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正木委員 ものごとには、一〇〇%善であって悪がゼロ%なんという、そんな
考え方はないのです。これはすべて価値判断でございまして、いいところもあるが悪いところもある。どちらがいいところが多いかということで判断をするのでありまして、いま
通産大臣がおっしゃるように、
政府間協定で一〇〇%メリットがあって、いいところがあって、悪いところは全くない、
国会でいじめられるぐらいのものだなんて、そんな気楽なことを言ってもらっては困るのです、ほんとに。あるのです。私は、あなたはどうお
考えになっているかわかりませんが、いまあなたがあげられたこのメリットというもの、これは全部砕けるのです。よ。それでデメリットの最高のもの、デメリットもたくさんありますが、最高のものは、
政府間協定の場合には相当長期化するということです。あなたは三年できめたんだからだいじょうぶだと言いますが、あなた、この
覚書の中を見てごらんなさいよ。ずいぶん
アメリカの一方的な意思によって規制のできるという条項が、綿の
協定よりもなおたくさん、しかもきびしく行なわれていますよ。
そこであなたは、最初おっしゃいましたのは、規制が三%伸びから五%伸びになった、そういうことですね。あなたは記者会見でも盛んにこのことをおっしゃる。実際に
田中通産大臣は、
繊維問題をほんとうに理解なさっているのかどうかということを疑問にさえ思うぐらいです。これは総括規制の中で五%伸びたのではないのですよ。個別規制でそれぞれに五%伸びているのですよ。そういうことは、
繊維製品では流行が多いわけです。はやりすたりが多いのです。そういう中で、伸びるやつは前年に比べて倍も三倍もふえるのです。これを五%と押えられるのです。売れないものは前年の何分の一かに減ってしまうのです。そういうものは個別規制で五%の伸びといったって、総体では五%の伸びにはならないでむしろ減るということは、専門家であれば必ずわかるはずです。それを、あなたが得々として五%の伸びを確保したということを記者団に発表なさって、記者を通じて
国民に発表なさって、鬼の首をとったように
政府間協定をおっしゃいますが、これは決してそうではありません。そういう
意味では、
繊維の輸出は大幅に減少するということです。ですから、これは何にも手柄ではありませんよ。メリットではありません、デメリットです。そして七月の施行が十月になった。こんなことはたった三カ月のことで、しかもこれが、最初申し上げたように非常に長期的な含みを持つ。これは綿の
協定からいったって当然
考えられることであって、短いものが次から次へと延長されて非常に長い期間になるということは、
政府間協定の場合あり得るのです。
なぜかならば、いわゆる
ガットの精神、いわゆる自由
貿易の精神からいえば、こういう輸入規制だとか輸出規制だとかいうような問題は、当然追放されるべき
考え方です。いま
アメリカが、
佐藤さんのことばをかりて言うならば、非常事態であるからこれをやむを得ないとしても、これがここ十年、二十年と続くわけが絶対ないです。一方
的規制の場合には、これはきわめて短い期間に、いわゆる世界の
国際世論に押されて撤廃されなければなりません。ところが、
政府間協定の場合には二国間の
協定でありますから、相変わらず
アメリカに首根っこを押えられたままで続いていきますよ。これはもう完全に長期的に続きます。したがって、三カ月のことは自慢になりません。これから何十年先、長くこの
政府間の
協定によるところの規制が続くということを
考えれば、これは決してメリットではありません。
それから、シフトの問題をおっしゃいました。シフトの問題が、一方
的規制よりも
政府間協定の規制のほうが楽だと言いますが、シフトというのは自由ですか。完全に自由ですか。そうじゃないでしょう。シフトというものはいわゆる緩和措置です。いわゆる融通できる姿です。これは二・五%ないし三%とか五%とかいうようなシフトしかないのですよ。こういう問題がどうしてメリットですか、こんなシフトがあったって。そのシフトが無制限であるならば、これはメリットの条件と数えていいかもわかりませんが、このシフトに制限がある限り、先ほど申し上げたように、大きく伸びる輸出品と大きく減っていく輸出品とのいわゆる伸びを
考えたとき、幾らシフトをここではさんでも、結局は輸出は減ってくるのです。総体的には輸出が減るのですよ、
政府間協定では。
そして課徴金の問題をお出しになりました。これはごもっともだと思うのです。これは一時的にはメリットであるかもわかりませんが、この課徴金という問題は、いわゆる国際的な平価調整というものができれば、これはもう世界的に非難を受けておる制度でありますから、これは絶対撤廃されなければなりません。これは、長い期間にわたって課徴金がこのまま続くという情勢は
考えられません。そうなってくると、これは決して絶対的なメリット、いわゆるいいところというふうには
考えられないわけです。
そういうふうに
考えてまいりますと、根拠法も明らかにされずに、向こうが困っておるからというのであなたがお引き受けになった。そうしていわゆる針小棒大に、針のようなものを棒のように大きくメリットとしてやられておるけれ
ども、そしてことばを全然触れられないところに、いわゆる短期に被害を受けてそして長期的にいい
方向へ伸びていくという一方
的規制と、そして短期的には非常に有利なように見えるかもわからないけれ
ども、長期的には大きな損失をこうむるというような
政府間協定、こういうものに踏み切られた。しかもここに重大なことは、
国会の
決議を踏みにじってまでやったというところに、重大な問題があるのです。
したがって、この
繊維規制という問題につきましては、これは
田中さん、気の毒だけれ
ども答えてください。これは絶対まずいですよ。絶対まずい。したがって、これをどういうふうにあなた方は改善していこうとしているのかということ、しかも私がいまあげました一つ一つの条件について、あなたに言い分があったらお聞きしましょう。