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1971-12-17 第67回国会 衆議院 文教委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十二月十七日(金曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長代理 理事 久保田円次君    理事 久野 忠治君 理事 河野 洋平君    理事 谷川 和穗君 理事 西岡 武夫君    理事 山中 吾郎君 理事 山田 太郎君       小沢 一郎君    坂田 道太君       塩崎  潤君    中山 正暉君       松永  光君    森  喜朗君       吉田  実君    川村 継義君       木島喜兵衞君    小林 信一君       三木 喜夫君    有島 重武君       多田 時子君    山原健二郎君       安里積千代君  出席政府委員         文部政務次官  渡辺 栄一君         文部大臣官房長 井内慶次郎君         文部省初等中等         教育局長    岩間英太郎君         文部省大学学術         局審議官    安養寺重夫君         文部省体育局長 澁谷 敬三君         文部省管理局長 安嶋  彌君         文化庁次長   安達 健二君         厚生省医務局長 松尾 正雄君  委員外出席者         青少年対策本部         参事官     佐々 成美君         行政管理庁行政         管理局審議官  増淵 亮夫君         環境庁自然保護         局企画調整課長 須田 秀雄君         大蔵省主計局主         計官      青木 英世君         建設省都市局街         路課長     村山 幸雄君         建設省都市局公         園緑地課長   川名 俊次君         文教委員会調査         室長      石田 幸男君     ――――――――――――― 委員の異動 十二月十七日  辞任         補欠選任   堀田 政孝君     小沢 一郎君   渡部 恒三君     坂田 道太君 同日  辞任         補欠選任   小沢 一郎君     堀田 政孝君   坂田 道太君     渡部 恒三君     ――――――――――――― 十二月六日  中央教育審議会最終答申による教育政策反対等  に関する請願山原健二郎紹介)(第二八九二  号)  国立大学厚生施設拡充等に関する請願横路  孝弘紹介)(第三〇二三号)  同(横路孝弘紹介)(第三〇二六号) 同月十日  私立学校に対する公費助成大幅増額等に関す  る請願大原亨紹介)(第三〇八四号)  同(川俣健二郎紹介)(第三〇八五号)  義務教育費の無償化等に関する請願青柳盛雄  君紹介)(第三一七二号)  同(田代文久紹介)(第三一七三号)  同(不破哲三紹介)(第三一七四号)  同(山原健二郎紹介)(第三一七五号)  同(寺前巖紹介)(第三二一八号) 同月十六日  義務教育費の無償化等に関する請願島本虎三  君紹介)(第三三四〇号)  中央教育審議会最終答申による教育政策反対等  に関する請願山原健二郎紹介)(第三四六一  号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十二月九日  学校給食費補助増額に関する陳情書  (第一四九号)  香川県に自治医科大学設置に関する陳情書  (第一五〇号)  旭川市に国立医科大学設置に関する陳情書  (第二二二号)  大学医学部及び医科大学定員増加等に関する  陳情書  (第二二三号)  幼稚園教育改善充実に関する陳情書  (第二二四号)  特殊教育学校教職員待遇改善に関する陳情  書  (第二二五号)  民間学術研究機関助成に関する陳情書  (第二二六号) は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  文教行政基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 久保田円次

    久保田委員長代理 これより会議を開きます。  本日は委員長所用のため、その指名によりまして私が委員長の職務を行ないます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山中吾郎君。
  3. 山中吾郎

    山中(吾)委員 大臣がいないので遺憾でありますけれども文教委員会大臣がいないということが常識化しないように、これを前例としないことを特に委員長に要望して質問いたしたいと思います。  一つは、前の文教委員会において文部大臣に、授業料問題を論議するときに、授業料の性格を明確にして、そして説得力のある理論というものを持って授業料に対処してもらいたいことを要望しておきました。きょうは大臣がいないので、次回の大臣のおるときに、特にそういう基本的な考え方を明確にするように、次官のほうから大臣に伝達しておいていただきたいと思います。その意味において授業料質問は省きます。  次に、教員定員問題でお聞きいたしたいのでありますが、全国的に臨時採用教員が非常に多い。先般九州に視察に参りましても、熊本県におきましても、宮崎県におきましても、定員外臨時採用が相当数ある。さらに岩手の例をとってみましても、定数法の中で当然に採用してもよいいわゆる定員内の教員臨時採用にしておる。その理由を調べてみますと、だんだんと児童生徒が少なくなるので、そのときに首を切るのはめんどうだから、そこで臨時採用にしておるという、まことに便宜主義理由がおもなものである。したがって、その採用のしかたについては、いわゆる身分を保障しない採用のしかた、あるいはこれは法的に可能かどうか局長にも聞いておかねばいかぬと思うのですが、期限を付しての採用、そういういろいろの便法を用いておる。そこで、退職金にその在職年限が計算されるのかどうか、いろいろ疑問があると思うので、この点について文部当局の御意見、どういう指導をしておるかをお聞きしておきたいと思うのです。
  4. 岩間英太郎

    岩間政府委員 実は山中先生から御質問があるということで、私も臨時教員採用の実態を少し調べてみたのでございますけれども、私が考えておりますような点がまだ明らかになっておらないわけでございますが、事柄は、先生の御指摘を受けまして、これはなかなか容易ならない問題だというふうな感じがするわけでございます。  この問題につきましては、さらに調査をいたしまして、これに対する適当な対策を考えたいと思いますけれども、ただいま先生が御指摘になりましたような臨時的な職員は、いわゆる産休代替職員でございますか、あるいは病欠の職員のための臨時的な採用というのは、これは従来からも行なわれております。また、ある意味では当然のことではないかというふうな感じがするわけでございます。それから、ただいま先生が御指摘になりました岩手等のいわゆる過疎県における臨時採用でございますけれども、これは過疎によってどの程度その人口が流動するかという点がはっきりしないために、県のほうでもなかなか本採用に踏み切れないというふうな事情もあろうかと思います。  ただ、私どものほうの計算によりますと、昭和四十九年から二度目のベビーブームの波がもう一度参りまして、毎年二十万人ずつぐらい子供がふえてくるというふうなことが予想されておるわけでございます。特定の県につきましてはたいへん流動的な問題もあろうかと思いますけれども、御指摘を受けましたので、私どもこれにつきましてさらに詳細な調査をいたしまして適当な指導を行なうというふうなことも考えていきたいと思います。  なお、最近ある特定の県におきまして、これは過疎県でございますけれども人口急増地帯の県と相談をいたしまして、教員の交流というふうなことも具体的に考えておるようでございます。私ども教育長会議研究部会を通じまして、この問題につきましてはもう少し各県との間の話し合い、それから私ども指導ということで何かいい方法はないだろうかということも検討してまいりたいというふうに考えております。
  5. 山中吾郎

    山中(吾)委員 文部省調査方を依頼しておきたいと思いますが、全国的に臨時採用がどのくらいあるか、各県ごとにどのくらいあるか、その内訳に定員外定員内、それをこの国会開会中に調査をしていただきたい。それから、任命のしかた、どういう任命のしかたをしているか、それから、臨時採用のまま何年間教壇に立っているか、そういう諸点を調査をして提出してもらいたい。これは要するに過密過疎の問題に関連して、過疎の県においては、将来児童生徒が減るというので、身分を保障しない教員教壇に立てて教育を継続する、過密地帯のほうでは、教員が不足で短期の教員養成をして入れるとか、これもちょっと法律上疑義のあるやり方をしておるわけです。したがって、日本全国教育を担当する教員全体について何かの方法を考えていかなければならぬと思う。あまりにも便宜主義である。そして、教壇に立っておる教師は、これは臨時採用だからといって素質が低いとか資格がないのではない、優秀なものを、ただ将来数年後に教育行政上首切るのに困るからというので身分保障しないで教壇に立てておる。そういう教師にどうして積極的な教育的エネルギーが出るか。いつも不安な状況にあり、そのうち奥さんをもらってもいつ首になるかもわからぬというふうな状況で不安な状況におる者が非常にある。なおかつ、各教育委員会においては、採用試験をするときにいわゆる学力だけの採用試験をする。そうすると、大学新卒のほうがまだ記憶が新しいので有利であって、数年教育実践努力したもう三十近くになった教員は不利なんです。したがって、一体教師に対して、その記憶によって、頭で獲得できる知識によって重要な評価をするのか、数年間教壇に立った教育実践を高く評価するのかということも含んでこの点を指導しないと、せっかく教壇に立って教育に貢献した者を首切り、そして一片のペーパーテストによって新卒教壇に立ってその人を追い出していくというような行き方が繰り返される。もう現実にそうなっている。これは教育行政上まことに私は矛盾であり遺憾であると思うのですね。そういう意味において、そういう全国的資料を正確に調査をして、この国会中に対策を立ててもらいたい。大臣出席のときにお聞きいたしたいと思います。ここに大臣がいないものですから、そういう資料調査あとでしたいと思いますので、これはこれで打ち切ります。次官もよく聞いておいていただきたい。  次にお聞きいたしたいのは、一つは、四十七年度の教員海外視察予定人員及び予算はどうなっていますか。
  6. 岩間英太郎

    岩間政府委員 その前に、御提案がございました調査の件につきましては、私ども必要なことでございますのでやりたいと思いますけれども、ものによりまして若干おくれるものもあるかもしれませんが、順次提出をすることにいたしたいと思います。  ただいま御質問のございました海外派遣教職員でございますが、四十六年度は御案内のとおり七百名でございます。来年度は千五百名の予算要求をいたしております。
  7. 山中吾郎

    山中(吾)委員 たとえば七百名というと各県に十名程度、千五百名というと二十名程度になると思うのですが、これは一見いい計画のようでありますけれども、一万二万の教師から二十名三十名を選択することにやはりどっか教育行政偏見があって、選別、差別をして行政に都合のいい者を海外に派遣するというようなことで終わるのでは私はまことに遺憾だと思うので、こういうやり方については私は非常に批判を持っているわけであります。  そこで私は、もし海外視察をするなら全教員を出すべきだ。毎年教壇に立つ前に、むしろ教員養成過程の中で、たとえば三カ月の教育実習を行なうことを条件にすれば一カ月でも海外視察をして、そして世界における日本地位というものを認識して教壇に立てる。むしろ教育養成過程として海外視察を考えるならば私は教育制度として非常に有効であると思う。  そういうことを考えながらお聞きしておきたいと思うのですが、一人当たり算出基礎、いまの文部省の千何名の予算の一人当たり海外視察費は幾らか、それから視察先はどことどこなのか、期間は何日、何カ月か、それをお聞きしたいと思います。
  8. 岩間英太郎

    岩間政府委員 費用は大体一人当たり五十万でございます。行く先は毎年広がってまいりまして、大体アメリカ中心といたしましてヨーロッパ系統、それからヨーロッパ中心といたしますもの、ヨーロッパの中でもイギリス、フランス等中心といたしますもの、あるいはスウェーデン、ノルウェー、デンマークを中心といたしますもの、そういうふうなことでございますけれども、さらにフィリピン、タイ、マレーシア、インド、イラン、そういうところまでだんだん範囲を広げてまいっております。  期間は大体一カ月でございます。
  9. 山中吾郎

    山中(吾)委員 一人五十万というとごく安い費用ですが、この点はあとにして、視察先社会主義国に一国も出していない、そこに一つの問題があると思います。教育としてアメリカ西欧等教育視察しても別に参考になることはないと私は思うのです。地球上に自由国社会主義国があるならば、その全貌を偏見なく見せるということにおいて初めて世界の中における日本地位がわかるのです。ことに中国が国連に参加しておる時代に、そういう自由国だけを見せるという考え方、そういうことが選別する海外視察に出てくるので、私はこれに対しては反対せざるを得ない。その点検討する用意がありますか。
  10. 岩間英太郎

    岩間政府委員 御指摘のとおりでございまして、先ほどちょっと落としましたが、ことしはブルガリア、それからハンガリー、ソ連も入っておりますが、そういうところにことしから行くことにいたしております。
  11. 山中吾郎

    山中(吾)委員 一歩前進の姿があるので、それについては歓迎をしておきます。  一人五十万ということで、毎年出す場合に、ひとつ参考に聞きたいのですが、小中高、毎年何万人新採用になりますか。
  12. 岩間英太郎

    岩間政府委員 約二万人でございます。
  13. 山中吾郎

    山中(吾)委員 一人五十万で二万人というと百億ですね。たった百億の金をつぎ込むことによって、教壇に立つ小中高先生世界を見せて、世界の中における日本地位を自覚して教壇に立たせる。これほど有効な税金使い方はない。大蔵省主計官、聞いておってくださいよ。たった百億なんです。主計官に六割くらい聞いてもらわなければいかぬ。そして、いまの「青年の船」なんというのはこれは税金のむだづかいだと思うのです。行ってくるとみやげ話みやげを買ってきて、ただ個人世界を知ってきて個人生活が少し潤うだけなんです。教師というのは、大体勤続年数平均三十年、三十年の間に人間形成影響を与える生徒児童というのは少なくとも四千名はあるのじゃないか。その四千名に影響を与える教員に一人五十万の税金を使って世界を見せる。そうすると、一人当たり私はおそらく百二十五円程度だと思う。百二十五円程度費用世界を見て、その認識のもとに教壇に立って人間形成を担当する、私はこれくらい税金の有効な使い方はないと思うのです。一人一人「青年の船」に青年を乗せるなんて何の意味がある。そこで百億くらいの年間の計上というようなことは教育政策からいっても最も有効な金の使い方であり、教壇に立つ者にはぜひ世界を見せるということを教育課程の中で実現すべきであると思うのです。こういうことを実現することによって、勤務評定その他の、外から強制するようなそういう教師の人権を阻害し、あるいはいろいろの抵抗を受けるような愚策はやる必要がなくなるのではないか、そういうふうに私は考えるのであります。  そういう意味において考えてみたときに、なお現在の状況を見ると、高等学校生徒は夏休みにハワイにレクリエーションに行っておる。農協のおじいさん、おばあさんは、香港に団体を組んで行っておるのです。ひとり義務教育教壇に立つ先生のみが、外国を知らないで世界地理を教え世界歴史を教えるなんという、こんな矛盾をした時代はもう過ぎているのではないか。少なくとも教壇に立つ者は、国民がどんどん海外に出ておるときに、地理を教え世界歴史を教える者が世界を一回も見たこともないという姿で教育などできるはずはない。世界の中における日本教育なんです。ぜひこれは実現すべきである。一人百万にしても二百億円のわずかな金であって、何千人という人間形成が行なわれるのでありますから、ぜひ実現する方向努力をしてもらいたい。  これは政治的な問題でもあるので、文部大臣に進言をしていただきたい。また、文部大臣が来たときにいま一度私は識見を聞きたいと思うのです。これが実現するまで永久質問いたしたいと思っているのですが、政務次官意見を聞き、主計官に感想を聞いておきます。御答弁願います。
  14. 渡辺栄一

    渡辺(栄)政府委員 お答え申し上げます。  いまの山中先生の御意見、まことに私ども傾聴すべきことだと思います。やはり、外国へ行きまして初めて日本のよさがわかるということは、私ども経験をいたしておるのであります。ただ、昨年に比べまして昭和四十七年度は、文部省としましては相当大幅な予算要求をしておるつもりでございますので、当面はその予算獲得努力をいたしたいと思っておりますが、将来は極力先生の御趣旨に沿うように努力をいたしたいと思っております。  ただ、まだ先生になって間もない先生方については、ある程度やはり国内の教育事情というものも十分御理解いただいた上で外国へおいでいただいたほうがより効果があるのではないかというふうにも考えております。そういうような問題もあわせ考えながら、極力適切に先生方がそういう機会が得られますように私ども努力をいたしたいというふうに考えております。  なお、いま先生から、三十年平均で四千人ぐらい教育するとおっしゃっておりましたが、現在の資料によりますとそういうようなことの年数にはなっていないようでございまして、大体男子教員の例をとりましても十八年ぐらいでございまして、一学級の児童生徒を四十五人といたしますと、大体八百十人ぐらいということになるようでございます。  いずれにいたしましても、海外研修機会を得るということは非常に私どもも大事なことであると考えております。そういう意味におきまして、ひとつ極力大蔵省のほうにもお願いをいたしまして推進をしてまいりたい、かように考えております。
  15. 青木英世

    青木説明員 はっきりした数字は覚えておりませんが、たしか四十四年度ぐらいは数十人ぐらいでございまして、四十五年度に、当時福田大蔵大臣のときに一挙に五百人ということで、それから四十六年度がたしか七百人というようなことで、学校長等海外派遣についてはかなり予算を増額してきておる、こういう次第になっております。山中先生がおっしゃった御趣旨、私どももできるだけそういうことを生かしながら、全般的な財政事情をにらみながら、ひとつ前向きの方向検討さしていただきたい、このように考えております。
  16. 山中吾郎

    山中(吾)委員 考え方についてもう一度深く検討してもらいたいことが二つあるのです。  一つは、一定の経験を経たあとがいいという考え方ですね。そういうことで、十年二十年経験をして、教頭とか中堅教師以上の者を向こうへ出すということは私は反対なんです。教壇に立つまでに世界を知って子供に教える位置につくべきであって、一体、おとなになるまでに、日本に生まれ、日本に育って、日本がまだ経験しなければわからぬということはないのであって、二千年の歴史の文化の中で育っているのですから、教員養成過程の中で世界を見聞せしめるということが一番意義があるのだ。そして、たとえば教壇に十年十五年立ったあとに、頭脳が硬直化したあと世界を見せる。だからたいてい、帰ってきておる人たち見聞録を書いて、そしておみやげを買ってくるだけに終わっておる。これはお調べになったらわかる。どれだけ教育的影響を与えるか。人生観が確定したあとお見せになるという着想は間違いであると私は思うので、検討してください。これは、予算委員会でこういう提案をしたときに、佐藤総理大臣も、若干経験したあとのほうが効果があると思うというふうな言い方をしておる。そうでなくて、むしろ社会生活に入る前に、十数年の教育を受けたなまなましい姿の中で世界を見て職業生活に入るというほうが、私はその人の人生観形成に大きい影響を与えると思っておるので、その根本に違いがある。  それから、五百名千名とだんだんと広げていくということは、その間に、政党いかんにかかわらず、一つの差別的な選択が入る。そういうことと同時に、これは何年かかるかわからない。そうでなくて、教員というものの資格の中に、全教員が少なくとも世界を見聞すべきであり、現代は飛行機その他によって地球というものは非常に縮小されておるので、世界を見せるということは、教員の資質として、条件としても必要なんだという認識に立って、少しずつ多くしていくというふうな考え方であることは、その点について非常に違った発想があるのじゃないか。全員に教員条件として見せるべきであるというふうに思います。そういう観点に立つべきだと思うのです。  これは次の機会までに、また論議をお互い理解するまで進めていきたいと思うので、御検討願いたい。いまの発想からいったら永久に到達しない。全員行くということには到達できない。発想が違うと思う。これは大臣がいないのでそれだけにしておきます。  その次に、管理局長おるので、これは次にと思いましたが、一言だけ言っておきたいと思うのです。  過疎問題と含めて、いなかにおいては子供がいなくなって、分校を廃校するあるいは学校統合ということが、全体の客観条件の中でやらざるを得ない状況になっております。そのときに通学バスをもって遠距離を子供を運ぶということで、すでに補助金制度ができておるわけであります。しかし、そのバスを通す道路が、村道が幅が狭いし、またバスが通るのには整備がされていないというのが非常に多い。そこで私は、バスをもって通学をせしめ、学校統合するならば、バスが通れる村道改修をやるべきである、いわゆる通学道路というか教育道路をつくるべきだということを、予算分科会提案をしたことがあるわけであります。そのときに文部省では、それは道路ですから建設省の所管でありますと答えたから、もってのほかだ、営林署、農林省が、木を切るに必要な道路のために、その事業に基づいて必要なる林道農林省予算として計上しておるじゃないか。あるいは厚生省は、健康保持のために自然歩道というものを厚生行政に関連する道路として予算計上しておるじゃないか。教育政策として、通学に必要なる道路を、文部省予算として通学道路教育道路を要求することは、どこが建設省の権限を侵すことであるのか。みずから文教行政範囲を狭めるなんという、そういう消極的な態度だから日本教育は進まないのだという意見を述べて反省を求めたことがあるわけなんです。  現実において、通学道路というものについて、林道に相当する考え方村道改修、具体的な国の補助制度をつくるということがなければ、通学バスだけの補助制度ということは片手落ちである。そういうことが現在農山村において学校中心教育道路というものが考えられて、私は、過疎地域の総合的な自治のあり方に非常に大きい役割りを果たすと思うのであり、町村長においても大きい課題であろう。ぜひこういう通学道路検討を願いたい。  文部省においてその後どういう検討をしておるのか。していなければ、やはりこの問題を検討さるべきであると思うので、文部省意見をお聞きしておきたい。これも現状だけお聞きして、次の宿題として残しておきたいと思うのであります。  この点についても、大蔵省主計官に、学校統合というようなことを必然的な問題として考えるならば、通学バスは考えなければならぬ、そこまでは大蔵省の思想も現実に考えて予算計上しておるわけだが、そうすると、バスの通る道について、通学道路としてこれに手当てをするというのは当然だと思うのだが、そういう点についても、これは聞いておいてもらうだけでけっこうですが、そういう問題があるということを認識しておいてもらいたい。文部省の御意見を聞いて、私の質問を終わります。
  17. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 四十五年三月の予算分科会におきまして、山中先生からただいまお話がございましたような趣旨の御質問があったわけでございます。そのとき坂田大臣から、たいへん傾聴すべき御意見ではあるけれども、処置については建設省とよく打ち合わせた上で処置したいとお答えをしたわけでございますが、文部省としてまだそうした問題についての詳細な実態をつかんでおりませんので、早急に調査に入りたいというふうに考えております。  それから、建設省におきましては、これは先生御承知かと思いますが、過疎地域対策緊急措置法に基づく過疎対策道路整備が進められておるようでありますし、また、山村振興法に基づく山村振興道路整備というものもかなり大幅に進められておるようでございます。その辺との関連等も含めまして調査をいたしたいというふうに考えております。
  18. 山中吾郎

    山中(吾)委員 いまの問題で次官意見を聞いておきたいと思います。
  19. 渡辺栄一

    渡辺(栄)政府委員 ただいま管理局長がお答えしたとおりでございますが、これはいまお話しのような建設省との関係もございますが、やはり文部省として教育上特に配慮すべき問題もあろうかと思いますので、ひとつ十分検討いたしまして、私どもといたしましての方針も検討してまいりたいと思います。
  20. 山中吾郎

    山中(吾)委員 終わります。
  21. 久保田円次

  22. 木島喜兵衞

    ○木島委員 この間沖繩特別委員会でもって十数項目通告しておりましたところ、高専問題だけで終わったもんだから大臣にしかられました、ずいぶん勉強させて一つだけで失礼じゃないか。でありますが、しかしきょう大臣はおいでになっていませんから事務的なことだけで、しかも時間がないそうでありますから、私のほうも簡単にお聞きしますから、どんずばり簡単にお答えいただきたい。この問題は息の長い問題でありますから、きょうお答えできなければなお今後という問題も当然あるわけでありましょうから、そういう意味できわめて事務的な問題だけをきょうまとめてお聞きしたいと思います。  第一は、この間山田先生が御質問なさっていらっしゃったんでありますが、特別教室、屋体、プール等がたいへんおくれておる、これを本土並みに五年間でというんでありますけれども、いまは熱があるけれども、五年というとだんだん延びるのがいままでのとかくの計画だと思うのです。  そこでお聞きしたいのでありますけれども、こういう施設整備を本土並みにするのには一体どのくらい金がかかるのか、来年度のそれの予算要求はその五分の一なのか、五年間で平均してやれば五分の一になるわけです。あるいはもっとよけいにやってだんだん少なくなるのか、あるいは最初少なくてだんだんよけいになるのか、均一になるのかということをまずお聞きします。
  23. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 沖繩の学校施設の整備状況が本土に比べてかなりおくれておるということは大臣からしばしばお答えをしておるわけでございますが、従来はこの沖繩の施設の整備の現況につきましての調査が非常に不十分でございましたが、本年の五月一日現在におきまして正確なまた詳細な調査をいたしまして、四十七年度予算はそれに基づいて要求をいたしておるわけでございまして、四十七年度から五十一年度までの五カ年計画ということで、私ども調査によりますと、要整備坪数は約六十万平米ということでございます。補助の所要額といたしましては、本年度の要求単価を前提にいたしまして、約二百十八億前後というふうに推算をいたしております。この予算文部省から総理府に要求をいたしまして、沖繩・北方対策庁におきまして一括計上いたしておる予算でございます。四十七年度の要求額は全体の五分の一ということで要求をいたしております。ただ、土地につきましては、買おうと思いましても買えないというような事情がありましたり、そういうようなことがありますから、必ずしも均等の五カ年ということになっておりません。建物につきましては均等で要求しておるということでございます。
  24. 木島喜兵衞

    ○木島委員 いまもちょっとありましたが、小中学校の借地しているのは、文部省が買う金を補助しますか。
  25. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 私どもが主として調査をいたしておりますのは、米軍に接収されました小学校の用地の取り扱いでございまして、接収されました学校が十三校ございます。そのために代替地を借用しておるという学校が十一校ございます。そのうち具体的にその買収計画を持っておるという学校が五校ございます。その所要額は約五億ということでございまして、五カ年計画でいま二分の一という補助で買収費を補助してまいりたいというふうに考えております。
  26. 木島喜兵衞

    ○木島委員 少し意見があるところがありますけれども、きょうはあまり意見を私述べません。  それから高校の進学率が非常に少ないですね。六五%くらいですね。この高校進学率の低いのは本土並みにするならば、五カ年計画で約二〇%以上上げなければいけません。一体その高校進学率の低い原因はどこにあるのだろうか、その原因を除去して進学率を高める、そういう計画があったらひとつお聞かせ願います。
  27. 岩間英太郎

    岩間政府委員 沖繩はただいま高校進学率が六七・九%ということになっております。その原因でございますけれども一つは、子供のいわゆる急増が本土と比べますと若干おくれております。そういう意味でいま沖繩の子供の数はずっとここ全般的に減るような傾向にございますが、これが減ってまいりますと進学率が伸びるということにもなろうかと思いますが、しかし根本におきましては、要するに高等学校が本土に比べて足りないということだろうと思います。したがいまして、これにつきましてもやはり今後六校程度高等学校を増設するというふうな方向で計画をしてまいりたいというふうに考えております。
  28. 木島喜兵衞

    ○木島委員 それから独特のでは教育債が私の調査では三百四十万ドルくらいだと聞いておりますけれども、そのうちの九〇%くらいは金利の高い市中銀行のを借りておりますね、これはどう処理なさいますか。
  29. 岩間英太郎

    岩間政府委員 ただいま先生が三百四十万ドルとおっしゃいましたけれども、この数字は私どもまだ正確につかんでおらないわけでございますが、一九六九年現在では約二百万ドルということで、その後二年間でそこまでふえておりますかどうでございますか、よくわかりませんが、これは市町村のほうで引き継ぐということになっておるわけでございます。自治省と相談をいたしておりますけれども、地方財政全般がだいぶ仕組みが変わってまいりますから、これにどういうふうに対処するか、今後相談をしながらやってまいりたいというふうに考えます。
  30. 木島喜兵衞

    ○木島委員 そうですね、これは自治省と十分連絡してください。  それから琉球大学、いま敷地の問題が出ましたが、琉球大学の敷地四十四万坪のうち今日買ったのが十三万坪、あと三十万坪余買わなければならないのですね、敷地だけでいいますと。これは敷地を買う金の補助はするんですか、国が買うのですか。
  31. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 お話のように、現在首里北方十キロの地域に百四十八万平方メートルの用地を選定いたしまして、そのうち三割は購入済みでございまして、残余の七割の土地につきましては、本年度の、向こうでいいますと一九七二年度の予算で琉球政府で全部を買うべく用意ができております。日本の政府からそのことについての補助というふうなことは格別いたしておりません。
  32. 木島喜兵衞

    ○木島委員 これは琉球政府が買うのはいいんですけれども、ものの考え方だと思うのです。もし従来なかりせば、一県一校の国立大学があるんですから、当然国がつくらなければならないでしょう。琉球政府全体の財政から考えて、私はやはり相当の大きな額だと思うのです。ですからこれは、むしろ国立を新しくつくるんだ、いままで琉球大学という大学があったけれども、それをただ移管するのだというものの考え方、それはたいへんふしあわせだ。しかし、もしなかったら国がつくらなければならないということだろうと思いますが、そういう立場に立って言えば、国が土地については——私いろいろ考え方があると思うのですけれども、しかしきょうはこれだけでやめておきます、意見を言わないということにしておりますから。  それから、大学国立移管に伴って教授陣の資格審査はどういたしますか。
  33. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 琉球大学は国立移管ということで法律の用意もいたしておるわけです。現におられる数のほかに相当数の定員増が要る。現におられる人を含めて移管するわけで、当然先生のおっしゃるように資格審査の問題が出てまいります。現在までに大学設置審議会の専門の部会等におきまして、内々に本土の国立大学の基準に照らしまして審査を進めてございまして、大体おられる方の大半は審査合格というような準備はいたしております。
  34. 木島喜兵衞

    ○木島委員 それから医学部。これは総理府の琉球大学医学部設置問題懇談会、武見太郎さんが会長ですが、あれの結論ともからむのですけれども、医学部を、来年は調査費をつけるといいんだけれども文部省とすれば何年から設置したいという希望を持っていらっしゃいますか。
  35. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 これはすでにそのあたりの経緯は御説明をいたしたわけでありますが、現在本土でも医学部をたくさんつくるというような話が具体の日程に乗っておりまして、沖繩を含めてどういうぐあいに考えるか、また文部省としてどうしたいか、できるだけ早いほうがよろしいかと思いますが、いろいろ医療制度の問題とか、医師が定着するかどうかとか、諸般の情勢を整備しつつということでございますので、いろいろお励ましもいただいておりますけれども、大体四十八年度以降すみやかにということを文部省として申し上げたいと思います。
  36. 木島喜兵衞

    ○木島委員 新那覇病院を建設中でしょう。これとの関係を——いま本土の医学部、いろいろ問題があるとおっしゃるけれども、一方、新那覇病院をつくっているわけです。私はもう議論をしないつもりでおりますけれども、新那覇病院をいまつくっているということと、保健学部との関係だとか医学部との関係を明確にしなければ、新那覇病院そのものも実はたいへんあいまいな、付属病院といいながらたいへんあいまいだと思うのです。その辺もう少し——私はとことん聞きたいのですけれども、きょうは時間がないというから聞きませんけれども、そういう関係から、本土と一体とか、あるいはなるべく早くとか、あるいは定着するかどうかとかいう問題ではないんじゃないですか。少なくとも、政務次官、これはむしろ判断の問題かもしれませんが、いかがでしょう。
  37. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 事実関係だけ申し上げますが、二十億余をかけまして新那覇病院ができるわけでございます。すでに官制的には琉球大学の保健学部の付属病院ということになっております。四百床のベッドを持つ、保健学部の教育実習をする予定になっております。今後これを整備するということに相当の、職員の手当てあるいは内容の施設整備等の充足を考えてまいりたいというのが現況でございます。
  38. 渡辺栄一

    渡辺(栄)政府委員 ただいま安養寺審議官が御説明申し上げたような現状でございますが、政府といたしましては、医学部の設置につきましては強い熱意を持っております。なるべく早い機会に設置をするように努力をいたしたいと思います。
  39. 木島喜兵衞

    ○木島委員 問題は少し変わりますけれども学校安全会の掛け金が本土並みになるわけですけれども、現在でも給付基準は本土と同じですよね。ところが、本土のほうは掛け金が百十円、沖繩は一セント、三十六円、これはすぐに百十円に上げますか、経過措置をとりますか。
  40. 澁谷敬三

    ○澁谷政府委員 いま御指摘のとおり学校安全会の支給基準は本土とほぼ同じでございますが、給付が非常に少なくなる。これはいろいろ原因があるかと思いますが、一つの大きな原因は、医療機関が不足しておる、それから医療保険制度がまだ未整備である等のことがあるかと思います。こうした事情はまだ当分の間続くと思われますので、義務教育学校につきましては、当分の間、少なくとも来年は本土並みの比率で考えていきたい、そういうふうに思っております。
  41. 木島喜兵衞

    ○木島委員 比率とは何。掛け金か。
  42. 澁谷敬三

    ○澁谷政府委員 ことしが百十円でございますね。向こうが一セントですから三十六円、おおむね三分の一になると思います。そのおおむね三分の一程度で当分の間考えていきたい、そう思っております。
  43. 木島喜兵衞

    ○木島委員 私立学校教職員の共済組合ですが、これは本土並みにしていくと、いままで掛け金をかけておらないから長期給付をどうするかという問題があるわけですね。しかし、掛け金かけないのなら短期給付だって同じことだと思うんですよ。かけ始めたって財産を食っていくわけですからね、いままでの掛け金を。短期給付はまあいいですよ。長期給付はかけておらないからということになると、生涯影響を及ぼします。そういう意味でこの私学共済組合の長期給付をどうするかという点、もうあまり説明しないでも問題だけ聞いておりますから……。
  44. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 私学共済の長期の経過措置でございますが、これは先生御承知のとおり、非常にむずかしい、かつ技術的な問題でございますが、共済組合の一般的な考え方といたしましては、掛け金を納付していない期間につきましてはこれは組合員期間に算入をしないということが大原則でございます。これは本土の場合ももちろんそうでございますし、従来の本土の共済組合に関連する各種の経過措置というものは、すべてそういう前提のもとに立てられておるわけでございます。したがいまして、沖繩の場合も原則としてはそういうことでございますが、しかし沖繩は、御承知のとおり米軍の占領下に長期間あったというような特殊事情がございます。その点を考慮いたしまして、掛け金をかけていなかった期間につきましても、これを控除期間と申しますか、職員期間と申しますか、そういう期間として取り扱いまして、本人の掛け金相当分だけを控除して年金の計算をする、つまり通常の原則でございましたならば何ら給付の対象にならないわけでございますが、沖繩の特殊事情にかんがみまして、本人の掛け金分だけを控除して年金計算をするという経過措置を考えておるところでございます。
  45. 木島喜兵衞

    ○木島委員 もう一歩進めて、そういう事情にあったのだから、本人の掛け金分を公費で出しませんか。国費で埋めてやりませんか、そういう特殊事情なんだから。
  46. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 一つの御提案として理解できないことではございませんが、共済組合というのはすべて横並びの問題がございます。国家公務員共済組合、地方公務員共済組合等の問題がございます。私学共済についてだけそのような措置を講ずるということは、これはとうてい不可能なことかと思います。
  47. 木島喜兵衞

    ○木島委員 まあ、それはいま文教でやっているからそうなるんだけれども、他のほうも私はそうあるべきだと思うのですけれども、きょうは議論しません。  それから退職手当、これも計算のしかたが、勧奨退職の場合は率はたいへんいいですよ。本土の三倍くらいになるわけです。ところが年数計算が違うわけでしょう。だから、いい場合もあるし悪い場合もあるわけです。だけれども、どうなんでしょうか、これを全く本土並みに再計算を全部する、戦前も含めて。年数計算は二十七年からになっていますね。そうすると、それ以前の年限は一体どうなるのか、退職金の問題としても。こういう問題と、それから年金、恩給、この場合も公立学校共済組合の実施される以前、一九六八年以前の退職者はたいへん低いわけですね。これをどうするか、この問題も教職員並びに退職者にとってはたいへん大きな問題だと思うのですね。その点をひとつ……。
  48. 岩間英太郎

    岩間政府委員 年金の問題は管理局長からお答えいただくとしまして、退職金につきましては、二十七年以前の期間を含めまして計算するものでございます。大部分の教員はこれは有利になるということであろうと思います。ただ、六十を過ぎました方で勧奨退職を受けられる場合には三倍ということでございまして、そういう方が現実におられるかどうか、これは私どものほうで正確に把握しておりません。しかし、そういう方が来年の三月に御退職になる場合にはどちらか有利なほうを選べるというふうなことになるわけでございますけれども、三月に三倍もらっておやめになるという方がございます場合には、それに対応できるように本年度におきまして約六億八千万の援助金というものを別途考えておるような次第でございます。したがいまして、そういう方はどちらか有利なほうを選択をされる、その方々は有利にできるということじゃないかと思います。
  49. 木島喜兵衞

    ○木島委員 ついでに給与のことですけれども、本土に直しますと、現在の給与より高い人がおりますね。これを臨時手当や何かにする、これはずっと臨時手当で続くのですか。それとも定期昇給のときに間引いて、だんだんともとへ戻していくのかという問題はどう処理なさいますか。
  50. 岩間英太郎

    岩間政府委員 御承知のとおり、沖繩の教職員の給与は、本土に比べまして、同じような計算で比較いたしますとかなり高い。もっとも、これは教職員ばかりではなくて、その他の国家公務員あるいは地方公務員も同じような状況にあるようでございます。したがいまして、特別措置法におきましては、特別の手当を支給するというふうな方針が示されておるわけでございますけれども、しかし、これは順次本土の教員並みにならしていくという方針のようにただいままでは私どもも聞いております。
  51. 木島喜兵衞

    ○木島委員 次に、宗教について聞きたいのですけれども、四十七条でしたか、「沖繩の宗教団体法に基づく法人である宗教団体及びこの法律の施行の際琉球政府が保管している神社明細帳に記載されている神社は、それぞれ、宗教法人法に基づく宗教法人となる。」となっていますけれども、この神社明細帳にある神社で宗教法人法に基づく宗教法人になるのであるけれども、これは承認を求めることから出発をするわけですね。したがって、ある神社が、神社明細帳にある神社で、承認を求めてこなかったらこれは宗教法人にならないのか、この点はどなたか……。
  52. 安達健二

    ○安達政府委員 いまお示しのように特別措置法によりまして、現在沖繩におきまして有効であるところの宗教団体法によって認可が行なわれたところの宗教団体が五十一ございますが、これは特別措置法によって何らの手続を要せずして法律上当然宗教法人になるということになっておるわけでございます。それから神社につきましては、神社明細帳に記載されておる神社も当然宗教法人になるわけでございます。ただ、そのなったものにつきましては、施行の日から一年六カ月以内に宗教法人法に基づく規則の認証を申請しなければならないということでございまして、もし認証を申請しないということになれば宗教法人として継続することができなくなるわけでございますが、認証を申請して認証を与えられれば一年六カ月後に、あるいは認証を与えられた後に新しい宗教法人法によるところの宗教法人になる、こういうことでございまして、別に特に手続を要せずして、神社明細帳に記載されておる神社は宗教法人になるということでございます。
  53. 木島喜兵衞

    ○木島委員 だから承認を求めなければならないわけでしょう、明細帳にある神社も。
  54. 安達健二

    ○安達政府委員 神社明細帳に記載されているものは法律上当然になるわけでございます。ただ宗教法人法の規定によるところの規則の認証申請を一年六カ月以内にしなければならない。
  55. 木島喜兵衞

    ○木島委員 しなければならぬのでしょう。
  56. 安達健二

    ○安達政府委員 なるわけでございます。なって、一年六カ月以内に認証申請をしないか、あるいは認証を得られない場合に、一年六カ月後にその資格を失うということでございまして、何らの手続を要せずして復帰の特別措置法の施行の際に宗教法人になってしまいます。切りかえられるわけです。こういうわけです。
  57. 山中吾郎

    山中(吾)委員 ちょっと関連。認証の法的性格はどうなんですか。第三者に対抗するとか、そういう意味ですか。
  58. 安達健二

    ○安達政府委員 宗教法人法による認証の性格でございますが、これは一種の確認行為である、一規則が法令の規定に適合しているかどうかを確認する行為である、こういう性格でございます。そして、第三者に対抗するためにはいわゆる登記をしなければならない、こういうことになります。
  59. 木島喜兵衞

    ○木島委員 私がこれを聞きますのは、ちょうど靖国神社とかそういう問題とからんできますから、宗教法人でない、宗教の圏外にある神社というものが存在するかどうかということが、国内の靖国神社問題等とのからみ合いにおいて私は重視しておるものですからお聞きしたわけであります。  それについてからめて聞きますけれども、法人になるから、したがって現在の境内とかそれらは結局法人のものになるわけですね。現在の神社の土地というのはどこの土地になっておるのですか。神社明細帳にある神社の土地の所有権はどこですか。
  60. 安達健二

    ○安達政府委員 宗教団体法が昭和十五年にできましたけれども、その当時神社は宗教団体法の適用を受けない形になっておったわけでございます。そして神社につきましては、従来からの慣例で、民法施行法の規定といいますか、規定の解釈といたしまして法人格を持つというように考えられておったわけでございます。したがいまして、神社の土地は神社という法人の所有に属する、こういうことでございまして、この復帰の特別措置法によりまして切りかえられた後も、宗教法人法によるところの法人のものであるということは変わりがないわけでございます。
  61. 木島喜兵衞

    ○木島委員 現在の所有権はどこにあるのですか。
  62. 安達健二

    ○安達政府委員 その神社そのもの、法人である神社であります。
  63. 木島喜兵衞

    ○木島委員 いま神社は法人じゃないでしょう。
  64. 安達健二

    ○安達政府委員 これは宗教団体法に基づくところの法人ではございませんが、民法施行法で神社、寺院その他につきましては民法の法人の規定を適用せずと書いてあるわけです。その反対解釈として、学説でございますけれども、これは法人であるということが従来からの解釈であったわけでございます。
  65. 木島喜兵衞

    ○木島委員 もうやめます。あと二つばかり聞きたいのですが、これはどなたに聞いたらいいのか。学術会議の——これは答弁できる方いらっしゃいますか。三年間はちょっと困るのです、沖繩における科学者たちが。選挙権、被選挙権を三年ごとに切りかえるでしょう。この十月にしたものですから、あと三年間学術会議に対する沖繩における科学者たちの発言権がないわけです。これはまさに本土並みにならないと思うのですが、これはだれか一いらっしゃらなければいいです。安養寺さん、いいですか。
  66. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 総理府の所管ですので、ちょっとわかりません。
  67. 木島喜兵衞

    ○木島委員 なければこの次でもけっこうです。御研究いただきます。  それから、安達さん、沖繩の著作権法ではソ連とか中華人民共和国等は、条約のない外国人の著作権も保護を受けておりますね。本土ではないわけでしょう。この関係は、いままでそういう国々の沖繩における著作権の保護を受けておったものが、今度受けられなくなりますね。この点はどう処理なさいますか。
  68. 安達健二

    ○安達政府委員 現在沖繩で施行されておりますところの沖繩の著作権法の第二十八条で、「非琉球人」、琉球人にあらざる人の「著作権ニ付テモ本法ノ規定ヲ適用ス」、こう書いてあるわけでございます。非琉球人というものの解釈といたしましては、あらゆる琉球人にあらざる人ということでございますから、条約関係があるとかないとかを問わず、すべての国の国民の著作物を保護する、こういう体系になっておるわけでございます。しかしながら、現在国際著作権の関係におきましては、条約関係のない国のものについて全面的にすべてを保護するという体制はないわけでございます。現在の新著作権法におきましてもそういう体制はとっていないわけでございます。したがいまして、原則といたしましては、沖繩が本土に復帰する際に、沖繩だけの地域については全外国人の著作物を保護するというようなことは認められないわけでございます。したがいまして、復帰後においては、そういう条約関係のない国の国民の著作物まですべて保護するというたてまえをとるわけにはいかない、こういうことになるわけでございます。それは本土と同じ取り扱いになるわけでございます。ただ附則におきまして、沖繩において第一発行された、最初に発行された著作物について現に沖繩著作権法によって保護の対象になっているものについては、これは引き続き保護するということでございます。  もうちょっと解説を加えますと、外国人の著作物を保護する場合に、たとえばソ連との間には条約関係がないわけでございますが、ソ連人がソ連で出版したものを沖繩で翻訳して発行する場合に、それについて著作権法が及べば翻訳料を払わなければならぬという義務が生ずるわけでございます。これが一つと、もう一つは、ソ連人のものを沖繩で初めて発行するということが一つ考えられるわけでございます。そういう沖繩において最初に発行されたものについては、これは日本の法制におきましても、条約関係のない国の国民のものでも、日本で最初に発行されたものについては保護するというたてまえをとっているわけでございます。したがいまして、沖繩において第一発行された条約関係のない国の著作物についても、現になお沖繩の著作権法によって著作権が存続しているものは引き続き保護をしよう、こういうことに措置法になっておるわけでございます。
  69. 木島喜兵衞

    ○木島委員 私、きょうは意見を述べないで、文部省のものの考え方だけを聞いたのでありますが、あと若干ありますけれども、時間の三十分が来ましたから終わりますが、なお、これらの問題はこれからもずいぶん長く審議をしなければならぬ沖繩の教育問題でありますから、いまは文部省のお考えだけを聞きまして、後日また私ども考え方を申し上げます。  終わります。
  70. 久保田円次

    久保田委員長代理 有島君。
  71. 有島重武

    ○有島委員 私は、きょうは都市の緑化をめぐっての二、三の質問をやりたいのですが、その前に、報道によりますと、この十六日に高見文部大臣が、与党の教育費等に関する小委員会において、国立大学授業料の値上げを受諾された、そして新年度からこれを適用するというようにおきめになったというふうに伺っておりますが、このことについてただしておきたいと思います。  私どもとしては、この値上げ問題につきましてまず第一番に、大学のあり方そのものについての基本問題、これがはっきりしない前に、単に便宜的な、安易な授業料の変更ということは非常に不見識ではないか、そのように思っておるわけです。基本問題と申しますのは、国公私立の各立場における相互の関連性の問題、それからもう一つは卒業資格ということについての再検討、それから大学における受講、授業を受けるそうした形態、こうした規定についての再検討をすべきじゃないか。そういうことをかねてから主張しておりました。こうした問題がもっと詰められていかなければならないのではないか。それから先日来同僚の山田議員あるいは多田議員からの質疑もございましたように、大学授業料の性格そのものについての考え方、あるいは育英奨学資金のあり方の再検討、こうした問題を解決しない前に、単にバランスの問題、あるいはいま上げると大学紛争が再燃するのではないかなどというきわめて保守的な、保身だけの理由からこれに反対している、あるいはもうよかろうというような、そういう御判断ということは、きわめてこれは不見識であろうと私どもは思うわけでございます。  これにつきまして、本日閣議があったと思いますけれども、そこでもってどのように取り扱われましたか、その点渡辺政務次官から御報告いただきたいと存じます。
  72. 渡辺栄一

    渡辺(栄)政府委員 授業料の問題につきましては、まだ文部省として最終の態度を決定しておるわけではございません。本日の閣議におきまして、文部大臣としましては、国立大学授業料につきましては、中教審の答申を受けまして、奨学制度等一連の総合施策と関連して検討いたしておりまして、今回はその値上げはできれば見送りたいという考え方でございますが、しかし、そういうような決定がなされたような場合におきましては十分考慮しなければならぬであろう、こういう発言をしておるはずだと思っております。  したがいまして、文部省といたしましては、現在の国立大学授業料昭和三十八年度に定められたものでございまして、これは御承知のとおりでありますが、設定以来すでに八年を経過しております。諸般の事情から授業料の値上げを適当とする意見のあることも十分承知いたしております。しかし文部省としましては、この問題については、中央教育審議会の答申もございまして、特に私立学校に対する助成の強化あるいは育英奨学事業の抜本的な拡充というような問題ともあわせまして、四十八年度に検討いたしたいという考え方をすでに申し上げておるはずだと思っております。したがいまして、昭和四十七年度の授業料値上げにつきましては、そういう方向で現在のところ変わった線を出しておりませんけれども、いろいろな御意見も出ておることは事実でありまして、ひとつ慎重に検討いたしたい、こういうふうに考えております。
  73. 有島重武

    ○有島委員 報道によりますと、党の決定があればそれに従うというようなことを言っていらっしゃる。これはそういうふうに報道されておりますので、一般はいよいよこれは値上げではないかというふうに思っておりますけれども、いまの政務次官のお話では、それは必ずしもそうではないんだ、四十八年度からということを文部省としては望んでおるんだ、そういうお話でございますね。
  74. 渡辺栄一

    渡辺(栄)政府委員 これは御承知のように、まだ党の決定も、現在の時点におきましては正式になされておりません。同時にまた、文部省としましては、いま申し上げましたような方向検討いたしておるということは変わっておりません。
  75. 有島重武

    ○有島委員 じゃ、きょうの閣議ではそのことを決定したわけではない、むしろ従来の主張をされておったんだと、そういうことでございますね。  それで、いま諸般の事情というおことばがございましたけれども文部省では、大学授業料の算定の基準といいますか、一体何を根拠として値上げをしようとしておるのか、あるいは据え置きをしようとしておるのか。私学がだんだん上がってきた、物価が上がってきたからこれに便乗しようということではないと思うのです。その基準についての大筋を承っておきたいと思います。
  76. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 値上げ問題そのものにつきましては、いま政務次官からお答えを申し上げたとおりでございます。これは、かりにということでございますけれども、かりにどういうような根拠で値段の議論をするかというようなお尋ねがございました。これは、いろいろ在来の経緯もございまして、公共料金というような扱いにもなっております。また授業料は、受益者負担というようなことで、いろいろ新しい大学財政全体の中で考えるべきじゃないか、学生納付金が大学財政にどのような程度寄与すべきか、というような角度からの御議論もございます。現に中央教育審議会等には、個人消費支出の二割方がちょうど妥当な授業料、学生納付金じゃないかというような一応の試算のようなものも具体の案として出ておるわけでございます。いろいろございまして、結論的には、そういうものを総合して、世論の動向を見ながら考えることになるのじゃなかろうかというような考え方を持っております。結論はこれだというようなものはまだ持ち合わせておりません。
  77. 有島重武

    ○有島委員 そういたしますと、たとえ与党において決定したとしても、文部省内でもってまだ授業料の算定の基準というものが明らかになっておらない、まだ議論の段階である、そういうことになりますと、これは当然、与党の決定であろうとも、そちらのほうの値上げの根拠が明らかになるまでは動かさないというのが筋だと思いますけれども、その点いかがお考えでございましょうか。これは政務次官から……。
  78. 渡辺栄一

    渡辺(栄)政府委員 先ほどは、まだ党の最終決定を見ておりませんと申し上げたわけでございます。したがって、もちろん党の最終決定が出た場合は、その時点におきまして文部省としての意思決定をいたしたい、そういう意味におきまして慎重に検討をいたしておるわけでございます。
  79. 有島重武

    ○有島委員 いまのお話で、意思決定の問題なんですけれども文部省内における、いままでの御専門的な立場から授業料の算定の基準というものがはっきりしない前は、どこから何と言われようともこれは動かさないというのが当然のことではないか、そうお思いになりませんか。いかがでございましょうか。
  80. 渡辺栄一

    渡辺(栄)政府委員 それは、いまいろいろな意見があって検討しておると申し上げておるわけであります。これは最終的に大臣の問題で、こういう見解でいくということを決定をすれば、私はその時点で問題は決着をつけると思います。あるいはまた授業料の問題につきましては、いろいろな御意見もございますから、検討をしていくということはさらに続けるとしましても、その時点においていろいろな結論が出ることは、これはまたその時点における大臣の決心にかかってくるだろうと私は思います。少なくとも現在の時点におきましては、そういうような問題も含めて慎重に検討いたしておる段階でございます、とこう申し上げておるわけでございます。
  81. 有島重武

    ○有島委員 大蔵省に伺いたいんですけれども大蔵省は一番最初から三倍を表明なさったようでございますけれども、かりに値上げになったときに、その増収分の使途ですね、どのようにこれを使っていくという目算がおありになるのか。これは私どもから考えれば、私学振興または奨学資金のほうに繰り入れていくということが当然であろうかと思いますけれども、その点はいかがでございますか。
  82. 青木英世

    青木説明員 ただいま先生から御指摘授業料の値上げの問題につきましては、先ほど文部省のほうから御説明ありましたように、昭和三十八年度以来八年ないし九年据え置きということで、私立大学授業料とのバランス、あるいは国立学校の運営費において占めます割合が三%弱だ、これは昔の、戦前の昭和十年度あるいは十一年度、このころの東京帝国大学特別会計でございますと約一〇%ぐらい占めておったわけです。それから昭和二十年代におきましても七%程度かと思いますが、そういうことで、著しく運営費に占める学生等の納付金の割合というものが低くなっておる。他方、個人所得について見ますと、たとえば戦前と比べますと、昭和四十五年度の一人当たり個人所得は二千六百倍ぐらいになっております。戦前の国立大学授業料が百二十円で、現在一万二千円でございますので、百倍ということで、まあ個人所得の増加から見てももう少し負担能力があるんじゃなかろうかということで、財政当局としては値上げという方向検討しておることは事実でございますし、また、いま御指摘の三倍というような案がございましたが、大蔵大臣が渡米される前に、私どもとしては少なくとも三倍程度は値上げすべきじゃないかということを大臣の御了解を得ていることも事実でございます。
  83. 有島重武

    ○有島委員 私の伺った質問……。
  84. 青木英世

    青木説明員 それから、二倍とか三倍とか、一つの案でございますので、かりに三倍案としますと、おそらく初年度におきまして四十億程度の増収、御承知のとおり新入生からやるということになりますので、四十億程度の増収かと考えますが、授業料の増に伴う育英資金の増額とか、あるいはそれ以外におきましても、おそらく本年度の公務員の給与改定によりまして来年度一般会計から国立学校特別会計へ繰り入れる分というのは、四十億どころの話ではございませんで、やはり数百億増加しなくちゃいけないというようなことになっておりますし、あるいは他方、いま先生おっしゃったような私学助成の問題もございますので、とても、その四十億がどう消えたかというようなオーダーの話ではないというように私どもは考えておる次第でございます。
  85. 有島重武

    ○有島委員 じゃ、本論に入ります。  日本の都市の緑化をめぐりまして、緑の効用をどのように認識すべきであるか、それからこれをどのように教えていくべきであるか、それからまた、文教行政上この緑化をどのように扱っていくべきであるか、それからもう一つは、植物にとって非常に必要な水の問題でございますけれども、雨の水をどのように利用すべきであろうか、そうした点につきまして関係各省庁のお考えをただしていきたいと思います。  最近、植物学者、生態学者から、人間と植物、ないしは人類と生物環境というような問題について非常に重要な報告が次々となされまして、緑がわれわれの生活にとっては不可欠な存在である、そういうことが明らかにされているわけでございますけれども、最初に、環境庁、来ていらっしゃいますか。環境庁としては植物をどのように評価されていらっしゃるか。それに対して、国土または特に都市の緑化に関してどのような対策を講じていらっしゃるか、そういうことについて承っておきたい。
  86. 須田秀雄

    ○須田説明員 お答え申し上げます。環境庁自然保護局企画調整課におります須田でございます。  いま私ども、環境庁がスタートいたしましてから、わが国の自然環境、国民の環境が非常にこわされてきているという意味で、それを守っていくためにいろいろ対策を必死に追求している段階でございます。その中で、特に緑地が国民の良好な生活環境を守っていくために果たす役割りというものがきわめて多いということを痛感いたしておりまして、関係各省庁と密接な連携をとりながら、守るべき自然というものをしっかり把握していきたいという点で、新しい対策を打ち出すための努力を続けておる次第でございます。  先生指摘のとおり、緑というものが人間の生活環境あるいは肉体、精神に対して持ちます効用というものがきわめて大きいと存ずるわけでございますが、いろいろまだ学問的にも未知の分野で、これから詰めていかなければならない分野がきわめて多いと存じますが、幸いにいたしまして、国会の御承認を得まして、環境庁におきましてただいま国立公害研究所というものを設置するための構想を煮詰めている段階でございますので、その中で今後御指摘のような研究をもっと多角的に積み上げていくために最善の努力を繰り返していきたい、かように考えている次第でございます。
  87. 有島重武

    ○有島委員 重ねて伺いますけれども、私が伺っているのは、緑が何で人間に対して大切なのか。大切だ大切だということはいわれているのです。何で大切なのか、そのことをどのように認識なさっているかということを承りたかったのです。
  88. 須田秀雄

    ○須田説明員 人間の生活の疲労度という面から把握いたしましても、緑のある環境で住んでいること、あるいはもっと具体的に申し上げますと、道を歩く場合に、緑に乏しい道を歩く場合と緑の豊かな道路を歩く場合で、どういう心身に対する影響があるかというような研究もなされております。豊かな緑に恵まれた地帯で生活することが非常に人類の快適な生活、心身の豊かさを増していく、そういった研究もあるわけでございます。ぜひ緑を豊かにしてまいりたいと考えておるわけでございます。
  89. 有島重武

    ○有島委員 環境庁を代表していらっしゃると私はここでみなさなければならないから申し上げるのだけれども、そんなあいまいな認識でもって——それだったらほかのものにどんとん押し切られてしまいますよ。  次に建設省に伺います。建設省、おりますね。  天皇陛下が外遊されまして、ロンドンでもって第一番に言われたのは、こんなに自動車が多いのに、どうしてロンドンではこんなりっぱな木が育っているんだろうか——それはテレビでもって報道されました。それについて侍従の方々が、さっそくこれは調査いたします、そう申し上げたのだそうですね。ロンドンやパリやあるいは西ドイツ、ああいったところと比べまして、もう東京だとか大阪だとか非常に緑が貧困でございますね。建設省としては、緑の重要性をどのように評価していらっしゃるのか。また、都市計画の中でもって緑化という問題をどのように位置づけておるのか。特に街路樹について、今度は具体的な問題として街路樹の単価はどのくらいにつけていらっしゃるのですか。それから大都市ですね、東京と大阪だけでもけっこうですけれども、大体年間にどのくらい植えて、どのくらい枯れているのか掌握していらっしゃるか、伺います。
  90. 川名俊次

    ○川名説明員 第一点目の、どのような評価をしておるか、こういう御質問でございますが、私どもといたしましては、古くは、どちらかと申しますと、都市の中の街路樹を都市の美観の問題として評価をしていた時代がございます。しかし、最近におきます緑の減少と申しますか、緑地の喪失と申しますか、そういったような事態あるいは環境の破壊等の問題がございますので、むしろ生活を取り巻く環境問題としてこれを把握するほうが妥当であるということが一つございます。  それから公害対策といたしまして、大気汚染等、こういった問題がございますが、これらに対しますところの物理的あるいは化学的な効果があるという点が二点目であります。  それから三点目は、視覚的な安らぎを非常に受けるのが植物の持つ緑の機能であります。こういったような視覚的な安らぎ、向こうのことばでアメニティというようなことを申しておりますが、そういった位置づけをしております。  そういったことにおきまして、第二点目の御質問でありますが、私どもといたしましては、緑の問題は、都市の中におきまして非常に大切にいたそうということで、大きく分けますと二つの立場があります。一つは、現在ある緑をいかにして保存をしていくかということであります。第二は、非常に少なくなってまいりました緑に対しまして、今後どうやってこれを回復していくかということの問題でございます。  この二つをあわせまして、昭和四十四年度に都市緑化対策推進要綱というものを省といたしまして決定をいたしました。これは、一つは国または地方公共団体が実施する事業、もう一つは民間の御協力を得る事業、こういうことの二つに分けまして、その中におきまして都市公園をまず整備していく、それから再開発等によりまして都市の空閑地ができましたところを緑化していこう、あるいは工業地帯、河川敷等の緑化をはかっていこう、それから街路樹の整備をいたしていこうというような、主といたしまして営造的な形において整備をしてまいりたいということが一つ。もう一つは、現在残されております風致を維持していく、あるいは樹木の保存等による適応策をはかっていく、こういうことによりましての保存を考えていく。それから、民間と申しますか、市民と申しますか、そういう方々に御協力を賜わりますことは、市民の森を造成していこう、あるいは都市公園等の美化保全に参画をしていただこう、あるいは敷地内におきますところの緑化をはかっていただくというような事柄を、関係諸団体を通じまして進めてまいりたいというのが都市緑化対策推進要綱の骨子でありまして、現在これに基づきまして着々とその効果をあげつつあるというふうに思っております。  それから、街路樹の単価につきましては、街路課長から御答弁申し上げたいと思います。
  91. 村山幸雄

    ○村山説明員 街路課長でございます。  街路樹の単価のお話と、それからどのくらい植えてどのくらい枯れるかというお話でございますが、現在ここに手持ちの資料といたしましては、東京都の例で、管理費のほうでございますが、大体一本につきまして約六百二十円ぐらいの管理費を一年間にかけております。  それから、これは都道の分だけでございますが、現在東京に約七万本近い街路樹がございますが、その中で四十五年度に新設いたしましたものにつきましては大体七千本くらい新設をいたしておりまして、このペースをどんどん上げていきたいというように考えておられる。  どのくらい枯れたかということにつきましては、ちょうど手持ちの資料がございませんので、ここで申し上げる数字は持ち合わせておりません。
  92. 有島重武

    ○有島委員 建設省の御認識としては、一つには美化である。それから環境問題ということになってきた。それから大気汚染に対して、あるいは視覚的な問題であります。視覚と美化とはどういうことになるか、非常にあいまいなことなんですけれども、そちらでわかっていらっしゃる問題なのかどうか知りませんけれども、ここに私の持っているのは、これは東京都の調べでございますけれども、こういった事実があるのです。  一つには、各交差点において排気ガスが猛烈にたち込める。したがいまして、一酸化炭素、鉛というものがどのくらいあるかというそういうことを東京都で調べたわけです。その例を一つ二つ申し上げますと、大原の交差点、一時間の交通量が一万四百六十八台、こういうことになっております。この一酸化炭素濃度が一一・七PPMです。鉛が三・三PPM。ところが、荒川に宮地のロータリーというところがありまして、ここは一時間交通量が五千三百三十三台というから半分くらいですね。ところが、一酸化炭素の濃度が七・六、これは半分にはならないがやや低いけれども、鉛の濃度は七・四ということになっておる。大原交差点の約倍です。台数が半分なのに鉛の濃度が倍になっておる。それから千住の二丁目、一時間の交通量は四千三百十七台ということになっている。ここの一酸化炭素の濃度は一九・〇ということになっておる。こういうことに比べまして高円寺の陸橋のあたり、ここはやはり一時間の交通量は一万二百八十六台ということになっておりますけれども、一酸化炭素の濃度は五・五、鉛が三・三、こういうような現象も起きているわけです。ですから、交通量が非常に多いにもかかわらず、一酸化炭素の量も鉛の濃度もそれほどでないというところがあるわけです。それから、交通量が少ないにもかかわらず、非常にそうした環境が悪いという例もあるわけなんです。これは間違いじゃなかろうかと思って問い合わせたのですよ。ところが、これは間違いではなかったわけです。見に行ってわかったことは、高円寺の陸橋のあたりは、御承知かもしれないけれども、緑がたくさんあるわけです。宮地のロータリーなんかほとんど何もないコンクリートの場所です。それで、これも環境庁はこれから研究なさるというお話ですけれども、神奈川県の農事試験場の調査がございます。街路樹がどのくらい大気中の有害物を吸っておるか、そういった検査があるのですね。これは神奈川県のサンプルでございますけれども、イチョウについていいますと、イチョウの体内に鉛が三四PPM、鉄が一二一一PPM、マンガンが六九、亜鉛が八三、銅が二六。それでこのイチョウが葉っぱの面にどれくらい吸っておるか。すると鉛が一九〇、鉄に至っては一七六二五〇PPM、これだけのものを葉に吸着しているわけです。マンガンが四三五〇、亜鉛が八〇二五、銅は四八〇、これはほかのプラタナスの例もございますけれども、こうしたデータが出ております。ということは、排気ガスの中の有毒分を植物がどのくらい吸ってくれるかということ。もし植物がなければその部分を全部人間が吸うわけです。植物は、御承知のように空気中の炭酸ガスを吸ってそして酸素を出してくれる、これは学校で習うことでございますけれども、日が照りさえすればそうなる。だけれども、空気中の全部を吸ってその中から炭酸ガスを吸うわけですね。ですから、比喩的にいえば、電気掃除機がございますね、あの電気掃除機をさかさに立ててあそこに置いてあるのと同じ効果があるわけです。そして、そうすれば植物がたくさん吸って、植物はかわいそうかもしれないけれども、ではそれによって植物がまいってしまうかどうか。これも神奈川県の農事試験場でやった問題ですけれども、植物はまいらない。そういったことがございます。  それで文部省のほうにちょっと聞いておきたい。副読本でもって「公害の話」というのがあるのですね。この中にこういうのが出ているのですよ。「1、工場の多い土地では木の生長がおそく、かれかかった木や、葉の色の悪い木が見られる。また、夏でも葉の落ちてしまう木が見られる。2、工場の少ない町でも、自動車のはい気ガスのためにサクラ・スギ・ヒマラヤスギなどが弱っている。」これはどちらに伺ったらいいのですか、岩間さんに伺ってよろしゅうございますか。これは何か科学的な根拠があって記載されたものであるか、その辺を承っておきたい。
  93. 岩間英太郎

    岩間政府委員 御指摘になりましたのは東京都の例ではないかと思いますが、私どももただいまそういうものにつきましてこれから作製しようと思って検討いたしております。いまの学問的根拠があるかどうかというお話でございますけれども、私からちょっとお答えする能力がございませんので、お許しいただきたいと思います。
  94. 須田秀雄

    ○須田説明員 先ほど、実は私、少し趣旨を取り違えて御答弁申し上げましたので、もう一度補足させていただきたいと思います。  まず第一点は、環境庁といたしまして従来から国立公園ということを中心に自然保護を景観の立場からながめておりました点を、積極的により広い目的から自然を見直すというための努力を法律、予算その他を通じまして考えておる次第でございます。  それで、ただいまの御質問に入ってまいりますが、植物につきましても、非常に環境に、大気の汚染に弱い植物というものがございまして、そしてそれぞれの植物の種類に応じまして、その植物の生育の状況を見て汚染の度合いを調べてみるという意味での指標になります動植物ということの研究がだんだん進んできておりまして、そういう学問というものをこれから行政に生かしていきたいと考えておる次第でございます。
  95. 有島重武

    ○有島委員 文部省として、こうした緑についての、どのように教えていくことを期待するか、現在の教え方、これで十分なんだろうかどうか、こういうことなんですが、総理府の青少年局の方来ていらっしゃいますか。宇部市でもって緑化運動が二十年前らかずっと持続的に行なわれて、ここ十年、たいへんな成果をあげたということです。これが青少年問題と大きな関連を持っているというふうに私は報告を受けているわけですが、宇部市の緑化運動、ないしはここ二十年来の青少年犯罪の推移、それについて御報告をいただきたいと思います。
  96. 佐々成美

    ○佐々説明員 先生お尋ねの宇部市の緑化運動のお話でございますけれども、山口県に問い合わせて調べましたところ、市の緑化運動というのをやっておりまして、これは、緑化することによりまして生活環境を向上させる、美化させる、そしてその都市の文化の高揚に役立つというようなことを趣旨としまして、市並びに教育委員会、それから青年団体とか婦人団体、または商工会議所とか、それから会社、工場、それから新聞社等のマスコミ関係等が一体になりまして、市の緑化運動を進めているようでございます。  そのやり方といたしましては、公園の緑地化あるいは市民による森づくり、また花一ぱい運動とか、それから市を彫刻で飾る運動とかというようなことをやっておるようでございます。  先生お尋ねの青少年犯罪との関連でございますけれども、これが特別なそういう犯罪と関連しているかどうかという因果関係につきましては、非常にむずかしい問題がありまして、そこら辺の分析というのはやや困難を伴いますが、犯罪数という実態でいきますと、これは御指摘のように減ってございます。二十年という数字がちょっととれなかったものでございますから、過去四十一年から四十五年まで、まだ本年はあと少し残っておりますのでとりませんでしたが、過去五年間では確かに青少年の犯罪数が減っております。  それで、この緑化運動の一つ意味と申しますか、青少年育成という観点から見た関連、これは私ども総理府といたしましては、非常に意味のあるものだというふうに考えております。それで、いままでのお話では、緑からひとつ青少年——人間全般でもございますけれども、そのような健康的な問題もございましたが、なお人間の情操といいますか、そういう観点から、緑が多い、また花が多いとか、あるいは緑と花だけではなくて、いろいろな彫刻とか都市の美観というふうなこともいろいろあると思いますけれども、そのようなものから受ける人間の情操というものに欠くべからざる一つ影響力があるというふうに思います。  それで、この緑を植える、あるいは花を植えるということと、それから人間がそれを植えたいという気持ちというものは これはうらはらになろうかと思います。人間の、緑を植えることだけではなく、その緑を大切にするというその気持ち、それが相互に連関をしつつ、人間の情操を養って、人間が生きているということの喜びをそこで見つけ、そうして青少年が健全に育成される、そういうものが基盤になって、犯罪というふうな特殊な状況もだんだんと少なくなっていくというふうに承知しておる次第でございます。
  97. 有島重武

    ○有島委員 大気汚染についてどのくらい学童が被害を受けておるか、これは文部省でもってよく調べていらっしゃることと思いますけれども、どのように認識していらっしゃるか、それを承りたい。これは体育局ですか。
  98. 岩間英太郎

    岩間政府委員 体育局長からお答えすべきだろうと思いますので、後ほどお答えさせていただきます。
  99. 有島重武

    ○有島委員 それじゃ、体育局のほうからこまかくまた伺いたいと思いますけれども、ざっと新聞に出ているだけでも、ぜんそくの児童が四年間に十一倍になっている。これは東京の、吾嬬小学校だったと思いますが、その例ですね。それから、生徒百三十人に頭が痛いあるいは不快である、これは富士市のほうの小学校、中学校ですかの例でございますね。あるいは目の病気です。それから蓄膿症ですね。これは目ですが、全国平均が千人中四十四名、これが汚染地区になりますと八十三名ということですね。あるいはへんとう腺炎が平均では百三十六名、これが汚染校になりますと百八十名。それから、公害のない学校といいますと、これはまた非常に少なくなるわけですね。  ところで、これは体育局長が来ていないとほんとうはまずいかもしれないけれども、この前もここでもって一ぺんお話をしたことがある。四日市の問題。四日市の塩浜小学校というのがございまして、この四年間に、あそこはいま非常に大気汚染のひどいところですけれども、よい成果をあげているわけなんですね。それで出席率なんかも、これは欠席率が下がったと言うほうがよろしいのですか、あるいは体位が向上している。こういったことがありまして、私、その校長さんから、どのようにやっていらっしゃるのか伺ってみた。そういたしますと、やっていることは、やはり深呼吸をしたりうがいをさせたり、ほかの学校と何にも違ってないことをやっているわけです。にもかかわらず、ほかの学校と飛び抜けて、平均校よりもずっと子供たちの状況がよくなっておる。それから成績もよくなっておる。御承知のように、蓄膿症になると、幾ら聞いていてもぼうっとしちゃって、頭に入ってこない。ちょっとした欠陥でもって子供たちの学力というのは非常に低下するわけですね。それで、東京の中でも山の手のほうと下町のほうとで、ずいぶん学力あるいは体位、体力みんな下がっているデータが出ておりますけれども、これがその四日市でもってどうしてそうなったんだか、御自分たちでもわからなかったのだけれども昭和三十八年のころから、校庭に緑を植え出したのですね。全然別な意識観点からそれは植え出したのです。それで校長さんに、おたくの学校は緑はどうなっていますかと言ったら、この点だけはもうほかの学校に絶対ひけをとらないのだ、それだけは自慢できますと言っていらっしゃった。そして、お話ししているうちに、そのせいですかね、そういうようなことがございました。これももう少し環境庁にもよく勉強していただいて、全般的な公園もいい、山の中に緑を植えるのもいいけれども、校庭なら校庭に植えるとその学校が変わってくる、道のまわりに植えておけばその道が変わってくる、そういうふうに小さな領域の中ですぐに効果を発揮しているのだということをよく御認識いただきたいわけです。認識するために実験をやっていただきたい。そちらのサイドから各関係のところにしっかりした裏づけを与えないと、これは非常に怠慢である。始まったばかりだからしようがないと思いますけれども、そういうことも続々と起こっているわけなんです。いま環境庁のやっていらっしゃることは、おもに公害を出さないということ、これは大切なことです。出てしまったものを、あるいは幾ら規制をしてもどんどん出てくるものに対して、これをどのように防ぐかというと、ガラス窓を二重にするとか、それからそのためにはエアコンディショナーをつけなければならないとか、あるいはうがいをさせるとか、そんなことをやっているわけですが、工場のすぐそばにある学校なんかは、深呼吸しちゃいけないという学校もあるのですよ。深呼吸したらかえって悪くなる、そういう学校もあるのですよ。そしていまどういう手を打っていいかわからないというような状態なんですね。ほかにまたたくさん体育局のほうは例を集めていらっしゃるかもしれないけれども、早急に緑を植えてやらなければならないと私は主張したいわけです。  それで建設省にもう一ぺん伺っておきますけれども、どうして日本の街路樹はあんなにみすぼらしいのですか。
  100. 川名俊次

    ○川名説明員 私から答弁させていただきますが、みすぼらしくなりましたのは幾つかの原因があろうかと思います。たとえば、一つには道路の地下におきます埋設物、あるいは地下鉄等の工事によりまして土壌圧が非常に減ってきているということ、あるいは保水力が非常に少なくなってきているということ、これが地表面下でございます。地表上の問題といたしましては、台風常襲国でございますので、常に剪定を試みなければならないというようなことから、これは夏季剪定、冬季剪定両方ございますが、やはり街路樹を自然木として育てていくよりも、人工木的な育て方をせざるを得ない風土条件にあるということ、それから架線等の工作物が道路上にございまして、それらの障害にならないように、特に樹間の剪定を行なうというような事柄から、諸外国に見られますような、ていていとしたような街路樹が昨今見られなくなってきたということ、それからもう一つ、先ほど先生から御指摘がございましたような、街路樹を取り巻きます大気の関係、汚染の度合いが非常にひどくなってきたという事柄が、相乗的に街路樹をだんだんと枯死させるか、あるいは貧困化させていくというような事柄だろうというふうに存じております。
  101. 有島重武

    ○有島委員 お聞きのような御認識らしいのですよ。ところで、それじゃわれわれは、いままで学校で植物について何が大切なのか、そういうところを教わってきたかと思うのです。そういうところを問題にしたいと思うのですよ。どう教えているか。建設省の方もやはり小学校から教わってきて、あんなふうにしか知らないと思うのです。御専門でも知らないわけだ。どんな生物にしろ水が一番大切なんだということをどこかに書いてあるのかと思ったのですけれども、教科書をずいぶん拝借して調べました。それがなかなか見当たらないのです。「生物体をつくりあげている基礎物質は、たんぱく質・核酸などの高分子物質である。」そうかもしれない。どんな生物にしろ水が半分以上ですよ。それから、水について、「ハスのように水中で生活する植物は維管束や機械組織などの発達がわるい。」この程度のことが書いてある。それから、「水分も特に雨量の多少などにより動植物の季節性の要因となっている。」季節によってそういうことになっている。一つだけ、これは高校の生物の教科書の中に、「土がかわいて、土が水をすう力が約十五atm以上になると、土にはまだ水が残っていても、植物は吸水できずにしおれてしまう。」このようなことが書かれておりますけれども、だからどうだということは全然わかりません。それで建設省に——私、建設省に一ぺんこの問題でお話しに行ったことがあるのです。どうして日本の木が、特に都市の街路樹が育たないのか。結論から申しますと水です。このまわりにイチョウの木が植わっておりますね。太いですね。あの根はどのくらい張っているかという問題です。その根に匹敵するだけの水がどこから流れ込むか、全部コンクリートでまわりが固められているでしょう。根に水が行かないわけだ。大体、木の根元というところは雨宿りするところなんですから、水はみな葉でもって遠くにはじかれるわけですね。そして舗装が進んでまいりますと、昔植えた木はまだいいですけれども、いま植えている木は、あれはもう五年ももちはしないよと言いながら植木屋さんが植えているわけなんです。いま剪定の話をされました。何で剪定するのか。聞けばあらしだ。台風が来るからだと言いますけれども、じゃ公園の木は剪定するか、しませんよ。倒れませんよ。同じ木です。根が張らなければ、あらしが来なくたって倒れるのですよ。根がどうして張っていくのか、それは水分を求めて張っていくのですよ。日本の国は雨量は世界でも多いのでしょう。それで、都市づくりは従来水をどのように排除するか、どのように早く下水に流し込んでしまうかというのが下水をつくっていく基本になっていた。それは大昔の話でございまして、このように全部コンクリートべったりになってしまう、そのときには、それはそれなりの方法をお考えにならなければならないのじゃないか、そういうような教え方が植物についての教え方、動物についての教え方で、きょうは植物に限って申しますけれども、目に見えないところに注意を向けて、そこを——根の部分ですね。そういった教育がなされていないということは、これは植物に限らず、ほかの面においても、目に見えないところはばかにしておるというような傾向が全般的にあるのじゃないかと私は憂えるわけです。受験勉強なんというのも同じで、そういうわけですね。これはずいぶん論理が飛躍するかもしれませんけれども、根を張らしていくというよりも、何かかっこうだけよくしていく、そういうような教育のしかたそのものがあっちにもこっちにもあらわれているのじゃないか。建設省、ひとつ水がたっぷり行くようなふうにしていただきたい。御承知のように、水は足りないのでしょう。それで、いま大気汚染の関係にもよると言われましたけれども、その一番PPMの高い交差点に参りましても、そのそばに銀行なんかがありまして、そこに植わっている木は青々としているんですよ。水道で水をやっているのです。水道の水が足りなくて、地下水を水道のもう五倍も六倍もくんで、いま地盤沈下があるのに、くんじゃいけないといってもくまざるを得ないような状態でいるんでしょう。  それからもう一つ、下水の問題にしても、私の聞いておるところでは、私は専門家じゃないからよくわかりませんけれども、下水は大体雨が三十ミリ程度までならばもつことになっているはずなんでしょう。それがどうですか、この間の台風二十五号のときなんか、たった十四・五ミリです。まあ、たったとは言えないけれども、相当降りました。降っても、あれは十四・五ミリの雨量だと発表されております。そして下水が都内だけでも百二十六カ所ですか、何カ所かはんらんしておりますよ。しかもそれは山の手のほうです。地盤の低いところじゃないんですよ。コンクリートでもってべったり敷いてしまったために、全部下水へ入っていく。そして水が大切だ大切だと言いながら、われわれは高い料金を払って水を使いながら、おそらく天水の九〇%以上は流しているでしょう。カリフォルニアなんかに参りましても——おそらく皆さん方もあっちこっち見ていらっしゃるのじゃないかと思いますが、あすこは非常に雨量の少ないところでございますけれども、並み木が非常に豊かになっているんですね。どういうふうになっているかというと、道があって、こうみぞになっているんですね。そのまん中に木が植わっているわけなんです。みぞには水は流れておりませんけれども、少なくとも低くなっています。パリに行っても、ロンドンに行っても、街路樹の植わっているところは路面よりか低いところに地面があるのです。中央分離帯なんかわざわざ高くして、その上に芝生なんかを植えておいても、夏になれば枯れるのはわかっているんです。あれは見てくれだけですね。とにかくきれいに見せればいいだろうというような発想から出ているのじゃないか。人間の健康を守り、あるいは脳みそを守り、あるいはさっきもどなたかおっしゃったけれども、緑のたくさんあるところに行くと、運転が非常に楽な気持ちになる、そういうことを運転手さんも言っていらっしゃいますね。環境庁のほうには、そんなことを科学的にさらに深めていこうという姿勢を見せていただかなければならないし、今度はどうしたら緑がほんとうに育つような環境をつくることができるかということをもう一つくふうしていただかなければならない、いかがでしょうか。
  102. 村山幸雄

    ○村山説明員 先ほど市街地の中の街路樹がなぜこんなに貧弱かということに関しまして、一般的に、特に植物的に公園緑地課長のほうから申し上げたわけでございますが、いわゆる道路工事と申しますか、そちらの道路の構造のほうから申し上げてまいりますと、少なくとも日本道路は、まず幅が狭い。特に、並木は歩道に設置するわけでございまして、現在のところ道路構造令では三メートル二十五以上の歩道に設置するということになっておりますが、ほんとうにりっぱな並み木をつくっていこうということになりますと、まず歩道の広さというものが相当要求されるのじゃないか、このことが根本的には非常に大きなことであろうというように考えております。  それから、歩道のところの歩板でございますが、これはいままで、下に砂利を敷きまして、その上に歩板をただ載せておっただけでございます。そういたしますと、歩道に降りました雨が全部並み木の下までいくということでございますが、最近、アスファルト舗装とか、そういうようなことで、いわゆる植樹をいたしました小さなますのところの土の見えておるところからしか水が入らない、こういう面が先ほど先生の御指摘の水分が足らないという面に非常に影響しておるのじゃないかというように考えるわけであります。そういうわけで現在のますの大きさがあのままでいいかどうかという問題につきましては、これから街路樹をどんどん植えていこうという現在の段階では、大いに検討してまいりたいというように考えております。  なおまた、先ほどいろいろ外国の話が出ておりましたけれども日本の街路樹は、街路樹を植えただけでございまして、そのまわりの水の入るところは土砂のままで、大雨が隆りますとその土砂が流れるとか、それから風が吹きますとほこりになるとか、要するに、町の中の好ましい状態でない、そのままで放置されているというこの面も大いに反省すべきだろうと思います。  先ほどパリの話が出ておりましたが、要するにそういう並み木をいためないということで、彼らの場合は、鉄の輪をぐるっと並み木のまわりを回っておりまして、水はどんどん入っていく、そのかわりに並み木は、人が歩くとか、そういうようなことでは全然傷つけられないというふうな工法をとっております。いろいろな工法があろうかと思いますが、そういう雨水ますというか、植樹ますというようなものにつきましても、単に土砂のままでおくのじゃなしに、芝を張るとかなんとか、もう少しいろいろなくふうをいたしまして、並み木、それからその並み木の根元、それから水の問題、そういう問題を合わせた街路樹のこれからの育成ということが必要になろうというように考えております。
  103. 有島重武

    ○有島委員 やや何か御認識があるような感じもいたしますけれども、いまのスペースの問題、日本はスペースが狭い、それだからうまくいかないのだろうということもあるかもしれないが、スペースを幾ら広げても、いまのように路面よりか土を高くしておいたのじゃだめですよ。水は上に流れるんじゃない、下に流れるんだから、流れ込むようにしていただきたいわけです。鉄がまわりにありますですね。あれをやろうがやるまいが、それは二の次なんです。とにかく地面を下げていただきたい、流れ込むようにしていただきたい。そんなことは何でもない、一番お金がかからないでできるのです。それからくふうをすれば、ガードレールなんかがあるところは、ある程度の幅は、ずうっとグリーンベルトをつくることはできるわけでしょう。雨が降ると、水が流れ込んで一見川のようになっているけれども、あくる日になればそれを吸い込んでしまう。そういうことが十分できるわけでしょう。それはまた金もかからないわけでしょう。それだけのことでもってもうずいぶん変わってしまいます。あんな剪定を一々やるなんということは間違いなんです。ひどく言ってしまえば、あのおかげでもって助かっている植木屋さんはたくさんいらっしゃるかもしれませんけれども……。あるいはあそこにわらを巻いてございますね、あるいは木のさくが立ててありますね。あれは水が発散しないように、根が弱いからささえているというだけでもって、根をしっかりさせれば何の問題もないわけなんです。もっとしっかりやっていただきたい。必ずそれは答えてください。  こうした問題を含みまして結論的に申しますと、最後だから政務次官に申し上げておきますけれども、従来とかく木が育たないのは排気ガスのせいじゃないかというふうにばく然といわれておりました。科学的な根拠はなかったわけです。学者の方々に相当いろいろ伺いましたけれども影響はあるかもしれないけれども、それによって枯れるというような、そこまでは言っていないわけです。逆に非常に排気ガスをどんどん注入した実験をしてみたときに、水があればそれは十分こたえていけるんだということがよくわかった。衰退の原因はむしろアスファルト化です。先ほど言った四日市の学校も、校庭のアスファルトをやめてしまって土にしてあるわけです。土でもってほこりが舞い上がらないくふうというのは、いまわりあいと安くできるのですね。  もう一つは校庭のへいです。あのコンクリートのへいなんというのは何のためにあるのか。あれでどろぼうが防げるのか、二、三聞いてみましたけれども、へいのある学校でどろぼうに入られているところもあるわけです。いなかの学校で入られているところもあるわけです。木を植えようとすれば幾らでも植えることができるわけです。しかもこれは、山中先生なんかもおっしゃったけれども、木を生徒たちに育てさせるということは、どのくらいまた子供たちにいい影響を与えるか、その問題はきょうは言いません。  それから、先ほど申しましたけれども、目に見えないところを大切にする、そういう問題が非常に大切だと思うのです。  それから、街路樹ないしは校庭の木を植えていくことがそのまま公害対策になっているんだということですね。そうした点よく総合的にお考えいただきたい。  体育局長がいまいらっしゃったというので、体育局長からさっきの宿題部分だけ伺いましょうか。大気汚染が学童にどのくらい悪影響を及ぼしておるか、その御認識を承っておきたい。
  104. 澁谷敬三

    ○澁谷政府委員 大気汚染地区の学童の健康状態につきまして、最近三年間にわたりまして、二十分の一の抽出でございますが、調査をいたしました。  大気汚染で一番影響が考えられますのは、一つには眼科の系統、結膜炎とかその他でございます。もう一つは耳鼻咽喉の系統、これも鼻炎とかあるいはへんとう腺肥大とかその他いろいろございます。それから内科の系統で、特に気管支ぜんそくとかその他の心臓系統、そういったような内科の系統、いろいろ考えられるわけでございますが、大気汚染も特にひどいところと必ずしもそれほどでないところとあるかと思いますが、一応大気汚染防止法によります大気汚染地区の学校につきまして、二十分の一の抽出で調査をいたしました。それから、毎年文部省では全国的に学童のそういう疾病、健康状態につきまして調査をいたしております。その二十分の一で抽出調査いたしましたところと、全国的な平均値について比較いたしてみますと、おもな例だけ申し上げたいと思いますが、まず小学校で結膜炎でございますが、昭和四十三年度の調査でございますと、全国的の小学校児童の結膜炎の疾病率が三・九四%ということでございます。大気汚染地区の学童は五・一一%というふうにかなり多くなっております。それから鼻炎とかそういったような鼻の関係でございますが、全国的な平均は五・六三%でございますが、大気汚染地区はそれが七%近い。それから気管支ぜんそくでございますが、全国平均が〇・二五%に対しまして汚染地区は〇・六%というふうな状況になっておりまして、やはりかなり学童の健康に悪影響を及ぼしておるというふうに思われます。ことしそういう大気汚染地区の学校の児童の特別健康診断費の予算を計上していただきまして、本年度現在大気汚染地区の学童たちに眼科、耳鼻咽喉科、内科、心臓、気管支、そういったまず意識調査といいますか、何かおかしいと学童が訴えるその調査をいたしまして、次いでそれを眼科医、耳鼻咽喉科医、内科医によりまして健康診断をいたします。そこで疾病が発見され、あるいは疑わしいというときにはさらに医療機関で精密な健康診断をする、そういう予算を計上していただきまして現在実施中でございますが、その結果が出てまいりますと、さらにその辺の状況が明らかに把握できるかと思っております。
  105. 有島重武

    ○有島委員 調査をしていただいて、あとは健康診断をなさるそうですけれども、診断しても、だめになっちゃったのはとてもかわいそうなわけですね。それで、せっかく調査なさるならば、大体汚染地区の平均というものは出てまいります。だけれども、汚染地区の中でもいろいろなでこぼこがあります。それでおついでに——おついでにと言っちゃ悪いけれども、その校庭ないしはそのまわりの環境に緑がどのくらいあったのかということ、校庭に何本くらいあるのか、それがどのくらいの手当てがされているか、そういったことを一緒に調査していただきたいのです。それで、緑とそれから児童の被害との因果関係というものが必ず出てくると私は確信しているわけです。明らかにしていただければこれはずいぶん助かると思うのです。それ、やっていただけますか。
  106. 澁谷敬三

    ○澁谷政府委員 実は昨日も自民党の文教委員のある先生から、学校の緑化といいますか、そういう問題につきましていろいろお話を承りました。それで学校の緑、木、それから学校によりましてはいろいろ子供のために庭園をつくったりいろいろやっているところがございます。それから芝生、大体都会地の学校の校庭はコンクリ、アスファルトが多い、そういった学校の環境、これは学校保健で扱っております学校環境衛生の問題にもなってまいりますので、いま御指摘の点は、全国的に大々的には一ぺんにはできないと思いますが、抽出的にでも、特に特別健康診断の対象校になったようなところにつきましては、まず大気汚染防止法による第一号、二号、三号という違いもございますし、いま御指摘のような点につきましてもできるだけの調査をしてみたい、そう思います。
  107. 有島重武

    ○有島委員 これは子供の健康の話で、何党でもそんなことはいいわけだ。いま言っているのは、健康の調査と同時に緑の量ですね、どのくらいあるかということを調査願いたい、そういうわけです。いいですね。よろしゅうございますね。  それから、環境庁については、緑が大気汚染を吸収する、その吸収効果について、この研究を進めていただきたい。やっていただけますか。予算をつけますか。
  108. 須田秀雄

    ○須田説明員 樹木の伐採が環境に及ぼす影響、特にこれにつきまして、来年度実は相当大幅な研究調査予算といま協議をいたしておる段階でございますので、できるだけ先生の御趣旨に沿って調査研究を進めるようにがんばりたいと思っております。
  109. 有島重武

    ○有島委員 建設省は、できるところから、まず植物の植わっている地面を下げる、水が流れる、それだけのことは手をつけていただきたい。たとえば建設省のへいなんというのも非常にナンセンスなんですね、あれは。石垣なんか積んであんなところに緑をやっておる。かっこうはいいかもしれないけれども、もうあの辺からおかしいわけなんです。ですから、もうできるところから即刻に手をつけていっていただきたいと思いますけれども、いかがですか。
  110. 村山幸雄

    ○村山説明員 水の問題で街路樹が枯れるということのないように努力してまいりたいと思います。
  111. 有島重武

    ○有島委員 それじゃ政務次官に最後に。  こうしたいろいろな問題でございましたけれども、一番の中枢になるのはやはり教育の問題だと思うのです。教科書に対しての問題もますます配慮していただいて、ほんとうに子供たちにとっても、あるいは人類全体にとって大切な緑を育てていく一つの推進力となっていただきたい、こう思うわけでございますが、御所見を最後に承って終わります。
  112. 渡辺栄一

    渡辺(栄)政府委員 お答えを申し上げます。  先ほど来るるお話がございました生物を大切にすること、あるいはまた植物のために水が大切である、たいへん適切なる御意見でございましたけれども、私どもも全く同感でございまして、今後あらゆる面を通じまして教育の場におきましてこれを推進してまいりたいと思います。特に中教審の答申に伴いまして第三次教育改革を進めたいと思っておりますが、これはもともと豊かな人間性をつちかうということでございまして、将来におきましても、そういう意味におきまして、われわれといたしましては最善の努力を尽くしてまいりたいと思っております。よろしくお願いしたいと思います。
  113. 有島重武

    ○有島委員 どうもありがとうございました。
  114. 久保田円次

    久保田委員長代理 山田太郎君。
  115. 山田太郎

    ○山田(太)委員 きょうは大体二時ごろまでに委員会を終了するという理事会での話し合いもありますし、ことに大臣が欠席なさっています。大臣への質問を保留し、できるだけ三十分以内に終われるようにぜひ努力はしてみたいと思います。  いまわが国は、世界各国からも経済大国と言われ、やがて軍事大国になるのではなかろうかという心配をされている面も多々あるわけです。しかし、そうなっては相ならぬと思います。日本世界が注目しているのは、教育大国になるかあるいは福祉大国になるということを念願もし、希望している人々も非常に多いようでございます。その見地から、福祉大国になっていくためにも、きょうは医学教育と医師養成の問題に的をしぼって質問をしたいと思います。  そこで、現在よく世上では、三時間待ちの三分診療とかいうことばが非常にはやっています。私も如実に、総合病院、あるいは大学病院も総合病院の一つですが、その大学病院等へ行ってみましても、やはり非常に待ち時間が長いのを如実にこの目で見ております。聞くところによると、現在、一人の医師が全国的に取り扱う患者の数というのは一日で五十人以上になっている。このようなことでは真の医療というものが非常に心配されるのは当然なことです。したがって、その医療需要の増大と、また同時に、医師の地域的な偏在、この是正は、いまわが国にとっても大きな課題になっておるわけです。当委員会においても、幾人かの方々がこの点についても質問をなされておりますけれども、きょうはそういう立場から、国立医科大学あるいは医学部、ことに私立医科大学あるいは医学部について、できるだけ簡単に質問申し上げますから、要領を得た答弁をお願いしたいと思います。  そこで、まず、先日の十二月七日に医科大学設置調査会の答申が高見文部大臣あてに出ているわけでございますが、まず文部省のこの医学教育あるいは医師養成についての基本的な考えというものを、局長、同時に政務次官からもお答え願っておきたいと思います。
  116. 渡辺栄一

    渡辺(栄)政府委員 医師の養成数の拡充ということにつきましては、お話のごとく最近医科大学(医学部)設置調査会の報告が出たことは御承知のとおりであります。この趣旨に沿いまして、文部省といたしましては昭和四十七年度概算要求におきましても、国立大学医学部の入学定員の増、また国立医科大学あるいは医学部の創設準備費の要求を行なっておるわけでございます。これらによりまして医師養成数の増加をはかってまいりたい、答申を十分尊重しながら積極的に推進してまいりたいと考えておりますが、詳細につきましては政府委員から御説明いたしたいと思います。
  117. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 前回も御紹介申し上げましたように、去る九月十七日に文部省にございます医科大学(医学部)設置調査会が医師養成の必要性とその緊急性について、とりあえず全体の医師養成計画数というものを御披露して中間発表したわけでございます。その後鋭意検討が進められまして、去る十二月七日「医師養成の拡充について」という最終報告が大臣あてに出されたわけであります。  これによりまして、在来議論しておりました事項のほかに、医科大学なり医学部設置の要件でありますとか医科大学(医学部)配置の方針でございますとか、これらの機構をつくるための国がとるべきいろんな措置というものについて指摘がなされたわけでございます。  詳細は省略申し上げますが、そのような形で医師養成の拡充の数は、前回から申し上げているような総数に異動はございません。自今これを具体に取り上げて、この要件にかなったところにできるだけ早く国立の学校をつくりたいということで、われわれといたしましては、明年度の既設医学部の入学定員の増でございますとか、あるいは五つの医科大学なり医学部の設置の準備にかかりたいというような要求をしておるという形になっておるわけであります。
  118. 山田太郎

    ○山田(太)委員 ただいま申し上げた調査会の答申の付属書類によりますと、昭和三十六年から昭和四十六年まで、この間の国立あるいは公立、私立等の入学定員の増が統計表で出ております。そこで、昭和三十八年に国立医科大学定員増を百名しておりますが、三十九年はゼロです。それから四十年に二百六十名、四十一年に百六十名、四十二年はゼロ、四十三年はたった八十名、四十四年から六十名、四十五年になってちょっと上向いて八十名、四十六年は四十名と、この合計が七百八十人になっております。  ところが、私立医科大学あるいは医学部の定員増は何とこの間に、昭和三十六年の八百人から八百八十名増になっております。したがって、この表で見てもわかるように、この医学教育あるいは医師養成について、あまりにも私立医科大学等に依存をし過ぎておるという現実の証拠が出ております。今度の答申の中にもその点については述べてあるわけですけれども、このような間違った方向をいままでたどってきた、これからはどのような方向に向かってこの医師養成あるいは医学教育を行なっていこうとするか、そういう見地からもう一ぺん答弁してもらいたい。
  119. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 いま御説明がございました昭和三十六年度前後の医学生の入学定員の増加の問題は、それまでの医学部にはあまり依存しなくてもいいんではないかというような想定のもとの実態でございまして、だんだんそれではまいらないということから、次第に御指摘のように増員がはかられてまいったわけでございます。近年になりまして医者の地域的な偏在、また絶対数の不足というような議論が強くなってまいりまして、文部省におきましても厚生省といろいろと御協議をいたしまして、どの程度とりあえずふやすか、また今後どのような需要の拡大が妥当であるかというようなことを、いろいろ医者の養成の問題、医療の問題ということの関連において議論を進めてまいっておるわけであります。  さしあたり、この報告書にもございますように、四十七年度から五十年度にかけての当面の期間に少なくとも千二、三百の入学定員の増加をはかり、その方法論も指摘がしてございまして、特にこの中で、少なくともその半数程度は国が責任をもって適正の配置において増員をすべきであるというぐあいに指摘をされておるわけでございます。目下文部省といたしましては、そういった方向でぜひ先を急いでまいりたいと思っておるわけでございます。  しかし、医学部をつくるということは、単にお金がたくさんかかるというだけではございませんで、いろいろこれに従事する教官あるいは看護婦を中心とする医療技術者の確保、養成というような関連の問題もございます。さらには、いろいろ医療制度の問題とも関連をいたすことがあろうかと思います。慎重に遺漏のないようにこの問題を進めてまいりたい、かように思っておるわけでございます。  また、これとは多少問題を異にいたしますが、これは世界をあげての風潮でございますけれども、在来のような医学教育というもののあり方で満足できるかどうかというような新しい問題が提起されておりまして、この点につきましても、新しい今後の医師の養成、医者のモラルの確立というようなことを十分考えまして、そういう面の関連を十分に検討、加味した上での医者養成の拡大ということを心得てまいりたいと思っておるわけでございます。
  120. 山田太郎

    ○山田(太)委員 答申の文書の内容をそのまま安養寺審議官はおっしゃったようですが、そのことを聞いたわけじゃないのです。具体的に国立でどのように補充していこうか、あるいはどのように増員して、たとえば四十七年は幾ら、あるいは四十八年は幾ら、そういうふうな計画がありやなしやを聞いたわけです。この点についてどうですか。
  121. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 一応の当面五年間の充足計画というものが計数的に出ておるわけでございます。また、その方法も的確に指摘がございます。私どもといたしましては、このことあるをかねて予測もいたしておりまして、四十七年度概算要求のときに間に合うようにと、現に間に合ったわけでございますが、国立の七つの大学定員の増をお願いしようというような協議をいたしました結果、一応二十名ずつふやす、そのための条件整備をする、これはさしあたり七大学でございましたけれども、ぜひ今後百二十名まで定員の充足が可能なところは、関係大学と協議をいたしまして進めてまいりたい。二十五ございます全部が全部できるというわけではございません。いろいろキャンパス問題等もございますが、できるだけそういうような方向で着実、的確な方法をまずとりたいと考えております。そのほかは現在の五大学、現にその府県に国立大学あれども医学部なしというようなところを選定をいたしまして、条件の可能なものから開始することを急いでまいりたい、当面の計画としましては、さようなことを考えているわけでございます。
  122. 山田太郎

    ○山田(太)委員 ぼくがさっき質問申し上げたのは、私立医科大学等についてはいろいろな問題点が多いことですから、この点はあと質問申し上げる点がありますけれども、いままでのように私立に依存して医師養成をはかるというようなことがあってはならぬと思うわけですね。その点について厚生省の医務局長さんに来ていただいておりますが、いま安養寺審議官の答弁の中には、そんなに医師養成が要求されてない、要望されてないというような判断を持っておったものですから、というふうなことばが一言ありましたけれども、そういう点について厚生省考え方が甘かった。四十二年、四十五年に厚生省から文部省に要望書が出ております。しかしそれは、あまりにも時間がかかり過ぎておるし、そういう点厚生省はどのようなお考えであったか。  その点と、もう一つは、これからの医師養成について、医学教育文部省担当であろうとも、やはり医師となれば厚生省関係と非常に密接なわけですから、文部省との連絡もこの答申には非常に要望されております。聞くところによると、去年大学設置審議会の中に医務局長が初めて入られた。それまでは入ってなかったというふうなことも聞いております。非常に文部省厚生省との連携が悪かったということは、そういう点から見ても歴然としておりますが、その点はもう過去のこととして、これからの医学教育並びに、ことに医師の増加の問題についてどのようなお考えを持っているか、お聞きしておきたいと思います。
  123. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 第一点のほうの過去の経緯でございますが、実は率直に申し上げて、かなり古い時期におきまして、厚生省ではこのまま推移すれば医者の数はむしろ多いのではないかという判断が下された事実がございます。それは具体的には、昭和三十四年に医療保障委員会というものがございまして、そこで出された最終的な答申の中では、いま私が申し上げましたように、このまま推移しますと日本は有数な医師保有国になるのではないかということが述べられておりまして、むしろ医学部の定員は、医者の質という問題に着目いたしますとよほど慎重でなければならぬ、こういうことをいわれております。  また、その当時のことを考えますと、ちょうど皆保険の前でございました。また、今日私どもが扱っておりますようないろいろな各種の統計資料というようなものも十分整備されていないという、こういう階段での御判断であったろう、こう考えておりまして、私どもはその考え方を、その当時の状況から見れば必ずしも不当であったとは一がいには言い切れないのではないかと思っております。  しかしながら、その後三十八年に医療制度調査会が、四年後のやはり三月に答申を出されました。その際にはそのときの考え方が提示されております。単に人口比だけで医者の数を見るということは必ずしも妥当ではない。それは、一つは医療の分野の拡大という面に着目する必要があるし、医療の技術自体も複雑高度化する要因がございます。また、国民の医療費自体が高騰する、こういった点を考えて、むしろそういうようなものと対応できるような医師養成をはかるべきだというのが三十八年であります。ちょうど四年の間に、ただいま申し上げました、極端に申し上げれば百八十度の省内の転換があったわけでございます。  したがって、たまたま皆保険を中心にいたしまして二つの考え方が出てまいったわけでありますけれども、私どもはやはり最後に述べましたような方向が正しいものであるというふうに考えております。したがいまして、先般医学部調査会のほうで出されております人口十万対百五十という数字につきましても、これは日本の医療供給体制の中で医者の数がどれくらいおればいいのかということはむしろ厚生省の責任でございますが、私どももいろいろと苦心をいたしまして、ただ世界的に医師が何人おればいいかということは定説化されていないというのが事実でございますので、単に人口比という形で私どもは見るのではなく、特に日本の医療需要が非常に増大をしておるという実態がございますから、そういうものに着目いたしました世界ではおそらくやっていないと思われる計算でございますが、その計算の方法をとって推計していく。それはちょうど皆保険直前の、先ほど先生指摘のような一人頭の医師の患者数が出ておりますが、それをどこに置くかということは論議のあるところでございますが、少なくとも皆保険直前の段階まで持っていくべきではなかろうかということを一つ基準にいたしまして計算をいたしましたのが、人口十万対百五十、こういうことにいたしております。ただしこの問題は、今後の医療の需要の変化なりあるいは医療技術の進歩なりということに伴って、はたしてこれで十分かということはなかなか一がいには言い切れない問題である、少なくとも私どもは、この数字はいまのところミニマムの数字だと考えていただいたほうが妥当じゃないかと考えております。  しかしながら、一方コンピューターの導入でございますとか、あるいは自動診断装置でございますとか、いろいろなものが今後開発されてくることが予想されますが、そういうものによって今後はどれだけ医療自体が効率的になるか、この辺はなかなか十年後の見通しということは容易でございませんので、私どもは一応基本的に最終の数値を見まして、今後の推移を見ながら途中でもっと弾力的に軌道修正を加えるべきではないか、こういうようなつもりで当面文部省にも御尽力をお願いしたい、こういうふうに申し上げておるわけでございます。  そういう意味で、私どもは今後の養成については、当面いま申し上げたような数値を目標にやっていただきたいと存じますが、同時に、安養寺審議官からも御指摘がございましたように、医学教育の中身そのもののあり方というものも、やはりあるべき医者をどういうふうにつくるかということと非常に関連をいたします。特に今度の調査会に出ておりますように、従来大学付属病院の中だけで臨床実習というものが行なわれておりましたのを、諸外国にございますように、もっと広く一般の病院をさらに整備いたしまして、そうして教育的な環境というものも一般の病院の中に持つことによって、大学の付属病院とタイアップいたしまして、従来から指摘しておりますように、日本で最もおくれているとされているいわゆる臨床教育、こういったようなものを豊富な形で学生に提供する、また卒業教育と結びつけていく、こういったことが基本的にはどうしても大事だということで、ようやくそのような方向のものをお出しいただきましたことを私どもとしても非常にありがたいことと考えております。  なお、最後の点につきまして、文部省との提携のことを御指摘いただき、まさに御指摘どおりの問題であろうと存じまして、私たちも今度はそういう調査会にも加えていただきましたし、また文部省の方々にも、私たちの審議会にもお入りいただいておるわけでありまして、一そう連携を密にいたしまして、よき医者をつくるべく努力を続けさせていただきたい、かように思います。
  124. 山田太郎

    ○山田(太)委員 いま厚生省の医務局長からの御答弁で、厚生省としてのお考えはよくわかります。また、答申もほとんど同じであろうと思います。  そこで、厚生省あるいは文部省ともに——現在文部省には、いわゆる医療関係の医師としての技官という人が、二週間前か一週間前一人、どこの局に入ったか知らぬけれども採用されておるようですけれども、こういう医学教育の面については、やはり厚生省との人事交流といいますか、本省の中にそういう面においての技官がいないということは、これは非常に大きな欠陥を生む一つの動機になると思う。そこで、やはり他の省との人事交流というのは、どこの省にも大体あることです。そこで、技官を文部省厚生省と人事交流をする、そういうふうなお考えが大切じゃないかと思いますが、政務次官のお考えをひとつ伺いたいと思います。
  125. 渡辺栄一

    渡辺(栄)政府委員 ごもっともな御意見だと思います。現在の医学視学委員の皆さんにはそれぞれ専門の皆さまをお願いしておるわけでございますが、しかし、今後のことを考えますと、御指摘のような点は十分考えなければならぬと思うのですが、厚生省のほうもそういうことにつきましては十分御理解のあるお気持ちのようでございます。文部省といたしましてもひとつ十分前向きの姿勢でこういう問題には取り組んでまいりたい、さように考えております。
  126. 山田太郎

    ○山田(太)委員 ただいまの政務次官の御答弁で、前向きということはやる方向の前向きですか。ただじんぜんと日にちを送らないように、小さい問題のようですけれども非常に大きい問題ですから。  そこでもう一点、今度は教官の問題についてお伺いをしておきたい。時間がきまっていますから、はしょっていきます。いま医科大学あるいは医学部、ことに国立あるいは公立においても、教官、ことに基礎教育の教官が非常に不足しているということを、私の地元の岡山大学の医学部あるいはその他の医学部あるいは医科大学でもその話を聞いております。この点について、やはり基礎医学を志す人が現在数が非常に少ない。その原因は、何といってもやはり卒後の収入の問題、したがって臨床の教官よりも基礎医学の教官に非常に不自由をしておるということはこれは事実です。この点についてどのような対策を持っていらっしゃるか。いまのまま進んでいけば、基礎医学は崩壊の危機に瀕する。基礎医学なくしては真の医師養成にならないし、その点に対する対策をどのように考えていらっしゃるか。俸給等の点、待遇の点、そういう点について昔は差があった。私の調査した範囲内では、臨床と基礎とは非常に差がありました。助手の給料を比較してみても約倍以上、三倍近い報酬をもらっておった。戦前の教授が二百五十円から四百五十円、助教授が百十円、講師が九十五円、助手が八十五円、これが基礎医学です。ところが臨床のほうは当時三十五、六円。こういうふうなデータが出ていますね。こういうふうなことも考えなければならないのじゃないか。基礎医学優遇の措置を考えてはいかがかという点についてはどうお考えでしょうか。
  127. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 いま基礎医学の従事者というのは、国公私立を通じまして三千名ちょっとでございます。いまの御指摘の点そのものを端的に調査いたしますと、在来は医学部なりその他、こういう方々が卒業後主たる職業として従事する範囲が限定されておったのじゃないかという感じもいたします。しかし、今後を展望いたしますと、そういう人たちが真に勉強された結果を大いに展開する職業の領域が拡大することは明らかでございます。そういう意味でも、いろいろと現状に活を入れるということができるんじゃないかと思います。現在一応研究者養成として考えております大学院の基礎系の研究科の入学状況などを申しますと、定員のかれこれ半分も入るかどうかというような低調ぶりでございまして、かりに用意はあっても人が集まらぬというような状況でございます。今後は、先ほど申しましたようなことで、こういう面の拡大に関連いたしまして希望者もふえてしかるべきじゃないか、ぜひふえてもらいたいというふうに考えております。  もう一つ。そういうような関係から、現在基礎医学に従事する人の処遇の適正化というようなことに関連いたしまして、基礎医学と臨床医学とがもう少し融和するような形で教育も行なわれ実習も行なわれるという方向検討すべきであるというような問題が、教育研究の具体的な内面的な要請として出ております。そういうことが大いに方法論として確立し、現場にそういった空気が定着すれば、いよいよこういう関係の志望者についても明るい希望を持たすことになるんじゃないか。たいへん回りくどくてじみな話でございますが、だんだんにそういうことでわれわれとしてもてこ入れをいたしたい、こういうように考えております。
  128. 山田太郎

    ○山田(太)委員 いま申し上げた待遇の面においてどのような考えを持っておられるか。やはり待遇に戦前のような考えを取り入れたほうがいいのじゃないか、この点についてのお答えが明確でなかったと思います。
  129. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 いろいろ精神的なあるいは具体的な研究活動の条件整備というようなことは別にしまして、給与そのものの制度から申しますと、現在は同じでございますし、今後教官全体の給与のあり方というのは検討するように日程にのせておりますけれども、だんだんにそういう点を検討させていただきたいと思います。
  130. 山田太郎

    ○山田(太)委員 教官全体の問題あるいは医学部あるいは医科大学の教官全体の俸給の問題については、また日をあらためてこの点はもっと突っ込んでいくべき性質のものだと思いますので、いま基礎医学の点だけを申し上げたわけです。  そこで、大蔵省から文部省担当の青木主計官がお見えでありますが、いま文部省あるいは厚生省、ともに現在の日本の医療制度を踏んまえて、同時に三時間待ちの三分診療とかあるいは無医町村等々、ただ定員をふやしさえすれば辺地の医療は解決するというものではない。これはもちろんそうです。しかし何せ絶対数が足らない。ことにいままでのような私立医大あるいは私立大学の医学部にこの定員増を依存しておったのでは、これから私がお話しするようないろいろの寄付金の問題等々を含めて、真に医師になりたい人、あるいはなるべき素質を持っている人が入学できないまま放置されているという状況も考え合わせて、新聞の報道ですけれども文部省予算要求医科大学の創設について文部省からの予算要求について、担当主計官としてどのようなお考えを持っていらっしゃるか。いまの医学教育定員増の問題での苦労と兼ね合わせて、この点についてのお考えをお伺いしておきたいのであります。
  131. 青木英世

    青木説明員 医者不足、あるいはそのものに伴います医師養成の必要性ということにつきましては、それは担当の厚生省がおっしゃることでございますので、そのとおりかと私ども存じます。ただ、その手段方法につきましては、実は御承知のとおり、一つ医科大学をつくるといいますと、おそらく定員は七、八百人になる。それから金は百億とか百五十億とかかかりますので、私どもとすれば、できるだけ既設の大学の医学部の入学定員をふやしていただく。と申しますのは、現在国立で二十五大学医学部がございますが、このうち定員が八十人のものが五大学、それから百人のものが二十大学で、合計しまして二十五大学で二千四百人でございます。先日の文部省に設けられた懇談会におきましても、でき得れば一大学百二十人ぐらいまでふやしていいんじゃないかというような御意見もございますので、かりにこの二十五大学を全部百二十人にふやしたとしますと三千人になるということで、現行より六百人ぐらいふえますので、できるだけそういうものに重点を置きながら医師の養成の増をはかっていきたい、こう考えております。  ただ予算編成期でございますので、あまりはっきりしたことをこの席で申し上げるのは、かんべんさせていただきたい、こう思います。
  132. 山田太郎

    ○山田(太)委員 いまの青木主計官のお話ですが、これは現在すでに百二十人になっておるところ、それからスペースあるいは研究室等々から、どうあっても百二十人にすることができない大学があることも御存じだと思う。ただ安直に、今回七大学定員増二十、したがって百四十名増員することができる、他の大学だって全部やればいいじゃないか、そういうふうな計算にはならないわけです。よく見ておいてもらいたい。もうすでに百二十になっておるところ、あるいは八十を無理して百にしておるところ、したがってまた同時に、いまのベッドサイドティーチングによっても、いま欧米のお医者さんと日本のお医者さんでは、真の臨床についての知識なり力というものが差がついてきておる。これは国民の健康の立場からもあるいは福祉の立場からもゆゆしい問題です。ことに、今度答申が出ていますように、私立医大に依存しないで国立でやっていくという本来の趣旨はやはりそこにもある。その点をよくわきまえていただきたい。医学教育定員増あるいは医科大学の新設については、より一そうの深い検討と同時に、文部省の要求あたりでもまだ足らぬぐらいだから、この点はまた別の機会に言いますけれども、その点を大蔵省はよく聞いていただきたい。文部省の要求、どうも弱いような感じがするんだね。文部省厚生省大蔵省に対して非常に弱いという、これはうわさです。この目で見て言うているわけじゃない。うわさです。したがって、主計官もその点は含んで、ちゃんと腹の中におさめて、そしてちゃんと文部省要求を通すようにしてもらいたいということを要望しておきます。  そこで、次は私立医科大学の問題ですが、あともう十五分しかないので、まず問題点二つ先にあげておきます。  それは、昨日の大学設置審議会でしたか、私大の審議会でしたか、私立の新しい医科大学——これは福岡大学、それから愛知医科大学でしたね、それでもうよかろうという内意が出ておるそうです。そのほか私立の医科大学が去年あるいはおととしも含めてつくられてきた。ところが、まず教官の問題だけ取り上げてみますと、教官が充足されてない。名前は伏せておきます。同時に、せっかく招聘して来てもらった教授が、待遇が非常に話と違うためにすぐ出ていってしまっておる。それも一人や二人じゃない。そういうふうな大学が私の調査によっても出てきております。ことに基礎系の教官についていいますと、国立大学でも充足されてないところもあります。ある私立大学の基礎系教授定員の計画が、五人が現在四名しかいない。助教授は定員計画三名のところが現在二名しかいない。それから講師は二名のところが現在一名しかいない。このような状況になっておるわけです。したがって、私立医科大学の粗製乱造といってはことばが悪いのですが、やはり過去の実績と現在の状況を見てみると、その点に一まつの不安があるわけです。したがって、新設の医科大学についてのその後の監督といいますか、ことばは違うかもしれませんが、そういう点についての査定はどのようにしてやっておるのか、一ぺんお伺いしておきたいと思います。
  133. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 医科大学に限りませず、すべて大学の新設その他につきましては、設置の認可の基準がございまして、御指摘の教授等の数並びに質については、すべて厳重な審査の結果適合したものについて認可を可とするということで運んでおるわけであります。それがいまお話しのように、だんだんに設置されたあといろいろな関係の欠損部分が出てくるというような御指摘でございます。こういうことにつきましては、現在大学設置審議会でも、学年進行中はできるだけ計画的に、いわゆるアフターケアと俗に申しておりますが、設置された後どのような形でその運営がされておるか、充実の程度はいやましに高まっておるかどうかというようなことを検討する。また、つくりました際に多少いろいろな条件の整備をすべきだ。たとえば図書をもっと買うとか、そういうようなことがございますので、そういう点の完全履行を求めるとか、実地に参りましていろいろ指導している。その指導に従いまして、文部大臣からそのことの督励を厳重に申しているというような形でございます。
  134. 山田太郎

    ○山田(太)委員 安養寺審議官は、ほかのことも兼ね合わせて、ごまかした答弁とまでは言いませんけれども、なかなかそういう点の答弁がたけておるようですが、安養寺さん、こっち向いてくださいよ。  そこでぼくは、それを言うたんじゃないんだ。申請時の陣容と現在の陣容が、わずかの間に変わってきているじゃないか。名前は語弊があるから言わないだけであって、ほんのわずかの期間に変わってきてしまっている。しかもその教官の充足までされていない。こんなことで真の医学教育ができるかということを数字の上からだけでも言いたい。この点についての処置方、手配方を、これはまた別の機会で言いますけれども、まず要望しておきます。  それからこれは一つのある私立医科大学のことです。これも名前は伏せておきますが、まずいま現在私立の医学部あるいは医科大学の入学定員は何名ですか。
  135. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 医科大学の全体の定員は現在二千八十名でございます。個々の大学定員となりますと、百二十名のものもございますし、八十名のものもあるというようにいろいろになっております。
  136. 山田太郎

    ○山田(太)委員 私立医科大学の入学定員二千八十名というのはいつ現在ですか。
  137. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 失礼いたしました。四十六年度で医学部の入学定員が千六百八十名でございます。
  138. 山田太郎

    ○山田(太)委員 ところが、定員千六百八十名に対して入学者数は幾らになっていますか。
  139. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 お答えいたします。  四十六年五月一日現在で、入学者数は二千九十五名ということになっております。
  140. 山田太郎

    ○山田(太)委員 入学者数は定員よりも約四百名以上多いわけです。これは黙認の形ですか、その点を一言聞いておきます。
  141. 安養寺重夫

    ○安養寺政府委員 黙認というわけじゃございませんで、入学定員は厳守すべきである、かように常日ごろ指導しておるところでございます。
  142. 山田太郎

    ○山田(太)委員 そう言う口の前に、入学者数のほうがはるかに、四百名以上も多いということを言うておるわけだ。ここにも大きな問題点がある。  ある大学によると、定員オーバーした——たとえば定員百名、入学者数百三十名、そうするといわゆる定員をオーバーした三十名、この三十名から多額の寄付を取っておるわけだ。したがって、ある意味からいうならば、成績順であっても、一番から百番までは成績順とすると、百三十五番の人も当然中へ入るわけだ。あるいは百四十番の人も中へ入るわけだ。そして事実上は、百十番だった人、あるいは百一番だった人でさえも入学できないというふうな事態を御存じですか。
  143. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 私立医科大学の入学時の寄付金に関連した問題でございますので、私から私の所管の範囲につきましてお答えを申し上げておきたいと思いますが、山田先生も御承知のとおり、私立の医科大学あるいは医学部におきまして、入学時に相当多額の寄付金が徴収されておるというような話をしばしば耳にいたしましたので、本年度四月の入学生につきまして各大学から調査報告を求めました。各大学の固有名詞は公にしないという約束で取ったわけでございます。したがいまして、おそらく実態に近い数字を出してくれたものというふうに考えておりますが、入学者の実数はただいま安養寺審議官から申し上げた数字にほぼ近い数字が報告数としてあがっておりますが、その中で寄付者の数といたしましては千三百九十三名の者があがっております。入学者の六五%が何がしかの寄付を出して入学しておるということでございます。ただ、この寄付の性質でございますが、一、二の大学におきましては入学者全員から取るということにいたしておりますが、他の全学につきましては、たてまえはあくまでも任意の寄付であるということでございます。前者の、入学者の全員から取るというような寄付金につきましては、これは管理局もことにそうでございますが、大学局におきましても、そうした入学時の納付金は、学則なり募集要綱なりに明示をいたしまして徴収すべきであるという指導をいたしております。今後もそういう指導は続けてまいりたいと思いますが、その他のものにつきましては、これはいま申し上げましたように、あくまでも任意の寄付ということでございます。  そこで、入学者の具体的な決定との関連でございますが、ただいま山田先生が御指摘になったような、寄付金があるなしによって入学の順位が変わるというようなことは、私どもないというふうに信じたいわけでございます。また、あるというような事実を具体的に耳にしたこともございません。ただ、先ほどお話がございましたように、補欠と申しますか、定員を若干上回った数の入学生を入れているわけでございまして、その際は成績の順位によりまして寄付金の額に多少の差があるということはあるようでございますが、しかし、それもあくまでも任意の寄付であって、多く出すから入れるとか少ないから入れないとかいうことはないはずである、ないというふうに私どもは聞いております。
  144. 山田太郎

    ○山田(太)委員 寄付金の多寡によって、あるいは出す出さないによって入学が左右される、そういうふうに文部省に直接報告するものもいないし、それは言うはずはない。そんな答弁をなさりながらも、私がさっき申し上げたようなことは、やはり普通常識としてあり得るということは、管理局長もここの中ではしまっているような顔をしている。これは言うたって水かけ論になりますから、名前を言い、如実にその数字を示し如実の名簿を示せば、これはどうにもならぬわけですが、そこまですることもまた考えなければいけない点もありますから……。  大体、私立医科大学なりあるいは医学部なりがなぜこのような寄付金を集めなければならないのか。聞くところによれば、これはうわさですが、高校時代から寄付を取っておるところもあるとさえ耳にしております。なぜこれらのことをしなければならぬのか。私立大学の経常費補助について四百十五億円の予算要求をなさっておりますけれども、新聞報道によるとこれはあぶない。と同時に、医学教育に限定してみても、その中からわずかの金額しかいかない。私の調査した範囲内でも、私立医学部あるいは私立医科大学に対しての経常費助成というものは二〇%いかないのではなかろうか。したがってこのような寄付を集めるようになってくる。この問題についてはもう一ぺん別の日にまたあらためてやりますが、いまの助成額ではとうてい、高見文部大臣が答弁なさっておったように、この四百十五億円の経常費助成のこの予算がもし通ったならば、また必ず通るように折衝はいたしますけれども、しかしこれが通ればこの寄付金の徴収もあるいは影響するんではなかろうか、このような答弁がありました。しかし、この四百十五億、これだけではとてもじゃない、この寄付の金額を下げさせるという力はまだないと思うのですが、その点についてどうでしょうか。私立の医科大学、医学部が集めたのが、寄付だけで約八十数億円になっています。それで文部省助成は、四百十五億が通ってさえもわずかのものです。真の医学教育あるいは真の医師の養成というものが非常にはだ寒い思いがするわけです。この点についていかがですか。
  145. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 私立の医学部に対しまする経常費の補助につきましては、御承知のとおりことしは人件費の四割ということでございます。これに対しまして理工系が三割、その他人文社会系が二割ということでございますが、来年度はこれを医師系につきましては五割、理工系には四割、その他につきましては三割に上げていただきたいという要求をいたしております。文部省といたしましては、五カ年計画の年次計画の一部であるというふうに考えておるわけでございます。そのように、現行の経常費の補助におきましても、医学部、理学部につきましては、多額の経費を要するというようなこともございまして、特別な傾斜をつけておるわけでございます。来年度はさらにそれを増額をしていただきたいというふうに考えておるわけでございまして、特別の措置を講じておるということはまず御理解をいただきたいと思います。  それから、四百十五億の中に、医学部関係といたしましては約六十億くらいが入っておるわけでございます。そのほかに、実は私立大学に対する臨時特別助成といたしまして三十七億という要求をいたしております。ほかに、振興財団の貸し付けのワクといたしまして、これは財源的には財投等が主になろうかと思いますが、新しく特別なワクを設定していただきたいというようなことを大蔵省にはお願いをしておる段階でございます。  御指摘のとおり、寄付金の総額は八十三億というかなり多額な金額でございますので、この補助金がまるまるとれた場合でも、その寄付金の抑制は困難ではないかというお話でございますが、私ども大蔵省にせっかくお願いをいたしまして、この補助金を増額することによって私立の医科大学における入学時の寄付金を極力抑制するように、強力に指導してまいりたいというふうに考えております。
  146. 山田太郎

    ○山田(太)委員 青木主計官、よく聞いておいてくださいよ、いまの答弁。  そこで、これでさえも——これはしかも専門教員の本俸ですね、基準は。しかも去年の十二月が算定の基準ですね。そのほか看護婦の問題であるとか事務職員の問題等々、やはり二〇%いかないのじゃなかろうかというふうに私の調査ではなっております。  そこで、あくまでも医学教育あるいはいまの国民の負託にこたえることのできる医師養成のためにも、もっと強力な私立医科大学あるいは医学部への助成——待遇の面はもちろん、金の面も、ことに助成を強力に要望しておきたいことと、もう一つは、国立の大学に医学部の設置、あるいはまだ医科大学なり医学部のない県に対しても、各県にこれを設置するよう早急に計画を立てて実行に移してもらいたいことを要望したいわけです。この点について政務次官から最後にお答えをいただいておきたいと思う。
  147. 渡辺栄一

    渡辺(栄)政府委員 お答えいたします。  先ほど来いろいろお話しを申し上げてまいりましたように、私立医科大学あるいは医学部の設置ということにつきましては、ことしは新しい予算の要求もいたしておるようなわけでございまして、財政面から積極的に対策を講じていきたいと思っております。おそらく大蔵省におきましても、いろいろ財政事情はあろうかと存じますけれども、現在の医師養成の必要性というものについては十分御理解が得られるだろうと思うのでありまして、私どももぜひともひとつ要求が貫徹できるように努力をいたしてまいりたいと存じております。  もう一つの各県に設置する問題につきましては、これは各県の受け入れ体制、特に予算面だけでなくて、医療関係者の確保という問題もございますし、あらゆる面からこれは検討を要する問題であると思いますが、少なくとも医学部のない県におきましては、そういう御要望のある地域もあろうと存じますけれども、そういうあらゆる面を検討いたしまして、できる限りそういうもののない県には医学部が設置できる方向検討してまいりたい、かように考えております。
  148. 山田太郎

    ○山田(太)委員 二時が過ぎましたので質問を終わりますが、どうか医学教育あるいは医師の養成、この問題については、何としても国公立並びに私立の医科大学への、俸給面等々においても、あるいは施設等の面においても、あるいは私立に対しては助成等々の面についても特段の強力な配慮をして、大蔵省に対しても、要望している予算は条理を尽くして、弱腰でなしに、政務次官努力は非常に高く評価されておるそうですから、その点を強く要望して——厚生省との連携も非常にスムーズにいき出したという話です。人事の交流等の面も考え合わせるということと同時に、大蔵省当局としても、この点について国民的立場から大きな配慮をしてもらいたいことを要望して質問を終わります。
  149. 久保田円次

    久保田委員長代理 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後二時九分散会