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1971-10-30 第67回国会 衆議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十月三十日(土曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 瀬戸山三男君    理事 大坪 保雄君 理事 佐々木義武君    理事 田中 龍夫君 理事 長谷川四郎君    理事 細田 吉藏君 理事 大原  亨君    理事 田中 武夫君 理事 鈴切 康雄君    理事 今澄  勇君       足立 篤郎君    赤澤 正道君       荒木萬壽夫君    植木庚子郎君       小川 半次君   小此木彦三郎君       大村 襄治君    奥野 誠亮君       川崎 秀二君    佐藤 守良君       笹山茂太郎君    竹内 黎一君       中野 四郎君    灘尾 弘吉君       二階堂 進君    根本龍太郎君       野田 卯一君    羽田  孜君       橋本龍太郎君    浜田 幸一君       林  義郎君    福田  一君       松浦周太郎君    松野 幸泰君       森田重次郎君    阪上安太郎君       辻原 弘市君    楢崎弥之助君       西宮  弘君    原   茂君       細谷 治嘉君    安井 吉典君       近江巳記夫君    林  孝矩君       正木 良明君    宮井 泰良君       山田 太郎君    岡沢 完治君       和田 春生君    谷口善太郎君       津川 武一君    松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 前尾繁三郎君         外 務 大 臣 福田 赳夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 高見 三郎君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  田中 角榮君         運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君         郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君         労 働 大 臣 原 健三郎君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣         (北海道開発庁         長官)     渡海元三郎君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      竹下  登君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      中村 寅太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      平泉  渉君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 西村 直己君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      木村 俊夫君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大石 武一君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         内閣総理大臣官         房管理室長   吉岡 邦夫君         行政管理庁行政         管理局長    河合 三良君         防衛庁参事官  高瀬 忠雄君         防衛庁参事官  鶴崎  敏君         防衛庁長官官房         長       宍戸 基男君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁人事教育         局長      江藤 淳雄君         防衛庁衛生局長 鈴木 一男君         防衛庁経理局長 田代 一正君         防衛庁装備局長 黒部  穰君         防衛施設庁長官 島田  豊君         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         経済企画庁国民         生活局長    宮崎  仁君         経済企画庁総合         計画局長    矢野 智雄君         経済企画庁総合         開発局長    岡部  保君         科学技術庁長官         官房長     井上  保君         科学技術庁計画         局長      楢林 愛朗君         科学技術庁研究         調整局長    石川 晃夫君         科学技術庁原子         力局長     成田 壽治君         沖繩北方対策         庁長官     岡部 秀一君         沖繩北方対策         庁総務部長   岡田 純夫君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省経済局長 平原  毅君         外務省経済協力         局長      沢木 正男君         外務省条約局長 井川 克一君         外務省国際連合         局長      西堀 正弘君         大蔵省主計局長 相澤 英之君         大蔵省関税局長 赤羽  桂君         大蔵省理財局長 橋口  收君         大蔵省国際金融         局長      稲村 光一君         厚生省公衆衛生         局長      滝沢  正君         厚生省環境衛生         局長      浦田 純一君         厚生省医務局長 松尾 正雄君         厚生省薬務局長 武藤琦一郎君         厚生省社会局長 加藤 威二君         厚生省保険局長 戸澤 政方君         厚生省年金局長 北川 力夫君         社会保険庁医療         保険部長    穴山 徳夫君         農林大臣官房長 中野 和仁君         農林省農林経済         局長      小暮 光美君         農林省農政局長 内村 良英君         農林省農地局長 三善 信二君         農林省畜産局長 増田  久君         農林省蚕糸園芸         局長      荒勝  巖君         食糧庁長官   亀長 友義君         林野庁長官   松本 守雄君         水産庁長官   太田 康二君         通商産業省通商         局長      山下 英明君         通商産業省貿易         振興局長    外山  弘君         通商産業省繊維         雑貨局長    佐々木 敏君         通商産業省鉱山         石炭局長    莊   清君         中小企業庁長官 高橋 淑郎君         運輸大臣官房長 高林 康一君         運輸省港湾局長 栗栖 義明君         運輸省鉄道監督         局長      山口 真弘君         運輸省航空局長 内村 信行君         海上保安庁長官 手塚 良成君         郵政省郵務局長 溝呂木 繁君         労働省労政局長 石黒 拓爾君         労働省労働基準         局長      岡部 實夫君         労働省職業安定         局長      住  榮作君         建設大臣官房長 大津留 温君         建設省計画局長 高橋 弘篤君         自治大臣官房長 皆川 迪夫君         自治省財政局長 鎌田 要人君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       磯崎  叡君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ――――――――――――― 委員の異動 十月三十日  辞任         補欠選任   相川 勝六君     林  義郎君   荒木萬壽夫君    小此木彦三郎君   仮谷 忠男君     箕輪  登君   田村 良平君     竹内 黎一君   羽田  孜君     松野 頼三君   二見 伸明君     近江巳記夫君   宮井 泰良君     山田 太郎君   谷口善太郎君     津川 武一君 同日  辞任         補欠選任   近江巳記夫君     矢野 絢也君   正木 良明君     宮井 泰良君   山田 太郎君     大久保直彦君   津川 武一君     不破 哲三君   松本 善明君     谷口善太郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  昭和四十六年度一般会計補正予算(第1号)  昭和四十六年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和四十六年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ――――◇―――――
  2. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これより会議を開きます。  昭和四十六年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十六年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和四十六年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。和田春生君。
  3. 和田春生

    和田(春)委員 実は一昨日、一般の、議員ではない人たちの会合に出ておりました。そうしたところ、予算委員会でいろんなことが議論をされておって、テレビや新聞を通じて質疑の内容を聞いていることはたいへん興味があるし勉強にもなるけれども、一体、自分たち生活に一番関係の深い予算案についてはいつどこで審議をされるのですかという質問があったわけであります。聞かれてみますと、予算委員会では従来の慣例によって、広範にあらゆる国政上の問題が取り上げられておりますけれども、やはり予算そのものに対する質疑というものもたいへん大切ではないかと考えますので、きょうは予算案に焦点を置きまして、政府が唱えている社会資本増大物価安定対策税負担、その他について集中して質問をいたしたいと思います。  そこでまず、最初大蔵大臣にお伺いをいたしたいと思いますが、今回の補正予算を提出するにあたりまして、四十六年度のすでに成立した予算からの歳入欠陥総額は幾らでございますか。初歩的なところからまず御質問いたしたいと思います。
  4. 相澤英之

    相澤政府委員 数字の問題でございますので私からお答えいたします。  四十六年度におきまして歳入減少としまして見込みましたものは、予算の説明にも書いてございますが、租税及び印紙収入で四千七百五十七億円、これは年内減税の千六百五十億円を含むものでございます。それから雑収入の六百九十六億千五百九十一万三千円でございます。
  5. 和田春生

    和田(春)委員 総額五千四百五十五億円の歳入欠陥のうち、法人税が約二千九百億円マイナス、それから日本銀行の納付金マイナスが六百九十八億円、関税見込み減少五百十四億円を含んでいるというふうに説明されておりますが、そのとおり確認してよろしゅうございますか。これは数字ですから主計局長でよろしい。
  6. 相澤英之

    相澤政府委員 そのとおりでございます。
  7. 和田春生

    和田(春)委員 それから、いままでこの委員会でもしばしば質問が出ておりますけれども、公債発行額、これは補正後全体で一兆二千二百億になる。当初予算では四千三百億円でありますから、公債発行額が七千九百億円ふえている、そのとおり確認をしてよろしゅうございますか。
  8. 相澤英之

    相澤政府委員 そのとおりでございます。
  9. 和田春生

    和田(春)委員 ところで、今度の補正予算関連いたしまして、公共事業関係費として計上をされているものが二千四百七十九億円、これは公共事業関係費二千三百七十九億円にその他の施設費百億円、それから出資金が六十五億円、したがってその増額は二千五百四十四億円である、よろしゅうございますね。
  10. 相澤英之

    相澤政府委員 財政法第四条一項ただし書きにいう公債対象経費の額の増加額はそのようでございます。
  11. 和田春生

    和田(春)委員 そこで今度は、以上の数字を踏まえて大蔵大臣にお伺いをいたしたいわけでございます。  当初予算で、財政法の四条三項、公共事業費出資金貸し付け金、ただいま確認をしましたけれども、合計は一兆四千二百七十八億円である。補正が一兆六千八百二十二億円で、プラス分が二千五百四十四億円はいまも確認をしたとおりであります。ところが、当初予算における公債発行予定額は四千三百億円、補正後一兆二千二百億円になっている。そうすると、この分のプラスは七千九百億円になるわけであります。そこで、当初予算における財政法四条三項に基づく金額に対する公債発行予定額の割合は三〇%であります。補正後は七三%であります。プラス分の倍率は三・一一倍という形になるわけであります。今度の補正で七千九百億円、予定額増額をいたしました公債発行は、以上の数字関連からいって完全な赤字公債であるというふうにお考えになりませんか。
  12. 水田三喜男

    水田国務大臣 歳入欠陥がございましたので、一般歳入を充てておった公共事業費、ここにこの歳入を充てることが非常に困難になったという事情公債発行をしたことと関連はございますが、しかしそうではなくて、七千九百億円の建設公債発行するということは、公共事業費に七千九百億円全部を充てるということでございます。ですから、そうしますとそこに、当初予定しておった一般歳入余裕が生ずる、その余裕をもって、たとえば公務員の給与アップとかいうような必要経費増と同時に、税収減というようなものをそこで、一般歳入余裕でまかなうということでございますので、歳入欠陥があったから建設公債発行増額したということは、それはそういうことでございますが、この公債赤字公債という性質にはならぬということだと思います。
  13. 和田春生

    和田(春)委員 重ねてお伺いいたしますが、私は、いろいろな建設事業を進める、公共事業を進めるという上に、現在の負担だけではなく、将来の国民生活関係考え公債発行していく、その趣旨を否定しているものではございません。しかし今回の、政府の出された補正予算はあまりにもつじつまが合わない。いまも確認いたしましたように、建設公債だということをおっしゃっておりますけれども、財政法四条三項に基づく公共事業費出資金貸し付け金のふやした分はわずかの二千五百四十四億円である、わずかといっても国民生活にとってはたいへん大きな金額だろうと思います。そうしたら、そのふえた分の二千五百四十四億円にほぼ見合う程度、あるいは、もちろん大きな数字でありますからきっちり同じ額であるということは言いませんけれども、おおむね見合う金額ならいいと思うのです。しかし、いまの公共事業費出資金貸し付け金、主として公共事業関係費ですけれども、二千五百億円ふえているのに、公債増発が七千九百億円である。三倍以上これはふえているということになるわけです。赤字公債じゃないですか、これは。一般会計歳入欠陥を補うために公債を、多少公共事業関係費をふやしたやつに便乗して、乗っかった荷物のほうが大きいということは数字が明らかに示しているじゃありませんか。いかに強弁しようともこれは赤字公債であるといわざるを得ない。大蔵大臣、ここでそういうことばは言いにくいかもわかりませんけれども、法律の歯どめとかなんとかというよりも、補正予算組み方自体が、景気が悪いので公共事業関係費をふやすとかいって、それに便乗してこれだけ巨額の公債発行するということをここではっきり示しているんじゃないですか。いかがですか、その点。
  14. 水田三喜男

    水田国務大臣 補正予算というものは一年の予算補正することでございますので、この増加分だけの問題を処理するということではございません。もし、たとえば八月十五日以来のああいう変動があるとかあるいは不況対策のために、もっとより多い公共事業量増加というものが必要であるというようなことが当初予定されておるというようなことでございましたら、当初予算においてすでに一兆円なら一兆円という建設公債発行を予定して、これによって公共事業を行なうということでなければ当初予算最初から組めなかったということになるのでございますが、それが予想されなかったために、当初予算において一般歳入相当建設事業に充てられるという予想のもとに当初予算を組んだのでございますが、事情が変わってきて、いままできめた量以上の公共事業を遂行する必要があるという政策的な必要も出てきましたので、そこでこのいままできめておった予算補正するというための補正予算の提出でございますので、今度千億ふえたから千億分の公債しか出せないとかなんとかという、そういう性質のものではないと思います。
  15. 和田春生

    和田(春)委員 そういう詭弁を私はお伺いしているわけじゃないのです。それならもっと具体的にお伺いいたしますけれども、公共関係事業費増額ゼロである、かりに今度ふやさない、そういう前提に立っても、政府見通しによれば歳入には五千四百五十億ほどの欠陥が生ずるわけですね。確認したいと思います。
  16. 水田三喜男

    水田国務大臣 そうでございます。
  17. 和田春生

    和田(春)委員 そうすると、その場合に政府は五千四百億ほどの公債発行して埋め合わせることになりますか。
  18. 水田三喜男

    水田国務大臣 そこで、当初予算において公共事業建設公債においてまかなう分を四千億と予定しましたが、これは建設公債発行を五千億増額してこの公共事業を執行するなら、一般歳入において、自後にできたいろいろな欠陥に対処できるということになりますので、そういう方針予算を組み直すということでございますから、歳入欠陥が生じたときには、やはりいま財政法においてはそういうことも予期されている一つであろうと思いますが、建設公債をもってこの公共事業分をまかなえるということになっておるんですから、この範囲内において建設公債発行するということは財政法上違反ではないということだろうと思います。
  19. 和田春生

    和田(春)委員 この委員会でも前にもそのところが、財政法との関係の歯どめとして議論をされているわけでありますけれども、いまの大蔵大臣お答えを推していきますと、当初の予算組み方数字の操作のさじかげん一つ公債発行には事実上歯どめがなくなる。結局建設事業公共関係事業というものはまるきり全部公債でまかなっていくというような形にならざるを得ない。現に補正後の公共事業費出資金貸し付け金総額は一兆六千八百億円である。それに対して補正後の公債発行額は一兆二千二百億である。まだ四千億ほどのゆとりがあるといいますけれども、ほとんどすべてこれは公債でまかなうというかっこうになっていく。なるほど法律のたてまえからいけば、一兆六千八百億まで公債でまかなっても法律には違反しないということになろうと思いますけれども、そうなれば完全に公債発行の歯どめというものあるいは財政節度というものが失われるじゃないですか。私はそういう点において、わずか二千五百四十四億円の公共事業関係費増大に対して、その三倍をこえるような公債発行するというのは、いかに見通しが狂ったとはいえ、その財政の運用というものは非常に問題がある。大蔵大臣のお考えを推していけば、今後もこれと同じようなことを繰り返すというお考えですか。それとも、今度はやむを得ないから今回に限ることであって、今後こういう節度のないことはやりたくないというお考えですか。その点を確かめたいと思います。
  20. 水田三喜男

    水田国務大臣 その点に関して、四十年度のときの公債発行が例に引かれておりますが、あのときは、こういうやり方は今後やらないということを大蔵大臣総理大臣もこの委員会で言明したようでございますが、私はそうであって、ああいう歳入補てん公債というようなものはそうやすやすとやるべきじゃない。それこそ財政節度を失うことでございますから、再びやらぬほうがいいと私は思います。そうじゃなくて、財政法上は、そういう歯どめのない、いわゆる赤字公債とか歳入補てん公債というようなものを出すことのほうが何ら歯どめがないので危険であるから、国会できめた、公共事業範囲をしぼって、この範囲内においては公共事業建設公債をもってやれ、やってよろしいということをきめてあるんですから、その限度内における公債発行をする限りは、そこにもうおのずからはっきり歯どめがある、予算がきまったときに自然に歯どめがきめられておるという仕組みでございますから、このほうが財政運営としては本筋であるというふうに思いますので、今後再びやらないんじゃなくて、この条項による公債活用を今後もやりたいというふうに考えております。
  21. 和田春生

    和田(春)委員 質問したことに的確に、簡潔にお答え願いたいんですが、今度の補正において、財政法関係というけれども、何度も言っているように、公共事業関係費のふえておるよりも三倍以上公債を出すという補正予算組み方をしておるわけですよ。ほとんど公債発行するような予算組み方なんです。こういうやり方はごく普通のやり方で、いいことかどうか、今後も続けてやるつもりかどうかということを聞いているのです。やるんならやる、やらぬならやらないと言ってください。
  22. 水田三喜男

    水田国務大臣 当初予定しない、異常の財政上の変化があったというようなときには、やはりこの四条の活用によって、許された範囲内の建設公債によってまかなって一般歳入の不足を補てんするという措置は、今後もやることはあると思います。
  23. 和田春生

    和田(春)委員 今後もやることがあるというお答えでございまして、まことに遺憾ではあると思いますが、そういうことを前提にしながら次に質問を進めていきたいと思うのです。  首相の施政方針演説、また財政演説等で、不況対策、またこれからの政策転換として、社会資本増大をはかっていくほうに向かっていきたい、こういうことを言っておられるわけです。いまの大蔵大臣お答えによりますと、公債増発というものについては、ほとんど予定される公共事業関係費全部を公債でまかなっていくと言えば言い過ぎかもわかりませんけれども、そういう傾向に向かっていく可能性があるわけでございますけれども、そういうふうな公債発行というものが、一体これからの日本経済の中で、市中で消化し得る余力があるとお考えでございますか。
  24. 水田三喜男

    水田国務大臣 私はいま不況対策――異常のときでございますので、この対策を長引かせておくことは非常にむずかしい経済状態を起こすと思います。やはり不況対策短期にすべきものだというふうに考えますので、こういう公債発行のしかたも実は今年来年ということで、それ以後、やはり公債はできるだけ節度をもって発行すべきである、ごく短期克服期間だけのこととして活用したいという考えを持っておることが一つと、それからもう一つは、いまおっしゃられた市中消化ということを原則にしなければ公債発行節度を失うことになりますので、これはもう厳密に守った公債発行にいたしたいと思っております。  では、今年度から来年にかけて相当国債発行が予想されるのに、市中消化見込みはどうかと言われますと、御承知のように、いま金融基調として非常に緩慢でございますし、まだこの基調は来年度も続くというふうに思われます。輸出の状況を見ましても、輸出の減はございますが、それに伴った輸入減というものも考えられます。したがって、外為会計を通ずる金融のあり方というものも、やはり緩和基調を依然として来年もたどるというふうに見られますので、私は市中消化は可能であると思います。
  25. 和田春生

    和田(春)委員 なるほど、たてまえ上そういう形で市中銀行に引き受けさせる、市中で消化が可能であるといっても、いまのたてまえからいきますと、一年たてば、新しい公債を引き受けて手持ちの公債を日銀に売り渡す、日銀が買いオペをやる、そのことはできるわけですね。
  26. 水田三喜男

    水田国務大臣 一年たてば日銀が買い上げることができるということは変更いたしませんが、現状を見ましても、もう日銀は長期国債をほとんど持っていないというくらいに金融は緩慢状態でございますので、私は消化の点はだいじょうぶだと思っております。
  27. 和田春生

    和田(春)委員 結局、そういうようなことになってきますと、回り回って日銀が引き受けた形になる、そこで通貨が増発をされる、インフレを刺激する、物価対策上問題が生ずる、そういう懸念はないとお考えですか。それとも、あるけれどもやむを得ないとお考えですか。端的にお答えを願いたい。
  28. 水田三喜男

    水田国務大臣 金融状況を見ましても、いま程度の公債発行しても私は心配がないと思いますし、また現在のデフレギャップが非常に多いという現状から見ましても、公債発行による公共事業費の増というようなことがいまの程度でインフレに結びつくという懸念は、私はないんじゃないかというふうに思っております。
  29. 和田春生

    和田(春)委員 大蔵大臣は懸念がないと言われていますけれども、われわれが最も懸念を持つのはその点であるわけでありまして、公債公債といいますけれども、これは全部借金でありますから、いずれは国民の負担で返さなくてはいけない。しかも、そういう節度を欠いた財政運営やり方がインフレを刺激するという形になりますと、いま一番問題になっている物価安定という面において非常に問題が出てくるように思うわけです。  そこで、物価との関係等につきましてはあとからさらに具体的に詰めることにいたしまして、そうまでやって社会資本増大をはかっていこう、公共関係事業費をふやしていこう、こういうお考えなんですけれども、いま物価の上昇とともに一番問題になっていることの一つは地価の上昇でございます。この点について建設大臣にお伺いをいたしたいと思いますが、地価が上昇するのを抑制する具体策というものをお持ちであるかどうか、その点について的確にお答えを願いたいと思います。
  30. 西村英一

    西村(英)国務大臣 具体策ということでございますが、地価の高騰は、たびたび申し上げるように、根本的にはやはり需要供給の関係ということ。もう一つは、土地は管理にわりあい金がかかりませんので、投機的な対象あるいは売り惜しみになる、こういうことが基本で、ますます高騰に拍車をかけるということになろうと思います。したがって、地価を安定せしむるのには、やはり需要供給の関係から一つ考えていきたいということ。  それからもう一つ、売り惜しみをしないように、投機的な対象にならないようにという基本的な立場に立って、いろいろな施策をしておるのでございます。都市計画法に基づくいわゆる線引きの問題、さらに建築基準法で特定な土地は利用をきめていこう。それからまた、投機的な対象にならないように、先般制定をしました個人の分譲税につきましては、特別に税を課して早く出させる。次に、法人等のことについても考えております。政府はいろいろな手によって地価の高騰を防ぐことをやっておるのでございまするが、残念ながら徹底的な手はまだこれからいろいろ検討したい、かように考えておる次第でございます。
  31. 和田春生

    和田(春)委員 いろいろ努力をしているけれども、決定的な効果はないんでこれから検討したいというまことにスローモーションのお話なんでありまして、政府が国民の福祉のためにお金を使うことには国民は文句は言わない。おかしなところにそれが使われたり蒸発をしてしまうと、たいへんこれは問題になるわけです。  これは事務当局で、政府委員のほうでよろしゅうございますけれども、昭和四十年から昭和四十五年まで、この五カ年間に、たとえば建設事業の典型的なものといたしまして公営住宅あるいは公団住宅、こういう建設があるわけであります。公営住宅については、それぞれの都市の状況や地方自治体の規模その他によってばらつきがありますので統計がとりにくいと思いますが、公団住宅の中における用地費と工事費との上昇の割合はどれぐらいになっておりますか。
  32. 西村英一

    西村(英)国務大臣 日本不動産研究所の全国総合的なものは持っておりますが、公団、公庫と分けたものは持っておりません。事務当局にあれば説明させます。また、事務当局が持っていなければ後ほど示しますが、大体十カ年間、私が調べたところは、三十七年の三月から四十六年の三月までに、やはり土地は三倍ぐらいに上がっております。
  33. 和田春生

    和田(春)委員 質問に答えてください。四十年から四十五年まで。最近の五カ年間。
  34. 西村英一

    西村(英)国務大臣 四十年から四十六年ぐらいの間には、約一・八倍ないし一・九倍ぐらい、全国平均にいたしまして上がっておると思います。
  35. 和田春生

    和田(春)委員 大臣のお持ちの資料はどこか間違っているんじゃないかと思うのですけれども、私のほうで調べたところによりますと、公団の中層住宅、実績で一戸当たりに含まれる用地費は、昭和四十年を一〇〇とすると、昭和四十五年は二四三。用地費は実に二・四倍以上に上がっております。それに対して工事費は、昭和四十年を一〇〇とすると、昭和四十五年が一六六でありまして、約六六%の上昇でございます。そうすると、これに含まれている用地費の金額が、昭和四十年には一戸当たり約四十万円、四十五年には九十七万円、実に用地費は二・四三倍に上がっているわけです。そして団地の建設費の中に占める用地費の割合が、四十一年の二四%から四十五年の約三二%に上昇をしているわけです。先ほど建設大臣は、有効な土地対策についてはこれから検討するんだとおっしゃられましたけれども、そうだとすると、ことしもあるいは来年、ここ二、三年、どういう対策ができるかわかりませんけれども、大いに政府社会資本増大をして国民の福祉を考えていこう、そういう発想はけっこうでございますけれども、そういう形で住宅をつくる、道路をつくるあるいはその他の生活環境の整備をやるということを進めていくうちに、土地の値上がりはこの傾向でどんどんどんどん上がっていく。公共関係事業費の中に占める用地費の割合というものはウナギ登りにのぼっていく。それを食いとめる方策はないと考えるのですけれども、いかがですか。
  36. 西村英一

    西村(英)国務大臣 いま私が申しました数字は、これは全国平均でございまして、あなたがおっしゃっておる数字は、公団という特定なものをとれば、大都市は平均より高くなりますからそうであろうと思います。したがいまして、公共事業を進める上におきまして、ただいまこれから検討すると言いましたが、一つの手でちゃんと押える手がないわけでございます。したがいまして、今後は、さいぜんも申しましたようないろいろな手法によって地価の安定を期したいということを考えておる次第でございます。
  37. 和田春生

    和田(春)委員 数字の点は、私は前提で、全体、公営住宅等を含めればいろいろばらつきがあるから公団の住宅についてと限定して御質問申し上げた。したがって、それに対するいまの大臣のお答え数字が違っている、こういう意味で訂正をいたしたわけであります。あとで十分事務当局に命じてお調べを願いたいと思うのですが、ほかの数字を若干並べてみますと、消費者物価が非常に上がっている、こういうことに対する国民の不満が多いわけであります。四十五年まで、四十年の高度成長期になってからの五カ年間に約三〇%強消費者物価は上がっている。高い高いといわれている野菜が約六〇%上がっているわけであります。去年からことしへかけてさらに八%ないし一〇%くらい上がっているだろうと思いますけれども、それに対して全国の市街地の住宅地の地価というのは、四十年を一〇〇といたしますと、四十五年には二一〇に、二倍以上に上がっている。これは全国の市街地の住宅地であります。それから、用途地域別に平均をいたしますと、これは住宅地だけではなく、商業地あるいはその他の地域を含んでいるわけですが、一九二。大体二倍近く上がっているわけでありますから、国民が非常に不満に思っている物価の上昇率よりもはるかに地価の上昇率は高い。しかも、現在頭打ちになっているというのは、一般の庶民が手を出そうと思っても出せない、政府が買おうと思っても買えない、そういう大都市の中心部等においては、地価がもうほとんど買うことができないくらいべらぼうに上がり過ぎたために頭打ちの傾向が出ているところもございますけれども、これから開発するところは、いまだに日に日にどんどん地価が上がっているというわけであります。そういう状況の中で、いまの建設大臣のような心もとない抽象的なことでは、先ほども言ったように、公債増発をする、それは国民の借金であります。そして公共事業を進めようとする。用地費の割合がどんどんふえていく。結局用地費に食われていって、当初予算で予定したものさえも仕事ができない、そういう状況になっている。そういうものに対して、政府はよほどしっかりした決意を持たなくてはいけないと思いますけれども、もう一回建設大臣にお伺いいたします。  これから検討するというお話でしたけれども、具体的な対策はいつまでにお答えを出されますか。何カ月以内とか、一年以内とか、めどをひとつお答え願いたいと思います。これは建設大臣の責任においてお答え願いたいと思う、政策的な問題ですから。
  38. 西村英一

    西村(英)国務大臣 私は大都市においても、率直に申し上げれば、土地がないんではないので、かなり遊んでおる土地はあると思います。したがいまして、土地が売り惜しみあるいは投機の対象になって値上がりを待っておるからでございまするから、個人の譲渡に対しては先般それぞれの手を打って、なるべく早く土地を出させるという方法を講じたのでございます。これから考えるといっても、これは行政だけではなかなかできません。やっぱり法律を要することもありますので、法人に対して――法人は私はかなり土地を持っておると思います。したがいまして、法人に対しても、土地を早く手放すという税法上の措置でやらなければならぬと思っておりまするから、法人に対しても、譲渡所得に対して税法上の措置を強く講ずるというようなことを申し上げたいのでございます。
  39. 和田春生

    和田(春)委員 政府は確かに、税法上の措置を講じて、民間の投機をねらっている土地を吐き出させる、こういうふうにいわれて税制を改正いたしました。その結果はどうか。ここに当時の新聞がありますが、本年の申告所得について、これはある新聞の大きな見出しであります。億万長者が千二十九人、土地成金がほとんど、こういうふうに書いているわけでありまして、結局、税金が非常に安くなる売却促進の制度で、たまたま土地を持っておった国民のごく一部の人はずいぶんもうかった。そして高額所得者の上位にずらりと顔を並べる状況になった。地価はどれだけ安くなりましたか。地価の騰勢が何%押えられましたか。具体的にお答えを願いたいと思います。
  40. 西村英一

    西村(英)国務大臣 個人所得で上位にいっておるということ、それも、これは的確には申し上げられませんが、ある程度個人の譲渡は早ければ早いほど税で安くなるのだからというような影響もやっぱりあるのだと思います。そのために地価がどれだけ下がったかということは、これはちょっとなかなか計算しづらいのでございます。(発言する者あり)
  41. 和田春生

    和田(春)委員 いまもだいぶやじが出ておりますけれども、あの土地税制をやるときの政府の説明は、これによってそういう土地を吐き出させることになるから、地価の騰勢を押えることができるのだ。たまたま土地を持っている、しかもこれでもうけるのは国民のうちの〇・何%というごく少数の人なんですよ。そういう人たちにサービスをすることになりはしないかという質問に対して、そんなことはありませんということを政府は何度も答えてきたわけです。ところが実際においては、地価の騰勢というものは一つも押えられていないじゃありませんか。そして建設費その他に含まれる用地費の割合というものはどんどんどんどんふえている。道路公団がつくっている高速道路等につきましても、これは立地条件によっていろいろ違いますから単純に比較はできませんが、キロ当たりの建設費にしてみましても、たとえばキロ当たりの建設費に含まれている公共用地と民間の土地との割合というもので、民間の土地が多ければ多いほど飛躍的に建設単価というものは用地取得でふえているのが実情じゃございませんか。そういう点について首相にお伺いいたしたいと思いますけれども、総理、土地の値上がりというものはこれからの政府の政策方向と考え合わせてみましても非常に重大な問題になってきている。金を使っても使っても一部の国民のふところをふやすだけ、ごく、一部の国民のふところをふやすだけである。実際の国民全体の利益にはならない。こういう問題がいまの状況でいくと予想されるわけでありますけれども、この際思い切った地価抑制の対策を打つというお考えはございますか。
  42. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 地価対策、これは現在一番むずかしい問題でございます。これはいまさら私がそのむずかしさを説明する要のないほど皆さん方も御承知のとおりであります。問題は、これに対する適切なる対策がありやいなや、こういうことだと思います。過般、この席で社会党の阪上君からも提案がありました。やはり土地を前もって先行取得するような方法はないのか、公共団体や国、それが取得するということによって地価が投機の対象にならない、こういうようなことになれば、ただいまのような弊害はよほど除去できるのじゃないか、これなども一つの案として十分真剣に考うべきことではないだろうかと私は思います。また、需要に対して供給が少ないのでありますから、そういう意味ではいままで宅地等に利用されていない山林原野等も土地造成を積極的にすること、これはやはり必要な処置ではないかと思います。  とにかく土地が投機の対象からはずされるように、これまた税制上も考えなければならないのじゃないか。過去においての、いま言われました、ここで論議されたような特殊な例ばかりではございません。やはり今度は土地を短期に売買する、そのほうから申しまして、売買所得に対する課税の適正化がはかられれば、そういう面からも押えることができるのじゃないだろうか、かように思います。これは政府だけの考え方でなしに、国会の御審議を得ることはもちろんですが、原案作成にあたりましては各方面の意見を十分聴取すること、そのことが必要ではないだろうかと思います。税制、金融すべての面からどうしたら土地が上がらないで地価を抑制することができるか、こういう方向にいくべきじゃないかと思っております。最近、経済がやや停滞ぎみで、設備投資等が鈍っておりますから、その面では企業からの土地需要、このほうはやや幾ぶんか停滞ぎみだろうと思います。したがって、そのほうの地価高騰に対する危険はただいまのところやや鈍っている、こういう際こそひとつ思い切って対策を立てるべきじゃないか。和田君の先ほどからの建設大臣に対する御要望も、こういう際に早急にやれ、こういうような御意見ではないか、かように私はとったのであります。確かに、ただいまがこういう問題と取り組むべき適当なとき、その時期だろう、かように思います。
  43. 和田春生

    和田(春)委員 いま首相のお答えたいへん抽象的でございますが、新聞に発表されているところによりますと、政府の地価対策としては、地方公共団体の先行取得あるいは土地開発金融公庫の設置とかあるいは公示価格の活用とか、そういうことをするというふうにいわれているわけであります。しかし、こういうことについては、そういう発想はいままでもしばしば述べられておりましたけれども、一つも実効をあげておらないわけであります。日本の場合には、ヨーロッパの多くの国と違いまして非常に山が多い。人口のわりあいに利用すべき土地が狭い。さらに造成をするといっても限度があるわけであります。造成によって緑を失うということはかえって公害や生活環境の悪化を伴う。結局、そういう少ない土地資源というものを有効に使うということのためには、小手先細工ではなく、この際思い切って土地の私権の制限、これに踏み切る以外に私は方法がないと思う。そういうお考えはないのか。土地の私権の制限ということに踏み切らずにやれるというならば、的確なそういう方策というものをやはりお答えを願わなければならぬわけですけれども、その点総理いかがでございますか。
  44. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私権の制限は当然あるのでございます。公共福祉のためにそういうものは提供される、制限を受ける、かような抽象的な原則はだれも文句なしに理解いたします。しかし、何が公共の福祉か、何が公用か、こういうような問題になりますとなかなか意見が一致しない。そういうところで私権の制限ということも理論的には可能ですが、具体的にはなかなか困難な問題が起きております。これは過去の、また現在当面しているいろいろの公共施設等の私権の取得についてすでにいろいろの問題が起きていること、これは御承知のとおりであります。一つ成田空港だけの例を申すわけではありません。発電所一つつくるにいたしましても、また鉄道一つつくるにしても、道路をつくるにしても、公共の用に供するということについての地域住民の理解を得るということはなかなか困難であります。問題はこういう点についてのやはり高度の考え方、国民的な考え方によって初めてただいまのような問題が片づくのではないか、かように思っております。  私権は制限さるべきものだ。無制限ではございませんが、公共の用ならば、公共の福祉のためなら、これはやはり制限を受けるべきものだ、かように私は考えておりますけれども、その具体的な問題についてのそれぞれの判断が、なかなか異見がある、この点を御了承いただきたい。
  45. 和田春生

    和田(春)委員 私権の制限と一口で言いましても、強弱いろいろの度合いがあると思います。現在でも土地収用法というものがあるわけです。そういう点について成田空港の例をあげられたと思うのですが、成田空港の例は適切でないと私は思うのです。ここで議論をいたしませんけれども、あの場合は政府の施策なりあるいは土地に執着する農民なり、いろいろの政治的な要因がからんでいるわけでございますけれども、何が公共の福祉かということについて問題がある。そういう前提を置いて一部私権の制限をやろうとするから問題が出るわけですけれども、この際、思い切って土地の所有権というものについての観念を、憲法のたてまえからいっても差しつかえないように切りかえることができるのではないか。  そこで具体的な考え方の一つの問題として私はここで申し上げて、お伺いをいたしたいと思うのです。  もちろん、憲法二十九条によれば、財産権は侵してはならないということになっております。しかし、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」とこうなっている。  ところで、一生懸命汗水流してつくったものなら別でありますけれども、土地というのは本来もう先祖代々日本の国ができたときからここにあるものでございまして、しかも、土地の値上がりでもうけるというのは、自分の努力でもうけるというよりも、投機をするかあるいはたまたまそこに土地を持っておったところに国民の税金で道路ができる、あるいは住宅地ができる、開発ができる。そこで地価が値上がりをして、思わず予期しないもうけがころがってくるとか、そういう偶然の、個人の所得からいえば偶然の結果によるところが非常に多いわけです。そういうふうなものを財産権の内容として放任しておく手はないと思うのです。特に、民間設備投資中心で高度成長期が今日の状態を迎え、政府社会資本増大に立ち向かおう、こういう考え方に立っておられる。住宅、道路、公園、あるいは上下水道の完備、通勤対策、いろいろな問題を取り上げても全部土地にかかっている。そうすると、土地の所有権というものに、たとえば、上級の所有権と下級の所有権というようなことを考えてはどうだろうか。つまり上級の所有権は本来国に所属しているのだ。下級の所有権はそこを持っている人が利用してもいい。したがって、土地を売る場合には国または公共の機関にしか売れない。買うときには国または公共機関から買う。そうすれば、売買の価格についても的確に押えることができる。そして個人の利用というものもあまり妨げない。投機によって、いまのようなことをほっておきますと、むつの開発についてすでにもう虫食い状態になって、投機業者が一ばい買い荒してしまって、あれは決してうまくいきません。いまから先行取得権をつくたって手おくれだ。もう全部そうです。見当がつくのはみんなやってしまう。そうなれば、公共のためとか、ためじゃなくて、土地全体についてそういう根本的な所有権の内容そのものについての考え方を切りかえないと、日本のように人口が多くて土地が狭いというところではうまくいかないのではないか。ほんとうに政府が本気でこれから社会資本増大というものを中心にして国民の福祉を向上して、公共の福祉というものを中心に今後の財政を運用していく、政策をそこに向けていくという決意があるならば、それぐらいのことをしない限り、先ほど押し問答やりましたけれども、公債発行して国民の借金が将来どんどんふえる一方だ。そして、それは一部のふところを肥やし、成金をつくるだけである。一般の国民は依然として低福祉のままでやらなくてはいかぬということになると思うのです。どうですか、いま私は一つの例ですけれども、そういう点まで根本的に踏み込んで検討するという決意を、総理お持ちですか、いかがです。
  46. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 所有権の上級、下級というような二段階という、これは一案だろうと思いますが、私は、昨日の阪上君の提案された土地先行取得、そういう権利を公共団体、自治体に認めたらどうか、こういうのと類似の考え方だろうと思います。私は土地のいわゆる私的売買を禁止する、その売買はやはり国または自治体を通じてと、これはいかがかと思いますが、なおそれは研究を要する問題だ、かように思いますが、確かにただいま言われるように、こう投機の対象になって、むつ小川原湖の例がただいま出ましたが、ああいうような状態になってくると、なかなか当初の計画を遂行するわけにいかないんじゃないか、私も非常に疑問に思っております。こういうものが事前に出されて、その結果、特殊な連中の投機の対象になる、そういうことがあってはならない、かように思いますし、国民を守ること、また国民の利益を守ること、それがわれわれのつとめでございますから、ただいまどういうところが名案であるか、簡単に結論は出ておりません。これはもちろん各方面の意見を聞いた上で土地対策は立てるべき筋のものだと思いますが、そういう取り組み方は、私は少なくとも早急に各方面の意見を徴する、そういう形に進みたい。このことは申し上げ得るところでありまして、ただいま非常に投機の対象になっておるような事柄については、いままでの計画をも改めるぐらいな決心を持ってこれと取り組むということでないとこの問題は片づかない、かように思います。  したがって、御提案に直ちには賛成はいたしませんけれども、確かにわれわれが頭のうちに入れるべき一つの大きな問題だ、かように思っております。
  47. 和田春生

    和田(春)委員 もちろん、いま私もそれが絶対的であるというつもりで言っているわけではございませんが、そこまで踏み切る決意が必要ではないかという意味で総理の所見をただしたわけでございますけれども、現行の法律のたてまえでも、やりようによっては法の筋と行政の運営の適切な方法を促進するということでやれることがあるわけです。  そこで、これは建設大臣にまずお伺いいたしたいと思いますけれども、土地に対しては固定資産税というものがかかっているわけです。法律によれば、その場合の評価というのは「適正な時価をいう。」と、こういう表現になっていると思います。このことについて、評価額というものについては、御承知のように実際の価格よりだいぶ低い。だんだん時価に近づけるということはやられているわけですけれども、今後思い切って、たとえば、公共用土地の取得については固定資産税をかけている評価額で買い上げる、そういう方法はとろうと思えばとれると思うのです。それは国が評価をして税金を取っているわけですから、その義務を果たしているもとの金額で買うということは一向差しつかえない、私権の制限にも何にもならないと思うのですね。もちろん一ぺんにそこまでいけば固定資産税が飛躍的にふえることになりますから、そういう点については段階を追って上げていってもいいけれども、ともかくその評価というものについては適切にやっていく、そうして税金を納めているもとの金額で公共用地の取得は買い取る。また民間の売買をやってもいいけれども、固定資産税の評価額をこえて売買された金額については超過所得として思い切って税金をかける。この点はあとから大蔵大臣にお伺いいたしますけれども、そういう方法は法律のたてまえと行政の筋を通すという意味において、やろうと思えばやれることです。もちろんそういうことをやろうとすれば、そこのところでうまくやっておった者には抵抗があるかもわかりませんけれども、地価を安定させるということが本気であるならば、そういうことを考えてもいいと思うのですが、建設大臣、いかがですか。
  48. 西村英一

    西村(英)国務大臣 土地の保有税について、もう少しやはり改善しなければならぬと思います。いま言いましたように、宅地に対する固定資産税、これらについてもいま一応の方法ではやっていますけれども、私はなおこれは改善するところが多々あると思います。  また、市街地区域に……。
  49. 和田春生

    和田(春)委員 大臣、答弁中ですが、税金のことは大蔵大臣にお伺いいたします。固定資産税の評価額で公共用地の取得をするというたてまえをはっきりさせる、そういう方法はいかがですか。
  50. 西村英一

    西村(英)国務大臣 固定資産税の評価についてそういう方法をとりたい、これは私のところだけでもできませんので、関係の省といろいろ協議をいたしておる次第でございます。
  51. 和田春生

    和田(春)委員 どういうふうにお考えですかという建設大臣の所見を伺っているのです。
  52. 西村英一

    西村(英)国務大臣 やはり時価を標準として、固定資産税をかけたい、かように思っておる次第でございます。
  53. 和田春生

    和田(春)委員 税金じゃなくて、国が固定資産税をかけるのには、その資産税をかけるもとになる評価があるわけでしょう。法律によって、その評価は、土地の価格というものは、適正な時価だという筋になっている。それを現在、税金の対策や何かで非常に低くしているけれども、評価を適切にして、そして低く評価をしているものは税金を少ししか取ってないのですから、公共用地としてその土地が買い上げられる場合には、その評価額で買う、そういうことにしたらどうかということを聞いている、たてまえとして。そういうお考えはありますか。
  54. 高橋弘篤

    高橋(弘)政府委員 御質問の点でございますけれども、先生のおっしゃるとおりに、固定資産税と時価との差がございます。したがって、先生は、時価でなしに、固定資産税の評価額によってということだろうと思いますけれども、御承知の憲法上も、公共用地の取得に際しましては、正当な補償ということが必要になってくるわけでございます。したがいまして、時価によるということはもちろん必要でございます。したがって、現在では、地価公示価格というのがございますが、地価公示価格のあるところにおきましては、これを基準にして購入するということになっておるわけでございます。固定資産税の評価額の問題は、これは私の省の所管でございませんけれども、この評価につきましては税制上の評価でございまして、いわゆる時価とは違うものでございます。したがって、大臣が最初に申し上げましたとおり、この評価額につきましては、なるべく早く私どもは時価並みに評価ができるように、関係当局にも要望いたしておる次第でございます。
  55. 和田春生

    和田(春)委員 いまやっていることは大体ごまかしだから、そういうことをこの際地価対策を進めるのにははっきりさせたらどうだということを聞いているのですよ、政策的に。質問の意味を理解してくださいよ。いまは、法律のたてまえからいったら、実際の時価よりもあんな低い評価をして固定資産税をかけるということはおかしいのですよ。価格というのは適当な時価のことをいうと書いてある。ごまかしているんですよ。それはいままでの例がずっとあるから、だから、私は一挙に評価額を上げて、それに税金をがっぱりかけたら困るだろうけれども、税金を取るということは政府が公認をしているというのだから、固定資産税をかける基礎になっている評価額というものでその土地を取得する、そういう形にもっていく、行政と法律のたてまえと筋目を通せ、それならば私権の制限にまで至らなくてやれるではないか、そういうことを考える気はないかということをお伺いしているのですけれども、建設大臣いろいろ目をむいていらっしゃるので、総理、いかがですか。
  56. 西村英一

    西村(英)国務大臣 時価で固定資産税をというお話です。そういうふうに近づけたい。時価というのは土地の公示価格等の制度ができますれば、そういうふうにその時価でやることを守りたい、かように考えておる次第でございます。
  57. 和田春生

    和田(春)委員 これはらちがあかぬので、時間がだいぶんたちますから、今度は大蔵大臣に端的にお伺いいたしますけれども、固定資産税をかける基礎になっている評価額以上で取引をされた部分については、超過所得として大きな累進課税をかける、お考えになる気はありませんか。
  58. 水田三喜男

    水田国務大臣 いまの問題ですが、この時価売買価格と固定資産の評価は相当違っておりますが、公共用地の取得ということについては、そういう考えを取り込むことは、私はやはり一つの方法じゃないかと思います。それによって、いまの時価と評価額のあまりに大きい違いというようなものが徐々に是正されていく一つのきっかけになるということは、私はいいことじゃないかと思っております。  それから、土地政策を税制で行なうということは実にむずかしいことでございまして、いろいろなことに対して思い切った税を取るというようなことを土地政策にやってみたいということを、大蔵省でもずいぶん研究しましたが、これはいまのところ、しょせん税制で土地政策の解決はできないというのが私どものいま結論でございまして、総合政策の一環としてある程度の効果は持つんでございますが、これを譲渡所得税を特に多くするということをすると土地を売らなくなる。そうしてそのために土地が上がってくる。かりに売るという人が出てきますというと、税金が高くなった分が地価に転嫁されて、やはり土地の値段を上げるということになる。そういう欠陥を除去しようというために、年数を切って、昔から持っておった、長く保有しておった者の譲渡所得については特例を設けて非常に安い税をかけ、それによって供給の促進をはかるという措置をとったことは御承知だと思いますが、それによって、それなら一般の土地をほしがる需要者が、相当の利得をしているかと申しますと、直接土地の需要者へそれがいかなくて、中間でそれを広く買い占める者の手にだいぶそれが握られてしまって、そうしてその手で保有されて地価の高騰を待つというようなことで、これも税を安くした結果土地が下がっておるという実績があまり出てこないというようなことで、税制による土地政策というものはむずかしいんで、そのほかのものがやはり土地政策の私はきめ手になるんじゃないかと考えます。
  59. 和田春生

    和田(春)委員 大蔵大臣いま非常に重要なことを言われましたり二回にわたって言われたわけですけれども、税制によって土地対策ということはできないと考えているということをおっしゃったわけです。ついこの間は、税制によって土地対策を進めるという形で、先ほど私が質問したように、税金をまけてやるから土地を出せ、それは土地政策だという形で政府は説明をしていまの暫定措置をきめたはずであります。あのときに、世論から批判があるのは、結局それはごく一部の地主をもうけさせることになるのではないか、こういう形で批判があったのに対して、政府は、このことによって土地を多く出させる、土地対策の一環としてこれをやるんで、不当に税金をまけてもうけさせてやるのではないということを説明してきたはずなんです。ところが、いま大蔵大臣は、税制によって土地政策はできないというふうに考えているとおっしゃる。この前の政府の政策は間違いだったということをお認めになりますか。
  60. 水田三喜男

    水田国務大臣 前に土地政策としての税制をきめるときも、そういう問題はあらかじめございました。そういう答弁も政府からなされておりますが、しかし、総合政策によって土地問題を解決することが急務だということから、税制においてもできるだけ土地政策になる税制を考えて実施したことは事実でございまして、これはやはり土地政策のための税制でございましたが、実施したいま、結果を申しまして、なかなか所期のとおりにこの税制が効果を発揮していないということから、税制による土地政策というものはなかなかむずかしいものだということを申し述べたので、無効であるとか、不可能であるというふうに言ったわけではございません。
  61. 和田春生

    和田(春)委員 ことばのあやですけれども、先ほどは、税制によって土地対策というものはできないというふうに考えているとおっしゃったんですよ。速記録をあとで調べてみてください。したがって、それは明らかにいままでの政府の方向を訂正する発言である。この前のやつは、やってみたけれどもまずかったということをお認めになったと私どもは解釈をするわけです。結局、この前のときにも大方の批判があったように、土地が出るんじゃないのですよ。いまのうちに売っておけ、そうすると税金が安いからというわけで土地を売った、だれが買ったか、大手の不動産業者とか投機をねらう者がしっかり買い占めて、さらに値上がりを待って握っているというのが現状じゃないですか。そのために一般の民衆のための土地は一つもふえてはおりません。そのために公共用地の取得費が一銭も下がってはおらない。結局、税金をまけただけ一部の者のふところをふやしたという結果になっている。そういうことをやっているから、佐藤内閣の政策というものは、庶民の利益にそっぽを向いて、一部の金持ちのためにやっているんではないかといわれてきているわけです。だから、私がいま言っていることも、税制の土地対策ということでなくて、先ほど来言っているように、時価と国民の義務と政府の政策と、そういうものを考えた場合に、固定資産税を取っているというのは、政府がそれだけだと評価してかけているのだから、その評価額で公共用地は取得する。民間で売買するときに、それより高く売ったりするときには、税金を払ってない分なんだから、超過所得としてうんと大きな税金をかけることにしたらどうかということを言っているわけだ。サラリーマンは夜寝ずに働いて、賃金労働者はオーバータイムでもらったって、がっちり源泉所得で、ふえたらふえた分だけ累進課税で税金を取られているというのが実情ですよ。一つも流れていない。ところが、片方は非常に低い評価額で安い税金を払っている。そして売買によって大きな金額をもうけているというなら、超過所得に対して税金をかけるのはあたりまえじゃないですか。それがやはりほんとうに国民に対する責任ある態度だと思う。ここでやるということは約束できないにしても、当然そういうことは考えられてしかるべきだと思うのです。いかがですか、大蔵大臣
  62. 水田三喜男

    水田国務大臣 利益の出たものについて税金をかけるということは、これは当然のことでございましてやっておりますが、私の申しましたのは、むしろあなたの意見に賛成みたいなことで、この土地問題を解決するためには、たとえば私権の制限ということばがございましたが、これもそう簡単なことではございませんが、何らか別個の措置をここで考えなければ土地問題は解決ができないのじゃないか。これは税制にたよっていこうとしても、税制の受け持つ効果というものは、そう多く期待できないということを言っているだけでございまして、ほかのほうに土地問題の大切なものがあるというふうに私は考えております。
  63. 和田春生

    和田(春)委員 私の意見に賛成だということですが、あまり賛成してないようですけれども、この問題については、私はこれからの政府財政政策にとっても非常に重要な問題になってくる。そして、税金を使って開発をしたら、開発利益はもう一度公共機関に吸い上げる。ごく一部の国民の私的利潤のふところを肥やすために尽くさせない、そういうことが非常に大事であると思いますから、私権の制限とともに、税の対策におきましても、不当なもうけについてはがっちり税金を取る。そしてその費用をさらに公共の利益のために使う、そういうようなことを総合的にお考えを願いたい、こういう点について特に希望をしておいて先に進めることにいたしたいと思います。  ところで、物価上昇の一つの重要な問題として土地の問題を取り上げたのですが、けさの新聞にもたくさん出ておりますように、今朝の新聞の切り抜きを少し持ってきておるのですが、それはさておいて、最近の特に生鮮食料品品を中心とする物価の上昇、こういうものは非常な勢いで上がっているわけであります。  そこで、これは経済企画庁長官にお伺いいたしたいと思いますけれども、生鮮食料品、この物価安定についての具体策いかん。いまお考えになっていることがあったら、これならきき目があるというものがあれば、ひとつ具体的に例示をお願いしたいと思います。
  64. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 最近非常に生鮮食料品を中心にして消費者物価が上がっております。たいへん私ども心を痛めております。  ところで、この生鮮食料品の最も大きい対策と申しますか、これはやはり何といっても生産力、供給力の確保と、それに対応して流通段階における対策、この二つでございますが、何と申しましてもいままでの、これは政府の政策的反省も含めて申し上げますが、中途はんぱなことではもうとても立ち行かぬような時期ではないか。したがいまして、単に間接的な指導行政の段階から、いまやもう政策的に介入するというようなことをやらなければならぬと思います。当然それには農林省が従来やってまいりましたような、ああいう中途はんぱな野菜行政ではもうとうてい無理だ、こう思います。したがいまして、またそれに要する予算にいたしましても、今年度は約二十五億円程度の予算でやっておりますが、来年度は農林省もこの野菜行政には真剣に取り組むという体制でもって、それの約八倍になるような予算要求をいま準備中でございます。経済企画庁といたしましては、その具体面、具体的な実施面は農林省でございますが、それに要する当然の費用としての予算、しかも、相当政策介入しなければならぬ予算の段階におきましては、農林省に極力協力してまいって、実施段階における消費者物価の安定に努力したい、こう考えております。
  65. 和田春生

    和田(春)委員 どうも従来の農林省の野菜対策なんていうのは全然でたらめで、むしろ値段を上げるほうに協力しているのじゃないかと思われることが多いので、経企庁長官にお伺いをいたしたわけなんですけれども、具体的な方策として、いま特に野菜類あるいは生鮮魚介類というものが、産地の価格というものは安いのにかかわらず、消費地において非常に高くなっている。やっぱり中間マージンが問題になっているわけです。そこで、具体的な対策を進めるという場合に、これは皮肉な言い方になるかもわかりませんが、具体的な対策のない人が、具体的な対策を立てるということばで具体策にかえているということが多い、こういうことがよくあるわけなんです。  そこで、ほんとうに具体的にお伺いしたいと思うのですが、非常に利幅が大きい。中間マージンが多過ぎる。どこに一番焦点を合わしてその中間マージンを圧縮しようとされているのですか。それが、焦点が明らかになってこないと対策が立たないと思う。経企庁長官のお考え伺いたい。
  66. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 特に農林省で一月に調査いたしました、流通段階における生産、流通段階を通ずる段階別のマージンと申しますか、それを調査してみますと、まず、野菜等につきましては、約五一%が生産者の手に渡っておりますが、あとの四九%のうち二%、これが出荷手数料、流通段階における出荷経費、約六%が卸売りの手数料でございます。あとの三〇%が小売り段階におけるマージンと、こういうことになっております。
  67. 和田春生

    和田(春)委員 そこで、いま数字を言われました。その数字を私も持っておりますが、小売りのマージン、私は必ずしも三〇%ではないとも思いますけれども、私もいろいろ追跡をして調査をした資料を持っているわけですが、一体政府の施策でそれを縛ろうというところは、どこに焦点を置いて対策を立てようとしておられるのかということをお伺いしているわけです。あれもこれもというふうに手を広げたんでは、結局、具体的な対策をとって善処をします――これは総理の常套文句ですけれども、善処をする、善処をするといって何にもできないということになるわけですから、その中間経費の中のどこに焦点を置いて、一番重点を置いて圧縮しようとされているのか、そこをお伺いしているわけです。具体的にお伺いしているわけです。
  68. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 実施面についてはまた農林省から具体的にお話があると思いますが、要するに流通段階における手数料というものが、非常に幅が大きく、またあるときには投機的にこれが利用されるという点がガンであろうと思います。したがいまして、その流通面における、特に卸売り手数料、この取り方、これが定率制あるいは定額制というようなところへもメスを入れていかなければならぬと思います。そういう面から、ことし国会を通していただきました卸売市場法の改正が、ようやく各地方公共団体において実施段階に入りますので、この卸売市場法の改正を通じてそういう面に根本的にひとつ改正を加える、業務方式に改正を加えるというところからスタートすべきであると思います。
  69. 和田春生

    和田(春)委員 具体的にお伺いいたしますけれども、いま卸売り段階における手数料の定率、定額の問題にちょっと触れられました。これは単に手数料が高いとか低いだけの問題ではないと思う。定率制によれば、当然高価なものを少量に扱ったほうが利益が大きいと言うことができる。そこに操作の余地が十分入ってくるわけです。したがって、やはり最も緊急にやらなければならぬ対策一つは、この定率制の手数料というものにメスを入れるということは、不当な操作、出荷量その他いろいろな品物を扱う上のこれを制約をするという上で必要であるということがいわれているのですけれども、政府はそこにメスを入れるお考えはありますか。
  70. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 どうも私がそこまでお答えすべきでないかもしれませんが、当然そこまでメスを入れるべきだと思います。
  71. 和田春生

    和田(春)委員 その点総理、よろしゅうございますか。答えてください。
  72. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 答弁は、いま木村君が答えたとおりであります。
  73. 和田春生

    和田(春)委員 総理と、物価の元締めの経企庁長官お答えになったわけでありますから、これは確実に実行してもらうように希望いたしたいと思います。もちろんこれだけではございません。限られた時間の質問でございますから、ポイントの一つを取り上げてお伺いをしたわけでございますが、他にもやらなくてはならぬことがいろいろある。  そこで、次にお伺いをいたしたいのですけれども、物価対策として、供給が不足している品物については輸入をするという手が一つ残されている。けさほどの新聞にも、政府の施策として、特に生鮮食料品についての輸入の面を考えていこう、関税を引き下げるというようなことが検討されている由に伝えられておるわけであります。しかし、問題は、輸入品について、非常に輸入原価というのが安いにかかわらず、これまた中間のマージンが多くて、べらぼうな高い値段で売られているという例が幾らもあるわけであります。中には公共団体の仮面をかぶったものがばく大な手数料をかせいでいるという点もある。ところで、国内で生産するものについては生産コストというものがなかなかつかみにくいという面もあるでしょう。その利幅というものを一定に押えていくということはできませんけれども、輸入されるそういうたとえば生鮮食料品については、輸入された原価というものはわかっているわけです。そうしてそのわかっている原価というものを踏んまえて、最終価格は幾ら以上で売ってはいけない、そのマージンはどれだけ以下に押えなくてはならない、それ以上こえてはいけないというような規制のしかたは、輸入品についてはわりあいやりやすい面があると思うのですが、そういうことまで踏み切るお考えはございますか。これは経済企画庁長官にお伺いいたします。
  74. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 輸入の自由化、あるいは関税引き下げ、もうすべてこれは物価安定効果につながるべきものでございます。それが、ややもしますと、国内における流通段階で減耗してしまうということは、これは厳に戒めなければなりません。  そこで、いま和田さんのおことばの中にあった、政府がその輸入価格を押えて、それについて直接その価格を取りきめすることは、現在の自由価格の運用の面ではこれは困難であろうと思います。ただ、その流通過程において減耗するところをわれわれが行政的にこれをよく追跡調査しまして、もし万一そういうことがあった場合のいろいろな措置、これは農林省の行政指導も含めて、そういうことは当然これはやらなければならぬと思います。一例を申し上げますと、たとえばバナナあるいはレモン、これは昭和三十八、九年に自由化に踏み切ったのでありますが、当時一年間はあまりこの自由化によって値段が下がらなかったのですが、現在におきましてはもうバナナは半分ぐらいになっております。レモンは約六〇%値下がりをしておりますが、やはり政府は相当きびしい態度でもってこの自由化されたあるいは輸入されたものについての追跡調査、これをやらなければならぬと思います。  そこで、経済企画庁では、今回各省の物価担当官会議というものを設けておりますが、そこに特にこの輸入価格についての追跡調査委員会というものを設けまして、今後その輸入価格、卸売り価格、小売り価格について精密にひとつ調査をしていこう、こういうことを考えております。
  75. 和田春生

    和田(春)委員 この輸入品を物価安定に役立てるというためには、輸入業者の操作や思惑にまかしておいたのではいけない、これはいままでの実績が明らかに示していると思うのです。そこで、政策的にそういう輸入を考えていくという場合に、政府機関の直販店か何かを主要消費地に設けていって、そこでそれらの輸入生鮮食料品などの適正な価格というものを打って、一般の市価というものと対比できる、具体的にそういう形をとる、行政的に権力をもって直接介入して押えることが無理であるにしても、はっきり国民の目の前にわかる、そういうことに対して対策をとられるお考えはありませんか。
  76. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 いま和田さんが御指摘になりましたように、政府が直接これを売買するということは、これはちょっと困難だろうと思いますが、政府機関がやることにおいては、たとえば事業団、そういうものがやることは、当然私は将来考えるべきことだと思います。
  77. 和田春生

    和田(春)委員 そういう点で、やろうと思えばやれることはいろいろとあると思うのです。つまり物価対策について、国民が現在の内閣に一番不信感を持っているのは、一体やる気があるのかないのか、対策として出てくるものは全部抽象的な文句の羅列である、したがって、具体的な問題を一つ一つ詰めてやるということが大切な問題だと思うのです。これは非常に大事な問題ですから総理にお伺いしたいと思いますが、佐藤総理、佐藤総理――質問をしているときにそういうことではちょっとぐあいが悪いじゃないですか。物価問題というものは、一番重要な問題ですよ。けさの新聞にも調査の結果が出ている、成長よりも物価の安定を望むというのが国民大多数だ、ところが、政策担当者のマインドは、物価に対して不感症だと、新聞に大きな記事が出ているじゃないですか。物価問題が出ているときに、法制局長官と耳打ちをしているという首相の態度が、物価問題に対するふまじめなことなんですよ。私のいまの質問をお聞きになっていないのでしょう。そういうようなまずい姿勢はいけない。もっとまじめに取り組んでいただきたいと思う。お答えください、首相。
  78. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま、他の打ち合わせをいたしておりまして、私聞いておりませんでした。
  79. 和田春生

    和田(春)委員 一番冒頭に――(発言する者あり)これは笑いごとじゃないのです。まあ私もちょっと笑いましたけれども、笑いごとじゃない、考えてみるとですね。それはいろいろと防衛や外交や沖繩の問題もたいへん大切な問題です。しかし、国民の生活に直結した問題、それに集中的に質問をする、総理はいつも国民のためにとか、施政方針演説にもいろいろと美辞麗句を並べておられるわけです。直接総理に質問の矢が向いていないからといっても、やはりまじめに質疑のやりとりというものを聞いておって、そして真剣に取り組むという姿勢があって、初めて政府の姿勢というものがぼくは正されるのだと思うのですよ。そういういいかげんなやり方が政治不信を買っているのですよ。質問をしているのは、私一人じゃない、私は、国民の声を代表しているし、私が代表していない部分でも、背後には政府の答弁というものに注目している国民がおる、そういう感じでやってもらいたいと思う。いまの総理の態度は何ですか、私は非常に不愉快だと思う。  流通対策について、消費政策について、結局やろうと思えばやることが幾つかある、小さなことでもいい、具体的なことを本気でやって、その効果を一つ積み上げれば、第二番目についてはさらにその効果が進むということがいわれるわけなんです。そういう点を、ことばを並べるだけで一つも何にもやっていないじゃないですか、そのやる気があるかないかということが問題なのだ、そういうところに質問が発展してきて、総理に、ほんとうにこの際この重要な問題について体当たりで取り組むということを、しかもいままで関係大臣が、あなたの任命された大臣が、そういうことは検討したい、そういうことはやれると思います、あるいはそういうことは一つの方法だということを言われた、それをほんとうに総理が先頭に立ってやる気があるかないかということをお伺いしているのです。決意のほどをお答えください。
  80. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の態度がふまじめだというおしかりを受けました。私は確かに聞いていなかったこと、それは率直に認めた。ただいま言われるとおり、冒頭の発言はおっしゃったとおり私もちゃんと聞いておりますから、物価の問題について、最も大事な問題だと、こういうことで発言をしていると、それで、和田君の立場について私は誤解はいたしておりません。しかし私が、他でいろいろ指図していた、そのことのために、私の任命した木村君が十分答えると、かように考えておりましたので、これはだいじょうぶだと思って他のほうの仕事をしておった、これはたいへん申しわけございませんでした、弁解がましくなりますが……。  ところで、ただいまの物価との取り組み方、この生鮮魚介、こういうものについての、一番野菜が問題になりますが、これについては産地との契約栽培をすでに実施しております。また、私は、最も不足しているのは産地並びに消費地における倉庫の建設ではないかと思う。その建設もただ雨露をしのぐという程度の倉庫でなしに、こういう生鮮食料品の倉庫にふさわしい倉庫が必要だ、そういうものを具体的に取り組めと、こういう点も指図しておりますし、そういう意味では積極的な姿勢をとっております。  また、私自身がこの席で過日も申したのですが、一日内閣で宮崎に出かけました。カーフェリーに乗って実情に触れた。こういうことも、ただ東京から細島までをカーフェリーに乗ったという、それだけの問題ではございません。やはりただいまのような事柄について関心を示している一つの証左であります。  また、宮崎県に参りまして蔬菜の団地栽培などを見ると、いわゆる小さい農業ではありますけれども共同作業によって大農業化できるんだ、そういうことも直接この目で見、今後の指導方法はそこにあるんだ、これは百の議論よりもそういうことが必要だ、かように考えておりますので、いま和田君の御指摘になるように当然理論も理論だけれども、それより以上にやはり実行に移すということ、それが国民にこたえるゆえんだ、かように私も思っております。  そういう意味で、この上とも御鞭撻賜わりますようお願いいたします。
  81. 和田春生

    和田(春)委員 別に皮肉を言うつもりはございませんけれども、公約を乱発するのは三流の政治家で、実行をするのが二流の政治家で、公約と実行とが完全に一致するのが一流の政治家であるというふうにいわれておるわけですけれども、どうも従来の佐藤内閣の姿勢は、物価対策に関する限り三流であるというふうに考えるわけです。一流とは言わないけれども、せめて二流ぐらいにはなってもらわぬことには国民も安心できませんので、その点について特に強く希望いたしておきたいと思います。  税制対策等もやりたいと思いましたけれども、与えられた時間がだんだん少なくなってまいりました。  最後に、少しゆとりのある質問をいたしたいと思うのですが、これは総務長官にお伺いいたしますけれども、国民の祝日に関しまして、先般運輸大臣が海の日を国民の祝日にしたいということを言っておられました。政府が行政的に措置をしているけれども法定の祝日になっていない日には、もう一つ十月一日の法の日というのがあったと思うのですけれども、最近日本人は働き過ぎる、ゆとりがなさ過ぎるということがいわれておりますけれども、そういうものを国民の祝日に入れるということのために法律を改める、そういうお考えはございませんか。
  82. 山中貞則

    ○山中国務大臣 先日の閣議において、沖繩昭和五十年に海洋博覧会を開催する決定をいたしましたが、それに伴って運輸大臣から、お話しのような七月に海の日というものを設けて祝日にしてもらいたいという要望がございました。一応閣議の席においては私のほうでそれを引き取ったわけでありますが、なお環境庁長官よりは環境保全の日、あるいはまた海に対応する山の日、あるいはただいま御指摘の法の旧、いろいろと今日までの議論がございますし、さらに祝日と日曜と重なった場合にそれをずらすという諸外国の例等を日本において適用すべきかいなか、それらについても議論のあるところでありますから、これは私は、慎重に検討するということばはきらいですし、あまり使いませんが、この問題に関する限りはもう少し検討の要ありと考えておるところでございます。
  83. 和田春生

    和田(春)委員 検討を慎重にされるのはけっこうですが、国民の祝日というものと国民の休日というものの観念が少し混乱をしているんではないか。無理にいろいろこじつけておかしな日をつくるものですから、さっぱりその意味がわからなくなってくるのがあるわけですね。そこでそういうことになるんで、むしろこの際、国民の休日というものをはっきり考えていくという方向が一つあると思うのですけれども、日曜日が休みであるというのはどういう根拠に基づいているのですか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  84. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは憲法とか法律の定めによるものではもちろんありませんし、諸外国においても日曜は休みであるということについて、それを特別に法律で定めているとは思いません。あるいは正月において、年末において、わが日本においては日本の習慣として一定期間休みがございます。しかしながら、これらはいずれも法的な根拠はないものでありますが、長い間の慣習として一応定着しておるものでありまして、これを法制化しなければならないかどうかの問題は、これまた別の議論になろうかと思いますが、少なくとも法律をもって定められている十二日という日本の国民の祝日の数は、諸外国に比べて多いほうの国であって少ないほうではないというふうに考えます。また、全般的に国民の働き過ぎる国日本というイメージから考えて、あるいは国民の動向がやはり豊かな心あるいはレジャーというような傾向に相当資金的にも労力的にも向いておる現状等から考えるときに、労働政策等とも関連をしながら、やはり考えなければならないのがいわゆる休みの問題点ではなかろうかと思っております。
  85. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 和田君に申し上げますが、時間が経過いたしましたので、簡単にお願いいたします。
  86. 和田春生

    和田(春)委員 いま年末年始の休みに法的根拠はないというふうにおっしゃいましたけれども、調べてみますと、明治六年の太政官布告第二号というので「自今休暇左ノ通被定候事 一月一日ヨリ三日迄 十二月二十九日ヨリ三十一日迄」、これがあったわけです。諸外国で日曜日は、特にキリスト教の国においては日曜日は安息日として、法律できめていなくても宗教的に一つの慣習法としてはっきりしているわけです。日本の場合には何となく休みになってきた、おっしゃるとおり法的な根拠はないと思います。そこで、日曜日というのは国民の休日であるということをはっきりさせる。そうすると、国民の祝日と休日が重なったときには帳消しにしないように繰り延べて月曜日を休みにする、こういうふうな操作の根拠も生まれてくると私は考えるわけです。  ヨーロッパでは、簡単に申し上げますが、御承知のように、日本より経済水準の低いところでも今日ほぼ週休二日制というのが定着をしてきている。御承知のとおりでございます。一挙に週休二日制まで全般的にいくのは無理だけれども、国民の祝日というような形で休みをふやすということにするから無理があって、歯切れのいい山中長官をしても慎重検討と、こう言わせるわけですから、いっそのこと日曜日を全部国民の休日にする、そして祝日と休日が重なったときにはずらす、そういうことを考えてもらうと、働き過ぎる日本人という点についても非常にいいし、失点続きの佐藤内閣についても明るい話題を提供することになると思うのですが、この点いかがですか。
  87. 山中貞則

    ○山中国務大臣 確かに太政官布告はありますが、しかし、それは全部敗戦とともに廃止された法律の形になりまして、昭和二十三年に現在の法律前提である国民の祝日に関する法律が制定されて、四十一年にさらに三日追加されて現在の十二日になっていることは御承知のとおりであります。  そこで、和田委員の御提言は、私もやはり耳を傾けなければならない。すなわち日本の近代工業国家としてのあり方から考えるときに、やはり国民がゆとりを持っていけるかどうかという問題で、ただ日曜を、これは祝日である、休日であるというふうに定めてしまうという必要性があるかどうか。これは、問題は日曜と祝日とが重なったときに、やはりちょっとみんな損をしたような気持ちがすると思うんですね。ただしかし、現実にはことしは二日でありますし、来年は幸か不幸か重なる日が一日もないというように非常にばらつきがございます。したがって、それだけでは基本的な問題の解決にはならないのではないかということでありまして、その意味も含めて歯切れよく検討をしたいということであります。
  88. 和田春生

    和田(春)委員 最後にお願いをいたしておきたいと思いますが、いまの休日の問題については、これは決してゆったりした問題ではなくて、日本人の働き過ぎということが最近非常に国際的な批判を買っている。私もドル・ショックのときにちょうど欧米を歩いておりました。やはりもっと休まなくてはいけない、そして働くときにはうんと働く、そういうことが非常に必要だと思います。単にダブったときにそれをずらすというだけではなくて、休みというものを定着をさしていく、さらに週休二日制に前進をするという点において政府の施策あるいは法律というものが重要な関係を持ちますので、そういう点は国民生活のゆとりのある面という面で十分検討してもらいたい、このことを希望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  89. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて和田君の質疑は終了いたしました。  次に西宮弘君。
  90. 西宮弘

    ○西宮委員 私は、特に沖繩について農業問題を主にいたしましてまずお尋ねをしたいと思うのでありますが、その前に、沖繩関連がありますので一言だけ簡単に伺いたいと思うのであります。  世上伝えられるところによりますると、沖繩返還が実現をすると恩赦をやる、こういう話があるわけであります、うわさがあるわけでありますが、はたしてやるかどうか。私どもは、もちろんわれわれの立場では今度の沖繩返還、いまのような形で返ってくる沖繩に対してはとうてい納得できない、したがって、これが国の慶事であるというような理解はもとよりとうていできないのでありまするけれども、ただ世間ではそういうことのうわさをいたしておるわけであります。私が御質問したい要点は、要するにもしやるとしたならば、その際に選挙違反を対象にするかしないか、この一点だけであります。したがって答えはきわめて簡単明瞭、イエスかノーだけでお答えをいただきたいと思います。
  91. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま、まだその点については考えておりません。
  92. 西宮弘

    ○西宮委員 私は、考えていないという総理の御答弁にきわめて不安を感ずるわけであります。なぜならば、前回はいわゆる明治百年の恩赦があったわけであります。そのときには選挙違反は対象にしないと、こういうことを佐藤総理も赤間法務大臣も国会において答弁をしておるのであります。にもかかわらず実際にはこれが行なわれた、こういうことになりまして、たいへんな数の選挙違反が回復をされた。もしそういうことをやるとすれば重大問題なんで、考えていないといういまの内容は、私はそれだけではとうてい満足できない。やるのかやらないのか、その点だけは明瞭にお答えをいただきたいと思います。
  93. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まだ恩赦をやるかやらないかきめてないと、こういうことをただいま申し上げたのです。でありますから、いま私ども聞きたいのは、社会党を代表しての西宮君が恩赦はやるべきでないと、かように言われるのか、恩赦はやってもいいがこういうことは除けと、かようなお尋ねなのか、その辺も明らかにしていただきたいと思います。
  94. 西宮弘

    ○西宮委員 私の質問の要点は、恩赦をやる場合には選挙違反を対象にするかしないかと、その一点だけです。
  95. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 その点はよく伺っておきまして、きめる際にどういうようにするか十分考えるべきことだと、かように思います。
  96. 西宮弘

    ○西宮委員 前回の明治百年の恩赦の際にも、総理は、昭和四十二年の三月三十日でありますが、やらないと、こういう答弁をしておるわけであります。にもかかわらず今回は、沖繩復帰については、それについて言明ができないというのはどういうわけですか。
  97. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これから審議を受けるのだし、いずれにしても沖繩祖国復帰は来年のことでございます。そういう点をいまからきめておらないと、かように申し上げておる、これは御理解をいただけるだろうと思います。まだ政府がこれがあったらやるんだと、こういうことで準備しておるわけではございません。ただいままだ考えておらない、かように申し上げておるのですから、これを御了承いただきたいと思います。
  98. 西宮弘

    ○西宮委員 私は簡単に了承できないのであります。それは戦後数回の恩赦が行なわれております。六回行なわれておりますけれども、特に最近に行なわれました三回の恩赦、これはいずれも選挙違反を対象にして行なわれた恩赦であります。そのことは当時の新聞報道等を見ればきわめて克明に報道されておるので、議論の余地がないわけであります。たとえば国連加盟のときにも大体一〇〇%近くは選挙関係が対象にされたといわれ、あるいはその次の皇太子御成婚の際の恩赦は大体九割程度はそれだと、こういうふうにいわれておるわけであります。この前の明治百年の際には四千八十六人の特別恩赦が行なわれ、さらに政令による復権で十四万八千七百三十二人と、こういう人が復権をされているわけであります。ただし、この中には相当数の道路交通法の違反を含んでおりますから、これが全部だとは決して申しません。しかし、このような膨大な選挙違反者が一ぺんにパアになってしまう、こういうことは国民の感情として絶対に許すことができない。あるいは現にいま問題になっておりますのも、たとえばこの前の選挙で起訴されておりますのが、選挙違反の起訴者が九千九十人であります。そのほかに、ことし行なわれた地方統一選挙で一万八千五百五十人、さらにこの間の参議院選挙で一千七百三十三人、これだけが現在起訴をされておるわけであります。そういうことになりますると、こういう人を対象にしていわゆる恩赦を行なうということにもしなるとするならば、今日まで唱えてきて、あるいは佐藤総理がしばしば唱えておるようなその政治の姿勢を正すと、こういうことは私は絶対にできないと思います。したがって、この点だけは、まだその時間が来ないという答弁ではなしに、総理の腹としてはそういうことをやるのかやらないのか。     〔委員長退席、長谷川(四)委員長代理着席〕 これは腹は明らかだと思うのですよ。いろいろ手続その他で実際の実施の際には問題はたくさんあると思います。あると思いますけれども、過去三回やっているわけですから、いずれもくしくも過去三回やった恩赦は、その前年に総選挙が行なわれておるわけです。昭和三十三年、昭和三十年、昭和三十一年、これらはいずれもその前年に総選挙が行なわれて、たいへんな数の選挙違反が出ておるわけです。したがって、それらが全部パアになってしまうというのでは、いわゆる明正選挙などということに政府がたいへんな金を投じてそういう運動に一生懸命かかる、あるいは民間の人たちがこれに協力をしてたいへんな努力をしている、こういうことはもう何の足しにもならなくなってしまう。そういう点について佐藤総理はどういうふうにお考えか。ひとつその、そういういままでのいわゆる明正選挙を推進してきた総理の立場で、こういう問題に対してはどういうお考えを持っているかをお聞かせを願います。
  99. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この問題は、もっと恩赦をすると、そういうことを決意した場合にどういう範囲でするか、私がやはり意見を徴する筋のものもございますから、西宮君の御意見のただいまのような御趣旨は十分伺っておきます。私は、ただいまこの席で何々はやらないとか何々はやるとか、これを言うことは適当でない、かように思っております。私が思いつきで申し上げてもそのとおりにならぬかもわからないし、これはやはりもっと慎重にやるべきだと御了承をいただきたいと思います。
  100. 西宮弘

    ○西宮委員 それでは一言だけ伺います。  今度の恩赦をやるかやらぬかまだその決定をする時期ではない、こういうことならばまあまあやむを得ないといたしまして、佐藤総理が先頭に立って進めておる明正選挙ですね、これが行なわれておるときにもし恩赦が行なわれたとすれば、その結果はどういうことになるか。明正選挙の趣旨に反しないか反するか、その一点だけをお尋ねいたします。佐藤総理はどういうふうにその点をお考えか。
  101. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、恩赦という制度そのものはいままでの問題をきれいに一度筋を引く、こういうものが恩赦という制度じゃないか、かように思いますので、その制度の立場に立って恩赦をする場合にどういう範囲にするか、これを考えるべきだ、かように思います。明正選挙がどうだとか何がどうだとか、こういうものは何とか、こういうようなそこらまでの検討はしておりません。恩赦というものはただいま申し上げるような制度であると、そういうことだけはっきり申し上げておきます。
  102. 西宮弘

    ○西宮委員 答弁をはぐらかしちゃ困りますよ。私はどういう線を引くかなんていうことを聞いておるのじゃないので、いわゆる明正選挙と恩赦という関係、その一点だけを聞いているのだから、だからいわゆるその選挙違反の恩赦なるものは明正選挙の推進に妨げになるかならないか、その点だけを聞かしてください。
  103. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま申し上げたとおりであります。
  104. 西宮弘

    ○西宮委員 全然申し上げておらないですよ、その点だけは。全然申し上げておらないですよ。妨げになるかならぬかということを聞いておる。
  105. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まだきめてないということを申し上げて、そうして明正選挙についてただいまのお尋ねがありますが、どろぼうは許すというようなことも私は言うておるわけではありません。しかし、とにかく恩赦という制度は、過去の罪をその際に消すというのが恩赦ではないか、その制度をそれなりに考えていただきたい、かように申し上げておる。これならおわかりだろうと思う。
  106. 西宮弘

    ○西宮委員 たいへんにまた総理のおことばがきつくなってきましたけれども、私が聞いているのはそういうことじゃない。そんなことはもう百もわかっていますよ。そんなことではなしに、選挙違反に対する恩赦なるものは明正選挙運動に対して妨げになるかならないか、この点だけを答えてください。
  107. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま百も御承知ならただいまのような恩赦という制度に反対だ、かように言われることになるのですか。だから私は先ほど聞いたのです。あなたは恩赦に反対ですか、反対の立場でお話しなんですか、かように申し上げたのです。そうじゃない、そうじゃなくてこの選挙についてだけだ、こういうことですから、私はまだそこまできめておりません、かように申し上げておる。それできめておらなくてもこの点だけは何か答えられるだろう、かようにお尋ねなんだけれども、それは御無理じゃないでしょうか。
  108. 西宮弘

    ○西宮委員 きめていなくても、やるかやらぬか、何をやるかはきまっておらぬ、それはわかりました。私が聞いておるのは、もし選挙違反に恩赦をやるとすれば、佐藤総理が進めている明正選挙なるものに影響がないのかあるのか、妨げがあるのかないのか、この一点ですよ。
  109. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、恩赦の対象になったからといって明正選挙と矛盾するとは思っておりません。ただいま申し上げますように、恩赦というのは過去の罪について一応筋を引く、こういうものでございますから、これからやる明正選挙はどこまでも明正選挙だ。私ども、もし窃盗罪の者が恩赦にかかったからといって別に窃盗を奨励はしておるわけじゃございません。そういうような事柄を考えて、ただ、いま申し上げるようにそれが恩赦なんだ、その恩赦をやるかやらないかまだきめてない。恩赦というものは百も承知だとおっしゃるのだから、もうそれでいいじゃないですか。
  110. 西宮弘

    ○西宮委員 それでいいじゃないですかといってこっちの質問を制限することはないじゃないですか。私ども聞きたいのは、きまってないなんということはいままでの答弁でよくわかりました。要するに、それではその恩赦をやる場合には選挙違反を対象にすることもあり得る、あるいはそれは、さっきのことばだと明正選挙には直接関係がない、こういう御答弁だったが、そのとおりですか。もしそのとおりならそのとおりで、われわれはまた別な立場で議論をしますから……。
  111. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 西宮君が私の先ほど来の答弁をいかようにおとりになろうと、これは御自由でございます。
  112. 西宮弘

    ○西宮委員 あまりどうも最近の総理の御答弁が――要するに速記録で見ればわかりますけれども、さっきは直接明正選挙には関係ない、こういう答弁をしておられますから、もし佐藤総理がそういうお考えであるとするならば、私はそのつもりでまた別の場所でこの問題を議論するなりあるいはその他の行動を起こすなり、そういうことをやっていきたいと思います。  それでは、通告をいたしました問題に従ってお尋ねをいたしてまいりまするけれども、沖繩の農業は、これは佐藤総理もおそらく御承知だと思いますけれども、私はあまりにも貧困だと思うのです。たとえば沖繩県内において非農業に比較すると一人当たりの所得は二五%、四分の一にしかならない、本土の場合なら四六%でありますが、それから沖繩の農業を本土の農業に比較をいたしますとわずかに四〇%にしかならない。非農業の場合は七七%ですからまあまあというところでありますが、農業は四〇%にしかならぬ、こういう状態であるわけであります。  そこで、なぜ沖繩の農業がこのように貧困なんであろうかということを考えてみますると、最大の原因は、何と申しましても大事な農地が奪われてしまっておる、こういう点にあると私はいわざるを得ないと思います。特に基地として収用された土地が、平たん部の肥沃な土地であります中部に集中をいたしております。沖繩では中部の農地は四三・五六%が基地になっているわけであります。大体半分近くが基地に収用されておるわけです。町村別でおもなところを拾ってみますると、嘉手納の農地の九五%、北谷の農地の九二%、コザ市の農地の七七%、読谷村の農地の七四%、こういうところがいずれも農地であったものが基地に取り上げられておるわけであります。したがって、農地がこういうふうになくなってしまっては農業が非常な困難にあうということは当然だと思うのでありますが、佐藤総理はこういう点について十分な御認識を持って基地を縮小する、あるいは基地を撤去する、こういうためにどういうお考えをお持ちか、まず一言お聞かせを願います。
  113. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 沖繩の農業の実態についてお触れになりました。沖繩は、戦前におきましても十分恵まれた農業経営ができたその地域ではございません。これにはいろいろその原因があると思います。まず第一は、かんがい用水、こういうものが不備だ、こういう点が一番の問題だと思っております。むしろ戦後において新しくパイナップルなどの栽培をするというようなことで、やや形態は変わってまいりましたが、どうも過去においてはそういう点が欠けており、さらにまた台風常襲地帯だ、こういうようなことで特殊な農産物に限られておる、また流通そのものもまことに不十分でございましたから、僻地という感がしていた。そこへ持ってきて今度の占領によって、ただいま御指摘になりますように軍用地等にずいぶん農地が取り上げられておる、こういうところもその原因の一つであろう、かように私は思います。もともと、もっと亜熱帯地帯ならばそれに適応する農業指導があってしかるべきだった、かように思います。しかし、過去の経過から見まして、どうも今日まで十分な農業が育成されておらない、この点はまことに残念に思います。
  114. 西宮弘

    ○西宮委員 沖繩の農業は、この農地を回復するという以外に救われる道は全くないわけでありますが、そういう点についていままで総理がどれだけの努力をしてこられたかということに対して、実は非常な不安を持っているわけであります。それというのは、例の一九六九年の共同声明には、日米安保条約が日本を含む極東の平和と安全のために果たしている役割りを高く評価をしとうたい、あるいはまた、沖繩にある米軍が重要なる役割りを果たしていることを認めた、こういうふうにいっておるわけでありますから、おそらく、そういう沖繩の農地の問題などは、あるいは農民の問題などは、ほとんど念頭になかったのではないかというふうにいわざるを得ないわけであります。あるいは佐藤総理等に言わせれば、いまは自分は極東の安全、日本の安全を考えているのだ、その際に沖繩の農民の問題など、農地の問題など考え余裕があるかと、そう言わないでしょうけれども、腹の中ではそういうお気持ちがあるかもしれません。  しかし、この点についても事情はずいぶん変わってきているわけであります。おそらくニクソン訪中というような問題からいけば、当然にこれはアメリカとしては極東のアメリカ軍を撤退する、こういうことが話し合いになることは火を見るよりも明らかであります。そういう情勢下にありまするから、われわれはこの返還協定をやり直せと、こういうことを主張いたしておるわけですが、さらに今度の国連の決定等がありますると、おそらくそれに拍車がかかる。そういうことになれば、米中会談というのはもうおそらく成功するだろうと思う。そういうことになれば、アメリカ軍が極東から撤退をするということは当然予想してよろしいと思う。そういうように情勢が変わってきたので、私は、思い切って基地の削減をする、こういうことが絶対に必要だと思いますけれども、総理、お考えがありましたら簡単にお聞かせ願います。
  115. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、沖繩がどうなってもいいとか、極東の安全、平和だけ確保すれば、というようなそんな乱暴な考え方は持っておりませんから、それだけははっきりひとつ……。お尋ねになるにしても、そういう前提で私にお尋ねになるなら、私はお答えしないつもりですから、その点はひとつ修正していただきたいと思います。  なお私、申し上げますが、沖繩については、ただいま言われるように、極東の情勢は大きく変わったと、かように言われる。そういう点から、米軍の駐留もなくなるんじゃないか、かようなことを言われますが、さようになれば、沖繩はまず先になくなるだろう、かように私は思いますが、そういうことを考えながらも、私は、無事に返還協定ができて、そうして祖国復帰が実現することを心から願っておる一人である、そのことだけを申し上げておきます。
  116. 西宮弘

    ○西宮委員 さっき私の言ったことばについて反論がありましたので、あえて申し上げますが、私が言ったのは、一九六九年十一月の共同声明、これがある限りにおいては、極東の安全あるいはまた沖繩はそのために重要な役割りを果たしているということを、これを声明している以上は、私はそれ以外の問題を考える余地がなかったんだろうと、こういうふうに言っているわけですよ。私は、ずっと最初以来佐藤さんの答弁を聞いておりますると、とにかく返還が先だと、まずとにかく返ってくるのが先だと、こういうことを常に言われるわけです。それはあたかも、聞いていると、とにかく返ってきさえすればこっちのものだ、あとはどうにでもなるんだから早く返らせろと、こういうふうに聞こえるんだけれども、それは返ってきたところで、佐藤総理で自由になれる範囲というのはきわめてわずかしかないわけですよ。それは、なぜなら、アメリカとの協定のもとに幾多の制約を受けているわけです。だから、そういう問題を解決をしなければ、ただ単に返ってきたということだけで安心はできない。おそらく、国民は佐藤さんの答弁を聞いておると、とにかく返ってきさえすればどうにでもなるんだ、だから早く返らすのが先決だと、こういうふうにだけ答弁をされるんだけれども、あるいはそういったお気持ちで答弁をされるんだけれども、私はそういう点に重大な問題があると思う。しかし、時間がなくなりますから先に進みます。私は、ぜひともその点は国民にも誤りなく伝えてもらいたいと思います。要するに、返ってくればこっちのものだ、こういうふうになる沖繩ではないんだということを明確にしてもらいたいと思うんです。  いわゆる本土並み復帰ということは、今日まで核の問題を主にして論議をされてまいりましたけれども、私は人権の問題、基本的な人権の問題、そういう点についても、いわゆる本土並みとは、日本の本土法制のもとに、憲法を頂点とした本土法制のもとに復帰をする、こういうことがいわゆる本土並み返還だと思う。したがって、沖繩は、申し上げるまでもなく長い間ゆがめられた行政のもとに、異民族の行政のもとに非常に多くの困難をなめてきているわけですよ。権利は極端に押えられてきているわけです。したがって、ここで本土並み返還ということを実現するのには、それは明らかにいわゆる人権の立場で、基本的人権、こういう立場でも本土並みなんだ、したがって、長い間そういうしいたげられ、ゆがめられ、苦しめられてきたそういう戦後二十六年間の状態は、全部ここで清算をするんだと、こういうことが基本でなければならないと思います。したがって、その当時の各種の諸問題がぜひ本土と同じように回復をされていく、こういうことがそもそもの前提でなければならぬと思いますが、その点いかがですか。
  117. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 前提は、ただいま言われるとおりでございます。
  118. 西宮弘

    ○西宮委員 そうしますと、もう一ぺん伺いますけれども、要するに、いわゆる本土の国民と全く同じような権利を回復する。いままで二十六年間こうむってまいりました各種の損害があるわけです。私は主として農業の問題についてお尋ねをいたしますが、農業上にそういう問題が、あるいは農地の問題等にそういう問題がたくさんあるわけです。だから、これらは本土政府の法制に従ってその失われた損害を回復する、こういうおつもりだということを伺いたいと思います。イエスかノーかでなるべく……。
  119. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 さような点も救済をする、この考えでございます。
  120. 西宮弘

    ○西宮委員 わかりました。  それでは具体的の例として二、三の点をお尋ねをいたしますが、一番問題になっておりますのは、軍用地の接収に伴って、当然本土ならばなされておったはずの残地の補償とか、隣接地の補償とか、離作補償とか、水利権の補償とか、こういう問題があるわけです。これは二、三ずつサンプルをとってきたわけでありますが、たとえば残地と申しますると、これだけの土地のこっちだけは接収された、あとにこれだけ残ってしまって、これじゃ全く使い道にならない、そういうものも全然今日まで顧みられておらないわけです。あるいは隣接の問題ならば、たとえばこういったように隣近所は全部基地になってしまった、それがために通行もできなければあるいは水も流れてこない、そういうことで水田も全部使いものにならないとか、あるいは水利権の問題ならば、途中のかんがい用水が全部埋められてしまった、それでもう田にならなくなってしまったとか、あるいはまた水源地が接収されたために水が来なくなってしまったとか、そういう問題等は全然顧みられておらないわけです。それから、いわゆる離作補償ですね。本土の場合ならば、転業するについての資金の手当てとかいろいろなことが離作補償として行なわれるわけですが、そういうものも全然なされておらない。こういうところに問題があるわけです。そういう点についても万全の対策をとっていく、こういうおつもりかと思いますが、そう理解をしてよろしゅうございますか。
  121. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 沖繩の方が御安心がいくように、担当の山中君から詳細に説明させます。
  122. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは、いわゆる対米請求権と呼ばれるものの中のそれぞれの分野に属するものでありまして、たとえば隣接地その他の問題は通損補償でございましょうし、あるいはまた耕作権の問題というものは請求権の中にもいわれておりませんが、同じような問題としては、やはり漁業補償等もいわれております。あるいは入り会い制限その他の問題もございます。したがって、これらの問題は、予算措置は一応今後防衛施設庁が行なっていくことになりますので、私のほうが担当大臣として沖繩の現地の事情を、先ほど来お話しのことはそのとおりでございますから、沖繩の方々のみにそのようなことが今日まで苦しみとして与えられてきた、そのことに対する本土政府が、対米請求として話し合いができなかった、妥結しなかった残りについては、本土政府においてわからないところは、調査費でも計上しながら、本土の姿勢というものを明らかにしていくというつもりでございます。
  123. 西宮弘

    ○西宮委員 たいへんに明快な答弁で私、満足をいたしました。それでは問題だけを指摘をして、いまの御方針でやってもらいたいと思いますが、いま入り会いの問題についてもお話がありましたので、これは申し上げません。  そのほかに、海没地の問題あるいはまた復元補償がなされないために、せっかく返ってきたけれども全然使いものにならない、こういう土地が大体四百七十七万坪といわれておりますが、まことに膨大な土地があるわけですよ。そして、しかも古いのは一九六二年、約十年前に返ることは返った。しかし、めちゃくちゃに土地が削られたりあるいは埋められたりして、もうとうてい使いものにならぬ、そういう膨大な土地があるわけであります。そういう問題についてもぜひとも――要するに返還されたけれども全然使いものにならなかったというその間は、当然にその損害が補償されなければならぬと考えまするので、そういう点もぜひ取り上げてもらいたいと思います。  それからもう一つ、山中長官でけっこうでございますが、開放地の境界設定の問題ですね。来年度の予算に若干要求しておるようですけれども、この問題はたいへんにむずかしい問題です。総理、これは総理は十分御承知だと思いますけれども、戦争後、沖繩人をみんなどこかに収容しておいて、ただあるところにかってに基地をつくっていったわけですね。だから、いまその土地の境界を画定しようと思っても、これはなかなか困難なことなんですよ。非常にむずかしいこと。かく申す私も、三十年前沖繩に住んでおったわけです。私は、私が住んでおったところはどこだろうと思って何回か行ってみたけれども、何回行ってみてもわからない。滄桑の変どころの騒ぎではないのですから、境界を画定するという問題は非常にむずかしい問題なんであります。  そこで長官、今度はこれはだれがやるのか。つまり従来沖繩には、琉球政府に土地調査庁というのがあったわけです。それがやったが、今度は国の出先としては、それに該当するものはなさそうですね。そうするとだれがやるのか。あるいは沖繩には土地調査法という法律があってやっておった。これは日本本土の国土調査法にやや似ていますけれども、全然違う。したがって、やるとすれば、その法的根拠は何によってやるのか、こういう点についてかなり不安がありますので、お聞かせを願います。
  124. 山中貞則

    ○山中国務大臣 まず海没地の問題ですが、これは返還協定で御承知のように、那覇軍港にかかる部分については、アメリカにおいて造成された土地との交換、代替提供ということで地主との話し合いさえつけば、これは可能でありますが、その他にも一部、読谷、北谷等の海岸部門等において、これはまだ確認されておりませんけれども、海没地があるということであります。これらの問題は、調査しつつ、それらの海没地についてどのような補償をなすかについて、本土政府の責任においてこれを行ないたいと考えております。  さらに復元補償に関連をいたしまして、中でも西原飛行場のごとく、旧日本軍が建設した部門にかかる地域については、返還はしても復元補償費を出さない。何となれば、それは日本が戦争中にわれわれと戦うために、おまえたちも一緒になってつくった飛行場じゃないかというアメリカの理論らしいのです。しかし、その土地は確かにそういうふうにして軍が飛行場をつくったかもしれませんが、私どもとしては、その上に工作物、セメント、アスファルト等を塗ったものは米軍だと思うのですけれども、しかし理論は理論として、それは合意に達し得ないまま、それを復元補償しない対象にしてありますから、これらはやはり旧日本軍が行なった行為に伴って、それが飛行場になってしまったための復元の費用ということで、見てあげなければならないことであろうと考えます。  さらに、この問題は結論は出ておりませんが、復元補償も出た、復元の作業も始めた、しかしながら復元が完全になされて、すなわち耕作が行なわれるようになって、もとどおりの収益というものが土地からあがるようになるまでの間、土地収入、賃貸料が入らなくなってくる、これを本土政府のほうで何か考えてくれという要望もございます。これについては、防衛庁のほうの現在の法律でも六カ月は払うことができるようになっておりますが、沖繩について特別の配慮というものがなされるように、協力して私どもも努力をいたしたいものであると考えておる次第でございます。  さらに境界線の設定作業というものは、これは本土においては予測できないほど沖繩においてはきわめて重大問題であります。したがって、ただいまお話しのように、土地調査庁が現在は沖繩法律によって一応の調査を行なっておりまして、日本でいう国土調査法というものから考えると、沖繩においては比較的順調で、問題のない地点の進捗率は本土の各県よりも高うございます。しかし一番問題なのは、すなわち第二次大戦中に戦場と化して、いまおっしゃったように米軍が上陸してかってに基地をつくったり、あるいはまたかってに追い立てたあとにみんながばらばらに帰ってきて住んでしまって、いまさら他人の土地である、自分の土地であるということが、指摘はできてもどうにもならない。境界線の設定作業というものは、たいへん小さい地域の問題であるだけに、きわめて困難な事情を伴っております。琉球政府の現在持っております土地調査庁の職員の能力はございますが、権限の問題、予算の問題、こういう問題について、確かに私も問題があると思いますので、本来ならばこれはやはり、登記法的なものに準拠したものによる市町村の土地調査的なものをやらなければならぬと思いますが、しかしこれは、沖繩においては市町村限りでやることは困難であると思いますので、現在沖繩の琉球政府と話をいたしまして、土地調査庁の職員を一応そのまま残していただいて、人件費、事務費等についても一応全額国が見ようじゃないか、そうして、たとえば与那原村が解決をすれば、沖繩においてのこのような境界線策定作業はできるのだという一つの典型的に入り組んだところがございますので、これらの与那原地区等については、できるならば国のパイロット事業的なものという認識のもとに、この境界線策定作業を全額国費でやってみたらどうだろうかという構想を持っておりますが、最終的に大蔵省と予算をまだ詰めておる段階ではございません。
  125. 西宮弘

    ○西宮委員 ただいま海没地の問題について答弁がありましたので、お尋ねをいたします。  つまり海没地の場合は、アメリカ軍が造成した埋め立て地と交換をする、簡単に言えば、ことばは違いますけれどもそういう構想でありますが、これにはこう書いてあるわけですね。交換公文には、アメリカ政府が埋め立てた土地で現に保有しているものを処分して、こう書いてあるわけです。私は、アメリカ軍が処分をする権限があるのか。つまり所有権ならば当然に処分ができると思いますよ。しかし、アメリカ軍は沖繩の土地を所有しておるはずはない。所有権を持っておるはずはない。これはどういうことなんですか。
  126. 吉野文六

    ○吉野政府委員 お答えいたします。  沖繩復帰後は、これらの土地は日本政府に属するものでございますが、復帰前は、いずれにせよ彼らが埋め立て、彼らが保有しているものでございますから、復帰前にこの土地につきまして処分することは、われわれとしては妨げ得ない、こういう解釈でございます。
  127. 西宮弘

    ○西宮委員 復帰前は妨げないということですか、処分することは。
  128. 吉野文六

    ○吉野政府委員 妨げ得ない立場にある。したがって、この交換公文によりましてわれわれと協議してともかく処分をする、こういうことになっております。
  129. 西宮弘

    ○西宮委員 ちょっと局長、復帰前は妨げ得ない。つまり彼らは沖繩の土地を処分をする。つまり処分するというのは、所有権に基づいて処分するわけですよ。処分のしかたはそれ以外にはないわけである。だから、所有権を持っておるなら処分してもちろんかまわないけれども、その処分をすること、いわゆる所有権には使用、収益、処分とありますね。そのうちの一つですね。それを実行するというならば、それは現在の時点では差しつかえない、こういうことですか。
  130. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これは差しつかえないと言い切るのは多少疑問があるわけでございますが、いずれにせよ彼らが自分で造成した土地でありまして、これは公法上の所有権というのか処分権というのか、ともかく私法上の所有権ではないだろうと思いますが、いずれにせよ彼らが自分の費用において造成した土地である、したがって、少なくとも復帰前は、わがほうが権利あるものとしてこれについてクレームをつけ得ない、これが現状でございます。
  131. 西宮弘

    ○西宮委員 自分の費用においてアメリカが造成をしたから、それは処分ができるのだ、こういうことならば、これは重大問題だと思うのですね。とうていここにはアメリカの所有権は及んでおらない、いわゆる処分する権限は全くない、これは私はそういうふうに断定せざるを得ないと思う。とてもそんなことでは承服できませんよ。土地がその造成した人の所有権に移る、こういうことは日本じゅうどこにもあり得ないじゃないですか。
  132. 吉野文六

    ○吉野政府委員 この問題は、一種の占領軍の権限と申しますか、国際法上の問題でございまして、いろいろ込み入った問題がございます。しかしながら、日本復帰の際には、これは自動的に全都日本政府の土地に戻るわけでございます。
  133. 西宮弘

    ○西宮委員 問題は復帰後の問題ではない。現に保有しておる土地、こう書いてあるわけです。ナワということばが使ってある。だから問題はいまなんです。これを調印した一九七一年六月十七日時点なんだ。現に保有しておる土地と交換する、交換というか処分をする、こういうことをいっているわけです。だから、そういうことは私はとうてい許されないと思う。これは重大問題ですよ。
  134. 吉野文六

    ○吉野政府委員 アメリカ側が処分するといいますのも、あくまでもわがほうと協議の上に、この海没地で補償を要求し、かつ代替地を要求する人に対して処分する、こういうことでございます。
  135. 西宮弘

    ○西宮委員 ちょっと聞きそこなったが、済みません、いま話をしておったから……。
  136. 吉野文六

    ○吉野政府委員 アメリカ側が処分すると申しましても、これはあくまでも海没地のために新たに代替地を要求する人に対して、その必要な範囲内において埋め立て地から処分をする、こういうことでございます。
  137. 西宮弘

    ○西宮委員 そんなことはわかり切っているじゃないですか。ちゃんと書いてあるじゃないですか。そうじゃない。私の聞いているのは、その処分する権限ありやいなや、こういうことなんですよ。つまり所有権がありやいなやということなんですよ。
  138. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これは本来的に考えますと、米側といたしましては、自分で埋め立てた、造成した土地でございますから、場合によってはこれを全部またもとに戻して海の中に埋めて、そうしてわが国に返すことも、少なくとも占領下にある限りは可能だと思います。そしてわがほうもこれに対して、これをそういうようにしてくれるなということを主張することも困難かと思います。しかしながら、すでに彼らはせっかく造成した以上、これを日本政府に返したい、しかしながら、返す前に、彼らが沖繩の一部の人に対して、海没地の現状を起こしたから、その人たちに対してその一部から補償したい、これが現状でございます。
  139. 西宮弘

    ○西宮委員 私はいまの説明ではとうてい納得できませんけれども、局長のああいったような自信のない答弁では、これ以上議論しても役に立たないと思う。したがって、これはお預けをします。  この問題は保留しまして、もう一つついでにこういう問題が出ましたからお尋ねをしたいと思う。総務長官、VOAの土地はだれの土地ですか。現に置かれておりますのは三カ村にまたがっていますけれども、国頭と恩納と北谷、この三つそれぞれにいろいろな施設がありますけれども、これはだれの土地ですか。
  140. 山中貞則

    ○山中国務大臣 VOAの継続存置の問題でありますれば、外務省、郵政省から答弁をしていただきたいと思いますが、私の知る範囲では、それは個人の所有地に対してアメリカ軍が賃借料を払って使用しておると考えております。
  141. 西宮弘

    ○西宮委員 個人の土地だといたしますると、今度返還の時点でこれを先方に使わせる、こういうことになった場合には、もし個人が賃貸を承知をするということになればよろしいけれども、そうでなかった場合にはどうしてこれを確保いたしますか。
  142. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これらの土地は、先ほど御説明がありましたとおり個人の所有地でございます。したがって、地主とVOAの当局者が契約をいたしまして返還後の賃貸契約をすることになっております。
  143. 西宮弘

    ○西宮委員 わかりました。それでは要するに土地の所有者と賃貸借の契約をするということだけしかない。つまり今度提案されたいわゆる土地の収用法、あれの対象にはどこにもなっておらない。あるいは返還協定のいわゆるA表、B表等にはどこにもない。つまり施設及び区域ではない、こういうことでそのいずれでもないわけですね。だから、あの土地を借りるという方法は、その地主の承諾を得るという以外には道は全くない、こういうことですね。
  144. 吉野文六

    ○吉野政府委員 そのとおりでございます。
  145. 西宮弘

    ○西宮委員 もしそのとおりだということであれば、私はこれはこういう交換公文をかわした責任はきわめて重大だと思う。つまり、もし地主が承諾をしないというようなことになったときには、それに対する対応策は一つもない、こういうことで、きわめて厳重な交換公文を取りかわしているわけですよ。私はこれはまことに重大だと思うのだが、これは問題としては、まさにいま決定的にそういう重大な点が明らかになったので、その点だけを明らかにいたしまして、次に移りたいと思います。ほんとうはいまの公用地の暫定使用に関する法律案について相当議論をしたいのでありますが、時間がありませんから別の機会に譲りましょう。ただ、私どもとしてはこういうきわめて違憲性の強い、違憲性の明白な法律は、われわれは断じて承認できない、そういうことだけ申し上げておくことにいたしたいと思います。  私は、その次に日本の農業について予告をいたしておきましたが、この点ではきわめて簡単に二、三の点をお尋ねをしたいと思います。  その一つは、けさの新聞にも報道されておりますように、ことしの作柄がわかったわけであります。したがって、ことしはことし単年度では米が足りない。足りない米は昨年度の、四十五年度の持ち越しで補う、こういうことでことしの昭和四十六米穀年度はそれで間に合わせようとしておる。私は、ことしはとにもかくにも昨年の持ち越しがあったからそれで済むけれども、そういう状態で今後続けていくということはきわめて危険千万だ、こういうことをいわざるを得ません。新聞にもありまするように、ことしは戦後三回目の不作であります。しかもこれは、いわゆる米作技術が安定をしたその時点から数えると、まさに初めてですよ。私はこれは単に冷害だけの原因ではないと思う。要するに生産意欲が大幅に減退しつつある、こういうことが原因だと思うわけであります。したがって農林大臣は、そういう点についての御認識はいかがであるか。特に、こういう冷害等にあいますると、なおさら生産意欲が減退をいたします。相乗的な作用をしてくる、こういうことになりまして非常に危険だ。しかも過去の経験によると、冷害は二年ないし三年続いております。したがって、残念ながら来年もこういうことを予測をしないわけにはまいりません。そういうときに全く一トンの余裕もない米の需給計画、すなわち生産は千百六十五万トン、消費は千六百五十万トン、一トンの余裕もないこういう計画をつくるということは、私はまことに危険だと思う。当然にここには幅を持たして、余裕を持たして、そして余ったらばもみ貯蔵をするとか、そういうことが考えられなければならないと思うわけでありますが、農林大臣にお尋ねをしたいのは、簡単にお尋ねをしたいと思いまするが、要するに来年もそういうぎりぎり一ぱいの生産計画を立てるのか。したがって、減反政策をやる、あるいはまた買い入れ制限をやる、こういうことを相も変わらずやろうとしておるのか、その二点についてだけお答えを願います。
  146. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 前半のお尋ねに対しましては申し上げる必要はないと思いますので、結論的な問題を答弁いたします。  生産調整をこういう凶作の年にもやるのかどうか、こういうことでございます。私は根本的に農産物の需給の調整をとるということは一番大きな問題だと思います。ことしはまことに不作の年でありますが、米の生産は恒常的にふえてきております。そういう意味におきまして生産調整は続けてやる、こういうことでございます。ただ、生産調整につきましての数量の考え方等については、なお検討しなければならぬ問題が残っておると思います。  それから需給の計画でございますが、いま御説のとおり、四十七年度の需給はことしの凶作によって七十九万トンも減りますが、ことしの需給調整は従来のとおりで差しつかえないと思います。四十八年度以降の調整等につきましては、生産量とか、あるいは消費量とか、こういうものをなお勘案しまして、幾ぶん数字的に考え直す点があると思います。しかし来年度におきましては、現在のところ需給の調整は現在のままで差しつかえないと考えておりますので、それを続けていきたい、こう思います。
  147. 西宮弘

    ○西宮委員 この点は総理にも、ひとつぜひ赤城さんと一緒に聞いておいていただきたいと思うのですが、最近の生産意欲の減退ということはきわめて重大化しているわけです。したがって、私はあえて断言をいたしますが、ぜひ総理も農林大臣も記憶にとどめておいていただきたいと思うのですが、これは前から私は言っておることだけれども、いまのような状態が続いていけば、つまり生産意欲の減退ということが続いていけば米は足りなくなる。これは絶対に足りなくなると私は断言をしてはばからない。したがって、昭和四十六年の十月三十日に西宮がそう言ったということを、覚えておいてください。私は必ずそういう事態が来ると思いますよ。だからそれに対する対策をいまから十分に考えなければならぬ。  たくさん問題がありまするけれども、時間がありませんから総理に一言お尋ねしますが、赤城農相はしばしば国会の答弁を通じて、来年は生産者米価も考慮をする、こういう説明をしているわけです。そこで私は、これは生産意欲減退の歯どめの一つになり得ると思うのですね。その点について、総理も赤城農相と同意見であるかどうか、一言お尋ねをいたします。
  148. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 赤城農相と同意見でございます。
  149. 西宮弘

    ○西宮委員 私は、先ほど来問題になっております蔬菜の問題について、これは現在重大な問題でありますからお尋ねをしたいのでありますが、総理の答弁を伺っておりますと、総理の蔬菜問題に対するお答えは、要するに先般フェリーに乗っかったということだけしかないように聞こえるのです。一番最初の日の答弁以来、宮崎に行くときにフェリーに乗ったということをたいへんに強調しておられまして、総理の蔬菜対策というのは、要するにフェリーに乗ったということだけじゃないかという感じがするわけであります。  そこで、これは先般、総理が十月の八日に、日本新聞協会、日本記者クラブ共同主催の会合で、くしくも蔬菜問題について詳細な説明をしておられます。それを項目だけ拾ってみますると、両者――両者というのは生産者と消費者ですが、この利害が合うような安定的に供給される仕組みを確立する。それから、生産量の適切な確保が先決であるから、共同によって集団化すること。それからカーフェリーが活用できる。たくさんできればですね。消費者も、小口消費では生産が対応できないから、産地あるいは消費地にも冷蔵庫を新設をし、直結できる体制をつくる。牛肉、生乳、豚肉などについても同様である。四番目は、神田市場でなくては値がさめられないという今日の流通機構が時代に合うよう整備さるべきである。五番目は、現地と消費団地に貯蔵施設をもって直結をすれば、もっと安い、おいしいものが食べられる。目標を示さず、ただ農民につくれ、つくれというだけでは農家も困るのである。目標を示し、市場を思い切って改革をし、消費者との太いパイプをつなぐ。それに合わせ得る集団営農体制をとる。これだけの問題を指摘をされておるわけです。私は、これはまことに明快な問題の指摘であり解決策だと思うわけです。だから私はこれに対しては一言の異論もないわけです。  ただ問題は、総理は、ここにいまるる説明をされたことをいかにしてやるのか。あるいは新聞等のことばをかりると、一体やるのかやらないのか、やる気があるのか。新聞等ではしばしばそういう表現でいわれておるわけでありますが、私は、これだけ指摘をした問題を総理はいかにしてやるのか、こういうことを一言お尋ねをいたします。
  150. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 総理がやるといって、それは私自身が生産から消費まで、自分でつくって自分で食べただけでは一人だけの問題ですから、そうできるものじゃございません。これには、いままであります、生産地においては農協の施設、これはずいぶん行き届いております。     〔長谷川(四)委員長代理退席、委員長着席〕 これの協力も得なければならない。また、今日までの市場というものがそれぞれ果たしておる役割り、これはそれなりに評価いたしますが、最近市場法が改正されて、もっと各地に市場が分散する、そういう形にもなりますから、そういうことによって、いわゆる配送の重複を除く。たとえば、東京まで持ってきて値段が立って、それがまたもう一度高崎に返るというようなことでは、高原野菜一つとってもずいぶんむだがあるじゃないか。そういうことを考えながらそういうものに対応するようにする。ことにまた貯蔵倉庫の問題は、品物によっては直ちにそれが向かないものもございます。しかし豚肉が不足だから緊急輸入する、何という情けないことか。せっかく制度があるんだから、これは豚肉だろうが、牛肉だろうが、これをちゃんと貯蔵して、その状況を握っておれば、これからいよいよ不足する、こういうことになれば、いわゆる緊急輸入するというような大騒ぎをするまでもなく、絶えず補給し、そういうことがうまくできるんじゃないか。これは肉の例ですが、肉ばかりじゃありません。野菜についてもそういうことが言える。ことに、タマネギだとか、あるいはバレイショなどは、そういう長期保存に対応できるものだ、かように思います。私などはいなかの出でありますから、バレイショとは申しませんが、サツマイモなどは一年間自分のうちで貯蔵していた、そういうことを思い起こすのでありますが、もっと最近便利になったからといって、ただいまのような点がおろそかになってばむだがどうしてもできる。だからこれは荷受け地において、また産地において、それぞれそういう共同施設が持たれてしかるべきじゃないかと思っております。  カーフェリーの話を出しましたが、宮崎で選果場も見てまいりました。これはやっぱり共同してその選果場の施設をすることによって、小さな生産者が共同することによって大量の品物が確保できる、そこで取引の対象にもなるんだ、ここに目をつけていただきたい、かように思っております。私がしろうとながら指摘した点は、ただいまも御賛成をいただいておりますが、これは現在の状況では、生産者側のいわゆる農協のほうの介入といいますか、お世話というか、これはずいぶん行き届いておるように思いますから、荷受け側、今度は消費地における設備、制度等をもっと完全にすることによって、いわゆる値動きがあまりしなくて済むようになるのではないか。高いばかりが生産者にいいわけでもございません。やっぱりそういう点が下がる、値下がりもあるとか、値上がりもあるが安定することが必要だと思うし、また消費者にとりましても、安いばかりだというわけにはいかないんで、これはやっぱり安定した供給であることが必要だ、かように思いますので、この点では大体意見は一致するのじゃないか、かように思っております。
  151. 西宮弘

    ○西宮委員 私は、いろいろ論議をしたいのでありますが、時間がありませんから次に移ります。  ただ、指摘された、たとえばいわゆる受け入れ側においてもその体制をつくれ、これも当然でありまして、したがって、年来から主張いたしておりますように、たとえば生協の育成、要するにああいう大型な受け入れ機関をつくる、こういうことは絶対必要なんで、生協の育成というようなことはまことに重大問題だということを、ぜひ御認識を願いたいと思います。  それから、総理も言われた、足りなければ緊急輸入だ、こういう考え方は、そういう発想がそもそも間違いなんで、今日まで私は、その点が日本の農業を非常に大きく毒してきていると思うのですよ。たとえば米の場合でも、おそらく農林大臣などもそういう腹があるのじゃないかと思う。たとえば、足りなくなれば輸入だ、心配ない、いわゆる国際分業論。私は、そういう国際分業論等の考え方がいわゆる貿易立国の裏返しでありまして、したがって、日本の国が、公害その他であらゆる問題を引き起こしている今日の状態になっていると思う。したがって、そういったような安易な、足りなければ輸入するんだ、そういう考え方はぜひとってもらいたくない、こういうことも指摘をいたしておきたいと思います。ぜひ、指摘をされた、総理も言われました問題を、強力に推進してもらうようにお願いしたいと思います。  それでは次に、国鉄総裁にもおいでを願っておりましたので、総裁に対して少しばかりお尋ねをしたいと思います。  私は、現在新聞等でも報道され、あるいは総裁みずからもたいへんに心痛をしておられる問題だと思いまするけれども、私は実は昨年の十月の九日にこの問題を国会で取り上げたわけであります。それから一年有余たっているわけであります。問題はますます深刻になっている。私が、せっかく昨年の十月の初めにこの問題を取り上げたのでありますが、そのころはほとんど何の反響も示さない。こういうことがだんだん問題を深刻にしてきた理由ではないかと思うので、まことに残念だと思うのであります。私は結論として申し上げたいのは、いま問題になっておりまするような運動はぜひやめにしてもらいたい。このほうが問題解決の早道ではないか、こういうことが最後に結論として言いたい点なんであります。だいぶ総裁の考え方も変わっておられるようでありますが、さらにこの点については慎重に深刻に考えていただきたいと思います。  おそらく総裁は、このいわゆる生産性向上運動なるものはきわめて純粋な動機から出発したんだ、こういうふうに言われると思います。あるいは総裁の考え方はそのとおりであったかもしりませんけれども、もしそうだとしても残念ながら今日は事志と違ってしまったわけであります。そのためにはいろいろな不当行為――これは現に公の機関によって不当行為と断定をされているわけですから、そういうことが現に行なわれておる、あるいは差別待遇が行なわれておる、こういうことも現実の実態であります。あるいはさらに現場では、この運動を推進をするために金が足りないというので、無理算段をして不正な金までくめんをしてこのことをやっている、こういうような問題などもあるわけであります。私はそういう点について、できるだけ簡単に、まず総裁のお気持ちを聞かしてもらいたいと思います。
  152. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 ただいま御指摘の、最近の国鉄の生産性運動の問題でございますが、昨年の秋、先生から御注意いただいたこともよく記憶いたしております。その後、いま先生がいみじくもおっしゃいましたように、事志と違ってという御発言がございましたけれども、私といたしましては、四十四年に国鉄の財政再建の臨時措置法ができましたときに、三本の柱、すなわち国鉄自体の努力、国民の御協力と、それから政府の援助、この三つでもって国鉄の再建をやるというふうに国会でもおきめ願ったわけでございますので、そのうちの第一の国鉄自体の努力ということについて全力をあげて今日まで来たつもりでございます。  その意味で私は就任当時から、やはり国鉄自体の努力の基礎は職員自体の意識と申しますか、国鉄に対する愛情と、それから国民すなわち利用者各位に対する誠意、これが私は国鉄を再建する基礎であるというふうな信念を持っておりまして、精神運動を盛んにするために純粋な生産性運動をやってまいったのでございますが、過般の公労委の決定のごとき不当労働行為によりまして、その純粋な生産性運動が歪曲して理解された事例があったことははなはだ遺憾でございまして、これは私の不徳のいたすところだというふうに考えております。しかし、ことしの予算でも御審議願いましたときに、すでに三百数十億という償却前赤字を計上し、また来年度予算はいまいろいろ積算いたしておりますが、千数百億のやはり償却前赤という有史以来の難問に直面いたしておりますが、これに対しましてどうしても国からある程度のお金をいただかなければいかぬ。それには国鉄自体が、やはり自分自身が立ち直るという気持ちがなければ国民の御協力がいただけないという気持ちでもって、今後純粋な生産性運動は続けてまいりたいというふうに私は思っております。
  153. 西宮弘

    ○西宮委員 私は最初に、事志と違ったとしてもということを言ったので、私みずからはそうは思っておりません。このいわゆる生産性運動なるものが、最初からそういうことを指向して、そのためにいろいろと考えられてきた、こういうことはいままでの調査で明らかなんであります。私が言いたかったのは、もうこの運動はおやめになったらいかがですか、こういうことを言いたかったので、そのことを強調したかった。これが最後に私が言いたい点だということを冒頭に申し上げた。したがって、たとえあなたの志と違ったとしても、そのために現場にはいろいろな問題が惹起しているわけであります。したがってこの点は、どうしても見のがすわけにはいかない。  私はそこで、それでは具体的な問題として一、二お尋ねをしたいと思うのでありますが、たとえばこの間、これは公の機関によって不当労働行為と断定された人があるわけですね。こういうような人に対する処分、つまり法律的な処分というようなものがなされておらない。こういう点について私は非常に残念だと思う。私は昨年の十月に国会で質問をしたときに、当時の山口常務は、あれはみんな現場の職員が、現場の管理者がやっているのだ、中央から指示しているのではないのだ、現場の人たちがみんな自分で手弁当でやっているのだ、こういうことを言っているわけであります。もしそうであるならば、そういう人たちは自分の責任においてやったことだから、その意味においての処断を受けなければならぬというのが当然だと思う。この現場の職員に対する処分はどういたしますか。
  154. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 去る十月の二十三日に一連の人事上の措置を発令いたしました。その内容はすでに御承知のとおりでございますが、私といたしましては、今度の問題につきましては、総合的な判断に基づいて適切な措置をとるということを繰り返し国会においても申し上げておるわけでございまして、今度の問題につきましては、すでに私の受諾いたしました公労委の命令書におきましても、いわゆる懲戒処分には及ばない、当局の陳謝命令で足りるというふうな決定がなされておることは、もう御承知のとおりでございます。私は、それにもかかわらず、いわゆる就業規則による処分ではないけれども、その一歩手前の厳重注意あるいは訓告をしたわけでございまして、その点、現場の責任についてはある程度の追及をしたというふうに思っております。
  155. 西宮弘

    ○西宮委員 公労委においてはあれだけしかできないから、あれだけしかやってないので、私は日鉄法三十一条に基づくそういう処分が当然なされなければならぬと思う。ぜひとも、そういう責任者については、そういう規律を明らかにしていくということが問題解決の一つの道であることは申すまでもありません。したがって、ぜひそれはやらなければならぬということを強く申し上げておきたいと思う。  それから最後にまとめてお尋ねをいたしますが、私はこういう点も重大だと思うのです。これはそもそも、さっき申し上げたように、いわゆる生産性運動なるものが意図された、そういう組合弾圧と申しますか、あるいはそういう意味での偏向的な教育というか、そういうことが行なわれておるという点であります。これは仙台鉄道管理局の労働課で出しました書類でありまして、ここに現物は全部持っておりますが、その労働課というところ、つまり公の機関が出した書面でありますが、これは要するに現場の責任者に出した文書であります。そのうちの幾つかを拾ってみると、たとえば「そのために我々は労働組合をアカの手から守ろうのスローガンをあげ真の労働者の幸せをつかむために努力しようではないか。アカ、それは社会党と日共である。」あるいは別な個所には、「アメリカは一回でも日本を裏切ったことがあるであろうか。」「サンフランシスコ条約に反対して、日本からアメリカを追いださなければソ連も中共もその野望即ち日本侵略ができないからである。それが安保条約の完全破棄なのである。」「自民党の安全保障構想として、自衛隊の評価という点に欠けているのはもの足りないだけでなく、」これは自民党が足りないというわけですね。「すくなくとも建設的ではない。まづ自主防衛力の強化という見地から、自衛隊の整備についてももっと積極的に取り組むべきであろう。」「問題は社会党の非武装中立論である。安保条約はわが国の平和と繁栄に高く寄与し」、こういうようなことがまだまだたくさんあるわけですよ。これは労働課として、つまり国鉄の機関ですよ。それがこういうことを言って宣伝をしているというようなことを、私はとうてい見のがすことはできないと思う。簡単に答弁をしてください。
  156. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 その点につきましては、すでに委員会におきましても取り上げられまして、不適当な点につきましては、すでに訂正し撤回をいたしております。
  157. 西宮弘

    ○西宮委員 撤回をしましても、配ったものはもうみんなが読んでしまっている。そういうことでは何の対策にもならない。私は、そもそもそういう考え方がこの運動の基本をなしている、こういう点を申し上げたい。  さらにいろいろな点に波及をしてまいりまして、私は、一番国民が心配する問題で列車の安全運転ということが大事だと思うのであります。たとえばここにある一例は、若松の運転区でありまするけれども、指導助役が、昭和四十五年十二月二十四日でありますが、酔っ払って乗り込んできて、停車中に乗客の若い女性をひやかしをしたので、乗務員がそれをたしなめた。そうしたらその助役は、酒はうちで飲んだのだが、もう三時間も過ぎている、だからいいのだ、こういうことを言っている。乗務員が、勤務中に酒を飲むとは何ごとだと言うと、管理者は私用も公用もないのだ、とにかくおまえたちにとやかく言われる必要はない、こういうことでがんばりました。しかしその後このことが公に問題にされましたので、この人は指導助役から運転担当助役ということに横すべりをしておりますけれども、これだけで終わっている。もし労働組合の組合員が、この場合は動労になるわけですが、動労の組合員等がそういうことをやったということになったら、たいへんなことになるわけです。しかしそういうことが大目に見のがされておる。あるいはまた、同じ若松でありますが、停車をしないで通り越してしまった、こういうことに対してもきわめて寛大な処置しかとらない。しかもそれは組合等が何回か交渉をいたしまして、交渉した結果、三カ月以上たってわずかに一週間の乗務停止をした。いわゆる庫出しのほうに回した、こういうことであります。普通ならば当然減給、減俸になる筋合いであります。これはその所属組合のいかんによってそういう点がきわめてルーズに扱われておる。あるいは、週刊誌を見ながら運転をしておった、こういうことが、同じく若松でありますが、投書をされて明らかになった。これに対して組合から強く抗議をいたしまして、これもようやくその結果として庫出しに回されて、二、三日乗務停止になりましたけれども、本来ならば、そういう事故のあるたびにいつも張り出しをしているのですが、全然張り出しをしない。あるいは前回に申し上げたのも張り出しをしない。こういうことを数えあげると切りがないのであります。こういう点は保安運転に重大な影響がある。これは国民の旅行の安全、輸送の安全に重大な関係がある。したがってそういう問題が惹起をしてくる。いわゆる管理者一覧しては寛大であるとか、あるいはまた特に当局の言うことに忠実である人たちに対しては寛大であるとか、そういうような差別待遇をしておりますると、これは国民に対して重大な問題を惹起する、こういう心配さえもありまするので、ぜひその点について、そういうことが絶対にあってはならぬ、あるいはこういうことに対してどういう処置をとるか、まずお答えをいただきます。
  158. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 運転事故につきましては、私どもといたしましては、これを防止することは最大の使命であるという決意のもとに、当委員会におきましても数回となく私は同じことを申し上げ、そして私の決意を披瀝したつもりでございます。したがって、その事故の関係者、責任者につきましては、従来とも厳重な処分をし、また今後ともそういう点について誤りのないようにしていきたいという覚悟でございます。
  159. 西宮弘

    ○西宮委員 私は先般田端の機関区を調査に行ったわけでありますけれども、ここでは職員に対して、つまり組合員に対して――組合員という立場ではないかもしれませんけれども、現場の職員に対して裏監査をやっております。裏監査を、裏面監査をやっております。そこで、その裏面監査というのはどういうことなのだ、あるいはだれがやるのだと言って聞きましたところが、職場の秩序あるいは業務の成績、それから品行、私行ですね、こういう問題について監査をするんだ、そしてその監査に当たる者は私、区長から指導機関士までやるんだ。指導機関士は二十二名おる。年齢を聞いたらば、若い人は三十歳前後だ。こういう人が裏監査をやっている。こういうことでは、私は職場が明るくなるなんということはとうていできないと思う。さっきから総裁も、国鉄がほんとうに国民に愛される国鉄になりたいということを言っておりますけれども、そういうことをするならば、とてもこんなことでは国鉄が明るくなるはずはない。ことに乗務員の場合は、一人で長い間勤務をして、だれ一人話し相手はないわけですよ。長い間の孤独に耐えて帰ってくる。そうすると、職場で雑談をするというようなことが楽しみであるはずだ。ところが、それが、帰ってきた職場は、そういうふうにどこかで絶えず自分をにらんでいるんだ、だれかがスパイしているんだ、こういうことでは――しかもそう言っちゃ失礼だけれども、三十歳前後の若い人たちですよ。お互いに同じような職場にある人、そういう人がどこかで監視をしているんだ、こういうことでは私は明るい職場などはとうていできるはずはないと思う。私はそういうことを考えると、こういうやり方は絶対に廃止をしてもらわなければならぬし、同時にこの職場を一新しなければならぬ。人心を一新しなければならぬ。そうでなければ、やはりいままでの惰性で、たとえ上のほうでいろいろな交渉等が行なわれても、なかなか現場ではそう急に態度を変えるというわけにいかない、いろいろそういう点があると思います。ですから大幅に人心を一新する、こういうことが絶対に必要だと思うので、私はそういう点で、問題になった人あるいは問題を起こすおそれのある人、そういう人は徹底的に異動をやってもらいたい、こういうことを申し上げたいが、その点はいかがですか。
  160. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 先生が先般田端へいらっしてお聞きくださったことは、私のほうでいわゆる実設訓練と申しておることだと思います。裏監査ということばは私ども使っておりませんが、実際のケースを想定して、そういう場合が起きたらどうするかということについての乗務員その他の処置の態度というものをはっきり実設でもってやっておきませんと、万が一事故が発生したときに、その事態の収拾がうまくいかないというふうなことがございます。そういう実設訓練のやり方のことだ、こういうふうに思います。  それから職場が暗くてはいけないということは、まさにお説のとおりでございまして、私もそのとおり考えます。先般の静岡関係の問題につきましても、関係者十二人おりましたが、すでにそのうちの半分は職をかえております。また今後もいまの先生のおっしゃったような趣旨あるいは人心一新という意味で、しかるべき時期にしかるべき総合的なことをいたしたい、これはそういうつもりでおります。
  161. 西宮弘

    ○西宮委員 わかりました。  それではもう一点だけお尋ねをします。  つまり、いわゆる差別待遇が行なわれているということに職場ではたいへんな不安があるわけであります。したがって、そういう差別待遇などということが、少なくともそういう感じを持たせないというためには、国鉄当局とその対応機関であるところの労働組合、ここにたとえば昇給、昇格等についてはそういう事実を示して、実態を明らかにして、それでフェアな交渉をする。つまり要するに、こういうことですよ。差別待遇があったかなかったかと私どもが質問すれば、おそらくそんなことは絶対にありません、きわめて公正ですと、こういう答弁をするに違いないと思います。しかしそれが公正であるかどうかということを判断するのは、私ぐらいでは実は判断する能力がない。これは対応機関であるところの労働組合ならば、一見してわかるわけですよ。だからそういうところに事実を示して、これならもう公正じゃありませんか、こういってやりさえすれば、私はその問題は一ぺんに解決をすると思います。あるいは昇格とか昇職等についてはその基準を明確にして、その基準どおりに実施をする、こういうことをやればよろしいと思う。だから、ぜひそういう点をやってもらいたいと思うが、その点簡単にお答えを願います、時間がありませんから。
  162. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 昇職、昇格につきましては、御承知のとおり現在組合といろいろ交渉中でございまして、片っぽは、国労のほうはことし一ぱい、動労のほうも、出ました公労委の調停案によりましていま折衝中でございます。  なお組合別に昇職、昇格の結果を出すということは、私のほうは四組合ございまして、いろいろ問題もございます。しかし組合員数とその昇職、昇格の問題とは私は全く意識しないでやっております。その組合ごとの不公平その他は私どもはないというふうに思っておりますけれども、先生のおっしゃったこともございますので、十分その実績を検討いたしたい。組合がたくさんございますので、一つの組合について不当労働行為でないことが、他の組合については不当労働行為になることがあり得るわけでございますので、その点も十分気をつけてやってまいりたいと思います。
  163. 西宮弘

    ○西宮委員 相手の組合いかんによって不当労働行為があったりなかったり、これはおかしいですな。不当労働行為というのは、法律にきめられた不当労働行為ですよ。これはおかしいじゃないですか。そういうことがあり得るんですか。相手の組合いかんによって不当労働行為があったりなかったりということがあるんですか。
  164. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 もちろん不当労働行為は法律によってきめられておるわけでございまして、組合ごとに差別はございません。しかしながら、一つの組合のための事をはかるということが他の組合に対する不当労働行為になる。それから他の一つの組合に対して差別待遇することがほかの組合の不当労働行為になるということでございまして、  一つの行為がうらはらになることがあるということを申したわけでございます。
  165. 西宮弘

    ○西宮委員 そういう心配があれば、それは組合にその提示をするやつを全部、一つの職場で同じ昇給、昇格等が行なわれるんでしょうから、それは組合に、みんなに示したらいいじゃないですか。そういうことで十分チェックできると思う。  実はこの問題は大原委員がさらに質問をしてくれることになっておりますので、私はこの程度にとどめたいと思います。  最後に、これはまことに言いにくいことなんでありますが、外務大臣にお尋ねをいたします。  うわさでありますが、この間の国連総会において、日本の代表が、同調者を得るためにたいへんな活躍をした。こういうことから相当、何と申しますか、必要以上のと申しますか、そういう運動がされたんではないか。たとえばアメリカでは金を使って云々という記事が出ているわけです。これはアメリカの記事でありますが、そういうことで金で票集めをしようとした、こういうことが報道されているわけですが、そういうことが日本でもあったんだというふうにうわさをする向きがあるわけです。そういうことはまあなかったという答弁をされると思いますけれども、しかし私は……(「幾ら使ってもいいじゃないか」と呼ぶ者あり)幾ら使ってもいいじゃないかというような不規則発言がありますけれども、そうですか。それではその点をお尋ねします。それでよろしいのですか。
  166. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいまお話を承りまして、実は驚き入ったわけであります。総理からかねて申し上げておるとおり、わが国の立場というものを了解せしむるというためには最大限の努力をいたしたわけでありまするが、金を使うとかそういう種類の、度を越えるような行動は一切いたしておりませんから、この点は誤解のないようにぜひともお願いをいたしたい、かように存じます。
  167. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 長西宮君に申し上げます。時間が経過いたしましたから結論としてもらいます。
  168. 西宮弘

    ○西宮委員 自民党の方から、幾ら使ってもかまわないじゃないかというような声があったけれども、もし使うとすれば私は外務省の報償費がこれに当たるのだと思うのですよ。予算で申しますると、外務省の報償費が七億余り、それから在外公館の報償費が十四億余り、これは四十四年であります。四十四年の決算であります。こういう金額があるわけでありますけれども、その点について、使うとすればこういう金が充当されるのだろうと思うのだけれども、それではそこだけひとつお答えしてください。
  169. 福田赳夫

    福田国務大臣 報償費にせい他のいかなる公費にせい、一切さような金は使っておりませんから、この点は一点の疑いもないようにひとつお願い申し上げます。
  170. 西宮弘

    ○西宮委員 私は、そういううわさが流れておりますから、あえてお尋ねをしたわけでありますけれども、いまお尋ねしたのは、もし使うとすればここから出るんだろうということを申し上げたので、したがって私は外務省に問い合わせてみたわけであります。そうしたら外務省の所管の報償費は次のような項目に使われるんだ。情報収集費、調査費、外交工作費、使節団工作費、外交活動援助費、宣伝啓発費、招待外交費、見舞贈答費等である、こういう答弁を得たわけであります。これは私が外務省の係から得た答えでありますけれども、この中で答えられた外交工作費であるとか使節団工作費であるとか、こういうところに使われるとすれば、私は事は重大だと思うわけです。しかもその金額がさっき申し上げたように本省並びに出先を合わせると二十何億かにのぼる金であります。したがって、そういうものがさっきのおことばのように幾ら使ってもかってなんだというふうな扱いをされるとたいへんな問題になると考えますのであえて申し上げた。私は、答弁がさっきのとおりであるならば、これ以上この点については答弁を求めません。ただしかし、こういう点がうわさとして流れている、こういう点だけは十分御認識の上で善処されるようにしていただきたいと思います。  終わります。
  171. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて西宮君の質疑は終了いたしました。  午後は一時四十五分より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後一時十三分休憩      ――――◇―――――    午後一時五十三分開議
  172. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。近江巳記夫君。
  173. 近江巳記夫

    ○近江委員 今後の国際経済に対処するわが国の基本的な方針について伺いたいと思います。  まず最初伺いたいのは、英国もEC加盟を決定いたしました。そのことは、拡大欧州の実現ということは、政治的には安定要因になろう、このように考られるわけですが、国際経済に対するこの影響というものは、一つはECブロック経済体制の強化になっていく。このことがひいては閉鎖市場となり、また、保護貿易へと進む危険性がないかどうか、このことにつきまして通産大臣、大蔵大臣にお伺いしたいと思います。
  174. 田中角榮

    田中国務大臣 英国のEC加盟は多年の問題でございましたし、イギリス国内においても議論が分かれておる問題であることは御承知のとおりでございます。しかし、いよいよ加盟が決定をしたわけでございます。加盟に対してイギリス国内でもって激論がありましたとおり、やはり、ECという大きな機構ができることによって、国際経済の自由な発達というものにブレーキがかかるおそれがあるわけでございます。もちろん、もう一つの一方の大きな旗頭であるアメリカそのものが、課徴金制度等によりまして縮小均衡の道を招くおそれのある状態でございますので、これらの実態を見ますと、このアメリカの状態と、ECに対してイギリスが加盟をするということの二つは、自由貿易拡大という方向の上では非常に不安な問題であるということは御指摘のとおりでございます。
  175. 水田三喜男

    水田国務大臣 通産大臣が言われましたように、もう長い間の懸案でございますし、英国経済が生きる道は欧州の共同圏の中に入ることだという結論が今度実現されたということだろうと思いますが、国際経済問題から見て、ここで必要だと思いますことは、これがまたブロック経済化への道をとるということは避けなければならない。したがって、やはり、ガットその他の国連機関が健全になって、自由貿易主義というものをもっと強くして、そうして保護主義的な傾向を打破することにこういう機関がより一段強力に力を発揮しなければいけないという必要が出てきているだろうと思います。
  176. 近江巳記夫

    ○近江委員 現在、このECの各国は、非常にわが国に対して輸入差別措置をとっておるわけですが、この輸入制限品目というものは拡大欧州にそのまま引き継がれる可能性はないかということであります。この点について政府としてはどういう見方をされておられますか。この点についてお聞きします。  もう一度申し上げますと、対日輸入差別、制限措置ですね。この輸入制限品目というのがそのまま引き継がれて、さらにずっと続くかどうか。それについてどういう見方をしておるかということです。
  177. 田中角榮

    田中国務大臣 御質問の要点がよく理解できませんが、イギリスがECに加盟をすれば、当然ECの力というものは大きくなるわけでございます。でありますから、そういう意味で、ガット体制等を考えますときには、今度のイギリスのポンドの問題、カナダ・ドルの問題、アメリカのドルの問題等で、ガット体制というようなもの自体がもう非常に危機に瀕しておるというような状態、それはすなわち拡大から縮小均衡へ向かうおそれがあるということでございますから、そういうような態勢に歯どめになるように日本自体も――三極ということをいわれますが、日本を含めて四極、ECを含めて五極というようにも考えられますし、当然、経済の問題では逆にアメリカを含めて三極、四極と見るべきでございますから、そういう縮小均衡に向かわないような歯どめの役割りは日本が十分でき得るし、しなければならない、私はこういう考えでございます。
  178. 近江巳記夫

    ○近江委員 その具体的な歯どめについてどういうようなことをお考えになっておられますか。何かお考えがありましたら……。
  179. 田中角榮

    田中国務大臣 来月の十六日からガットの総会も開かれるわけでございますし、ここには当然閣僚――私ども、また経済企画庁長官か、閣僚ベースの出席になると思います。日本に対する要望も強いことでございますし、日本がガット体制にどのような力を入れるか。また、日本がそういうガットを補強する、拡大していくということに対する一つの推進力になれるわけでございますししますので、そういう姿勢を出さなければならない。具体的に、ガットや、IMFや、世銀というようなものを拡大していくということに対する積極的な提案を行なっていくという姿勢を出すべきだと思います。
  180. 近江巳記夫

    ○近江委員 今回の拡大欧州の影響というものが当面前面に押し出されてくるというのは、国際通貨の多国間調整、こういうところに出てくるのじゃないか、このように思うわけです。  そこで欧州が、国際通貨制度の改革で具体案が提示された場合、その発言力、影響力というものはきわめて強力になるのじゃないか、このように思うわけです。そういう場合、政府はそれに対してどのように対処されていくか、大蔵大臣にお伺いしたいと思います。
  181. 水田三喜男

    水田国務大臣 いままでも十カ国会議がしばしば開かれてこの問題を協議しておるところでございますが、いま英国がECに加盟したからといって、今後の通貨調整に関する限りでは、特別にEC諸国が強くなって、日本の交渉がやりづらくなるというような問題は、今回の場合はまだないというふうに思っております。
  182. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま大蔵大臣はそういう心配はないというようなことをおっしゃったわけですが、総理は、いままで何点か私が申し上げたわけでございますが、それを通じまして、大蔵大臣と同意見でございますか。
  183. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私も、ECに英国が加盟したからといって、通貨問題についてのECの発言が非常に強くなった、かように考えなくていいのじゃないか。いままでいわれておりましたEECの場合でも共通通貨という問題があったわけですが、なかなか各国間でそう簡単にはできない、その状態が続いてきております。したがって、今度英国が入る、まあ入らない、入れない、こういうような場合にも、入れたときにどうなるか、入ったらどうなるか、ずいぶんEECの諸国も考えていた。そういうことを考えますと、やはり通貨というものは、それぞれの国がそれぞれ背景を持っておるので、簡単にEECという共同体で共同の動作をとるとは思いません。しかし、そこらにも私どもは十分注意しなければ、とかく話がしやすい仲間である。また先ほど近江君が御指摘のように、三十五条の援用等から見ましても特殊な扱い方をしている、過去においてもそういう例もございますから、やはりわれわれは今後の成り行きについては十分警戒を要するだろう、かように思います。いわゆる十カ国蔵相会議、これなぞが過去において結論を見出すことができなかった、この事実だけはそれなりに認める。しかし、それがいつまでもそういう状態が続く、こういうふうに考えておるわけではありません。ただ、いま直ちに英国が入ったことによって、一つの共同体内の調整がとれるとか、まだそれには少し経過があるだろう、かように思います。
  184. 近江巳記夫

    ○近江委員 次に、日ソの経済協力の点についてお聞きしたいと思うのです。  民間ベースではかなり積極的に進んでおるように思うのですけれども、何といいましても、やはり政府のそういう積極的な取り組みがない限りは、大きな発展は望めないと思うわけです。わが国の場合は非常に資源がございませんし、そういう点において今後日ソのそういう経済協力というものについてはさらに積極的に推進をしていく必要があるのじゃないか、このように思うわけです。  最近の報道によりますと、ソ連とフランスの間で十カ年に及ぶ経済協力協定が締結されたということでありますが、この協定の中には、具体的内容としてはシベリア開発あるいはシベリアからフランスへ天然ガスを供給することが考えられておる。こういう点についてフランスとの間とも非常に強力な関係が生まれておる。こういう点におきまして、わが国としてもさらに手おくれにならないように基礎固めをしていく必要があるのじゃないか、このように思うわけです。この日ソの今後の推進につきまして、通産大臣そして外務大臣にお聞きしたいと思います。
  185. 福田赳夫

    福田国務大臣 日ソの経済交流はかなり順調に進んでおり、これは世界の各国でも注目をしておるくらいな程度でございます。過日、日ソ両国間には五カ年間の長期通商協定を結ぶということもいたしたというような状態であります。  わが国は国内に重要資源を持たない。そこでその重要資源を他の国に求めなければならぬ、こういうわけでありますが、その他の国から求める重要資源、その一部は、最も近い地理的関係にありますソビエトにこれを求めるということは当然考えなければならぬ問題だろう、こういうふうに思っております。日ソ関係は非常に順調に動いておりますから、なお心してこの関係は推進をいたしたい、さような考えです。
  186. 田中角榮

    田中国務大臣 日ソの通商、だんだん拡大の方向に向いておるということでございます。大ざっぱに申し上げて、六八年、出入で約六億ドル余でございます。それから六九年は七億ドル余でございます。七〇年は八億ドル余でございます。大体一億ドルぐらいずつ伸びておるわけでございますから、まあ順調に伸びておると言えると思いますが、その合計が八億ドル余でございますから、極東の韓国、台湾、中国等と大体同じぐらいという状態でございますから、それほど大きいということではありません。しかし日ソの間で、いま石油の問題に対してパイプラインを引こうとか、日本が原材料の輸入源を多様化しなければならない、またアメリカ向けが三〇%というような大きなウエートを占めておりますので、輸出先の多様化ということも考えなければならないということで、現実的には鉱産物の輸入対象としていま考えてみたりいたしております。ただ、非常にプロジェクトが大きいものですから、日ソ間で経済ベースだけでなかなか片づくというわけにまいりませんので、民間、政府その他、十分連絡をとりながら拡大方向に入っていくものだ、こう理解しております。
  187. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう少し具体的にお聞きしたいのですが、いま外務大臣は五カ年間の締結ということをおっしゃったわけですが、額で見ますと、貿易総額が五十二億ドルということでありまして、わが国経済がこれだけの日米間の摩擦――これからあらゆる諸国と仲よくしていかなければならないし、秩序ある輸出をはかりながらそうした市場の開拓ということを考えていかなければならない問題でありますし、そういう点で、この五十二億ドルという今後の五年間の締結、これをさらに拡大していく政府としての積極的な取り組みがなかったらいけないのじゃないか。これでよしという態度であってはならぬと思うのです。その点、もう一度重ねて大臣にお聞きします。
  188. 福田赳夫

    福田国務大臣 五十二億というのは、今日この時点に立ちましての推算でございます。しかし、それがさらにふえるということになりますれば両国にとりましてけっこうなことなんでありまして、それで満足をしておるというわけじゃないのです。さらにこれが金額増額をするということにつきましては努力をいたしたい、かように考えます。
  189. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから通産大臣も、今後は積極的にやっていく、積極的に拡大をはかるというお答えでございましたが、具体的にもう少しお聞きしたいのですが、ソ連の場合、この輸銀の活用というのはあまり活発ではないんじゃないか、このように思うのですが、これの活用についてはどういう取り組みをなさるおつもりですか。
  190. 田中角榮

    田中国務大臣 昨年度、四十五年度ベースで見ましても三十二件、延べ払いが二億七千七百万ドルもございますから、ほかの国と比べてみても一向少ないものではない、こういうことでございます。  それからソ連との問題、いま未確定なものがたくさんあるのです。木材を入れようとしても、これが木材を入れるというだけではなく、シベリアのワンセット開発ということが前提になりまして、港をつくったり鉄道を敷いたり工場をつくったりということでありまして、相当巨額なものがかかるということでございます。  もう一つは石油の問題がありまして、パイプラインを引くだけでも四千キロ、五千キロということでございますから、カナダからアメリカへ引くと同じことでございます。そういう大がかりなものがあります。  なお、鉱石関係でも幾多の問題をいま検討いたしております。こういうものが付加されるということになりますと、いままでの年間十億ドルベースということではなく、もっと飛躍的に大きくなるわけでございます。ですから、いま考えられる十億ドルの台に上げようというものと、一つのプロジェクトが現実的にスタートをすればその何倍かになる可能性は多分にある、こういうことでございます。
  191. 近江巳記夫

    ○近江委員 この中国貿易については、中国の国連加盟と相まって政府もかなり積極的に前向きに検討しだしたように思われるわけですが、しかし、この際はっきりと吉田書簡も廃棄して、輸銀使用も全面的に行なう、あるいはココムリストも全面的に撤廃する、さらに拍車をかける必要があるんじゃないか、このように思うのです。大臣としてのお考え、決意をお聞きしたいと思います。
  192. 田中角榮

    田中国務大臣 中華人民共和国もソ連に対するものと同じような傾向をたどっております。三年ばかり申し上げますと、六八年の輸出が三億二千五百万ドル、輸入が二億二千四百万ドルでございますから、五億四千九百万ドルでございます。六九年は、輸出が三億九千百万ドル、輸入が二億三千五百万ドルでございます。なお、七〇年は輸出が五億六千九百万ドル、輸入が二億五千四百万ドルということでございますから、これも着実に伸びておるわけでございます。このほかに、かつてプラントの輸出等がございましたが、その後はそのようなまとまった商談が持ち込まれておりません。おりませんが、これからいままでよりも具体的な問題が出てくるような感じがいたしておるわけでございます。
  193. 近江巳記夫

    ○近江委員 北朝鮮――朝鮮民主主義人民共和国、ここに対して通産省は輸銀の使用、資金の使用検討ということを開始されたわけですが、今後の各国との友好関係、また経済のそうした発展を考えていくと非常にけっこうなことであると思うのです。そこで、この輸銀使用の問題については非常に私けっこうだと思います。この点、通産大臣はそういう意向をおっしゃっておるわけですが、外務大臣はこの問題に対してはどういうように取り組まれますか。
  194. 福田赳夫

    福田国務大臣 北朝鮮に対しましても、ただいま通産大臣から申し上げましたようにケース・バイ・ケース、そのケースはこれから従来よりもよけいに出てくる傾向を持つであろう、こういうふうに見通しております。
  195. 近江巳記夫

    ○近江委員 ここで私は、非常にいまの御答弁は抽象的なように思うのですが、通産大臣、まあ直接私まだ御返事もいただいておりませんのでお聞きしますが、通産省で検討しておるということでございますので、この点について具体的なそういうプロジェクトが出てきた場合には許可をする、そういう強い決意で大臣としては臨んでいらっしゃるのですか。
  196. 田中角榮

    田中国務大臣 いま新聞には三つ出ておるようでございますが、通産省がいま知っておりますものはそのうち二つのようでございます。その一つは、くだもののジュースをつくる機械か何かだと思いますが、これは大きなものじゃございません。三、四億円のものだと思います。それから第三プロジェクトとして報道されておりますビニロンのものでございますが、これはただ話を持ってきそうだという状態でございます。この第一の小さな問題に対しては、支払い条件等をいま事務的に聞いておるようでございますが、支払い条件等については問題がないという状態でございます。他の二件については申請者側からの説明はまだ聞いておらないということでございまして、報道されておるまん中の、第二のものは、全然通産省そのものが無知しておらないということでございます。いままだ事務当局ベースで申請者等の申し出によって接触を始めたという段階でございますから、これをにわかに、いつ決定をいたしますということを私は申し上げられない段階でございますが、事務当局が申請者から事情を聞いておる、条件その他をただしておるというのが実情でございます。
  197. 近江巳記夫

    ○近江委員 もちろん御検討されるわけですが、検討するということだけではだめだと思うのです。やはり積極的にそれを検討して、前向きでいくのか、うしろ向きに検討するのか、その辺が違うと思うのです。ですから、許可をするという前向きの姿勢で検討されるのかどうか、その点はどうですか。
  198. 田中角榮

    田中国務大臣 すなおな気持ちで検討いたしております。純経済ベースで検討しておるというところでございます。
  199. 近江巳記夫

    ○近江委員 今後の貿易関係をさらに発展さしていく、こういう点で私は、通商代表部ぐらいを設置してはどうかと思うのです。これは朝鮮民主主義人民共和国だけではなくして、ドイツ民主共和国なりあるいはベトナム民主共和国なり、いろいろな国があるわけですが、そういう点についてはどういうお考えですか。これは通産大臣、そうして外務大臣にお聞きしたいと思います。
  200. 田中角榮

    田中国務大臣 中華人民共和国との間には、通商を調整をしたり連絡をしたりいたしますための出先事務所は持っております。なお、通産省の省内にもこれを取り扱っておるところがございますので、来年の予算でも通りましたら、これを課にでもしなければならないかということで、増大傾向にある日中間の問題に対処できるような、絶対迷惑をかけないような体制をつくろうということをいま検討いたしております。しかし、北鮮その他の問題に対して、まだ非常に商売が小さいのです。北鮮で年間五千万ドル程度のものでございますから、そこで一体出先を出して合うのか、向こうで出してもらえるのか、出してもらったらこちらへもすぐ同じものを出さなければならぬのかというような問題がございます。ジェトロの一人か二人の人間をふやそうとするモスクワの問題でも、なかなか日ソ間で話がつかないというような状態もございますので、やはり国別バイ・ケースで考えていくというのが一番いいことだと思います。
  201. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま通産大臣からお答えのとおりと思いますが、北鮮との通商問題には前向きで取り組みたい、こういうふうに考えております。ただこのタイミング、これが大事だろうと思う。朝鮮半島は二つに分かれておる。その南の韓国とわが国は正式な国交関係を持っておる。そういうような関係がありますので、そう一挙にというわけにはいきません。いきませんが、前向きでこの問題には対処していく、こういうつもりです。
  202. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、発展途上国に対する経済協力の問題でありますが、やはりいままで非常に経済協力のあり方というものについては問題が多かったし、事実いろいろなことが出ておるわけであります。そこで、今後あくまでも発展途上国の経済発展に寄与して、しかも平和互恵、平和共存の積極的な方途で臨むべきではないか、従来の方針を私は見直すときが来ておるのじゃないか、このようにも思うわけです。  そこで、わが国の経済における発展途上国への普遍的な経済協力の位置づけ、これについてどのように考えておられるか、ひとつその点をお聞きしたいと思います。
  203. 福田赳夫

    福田国務大臣 経済協力につきましては、わが国は非常に積極的にやってきております。そこで量的になりますと、かなりのもう実績をあげている。金にいたしまして昨年は十八億ドル、GNPの〇・九三%と、こういうところまでやっておるわけなんです。しかし、私がしばしば申し上げておりまするとおり量より質だ、こういう見方の転換をはかるべきときに来ておるのじゃあるまいか、そういうふうに思うのです。ということはどういうことかと申しますと、わが国は量的にはたいへんな経済協力をしておる、しておるが、常にそれがわが国の通商とうらはらをなす、それが与えられる被援助国に対していろいろな感触を与える傾向もなきにしもあらず、その点はよほど注意してかからなければならぬじゃないか、こういうふうに思うのです。ほんとうに日本は協力してくれたなと感謝されるような、ありがたがられるような中身、内容の援助でなければならないじゃないか、そういう方向へ逐次この援助方式というものを切りかえていきたい、さように考え、そういうかじとりをいたしている最中でございます。
  204. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま、かじとりの最中ということをおっしゃったわけですが、やはりいずれにしても発展途上国へのこうした協力、これは先ほど私申し上げた線でやはり進めていかれる必要があるし、そういう点において従来、理念においても方法においてもやはりいろいろな、大臣御承知のとおり問題があるわけです。そういう点やはりはっきりとした、政府として強い明確な指針といいますかビジョンといいますか、そういうものは早く出すべきではないか、固めるべきではないか、このように思うわけです。通産大臣どうですか、簡単にそれについて……。
  205. 福田赳夫

    福田国務大臣 今国会でもそういうふうに申し上げてありまするし、それはひとり国会ばかりじゃないのです。外国に対しましても、あらゆる国際会議等の場を通じまして、わが国はこういう方針でいくのだということを表明しております。
  206. 田中角榮

    田中国務大臣 まあ先進工業国となりました日本が、国際的な責任を果たすという立場から、国民総生産の一%までは最低限後進国援助の率をふやすべきであるということの実行上からくる問題が一つございます。  もう一つは、日本は貿易立国でございまして、これはもうほとんどの原材料を海外からあるいは仰がなければならないということでございます。と同時に、日本はそれを土台とした製品の輸出をして国を立てておるわけでございますから、国際協調という線から原材料供給国、すなわち低開発国のレベルアップのために応分の協力をしなければならないこと、それ自体が日本の貿易にも寄与することであって、無縁なものではないという考え方が第二でございます。  第三は、先ほど御指摘いただきましたように、対米貿易というようなものに集中的になっておったものが、輸入も輸出先も多様化をしなければ安定性がない、こういうことでございます。  そういう意味から、経済協力というものはどうしても、もう日本の国益を守るためでもなさなければならないものでございまして、うしろ向きというよりも、これこそほんとうに前向きな施策として取り組むべきである。こういう状態でございまして、経済協力というものに対してはひとつタイムリーにやらなければいかぬということで、いままでなかなか条件が違ったり、いろいろなものが――特に日本は民間ベースのものが多いので、どうも一々条件が違う。そのまま政府に持ち込まれる。ですから、きまらないものは何でもきまらないということで、そのうちにタイミングを失してほかの人が落札をするというような問題がありましたので、日米経済閣僚会議の直後に、総理の裁断も仰ぎながら関係閣僚、大蔵、外務、通産の三閣僚が随時会いまして、事務ベースでもって片づかなかったものに対しては、結論を出して閣議の御決定を待とう、こういう積極的な機構をつくりましたので、後進国援助、経済協力というものに対して、いままでのような批判を受けることはないと思います。
  207. 近江巳記夫

    ○近江委員 総理にお伺いしますが、いま両大臣からそうした発展途上国に対する考え方、経済協力の考え方が言われたわけですが、そうした国々の日本に対する批判というものはやはり非常に強いわけであります。その点、総理はいま申し上げた問題に対して、あなた自身はどういうお考えで今後進めていかれるか、それについて明確にひとつ承りたいと思います。
  208. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま外務、通産両大臣から答えたとおりでございます。量としては対外援助、これは相当にのぼっておりますが、質的な問題でなおわれわれがくふうし、努力していかなければならない、かように考えております。それらの点で一そう改善を加える、こういう方向でございます。
  209. 近江巳記夫

    ○近江委員 今回繊維問題等を見ましても、ガット等のそういう国際機関の機能性というものについて、私はこれでいいのか、そういうような疑問が非常に大きくあったわけですが、今後やはり国際経済という問題を考えていきますと、非常にブロック化していくような傾向にあるし、あるいは保護主義を各国がとるような傾向もやはりあるわけですし、そういう点、やはりこれからそういう国際機関というものをもっとほんとうに機能として生きたものにしていかなければならぬじゃないか、私はこのように思うわけです。そういう機能性を確保するためのくふう、新しいルールというものを生み出すための努力が当然あってしかるべきじゃないかと思うのです。そういう点政府としてはどのように考え、また今後進んでいかれるか、その点をひとつお聞きしたいと思うのです。
  210. 福田赳夫

    福田国務大臣 国際的な経済機関がたくさん戦後できたわけです。これは非常に重要な役割りを演じてきたと私は思います。戦前にはそれがなかった。なかったがゆえに一九三〇年代に見られるような、世界的な悲劇とも申すべき経済の縮小均衡、こういう事態をかもし出したわけです。ところが、今日は通貨につきましてはIMFその他の諸機関がある。また通商については、ガットだとかOECDだとか、そういう機関ができております。ですから、問題が起こりますと、破局に至らないでこれらの機関の間で話がつくのです。私は、この国際機関が経済面でできたことを非常に多としております。  ただ最近、多少その国際機関の機能が麻痺してきたんじゃないか、時代の進展に合わなくなってきたんじゃないか。そういう現象もありまして、極端な議論になりますと、もうこれを全部やめちゃって、新しいものを考えたらどうだろうと、こういうようなことも言う人があります。つまり、通貨につきましてはブレトン・ウッズ体制だ、これを全部もうスタートからやり直すんだ、こういう考えもある。あるいはガット機能がどうも非常に動きにくくなっておるじゃないか、もう根本的な再検討を要するというような意見もある。私はそれに対しまして、ゼロからやりだすというような行き方、これではまたそれなりに混乱を招くんじゃないか、そういうふうに考えるのです。ですから、その国際機関の欠陥をよく見て、そしてそれを是正していく、漸進的に国際機関の改善強化をはかる、こういう方式がいいんじゃないか、こういうふうに存じまして、各会議等におきましては、そういう方向の意見を打ち出しておるというのが現状でございます。
  211. 近江巳記夫

    ○近江委員 総理は、以前このケネディラウンド以後の新しい関税の一括引き下げ交渉、いわゆるジャパンラウンド構想ですね、これを打ち上げられたわけですが、しかし、このニクソン・ショック等で、この構想も非常に夢と化したというようなお考えを持たれておるのかどうか。またそれにあわせて、いまこういう国際機構のそういう新しい組成、こういうことについて、総理として今後どういう構想――構想までいきますと長くなると思いますので、前向きの姿勢でいかれるか、その二点についてお聞きしたいと思います。
  212. 福田赳夫

    福田国務大臣 ちょっと前座をさしてもらいますが、いま私は、国際経済情勢の動きにつきましては、非常に心配をしておるのです。つまり、ただいま申し上げましたような国際機関があるにかかわらず、今日この時点におきましては、この国際機関もなかなか動きにくい。そうして、しかもそういう中におきましてアメリカの課徴金制度というようなものが打ち出される。一方においては、先ほどから議論がありましたEEC、これがどういう方向をとるか、これも心配されておる。そういうようなことでこれをほうっておきますると、再びこの自由濶達な国際交流から、封鎖、保護主義というような傾向にならないとも限らない。これをどうしても打破しなければならぬ。  ひるがえってわが国の立場を考えると、わが国は重要資源をほとんど国内に持たないのです。石油につきましても、鉄につきましても、ほとんど全部というくらいを海外に依存をするというふうに。そうすると、自由交流、自由経済というものは、わが国の経済の命であるとも言っていいと思うのです。そういう際でありますので、機会あるごとに、わが国は自由経済を守る、保護主義への復帰、復元、これを防ぎとめるという努力をしなければならぬ、こういうふうに思っておるわけであります。  関税につきましては、これはわが国は高い高いという批判を国際社会で受けておるのです。しかし、幸いにして外貨もずいぶんたまった、そういう際こそ、そういう批判を一掃する。のみならず、逆に進んで、わが国は関税引き下げという先頭に立つべきである、こういうふうに考え、実は総理というお話でございますが、このジャパンラウンドというのは、大蔵大臣当時私がそういう構想を打ち出したわけなんです。その構想につきましては、ガット、OECD当局、これは非常に歓迎をいたしております。幸いにガットの総会が十一月の二十三日ごろ開かれる。それからOECDの貿易上級会議、これも開かれる。そういう際に、さらに積極的にその考え方を諸外国に対して打ち出し、そうして同調を得たい、こういうふうに考えておる最中でございます。
  213. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま外務大臣から詳しく答えたから、もう私から申さなくてもいいかと思いますが、私も近江君と同じような気持ちを持っておるのです。どうも世の中が国際的に縮小均衡の方向へ行くのじゃないのか。どうもそうなってくると、われわれの自由経済の立場から見てものごとがちぐはぐになる。ただいまは関税の一点について日本のあり方等についてのお話がありましたが、いわゆる貿易の自由化八項目、これなども、積極的な貿易拡大の方向でわれわれが歩みを進めていく、その方向を打ち出したものでございます。そうして自由化をもっと進めていく、それで各国と協調していく。  ことに、先ほど来お話のありました対外援助にいたしましても、一国だけでこの援助をすることについては、とかく誤解を招きやすい、かように思いますので、多数国と一緒になって、発展途上国に対する援助もしていく。それには、やはりDACの会議などの決議のその精神で、その方向で多数国と手を携えていくことが望ましい。まあこれも先ほど外務大臣がお答えいたしましたように、対外援助の額としてはGNPのコンマ九三までになっておる。したがって、量的には一%が要求されていてコンマ九三までといえば、これはもう大体目的を達しつつある、かように思いますが、ただ質的に見ますと、政府援助というものが比較的少ない。もっといまの率も倍増すべきじゃないだろうか。さらにまた金利あるいは期限等についても、もっと有利な方法で発展途上国に便益を供すべきではないか、これは先進工業国の当然のつとめだ、かように実は思っておるわけであります。そういう場合に、一国だけでやりますと、軍事力こそ持たないけれども、経済侵略をやる、こういうような誤解を生じても困りますから、日本の援助が喜んで受けられる、そういう方向のために、私は先ほど簡単に、質的な方面に改善を加えるとかように申しましたが、さらにそれをいまふえんしておるような次第でございます。  まあ先ほどお尋ねになりました点については、外務大臣がお答えしたとおりでありますし、この貿易の自由化の八項目、その一つはただいま言われる関税の問題だと、かように御理解をいただきたいと思います。
  214. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこで、国内に目を移してみたいと思うのですが、現在のこういう不況が一体どうなるのだ、これは国民の皆さんが一番心配し、注目されておられるところなんですが、政府として、この景気の見通しについて、落ち込みの底をどのように見ておられるのですか。これをひとつ大蔵大臣にお聞きしたいと思うのです。
  215. 水田三喜男

    水田国務大臣 経済企画庁の大体の見通しで、今年度の日本の成長率は五・五%前後になるのじゃないかということをいっておりますが、これをやはり八%前後まで回復するということを目標の対策をやって、ちょうどいいかげんになるのじゃないかというふうに考えておりますが、ことしの六月、七月の情勢でございましたら、わりあいに早く回復できるのじゃないかというところまでいったものがこういうことでございますので、私はもう一年かかる、来年が勝負であって、来年一ぱいでこの不況を解決してしまうという方針のもとに、あらゆる施策を集中することが必要だというふうに考えております。もう二年延ばしては、非常に経済というものはやっかいなものになりますので、どんなに苦しくても、不況対策というものはやはり短期で、来年一年ぐらいでやるという目標で対策を立てるべきだと考えています。
  216. 近江巳記夫

    ○近江委員 大蔵大臣はそういう見方をされ、いろいろ政府としては対策をとっていらっしゃるわけです。景気浮揚策として、内需を喚起するための公共投資あるいは年内減税政府としてやられているわけですが、政府がとられておるこの程度の対策の内容で、実際に景気浮揚に自信があるかということを、はっきり私はお聞きしたいと思うのです。これは通産大臣でも大蔵大臣でもけっこうです。総理にもお聞きしたいと思うのです。どうですか。
  217. 水田三喜男

    水田国務大臣 いままで日本の好況は、民間の設備投資によってささえられておったものでございますが、この設備投資が、政府の予想よりも二兆円ぐらい落ち込んでいるということが、大体のいまの不況の実態であろうと思いますので、これを補う程度のいろいろな景気の喚起策をとるということから、私どもは来年、公共事業の量、それからそれに対する減税の効果、いろいろなものを総合的に考えた案を立てたいと思っておりますが、やはりこの民間投資の落ち込みを、これを今度は生産力を増強する従来のような投資じゃなくて、国民生活につながっておる環境整備の事業というものに置きかえて、それだけのギャップを埋めることをすることが肝要ではないかと思っております。
  218. 田中角榮

    田中国務大臣 私は、七月の初めに通産大臣に就任をいたしましたときから、どうもことしの景気の状態はよくないので、財政支出等急がなければならないという考え方でおりました。それで、先行する公共投資等が支出されない限り、民間の設備投資にはなかなか結びつかないというのが過去の実態でございました。ところが、今度は過去の実態のように公共投資が先行しても、非常に生産力が大きくなっておる、設備過剰の状態にある民間の設備投資が、これに一体結びついていくかどうかということさえもなかなかむずかしい状態でありますので、ことしの景気浮揚というものを考えると、へたをすると半分ぐらいになるかもしらぬということだったのです。二十九年から三十九年まで十カ年一〇・四%、六〇年代は一一・一%、高い成長率でございます。そういうものを前提にして、今年度政府が当初企図した国民総生産の伸び率は、対前年度一〇・一%でございましたから、半分というと五%。そんなことはないだろうといっておったのですが、その後課徴金問題が起こったり、新政策が出たりいろんなことがありまして、現時点においては、経済企画庁もそれを試算せざるを得ないという状態でございます。  ただ、選挙等が二つもあった年は、大体上半期は非常に公共投資がおくれておるのでございますが、大蔵省の試算によりますと、大体四十年ベースにはたどりついたようでございます。そうすると、残りの五が月間ぐらいで非常に大きな財政資金が支出をせられるわけでございますので、ことしの十-十二月、一-三月というようなわけにはいかないかもしれませんが、来年度になれば、景気の底入れから浮揚へという見通しはつけられるのではないか、さだかではございませんが、そのような考えでおります。
  219. 近江巳記夫

    ○近江委員 今回のドル・ショックあるいは円の変動相場制への移行、こういうことにおきまして、やはり一番影響を受けておるのは中小企業です。二重、三重のパンチを受けております。私たちも、特に党の商工部会を中心として、全国のそういうような地場産業をはじめとして、できる限りの努力をして実態も調査してまいりました。ほんとうに言うに言えないきびしい状況であります。おそらく総理も、通産大臣も、ほんとうに歩かれれば、どれほど深刻にこういう中小企業に対する被害というものが拡大しているかということは、おわかりになると思うのです。私は、ほんとうに総理や各大臣がその実態というものをはだでつかんでもらいたいと思うのです。そうでなければ、私はほんとうに生きた施策はできないと思うのです。政府は中小企業対策本部を設けていろいろとなさっているわけですけれども、はたしてこのぐらいでできるかというような問題がいろいろあるわけです。  たとえば、この補正予算を見ましても、中小企業の対策費は七十四億八千五百万。全体として二千四百四十六億ですから、これだって三%ですよ。別途財投で二千六十四億。しかし、ほとんど公共事業関係で、中小企業対策費というものはあまりない。こういうようなことで、いろいろ苦労はされていると思うのですけれども、実際にまだまだ中小企業について対策が弱いのじゃないか、私、このように思うわけです。  時間があれば、この財投の点等触れたいと思うのですが、財投の点で一点お聞きしてみたいと思うのです。これまで財投の補正がずっと行なわれてきているのですが、この中小企業対策費というのはどうなっているんですかね。この辺、話をされると非常に長くなると思いますが、通産大臣、つかんでおられたら簡潔にひとつ、いままでの効果等についてお聞きしたいと思うのです。
  220. 田中角榮

    田中国務大臣 日本経済全体があまり景気がよくない、その中で中小企業がたいへんな状態を迎えておるであろうということは想像できるわけでございます。ところが、数字の上ではまだ新政策、ドル・ショックその他日米繊維交渉等、被害がある被害があると言われますし、確かに被害があるという認定に立っておるのでございますが、統計的に出てくる数字ではまだそこまでいっておらぬわけであります。十月現在の中小企業の倒産状況等を見ましても、去年よりも事実減っております。減っておりますから、そういう限りにおいては去年よりもそんなに悪い状態ではない、こうは言えるわけですが、私はそんなに簡単に考えておりません。これはもうこれから集中的に出てくるものであるというふうに考えておるわけでございます。  そういう意味で、政府がいままでやった九月二十三日の対策等も、いままでの中小企業対策とは全然違う対策をやっておるわけです。とにかく五百万円のワクに対して別ワク五百万円を設けよう、二千万円の保険ワクに対して別ワクを二千万円にしようというように、追加というものは台よりも大体小さいから追加というわけでございますが、台よりも大きなものさえも考えようということでございます。今度の中小企業三公庫の資金量を見ましても、対前年度比一八%というものを、補正後三六%まで伸ばしておる。これは過去になかったことでございます。  しかし、中小企業そのものが、過去の例に徴して考えられないような状態になっているんじゃないか。それは、言うなれば二十五年間たった戦後のしわを、ここらでもって一整理しなければならないという大きな時期も迎えておるのじゃないかということでございまして、いままでやった中小企業対策が、私は不足であるとは思いませんし、過去の例に比べても非常に大きなものだと思いますが、しかし、実態の移り変わりというものをよく把握して、必要なものであったならば、対前年度比幾らだなどということでもって片づく状態ではない、そう思っておりまして、それに対応する施策は、柔軟に弾力的に行なえるようにしなければならない、こういうのを基本的に考えて、こまかい数字を、実態を把握すべく全力をあげておるわけであります。
  221. 近江巳記夫

    ○近江委員 倒産のこともおっしゃったのですが、これから年末あるいは年度末等にかけて、非常に不況がさらに悪化する、このようにちまたではいわれておりますし、私もそうだと思うのです。したがって、ただ倒産件数がどうだからということで、そういう数字の上だけで判断すると非常に危険だと思います。そういう点、私が冒頭に申し上げたように、政府の最高首脳の皆さんがはだでそれをつかんで、それにほんとに生きた対策をやってもらいたいと思うのです。いま三金融公庫につきましても力を入れたとおっしゃっておりますが、千五百億ですよ。千五百億でどれだけ回るかという問題なんです。あるいは、実際にこういう政府系の金融機関へ借りにいきましても、担保を持ってこい、保証人を持ってこい。担保なんかないのですよ、実際。それに持ってこい。まあ、それは無担保という制度もありますけれども、わずかなものです。別ワクを設けたとしたって、それはわずかなものです。そういうようなことで、それじゃ保証人になるといっても、この企業を見ておりますといつ倒産するかわからない。そんなあぶない企業に保証人になんかなれぬ。保証人さえできてない。その保証人については、政府としては信用補完制度の拡充を目しておられるわけです。それではたして補完できるかという問題です。私は、まだまだ不足だ、このままではこれだけの不況に立った中小企業は救えないと思うのです。その点は田中大臣も、前年度に比べてどうだからと、そういうけちなことは言わない、やるということを言われて、私は、実力大臣の田中大臣ですから必ずやられる、こう思うのです。その点、大蔵大臣はどうですか。田中大臣のおっしゃったことに異論ございませんか。
  222. 水田三喜男

    水田国務大臣 財投の面で見ますと、七月に二百六十五億ですか、融資ワクを拡大しますし、九月に千五百億の三金融機関の融資拡大をはかり、これからやる仕事は、いままで年末金融をやっておりますが、これは十一月の半ばごろに、他の金融機関の貸し出し目標とあわせて政府機関に対する年末金融の幅をきめるということになっておりますので、年末相当のものを準備しておるというようなことでございますので、中小企業の金融に対しては、私は、いまのところ相当手を尽くしておるのだろうと思います。いま通産大臣から言われましたように、政府が早く手を打ちましたために、わりあいに皆さんが安心されて、いざというときにはそういう道があるということが幸いしているのじゃないかと思いますが、実需になってあらわれてくるのがいま非常におそいということで、おそらくこれから年末にかけてほんとうの実需となってあらわれてくるだろうというふうに思っておりますので、そういう意味で、資金の準備は十分にしてあるところでございますから、この点は、そう混乱を起こすというようなことはないだろうというふうに思っております。
  223. 近江巳記夫

    ○近江委員 大蔵大臣にお聞きしますが、民間の金融機関を見ますと、専門の中小企業に対する機関、相互銀行あるいは信用金庫、信用組合、こういう貸し出し等を見ますと、非常に鈍化あるいは減少しているわけですよ。これはデータでごらんになればすぐわかるわけです。それに対して都市銀行や地方銀行が非常に大幅にふえている。中小企業に貸し出しをやってくれるのですから非常にけっこうだと思いますが、しかし、肝心の中小企業の専門金融機関の貸し出しが伸び悩んでおるということについて、どのようにごらんになっておるか。あるいはまた都市銀行、地方銀行の最近のそういう中小企業向け融資の増大の傾向というものは、これはほんとうに安定的なものであるかどうかということです。いままではなかなか、大企業ばかりいって、一たび金がダブってくれば中小企業と、何かあればすぐに犠牲にする。こういう点についてはどう思量しておりますか、その辺の御判断あるいは今後の考え方を言ってください。
  224. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは中小企業への貸し出しだけではございませんで、大企業への貸し出しも同様で、全般的に貸し出しが伸びないという状況でございますので、大蔵省では銀行局長の通達をもって、中小企業への金融に遺憾なきを期せ、貸し出し量をもう少しふやしなさいということを、財務局長を通じて管下の金融機関にいろいろ指導しておるのですが、貸し出しが伸びないというのは、これはやはり不況の結果であろうと思いますが、これは中小企業だけでなく、大企業へ金がいって、そちらへ貸し出しが減っておるということではございません。全般的に貸し出しが減っているというために、非常に金融緩和の基調になっておりますので、やはり国債政策の活用によって、財政主導型の財政運用によって、いわゆる社会資本の充実という方向へこの資金を向けるということが当面の財政政策でもあり、必要な金融政策でもあろうというふうに考えております。しかし、必要な中小企業の金融については、いまこれを窮屈にさせているというような状態では絶対ございません。
  225. 近江巳記夫

    ○近江委員 私、田中大臣にお聞きしたいのですが、政府は、中小企業政策については、中小企業基本法を柱に、世界に類を見ないほど整備されておるといつもこのようにおっしゃっておるのです。ところが、一々この法律を見てまいりますと、たとえば下請中小企業振興法、これは法律が施行されて約一年になるのです。ところが、いまだに通産省への申請が一件もないということを私、聞いております。これについて初年度十五億、四十六年度三十五億、五十億の金が、これは何にも活用されぬであるわけですよ。こういう点はどう考えるかということです。あるいはドル・ショックによって下請業界は、親企業から単価の切り下げとかあるいは手形の長期支払い、こういう点から非常にいま困っておるわけです。これについては、下請代金支払遅延等防止法もあるのですけれども、この法律があまりにもざる法であるということは、天下周知の事実です。それでは、それをてこにして公正取引委員会でもほんとうに踏み込んででもやっておるか。何もやっておりません。そんな下請が一々届けなんかようしませんよ。こういう状態で、親企業に苦しめられている下請をほんとうに救う気が政府にあるかということなんです。何もこの法律は生きていませんよ。あるいは中小企業特恵対策臨時措置法、これは、本法は八月の一日に施行されたのです。ところが、いまだに特定業種の政令指定がされてない。これにつきましても、中小企業金融公庫に特恵転換貸し付けワク十五億、中小企業振興事業団特恵転換特別ワク十億、これでも二十五億遊んでいるわけです。さらに、これは景気浮揚にも関係があると思いますが、官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律、これは四十一年の六月に制定されているのです。ところが、これは制定されたときとその前から比べても何にも変わっていないのですよ。三十一年三二・九%、三十八年二八%、四十一年二五・九%、四十五年度においては二五・五%ですよ。むしろ下がっております。中小企業向けに官公需をもっと出せという法律がありながら、何も生きておりませんよ。これなんかの運用だって一体どうするかということなんです。このように、世界に類のないほど整備されておるといいましても、実態はそういうような状況なんです。こういう点において、徹底的に中小企業を救済していくためにおいても、やはりこの法の総点検をやって、現状に合わないものはもっと変えていく、そういう政府としての前向きの姿勢が一番大事じゃないかと私は思うのです。その点、大臣にひとつお聞きしたいと思うのです。
  226. 田中角榮

    田中国務大臣 中小企業、零細企業というものが日本における特殊なものである。しかし戦後の復興や輸出の状況を見ますと、中小企業のバイタリティーといいますか、中小企業を基盤とした日本のエネルギー、これはおそるべきものである。おそるべきものであるという評価をする以外にないというくらいに、中小企業は非常に大きな力でございます。そうであるけれども、千差万別である中小企業、零細企業というものは、ぶつかって現象が出たときにだけ対応策が講じられる、こういうことでございます。今度私は、日米繊維の問題等でもっていろいろなものに手を入れてみたのでございますが、そうは思っておったけれども、あらためて数字を手にしてみると、たいへんなことだと思います。それはやはり中小企業、零細企業という自由企業の中で相当なロスがある。あっという間に何倍かの生産力というもの、設備投資が行なわれておる。そしてまた、ある時期にはさいの川原のように整理を行なう、また強靱にどろの中から立ち上がる。まさに大地をはいなめずるような中から立ち上がっているという、これは一つの歴史だと思います。現実です。しかし、こういうものに対して体系的な法制を整備して、やはりロスのないようなものにしなければならないということでないと、真に中小、零細企業対策にならない、こう私も思います。  そういう意味でいろいろな法律の施行状況等を見てまいりました。それで、いまあなたが御指摘になったように、今年度つくられた法律等、まだこれは、先ほど言ったように、ショックの実態が出ておらないというような面もございますが、やがてこの法律の存在理由というものは明らかになるわけでございます。しかし、法律をつくるときには、非常にこれはいい法律だと思ってつくっても、必ずしも実効をあげ得ないという問題があります。議員立法をもってつくられた下請代金支払遅延等防止法なるもの、これはここに書いてありますとおり、ことしももう六千六百事業所、年間には一万三千カ所やります。百四十二件の立ち入り検査をやりました。四十七件の招致検査もいたしました。百四十七件の文書警告も行なった。これはこのとおり実効をあげております。あげておりますが、日本における中小企業の実際から考えると、この数字が適当な数字であるかどうか、私にも自信がないということでございます。  しかし、大体において中小企業や零細企業は、法律をつくってやってもその法律をなかなか運用しないという人たちでございます。私も中小企業の出身でございますが、どん詰まりにならない限りなかなかお世話にならない、こういうところで、政府が用意をしておっても予算も余す。それだけまた、何年か後には非常な大きな現実にぶつかって被害を受ける、こういうことがあるわけでございます。ですから、中小企業基本法をつくってから相当の日になりますが、ここで一切やめてしまって新しいものをつくるという議論もあります。しかし、それなりに一つ一つの現象をとらえて対症療法としての立法がなされ制度ができたわけでありますから、全部御破算にしてというにはどうもめんどうな問題がございます。困難な問題でも、これは日本の政治の、また経済の本体でございますから、やはりこういう国会の場でこまかく議論をしていただく。そしてその中から一つずつ対症的なものも取り上げる、そしてタイムリーに施策を行なっていく、そしてある時期に広範な中小企業に対する体系的な措置を完成するということ以外には、どうしてもいい手がないというところでございます。  しかし、これはもう、おざなりに私も答弁するようなつもりはありません。今度は繊維の問題等、ニクソン新政策を契機にして、半年後の日本の中小、零細企業はどうなるだろうと思って手を入れておるのでございますから、相当具体的な政策を用意する必要がある、こういう考えで通産省も対処いたしておりますので、ひとつ知恵をかしていただいたり――これは与野党などというよりも、国会議員全部がひとつ通産省を御鞭撻願って、ロスが多い中小企業などといわれないような新しい中小企業の完成にひとつ御協力いただきたい、こう思います。
  227. 近江巳記夫

    ○近江委員 法をつくってもそれがうまく運用されないというのは、中小企業も理解に乏しいという何か押しつけるような言い方、これは私は納得できません。これは、PRをしない、また現状に合ってない法律をつくった政府の責任であると私は思うのです。そういう点は非常によくないと思います。それで、特に大臣に私は、その現状に合ったそういう時点で法令もよく検討していただき、改正すべきものは改正していく、また新たなものをつくっていくという、さらに積極姿勢をとられることを望みます。  それから総理に私お聞きしますが、政府は、財政金融あるいは税制と、いろいろ処置をされております。わかります。わかるけれども、中小企業がこういうきびしい環境に立っておる、そういう新しい環境に今度は適応して、そして今後どう進んでいくかということについては、これはほんとうに政府として力を入れていかなければならない問題であると思います。どうあるべきかというビジョンをもうほんとうに打ち出し、政府としての指導性を発揮すべきときじゃないかと私は思うのです。ところが、いま目先の、ああ財政だ、金融だ、税制だというような、そういうことばかりで追われておってはだめだと思うのです。やはりここに明確なるビジョンを打ち出していく、これが大事だと思うのです。その点、中小企業の位置づけなり、あるいは今後の方向等について、やはり総理自身の強い決意が大事だと私は思うのです。いかがでございますか。
  228. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど田中通産大臣から、政府の持っているビジョンは打ち出したと思いますが、先ほどの説明で私は事足りる、かように思っております。
  229. 近江巳記夫

    ○近江委員 次に公害問題についてお聞きしたいのです。時間の関係がありますので、担当なさる大臣は簡潔にお答え願いたいと思うのです。  まず環境庁長官にお尋ねしたいと思いますが、イタイイタイ病あるいは阿賀野川の水俣病等が世論の盛り上がりの中で、裁判長の英断によって勝利となったわけでありますけれども、政府は今国会で、無過失損害賠償制度、この制定をはかるべきではなかったか、このように私は思うのです。長官はこれについてどう思われるか。またこれをいつ提出されるか。単独立法にするか、個別法にするか。この際、簡潔にひとつお聞きしたいと思うのです。
  230. 大石武一

    ○大石国務大臣 無過失賠償責任制度につきましては、次の通常国会におきまして提案いたしたいと考えております。これはでき得ますならば一本の法律にいたしたいと思いますが、いろいろな事情がございまして、あるいは現在の水質汚濁防止法、大気汚染防止法、二つの法律の改正になるかとも考えておる次第でございます。
  231. 近江巳記夫

    ○近江委員 引き続いて環境庁長官にお尋ねしますが、わが党はじめ野党三党が一年前から提唱いたしております環境保全基本法案は、この国会提出をはかる時期に来ておると見ておるわけでございますが、長官はこの国会提出の意思があるかどうか。こうした内容をですね、これについてひとつお伺いしたいと思うのです。三野党提出の環境保全基本法案、これはどうされますか。
  232. 大石武一

    ○大石国務大臣 ただいま御答弁申し上げましたように、無過失損害責任法、この法案も次の通常国会に提案いたす予定でございますし、また、自然保護法とかりに呼んでおりますが、自然保護を中心とした新しい国のあり方を考えておるわけでございます。このようなものをあわせて考えますと、皆さま方のおっしゃっておられる環境保全基本法でございますか、これと大体同じような内容となりますので、そのような方向で進んでまいりたいと思っております。
  233. 近江巳記夫

    ○近江委員 引き続いて環境庁長官、公害防止の基本的な施策として監視体制の整備は、これはもうきわめて重要な問題であります。御承知のように、西ドイツのルール地方で実施されておりますメッシュ方式、これはすでにわが国でも川崎市が独自でこの方式を実施しておるわけですが、政府の公害防止に対する根本的な欠陥、これは科学性への消極的な取り組みにあると思うのです。そういう意味から、地方自治体への財政処置を大幅に増加し、常時継続的な監視網の整備をさらに推進するお考えがあるかどうか。これが一点であります。  それから次は、公害認定患者の救済についての問題でございますが、本法施行以来政府は努力されておりますが、悲しい犠牲者が相次いでおるわけです。最近も御承知のように、五人もの死亡者が出ております。こういう点において、本法の救済法としての基本的な問題として、居住要件の大幅緩和、所得制限の撤廃、また公害激甚地の国費による健康診断、こういうようなことを積極的に実施することが重要な課題であると思うのです。これが犠牲者の防止につながると思うわけです。  この二点について、長官の所信をお伺いしたいのであります。
  234. 大石武一

    ○大石国務大臣 公害の防止にはやはり監視体制の強化が何より必要でございます。これにつきましては、御承知のように、その権限は地方自治体に移されてございます。われわれとしましては、この地方自治体が十分にその権能、機能を発揮いたしますように、十分な調整、連絡もいたしますし、指導もいたしますし、またいろいろな機械設備やそのようなものを完備するようにあらゆる協力をしてまいりたいと考えております。  それから、公害病患者の救済につきましては、お説のとおり、次の通常国会におきましては、できる限り大幅に所得制限を撤廃する考えでございます。また、いろいろな医療手当、介護手当その他につきましても、増額いたす考えをいたしておる次第でございます。
  235. 近江巳記夫

    ○近江委員 私は、その次に、この公害問題としての特殊公害、たとえば、航空機騒音あるいは新幹線騒音とか、いろいろ特殊なそういう公害があるわけですが、特に航空機騒音の被害というものは、これはもう国際空港である羽田あるいは伊丹空港においても拡大する一方であります。とにかくその飛行場のそばに住んでいる人などの状態というものは、これはほんとうにたいへんな状態です。そういうことで、まずこの法自体に問題があるんじゃないか。こういうことで、環境庁長官の管轄としては騒音規制法があるわけですが、こういう特殊公害を織り込んだそういう法改正をすべきじゃないか。むしろ航空機の騒音規制法といいますか、そういうものを新たに立法しても、極端にいえばいいような状態じゃないか、そのように思うのです。その点についてどう思われるかということです。  それと同じ問題として、私、運輸省にお伺いいたしますが、最近、こういう民家の防音対策とかいろいろな問題が出てきておるのですが、そういう点を考えていきますと、現在の航空機騒音防止法、これはもう全然現状に合っていないと思います。そういう点でどうしても騒音防止法の改正をはかる必要があるのじゃないか、このように思います。そういうことで、環境庁長官と運輸大臣にまず法の面についてお聞きしたいと思います。
  236. 大石武一

    ○大石国務大臣 航空機その他の特殊騒音につきましては、いま非常に大きな公害問題を起こして問題になっております。われわれ環境庁におきましても、去る九月の二十七日に、この騒音防止の環境基準をつくるべく中央公害対策審議会にそれを申し出まして、できるだけ早い機会にその基準をつくってもらうように要請をいたしております。しかし御承知のように、この航空機騒音の環境基準というものは世界にもございません。非常に技術的にもむずかしいようでございますし、しかも現在におきましては、この騒音の公害についてはこれをなおざりにすることができません。そういうわけで、今年内にもせめてその指針だけでもきめてもらいまして、それを中心として各省庁と十分に連絡をとりましてある程度の航空機騒音の規制をいたしたい、こういうことを考えておる次第でございます。近い将来には、やはり航空機のような特殊騒音もいろいろな検討をいたしまして、騒音規制法に一緒にいたしたい。それにはもう一つ運輸省関係の騒音の障害防止法もございますが、そういうものもあわせ考えまして、広い面から考えてまいらなければならない、そう考えておる次第でございます。
  237. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 ただいまの航空機騒音の点につきまして、現状に合わないのではないかという御質問でございます。御承知のとおり、四十二年の八月に、空港周辺におきまする航空機騒音による障害についての防止法ができておりますが、いろいろの面におきまして公害が非常に広がっております。たとえば、御指摘のございましたような個人住宅の防音対策をどうするかというような問題がございますので、ただいまその実情に合うべく鋭意検討中でございます。
  238. 近江巳記夫

    ○近江委員 運輸大臣、鋭意検討をしておるということでありますが、この法改正をなさる、そういう姿勢でなさっておるのか。もう少し明確におっしゃってください。
  239. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 法改正をする前提でもって検討中でございます。
  240. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから環境庁長官にお伺いいたしますが、この環境基準、これをもう一日も早く設定していただかないと、ほんとうに周辺の人にとってはたいへんな問題です。総理は常に、住民優先だ、国民優先だ、これに切りかえていくんだということをおっしゃっておるわけです。そうであれば、これをすみやかにやっていただかなければ困ると思うのです。この点の見通しについてはどうでございますか。
  241. 大石武一

    ○大石国務大臣 本格的な環境基準につきましては、できるだけ急ぐようにその審議会にお願いしてございます。しかし、先ほど申し上げましたように、世界にはまだ類例がございませんので、つくる以上は、どこに出しても恥ずかしくない有意義なものをつくりたい、こう考えておりますので、できるだけ急がせますが、しばらく時間をかしていただきたい、こう思います。ただし、本年・のうちにはその指針だけでも方針をきめまして、それによって運輸省なりあるいは防衛庁と御相談いたしまして、ある程度の規制はいたしたいと考えております。
  242. 近江巳記夫

    ○近江委員 特に空港を見てまいりますと、羽田あるいは伊丹空港、あるいは札幌、板付、いろいろありますが、特に伊丹空港の場合、周辺に百八十万の人が住んでいる。そうしますと、特に最近は一日四百六十回、ひどいときは大体一分三十七秒の間隔でおりてきております。しかもこの百ホンをこす騒音が間断なく民家をおおっておる。だから、もうノイローゼになったり、いろいろなことで苦しんでおる。一番被害の集約された姿がそこにあるのではないか。各地もそうであります。そういう点で、ほんとうに騒音のそういう被害の対策。あるいは、大きな飛行機が頭のところへ来る、だからあれが落ちればどうなるか、そういう心理的な被害というものはたいへんなものであります。そういう点、政府としてはほんとうに積極的に取っ組んでいかなければならぬと思うのです。その点、世界でも、内陸部の中で、しかも人口密度、いろいろなそういう状態から見て一番過密な状態であるといわれている伊丹空港等について、今後どういう救済をされていくのか、これについてひとつ運輸大臣にお聞きしたいと思うのです。
  243. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 伊丹空港周辺の人口が稠密でございまして、また離発着の回数が非常に増加してまいりまして、騒音によりまして住民が非常に悩んでおることは、御指摘のとおりでございます。それに対しまして、先ほど申しました航空機騒音防止法の発足以来、大阪空港はその指定空港といたしまして、それに対しまして、御承知のとおり、あるいは学校、あるいは病院、または公共施設、集会所、保育所その他につきましての防音施設はいたしている次第でございます。また、それに伴いまして、付近住民につきますその移転につきましては、移転補償その他もいたしている次第でございます。また、テレビ受信あるいはまた防音電話等につきましても、航空公害防止協会をいたしましてやらして、鋭意やっている次第でございますが、何ぶんにも、今日の航空事情にかんがみまして狭隘になっておりまして、離発着回数をこれ以上現在では減らすわけにまいらないような状態でございますので、できるだけ早い機会に関西新空港を設立させまして、そうして現在の計画におきましては、そのうちの国際線は全部、国内線は半分は、少なくとも新空港完成の暁には持ってまいりまして、この伊丹空港付近住民の騒音からくる障害を除きたい、こういうふうに思っている次第でございます。
  244. 近江巳記夫

    ○近江委員 新空港ということをおっしゃっておりますが、現在の各空港の状態を見ますと、そういう被害というものはたいへんなものです。これがまた再び新たな空港で起きるということであれば、これはたいへんな問題だと私は思うのです。公害の起きるような、そういう空港であってはならぬと思うのです。そういう点について大臣として、絶対にそういう公害が起きないということは証明できるのですか。公害が起きる空港であれば、絶対これは認めるわけにいきません。
  245. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 ただいまの御指摘は当然でございまして、これから飛行場選定の一番大きな重要基準といたしまして、公害のない、騒音のない飛行場を選定すべきだという観点に立ちまして、今日私どもは選定をいたしている次第でございまして、今回の関西新空港に対します諮問につきましても、その点を重点として置いている次第でございます。
  246. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこで、新空港ができた、そうなった場合、いま大臣は、国際線、そして国内線の半分が行くとおっしゃいましたが、いま現在ピーク時には十七万五千回ぐらい伊丹に発着しておりますが、半分が移る。そうするといまよりも半減をする。環境庁長官は、前にも関西にお見えになって、そういう密集地帯の空港を廃止すべきだといった意味の発言をなさったと私もちょっと聞いておるわけですが、そういう点で、その半減をしたその線からさらに減らしていく、こういうことですね。
  247. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 半減はいたしたい、こういうふうなことでございます。ただ、そのできました時点におきます航空需要その他からまいりまして、半減からさらに減らすということはなかなか容易なことではない、こういうふうに思っている次第でございまして、その点はやはり、その付近のあるいは民家が御移転になる場合の補償、あるいはまた、そのあと地におきますところの土地開発、あるいはまた、先ほど申しましたように、テレビの障害、あるいはまた電話の障害等につきまして十分な対策を講じまして、そうしてやってまいりたい、こう思っている次第でございます。できるだけ御要望に沿えるようにはいたしたいと思う次第でございますが、その時点におきます離発着の点は、ただいまのところ半減をするということでございますので、御了解願いたいと思います。
  248. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 近江君に申し上げます。時間が終了いたしましたから、そのつもりでお願いいたします。
  249. 近江巳記夫

    ○近江委員 それじゃあと一問で。  環境庁長官はそうした方向の発言をなさったと聞いておりますが、要するに、半減した時点から、伊丹空港のいまのそういうたいへんな状態を見て、今後さらに減らしていく努力を積極的にやっていくべきである、これは私は当然だと思うのです。その点、運輸大臣、環境庁長官、そして最後に総理にお伺いしたいと思うのです。
  250. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 ただいま私お答えいたしましたとおりでございまして、御趣旨はよくわかる次第でございますが、ただいまの航空需要の増加その他にかんがみまして、現時点におきましてそれらをお約束するわけにはなかなかまいらぬ。それにつきましては、関西新空港の第二期工事も急がせまして、それでそっちのほうに漸次移すということは考えられる次第でございますが、その点を御了解願いたいと思います。
  251. 大石武一

    ○大石国務大臣 ただいまのお話の御示唆はごもっともでございます。私どもが、この年内にも環境基準の指針だけでもつくりまして規制をいたしたいというのは、夜間の飛行とかそういうものを少しでも規制いたしたいという考えからでございます。  なお、先ほどの発言でちょっと誤解があるようでございますが、私は伊丹の空港をとめてしまえという話はいたしておりません。ただ、新空港をつくるには非常な決意が要る、それを貫くためには伊丹空港を閉鎖してもよろしいというくらいの決意を持たなければだめなんだ、そのくらいの熱意がないとできないということを申し上げたわけでございますので、別に運輸省の方針に反対しているということじゃございませんので、御了解願いたいと思います。
  252. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこで最後に、公害のないということで海上ということをおっしゃっておるわけでございますが、いまいろいろ審議されていると思うのです。私もその点は、絶対にそうした公害の起こさない、そういう位置の選定でなくてはならぬと思います。そういう点で私は総理に最後にお聞きします。環境庁長官も、廃止をするくらいのそういう気持ちで住民を守っていかなければならぬということをおっしゃったわけですが、その時点で半減をするわけですが、さらにそれをこれからも減らしていく、こうした努力を住民優先の立場からやっていかれるべきだ、このように思うわけです。総理はそれに対してどう思われますか。
  253. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 なかなか問題は複雑でございます。おそらく近江君も、航空機の便利な点、利便は十分御了承だろうと思う。同時にそれがかもし出す弊害も、ただいまなくしろ、こういうお話でございますから、その点でどういうような方法が考えられるか、これをやはり積極的に取り組まなければいかぬと思います。もうすでに御承知のように、飛行場周辺の学校その他病院等においても防音装置をした、こういうことは御承知のことだと思いますし、また人家等におきましても、そういう処置のとれるものととれないものとがございますし、また発着回数にもよる、こういう問題もありますし、いろいろ複雑な問題がございますから、それらの点を十分勘案しながら、われわれの利便は利便として、また公害としてあとへ残らないような、そういうことをどの程度避け得るか、かような点を考えていきたい、かように思います。  先ほど来、両大臣がお答えしたのと私の所感はやや感じが違いますが、ただいまの近江君の論法がなかなか鋭いので、ついそれに負けて、飛行場も簡単に、また回数も簡単に減らし得るような答弁をしていること、私、聞いておりまして、これは誤解を与えるな、かように思います。おそらく近江君の言われることも、利便は利便として必要なんだ、同時に回避する方法がどこにあるか、それを考えろ、こういうような御注意じゃないか、私はかように理解したのでございまして、そういう意味において、この問題は十分真剣に取り組んでまいりたいと思います。
  254. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて近江君の質疑は終了いたしました。  ここで御報告いたします。昨日の委員会において、田中委員より要求のありました資料が大蔵省から委員長の手元に提出されました。この際、委員各位に配付いたします。  本件に関し、田中君から発言を求められておりますから、特にこれを許します。簡単に願います。
  255. 田中武夫

    田中(武)委員 先日二十八日に私が要求いたしました資料をただいまいただいたわけであります。ありがとうございます。しかし、この中にはまだ私の要求したもので満たされていない点が二、三ありますので、念のために、そのことについて大蔵大臣にお伺いをいたしておきます。  これによりますと、結局ニクソン声明のときから固定相場制の間、すなわち変動相場制をとりました前日までの、買ったと言いますか、ドルは三十八億九千五百万ドルとなっておりますが、俗に四十億とか四十六億とかいわれておりますが、これがすべてであるかどうか。そういたしますと、中にから売りなんていわれたのがありますが、そういうのが事実あったのかなかったのか。それが一つ。  もう一つは、これは私は明確に要求したはずなんですが、トータルとしてはこの中に入っておると思いますけれども、固定相場制の最後の日、すなわち八月の二十七日に、本来ならば午後三時三十分に締めるべき市場を二十分延長した。それはなぜかということ。その間に二つの銀行から二億八千万ドルをかえたといわれておる。その銀行名とその金額。これは議事録を見てもらったらわかります。私、要求したはずですが、それが別に出ておりません。それをお伺いしたいんです。  それから、これは算用すればわかるのですが、固定相場すなわち一ドル三百六十円と、変動相場制になりました最初の幕あき、そのときの、まあ相場というんですか、ドルの円との関係において、差額は幾らあったのか。そういたしましたら、この一番多くかえた東京銀行、六億九千二百万ドルになっていますが、それはその金額、差額をこれにかければいいのか。幾らぐらいのいわゆる差益損が――助かったというか、あるいはもうかったということばか、どっちが適切かわかりませんが、その金額。これは計算すればわかりますけれども、その点。  それからもう一つは、この変動為替制に移行した今日でも、政府、日銀は若干のやはり介入をしているのではないか、こういわれておるが、ほんとうに変動為替相場といえば成り行きにまかしておるのか、やはり若干介入をしておるのか、介入をしておるとするならばどの程度の介入をしておるのか、この点この資料に基づきまして簡単にお伺いいたします。
  256. 水田三喜男

    水田国務大臣 実務に関しての問題が多いようでございますから、局長から答弁いたさせます。
  257. 稲村光一

    ○稲村(光)政府委員 簡単に御答弁申し上げます。  最初の、四十五億買った、そのうちで三十八億しかない、(田中(武)委員「三十九億」と呼ぶ)三十九億しかないというふうに申されましたが、それは四十五億と申しますのは八月中の外人の増でございまして、一日から十五日までにすでに入っておるわけでございます。それ以後は、お出し申し上げました資料のとおりでございます。から売りというようなことはございません。  それから、例の二十七日のときに日銀が営業時間を延ばしたんじゃないかという点でございますが、この点につきましては、日銀の問題でございますが、日銀総裁の国会での御答弁にもございますとおり、通常日銀の営業時間と申しますのは五時まででございまして、ただ、普通の状況でございますと、いろいろな取引の全部の整理が大体三時半くらいには終わる。ところが普通の場合でも、週末でございますとかあるいは月末等の取引の多いときには、どうしてもそれをオーバーするということはあったようでございまして、たまたまこの二十七日は非常に多額のドルの売りがございまして、そのために取引の処理がおくれまして三時四十分ぐらいになったということでございまして、特別に先生御指摘のような事実があったわけではございません。  それから、相場の点でございますが、ちょっと計算をいたしておりませんが、いまのどのくらい差が変動相場制になって生じたかという点でございますが、この資料によりますと、二十七日が、これはまあ変動相場制になります前でございます。これは三百五十七円三十七銭でございます。それが二十八日は三百四十一円三十銭になっております。ちょっといま計算をいたしておりませんが、その差額が、その相場の差はそれでございます。  それから、御質問の変動相場制になってからも買い入れがあるではないかという点はまさに御指摘のとおりでございますが、これは今回の変動相場制が全く自由な変動相場制と申しますものではございませんで、各国ともコントロール・フロートと申しますか、やはり各国市場の状況その他によりまして、介入をいたさなければならないときにはいたすということでやっております。その点で日本におきましてもやはり市場があまり相場が大きく動くということは取引上適当でございませんので、そういうときには介入をいたさざるを得ないということでございますので、その点で変動相場制に移りましてからあとにおきましても介入は行なわれておる場合があるということでございます。
  258. 田中武夫

    田中(武)委員 その二十分余り延長したときに、二億八千万ドル二つの銀行でかえたといっておるが、その銀行と金額。それからどこの銀行が幾らもうけたということは結局三百五十七円マイナス三百四十一円の差額かけるこれこれの金額でいいわけですね。掛け算をすれば出てくるわけですね。そう見たらいいわけですか。  それからもう一つは、いまの本来為替を持っておる、ドルを持っておると思われぬところがやっておるといわれておるのですが、そういう事実はどうかということです。から売りがあったのか、そういうことですね。  それから、現在でも若干介入をしておる。それはどういう限度で介入をしておるのか、無制限に介入をするなら変動為替制をとった意味はないですね。そういう点を、ちょっと落っていますから。
  259. 稲村光一

    ○稲村(光)政府委員 ただいまの御質問でございますが、ただいま申し上げましたのは、相場の問題でございますが、変動相場制になりました八月二十七日と二十八日の直物の仲値の差がこれだけであったということでございまして、したがいまして各行ごとにどれだけの損、どれだけの得ということはそれだけではちょっとわかりがたいことであろうかと存じます。  それからドルを持っていなかったのに売った、から売りという御質問でございますが、このから売りという意味が先物で――たとえば直物を持ってなくて先物で売っといてというようなことでございますとすれば、それは実はそういう取引は変動相場制に移ります前でも応じておりませんから、それはございません。  それから民間同士でそういうあれがあったかどうか、これはちょっとわかりかねます。それから……
  260. 田中武夫

    田中(武)委員 現在の介入……。
  261. 稲村光一

    ○稲村(光)政府委員 現在の介入につきましては、これはまあ事柄の性質上、たとえば一日にこのぐらいの変動幅で介入するというような方針を全く持っておるわけではございません。そういうものはやはり相場があまり急激に変動してはいけませんので、そういうことのございませんように適宜必要があれば介入をするという方針をとっております。
  262. 田中武夫

    田中(武)委員 最後に一点だけ。それでは大蔵大臣、大体いまの局長の答弁ですが、現在いわゆる変動為替相場といいますか、為替制をとっておるわけですが、介入するのに無制限ではないと思うのですが、大体その差といいますか、上限、下限ですか、どのくらいのところでコントロールしようとして介入しておられるか、その大体のめどはどうなんです。局長でははっきり言えない、こういうことですが、大体めどはどうです。
  263. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは市場の様子によって異常な変動を避けるというようなときに随時介入することがありますから、めどというものを持って介入しているわけじゃございません。
  264. 田中武夫

    田中(武)委員 ないということですね。じゃ、どうもありがとうございました。まだ言いたいことがあるけれども、しょうがないですな。
  265. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 この際、安井吉典君及び楢崎弥之助君の残余の質疑を順次許しますが、残余の時間内においてお願いいたします。安井吉典君。
  266. 安井吉典

    ○安井委員 去る二十五日の私の質問で、沖繩の核撤去費と称する七千万ドルの積算基礎を政府に示すように要求したところで私の質問は中断されました。その後、数日経過したわけでありますが、政府はその後国会に対し、この七千万ドルの積算の根拠を説明することについてどういう結論を得ておられますか。
  267. 福田赳夫

    福田国務大臣 先般、経過並びに結論につきまして御説明申し上げたわけでありますが、まあ大体あれにて御了解を得たんじゃないか、私のほうではさように考えておる次第でございます。あれ以上つけ加えることはありませんでございます。
  268. 安井吉典

    ○安井委員 そういたしますと、沖繩にはどんな核があるかわからない、どんな状態であるかわからない、いつから運搬が始まるのかわからない、どういうふうに撤去するのかわからない、何にもわからない、そのとおりですか。
  269. 福田赳夫

    福田国務大臣 先般も申し上げておきましたが、メースBですね。あの関係なんかから見ましてどうも核がありそうだ、こういうふうに見ておるのであります。そこで一億七千五百万ドル、それから七千五百万ドル、合計二億五千万ドルがきまりました。その上さらに米政府からいろんな要求があったわけでありますが、とにかく核が返還時において沖繩にないんだということを明らかにすることが非常に大事なことだ、こういうふうに考えまして、七千万ドルを乗っける。もっとも七千万ドルはそればかりじゃないのです。他のいろいろなそういう要請等も考慮して高度の政治的判断から加えた、こういうふうに御承知願います。
  270. 安井吉典

    ○安井委員 いまのお話を承りますと、核が一体どんな状態であるのかわからない、何があるのかさっぱりわからない、何もわからない、かにもわからない。それでも高度の政治判断で七千万ドルを払う、こういうわけです。  私は今度の協定の中で、ただ一つ政府がいいことをされているのがあると思うのです。それはドル建てで金の値段をきめていることですね。政府はみごとドル政策、外貨政策に失敗をしてドルの値打ちを下げたもんですから、ドル建てできめたことによって幾らかこれは得しましたね。しかし七千万ドルといったって、たとえドルの値段が下がったって二百三十億円か四十億円払わなければいかぬわけですよ。何のために払うかわからないそういう金を、それを払うのだから、何があってどうなっているんだかわからないが、ただ二百三十億円払うのだ、だから核がなくなったんだ、こんなことで県民や国民が承知しますか。どうですか。
  271. 福田赳夫

    福田国務大臣 核がない、返還時においてないというそういう状態、これは大統領と総理大臣が確約をいたしておるわけです。それを引用いたしまして、そのことをも考慮いたしまして七千万ドルを支払います、こういうんですから非常に事ははっきりしている。そのこと自体については私は御理解願えるんだ、かように考えております。
  272. 安井吉典

    ○安井委員 それじゃもう一つ詰めて伺いたいのは、核の問題について政府は知らないのか、それとも知っていても国会では言えないのか、どちらですか。
  273. 福田赳夫

    福田国務大臣 率直に申し上げまして詳しいことは存じませんでございます。
  274. 安井吉典

    ○安井委員 詳しいことは知らないで、七千万ドルを払うからそれで核抜きだということでは断じて承服ができる問題でないということを明確にしておきたいと思います。  特にきょうまでのこの審議を通しまして、沖繩にはたくさんのおそろしい核が存在をし、しかもそれはなかなか撤去しがたい情勢、状態に置かれている、これも明らかになっているわけですから、私はことさらにその点を大きな問題だということを指摘しておきたいわけであります。  時間がありませんので、もう一つ核について大事な問題があるので、これについてお尋ねをいたしたいと思いますが、これは総理について。  いわゆる非核三原則は政府方針だからと、こういうふうに言われて、これがあるんだからと、こういうふうにいままで言われてまいりました。しかし政府方針なら、政府がかわればこれはもう変わってもしかたがないのだと、こういうことにならぬでしょうか。特に佐藤内閣はもう余命幾ばくもないのではないかといわれて、政府がかわるかもしれないだけに私ども心配です。ですから全国民を代表する国会で三原則を決議し、政府方針を国の方針としよう、こういう提案を私どもはするのでありますが、これまで政府・自民党はそれに反対をしてまいりました。しかし、核抜き本土並みということがいま最大の問題となっている際であります。いまこそ国会で、核はつくらず、持たず、持ち込まず、この三原則を決議をして声高らかに宣言をする、これがいま大事なときではないかと私は思います。とりわけ政府は、非核三原則をこの国会が始まって毎日のように連呼してきています。アメリカの上院におきましても核抜きが証言されました。もう障害はないじゃないですか。国会決議にぜひともすべき段階だと私は思うのですが、どうですか。
  275. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は安井君と結論が逆でありまして、これだけはっきりしたら、もういまさら国会で決議する必要はない、かように思っております。  佐藤内閣の余命幾ばくもないと言われますが、私は保守党の内閣はその方針を引き継ぐ、かように思っておりますので、その点では御安心願いたいと思います。
  276. 安井吉典

    ○安井委員 私は政府・自民党がここで非核三原則の国会決議に反対をするということは、国民にとっては、核抜きはどうもうそではないか、そういう印象を与えかねないと思うわけであります。特に、アメリカの核再持ち込みにイエスといわなければならないような状態がくるのを予想して、国会決議に反対するのですか。それとも政府の政策には核のかさの中に入るというのも一つ政府の政策で、実は非核三原則プラス一原則、これが政府の政策ではないかともいわれるわけでありますが、アメリカの核のかさにあることで気がねをして、三原則に賛成できないのですか。それともアメリカのほうが国会決議に反対しているから、非核三原則決議に反対をされるのですか。
  277. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 核はつくらず、持たず、持ち込みも許さない、これが非核三原則、こういうのでございます。私はこれはもうずいぶん口が酸っぱくなるほど言っておりますし、おそらく各人の耳にもたこができるほど聞こえておる、かように思っております。いまさら国会で決議する必要はない、かように考える次第であります。
  278. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 安井君に申し上げますが、時間が経過いたします。簡単に願います。
  279. 安井吉典

    ○安井委員 それではもう一点だけ伺いますけれども、ほかのときならそういう答弁で私は逃げられたと思うのですよ。いままで国会が幾らやっても、政府はそういうことでお逃げになりました。しかしながら、いま沖繩の核抜きの問題がこれだけ大きな問題になっているじゃないですか。沖繩の県民も関心を持っている。全国民の関心の的であり、今度の返還協定の最大の焦点ですよ。こういうときこそ非核三原則で、はっきり日本の国の方針はこうなんだ、未来永劫に変わらない方針はこうなんだ、こうすることがほんとうのことであって、そうでなければ、むしろ政府・自民党は再持ち込みを認めるために、いまそんなものがあったら困るんだからと、こういうことで押えているのではないか、核隠しではないか、そういう心配を国民にさせることになるのですよ。どうですか。
  280. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 安井君から、ずいぶん政府の立場にも同情し、またこうやったほうがいいだろう、かようにおっしゃるそのお気持ちがわからないわけでもありませんが、私はかねてから主張しておるように、その考え方をこの際に変えるというさような考え方はございません。はっきり申し上げるとおり、いままでの方針を堅持しておると御了承いただきたい。
  281. 安井吉典

    ○安井委員 それでは最後に一つ申し上げて終わります。  現在沖繩にある一発の水爆の爆発で、百万人の県民の命も建物も草木も全部蒸発してしまうのです。それくらいおそろしい水爆も沖繩にあります。アメリカ上院でのアメリカの政府側の核抜き証言で、政府は鬼の首でも取ったように考えておられるのかもしれませんけれども、私は、非核三原則の国会の決議、これがやはり国民を安心させることになる。あるいは核兵器の存在について確認をするという措置を講ずる、こういうようなものでなければ安心することはできないと思います。総理に申し上げたいのは、そのおそろしい核と同居している沖繩の県民の身になって考えていただきたいということです。この予算委員会でその問題について、特に七千万ドルの問題について明示できないというのなら、私どもは近く開かれる各特別委員会の中にこれを持ち込みたいと思います。特に七千万ドルの積算基礎を明確にしない限り、特別委員会における案件の審議はスムーズに進まないだろう、こういうことを私ははっきり宣言をいたしまして終わります。
  282. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて安井君の質疑は終了いたしました。  次に楢崎弥之助君。
  283. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 きょうは総理おこらぬことにしておってください。私は、きょうの朝刊を見まして、総理はわが党の松本七郎議員に、自分たちはまじめにやっておるのだから、あまり変なものを出してくれるなと言われたそうですね。変なものをつくっておるのは政府側ですよ。私がつくっておるのじゃないのです。いいですか。そういう認識であれば、私はもう一ぺんこの点で明確にしておきたいと思うのです。いいですか、きのう山中長官は――おられますか。山中長官は、この資料がさも個人の意見書のように見せかけようと答弁された。山中さんも当時のことは御存じないのです。官房長官竹下さんもこれは御存じない。この資料の原案は実はそれから数日前の十二月八日に総理府でつくられております。いいですか、総理府でつくられておる。使用されておるその原案の用紙も総理府の用紙であります。そしてこれまた極秘と書いてある。それでこれは十二月八日の分であります。これは委員長、山中さんにこれを渡して、総理府にありますから確認をしてください。  それからこの原案の中にすでに私が指摘した点が実に明瞭に、より明瞭に書いてあります。(イ)のところ、「主席公選制の実施」という表題。「沖繩における与党体制を確立しつつ公選制を実施する。」実に簡単明瞭にそれだけ書いてあります。さらに形式も、これは意見書ならその団体が政府に何々してくださいというのでしょう。その原案を見てごらんなさい。これは総理と大統領のトーキングペーパーの形になっておるのですよ。読んでもらいたいと思うのです。「私は」すなわち総理はですよ、「について大統領の特別の御配慮をわずらわしたい。」こういう意見書がありますか。それから昨日指摘をしました佐藤総理訪米資料(1)のほう、これはこの十二月八日の原案の分を整理したものであります。そしてこれまた総理と大統領との直接の会談のためのトーキングペーパーの形になっておる。「私は大統領に対し感謝の意を表したい。」そして資料2のほうは「総理から米国政府への要望事項」すなわち資料1の細目が資料の2のほうになっておるわけですね。そして極秘の印はきのうも確認したとおり総理府の極秘の印であります。現在あなた方の総理府にある資料に押されておる極秘の判と、この判は同一判であります。極秘というような重要な判が押されておる、総理府の判が。いいですか。そこで先ほども言いましたとおり、もし個人の意見書ならば何々してくださいという形でしょう。そしてまた成案されたものだけが総理府に届けられるはずであります。ところがおかしいことに草案までがちゃんと総理府にあるのです。この資料の草案まで。それで私は念のためにこのときの背景を説明しておきます。この年の十二月八日の日に草案が書かれて、十四日の日に当時のワトソン高等弁務官は、佐藤総理、お会いになりましたね。そしてあなたの訪米の下交渉が行なわれております。つまりこれはその原案に基づいていろいろ話をされたはずである。そして十七日に成案がつくられた。そして十二月の二十六日に沖繩では保守合同が行なわれております。そのときの民主党大会です。いいですか、そういう背景があるのです。しかもこのような資料に基づく佐藤総理の沖繩交渉が米国側にどのように反映し、影響しているか。ちゃんとサイミントン委員会にこのことが載っております。読んでください。いいですか、これは政府からいただいた資料一一一-七三のところです。「沖繩の政治に対する米国の介入の度合い」、もう時間がありませんから、これは政府のほうで読んでください。ちゃんとあるんです。あまりこういう資料をごまかしちゃいけませんよ。それで、いまの原案が総理府にあるかどうか、私が質問しておる間に確認してください。私がきのう要求をいたしました資料の中で、きょうお手元に配られておる資料があると思います。  防衛庁長官、お尋ねしますが、UAUMというのは水中・空中・水中ミサイルでありますが、今日各国で実際に装備されておるUAUMは一体何ですか。
  284. 西村直己

    西村(直)国務大臣 昨日お求めいただきました資料は、一応ごらんのとおり差し上げてあります。御存じのとおり、われわれの……(楢崎委員  「時間がありませんから、言ったことだけ答えてください」と呼ぶ)開発計画ですな、四次防の。その中にはそれは入っていないです。(楢崎委員委員長、困りますよ、私が質問したとおり答えてもらえばいいんです」と呼ぶ)ですから、四次防の開発計画……。
  285. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、私はそんな答弁は聞きませんよ。私が聞いておるのは、現在各国でこのUAUMを実際に装備されておる、それは何かと聞いておるのです。
  286. 久保卓也

    ○久保政府委員 アメリカのサブロックであります。
  287. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 仰せのとおりであります。サブロックは核以外にないのであります。ところが、この私が要求をしました「技術研究本部技術研究開発計画第四連絡会武器分科会、四十四年十一月二十六日」この議事録を要求したわけでありますが、この2のところに、「潜水艦用ミサイル(UAUM、UASM)等について討議」されたと書いてある。そこで、すでに検討に入っておることは事実であります。私がこれを言えば、アスロックをそのように改良してみたらどうかというようなことじゃないかとおそらく答えるでしょう、私が三年前にAMM、アンチ・ミサイル・ミサイルを言ったときに、いや普通弾頭もありますなんという答弁をしたんだから。これは核以外に使いようがないのですよ。UAUMをわざわざ開発するんだったら、核以外にないのです。現に、UAUMは世界どこをさがしても、サブロックしかないじゃありませんか。だから、私は、この議事録をほんとうに出してくださいと言ったのです。出してください。私が要求した部分は入っていない。議事録はこれがすべてですか。  私は申し上げておきます。この第四連でこういう項目の検討もされております。「艦艇推進用特殊パワープラントの研究」この中に――必要なところだけ読んでみましょう。「原子力機関が将来採用される時期がくると思う。それに対して本研究はいかに評価されるか」、答え「原子力を発熱源として見る限りにおいてはMHD発電も特殊熱機関も、このような研究は有効な原子力機関の基礎研究である。」つまり、原子力を将来持つ、そしてこのような推進パワープラントの研究はこの原子力推進の基礎研究であるとちゃんと言っております。この中に、緒明氏という人がものを言っております。この緒明という人は、おたくからいただいた資料の中にあるとおり、これは陸将補、たいへん偉いです。将補、第二開発官。さらに、小野という人がしゃべっております。この小野という人は、緒明開発官の指揮下にある第四班長でしょう。したがって、いま非核三原則を非常に重要視しておるときに、総理もこのような研究は相ならぬとおっしゃっている重要な問題ですから、これを明らかにする必要がある。したがって、この第四連の議事録を全部見せてください。お願いをいたします。
  288. 西村直己

    西村(直)国務大臣 私の手元にあります議事録は、これが直接あなたにもお見せしましたものであります。そして、その中には、いまお読みになりましたような原潜というようなものは全然出ておらないのであります。それで、問題は、しかもそれをきょうは要旨にいたしましてお手元には差し上げてありますが、議事録そのものにもそういう原潜ということばなどは出ておりませんです。
  289. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あるのであります。私は、実物をここに持っております。それじゃ照合いたしましょう。委員長、お取り計らいを願いたい。
  290. 西村直己

    西村(直)国務大臣 重ねて申し上げますが、私の手元にあります議事録といたしましては、そういうようなことばは出ておりませんです。
  291. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私はそれを見せていただきましたが、それはゼロックスをとっておるが、原文を見せてください。あなた方は改ざんしておる。それは改ざんしておりますよ。そのゼロックスをとった原文を見せてください。
  292. 黒部穰

    ○黒部政府委員 昨日の委員会で先生から御指摘のありました第四連絡会の議事録を持っておりましたので、それをそのままゼロックスにとったものでございまして、改ざんいたしておりません。
  293. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 一つは、私の昨日の松本七郎君に対する廊下での話が、新聞にまことしやかに出ておる。これが楢崎君にたいへんおこられました。私も、その記事がよもや出るとは思わなかったのです。実は冗談的に私が申したことは、これは事実でございます。だから、それを言う以上、新聞に出ることを当然心得べきことですが、これがまじめに取り上げられるとは実は思わなかった、さように御了承をいただきたい。  それから、その次の問題は、この非核三原則、これについてただいまいろいろ研究しているじゃないか、こういう問題を提起されました。私は、そういうことがあってはならない、かように思いますし、私は、忠実に非核三原則を守っていきますから、この上とも御鞭撻をいただきたいと思いますが、私自身が、私の配下の問題でございますから、疑惑を受けるようなことのないように、この上とも注意したい、注意する、このことをお約束いたしまして、この問題を御了承いただきたいと思います。
  294. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 楢崎君に申し上げます。  この際、楢崎君の残余の時間約五分を残しまして、資料を理事立ち合いの上で突き合わしてもらいます。その間は大原君の質疑を続行いたします。御了承願います。  大原亨君。
  295. 大原亨

    ○大原委員 いよいよ補正予算質問も最後になりまして、予算委員会予算の審議としてはこれが佐藤内閣の最後になるかもしれません。(発言する者あり)かもしらぬと言ったじゃないか。  そこで、いままでの予算委員会はきわめて重要な問題について議論をしてきたわけであります。その審議の中におきまして重要であると思われる数点につきまして、ここで、最後の質問の機会に、総理大臣以下各関係大臣に質問をいたしたいと思いますから、答弁のほうも簡潔に、ひとつ中身のある答弁を最初に要望いたします。  第一の問題は、日中国交回復の問題であります。これは、本予算委員会の審議中に、劇的な国連の総会のアルバニア案の三分の二多数の議決がございました。そこで、私は、この議論を聞きまして痛感をいたしましたが、この問題はすぐれて総理大臣の政治的な決断にかかる問題であります。高辻法制局長官や、あるいは外務省のベースで、この問題をテクニックで過ごしていこうという問題ではないわけであります。ですから、そういう点を十分念頭に置いていただきまして、佐藤総理から率直な御答弁をいただきたいと思うのであります。  佐藤総理は、佐藤総理の決断によりまして、国連総会において、逆重要指定方式と――これは議事進行ですが、二重代表方式につきまして、アメリカと組みまして共同提案国になりました。その二重代表制を検討して、議論の中からはっきりいたしますことは、第一項は、これは中華人民共和国を国連に招聘し、かつ安保の常任理事国に席を占めさせるという第一項であります。     〔委員長退席、長谷川(四)委員長代理着席〕 第二項は、台湾の、簡単に言えば追放については反対であるということであります。この二つの項目は、いろいろな角度から議論をされましたが、しかしながら、今日まで、中華人民共和国と世界各国との交渉や国交回復の経過を見て明らかなように、台湾追放反対が最後についておりますが、このことは、明らかに、中華人民共和国が国連に議席を持つ、そういうことに対しまして、言うなればこれを阻止する、妨害する、そういう意味を持っておるということがはっきりいたすのであります。総理は、しばしば、これは第一項を引用いたしまして、前向きの案であるということを強調されましたが、しかし、第二の問題とセットになっておりますから、結論といたしましては、アルバニア案が中華人民共和国を中国の唯一の合法政権として国連に迎え入れるという案に対しまして、台湾を残して中華人民共和国の国連に加入する道を閉ざす、こういう結論になっているわけであります。ですから、アルバニア案を中心といたします賛成、反対の採決の際に、なだれを打って七十六票という一つの結論が出ましたが、これは、日本が立った立場からいいますと、明らかにそれに対抗する案であったのであって、最後の第二項目が、これが佐藤内閣が共同提案国になりましたこの議案の中身であるということであります。このことは議論を通じまして非常にはっきりいたしてまいりました。私は、これは非常に重要なことであると思いますが、このことを、国連の総会に臨む佐藤内閣の、共同提案国になるという、そういうことから出発をいたしまして、その経過を顧みて、佐藤総理としては率直にどのような反省なり意見を持っておられるかという点を最初にお聞きをいたしたいと思います。
  296. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大原君、大体私どもの提案を御理解だと思いますが、最も重大な点を、認識は持っておられるんだと思いますけれども、私どもが主張する点に触れられなかったこと、それはまことに残念です。それは何かというと、私どもは、中華人民共和国を国連に招請もし、同時に国府の追放には反対する、こういうことでございますが、中国は一つだという、そういう原則に立ってでございます。ただいま申し上げるように、中国は一つだという、その原則に立つということが何よりも大事なことであり、その観点に立って、私は、昨年とことしと大転換をしたんだ、こういうことを申し上げております。したがって、ただいま言われたとおりではありますが、その基本の問題で、中国は一つだ、こういう点を落とされないようにお願いしたいと思います。私は、そういう立場に立って、アメリカその他の国と、国連に対するわがほうの案を、共同提案国の一つになりました。これは、私の責任において実は共同提案国にしたのでございます。最終的には私の結論でございます。  しかして、私は、そのことによっていままでの国際情勢を正しく認識しておる、かように考えておりますが、とにかく、ただいまはアルバニア案が通過した今日でございます。したがって、そのアルバニア案が通過した、その現実をそのまま国連において認められておりますが、それと同様に、日中両国の間におきましても、中国は一つである、こういう観点に立って今後日中の国交正常化をはかるべきだ、これが私の今後とるべき処置だ、かように思っております。
  297. 大原亨

    ○大原委員 話を進めてまいりますが、外務大臣不信任案のときに、与党を代表いたしました青木君の演説の中に、国連総会で敗れた国の外務大臣が責任をとった国がどこにあるか、こういうくだりがありまして、拍手が与党からわきました。私は、佐藤総理を追及するために追及をいたしておるのではないのであります。問題は、アルバニア決議案が三分の二の絶対多数で議決をされました今日の段階において、すでに新聞報道で御承知のように、中華人民共和国の代表は国連に出席をいたすわけであります。そのときに、中国は一つというふうに佐藤総理はいまお答えになりましたけれども、これはこの機会にしばしばお答えになっておりますが、その、中国を代表する唯一の合法的な政府は中華人民共和国である、こういう点を明確にするようにいままでの方針の一歩前進をはかっていくという佐藤総理の決意が政治的な決断の問題であると私は思うわけであります。この点に対しまして佐藤総理はどのような所見を持っておられますか、率直にお聞きをいたしておきます。
  298. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、先ほど来申しますように、国際世論を無視するものではございません。国際世論に従うというのが、国連中心といういままでの外交姿勢でもありますから、これは当然のことであります。  そこで、国連は国連、日中間においては日中間において、当然、私どもは国交の正常化をはからなければならない。その場合に、台湾の問題はおのずから解決されるだろう、かように期待してしかるべきだ、かように思います。
  299. 大原亨

    ○大原委員 この国会中、佐藤首相はこういう答弁をされておるわけであります。中華人民共和国が法的には戦争状態にあるという主張をいたしておることについてこれを理解をする、こういう答弁がありました。また、このことにつきましては、去る十二月の臨時国会において私の本委員会における質問に対しまして、日本と中華人民共和国は法的には戦争状態にある、こういう答弁を午前中されて、午後矢野書記長の質問のときにひっくり返ったのであります。また、この国会において、台湾の問題は、これは経過措置であるということもしばしば言っておられるのであります。  そこで、いよいよ中華人民共和国との間において、国連の舞台においても接触されるでしょう。あるいは、本院でもしばしば言明になりましたが、交渉に当たるという意思を表明されておるわけですが、その交渉をされるときには、一定の方針なしに交渉することはできないわけであります。一定の政治的な決断なしに、いままでのままであっては交渉できないわけであります。全体としてどうかなるであろうという淡い希望で何とかたどりつこうということは、いままでの世界各国の中国との交渉経過を見てみましても、これはできないわけであります。そこで、やはり何といっても日華平和条約をやめるという、そういう腹がまえで交渉に入るということが第一であって、よく出口論といわれますが、すなわち日中国交回復後に、台湾との関係についてはいろいろな手続上の問題もあるし、借款その他の残務整理もあるかもしれないが、こういう議論は別にいたしまして、これはいろいろな問題があるでしょう。出口論といわれておりますが、そういう問題は技術的な問題でありますから、原則をぴしっと確立するような政治的な決断が要求をされておるのでありますが、この問題に対しまして佐藤総理から具体的な所信の表明を聞き得なかったことについてはまことに遺憾であると思いますが、あらためて佐藤総理のお考えをお伺いいたします。
  300. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これから日中国交正常化、これに全力をあげて努力してまいります。このことははっきり申し上げます。その基本的な立場に立つときに、一体どういう点があるのか。ただいま言われるように、中国は一つだ、これはもちろん、そういう立場でなければ中華人民共和国と国交の正常化もはかれないことも、これも承知しております。また、同時に、過日公明党の渡部一郎君から指摘されましたように、私どもはやはり隣同士だ、そういうところで共存という立場に立ちたい、二度と侵略するとかいうようなことがあってはならない、かように思いますので、共存の関係に立つ。そうして、過去の戦争に対しての反省、これは同時に反省あるいは謝罪といわれてもけっこうでありますが、その深い反省に立って、今後平和的な関係を結ぼう、こういうことでございます。これが基本的な態度であろうと思います。  私は、そのときに、台湾との関係はただ技術上の問題だ、こう言われますが、さような簡単なものではないと思います。私どもは、戦後二十六年間台湾といろいろの交渉を持ってまいりました。その中には、画期的な日華平和条約を締結した、そういうこともございます。何年になりますか、二十四年になりますか、二十五年になりますか、そういうような関係にある。それが今日まで続いてきておりますので、そういう問題は、ただ単なる技術上の問題だと、そういうようにはいえない問題であります。これはおそらく、出口であろうが、入り口であろうが、そう簡単に処理されるべき問題ではないと思います。お互いにその立場に立って、お互いの立場を十分説明し合って、そうして解決すべき問題ではないだろうかと思います。私は、日華平和条約――日本は、権利もあるが、同時に国際的な義務がある。国府の存在する限り、その国際的義務を簡単に弊履のごとく捨てるというわけにはいかないと思います。これから中華人民共和国と国交の正常化をはかる場合に、一体こういう問題についていかに取り扱うべきか、これは十分中国側の御意見も伺いたい、かように思いますが、いずれにいたしましても、ただいま台湾の問題は簡単な問題ではないということ。深い歴史的な意義のある問題だ。しかも冒頭に申しました中国は一つだ、こういう観点に立って解決のできるような方法があるかないか、そこらの問題を十分話し合わなければならぬと思います。中国自身といたしましても、内政にお互いに干渉をしないこと、また同時に相互の立場を尊重するということは、これはもうバンドン会議等においてもすでに申しておることであります。私は、今日まで中国がいろいろの場合に、五原則あるいは四原則その他のもの、あるいは日中議員連盟の諸君が出かけた際の四原則、あるいはまた公明党の出かけられたときの原則なども詳細に目を通しております。私は、そういうような点が、やはり今後国交を正常化する場合にこれがもちろん参考になる問題だ、かように思いますけれども、いずれにいたしましても今日、国際世論が中華人民共和国を国連に迎えよう、安保理の常任理事国の議席も与えよう、それを占めてくださいという勧告をする、そういう事態になっておるのですから、その立場に立って国交正常化をはかる、これは隣国である日本として当然とるべき処置だ、かように思います。
  301. 大原亨

    ○大原委員 同じことをぐるぐる言っておりますが、佐藤総理、中華人民共和国が成立いたしましたのは一九四九年です。いわゆる日華平和条約が締結されましたのは五二年でしょう。そのころでしょう。そういうところから今日の問題が起きて、アルバニア決議案で国連総会、国際舞台において決着がついたわけです。そこで日本はどう決断するかという問題について、私は筋を追って質問をいたしたわけであります。  この国会の審議中、外務大臣を含めて総理大臣は、現状を急激に変えることはアジアの緊張を激化するという答弁もありました。また、国際信義という点において蒋介石政権を頭に置いた考え方もありました。しかし、不自然な現状をこのままにしておいて、八億の中国の国民、総理も外務大臣も言われたけれども、非常に非人道的な被害を与えた侵略戦争の被害国である八億の国民、そういう国民との間、中華人民共和国との間において、これを唯一の合法的な政府として国交を回復するということが現状を急速に変えることにはならぬと私は思うし、また国際信義に反することでもない。国際信義というのは個人対個人の関係ではない。やはり八億の、戦争において被害を与えた、そういう国民との関係であると私は思うわけであります。  そういう面においては、佐藤総理のお考えというものは、私のいまの段階における質疑応答を通じましても、やはり決断ができていないということがはっきりいたしました。私は、このような同じような議論を繰り返し巻き返しいままでのようにいたしませんが、しかし佐藤さんのような、政治的な決断をされないということであるならば、中国との関係においては遺憾ながらとびらを開くことはできないのではないか。国際場裏において日本は孤立をするのではないか。そういう意味においては、佐藤内閣は、佐藤総理大臣は、日本の現状において政権を担当する、そういう問題について最終的な決意を私どもが求めることは当然のことではないかと思うわけであります。いかがですか。
  302. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま言われましたとおり、一九四九年、中華人民共和国ができた、日華平和条約を結んだのは一九五二年だ、中華人民共和国ができてから三年後であります。その際に国際的に承認していた国の数は一体どうでありましょう。私は正確には覚えませんが、たしかこの日華平和条約を結んだときには、中華民国を中国の代表として承認している国が四十数カ国、そうして中華人民共和国を中国の代表者として認めた国は当時は二十数カ国であった、かように覚えております。これは概数だけでございます。したがって、私どもは、中華人民共和国を中国の代表者と当時の状況からは判断ができなかった。したがって当時の吉田首相は中華民国と日華平和条約を結んだ、これは歴史的な当時の様相でございます。その後、非常に事態が変化してまいりました。もう昨年になってくれば、中華人民共和国を承認している国のほうが多くなっている。だからこそことしは、私どもも国連に対する態度を変えたわけであります。  そういう歴史的な変化をやはり無視はできない。そういうことに立って現状また今後のあり方を、いかに処していくかをきめるのが政治家の当然の責務だ、私はかように考えるのでありまして、これは別に私は、一つの、大陸の中国また台湾、こういうような政府考えておるわけでもありませんし、中国はどこまでも一つだ、かような観点に立って、いままでの経過を考えながら、いかに処すべきかということを考えただけであります。  そうして私は、とにかくいままでは北京にある中華人民共和国、台湾にある国民政府、その二つが存在していてアジアの平和は維持されておる、そういうものに重大なる変更を加えるということになると、これは緊張を激化するおそれなしとしない、こういうような認識に実は立っておるのでありまして、私は、それらの点をあまり変更しないことのほうが望ましいのではないか、かように思って国連における一案を提案したわけであります。  私は、このことは日本考え方を、信義を貫くし、同時にまた、現状に対して大きな変化を加えないで、そういうことはやはりこれからの経過的な問題として中国の国民同士が話し合われて、そうして解決されるべき筋のものだ、われわれがとやかく言う資格はないのだ、かように実は厳格に解釈しておるわけであります。
  303. 大原亨

    ○大原委員 最後の一点ですが、佐藤総理、七月十五日のニクソン・ショック、第一のニクソン・ショックですが、それ以来、国連の総会のアルバニア案の絶対多数の議決、これは私は佐藤内閣、佐藤総理、日本の民族にとっても一つのチャンスであると思うのです。ここでどういう決断をするかというのが私は政治であると思うのです。そういうたてまえで私は議論している。あなたを攻撃するためにやっているのじゃない。アメリカはベトナム戦争で決定的に敗北したわけです。アメリカへ行ってみますと、悪性インフレだし、失業者も多いし、国際収支は逆調になっている。それが第二のニクソン・ショックになってきておるわけです。そこで、行き詰まったからニクソンは政策転換を総選挙を前にいたしまして考えたわけです。それは、一面は交渉である、平和共存の方向である、一面は対決である。私は詳しくは言わないけれども、日本が、いま佐藤内閣が果たそうとしていることは、ニクソンのそういう二面外交、二正面外交といってもよろしい、二正面外交の、つまりニクソン・ドクトリン肩がわりの政策――きょうの新聞を見てみますと、対外援助を打ち切ると言っているから、日本にいろんな要求があるでしょう。上院で提案が否決されて、二十九億ドルに対外援助が削減になっておりますが、その対決の面、力の政策の面、その面のお先棒を日本がかつぐことになる。それは共同声明であり、あるいは沖繩返還協定であるという点をわれわれは議論をいたしました。  こういう直接中国との関係、世界情勢の大きな激変期において、そういう情勢を正しくつかみながら、アメリカ一辺倒の政策は、もうだれが考えても是は是とし、非は非とできるような自主外交に転換すべきです。だから、そういう転換を求めるにふさわしいいまの情勢の中において、単なる受け身の立場ではなしに、積極的に日本の外交、内政を切りかえていく、こういう私は、言うなればチャンスではないかと思うわけです。そのときにおける、末梢的な法律議論ではなしに、政治的な決断を佐藤総理がどうするのか、こういうことを国民はひとしく佐藤総理に求めていると私は思うのです。あなたと七年間論争いたしてまいりましたが、あなたは重要な政治課題について何を決断されましたか。共同提案国になったのがただ一つである、あとにも先にも一つだということでありますが、物価でも公害でも、たくさんあるでしょう、内政、外交、これから申しますが、その決断をあなたがこの論争を通じて国民の前で示すことが、私は、国民がひとしく党派を越えて希望していることではないかと思うわけです。最後に、この情勢に対するあなたの見解をお聞きいたしたいと思います。
  304. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどお答えいたしましたように、まあ、できるだけ早く日中の国交正常化をはかるべきだ、かように私は思います。そうして、幾多の懸案事項がございますから、それらを解決することが最も望ましいことだ、かように考えております。政府もさような意味におきまして努力をいたしますから、野党の諸君も、どうか政府を御鞭撻賜わりますようお願いしておきます。
  305. 大原亨

    ○大原委員 次に質問を進めてまいりますが、今回の補正予算におきまして、最初に議事進行の形で私が発言をいたしました、そうして各予算委員から繰り返し巻き返し議論がありました赤字公債発行関係をいたしまして、本予算案公債発行の措置が、財政法四条一項の法文の趣旨から重大な疑義があるという点であります。この議論は、私は同じような形で繰り返し巻き返しやりませんが、私どもが申し上げておりますのは、当初予算で四千三百億円の公債発行いたしました。もちろん予算総則の中に公共事業費範囲がありますが、七千九百億円、今度は補正公債発行するわけです。しかし、この中で、これが使われる中で、建設公債、四条公債といわれておる部面は二千五百四十四億円であります。これは出資金貸し付け金を含むのであります。それとは逆に、当初の税収の見積もりが間違っておったから、情勢の変化と不況、不景気は昨年からあったのですから、その租税収入の落ち込みがあり、かつ減税という、そういう収入減がございまして、それを合計いたしますると五千六百二十二億円です。これは収入欠陥を補う赤字公債であることははっきりしておるじゃないか。それから、これは財政法四条の原則が示すところであり、ただし書きは例外ですから、これをきびしく解釈すべきであるということであります。  もう一つは、私が議事録をたどってみますと、あなたが昭和四十三年に大蔵大臣をしておられたそのときには、いまはなくなられた、参議院に当選されてなくなったけれども、村上前々主計局長は――あなたも、そのとき施政方針演説の中で総合予算主義をとります。これは当然のことですよ。当初予算で十分収入、支出をはかって予算を組んでいく、補正なし予算を組みます、そのことによって圧力団体その他による放漫財政をチェックをしながら、悪性インフレを阻止をしていく、健全財政を保っていく、公債発行するけれども健全財政を保っていく。当初予算できちっとやっておいて、途中でニクソン・ショックその他が今回はあったわけですが、その場合は別ですが、その場合には当然の措置をとるということを前提として、総合予算主義をあなたは言っておるのですよ。議事録もあります。質疑応答もありますよ。君子は豹変するというけれども、あなたのいままでの答弁を聞いておると首尾一貫しない。昭和四十年当時の福田大蔵大臣の御答弁を見てみましても、水田さんのいまの答弁とはまるで違う。四条一項の解釈が違うのです。こういうことは、同じ佐藤内閣のもとにあって、私は国会としては許すことはできない。一体これについて、最終的にいまの段階において政府はどのような見解を持つか、はっきりしてもらいたい。
  306. 水田三喜男

    水田国務大臣 御承知のように、今回の補正予算における公債の追加発行につきまして、財政法第四条一項の解釈をめぐって、財政運用の問題について疑義が出されました。これは委員の各位から、この問題がこの予算委員会で出されたわけでございますが、これに対しまして、私は政府の解釈、政府の意見を終始一貫して答弁してまいりました。私は政府の解釈があくまで正しいというふうに思っておりますが、しかし、この問題は決して軽い問題、小さい問題ではないと存じます。  と申しますのは、地方財政におきましても、地方税の歳入欠陥があったときには、地方財政法の第五条、ちょうどこの財政法四条に匹敵する同じような財政法が地方財政にもございますので、歳入欠陥があるときには、従来地方公共債をこの条文によって発行して今日に来た。運用は全く中央の運用と同じにやってきたいきさつもございますので、ここに疑義が生ずるということになりますと、将来地方財政の運用についてもやはり疑義が残るということになりますので、これは将来のためにこの辺でやはり問題をはっきりさせておくことが必要だと私は考えますので、そうしますというと、私はいままで政府の解釈を一方的に主張してきましたが、この際、政府の解釈だけを主張するのでなくて、やはり第三者の機関、たとえば財政制度審議会の中に専門家がたくさんおられますので、この専門部会に諮問して研究してもらうというような措置をとりまして、ここの結論を得て、この委員会においてはっきりした結論を了承していただくということが、やはり将来の財政運用に問題を残さない処置だと思いますので、そういう取り扱いに私はしたいと存じます。
  307. 大原亨

    ○大原委員 大蔵大臣から、最終的にはやや具体的な提案を含めての見解の表明があったわけです。そのことはこういうふうに理解してよろしいですか。  私どもは、昭和四十年の補正において初めて国債を発行いたしましてからの議論を通じて、政府の見解なり私どもの主張を明らかにしました。私どもは、今日の時点において、民間設備主導型の日本経済を、社会福祉、社会開発のおくれている日本において、国民優先の原則に従って財政主導型に切りかえていこう、こういうときには、健全な条件のもとにおける公債については前向きで考えていくべきであると思う。しかしながら、このことは、公債発行において当初予算で、たとえば圧力団体等に押されて、税金収入を高く見積もっておる、途中で足りなくなったから赤字公債発行する、こういうような節度のないやり方等を繰り返さない、そういう歯どめが必要である。ですから、悪性インフレを阻止する土地問題や軍事予算に流れていかない、こういう問題等を議論をしてまいりましたが、そういう問題を含めて、私は、今日以後のその公債政策について、政府は国会の議論を踏まえてそこにおいて審議をし、結論を出すという御答弁と解釈してよろしいか。
  308. 水田三喜男

    水田国務大臣 戦前の財政の運用を見ましても、やはり使途を指定しない公債というものも、許された範囲内の公共事業債を出して、なおかつ歳入不足というときに初めて歳入補てん公債、いわゆる赤字公債というものを出すというふうに、戦前もこういう運用をされておりましたので、今度政府がとったようなことは、やはり先ほど申しましたように、財政法の解釈としていいんだと私自身は思っておりますが、しかし、問題は、疑義がいやしくも出されておりますものをこのままあとへ残すということは、やはり将来の財政運営に大きい問題を残すことになりますので、この際、やはりこれは専門機関に研究してもらってここで結論を出すということは将来のためにいいことだと思いますので、そういう意味で政府の主張することばかりをしないで、そういう措置をとりたいというふうに考えているわけでございます。   〔長谷川(四)委員長代理退席、委員長着席〕
  309. 大原亨

    ○大原委員 この問題に関係をいたしまして、いま本委員会において議論になった問題があります。それは当初予算における審議の際に、田中武夫委員が問題を出された問題ですが、第二の予算といわれておる財政投融資の問題です。政府予算編成の過程の中で、本予算においてはみ出たものを、財政投融資の形で利子補給等を加えましてやってきた例がしばしばあります。ですから、これは、財政投融資の原資というものは郵便貯金であり、国民年金や厚生年金の保険料であり、これはすべて庶民大衆の金であります。したがって、この財政投融資を単に国会に報告するだけではなしに、この問題は当然に審議の対象とするような財政投融資の国会に対する承認案件といたしましてこれは取り扱う、このことが必要である、こういう点を私どもは主張いたしてまいりました。この問題も、いまの段階においてどういう考え方を持っておられるか、来年度予算を一体どうするか、あるいはこの問題を含めて政府も、この問題を今日までの立場にこだわらないでやってもらいたい。どういうふうな措置をとられるか、私は御見解をお聞きいたしたいと存じます。
  310. 水田三喜男

    水田国務大臣 この問題は、御承知のように前のこの委員会に出された問題で、その処理としましては、当委員会にも特別委員会をつくってこの研究をする、同時に、政府も検討すべしということになっておりましたので、その後政府側は法制部会にかけてきょうで三度、この問題の審議をいたしております。で、これはもう御承知のとおり、財投と申しましても産投、運用部、それから簡保、政保債、幾つかのものを取りまとめてあるものでございますので、その中には、たとえば政保債とか産投というようなものはすでに国会のこれは議決をしておるものでございますし、また特別会計とかあるいは政府機関会計にこの金を使う場合には、それぞれ予算審議のときに国会の議決を得る問題でございますので、すでに国会の議決を得る問題をたくさんこの財投計画の中には含んでおる各機関に対して、統一的に、効率的に資金を運用するというために、この計画をわかるようにあそこに作成して表示してあるという性質のものでございますので、これがそのまま国会の議決を要するということになりますと二重議決の問題がたくさんございますので、そこらをどうするかというようなこともいま掘り下げて法制部会が研究しておって、近く一応の意見を出してくるということになっておりますので、この意見を待ってこの委員会でまた御審議を願いたい、こういうふうに考えています。なるたけ早く結論を出したいと思います。
  311. 大原亨

    ○大原委員 いままでの議論の中で、内政においては民間設備の主導型、高度成長型のそういう経済政策から、社会開発、社会保障等を重視するような国民生活優先の財政主導型の財政に切りかえていくのだということを、総理大臣の演説その他においてもその意味のことがしばしば述べられたわけであります。しかし、これは佐藤内閣が昭和三十九年にできましたときに、社会開発、人間尊重、物価の安定ということを言われたときと同じような結果になってはならぬわけです。  そこで、私は、財政投融資の問題について議論をいたしますにおいて、二つの点について問題を提起いたしたいと思う。  その一つは、国民年金や厚生年金や郵便貯金や簡保の金、こういう庶民大衆の金を資金運用部その他を通じまして吸い上げて、財政投融資として大蔵省が一元的に利用いたしておりますが、この資金の流れを変えていくということを考える必要があるのではないか。それは、民間設備投資のほうへかなりのウエートを占めて回っている開発銀行、回り回っている輸出入銀行あるいは北海道開発金融公庫やあるいは農林漁業金融公庫の肥料その他に対する問題、そういう流れを変えて、零細な皆さんの金ですから、厚生年金でも国民年金等でも――厚生年金等は理論的には賃金の先払いですから、ですからこういう問題を頭を切りかえて、その流れを変えて、福祉的なあるいは社会保障的な面に、住宅やその他生活関連投資に向け直すというふうな考え方を持つことはできないか、いままでの頭を切りかえることはできないか。  もう一つの提案は、国民年金と厚生年金の積み立て金が六兆円あるわけです。いまの日本の年金のシステムによりますと、保険主義であるから自分が保険金をかけて、そうして一定の年数の後に、六十歳、六十五歳になったらもらうようになっておるわけです。その期間中には、どんどん利子の計算分を上回って物価が上昇して、貨幣価値が下落をしているわけです。そうしてそれが、積み立て金のときには大きな企業のほうへどんどん流れていくということです。それでは二重にも三重にもしぼり上げることになるわけです。ですから、先進諸国は、いま日本で必要な老人対策その他で日本よりも非常にすぐれた水準の高い政策をやっておるわけですが、たとえば国民年金、厚生年金の六兆円の積み立て金を活用する方法として、いままでの積み立て方式を、現在元気で働いておる人が年寄りを守っていく、生活を守っていく、身体障害者、母子家庭を守る、こういうふうな賦課方式に切りかえていく。そのことが、結果として六兆円の積み立て金がくずれていくことになる。そういうふうな構想を変えながら、十年間なら十年間に、社会保障の中で一番おくれている老人年金や年金の水準を上げていくということが大きな政治課題ですし、また購買力をつけるゆえんでもあるわけですから、そういう老人対策としても年金の水準を引き上げる、社会保障の水準を引き上げるという点からも頭の切りかえを行なって、賦課方式に逐次切りかえていくような方式で、福祉年金であるならば一万円、七十歳を六十五歳に下げる、そして拠出制の年金でも掛け金をかけて十年、二十年後もらえるのではなしに、いますぐもらえるようなシステムにして、そうして少なくとも夫婦で三万円、厚生年金であれば二万円、こういうふうな最低を保障しながら、年次計画で五万円、六万円と引き上げていくような、そういう政策を立てる、頭を切りかえる、こういう財政投融資の見直し方というものは、私は当然世界各国がやっている方向からいってあるのではないか。そういう点を、頭をうんと切りかえなければ、いままでのGNPからNNWを中心とする、そういう政治に移行することはできぬのではないか。二つの点を私は意見として提示いたしますが、財政投融資のやり方について洗い直す、こういう考え方はあるかないかをお聞きをいたします。
  312. 水田三喜男

    水田国務大臣 ひとつ、これは十分私どもにも検討させていただきたいと存じます。
  313. 大原亨

    ○大原委員 厚生大臣から……。
  314. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 大蔵大臣も十分検討するという御答弁でございますから、私のほうも十分検討をいたしたいと存じます。  ただ、ただいまの賦課方式ということになりますと、これからのいわゆる老齢年金をもらう数と、生産に従事する数とが今後相当変わってまいりますので、したがって、人数が今後非常に変わってくる、日本の人口の老齢化によって。したがって、将来は少ない生産人口でたくさんの老齢人口を養わなければならないということになって、その間に生産人口の人たちの負う負担が将来非常に多くなるし、現在と比べると非常に不公平になるという点を考慮しなければならない、かように思いまするし、同時に、日本の年金制度は非常にいま成長の最中でありますから、この点はよほど考えないとむずかしいのではなかろうか、かように思います。
  315. 大原亨

    ○大原委員 厚生大臣は全然わかってないのです。大蔵大臣とかわったらどうですか、あなた。厚生大臣、もしこの問題についてあなたが否定するのであるならば、六兆円もたまっている年金の積み立て金、これは物価の値上がりでだんだん少なくなっているのですよ。ですから、二十年、三十年後にもらうという者は貨幣価値が下落をしていて、その期間中に財投を通じまして大きな企業に流れていくわけですよ。あるいは各方面に流れていくわけですよ。ですから、もしそれができなければ、完全な賃金の上昇、所得水準の上昇、物価の上昇に対するスライド制をとる、年金の積み立て金は完全に住宅その他国民に還元する、こういう政策をとりながら漸次切りかえていきますというふうな答弁を、私が厚生大臣であるならばする。あまり私は見識がない話じゃないかと思うわけですけれども、いまこそチャンスなんだ。ピンチはチャンスだというけれども、チャンスなんだ、そういうことは。そのことについて抱負がないような者が何で厚生大臣できますか。いかがですか。
  316. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 いま大蔵大臣もよく検討するとおっしゃいましたから、私は大蔵大臣が一番むずかしいと思っておったのでありますが、しかしながら検討するとおっしゃいましたので、私のほうもさらに検討いたしますけれども、そういう問題もあるということを考慮をいたさなければなりませんので、それを考慮の上で、いまおっしゃいましたような方向に、どの程度ずつ進んでいったらいいかという点を考えなければなるまい、かように申し上げているわけです。
  317. 大原亨

    ○大原委員 後に議論をいたしますが、佐藤総理、佐藤内閣ができましてから、昭和四十二年以来、四十四年、四十六年と医療保険の赤字ばかりを厚生省は突っつき回しているから頭がぼけている。だめなんです。それはあなたの政治的な決断の問題です。社会開発、人間尊重を言われながら、今日まで何をしてきましたか。その問題です。いままでのお話をお聞きになりながら、大蔵大臣の答弁もありましたけれども、私が申し上げましたことについての総理大臣の御所見を簡単に伺わしていただきたい。
  318. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 簡単に申せば、大蔵大臣の答えたように十分検討いたします。  ただ私は、たいへん重大なる御提案でございますから、ただいまこの場ですぐ返事を求められると、厚生大臣が先ほどのように慎重なお答えをすることも、これまた御了承いただきたいと思います。御提案は二つ、そのいずれもがまことに重大でございますから、そう簡単に結論の出る問題ではない。相当時間をかしていただいて、私どもに検討さしていただくようお願いいたします。
  319. 大原亨

    ○大原委員 いままで長い間議論いたしまして、実りのない答弁ですが、まあ検討するということですから、大蔵大臣の画期的な言明もありましたので、議事を進めます。  その次の問題は、やはり生活優先の財政主導型の福祉経済、こういう議論を今日までいたしてまいりましたが、その一つは、何といっても公害問題です。公害問題につきましては、本予算委員会におきましては、先般九月に、瀬戸山委員長、前に建設大臣をされておりまして、非常にまじめな方でありますが、団長といたしまして、九人も一緒に委員が瀬戸内海の公害についての広域調査をいたしました。その報告を総理大臣はお聞きになりまして、総理大臣はこれについて大石環境庁長官に御指示になったと思います。これに対しまして、田中通産大臣が横やりを入れられたやに――いま頭を振っておられますが、そういうこと等があるわけですが、しかしいずれにいたしましても、国会の機能といたしまして、公害というものは行政、政治の一部現象ではないわけですから、全体のトータルの結論ですから、物価と同じですから、私どもが現状を調査しながら、ばらばらな行政について一定の規制を加えていく、こういうことは本院の仕事といたしましてきわめて重要な機能であると思う。そういう面において調査の報告を申し上げたわけでありますが、これを受けられて、佐藤総理はどのような御感想をお持ちになりましたか。どのようなことをされましたか。
  320. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私も、大原君と同じように瀬戸内海沿岸の住民でございます。したがいまして、予算委員会の皆さん方が現地をみずからごらん願ったということは、非常に厚くお礼を申し上げたいような気持ちでございます。ことに、内海はあの狭い海峡でございますから、水島付近の水になりますと、おそらくこれはなかなかわからないんだろうと思います。これが、ただいまのように右に行き左に行きしているだけで、干満によって入れかわるということはなかなか困難である、かように思います。そういう点から見まして、いままでもこの瀬戸内海沿岸の工業地帯について、立地条件がよろしいからというだけで野方図に工業発展すると、これはたいへんな事態が起こるだろうというふうに思って心配していたのでありますが、皆さん方もすでにお出かけになってつぶさにごらんになった、こういうことでございますから、私は、環境庁としてこの問題をさっそく取り上げろ、こういうことを実は下命いたしました。ただ単に汚水処理というような簡単なものではなくて、これはやっぱりこの瀬戸内の沿岸各都市の工業、これと併存できるような、そうして公害のないような静かなきれいな海にしたいと、かように思いまして、これと取り組む決意でございます。しかし、相当もう今日荒らされておりますから、これを取り戻すということは容易ではないと思います。しかし、時期がおくれているからといって、これを手をこまねいているわけにはいかない、かように思いますので、精出して各方面の意見も徴して、そうして結論を得たい、かように思っております。
  321. 大原亨

    ○大原委員 環境庁長官がそれ以後おとりになりました措置、現在の段階におけるお考え、これをお答えいただきたいと思います。
  322. 大石武一

    ○大石国務大臣 先日、ただいま総理からお話がございましたように、瀬戸内海は何と申しましても日本の代表的な景観であり、中心でございます。これをやはり日本の国にふさわしいようなすばらしい環境にすることが、日本の大事な一つの基本政策と思います。そのような総理の御方針によりましてこの私に、それをそのようなすばらしい環境にするようにとの御下命がございましたので、その意を体しまして、目下一生懸命努力いたしております。その最初の手始いとして、まず瀬戸内海環境保全対策推進会議というものをつくりまして、私がその長となりまして最高責任を負いまして、懸命の努力をいたす決意でございます。  御承知のように、現在の公害行政、ことにその対策面というものは、ほとんど各地方自治体が中心となって権限を持ってやっております。しかし、御承知のように、あの地域は十一の府県にまたがっている地域でございまして、いままでのような府県単位の行政であっては、とうていこれをりっぱにつくり上げることができません。そこで、やはり総合的な強力な対策が必要でございます。そういう意味で、関係ある各省から代表者を選びましてこの推進会議を開きまして、そうしてその根本的な対策を立て、そしてまた強力な実行をすることにいたしております。われわれの考えておりますことは、この十一の府県が集まりまして一つの新しい行政機構をつくりまして、新しい、いままでにないような考え方によりまして、これを強力な総合施策ができるような、そのような行政機構を考え出しまして、それを中心としてわれわれは、これから考え出しますいろいろな原因の究明、対策というものを強力に推進してまいりたいと思います。その第一回の対策は、去る二十八日に開催いたしまして、四つの部門をつくりまして、一つは赤潮の問題でございます。もう一つはその対策の問題でございます。公害防止の対策でございます。もう一つは自然保護の問題、もう一つは長期的なプロジェクト、この四つの部門に分けまして、それぞれ鋭意検討するようなことにいたしておるわけでございます。
  323. 大原亨

    ○大原委員 瀬戸内海の汚染は、その特徴的なのは赤潮といわれておるのであります。赤潮は窒素、燐酸を中心とした、富栄養化というふうに一応いわれておりますが、これは陸上でいうならばオキシダント、光化学スモッグと同じようなものであります。当初はプランクトンが異常発生いたしまして、それが酸素を吸入して魚を窒息させる、あるいはえらについて窒息させる、そういう現象ですが、汚染が進んでまいりますと、いまでもタイとかチヌとか、あるいはヒラメとか、あるいはクルマエビとか、あるいは養殖漁業の中におきましてはハマチ、そういう大きい高級魚がどんどん死んでいっておるわけであります。少なくなっておる。このままで進めていくならば、五年後にはほとんどいなくなるのではないか。それがさらに進むならば、中級魚に至るまでいなくなるのではないか。カキとかあるいはノリ等も根絶するのではないかといわれておる。死の海になるといわれておるのであります。  それで、いまのような体制でやるという決意は一法でありますが、しかし、私が指摘するようなことが、二、三指摘をいたしますが、これがはたしてできるのかどうか。私は、環境庁長官、かなり熱心にやっておられますし、現地を見ておられますから、指摘をいたしまして御意見を聞きたいのであります。  これは通産大臣の所管にもなりますが、瀬戸内海の工業出荷量は昭和四十三年で十八兆円ですが、これはこのままでふえてまいりますと、昭和六十年では五十八兆円になるのです。新産都や工特やその他ずっと新全総の方針に従ってやってまいりますと、五十八兆円になるのです。そういう生産高がふえてまいるに従って、人間と工場が臨海工業地帯に集まってまいりますから、工場排水、家庭排水の流出による汚染付加量、BODであらわしますが、これは四十四年で一日に二千五百トンですが、六十年には一日に一万二千トンになるわけです。一日二千五百トンが一日一万二千トンになるわけです。ですから、いまのままで工場配置や新全総の計画をそのまま進めてまいりますと、これは事実上にっちもさっちもいかないのです。ですから、そういう点について環境庁がチェックする機能があるかどうかという問題。これは土地利用にも関係いたします。工場配置にも関係いたします。こういう問題についてチェックする能力があるかどうかという問題でありますが、これは通産大臣は、そういう面においては、ブレーキをかけるのでなしに、理解をされて、側面的に積極的に協力されることが必要です。あなたのことが新聞にも出ておりましたから、この機会にひとつあなたの御答弁をいただきます。
  324. 田中角榮

    田中国務大臣 瀬戸内海の海水汚染が非常に重要な段階に入っておりますことは、私も承知をいたしておりますし、また、総理大臣からも指示を受けております。これが対策の樹立が困難な仕事ではございますが、全力をあげて取り組まなければならない問題であることも言うをまちません。いろいろな原因はございますが、工場排水というものが海水汚染の重要な大きなもとであるということは、もういなみがたいことでございます。そういう意味で、工場の配置、立地の問題等、十分取り組んでいかなければ、目先の汚染をとめることはできても、長い時間からいうと、過度集中による瀬戸内海全体の汚染が避けがたくなるということでございますので、いま中国工業技術試験所におきまして瀬戸内海の全部の模型をつくっておりまして、どの程度の状態になるのかということを、こまかく専門的なデータを出すようにということをいまやっておるわけでございます。それだけではなく、いま御指摘になりましたように、いまの工業生産力を基盤にいたしまして、年率一〇%といえば十五年間に四倍になるわけでございますから、十八兆円が五十数兆円よりももっと大きくなるかもわかりません。大きくなっても小さくはならない。もちろん、関東や阪神地区や水島地区等を中心にして考えますと、日本の全平均伸び率よりも高い伸び率を示すわけでございますから、東京湾や大阪湾や瀬戸内海が考えられる数値よりももっと汚染がひどくなる、こう見べきでございます。  そういう意味で、通産省では新しく産業立地政策を根本的にいま検討いたしております。そして国民総生産の長期的な展望と産業立地の青写真をかきながら、その中で東京湾それから東海道地方、山陽地方、また瀬戸内海等重点的に検討を進めておりますので、四十七年度予算編成までにはこういうものに対する一つのめど、通産省としての考え方だけはまとめたい、こういうことでございます。
  325. 大原亨

    ○大原委員 新全総は経済企画庁の所管でありますが、これはあとでまとめてお聞きいたします。  厚生大臣か環境庁長官ですが、採尿の投棄ですが、瀬戸内海に採尿の投棄をいたしておる。その投棄量については数字があるわけですが、昭和五十年までに採尿投棄を禁止をする措置をとるというのですが、これはできますか。
  326. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 五十年までには必ず海洋投棄をしないで済むように施策をいたしたい、かように思います。
  327. 大原亨

    ○大原委員 なまの屎尿を投棄しなければならない、その屎尿はどこへ持っていきますか。
  328. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 下水と終末処理で片づけたいと思います。
  329. 大原亨

    ○大原委員 現在屎尿の投棄量が、昭和四十五年三月末調べですが、厚生省の資料ですが、一日に三千六キロリットルであります。しかし、現在進められておりまする陸上の施設の進捗状況を調べてみますと、昭和四十四年度が一日について三百九十三キロリットル、昭和四十七年になりましても千七百二十八キロリットルであります。投棄をするほうはどんどんふえてまいります。いまの整備計画を五カ年計画で見てみましても、千七百二十八キロリットルしかないわけであります。ですからこれは、厚生大臣はもう一年もしないうちにかわられますけれども、この計画は、あなたがいま答弁されただけでは解決しないわけです。これは非常に大きな問題です。こういうふうな公共下水道や陸上の終末処理その他について思い切った投資をやるということをやらなければ、瀬戸内海の海中投棄を防ぐことはできないのです、大蔵大臣。瀬戸内海に入っておる水は黒潮ですから、流れているのですから、豊後水道から入ってくるし、紀伊水道から入ってくるわけです。両方から入ってきまして、中でがあっとやっているから、一巡するまでは二十年とか六十年説が出ておるわけです。池みたいなものであります。ですからヘドロは蓄積するし、どんどん出てくるし、そうして屎尿は投棄されるし、実際には整備計画は言うだけであって実行できてないでしょう。一体だれが決断をして、どういう計画を立てて解決するのですか。どうしたらいいと環境庁長官は思われますか。
  330. 大石武一

    ○大石国務大臣 先ほど申しましたように、瀬戸内海の環境保全対策推進会議を今回新たに設置をいたしました。これがその対策の中心となりまして、各省庁と十分な協調のもとにあらゆる努力をして、そのような目的に向かって推進してまいりたいと思います。そのような覚悟で努力いたしてまいります。
  331. 大原亨

    ○大原委員 この公害問題というのは、私は地域の問題を取り上げたわけですが、公害は具体的なんです。瀬戸内海の公害防止ができなかったら、東京湾もきれいにならぬわけです。琵琶湖もそうです。あるいは大気の問題だって、全部連なっているわけですから、そうなんです。だから、具体的な問題を調査した報告に基づいて私は所見を申し上げ、質問をいたしておるわけです。しかし、遺憾ながら、保全対策推進会議を設けられてやられたことはいいことだけれども、大臣の指示でやられたのだけれども、しかし、いまのようなことであったのではこれは推進しないわけです。公害の法律がたくさん出てまいりましたが、これを中心的にしても、人間優先、公害優先で実行することはできないのです。あなたは一生懸命やっておられる。このたくさんおられる大臣の中では一番一生懸命やっておられる。であるけれども、これができる保証はないわけであります。そこは総理大臣のイニシアチブの問題だと私は思う。あるいは環境庁のいまの機構の問題です。これはドイツにおいてもイギリスにおいても、非常に苦労いたしておるわけです。企業責任を明確にすると一緒に公害行政を一元化する。たとえば、公共下水道などは環境庁が持っておって、それを計画どおり優先的にやるというふうなことがないと、全体の行政のばらばら行政を一元化することはできない。  もう一つは、田中通産大臣が言われましたが、広島県の広に工業技術試験所ができて、瀬戸内海の模型をつくって、水流研究や汚染の研究をやるという。いいことです。農林省の水産庁には南西海区水産研究所があって、ベテランがおります。しかしながら、各県の衛生研究所や工業試験所その他を含めまして、それぞれの研究機関はあるけれども、総理大臣、機能的にも組織的にも一元化していないわけです。いい意見がでましても行政に反映しない。研究の結果がびしっと行政に反映するようなシステムで日本はないわけです。ですから、公害問題は永遠の問題です。佐藤内閣は瞬間的な問題です。だからこの問題が解決しないのです。佐藤総理のそういう点における決断が必要です。政治的決断。総理大臣は何と何と何をやったらいいかということです。外交では日中問題、内政ではどういう問題、そういう点について佐藤総理が、政策の佐藤榮作として決断されることが必要なんであります。そういう決断がなかったのではないか。いまの議論を通じて、私は問題点の所在を明確にして、決意を示してもらいたいと思います。いかがですか、佐藤総理。(発言する者あり)
  332. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お静かに願っておきますが、ただいま言われるように、公害問題は、それぞれの役所にみんなまたがっております。しかも、中央政府から地方自治体まで、その関係するもの、たいへん多岐多様でございます。しかも、それを一元的にやらなければならないというところに問題があるのであります。私は、いかにむずかしい問題でも、最近のものの考え方、これはもうすっかり変わっておりますから、新しい構想、発想の転換によりましてただいまの点に集中すれば、公害と取り組めば、必ず、困難な事柄ではありますが、これを克服することができると、かように思っております。幸いにして大石君、なかなか熱心ないい環境庁長官を得ましたから、十分皆さんの御鞭撻をいただきまして、そうして要請にこたえたいと、かように思っております。
  333. 大原亨

    ○大原委員 大石さんは一生懸命やっておられますが、個人の力には限界があるわけです。足を引っぱるやつもおるし、いろいろむずかしいもんです。それは縦割りで、通産省も農林省も何もそれぞれ企業べったりなんだから、官僚も政治家もべったりなんだから、そうすると、公害を選ぶか企業成長を選ぶかということになると、こっちのほうが金を持っているから強いというわけです。それをコントロールするのが公害行政です。  公害行政の一元化と研究の一元化だけれども、もう一つ大切な点は、公害の問題に対して、立法、行政、司法を通じて、被害者の住民の意思が貫徹できるというふうな保証が必要なわけです。これが無過失賠償責任の問題であります。この問題についてこまかな議論はいたしませんが、佐藤総理からお聞きしたい。次の国会においては、この懸案の問題については解決するという決意で閣内をまとめて、りっぱな案をおつくりになりますか。
  334. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 無過失賠償責任制度の確立については、先ほどもこの席から大石環境庁長官お答えしたとおりであります。政府は、次の通常国会に提案する予定でございますから、どうかよろしくお願いいたします。  なお、私が先ほど申しましたのは、各省にまたがるばかりではございません。中央官庁、地方自治体、それらにもそれぞれがみんな関係しておる。そこにむずかしさがあるが、それを克服していかなければならぬと、こういうことでございますから、どうか誤解のないように……。
  335. 大原亨

    ○大原委員 いまの点はいい点ですが、関係県が十一府県あります。自治体がたくさんありますが、それが企業との間において防止協定を上乗せをする、その際にもばらばらなんですね。これでは全体の水準が引き上がらぬわけです。そういう点についてのイニシアチブ、指導力が必要なわけです。だから、こういう問題等含めて重要な問題があるという点を指摘いたしまして、大石長官はせっかくの絶好の機会ですから、大いにがんばってもらいたいし、大石長官だけではだめだということを指摘をいたしまして、次に移ります。  次は、先ほどから西宮委員等から話がありましたが、国鉄の再建問題です。国鉄は、佐藤さん、あなたは国鉄の大先輩ですが、国鉄の赤字、健康保険の赤字、食管の赤字、この対策は、いまの政策は全部うしろ向きです。これを前向きにどうするかという問題がいまの課題です。国鉄に対しては、公共性の名において国民はたくさんの期待を持っているわけです。その期待にこたえるような国鉄にしてもらわなければならぬと思う。政府はその公共性にふさわしいような財政上の措置やあるいはいろいろな施策をやるべきです。  そこで、私はお伺いいたしたいわけですが、そういうことを前提として、国鉄の再建について佐藤総理は、これはきのう、きょうのしろうとではないわけですから、一体どうお考えになっておるか、お聞きをいたしたいと思います。
  336. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国鉄の再建、これは何と申しましても、企業主体である国鉄自身がまず第一に考えなければならない。これは国鉄の管理者という意味ではございません。もちろん労使双方ともこれと真剣に取り組むということがまず第一に問題であります。  第二の問題――私の話を聞いてください。
  337. 大原亨

    ○大原委員 悪うございました。
  338. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 第二の問題としては、何といいましても国民各界、各層の御理解がなければならぬと思います。私はそういう意味で、御叱正も必要でございますが、やはり理解ある援助も必要だと思います。このことを、私は国鉄出身者であるという立場から、心からお願いをいたしまして、現在取り組んでおる国鉄当局、労使双方の立場について深い理解を持つものでございます。何としてもこの状態は、ある程度の国家的な財政援助も必要でございますけれども、それだけではなく、やはりみずからが立ち上がる、そのためのものが必要ではないだろうか、かように私は思いますので、それらの点についても理解あることをお願いしておきます。
  339. 大原亨

    ○大原委員 鉄道には私鉄もあり、その公共性の問題等も議論になっているわけですが、国鉄は一貫をして公共性でやってきたわけです。ですから、その名にふさわしいような、たとえば道路等はやっているわけですから、措置をとるべきです。  このことはともかくといたしまして話を進めてまいりますが、国鉄総裁、あなたはマル生運動、生産性向上運動でお話しになっているのは、愛される国鉄をつくる、国民から信頼される国鉄をつくるというようなことを言っておられるわけですね、眼目として。それは、そういうことを言う、言わないにかかわらず当然のことであって、たとえば磯崎さんと石田前総裁を比較するわけじゃない。ないけれども、ほんとうに国鉄を愛するという気持ちから出た前の石田さんの行動の中には、私どもも同感の点がたくさんあった。意見は違っても同感の点はたくさんあった。マル生運動を通じてそういうことはかけらもなくなりつつあるのが、いまの職場の現状ではないですか。西宮委員が午前中言われましたが、私は、この考え方、認識の基本から再出発しなければ、ほんとうに皆さん方に対する労働者の信頼や国民からの信頼を取り戻して、安全輸送等、国民の要求にこたえるような輸送を建設することはできないと思うけれども、予算委員会は大きな政治的な議論の場ですから大きな質問をいたしますが、そういう基本的な認識をあなたは改める必要があるのではないか。いかがです。
  340. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 国鉄全般の運営につきまして、たいへん御丁重な御意見を拝聴いたしました。私といたしましては、国鉄法第一条並びに公共企業体等労働関係法第一条に明示されておりますとおり、現在の国鉄の施設を極力発展させて、そしてそれによって国民の福祉を増進し擁護する、こういう点に立って今後再建をするということが私の考え方の原点でございます。
  341. 大原亨

    ○大原委員 昨日の朝、国鉄副総裁は組合側の代表、国労、動労の代表とお会いになって、いろいろな収拾策について提示になっております。それはそれなりの意味があると私は思いますし、努力をされていることは認めます。しかし、公労委が決定を下して、このマル生運動の中に不当労働行為がある、当局は陳謝すべきである、こういうことや、あるいは社会労働委員会等における議論、衆参両院の議論等を通じまして、国会においてもこの問題は大きな議論になってまいりました。政治問題になってまいりました。国民は非常に不安に思っておるわけです。職場において全く前近代的な労使の関係が生まれつつあるということはまことに遺憾です。それは責任を明らかにする必要がある。責任を明らかにしなければならぬ。衆議院社会労働委員会におきましても、山田副総裁は、自分たちが命令したのじゃない、第一線の管理者が誤ったのだということを言われた。第一線の管理者はおこっている。何を言うか、いまになってと、こういうことを言っている。ですから、その問題を含めて、明るい健康な国鉄をつくる面からいえば大マイナスをかけているそういうことについて、仲裁機関の公労委の決定もあったわけですから、その問題について、是は是、非は非として処分をすることは当然である。そういう問題に対する処分については総裁はどういうようにお考えでありますか。
  342. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 社会労働委員会においても申し上げましたが、私は、この運動を進めていくに際しての本社としての指導において欠ける点があったということを率直に申しました。したがいまして、その点について総合的な判断のもとに責任をおのおのとるというふうな形でもって、去る二十三日の処分を決定したわけでございます。
  343. 大原亨

    ○大原委員 率直な職場の感想ですよ。訓告とか厳重処分というのは、日鉄法でいえば処分ではないのです。定期昇給が吹っ飛ぶわけでもないわけです。そういうことを副総裁や真鍋常務理事や幹部についてはやっておるわけですが、しかしいま法廷で大きな議論になっております公労法や公務員法の刑事免責、行政罰からの免責の問題、そういう国際的な水準から考え、ILOの水準から考えて問題になっておるいまの公労法の行き過ぎ、あるいは公務員法の行き過ぎ、そういう問題が議論になっておるし、どんどん判決も出ておるわけですが、そういうときにおいて、労働運動上生じた問題についてはびしびしと処分をする。それだけではなしに、最近のマル生運動の中においては、国労や動労を脱退させる、差別の昇給や昇格や昇職をさせる、こういうことが労働者の団結権を侵害する不当労働行為の形で二万件もあがっているのです。こんなことがあって何で国鉄の再建ができますか。労働者の立場から考えてみても、国民の立場から考えてみても、そういう処分や措置というものは公平でなければならぬ。いかがですか。
  344. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 私が公労委の決定を承諾いたしました今月の十三日の時点でございますが、これは公労委の決定を全面的に納得して受諾したわけでございまして、すでにこれを実施に移しております。そしてそれについての全体的な措置につきましては、本社あるいは管理局、現場において、それぞれ私たちとして考えた適切な措置をとったというふうに思っております。
  345. 大原亨

    ○大原委員 具体的な問題については次から次へと解決すべきだ。たとえば、きのうの新聞を見てみまして、私はかなり本質的な議論がなされているというふうに理解をしたわけですが、総裁から見解を聞きたいのですが、非常にゆがんだ形のいままでの精神運動、それは指導書、教科書、教材というかっこうであらゆる場所においてやられておるし、その注釈に至っては、社会党はけしからぬということまで言っている管理者がいるわけです。これはけさ西宮委員からも指摘された点です。全くの脱線です。ですから、そういう問題、教材等については二カ月間凍結をするというお互いの確認があって出直すということがあったやに聞きますが、今後はこれに対してはどのような措置をおとりになるか、お聞かせをいただきたい。
  346. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 ただいま先生のおっしゃいましたとおり、昨日の朝、いわゆる生産性運動について、それに使っておる教材その他具体的な方法について点検をしたいということで、これはすでに二十三日の時点で私、公にした点でございます。新しい局長の目でもって点検させるということで、それに要する期日約二カ月間、この問題を延期するということをいたしたわけでございます。したがって、現在すでにきょうからその点検を始めておりますが、その点検につきましては、先生のおっしゃったとおり、新しいと申しますか、正常な労使関係の確立、いわば公労法第一条の精神にのっとった新しい意味の労使関係の確立をはかるということを主眼としてやってまいりたいと、こういうふうに思っております。
  347. 大原亨

    ○大原委員 一つの例でありますが、国鉄にはそれぞれ地方に学園があります。そこはいろいろな職場の近代化や転換のために技術教育をいままでずっとやっておったのです。それが最近はマル生運動の一つのオルグを養成する場所に変わっておるということで、大きな問題になりました。ほんとうに国鉄を愛する労働者であるという観点に立って技術教育を一生懸命身につけるならば、そのこと以上に問題を政治的に観念的に取り上げるということは間違いであると私は思う。この学園の教育のあり方について改めてまいりますか。
  348. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 私は、あくまでも国鉄の利用者に対する誠意と国鉄企業自体に対する愛情、この二つが、どの組合に属していようが、国鉄職員としての共通の意識でなければいけない、こういうふうに考えます。したがって、ただいま先生の御質問の、今後の学園における教育の精神の徹底につきましても、その二点を中心として今後展開させていきたい、こういうふうに思っております。
  349. 大原亨

    ○大原委員 公労委が不当労働行為として判定をいたしておりますし、原則的な問題、具体的な問題について逐次決定をいたしておりますが、それによって、差別を受けて、そして不利益な処分を受けている、そういう人々の是正をすべきである、いかがですか。
  350. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 その点につきましては、すでに去る二十三日に組合から具体的な要求が出ております。その要求に基づきまして、相互の交渉の中で問題を解決してまいりたいというふうに思っております。
  351. 大原亨

    ○大原委員 各支社、管理局の中におきましては、中央に真鍋常務理事を筆頭といたしまして、地方に能力開発課というのがマル生運動のためにできました。これが直接的なそういう指揮命令の関係において非常に歪曲いたしました。これは、もとの国鉄経営の初心に返ってやり直す、こういうことですから、そういう機構についても人事と一緒に重大な検討を加えるべきです。洗い直すべきである。国鉄は赤字だ、赤字だと言っているでしょう。この中で、超過勤務をしていない管理職が超過勤務料をとって、そして運動に使っているとかいう問題等がたくさん出ている。何が財政再建の問題ですか。そういう問題が出ている。ですから私は、その問題についても十分配慮して再出発すべきであると考えるが、いかがですか。
  352. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 私のほうの部内の業務の運営組織につきましては、いろいろ問題点もあると存じます。私は新しい観点に立ちまして、総合的な問題点につきまして、組織上の種々の点検をしてまいりたいというふうに思っております。
  353. 大原亨

    ○大原委員 労働運動に介入しないというのは民主主義の最低の原則です。自民党の皆さんは自由を尊重をしているというふうに佐藤総理と一緒に言われておる。自由というのは、個人個人の自由であるということと一緒に、憲法の保障した団結の自由である。結社の自由である。この運動に対して介入をやるような前近代的なそういうものであっては、これは国鉄の再建はできない。ですから、全体の政治責任の問題については、逐次私は機会を求めて、この問題を実際の処理のしかた等を含めてこれから検討いたしたいと思いますが、佐藤総理、あなたは大先輩として、こういう問題について、正しいやり方について、あなたの指導的な発言を期待をいたします。いかがですか。
  354. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は確かに鉄道の出身ではございますが、ただいまは磯崎総裁にその責任をまかしております。運営をまかしております。私はこれがもし間違っておれば、そういう意味で私自身も同罪だ。また、これを直していくということになりますが、ただいまのところ、私自身が直接やらないで、磯崎総裁のもとで国鉄は運営されておる、おおむね間違ってはいない、かように私は考えております。
  355. 大原亨

    ○大原委員 いまの質疑応答を聞いて総理の発言でありますが、これは私もまた席をあらためて別の機会に議論をいたします。しかし、いままでの質疑応答を聞いて、少なくともいままでのそういうやり方については……(「誤りがあったから直すのだ」と呼ぶ者あり)うしろから言っておる。誤りがあったから、公労委は間違っておるというふうに決定を下しておる。あなたは、その事実を含めて間違っていないというのか。いかがですか。
  356. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 その点は私は、ちゃんと磯崎君が改めました、こう言っているから、これでよろしい、かように思っております。いままで間違ったこと、この間違いを直すことにやはり勇気も要るでしょうが、それをよくやった、かように思っております。
  357. 大原亨

    ○大原委員 間違った総裁を任命した不明を国民に謝すべきである。  次に、最後の問題ですが、やはり日本の社会保障の水準は非常に低いわけです。国民所得に対する社会保障給付費はヨーロッパの三分の一です。その中で問題は、児童手当ができたけれども、まだ未熟である。国民年金の水準が低い。一番停滞をしておるのは医療保険の問題である。  医療保険の問題は、昭和四十二年以来国会では大問題になっている。私どもが主張したことは、単に目先だけの赤字対策をやったのでは、その赤字や矛盾を拡大するだけであって、解決にはならない、医療の需要面だけではなしに、供給面も総合的に改革をするというふうな見識と政策と指導性が要る、こういうことを議論いたしてまいりました。赤字補てんのための健康保険法の改正を本年の当初出しましたが、それはつぶれました。これは出発が間違っておるからであります。次の通常国会にかけて、どのような態度をもって佐藤内閣は医療保険の問題に対して対処しようといたしておるか、基本的な態度をまず第一に厚生大臣から聞きたい。
  358. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 ただいま大原委員のおっしゃるような基本的な態度で臨みたい、かように考えております。
  359. 大原亨

    ○大原委員 それでは佐藤総理、はっきりいたしましたが、単なる赤字対策は出さない、ことしの当初のような蒸し返しはしない、こういうふうに理解をいたしますが、あなたは厚生大臣の主張を支持されますか。
  360. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 厚生大臣がこの問題とただいま取り組んでおります。また、支払い側の意見はなかなかまとまりにくいわけであります。しかし、中立系の委員の諸君の考え方をまとめて、そうして厚生大臣はそのもとで進めていく、こういうような考え方でただいま取り組んでいる最中でございます。私は、それぞれの立場にあってそれぞれがその立場を主張しておると、なかなかまとまらないことだと思いますが、どうか関係各位が、それぞれの立場は立場として、大局的見地からこの問題と取り組んでいただきたい、かように心から願っておるわけでございます。そこで、厚生大臣はほんとうに真剣に対策を立てようとしておりますから、十分御鞭撻をいただくこと、また御叱正も賜わりたい、かようにお願いをしておきます。
  361. 大原亨

    ○大原委員 しばしばここで主張をいたしておりますように、いま日本昭和四十五年度の総医療費は二兆六千億円です。昭和四十六年度になりますと、医療費値上げの問題もありいますし、三兆円をこえるかもしれません。これはばく大な財政です。それを税金で負担するか、保険料で負担するか、自分が負担するか、医療機関との関係をどうするか、薬の問題はどうするかという問題があるわけです。ですから、これは総合的に考えないと、三百億円とか五百億円の赤字対策のために保険料の操作をする、いろいろなことをやっただけでは解決できないのです。それは子供でもわかることなんです。その点をしっかり踏まえて、内閣全体が考え方を統一して、この問題に指導性を発揮しなければ、この問題の解決はできないわけです。佐藤総理は、そういう点についてひとつもう一回決意をはっきりしてもらいたい。
  362. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この問題は長い問題でありますので、今度こそぜひとも仕上げたい、かように思っております。先ほど考え方について申し上げたのもその片りんでございます。私は、中立委員が全部が全部国民の支持を得ると、かようにも考えませんけれども、しかし比較的公平な立場にあるのは中立委員ではないだろうか、かように思いますので、それらの方々の意見をまとめるということに最も重点を置いて、しかる上で案を進めていきたい、かように考えております。
  363. 大原亨

    ○大原委員 こういう考え方の上に医療の需要供給全体にわたって基本的な改革を進めていく、総合的な対策を立てていく、そういう意味において医療基本法を次の国会に提案する用意がありやなしや、厚生大臣からお聞きしたい。
  364. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 医療基本法、ただいまおっしゃるような方向でぜひまとめたい、かように思っておるわけでありますが、なかなか内容がむずかしい点もありまするし、これにつきましても、いろいろ御意見を伺い、御叱正を賜わって、将来にわたってあやまちのない基本法を立て、またその方針に基づいて各医療に関する行政、ことに保険の改正等もやってまいりたい、かように思っております。
  365. 大原亨

    ○大原委員 問題はたくさんあるわけですが、重要な改革の問題点について、時間のあるだけひとつ意見を述べながら質問をいたしたいと思います。  何といっても日本においての一つの大きな欠陥は、医療機関の病院や診療所その他の機能の問題、配置の問題です。医療機関のないところが、無医村が二千もあるというふうなことは、保険料は払うけれども医者にはかかれぬということ、かかろうと思えばうんと交通費を払って出なければならぬ、泊らなければならぬということ、そういうことから考えてみまして、皆保険の名に値しないわけです。この問題について、私は、医師の養成と一緒に総合的な計画を立てる必要があると思う。特に今日のような、一千万円も二千万円も入学金がかかるような、あるいは学費がかかるような医師の養成のしかたでは、卒業いたしまして医師になりました医者が、その回収のために狂奔することは必至であります。ですから、医学教育とか研究に対しては、二兆五千億円も三兆円も国民は負担するのですから、思い切って財政措置を講ずるという、そういう抜本的な措置がなければこの改革はできない。医療配置の問題と医師の養成に対する問題。私立の医科大学を、五十億円、百億円かかるというやつをどんどんやると、これは次から次へと悪循環をする。この点について私は、武見医師会長とはたくさん意見が違うけれども、医師会長の意見と同じだ。そういう点について十分配慮して方向づけをする意思がありやなしや、お伺いいたします。
  366. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 これまた全くおっしゃるとおりでございまして、少なくとも人口十万対の医師の数はアメリカ並みに十年以内には持っていきたい、かように考えまして、文部省にもお願いをし、医師の養成、そのほかのパラメディカル要員の養成につとめたい、かように思っております。
  367. 大原亨

    ○大原委員 医療機関の配置の問題、医師の養成の問題。さらに日本ぐらい医薬品に対する管理がルーズな国はないです。たとえばサリドマイド、睡眠薬を飲んで奇形児が出る、アザラシっ子が出る。いま年ごろになっておられるわけです。あるいはキノホルム、整腸剤を飲んで、そしてスモン病が出ている。キノホルム、整腸剤を使っているのは、フランスでもどこでも使っているけれども、薬品管理が違う。だからそういう問題について事故が起きていない。これは、食品添加物とかその他化学物質による難病、奇病で正体不明の病気がたくさんあるけれども、医薬品の管理をきびしくしていく。医薬品に対するきびしい認識を確立していく。そのためには、新聞やテレビの広告の規制もやる、許可についても考え直す、自由化に備えて医薬品の体質も改善する、医薬分業も断行する、こういうことが、医師の技術尊重や歯科医師や薬剤師の技術尊重と一緒に、責任分野を明確にして医薬品の管理や認識を一新するということが必要である。このことについて厚生大臣はどうお考えですか。
  368. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 医薬品の管理並びに副作用についての検討、またこれがあるとわかれば直ちに禁止の措置をとるというようなことも、非常に大事なことだと思っております。ことに医薬の分業を行なうこともすでに決定された方針でもありますので、これも薬事審議会とも話し合って、早く受け入れ体制のできるようにいま推進をいたしておるわけであります。医薬行政の大事でありますことは私も肝に銘じておるわけでございますので、御意見のような方向で、一日も早く満足のいくような医薬行政を立てていきたい、かように思っております。
  369. 大原亨

    ○大原委員 だんだんと産業が高度化いたしまして、過密、過疎、特に過密が出ておる。ガンとか神経病とか成人病が非常に多い。神経系統の病気とかいうものが多くなっている。自分は正体不明の病気だと考える人がたくさんある。疾病構造が変わっておる。医者にかかる機会が多い。そこで、やはり何といっても治療中心のいまの医療保険の制度をさらに拡大をして、疾病の予防とか、健康管理とか、あと保護とか、そういうものを一貫的にやる。老人医療、老人病の問題も大きな問題になっている。ですから、そういう点に対する国費をどんどん出していくということが、結果といたしましては医療保険の赤字を少なくするもとになる。だから、そういう総合的な供給面の制度の充実が必要であるとともに、医者まかせ、あるいは保険者まかせでなしに、住民が参加して、自分自体の問題としてこの問題の解決に当たるというふうな、そういう制度の保障も必要である。こういう問題等に対して厚生大臣は見解をどう持っておられるかということと、そうしてこのような医療基本法の総合対策の問題について、厚生省は、かなり各方面で議論が詰まっておるのであるから、思い切って正しい案を出すと一緒に、この案を国民的な討議に付して、強行採決であるのは何だということでなしに、慎重に審議をしながら、国民的なコンセンサスを得るような、そういう持っていき方が今後の医療改革としては必要であると考えるが、厚生大臣いかがですか。
  370. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 国民の健康管理、ことに予防あるいは健康診査、これをできるだけ公費負担でやるようにというお説は、もうすでにその趣旨によって実行をいたしております。妊産婦、乳幼児の公費の健康診査、あるいは成人の方々の健康診査、これも今後さらに推し進めまして、これらは公費で地域によって健康管理をやっていくという方針を立てておるわけであります。医療基本法の中にもそういうような趣旨で立ててまいりたい、かように思います。  医療基本法は、おっしゃいますように、国民の全体のコンセンサスが必要であります。ごとに与野党ともの私は熱意をもってつくり上げていただくことが必要である、かように考えておりますので、ひとつよろしく御指導と御鞭撻を願いたいと思います。
  371. 大原亨

    ○大原委員 時間もまいりましたから結論を急ぎたいと思います。  いままで内政、外交で補正予算委員会において議論をされました問題、あるいは当面の問題と思われる点について数点を指摘しながらやってまいりました。問題は、私どもは七年の間佐藤内閣のもとに国会でも論戦をいたしてきたわけですが、しかしながら、遺憾ながら重要な問題が山積をいたしております。  一体佐藤内閣のもとで何が解決されたか、私はそのことを振り返って佐藤総理は考えてもらいたいと思う。問題は重要な問題に対する指導性の問題です。政治決断の問題であります。私は、特に日中問題等については、ぐるぐる回るような議論で、国民がわからぬ議論ではなしに、問題点は非常に明確になっているわけであります。あらゆる分野において問題点は明確になっておるわけであります。私は、そういう問題等について、十分今日までの論議を佐藤総理は肝に銘じて今後の施政に当たってもらいたい。あなたはどういうお考えか、最後にお聞きをいたしまして、私の質問を終わります。
  372. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろ御意見を聞かしていただいてほんとうにありがとうございました。私は、皆さん方がどういう点にポイントを置いて質問しておられるか、これを絶えずつかんでおるつもりでございまして、これが今後の行政運営、政治を進めていく上にどういうように具体化されるか、十分皆さんからもひとつ見守っていただきたい、かように思います。
  373. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて大原君の質疑は終了いたしました。  ここで、楢崎君の持ち時間の残が五分程度あります。この際、許しますが、ここで総理府総務長官から発言を求められておりますので、これを許します。山中総務一長官
  374. 山中貞則

    ○山中国務大臣 楢崎委員御指摘の文書については、個人の文書だとは昨日来申してはおりません。南援関係者より当時の特連局に提出された意見を特連局で文書の形にしたもので、楢崎委員のお手持ちのものと同じものであります。特連局内部で文書にしたまま保管していたもので、したがって決裁もなく、他の官庁に発送もしておりません。文書に押された極秘印でありますが、なぜこのような印が押されていたかは今日では明らかではありませんが、総理の御注意もあり、今後十分気を配ってまいりたいと存じます。
  375. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 政府方針なりあるいは政策をつくられる場合には、政府自身がつくられる場合もあるし、あるいは適当なところに委託をされて、そしてそれを基礎にして政府のものにする、これは常識だと思うのです。ただし、問題は、その文書が政府の文書として採択されたかどうかが問題でありましょう。ただいまの御答弁でも明らかなとおり、この資料は総理府特連局がつくったことが明白になりました。政府自身の文書、すなわち資料であることは間違いありません。私どもはそれがトーキングペーパーの形になっておりますから、おそらく総理はこれを十分参考にして話をされたのではないかというのが私の指摘であります。総理の御見解をひとつお承りしたいと思います。
  376. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど山中長官から説明いたしましたように、直接私はその書類を見ておりません。また、ただいまのお話しですが、いろいろ政府が各方面から意見を聴取することはもちろんあります。またいろいろ書類を送ってくることもございます。しかし、全部が全部そのとおり採用するわけでもございません。そういう点でやはりその中身について取捨選択をしなければ、これはやはり政府としての責任が持てる範囲でないといかぬと思っております。どうかその辺は十分取捨選択しておることもございますから、御了承をいただきます。  また、文書の取り扱い方については、これは私は、御注意もありましたので今後十分注意いたしまして、かようなことがないように、二度とないようにいたしたいものだと思います。受け付けた以上、ちゃんと受付番号がある、またそしてそれは決裁される、こういうことが本来の筋であります。また、決裁しないものについて、また受付も正式にしないものについて、極秘など打つことが問題を紛糾さすゆえんではないか、かように私は思います。ありがとうございました。
  377. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 この際、防衛庁長官から発言を求められております。これを許します。西村防衛庁長官
  378. 西村直己

    西村(直)国務大臣 楢崎委員の御指摘の技術研究本部の資料につきましてお答え申し上げます。  SSX云々のことにつきましては、技術研究本部第一研究所における水槽試験の計画書においてそのことばが書いてありますが、これは将来の改良型潜水艦を意味するもので、原子力潜水艦を意味するものではありません。  次に、技術研究本部第四連絡会のことでありますが、技術研究本部の研究員の研究討議の段階において、原子力機関が将来採用される時期云々の発言をした事実がメモに残っております。いずれにしましても、防衛庁における原子力潜水艦の採用を意味するものでないことはもちろんであります。なお、防衛庁の第四次防衛力整備計画原案の中には、技術研究開発におきまして、原子力潜水艦や核ミサイル等の開発に触れているものは全くないことを念のために申し添えます。  なお、御要求でありました核兵器の用法につきましては、これは米国の翻訳ものであり、教科書等に使ったものではございませんが、その資料が到着次第楢崎委員に御提出申し上げます。
  379. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ただいまの西村長官の御答弁で明らかなとおり、私が指摘をしました中で、原案が改ざんされたということばは私は訂正をいたします。ただし、原案と称されたものは実は原案ではなしに、そのまた原案をメモされたものを原案と称して、そしてそれをまた要約されたものが委員会に出された、これは明白になったわけであります。  そこで、私が当委員会で出しました第一回第四連絡会における検討、「艦艇推進用特殊パワープラントの研究」と題する、私はこれは議事録であると思いますが、原子力機関の採用を将来予定しておることばがあるということは、いま報告のとおり確認をされました。しかし、総理も言われておるとおり、四次防の中では現実にこれは正式採用にはなっていない。ただ、私はここで心配するのは、UAUM、これは現在世界にあるのはアメリカのサブロックだけである。サブロックは核魚雷である。これを検討の対象にしておったことは事実であります。それからまた、原子力潜水艦を将来持つというこのことばがある以上、やはり検討の対象になっておることはまた事実であります。いま沖繩返還協定を問題にするにあたり、核抜きを沖繩県民も含めて国民が非常に心配をしておる段階で、総理も言われたとおり、非核三原則に抵触するこのような原子力潜水艦なり、あるいは核魚雷に匹敵するこのようなUAUMの検討が現実に日程の中にのぼっておるということを私はたいへん心配するわけであります。よほどシビリアンコントロール、また国会におけるわれわれの監視をきびしくしなくては、いわゆるユニホームはこのような方向に向かっておることは事実でありますから、五次防の段階でもわれわれ出てくるかもしれないとおそれておる。十分、政府あるいは国会でこのような核兵器、核武装に対するチェックをこれから相ともにしてまいりたいと思います。なお、沖繩の核抜きの問題も、いわゆる再持ち込みということがこれまた心配の一つであります。その際に、非核三原則がある以上と断わるんだとおっしゃっていますが、その非核三原則自身が、日本の自衛隊がそういう核武装をするような方向であったのじゃ、この非核三原則という原則は一体何であろうか、まことにそらぞらしいことばだけになってしまいます。総理は、総理大臣であると同時に国防会議の議長でございますから、十分その点は御注意をあって、ひとつシビリアンコントロールの実をあげていただきますように要望いたしまして、私の質問を終わります。
  380. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま言われるとおり、私が最高責任者でございます。防衛庁長官はおりますが、全責任を持たなければならないのは私であります。そうしてただいま最後に言われましたシビリアンコントロール、これを厳重に、厳格に実施しろと、かように言われましたこと、これは私のかねての願望でもありますし、また私のやろうとするところでもありますから、これは忠実にそれを実行する考えでございます。
  381. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 終わります。ありがとうございました。
  382. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、昭和四十六年度補正予算三案に対する質疑は全部終了いたしました。  この際、暫時休憩して、理事会を開きますが、閣僚の皆さん、委員の皆さんはそのままの姿で御在席を願います。  暫時休憩いたします。    午後六時十二分休憩      ――――◇―――――    午後六時十四分開議
  383. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十六年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十六年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和四十六年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、討論に入ります。  討論の通告がありますので、順次これを許します。細谷治嘉君。
  384. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました昭和四十六年度補正予算三案、すなわち第1号、特第1号及び機第1号に対しまして、反対の討論を行ないたいと思います。  戦後二十六年間にわたって世界の資本主議経済をささえていたブレトン・ウッズ体制が、去る八月十五日にアメリカが発表した金とドルとの交換停止、一〇%の輸入課徴金の設定を含むいわゆる新経済政策によって、その根底が大きくゆらいでおります。  今回の国際通貨危機は、過去のそれと比較いたしまして、広さと深さにおいて格段の差があります。ところが、わが国政府はそれが理解できず、世界の嘲笑の的とされながらも変動為替相場制への移行をおくらせ、大銀行、大商社の利益擁護をはかったのであります。そのため国民は不当な負担をしいられることになり、提案されました補正予算案にあります日銀納付金の減収六百九十六億円がその負担の重さの一端をあらわしております。  政府の国際通貨問題に対する態度だけではなく、対米依存、ドル依存の輸出振興拡大政策の破綻が明らかとなり、国内経済の面でも低賃金、長時間労働による生産性の向上と、公害たれ流しの無節操な企業経営が国民生活を破壊しており、高度経済成長政策の失敗が明らかにされておるのであります。いまや政府・自民党の推し進めてまいりました内外経済政策を根本的に転換し、大企業、独占資本優先の成長政策から国民福祉、生活重視の政策を緊急に樹立し、推進しなければならないのであります。  しかるに政府は、何らの政策転換をすることなく、従来と同様な大企業、独占資本救済中心の景気振興政策を取り続けてきております。ここに編成されました補正予算も、景気浮揚、不況脱出が第一の目標に置かれ、国民の生活向上、人間尊重の政策は見受けられません。その具体的内容を見ると、以下のような問題点が指摘されるのであります。  第一に、所得税の減税についてであります。  九月の物価上昇率は、東京で前年同月比一〇・三%と総理府も発表したように、不況下でも物価は高騰を続けておるのであります。だから生活費非課税の原則を順守するならば、毎年度大幅な大衆減税が行なわるべきであります。ところが、今回の千六百五十億円の減税額は、自然増八百六十五億円を差し引けば実質七百八十五億円の小幅にとどまり、その上減税効果の及ぶ対象も中堅所得層と呼ばれる年収三百万円から六百万円の階層を中心にした不公平な減税であります。これは勤労大衆の負担軽減を置き捨てた減税政策であり、結果的には政府の企図する景気回復の速効薬としても何らの効果を発揮しないでありましょう。  景気対策としての減税は、消費性向が高く、有効需要の拡大に直結する低所得者層対象の負担軽減をはかることが理論的にも正しく、政府の減税政策はこれに逆行するものでございます。  第二に、物価と社会保障についてであります。  わが国の高度経済成長は、インフレ政策による物価高を利用しての国民の収奪強化と低劣な国民年金、生活保護費及び医療費の患者負担増など社会的費用の節約とによって行なわれてまいりました。だから、政策転換とは、物価上昇を押え、もろもろの年金額の引き上げ、さらに社会福祉施設の充実などが重点政策とされるべきなのであります。しかし、政府予算にはこれらに対する措置は講じられておりません。  第三に、公共投資の内容についてであります。  この補正予算の柱の一つである事業規模五千億円をこえる公共事業費支出、二千三百二十億円が計上されております。その内容は、一般公共事業関係費の三五%を占める道路整備事業が中心に置かれております。住宅対策費は八%と依然として低く、下水道中心の生活環境施設整備費が若干増加していても、それは公害対策考えられていますように、事後的対策の域を出ないものであります。今年度四回目の財政投融資の追加二千六十四億円について見ましても、地方債の引き受け分千六百億円を除いては、国鉄、電電公社、道路公団など、やはり産業基盤投資が軸にされております。現在国民の要求する社会資本の充実とは、高速道路、産業港湾などではなく、住宅、下水道であり、公園、学校、病院、保育所など、日常的生活環境諸施設なのであります。  第四に、国債発行についてであります。  政府は、七千九百億円の国債は、すべて財政法第四条第一項のただし書きが認めている建設公債であると強弁しておりますが、それはまさに詭弁以外の何ものでもありません。政府建設公債論は、財政法建設公債発行限度規定を曲解し、拡大解釈する我田引水の論理であります。財政法は総ワク主義的な発行限度を規定しているものではなく、個別的、特定事業限定的な公債発行を認めているものなのであります。したがいまして、七千九百億円の国債発行についても、公共事業費出資金貸し付け金総額に相当しない五千三百五十六億は赤字公債であり、この発行に際しては特例法の立法化が必要なのであります。政府が特例法によらないで国債発行を続けることは、財政法の歯どめを形骸化し、建設公債発行権の乱用となり、インフレ財政の再現に導く危険なものとなります。  第五に、地方財政についてであります。  今回の政府の地方財政対策を見ますと、地方交付税及び地方税の減収、国の公共事業拡大による負担増などに対し、国からの財源の補強がなされました。しかし、同時に二千五百億円をこえる地方債が増発されるのであります。そのうち千六百億円が政府資金で充当されますが、千八十二億円の縁故債が残るのであります。縁故債の発行は、従来引き受け側が歓迎していないもので、今度のように巨額な国債発行が伴うならば、起債の困難さは倍化し、高利の資金調達を余儀なくされるでありましょう。地方債の発行は、元利償還を含めて積極的な国家資金が提供されないならば、将来にわたっての地方の債務負担増加するばかりであります。したがいまして、政府が、地方交付税率の引き上げによる地方への財源付与をなすことなく、特別会計で処理したことは、地方財政、地方自治体の地位を重視したものでないといえるのであります。  最後に、特に沖繩対策予算について指摘しなければなりません。  沖繩県民は、いまや干ばつ、台風による被害に加え、ドル・ショックのダブルパンチを受け、生活の危機にさらされております。これに対する政府の援助は全く不十分で、経済的琉球処分を許すなと怒りの声があがっております。物価上昇や経済不況に対する政府の措置の不十分さだけでなく、特に強調いたしたいことは、軍事基地の恒久化による差別と切り捨ての歴史を繰り返そうとしていることは、断じて許すことができないのであります。  以上見てまいりましたように、政府提出の補正予算案は従前どおり財界、独占資本に顔を向けた予算案であり、国民勤労大衆には背を向けた予算案となっておるのであります。資本優先、国民生活軽視のこの予算がいわゆる十五カ月予算の一部をなし、来年度予算の全体像を写し出しているものである以上、政府政策転換の欺瞞性は明らかであります。国民の生活を守り、平和と福祉の政策を確立し、平和経済の実現という任務を負うわが日本社会党にとっては、本補正予算は絶対に認めることができないのであります。  以上をもちまして私の反対討論を終わります。(拍手)
  385. 瀬戸山三男

  386. 佐々木義武

    佐々木(義)委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております昭和四十六年度一般会計補正予算特別会計補正予算政府関係機関補正予算について賛成の討論を行ないます。  今次補正予算の背景となりましたわが国経済は、昨年末からの不況を徐々に克服し、六、七月と景気も上昇に向かいつつあるとき、ニクソン声明による金・ドル交換停止と一〇%の輸入課徴金という、まさに青天のへきれきともいえるショックを受けたのであります。もちろんその最も大きな原因は、世界の経済大国アメリカの国際収支の悪化によるものであり、アメリカの一方的な非常措置によるものでありますが、他面、このことはアメリカ一国の一時的な問題ではなく、世界経済全般の問題でもあり、世界経済の動向が大きく変革期に差しかかったことを示すものであります。これにより、わが国経済も、輸入課徴金や変動相場制への移行に伴う輸出の停滞、今後の平価調整問題等、将来への見通し難に基づく不安感の増大等が重なり、景気不安という未曽有の試練に立たされたのであります。このような流動的な世界経済の中において、わが国経済のあり方、財政運用の方途またきわめて困難なものがあります。わが国が当面するこれらの諸問題に対処して、国民経済の安定をはかり、ますます多様化する国際経済との関係を調整していくためには、従来の経済成長第一主義、輸出至上主義から脱却し、社会資本の充実、福祉の向上、秩序ある輸出等に経済の主眼を変えていかなければなりません。そのためには、これまでの民間主導の設備投資による無秩序な生産第一主義の経済方式を改め、財政主導による経済の進路を打ち立てる必要があります。高度成長政策時代から、国際化のもとにおける高度福祉社会への道がこれであります。したがって、今日のごとく、ドル・ショック等による景気の下降と不況感の強いときには、まず、国民生活に最も密接な不況対策、景気浮揚策に財政の重点を置くべきであります。  かかる観点に立って今回の補正予算を見るに、その主軸として、社会資本の充実を目ざす大幅な公共投資の追加と、景気刺激に直接効果のある所得減税、そして公共事業追加のための財源としての公債発行があげられております。  公共投資の追加は、事業費の規模で約五千億円であり、治山治水、道路、港湾、住宅、下水道、文教施設、社会福祉施設等の整備を行なうことになっております。これにより国内需要を喚起し、国民生活の向上と社会資本の整備を一そう推進しようとするものであり、年度後半の景気浮揚に大きな役割りを果たすこととなりましょう。  また、所得減税一千六百五十億円の年内実施は、景気の刺激策として速効性が期待できる適切な措置であります。公共投資の景気刺激効果には、その性質上、時間的おくれを伴うことは避け得られませんが、所得減税は直ちにその効果があらわれ、景気の浮揚を待ち望んでいる国民にとりましてもまさにタイムリーな措置であります。まして、法人の減税を行なわず、所得減税に限ったことは、法人投資を抑制し、過剰な設備投資を財政主導により調整する意味においても賢明の策であります。ただ、景気刺激の速効性という面からも、本年において、社会福祉関係の支出増、減税の恩恵を受け得ない人々に対する対策も望まれるところでありますが、これは来年度予算にその成果を期待いたしておきます。  さらに、公債七千九百億円の増額は、公共事業の拡大等により、不況下にあるわが国経済に刺激を与えるとともに、市中消化の原則も守っており、まことに妥当なものであります。  以上のほか、歳出では、アメリカの輸入課徴金の賦課等による関連中小企業対策費七十五億円、公務員の給与改善費千百四十四億円、米の生産調整関係費百三十億円、対米繊維輸出規制に伴う特別措置経費六十二億円、北海道の冷害対策等のための農業共済再保険特別会計への繰り入れ五十億円、義務的経費八十七億円、臨時地方特別交付金五百二十八億円等を追加するとともに、既定経費の節減等をはかっており、歳入におきましては、さきに述べました公債増額、所得税減税のほか、経済活動の停滞等による減収見込み等を勘案し、租税収入、印紙収入並びに、日本銀行納付金を減額する等所要の補正を行なわんとするものであります。  わが国を取り巻く経済情勢はきわめてきびしく、国際社会の中において安定的成長を続けてまいりますためには、前述のごとく、経済構造の改善が必要であり、財政主導による経済体制の確立が必要であります。本補正予算には、かかる政策転換を指向しておる面も見受けられ、財政面からも有効需要の増大策を打ち出し、景気の早期回復をはからんとするものであり、まことに時宜を得たものと考える次第であります。  以上述べました理由により、私は、本補正予算案に対しまして賛意を表し、討論を終わります。何とぞ委員各位の御賛同を賜わらんことを要望いたします。(拍手)
  387. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 次に、鈴切康雄君。
  388. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、公明党を代表して、ただいま議題になっております昭和四十六年度補正予算案に反対の討論を行ないます。  中国代表権問題について、アルバニア決議案は、まさに新しい世界の幕あけを告げるものでありました。同時に、このことは、わが国外交が世界情勢の把握と予見性を欠き、虚構の歴史にとらわれた政府の外交失態を明確にあらわしたものでありました。  中国問題といい、沖繩返還協定問題といい、本委員会に示した政府の姿勢は、わが国の前途に重大な憂いを国民に与えたのであります。  そのような政府の姿勢は、補正予算案にも如実にあらわれているというべきでありましょう。今回の補正予算は、今日の事態に対処することはもちろんのこと、政府経済政策の転換の手始めとなるべきものでなければならないことは当然であると思います。この観点から見て、補正の主たる目的である景気浮揚の内容に疑問がある上、従来の国民生活無視の経済政策から抜け出せない諸点をあげ、反対を表明するものであります。  反対理由の第一は、七千九百億円にのぼる増発国債の発行手続きの問題であります。  増発国債そのものに否定的立場をとる考えは毛頭もありませんが、政府のいう、建設国債の範囲に限定されており、財政法の特例とする理由はないという態度は納得できないのであります。歳入欠陥を補う増発国債である以上、国債発行節度を守る意味からも、政府のその場を糊塗する態度が今日の政治不信を招いている事実からしても、財政法四条の特例措置とすべきは当然なのであります。野党の主張を無視し、強引な措置をとった増発国債は、国債発行の歯どめを失わしめるものであり、絶対反対せざるを得ないのであります。  第二は、上厚下薄の所得税減税の内容についてであります。  戦後初めてという年度内減税については、それなりの評価をいたします。しかしながら、不況と物価高騰の中にあって、重税に苦しみ、最も減税を必要としているのは低所得者階層であります。従来の高額所得者優遇の税制を転換する意味においても、景気浮揚のためにも、基礎控除の引き上げを中心とする課税最低限の大幅引き上げが妥当なのであります。にもかかわらず、年所得五百万前後を中心とする高所得層以上の減税措置がとられております。したがって、景気刺激に名をかりた高額所得者優遇のまやかし減税といっても過言ではなく、このような内容を認めることはできません。  第三は、地方財政の落ち込みに対する不十分な措置についてであります。  今回の特別交付金について、政府は、前例のない措置であると称しておりますが、事実は、所得税減税に伴う当然の措置なのであります。地方財政の窮乏はそのまま国民生活向上を阻害する要因であることから見ても、地方財政の充実こそ急務といわざるを得ません。今回の措置の範囲では、地方公営企業の累積赤字、度重なる地方債の発行によって悪化している地方財政構造に何ら寄与するものではないのであって、不十分であるといわざるを得ません。この意味からも賛成しかねるのであります。  以上、反対理由を申し述べ、反対討論を終わります。(拍手)
  389. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 次に、岡沢完治君。
  390. 岡沢完治

    ○岡沢委員 私は、民社党を代表し、ただいま提案されております昭和四十六年度一般会計補正予算特別会計補正予算並びに政府関係機関補正予算の三案に対し、一括して反対の討論を行ないます。  現在のわが国を取り巻く情勢は、内外ともに非常に激しく流動いたしております。戦後二十五年間にわたって続いてまいりました世界の外交並びに国際経済情勢は、中国の国連加盟、ニクソン声明によるIMF体制の崩壊、日米関係の再調整などを契機に大きな転換期に直面しております。この転換期にあたり、そのよって来たる諸因を明らかにし、将来の展望を持つことが、現在のわが国政府並びに立法府に課せられた緊急の課題かと存じます。にもかかわらず、政府は、これらの基礎的変化に対し、手をこまねいて目をおおい、いたずらに景気の落ち込みに対する当面の対応策に追われて、基本的な施策を見失い、その場しのぎの措置でこれを取りつくろい、これらの重要課題へのまっ正面からの取り組みを避けようとしておられるのであります。  たとえば、円切り上げ問題に対する政府の対処のしかたについて触れてみます。  申すまでもなく、現在の国内、国際経済の混乱と、それに基づくわが国の財政経済上の損失は、歴代自民党政府経済政策と無縁では断じてございません。口では国民生活の向上、人間尊重の政治をうたいながら、その実、アメリカ追従、生産第一、輸出中心、経済成長本位の自民党政治がもたらした結果が、外圧による円切り上げに道は通じているのであり、むしろ、これが現在の国内経済の低迷の真因であることを政府は銘記すべきであります。また、日米繊維問題につきましても、アメリカの理不尽な要求に一方的に屈し、対外経済取引に悪い先例を残されますとともに、繊維業界に多大の損害を与えられました政府の態度は、今後のわが国の外交姿勢への警告も含めて、予算審議にあたり、重ねて指摘せざるを得ない重要な要素をはらんでいるものであります。これらの責任を何ら根本的に反省されることなく、近視眼的な措置によって当面の問題を切り抜けられようとする政府の姿勢こそ、わが党が本予算案に反対する第一の理由であります。  わが党が本補正予算案に反対いたします第二の理由は、あまりにも安易な政府の国債政策についてであります。  政府は、今年度の租税及び印紙収入が五千六百二十二億円の減収になることにかんがみ、その穴埋めとして、七千九百億円の国債を追加発行しようとしておられるのであります。  まず第一の問題は、この五千六百億円にものぼる歳入欠陥をもたらした見通しの誤りについて何ら政府に反省が見られず、あたかも当然に歳入欠陥が起こったかのごとき態度をとっておられることであります。まさに責任の所在を忘れた政治姿勢といわざるを得ません。今回の事態は、政府が何と強弁されようと、昭和四十年当時の国債発行時の背景とほぼ同様の条件下での発行であるにもかかわらず、昭和四十年の際にとられた特別立法の措置を講じられることなく、財政法第四条をたてに問題の所在をうやむやにしておられます。しかし、これは明らかに財政法第四条の精神をゆがめ、財政法律主義の基本原則を踏みにじられるものであります。  さらに重大な問題は、政府の国債政策の基本方針が確立していないことであります。あるときは景気刺激政策の手段として国債を使い、あるときは民間設備投資を国債発行に優先させるなど、建設国債のたてまえを無視して、実質的に赤字国債としての機能のみを活用されんとしていることであります。わが国の社会資本の立ちおくれを取り戻し、積極的な公共投資計画を推進するために、明確なプロジェクトを設定して、国債を活用することが建設公債の真の意義であると私は考えますが、この意義を見失い、名目はともあれ、実質は赤字国債としてのみ国債を利用されようとする政府の態度は断じて間違いであることを私はここに指摘いたします。  わが党が本補正予算案に反対する第三の理由は、減税政策の方法についてであります。  政府は、今回新たに、基礎控除等の引き上げ、税率の緩和により、千六百五十億円の所得税減税を行なわれたのでありますが、その国民大衆に与える効果たるや、まことに疑問であります。第一に、今回の減税政策が景気刺激策の一環として行なわれたにもかかわらず、減税額の大部分は消費性向の低い高額所得者に回され、政府の所期のねらいである景気刺激に対しても、その効果が非常に薄いことであります。第二に、現在、勤労者が最も強く要望していた給与所得控除の引き上げが全く見送られ、税率の緩和に重点を置き、その結果、全勤労者の三%にしかすぎない年間三百万円から五百万円の高額所得者を優遇する結果になっていることであります。まさに、課税の基本原則である税負担の公平、平等の原則が無視され、むしろ不平等の拡大がはかられているといっても過言ではありません。このような重大な矛盾をはらんだ減税であるにもかかわらず、減税さえすればよく、中身は二の次であるという政府の安易な態度はきびしく批判されなければなりません。  わが党が本補正予算案に反対する第四の理由は、その歳出面において、依然として、道路整備等を中心にした産業基盤整備関係公共投資が優先されている点であります。たとえば、現在なお、最も緊急な国民的願望課題の一つであり、また、現在こそその実現の絶好の機会でもあります住宅不足対策につきましては、今回の補正予算案におきましてわずかに百三十億円しか追加されておりません。このような産業基盤整備優先、生活環境整備軽視の公共投資政策の方向こそ、いつか来た誤った道であり、これには強く反対せざるを得ないのであります。政治は選択であるといわれます。私も、産業基盤整備の必要性を否定するものではありません。しかし、現時点においてわれわれがとるべき選択は、産業基盤の整備よりも生活環境の整備であることは明らかであります。佐藤総理も、水田大蔵大臣も、よもやこのことを否定はされますまい。ならば、なぜこれを実行に移されないのでありますか。予算は政策を数字で示すものといわれます。なぜ予算案にこれを反映されないのでありますか。  最後に、私は、今後の新しい経済政策のビジョンについて、政府が何ら国民にその指針と具体案を示していないことを指摘したいのであります。  いまや、国民は、日米経済関係の悪化、円の実質的切り上げ等による先行き不安、それによる国内経済の不況の深刻化に対し、非常な生活不安と政治不信に見舞われております。この国民の生活不安と政治不信を一刻も早く解消し、日本国の今後進むべき道を明らかにし、国民に対し安心と希望を与えるのが政治の使命であると私は思います。申すまでもなく、今後わが国の進むべき道は、経済的軍事的大国の道ではなく、国民の健康と暮らしを守る高度福祉社会の建設の道でなければなりません。また、その具体的施策として、生活環境整備中心の新しい各種年次計画が、その財政的裏づけとともに早急に立案されなければなりません。いまこそ、政府は、一刻も早く、国民の不安と動揺にこたえるあすへのビジョンを策定され、これを実行に移すプロセスと、その財政上の裏づけを示されるべきであります。その際、人よりも経済に、国民よりも企業に顔を向け続けてこられた従来の政府の姿勢を百八十度転換されることが、その出発点でなければなりません。  私は、国民にかわりこのことを強く政府に要望いたしまして、補正予算案に対するわが党の反対討論を終わります。(拍手)
  391. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 次に、津川武一君。
  392. 津川武一

    津川委員 共産党を代表して、本補正予算三案に反対いたします。  この予算案の最大の特徴は、アメリカの戦争と侵略政策によるドル危機の日本への転嫁と、円の大幅切り上げ必至の情勢、わが国経済の不況の一そうの深まりの中で、戦後最大の赤字公債増発によって大企業本位の景気刺激をはかりながら、他方、国民のために必要な経費を徹底的に圧縮する、きわめて反動的、反人民的なものであるということであります。  まず、七千九百億円にのぼる赤字公債増発であります。これによって、今年度の赤字公債発行総額は、一般会計で一兆二千二百億円となり、公債の元利償還のための国債費は今後一そうばく大なものとなり、国民の税負担が加速度的に重くなることは明らかであります。しかも、政府は、名ばかりの所得税減税の宣伝の裏で、二、三年後を目標に国民大衆収奪の付加価値税の導入を企てているのであって、国民の断じて許せぬところであります。  さらに重大なのは、赤字公債増発によるインフレの高進であります。その上、政府は、国鉄運賃、大手私鉄、バスなどの公共料金の相次ぐ値上げを企て、野菜、魚類の暴騰、独占価格などには何一つ対策を講じていないのであります。  第二に、大企業本位の公共投資の増大であります。本補正予算案では、一般会計と債務負担行為を含めて三千四百億円を計上していますが、事業のおもなるものは、縦貫道路や有料道路、港湾、国鉄新幹線などであり、大企業の市場拡大のためのものであります。一方、公営住宅や足元道路などへの投資は微々たるものにすぎません。このような投資計画が、過密と過疎を激しくし、大企業本位の国土利用、新全総計画を一そう促進するものであることは明らかであります。  第三は、国民の暮らしと命の問題であります。特に、ニクソン声明以来、労働者に対する首切り合理化、中小企業と農民に対しては、転業、廃業など目に余る犠牲が押しかぶされています。繊維産業についていえば、アメリカの一方的な要求に屈服し、政府間協定を強行することによって、日本の伝統的繊維産業を意識的にスクラップにしようというのが今回の補正予算の主要な内容であります。輸出関連その他の中小企業対策費は、一般会計でわずか五十億円、その上、財政投融資の追加も、大部分の中小零細業者には向けられておりません。農民に至っては、生産者米価の引き上げわずか三%、減反強制に加えて、農産物の自由化が推し進められ、日本農業の危機はさらに深刻になってきました。ドル・ショックによって出かせぎ職場を失った農民、この農民に対する救済措置の全くないのも本補正予算案の重大な欠陥であります。  地方財政はどうか。戦後最大の困難におちいった地方財政に対し、政府は、国による当然の措置を行なわず、むしろ、借金政策を強要したことなど、露骨な地方財政破壊政策をとったのであります。  最後に、沖繩関係経費について特に一言しなければなりません。この補正予算案ではただの四億七千万円、しかも、屈辱的な沖繩協定の実施準備のための経費ではありませんか。為替差損や物価の大幅値上がりに対する対策など、県民の生活にかかわる緊急の経費は完全に無視されたのであります。沖繩協定の反国民的本質がここにもきわ立ってあらわれているのであります。  わが党は、対米依存を直ちに断ち切り、赤字公債発行をやめ、軍事費、海外援助費を徹底的に削減し、大企業に対する特別減免税を全廃して、正当に税金を取り立て、これを国民生活向上に回すなどの国民生活本位の財政政策に緊急に転換することを要求します。これこそ国民の要求する不況対策への道であります。  以上で反対討論を終わります。(拍手)
  393. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより、昭和四十六年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十六年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和四十六年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  394. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 起立多数。よって、昭和四十六年度補正予算三案は、いずれも原案のとおり可決いたしました。(拍手)  おはかりいたします。  委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  395. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     ―――――――――――――   〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  396. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 この際、国政調査承認に関する件についておはかりいたします。  すなわち、予算の実施状況に関する事項につきまして、議長に対しその承認を求めることとし、その手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  397. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。      ――――◇―――――
  398. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 この際、一言ごあいさつを申し上げます。  補正予算三案を、ここに、慎重審議の上審査を終了いたしました。連日の審査につきまして、御精励いただきました委員各位の御労苦に対し、深い敬意を表示いたしますとともに、総理をはじめ閣僚各位、連日御協力いただきましたことを厚くお礼を申し上げます。(拍手)  本日は、これにて散会いたします。    午後六時五十四分散会