○岡沢
委員 私は、民社党を代表し、ただいま提案されております
昭和四十六年度
一般会計補正予算、
特別会計補正予算並びに
政府関係機関補正予算の三案に対し、一括して反対の討論を行ないます。
現在のわが国を取り巻く情勢は、内外ともに非常に激しく流動いたしております。戦後二十五年間にわたって続いてまいりました世界の外交並びに国際
経済情勢は、中国の国連加盟、ニクソン声明によるIMF体制の崩壊、日米
関係の再調整などを契機に大きな転換期に直面しております。この転換期にあたり、そのよって来たる諸因を明らかにし、将来の展望を持つことが、現在のわが国
政府並びに立法府に課せられた緊急の課題かと存じます。にもかかわらず、
政府は、これらの基礎的変化に対し、手をこまねいて目をおおい、いたずらに景気の落ち込みに対する当面の対応策に追われて、基本的な施策を見失い、その場しのぎの措置でこれを取りつくろい、これらの重要課題へのまっ正面からの取り組みを避けようとしておられるのであります。
たとえば、円切り上げ問題に対する
政府の対処のしかたについて触れてみます。
申すまでもなく、現在の国内、国際
経済の混乱と、それに基づくわが国の
財政経済上の損失は、歴代自民党
政府の
経済政策と無縁では断じてございません。口では
国民生活の向上、人間尊重の政治をうたいながら、その実、アメリカ追従、生産第一、
輸出中心、
経済成長本位の自民党政治がもたらした結果が、外圧による円切り上げに道は通じているのであり、むしろ、これが現在の国内
経済の低迷の真因であることを
政府は銘記すべきであります。また、日米繊維問題につきましても、アメリカの理不尽な要求に一方的に屈し、対外
経済取引に悪い先例を残されますとともに、繊維業界に多大の損害を与えられました
政府の態度は、今後のわが国の外交姿勢への警告も含めて、
予算審議にあたり、重ねて指摘せざるを得ない重要な要素をはらんでいるものであります。これらの責任を何ら根本的に反省されることなく、近視眼的な措置によって当面の問題を切り抜けられようとする
政府の姿勢こそ、わが党が本
予算案に反対する第一の理由であります。
わが党が本
補正予算案に反対いたします第二の理由は、あまりにも安易な
政府の国債政策についてであります。
政府は、今年度の租税及び
印紙収入が五千六百二十二億円の減収になることにかんがみ、その穴埋めとして、七千九百億円の国債を追加
発行しようとしておられるのであります。
まず第一の問題は、この五千六百億円にものぼる
歳入欠陥をもたらした
見通しの誤りについて何ら
政府に反省が見られず、あたかも当然に
歳入欠陥が起こったかのごとき態度をとっておられることであります。まさに責任の所在を忘れた政治姿勢といわざるを得ません。今回の事態は、
政府が何と強弁されようと、
昭和四十年当時の国債
発行時の背景とほぼ同様の条件下での
発行であるにもかかわらず、
昭和四十年の際にとられた特別立法の措置を講じられることなく、
財政法第四条をたてに問題の所在をうやむやにしておられます。しかし、これは明らかに
財政法第四条の精神をゆがめ、
財政法律主義の基本原則を踏みにじられるものであります。
さらに重大な問題は、
政府の国債政策の基本
方針が確立していないことであります。あるときは景気刺激政策の手段として国債を使い、あるときは民間設備投資を国債
発行に優先させるなど、建設国債のたてまえを無視して、実質的に赤字国債としての機能のみを
活用されんとしていることであります。わが国の
社会資本の立ちおくれを取り戻し、積極的な公共投資計画を推進するために、明確なプロジェクトを設定して、国債を
活用することが
建設公債の真の意義であると私は
考えますが、この意義を見失い、名目はともあれ、実質は赤字国債としてのみ国債を利用されようとする
政府の態度は断じて間違いであることを私はここに指摘いたします。
わが党が本
補正予算案に反対する第三の理由は、減税政策の方法についてであります。
政府は、今回新たに、基礎控除等の引き上げ、税率の緩和により、千六百五十億円の所得税減税を行なわれたのでありますが、その国民大衆に与える効果たるや、まことに疑問であります。第一に、今回の減税政策が景気刺激策の一環として行なわれたにもかかわらず、減税額の大部分は消費性向の低い高額所得者に回され、
政府の所期のねらいである景気刺激に対しても、その効果が非常に薄いことであります。第二に、現在、勤労者が最も強く要望していた給与所得控除の引き上げが全く見送られ、税率の緩和に重点を置き、その結果、全勤労者の三%にしかすぎない年間三百万円から五百万円の高額所得者を優遇する結果になっていることであります。まさに、課税の基本原則である
税負担の公平、平等の原則が無視され、むしろ不平等の拡大がはかられているといっても過言ではありません。このような重大な矛盾をはらんだ減税であるにもかかわらず、減税さえすればよく、中身は二の次であるという
政府の安易な態度はきびしく批判されなければなりません。
わが党が本
補正予算案に反対する第四の理由は、その歳出面において、依然として、道路整備等を中心にした産業基盤整備
関係公共投資が優先されている点であります。たとえば、現在なお、最も緊急な国民的願望課題の
一つであり、また、現在こそその実現の絶好の機会でもあります住宅不足
対策につきましては、今回の
補正予算案におきましてわずかに百三十億円しか追加されておりません。このような産業基盤整備優先、
生活環境整備軽視の公共投資政策の方向こそ、いつか来た誤った道であり、これには強く反対せざるを得ないのであります。政治は選択であるといわれます。私も、産業基盤整備の必要性を否定するものではありません。しかし、現時点においてわれわれがとるべき選択は、産業基盤の整備よりも
生活環境の整備であることは明らかであります。
佐藤総理も、水田
大蔵大臣も、よもやこのことを否定はされますまい。ならば、なぜこれを実行に移されないのでありますか。
予算は政策を
数字で示すものといわれます。なぜ
予算案にこれを反映されないのでありますか。
最後に、私は、今後の新しい
経済政策のビジョンについて、
政府が何ら国民にその指針と具体案を示していないことを指摘したいのであります。
いまや、国民は、日米
経済関係の悪化、円の実質的切り上げ等による先行き不安、それによる国内
経済の不況の深刻化に対し、非常な
生活不安と政治不信に見舞われております。この国民の
生活不安と政治不信を一刻も早く解消し、
日本国の今後進むべき道を明らかにし、国民に対し安心と希望を与えるのが政治の使命であると私は思います。申すまでもなく、今後わが国の進むべき道は、
経済的軍事的大国の道ではなく、国民の健康と暮らしを守る高度福祉社会の建設の道でなければなりません。また、その具体的施策として、
生活環境整備中心の新しい各種年次計画が、その
財政的裏づけとともに早急に立案されなければなりません。いまこそ、
政府は、一刻も早く、国民の不安と動揺にこたえるあすへのビジョンを策定され、これを実行に移すプロセスと、その
財政上の裏づけを示されるべきであります。その際、人よりも
経済に、国民よりも企業に顔を向け続けてこられた従来の
政府の姿勢を百八十度転換されることが、その出発点でなければなりません。
私は、国民にかわりこのことを強く
政府に要望いたしまして、
補正予算案に対するわが党の反対討論を終わります。(拍手)