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1971-12-01 第67回国会 衆議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十二月一日(水曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 松澤 雄藏君    理事 小島 徹三君 理事 高橋 英吉君    理事 羽田野忠文君 理事 福永 健司君    理事 畑   和君 理事 沖本 泰幸君    理事 岡沢 完治君       石井  桂君    大竹 太郎君       鍛冶 良作君    千葉 三郎君       村上  勇君    黒田 寿男君       日野 吉夫君    三宅 正一君       林  孝矩君    青柳 盛雄君  出席政府委員         公安調査庁長官 川口光太郎君  委員外出席者         最高裁判所事務         総局人事局長  矢口 洪一君         法務委員会調査         室長      松本 卓矣君     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申し入れに関する件  法務行政に関する件      ————◇—————
  2. 松澤雄藏

    松澤委員長 これより会議を開きます。  法務行政に関する件について調査を進めます。  本日、最高裁判所矢口人事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 松澤雄藏

    松澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  質疑の申し出がありますので、これを許します。畑和君。
  4. 畑和

    畑委員 私は本日、主として公安調査庁のほうにお伺いをし、また同時にあわせて、最高裁からも人事局長がお見えになっておりますから、最高裁考え方等も承りたいと思います。  というのは、ついこの間でありましたが、十一月十九日の朝日新聞報道するところによりますと、その前の十月の二日に開かれました司法独立を話し合うつどい、こういう裁判官のつどいがございました。二百八人ほどが集まりまして、司法独立について裁判官がいろいろ話し合いました。そのときに、講師として横田正俊最高裁長官我妻先生講演をその席でされ、それに質疑応答もあって、さらにまた集まった二百八人の裁判官人たちが、いろいろ司法独立の問題、司法危機の問題、こういった問題について真摯な話し合いをした会合が開かれたということ、これはすでに新聞紙上でも、各紙でも報道されました非常な注目を集めた会合でありました。この会合模様を聞こうというので、この十一月十九日の朝日報道に書いてあります中部公安調査局職員古市調査官という人が、名古屋の地・家裁川上孝子判事補、この方とちょっと知り合いだというような関係で、この判事補に対していろいろしつこく会合模様を尋ねたというようなことで、この川上孝子判事補は、その古市さんのことば、そういったことから判断をして、これは一般的にこうした集会に対して、出席をした人たちから、いろいろそのときの模様発言をした人の名前や人数といったようなことを、相当広く調査をしておるのではないかというような心配から、これが表へ出たということであります。  私も、実はこの新聞報道を見ましてショックを受けた一人です。たまたま現在司法独立をめぐって、いわゆる司法危機だといわれるような事態がいろいろこの二年ぐらい続いておりますが、そういった問題をまじめな裁判官たちが集まって話し合った会合、しかもその会合が、そういった意味合いの問題にならないような会合であったということ、そういうふうにわれわれも印象を受けておる。ところが、それにすら調査の手を差し伸べておるのかということで、私たちも非常にショックだったわけであります。  この新聞報道するところによりますと、古市調査官川上判事補金沢大学先輩後輩関係にあるということで、すでに一応の知り合い間柄ではあった。その古市調査官が一度会いたいということで、しかもまた重ねて裁判官室にも電話があって、急ぐ用事があるという電話だったので、近くの喫茶店を指定してそこで会った。そこで古市調査官が言うには、十月初めに裁判官集会があったでしょう、何でもいいから聞かしてほしい、裁判官全員に参加の呼びかけがあったのか、それとも特定の人だけに呼びかけがあったのかというような質問。また同調査官から、会議内容出席者などは一応東京公安調査庁でわかっているということ、各地の公安調査局からさらに実情を報告することになっていること、名古屋司法関係担当しているのは自分一人である、東京担当者大学先輩から聞けるが、自分はそうしたルートがなくて困っていることなどの説明があったと新聞では報道されている。いいかげんな資料判断されるより確実なものがあったほうがいいだろう、あるいはまた、裁判官はだれかが大きな声で言うとみんなそれに引っぱられていくのかなどとも尋ねた。また名古屋から何人くらい集会に行ったのか、何か一つ教えてほしい、集会のあったことは全員に知らされていたのかというような質問を繰り返した。結局最後には、何も聞けなかった、気が変わったら、私のポストにでも紙に書いて投げ込んでおいてくれ、こういうことで別れた、こう川上判事補が言っているようであります。  このことが報道され、同時にまた、そのときの新聞によりますと、中部公安調査局担当直属上司である第一部第一課長が談を発表いたしております。この談話によると、こういうことが書いてある。「裁判官であっても神聖不可侵ではない。裁判官の中に共産党員がいれば調査するのが破防法に基づく当然の職務で、古市調査官情報提供を求めたのも当然である」こう言った上に、「日本共産党組織のあるところはすべて調査対象である。とくに大企業、官公庁は国の基幹であり、そこにおける党活動には重大な関心がある。司法部門も当然その一部であり、青法協問題が表面化してからにわかに調査を始めたわけではない。古市調査官が十月二十九日、川上判事補に会って裁判官集会について情報提供を求めたことは報告を受けている。司法関係調査対象の一部にせよという職務上の指示にもとづいて、本人知人関係を頼りに情報提供を求めたわけだ。」ほかにもありますが、そういったような談話を発表いたしておるわけであります。これが事実といたしますと、相当これは問題だと思います。  ところで、同じそのあとの談に、おたく次長の冨田さんが、それをある程度否定したような談を言うております。「司法問題担当のセクションを設けているというようなことは絶対にないし、十月二日の裁判官集会について特別調査指示、命令したこともない。公安調査庁破防法関係調査仕事であり、裁判官行動を一般的に調査対象にすることはいっさいない。古市君のことは事情をきいていないので何ともいえないが、裁判官のほうで誤解をされたのではないだろうか。」こういうような次長談が出ておるわけであります。これは現場のほうの中部公安調査局課長談話を大部分は否定をしておる、こういうふうに考えられる。  ところで、ほかのその後の新聞によると、公安調査庁のほうでは、やはり若干行き過ぎであるというようなことを認めたような談話中央で発表しておるようなふうに見受けられます。このことについて、事実関係をさっき私、申しました。そしてその両方の談話を、新聞に出ている限りのことを読み上げてみたわけですが、これについて公安調査庁は、事実関係についてはどうなのか、さらにまた、公安調査庁としては、新聞にも出ているようでありますけれども公安調査局が謝罪をしたようなことも、何か名古屋司法反動化に反対する愛知県連絡会議という団体からの抗議に対して、それに返答をしたということの内容等について、また第一線の、先ほど私が申し上げましたことを若干否定するようなことも載っております。その辺、全部一応申し上げたのですが、公安調査庁長官としてどういうふうに事実を把握しておるか、またどういうふうな考えを持っておられるか、この点をまず承りたい。
  5. 川口光太郎

    川口政府委員 お答えいたします。  朝日新聞記事が出ました当日、あれは十九日と思いますが、私のほうでもそれまではそういう事実があることを知りませんでした。それで朝日新聞記事によりますと、名古屋地家裁川上判事補の言い分を一方的に取材して報道されたような記事内容でございましたので、まず事実関係を確認する必要があると思いまして、私のほうの調査一部四課長を、当日、十九日の午後であったかと思いますが、さっそく名古屋へ派遣いたしまして、古市調査官、それからその上司金矢一課長松田公安調査局長、この三人から詳しい事情を聞かせまして、その翌々日ですか、帰庁したところで詳しく報告を聞きました。  それによりますと、私どものほうの事実調査によりますと、大体古市調査官が十月二十九日、名古屋の地方裁判所近くの「ゆき」という喫茶店川上判事補に会って、二、三十分談話をしたそうでございます。その間に、御指摘の十月二日の裁判官懇話会と申しますか、そのことを聞こうとしたという事実は確かにあったということがわかりました。ただその発言が、川上判事補の受け取り方と、古市調査官の言ったのと、ことばが若干ニュアンスの相違と申しますか、たとえば先ほど御指摘の、公安調査庁本庁では何でもわかっているというように川上判事補は言っているのですが、古市君はわかっているはずだ、こういうふうに言ったと申しております。それは一例でございますが、大体そういうことです。それから司法担当自分一人だと言ったのも、これも何か司法担当というものが全国調査局にあるように川上判事補は受け取られたようですけれども、これはこの古市調査官名古屋公安調査局、大体七十名ぐらい職員がおりますが、その中で、大学の法科を出て一応司法試験勉強をしていたわけでございますが、司法関係について詳しいのは自分くらいだと言って、後輩の前でいばっていたのだ、こういうように申して、そこに非常に違いがあります。  それから金矢課長でございますが、これはちょうど古市調査官から直接取材しようと思って、朝日の小栗という記者が参ったそうでございますが、古市調査官が出張不在中だったのでその上司金矢課長が会って、大体午後五時ごろから一時間ぐらい、十一月十八日ですか、談話したそうでございます。古市調査官はどこの所属だというので、一課だ。では、一課というのはどういう仕事をしているのですかというその記者質問に対して、一般的に、一課というのは日本共産党担当である、日本共産党調査対象団体になっている。では、どういう方法調査するのかと言うので、いろいろ方法があるが、中には個人的な知り合いをたどっていろいろ断片的な情報を集め、それを総合して何らかの判断に到達するというようなこともやるのだ。裁判官でも調べるのかという質問があったので、一般的に、共産党活動裁判官に及んでいるという場合は、それも対象になるのだ、こういうふうに、一般的な問題として申し上げたわけでございます。それをこの裁判官集会そのものに結びつけて、途中がちょっと飛ばされたような形で談話が載っているので、ああいう印象を与える記事になった、このように私ども判断しております。  それから松田局長が十一月二十二日に名古屋高裁内藤長官のところへ参りまして、この裁判官集会調査したような誤解を与えるような記事になって、裁判官の方に御迷惑をかけたことは申しわけない、こういう意味の陳謝をしたというように伺っております。  以上でございますが、よろしゅうございますか。
  6. 畑和

    畑委員 いまの公安調査庁長官お話によると、中部公安調査局の第一課長談話、これは一般的な調査権限の話をしただけであるというようなお話のようでありますけれども、そのときは、当然古市調査官がそういった調査意図を持って川上判事補に会ったということはわかっているはずであります。  そこで、私、先ほど読み上げなかったのですが、その最後に、「ただ、そのとき川上判事補に断られて引きさがっており、情報提供を強要したということは全くない。」こういう談話にも明らかなように、おそらく情報提供を強要したということをポイントに考えて、強要したのじゃないかということが問題になっているのじゃないかということを考えたのじゃないか。したがって、その前段のほうのことについては、長官のおっしゃるような一般的なことというふうに限ったわけではないような感じが私はするのです。「裁判官であっても神聖不可侵ではない。裁判官の中に共産党員がいれば調査するのが破防法に基づく当然の職務で、古市調査官情報提供を求めたのも当然である」そのほかに、「司法部門も当然その一部であり、青法協問題が表面化してからにわかに調査を始めたわけではない。古市調査官が十月二十九日、川上判事補に会って裁判官集会について情報提供を求めたことは報告を受けている。」こういうことになっておるのです。またさらに、「司法関係調査対象の一部にせよという職務上の指示にもとづいて、本人知人関係を頼りに」云々、こう言っておるから、やはり指示をしたのではないかと私は思うのです。そういう点で、あなた方のほうの考え方現場のほうの考え方が、理解のしかたが事実相当食い違っておるのじゃないか、私はそういう感じがいたします。まあこうして問題になりましたから、中央のほうでは頭の整理もしてこの談話を発表しているのでしょうが、突然のことであったせいか、ある程度正直なことを中部公安調査局の第一課長は言ったのではないかと思う。その点が私はやはり問題だと思うのです。これはよほど注意してもらわぬといけないと思う。  大体、共産党がなるほど破防法にいう団体であって、それを調査するというのは破防法に基づく仕事とされておるような話ですが、私も最近の共産党のああした変わりようというか、それが本質かどうかわかりませんけれども、そういうことからいたしましても、どうも共産党だからといってすぐ調査対象にするということもいかがかと思うのです。まあしかし、そういうあれはまだ変更してないようでありますから、それは職務上当然だといえば当然かもしらぬのでありますけれども、この間の場合は、新聞でも報道されているように、また私もちょっと資料を読んでみたのですが、「判例時報」にもあのときの会合模様は相当こまかく載っております。最初に、集会を催した世話人の代表の森田宗一判事あいさつをしておる。そのあいさつを見ましても、まことに、これはもうほんとうに、何と言うか、あんまり意図的なものじゃない。ただ司法危機ということを心配しての上の、ひとつみんな対話をかわそうじゃないかというようなことでの集まりのようであります。それに横田さんも講演をしておられるし、また我妻さんも講演をされて、それに対する質疑等も、名前はあげてありませんが、ABCということで、相当こまかく質疑内容、それに対する答弁というような要旨が載っております。最後に、「意見交換と感想」というような欄も設けて、横浜地裁大阪地裁等の各裁判官人たち報告ども載っておる。これを見ましても、そんな公安調査庁で心配するような会合ではないはずです。  そこで私は、結局これが未遂に終わったけれども、単に古市さんだけの勇み足というか、それだけではないのじゃないかというような感じがいたすのです。それだからこそ一応こうして報道もされ、また同時に世間の注目を引いたことなんでありますけれども、この点いかがでしょうか、おたくのほうでは裁判官に対して特別に調査をするということはいたしておらないのでしょうね。その点をはっきり承りたい。また個々裁判官共産党員がおるとしたならば、あるいはその疑いがあるとしたならば、それも調査するというのか、その点も承りたい。
  7. 川口光太郎

    川口政府委員 お答えいたします。  御指摘のように、日本共産党破防法による調査対象団体に指定したのは昭和二十七年ごろでございまして、初代の藤井長官が指定され、それ以後ずっと調査を続けているわけでございます。その後、御指摘のように共産党は戦術を変えましたけれど、過去において暴力主義的破壊行為をやったという事実はございますし、現在はやっておりませんけれど、情勢の変化によっては、また将来そういう行動に出る危険があるのではないかという疑いをもって、引き続き調査を行なっているわけでございます。それで、その日本共産党活動裁判所の中に及んでいる疑いがありますれば、当然それも調査対象になります。私ども、各公安調査局あるいは全国各府県にもございますが、本庁長官がこういう団体、こういう団体調査するように——これは無制限にやらせますと、先ほど御指摘破防法三条の精神に違反するようなおそれがありますので、一応いろいろな状況から考えまして、この団体調査する必要があるというように長官がきめまして、これを指示いたします。そうすると、各公安調査局あるいは地方公安調査局では、その指定された団体についてだけ、組織とか活動とかあるいは他の団体に対する働きかけとか、そういうことを調査するわけでございまして、その具体的な調査方法は、結局最後には各調査官の創意くふうと申しますか、これにまかされるわけであります。  今度の十月二日の裁判官懇話会、私どもはこれは新聞で承知した程度でございますし、呼びかけ人の森田判事あるいは環判事等個人的にも知っておりますし、全然これを調査対象にするということは考えてみたこともございません。もちろん、これは調査せよというような指示もいたしておりません。これは新聞にも報道されたとおりでございまして、金矢課長発言がそれと非常に違うではないかという御指摘でございますが、これは先ほど申しましたように、一般論として、日本共産党活動調査する過程で裁判官調査することがあるのだというように申し上げたことが、話の前後で裁判官懇話会に結びついて、いかにも一般的に裁判官調査対象になっているように誤解を与えた。こういう誤解を与えるような話し方をしたという点については、私、これは遺憾であると考えております。しかし、古市調査官自体行為はこれは勇み足ではない、こういうように考えております。
  8. 畑和

    畑委員 今度の場合の古市調査官調査活動ですか、それは勇み足ではない。正しいと言うのですか、そういう意味じゃなくての勇み足ではないということですか、どっちですか。
  9. 川口光太郎

    川口政府委員 これはやはりある根拠に基づいて調査をしようとしたことでありまして、その目的とした調査のところまで話がいかないうちに、相手方の川上判事補が口をつぐんで全然応じてくれなかったもので、それでいかにも裁判官集会を調べておるような誤解を与えた。そういう点でちょっと措辞適切を欠いたと申しますか、しかし調査官としての職権乱用とか、あるいは行き過ぎとか、そういうことは言えないのじゃないか。今後よく注意するようにと口頭で注意はしてあります。
  10. 畑和

    畑委員 そうするとますます問題ですね。そうすると職務上の行為ですね。当然やるべき行為ですね。個人的な行為ではないのですね。新聞によると個人的な行為だというようなことを言っていたようなところもあったと思いますね。そうすると当然のことなんだということで、一体そういうことでいいのでしょうか。あなたも、情報を集める必要がある、一般的に裁判官というものを調査対象にはしていないけれども個々裁判官の中に共産党員あるいは共産党員疑いがあるような人がおると推定された場合には、これを探るということは当然だというようなあなたのおっしゃり方だと思う。またそういう理屈だと思うのですが、ただ、そうするとあれですか、何かやはりそれに関係した裁判官共産党員の人がおるのですか。何か川上さんに関係をした人でそういうような人がおるのでしょうか。さもなければやはりちょっと勇み足だと私は言ったのだ。指示に基づくものではなくて、若干個人的な、自分での、あれによると功名心とかなんとか書いてありましたね。誇大にあれして、考えてやったことだというような談もあったような気もしますが、そういう意味なんじゃない、やはり職務上の当然の行為だということ、それがただ誤解を受けたんだということだと、どうもはっきりしないのですが、その辺もう少しはっきり、明確におっしゃっていただけないですか。
  11. 川口光太郎

    川口政府委員 お答えいたします。  裁判所のことですから、われわれが申し上げないほうがいいかと思っていままで遠慮していたのですが、実はことしの夏ごろ、ある日本共産党員から、名古屋高裁管内裁判官グループに対して、ある種の働きかけがあったという情報古市調査官は得まして、何とかしてそれを裏づけるような資料を得たいと苦心しておったわけでございます。ところがそういうチャンスがない。たまたま古市調査官は、金沢大学の法文学部で川上判事補の四年先輩でございますし、それから、卒業後金沢弁護士事務所に五年くらい勤務しまして、司法試験受験勉強をしていたそのときの同じ勉強仲間川上判事補で、四年後輩でございますが、一緒勉強して昔からの親しい仲であった。そういう関係で、川上判事補が九州のほうから、昨年でしたかことしでしたか忘れましたが、名古屋へ転勤してきた。古市調査官も、一昨年金沢公安調査局から名古屋公安調査局へ転勤してきた。金沢大学の同窓会でばったり会いまして、そうしてまた旧交があたたまって、一緒に食事したり話をしたりするという間柄にあったわけです。  そういう個人関係で、たまたま十月二日の裁判官集会のことがいろいろな新聞に出まして、それから、たしか十月五日の朝日だったと思いますが、会議は、我妻さんと横田さんの話のあと非公開になった云々という記事があります。こういうことを思い出しまして、非公開の中でいろいろどういう討論がなされたのだろうか、働きかけを受けたという裁判官出席して、その非公式の席で何か発言しているのではないだろうか、そういうことをひとつ川上判事補がこの集会出席していたならば聞いて、その情報裏づけをとりたい、このように考えて、あの懇話会のことをちょっと話に出したら、川上判事補が固くなってしまって、全然話が進まないというので、その川上判事補の態度をほぐすために、いろいろな雑談といいますかをしたんだ、これがどうも事実関係のようでございます。そういう点で、やはりこれは基本的には職務関係であるというふうに私たちは認定したわけでございます。
  12. 畑和

    畑委員 そうすると、この集会の全部の模様というんじゃなくて、古市調査官がかねて調査をしようと思っておった、いま言った、要するにある共産党グループから名古屋の地・家裁判事のだれかに働きかけがあったというような情報をさらに確認をして、その働きかけたといわれるような判事が、はたしてどういう言動をこの集会でやっただろうかということの裏づけというか、そういうものをとりたいというような意図だったというふうに、いまの長官お話では承りました。  そうすると、あなた方のほうの調査対象というのは共産党であって、共産党から働きかけを受けたとなると、それは共産党に入ってくれというのかどうか、あるいはこういうことを言ってくれと言われたことがあったということだったのか、どういうのかよくわからぬけれども、やはり裁判官調査対象になる、こういうことになると思う。その裁判官共産党員ならばともかくも、そうでない人にそういうことで調査をされるということになると、これはなかなか司法権独立との関係が出てくるというふうに私は思うのです。一般的に調査することはない、ただ個別にはあると言われる。しかも今度の場合が、共産党グループからある判事グループ個人か、一人か複数か知らぬけれども働きかけを受けたような節というか、そういうことがあったから、さらにそういう関係を詳しく調べよう、こういうことだったと思いますけれども、そうなりますると、うっかり共産党員とも話もできないというようなことにもなってまいりますですな。これはやはり司法独立に対する相当な介入になるような感じが私はするのですが、その点はどうでしょうか。
  13. 川口光太郎

    川口政府委員 非常に微妙な問題と思いますが、私ども常々、破壊活動防止法による調査が、同法の三条に書いてありますように、個人の人権あるいは労働組合の活動に対して影響を及ぼすことがあるから慎重にやれという趣旨がございますので、絶えず会議とか研修とかのつど、もうそれは職員に徹底させております。  それで、いま御指摘のように、裁判官一般を調査対象にするということになれば、確かにその裁判官に対して不当な影響を与えるかもしれませんが、そういうことは決して指示はしておりませんし、本件は、たまたま先輩後輩という個人の非常に親しい間柄ということでやられたものであって、そういう裁判権の侵害とかあるいは司法権独立を害するとか、そういうことには当たらないのではないかと考えますが……。
  14. 畑和

    畑委員 どうも私はそれは承服できない。もっともあなた方はそういうふうにさせなければ、これは職務外だったなんと言ったらみんな士気がふるわないから、やはりかばうという気持ちになると思うのでありますけれども、これははっきりさせておかぬといかぬのじゃないでしょうか。これをしも、やはり個人的な関係知り合いだったというようなことを長官も言われるけれども、しかし、それとしてもやはり職務上の行為である、こういうことになる。こういうことだと、破防法三条のあの制限、これに触れるわけだと思う。それじゃ裁判官は安心して裁判ができないということになりはせぬか。やはり一般の裁判官としてこれは非常にショックだったに違いない、私はそう思うのです。これはよほど考えてもらわにゃいかぬと思う。  そこでお聞きしますが、一体あなたの調査で、日本の裁判官の中に共産党員がおりますかおりませんか。これはなかなか言えないかどうかわからぬけれども、わかっていたらひとつ話してください。
  15. 川口光太郎

    川口政府委員 現在、まだはっきりしたことを申し上げる段階ではございません。
  16. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 ちょっと関連して。はっきりさせなければいかぬのですが、長官の言われようとするところは、裁判官だろうが、代議士だろうが皇族の方だろうがだれだろうが、破防法対象になるような団体関係しているかどうかということについて、多少でも疑いがあればそれは捜査をするというふうなこと、たとえば高橋英吉が、自民党ではあるけれども、実はそれがカモフラージュだった、共産党関係を持っているとか疑いがあれば、高橋英吉を調べる。調べる方法は、いろいろの方法でやらなければいかぬし、慎重にやらなければいかぬ。制限も厳守しなければならない。だから今回の場合には、われわれは五分間人と話をすれば、大体その人の性格や気持ちがわかるのだが、長い間つき合っておって、そうしてそのときも相当長い間話をしておるわけです。そのときはすぐわからなかったということは、技術上まずかったということになるかもしれない、捜査の遂行上ですね。これは、とにかく破防法対象になるような疑いのあるものに対しては、神聖な職務の遂行として、あらゆる方法で法律に基づいた職務行為をしなければならないというふうなことです。それは裁判官だろうと検事だろうと弁護士だろうと代議士だろうと皇族だろうと、少しも差しつかえないというふうなことの基本的なものをはっきり答弁しておいて、いただければ、自然ほかのところは解決すると思うのです。
  17. 川口光太郎

    川口政府委員 いま高橋先生の言われたように、行き過ぎてはいけませんが、法律の範囲内で共産党の実態と申しますか、これを徹底して調査する。特に共産党の方針といたしまして、重要経営とか官公庁の中に奥深く党の組織を確立しなければいかぬというようなことが、これは従来の日本共産党会議で何度も発言されておりますし、これに応じまして、私どももそういう方面に対する日本共産党活動を特に重く見て、あらゆる手段と申しますか、力を尽くしてやっております。非常に不十分でございますが、その点に努力しておるということを申し上げていいと思います。
  18. 畑和

    畑委員 いま長官は、裁判官の中に共産党員がいるかいないかという私の質問に対して、どうもはっきりしない、こういうようなことばだったと思います。言えないというのではない、はっきりしないということですか。
  19. 川口光太郎

    川口政府委員 いるともいないとも申し上げられない、申し上げる段階ではないというわけです。たとえば学生時代に党員で、その後裁判官になったというような人がおるとします。ところが、御承知のように共産党では党員全部を発表しませんので、現在党員かどうか、昔は党員だったようだが現在はどうかということが、わからない者もいるわけでございます。そういう意味で、いるともいないとも申し上げられない段階である、こういうように申し上げておきます。
  20. 畑和

    畑委員 結局は、あなたのほうでいるということを握っておっても言えないというわけではない。いま言ったように、かつて共産党員であったような人がいることはいる。しかし、それがいま共産党に入っているか入っていないかはっきりしない、そこまではっきりさせるような段階にはまだ達していない、こういうことに承りました。  そこで、もう一つ伺いたいのですが、青法協ですね。あれは調査対象にしておるわけですか。
  21. 川口光太郎

    川口政府委員 青法協そのものは、調査対象団体ではございません。
  22. 畑和

    畑委員 そうすると、青法協の中に共産党員がいるということ、これは想像される。私たちもそれは否定しません。特に弁護士の場合などは、共産党員の人は相当入っておられるというふうに私は思っております。裁判官にはおそらくないだろう、私個人の考えですが。これだってあなた方のほうが専門です。専門の方はよくわかっているわけだが、これもしかし先ほどのような御答弁で、私はそうありたいと思っていますが、これはあくまで個人だけの話だと思います。団体としては青法協そのものも対象にはなっていない。ただ、その構成分子の中で共産党員がいるかいないかということで、その点についてだけの調査ということだと承知いたします。  それでは、大体調査庁のほうからの御答弁はそれまでにいたしまして、今度は、最高裁のほうの矢口人事局長がお見えになっております。いまいろいろこの問題につきまして公安調査庁のほうからお聞きをいたしたのですが、最高裁では、新聞報道するところによりますと、やはりこの問題を重視して、談話を発表されておると思います。その談話をめぐって、最高裁としてこの調査問題に対してどうお考えになっていらっしゃるか、その点を承りたい。
  23. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 私の名前談話を発表いたしますが、新聞に掲載されたとおりでございます。そこにもございますように、十月二日の裁判官の懇談会というものは、これに参加いたしました裁判官の数、あるいは講師として横田長官我妻教授がお出になっておるといったようなことを総合いたしますと、私どもといたしましては、破防法調査をすることを命じておる調査対象団体、そういったものからはほど遠い性格のものであると思わざるを得ないということが第一段にあるわけでございます。この団体と申しますか、懇談会は、その後法律雑誌にその会議内容等について報告がございましたが、私どもその当時の段階においては、中でどういうことが行なわれたかというようなことの詳細につきまして、承知いたしておりませんでしたので、そういった外形から見るよりほかしかたがないというふうには思いましたけれども、それにいたしましても、破防法による調査対象団体というものからほど遠いものであると見るのが相当であるというふうに考えたわけでございます。  にもかかわらず、現職の裁判官に聞きまして、その懇談会に関する調査を行なおうとされることは、どう考えてみましても破防法調査ということの範囲を逸脱したものであるというふうに考えられます。そのことは、やはり現職の裁判官についての調査であるという点を考えてみますと、司法独立という観点からきわめて遺憾であるということを考え、あのような談話を発表したわけでございます。
  24. 畑和

    畑委員 最高裁としては当然そうあるべきだと私は思います。それでなくても最近司法独立の問題については、いろいろな批判も最高裁に向けられておるわけでありますから、こういう点はき然としてはっきりさせる、こういう態度が望ましいのでありまして、この点は私は最高裁の態度を支持するわけです。そうすると、破防法第三条の制限規定に違反するというふうな最高裁の態度だと思います。  ところで、公安調査庁のほうは、先ほどはそこまで言っていない。結局職務上の行為だというふうに言っておられるが、いかがですか。逸脱した行為かどうかということです。逸脱していないとおっしゃるのですか、それとも逸脱しておるというふうに考えられますか、公安調査庁長官、いかがですか。
  25. 川口光太郎

    川口政府委員 先ほどお答えしましたように、私のほうは逸脱していない。
  26. 畑和

    畑委員 これははしなくも最高裁のほうと公安調査庁のほうで見解が違うということになったわけです。調査庁は調査庁での職務というものがあるからでありましょうけれども、しかし、裁判官一般の調査はしていないと一応言われるけれども、個別的にでもそういうふうなことを調査しようとして、裁判官の思想、信条の自由を脅かすような結果になっておると思う。裁判官としては非常に不安を拘くだろうと思っておる。したがって調査については、この間の調査しようとしたこと自身が私は非常に遺憾であると思うのです。両方とも明確な食い違いがあるのですから、これ以上追及することはやめますけれども、裁判が治外法権でないとおっしゃる。確かに治外法権でないかもしれぬけれども、裁判の独立ということで当然特別に考えるべきですよ。  そういうことで、以上で私の質問は終わります。また青柳君のほうからこってりやられると思いますから。
  27. 松澤雄藏

    松澤委員長 関連して、岡沢君。
  28. 岡沢完治

    ○岡沢委員 私は、三権の分立あるいは司法権独立に関連することでございますので、もう一度確認をいたしたいと思いますけれども、川口長官は、古市調査官の今回の行動は、調査官としての権限を逸脱していない、調査の権限を逸脱してない、勇み足でないという解釈を確認されますか。
  29. 川口光太郎

    川口政府委員 御指摘のとおりでございます。
  30. 岡沢完治

    ○岡沢委員 川口長官ももちろん法曹界のわれわれの先輩でございますので、ここで論議をちょうちょうすることは避けたいと思いますけれども司法権独立が日本国憲法の基本的な精神の一つであること、また憲法七十八条はそれに関連して、裁判官の身分保障を特に規定いたしておりまして、「裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒處分は、行政機關がこれを行ふことはできない。」という明文がございます。公安調査庁が行政機関の一つであることは、これは明らかであります。もちろん懲戒処分もなかったという意味ではありませんけれども、この七十八条の裁判官の身分保障は、やはり私は、三権分立の精神から、司法権独立の基本的なたてまえからこの規定が織り込まれたと思うわけであります。  先ほど長官の答弁にもございましたように、破防法の三条のきびしい制限がございます。「この法律による規制及び規制のための調査は、第一条に規定する目的を達成するために必要な最小限度においてのみ行うべきであつて、いやしくも権限を逸脱して、思想、信教、集会、結社、表現及び学問の自由並びに勤労者の団結し、及び団体行動をする権利その他日本国憲法の保障する国民の自由と権利を、不当に制限するようなことがあってはならない。」第二項に、「この法律による規制及び規制のための調査については、いやしくもこれを濫用し、労働組合その他の団体の正当な活動を制限し、又はこれに介入するようなことがあってはならない。」この規定は、人権侵害になってはならないということと、特に労働組合の団結権等をあげてはおりますけれども、その以前の問題として、裁判官独立というようなことを侵すことがあってはならないということは、私は条文以前の常識でもあるし、また条文が予想もしなかった形だと思うのです。私は、長官職務熱心のあまりかもしれませんが、たとえがいいとは思いませんが、木を見て森を見ない、ほんとうに憲法の精神、三権分立の精神、司法独立の立場からして、あの古市調査官行動調査権の範囲を逸脱していない、勇み足でないという考え方には、どうしても納得できないわけでございますけれども、私がこう申し上げても、長官としては先ほどの答弁に間違いございませんか。
  31. 川口光太郎

    川口政府委員 お答えいたします。  先ほど来るる申し上げましたように、古市調査官個人の友人関係を利用して調査をしようとした、その際の発言内容措辞適切を欠いた点がある、これで川上判事補に不安を与えたということは、私どもとしても残念に思います。やり方がまずいなということは考えます。しかし、これを調査権を逸脱したものだと言ってとがめるということはできません。もちろん、裁判の独立の重要なことは私よく承知しておりますし、先ほど申し上げましたように、職員にも行動その他を慎重にするようにということは常々申しております。
  32. 岡沢完治

    ○岡沢委員 見解の相違とおっしゃればそれまでではありますけれども、しかし、現職の裁判官に与える心理的な影響、それは当該裁判官だけではございません。裁判官一般に与える心理的な影響、不安あるいは国民に与える司法権独立についての不安、これは先ほど来申し上げておりますように、公安調査庁が……(発言する者あり)黙りなさい。質問中じゃないですか。失礼じゃないですか。質問している最中じゃないですか。(高橋(英)委員「興奮しなさるな。そのくらいで一々おこりなさるな」と呼ぶ)質問の最中にじゃましなくてもいいじゃないですか。事は大きな問題じゃありませんか。司法権独立に関する問題じゃないですか。(高橋(英)委員「君よりも先輩なんだ」と呼ぶ)質問をやめます。あまりにも失礼じゃないですか。議員として何も先輩後輩は必要ないですよ。礼を尽くすのは国民に……。
  33. 松澤雄藏

    松澤委員長 不規則発言は遠慮願います。  速記をやめて。   〔速記中止〕
  34. 松澤雄藏

    松澤委員長 速記開始。
  35. 岡沢完治

    ○岡沢委員 私は、高橋議員がわれわれ議員の先輩であることはもちろん認めます。しかし、議員としての資格、委員会委員としての資格というものは、国民の代表として私は自分に課せられた責任だと思います。その発言中に妨害的な不規則発言というものは、私は許されないと思う。  重ねて長官にお尋ねいたしますが、この古市調査官に対しては処分は考えていない、口頭による注意はしたけれども処分は考えていないということでありますか。
  36. 川口光太郎

    川口政府委員 そのとおりでございます。
  37. 岡沢完治

    ○岡沢委員 先ほどの畑委員質問に対して、裁判官一般を調査対象にしない。逆に言いますと、個々裁判官については調査対象にすることがあるというように解してよろしゅうございますね。
  38. 川口光太郎

    川口政府委員 そのとおりでございます。
  39. 岡沢完治

    ○岡沢委員 ここで最高裁人事局長にお尋ねいたします。  最高裁の御見解は、先ほど畑委員質問でお答えになりましたが、局長の談話によっても明らかではございますが、ただいまの公安調査庁川口長官の御発言、どのようにお考えですか。裁判官独立を守る最高裁人事局長のお立場から、私はこの際三権分立——ここには期せずして、立法府と司法府の最高裁判所とそして行政官庁の公安調査庁長官とが意見の食い違いを見せるわけでございますが、最高裁の立場からこの際明らかにしてもらいたいと思います。
  40. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 裁判官は、やはり法律と良心に従って独立して職務を遂行いたすわけでございます。職務遂行に関します限りにおきましては、これは何人にも制肘される筋合いのものではない。そこに司法の本質というものがあるということにつきましては、私ども最後までこれを守っていくというかたい決意を持っておるわけでございます。  そういう決意の表明の中に、具体的な問題として十月二日の集会調査ということが取り上げられ、それを現職の裁判官について調査するという事態が起こったわけでございまして、私どもは黙視し得ないものとして遺憾の意を表明したわけでございます。以上で、私どもの決意というものは尽きておるのではないかというように考えます。
  41. 岡沢完治

    ○岡沢委員 そうすると、確認いたしますと、古市調査官に代表される公安調査庁の今回の調査というのは、司法権独立、あるいは憲法の裁判官の身分保障、あるいは裁判官職務権限行使についての当然の性格等からして、権限逸脱といいますか、迷惑だというふうに解しておられると解してよろしゅうございますか。
  42. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 十月二日の懇談会の調査に関連いたします現職裁判官たる川上判事補に対する調査というものにつきましては、きわめて遺憾であると考えております。
  43. 岡沢完治

    ○岡沢委員 ちょっと角度を変えまして、この十月二日の司法独立を話し合うつどい、これは最高裁にお尋ねしたいわけでございますが、私たちもこれがいわゆる破防法対象として調査対象になるというようなことは全く考えませんが、逆に積極的に、いわゆる裁判官が閉鎖社会であったりあるいは裁判官の断絶、古い裁判官と若い裁判官の断絶ということが、ここ数年来指摘もされ問題にもされました。そういう関係からいたしますと、むしろこのように全国裁判官が、有志だけではありましても一堂に会し、先輩後輩、特に講師であります横田長官我妻先生は法曹界の大先輩でありますから、こういう方々とひざを交えて話し合う機会は、むしろ積極的に評価してもいいのではないか。どうしても裁判官が主観的に偏向的な判断をされるということが、裁判官として好ましくないという面を考えました場合、むしろこういう開かれた場所で先輩後輩あるいは法曹の方々を交えた集会というものは、積極的に価値あるものと評価していいと思うのでございます。この集会に対する最高裁の御見解をお聞きいたします。
  44. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 実は、このような集会が開かれるということは、私どももそれとなく承知していないではございませんでした。この集会を開くという、こういういわば内外に恥じない集会であるならば、もう少し集会を開く方法とかいうようなものについて考えていかなければいけない面があったのではないか。結果的には、こういうふうに法律雑誌等にもその内容を詳細に御発表になりましたので、もしそういうものであるならば、いわば俗に申しますとオーブンにやっていくということもできたのではないかというふうに考えております。  したがいまして、この集会そのものをあらゆる角度から見てりっぱなものである、一点非の打ちどころのないものであるというふうには、私どもは考えておりません。しかし、司法行政の重要な問題について裁判官が十分の関心を持って、何とかこれに真剣に取り組んでいきたいというふうに考えておる、そしてそういうものの発露であるという観点から、これを私どももまた、こういったものが行なわれたこと及びそこで行なわれた討議の内容みたいなものを、今後の司法行政の中に十分取り入れて生かしていきたいというふうには考えております。
  45. 岡沢完治

    ○岡沢委員 川口長官にお尋ねいたします。  先ほどの畑委員質問に対する答弁で、共産党はいわゆる公安調査庁調査対象組織であるというお話でございました。共産党員ももちろん調査対象になるわけでありますね。共産党員疑いのある人物は調査対象になりますか。
  46. 川口光太郎

    川口政府委員 その党員であるかどうかを確定するという作業がやっぱり必要でございますから、お説のとおりになります。
  47. 岡沢完治

    ○岡沢委員 そうすると、先ほどの答弁で、もう一回確認いたしますが、裁判所にもあるいは裁判官にも共産党員がおった場合、先ほど畑委員に対する答弁では、たしか共産党組織のあるところはすべて調査対象になるという御答弁がございましたね。そうしますと、裁判所も一つの組織でございますから、もし共産党員あるいは共産党員疑いがある裁判官がおられたら、書記官、調査官、事務官がいるというような場合には、調査対象になりますか。
  48. 川口光太郎

    川口政府委員 その判明している党員の活動状況を調査するという範囲で調査するわけでございまして、その属している裁判所とか、いわゆる労働組合という団体そのものを対象にするわけではございません。やはりそこは区別しております。
  49. 岡沢完治

    ○岡沢委員 もう一回だけ確認してこれで終わりますが、共産党員である裁判官ということがはっきりした場合、共産党員であるかどうか疑わしい裁判官がおられる場合、これは調査対象になると解してよろしゅうございますか。
  50. 川口光太郎

    川口政府委員 そのとおりでございます。
  51. 岡沢完治

    ○岡沢委員 終わります。
  52. 小島徹三

    ○小島委員 関連して。先ほどから質疑応答を承っておったのですが、長官の言われるのは、何か新聞か何かに共産党が——共産党破防法対象にすることについて文句があるかもしれませんが、それはそれとして、共産党名古屋裁判官働きかけていたというようなことが新聞か何かに出ていた。その事実を確かめようとして古市という調査官が調べようとした。その調べ方が、たまたま川上さんという判事補に親しかったものであるから話しかけて聞こうとしたということであって、裁判官自体を調べようとした目的ではなかったように思うのです。ただしかし、それがたまたま裁判所の立場からいうと、そういうことについてよほど慎重にやってもらわないと、裁判官に与える影響というものが非常に大きいから注意してほしいということだろうと思う。それでおそらく、そういうことはすでにもう新聞なんかで問題になるくらいだから、裁判所としては、遺憾の意を表したものだと私は思うのです。あくまでも裁判官対象として調べようとしたのではなくて、たまたま知り合い裁判官だったから、それで共産党働きかけたという事実について、何かの発言があったかなかったかということについて確かめようとしたのではないかと思うのですが、その働きかけがあったかなかったかを確かめようということは、当然公安調査官としては調べることだと思う。その調べ方として、多少やり方がまずかったというか、裁判官に対する影響というものが大きいということがあるから、注意をよほどしなければならぬということだと思うのですが、一体その点はどうなんでしょう。
  53. 川口光太郎

    川口政府委員 ただいま小島先生の指摘されたとおりでございます。
  54. 小島徹三

    ○小島委員 裁判所はどうでしょう。
  55. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 裁判所といたしましては、現地からも報告を受けたわけでございますけれども、いろいろ御質問調査官からありまして、あっただけで、それを門口で答えておりませんので、どういう意図であったかというようなことは私どものほうとしては何もわからないわけでございます。しかし、外形として出ておりますものは、これはやはり十月二日の懇談会を川上判事補について調査しようとしたという外形でございますので、そういう点から、私名義の談話というものを出したわけでございます。
  56. 小島徹三

    ○小島委員 裁判所の立場としては、そういうお考えでああいう発言をされることも無理もなかったと思うのですけれども古市調査官の立場からいうとそれほど重大な考え方でなかったのであって、ただ働きかけたという事実があるかないかということについて確かめようとしたのだろうと私は思うのですがね。それは結果としては、いろいろな波紋があったから注意しなければならぬと思うのだけれども、それがために古市調査官が処罰されなければならぬというようなことは、私としては少し行き過ぎじゃないかと思う。むしろ調査官としてはもう少し慎重にやり方を考えなければいかぬぞ、そういうことを確かめるなら確かめる方法については、もう少し慎重にしろということでいいのじゃないか。裁判所のほうは非常に神経質になられることは無理もないと思うけれども、外形の上では何だかその懇談会を調べたようになりますから、形の上では確かにそうだけれども古市調査官の気持ちからいえば、懇談会自体を調べようとしたのではなかったと思うのです。たまたまそういう働きかけがあったという事実について、何か出てきはしないかと思って簡単に考えたのだろうと私は思うのですが、その取り調べ方については、私は慎重にしなければ、裁判官に対する心証というものは非常に悪いということは言えると思うけれども、それほど目くじら立ててここで議論しなければならぬほどのことはないのじゃないか。もっとも、共産党破防法対象にしたということがけしからぬということであるならば、これは別問題といたしまして……。
  57. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 関連して。人事局長にちょっとお伺いしたいのですが、裁判権の独立司法権独立というふうなことで、いろいろ外部からの介入らしきものがある場合に、その独立を侵すというふうなことで好ましくないという発言がしばしばあって、今度の場合もそうなっているのですが、大体いま小島委員が言ったように、破防法対象共産党をしておることがいいか悪いかという根本問題は別として、法律できちんとそういうふうにきめておる以上は、そういうことも調査対象になるかと思うのです。最も国民から信頼され、最後の国のとりでというふうにも思われており、その最も国民から尊厳を信じられておった裁判官に、いまや司法危機ということが叫ばれておる。これは左のほうからも、御承知のようにそういう声も盛んではあるけれども、また違う面からいって、従来の裁判官のイメージからいって、司法危機ではないかと言われておるのですが、いやしくもそういうふうな破防法対象になるような団体に属しておるとか、属して活動しておるのではないかというふうに疑われるような今日の裁判官の一部の存在、司法危機と称せられるものに対して、これはもう絶対に、そういう点について裁判所のほうとしては、裁判官としては遺憾だというふうな考え方があるのかないのか。いまの姿でいいというふうにお考えになっているかどうか。  それからまた、思想は自由であるから、共産党属しようとどうしようと——共産党は一応表面上は暴力革命を否定しているが、まあ実際は否定もしてない肯定もしてないということだから、かりにはっきりと暴力団体でないということであるならば、破防法対象からははずしてしまう、除外するというふうなことが適当であるというお考えがあるかないか、その二点についてちょっと……。
  58. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 裁判は公正でなければいけませんし、また公正らしさというものも必要であることは、あらゆる機会に私どもが強調してまいったところでございます。政治的な色彩を帯びた団体裁判官が加入すべきでないという、裁判官のモラルというものをはっきりと打ち出しておりますのも、その趣旨にほかならないわけでございます。  そういったところで、私どもといたしましては、現段階、現下の国民の政治的な意識と申しますか、そういった段階におきましては、やはり裁判官は政治団体あるいは政治的な色彩を帯びた団体には属さないほうがいいということは、現在でも確信を持っておるわけでございます。したがいまして、お答えになるかどうかわかりませんが、そういった考えの中に裁判所の、私ども意図を十分おくみ取りいただけるのではないかというふうに考えております。
  59. 松澤雄藏

    松澤委員長 青柳盛雄君。
  60. 青柳盛雄

    ○青柳委員 同じ問題についてお尋ねをするわけであります。  最初に川口長官にお尋ねするのですけれども、これは十一月二十日ごろの新聞報道によりますと、川口長官談話を発表しているようです。先ほど引用されたかもしれませんけれども、正確を期するために一応読んでみます。川口光太郎公安調査庁長官談話として、「一応の事情は聞いたが、さらに実情を調査してみる。古市調査官は四年目で経験が浅く、自分職務を誇大に考えすぎ、指摘されたような行為をとったと思われる。「裁判官の集い」については調査対象にもなっていないし、調査指示したこともない。青法協に関しては共産党員についての調査という点で調査対象にはしている。川上判事補の方にも誤解があるのではないか。」、これは十一月二十日の朝日新聞報道です。この談話は正確ですか。
  61. 川口光太郎

    川口政府委員 お答えいたします。  私、特に談話を発表したわけではございません。十一月十九日の午後三時ごろだったと思いますが、最高裁判所の中にあります司法記者クラブの幹事の毎日新聞記者から、人事局長からこういう遺憾の意の発表があったがどうですかという照会があったわけであります。それに対して電話で応答した結果が、こういうふうにまとめられて記事になったものでございまして、私、そういう新聞報道されるなどということは考えたこともございません。  で、同じ日の毎日新聞にはこのように載っております。私の談話といたしまして、「破防法上の調査対象でもない集会について、公安調査庁が実情調査指示するはずがない。青法協会員のうち、共産党員については調査しているが、経験の浅い古市調査官自分職務を誇大に考えすぎ、勝手に調査活動をしたのではないか。二、三日中に調査官名古屋へ派遣して調査するつもりだ。」大体このほうが正確に当時の私の電話の応答を伝えているように思います。
  62. 青柳盛雄

    ○青柳委員 私がその中で特に聞きたいのは、古市調査官が四年ぐらいで経験が浅いので、職務を大きく考え過ぎてあのようなことをやったのではないかという点は、どうも朝日報道あるいは時事通信の報道、いまの毎日新聞報道の中にも共通してあるわけですね。だから、これはやはり行き過ぎといいますか、先ほど調査官のやったことは別に誤りはないのだと言ってがんばっておられたのだけれども、当時はやはりちょっとまずい点があるということを認められたように聞こえるのだが、その点はどうなんですか。
  63. 川口光太郎

    川口政府委員 お答えいたします。  この談話をした時点におきましては、まだ当庁の実情調査をしていなかった段階でございまして、朝日新聞報道だけをもとにこういう答えが出たわけでございます。すなわち、私どものほうでは裁判官懇話会というものを全然調査指示したこともございませんし、何も思い当たらなかったわけでございます。それでまあ新聞にもすでに相当詳しく報道されましたし、そんなことについては報告を求める気もございませんでした。それに、古市調査官が何か自分の手柄でも立てようということでやったのではないか、こう考えたものですからこのように申したのでございますが、その後実情調査の結果、先ほど畑先生の御質問にもお答えしましたような事情が判明しまして、職務範囲であるというふうに認定をしたわけでございます。
  64. 青柳盛雄

    ○青柳委員 だから、十一月二十日の新聞記者からの質問に対する談話は、実情がよくわからないから正確でない、その後の調査では、別に古市調査官のやったことは行き過ぎでも何でもない、こういうふうに確認したというように理解するわけです。  そこで問題にされているのは、十月二日の裁判官の懇談会の内容調査したという。これは司法独立に大きな妨害になる、こういうことだと思うのですね。先ほど矢口最高裁人事局長は、持ち方が悪かったというようなことを言われて、どういう点が持ち方が悪いと言うのか、どうもその後雑誌に発表されたからわかったのだけれども、秘密会、非公開にした部分があるということがよくないというふうにもとれるわけですけれども、その点、まさに公安調査庁の川口長官は先ほど、横田最高裁長官我妻元東大教授のお話のときは公開だったけれども、その後の何か話し合いが非公開になったので、その中で何がやられたか知る必要があったということを、何か合理化する一つの根拠にしているようであります。それだけではなしに、何かその前に情報が入って、名古屋裁判官に対して共産党側から何かの働きかけがあって、その働きかけを受けた者か何かがその集会へ出ていって、そうして非公開になったところで何かやったのじゃないかということを知りたかったのだ、こういうふうに持って回ったようなことを言っているわけですが、もちろん具体的にどういう人がどういう働きかけを受けて、そうしてその日に出席したかしないかというようなことについて、おそらくここで答弁はできないのだろうと思うのですね。そういうような理屈をつけて、結局はこの裁判官の懇談会の模様を、出席したと思われる名古屋の女性裁判官から聞き取ろう、そういうことではないか、こういうふうに思われるのですが、その点はどうですか。
  65. 川口光太郎

    川口政府委員 この裁判官集会につきましては、すでに新聞に相当詳しく当時報道されておりました。呼びかけ人の名前どもちゃんと載っておりますし、私たち個人的にも、先ほど申し上げましたように存じ上げている穏健、中正、そういう方ばかりでございますし、私たちこれについて、何かの疑いなど全然持っていませんでした。  ただ、この古市調査官が、たまたまそういう情報があったので、その働きかけを受けたという裁判官がそこに行ったかどうか、行ったとすれば、その会合でどんな発言をしているのかということを知りたくて、親しさのあまり川上判事補にそれをただした。入り口で断わられたので、結局目的としたところまで到達しない。そのために、非常に川上判事補その他裁判官一般に御迷惑をかけた、こういうように理解をしているわけです。
  66. 青柳盛雄

    ○青柳委員 ですから、そこを私がお尋ねしたいのですよ。共産党員の言動についてつぶさに知りたい、また知る必要があるという公安調査庁の要求ですか、気持ち、それはそれなりに、あなた方はそれでめしを食っているわけですからやむを得ない。これは私は反対ですけれども、そのことで議論をしていると時間がたつから……。それから、だれが共産党員であるかということも知りたいという。これもおそらく公安調査庁の要求だろうと思うのですね。  そこで、非公開になった会合で、一体共産党員と思われる人間がどういう発言をしたか、また何か情報が入ったという人間が、はたして共産党員かどうかというようなことを知る一つの資料も得られるとか、こういうことでなければ、そういう具体的なきっかけがなければ、ただぼんやりと川上判事補にその場の模様を聞くということはないと思う。これはその会合自体をつぶさに知ろう、こういうことになってこの集会調査活動をやった、いわゆる調査対象にしたということにならざるを得ないわけですね。口実は共産党員の言動、共産党員の有無を調べるのだ、幾らこう言ってみても、具体的なものが何もそこになければ……。あるならばあるで、何がそうなんだ、それを言っていただきたいのです。
  67. 川口光太郎

    川口政府委員 古市調査官が、結局目的としたところまで到達しないで、その入り口で門前払いを食ったような形になったために、先ほどから問題になっていますように、裁判官調査しようとしたのじゃないかという誤解を与えた、その点で残念であるというように申しているわけでございます。
  68. 青柳盛雄

    ○青柳委員 裁判官共産党員であるかどうかを調べるということも、非常にこれは大問題なんですね。共産党が重要企業だとかあるいは官庁等の組織を伸ばそうとしているから、どうしてもそういう点も探らなければいけないのだと先ほどおっしゃいました。大体裁判官も官庁を構成するメンバーですから、もちろんその中に共産党がいたらまずいというような考え方が前提にあるのでしょう。そのことについては、もちろん私はあと最高裁にも聞きたいと思っているのですけれども、それは一応あと回しにいたします。  本件の場合、新聞の論調などを見ましても、たとえば一つですが、十一月二十日の朝日新聞の夕刊では、「裁判官の言動調査」という「今日の問題」という欄で、そういう題名で扱っているのですけれども、「裁判官といえども神聖不可侵ではない。共産党員がいれば調査するのが、破防法にもとづく当然の義務だ」ということを名古屋公安調査局の第一部第一課長が言ったというのをとらえて、こういう言い分で、こういう論法でこの集会を調べるというのは、裁判の独立にも悪い影響を与えるという趣旨のことを言っているわけですね。だから、赤といえば何でもできるのだ、共産党のにおいがすれば何でもできるのだ、そういう口実でどんな集会であろうと、どんな団体であろうと、どんな個人であろうと、それの関連の有無を調べるのだ、その疑いの有無を明確にするのだ、こういうようなことになっていくと、際限もなく言論、思想の自由というものに侵入していってしまう。これはおそろしいのじゃないですか。だからその点を一般の世論も非常に重視している。ことに裁判の独立などにもそれが悪影響を及ぼす。いわゆるマッカーシー旋風のようなものが裁判所の中に吹き荒れたら、裁判などはもう良心に従って真実の法のあり方を明確にすることもできにくくなってくる。いわゆる裁判の独立が奪われるということになるということなんで、いま本件で問題にしているのは、この集会調査対象にしたというところに非常に重要な問題点があるわけです。これを川口長官は、それをしたのじゃないのだと言い張るのか、それをしたということになろうとしても、入り口で失敗しちゃったのだからもういいじゃないかということでおしまいにしようというのか、そこをはっきりさせていただきたい。
  69. 川口光太郎

    川口政府委員 朝日新聞の夕刊の「今日の問題」というところに、そういう記事が載っているということは私も承知しております。私ども一応、先ほど来何度も申し上げましたように、調査の上におきまして、破防法の三条に基準というものが設けられておりますが、これだけではなしに、公務員としてもいろいろ義務がございますが、あくまで慎重に、人の権利とかあるいは団体の権利というものを害しないように注意してやるようにということは、常々職員に徹底さしております。  たまたま古市調査官の今度の行為が、まあことばはいろいろなことを言っておりますが、そのことばづかいがまずくて、裁判官あるいは裁判所に御迷惑をかけたという点で申しわけないこと、残念だというようには考えておりますが、しかし、これは行き過ぎ職権乱用行為であるというようには考えられないわけでございます。
  70. 青柳盛雄

    ○青柳委員 職権乱用になれば、これは当然破壊活動防止法による罰則によっても処罰されますし、また一般刑事上の責任を問われることになるわけですが、最初のあなたの印象でも、ちょっとこれはおかしいぞと思ったが、その後調べてみたら別にどうということはないんだ、言ってみれば、最高裁のほうから遺憾の意を表されることもどうも筋違いではないか、世論が何かこれをとやかく言うのも筋違いだといったように、すべて自分たちのやったこと、自分の部下のやったことは間違いなかったのだ、要するに事は共産党にかかわることなんだから、共産党にかかわるということがありさえすれば、何をやったって文句を言われる筋はないんだと、こう言わぬばかりの開き直りに聞こえるのですよ。  そこで私はお尋ねいたしますけれども、この問題について先ほど畑委員からも引用されたと思うのですが、名古屋の地元の司法反動化に反対する愛知県連絡会議の人々が、中部公安調査局松田局長に面会をいたしまして、その古市調査官のやったことの非違を糾弾した、抗議をしたところが、それに対する松田局長の答弁は、朝日新聞の十一月二十一日付によりますと、「「古市調査官川上判事補と会ったのは職務上ではなく、個人的なもの。調査するようなにおいをさせたのはまずく、申しわけない」と、あやまった。」それから、「古市調査官や局長自身の進退問題を本庁と相談する」ということ、それから、「名古屋家・地裁なり名古屋高裁へ実情報告と謝罪のために行くことなどを認めた。」こういう記事があるわけですね。地元の現場の局長も申しわけないと言い、しかも進退を本庁と相談をする、それから名古屋地家裁なり名古屋高裁なりへ実情報告を兼ねて謝罪に行くと言った。これは非常に公務員としては率直な態度だと私は思うのですよ。それをやるかやらないか、ただその場のがれのごまかしであればこれは問題ですけれども、それをやるということであればね。これに対して長官のほうではどういう指示を与えたのか。たとえば本庁に相談するといったような進退問題ですね、それから裁判所のほうへ報告がてら謝罪に行くといったようなことに対してどういうふうに措置をとったのか。また現在どう思っておられるのか。
  71. 川口光太郎

    川口政府委員 お答えいたします。  この司法反動化に反対する愛知県連絡会議というものが、二十日の午前中に松田局長のところへ抗議に行ったという記事報道しているのは、朝日新聞と翌日の「赤旗」の二紙だけでございますが、松田局長が二十五日に上京いたしまして本人から詳しく事情を聞きましたところ、やはり若干報道本人意図が違うようでございます。本人は、裁判所には、先ほど申しましたように、裁判官集会調査したものではないかというような誤解を与えて御迷惑をかけた、その点をあやまりに行く。それから本庁に対して、処分問題を含めて進退を伺うということは、これは本庁指示もしていないのに、全部調べてわかっているはずだというようなことを古市調査官川上判事補に申しまして、そういう点で新聞に大きく出て、本庁に対してもいろいろ御迷惑をかけた、こういう点で本庁に進退伺いを出したい、そういう気持ちで、抗議団の抗議に答えるために言ったのである、こういうように申しております。それで、その前後の事情を聞きまして、松田局長の態度にもやむを得ない点があったというように認めております。別に処分する気はございません。
  72. 青柳盛雄

    ○青柳委員 松田局長が、その抗議に対してとった態度は別に間違いではない。それで処分する必要はないという、そういうようなお答えですけれども、しかし、先ほどからも繰り返し述べて私のほうで質問しておりますけれども、この古市調査官のやったことというのは偶然ではないと思うのです。要するに、破壊活動防止法に関係する調査対象にするような団体、本件で言えば共産党だそうですが、共産党活動調査するためには、平常自主的に部下の人たちが、一々指示がなくとも、創意を発揮していろいろ調査活動をやりなさい——もちろん三条の制限はありますけれども、それを越えてやれという意味じゃありませんが、やれと言っていたのが、結局こういう行為になってあらわれてくると思うのです。だから、共産党関係あるということであれば何でも調べられるという立場をとっているのかどうなのか、その点をひとつお尋ねしておきたいと思います。
  73. 川口光太郎

    川口政府委員 お答えいたします。  それは先ほどから何度も申し上げますように、一定の限度というものがございまして、それは先ほど来申しましたような破防法の三条が基本でございますが、そのほかに、公務員としての義務あるいは一般の人間としての教養とかいろいろな意味の、やはりそこに一定の制約というものがございます。それに従って間違いのないようにやるようにということを、絶えず職員に徹底さしておる次第でございます。
  74. 青柳盛雄

    ○青柳委員 そんな一般的なことを私は聞いているのじゃなくて、共産党員がいるかもしれないような団体は、どうしても秘密の部分があったら調べてくるのだ、それから集会も同様だ、こういうことは許されるものと考えているのかどうかですね。たとえば労働組合その他一般の民主団体でもいいですけれども、その役員構成などがどうなっているか、別に一々公表してない場合に、共産党員がいるかもしれないし、いるとなれば、これは調査しておかなければいかぬということでいろいろと情報の収集をやるということになれば、幾ら理屈は何と言おうと、その団体内容を調べることになるわけですね。集会の場合でもそのとおりです。だからそういうことは、もう事は共産党員の有無あるいは行動を調べるのだから、それに関係ありと公安調査官のほうで考えた場合、疑った場合には幾らでもできるのだ、こういうことなのかどうかですよ。それは指示しているいないにかかわりなく、そういうことはあなたのほうでは別に問題じゃないのだ、今度の場合だって、それだから問題ないのだ、こう言いたいのかどうかですね。
  75. 川口光太郎

    川口政府委員 単なる疑いだけで調査するというようなことはしてはおりません。相当な資料その他の根拠がありまして、共産党員活動があるというような場合だけ調査するわけでございます。たとえば、先ほど御指摘の労働組合について言いますと、幹部、執行部の大部分が共産党員であるというような場合、その党員の活動を調べることがその労働組合の活動そのものを調べるに近いようなていさいを呈することもございますが、あくまでも私どもは、調査対象として指定した団体員の活動を調べるということでやっておりますので、やはりそこに一定の限界というものがございますので、何でもかんでも調べるというわけではございません。
  76. 青柳盛雄

    ○青柳委員 そこで本件に戻りますが、本件の集会非公開になっているところで何が行なわれたかを知りたかったのだということを先ほどから言われております。そこで、ただ抽象的に何でも知りたいというのではないのだ、やはり何か根拠があるからだと言う。そうすると。どういう根拠があったのですか。この会合の中に共産党員とおぼしき者が入っておって、そしてどんな活動をするかということが知りたかった、それだったら具体的にそれを言ってもらいたい。それがないというのであれば、幾らあなたが一般的にそんな疑いのないものまで、何でもやるんだということではありませんと答弁されても、だれも信用できません。
  77. 川口光太郎

    川口政府委員 お答えいたします。  先ほど畑先生の御質問のときにお答えしましたように、古市調査官がある方面から、共産党員名古屋高裁管内裁判官グループ働きかけをしたという情報を得ていましたので、その働きかけを受けた裁判官が本件の会合に参加したかどうか、参加したとしたならば、その会合の席上でどういう言動があったか、すなわち共産党員からの働きかけに応じた活動があったかどうか、これを入党とか、その他の資料とあわせて判断資料にするわけでございますが、そういう目的で調査をした、こういうのが事実のようでございます。
  78. 青柳盛雄

    ○青柳委員 どういうふうにそれを理解するかということについて、時間がありませんから詳しく言いませんけれども、いまの御答弁の中に、この懇談会において共産党が何をやったかということを調べるのだ、あるいは共産党員かどうかを調べるのだという形で、この前提に、すでにこの会というものが、何か思想的に共産党に共通するものがあるのじゃなかろうかという疑いを持っていたことを意味しますね。そうでなければ、その会における言動を調べることによって共産党員であるかどうかを調べるなどということは考えられないわけですね。ほかの、「赤旗」を読んでいるかどうかとか、「前衛」という雑誌を読んでいるかどうかというようなことを調べるというなら、これはもうそのものずばりで、なるほど共産党員と近いらしい、あるいは入ったらしいということも一つの徴憑として知ることもできるでしょうけれども集会にいたかどうか、集会発言したかどうかということを一つの資料にするということは、その集会共産党と何か関係があるというようなことが前提でなければ、そういう論理は出てこないわけですね。だから、結局この集会を調べたというところに世論がわき立つ根拠があるわけですね。最高裁が抗議をする根拠がある。その点について、少しも反省するところがないというのは一体どういうことなのか、もう一ぺんあなたのほうの言い分を聞いてみたいと思う。
  79. 川口光太郎

    川口政府委員 たびたびお答えいたしますように、そういう誤解を招くような言動があったことは非常に残念である。今後全職員にそういう行為のないように注意したいと思っております。
  80. 青柳盛雄

    ○青柳委員 最高裁、せっかくお越しになっておりますから、矢口人事局長にお尋ねいたしますけれども最高裁とすると、本件の問題についての意思表示はもうすでに明らかにされておりますから、それについてとやかく言うわけではありませんが、最高裁のほうの理解として、破防法調査対象集会とか団体とかいうようなものは、どういうものだというふうに理解しておられるのか。本件がそうでないと言うなら、そうすると対象になるものはどういうものだというふうに理解しているのか、それをお尋ねしたいと思います。
  81. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 一般論として、破防法対象になる団体というのは、この第一条以下に規定があるとおりであろうかと思います。具体的にどういう団体が当たるかということは、これは私どものほうから、この解釈、運用ということについてとやかく申し上げる筋のものではないというふうに考えておるわけでございます。あくまで、具体的な十月二日の懇談会というものをとらえてみた場合に、それは公的なものではございませんけれども裁判官が集まった任意の私的な団体であるという点をとらえまして、それは少なくとも破防法対象としておる団体には当たらないであろうということを申し上げておるわけでございます。
  82. 青柳盛雄

    ○青柳委員 何か調査庁のほうでは、共産党調査対象だ。それは別に変える必要はないみたいに言っておるし、また、さらには共産党関係するような集会調査対象だというようなことも言っているようです。その点で、最高裁とすれば、共産党調査対象公安調査庁でするのは妥当だと思っておられるのかどうかですね。それから共産党関係しているような集会は、調査対象にされてもやむを得ないというふうに考えておるかどうか、この点はいかがですか。
  83. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 共産党は現在合法政党でございます。それ以上のことにつきましては、私ども専門に調査等いたしておるわけではございませんので、その点につきましてはお答えをいたしかねるわけでございます。
  84. 青柳盛雄

    ○青柳委員 先ほど私、留保して、最高裁にもお尋ねしようと思っておったことなんですが、矢口人事局長は先ほどの御答弁にも、裁判官は政党などとは関係のないほうが、公正な判断もできるし、また公正らしさも保てる、これは道義的な問題であるというようなことでございましょうが、大体これが最高裁の公式の統一見解みたいにいまなっているようです。そこで、考えていただきたいのですけれども裁判官を罷免するかしないかというようなことをきめる国会の裁判官弾該裁判所ですね、訴追委員会もそうですけれども、これは各政党所属の議員が構成メンバーになっている。政党政治の時世ですから、無所属というような者もあるでしょうけれども、大体この割り振り、選任の方法などを見ましても、政党に所属する議員の数で割り振って、したがって、現在共産党は衆議院十四名ですから、どうもいままでの慣例からいって、弾劾裁判所の裁判員には選ばれていませんけれども、いずれにしても、最も裁判の公正を保つための最高の機関ともいうべき弾劾裁判所の裁判員が政党所属員であるというこの事実と考え合わせてみた場合に、裁判官が政党に所属しておったら公正が保てないということは自殺論法になりませんか。憲法が保障する弾劾裁判所の構成というものがおかしいんだ、政党に所属しているような者は公正なことができっこないんだ、だから一般の裁判所の場合でも当然、らしさを保持する上からいっても、またモラルの上からいっても、政党員であってはいかぬのだというようなことが言えるのかどうか、その点考えたことはありますか。
  85. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 弾劾裁判所裁判官の身分上の問題として、身分保障に対するチェック的な機関として存在するということは御指摘のとおりでございます。しかしそのことと、現在全国に二千六百名おります裁判官が、全国に散らばって個々の具体的な国民の争訟というものを判断しておるということとは、これは別個に考えられるべき問題であるというふうに考えております。現段階、すなわち国民の政治意識に関する現段階におきましては、やはり裁判官のモラルとしては、政党に加入することあるいは政治的色彩を帯びた団体に加入することは好ましくないということは、変わらない信念でございます。
  86. 青柳盛雄

    ○青柳委員 弾劾裁判所の構成について、現在の国民の意識はどうだというふうに考えられるのかよくわかりませんけれども、弾劾裁判所のほうはチェックするだけのもので大したことないんだ、国民の感情もそれをおかしいと思っていないし、かまわないのだけれども、一般の裁判所の場合はそうではないんだというような議論のように聞こえるのですが、そもそも思想、信条の自由がすべての国民に保障されていて、裁判官もその例外ではないということが、憲法の動かしがたい大原則なんですね。そのときに、何か政党に所属するのはいかぬと一般論を言って、自民党だってだめだし社会党でもだめだ、共産党はなおだめだ、こういったような議論というのは、一見もっともらしく聞こえながら、結局は思想的に差別待遇をするということになってしまうのじゃないか。反共は戦争の前夜であるというあの有名な蜷川さんのことばがありますけれども、とにかく、反共と言えば泣く子も黙るといいますか、要するに、共産党だと言ったらすべてが合理化できるんだ、そうして戦争も何もできるようになっていくんだという、そのことを言おうとしていると思うのですね。  だから私は、裁判所がみずから厳正に憲法を守るべき立場を捨てるような形、いわゆる共産党員は特定の政党だから好ましくないといったような、あの石田長官談話の中にもありましたけれども、これではたしていいのかどうか、それを貫くことに何か確信を持っているのかどうか、これだけお聞きしておしまいにしたいと思います。
  87. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 ちょっと関連して。ちょっと問題だと思うのですが、いまの弾劾裁判所の問題、これは政党政派の問題ではなくして、国会を代表しているというか、憲法に基づいて国会でつくられたところの制度ですね。国会というものはもう申すまでもなく国の最高機関でありますし、それから国会議員はそれぞれ全国民の代表ということになっておるので、政党政派を代表してやっているのではなしに、ことにまた、制度としては三分の二以上なければ決定ができないというふうないろいろなあれがあるんだから、いまの政党員、政党に関係する者が裁判官として好ましくないということと、国の最高機関である国会の憲法上の機関であり、超党派、全国民の代表の機関が裁判官の問題に介入するということとは別の問題だと思いますが、そういうことの認識をはっきりしてもらいたい。  それからもう一つ、それに関係しますが、あなたの答弁に対して青柳君はこう解釈しているのです。ある団体共産党というか、そこに破防法対象になるような人がおったならば、その人の活動ぶりを調査するのは当然のことだが、その属している団体調査するというようなことにあなたが答弁されたようにとっておられるが、私はそう聞かなかったのだが、個人的な活動だけに対して調査するというように言われたと思うのですが、そこの点を明確にしてもらいたい。
  88. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 高橋委員からの弾劾裁判所の点でございますが、弾劾裁判所の制度というものは、やはり司法と立法との間のチェック・アンド・バランスの関係に立っているものであろうというふうに考えております。したがいまして、御指摘のとおり国会議員でもって構成される弾劾裁判所が、裁判官の身分というものをチェックするという観点からできておるものでございます。その対象になる者は裁判官に限られておるというものであるわけでございます。そのことと、広く一般国民、その国民の中には政党員もおりますでしょうが、しかし現下の段階におきましては、正式の政党員ということでいわれておりますのは、共産党から自民党まで全部合わせましても百万前後の数しかないわけでございます。一億の国民の中で政党に属しておる方が百万前後しかないという状態における国民の政治意識、そういった広い国民を対象として裁判を行なうという場合の裁判官というものとは、おのずと変わってくるのではないかというふうに考えるわけでございます。  そういう観点に立ちまして、現段階におきましては裁判官はやはり、それは自民党でございましょうとも、社会党でございましょうとも、共産党でございましょうとも、そういった政党に属すること、あるいは政治的色彩が非常に強い団体に所属するということは、裁判の公正らしさという観点からは好ましくないというふうに考えておるわけでございます。
  89. 川口光太郎

    川口政府委員 私がお答えしたのは、ある団体の中にいる共産党員活動調査するので、団体活動自体を対象にはしていない、そこには明らかに区別があります、こういうふうに申し上げたので、別に青柳先生誤解されたのではないと思いますが……。      ————◇—————
  90. 松澤雄藏

    松澤委員長 この際、連合審査会開会申し入れの件についておはかりいたします。  沖繩及び北方問題に関する特別委員会において審査中の案件について、沖繩及び北方問題に関する特別委員会に連合審査会の開会を申し入れたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  91. 松澤雄藏

    松澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、連合審査会の開会日時につきましては、委員長間において協議の上決定いたしますが、来たる四日午前十時より開会の予定でありますから、さよう御了承願います。  本委員会の次回は、明後三日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時二十九分散会