○安達
政府委員 国が指定いたしました史跡等につきまして、これを公有化して将来にわたって保存し、また活用していくということで、史跡等の買い上げを促進いたしておるわけでございます。この史跡の買い上げについての国庫補助につきましては、現在原則といたしましては国が半分、
あとの半分を地方公共団体が負担をする、こういう原則で進めておりまして、本
年度約十五億の
予算を計上しておるところでございます。ただし、地方公共団体の財政負担がその財政力から見て著しく大きい、こういう特例的な場合は、五割といわずにそれ以上の補助率を考えておるわけでございます。
特に太宰府地区の史跡の場合におきましては、史跡の規模が非常に大きゅうございまして、全体で百二十二ヘクタールというような大きな規模でございますし、また町の財政の負担能力等から見まして、これを特に特例的に八割の補助をいたしておるわけでございまして、これは
全国でこのほか
一つ、二つある程度でございます。この
あとの二割をどうするかにつきまして、太宰府の場合におきましては、町が負担する二割について
福岡県に一割五分を出していただく。これは三年ほど前から県のほうにお願いをいたしまして、県の補助を多くしてもらいまして、現在町が五%負担するようになっておるわけでございます。その負担分につきましては、実は特別交付税のほうで大体においてこれをカバーしておるというような状況でございます。したがいまして、この太宰府のような場合におきましては、現実的に負担がかからないようにできるだけの
努力をいたしておるというのが実情でございます。
この買い上げについて、これを全部国費で買い上げますと、これは国有地に在るわけでございます。その国有地を史跡地として管理するというのは非常にまたむずかしい問題が生ずるわけで、やはり現地の市町村が買い上げて保存し、整備していくというのがいい。そういたしますと、市町村が幾ぶんかの金を出してその市町村有の土地にするわけでございますから、やはり何ほどかの金はそれぞれの負担能力に応じて出していただくのが、史跡保護全体を考えた場合にはいいのではないかという観点もあるわけでございます。したがいまして、現段階におきましてそういう史跡について全額国費による買い上げは実態に即しないのではないだろうかというように考えておるわけでございます。
それから第二の点で、買い上げた土地が直ちに整備できない、できるだけ整備をいたしておりますけれ
ども、御承知のように整備が進まない。荒れ地のまま残しておかなければならない。その場合に、そういう状態になれば元の所有者に耕作をさせたらどうか。これはまことに適切な、非常にいい御
意見だとわれわれ考えるわけでございまして、これにつきましては、現在の国有財産法といいますか、そういうたてまえからして、市町村がこれを耕作するというような場合認めるとかいうような特例はございます。ただ問題点は、一たん買い上げた土地を耕作した場合に、耕作権を生ずるとかいろいろなむずかしい問題がございます。しかしこれはやはり前向きに
検討していくべき課題であるとわれわれは考えておるところでございます。
それから第三の、
九州全体についての国立の博物館を設けたらどうかという
お話でございます。これにつきましては、いま御指摘になりましたように、現在太宰府の近くに
九州歴史資料館というのを二億二千万円、そのうち七千五百万円ほど国が補助いたしまして今
年度中にでき上がる予定になっておるわけでございまして、これは太宰府地区等から発掘されたものを主として収集して展示をする、こういうことになるわけでございます。
こういういろいろな歴史資料、考古資料等が出てきた場合に、どういうように国家的にこれを保存していくかという問題につきましては、われわれとしては、
日本全国にわたるところの資料を集めまして、
日本の歴史を全体的に物によって把握できるような国立の歴史博物館というものをつくらなければならないということで、現在千葉県の佐倉につくるところで、準備を進めておるわけでございます。
それから、出てまいりましたものをすべて国のほうに収蔵してしまうということもこれは適切でない。現地で、たとえばその市町村で保存することが適切なものもあるわけでございます。そういうもののために市町村立の歴史民俗資料館の
設置助成をいたしておるわけでございます。
それからさらに、市町村段階ではなしに、県段階においてこれを保有していったほうがいいというようなものがございます。そういうものは県立の歴史資料館というものをつくっていくということで、ただいま申しました
福岡県の
九州歴史資料館というものを助成しております。あるいはまた香川県で五色台に瀬戸内歴史資料館というものを考えておる。来
年度はまた宮城県のほうから出ておるわけでございます。そして国立と県立と市立とが有機的な連携をとって相互に物を貸し合うとか、あるいはどこに何があるかをはっきりさせるとか、そういうような
全国的なネットをつくって、その歴史資料というものを
全国的に保存し、かつ活用していかなければならないというふうに考えるほうがより一そう妥当ではないだろうかというのが現在の
考え方でございまして、そういう
考え方からいたしますと、さしあたりいま
九州地方について国立の博物館をつくるという段階ではなく、まず中央のものをつくり、そして県立のものを整備し、市町村立を整備して、全体的なネットワークをつくっていくということがまず緊急の課題ではないか、かように考えますので、
九州地方について国立博物館を
設置する
考え方は現在のところ持っておりません。