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田中国務
大臣 アメリカがとりましたことは、貿易収支が八十四年ぶりで赤字になった。これはもう二十億
ドルも赤字である、こういうことであります。失業は六%をこした、五百万人をこしたということでございます。インフレ傾向にある。これは私たちは必然的な状態だと思っておったわけです。これはいますぐこんな問題が出てきたのではなくて、日本が十四条国から八条国に移る当時、三十九年だったと思う。三十八年に当時のアメリカのケネディ大統領がケネディラウンドの推進をいいながら
ドル防衛政策ということを発表したわけでございます。キーカレンシーとしての
ドルの価値の維持ができなくなると、これはアメリカだけの問題ではなく自由世界の拡大基調が縮小均衡に移るおそれがある。これはお互いの協力によってこれらの問題は未然に防止をすべきである。これは理論としては正しいことでございます。そういうことから始まって、三十九年の東京総会には新通貨をつくるかもしくは
ドルをささえるかというアメリカの提案に対して十カ国蔵相
会議は結論を出して、新しい通貨としてのSDRの制度に踏み切ったわけでございます。もう
一つは世銀債を主要工業国の市場で発行して世銀の資金を拡大をしたという
二つで約七、八年間参ったわけでございます。その後シップアメリカン、バイアメリカン政策が進められて、対外援助も削減基調をずっと続けながら今日になって、ついに八十数年ぶりで二十億
ドル余の赤字が出るということでございます。ここに
数字がございますが、六六年二十二億、六七年が十一億、六八年に持ち直して二十五億、六九年三十六億、七〇年に三十九億という
黒字基調が一ぺんに二十数億
ドルというのでありますから、六、七十億
ドルも赤字が年間ふえるということであって何らかの処置をとらなければならぬことは当然であると思う、こういうことでございます。
あなたがいま御
指摘になったように、八月十五日にワンパッケージ政策を出したわけでございます。これは課徴金、対外援助の一〇%削減及び物価、賃金の凍結令という非常にドライな政策に踏み切ったわけでございますが、その後確かに十月は八億二千百万
ドルという大きな赤字が出ております。これはずっと四月、五月、六月、七月、八月まで悪いのです。八月十五日によくあの新政策を出したなあということは
数字を見るとよくわかります。四月二億三千万
ドル、五月二億
ドル、六月三億六千万
ドル、七月三億
ドル、八月二億五千九百万
ドル、これ全部赤字なんです。そして一カ月飛んで十月に八億二千百万
ドルというほんとうに例のないほどの大きな赤字が出ておりますから、これはもうどうにもならないということでございますが、私は必ずしもそうは思わない。そこがアメリカと日本とのこれからする交渉になっているわけです。
こういう
数字は当然出るんだ、これは二十五年間の帳じりとして出てくるのであって、新政策をやってもすぐきくわけがないじゃないか、当分の間はこれはこれで前進をするという
数字は避けがたいことであって、この事実をもって日本に攻めてきてもだめだという話が日米
経済閣僚
会議の主要議題になったわけでございます。またこの間コナリー氏が来たときも、私もそのようなことを言ったわけでございまして、まあ十月、十一月、十二月まではアメリカの国際収支そのものは、私はいままでの状態だと同じだと思います。思いますが、新年度の始まる六月まで見ますと、平価調整が行なわれたりいろいろなことが行なわれれば、実際的にアメリカが当初
考えた二十五億
ドルを歳入として見込んだ
程度の国際収支の改善は、私は可能だと思います。しかし失業とインフレの問題はちょっと片づく問題ではないと思う。これはとにかく膨大な海外投資をしているわけでございますから、とても私は片づく問題ではない。だから日米
経済閣僚
会議の議題としては、この三つの中で三つとも全部片づけようと思うのはむずかしい問題であって、まず貿易収支だろうということを述べておるわけでございます。
日本はいま、八月十五日からたいへんだ、たいへんだと言いながら、実質的には
数字的にはたいへんな
数字は出ておらぬのです。八月、九月、十月、十一月を見ましても、対前年度比三〇%ないし四〇%も
倒産件数も何か減っております。減っておりますが、これは全くいままでの状態における
数字であって、ほんとうにこれからの
数字というものは、私はこれから来年の一月から六月にかけてはアメリカは多少上向きになる、日本は横ばい、もしくは下がってまいる、こういうところが
数字の見通し。実勢に対する見通しが違うわけでございますが、そういう意味でアメリカはいま大きな赤字が出ておりますけれ
ども、新政策をとった
効果は出ると思います。日本は、いまの
数字はいままでの状態でもって慣性の理屈でずっと前進を続けている
数字でございますが、これはどうしても下降線をたどるだろうということでございまして、アメリカ自体はそういう見通しがつけば、一月大統領会談が行なわれるとすれば、それまでには少しでもいままでのような
数字では日米間が非常に困るのであって、多少でも新しい
数字がアメリカの
経済に
経済指標としてあらわれてくるだろうと思います。そういう意味では十一月末よりもできるだけ先のほうがお互い話をするにはぐあいがいい、こういうふうにいま
考えているわけでございます。