○矢野絢也君 私は、公明党を
代表いたしまして、昨日の
総理の
所信表明に関しまして、現在の緊急
政治課題である
沖繩返還問題、
日中国交回復問題及び
日本経済の新しい
方向、特に当面する
経済混乱への緊急対策などについて、
佐藤総理に御
質問をいたしたいと思います。(
拍手)
今日、
国際情勢の変転は激動をきわめ、その中で、
わが国の
役割りは重大であります。なかんずく、
わが国の
方向を指導される
総理——佐藤さんのことです。
総理の
責任と使命は、今日、きわめて重大であります。
佐藤内閣の命運すでにきわまれりということは、これはもうすでに常識になっておりすす。しかし、
総理、やめろとかやめないとか、そんな押し問答しておる間にも、
国際情勢は急激に動き、
国内中小企業や勤労者は、その日その日の
生活をかけた苦しみを戦っております。おやめになるその日まで、あなたは
日本の浮沈と興廃を握る
総理であります。
佐藤内閣七年間の終幕にあたり、今日までの誤ったいきさつに固執されるよりも、今日の
混乱にどのように対処し、次の新しい展望をどのように開かれるかが、あなたの
国民に対する義務であります。その
意味において、
総理、しっかりしてもらいたいと願うのは私一人だけではありますまい。
今日まで
わが国は、第二次
世界大戦後のサンフランシスコ体制、安保体制、並びにこれに基づく
アジアの冷戦
対立の中で、二十数年の星霜をけみしてまいりました。
自民党の諸君は、
安保繁栄論であるとか、日米のパートナーシップこそわが繁栄の根本であると、鳴りもの入りで
主張してこられました。私たち野党は、大国のエゴイズムヘの盲従をしいられたこのような力の論理による戦後体制の延長が、
アジアの平和に逆行し、
緊張を激しくする危険なものであることを指摘し続けてまいりました。今日までの
日米関係は、
わが国が常に被保護国であるにふさわしい従順な弱国にとどまる限り、ネコかわいがりも期待できたかもしれませんが、国力の充実に伴って、必ずこのパートナーシップは
対立に変わり、
軍事同盟体制は必ず
軍事力の
肩がわり要求に転化することは必然であります。いわば強者の命令と弱者の従順に基づく何らたよりにならないものであり、そのこと自体が
わが国の主権と主体性を侵害するものであることを指摘してまいりました。その
ゆえにこそ、平和と
相互尊重の
原則に立った自主的、合理的な
外交政策の展開こそ肝要であることを
主張してきたのであります。
今日、
わが国の頭越しに行なわれる
ニクソン訪中、あるいは
アメリカの新
経済政策、
繊維交渉、なかんずく対敵国通商法を適用するなどの脅迫、これら一連の
アメリカの
わが国への強圧的な
姿勢について、私はここで伺いたいのですが、
安保繁栄論や日米のパートナーシップを
主張された諸君はこれをどう説明されるのか、とくと伺いたいのであります。(
拍手)
反面、
国際政治の根底はマキャベリズムであるといわれております。
アメリカがインフレ、高
物価、失業、
ベトナム戦争の行き詰まり、これはまあいわば身から出たさびでありますけれども、きわめて
アメリカが困難な条件の中でこのような一連の行動をとることは、むしろそれが、
政治の冷徹さという面で見る限り当然であるとする向きもあります。むしろそのようなことすら予想だにもしないで、砂上の楼閣に、
無為無策に終始し、今日いたずらに周章ろうばいする
わが国政府の
責任こそ糾弾されなければなりません。(
拍手)
公明党は、イデオロギーとか、あるいは党利党略のみでかかることを申し上げているのではございません。
日米関係の大切なことは十分承知しております。ただ、独立国家にふさわしい、そして
国民を
代表する
政府にふさわしい主体性と
責任を持ってもらいたいと
主張しておるのです。わが党は、
自民党政府の対米追随、
国民不在の誤った
政治の
責任を今日まできびしく追及してまいりました。しかし、それとともに、与野党の立場の違いこそあれ、また、あげて
政府の
責任であるとはいえ、ともに
政治に携わる者の一員として、あすへの展望が
混乱した今日の事態を招いたことは、
国民に対しまことに申しわけないことだと、心から
考えております。
願わくは、
総理をはじめ
政府・
与党各位は、多数に安住することなく、
国民の声に真摯に耳を傾けられ、そしてさらに
日本国民百年の平和と繁栄のために、冷静に、大胆に正しい方策を選ばれることを、心より期待するものであります。
さて、まず
沖繩返還協定について逐次御
質問をいたします。
政府は、
核抜き本土並み返還であると言われる。であるならば、それぞれ、みずから正しいと信ずる
政策に従いまして、
核抜き本土並みがいいのか悪いのかを議論されなければなりません。しかし、私たちは、
沖繩の即時
無条件全面返還こそ、正しい道であると信じております。したがいまして、この
核抜き本土並みは、よいとは申せません。しかし、それよりももっと大事なことは、この
政府のいう
核抜き本土並み返還がほんとうなのか、うそなのかという議論が本
国会において必要であることは、全く情ないことであります。(
拍手)
国民は、
核抜き本土並みのこれがよいのか悪いのかと判断する前に、これがほんとうかしらという切実な疑惑を持っております。
総理、
核抜きやあるいは
本土並みでよいのか悪いのかの議論よりも、ほんとうなのか、うそなのかの議論が必要であるということは、これは
繊維交渉にも見られたことでありますが、とりもなおさず、
政府のなさることが
国民に全く信用されていないということであります。なぜそのようにこそくなことをなさるのか。率直に事実を
国民に告げ、国の大事を
国民とともに悩み、ともに解決しようとはなされないのか、全く悲しむべきことであります。
私たちがこのように
核抜き本土並みは欺瞞だと申し上げれば、おそらく、
政府は、それは野党の思い過ぎである、
安保条約がそのまま適用されるのだから
本土並みだ、核についても事前
協議でお断わりするのだから安心しなさいと言うでしょう。しかし、ジョンソン国務次官補あるいはチャップマン海兵隊司令官その他、
アメリカ政界、軍界の発言は、核隠しであり、有事持ち込みであり、
沖繩基地の事実上の自由使用が運用面で保証されておるという趣旨の発言ばかりであります。安保がそのまま
沖繩に適用されるということは、形式面での
本土並みであって、それはしょせん詭弁にすぎません。あの膨大な
沖繩基地の面積、
機能は、どれを見ても、どこを見ても、
本土並みなどと言えるものではありません。
政府が、まじめに返還問題を
国民のコンセンサスの上で審議をしてもらいたいと期待するならば、私はまず次のことを
要求したいと思います。
まず、核は、
沖繩はもちろん、
日本に持ち込まないことを明らかにした日米の交換公文、
わが国国会の非核決議、さらに、
安保条約の事前
協議について、
わが国政府にも発議権、拒否権があることを明確にした日米間の交換公文、さらに
沖繩基地の査察権、あるいは
基地のすみやかな縮小、撤去の計画案、これがあって初めて
政府は、
核抜き本土並みですよと公言し得るものであります。(
拍手)かかるものを用意しないで、口先だけで「
核抜き本土並みだ、
総理の言うことだから信用しろ」などとは、これはもうはなはだ失礼ながら笑止千万であり、
国民を愚弄するものであります。(
拍手)
沖繩返還協定は、一昨年の佐藤・
ニクソン共同声明がその基礎になっていることは、その前文に明らかにされているところであります。すなわち、
アジアの冷戦的発想に基づき、
中国敵視、封じ込め
政策がその基礎となっていることは、
共同声明の、
韓国、
台湾並びにベトナム問題に言及している部分に明確に示されております。
しかしながら、この二年間、客観
情勢が大きく変わってまいりました。
アメリカ自身が、従来の
中国敵視政策をはじめ、
アジア極東
政策の大きな転換を余儀なくされておる今日、
アメリカにとりましても、
沖繩基地の
軍事的価値は二年前の認識にこだわる必要もなくなり、いつまでも
沖繩基地を太平洋の
軍事的かなめ石として
わが国が黙認する必要もなくなったと思います。このことは、極東の安全のために
沖繩米軍基地並びに
米軍の果たしている
役割りの重要性を強調しておった佐藤・
ニクソン共同声明が、いまや時の流れとともに
誤りであったことが実証されたというべきであります。これに基づく
返還協定もまたその基礎を失ったことになると私は思うのでございます。
総理、あなたはいまでも
沖繩基地が
日本の平和と安全にとって不可欠のものであると
考えておられるのかどうか。もし
考えておられるとするならば、それでは
わが国に脅威をもたらすのはいずれの国なのか、具体的に御説明を願いたいのであります。(
拍手)
私は、まず第一に、
返還協定を、せっかくこのように苦労してまとまったものだ——確かに苦労はなされたと私は思います。しかし、このようにまとまったものだと誤った執着を持つことなく、
国際情勢の変化に従って、
軍事的ではなく、平和のキーストーンとしての
沖繩返還を目ざし、日米再交渉を行なうのが
政府の義務であると思うのでありますが、
佐藤総理にその用意があるのかどうか伺いたいのでございます。
佐藤・
ニクソン共同声明、あるいはこれに基づく
沖繩返還協定は、日米安保の
アジア核安保への変質を示すものであるといえます。すなわち、
本土にはない謀略的かつ攻撃的
機能と任務を持つ特殊部隊がほとんど残されておる、また、対共産圏向けのVOA放送が存続される、さらに、事前
協議の形骸化による実質的な
基地の自由使用が、
沖繩に限らず
本土にも、もたらされるという、いわゆる
本土の
沖繩化が必然となるのであります。これらの点がどうして安保のワク内に入るものでありましょうか。安保のワクに入る、そういう
意味の
本土並みではなくして、安保のワクが広げられたと
理解するのが当然ではありませんか。(
拍手)安保が変質していないとするならば、
政府は、返還後の
米軍基地の
実態を、あるいはその行動範囲などを、かってなことを許さない、かってに核などを持ち込まさない、そういう
意味での確認の方法はどうなっているのか、明らかにしていただきたいのであります。
核兵器についても、
国民の疑惑は高まっております。
政府が
核抜きというなら、それを証明する具体的な手段あるいは証拠をここに示していただきたい。核装備していることが常識化されておる
沖繩の戦闘爆撃機のあの核の確認はどうなるのでしょうか。数千発といわれる核弾頭の撤去を確認し、県民を納得させることができるのでしょうか。日米間の不信が今日たいへん積み重なっております。こういう現在、いままでのように日米信頼のきずな、こういうような、わからない
わが国政府の希望的意見ではなく、
国民すべてがなるほどと納得する御説明を伺いたいのであります。
米軍基地の撤去は、県民の正当な権利の
回復実現のため、切り離せない大きな問題であります。しかし、
政府は、単なる
米軍基地に関する了解覚書によって事を済ませ、大部分の
米軍基地を永久的に固定化させようとしているのであります。さらに加えて、
米軍基地の返還後に
自衛隊を継続的に派遣し、しかも、この
基地を確保するために、暫定使用法案という強制立法を行なおうとしていることは、これはきわめて重大であります。
米軍にかわって引き続き
日本政府が
沖繩に
軍事優先の支配を行なおうとするものにほかならないと私は思うのでありますが、このような県民の主権を侵害する欺瞞的な強制
措置立法は、断じて許されるべきでありません。
沖繩のあの強力な
基地機能の維持が返還の絶対的条件となっておることは、
総理も、昨日、
所信表明演説でお認めになったところであります。この条件の
ゆえに、私たちも
沖繩の人々もすなおに祖国復帰が喜べない。このような
軍事基地機能の維持が絶対条件である。だからこそ、すなおに喜べないのであります。
わが国自衛隊の駐留もその条件のためのものでありましょう。このような
自衛隊派遣を取りやめるべきだと思いますが、
総理の御
見解を承りたい。
軍事優先の
沖繩返還、
わが国自衛隊の増強、産軍複合の進行、これは
アジア諸国の恐怖心をかき立て、
国際緊張を高めておることは、否定できない事実であります。
政府が、
わが国の平和国家としての
姿勢を
内外に明らかにされようとするならば、
憲法の原点に立ち戻り、安保を早期に解消するとともに、日
中国交をすみやかに実現し、攻撃的な第四次
防衛計画を中止するなど、具体的な事実をもって示していただきたいのであります。
さて、私は、先ほど小坂議員も触れました、あるいはまた、
総理も先ほど言われましたが、
沖繩返還協定が批准されなければ
沖繩は返らなくなる、こういう
意味の発言をなさったことをきわめて重大視するものであります。
私たちは先日
沖繩のまじめな青年と懇談する機会がありました。実にまじめな、平和を愛し——それこそ、
総理の言う、自由を愛し平和に徹するといいますか、
総理が言ったのじゃあまりぱっとしないのでありますけれども、
沖繩の青年は真剣に平和を願って、いろいろな
考えを述べておりました。そのとき、私たちのある人が、
返還協定は
国会対策の
運営上反対する、ほんとうにこの
返還協定をぶっつぶしてしまったならば
沖繩が返らなくなる、それでも
沖繩の人はいいのだろうか、このように
質問をしたわけであります。このような
質問は、私たちの場合は、そんな皮肉な、いやみな
意味で聞いたのではありません。しかし、それに対して、
沖繩の青年の諸君は、何も答えられなかったといいますか、ほんとうに平和な
沖繩としての返還も願いたい、しかし
基地は困るのだと言って、そこにおった青年の諸君は涙ぐんだのであります。
私は
佐藤総理にお願いをしたいのでありますが、あの終戦後、あの敗戦、そしてその後の二十数年間にわたる
米軍の圧制のもとにあって、ほんとうに
米軍の
基地は困るのだ、しかしそれでも早く祖国に返りたいのだ、私は、そういう青年の方々の、むしろ慟哭ともいうべき悲痛な声に、こんなことは聞くべきではなかった、聞いてはならないのだと心底から思ったのであります。(
拍手)
私は、
自民党の諸君が、
返還協定に反対するのは
沖繩が返らなくてもいいのだ、こういうようなことを言われるのに心から憤りを感ずるのであります。(
拍手)そうではない。私は、平和の島としての
沖繩の返還を
自民党の諸君も真剣に
考えるべきだと思います。
さらに、こういった
意味で、わが党は、この際、本
国会において、
沖繩の平和宣言あるいは非武装宣言を行なって、この二十数年間の苦悩に耐えてきた
沖繩の人々に対して報いるべきではないか。
軍事基地、
軍事施設をすみやかに撤去し、また、将来においても永久に
沖繩を平和な島にすべきが、
本土の私たちの
責任ではないかと思いますが、この平和宣言、非武装宣言についての御
見解を承りたいのであります。(
拍手)
次に、
中国問題について御
質問をいたします。
歴代
自民党政府は、
一つの
中国と称しながら、その
中国を
代表する正統
政府は
台湾にある蒋介石政権であるとの、私たちから言えば虚構に満ちた
政策を続けてまいりました。今日の
中国をめぐる
内外の諸
情勢の急激な変化に、ただ周章ろうばいするばかりでなく、もはや何とも説明のつかない醜態を演じておられるのであります。
中華人民共和国が
中国国民を
代表する唯一の
合法政府として
国連に復帰することは、もはや時間の問題としてだれの目にも明らかになり、とどめることのできない
世界の潮流となっております。
わが党は、御承知のとおり、去る六月に
中華人民共和国を
訪問し、対等、平等、
相互尊重の
原則を守り、
国民政党として
わが国民の意のあるところを
主張し、五項目にわたる
日中国交回復のための
原則を明らかにしてまいりましたが、(発言する者あり)さらに、先日、与党議員も含めた日中議連の訪中によって、公明党五項目と軌を一にする四つの
原則があらためて明らかにされたのであります。
いま私にだれかがやじを飛ばしましたが、そのやじは、与党の、私たちと
考えを同じくする諸君にも向けるべきだと私は思う。(
拍手)
今回の日中議連の訪中成果をどのように評価しておられるのでありましょうか。御意見を承りたいのであります。
わが党は、これまで、あらゆる機会を通じて、
中国の
国連代表権問題について、
中華人民共和国の
国連復帰を妨げる敵視的な方策をとるべきでないことを
政府に
要求してまいりました。しかし、
政府は、
中華人民共和国を実質的に
国連から締め出す逆
重要事項指定方式、あるいは複合二重
代表制の
提案国になったのでありますが、近く
国連総会においてこの問題がクライマックスを迎えます。これら二つの
中国を締め出す
決議案が否決され、
中国を
国連に招請するアルバニア案が通過する見通しが濃いといわれております。
そこで、いまならおそくはない、すみやかに誤った
共同提案国から
わが国は脱退すべきであると
考え、それを求める
決議案を社会、民社両党とともに提出をいたしましたが、これを拒否し、何ら誠意の見られない
姿勢でありました。
総理に伺いたいのでありますが、なぜそこまで
中国を敵視し、不自然な
日中関係を続けなくちゃならないか。先ほど
総理も、敵視していないと言われましたが、これはことばの遊戯であります。
総理は国益をしばしば口にされます。
中国の
国連復帰を妨げるかかることが、どのように
わが国の国益に合致するのか、
国民は全く
理解できないのであります。その理由と、
国連での表決の見通しについてどのように分析をしておられるかをお聞かせ願いたい。
もちろん、かりに日米両国の悪だくみが成功し——これは悪だくみなんです。これが可決されたとしても、
中国を締め出し、
世界の
大勢を逆行させようとした
責任は、消えるものではありません。しかも、一般に予想されるごとく、共同提案が否決されたとするならば、これはきわめて重大な
政治責任が追及されねばならないのであります。もし否決されたならば、それは
わが国の
世界政策が
世界の少数意見であり、しかもそれが
世界の多数意見を妨害する形であっただけに、今後の
国際社会における孤立を招き、
わが国の立場を著しく傷つけるのみならず、先見性のなさ、主体性のなさについて、
世界の嘲笑の的になるに違いありません。ましてや、
自民党内の有力な反対や
国内世論の
大勢にまでさからってかかる結果を招いたことは、きわめて重大であります。その節には、みずからの
政策の破綻を率直に認められ、即刻その
責任を明らかにされて退陣なさるべきであると思いますが、
佐藤総理の御決意を承りたいのであります。(
拍手)
佐藤総理は、二つの
決議案の
提案国になる、そのことを
わが国が決定したときの
記者会見で、あくまで
中国は
一つであり、これは経過的
措置であると述べておられる。
国連に二つの
中国、あるいは
一つの
中国一つの
台湾をつくり出すものにほかならない両
決議案は、明らかに二つの
中国を目ざすものであります。これはどういう理由で
一つの
中国ということになるのか、私もわからないのでありまして、納得のいく御説明を承りたい。
さらに、先ほど御
答弁の中で、経過的とはことばどおりであるとお答えになった。正確な
日本語の解釈から申し上げますと、経過的というのは、目ざす
方向が明確に設定されており、それに至る過程、これを経過的というのであります。
総理は、その目ざすゴールを明らかにしないまま、経過的ということばを使っておられる。どのような
中国政策がその経過の最後、ゴールに設定されておるのか。たとえば、
中国を
代表する唯一の正統
政府は
中華人民共和国であり、
台湾は
中国の領土の一部である、このようなゴールが想定されて、その上でそれまでの経過的
措置ということなのか、あるいは、目標もきまらないで、時間かせぎの単なる経過的ということなのか、そういった点について、ことばどおりだなどという、そんな子供だましの御
答弁じゃなしに、まじめにお答えをお願い申し上げる次第でございます。(
拍手)
中国問題について御
質問を終わるにあたりまして、
総理に強く要望申し上げたい。
すなわち、今日の
わが国は、少なくとも
中華人民共和国政府が
中国を
代表する唯一の正統
合法政府であり、すみやかに
わが国との法的
戦争状態を解消し、
台湾の帰属未定論を明確に否定して、
台湾は
中国と不可分の領土であり、
中国の一省であり、
日台条約はその
ゆえに廃棄されるべきであることを明確にした
国会決議を成立せしめ、それを転機として
政府の
中国政策を転換し、
わが国と
アジアの平和と繁栄を期せらるべきであると思うのでありますが、
総理の御
見解をしかと伺いたいのであります。
ここで、日中問題につきまして、さらに先見性と良識のある
自民党議員の諸君にお願いを申し上げたいのであります。
日中国交回復には
佐藤総理と意見を異にして、きわめて前向きの意見を述べる人が
自民党内にもおられるのであります。非常にけっこうなことでありまして、尊敬を申し上げておる。しかし、そういう諸君も、
沖繩の返還については、これに賛成をされておる。これは、正直申し上げて、
理解に苦しむものであります。すなわち、
中国敵視政策も、
沖繩の
軍事優先返還も、すべて
アジアの
冷戦構造の既定図式の上に成り立っておるのであります。このような
軍事優先の
沖繩返還協定に賛成をしながら、
日中国交回復——まあ私は、何といいますか、御尊敬の
意味で申し上げておるわけでありますから、悪気を持たないでください。願わくは、
日中国交回復を前向きに
考えるならば、
中国問題と
沖繩とは一体であります
ゆえに、この
軍事優先の
沖繩返還につきましても、何とぞ当然の批判をされるべきではないかと私は思います。(
拍手)まあすべからく熟思再考をお願いする次第でございます。(
拍手)
わが国経済は、
米国の新
経済政策によりまして、不安と
混乱におちいっております。
米国が深刻な
経済危機を招きましたのは、
ベトナム戦争などの海外
軍事行動による浪費、放漫
経済政策などによるものであります。それらにつきまして
米国は深刻なる反省を全く抜きにして、諸外国に理不尽な
要求をするに至っては、これは言語道断というべきであります。
しかしながら、これとあわせて追及されなければならないのは、今日までの
佐藤内閣の
経済政策であり、
外交政策であります。
総理は、せんだっての
アメリカのNBCテレビで、
日本と
米国は同じ船に乗り合わせておると、
米国の新
経済政策について積極的な協力
姿勢を示されました。これは、昨日の
所信表明においても明らかに見られる
基本姿勢であります。しかし、
相互の友好と申しましても、これは相手の
態度によりけりであります。ほんとうの友好とは、譲るべきは譲るが、争うべき正義の論点は一歩も引かず相手の反省を求めるのが、
国民の期待する日米友好ではないかと思います。
したがって、通貨問題の解決にあたっても、いやしくも
国民に不測の損害を与えないよう、多国間
協議によって通貨調整を行ない、一方的ではなく、
米国にも
ドルの切り下げ、課徴金の完全撤回を前提としての交渉をすべきであります。しかし、
アメリカは、
各国が、平価と
貿易障害、また、特に
防衛負担について十分な代償を提供しない限り、
ドルの切り下げや課徴金撤回についても容易に歩み寄ろうとしておらないのであります。
総理は、昨日の
所信表明において、いたく
アメリカの立場に同情と
理解を示し、あたかも弁護なさっておる印象すらありました。
総理、このような
アメリカの
姿勢は、
自民党の諸君がいままで賛嘆してこられた安保体制の相手方としてふさわしい
態度と思っておられるのでしょうか。あるいは、これは困ったことであり、許しがたいことであると思っておられるのか、その御心中をとくと伺いたいのであります。
特に、これからの円切り上げなど一連の通貨
政策について、その具体的なプロセスと目標をこの際明らかにされなければ、
国民はこの問題に冷静に対処できません。同時に、
総理は忍耐と時間と負担が必要であると述べておられますが、いつまで忍耐すればよいのか、そのめどとをあわせまして明快な御
答弁をお願いするものであります。(
拍手)
さらに、
繊維の
政府間協定は、
国会決議に反し、業界と
国民の強い反対にもかかわらず、
政府の独断で結ばれたのであります。しかも、
総理は、聞くところによりますと、今回のケネディ案を六月末に受け取っておられながら、それを隠しておられた。どういうことなんでしょうか。被害の立証されない限り
規制はあり得ないとの
国際経済の常識も振り捨て、みずから涙をのんで自主
規制に踏み切った業界の誠意と忍耐すらけ飛ばし、
わが国繊維業界の壊滅を
意味する今回の
政府間交渉は、これはもうむちゃといいますか無慈悲といいますか、言語を絶する暴挙であります。やはり二年前の佐藤・
ニクソン会談以来の
総理の密約といわれておりますが、こういうかってな手形のためではないかといわれてもやむを得ないと思います。この重大な疑問に対し、業界はもとより、
国民に十分納得できる御
答弁をお願いいたします。(
拍手)
あわせて、業界九百万人の従業員とその家族、
生活を守れる自信をどのような裏づけのもとに持っておられるか、具体的にお教えを願いたい。
さて、九月の日銀の月例報告は、
ドル・
ショックの影響が
実態面にあらわれたことを指摘し、景気
回復の期待が遠のき、不況が長期化することを示しております。さらに、現在の通貨
危機は、単に輸出関連産業のみならず、他産業に大きい影響を及ぼし、
わが国の総事業従業員数の七七%を占める中小企業に恐慌状態を招きつつあります。
わが党は、社会、民社両党とともに、九月二十二日、
政府に対して、中小企業緊急対策として、輸出取引の円滑化のための為替差損による損失補てんのための低利、長期の融資資金制度などをはじめ、六項目の緊急
措置を直ちに実施することを申し入れたのであります。これらの
措置を即刻実現されなければなりませんが、これとあわせまして、中小企業緊急対策について、もっと具体的な、もっと誠意のある
総理の御構想をお聞かせ願いたいのであります。
次に、社会福祉問題について
お尋ねをいたしますが、まず老人福祉につきましては、そのかなめである所得保障の年金制度は、
生活実態から遊離し、保障の名に値しないものになっております。直ちに老人一人につき二万円年金を支給することと、
物価に対応するスライド制の導入をなすべきであります。
また、現在全国約四十万人といわれる寝たきり老人をはじめ、六十歳以上のお年寄り、病気のお年寄りに対して、医療の無償制度の具化体が急務であります。
さらに、児童福祉の向上のための投資を惜しんではりっぱな国づくりはしょせん不可能でありまして、そのためにも、全部の児童に毎月三千円の児童手当の早期実施はきわめて大切であります。これらの施策の充実について御意見を承りたいのであります。
次に、
公害についてでありますが、昨年末の
公害関連法案、これは不十分きわまりないものでありましたけれども、
政府はこれによって万全の対策をとったかのごとき錯覚を持っておられるようであります。しかし、その後も
公害は一日も歩みをとめることなく……