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1971-12-21 第67回国会 衆議院 商工委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十二月二十一日(火曜日)     午前十時五十六分開議  出席委員    委員長 鴨田 宗一君    理事 浦野 幸男君 理事 進藤 一馬君    理事 橋口  隆君 理事 武藤 嘉文君    理事 中村 重光君 理事 岡本 富夫君    理事 吉田 泰造君       稲村 利幸君    内田 常雄君       奧田 敬和君    北澤 直吉君       櫻内 義雄君    始関 伊平君       塩崎  潤君    羽田野忠文君       増岡 博之君    山田 久就君       石川 次夫君    岡田 利春君       加藤 清二君    勝間田清一君       田中 武夫君    堂森 芳夫君       松平 忠久君    近江巳記夫君       松尾 信人君    川端 文夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 福田 赳夫君         通商産業大臣  田中 角榮君  出席政府委員         外務省条約局長 井川 克一君         通商産業政務次         官      稻村佐近四郎君         通商産業省通商         局長      山下 英明君         通商産業省繊維         雑貨局長    佐々木 敏君         中小企業庁長官 高橋 淑郎君         労働政務次官  中山 太郎君         労働省職業安定         局長      住  榮作君         労働省職業訓練         局長      渡邊 健二君  委員外出席者         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ――――――――――――― 委員の異動 十二月二十一日  辞任         補欠選任   神田  博君     奧田 敬和君   中谷 鉄也君     勝間田清一君   松平 忠久君     田中 武夫君   横山 利秋君     堂森 芳夫君   米原  昶君     津川 武一君 同日  辞任         補欠選任   奧田 敬和君     神田  博君   勝間田清一君     中谷 鉄也君   田中 武夫君     松平 忠久君   堂森 芳夫君     横山 利秋君   津川 武一君     米原  昶君     ――――――――――――― 十二月十七日  山村開発次期対策早期実現に関する請願外百  三件(金丸信紹介)(第三七七一号)  同外一件(安田貴六君紹介)(第三七七二号)  離島振興法期限延長等に関する請願大坪保  雄君紹介)(第三七七三号)  同外一件(金子岩三紹介)(第三七七四号)  同(坂田道太紹介)(第三七七五号)  同(坂本三十次君紹介)(第三七七六号)  同(櫻内義雄紹介)(第三七七七号)  同(田中龍夫紹介)(第三七七八号)  同(西岡武夫紹介)(第三七七九号)  同(福永一臣紹介)(第三七八〇号)  同(藤波孝生紹介)(第三七八一号)  同(松尾信人紹介)(第三七八二号)  同(吉田重延紹介)(第三七八三号) 同月十八日  山村開発次期対策早期実現に関する請願外十  七件(金丸信紹介)(第三八九一号)  同外四件(久保田円次紹介)(第三八九二号)  同(地崎宇三郎紹介)(第三八九三号)  同外四件(徳安實藏紹介)(第三八九四号)  同外四件(野原正勝紹介)(第三八九五号)  同外三十九件(古井喜實紹介)(第三八九六号)  同外九件(渡辺栄一紹介)(第三八九七号)  同外八十二件(相川勝六紹介)(第三九七三号)  同外十四件(赤澤正道紹介)(第三九七四号)  同外百六十六件(内田常雄紹介)(第三九七五号)  同外六件(大村襄治紹介)(第三九七六号)  同外四件(田村元紹介)(第三九七七号)  同外六件(中川一郎紹介)(第三九七八号)  同外二件(足立篤郎紹介)(第四〇九三号)  同外三件(久保田円次紹介)(第四〇九四号)  同外十五件(松野頼三君紹介)(第四〇九五号)  離島振興法期限延長等に関する請願(宇都宮  徳馬君紹介)(第三八九八号)  同外一件(菊池義郎紹介)(第三八九九号)  同(小宮武喜紹介)(第三九〇〇号)  同(高橋清一郎紹介)(第三九〇一号)  同(西村英一紹介)(第三九〇二号)  同(藤本孝雄紹介)(第三九〇三号)  同(松浦周太郎紹介)(第三九〇四号)  同(進藤一馬紹介)(第三九七九号)  同(關谷勝利紹介)(第三九八〇号)  同(増岡博之紹介)(第三九八一号)  同(橋口隆紹介)(第四〇九六号) 同月二十日  山村開発次期対策早期実現に関する請願(大  村襄治紹介)(第四二五二号)  同外十八件(小山長規紹介)(第四二五三号)  同外一件(關谷勝利紹介)(第四二五四号)  同外五件(本名武紹介)(第四二五五号)  同外一件(吉田之久君紹介)(第四二五六号)  同(相川勝六紹介)(第四三五〇号)  同外二件(菅太郎紹介)(第四三五一号)  同外二十一件(大野明紹介)(第四四九五号)  同外二件(菅太郎紹介)(第四四九六号)  離島振興法期限延長等に関する請願池田清  志君紹介)(第四三五二号)  同外一件(白浜仁吉紹介)(第四三五三号)  同(砂原格紹介)(第四三五四号)  同(田村元紹介)(第四三五五号)  同(毛利松平紹介)(第四三五六号)  同(内海英男紹介)(第四五〇〇号)  同(小澤太郎紹介)(第四五〇一号)  同外一件(小沢辰男紹介)(第四五〇二号)  同(大橋武夫紹介)(第四五〇三号)  同(園田直紹介)(第四五〇四号)  同(中村重光紹介)(第四五〇五号)  同(村上信二郎紹介)(第四五〇六号)  日米政府間繊維協定破棄に関する請願岡沢完  治君紹介)(第四三五七号)  同(内海清紹介)(第四三五八号)  同(今澄勇紹介)(第四三五九号)  同(池田禎治紹介)(第四三六〇号)  同(春日一幸紹介)(第四三六一号)  同(河村勝紹介)(第四三六二号)  同(寒川喜一紹介)(第四三六三号)  同(竹本孫一紹介)(第四三六四号)  同(曽祢益紹介)(第四三六五号)  同(鈴木一紹介)(第四三六六号)  同(吉田之久君紹介)(第四三六七号)  同(渡辺武三紹介)(第四三六八号)  同(麻生良方紹介)(第四四八九号)  同(受田新吉紹介)(第四四九〇号)  同(西尾末廣君紹介)(第四四九一号)  同外一件(西田八郎紹介)(第四四九二号)  同(門司亮紹介)(第四四九三号)  同(吉田泰造紹介)(第四四九四号)  中小企業団体中央会に対する助成強化に関する  請願岡本富夫紹介)(第四四九九号)  中小企業に対する公害防止設備資金融資拡充  に関する請願(林百郎君紹介)(第四五二三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十二月二十日  中小企業対策に関する陳情書外三件  (第三〇三号)  流通システム化推進等に関する陳情書  (第三〇四号)  海外金属資源開発に関する陳情書  (第三〇五号)  貿易政策に関する陳情書  (第三〇六号)  鉱業対策強化充実に関する陳情書  (第三〇七号)  染色業に対する補償に関する陳情書  (第三〇八号)  発電用ダムによる只見川の埋没対策に関する  陳情書  (第三〇九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  通商及び中小企業に関する件(国際経済情勢に  伴う繊維問題等)      ――――◇―――――
  2. 鴨田宗一

    鴨田委員長 これより会議を開きます。  通商に関する件、及び中小企業に関する件について調査を進めます。  最近の国際経済情勢に伴う繊維問題等について、質疑の申し出がありますので、これを許します。勝間田清一
  3. 勝間田清一

    勝間田委員 私は、日本社会党を代表しまして、日米繊維協定に関連をして若干の質問をいたしたいと思うわけであります。  まず、外務大臣お尋ねをいたしたいと思うのでありますが、田中通産大臣はすでに日米繊維輸出規制に対して了解覚書を交換をいたしておりますけれども、本調印一体いつごろするつもりなのであるか、それを聞かしていただきたい。
  4. 福田赳夫

    福田国務大臣 田中通産大臣ケネディ特使との間で了解覚書が交換されまして、それに基づきまして先月の二十二日、これを協定化するための交渉団を、これは通産外務両省事務当局でありますが、これをワシントンに派遣いたしました。自来、ずっとこの交渉団アメリカとの間に協議が行なわれておりまして、かなり実質的な進捗を見ております。もう残されておるところというものは少なくなってきておるという状態でありまして、何とかして年内には協定に本調印ができるようにということを念願し得るような状態になってきております。
  5. 勝間田清一

    勝間田委員 覚書に記載された事項にかなり問題が多いように思うのでありますが、その交渉過程で何らかの修正なりあるいは改善なりがなされたのであるかどうか、もしなされておるとするならば、それを具体的にひとつ御説明をいただきたい。
  6. 福田赳夫

    福田国務大臣 私が出先から報告を受けておるところでは、覚書協定化、この間にはそう根本的な食い違いはないと、こういうふうに聞いております。非常に苦心はしておるようです。特に了解覚書をつくるにあたりまして、田中通産大臣が最後にたいへん大奮闘をしたわけであります。その結果、あのいわゆる弾力条項というものが挿入されることになりました。この弾力条項をいかに協定化するかという問題、これはかなりいきさつがあったようでありまするが、私どもは断じてこの点は譲ることはできないという強い態度で臨んでおりまして、これはもう譲り得ざる一線である。また、大体アメリカ側の了承も取りつけ得る、かように考えております。
  7. 勝間田清一

    勝間田委員 田中通産大臣に聞きますが、その弾力条項について、どういう点が一体合意に達しているのか聞かしていただきたいと思います。
  8. 田中角榮

    田中国務大臣 牛場フラニガン会談で問題になっておりましたのは、シフト、トリガーの規定が主でございます。このシフト率規定につきましては、おおむね原案では綿製品協定のような気持ちであったと思います。また業界がそうであろうというふうに指摘をしておったわけでございますが、私とケネディ特使の間にイニシアルをいたしました繊維交渉には、二つの重要な問題を書き加えたわけでございます。  その一つは、この協定は、対米の繊維輸出規制することを目的とするものであるというふうにとられておるこの協定を、日米間の正常な貿易を確保し増進をするというためのものであるというふうにまず前文を挿入すること。もう一つは、第七項に規定をいたしておりますシフトの問題については、死にワクの活用について両国が随時協議をして、これが漸減協定にならないように努力をするということをいたしたわけでございます。  そして、そのための実行手段としては、専門家会議をつくりまして、毎年一回ずつ両国会議を行なうということにいたしたわけでございます。なお、第一回会議は、正式調印が行なわれない以前にもうすでに行なわれておるわけでございます。この間に具体的なものを確認し合っておりますから、そういうものは必要であれば事務当局に読み上げさせます。
  9. 鴨田宗一

    鴨田委員長 読んでもらいますか。じゃ、——ひとつお願いします。
  10. 佐々木敏

    佐々木(敏)政府委員 専門家会議交渉いたしました結果、次のような点が改善されましたし、また明確化されたわけであります。  専門家会議は、なお現在協議を進めておりまして、最終的にはまだ終了いたしておりませんが、現在の段階といたしまして、まず第一に、弾力条項といたしましては、覚書のどの規定弾力条項を運用するために活用するかというような、各条文ごと確認を現在協議中であります。  第二点は、米側輸入統計日本輸出統計との間におきまして非常に相違点がある品目がございますが、特にアクリル短繊維織物につきましては非常に大幅に相違いたしておりますから、この二つ統計のブリッジにつきまして現在協議中であります。  第三点は、米側チーフバリューでいたしますが、日本チーフウエート基準にとっております。この点につきましては、その分類の問題につきましてできるだけつながるように、これは覚書を交換いたしまして確認をする予定であります。  第四番目は、ガラス繊維等日本といたしましてはいわゆる繊維製品に入っておらないと考える品目等がございます。そのガラス繊維製品あるいはゴム引き布等々でありますが、これにつきましては、今回の専門家会議におきまして、規制の対象には向こうは含めるけれども、その取り扱いにつきましては、前文等の趣旨に沿いまして米側としては弾力的に運用するというような確認を受けております。  以上であります。
  11. 勝間田清一

    勝間田委員 外務大臣お尋ねいたしますけれども、この重大な協定をなぜ国会承認事項にしていかないのか、その理由をひとつ聞かしていただきたい。
  12. 福田赳夫

    福田国務大臣 この協定政府間協定にいたし、国会承認は求めない、こういうふうに考えておりますが、この協定内容が全部これはわが国の法令範囲内、つまり国会から授権を受けておりまするその範囲内のものである、こういうことでありまして、あらためて国会承認を要する必要はない、かように考えておるからであります。
  13. 勝間田清一

    勝間田委員 お聞きいたしますが、国会承認を受ける事項であるかないかの基準というものは、一体政府はどう考えておりますか。
  14. 福田赳夫

    福田国務大臣 あらためて国民に対しまして権利義務関係を設定するということでありますれば、これは国会承認を得る必要があると思うのですが、今回の協定は、これはあらためて新しいそういう権限をいただくような内容のものはございませんです。すべて現行の法令範囲内である、こういうことでございます。
  15. 勝間田清一

    勝間田委員 この法令範囲内そのものについても重大な疑義があると思います。特に日本の憲法との関係の問題もありましょう。しかし、それを一応除外いたしましても、対外的に非常な重大な義務を負うことにこの協約はなるのではないか。しかも、その及ぼす犠牲というものは長い年月に及ぶものではないか。しかも、今日まで政府答弁によれば、たとえば田中通産大臣はわが党の加藤委員に対して、三年以内であれば国会承認を得なくてもよろしいのであるが、それ以上過ぎるならば承認を得る必要があるといういわゆる暫定性を特に主張されてきた経緯も今日まである。われわれは国会の今日の権威から考えてみまして、これほど重大な義務を対外的に負い、しかも長期にわたって日本国民に大きな犠牲を要求する、しかも国内法上多大の疑義のあるこうした協約を締結するのについては、当然国会承認を得べきではないか。政府は今回あえてこれを国会承認を求めないというのは、田中通産大臣合同委員会から帰って放言しているように、これを国会に出せば否決されることは明らかだから、だから、その国会承認を得ることを回避して、あえて行政権に訴えたのだというのが、私は真実ではないかと実は思う。政府見解をあらためて問いたいと思います。
  16. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほど申し上げましたように、ただいまこの覚書協定化する交渉を進めております。その交渉過程におきまして、この取りきめの規定は、両国政府により、それぞれの国の関係法令に従って適用される、こういう文言を挿入をするという話をいたしておるのです。これはそうなると思います。したがいまして、新しく政府国会から交渉権限をいただくというようなことじゃない。いままでいただいておるところの法令上の権限範囲内においてのみこの協定は締結される、こういうことに相なりますので、あらためて国会承認を求める必要はない、こういうふうな見解でございます。
  17. 田中角榮

    田中国務大臣 国会議決案件でなく、行政協定であるという問題に対しては、外務大臣お答えをしておりますから申し上げませんが、いま勝間田さんの発言の中で、三年以内ならばよろしいが、三年をこすと国会議決案件になるんだという旨の発言国会においていたしたような御発言がございましたが、これは……(「あなたはそこの席で言ったのですよ」「もう一ぺん速記録を読んでください」と呼ぶ者あり)これは速記録をよく取り調べる必要があると思いますし、取り調べますが、私は、期限の長短によって、国会議決案件としからざるものの区別がないことだけはここに明確にいたしておきます。   〔発言する者あり〕
  18. 鴨田宗一

    鴨田委員長 私語はひとつおやめを……。
  19. 勝間田清一

    勝間田委員 いずれにせよ、私は国会権威の上からこれを了承することはできません。  次いで、私お尋ねしたいと思いますものは、一体この協定は三年になっておりますけれども、結局半永久的な協定になるのではないか、この点に対する外務大臣答弁をお願いをしたい。
  20. 田中角榮

    田中国務大臣 アメリカ側は当初五年を要請してまいったわけでございますが、短いことはいいということで三年にいたしたわけでございます。これを延長できるかどうかという問題は、その時点になって、四囲情勢、諸外国との協定内容等状態を見ましてから、両国協議をしなければならない問題でございまして、前提といたしまして半永久的にこの協定を続けようという意思はありません。
  21. 勝間田清一

    勝間田委員 この覚書の中に、さらにこの協定延長することを考慮すると書いてあるが、一体これはどういう意味であるか。
  22. 田中角榮

    田中国務大臣 延ばす延ばさないの問題は、三年の期限が来たときに両国協議をしてきめようということを規定してあるだけでございます。
  23. 勝間田清一

    勝間田委員 延ばすか延ばさないかではない。「ツウ ガバメンツ シャル コンシダー エクステンディング ザ アレンジメント フォー ア ファーザー ピリオド オブ タイム」、さらに延長について両国政府はこれを考慮すと書いてある。延長するかしないかではない。延長についてさらに考慮するということを書いてある。それは答弁が間違っちゃいませんか。
  24. 田中角榮

    田中国務大臣 「この取極の第三年日中に両政府は、その後の期間のための取極の延長を考慮すべきものとする。」ということでありまして、やるかやらないかを協議をしようと、こう書いてございます。
  25. 勝間田清一

    勝間田委員 これは念のために聞いておきますが、一体日本文正文なのですか、英文正文なのですか。
  26. 田中角榮

    田中国務大臣 英文正文でございます。
  27. 勝間田清一

    勝間田委員 英文正文でしょう。英文は、だから「ファーザー ピリオド オブ タイム」その「エクステンディング」について両国政府は考えるということでありまして、でありますから、延長ということはすでに考慮されることになるわけでありまして、なるかならないかを考えるわけではない。  さらに、もう一つ私はお尋ねしますが、ケネディからあなたに書簡が来ておるはずであります。その書簡に対して、あなたは、この期間の問題についてどういう返事を書いたのですか。
  28. 田中角榮

    田中国務大臣 事務的にいまあれしていますから、ちょっと待ってください。——国際取極に関する一九七一年十月十五日付通商産業大臣あてケネディ大使書簡というものがございます。これには「国際取極の締結に関し、」「取極の期間は、一九七一年十月一日から五年間とし、その後は、加盟国合意があれば、更に広般な国際取極に代りうること。」等のアメリカ側の考え方を書簡としてこちらへよこしてございます。この書簡につきましては、意思を明らかにいたしておりません。「一九七一年十月十五日付の毛及び化合繊繊維品の国際取極に関する閣下手紙を受領しました。この点に関し、私は同書簡に述べられた閣下の希望をテークノートしたことをお知らせいたします。」ということだけでございまして、そういう事実があったということを私がテークノートしたという返簡を出したにすぎません。
  29. 勝間田清一

    勝間田委員 テークノートということをお話しになりましたが、原文ではテーク デュー ノートとなっておるわけでありまして、私はデューというのはかなり意味が深いと実は解釈するのでありますが、一体どのようにあなたは認識せられておるのであるか、お尋ねいたしたいと思います。
  30. 田中角榮

    田中国務大臣 私は英文にはあまり詳しくはございませんが、デューを入れても、向こう意思を受諾した、OKを与えたということを意味しないという考えであります。
  31. 勝間田清一

    勝間田委員 これは非常に無責任な私は回答だと実は思います。単なるテークノートではなくて、テーク デュー ノートであって、まさにこの点を了承して、これを受諾して、これをテークノートをしたというその意味を強くあらわした意味であると私は解釈いたします。したがって、単にテークノートテークノートでごまかしていらっしゃいますけれども、その態度こそ私は国会をごまかす態度ではないだろうか。私はこの点を強く指摘しておきたいと思いますが、再度答弁を願いたいと思います。
  32. 田中角榮

    田中国務大臣 しかと承りましたということでございます。
  33. 勝間田清一

    勝間田委員 しかと承りましたということでありまするならば、結局五年にする、やがて多国間のこれは協定にする。このことは、現在の綿製品協定が同様の経過をたどったことから見ても類推できる。だから、あなたがここで便宜的に三年協定ということを、韓国、台湾、香港とは違って、特に日本を三年にしたということは、国会審議を回避しようとする手段に使った以外の何ものでもない、あるいは国民をごまかそうとする手段以外の何ものでもない、そういうように解釈して私は今日あなたを批判せざるを得ない。一体、ほんとうのところ、この協定は三年で済むのですか、済まないのですか、それをはっきり聞かしていただきたい。
  34. 田中角榮

    田中国務大臣 あなたはお立場でそういうふうにこれを五年を意味しているのだ、こうおとりになっておると思いますが、私は、三年間たったら文字どおり両国四囲情勢を見ながら、国際的な情勢も見ながら御相談をいたしましょうということであって、それはお互いの間に協定を行なうときでも、三年の期間は三年、手形を出すときでも六十日の期日であったならば、これは六十日というのが正しいのであります。法律的にはどこまでいっても六十日であって、初めから九十日に延ばすことあるべしというようなことをいってないのですから、そのときにどうしても払えなかったら、両方でもって申し出てください、そのときには両方お互いに話し合いをしましょうという手形発行お互いにやるはずであります。あくまでも手形発行日は六十日であるということは当然のことであります。
  35. 勝間田清一

    勝間田委員 この日本外交というのが、見ておりますと、善処するとかあるいは何とかするとか、いろいろのことばを使ってそこをあいまいにしていく傾向があるのではないだろうか、そのことが日本外交を著しく混迷ならしめ、著しく不利ならしめているというのが今日の日本外交の実態ではないだろうかと私は思う。覚書の中にこの延長を考慮することをうたい上げ、さらにケネディ手紙をもってこれの再確認を求めて、私は五年を希望しますよ、さらに多数国間協定にこれが発展することを希望しますよということに対して、あえてアイ トゥック デュー ノートするという状態返事を書いて、それで三年後において私は知りませんということでは、外交には少なくともつながらない、国際的通念としてはつながらない。私はそういう無責任な態度というものが今日基本的に批判されなければならぬものだということを指摘しておきます。  次いで私は外務大臣にひとつお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、今日の日本経済外交の状況を見ておりますると、一面においてはIMFの通貨体制、他面においてはガットにおける貿易及び関税におけるいわゆるそうした流通面における体制というものが、世界の経済一つの秩序を形成しているものと私は考えます。しかるに、最近の状況を見ておりますると、アメリカは年百三十億ドルの国際収支の赤字を解消するためにこれらの国際的秩序を破壊して、あえてそれを強行しようとする傾向が顕著に見られる。それに対して日本経済外交というものを見ますると、全くその場限りの状況であることに私は気がつかざるを得ません。特に今度の繊維協定の場合を見ておりますると、明らかにガット違反ではないかと私は思う。こういうガット違反をいかに粉飾してこれを合理化しようといたしましても、それは秩序を混乱させるだけで、決して世界経済の発展に寄与しないし、日本の将来の経済発展に寄与するものでは絶対ないと私は思います。あなたはこれでもガット違反と考えませんかどうか。その点をしっかり聞かしていただきたい。
  36. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は今日の国際経済情勢というものを非常に憂慮しておるわけです。つまり、その根源は一体何にあるのかというと、アメリカ経済の非常な重大局面、そういうふうにとらえております。アメリカ経済は世界の中において非常なウエートを持っておる。この経済がどうなるかということによって、世界の経済情勢というものは変わっていく。それくらいの大きなウエートを持つアメリカ経済、これがいま御指摘のように、アメリカは昨年におきましては国際収支において百億ドルの赤字を出す、しかも実に八十年来の貿易赤字を出す、そういう状態です。ことしになりますと、その勢いがさらに高じて、どのくらいまで国際収支の赤字がなるのだろうか、どうもわれわれが想像し得ないような悪化の状態です。ですから、私は、アメリカ経済がこのままでいきますると、アメリカ経済は非常な困難な立場に立ち至り、それはしたがって世界経済を混乱させる、こういうことを特にことしになってから憂えておりまして、私の提唱によりまして、日本としてはいわゆる八項目の経済政策をとる、同時にアメリカに対しましてもその姿勢を正すということを要請するというような考え方を進めてきたわけなんですが、しかし私は、今度十カ国蔵相会議の結論、あれを見まして、とにかく課徴金の撤廃が行なわれるということになった。八月十五日、ニクソンは経済新政策を出しまして、課徴金新設を含むいろんな新政策を出したのですが、その中で特にわれわれの注目を引いたのは、課徴金の問題その他の保護貿易的な、国内擁護的な施策の打ち出しです。これが各国に対抗手段として波及をするというようなことになると、それこそほんとうにこれは世界が総沈みになる、こういうことを心配したんですが、今回課徴金がきれいに撤廃された、これはたいへんよかった、こういうふうに思う。  日本という国は、経済大国といわれるアメリカあるいはソビエト、そういうのと違って、資源を外国から輸入しなければならぬ、そういう国です。ですから、どうしても自由貿易体制というものに対しましては先頭に立って常に擁護する立場に立たなければならぬ、そういうふうに考えておるやさきの決定で、たいへんよかったと思うのですが、この繊維問題、これは私はガットには違反しないという考えであり、ガット上の権利はこれを留保する、こういうことを協定には明らかに挿入したいという考えでございますが、この繊維交渉というものは非常に特異なものでありまして、とにかくあれは八月の中旬ごろですか、二十日ちょっと過ぎたころになりますか、アメリカから、輸入割り当て制度を施行するかもしれぬ、もし九月一ぱいに日本アメリカとの間において政府間協定が成立しなければ、十月十五日の時点において輸入割り当て制を採用することを考慮する——考慮するというよりはもっと強かったと思いますが、決意をしておる、そういうことです。これこそたいへんなガット違反になるわけです。そんなことをさせてはいかぬ、これを未然に防止するというような新しいそういう事態に臨みまして、われわれは政府間協定、これに踏み切ることにいたしたわけでございますが、どこまでも政府間協定におきましては、ガットにおけるところの権利、これは留保をするという明らかなる条項を入れておりますので、これが法的にガットに違反をする、そういうふうには考えておりません。ただ、しかしながら、いま私どもはわが国の国益を踏んまえるときには、もう通商は自由へ自由へというときにこういう制限的なものができるということは、これは実際問題とすると一つの私どもの考え方に対する例外だ、こういうふうに思いまするけれども、通産大臣はその間におきまして非常に苦心をしておる。そしてこの協定はできるけれども、この協定は制限的なものにはしない、これをさらに踏んまえまして通商を拡大する方向に持っていきたいという話し合いまでしておるような状態でありますので、非常な特異なものであるということ、それから法的にはわれわれは権利は留保しているということ、それらの点をよく御了解願いたい、かように存じます。
  37. 勝間田清一

    勝間田委員 もう時間が参りましたが、まださっきの延長分だけであると私は思いますから、端的にひとつお尋ねをいたしますが、ガットでは数量の規定は一定の制限があると思います。例外の規定があると私は思います。一体ガットの何条によってこの数量制限が行なわれているのか、政府見解お尋ねをいたします。
  38. 山下英明

    ○山下政府委員 一般的にはガット十九条でございます。
  39. 勝間田清一

    勝間田委員 ガット十九条ならば、まず第一に大切な問題は、被害を及ぼすか及ぼさないかという問題があると私は思う。一体高橋ミッションの結果は被害があったのですか、なかっだのですか。さらにもう一つ大事な問題は、無差別の原則があると私は思う。なぜこの協約には英国並びにEC諸国が参加しないのであるか、この点をお尋ねをしたい。第三に、もし十九条であるならば、これに対する対抗処置も許されておるはずである。これに対する日本側の処置は一体どう考えるのか。十九条に対するわが国の主張の根拠というものをしっかりこの際明確にしてほしい。それでない限り、十九条で適用されているものとは私は考えることはできません。
  40. 田中角榮

    田中国務大臣 アメリカが一方的に数量規制を行なえばガット十九条違反になるわけでございます。しかし、それを待たずして二国間交渉によってこの協定がつくられたわけでございますからガット違反にはならない、こう申し上げておるわけでございます。ガット違反行為をアメリカが犯すようなこと、それは日米間に話し合いの場が途絶をすればそうなるわけでございます。ですから、あくまでもガットの条項違反を犯さない前の段階において二国間で話し合いをし協定を行なったということでございますので、その間の事情はひとつ御理解をいただきたい。
  41. 勝間田清一

    勝間田委員 時間が迫りましたから最後の質問をひとつさせていただきたいと思いますが、政府は繊維対策として、いろいろの織機の買い上げであるとかあるいはミシンその他の買い上げなどのいろいろの処置を講じておるようであります。しかし、私もかつて石炭対策特別委員長をいたしましたけれども、そうした鉱山の救済をいたしましても、そこに働く労働者の賃金であるとかあるいは一時金であるとかあるいは社内貯金であるとか、そういういわゆる労務債権を確保するという点について、必ずしもそれが優先権というものが確保されない。そこで石炭の場合においては臨時措置法をつくって、この石炭鉱山に対する補償が行なわれる場合においては、労働組合なり経営者なりあるいは自治体なりが参加した公正な機関を通じてそれを補償する、そういう制度を設けて、そうして、いわゆる山の経営者だけが保護されて労働者が結局すべての犠牲を受けるといったような結果は回避することができた。今回の織機の買い上げ等の諸処置を講ずる場合に、政府は多額な金を出すであろう。しかしその場合において、労働者の労務債権、権利というものが優先的に確保される手段というものが確立されていない限り、労働者は一切の犠牲を受けざるを得ない。これに対する一体政府の方針はどういう方針であるか、このことをひとつ最後にお尋ねをいたしたいと思います。
  42. 田中角榮

    田中国務大臣 繊維は、石炭と同じように百年の歴史の上に非常に大きな足跡を残すものでございます。私はそういう意味で、今度の日米繊維交渉というこの交渉の対策として相当大幅な救済、援助対策をきめたわけでございます。しかし、石炭のように制度的に明確に立法処置等も行なわれておりませんし、制度上も確立をされておりませんので、いま述べられたような御意見が一部に出ておることは事実でございます。しかし、繊維というものに対しては、対前年度比五%増しの自主規制に移ったときに七百五十一億円の対策費を計上することによって、業界もおおむね妥当なものとしてこれを受け入れておったわけでございます。ところがその後、第二弾のものとして新たに日米政府交渉を締結せざるを得ないような状態になりましたので、その七百五十一億円に上積みをして二千二十九億円というものを計上いたしたわけでございます。七百五十一億円を加えて合計二千二十九億円になるようになったわけでございます。その上になお離職者の対策費として十億円程度を積算がされるようでございますが、これはまだ政府全体として最終的に決定したものではございませんが、措置をしようという方向でいま折衝を続けておるわけでございます。  これは対米貿易が、ラウンドの数字で申し上げれば一年間全部で二千億前後ということでございます。それを約一年間という間に、対米一年間に匹敵する対策を講じておるわけでございますので、いまの段階において私は繊維対策については誠意をもって行なった、これは業界も理解をいたしておると思いますし、国民全体の立場でもそう考えておると思います。だから石炭にとっておるのと同じ制度を繊維にとらなければならないのか、とる必要があるのかという問題に対しては、私は今度の対策というものが合理的なものとして理解されるであろうという考えの立場に立っております。
  43. 勝間田清一

    勝間田委員 最後に申し上げておきますが、アメリカは最近の経済情勢からして一定の、言うならば戦略戦術をもって日本に向かっておるように思われます。たとえば先ほど申しましたように百三十億ドルの国際収支の赤字を回復するために、円その他の国際通貨の切り上げが一一%ならば七十数億ドル、一二%平均ならば九十六億ドル、これで赤字の大部分が解決がつけられる、さらに防衛費の分担を行なえばどれだけになる、さらに貿易関係をどうすれば幾らになる。これらの計画をゴリ押ししょうという態度が今日明確に見える。  それに対して日本の立場というものを見ておりますると、全くその場限りの態度で混乱しているのではないだろうかと私には思われてならない。特に最近の貿易交渉を見ておりますると、この繊維協定を締結したから他のものを防ぐことができる、これが防波堤になるというような説明を政府はしてきたけれども、そうではない。たとえばオレンジの問題なり牛肉の問題なり果汁の問題なりその他の問題も遺憾なく彼らは主張してくる。おそらく、やがて自動車、電気器具等にも及んでくるのではないだろうか。そういうことを考えてくると、ここに政府貿易政策というものに対する明確な態度というものがきわめて総合的にしかも計画的にならなければならぬことは当然だと私は思う。そういう態度が今日政府に欠けているのではないだろうか。私はこの繊維協定が歯どめになったというその理由を発見することはできません。もしそうであるならばその理由を示してもらいたい、同時に今後における貿易政策についての政府見解を申し述べていただきたい、これを最後の質問にして私の質問を終わります。
  44. 田中角榮

    田中国務大臣 日米間の貿易調整の問題がいま両国の間で議論をされておることは事実でございます。またこれは日米間だけではなく、米国が八十余年ぶりに貿易収支の赤字が計上されたというこの事態に対処いたしまして、十カ国の、米国を除く九カ国に対して協力を求めておることも事実でございます。その結果米国は新政策を発表し、ワンパッケージ政策と称して対米通商問題に対しても全部協定を行ないたいという意思を明らかにいたしておったわけでございますが、通商交渉品目別にいろいろめんどうな問題もございますし、国別に見ますといろいろな問題がございますのでこれを同時に決定をすることはできなくして、御承知のとおり平価調整が行なわれたわけでございます。  平価調整は行なわれましたけれども、それで貿易上の問題、通商上の問題が終わったのではなく早急に詰めなければならない、こう言っておるわけでございます。特にアメリカは、ドルの引き下げに対しては議会の議決を経なければならないという問題もあるようでございまして、この時期までには相当具体的に各国間の問題を詰めようということで、現に日本からも各省の代表が米国に派遣をせられております。牛場大使をキャップにいたしましていま交渉をいたしておるわけでございます。しかしこれは日米間の状態から見ますと、やはり日本の立場だけで言っておることはできないと思うのです。そうなると、すべてが繊維交渉の例に見るように、では、正常な貿易状態が確保できないような状態であるならば、ガット違反もものかは、一方的規制もやむを得ません、こう言っておるのでございます。そういうことであると、私はアメリカよりも——アメリカは混乱が起きておればその間だけは国際収支も改善をされますし対米輸入も押えられますので、アメリカとしては混乱をしておってもそれだけのメリットはあると思います。国際的には相当アメリカはかなえの軽重を問われるような過程があったとしても、現実的にはプラスの面があります。ところが対米貿易三〇%というような現状、アメリカはちょうど三〇%でございます。これは西欧、ECなどが大きいといわれておりますが、ECも日本からの輸出攻勢に非常に声を大きくしておりますが、わずかに六・三%というシェアでございます。共産圏貿易もこれから大きく伸ばさなければならないわけでございますが、しかしこれは全輸出から見ると五・一%でございます。それに対して三〇%のウエートを占めるアメリカと困難な状態をつくるということが、いかに日本経済に響くかということは私が申し上げるまでもない。繊維協定だけでもこのくらい日本の産業は混乱しておるじゃありませんか。そういう状態において日米間が正常な状態をつくらなければならぬことは当然です。世界的に見ても、縮小均衡の道を選ばず拡大基調を維持していかなければならないことは当然でございますが、そういう国際的な立場だけではなく、当面している日本自体がどうしても日米間の正常化が前提として必要なのでございます。そういう意味でわれわれは真剣に事態に対処をいたしておるわけでございます。ですから、初め日米経済閣僚会議福田外務大臣も一緒に出席したわけですが、繊維問題もしかりでございますが、自動車は去年の倍以上も入っておるんだ、それからテレビは一体幾ら入っていると思う、七〇%も前年度をこしておるのです。電卓は幾ら入っているのです、四〇%から五〇%入っているのです、一体こういう状態がノーマルな対米貿易だと思いますか。私はそう言われるときに答えられるのは、日本が不景気であってアメリカが景気上昇過程にありますので、三十七年、四十年のパターンと同じように輸出ドライブがかかったようになっているのです、現実的にアメリカからの八月におけるアメリカ製品の日本に入ってくる輸入は、対前年度比六四・八%でございます、九月は六一・三%、去年の六割しか日本には入っていないのです、そういう意味で、アメリカに対して出ていくのは三〇%から四〇%増しであり、アメリカから入ってくるものは半分であれば、その差はこういうふうに大きくなるのです、だから、日本の景気がだんだん浮揚してくる過程においては、この対米貿易のギャップは縮まると思います、こういうことを声を大にして私はやってきたわけでございますが、しかし、やはり平価調整が必要であったと同じように、日米間も、また日本とEC間も、また後進国に対する援助の方式やその他を拡大する問題においても、事はここで全部終わったというのではなく、これからやはり日本は積極的に——先ほどあなたも指摘されたように、前向きとか善処しますとかということではよろしくないことでございますが、日本流にいうと前向き、積極的、善処していかなければならぬ態勢にある、私は真にそう感じておる。それが国益を守ることである、こういう感じでおります。
  45. 鴨田宗一

  46. 堂森芳夫

    堂森委員 時間がたいへん短うございますので、主として田中通産大臣に二、三の点について質問を申し上げたい、こう思うのであります。またほかの人がやりますから……。  そこでこの繊維問題は、過去の経緯を考えますると、大体足かけ三年間の経過をたどってきたことは御承知のとおりでありますが、先般田中通産大臣了解覚書にサインをされまして、今回いよいよこれが実施されるという段階を迎えておるのでありますが、七月一日から業界が自主規制をした、政府はこれを大いに歓迎する、あなたも幹事長時代に、党を代表した立場でこれに賛成しておられた。また、大臣になられてからもこの立場をずっと継承してこられた。また、九月のワシントンにおける日米両国経済閣僚懇談会に出席されたときも、こちらの立場を主張して、できぬことはできぬ、こう言ってきた。これはあくまでも向こうの主張を拒否してきたのだ、こういうふうに言っておられましたが、その後急変されまして、君子豹変すということがありますが、全く変わった立場からやってこられました。これに対してあなたは、新事態が来たので変わったのだ、こういう答弁をされておるのであります。しかし、政府がきめた今回の両国協定内容に対しては、業界はどうしても納得できぬ、こういう立場から、政府の政策に行政訴訟を先般業界が提訴してきておるという事態も出てきておる。どうしても政府のそうした豹変した態度というものはわからぬ、理解ができぬ、こう言っておるのでありますが、この際もう一度通産大臣にそういう事態が来たのだということを私は説明をしてもらいたい、こう思うのであります。時間がありませんので、なるべく簡潔に……。
  47. 田中角榮

    田中国務大臣 私は、自由民主党の幹事長でございましたときは、自主規制が最上のものである、こう信じておりました。またそうなければならない、こう思っておりました。七月五日に通産大臣を拝命しました直後アメリカに参りましたときも、そのような認識に立って日米間の五一年から二十年間の数字をもととして、対米問題に対して掘り下げた議論を徹底的に行なったわけでございます。そして、日米間が政府間協定等を行なわないことの利益である旨を強調して帰朝いたしたわけでございます。しかしその後、君子豹変ではないのです、これは国益を守るためにやむを得ず態度を変えたということをよく理解していただきたい。私もただ単に立場とか考え方の相違とかでやったのではないのでございます。これは現実的に私は日米経済閣僚会議でも、片手にケネディラウンドの推進を掲げておって、一方では課徴金とは何を言っているんだということを声を大にして言ったことは幾ぶんか御承知だと思います。私はそういう意味で、しかしアメリカ側が実際的に長期的な拡大均衡路線を守っていくためには、そのためにもやはり暫定的にこのようなことも考えてもらわなければならないんだという立場で、繊維の二国間協定というものを強く推進してまいりました。  私はその後いろんな情勢を見ましたら、率直に申し上げて、やはり日本人も相当たくましいところもあると思います。これは自主規制をやります、その自主規制は七月一日から五%増しですと言いながら、糸などに対してはもう相当量アメリカに出てしまって——韓国、台湾等を通じて出たものもあると一時指摘されたものもございますが、私はそれはつまびらかにいたしません。しかし韓国、台湾等は対前年度の実績でいうと二十三年分、二十四年分というものが一ぺんに出ておるわけであります。日本も、三五一でありますから三年半分も出ておる。それで、このように二国間協定をすればお互いで話し合いをしていきますが、二国間協定が行なわれない場合、どうしても一方的規制をしなければなりません。一方的規制をすればどうなりますか。これはもう七月一日からの規制になります。繊維に関しては対米繊維が一年間ほとんどストップになるということであります。そんなことは日米間でできるわけがないというのですが、わけがないということだけで私はどうもそのままじんぜん推移するわけにはいかない。そのとき国会にも、いやな引用でございましたが、申し上げたのです。労使の間のときに、そんなことをしてゼネラルストライキができるわけがないといって交渉に応じないというようなことで、一体よき労使の慣行ができるわけがない。白米間はやはり話し合いをしていかなければならない。その陰には対前年度比三〇%以上という輸出の増があるんだということ、現にアメリカは基礎的不均衡も約三十億ドルもあるし、そのほかに対米貿易において八十数年ぶりに貿易収支の赤字が年間二十億ドルある。その二十億ドルはちょうど日本の対米出超の額とひとしいという数字的な事実の上に立って見ると、やはり協調することが長い間の日米間の利益であり日本の利益でもある。その後に日米間のものは、八月、九月ちょっと減っただけでどんどん出ておって、十一月は一三一でございますか輸出も伸びております。対米輸出は非常に減ると思いましたが、暦年制で見ますと七十二、三億ドルをこすような状態でございますので、そのためにはやはり話し合いがよかった、いまでも間違いなくそう評価しております。
  48. 堂森芳夫

    堂森委員 わかったようなことをくどくどおっしゃって困るのです。時間がない。  そこで田中大臣は、十月八日の参議院の商工委員会で、大矢正君の質問に対して——これは私が聞いたようなことを聞いておるのですが、あなたはこう言っておるのです。「しかもこの要請は、ニクソン新政策の中の、一括的な政策の一つとして考えておるということでございました。なお、」——あとが大事なんです。「日本だけを対象としないで、世界各国に対して画一、一律的な規制を十月の十五日から実施をいたしたい、」云云。だから受けたのだ、日本だけじゃないのだ、しかもそのときに極東三国はすでに了承しておる、こうつけ加えておる。世界各国というのは極東だけじゃないのでしょう。ヨーロッパも加わっておるのでしょう。いま勝間田議員の質問に対しても、ヨーロッパのことを勝間田氏は聞いておるけれども、あなたは答弁されぬ。ずるいんだ。ヨーロッパは何もしてないという。どんどん糸を出しているじゃないですか。これは一体どうなんです。
  49. 田中角榮

    田中国務大臣 日本との間にはイニシアルを行ないましたし、同時に極東三国との間にもイニシアルが行なわれました。日本との間に正式調印が行なわれれば、ほぼこれと前後して極東三国も行なわれると思います。問題はやはりECだと思います。その後の状態を見ておりますと、ECには別にいろんな問題があるわけなんです。きめ手となる問題はあります。これは日本に防衛分担金を拡大されるのではないかという議論がありますが、制度が違いますからそれは日本にはない。そのかわりにアメリカとEC諸国との間にはいろいろな問題が存在をいたします。そういう意味で、アメリカはいずれがいいかということは考えておると思いますが、これは私の推測でございます、推測でございまして、やはりアメリカに有利なほうを選ぶ、そうなって平価調整その他でもっていろいろなことをやっておると思います。なお糸だけではなくて、イタリアについてははきものがありますし、各国別にみんな特製品があるわけでございますから、そういうことをアメリカと各国の間でいろいろ折衝を続けておることは事実でございます。それは新聞の報道するとおりでございます。  ただ、その後ほかのものでもろてアメリカがメリットを得ても、日米間で繊維交渉をした、その結果、アメリカとECの間では何もしなかったということになると私も困るわけでございます。その意味でじっと見ておるのですが、アメリカとECの間にはこういうことがあるようであります。ECからの糸が出たりしておりますものは、アメリカ資本が主体でやっておるようであります。そういう意味で、国内の労働の問題等もありますし、失業等の問題もあって、ヨーロッパのアメリカ資本による生産を少なくして、その分だけはアメリカの本国でもって生産をしようというふうに振りかえをすることによって、ECからアメリカ本国に輸出されておる数字の調整はできるというようなことのようでございます。  そんな意味で事態の推移を見ておるのですが、そこで弾力条項が発動するわけであります。私との書簡が発動いたします。アメリカとECとの間がそのような状態であれば、内容がどうであろうと、今度は私が専門家会議において、日米もこのようにひとつ配慮をしてもらわなければ困る、こういうふうに、だんだんとこの協定弾力条項日本に有利にやってまいりたい、こう思います。
  50. 堂森芳夫

    堂森委員 どうも答弁が長くて困るのですね。  あなたの答弁は顧みて他を言う答弁ですよ。ヨーロッパは何もしてないじゃないか。規制してないじゃないか。日本の繊維産業だけがそういう規制をされるということをあなたはやった責任者ですよ。それを追及しているので、そんな顧みて他を言うような答弁では答弁にならぬと思うのです。時間が迫っているものですから残念なんですが、私はもっと論争すべき重大な点だと思うのです。あなたは国会でうそを言っておるのですよ。いや、とにかくヨーロッパ各国に対して一律にやるのだ、ヨーロッパに対してもやるのだ、こういう答弁だと思うのです、そうでしょう。世界各国ということはヨーロッパを省くということじゃないのですから。だけれども、アメリカは何も向こう規制をしてないことは事実なんですから、日本の繊維産業だけがそういう被害を受けておるということは事実でしょう。だから、あなたが言うような世界各国の繊維に対して規制をするということはアメリカはやってないのです。やってないことをやるとあなたは言っておるのだから、あなたはほんとうのことを言ってない、そういうことになると思うのです。まあこれはやむを得ません。  そこで、あなたは仮調印をされた当時、記者会見か何かで、全国の機屋さんの七十数万台ある織機の中で、こうなると三十万台ぐらいはスクラップしなければいかぬのじゃないだろうかというような発言をしておられたと、私は当時新聞で読んだと思うのです。あなたの下僚に聞きますと、あれは大臣が思いつきで言ったことで、本心じゃないように思うというようなことを言っておる人もありますが、とにかくたいへん大きな影響を受けることはあなたも知っておられると思う。そうだからこそ、二千億をこえるような膨大な、国民が納めた税金を繊維産業に使おうというのでありますから、そこであなたは、こういう大きな影響を受ける繊維産業に対して、やはり担当大臣ですから、こうなったら繊維産業はどうなっていくかという、少なくともマクロの構想、青写真があると思うのでありますが、時間もありませんから、あまり長くやらぬで、ひとつ簡単に……。
  51. 田中角榮

    田中国務大臣 なかなかむずかしい御質問でございますから、やはりそう端的にはお答えできないわけでございます。  これはいままで対前年度比五%増しぐらいのときは、七百五十一億の問題は業界と通産省の繊維局でうまくできたのです。ところが今度は、ほんとうにこれからの新しい繊維のスタートを考えて、これからどうあるべきかというものに対しては、通産省だけで一方的には政策を立てませんから、私は、各業界がこまかくスクラップ・アンド・ビルドの案を出してください、こう言っているのですが、それはいますぐは出ない、やはり少しずつ時間がたってみて、国際情勢も見なければならないという中には、一体いま日本アメリカに対してこんなことを言っておりますが、これで今度日本アメリカと同じ立場になる、これは韓国や台湾や香港が日本に向けてやってくる。それだけではなく、中国との間に道を開いた場合何が入ってくるのか、それは一次産品と繊維である、このときに日本日米でもって五%減るとか三%減るというようなことで一体済むのだろうか、そういうことを展望すると、七十万台の織機のうち半分以上はもう政府に買い上げてもらわなければならないような実態でございます。そういう実態の中で日米政府交渉が行なわれることは望ましくないという業界の話であって、通産省に三十五万台買い上げてくださいという文書が出ております。これは私が思いつきで言ったのではなく、繊維局には三十五万台買い上げ申請なんというのが来ておりますから、これはそういう事情で、将来を展望するとそんなこともある。  特にいま日本の繊維企業が持っておる機械の能力そのものも、ヨーロッパに比べると何となく、私もさだかにいたしませんが、必ずしも性能が国際最高水準のものではない、こういうことで、将来を展望するとそういうことでございますという業界の気持ちを申し上げたわけでありまして、これからはやはり中国大陸の問題とか、後進国との問題とか、日本のまわりの三国の問題とか、いろんな問題を考えながら、もっと質のいいもの、付加価値の高いもの、知識集約産業ということを私はいつも言っておりますが、繊維企業の中においても、やはり同じ原料を使っても高く売れるもの、いいものというふうに、だんだん質的な向上をはかってまいるべきものだと思います。  最後に一言申し上げますと、糸は三年半分も出したのですから、三年半分ぐらいもうかっているのかと思って業界に聞いてみたら、一向もうかっておりません、こういうのでございますから、そんなに三年半分も急いで汗をかいて輸出をするところに私は間違いがあると思うのです。これは通産省も誤りだと思うのです。そんな行政指導をしておったら大間違いであると私は思います。やはり輸出をしたらそれなりの利益を得られるということでないと、ダンピングだといわれるわけでございますので、質のいい輸出というものができるような繊維産業に改変をしてまいりたい、こう思います。
  52. 堂森芳夫

    堂森委員 どうもまともな答弁じゃないので困るのですが、もう時間がありません。  そこで、政府が先般、十七日ですか、閣議決定されまして、自主規制のときと加えて二千億をこえる膨大な予算をきめた。そして通産大臣は得意げに記者会見なんかをして、何でもやろうと思えば、こういう対策を講じてやれば、よその国との経済のいろんな交渉もうまくいくのだというふうな、私は新聞で読んだのですが、そういうふうな態度だったということであります。私は御承知のように福井県ですが、今度の繊維規制で一番大きな影響を受けるのは私の県の福井県と石川県です。大体輸出は三割は減るであろう、こう言っております。福井県、石川県等で織る織物の従来輸出しておった三割は減るだろう、こう言っておるのです。そして買い上げ織機を十万台、こういっておりますね。十万台政府は買い上げる。しかし準備機等を加えると二十五万円じゃ借金の一部にしかならぬ、幾ら十万台買い上げてやろうとおっしゃっても。私の県で大体一万五千台の割り当てになるそうです、十万台を割り当てると。石川県が八割くらいになるそうですから一万二、三千台になるのでしょうか。石川、福井というのは輸出織物の大部分の産地でありますから、たいへん大きな影響がある。とても一万五千台なんてだれも供出しません、安過ぎて。そう言っておるということなんです。それから、いろんな低利、長期の融資を受けるようになって、政府の六百五十億ですか、こういう大きな金を貸してもらえるが、そんなことをしてもらっても、いまのような事情では万歳するのが二、三年先になるというだけにしかならぬというふうな、全くもうほんとうに絶望的な気持ちを訴えているわけですね。通産大臣、それでいいんでしょうかね。たいへんに大きな影響を——日本全国で数百万の人口が繊維産業に関連しておると思うのです。労働者あるいは労働者の家族あるいは事業家、いろんな人がおるのでありますが、これはたいへんな問題であります。私は時間が十二時五分までしかないのが、もうだいぶ超過しましたので終わりますが、通産大臣はよけいなことばかりしゃべっておられて何も構想をおっしゃらぬです。田中通産大臣、私はいろんなことで不満なんです。日米両国の親善関係を改善するためにはこの協定が必要である、こうおっしゃるが、私は逆だと思うのです。それは見解の相違だとあなたはおっしゃいますが、きょうは議論をするところではありませんから申しませんが、これはたいへんな問題でありますので、今後繊維対策への一そうの精進を願いたい、こう思うのであります。  それからあなたは労働者対策は石炭のようなわけにいかぬとおっしゃいました。通産大臣はそうおっしゃいましたよ。石炭対策のときのようには労働対策はできぬとおっしゃいました。どういうわけでしょうか。そんなばかなことあるでしょうか。政府のやり方によって、ある意味では外交的なミスとでも申せる部分も私はあると思うのです。そういう意味で、国の外交、政治のあり方からきた被害であるならば、なぜ石炭と同様に扱えないのでしょうか。御答弁願いたいと思います。
  53. 田中角榮

    田中国務大臣 まず一番最後からお答えいたしますと、離職者対策は、石炭対策の中で取り上げましたと同じような方式をいま考究しておるわけでございます。しかし全部が全部、労働者対策を石炭と同じようにするかどうかという問題に対しては、なかなかそうはいかない、これは御理解いただけると思います。  それから、二十五万円というものはこれは平均値でございまして、もうすでに百十一億、補正予算で措置をした。五万三千台も二十五万円という平均値でやっておるわけでございますし、そのほか、まあそういう意味の権衡もございます。それから仮より機等の準備機その他、織機以外のものは今度買い上げの対象にもいたしておりますので、その間の事情はひとつ御了承いただきたいと思います。  あなたも福井でありますが、私も新潟であります。これはそんなに簡単なことではないのですが、織機に関して言うと、福井・石川・新潟、新潟・石川・福井というようにこれが代表的三県でございます。その拠点は全部私の選挙区のどまん中でございます。ですから私は、そういう意味ではいま繊維業界が置かれておる国際的な地位、また日米協定における日本の産業の中における繊維企業の地位というものを公平に、十分評価をし、しかも冒頭申し上げましたように、やはり繊維というものは明治から百年の間に日本が自由貿易の中でもってやっと立ち上がってきたときの原動力である。戦後の二十五年でこれだけの経済成長ができた原動力もやはり繊維にあると私は思います。そういう意味で今度は二千億という思い切った措置をやったわけでございまして、業界でも、表面的には別としまして、よく政府も踏み切ったなあということをしみじみたる感じで述べておるのが実情でございますから、政府の意のあるところをひとつ十分おくみ取りいただきたい。私たちも一これだけの日米協定を行なった以上、日本の繊維業界のあしたのためには通産省も全力を傾けてまいります。御声援のほどをお願いいたします。
  54. 鴨田宗一

  55. 田中武夫

    田中(武)委員 勝間田堂森委員の質問に引き続いて御質問申し上げます。  先ほど外務大臣は、この協定に、法令範囲内において云々と書く、したがっていわゆる行政協定でいいのだ、こうお答えになりましたが、協定法令範囲内云々と書けばそれでいいというものではありません。それでは、具体的にその法令は何条であり、その権原、これは何法何条によって発動をせられるのかお伺いをいたします。
  56. 井川克一

    ○井川政府委員 先生御指摘でございますけれども、私ども従来行政取りきめをやっている場合に、何法に基づいて、何令に基づいてというふうなことばは使っておりません。法令範囲内において、法令に従って実施されるということばを使っているわけでございます。と申しますのは……。
  57. 田中武夫

    田中(武)委員 わかった。協定の中に、法令に基づきとか法令に従ってとかと書いたから行政協定でいいんだということはいえないと思うのです。  それじゃ裏からお伺いいたします。この協定ができ上がった、そうして具体的に憲法の保障する基本的人権である職業の選択の自由——輸出貿易、輸出の仕事を押えるという権原はどこから出てきますか。
  58. 福田赳夫

    福田国務大臣 この協定アメリカに対して約束をすることはわが国の法令範囲内である、こういうことです。ですからわが国としては、わが国の法令範囲内において繊維輸出関係者に制限を与える、こういうことでありますから、何ら憲法に抵触するという問題は起こらないのであります。
  59. 田中武夫

    田中(武)委員 これは答えになりません。少なくとも貿易という仕事、これは憲法の二十二条が保障するところの職業選択の自由、基本的人権であります。したがって、それを具体的に制限するにはそれだけの権利の源、権原がなくてはなりません。その押し立っているところのもの、それは一体日本の現在ある法令の何法何条によって行なわれるのか、具体的に言ってください。
  60. 田中角榮

    田中国務大臣 外国為替及び外国貿易管理法第四十七条、第四十八条一項、二項、これはもう田中さん十分御承知でございますから私も申し上げるわけでございますが、これを前提とした輸出貿易管理令第一条ということが明確にございます。
  61. 田中武夫

    田中(武)委員 貿管令は外為法を受けておりますから、外為法でひとつ議論をいたしましょう。  いま四十七条及び四十八条とおっしゃいました。その前に二条を見てください。この外為法というのは昭和二十四年にできた法律であります。すなわち、戦争によって壊滅的な打撃を受けた日本経済が、ようやく世界貿易に初めて参加する事態が起きたときです。したがって、そのときの状態においてきめた法律でありますので、第二条でいわゆる再検討条項というのがあります。少なくともこのことは最小限度に運営していくのだ、こういう精神であります。そして四十七条にも、おっしゃっておるように「最少限度」とある。四十八条二項には三つの要件があがっております。しかも、この三つの要件をつないでおるのは「並びに」「及び」でつないでおるわけです。したがって「又」ではないわけです。「又」でつないでおるのではないのですから、この三つの要件にぴっしゃり当たらなければいけないのです。この三つの要件、すなわち「国際収支の均衡」「外国貿易」それと「国民経済」の健全な発展、この三つにこの協定が具体的にどう当てはまるのか、御説明願います。
  62. 田中角榮

    田中国務大臣 この法律そのものの精神もそうでございますし、それだけではなく、世界的な通念としても無差別自由化で、自由な方向でなければならないということはこれはもうあたりまえであります。しかし、これは理想でございまして、憲法の自由の大原則と同じことである、私はそういうふうに解すべきだと思います。やはりこれは、この法律を運用する通産省、日本政府というものはこの精神でいかなければならぬと思います。ですから私たちは、アメリカの繊維二国間交渉に対しても相当な抵抗をやったわけであります。政府交渉をやりながら、二年間たってまとまりそうになってもちゃんとまとめられなかったわけでございますから……。
  63. 田中武夫

    田中(武)委員 時間がございませんから……。そういうことは聞いていないのです。聞いたことにぴっしゃりと答えてください。  しかもあなたはいま重大な発言をいたしました。時間がいただけるなら議論をいたしたいと思います。憲法と同じような大原則であってということは、理想は理想であるが、現実は守らなくてもいいというような、あなたは憲法に対してもそういう制限を持っておるのですか。
  64. 田中角榮

    田中国務大臣 そんなことはありません。憲法は高く理想を求めておりますように、この法律も無差別自由の原則をうたっておりまして、これを運用する政府はそういう基準で運用に当たらなければならないことは当然でございますと、あなたの言うことをそのまま是認をしておるのです。(田中(武)委員「それならよろしい」と呼ぶ)承認しております。
  65. 田中武夫

    田中(武)委員 この三つを具体的にどう当てはめるのか言ってください。
  66. 田中角榮

    田中国務大臣 ですから、そのような法律運用を基本的にしておりますが、今度外国との問題、これは外交上の問題が起こってまいりましたので……。
  67. 田中武夫

    田中(武)委員 もちろん外国のことを前提にした法律です。だからこの三つの要件を具体的に、どういう点が国民経済の発展を阻害する、だから制限するのだ、どういう点が国民あるいはわが国の外貨の均衡を阻害するから、悪いから、だから制限するのだ、こういうように答えてもらわなくてはいけないわけなんです。
  68. 田中角榮

    田中国務大臣 では前後を省いて率直に申し上げます。  アメリカとの間に二国間協定を行なわないで、アメリカに一方的規制を行ない、行なわれ、対米輸出が全面的というのではなくて一時的にストップをするとするならば、この法律が考えておるような目的は全く阻害されるような状態になる。だからこの条文の精神を生かすためにと、こういうことでございます。
  69. 田中武夫

    田中(武)委員 全面的にストップ、こういうことを言っておる。さっきも議論がありました。だからゼネラルストライキなんかできない云々というような例もあげられました。私はそういうことは理由にならぬと思う。具体的にどうやって全面的にストップできるのです。そういうことでは答えになりません。これは少なくとも日本の法律である。日本の輸出貿易である。したがってこういう事態が起こる、こういう事態であるからこうやるのだと具体的に条文に従って答えが出されなくてはなりません。そういう答えでは答えになりません。  それではこれはまたの機会に譲ります。とうてい法律論ではあなたは勝てません。何ならどこかでゆっくりと公開討論をやってもよろしい。  次に、ガットとの関係において、数量の制限はガットは禁止をしておる。ただし例外を設けておる。それは一体どれなのかという質問に対して、十九条をもって答えました。しかし私は十九条のいわゆる被害ということについて両国間が云々と、こういうことです。私は、ガットは一般的国際条約である、この一般的国際条約の効力と二国間協定、しかもこれが行政協定、これの効力は当然ガットが優先する。もしあなたがおっしゃるように、二国間協定がガットの条約を破ることができるということであるならば、一般的国際条約なんて意味をなしません。二国間が話がつけば国際協定は全部破られるというような問題なら、一般的国際条約というものの意味はなくなります。したがって二国間協定で云々するからガットが破れるということは絶対に法律上通りません。いかがですか。
  70. 井川克一

    ○井川政府委員 多数国条約の目的その他によりましていろいろのことができ得るのではなかろうかと思います。と申しますのは、その多数国条約の性格が、立法事項であるというようなこと、国際的立法事項である、あるいは禁止規定であるというようなことからいろいろ考えられると思うわけでございます。したがいまして、一般的にいま田中先生の言われたような断定はなかなか困難かと思います。しかしながら、このガットのことにつきましては、このガットのワク内におきまして、私どももこれからつくります行政取りきめにおきましてガット上の権利をわが国といたしまして明白に留保して、そしてやっていきたい、こういうふうに考えております。
  71. 田中武夫

    田中(武)委員 それでよく条約局長がつとまりますね。このガットは、言うまでもなく国際的立法条約ですよ。いいですか。これだってもうだめです。答弁をもらっておったら時間がなくなるからやめます。それとも自信がある答弁ができるならやってください。
  72. 井川克一

    ○井川政府委員 あらゆる多数国条約におきまして、その加盟国の二国間の話し合いというものを禁じているものとは私は理解いたしておりません。その上に、先ほど申し上げましたとおりガット上の権利は明白に留保いたすつもりでございます。
  73. 田中武夫

    田中(武)委員 だから立法的条約は破れないというのです。そうでなくて、二国間において、国際的条約のもとに取りきめができるものがあることはあなたのおっしゃるとおりです。あなたみずから立法的条約ということを言ったじゃないですか。立法的条約は破ることはできません。
  74. 井川克一

    ○井川政府委員 立法的条約ということ、その他のものがあるからいろいろ多数国条約についてはむずかしいということを申し上げたわけでございます。そして、結局その多数国条約というものは、多数国条約によって組織される社会、その社会の利益というもの、その観点から判断されなければならないと思います。
  75. 田中武夫

    田中(武)委員 条約局長答弁としては通りません。条約上の解釈でありません。いまのはきわめて政治的——外務大臣がそう言うなら、一応私は受けましょう。条約局長答弁としては通りません。これもあらためて時と場所を得て本格的議論をすることといたしまして、留保いたします。  そこで、十月十五日に仮調印した了解事項覚書、これを内容とするいわゆる二国間協定行政協定調印は、できるならば年内、こう言っておられますが、私は、そうではなくて、ひとつこれを来年一月六、七ですかに佐藤総理、それに次の総理、総裁を目ざす外務、通産のお二人も一緒に行かれる由ですが、そのあとへ持っていってもらいたい。そうして、その会談に際して次の三つを主張し、いわゆる事情変更の原則の上に立って、すでに仮調印はしておりますけれども、了解事項覚書内容の変更、できるならばそれを破棄する、そういうような話し合いをしてもらいたい。  その理由の第一点は、国内の業界がとうてい納得しない。しかも、労使双方から行政訴訟が出されておる。  二つ国会がうるさくて困る。ことに野党が絶対反対である。この点については、アメリカは議会というものをうまく野党を利用しております。たとえば、今度のドル引き下げにいたしましても、日本は、大蔵大臣が訓令を受けてものを言ったら、それできまった。アメリカは、何%ドルは引き下げます、しかしこれは議会の承認が必要ですからということで、それを理由にして各国の動きを見ておるわけなんです。たとえば沖繩にいたしましても、議会は通った、しかし大統領の署名は日本の様子を見てというようにして、クッションを置いてにらんでおるのです。同じように、もう少し日本国会というものを皆さん方は尊重し、権威を持たせ、こうして国会において執拗にまでわれわれが追及を受けておる、国会が承知しないのだ。  さらに、今回の通貨調整にあたって、通産大臣は談話を出しておられます。その談話の中に、これは時間がないからその一節だけを読み上げます。「わが国としては、この機をとらえて諸外国に対し、保護貿易主義からの脱却と国際均衡の実現のための節度ある態度を要請してまいりたいと考えております。」このようにも言っておられます。したがって、その後の国際経済、ことに通貨調整等々の問題が起きてこれが解決をした。このことについては、われわれもっと言いたいことがあります。これはまた別の機会に申し上げますが、等々の事情が変わった、したがってあの内容についてはこう変更したい、あるいはこの点は改めたい、取り消したい、そういうような主張はできますか。やれますか。少なくとも次期総理、総裁を目ざす福田さん、田中さん、どうなんです。そのくらいのことはおやりになる——ちょっと待ってください。少なくともお二人はこれで終わるわけじゃありません。総理、総裁にどちらかが——順番に回るのかしれませんが、私も国会議員をそう簡単にやめません。落ちません。したがって、あなたたちとの国会における交際はなお今後も続きます。いいですか。ことに田中さん、あなたのようなうそつきを相手にできないというのがいまの私の心境です。したがって、私はいままでにない強いことばをあなたに対して使っております。なぜかというと、あなたはうそつきだ、そんな人には総理、総裁はつとまりませんよと言いたいのです。少なくともここで二人が一緒に行かれる以上は、いま申し上げたような——そのほかにもたくさんありましょう、そういった十月十五日からの今日に至る事情の変更あるいは見通しの間違い等々を理由に、これの改正あるいは取り消しを提案するだけの用意があるのかないのか。  さらに、もし正式調印をした場合に、これが十月の一日に遡及するということになる。その遡及の根拠はどこにあるのか。少なくとも一般的法律的な解釈のうちで遡及が許されるのは、その適用を受ける者が利益を受けるときのみであって、不利益を受ける場合は、新たに結ばれた協定なり協約なりあるいは法律によってそれがさかのぼるということは許されない。これが法律の遡及の原則であります。したがって、これが十月一日に遡及するというところの根拠いかん、これをお伺いいたします。
  76. 福田赳夫

    福田国務大臣 時間がないそうですから結論を申し上げますが、私どもはこの覚書のやり直しをいたす考えは毛頭ございません。つまり、これはもう三年越しの問題です。それから煮詰め、煮詰め、煮詰めて、やっと今日の事態になってきておる。しかもいま御指摘の三つの点、これらの点は大体において、もう覚書交渉が成立をするこのとき予見されておった問題なんです。したがいまして、事情変更というお話でございまするけれども、重大な事情変更があったとは考えない。これはわが国としては、日米間の経済的緊張、これを緩和する上において非常に大きな役割りをしておる。その役割りを十分認めなければならぬ。これを変更するということになると重大な結果が出てくる、そういう理解であります。
  77. 田中武夫

    田中(武)委員 それじゃ、遡及の根拠はどこにある。
  78. 山下英明

    ○山下政府委員 十月十五日調印の取りきめ分に、十月一日からということになっております。
  79. 田中武夫

    田中(武)委員 君は何を言っておるのだ。その十月十五日あるいは十二月の何日か一月の何日か知らぬけれども、結ばれるものが、十月一日に遡及するという根拠はどこにあるのかと言っているのです。了解事項にそう書いてあるからと言うが、そう書いてあるのを誤りだと言っておるのですよ。少なくともそういった不利益を与え、権利を制限するものを遡及せしめるのには、それだけの根拠がなくてはいけない。あなたも法学通論くらいはやったでしょうが。法なりそういったものが遡及するのは、相手方というかその適用を受ける者が利益になるときだけであって、不利益になる場合は絶対に遡及は許されない。これは法学通論の一ページですよ。それであなた、何ですか、行政が通ったのですか。
  80. 山下英明

    ○山下政府委員 おしかりでありますが、実際に制限を発動いたします輸出貿易管理令の措置は、適法にやってまいるつもりでございます。  条約の遡及効果全般に関する法律論は、条約局長その他とも相談の上後ほどお答えいたします。
  81. 田中武夫

    田中(武)委員 条約局長、その根拠はどこにある。
  82. 井川克一

    ○井川政府委員 田中大臣とケネディ特使とのお話し合いによりまして、この規制を行なうところの基準というものを十月一日にとったわけでございます。それはあくまでももろもろの計算の基礎になるわけでございます。そしてその計算の基礎を十月一日からとらざるを得なかった。そういうことになりますると、一方山下局長がお答えになりましたように、それを規制する権限というものはすでに外為法及び貿管令によって日本政府が持っているわけでございます。その権限に基づいてすでにこれを実施しているわけでございます。
  83. 田中武夫

    田中(武)委員 これで終わりますが、お聞きのとおりです。まともに答弁ができていないじゃありませんか。時間を一時間ください。そんなら貿管令、外為法、ガット全部裸にして、あなた方がぐうと言えないようにしてみせますが、いかがですか。あらためてきょうの夜でもよろしい、やりましょうか。
  84. 鴨田宗一

    鴨田委員長 いずれまた理事会で相談します。それでは時間になりましたので……。
  85. 田中武夫

    田中(武)委員 ぐうと言えないまでやってみせますよ。  これで終わります。
  86. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次は近江君。
  87. 近江巳記夫

    ○近江委員 今回円の切り上げが決定したわけでございますが、いままでこの繊維業界は自主規制の上にさらに政府間協定ということで非常に困難な中に入ったわけでありますが、さらにこの円の切り上げということが重なってまいりまして、たいへんな状態にいま入っておるわけでございます。  そこで、できるだけ重複を避けて質問したいと思うのですが、特にこの円の切り上げが繊維業界に及ぼす影響についてどう把握されておるか、またそういうミックスされた要因に対していままでの救済でいいのかどうか、端的にひとつ通産大臣にお聞きしたいと思います。
  88. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどから申し上げておりますが、第一の段階である自主規制五%増しというときに七百五十一億円の救済を行ない、今度はそれを含めて二千二十九億円まず決定をいたしました。このほかにも離職者対策等いま詰めておる段階でございます。私は繊維企業が重大な状態であり、また重要な産業であることを前提にして考えますが、政府がとった今度の救済対策、支援対策というものは万全に近いものである、こう理解をいたしております。
  89. 近江巳記夫

    ○近江委員 非常に政府も努力されておることは私も一応は認めますが、しかし業界から四千六百億の要求が出ておるわけです。それに対して政府がとられた今回のそういう処置というものは、非常に額が小さいわけです。その点、これでいいというような大臣の考えでありますけれども、どこにこういう大きな食い違いがあるわけですか。
  90. 田中角榮

    田中国務大臣 業界の四千六百億というのは、これは将来を見通して四年ないし五年ということでございます。私たちは四十六年、四十七年両年度、どうしても四十八年度にずれ込むものもあるかもしれませんが、これは業界の状態においてずれ込むということであって、これはできればもう一年ちょっとの間でもってこれをやってしまうというのが二千億余でありますから、これは非常に大きい金額であると考えております。特に対米の輸出総額が年総額二千億、その年総額二千億というものに該当する金額と同じことをやっているわけでございますので、これはほかの対策に比べてみても相当思い切った対策であるということは申し上げられると思います。
  91. 近江巳記夫

    ○近江委員 確かに業界の要求は三年計画ということでございますが、しかし当初にやはり集中してほとんどこれに近い額だけのことは要求しているわけです。その点大臣のそういう考えとすれ違いがあるように思うのですが、また金だけでこと足れりというやり方であってはならぬと思うのです。ことに離職者の問題になってくるわけです。非常にこれはさびしい話になってくるわけですが、こういう点についても、真剣に働いておる人たちは生活の問題でございますし、この点の対策が非常に政府としてはまだできてないように思うのです。したがって、これは政府の責任のもとにおいて結ばれた協定でありますし、全力をあげて働いておる人たちが安心できる体制をとるべきじゃないか、これについてはどのようにお考えでありますか。
  92. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほども述べましたように、離職者対策等につきましては石炭対策等で行なっておることを援用して、いま最終的詰めを考えておる段階でございます。私も昭和初年初めて東京に出てきたわけでございますが、当時の女工哀史の一ページも読んでおるわけでございます。そういう意味で、今度の政府間協定を行なうにあたっては非常に深刻な立場で判断をしたわけでございまして、政府が可能な限り措置をいたしたい、こう考えます。
  93. 近江巳記夫

    ○近江委員 この自主規制あるいは政府間協定、円の切り上げ、このように重なってきておるわけですが、特に円の切り上げの業界に与える影響をひっくるめていま大臣おっしゃったわけですが、特に円の切り上げについては大きな影響があると見ておられるのか、その点についてはどうなんですか。
  94. 田中角榮

    田中国務大臣 輸出そのもので見ますと、円平価の切り上げというものは、長期的に見るとまた別な言い方もできますが、当面する状態から考えると影響は相当ございます。試算でございますが、一五%引き上げくらいですと大体ドル建てでことしよりも一〇%くらい輸出がふえるかなという数字でございますが、一七%近くになりますと円建てでは横ばいもしくは多少減るくらいでございますから、それが一六・八八%に上がっておるのでございますから、実質的には横ばいという考えでございますので、繊維業界のみならず他の産業にも相当影響がある、こういうふうに考えるのが当然だと思います。
  95. 近江巳記夫

    ○近江委員 非常に影響があるということを言われたわけですが、政府のそういう円切り上げに対する見方というものが非常に甘かったのじゃないか。今回一六・八八%の大幅切り上げで合意するように追い込まれたような形になったわけでありますが、これについては大蔵大臣が向こうに行かれたわけでありますけれども、政府の重鎮としてきょうはお二人来られておるわけですから、この一六・八八%に対する率直なひとつ所感をお二人からお聞きしたいと思う。
  96. 福田赳夫

    福田国務大臣 私はこれは通貨問題だけとして事を考えちゃいかぬと思うのです。あのGテンできまった全体の問題、ことに課徴金が撤廃されることがきまったということは非常にわが国にとって重大だと思います。つまり日本の国は資源を外国に求めなければやっていけない国なんです。それが課徴金を中心といたしましてだんだん世界が保護貿易化しようという勢いにある、そういう際にとにかく課徴金の撤廃、そういう問題を含めて総合措置がきまった、こういうことは私はわが国の将来にとりまして大局的に見ましてたいへんよかった、こういうふうに思います。  率の問題は、これは多少私どもの見通しよりは高かった、これは率直に申し上げます。つまり一六・八八%、こういうことです。最後に水田大臣が訓令を仰いできた。私どもは三百十円——これは一六・一%に当たります。それをひとつ守ってもらいたい、こういうふうに申し上げたわけでありまするが、ただいま申し上げました大局的見地に立ちまするときに、やむを得ず二円を切った、二円まけとけということがいわれるような結果になったわけでありますが、しかしこれはアメリカに対しての関係はそうなんだが、ヨーロッパに対する関係はどうかというと、ドイツは最後まで日本との間の格差を五%の切り上げ幅、五%ドイツが低くなければならぬという主張が、わが国の主張等に影響を受けましてこれは三%にとまったということ、それから、イギリスやあるいはフランス、これがあれだけドルが減価をするという事態になりましても、その平価の切り下げをいたさないというようなことになったこと等を考えますと、通貨の面におきましても、総合的にまあまあという成果ではなかったかと、私は水田大蔵大臣の健闘に対しまして高くこれを評価しておるという立場にあります。
  97. 田中角榮

    田中国務大臣 通貨調整に対しましては外務大臣の述べたことが、けさも閣議をやって、佐藤内閣全体の共通した意見でございます。ただ一言申し述べれば、多少どうも切り上げ幅が高かったという感じはいなめないのでございます。前日の夕刊の数字は、あげて「三百十円の攻防」ということでございますが、まあきまった数字が三百八円ということでございます。これは二・二五%のワイダーバンドを入れて、三百一円から三百十五円まででございます。まあ実勢、もう少し低く押えたいということを考えたことは事実でございますが、アメリカの引き下げが五%だと思っておった九ケ国の予測を上回って、その分だけ引き下げられたという感じは、これは全部、アメリカ以外の国はみんな持っておると思います。ただ、いま外務大臣が述べられたように、五%以上の差がなければ絶対に困ると言っておった西ドイツと三%であったということを考えてみても、まあ多国間調整という有史以来初めての結果としては、のまざるを得ないのではないかというのが実感でございます。
  98. 近江巳記夫

    ○近江委員 政府として努力されたことはそれはわかるわけです。しかし国民が思っておった線よりもはるかに高いこういうような一六・八八%というような線、しかも、それを決定のそういう場面をわれわれはマスコミを通じて知るしかないわけですけれども、非常に追い込まれて、日本が孤立化したような中で、ぎりぎりの段階でやっておる。私はそういう態度を見ておりまして、今日のこういうような国際経済の深刻な面に入っておりますし、また外交面においても非常に日本は何か孤立化しているような、包囲されておるような、そういう外交においても少しも安心できないような態度を、今回の円切りの決定を見ておりましても感ずるわけです。その点は何の反省もないわけですか、外務大臣
  99. 福田赳夫

    福田国務大臣 わが国の経済がここ数年間非常な拡大をされた、これにつきましてはアメリカもヨーロッパもその他の国々も目をみはっております。それだけにまた、日本経済のこの伸長に対しまして警戒的態度があることはこれはいなめない、そういう情勢下ではありまするけれども、われわれはまたわれわれとして手を尽くして、孤立化なんていうような事態には全然なっておりません。もう八方に手を伸ばしまして日本の国の国益を守る、そういうためにはこれは万遺憾なきを期しておるわけなんです。今回の通貨調整も何か孤立化されて追い込まれたというようなお話でございますが、水田大蔵大臣の帰朝報告、これは、どことどういうふうな手をとったなんというようなことは外交上の機微の問題でありまするから申し上げません、こういう前提でありましたが、孤立化という状態ではない、十分戦うべきところは戦った、こういう報告でありましたことを申し添えます。
  100. 近江巳記夫

    ○近江委員 この三百八円にきまったときの日曜日の記者会見で、佐藤総理は、円の切り上げ幅が一番高く、ドイツより高かったことをこれは自慢していい、このようにおっしゃったということがマスコミで出ておるわけですけれども、こういう総理の考えはいいんですか、これについてはどう思われますか。
  101. 福田赳夫

    福田国務大臣 私もそばにおったのですが、自慢していいとまでは言われなかったんじゃないかと思いますが、総理のお気持ちは、ドイツより三%も上げ幅が大きい、それくらい国際社会において日本の円というものが評価されたんだ、こういうことです。その評価の結果が、三%も上で、一六・八八%の対ドル切り上げというふうになったのですが、その切り上げ幅が少しドイツその他より上でありますが、これはもう、大体三%やそこいらの格差はあるだろうということは国際社会の通念だったわけです。これは別にそう心配する事態ではあるまい、こういうふうに見ております。
  102. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは私は、総理をはじめ政府の最高幹部の方々が、要するに日本の国はGNPが世界第二位になった、そういう自負というものが非常に多過ぎるように思うのです。そういう点からこういうような発言が出ておるのではないか。これだけ高い円切りに追い込まれて、先ほど田中通産大臣も、この円切りが繊維業界にも非常に大きな影響を与えるということをおっしゃったわけです。少なくともこの影響がどういう状態に出てくるかという国民に与えるその影響、特に中小企業等あるいは地場産業なり輸出業者に与える影響を考えたとき、こんな調子のいい発言は絶対私は出ないはずじゃないかと思うのです。その点ほんとうに政府の首脳部は、最も困っておられるそういう人々の上に思いをはせて、一つ一つの影響について真剣な姿勢がなかったらいかぬのじゃないかと私は思うのです。この点についての反省はないのですか。
  103. 福田赳夫

    福田国務大臣 これはまあ大きな国際的措置でありますから、これを契機にいたしまして、そしてわが国の国益を伸ばしていくというそのジャンピングボードにしなければいかぬ、そういうかまえです。まあ大きくは、国際社会において再び保護貿易主義的な傾向の出てくること、これに対しては峻厳な態度をとらなければならぬ、日本は先頭に立って世界の貿易の自由化、自由通商体制、これを推進する役割りを尽くすべきである、これはまあ大きな立場です。  それから直接国内に及ぼす影響とおっしゃいますが、今度はアメリカから輸入するものにつきましては一六・八八%安く輸入できる。ですからその原材料を使って仕事をする人の立場、これはそれだけ大いに改善をされるわけです。それから国民大衆は一体どういう立場になるかといえば、その影響を受けまして、これがなかりせば高かったであろう物価というものがそれだけ低くなる。ですから、これから問題は、この事態を踏んまえまして、国民の一人一人にこの切り上げの効果というものが波及するような、浸透するような政策、つまりきめのこまかい物価対策というものが国内としては非常に重要である。これが行き届きますれば、この効果というものは国内的に国民大多数の者に均てんせられるわけです。ただ例外がある。それは輸出業者です。この立場は、通産大臣が先ほどからるる申し述べておるとおり、何とかいろいろな手を尽くして守り抜く、こういうように言っておるのですから、まあそれはそう御心配なされるような事態にはならないのじゃないか、これが私どもの大局的な見解でございます。
  104. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう時間がありませんから、私もこの問題をもっとやりたいと思いますが、今回の円切りで為替差損だけでも六千億損をしておるわけですが、しかもこの金価格の引き上げということでも、わが国は金は七億ドルも持っていない。片やフランスに至っては四十億、五十億の金を持っておる。こういう点を考えても、非常にいままでの外貨に対する——いままでそれだけたまってきたわけですが、これだけわが国としては損をしているわけですが、それに対しては、どういう反省を大臣としてはなさっていますか。
  105. 田中角榮

    田中国務大臣 三十九年に十四条国から八条国に移ったわけでございますが、このときの外貨保有高は二十億ドル余でございます。それから順調に伸びてきて、本年の一月、四十五億三千二百万ドルでございますか、四十五億ドル余でございます。それが四月には六十八、九億ドル、七十億ドルになり、八月から急激に伸びて、わずか半歳ばかりのうちに百億ドルに伸びたわけでございます。いまは百五十億ドルをこしておると思います。この中で金準備高が非常に少ないということは御指摘のとおりでございますが、大体日本の戦後というものが、管理通貨制度の中で、IMFや世銀やガットやOECDというような国際的な機関を中心にして今日になってまいりました。もともと敗戦のとき、二十六年のときは一かけらの金も持っていなかったわけでございまして、そういう中で今日の百五十億ドルを築いてきたという事実がございます。いまは百五十億ドルを持っておりますが、一月の四十五億ドル保有しておったときにはとても金利をかせいでおるような、金利のない金を買って寝かせておけるような状態でもなかったんです。絶えず流動しなければならないという感じでございますし、幾ばくか利息をかせごうということもございました。そういうことで、金準備高が六、七年間に二、三億ドルしかふえていないことは絶えず御指摘になられたことでございますが、このように百五十億ドルも今度たまりますと、これから金市場が全然混乱しない状態で、日本に買ってくれというような状態があれば拒むことではない。しかし必ず金にかえて利息のないものにしておくほうがいいのだということにもならないわけでございます。
  106. 近江巳記夫

    ○近江委員 時間がありませんからあと一問ですが、予算委員会において、私が国際経済の問題で北朝鮮の輸銀資本の問題を申し上げたところ、田中大臣また福田大臣は、積極的に取り組む、こういうようにおっしゃったわけですが、最近外務省がそれをうしろ向きのような態度で検討するという方向に変わりつつあるように聞いておるわけですが、それは予算委員会で私に対して答弁されたその姿勢と変わりはないわけですか。それを一言だけおっしゃっていただきたい。
  107. 福田赳夫

    福田国務大臣 長期的な展望としますと、まさに前向きで取り組んでいきたい、こういうふうに考えておるのです。つまり私どもは、アジアに緊張緩和の傾向が出てきておる、ことに南北朝鮮の間におきまして、あるいは赤十字の会談が行なわれますとかそういう動きさえある、そういうことでありまするから、わが国の外交方針といたしましては、この緊張緩和の方向を定着させたい、こういうような動きをしておりますが、今度は短期的当面の問題としますと、たとえば韓国において国家非常事態宣言をするとか、また逆の現象も出てきておるのです。それを踏んまえて外務次官が会見をされたんじゃないかというふうに思いますが、長期的にはこの前申し上げましたような前向きのかまえであるということには間違いないのです。しかし当面どうするかということになると、これはひとり北鮮のことだけを考えるわけにいかぬ、いろいろ方々に与える影響を考えながらやらなければならぬ、こういうふうに思っております。
  108. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうした問題をさらに意欲的、積極的にひとつ展開していただきたい、これを強く要望しまして、きょうは時間がありませんので、これで終わりたいと思います。
  109. 鴨田宗一

    鴨田委員長 加藤清二君。
  110. 加藤清二

    加藤(清)委員 私が本件について質問しようと用意したのは、今月の初めでございます。最初は八日という話でした。次が十日になりました。次が十五、六、七日となりました。また延び延びになりまして本日になりました。にもかかわらず、いざ質問というおりになったら、田中大臣はどこかへ逃げました。それほど本件に対する質問を逃げなければならぬほど怪しげなところがあるのでしょう。いかに参議院の法律云々といったって、きょうはまだ時間があるはずです。なめるのもほどほどにしておくがいい。一体どれだけ待たせるつもりなんです。  田中君は私に向かって、本件が始まるときに、国会において十分審議をしていただきますからよろしくお願いしますということを言ったはずだ。にもかかわらず、きょうの最初から聞いていると、君子豹変したところの原因はさっぱりわからぬ。(「あれは君子じゃないよ」と呼ぶ者あり)自分で君子と言うんだからあえて君子という敬語を使うのですけれども、全然わからない。しかもわかったことは何かといったら、不当であるということである、不法であるということである、日本が非常に不利であるということである。同時に、これは不可能であるということなんです。その不可能性は、すでに先般の質問において私は詰めてみた。通産大臣はわからない、繊維局長もわからないのだ。そのようなことを税関の官吏がどうして行なえます。しかもその内容たるや何かといったら、日本の港で検査をするのにあたって、アメリカのTQベースでやれというのだ。こんな治外法権的なむちゃな話がどこにありますか。できないじゃないか。こんな検査がほんとうにスムーズに行なえるという証拠があったら出してもらいたい。できないでしょう。これはLTAと同じことなんです。だからこそLTAはワクがあってもワクを充足することができない。だんだんと日本の輸出量は減ってきた。したがって、ワクに対する充足率は半分以下に減っている、これが実態なんです。六十四品目のLTAでもそうなんです。今度六百品目余なんです。それがシッピングに間に合うようにどうやって検査するのですか。そういうむちゃな内容協定にしたことが実行に移せるなんて思っておったら大間違いなんです。やれるというなら脱ぎますから、私の上着をひとつ検査してもらいたい。これは六百四品目の何に該当しますかやってもらいたい。できないでしょう。やれる人があったらどなたでも出てやってください。TQベースの六百四品目の中にこれを仕分けしてみてください。
  111. 佐々木敏

    佐々木(敏)政府委員 TQベースは、おっしゃるように数多い品目で、かつ繊維別に、製品別にそれぞれ非常に複雑な規定になっております。私どもまことにそういった面につきましてしろうとでありまして、ただいまの先生のお上着につきましては判断しかねる次第でございます。
  112. 加藤清二

    加藤(清)委員 外務大臣、お聞き及びのとおりなんです。通産大臣もできない、繊維局長もできないようなことを、税関の官吏にやらせる。税関の官吏というのは繊維の識別ができるから官吏になったのですか。そうじゃないでしょう。いわんやある程度識別はできたとしても、それは日本ベースによるのだ。なぜ本協定においてはTQベースを使わなければならぬのです。そんなばかげた話が世界じゅうどこにあります。輸出の場合に、輸出国のベースで検査をするというなら話はわかります。何がゆえに外国のものさしではからなければならないのか。こんな屈辱的な協定がどこにあるのです。  外務大臣お尋ねする。あなたは、本協定は現存の法律によって解決できるからあえて国会承認を求めないと先ほどおっしゃった。TQベースを日本の港に適用することが、現存の法律のどこにあります。
  113. 佐々木敏

    佐々木(敏)政府委員 先生おっしゃいますように、今回の協定につきましては米国のTQ統計に従うというような覚書規定になっております。これは、六一年以降米国におきましてTQ制度ができまして……。
  114. 加藤清二

    加藤(清)委員 そんな理屈を聞いているのじゃない。そんなこと、ちゃんとわかっているのだから……。
  115. 佐々木敏

    佐々木(敏)政府委員 はい。極東三国も同じように米国のTQ統計に従ってやっております。米国の統計管理上どうしてもそのTQ統計に従ってやるということで、私どもといたしましては、米国のTQ統計日本輸出統計との連絡調整につきまして、できるだけ不明確な面のないように今後の運用におきましても実施をしてまいりたいと、かように考えております。
  116. 加藤清二

    加藤(清)委員 答弁にならない。私は外務大臣お尋ねしておるのです。時間かせぎはやめてもらいたい。現存の法律でもって十分にこれは消化できる問題である、ゆえに本件は国会承認を得る必要がないと先ほど外務大臣はおっしゃったのだから、アメリカのTQベースを、しかもこれは特殊なベースなんだ、あなたがいま言ったように。農業法第二百四条から発生したものなんだ。それをこれに適用するというのだ。これは新事態だ。しかもそのことは、大臣よく聞いてくださいよ、実行不可能なんですよ。シッピングは三カ月で切られておるのです。六百四品目、横割り、季節割りなんです。四半期に割られておるのです。その間にどうやって仕分けができます、たった一着の洋服ができぬようなしろうとが集まって。その費用も日本持ちだ、こういう話なんだ。そんなことができますか。結果はLTAと同じになるじゃございませんか。現存の法律でどうやって処理ができます。ゆえに私は、これは国会承認を求めなければならぬ案件であると申し上げておる。できないことをやれというのですから……。大臣に承る。
  117. 福田赳夫

    福田国務大臣 加藤さんは今度の覚書が不法であり、かつ実行不可能である、こういう認識の上に立っておられる。しかし私は通産当局から、これは合法のものである、かつ実行は可能である、そういう報告を受けております。その報告に基づいて協定を作成するという考えでございます。
  118. 加藤清二

    加藤(清)委員 もしこれを可能にしようとすれば、数量を減らす以外に手はないのです。LTAが明らかに証明しておるのです。それではそうならないとあなたは保証できますか。LTAのようにならないと保証できますか。
  119. 福田赳夫

    福田国務大臣 通産当局から、これは合法であり、かつ実行可能である、そういう報告を受けておるということを申し上げておるのです。
  120. 加藤清二

    加藤(清)委員 それをまるのみにしておるというだけですか。あなたは外交の最高責任者でしょう。これが不可能なことを、あえて国民犠牲をしょわせながらやらせようというのですか。できないということは、だれでも証明しておる。できるという証明はどこにもない。あったら見せてもらいたい。この間私はここに人形を持ってきた。これは福田さんもよう御存じのとおり、佐藤総理大臣もあの人形一つが区別ができない。したがってあれは目方でやられるのです。この間も私はここへ人形を持ってきた。そうしたらそれはできないのです。結果、目方でやられるのですよ。識別ができますか。六百四品目に区別ができますか。できないじゃないですか。
  121. 福田赳夫

    福田国務大臣 政府には、ある問題についてそれぞれのつかさがあります。そのつかさにおいてこれはもう実行可能である、こう言っているのですから、それを信用する、それ以外に道はございませんです。
  122. 加藤清二

    加藤(清)委員 あなたはおかしいじゃないですか。いま繊維局長はあなたの目の前でできませんと言ったのですよ。田中大臣は、この前の席で、できませんと言ったのですよ。できませんと言ったのです。あなたはそれをできると聞いておるというのですが、それはどっちを信用するのです。できませんよ。
  123. 佐々木敏

    佐々木(敏)政府委員 ただいま申し上げましたのは、繊維局長は、私は先生の上着につきましてできないのでありますけれども、日本の税関の職員はそれぞれその専門の方がおるわけでありますから、日本の輸出管理の制度から、それぞれの品目につきましては正確にその分類ができる、かように思っております。
  124. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は繊維局長と一問一答をやろうとは思っていない。できないということは税関もはっきり言っておる。したがって、これをあえて遂行するには業界の専門家の力をかりなければできない。しかし業界は何と言っているかといえば、自主規制ベースなら協力するけれどもTQベースではごめんであると言っている。いずれこの問題は裁判になりますから、そこで白黒がはっきりすると思いますけれども、要は、やれないということをやれといっておるのだ。ここにワクはあっても、かりにそれプラスシフトがあろうと、伸び率五%あろうと、それは空文に終わるという結論が出てくるわけなんです。当然のことである。もしそうなったときに、福田外務大臣、あなたはそのときに総理大臣になってみえるかもしれませんね、そのときに責任を負えますか。あなたもこれで終わる人じゃない。先ほど田中君も終わらぬと言った。私も終わらぬです。私は繊維とともに歩きますから、かりに議員はやめても。やれますか。
  125. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは先ほどから申し上げまするようにもの非常にむずかしい問題だ。これは私も聞いています。あるいは業界の助力、協力を求めなければならぬというようなことも出てくるかもわからぬというような話も聞いております。しかし総合いたしまして、通産当局は、これは合法であり、かつ実行可能である、こう言っておる。これを信頼して外交を行なう、これ以外に道は私としてはありませんです。
  126. 加藤清二

    加藤(清)委員 できぬと目の前で証明した。できないと目の前で証明した。この間田中大臣もできないと言ったのです。それならこれをやってもらおうじゃないですか、やれるというなら。できないでしょう。できないのですよ。できないことをやれといっておる。  さて、あくまで合法だとあなたがおっしゃる。私は不法だと言っている。それじゃお尋ねいたします。LTA第一条に何と書いてございますか。
  127. 井川克一

    ○井川政府委員 第一条、「参加国は、この取極の前文に掲げる諸問題の解決に資するため、綿製品の国際貿易の類型の変化により必要となる調整に資する特別なかつ実際的な国際協力の措置を今後数年間適用することが望ましいと考える。ただし、参加国は、上記の措置が関税及び貿易に関する一般協定(以下ガットという。)に基づくそれらの国の権利及び義務に影響を与えるものではないことを確認する。参加国は、また、これらの措置が綿製品の特定の問題について処理することを目的とするものであるから、他の分野には適用されるべきでないと考えることを確認する。」以上でございます。
  128. 加藤清二

    加藤(清)委員 大臣、LTAの第一条に、LTAのようなこの案件は特殊な案件であって、この綿製品協定以外に適用される筋合いのものではない。つまり第一条に、LTAと同じ案件を他に波及させることを歯どめをしているのです。第六条にも同じことがうたわれておる。それを今度は犯すわけなんです。他の案件には及ぼさないと書いてある。アメリカの農業法第二百四条もそうなんです。それでもあなたは合法だとおっしゃるのですか。
  129. 福田赳夫

    福田国務大臣 合法だと考えております。その事情は条約局長から説明するように指示します。
  130. 加藤清二

    加藤(清)委員 現存の法律そのままである、そうしてこれが実行に移されるということが言えますか。先ほど来、憲法違反の問題も、疑いのあることが出ました。貿管令の違反であるということも出ました。もう一ついえば、日米友好通商航海条約の最恵国待遇、これにもはずれる問題なんです。なぜかなれば、この案件は、先ほども出ましたけれども、欧州の、アメリカへ一番たてさん繊維を輸出している、特に合成繊維の糸を一番多く輸出しているところに適用除外になっている。日本だけが過酷なものなんです。しかもシフトの問題にしても何の問題にしても、極東三国を比較してもなお日本だけが一番過酷なんです。これで最恵国待遇と言えますか。これで互恵平等の法律にのっとった協定だということが言えますか。現に新しい事態じゃございませんか。田中大臣も新事態に直面したからこういうふうにしたんだ、こう言っておる。あなたは現存の法律で、それでもってすべてが解決する、こうおっしゃってみえますけれども、そんなものじゃないでしょう。ゆえに私は、これは当然国会承認事項である、国会承認を得なければならぬ案件であるというふうに申し上げているわけなんです。私の言い分に違いがあったら指摘してください。
  131. 福田赳夫

    福田国務大臣 田中大臣が新事態、新事態、こう言っているのは、九月二十日過ぎになりまして、アメリカ政府が、もし日本日米間で政府間協定ができないならば、非常に望ましいことではないけれども、一方的な割り当て規制を行ないます、そういう決意をいたしました、こういうことなんです。そういうアメリカ政府の考え方が固められたということが新事態である、こういうことでありまして、何か他に新事態があるんだというような認識は持っておりませんです。そこは大いに食い違う。
  132. 加藤清二

    加藤(清)委員 調印が本月中に行なわれるというお答えでございましたね。それはどこで、だれがやるのですか。
  133. 福田赳夫

    福田国務大臣 おそらく牛場駐米大使とそれからアメリカ側の責任者と、こういうことになろうかと思います。
  134. 加藤清二

    加藤(清)委員 その時点において国会承認を求めるの行為はなさいますか、なさいませんか。
  135. 福田赳夫

    福田国務大臣 さような考えは持っておりませんです。
  136. 加藤清二

    加藤(清)委員 じゃ、その理由を承りたい。
  137. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは国会承認案件とならない行政協定である、こういう考えであるからであります。
  138. 加藤清二

    加藤(清)委員 田中大臣は三年、五年ということをさきにここで答えました。あなたはほんとうにこれが三年で終わるとお考えになっていますか。
  139. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは直接交渉に当たりました田中通産大臣見解を尊重するほかはない、こういうふうに思います。私は、田中通産大臣ケネディ特使との間で調印を見ました覚書、これを条文化する、こういうふうにいたしたいと、かように考えております。
  140. 加藤清二

    加藤(清)委員 田中大臣は、五年ならば承認を経なければならない、しかしこれは三年であるから承認を得る必要はないと本席で答えてみえる。ところが、しばらくたって議運に総理と一緒に臨まれたときには、そのことはオミットして答えてみえる。君子豹変もはなはだしいといわなければならないが、これは五年以上になることは、先ほど出ましたところの交換書状、これにファイブイヤーと書いてある、向こうからの要求書には。ファイブ・イヤーというのはスリー・イヤーと解釈するのですか。ファイブ・イヤーと書いてある。しかもそれについてテークデューノート田中大臣は答えている。しかもそれを裏づけするがごとく、韓国へジューリックが行きましたときに、韓国はこう言っておる。日本が三年だというのになぜ韓国は五年に延長されなければならないか、これこそ不平等ではないかと尋ねておる。それに対してジューリックはこう答えている。いや、それは実質は五年です、国会がうるさいとまでは言わなかったけれども、あれこれの問題があって当分三年と言っているだけであって、実質は五年であると言っておる。この二つの証拠を照合してみれば、最低五年、それ以上になるということは明らかな事実である。五年となれば国会承認を得なければならぬからというので、それをわざと三年と二年に区切っただけの話です。そういうテクニックをするものですから、うそつきだと言われなければならぬ。そんなことはもう国民一般周知の事実なんです。これは当然五年なんです。しかもLTAを例にとれば、当初一年であったのがSTAになって二年となり、これが五年になり、またLTAになってから三年、三年、三年と、こう延ばされてきておる。当然そうなる。こういう重大な案件、これを行政措置だけで行なうということはあり得ないことなんです。また二国間の大臣二人が行政的に行なったことが、その上の母法であるところの国際法、ガットを犯すことが可能であるなどということは、これはもう世界常識からはずれた行為なんです。これに対して外務大臣、どうお考えです。
  141. 福田赳夫

    福田国務大臣 加藤さんのおっしゃるのは、これは多国間協定についての書簡です。これは確かに、多国間協定についてのケネディ特使から田中大臣あてでは、「取極の期間は、一九七一年十月一日から五年間とし、その後は、」初めから五年間とするのです。「その後は、加盟国合意があれば、更に広範な国際取極に代りうること。」こういうことです。それを日本は引き受けました。これは多国間調整の問題です。それから一方日米間につきましては、この取りきめの三年目に両国はこの取りきめをさらに延ばすかどうかについて考慮いたしましょう。シャル コンシダーというのですから、何というのですかね、考慮する、こういうことでこっちのほうははっきり三年といっているのです。その三年の期間が過ぎたら、その三年目のときにその後のことは相談をいたしましょう、こういっておるわけであります。
  142. 加藤清二

    加藤(清)委員 それじゃお尋ねするのですが、あなたは三年たったらこれが解消できるというお考えですか。そういうことが言えますか。三年たったころにあなたは総理大臣になっていらっしゃるはずです。いまここで三年先にはこれが解消できるということが言えますか。
  143. 福田赳夫

    福田国務大臣 とにかくこれはこの覚書で三年というのを一応きめたわけです。で、三年目になってからその三年経過後の事態をどうしようかということを相談しましょう、こういうことなんで、そのとおり理解してかかるほかはない。そのときの国際情勢一体どうなっているのか、その辺のことを踏んまえて三年目において考慮すべき問題である、こういうふうに考えます。
  144. 加藤清二

    加藤(清)委員 いま私が尋ねているのは、そのときに打ち切るということがあなたはいま言えますかということを言っているのです。
  145. 福田赳夫

    福田国務大臣 一応三年という期限がついているんですからそのときで一応打ち切りになる。しかし、その三年目の一年間において、三年経過後の措置はどういうふうにしましょうか、これで打ち切りにしましょうか、あるいはまた多少延ばしましょうか、そのときの環境に応じて考慮しましょう、こういうことでございます。
  146. 加藤清二

    加藤(清)委員 あなたは先ほども多国間協定とこうおっしゃったが、多国間といったって極東四国なんです。極東四国、日本を除く極東の三国が全部五年なんです。日本だけが三年ではずされて、それで他の国が承知するはずはないのです。  これを論議すると長くなりまするから、本日は時間が参りましたのでこの程度にしますけれども、いずれこれは裁判で争われる問題ですし、あなたが総理大臣になったときに答弁をしなければならぬ問題でございます。いま三年で打ち切る勇気があるならば、私も国会承認案件期限の問題だけははずしてもやむを得ないと思います。しかし現時点において、これが、あまたあまたの状況を勘案してみると最低五年、それ以上になるということが想定できる今日においては、当然、国会承認案件として求めることを私はここに要求して、本日の質問を終わります。
  147. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次回は、明二十二日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することにし、本日はこれにて散会いたします。     午後一時三十四分散会