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1971-12-02 第67回国会 参議院 運輸委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十二月二日(木曜日)    午後一時十六分開会     —————————————    委員異動  十二月一日     辞任         補欠選任      塩見 俊二君     平島 敏夫君      鈴木  強君     瀬谷 英行君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         木村 睦男君     理 事                 鬼丸 勝之君                 佐田 一郎君                 山崎 竜男君                 森中 守義君     委 員                 岩本 政一君                 江藤  智君                 岡本  悟君                 橘  直治君                 平島 敏夫君                 伊部  真君                 小柳  勇君                 瀬谷 英行君                 田代富士男君                 三木 忠雄君                 田渕 哲也君    国務大臣        運 輸 大 臣  丹羽喬四郎君    政府委員        水産庁長官    太田 康二君        運輸大臣官房審        議官       見坊 力男君        運輸省海運局長  鈴木 珊吉君        運輸省船舶局長  田坂 鋭一君        運輸省港湾局長  栗栖 義明君        海上保安庁長官  手塚 良成君    事務局側        常任委員会専門        員        吉田善次郎君    参考人        日本造船工業会        副会長      古賀 繁一君        日本船主協会副        会長       福田 久雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○運輸事情等に関する調査  (新潟港外におけるタンカー座礁事故に関す  る件)  (当面の海運及び造船の諸問題に関する件)     —————————————
  2. 木村睦男

    委員長木村睦男君) ただいまから運輸委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨一日、鈴木強君が委員を辞任され、その補欠として瀬谷英行君が選任されました。     —————————————
  3. 木村睦男

    委員長木村睦男君) まず、参考人出席要求についておはかりいたします。  当面の海運及び造船の諸問題に関する件について、本日の委員会日本船主協会会長福田久雄君及び日本造船工業会会長古賀繁一君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 次に、運輸事情等に関する調査を議題といたします。  この際、新潟港外におけるタンカー座礁事故について政府から発言を求められておりますので、これを許します。
  6. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 先般新潟港外において起こりましたタンカージュリアナ」号の海難概要の御報告を申し上げます。詳細はお手元に御配付申し上げております資料でごらん願いたいと思います。  去る十一月三十日午後四時ごろ、原油二万一千七百四十二トンを積載し、新潟港西防波堤灯台西南西三千百メートルに投錨しておりましたリベリアタンカージュリアナ」号、一万一千六百八十四総トン、四十七名乗り組みは、北西の風が十五メートルないし二十メートルとなったために、転錨をすべくいかり作業中、風浪に圧流され、午後四時四十分ごろ西防波堤灯台南西二千三百メートルの地点に乗り揚げ、SOSを発信、午後五時三十人分ごろ船体中央部付近で折損し、折損した船体船首部分船尾部分に完全に分離した。  当時の海上模様は、曇り、北々西の風十七メートル、うねり——うねりの高さ二ないし四メートル、波四——二ないし三メートルであった。  この事故で、積み荷油の一部約三千六百キロリッターが流出をし、一日午後五時現在、この油は「ジュリアナ」号の座礁位置から阿賀野川に至る間のテトラポットの周囲に厚く滞留しておるほか、西港から東方に陸岸に沿って長さ約十五キロメートル、幅二キロメートルの帯状となって薄く広がっている。  以上でございます。
  7. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 本件に関し御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  8. 小柳勇

    小柳勇君 いまの概要説明ですけれどもね、いま一日の午後五時現在の報告をなされましたですね。これだけ大事な問題をだな、そんなに簡単にきのうの五時の状態でなくて、それから運輸省としてはどういう対策をとっておるのか、もう少し詳細にですね、報告しなければ、質問のしようがありませんよ。   〔委員長退席理事鬼丸勝之君着席〕
  9. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 以上の事故に対しましてとりました措置を御報告いたします。  この「ジュリアナ」号のSOSを受信いたしました海上保安庁は、まず次の措置をとりました。  一つは、「ジュリアナ」号乗り組み員の救出のため、航空自衛隊新潟救難隊航空機の出動を要請、同隊ヘリコプター二機によりまして午後六時二十五分から乗り組み員のつり上げ救助作業実施し、午後九時四十五分乗り組み員四十七名全員の救出に成功いたしました。  三十日午後五時、第九管区海上保安本部本号海難対策本部を設置し、本庁から警備救難部長現地に派遣いたして対策を検討し、同本部の決定に基づきまして緊急通信を発信し、一般船舶への事故周知をはかるとともに、ジ号付近への立ち入りを禁止をいたしました。また、県警の消防機関を通じまして付近住民に対し周知をするとともに、火気使用を禁止いたしました。  今後は、流出油拡散及び残油流出防止並びに流出した油の防除等のために、残油瀬取りオイルフェンスの展張による拡散防止油処理剤による乳化分散むしろ等による回収等措置をとることといたしております。  現地におきましては、一日午前六時以降、航空機による流出状況調査巡視船艇消防車等による油処理剤散布むしろ等による油の回収等処理作業を現在実施しております。  以上でございます。
  10. 小柳勇

    小柳勇君 ただいま報告がありました事件について質問いたします。  私は昭和四十二年の五月八日の参議院予算委員会でこの問題を質問いたしておるのであります。そのきっかけは、英仏海峡で起きました「トリー・キャニオン」号事件の直後でありましたので、このような事件日本の近海、沿海であってはならぬという立場から、この問題を質問いたしました。当時の運輸大臣大橋武夫君でありますが、運輸大臣のその当時の答弁がございます。その答弁は、昭和四十一年の十一月にタンカー大型化に伴う災害対策要綱というものを検討して一応決定いたしております。その内容について三点重要な点を説明をいたされました。したがいまして、その三つの大きな柱についてこの四年間の間に運輸省がどういう措置をとってきたか、その措置を十分にとっておるならば今度の事故発生後の救助対策はもっとスムーズにいったであろう、そういう立場から質問いたします。  まず、いま事故概要については説明がありましたが、事故原因をどのように把握しておられるか答弁を求めます。
  11. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 先ほど御報告に申し上げましたが、乗り組み員総員を救助いたしまして、その救助いたしました乗り組み員の中から、本件についての原因調査に重要な立場にあると思われますところの船長、二等航海士操舵員、一機士、こういった連中について昨日以来取り調べ現地保安部において行なっております。まだその最終結論が出ておりませんので、ここでこうだという決定的なことを申し上げることができませんけれども、今日までに大体わかっておりますこと——これは主として船長の供実になります。それによりますと、十一月三十日〇七・四〇ごろ、新潟港の西区の西防波堤灯台から二百五十度三千百メーター左舷いかり四節を入れて入港待ちのために錨泊をした。投錨当時は南の風であったが、それが北西の風で約十五ないし二十メートルとなってきた。そうして検疫パイロットボート荒天のために出航しないという連絡を受けたので、同船の沖出しをするということにして、同日の十六時ごろからいかりを揚げることを開始をした。そうして二節——この一節といいますのは約二十五メーターだそうですが、四節入れてあったうちの二節までを揚げようとしたが、その揚錨が困難となった。そうして揚錨をさらに続けておりましたが、そのうちに、いわゆる走錨というので、いかりを入れたままで引きずられて走っちゃう——走錨をしまして、同日の一六・四〇ごろ、新潟港西防波堤灯台から二百十八度二千三百メートル、先ほどの事故地点でございますが、そこに乗り揚げた。——こういうことを船長は自供いたしております。  私どもは、本件に対しまして、新潟警備救難課長以下十六名をもちまして捜査専従班というものをいまつくりまして、主として業務上過失往来危険罪の容疑ということで、目下鋭意取り調べをいたしております。  本件につきましては、いま申し上げました供述に基づいて、実際の実況検分などを早急にやらなければなりませんが、現状、波や風の気象条件によりまして、まだ本船に行くことができないというようなことで、重要な点につきまして今後の捜査を進めるのに若干手間どっておるような状況はございますが、陸上において可能な限りの目下捜査をしておる、かような状態でございます。
  12. 小柳勇

    小柳勇君 船長並びに関係者操船ミスであろうというような御報告でございますが、それがわかり次第また報告を願いたいと思います。  次に、船体が前後にまつ二つに割れたのでありますが、建造後十二年経過しておると聞いております。この船体に対する点検、たとえば弱点があったのではないかとか、建造欠陥があるのではないかというような、欠陥についてはどのような調査をなされつつあるか、報告を求めます。
  13. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 本船の要目につきましては、お手元にお配りしてあります資料にありますとおり、いま御指摘の建造年月については、一九五八年四月ということになっておるわけで、耐用経過年数十三年というような船であるわけです。この船がまつ二つということでございますので、いろいろな条件が複雑にからみ合っておると思いますが、ただいま申し上げた保安部のほうの原因捜査という立場におきましては、いまだ海象条件のために本船に参れないという状態のために、実地における調査というのができない。これは、天候が回復し、接近できる状態になりましたら、早急に行きたい、かように思っております。  なおまた、船舶技術的な立場においてやはり十分調査をしていただく必要があると思いますので、昨日政務次官が現地にお出かけになりました際に、船舶局における当該担当官がこれに随行いたしておりまして、この調査官によるやはりそういった技術的な立場における調査もお願いする、かようなことで、目下態勢だけは一応整えておるという現状でございます。
  14. 小柳勇

    小柳勇君 国籍はリベリアですが、建造は英国で建造したようであります。この同型船——同時代につくりました同型船調査など、やろうとすれば、どういう仕組みでできますか、日本政府が。たとえばIMCOなどに連絡をとるとかなんとかということで、同型船船体弱点などについて調査をすることができるのか、できないのか、答弁を願います。
  15. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 私どもがもし必要と考えまして、おっしゃるようなことをやろうと思う場合には、当面いますぐに思い浮かびますことは、外交ルートを通じて向こうの政府機関から本件のいま御質問のありましたような趣旨の資料を取り寄せる、そういうことが第一義的なことかと思います。なお、そのリストによりまして、そういった現物の他船が本邦に入港するというようなことがありました場合には、所定の手続等をとればそれの類似の船を見るというようなことも可能かと思います。いま当面思い浮かびますのは、そういった点でございます。
  16. 小柳勇

    小柳勇君 問題があとに残りませんように、国民の疑惑が晴れますように十分のひとつ調査をお願いをいたします。  次の質問に入ります。海洋汚染が非常にひどくて、しかも漁業あるいは漁業権などに対する被害も甚大であろうという報告がなされておりますが、この点に対する現状における見解についてお聞きいたします。
  17. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 本件につきましては、直接私ども目下のところまだ手を下しておりません。水産庁お話をいたしまして、本件については水産庁からの報告によってその問題を処理する、こういうたてまえにいたしております。聞き及びますところ、水産庁からは本庁から現地調査官を派遣しておられます。それから、地元の公共団体にその調査方の指示の指令を出しておられると聞いております。その結果については、いまだに調査中ということで結論を得ていないように伺っております。
  18. 小柳勇

    小柳勇君 賠償の問題との関連がありますからお聞きするわけですが、あと質問にも関連ありますが、この具体的な問題について、たとえばいまの漁業権の問題なり、あるいは救難対策の費用なり、その他処理剤あるいはオイルフェンスなどの代金など、相当の経費がかかっておる。これは補償は当然船長あるいは船主など補償しなければならぬのでありますが、この問題について、これからのやり方、手続ですね、あるいはそれに対する判定、あるいはそれの支払いなどについての一応の骨組みを御説明を願います。
  19. 鈴木珊吉

    政府委員鈴木珊吉君) お答え申し上げます。  制度といたしましては、いわゆるPI保険というのがございまして、これはこの船の荷主でございますシェル興産という会社に昨日確認いたしましたところ、この船の船主PI保険——イギリスPI保険でありますが、入っております。それからもう一つ、このPI保険に入っておりますると、そういった漁業権とかあるいは魚介類等に対する損害、それをも含めましたそういった第三者損害、並びに油濁を除去するそういったいろいんな資材を使うとかお金がかかるというような面での補償、そういった問題もこういったPI保険で補てんできる。さらに、この船主は、TOVALOPという制度がございまして、世界のタンカー船主が自主的につくっておりまする基金がございまして、これは自主的なものでございますが、その基金にもこの船主は入っておると聞いております。したがいまして、そのほうでも防除に要した費用の補償お金てん補してくれるということでございますので、そういった面での補償は、その両制度に入っておりますから、十分ではないかというふうに思います。  それから、手続でございますけれどもPIの面につきましては、やはり船主が、被害者からの請求を受けまして、PIの組合と打ち合わせいたしまして、どういった損害があったかということを見積らせるなどということでございまして、船主PI保険にその結果てん補の金を求める、こういうのが通常の手続であるということでございます。
  20. 小柳勇

    小柳勇君 確認いたします。漁民に対する補償救難対策費弁済油汚染処理費弁済など、要りました経費は、一切いま申されたような方法補償できると確認してよろしゅうございますか。
  21. 鈴木珊吉

    政府委員鈴木珊吉君) さようでございます。
  22. 小柳勇

    小柳勇君 次は、現在進行しております油除去対策について質問いたしますが、現状では、さっきのテレビの放送によりましても、油の被害が広がりまして、ほうほうに害を及ぼしておる。その原因は、中和剤なり油除去材料不足処理剤不足、あるいはオイルフェンスをやろうにも材料不足というようなことで、一応荒天の理由があります——天候が荒い、波が荒いためにオイルフェンスができないという面がありましょうが、あるいはいわゆる資材不足で、救助対策といいましょうか、油の除去対策がおくれておるというようないまニュースが報道されましたが、事実ですか。
  23. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 現地におきましてわれわれがやらなければならない対策ということで考えておりますのは、現在、船体がまっ二つになっておりまして、その船尾部分船首部分両方にまだ一万数千トンの油が残っておる。この油がさらに流出をしないようにということをまず考えて、いわゆるこれに対する対策瀬取りということになりますが、そういうことをやろうとしております。それから、現在、流れました油が範囲を拡大して被害を及ぼさないような拡散防止措置をとるということが一つあります。それから、現実に流れておりますわれわれの推定によりますところの約三千六百トンの油をいかに処理するかという問題、これに私どもは追われております。さらにつけ足せば、今後若干新しく流れてくるかと思います油から懸念されます火災防止ということでございます。  それで、一番最初の瀬取りという今後流れるのを防止するという意味におきましては、ただいま深田サルベージという専門サルベージ会社が主になってこれの対策を樹立しております。この対策関係について、資材器材等は、一部時間的な問題あるいは数量的な問題で不足等も考えられますので、これは港湾局現地器材資材等を応援してもらうというような措置で調整をとって進めておりますので、この面についてただいまのところそういった資材不足等の問題はまずない段階かと考えております。  次に、拡散防止のためにオイルフェンスを主に考えております。このオイルフェンスは、現在現地に到達しておりますのが五千六百メートルでございます。これによって防止しようと考えますことは、一番問題であります、港の中に波しぶきと一緒に入り込まないようにしたい。その意味によって、このオイルフェンスで拡大を防止する。それからさらに、川から中へ入るという問題があります。これは幸い、川からの流れによりまして、表面的にはいま流れ入っておりません。これらの対策を考える必要があろうかと思います。  それから、全体的に風の変わりようによってさらに範囲が西へ動くあるいは東へ動くというような状態もあり得るかと考えますので、そういった面について拡散防止を考えるということでいろいろ検討しまして、現在この五千六百メートルの現地オイルフェンスで一応間に合うというように現地からも報告が来ております。ただし、いま風と波の模様で、事件発生直後以来、いま申し上げましたような目的で早急にこれを展張したいと思っておりますが、現状では展張することが不可能という現状でございます。しかし、とりあえずまた別途に木材でもってこれを代用してやる方法はあるまいかということで、本日の作業予定といたしましては、木材によるオイルフェンス、これを九百五十メーター正午までに展張するというようなことを現地では計画し、実施をしております。そういった木材等についても不足だということはございません。  さらに、流れました油の中和という問題で処理剤が問題になりますが、今日現在、現地にございます油処理剤は九千二百かん——かん十八リッターでございますが、九千二百かんございますので、この内容目下のところは間に合っており、不足だということはございません。なお、これにつきましては、いまどんどん送致をいたしておりまして、最終的に計画上考え得ますのは、七万四千かん送致可能という状態でございます。一部どんどんいま送っております。したがいまして、現在、現地にあります油の除去剤数量と、今後のこういった計画によりまして、不足という声は現地実施本部からは出てきておりません。当面私のほうもそれで十分であろうかと考えております。あとまあ、これらをやっていきますのに、むしろでもって回収をする、あるいはこの散布をするためのポンプ等が必要になってまいります。こういった面につきましては、むしろにつきましては、これもいま五万枚の調達可能ということになっておりまして、現地の現場には現在一万六千枚準備をいたしておりまして、これも波と風の関係で、これによる回収というのが、一部実施をしてみましたが、あまりはかばかしくないというので中止もしておりますので、使用が可能、効果が出るということになりました際に、これぐらいの準備数量があればまず十分かというふうに考えております。消防車その他の資材につきましては、現地におきます公共団体新潟市、あるいは当該会社である企業の油会社、あるいは自衛隊、そういう方々と、連絡協議会というのを中心にして、いろいろな計画資材の動員をやっております。その限りにおきましては、目下のところは間に合っておるというふうに報告を聞いております。
  24. 小柳勇

    小柳勇君 この中和処理剤が、いまの報告では大体百七十トンくらいですけれども、流れた油は四千トンで、われわれはしろうとですけれども、計算からいきまして、いま足らないことはないというお話でしたが、新聞報道なり、現地報告によりますと、中和剤についても足らない。それから、もちろん波も高いけれどもむしろで油を吸うというようなことでどうするかというような批判がある。いま一つは、基本的には船主責任だということで、海上保安庁だけにまかせてしまって、ほかの人はもう手を引いた、第三者的に傍観的である、特に石油業界などが傍観的であるという批判があるようでありますが、耳に入っておりますか。
  25. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 現地における資材不足という声は、繰り返して申し上げるようでございますが、私ども現地からの報告も来ておりませんし、私どもも綿密にそういうことがあってはならないという計画で、方法で援助をしておるつもりでございますので、これはまずないというふうに御理解願ってしかるべきかと思います。ただ、前提気象条件なり海象条件、あるいは先ほどの船の船首船尾からの今後の流出というような条件の変化が加わってまいりますと、それに対応する措置を早急にとらなければならぬ、ある意味不足になるということがあり得るかとも思いますが、現状われわれの推定しております状態では、まずなかろうというふうに考えております。  それから、第二の点で、石油会社等皆さん本件責任をどう考えて措置をしておられるかということでございますが、これは先ほど海運局長からも御説明がありましたように、やはりこの船舶所有者、あるいはこの船の船長、あるいはそういった関係運航業者等々に責任があることは明白であります。それから、海洋汚染防止法等前提にいたしますと、やはりこの石油業者にも責任があるということになっております。責任内容がそれぞれ少しずつ違います。で、石油関係皆さんは、やはり今回のような事態日本としましてある意味では初めて起こったような事態でもありますので、非常に真剣に取り組んでおられると私は理解しております。現地で早急に立てました対策本部にもいち早く入ってもらっておりまして、一昨日の晩からきのうにかけましての再々の会議にも終始出ておられる。それから、東京におきましても、正式な対策本部とは銘を打っておりませんが、われわれに対応するような石油関係皆さんでのやはり一つ本部式のものができておりまして、私どもと絶えず連絡をとり、それをまた現地に流しておるという状態で、少なくとも東京で私どもが接します限りにおいては、非常に熱心にこれをやりたい、幾らでも——極端な言い方ですが、幾らでも資材その他を応援する、それは海上保安庁指揮下においてしかるべくどんどん処理してもらいたい、簡単に申しますとこういうような申し入れが出ておるわけでございます。現地におきまして、一部新聞報道等内容の真偽につきましては、実はまだよくわかりませんが、天候海象状態がよくないということで非常にあせりを感じておるというふうなことは、私は事実であろうと考えます。したがいまして、私どもはこの天候状態というものに非常に気を配っております。そういう関係で、いま先生の御指摘のようなことがあるかと思っておりますが、なおこれは終始連絡をとって十分把握しながら対処していきたい問題だと思っております。
  26. 小柳勇

    小柳勇君 大型タンカー事故対策連絡協議会現地の実態も、まあ当初はよかったけれども、最近では気がゆるんで連絡が不十分であるというような意見もあります。したがって、早急に連絡をされて、この油の弊害の除去のために官民一体となって措置されるような特別のひとつ配慮をお願いいたします。  同時に、見通しですね、これから一体——いままあ波が荒いようでありますが、一体いつになったら心配のないようなところまで持っていかれるつもりであるか、お尋ねいたします。
  27. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) たいへんむずかしい問題でございますし、私どももめどというものをできるだけ早く立てたいというふうに思っております。現地におきます船艇の諸君等も、まあわずかに足かけ三日ではございますけれども、いろいろ計画をしたり神経を配っておりますので、いわゆる疲労というような問題も出ておる状態ですし、本部の諸君もややそういった状態でもあります。まあ全体的に申し上げますと、本件についての処理は、非常にその気象、海象というのが大きなウエートを持っているように思います。波の状態が当初のような状態でございませんならば、これはきのう来で相当に処理が私は進んでおると思いますが、現在の段階では非常にいま遅々としておるということでございます。本日と明日にかけましてやや風がいま少し衰えておる。十二ないし二十メーターといっておりましたのが、いま九メーターぐらいに下がってきております。これは非常に私はチャンスであるかと思いますので、きょうあしたにかけて、できるだけの処理剤を使っての中和、あるいはフェンスでの拡張防止、瀬取りの態勢の推進、こういうことを指示いたしております。しかし、またそのあとに、三寒四温ではございませんけれども、また風が吹き波が荒くなる、こういうのが日本海の今後の気象のようなふうに聞いております。そういう状態の中でございますので、まあ資材その他はそういうふうに準備をいたしておりますが、そういった天候状態に非常に支配されるというので、大体どれくらいということがきわめてこの段階では申し上げにくい。なお、この瀬取りにつきまして、これはやはり相当時間を要する仕事であるようであります。まあそれだけの話で、いまの天候その他の状態前提にいたしますと、船首船尾部分両方を処理し終わるには、何日という日の単位ではなしに月だというふうなことを、けさ当該会社の長との話でちらっと出ておりますが、これなども早急な現地調査をさらに綿密にやり、資材の到着状況等によってきまっていくかと思います。
  28. 小柳勇

    小柳勇君 この日本海のまん中の新潟の港にタンカーのこのような事故が発生すると予想して過去四年間防災体制なり救助体制をとられたかどうか、お聞きいたします。
  29. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) きわめて端的に結論だけ申し上げますと、今回のような事故がああいった場所で起こるということは、当初計画というか、想定の上にはございません。したがいまして、資材その他の備蓄、整備等につきましても、今回のような事態を想定してのことは考えておりません。
  30. 小柳勇

    小柳勇君 それでは一般論に入っていきます。  さっき冒頭に申し上げましたように、四十二年の五月の予算委員会運輸大臣はこの問題で三つの柱で答弁されました。まず第一は事故防止対策であります。第二の柱は災害救助対策であります。第三の柱は責任、賠償の問題であります。したがって、この三つの柱について逐次質問してまいります。  まず、それを質問する理由は、四十二年にこれだけはっきり運輸大臣答弁されたのでありますから、これ、四年間に予算をつけて施設を十分にしたならば、いま長官が答弁されたように、新潟にこのような事故が起こると予想しませんでしたというようなことではなかったのではないかという気がいたしますから、同時に四年前で予想できなかった事態が現在起こっておるのではないか。大型タンカーがどんどんできまして、四年前に予想できなかった事態が今度の新潟事件であろうとも思いますから、そういうことを想定しながら、いまから質問いたします。  まず第一の事故防止対策でございますが、この事故防止対策要綱に、航路の指定、航法の指示、それから港長の権限強化という問題がございます。この航路の指定や航法の指示あるいは港長の権限強化についてどのような措置をされておるか、法的措置、あるいは行政命令など、御答弁を願います。
  31. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 航路の措置、あるいは航行規制、いまあげられましたような当時の問題になります交通整理の問題につきましては、これはやはり法的規制を必要といたしますので、通称試案であります海上安全交通法なる法律を制定しなければならない。このことにつきましては、内容、ドラフト等はすでにでき上がっております。現実、これを国会に上程、御審議を願うという段取りまでに至らない、その主たる原因漁業との調整問題である、こういうことでございます。漁業等の調整問題につきましては、ここ両数年来鋭意努力をしてまいっておりますが、このことについてはなかなか現実問題の話がつきにくいという状態でございます。ただ、今回の事故にも徴し、また先般来、地元ではございませんけれども事故というものがやはり出ておる。そしてまた、主として狭水道等が非常に問題が多いということでございますので、ぜひこの法律は制定をしなければならないというふうに痛感をいたしておりまして、先般も運輸大臣の御決意も承っておりますけれども、早急にこれを上程をする、こういうふうに考えて、目下鋭意努力をいたしておるということでございます。   〔理事鬼丸勝之君退席、委員長着席〕 ただ、この法律ができない段階、今日までのところ、やはりこういう交通規制等を法律がないといって全然やらないことはできませんので、この法律の内容をいわゆる行政指導というたてまえで必要な個所に実施をいたしております。たとえば、浦賀水道等におきましては、中央に推薦航路というものを設定をいたし、その推薦航路に沿って、右側航行、一方通行、あるいは速度の制限、あるいは追い越し禁止等々、交通法の中へ盛り込もうと思うような内容を行政指導のたてまえで実施をしてみております。しかし、これはあくまでも行政指導でございますので、違反者等に対しては処罰等の問題はできないということで、これを順守させるに限界を感じておることは事実でございます。浦賀以外の狭水道につきましても、大体同様な措置を行政指導でやっておる、こういう内容でございます。
  32. 小柳勇

    小柳勇君 大臣に質問いたしますが、いまの航行の規制の問題ですけれども、このようにタンカー大型化してまいりますと、たいへんだと思うのです。昨年でしたか、この浦賀水道などを視察いたしましても、しろうとながらわれわれそれを十分感じますが、この航行の規制を厳格にするということで、業界並びに与党の内部にも相当の抵抗があると聞いておりまするが、いま長官が言われたようにやらなければ、また事故が起こりますよ。これは法案もあるようでありますが、早急にこれを国会に出して航行の規制をやる、そして航行の規制を厳格にすると、こういうことをお約束できますか。それは四年前に、当時の大橋運輸大臣が、ここにちゃんと約束してあるわけです、私に、要綱がありますから。これを即刻実施する。しかも、四年たってまだ法律が出てないでしょう。そういうものが新潟に起こりましたが、またあるいは東京湾に起こるかもわからぬでしょう。大臣の見解をお聞きします。
  33. 丹羽喬四郎

    ○国務大臣(丹羽喬四郎君) ただいま小柳先生から、るる今回の事件につきまして御心配をいただきまして、いろいろ御提言をいただきまして、深く責任者といたしまして感謝をしておる次第でございますが、私も就任以来、四十二年の「トリー・キャニオン」でございますか、あの事件直後の小柳さんの御提言、まことにもっともなことであるということで、事務当局を督励している次第でございますが、それを受けまして、四十三年に各地に協議会をつくって、万一事故が起こった場合におきましては各機関が連絡をしてやるというようなこと、あるいは、ただいま保安庁長官から御答弁をいたしましたようないろいろ行政指導はしておりますが、何と申しましても、法律の権限をもちまして規制をするということになりませんと、なかなか強力になりません。それで、どうしても海上安全交通法をぜひ制定をいたしたい。就任以来、直ちにそのことを命じまして、先ほども申しましたとおり、一番の難関は漁業補償の問題にあるということでございますので、農林省と折衝をさしておりまして、ただいま、海上保安庁長官と、そうして水産庁長官、相ともに協議をいたしまして、農林省も非常に前向きの考えでもってやっている次第でございます。ただ、その問題は、具体的内容を申し上げますと、まずとりあえず漁業補償の額も相当に多額にのぼるものでございますから、一番狭水道である浦賀水道だけからでもひとつ取り上げて、順次やるということで、海上安全交通法をまず第一番に通常国会に出すということでやったらどうかということで、ただいま折衝をしている次第でございますが、全体の関係上、瀬戸内、あるいは伊勢湾というようなところもやはり含めて漁業補償の問題は解決をしなくちゃいかぬというような問題で、ただいま折衝が続けられているところでございますが、これはぜひひとつ、ことに委員の皆さま方の御鞭撻をいただきまして、次の通常国会にはぜひ私は出したいと思ってせっかくいま督励をしておるところでございますので、一そうのひとつ御鞭撻をお願いをする次第でございます。
  34. 小柳勇

    小柳勇君 これも四年来の大臣の約束ですから、各省とも連絡をとられて、ひとつ早急に航行規制ができますようにしてください。  それから次は、シーバースを整備して、海上において原油を処理すると言明されておりますが、この四年間の間にどれくらいのシーバースの整備ができましたか、御答弁いただきます。
  35. 見坊力男

    政府委員(見坊力男君) 港湾局長おりませんで、お尋ねのどのくらい整備されたかという点はちょっと答弁できないわけでございますが、湾外シーバースの建設につきましては、自来検討を重ねまして、現在本年度調査費八千五百万円をもちまして調査実施いたしておるところでございます。   〔委員長退席理事鬼丸勝之君着席〕
  36. 小柳勇

    小柳勇君 これはまた専門局長が見えてから答弁いただきましょう。  次は、原油基地の建設のあり方を再検討する、これも基本的な問題ですがね、これは運輸大臣だけではできない問題でありますが、こういう答弁をがちっとしてあります。これは予算委員会ですから総理も通産大臣もおられる前の答弁であります。原油基地の建設のあり方を再検討するということでどのような検討をなされておるか、御答弁いただきます。
  37. 丹羽喬四郎

    ○国務大臣(丹羽喬四郎君) 原油基地の建設のあり方でございますが、この点につきましても、私はシーバースの建設その他にも関連をしてまいると思う次第でございまして、これは今回のこういった油の流出が起こりましたからの問題でございません。私、就任以来そういった点につきまして、港湾の整備、そうしてでき得べくんば湾外にシーバースをつくるということ、そうしてまたこの油送船——タンカーの大きさ等によりましてこれを制限をするというようなことを総合的に考えて、そうして早急にそれらの具体的の計画を樹立するように命じておるところでございます。先ほど見坊審議官から申しました八千数百万円の調査費をとっている。——まあこれはただ東京湾の入り口のところにシーバースを早急につくったらどうかということの一端でございまして、とてもこれらのことでは、まだまだいま油の基地の非常に港湾に多い現状でございまして、とても御指摘がごさいましたような施設の充実、拡充——災害防止のための施設の拡充には役立ちませんので、これは精一ぱいひとつそれらの点につきまして検討させまして、そうして、施設の拡充につとめたいというふうに思っておる次第でございます。具体的の問題になりましたら、ただいま港湾局長を呼んでおりますから、後刻お聞き取り願いたいと思います。
  38. 小柳勇

    小柳勇君 これは局長の問題ではないわけですね。これは運輸省だけでもできない、通産省の問題、経済企画庁の問題がありますから。再度また、これは予算委員会などの問題になりましょうが、運輸省、立体的にひとつ御検討願いたいと思います。  そこで、この事故防止対策の中で私気に食わぬのは、考え方が東京湾、伊勢湾、瀬戸内港、大体三拠点を中心に事故防止対策が考えられているわけです。ここに問題がありはせぬかと思うわけです。たとえば鹿児島の喜入港に大きな基地ができました。ここでは船舶出入は年間おおむね百八十隻、貯蔵能力は十万トン、十八基、たいへんな基地でありますが、こういう基地に対する——基地はこれは大きな湾だからだいじょうぶ、そういうわけにまいりません。あるいは関門海峡などをあの大型タンカーが通っておりますが、近い将来に関門架橋もできます。東京湾、伊勢湾、瀬戸内海だけではなくて、国全体周辺に大型タンカーが立ち寄ることを想定しなければなりません。したがって、事故防止対策を根本的に考え直さなければならぬのではないかと思いますが、大臣いかがですか。
  39. 丹羽喬四郎

    ○国務大臣(丹羽喬四郎君) ただいまの御指摘でございますが、率直に申しまして、そのとおりと私も痛感をした次第でございます。新潟のこういう事件がございまして、まさか新潟のあの地点にこういったことが起こる——まあ確かにいまだこれは原因調査してみませんとわかりませんが、操法その他に非常なあれがございましてこういうことがあった。こういった操法はちょっと予見しなかったというような議論もございますが、結果としてあれだけの油の流出をみて非常に迷惑を及ぼすという点から考えてみますと、やはり日本全体海に囲まれているところでございます。ことに油基地の周辺はよほどこれを気をつけてやってもらわなければならぬと思っている次第でございます。  喜入の基地のところは、これは会社が非常に責任を持って、そうしてあらゆる万一の場合の油濁防止措置、あるいはただいまお話がございましたオイルフェンスの整備の問題とか、あるいはまた油の中和剤の貯蔵の問題とかというのは十分に尽くしている、こういう話でございます。  しからば、社会資本の充実を担当しております私どもといたしましては、その一会社に負けない——負けないというと恐縮でございますが、以上のものをこれからやっていかなくちゃいかぬということを痛感している次第でございます。ことに、率直に申しまして、今回の事件について見ますると、十五メートル、十七メートルの風速の地点では何ら措置ができないということは御承知のとおりでございます。オイルフェンスも役に立たぬ、それから中和剤散布もなかなかできぬ、こういうことでございます。しかし、裏日本におきましては、冬期におきましてはそういったような風速の点がしょっちゅう予見される次第でございまして、それらの点につきまして、それではそういったような万一の場合における油濁防止のための施策をどういうふうにするか、オイルフェンスの高さをどういうふうにするとか、あるいはいろいろの問題があろうかと思う次第でございますが、それらの問題につきまして、まだまだ研究不足の点がある次第でございまして、私どもただいまの御指摘の点を十分踏まえまして、これからできるだけひとつ遺憾なきを期したい、こういうふうに思っている次第でございます。
  40. 小柳勇

    小柳勇君 海運局長質問いたしますが、二十万トン以上の問題はあとでまた論議しますが、たとえば四、五万トンから十四、五万トン平均でしょうが、その大型油送船が日本にいま年間に何隻入ってまいりますか。そして、それを扱っている港は幾つありますか。
  41. 鈴木珊吉

    政府委員鈴木珊吉君) ちょっといま資料手元にございませんので、調べまして御報告申し上げたいと存じます。
  42. 小柳勇

    小柳勇君 それじゃ海上保安庁長官に。関門海峡にもしあのような事故があった場合、あるいは博多湾、二カ所質問しましょう、私はもうよく知っているから。博多湾にあのような事故が起こった場合に救助対策を直ちにとれる資材、消防艇などありますか。
  43. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 前段のお話で、私のところの手元にある資料でお答え申し上げますと、原油タンカーとして入港いたしております隻数、四十五年の四月一日から四十六年の三月三十一日までの間でございますが、東京湾その他全部の港で三千七百五十隻という隻数になっております。入ります港は数を数えますとかなりありますが、これは日本全国の製油所その他タンカーの入る全部の港でございます。五十数港あるかと思っております。  いま御指摘の関門についてでございますが、関門におけるわれわれの消防あるいは油防去の体制というもののとり方といたしまして、保安庁自体としては、いま御指摘の化学消防能力を持った船の配属、それからオイルフェンスあるいは油除去剤、そういったものの備蓄整備、こういうことがございます。それからさらに今回の例にも徴しまして考えておりますが、先ほど大臣の言われましたように、やはりこういった防災関係というのは官民の一体的な体制を考えなければならぬ。その災害の内容にいたしましても、いろんな前提条件で数限りない態様が考えられますので、それらに全部対処できるようなことを国ひとりでやることは私は不可能だと考えるわけで、やはりそれぞれ企業自体も自衛の措置を講ずる、船舶等におきましてもある程度のものは講ずるということでなければなりません。そういう意味で、私どもが現実指導しておりますのは、地方に協議会というものをつくって、そういった官民共同で所要のものの備蓄整備あるいは船艇の配置、配属等を考えていくというシステムを考えておるわけです。  そういった前提でいきますと、いま御指摘の関門については、私ども自体では第七管区本部になりますが、   〔理事鬼丸勝之君退席、委員長着席〕 ここにございますところの化学消火剤、これが一万三千五百リットル、これは化学消防艇に使いますあわを出します消火剤でございます。それから処理剤が三千四百六十六リットル、こういうことになっております。官民で処理剤の合計が七万四千リットル、オイルフェンスが一万四千三百八十五メートル、こういうような体制がとられております。  後段申し上げました協議会というのも、あの地区を中心にして関係の企業を入れた協議会ができております。で、それぞれの企業にもある程度自衛のいま申し上げたような内容のものも整備をしてもらっております。そういうのが関門地区の現状でございます。
  44. 小柳勇

    小柳勇君 災害対策要綱の第二の柱は、いま御答弁ありました災害救助の対策でありますから、その点を重ねて質問いたしますが、現在地方に災害対策の協議会が四十五カ所あるようです。この四十五カ所については、資材もあるいは組織もだいじょうぶと考えておられますか。
  45. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) この協議会の性格は実はきわめて自主的と申しますか、一種のやはり行政指導のもとに地方ごとにつくらせてあるものでございます。その数はいま先生が四十五とおっしゃいましたが、現実いろんな事情がございまして、集約統合の結果四十三という数字になっております、それでこの協議会のメンバーは、いま申し上げましたように地方公共団体、消防、警察、自衛隊、こういった官の立場のほかに、その地元のそれぞれ主要の企業がほとんど網羅的に入っておる、こういうようなメンバーであります。そうしてやります内容は、情報の連絡あるいは事故対策に対する計画の樹立あるいは所要の資材器具の整備あるいは事故対策に関する問題、技術的な事項の調査研究あるいは開発助言、そういったようなことをやっております。さらに実際の事故の際に、それぞれ出て行って協力体制をとるというようなことももちろんあり、それの平常の訓練等もやるということになっております。ただ、これらの動きあるいは資材の整備の現状等を見ますと、これは必ずしも一律ではもちろんございません。地方々々の企業の実勢、その他港湾あるいは船の動き、そういった実勢に合わせるといいますか、そういったばらつきがございます。一律になっておりません。で、その内容も、したがいましてすべて全部が十分だということには考えられません。重点配置といいますか、いまおしかりを受けましたが、東京湾あるいは瀬戸内海、伊勢湾、大阪湾、こういった重点海域につきましては比較的よろしいかと思いますが、それ以外の地域につきましては必ずしも十分ではない、かように考えております。
  46. 小柳勇

    小柳勇君 救難救助体制の強化ということも強く四年前に答弁されていると思うのです。これには当然化学消防艇の問題もありましょうし、油の除去なりあるいはオイルフェンスの問題もありましょう。いまの官民一体になる連絡協議会の組織もありましょう。そういうものを一体として強化しなければなりませんが、この三点の重点的な考えというものをこの際やはり変えて、全国的に機動的に消火体制なり消防体制ができるようにしなければならぬと思うのですが、いかがですか、長官。
  47. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 結論的には先生のおっしゃるとおりだというふうに思うのです。この防災といいますのは、いかなる災害が起こるかというのがなかなか想定がむずかしいので、四囲の情勢、前提の変化に伴っていろいろ検討するわけでございますが、現実起こります内容は、なかなか想定どおりのことが起こり得ない。したがいまして、除去剤一つとりましても、どの地域にどれだけ置いておくことが適正であるかということを確実につかむということがなかなかむずかしゅうございます。それに財政、予算上の制約等もあるというのが現実でございます。そこで従来、私どもは先ほど来申しております、災害の起こる蓋然性の高いところに重点的にこういうものを配備、整備するという方針をとっております。したがいまして、今度の新潟のような地域、その他超重点的な地域以外のところについては、やはりこういったものを機動的に運用するということを考えざるを得ませんし、私どもは、そういう立場で従来とも基本計画をしてきております。その機動力をどういうように発揮するか、こういうことが非常にわれわれとしては重要に考えておるところでありまして、そういう意味での保安庁としての器材の整備等もかねがね予算その他でお願いをし、整備を続けておる次第でございまして、いま御指摘の点につきましては、私どもはやはりそういった機動性で、できるだけ重点的なところに集約をして、それを機動的に使用する、こういう方向が基本的な方向ではないかと考えております。
  48. 小柳勇

    小柳勇君 さっき大臣の御答弁で、鹿児島県の喜入港は民間の会社が非常に協力して救難救助対策に力を入れておられるという御答弁でございましたが、施設は日本石油でございますけれども、国としての対策ですね、海上保安庁として具体的にどのような対策をお立てになっているのですか。
  49. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 喜入につきましては、あそこに私どもの出先としての保安署というのをつくっております。で、ここに配属しております船艇は、CL型「さたかぜ」というのをここに配属をしております。この船につきましては、こういった型における一般的な消防の能力を義務づけさしております。
  50. 小柳勇

    小柳勇君 三十七万トンの「日石丸」など、年間百八十隻も出入りいたしますから、非常に重要な港として救助対策ども御検討願いたいと思います。  次は、第三点の船主責任の問題でありますが、さっき一応の答弁がありました。新潟事件に対する答弁はありましたが、一般的な質問をいたします。  まず、船主責任ということが中心のようでありますが、過失が明らかな場合は、これは当然であります。たとえば、先般来起こりました二十万トン以上のタンカーが三隻も爆発、沈没しております。これはなかなか事故原因がわからないような場面もあろうと思うが、大型になればなるだけ、その損害も大きいから、無過失の賠償責任というものはどのようになっておるか、御答弁願います。
  51. 鈴木珊吉

    政府委員鈴木珊吉君) 実は無過失責任の賠償につきましては、船舶は国際性がございますので、国際機関の場におきまして条約が実は検討されております。これは昭和四十四年でございますが、例の「トリー・キャニオン」号事件以後におきまして、IMCOという国際海事機構の場におきまして船主の無過失責任をきめた徹底的に被害者を救済するという趣旨の条約でございますが、油濁損害に対する民事責任に関する国際条約というのが昭和四十四年の末に採択されました。それで、これに対しまして、さらにそういった場合に、やはり基金が要りますので、この基金——やはりその場合に石油業界も参加いたしまして基金を積む。そういった基金で、そういった場合の補てんを十分に行なうという趣旨で、やはり同じIMCOの場におきまして国際油濁損害補償基金条約というのを現在ちょうどブラッセルで実はやっておりまして、おそらくこれが今回採択される見通しでございます。したがいまして、わが国といたしましては、この二つの条約に対しましては、これは関係省等がございますけれども、御相談申し上げまして、極力これにつきまして今後批准なり、それに伴いまする国内所要の法規の整備ということにつきまして積極的に前向きで取り組んでいきたいというふうに考えております。ところで、これは、実はこれからできるわけでございまして、現在、こういう制度があるわけではございませんで、その間の問題でございますけれども、実は先ほど申しましたように、この二つの条約ができまするまでの間、これもやはり国際的な問題でございますので、世界的にタンカー会社が金を出し合いまして、それでTOVALOPという、これは略称でございますけれども、これは日本語で言いますと、タンカー船主油濁責任自主協定と訳しますんでございますが、略称TOVALOPとわれわれ呼んでおりますが、世界のタンカー業者が自主的にこういう協定を結びまして、ここでやはり分担金を出しまして、お金を積んでおります。これが昭和四十四年の十月から実は設立されまして、わが国の外航タンカー会社全部が入っておりますが、油濁のための除去費用をここで、この基金で補てんをするという機関でございます。さらに、このタンカー業界のみならず、荷主であるところの石油業界自身も、やはり世界的にこういったタンカー事故あるいは災害という問題の重大性にかんがみまして、実は世界の石油会社がやはりこれも自主協定をつくりまして、これはCRISTAL協定というふうにわれわれ略称呼んでおりますのでございますけれども日本語で申しますと、タンカー油濁責任暫定補償協定、こういうのを世界の石油業界会社がやはりお金を積みまして基金をつくりまして、これは本年の四月にできまして、わが国の石油会社も全部これに入っておるのでございます。これは要するに自主的なものでございまして、やはり油濁の事故があった場合に、先ほど申しましたようなPI保険とか、あるいはTOVALOP等によって補てん、補償できないような大きな損害が出た場合に、追加してこのCRISTALという機構が補てんするのだということになっております。これは今回の実は「ジュリアナ」号につきましても、これの荷主でございますシェル興産はこのCRISTALに入っておるそうでございます。かようなことでございまして、要するに先ほど申しました無過失責任の条約ができますまでの間は、PI保険、それからいまいったTOVALOP並びにCRISTALというところでその間つないでいくということでございまして、正しい意味の無過失責任制度は現在あるわけじゃございません。近い将来そういうふうになると思います。
  52. 小柳勇

    小柳勇君 大きな三つの柱についての質問を大約いたしました。あと部分的に二、三質問いたします。  まず、大型タンカーの将来性といいましょうか、いま大型化されました。もう二十万トン以上が通常のようになっておりまするが、タンカー大型化するのがよいという方向で政府は指導しておられるのかどうかお聞きいたします。
  53. 田坂鋭一

    政府委員(田坂鋭一君) タンカー大型化につきましては、わが国の今後の石油に対します需要の増大並びに技術革新、そういうものを考えまして、今後とも石油の海上輸送の増大は進んでいくであろうということでございますので、それを安全にかつ的確に輸送するためには大型化が必要であろう。また大型化をいたしましても、それに対する対処が十分できれば、私どもとしてはそれを助長していくべきであるというふうに考えております。
  54. 森中守義

    ○森中守義君 関連。  いまの船舶局長のお答えに関連をしてちょっとお尋ねしておきたいのは、IMCOで、来年の一月から三万立方メートル以内に被害を押えるように、こういう安全基準をつくる。これは通牒も運輸省受け取っておるでしょう。ところが、大体三万立方メートルに押えるという許容トン数がどの程度であるか、また安全基準というその内容がどういうものなのか、そういう検討が急がれているかどうかということにも関連するし、しかも、そういうことがまだ固まらない間なのか、固まったあとかわかりませんけれども、ごく最近四十七万トンタンカー建造が許可された、こういうことが言われている。したがっていまのお話しですと、安全性が確保されるならば大きいほうがよろしいと、こういう見解のようだけれども、おのずからこれは限界があるのじゃないですか。そこで、三万立方メートルに押えるという許容トン数は何トンぐらいであるか。また、船体の構造をどうすれば安全基準ができ上がるのか、その辺の見解どうですか。そういうことが全然検討されないで、一口に安全性が確保されるならば、大きいほうがよろしいということでは、やはりこういう問題を繰り返す。この点どうなんですか。
  55. 田坂鋭一

    政府委員(田坂鋭一君) まず最初に、安全性が確保されるならばということを申し上げましたその点につきましてでございますが、今後の大型化につきましては、昨年の七月に運輸技術審議会に対しまして、今後のタンカー大型化につきまして検討をするという趣旨から、百万トンタンカー建造上の問題点につきまして御検討願うために御諮問をいたしております。その場におきまして、今後十分安全性を主体にいたしまして検討されていくと存じますし、私どももそういうふうに事務的にも進めていきたいというふうに考えておる次第でございます。  次に、IMCOにおきますタンク・サイズの規制でございますが、これは二つの段階がいまございます。と申し上げますのは、第一には、昨年の十月にIMCOにおきます第二十二回海上安全委員会がございまして、この場におきまして当面のタンカーのタンク・サイズの規制につきまして勧告が出ております。これはタンカーのそれぞれのタンクを、中央とそれから船側と分けまして、中央のタンクにつきましては五万立方メートル以下、船側につきましては三万立方メートル以下というふうな勧告が出ております。これが現行のタンク・サイズの規制でございます。  それから今年の十月にIMCOの第七回の総会がございまして、この総会におきまして一九五四年の油による海水の汚濁防止のための国際条約の一部を改正いたしまして、タンク・サイズを規制していくということがきまりました。その内容は、タンカーの衝突並びに座礁、こういう場合に対しまして、油の流出いたします量を想定し、その油の量を三万立方メートルか、または四百掛けるデッドウエートの立方根のいずれか大きいほう以下にするということでございます。これの適用は来年の一月一日以降に契約がなされる船ということになっております。まあ、タンカーのタンク・サイズの規制はそういうことでございますが、この規制とタンカー大型化関係でございますが、三万立方メートルといたしますと、従前いわれておりましたのは、現在つくられておりますような二十六、七万デッドウエートトンのタンカー、これぐらいが最も経済的によろしいところであるということでございますが、今後、先生もおっしゃいましたような構造的な問題、そういう問題の技術的開発によりまして、このまた四百掛けるデッドウエートの立方根という数字が入りました。これらタンカーの大きさに従ったタンク・サイズの規制という思想が入ったわけでございますが、これらを加味して考えますと、今後の技術開発によりましてある程度の大型化は相当可能であるというふうに考えております。
  56. 森中守義

    ○森中守義君 ちょっと委員長。わかりましたが、まあ一月以降の契約分からということで、あながち四十七万トンを許可をされたことをとやかく言いませんがね。いま局長の言われるその審議会の諮問という問題、これは運輸省の独自な立場で安全性を諮問されたのか、あるいはIMCOの勧告に基づいたものを内容として、安全基準はどうだろうという諮問なのか、その辺はどうなんですか。
  57. 田坂鋭一

    政府委員(田坂鋭一君) この諮問は独自の立場で出したわけでありますが、その後IMCOのタンク・サイズの規制の問題もだんだん終結といいますか、結論が出てくるというような状態でありましたので、この結論が出るまでしばらく審議は待っておった事情はございます。  それからこの諮問の内容でございますが、これは安全性を一番重点に考えてはおりますが、その他建造設備の問題あるいは港湾設備の問題、そういうものまでも含めて考えていくということでございます。
  58. 森中守義

    ○森中守義君 もう一つ。そうしますと、その答申がいつになるかわかりませんけれども、事はきわめて重大、しかも、今回のような事件が再発しないという保証はどこにもありませんからね。そこで、そういう答申が出て、船体の構造などを中心に極力防止できると、安全性が確保されるという一つの答えが出されるまで新たな建造計画というものを中止する、こういう考えはお持ちじゃありませんか、持てませんか。
  59. 田坂鋭一

    政府委員(田坂鋭一君) 船舶の、まあ釈迦に説法になるかもしれませんが、船舶の安全につきましては、船体の構造といいますか、設備といいますか、そういうものと、それからこれを運航いたします船舶乗り組み員の技術、そういうものの相関におきまして安全性は確保されるというふうに私ども考えております。そこで、それらの関連を考えながら、いろいろ船舶の運航熟練技術者の問題もございましょうし、いろいろな問題がございますので、直ちに大型化をいまの段階でとめてしまうというふうなことは御答弁いたしかねると考えております。
  60. 森中守義

    ○森中守義君 それから関連でまことに恐縮ですが、海上保安庁長官、先ほど小柳君への答弁の中で外船の入港等に対する検査の問題、これは手続によってできると、こういうことのようでしたが、確かにできるようですね。そこで、画一的にどれもこれもということは国際的な問題としていろいろむずかしい問題はあるでしょうが、少なくともこの形式のタンカーについてはやや構造上あぶないとか大体見当がつくのじゃないか、過去の事故の実績からしますとね。そういうものには進んでこれは立ち入り検査を恒常的に、計画的にやったほうがいいと思うのですけれども、そういう見解をお持ちじゃありませんか。
  61. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 今度の事故に徴しての問題としまして、非常に船が古い、あるいは建造上問題があるというようなことにでも考えられることになりますと、まあおっしゃるようなことは一つの防災上重要なことであろうと考えます。ただ、今度のような事故が、まあ原因目下調査中でございますが、そういった純粋な構造という以外にいろいろ理由はあるかとも思います。そういう面からいまの立ち入りによる調査ということが有益であるかどうかということは、これはまた考えなければならぬ、これは当然のことだと思います。したがって、構造上これは非常な問題だということになりますと、私どもはやはりそういうことを徹底的にきわめたいという気持ちはございますので、とり得る手段はすべてこれをとって調査をいたしたい、かように考えます。
  62. 小柳勇

    小柳勇君 最後の質問水産庁長官にいたしますが、二つあります。  一つは、現在の新潟事故に対して水産庁としてどのような調査対策をとっておられるか、これが一つであります。  もう一つは、一般的に大型タンカーが破損して油が流れ出た場合に、水産資源あるいは漁業権など量的、質的、あるいは時間的な損害について実験などされておるかどうか、その実態について御報告願います。  以上二点。
  63. 太田康二

    政府委員(太田康二君) 私ども公害の担当の調査官がおりますので、昨日、調査官現地に派遣いたしまして、それぞれ関係方面に出向きまして、被害状況調査に当たらせております。いままでの報告によりますと、まだ被害金額がどうであるか、被害の実態等についてはまだ十分わかっていないようでありますが、中間的な報告でございますけれども、現時点での関係漁場は一応組合関係で九組合、関係の漁民が約一千名であろうと、なお油が県北部に広がった場合には二十一組合、約三千名に及ぶということをいっております。なお、本日現地におきまして関係者が集まりまして対策の、何と申しますか、相談もいたしておるようでございますので、当然これに出席いたしまして、十分実態把握等につとめてまいるだろうと思っております。それ以外に、たまたま私のほうの日本海区水産研究所が新潟にございますので、これらの機関も動員いたしまして、中和剤使用等につきましては指導に当たらせたい、また、現にそういう指導に当たっているというふうに報告を受けております。まことに残念でございますが、現段階におきまして、私どもの承知いたしておる、まあ現地に派遣いたしました調査官からの報告は、以上申し上げたとおりでございます。  それから、最近におきまして、先生御指摘のように、公害——タンカー等の油による漁業被害というものが、まあ今回を含めてでございますが、あることは事実でございます。しかし、油による一般的な漁業被害といたしましては、今回のように原因がはっきりいたしておるものと、はっきりいたしていないものもあるわけでございますけれども、われわれの基本的な考え方といたしましては、はっきりいたしましておるものにつきましては、これは当然、原因者に対しまして民事上の救済というような形で問題の解決がはかられるだろうと思っております。しかし、はっきりいたさないものがあるわけでございますから、私のほうの基本的な姿勢といたしましては、まあ先般国会で御審議いただきました公害の諸立法の厳正な運用によりまして、油の海洋投棄等の監視、あるいは取り締まり体制の強化等を海上保安庁等にお願いをいたしまして、こういった事故のないようなことを実は要請をいたしまして、事故の発生の防止につとめてまいりたいと、かように考えております。  それから、具体的な事例といたしまして、先般、たしか和歌山県で、やはりタンカーによる油の流出の問題がございましたが、この場合にはノリの養殖漁場でございまして、被害の確認が非常にはっきりできましたので、県が間に入りまして被害を出した者と被害漁業者との間で円満に解決したというような事例も聞いております。しかし、今回の新潟県の場合のように、この地域におきましては、私ども調査ではサケの定置網、それ以外に刺し網とか、地びきとか、カニかご、板びき、それから落とし網、それに小型底びきというような漁業がこの地域で行なわれておりますので、これらが一体どういう被害を受けたか。なお、中和剤使用によりましても、実はこれによる漁業被害というようなこともございますし、特に沈降性の中和剤等を使いますと、また海底に影響を与える。そういった間接的な被害もございますので、これらを的確に把握することはたいへん困難でございますが、私どもといたしましても、十分現地等につきまして実情調査の上被害額の確定、こういったものにこれから全力をあげてまいりたい、かように考えております。
  64. 木村睦男

    委員長木村睦男君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  65. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 速記を起こして。  本件に関する質疑は後刻に譲ることにいたします。     —————————————
  66. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 次に、当面の海運及び造船の諸問題に関する件について調査を行ないます。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。本日は、御多忙中本委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。本日の議事でございますが、議事の都合もございますので、直ちに参考人に対する質疑に入り、委員からの質疑に対し、お答えまたは御所見等を承りたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。  それでは、これより参考人に対する質疑を行ないます。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  67. 小柳勇

    小柳勇君 日本造船工業会会長古賀さんに質問いたします。私は、ここに、八月に工業会で声明されました「造船業界の考え」という書面を持っております。この中に二つの、政府に対する要求が出されておりますが、一つは、「政府および日本銀行当局の言明を信じ、円の切上げは行なわれないものと考える」、二つ「もし、上記に反して、円の切上げが行なわれる場合には、造船業界が保有している外貨建て債権(約二兆円)から生じる為替損失は、国によって全面的に補償されるべきである」と、こういうような国に対する要請が出ておりますが、これはまあ八月のことであります。現状は相当円切り上げ問題は進展いたしておりますが、たとえば——たとえばの話であります。いまの段階では、とうてい円の切り上げがないということは私ども考えません。一五%、円の切り上げがあったとする場合には、国によって全面的に補償されるべきであるとおっしゃる為替損失についてはどのようにお考えであるか、お聞きいたします。
  68. 古賀繁一

    参考人古賀繁一君) 八月二十七日現在の外貨建て債権は、造船工業会傘下の全企業の分を集計いたしますと、まるまる損失を受けるものが一兆五千六百十一億円ございます。それから一部差損を受けるもの、これは五%ぐらいまでは船主が持ってくれるとか、七%ぐらいまでは船主が持ってくれると、そういう契約になっております。それ以上は造船所が持たなくちゃいかぬ、それが三千三百二十九億円ございます。合計一兆八千九百四十億円ございます。したがいまして、もし、これがいまおっしゃいましたとおりに、一五%切り上げになりました場合に、その為替差損は二千六百七十五億円となります。これは造船会社全体の六期分、すなわち三年分の経常利益に相当いたします。  以上でございます。
  69. 小柳勇

    小柳勇君 次は、船主協会の福田会長に承ります。いまと同じ問題でございますが、ここに船主協会がお出しになりました政府に対する損害補償訴えがございます。いまと同じ一五%切り上がったといたしましたならばどのくらいの数字をお考えでございますか。
  70. 福田久雄

    参考人福田久雄君) ドル建て運賃でございますが、これにつきまして輸入物資に対する運賃とそれから輸出に対する運賃と二通りあるんでございます。それで輸入に対する運賃といたしましては、当時、計画造船その他によってつくりました長期張りつけの船を鉄鋼メーカーなりあるいは石油メーカーに提供いたしております。これがそれぞれ七年、八年という長期にわたって運賃をドル建てで契約いたしまして、それによって財政投融資による、その他協調融資による資金が出ておるわけでございます。それがすべて三百六十円あるいは三百五十八円ぐらいの、三百六十円内外で計算されたものであって、ドル建てにはなっておりますが、事実はそれを円に換算したものですべて採算ができておるわけです。その運賃を集計いたしますと、八月の当時で約二兆三千億円という数字になるわけなんです。このうちやはり荷主とのいろいろ特約条項がありまして、為替が変わった場合にはある程度それが変更に応ずるというような条項というものもありますし、厳密に申しましてどうしても為替差損の影響を受けるのがそのうちの一兆円、したがって一兆円が、もしいまお話しのように一五%切り上げられるということになれば、長期にわたって千五百億の為替差損をこうむるわけなんです。これが大量の輸入物資に対する長期張りつけ船の為替差損でございます。一方、その輸出のほう、あるいは長期張りつけ船以外の海運収入というものが大体年間八千億ぐらいございます。この八千億のうちの約半分の四千億は、これはイギリスとかアメリカとか、現場における港湾費用その他のあれで、ドルであるいはポンドで支払われるものでございますから、その差し引いた残りの半分つまり四千億が為替差損をこうむるということになるわけです。したがって、この四千億を一五%切り上げられると、やはり六百億ということになるわけなんです。それを長期にならしてみますと、大体いまのあれで毎年七百五十億ぐらいの差損をこうむるべかりしだったわけでございます。  しかし、当時、政府に対して船主協会からわれわれ補償をお願いしたいということは、いまお話のありましたとおり、われわれがこの契約をやってきたときは、円の切り上げその他の変動はないものとして計算してあったわけなんでして、われわれの予期せざるこういうことがこうむる差損については政府で見ていただきたいということを、造船工業会と同じようなあれでお願いしたんです。しかし、そのときに私から申し上げましたことは、荷主にお願いして、そして荷主のほうから、もしその情勢において為替差損の負担に応ずるというような場合は、これは極力業界としましても努力いたします、したがって、もしその努力をいたしました結果どうしてもその為替差損をこうむらざるを得ないものについては、もし直接補償が非常にむずかしければ税制その他の点で見ていただきたいということを申し上げまして、その後せっかく——私ちょうどいま船主協会の副会長をやっておりますが、一方、輸入物資の輸送協議会の会長をやっておる者です。それがやはり管掌する仕事でございますので、鉄鋼連盟あるいは石油連盟あるいは木材協会その他にお願いしまして、こういう事情になったのだから、ひとつ為替の、つまりいまの長期張りつけのものにつきましては契約の当初にさかのぼってひとつ三百六十円でお願いしたいということをお願いいたしまして、まあ非常に荷主の各位におかれても理解と認識を示していただいて、大体それは三百六十円ないしそれに近いものでそれじゃ見ようということに大体話がまとまりそうなんでございます。そうなりますと、もうそのほかにいろいろありますから、外国用船しておった結果これは適用されないというようなことで直接為替差損を受けるものもありますが、大きなものは輸入物資に関する限りは政府にごめんどうをかけなくても済むんじゃないかというような情勢にあるわけでございます。  一方、輸出の荷物に対する運賃につきましては、これも御承知のように各運賃同盟が——たとえば欧州同盟とかニューヨーク同盟とかありますが、これにつきまして、いま、九月三十日現在では、当時三百三十四円になりました。その三百三十四円で換算しましてその差額が出ます、三百六十円との。その差額を、やはり一トンにつき三十ドルとか五十ドルというものに対して何%というその計算を出しまして——もちろんこの中で、先ほどお話ししましたように外国で支払うべき費用は、これは影響を受けないわけです。それだけ差し引きまして、荷主の納得を得て、各同盟に対して、たとえば五%あるいは六%という為替サーチャージという形でいま取り立てております。したがって、これが最初六%くらいから入りまして、それがずっとだんだん円のあれが強くなりますと、そのサーチャージというものが六%になり七%になると——航路によって多少違います。そういうことで為替差損の影響をわれわれ自主的に何とか解決したいということで、いませっかくやっております。そういうことでございますので、造船のほうはちょっと趣が違うんでございます。
  71. 小柳勇

    小柳勇君 現状についてはわかりましたが、将来のことを少しお聞かせ願いたいと思うんですが、アメリカのドル防衛宣言による——もちろんこれはアメリカの不況でありまするが、そのアメリカの不況及びドル圏域内の不況などによります日本海運業のこれからの不況といいましょうか収入減といいましょうか、そういうものについて、それは短期、長期ありましょうけれども、これからわれわれ予算編成しなきゃなりませんのでありますが、一年か二年ですね、そういうものをどのようにお見通しであろうかということについて、まず海運界のほうからお話し願いたいと思います。
  72. 福田久雄

    参考人福田久雄君) これはいま非常に海運界が景気が悪いのは三つ、つまり三重苦を受けたわけです。これから話しますとよくわかるのですが、まず第一に、去年の秋ぐらいから世界の不定期船の海運市況が悪くなりまして——これには鉄の生産減とかいろいろな影響が原因になっておるのですけれども、非常にまあ不定期船のほうはタンカーにしろあるいは一般ドライカーゴーにしろ悪くなっておった。そこへもってきて日本海運界が非常に大きな影響を受けたのは、御承知のアメリカ太平洋岸における三カ月にわたるストですね、これは全部の船会社じゃありませんが、大手の船会社はコンテナその他によってショックを受けまして相当の被害をこうむったわけです。そこへ八月十五日のドル・ショック、ニクソンのドル声明によって、ドル防衛によってきたあのショックですね。そういうように非常にまあ三つのあれでたいへんなことになっておるんですが、この円が、しからばどれくらい切り上がるかということは、われわれとして非常に関心の深いところなんで、これが六%になるかあるいは一五%になるかによりまして日本の輸出貿易のやはり国際競争力がそれだけ低下するわけですね。  で、もちろん海運そのものも国際競争力の低下というものには例外じゃありませんが、まず第一に輸出貿易なんかについては、商品によりましては、西独あるいは欧州のものと競争するという場合に、やはり先方が、いまお話しのように一五%切り上げればいいですが、日本は一五%、あるいはドイツは一〇%でいいというようなことになれば、そこにたちまち五%のあれがありまして、今後日本の貿易がいままでのような伸び率を示すかどらか、あるいはそんなにすぐに正常に返らないかどうかということが非常に見通し難です。いまの現状を申し上げますと、大体十二月まではすでに船の輸送の商品というものは先物先物を契約していますから、いま大体においてこの年末ぐらいまではどうにか荷物には不自由しないだろう。しかし問題は一月−三月あるいはその後の世界の貿易、日本から出る輸出貿易というものがどういうようになるかということによって、非常に影響するわけです。いまのところわれわれのほらは、来年の三月期における決算見通しについてはまあちょっと見通し難というのが実情でございます。しかし、これは輸入につきましては、それだけ円が上がれば輸入は安くなるわけですから、普通にいけば輸入は大いに助長しなければならぬ。われわれとしましても、船の荷物というものは往航だけではありません。帰りもありますから、その輸入が非常にこれからまあ増加するであろうということに対して船会社としては期待を持っておるわけなんです。しかし、そういうぐあいで長期に見ますと、私はこの貿易もだんだん、きまりますれば、日本の力、努力でもってある程度回復するんじゃないかと思いますが、一番困るのは、これはいろいろ政府の御施策もあるんでしょうが、一体、幾らになるのか、変動制をとって一体どのぐらいに落ちつくかということは、非常にこれは貿易のほらも、われわれとしても迷うわけなんですね。だから、これが大体最近の情勢では、何か一つのめどがつくということになれば、それからまあわれわれは必死になって努力すれば、ある程度回復すると思うんですが、やはり一番大きな影響を受けるのは鉄鋼の減産ですね。鉄鋼は、御承知のように、ことし普通でいけば粗鋼ベースで一億トン近いものがあり得べかりしが、もうだいぶ生産減、鉄鋼が減ればそれをつくる輸入する鉱石、それから石炭も減る。で、まあこれを製造する電力もそれだけ要らなくなるわけです。そういうことから石油も、したがって減るということになりまして、その点を非常に心配しておるんでございます。で、まあ不況がどれぐらい続くかということですが、これは私の個人的な意見ですが、大体まあ二年ぐらいずっとアップしないということになって、覚悟すれば、それから先はあるいは日本の努力によってそれより早く回復するんじゃないかと思います。  ここでひとつせっかく先生から御質問がありました、お願いしたいことは、そういうぐあいで、円が切り上がることによって一番、船のほうとして影響を受けるのは、これからつくる船の船価がやはりそれだけ高くつく、ドルとかあるいはポンドと比べまして高くつく、これがやはり世界の日本船の競争力に非常に影響するわけです。それで、いま申し上げた鉄の運賃換算なんかについては、鉄鋼連盟のほうから非常に理解ある方針が示されたのですが、その条件前提としては、これからやはりわれわれとしては日本船を使っていきたいということであるが、しかし、円の切り上げによって競争力が落ちるということは、非常にわれわれ日本船を使っていきたくてもいけないから、その点についてひとつ政府にお願いしてもらいたいということが——これは当然、そういう荷主のほうから要望がなくとも、われわれからお願いすべき筋合いのものでございますが、これは今後の海運政策について、ひとつぜひ国際競争力の低下を補う施策を海運政策でとっていただきたい、こういうことでございます。
  73. 小柳勇

    小柳勇君 最後でありますが、古賀さんにひとつ。これはいまのドルショック及びこれから——いま海運のほうで二年間くらいの不況と言われましたが、そのために起こる下請企業の影響ですね、下請に対する影響、したがって、さいぜん質問いたしました造船工業会の政府に対する要求もございますが、まとめて、業界としてはこれこれの対策をやるから政府はこれこれせい、こういうことについての御意見を聞きたいと思います。
  74. 古賀繁一

    参考人古賀繁一君) ドル・ショック並びに国内不況のために最近輸出船はほとんど商談がございません。停滞いたしております。それから国内船につきましては、先ほど福田さんから御説明がありましたとおりに、鉄関係の生産のスローダウン、それから石油の輸入量の減少、そういうことを反映いたしまして、二十八次の計画造船——これは四十七年度予算の計画造船でございますが、それでも、この船台予約いたしておりました船が七、八十万総トンキャンセルになりました。それから四十八年度予算で計画される二十九次の計画造船、これはいまのところ百二十万総トンくらい船台予約がキャンセルされております。それは製鉄所から船会社が積み荷をもらう予定になっておりましたのが、製鉄所が取り消されましたので、それが即造船所の船台予約キャンセルということになってまいっております。それは船会社だけでなくして、商社関係もそういう若干の船台予約がございます。それ全部合わせますと、二十八次、二十九次合わせておおむね三百万総トンの船台のキャンセルが国内船で出ております。三百万総トンといいますと、去年の計画造船が三百万総トンでございますか、来年が三百三十万——ちょっと三十万ずつ違うかもしれませんけれども、一年間の計画造船が三百三十万とか三百六十万総トンとかいうのが最近の実情でございます。そのくらい、一年分ぐらいが国内船でキャンセルを受けている、そういう非常な大打撃をこうむっております。  輸出船につきましては、いまほとんど商談がございませんが、大きな造船所は今後二年ないし二年半分ぐらい注文を持っております。小さい船をやっております造船所はまあ一年分ぐらい、あるいは、いいところで一年半分ぐらいの注文を持っております。いますぐに造船所自身が非常に仕事量不足で困る。また、すぐにはなりませんけれども、中小の造船所におきましては来年の半ばくらいから非常にお困りになるのじゃないかと考えております。  それから御承知のとおりに、造船所というのは、船をつくります仕事を造船所自身でやっておりますのは二割から二割五分くらいの程度でありまして、あとの七割五分ないし八割は、材料を買ったり、それから関連企業に依存したり、あるいは構内での下請企業に依存したりしておりまして、たとえば百億いたします船でも、その四分の一程度を造船所がやっておりまして、四分の三は関連企業の仕事になるわけであります。それで、造船所がひまになってまいりますと、造船所自身の約三倍の協力をしていただいております関連企業に大きな打撃が出てくる。特に造船所は強い組合を持っておりまして、なかなか残業時間を減らすとか、あるいは人減らしをするとかいうことは困難な事情にありますので、どうしてもすそ野の関連方面に大きなしわ寄せがいく。しかも造船所自身は四分の一、それから関連企業が四分の三と、そういうふうに一対三、外部に影響するものが造船所の三倍の範囲あるんで、造船所は大きな企業、中小企業とございまして、目に見える造船所はちゃんとしておるような姿でございますけれども、それを取り巻くすそ野の四分の三が、不景気になりますと非常な打撃をこうむる。それからなお、京浜、阪神方面におきましては、そんなにまでは単独での影響力はございませんけれども、地方の造船所におきましては、その造船所の繁閑がその地域の経済に著しい影響を与えるものでございまして、造船所がひまになりますと、造船工場だけでなくして、その地域が火の消えたようになるのがいままでの実情でございますので、もし円の切り上げ幅が、さっき御質問にございましたような大きな幅でございましたら、その差損はとんでもない大きな差損でございます。それから国内の新造船の需要がうんと減ってまいっております時期でもあります上に、輸出競争力がぐっと下がってまいりまして、とうてい欧州に対抗できない時代になると思いますので、当面、若干の手持ちはありますが、その先のことを考えますと、ほんとうに身ぶるいするような、おそろしい気持ちがするのであります。為替差損につきましても、それから切り上げ幅の過大でないように御配慮いただくことにつきましても、業界としては非常に強い関心を持っております。何ぶんとも諸先生方の御高配を特にお願い申し上げたいと思う次第でございます。  終わります。
  75. 小柳勇

    小柳勇君 ほかの人が質問があるかと思って遠慮いたしましたが、せっかくですから工業会の古賀さんに。  いままでは大型タンカーの破損の問題を論議しておったんであります。したがって、いまタンカーが、運輸省は四十七万トンタンカー建造を認可したようでありますが、もちろん経済性を考慮しての造船あるいは海運両方の希望でありましょうが、現在の日本のシーバースなり港湾施設を考えまして、一体どういうところが一番いいのかというところが私どもとしては問題にしているわけです。ただ、大きいだけでは、あとシーバースの問題なり陸上輸送なり、この基地から供給地までの問題もありますから、そういう問題もいろいろ頭の中にあるわけでありまするが、どちらでもかまいません、専門的に、四十七万トンタンカー一つここにできまして、これからなお大型の方向を皆さん期待しておられるのかどうか、そういう点について、まずひとつ海運のほうから聞きましょうか。
  76. 福田久雄

    参考人福田久雄君) これはやはり海運界でもいろいろ意見がありまして、もちろん大型になるというねらいは経済的効果をまずねらって一トン当たりの運賃を下げるというところにあるだろうと思いますが、しかし、それにつれてシーバースあるいはまず陸上の貯油の問題があります。で、これはそう大きなタンカーで一度に運んできても、それを揚げる貯油の施設というものに相当にかかるものであるから、なかなかそう大型までいかないのだというようなメージャー・オイルの考え方もありまして、そう百万トンそれじゃすぐできるかということじゃないんです。で、われわれ海運業界としましては、まず第一に考えることは、船の大型化によって起こるかもしれないという安全性の問題ですね。安全性に第一義を置きまして、そしてさらにそれと均衡して経済性、経済効果が発揮できるかどうかということ。それからやはり航路によりまして、御承知のようにペルシャ湾から持ってくるとしましても、四十万トン、四十七万トンになれば、もちろんマラッカ海峡は通れません。そうすると、ロンボックを回らなければならぬ。そこに起こるやはり航海日数の増加その他による経済的な運営というようなもの、いろいろ考えまして、なかなかいかないんですが、やはりいまのところ大体二十三万トンから二十七万トンぐらいで一ぺんそろえたいというのが外国のあるメージャーの考え方だったのですが、しかし一部に、やはりそういう大型の四十七万トンでも造船技術からいっても安全にできるのだということになれば、競争上やはりそういうところも出てくると思うのですが、しかし航海する通路にもよりまして、なかなかどこでもそれが配船できるというものじゃありません。それから、日本へ持ってきましても、お話しありましたようなシーバースその他によって揚げ場所が違っておりますから、そうむやみやたらに大きくなる、大きくなればなるほど経済的な効果があがる、それに安全性もある程度保持できるというようなものじゃありませんで、やはりこれはそう急にどんどん百万トンドッグ——これはまあ造船業界の御意見も聞いていただけばわかりますが、私としては、そう突拍手もなく大きくどんどんそれがふえるというものではないと思うのです。いま現にわれわれに要請があるのは、大体二十三万トンから二十七、八万トン、三十万トン前後で、そういうものが日本のつくるタンカーとしては多いのじゃないかと思います。
  77. 小柳勇

    小柳勇君 造船のほうで何か問題ございませんか。
  78. 古賀繁一

    参考人古賀繁一君) 戦前はタンカーと申しますと一万トン前後のデッドウエートでございましたです。戦後どんどん大きくなってまいりまして、いまのお話のとおりに四十七万トンのタンカーがすでに建造中でございます。これに関しましては、運輸省でも非常に慎重を期されまして、学識経験者、実務家、そういう者の意見を十分徴して、その上で、だいじょうぶだということで許可になったと承っております。それで、まあ世界の経済が年々大きくなっていきます、五年くらいすると倍くらいになる、十年くらいすると三倍、三倍半になるというふうな姿でございますので、将来船がどの辺まで大きくなるかということは軽々に断じにくいと思うのでございますけれども、私たち十年くらい前までは十五万トンのタンカー、その辺が行きどまりじゃないか、十万トンぐらいかなあと、私、船大工でございますが、そういう判断をしておったのでありますけれども、どんどんどんどん大きくなりまして、三十二万五千トンというのがもうたくさん就航いたしております。三十七万トンがこの間就航したという状態でございますから、どこまでどうなるか軽々に言いにくいと考えております。しかし、そういう世界経済の要請並びに海運業からの要請がいつありましても、それにこたえ得るように、造船業界としては早手回しにいろんな研究もする、調査もする、必要あれば実験もやるということで、要請が出たときに、日本造船ではだめですというふうなことなく、要請に完全にこたえ得るように絶えず研さんを重ね、勉強を続けておくということが一番大事だ、そういう観点に立ちまして、運輸省御当局の御指導のもと、世界におくれをとらないように勉強を続けているというのが実情でございます。
  79. 森中守義

    ○森中守義君 ちょっと私からも二、三問お伺いいたします。  古賀参考人にお尋ねいたしますが、現行の新海運政策として二千五十万トンということがすでに建造計画として進んでおる。そこで、さっきのお答えによりますと、大体外船の受注はそうたいして心配はないというお話がございました。どうなんでございますか、新海運政策ということを、二千五十万トン計画建造ということを基調に置きながら、このままの状態で業界としては進んでもよろしいというお考えなのか、あるいは若干の手直しをしなければならぬというお考えなのか、この辺の御見解はどうでございますか。
  80. 古賀繁一

    参考人古賀繁一君) いまの御質問に、外船のほうはだいじょうぶだと——これは輸出船のことと存じますけれども、輸出船が非常に心配なんでございます。大きなタンカーは若干まだ需要があるかもしれませんけれども、それ以外の船では、もう輸出船の商談はいまばったりとまってしまっておりまして、輸出船が非常に心配でございます。その上に、六カ年間に二千五十万総トンの計画造船をやろうということでお始めになった分のうちの二十八次と二十九次では、もう計画どおりにいきにくいような実態があらわれてきておるということでございます。
  81. 森中守義

    ○森中守義君 結果的には、やはり計画建造というのはかなり手直しを必要とするというお考えですね。
  82. 古賀繁一

    参考人古賀繁一君) そうなるんじゃないかと推察いたしておるんでございますけれども……。
  83. 森中守義

    ○森中守義君 それから、あまり建造専門的なことはよくわかりませんが、当時、たしかILOの九十八号かあるいは百五号であったかと思うんですが、船内の居住等に関する勧告が出ておりましたね。こういうものは建造の中には、計画上の実施部門の中には当然生かされているんですか。
  84. 古賀繁一

    参考人古賀繁一君) 私、正確に存じませんが、日本立場としては、そういうものは完全に守って誠実にやっておるというのが実情でございます。
  85. 森中守義

    ○森中守義君 実は当時のこの委員会の質疑の中で、運輸省のほうでは当然なこととして、水産庁が所管をする漁船は別だ、しかし運輸省所管のものについてはILOの問題は完全に実施していく、こういう答弁があったんです。  そこで、今回のタンカー事件に関連しまして質問いたしますが、せんだってIMCOのほうで、三万立方メートル以上は被害が及ばないようにする、そのワク内に封じ込めるという勧告が行なわれた。で、これが一月以降実施に移されるということで新しい建造体制に入っているわけです。そうなると、当然船体の構造ということがかなり大きな変化を伴ってくるのじゃないか、そういう際にILOの船内設備の基準等が相当大幅な影響を及ぼすのじゃないか、こういうふうにしろうと判断で思うわけですが、その辺のことは、おわかりになっている範囲でけっこうでございますが、どうお考えでありますか。
  86. 古賀繁一

    参考人古賀繁一君) IMCOのタンク・サイズ、大きさでございますね。油タンクの大きさ、それから事故があった場合に油が流れ出る量を合理的な範囲に規制しよう、これがIMCOの制限でございますのですが、それはおっしゃったとおりに、来年の初めから契約される船については、IMCOの去る十月決定されました制限どおりにしかと順守してやるようにということが運輸省の示達でございまして、造船工業会もそれを受けてそのようにいたすことにしております。  IMCOの規定というのは、船の鋼鉄でつくりましたタンクの大きさをあまり大きくせずに適当な大きさにしろという規定でございまして、居住区分の規定とは全然関係ございません。
  87. 森中守義

    ○森中守義君 福田参考人に一、二点お尋ねいたします。  大体海運界から見られるこれからの貿易収支、これに対応する対策ですね。ことに、先般のアメリカの港湾ストライキの場合かなり航空に依存したのが非常に多い。正確な数字を持っておりませんが、おそらく全体の三〇%ぐらいのシェアを航空に依存したのじゃないか、こう思うのです。そうなると、このことがストライキという特殊な現象によって行なわれたにしても、将来、速さとかあるいは量とか、こういうことから、航空産業がだんだん大型化していけば、かなり海から空に移行する可能性が十分あるのじゃないか、こういう見解を持つのです。そうなりますと、当面しておる日本の貿易収支の問題並びに輸送手段の問題からしまして、海運界としては非常に大きな変化がおとずれてくるのじゃないか、こういう見解を持つのですけれども、そういう将来の展望はどういうふうにお考えでございましょうか。
  88. 福田久雄

    参考人福田久雄君) 大体四十五年度で輸入の物資が五億トンぐらい日本に入っているわけですね。ここにあれがありますが、輸出が約四千万トン。大体そういうような比率できておるのですが、航空ももちろん速度も速いし、型も大型になりますから、運賃が非常に高く商品の値段が上がっても、しかも早く向こうへ送着することが必要だとかなんとかというものは一部取られると思いますけれども、いまの情勢からいくと、世界の貿易が、海運の運んでいる輸出品なら輸出品が航空が取ってかわるということはなかなかそう容易に実現しないんじゃないか。それからコストそのものからいいましても、まだやはり航空貨物の運賃が安くなりましても船には対抗できません。そういうことから、いま、たとえばこの十二月から日本で始めようとしています欧州行きのコンテナボートですね、これは日本と欧州の間を二十二日ぐらいで結ぼうという非常に速い船で、もちろんコストも高くつきますが、そういうことによってターンを早くし、で、コンテナによって早くやろうと。それからもう一つ、来年の八月ごろからまたニューヨーク船が始まりますが、このニューヨーク船もやはり横浜からニューヨークまでを約十七日ぐらいで運ぼうということになりますと、いままでのような二十八日も一カ月もかかるのと違って、そんなに早く行くのなら、航空によるスピードアップというものもある程度船によって対抗できるわけです。これはもちろん輸出商品についての話ですが、量的にいいまして、なかなか船の取っている荷物の何%を航空で運ぶということは、それは容易ならぬことじゃないかと思うのです。いずれはそういうことになるかもしれませんけれども、運ぶ輸送力から言いましてもう問題にならぬと思うのでございますがね。そういう意味からいいまして、これから船の船型とかスピードとか、そういうものもだんだん改善されていくでしょうが、海運が相当部分を航空に取ってかわられるという時代はまあ今世紀はこないんじゃないかと私は確信しておるわけですがね。
  89. 森中守義

    ○森中守義君 はあ、そうですか。まあ今世紀はだいじょうぶという非常に長期にわたる見通しを伺って安心しましたが、ただ、こういうことはどうなんでしょう。輸送の品目の選択が少し変わってくるんじゃないか。
  90. 福田久雄

    参考人福田久雄君) ええ、変わってきます、それは。
  91. 森中守義

    ○森中守義君 それでもなおかつ船に依存するシェアというのは相当高いと……。今度サンフランシスコあたり行ってみますと、トマトだキュウリだといういわば生鮮食料品など鮮度を必要とするようなものはほとんど航空に切りかえているという、そういう現状が多いんですね。だから、そういったような角度から見ていくと、やはり輸送の品目が、この部門は船、この部門は飛行機という、そういう時代がやっぱりくるんじゃないかと見ていたんですがね。
  92. 福田久雄

    参考人福田久雄君) お説のように変わってくると思います。それからそのために海運のほうもやはりいろいろくふうをこらしまして、たとえばいまお話の出ましたカリフォルニアの生鮮の野菜とか、そういうものも、飛行機でなくて船で運ぶ計画を立てておるわけですね。それからもう一つ例をあげますと、豪州から牛肉が来ますね。あれ、もとはみんな冷凍で来ておったんですが、それを冷蔵で、何とかコンテナの速いので運ぼうということになれば、豪州の肉をそのまま日本へ持ってきて市場へ売れるというようなことを計画しております。それで私も、何とかカリフォルニアの野菜を飛行機じゃなくて——飛行機はもう運ぶ量が限られていますし、コストも確かに高いわけですからね。だから一般の経済的のあれからいって、何か船でくふうができて、大量に、しかも安く、早く持ってこられるということになれば、日本の物価政策とかその他にも大いに貢献するんじゃないかと思いまして、そういうこともいま研究さしております。それで冷凍荷物は、だんだんこれから船で運ぶ量も、世界各国から入る冷凍の、あるいは冷蔵の荷物がふえてくると思いますですね。
  93. 森中守義

    ○森中守義君 最後にもう一つずつお尋ねいたします。いまの問題は、たいへん強気のお考えで、多少安心もしました。  そこで、造船界、海運界それぞれ今日の重大な課題になっている中国との関係ですが、これは、造船工業会などにおかれては、プラントの輸出などは当然なこととして早急に検討さるべき時期が来ておる、こう思うのですが、これについてどうお考えか。  それと、海運界のほうでも、さしずめ、日中間の貿易も、今日のように友好サイドであるとかあるいは覚え書きサイドとか二種類のものですけれども、いずれは国家間の問題に発展していく可能性がある、そういう際に、中国側との配船関係あるいは交流関係などはどういったようにお考えであるか。それぞれ所見を承ってお尋ねを終わりたいと思います。
  94. 古賀繁一

    参考人古賀繁一君) 私たち製造業者は、どこの国とも仲よく商売をさしていただきたいというのが基本的な念願でございます。日中関係は、今後、本格的に改善されていくという大きな期待を持っておるのですが、民間だけでは、なかなか、急激に効果をあげるということもむずかしいと存じますので、先生方のお骨折り、運輸省、通産省の御指導のもと、積極的に応分の努力をしたいと考えております。
  95. 福田久雄

    参考人福田久雄君) 中国との配船関係は、日中に関する限りは、すでに、ある程度やっておるわけなんでございます。いまの日中貿易あるいは国際貿促の関係でやっておったのですが、今度、中国の国連復帰に伴いまして——私のほうの会社のことを申し上げて申しわけないのですが、中国と世界を結ぶ世界航路に協力しようということで、日中はすでにやっておる会社があるのですが、われわれのほうは、上海とか、そういうところからアフリカとかカナダとか、そういうこれから関係のある間の航路について協力したいということが北京に受け入れられまして、予定どおりいけば、この年末ぐらいまでにはだれか向こうに説明に来いということになっております。  それで、これは、もちろん、日中の国交の関係もあるのですが、経済的には——私の私見を申し上げて申しわけないのですが、戦前の中国とは非常に違っておるでございましょうが、あすこに七億、八億の人間がおって、ああいう大国と日本との間の竹のカーテン、そういうものが取りはずされたということは、非常に日本としても明るい先の見通しが持てるのじゃないか。で、いままで不自由ながらもやっていたのですが、それがみんな大っぴらにできるということは大いに歓迎すべきじゃないかと思います。そういう意味から、私のほうも、幸いいろいろな世界航路に関係し、それからアフリカなんかも中国としても非常に関心を持っておりますから、その間の荷物の輸送に協力しようと、そしてお互いに友好関係を進めようじゃないかということでいきたいと思います。ほかにも、海運界全体としてもそういう空気があるわけでございます。
  96. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 他に御発言もなければ、参考人に対する質疑はこれにて終わります。  参考人の方に一言お礼申し上げます。  本日は、御多忙の中を貴重な御意見を拝聴いたしまして、まことにありがとうございました。今後とも当委員会の審議、調査に御協力のほどをお願い申し上げます。この機会に厚くお礼を申し上げます。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  97. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 速記を起こして。     —————————————
  98. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 再び、新潟港外におけるタンカー座礁事故に関する件について質疑を行ないます。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  99. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 今回の「ジュリアナ」号の事故に関連をしまして二、三お伺いをしたいと思います。  まず初めに、港湾の安全確保の問題についてお伺いしたいと思いますが、タンカーというのは大体湾内に入るといいますか、港湾の中に入る必要があるにもかかわらず、沖に停泊しなければならない、こういう状況があるわけですね。それで、外国船からの日本の港湾設備に対する苦情も非常に多いわけです。「ジュリアナ」号も、もし沖に停泊せずに港湾の中に停泊しておったなら、今回の事故は避けられたのではないか。そういう点を考えた場合、単に岸壁をつくるだけではなくて、防波堤の拡充とか、こういう港湾設備の拡充ということが必要ではないか。こういう点、少し日本の港湾設備の安全面での不備な点があるのではないかと思いますけれども、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  100. 栗栖義明

    政府委員(栗栖義明君) ただいまの御指摘の点、二点あろうと思います。前段のほうの御質問でございますが、御承知のように現在の検疫制度は、これは厚生省が検疫をやっておられますけれども、検疫船は、どちらかといいますと、中に入ればかえって伝染病その他で危険があるということで、港外に検疫錨地というものを指定されておるところが多うございます。今回の新潟の場合も、聞くところによりますと、検疫錨地にいたというふうに聞いてございます。ただ、検疫制度そのものをいろいろと厚生省のほうでも御検討をいただけると思いますけれども、御指摘のように港の中で——検疫の問題は別にいたしまして、港外でしけにあって船が困るということは事実あると思いますし、港に船が入りましてから事故を起こしたのでは非常に申しわけないという感じがいたします。それで、実情を申し上げますと、港湾の貨物、過去におきまして非常に、年々ふえるものでございますから、船をつける施設に追われておって、ある程度まで防波堤ができたころにはもう足りなくなって、広げなくちゃならないというのが実態でございますが、私どもも基本的には、まず防波堤を囲ってから船の着く岸壁をつくるということが基本的な整備の方針でございます。ただ、御指摘のように、先ほど申し上げましたように、一定限度の港の規模ができても、さらに拡充しなくちゃならないという、建設途中の段階におきまして台風が来ました場合に、御指摘のような問題が出てこようかと思います。この点は十分気をつけて、建設途中でも先に極力囲っていって事故が起こらないというふうな施工のやり方とか、そういうふうな点につきまして十分注意いたしてまいりたいと思います。
  101. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 これは基本的に、海運の拡充発展に伴って港湾設備の充実がおくれておるというところに問題があるわけですけれども、それなら、じゃあすぐこの防波堤の建設が全部できるかというと、なかなかできないのじゃないか。そこで、やっぱり日本の全港湾の安全度といいますか、そういうものの点検をされるべきではないか。特に、この機会にそれをお願いしたいと思います。現在、全日本海員組合におきまして、やっぱり船員の立場から見て、港湾の安全基準、約二十項目をつくって全国点検に入っておりますけれども、こういうことは労働組合がやるべきではなくて、当然、関係官庁としてやるべきじゃないかと思いますけれども、これはやられるつもりはありますか、この点についてお伺いしておきます。
  102. 栗栖義明

    政府委員(栗栖義明君) 先生御指摘のように、いま全日本海員組合が点検していただいておるという点は、私ども、実はそれより先に私ども行政当局がやるべきことをやっていただいたという点では、申しわけないという気持ちもございますけれども、非常にありがたいと、御指摘があればそれに即応するように直してまいりたいというふうに考えてございます。  なお、フェリーその他につきましては、いろんな基準をきめまして点検に入ってございまして、施設の不備なものは、どんどん直していくという体制に入っておりますが、港全体につきましては、先生御指摘のような、いわゆる総点検というのは現在行なっておりません。部分的には、たとえば裏日本で申しますと、いまの防波堤の形では波がどれくらいまで低く押えられるかとか、あるいは、この程度じゃだめだから、どうしなきゃいかぬというふうな点はやってございますが、今後、海員組合の御指摘がございまして、それを十分いただくと同時に、まだ、私ども立場から見て足りない点があれば、うちのほうはそれを補う意味でも検討を進めるというふうなことにさしていただきたいと思います。
  103. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 次に、船舶局長にお伺いしたいと思いますけれども、先ほどからタンクの大きさが問題になっております。今回の場合にも、「ジュリアナ」号の場合タンクが二十七個ですけれども一つのタンクの大きさが問題になるわけですね。それで、これは先ほどのお話のように、IMCOにおいて基準がきめられたわけですけれども、これは四十七年の一月から発効されます。現在はまだ発効されてないわけです。ところが、こういう一つの基準ができたということは、その基準を守れば比較的安全であるけれども、守らなければ安全でない。危険だからこういう基準ができたわけですね。ところが、現在は、これが発効するまでのかけ込み建造が行なわれて、いまの間にもっと大きなものもやってしまおうというようなことが行なわれておるのではないか。これは具体的な例におきましても、現在、運輸省に申請すれば、その期間も非常に簡単に行なわれて、IMCOの基準による、万が一の場合三万立方メートル以上流れないという規定を越えたものがどんどんつくられつつある。この点について、監督官庁としての運輸省の姿勢の問題を私はただしたいと思うのですけれども、この点どうですか。
  104. 田坂鋭一

    政府委員(田坂鋭一君) 規制の問題につきましては、現状につきましては、ただいま先生のおっしゃられたとおりでございますが、ことしの十月にIMCOで、タンク・サイズの規制につきまして、海水汚濁の防止のための国際条約の改正によってこれを行なっていくということが採択されたわけでございますが、同時に、この条約の改正の発効を待たずにこれを実施していくこと、各国に実施させること、これを要請する旨の決議が採択されております。わが国といたしましては、この決議の趣旨によりまして、明年一月一日以降契約される船舶につきましては——この国際条約の改正は、相当に時間がかかるだろう、発効は時間がかかるだろうと存じますが、明年一月一日以降、これを実際に実施していくという方針を固めております。  それから、その実施前に建造される船につきましては、現行の、適用されております、先ほど申し上げました昨年十月のIMCOの海上安全委員会によって採択されました勧告、これに従っていくのが私どもの行政指導の及ぶ最大限度であるというふうに考えております。
  105. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 現在、油の流出対策というのは、なかなか効果的な対策はないわけなんです。たとえば、今回の場合に、中和剤の投入とか、いろいろなことをやっておりますけれども、なかなかこれはひまがかかりますし、極端に言うならば、効果的なきめ手がない段階で、その段階でやっぱり規制するとしますと、やっぱりタンカー建造に対してもう少し規制をきびしくして、強力な指導をやるべきではないか。IMCOの発効が来年だから、少々大きいものをつくるならいまのうちだというかっこうでやられると問題があるんではないかと思いますけれども、そういう基準がいま一つできているわけですから、経過的な措置としましても、もう少しこの点を厳重に規制されるべきじゃないかと思いますけれども、いかがですか。
  106. 田坂鋭一

    政府委員(田坂鋭一君) 先ほど申し上げました現在適用されておりますIMCOの海上安全委員会におきます勧告、これもその以前からの、従来のタンカーのタンク・サイズから考えますと、相当に規制が加わっておるという現状でございます。そこで、また繰り返しますけれども、現在の三万という規制が私どもの行なえる行政指導の限度であると考えて、これに準拠するように通達も出しておる次第でございます。
  107. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 それから、もう一つの問題ですけれども、そういうタンカーの構造の規制と同時に、もう一つは、タンカーが入れる地域というものをやっぱり規制しないといかぬと思うんです。現在、特に東京湾のように非常に狭いところで、しかも周囲の陸地は人口の過密地帯である、こういうところに大型タンカーがどんどん入ってくるのは万が一の場合に非常に危険があるのではないか。現在、京葉第二シーバースの新設の申請も出ておるようですけれども、こういうものがつくられると、近くには羽田空港があるし、しかもこの第二シーバースというのは航空路の真下に当たっておる、もし飛行機の墜落事故でもあったら大惨事にもなりかねない、こういうところにこういう施設をどんどん増設するのは非常に問題があるのではないかと思います。したがいまして、こういう危険が想定されるような地域にはもっと制限をすべきである、大型タンカーが入るのを制限すべきである。それから、もう一つの観点からは、東京湾とか瀬戸内海とか、汚染されたらなかなかもとに戻りにくいところですね、海水がなかなか交流しないから。そういう東京湾とか瀬戸内海とかに大型タンカーがどんどん入ってくると、そういう問題が起こるわけですから、そういう観点からも制限の必要があるのではないか。この二つの観点から、制限強化についてどう考えられておるか、お伺いをしたいと思います。
  108. 丹羽喬四郎

    ○国務大臣(丹羽喬四郎君) ただいまの御指摘でございますが、確かに大型タンカーになってくる傾向が非常に強い趨勢でございまして、それがもし港湾内で万一のことがあったらばたいへんではないかと、また空港の近くでこういったようなシーバースを設定することはやはり危険の蓋然性が強いのではないか、こういうような御質問でございます。私もごもっともな御質問と思う次第でございます。実は、できるだけシーバースというものは港湾の外に、外房に設けるというふうにしたらどうかということを指示をしている次第でございますが、いろいろ、外房になりますると波の圧力その他によりまして技術上非常にまだ困難な点も相当にある、港湾局長あたりの意見もございますが、できるだけひとつそういったようなところにいたしまして、そうして万一の場合の油による汚濁をできるだけ最小限度に食いとめるべきだということは、私もそれを考えておりまして、検討をさせている次第でございます。  また、港湾に入るタンカーのトン数規制をしたらどうかという御意見でございます。実は私もその点につきまして、この港湾にはどのくらいのタンカーが入る、この港湾ならこれでいいというような規制をすべきであるというようなことを考えて、これをいま検討させているところでございます。  また、東京湾につきましては、先ほども海上保安庁の長官からも説明をいたさせましたように、東京湾に入る場合におきましては速度を極度に落としてやらせるとか、一方通行をさせるとか、追い越しの禁止をするとか、その他いろいろの措置をとりまして、それらの事故の起こらないような方策を講ずる、こういうことでただいませっかくやっておるところでございまして、先ほども申しましたとおり、いろいろなやはり根拠といたしまして、できるだけ早く海上安全交通法を制定いたしたい、こういうふうに考える次第です。
  109. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 それから次に、事故対策の体制が非常にお粗末だということが指摘されておるわけですけれども、現在も現場に九隻の巡視艇がかけつけておるといわれておりますけれども、全国からも応援にかけつけておるわけですね。また、こういうところに、ほかに事故が起これば、それに対する対策はとり得るのかどうか。現に、けさ、兵庫県の明石でタンカーがやっぱり座礁しております。これは非常に油の流出は小規模のようでありますけれども、こういうことが重なることも考えられるわけです。そうすると、現在の事故対策の体制というものが非常に足りないと思いますけれども、この点いかがですか。
  110. 丹羽喬四郎

    ○国務大臣(丹羽喬四郎君) ただいまの九隻にプラス六隻で十五隻、いま全力投球ということもございませんが、裏日本には、いま新潟港を中心にして十五隻の巡視艇で警戒に当たっていると、私、承知をする次第でございます。そして、いまお話がございましたが、同時多発と申しますか、そういうような事故がございましたらば、やはりいまの警備体制ではなかなか手が回りかねるというところも相当多いのでございまして、機会あるごとに、運輸省といたしまして予算要求をいたしまして、あるいは巡視艇の増強、またヘリコプターの増強、あるいはまた救難艇の増強、消火艇の増強というものを予算折衝をいたしておる次第でございますが、申しわけのない次第でございますが、所期の目的をいままでは達することがなかなか容易ではございません、御承知のとおりでございます。諸先生の御鞭撻をいただきまして、一刻も早く海上保安庁としての警備体制の強化を懸命にはかってまいりたい、こう思っている次第でございます。
  111. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 それから処理剤の問題も、中和剤の問題も非常に準備不足しておるのではないかと思います。全国では千二百五十八トンということがいわれておりますけれども東京湾については五百トンということがいわれております。ところが、この五百トンの根拠を見てみますと、約一万キロリットルですか、の流出の場合は五百トンあれば大体いける、こういう想定のようですけれども東京湾は、先ほどのお話のように、非常に大型タンカーがどんどん入ってまいります。しかも、先ほどのIMCOの基準によりましても、一ぺん衝突なり事故があった場合に、三万キロリットルまでの流出が限度として規制されているわけですね。そうすると、一万キロリットルですか、そういうものを前提に五百トンの準備というのは全くナンセンスだと思いますけれども、この点はどうなんですか。
  112. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 先ほどの大臣のお答えの追加になるかとも思いますが、まあ先ほど来お話ししておりますように、防災という見地におきましてどれだけの体制をどういうふうに整えるかということにつきまして、非常にいろいろ条件前提がございます。船の大きさから、種類から、場所、そのときの気象状態海象状態、いろいろあるわけでございまして、まあそれらのすべてに対応できるということが一番望ましいというふうに考えまして、私どもも鋭意それに沿うべく努力をいたしております。しかし実際問題といたしますと、なかなかそうはまいらないわけです。そこで、先ほどもお話が出ましたように、やはり船あるいは航空機等については機動力をある程度使わざるを得ないというふうに思うのです。したがいまして、いまの新潟でやっております体制といいますのは、これはやはり日本海の裏日本で、ああいった場所でああいった船のああいうような状態の災害、こういうものに対してはやはり裏日本全体としての集中機動力を投入せざるを得ないと思います。その際に、また、たとえば秋田だとか酒田で同様な大事故が起こったらという仮定の問題はございます。しかし、そのときにはまた再度の機動力の発揮ということになるかとも思いますが、日本海方面においては私どもはそういうふうな運用を考えております。しかし重点海域、表日本のほうにつきましては、極力局部的な重点海域の中での相当数のケースに対応できるようなことを常時考える、こういう基本線を持っております。いまお話の出ました明石沖に同時に起こったではないかということにつきましては、これは所管の第五管区本部におきます現在の船艇で十分これは処理できるという体制で、現実にそういう処理に当たって支障がないように進んでおるように考えております。  なお、いま御指摘になりましたあとの問題等につきましても、やはり資材その他について不十分という観点はいろいろありますが、これらの点につきましても一部いまのような考え方をとっております。ただ東京湾は、われわれとしては最重点海域として考えておりまして、現在の除去剤が五百トンであるという点につきましてはそのとおりでございます。したがって、これに対処できます流出油状態というのは、現在の新潟のような程度の船から、まああれより少しよけい出るような油の状態が一応除去剤だけの観点からすれば対応の災害であるということになると思います。そしてその際に、いまお話の出ましたようにタンク・サイズの問題が出てまいりましたが、これは新しい問題の一つとして最近時において出てきた問題であります。したがって、これに対応するような措置は私どもとしては当然今後検討していかなければならない。そういうことから、今後の体制としてはひとつ大いにそういう問題を局部的に、特に重点海域においては局部的に対処し得るように措置をしたいと、かように考えます。船艇等につきまして、いま申し上げるような基本線からいいましても必ずしも十分とは思いません。毎年毎年の予算で非常に難渋をしておることは事実でございますが、今後におきましてもいま申しましたような基本線を考えながら最善の努力を払って万全の対策に処していきたいと考えております。
  113. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 それからもう一つ、消火設備についてですけれども、現在専用の消火船を持っているのは横浜と四日市だということがいわれております。ところが、東京湾だけで考えても最低三隻は必要だろうといわれております。こういう点についても全然設備が貧弱である。これも早急に充実強化する必要があると思いますけれども、この点はいかがですか。
  114. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 専用の消火船というおことばの船は、私どもでいいますとA級の消防船と言っておるのです。これは非常に高いやぐらを持ちまして、放水能力も水でいくと一時間千七百トン、あわの放水量でいきますと一時間当たり一千トンというような船で、これは大型の十五万重量トン以上のタンカーの火災ということを対象に考えた船であります。この船は現在——いま二隻とおっしゃいましたが、実は三隻になっております。横浜と四日市と和歌山県の下津、大阪湾内の管轄をさせる意味で下津に配備をいたしました。そのほかの巡視艇も実はある程度の消防力を持っております。私どもでは、放水量時間当たり百五十トン以上、あわ放水量一時間当たり百トン以上といいますのはB級というふうに考えております。これは大体五、六千重量トンクラス以上のものに対応できる船で、こういった船が現在九十三隻でございます。これは巡視船、消防艇、巡視艇という種別はございますが、能力は先ほど申し上げたのと同じ能力で、九十三ばいございます。それ以外のものの船、これが非常に数が多いのですが、二百三隻ございまして、これがC級、このC級の船にしましても、放水量百五十トン、あわ放水量百トン前後と、こういうようなものにいたしております。  そこで、全体的に見まして、御指摘のA級消防船というものは、特にいま三カ所に配置しております以外の場所におきまして、最近の臨海工業地帯の発展に伴ってこういったものが必要かというふうに考えていま検討をしております。しかし、そういったない場所につきましてはB級の船舶を配置しまして、A級に足らない能力をB級でカバーするということにして、この全体九十六隻のABクラスを、先ほど申しました重点的な港、海域に配置をする、そうしてそれ以外のところの場所についてはC級、それで足りない場合にはB級の応援体制をとる、かような体制を考えております。ただ繰り返すようでありますが、これだけで決して十分とは考えておりません。今後建造していく場合にはすべてB級以上の消防能力を付与していくということを考えておりますし、さらにA級の消防船を極力増強したい、かように考えております。
  115. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 次に、油の処理をする技術の開発を急ぐべきではないかと思うのです。現在オイルフェンス拡散しないようにするけれども、これも新潟の例では波浪であまり効果がない。それから中和剤を使ってもこれは生物に有害である。それから海水と一緒に吸い取って海水だけ吐き出す装置もあるようですけれども、これもしけておるときはなかなかうまくいかない。それからむしろをまいて吸い取るというのも行なわれておりますけれども、これもそれほど大きな効果がないようである。外国の例を見ましても、アメリカのカリフォルニア沖の場合は麦わらで吸い取ったとか、あるいはイギリスの「トリー・キャニオン」の場合には中和剤をまいたとか、火をつけて燃やしたとか、きわめて原始的な方法しかないわけです。だからこれはやはり早急に処理技術というものを開発する必要があるのじゃないかと思うのです。いまはいろいろな方法があるけれども、どれもきめ手にならない。そういう点で今後の方策をどう考えられているのか、お伺いしたいと思うのです。
  116. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 今回の事故例に徴しまして、油の対策、いろいろな機材と除去剤のような薬品等を必要といたしております。おっしゃいますように、非常にいずれも不備で、決定的な、これだというきめ手になる対策のものがない、これは事実でございます。油が当初多量に流れましたときにその上澄みの回収をする、これは非常に望ましいやり方であります。ところが、回収に当たるような船というものがどういう機能を持ち、どういう船であればいいかということに対して、やはりこれは目下きめ手がないわけです。姫路の出光興産の精油所におきまして「きよすみ」という油回収船を持っております。相当な性能を持っておりますが、これとても今回の新潟のような海象気象のような状態では使用不可能であろうと思っております。この回収船につきましては、私どものほうもかねてこういう必要性を感じておりますので、非常に小船ではありますけれども、いま一隻、技術開発の見地からつくりまして、いろいろなテストをしておる最中でございます。さらに、油の拡大を防止しますオイルフェンス、これもまた、現在もそうでありますが、新潟災害でもそうでありますが、非常に波浪が高いと効果がないという現状のものであるわけです。これなども少なくとも波高二メートルぐらいの波浪の際にも有効であるというようなものが望ましいということで、これまたわれわれも懸命になって検討を重ねておる最中のものであります。さらにまた、油を除去しますための中和剤として現在使っておりますもの、これも非常に欠点がございます。先ほど来お話に出ておりますように、魚類等に対する二次公害が非常に大きい、こういう点につきましてはこれは早急に改善、改革をすべき内容であろうと思っております。現在市販等におきまして三十数種類のこういった種類が出ておりますが、性能と、こういった魚介類に対する弊害とのかね合いの問題が非常にむずかしゅうございまして、現在これが絶対的であるというものがいまのところ見つかってないというようなことで、その他まだいろいろございますが、結局はやはりアメリカのサンフランシスコ湾でオイルフェンスのかわりにあそこでは材木で取り巻く、それから油除去剤は使えませんので、枯れ葉を使ったり、わらを投げ込んだりという状態で油の除去、回収をやろうというようなことをやっておった。「トリー・キャニオン」のイギリスの場合のごときは、ついには爆撃をして燃やしてしまうということも、相当なデメリットを伴いながらやっておるという状態でございまして、これは世界各国ともにいま非常に悩みつつ研究を重ねておる最中のものでございます。私どもも、痛切にそういうことを考えておりますので、いまあげましたような内容のものにつきましてそれぞれ適当な研究機関を見つけまして、いま鋭意努力をしております。今後この問題について大いに力を入れなければならぬ問題だと、かように考えております。
  117. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 次に、海上交通規制の点について先ほども触れられておりますけれども、もう一度確認をしたいと思います。この日本には世界の三〇%の船が集まるということもいわれておりますけれども、それが日本の港則法の適用地域以外は全く無規則である。こういうことは、非常におかしなことではないかと思います。すでに民間で自主的に交通規制をやっているところは七個所もあるといわれておりますが、こういう状態政府はやっぱり手をこまねいていることはおかしいことだと思います。船の建造にも航行においても主要国である日本が、本来なら国際的に指導的な力というものを発揮すべきではないか。こういう面について、海上交通規制についての具体的なスケジュールといいますか、方策というものを大臣にお伺いしたいと思います。
  118. 丹羽喬四郎

    ○国務大臣(丹羽喬四郎君) ただいま私どもで考えておりますのは、先ほどから申しました海上安全交通法の制定を一刻も早く御審議を願いまして、そうしてこれを実現をいたして、そうして交通の法則を確立すると、こういうふうに第一に思っている次第でございます。  また、先ほどお話がございました国際的にも非常に海運国として指導的な地位を持っているわが国でございますので、IMCOの国際会議におきましても、たえずそれらの方面につきまして具体的な案をもちまして、そうして国際間の了解、協力を得ましてこれを持っていきたいという考えでいる次第でございまして、実は来年の五月にIMCOの会議が開かれる、そういうときにおきまして——それまでに十分に海上交通の安全、また油濁防止、そういうような見地からいろいろな具体案をつくって、IMCOに積極的に提案をして、そうして国際間の了解、協調を得るようにすべきだということを、実はきのうの省議におきましても、本日の関係局長を集めましたときにも、私から指示をいたしまして、せっかくそれらの方面——また、先ほどからお話がございました船舶の航行の安全性というような点につきましても、先ごろの会議におきまして、船舶局長の指導のもとに、タンク・サイズの規制をきめたようでございますが、それらの点につきましても、さらに一そうの安全性を深めるような、あらゆる方面につきましての指導性を発揮してまいりたい、そのように研究をさしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  119. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 最後に、大臣にお伺いをしたいと思いますけれども、いろいろ答弁をいただきましたけれども、問題は、今回の事故が不幸中の幸いといわれているのは、比較的小規模の流出であった、それから人口の過密地帯から離れている、ところが、将来やはり東京とか、その他人口過密地帯で、もっと大規模な事故が起こる可能性が出ているわけです。ところが、現在のいろいろの対策を見ても非常に不足している、お粗末だということは明らかなんですね。したがって、この港湾の安全施設の面、あるいは救済対策の面、やっぱり予算がなければできないと思うんですけれども、こういうタンカー事故に備えての予算の大幅な獲得をぜひ来年度においてやってもらいたい。それから、やっぱり思い切った規制をしなければならないと思うのです。東京湾に対するタンカーの進入を除くとか、あるいはタンカー建造の問題にしろ、これは非常に政治的には勇断が要ると思うんですけれども、これをほんとうに勇断をもってやっていただきたい。特に以上の点を、大臣の決意をお伺いをして、私の質問を終わりたいと思います。
  120. 丹羽喬四郎

    ○国務大臣(丹羽喬四郎君) ただいま田渕さんからいろいろ御指摘がございましたが、一々ごもっともでございまして、私も就任以来交通の安全確保、そうして公害の防止ということが、運輸行政の基幹であるという考えをもちまして、微力ではございますが、今日までやってきたつもりでございまして、これが将来におきまして、そういったような保安体制の基盤をつくることが、私の在任中の一番大きな任務ではなかろうかというふうに考えて、せっかく努力をしている次第でございますが、力足りませんで、いろいろの事故が続発をいたしまして、国民の皆さまに御不安をかけて、何とも申しわけないと思っている次第でございます。いまお話しのとおり、この機会にぜひとも保安体制の強化をはかる。ただいまいろいろ大型船の問題が出てまいりましたが、これは安全確保ということの核心に立ちまして、大型船の建造ということが一番のもとになるわけです。安全確保が何よりももとになる。それが確認ができないという場合には、規制もやむを得ないという覚悟で私は臨んでいる次第でありまして、先般も御指摘がございました四十七万トンの問題のときも、安全確保はどういうものであるか、また、寄港地はどういうものであるかということを十分確かめまして、技術的にその点につきましては全然心配がない、四十七万トンを外国におきましてはすでに二隻建造をしているというような実情である、さらに、やはり外国におきましては、もう五十万トンも五隻の建造がすでに計画されている、こういうふうな実情でございますので、安全性確保という見地に立ちまして、これを十分確かめての認可をいたしているような次第でございまして、将来とも、いまの御指摘の趣旨を体しまして、安全性確保、そうして公害防止、汚濁防止ということを第一に置きまして、せっかく努力をするつもりでございますので、一そうのひとつ御鞭撻をお願いする次第でございます。
  121. 伊部真

    ○伊部真君 大かた私の聞きたいことが質問に出ておりますので、極力重複を避けて二、三点について質問をいたします。  この事故が起きて、強風に災いされる面と、強風であるために、その地域の空気のいわゆる汚染、爆発下限が〇・三になると非常に危険な状態になる。幸いにして〇・一以下で大惨事を免れた、あるいは海岸への延焼についての危険は去ったと言われております。しかし、それは確かにそうは言えるのですけれども、もしもあれが東京湾であったら、大阪湾であったらということになって、しかも、かつまた強風でなかったらということを考えますと、非常に私としてははだ寒い思いがするわけです。それは私だけではなしに、やはり東京都民、密集地におる住民の気持ちではなかろうか。したがって、いま田渕委員からも質問がありましたが、これにきめ手になるような手がないというふうに言われてしまうと、住民の不安というのはたいへんなことだと思うのです。これは何としても、どんなことをしてでも、やっぱりそういう惨事を防ぐという手だてを考えなければならぬと思うのです。その問題について、東京はだいじょうぶ、大阪ではだいじょうぶだというようなことが言えるのかどうか、その点についてやはり国民に知らせておくことが必要だと思います。御見解を聞きたいと思います。
  122. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) 先ほどからも申し上げましたが、防災ということにつきまして、事務的に考えます場合には、その前提になる災害というもの、その与件が非常にたくさんある。特に海上の場合にはたくさんあるというふうに思いますので、いかなる事態を想定するかということにつきまして、それに対応する対策が十分か十分でないかというようなことになるわけでございます。私どもは従来とも超重点海域ということで、浦賀と大阪湾、伊勢湾、瀬戸内、こういった海域を考えております。この海域には日本タンカーのほとんどが入港する場所でございますし、またその隻数もだんだんふえてまいっておる、臨海工業地帯等も最も発達しておるということで、この辺での災害ということの被害の大きさを考えますときに、何としてでもここでの災害の防止につとめなければならぬ、かように考えるわけです。  そこで、対策的な見地から申し上げますと、こういうところでは、衝突あるいは座礁、そういった災害を起こさないということに、まず最大の努力を払うべきではないか。そういうことで、けさほど来申し上げてありますように、交通、航行の管制あるいは交通整理といいますか、そういう問題に目下非常に力を入れておるつもりでございます。さらにこれを確実、確定的なものにしたいということから、大臣の御表明もございましたような、海上安全交通法というものの成立を非常に期待をいたしておる次第でございます。しかし、そうはいいましても、災害が起こるということは、これはまた絶対ないとは申せないわけでございます。そこで、起こる場合の何がしかを想定いたしまして、そうしてそういう災害に対処するという資材あるいは訓練等を、私どもは常時やっておるわけでございまして、この区域が区域であるだけに、私どもは非常な力と熱意と研究と努力をいたしておるつもりでございます。ただ、やはり繰り返すようでありますが、いろいろな条件下等がございますので、そういった場合のきわめてレアといいますか、予想せざるものというものもあるかと思うので、きわめて歯切れの悪い御答弁になるかと思いますが、そういうような私どもの努力と熱意であるということを、ひとつ御了承願いたいと思います。
  123. 伊部真

    ○伊部真君 これは早急に、安全面からの検討というのは、もう陸海空どこの地域でも再検討しなければいかぬと思うのです。今日までやっぱり、こんな事故が起きてから初めて大型船の問題が議論される、あるいは安全交通の面でも、四年も五年も前から海上交通安全の問題については議論がありながら、それがやっぱりできなかった。こういうふうな事故が再び起きたとしたら、私はもう釈明のしようがないんじゃないかと思います。やっぱり困難があろうとも、これは整備に責任を持って進んでもらわなければならぬと思うのです。  それからもう一つは、やっぱり事故が起きたときの器具なり設備の配置という問題があろうかと思います。この問題についても、報道関係では、新潟であの昭和石油のような大きな規模のタンクがあるところで十五トンしか中和剤がなかったというようなことが言われておるわけですが、やはりそういういわゆる危険個所についての配備のしかたというものに対して、これは再検討をすべきでなかろうか、十分に考えていただかなければならぬのではないかと思います。佐藤次官もこの点について、もう一度量的な面と配置の良否について検討したいというふうなことを言われておるようでありますけれども、やっぱり絶対量の問題と配置の問題について、ぜひ国民が納得できるように、その配置についてひとつ検討していただきたい。先ほどもお話がありましたが、全体として、いま千二百五十八トンということでは、船の一船倉の量、六つ危険な状態があるようですけれども、四千トンあるいは三千六百トンといわれておるこの一倉か二倉で、もう裏と表だけで非常に量的にも問題があると言われているようであります。ぜひひとつこの点について考えてもらいたいと思います。  それから二点目に質問をいたしますのは、船が切断をされて、そしていま波浪が高いために、暴風のためにこれの抜き取りに非常に困難だと、こういうことでありますが、あれ以上に油が流出するとたいへんなことになると思う。そういう意味では早急に抜き取りをしなければならぬと思いますが、この面で、いままでに抜き取りに対する訓練というものがなかったので、したがって非常に不安で、どうも抜き取り作業がうまくいってないというようなことをいわれておるわけです。それからもう一つは、民間のサルベージ会社でも、安全について非常に疑問があるということで二の足を踏んでいるというふうなこともここで言われているのです。これはやっぱり救援に対して手落ちではなかったのか、訓練の不十分さというものがあらわれているのではないかというふうに心配をいたします。この点についてはいかがですか。
  124. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) この油の抜き取り——瀬取り作業と言っておりますが、この問題につきましては、私ども海上保安庁では、まず大部分の場合に、じきじきにこれに対処するということを、最初からは考えておりません。非常に専門技術的な機材と訓練と人を要しますので、なかなかこれまでわれわれが受け持つということは非常に困難でございます。そのかわりといいますか、そういう意味で、責任ある技量の十分なこういったサルベージ会社と密接なタイアップをしまして、今回新潟のように対策本部ができますと、直ちにそういう一員に入ってもらうという体制をまずつくりまして、そしてその専門技術でひとつこういうのを処理してもらう、こういうふうなたてまえをとっております。もちろんきわめて小型の船の小型のような場合は別でございますが、今度のような大きなものになりますと、私どもの手でみずからやるということは、これはまずできないという状態です。これは将来においてもそういうことになろうかと考えております。  そこで、今度の場合ではやはりそうは申しましても全体との関連もございますので、対策本部の一環として、私どもの出先の本部長である第九管区本部長がこれを指導をするということで、その傘下でいま特定の専門技術の企業がこれに当たるということに実は昨日最終決定をいたしておりまして、その技術者の調査が昨日来始まっておる。そうしてそれに必要な資材というものが、いまおおむねアウトラインが出てまいっておりまして、必要な資材をどんどん現在陸送、海送をやっております。なお、そういう資材の中で、現地になくて遠くから送る、特にこの瀬取り船、油を取って入れる瀬取り船というようなものが、場合によると門司とかあるいは呉から回航しなければならぬだろうというお話がありますので、これは東京並びに現地保安部等でいろいろ検討をし、運輸省全体として検討をしまして、現地における港湾建設関係の関連の機材等がこれに活用もできるというようなものが出ておりますので、それはそういうことでひとつそういう回航などをしないで現地港湾局の船をこの際使うというようなことも、いろいろ対策本部で総合調整をいたしております。したがいまして、こういう瀬取りについて担当の企業がどれであるかわからない、あるいはその連中が二の足を踏む、そういうことは、絶対に現在はございません。順調に調査の結果によっていま仕事が進められております。
  125. 伊部真

    ○伊部真君 そうすると、瀬取りの着手と完了というものについての見込みがあるわけですか。大体の時間的、日程的な見込みというものは立っておりますか。
  126. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) これはただいま、まずこれをやりますのに、船固めというようなことから始まるようでございまして、四トンの鎖が六丁要るとか、あるいは八十ないし十二トンのポンプが二台要るとか、ワイヤーがどれくらい要るとか、あるいはただいまも申し上げましたような瀬取りの船が千トンのものが幾ら要る、千四百トンがどのくらい要る、あるいはまたデッキバージというような、バージのものが、三千トンクラスのものが何ばい要るというようなことがいわれておりまして、そういう技術的な調査がいま懸命にきのうから引き続いて行なわれており、そしてその決定した、前段申し上げましたような内容については、まず第一便が本日の午前中から横須賀を出発しておるという状態になっておりまして、そのあとの総合的な問題については、特にこの船へ接近するといいますか、行って見ないとなかなかできないという面があるようでございます。たとえばこの船尾のほうはいまぐらぐら波とともにゆれております。こういうのを固定させるというのにどこからワイヤーをとって、どこへどうするというようなために現実の船へ行くというようなことがどうしても必要らしゅうございます。船首部分については、これがまた少し船尾の部分よりももっと沖のほうにあるようです。そういうものに瀬取り船をどういうふうにつけていくかということは、やはりこわれておる状態との関連などもあるようでございまして、その接近ができないということがちょっと問題があるようでございますが、そういうのを別にして、とにかくいまどんどん資材的なものの見切り発車をさしておるわけでございます。そこで、そういうものが、きょうおそらくある程度風が少なくなっておる、弱くなっておると思いますので、何がしか進んでおると思いますので、きょう、いま私がずっとこっちにおりますからわからないのですけれども、きょうぐらいにそういう予定が立たないかというようなことを言ってけさ出てまいっておりますので、いま手元にはいつからいつまでと申し上げにくいと思いますが、そういう準備はどんどん進めているということでございます。
  127. 伊部真

    ○伊部真君 いま長官が言われたような状態がやはり報道されているわけですよね。近くに行けないので瀬取りが非常に困難だということ。同時に報道されているのは、新しい船倉に亀裂状態が出て、その間に新たな傷が出てくるのじゃないかという心配をしているようです。あるいはそれに手間取りますと、次の状態が出てくるということになると、これはまたたいへんなことになると思う。同時に私、先ほどちょっと言いましたけれども、風がおさまってきたときに、いわゆる新たな流出が出てくると爆発下限というものについて危険な状態になって、また作業が非常に困難になってくるというようなことで、また繰り返しが出てくるのじゃないかという心配をするわけです。そういう点についてこれはあまりに長く——そうかといって長くずっと近づくのも困難だしということになってきますと、やはり住民の不安というものはますます大きくなるわけです。そういう意味で新たなる問題が起きないかどうかという点ですね。新たな船倉の傷が大きくなるとか、あるいは爆発下限というものが心配になるような状態が気候の関係で出てこないかどうかという点についてどうでしょう。
  128. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) そういう点を非常に確認をしたいために、何とか船に近寄ってそれに乗り組んで現状の破口の生じた状態を確認したいというのが、私どものいまの最大の希望です。しかし、現実あすこに行って見ますと、一部テレビ等にも出ておりますが、たいへんな波で、あれに接舷というのはなかなかできないというのが、現実の姿のようです。現場におきましてはやはり同様なることを考えておりますので、何とかチャンスをというふうにねらっているのが現状であるといわれております。そこで御心配のような状態ということは、私どもも一番心配しております。いま流れましたものについては、これはいろいろなことで何がしか二次公害等の問題があるにいたしましても何とか処理ができようし、また不十分ながらしなければいかぬと思っておりますが、その上にさらにいまのものが破口が新しく生じて新しい油が出るということになりますと、これは際限のない話になる。そこで次に出てくることがないように瀬取りをできるだけ早くやって、今後の心配がないようにしたい。これにもう私どもは最大の眼目を置いて作業を進めたいし、またやらなければならぬことだというふうに思っているわけです。御指摘のとおりの問題がいろいろ心配されておりまして、そういう間で、午前中御質問もありましたように、現地対策本部の一部には非常な焦燥感を持って事に当たっているようなものもおるような状態でございまして、それはいずれもこういったことに気を使っていることが一つあるかと考えております。
  129. 伊部真

    ○伊部真君 現状がそういうことですから、これ以上現地でないところでこれ議論してもと思いますけれども、やはりどうしても気になることは、このような状態でいいのかどうか。救援体制にしても、いまの訓練にしても、このような状態でいいのかどうかということがやはり残ると思うのです。いま答弁のありましたことは私もわかるのでありますけれども、しかし、いかなることがあってもやはり民間のサルベージとの連絡あるいは協力というものがあっても、こういうことに対してやはり訓練された救援部隊というものがつくられるような体制というものを、ぜひひとつ今後考えてもらわなければならぬと思います。したがって、それは技術的にはいろいろあろうかと思うのでありますけれども、しかしいずれにしても、しろうとであぶなっかしくて出て行けぬということでは、やはり困ると思いますので、民間の技術の活用も必要でありましょうけれども、いずれにしても救援体制に対しての万全をはかってもらいたい、こう思います。  それから、次に中和剤のことでありますけれども、まだこれも決定的なことではありませんけれども、しかし、第二次公害のおそれがあるというふうにいわれておるわけです。これは沈澱をすることによって海底の汚染ということもありましょう。それはそれなりに、われわれしろうとでもわかるわけでありますけれども、しかし汚染された魚を食べたときにどうなるのかという問題が、やはり心配があるわけです。したがって、これは当然中和剤を使うというときには、当然にそのことを考慮の上でこれは使っているのだと思うのですけれども、一部やはり中和剤が人体に及ぼす影響ということを心配をしておるわけです。この点について明確に答えが得られるのかどうかという点であります。これは水産庁ですか、お答えを願いたいと思います。
  130. 太田康二

    政府委員(太田康二君) 私のほうで石油中和剤につきましては、実は東海区の水産研究所という研究所がございまして、そこで試験をいたしました事例がございます。これによりますと、確かに先生の御指摘のとおり石油中和剤を使うことよりも、先ほど来話の出ております吸油マットとかそれからむしろとかそういったものを使ったほうが好ましい。特に油水分離器等により物理的回収につとめることが最も適切である、こういうふうに考えておるわけでございますけれども、今回のように緊急に処理をしなければならないというような事態の場合に、やはり中和剤使用ということもやむを得ないことがあるわけでございまして、その際、中和剤によりますところの魚類に対する第二次被害という問題があるではないかという御指摘は、そのとおりであろうかと思います。そこで、われわれの実験の結果も出ておりますから、具体的に使用する場合には当然中和剤の種類、まああるいはどういった海流の場合にはどういう種類のものを使うかというようなことも、慎重に配慮して使用しなければならないと思うわけでございますけれども、今回のような場合に、はたしてそういうことができるかどうかということもまた問題であろうかと思います。  それから御指摘になりましたように沈降型の中和剤使用いたしますと、それによりまして海底の底質あるいは底棲動物に悪影響を及ぼすということでございますので、一般的に申し上げますと、沿岸漁場での中和剤使用というのは好ましくないというふうに考えておるわけでございますけれども、今回のような場合にはやむを得なかろうと思うわけでございます。  そこで、現実に中和剤を使った魚を食べたらどうなるかというような御指摘でございますけれども、まあいますぐこの場合について申し上げますれば、現在は船も引き上げて全くの魚類の漁獲はいたしておらないような状況でございますので、いま直ちにこの問題が起こるというふうには考えませんけれども、まあ一応何と申しますか処理が完了したあとにおきまして、実際に漁場が回復して漁獲をするというようなことになった段階におきまして、そういった問題が出てまいろうかと思います。こういった面につきましてのまだ研究それ自体、どういう一体人間に影響を与えるかというような点につきましては、確かにいろいろな漁類への毒性として、ものによりまして、二十四時間半数致死濃度で最高七・五PPMから最低一万三千PPMまで種類によりいろいろ差があるようでございまして、エステル系のものは毒性が低い、あるいはエーテル系のものは高いというようなことがあるわけでございまして、その使用された中和剤によりまして出てくる影響というのはそれぞれ違うのではないかというふうに考えられます。そういった意味で、高濃度のものを使いますと、むしろ魚が死ぬとか、あるいは貝類等も死ぬというようなことでございますので、そういったものが人間の口に入るというようなことは万が一なかろうというふうに考えるわけでございますが、なおこれらの魚に対する影響、さらにその魚を食した場合の人間への影響等につきましての実験データ等につきましては、十分なものがないというふうに承知いたしておりますので、今後これらにつきましては、われわれも研究を深めていかなければならないというふうに考えております。
  131. 伊部真

    ○伊部真君 これはいまのところはどの程度かということが明らかでないようでありますけれども、しかし沈下性でありますから、したがってかなり長期にというふうなこともいわれているわけですね。そうなりますと、これは補償の問題にも問題がありますが、補償補償なりにその問題で検討するとして、一番問題なのはやはり人体に対する影響だと思うのです。したがってこれが完全にだいじょうぶだというふうに言い切れないとするなら、やはりこれは直ちに、この事故一つの見通しがつけば直ちにやはり手を打たないと、いわゆる第二水俣のようなことにもしもなったとしたら、これは大きな政府責任だと思うのです。政府責任だけでは済まされぬことです。したがって、この点については厳重な配慮をしなければならぬと思うのです。  そこで、いまいろいろな性能の中和剤によって影響力も違うと言われました。何が何ぼ使われてということについては十分掌握できるという状態ですね。その問題についてやはりどこが監督する立場にあるのか、水産庁なら水産庁のほうで、そこで何をどれだけ使ってということについても十分掌握をして、一段落をすれば、やはりそれは住民に対して明らかに魚を食べてはいけないとか、そこの魚は食べてはいけないとか、漁民だけではなしにやはり公開をしなければならないというふうに思うのですが、この点についてはどうですか。
  132. 手塚良成

    政府委員手塚良成君) いま処理剤は私のほうでこれを集めましてそして現地に送り、あるいは現地にありましたものをまぜてこれを使用する。いま蓄積をしているわけですが、これは主として六社のメーカーからこれを集めたものを使っております。したがって現在持っております九千二百かんのものがどこのメーカーのものが幾らであるか、どういうものを、どこのものを何かん使ったかというようなことは、はっきり記録としてもあとへ残りますので、そこのメーカーの内容のものを分析しますとその成分はわかる、こういうことになると思います。
  133. 伊部真

    ○伊部真君 これはもう一ぺん確かめますが、その薬を使ったために影響力が起きる、濃度によるでしょうけれども、ということになれば、これはいま私言いましたように、めどがつけばそれについて公開をして、ある程度自信が持てるまでは魚を市場に出さないようにという処置はできますか。
  134. 太田康二

    政府委員(太田康二君) まあ今後の推移にもよりますけれども、御指摘の点一々ごもっともでございますので、私どもそういうことを念頭に入れて、当然これからの対策を考えていかなければならないだろうと思います。慎重に検討さしていただきたいと思います。
  135. 伊部真

    ○伊部真君 終わります。
  136. 田代富士男

    田代富士男君 私は運輸委員会でこの二、三カ月のことを振り返ってみましたら、まず最初に、「ばんだい」号が横津岳に衝突をいたしました。あの事故のときに私は運輸大臣に、これはただ単なる航空事故として終わったのだが、次から次と事故が累発することは間違いない、陸海空、こういう事故が起きることは間違いありませんよと、こういう意味の、運輸大臣に対しまして要望を申し上げました。それに対して運輸大臣は、積極的に責任を持って取り組んでまいります、こういう御答弁をいただきました。しかし、運輸大臣が直接責任はないかわかりませんけれども、しかし所管大臣としての責任は負わねばなりません。あれから全日空と自衛隊機との衝突事故がありました。陸上におきましては、近鉄事故のあのような大きな事故が起き、また昨日は第二の三河島事件になるかといわれた。幸い事故になりませんでしたが、御徒町駅で国電が停車したときの措置ですが、全部乗客が線路上におりた。あの車掌のとった措置というものは、誤まった措置をとっておりますが、一分前に電車が通過している。あれが一分あとであったならばどうなっていただろうか。まあこの問題はきょうは国鉄と関係がありませんから避けますけれども、そうこうしているうちに海の事故。このような陸海空すべての事件が起きてきております。私何か狂っていやしないだろうか、そのように思うわけなんですが、事故のたびごとに、積極的に取り組んでまいります、そういう大臣の答弁をいただいておりますけれども、一体これをどのようにお考えになっていらっしゃるのか、まず最初に大臣の決意をお聞かせ願いたいと思います。
  137. 丹羽喬四郎

    ○国務大臣(丹羽喬四郎君) いま御指摘のとおりでございまして、交通機関によるところの事故が続発をしておりまして、国民に多大な御不安をかけまして、何とも申しわけないと思っておる次第でございます。再三でございますが、私運輸大臣に就任いたしまして以来、まず輸送機関の一番の根本は、安全確保が第一だろうということを念頭に置きまして、微力ではございますが、懸命の努力をしてきたつもりでございます。しかしながら、その微力のために次々にそういったいま御指摘がございましたような事故が起こりまして国民に御不安を抱かせましたことは、何とも遺憾に存じている次第でございます。  実は航空の問題、これにつきましては、御承知のとおり、事故が起こりましてから直ちに航空五カ年計画の、ことにそのうちの保安体制につきましては、これを三年に繰り上げてやる、あるいは管制官のいろいろの勤務の状況あるいはその他の軍民の航空訓練空域の分離の問題、特別管制空域の設定の問題等々積極的にやってきたつもりでございます。しかしながら、まだまだ至りませんで、全日空の事故を起こしたりなんかをいたしておりまして、自来も引き続きまして事故の絶滅を期するように、各方面に細心の注意を促して今日まで来るとともに、またいろいろの施設の点におきましても積極的に手を打たなければいかぬということで、来年度予算につきましても、それらの点を重点として整備をするようにということを、いま指示をしている次第でございます。  また陸上運輸機関につきましても、それらの点につきまして、私も就任早々国鉄の新幹線の安全装置状況を視察しますし、みずから機関車によるところの安全装置を見てきてまいり、施設その他につきましても、安全施設装置につきましていろいろの指示をしてきた次第でございますが、あれらの事故が起こりまして、一そうこの安全に対する関心と、そうしてまたいろいろそれをめぐるところのあるいはダイヤ編成の問題、あるいは安全装備の問題あるいはまた複線化の問題その他の点につきましても十分なる注意を払い、そのつど事故の直接経営者に対しまして厳重の注意を促して、また設備改善をさせるとともに、それらの施策につきましても十分に注意を払っているつもりでございます。  また海の問題につきましても、私もただいま御指摘がございましたが、これまた海上でそういったようなことを起こしてはいかぬということで、海上輸送の安全確保ということにつきまして種々考えをめぐらせまして、たとえばカーフェリーにつきましては、カーフェリーで万一火災事故でも起こりまして、また相当やはりガソリンも積んでおりますので、そういったようなものの船中火災でも起こしまして、万が一にも人命に損傷等があってはいかぬというので、十月の初旬にカーフェリーの安全対策の強化につきまして、関係各局長集めまして協議をいたしました。構造の問題また操縦士の資格の問題その他につきましても対策をつくりまして、各会社に指示を与えて着々それの実行を促している次第でございまして、またただいまお話がございましたが、こういったような公害を伴う危険物を持っている船舶の運航につきましても、まず一番に事故を起こさないことが先決である。それがためには浦賀あるいは瀬戸内海あるいは伊勢湾等の狭水道の問題、これらにつきましても、私直ちに海上保安庁の艦艇に乗りまして浦賀水道を視察し、まだそれらに対するところの安全施設その他も視察をしてまいりますとともに、これらの対策につきまして、一刻も早く海上交通安全法を制定いたしたいということで、ただいませっかく努力中でいる次第でございまして、これはまあたびたび起こして言いわけになるということで、おしかり十分承知している次第でございますが、それらの点につきましては、いかにいたしましても事故の撲滅を期しまして、そして国民の皆さまに御安心をいただいて海上交通の安全をはかっていく。たとえば物資の輸送につきましても遺憾なきを期したいということで、せっかく努力をしている次第でございまして、たとえば港湾の施設につきましても、輸送基地の多いところにおきましてはシーバースをなるべく外海につくるとか、いろいろの指示をいたしている次第でございます。しかるにこと志と反しまして次々に事故が起こりまして、何とも申しわけない次第でございます。諸先生の御鞭撻をいただきまして、あらゆる方面の御協力をいただいてその安全対策の確立に励んでまいりたいと、こう思っている次第でございます。
  138. 田代富士男

    田代富士男君 いま大臣がお答えになりましたが、この陸海空一つ一つ私はほんとうは取り上げて、その原因がどこにあったかということを大臣に聞きながら、この質問を進めていきたいと思いましたが、時間がありませんから、一言でそれをまとめて申し上げますと、この空の事故、陸の事故、あるいは今回の事故につきましても、まあ今回の「ジュリアナ」号の事故につきましても、海上保安庁で現在取り調べ中だと思いますが、初歩的なミスでこういう事故が起きた。あの近鉄事故もほんとうに考えられない初歩的なミスで事故が起きた。今回のことも、国籍が違うということはあるでしょう、それは指導管轄は違うと思いますが、これをただ単なる国籍の違う船とせずして初歩的なことで、こういう波の高いときにはどうすべきか、エンジンも始動してこなければならないことは当然きまっているのです。それを怠り、走錨をされてしまったということは、初歩的なミスだ。初歩的なことでこういう被害が大きい、これが陸海空の事故を通じて一言で言えることなんです。この問題を私は一つ一つ取り上げたいのですが、その問題点をさらに反省しなくちゃならないと思うわけなんですね。  それから私はこの新潟のいろいろな事情を聞きましたが、新潟県内は十月、十一月、十二月になりますと、西高東低という典型的な冬型の気圧配置におおわれるという特性があります。これは新潟特有のこういう気圧配置です。こういうわけで、三十日の朝も平均して十三メーターあるいは最高二十メーター以上の風が吹いている。これはこういうところだ、そして今回のリベリアタンカーの「ジュリアナ」号だけではなくして、新潟県内の一帯の海岸近くではちょいちょい入港を待っている、そういう船が今回事故が起きたような現象を起こしていたという、こういう事実がだんだんと明らかになってきているわけなんです。私はこれは運転手の初歩的なミスと同じように、どうしても太平洋沿岸の主要港に目が移ります。どうしても新潟港というのは、これはローカル港になりますから、そういう一つ一つ事故が起きてきた時点において、そのためにこういうことを参考にいたしまして、沿岸で座礁するかわからないというわけで、保安施設だとかそういうものを事前に——これは結果論でありますけれども、やっていたならばこういうことにならなかったんじゃないか、こういう一連の初歩的なミスと同時に、こういう配慮をしていかねばならないと思いますが、大臣どうでしょうか。
  139. 丹羽喬四郎

    ○国務大臣(丹羽喬四郎君) ただいまのお話は、私もそのとおりと思う次第でございます。今回の事故、まだ原因がはっきりしておりませんが、投錨する場合にエンジンの始動を中止したとかいうことを承っておりまして、これはほんとうに船舶を操縦する一番初歩的の過失をおかしているというふうに思う次第でございます。それとともに、やはり投錨地につきまして、これは検疫所あるいは水先案内を待つというようなところで、そこに置いたと思う次第でございますが、投錨地の地位を、これらもあとのことになりますが、よほどわれわれも立ち入ってこれを注意しなきゃいかん問題があるのじゃないか、こういうふうにも感じた次第でございます。これは初歩的のミスがまず第一番でございますが、御指摘のとおり、私もそれを感ずる次第でございます。そういう点につきまして、やはりこれからは石油の基地とかそういったような重大——ややもすると危険をはらむ港湾につきましては、よほど私どもも細心の注意を払いまして、そしてそういった、ことに外国の船舶——われわれの指導の及びがたいものも入ってくるようなところにつきましては、よほどこちらも注意をいたしまして、そうしてそれらに対する指導、施設の整備をしていかなければならないということを感じているところでございます。
  140. 田代富士男

    田代富士男君 だから、これはこの委員会でやりとりしていてもしかたありませんし、毎回言っていることですから、ほんとうにその点は大臣、解決してもらいたいと思います。だから未然に、こういういま申し上げましたようなことが、たとえ少しでも実行されていたならば、まして外国船に対してこういう気圧配置になっているからとか、また砂地であるからと、そういう通達でもあるいはそういう連絡でも未然にしているならば、こういうことにはなっていないと思うのです。こういう点から言うならば、私は一端の責任があるんじゃないか、大臣だけを責めるわけじゃありませんけれども、だからあらためてひとつそれをやっていただきたいと思います。この第二の「トリー・キャニオン」事故だともいわれておりますが、いまこの委員会でもさまざまその事故処理につきまして質問がされましたから、あえてそれは避けますけれども、いま申し上げましたイギリスの「トリ−・キャニオン」事故のときには、これは十数日間にわたりましてオイルが流出した。最後は爆弾によって焼却をして処理をしてしまった。もちろんそういう乳剤等は使いましたけれども、最後はそういう処理で終わった。また、大きな事故といたしましては、御承知のとおり、サンフランシスコ湾で起こりました「オレゴンスタンダード」号、「アリゾナ」号、あるいはサンフランシスコでありました油田のオイル噴出事件といったような事件がありました。このときにアメリカのとった処置というのは、当然そういうような薬剤によるところの処置もとろうとしたんでしょうけれども、これは単純にも麦わら等の素朴なそういうもので解決したといわれております。こういう大きな事故の過去を振り返ってみた場合に、私は今回、新潟のこのリベリアタンカーの「ジュリアナ」号の処置に対しまして、それは運輸省あるいは海上保安庁長官をはじめとして最大の配慮をしていらっしゃると思うのです。日本の船であるならば指導のしようがあったと思いますが、いかんせん外国の船でありますから、保安庁長官としてもたいへんだろうと私は思うのです。しかし、その被害を受けるのは日本の国民です。  そこで、いまいろいろそういう薬剤を用いまして処理をされようとしておりますけれども、私はこの過去の二つの例を申し上げましたけれども、こういうことから考えて、特にサンフランシスコにおけるところの事故処理につきましては、やはり環境保全という立場でこういうことがとられた。今回の場合はやむを得なかったのか、この点につきましてひとつ大臣お願いいたします。
  141. 丹羽喬四郎

    ○国務大臣(丹羽喬四郎君) いまの御質問の御要点でございますが、あるいは油の処理剤を使うとか、オイルフェンスを使うとか、そういったような点につきまして、それらよりほかに方法がなかったかと、こういうことでございますか。
  142. 田代富士男

    田代富士男君 そうです。
  143. 丹羽喬四郎

    ○国務大臣(丹羽喬四郎君) いまの点につきましては、ちょうど先生まだお見えにならないときにだいぶ議論がございまして、詳細、保安庁長官から御説明いたしましたんですが、いま出ております推定三千六百キロリットルの油につきましては、やはりそういったような中和剤を使いまして早急にそれらを固まらす、また流出を防ぐためにオイルフェンスを使うというような方法以外にはいまの技術ではない、こういうことでございます。また、しかし本日は幸いにいたしまして六メートルくらいのいま風速になっているそうでございますが、昨日までは十七メートルあるいは十五メートルのあれでございますので、その散布さえもむずかしいというような状態でございまして、申しわけない次第でございますが、手をこまねいているというような状態であった。それがためにヘリコプターで上から投下させるとか、海上から投下させるとか、いろいろな方策を講じたような次第でございますが、いまお話がございましたような、むしろむしろとか木材を投入したほうがいいんじゃないかというようなさらに原始的な方法よりないんじゃないかということで、それらもくふうしてやっているような次第でございます。ただ一番の心配なのは、あとに残りました相当多量な油の船倉、これはいま二つに分かれておりまして、これを瀬取りというそうでございますが、いかにして早く抜き取りまして安全なる地帯に油を移すかということが、いまの一番の眼目になっておりまして、これをどうするか。これはやはり瀬取り船を持ってくる前にもどうしてもサルベージの力をかりなければいかぬというので、サルベージにもただいま交渉しておりまして、それまでにやはりその船があまり動揺しないようにアンカーによりまして動揺を防ぐとか、定着をさせるとかというようなときに、いろいろな投錨であるとか、あるいはロープをどう使うかというような技術につきまして、関係各方面とせっかくいま折衝しておりまして、それらの事後処置をいまやっている最中でございます。しかし、非常に、科学技術がこういうふうになってきましたけれども、公害に対する技術、その予防がおくれていると申しますか、荒天の場合、風速の多い場合、先ほど御指摘がございましたように、新潟方面は特殊のやはり風速、天候であるにもかかわりませずそういったようなときに作業をするということが、非常に至難だそうでございまして、それらの、天候一つのやはり相当大きな頼みにして、それで続けているというのが実情でございます。
  144. 田代富士男

    田代富士男君 私は、いま質問した趣旨は、大臣そのことを含んでお答えになったと思いますが、私は、イギリス海峡のものにつきましては、中和剤を使わなくて、爆発さした。サンフランシスコの場合は、こういう薬剤を使わずに、環境保全ということを主体にしてやった。だから今回も、環境保全という立場でやるならば、それはオイルフェンスを使うのは当然です。そういう薬剤等を使わずに、これは何とかできないか。しかし、おそらくそれもできなかっただろうという、さっきの委員会のあれで承知しておりますけれども、そういう四千何百トンというオイルの流出新潟のその一帯がたいへんなことでしょうけれども、それ以上の第二次被害といいますか、公害を考えた場合の被害が大きいのじゃないかと思うのです。それを心配するわけなんです。だから、一時的な処理とすれば、中和剤とかそういうもので処理できるかわかりませんが、それは一時的なものです。長期的にみた場合の影響ということを考えて、私は申し上げたわけなんですけれども。  まあ、そういうわけで、石油の影響というものは、重油か、あるいは原油か、あるいは燃料油か、そういう種類によりまして、いろいろ異なると思いますが、今回のリベリアタンカーの「ジュリアナ」号の場合は、海洋生物に有毒な芳香族の成分をたくさん含んでいる。この成分というものでそういう海中におりますところの微生物というものは、二、三日で壊滅的な打撃を受けてしまうんだ。まして、これが沿岸から遠く離れた沖合いであるならば、まだしも沿岸に生息するそういう微生物というものは、プランクトンをはじめとした微生物は幾分か免れるけれども、いかんせん近くで起きた。これはもう総なめでそういう打撃を受けてしまう。  その心配が一つと、また、私が申し上げるまでもなく、こういうような芳香族成分を含んだものは揮発しやすいわけなんです。揮発しましたあとの成分ですね、化学成分が変化をいたしまして、油と水がまじり合うようになった場合には、油が水玉状になるものと、今度は油の中にあんこのような水分が入りまして、ねばねばしたものになる。これがいろいろな漂流物を囲んで廃油ボール——ちょうど私は海上保安庁からの「海上保安の現況」というのを前に読みました折りに、こういうことがあるんだなということで、タール状油塊漂着事件、これは鹿児島県の指宿市の沿岸に廃油ボールと呼ばれる多量のタール状油塊が漂着した事件、それから茨城県、伊豆諸島にもこういうものが多く発生している。八丈島におきましては、サッカーボール大というような、そういうものもきている。これが始末におえないわけなんです。これに対してどうするか、海上保安庁でもお困りなんです。だから、ここでそういうような中和剤をやったあとの問題、これに対して、もうそこで解決したらそれで終わり、運輸省としての責任はそれで終わるのか。  また、これはサンタバーバラ沖の原油噴出事件のときに、そういう海鳥にどれだけの被害が起きたか。これはカリフォルニアの狩猟局の調べでは、六九年四月までに三千五百羽以上のカイツブリあるいはペリカンが死んでいるわけなんですね。それから、哺乳動物への影響もあらわれている。イルカ、アザラシが十数頭死んでいる。また、カリフォルニアのコクジラ、そういうようなものも死んだということが確認されているわけなんです。今度は、いまも申し上げました「トリー・キャニオン」号事件がありましたときも、英国の自然保護協会の調査では、二万五千羽以上の海鳥が死んでいる。救い出された七千八百四十九羽の中に、二カ月後にはたった四百五十羽しか残らなかった。また、そういうような原油が近くの港に入り込んでしまい、魚類、フジツボ、イソギンチャク、こういうものが全部だめになってしまった。  だから、問題は目に見える被害だけじゃないのです。大きな被害は、海の中というものは生命の発祥地といわれるものです。そういうようなさまざまな微生物が、変形しました化学物質、原油の流れによりまして、これが全滅してしまう。ましてプランクトンは海の牧草といわれております。それは、プランクトンは、一PPMによっても全部やられてしまうともいわれております。こういうような被害をどうするか。昨年の九月、東京で開かれました生物地球化学国際会議におきましては、英国のトッド博士がもう一つ危険な点を言っておりますね。魚というものは、においをかいでえさをさがしたり、あるいは敵から逃げたりしているけれども、重油や廃油、そういうようなものによごれると、石油の成分のにおいによりまして、いわゆる魚の臭覚を鈍らしてしまう、麻痺させてしまう、そういうようなことを言われております。いま私の前に質問された委員から、魚はどうするのだということがありましたが、こうなったらどうなるか。私はこれを心配している。だから私は、こういう意味から、今回の事故に対しまして中和剤を使った。これに対して、一時的に解決できるけれども、これは与える影響、環境汚染、生命の発祥地ともいうべき新潟一帯が全滅してしまう。ここで私は大いに考えなくちゃなりません。  そういう意味からいまさっきの質問もしたわけなんですが、そこでいま、対策といたしましてはおおむね議論されたと思いますが、やはり第一番目には、オイルフェンスを使ってその拡大を防ぐという、これは一つの行き方でしょう。また、「トリー.キャニオン」のときには焼却したでしょう。これも行き方でしょう。また三番目には、回収をする、その流出したものを回収をするという、これも一つの行き方でしょう。化学処理をするという、これも一つの行き方でありますけれども、しかしこれ以上の被害が残る。しかし、いま申し上げました四つのこと、さんざんきょう議論されたから、私これを省略しますけれども、第一番のオイルフェンスの問題に対しましても、これは今回の波浪では使用できなかった。一メートルではだめだ。現在二メートルのものを開発中である、これはおぼつかない。また二番目の問題、焼却をすることはできない。あまりにも岸に近いために。三番目の、回収するといいますか、スイーパーという、これは現在海上保安庁では一隻開発中であるとか、いま長官が申していらっしゃいました。出光興産にあるきりです。これで対策する、これはたいへんじゃないかと思う。出光興産から一々借りてくる。太平洋沿岸におりますのを、日本海に行くのにどれだけ日時がかかるか。こういう意味で、このスイーパーの問題につきましても、私は読んでおりまして、タンカー事故の災害防止に対しては、消火の面だけの、船舶に対しては力が入れてある。が、そういう油田の廃液を収集する船等に対しましては、それがされてないのです。そういう点につきましては、今回のような大きい事故はたびたびあってはなりませんけれども、小規模の事故であったならば十二分な効果を発揮すると思います。今回まだ予算の面におきまして検討できるならば、そういうスイーパーも検討してもらいたいと思うわけです。これは私は大臣にお願いしたいわけなんです。それから化学処理につきましても、これは金額もいろいろありましょうが、一トン十万円ぐらいかかる。こういうことを考えますと、今回とられた処置というものにつきましては、私は一時的な処置でありまして、環境保全というものに対して、環境破壊というものに対する罪償い、これは現地の漁民の人々に対しましては金銭的な補償ということについてもやられるでしょう。これも一時的な問題。だから、この環境を破壊した責任というものに対して、運輸大臣はどのように思っていらっしゃるのでしょうか。いま、私はまとめて申し上げましたけれども、いかがでございましょうか。
  145. 丹羽喬四郎

    ○国務大臣(丹羽喬四郎君) ただいまの、油の流出によりまして、海の資源と申しますか、海の生物が壊滅する。どのくらいの程度の壊滅になるか、油の種類にもよると思う次第でございますが、それらの点につきましては、現実にどのくらいの環境が破壊をされるかということも十分検討していかなければならぬと、こういうふうに思っておる次第でございます。  また、先ほども水産庁長官からお答えがございましたが、できれば魚族保存、それから環境保全のためには、あるいはわらを投入をする、あるいはまたバキューム船その他によりまして油を吸い取ってしまう、また木材を投入してやるということだけで済めば、そのほうがベターである、望ましいという答弁がありましたが、私もそのとおりと思う次第でございますが、今日の事態におきまして、それらの方法がまいりません場合におきましては、どうしても処理剤を使わなければならぬということになりまして、承りますと、処理剤も三十数種類あるそうでございまして、その毒性その他につきましてもいろいろあるそうでございまして、それらの解明、それからまた、その処理剤がいわゆる毒性のない、むしろ油をあれいたしまして、一般の生物に影響のないような処理剤がつくれるかどうかというような、科学的開発がまだおくれておるようでございます。それらの点につきましても十分させますと同時に、環境保全の点につきましては、御指摘のとおり、やはりそういったような不測の事態によりまして破壊いたしましたことはまことに遺憾でございますので、それらの環境保全につきましては、事後におきましても十分その破壊が少なく済むように努力をしていきたい、こういうふうに思っておる次第でございます。
  146. 田代富士男

    田代富士男君 時間があまりありまん。だから、いろいろお聞きしたいことがたくさんございますが、いま申しますとおりに、現在行なわれるべき対策四つ述べましたけれども、それよりも何よりも、その四つのことで解決はできないというならば、それを起こさせないように、タンカー自身を問題にして、そしてそういうオイルの流出を防ぐようにしていかなくちゃならない。そういう意味におきまして、いまIMCOにおきましても、たびたび話が出ておりますとおりに、事故が起きた場合、海に流出する油は三万立方メートルに押えるということがきめられているわけなんです。ところが、十一月二十日には四十七万トンのタンカー建造許可が出ておる。これは四十七万トンのタンカー事故を起こした場合にはどうなるか。こういうような企業本位の現在の運輸行政というものを環境保全の行政に変えないことには、私は根本的な解決にならないと思います。  私は、その大型化することに対しましてなぜ申し上げたいかと言えば、「ぼりばあ丸」あるいは「かりふおるにあ丸」等のこのような事故が起きております。これもいろいろ取り上げようと思いましたが、時間がありませんが、この問題の原因すらも明確にされてないときに、四十七万トンのそういうものをやるという、ここに問題があると思うのです。そういう意味におきまして、こういう企業本位の運輸行政を改めて、当分の間、大型タンカー等は環境保全という立場から私はこれを中止すべきだ。人間が人間として地球上に永遠に住んでいきたいと思うならば、一時的な利益のために、利潤追求のためのそういうようなことを改めて、人間本位の姿勢に返っていかなければ根本的な解決になりません。四つの方法で解決はできないのです。これが一つです。  また、私が心配するのは、LNG船、液化天然ガス船が現在、これはいよいよ技術もヨーロッパ並みになってきたということで、今度石川島播磨、あるいは横浜第二工場を専門工場にして建造しようとか、日立造船、川崎重工、三井造船がそれぞれ専門設備の準備を進めておりますけれども、いまのタンカー船とあわせまして、液化天然ガス船に対する対策は、これはまだ事故が起きておりませんけれども、これが起きたならばたいへんです。これに対してどのような対策——今回のタンカー事件であっても、いま申し上げた四つの過去の対策は通用しません。だから、この液化天然ガス船につきましての対策はどのようにしていくのか。これもちゃんと対策ができた上で許可してやっているのかどうかという、この点につきましてお願いしたい。  しかし、もうすでにそのような十万トン、二十万トン、三十万トンのタンカーがありますから、今後つくらないにしても、おそらくそれは航行するでしょう。ですから、私はいまからはそれを中止する。と同時に、大事なことは、私は大事なことを申し上げたいのは、これもいま委員会で問題になったかと思いますが、海上交通法の早期実現をはからなければならないと思うのです。どれだけ船の大型タンカーを制限しましても、これが実現しなかったならば何にもならないと思うのです。だから、特にタンカー事故昭和四十五年には百七十隻、一昨年よりも三十八隻もふえておる。そういういろいろデータもありますが、こういうわけで、現在のフェリーとの関係とか、いろいろそういう事故状況が白書に出ております。その白書も、私はこまかくは読んでおりませんが、あらゆる目を通しました。そういうような問題で、白書には一片の現況報告にとどめられておりますけれども、現在のこの問題を検討する上におきまして、海上交通法というのは、陸上でいうならば、主要な国道や県道の交差点にあたるべきものじゃないかと思うのです。そういう意味におきまして、水先案内の強化、あるいは狭い海峡を通過する場合の速度制限の義務づけや、あるいは一般商船や漁船を含めた総合的な海上交通の規制強化、そのためには船舶全体の運航状況をとらえたり、航行状況の交換や、あるいは運航指示、そういうような船舶情報センターというものを設置するなりして、これを早急にやらなければならないと思うのです。  いま一番たいへんなのは浦賀水道です。御承知のとおり一日に九百隻くらいの船が出入りしておる。もし万一、東京湾で三十万トンのタンカーが衝突して原油が全部流出したとするならば、東京湾全体におきまして厚さ一ミリのオイルの膜ができあがる、このように言われておるわけなんです。まして、そのように東京湾全体に一ミリのオイルの膜ができ上がり、そこに引火したならばどうなるか。東京湾の周辺には精油施設が十三カ所あります。この十三カ所に引火したならば、これはたいへんなことになってしまう。こういう意味から、浦賀水道につきましては、海上保安庁におきましては、交通規制を幾分やっております、いま。しかしこれは一時的なものです。根本的なものになっていない。こういう点から、私は早急にこれを国会に提出しまして、これを実施しなくちゃならない。  だから、第一番目には大型タンカーの中止、それからLNG船の対策、それから海上交通法の早期実現をはかるべきである、こういう点を私は要望したいんですけれども、大臣のお考えをお願いいたします。
  147. 丹羽喬四郎

    ○国務大臣(丹羽喬四郎君) 一番最後の、海上安全交通法の国会での御審議は、ぜひお願いをしたいと思って、せっかく努力をしているところでございます。御承知のように、私ども前々から、その法案を御審議を願いたいと思っている次第でございますが、一番の問題は、漁業との調和の問題漁業補償の問題、これらが一番の大きな問題でございまして、本日水産庁長官出席でございますが、非常に前向きで検討していただいておりますので、ぜひ次の国会には出したいと思っております。せっかく努力をしているところでございます。  お話の大型タンカーの問題でございますが、これは私は再々申しましたとおり、運輸行政の根本はあくまでも安全度というところにあるから、安全の角度からこれを許可する、建造を許可するとか何とかをきめるべきであるということを、私は強くこれを指示して、今日もその方針でまいっている次第でございますが、大型タンカーを直ちに中止するかどうかという問題は、今日石油需要が非常にふえてまいりました問題と、やはりこれは一つは、考え方といたしまして、航空機のジャンボ化の問題と相通ずる問題であります。いま四十七万トン、イギリスにおきましては今度五十万トンのものを五隻つくろう、こういうふうな計画があるというふうに承っている次第でございますが、これらの問題も、できましても、安全度がむしろ小型よりも非常に注意深く、また設備等におきましても、建造費をよけいかけてつくっているか、そのほうが運賃に——大型化でございますから、コストといたしましても金をかけるのが可能であるかどうかというような経済的な問題、そのほかいろいろ問題がございまして、それらの点も勘案をいたしまして、これはやはりきめてまいらなくちゃならないと思う次第でございます。  もとより、これらの船が東京湾に入るとか、瀬戸内に入るとか、伊勢湾に入るとかというようなことがありましてはあれでございますが、今回、先般認可をいたしましたのは、鹿児島の沖の、湾外のところにシーバースが整って完備をしておりまして、そこでまた万一の場合におきましても処理態勢も十分まあできている、海上保安署も置くというような体制でやっておりまして、よその石油基地に持ってまいります場合には、小型タンカーに分散をして持っていくと、こういうような次第でございますので、私も断を下した次第でありますが、その点につきまして、一番船舶行政、まあ日本が一番主導的地位に立っている次第でありますが、その技術者として、船舶局長が先般もIMCOに参りまして、主導的発言をいたしまして、それらをきめる、世界も納得するというようなただいま水準にいっております。安全面も、私はたびたび確かめている次第でありますが、確信を持って安全面は可能であるということで私は認可をした次第でありますが、将来とも、ただいま御指摘がございました点につきまして、万一のことがあればたいへんでございます。安全面の確認ということを中心といたしまして、これらの面を慎重にいまの御忠言を踏まえまして検討してまいりたい、こう思っている次第でございます。  また、LNG船につきましては、ただいまのところ、私はあまり具体的に出ているかどうか聞いておりませんので、船舶局長からお答えをさせます。
  148. 田坂鋭一

    政府委員(田坂鋭一君) LNG船につきましては、現在建造されましたものが日本に入ってくるという問題と、それから今後、先生の御指摘の日本が今後どういうふうに建造していくかという問題、二点あろうかと思います。  前段の、外国船でLNGが日本に入ってくるという事例は、最近、大阪あるいは東京に起こってまいっております。これにつきましては、まだ私どもそれぞれにつきまして明確な基準の作成を終わっておりませんが、それぞれにつきまして、関係者におきまして委員会をつくりまして詳細な検討を行なって、所定の措置をとらせて入港させるという措置をとっておる次第でございます。  次に、わが国におきますLNG船の建造でございますが、現在、大型船を建造し得る会社数社でございますが、これらが外国の技術と提携いたしまして、わが国におきまして実際に建造する場合の基礎的な問題点、そういうものにつきましての検討を進めておる段階でございます。そこで、これらの建造は、需要がわが国に起こりましたら、大体昭和四十八、九年ごろ以降に建造し得る態勢ができるという段階でございます。なお、これに対処しますための私どもの安全基準の作成でございますが、これにつきましては来年度予算要求をいたしておる段階でございまして、来年度以降十分な態勢を、建造の起こりますまでには整えるというふうな考えで準備いたしているところです。
  149. 田代富士男

    田代富士男君 いま私は、東京湾の事故が起きた場合、三十万トンのオイルが出た場合は、全域にわたりましてもうオイルで一ぱいになってしまうということを申し上げましたけれども、特に私が一番心配するのは、東京湾の第三海堡です。ここでタンカー事故が起きた場合どうするかと。だから、この点は運輸大臣に、特に第三海堡に対しましての監督といいますか、その点厳重にお願いしたいと思うんです。  で、いまこういう今回の事故が起きまして海がよごれるといわれておりますが、ことしの六月から、こういう廃液の処理につきましての法律が実施されることになりました。しかし、そのような廃油処理所ですが、こういう廃油処理施設につきまして一例を申し上げますと、静岡県の清水港で、昨年の十二月の一日にそれが発足をしました。そして今日に至りまして、その処理を受けた船の数がどれだけであるかといえば、たったの二十二隻です。ところが、どのくらい出入りしているか。百隻余り出入りしているわけです。百隻ぐらい出入りしているのに、二十二隻です。だから、海をよごさないために、そのような国際法まで検討して、われわれはつくってまいりました。その施設が利用されてないのです。こういう点につきましては、こういう大きな事故が起きてこそこの汚濁の問題につきまして検討されますけれども、こういう問題に対しましても、今度運輸省といたしまして厳重に、環境を保全するという立場運輸大臣臨んでいただきたいと思います。  だから、最初に申し上げましたとおりに、この事故は初歩的な問題である。だから、事故が起きてからではおそい、未然にどう対処していくかということが問題でありますし、われわれが二十一世紀まで生き延びていくためにも、われわれの子孫のためにも、残していかなくちゃならない、そういうプランクトン一つにしましても、どんどん死んでいっている。これを保存する上におきましても、私は強く運輸大臣にお願い申し上げる次第でございます。今後、どのようにそれに対処していかれるのか。すべてをまとめまして運輸大臣から一言お願いしたいと思います。  以上で私の質問を終わります。
  150. 丹羽喬四郎

    ○国務大臣(丹羽喬四郎君) ただいま非常に貴重な御意見を承った次第でございますが、東京湾の第三海堡につきましては、すでにもう、これをしゅんせつをしようということで、十億円の予算を組んでおる次第でございます。ただ、先ほど申しました海上安全交通法と申しますか、それとの漁業補償のからみ合いがございまして、それはただいませっかく水産庁の協力を得まして、それらの問題を早期に実現しようというつもりでいま取り組んでいるところでございます。  お話がございましたとおり、私も、東京湾はもちろんでございますが、瀬戸内、伊勢湾その他の狭水路の問題は非常に憂慮をしておる次第でございます。これらの問題につきましては、ほんとうに積極的にとり進めてまいりまして、そうして、いつも事故が起こってからあとに、積極的、積極的といってもしようがないじゃないかというおしかりを受けておる次第でございますが、絶えず積極的に、それらの保安体制につきましては進んでまいる。ただいま一番の問題は、安全の確保と環境保全、公害防止ということがやはりいまの内政上の一番大きな問題であろうと考えておる次第でございますので、一そうのひとつ御鞭撻と御指導をいただきまして、それらにつきまして万全の策を講じてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございますので、一そうの御協力のほどをお願いいたします。
  151. 森中守義

    ○森中守義君 たいへんおそくなっていますので、詳しくはまた次にお願いすることにして、さっき大臣が言われるように、いわば生産原料ということでかなり原油の需要が旺盛になる。したがって、おそらくタンカーによる輸送ということは相当これからもひんぱんになることと想像されるのですが、結果的に、どうなんでしょうかね、こういう事件などが発生するたびごとに問題になるのですけれども、こういう機会にもう一回対応策を洗い直してみる。もちろん汚染防止法などもありますけれども、現行法のワク内で届くものは全部届かせるし、同時に、統一をとるために予算が必要であればこれもつけるということ、そういうような原則に立ち返った対策をもう一回考える。また今回この事件を見て、ひとり海上保安庁だけに対策がよかった悪かったと言うことだけでは、どうも済まぬような気がするのですね。だから、本来ならば科学技術庁あたりも、当然なこととして対策に参加すべき筋合いのものだと思うのです。むろん水産庁も。ですから、閣議あたりで大臣、一回ものを言われて、総合的な対策機関というのか、しかも長期的なものが——こういう事故というのは方程式はありませんし、場所はどこと選ばないわけですから、どこでどういう態様のものができても、政府が一体のもとに機動力をもって直ちに対策ができるような、そういう恒常的な機関の設置とか、あるいは方針とか、そういうものを一回閣議で検討してみたらどうですか。これは非常に私は急を要する問題じゃないかと思いますね。  それと、水産庁長官に、お願いでもあるのですが、たしかあれは、二、三年前でしたか、国際海洋会議が開かれた。この会議が次はいつの機会になるかわかりませんけれども、いまこういう状態でいけば水産資源はみな枯渇してしまいますよ。そういう立場からいくと、非常にものごとは穏やかではない。そこで、いままで幾つかの条約もありますけれども、こういう機会に、資源を確保する、そういうことのために、国際的な機関にこういう問題をもう一回日本から持ち出していって、共通の問題として国際会議で一ぺん検討を加えるということ、こういうことが急がれてもいいというように思うのですよ。これはもう当然、水産庁でもお考えだと思いますけれども、これもひとつ検討してみてください。むろん領海三海里の問題等も喫緊の問題でありますが、さしずめ、こういうように具体的に被害をこうむってきますと、やはり、これはひとり日本だけ一生懸命やってみてもどうにもならないようなことになりましょうから、国際的にもう一回見直してみる、こういう意味で、国際海洋会議あたりに問題を提起してもらう必要があるんじゃないかと思う。  それといま一つ、漁場ですがね、さっき長官から一通りの見解が述べられておりますが、いつ回復をするものか、ちょっと、ものごとがものごとですし、しかも非常に範囲が広い。この間、当然漁獲の禁止はやられるのでしょうね。それと、漁場の復活ということのために、精密な水産庁における海水の調査などが早急に行なわれるべきだと思うのですが、そういうことはどうお考えになっているのか。  そのことと、少しローカルな話になりますが、ちょうど港湾局長もおいでになりますので一緒にお聞き願っておきたいと思うのですが、熊本県の長洲ですね、日立造船がいっていますね。これが新しく港をつくるということで、熊本県のほうもだいぶみこしを上げたようです。ところが、それは非常に歓迎すべきことなんですけれども、実は、新しく港が拡張工事に入って、これができ上がるということになると、少し潮流の変化を伴ってきて、沿岸一帯におけるノリの栽培がどうもうまくないという意見が非常に漁協側から強く述べられているのですよ。  これは、長洲のすぐ横に横島というところがありましてね、水産庁長官よく御存じでしょう。この横島で、干拓をやったために近辺のノリが全然だめになった。それであわてて鋼管を打ち込んで、まあ何とか食いとめた。ところが、込ち込んだ鋼管が、十年くらいの予定のものが二年くらいでみんな倒壊して、死人まで出ているのですよ、その鋼管のあとにぶっつけましてね。補償問題も、ようやく水産庁長官の骨折りで決着がつきましたけれども、すぐその横っちょの問題なものですから、非常にノリの栽培者が神経過敏になっていましてね、港をつくってもらうのはいいのだがノリはどうしてくれるのだ、こういう新しい問題がいま出ているのです。ですから、港は港、ノリの栽培はノリの栽培という分離したことでおやりになりますと、またまたこれは大騒動になる。だから、港湾を着工されるような際に、相なるべくはひとつ水産庁のほうとよく相談をされて、これならば港をつくったがノリはだいじょうぶだという、そういう配慮がこの際は必要じゃないかというように考える。これは私の地元のことでまことに恐縮ですけれども、これはひとつ特段の、いますぐの返事は要りませんけれども、ぜひひとつ、そういう際には御相談を願って、沿岸の漁民に不利益にならないように御配慮願っておきたい。
  152. 太田康二

    政府委員(太田康二君) 私のほうから派遣いたしました調査官の、昨夜の八時でございますけれども、電話連絡によりますと、現地での漁場の操業は全部中止されておる。漁船はすべて港に引き揚げておる。本日ももちろんそういう状況であろうと思います。ここ当分はそういったことが続くわけでございますので、実際に漁獲が直ちに、何と申しますか、できるというような状況になるまでには、なお数日を要するだろうというふうに考えております。  それから漁場の回復の問題でございますが、実は最近におきましては、かなり水産土木の技術も発達いたしまして、澪をつくるための作澪の事業とか、客土をいたしますとか、しゅんせつをいたしますとかいう事業も、私どものほうで補助などを組んで実はやっております。しかし、この場合には原因者がはっきりいたしておりますので、結局、漁場の状態を見まして、その結果、そういったことをやることが適切な措置であるということがはっきりいたしますれば、当然、被害補償の一部の事業として、そういった事業をいたしまして、これをもって漁民への補償の一部を充てるということも必要かと思いまして、これらの点につきましては、もうしばらく推移を見まして、一応何と申しますか、一段落した段階で、先生の御指摘のとおり、研究機関等も動員いたしまして、漁場の状態、特に海底の状況等につきまして十分調査をいたしまして、いま申し上げたようなことをとるのが適切であるということになりますれば、補償の対象事業としてそういったことも取り上げてまいりたい、かように考えております。
  153. 森中守義

    ○森中守義君 熊本のほうはどうします。
  154. 太田康二

    政府委員(太田康二君) 熊本の問題でございますが、先生の御指摘のとおり、潮流の変化によって栄養塩類の賦存状況が変わりまして、ノリ等が、従来非常に高い生産力のものが生産力が落ちるということがあることは、御指摘のとおりでございます。そこで、われわれといたしましては、港湾事業なんかが行なわれる場合に、もちろん関係の省庁とも連絡をとりまして、そういったことがないようなことを考えての事業の実施を要望いたすわけでございますけれども、現実問題として、潮流の変化によってやはりいままでよりも落ちるというようなことが明らかな場合は、一部金銭の補償ということも考えられるわけでございます。しかし、そういったことよりも、漁場の生産力を維持するということのほうが好ましいわけでございますので、工事の施行にあたりまして、そういった面での配慮ということにつきまして、十分運輸省、港湾当局とも話し合いを進めてまいりたい、かように考えております。
  155. 丹羽喬四郎

    ○国務大臣(丹羽喬四郎君) ただいま御注意がございましたが、ただにこれはもちろん海上保安庁だけの仕事でございません。私どもそういう交通安全対策を立てます場合に、関係各局長相寄りまして常にやっておる次第でございますが、しかしまた、運輸省だけの問題では済まされぬもので、科学技術庁、あるいはまた海上の問題は水産庁、農林省等とも非常に関係がございますし、非常にありがたい御注意をいただきまして、さっそく私どういう方法が一番適切であるかということを検討いたしまして、閣議にもはかりまして——ただいま御承知のとおり、交通安全対策会議というものが、総理が議長になってやっております。先般の交通安全対策は、ここへかけましてできたような次第でございます。それらも勘案いたしまして、御趣旨にのっとりまして早急に計画を立てたい、こう思っている次第でございます。
  156. 木村睦男

    委員長木村睦男君) 他に御発言もなければ、本日の調査はこの程度にとどめておきます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十三分散会