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1971-11-10 第67回国会 衆議院 大蔵委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十一月十日(水曜日)     午前十時四十分開議  出席委員    委員長 齋藤 邦吉君    理事 宇野 宗佑君 理事 木野 晴夫君    理事 丹羽 久章君 理事 藤井 勝志君    理事 山下 元利君 理事 広瀬 秀吉君    理事 松尾 正吉君 理事 竹本 孫一君       上村千一郎君    奧田 敬和君       木村武千代君    倉成  正君       佐伯 宗義君    坂元 親男君       地崎宇三郎君    中川 一郎君       中島源太郎君    坊  秀男君       松本 十郎君    三池  信君       村上信二郎君    毛利 松平君       森  美秀君    吉田 重延君       吉田  実君    阿部 助哉君       佐藤 観樹君    藤田 高敏君       貝沼 次郎君    合沢  栄君       津川 武一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君  出席政府委員         大蔵政務次官  田中 六助君         大蔵省主計局次         長       吉瀬 維哉君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省銀行局長 近藤 道生君         大蔵省国際金融         局長      稲村 光一君         農林大臣官房長 中野 和仁君         農林省農林経済         局長      小暮 光美君         農林省農政局長 内村 良英君         食糧庁次長   中村健次郎君  委員外出席者         大蔵省主計局法         規課長     戸塚 岩夫君         農林大臣官房参         事官      内藤  隆君         農林省畜産局参         事官      斎藤 吉郎君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 十一月十日  辞任         補欠選任   寒川 喜一君     合沢  栄君   小林 政子君     津川 武一君 同日  辞任         補欠選任   合沢  栄君     寒川 喜一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農業共済保険特別会計における農作物共済に  係る再保険金支払財源不足に充てるための  一般会計からする繰入金等に関する法律案(内  閣提出第一九号)  国の会計に関する件  税制に関する件  関税に関する件  金融に関する件  外国為替に関する件      ————◇—————
  2. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 これより会議を開きます。  農業共済保険特別会計における農作物共済に係る再保険金支払財源不足に充てるための一般会計からする繰入金等に関する法律案を議題といたします。  本案につきましては、去る十月二十九日提案理由の説明を聴取いたしております。  これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。広瀬秀吉君。
  3. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 最初に、食糧庁にお伺いします。  ことしの米の生産は二百三十万トンの生産調整ということなのでありますが、その点についてもあとで伺いますが、冷害あるいは台風被害、秋の稲作成熟期における長雨被害などによって、相当予想収量を下回る状況になっているわけでありますが、まず数字を、正確なところを最も新しい資料お答えをいただきたいと思います。
  4. 中村健次郎

    中村(健)政府委員 本年の米の生産につきましては、十月十五日現在の統計調査部調査によりまして、全国平均作況指数が九三、したがいまして、収穫予想量は千八十六万トンというふうに見られておりまして、当初われわれが需給で組みました生産見込み量の千百六十五万トンに対しまして約七十九万トンの減収になる、こういう状態になります。
  5. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 千八十六万トン、それで当初予想よりは七十九万トンの不足、こういうことでありますが、政府買い上げ予定数量が五百八十万トンでございましたね。この五百八十万トンが予定どおり購入できるかどうか、この見通しはいかがでございますか。
  6. 中村健次郎

    中村(健)政府委員 生産見込みが約七十九万トン減少いたしますが、政府買い入れにつきましては、その生産の減が直ちに政府買い入れ減少にそのままいくかどうかということにつきましては、農家消費の動向その他いろいろな事情で動きますので、いまの段階で必ずしも七十九万トンがそのまま政府買い入れの減というふうに言い切ることはできないと思いますけれども、一応七十九万トンが政府買い入れ減ということになるとするならば、五百八十万トンの予定が約五百万トンになる、こういう計算になります。
  7. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 まだはっきりしないと言うけれども、千百六十五万トンの生産を当てにして五百八十万トンの政府買い上げをする、こういう計算であったわけですね。ところが、八十万トン近くも減少している。しかも問題は、ことしは成熟期における長雨あるいは台風被害というようなことで、青米ができたりあるいは腹白ができたり、よくいうしいなが非常に多い、こういうようなことを考えますと、いわゆる等外米というような、いままでは政府買い上げ対象にならぬようなものまでも買い上げなければ、この買い上げ予定数量を満たすことはかなり困難になるのではないか、こういうように思うのです。この品質等級というようなものによってこれはかなりむずかしい事態になるのではないかと思うのですが、そういういま私が申し上げた事情を考慮して買い上げ数量というものが一体どうなるのか、この辺の見通しも伺っておきたい。
  8. 中村健次郎

    中村(健)政府委員 先生のおっしゃいますように、ことしの天候は異常な天候でございましたので、米の収量が減るのみではなく、品質につきましても下位等級のものが多くなるということは予想をされております。しかし、一応数量的には五百八十万トンの計画が約五百万トン程度に最悪の場合なるであろうというふうに考えております。ただ、五百八十万トンのうち四十七米穀年度消費予定しております数量は、御承知のように、四百八十万トンでございますので、五百万トンの買い入れがあれば、なお年度末には二十万トンの四十六年産を持ち越すということができるような需給事情になっておりますので、この程度減収買い入れ見込みであれば、需給上の心配はないというように考えております。
  9. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 需給心配はないというお話でありますが、農民立場に立ちますと非常に問題が多いわけであります。と申しますのは、やはり五百八十万トンは買ってもらえるのだということで生産調整にも協力をし、そして自然災害によってきわめて品質の悪いものができたというような場合に、大体二、三等米というようなところがおそらく二、三〇%減少しているだろう。いままで大体二、三等米に間違いなくなる予定のものが四等米になりあるいは五等米になる、あるいは等外米が非常に多い、こういうようになった場合に、いままでの慣例どおりに、五百八十万トンに満たなくても、この等級買い上げになるおつもりなんですか。今日までは等外米は買わぬことになっておりました。しかし、前には等外になった場合でも買い入れるという措置をとったこともあるわけですが、このことはもう一切考えない、こういう立場で考えておるわけですか。
  10. 中村健次郎

    中村(健)政府委員 現在、五等までは政府が買うことにいたしておりますので、一−三等の上位等級が減り、四、五等がふえるという面につきましては、量的には、どちらにいたしましても五等までは買うということになりますので、これは政府買い入れ量には関係がございませんけれども、いま申されました等外米あるいは規格外米につきましては政府は買わないようなことに相なっております。ただ、今年のような異常な災害天災融資法対象になるような大きな災害がございまして、等外規格外米が多量に発生する、そのために農家経済に影響が大きいという場合には、特別に等外規格外のもので食糧になる程度のものにつきまして規格を設けまして政府買い入れをするということを例年やっておりまして、本年につきましても、すでに北海道千葉県のものにつきましては、規格外米等外米を買うことにいたしております。
  11. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 規格外米買い入れは、北海道千葉県だけに限るわけでございますか。
  12. 中村健次郎

    中村(健)政府委員 現在のところ、特に大量に発生し問題が起きておりますのが北海道並び千葉県でございますので、この二県につきましては、財政当局とも協議の上買い入れをすることにいたしておりますが、その他の県につきましても、特にそういった等外規格外が大量に発生するというふうな地帯につきましては、現在いろいろ調査をし、検討をいたしたいと存じます。
  13. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 十分その点配慮をしていただかないと、たいへんなことだと思うわけであります。  そこで、角度を変えてお伺いをいたしますが、この七十九万トンの減少、また品質の低下、下位等級に格下げされる、あるいは等外米が多量に発生する、こういうようなことを含めて農家損害額はどの程度と見込まれておりますか。——数字を調べている間大蔵省に聞きますが、大蔵省は今度の法案で、農業共済保険特会農作物保険金支払い財源不足に充てるということでこの法律をつくって、四十九億四千二百十二万円を一般会計から特別会計に繰り入れをするわけですね。これをやるのにどういう数字的根拠を持ったのですか。農林省のほうの数字あとで聞きますが、大蔵省としては被害金額を。
  14. 小暮光美

    小暮政府委員 被害額、おくれまして失礼いたしました。水稲関係で五百十億五千万という被害金額を見込んでおります。
  15. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 さらにもう一つ伺っておきますが、米は二百三十万トンからの生産調整をやるということで休耕あるいは転作をしているわけですね。この分、得らるべき収入が得られなかったというものは、これはもちろん生産調整のための奨励金が出るわけですが、米の三等建て値といいますか、そういうようなもので平均されるとして、その得らるべき金額をはじいて、それに対して幾ら奨励金で補てんをし、差し引き幾らその面での農家所得減があるのか、こういう数字はおわかりでしょうか。
  16. 内村良英

    内村(良)政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの三等に換算して幾らになるかという数字は、ちょっとただいま数字を持っておりませんけれども生産調整奨励金は千六百九十六億円。これに転作等関係で十六億円ふえまして、千七百十二億円が生産調整奨励金として農家に交付されるわけでございます。  そこで、生産調整奨励金考え方でございますが、大体農家の米による所得の六割ぐらいとそれから休耕田管理その他に要する経費を補償しようという考え方になっております。ただ、全体の額が三等換算で幾らになって、それから生産調整奨励金で交付されるものはどうかということについては、ちょっといま数字を持っておりませんので、必要があれば後刻提出したいと思います。
  17. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 その数字を出していただきたい。それから十六億追加して千七百十二億円、そういうことになって、それを引いてもなお農家所得減というものは当然ありますね。この金額幾らになるかということもあとで明らかにしてもらいたい、そういうように思います。  それから、続いてお伺いしますが、ことしは二百三十万トンの生産調整をやるという予定を立てて、実績はどのようになりましたか、この数字をお伺いいたします。
  18. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいまのところの実績は、二百三十万トンに対して二百二十五万九千トンになっております。ただし、まだ最終的に確認をしなければならぬところが少し残っておりますので、多少その数字は動くかと思いますけれども、ほとんど変わらないと思います。
  19. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 さらに続いてお伺いいたしますが、ここ三年来ですか二年でしたか、三年来と私は記憶するのですが、生産者米価は引き上げなかった、基本米価は引き上げないということが続いたわけであります。過去のことは聞きませんが、昭和四十六年度において農家かなり所得減になっている。それに対して国家の要請によって米作農民がこれに協力するという形をとってはおりますけれども、ある程度上からの押しつけのような形で生産調整協力をさせられる。そういう中で生産者米価が据え置かれてきている。しかも農家生活のために購入しなければならない農業資材等についても、それぞれ値上がりをしておる。物価上昇というものは依然として——米がかつては物価値上げの元凶などといわれた、PRも行なわれた時代もあるけれども、米の生産者米価を上げなくても、やはり依然として物価上昇の騰勢というものはとどまらぬわけですね。しかもことしは経済企画庁長官ですら国会において六%をこえるであろうと言わざるを得ない状態になっておる。そういう中で、やはりこの物価上昇が一方においてあり、生活必需物資はそれで購入しなければならぬ。しかも農家収入の大宗をなす米による収入というものは、米価据え置きという形になっているということで収入はふえない。こういうことでの農家の、これは消極的な意味での損害額、こういうものがあるだろうと思うのでありますが、推計はその分どのように算定をされておられるか、この点をお聞きをいたしたいと思います。
  20. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいまの御質問数字計算は、これは非常にむずかしい問題が中に包蔵されていると思います。たとえば米価据え置きによって幾ら損害を受けたかということになりますと、それでは一体どういう米価基礎にしてその損害計算するかということになります。先ほどもお話がございましたように、生産調整の結果ということでございますと、数量米価がきまっておりますから、これは計算できますけれども、ただいま御質問の点の計算は、私どもとしてできれば資料をお出しするように検討はしてみますけれども、中にはなかなか計算上技術的にむずかしい問題があるのではないだろうかと思います。
  21. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 いろいろこの数字のとり方も非常にむずかしいし、計算方式もむずかしいだろうと思うのです。しかし、やはり現実の農家は、諸物価が上がる中で米だけ据え置かれているということによって、われわれは非常にひどい目にあっているという実感が非常に強いのですね。そういう点を考えると、農林当局としては農政立案一つ基礎資料として、やはり何らかの形でそこまで試算をしておくべきであろう、こういうように思うので、これはむずかしい点は私もわかる、いろいろ諸元というか諸要素というものをどういうようにはじいていくか、農家収入の中で米の収入が何%かということは言わぬにして毛、まあそういうむずかしい計算方式をしなければならぬだろうということはわかるけれども、その辺のところもひとつ知恵をしぼってはじいてもらって、資料としてあとで私のところへ届けておいていただきたいと思うわけであります。  そこで、質問を次に移しますが、先ほど数字をお示しいただいたように、七十九万トンからの減収がある、政府買い上げ米も五百万トンになるか、あるいはそれ以上になるかそれ以下になるかまだわからぬ、こういうような状況なのであります。そこで、私ども前の通常国会におきまして食管特別会計法の一部を改正いたしまして、いわゆる過剰米処理法案というものをここで審議をしたわけであります。当時この過剰米数量として大体四十五年度見込み六百五十四万七千トンということで、これを四十六年から四十九年の間に二百万トン、二百万トン、二百万トン、そして端数の五十四万七千トンを最終年次処理をする、処理の方法としては飼料用あるいは工業用あるいは輸出用、こういうように考えて、このような用途に向けて過剰米処理していく、こういうことを審議して、前国会を通過したわけでありますが、この計画は、先ほどのことしの産米生産数量それから買い上げ数量見込みというようなものの中から、これは何らかの変更をせざるを得ないだろうというように考えるのでありますが、その点いかがでございますか。
  22. 中村健次郎

    中村(健)政府委員 過剰米処理につきましては、先般の国会におきまして特別会計法の改正をお願いいたしまして、損失の繰り延べをいたすということになりました。その際に、見積もりとして提出申し上げました処理計画が、先ほど先生のおっしゃいました総数で約六百五十四万トンという数字でございますが、これは初年度の二百万トンの計画が一応計画としてきめられておりまして、あとは一応の見積もりとして出した数字でございます。と申しますのは、過剰米一般配給、売却あるい買い入れ量変動——当時まだ四十五年産米買い入れ量が確定いたしておりませんので、それらの変動によりまして総体数量にも、過剰米として処理しなければならない数量につきましても変動があるということでございますので、一応見積もりということで出してございます。  なお、この過剰米として見込んでおります数量は四十五年産までの米でございまして、四十六年産米以降のものにつきましては、これは生産調整によりまして単年度需給方式過剰米は出さないということでやっておりますので、今年の四十六年産米作況によりましてこの数量変動いたしましても、この数字には変化がないというように考えております。
  23. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 そうおっしゃるだろうと予想はしておったわけでありますが、ことしの買い上げ米が非常に少ないというようなことで、あるいはまた米の消費も若干ふえているというような状況もぼつぼつ出ておるというようなことも考えれば、四十五年産米をこの四十六年産米に加えて需給計画の中にのせていかなければならぬ、配給計画の中にのせていかなければならぬ、そういうような事態もあるのではないか。さらにまた、来年も生産調整というようなものを続ける方針のようでありますが、そういうものを含めて、またことしこういう状態になった、先ほど冒頭に申し上げたような不作ということになると、生産調整の上に不作あるいは凶作というようなことになって非常な打撃を受ける。農民自身がこの四十六年というものを契機にして非常に米に対する生産意欲あるいはまた広くは農業それ自体に対する意欲というものを失って、どんどん出かせぎに出る、地場における土建屋の下働きのような日雇い労働者に転化をするということがかなりふえていくだろう。東北地方にも私ども国政調査に参ったのですが、その中でも、ことしはドル・ショックが加わった不況によっていい出かせぎ先はだいぶなくなってきたというけれども、しかし、こういう農業の年々自然の災害を受ける、しかも人為的な生産調整あるいは米価据え置きというような、もうダブルパンチでない、トリプルパンチ以上のパンチが集中するというようなことで、生産意欲というものが非常に失なわれる一つの大きな契機になるのではないかと思うのですね。  そうしますと、来年以降もかなり生産意欲が減退して、あなた方がお出しになる生産調整というものは、休耕が許されるならばどんどん休耕して、もう水田をほうりっぱなしにして、何らか農外所得をかせがなければならぬ、こういうようなところにいくのではないか。そうなりますと、この過剰米処理というものもかなり変更が行なわれてくるのではないかというような気がするわけであります。その点の見通しを伺いたいことと、それから今日における農業の実態の中から、農業所得がどんどん減少をして、農外所得がいまや五十何%というような、これは場所によっても違うけれども、完全に農業所得が三六・五%ぐらいですか、こういうようなところまで落ち込むという事態になってきているということに対して、将来の農業を展望して、主食を自給するという体制がかなり困難になる事態を迎えるのではないかという心配をするわけなんだけれども、その辺のところの見通しというものを農林省として一体どのように立てておられるのか。二点についてまず伺いたい。
  24. 中村健次郎

    中村(健)政府委員 第一点の問題について、食糧庁からお答えを申し上げます。  過剰米処理計画を立てました際に、四十五年産米につきましては、主食用として使用するもの約百万トン程度を四十七米穀年度へ持ち越す、持ち越して四十七米穀年度消費するという計画需給計画を組んでおります。したがいまして、これが現在約百六十万トン程度の持ち越しになっております。そのうち百万トン程度通常配給に使うということで、六十万トン程度過剰米という計算になっておるわけでございますが、四十六年産米がこういった不作でございましても、一応四十六年産米を四十七年度に食べる予定は、四百八十万トン程度予定をいたしておりますので、現在の買い入れ見込みからすれば、なお若干の余裕があるという状態でございます。したがいまして、特に四十五年産米、古米を百万トン越しまして、大幅に消費に、配給に使うということは必要はないのではないか、こういうふうに考えておりますので、過剰米処理計画にもそう大きな変化はなくて済むであろう、こういうふうに考えるものでございます。
  25. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 将来の見通し……。
  26. 中村健次郎

    中村(健)政府委員 将来の問題につきましては、今後二百三十万トンにものぼります生産調整をやっているような需給情勢でございますので、将来の米の需給に対しましては、潜在的にまだ過剰な状態でございます。生産力として過剰な力を持っておりますので、将来のそういった米の需給に対しましては、十分に対処していくことができるかと考えております。
  27. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 食糧庁は、米の国内における需要というものは、かつては、六、七年前というか、十年前くらいですか、五百五十万トンくらいだ、月大体五十万トン程度だといった時代から、いま四十万トンに落ちている。十二カ月で四百八十万トンですから、先ほど言っているように、四百八十万トンくらいだというわけですが、どの辺まで米の需要というものは減退をするのだろうかということを、五年先、十年先というようなことを予想して、米の配給量というものは、食管制度を続けていくということをもちろん前提にして、どの辺のところに長期見通しを持っておるのか。これについて何らの手も打たぬで、米は減少するのだ、——どの程度まで減少するのだ、そういう見通しについて、どの辺のところで数字を押えられておりますか。
  28. 中村健次郎

    中村(健)政府委員 将来の需要見込みにつきましては、現在までの趨勢、食生活変化等を勘案いたしまして、一人当たり消費量の推移、人口の移動等を考えて、先の見通しを立てまして需給計画を組んでおります。それに沿って生産調整その他の政策をやっておるわけでございまして、その見込みにつきましては、いままで非常な一人当たり消費の減を来たしておりましたけれども、最近は多少そういった減る傾向が鈍化いたしております。そういった傾向十分計算に入れまして、先の見通しを立てております。
  29. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 答弁になっていない。四百万トンなのか、四百五十万トンなのか。どういう見通しを立てているのか。その見通しなしじゃおかしい。
  30. 中村健次郎

    中村(健)政府委員 ただいま見通し数字を調べまして、後ほど申し上げます。
  31. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 どうもそういうきわめて重要な問題を審議するにあたって、基本的な数字をしばしばいまはわからぬというような言い方をされることを非常に遺憾に思うわけなんですが、次に質問を移します。  この稲作生産調整で、これは四十五年の目標数字、あるいは四十四年あたりも大体そんなことではなかったかと思うのですが、非常に転作転作ということを奨励しているはずなんだが、転作をされないで休耕——皆さんの出した農業白書を見ましても休耕が六六%だ、それから林地転換が一%、これはわずかですが、そのほか土地改良通年施行ということで、米をつくらぬで夏場ずっと続けてやるというようなことで一二%、転作はわずかに二一%だ、こういう数字が出ておるのですが、四十六年においてのこれに見合う数字をひとつ示していただきたいと思います。どのようだ状況ですか。
  32. 内村良英

    内村(良)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生からのお話がございましたように、四十五年は転作が二一・九%でございました。それが四十六年は四五・四%、面積にいたしまして、四十五年は七万三千八百十五ヘクタールであったのが、四十六年は二十四万五千百三十二ヘクタールになっております。それから休耕のほうは、四十五年は七七・七%、面積にいたしまして二十六万二千四十三ヘクタールでございましたが、それが四十六年は、生産調整数量自体も多少ふえた関係もございまして、二十九万二千五十三ヘクタールになっておりますが、比率は五四%ということで、四十六年は転作が非常に比率がふえております。
  33. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 今後、来年、たとえば百五十万トンなら百五十万トン、あるいは百二十万トンなら百二十万トンというように生産調整をかりにやられるとして、この傾向というものは、もっと転作の比率というものが大きくなる、あるいは大体この辺のところでもう転作は横ばいか、そういう点ではどのようなことでございましょうか。どういうように指導されるおつもりで、またその実績が出た場合に、大体そのくらいになるだろうという見通しを持っておられるのだろうと思いますが、四十六年はいま伺いましたが、四十七年に生産調整をやられる場合に、この転作のパーセンテージというものはもっと上げていくというお考えなのか、まあこの辺のところでしかたあるまいということなのか、その辺のところはどのようにお考えでしょうか。
  34. 内村良英

    内村(良)政府委員 四十六年の生産調整の実態について調べてみますと、休耕が多いのは都市近郊、それから山間部に休耕が多いわけでございます。都市近郊が多いのは、やはり基幹労働力がもう他産業に出てしまうということで、この際米をやめようかというような感じになっているようでございます。それから山間部では、なかなか適当な他作物がない。それからさらに、いわゆる平場の米どころで、湿田地帯でほかのものが植わらぬというようなところに休耕が多いようでございます。しかしながら、一般的に申しますと、特に西日本を中心に転作が進んでおりまして、私どもといたしましては、やはり米の需給構造は過剰ということでございますので、この転作の定着に大いに力を尽くしたいというふうに考えております。その場合に、やはりいろいろな自然的条件その他から、東日本よりも西日本のほうが転作が進みやすいという状況になっております。
  35. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 転作は大体どういう内容になっておりますか。野菜か、果樹か。果樹というようなことになれば永久転作ということなんですが、その中身はどういうように内容的に分布していますか。
  36. 内村良英

    内村(良)政府委員 お答え申し上げます。  作物別に見ますと、野菜が六万八千ヘクタール、飼料作物が六万五千ヘクタール、この二つで大体転作面積の五四%を占めております。それから次いで豆類が四万一千ヘクタール、それから果樹、桑等のいわゆる永年性作物が一万八千ヘクタールということになっておりまして、野菜と飼料作物が多いということでございます。
  37. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 野菜がそういうように転作の寄与率も非常に高い、転作に占めるウエートが非常に高いわけなんだけれども、ことしの物価騰貴、九月あたりにおいても物価上昇に対する寄与率がやはり依然として野菜が非常に高いのですね。野菜についてはいろいろ産地指定などを行なって、すでに五百六十一カ所ぐらいやっているのですか、そういうようにやっているわけです。作目もいろいろ追加をしたりしてやっているわけなんだけれども、依然として野菜が——ことしは特に気象条件による不作ということもたたったのかもしれぬけれども、これが物価上昇に非常に大きく寄与する不幸な事態になっている。このことについて、一体水田からそういう野菜の方向に農林省の大きな指導方針として転作の方針というものはお持ちなのかどうか。転作についての基本的な指導の方針ですね。野菜にいくなら野菜を中心にやってもらいたいと、そういうような指導というものはなされておるのですか。その基本的な考え方転作についての基本的な指導の方針、こういうようなものはどういうようになっておるのか。
  38. 内村良英

    内村(良)政府委員 転作を進めます場合に、やはり適地適産ということが大事なわけでございます。たとえば西のほうでは団地が多うございますから、たとえば野菜を進める、それから牛の多いところでは飼料作物を進めるというように、適地適産ということを考えてやらなければならぬということで、生産調整の割り当てにつきましても、いわゆる農業生産の地域分担というものを、昨年農林省が大体ブロックごとに、この地域ではこういうものをこれからつくったほうがいいじゃないかというような一つのガイドポストといたしまして、そういう地域分担の指標というものをつくったわけでございます。それを織り込みまして生産調整数量もきわめているわけでございますが、もちろんそれだけではなしに、ほかのたとえば米の生産量とかあるいは政府買い入れ数量とかももちろん勘案しておりますが、そういうものを勘案して生産調整の目標数量をきめておるわけであります。  そこで、具体的には、そういうガイドポストといたしましてブロック別につくってあるわけでございますが、県ごとあるいは市町村の計画ということになるわけでございます。それにつきましては農業振興地域の問題といたしまして各市町村が計画をつくっておるというようなことになっておりますので、そうした面で適地適産ということを中心にして転作を進めていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  39. 中村健次郎

    中村(健)政府委員 先ほど数字をさがしておりまして失礼申し上げました。お答え申し上げます。  消費量見込みといたしましては、四十四年度実績が総消費量で千九百九十六万五千トンという数字でございますが、これが五十二年度見込みまして千百六万三千トンという見込み需給を考えております。これは農家消費も含めましたすべての米の消費量でございますので、この中のどの部分が政府買い入れなり自主流通米なり、そういった形で流通するかは、これは年々によって違ってくるわけでございますけれども、大体の傾向といたしましては、おおむね農家消費量が、人口の都市への流出等によりまして、大体年間二十万トン程度毎年減ってまいっております。一方、都市の消費につきましては、人口増等ございまして約十万トン程度ふえている。したがいまして、流通量としては大体十万トン程度が減ってくる。こういった形で自主流通あるいは政府米の流通数量変化してくるというふうに考えております。もちろん一人当たり消費量そのものが減ってまいりますので、人口の移動だけで計算はできませんけれども、そういう形で今後推移していくであろう、こういうふうな考え方で一応見込んでおります。
  40. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 それはけっこうです。  この野菜の問題ですが、ことしの物価上昇にもたいへんな寄与率をあげておる。そういう中で、米の生産調整による転作を含めて、その前から野菜の産地指定あるいは需給安定などによっていろいろ努力はされているんだけれども、依然としてこれが直っていないのですね。改善された実績というものを私ども見ることができないのです。これはもちろん消費構造の変化というようなものも考慮に入れなければならぬだろう。いままでどおりの野菜の消費構造ではない、いろいろ消費が多様化してくる、近代化しているというか、高級化しているというか、そういうようなものもあるけれども、努力のわりには一向にこの問題が改善をされた実績というものを私ども見ることができないんだけれども、この生産調整によるものなども、それは地域分担指標をつくって、それぞれ農業生産の目下の傾向というか、そういうものなんかもあって、そういうものもにらみ合わせながらそういうものをつくっている。しかし、そういうものが適地適産だということで各県市町村が計画をつくることになっている。この国土全体を通じて、日本国全体を通じて一億一千万の人口がいる。この人口がどの地域でどれだけどういう野菜を消費するんだ、それに見合って、どこの地区の分はどこがつくるというような計画性を、非常に高度の計画を持った計画生産あるいは計画出荷という体制を、農林省が全体をにらんで、各市町村がやっているのですからこれはなかなかむずかしいということではなしに、やはりそういうものをしっかり握って、それにふさわしい適地適産も考慮をしながら、地域指標ともにらみ合わせながら計画生産方式というものをやって、ここではこういうものをこれだけつくってもらいたいというような、そういう方式というものがやはりなければ、非常に生産のばらつきもあり、また値段も決して下がることはないだろう。  そういう点で初めて農政が存在するということが言えるだろうと思うけれども、各市町村ごとに計画をしておるのですという言い方は、やはり適地適産ということが農業には自然的にあることだけれども、それをにらみながら全体的な需給関係というものをにらみ合わせて計画的に適地に生産を割り当てるということも——これはいわゆる規制だとか強圧的な天下り統制ということを意味しないけれども、十分その土地の人たちとも創意を生かしながら密接な協議を遂げた上で、そういうものを全体的なマクロの計画の上に立ってそういうところに要請をし、協力を求めていくというような、そういうものがやはり組み立てられなければならない時期に来ていると思うのですが、そういう問題について一体農林省としてはどういうようにお考えなのか。  野菜がいつでも、物価上昇といえば経済企画庁長官が予算委員会でも苦しい答弁をなさっている。ことしは少し日照りでした、ことしは少し長雨でした、これで不作でした、だから上がったんです、こういうような答弁はもう聞き飽きているわけですね。しかも、物価上昇においていつでも最高の寄与率を示しているということにずっとこのところ変わりない。そういう事態に対して根本的に大きいマクロの立場で、しかも綿密な計画生産というものをやる方策というものについてどのように構想を持ち、計画をされているのか、この辺のところをひとつお聞きしたい。
  41. 内藤隆

    ○内藤説明員 野菜の問題につきましてのお話でございますが、先ほど先生から御指摘がございましたように、現在農林省といたしましては、指定産地制度と価格の補てん制度というものを軸にいたしまして、供給の安定をはかるというような方策をとっているわけでございまして、物価上昇に対する寄与率も年間を通じますとそれほどではございませんが、本年の十月でございますか、相当高い寄与率を示したというような点も先生の御指摘のとおりでございます。ただ、最近におきましては、この夏に秋冬期の問題野菜につきまして、若干計画的要素を加味いたしました供給増と申しますか、価格保障制度の強化という措置をとりました関係もございまして、大根それからキャベツというようなものにつきましても、現在におきましてはむしろ東京市場等におきましては若干荷もたれぎみと申しますか、十一月に入りましてから相当低い水準で推移しておりますので、十一月段階におきましてはある程度そういうものも鎮静するのではないかというふうに考えております。しかしながら、先生御指摘のように、今年度の秋冬期の野菜につきましては、臨時的に計画出荷量に応じます国の補てん率の引き上げというような計画的要素を入れたわけでございますが、指定産地におきます指導員の制度それから振興産地の育成というようなことと並びまして、全国指定消費地域と指定産地をリンクしているわけでございますけれども、大市場におきます需要とそれから供給が、これも先生御指摘のように、非常に不安定な要素がございますので、何らか計画的な生産それから出荷、特に大消費地に対する輸送というような、産地の結びつけということを強化する必要があるというようなことを考えておりまして、四十七年度以降の対策といたしましては、計画生産計画出荷のための価格補てん制度の充実、それから輸送、市場隔離というような措置に対しましても漸次強化をはかって、計画性を増していきたい、そういう方針でおりますので、全く先生の御指摘のとおりだ、こういうふうに思っております。
  42. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 そこで、ことし幾らか大根、白菜等については効果があらわれてきた面が見えている。これは一つの明るいことであるかもしれないけれども、四十四年、最初に生産調整をやったときに転作がきわめて少なかったということは、これは野菜づくりをやることは、足りない、暴騰しているというようなこともあるけれども、これでまたみんなばっと野菜づくりにいったらこれはまた大暴落で、群馬県の吾妻地方ですか、あそこでキャベツ畑をブルドーザーで全部結球したやつをそのままとっ払ってしまってやったなんという、ああいう悲劇を繰り返す豊作貧乏というようなことになってはいかぬという農民一つの知恵が働いた。ところが、その後野菜がやはりどんどん上がっている。大根一本二百円の呼び値が小売り店等で出たなんという事態があったというので、四十六年度では転作がそういう方向にかなり進んだ。五四%を転作の中で野菜が占めたということもそういうことがあるだろう。それだけにやはり全体的なマクロの立場に立った計画生産というものがきちっとして、需要に見合った安定供給が行なわれる体制というものが非常に必要な段階なんです。  そこで考えられることは、やはり価格保障の問題が一つある。これは、農業基本法は十年の歴史を経たわけだけれども、その中で一番問題でわれわれ社会党が指摘をしておったのは、農業基本法には価格保障の政策というものが欠如している、農産物価格に対する安定政策というものが欠如しているということが一番大きいガンだったのだが、産地指定をやったり何かする中で、そういうものもぽつぽつ県独自で先行してやったというようなことで、農林省がそれを見習って追っかけたようなかっこうになっているわけですね。そういうものがあるということは、これもたいへんけっこうなことです。  それと同時に、貯蔵というようなことがあります。やはり一気に市場になだれ出て、いわゆる豊作貧乏という、もう農民がこれほど歯を食いしばって今日までつらい思いをしてきたものはないのですね。一生懸命精出して値段が二束三文で、肥料代やっとこだという状態になる。こういうようなことの繰り返しを何十年となくやってきたというところに、なかなか農民の自主的協力というものが得られない原因もあるわけですから、そういうことにならないように、やはり貯蔵の問題というようなことで、常温あるいは冷蔵倉庫、それぞれのものによっていろいろ違うけれども、そういうものの適正な配置、しかも必要にしてかつ十分というような貯蔵施設の配置というようなものについては、いま御説明がなかったのだけれども、こういう問題についてはどのようにこれから拡充をされていくお考えなのか、この点伺いたい。
  43. 内藤隆

    ○内藤説明員 いま先生の御指摘のように、野菜につきましては、供給を調整すると申しますか、そういう点が非常に重要でございますので、タマネギ等の貯蔵性のあるものにつきましては、共販率を高めまして、計画的に出荷をやっていくというようなことを通じまして価格の安定をはかる。必要な場合には若干量の輸入を行ないまして供給の不足を補うと同時に、国内のものにつきましては計画的に出荷していくというようなことが重要だろうと思いますが、それ以外の洋菜類、それからキャベツ等につきましては、貯蔵にはもちろん一定の限界がございます。しかしながら、先生御指摘の冷蔵倉庫等を充実いたしまして、不時に備えると申しますか、一定のストックをするということは、供給調整、それから分荷と申しますか、荷の配分上も非常に重要なことでございますので、明年度以降におきまして、従来とも産地段階の貯蔵庫等につきましては若干の施策をとってまいったわけでございますが、将来はさらに規模の大きい冷蔵倉庫を消費地等に設置する。国はそういうものに対して助成をしていくという方向で、四十七年度以降大消費地を中心に検討いたしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  44. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 これはやはりそれぞれの県、市町村なんかでも農協などとタイアップして、あるいは助成金を出したりあるいは補助金を出したりというようなことでかなりやっているけれども、それだけでは足らない。これは国の補助等もいただかなければならないことでありますから、そういうものについても積極的な態度をもってやはり善処をしてもらうように要請いたしておきたいと思うわけです。  それから、私ども農業問題をこの委員会で審議する機会というのはあまりないし、私ども勉強不足だし、農業問題ばかり調べているわけにもいかないので、たいへんしろうとのような質問をするわけなんだけれども、三十六年、農業基本法ができたそのときに、いわばスローガン的にうたい文句として、畜産三倍、果樹二倍、選択的拡大ということがいわれたわけですね。この状況は一体どうなっているのですか。畜産三倍になったのですか、果樹二倍になったのですか。
  45. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、昭和三十七年の五月に公表いたしました「農作物需要生産長期見通し」、農林省でつくりました。それによりますと、御指摘のように、果樹が二・一六倍、牛乳が三・四四倍、肉類は二・五六倍、こういうふうに見ておるわけです。それの実績でございますが、まだ正確には四十四年までしか出ておりませんが、果実は一・七二倍までいっております。年率にいたしますと、計画では六・七%ずつ伸びると思っておったのが、果樹は五・六%で、若干見通しより低目でございます。牛乳につきましては、三・四四倍、年率一〇・八%伸びると思っておりましたのが、二・六倍、年率にしまして一〇%程度伸びておりますので、最近まで見通しまして、大体見通しどおりいくのではないかというふうに思っております。それから肉類につきましては、二・五六倍、年率八・二%伸びると思っおったわけでございますが、これが二・九倍、年率にしまして一一・二%ということで、見通しを上回っておる。こういう状況でございます。
  46. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 大体近似値が出ているというお話でありますが、日本の酪農業も、牛乳は三・四倍と想定したのに対して二・六倍だ。これもまあわりあい近い数字ではないか、こうおっしゃるわけだけれども、畜産、酪農ももう頭打ちになって、ここ二、三年来というか、これは非常に伸びが悪く鈍化をして、横ばい状態になっている。これ以上の伸びはないのではないか。しかし、まあ、この需要というのは着実にやっぱりふえてくる。そういうことになると、この需要と国内における生産の乖離というものは、やっぱりどんどん広がっていくのではないか、こういうように思うのです。そしてまた、果樹についても二・一六倍を想定して、一・七二倍だ。これもまあ近いといえば近いですけれども、まだまだ足らんのではないか。二倍には満たない。こういうような原因は一体どうなのか。目標を完全に突破していれば問題ないけれども、これから消費構造は一そう高度化する。果汁の需要あるいは牛乳の消費量、こういうようなものが、飲用牛乳にしても、あるいは加工原料としてのバター、チーズのたぐいにいたしましても、やはり相当伸びていくだろうと思うけれども、特に酪農業は、先ほども言ったけれども、伸び悩み、完全に頭打ちになっている。こういうようなことでいいのかどうか。そしてまた、このような目標達成ができなかった主たる原因というものはどういうところにあるのか。この点をお聞きいたします。
  47. 中野和仁

    ○中野政府委員 先ほど申し上げましたように、四十六年までの見通しでやっておりまして、私が申し上げました実績が四十四年まででございまして、若干年次的にズレがありますので、その後若干伸びておるのではないかと思われますけれども、御指摘のように、若干下回ったものもございます。それぞれによりまして原因があろうかと思いますが、農林省といたしましては、当時立てました見通し、その後の米の状況、あるいはその後果実なり牛乳なりの需要の伸び等も違ってきております。昨年暮れ農業生産の地域指標というのをつくりまして、これでもって適地適産という観点から伸ばすべきものは伸ばしていくということで、新しく立て直しをはかっておる段階でございますが、伸びなかった面ということで御指摘がありますと、やはりいろいろ考えられると思いますが、やはり基本的には構造政策のおくれではないかと私は思います。  と申しますのは、やはり生産性を上げていくためには経営規模の拡大ということが必要でありますけれども、当時、農業基本法をつくりました際には、考えましたいろいろなことがありましたけれども、考え浮かばなかったことが地価の高騰、それによります農地価格の値上がり、それからもう一つは労働力の相当な流出が当時の想定よりも多かったこと等、いろいろからみ合いまして、あるいは若干のおくれがあったかと思います。農林省といたしましては、先ほど申し上げましたように、新しく体制を立て直すという意味で昨年暮れに地域指標等も出しまして、今後ともこれから需要の伸びていく、いまおっしゃいました果実なり牛乳なり肉類等の生産増強に邁進したいと考えております。
  48. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 特に酪農の場合に、やはり非常に伸びが鈍化をしているというようなことで、酪農あるいはまた畜産全体でもけっこうなんですけれども、一番大きいネックは、やはり購入飼料が、濃厚飼料の分野に入るわけでありますが、購入飼料が値上がりをずうっと続けておる。私の若い友人で、栃木県で八百頭も豚をやっておった。これはまあ六、七年続けたわけですけれども、昨年ついに万歳して、もうやめてしまった。とてももうえさが高くて成り立っていきませんというのです。これはもうきわめて簡単なんです。とてもえさ代をかせげないということなんですね。こういうことがあるわけです自やはり畜産関係、特に酪農では、経営を完全に成り立たせるためには、飼料の自給度を少なくとも七割ぐらいまで持っていかなければならぬというのが大体常識になっているようであります。そういう点での酪農の構造変革といいますか、そういうものを含めてまた地域的な、牧草などがたくさん得られるような、草地が豊富にあるようなところに多頭飼育を、八頭だとか十頭ぐらいのものが二十頭になりましたというようなことで喜んでいるのではなくて、何百頭、何千頭——何万頭までは日本は狭いですからなかなかそうはいかぬけれども一つの経営体で、これが共同であろうとあるいは個人であろうと、そういう単位の少なくとも多頭飼育というようなものにいかなければならぬだろう。それと同時に、自給飼料の確保というものが非常に大事なんだけれども、草地造成の問題について、最近年においてどのように増加を示しておるか。農林省としては、草地試験場というものをことしからでしたか去年からでしたか発足をさせた。これは企画としてはたいへんいいことだと私ども思っておるのだけれども、どうもまだ試験の段階で、ほんとうに大草地造成というようなことが、非常に大きなスケールをもってそういう構想というものの展開が行なわれていない、こういうように思うのですが、その辺のところについての考え方はどのようになっておりますか。
  49. 斎藤吉郎

    ○斎藤説明員 ただいま畜産の酪農というもののいわゆるもとになります飼料基盤につきましての先生の御指摘でございますけれども、私どもといたしましても、やはり畜産のもとになります飼料の自給度を高めるということは当然のことでございます。そこで、現在考えておりまする考え方といたしましては、やはり草地開発の促進ということを中心に置きまして、いわゆる既耕地におきますところの飼料作物の作付の拡大ということとあわせまして、いわゆる未利用地と申しますか、未墾の場所における草地を造成していくとともに、既耕地の部分にも飼料作物というものを大いに展開いたしたいというのが基本的な考え方でございます。その基本的な方向に沿いまして、草地開発につきましては、先生御存じのとおり国営、県営、団体営といういろいろな草地の開発事業のやり方があるわけでございます。それらの草地開発事業と、それからいまお話のございましたような共同利用というような観点におきますところの共同利用の模範草地の設置といったような、いろいろの種類の事業を通じて従来からやってきたわけでございますが、今後もこれらのものをさらに、先生お話ではもっと大規模なものをというお話もあるわけでございますが、大規模なものばかりに目をつけますと、なかなか普及度というものがございませんので、むしろ大きいものは大きいものとして進めますが、片やそういったものを、採択基準と申しますか、そういった従来からの基準に検討を加えて、利用可能なところはこれを利用していくという形の方向を一つ考えてみたいというようなことで普及を大いに進めてまいりたいという形で、この施策に取り組んでまいりたいというぐあいに考えております。   〔委員長退席、藤井委員長代理着席〕  それから、ただいま少し申し上げました既耕地におきますところの飼料作物の作付につきましても、これを効率的に利用をはかるということで、機械施設を入りやすいかっこうにしていくということで、従来からございますものをさらにこういう機械が入りやすいような形に整備をいたしまして、これも生かして使っていくという方法をとりたい。もちろん、これらは先ほど来お話のございました米の生産調整、これの転換作というようなことも含めまして飼料作物への転換を促進してまいるということであるわけでございます。  それから、酪農につきましては、御案内のとおり、ことしの初めに新しい酪農の近代化の基本計画というものを、五年前に定めたわけでございますが、先ほど官房長からお話しいたしましたように、いろいろと条件が変わっている中におきまして、新しい目標を見つけて、新しい経営の類型を示しましてそこに持っていこうということで、酪農近代化の基本計画を立てたばかりでございます。これに従いまして、府県の計画さらに現在市町村にこれをおろしている段階でございます。先ほどの地域指標の問題等ともからみ合わせまして、新情勢に即した酪農の発展ということに取り組んでまいりたい。現在仕事を始めたばかりでございます。
  50. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 飼料の問題、もう一点だけ聞きますが、いま草地造成等については非常に努力しているというのだが、その努力もまだまだ私は足らないと思う。   〔藤井委員長代理退席、山下(元)委員長代理着席〕 そのことだけは指摘しておきますが、特に購入飼料がいわばかなりの部分輸入にたよっているということで、輸入価格の高騰というようなことを反映している面もあるけれども、中間業者が相当高利潤をむさぼるというようなこともあって、末端需要者に非常に高い飼料が提供されている。こういうことに対する国としての措置、われわれ社会党はもう飼料は国家管理にしたらどうかという意見すら、前からこうすべきではないか、そうでなければ本格的な畜産の生産を増大さしていくというようなことはあり得ないという見解を持っているんだけれども、それはしばらくおくとして、末端需要家が購入する飼料について、この価格の安定をはかる措置として、どういう具体的な、有効な措置をやったか一またやろうとするのか、こういう点についての構想をひとつお示しをいただきたい。
  51. 斎藤吉郎

    ○斎藤説明員 購入飼料につきましては、先生御指摘のとおり、ことに昨年非常に異常な事態が生じたわけでございまして、年度内に二回の価格の値上げというようなことが行なわれました。かつその際に、鶏卵その他畜産物の値段がちょうど低迷期と重なりまして、先生御指摘のようなこともあるいは出たかというぐあいに思われるわけでございまして、昨年は異常な年であったわけでございます。しかし、御案内のとおり、その理由は、いわゆるアメリカにおきましすところのトウモロコシのリーフブライト等の発生でございますとか、ミシシッピー川の凍結の問題とか、いろいろ悪事情が重なりまして、どうしても配合飼料の原料穀物の高騰、それに船舶の不足等によりますところのフレート高というような悪条件が全部重なった結果でございまして、御案内のとおり、最近がら将来にわたりましての見通しといたしましては、それらのものが漸次改善をされまして、先行きは一応明るいと申しますか、そういう見通しがあるわけでございます。すでにこの十月から全購連系統はトン当たり千円程度の価格の引き下げを行なっております。一般の商系のほうもこれに追随をした値下げを漸次行なっておるという状況でございます。  さらにいろいろその後の事情も好転をしておりますので、現在問題になっております円問題等の帰趨というようなこともこれにからんでまいりますれば、あるいは将来におきまして、さらにこれらの要因を分析した上で、より値下げと申しますか、そういうような方向の芽もあるのではないかというぐあいに思われるわけでございまして、その辺のところはよく見届けまして、実態に即応した形でもって取り組んでまいりたい。さらに御存じのとおり、配合飼料自体につきましては、それぞれの系統あるいは商系におきましても、配合飼料の安定制度、積み立て金制度をとっておりまして、それでもってある程度の値上げに対してはカバーをするという措置も従来からとっておりますので、その辺のところも漸次進めてまいりたいと思います。
  52. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 質問を進めますが、農林省は体農産物の自給度というものについてどういう基本的な考えを持っておられるのか。たとえば主食の場合に、日本はこれだけ主食である米を生産する力があるわけですね。いまや完全に七百数十万トンも余っておるという状況になっている。こういう中で、もう戦後ずっと、いわゆるアメリカの余剰農産物の小麦粉を受け入れ、あるいは脱脂粉乳を受け入れて、学校給食でパン食の習慣を植えつけて、そういうようなところから米の消費が減退するという傾向は、これは非常に大きな影響を及ぼしているのではないかと思うわけなんです。米をつくればこれだけの生産能力がある。それを人為的に、アメリカとの関係において余剰農産物受け入れ、MSA協定以来のああいう学校給食がほとんど全面的に、これは精米で大体二十万トン程度にあたるだろうといわれておりますが、こういうものをいまこそ改めていくというようなことを通じて、主食の面についても自給度をどのくらいに持っていくのか。その他の酪農製品、牛乳、あるいは野菜、果樹、こういうようなものについて、主要なる農畜産物というものを、主食の米を含めて、どの程度の自給度を望ましい姿だと考えておられるのか。これは非常に基本的な問題であるけれども、この際伺っておきたいと思うわけです。
  53. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいまの自給率の考え方でございます。農林省といたしましては、国民に安定的に食糧を供給する場合、相当部分はやはり自給すべきではないかということを考えております。われわれ、現在、昭和五十二年を目標にしましてその見通しを立てているわけでございますが、これによりますと、全体といたしましては現状程度の自給率は維持したい。現状程度と申しますのは、米が、昭和四十四年を基準にいたしますとかなり過剰でございます。米を一〇〇にいたしまして七六%程度になっております。自給率その程度は、昭和五十二年にも維持をしたい、こういうことを考えております。  そこで、個別に申し上げますと、いまのように米は過剰でありまして、生産調整をやっておるような事態でございます。今後とも米の自給率は一〇〇%これは完全に自給をいたしたいと考えております。  それから、野菜、鶏卵、こういうものは、野菜等は輸入しにくいというような問題もございますので、これは目標としましては当然一〇〇%というふうに考えております。  それから、牛乳、乳製品、肉類、果実等につきましては、こまかくは数字がございますけれども、大体八割から九割の程度は自給をいたしたい、そのための対策をとっていきたい、こういう考え方でございます。
  54. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 そういう、一億国民に食糧を安定的に供給をしていくということのために、しかもそのことは最も基礎的な、経済発展のこれは基礎条件だ、こういうような立場で、かなり高い自給率を想定されているということは、私どもたいへんけっこうなことだ、それに見合う政策展開を強く求めておきたいと思います。  そこで、大蔵省に今度は聞きますが、農業共済のこの法案で、どれだけ末端農民農業共済金が支払われるのか、この数字をひとつお聞きをいたしたいと思います。
  55. 小暮光美

    小暮政府委員 水稲関係で今年は約四百億の共済金が末端の共済組合からは支払われることになります。
  56. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 水稲関係で四百億。先ほど、この直接的な被害額が水稲において五百十億五千万円あるわけですね。これに対して四百億しか支払われない、こういうことですね。そうしますと、これは百十億五千万というのは少なくとも目に見えた農家所得減少、こういうことになるわけですね。
  57. 小暮光美

    小暮政府委員 水稲共済については、御承知のように、あらかじめ共済金額のどの程度のものを選ぶか、選択が生産者によって行なわれるわけでございます。できるだけ高いほうを選んでおけば、もちろん掛け金が多いということはございますが、最悪の場合の補てんが多い。現状ではおおむね現金経営費をまかなってなお若干ゆとりがある程度のところに付保するような形を指導いたしておるわけであります。そうしますと、一番高いものを選べば約六割、しかし実際には六割を選んではおりませんで、全国平均では五割程度になるような形の金額を選んでおる実情でございます。
  58. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 もう時間もありませんので簡単にしますが、今回出した法律案、これと同じ事例というのは何年前にありましたか。
  59. 戸塚岩夫

    ○戸塚説明員 お答えいたします。  一般会計から繰り入れをするということで法律を出しましたのは、最近の年次におきまして四十一年度でございます。また積み立て金を取りくずして歳入に入れるという法律措置をとりましたのは、最近年次におきましては昭和二十八年度でございます。
  60. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 そのときは一般会計から繰り入れたのは幾らでございましたか、四十一年に。  そして、ついでに伺いますが、今回の場合の繰り入れ金については、将来農業共済保険特会農業勘定に決算上の余剰が生じた場合には一般会計に繰り戻しをする、こういうたてまえになっているわけですね。四十一年の場合、これがどういう年次別に繰り入れが行なわれて、完済されているのか。今度の場合、四十九億四千二百万くれるわけですが、これの繰り戻しの見通し、これらの点について伺っておきたいと思います。
  61. 戸塚岩夫

    ○戸塚説明員 お答えいたします。  四十一年度におきまして、六十五億一般会計から繰り入れておりまして、繰り戻しにつきましては本年度で完了する。本年度は十二億一千三百万でございます。それをもって繰り戻しが完了するということでございます。  次に、本年度の四十九億四千二百万円一般会計から繰り入れる分につきまして、計画的にいつまでに返してもらうということはございません。災害が起こりませんで再保険金の支払いが少なくて済んだというときに繰り戻してもらうということになろうかと思います。
  62. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 いろいろ農政問題を含めてお伺いしたわけでありますが、まさにいま日本の農業というのはたいへんな転換期にあるだろうと思うわけです。先ほども指摘をいたしましたこの四十六年における生産調整米価据え置き、そういうところへもってきて天然災害による被害、こういうようなもろもろの問題がある。しかも消費物価は農村にも遠慮会釈なしに押しかけて、むしろ都市以上の値上がりがあるというようなことなどを踏まえて、将来の農業に夢と希望を持ち得ないというような若い農業後継者がどんどん出てくるというような時代、そういうような時代で、やがて食糧、特に米はいま余っておるというような時代ではあるけれども、米をつくる農民が将来に希望を失って農業から離脱をしていくというような傾向が非常にふえる可能性がある。そういう状態になった場合に、これを再び帰農をさせ、非常に勤勉な農民として農村に戻って働いてもらうということはなかなか困難な時代を迎えるのではないか、こういうようなことで、先ほど官房長から自給度をそういうところに持っていきたいというようなことが言われておりました。その限りにおいて私どももある程度安心をしたわけだけれども、それにふさわしい自給度を上げるためにどうすべきか。もちろん都市化の中における将来の農業のあり方がいま問われなければならない時代だ。しかも新しい農業の姿、消費構造の多種多様化というようなことにも対応していかなければならないし、また基本的に土地の生産性を上げるというよりは農業労働生産性を上げていかなければならぬという基本的な構想も生まれている。そういう中で、農業の大規模化あるいは共同化、こういうような問題なども十分考えていかなければならないだろうし、いずれにいたしましてもそういう点で農民がほんとうに安心して、将来に希望を持ちながら、先ほど官房長が言われたような農業の自給度を確保する、このことが農民の使命なんだ、日本農民に与えられた役割りなんだ、こういう使命感に燃えて農業に立ち向かっていけるような、夢と希望の持てる農業をつくるために一そう——農林省の農政は、まさに農政がない、イエスかノーかのノー政だというような悪口のある段階において、この重大な転換期において、一そう決意を新たにして、新しい農民に夢と希望が持てるような、安心して農業をやっていけるような、農業後継者が喜んで農業に従事するような農政の確立を期待をして、私の質問を終わりたいと思います。
  63. 山下元利

    ○山下(元)委員長代理 阿部助哉君。
  64. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いまかかっておりますこの法律案、これは四十九億四千二百十二万円を一般会計から共済再保険会計に繰り入れる。これは北海道、東北の冷害あるいはまた九州の災害ということで金の不足を来たしたということだと思うのでありますが、これの保険金の支払いの大きなほうから五つ、六つの県名と金額を並べてもらいたいのです。
  65. 小暮光美

    小暮政府委員 まだ金額が確定しておりませんから、そう正確な数字を申し上げるわけにはいきませんが、何といっても水稲関係の一番大きな共済金の支払いが予想されますのは北海道でございます。先ほど約四百億出ると申したのは、実は台風その他のあらゆる災害を含めてことし約四百億出るだろうと申し上げたのでありますが、北海道は主として冷害で、百八十億程度になるのじゃないかというふうに見ております。なお、そのほかに大きなものとしては、北関東、茨城、栃木あるいは福島、それから西のほうで熊本、こういったあたりで支払い金額が大きくなるというふうに見込まれております。
  66. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そうしますと、北海道で百八十億というと、これはたいへんな大きな金額になるわけでありますが、北海道農民の方々が米をつくれば、何年かに一ぺんぐらいは冷害になるだろうぐらいのことは承知しておると思うのです。御承知のように、皆さんの専門でありますが、何といってもこれは南方作物ですから、北のほうへ行けば寒さに弱いという作物でありますから、冷害の来ることは承知しておると思うのです。だけれども、なおかつ水稲にたよらざるを得ないというところに、私はいまの農民にとっても、農政という立場からいっても問題があると思うのですが、なぜ水稲にたよらざるを得ないようになったか、その原因はどういうことなんです。
  67. 内村良英

    内村(良)政府委員 お答え申し上げます。  なぜ米の比重がふえたかということは、やはり米の収益性が一番高い、それから技術的に米がつくりやすくなっているという二点があるかと思います。
  68. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私もそう思うのです。ほかのものをやってもなかなか採算に合わないというところが、無理を承知の上で米に依存せざるを得なくなったんだ、こう思うのでありまして、この問題はまたあとでお伺いしますが、数字だけちょっと教えてもらいたいのであります。米価は、ことし少し上げたけれども大体三年据え置きという形になっておるのですが、円はいま外国では強いというけれども、国内の円はひとつも強くないのでありまして、毎年毎年これくらい価値を落としておる貨幣はあまり世界にも例がないほど毎年価値を落としておるのです。実質米価はことしはどれくらいになっておるのです。——皆さん米価三年据え置きというけれども、金の価値が下がっておる。そうすれば米作農家の手取りが何ぼになっておるのか、それくらいの計算がすぐ出なければ農家経済農業政策をやっていこうなどといったってそれは無理じゃないですか。   〔山下(元)委員長代理退席、藤井委員長代理着席〕 そんなものは常識で出るのじゃないですか。私は、政府物価統計指数、消費物価指数には幾つかの不満を持っております。しかし、この政府の統計をかけていけばすぐ出ることだし、ことしの農家経済が一体どうなるかというようなことは、この数字が一番基本じゃないですか。米価は実質引き下げられておるのです。それが一体ことしの米価幾らなんだ、三等米で八千三百円だったのがことしは幾らなんだ、四等米は格差がついた、それが一体この前の値段と比べて幾ら落ちたんだというぐらいのことは、一番農家経済の基本じゃないですか。そんなものがすぐ出てこないのじゃしょうがないじゃないですか。
  69. 中村健次郎

    中村(健)政府委員 この問題は、貨幣の価値がどの程度落ちたかという問題が、非常にいろいろな見方がございまして、むずかしい問題を含んでおりますので、端的に比較するということは困難でございますが、かりに物価指数等で見ますと、昭和三十五年を一〇〇といたしまして、消費物価指数が四十五年で一七六・六になっておりますが、生産者米価のほうは、三十五年を一〇〇といたしますと四十五年で一九八・八というふうな数字になっておりますので、こういった点から推察するよりほかないと思います。
  70. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いま、常識からいって物価指数でデフレートして計算するのが普通でしょう。大蔵省のいろいろな資料政府の統計資料、みな見ても、成長率何%で実質何%というときには、大体消費物価指数をかけてデフレートするのがあたりまえじゃないですか。私の聞いておるのは、標準三等米で幾らなのか。もう一つはことしは特に等級間隔差を広げておるわけです。しかも大体全般に不作で、等級は四等米が圧倒的に多いわけです。そうすれば、四等米は三年前は幾らでいま幾らかというのを私は聞いておるわけです。いまのこの数字について私は聞いておるわけではないのでして、三年前の据え置きの直前における三等米、四等米は幾らで、デフレートした今日の価格は幾らか、こういうことを聞いておるわけです。——じゃ、それを計算してもらっておるうちに、別の問題をお伺いします。  ことしの生産数量はどのくらいになりますか、大体の見込みでしょうけれども
  71. 中村健次郎

    中村(健)政府委員 ことしの生産見込みは、十月十五日現在の調査によりますと、指数が九三になっておりますので、これで収穫予想量を立てますと、千八十六万トンでございます。
  72. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これから一年間の消費米は大体どの程度になると予想されますか。
  73. 中村健次郎

    中村(健)政府委員 これから一年間の、農家消費も含みました数量は、約千百六十五万トンでございます。
  74. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そうすると、ことしできた米で一年間の国民の食糧をまかなうにはちょっと足らないわけですね。それは幾ら足らないのです。
  75. 中村健次郎

    中村(健)政府委員 約八十万トン程度でございます。
  76. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これは古米で補給をすればとりあえずことしから来年にかけての食糧問題はまあむずかしくないというふうに思うのでありますが、古米というのは、これは保管のやり方、倉庫のぐあい等にもよりましょうけれども、大体何年前の米まで配給するつもりでおるのですか。
  77. 中村健次郎

    中村(健)政府委員 古米と申しますのは、これから四十七米穀年度にかけましては、四十五年産米を一応古米、四十四年産米は古古米、こういうふうに十一月一日から申しております。古米は、通常の年でございましても、御承知のように新米とある程度混合して操作していくのが米の操作の通常でございますので、古米を百万トン程度消費するということは例年やっておることでございまして、あえて特に問題のあるものではない、このように思っております。  古古米につきましては一応一般配給用としては使わないで、過剰米として処理する、こういう方針で進んでまいっております。米自体は、四十四年産でございましてもあるいは四十三年産でございましても保管は十分に気をつけてやっておりますので、ある程度搗精度その他に気をつければ食糧として使えないものではございません。ただ、こういった米の余っておる時期でございますので、そういったものはあえて食糧に強制的に配給するということはやらないということをいたしております。ただ消費者等から、特に安い米で、古古米でも出したらどうかというような声が一部にもございますので、そういった点につきましては、これを強制配給需給操作の中に入れるということではなくて、あるいはそういったことについてもそういった声もございますので検討をする必要もあろうか、このように思っております。
  78. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そうすると、配給に回せる古米というのは現在手持ちは幾らあるのですか。
  79. 中村健次郎

    中村(健)政府委員 四十五年産米の十一月一日の持ち越し数量はおおむね百六十万トン程度ございます。ただこれを全部配給に回すかどうかということにつきましては、消費者のほうでどの程度の古米の混合率で配給が受けられるかというような問題もございますので、現物は百六十万トンございますけれども、これを全部配給に回すということではございません。
  80. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そういたしますと、ことしこれからの不足米が八十万トン、それで配給に回し得る古米が百六十万トンあるけれども、来年またことしと同じような出来高でいった場合には今度は米は足らないということになる計算になりますね。
  81. 中村健次郎

    中村(健)政府委員 私のほうで需給操作として考えておりますのは、平常の年で約百万トン程度の古米を十一月一日に持ち越しまして、そしてこれを新米とまぜて操作をして、新米を百万トン次の年へ残す、こういう回転を考えております。この場合の約百万トンと申しますのは、需給操作をするために必要な持ち越しではないのでございまして、十月の末と申しますと、新しい米が通常二百万トンないし三百万トン政府買い入れになる時期でございます。したがいまして、操作上から申しますとそういった古米を持ち越す必要はないわけでございますが、翌年の凶作、作のフレがございますので、そういった凶作等に備えまして、備蓄の意味をかねて百万トンの古米を持ち越す操作をしておる、こういうふうに考えております。これが今年、四十六年産米がかりに生産量が八十万トン減りまして、それがそのまま政府買い入れの減ということになりますと、四十七年度の終わりに四十八年度へ持ち越す予定の百万トンの四十六年産米が約二十万トン程度になるということになるかと思いますが、まだ二十万トンの余分の備蓄的なものを持って越すということができますので、現在の程度の作柄ですぐ困るということはございません。ただ先生のおっしゃいますように来年もまた続いて作が悪ければどうなるかという問題につきましては、いろいろと検討をして今後の対策を考えなければならない、こういうふうに思っております。
  82. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そうしますと、百六十万トンは古米をまぜながらやって、ことしできた米を、何がしか残ったものを次の年に送っていく、こういうことで何とか操作をしていこう、こういうことですね。  そこで、もう一つお伺いしたいのは、いま小麦  の輸入は大体どれくらいになっておりますか。
  83. 中村健次郎

    中村(健)政府委員 小麦の輸入量は、四十五年で主食用といたしまして三百二十八万トン、それからえさ用に使います小麦といたしまして約百二十七万トン、合計で約四百五十六万トン程度を輸入いたしました。
  84. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 さっきのデフレートした数字は出ましたか。
  85. 中村健次郎

    中村(健)政府委員 先ほどの先生の御質問でございますが、四十四年産以降四十六年産までの米価算定におきましては、生産費に基づいて算定するにあたりまして、直近のデータでございます物財費とか労賃、こういったものを評価がえをいたしておりますので、物価、労賃の動向、生産性の動向等を反映して米価をきめておる、こういうふうにいたしております。ただ生産費のとり方等につきましては、米の現下の需給事情等も考慮して据え置きという計算になっておりますけれども、その間の中の物価指数等の変動は、評価がえその計生産費のとり方等について考慮をして米価をきめておるというふうに考えております。  なお、四十三年から四十五年にかけましての消費物価指数の上昇というものは約一四%でございますけれども、これを機械的に米価の実質の値上がりというふうには考えられないと思います。
  86. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私のお伺いしておるのはそういうことじゃないのですよ。それは皆さん、生産所得補償方式だなんて言ってみたって、これは六、七年前のやり方と最近のやり方ではいろいるな数字のとり方も違うし、皆さん自体は生産所得補償方式だと一口に言うけれども、皆さん自体が幾通りかの案をつくっておるじゃないですか。そんなものを聞いておるのじゃないですよ。それならそれで私は論議しますよ。皆さんの毎年つくる案にしたところで大体三案くらいつくっておいて、一番財政当局と合わしたところから逆算するような形の生産所得補償方式で、私たちはそんなものは不満を持っておる。だけれども、そのことを聞いておるのではないですよ。据え置きが四十四年からですね。その四十四年に三等米一俵何ぼで、四等米、石なら石で幾らだ、それが今日、ことし、少し上げました。しかし四等米との格差はうんと開いた。それで三等米は石幾らで四等米は石幾らか。これは即、いろいろなへ理屈はつけるだろうけれども、労働費だ、物財費だ、いろいろあるけれども農家の手取りとしては、まずそれを基準に家計の設計を立てざるを得ないので、私はその結論を聞いているのです。だから、四年前に三等米は俵一つたしか八千三百円、それがいま幾らになったか。石なら石でいいです。四十四年に三等米が石幾らだったのか、いまデフレートして実質幾らになったか、四等米はどうだというのを聞いておるのでして、こんなものはあなたたちすぐ出せるでしょう。おかしいじゃないか。農家の家計なんというのは何も考えてないのかね。
  87. 中村健次郎

    中村(健)政府委員 四十四年の一−四等の平均が百五十キロ当たり二万六百四十円でございまして、四十六年の一−四等平均が二万一千三百五円になっております。消費物価の上昇率が一四%でございますから、四十四年の二万六百四十円をそのままスライドするとすれば二千八百円の増になりますけれども、現実には約千——六百五十五円の値上がりにとどまっているという形になっております。(「千六百五十五円か、ただの六百五十五円か、はっきり言え」と呼ぶ者あり)  もう一度申し上げます。四十四年の一−四等平均が二万六百四十円でございますので、消費物価指数の一四%アップにスライドいたしますと、二千八百円上がるということになりますが、実際には四十六年産の一−四等は二万一千三百五円でございますので、六百五十五円の値上がりにとどまっております。その差は二千百五十円ぐらいになります。
  88. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 どうも私の質問とちょっと食い違っておる。あなたのほうで的をはずしておるのだと思うのですけれども、私の計算では農家経済はだんだん苦しくなっておるわけです。米価据え置きだ、こう言っているけれども物価が上がるということは金の価値が落ちているんだから、農家の実質手取りは少なくなっておるのだと私は思うのですが、そうじゃないですか。違いますか。
  89. 中村健次郎

    中村(健)政府委員 そういう意味においては先生のおっしゃるとおりであります。
  90. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 だから、それは実質幾らになったのだとすれば、デフレートしなければいかぬのだ。そうすると、一−四等平均二万六百四十円、それを——ほんとうは、具体的に言うと大体一等、二等なんてないのです。いま私たちのところで一番多いのは四等、五等なんだ。しかもあなたたちは等級間格差は下でうんと開いてしまったわけだ。それで、米の検査をきつくすれば大体五等なんです。ことしは四等と五等が大半です。そうすれば、実質米価は引き下げられ、そして等級間格差でさらに引き下げられ、その上に減反ということをやられる。それは何がしかの補償金はもらったろうけれども農家一戸当たりの粗収入というものは、がっくり減っておるわけです。  私の計算でいけば、二割の減反をやった農家は、農家収入が大体四割ぐらいは減っておると私は見ておるわけだ。その数字をあなたに出しなさい、こういうことなんですよ。農家収入が四割減れば一体どういうことになるのです。皆さん月給取っている人だって、四割減俸されたら生活が成り立ちますか。皆さんはそれを作目の転換をしろとかいろいろおっしゃるけれども、できるところとできないところがある。だから、まずどの程度農家収入が実質減少しておるかというぐらいのことを皆さんつかまないで、いま農政をどうこうしようといったって、これは農民にとっては何もめどが立たないじゃないですか。皆さんだって、ほんとうの農林政策というものはそこへ立つわけがないでしょうが。これは農家の基本でしょう。これぐらいのものは皆さん頭の中に入れてあるものだと私は思ったのだ、ほんとうを言うと。このくらいのものを入れてないで、いまの日本の農家がどうなっておるのか——じゃ、あなたにお伺いするけれども、いま農民の出かせぎ者は一体どれだけあるのです。
  91. 内村良英

    内村(良)政府委員 農家の出かせぎ者の数は、農林省調査によりますと、約五十万でございます。ところが、労働省のほうの調査によりますと六十万で、十万の違いがありますが、大体五十万から六十万の間の農民が出かせぎに出ておるということになっております。
  92. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 その五十万、六十万という数字も、職安を通したり、いろいろな形で出る数字だ、こう思うのですが、私は実質ははるかに多いと思うのです。それで、この出かせぎの人たちというのは、一体どんな仕事をしておるか、御存じですか。
  93. 内村良英

    内村(良)政府委員 昭和四十五年の調査によりますと、出かせぎ者の約二五%は製造工業に従事しております。すなわち、自動車工業だとかそういったいわゆる製造工業に従事しております。それから残りの大部分は、いわゆる建設業に従事しておりますが、就業条件が非常に悪いということになっております。
  94. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 あなたもおっしゃるように、この建設業というものがまたたいへんなことでしょう。実際、高度成長だというて、何十階建てができたとか、税務署の発表じゃないけれども、キャバレーのホステスがとにかく一年間に千四百万円もかせぐというときに、その地下で、大体夜間作業でしょう。こんなみじめな仕事をせざるを得ないのは、問題は農家収入が減ったからじゃないですか。この農家収入が減った、それで出かせぎという、いまのこの働く形態がいいものだとは皆さんもお考えになっておらぬと思うのだ。家族と別れ別れで半年も暮らさなければいかぬ。しかも行った先は、飯場は飯場でたいへんお粗末なところである。その上に夜間の地下鉄工事なんというものは、これはあまり先進国では見られない現象でしょう。西ドイツの大臣が来て一番驚いたのは、この地下鉄の作業を夜中にやっておるというようなことに一番驚いたという話を私は聞いたのでありますけれども、こんな仕事に携わらせておくということ自体が、私は政治の貧困だと思う。それはわれわれ野党にも責任があると思います。だけれども、いずれにせよ、いまの農政だけの問題じゃないけれども、これは政治の貧困だと思うのですよ。この問題にメスを入れるには、先ほど言ったような農家の基本的な経済状態、それぐらいを農林省が把握してないで農政をやろうといったって私は少しこれは無理じゃないかと思うのだな。皆さんどうなんです。
  95. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいま米の問題に関連しまして、いろいろ物価指数でのデフレート等の問題がありました。農林省におきます農家経済調査のこれは一般的な平均でございまして、あるいはちょっと先生の御質問とずれるかもしれませんが、平均的に最近の農家経済状態を申し上げたいと思います。これによりますと、先ほども御指摘ありましたように、昭和四十四年からの米価据え置き的になっておりますので、これまでは農家農業所得、これは昭和四十一年から二年にかけまして一三・二%、四十二年から四十三年にかけまして三二・四%伸びたものが四十三年には単に三・三%、四十四年は〇・四%、昭和四十五年は生産調整金額を別にしますれば、農業所得としては四%の減ということになっております。  ただ、その間高度経済成長との関連もございまして、農外所得が非常にふえております。ただいま御指摘の出かせぎ等も入っておるかと思います。これによりますと、引き続き農外所得は伸びておりまして、去年からことしにかけましては約二二・八%農外所得が伸びたというかっこうになっております。その結果、これは平均的な数字でございますが、たとえば昭和四十三年に農家の総所得が百十二万五千円であったものが四十五年、百三十九万三千円になっております。農家所得としてはふえておりまして、ただいま御指摘のように、農業所得としては非常に停滞あるいは若干の減ということになります。本年度四十六年度はまだ計算はできておりませんけれども、大体いままでのわれわれの見込みでは、ことしの不作も関連いたしまして、四十五年度よりも農業所得はまだ落ちるのじゃないかと見ておるわけでございます。
  96. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私は、農家の全体の収入がどうだということよりも、それの中身が問題だと思うのですね。だから農業収入生活のできるような収入をあげるということが、これが普通なんですよね。だけれども北海道の人たちが冷害を覚悟の上で米をつくらざるを得ないとか、自分の家計を保つためにはしかたがないから、いやだけれども出かせぎをしなければならない。いやだけれどもやったその結果は、収入は出かせぎのあれをひっくるめればある程度いままでの収入に大体見合う、こういうことになろうかと思うけれども、このこと自体に私は農政としてやはり問題があるんじゃないか。それは私は、いまの零細農がいまのままで永久にいいのだなんということは考えない。それならばそれなりに皆さん、これは農林省だけの問題じゃないだろうけれども政府自体が、農業から他産業に転換するには転換するような手をもっと打たないといかぬでしょう。それなしに米価据え置きという形で、これは実質的な引き下げなんだから、引き下げれば農家の家計は苦しくなる。苦しくなれば出かせぎに来る。そしてそれを低賃金で重労働でこき使って、そして大都市の建設が行なわれておるなんということは、これは近代国家の姿ではないじゃないですか。  私は結局農政の貧困だと思う。皆さん、この作付減反をもう二年間、もう三年間も続けるだけの自信があるのですか。米は一年生だけれども農林省の政策は三年生じゃないですか。三年たつと四年目には大体転換をするというのがいままでのあり方なんで、私は農林省の政策は大体三年生だ、こう見ておるのですね。だからもう来年はしぶしぶでも、いままでやってきたから来年も作付減反はやるだろうけれども、再来年になると、この政策はお手上げになって、また別のことを理屈をつけて考え直すだろう、こう初めから見ておった。大体いまの作柄、いろいろな米の生産量、需給、こういうものを見ていくと、来年はまあ三年目だからしかたがない、これを続けるだろうけれども、四年目になると、大体これは転換をせざるを得ないところにきておるのではないだろうか。五年目になれば間違いなしにこれは転換だ。大体農林省の政策は三年生だという私の見方ははずれないのではないだろうかという感じが私はするわけです。  そういう点で、いま農民は一体これからどうしたらいいのだろう。一体農業というものを政府はどこに持っていこうとしておるのだろう。われわれ一体これからどうしたらいいのだろうというところに一番悩みがある。その悩みに政府は回答を出す立場だ、こう思うのですが、農林省は一体どういうふうに農政を、日本の農業をどういうふうにしようという考え方なのですか。これはもう農民ひとしく不安を感じ、わからないでおるところなんです。私は、これはほんとは大臣にお伺いをしたいのでありまして、せめて私は政務次官を要求したのですが、何か選挙運動か何かで忙しいようで、国会を無視しておるようだけれども、これは皆さんのほうひとつお答えを願いたい。
  97. 中野和仁

    ○中野政府委員 当面の農政の問題についてるるお話がありましたわけでございますが、本来ならば、御指摘のように農政の今後の持っていき方について農林大臣から申し上げるべきところでございますが、私、大臣が先般われわれ事務当局に指示されたようなこともございますので、それを中心に若干申し上げたいと思います。  農林大臣の御判断といたしましても、先生も先ほどからいろいろ御指摘のような、内外非常に、外からは自由化の問題もありますし、内部では生産調整はじめいろいろな問題が起きております。その上に物価の問題、公害の問題等起きております。ここでどう立て直すかということでございますが、農林大臣のお考えとしましては、やはり一ぺんにはいきませんけれども、国際競争力にたえるような体質の農業にすべきではないか、こういう考え、そういうことでございます。それをやっていきますためには、やはり基本的には生産規模あるいは経営規模を拡大するための構造政策、これをやらなければならない。同時に、ただ土地の問題等見ましても、個々の農家の土地をぼつぼつ大きくするだけでは間に合いません。そこで相当な地域を限りまして、あるいは作物によって大きさは違いますけれども農業団地というものをひとつ頭の中に描いて、それを団地的にひとつまとめて農業の再編成をやっていったらどうかということでございます。  われわれいませっかくそういうことを準備をしているわけでございます。その団地の中には専業農家、自立経常的な農業もございましょうし、日本の農村自体からいって兼業農家も非常に多いわけでございます。そういうものをひっくるめて団地の経営をどう持っていくかというところに踏み込まなければなかなか農業の立て直しはむずかしいのではないかということで、いませっかくそれを準備しております。  それと同時に、そういう生産面での団地ができても、生産から流通、加工、消費までつながらなければまいりませんので、そういう団地を幾つか含めたような流通的な広域の営農団地をつくる。これは若干すでに農林省でも農道なり流通施設等つくっておりますけれども、それを再編成的に生産団地と結びつけて広域の流通団地をつくっていきたい、こういうことでございます。  それからなおそれに関連をいたしまして、そういう農業の比産をやります農家生活環境というものがあわせて整備されなければいけないということから、これはなかなか農業生産と農村の環境整備を結びつけてやるというのはむずかしいわけでございますが、これは大蔵省との御相談でございますが、来年からそういう面にも若干手をつけていきたいということを考えております。  それからもう一つ、いまの問題と関連して申し上げれば、先ほど出かせぎの問題も出ました。出かせぎ対策としてもいろいろ手を打たなければならないと同時に、やはり余りました労力を地元で消化できるのが一番いいのではないかということが考えられます。そこで、先般国会でも成立させていただきました農村地域工業導入促進法、これの活用をはかりまして、全部の人がそれにとどまるとは私は考えませんけれども、できるだけ地元に労力をとどめておくというやり方を考えていきたいということでございます。  それから第二点は、先ほどからるるそういう御議論がありまして、土産調整につきましては三年目で終わりじゃないかというようなお話もございましたけれども農林省といたしましては、生産調整を本格的に実施しようとしましたのはことしからでございます。これは御承知のように五カ年間、それも単に休耕ではいけないので、できるだけ転作に持っていくということで計画的に進めたいと考えております。ただ若干ことしの不作という影響がありまして、先ほども御議論のように、来年の生産調整の目標につきましては、そういう需給事情を考えまして、ただいま関係局で検討をしておるところでございますが、米の生産調整はこのままやめますと、また五十万ヘクタール程度水田がもとへ戻ってくるということになりますれば、また数年前の状況になるということでございますので、その点は十分わきまえながら、生産調整転作を中心に進めるべきではないかということを考えております。  それと関連をいたしまして、今後需要の伸びます畜産、果樹、蔬菜、こういうものにつきましても、やはり先ほどの農業団地の育成に関連をいたしまして、生産あるいは加工の面での施策の拡充ということが必要ではないかというふうに思っているわけでございます。  なお、これにつけ加えまして、農林大臣がたびたび申し上げておりますのは、単なる水田ではだめだ、水田を畑に変える。その畑というのは結局田畑輪換の場合もありましょうし、いろいろの場合がありましょうけれども、畑に変える方向をとるべきだということをおっしゃっておりました。そういうことは、いままで申し上げました点につきましては、土産基盤の拡充ということが基礎的に必要なわけでございますが、その場合も農道、圃場整備、それから畑地帯の総合整備ということを考えていきたいと思っております。  それから、四番目の柱といたしましては、いままでは生産の面を主として申し上げたわけでございますが、最近の野菜の問題あるいは畜産物の問題等を考えましても、農産物の価格安定対策がぜひとも必要だということでございます。特に野菜につきましては、連日ではございませんけれども、新聞紙上をにぎわしておるということもございまして、ただいま従来の施策からしますれば飛躍的な施策ということで生産から流通、消費まで一貫した野菜行政がどうあるべきかということを考えております。予算も大蔵省の御理解をいただきまして、相当ふやしたいと考えております。  それから、また自由化との関連の問題がございます。これにつきましては、特に問題になりましたのは、よくアメリカ側から牛肉、それからオレンジ、果汁、くだものを自由化しろということになっております。私がるる申し上げましたように、稲作からそういう作目への転換の過程にある総合農政を展開中でございますので、当面体質改善がある程度見通しがつくまでは自由化しないという考えでおるわけでございます。こういう肉用牛あるいは加工用の果実についての価格安定対策を、これも抜本的に来年度から考えていきたいということを考えておるわけでございます。  以下まだ若干あるわけでございますが、基本的にはそういう線でいきたいと思っております。  その際に、先ほども若干述べたわけでございますが、農林省としましては、地域指標というものを昨年つくりました。これを単なるガイドポストのままほっておくという、口で言っているだけではいけないと思っておりまして、現在、農林省が十四地域に分けました地域指標につきまして、これを各県におろしまして、各県の中でまた下におろしていただくということでいま作業をやっております。いわば適地適産の方向を末端まで明らかにしていきたいということを考えて進めておるところでございます。  若干長くなりましたけれども、以上のとおりでございます。
  98. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いろいろとお考えになっておるというが、実際問題として私も農業問題はどこの国でもほんとうはむずかしい問題だろうと思うのです。これはまあ私の見た限りでは社会主義の国でも、北朝鮮、中国はそれなりにその方式でいっておるが、ほかはなかなかそううまく成功しておるとばかりはいえないのではないだろうかという見方を私はしております。そういう点でいろいろむずかしいけれども、基本的な立場がやはり日本の場合は少し狂っておるというか、力の入れ方が違うのではないか。いまいろいろとお述べになったけれども農業団地をつくってみるとかいろんなことがあるけれども、もう一ぺん抜本的に日本の農業は一体どうするのかという基本的な問題を立てて、ただそこへいくには何年かの年次はかかるでしょう。と同時に農民にもある程度そのことをよく理解してもらわないと、これはなかなか進まない問題だと私は思うのです。皆さんがいつでもおっしゃることが裏目で出るでしょう。  昨年の万博のときの野菜一つとってみたって、西高東低でございますというような天気予報みたいなことで皆さんおっしゃるものだから、東京のほうはますます野菜が上がってしまって、西高東高になってしまった。ことしだってそうでしょう。そういう点で、大企業でまとめて生産するどころじゃない。農業の問題というものは皆さんの発言一つでも下手すれば逆な作用に響くことがあるでしょうし、なかなかむずかしい問題です。だけれども、一番大切なのは、農基法をつくったとき私はあれには反対したのだけれども、あれはあれなりに、高度成長のてこ入れとして農業をだんだんつぶしていこうという方針があるという点では私はそれなりにわかるわけです。もちろん私は農民立場からいけば反対だけれども、それなりにわかるわけです。ところが、最近はもうほんとうの出たとこ勝負で皆さんきておるような感じがしてならぬわけです。だから、いまこの政策を皆さんが農民にお示しになったところで、農民は、これでおれたちは一体どうなるんだということになったらさっぱりわからぬと私は思うんですよ。ほんとうに水田を暗渠排水でもして乾田化していくなら、政府はよほど思い切ってこれに金を投じないと、いまの疲弊した農家にさらにこれに多額の土地改良費まで負担をさせようとしても農家自体やる力がないでしょう。それは場所によってやる力の持っておるところもあるでしょう。しかし東北一帯の農家にはもうそれをやるだけの力はなかろうと私は思う。そうすれば、その基盤整備をもっと政府で本腰を入れてやる、あるいはまた農家から出る人たちがどういうふうに生活ができるようにするか。都市の住宅はいまでも足らないのですから、住宅問題がすぐ解決するとは思いませんけれども、そういう転換の場合の手当てというか方針というものがきちんとしなければ、いまのような農民年金のあり方であるとかいまのお話程度で、農家自体が一体おれはどうしたらいいんだということになったらさっぱりわからぬというのが私は正直のところいまの姿だと思うのです。  まあしかしこれは非常に大きな問題です。私はある意味でやはり日本の最大の問題だ、こう思うのでして、一ぺんにこれが結論が出るとは思いませんけれども、本来ならば、これは四、五年前から、高度成長政策を立てたときからほんとうに日本の農業というものをどういうふうにやるかということをお考えになって進めるべきだった、こう私は思うのです。ある意味でいえば、農民の低賃金の、しかも一番きたないところ、一番つらいところ、ここへとにかく労働者としてしぼり出してきて、そして日本の建設が行なわれたといっても言い過ぎじゃないじゃないですか。農家をいままでいじめてさておいて、そしてこれからこうやりますというこの政策を見ても、まあこの政策にも私は不満があるけれども、これだって実際どこへいくのかというのはわからぬ問題だ。  これは農林大臣の御方針なんですか、それと同時に、これは政府全体が認めた方針なんですか、その点もう一ぺんお伺いしておきます。
  99. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいま申し上げましたのは、最初に申し上げましたように、農林大臣が御就任になりましてわれわれに指示があった政策でございます。ただ、急にこういうことになったのではございませんで、米の生産過剰を契機にいたしまして、総合農政を展開するということで、昭和四十五年の二月に閣議決定で総合農政の推進の方向というのを明確にしております。その路線に乗った上で、より具体的に自由化等の問題もからんでまいります。より具体的にしていこうという方向も、個々の問題につきましては予算の問題もあります、あるいは法制化しなければならない問題もございますけれども、大きな方針としては、私は政府の方針だと思っております。  なお、若干つけ加えさせていただきますと、先ほど総合農政からの御批判等ございましたわけですが、やはりほんとうの農村をつくっていくためには、かつて昭和三十五年ころには一千数百万の就業人口があったわけでございます。いま八百二、三十万に減っております。われわれの見込みでは、昭和五十二年には六百五十万程度に就業人口がなるのだろうと思っております。それをたたき出したと見られるか、あるいはそうではなくて、やはり高度成長経済に応じまして他産業に転職していくと見るかということもあろうかと思いますが、農林省といたしましても、かつては離農ということばさえタブーであったわけです。それをここ数年農業者年金もつくり、それからその他の労働省等ともいろいろ協調しながら、円滑な他産業への転職ということもあわせ考えませんと、相当大きな人口をかかえて、限られた土地で、しかも全部食っていくということは、なかなかこれは無理ではないかと思うわけですから、一言つけ加えさせていただきます。
  100. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 もう私も終わりますけれども、私は、ひとつ流通の問題とってみたって、作目の転換とってみましても、東京では野菜が高いと、こう言う。しかし夏場見ても、私、新潟ですけれども、トマトがこんなに段ボールの箱に詰めて市場へ持っていって五十円で売る。段ボールの代金が二十五円なんだ。中身、これは二十五円ですよ。それをちゃんと粒のそろったのをそろえて、トラックで運んでいったのでは、これは農民の採算合わないですよ、実際言って。そうだけれども、捨てるわけにもいかないという農民心理でこれを持っていく。そして町へいくとうんと高いと言う。この流通問題も、皆さんもおっしゃったけれども、口先だけは前からこの家庭の流通機構の問題は言われるのですよ。しかし、市場には市場のボスがおりまして、そうなかなか簡単にはいかない。今日までこれだけ物価問題が云々されてきたけれども、解決を見ないで今日まで来ておるわけです。  もっとひどいのは、Uターンものというのを皆さんも御承知でしょう。北海道から東京へ来て、東京からまた青森へ運ぶみたいな、Uターンものというようなものが——いまのようなやり方で流通機構をやっておったのでは、これは都会の人たちは野菜が高い、産地では安くて採算が合わない。そうすれば、私はいつまでも価格支持政策が永久にとられるべきだとは思わない。それはやはり生産基盤を直しながら生産性を上げていくという体制をつくることが基本ではありますけれども、しかしいまの段階、いまの出かせぎの農民、あるいはいまのような都市の野菜価格の問題、そうして農民の手取りの少なさの問題、こういうことを考えれば、このところしばらくは、その体制ができるまでは私は米だけじゃなしに、皆さん食管法すらもうなしくずしにくずそうとしておるけれども、そうではなしに、やはり価格支持政策というか、価格保障政策というものを、もうしばらくはもう少し幅広くおとりになる以外にいまの農業農家生活を安定させる道はないのではないかというふうに私は見ざるを得ないのでありますが、その辺はどうなのですか。
  101. 中野和仁

    ○中野政府委員 価格政策につきましては、確かに御指摘のとおりでございまして、従来どちらかといえば米に片寄っておりました。米そのものの価格問題になりますと、またこれはいろいろ問題が出てまいりまして、先ほどから申し上げますように、農政の再編成ということから米価据え置き生産過剰の問題等もありまして、やってまいったにしましても、また御批判があるといたしましても、やはり米と他の農作物とがあまり相対価格が離れ過ぎてはいけないということでございます。  それからもう一つは、そういう面からしますと、価格政策としましても、やはりいろいろな手を他の作目で打っておりますけれども、まだ足りないということではあるかと思います。したがいまして、先ほども触れましたように、野菜なり肉用牛なり加工果樹等なり、なお今後需要の伸びていく作目についての価格支持という点につきまして、合理的な価格支持は当然やっていくべきだと考えております。
  102. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 もう一つ、これは私、提案のような形になるでしょうけれども、いままでどちらかといえば近代化資金をなるだけ貸して耕うん機を買わしたりした時代がありますね。あの政策自体も私は問題があるんじゃないかと思う。耕うん機会社はあれで一時はたいへん利益をあげたんでしょうけれども、何といっても一町歩や一町五反、二町歩の農家で、機械貧乏と普通いわれますけれども、一番よけい働く機械が大体耕うん機ですよ。これが年間稼働大体八十時間ですね。バインダーあたりにいきますと、三十万、四十万の機械を買って、これが年間稼働時間わずかに五十時間も稼働すれば大体いいところじゃないですか。その上に脱穀の機械だ、やれ乾燥機だ、こういうことになってまいりますと、これはこれだけでも農家経済はつぶれるようにできておるんですよ。それならば、思い切ってもう少し大型なトラクターならトラクターを、政府自体でトラクターセンターを市町村あるいは農協と一緒に協力をしながらつくって、あんな一年間で百時間以内、七、八十時間しか稼働しないような機械を農家にみんな売りつける、その農家が買うように、そのための近代化資金なんだということでお出しになったやり方、私はあの辺にも見通しのなさというか、機械屋の協力を皆さんはされたんではないだろうかという疑問すら持つようなやり方。それは農家自体にも問題はあります。お隣が買えば、三町歩の農家が買ったら一町歩の農家もやはり自分もまねしてお買いになるという現実の姿を見ると、私はそれにも問題があるとは思います。しかし、それを指導するのが私は政治だと思うんですよ。実際にいまの農家の機械は、採算が合わないんです。だからそういうものに抜本的にメスを入れる。基盤整備をもっと徹底的に政府の力でおやりになる。そうしてそういうセンターを設けていくということで生産性を上げていく。その中からまた他産業へ出る人もあるでしょう、またそこで農家経済がどうなるかという、私はもう少しそういう点で末端の農家経済のあり方が一体どうなんだということからほんとうの調査をし、そこから案を考えながら政策を立てていかないと、皆さんの政策は逆に農家は機械を買うなら近代化資金を貸すということになれば、みんな飛びついてその機械化をしてしまう。しかもその機械は、もう採算は合わないという形になってしまう。  そういうようなことを考えていくと、いままでの農政自体があまりにもそのときそのときの思いつき、そうして農民はそれに振り回されてきたという感じがしてならぬわけであります。それはもちろん皆さんだけの問題じゃありません、私たちにも責任があります。農民自体にもこれは責任があります。しかし、いま日本農業がこれだけ大きな困難な壁に当面しておる、そういうときでありますので、私はいまの農林大臣、農林省のお立場やお力からいってみて、精一ぱいのところを立てたおつもりなんだろうけれども、これは農林省だけの問題じゃなしに、日本の政治全体の問題として、もっと本腰を入れたかまえで基本的な政策を立てていただかないと日本の農業はつぶれる。まあ農業がつぶれていいということには皆さんもお考えにならぬだろうから、そこで日本農業をどうするかという基本的なお考えをもう少し研究していただくことを要望いたしまして、私、質問を終わります。
  103. 藤井勝志

    ○藤井委員長代理 午後三時三十分より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後一時十一分休憩      ————◇—————    午後三時三十七分開議
  104. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  質疑を続行いたします。貝沼次郎君。
  105. 貝沼次郎

    貝沼委員 先般北海道方面の冷害をずっと見てきたわけでありますけれども、この冷害を見て私が思うことは、単なる冷害だけではなく、もっともっと大きな問題が政治的な問題としてそのバックにあるのではないか、こういうことであります。  そこで、地元の意見としてもいろいろ具体的な問題が出されておりましたけれども、中でも岩見沢の測候所を気象台に昇格してもらいたい、こういう意見がありました。これは政府の方針として、気象台をつくる場合は、どこかの気象台をつぶさなければできないそうでありますけれども、こういうことではいつになっても日本の気象観測並びに予報というものが的確にな行われるかどうか非常に疑問であります。こういうようなところから私は、いろいろな災害が起こり、そのために共済制度というものがどうしても必要になってきておる。そして災害の多いときには、今回のように一般会計から繰り入れなければならないというふうな事態も起こってくる、こう思うのですね。したがって、そのお金をどういうふうに動かすかということも大事でありますけれども、それよりもなお根本的な問題として、気象観測などが的確にできるような体制というものを国をあげてつくってやる必要があるのではないか、こう思います。  そこで、運輸省あたりの予算要求というものを聞いてみましたら、すでに予算要求はしておるようでありますけれども、この予算要求も測候所を気象台にするという予算要求ではなく、測候所という名のもとにさらにその中身、たとえばレーダーであるとか、そういう観測機器の充実とかというような面においての予算要求をしておるということでありますが、この件について前向きにこれを取り上げていく姿勢があるのかどうか、この点についてまず政務次官にお願いしたいと思います。
  106. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 いまの御質問でございますが、最初の岩見沢の測候所の気象台への昇格の問題でございますが、運輸省からいま要求が具体的に参っておりませんで、ただ、中身の気象関係に関するサービスについては、たとえば水理、水害の関係の業務の拡大とか、あるいは農業長期気象情報の整備とか、そういう種類の内容の整備につきましては、運輸省といたしまして無人の観測装置の設置とか、ロボット的にいろいろな推移を見るとか、そういう内容の充実につきましては、全国的な面といたしまして考えておりますが、岩見沢の気象台の昇格につきましては、まだ私どもは伺っておりません。
  107. 貝沼次郎

    貝沼委員 いまも言いましたように、昇格をするということは、これは政府方針として、ほかの気象台をつぶさないとできないそうですね。これは私も一応確認したのです。そうすると、昇格というのは実際あまり意味がないわけです。そこで、中身の充実が非常に大事だと思うのです。これは何も岩見沢だけに限ったことではありません。私は、ただいまも全国的にというお話がありましたけれども、それは全国的にやらなければならない。しかし、その規模というものがきわめて少ない、こういうことであります。  そこで、政府の姿勢というものがもっともっと前向きの方向でこれを取り上げていくという、そういう姿勢があるのかどうか。これは政治的な判断でありますので、政務次官にお伺いしたいと思います。
  108. 田中六助

    ○田中(六)政府委員 貝沼委員のおっしゃるように、災害が発生してからいろいろするよりも、事前にするという根本趣旨は、政府としてもそういう方針でございますし、そういう観念でございますので、あくまで前向きに対処していく所存でございます。
  109. 貝沼次郎

    貝沼委員 さらに、ついでですからもうちょっと申し上げますが、この気象通報だけでなく、実はこういう災害の起こっているところは、ほかの観測所あるいは研究所あるいはそういう研究機関、大学へ研究を依頼する、こういういろいろなことが行なわれているわけでありますけれども、それについて、現在の政府のとっている態度というものは非常に前向きではない、私はこういうふうに思うのです。たとえば先日とういう話をした大学の教授がおりました。  私は大学の教授で給料をもらっておる、しかし、私の教え子は研究室には残らない、なぜなれば、民間の研究所に行けば私よりもずっと多くの給料をもらって楽な生活ができる、その上大学の研究室においてはたくさんの仕事をやらなければならない、これでは大学教授が研究などできるはずがない、また、これでやっていこうとすれば、自分の生活費を切り詰める以外にはない、したがって、今後革命でも起きない限り大学でほんとうの研究がなされるなんていうことは望めないのではないか、こういうような声を私は聞きました。これは非常に重大な問題だと思うのですね。したがって、こういうような研究機関あるいは研究費、こういうものに対して大蔵省はもっともっとめんどうを見てやる必要があるのではないか、こう思ったわけでありますけれども、この点はいかがでしょうか。
  110. 田中六助

    ○田中(六)政府委員 最近の傾向として、大学の研究所よりも民間の研究所、それならばまだいいのですが、頭脳の流出等、外国に有能な人がどんどん行ってしまう。これは日本にとっても大きな損失でございますし、研究機関の整備並びにそういう大学の研究所におる人々の給与、そういう面については十分配慮しなければならないというふうに考えております。
  111. 貝沼次郎

    貝沼委員 十分配慮というのは、どういうような具体性を持ちますか。
  112. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 先生御存じのとおり、研究者といえども公務員でございますので、公務員の給与体系の全般のワク組みの中で判断されてしまう。そうなってしまうと、なかなか思い切った改善はできないわけでございますが、いま御質問にありましたようないわゆる研究公務員、これが民間との比較におきまして非常に格差ができている。これにつきましては、さらに私どもも給与の担当者のほうといたしまして、人事院その他と連絡をとりまして、具体的な内容について検討いたしたい、こう思っておる次第でございます。具体的なことをお答えできなくて恐縮でございます。
  113. 貝沼次郎

    貝沼委員 私も民間のほうをずっとながめてみましたが、給与自体はあまり変わらない。しかしながら、大学の教授あるいはそういう研究所の場合は、研究費が非常に少ない。したがって、自分の給料の中から研究費を使っていかなければならない、こういうことがあるのです。それに比べて、ただいまも政務次官から話がありましたように、外国に行きますと今度は研究費はふんだんに使える。そしてまた民間においても研究費は別ワクとしてたくさん出ておるというようなところから、おのずから自分の給料を生活費に使える人と、そうではなしに、自分の研究のためにもそれを使わなければならない人との差が出ておるわけですね。こういうことは好ましくないことであるから、もっと研究費のほうを多く見てやるべきではないか、私はこう思いますが、この点はいかがですか。
  114. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 研究費のワクが、いままでの一般的な研究費のワクにとらわれまして、そのために伸びないということを是正するために、近年大型の試験研究計画を取り上げまして、そのために科学技術研究費も相当な増額になっているわけでございます。  ただ、一つの参考を申し上げますと、先生の先ほどの御質問に関連いたします災害対策関係の事前研究を充実するというような費用につきましても、昭和四十二年度は十九億でございますが、四十六年度には三十二億というぐあいに、ほぼ六割ほどの増加になっております。それにいたしましても、また研究の分野によりましてはさらにそれを重点化、大型化する必要があるのではないかと思いまして、私ども検討を進めているところでございます。
  115. 貝沼次郎

    貝沼委員 パーセントとか何割増というのは非常に都合のいい話でありまして、現実に物価も上がっておるし、あるいは一つの機械でもきちっとしたものをつければ、相当金額が張っても、これは正確な予報もできるし、あるいはまた長くも使えるわけでありますけれども、しかし、ちょっと減らしたためにどうにもならないということもあるのです。現実に私は災害対策特別委員会でいろいろ質問してみましたけれども、その究極はやはりお金がないということに尽きたわけです。したがって、日本の災害というのは、うんと突き詰めていけば、金がないということよりもむしろその国の財政のやり方、ここに問題があるのではないかとすら思うわけであります。したがって、この辺からさらにさらに姿勢を変えて、そしていまは直接利益しないかもしれないけれども、長い目で見た場合日本の国民を守っていくという立場から、惜しまない予算をつけてしかるべきではないか、私はこう思うわけでありますが、この点いかがですか。
  116. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 まさにお説のとおりでございまして、災害を事前に察知する、あるいは災害が予防できるような試験研究、こういうものにつきましてはさらに力を尽くしていきたい。それにつきましては、研究費の内容などもさらに検討していきたい、こう存じております。
  117. 貝沼次郎

    貝沼委員 農林省のほうに伺いますが、北海道のこの要望書の中に、すでにこれは行っていると思いますが、「農業共済金の早期支払等について」という項目がありました。この中で「被害の早期認定により農業共済金を早急に支払いできるよう措置を講ぜられたい。」というのがあります。これについて現在きまっているところ、たとえばいつ認定をする、そしてその請求はいつやるか、支払いはいつやるか、これについてお伺いをいたします。
  118. 小暮光美

    小暮政府委員 北海道冷害の状況にかんがみまして、八月二日に農林経済局長名で、まず被害の極端に大きいと思われるところについては共済金の仮渡しあるいはそれに対する特別会計からの再保険金の概算払い、これをやってよろしい、したがって、そういうものの準備をしろという通達を出しました。具体的には、北見地区で十九組合、それから上川地区で五組合、十勝で一組合ございますが、これはほとんど収穫が多くは期待できないといわれる水田約七千ヘクタールにつきまして概算払いの手続をやらせまして、具体的には十一月四日に特別会計から概算払いをした。それを受けて六日から個々の農家に仮渡し金を渡すというような措置がとられております。これは被害がきわめて大きいところについての措置でございます。もちろんほかの地帯も被害があるわけでございますが、全体としてはそれぞれの共済組合が十月の中旬までに現地調査を終わりまして、それぞれこれを取りまとめまして評価会等を行なった上で連合会に資料をあげております。したがいまして、いま十一月上旬の現状では連合会による現地調査並びに連合会による評価会への諮問の準備というのが現在行なわれております。十一月二十五日までに農林経済局に届くように資料を出せということを申しておるわけでございます。私どものほうの担当者は、それを待ち望んでおるわけでございます。これが参いりましたら、最短の事務日数で、暦年内に最末端まで支払いの通知が行くように努力したいと考えておるわけでございます。
  119. 貝沼次郎

    貝沼委員 その点はよろしくお願いいたします。  それから、農業共済関係するわけでありますが、直接の関係ではないのですけれども、最近非常に望まれている問題といたしまして、畑作共済をつくったらいかがなものか、こういう声が非常に多いわけであります。しかし、この畑作の共済は非常に作物の種類が多いので、私は非常にむずかしい問題だとは思いますけれども、大体つくろうとする気があるのかないのかということが一つ。さらにつくるのならば、現在政府が考えているものはどういう方向のもので、その対象になる作物というものは大体何を考えているのか、こういうことについてお答え願いたい。
  120. 小暮光美

    小暮政府委員 畑作物の共済制度につきましては、たとえば三十八年、九年当時の北海道の作柄等に端を発しまして、当時も非常に強い要望が巻き起こりまして、十勝の豆類あるいはバレイショといったようなものについて共済制度がもし完備すれば、水稲共済で安心して米をつくるというあの雰囲気を一部畑作のほうに回せるのじゃないか、それが北海道の営農が豊かになる一つのきっかけになるのじゃないかということで、非常に強い要望がございました。当時四十一年から四十三年まで予算をいただきまして、大豆、小豆、菜豆、バレイショ、てん菜、なたねといったものについていろいろ試験的な調査をいたしたことがございます。そのほかにもおりに触れまして若干の畑作物についての調査検討の経費をいただきましてやったことがございます。ただ、非常に強い願望がございますが、実際に調査に取り組んでみますと、一つには、それぞれの作物が、年次間の作付変動が非常に多いある程度相場商品でもあるわけでございます。気象条件に左右されることだけでなしに、御承知の小豆の相場といったようなものも片一方には頭に描きながら作付反別を生産者が随時変えていく。したがいまして、たとえば小豆の畑作共済というような形で仕組もうといたしますと、対象が捕捉しがたい。  水田の場合には、今回のような需給事情でやむを得ず生産調整というようなことをやれば別でございますけれども一般の場合には水田というものは、まず間違いなく米をつくるわけでございますから、事業としてのいわば対象がはっきりしておる。それから果樹については、やや長い試験実施をやって来年から本格実施をしたいということで、こまかな検討に入っております。これも植えてしまえばほとんど永年作物ですから、いわば対象が逃げないわけであります。そこで、畑作の場合には、年次間の作付変動があまりにも大き過ぎて、個々の品目で追っかけ回してもなかなかうまい制度にならないのじゃないかという問題がございます。  それからもう一つは、先ほど御指摘の試験研究がもっと進めば別でございますが、現状では残念ながら北海道のようなところでは畑作物の収穫量は年によって激しく変動いたします。そのことがまた相場商品という性格を与えてしまうことにもなっているわけです。そこで、基準収量というものを、北海道全域について統計的に定めることはできるが、個々の圃場について妥当な基準収量を求めようとしますとなかなかむずかしいというような問題がございます。  それからもう一つやはり困りますのは、時系列での危険分散をはかるほかに、地域的な危険分散をはかることが農産物というものは必要なわけです。その地域的な分散をはかろうとしますのに、水稲とか麦であれば全国各地に作付がありますから、北のほうはやられたけれども南のほうはいいという形があるわけであります。台風が一部の地帯を通る。台風の通らなかったところはむしろ水がたくさん来てよくとれるというようなことがあるのですが、北海道のような畑作で考えますと、そういう地域的な危険分散が非常に困難である。やられるときには徹底的に全道やられてしまうということですから、共済という形の組み方が非常にむずかしい。そこで、まことに残念ながら、四十一年から四十三年までの検討の結果では、当事者の非常な熱意にもかかわらず、結果はやや否定的な調査結果になりまして、ちょっと現状では畑作共済は仕組みがたいのではないかということに実はなったのです。  しかし、その後農林省といたしまして、実は稲作転換をはかるという非常にたいへんな問題に直面した。特に政策的に稲作をある程度ほかの作物に転換をしなければならないということになりますと、かつて考えました以上に転換時の畑作物について生産者が安心できるような仕組みがほしいという、もう一つそこに強い願望が加わってきたわけであります。しかも、内地である程度稲作転換との関連で、いま申しましたような大豆とか小豆とかあるいはバレイショとかいったようなものがもう一ぺん見直されるということもあるわけでございます。かつて大体内地の水田地帯からはだんだん遠ざかっていった作物が、もし稲作転換ということでまたある程度各地で永続ということになれば、さっき申しました地域的な危険分散というきっかけがもう一つ出てくるのじゃないか。北海道だけでなしに、東北地方も含めたような形で危険の地域分散ということが考えられないかどうか。これにはやはりある程度その作物がふえてまいりませんと、共済事業の対象としてはうまくない。ややそこが、どっちが原因でどっちが結果かという安心感があれば内地にも定着する。しかし、それがある程度ふえませんと共済制度として仕組めないというような問題があるわけです。  ただ、かつて四十三年当時に一ぺんあきらめた形とまた違いまして、新しい要請がもう一つこれにつけ加わったというふうに私ども判断いたしまして、四十五年からもう一ぺんいわば気持ちを新たにして調査を再開いたしたわけであります。しかも今度は豆類という形でのつかまえ方が一つ。要するに、大豆とか小豆とか分けないで、豆類という形でのつかまえ方が一つ。それからあとは地域特産ということで、サトウキビとかあるいはたばことかあるいはお茶、イグサ、そういう地域特産で、今後生き残っていくであろう、こういうものについても調査しようというような形で、それぞれ調査費を計上して調査を再開いたしておる現状でございます。ただ、率直に申し上げまして、非常に組み方がむずかしいということを申し上げておきたいと思います。
  121. 貝沼次郎

    貝沼委員 いろいろ述べられましたけれども、要するに、それをつくりたいという意思はあるわけですね。その点だけ確認しておきます。
  122. 小暮光美

    小暮政府委員 何とか技術的に仕組める限り仕組んでみたいという熱意は持っておるつもりでございます。
  123. 貝沼次郎

    貝沼委員 それからもう一つ、最近瀬戸内海においては、赤潮とか、いままでにないようなことがいろいろ起こっておりますけれども、この赤潮は天災と判断しておるわけですね。
  124. 小暮光美

    小暮政府委員 水産庁が見えておりませんので、私、専門外で、あるいは間違いましたら後ほど訂正いたしますけれども、農災制度のようなあるいは災害対策、そういろ角度から見ました場合に、自然の災害というふうに思われますものであっても、所有権がはっきりしてない、要するに被害であることには間違いないのですけれども、その被害に対して農災とかあるいは災害融資とか、そういうものを仕組むためには、非常にちょくな言い方で恐縮なんですけれども、とりに行って、とってみて初めてその人のものになるのであって、私の地先にある魚はおれのものだ、私の地先にあるコンブはおれのものだというように、所有権がはっきりしてないわけです。ノリしびのように、特にいかだを組んでそこでノリをつくる、こういう形でございますれば、そこでくっついてくるノリに対してそのつど所有権が確立するわけでございますから、これについての天災融資法は発動した例がございます。暖冬異変でノリが腐ったような場合、いま流氷でコンブが切れたり、赤潮で魚が遠のいたり、こういったいろいろ残念な事柄があらこらであるわけでございますけれども、そういうものを共済制度とか天災融資法とか、いままで考えられている災害の仕組みでちょくに救えない部分があるということを聞いております。
  125. 貝沼次郎

    貝沼委員 ただいまも答弁ありましたけれども、確かにどちらかはっきりしないような問題で困るというのは役所のほうであります。しかし、実際にもっと困るのはそれに従事している人たちなんですね。これはどうしようもないという状態です。したがって、私は、政府に対して、政務次官もいらっしゃいますが、また主計局もおりますので、これを要望しておきたいのですけれども、こういう方面から対策を講じて、そうして積極的な予算をつけてもらいたいという場合、これをむげに切るのではなくて、少し前向きの姿勢で予算をつけてやってもらいたいということなんです。  これは何も赤潮だけでなく、私が最近特に思っているのは、たとえば私どものほうには石油コンビナートがあります。ところが、この石油コンビナートが爆発すればどんなことが起こるかわからない。それこそ原爆の実験みたいになってしまう。ところが、それくらいのことはもう百も承知だけれども、それに対する予算というのはつかないわけですね。消防艇が一隻か二隻ぽかっとついておって、そうしてもしも事件があった場合にそれに対して水をかけるか何かぐらいの程度です。あるいは燃えているタンカーならタンカーをタグボートでもって引っぱり出す。そして沖のほうで燃やしてしまえばいいじゃないかといいますけれども、タグボートだって人が乗るわけです。その大きな船がもし爆発すれば、タグボートに乗っている人はみんな吹っ飛んでしまう。したがって、その人たちの生命の保証はあるかというと、これはないわけですね。そういうようなぐあいで、非常にあぶないことをやっておるわけです。  したがって私は、こういう一つの共済という考え方あるいは助けるという意味から、やはりいまそういうような手が望まれているようなところに対して、主計局としてもっともっと力を入れて、考え方を改めて、そしてほんとうにみんなが安心して生活できるような、そういう体制に協力していただきたい、こう思うわけですが、この点いかがですか。
  126. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 これから相当公害、また大規模災害を惹起するようないろんな原因が私どもの周囲に累積しているわけでございますが、まずそれに対しましては、たとえば瀬戸内海の海水汚染などにつきましては、水産庁とか海上保安庁に、まず原因者を究明してその被害を未然に防止しようという対策費の予算をいろいろ強化いたしたいとは思っております。  それからいま御質問の、そういうような災害に対しまして一つ災害互助制度といいますか、共済制度といいますか、そういうものに乗るかどうかという点につきましては、農林省のほうでもいろいろ熱意を持って研究しているようでございます。私どもその研究の結果など待ちましてまた検討していきたい、こう存じております。
  127. 貝沼次郎

    貝沼委員 では、前向きによろしくお願いいたします。
  128. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。  暫時休憩いたします。    午後四時七分休憩      ————◇—————    午後四時二十一分開議
  129. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 再開いたします。  国の会計、税制、関税、金融外国為替に関する件について、調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。広瀬秀吉君。
  130. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 主として国際通貨問題、また平価の調整の問題を中心にして、大蔵大臣に質問をいたしたいと思います。  けさの新聞によりますと、円の変動相場制に移行して以来、最高の円高相場を実現した。一ドル三百二十八円七十三銭という、IMF方式で平価に対して九・五一%高い、そういう高い状況が出た。ドイツのマルクが、フランクフルトの相場で平価に対して九・五%上昇しておる。これをさらに〇・〇一%抜いて、まさに、非常に大見出しで、世界一強い円というようなことまで報道機関では使っている。そういう状態に昨日なったわけです。これはたいへん意味があると、私は実は思うのです。きょう十日、コナリー米財務長官とわが国の水田大蔵大臣が会見をされる。その話題は、当然円問題、円切り上げ問題に及ぶであろう。そういう状況の中でこういう実態が出たということは、やはり一つ問題があるのではないかということで、投機資金等がまたきのうの段階で相当多量に流入をしたのではないかということも考えられるわけでありますが、こういう水田・コナリー会談というものを見込んだ投機筋の資金が流れ込んだ、そういう結果、こういう円高相場が実現をしたのではないかという見方もできるわけでありますが、この辺のところを一体大蔵大臣はどのようにお考えでございましょうか。
  131. 水田三喜男

    水田国務大臣 私は、きょうのコナリー長官との会談と関係のある、きのうは為替相場であるというようなことは全然考えておりませんでしたが、実情についてどうも……。もしあれだったら、局長から……。
  132. 稲村光一

    ○稲村(光)政府委員 昨日、ドイツマルクに比べましてほとんど同じといいますか、旧平価に対します切り上げ率と申しますか幅が、ドイツマルクを若干、ほんのわずかながら抜いたということは事実でございますが、これはコナリー長官の訪日とかなんとか、そういうこととは全く関係ございませんで、実際の市場の実勢に応じましてそういう相場が出ておるわけでございまして、当局のほうといたしまして、特に特別なそういう意味の操作は、全くいたしておりません。
  133. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 そういう投機資金が流入したというようなことではないということでございますが、この問題は水かけ論ですから、それ以上やりません。  きょう、水田大蔵大臣は、コナリー長官と午前午後二回にわたって会談をされたはずでありますが、その会談で出た問題はどういう問題でございましたか、ひとつお聞かせをいただきたいと思うわけであります。
  134. 水田三喜男

    水田国務大臣 私は、両国にとってきょうの会談は非常に有益であったと思っております。と申しますのは、いままで何回も会談の機会があっても、時間が短かったことと、それから大ぜいの会議ではなかなかこまかい話ができないのでございますが、きょうは非常に時間が十分ありましたために、いろいろな問題にわたってお話ができて、日本の問題についても理解を深めてもらうことができたと思いますし、また私どもも非常にアメリカの考え方というようなこともわかって、有益であったと思っております。  話題は、これは御承知のように、日本へ来られるとき長官が、要求、解決というようなものを持って、今回の訪日を交渉の場とするということは一切考えていないということでございましたので、あるいはそうであるというふうにも私どもは思っておりました。しかし、国際通貨の問題がこういうときでございますので、私のほうとしましては、できるだけこの機会を得ていろいろなお話もしたいということで、そのつもりできょうは会談に臨んだわけでございますが、コナリー長官は、やはりいままで言っておったとおり、特にきのう羽田へ到着されてからすぐに記者に対して言われたと同じことで、今回は一切かばんの中にそういうものを詰めてこない、だからその問題とは別に、いろいろな問題にわたって日本のことを十分聞きたいということでございましたので、私どももそれを了承して、日本の現在のいろいろな問題について、これは相当詳しく説明いたしました。特に長官が一番興味を持って聞きたがっておりましたことは、欧州の諸国にもあるのですが、完全雇用が行なわれておって、国外から労働者が移入されておって、一定の成長率を持っている国が、やはり不況ということを訴えているという、その不況という意味について、なかなか理解しがたいものがあるので、自分たちはそれを非常に勉強してきたが、日本に対しても同じような、日本の不況というものについて十分理解できないものを持っておるので、そのことだけは、今後の日本と米国とのいろいろな今後の問題のために、やはりこういう機会に十分聞いていくことが有益であると思うというようなことで、日本においても、不況という——いま不況、不況と言われているが、どういう不況であるかという質問で、これはいろいろ質問いたしました。たとえば今年度の成長率がどのくらいになるかというので、四・五%から五・五%というような予想をしておるというのですが、外国から見ましたら、五%の成長率なんてものはたいへんで、これはいわゆる日本的不況ということになるでしょうが、それをまず納得するのに相当いろいろ——すぐにはなかなかパーセントの理解はむずかしいと思いますので、実情によっていろいろな問題にわたって説明して、相当日本の現状というものを長官はわかっておられたと思います。  それから、いまの通貨の問題については、世界の政治情勢も非常に変わっておるときでありますし、したがって、この国際通貨に関する問題の安定をはかるということは、やはりこれは急務であるために、この問題をできるだけ年を越したくない、無期限に明年度へ延ばすということは、各国にとってこれはどういう不幸を招来するかもしれないので、できたらこういう問題は年内に片づけることがいいと思うということから始まって、私どものいろいろな意見を述べて米国の考えを聞いたわけでございますが、これはいま旅行しておる途中で寄ったので、自分のいないあとでECのいろいろな情勢も変わっておるし、そういうのも帰ってから十分ECの事情を聞くし、日本の事情も聞いていけば、そういうものを参考にして、この次の十カ国会議に臨む自分の腹を向こうへ帰ってからきめるのだ、きょうこの旅先でアメリカの考えを述べるということはよしたいというようなことで、こういう点についても考えを述べない。したがって、その問題について、日本にこうしてくれ、ああしてくれというような要望もむろんございませんし、とにかくそういうものを解決するための資料を得たいというために、きょう私を皮切りにして、あしたから一応各閣僚に会っていろいろな事情を聞いて、そうしてそれを参考にして帰りたいということがやはり最初からの目標であったと私は思われるのですが、そういう立場でいろいろ意見の交換を行ないました。  その中では、当然一国別の話が出てまいります。ドイツの事情についてはこう、フランスについてはこう、いろいろ出て、そこでむずかしい問題がこういうところにある、ああいうところにあるというようなことについては、相当詳しくお話がありましたし、また日本で得ている情報があったら聞きたいというようなことで、私どもの得ている情報についてもある程度提供いたしましたが、最後に、他国についてお互いにこういうふうな見方をしたとか、話し合ったとかいうことだけは、これは一切いかなるところへ行っても言うべきことではないので、この点はということで、これは当然でございますから、ひとの国について話し合ったということはごかんべん願いたいと思いますが、そういうことから、この通貨問題のまとめ方、非常にこれはいま苦心しているという各国との関係は十分聞きましたが、さてそれをどうするかというようなことについての最後のアメリカの考え方というものは、きょうは言わないで別れたということでございます。  そのほか、いろいろ問題ございましたが、大筋は大体この二つのことを中心にして、長時間いろいろ話し合ったことでございまして、最後に、どういうことがあっても、日米の個人的友情、それから国と国とのいろいろな関係ということは、今後もっと緊密に結びついていかなければ、両国経済というものはいかないと思うというようなことで、今後の日米関係については、これから非常に緊密な連携をとっていこうということを強調されて、こちらもそれに賛成して、きょうは別れたと  いうことでございます。  大体の筋は、そういうことでございます。
  135. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 そうしますと、具体的に円切り上げ幅について考えを明らかにしてこちらに要求をする、あるいはいろいろなマスコミに報道されておりましたような、いわゆる防衛分担金の要求であるとか、あるいは経済援助の肩がわりの要求であるとか、あるいはアメリカの中古兵器の購入を要求するとかというような具体的問題については、何もきょうは話を向こうからしなかった、こういうように了解してよろしいわけですか。
  136. 水田三喜男

    水田国務大臣 その種の問題は、きょうは自分のかばんの中に一切入っていないからという冗談まで言って、そういう問題をしませんでした。
  137. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 そこでお伺いしたいのですが、大蔵大臣としてはコナリー長官との会談の中で、年を越したくない、年内に通貨調整の問題は何とか片づけたい、そのことが世界の経済の発展、貿易の拡大のために必要なことだ、こういう話し合いが行なわれたということをいまお話しになったわけでありますが、そこで私どもが考えること、また心配することは、日本政府としての国際通貨調整問題に対する基本的な態度としては、二国間交渉はやらない、多国間調整ということでやっていくのだということが今日までの方針になって、大蔵大臣の口から九月一日の委員会においても語られておるわけだけれども、そういう態度については変わりはない、こういうように考えてよろしゅうございますか。
  138. 水田三喜男

    水田国務大臣 そのとおりでございます。しかし私は、この通貨調整の問題は、二国間でかりに話し合いをしてみても、多国間の合意が得られなければ、二国間できめたもので通貨が安定するわけではございませんので、最後は多国間の協議によってきめられなければならぬということはそのとおりでございますが、しかし、大ぜいの国が集まってすぐにそこまでもっていくということはなかなかむずかしゅうございますので、やはりそこにいく過程には、二国間の話し合い、三国間の話し合いというものが多角的に行なわれて、そして最後に全体の合意というところへもっていくのが、やはりものをきめる筋ではないかということも考えて、場合によったら、そういう基本的な相談をもう二国間で始めてもいいということは、私も考えて機会を見ておったのでございますが、きょうのいろいろの説明で、まだ二国間がそれをやっても、それが多国間全部まとめる基礎になるというようなところまで情勢が熟していないということを私も感じましたし、またコナリー長官もそう思っておるようでございますので、したがって、そういう方法論として考えられても、まだ少し——その問題を向こうからも言い出しませんし、したがって、私も言わなかった。いずれそういう時期があるとは思いますが、それはむろんきょうの話には出なかった。しかし、いずれにいたしましても、最後は全部が入った場できまるものでなければこれは意味がないということについては、きょうもそういう話が出て、意見が一致しております。
  139. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 まあ、この多国間調整ということも、その中でバイラテラルに、プロセスとして交渉なり、折衝なりがひんぱんに行なわれるということはあろう。ただ、われわれが心配するのは、そういう場において、大体今後の通貨調整、これは、ドイツのマルクとやはり日本の円と、こういうものが中心になるだろう。この問題が大体二国間で合意に達するようなことになれば、あとは若干の特殊事情を考慮しながらそれに右へならえをしながら若干の調整をするというようなことで大体いってしまうということに、多国間調整の最終結論というのは、そういうことになるのではなかろうか、こういうことを予想するわけなんですね。その際、いまのアメリカの態度というものが、上院においても、課徴金一〇%の問題でも一五%までは大統領に権限を委譲しようではないかというような決議までやっている。通貨調整の問題について、これはお互いの激烈なかけ引きがあるわけですから、向こうもそういういろんなタクティクスも使うかもしれませんけれども、そういう点で向こうのベースに巻き込まれるということが非常に危険である。すでにもう繊維の政府間協定というような場合においても、向こうの非常に高姿勢な態度に押し切られた形で、向こうの要求をほぼ一〇〇%のまざるを得ない、こちら側の自主的な要求というものが完全に圧殺されたような形になっているということで、非常に国民はその点を不満に感じ、政治不信にもつながるというような面にも発展しているわけです。  だから、そういう点でわれわれ日本側として具体的に一体どのくらいの予想数字をもって切り上げ幅をどうするんだというようなことは、いま大蔵大臣の口からおそらく言えないだろうとは思うけれども、とにかく国民的な立場に立って、それこそまさに最近はやりの国益の立場に立って、特に日本経済をささえている国民大衆、労働者大衆、勤労者大衆、そういうものの立場に立って、この人たらを過度に、不当な通貨調整を押しつけられたというような姿によって犠牲を負わされるということについては、忍びがたいものがあるわけですね、そういう点について、一体この日本の経済というものがどれくらい——質問の角度を変えまするけれども、どのくらいの切り上げ幅までならばたえられる限度だと考えられておるのか。またそれに対して、今度はワイダーバンドを一%というのじゃなしに三%、日本の場合は〇・七五上下幅だったけれども、これが三%ぐらいになるというようなこともあるわけでありますが、それらの点について、お考えを聞かしていただきたいと思います。
  140. 水田三喜男

    水田国務大臣 どの線までたえられるかというようなことは、私どものやはり一番知りたいことでございますので、各業種別にできるだけの資料を集めるというような形で私どもも十分勉強しておりますが、しかし、この問題は、いま政府はこの程度と考えるというようなことは言うときではないと思いますので申し上げられませんが、十分勉強はしております。しかし、何といっても、こういう問題は不況をひどくして解決するというようなことは、これはたいへんな問題でございますので、したがって、単なる率の問題じゃなくて、日本経済の実態の上から、これ以上の不況を起こした場合にどうなるかという、別の面からもこれは政治的にも考えられることでございますし、したがって、昨日日本社会党からもこの点について慎重を期するような申し入れ書ももらっておりますので、きょうはそういう取引の日ではありませんが、私は雑談の形で、日本社会党からもこういう申し入れに接しておって、いま自分も、まだ私の考えはさまっていないということになっております、まだきまっていないけれども、やりそこなうというと、今度は国会でだいぶ閣僚が次々に不信任——今度はおそらく私の番だろうと覚悟して、私はこの問題についていろいろそういうお話もきょう雑談の中で出ました。そうしましたら、コナリー長官は、それはおかしい、場合によったら私が行って説明してあげてもいい、アメリカから見ると、日本の経済を伸ばしてドルをだいぶためて、しかもこういう折衝ごとになって、相当慎重にやっておられて、これは向こうから見たら勲章ものだと思っているので、不信任じゃなくて、勲章をもらってもいいのじゃないかと言うので、なかなかこういう問題では勲章はもらえないのだという笑い話もいたしましたが、申し入れ書にありましたような趣旨、これは十分私は体して今後の交渉に当たるつもりでございます。
  141. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 むずかしい問題で、大臣も言いにくいだろうと思いますが、そこでいままでにも九月の二十日前後に開かれた十カ国蔵相代理会議でこの通貨調整の何かの手がかりがほしいということが十カ国蔵相会議でも言われたというようなことから、その問題を煮詰め、またOECDの第三作業部会というようなものも開かれて、一体アメリカの国際収支の調整所要額といいますか、こういう問題が一つの手がかりになるのではないかというようなことから、だいぶこの問題を一つの手がかりとするために作業が進んだ。アメリカは、その必要な国際収支の調整額というのは百三十億ドルにのぼる、こういう主張をしておる。また、ときには百十億まで譲歩したということもある。日本側は、必要調整額は五十億ドルである、こういうようなことを言っておる。OECDの作業部会では、大体八十億ドルくらいであろう、こういうようなことも出ておるわけでありますが、この円切り上げ問題、このドル問題とからんで、アメリカの国際収支の調整額というのは、一体日本としてはやはり今日でも五十億ドル程度と、こういうような主張をされておるのかどうか。それはもう引っ込めて、後退しちゃったのかどうか。この辺のところはいかがでございますか。
  142. 水田三喜男

    水田国務大臣 OECDの会議以来、この問題はいまのところ引っ込んだ形になっております。と申しますのは、もうコンピューターではじいた数字基礎に行き詰まったものを、さらにこれを基礎にして打開をはかるということは、私は、ここまで来たら困難じゃないか、むしろもうこの問題を離れて、まとめるつもりなら離れて、別個の立場でお互いがまとめようとするのでなければ打開できないのだろうというふうにも考えますので、この百三十億の問題を繰り返して、これを狭めろとかなんとかいうよりも、そうじゃなくて、やはりこの際は各国が自分の経済においてたえられる限度の協力を求めることがいいであろうし、またわれわれもそういう範囲において協力することがいいのじゃないかというような、別の角度からの各国の協調、話し合いをこれからすることのほうが、私は賢明だろうと考えて、きょうはもうその百三十億ドルの数字の問題は、私のほうでは出しませんでした。
  143. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 結局、高度な政治判断というか、それぞれの国における経済のたえ得る限度ということを目安にして高度な政治判断というものが、通貨調整を円満に解決する道であろうということばに理解したわけですが、そうなってまいりますと、われわれまた一つ心配が起こるわけであって、この委員会に参考人を招致いたしまして、いろいろ参考意見なども伺いました。その中で、問題はドルの減価なんだ、ドルの価値が下がっているのだ、こういうことなんだから、ドルに対して切り下げを要求していく、金価格の引き上げという形のものを要求していくということは、日本政府の態度の中には現在ないのでありますか。この点はいかがでございますか。
  144. 水田三喜男

    水田国務大臣 会議をまとめる上において、アメリカがどういう態度をとるかということは、一番重要な問題でございますので、むろんこの問題についてきょうは触れました。ところが、さっきも申しましたように、これから各国の情勢も聞くし、日本の事情も聞いていって、来たるべき会議に対するアメリカの考えというものはこれからきめるのだから、きょうは旅先で、そういう問題についてのはっきりした話ができないというようなことで、こういう問題については、一切きょう向こう側の考え方というものは出てきませんでした。
  145. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 そこで、もう時間がありませんので、今月の二十二日でございますか、これは議運も、十カ国蔵相会議に大蔵大臣が出席することは、こういう特別な重大な問題だから、国会開会中ではあるけれども認めようじゃないかということに大体決定をしたようでありますが、この十カ国蔵相会議で、いわゆる多国間の国際通貨調整の仕上げができるというようにお考えであるかどうか。このことが一つ。  それから、それに先立って、やはり先ほど切り上げ幅や何かについても、大蔵大臣として、日本の大蔵大臣として、日本の経済状況というものをしっかり踏まえて、これを著しく犠牲にして国益をそこなうようなことのない限度はどういうところか、どういう線か、こういうところをやはり決断をしなければならない時期があろうと思いますが、十カ国蔵相会議に行かれる前にそういう決 断はされる、そういうように理解してよろしいですか。
  146. 水田三喜男

    水田国務大臣 私の予想では、この二十二日、三日の会議は、いままでのいきさつもございますので、各国が角度を変えた大局的な話に戻って、そしてこれをとにかく解決しようという話し合いが、もし開かれるとすれば、それが中心の会になって、そうだとすれば、たとえば年内にもう一ぺん会ってそこできめようとかなんとかいう解決のためのいろいろな手続とかいうようなプログラムをきめて終わるのじゃないか。そうしてその次きめられた日が、最後に各国が話を持ち寄って解決の折衝をするときだと思いますので、この二十二日、三日が済んでからほんとうの日本の腹をきめる作業を行なってもおそくはないだろうというふうに考えます。
  147. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 年を越したくないといえば、クリスマスまでにはきめなければならない、そういうことになるのですが、二十二、二十三日の十カ国蔵相会議ではおそらくきまらぬだろう、そのあとだというのであります。そこで、やはり年内にこの問題が、先ほどおっしゃったような多国間調整の場において決着を見る、こういう見通しについてだけ最後に伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  148. 水田三喜男

    水田国務大臣 二十二日が開けるようでしたら、私は年内解決の望みも出てくるというふうに見ますし、二十二日、三日が開けないようだと、これはなかなかむずかしいというふうに見ておりまして、コナリー長官が議長でございますので、きょうその点について、二十二日をどうするかという話もしましたが、いまのところこれを変更するような考えはありませんでした。しかし同時に、先ほど申しましたように、各国の事情を言われたところによりますと、問題はなかなかむずかしいという印象は持っておりますが、この点は、やはり二十二日、三日の会議を経ないと、正確な判断ができないのじゃないかと思います。
  149. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 終わります。
  150. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 貝沼次郎君。
  151. 貝沼次郎

    貝沼委員 ただいまずっと大臣の説明を聞きまして、ほぼ話し合われたことがわかったように思うのですが、しかし、その前に、私は二、三の点をお伺いしたいと思います。  その一点は、今回日本政府の首脳とコナリー長官が次々にお会いになるわけでありますけれども、この会談というものが二十二日、三日に行なわれる十カ国蔵相会議との関連性においてどういう関係があるのか、大臣はどう受けとめておられるのか、この点についてお伺いします。
  152. 水田三喜男

    水田国務大臣 今度はそういう折衝の場ではございませんでしたが、ベトナムの就任式に参加したのを機に日本へ寄って、日本のいろいろの人と会って日本についての理解を深めたいということを最初から言ってきているところでございまして、やはりそのとおりの意図を持って来られておると思います。ですから、きょうを皮切りに、この二、三日の間、相当いろいろな人と会われることと思いますが、これは日本の事情を知るということによって、米国はこの平価調整の問題そのほかについて、日本との関係の調整というようなものへの一つ資料をこしらえることに役立つ会談になるのではないかと思っております。
  153. 貝沼次郎

    貝沼委員 そこで、コナリー長官がお会いになる人というのは、総理をはじめとして大蔵大臣、外務大臣、ずっとおるわけでありますけれども、この大蔵大臣あるいは通産大臣、外務大臣、こういう会われる方々が会議をして、そうして一つ考え方というものを持って長官に会われておるのか、それとも個々別々に独自の考え方で会っておられるのか、この点はいかがですか。
  154. 水田三喜男

    水田国務大臣 もし特定の問題の交渉というようなことでございましたら、これは関係者の十分な協議が必要であるというふうに考えておりましたが、そういうものはない、ただ日本の実情についていろいろ聞きたいんだということに限定されましたので、したがって、そうだとすれば、各閣僚は自分の関係の範囲内においていろいろ事情の説明をするということでいいんではないかということで、一応は集まって相談をいたしましたが、結論としてはそういうことで話が済みました。その場合に、通貨調整というような問題は、微妙な問題でありますし、これを会った各大臣がそれぞれその問題についての意見を述べるというようなことがありますと、これは非常に支障あることでございますので、通貨についての話がもし出るという場合には、大蔵大臣に窓口を統一する、こういう話し合いになっておりますので、きょうですか、外務大臣が会われるときには、外交問題全般についていろんな話し合いがあったり、日本の態度の説明を求められれば説明をするということは、各大臣によってこれから行なわれるだろうと思います。
  155. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから、今回はコナリー長官が来て閣僚と会うわけでありますけれども、今後日本とアメリカの間において、このような会談という砥のは行なわれる可能性はありますか、それともないとお考えですか。
  156. 水田三喜男

    水田国務大臣 私は、特別になくてもいいんじゃないかという気がいたします。もし必要があるのなら、Gテンの会合があるというようなときに、事前にその場で話をする機会もございますし、時に二国で特別な話をする必要もないんじゃないかと思っております。
  157. 貝沼次郎

    貝沼委員 そうしますと、必要がないということは、今回のが日本とアメリカとの会談を通じての話し合いとしては最終的なものである、こういうふうに判断してよろしいですか。
  158. 水田三喜男

    水田国務大臣 いや、そうではございませんで、会う必要はそういう意味ではあると思いますが、この次のGテンならGテンまでに特に二国が別に会うということが必要かという意味にとりましたので、その必要はないだろうというのですが、これが済んでから、また必要がいよいよまとまる前には起こるかもしれない、これは私もいまのところ予測できません。
  159. 貝沼次郎

    貝沼委員 先ほども話がありましたが、今日の会談でコナリー長官のほうから、世界の政治情勢が変わった時点で年内に片づけるほうがよいと述べたという大臣のお話がありました。この点については、テレビの放送によりますと、同意したというふうになっております、意見の一致を見たというふうになっておりますけれども、大臣もこういうお考えで事を進めようとなさっていらっしゃるわけですか。
  160. 水田三喜男

    水田国務大臣 午前の話では、大体私は同意したというふうに理解しておりますが、最後に別れるときになりましたら、たとえ年を越すようなことがあっても、日米の関係は全然変わらないで、より緊密にこれから連絡をとってというようなことでございまして、かりに年を越すことがあったとしても、という余分な字が一字くっつきましたので、これはやはりなかなかむずかしいと思っているところがどこかにあるんではないかというふうに思われますが、しかし私は、こういう問題は世界情勢がどんどん変わるときに、少なくとも通貨の安定ということは、これは何よりも先に解決しなければならない問題だ、できたら年内に解決したいということを述べたことに対して、一応私はアメリカも賛成であったというふうに理解しております。
  161. 貝沼次郎

    貝沼委員 その解決ということでありますけれども、この解決は、たとえば大臣の考え方としては、固定相場制ということを頭に置いての解決ですか。それとも、それ以外の方法を考えての解決ですか。
  162. 水田三喜男

    水田国務大臣 非常にむずかしい問題でございますが、固定相場制と申しますが、昔のような固定相場制というものは、もう金という一つの基準がなくなっておるんですから、厳密な固定相場制といえるかどうかわからない。むずかしい問題でございますが、やはり最後は、最近よく新聞などでもいわれておりますように、対ドル基準のレートを一応きめるというようなことで、この調査を第一段としてする。金との結びつき云々というものは次に考えていい。そこまで考えたら、これは当分解決にはならないというふうに思いますので、やはり対ドル基準の為替レートをきめるということに上る妥結が、この際可能な方法ではないかというふうにも私は考えております。
  163. 貝沼次郎

    貝沼委員 それで、正午のニュースによりますと、本日の会談で、柔軟な態度をとるよう要請したとありますが、この柔軟な態度というのは、具体的にどういうことを要請されたわけですか。
  164. 水田三喜男

    水田国務大臣 具体的には、すでにこの四日ですか、ECの蔵相会議においてこの問題解決のための前提条件というようなものを欧州の諸国はきめておりますので、このきめておる条件というものに対しては、いままでのいきさつから申しますと、米国は非常に強硬に拒否しておった問題でございますので、この点について柔軟性をある程度持たないと、この解決というのは私どもはむずかしいと思う、それについてどう考えるかということを聞いたわけでございますが、さっきからお答えしておりますように、まだこれからきめるというようなことで、その点についての明確な回答を今度はアメリカはしなかったということであります。
  165. 貝沼次郎

    貝沼委員 きょうの新聞によりますと、「この一連の会談では1.円切り上げは多国間通貨調整の一環として行なうが、大幅な切り上げは日米双方に不利な結果を招く2.通貨調整を年内に実現させるには米国が輸入課徴金廃止、ドル切り下げで弾力的姿勢を示す必要がある3.通貨以外の問題では米国製兵器購入、貿易・資本の自由化などで引き続き前向きの措置をとる——などの考えを示す方針だが、」と、こうなっておりますが、この点は間違いありませんか。
  166. 水田三喜男

    水田国務大臣 いやいや、そんな話はきょうは出ません。
  167. 貝沼次郎

    貝沼委員 いや、これはきょう話があったというのではなくて、一連の会談において、今後こういうことが基本としてなされるのかということを聞いておるわけです。
  168. 水田三喜男

    水田国務大臣 これはどこでこしらえたのだか知りませんが、私のほうでは別にいまそういうことをきめておるわけではございません。
  169. 貝沼次郎

    貝沼委員 先ほども話がありましたけれども、きょうの報道によりますと、九日に日本円の切り上げ率がマルクよりも大きくなったということで、この逆転は、時期的に見ても、政府、日銀がマルクを上回る幅で円切り上げを行なうのもやむを得ないと判断したといわれておるとありますが、この点は大臣、いかがですか。
  170. 水田三喜男

    水田国務大臣 それはさっき金融局長からお話ししましたように、相場とそういう問題は全然関係のないことでございます。
  171. 貝沼次郎

    貝沼委員 それじゃ、この西ドイツのマルクが低下したという理由などもいろいろ報道されておるわけでありますが、その中に、たとえば十月の十四日に公定歩合の引き下げなどをやって金融の緩和策をとったということが、一つの理由になっております。そこで、今回政府の発行する国債、また来年度行なわれる国債の発行等考えた場合、この第五次の公定歩合の引き下げということもささやかれておりますし、同時にまた預金金利の引き下げも行なうのではないかと一般の人は非常に心配をしておるわけでありますけれども、この点について、まず第一に、第五次の公定歩合の引き下げはやるお気持ちがあるのかないのか、これが一点です。それからもう一点は、それに伴って預金金利の引き下げというものを行なう考えはあるのかないのか、この点についてお答え願います。
  172. 水田三喜男

    水田国務大臣 公定歩合の問題は、御承知のように、政府としてはいま日銀の判断に一切おまかせしてあるという状況でございます。日銀としましては、もうすでに一般貸し付けというものがゼロにほとんどなっておるのですから、公定歩合の引き下げということの意味というようなものもまあ検討しておるようでございますし、要するに銀行の貸し付け金利をもう一段下げる指導をすれば目的は達するのでございますから、その辺についていろいろ検討するということでございまして、判断はおまかせしてあるということでございます。  預金金利の問題は、これは来年の国債発行とからんで、そこまで思い切って考えなければいかぬ問題かどうかということについてもまだ問題がたくさんございますので、検討はいたしますが、これは私どもとしてはもう少し慎重に考えたいというふうに考えております。
  173. 貝沼次郎

    貝沼委員 時間がありませんので、最後に一問だけお願いします。  九日に、佐々木日銀総裁が関西の財界首脳と懇談いたしました。そのときに、「円切り上げ一五%説に対して「平価切り下げの場合は一挙に大幅切り下げすることもあり得るが、多国間調整による切り上げの場合は、各国とも小幅になることは仕方がないという態度である」と語り、間接的表現ながら、切り上げ幅は一五%未満であることを示唆して注目された。また長期の輸出取り引きに対しては、為替保険制度の新設を前向きに検討するとの見解を明らかにした。」と伝えられておりますけれども、大臣はこの点についてどのようにお考えですか。
  174. 水田三喜男

    水田国務大臣 私は、日銀総裁がそういうお話をしたということを、実際には聞いておりません。また、日銀総裁がそう考えておるというようなことも、いままでいろんなことでお会いしているのですが、そういう話を聞いたこともございませんし、(「大臣はどう考えているのかというのです。」と呼ぶ者あり)私の考えは、いま申しましたとおり、どこへもいままで言っておりませんし、もうしばらく言うことは遠慮したいと思います。
  175. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 関連質問として、松尾正吉君。
  176. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 きょうの大事なコナリーとの会談にあたっての、いままでの論議を中心にして、あとのために一問だけ伺っておきます。  それは、コナリー長官はからのかばんで臨んだというお話ですね。これについて大蔵大臣並びに総理大臣と関係大臣が集まって協議をしたけれども、ばらばらで折衝をしょう、こういう方針にきまったというお話をいま伺いました。これは全然白紙で臨もうとしたのか、ねらいをどこかに置いたのか、これが一点です。向こうを探るのか、あるいはこちらの実情を聞いてもらうのか、それはどこにあったのかという点が一点ですね。  それからもう一つは、非常に有意義な会合であった。理由は、長時間かけて理解をしてもらうことができた。非常に楽観的な答弁を聞いたわけです。ところが、何と何を大臣は話して、どういう面でコナリー長官は日本を理解したのか。これはもういまの時間ではとうてい詰められませんから、この次の時間のためにこの点をはっきり伺っておきたいと思います。要するに、今度コナリー長官が来て、ここで話して、それで日本あるいは国際通貨の調整をやろうなんという考え方は、これはもうだれが考えても甘過ぎる。米国の事情は、御承知のようになりふりかまわずにとにかく徹底した方式でいかなければいかぬぞというようなことが、ハト派からもタカ派からも出ている。こういう情勢は、大臣十分御存じであろうと思いますので……。まあ答弁を聞きますと、日本を非常に理解をしてもらったということで、それじゃ今後の交渉では日本の主張がある程度通るんだなという感じを国民は持ちます。おそらくきょうの大臣の答弁は、こういう過程にありますから、日本を理解してもらったというのは、こういうことばもちょっとまずいのですが、作戦的にそういうふうに答えられたんだとは思うのですけれども、ほんとうにそういう腹で今度の会談を、日本をアメリカは理解したと大臣はとっておられるのかどうか、これを含めて一問だけお聞きします。
  177. 水田三喜男

    水田国務大臣 いま、各大臣がばらばらに折衝することにきめたということでございましたが、さっき申しましたのは、もし折衝というようなことだったらばらばらではいかぬからということを考えたんですが、折衝ではないということでございますので、それではばらばらに会って、いろいろ実情を聞きたいというのですから、その点において各自が自分の管轄の問題でいろいろお話をするのがいいだろうということに話をしたということでございます。交渉ではございません。  また、同様に、明日は財界の人たちも何人かは会見する機会を得ると思いますが、そこもいまそれぞれ日本の経済についての説明をするというようなことで、交渉にわたる問題ではございませんので、これは自由にみなそうしていただくということにしてございます。  非常に有意義だったといいますことは、何といっても、なかなか一国の事情というようなものをゆっくり説明したり理解してもらう機会というものは国際間ではない。で、そのことを私どもは今度の日米会談を通じ、ロンドンで行なわれたGテンを通じ、そういうまず真相を、実際のところを知ってもらうということから始めなければ、話し合いにも何にもならぬということでさんざん苦心した経験がございますが、そういう意味で、コナリー長官が日本でいろいろな人と会って、日本の実際に触れ、実情を聞いて帰られる。そうしていずれ日本問題について向こうでもいろいろ相談があることと思いますが、すでに政府の中から、交渉ではございませんが、マクラッケン氏が日本へ来たついでにやはり各閣僚に会っておられますし、そこらの説明も、日本の経済については数字にわたったものの説明を受けていかれたそうでございますので、そういう点が今後の日米関係には私は非常に役に立つことだと思っておりますので、非常に有意義だったと思っております。
  178. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 非常に有意義だったと言われるが、その内容は、日本をよく理解してもらうことができた、こういう日本の何を話して何を理解してもらったのかということを、今後のために聞いておきたい、これは大事な点ですから。
  179. 水田三喜男

    水田国務大臣 日本の経済の実情、それから今度の補正予算の説明も向こうで聞きましたが、そういう説明を通じて、日本の来年度の財政というようなもの、それに関連してやはり日本にいろんな政治的なむずかしい問題があるというようなこと、これを理解してもらうということは、私は非常に大きい意義のあることだと思います。そういうことを知らないのと知っておるんでは、今後のいろんなことについて、私はだいぶ違ってくるんじゃないかと思っております。
  180. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 それをアメリカが理解したということですね。
  181. 水田三喜男

    水田国務大臣 一々理解したとは言いませんが、説明はやはり興味を持ってそういう点を聞かれて、こちらで説明したんですから、私はある程度、そういう問題について相当理解されたと思っております。
  182. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 竹本孫一君。
  183. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は、国際通貨調整の問題は非常にむずかしい問題でありますから、しかも最終的には多国間調整でやらなければならない問題でありますから、これは一回で全部解決するということは、大臣が言われるように非常に困難だと思います。したがって、第一次調整、第二次調整、金との結びつきを考えたものと考えないものとあっていいと思うのです。しかし、そういう形にしろ、結論的には、日本の経済の実情からいっても、アメリカの内部事情からいっても、ヨーロッパの実情からいっても、どうしてもこれは年内に解決をしてもらわなければ困る、かように考えておりますので、前回もそのことを申し上げたのでありますが、承りますと、最後に一言変なことをコナリーさん言ったということでありますけれども、大体において年内解決という方向を指向しておるというふうに思いますし、期待をするわけでありますから、そういう方向で御努力を願いたいと思うのです。  ただ、それにつきまして、年内解決を急ぐあすりに無原則になっては困りますし、従来、日本の政府の態度にわれわれいろいろ不安を持ち、あるいは不満を持っておりますので、きょうは主として私の意見を申し上げて、あわせて大臣の意見よ承りたいと思う。時間がありませんから、三点だけ申し上げます。  第一は、ドルの切り下げの問題です。これはこの前の七月の予算委員会のときにも、ドルのために、あるいはドルの不始末のために日本の円を切り上げるというような、アメリカのしりぬぐいの材料にされることは反対だということを私申し上げまして、大臣にも大体そのような御答弁をいただきました。しかしながら、日本の円にももちろん切り上げなければならない必然性もあるし、合理性も若干あると私は思っておりますから、円の切り上げももちろんこの際やらざるを得ないし、やっていいと思うのです。問題はその幅の問題でありますが、これはデリケートな問題であるから、本日は避けます。  問題は、アメリカの、要するにベトナム・インフレというか、あるいはドルのたれ流しというか、あるいは金・ドル矛盾の激化と申しますか、いずれにしてもアメリカの経済自体が、いままでのあり方を続けていくことは許されなくなっておる。私はあのときも申しましたように、ドルは、一種の言い方で言うならば、極端かもしれませんが、破産状態である。金・ドル矛盾は非常に深刻である。ベトナム・インフレも深刻である。このアメリカの経済の行き過ぎや、あるいは行き足らずといってもいいかもしれませんが、矛盾というものを何としてもアメリカがみずから解決するという姿勢を示さなければ、この国際通貨の問題解決は絶対にできない、私はそう思います。そういう意味において、大蔵大臣も国際会議でそういうことを言われたやに新聞では了承いたしておるのでありますけれども、きょうはかばんの中にあるとかないとかいう話もいろいろありましたが、大蔵大臣の腹の中に、アメリカのドルは当然切り下げるべきである、行き詰まった会社が減資するように、ドルもこの辺でいままでの矛盾を総決算する意味において、三%であるか五%であるかは今日別にいたしますけれども、何としてもアメリカのドルの切り下げということが、通貨問題の解決の第一前提条件になるんだという前提に立って話を進められておるのか、あるいは進められていくのであるか、その辺の基本的な考え方をひとつ承りたい。
  184. 水田三喜男

    水田国務大臣 切り下げという形をとることが、アメリカにおいてはなかなか国会関係もあって政治的にむずかしい問題もあるということもわかっております。したがって、実質的にドルが切り下げられるという措置がとられるならば、別に金の値段を直さないでやる方法というものはいろいろ考えられるということで、いまIMFを中心にそういう問題も考えられておりますので、そういう点で実際はおっしゃられるとおりでございますので、それをアメリカがやりいいように実現させるということも一つの方法ではないかということで、こういう問題もいま各国が検討しておる問題の一つでございます。
  185. 竹本孫一

    ○竹本委員 形は、すぐ金の値を上げるといったような形になるか、あるいはIMFに積み増しをするとかいったような形で便宜手段を考えるか、いろいろあると思いますけれども、とにかくアメリカの経済の国内的矛盾というものがあるのだから、それを解決する手段を講じないで、よその国、黒字国にだけ責任を持たせるようなでたらめなやり方は了承できない。そういう意味において、ドルの何らかの形における切り下げというものは、われわれが通貨調整をやる場合の第一条件であるということだけははっきりひとつ腹の中へ置いて話は進めてもらいたい、これは要望にしておきます。  それから、第二の問題は課徴金です。この問題についても、われわれは繊維交渉以来いまの政府のやり方に非常に不満を持っておる、あるいは憤りを持っているわけですから、ついでに申し上げるわけですが、課徴金の問題にしても、これは政治的ないわば一種の恐喝手段みたいなもので、私は、ヨーロッパにおってこの問題を聞いたときには、ドイツ、フランス、イギリス等では、フェアでないというような言い方をしておりました。それはそれでもいいかもしらぬが、ただにフェアでないだけではなくて、一種の脅迫、恐喝手段というふうに私は思いますから、これはイタリアの大蔵大臣が言ったかどうか知りませんが、新聞か雑誌で見ましたけれども、とにかくこの課徴金をやめなければわれわれは国際通貨調整の会議に臨むこともできないというぐらいの強い姿勢を示しておったようでありますが、日本もやはりアメリカに対して、課徴金みたいな脅迫手段みたいなものをやっている以上は会議には入れない、少なくとも会議に入る前提条件として課徴金はやめるのがあたりまえだというくらいのことは言ってもらいたい、これは要望でありますが。  特に経済的に考えますと、課徴金をかけるということ自体が、もうすでにドルの切り下げの一つの方法かもしれません。しかしながら、何よりも課徴金をかけるということは、それだけ一〇%、あるいはそれだけ一〇%前後のものがアメリカの国内の物価を上げることになると思うんですね。アメリカのインフレを押えなければアメリカの金・ドル矛盾の解決は根本的にできないのに、たとえ一時的な便法にしろ、脅迫手段にしろ、アメリカが課徴金をかけるということは、経済政策のあり方から見ても、アメリカ自身矛盾しているじゃないか。この点はむしろ積極的に追及すべきであると思いますが、大臣のお考えはどうでありますか。
  186. 水田三喜男

    水田国務大臣 ECの前提条件といわれるものが幾つもございますが、そのうちでいまのところアメリカが一番柔軟性を示している問題は、課徴金の問題であると思います。現にこの課徴金の各国に与える影響というものはまちまちでございますし、したがって、こういう各国への影響がまちまちであるむずかしい問題を持っておって、各国の平価調整というものは実際問題として困難であるというようなことから、欧州諸国も、これはもうはずすことが平価調整の前提だといって意見が一致しておる状況でございますので、アメリカも、この点については柔軟な考え方を持っておるものと私は思っております。
  187. 竹本孫一

    ○竹本委員 欧州が言っているのはわれわれも聞いておるんだけれども、日本の大蔵大臣が言われたということをあまり聞かないものだから、少なくとも日本の政府の姿勢としては、課徴金なんかやめろということをもっとはっきり政治的にも言ったらいいんじゃないか。経済的にいえば自己矛盾ですから、その点を大臣の専門的知識で大いに教えてやったらどうかという意味で、これも要望にしておきますが、課徴金の問題は、われわれが新聞を見ても納得できるくらいの強い姿勢で当たってもらいたいということであります。  それから最後にもう一つ、第三点としてアメリカの海外投資、世界企業の問題でありますが、先ほども同僚議員からアメリカの基礎的国際収支の不均衡は幾らか、百三十億か、百十億か、九十億か、七十九億か、あるいは五十億ドルか、いろいろそれぞれの数字が出ておりますが、その中にやはりアメリカの姿勢を改めなければならぬのだということと関連をして、海外援助、海外投資の問題が当然に出てくる。特にアメリカの経済の実態を見れば、アメリカの地盤沈下ということの一番大きな原因の一つは、どこの国の資本家も同じでございますが、アメリカのそれこそ国益よりも、ミクロの利益を中心にしまして、アメリカはここまで欄熟期に入っておる。したがって、アメリカの国内に投資しても、第一にマージンがそれほど上がらない。それを後進国、低開発国に投資すれば、それだけマージンが多いのですから、どんどん外国に投資するのだ、こういうことで海外投資する。人によっていろいろ推計が違うようですけれども、大体七百八億ドルとかあるといわれておる。ところが、そういう海外投資をどんどんやるということは、一方においてはアメリカの国際収支、ドルのたれ流しを激化させるだけでなくて、国内的に見れば、アメリカの産業の近代化、合理化、能率化というものを妨げていると思うのですね。たとえば繊維の問題なんかでも、日本の繊維がどんどん進出したというけれども、パーセンテージは二%だったとよくいわれるが、問題は、アメリカ自身の企業の近代化、合理化といったものがどれだけできて、はたして競争に耐え得るような条件を持っておるのかというと、アメリカは持っていない。持っていないから負けるのです。重化学工業においてさえ、世界の平均の伸び率までアメリカはいかないじゃないですか。結局、合理化投資をやるべき金を海外に投資する、もうかるからということで海外投資をやる。そして国内では設備近代化ができなくて老朽化しておる。そのことが、アメリカの国際競争力を弱くしておるのです。弱めておる。したがって、アメリカは今日日本の責任みたいにいろいろ言ったりするけれども、これはほんとうはアメリカの資本家の責任ですよ。アメリカの企業が国内における近代化努力をやらないで、もうけのあるところのほうへどんどん出ていく、国内は老朽化にまかしておる、こういうことであるから、アメリカの経済は行き詰まったので、アメリカの経済の行き詰まったのは、われわれ日本の責任では一つもない、むしろアメリカの資本家の責任である、私はそう思うわけです。そういう意味からいっても、アメリカのドルのたれ流しの問題から考えても、世界企業における海外投資の規制といいますか、自粛と申しますか、そういう問題が当然取り上げられなければいかぬ。海外における過剰ドルの問題とあわせて当然取り上げられなければならない問題だ、こういうふうに考えますが、一体政府は、アメリカの基礎的な国際収支の不均衡を改善する、あるいはこのドルの問題を解決するという場合に、アメリカの世界企業の規制ということ、コントロールということがなければ、この問題の解決はできないという認識に立っておられるのか、あるいはそういう認識に立ってそういう主張をされる意思があるのか、ないのか、それを伺って終わりたいと思います。
  188. 水田三喜男

    水田国務大臣 お説のようなことは、私どもがずっといままで主張してきました。これは各国ともそういう主張があるために、この数字の問題で暗礁に乗り上げてしまっておる。理論的に言いましたら、こういう問題をはっきりして、そして協力する幅をきめるということが、一番理屈に合ったことでありまして、その方向でずっと今日まできましたが、これがいま行き詰まりになっているということになりますと、さらにこの数字にこだわって合理性を追求するということによって解決することのほうが早いのか、あるいはむしろそれは解決しないことにつながる方法であるかどうかという問題が出てきましたので、私は、もしこれを各国がやはり早期に解決する必要があるという認識であったら、解決のためには一時もうそういう問題から離れて、大きい大局的な話し合いに入らなければいけないのじゃないかというふうにもいま考えておるところでございます。その議論は、今日までずっとしてきて、暗礁に乗り上げてしまったという問題でございます。
  189. 竹本孫一

    ○竹本委員 以上で終わりますから、以上の三点は希望意見として主として申し上げましたけれども、ひとつ十分検討していただいて、やはりアメリカに対しても主張すべきことは主張するという姿勢を貫いていただくように、最後に要望をいたしまして終わります。
  190. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 次回は、明十一日木曜日、午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時三十七分散会