのが地元の知事でございますから、もちろん公害を前提とした事でなどを計画しようとは予想いたしませんが、地元との調整が可能なものということで立案をしてまいります。しかも、それを最終的に決定をするときには、審議会で十分検討して、あなたがいま御指摘になられたような理想的なものに近い産業形態というものをつくるべく努力をしてまいるということは事実でございます。いま金武湾とかそこらにそういう拠点を見るときには、アルミ工場がすでにボーリングをしておるとか、埋め立てが始まっておるとか、このまま無計画に進んでいったならば本土の現在と同じような道を歩くおそれがある、そういうことのないように十分調整権を発動してまいるということでございまして、理想に近いものを考える、考えるだけではなく、実行してまいらなければならないと、こう考えておるわけでございます。
  381. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 だから、そこなんです、私の聞いておるのは。最初に聞いたところの経済計画、琉球政府の発表した。あれをあのまま踏襲されちゃうと、これはあなたの答弁とだいぶ違ったイメージになっちゃうんですよ、構想と。少なくとも、あなたが衆議院でおっしゃったところの日本全体の第二次産業の未来図をひとつまず沖繩から立てたいと、あるいはまた知識集約型の産業をひとつ沖繩に持っていってやるんだという、いまもちょっと述べられたけれども、そういう構想をお持ちなら、やはりその点は、日本と同じような道を歩んだことに対しては、それこそ行政指導の面で、ただ沖繩の持ってきたものは無条件にいいんじゃなくて、そういう面ではこういう点があるんじゃないかと、そこを適切に指導をやるのがあなた方の仕事じゃないですか。それをしないで、いま現地では例の石油工業地帯がもう野放しのかっこうになっているでしょう。だから、公害という問題も具体的に出ておるんですよ。だから、私は、その点をやはり通産大臣は、そういう答弁をされるなら、もっとやはりこの面についてはイニシアをとった形で、沖繩の第二次産業の形態をどうするか、このことをしない限り、私はかつて日本がいままで歩んできたところのものの沖繩版では困るんです。これは沖繩人々の将来にとっても困るんですから、そこのところをやはり明確に私は政府としては指導方針をきちんと立てていただきたい、この点だけを申し上げておきたいのでありますが、なお大石長官は、先般のこの委員会で、緑と太陽と、まあ海の沖繩ですか、得々として公害がないんだということを宣伝されていましたけれども、すでに東海岸あたりは公害の問題が具体化しつつあるわけですよ。特に石油産業コンビナート地帯、コンビナートのこの公害の問題というのは、もう四日市とかの例を見るまでもなく明確でしょう。だから、いまにしてこの問題に対するところの具体的な強力な手を打たない限り、また手おくれになってしまうと思うんですが、こうしたい、こうしたいという夢じゃなくて、いまの公害問題についてこうするということがあるなら、ひとつお聞かせいただきたい。
  382. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) いままでに多少の汚染は出ておりますけれども、この程度にできるだけとどめまして、これ以上公害を広げないことが一番重大な問題だと思います。その方策につきましては、先ほどの答弁で通産大臣が申しましたように、やはりいろいろな計画なり、立地の条件なり、あるいは誘致する業種の問題なり、あるいはいろいろな経済の発展の進め方のタイミングのとり方、そういうものを十分に考慮しまして、できるだけ公害をこれ以上広げないように努力することがわれわれの責任であると考えておる次第でございます。
  383. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 先を急ぎますので、もう一つ私は工業開発と関連をして、水資源の問題についてお尋ねをしたいと思うんです。  これはやはり、沖繩の工業開発にとって一番大事なのは、この水資源の開発だと、こう思うんですがね。沖繩が多雨地帯であることは事実だけれども、また水もたまりにくいという条件があるから、少なくともこれは大事なんですが、この問題について、いわゆる水資源の開発と——これは工業用水を主として私は言いたいんですがね。この問題について、私はやはり少なくとも積極的な施策というものを明らかにする必要があると思うんですが、実はこの問題とからんで、これは日本地域開発センターと琉球大学の経済研究所の共同の沖繩開発シンポジウムの報告書をちょっと見ますと、その中でこの問題はこう書いてあるのですよ。現在のところで水を開発し得るところの程度は毎秒五トン程度である、しかもその五トンがダム地点であっても二十五円ないし三十円かかるというのですね。それを使用する場所まで持ってくると、トン当たり五十円はかかっちゃう。それはしかし、本土においては大体四円五十銭ぐらいでこれは使われている。一体本土政府はこの工業開発のために、この差額ですね、この水資源開発の問題についての。この問題についてめんどう見て、くれるのだろうかどうだろうか、こういう問題が工業開発上の一つのネックになっているというような問題を報告しているのですが、私は、これが事実とすれば、先ほど大蔵大臣の答弁されたところの水資源の工業用水の確保という問題に関連をして、これは積極的な財政上の保証、この問題については、工業開発をやれという以上は政府としてはやってくれるのだ、こういうふうに理解してよろしゅうございますか、通産大臣にお聞きしたい。
  384. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 沖繩は、御承知のとおり、降雨量は非常に多いわけでございますが、貯水をする施設が完備しておらないということでございますので、いまダムの築造等を行なっているわけでございます。いまの工業用水、現に予算要求いたしておりますものを申し上げますと、日量十万トン確保したいということでございまして、この事業費は百十七億円でございます。工業用水の負担分でございますが、この中で四十七年度予算要求額二十三億円、先ほど大蔵大臣が、二十億円余を要求を受けておりますと、こういうことでありまして、これはもう大蔵大臣もちゃんと数字を覚えておりますから、満額配賦をする予定だと思います。工期は四十七年度から五十一年度にわたるわけでございまして、いま申し上げたように、コストを下げるために、基幹施設の補助率は一〇〇%、その他が七五%ということで要求いたしております。これは本土の工業用水に比べては相当積極的なものでございますが、このようなことを実施をしていくということが沖繩の工業用水を確保する道であり、二次産業比率を上げる根幹である、この予算は確保いたしたいという考えでございます。
  385. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 時間がありませんので次に急ぎますが、次は第一次産業の基幹作目であるサトウキビの問題について山中大臣にお伺いしたいと思うのです。まあ沖繩農業の特質はキビ依存型であることはもうだれしも否定できない。しかも、この形態を見てみますと、キビにプラス基地依存産業型とか、あるいはキビ・プラス・パイン型とか、キビ・プラス出かせぎ型というような形の農家形態なんですね。それだけに、このサトウキビに対するところの対策をどう立てるかということは、私は一番重要な問題だと、こう思いますので、その観点から私はお尋ねしたいと思うんですが、まあ価格を上げますとか、あるいはその省力化をはかるとか、いろいろ答弁はありましょうけれども、私は、少なくとも一番この問題で大事なのは、一番の基本は、政府の積極的な国内産糖に対するところの保護政策をどうやはり前向きに打ち出すかということだと思うんですよ。率直に申し上げて、現在の政府のこの国内産糖に対するところの対策を見てますと、常に従属的な立場にありますね、これは。言うならば、砂糖はあり余っているんだけれども、お前たちを保護してやるんだと、こういう姿勢から一歩も抜けておらないのが、今日のこの国内産糖に対するところの私は基本的な態度じゃないだろうかと思うんです。しかも、戦後の砂糖政策のいろんな経緯から見ても、いまあるところの糖価安定法とか、あるいは甘味資源特別措置法とか、あるいは沖繩産糖の特例法と、いろいろ出ておりますけれども、これらの法律を見ましても、これは直接に、いわゆるキビ産業労働者、キビをつくっているところの農民に対する保護とか、あるいは生産を立てていくというよりも、むしろそれをもとにしてつくっているところの国内産糖業者——国内産糖の製造業者ですね、製糖業者、それを保護するというところに非常に重点があるというふうにうかがえてしょうがないんですよ、これは。したがって、私は、そこのところを、少なくともやはり糖価安定法やいろいろな問題を、せめて米並みとは申しませんけれども、米の例の食管法の中の一番基本の農家の生産所得というものを、相当やはりキビ価格の中でも安定を保障するんだという積極的な姿勢がない限り、なかなかこの問題根本的な解決がつかないと思うんです。ただ糖価安定法にあるところの二十一条の「最低生産者価格」云々ということだけでは、これはもうおざなりのものにしかならない。そこが私は、キビ産業に非常に問題点があったところだと思うのですね。したがって、そこにメスを入れてやらない限り、私は沖繩の第一次産業開発——これは沖繩だけではありません、奄美の場合でもそう、あるいは態毛の場合でも私はそうだと思うのでありますが、そのことについて積極的な私は方策をこの機会に考えなければならないと思うのですが、一体大臣はどういうふうにお考えですか。
  386. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは全体的な国民経済的な立場から見ると、よく日本の砂糖は関税、消費税で世界一高い砂糖をなめさせられているという批判が、いわゆる物価対策として経企庁あたりから絶えずあるのです。しかしながら、それらの外国産糖に対する措置をとることによって国内産甘味資源というものを保護しておるわけでありますから、沖繩復帰いたしましたときに、やはり考えなければならないことは、現在の買い入れ価格は、なるほど生産者に対して、ことしはあくる日の日曜日に円を切り上げることがほぼわかっていても、円建てでもって買うこともきめてやりましたけれども、しかしながら、問題は、生産者の段階における共済的な補償制度がない。やはりこの点が、台風常襲地帯、ことしのような干ばつ地帯というところにおける一番大きな生産農民自身の問題であろうと思いますから、これについては積極的な検討をしてみてまいりたいと考えます。
  387. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 とにかく私は、時間も来ていますから、もうそこはやめますけれども、この問題は、単に共済法とかいろいろなものだけじゃなくて、現在の糖価安定法の中にやはり少しメスを入れていただかなければ、あまりにも米の価格と違い過ぎやしませんかと言うのですよ。また、沖繩の実態を見ても、本土の稲作が十アール当たり二千四百四十円に対して、わずかに千三十七円しかない。言うならば、四二・五%しかないのですね。ここにやはり今日のキビ産業の大きな問題点があると思いますので、その点をひとつ、時間がありませんから多くを申しませんけれども、担当大臣は積極的に——ほんとう沖繩の開発のためには第二次産業だけではだめですけれども、第一次産業の一番基幹であるところのこれをどうするのだというところの前向きの姿勢もない。——同時にいま一つは、価格の問題について、いつかこの委員会の席上で、奄美がこうだから奄美並みにしろという意見がありましたけれども、これはやはり生産コストがそれぞれみな違うのです。先島の場合、沖繩本島の場合、奄美の場合、種子島というぐあいにね。これが当然、同じような安定法の中に入ってくるとするならば、複数価格制度というものが明確に私はとられていかなければおかしなかっこうになると思うのですが、その点についてはどうお考えですか。
  388. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは相当前から、沖繩復帰いたしました後はあれだけの長い列島を一本価格で買うということは問題があるということで、ただいまのようないろいろな形の複数価格が考えられますから、そういう価格の制度のあり方を実行しなければならないだろうという検討を開始いたしております。
  389. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 時間が参りましたからこれはやめますが、またほかのところでやりましょう。どうもありがとうございました。     —————————————
  390. 長谷川仁

  391. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 私は、ただいまから、総理並びにそのほか六大臣に沖繩の問題点と考えられる点をそれぞれお尋ねをしてみたい、こう思います。なお、いままで衆参両院の特別委員会を通じて特に問題点として取り上げられてきた問題は、これは何といっても核撤去の問題、そうして基地問題、また公用地の暫定使用に関する問題、これらが特に重要な問題として取り上げられてきたわけでございますけれども、私は、沖繩の戦後二十六年、また戦争中もしかりでございますけれども、その中で数知れない大きないろいろな問題が起きている。しかも、それはあまり表に出てきていない、あまり論じられていなかった。こういうような、論じられてはいないけれども、それが沖繩の県民の人権あるいは利益に大きくつながる問題である、こういうような問題がまだまだ沖繩には山積されているわけです。そういう立場から、私はそういう意味を含めてこれから質問をさしていただきたい、こう思います。  そこで、まず第一点は、国有地の問題、昭和十七年度の時点における沖繩所在の国有地の面積、これと現在把握されている沖繩におけるこの面積、この二点についてまずひとつお答えを願いたい、こう思います。
  392. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) 沖繩にあります国有地の問題でございますが、戦前の昭和十七年三月三十一日現在の国有財産台帳上の面積が三億七千八百四十万平方メートルということがわがほうでは判明しております。これに対しまして、現在米国民政府が管理しております面積でございますが、これは民政府の資料でございますが、これが三億八千二百万平方メートルになっておりまして、これは数量を把握しました時点のズレによる違いでございますが、もうちょっと詳しく申し上げますと、米国民政府の管理面積といいますのは、実は本島におきまして戦前の登記簿は一切焼失しましたし、また戦火によりまして相当地形も変容しております。そこで、民政府の布告に基づきまして土地所有権確認のための調査をしたわけでございます。これが、昭和二十六年の四月一日付をもちまして、各市町村長から土地所有権証明書というものが土地所有者と認定された者に交付されたわけでございます。国有地につきましても、同じように、日本政府土地所有者とします土地所有権証明書、これが交付されまして、これは国有地を預かっております民政府、これが持っておりますので、民政府はそれによって、いま申し上げました三億八千二百万平方メートルと、こういう数量を確認しているわけでございます。ただ、何ぶんそういった土地所有権の確認作業でございますので、当然いろいろ測量技術の未熟の問題がございますし、新しく数量をはかったわけでございますので、戦前の面積との間に誤差が生じている、これはまあやむを得ないことじゃないかと思います。  それからもう一つは、昭和十七年の国有財産台帳との違いは、日本の旧陸海軍が戦争末期におきまして買収いたしました旧軍用地というものがございます。いろいろございますので、ズレがございます。
  393. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうしますと、今回沖繩から日本に返還される面積は、どの面積で決定されるのですか。
  394. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) 民政府の資料によります三億八千二百万平方メートルでございますが、ただしこれは復帰後直ちに実地調査をしまして数量を再確認しなければいかぬと思います。それによりまして数量がずれるかもしれませんが、一応これをもとにして引き継ぎを受けたい、こういうふうに考えております。
  395. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それでは、一応も二応もないと思うのですが、私が聞いたのは、今度返還されるその面積はどれで確定するのかということを聞いたわけです。ですから、そうすると三億八千二百万平米ということなんですか、その点を明らかにしてもらうことと、それからその面積ですね、返還されるこの面積は何を根拠にしてはじき出したものか、この点をひとつ。
  396. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) 引き継ぎを受けますのは、ただいま申しましたように、民政府の持っております三億八千二百万平方メートルでございますが、宮古と八重山につきましては、登記所が残っておりましたので、これは登記簿による面積でございます。それから沖繩本島におきましては、十カ所の登記所が全部やられましたので、これは先ほど申し上げました一九五一年四月一日付の土地所有権証明書によって日本政府が所有者であると認定された面積でございます。
  397. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 なお、それでは、その中にその面積を構成している内容ですね、どういうものが含まれているかということを具体的に。たとえば河川敷であるとか、あなたがちょっとさっき言おうとした旧軍用地であるとか、そういう内容、それを並べてみてください。
  398. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) この中に含まれておりますのは、一般会計、郵政事業特別会計、国有林野事業特別会計の所属の国有地、これは昭和十七年三月三十一日現在の台帳面積にもございますが、そのほかに旧陸海軍のいわゆる旧軍財産、これが千二百五十二万四千平方メートル。それから旧河川敷とか道路敷というようなもの、これは公共物でございますので戦前は台帳に登載されておりませんでしたが、これは公共物の用途を廃止しますと台帳に登載するというふうになりますので、こういった旧公共物が二百九十万平方メートルございます。そのほかにいわゆる雑種財産、これがいろいろございまして八十七万三千平方メートルございます。
  399. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それじゃ話を変えまして、今度は農林省ですがね。農林関係、いわゆる山林、これはどういうことになっておりますか。やはり昭和十七年現在とそれから現在とでは、どういうふうに変わってきておるのか。
  400. 松本守雄

    説明員(松本守雄君) お答えいたします。  昭和十七年の三月三十一日付の時点の国有財産台帳によりますと、国有林が三万七千七百九十ヘクタールでございます。一方、これは戦後におきましてもこの台帳面積を使っておりますが、米国の民政府の資料によりますと三万六千五百三十ヘクタール、その間千二百六十ヘクタールの減少の差がございます。
  401. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そこからでけっこうですがね、もう一度最終的に農林省の——幾らの差と言いましたか。
  402. 松本守雄

    説明員(松本守雄君) 千二百六十ヘクタールでございます。
  403. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうしますとね、昭和十七年度の面積が三億七千八百万平方だ、これには旧軍用地も、道路敷、河川敷、あるいは海岸線、こういうものは入っておらなかった、こういうことですね。現在の面積にはこれらが入っておると、こういうわけですね。そうしますとね、さっきおっしゃったかもしれませんけれども、現在の返還される面積ですね、この中には、旧日本軍の強制収用した土地、これは幾らとおっしゃったか、何かさっきおっしゃったような気がしたんだけれども、もう一度言ってください。
  404. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) 返還するとおっしゃるのは、A表、C表の話でございますか、C表の話でございますか。
  405. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 旧日本軍による……。
  406. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) 先ほど申し上げましたが、旧軍財産は千二百五十四万平方メートルございます、そのうち返還されるものでございますか。
  407. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それでいいですよ。だから、その返還される中に旧——旧というのは旧日本軍によって強制収用されたその土地はどのくらいあるかということです。
  408. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) それじゃ、先ほど申し上げました千二百五十四万平方メートルございます。
  409. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうしますと、ただいま報告された昭和十七年度における面積と、それから現在の面積、いわゆるアメリカから返還になる面積ですね、これとの間には差が出てくるわけですね、差が出てくる。これをちょっと計算をしてみてくれませんか、どういうことになるか、差し引きしてですね、全部ひっくるめて。
  410. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) 差し引きいたしますと、昭和十七年現在の差は千二百六十五万平方メートル国の台帳面積が少なくなっております。それからその後におきましては、逆に、これはまあ当然でございますが、千六百二十九万七千平方メートル多いわけでございますから、差し引きいたしまして三百六十四万七千平方メートル米民政府の管理面積のほうがこちらの台帳面積よりも多くなっております。
  411. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 もう一度言ってください。
  412. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) 千二百六十五万平方メートルの減と、それからその後の——十七年以後のものが逆に千六百二十九万七千平方メートルに多くなっておりますので、差し引きいたしますと、全体で三百六十四万七千平方メートルだけ米民政府の管理面積が多くなっております。
  413. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうしますと、私はちょっとおかしいと思うのですよ、その辺のところが。というのは、昭和十七年には三億七千八百万平米だった。それから今度返ってくるのが三億八千二百万平米、そうすると、これは旧軍用地が——日本軍によって接収されたこの用地が入っておるわけです。そうですね。旧日本軍によって接収された用地はどのくらいあるかと言ったら、千二百五十万平米あると言っている。それは昭和十七年の時点では入っていないわけですね。入ってないということは、これをそれに加えた場合——昭和十七年現在に千二百五十万、これを加えると、そうするとどうなりますか、そこだけはっきりしてください。
  414. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) これは実は、国有林野事業特別会計に属する国有林野の面積が、昭和十七年三月末現在の数字がすでに千二百六十三万九千平方メートル。要するに、十七年の国有財産台帳面積に比べまして、米民政府が管理しております国有林野の面積が現在千二百六十三万九千平方メートルも少なくなっている、そういうことによるものでございます。
  415. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうしますと、まあ大体ぴったりだということですね、そういうことになりますね。ずいぶんうまく数字を合わしたもんだなというふうに思うのですがね。そうするとぴったりだ、これじゃ文句のつけようがないですよ、この面では、ぴったりだから。それじゃ、農林省からいまこうだという説明があったんだけれども、それじゃ農林省はそれはどういう経路によって、その差というものを確認してきたんですか。正式な文書なりそういうものがあるわけですか、農林省は。
  416. 松本守雄

    説明員(松本守雄君) 農林省といたしましては、この差につきまして、まず沖繩本島の北部に国有林がございます。その差が約五百五十七ヘクタールございます。それから、もう一つの差は西表島でございます。これが七百ヘクタールばかりでございます。端数は省略いたしますが、その西表の差は戦前、昭和十七年のときに測量をいたしまして面積訂正をいたしております。米国の民政府で使っております土地台帳、そのほうはその面積訂正をしておらなかったというための差が七百ヘクタールございます。それから、本島のほうの五百五十七ヘクタールの差でございますが——これは戦争中でございますが、非常に戦争のあとで、土地台帳、それから公図、そういうものが焼けたということで、いま大蔵省からも説明がありましたように、再測して認定をし直しておりますが、それとまた戦後の、測量の機械もない時代でございます。技術も十分でなかったということのために、そういう差が出てきたということから、国有林につきましては演習場として接収をされておったということから、演習場内への立ち入りができなかったということもありまして、五百五十七ヘクタールの差が出たということにいま理解をしておりますが、いずれにしましても、返還の暁には十分調査をいたしまして、それを確定しなければいけないということでいま考えております。
  417. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 私がお尋ねしたのは、農林者がそのようにつかんだという、まあいうならば根拠——正式にそういう書類なり何なりによって、そういったものを確認したのか。少なくとも三億八千万平米のうち——これは返ってくるわけですからね。その中の一部でしょう、いまあなたのおっしゃったのは。少なく見積もっているなんて言うけれども、その中の一部だ。だから、そうだとするならば、農林省に対していまあなたがおっしゃったような何か資料、正式ないわゆる報告がきておるのかどうかということです。どこからそういったことを——あなたは説明したけれども、私の聞いたのは、説明をしてくれというのではなくして、そういうふうにつかんだ根拠は何かということを聞いておる。正式な文書なり何なりがきているかと聞いておる。
  418. 松本守雄

    説明員(松本守雄君) お答えいたしますが、沖繩の国有地につきまして全体を調査したことではございませんが、昭和四十六年の六月二十五日から十日間、林野庁から二名、営林局から一名を派遣いたしまして、主として琉政のほうからいろいろ聞き取りをして、そうい実態を聞きただした結果、以上の差が出ていることになっております。
  419. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  420. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記を起こして。
  421. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 私は、しつこいようだけれども、これから国有地についてきちっとしていかなければならないので、正確なところを聞かしてもらいたいということで質問しているわけです。そこで、あちこちへ調査員も入れた、いろいろとこうあれしてつかんだんだと、こういうことですよ。だからこれは確実なものである——その数字が確実だとは言えないわけですね、いずれにしても。ですから確実なものではないということだけを、ひとつはっきりしておいてもらいたい。いまあなたがおっしゃった数量、いいですか。確実なものときめていいんですか。
  422. 松本守雄

    説明員(松本守雄君) いま持っております資料によって判断いたします限りでは、まあ一番確実な資料である。これは測量というものは機械によりまして、その技術によりまして同じ土地を測量しまして若干の差が出てまいります。周囲測量の場合には全体の距離でございますが、その距離に対しましてトランシット測量の場合には百分の一の面量限界がございます。ですから、必ずしもぴたり一緒になるということは、技術的にもないわけでございます。いまつかんでおります数字は、現時点では一番正確な数字である、このように判断をしております。
  423. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それじゃ農林省のほうはそれくらいにしましょうかね。で、これは私がいろいろと皆さんから聞いた結果は、そんなにうまく千二百五十万平米ぴったり差し引きして合っちゃうなんていう話じゃなかったんだね。ですから、そうだとすると、その昭和十七年現在と今度返ってくる面積と差し引きすると、そうすると現在のほうが多い。多いけれども、十七年度は旧日本軍によって接収された千二百五十万平米が含まれていないのですから、これが含まれると八百万平米、今度返還になるのが足りなくなってしまう、こういうことだったわけなんですよ。ところが、うまく合っちゃったのだ。どこでどういうふうに変わってきたのか知らないけれども。そこでそれじゃ、それで合わしたら合わしたでいい。じゃそこで、それでは、先ほど説明があったのだけれどもアメリカから返還されるこの現在の面積、これには道路敷、河川敷、それから海岸線、これも全部入っていると、こういうわけだ。三億八千万の中にたとえどれだけでもそれは入っているということですよ、そうでしょう。入っている。もう一度はっきりしてください。これは全体で幾らになりますか。
  424. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) 旧道路敷、旧河川水路、海浜地等合わせまして約二百九十万平方メートルが入っているわけでございますが、いずれも用途を廃止した河川水路で、河川水路そのものではございません。それから海浜地等、海浜地も管理可能な海浜地です、いわゆる公共物ではございません。したがって、旧公共物と申し上げたほうがいいかと思いますが、こういう公共物の用途を廃止したものは、国有財産上は台帳に登載する、こういうことになっておりますので、こういうものを合計いたしますと二百九十万平方メートル、これが先ほどの総面積、三億八千二百万平方メートルの中に入っているわけでございます。
  425. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そこで、そうしますと、少なくとも昭和十七年の時点では道路敷、河川敷、海岸線——私はその三つにしぼりましょう、この三つは入ってないということですよね、そうでしょう。そうすると、その数量は十七年——十七年というよりも十七年現在で載ってないんだから、それだけ差し引かれなくちゃならないわけですよ。あるいは昭和十七年度には載ってないんだから、それは載せなきゃならない、その数字だけは。それで、差し引きした場合にはどうなりますか。
  426. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) お手元に差し上げた資料をちょっと見ていただきたいんでございますが、昭和十七年末現在におきましては、千二百六十五万平方メートルで三角になっております。それからその後増加した国有地でございますが、旧軍財産が千二百五十二万四千平方メートルでございますから、十七年……
  427. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 ちょっと待ってくださいよ。私の言っているのは、三億八千万の中に道路敷それから河川敷、海岸線、そういうものが現在の三億八千万の中にあるわけですから……
  428. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) 入ってございます。
  429. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 その内訳はどうだということを聞いたわけですね。
  430. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) ですからそこに……
  431. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それでその面積は全部で……
  432. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) 二百九十万平方メートルでございます。
  433. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 二百九十万……
  434. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) はい。お手元に差し上げました旧公共物というところがございますが、それが二百九十万平方メートルでございます。その中にいま申し上げました旧道路敷とか旧河川水路、これが入っておるわけでございます。
  435. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ちょっと速記とめて。    〔速記中止〕
  436. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記を起こして。
  437. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 じゃあね、少なくともこの二百九十万平方メートルというものが昭和十七年現在で載ってなかったんだからね、載ってなかったんだから、それだけ足りないということなんですよ。さっきうまく合わしちゃったから、あれをね。あれでは旧日本軍の強制収用したその土地については、千二百五十万は農林省のほうが少なくあげられているんだというので、それでぴったり合った。合ったなら合ったでいい。だけれども、いま言った道路敷だとか河川敷だとか海岸線というのは、こんな二百九十万なんていう数ではないはずなんだ。はずなんだけれども、だけれども、一応そうだとして、二百九十万は不足になるのですよね。不足になるのです。幾ら頭かしげたって、そうなるでしょう。昭和十七年に入ってないのですから。入ってなくて三億七千幾らになるのだから。それ全部ね、ですからいいですよ。——そういうことになるのです。——どうしてさ、よく計算してみなさいよ、あんた。
  438. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) ちょっとお手元のあれをごらんいただきたいのでございますが、昭和十七年末の数量の違いは国有林野が主体でございますが、現在少なくなっておりますから、千二百六十五万平方メートル。
  439. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 少なくなっているというのは何だい。
  440. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) 少ない……。
  441. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 昭和十七年のときは三億七千幾らでしょう。
  442. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) はあ、それはですね、先ほど申し上げましたように、土地所有権証明書というものをですね、これを発行したその面積を民政府が把握して管理面積にしているわけでございますから、国有林野につきましても、先ほど林野庁長官答弁いたしましたように、所有権証明書のない——漏れているものですね、こういう林野がたぶんあるのじゃないかと、そういうことでございますが、私の申し上げている米民政府の資料でございます、この資料は土地所有権証明書が交付されている国有林野だけをあげているわけでありまして、先ほど千二百万と千二百万で偶然会ったではないかとおっしゃいますが、これはたまたまそういう所有権証明書を出されている国有林の面積が少ないものですから、千二百六十三万九千平方メートル——一方、昭和十七年以降に日本側が取得しました旧軍財産が千二百五十二万平方メートル、千二百万というところが合っているわけでございます。それがふえているわけですから、そこで大体とんとんになって、そのほかにプラスしまして昭和十七年当時なかった旧公共物が二百九十万、それからその他が八十七万三千、合わせて大体四百万平方メートル近くある、全体が四百万近くにふえている、そういうことでございます。
  443. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 ですからどうも、その辺のところがかみ合わないんですけれども。それでそういうものをひっくるめて三億八千何がしで出てきているわけでしょう、現在。そうでしょう。だからその差額は、いまあなたが言ったように、昭和十七年度においては三億七千何がし平米でしょう。——どうもしようがないな、これは。それじゃちょっと休憩してくださいよ、これ、わからないよ、休憩してください。(「時間がないから」と呼ぶ者あり)時間がなくたって、これ、はっきりしなければしようがないですよ、そこが問題なんだから。
  444. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) その資料をちょっと見ていただきたいんですが、これは台帳面積のところが三億七千八百万、全体で四百万平方メートルふえているわけです。
  445. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 休憩して、そして話し合えばよくわかるでしょう。
  446. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) ですから、資料をお渡ししているわけですが……
  447. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  448. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記を起こして。
  449. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それでは話を変えましょう。いずれにしても、私はいままでこういうことを言ってきたということは、それはどうつじつまを合わせたか知らないけれども、少なくとも私が調べた範囲では二千九百万平米少なくなってくるんだという、こういう見通しであったわけだ。もしそうだとするならばこれは重要問題だ、返還される国有地が減っているのだから、これは重要問題だ。その辺はたださなければならないということでいま話をしてきたわけです。ところが、その辺のところが、いままでずうっと政府の方たちを呼んで聞いた、その中から計算すると、二千九百万から足りなくなっちゃうのが、何となくほぼ同じくらいの数字になってきた。そこで、それじゃらちがあかないので、それでは絶対に、このアメリカ施政権下においてアメリカが管理をしていた日本の国有地、これは絶対になくなってないという保証がありますか。これは大臣からひとつ。
  450. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 昭和二十二年ですから占領直後でございますが、そのときに石垣島で三十五万平方メートルぐらい零細な旧所有者にこれを返した、これは有償ですが、返したというのが三十五万平方メートル石垣島にあるという例が一つあるだけで、そのほかに別に管理中どうこうしたというようなものはございません。
  451. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それじゃそれは石垣島ですか、石垣島の何というところですか。何というところで、内容をもう少しはっきりしてくれませんか。
  452. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) 石垣島の旧大浜村でございますが、平得飛行場、旧軍の平得飛行場で百二十一件、それから同じく白保の飛行場で二十七件、合わせまして百四十八件、三十五万三千百平方メートルでございます。これは当時の八重山軍司令官が経済命令を出しまして、特に旧所有者のうち、生活貧困である者に対価を取って返したということであります。もちろん、国有地の管理をしております民政府は、処分する権限はないわけでございますが、これは間違った措置であったとみえまして、さっそくその年の——この経済命令は四月でございましたが、その年の十月にすぐ訂正しまして、これを廃止するという命令を出しておりますけれども、すでに処分してしまったものが三十五万三千平方メートルあるということでございまして、まことに遺憾でございますので、さっそく外務省に通知いたしたのでございます。
  453. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうしますと、そのほかにはないということですか。
  454. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) 米民政府によく聞いたわけでございますが、国有地に関しては、これ以外にはないということでございました。
  455. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうしますと、それじゃひとつ具体的に申し上げてみたいと思うのですよね、大臣。  これは、与那城というところがありますね、与那城村の伊計というところ、ここの約一万二千坪、この民有地は旧陸軍がいわゆる強制収用したところです。で、ここには山砲隊が一個中隊おった。その陣地構築のために強制収用したわけです。これが一つ。それから、この沖繩決戦後だ、その後ここはアメリカの海軍通信基地となった。昭和三十八年に米軍がその通信基地を、この地元の伊計部落ですね、この地元の部落に復元補償と称して譲与しているわけです。で、ここには現在株式会社伊計観光ヘルスセンター、こういうものが建っておる。そうしてこれが地代を払って借りておる。地代は部落へ払っているわけだ。そこで、そういうように復元補償と称して譲与している。そこで復元補償ということについて、私はひとつまず正確な見解を聞かしておいてもらいたい。
  456. 島田豊

    説明員(島田豊君) 復元補償という観念でございますが、これは土地の賃貸借をいたしまして、これは一般的な世論として申し上げますが、そこでそれを借りているほうがその土地に対しまして一つの形質変更をする。そうしてその契約によりまして、もしその形質変更をした場合、その賃貸借契約が解約されると、そのもとの借り主に対して、その形質変更したものを原状に回復させる。もし回復が物理的にできないというような場合におきましては、金銭でその補償をしてやる。こういうものが一応復元補償だとわれわれは考えておるわけであります。
  457. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうしますと、これはひとつ外務大臣、いままでゆっくり休んでいただきましたので、これから本格的にお答え願いたい。  そうしますと、復元補償、これはいうならば、旧陸軍が強制収用したということは、これは国有地でございますよ。その国有地をアメリカ軍費が復元補償として譲与したということは、これは復元補償ということにはならないじゃないですか。
  458. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) どうも話を伺っておて、わけがわからないのですが、復元補償という際は、貸している地主に金を、借りているほうが払うんです。ところが、どうもお話を承っておると、逆に、借りているほうが金を受け取っておるようなお話なんでございますが、そういうお話ですか。
  459. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうじゃありません。よく聞いていてくださいよ。あまり休ませ過ぎたから……。いま局長復元補償ということはこういうことですと、アメリカのほうからこういうふうにするんですと、これが復元補償というんだと、こう言ったわけですよね。それで、私の言いたいのは、少なくとも国有地——国有地は、さっき大蔵省の理財局次長が言いました。アメリカ日本の国有地を、これを無断で処分することはできない。これは国際法上、そのとおりですよ、そうでしょう。で、いままで使っていた自分たちの土地を、それを——国有地ですよ、さっき説明したでしょう。何回も言わさぬでくださいよ。国有地を自分たちがいなくなるときに復元補償と称して地元にくれていったというわけですよ。だからそんな復元補償というのはないでしょうというのです。成り立たぬでしょうと言うわけです。一々こんなに説明しなければわからぬですか。
  460. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) それは、復元補償というふうにアメリカが言ったかもしらん。これは違法な扱いであると、こういうふうに考えます。
  461. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それでは違法であると大蔵大臣が認めたのです。(「外務大臣だ」と呼ぶ者あり)ああ、やっぱり大蔵大臣のほうがちょっと長かったから。外務大臣、それは違法であるということでのほほんとしているわけにいかぬでしょうが。少なくともいわゆる沖繩県民の、あるいは日本国民の大切な国有財産、しかも国際法上アメリカといえどもそういうことはできない。日本の国有地をかってに処分するということはできない、こういうことになっている。それをやったわけですよね。だからやったということは、それは違法であるといま大臣が認めた。違法である以上、このままほうっておくわけにいかぬでしょう、私はそう思う、違法なんですから。あなた、はっきり違法とおっしゃった。
  462. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) もし国有財産を復元補償補償金に使ったと、代用したと、こういうことがあればこれは違法であると、こういうふうに申し上げておるのです。ただそういう事実があったかどうか、これは私はまだ存じておりませんでございます。
  463. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 あればですね。なくてこんな話をするばかはないんです。あるから話をするんでして……。じゃこれはあれですよ、琉球政府からね——いいですか。
  464. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  465. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) では速記を起こして。
  466. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 ですから、ここのところが大事なところなんですよね。たとえこれが十坪であっても百坪であってもね。国有地が国際法上違反であるという、アメリカがその違反をおかしているということは、それは日本政府としても黙っているわけにいかぬ。先ほどもこういう例があると、一カ所だけあるんだということをおっしゃったんですけれどもね。ここにもこういう例があるんだ、実際にこうなんだということを、具体的にいまお示しをしたわけです。この責任を私はやはり日本政府はとらなくちゃうまくないんじゃないか。ただアメリカの言いなりに協定四条の一項でその請求権は放棄したんだと、それでうそぶいているわけにいかないと思うんです。それ以前の問題として、こういう問題が起きているということならば、当然これに対してどう処置しなきゃならぬかということは、おのずから国民の財産を守る政府の立場で、やはり何らかの処置をとっていかなきゃならぬ、こう私は思うのですね。この点はひとつどういうふうに外務大臣、処置されるのですか。
  467. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) もしさような事実がありますれば、先ほどから申し上げておるとおり、これは国際法違反でございます。違法でございます。しかしその事実があるのかどうか、これをひとつ政府委員からお聞きを願いたいとかように存じます。
  468. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) 御指摘のは、与那城の現在ヘルスセンターとして使っているところじゃないかと思いますが、これにつきましては、軍が解放したと称しまして軍用地解放の敷地全減を、その辺の住民が悟り受けて使っているわけでございまして、民有地もありますし、国有地もございますけれど、その国有地は払い下げたわけじゃございませんで、これは貸しているということでございます。
  469. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 あのね、私はことばじりをとるわけじゃないけれども、いつ売ったと言ったのですか。ずいぶん先走るのですね、局長は。売ったなんて言わないでしょう。置いていったのです、譲与したのです、譲り与えるということなんです。ということと、その売ったということとは違うのですよ。あなたのいわゆる——こっち聞いていないとわかりませんよ。あなたの言う、あなたは売ったと言っている。売っていませんというのだ。私は売ったと言わない。譲与だと、もうその辺から違うじゃないですか、もうその辺のところ……。あなた、そんな売ったなんて、あなたのほうで認識しているんだから……。だからそんな人に答弁をしてもらったってしょうがない。やっぱり外務大臣ですね。
  470. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 売ったということと、譲り渡したということは、これは私どもの常識では同意語みたいに思いますが、どこかに違いがありましょうか。私の常識では、どうも同じように響けてしょうがないですが……。
  471. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それならそれでいい。ですから、それは何というか、大臣の詭弁というか、そんな譲与したのも売ったのも同じだなんて、そんなことは断言できませんよ。日本外務大臣、そんなことを言っていると恥をかいちゃいますよ。私が言っているのは、復元……。もとへ戻すけれども復元補償ということで譲与をした、復元補償ということ……。復元補償というのは、向こうから措りておるものじゃないですよ、そこまで言っているじゃありませんか。そんなことは常識で考えればわかることです、だれだって。だから、私はあえて売ったんだとか何だとかっていうことを言わないわけですよ。頭のいい皆さんだから、そこまで言えばわかるだろう、こう思うから言っているんですよ。与えたんです。だから、そんな復元補償というのはないわけですよ。そうだけれども復元補償として渡されたということは、それはいわゆる売ったんではない。売ったんではないけれども、与えちゃったんですから、貸しているのじゃないんです、与えちゃったんです。それでそういうふうになっている問題についてどうするんだ、ということをさっきから聞いている。だから、大臣はそういうものがあれば、それは国際法違反だからと、こう言うわけなんです。だから、これは実際にある。ないと、あなた方は断定できないわけです。私は、あるからこうやって取り上げているわけです。どれだけか証拠書類を整えて、そしてこういうふうにあるんですよということを話しているわけです。それでそういうものがあると私は言う。どうするんだという……。
  472. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) もし、さようなことがあれば、これは国際法違反であります。しかし、政府委員はさようなことはありませんと、こういうふうに言っております。なお、詳細につきましては、政府委員から御説明申し上げさせます。
  473. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) この地域は、現在、米民政府の管理しております国有地のリスト、これに載っておりますので、まあ処分したのではないと、現在、国有地として管理している面積の中に入っております。
  474. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 さっきといまと違うんですが、どうするんですか。
  475. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) 私は先ほど、これは現在国有地としてそれを使わしていると申し上げたわけでございまして、まだ国有地になっているわけでございます。リストにも載っております。
  476. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 さっきと違うんですよ。
  477. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) 私の申し上げておりますのは、違わないと思います。所有権がまだ国にあるから国有地でございます。
  478. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それではいいですか、こまかく聞きますよ。まだ国有地——これはいま伊計観光ヘルスセンターというのが建っている。そして、伊計ヘルスセンターは約二千ドル——千九百七十ドルぐらいの地代を払っている、地元に。この事実は、これは国有地でございますというわけにいかないでしょう。これは、地元がヘルスセンターに貸しているということは、地元に所有権があるという姿でしょう。どうなんですか、その点。
  479. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) ヘルスセンターが建っておりますところは、国有地のほかに民有地がございますので、民有地については当然借料を払っているのじゃないかと思います。
  480. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それじゃ、私が言った千九百七十ドル、その内訳は、あなた民有地だとか何とか言うけれども、それはどういうことなんですか、どの土地についての地代なんですか、全体なんですか、あなた民有地だとか、何とか言うけれども
  481. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) 私どもは、国有地を管理しておりますので、実は民有地のことにつきましては存じておりません。
  482. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 だから、私が言っているのは、国有地がそういうふうに正確に言うと一万七百余坪、そして全体が一万三千坪です。だから国有地がほとんどなんだ。それに対して地代を取っているわけです。取っているということは、所有権はもうすでに地元に移っているのじゃないか、ということを私言っているのです。それじゃ、ひとつ大蔵大臣答えてください、代理じゃいけませんよ。
  483. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) これは、米民政府は国有地として管理しておりますが、地代は取っていないそうでございます。
  484. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 取っているんですよ。
  485. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) 少なくとも民政府はそういった地代を取っていない、そういうふうに承知しております。
  486. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 私が言っているのは、ヘルスセンターから地代を地元が取っているということは、所有権が地元に移っているのだという証拠じゃないか、ということを言っているわけです。そうだということは、国有地じゃないじゃないかと言っているのです。だから、国有地じゃないということは、還元補償としてアメリカが地元にやってしまったのだ、こういうことをさっきから言っているのです。それをあなたはそれは国有地です、国有地です、こう言っているわけです。地代を取っているんですよ。
  487. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) 地代を地元の住民が取っているかどうかは存じませんが、少なくともこの土地は、これは土地所有権証明書が出されておりまして、国有地という扱いになっております。
  488. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 証明書を出してください。証明書すぐ出しなさい。
  489. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) いますぐはちょっとお出しできませんが、ともかくこれは民政府の資料として——管理しておりますものは、土地所有権証明書が交付されておりますものでございますから、現地に照会すればわかると思いますが……。
  490. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 照会するじゃなくて、自信を持って言ったのじゃないか。
  491. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) それは所有権証明書が出されているものを、民政府は国有地として管理しているわけです。その中にまだ入っているということでございます。
  492. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 入っていてあたりまえなんだ。入っていてあたりまえなのが、そういうふうになっているからおかしいじゃないかと言っているんです。事実そうなってるんですよ。だからね、地代はそれじゃだれが取ってるんですか、地代を。地代をだれが取っているんですか。私は地代まで言ってるんだよ。地代をだれが取ってるんですか。国有地ならばだれが取るんです、地代を。
  493. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) その辺は、だれが取っているかは私承知しておりませんが……。
  494. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そんな根拠のないことで答えるやつがあるかい。
  495. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) 管理しております米民政府、これがいま国の所有権を預かっておりますから、それは取っておりません。
  496. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 何をあんた言ってるんだ。どうですか、大蔵大臣、一つ答弁になってないじゃないですか。冗談じゃないですよ、あなた。
  497. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  498. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記を起こして。
  499. 井川克一

    説明員井川克一君) 御存じのとおり、沖繩におきましては財産の管理に関する米国海軍軍政府布告第七号——一九四九年六月二十八日米国軍政府特別布告第三二号というのがございまして、財産管理官というものが任命されております。そうして「財産管理官二委任スル財産」といたしまして、「本布告ノ有効期日ヨリ軍政府下ノ区域内二於ケル左ノ財産ハ財産管理官二委任ス。」とあり、その中に「総テノ国有財産」と、こういうふうになっております。したがいまして、ただいま小幡次長が申されましたのは、すべての国有財産を管理いたしておりまする財産管理官が、これは日本の国有財産であるとして管理しているリストに載っているということを申しているわけでございます。したがいまして、この布令のたてまえからいたしましても、国有財産の地位に変更はないわけでございます。
  500. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そういうふうに説明はけっこうです。だから、私は現実的な問題をいま取り上げている。はっきりとその国有地が国有地としてあなた方は載っていると言うんだが、その国有地を部落がアメリカ軍から譲与されて、そうしてそこには伊計ヘルスセンターというのができているんだと。いいですか。で、地元の伊計部落がその地代を取っているわけですよ。いいですか。だからそうなると、国有地だ国有地だと言っていられないでしょう、どうなんですか。私から言わせれば、アメリカ軍がかってな——いわゆる復元補償というかってな言い分でもってわれわれの国民の大切な財産である土地を譲与してしまった。そうしてその結果は、いいですか、その結果は三億八千万平米でもって国有地は確定いたしました。その中にそういうものが入るべきです。当然そうだとすると、それに狂いが出てくるということですよ、三億八千万で決定した数字それ自体に。その狂いをそれじゃどうするのかということになるのです。
  501. 小幡琢也

    説明員(小幡琢也君) 再三申し上げておりますように、これはあくまでも所有権は日本政府にありますから、国有地でございますから、全体の三億八千二百万平方メートルの中に入っておるわけでございます。狂いはございません。
  502. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 同じことを言っている。大臣、お願いします、しょうがないですよ。答弁にならぬじゃないですか。はっきり具体的にこっちは例を示して、こういうケースがあるんだ、どうするのだ。ばかの一つ覚えみたいに、国有地だ、国有地だと言っても通るものじゃないぞ、あんた。委員長、これははっきりしてください。こんなことをやったんじゃ、いつまでたっても結論が出ませんし、あとの質問時間もありますし、これじゃしょうがない、時間もなくなってきた。
  503. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  504. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記を起こして。
  505. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 問題はこうだと思います。所有権は少しも変わっていない。ただ、それを貸しているということは事実でありますが、これが有償で貸しているのか、無償で貸しているのかということですが、いま少なくとも民政府は地代は取っていないというのですから、おそらくそれは取っていないんですが、もし取っておるとすれば、その地元が何かの形でそういう地代的なものをセンターから取っているかもしれませんし、この事実関係を調べれば、これははっきりするのじゃないかと思いますが、いまその事実関係が要するにわからないということだろうと思います。
  506. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それじゃ同じなんですよ。同じことの繰り返しなんです。それじゃさっぱり答弁になりませんよ。ここで納得しろと言ったって、これは納得するわけにいかない。ひとつそこのところを、まことにおそれ入りますが、総理ひとつ——いま総理には特に書類を見ていただいたわけですから。
  507. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうもお尋ねになったことについて、政府当局が答えないわけではございません。これはもう答弁しているとおり、これは国有財産の中に入っておりますと、こういうことを言っておる。それがそれでは処分されたのか、こう言われると国有財産にそのまま残っているんですから、処分はされておりません、こうはっきり実は答えております。しかしながら、お調べになったところでは、その土地はヘルスセンターに貸されている、そうして部落共有というか、部落の方が貸し賃でも取っているというかそういうような状態だ、こういうことでございますから、政府当局のほうといたしましては、その事実をそのまま認めてくれていない、こういうことでありますので、上林君のお尋ねと答弁と、これは食い違って、すれ違っておる。しかし、全然答弁のないことじゃございませんから、私は聞いておりましても、こういう違いがあるのかなと、かように実は思って、これはさっそく取り調べなければならぬことだ。しかし、このことで法案がまた停滞するのもこれも困ったな、何か上林君の特別な何で、誠意をもって私のほうも取り調べますから、この問題は別に時間をかしてもらえないか、かように私お願いする次第でございます。
  508. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 最後にせっかく大臣が御答弁くださったんですから、私はこれでもって終わりたいと思います。終わるんじゃない、これは保留ですね。で、こういうことです。こういう問題が、まだまだ私聞きたいことが一ぱいあるんですよ、旧軍用地それ自体についても。金をもらってない、それで強制収用された、あるいは金をもらったけれども、みんなそれは預金である、証書はない、みんなそういう問題があります。そして、まあ言うならば当時の金ですから安いものです。ほんとうにその当時は強制的にそれを取られて、そしてしかも何の補償もないと言っていいわけです。そういう問題が山積みされている。これは日本の国でも、私は昨年追及したわけだけれども、大蔵省、日本の国にそういうような問題が幾つあるかと——わからぬでしょう、おそらく。これは三千三百件に及んで裁判だとかそういうのがあるんですよ、日本にも。だから沖繩にないわけはないんですね、そういう問題。ですから、こういった問題をはでな問題として国会では論議されなかったかもしれないけれども、しかし国民、いわゆる沖繩県民の人権を守り、財産を守るという、そういう立場から言うならば、これは何とかしなきゃならぬと私は思う。ですから、そういうものを全部含めて、そういう問題もあるわけですよ。一ぱい問題がある。だからそういうものを、私はこういうものが明らかになったときには、これはやはりこの法律——暫定措置法、これでもって何とかしなくちゃいけないと思うんですよ。私はそう思うんです。そういういろんな問題があるんですよ。それが明らかになったときにはどうするんだと、その補償を。それこそそれは、私は法律の上ではっきりうたうべきだと、こう思うんです。最後に……。
  509. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまのヘルスセンターが使用している土地は、これは国有地を民政府が管理している、その管理の範囲を越して処分しているんじゃないかと、こういう事例でございましたが、沖繩の場合の、いわゆる軍基地ができる、それにつきましては、しばしば言われるように、これは銃剣のもとで行なわれたとか、不法不当に土地が占有されたと、こういうことでございます。そして、その土地の借地料も、正確に計算されてもおらない、ずいぶん問題が残っておるんだと。そういう事実があるから、ただいま御指摘になりますように、ただ金は払ったという形だが、受け取り人は出ておらないと、こういうような土地もあるはずだと、一体そういうものをどうするのかと、こういうことが問題の趣旨だろうと思います。私は、今回日本施政権が返ってくる、その際に、これらの問題が話し合いで、地主と——所有者と国との話し合いでそれらの問題が片づくということを主体にいたしまして、そしてどうしても所有者が見つからないとか、あるいはまた移民したとか、その土地におらないとか、あるいはどうもなくなって、そういう方と交渉することができないとか、こういう場合に、そういう土地のあり方をひとつ全部はっきりさせようと、明確にすると。で、このことは、過日もこの席でお話がありましたが、沖繩の、所有者のない場合、これが戦死の場合も多いんじゃないか、そういうのを国に帰属さすようなことがあってはならない、部落有その他で措置するということなら、せめてもの、この犠牲者に報いるゆえんでもあるけれども、所有者がないからといってその土地を国有にするということは、これは避けなければならない、こういうことを山中総務長官からお答えをいたしたはずであります。また、そういう際に、ただいまのような国有地、その国有地が明確にその区分がはっきりすれば、それが不当に使用されておると、こういうような事態があれば、それはもとに返すことがこれは当然であります。そのためにも、今回の復帰に際して旧地主と話し合い、これを根幹にして、そして足らざる点を暫定措置法で処理する、こういうことでなければならないと、私はかように考えます。  ただいま御指摘になりましたものは、まあ幸いと言っちゃ何ですが、これはもう国が持つもの、国の持つものが貸し付けられたと、こういうことで、国が借地料を取っておらないというか、そういうことでありますが、民有地の場合には、ずいぶん不当、不法、そういう事態が起きておると思います。それらについても、これが正しく処理されるということが望ましいのであります。また、それで初めて施政権日本に返ったと、こういうことにもなるのではないだろうかと私は思いますので、沖繩の方の御労苦にこたえるためにも、当然、さような処置をとるべきだと、かように思います。
  510. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 最後に、とにかく、(「時間がきているんだ」と呼ぶ者あり)こっちに言うんでなくて、向こうに……。で、納得はしませんよ。納得はしないから、したがって、これは一応保留ということにしておきます。またあとで聞かしていただきます。  では、以上で終わります。     —————————————
  511. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 栗林卓司君。
  512. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 沖繩施政権返還がいつになるかは別にしまして、施政権が返ってくることは時間の問題になりつつあると思います。まあ、これまで政府の御見解を伺っておりますと、いろいろ不満はあるとしても、施政権を返してもらうことがとにもかくにも先決だという趣旨の御答弁をされてまいりました。私も率直に理解できる気がいたします。そうしますと、一日も早く法案を上げてくれと言われるかもしれませんけれども、一日も早ければ、関連法案はどうでもいいということではないと思います。総理がこれまでたびたび御指摘のように、これからの沖繩の問題解決を考えますと、県民の理解と協力を求めることが何よりも不可欠な条件だと思います。その意味で、関連法案が県民の理解と協力を求める妥当性を持っているのか、あるいは今後の沖繩関発の足を引っぱるものでないのか、その辺について、これまでの、たいへん長時間の審議にもかかわらず、十分明らかにされない点が多々あったことが、不満を残しながら、審議が今日まで及んだ大きな原因の一つではなかろうかと思います。そういう気持ちから、時間の制約もありますので、二、三の問題についてお伺いをしたいと思います。  最初に、まず、公用地等暫定使用の問題について、防衛庁長官にお伺いをいたしたいと思います。これまでもたびたびお伺いをしてきた点でありますけれども暫定使用期間として五年間が必要であると判断され、御提案された根拠について、もちろん、こまかくは、これはないと思います。とはいうものの、御提案に至る考え方の基礎、根拠はあろうかと思いますし、可能な限り具体的に御説明をいただきたいと思います。
  513. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 御指摘の点は、いかにも五年間ときめまするのには、いろいろ法制定のときにも議論をしたわけであります。で、これは先ほども総理答弁の中に申しておられましたが、施政権返還というまことに異例の、一日も空白をおくことのできないこの事態に処して、公用地を確保しなければならぬ。そこで、その地主が三万数千名という非常な多数に及ぶわけであります。しかも、その中には行くえ不明の人、あるいは海外に移住して、転々とその移住地が変わって調査が行き届かない人、それから遅滞なくというために、復帰の日までに話し合いがどうしてもつかなかった場合には、これはまことにどうも法適用というようなことにならざるを得ないわけですが、まあ、そういうようなことなどを考え合わせまして、そして法適用をかりにするにしても、なおかつ念入りに話し合いを続けていく、そして、従来とも米軍との間に賃貸契約が結ばれておったものですから、これを適正化し、しかも納得るようにというために、実は五年間という期間を設けたわけであります。しかし、これは従来ともしばしば申し上げてまいりましたように、でき得べくんば運用面でいろいろな手はずを講じ、同時に、できるならば長いそういうことによらないで、法律は五年間であっても、もっとすみやかにできるものならすみやかに片づけていきたい、そういう考え方には立っておるわけでありまするが、いま申し上げたような諸般の事情を考慮して、最悪の場面も含んで、まあ五年間と、こういうことにきめたような次第であります。
  514. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 使用期間の問題についていまお尋ねしたのは、たいへん素朴な疑問、これは先般七月だったと思いますが、参議院として沖繩に参りました際に、地主の代表の方からいろいろ訴えられました中で、なるほどもっともだという気がした部分がありました。それは、本土の六カ月との見合いで考えますと、五年間というのは、なるほど十倍ということになります。事は、理を尽くして何とかということですから、それじゃ沖繩本土の十倍もものわかりが悪いのか、そんなとり方はなかろうとはいいながら、実はそういう趣旨の訴えられ方をされ、なるほど理解ができる気がいたしました。その意味で、本土の場合には六カ月、それも、ただいまいろいろお話があったことを踏まえながらの六カ月であったように思いますし、その趣旨の議事録も残っております。その意味で、それとの見合いで、もう少しわかる説明をしていただきたいと思います。
  515. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 栗林さんの御指摘、まことにもっともなところをついておられると思うのです。それは本土の場合は地主が判然としておったということ、台帳もしっかりしておったということ、これであります。琉球政府の台帳がしっかりしていないとは申しませんが、あの当時の場面に比べまするというと、非常に不確定要素が多いわけです。したがいまして、そういうことを踏まえて、まあ小笠原方式でいこうということにしたわけでありまして、特に差別待遇をするなんというようなことは、これは全然意中にないことであります。この点は御了解願いとうございます。
  516. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 御趣旨はわかる気がいたします。ただ、同じ質問を少し別な言い方で整理をいたしますと、差別待遇をするつもりはない、本土沖繩も同じように時間をかけて御相談をするし、わかっていただけると思うということになりますと、大ざっぱな言い方をすれば、本土並み六カ月ということだと思います。五年は、さほど積極的な根拠があって出た数字ではもちろんないと思いますが、大まかに考えますと、ただいまいろいろ説明された、地主の所在を明らかにする、あるいは土地権利関係を明確にする、そういったことのために、まず時間がかかる。あわせて、その上に立っていろいろ交渉しなければいけない。その交渉をする部分がかりに六カ月としますと、差し引き四年半が土地権利関係確定のために必要な時間だということになる、そういう理解でよろしいでしょうか。
  517. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 先ほども申し上げましたように、五年間というのは、相当ゆとりを持つて設定したわけでありまするが、運用面において、なるべくすみやかに決着をつけるように努力をしてまいりたいと思います。全く、これは私も就任をしましてから、いろいろ事務説明を聞いたり、いまのような素朴な疑問を私自身が投げかけて、事務当局と話し合うのですが、やはり内地の場合と違いまして、非常に不確定要素が多い。これは地主にして一家全滅なんという人もあるわけでございます。そういうことを踏まえて五年間としたわけですが、これはあくまで、もっとすみやかに進むものはすみやかにというつもりでおりまするので、御理解を願いたいのです。
  518. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 それでは少し別な角度からお伺いをしたいと思います。法制局長官にお伺いいたします。  公用地等暫定使用法案の公用地ということばです。これまで法律を見ますと、似たことばとして公用財産、公共用財産あるいは公共用地、公共施設等々という用語がございます。私が理解する限りでは、公用地という用語が法律用語として使われたのはこれが初めてだと思います。その意味で、この公用地という概念は一体何なのか、そしてまた、新しい法律用語をここであえて起こさなければならなかった理由は一体何なのか、二点伺いたいと思います。
  519. 高辻正巳

    説明員(高辻正巳君) お答えを申し上げます。  ただいま御質疑の中にもあったと思いますが、公用あるいは公共用、こういうことばはいろいろ実定法の中にございます。まあたとえば非常に似た例では、小笠原諸島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律の十二条には「公用」「又は公共の用」ということばがございますし、地方自治法あたりにも、これは二百三十八条でございますが、そこにもまた「公用又は公共用」ということばがございますし、先ほどおあげになったかもしれませんが、   〔委員長退席、理事剱木亨弘君着席〕 たとえば国有財産法には「公用財産」「公共用財産」というようなことばもございます。そこで、いま申し上げた公用と公共用と並べた場合に、公共用地ということばを使った例は、同じく題名で、公共用地の取得に関する特別措置法というのがございます。要するに、公用あるいは公共用というものがありまして、公共の用に供する土地、これを公共用地と言い、公用に供する土地、これを公用地と言ったにすぎないのでございます。  ところで、公用地というのは実体的には何を言うか、国や地方公共団体等の事務の用に供する土地、これを公用地と言っていいと思います。公共用地というのは、直接一般公衆の用に供するものを公共用地と言い、そのほかに企業用とか、企業用財産とか、そういうものもございますが、ただいま申し上げるのは公用と公共用だけに関して申し上げれば足りると思いますので、それだけにとどめておきます。
  520. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 法制局長官に伺います。公用地——こまかい概念論議をここでするつもりはないのですが、従来の法律用語で間に合わない理由があったから公用地という新しい法律用語をつくられたのだと思います。別に勘ぐって質問しているわけではありません。その意味で、この公用地ということば、いまお話しのように公用財産あるいは公共施設、公共用地等とありますが、従来のことばで尽くせなかった、かりにそれが施政権の返還というよりも米軍基地関係だといたしますと、地位協定に基づく特別措置法では公共に類することばは一切使っておりません。そこで、使っているのは、「日本国に駐留するアメリカ合衆国の軍隊の用に供する土地」と、きわめて具体的に書いてあります。その意味で今回の法案の中身を見ますと、大別して三つあると思います。自衛隊の用に供する土地米軍基地として用に供する土地、そのほか道路、港湾、航空標識等々の用に供する土地、この三つ。たいへん異質なものが入っている。それとの見合いで公用地という新しい用語を起こす必要が出てきたのではないかと実は考えるのですが、あわせて、なぜ必要か伺いたいと思います。
  521. 高辻正巳

    説明員(高辻正巳君) 公用地は公共用地というのと同じような趣旨で用いたということを申し上げましたが、この法律の題名に「公用地等」とやりまして公用地を持ってまいりましたのは、この二条の各号をごらんになりますとわかりますように、二号、三号あたりがさつき申した公共企業用地と言っていいものであり、七号あたりが公共用地と言っていいものでありますが、そのほかのものは大体公用地というたぐいに入るものであり、それが多いものですから、公用地——あるいは公共用地等と言っても別にかまわないのでありますけれども、そういう意味合いで「公用地等」ということばを用いたにすぎないわけです。もともと題名でございますから、法の規律それ自身が意味を持つものではございませんが、この内容に照らして「公用地等」ということばにしたわけであります。
  522. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 ただいま法の題名でという御返事がありましたけれども、法文の中にも公用地ということばは使われております。単に題名だけではありません。そこで、公共用地ということばを使ってもいいし云々というお話ですけれども、それほど法律用語というのは、必要があればどうでもいいということではないと思います。その意味で、もう少し明確なお答えをいただきたいと思うんですが、少し進める意味で追加して伺いますと、「公用地等」の「等」ということばがあります。これはどういう意味ですか。
  523. 高辻正巳

    説明員(高辻正巳君) 公用地と申しましたのは、公共用地というふうに使ったのと別して変わりがないということを先ほど申し上げましたことをまた繰り返して申し上げます。  それから「等」というのは、ただいまも申し上げましたが、公共用地もあり、それから公共企業用地もあるものですから「公共用地等」ということにいたしたわけであります。
  524. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 普通、土地等という場合の「等」というのはどういう概念ですか。
  525. 高辻正巳

    説明員(高辻正巳君) それは、それぞれ実定法の定めるところによりましてながめないといけませんので、ただ土地等と言われて、何が入るかと言われますと困りますが、土地収用法等には「土地等」ということばがあったと思います。それは権利関係その他のものも入るような意味合いで言っていたと思います。これは条文を見ればすぐわかりますが、そういうような実定法の中身に照らして判断するほかはございません。
  526. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そうしますと、この「公用地等」というのは公共用地などということと大体同じ意味なんだと、で、土地収用法にいう「土地等」というのは土地に付随する権利関係を総称して言っているのだと、こういうお答えがありました。この間、松井委員のほうから、いろいろ告示の効果について質問があった中で御回答がされました。そこの中で、「土地等」ということばを土地収用法と同じような意味で使っていたと思いますが、   〔理事剱木亨弘君退席、委員長着席〕 お出しになった資料の中で、一項のうしろから二行目です。「告示された範囲内の土地等につき」云々とあります。この場合の「土地等」も公用地などという意味ですか。
  527. 高辻正巳

    説明員(高辻正巳君) その「土地等」は、土地と工作物——この法律が工作物も入れているものですから、工作物のつもりでございます。先ほど申し上げたように、「土地等」と言った場合に「等」が何を意味するか、それぞれの実定法上の問題であれば、その法律に照らして判断するほかはございませんが、そこで書きましたものは、土地に限らず工作物があるものですから「土地等」と書いたわけであります。
  528. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 土地収用法で「土地等」ということについてあえて一条を起こして説明をしております。これは土地収用法というのは、土地に関する権利の制限法規ですから、その意味で何が対象になるのかということを明らかにしておきたい、また明らかにすべきだという趣旨であると思います。いまの御説明ですと、「公用地等」の「等」というのは、公用地、公共用地などなんだ——これはあとで伺いますが、中に入っているものが全部公用地として見ていいのかというと、題目といい本文といい、やはり問題が少し残ると思います。たいへん不明確なことばの使い方だと言わざるを得ません。また、その「等」についても、今回御提案の暫定使用法案には「土地又は工作物」という記載はありますけれども、その「土地」というのは関連する諸権利を含むのか含まないのか、ただいまの御説明ですと、「土地」はあくまでも土地だけで、土地収用法にいう「土地等」の「等」という関連する諸権利は含んでいないように聞こえます。そういうことなんでしょうか。
  529. 林信一

    説明員(林信一君) お答えいたします。  問題の法案の「土地等」と申します「等」は、ただいま長官からお答え申し上げましたように、工作物のことを申しております。そういたしまして、これは使用でございますから、収用でございません。使用でございますから、権利の使用ということはこの法案では考えておりません。土地自体の使用あるいは工作物の使用)それを考えておるわけです。その使用といいますのは、土地収用法で言っている使用と同じ意味でございます。
  530. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そうしますと、念のためにお伺いいたします。土地収用法で見ますと、その「土地等」の「等」に当たるものとして、「地上権、永小作権、地役権、採石権、質権、抵当権、使用賃貸又は賃貸借による権利その他土地に関する所有権以外の権利」ということが書いてありますが、ただいま私が読み上げたものは、今回の暫定使用法案の対象にはならないということですか。
  531. 林信一

    説明員(林信一君) さようでございます。
  532. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 それでは、確認しますと、使用については土地収用法と同じ使用だといういまの御説明がありました。そこで、また法制局長官に伺いたいんですけれども土地に関する権利の制限規定をつくる場合に、これは土地収用法の場合でも、あるいは公共用地の強制取得に関する法律の場合でも、さらには地位協定に基づく土地使用に関する特別措置法の場合でも、それぞれ対象となる権利の内容、さらに使用の内容について、何らかの形で法文上明確に定めております。これは憲法の定める精神に従って当然の措置だと思います。ところが、この公用地等暫定使用法案については、その種の規定は全くありません。あったとしても「土地又は工作物」というたいへん概括の規定で、土地に関する諸権利が対象にならないということもいま伺わなければわかりません。土地に関してこういう法律のつくり方というのは、率直に言ってたいへんずさんだという気がいたします、従来公布された土地に関する諸法律に比べて。御意見を伺いたいと思います。
  533. 高辻正巳

    説明員(高辻正巳君) 一般に新たに土地を収用、使用しようという場合、いわゆる適正手続なるものがフルに働きまして、いろいろな手続を踏んでその目的を達するということが必要であることは言うまでもないことであります。この場合、一般の場合と違いますのは、現に公用、公共用に使われておって、そうしてその用をとめることが、やはり公共の利益に著しく支障を及ぼすおそれがあるということでそれを引き続き使用したい、それには、しばしば当局、大臣からお話がありますように、むろんそういう手続によらずして任意の契約なりによってその使用権を取得しようということではありますけれども、いま申し上げたような公用、公共用が中断をするということがたいへん困るという公共の利益上の要請がありますために、それを引き続き使用することにいたそうというのでありますので、一般の場合と同じようにいわゆる手続をするといっても、そこには相違が出てくるのはやむを得ないことだと考えております。
  534. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 新たに権利を取得する場合には、在来法制の配慮が必要であるけれども、引き続き使う場合にはその辺は多少簡略化してもよろしかろうという御答弁だったと思います。しからば伺いますけれども、自衛隊が使用する用地というのは新しく取得する用地なんですか、引き続いて使用する用地なんですか。
  535. 高辻正巳

    説明員(高辻正巳君) この場合は、いま申し上げたように、公用、公共用、そういう用途に着目をいたしまして、その用途の同一性あるいは同質性に着目しているわけです。で、自衛隊については、ちょうどアメリカ合衆国の駐留軍が沖繩現地で、これは民生用にもいろいろ使われていると思いますが、そういうものを含めての自衛隊としての沖繩の防衛とか、あるいはこの民生とか、あるいは災害防除も入りましょう、そういう用途、それが同一、または同質と言ってもいいと思いますが、そういう用途の性格上から申しておるわけであります。
  536. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 ただいま公共用、用途の共通性、この二つを説明の根拠として提示されました。しからば自衛隊並びに米軍用地が公共用施設であるという法律上の結論がこれまで出されたことがあったかどうか、さらにまた米軍基地と自衛隊基地はまさに目的において共通なのかどうか、たいへんそれは理解しがたいいまの御回答だったと思います。
  537. 高辻正巳

    説明員(高辻正巳君) 実態については、あるいは防衛庁当局からお話をお聞き願うのがいいかもしれませんが、私が先ほど申し上げましたように用途の点から御説明を申し上げました。この点は、当局からお話があっても同じことだと思います。  ところで、それが公共性があるのかということでございます。これは先ほどの御説明で、どちらかと言えば公用地というのに入るということを申しましたが、公用も広い意味では公共であります。憲法の二十九条には「公共のため」とありますが、土地収用法——これは学者の通説でもございますが、いわゆる公用も入る、公益のため、社会、公共の利益のためという意味であるということでありますが、その防衛庁の施設——自衛隊の施設というのは、言うなれば、これは防衛庁設置法あたりから御説明申し上げないといけないかもしれませんが、防衛庁の施設でございます。そういうものが公用として、あるいは自衛隊の仕事が結局は公共の利益のためにつながるものであるということは疑いをいれないことであると思っております。
  538. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 私は常識論をお伺いしているのではないのです。自衛隊用地あるいは米軍用地が公共用地とほぼ同じだと言われるから、じゃ、そう判断する判例、法文があるのかと伺ったのです。それでは百歩譲って、自衛隊もまた公共の用とするといたします。しからば財政法四条にいう公共投資の中に自衛隊もまた入るのか、おそらくそう伺うと、これは入らないとお答えになるでしょう。このときに入ってこのときには入らないという、そういうあいまいな解釈は、この土地所有権に関する部分では許されないから、憲法でも明らかにし、しかも土地収用法、公共用地の取得に関する特別措置法でも法の対象及びその権利の使用については明らかにしてきているはずだと思います。その点について目を光らしているのがほんとうは法制局長官としてのあなたのお仕事だと思います。その意味で、なぜそれが公共用地なのか根拠をお示しいただきたいと思います。
  539. 高辻正巳

    説明員(高辻正巳君) 公用地等暫定使用法案の各号列記のものを用地の性格から言えば、公用地と公共用地と公共企業用地、それから公用工作物もございますが、そういうふうに分かれると思います。そこで「公用地等」と言ったわけでありますが、なぜそれが公用地と言えるかということになりますと、これはまず土地収用法、これはいろいろ御疑問があるかもしれませんが、土地収用法の二条でしたか、三条でしたかの三十一号に、国が直接その事務の用に供する施設というのが公用——狭く言えば公用、広く言えば公共になるわけでありますが、それと同じものでありますために公用地と言えることが確実だと思います。それはもっとさらにさかのぼって言えば、防衛庁設置法をごらんになるとわかりますが、防衛庁は自衛隊を維持管理するというのがその所掌事務であり、その所掌事務を遂行するために庁舎をくつったり、あるいは演習場をつくったりするような事務はその権限に属しております。防衛庁は国の機関でございますから、国が直接その事務の用に供する施設ということで、公用であることは間違いないと思います。  それから、自衛隊が公共性があるのか、ないのかと言われれば、自衛隊法をごらんになれば、これが公共の利益のために使えるものであるということは間違いないことだと思います。もし必要があれば、自衛隊法に基づいて御説明申し上げます。
  540. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 常識論として公共のため、平たく言えば人のため、こういう言い方をすれば、当然、自衛隊は人のための機関であり、活動です。ただ、そういう大ざっぱな言い方では、権利侵害のことになる公共ということばについては、乱用されては困るから、いまいろいろ言われましたけれども、国有財産法では「公用財産」と「公共用財産」、と、わざわざことばを分けてまで使っております。土地収用法では「公共の利益となる事業に必要な土地等」です、使っておることばは。公共用地の取得に関する特別措置法で初めて「公共用地」ということばが出てまいります。先ほど申し上げたように、地位協定に基づく特別措置法では一切公共ということばを使ってません。ちゃんと「日本国に駐留するアメリカ合衆国の軍隊の用に供する土地等」と書いてあります。また、都市計画法では必要に従って「公共施設」ということばを使っております。どれも、あなたがおっしゃった常識論では公用地に入ります。いま伺うのは、法律用語としての「公用地」をなぜ新しくつくったか。平たくくだいて言えば、自衛隊用地、米軍用地、さらに通常の公共用財産あるいは公共用地に匹敵する第三番目の分類、これを何もかも一緒にしてしまっているから、結局、「公用地」という新しいあいまいなことばをつくらざるを得なかったのかと素朴な疑問が出てくるから伺っているわけです。
  541. 高辻正巳

    説明員(高辻正巳君) お答えを申し上げますが、つくらなければならなかったわけではございません。もし各号全部あげればあげたでいいんでありますが、それではかえってわかりがにくくなる、公用地、公共用地、公共企業用地、公用工作物、そういうものがありますので、「公用地等」と締めたわけであります。したがって、これにはもう全然他意がございません。公共用の土地を公共用地と言うがごとく、公用の土地を公用地と申しただけのことであります。何らほかの意味はございません。
  542. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 常識論でお答えになりますので、私もそういうことでお伺いしてまいります。  防衛庁長官伺います。公用地の暫定使用期間五年間に対して、事実上はこれにこだわらないで早く解決をしたいという真意を私は疑うつもりはありません。その意味で、実は一つ伺いたいことをやめたのですけれども、いまの法制局長官のお話を伺っておりますと、やはり聞かなければいけない気がいたします。なぜ五年間が必要なのかに関連して、これはこれから実際に暫定使用の交渉に当たるわけでありますけれども、引き続き米軍用地として使用している土地について貸してくれと交渉する場合と、一ぺん日本に返ってくる、それを自衛隊用地に転用する土地について貸してくれという場合と、どちらが交渉がむずかしいと用いますか。
  543. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは、旧軍隊というものに一つの悪いイメージ、悲惨な考え、記憶、そういったものがあるだけに、自衛隊に対する賃貸借料をきめたり賃貸借をきめる、そのことのほうが非常に骨が折れる、そんな気持ちがいたします。しかし、これはひとつ御理解を願いたいのですが、やはり施政権が戻ってくれば、主権が及べば、これはやはり自衛隊の局地防衛、民生協力、こういつたことにも一日も空白にできない事情、これがありまするので、いまこの法律で締めくくって御審議をお願いしておるわけでありまするが、この困難性は想像にかたくありません。それだけに自衛隊の実態というものをよくよく認識してもらう努力を、この法案が通過いたしました暁は、即刻ひとつ現地に向かって努力をしてまいりたい、こんなふうに思っております。
  544. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そういうことをお伺いしたのではないのです。誤解がないように申し上げておきますけれども沖繩施政権が返還される以上、沖繩が自衛隊の配備対象地域になることは私は当然だと思います。ただ規模、時期、態様については、これは別な意見を持っております。観念的には当然沖繩を含めてになると思います。また、いまの御意見に反論するわけではなくて、私が伺ったのは、これから実際に交渉する場合にどっちがむずかしいと思うかということなのです。
  545. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) ただいま申し上げましたように、自衛隊の用地を確保するということのほうがむずかしいのではないか。という意味は、アメリカ軍とは在来とも契約を結んでおります。で、これを、土地使用料等々を更改するわけですから、改めていくわけですから、アメリカの問題については従来の延長というわけですが、自衛隊については、先ほど申し上げたような理由どもありまして、抵抗もあったり、あるいは理解にかたいところもあったりするのではないか、そんなふうに想像しております。
  546. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いまの長官の御意見のとおりだと思います。米軍については、とにかくどかないのですから、あとは賃貸料の問題しか残りません。自衛隊用地は、一ぺん返ってきて、しかもたいへん心理的な抵抗が強い、日本軍隊の幻影をしょった自衛隊ということになりますと、この交渉はいかばかりむずかしいか。そうなりますと、五年間という暫定使用期間は常識的にむずかしいほうに合わせてきめてまいります。先ほどお伺いしました、沖繩本土とを区別するわけではない、そうなれば沖繩もまた六カ月あれば十分である。じゃ、六カ月をきめるときにどういうきめ方をしたか。当時の議事録を見ますと、三カ月でもいいし、一年でもいい、まあとにかく六カ月くらいあれば何とかなる。確かにこういうきめ方しかなかったし、同じように沖繩も六カ月といって何らおかしくない。ところが、土地権利関係と言われるから、その確認のために、じゃ、四年半も要るのか、じゃ十年で開発計画を進めようとする山中長官の御意見はと聞きたくもなる部分です。ところが、ほんとうはむずかしいほうに合わせてきめているから、五年という数字が出てくるわけでしょう。それを率直に言われれば、それじゃ、どうしようかという議論になりますけれども、いつもその前でとまっているから疑惑しか残らない。その意味で、五年というのは——私は自衛隊の沖繩配備に方向として反対しているのではないのですよ。ただ、久保・カーチス協定の取りきめについてはきわめて批判的であります。  ついでに申し上げますと、この暫定使用法案が必要になる理由というのは、施政権が返ってきたときに法律的な空白を生むわけにはいかぬ。いかぬというのは米軍用地だけです。その瞬間から局地防衛を日本が引き受けるという精神的な意味はあっても、実際の活動は空白があってもいいのです。それもこれもひっくるめて公用地等年間とくるから、じゃ、この法案は要するに自衛隊問題なのか、ねらいは。だから、さっきみたいなどんぶり勘定の「公用地等」という概念が出てくるのです。これは私、自然な疑問だと思うのです。そういった意味で、五年間をきめるについて、実は自衛隊問題が大きな配慮の対象になったということは率直にお認めになっても私はかまわないと思いますので伺う次第です。
  547. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 栗林さんいま御指摘のように、確かに私、自衛隊を理解させ、またこれと話し合いをきめていくということは骨が折れる、これはそのとおりに思うのです。どうぞ誤解のありませんように、このかつての講和時における日本本土の場合は、従来も契約者であった、それから土地所有者もはっきりわかっておった。この広い日本全土で、まあ一口に言えば五千名余の地主であった、この広い日本全体の地域でですね。ところが沖繩の場合は、あの狭い、百万県民のその基地の持ち主は三万数千名である。この違いですね。そうしてこれが琉球政府によって必ずしも的確に把握されていないなどを踏まえまして、どうしてもこれは手間がかかる。御指摘のように、困難性の一番最大限のところで押えたのでないかと言われれば、確かにそのきらいなしとしないと思います。したがいまして、さっきも申し上げたように、運用の面で、これはひとつ沖繩県民に納得を得られるように努力をしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  548. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 それでは法制局長官にお伺いします。  いろいろな条件の中で返還協定もあるいは公用地等暫定使用法案も出てきた、これは事実だと思います。ただいま防衛庁長官お答えになったような面もなきにしもあらず。そういう中で「公用地」という新しい法律用語をとにもかくにもつくった。しかも、その「公用地等」の「等」というのは土地収用法でいう「等」じゃないんだ。平たく、「など」という意味なんだ。こうなりますと、その辺はやっぱり法律面で明らかにしておくべきだ。しかも、そういう新しい用語ということになれば、当然その使用の内容についても法文の面できめておくべきなのが当然だと思います。ところが、今回の公用地等暫定使用法案がどういうことになるかといいますと、対象になる権利等、またその使用の態様について具体的に確定するのは、先日来、再々松井委員が指摘された告示後になっているわけです。これは土地所有権の、重要な基本的人権の一部であるということからいっても、この法案はたいへん私はずさんだと言わざるを得ない、御見解を伺います。
  549. 高辻正巳

    説明員(高辻正巳君) その問題に対するお答えは、一番手っとり早いお答えは、たとえば地位協定に伴う土地等の使用に関する法律というのがございますが、あれなんかに、新たに土地を取る場合と、それから暫定的に、これは五年じゃございませんが、暫定的に使用する場合、これは附則に書いてございますが、そういう附則の規定に相対応するものであります。それはやはりいままでの、従前その用に供されていたものを引き続き暫定的にその用に供していこうという場合の手続として、特別に今回のあれと比べてどうということはございません。要するに、現に公用に供されている土地、その使用の中断をなくしていくようにという公共の目的といいますか、それと、それからいまお話のあった私権との関係の問題は確かにございますが、その緊要性と、それからそれまでに行なえる手続との相関関係において、この程度でこの場合はやむを得ないのではないかというのが私どもの考え方でございます。
  550. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 念のために一つ伺っておきます。「公用地等」の「等」というのは「など」なんだということから、土地に付随する諸権利、これは対象にしていない。したがいまして、米軍用地あるいは引き続いて自衛隊が使用することになる用地に関する地上権、永小作権、地役権、採石権、質権、抵当権、使用貸借または賃貸借による権利、その他土地に関する所有権以外の権利、これは対象にならないのですから、当然、暫定使用法が適用されようとも、地主の本来の権利として保護され、自由処分が保証される、そう理解してよろしいですか。
  551. 高辻正巳

    説明員(高辻正巳君) ただいまの前段で「公用地等」ということばについてさらにお触れになりましたが、この「公用地等」が使われておりますのは、題名と第一条の趣旨であると思います。第二条が実はこの法律の法規的特質でございますので、「公用地等」にあまりおこだわりになる必要はないのではないか。これは先ほども申し上げたように、この二条には公用地、あるいは公共用地、公共企業用地、あるいは公用工作物等が入っておりますので、それらが「等」に入っておるということでございまして、別に他意はないということが一つ。  それから後段の御質問に対しては、先ほど私のほうの二部長がお答えしたとおりであります。
  552. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 土地所有権に関連する諸権利暫定使用の対象になっていないことを確認されたわけですから、これ以上の論議はやめます。ただ、「土地等」について、「土地等」ということと「公用地等」ということを、何となく、「など」という印象で言ってみたり、「土地等」という正規の法律概念で使ってみたり、たいへん伺っていて混乱する気がいたしますし、元来、公共ということばはそんなに常識論で振り回してはいけないことばだと思います。  そのほか、立ち入って伺いたい気がしますけれども、時間がございません。最後に、総理に二つお伺いを実はしたいと思うのです。  実はこれまでの論議も踏まえて考えるんですが、今回の暫定使用法案、内容的にいろんな問題をたくさん含んでいるような気がいたします。一番基本的な問題では、従来からの論議に出たように、憲法違反の疑いが非常に濃い。これはいずれどちらにしても法廷が法律的に決着を争っていく場所になると思います。加えて、今度の六カ月と五年との違いからくる非常に素朴な反発、あるいは従来の土地関係の諸法律に比べて、異常事態における立法とはいいながら、たいへんずさんな内容を持っていると言わざるを得ないこと。しかも、その内容が自衛隊、米軍用地も含めて——伺いする時間のゆとりがありませんでしたけれども、それもまた公共なんだと言い切ってしまっていいかどうかということになりますと、実は毎度出るようですが、河野元国務大臣が、自衛隊は公共の用に供するものに当たらないと再三申し入れたときに、あれは土地収用法との関係でそういう表現なんでという御答弁もあったような気がします。まあそれはけっこうです。とにかく、そういうもろもろの問題をかかえたこの法案をこのまま通してしまうことの、法律的ではなくて政治的な意味について、総理は肯定的にやはりお考えになるのかどうか、一言所見を伺いたいと思います。
  553. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも、この法案についていろいろ御議論があるようでございます。まず第一に、憲法違反の疑いが非常に濃いと、こういうことを御指摘でありますが、政府はもちろん憲法違反をする考えはございませんし、法案制定に際しましては十分その点は考慮したつもりでございます。また、中身がたいへんずさんだと、こういうような御批判でございますが、いまこの中身そのものといたしまして必要最小限のものが織り込まれている、かように御理解いただきたいと、かように思います。  私は、自衛隊の配置、それの必要な点については、これは申すまでもなく祖国施政権が返れば当然われわれの手で沖繩を守るという、そういう自衛の範囲に入るものでございますから、守備範囲に入ったと、そういう意味で自衛隊が防衛を担当すること、これは当然のことだし、また地域住民に協力することもこれまた当然でございます。そういう意味でございまして、いわゆる公共用地あるいは公用地等の議論はございますが、いずれにいたしましても、私は、この法律をそのまま適用するのではなくて、話し合いを十分つけると、これが主体になりますから、そういう意味では、もうすでに米軍が使っておる土地でもあるし、そうしてさらに、その地主とその点を、中身を詰めて話し合っていくということがまず第一でございますから、それらの点を十分御理解いただくならこの法案の問題も解決する、自衛隊の土地の問題も御理解がいただけるのではないかと、かように思います。  ただ、中身がずさんだとか、あるいは期間が長過ぎるというような批判は、これは事柄の性質上当たらないでもない。私もどうも五年かかると、こういうことについては十分の自信があってこういうものをつくったわけでもございません。まあ五年程度が望ましいだろう。小笠原が返ったときの状態もあるし、それに比べればたいへん多数の所有権者がいる、そこらを考えると、この程度のものが必要かと、かように私ども考えた次第でございます。
  554. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 その点で押し問答するつもりはありません。ただ、この暫定使用の問題に関連して、問題の実態的な背景の一つが、戦中戦後の不幸な歴史を背景にした沖繩土地権利関係の混乱にあることは、これはもう事実ですし、総理も再々、地籍調査を積極的に進める意図があるという趣旨の御答弁をされてまいったと思います。そういう趣旨でお伺いするのですが、国土調査法の第六条の二に、「(地籍調査に関する特定計画)」という項目がございます。こまかくは条文は読みませんけれども内閣総理大臣が主宰をして、国の大幅な援助を講じながら地籍調査を実施する、そういう特定計画をきめるということが内容になっております。その意味で、なるほど地籍調査を進めるというこれまでの御答弁ではありますけれども、実際は、この土地問題というのは、何も基地関係ではなくて、これからの沖繩の開発ということを考えますと、何をさておいても出発点だと思います。その意味では、ほんとうは公用地の暫定使用という形ではなくて、沖繩全土にわたって一時期、土地所有権を制限してでも地籍調査を実施する、開発計画に伴う土地の値上がりは事前に防止する、そんな配慮の一つほんとうはあったほうが、どれほど沖繩県民あるいは本土を含めた国民にとってわかりやすいかもしれないとさえ思う次第です。そんなことから、たまたま国土調査法の第六条の二を申し上げましたけれども、そういう特定計画を明らかにし、国の助成を明確にして、時期を区切って積極的に進める。しかも、施政権が返ってくれば、米軍基地内にも、いろいろ障害があったとしても、立ち入る可能性もあると思います。その意味で、今後の地籍調査について御見解を伺っておきたいと思います。
  555. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは当然、地籍調査をしなければならないと思います。ことに米軍基地内、その中は地形も変形しておりますし、その所有区分等も明確でない、こういうような実情でございますから、どうしてもこれはやらなければならない、かように思っております。なお、この詳細につきましては、木村君からお聞き取りいただきたい。
  556. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 沖繩復帰いたしますと、本土でいま行なっております国土調査十カ年計画、これに沖繩を含めて実施することになります。その際、いまお話のありました公用地も当然その中に含めてやることですが、ただ所有関係に争いのあります土地については、なかなか国土調査法でその所有権関係を明らかにすることができない。結局、その場合には民事関係で解決するほかはないと思います。その点だけは御了承願いたいと思います。
  557. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 ぜひ御努力をお願いしておきたいと思います。  実はいろいろ伺いたいことがあるのですが、時間が乏しくなってしまいました。あと一つ、とてもこれは十分では無理なんですが、通貨交換の問題についていろいろお伺いをしたいと思いましたが、こうなると、主張を申し上げたほうが早いような気がいたしますので、二、三伺いながら申し上げてみたいと思います。  大蔵大臣にお伺いいたします。  通貨交換というのは、ある部分の通貨をとにかくある金からある金にかえるということでは私はないと思います。よく言われるように、沖繩であれば、ドルの通貨圏から円の通貨圏にかわる。その意味で、単に目に見える紙幣あるいは預金を交換するということにとどまらない。通貨価値の等価交換、これが実は通貨交換の中身だと思います。その意味で、以前、個人の現・預金についてあり高を調べ、一ドル三百六十円で交換するということを決定されました。投機ドルが心配される中で、そこまで踏み切ったことは私は大きな英断だったと思います。とは言うものの、これで終わったわけではない。これが、きょうも論議に出ておりました請求権の問題について、一体一ドルを何円にかえていくのかという議論も出てまいリますし、その他もろもろ、時間がないので申し上げません。ただ、元来通貨交換というのは、実際に生きている経済の実体に触れた問題なんで、一部分だけを抜き出してこれは一ドル三百六十円、あとは対ドル基準相場だという、こういうことは非常にむずかしいんだと私は思うのですが、大蔵大臣の御見解を伺いたいと思います。
  558. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) もう、通貨交換はそういう意味でございますが、それが、実際において旧レートでこれを交換すべしというのが沖繩人たちのいままでの要求でございましたが、通貨交換というものは、旧レートで復帰のときにあるいは復帰前にこれを交換するということは、実際には非常にむずかしい問題だということから、私どもは一定の時期において持っておる所有のドル、それから債権、債務の差額というものを確認して、そうして交換時には実勢レートにおいて交換する。しかし、お約束によって、別に差額に当たる分を支給金として交付するという形によって、この沖繩の方たちに損害をかけないという形で解決したいということをいま考えておってああいう措置をとったんでございますが、やはり、いま考えられる方法としては最善の方法ではなかったかと思うのですが、さらにまだ、外交交渉の問題もこれから先に機会もございますし、いろんな意味において考えられることがあれば、われわれも研究したいといって、今後の検討を約束しているところでございますが、いま現在としては考えられる私は最善の策であると考えております。
  559. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 山中長官伺います。  現在、沖繩の物価安定緊急措置ということで二十億円。しかしこれは、施政権が返ってまいりまして沖繩が円の通貨圏に入りますと、この機能は事実上もう役に立ちません。そうなると、沖繩は結果としていまより物価高。この辺の理屈を非常に大ざっぱに申し上げれば、一ドル三百六十円の経済がそのまま沖繩に流れ込んでいくということになります。これに対して具体的に個別の対策を打とうと思っても、どう考えても可能性は私はないように思います。そのほか、再々出る話ですけれども、国家公務員あるいは地方公務員として採用する沖繩の、現在琉球政府に働いておいでになる皆さん、人事院規則によって査定をするということになりますと、現在もらっているドルに幾らかけてというきめ方ではないとしても、素朴に受け取れば、一ドル三百六十円でかえた勘定になります。そうなれば、民間で働いている人も、わしたちも一ドル三百六十円でかえてくれと言うのは、これは当然の要求だと思います。じゃ、そうなれば今度は企業の側からいえば、企業の現・預金、資産についても、当然三百六十円でかえるという話に発展してまいります。それもまた、しごくもっともな理屈じゃないか。沖繩では自主的な金融制度を果たしているものとして模合いがあります。たまたま模合いの結果、ドルを受け取った。調査に間に合って三百六十円でかえてもらった。しかし、負っている債務はあくまでもドル建て債務ですから、対ドル基準相場でかえていっていいかといったら、それはおまえ三百六十円で返せということになるでしょう。ところが、模合いによって事業資金を得た人は、対ドル基準相場でしかもらえませんから、これは三百八円、無数にある模合いの中で返済基準が全部まちまちになります。こんな例は、拾い上げれば私は切りがないと思います。  実は、そういったことを個々にお伺いしながら、この通貨交換というのはいかにたいへんなことかということを御一緒に考えていただきたい気がしたのですが、最後に主張だけ申します。  とにかく一部だけ直して、あとを直さないということは、どう考えても不可能だと思いますし、その場合に、三百八円と三百六十円の差額が何か、これが実際には、いまの二十億円に見合う実質的な対策費として生きてくると思います。この三百八円と六十円の差額五十二円は、現金が動くわけではありません。ないけれども、そういう経済を認めていくことが、結果として二十億円の趣旨も生きるし、個人の現・預金について一ドル三百六十円でかえた趣旨も生きるし、何も返還前にドルを円にかえなくても、安心が即座に生まれると思います。ただ、そういった取り組みをした場合に、投機ドルの関係はどうかということになります。ところが、私が申し上げたかったのは、こうなれば投機ドルの危険をおかしてでもかえるべきではないのか。この間、現・預金のあり高を調べた場合に、六千万ドル強だと伺いました。かりにこの六千万ドルと同じ額が投機ドルとして流入したとしても、そのことによる損失は三十億円強です。現在支出している二十億円の五割増し、三十億円、たいへんな金額ですけれども、そうたいへんな額とはいえない。三十億円。
  560. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) それは手持ち現金だけですか。
  561. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そうです。ですから、それだけ投機ドルが流入したとしても、そこまで覚悟すればいい話になるし、そんな投機ドルが管理できない話でもないでしょう。その意味で、一〇〇%投機ドルを押えるということでは、私はいまの事態、沖繩の通貨問題は解決できるとはとても思いませんので、場合によってはその危険を若干おかしてでも、そのかわりその流入を極力押える処置を講じながら、全部について一ドル三百六十円を基準として経済を組み立て直していくということに踏み切る必要があるのではないかと思います。  事柄の性質上、お答えを求めてはおりません。私の主張だけ申し上げて、時間がなくなりましたので、質問を終わりたいと思います。     —————————————
  562. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 渡辺武君。
  563. 渡辺武

    ○渡辺武君 今回締結されました沖繩協定が、核抜き本土並みという政府の宣伝にもかかわらず、アジア最大の総合的侵略拠点としての沖繩基地の機能を維持し、さらには日本全土をアメリカの侵略体制に一そう緊密に組み込むものであって、またホイーラー・アメリカ統合参謀本部議長の述べた、いわゆる日米軍事混合体制のもとでの日本の軍事力の増強を義務づけるものであることは、この国会論議を通じて明らかになってきております。私はきょうは、沖繩協定と、特に沖繩への自衛隊配備などと関連して、特に重大な問題になっておりますこの日米軍事混合体制、すなわちアメリカのアジア侵略体制に自衛隊を一そう緊密、有機的に組み込み、自衛隊の肩がわりによって侵略体制を強化しようとするこの体制の問題について、質問をしたいというふうに思っております。  そこで、防衛庁長官伺いますが、私が決算委員会での質問のために防衛庁に資料要求をいたしまして、防衛庁から提出された資料によりますと、防衛庁は、日米共同声明直後の昭和四十五年七月二十五日から四十六年の十一月三十日までの間、八回にわたって日本大洋海底電線株式会社、通称OCCと呼んでおりますけれども、このOCCから総額二十七億三千三百三十六万七千円、総量四千二百トンの同軸海底ケーブルを購入しております。そこで伺いたいのですが、この四千二百トンの海底ケーブルの総延長は何海里か、また、この大量の同軸海底ケーブルを何のために使っておられるのか、伺いたいと思います。
  564. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 御指摘の海底ケーブルでありまするが、これは水中探知機敷設適地の選定、それからこれに伴う器材の改善、開発と、こういったものに使っておるわけであります。  御承知のとおり、原子力潜水艦というものが出てまいりましてから、海中機器の構造というものが非常に大型化してまいりました。それからまた複雑化してまいったわけであります。したがいまして、これを専守防衛といいまするか、日本としては、四面海をめぐらしておるこの地理的環境にある国としまして、やはり磁気、音波、そういうようなものによって探知をしていく、そういった機器を、どこにどういうふうに配置したらいいのか、そういうことを研究し、同時にまた、それが流されてしまっては困りまするので、たとえば潮流はどういうふうであるとか、ここは塩分はどういうふうであるとか、水温の状況はどうであろうとか、そういう多目的な調査にこれを使っておるわけであります。  そこで、長さはどれだけかと、こういう御質問でありますが、実は私就任以来、このことにつきましていろいろ事務当局と話し合いをしておるわけでありまするが、自衛隊としてはトン数で四千二百トンというものを申し上げたわけで、この長さをどの程度かということをはっきりいたしますると、この海洋国家としての日本が自衛上いろいろ探知するものを配備したり何かする、それが簡単に出てくるわけであります。したがいまして、この長さについては、決算委員会でも政務次官が、私は協定委員会に入っておりましたために、政務次官がかわって出まして、申し上げることができませんと、こういうことで過ぎてきておるようでありまするが、私といたしましても、この点についてはひとつ御容赦を願いたいと思います。
  565. 渡辺武

    ○渡辺武君 海底ケーブルの分量をトンであらわすなんというようなことは、これは海底ケーブルをスクラップ屋に売るときぐらいなものでしょう。海底ケーブルというのは、あなた方が注文を出す場合にも、大体どのような仕様のものを何海里というふうにして出すのが当然です。いまの御答弁を伺っておりますと、どこへこの水中探知機を装置していいか、それを調べるためだというようなものだったら、何もこれは防衛上の秘密だといって隠す必要は少しもないと思う。そういうことでは、これから先の審議、私はこれは進められるかどうか疑わしくなってくる。何海里のものなのか。二十七億三千万円もの金を使っているんですから、国民はこれを知る権利を持っていると思う。おっしゃっていただきたいと思う。国務大臣江崎真澄君) これは御理解を願いたんですが、トン数で申し上げたわけです。本来ならば、あるいは長さでいっそのこと申し上げたほうがよかったかもしれません。まあどちらかを一つ申し上げることによって、これはひとつ御理解を願いたいと思うんです。で、やはりこの四面をめぐらしておる日本の地理的環境からいって、長さがこれこれ、重さがこれこれということなりますると、やはりこれはもう、たとえば津軽海峡に敷設しておるとか、あるいは対馬海峡に敷設しておるとか、一々こう言わなくても、専門家の間では、ああ、あそことこことここにあるかということになりますると、やはりこれは日本の自衛上まことに好ましくない結果が生まれるわけでありまして、その点を言っておるのですから、どうぞ御理解願いとうございます。渡辺武君 とうていそれは理解できない。いままでの対潜水艦用の水中ソーナーはどこに設置されておるかということは、これは大体もう明らかなっておるでしょう。先ほど私ちょっと申し上げたかと思いますが、水中聴音機ですね、LQ0というのが一番最近のものだといわれておる。このLQ03も、これも津軽海峡に設置されておる、二基ね。そうして、間もなくこれが壱岐、対馬にそれぞれ一基ずつ設置されるだろうというよなことは、専門雑誌見ればすぐ書いてあることだ。なぜ一体、この海底ケーブルについてだけ、防衝上だというようなことで隠されるのですか。国務大臣江崎真澄君) 決してことさらに隠すわけではありませんが、事の性質上、どの港に、どの海峡に、どの地点にということは、これは日本の国益という点で御理解を願いたいと、こう申上げておるのです。
  566. 渡辺武

    ○渡辺武君 日本の国益などと聞こえのいいこと言っておるけれども、私これから質問の中で明らかにしたいと思いますがね。これは日本の国益だとか、防衛上の秘密とかということであなた方隠しているのじゃない。そうじゃない。この全貌が明らかになれば、あなた方は憲法、自衛隊法違反を犯すことになる。そういう政治上の秘密から国会での答弁拒否をしている。そのことを私これから先、質問を通じて明らかにしたいと思う。  きょうは質問時間も限られて、しようがないから、私どものほうで調べた数字を申し上げましょう。いいですか。この四千二百トンの同軸ケ−ブル、私どもは最初、これは大体千六百海里から千七百海里くらいのものだろうというふうに考えておりましたが、われわれの入手した資料によりますと、これは特殊なケ−ブルで、総延長約千四十海里、キロメートルに直せば千九百キロメートル。ですから直線距離でいいますと、北海道の北端稚内から奄美大島の間、それをつなぐくらいの膨大な延長を持った海底ケ−ブル。どうですか、この点認めますか。そうして、このような膨大な延長を持った海底ケーブル、一体何のために使っているのか。これも明らかにしていただきたい。
  567. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは、何といいましても四面海の国でありまするので、港も多うございます。しかも重要港湾といわれる地点も多うございます。また海峡もあります。したがって、このごろこういう海底機器の規模というものは、先ほども申し上げましたように、非常に大きくなっております。複雑になっております。したがいまして、それを各所に配置すればそれだけのものがやはり要ると、こういうわけであります。
  568. 渡辺武

    ○渡辺武君 いいかげんな、その場のがれの答弁国会審議を妨害することは、私は許されないと思う。いいですか、一千海里といえばばく大なものですよ、これ。いま申しましたように、日本列島を縦につないで、ほとんど全部尽くしてしまうぐらいの長さのものです。こういうものを、いまおっしゃったような御答弁で満足できますか、何に使っているかということです。千四十海里というのは、これはあなたも認めざるを得ないと思うのですが、どうですか。その点はっきりさせてくださいよ。
  569. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは太いのもありますし、また細いのもありますし、したがいまして、それをどういうふうに認めろとおっしゃられても、これは困ります。私、必ずしもいまの御指摘は根拠のあるものと思いません。
  570. 渡辺武

    ○渡辺武君 太いのもある、細いのもある。それを全部入れてですよ、千四十海里。ここにちゃんとわれわれの入手した資料があるのです。それを全部合計すれば約千四十海里になる。うそを言ったってだめですよ。国会をばかにするつもりですか。
  571. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは御理解をいただきたいんですが、決してうそを言っておるわけじゃないです。それじゃ、御質問は、何をしているとおっしゃるのでしょうか、むしろこちらからお尋ねをしたいわけです。私は、さっき申し上げたように各港、海峡、とにかく四面海に囲まれた国でありまするから、各所に分散配置をしておる、こういうことを申し上げたわけです。しかも冒頭に申し上げましたように、潮流であるとか、水温であるとか、特に潮流の場合は、機雷等を敷設する場合にも、これは容易に流されてしまいます。したがいまして、そういうこともやはり当然十分平素から承知しておらなければならぬわけであります。それから塩分が一体どの程度であるのか、そういうことを、この裏表ずっと長い——いまおっしゃるように稚内から奄美大島まであるとしましても、それは一直線の、かりにですよ、あなたのおっしゃることを承ったとして、それで日本のまわりを取り巻いてみたら、半分にしかならないわけです。それを、あちらこちらに配置するわけですから、それぐらいのものは当然要るわけでありまして、これは御理解を願いとうございます。
  572. 渡辺武

    ○渡辺武君 まあ、いまの御答弁がどれほど国会をばかにした答弁かということは、いずれ質問の中で明らかにしたい。  そこで伺いたいのですが、対潜水艦用のソーナー用だという趣旨答弁がありましたけれども、これまで防衛庁が制定化した兵器ですね、これはすべて三次防、四次防計画、あるいは防衛庁の業務計画書、あるいは装備年鑑などにちゃんと公表されている。ところが、同軸ケーブルを使った対潜水艦用のソーナーというようなものについては、これはどこにも記載してない。私ども調べてみた。どこに記載されていますか。記載されていないとすれば、その理由は何でしょうか。
  573. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 原子力潜水艦ができてというのは、私は一般論として申し上げたわけです。原子力潜水艦の時代ですから、だんだんこういう海底機器というものも大型になり複雑化してきた時代ですと言ったわけで、いま私どもの水中機器を調べるこのケーブルというものが原子力潜水艦に向けたものである、そういうことを申し上げたわけじゃありませんので、これは誤解のないように願いとうございます。
  574. 渡辺武

    ○渡辺武君 答弁がないですね。どうして二次防、三次防計画などに載ってないのか、業務計画書や装備年鑑などに載ってないのか、時間がないから聞かれたことに的確に答えていただきたい。
  575. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) この時代の要請にこたえてやっておるわけですが、これは兵器というよりも、むしろそういう潮流、水温などなどを調べる機器ですから、これは兵器としてそこに計画を明らかにしてないということもあろうかと思いまするが、装備局長から補足をさせます。
  576. 黒部穰

    説明員(黒部穰君) 一般に装備年鑑に掲載しておりまするものは、制式として採用をいたした兵器、武器類を入れます。ただいま大臣の御答弁申し上げましたように、本件は主として、言うなれば観測のための機器でございますので、年鑑のようなものには何ら書いていないわけでございます。
  577. 渡辺武

    ○渡辺武君 これは兵器であることは、あとから明らかにしますけれども、そういう答弁国会に事態の真相を隠そうとすることは、私はけしからぬと思うのですね。  それじゃ、時間がないので質問を次に移しますけれども、先ほど何本かに分けて使っているという御趣旨答弁がありましたけれども、何本に分けて使っておりますか。
  578. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは御容赦を願いとうございます。
  579. 渡辺武

    ○渡辺武君 みんな御赦容願いますでは、質疑続けることでませんよ。はっきり答弁していただきたい。
  580. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これをはっきり申し上げますと、一体何のために日本が国防の意味——これはまあ通常兵器による局地戦以下の国防というのが自衛隊の任務でありまするが、その任務が根底からくつがえってしまうわけです。だから、それについて明らかにすることは御了解をお願いしたいと、こう申し上げておるんです。
  581. 渡辺武

    ○渡辺武君 いまも申しましたように、もうすでに三十億円近い金を使っている。ケーブルだけでです。まだそのほかにも、このケーブルを積んで敷設するための自衛艦「つがる」、これを改造するために九億数千万円の金も使っている。二つを合わせただけで四十億円近い金です。まだそのほかにもいろいろあります。こんなばく大な金を国民は使われて、何に一体使っているんだ、それを明らかにすることもできないというのは一体どういうことですか。こういうことでは審議を続けることはできない。委員長、注意していただきたい。
  582. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 「つがる」のお話が出ましたが、これは昭和三十年に竣工しました古い、いわゆる機雷の敷設艦、水中機器の敷設艦であります。したがいまして、こういう古いものでは、もうその用に任ずることができない。そればかりか、昭和四十四年に「そうや」という二千トン級の、新鋭の機雷敷設、機器敷設の専用艦ができたわけであります。そこで、まあ金のある国ならばそれでもう廃艦ということかもしれませんが、やはり乏しい自衛隊のことでありまするので、これを改造して、そうして水中機器の配備あるいは水中のいろいろな多面的な調査、これに使えるように改造を加えたのでありまして、新造船をするのと、九億数千万円を要しましてもこれを改造して使うというのでは、これはやはり自衛隊の乏しいその行き方、あり方というものを御同情願いたいと思います。
  583. 渡辺武

    ○渡辺武君 そんなこと伺っているのじゃないですよ。改造にせよ新造にせよ、国民の血税を使っているということについちゃ変わりはない。そのばく大な金を使って、一体これは何のために使われているのか、そのことも国会が明らかにできないというようなことでどうなります。数本に分かれて使われるということなら、どういうふうに、何本に分かれて使われているのか、はっきり御答弁いただきたい。
  584. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは四面海でありまするから、重要な各地各所に分散して敷設されておるわけであります。したがいまして、この本数等々について触れることができぬのをいかにも残念に思いますが、これは国益という点でぜひ御理解を願わしゅうございます。
  585. 渡辺武

    ○渡辺武君 それなら申し上げましょう。私どものこの入手した資料によれば、このケーブルは予備を含めて四本ある、予備を含めて。予備は約百三十海里。ほかは三本に分かれております。このことを認めますか。三本の各ケーブルの長さ、これをおっしゃっていただきたい。
  586. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは、私も就任以来いろいろこういうことについても勉強したつもりでおりまするが、そのことについてはつまびらかにいたしておりません。
  587. 渡辺武

    ○渡辺武君 こういうことでは審議できないじゃないですか。全部答弁拒否、これじゃ国会調査権どうなりますか。防衛上の秘密だというならどんなものでもやっていいという、国会の追及をのがれてどんなことでもやっていいということになるんじゃないですか。私の入手した資料で申しましょう。これは予備を除いた三本、そのうち一本は百十海里、もう一本は百八十海里です、約。第三のものは実に六百二十海里。どうですか、このことを認めざるを得ないでしょう。
  588. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) それは残念ながら認めるわけにまいりません。
  589. 渡辺武

    ○渡辺武君 委員長、これは審議できないですよ。審議できませんよ、こんなことじゃ。そんなことでは審議できませんよ。何の答弁もしない。
  590. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  591. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記を起こして。
  592. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) あとから装備局長に補足をさせますが、いま御指摘のようなことはない、こう申しております。
  593. 黒部穰

    説明員(黒部穰君) もっと数多く分けられております。
  594. 渡辺武

    ○渡辺武君 答弁にならぬです、そんなことでは。私はちゃんと三本の長さを言っている。もしそれを否定するなら、何本になって、各本の長さはどれくらいか、はっきりした資料を出していただきたい。それでなければ審議できない、これは。
  595. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは、どうも押し問答になるとあなたのプライドを傷つけることになりますので、いかにも残念ですが、これはやはり自衛隊なりの秘密ということで御了解を願いたいと思います。
  596. 渡辺武

    ○渡辺武君 自衛隊なりの秘密と言うけれども、これはアメリカには筒抜けでしょう。アメリカの技術でこれはつくっているのです、あとから申しますが。アメリカ海軍の協力と指導のもとにこれをつくっている。アメリカに筒抜けなのに、何で国民や国会の前に明らかにできないのか。そんな防衛秘密なんというものはあるもんじゃない。はっきり答弁していただきたい。資料をちゃんと出してもらいたい。質疑できない、こんなことじゃ。
  597. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) だんだん大型になってまいりましたので、そういうことを勉強するために協力を得たことはありまするが、配置その他については、日本独自のものであって、米軍もこのことについては知らないはずであります。
  598. 渡辺武

    ○渡辺武君 そんな答弁、満足できない、とても。うそばかり言っている。  それじゃ、あなたの言っていることが正しいか、ぼくの言うことが正しいか、それを明らかにするために、この同軸ケーブル、これの仕様をおっしゃっていただきたい。
  599. 黒部穰

    説明員(黒部穰君) 同軸ケーブルは三十ミリから八十ミリまで、各種ございます。
  600. 渡辺武

    ○渡辺武君 三十ミリから八十ミリまで各種あると、これはこの前の決算委員会でもそのように答弁された。しかし、それだけじゃわからない。少なくとも同軸ケーブルの軸芯、すなわち内部胴体の直径はどのくらいあるのか、同軸ケーブルの本体、すなわち外部胴体の内径はどのくらいあるのか、それからまたレピーターが入っているはずだが、レピーターの区間の長さはどのくらいか、最低限そのくらいのことははっきりさしていただきたい。
  601. 黒部穰

    説明員(黒部穰君) 仕様の詳細につきましては答弁できないわけでございますが、レピーターは入っております。ただレピーターの入れ方は、海底の状況その他によりましていろいろ変わるわけでございます。それから内芯の太さをということでございますが、先ほどお断り申し上げましたのですが、結局はこれでどれだけの情報量を伝送するかという問題になりますので、性能の詳細にもわたりますので、仕様については御答弁を申し上げられない次第でございます。
  602. 渡辺武

    ○渡辺武君 これは休憩して、理事会開いてくださいよ。こんなことじゃ質疑続けられませんよ。どっちが正しいかということを私は証明するために質問しているのです。この仕様が明らかになれば、アメリカ関係がないなんというような話にはならぬ。
  603. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  604. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記を起こして。
  605. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 御質問は、それじゃお尋ねしますが、一体どういうふうに思っていらっしゃるんでしょう。私ども何も隠したつもりはないんです。ただ目方で一応申し上げた。その長さを申しまするというと、これは専門家がそれを聞けば、すぐどことどこにあるだろうということが明らかになるから、それは申し上げるわけにまいりませんと、こう言っているわけです。そうすると、何を疑っていらっしゃるんでしょう。それを具体的に言っていただけば、あるものはある、ないものはない、こういうふうにお答えができると思いまするので、どうぞ御質問をお進め願いたいと思います。
  606. 渡辺武

    ○渡辺武君 そんな答弁では満足できない。私の伺ったことにちゃんと答えていただきたい。休憩して、少しこの問題検討してほしい。こんなことじゃ審議できませんよ、これ。けしからぬですよ、実際。  総理大臣伺います。いま質問している問題は、あとで明らかにしますけれども、防衛上の機密などと言えるようなものじゃありませんよ。これは初めに述べましたように、自衛隊の沖繩配備が典型的に示しているように、日米軍事混合体制のもとでの自衛隊の侵略的な強化という、政治上の問題です。ところがですね、答弁を拒否する。私、きょうここに、この沖特委員会から防衛庁に資料要求したのを持ってきました。この回答を参考までにちょっと申し上げてみましょうか。この海底ケーブルの総延長は何海里か、それに対する答えは、「防衛上の見地から長さについては明らかにできない」。こちらが、直径約三センチの細いものとは何海里か、「防衛上の見地から長さについては明らかにできない」。全部です。伺った質問八項目のうちで、答弁のあったのはたった一カ所、全部これは「防衛上の見地から明らかにできない」、全部これですよ。こんなことで国会審議できますか。ちょっと見てください。よく見てくださいよ。こんなことで、あなた、審議できますか。ちょっと待ってください。もう少し申し上げることがある。かりに、もしかりに百歩譲ってこれが防衛上の機密であったとしても、国会答弁を拒否するというのはこれは重大なことだ。何を聞いても答弁拒否。資料要求をしても資料を出さない、答弁拒否。これは、国権の最高機関である国会の上に軍隊を置いて、そうして議会制民主主義を踏みにじろうという軍国主義の明確なあらわれだ。こんなことなら、防衛上の秘密ということで国会審議をまぬがれて、自衛隊はどんなことでもできるということになるんじゃないですか。自衛隊がどんな危険なことをやっても、国会はそれに対して規制できないということになるんじゃないですか。しかも軍事機密でも何でもない。さっきも言いましたように、これは政治上の機密だ。こういうことで国会の国政調査権を妨害するということは言語道断と言わなきゃならぬ。総理大臣、この点どう思いますか。
  607. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも渡辺君とかみ合わないのは、先ほどから言われる日米軍事混合体制、そのもとで日本が侵略体制を整えつつあると、これはとんでもない前提です。さようなことはございません。幾ら自衛隊を沖繩へ配置したからって、それをもって日米軍事混合体制、これは一体何ですか。そういう前提のもとでお尋ねになると、たいへんそれは、枯れ尾花も幽霊に見えるでしょう。それはとんでもないことなんです。私はどうもそこらに、どうしてかみ合わないのかと、こういう気がするのです。だから、その辺をまず正しく認めていただいて、われわれの自衛隊はどういうものだと、これはもう専守防衛だと、これについて何か御議論があればそれは十分お答えしますが、どうも前提が、今回のは、ちょっと私どもと立場が違うので、そういう立場でお尋ねになると、渡辺君の御満足のいくような答えはとてもできません。これは、私どものほうでそれはできないことです。御了承願います。
  608. 渡辺武

    ○渡辺武君 それは総理大臣として答弁にならぬですね。この答弁拒否、これは議会制民主主義を踏みにじるものじゃないかということを伺っている。国会の、国権の最高機関である国会審議権を、その上に軍隊を置いているんだ。防衛上の秘密だというなら何でもできるんじゃないか。こういうことは許されない。——いや、総理答弁を求めている。
  609. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 私が先にお答えして、あとからまた。  これは何も隠しておるわけじゃないので、私何べんも先ほどから申し上げておりますが、要するに、だんだん水中固定器材の性能が向上してきた、そこで敷設能力の向上を、適地を選定するために必要な海洋調査機能を増強するためのものだ、それを各所に配置をいたしておりますと。したがって、その大きい、新しい水中器材というものを今後開発していくためのこれはデータにもなる要素を持っておりますと。そこで、これはお尋ねするんですが、たとえば沖繩の場合、沖繩から台湾に海底ケーブルがあった。そういうようなことから、何かもし自衛隊が他国、これはアメリカを含めてよろしゅうございます。他国と海底ケーブルでもつないでおるんではないかというお疑いがあるならば、さようなことは絶対ありませんし、いまの自衛隊がそういう特定な、どこの国とでもよろしゅうございます、そういう海底ケーブルをつないでそうしていくというようなことは絶対ありませんし、今後もそういうことはないということまでは申し上げておきます。ただ、長さはどうかとおっしゃると、トン数を申し上げたことによって御理解を願いたいと、こう申し上げておるので、それも、お答えできませんという点は、長さについていろいろな角度をかえての御質問ですから、お答えできませんというまことにぶあいそうな形になっておりますが、トン数をはっきり申し上げておるわけですから、これは御理解を願いたいと思うんです。
  610. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 国会をべつ視したとか、あるいは審議拒否をしたと、こういうものではございません。ただいま防衛庁長官からお答えいたしましたように、事柄の性質上、どうもそれだけはひとつお許しを得たいと、こういうことでございますので、その辺は御理解をいただけるのじゃないだろうか。いまお手元に差し上げてあるものも、それはやはり同軸ケーブルがいろいろ機能を持っておる、そういう点についての答案は出てないと、こういうことですから、全然答えやしないとかというようなものではないんですから、答えることはしたいんですが、どうもこれの点は機密上できないと。ただ、先ほども申しましたように、私は日米合同体制とか何とかおっしゃったが、そういうものでないことだけは、これは御理解していただきたいと思います。
  611. 渡辺武

    ○渡辺武君 その日米軍事混合体制であることを、質問を通じて明らかにしようということなんです。予断を持って言っているわけじゃない。われわれが調査して、明らかにそうだと判断できるから言っている。もしあなた方がそうでないというなら、私の伺ったことに正直にお答えいただければいいんです。それを、肝心なところを隠しておいて、そうじゃない、そうじゃないと言ったって、これは道理が通りませんよ。時間がないので質疑進めますけれども、やむを得ないから。しかし、この点ははっきり申し上げておきたい。防衛上の秘密でございますということで、自衛隊が国会の国政調査権を妨害しながらいろんなことをやるということは、まさにこれは軍国主義そのものの姿です。この点をはっきり申し上げておく。  このケーブル、これはアメリカの開発したケーブル、専門用語でいえばTAT1方式といわれ、タート・ワンといいます。すでに商業用海底ケーブルとしては旧式となって、軍用の、特に対潜水艦用ソーナー用としてだけアメリカで使われているものです。内部胴体の直径は〇・一三一八インチ、外部胴体の内径は〇・六二二インチ、レピーターの区間の長さは約三八・七海里、いま防衛庁長官答弁のあった八十ミリメートルの太いもの、これは浅い海の荒波からケーブル本体を守るために外装を厚くした部分、そして浅い海から陸揚げするその部分が約八十ミリメートル、これは四段階に分かれて、そして三本ともに、この厚い部分はほぼ二十四海里から五海里ぐらいの長さがある。ほかはすべて深海用です。外装のない、深い海用のものです。そして、その延長の先端にソーナーがついている。これを潜水艦が通れば、聴音をして地上局でこれをキャッチする。こういう仕組みになっている。これは明らかに対潜水艦用の水中兵器、ソーナーです。このことを認めますか。
  612. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) たいへんいろいろ御勉強のようですが、私どもは、そういうものではございません。さっきから申し上げておりまするように、もう重ねて申し上げませんが、各地に配置をして、水温とか、塩分とか、潮流とか、そういうものを総合的に調査をして、データを集め、将来の水中機器の大型化、複雑化に伴って、これをどう開発していくかということをもっぱら研究いたしております。それこそ、国際海洋博にも一部は場合によれば展示してもいいようなものじゃないか、それくらいに思っております。
  613. 渡辺武

    ○渡辺武君 海洋博に展示してもいいようなものだったら、何で国会答弁拒否するんです。まさに水中ソーナーであればこそ、あなた方はそれを否定しようと思って、そして国会答弁拒否しているんじゃないですか。いいかげんなことをおっしゃっちゃいけませんよ。
  614. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 決していいかげんなことを申し上げておるわけじゃなくて、その一部を展示してもちっとも差しつかえのないものです。ただ申し上げるのは、どことどこに入れておるか、長さはどれだけか、幾つに分けておるかと言われるから、それはできませんと、こう申し上げておるわけであります。
  615. 渡辺武

    ○渡辺武君 展示していいようなものだったら、何で仕様をはっきり言わないんです。国会をばかにするんですか。  伺いますがね、問題は、このような長大なアメリカ式の海底ケーブルのついた対潜ソーナー、これをどこからどこまでどのように設置しているか、こういう問題です。これは国民にとって無視することのできない重要な問題です。この最大の長さ六百二十海里。六百二十海里といえば、これはナホトカ−直江津間のあの日本海海底ケーブル、この長さが四百八十海里ある。これは日本海の一番ふくらんだ部分です。それを横断しているケーブルでさえも四百八十海里。六百二十海里といえば、直江津からナホトカまで行ってまた帰ってくる、途中まで。それほど長大なものが一本のソーナーにつながれているのだ。国民として、一体これをどこにどんなふうにして設置しているのか、これについて疑いを持たざるを得ない。御答弁いただきたい。地上局はどこですか。どこからどこまで、どのようにしてこれは設置されているのか。
  616. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これは何べんも御答弁申し上げておるのですが、各地各所に配置をしておるものであって、決して、いま御指摘のような一本のものではありません。これはどうぞひとつ、何か私のほうがばかに答弁をはぐらかしているような感じになりますが、決してそうじゃないのです。各地各所に、重要な地点に配置をしております。その代表的なものは津軽であり、対島であるということを先ほど申し上げたわけですが、それ以上申し上げることは御勘弁をいただきたい。しかし、それは各地各所に配備をいたしております。
  617. 渡辺武

    ○渡辺武君 各地各所に配備しているというのは、これは日本の領海内ですか。領海外ですか。
  618. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 領海内であります。公海に及ぶところは、当然これは郵政大臣の許可を得なければならぬことになっております。
  619. 渡辺武

    ○渡辺武君 いま領海内だとおっしゃいましたけれども、あなた方の答弁自身がそのことを否定している。先ほどの御答弁だと、細いところは三十ミリメートルだと答弁している。太いところは八十ミリメートル。その太いところというのは、これは浅い海の荒波からケーブル本体を守るために外装を厚くしてある。そうして浅い海から陸揚げするという、そのために太くしてある。三十ミリメートルというのは外装のないケーブル本体です。これは深海用のものです。日本の領海というのは、これは私が申し上げるまでもなく、三海里です。大陸だなの上ですよ。浅い海です。もし、あなた方が全部領海内のものだと言うならば、全部のケーブルが厚くされていなきゃならない。まさに深海用のケーブルを使っているというところに、領海外にまでこれが設置されているということをはっきり物語るじゃないですか。うそばかり言っちゃいけません。はっきり答弁いただきたい。
  620. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) 決してこれはうそを申しておりません。領海内です。で、今後、計画しておりまするものに、公海にわたるものもないわけではない、いま装備局長が私にそう申しております。そういう場合には、当然、郵政大臣の許可が要る、その手続のことを申し上げたわけで、現在は領海内でございます。
  621. 渡辺武

    ○渡辺武君 この同軸ケーブルがどういうものなのか、外装のない無外装のケーブルというのはどういうものなのか、これがはっきりわかるならば、あなたのそういう答弁が、国会を愚弄する全くのうその答弁だというのははっきりしますよ。この同軸ケーブルというのは、御承知のとおり、長距離の多重通信用のものとして戦後開発されたものです。ね、そうでしょう。太平洋を結ぶ海底ケーブル、これもそうだ。ところで、いままで防衛庁が使って発表している、海峡や港湾から防衛すると称して潜水艦用のソーナーを使っている、先ほども言ったLQ03などもそうです。これは全部、同軸ケ−ブルを使っていないんです。これは多芯ケーブルです。何本もの線が集まったケーブルですよ。これは領海三海里、その範囲内に設置されているといったって、これはなるほどそうかもわからぬと思いますよ。ところが、長大な遠距離に通信を送るためのケーブルを潜水艦用のソーナーとして使っているということは、領海三海里をはるかに離れて、深い海、したがって、公海、あるいは他国の領域の中に行っているかもわからぬ。先ほども言ったように、直江津−ナホトカ間の日本海海底ケーブルよりももっと長い、そういうケーブルをつけたソーナー。子供だましの答弁しちゃいかぬと思うんです。はっきり御答弁いただきたい、納得のいくような。
  622. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) どうも、私ほんとうのことを申し上げておるんですが、どうしておわかりにならぬかと思うんですが、領海内で、現在は公海には出ておりませんと、将来、公海に出るという分については郵政大臣の許可も要ることでありますと、計画はあるのかないのかとおっしゃるなら、ございますと、こういうふうに申し上げたわけで、現時点では確実に領海内でありまして、ナホトカとどういうことになるか存じませんが、少なくとも日本が現在、特定な国と海底ケーブルでつながなければならないような事態はございません。将来ともないと、私断言しておいて差しつかえないと思います。
  623. 渡辺武

    ○渡辺武君 答弁そらしちゃいけませんよ。海底ケーブルに使っているなんて、だれも言っちゃいないんだから。対潜水艦用のソーナーとしてこれを使っているんだということを言っている。私の申し上げることにちゃんとお答えいただきたいと思う。対潜水艦用のソーナーが六百二十海里、一番短いのでもって約百海里、全部これは無外装の同軸ケーブルを使ってやっているんです。領域内だというならば、何で無外装の同軸ケーブルを使うんですか。いままでの多芯ケーブルで間に合うはずだ。何で無外装の同軸ケーブルを使うのか、それをおっしゃっていただきたい。
  624. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) あなたのおっしゃるのが正しくて、私がこの国会の場でお答えするのが正しくないという御判断は、これは私、お間違えじゃないかと思うんです。これは私は、各地各所に配置されておる、こう申し上げております。あなたは、これは一カ所で、長大なものがそこに配備されているのだ、こうおっしゃるわけですが、はなはだ話がかみ合わなくて恐縮ですが、あくまでこれは各地各所に配置、配備といいますか、しておるものでありまするので、どうぞひとつ、いろいろ御研究になっておられるようですが、それは違っておると思いまするので、私の答弁を御信頼願いたいと思います。
  625. 渡辺武

    ○渡辺武君 肝心なことを答弁もしないで、距離がどのくらい、長さがどのくらいだと言わない。何本に分かれているのだ、これも言わない。それで自分の言うことを信用しろといったって、だれが信用できますか。そうでしょう。そうして、うそばっかり言っている。しかも、このケーブルをOCCの工場から積み出すのに、あなた方は徹底的に人目に触れないように注意しているじゃないですか。あのOCCの工場のあるところは、これは横浜の出田町という岸壁のあるところです。アメリカの大きな国際海底ケーブル敷設専用船であるロングラインズ号でさえ横づけにできる。まして「つがる」のような小さな船は十分に横づけできる。それだけの岸壁でありながら、わざわざそこには直接に持ってこないで、はしけに積んで、横須賀の長浦港まで運んで行って、その長浦港から「つがる」に運ぶ、こういう忍者まがいの行動をやっている。あなたが言っているように、国際海洋博に出してもいいようなものだなんというものじゃないんです。これは秘密のベールに包まれている。あなたは自分の言うことをほんとうだというでしょうけれども、私は、防衛庁がどういうものをつくっているか、はっきり示す資料をここにこんなに持っておる。一番長いのはちゃんとケーブル系1と書いてある。これは百数十メートル、ケーブル系2、これは先ほど申しましたように約二百海里、一番最後のケーブル系3、これは六百二十海里、ちゃんとつながっている。たくさんに分かれて各所に配備されているなんて、まっかなうそです。地上局がどこで、どこからどこまで敷設されているのか。領海の外に出ていることは明らかだ。はっきりおっしゃい。
  626. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これはどうも、私さっきから何べんも同じことを繰り返しておるわけで、各所に配置してあるわけでありまして、一カ所言えとおっしゃっても、これは表現のしようがないわけです。これは午後の、たとえば毒ガスというような話ならば、これはほんとうにわれわれもともに驚き、ともにそのあり方を追及するというわけでありまするが、これは性質が全然、そういうものとはわけが違うんですね。ですから、これはひとつ御信頼を願いたいものだと思うんです。
  627. 渡辺武

    ○渡辺武君 われわれの調査によれば、この海底ケーブルは青森県の大湊にある自衛隊の基地に運び込まれている。明らかに、北方水域にこれが設置されていることは明らかですよ。しかも、いま申しましたように、一番短いものでも百海里、一番長いのは六百二十海里。長大なものだ。これがケーブルの姿、その仕様そのものからいっても、領海内、つまり浅海用のものでないことは明らかです。深海用のものです。しかも、先ほど申しました「つがる」、これはグラプネルロープという特殊なロープを積み込んでおる。これは深い海から海底ケーブルを引き上げるために使われるロープだ。しかも、その長さ、推計すると約一万二千メートルある。いいですか。そんな長大なものを使わなければならないほどに深いところへケ−ブルを設置して、その先端にソーナーをつけて潜水艦を追っている。明らかにこれは公海もしくは他国の領域内にまで設置されているものだと考えざるを得ない。絶対にこれは領域内のものじゃない。国会を愚弄しないで、はっきり答弁してほしい。
  628. 江崎真澄

    国務大臣江崎真澄君) これはもう何べんも申し上げておりまするが、私はっきり、ほんとうに御答弁しているつもりなんです。ですから、これは私どもの言うことも御信頼を願いたいと思うんです。これはあくまでそういういろんな調査をし、今後に備えるものでありまするから、これは秘密といいましても、人に危害を加えるものじゃないんですね。外国に何かえらいたいへんな攻撃的な不安を与えるものでも何でもないわけですから、なぜそんなふうに御追及になるのか、実際、私了解に苦しむわけです。ただ、こういう押し問答をしますと、非常にあなたも不愉快になられて、その点はいかにも恐縮に思いますが、どうぞ、これは何ら敵国を刺激——いや失札、よその国々を刺激するとか、いろいろそういう——いや、これはもう私のことばの、発言の間違いですから、これはどうぞ御容赦願います。どんなところを、だれを刺激するというのでしょう。ですから、そういうことはないんです。各地各所に配置してある、これをもう繰り返す以外に答弁のいたしかたがないわけです。
  629. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  630. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記を起こして。  本日の質疑はこの程度にとどめます。  これにて散会いたします。    午後十一時五十六分散会