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1971-11-10 第67回国会 衆議院 内閣委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十一月十日(水曜日)     午前十時十分開議  出席委員    委員長 伊能繁次郎君    理事 佐藤 文生君 理事 坂村 吉正君    理事 塩谷 一夫君 理事 湊  徹郎君    理事 山口 敏夫君 理事 木原  実君    理事 伊藤惣助丸君 理事 和田 耕作君       阿部 文男君    加藤 陽三君       鯨岡 兵輔君    辻  寛一君       中山 利生君    葉梨 信行君       華山 親義君    横路 孝弘君       鬼木 勝利君    鈴切 康雄君       受田 新吉君  出席国務大臣         法 務 大 臣 前尾繁三郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 西村 直己君  出席政府委員         総理府人事局長 宮崎 清文君         警察庁刑事局長 高松 敬治君         防衛庁長官官房         長       宍戸 基男君         防衛施設庁長官 島田  豊君         沖繩北方対策         庁長官     岡部 秀一君         沖繩北方対策         庁総務部長   岡田 純夫君         法務大臣官房長 安原 美穂君         法務省民事局長 川島 一郎君         法務省刑事局長 辻 辰三郎君         法務省矯正局長 羽山 忠弘君         法務省入国管理         局長      吉田 健三君         運輸省航空局長 内村 信行君  委員外出席者         法務大臣官房会         計課長     伊藤 榮樹君         法務大臣官房訟         務部長     香川 保一君         外務大臣官房領         事移住部長   遠藤 又男君         外務省アジア局         中国課長    橋本  恕君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ――――――――――――― 委員の異動 十一月十日  辞任         補欠選任   佐々木更三君     華山 親義君 同日  辞任         補欠選任   華山 親義君     佐々木更三君     ――――――――――――― 十一月六日  沖繩開発庁設置法案内閣提出第五号)  沖繩復帰に伴う防衛庁関係法律適用特別  措置等に関する法律案内閣提出第七号) 同月九日  国家公務員法等の一部を改正する法律案内閣  提出第二一号) 同月八日  海の日制定に関する請願内海清紹介)(第  六三九号)  同(西田八郎紹介)(第六四〇号)  同(麻生良方紹介)(第七三六号)  同(受田新吉紹介)(第七三七号)  同(内海清紹介)(第七三八号)  同(岡沢完治紹介)(第七三九号)  同(河村勝紹介)(第七四〇号)  同(佐々木良作紹介)(第七四一号)  同(鈴木一紹介)(第七四二号)  同(竹本孫一紹介)(第七四三号)  同(門司亮紹介)(第七四四号)  同(吉田泰造紹介)(第七四五号)  同(吉田之久君紹介)(第七四六号)  狩猟者団体法制定に関する請願外四件(根本龍  太郎君紹介)(第六八〇号)  傷病恩給改善に関する請願宇田國榮君紹  介)(第七四七号)  国家公務員給与改善に関する請願浦井洋君  紹介)(第八〇五号)  同(田代文久紹介)(第八〇六号)  同(谷口善太郎紹介)(第八〇七号)  同(土橋一吉紹介)(第八〇八号)  同(林百郎君紹介)(第八〇九号)  同(東中光雄紹介)(第八一〇号)  同(不破哲三紹介)(第八一一号)  同(松本善明紹介)(第八一二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十一月八日  靖国神社法早期制定に関する陳情書  (第一号)  恩給共済年金増額改定等に関する陳情書  (第二号)  同  (第七八号)  同和対策事業助成実質単価採用に関する陳情  書(第三号)  傷病恩給増額に関する陳情書外三件  (第四  号)  飲料水水質保全に関する陳情書  (第七九号)  国定公園内の自然探勝路及び自然教室整備促  進に関する陳情書  (第八〇  号)  地下水利用適正化法早期制定に関する陳情書  (第八一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  法務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出、第六十五回国会閣法第一九号)  沖繩開発庁設置法案内閣提出第五号)  国家公務員法等の一部を改正する法律案内閣  提出第二一号)  沖繩復帰に伴う防衛庁関係法律適用特別  措置等に関する法律案内閣提出第七号)      ――――◇―――――
  2. 伊能繁次郎

    伊能委員長 これより会議を開きます。  法務省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
  3. 伊能繁次郎

    伊能委員長 本案につきましては、第六十五回国会におきまして趣旨説明を聴取いたしておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 伊能繁次郎

    伊能委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  5. 伊能繁次郎

    伊能委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。加藤陽三君。
  6. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 この際、法務行政について二、三お尋ねしたいと思います。  最近の検察庁仕事はたいへん忙しいように聞いておるのでございますが、この聞いただきました資料によりますと、現在、地方検察庁及び高等検察庁において合計百十二人の欠員があるようでありますが、この欠員充足できるのでしょうか。どういうふうな見通しを持っていらっしゃいますか。
  7. 安原美穂

    安原政府委員 お答えいたします。  ただいま御指摘の百十二人の欠員でございますが、正直に申しまして見通しは、これを充足することははなはだ困難であるという現状にございます。検事給源といたしましては、何と申しましても司法修習生修習を終了した者から採用するというのがおもな給源でございますが、最近の傾向によりますと、五百人ほどの修習終了者のうち四百人近い数がほとんど弁護士を希望するというような傾向にございまして、はなはだ充足が困難な状況にあるということでございます。
  8. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 たいへん困難だというお話でございまして、私もそのように推測はしておるわけでございますが、必要な数はぜひ充足をするように御努力を願わなければいけないと思うわけであります。  それにつきまして前からふしぎに思っておるのですが、これもこの前いただきました資料によりますと、法務部内の検察庁以外に充職検事といいますか、充職検事として御勤務になっていらっしゃる方が合計で百三十三人あるわけですね。これは一体、充職検事というのは、便利だからそうしていらっしゃるのでしょうか。あるいはやはり検事をもって充てなければいけないという理由があるのでしょうか。一々についてお尋ねしますと長くなりますので、具体的な例でお尋ねしてみたいと思いますが、今度の法案入国管理局の位置の廃止や変更や新設が出ておるわけですが、入国管理局にも次長さん以下四名いらっしゃるわけですね。たとえば入国管理局については、どういう理由検事をもってお充てになるのでしょうか、お聞かせ願いたいと思います。
  9. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 確かに充職検事が多いわけでありますが、それは法律についての専門家といいますか、また民事なり刑事の訴訟についての実験者ということになりますと、これは、弁護士か、あるいは検事か、裁判官か判事か、こういうことになるわけでありますし、弁護士から登用するということは非常に困難であります。結局は検事を充職するという以外にないわけでありますが、検事は御承知のように一つの身分を持っておるわけでありますから、したがって充職検事というような制度ができたわけであります。  ところで、ただいま、出入国なんかに検事を使う必要はないであろうというお話であります。まさに私どももそう考えておりますが、それが養成といいますか、それに適合する人をつくり上げていく。制度が新しいわけでありますので、そういう点には検事でなくてもやれるような方向にだんだん持っていっております。まだ過渡期で、お話のような点までいっていないというのが現状なわけであります。
  10. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 私はこれを拝見いたしまして、なるほどこれは検事さんでなければいけないなと思うような仕事もあるわけですけれども、いま大臣もおっしゃいましたが、入国管理局とか、保護局とか、あるいは管区の法務局というのは、法律専門に勉強する方を養成されれば、検事さんでなくてもいいのではないかと思うのであります。過渡的なものもだいぶあるのだということをいま御答弁になりましたので、非常にけっこうだと思います。現在でも百三十三名ですから、これを検察庁のほうへ返されましたら、検察庁欠員が全部埋まるわけですね。ぜひその方向で御努力を願いたいと思うわけであります。  その次にお伺いしたいのは、登記所統廃合のことでございます。行政整理の一環として登記所統廃合をやっていらっしゃるということは、資料をいただいてよくわかったのであります。交通事情もだいぶ変わっておりますから、そういうことも必要であろうと思うのでありますが、現在、登記所関係行政整理については、どういうお考えで進めていらっしゃるのでしょうか、お尋ねいたします。
  11. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 大体の方針だけ私から申し上げたいと思いますが、率直に申しますと、ただいまお話しのとおり、交通事情も非常に変わってまいっておりますし、また仕事の分量もだんだん都会集中に変わってきておるわけであります。したがって、当然、実質的な事態に即応するということになりますと、かなり配置がえをしていかなければならぬということは、もう現実に私も痛感をしておりますし、理論的には皆さんよくおわかりくださるわけであります。しかし、従来からありますものをやめるということは、民間の方から見ますと非常に不便になるわけであります。そういう点で、どういうところでマッチさせるか。あるいは現実に適合するものに持っていくにしましても、一挙にはなかなかできません。ただ、一人庁といいますか、一人だけでやっておりますようなものは、率直に言って休暇もとれないというような状況でありますので、一人庁はまず原則として整理していくべきものではなかろうかというような考え方で、ただいまその段階なわけであります。  ただ、これはよほど適正にやっていかなければなりませんので、最近、民事行政審議会というものを設けまして、一応のいろいろ諮問をして、そしてまた現実に見てもらって、公平な一応の案を協議をはかってつくっていただく、こういうことでただいま作業を進めておる、こういう段階でございます。
  12. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 そこで、これは大臣にお伺いしたいのでありますが、私、思いますのに、昔は地租というものは国税の大宗であったわけでありますが、最近は土地とか不動産というものは全部地方税に移管されているわけです。戸籍事務市町村委任になっているわけです。土地不動産に関する登記関係事務も、住民サービスという面から見ますと、市町村委任されるほうがいいのではないかと私は思うのですね。ことに、一人庁のことをいま大臣はおっしゃいましたけれども、こういうことも、市町村委任ということで解決するのではないかと私は思うのでありますが、その点はどういうふうにお考えになりましょうか。
  13. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 戸籍登記とどれだけ違うか、私も最初多少疑問に思ったわけでありますが、登記の場合にはいろいろ種類があります。そしてまた、それに付随してみんな非常に密接に法律関係があるわけであります。また一方、戸籍のほうを見てみますと、戸籍に使っておられる人というのは、人数からいいますとかなりの人員を使っておられる。率直に申しまして、現在の登記市町村でやっていただくということになりましたら、おそらく倍の定員が要るだろう。戸籍の点から見まして、登記市町村でやってもらうと、倍の人員が要りながら今度非常に監督がむずかしくなるというような、それこれ考えてみますと、戸籍にしましても、やはりあれは国家事務を託しているわけでありますが、戸籍事務のように簡単に委託するというわけにはいかぬということを、私、最近痛感しておるわけであります。そういう意味合いからいたしますと、やはり登記は国でやっていく以外にないのじゃないか、かように考えております。
  14. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 いまの大臣の御答弁、私もよくわかる点もあるのですが、経費とか人員とかの点の推定になりますと、よけいかかるようなことをおっしゃいますけれども、私はどうもそうでないような気がするのですが、これは私もよくまた研究してみたいと思います。  いまの登記所統廃合につきましては、いま大臣から、民事行政審議会ですか、これに諮問をして案を考えておるというふうな御趣旨の御答弁がございましたが、実は広島県安芸郡の海田町というところに広島法務局出張所があります。ところが昨年の十一月に、広島法務局長のほうから手紙が参りまして、広島市に合同庁舎ができるので、そっちのほうへ移したいということを法務局長さんがおっしゃったわけなんですね。ところがこれに対しまして、海田出張所管理区域に八カ町村あるわけですが、その八カ町村町村議会が全部、あれは不便になるからということで反対の決議をしておられるのです。その言い分は一つは、登記件数がこの五年間に一・六倍もふえている。非常に事務量がふえている。今度移ると九キロほど遠くなる。それに、今度移そうとなさる地点から四・五キロぐらいのところにある登記所はそのままにしておいて、九キロもあるところを移そうとするのはやり方としておかしいのじゃないかというふうな御意見もあるわけなんですね。これは民事行政審議会の御答申とは関係がないようなんですが、どういう趣旨でおやりになっておるのでしょうか。
  15. 川島一郎

    川島(一)政府委員 私からお答え申し上げます。  広島法務局海田出張所移転につきまして、ただいまお話しのような問題があるということ、私もよく承知いたしておるわけでございます。この問題は、先ほどお尋ねのございました登記所適正配置の問題、この問題とは実は別の問題として考えておるわけでございます。  いろいろ複雑な経緯があるわけでございますが、ごく大ざっぱに申し上げますと、広島法務局が新しく庁舎をつくることになったわけでありますが、この新庁舎をつくるに際しまして、比較的近くにある海田出張所をやはり同じ新しい庁舎に入れてはどうかという話がございまして、そのほうが事務にも便利であろうということでそういう話が出てきたわけですが、当時、法務省といたしましては、それほど地元の御意向にも反しないのではないかというような観測がありましたために、できることなら移転したいということで計画を進めてまいったわけでございます。ところが、途中から情勢が少し変わってまいりまして、いろいろ地元の不便になるというような理由で反対される方がかなり出てきた。そこで、正直申しまして、現在どうしようかということをわれわれ考えているところでございます。この問題は、海田出張所という比較的大きな出張所でございますから、適正配置の問題とは別に、よく情勢を見てそういう点の解決策を得たいということで検討をしておるところでございます。
  16. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 よくわかりました。ただ、私がさっき申し上げましたとおり、登記所統廃合ということも私は必要だと思うのですね。ただ、ちょっと触れましたように、近くにある登記所をそのままにしておいて遠いところを移すなんていうことでは、これは地元の人は納得できないと思うのです。ことに海田出張所のほうは、どんどん件数がふえておるのですから、よくその辺をお考えいただきまして、住民サービスの点からもあまり不満を買わないようなお取り計らいをお願い申し上げたいと思う次第でございます。  質問を終わります。
  17. 伊能繁次郎

  18. 木原実

    木原委員 この機会に、出入国管理行政について二、三お伺いをいたしたいと思いますが、今度の設置法の中に、入国管理事務所成田に移すという条項があるわけなんですが、成田への移転はいつごろの心積もりでおるわけでございますか。
  19. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 現在のいろいろな施設の完成が大体五月中ぐらいにできるらしい。したがいまして、供用開始が明年の六月ごろを予定して準備を進めております。
  20. 木原実

    木原委員 これは法務省の責任ではございませんので、五月ごろ、六月ごろということで工事を進めておるようなんですが、実際には供用開始になるのは多少ずれるような見通しもあります。そこで、この移転に伴いまして、職員受け入れ体制宿舎の問題、いろいろな問題があると思うのですが、そのほうはどうですか、それまでにめどはつくようですか。
  21. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 職員宿舎に関しましては、現在百七十四名の職員を予定しておるわけでございますが、確保をいたしましたのは、百六十四戸の宿舎を一応割り当てをもらいましたので、一部自宅から通う者とか、その他独身者等もございますので、一応めどがついたと思っておる次第でございます。ただ、その宿舎完成がいつごろになるかという問題がそこにあるわけでございますが、私たち承知しておりますところでは、宿舎完成はかなり早いスピードででき上がりつつあるというふうに了解いたしております。
  22. 木原実

    木原委員 成田の問題は、御存じのとおり、いろいろな経過がございますが、しかし、国際空港ができ上がるということになりますと、やはり空からの出入国がたいへん大きな事務になってくると思います。これにつきましては、いろいろな問題があろうかと思いますけれども、これは主として空港関係は所管が違いますので、ただ、五月ごろ、六月ごろにその一部という心積もりなんですけれども、いままでもいろいろな目標を立てまして予定がずれてきたものですから、法律はできたは、実際は仕事が秋に延びるとかというようなことになりますと、何がしかのそごがあろうかと、こういうふうに思いまして確かめたわけなんです。  そこで、それはそれといたしまして、この機会大臣出入国管理行政のことについて少し伺いたいと思うのです。  御承知のように、われわれの周辺には、国交回復国をたくさんかかえている。しかも日本がかつて旧植民地として領有をしたような地域の人たちも非常に多い。こういうことで、いままで出入国管理行政についてはいろいろな問題があったと思うのです。特に、かつて日本国籍を持った朝鮮人たちに対する処遇については、これまた御案内のようにいろいろむずかしい問題がございました。しかし最近、いわゆる南北朝鮮の新しい親族さがしというような交流の窓口が開けつつあるというような報道もわれわれは聞いておるわけなんです。そういうことと見合いまして、いろいろな懸案がございました北朝鮮民主主義人民共和国人たちのいわゆる自由往来という面についても、かなりいままでのやり方よりも考え直していく時期に来ているのじゃなかろうか、こういうふうに思うわけなんですが、大臣、いかがでございましょうか。最近の動きと関連いたしましてどうぞ。
  23. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 北朝鮮との往来の問題につきまして、というより私は、入国管理の問題は客観的情勢が変わっていくにつれて変えていかなければならぬ。常に、行き過ぎもよろしくないと思っておりますし、おくれてはいけない、要するにそのときに最も適合した裁断をしていくべきだ、こういうような考え方に立っておるわけであります。たとえて言いますと、中国につきましては、もうわれわれ国連加盟を認めようというときには、それに応じて考えていかなければならぬ。ただ、北朝鮮につきましても、韓国との関係がかなり雪解けになりつつある情勢は、確かに私も認めておるのでありますが、まだこれを客観的にそうだと言い切るだけの現実ではないのであります。したがいまして、私、北鮮に従来行かれております方について、できるだけ認めるべきだというのでことしも処理をいたしましたが、しかし、さりとて客観情勢が変わったと言い切るところまでいきません。だから、原理としてはまだ変わっていない、しかしそれだけムードは変わってきておる、そういう考え方に応じて現在処理しておるようなわけであります。
  24. 木原実

    木原委員 私は、いままでのいろいろな北朝鮮との関係なんかを、陳情も受けたりなんかいたしまして見てまいりまして、やはり過酷に過ぎたという感じがいたします。これは、主として大韓民国とのいろいろな関係もあるし、そうせざるを得なかったという立場もわかるのですけれども、しかし、ことばが熟しているかどうかわかりませんが、朝鮮に対しては旧宗主国としての立場もあったと思うのですね。ですから、韓国内部のいろいろな、分断をされた二つの国家になっておるその相克の反映が日本にも及んでくる。あるいは、日本に在留をしておる、南北いずれの国籍を問わず、朝鮮人たちに深刻な問題を投げかけている。このことはわかるのですけれども、もう一段高い立場で、せめて出入国ぐらいについての配慮というのは、もっと特にあっていいのじゃないのか、こういう感じをかねて抱いてきた者なんです。日韓会談が行なわれて、南のほうとの修好の窓口が大きく開いたときに、たしか佐藤総理国会の中でも、ともかく今度は南との関係改善をした、続いて北に向かっての改善を進めていくんだ、こういう前向きの発言もあったと思うのです。これはわが国の外交全般についての見解だと思うのですけれども、そういう姿勢がすでに五年も六年も前に示されておりながら、出入国についての管理の面ではかたくなに堅固な立場を堅持をしてきて、ともかく人間の往来についてきびしい規制をしてきた、これはやはり本末転倒じゃないのか、こういう感じがするわけなんです。かねて不満を持ってきたのですけれども、しかし、いろいろな状況朝鮮内部でも変わってきつつある、こういう機会にこそ、いままでのいろいろないきさつや何かむずかしい問題はありますけれども、しかし少なくともわれわれは、朝鮮民族に対しては、旧宗主国としての責任なり、ある意味では負い目なり、いろいろなものを持っているわけなんですから、本国の内部に見られるような動きを積極的にとらえていくというような観点から、せめて出入国管理行政面等においては、もう少し緩和の措置雪解け措置を助長するような方向での行政ができないものか、こういうふうに考えるわけなんですが、どうでしょうか。
  25. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 率直に申しまして、韓国とはすでに国交を回復しておるわけであります。北朝鮮とは、まだ政治的には国交回復していないというか、そういう形になっておりますし、したがって韓国同様の処遇をするというわけにはまいりません。また、いままでの状況から言いますと、国交のある韓国内の事情ということは、これは外交ルートを通じていろいろと話もありますし、それを反映してきたわけであります。将来におきまして、というより現実にかなり南北の問題が雪解けになっておる事実は認めますが、まだ赤十字を通じてやっているという段階でございまして、これを直ちに客観的な事実として受け入れるところまでは、まだ行っていないということであります。しかし、おそらく将来はそういう方向に行くであろうという考えのもとに、われわれとしましては、北鮮に対してもできるだけのことを考えていくというような態度で臨んでおるわけでございます。
  26. 木原実

    木原委員 私も、いままでのいきさつがありますから、この際たいへんドラスチックに大幅な改善というようなことはおそらく望まないとは思いますけれども、ただ法務大臣、幸いにいたしましてたいへんな実力者の大臣がポストにおすわりになっておるこの段階ですから、大局的に考えまして、いままでさまざまな、私どもから見れば理不尽とも思われるような措置をとってきた朝鮮人たち往来に対する問題等についても、いまの大臣の時代に、大所高所から考えて新たな方向をお示しになる、そういうことを期待いたしたいと思うのです。ですから、いままでのいろいろなことにこだわることは当然なんですけれども、それをひとつ越える時期が来ているのではないのか。ですから、たとえば南北会談でお互いに親族さがしをやろうじゃないかとか、あるいはまたそれに類するような交流をやろうじゃないかとか、私ども多少朝鮮事情等について知識を持った者といたしましては、確かに三十八度線をはさんでたいへんな変化だというふうに考えておるわけなんです。それならば、いままで自由往来という考え方はないわけなんですけれども、たとえば一部、墓参に行く人たちには里帰りを認めた幾つかの特例措置がとられるようになってきた。これをもう一つ推し進めて、本国のほうで親族さがしをやっておるのならば、そういうケースは、日本に在留しておる北の人たちの中にも南の人たちの中にもあるはずなんですから、そういう面については、少なくとも本国内部動きを十分に考慮しながら、進んで日本政府としても便宜を供与をしていこう、これくらいの一歩進んだ考え方を打ち出せないものでございましょうか。いかがでございますか。
  27. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 南北のいろいろな折衝なり関係については、私ども非常な関心を持って、そしてそれに即応してできるだけのことをやっていきたいという考え方を持っております。ただ、先ほど来申し上げておりますように、客観的にそういう事実がまだはっきりとしていないというところで、またわれわれがあまりに先ばしってもいけません。私は率直に国内の事実も認め、そしてそれに即応していきたいというのが、ただいままでの私の態度であります。
  28. 木原実

    木原委員 くどいようですけれども、私は、特に前尾さんですから、これはもう御判断をいただきたいと思うのですけれども、従来はやはりかなりシビアなものがあったわけなんです。しかし、繰り返すようですけれども、私たちは三十六年間にわたる朝鮮の領有の問題について、少なくとも北の人たちに対してはまだ何らの措置をしていない、そういうこともあるわけなんです。ですから、朝鮮が一日も早く分断をされない統一をした国家として安定をして、隣人、隣国として発展をしてくれるように願い、あるいはわれわれの必要な協力、あるいはまた必要な援助、少なくともこういうことをやる責任があると思うのですね。残念ながら、わが国の政治の方針なり、あるいは朝鮮内部のきびしい情勢なり国際情勢なり、そういうものにはばまれて、われわれがそれに対してのアプローチを試みることが、ある意味ではあまりにも乏しかったと思うのです。しかしいまや、中国の問題にいたしましても、朝鮮内部の問題にいたしましても、急速に変わろうとしている。だからこれについて、やはりいまこそ日本が一歩進んで、幸いにして、戦後二十六年間ここまで参りました、多少のゆとりも出てまいりました日本なんですから、旧宗主国として持っておった責任をこの際にこそ果たしていこう、こういう善意の前向きで、そういうものがたとえば出入国管理行政の中においても生かされていってしかるべきじゃないのか。ましてや人間の往来というようなものはきわめて人道的な側面を持つわけなんですから、政治の壁を、いままでの障害の壁を、やはり少しでも突きくずしていく努力行政面でも試みる時期が来ているのじゃないか、こういうように考えるわけなんです。ですから、本国の動きをもう少し見定めてという慎重な御発言は、了解はできますけれども、しかし、もう一つ高い立場で判断をする時期に来ているのではないか、こういう考え方を持っておるのですが、いかがでしょうか。
  29. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 気持ちは、まさにあなたのおっしゃるとおりの気持ちを持っておるわけであります。したがって、決して私ども、偏見を持って考えたりなんかすることは絶対にいたしませんし、十分その気持ちは持って仕事に従事しているわけであります。したがって、朝鮮韓国内部の問題に即応しながら転換していこう、こういう考えでございます。お気持ちは十分私もよくわかっておりますし、私もそういう気持ちを持っておることだけは申し上げます。
  30. 木原実

    木原委員 むずかしい問題があることはわかるのですけれども、どうぞひとつそういうことで前尾さんの大臣の時代に思い切った前向きの方向だけは出していただきたい、こういうふうに考えるわけなんです。  ただ、それにしましても、現に幾つかむずかしいケースがあるようです。先般、私どもの党の副委員長が平壌に参りまして、その報告を聞いたわけですけれども、その中にも、何か昨年行事で平壌のほうに渡った在日朝鮮人の人たちが、生活の本拠が依然として日本にあるわけなんで、帰りたいという人たちがたくさんいるらしいんです。そうした人たちが全く帰る道を失って向こうに滞留をしているというような事実があったのですが、これは出国をしていくときは、自由往来が禁止されている状況の中ですから、帰れなくても向こうの行事に参加をしたい、こういうことで出向かれたと思うのですが、しかし、そういう人たちを帰してやる手だてというようなものは、具体的に考えられないものでしょうか。
  31. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 ちょっとその事例、最近、新聞にあやまって報道されたように思うのでありますが、こちらから向こうに帰国するというので、永久的に帰国するという申請を出して帰られた方が、こちらに帰りたいが帰れないというような話が、少し誤り伝えられておるんじゃないかと思います。これは、向こうに帰るという帰国申請だけが出たものでありまして、再入国をするつもりの申請でなかったやに伺っておるわけであります。それ以外にそういうような事例があるかどうか、まだ調べてみておりませんけれども、ただ、向こうに帰国するというので出かけられた人の再入国ということはちょっと困難だと思います。
  32. 木原実

    木原委員 そういう人たちは、結局向こうから帰国をしたいという申し出があっても、いまの運用の中ではなかなか無理だということですか。
  33. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 未承認国の人の日本に対する入国というのはいろいろ制約がございます。ことに分裂国家であるいまの北鮮韓国との関係等もございますので、北鮮からの入国につきましては、国際会議とか、スポーツとか、たとえば今度行ないます札幌の冬季オリンピックとか、日本で国際会議があるときとか、その他学術的な問題とか、そういうような事例に限って入国が許可されておる、こういうことになっております。
  34. 木原実

    木原委員 そうしますと、これは局長にお伺いしますけれども、いまかなり、経済関係、貿易関係、それから墓参、やや特例的な措置で北のほうに往来があるやに聞いておるわけなんですが、いまそういうケースは幾つかあるんでございますか。いままでかなり往来がきびしかったわけですけれども、向こうの国籍を持っている人たち往来を許可をしている、そういうケースは、どういうケースがありますか。
  35. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 経済関係では、現時点においてはまだございません。これから日本との貿易が進み、いろいろな技術的な問題が起きてきたときに初めて問題になってくるのだろうと思います。向こうからこちらへ墓参に見えたというケースはございません。先ほどのお話の、戦前から日本におられた在日朝鮮人の人が墓参に向こうへ帰られた、それでまた日本に再入国許可をもらって帰ってこられたというのは、先ほど大臣の言われましたように、人道的な考慮を払って、そういう人たちにはだんだんこれを緩和して許可しておる、こういうことでございます。
  36. 木原実

    木原委員 そうですか。そうしますと、墓参のケースについては幾つか実現をしておる。それから経済関係については、これから何か具体的なあれが起こった場合には考えられるということでございますか。こちらで商売をしておる向こうの国籍を持っておる人が、貿易上のことで平壌なら平壌へ渡る、その往来は、もう少し具体的なケースが熟してくれば窓が開かれる可能性がある、こういうことでございますか。
  37. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 ただいまの私のお答えいたしましたのは、主として先生の御指摘になった、北鮮におる人が日本に入ってくる場合ということでお答え申し上げたわけでございます。日本における朝鮮人の人が再入国するというケースに関しましては、現在いろいろな制約がございまして、結局、先ほど言いました墓参というような、人道的な考慮を払うべきものに限って現在許可しておる、こういう状態になっております。
  38. 木原実

    木原委員 これは微妙なところなんですけれども、墓参については幾つかのケースができた。それでは、親族さがしというようなことが、かりに来月とか再来月というような時点で起これば、これは人道的な考慮のワクの中へ入りますか。
  39. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 これは確かに人道的なケースではあるのですが、一面政治的な要素も加味されてくるおそれがございまして、先ほど大臣から御答弁のありましたように、韓国北鮮の中においてもまだいろいろな問題がありまして、その辺の解決が進んでおらない。わがほうが一歩先んじて、わが国のほうだけが独走してそういう関係の人の往来、交流を認めるというところまでにはなかなかいきにくいかと思います。
  40. 木原実

    木原委員 何か話を詰めるようですけれども、私ども、南北会談には一人の日本人としても非常に期待を寄せている者なんです。たとえば、あの中で幾つかの話し合いが両国の間でできて、三十八度線を越えての交流が始まる、こういうことになりますと、それは当然わが国の出入国管理の運用の上にも、善意の意味で反映をさせていく余地がある、こういうふうに考えてよろしゅうございましょうか、どうでしょうか。
  41. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 先ほど大臣のお答えになりましたように、情勢に即応して、先走らず、かつしかしうしろ向きにならないように、客観情勢に対応した措置をとっていきたいと考えております。
  42. 木原実

    木原委員 本国の中でそういうことが客観的に認められるような形で実現をしていけば、当然われわれとしても考慮しなければいけませんですね。そういうふうに考えるのですが、それでよろしいですか。
  43. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 その時点において私たちも真剣に検討しなければならないと思います。
  44. 木原実

    木原委員 私は、たいへん大きな転換の時期に来ておると思いますので、大臣の御答弁もいただきましたし、局長のいまのおことばもございましたけれども、これはある意味では、私どもにとっては長い間の懸案だったと思うのです。したがいまして、いままでのいきさつはともかくとしまして、新しい情勢に十分に柔軟に対応していく。わけても法務省人たちは、法の番人だけにたいへんがんこなところがありますから、これはぜひ大臣にひとつ改善をお願いをいたしておきたいと思います。法のたてまえがきびしく順守をされて、そして政治的に大きなものを失ったのでは国益にかなわない、私どもはこういう感じを持つわけでございますので、これはひとつ前尾さんのような方の大臣御就任の間に、何とか前向きの風穴のあくような方向を打ち立てていきたいと要望しておきたいと思います。  それから、ややそれに関連をするのですが、これはちょっとケースが違いますけれども、具体的なケースで、実は韓国で、日本に永住権を持っておる学生、徐勝さんというのですか、スー・スンという発音だそうでございますけれども、そういう方が北鮮のスパイ容疑で逮捕をされて、先般何か向こうの法廷で死刑の宣告を受けた。これについて、その青年の大学の先生たち、あるいは級友たちが、非常に心配をいたしまして、何とか寛大な措置をというので、大統領その他に嘆願書を出す、こういうような動きがあるそうでございます。これは新聞等にもその概要が何回か報道されておりますけれども、そういうことで、最近私のところにも関係者の方々が陳情にお見えになりました。  事情を聞いてみますと、これはたいへん微妙なことなんですけれども、その中で、この死刑の判決を受けました徐勝という青年は、これは前尾さんの選挙区なんでございますけれども、京都に生まれて、京都の高等学校、それから教育大学、それを卒業してから在日韓国人としてソウル大学に入学をしておる、こういう経歴の持ち主なんだそうです。ところが、死刑の判決を受けました容疑というのが、いわゆる北のスパイ事件だ。何か北のほうでスパイ教育を受けていろいろと大学の工作をやった、そういう容疑なんだそうですが、その容疑の中に、実はこの青年が、日本から北鮮に入り、さらに日本を通じて韓国に入った。別の人は、六八年ですか、それから七〇年と、二度にわたってそういうケースで韓国に潜入をした。あるいはまたこの人は、もう七〇年に何かそういうケースで韓国に入っている、こういうことが何かきびしく問われているということなんだそうです。しかし、出入国に関してはかなりきびしい管理をやっているはずなんですが、そういう日本一つの中継基地みたいにしまして、いわばそういう行動といいますか、あるいは密出国、密入国という形になるわけなんですが、そういうことが考えられるのでございましょうか、どうでしょうか。この事件の内容はともかくとしまして、日本から北鮮に渡り、北鮮からまた日本に帰って、そして韓国に入った、こういうケースがあげられておるわけなんです。  私は、もしそういうことが指摘をされているということになれば、これはまあ日本は密入国天国みたいな感じがするわけなんです。この人は、いずれもずっと大学に在籍をしていて、そうして卒業すると同時にソウル大学に入学しておりますから、経歴の上で見ますと、北に行ったり日本に来たりいろいろなことは考えられないわけなんですけれども、何かこうそういうことで容疑に問われ、それから死刑の判決を受けるというようなことになりますと、少なくとも日本に永住権を持つ韓国人、しかもそれがそういう形の往来をやっているとなると、私どもは一人の日本人としまして、一体出入国管理令はそれほど権威のないものか、こういうふうに考えるわけなんですが、いかがでしょうか。
  45. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 ただいまの徐兄弟の問題に関しましては、まず第一に、この人たち日本に永住する許可が与えられておったとしましても、外国人であることは間違いないわけでございます。日本人ではございません。外国人である以上、その所属する国家法律、あるいはその国家の統治権、司法権の支配下にあるのも、これまた当然でございます。それがその国へ行っておる場合に、当然、その国でもし法に触れるならば処断を受けるというのは、これはやむを得ないことであろうかと思います。もちろん私のほうは詳細はまだ承知いたしておりませんので、向こうの処断されたことがどうであるのかということについては、見解を言うのは差し控えたいと思うわけでございます。  それから、この兄弟は日本に本拠を持っておりまして、韓国に留学に行きたいというので向こうに勉強に行ったということでございまして、その出国経路の詳細につきましては、わが国の出入国管理令によりますと、日本から出国の事由がありまして出ていくところまではチェックいたしますが、一たび国外に出てしまいますと、別に尾行をつけているわけでもございませんし、どういうふうに動いたという報告をとっているわけでもございませんので、どういう経路をとって、またどういうことをしたかということは、われわれ関知しないわけでございます。  そこで、最後に御指摘の、日本から北朝鮮へ行って、それからまた韓国へ入って、そうしてそれが処罰の対象になったのではないか、この点、私は承知しておりませんが、そういうことになりますと、おっしゃるように、日本を中継地として北鮮韓国との人が、お互いに好ましい人であれば別でございますが、相互が好ましくないと思っておる人たちがお互いに行き来をするということになりますとまさに問題でございまして、そういう点もありますので、先ほどからの出入国とか再入国という問題に関しましては、私たちは非常に厳正にやらなければならない点もあるということで注意しておるわけでございます。判決の内容の詳細につきましては承知しておりませんので、どういう経路でどうなったかということにつきましては、私たちもここで意見を申し上げることはできないと思います。
  46. 木原実

    木原委員 そうなんです。われわれも、外国の裁判の中身について何ら言う権限はありませんし、ましてや政府の立場からものを言えるものではありません。ただ、報道やあるいは関係人たちが、裁判の傍聴等に行ってもたらしました資料等によりますと、私ども一番引っかかるのは、やはりこの出入国管理に関連をして、どういうケースかわかりませんけれども、少なくとも容疑の対象になっておる事実関係の中に、日本から北鮮に渡り、北鮮から日本に帰り、そうして韓国に潜入をした、こういうケースが指摘をされておるのですね。そうなりますと、ある意味では、いままで相当きびしくやってこられたはずの出入国管理行政の運用について、私はやはり問われているというような感じがするわけなんです。それほどずさんだったのか、私どもがぶつかったときにはずいぶんきびしかったはずなんだが、こういう感じがするわけなんでありますけれども、どうなんですか、状況としてもそういうケースは考えられるのでしょうかね。
  47. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 わが国は四方を海に囲まれておりますので、密出入国という問題は、私たちは全力をあげてできるだけ防止するようにはいたしておりますが、そこにおのずから限界がございまして、現在でも検挙しておる者は相当ございますが、しかし、われわれの目の届かない姿で密出入国が行なわれておるというのは、これは現実にあるということは存じております。しかし、これはどこまでそれを捕えられるかという、私たち人員といろいろな装備の物理的な問題がございまして、確かにもし非常に不適当な密入国を見のがした――見のがしたというわけではございませんので、私たちは厳重にやっておるわけでございますが、特にこの兄弟について何か特別にどうかしたとか、これを見のがしたのではないか、そういうことは毛頭ございません。全力をあげて密出入国の防止には努力いたしておるわけでございます。
  48. 木原実

    木原委員 それは、考えられるとすれば密出入国ということになるわけなんですけれども、私たちは少なくとも隣国の裁判の中で、日本を出たり入ったりするケースが直接の動機になって一人の青年が生命を失う措置を迫られておるというようなケースを考えますと、何かあらためて、どうも出入国行政のワクの中でたいへんな一つの穴があるのではないかという感じを抱くわけなんです。密出入国なら、非合法に出入りしたというなら、非合法に出入りしたということを明らかにしてくれればいいわけですけれども、しかし、そういうことは必ずしも言っていないで、日本から北に渡り、北から日本に帰り、それからまた日本から韓国に潜入をしたのだ、こういう指摘なものですから、ある意味では私どもとしてはたいへん心外に考えたわけなんです。そうしますと、こういうケースがあるとすれば、管理行政のワク外といいますか、密出入国ということしか考えられないというわけですね。
  49. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 そうだと思います。ただ念のため申し上げますが、日本からの密出入国を私たちは取り締まっておりますし、もしそれが発見された場合には、日本の法令によってこれを処断しておるわけであります。単に北鮮へ行ったからということだけで、日本出入国がおかしかったからということが理由韓国の法廷で判決を受けているのではないというふうに承知しております。北鮮において行なった、韓国に対する反共法に触れる活動が事の中心になっていると思いますので、その点は、私どものほうに何ら関係のない問題と御了解いただきたいと思います。
  50. 木原実

    木原委員 わかりました。これは外国で裁判を受けておることですから、特に政府の口からこれ以上のことを聞きたいと思いませんけれども、たまたまそういうケースが容疑の一つの素材として問われているということになりますと、ちょっと私もどうも黙っているわけにはいかないという感じがいたしましたので、お伺いいたしました。  それから、問題をもう一つ変えまして、これは大臣にお伺いいたしたいのですが、先般報道によりますと、例の過激派学生に対する対策の一環といいますか、政府と与党の中で、例の爆弾の製造をしておる過程をテレビが報道をした、あるいはテレビ等で、過激派学生がある意味ではきわめて不穏当な発言をしておること等を取り上げて、そういうことを報道することについて一定の規制を考えるべきではないかという話し合いがあったというふうに承っておるわけなんです。私は十二チャンネルのその報道を実は見ておりませんので、そのことの内容の問題は取り上げるわけにはまいりませんが、方向として大臣にお伺いいたしたいと思うのですけれども、何かそういう措置をしなければならないという状況でございますか。
  51. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 率直に申しまして、最近不穏当だと思われる放送が二、三あったように思います。放送法から考えましても、少なくとも公序良俗に反しておるんじゃないか。ただ、それが放送を通じてやられておるので、はたして放送者に故意なり過失があったかどうかというような問題もありますので、またそれの規制をやるのがいいかどうか、そういうようなことが議題になりまして、いろいろ研究しようということになっておる。最近そういう段階でありまして、改正すべきであるとか、また、どういうふうな方法がいいか、あるいはこのままで――率直に言えば、自粛していただくことが最も望ましいことであるとするなら、ことに番組審議会とかそういうものもありますから、そういうところで十分に自粛してもらえれば事足りるのか、そういうような点を十分に研究してみようではないか、こういう段階でございます。
  52. 木原実

    木原委員 そうしますと、これはもう御承知のとおり、非常に微妙で、しかも非常に重大な問題を含んでおると思うのです。公序良俗に反する云々という御指摘もございました。それは、われわれがかりにテレビを見ておりましても、まことに見るにたえないというようなものにもぶつかるわけです。しかし公序良俗に反するという限界なり、あるいは判断なりということは、もうきわめて主観的な要素も入りやすい。客観的にと言いましても、見る人によってまた違ってくるとか、こういう言論報道の自由ということを憲法上非常に大きな前提にして成り立っているような民主社会の中では、これはきわめて判断がむずかしいところだと思うのです。ですから、それを法によって規制をするということになりますと、これまたもう一つむずかしいと思うのです。ですから私は、たまたま与党なりあるいは政府の関係者の人たちが、そういうことを議題にして話し合いをしたということだけでも、政府は取り締まる権限を持っている立場ですから、これはやはり言論や報道に携わる面に対してはかなりの政治的な圧力になってくるのではないか、こういうふうに判断をせざるを得ないほど微妙でかつ重要な問題だと思うのです。したがいまして、重ねてお伺いをするわけなんですが、そういう問題について研究をしていかなければなるまい、こういうふうに御判断になったということなんですか。それは研究をしていくという体制はおとりになるのですか。いかがですか。
  53. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 まだ、研究をする体制をどういうふうにつくるとか、そんなところまで話はいっておりません。率直に言って、客観的に見ても、だれしも公序良俗に反しておるじゃないかと思われるようなものが放送されておる。その点についてどういうふうに考えていったらいいかどうかというような段階で、これは率直に言いまして党内でいろいろ議論があるのです。それを、事実あります議論に対して、どういうふうな考え方をとっていくべきかということから始めて、みんなで研究してみようじゃないかといって別れたということでありまして、まだ、組織的に研究するとかなんとか、そんな段階には至っておりません。
  54. 木原実

    木原委員 これは従来も、ケースは違いますけれども、全然なかったわけではないと思うのです。ただ私は、これまた、自由主義者、リベラリストとしての前尾さんに期待をいたしたいわけなんですけれども、この種の問題、特に言論、報道というような問題については、法や力をもって本来対処すべき問題ではないのではないかという考えを持っているわけなんです。なぜならば、かりに公序良俗という一つの基準を立てましても、これ自体たいへん主観的な要素が入りやすいという側面がある。しかし何よりも、報道とか言論とかというものについては、自粛を求めるということ自体が、私はある意味では圧力だと思うのです。そうではなくて、言論とかあるいは報道とかということについては、これはもうそれを受けとめる側の判断によって、ある意味では淘汰をされていく、ある意味では取り上げられていく、こういう性格のものだと思うのです。ですから、かりにも法によって、力によって、いかなるものが行なわれても対処をするという筋合いのものではなくて、そういう意味では国民の良識を信頼するかしないかという問題だと思うのです。ですから、こういうものをまき散らされたのでは困るとかりに政府や与党の方々が考えられましても、しかしそれ以上に、国民がそんなものはだめだと思えば、そういうものは消えていくわけなんです。少なくとも国民の多数が、あんな放送をやっておかしいじゃないかと言えば、そのチャンネルは視聴率が下がっていくという法則が民主社会の中にあるわけなんです。ですから私は、いまの社会の中で多数の国民の良識に信頼を置く以上は、法によってこの種の問題は対処すべき問題でないのではないのか、こういうふうに考えるわけなんです。ですから、報道のしかたや何かで他に定められた法に該当するという側面があれば、これはまた別ですけれども、少なくとも新しくそういうものを提起していくということについては非常に疑問を持つ、こういう考え方を持っているのですけれども、いかがなものでございましょうか。
  55. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 原則として、おっしゃることについて私は別に異論を持つわけじゃありません。ただ、最近の二、三の例は、いままでに全くなかったような、三人では殺し足りなかったというようなことが堂々と言われて、あんなことを言っていいんだろうかとみんなの人が非常に奇異に思っておる。むしろその点では、われわれがいかにも怠慢であるのじゃないかといってなじられてもしかたがないような感じがするのでありますが、そういうような点について、現在の法の制度がどうなっておるかとかなんとかということを、私としては説明をしたにすぎなかったわけでありまして、もちろん、言論の自由を抑圧するというようなこと、あるいは抽象的に公序良俗で問題が片づくなどとは絶対に思っておりません。
  56. 木原実

    木原委員 一部過激派学生がいろいろな過激な行動をとっておることについては、私はやはり法に照らしてきびしく対処をすべきだと思うのです。しかし、それがマスメディアを通じての報道や言論というワクの中で行なわれることについては、これはやはり言論には言論をもって対処する。政府に言い分があるならば、政府はそれに反発をしていく。あるいは与党の方々の中で、けしからぬという考え方を持った人たちは、けしからぬという声をあげられる。そういうことの中で淘汰をされていくべき性質のものだと思うのです。ですから、それをたてにとって、少なくともそれを報道した、放映をしたそういうメディアに対して、何か新しく法によって一つ措置考えるということになると、やはり当然別個の問題になると考えざるを得ないわけなんです。ですから私どもは、やはりそれを理由にして、一つの言論に対する力の挑戦が行なわれる芽が出るんではないのかと心配をせざるを得ない、そういうふうに考えるのですが、重ねていかがでしょうか。
  57. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 おっしゃるように、われわれの考え方も一緒にして対談をするとか、あるいは片一方にそういう対談があってこっち側に対談がある、そういうことであるといいんですが、そうではなしに、対談の形式によってこれを一般の人が見るわけです。二人だけが話しているならいいが、その話しているところを一般に聞かれたときには、どうも不穏当だというような場合にはどういうふうに法律的に考えていいものかどうか、そういうような点をいろいろ今後研究していきませんといけない。いわゆる情報化社会に適応性を持たなければならぬという意味合いからいろいろ研究しようじゃないか、こういう意味合いであります。
  58. 木原実

    木原委員 これはもうこれ以上申し上げませんけれども、私はやはり、いろいろないまの社会の激しい動きの中で、言論あるいは報道あるいはマスメディア、そういうワクの中で起こった問題に対してあらためて対処をしようというのは、いろいろな意味で危険な要素を持つと判断をしておる者の一員なんです。ですから、繰り返すようですけれども、過激な、行き過ぎた行動に対しては、当然やはりいままでの法をもってきびしく対処をする。しかし、報道あるいはマスメディアにあらわれるものは、それのいわば間接的な反映だと考えるわけなんです。ですから、どこまでも報道や言論に対してはそのワクの中での処理を期待する、こういうこと以外にないんじゃないのか。それ以上に、法をもって、力をもって何らかの形で公序良俗を守っていこうという意図を持たれると、そこから全然別の問題が出てくる、こういうふうに判断をせざるを得ないわけなんです。  したがいまして、これから研究でもしていこうかというお気持ちのように承ったわけなんですけれども、持っておる問題の深刻さ。それから、くどいようですけれども、半鐘が鳴ったから火事があるんではなくて、政府としては、その火事の大もとを消すという努力はあってしかるべきだと思うのです。しかしながら、それの反映として、たとえばかりに半鐘を鳴らした方を法によって取り締まりましても、ある意味では問題の根源は解決しない、こういう感じも持つわけです。したがいまして、この種の問題の取り扱いにつきましては慎重の上にも慎重を、できることならば、研究をするという話し合いをした、そういう段階で実はとどめていただきたいと思うのです。それよりもお互いに政治の中で、行き過ぎた、社会的な衝撃を与えるような過激な行動に対しては、これは追及をしていく。やはりこういう政治の本来の姿に返って、いやしくも言論や報道については、かりにその中に行き過ぎがあったと判断されるようなものがあったにしましても、それは、国民の良識と、あるいはまた、報道やその他の任に携わる人たちの最終的な良識を信じるという了解の上に解決の道を見出していく。そうでなければ、民主主義の社会というものは成り立たないという感じを抱くわけです。そういう意見を申し上げておきまして、重ねてひとつ大臣の御見解を承りまして、終わりにいたしたいと思います。
  59. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 私ももちろん、法律で規制するなんというのは下の下で、最終のあれだと思いますが、しかし、率直に申しまして、良識のある人が聞いて、これはどうもおかしいというようなことが行なわれておるものでありますから、その点について、それを是正させるというか、是正してもらう、それにはどういう方法があるか。もちろん、法律規制をやるのは最終の段階でありまして、それ以前にいろいろな手があると私も思います。そういうようなことをまだいろいろと研究しようじゃないかという段階でありまするから、そういう意味におとり願いたいと思います。
  60. 木原実

    木原委員 終わります。      ――――◇―――――
  61. 伊能繁次郎

    伊能委員長 この際、伊藤惣助丸君の法務省設置法の一部を改正する法律案に対する質疑に先立ちまして、沖繩開発庁設置法案国家公務員法等の一部を改正する法律案、及び沖繩復帰に伴う防衛庁関係法律適用特別措置等に関する法律案の各案を議題とし、順次趣旨の説明を求めます。山中総理府総務長官。
  62. 山中貞則

    ○山中国大臣 ただいま議題となりました沖繩開発庁設置法案について、その提案理由及び概要を御説明申し上げます。  わが国民多年の悲願である沖繩の祖国復帰がいよいよ明年に実現する運びとなったことは、国をあげての喜びであります。  沖繩は、さきの大戦において最大の激戦地となり、全島ほとんど焦土と化し、沖繩県民十余万のとうとい犠牲者を出したばかりか、戦後引き続き二十六年余の長期間にわたりわが国の施政権の外に置かれ、その間沖繩百万県民はひたすらに祖国復帰を叫び続けて今日に至ってまいりました。祖国復帰現実のものとなったいま、われわれ日本国民及び政府は、この多年にわたる忍耐と苦難の中で生きてこられた沖繩県民の方々の心情に深く思いをいたし、県民への償いの心をもって事に当たるべきであると思います。祖国復帰というこの歴史的大事業の達成にあたっては、各般の復帰諸施策をすみやかに樹立し、かつ、沖繩県の将来についての長期的な展望を明らかにして、県民の方々が喜んで復帰の日を迎え得るような体制を早急に整えることこそ政府に課せられた責務であります。  このような観点から、沖繩の祖国復帰の円滑な実現と明るく豊かで平和な沖繩県の建設こそ沖繩復帰の基本的な目標でなければならないと存じます。沖繩が戦争で甚大な被害をこうむり、かつ、長期間米国の施政権下にあった事情に加え、本土から遠隔の地にあり、多数の離島から構成される等各種の不利な条件をになっていることに深く思いをいたすとき、まずその基礎条件を整備することが喫緊の課題であり、進んでは、沖繩がわが国の東南アジアの玄関口であるという地理的条件と亜熱帯地方特有の気候風土を生かし、その豊かな労働力を活用して産業の均衡ある振興開発をはかることが必要であると考えます。  今回、沖繩開発庁を設置しようとする趣旨は、このような沖繩の振興開発に関する国の諸施策を積極的に推進し、豊かな沖繩県づくりに政府が直接の力添えをするための体制を整備することにあり、このため、総合的な計画の作成並びにその実施に関する事務の総合調整及び推進に当たることを主たる任務とし、国務大臣を長とする沖繩開発庁を総理府の外局として設置しようとするものであります。  なお、政府は、沖繩の各界各層の方々の意見を取り入れ、琉球政府と十分な調整を行ない、ここに成案を得て国会の御審議をいただく運びとなった次第であります。  以上が、本法案を提案した理由であります。  次に、この法律案の概要につきまして御説明いたします。  第一は、沖繩開発庁の所掌事務及び権限に関する規定であります。  沖繩開発庁は、その任務を遂行するため、沖繩振興開発計画の作成及びその作成のため必要な調査並びに振興開発計画の実施に関する関係行政機関の事務の総合調整及び推進に当たるとともに、関係行政機関の振興開発計画に基づく事業に関する経費の見積もり方針の調整を行ない、及び当該事業のうち沖繩の振興開発の根幹となるべき社会資本の整備のための事業に関する経費を沖繩開発庁に一括計上し、各省庁に移しかえる等振興開発関連予算についての権限を同庁に与えることにいたしております。また、このほか、この法律の附則において、沖繩復帰に伴い沖繩の特殊事情にかんがみ、政府において特別措置を要する事項で政令で定めるものに関する施策の推進に関する事務を当分の間沖繩開発庁に行なわしめることにいたしております。  第二は、沖繩開発庁の内部部局に関する規定であります。  沖繩開発庁には、内部部局として、総務局と振興局を置くことにし、総務局においては、主として振興開発計画の作成及び調査並びに沖繩振興開発金融公庫法に関する事務を所掌し、振興局においては、主として振興開発計画の実施に関する関係行政機関の事務の総合調整及び推進の事務を所掌することにしております。  第三は、沖繩開発庁長官は、必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、振興開発計画の実施に関する重要事項について勧告し、及びその勧告に基づいてとった措置について報告を求めることができることにいたしております。  第四は、沖繩開発庁に、付属機関として、沖繩振興開発審議会を置き、沖繩の振興開発に関する重要事項について調査審議することになっていることであります。  第五は、沖繩総合事務局の設置及びその所掌事務等に関する規定であります。  沖繩県民の便益に資するため、許認可、補助金交付等の行政事務あるいは沖繩の振興開発に関連する建設工事等について、沖繩現地に関係各省庁の通常のブロック機関の長の有する権限をおろし一元的な事務処理を行なうため、沖繩開発庁の地方支分部局として沖繩総合事務局を置くことにいたしております。  総合事務局は、沖繩開発庁の所掌事務の一部を分掌するほか、公正取引委員会事務局の地方事務所、財務局、地方農政局、通商産業局、海運局、港湾建設局、陸運局、地方建設局等の地方支分部局において所掌すべきものとされている事務その他民有林及び水産関係事務の一部を分掌することにいたしております。また、これらの地方支分部局において所掌すべきものとされている事務等については、当該事務に関する主務大臣または公正取引委員会が総合事務局の長を指揮監督することにしております。  なお、総合事務局の位置及び組織については、別途政令で定めることにいたしております。  第六は、沖繩開発庁設置法は、琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の効力発生の日から施行することにし、また、この法律の公布に際しては、法律の内容について沖繩県民に対し周知徹底をはかるため、内閣総理大臣は琉球政府行政主席に通知することにいたしております。  第七は、沖繩開発庁設置法の施行に伴い従来の沖繩北方対策設置法は廃止されることになりますので、北方領土問題に関する事務につきましては、新たに、総理府の機関として、総理府総務長官たる国務大臣を長とする北方対策本部を設置して、沖繩北方対策庁が所掌する北方領土問題に関する事務をこれに引き継がせ、本問題の解決の促進をはかるため、この法律案の附則において総理府設置法の所要の改正を行なうことにいたしております。  以上述べましたことのほか、沖繩開発庁設置法の制定に伴い必要な関係法律の整備に関する規定を附則に設けることにいたしております。  以上が、この法律案の提案の理由及びその概要でありますが、この法律案は、沖繩県の自治権を最大限に尊重しつつ、新しい沖繩県の伸長、発展に取り組む政府の基本姿勢を明確にするためのものであることを申し添えておきます。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。  次に、国家公務員法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  現行法のもとにおいては、国家公務員等の職員は、本来その職務に専念すべき義務を有していることから、職員団体等の業務にもっぱら従事することが原則として禁止されておりますが、特に所轄庁の長等が相当と認めて許可を与えた場合には、職員としての在職期間を通じて三年をこえない範囲で職員団体等の役員としてその業務にもっぱら従事することができることとされております。いわゆる在籍専従制度がこれであります。  この在籍専従の期間について、本年十月十一日、第三次公務員制度審議会会長から同審議会の全委員の一致した意見として内閣総理大臣あてに、「公務員等の在籍専従期間の制限については、現行法の定める三年を五年に改めることが適当である。」との答申が行なわれました。  政府は、この答申を尊重し、さらに最近における職員団体等の運営の実態をも考慮して、在籍専従の期間を現行の三年から五年に改めるための法改正を行なうことにし、この法律案において、国家公務員法、公共企業体等労働関係法、地方公務員法及び地方公営企業労働関係法の関係各規定をそれぞれ改正しようとするものであります。  以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  63. 伊能繁次郎

  64. 西村直己

    ○西村(直)国務大臣 沖繩復帰に伴う防衛庁関係法律適用特別措置等に関する法律案の提案の理由と内容の概要について御説明いたします。  この法律案は、沖繩復帰に伴い、防衛庁関係法律適用についての暫定措置その他必要な特別措置等を定めるものであります。  その第一は、防衛庁職員の給与等の特別措置に関する規定であります。これは、琉球政府の職員で、沖繩復帰の日から引き続いて防衛庁の職員となる者、及び復帰の日以後沖繩県で勤務する医師または歯科医師である防衛庁職員につきましては、一般職の国家公務員の例に準じ、政令で定めるところにより、当分の間、特別の手当を支給することができることとし、また、琉球政府に在職中公務上の災害を受けた琉球政府の職員で、復帰の日から引き続いて防衛庁の職員となる者につきましては、その災害を防衛庁職員としての公務上の災害とみなして、一般職の国家公務員の例に準じ政令で定めるところにより処理するものであります。  第二は、人身損害に対する見舞い金の支給に関する規定であります。これは、沖繩において、昭和二十年八月十六日から昭和二十七年四月二十八日までの間に、合衆国の軍隊等の行為により人身にかかる損害を受けた沖繩住民またはその遺族のうち、一九六七年高等弁務官布令第六十号に基づく支払いを受けなかった者またはその遺族に対しまして、その支払いを受けなかった事情を調査の上、必要があるときは、同布令に基づいて行なわれた支払いの例に準じて、見舞い金を支給することができることとしたものであります。  第三は、防衛施設周辺の民生安定施設の助成の特例に関する規定であります。これは、沖繩における防衛施設周辺の民生安定施設の助成の対象といたしまして、市町村のほかに沖繩県を加え、かつ補助率を十割とすることができることをその内容といたしております。  第四は、沖繩の軍関係離職者に対する特別給付金の支給に関する特例についての規定であります。これは、現在沖繩におきまして、沖繩法上の特別給付金を受けるべき地位を持っておりながら、合衆国の軍隊等に再雇用されたため、その支給を停止されている者がおりますが、その者が有する特別給付金を受けるべき地位を本土法の駐留軍関係離職者等臨時措置法上の特別給付金を受けるべき地位を持っている者とみなして、その者が復帰後において駐留軍労務者の職を失ったときに、特別給付金が支給されるよう措置したものであります。  第五は、政令への委任に関する規定であります。これは、防衛庁関係法律沖繩への適用上必要とされる事項につきましては、当分の間、政令で必要な規定を設けることができることとしたものであります。  最後は、沖繩復帰に伴う防衛庁設置法の一部を改正する規定であります。これは、防衛施設庁の地方支分部局として、沖繩県那覇市に那覇防衛施設局を設置し、その管轄区域を沖繩県とすること等を定めたものであります。  以上、法律案の提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げましたが、何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに、御賛成くださるようお願いいたします。
  65. 伊能繁次郎

    伊能委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。      ――――◇―――――
  66. 伊能繁次郎

    伊能委員長 法務省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。伊藤惣助丸君。
  67. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 初めに、この法務省設置法の一部を改正する法律案の中身についてでありますが、千葉県の成田市に新東京国際空港が設置されることになっているわけでありますが、そこに羽田入国管理事務所移転する、こういうことでありますが、成田の新東京国際空港の設置については、地元農民との間にたいへんな長い間の代執行をめぐるトラブルが続いているわけでありますが、まずその経過について、どうなっているのか。私が常にあの事件を通じて考えておりましたことは、行政あって政治なしだ、あのような対決ではなくて、何らかもう少しうまく話し合いができなかったものかというふうにいつも思っている一人でございますが、その経過についてまず伺いたいと思います。
  68. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 実は、長年の問題であり、法務省としては関係がないというわけではありませんが、いまおっしゃるように、入管の事務所を設置する。当然これは飛行場ができれば、それに従って入管の事務所を設けなければならぬ、こういう関係だけでありまするから、あの用地の収用のやり方がよかったかどうか、あるいは何らかのもっと措置すべき点があったかどうかというような点については、実は私、残念ながら報告を受けておりませんので、ただいまお答えするだけの資料を持ち合わせておりませんことを御了承願います。
  69. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 質問通告することにあたって、経過をよく聞いてほしいということを通告してあるのですが、政府委員のほうでだれか知っておりますか。  そこで、さらに質問をつけ加えておきますが、現時点でどういう状況になっておるのか。たとえば、この間強制収用を終わったようでありますけれども、地元農民の方々は何を要求しているのか、いま何が問題になっているのか、その点なんかもあわせてお伺いしたいと思っております。
  70. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 私のほうの立場といたしましては、飛行場ができ上がっていく建設状況そのものにつきましては、実は直接関係がございませんので、情報は幾つか聞いておりますが、しかし、これも運輸省なりいろいろな関係官庁のほうで鋭意やっておられるわけでございまして、私のほうは、当初は、明年の二月ごろ飛行場が完成するであろう、そうすれば、それを目途に業務が開始できるように考えておったわけでございますが、その後いろいろ御承知のような経緯がありまして、現在のところ得ております情報によりますと、明年の五月中にターミナルビルその他収容施設その他のものが完成する、六月に正式に国際線が入ってくる、供用開始が行なわれる、こういうふうな通告を受けておるだけでございまして、それをもとに私たちは、その業務に差しつかえのないように各般の準備を進めておる次第でございまして、収用の状況がどうなっておるかどうかのほうは、遺憾ながらつまびらかにいたしておりません。
  71. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 私は、確かに管轄違いかもしれませんが、そこに入って使う以上は、やはり正確な情報と、あれだけ大騒ぎになっているところでございますから、やはり正確に情報をキャッチして、法務省としての態度をきちっときめてかかることが大事じゃないだろうかと思うのです。野党の同僚委員の中にも、このものについては賛成だけれども、新東京国際空港を建設するにあたっての政府の姿勢に問題があるのだということがいままでの論点であったわけですね。ですからああいった一つのたいへんな代執行が行なわれた。それで問題解決したかというと、していない。しかしまた、運輸大臣その他の関係の政府の答弁によれば、十分地元の方々の要求なり要望なりを考えていくということを抽象的には聞いておりますが、何が問題で、そしてまた今後どういうような態度で臨んでいくのか、そしてそれが妥結してからやるのか、しなくても一つの計画は実行するのか、そこら辺のところも、われわれからすれば、やはりこの法案審議にあたって態度を決定する一つの判断の材料にするわけですね。したがいまして、そういう状況については正確な情報をとって報告していただきたい、こう私は思うわけです。ですから、いまの情報では、五月ごろできて六月ごろ業務が開始されるということだけでありますが、これは関連する問題でありますので、後刻でけっこうでございますが、そういった状況についてまた報告をしていただきたいと思います。  そこで、法務大臣、やはり法務相といえば法律の番人の最たる大臣でございますから、ああいった一つの事件を通していろんな問題があろうかと思うのです。そういう点の見解を承っておきたいと思います。
  72. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 これは非常に長い問題でありましたから、私は、そう遺憾な点はないというより、あれよりやむを得なかったというふうに承知しておりますが、詳細については、また後刻御報告したいと思います。
  73. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 それではまた後刻、その問題については大臣から御見解を承ることを約束しまして、次の質問に入りたいと思います。  といいますのは、前国会においても、この設置法の前の段階で巣鴨の拘置所を移転するという問題が法律案として出ましたそのときに、私はいろいろな角度から質問したわけでありますが、最近のあと地利用を見てまいりますと、ここで述べられた政府委員答弁とはだいぶ違った方向に、あるいはまた計画というものがたいへんおくれているような、さらには、あと地利用を推進している新都市開発センターというものが、内部事情というのはよくわかりませんけれども、いままでにすでに三回ほど役員が交代している。いまだにその構想というものがはっきり示されていない。しかしながら、地元においては、来年四月に着工するんだというふうな話も伝わっている。現在、約二万坪のあの土地は、建物を取ってたいへんきれいになったわけでありますが、風が吹くたびに近所にごみのようなものをひどく飛ばして、もうすでに公害を出している、こういう地元の苦情もございますので、きょうはこの問題については、政府委員の方にしかと、どのような経過、またどのような過程で取り組んでいらっしゃるのか、明確に御答弁いただきたいと思います。
  74. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 旧東京拘置所のあと地につきましては、すでに御承知のように、数個の刑務所の建築をしてもらいましたものと交換をするという契約をいたしまして、その契約に基づきまして、本年の四月までに一切の契約の履行が終わりまして、東京拘置所のあと地は本年四月七日に新都市開発センターに引き渡したわけでございます。したがいまして、法律上あるいは形式上は一応国の手を離れたという関係になるわけでございますが、前国会で当時の法務大臣も申し上げましたように、この土地につきましては、長年の法務省の刑務施設があったところでございまして、その行くえについては深い関心を持たざるを得ないところでございます。そういう意味におきまして、いろいろ地元の御要望、あるいはこういうところで御議論になります御意見、こういうものは逐一同会社に伝えまして、要望をしながら、よく見守りながら建設を進めていっていただこう、こういう態度でおるわけでございます。  そういう態度で見守っておりましたのでございますが、現状を申し上げますと、先ほど申しますように、四月七日に引き渡しを完了いたしまして、引き続いて同会社におきまして、この上に建っておりました旧東京拘置所の建物の解体撤去をいたしまして、先般これが全部完了いたしまして、現状は、ただいま御指摘のとおり、外へいを除きましてさら地になっておるはずでございます。今後の予定といたしましては、これを用途指定がついておりますところの都市計画事業に供用するための工事を始めますために、掘さく作業が間もなく開始される予定でございます。  さてその上にどういうものが建つかという点でございますが、現状において、私どもがこういう場所で申し上げられる事柄といたしましては、一応当初の計画どおり、あそこに人工地盤のようなものをつくって、地上三階以下を公共部分、すなわち駐車場、バスターミナル、それから高速道路のインターチェンジに使う。四階から上につきましては、一応三十六階建てのビルを二本建てる。こういう計画になっておるというふうに申し上げざるを得ないわけでございます。  先ほどちょっと御指摘にございましたように、その後の情勢の変化、特にこの会社は、ビルを建てまして、その中で自分でホテルをやったりいろいろな公共の施設を経営したりするということではなく、いわばビル貸し業のような企業形態を営むことを目的としておりますので、いわゆるテナントの選択等がまず基本設計に先行するわけでございまして、そういうテナントとの内々の交渉等をいたしておりますために、その過程で構想が若干変わることも考えられる。それで昨日も、御質問の御通告をいただきましたので、同会社の責任者に尋ねてみましたところ、その構想は当初、御指摘のように、十一月の初めごろ完成する予定であったけれども、まあ率直にいって、最近の経済事情等を反映してテナントの意向も多少変わってきている関係等もあって、ややおくれている、十二月に入るのではなかろうかということを申しております。その間、すでに地元の豊島区から御要望が出た点も数点ございまして、これらにつきましては、前国会当時の大臣からもしかと要望をいたしておりまして、それを前向きに組み入れて構想を立てたい、こういうふうに申しております。なお、そういうものを組み入れて構想を立てました上で、なるべくすみやかに地元の方とお話し合いをして円満に処理をしていきたい、こういう段階のようでございます。
  75. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 あなたから聞くとなかなか話はわかるんですが、実際現場に行きまして、その会社の責任ある重役の方とか、地元だとか、あるいはマスコミの方々なんかからいろいろ聞いてみますと、あなたのいまの話の構想とは全く違うのですよね。三十六階を二むね建てるということは私も承知しております。しかしながら次の段階では百階にする、こういうことも大きく新聞に出ております。そういう考え方はどうなんだと聞いたら、あるというんです。これは新都市開発センターの方ですよ。その後、地震が来るだろうからということで、六十階ぐらいが妥当じゃないかというような話も聞いている。そのことも新聞に出ている。こちらからは用途指定も出ていたのですよ。いつごろ完成するかという時期もある程度きまっているわけですよ。それが三十六階を二むね建てるにしても――四十九年でしたね。あとで伺いたいと思いますが……。いまから着工しても間に合わないぐらいに思っているのに、なおかつ向こうのほうは、百階か六十階かわかりませんけれども、非常にあいまいで、いま課長が言うようなこととは全く違う方向のものを現在設計しているような状況だと思うのです。  そこで私は、やはり計画というものはそんなに変わってはいけないと思いますし、また変わるものであれば、最初から変わらないものに近いものを出して、それを政府がよく見た上で払い下げなり等価交換なりすべきではなかったかと私は思っておりますが、このままそれで考えていまますとだいぶ違うわけですが、その点は非公式に話があったのかどうか。また、そういう事実、そういった報道を知っていらっしゃるのかどうか。  特にバスターミナルの問題については、現在ですら高速道路は満員ですよ。そこに一日に二百台も入ってくるのであれば、またあの高速道路がたいへん麻痺するのじゃないかという心配も地元はしているわけです。しかもそこにバスターミナルができれば、たいへんなバスの公害が発生するんじゃないか、こういうことをいまいわれているのですが、その辺はどうなんですか。
  76. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 御指摘のように、新聞紙等を見ておりますと、百階建ての構想があるという話が出たり、あるいは五十階以上のビルを建てるんだという話が出たりいろいろしております。そういった点も、新都市開発センターに問いただしてみましたところが、大ぜいの株主がおります、取締役も大ぜいおります、そういった人の中からいろいろの試案が出ておる、おそらくそういうものが何らかの方法で取材されて新聞等に出ておるのではあるまいかということでございまして、最終的には社内でいろいろ議論した結果が大体十二月にはまとまるんじゃないか、まとまった段階で外部的にきちっとした形で発表したい、こういうふうに申しております。  役所の側といたしましても、これについては御承知のとおり、バスターミナル事業の免許でございますとか、都市計画事業の特許の対象になっておる事業でございますから、それらの申請に出されました書類には三十六階建て二本の構想になっておるわけです。したがって、会社の構想がまとまって、それを正式に決定する以前には、それらの関係官庁に対して説明がなされて、なるほどその変更が合理的であるという了承を得なければならぬと思います。そういう作業をことしの終わりごろから若干の時間をかけて同会社がやる、その間に地元の方とも御相談をしていく、こういう予定のように聞いております。
  77. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 一つ問題は、完成時期は大体四十八年ですか。時期はいつですか。
  78. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 先ほど申し上げました用途指定に供する部分、すなわち地上三階以下の部分、これを四十八年の四月までにつくり上げる、こういう約束でございます。
  79. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 これは、もしこの期間にできなければ、契約解除ということも法的にはあり得ることですね。
  80. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 その期間を徒過いたしますと、まずもって違約金をちょうだいいたします。違約金をちょうだいしてもどうしても見込みがないということになれば、契約を解除するということが契約書に書いてございます。
  81. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 ですから私は何も、契約を解除しろとか、変更して悪いと言っているわけではないのです。一つの用途指定がある以上、少なくとも法務省また政府としても、現在ではまだ指導の傘下にあるわけですから、現在において私は行政指導がある程度できると思うのですね。そこで、いまおっしゃったことでありますが、私も聞いたのですけれども、この計画についてはもうすでに着手しているのですよ。それで、だれがやっているか。これは郭茂林さんという、ここから見える三十六階のビルを設計した人、すなわち三井グループですか。この人たちが現在やっているわけですよ。それができ上がった時点で発表するというわけですよ。しかもこれには半年から一年近くかかるという話も過去に聞いたことがあるわけですよ。また、そのくらい私も聞いているわけですから、当然知っているのではないかと思うのですね。  それで、私はやはりここではっきり地元のほうからもいわれていることは、また地元の長である区長としても非常に困っているわけですよ。たとえば、十一月初めに出す、守らない、その前に概要だけでも出す、やらない。そういうことで、いたずらにあの場所のために、地方自治体の長である区長はじめ関係者が現在非常に困っているわけですよ。ですから私は、きょうこの場でよく相談した上で、大体概要はどんなものができるのか。現在設計しているものはこういうグループがやっていることは私知っているわけですから、どの程度のものを考えられているのか。それを明らかにしていただいて、そして地元としても、その問題についていろいろな問題があればさらに協議してもらう。前大臣からも話があったことは、いままでこういう問題については、地元を差しおいてやったところに問題があった、今後は十分に地元と協議をした上でこの問題は進める、こう言っているわけですね。ですから、先ほどのあなたの答弁の中にもそれがあったわけですから、ここでそういう点について、きのう呼ばれてお話があったようでありますから、明らかにしていただきたいと思うのです。
  82. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 昨日も確かめました結果、先ほど申し上げたとおりでございまして、私どもとしましても、もう一日も早く構想を示してもらいたい。これについて私どもとしても、先ほど申し上げたような趣旨において要望したりいろいろしたい点もある、関係官庁の側でも一日も早く構想をまとめてほしいというふうに願っておるわけでございます。したがいまして、今後私どもの立場としても、大いにその計画の促進について指導をいたしまして、構想のまとまり次第御報告させていただきたいと思います。先ほど仰せになりました設計担当者の話等は、実は私も初耳でございまして、おそらく真相であるのかないのか、その辺もちょっと自信がございません。なおこの会社を督励して、構想を早くかためさせるようにしたいと思います。
  83. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 初耳だというと心外だと思うのですが、公式には言えないから言わないということじゃないですか。それで要するに、何もきまったものを聞きたいと言っているのではないのです。確かに会社としても、最終的には重役会にかけて、そこで決定したものを発表するということが筋だろうと思うのです。しかしながら、われわれが法律を審議する前だって、一つの問題点については明らかにして、そして国民に知らせて、前向きでそういったことを審議してきているということだってございますし、この問題だって、やはり大きくは国民が関心を持ち注目をしておるわけですから、非公式でけっこうですから、大体こういうものが考えられてこういう話になっているのだ、これについてはこういう問題点をいまどうしようとしているのだというくらいの前向きな答弁は、私はやはりあっていいと思うのですよ。そこからひとつ承りたいと思います。
  84. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 御趣旨はよくわかりますので、努力したいと思います。
  85. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 それで大臣に伺いたいのですが、地元の要望というものもよく知っていらっしゃると思うのですよ。それで、どういうことを要望しているかといいますと、第一は自然の歴史博物館。池袋は副都心として新宿とともに今後非常に発展するだろうといわれておりますが、そういうことを考えまして、狭い一区の考え方だけではなくて、やはり副都心としての公共性のあるもの、こういうふうに考えまして、地元の議会でこの問題について検討した結果、数点にわたって要望しているわけです。第二は体育施設ですね。これも相当大規模なものを考えているようなのです。それから全国の郷土物産館ですか。さらにはまた母子センターと婦人センター、こういう話もある団体からあります。  それに、特にきょう大臣に伺いたい点は、あの地域に法務局出張所がないのですね。最近、非常に池袋、練馬が発展しているわけでありますが、すべて登記は北区の王子であるとか板橋のほうなのです。そこで、これはずいぶん前の、中村先生が法務大臣のときも、池袋につくるというような答弁も実はしているわけなのですね。そういう点、私は法務局出張所なんかも、こういうところに設置されるのが当然ではないかと思うのですね。ただし、この問題について一つ問題があることは、法務省は一銭もお金を出さないで、やるとすれば考えているというようなことも言われておりますので、そういうことではなしに、町の中心にあっていいその出張所が、現在はそういうところにないわけですから、その点について大臣から、どういうお考えがあるのか、伺っておきたいと思います。
  86. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 きょう初めて実は伺ったので恐縮でありますが、ただいまのお話の点は十分私もわかりました。今後とも努力いたしますし、法務局出張所を向こう持ちだけで考えるなんというのはあまり感心したことではありません。よく事情を聞きまして、当然とるべき予算はとってやりたい、かように考えます。
  87. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 これは法務省土地であったわけですから、やはりそういう出張所があってしかるべきだと思いますし、いまの大臣答弁は、そこにやるという答弁でございますか。
  88. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 おっしゃるとおりです。
  89. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 そこで問題が一つあるのです。それは、現在、約二万坪ですか、これがさら地になっておりますが、その北側のほうに実は絞首刑のあとがあるのですね。東条英機をはじめ戦犯六十四名ですか、あそこで絞首刑になりましたね。また、それまでに絞首刑になった人たちが約二千名くらいいるというような話も聞いております。そこに、現在公園予定地にされている地域でありますが、いろいろな団体から、慰霊塔をつくれだとか、あるいはまた記念碑を残せというような意見が現在あります。こういうようなところに、そんな大きな慰霊塔であるとか、あるいはまた公園法にひっかかるような建物は建てるべきじゃない、こういう考え方があるわけですけれども、あの場所はまだ整地もされておりませんし、いまだに高いへいと十三階段の土台は残っておるわけですね。あれをどのようにされるのか、その点伺っておきたいと思います。
  90. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 東京拘置所のあと地は、二つに分けまして、その一部を新都市開発センターに売り渡しまして、残りました約六千平方メートルだと記憶しておりますが、これは将来東京都に国から無料で貸しまして、公園をつくっていただくことになっておりますが、公園予定地の一部に、御指摘のように、旧巣鴨プリズン時代の絞首台のあとがあります。これにつきましては、昭和三十九年当時に閣議におきまして、戦犯の遺跡というようなものとして何らかの形で残すことを考えようという了解がございまして、その関係をどういうふうに考えたらいいか、私どもも現在まだ考えておるところでございまして、だれがどのような形でその保存措置を講ずるのかということがまだ固まっておりません。いずれにしましても、御指摘のように、そこに公園の趣旨に反するような大きなものをつくるとか、あるいは特定の宗教団体その他の団体等のものができるということは望ましくありませんので、そういった点をよく踏んまえまして検討しておる段階でございます。
  91. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 これはだいぶ検討が長いのではないのですか。この問題は立ちのきがきまった時点からの問題ですよ。どうも課長は、お金の計算はきちっとしてやっておられるのかもしれませんが、計画だとか、事業遂行の進行状況の経過の監督、とも言わないでしょうけれども、そういう点、何かちょっとおそいような気がするのですが、このままにしておけばおくほど問題が大きくなってくると思うのです。地元から聞いた話でありますが、すでに右翼団体はそのためにだいぶ動いているとか、遺族団体がどうだとかいうような、いろいろな話がいまございます。そういう点について政府の態度があいまいだというところにまたいろいろ問題があるわけでございます。これは決して最近の問題ではない。非常に古い問題なんですね。ですから、そういった問題についても、地元の意思を十二分に考えた上で早急に善処していただきたい、こう思います。大臣、いかがですか。
  92. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 御趣旨に沿って努力いたします。
  93. 伊能繁次郎

    伊能委員長 さいぜん、伊藤委員から前尾法務大臣に対しまして、成田空港の進捗状況並びにそれに関連しての地元の紛争等についての見解を求められましたが、所管の違いで法務大臣からは実情を詳細説明いたしかねると存じますので、その点に関して運輸省航空局長を招致いたしましたので、その間の事情だけ御聴取を願いたいと思います。内村航空局長
  94. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 ただいまお尋ねの成田空港の状況でございますけれども、それにつきましては、先般、代執行がありまして、皆さんに御迷惑をかけたことをたいへん申しわけなく思っておりますが、その後大体順調に進捗いたしております。  そこで、残りましたところがややございますけれども、たとえばいわゆる平和の塔というのがございます。これにつきましても、大体お話し合いで解決できそうに考えております。それからさらに墓地の問題等ございますけれども、これも極力お話し合いで解決できるというようなことで、公団といたしましても、せっかく考慮されておる状況でございます。したがいまして、大体の目安といたしましては、来年の五月一ぱいには供用開始の運びに至るのではないかというふうに私ども考えておるわけでございます。  それからさらに、現地の、これは特に千葉県とか県庁の方々といろいろお話し合いを重ねておりますけれども、たとえば代替地の問題であるとか、あるいはそれから騒音地区につきまして、大体騒音地区がきまっておるわけでありますが、その中に入っていなくても、それと一体になっている場所、そういうものについては、騒音地区並みに買い取ってほしいというふうな御要求もございます。そういった問題でございますとか、あるいは個人の住宅についての騒音防止工事の問題、そういったような問題につきましても、千葉県御当局のほうといろいろお話し合いをいたしまして、逐次これも詰まっておるというような状況でございます。  概況、以上のようでございます。
  95. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 先ほど法務省から聞いたことは、いま航空局長からおっしゃったように、五月ごろに終わって六月からもう業務が開始されるというようなお話があったわけですね。私はやはり、新聞あるいはマスコミを相当にぎわせましたあの代執行の問題について、常々何とかならないものか、行政あって政治なしだ、こういうように思ってきた一人なんです。そこで、あの代執行の終わった時点で、いま現在では問題は何が残っているのか。いま少し聞きましたけれども、地元の農民の方は何を要求しているのか、あそこまで反対させた原因はどこにあったのかというような点について、私たちあまり知らないわけですね。そういった点について、現在どのようなことをおっしゃっているのか、それに対してこちら側は何が応じられないのか、そういう点なんかももう少し明らかにしていただきたいと思うのです。国際空港が開始されることについては、また、そこに入国管理事務所を置くことについては、どの党も反対はしないわけです。ただ、その成田空港の土地収用をめぐる、あるいはまた反対が強いのにさらに代執行等を通じて収用したというところに、みな反対する理由があるわけでございますから、そこの経過について詳しく知りたいということで来ていただいたわけですが、もう少しそこの辺を明らかにしていただきたいと思います。
  96. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 いま概略申し上げたわけでございますけれども、大体先般の代執行によりまして、滑走路を中心とした部分、大体飛行場として供用開始をいたしますのに必要な部分の土地は取得できたわけでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、平和の塔というふうなものが若干ございます。これにつきましては、大体持ち主の方とお話し合いによって解決するという立場に立ちまして、これは公団のほうでお話し合いをして、これも解決するであろうというふうに考えております。それから、これも申し上げましたが、墓地が一つ残っております。これにつきましては、まだいま直ちにお話し合いで解決するというふうにきまったわけではございませんけれども、これにつきましても、極力こういう問題については代執行は避けるということで、お話し合いによってこれはぜひとも解決したいということで進めております。そういうふうになることを私どもとしては期待しておるわけでございます。  それからさらに、いろいろな問題と申しますのは、これからやはり騒音ということが一つの大きな問題になろうというように考えております。したがいまして、いわゆる民家の防音工事でございますとか、あるいは騒音地域についてなるべく広く考えてもらうというふうなことをさらに考えまして、地元の方ともお話をいたして、十分詰めてまいりたいというふうに考えております。ただ、現在のところ残念ながら、地元の方々と直接お話し合いをするというふうな場が、率直に申し上げましてなかなかないわけでございまして、それが非常に残念でございますけれども、その辺につきましては、あるいは現地の方々の御都合等をいろいろ勘案いたしまして、できるだけそういう機会をつくって積極的にお話し合いをしてまいりたいというふうに考えております。
  97. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 直接話し合いできない理由は何ですか。それで、この平和の塔と墓地問題について話し合いが行なわれるだろうとおっしゃっていますが、極端に言うと、これが話し合いできるならば、前も話し合いができなかったかということが考えられるわけです。
  98. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 あの平和の塔と申しますのは、これは共産党の方々の系統の方の塔でございまして、これにつきましては、お話し合いをするというふうなことで、だんだんそういう機運になっているものでございますから、これはもう大体いいだろうということでございます。  それからもう一つの御質問は何でございましたか。
  99. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 話し合いの問題です。
  100. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 それから、全般的な問題として、何か話し合いができないかということでございますけれども、これにつきましては、いわゆる反対同盟というものがございまして、その辺に対しまして、もうだいぶ再三にわたってお話し合いをしようというふうに大臣からも呼びかけたわけでございますけれども、それに対してどうしてもこれは聞き入れられないで、話し合いはしないというふうな、少なくとも空港建設を前提とした話し合いには応じないということで、いままでそういうふうな状況にあったわけでございます。さらに今後は、反対同盟の方々もいろいろおられますけれども、実際に農耕を営まれる方、そういった方々を積極的にその話し相手として、それで取り組んでいきたいというふうなことで、現地の、あるいは成田市とかそういったようなところでも、場合によってはそういうふうなことをあっせんしてやろうというふうなお気持ちもないではないように見受けられますので、そういった方々とも連絡をしながら、実際に農耕をしておる方々を相手にして話し合いをしてまいりたいというのが私どもの考え方でございます。
  101. 木原実

    木原委員 関連して。一つはパイプラインの問題が少し千葉市内等で問題になっておりますね。あれは、かりに六月供用というようなことになると、間に合いますか。
  102. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 これは先生御存じのように、公団のほうでいろいろ地元の人々と話し合いを続けておるわけでございますけれども、私どものいま聞いておる限りでは、間に合うというふうに聞いております。
  103. 木原実

    木原委員 いつもそうなんだけれども、公団というのは非常に甘くて、だいじょうぶだということなんですよ。しかし一つも進んでおりません。しかもあれは、公団の出したものは、絶対だいじょうぶだ、安全だ、こう言うのですけれども、要するに千葉市には何のメリットもない。ガス管とかなんとかならば市民が恩恵を受けるわけですけれども、通すだけですから。幾ら安全だと言われましても、やはりかなりのものが下を流れていて、そしてその上に関係のない市民の人たちが住んでいる。そういうところですから、おれのところはいやだと言ったらどうしようもないことだと思うのです。市内で、御存じのとおり、いろいろ公団も努力をしておることだと思うのですけれども、市民の人たちはほとんど了解をしていない、こういう姿がありまして、最悪の場合はトラックで運んでもいいだろうというようなこともあるらしいのですけれども、これは別の問題が出ますし、公団は本体のほうをつくることに追われておりますから、それもまたそうなんですけれども、ともかくパイプラインを持ち込むほうも、だいじょうぶです、通してくださいというだけでやっているものですから、これは、市長としましても、市会の連中にしましても、何をという気がするわけなんですね。それはちょうどこの飛行場の問題が、御案内のとおり、初めからこじれてきたと同じような態度でやっています。やはり通さしてもらうわけなんですから、あるいは市民の人たちは、安全だと言われても、油が通るわけだから、かりにあぶないという判断を持っても、残念ながら立証するものがない。そんなようなことですから、通すならばもう少し親切丁寧に、懇切に、迷惑を受ける側の立場に立つ配慮がないとこれはできませんよ。それが一つございますので、これはやはり公団に対しまして、市民の声をもっと率直に聞いて、あるいは市のほうとももっと積極的な協力をしてやる。そのうちにいずれできるという判断だけでは、これはちょっと大きなそごを来たす、こう思います。これが一つです。  それから、ここでは場所ではありませんからあれなんですが、騒音対策の問題、いろいろ考えていらっしゃるのは私ども承知をいたしておりますけれども、これはここまで来ましたら、やはり騒音についての少し客観的なデータを私どもにも示してもらいたいと思うのです。騒音の問題は、四千メートルができましても、すぐ新しい問題として残る問題だと思うのです。というのは、騒音の問題についていろいろ私どももデータをいただきました。あるいはまた、私どももいろいろな形で調べてみましたけれども、やはりたいへんですね。きのうですか、おとついですか、関西空港で、あれはDC8を使ったのですか、何か騒音の調査をやられたというのですが、成田につきましては実際に飛行機を飛ばして騒音測定をやったことはございませんね。何かそういう客観的に――もうここまで来ましたら残るのは騒音問題だと思うのです。御存じのように、騒音問題が解決をすれば芝山の問題がやはりある程度動くという状況があるのですから、それならば、ある意味では包み隠しをしないで、住民の人にもわかるように、実際にDC8ならDC8のようなものを何回か飛ばしてみて、官庁側だけのデータではなくて、市民が立ち会って、この程度の音かというのならそれでいいわけですから、やはりそういうデータをつくってもらいたいと思うのですが、いかがですか。
  104. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 まず第一の御指摘のパイプラインの点でございますけれども、それにつきましては、私どもも公団のほうからいろいろ現地にお願いに回っておるということを聞いておりますが、確かにただいま先生の御指摘の点があると思います。したがいまして、これは非常にいい御指摘でございまして、私のほうからも公団のほうによく申しまして、現地の方々によく御納得を得て、早くパイプラインを通すようにいたしたいと思います。それから次に騒音の問題でございますが、これは先生おっしゃいますように、できた場合に起こる問題が騒音の問題でございまして、私どもこれが今後の一番大きな問題だと思っております。したがいまして、現在までの騒音の予測というふうなもの、これにつきましては、必ずしも現実のものを飛ばしてやったことがございませんので、現実の姿とはあるいは違ったようなかっこうになっておるかもしれません。したがいまして、今後はなるべく客観的なデータを示しまして、皆さまにも御理解を得て、それに必要な対策をつくり上げていくというふうなことを考えたいというふうに考えております。
  105. 木原実

    木原委員 その騒音の問題につきまして、いままで示されましたデータ、これはもういろんなのがありますけれども、非常に不十分だと思うのです。ですから、騒音の分布の問題にしましても、これがやはりこれからの対策を立てていく基礎になるものですから、出し方がおそかったと思うのです。だから私は、急いでともかく一ぺん何機か飛ばしてみる。そうしましたら、市民の連中もはだで感ずるし、そこから得られた値というものはこれからの施策の根本になりますから。とてものことでは、いまの公団や政府が考えておる範囲の中ではとどまりませんよ。そういうことですから、この客観性のあるデータをつくるということについては、ひとつすみやかにそういう措置をとってもらいたいということを重ねて申し上げておきます。  それからもう一つは、詰めるようですけれども、五月中に完成して六月供用ということは間違いありませんか。
  106. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 ただいまの進捗状況では、もちろん全面的にすっかりできるわけではございませんけれども、一部なりとも供用開始の運びに至るだろうというふうに考えております。
  107. 木原実

    木原委員 そうしますと、試験期間を含めて、実際に仕事が始まるのは秋ごろという考え方なんですか。それとも、もう試験期間を含めて、六月なら六月から営業開始という段階になるのですか。
  108. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 現段階での予測といたしましては、五月中にいわゆるフライトチェックが終わりまして、六月から供用開始に至るであろうと、こういう見込みでございます。
  109. 木原実

    木原委員 以上で終わります。
  110. 伊能繁次郎

    伊能委員長 和田耕作君。
  111. 和田耕作

    ○和田委員 大臣にちょっとお伺いしたいのですけれども、実はきょう二時から、中野の区体育館で約五千名の区民が集まりまして、そして区役所が主催する形で中野の刑務所の移転を要望する大会があるのです。この問題につきましては、もう数年前から私も、田中伊三次さんの法務大臣のときに、あのころよりずっと前から区民の熱心な陳情がございまして、何回か立ち会ってお願いをしたことがあるのですけれども、この中野刑務所の移転の問題について、現在この経過はどうなっておるか、このことをひとつお伺いしたいと思います。
  112. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 私は、実はこの問題をただいま初めて伺ったので、矯正局長から。
  113. 羽山忠弘

    ○羽山政府委員 お答えいたします。  中野刑務所の移転問題につきまして前々から御要望のあることはよく承知いたしておりまして、ただいまお話しの会合はよく存じませんが、本日、別途私のところに面会を求めておる方々もあるわけでございます。  現況を申し上げますと、中野の刑務所は、率直に申し上げまして、非常に移転することがむずかしい状況にあると申し上げざるを得ない。と申しますのは、中野の刑務所は、現在刑務所という看板はかけておりまするけれども、その大半が拘置所的な運用に相なりつつあるわけでございます。と申しますのは、最近御承知のように非常に集団犯罪が多うございまして、多数の検挙者があるわけでございます。巣鴨がございました当時は、巣鴨と小菅でこれをまかなっておりました。巣鴨がなくなりましたために、警視庁の留置場が満員になりまして、警視庁のほうから非常な御要望がございまして、中野の刑務所を私どもは実は分類センターといたしまして刑務所的な運用をいたしたいと思っておったのでございますが、御承知のように、受刑者は都合によりましては全国に分散移送ということができるのでございますけれども、刑事被告人は裁判がございますので、あまり遠いところに移送いたすわけにまいりません。と同時に、三多摩地区が人口が激増いたしておりまして、八王子の拘置所が満員どころではございませんで、だいぶ警察に御迷惑をおかけいたしておる。府中の刑務所がまた、これも相当数の刑事被告人を収容するというような状況でございまして、この中野の刑務所を現在急に廃止いたしますると、非常に多数検挙いたしました場合に入れるところがなくなってしまうというのが、まことに遺憾なことでございますが、現況なのでございます。
  114. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 法務省としての見通しですけれども、現在のような、かなり異常だと思うのですけれども、こういう状態が今後もずっと続くと予想されるので、移転は困難だというふうな御見解ですか。
  115. 羽山忠弘

    ○羽山政府委員 犯罪情勢そのものにつきましては、私は的確な判断はできないわけでございますが、少なくとも過去十年以上にわたりまして、毎年のように相当多数の集団犯罪が起きまして、相当多数の被告人が入ってきておるわけでございまして、裁判官の令状が出ました場合に、これを収容施設で受け取らないというわけにまいりませんので、その辺が非常につらい現況にあるわけでございます。
  116. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 あれは中野の駅から五、六分のところで、全く都心ですね。都心に近いということで、最近のような大量検挙ということになってそれを収容するところがないということになりますと、中野刑務所の移転という問題は無期限に可能性がないというふうに受け取られるのですけれども、いままでの法務省の態度は、あと地ではなくて、それを引き受けるところがあればいつでも移転に応じますという態度をずっととってきておられたと思います。現在、中野のほうでは甲府のほうと相談をなさって、そして具体的な相談もしているようですけれども、そういうことは、つまりいまもお話しになったような理由で、そんなことがあってもどうもならぬのだ、移転はできないのだというふうにお考えですか。
  117. 羽山忠弘

    ○羽山政府委員 私どもは都心に刑務所がある必要はないと思うのでございます。ただ、拘置所は非常にへんぴなところへ参るわけにはいかぬというのが実情でございます。たとえば、現に八王子の拘置所は満員でございまして、だいぶ警察に御迷惑をかけておりますこと、先ほど申し上げたとおりでございますが、これも、八王子の相当便利なところに何とか拘置所をあらためてつくらなければいかぬというような状況になっておるわけでございまして、したがいまして、中野の刑務所が拘置所としての運用をしないでもいいような情勢になりますならば、どこへでも移転は可能である。ただ、いま拘置所としての運用をせざるを得ない。これが見通しがちょっとつきかねる。来年とか再来年ということではなかなかむずかしいのではないかということでございます。  ただいまお話しの甲府の刑務所の状況も、私、実は前任地が甲府でございまして、ある程度よく存じておりまして、きょう実は甲府の職員も私のところに何か面会を求めてきておりますので、これもいろいろ話をしようと思っておりますが、たとえば中野の刑務所を甲府の刑務所と合体いたしまして、山梨県のどこかに大きな刑務所をつくる。これは刑務所であれば可能なのでございますが、拘置所的な運用をいたしておりますために非常にむずかしい、こういうことになるわけでございます。
  118. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 先ほど伊藤君の御質問の巣鴨の拘置所ですね。巣鴨は移して中野は移さないというのは、ちょっとおかしな感じがするのですけれども、これはどういうわけですか。
  119. 羽山忠弘

    ○羽山政府委員 巣鴨がございましたときに、すでに場合によりましては中野を拘置所的な運用に使いまして、それから小菅のほうも拘置所的な運用をいたしておったわけでございます。それが、巣鴨がなくなりましたために、拘置所的な運用をするものが小菅と中野と二つになってしまった、こういうことでございます。で、たとえば小菅の定員は約二千数百名でございますが、現在小菅がすでに二千人をこえておりますので、これ以上小菅に入れるわけにいかぬというような状況になっておるわけでございます。
  120. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 実は私も戦前には思想犯で入ったことがあるのですけれども、大体、検事が調べをするのに、拘置所からわざわざ検事局まで引っぱっていく、あれはおかしなことだと私は思うのです。検事が拘置所まで出張すればいいじゃないか。検事のほうも少し気晴らしにもなるし、検事が出張してお調べになるということを考えれば、何も近くへたくさんの未決囚を置いて、そして調べるなんということをしなくても、そのほうがもっと安全だし、もっとゆっくり調べられる。これは私の理屈ですけれども、そういう方法もあるのだから、いずれにしても東京の都心。中野の駅から五、六分といえば、全くの東京の都心です。そういうことで、また、いままでもそういういきさつがなければ別ですけれども、いままでの私の法務大臣陳情についていったときは、かえ地があればいつでも返します、何とかかえ地をさがしてください、これ一本やりだったのです。いまあなたの言うようなことは、私は聞くのは初めてなんです。そういうふうな理由が未決拘置所の場合はあるかもわからぬなとは思いましたけれども、いま聞くのは初めてなんです。そういうことだと、巣鴨はかわったけれども中野は、永久的にあんなところに三万坪以上の土地で拘置所を持たれたのでは、これはたいへんだと区民は承知しない。ずっと燃え上がっている。きょう二時から五千人以上集まって、あそこで拘置所を移転させてくれという話があるのです。いままでの法務省の態度は、いま申し上げたとおり、かえ地があればいつでもかえるようにいたしますというのがいままでの法務大臣陳情の場合の答弁だった。その関係はどういうことになりますか。
  121. 羽山忠弘

    ○羽山政府委員 おそらくいままでは大臣も、中野の刑務所が刑務所としての運用になるということをお考えであったと思います。それと、巣鴨というものの問題がございまして、巣鴨が移転するということが方針がきまりましたのがわりあいにあとでございますので、そういう事情もいろいろ勘案して御理解をいただきたいと思うわけでございます。  で、検事が調べに行くようにいたしておりまして、検事の調べ室も相当の数がございます。特に、現在公安事件でつかまっておりまする学生諸君は、検察庁に引っぱってまいりますときに、途中でまた支援デモというようなものがあるわけでございますので、この種の取り調べは、検事が原則として拘置所に行って調べるというような形になっておりますので、その点は御指摘のとおり大部分やっておるつもりでございますが、ただ、あまりに不便なところに参りますと、結局検事も不便になりますし、それ以外に弁護士の御面会というようなことがすべて不便にならざるを得ない、こういうようなこと。それと裁判がございますときに出廷をする。たとえば、巣鴨の拘置所が小菅に移りまして、バスに乗って裁判所の法廷に出廷のために連れてまいるのでございますが、巣鴨から小菅に移りましたために、高速道路を利用いたしましてなおかつ一時間。毎日一時間延長する、それだけ職員の勤務が過重になるというような現況でございまして、拘置所に関する限りは裁判所とあまり遠くないところに置いていただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。
  122. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 その事情わからぬじゃありませんけれども、まあ現在のああいうところにあるものは、何とか東京の近くの、いまの予定の話し合われているところは甲府と、わりあいに東京に近いところです。そういうことで、検事が調べにいくとか、あるいは弁護士が行くとかいうことは、技術的にそうたいした障害には私はならぬと思うんですよ、その気になれば。検事さんも、そこへ引っぱってこないで、現地へ行ってお調べになったほうがいい。そういうことも例外的な人もあるでしょう。例外的な人は、その期間、周辺のところへ、たとえば検事局の下に大きな留置場でもつくって、しばらく置いておくという方法もあるのじゃないですか。いずれにしても、都心のああいうどまん中のああいう設備はできるだけ遠方へ移すといういままでの方針を変えてもらいたくないですね。また、それも何百キロも遠いところなら別だけれども、甲府というところであれば、高速道路もあるし、今後のあれもあるわけで、技術的にもいろいろ解決する方法はあるのじゃないですか。そういうふうに私は思うんですけれども。それにしても中野はだめですか。そうならそうで、きょう五千人のところでそのことを言わなければならぬと思っているのですけれどもね。
  123. 羽山忠弘

    ○羽山政府委員 絶対にだめだなんてことは申し上げるつもりはございません。私どもはやはり入れものを預かるのでございまして、私どもは実は、そんなことは冗談でございますけれども、ときどき同僚の検事などに、あまりいいかげんにつかまえるなというようなことも言うくらいでございまして、まことに、つかまってまいりますから困るわけでございます。それで、この情勢が落ちつきまして、東京拘置所と、それから三多摩のほうに適当な拘置支所でもつくれば何とかやれるという自信を持った見通しがございますれば、また話は別になろうかと思うわけでございます。
  124. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 最後に大臣から。いまのやりとりで大体御理解いただいたと思うんですけれども、従来はそうだったのです。どの大臣も、かえ地があれば移します。これは私は直接聞いた話です。だけれども、いまお話しの線もわからぬじゃありませんが、こういうようなことで、何百人、何千人という人を拘置する必要があるというのもわからぬじゃありませんけれども、都市問題の非常にやかましいときに、特に中野の付近は、大きな震災とかそれに類するものが起こった場合に、逃げる場所がないのですよ。そういうふうな面から、あの土地を開放していただいて、そしてあそこを公園とか運動場とかいうことにしてもらいたいというのが切なる願いなんです。そういう都市問題を解決する問題と、いまのあなた方の言われる、裁判あるいは取り調べの技術的な必要という問題とをお考えになって、大臣どのような方針か。きょう私はそのことを言わなければいけない。あなた方のしっかりした方針をお聞きしておきたいと思うのです。
  125. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 刑務所が最近はみな町の中央になりまして、どんどん移転させている。かえ地があればやるというのが原則でありますが、ただいまの拘置所の問題になりますと、そう簡単にいかないと、私も実は最近初めてよく知ったわけであります。ただ、拘置所を高層ビルにするとか、いろいろな方法をこれから研究して、やはり裁判所に近いところにある必要があるが、それをどういうふうにするか、高層ビルか何かで解決するかというようなことも研究していくべきだ、かように思いますので、なお研究さしていただきたいと思います。
  126. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 それではこの問題は、いまの御答弁では、非常にむずかしい問題もあるけれども、ひとつ今後ともよく地元人たちの話を聞いて検討してみたいというふうに了解していいですか。
  127. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 よろしいです。
  128. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 終わります。
  129. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 最後に一問。関連がだいぶ長くなってしまって少しぼやけてしまったのですけれども、先ほど会計課長前向きでいろいろやるとおっしゃいましたが、いままでもそう言ってきているわけですから、一つは、少なくとも今月中に絞首刑のあと地の問題についての結論を出すこと。もう一つは、やはり今月中くらいに出さなければ、四十八年四月までには無理だと思うのですよ。ですから、その点も指導監督ができる現在において、やはり法務省及び大蔵省は責任があるわけですから、少なくとも今月中に二つの点について明確な結論を出すべきだと思うのですが、その点について明確な答弁を、課長、それから大臣に伺って終わりたいと思います。
  130. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 私自身が構想をつくるのだといたしますれば、まさにオーケーいたすわけでございますが、何しろ会社がやっておることでございまして、一〇〇%お引き受けしたというふうに申し上げることができないのが残念でございますが、大いに努力をいたしたいと思います。
  131. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 会計課長の言ったとおりに、私もそういうふうに考えております。
  132. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 では質問を終わります。
  133. 伊能繁次郎

    伊能委員長 午後二時より委員会を再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時四十二分休憩      ――――◇―――――    午後二時十三分開議
  134. 坂村吉正

    ○坂村委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  委員長が所用のため出席がおくれますので、委員長の指名により、暫時私が委員長の職務を行ないます。  法務省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。受田新吉君。
  135. 受田新吉

    ○受田委員 法務省設置法の一部改正案は、前国会からのつながりもありますことですから、法案そのものに対する質問はごく簡単にこれを処理しまして、関連する諸問題についてお尋ねを進めていきたいと思います。  この法案から当然予想される出張所等の設置に伴う定員増というものは、どういうふうにお考えになっておいでになるのか、お示しを願いたいと思います。
  136. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 羽田の入管の現定員をそのまま成田に移すということでございまして、また港出張所においては、特に定員をつけておりませんので、定員増はございません。
  137. 受田新吉

    ○受田委員 事務量の増加とこれに伴う事務処理能力というもののつながり。事務量が非常にふえたので出張所を置くのだ、にもかかわらず定員はふやさないのだ。そうしますと、事務量の処理能力を過重に公務員に与えることになるのでございましょうか。
  138. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 成田事務所につきましては、羽田のものを一応移すということで、さらに将来、成田に入ります航空機出入国者の増大に伴います増員という問題は当然考えられますので、来年度の予算要求でこれを目下大蔵省と折衝しておる次第でございます。港のほうにつきましては、本来ある管区の出張所でございまして、いままで出張所のなかったところには、その本部のほうから臨時に出張いたしまして臨船審査しておったわけでございますが、その能率を合理化するために常駐させるということで、本部のほうからその分を担当しておった人間を渡すということと。それから、本年、どこということでなしに、全体の予算定員の増の中で、そのワク内でやり繰りをいたしましてこの事務量の増に対処させていくつもりでございます。
  139. 受田新吉

    ○受田委員 予算定員増を具体的にお示し願いたいと思うのです。
  140. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 いまの御審議いただいております設置法の一部改正法律そのものでは、定員増は出てこないわけでございまして、今後の問題として定員増を考えておるわけでございます。四十五年から四十六年の定員増は二十一名あったわけでございますが、来年度は目下大蔵省と事務的に折衝中でございますが、さらに大幅な増員を要求いたしておる次第でございます。
  141. 受田新吉

    ○受田委員 入国管理業務というものは非常に複雑で、また、これを処理する能力におきましても、高度の判断力を必要とするものでありまするから、その事務量がふえれば自然に人間をふやさなければいかぬ。機械で一括処理できない問題が多いわけですから、当然、出張所を設ければ、そこには、本部から派遣する人員で片づけるという問題以外に、やっかいな仕事がふえてくると私は思うのです。それを本格予算の折衝の段階でふやすという過程において、どこに幾ら人間をふやさなければいかぬかというくらいのめどはつけておられると思うのです。いまから交渉するにあたりましても一応の試案がおありだと思うのです。こうした出張所、また成田空港についても、羽田以上のスケールの大きさ、そしてより大きな入国管理業務の複雑さ、大量の入国者がおる、出国者がおる、こういうものを処理する能力は、相当大幅の定員増でないとこれは処理できない。また、その中には、ごまかして密輸入をしようと心得る者がおる、こういうことも起こりますので、これは、別途大蔵省からの税関担当者等も出てきて、大蔵省のほうの所管で片づけるが、入国管理業務はそう簡単な問題ではないと私は思うのですよ。あの空港の出入国管理業務というものは、最近のように、これほどテンポの早まった出入国者の大量の扱いをするのに、従来のような規格で考えておったら、もう満腹状態になっておなかは爆発しますよ。それを、成田にかわると同時にどの程度の増員をはかるかくらいのことは、規模が増大すればそれに当然人員がふえていくのはあたりまえだし、大蔵省の方はきょうはおられないが、そのことをあわせてもう一度。  定員に対する見通しくらいはいまから立てておかれないと、昨年から本年にかけて二十一名増であったというお話ですが、これは局長さん御遠慮されなくてもいい問題だと思う。事務量の増大という部局に対しては定員をふやして一向差しつかえないことだし、大学の教授等の定員は文部省は大幅に要求されておるわけです。出入国管理業務というものは、それほど円滑にしてあげなければ、少数の人間でずらりと人を並べて何時間も待たすような愚かさをやるよりは、国費を費やしてでも誠実な公務員をふやして、その事務能率を発揮して出入国者に便益を供与するというぐらいの大国の襟度が要ると思うのです。私はこの点は非常に気にかけておるわけです。お答え願いたい。
  142. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 たいへん御理解ある御質問をいただいたわけでございますが、私たちも公務員といたしまして、一方においてはできるだけ事務の合理化をはかりまして、国民に負担をかけないように人員の節約ということは考えておりますが、片やどうしても客観的にまかない得ない事務量の増に対しましては、新しい人員増の姿でこれを処置していかなければならない。現在、御指摘のように、私のほうは、各港ごとに、各事務所ごとに個別に事務量の算定を全部いたしまして、どこに何名要るという要求を大蔵省のほうに出して鋭意説明しておる折衝過程だ、そういう意味で大蔵省とただいま事務折衝だと申し上げたわけでございますが、また先生の御理解ある御支援をお願いしたいと思います。
  143. 受田新吉

    ○受田委員 私たちも、諸外国をたびたび旅行して、出入国管理業務が円滑にいっている国家には敬意を払いますし、そこに働く公務員のスムーズな扱い方に感謝をしてきたわけです。どうぞひとつその点は遠慮されないでやられていいと思う。  ここで官房長、これは私が毎回質問したので通告はしなかったが、いま局長さんの御答弁で思い出したのですが、法務省には他省に見られない別途の給与体系ができておるわけなんです。御存じのような充て検制度。この検事の職務をとられない――きょうもここへ来ておられる局長さんで検事の給与をいただいておられる。これは正確に言えば給与の本質と矛盾する行き方なんで、その執務する職務に対する給与というのは一貫した体系に従っていかなければならない。ところが、この入国管理局長さんは、歴代大使をやられたような方が来られる。吉田先生もやはり大使の御経験者である。そうですね。そういう立場から言うと、大使の給与を基礎にした給与を入国管理局長に支給しておられるのかどうか。充て検で検事の給与をもらっておられる局長さんもあれば、前官が大使であったならば、その大使の給与を当然基礎にして、入国管理局長であっても前官の大使給をもらうというふうにするのが筋ではないかと思うのですが、筋論からひとつ御答弁願いたいと思います。
  144. 安原美穂

    安原政府委員 おっしゃられるところは、確かに筋論としては、吉田局長さんが大使をしておられれば、入管局長のポストに回る方法としては、大使の給与を差し上げれば、より喜んで来ていただけるということはよくわかるのでございますけれども、現実には、外務省からお越しいただいておりますと、本国にお帰りになりますと、大使の給与ではなくて一般の外務事務官としての給与をいただかれるものですから、そこから来ていただくものですから、私どもとしては、その大使の給与でなくて、一般の行政官としてのポストにつかれた給与の段階でお越しいただくものですから、そういうことを特にしておらないわけでございます。  充て検につきましては、どうしても、現在、刑事局とか民事局とか、法律的素養と実務経験を必要とする本省のポストに来てもらうためには、やはり検事から来てもらう必要がある。ところが御案内のとおり、検事から来てもらう最も筋の通ったやり方は、法務事務官という一般行政職になって、そして刑事局長なり民事局長なりの仕事をされるというのが筋ではございますけれども、そういたしますと、御案内のとおり、いまのところ一般の行政官に比べまして、勤務年数を基準にいたしますと、検事、判事は一・五倍から二倍の給与をいただいております。そこで、給料を下げてまで検事から法務事務官になってくれるということはなかなか望みがたい状態でございますので、目下のところは、過渡的な措置といたしまして充て検制度というものをとらしていただいておるというのが実情でございます。
  145. 受田新吉

    ○受田委員 過渡的な措置である――そうしますと、本格的措置としては、やはり一般職の給与法を、たとえば検事の任にあって高給の者は、何号俸上げたところへ該当せしめるとかいうような措置をはかるなどの本格的な措置を予想されるのか。それからもう一つ検察庁法という法律に基づき、あるいは検察官の給与に関する法律というような別途の法律法務省関係にあるわけで、そういう法律を改めていくのかでございますが……。
  146. 安原美穂

    安原政府委員 けさほども加藤議員からお尋ねがございまして、大臣からお答えいたしたのでございますが、まず、法務省局長とか課長のポストの中に、過渡的に検事をもって充てておる部局がございます。たとえば入管局の次長とかそういうところです。そういうところは、将来の方向といたしましては、現に上級職の合格者を採用いたしておりますので、そういう人が育ってくれば、漸次上級職の合格者にポストを譲っていくべきであろうということで、充て検の数をその面からははずしていくことができるわけですが、問題は、検察庁に関する事項とか、訟務の関係をやっております訟務関係、あるいは刑事関係、あるいは民事の基本事項をやる民事局等につきましては、やはり判事、検事の実務経験者をもって充てることが最も仕事を能率的に行なうゆえんであるということに相なるので、どうしてもそういう人がほしいというようなことが実情であります。   〔坂村委員長代理退席、委員長着席〕 しかしながら、検事仕事そのものをやっておらないのに検事の俸給をもらうということは、あくまでも本来のあるべき姿ではないわけで、やむを得ず過渡的な措置でございますので、将来、行政官の俸給体系が改善されまして、そして検察官、裁判官とそう差異がないような措置が講ぜられるというような段階におきましては、あらためて考え直すべき問題であろう、かように考えております。
  147. 受田新吉

    ○受田委員 いま官房長さんから御指摘になられた入国管理局には、次長さんがいらっしゃいますね。それは事実問題として検事御出身の方が毎回出ておられる。そうなりますと、検事の給与をもらわれる次長さんのほうが局長さんよりも給与が高いという現象は起こりはしませんか。私はいまちょっと思い出したのですが、そういう現象が起こってきませんか。
  148. 安原美穂

    安原政府委員 あり得るのでございます。
  149. 受田新吉

    ○受田委員 それは、局長の職務と次長の職務を比較したときに、局長の給与のほうが次長の給与より低いというのは問題があると思うのです。これは給与体系の根本をゆさぶるものであります。いまのお話で私はふと思い出したのですが、次長さんになられる方は局長さんの一歩手前である。つまり刑事局などの局長さんの一歩手前くらいにある。片や入管局の局長にすぐなられるお方であると、大体給与が入国管理局長と同じくらいか、ひょっとしたら上へいきはせぬかとちょっといま不安が起こったのですが、局長の給与よりも次長の給与のほうが高いというような現象が起こったとしたら、これは私、問題だと思うのですが、いかがでしょう。
  150. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 実は午前中にも加藤委員にお答えしましたので、私から……。  給与のこともさることながら、身分という問題がありまして、検事を使わなければ、先ほどの刑事局あるいは民事局、そういうようなところでは、やはり検事の経験者、そういう人でなければいろいろ相談にはいかれない、こういうような問題があります。でありますから、身分の関係、それからまた給与の関係で、これはいわゆる充職検事という制度はやむを得ないと思います。ただ、ただいまお話のような入国管理局というようなところは、実を申しますと、できるだけそういう検事を充当するのではなしに、固有事務事務官という考え方でいきたいのでありますが、率直に申しまして、この制度は、法務省が所管いたしましてからあまり年数が足りない、それだけにまだ養成ができていない、こういうようなことで、これに適当な事務官を養成していくその間、先ほど来いろいろお話しておりますように、臨時的に充当検事というようなことでやっておるわけであります。したがって、ただいまのお話、まことに筋の通ったお話でありますが、そういうことが現実に起こらないような配意をしてしのいでいく。そしてだんだん法務事務官という人を養成して、もうすでに課長級にはなっておるわけでありますが、そういう人が次長あるいは局長なりになっていくというようなことで、将来はあまり充当検事ということでいかなくても済むのじゃないか、そういうふうに考えているわけであります。
  151. 受田新吉

    ○受田委員 非常に変則的な体系が給与の上において法務省で行なわれているわけなんです。局長さんの給与のほうが次長さんより低いということがあり得るといまおっしゃった。これは考えると、事実そうなる可能性があるのです。だから、職務で局長、次長というのは、一方は全体のセクションの長であり、次長はその次のポストにあられる方ですから、そこはやはり給与の上でも当然差がつくのはあたりまえであるという意味でいまお尋ねしたのですが、大臣が、研究すると、率直にいまの制度上の問題点を御納得でおられるようでございますから、法務省に御検討を願うこととして質問を続けます。  私、この機会に、一般的な法案に関連する質問に入っていきたいと思うのですが、せっかくきょう入国管理問題に触れてまいりましたので、この入国問題を議題としたお尋ねをいたします。  私が昨年ちょっとお尋ねをした、しかし掘り下げてはお尋ねをしなかった問題があります。それは、日本韓国とが一本であった当時、それぞれ日本人として結婚した人々、韓国から日本へ来たけれども日本人になっておる旧韓国人、新日本人、そして奥さんは昔からの日本人という立場、しかし制度的には両方とも日本人として結婚をした、そういう皆さんが、戦い終わり、また平和条約が成り立ちまして後に、韓国を分離させられた。分離させられた上に、韓国に本籍のあった皆さんは韓国人として分離された。旧日本人妻は日本人として分離された。しかし夫婦そろって韓国へ帰った。韓国へ帰ったところが、今度は日本人である奥さんは、あいつは日本人だといって韓国でいじめられるので、私はもともと韓国人だといって、偽名で韓国の生活を続けてきた人がたくさんできた。つまり日本人妻の悲劇が始まったわけですね。その数は非常にたくさんにのぼっておる。しかもその人々は、貧民窟に住んで、一日の生活にも事欠くほどの立場にある人々である。一九六五年に新しい日韓関係国交回復ができた。新しい条約がつくられた。しかしこの人々は、依然として日本人の立場にある韓国妻として残されてきた。韓国では日本人と名のるとみんなにいじめられるからというので、国籍を二重にするような人もできてきた。また別に満州などから引き揚げ途中、朝鮮を経由する際にいろいろな障害のために朝鮮へ残されて、日本へ帰れなくなった日本人の妻や子供がおる。そういう者が籍が不明のままで韓国に残っているというような悲劇が韓国にはあるわけです。  これは私、条約ができて直ちにと昨年と、二回韓国を訪問して、しみじみとその悲劇の人々の実情を調べてまいりました。残念ながら日本一つの欠陥があった。平和条約が締結されたときに、こうした立場の皆さん、私は日本に残っておりたいという韓国人には、日本国籍を与うべきであった。もしくは帰化さして日本国籍を与うべきであった。日本に残りたい男までもみんな韓国へ連れていって、その奥さんまでも連れていかした。この悲劇を私は日本政府の一つの責任だと思っておるのです。平和条約のときにすかっとしておけばこういう問題は起こらなかった。日本やり方のまずさが一つあった。  もう一つは、三年前から、韓国から日本に帰りたい日本人妻を日本に帰しましたけれども、御主人のほうは帰れない。その奥さんと子供さんは日本へ帰ってきたけれども、御主人が帰れないから、おとうさん帰ってくださいと苦衷を訴える子供がたくさん出てきた。日本人妻になったその人が日本へ帰ったら、御主人が日本へ帰りたいというときには帰らしてあげたらどうか。夫婦で帰ってもらえばいい。こういう扱いをもう少し寛大に、もう少し実情に即してあたたかく取り扱うべきじゃないかと思うのです。この問題について、私、去年、金山大使とも現地でいろいろお話をしてみましたときに、もう少し在外邦人の帰国に対する経費など国家予算のワクを広げて、帰りたい人は思い切って帰させるように受田さんも帰ったらひとつ骨を折ってもらいたい、私もここの現地で尽力しましょうというお約束をして帰ってきたいきさつもあるのでございます。  これは遠藤領事移住部長さんも御苦労願っておるのですけれども、今年度予算は一体どうなっておるのかつまびらかにしておりませんが、日本に帰りたいがまだ残っておる悲劇の人たち朝鮮人とも日本人ともわからぬままで人生の苦汁をなめる人々を、すかっと日本人として帰化せしめ、前途に希望を与えてやり、その子供たちにしあわせを与えるという英断をふるう愛情の国政を断行するときじゃないかと思うのです。局長さん、部長さんにそれぞれ御答弁を願い、最後には、内閣の副総理として皆さんから期待されている前尾先生に、これは私、非常に大事な人道問題だと思っておるのですが、お力添え願いたいと思っております。
  152. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 先生御指摘の点は、筋道として私も全く同感でございます。現にまた、こういう人道上の配慮を必要とする人々については、できる限り日本のほうに帰れるような手はずを整え、またその手続も簡略化いたしておりますが、まだ最近始めたばかりでございますので、これからだんだんそういう問題の本格的な解決に取り組むことになろうと思います。ただ、非常に技術的な点でございますが、法令上複雑な問題もございますので、そういう点を加味しながら克服して解決していきたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  153. 遠藤又男

    ○遠藤説明員 韓国から帰国したいという日本人、それからそれに随伴する子供、かなりの数にのぼっておることは、御指摘のとおりでございます。それで、日韓国交正常化いたしまして、四十一年以降でございますけれども、われわれのほうとして受け入れた数は、昭和四十四年までで三百五十人、それから昭和四十四年以降は国の予算でもって引き揚げを応援するという体制になっておりまして、四十四年から最近までの数字では五百三十三人、合わせまして八百八十三人帰っております。  問題は予算の点でございますけれども、昭和四十四年には千二百万円計上いたしました。それから四十五年、今年、四十六年と、ともに四百八十五万円。帰国を応援し、また現地での生活をある程度保護するための謝金として四百八十五万円計上されておるわけでございます。問題は、実績から見まして、予算の不足よりもまた別のほうの原因があるように思われます。といいますのは、この予算は四百八十五万円、ことし去年とそれぞれついておりますけれども、実際のところ使い切れない状況になっている。しかも現在、日本への帰国を希望しておりますそういう人たちは、約四百五十人おります。こういう帰国を希望する人が多いのにかかわらず、しかも予算をとって待っておるというかっこうでございますけれども、十分にそこまで数で出てこないという点は、また別にいろいろ理由があると思われるのでございますが、向こうの韓国側の事情その他、先生のおっしゃいました、自分だけ帰るわけにいかない、夫とか子供をどうするか、こういう事情もいろいろあるわけでございますが、予算面からだけ言いますと、その点は、いまのところは不十分ということはないというふうに申し上げていいと思います。  それからつけ加えますと、来年度予算要求では千百七十四万円の要求をいたしております。これは、非常に大幅に帰国もしくは現地での保護が必要になるという場合を想定して、倍額以上の要求をしておるわけでございます。実情は以上のようでございます。
  154. 受田新吉

    ○受田委員 遠藤さん、この千百七十四万円という金額ですが、在外法人の困窮者の援護を目的としたという資金ですね。これには韓国以外の国の困窮者が入っておるんじゃありませんか。
  155. 遠藤又男

    ○遠藤説明員 いま申し上げました四百八十五万円、それから来年度千百七十四万円と申しますのは韓国だけでございます。韓国だけの保護謝金の問題で、韓国以外の国々につきましてはまた別の保護謝金を要求しております。
  156. 受田新吉

    ○受田委員 その金額は非常に少ないですね。一人当たりにするとほんの一万円ばかりのちっぽけな金額が出てくるのです。こちらへ戻る旅費として渡す金にしかすぎない。それでこちらえ戻ってからの援護が薄くなっている。生活を起こすためのそういうものは、やはり厚生省などとの打ち合わせをされて、できればひとつ法務省、外務省、厚生省などが打って一丸となって、そうした不幸な人々にせめて灯台のあかりをともしてあげたいものですね。こっちへ帰ってからも悲惨な生活をしておられるようです。私、戻ってきた人の調査をしてみたいと思っておるのですが、また資料が整いましたら実情を報告して措置をとらぬといかぬと思っておるのです。向こうで貧困、こっちへ戻ってまた貧困、生きる道を知らずして死んだほうがいいという気持ちを持たれたのでは、何のためのこうした措置かわからないので、もう少し金額をふやし、また引き揚げて後の、祖国へ帰って後の扱いについても十分の処置をとってあげられるような扱いをしていただきたい。この点を一つ要望をしておきたいのです。いまの金額はあまりにも少な過ぎる。これではだんだんやめていく。これは最初は三年前の四十四年に措置したんですね。四十四、五、六と、これで見ますとだんだんと減らしておるのではないですか。最初のスタートのときには千二百万ぐらいあったのではないか。千二百万でスタートしたのが、だんだん減ってきて、来年あたりはこれはやめるんじゃございませんか。
  157. 遠藤又男

    ○遠藤説明員 昭和四十四年、最初に国の予算をこの関係に計上いたしましたときには千二百万でございました。ところが、十分に使い切れない状況だということで、実情に合うように四百八十五万円に減らして四十五年、四十六年とやっておるわけでございますが、いま御指摘のように、現地でもっと保護を充実したいということもございまして、来年度に千百七十四円の計上をしたいという状況でございます。  それから、あと帰ってからのことにつきましては、従来とも、関係の厚生省のほうと、十分な援護ができますように種々打ち合わせ、それから具体的な施策も講じてもらっておるわけでございますが、今後とも実情に合うように努力してまいりたいと思っております。
  158. 受田新吉

    ○受田委員 これに関連する問題ですけれども、一般的な問題でこれはつながる問題ですが、今度、朝鮮民主主義人民共和国、朝鮮の側のほうでも、やはりそういうようなのがあると私は思うのです。それから、ことしは、お盆にあちらへ帰るということで、十八名をお盆参り、墓参りに帰されるようになったようですが、お正月の分は何とか措置をしようという御配慮があるのか。また、合意書に基づいて先般一応進行しつつある朝鮮のほうへ帰りたい人々の今後の希望者等が集積した段階では、引き続き帰還船に便宜をはかる、こういうような御予定があるのかも、あわせて御答弁願いたいと思うのです。
  159. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 北朝鮮の問題につきましては、従来から私申しておるのでありますが、中共につきましては非常に世界的に情勢が変わってきた。また北鮮に対しても変わりつつある。それは私も十分認め、その変わるにつれてそれに即応した措置をとっていきたい、かように考えてきておるわけでございますが、率直に申しまして、北鮮との関係はまだ、ムードは多少変わってまいっております、また韓国朝鮮との関係も漸次打開されるのであろうと推測はいたしておりますが、現状においてはそうではない、まだそこまでいっていないということでございますので、率直申しまして、従来と方針を変えるというところまでは実はいっていない。しかし、昨年の大体二倍お盆に帰してあげるという措置をとりましたが、それだからといって、年二回にするとか、そこまでの話ではないのであります。正月の寒いときに帰すのはいかにもお気の毒だからということで、一番季節のいいときに、またできるだけの人数を認めよう、こういうことであります。今後の推移をいろいろ見てまいりませんと、やはり客観的な情勢が変わったということになりませんと、いまの原則を特段に変えるというわけにはいかない、かように考えておるわけであります。
  160. 受田新吉

    ○受田委員 すでに一般帰還希望者の朝鮮への送還は一応先月で完了しておる。また新しい合意に基づいた合意書による帰還というのがこれから始まるわけですが、従来のような形式でこの合意書に基づく合意が成功していくようにひとつ計らっていって差し上げるべきだ。  それから、お盆に墓参を繰り上げたということであるから、正月の分はいま考えていないということでございますが、これはまた多少ずつ国際情勢が変わっておるという現実は、やはり自民党政府としてもお認めになっておられるんだから、一歩ずつ前進して、これは人道問題として躍進というかっこうへ進めていかれることを期待しておきます。  時間がえらい進行したので、残った問題は少し急ぎますが、私、法務行政の根幹は人間を大事にして法秩序を維持するということにあると思うので、犯罪を犯した者をどう扱うかということについては、犯罪人としてこれを処理する方法と、人間としてこれを正しい方向へ導く方法と、二つを十分かみ合わせた措置がほしい。その意味では、刑務所で服役している皆さんに対して、物質的には、作業の報労金のような、ごほうびを出す制度が多少あるようでございますが、これも、ある期間をまじめに勤務した服役者にはごほうびを相当額出して、服役が完了した後には、社会復帰へある程度の基礎的な活動資金が確保されるような方式をとるべきではないか。また精神的には、無宗教の者に信仰を与えるという手が一つある。また、正しいものをどう守るかの教育的なものがあると思うのですけれども、そういうものへどういう対策を立てておられるか。一応服役中に、死刑とかあるいは無期懲役の皆さん等には、教戒師などがいて信仰的にそれを救っていく。特に死刑囚については、死の瞬間には何かの信仰を持って天国へ行く、浄土へ参るんだという一つの信念を持って死についておるということも聞いておるのでございまするが、そうした服役者に対する精神的なよりどころ、あるいは物質的な対策等で、何らかの対策をお持ちでございましたら、これをお知らせ願いたいと思います。
  161. 羽山忠弘

    ○羽山政府委員 行刑の考え方といたしまして、大別いたしまして、先生が御指摘のように二通りあるわけであります。  生活すなわち自活能力のない者が犯罪を犯すということが第一点。したがいまして、この対策といたしましては、職業教育、職業訓練、あるいは刑務作業を通じまして自活していく能力。それからただいま仰せのように、刑務作業賞与金。現在におきましては、まことにささやかなものでございまして、出ました場合にその更生資金として役立つほどの金額に達しておらないわけでございますが、そういう制度があるということでございまして、この刑務作業賞与金につきましては、来年度も、現行の金額が些少でございますので、これを倍にいたしましてもたいした金額にならないのは遺憾でございますが、とにかく現行の倍程度の金額に引き上げたいということで、目下予算を要求中でございます。  第二点は、自活に対応いたしまして自律能力でございます。先般御承知のように、前橋管内で多数の若い女を殺しましたあの犯罪者も、これは刑務所に何回も入りまして、矯正教育を受けたはずでございまして、しかもまた、出ましたあとで必ずしも生活に困ったわけではないわけでございますが、ある種の誘惑に屈して自分の行動を自律していくという能力がなかったわけでございます。こういう点につきましては、これはまことにむずかしい問題でございますが、刑務所というところは教育をする場である。矯正教育をするんだということの原点に立ち返りまして、もう一度深く反省しやり直すべきではないかというふうなことで、目下いろいろな計画を練っておる段階でございます。  それから、お尋ねの死刑囚に対しまする教戒でございますが、申し上げるまでもなく、死刑確定者はもはや更生、改善というような見込みが全く閉ざされた人々でございまして、あとは執行を待つばかりということでございます。したがいまして、これらの人々の心情の安定をはかるということが最も大事でございますので、宗教教戒をいたしおります。宗教教戒は、国がもちろんこれをいたすことができませんので、民間の宗教家に依頼して実施いたしておりまして、その実施の状況は、教戒を希望する者に対しましては、希望に従って宗派その他を選び、また指導に当たる先生を選びまして、極力心情の安定をはかり、また宗教に入るということにいたしておるわけでございます。どの宗派の教戒師さんも、死刑確定者の教戒には特に御熱心であるということを申し上げられるように思うのでございます。  それから、無信仰の者、宗教教戒を希望しない者がときどきあるのでございますが、これらに対しましては、もちろん施設といたしまして、国といたしまして、教戒を受けること、あるいは宗教を強制することは一切いたしておりませんが、ただ、死刑確定者は一部の施設のある場所に集中いたしております関係で、教戒師さんがほかの確定者のところへ参りますときに、その近くの別の確定者が非常に煩悶をしておるというような事態をごらんになることがあるのでありまして、そのときにその教戒師さんが、何となく声をかける。あるいは宗教家としてではなく、身の上相談というようなことから声をかける。最初声をかけましても、全然受けつけずに、さっさと帰れというようなことを言われる場合もあるようでございますが、しかし、その宗教教戒師さんの献身的な接触と申しますか、それが繰り返されておりまするうちに、ふとした動機からその信仰に入って心情が安定をしていくというような例が非常に多いのでございまして、これまでに、全然無宗教で最後まで煩悶して、そして執行を受けたというようなのは、きわめてまれであると申し上げることができると思います。
  162. 受田新吉

    ○受田委員 私、具体的な御答弁があったので、ある程度満足するのですけれども、社会に復帰した犯罪者、つまり前科者と称せられる皆さんが、社会へ出てある程度の資金を持ち、あるいは今度こそ間違いをしないというスタートをする。改めるにはばかるなかれでがんばってくる途中で、社会人が、刑余者をいかにも悪者のように引き続きいろいろと白い目で見るということのないような、刑を終えて出た後の扱い。さっきお話の出た前橋の大久保清という暴力の権化のような人間、それも社会へ出て後の扱い方に事を欠いたと私は思うのです。そういうような意味で、社会へ出て後の犯罪者の予防と更生をはかる犯罪者予防更生法等を含めた保護観察という仕事をもっと積極的に、そういう悪質な者はそうたくさんおるわけではないんだから、それを、一人一人を観察して、もし危険があればこれをさらに保護するというように努力をしていれば、社会の犯罪はもっと少なくなる。それから、少年の犯罪がだんだん増加しつつある傾向のときにも、犯罪を中心とした少年問題に対して、各省の連絡をとるための青少年対策本部が総理府にあるが、この点も法務省が中心になっておられることを聞いて、私は非常に頼もしく思いますけれども、もっと積極的に教育の場で、少年、青年が犯罪を犯さないような努力をするなど、前尾先生のような有力な閣僚が法務大臣におられる機会に、そうした、国民の中から犯罪を予防し、犯罪者には、犯罪の罪の償いのために在監中に十分更生の努力をさせ、社会に出てはもっとあたたかい手でみんながこれを見守ってやるというような総合的な犯罪対策を、法務省において立てて、他省の協力を求めるという基本的な策を、私、前尾先生を中心にやってもらいたいのです。そしてできれば、この日本を犯罪の少ない、住よい国にしてもらいたい。大臣、よろしゅうござますか。
  163. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大君 お話しのとおりに、刑は威嚇の面もありますが、現在では矯正、むしろ教育ということだと思います。教育には、職業教育といいますか、そういう面もあり、また精神的な教育、それから先ほどの宗教的な教育、これはバランスをとっていろいろと考えていかなければならぬ問題でありますが、精神的な教育ということが一番むずかしいんじゃないか。へたにやりますと、かえって逆効果を来たす。  具体的にどういうような精神的教育をやるかということでありますが、やはりこれは、看守その他の取り扱い、それらについても、よほどこの面の訓練をしていかなければならぬ。また、そこに出入りをしてもらう教育者というようなものを考えていかなければならぬと思います。それから、ただいまお話のありましたとおりに、保護観察が従来保護司さんにまかされておるのでありますし、また保護司さんは名誉職で、ほとんど報酬とかそういうものはなしにやっていただいておるような現状でありますが、第一に保護観察官も相当ふやさなければ、先ほどの大久保事件というような点も、やはりあれは保護観察官が直接当たるべき問題で、保護司さんにまかしておるというのではいけないんじゃないか。そういうような意味で保護観察官を相当やはり増員しなければならぬというふうに考えておりますし、予算要求もいたしておるわけであります。ただいまいろいろお話のありました御趣旨に沿って私もできるだけの努力をしたい、かように考えておる次第でございます。
  164. 受田新吉

    ○受田委員 質問をほとんど終わる時刻になっておりますので、二つだけ残った問題を端的にお尋ねします。簡単にお答え願いたいと思います。  選挙違反は恩赦の中に入るかどうかという質問が予算委員会で行なわれたようなんですが、その根底となっておる恩赦を扱うのは法務省です。したがって恩赦の担当課もある。そういう意味で沖繩返還は恩赦の対象として適当であると私は思います。選挙違反を含むことは反対であるけれども、恩赦をやることは賛成だ。大臣沖繩返還という、同胞が日本に返ってくる機会は、恩赦の中の適当な恩赦をやって喜びを分かつということは、いい意味においていいチャンスである、こうお考えじゃないですか。
  165. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 恩赦につきましては、やはりそのときに決定すべき問題で、その以前におきましてとやかく申すべき問題ではないんではないか。できるだけ白紙でいろいろな人の御意見を伺って、そして最終的に慎重に考えるべき問題だ、かように考えておりますので、その点でお許し願いたいと思います。
  166. 受田新吉

    ○受田委員 恩赦の制度の調査研究をしたり、どういうふうにして恩赦をやるかの立案をしたりするのが法務省なんだ。したがって、沖繩が返還される時点ににわかに恩赦を考えるわけにはいかないので、やはりいまから準備して考えておかないと間に合いませんよ。もうわずかですからね。目の前です。そういうことを考えていくと、いまから当然立案に着手していなければならぬ任務が法務省設置法にちゃんと書いてあるのです。これは私は、恩赦の実施をしてよい国家の喜びの時点であると思っておるのです。非常にいい。条件にかなっている。同胞が返ってくるのですから。しかし、ちょっとした窃盗罪のようなもの、生活の貧困にあえいで、やむなく窃盗をしたというような者は、破廉恥罪として従来恩赦の対象になっていない。政治の悪さで、貧しさのために未亡人が万引きをしたというようなものは恩赦の対象にならないで、選挙違反を平然とやって国民の目をごまかしたような者が恩赦の対象になるという、これは大きな間違いである。これは恩赦から選挙違反は断固削除すべきであると私は提案しておきます。これは法務大臣、恩赦の立案計画に当たられる法務省として、そろそろ当たってはおられると思いますので、ひとつ要望を申し上げておきます。  もう一つ、世情は、国際政治の流動は果てしなく流れていきまして、アジアにおける状態も非常にテンポを早めて変わってきました。私は台湾の皆さまが苦労しておられることがよくわかります。蒋介石総統もきっと苦労していると私は思うのですけれども、台湾の立場を守り抜いてこられた自民党とされましても、また総統を個人的に敬愛されてこられた政府とされましても、総統から大東亜戦争の終結の際に好意を持ってもらったということも、私自身もいろいろと伺っておるという事実の上に立って、すでに新聞等に報道されている事柄の中に、蒋介石総統はやがて日本において暮らしたいという希望を持っておるのじゃないかという報道がされております。  そういう際に、蒋介石総統はじめ多くの台湾の要路の皆さんが日本へのがれてくるという場合は、これは中華人民共和国を一つの国と見るという形から言うと、政治亡命者というような見方をされないとも限らない。中華人民共和国のほうからそういう趣旨で、蒋介石総統以下を、もし日本にそういう場合が起こったときに、この引き渡しを要求されたというとき、逃亡犯罪人引渡法による引き渡しの対象になるかどうか。政治犯罪を行なった立場の者は引き渡してはならないという条約ができておる。そういう意味から言うならば、蒋総統が日本に来られた場合は、純粋な政治犯罪と、私たちから見てもすなおに見られるわけですが、その場合には引渡条約による引き渡しを拒否することができるという立場に立つと法律的には見られる。条約的にもそういう判断ができる。この逃亡犯罪人引渡法から見て、またこれに関連する条約から見て、そういう事態において、政府としては法律的にはどう扱ったらよいかという御意見を承りたいと思います。むずかしいことですが、どうですか。
  167. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 ただいまのお話は、微妙な国際情勢下で、蒋介石総統という特定の方のことについて御質問があったわけでございますが、これはきわめて推測あるいは仮定を重ねた要素が多うございますので、その点に関してのわれわれの見解は、御了解をいただいて差し控えたいと思います。  ただ、一般論として申し上げますと、わが国に政治亡命を希望する外国人に対しましては、現在、世界で行なわれております政治難民の庇護に関する国際慣行に従いまして、政治的迫害の主張が十分根拠があるかどうかを慎重に検討しました上で、それは非常に認める根拠があるという場合には、今度わが国の国益あるいは公安上差しつかえないかどうかという点をもあわせ加味いたしまして、法務大臣の認定による特定在留を認めることがあるわけでございます。また、その当人が第三国、これは国際難民委員会その他がございまして、どこかある国へ行きたいということであれば、もちろんそういう国へ行くように、わが国といたしましてもあっせんもいたすわけでございますし、それから、何かの理由において日本におってもらっては困るという場合におきましても、日本から出て行ってもらうにいたしましても、帰る先へ送ることによって政治的迫害もしくは処断を受けるおそれがあるところへはわがほうとしては帰さない、本人の希望するところへ出国していただくというのが、従来法務省としてとってきた態度でございます。
  168. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 ただいまの答弁、全く法律論であるということで了承願いたいのであります。これがいろいろな形で誤り伝えられますと、非常にいろいろな誤解を受けたり、微妙な国際情勢に影響を及ぼしますので、前段に吉田君が言いましたこと以外は、私から申し上げられる問題ではないと思っております。
  169. 受田新吉

    ○受田委員 外務省も別に異論はないですね。
  170. 橋本恕

    ○橋本説明員 別にございません。
  171. 受田新吉

    ○受田委員 そこでおきます。それ以上突っ込みません。
  172. 伊能繁次郎

    伊能委員長 横路孝弘君。
  173. 横路孝弘

    ○横路委員 いま受田委員からも少し質問があったのですが、監獄法の関係に関してだけ質問をしたいと思います。矯正局長大臣だけ、あとの方はけっこうでございます。  初めに大臣にお尋ねをしたいと思うのですが、いま刑務所関係を規律している法律に、明治四十一年にできた監獄法という法律がいまもなお存在しているのであります。この問題はたびたび国会でも取り上げられまして、昭和四十二年、当時の田中法務大臣と矯正局長が、早急にこれを改正したいという意向を明確にいたしまして、去年も私はこの内閣委員会で小林法務大臣にお尋ねをしたわけでありますが、小林法務大臣は、次の通常国会、つまりことしの春の国会までには改正案をまとめて提起をするんだ。さらに、去年の十二月の内閣委員会におきましても、来年の二月、つまりことしの二月までにはこの改正案を出すように事務当局に命じて作業を進めておる、こういうことであったわけですけれども、依然としてこれが国会提出されない。前々からこういうお約束をしておって、そのたびにこの作業というのがおくれておる。やはりこれは法務省の責任だと思うのです。現在の作業の過程、これが一体どういうことになっておるのか、初めに大臣のほうからお伺いをいたしたい。
  174. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 実は、この秋には監獄法をぜひ法制審議会に回さなければならない、こういう考え方のもとに鋭意努力してもらっていたのでありますが、夏休みの間が多少進捗の状況が悪いということで、来年の春ごろまで原案がかかるんじゃなかろうかということであります。私もすでに、秋にはぜひとも法務省案を完成したいということを委員会に申しました。そういう意味からいたしますと多少おくれておりますので、督励してぜひ年内くらいには完成したい、こういうふうに考えております。
  175. 横路孝弘

    ○横路委員 昔から刑罰の本質とか目的に関していろいろと意見の対立がある。教育刑主義とか応報主義というような対立があって、それで法務省の中が矯正局と刑事局あたりでもってなかなか意見がまとまらないというように私たちいろいろ聞いてきたわけですが、すでに何回も改正作業には手をつけられて、そのたびに草案というものはまとめられておるわけですね。幾つもあるわけです。なぜこの作業が延びてきたのか。どこにその一番まとまらない大きな原因があるわけですか。
  176. 羽山忠弘

    ○羽山政府委員 原因と申しますか、二つ申し上げることができるかと思います。刑事局と矯正局との意見が一致してないという――もちろん全部完全に一致しておるわけではございませんけれども、一致してないからおくれておると申しますよりは、現在刑法を法制審議会で審議中でございます。そもそも監獄ということばは刑法の中にあることばでございまして、それを受けまして監獄法ができておるわけでございます。そこでいま、刑法の中で懲役、禁錮、拘留というような現行の自由刑制度をどういうふうにするかとかいう基本問題がございまして、その辺が法制審議会の中でもだいぶ論議が重ねられました。それから、死刑を置くか置かないかというようなことも、つい最近まできまらなかったわけでございます。それをにらみ合わせております関係で、全体的に私どもが一度書きましても、刑法が直るというたびに私どもが条文を直す。御承知のように、法律の条文は、私のただいまの見通しでは、多くても監獄法は約二百条くらいで済むと思うのでございますが、一条をいじりますと、一条だけをいじるということが非常にできにくくて、関連条文が非常に多くなっておりますので全体を直すというようなことで、そのつどごたごたするというようなことがございまして、おくれておるわけでございます。それが一つでございます。  本年の一月に、私どもといたしましては、ある程度の意見をまとめまして、四月に全部の出先の現場の意見、法務省各部局の意見を聞きまして、その意見を取りまとめまして、それで、先ほど大臣が言われましたように、私といたしましては、十一月の末を目途にいたしまして確定案をつくりたいということで、近ごろは、私自身がひまさえあれば監獄法をやっておるような状況でございまして、そういうことでやってまいったのでございます。  あとは、本年になりまして、立案に直接関係のないいろいろ別な事項がございまして、たとえば、非常に有力な相談相手になっていただきました先生がなくなるというようなことがございまして、そういうようなことで、十一月の努力目標が一カ月か二カ月か、ただいま大臣が仰せになりましたように、来年の春ぐらいにずれるんではないかというようなことでございます。
  177. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、刑法の改正のほうも、来年の大体五月ぐらいまでには審議会のほうの最終的なやつが終わって国会のほうに出される、こういうような見通しになるわけですか。
  178. 羽山忠弘

    ○羽山政府委員 法制審議会刑事特別部会と申しますのがあと二回か三回で終わりまして、総会にかけまして、来年早々、おそらく刑法の全面改正参考案の答申があるように――数日前に法務省で部会がございまして、その席に私も出たのでございますが、議長の小野先生が、いよいよ刑法も大詰めに来たなということをおっしゃっておられましたので、刑法が答申になるのは間近いころではないかと思います。
  179. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、それが国会に出されるのは大体いつごろになりますか。
  180. 羽山忠弘

    ○羽山政府委員 私は所管でございませんので、その議論を聞いておりました感じでございますが、刑法以外に刑法施行法というようなものがあるわけでございます。それから、はたしてこれは全面的に国会提出したほうがいいか、部分的に提出したほうがいいかというような、あと手続としての議論が残ってくると思いますが、いずれにいたしましても、案として印刷物で公表されるのはそう遠くはないんではないかというふうに考えております。
  181. 横路孝弘

    ○横路委員 そこで、現行の監獄法の中にも非常に古い規定がたくさんあるわけなんですが、ちょっと確認をしておきたいのですが、昨年のこの委員会で、五月の六日に私お尋ねしたときに、戒具の問題、これは保安上のために戒具の規定が監獄法にあるわけですが、この戒具の問題について、特に鎮静衣と防声具について平井政府委員がこういう答弁をしておるわけです。「鎮静衣はやめようじゃないかという話が非常に強く出ておる」。そして実際ほとんど使われていないんだ、私が調べた範囲では。たとえば昭和四十三年、四十四年あたりでも、年間を通して一件あるかないかというような使用状況になっておるのですが、その使用状況と、このほとんど使われていない鎮静衣について、去年の国会答弁では、大体これはやめようじゃないかという意見が強いというお話だったのですが、今度の改正作業の中で、その辺はどうなっておりますか。
  182. 羽山忠弘

    ○羽山政府委員 鎮静衣というものが、ほんとうの意味で鎮静する効果をあげる前に、非常に自由を拘束する程度が強い。そこで、これは拘束具としては非常にいいものだというようなことは、とても言えないわけでございます。鎮静衣を使用いたしますと、むしろその鎮静衣の使用中、職員が、本人がどうにかなってしまいはしないかというようなことを心配いたしまして、見回りに行く回数がよけいふえるとかというような、いろいろ欠点があるわけでございます。そこで、これを何とかもっといいものに改善することはできないかということで、目下検討中でございます。それで、鎮静衣というものは、ただいま御指摘のとおり、実際問題といたしましてほとんど使用しておりません。
  183. 横路孝弘

    ○横路委員 それからもう一つ、防声具については、これは前に事故がありましたね。窒息死をした。使用して二十分後に窒息死をして、使用については非常に厳格に指導されていると思うのですが、どういうような指導をされているのか、どういうような通達になっておるのか、その辺のところをちょっとお答え願いたいと思います。
  184. 羽山忠弘

    ○羽山政府委員 その通達の内容は、かなり詳細にわたりますので、時間の関係もございますので、ごく要領よく申し上げさせていただきます。  戒具使用一般といたしましては、できるだけ不必要な戒具の使用をするなということでございますが、あと特にこの防声具につきましては、鼻の穴から呼吸をするということについて障害が起きないように、あるいは頸動脈を圧迫するというようなことに最善の注意をするというような、事故が起きないようなこまかい使用の注意を列記いたしまして、その次に時間を限定いたしまして、防声具は六時間以上はかけてはいけない、それから医者が常に視察をしなければいけない、もちろん食事の時間にははずさせなければいけないというようなことが、こまごまと書いてあるわけでございます。
  185. 横路孝弘

    ○横路委員 そこで私、警察のほうにお尋ねしたいのですけれども、昭和四十六年の十月二十八日、ことしですね。「国家公安委員会規則第十号  被疑者留置規則の一部を改正する規則を次のように定める」として、被疑者留置規則の第二十条を改正して、従来警察においては使用していなかった防声具と鎮静衣をことしの十二月一日から使用するように規則の改正を行ないましたね。これは間違いございませんね。警察の関係……。
  186. 高松敬治

    ○高松政府委員 御指摘の被疑者留置規則の改正はいたしております。それで、従来の被疑者留置規則の場合に、「手錠、捕じよう等を使用することができる」という規定で、この「等」の中には鎮静衣、防声具ということは明確には書いてなかったわけでございますけれども、それが一応含まれる。ただ現実には、警察としてはそういうものをいままで使っていなかった、こういうことだったのでございます。
  187. 横路孝弘

    ○横路委員 使っていなかっただけではなくて、各警察署には鎮静衣や防声具が保管されておったわけでもないでしょう。そうですね。いま刑務所に入っている人というのは、私の記憶に間違いなければ四万人ぐらいいる。それが年間どれだけたとえば鎮静衣を使用したかというと、一回あるかないか、ほとんど制度として残っているだけ。それを新しく警察の留置場に置いてことしの十二月からこれを使用する。  まず第一にこの鎮静衣についてお尋ねをしますけれども、鎮静衣を警察においてことしの十二月一日から使用する。いま御答弁聞いていて矯正局長は、監獄法改正の中で、現行も少なくとも鎮静衣は使われていないし、これはやはりちょっとひどいもんだからやめよう、こういうことで検討されているというときに、警察が何でこんなものをいまどき持ち出してきたのですか。
  188. 高松敬治

    ○高松政府委員 従来、その「手錠、捕じよう等」ということで、実際に、たとえば柔道着のひもを使うとか、手ぬぐいを使うとか、あるいはふろしきを使うとかというふうなことが行なわれておりました。それによりましていろいろな問題が、現実に昨年も一、二起こっております。そういうことをなくして、むしろ使えるものを明確にする。手錠、捕繩、防声具、鎮静衣というようなことで、使えるものを明確に規定して、その制式あるいは取り扱い手続を明確にする、そういうことによって、そういう従来生じてきたような問題の起こることを防止しようというのが、今度つくりましたねらいでございます。  鎮静衣、防声具につきましては、いまほど御指摘のような問題があるということは、私たち承知をいたしております。で、これにつきましては、特に慎重に使用するということになっておりますし、またその鎮静衣につきましては、その様式が刑務所において規定されているものよりも非常に簡略になっている。ちょうどシュラーフザックのような形のものにしてあるということで、その点もむしろ改善をはかっているつもりでございます。  ただ、いま御指摘のような問題も確かにございますので、防声具、鎮静衣につきましては、その使用について特に厳格にこれを制限するというふうな指導方針でまいっております。
  189. 横路孝弘

    ○横路委員 「手錠、捕じよう等」の「等」からいろいろ問題が起きてきたというのは、別にここの問題じゃないでしょう。柔道着で逆エビみたいにしてしばったって、法律の問題ではないでしょう。実際の留置場の中における警察の運用の問題ですよ。従来は手錠、捕繩だけだったやつが今度は鎮静衣を持ってきた。鎮静衣というのは、私たち去年内閣委員会で視察したときに網走刑務所で見せてもらいましたけれども、ひどいものですよ。ミノムシみたいに身動き全然とれないような形でもって、頭をひょこっと出してあと、みな手足の自由を奪っておくようなものでしょう。実際に四万人も入っている刑務所の中でほとんど使われていないものを、なぜわざわざ、しかも監獄法の規定を改正しようという動きの中で、どうしていまごろ警察が昭和四十六年という時点で持ってくるのか。何も必要性がないじゃありませんか。柔道着でもって逆エビでやるというのは、皆さん方の職員の規律の問題として指導すればいいことなんで、新しくこんな戒具を警察でもって使用するなんという必要は何もない。ほんとうのねらいは一体何なんですか。何も必要ないじゃありませんか。
  190. 高松敬治

    ○高松政府委員 ほんとうのねらいとおっしゃいますが、先ほど申し上げましたように、手錠、捕繩だけではどうにもならない。たとえば、非常に大声を発して騒ぎ回る、どなるという者につきましては、手錠、捕繩だけではその効果を求めることはできないわけでございます。したがいまして、そういう場合に、従来も防声具が法律的にも「等」ということで使えるということになっていたわけですけれども、実際にそういうものを各警察署には備えつけてなかった、それから多少ものものしい感じのするものでもあった、そういうようなものをあわせまして、合理的なものにしてこれを防止しようというのがそのねらいでございます。それ以外にほかに目的はございません。
  191. 横路孝弘

    ○横路委員 いままで持っていないのを、これからわざわざ購入するわけでしょう、全部の警察署に。どのくらいの予算を組んだのですか。  この鎮静衣と防声具を新たに各警察署全部備えるわけですね。それはいままで刑務所の中では使っていないのですよ。鎮静衣については一年間に一回あるかないか。それを今度は警察でもって各警察署全部にわざわざお金を出して買って用意をする。そうして、使用の基準についてはこれからあとでお尋ねをしていきますけれども、警察のほうの使用規則なんというのは、これはいろいろな問題がたくさんある。これ幾ら予算使ったのですか。
  192. 高松敬治

    ○高松政府委員 都道府県で準備をすることになっておりまして、明年度の予算要求は、若干は補助金として入れるつもりでおりますけれども、本年度はとりあえず都道府県の予算でベルト手錠等を準備する、こういうことにいたしております。
  193. 横路孝弘

    ○横路委員 その鎮静衣と防声具を全部各警察署に備えるのに、大体どのくらいかかりますか。
  194. 高松敬治

    ○高松政府委員 全部の署に備える必要があるかどうかということも一つの問題でございますけれども、一応予算要求としては九百十六万ばかりの要求をいたしております。
  195. 横路孝弘

    ○横路委員 それはもうこの間も捜査会議か何かで、各警察署に備えるようにというような指示をしたわけでしょう。
  196. 高松敬治

    ○高松政府委員 十二月一日からこの規則を施行する、それに従って準備をしてまいるようにして、特に中心はベルト手錠と申しますか、それを中心にひとつ本年度は整備をやっていってもらいたいというふうな指示をいたしております。
  197. 横路孝弘

    ○横路委員 そのベルト手錠、皮手錠というやつですね。これは去年の国会のここでも議論をしたのですけれども、昭和九年に帝人事件が発生したときに、その使用について国会の中で大問題になったのです。法務省関係の先輩である岩田宙造という当時の議員が、小原法務大臣に対して非常に激しく追及して問題になったんですよ。そのときにどういう議論をされているか。皮手錠なんというものは、これは封建時代の遺物だ、こんなものが何でいまの明治憲法で認められるかという議論を昭和九年にやったのです。それから何年たったと思いますか。昭和四十六年ですよ。それから、法務省のほうはやめようというやつを、警察はこれから一千万近いお金を出して各警察署に備える。使うからでしょう。  その使用基準だって一体どうなっていますか。警察庁訓令第十八号、「使用上の留意事項 戒具の使用にあたつては、その必要性および留置人の健康状態を考慮して適正に使用しなければならない」というのが一つ。「防声具および鎮静衣は、六時間以上継続して使用してはならない」というのが一つ。「使用中は、留置人の動静について常に注意を払わなければならない」というのが一つ。国連がきめた被拘禁者処遇最低基準規則というのがある。一九五七年にきめられた。その中で、戒具の使用は、暴行のおそれとかあるいは自殺のおそれ、特にここでは自殺のおそれを防ぐためだというのが戒具の使用の趣旨なんです。これは懲罰じゃないのです。戒具の使用というのは、あくまで保安上、特に自殺者を出さないためにするというのがこの制度趣旨なんです。したがって、この最低基準規則の三十三条、「被拘禁者が自己もしくは他人に危害を加え、または財産に損害を与えることを防止するため、他の手段によっては目的を達することができない場合において、施設の長の命令によるとき」に使用できる。ただ、「この場合においては、施設の長は、直ちに医官にはかり」、医者に相談しなければならぬ、こういうことになっているのです。法務省のほうの通達もそういうことになっている。「昭和四年 行刑局長通牒行甲七四九 鎮静衣等ノ使用上ニ関シ注意ノ件」、ここでは「医師ノ同意アルニ非サレハ之ヲ使用スヘカラサルコト」。皆さん方のこの使用基準には、医者に相談するなんということはどこにもない、警察署長の命令で幾らでもできるようになっている。これは国連のこの最低基準にも違反するものですよ。法務省で出している通達、先ほど矯正局長のほうから話がありましたが、防声具はあとで質問しますけれども、非常にきびしくきめて、きびしくきめた上で、なおかつこれは問題があるからやめようと言っている。そのときに、何にも医者に相談するとかなんとかいうことがなしに、全くかってに警察署長の命令によって自由にできる、そういうものをなぜいまつくる必要があるのですか。しかも、この国連の処遇最低基準規則は、被拘禁者、刑務所に入っている犯罪が確定した人であるが、警察が扱うのはまだ無罪の推定を受けている。一番無罪の推定を強く受けている段階で、一体なぜこんなものが必要なんですか。
  198. 高松敬治

    ○高松政府委員 ベルト手錠の問題につきましては、皮ではなしにきれを使用する。それから自殺の防止ということも一つの問題でございますけれども、やはり非常にあばれる、暴行するというふうな者に対して、これを制止する方法として使用するということにいたしております。  それから戒具の使用につきましては、いま御指摘になりました第四条のほかに第三条で、必ず警察署長の指揮を受けてこれを実施せよ、緊急やむを得ないときにはその幹部の指揮を受けて、その使用後すみやかに署長に報告をしなければいかぬ、こういうふうな規定を設けまして、その取り扱いには慎重を期しているつもりでございます。  それから、医師の問題につきましては別に通達を出しておりまして、必要のあるときには医師の診断を受けさせなければいかぬというふうなことを規定いたしております。それで戒具というものは実体的に何を意味するか、具体的にどういう様式のどういうものを意味するかというふうなことによって問題は変わってくるのではなかろうかというふうに私どもは思います。
  199. 横路孝弘

    ○横路委員 この国連の最低基準規則でも、普通使うのは保安上の問題としてだけなんだ、懲罰の手段としてはだめだということになっているのですよ。したがって、まず第一に自殺のおそれがある、暴行等のおそれの場合は、非常に厳格にみんな規制を受けている。したがって、直ちに医官にはかって上級行政官庁に報告しなければならない、記録をしておかなければならない、記録を残さなければならない、そういうことになっているのですよ。これは全然そうじゃないじゃありませんか。
  200. 高松敬治

    ○高松政府委員 いま申し上げましたように、戒具ということは、私もこのことばはあまり好きなことばではございませんが、監獄法にそういうことばがあって、代用監獄である場合にはその規定の適用がある、こういうことになりますので、そういうことばを使用しておりますけれども、問題は戒具の制式といいますか、ものの中身の問題に一つは帰着するであろうというふうに考えます。もちろん、医者に見せてその上で使用しなければいかぬというふうな場合も出てくると思いますが、そういう場合には、もう戒具自身の使用に危険を感ずる場合だから、それはむしろやめるべき場合であろうというふうに私どもは考えます。
  201. 横路孝弘

    ○横路委員 だから現実にほとんど使われていないのですよ。これは代用監獄ばかりじゃない。勾留がついたあとの被疑者ばかりじゃなくて、最初の四十八時間以内の被疑者にも適用になるでしょう。だから代用監獄ばかりじゃないじゃありませんか。すべての留置人に適用になるのでしょう。だからこれは、国連のそういう基準にも反しているし、法務省がお考えになっているやり方と全然違うやり方なんですよ。そして、やめようというやつを、これからやろうというのでしょう。ほとんど使っていない、制度として残っているだけのものを、そんな特に必要性というのがいまありますか。特にそういうことをしなければ留置場の中の規律が守れないということか。いままでやってきたじゃありませんか。  先ほど話があったように、「手錠、捕じょう等を使用することができる」。そこで「等」でいろいろ問題が出てきた。問題が出てきたというのは、ことしの二月十八日の判決ですね。公務執行妨害の事件について千住警察で逆エビをかけた。これは被疑者留置規則二十条にいう行為じゃないという判決がありました。そこで出してきたというのが本音なわけですか。
  202. 高松敬治

    ○高松政府委員 留置場の中における、千住あるいは新宿のような事件が昨年はございました。その前にもそういうことが幾つかありました。これらを通じまして、「等」ということでそれを非常にあいまいにしていくことはよろしくない、むしろそれをきっちり定め、それからその使用方法についてきっちりした手続をきめる、そしてそれ以外のものは使わせない、こういうことが、そういうトラブルを起こさないことになろうということで、こういう改正を考えたわけでございます。
  203. 横路孝弘

    ○横路委員 ですから、それは職員の規律の問題なんですよ。そういう違法行為をやらせないように指導すればいいわけですね。何もそこで使用し得る戒具の範囲を広くして、わざわざ国民の税金の中から一千万もの金を出してやる必要というのは、いまの時点で私は全くないと思う。全くないですよ。これから新たに北海道から沖繩までの全国の警察にこんなものを一々買って備えておく、そんな必要は全くないですよ。だからこれは拷問に使われる。捜査の段階では、被疑者と捜査官というのは、ほんとうは対等の立場になければならない。刑務所の場合は終わっていますから、取り調べる者と取り調べられる者という関係は、少なくとも刑務所の中ではなくなっている。警察の中では、取り調べをする者とされる者という関係になっているわけですよ。そこでこういうものを使う。最近刑務所の中で全然使われていないものをわざわざ警察が持ち出したのは、そういうおそれが十分にある。  もう一つ、防声具のほうですが、この防声具については、昭和三十一年の十月四日に拘置所の中でこれを使用して窒息死したケースがあった。そこで先ほど矯正局長お話しになった通達を出した。非常に厳重ですよ。先ほど話にあったように、使用の際は、呼吸に障害がないかどうか、頸動脈の関係はどうか。使用後は視察に便宜な居房にわざわざ移して、その動静をひんぱんかつ綿密に視察し、そのつど呼吸障害等の有無を確認する。使用中は医師等にときどきその状態を視察させる。もし医者がいなければだめだ、医者はここでときどき確認をしなさいというような形でもって使用しているわけですね。それを、おたくのほうの戒具の制式の使用手続の訓令によると、そんなものは何にもないでしょう。いままでいろいろ問題を起こした人間に、こういうものを与えたら一体どうなりますか。全くないでしょう、防声具については。
  204. 高松敬治

    ○高松政府委員 そういうものを拷問に使う可能性があるというお話でございますが、そういうことは全く考えておりません。現実に留置場の中であばれる、こういう者についての使用、あるいは留置場の中で大きな声を出してどなりまくる、こういう者についての使用を考えているわけでございます。それ以外に使うことは絶対にございません。  それから、先ほどもちょっと申し上げたんですけれども、名前は、監獄法に規定されている戒具の四種類と同じ名前を使っておりますけれども、防声具、鎮静衣あるいはベルト手錠につきましては、その制式につきましては、これと全く同じじゃございません。できるだけ合理的に、そして危険のないようなものを考えて、それを制式としているわけでございます。  それから、前に防声具で死亡したという事故のあったことも私どもは聞いております。それで、それについての注意としてやはり同じような注意が必要でございましょうし、また防声具を使うときに、口の中にものを押し込むというふうなことは絶対にやってはいけない、そういうふうなことは通達の中にも書きまして、その点については十分に指示をいたしているつもりでございます。
  205. 横路孝弘

    ○横路委員 この訓令に基づいて、その医者や何かにも別に通達を出しているのですか。医者に見せなければならないということになっていますか。
  206. 高松敬治

    ○高松政府委員 十月二十八日付で次長通達を出しております。この中に、たとえば防声具の使用にあたっては、「呼吸器系統の疾患等について、その使用に耐えうるか否かを慎重に判断し、必要があると認めるときには、医師の診断を受けさせること」、「鼻孔からの呼吸を困難にし、または動脈を圧迫していないかを確認すること」、それから「口の内部に綿布等を入れないこと」、それから「使用時間は、三時間以内にとどめ、それ以上の使用を必要とする場合には、さらに警察署長の指揮を受けること」というふうなことを書き、あるいは「使用中は、看守に便利な場所に位置し、呼吸器障害の有無等について綿密に視察すること」というふうな指示をいたしております。
  207. 横路孝弘

    ○横路委員 その必要があるかないかということは、普通のしろうとが見てわかりますか。だから国連の基準でも必ず医者に報告しなければならぬ、こういうことになっているわけですよ。法務省の通達でも、防声具のときにはときどき医者が見るようにしなければならぬ、やはりこういうことになっているわけですよ。警察はそれをやらぬわけですね。窒息死のケースが出てからじゃおそいのですよ。こんなもの必要ないじゃありませんか。いままで手錠と捕繩だけで十分だったのでしょう。「等」という解釈があいまいだったから明確にするんだ――理由になりませんよ、そんなものは。
  208. 高松敬治

    ○高松政府委員 たとえば大声を発する者に対して、従来手ぬぐいでサルぐつわをかけるというようなことは間々あったことでございます。そういう者に対して、そういうものをかけるよりも、むしろこういうふうな性質のものでやったほうがよりいい、こういうふうに判断して制式を定めたわけでございます。
  209. 横路孝弘

    ○横路委員 法務省の場合は、これは全部書きとめることになっている。日付から使用時間から使用期間から、だれがどういうようにやったかということをきちんと書きとめることになっているわけですね。警察はそれはどういうことになっていますか。
  210. 高松敬治

    ○高松政府委員 同じく次長通達に、戒具の使用指揮簿という様式を定めまして、これによりまして、戒具の使用前に指揮を受けるに必要な事項、たとえば留置人の健康状態、戒具の使用を必要とする事由というふうなものをこれに書きまして、それからさらに使用状況については、使用の日時、時間、それから使用方法、使用中の状況、使用後の状況というふうなものを書いて所長の決裁を受けるような簿冊にいたしております。
  211. 横路孝弘

    ○横路委員 そこで、もとになっている被疑者留置規則、これは規則ですね。法律じゃないわけです。どの法律に根拠があるのですか。
  212. 高松敬治

    ○高松政府委員 警察法施行令第十三条、あるいはそのもとをたどりますと、警察法第五条第二項第十二号、それに基づく警察法施行令第十三条による国家公安委員会規則でございます。
  213. 横路孝弘

    ○横路委員 その大もとの警察法五条二項の十二号というのはどういう規定かというと、「警察職員の任用、勤務及び活動の基準に関すること」。警察職員の活動に関すること、そっちのほうからこれはとらえている規定ですね。被疑者の人権という視点は何もないわけですよ。私はこれは非常に大きな問題だと思うのですけれども、職員の活動の基準に関することが、何でこのあとの糧食の問題とか戒具の問題になるわけですか。監獄の場合は、監獄法という法律があって、そこで基本的人権ですね。被告人だって、あるいは被疑者だって、あるいは刑が確定した受刑者だって、やはり基本的な権利というのは憲法上あるんだ、こういうことになっているわけですね。これが被疑者の留置規則には、警察法のいまおっしゃられた五条二項の十二、警察職員の活動の基準に関すること、そっちのほうから持ってきて、何でもかんでも公安委員会でもってできるんだ、国会は必要ない、こういうことになっているわけですね。これでいいわけですか。
  214. 高松敬治

    ○高松政府委員 従来から警察活動の基準として、たとえば犯罪捜査規範というようなものが国家公安委員会で定められております。これは警察官の勤務なり活動のしかたなりというものをきめるという意味でございまして、その場合に、たとえば犯罪捜査規範が、人権上のことを全然考えないで捜査のやり方をそこで規定しているかということになりますと、そうではございませんで、やはり刑事訴訟法を踏まえ、人権の尊重と事案の真相の解明というふうなことを前提にして、それに対する捜査のやり方、そういう規範を定めているわけでございます。被疑者留置規則につきましても、これは警察官に対して被疑者を留置する場合についての定めをしているわけでございます。その場合に、人権の尊重ということは、やはり当然に前提になっている。先ほどおっしゃいましたような、これが懲罰であるとか、拷問の道具になるとか、そういうことを考えてこういうことを規定しているわけではございません。ただ、留置所の管理と申しますか、留置所の管理について必要な限度の制限を加えることができる、こういうことで若干の制限規定を設けているにすぎないわけであります。
  215. 横路孝弘

    ○横路委員 憲法で適正手続条項というのがあって、いろいろ自由を縛られる場合には法律に基づかなければならぬ。法による強制ですね。こういう原則というものがあるわけです。これは法務省のほうにちょっとお尋ねしたいのですけれども、警察の関係になりますと、監獄法で代用監獄は認めておるわけですが、代用監獄の関係は、法務大臣の指揮権はそっちには及ばないわけですね、現実の問題として。捜査というのは、これは警察、検察というふうに一体になっている。ところが、こういうふうに全くばらばらに、片方は監獄法で規律する、片方は規則でかまわないのだ、こういう法の体系は、私はやはりこの辺は、人権を守るという立場から、これはどうしても一本化していく必要があるだろう。少なくとも監獄法よりも、いろいろな関係から言いますと、特に医者の関係そのほかから言うと、防声具の使用の取り扱いなんか見てもやはりだいぶ違う。片方は警察署にいて、片方はどこか拘置所にいるということになりますと、全然違う取り扱いになる。これではやはり私は問題があると思うのです。監獄法の改正の中でも、代用監獄をどうするかということは非常にむずかしい問題だろうと思いますけれども、その辺のところを矯正局としてはどういうようにお考えになっておりますか。
  216. 羽山忠弘

    ○羽山政府委員 現行監獄法及び現行監獄法施行規則の内容につきましても、大別して二つあると思うのです。一つ行政法学者の申しまする委任命令と申しますか、というようなもの。それからもう一つは、やはり学者の申します執行命令というようなものに属するものがある。執行命令に属する部分は、法務省令といたしましても、法務省の法務大臣の所管に属する職員しか拘束力はない。しかしながら、委任命令に属する部分は、それは、代用監獄として仕事をなさるときには、そこに法律的には少なくとも拘束力があり得るのではないかというふうに考えるわけでございます。  ただ、先ほど来御質問を拝聴いたしまして、ちょっと私、先ほどことばが足りなかったので補足させていただきますと、私どもも、戒具すなわち鎮静衣とか防声具というようなものをできるだけ改善をしていきたいということで、全然やめてしまうというわけではございませんので、その点をひとつ御了承いただきたい。  それから、実際問題といたしまして、刑務所でも、今日支所におきましては医師に非常に困っておりまして、専従の職員としての医者はもちろんのこと、ときどき来ていただくお医者さんにもこと欠くようなことがぼつぼつ出ておるわけでございます。これは、百七十ぐらいの施設を持ちました法務省におきましてもそうでございますから、千何十カ所というような本署をお持ちになっておる警察では、なかなかへんぴなところの警察もおありでございまして、お医者さんというような問題がなかなかすぐ解決ができないのじゃないか。かりに、臨時的に監獄法の委任命令に属する規定が、代用監獄業務というようなものをお願いしておりまする警察に適用があるといたしましても、はたしてそれが実際的にうまくいくかどうかというような問題は、おそらく警察のほうでさぞ御苦心の存するところではないかというふうに考えるわけでございます。
  217. 横路孝弘

    ○横路委員 だから、その医者がついてなければ使えないようなものは、使わないことなんですよ。私、この前のときにも提案したように、うるさくてしようがないというのならば、あるいは自殺の心配があるというのならば、そういうような房をつくればいいわけです。外に声が漏れないように、テレビか何かつけて監視するようにすればいいわけです。おたくのほうでは、刑務所を新しくするときには、そういう施設にかえているわけでしょう、現実問題として。だから、少なくとも流れに逆行していることは、これは間違いがない。私は、何でこんなものがいまごろ出てきたのか、全く理由がわからない。これは何か特殊のあれですか。沖繩でいろいろこれからまた学生が騒ぐかもしれぬ、あるいは騒いだら困るからやってしまおうというようなねらいがあるわけですか。たとえば、犯罪人だって、被疑者だって、これは同じようにやはり取り扱わなければならない。特に暴力団だからどうするとか、特にこれは暴力学生だからどうするとかいうようなことではいけないわけですね。どうもそこにねらいがあるようにしか思えない。でなければ、何でいまごろこんなものを、全然使ってこなかったものを、わざわざ警察に新たに制度として取り入れなければならないのか。一千万もお金を出してですよ。全く私はわからないわけでありますけれども、これはどうですか。この通達、規則の類ですね。鎮静衣とか防声具なんという、われわれの内閣委員会で網走の刑務所を見て、与野党を問わず、一緒に行った議員、みんなびっくりしてしまったわけですよ。職員が足を入れて見せてくれましたけれども、ミノムシみたいに首だけちょこんと出して、手足全く自由がきかない。あるいは狂犬にサルぐつわはめるような、あんなくつわみたいなものをはめてしまう。私もあれをはめてやってみましたけれども、全く口は全然動かぬし、あんなものをいまどき刑務所だって、皆さん、行くと言っておられる。持っているだけで全然使ってないですよと。こうおっしゃっているものを、わざわざこれから金を出して購入しようというほんとうの腹が、どうも私はよくわからない。「手錠、捕じよう等」ということで、「等」のところに問題があるというならば、それはやはり職員の規律の問題として指示をすればいいやつを、被疑者を拘束するものを、職員の行動なんというところから逆に考えなんという発想自身が、大体非常に大きな問題だと思うのですね。法律論はまたあらためて、今度公安委員長にぜひ出てきてもらって議論をするということにして、きょうはこの辺で終わりにしたいと思うのです。  そこで、委員長にお願いなんですけれども、できれば公安委員長を一度ぜひお呼びいただいて、そこでいまの議論をちょっとだけさせていただきたいということを要望して、私の質問はこれで終わりにしたいと思います。
  218. 高松敬治

    ○高松政府委員 いまのお話の、私もできればそういうふうな特別の部屋ができて、声が漏れないで、テレビで監視できるような部屋ができれば、それはもちろんよろしいと思います。私もそういうことができれば、こういう戒具などというものをあらためて使用するなんということよりも、たいへんそれはけっこうだと思う。ただ現実問題として、警察署は刑務所なり拘置所なりよりももっと狭い。それから房がどうしても並んで小さなところに集まっている。そういうところで留置場の保安と秩序を維持するにはどうしたらいいかということから、こういう問題が起こっているわけです。いまいろいろおっしゃっているような、ほかに目的があるということは決してございません。私どもの考えておりますことは、あくまでもそれの保安と秩序の維持をはかっていきたいということだけでございます。
  219. 横路孝弘

    ○横路委員 去年でしたか、京都でやはり矯正関係の国際会議というのが開かれて、いろいろ議論されたですね。この一九五七年の国連の基準というのはほんとうに最低の基準なんです。先ほど受田委員からも話がありましたように、おたくは、矯正というようなことじゃなくて、要するに取り調べをして真実を発見するのだ。真実の発見というとちょっと聞こえはいいわけでありますけれども、その捜査のいろいろなテクニックがあるわけで、そういう捜査する者とされる者という関係の中でこういうものを使われるというのは、刑務所で使うよりもやはり非常に大きな意味があるわけですよ。あるいは危険性というものがある。だから、その辺のところを考えてもらわなければ、法律的にも、法による強制あるいは適正手続という立場からも、こんな警察法の五条を持ってきて、こういうようなことを自由に規則で変えて、どんどん公安委員会でもってやれるのだというところに実は大きな問題が私はあると思うので、その辺は、公安委員長が来たときにぜひ議論をしていきたいと思いますけれども、やはりこんなものを使用するということはしないほうがいいんじゃないですか。それはあと一年、二年、もし皆さん方どうしてもおやりになるというならば、統計的な数字を毎年毎年出していただいてこれは検討していかなければならぬというように思いますけれども、刑務所でさえも年間一件、制度として残っているだけだというようなものを、わざわざこの時点でこういう制度を導入するというのは、どうも私は納得できないわけでありまして、その点ぜひ公安委員長にもう少しお尋ねするということで、きょうはこれで終わります。
  220. 伊能繁次郎

  221. 華山親義

    華山委員 初めに予定されておりませんでしたが、私から簡単にお尋ねいたしたいと思うのですが、最近の裁判所の判決の中で特に注目すべきことは、国家公務員の労働争議行為の禁止あるいは政治的行為の制限、そういうことについて、裁判所はしばしば無罪あるいは行政処分の取り消しを命じているわけであります。非常に大きな傾向であると思っておるわけでありますが、この問題については、別に私が政府の人事関係の方々にお尋ねをする機会があると思いますから、きょうはそれについて法務大臣にお尋ねをするのでございますけれども、十一月二日の新聞によると、法務大臣は、「戦前の行政裁判所がなくなった結果、裁判所が行政権にかなり介入した形になっている。おかげで行政官庁も困っている」、こういうふうに発言なすったと報ぜられております。これはほんとうにそうであったのかどうか、どういう意味でまたこういうことをおっしゃったのか、伺いたいと思います。
  222. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 私、新聞が全部私の真意を伝えておるとは申しません。一部は私が申したことそのままであります。というのは、私の申しましたのは、最近、裁判所が法律の解釈を誤っていろいろな判決が出ておるのに対しまして、われわれ訟務当局としましては、各級訟の上訴を引き受けてやらなければならぬ、こういう立場にあるわけであります。したがいまして、われわれから見ますと、法律の解釈を誤っておる。ただ非常に憂うることは、それがいかにも司法権が行政権に介入したような感じを与えておる。これを非常に私、嘆いて話したのであります。  御承知のように、行政訴訟に対しましては、二つの系統、大陸法的な方式と、それから英米式の方式で、戦前は大陸法式なやり方でありました。また戦後は英米式になってきたわけでありますが、これは各国でいろいろ学説もあり、いろいろ論争もあるところです。そこで結局、ただいま申しましたように、行政裁判所でなしに司法裁判所が判決をするということが、いかにも行政権に司法権が介入するという感じを与えておることから、いろいろ論議がありますし、いろいろ制度をくふうされておるのであります。折衷的な制度をとっておるところもあります。ただ、現在私どもが承知しております限りにおいては、現在日本では、最終的に司法裁判所が法律の解釈を全部やる、こういうことでありますが、また裁判所におかれましても、行政訴訟と民事訴訟ではいろいろ違った点もあるわけでありまして、できるだけ行政訴訟担当の専門的な裁判官を養成したいというようなお考えでおやりになっておるようでありますが、それも非常にむずかしいというような面もあるやに伺っております。したがって、これは非常に論議のあるところでありまして、いずれにしましても、司法権が行政権に介入しましても、行政権が司法権に介入しましても、三権分立の精神に反するわけでありますから、そういう形の見えないような方式なりあるいはやり方考えていくべき問題ではなかろうか、こういう考えを私は持っております。そういうようなことばがその新聞にあらわれておるのではないかと思います。
  223. 華山親義

    華山委員 大臣のおっしゃることに私は全面的に反対です。しかし、いまここで論議をするのもなんだと思いますから、論議いたしませんけれども……。  昔の行政裁判所のことをおっしゃたと思うのですが、私も法務大臣と同じように、若いころに役人でございましたので、行政裁判所に被告の代理としてしばしば出頭しております。しかし、行政裁判所は行政府とはほとんど別個の立場で裁判をした。行政機関ではあるようでありますけれども、独立した裁判をした。私も被告代理といたしましてしばしば訴訟で負けました。そういうふうなことでございます。私は詳しく調べておりませんけれども、昔の行政裁判所といまの司法裁判所との違いというものは、行政行為が憲法に違反しているかどうかという判断だと思うのです。それを行政裁判所が昔やったのか。そういう憲法違反というふうな問題が昔の行政裁判所と違うのではないかと私は思う。そうすれば、とにかく行政権が、あるいはまた国会の立法についても言えるかもしれませんけれども、憲法によって支配されている。それがほんとうに憲法に違反しているのかどうかという判定はどこかがしなければいけない。これは裁判所以外にはないわけです。  そういうふうなことで、現在の制度は非常にいい制度だと私は思っておりますし、それからこれは、国会なりまた行政府の行き過ぎといいますか、専断といいますか、そういうものを抑止、矯正する能力を持っているわけです。そういう意味で私は、現在の裁判所による行政訴訟というものはいいことだと思っております。ただ、普通のいわゆる徴税のしかたとか、そういうふうなことについての問題は、あるいは特別な裁判官でいいのかもしれませんけれども、結局は最高裁判所までいく問題なんです。途中のいろいろな煩瑣のことをおそれてはいけないと私は思うのです。  そういうことでございますが、このことにつきまして、その翌日の新聞等の多くの論調を見ましても、新聞の世論では、このたびの本所の事件につきましては、あのようなことで懲戒処分にするなどということは非常識だと言っている。法務大臣はそう思っていらっしゃらないらしい。そこに私は問題があると思う。そしてあの法律を見れば、当然法律をそのまま適用すれば人事院の裁定のようになるのかもしれませんけれども、それを裁判所は憲法に違反するといって取り消しを命じているわけです。そこに裁判所のいいところがある。しかも、これは下級裁判所でありますけれども、最高裁判所までいくところであり、憲法には、憲法に違反するかどうかは最高裁判所が唯一の機関としてこれをきめるんだ、こう書いてあるわけです。そういう意味から、特に憲法違反であるかどうかというふうなことは、行政府に対する抑止の作用としても私は重要なものだと思います。  こういうことについては、なお別に人事を扱う他の行政機関ともお話ししたいと思っておりますが、やはり私も反省しなければいけないと思いますけれども、大臣にそう申し上げてはなんですが、古い役人をやった者は昔に対する懐古があるのじゃございませんか。そして、それはよかったのだというふうなものの考え方は、私も反省しなければいけないのですけれども、やはりあるのじゃないかと思うのですよ。しかし、行政裁判所もそんな甘いものではなかったということも、大臣は役人時代にそういう御経験があるかどうか知りませんが、申し上げておきたい。また、そんなに甘い行政裁判所だったならば、これはもう意味がないわけなんです。  そういうことで、大臣はせっかくお考えになっているようですけれども、ひとつお考え直しを願いたいと思いますが、御感想があるならば伺っておきたい。
  224. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 私も、昔の行政裁判所がいいと申しておるわけじゃありません。そして、あなたのおっしゃることと結論的には同じかもわかりませんが、制度としては行政裁判所と司法裁判所と分けて、最後は最高裁判所に統一するというような、折衷的な制度が一番いいのじゃないかと理論的には私、考えておるわけです。先般も申したのでありますが、これは結局最高裁判所にいきます。そして最高裁判所で判決される問題であり、それによって明らかになる。ただ、それまでにいろいろな裁判が出ておることが、いかにも司法権が介入したようなかっこうに見える。かっこうに見えるということを私は申しておるのです。それはやはり制度として非常に考えなければならぬ問題ではないかというような気持ちもありまして申したわけです。またいろいろ御示教願いたいと思っておりますが、これはいろいろ非常にむずかしい問題だと思います。
  225. 華山親義

    華山委員 ちょっとついでにと言ってはなんですが伺いますけれども、先ほど法務省の方にも申し上げておいたからお考えおき願ったと思うのですが、国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律がありまして、その四条に、「法務大臣は、国の利害又は公共の福祉に重大な関係のある訴訟において、裁判所の許可を得て、裁判所に対し、自ら意見を述べ、又はその指定する所部の職員に意見を述べさせることができる」ということが書いてありますが、これにつきまして、先ほどからの御意見を伺うと、この間の木所の郵便局の問題については、相当不満と言ってはおかしいですけれども、不服でいらっしゃるようでございますが、この第四条によって、大臣、今後裁判所に出て意見を陳述なさるようなことはお考えになっておりますか。
  226. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 私が出て意見を述べたり、そういうことはあり得ないと思います。この制度もはたしてどうかと思いますが、要するに法務大臣は、国の行政訴訟に対して代理者といいますか、訟務部がタッチしてそうして訴訟をやる、こういうたてまえになっておるものでありますから、裁判に対してわれわれも批判せざるを得ない立場ではありますが、私みずから出て訴訟をやるというようなことはありません。
  227. 華山親義

    華山委員 これで終わります。
  228. 伊能繁次郎

    伊能委員長 次回は、明十一日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十一分散会