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福田国務大臣 私は今日の
国際経済情勢というものを非常に憂慮しておるわけです。つまり、その根源は
一体何にあるのかというと、
アメリカ経済の非常な重大局面、そういうふうにとらえております。
アメリカ経済は世界の中において非常なウエートを持っておる。この
経済がどうなるかということによって、世界の
経済情勢というものは変わっていく。それくらいの大きなウエートを持つ
アメリカ経済、これがいま御指摘のように、
アメリカは昨年におきましては国際収支において百億ドルの赤字を出す、しかも実に八十年来の
貿易赤字を出す、そういう
状態です。ことしになりますと、その勢いがさらに高じて、どのくらいまで国際収支の赤字がなるのだろうか、どうもわれわれが想像し得ないような悪化の
状態です。ですから、私は、
アメリカ経済がこのままでいきますると、
アメリカ経済は非常な困難な立場に立ち至り、それはしたがって世界
経済を混乱させる、こういうことを特にことしになってから憂えておりまして、私の提唱によりまして、
日本としてはいわゆる八項目の
経済政策をとる、同時に
アメリカに対しましてもその姿勢を正すということを要請するというような考え方を進めてきたわけなんですが、しかし私は、今度十カ国蔵相
会議の結論、あれを見まして、とにかく課徴金の撤廃が行なわれるということになった。八月十五日、ニクソンは
経済新政策を出しまして、課徴金新設を含むいろんな新政策を出したのですが、その中で特にわれわれの注目を引いたのは、課徴金の問題その他の保護
貿易的な、国内擁護的な施策の打ち出しです。これが各国に対抗
手段として波及をするというようなことになると、それこそほんとうにこれは世界が総沈みになる、こういうことを心配したんですが、今回課徴金がきれいに撤廃された、これはたいへんよかった、こういうふうに思う。
日本という国は、
経済大国といわれる
アメリカあるいはソビエト、そういうのと違って、資源を外国から輸入しなければならぬ、そういう国です。ですから、どうしても自由
貿易体制というものに対しましては先頭に立って常に擁護する立場に立たなければならぬ、そういうふうに考えておるやさきの決定で、たいへんよかったと思うのですが、この繊維問題、これは私はガットには違反しないという考えであり、ガット上の権利はこれを留保する、こういうことを
協定には明らかに挿入したいという考えでございますが、この
繊維交渉というものは非常に特異なものでありまして、とにかくあれは八月の中旬ごろですか、二十日ちょっと過ぎたころになりますか、
アメリカから、輸入割り当て制度を施行するかもしれぬ、もし九月一ぱいに
日本と
アメリカとの間において
政府間協定が成立しなければ、十月十五日の時点において輸入割り当て制を採用することを考慮する——考慮するというよりはもっと強かったと思いますが、決意をしておる、そういうことです。これこそたいへんなガット違反になるわけです。そんなことをさせてはいかぬ、これを未然に防止するというような新しいそういう事態に臨みまして、われわれは
政府間協定、これに踏み切ることにいたしたわけでございますが、どこまでも
政府間協定におきましては、ガットにおけるところの権利、これは留保をするという明らかなる条項を入れておりますので、これが法的にガットに違反をする、そういうふうには考えておりません。ただ、しかしながら、いま私どもはわが国の国益を踏んまえるときには、もう
通商は自由へ自由へというときにこういう制限的なものができるということは、これは実際問題とすると
一つの私どもの考え方に対する例外だ、こういうふうに思いまするけれども、
通産大臣はその間におきまして非常に苦心をしておる。そしてこの
協定はできるけれども、この
協定は制限的なものにはしない、これをさらに踏んまえまして
通商を拡大する方向に持っていきたいという話し合いまでしておるような
状態でありますので、非常な特異なものであるということ、それから法的にはわれわれは権利は留保しているということ、それらの点をよく御了解願いたい、かように存じます。