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1971-11-10 第67回国会 衆議院 商工委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十一月十日(水曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 鴨田 宗一君   理事 浦野 幸男君 理事 小宮山重四郎君    理事 進藤 一馬君 理事 橋口  隆君    理事 武藤 嘉文君 理事 中村 重光君    理事 岡本 富夫君       稲村 利幸君    内田 常雄君       小川 平二君    神田  博君       北澤 直吉君    左藤  恵君       始関 伊平君    塩崎  潤君       八田 貞義君    前田 正男君       増岡 博之君    松永  光君       山田 久就君    加藤 清二君       松平 忠久君    横山 利秋君       浅井 美幸君    松尾 信人君       川端 文夫君    米原  昶君  出席国務大臣         通商産業大臣  田中 角榮君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      竹下  登君  出席政府委員         環境庁企画調整         局長      船後 正道君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省経済局長 平原  毅君         通商産業政務次         官      稻村佐近四郎君         通商産業省通商         局長      山下 英明君         通商産業省貿易         振興局長    外山  弘君         通商産業省重工         業局長     矢島 嗣郎君         通商産業省繊維         雑貨局長    佐々木 敏君         中小企業庁長官 高橋 淑郎君  委員外出席者         大蔵省銀行局特         別金融課長   北田 榮作君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際経済上の調整措置実施に伴う中小企業に  対する臨時措置に関する法律案内閣提出第九号)      ————◇—————
  2. 鴨田宗一

    鴨田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出国際経済上の調整措置実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律案を議題にいたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松尾信人君。
  3. 松尾信人

    松尾(信)委員 企業庁長官にまず最初に承りますけれども繊維自主規制、これが五月二十一日に閣議決定になりまして、総額七百五十一億円、このような予算的な措置を組んだわけでありますけれども、その中で織機買い上げ百十一億円、この実績はどのようになっておるか。いま買い上げ実態、その実態の内容をこのように教えてもらいたいのでありますけれども事業廃止に伴う分としての織機買い上げ、それから事業縮小に伴う分としての織機買い上げ、これが企業数と、わかれば台数というところまでまず伺いたいと思います。
  4. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 詳細は後刻お答えいたしますが、概略は、関係都道府県を通じて提出のありました各産地の工業組合が作成しました織機買い上げ廃棄計画、これを十月上旬までにその大部分の承認を終わりまして、繊維工業構造改善事業協会におきまして、買い上げ実施のため着々織機破砕実施中でございまして、十月末までに承認済み破砕予定数五万台のうち四千八百台の織機破砕を終えまして、逐次買い上げ代金を支払っているところでございます。内訳につきましては後ほどお答えさせていただきます。
  5. 松尾信人

    松尾(信)委員 非常に大ざっぱなお話だけであったのでありますけれども、私のほうの調査では、この綿、スフ織物と絹、人繊織物関係だけでも買い上げ計画が、これでは両方で約五万台ですね。その中ですでに事業廃止企業というのが千二百企業くらいあります。その買い上げ織機台数が一万六千余台ですね。絹、人繊織物業のほうとしても千八百五十二の企業事業縮小をいたしております。それから三万七百三十四台、これは中途でありますけれども、その後新しい実績というものはあなたのほうでよくおわかりになっておるわけであります。このようなことを聞いておりますのは、結局事業廃止の分、また事業規模縮小の分と、このように分けまして聞いておるわけでありますから、最近の新しい数字をこれはきちっと出してください。  そして次には、補正予算の前に、同じく七百五十一億の中で百十一億を織機買い上げに使いまして、六百億円の融資ワクというものをきめておりますけれども、この六百億円という融資はどのようにいま使われておるか、融資ワク実績ですが、先ほど聞いたのは織機買い上げの分ですね。いま聞いておるのは六百億の融資ワク実績、これはわかっておりますか。
  6. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 六百億円の融資につきましては、申し込みを八月末で締め切りまして、三機関の審査を経まして六百億円の大半が融資済みでありまして、十一月中には九割余には融資を終わる見込みでございます。(松尾(信)委員「間違いありませんね」と呼ぶ」)十一月中といいますか、十一月末には九割程度融資を終わる見込みでございます。
  7. 松尾信人

    松尾(信)委員 ただいまほとんど使っておるというようなお話でありますけれども、これもあとでよく数字を教えてください。  それで、このようにいたしまして、今度の補正予算の中でも織機買い上げ分が六十三億幾らありますね。これはいまから計画が立てられて実行に移されると思うのでありますけれども、いずれにいたしましても、自主規制で百十一億の金が織機買い上げに使われておる、その中には事業廃止に伴う分と事業縮小に伴う分との買い上げがなされておる、これが実態ですね。でありますから、この事業廃止に伴う織機買い上げにつきまして、どのような対策政府はとっていくのか。単に買い上げればいいという問題じゃなくて、事業廃止ということはそこに仕事をやめていくわけでありますから、すぐこれは転廃業につながっていくわけであります。何かその織機関係買い上げ分転廃業に対する考え方がありますか。
  8. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 申しわけございませんが、担当局長がいま参りますので、転廃後の施策あるいは方向づけということにつきましては担当局長からお答えをさせていただきたいと思います。お許しをいただきたいと思います。
  9. 松尾信人

    松尾(信)委員 私の質問要旨はもう一昨日からちゃんと渡してあります。質問の順序がけさほど狂いましたからあるいはお呼びがおそかったかもしれませんけれども、準備しておっていただきたい、このように思いますね。でありますから、その分はあと回しにいたしましよう。  では、いろいろの金融措置の問題でありますけれども、今度の国際経済上の調整措置実施に伴う中小企業臨時措置法案、この中でもいろいろ金融措置が講じられておりますけれども、実際上業者としてはそのような金を満足に借りることができる状態にあるかどうかという点についてまず聞きたい。と申しますのは、もうこれ以上の、業者政府幾ら金を出すと申しましても借りる力がないと申しますか担保力がないし、保証人等を連れてくるというわけにもいかないというのが非常に大きな実態であります。予算的な措置金融また税制というのが表面へ打ち出されておりますけれども、なかなか実際はそれでいかぬのじゃないか、こういう心配があるからこの点を聞いておるわけでありますけれども、あなたの考え方はどうですか。
  10. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 まず最初に、このたび緊急の融資措置をとりまして、この緊急融資措置が実効をおさめられますように、このたびの御審議をいただいております法律案の中で、中小企業信用保険法特例措置を規定いたし費して、この保証、それにつながる保険、これのバックアップによって金融が円滑に行なわれるようにということでお願いをいたしておるわけでございますが、しかしいま御指摘のように、確かに中小企業方々の中には担保ももはやない、あるいは保証人も立てられないという方々がおられます。それで、いま申し上げました保険の中で特別小口保険というのがございまして、八十万円までは無担保、無保証お金が借りられます。それから無担保保険につきましては三百万円まで無担保で借りられます。これら二つの保険制度を活用いたしまして、金融ルールに乗るぎりぎりのところで何とか困っておられる方にお金を回すようにしたいということで、政府系の三機関のみならず市中の金融機関に対しても、こういう事態であるからということで特段融資配慮方を要請しておるということでございます。確かに御指摘のような困難な点があるということは承知いたしておりますけれども、やはりぎりぎり金融ルール限度というものがございますので、その限度一ぱいのところまでと考えております。
  11. 松尾信人

    松尾(信)委員 いまお話のありましたこの無担保、無保証の問題でありますけれども、これも現実には保証協会を通じて借りるわけでありますけれども、これは実績はたいしたことありません。これはこちらでちゃんと調べてあります。ですから、さらにその制度を活用すると申しましてもその限度は知れたものである。貸さないですよ、無担保、無保証というものでは。現実には出ません。ですから出たものにつきましても実績は非常に少のうございます。これが一つですね。  それからほんとう担保をとって貸すということはもう行き詰まってしまっておりますから、そこに何か政府が、余分に担保力のない、せっぱ詰まった中小企業をどうしてやろうかという配慮がなくては、この金融措置では相当金が余る、使いこなすことはできない、このような感じが私は非常に強うございます。そうしますと、救済すべき方面には金は出ないで、そうでないほうに金が案外出てしまうような感じもするわけですよ。何か特段に、もう担保力のない、そういう人々に対してどうするかという考え方をはっきりしておかないといけないと思うんですけれども、何かありますか。
  12. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 無担保保険あるいは特別小口保険について利用が非常に少ないのじゃないかという御指摘でございますが、実は四十五年の実績を見ますと、無担保保険の活用によりまして五千三百億円余の保証がなされている。それから件数でいきますと五十万件余でございます。それから特別小口実績を見ますと、やはり四十五年度で一万八千件ほどございます。  ただ、やはり御指摘のように、だんだん景気の回復がおくれて、しかもこのたびのドルショックというようないろいろな要因が重なってまいりまして、情勢が非常にきびしいわけでございますから、過去の実績がこうであったからより借りやすくなるというようなことはなかなかないと思われますけれども、しかし、このような特別な保険制度というものを活用いたしまして、かつ各都道府県保証協会に対しましてはこのたび補助金補正予算の中に組んでございますので、それをまたもとにして保証協会ももう一ふんばりして、保証について積極的に取り組んでいただくというふうなことで、何とかいまおっしゃいましたようなほんとうに困っておられる方々のところへお金が流れていくように協力を要請しておる次第でございまして、いまの段階でこの保険特例措置を越えて何か特別な措置実施するということは、実際上なかなかむずかしいことだろうと考えます。
  13. 松尾信人

    松尾(信)委員 信用補完のほうはあるいはいまお答えのとおりで、これは保証協会を通じてこのワクはこなせると思います。ただし政府機関の千五百億円、この分については、これは相当使い残りが出るんじゃないか。ここにもやはり担保力がないというような事情は共通な面でありまして、この政府機関に対する今度の千五百億円の金融措置について自信がありますか。
  14. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 政府系機関からの融資に際しまして、担保力あるいは信用力に非常に問題がある、あるいは欠けておる、こういう中小企業方々に対して三機関お金を貸します場合には、いまの特別小口保険あるいは無担保保険を活用して信用力補完をはかって融資をするということも実際問題として考え実施するということでございますから、やはりこの信用補完制度を活用することによって、三機関からの融資中小企業方々、なかんずく小規模零細企業の方にも融資が行なわれるようにということで、三機関に対しても指示をいたしておる次第でございます。
  15. 松尾信人

    松尾(信)委員 いままでのやり方というものを相互補完しながらこのたびの金融措置をつけていこう、こういうお考えのようでありますけれども、そういう段階はもうすでに過ぎて、何かこの際、担保力のない中小企業に対しましては、そこに思い切った措置がなければ実際としては借りることができないのじゃないか、こういうことを言っておるわけです。あなたのお答えは、いままでのいろいろの金融上のものを相互補完的に、関連的に使っていってこのワクを消化していこう、こういうお考えでありますけれども、そういうことではとうていいまの実情からいうて満足に金が出ないのが実態じゃないか、こういうことを私は言っておるわけです。ですから、そこを救ってやるためには何か政府の思い切った施策が必要じゃないか、こういうことを言っておるわけでありますけれども、全然思い切った考え方をして、いままでのそういう金融制度じゃなくて、別途にこの中小企業担保力をどうしてやろうかという考え方はあるのかないのかですね。当然これは必要だと思いますけれども、今後必要と思うならば、何らかの措置を講じていきたいならいきたい、というふうに私は聞いておるわけです。
  16. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 先生指摘の点はよくわかりますが、先ほど来申し上げておりますように、金融措置を講ずるということでございますならば、やはり金融ルールにのっとっていかざるを得ませんので、どうしてもぎりぎりの限界があるということで、その中にありまして、たとえば国民金融公庫の場合を考えてみますと、小規模企業に対しましては三百万円まで無担保融資ができるということになっておりまして、貸し付け実績を見てみましても、金融公庫から貸し出しております全貸し付け額の約九五%はこの範疇に属するということでございますので、やはり相当程度中小企業方々にとって有効な措置であると思います。もし金融措置をとらないで何か考えるかということになりますれば、これは補助金を交付するとかというようなことにならざるを得ないと思いますが、補助金を交付するということになりますと、どこで線を引き、またどういう方向を見定めてやるかということで、きわめて困難な問題があると思われますので、この緊急の事態を克服していく際におきましても、やはり金融措置またそれを補完する保証信用保険、この柱でもって対処していくということがやはり実際問題としては限界ではなかろうかと思いますが、中小企業方々が非常に困っておられる、また金融を受けたくてもなかなか受けられないという実情が種々あるということについては、御指摘の点もよく私理解できるところでございます。
  17. 松尾信人

    松尾(信)委員 長官としてのお答えはまあそういうところがぎりぎりじゃないかと思いますが、一つの政策といたしまして、今後大きな課題としてこれは取り組まれまして、いま補助金というようなお話が出ましたけれども、そういう形でなくても、どうとかして、いままでの制度じゃない信用補完ですね、いままでの制度にない、中小企業担保力のないものに対する信用補完という制度考えるように、今後ひとつ積極的に取り組んでいただきたい。これは私の希望であります。  それから、今回は従来の貸し付けと違いまして、千五百億円と申しまするのはこのドルショックによる輸出関連中小企業でありまするので、でありますからなお限定されてまいります。そこもぎりぎりの状態にきているということですね。ですから、特に今回の千五百億円というものの使い方はそういう配慮がなされなければ、現実には非常に出がたいものである、こういう認識を強く持たれまして今後のいろいろの実際の問題を処理しませんと、この法案が通った、予算措置はできた、これで安心だというようなものではないということを強調しておきます。その点はよくおわかりですか。——じゃ、その点はよく考えていただいて、そして新たな、中小企業に対する、担保力のないものに対する信用補完をどうしていくかという、新しい角度からこれは研究していただくということにきょうきめていただきたい。どうでしょう。
  18. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 担保力のもう全然ない方に対する、それをカバーする信用補完制度の樹立ということは、いろいろな保険制度というものを考えてみました場合にきわめて困難な問題だろうと思いますが、御指摘のように、よく検討するようにということでございますので検討をさせていただきますが、私も、何とかできそうだということと非常にむずかしいこととの間にはやはり区別してお答えをするのが正直であると思いますので、御指摘の点はよくわかりますが、そういう意味合いで検討さしていただきます。
  19. 松尾信人

    松尾(信)委員 初めから担保力がないじゃないのですよ。もう出すだけ出して金を借りて、もう限界にきている、そしてドルショックで閉口している、こういうものでありますから、初めから何にもなくて、さあ貸せ、こういう問題じゃないのです。いままで政府も貸してきたんです。今度もまたそれを救っていこうとしているわけです。そういうときに、今度はないからというて貸さないならば、千五百億円はこれはまあ絵にかいたもちみたいに、ほんとうはのどから手が出るほどほしいのだけれども借りられないのが実態だということを私は言うているわけです。もう全部出したわけです、担保を。保証人も立てたわけです。そしていま、借りた金を一生懸命払っているわけですよ。いいですか。そういうことです。  では担当局長、お見えになったようでありますから伺いますけれども、まあ事例としましては、まず自主規制の百十一億の織機買い上げ、これは話が出たわけでありますけれども、その買い上げの中には、もう廃業するんだという前提でこの織機買い上げに応じておりまするし、転業するんだというので買い上げられたものもあるわけでありますけれども、そういうものを単に買えばいいんだ、買い上げてやればいいんだというだけではいけないと思うのですね。では、その転廃業するものに対してどのような配慮を持った買い上げをしているのか、こういうことを聞いているわけです。
  20. 佐々木敏

    佐々木(敏)政府委員 ただいまの先生の御質問は、繊維行政全般に通ずる非常にむずかしい問題でございます。申し上げるまでもなく、織機買い上げ資金のうちには転廃業者事業縮小業者と区分けいたしまして、転廃業者分につきましては一台二十五万円、事業縮小の場合には二十二万円という差等を設けております。といいますことは、一応織機買い上げ代金転廃資金の一部を含んでおる、かような考えでおるわけでありますが、問題は、そのような買い上げ資金だけの問題ではなくて、今後転廃されました中小業者がどのような事業転換をしていくかということでございます。私ども中小企業全般の問題でありますし、また日本の産業構造といいますか、そういったことでございますけれども、さらに最近の政府間協定の問題もございまして、長期的に——大臣は三年もしくは五年という御判断をされておりますが、長期的に、このような転廃業者転廃方向につきましても現在慎重に配慮をいたしておる次第であります。
  21. 松尾信人

    松尾(信)委員 まあ慎重に対処するというわけでございますけれども現実には、繊維の例だけをとりましても、転廃業するということで買い上げているわけでございますから。それはすでに五月二十一日の閣議決定に基づき、その後の予算措置で買っているわけですね。買った分につきましてはもう商売できませんから、おのおのの事業者転廃するわけであります。いま織機買い上げ価格お話がありましたけれども、結局自分の持っている織機を、もともとは多額の金を出して購入して、そしてそれを年賦年賦で払っていっている。それを今度は二十万円だとか幾らというように、そういう金で安く買うわけでありますから、当然それは不良、古い機械のほうから買っていかれるから単価は安いと思いますけれども、もともとは多額の金を出して新しい機械を買ったものが、今回は転廃業でそれを売る。買い上げは二十万だとか幾らということであれば、そこに大きな差がありまして、業者はこたえるわけですよ。ですから、それが一つ転廃業資金になるというよりも、もともとの繊維織機の買い入れに対する払いというものを延ばしていく。据え置き期間が来ておりますけれども、その据え置き期間をまた認めていくとかということは当然でありますけれども、それが転廃業資金になるということは考えられません。でありますから、今回新たにこの事業団なりまたは中小企業金融公庫にそのような資金というものを与えて転廃業資金にしよう、何か今度新しい事業をやるならばそこからめんどうを見ていこう、このような考え方でしょう。どうですか。
  22. 佐々木敏

    佐々木(敏)政府委員 先生おっしゃるとおりでございまして、今後の前向きの転廃した方々転業先につきましてはできるだけの配慮を払うべきでございますが、そのように私どもも極力努力をいたす所存でありますが、ただいまのお話のうちの織機買い上げ資金についてもう一度お答えいたしますと、転廃業者に対しましては一台当たり二十五万円になっておりますが、その根拠といいますか、算出根拠といたしましては、残存の簿価は平均ほぼ十万円というような数字になっております。そのほか従業員に対する解雇に見合うお金あるいは負債の整理に見合うお金、さらには登録権利といいますか、そういったプレミアム代金に見合うお金、合計いたしまして、簿価はほぼ十万円でありまして、その倍以上のものを、そういったもろもろのお金算定根拠にいたしましてつけ加えておるわけであります。これが織機買い上げ代金として転廃業資金の一部になるであろう、私どもかように考えておる次第であります。
  23. 松尾信人

    松尾(信)委員 その点は、どうせ借金が残っておれば払っていかぬとできませんし、全部そういうものが転廃業資金になるというようにはもちろん思いません。しかし、それは押し問答になりますのでやめておきますけれども、要するに、すでに織機の分としましてもたくさんの転廃業予定業者が出ておりまするし、そういう人々をどういうふうに転廃業させていくのか。いまは個人の創意くふうでありますから、各企業が一生懸命がんばってやっております。でありますから、燕の金属洋食器にいたしましてもこの転廃業一つ委員会みたいなものをつくりまして、そうして一生懸命になって新しいお得意さんをさがしております。そうしていろいろの事業転換をこういうふうにやっていこう、ああいうふうにやっていこうとやっておりますけれども、そういうものにつきましては、かりに燕なら燕という例をとりましても、地域の非常に零細な企業方たちでありますからその能力には限界があると思うのですよ。繊維のほうも、やはり個々の企業にまかせておって、それが都道府県と話し合いをつけて、そうして銀行に金を貸してくださいと来る段階までにはなかなか至らないのが実情ではないか。限界があります。金融その他で非常に苦しいから、この火の粉を払うというので精一ぱいでありまして、このドルショック等による転廃業対策も非常にけっこうでありますけれども、それは立てただけではいかぬのであって、やはり方向づけというものは、これはあなたのほうで繊維についてはしっかりやるべきであるし、また中小企業全般にとりましては、企業庁なりまたは通産省全般が全体として取り上げなければ実際はうんとおくれていく。その間に深刻な問題が出てくる。そうして結局倒産だとか行くえ不明とかいうようないろいろ問題が出てきます。そういう考え方はどうですか。
  24. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 繊維あるいは金属洋食器業のみならず、一般の中小企業の転業対策についての御質問と思いますが、このたびの法案の中で規定をいたしております事業転換に伴う諸対策というものを実行していきます上に、私どもとしてできるだけの助成策を講じていく必要があると思います。具体的には、事業転換方向等についての指導、助言につきましては、各都道府県、それから六大都市にございます中小企業総合指導所を積極的に活用するということが必要であろうと思います。また中小企業振興事業団におきましても、事業の転換指導をする上での基礎的な資料整備について取りかかっておりますし、また事業の転換、についての啓蒙、普及、情報提供等を行なうことといたしております。また大事な点は技術面の問題でございまして、この点については公設の試験研究機関の行なっております技術相談あるいは巡回技術指導、技術研修その他を積極的に活用することによりまして、事業転換を円滑に行なえるようにする必要があろうと考えます。いずれにしましても、新しい分野で事業活動を開始して、それが円滑に実施されるというためには、政府としてきめのこまかい、またいま申し上げましたようないろいろな手だてを講じての指導が大事であると思いまして、この点十分配慮してまいりたいと存じます。
  25. 松尾信人

    松尾(信)委員 事業転換が今後は中小企業に課せられた大きな問題だろうと思います。従来どおりのそのような都道府県にある機関だとか工業研究所だとか、いろいろそういうものでやっておってもこのような問題を起こしておるわけでありますから、これは政府がやはり直接、事業転換という政策についてはもう通産省の中でそういうものを取り上げてやっていくときが来た。そうしないと、皆さまの今回の措置にいたしましても、金は出す、そういうめんどうは見る、指導、助言はある程度する、それはだれがやっていくかといえば、このような法律が通りますると、現実には事業団なり中小企業金融公庫にまかせるわけであります。また、それぞれのかねがねの機関に全部それが下請になっていくわけでありますが、そういうことではほんとう中小企業事業転換はできない、本腰を政府が入れないとこれはだめだ、このように強く感じます。  でありますから、かりに今回のこの法案によって転廃業資金が出るということになりましても、事業団にしましてもいよいよ本格的に動き出すのは来年の四月ではありませんか。いまからいろいろ指導員、そういうものをまず内部的にも訓練が要りましょうし、それからそれぞれ都道府県との関連をとっていかないといけませんし、中小企業のそういう人々の中に深く、転廃業事業転換という問題で新たに取り組んでいくわけでありますから、ですから事業団にしましてもいまの体制はありません。でありますから、体制を整え、いろいろなそこで内部的な整備を終わってそろそろ出かけていくわけでありますから、これは応急措置でありますけれども、とっても応急措置にならぬ。その間、きめたわ、金は出すわときめますけれどもズレがあります。  維繊でもそうです。まあ六百億のそのような資金でもズレがございまして、その間、中小企業というのはつぶれるものはつぶれていく。自然淘汰のような形になっていっているわけです。これが今度はいろいろドルショック等でそういう問題が現実に起こってきています。転廃業資金を出すとおっしゃいますけれども、出すは出しても現実にはおくれてくるわけです。その半年なり幾らかのズレというもので、全部このドルショックをかぶってつぶれていくのは中小企業じゃないか。そこには必ず転廃業というものがつながってくるのでありますから、そういう期間というものを長く置かないで、それをいいほうにすぐ乗りかえる、乗り継ぐというような恒久的な考え方がないと、ばらばらにまかせておると、基本的にはこういうものでやっておいて現実にはばらばらにまかしておるから、実際的にマッチしません。ずれてます。ですから、今回の金融制度につきましてもそのとおりずれる。その間、中小企業はつぶれるのはつぶれていく。それではほんとう中小企業対策ではないと思うわけですよ。強く感じます。特に転廃業につきましては、どういう事業にいまからいったらいいのか。繊維関係また燕の金属洋食器関係についても、もうそろそろはっきりした方向づけくらいは持っておかなくちゃいかぬのじゃないか。それを自分のほうで責任を持ってやるようにいまなっておりませんから、転廃業についてももうだれかがやるだろうというようなことでは相ならぬ。やらなくちゃいけません、政府で。そういうものを強く促進していくかどうか。これはもう当然やらなくちゃできないと思うのでありますけれども事業団でもそうです。中小企業金融公庫でも、現実転廃業に対する新しい指導ができて、そういう事業はよかったな、それなら今度思い切ってうんと金を貸すぞという段階まではほど遠いんじゃないかと思います。  臨時措置法、これはけっこうでありますけれども、実際の効果はそういうことで全部半減以下に、うんと限定された効果しか発揮できない。私、念のためにこの洋食器関係で聞いたのでありますけれども、一番問題にしておるのはやはり担保力がないということです。事業転換につきましても彼らは一生懸命になっていま考えております。死にもの狂いですよ。そうして個々の企業に当たりまして自分の転換先をさがしておりますけれども、やはりそれについて、いま政府がそういうものを取り上げた基本的な姿勢、そういう政策というものを真剣に取り上げていかないと現実には合いませんです。この臨時措置法を非常に待っております。早くこれが国会で通過して、早くこれが適用されるということを待っておりますよ。待っておりますけれども、このように一生懸命に勉強して、それで転換先をさがしてきたところはうまくいきましょうけれども、そうでない企業が一ぱいあるわけですからね。それは全部その間非常に苦しい思いをするし、つぶれていくものはつぶれていく、これはほんとう中小企業対策ではない。これを私はいま言っておるわけです。どうですか、そういう点についてもう少し真剣に取り上げて、そうして事業転換というものを中小企業についてはきちっとしていくような考え方ほんとうに持つか持たぬかですよ。どうです。
  26. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 各企業にとりまして、転業するということはたいへんなことでございます。それで、従来からも中小企業の分野でいろいろと転業しておるケースがございます。最近に至りまして業界内部から、もうこのままではいけない、新しい分野を求めて転業すべきであるという声が出てまいりました。私たちもやはり日本の産業構造というものが変わりつつあるという認識を持ちまして、従来の重化学工業型からさらに知識集約型の産業へと、こういう基本路線に沿いながらいろいろと産業構造のあり方について検討いたしておるところでございます。  それで特に問題になりますのは、産地を形成しておりますような業種、これにつきましてやはり産地ごとにあるいは業種ごとに特徴がございます。それから各産地産地で、具体的にこういうような構想で新しい分野を求めていこうという声が高まってきております。そういうような自主的な転業意欲というものを私ども積極的に、先ほど来申し上げておりますような手段を用いまして促進ができるようにする、そのためにはいろいろのまた手段が要る、それについては積極的に検討し、かつ実行ができるように側面から協力をする必要があるということで、いませっかく検討いたしておるところでございまして、ただ、いま申されましたように、すぐに転業ができるかといっても、これはやはり転業先についての十分な見通しも持たなければなりませんので、その点時間的なやはり経過を必要とするということでございますから、その間倒産が起こったりあるいはたくさんの失業者が出るというようなことのないようにということで、このつなぎの措置として、この際とりあえず緊急な金融対策を中心にして措置をとるということでございまして、事業転換はそのつなぎの期間を経て、あるべき方向に向かって行なうということであろうと思います。
  27. 松尾信人

    松尾(信)委員 とりあえずの措置としてこれがあることは十分わかっております。それで、私が言っておるのはおわかりになったと思いますから、くどくなるので言いません。ひとつ中小企業をこのような方向に持っていく方向づけぐらいはきちっとしてもらいたい。何か考えていますか。いま中小企業としてもこういう方向に持っていったらいいんじゃないかというような、一つの新しい事業転換に対する方向づけはこういうものだという何かありますか。
  28. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 先ほど申し上げましたように、やはり知識集約型産業、この中にいろいろな産業が考えられます。そういう産業に業種転換をしていくということが望ましいわけでありまして、この点について、方向はもうそういう方向であろうと思いますが、より具体的には、中小企業政策審議会の場で、新しい時代に対応して中小企業が今後どういう方向に向かって進むべきであるかということについて早急に検討をお願いするという手はずを整えております。
  29. 松尾信人

    松尾(信)委員 これは早急にそういう方向づけをしてもらいたい。それで、いまいろいろ学者等が言われておりまするのは、住宅関係企業、インテリアですね、そういう関係、それから医療関係、医者の関係ですね、体力増強、いろいろそういう中小企業を利用したものができてまいります。それから教育とレジャー関係等々が、結局いまの中小企業の技術を生かしながら高級化し、そして彼らの行く手を開いていく分野であろうというようなことが申されております。早くこういうものをきめて、そしてそういう委員会、審議会等で早く結論を出されまして方向づけをはっきりしていく。そういうものに対する今度は資金の裏づけをしていく。臨時措置法じゃなくて、この事業転換というものは今後大きな課題でございまするので、これをひとつ通産行政の大きな柱として、方向づけとそれを促進していく資金の裏づけ等を早急にしてもらいたい。これはそのようにはっきりやってもらいたいと思うのです。  時間がだんだんなくなりましたので、年末金融のことも一言申しておきますけれども、これは先ほど繊維の六百億、あれなんかもうほとんど使ったとおっしゃいましたけれども、年末金融のねらいの中には、今回のいろいろ先取りした分が出ておるのだから、大蔵省としては五百億ぐらいは値切ってますよ。合計幾らというような年末金融が出ておりますけれども、こういうことではほんとうドルショック事業転換、おまけに年末を控えた中小企業では、とうていいまの考えられたような金額では足らないというのが一点ですね。これはしっかりがんばってください。  それから大蔵省のほうからお見えになったようでありますから一言聞きますけれども、今度は市中銀行が中小企業のほうへ思い切って金を出そうというような計画が出ておりますが、これは非常にけっこうなことと思いますけれども、この金融緩和の現在の実態から、中小企業専門の金融機関の分野へこの分が食い込んでまいります。全体が足らないということはわかりますので、大いにふやしていきたいのでありますけれども、そういう中からまず中小企業金融の専門機関を活用して、そして金利等も下げながらそういうものを活用していって、その次が都市銀行等からの中小企業融資にならなければいけない、こう思います。  それから、この際大蔵省として考えていくべきは、そういう方向づけ金融機関別に対してきちっとすることが一つと、金を貸しますときに、世間で歩積み両建てといわれておりますけれども、そういう実態を明らかにして、この際そういうものを解消する、そして中小企業の金繰りを少しでも緩和していくという方向が必要であると思いますけれども、どうですか。大蔵省のほうへこれをお尋ねいたします。
  30. 北田榮作

    ○北田説明員 ただいまお話がございましたように、現在のドルショック関係に伴いますいろいろな中小企業金融、また今後年末に向かいましての資金需要に対します中小企業金融につきましては、民間金融機関におきましても十分これに対処して適切な運営をはかるように、銀行局のほうといたしましても指導いたしているところでございます。ドルショック関係につきましても銀行局長から地方財務局長に通達を出しまして、適切な指導をするように通達しておるところでございますし、これに応じて全国銀行協会あるいは相互銀行協会等におきましてもそれぞれの管下の金融機関に十分指導いたしまして、適切な措置をとるようにしているところでございます。  また年末金融につきましても、例年、各市中の金融機関から中小企業金融については特段配慮をするように指導しているところでございまして、今年におきましても、各金融機関におきましては十分その趣旨に沿って措置をするものとわれわれも期待しているところでございます。ただいまおっしゃいましたような、中小金融の専門金融機関がまず中小金融についてやるべきであるというお話はまことにそのとおりであると思います。まずできるだけ中小企業の専門金融機関中小企業金融を充実いたしまして、それで足らないところを大企業その他の金融機関が補うというのが本来のたてまえであろうと思います。また政府関係金融機関といたしましても、そういった民間金融で足らないところを補完するというようなことでやっていきたいと考えておる次第でございます。  また、ただいま歩積み両建てのお話がございましたが、これは従前からそういうことのないように自粛をするよう常に指導しておるところでございまして、特に拘束性預金の実態等の調査をいたしまして、特にそういう事実のあるものにつきましては、たとえば金融検査の際等を利用いたしまして自粛をするように指導いたして、徹底を期しておる次第でございます。今後ともまたなおそういうような方向で努力をいたしたい、このように考える次第でございます。
  31. 松尾信人

    松尾(信)委員 いまの問題、いまのお答えのとおりしっかりやってください。  最後に年末の金融の問題でございますけれども、いまの計画ですね、どのくらいになっているのか、年末金融ワク、これを聞いて終わりたいと思います。
  32. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 年末金融の額についてはまだ決定を見ておりません。例年年末に際しまして、政府系機関の貸し出し規模の追加、それと同時に、民間金融機関の年末金融貸し出し増加を同時にきめるわけでございます。いませっかく大蔵省と話を詰めておりますが、まだ幾らという数字まで詰まっておりません。一刻も早く詰めたいと思って連日やっておるところでございます。
  33. 松尾信人

    松尾(信)委員 新聞等には大体このくらいのワクだというようなことが出ておりますけれども、それはいま未確定であるというお話でありますが、早くきめて、そして前年とことしはどうなるのか、前年並みでは相ならない、このように感ずるから、強くこれは今後ともに大蔵省を納得させるように推進をしていただきたい。早くきめてくださいよ。  最後に政務次官に一言でありますけれども、先ほど申し上げましたとおりに、この事業転換という問題は大きな中小企業の今後の課題でございます。通産行政としましてもやはりこれを取り上げて方向づけをし、そうして中小企業を指導していくべきときが迫っておる、こう思いますが、ひとつそういう点におけるお考えというものを最後に聞きたいと思います。
  34. 稻村佐近四郎

    ○稻村(佐)政府委員 松尾先生からたいへん広範な、しかもまたたいへん的確な御質問をいろいろいただいたわけですが、金融の問題でたいへん残りが出るんじゃないか、こういう御心配ですが、すでに景気浮揚対策としての二百六十億、そういった問題も九月までにほとんど完了しておる。あとの千五百億につきましては、中小企業金融融資制度というものを発足させまして、各都道府県に周知徹底をさせて、これは事務的にどんどん進めておる。  また、いまの年末の問題ですが、これはお説のとおり、こういうときでもある関係から、やはり早く額を決定して安心をさせる必要があるんじゃないか、こういうふうに思っておりますので、まずこの問題については、できるだけ早い機会に、お説のとおりひとつ決定をしていきたいと考えております。  それから転廃の問題ですが、これはなかなか、私もちょうど、まあ自分のところを言っちゃたいへん恐縮ですが、石川県におるわけですが、いまの機屋に何をやれといっても、すでにたんぼを売り払ってしまっておる、また百姓に戻るといっても、自分のところだけ申し上げて、一番身近なことですから申し上げてみるわけですが、なかなかこれはむずかしい。しかしながらむずかしいというわけにはいきませんと思いますので、来年度からこういう産地ごとに政府が力を入れて、商品あるいは技術センター等々をつくって、輸出面の開発、技術面の開発をやはりしていかなければならぬときではないか、こういう考え方を持っておるわけです。  それから買い上げの問題についての資金がおくれておるというような御意見があったのですが、これは五万台を買い上げをする、その中でもうすでに一万数千台が破砕をされて、その代金が支払われておる。こういう関係から、お説のとおりもう積極的に取り組んで、中小企業、特に繊維がいろいろな問題がございましたが、こういう問題を特に重要視しまして、積極的に取り組んでおりますし、いろいろな問題の御指摘ございましたが、今後もその線に沿って全力を注いでまいることをお答えをしておきたいと思います。
  35. 鴨田宗一

    鴨田委員長 中村重光君。
  36. 中村重光

    ○中村(重)委員 それでは長官に昨日に続いてお尋ねします。   〔委員長退席、進藤委員長代理着席〕  きのう申し上げたとおり、三機関に対して千五百億の特別ワク考える、こういうことですが、この積算の根拠というのか、それはどういうことなのですか。千五百億を適当であると認めたのは…。
  37. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 輸出の減少に伴いまして起こり得る減産資金あるいは滞貨資金、こういうものの所要額を各主要業種ごとにヒヤリングをいたしまして、また各産地から聞き取り調査を行ないまして、それを突合しまして、それからまたそのマクロ計算をいたしまして、三通りの組み合わせをやってみまして、ほぼ、この際政府系機関から千五百億の特別融資をやれば切り抜けられるであろうという試算をいたしたわけでございます。
  38. 中村重光

    ○中村(重)委員 それじゃ、いまの輸出の減退あるいは滞貨、そうした三つのドルショックによる影響ですね、それは大体具体的にはどういうことなのですか。たとえば、輸出の減退はどのくらいである、滞貨はどの程度であるというように。そうしなければ千五百億を相当とした——まあ三つの要素をあげられたんだけれども、輸出の減退がこの程度であるから、したがって金融措置というものあるいは減税措置というものはこういうことであればよろしい、こうならなければ答弁にはならない。
  39. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 いまちょっと手元にその積算の数字はございませんが、あの九月の時点においてできるだけの資料と、それから事情聴取を行ないましての試算でございます。なかなか輸出の減少の見通し、それから滞貨が幾らぐらい出るか、生産減がどのぐらい出るかということについて的確な見通しを立てるわけにはまいりませんが、その三つの要素をかみ合わせまして試算をしたということでございます。
  40. 中村重光

    ○中村(重)委員 国際経済上の調整措置実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律案をわれわれは審議をしている。その特別措置というものは金額的には千五百億である。ほかに減税措置等いろいろあるわけなんだけれども……。ところが、いま具体的な質問に対して、手元に数字資料がないので的確に答えられないのだ。それじゃこの法律案の審議はできないじゃありませんか。千五百億が適当なのかどうか、ほんとうに影響をこうむったところの輸出関連中小企業というものがこれで立ち直りができるのかどうか、われわれはその判断をまずしなければならない。適当でないということになってくると、修正等もやらなければならぬ。そういうことになるわけなんです。しかし、三つの要素があるのだ、それでやったのだ、千五百億になったのだけれども、具体的には答弁はできないが、ひとつそれで認めてくれ、そういうことでは審議できないですね。きのうだって——目玉商品なんだな、燕金属洋食器なんというのは。繊維雑貨局長はいなかった。あなたは中小企業庁長官なんだけれども、実質的にはあなたの責任によって提案されている法律案だ。そういうものが具体的に説明をされないで、われわれに法律案の審議をやれなんということは、これはあまりにも無責任だと私は思う。輸出の減退というのは一千八百億だと私は聞いているわけだ。ところが、もろもろの要素というものが実はある。それでは、それはこういうことなんだということの説明をなさいよ。法律案の審議をあなたは求めているわけだから。何もやかましくは言いたくないのだけれども、どうも——誠実な中小企業庁長官と私はきのう申し上げたのですけれども、あなたのまじめさは高く買うのだ。しかし、どうも納得のいくような資料を提供してもらう、答弁をしてもらうということでなければだめなんだな。
  41. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 申しわけございませんが、いまの点は少し時間をいただきましたら申し上げます。  それから昨日、燕の件につきまして、よく調べるようにということでございまして、燕の状況は次のようでございます。八月、九月、十月と比べまして、受注の状況は八月が一一一、九月が九二、十月が八九、こういうぐあいに下がっております。それから対米輸出分につきましてはぐんと下がっておりまして、八月が九・二、九月が上がりまして六五・六、十月が八八・八。といいますことは、受注量は全体として減少いたしておりますが、特に米国向けにつきましては八月に大きな落ち込みがありまして、その後少しずつ回復に向かっておるということでございます。それから、数量の落ち込みよりも金額の落ち込みのほうが各月ともはなはだしいということは、やはりそれだけ手元が苦しいということでございます。それから、来年の輸出分につきましては、現在商社レベルで交渉いたしておりまして、メーカーの受注にまで至っていない。と申しますことは、何とかことし十二月末までの受注はめどがついておるということでございますので、昨日の概略の御説明に以上補足さしていただきます。
  42. 中村重光

    ○中村(重)委員 資料はあと提出をするということなんだけれども、かりに輸出の減退が千八百億あったとする。それから滞貨が幾らということがわからないわけだ。千五百億というのはそういう数字からはじき出してみて、この程度の影響が出ているのだから千五百億にしたのだ、こういうことになっておる。ただその見合う数字ということだけで適当かどうか。いわゆるショックに対する手当て的なことであって、中小企業というものが立ち直りができるのかどうかということがわれわれのこの法律案を審議する上について重要な要素になるわけだ。一度落ち込んでしまうと、それは従業員なんかも相当かかえておるので、そう簡単に、おまえだめなんだからということで首を切ったりなんか、合理化というのか、そういう企業縮小なんというのはそう簡単にできるものではない。したがって、いわゆるショック的なことに対する手当ては手当てとしてするが、さらにこれを近代化していくというような措置というものは講じられなければならないのであるから、だから千五百億というような特別ワクを設けたのだけれども、これは一応あなたがいまお答えになった三つの要素から考えてみてこれはこういうことにした……。だがしかし、それだけでは中小企業というものをこの後健全な経営という形において立ち直らしていくわけにはまいらない。災害なんかのショックとは違うのだな。やはり対米輸出というものは減退していくことは事実なんだ。それから特恵関税の実施をする。低開発国の追い上げであるとか、いろいろな形においてこの後深刻な影響というものが出てくるわけだから、それに対応するところの施策というものは講じられてこなければならない。そういう恒久的というのか、そういう施策というものはこういうような方法でやることにいたします、だからして、当面こういう措置、いまショック的なことに対する対策としてはこういうことにしたのです、という説得力のある答弁というものがなければいけないのだ。それならばだいじょうぶだねというようにわれわれも納得をして、前向きの法律案だからこれを認めていこうということになるのだけれども、そういうわれわれに判断を持たせるような答弁というものがなされなければどうにもならぬということなんだ。そう思いませんか。
  43. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 仰せのとおりでございまして、今回もこの当面の緊急対策として政府系機関で千五百億程度融資ということでこの場の最悪の事態を回避するということを考えたわけでございまして、問題はこれから先どうするか、それから特に構造改善について積極的な対策を講じなければいけないということでございまして、その点につきましては、構造改善事業に対する資金的な手当て、あるいは税制上の措置その他を別途考えておりますし、また従来から進めております施策をさらに充実さしていくということが基本であると思います。したがいまして、例示的に申しますと、今回の輸入課徴金の実施あるいは為替変動相場制への移行によって影響を受けるような業種でございまして、近促法による指定業種になっておる、しかし業界ぐるみで積極的に構造改善をやらなくちゃいかぬというものは、この際思い切って特定業種に移るというようなこともあわせ検討しなければならない、このように考えております。
  44. 中村重光

    ○中村(重)委員 それから、さっき松尾委員からお尋ねになっておった年末融資の問題にしても、昨日の新聞で報道されておったように、昨年と比較をして約三割増し、全国銀行が、これは地銀も含めるのだけれども、九千四百億、それから相互銀行が四千億、信用金庫は前にきまっておったけれども五千五百億、一兆八千九百億ということの発表がなされた。そして具体的には、信用保証つき融資の金利を引き下げるとか、滞貨資金、減産資金のいわゆるうしろ向きの融資もするとか、あるいは手形の買い取りその他の資金という措置も講じていこうという方針を全銀協で法定をしたわけです。ところが三機関に対してはまだきまってない、こういうことなんだけれども、それは中小企業庁がそれをきめてないのか。中小企業庁としてはこれだけが必要だということでもうすでに一つの試案といったようなもの序持っているのかどうかということ。今度は大蔵省との折衝もあなたのほうは要るわけなんだ。相当期間も必要なんだね。すでに民間金融機関はこういう方針を決定した、だが政府機関においてはまだ何も考えていないんだということでは、これは間に合わない。どうなんです、それは。あなたのほうはまだそういうことはやっていないのか。
  45. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 説明が不十分でございましたが、私どものほうは幾つかのケースを考えまして、もちろん案をつくっておりまして、それを大蔵省のほうに持ち出しております。ただ、その大蔵省との間の話を詰めていきますのにいま時間がかかっておるということでございまして、中小企業庁として案を持っていないとか持ち出していないということではございません。  それから、たしか昨年の年末貸し出し規模の追加が千四百六十億円だったと思いますが、こういう数字も頭に置きまして、それから先ほど千五百億の三機関への貸し出し規模というものがきまりましたが、それで足りないのはもちろんでございますから、この年末の追加規模についても、千五百億はきめられてはおりますけれども、もちろんその外ワクとして必要な十分な資金を獲得するということで、いませっかく努力をいたしておるところでございますし、全国銀行、相互銀行、信用金庫合わせて一兆八千九百億の年末追加融資ということにつきましても、確かに新聞には報道されておりますけれども、先ほど申し上げましたように、最終的には政府系機関の貸し出し規模の増加と同時に決定される予定になっておりますので、いましばらく時間をかしていただきたいと思います。急いでおります。
  46. 中村重光

    ○中村(重)委員 大体どの程度考えているのですか。
  47. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 いろいろのケースがあると申し上げましたが、去年千八百九十億円くらいの要求をいたしました。その額を上回る額を要求をし、いま折衝いたしております。
  48. 中村重光

    ○中村(重)委員 それから、三機関でもって特別ワクを設ける。そこでいわゆる倍額ということになるわけですね。中小企業金融公庫が現行の二千万を四千万にする。それから国民金融公庫が五百万を一千万、こういうことにいわゆる倍額ということにワクをつくるわけです。それが十分か不十分かという問題は別として、私はこれでは不十分であると思うのだけれども、こうした特別融資ワクをつくって融資が行なわれるという場合、大体中小企業が民間金融機関等を含む借り入れをしている中で、政府機関融資の比率はどのくらいになるか。
  49. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 中小企業向け全金融額の九・四%が三機関でございます。
  50. 中村重光

    ○中村(重)委員 なかなか一〇%に達しないのだね。これはいつも言っていることなんでありますが、政府機関というものはこれは民間金融機関補完的な業務をやるのだという考え方の上に立っておられる。私は、それでは適当ではないのではないか、むしろ今日の段階では補完的な金融機関という線を一歩出るべきだという考えを持っているのだけれども、これはいろいろ議論の分かれるところだろうと私は思う。それにしても民間金融機関の貸し出しも大きくなっているのだから、政府機関融資ワクも広げてはおるがなおかつ一〇%には達しないということであっては、私はいけないのじゃないかと思う。もう一〇%のワクを破って——いつも一〇%以内でしょう。九%前後なんだ。これは十数年来そういう比率なんですよ。だから私は、もっと積極的な融資体制というものを確立をしていく必要がある、こう思う。  それから、三機関でもって融資をしていくということになってまいりますと、民間の金融機関融資がその中小企業信用度合いという形においてダウンしていくということにならないのかどうか。それをそういう方向にならないためにどういった対策というものをお考えになっていらっしゃるのか。いろいろお考え方があるだろうと思う。民間の金融機関に対する協力要請ということもやっているのだ、こういうことなんだから、具体的にいろいろな要請というものを続けているのだろうと思うのですが、その点はいかがですか。
  51. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 三機関の占める比率でございますが、三十八年当時たしか七・七%、それから先ほど申し上げましたように九・四%ということで、若干ではありますが比率は伸びておる。それから、できるだけ三機関に金を投入するようにしたいという考えでおりますが、おっしゃいましたように一割をこえるということはなかなかむずかしい現状であります。  それから市中機関に対してどういう接近をしておるかということにつきましては、九月一日に市中の各銀行に対しまして、積極的に、こういう非常の事態であるから特段融資についての協力方を要請をいたしまして、かつまた信用補完制度の特例を設け、あるいは信用保証協会に対する補助金を今度の補正予算で計上いたしますことなどによって、市中の金融機関融資を少しでもやりやすいようにということで協力要請をいたしておるところでございます。
  52. 中村重光

    ○中村(重)委員 いままで七・七%であったのが若干伸びているのだけれども、それは四半期別にずっと変わっていくのですね。だから実際は、九%というのは資料を見られればわかるのだけれども、われわれも絶えずその三機関から送ってきてもらっている資料を見ているわけだ。こう動いているわけだ。動いているんだけれども、実際は比率というものはなかなか伸びていないということが実態なんです。だが、どうしてもあなた方の頭の中にこれは補完機関であるという考え方、なかんずく大蔵省にこの点が強いと私は思うのです。大蔵省はやはり民間金融機関からの圧力というものが強くかかっているのです。特金課長もいま見えているんだけれども、それが非常に強い。それをたたき破っていくためには中小企業庁がもっと積極的にならなければだめですよ。ともかく一〇%以内ではいけないじゃないか、これを打ち破っていくのだというくらいのかまえがあなたのほうになければね。私も商工委員会に十数年、いまのことは絶えず議論してきているんだから、資料を見なくたっても頭の中に資料としてあるわけだよ。なかなか破れないのだ。絶対量はふえている。しかしそれは民間もどこもふえている。貨幣価値は下がっている。こういうことなんだ。やはり中小企業に対する三機関資金ワクを拡大をしたということは、絶対量の伸びからだけは論じられないわけだ。いかに三機関中小企業の借り入れ金に対するその比率が伸びておるかということ、それが私は重点でなければならぬと思う。その点が非常に弱いということです。  そこで、いま民間金融機関の貸し出しというものが中小企業信用度合いという形においてダウンすることがないのかどうかということの私のお尋ねに対しましては、まあいろいろな面からの協力要請はやっている、おっしゃるように信用補完制度をまた別ワクという形において拡大をした、これも事実である。ところがこの点に対しても先ほど松尾委員からお尋ねがあったんだそうでありますが、これに対するあなたのほうの答えは、担保力がない、そのためには信用補完という形においてその保証をつけることにおいて信用度合いを高めていく、そういう答弁がなされたということなんです。確かにそういう面はあるわけだよ。あるわけだけれども、これもまた松尾委員指摘のように、実行面においてはたして効果があるのかどうかということが問題なんだ。無担保保険というものは、いままで三百万であったんだから今度それを六百万にするのだ、無担保、無保証を、八十万であったのを百六十万にするのである、これは近代化保険というものは、たいした利用度というものはないわけなんですから、普通保険もしかり、これを伸ばしていくんだから、そうしててん補率にしても七〇%を八〇%にして金融機関の危険負担率というものが非常に少なくなってきたんだから、うまくいくのではないか。確かにそういう一面もあると思う。しかしそういう信用補完制度はあるんだけれども、どうしても金融機関が貸し出しを渋る。保証協会というものは独立採算制になっている。ましてや、これに対してもあまり貸し倒れということで代弁がふえてくるということになってくると、これまた大蔵省がなかなかきびしいんだ。一定のワクをきめて、これ以上の代弁というものはないようにしろということで、私がこの前も指摘しましたように保証協会を大蔵省は直接呼び出して、これをチェックするというやり方すら行なわれてきている、あなたのほうの頭越しに。それだからなかなかきびしいでしょう。  これはいまあなたのほうから四十五年度の実績という形で私にお示しいただいたのだけれども、この普通保険というものが金額にして約五〇%、件数にして二五%、無担保保険が件数にして六〇%、金額にして三〇%、無担保、無保証と近代化を含めて件数一五%、金額にして二〇%、これは何を物語っているのか。無担保保険の金額にして三〇%であり、件数にして六〇%ということは、いわゆる三百万というものをなかなか認められていないということだ。これは相当押えられてきているということを物語っている。金融機関が貸しましょうといっても、保証協会がノーと言うわけだ。保証協会が、わがほうで保証するのだからということで金融機関に要請しても、金融機関がノーと言う。これは金融機関みずからの貸し出し等の影響ということ等と関連をしてそういう形が出てくるわけです。だからして保証ワクを拡大するということそれ自体はけっこうなことであるけれども、これによってすべて円滑に進められていくのだという安易な考え方というものは、私は、実態に沿わない、現実というものを十分把握しておられない考え方であると思っている。だから今回のようなきわめて重大な段階においてこれをいかに是正をしていくのか、いかに実行面において効果を発揮していくのかということが運用上の重大な問題なんだから、これに対してどのような態度でもって取り組んでいこうとお考えになっておられるのか。また、私がいまあげましたようなこうした比率というものは、どういうことからこういう比率になってきているのか、こ原因の探求というものをおやりになったのか、これに対する一般的には是正措置をどう考えておるのか、今回のような重要な段階においての措置をどうしようとしておるのかということについての、あなたの納得いくようなお答えがなければならぬと私は思う。制度さえつくればよろしい、こういうものではない。
  53. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 保証協会に対しましては、今回の事態が非常に異常な事態であるということにかんがみまして、積極的に保証に応ずるようにということを大蔵、通産両省から要請をいたしましたし、また、先ほどお話のありました代位弁済があまり数多く行なわれることをおそれるのあまり保証が円滑を欠くということのないように、事故率の見方につきましてもできるだけ弾力的に見るという基本方針をもとにしまして、保証協会に対して積極的に保証に取り組んでほしいということを要請をいたしておるわけでございまして、決してこういう制度をつくったがために、それだけでただ自然に保証が行なわれ、金融がすぐついていくというように安易には考えておりません。しかし、繰り返して保証協会あるいは関係金融機関に対しまして要請をいたし、極力お金が流れるようにということで繰り返し努力をいたしておるところでございます。
  54. 中村重光

    ○中村(重)委員 どうも答弁のための答弁のような感じがしてならないのだ。この特別小口保険のおそらく一二、三%だろうと私は思う、近代化保険と合わして件数にして一五%、これは無担保、無保証なんだ。にもかかわらずこういった件数、金額にしてもわずかに二〇%です。これは住民税の所得割りというものを納めておりますという証明を持っていったら、すぐ無担保、無保証ということで認めてやらなければならないのだ、制度としては。この法律案のこの制度をつくります際の私どもの審議に対して、そういう答弁をしておられるわけだ。したがって、極端に言うとこれは手間ひま要らない、すぐ間に合うんだ、信用調査も何もやらないのだから。にもかかわらずこういうような形、数字があらわれておるというこの事実は、やはりこれは何とかしてこの特別小口保険制度というものをできるだけ押えていこうとするあらわれですよ、この数字というものは。あなたのほうのよほどの熱意でもって対処していくのでなければこれは是正できない。今日の置かれている保険公庫あるいは保証協会のあり方、これに対して大蔵省は非常にきびしいというようなことから、こういう結果が生まれてきている。しかもこの代位弁済といったようなものが特別小口保険に相当大きいのかと思うとそうでない。比較的これは低いんだ。それは何を物語っているのか。無担保、無保証は、住民税の所得割りを納めておりますという証明だけがあればよろしいのではあるんだけれども、実際はこれとても、それがあっても信用力のある者にこれを貸し付けていこうとする考え方というものがある。だからして、この場合五十万円を、私ども委員会の附帯決議はこれを百万円にしろということに対しても、これをほおかぶりして、ちょっぴり三十万円、これはようやくこの前改めたにすぎないのです。できるだけこれをなくしていこうとする考え方に立ってきている。これはもう否定することのできない事実なんです。あなたがまだ長官になられて長くないんだけれども、こういうことなんだから、あなたはそうした面を排除していくという姿勢が必要であるということを申し上げておきます。  それから、商工組合中央金庫に対して出資が五十億。御承知のとおり商工中金は貸し出し利率も高いのですね。二厘高いわけです。今回五十億ということになったんだが、これで適当だとお考えになっておるのかどうか。もっと安い原資を投入していくということになってくると、この出資金をふやしていかなければならぬ。これは時間の関係があるから私は指摘をするんだけれども、民間金融機関よりも私は商工中金に問題があると思うのですよ。まず商工債を買わせるのです。会員にならなければならぬから出資金を取られるのですよ。そして預金を取られる。しかもその預金は歩積み両建てでしょう。商工中金には歩積み両建てはございません、こう言っている。ところが現実にはあるんだ、民間金融機関はその比率が——率は別といたしましても、これは歩積み両建てだけなんだ。商工中金はいま言うとおり三つあるわけなんだ。これは借り入れ側から、いわゆる中小企業の側から見ると相当な高い金利になっている。それはやはり商工中金に対するところの出資金が少ないということです。もっと安い原資を供給していくということでなければならない。にもかかわらず、今回わずかに五十億の出資ということは、あなたとしてこれはまあこれでよろしいとお考えになったとするならば、私は問題がある。それから、私が指摘いたしましたそうした商工中金の今日進めておるやり方、商工債というものは一般なんだから、中小企業にこれを買わしておるのではないと言うかもしれない。しかし、現実に商工債を中小企業は相当消化してきている。消化させられている。出資金も取られている。預金も取られている。歩積み両建てという形が実はあるわけだから、これを直していくためにどうしようとお考えになっているのか。(「リベートを取っている、おかしいぞ」と呼ぶ者あり)
  55. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 商工中金につきまして、やはりその性格が中小公庫、国民公庫と違いまして半官半民であるということ、それから出資の比率も大体半々で、現在政府の出資は五六%だと思いますが、まあ大体バランスをとってきておる。それで昭和四十三年度に政府出資がございましてからずっとございませんでして今回五十億の出資がきまりましたが、十分と思うかという御指摘に対しましては決して十分とは思っておりませんけれども、この五十億の出資を受けることによって六分五厘の特利を適用する原資としては何とか間に合うということできめられたわけでございます。  それから商中の運用ぶりということについてはしばしば御指摘を受けておりますが、いまのような歩積み、拘束性預金をなくすということについてしばしば指示をし、また努力をいたしておると思いますけれども、御指摘の点、しばしばございますので、常にその点については注意をしながらやっておるということでございます。やはり半官半民というところに一般の金融機関と純然たる政府機関との中間的な性格ということもございますので、運用の中身につきましては十分気をつけて指導してまいるつもりでございます。
  56. 中村重光

    ○中村(重)委員 特金課長、いまの質疑応答であなたも一言なかるべからずと私は思うのだけれども、どうお考えになっておりますか。
  57. 北田榮作

    ○北田説明員 商工組合中央金庫につきましては、ただいま中小企業庁長官からお答えございましたように、中小企業者の組合の金融をやります組合金融機関という基本的な性格でございまして、国民金融公庫中小企業金融公庫とは、この両機関が全くの意味での政府関係金融機関というのに比べて、たいへん性格を異にしておるわけでございます。これに対して国といたしましては、出資その他、その資金調達の面でいろいろの助成を与えて育成をはかっておるわけでございますが、やはり基本的には、いまお話がありましたように半官半民の金融機関であるというところに基本的な性格の違いがあるかと思います。そういった意味で、政府関係機関と全く同じという運営にはまいりませんで、やはり自主的な運営と、それによって効率的、また弾力的な運用もはかり得るというようなメリットを持っておるものだと考えております。ただ、中小企業有成という観点から、従来から多大の助成と申しますか、援助をやっておるところでございまして、屡次の出資等によりまして金利の引き下げにつきましてもおいおいはかられつつある状況であると考えております。  それから、ただいまお話ありました歩積み等の点につきましても、これはやはり政府関係機関であります点を十分考えて、特にそういった点については自粛をするようにという指導を強くやっておる次第でございまして、そういった面でも非常に改善がはかられておるもの、こういうふうに考えております。ただ、そういった全般的な運営につきましては、今後とも適正を期するようになお一そうの指導をしてまいりたい、このように考えております。
  58. 中村重光

    ○中村(重)委員 答弁はいつも、局長が来ても、あなたが出てこられても、同じような答弁ばかり繰り返しているんだけれども、実効があがらないんだね。実効があがるようにきびしくやってもらわなければ……。まあ先ほど、リベートまで取っておるぞという声がある。私の耳にもそれは入っている。もってのほかだと思う。だから商工中金に対してはきびしい監督もしなければならぬ。同時にやはり安い原資を注入していく、投入するということが必要なんだから、出資をもっと大幅にふやしていくということでなければならぬと私は思う。  それから保険公庫に対して二十億の出資、これは準備基金であろうと思うのですが、そのとおりなのかどうか、それから二十億だと適当であると考えられた、この点はどういうことなのか。これはなぜかというと、答弁の中でも信用補完というものを非常に強調しておられるのだ。またこの法律案の中においてもその点は相当なウエートを置かれている。にもかかわらず二十億である。私は、特恵関税が実施され、転換というものが出てくる段階においても、この信用保険公庫に対するところの出資金というものを大幅にふやしていくのでなければ、一般の中小企業に及ぼす影響は非常に大きいということを指摘してきたのだけれども、なおかつ今回も二十億にすぎない準備基金ということになってくると、これは貸し倒れの関係ということになってくるのだから、それだけ保証はしやすくなるのだけれども融資資金もふやしてやらなければ保証能力というものが強くならないのだから、この点はどうお考えになっておるのか。これは特金課長からもお答えを願いたい。
  59. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 このたびの二十億の出資は準備基金でございます。それからいままでの準備金の累積が八十億ございます。この際二十億とりあえず出資をいたしまして、四十七年度の中小企業信用保険公庫に対する出資要求は、融資基金、準備基金を合わせまして二百十億円の要求をいたしております。それで、もし万一事故が多発いたしましても、これは本年度中にということよりもむしろ来年度の問題になろうかと考えますので、この際は二十億のとりあえずの出資ということでまずまず十分だろうと考えた次第でございます。
  60. 北田榮作

    ○北田説明員 たいへん申しわけございませんが、信用保険公庫は実は所管が違いますので、あるいは的確な答えができかねるかとも思いますが、信用保険公庫の保険準備基金につきましては、お話ございましたように、保険収支を補てんする、あるいは運用の基金として利用するというようなことから出資をして準備基金を保有しておるわけでございます。今回のことにつきまして、いま収支上悪化が考えられるというようなことから二十億の出資をすることにしたわけでございますが、これは今回の特別の保険ということに対する収支等を一応計算いたしました上で、この程度あれば十分であろうというふうに算出されたものと聞いております。なお、今年度の当初の出資が保険準備基金としては四十億でございますので、それに比べてもかなり大幅な金額であろう、このように考えておる次第でございます。
  61. 中村重光

    ○中村(重)委員 あなたが所管でないということは私はわかっているんだ。ところが、環衛金融公庫であるとかあるいはマル食資金関係、相当長期なものに保証というものがいまなされつつあるわけだ。だからあなたの所管のほうの関係信用補完の費用というものが相当吸収されておる。それが全般的に影響してくるわけです。あなたも大蔵省部内なんだから、来年度は二百十億要求をしておるということだから、これが削られないように側面からやはり協力をしていく、そういうことでなければ、あなたのほうの環衛金融公庫にしても、あるいは中小企業の生鮮食料品等の近代化資金というような面についても影響は出てくるわけだから、ひとつ大蔵省部内で大いにがんばってもらわなければならない。ましていまあなたが今度二十億というのが十分だということは私はいかがかと思う。これは来年のことだから、代弁でもするといったような場合は準備基金はどうしてもおくれてくるわけだから。それはいま事態が、赤字でどうにもならぬというような状態ではない。それは押えておるからそういうような状態ではないわけだ。だから今回のショックによって代弁をしていくということになると、来年のことだからということにはなるのだけれども、やはり二十億というような形で押えられておると、そのこと自体は当該保険公庫にしても、あるいはそれによるところの保証協会にしても、どうしても引き締めていこうとすることになるわけです。今回の大きなドルショックによっての影響というものがあるのだから、大幅につけてもらったという形になって初めてこの信用補完というものに対して積極的な取り組みを第一線ではやることになるのだけれども、やはり来年のことだからというので……。いまですら窮屈なのに対して、準備基金をわずか二十億つけるということについては私は問題があると思う。だからしてそういうような点も十分配慮していかなければいけないということなんです。  それから、転換の問題については先ほど来質疑応答が行なわれておったのだけれども、転換をするということになってまいりますと、私が法律案の中身等々を見てみますと、土地、建物であるとかあるいは過剰設備の買い上げというものが考えられていないようだ。これは私は問題だと思うのです。団地なんかの場合でも、古い機械や器具であるとか建物の処理というようなことが問題になってくる。古い借金を背負うから、団地等に入って新しい事業を営むという場合も、救済のために足を引っぱられる、あるいはそうした古い動産、不動産等の処分ができないために非常な重荷になってきておる。これを売り急ぎをするということになると買いたたきを受けるという形になってくるのだから、やはり転換対策としては、土地であるとか建物であるとか、あるいは過剰設備というものを買い上げていくようなことが当然考えられなければならぬと私は思う。この点を特に今回考えなかったのはどういうことなのか。
  62. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 廃業していく場合、その設備を買い上げるということにつきましては、例を申し上げますと、石炭の場合それから織布業等の場合しかないと存じます。廃業していくからといって設備を買い上げるということになりますと対象がきわめて広くなること、それから歯どめをどうやってつけるか、それからそういう措置をとることによってその業種が、全体として見た場合に将来それがどういういい方向に向かえるかというようなことを考えますと、やはりどうしてもはっきりした、新規参入は行なわれないとか、あるいはいわゆる残存事業者が応分の負担をするとか、何か団体法の規定に基づいて調整行為を行なうとかいうような仕組みがないと、実施することはきわめてむずかしいのではないかということで、内部的にはいろいろ検討いたしましたけれども、業種別にいろいろ意見を聞いてみますと、なかなか具体案についてこれはというようなところまでまとまったものがございません。それで、今後の事態の推移を見ながらこの点については検討を重ねていくということで、この際は、設備の買い上げというのを一般的に転廃業の場合に認める、国の負担において設備の買い上げを認めるということはむずかしいというように判断いたしまして、今回の臨時措置法の中には規定を入れなかった次第でございます。
  63. 中村重光

    ○中村(重)委員 しかし、これは相当な重荷になるんじゃありませんか。考えないということは、それは私は問題だと思うね。まああなたのほうとしては、これはぜひやらなければならぬ、こういうことで大蔵省との折衝を行なった。しかし、今回は大蔵省が同意しなかったということなのかどうか。そうだとすると近い将来この過剰設備の買い上げというものが、これはまあ現実事態というものがあらわれてくるわけだね、その事態に応じて十分対処し得る体制を整えるという意思を持っておるのかどうかということ。これは、いろいろ検討したんだけれども、やはりそうい制度をつくるというまでに至らなかったということは、その必要性ということになるわけだからね。必要性は認めたけれども、どうしても今回は意見が一致しなかった、なお続いてこれを認めるために対処していく、ということなのかどうかということ。
  64. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 大蔵省との折衝の問題もございましたけれども、それ以前の問題として、いま申し上げましたように、設備の買い上げを行なうということになりますと、よほどしっかりしたルールがなければいけない。それからまた、繰り返しになりますけれども、その業種、業態によってはっきりしたこういう買い上げ措置をやることによってその業界が将来新しく発展していけるのだという見通しを持つ、そのためこういう措置をとりたい、国あるいは地方公共団体、また業界自体、おのおのどういう役割りでその設備買い上げについて分担を行なうか、考えるかというようなそういうところが十分に尽くされていないというのが現状でございますので、一般的に設備の買い上げを一律にやるんだというように考えて、それを前提にして検討をするということはなかなかむずかしいと思います、結局、やはり業種、業態によって十分詰めた上で具体的な対応策を考えるべきものだと思います。
  65. 中村重光

    ○中村(重)委員 私は別に一律に買い上げをしなさいと言っているわけじゃないんだ。やはり織機類の買い上げというものも、これは買い上げをしなければどうしても近代化できないからこれはやっているわけだ。だからして、今回のドルショックによって、あるいは特恵関税の実施によって、どうしても転換をしなければならない、あるいは近代化をしていかなければならない——過剰設備もあるだろうし、いわゆる近代化するためにこれは旧設備となってこれを廃棄しなければならない、こういうことだってあるだろう。だからして、そういう制度制度として考えていく、この実施については実情に即するような運営をやっていく、そういうことは当然これは考えられなければならぬ。これは、そういう買い上げをやるということになってくると、一律にやらなければならぬということを私は言っているのでは丘いのです。だからして、その考え方というものが頭が出ていないところを私は問題にしているわけです。だからして、あなたのほうとしてはそういうことを検討したとするならば、具体的にこういうようなことを検討した、この点についてやはり問題がひっかかってきたのだからなおこれを掘り下げてやっていきたい、それを実施するような方向でいきたいということであるならば前向きなんだけれども、いまあなたの答弁を聞く限りでは、これはむずかしい、だからしてこの制度というものはやれないのだという考え方が、いま一律にやれないというようなことばでもって答弁を、若干前向きのような形なんだけれども、実際は問題にしてないというようにしか受け取れないわけですね。それは適当ではない。ともかくもっと前向きに考えていくというようなことなのかどうか、いかがですか。
  66. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 まず第一に、個別の業種ごとに検討を進めるべきものであると思いますし、またその業種に出入り自由ということでありますと、設備の買い上げをする意味がありません。一体どういうルールをもって新規参入を認めないで、しかも業界全体がこの設備の買い上げをやるということによってよくなっていくかというようなところについての詰めを、検討を必要とする業種ごとにもつと掘り下げていかなければいけない。そういう意味合いにおいての検討は現在進めております。非常にむずかしい問題ではありますが、業種、業態によっておのおの実情も違いますし、そこらあたり、繊維織機買い上げのようなことが可能であるのか、またその効果が十分考え得るのか、そこらの点いろいろ考えるべき点があると思いますので、むずかしい問題であると思いますが、業種の実態に即して慎重に検討してまいりたいというのが現在の考えであります。
  67. 中村重光

    ○中村(重)委員 団地のことなんかでも、これからあなたはいろいろと調査をしてその実態をおつかみになるだろうと私は思う。団地なんかに入ります場合も、旧設備の処理、救済で足を引っぱられるということが、団地で倒産というものが出てくるのですよ。これは大きな問題なんだ。そうでしょう。弱い中小企業が新たな投資をするわけでしょう。実際は中小企業振興事業団から金を出すのだ、そうして協調融資というのを中小企業金融公庫と商工中金がやるのだ、自分の金というものは出さなくてもいいのだというようなこと等々が、答弁としてなされてきたわけだ。ところが実際は二〇%程度は自己資金というものがなければならない。それから協調融資という場合におきましても、実際は担保というものを持ってこいというようなことが現実に行なわれてきておるわけです。中小企業振興事業団貸し付けというものはいわゆる第一担保であって、それから協調融資は第二担保という形においてなされておるのかどうか。それもあるのだけれども、なおかつ不足だからほかに担保を持っていらっしゃい。そうすると自己資金というものがなかなかできない。そこで、旧設備の買い上げ等というものが行なわれてくるならばそういうことも可能になってくるのだけれども、実際はなかなかそれができない。これが実態なんだからして、重要な問題点としてこれらの点は十分検討して実施に移していく、そういうかまえでなければならぬと私は思う。  それから、時間が参りましたからこれでやめなければなりませんが、労務対策等も含めて、これこそショック対策になるんだけれども、一時帰休制度なんということは考えなければならなかったと思うんだけれども、これらの点は検討されたのかどうか。されたとするならば、どこにひっかかったのか。いかがですか。
  68. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 検討はいたしました。それで、現在までの段階では、このたびの国際経済上の調整措置実施によりまして、雇用情勢が特段に悪化しているというようには判断されませんので、この際は財政、金融面からの景気回復策をとるということで対策を講じてまいりたい。やむを得ず離職者が発生するというような場合は、いまお話のございました職業訓練の実施とかあるいは就職あっせん、また中高年齢層に対する特別の措置ということで、この際とりあえず考えてまいりたい。しかし今後の事態の推移ということを注意深く見守りまして、雇用対策として必要かつ適切な措置を講じていかなくてはなりませんので、失業保険上の施策に関しましては、現在、中央職業安定審議会の失業保険部会で検討がなされておると承知をいたしております。
  69. 中村重光

    ○中村(重)委員 時間が参りましたから、後日、大臣の出席の際に、いまのような具体的な問題以外に政策上の問題もあるので、その際にお尋ねをすることにいたします。  最後に、倒産関連保証制度というのがあるんだが、この運用というものはどういう形でなされているのですか。
  70. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 倒産が起こりまして、その債権者の相当部分が中小企業者であるというような場合に倒産関連保険が働くわけでございますが、手続としましては、県のほうから所管の通産局を経由しまして本省に申請がなされます。従来、そういう報告がなされますと、迅速に指定をいたして発動をいたしております。
  71. 中村重光

    ○中村(重)委員 運用にあたっての負債額というものがあるんだから、それはどういうようにやっているんだということも答えなければいかぬ。
  72. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 三億円でございます。
  73. 中村重光

    ○中村(重)委員 だから私はその点を問題視するわけです。せっかく倒産関連保証制度というものがあるのに、負債額三億円以上しか対象になっていないのです。それ以下の負債額による倒産というものは非常に多いわけだから、これらの問題は当然重要な問題として考えていかなければいけない。いわゆる弾力的運用ということは可能なんだから、ある意味においてはそこに相当焦点を当てていかなければならない。あなたはいま長官だから、広範囲にわたって何事も知っておらなければならないが、一々何でも即答しなさい、課長に聞かなければ話にならぬじゃないかということは私は言いません。言いませんが、こういう問題は重要な問題だから、あなたとしてもこの弾力的運用というものをどうするのか。負債額というものをもっと引き下げて、そうした弱い関連倒産の場合、倒産者に対しても救済をしていくという措置が当然講ぜられなければならない、こう私は考えるわけです。だから今後それらに対してはどう対処していきますか。
  74. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 不幸にして倒産が多発するというような事態になりましたら、いま申し上げました三億円ということは法定されておるわけではございませんので、この運用については実情に沿うような措置ができるように、そういう必要性が起こってくれば関係当局とも十分話をしたい、このように思います。
  75. 中村重光

    ○中村(重)委員 これできょうはやめますが、そういう事態が起こってくればということではなくて、あなたが考えてみても、三億円以上の対象というものは問題でしょう。法定されてないならぼ、当然これは弾力的運用というものがなされなければならぬのだから、実態を十分把握して、そういう方向でひとつ運用していくようにしたいというくらいな明確な答弁がなければ、そういう必要が起こってきますればというようなことでは、これは話にならぬですね。お考えになってもそうじゃありませんか。三億円以上しか事実上対象になって互い。金額ではどうなんだ、三億円以上だとあなたはお答えになった。だから実際はそういうことをやっておるのだからして、これを弾力的に運用しなさい、私はこう言ったのだから、それに対しては何もかも私の言うとおりにそういたしますという答弁をしろとは言わないけれども、そういう事態になってそういり必要があればということでは話にならぬですね。  では、終わります。
  76. 進藤一馬

    ○進藤委員長代理 午後二時再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時八分休憩      ————◇—————    午後二時十三分開議
  77. 鴨田宗一

    鴨田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。横山利秋君。
  78. 横山利秋

    ○横山委員 この法案の前提となる問題につきまして通産大臣に伺いたいと思います。   この法案は、申すまでもなく先般の閣議決定に基づいています。そしてその閣議決定は、少なくともこういうような経済情勢にあって緊急な必要な措置及び当面必要な措置、こういう折り紙で諸般の措置がなされた。これは御存じのとおりであります。確かにこの法案に盛られております問題が緊要なことであることを認めるにやぶさかではありません。しかし、当面であり緊急であるとするならば、閣議決定の基礎となりました基本的な政策は一体何なのか。これはこれだけで、あとあとでもう一ぺん考えるということなのか。一体これから中小企業のあり方についてはどうあるべきかという基本的な論議の上に立って、当面緊急の措置がなされたのか。それとも基本的な問題はまた別途ゆっくりやって、これだけまずやっていこうということなのか。どちらでありますか。
  79. 田中角榮

    ○田中国務大臣 中小企業、零細企業等に対します施策につきましては、従来とも重点的に行なってまいったわけでございますし、また将来も現行法を基礎にしながらテンポの速い事態に即応をする中小企業対策を進めていかなければならぬことは申すまでもないわけでございますが、しかし今度は、いずれにしても外からの影響が非常に大きいという現実に徴しまして、この国際的な波動に対応する中小企業の当面する問題を処理をするということといたしまして、具体的な施策として御提案を申し上げておるわけでございます。ですから、体系的に中小企業をどうするかということのまず絵をかいて、その中に今度お願いをしておる法律はどのように位置するのかというふうにはお答えできませんが、当面する中小企業対策としてはどうしても必要なものといたしたわけでございます。いま御指摘のような中小企業対策は、過去も現在も将来も、また特に戦後四分の一世紀もたっておりますから、日本の産業自体を洗い直し、見直しをしなければならないときだとさえいわれておるわけでございますので、中小企業対策については、各界の御意見、審議会の御意見等を聞きながら、変化する事態に対応できるような措置は常にとってまいらなければならない、こう考えておるわけでございます。  具体的に申し上げれば、今度の施策は独立をしたものとして御審議をお願いしておる、こう理解していただいていいと思います。
  80. 横山利秋

    ○横山委員 大臣、忌憚なく申し上げれば、この法案は、金を貸しましょう、税金を少しまけてあげましょう、こういう法案なんですね。しかも、輸出関連産業についてのみ、こういうことなんですよ。簡単に言えばそういうことなんです。その金は貸してあげましょう、しかし返してくださいよ、返す能力のないところへは貸してあげませんぜ、こういう。税金はまけましょう、しかし、前に黒字であった人についてまけましょう、こういっておる。去年も赤字、おととしも赤字の人についてはまけるものがないのですから、それはまけてあげません。輸出関連産業以外のところにはこの恩恵はありませんよ、こういうわけなんです。そこのところを大臣、はっきり認識してもらわなければ困る。そうすると、私も言うように、この法案というものは、担保もなければ保証もしてもらうところも——保証協会にも断わられる、税金も黒字でなかったところ、それはだめなんです。輸出関連産業でないところはだめなんです。ですから、この法案はまさに全体の中小企業のうちのほんの一握りの緊急当面の措置だけなんです。この範疇からはずれる圧倒的な中小企業に対しては、政府はどういう対策を提案をしておるのかということが聞きたい。まさにこれは緊急当面の措置だということについて了承する。しかし、これと並んで、この範疇からはずれる中小企業にいかなる政策があるか。それもまた緊急当面の措置があるべきだ。それから、根本的に経済の変動期における中小企業政策のあり方を再検討しなければならないのだ。その点についてどうか。そういう基本的な考えがあって、その楼閣の上に緊急当面の措置があるべきなんです。いま聞いてみますと、それはこれから考えるよということらしいのですね。この法案の恩恵を受ける中小企業は、じゃ一体どれくらいだと思いますか。全国の中小企業がいま——それはうどん屋さんや八百屋さんはまだドルショックはそうないかもしれぬ、けれども、圧倒的な中小企業が直接間接に影響を受けているのですからね。輸出関連産業だけじゃないんですから。そういう点で、きわめて政府の姿勢は不十分じゃないかと私は思うのですよ。もう少し基本的にこの新しい七〇年代における中小企業のあるべき絵図面、政策の基本的な再検討の方向及びこの法案の恩恵を受けられない中小企業に対する対策、一連の構図が示されてこそこれが生きてくるのであって、その点はどうなんです。
  81. 田中角榮

    ○田中国務大臣 横山さんのお考えはよく理解できますし、またわれわれも、中小企業、零細企業に対しましては、先ほどから述べておりますとおり、過去も現在も将来も、流動する大勢に即応できるように、常に中小企業対策は完ぺきでなければならない、完ぺきな方向に対して常に努力しなければならないという姿勢にあることは御承知いただけると思います。そういう中で、中小企業に対してはいろいろな対策がとられております。いままででも、現行法としてもとられておるわけでございます。それからまた、年末対策としてもとられなければならないものもございます。また、現行法を修正したり拡大をしたり、中小企業対策を手厚くする方向に努力をしていかなければならないこともまた事実でございますので、それも絶えず検討いたしておるわけでございますが、それはそれとしまして、当面する問題としては、輸出中小企業、輸出関連企業というものが、現に、一般のものプラス国際情勢の変化から受ける影響というものがあるわけでございますから、そういう意味で別個にこの法律を出したということでございます。ですから、この法律はひとつお認めいただく、またいただかなければなりません。  同時に、輸出関連企業にこのような措置をしたので、他にこの輸出関連企業、輸出企業よりも影響が少ないにしても、大なり小なり見直さなければならない、洗い直さなければならないといわれておる中小企業対策はどうするのかというお考えに対しては、これは前向きで常に検討を進め、なさなければならない具体的な案ができれば、また御審議をいただくということになるわけでございます。そういうふうに御理解をいただきたい、こう思います。
  82. 横山利秋

    ○横山委員 大臣、あなたはしゃべっておって、私が満足しそうもない答弁だと気がついているのでしょうね。そんな手続論を聞いているのじゃないですよ。まだ残念ながら新しい時代に即応する中小企業政策の基本的な考えはまとまっていないとおっしゃればそれで済むのです。
  83. 田中角榮

    ○田中国務大臣 いまも申し上げましたように、現行法ができ、現体制ができましたように、相当努力して今日に参っております。これが現在の、またあしたからの日本の中小企業対策として完ぺきであるかどうかという問題に対しては、これは私自身も中小企業の困難な状態を知っておりますから、また、中小企業が何をしてくれ、かにをしてくれという中小企業側の要請も陳情も承知をいたしておりますから、これでほんとうに完ぺきであるのかどうかということは、私もここで即答はできません。できませんが、まあ中小企業に対しては常に努力をしてまいります。あなたがいま申されたとおり、この輸出企業、輸出関連企業にとったような具体策をつくるほどにまとまっておるのか、まとまっておらぬのかということでございますと、まだ検討中でございます。中小企業に対しては、現行行なわれておる制度をフルに活用するそれでなお施策が必要であれば具体的に検討してまいりますということをお答えする以外にないと思います。
  84. 横山利秋

    ○横山委員 どうも私の質問と歯車が合っていないのでありますが、少し自分の意見を申し述べてみたいと思います。  日本の産業というものは、終戦直後からある一定の時期までは重化学工業中心、産業政策もそれに沿って進んできたこと、御存じのとおりであります。ある一定の時期から、というのはまあ自由化のささやかれ始めたころから、もう保護貿易主義はいかぬから、少し海外へ進出するという輸出中心といいますか、国際的な視野といいますか、そういうところへ産業構造が変わっていったわけであります。そこで、今日われわれが直面しているのは、今度はまた逆に、その重化学工業中心主義が、公害なりいろいろなひずみを呼び起こしておるという反省が一つ。それから、ドルショックのような問題が起きて、国際的になぐり込みのようなやり方は慎まなければいかぬという反省が起きています。この二つの反省の中から、日本の産業構造はどういうふうにこれからいくべきかという、いま模索の時期ではないかと思うのです。  私はこの間、産業構造審議会が五月に出しました七〇年代の通商産業政策というものをもう一ぺんあらためて見まして、これはドルショックよりもだいぶ前の答申ではありますが、斯界の見るところ、通産省としては、通産省のお役人が下でだいぶまあ努力をしたにしては、かなり進歩的な時代をとらえておるという判断をしているようであります。この答申が一つの指標を出しておる。これからの産業政策のあり方についての一つの指標を出しておる。そこへ今度ドルショックであります。そこで、日本の産業構造も少し変えていかなければいかぬ。このことは単に民間にまかせるというばかりでもなく、また政府が行政介入をするというばかりでもなく、少なくとも一定の、どこかがリーダーシップをとって、あるいは協調して、産業構造の変化がこれから起こる時期であろうと思う。そうでなくとも、他動的要因——ドルショックによって、産業構造は変わらざるを得ない。政府もまた、財政投融資によってかなりの変化を期待しておる。要するに内需を求めておる。そういうような大きなうねりの中において、日本の中小企業は今後どうあるべきかという点についての一つ考え方——ぼくはあくまで具体的とは言いません、一つ考え方なり指標なりというものがあって、そのあった方向に沿って当面の暫定措置なり、あるいは第二目標なり第三目標というものがなければいかぬではないか。これは、いま泣いているから菓子だけやれということにすぎぬのではないか。それは、泣いているなら菓子をやろう。菓子をやろうにも、みんなに菓子をやるのじゃないんじゃないか。大きな声で泣いている者だけにさしあたり菓子をやるということであって、さしあたりということは、あとこうするからさしあたりがあるのであって、あなたの御意見を聞きますと、さしあたりが、あと何にもないさしあたりではないか。何の考えも何の基本的な構図もないさしあたりではないか、こういうことを私は言いたい。  では、あなたの御答弁を聞く前に、うしろでものを言いたそうな長官に一ぺんこの辺で発言をさしてあげてください。
  85. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 七〇年代の通商産業政策はいかにあるべきかという産構審からの答申をいただきました。仰せのとおり、このたびの国際情勢の激変の行なわれる前からそういう認識に立ちまして、そのあるべき産業構造はどういうことか、一言でいえばやはり知識集約型の産業であろう。その中で中小企業はどういう分野に進出するべきであるかということを模索をしてきておりますが、いまおっしゃいましたようにはっきりした構図を持っておるかとおっしゃれば、まだ、ほど遠いものがございます。それで、近々中小企業政策審議会の場を中心としまして、そういうあるべき姿について検討を進めるように準備をいたしております。また、私ども行政に携わる者としてもその構図を描くことに全力を尽くすべきである、こういう考え方を基本的に持っております。このたびの措置は当面の緊急策であります。弱いところへまずパッチを当てるということがどうしても必要である、このように考えておる次第でございます。
  86. 横山利秋

    ○横山委員 大臣、いま私が申し上げました大きな日本産業の構造の変遷という意味に沿って、荒っぽい議論でけっこうでございますが、これからあなたの抱負をひとつ聞かせていただきたい。
  87. 田中角榮

    ○田中国務大臣 横山さんの言われること、非常によく理解できますし、私もいまその問題を考えておるのでございます。きのうの参議院の予算委員会で、最後に時間がございませんでしたが、同じような趣旨の御意見がございました。それは、繊維産業の問題に対してこれから補償しなければならないということで、織機買い上げを行なったり転廃業資金を出したりすることはよくわかるが、一体どういうような事業転廃業させようというのだ、また、やがて加藤さんからもそういう問題、きっともっと専門的に御追及があると思いますが、十五歳から二十歳くらいの女子の単純な作業をやってきたような人たちが、企業整備の結果母のもとへ帰るということになっても一体あとどうするのかということでございます。それで私は、そこなんです、一番めんどうなところはそこでございまして、いま公式な答えとしてできるものは、知識集約産業型のものをこれから育てますということ、それから産業立地という問題といま取り組んでおりますが、東京や大阪という大拠点を中心に産業が集まったために非常にいろいろな問題が起こってまいっておりますが、公害の問題だけではなく物価の問題などを考る場合、究極はそれを解決しなければならないということになりますので、産業立地政策を長期的な見通しで進めようと思っております、そうすることによって、繊維産業の若年労働者、婦人労働者が全部大都会に出なければならないというような悪循環をし互いように努力をいたしますということしか答えられません。事実そうなんです。ですから、それよりも先の問題、新しくいま通商産業省でようやく始めたわけでございますが、せめて昭和六十年を展望した日本の産業地図というものをかかなければいかぬ。それが知識集約型であって、それが輸出を多様化できるようなものであって、それで各国との輸出秩序を守れるようなものであって、国内的にもバランスのとれるものであって、地域的にもとれるものであって、特に年齢構成、年齢的に見ても家族が働けるようなものということを、非常にむずかしいことではあるが、やはりこれが新しい通商産業政策として一番大きな問題であり、必要な問題だろう。いままでは自然発生を前提としまして、その中でぶつかり合わないように、摩擦が起きないように、起きた場合にはそれを救済するようにということだけが通商産業政策であったということでは、これではどうにもならない。特に私が考えましたのは、今度の繊維の問題で縫製工場というものを産炭地へ持っていったわけです。石炭鉱山が終閉山したからそこへ持っていくには単純作業でなければならない。それは何だといって縫製工場を持っていっていろいろやってみると、そのときには非常にいい転換政策だと思ったのですが、わずか二、三年しかたたないうちにその縫製工場がそのまままた転廃業しなければいかぬ。これはもう産炭地につくらなかったよりも悪いということがいつも言われるわけであります。ですから、やはりその場の思いつきのようなものではだめだ。国際的な視野に立って、そうして競合しないようなもの、これは繊維などで別なものをやっても、韓国や台湾と一体三年後にどう競合するのか、中国大陸との国交を開いた場合にどうなるのかという問題が出るわけでございます。そういう意味で、やはり通商産業省がいままで百年間やらなかったことをここでひとつスタートしなければならない、こう考えておるわけでございます。だから、これは私も正気でそういうことを強く言うわけであります。ですから、今度御審議をいただいておりますのはやはり在来の通商産業政策の中から出てきたものであって、こういう動きに対して通産省がやらなければならない責任を果たすということであって、あなたが御指摘になったように通産省の本来なさなければならない恒久のものであるかといったら、私もやはりなかなかそうは考えません。ですから、これから皆さんの御意見も聞きながら、同時にそういういままで通産省がとにかく取り扱ったことのないような方向をひとつ七月から研究するように、そのために必要なら課も局もつくろう、こう言っているのでございますから、御指摘の問題と取り組んでおることだけはひとつ御理解をいただきたい、こう思います。
  88. 横山利秋

    ○横山委員 もう少しそこを詰めたいと思うのですが、確かに新しい七〇年代における産業のあり方として、あなたのおっしゃるように知識集約型のものあるいはまた社会的プロジェクト、公共的プロジェクト、そういうものがイメージに上がっています。しかし、いまこのまま推移いたしますと、これは私ども社会党が言うよりも、通産省内部で言われているのじゃないかとすら思うのですよ。それはどういうことかといいますと、そういうメカニズムが簡単にできるかというとなかなかできっこない。現実的には膨大な財政投融資、公共事業というものが行なわれて、泣いた子に銭を与えるという現実的な姿が行なわれる。公共事業でだれが一体得するか。まず一番最初に地主が得する。その次に建設会社が得するということであって、水の流れる、お菓子をもらう部面というものはきまっている。それから通産省内部だとあえて言うのですけれども、公害、公害ということによってまた過度の高度成長を非難されるがために成長率を落とすという結果に自然になっていく、そして産業の発展というものを押えるだけにとどまるのではないか。したがって、そういうことになると安定成長になるかもしれませんけれども、民族のバイタリティが衰えて英国型のあり方になっていくのではないか。日本の国際競争力も弱まるのではないか。しかしそれが、あなたのおっしゃるようにそれにとってかわる大きな知識集約型産業が発展し、そして大きな一定の理念なり一定の方向を持った社会的なプロジェクトが発展をすればいいけれども、いまのままでいくだけであって、そして各省は全部縦割りで、通産省は産業を発展させればいい役所だ、建設省は公共事業をやればいい役所だ、そういういまの縦割り行政の中で、どこで新しい構想が発展するのか。言うはやすく行なうはかたし。したがって、いまの野党や社会圧力に負けて、成長率は弱まる、企業は余分なことはできない、そういうふうになっていってしまいはしないかということを通産省内部で言う人がある。わかりますね、この気持ち。私もわからぬことはないと思う。そうすると、大臣のおっしゃるとおり、そういう英国型に日本がなっていかないためには、どういうふうに産業政策が変わるか、役所の機構がどういうふうに縦割りからもっと横断的な組織に変わっていくか。非常にここのところはリーダーシップが必要な段階ではなかろうか。私ども野党として公害がいかぬと言うけれども、産業がつぶれればいいとは思っておらないのですから、そういう点については私ども言い分はあるけれども、しかしもう一歩そこを突っ込んで大臣の意見を伺いたいと思います。
  89. 田中角榮

    ○田中国務大臣 当面する世界情勢も国内情勢も非常に急転をいたしておりますから、現象が激しい移り変わりをしております。しかし、このテンポが速いということに目を奪われて、いまあなたが御指摘になったような、日本がほんとうに直面をしておる姿、これから再スタートしなければならないという事実に対する認識が私は少し欠けているような気持ちが確かにいたします。通産省へ参りましてから実によく私は認識をしたわけでございますが、とにかくこの三、四カ月の間でもって、日本の今年度から来年度における経済成長が一体どうなるのか、税収がどうなるのかというよう圧面から見ると、数字は全く違ってきておるわけでございます。ですからこれは、ただ日米の繊維協定とか、そういう小さな、具体的なものだけで起こったものではない。これはドルショックというようなものだけの現象ではありません。これは実際において、いま御指摘になったように広範な、やはりそういうときにぶつかったんだという考えを深くいたしておるわけでございます。ですからこのままでまいりますと、私は、年率五%ないし五・五%という、この間経済企画庁が試算をいたしました五・五%の成長率を実質維持することもたいへんむずかしい問題だろうと思います。しかし、五・五%とか六%というものが安定成長なのかというと、私はやはり二十年間の流れの上に立つ現実から考えると、五%台、六%台という実質成長率では、日本は非常にたいへんな状態だろうと思います。先般も申し上げましたが、ちょうどこの十五年間を見ますと、前年の十年間は一〇・四%平均成長しておるわけです。逆に後半の十年をとりますと、すなわち六〇年代は一一・一%の実質成長率を平均遂げておるわけでございますから、まあ七、八%、七・五%ないし八%というと、非常にきついが、やっと平均な経済状態を維持できるというのではないかというふうに試算をされるわけでございます。ですから、やはり一〇%近い成長率を確保するということでないと、がたんと落ちるということで、社会的混乱もたいへんだと思うのです。ですからこれからは、歴史をずっと見ますと、明治初年からずっと政府が官営製鉄所をつくったり、いろいろな新しい産業を国の力でやりました。これは社会主義政策とは違う立場でありながらも、そういう政府介入、政府が指導力を持ってやったわけです。やはりそういう必要性というものも何か感ずるのであります。それで私は、まあ短い間でございますが、そういうことが世界じゅうにあったのかということを考えてみたら、やはりニューディール政策をやったあのときのような状態というものも想定をしながら、社会政策や産業政策というものをやっていかないと、落ち込みというものが私は非常に大きくなってくるのじゃないかというふうにも考えております。きのうのそういう端的な質問に対して、時間がちょうどなかったというか、私にはちょうど時間切れでございまして、こんなにお答えできなかったわけでございますが、いままで人手がなくて困っておった三次産業人口にも吸収いたします、産業立地政策を確立することによって吸収いたします、重工業から知識集約産業に移行する、その過程において消化をいたします、こうは答えてみましたが、現実的にそんなうまく吸収できるのかどうかということになると、時間がなかったのでそこまではお答えをしなかったわけでございます。しかし、きのうからきょうにかけて、確かに労働力の状態や地域的な状態、いろいろなことを考えながら、やはり政府とか財政主導で、少しものを考えるよりも、進めなければいけないのじゃないかということを考えておりますので、四十七年度予算編成までには、完ぺきなものではありませんが、それなりの一つ方向というものは出さなければいかぬだろう、そうでないと、中小企業がいままで一五%——中小企業の中で二〇%も実質伸びておったものもございますが、そういうものが四分の一になり、三分の一になるというような状態で、社会的混乱を起こさないでやっていけるのかどうかという問題にぶつかってまいりますので、未熟なものであっても一つの青写真をかいて、それに対して予算、法制上の措置も何とかひとつ考え出してみたいという意欲をきのうからきょうにかけては特に持っておるわけであります。これは加藤さんに繊維の問題でこまかく割って御質問を受けると、その余った人、転廃業をする人をどこにやるんだ、こういう問題になりますので、あらかじめお答えをしておくわけではございませんが、どうも真剣に考えなければいかぬということでございまして、御注意があったらぜひひとつ日本全体のために御協力をお願いいたします。
  90. 横山利秋

    ○横山委員 加藤さんに先に予防注射をしてもらっては脱線なんですが、この答申というものが、一つ考え方として一応は出している。それに参画をせられた通産の役人の人たちは、それなりにやはり考えていると思うのです。全体からいいますと、大臣は非常に自由な立場でものをお考えになられるけれども、通産省のすべてのお役人は、いまあなたがはしなくも言った、明治以来の通産行政とあえて私は言うのですが、明治以来ずうっと続いた通産行政、つまり産業を発展させるため助長するための通産省、その感覚でずうっと、いかに近代化されようともその方針で進んでおると思うんですね。それが、いま泣いている子供に菓子を与えることはだれでも知っている、しかし、一体これから通産行政がどういう変革をすべきであるかについては模索をし、迷っており、自信を失っておるのではないかと私は思うのです。それはやはり公害となれば通産省の所管ではない、環境となればまた通産省の所管でもない。通産省というものが産業を発展させるための省だとするならば、通産省自身が自己目的をいま失いつつある、こう私には考えられる。それにとってかわるべき産業政策というもの、新しい時代における産業政策というものがもう出てこなければ、少なくとも考え方だけでも政策の中に柱が出ていなければだめではないか。ちょっと時間が長過ぎましたけれども、たいへん有益だと思いますので、私もあなたの意見を聞いたのです。それと同じように、それの土台の上に中小企業政策もまた出てこなければいけないのではないかと思うのです。  そこで、今度は中小企業オンリーの問題に移りたいと思うのですが、一体中小企業とは何だ。それは協同組合法なり団体法によって定義をされている中小企業である。資本金五千万、三百人というものである。しかし私が思うに、なるほど一千万のときもあったけれども、五千万になってから今日まで数年たっている。課税最低限というものは年々歳々向上をしている。あのときに自分は給料四万円であった、いまは物価が上がっておる、給料も上がっておる、大体六万円の課税最低限、こういうことで、ずっとその水準の人を連れてきているわけですね。ところが五千万の中小企業は、もう物価も上がり、資本金も上がって上まできておるのに、やはり法律定義の五千万はここにあるわけですから、あの当時五千万といった中小企業、はそのランクが下がっておる。物価の情勢、産業の発展の情勢からいってランクが下がっておる。五千万、三百人によって救済さるべき水準が下がっておる、私はこう思うのです。これが私の理由の一つです。  それからもう一つは、ドルショックで、現場をずっと回ってみました。商店や工場を回ってみました。泣いている子は確かに零細企業です。けれども、零細企業にさっき言ったように金を貸しますよ、貸しても返さなければならぬ。税金はまけますよ、去年は赤字でしたからだめですわ、それよりも私の親企業があぶないんですから仕事がないんですよ、こういうわけですね。その親企業も一部、二部に上場されているような親企業ならまだ方法はあります、多角的に経営しているから。しかし五千万だって、そのランクでは救済されておる中小企業がいつまでも五千万ですから、物価も上がっているし、資本金も多少はそれに見合って上げていますし、そういう法律上の中小企業よりもちょっと上のところがいま一番ドルショックの影響が強い。直接にもろにきているわけですね。ところが、この法律案は、御存じのように現在中小企業と規定しているものは全部包含するけれども、たとえば多治見の陶磁器の九百人ですか、使っておっても、これは包含します。現在の法規におけるすべての中小企業は包含するけれども、しかしそれ以上は、おまえはだめだ、菓子をやらぬということですね。ところが、その菓子をやらぬといわれるところがドルショックの直接的影響を受けているところ——加藤さんからあとで御意見があるかもしれませんけれども、たとえば繊維機械メーカーです。私は、繊維機械メーカーを六十社くらい調べてまいりましたが、この中で、私どもの地元の愛知県で、京和機械が六百人、資本金が九千五百万、東久製作所が一億、日本繊織機械が従業員三百四十八人、一億、平野金属が人数六百人で三億五千万、平岩鉄工所が三百七十六人で五千万、山田ドビーが四百五十人で六千万、鈴木式織械が四百七十人で八千二百五十万、こういうところが繊維機械の単独メーカーなんですね。私は一例としてこれを出したんですけれども、この種の中堅企業というものは一体どうなるんだというのが私の第二の理由なんです。  そこで、この際、もう中小企業という定義について再検討をする機会ではないか、こう考えます。もっとも、この問題については社会党としては再検討を加えるべきである。ただし、ということがいつもついているわけです。言うまでもありません。それをやりますと、その政策のフェーバーが全部上のほうにいってしまうから、零細企業に対する恩恵が上へ吸われてしまう。したがって、中小企業零細企業については必ずその歯どめをどこかでかわなければなりません。その歯どめについての私の意見はいろいろありますが、時間がなくなってまいりました。歯どめについては別だけれどもこの際、基本的に中小企業の定義を再検討するべき時期、条件ではないか、こう考えますが、いかがですか。
  91. 田中角榮

    ○田中国務大臣 いまの御発言を二つに分けて御答弁申し上げなければいかぬと思います。  その一つは、中小企業という法律上の定義というものを拡大できないか。これは常に御発言もあり、われわれ自体も絶えずそういう議論に直面をいたしておるわけでございます。とにかく中小企業者であった当時、一千万から五千万に引き上げられたころから考えてみても、五千万ということよりも、日本人の所得も上がっておるし、いろんな状況が変わったのじゃないかということで、中小企業の法律的な考え方を上げなければいかぬという考え方、これは私も理解できます。理解できますし、また税法等においてはもうすでに一億円以下は中小企業ということにしておりますから、そういう意味ではこれから中小企業という定義はひとつ専門的に考えていただかなければならない問題だと思います。これは審議会その他の結論を待って私たちもそれに対応してまいりたい、こう思います。  もう一つは、今度の法律は、これはこの法律の中の中小企業というものを広げるということではなく、現にある法律、近代化促進、それから信用保険の法律の適用を受けておるものに対して、この法律によってもっと手厚い保護をしたいということを目的といたしておりますので、この法律で中小企業というものの定義を変えるというわけにはいかないと思います。この法律を審議をしていただくことを契機として、中小企業というものを長くお互いが議論をしているんだから、ここらで結論を出したらどうかという御議論はよくわかります。よくわかりますが、この法律による中小企業というものの範囲は現行法による範囲であるということだけはひとつ御理解をいただきたい、こう思います。これは言わずもがなかもしれませんが、ここらに、私自身も中小企業出身者でございますから、中小企業に対しては何かもっとうまい手がないかということを考えています。拡大をすると、みん主力のあるところにいってしまって、この制度が真に中小企業を育成する制度にならないおそれもある。  これはやはりいろんなことを考えると、私はここで私のほうから提案するようでまことに恐縮でございますが、中小企業というのはほんとうに問題があると思う。それはやっぱり中小企業の一番の問題は、いままでは金融と税だけである、こういっておりましたが、私はそうじゃなく、やっぱり下請だと思うのです。下請代金と下請契約というものが、自動的になかなか元請と下請との間では法律的な争いなどできないのです。制度幾ら完ぺきであっても、そんなことできるわけない。そんなことをやればその人にその次から注文しないわけでございますから、これはそういうことで何か手形法というのがありますように、中小企業、零細企業に対する支払いと契約というものを保護するためには、いまの支払い遅延防止法よりも一歩進めたあの優先債務として、——どんなに会社更生法を受ける場合とかいろんなことがあっても、税金はまず優先債務になります。政府関係機関からの貸し出し金も支払い順位は非常にいいのであります。同時に、今度労働組合に対する未払い賃金もこのごろは非常によくなっている。中小企業の下請代金というものは、未払い賃金と同じものだろうと私は思うのです。そういう法制上の整備が行なわれ、しかもそれが社会的な定着をした制度になるということが一番いいのじゃないか。私も、中小企業を特に通商産業大臣となってから急勉強したわけじゃないです。どうもきめ手のない中小企業、零細企業対策には、そういうものに踏み出していくことが一番いいのじゃないかというようなことさえも考えておるのです。ですからこれはひとつこれからもいろいろ御質問も伺うかと思いますし、通産省でもひとつ積極的に勉強いたします。そういうことできょうのところは御理解をいただきたい、こう思います。
  92. 横山利秋

    ○横山委員 きょうのところは時間がなくなってしまいましてたいへん残念に思いますが、法案についてこれだけは大臣がお考えを願わなければならない点だけを少し申し上げたいと思います。  一つは、転廃業について銭を貸そう、あるいは税金をまけましょうとこういうわけですね。転業及び廃業なんです。ところが中小企業がまず最初にするのが事業の縮小なんです。減産じゃありませんよ、縮小ですよ。事業をまず縮小をしようというのが、この法律には恩恵がないではないか。一番最初考えることは事業の縮小ではないか。なぜ縮小が入らないか、これが一つです。  それから二つ目は、転換計画について知事が認可をすることになっておりますね。横山商店、横山製作所の事業転換計画について一々知事が認可して何になるか。そんなところは銀行のほうがよく知っている。銀行のほうがよく審査をする。知事が認可をすれば無条件で銀行は銭を貸すか、貸しません。どうも役所の考えることはそういうところに問題がある。思い切ってそんなものは要らない、知事の転換計画の認定なんか要らない。ただ、残るところは税金の問題なんですね。そこのところが困るけれども、何かこれは別の手段を考えるべきではないか。何かといえば、県知事、市長の認可をという、環境衛生金融公庫の認可でも私はあんなものは要らないと思うのです。  それから、その次の問題としては、構造改善について再検討を加えるべきではないかということなんです。その中で一番ポイントになりますのは、繊維については機械をぶっこわしたら銭をやる、こういうことになっております。ところが繊維機械なり洋食器なり、いろいろ問題のあるところには、こわすべき機械が登録されていないから銭をやらないとくる。いまそういうことですね。おわかりのとおりですね。それがどうにも私は納得できないのです。なるほど登録してあるから、それをこわしたら繊維には銭をやる。今度おやりになろうとするのは十万台ですか、やみ織機幾らもあることは御存じのとおりですね。ごまかすことができるかどうかは別にいたしまして、多治見の陶磁器はそのおかまが登録してないからこわしても銭をやらないとくる。私はずいぶんそれで自分なりに考えてみたんです。何とか方法がないか。繊維機械をこわしたらやるといったって、結局は補助金ですよ。いろんなことを言っても補助金ですよ。そんならほかのところも補助金を出せる道はないかということなんです。私はその意味でいろいろ考えた結果、みんなが集まって構造改善をするときに、政府補助金を思い切ってそこへ出す。その構造改善の主体のところに思い切って金を出す。その金が事業をやめた人、縮小する人、そういうところへ回っていくようにする、こういうふうにしたらどうか。また構造改善そのものにつきましても、全国一律でなければいかぬとか、あるいは広範な業種でなければいけぬとか——時間がありませんのであまり言いませんが、もう少し地域的にもあるいは業種的にも弾力性のあるようなやり方をしないと、構造改善はちっとも進んでいきません。百年河清を待つようなものです。もう少し構造改善というものが、この激動期にふさわしくずうっと進んでいくような弾力性のあるやり方をしなければ、お役人まかせでは分厚い資料ばかりとって、時間ばかりかかって、金ばかりかかって構造改善が進まない、こういうように思います。それら、実はたくさん申し上げたいことはございますけれども、時間の関係でいま申しました点だけひとつ御意見を伺いたい。
  93. 田中角榮

    ○田中国務大臣 具体的なケースに対しては政府委員からお答えをさせますが、確かにあなたが御指摘になったように、当面する現実等はいろんな問題ございます。そして、どうもかかる処置では中途はんぱじゃないかということはよくわかります。構造改善の問題をあとから申されましたが、構造改善をしてまいらなければならない。これは国際競争力をつけるためにも企業の合理化を行なうためにもでございますし、これは当然やっていかなければならないことでございます。しかし、構造改善そのものも、ただいままでのような考えだけで構造改善政策をそのまま進めていっていいのかどうかという問題もございます。そうでなくても、当面としては整理しなければならないような労働者も出てまいります。それが構造改善を行ない企業合理化を行なっていくことによってプラスされるというような社会的な面もありまして、そういうようないろんな面から構造改善というものも原則的には当然進めることでございますが、その実施の過程において、いままで考えなかったいろいろな条件も検討しなければならない、こう思います。  それから一部縮小——転廃業の場合は当然でございますが、転廃業につながる——転廃業は一年たったらしなければならぬと思うが、しかし半分だけやめてみてみようというのがあるのです。繊維なんか特にあるのです。私がきのう申し上げたのは、いま繊維対策などが具体的に私たちのほうでできないというのではなくて、業者自身が迷っているのです。五年ぐらいかかりますよと言ったのはそれなんです。ですから、だめだと思うけれども、半分しか縮小できない、全部やってしまったらほんとうに労働対策もできないし、たいへんなことであるという問題もございます。そういうところでもって、いま法律的なたてまえからいうと、転業にすぐつながるということでない縮小はこれは見るわけにはいきません、こういうことになっていますが、これは具体的にこの法律の実行の過程においてどういう救済があるのか、どういうふうに調整できるのか。これはまだ私自身も疑問にも思っておりますし、そこまで法律を拡大していくということも技術的に見てなかなかむずかしいようです。だから、どういう状態でいま御指摘になられたような事態、特に縮小をやるからこそ生きられるのだし、縮小をやる過程を通らないと転廃業にも結びつかないという一つの過程、これをどういうふうにするのかという問題に対して、私もいまここであなたが納得するようなお答えができませんが、そういう事実があることは私承知しておるのです。ですからこの法律は、いま二つの法律を適用しておる業界に対してもっと手厚い保護をしようということを目的として提出されておりますが、もっと中小企業に対しては対策を立てなければならないとしたならば、そういうものの中でどう救済をするのかという問題は起こってくる問題だと思います。ですから、どのくらい事務当局がこの問題で考えておるか、ひとつ答弁を聞いていただきたい。私も納得しなければ、そこで新しい問題として私がまた答弁いたします。
  94. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 補足して御説明いたします。  知事の認定につきましては転換計画が適正であるということを認定するということで、手続はきわめて簡便にいたしますし、また大体産地を形成しておる場合が多うございますから、知事があとあとのめんどうも見る、あるいは指導をしていくというつながりを持たせるという意味合いにおいて、こういう認定制度を設けたほうがよかろうというように考えたわけでございます。  それから、構造改善の再検討については、構造改善事業というものは、この際ますます推進していかなければなりませんけれども、内外の経済情勢がこれほど変わっておるわけでございますから、中身あるいは運用のしぶり等については、十分再検討しなければならない、あるいは見直しをする必要がある、このように考えております。
  95. 横山利秋

    ○横山委員 長官は大臣のお話を聞いていらっしゃらなかったようですが、それでは、時間の関係で注文しておきます。  いま大臣がお答え願いました縮小問題ですね。一番ポピュラーなのが転廃業でなくて縮小なんですから、その縮小がこの法律で救済できるかできないか、もう一回念査をしていただく。救済ができないとすれば、私は法律を修正すべきだと思います。この点について、中小企業庁としてすみやかに結論を出してもらいたい。いいですか。
  96. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 事業の縮小に伴いまして、離職者が出すした場合には、第九条の就職対策の条項が本法によりまして適用になります。しかし、基本的には先ほど大臣から御答弁のありましたとおりでございます。
  97. 横山利秋

    ○横山委員 わかりました。それで、私、おそらくこのことについては同僚の皆さんも御異存がないと思うのですが、大臣もああいうふうにお答え願いますので、それでお願いですが、委員長、ひとつ恐縮でございますが、中小企業庁と打ち合わせをされまして、この問題に善処をされるように、修正が必要となればどのように修正したらいいか、御検討を願いたいと思います。  それから、中小企業庁にお願いしておきますが、構造改善をいたしております業種——特定業種、指定業種すべて、簡単でけっこうでございますから、どんな業種がいつどうなって特定業種、指定業種になっておるか、全部一ぺん資料として提出を願いたい。  それから二番目は、この法律案は、本文だけ見ますと非常に抽象的な、見通しのある場合とか、著しい場合とか、認定だとか、非常に抽象的な面が多うございます。この間調査室からいただきました問題点の参考事項を見ますと、かなりそのことがわかるわけでありますが、少なくとも正式に本委員会に、できますならば政令案それから法律の解釈、オーソドックスなものをひとつ出していただきたい。  以上二点要望いたしまして、私の質問を終わります。
  98. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次は岡本君。
  99. 岡本富夫

    ○岡本委員 最初に、いま審議されておりますこの法律案の題名ですね、国際経済上の調整措置実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律案、こういうようになっておりますが、国際といえば、これは全世界と読めるわけでありますけれども、中を見ますと、アメリカ合衆国だけになるんじゃないか。このどこが国際になるのか。どうも私はこの最初の通産省の考えと申しますか、あるいは中小企業庁の考えから、非常にこの法案の適用範囲というものが縮小されたんではないか、こういうようにも考えられるわけでありますが、その点について、ひとつその経過あるいはまた大臣としてはどういうふうに考えておるか、お聞きしたいと思うのです。
  100. 田中角榮

    ○田中国務大臣 当面として考えますと、ニクソン新政策、また変動為替相場制移行という問題でございますから、アメリカの状態から直接影響を受けるもの、こういうふうに見られると思いますが、いまいろいろうわさをされておりますとおり、平価調整が不可避であるということになれば、これはまださだかに、いつまで、どのようなことで行なわれるということにはなっておりませんが、やはり常識的に考えて、平価調整というものは避けがたい国際的情勢だろうということが考えられますので、そうなればアメリカだけではなく、国際的な変化に対応するよう事態に対処したい、このように理解ができるわけでございます。
  101. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、今後起こってくるところの平価調整、円の切り上げ、こういうところからの問題であるから全世界に波及する。同時にまた、まだそこまでは行ってはおりませんけれども、EC諸国あたりからも課徴金、こういうようなことになってくると、これもやはりこの法律が適用されるのか、これについてひとつお答え願いたい。
  102. 田中角榮

    ○田中国務大臣 アメリカの課徴金さえやめていただかなくちゃならないので、ECが着た別に課徴金を取るなどということは非常に困ったことでございまして、そんなことは絶対にないようにしてもらわなければいかぬし、ないようにいたしますが、もしそのようなことがありとせば、その場合当然この法律の適用を受けるわけでございます。
  103. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで最初に、中小企業政策、通産省の産業政策が非常にまだこんとんとしておるのではないかというような先ほどの横山委員の発言もありまして、また大臣としても、これは今後非常に考える必要があるということでありますが、そこで、現在たくさんな中小企業対策の法律があって、これが実行される場合に、予算の範囲ということで予算がきまっている。この予算が零細企業には行かない。ほとんど、何といいますか中堅企業。また銀行のほうも選別融資をしまして、決して金の必要なところには行かない。またこれは非常に暴言のようにも聞こえるんですけれども、金の必要なところにはなかなか貸せないのですよ、まあ必要ないようなところには貸せるのですよ、というような政府機関の話もあるのです。私、直接聞いている。そこでやはり現在は、零細企業あるいは中堅企業——中小企業の上、普通の中小企業のことですね。それからもう少し援助すると大企業に移行するというか、成長していくという、こうした三つのグループに大体分かれると思うのです。したがって、今後の中小企業対策については、この三つのグループに対するところの適切な政策でなければならぬ、こういうふうに私は思うのですが、大臣の御意見を承りたい。
  104. 田中角榮

    ○田中国務大臣 御指摘の事情、よくわかります。とにかく零細企業中小企業に、中小企業は大企業にだんだんと育て上げたいということでございますが、そこには、もう少し勉強しなければいかぬという問題もあるかもしれません。これは、中小企業を全部大企業にしてしまうということは、必ずしも可能でない場合もございますから、そういう意味で、適正規模というものはそのまま定着させるようなことにしなければならないであろう。そういうことからいいますと、全部をレベルアップするということを目標とした制度が完ぺきなものであるかどうかということにもなるわけでございます。  ただ、いままでも、あなたがいま御指摘になられたような零細には、金融状態から見ますと無担保融資というのがございます。中小企業には、中小企業金融公庫制度をつくってある。あとは組合金融ということで、商工中金だとかそういうものをつくっておる。系統金融としてランクに合うような政策を行なっているはずでございますが、どうもそれだけでは完ぺきだとはなかなか御指摘にならぬわけでございます。現実問題としても、指摘すべきいろいろな問題があると思いますから、これは実情に合うように検討してまいるということだと思います。  ただ、先ほど横山さんが述べられたように、いま自然発生を是認しております。全く無差別自由ということでございまして、どうも国際的にペイするものもしないものも、しかも一次産業、二次産業、三次産業の別も一切一くるめで中小零細企業といっておるわけでございますので、こういうものをもう少し整理をする必要があるかもしれません。こういう問題に対しては、私もひとつ検討してまいりたいと思います。
  105. 岡本富夫

    ○岡本委員 大臣、ちょっと私の質問が聞き取れなかったのか、あるいはまたお聞き違いだったかもしれませんけれども、私は零細企業を全部大企業にせい、こう言っているのじゃないんです。大企業は、中小企業、零細企業の恩恵を受けているみたいなものですよ。品物が安い、あるいは工賃が安い。そして自分の会社でやれば高くつくもの、こういうものをそこに出しているわけですから、非常に安くできる。日本の産業としては九九・四%も中小企業だ、だから日本の産業というものは、中小企業あるいは零細企業でもっている、こういうように言われても差しつかえないのじゃないかと私は思うのです。  しかし、零細企業は零細企業なりにいいところがあるんです。家族でやりますから、納期に間に合う、安くできる、あるいはまた小回りがきくわけですよ。注文しているところは中小企業ですね。それからまた、たとえば政府としても、投融資をやるところの中小企業融資会社がありましたね。これで大企業にもっていこうとしている。現在でもそのような考え方を持っているかもしれませんが、たとえばこれだけの予算は零細企業、これだけの予算は中小企業にと、こういうようなもう少し明らかな縦分けでもあればいいのだが、中堅企業あるいはまた零細企業まで行かぬところで、全部金融措置がとまってしまう。いま無担保、無保証がありますからと言いますけれども、こんなものはなかなかやらないのです。大蔵省あるいは通産省のほうで保証協会に、これだけの準備金はみんな使ってもいいから保証してやれ、こういうことになれば保証すると思うのですけれども、なかなかそうではないんです。したがって、そういった三つのグループに適切な政策を今後とらなければならぬじゃないか、こういうように私は思うのですが、いかがですか。
  106. 田中角榮

    ○田中国務大臣 方向としてはそのとおりでございますし、現行もそういうようなことを考えてやってきておるわけです。零細に対しては国民金融公庫がやるようになっています。それから中小企業には中小企業金融公庫がやることになっている。それよりも上の、大企業中小企業との中間でもって、担保力もあり組合が共同で責任を負っていける範疇のものは商工中金でやろう、こういう組合金融でやろう。大企業は、その金融の大宗は都市銀行でやろう、こういうように制度上はできておるわけですが、ただ、それで完ぺきではないじゃないかというところに御指摘があるわけでございますから、そういう問題は、金融、税制、下請代金支払遅延等防止法、なお、私が先ほど申し上げたような新しい問題も取り上げて、中小企業、零細企業の育成強化に資するようにしていくということだと思います。
  107. 岡本富夫

    ○岡本委員 これはもっとこまかく説明したいのですが、時間の関係がありますから………。  そこで、もう一つ、せっかく大臣がおいでになったので申し上げたいのですが、いまアメリカから盛んにいろいろなことを押しつけられておる。これはアメリカの経済政策の失敗である。その失敗によってドルが流出した。あるいはまた繊維問題にしましても、南部のアメリカの企業努力というものが現実に不足している。そういったいろいろなものが、結局日本に押しつけられてきておるわけであります。きょうはまたコナリー長官が来ておりますけれども、アメリカはどうも、これを見ますと——この間、通産大臣は繊維の問題で相当御苦労なさったのですが、ニクソンを中心にして、向こうはがっちり組んでいて、それで一人一人使いが来るわけです。そうして、使いが来たら、その特使は、自分の成果をあげなければならぬからというので、相当きびしいことをやっておる。ところが、それを迎え撃つところのわが国は、諸官庁のなわ張りと申しますか、円の切り上げ、ああ、これはもう大蔵省の問題だ、ああ繊維か、これはもう通産省だ、こういうふうにして、お互いにどろをかぶるのがいやなものだから、押し合いしているような感じが国民はするわけです。がっちり組んで、たとえば繊維でこうなったんだから、今度は円は切り上げないんだ、あるいはこうだというような、がっちりした体制がどうも不足しておるんじゃないかということが、国民の偽らざるところのいまの心配の種なんです。ですから、その点について、いまどういうような状況になっておるのか、ひとつ御意見を伺いたい。
  108. 田中角榮

    ○田中国務大臣 官庁間のセクショナリズムがないとは、これはもう申し上げられないわけでございます。これは存在すると思います。しかし、国益を守るということについては表向きのようではないのです。これは、通産省と大蔵省との間を一つ例にとってみましても、通産省はこういうことをやるつもりである、大蔵省は反対である、こうは言っておりますが、前の晩にちゃんと会って、何とか二、三日うちに話をつけようやというようなことをちゃんとやっておるわけです。そんなことがなければ、連帯して国会に責任を負えるわけはありません。ですから、これはまとまらないようだけれども、まとまっておるということを考えていただけばいいわけでございます。しかし、対外的にももっとしっくりしたほうがいいじゃないか、内容だけではなく、表もそのほうがいいということもわかりますから、これはまたひとつ、閣内がばらばらの印象を持たれないように十分注意をいたします。  現実的には、経済問題に対しては、閣僚はちゃんとした連絡をとっております。ですから、今度の日米繊維交渉のイニシアルを行なえば、私がさしあたり織機十万台を買い上げをいたします、こう言えば大蔵大臣は反対をいたしませんし、また大蔵委員会で説明を求められても、通産大臣が言っておるのでございますから政府はそのとおりいたします、こういうことでちゃんと話はついているのです。  それで、対米貿易が減る場合に、今度は輸出の多様化をはからなければいかぬ。多様化をはからなければいかぬといいながら、また輸入の多様化をはからなければいかぬといいながら、海外に対するプロジェクトなどに対しては半年間もうんと言わないというようなことがあったので、今度そういうものにはタイムリミットを置いて、事務当局が一週間か二週間のうちで話がつかなかったら関係閣僚三人できめようということで、この間からアルゼンチンの問題もきめましたし、近くまたイランの場合もきめられると思いますし、その他いろんな問題がばたばたきまっております。それは大蔵、外務、通産三大臣が会って、ひとつピッチを上げよう、こういうことでございますので、アメリカのこの問題が起こってからそんなに各大臣が別々かってに自分の省だけの立場でものを言うということではなく、担当国務大臣として責任をもってものの処理に当たろう、こういう体制を整えておりますので、またいろいろ御指摘がございましたら言っていただけばこちらも身を正す、スピーディーにものが片づけられるように、タイムリーに事が行なわれるような体制を整えるために努力をいたしたいと思います。
  109. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうですか。そうすると大蔵大臣とも腹はきちっと合っているし、いろんなことが全部合っている。そうしますと、あした昼からあなたがコナリー長官にお会いになるだろうと思いますが、円の切り上げ、これは要求があると思うのですが、これに対してはあなたはどのくらいのところを踏んでおるのですか。そこのあたりをひとつ……。
  110. 田中角榮

    ○田中国務大臣 新聞を見ますと、円平価の切り上げなどは要求しないと向こうさんが言っているようでございまして、一日か二日の会談で何%切り上げてくれなどという話が出るものではないと私は思います。円平価の調整というのは、これは円だけではなく、円が切り上げられる場合には一体ドルはどのくらい切り下げるのか、その場合EC諸国は一体どうなるのか、特にドルの切り下げを非常に強く求めておるフランスも一体話に乗ってくるのか、いろんな問題があります。ですから日本だけの問題でなくて、最低考えても日本、ドイツ、アメリカ、カナダというような直接影響を持つ利害関係のある国々というようなものの意思さえもまだ統一されておらないわけでありますから、ここで円平価がどのくらい切り上げられるなどという話が出るとは思っておりません。だからここで申し上げられることは、いずれにしても多国間できめられるものである。多国間というのは、この問題に関してはIMFの十カ国の蔵相会議というものできめられるものだ。これはコナリー氏が議長をやっておりますから、二十日ごろ招集をするかどうかといっております。招集がされれば水田大蔵大臣も当然出席をするはずでございます。今度はワシントンでやるような話でございました。ですから、そういうことをどの程度水田・コナリー会談でやるのか、私としては現時点においては承知をいたしておりません。私に対して幾ら、どうだなどという話は出てこないと思うのです。私には、日本の自由化の状態とか、個別にアメリカに出ておる、あまり出過ぎておるものは一体来年どうなるのかというようなことだと思いますので、そういうものはちゃんと勉強できておりますし、平価調整が行なわれる場合、五%なら日本の商品、日本の産業界にどのくらい影響があるか、一%増しくらいにどのくらい影響があるか、これ以上などは絶対だめですというくらいな勉強はしております。しておりますが、向こうがそういうような指標でも教えてくれというなら別でありますが、何も言わないのに日本で考えた学問的な問題まで私が話に出すということもないと思います。ですから、私とコナリー氏との会談は一時間半か二時間予定しておりますが、これはやはり自由化の現状——資本の自由化と物の自由化というものに焦点があるものと思います。もう一つはノーマルな対米輸出、日米間の貿易の長期的見通しということが二人の間ではやはり一番議論しなければならない問題だろう。繊維のように、求められてというのではないのでございまして、今度は私のほうから少し求めようかとも思っておるわけでございます。
  111. 岡本富夫

    ○岡本委員 先ほどお答え願ったのといまお答え願ったのと、どうもそこらがもう一つぴんとこない。日本の佐藤総理を中心にして、ではどこまでくらいならば平価調整に応ずるか、あるいはこうなったらこうするとか、やはりケースをかっちりきめて迎え撃つ、あるいは当たる、こういうようにしなければ、ああ平価調整か、それは大蔵大臣だ、あるいは輸出規制、これは私のほうだ、こういうようなことをやっておったのでは向こうの思うつぼですよ。だから先ほどあなたのこの法案の説明のときに、平価調整をおそらく言うてくるのではないかというようなこともここに入れるということは、やはりいたし方ないのじゃないかという腹づもりもあるし、またそういう対案——これは相手のあることですから、それこそ国益というようなことになりますけれども、ですからここで何ぼくらいだというようなことは聞くことはないのですけれども、どれだけ円の切り上げということになるならばこれだけの影響があるからここ以上は譲れないとか、それは外交ですから若干かけ引きもあるでしょう。米側では一五%と強気で言うてきておるという報道もあるわけですから、その点についてひとつがっちり組んで、そうしてアメリカから一人一人特使が来てやられてしまうことのないような体制を組んでもらいたい。こういうふうに国民は期待しておるのですが、それに対する決意をひとつ……。
  112. 田中角榮

    ○田中国務大臣 当面する平価調整ということになれば、これはIMFの総務たる日本の大蔵大臣が窓口になることは事実でございますが、しかし平価の調整が行なわれるとするならば、その影響を一番受けるのは産業政策の担当省である通産省の関係が一番受けるわけであります。業種別にも受けることが予想せられるわけであります。そういう意味で私と大蔵大臣との間が疎遠なものであるとか、各個に別々な話をするということではありません〇十分意思の連絡をしてございます。ございますだけではなく、産業界にはこういう影響があるぞということはこまかく検討いたしまして、大蔵大臣が平価調整問題に対処して日本が混乱をしないように必要な参考資料は提示をしてございますし、これは各個撃破を受けるようなことはございません。  なお、繊維問題でも、私が当面の責任者としてイニシアルはいたしましたが、私だけで何もかにも、だれにも内容を教えないでやったものではなく——それだったら、十万台を買わざるを得ません、はいそうですか、というわけにはいかないわけでございまして、これは窓口は窓口といたしましても、国務大臣として責任を負えるように、また国益を守るためには連絡し、検討しなければならない問題に対しては十分な調整を行なうということでございます。
  113. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、次にこの八項目。これは円の切り上げを防ぐための八項目の提案をわが国がした。当委員会でも、かって通産大臣に対して私は、この八項目を実施すればだいじょうぶなのかという話をしたのですが、最近相当これは薄れてきておるような状態なんです。この点についての方向、これが一点。  それから、時間がありませんから、もう一つはこれは小さな問題ですけれども保証協会保証した中小企業融資は、これはひとつ金利は必ず大企業並みにすることを要求し、やっていただきたい。  それからもう一つは、今度は政府がとっておる公共事業に対するところの計画をやっておりますけれども、これは景気刺激の一つだと思うのですが、これは非常に緩慢になると思うのですよ。たとえば、道路をつくるのでもなかなか土地の買収いろいろなところで、あるいは地方自治体の補助金になりますから、そういったことで非常に緩慢になる。直接早く景気刺激が必要であるという場合、やはりどうしても福祉政策、たとえば老人福祉というようなところに、いま非常に困っておるそういうお年寄りに対して月二万円くらい出してやれば、直ちにこれは使うわけですから、零細企業あるいはそこらの商店、いろいろなところへ、ずっと下から景気刺激になって速効性があると思うのです。これが一点。  もう一つは、これは時間があれですから、構造改善あるいはまた工場団地の造成をやる。これは公害防止事業団がやったわけですが、この返済がドルショックのために非常に困っておる。せっかく公害のために出かけていって、こういった団地がその返済に困っておるわけですから、この延期。これは振興事業団はすでにやっておるわけですから、公害防止事業団にもそれをやらすべきである。  この四点について、大臣あるいは関係の方がいましたら、答えていただきたい。
  114. 田中角榮

    ○田中国務大臣 八項目につきましては、国際的な情勢の変動いかんにかかわらず、これは基本的表日本の姿勢でございますから、これは実行するということでございます。特に公共投資を進めなければならないということをきめてございますが、公共投資などは、あのきめた当時よりももっともっと別な要因から国民総生産が非常に落ち込んでおるのでございますから、公共投資は補正予算を組んでさえもやらなければならないということでございまして、これはもうやらなければいけませんし、また自由化を進めるということも、これはニクソン新政策が発表されたされないにかかわらず、ケネディラウンドの推進、また自由化政策を進めていくということは日本の立場としては当然のことでございます。また、海外に対して、国民総生産の一%、DACの基準まで早く海外投資を拡大していくということもまた当然でございます。その後、外貨貸し制度その他がございまして、まだ未解決のものもございますが、こういうものも、いま外貨は手持ち高百四十億ドルを越しておるのでございますし、先ほどから述べておりますように、海外投資というものも進めなければならないことはあの八項目をきめたときよりももっと急迫しておるものでございますので、この問題もなお推進をしなければならない、こういう考えでございます。自由化を促進すること、これは当然でございます。八項目の中に洗い直し、まあ手直しということも必要じゃないかと思われた時期もございますが、その後の海外情勢、国内情勢も非常に急でございますし、政府はきのう、八項目はあらためて従来どおり推進をするという確認を行なったわけでございます。  それからあと保証協会の金利、それから構造改善や団地の公害事業団の返済期等につきましては、中小企業庁の長官から、例もあるようでございますし、現にやっているのでございますから、これは事実を申し述べます。  それから公共投資だけではなかなか景気浮揚につながらないので、福祉事業というようなところに金を出したらどうかということ、これはもう予算委員会でも強い発言があるわけでございまして、今度の補正予算はきのう通ったばかりでございますが、これから予算編成期にも入るわけでございますし、かかる発言については政府として十分考慮をしてまいる問題だと思います。
  115. 高橋淑郎

    高橋(淑)政府委員 保証つき金利の引き下げにつきましては、これまでも通達を出して指導しておりますし、現実にも低下をしておりますが、今後とも一そう指導して御趣旨に沿うようにいたしたいと思います。
  116. 船後正道

    ○船後政府委員 公害防止事業団資金につきましては、九月二十三日の閣議決定の趣旨によりまして、輸出関連中小企業資金の返済が著しく困難と認められるものにつきましては、返済の猶予を認めるよう指示いたしておりまして、すでに一件この措置の適用を受けたものがございます。
  117. 岡本富夫

    ○岡本委員 約束の時間が参りましたからこれで……。あとまだ法案の審議がございますので、保留をいたしまして終わります。
  118. 鴨田宗一

    鴨田委員長 川端君。
  119. 川端文夫

    ○川端委員 きょうは法案の質疑が中心になっているわけですが、大臣に、その法案を審議するもう一つ以前の問題として、昨年来の不況の関係がよくなってきたとお考えかどうか。さらに現在の問題はドルショックといわれておるけれども、日本も円高経済に変わらざるを得ないという必然性も一面考えなければならないというこの時点に立っているのではないか。当面の問題としてのドルショック法案を出されようとしているわけでありますけれども、この二つの問題、不況をどのように浮揚化、打開するかという問題と、やはり円高経済という、このどれくらいかということは先ほどからの質疑の中にいろいろ、数字の問題は私は触れませんけれども、何がしかの円高というものを覚悟せざるを得ないという現実をわれわれは踏んまえての対策が法律の中に織り込まれなければならないように思うのだが、これらの問題は後日また別な角度で伺うとして、何か用意されているのかどうか、この点をまずもってお尋ねしてみたいと思います。
  120. 田中角榮

    ○田中国務大臣 昨年来から景気浮揚を必要とするような状態でございました。ことしの中期から第三・四半期に入れば、すなわち十、十一、十二月ごろになれば景気は上向きかげんになるだろう、来年の一−三月ということになれば相当程度上向くものだというふうに政府は見ておったわけてございますが、私は、七月の初め通産大臣を命ぜられましたときから、どうも少し景気浮揚のテンポはおそいということを感じておったわけでございます。当委員会でもその間の事情は申し述べてございますが、とにかく半年くらいおくれても多少上向くようにしなければならないということで、八項目の実施等に対しても積極的であったわけでございます。ところが、その後ニクソン新政策というものが出まして、せっかく上向いたものが全部またたたかれてしまってどうにもならないような状態、経済企画庁は一〇・一%として五・五%といっておりますが、これは年間を通じてこれからいろいろな施策を行なっての話でございまして、現時点においては五・五%というようなことはない、五%以下だと、こういうふうにいっておるわけでございます。私は第三の段階、それも先ほどもちょっと申し述べましたが、政府施策が多少おそまきであったとか、それから去年相当大幅な公共投資予算を組んだわけでございますが、しかし、ことしの四月の統一選挙、引き続いて行なわれた参議院選挙等で予算執行がおくれたなどでもって、結局景気浮揚と結びつかなかったなどということではなく、戦後四分の一世紀たった必然的な日本の国内情勢、中には設備投資の過剰もございますし、いろんな問題がございます。そういうことで、どうも景気浮揚というものはわれわれが企図しておるようにうまくいっておらない。ここでもって、繊維だけではなく、不況カルテルの鉄鋼の申請、鉄鋼だけではなく石油化学その他いろんなものがおしなべて出てきておるわけでありますが、これらのものはみなアメリカのドルショックということを言っておりますが、ドルショックがなくともどうなったのかということ。ドルショックというものを取り去ってみましても、何らかのいわば政策を必要とした状態であったということは事実でございます。それを円高の日本経済と一言にしていえば、外国はそういっておりますし、日本自体でも認めざるを得ないことだと思います。とにかく、この円高と一言でもって言うような状態の基礎となるものは、いろんなものの集積が今日そうなっておるんだ、このように理解をいたしております。
  121. 川端文夫

    ○川端委員 ことばを非常に大事にお使いになって、円高経済ということはなかなか回りくどく御答弁なさっておりますけれども、実は変動相場制によって上がっていることは事実であるし、さらにこれを固定相場制というものにきめようとするならば、日本は三百六十円で幾らがんばったって、国際的に孤立せざるを得ないということは必至ではないか。したがって、円高経済というものは、何もここで憶病にならずに、これにどのように対応できる日本の経済政策をとるかというのが、やはり商工委員会なり通産大臣の任務ではないかくこう思うんで、ことばそのものよりは、やはりどんな困難があっても受けて立つ、こういう立場がいま最も緊要ではないか。  そこで、ドル関係の、いま出されておる「国際経済上の」云々というこの長たらしい法律も、一面においてはドルショックをたてまえにされておるけれども、実際問題としては景気浮揚というものが大切であるという立場に立って公共投資をしようということで、大幅な公債をきのう成立した予算の中にも組まれておるけれども、その中身を見ると、やはり財源不足というか税収の見込みが減少する形において、差し引きたいしたことないという数字になっておることは、言うならば予算委員会等で指摘されていろいろ論議されてきておる問題であるから、ここで繰り返そうとは思いません。しかしながら、あのわずか二千四、五百億の公共投資をふやしただけで、全体の直接受けているドルショックといわれておる貿易上の影響の事業以外のものはだいじょうぶだということを言い切れますか。しかも、年内押し迫ってだんだんと影響は深刻になってきて、従来と違って、いま零細企業の倒産がふえている。なるほど一千万円以上の倒産件数はそれほど目立ってふえていないけれども、私どもの周辺を見ると倒産なり休業なりの件数が毎日ふえておる事実の中に、この暮れを目がけて、暮れから正月にたいへんな問題が起きるのじゃないかと心配をしておるのが、心配し過ぎと言い切れますか。その点をお答え願いたいと思うわけです。
  122. 田中角榮

    ○田中国務大臣 八月十五日のニクソン・ショック、九月、十月の中小企業の倒産件数等見ておりますと、確かに対前年度に比しては減っております。九月は七百二十四件、十月は八百四、五十件、これは九%ないし一〇%減っておる。こんな数字実態であると思っておりません。私自身は、十二月末でもまだこれで何とか年を越せるかもしれない、しかし来年の三月になるともっと問題が大きくなるだろう、そういうことをちゃんと考えながらこれから対策をしなければならないということでございまして、私が七月通産省に参りまして、ここでもって申し上げました対外経済調整法、あの構想から考えるとたいした法律じゃございません。ございませんが、しかしこれから起こり得る状態に対してこれだけの法律を提案して御審議をいただいておるということでありまして、いままでどん詰まりになってやむを得ず出したものとは違って、少しでもあしたを見ながら法律の御審議をいただいておるということでは、ひとつ御理解いただきたいと思うのです。そういう意味ではこれから起こり得る事態というものをいろいろ想定をしておることだけは事実でございます。私はいまでもやはり対外経済調整法というものの必要性をほんとう感じております。そして、これは政府の中でもって意見をまとめるのも、国会の意見をまとめていくのも、学問的な意見をまとめていくのも、なかなかたいへんめんどうな問題とは思いますが、アメリカは農業法二百四条とか銀行法とか対敵取引法なるものとか、いろいろなものがあって、世界的にいろいろなことができましたが、日本は何か、とにかく中小企業対策とかいろいろな転廃業とか、先ほどから御質問のあるような問題に対してスピーディーにタイムリーに政策を行なえるような、そういう臨時的な法律権限でも何か委任してもらえないかということを私自身考えております。ですから、それはどういうことかというと、戦後初めての三十七年、四十年不況というものとは別な意味で、新しい、初めての日本の産業界の不況——私は、いま昭和初年の本を読んでおるわけです。きのう参議院の本会議で問責決議案を受けながらじっと考えておったわけでありますが、ほんとうにこの繊維状態が昭和初年のような状態になったら一体どうなるのかと思って、非常に深刻な気持ちで当時のものをひもといておるということでございまして、全然これでもってだいじょうぶです、そんな考えは持っておりません。  それから、通産省の事務当局に対しても、起こり得る事態に対していつでも対応策ができるように検討、調査を進めるようにという指示をいたしておるわけでございまして、なるべくそういう社会的混乱を起こさないために全力投球をいたしたい、こういう考えでございます。
  123. 川端文夫

    ○川端委員 私はいま、大臣に御質問申し上げる時間の制約を受けておるから、あまり金融等の問題に深く入りません。しかしながら今年に入って、私の住んでいる城南地域の金属加工業等の中小企業は、平均して三割の受注減になっておる。これを耐え忍んできておるけれども、もうそろそろ限界にきておるような感じを受けてならない。こういう姿でありますから、金融を受けようにも、先ほどからも御議論があったように、金を借りても返さなければならないという条件に対してはなかなか手が出せないし、いろんな意味で悩み、深刻なものが感ぜられる。そこで、やはり景気を浮揚していく、前向きの仕事をふやしていくということがどうしても必要ではないか。これも先ほどから議論があったように、幸いに鉄鋼が余ってきているんですから、いまこそ中小企業の体質を改善せしめるために近代化資金等を大幅にふやして、将来仕事をしようという意欲のあるものは、多少は赤字があっても、思い切って設備の改善をやれというくらいのことをやって、景気浮揚をはかっていくのも一つの手ではないかと思うのだが、いかがでしょう。
  124. 田中角榮

    ○田中国務大臣 一面においては元請企業そのものが操短をしなければならない、不況カルテルの許可を受けたい、こういうことでございますから、中小企業、下請企業に寄るしわはとてもいままでのようなものではないと思います。  もう一つは、いままでは財政投資がおそ過ぎたとか、何か明確な原因があって、それで景気が悪かった。ですから、そのために的確な施策をやれば何カ月間で景気浮揚いたします、何%になりますということが述べられたわけでございますが、今度の場合はそうではないということであります。ただ見込み生産で三、四カ月分ずつずっと受注しておったのがとまったのであるから、これが復活するかというと、そこに問題があります。  それからもう一つは、公共投資が先駆をなすものであって、公共投資のあとには民間設備投資が必ず追いついていくというのが原則でございましたが、公共投資を先行させても設備投資がそれ以上に結びつくかどうかということになると、なかなか結びついておらぬのであります。そして一面においてはどうかというと、輸出は押えなければならないような状態でありながら、景気浮揚が行なわれないために輸出ドライブが行なわれておるような状態であります。輸入には全然つながっておらない。いままでになかったいろいろな問題がたくさんありますので、そういう意味ではやはり業者別に、いま御指摘にあったように、とにかく体質改善を行なうために私がいま通産省に強く求めておるのは、来年度からひとつ童業立地政策というものを大いにやろうという考え方、それから大都会においてもそうでございますが、いまこそ住宅地域やそういう中にある工場などを設備の更新と同時に団地に移すとか、そういう問題もあわせて考えないと、どうも景気浮揚、われわれが考えておるような状態にはつながっていかないということでありまして、一部には、どうも童業投資だけではなく、別なものにウェートを置けという議論もあります。私は、いまこそ日本の新しい産業のスタートにすべきだ、こういうことで産業立地政策そのものとも正面から取り組んでおるわけでございますから、現象に対する対応策と青写真の実行過程をずっと考えながらの政策と、あわせて行なってまいります。
  125. 川端文夫

    ○川端委員 産業政策といっても、日本の特殊的な存在である中小企業に対しては、たいしたことはないですから、その点では思い切った施策をとる。七〇年代という大げさなことばは使わぬでも、円高経済下に生きていくための体質改善が急速に進められなければならないという観点に立ってやるという決意ですから、これ以上この時間では詰めませんけれども、ただ大臣が考えられたり、ここで答弁されたようには行政は動いておりませんよということを、一、二点参考に供しながら、お答えをいただきたいと思います。  たとえば輸出前受け金の問題、九月の二十日でしたかの当委員会における国際経済情勢の激変に対処するための中小企業緊急対策に関する決議六項目の中に、為替差損の問題もあるしあるいは輸出成約の停滞を打開するためという、二回にわたって繰り返したことばがあるのですが、輸出前受け金に対しては、これは通産省からいただいた資料ですが、一万ドル未満の前受け金を受けていたものが件数にして九五%、それに対する金額は何と輸出総額の五%しかないわけです。一万ドル以上のものが件数にして五%で、全額で九五%です。こういう状態の中にもかかわらず、一万ドルしか自由にかえられない。一万ドルといえば、なるほど万という数字は大きく見えるけれども、これを日本円に直したって、いまの相場にすれば三百三十万円ですよ。輸出成約をしていこうという中小企業、輸出でもしようという意欲のあるものに政府の親心が三百三十万円しか出せないということで、あとはいわゆる日銀審査とかあるいは大蔵省審査というきびしいいろいろな条件をつけておやりになっていた。先日気づいてこのことを申し上げましたところが、一万ドル以上であっても、船積みの日にちがきまれば、その分に対しては割引する、五万ドルまでの条件と同じにするというお答えを行政当局から聞いておるわけですが、とにもかくにも八月の十五日から二十七日まで、あのような条件において、大手に対してはドルをどんどん持っていらっしゃいといって窓口をあけたのじゃないかといわれるほどのことをしておきながら、総金額において五%しかない中小企業に対して、成約をしたものに対しては一万ドルしか前受け金を割引しないというようなことをやるという考え方自体の中に、私は何かドルの流入を防ぐという名目のために、中小企業のことがわかっちゃいないんじゃないか。大臣は、私は中小企業の出身者だとおっしゃるから、おわかりであるならば、このようなことを再びやらせないように、もう少し血の通ったことをやっていただきたいと思うのです。  またもう一つの問題、時間の関係で別な角度で申しますが、事業転換の問題にいたしましても、おたくの選挙区の経験もおありですが、燕なんかに行きましても自主的な努力をいたしておりました。たとえば、洋食器だけでは生きていけないということで自動車部品をやろうとしてかなりの準備をしたものが、自動車が不景気になって今度はそれも受けられない。片やせっかくいろんな設備をしたものがパアになってダブルパンチを受けているという事実もあるわけです。これは輸出電球の中にもあります。いろんな転換をしても——先ほどからも転換の意見が出ておったのですが、都道府県知事の認可を受けるようなりっぱな文章をつくれれば中小企業ではありませんよ。模索の中から何とかして生き残りたい、立ち上がりたいと努力している中小企業に、こうすればいいではないかという案もなしに、おまえたち案をつくって県知事の判をもらってくればめんどう見てやるというようなことでは、血が通っていないんじゃないか。こういう具体的なことをもう少し事務当局にやらせるように御指導できるかできぬか、大臣に所見を承りたいと思います。
  126. 田中角榮

    ○田中国務大臣 いま御指摘になっておりますことは事実でございます。そこが中小企業のむずかしいところでございまして、私のところへも、転換をした、そしていままで営々十五年も二十年もかかって、そして七、八千万円の金を借りるだけの信用ができました、非常にいい仕事であったし、元請企業もしっかりした会社でありますからということで設備を更新いたしました、いたしましたが、生産は三分の一にしてくれということでございまして償還もできません、こういう問題があります。ですから中小企業というのは、いままで絶えず、先ほどもその問題を横山さんの御質問で申し上げたわけでございますが、中小企業はたくましいたくましいといいながらやっと立ち上がって、それがまた整理をしなければならないようなさいの川原になる。そういうようなことを何回も何回も繰り返しておるということは、もう今度はそういうことをやってはいけませんので、やはり計画的に青写真をかきながら、その一環として転廃業し、新しい企業をスタートするなら、そうすべく、通産省もいままでの通産省のように自然発生のものを調整をしていくというだけではなく、やはり産業そのものを指導するというところまでいかなければならないのじゃないかということで、私は通産省へ参りました第一回の省議で、こう言ったのです。いま通産省にある局と庁が、外局が、昭和六十年にはどうなるか、存在しておるかどうかということをまず自分から考えてくれ、それは通産省が新しい日本の産業行政を担当するためにはどうしてもやらなければならないことである、そして新しい日本産業の青写真をかいて、それに対応する通産省にならなければならないということを、私は第一回に申し述べたわけでございますが、いまでも、述べたときよりももっともっと深刻な状態で、通産省が全部が全部ちゃんときめて、そして年次計画を立ててこうなりますということに責任を負えるようにはならぬと思いますが、少なくとも青写真をかいて、六十年にはこういう理想的な図になります、五十五年にはこうしたい、五十年にはこうしたい、そのためにはいまのスクラップ・アンド・ビルドースクラップ・アンド・ビルドということばは、大臣は絶対に石炭以外には出さなかったのでございますが、私はここでスクラップ・アンド・ビルドということばを出したわけでございます。だから、スクラップになる場合にはあとで自分で考えろというわけにはなかなかいかないのです。そういう意味で、通産省が、都道府県知事また市町村長の意見も聞きながらひとつできるだけのことをやりたい。今度のこの法律の施行後においては、知事とのつながりも非常によくなります。そういう意味ではいままでよりももっと通産省が産業界との間に有機的なつながりを持ちながら、通産省のなさなければならない仕事をやっていけると思いますし、いかなければならないと思っております。
  127. 川端文夫

    ○川端委員 質問を終わりますけれども、いま提案されている国際経済上の問題の不十分な点は後日また委員会指摘するとして、私が強くお訴えしておきたいのは、これに目を奪われて、景気が悪いという去年からの不況の事情を見のがしてもらっては困る。この点は、これと並行して先ほどからも言われている年末資金の問題もあるけれども資金とあわせてやはり産業政策らしいものを打ち出すためにわれわれとも十分話し合いできる機会を後日持たしていただきたいことを申し上げて、質問を終わります。
  128. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次に加藤清二君。
  129. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 お許しを得まして、ただいま上程されておりまする二法案に関連し、特に二法案指摘しておりまする中小企業対策、その対策繊維にしぼって御質問をしてみたいと存じます。  外務省は来られましたか、吉野さんは。
  130. 鴨田宗一

    鴨田委員長 来ています。
  131. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 待つこと久しです。あなたにここへ来ていただきたいために委員長にお願いして、これで五回目でございます。すでにあなたがアメリカの大使館にいらっしゃるころ、内地へお帰りになって繊維協定の問題をあれこれ下田君の身がわりとして詰めなさったそのころから、何度も要求しているのでございます。きょうもきょうとて、いますでに四時十八分で、二時から待つこと久しです。しかし、官房長官御多用中の御身でありながら御出席をいただきましたので、時間の関係上官房長官にまずお尋ね申し上げます。  繊維が自主的規制を行ないました。政府の一部にはこれを一方的自主規制と唱える人がありますが、決して業界が一方的に結んだものではございません。誤解のないように、特に本会議の演説などは気をつけていただきたいものだと思います。これはアメリカ並びにEC諸国、極東繊維関係諸国に及ぼす影響が大きいからでございます。  さて官房長官、あなたの前任者は、さきの自主規制が結ばれましたおりにこれを歓迎する旨の声明を出されました。同時に政府は、そこから発生するところの被害に対して、七百有余億円の予算の裏づけをされました。それは目下進行中でございます。そういうやさきに、自主協定とは似ても似つかぬ一方的なゴリ押しの屈辱的協定、これが仮調印されました。そのときに及んでいまの官房長官は、これもまたやむなしという意味の声明を出されているようでございます。どうも同じ案件について、ほんの時間が違っただけで、こうも趣旨が変わるものかと国民は不可解に思っている次第でございます。したがって、ほんとうはここへ保利前官房長官にも来ていただきたいところでございますが、大役をしていらっしゃる最中でございますから、ひとつぜひ現官房長官によってこの間の消息を明らかにしていただきたいと存じます。
  132. 竹下登

    ○竹下国務大臣 お答えをいたします。  今年三月、繊維業界の自主規制宣言が行なわれた際に、政府もこれによる事態の改善その他について歓迎の意を表したことは事実であります。そしてその後七カ月、十月十五日、私が政府声明を読み上げる、こういうことに相なったのであります。またこのことは、当時幹事長であった田中通商産業大臣が、三月、歓迎の談話を発表され、そして十月、ケネディ大使との間に了解覚書のイニシアルと書簡の交換を行なう、この七カ月間の動きというものは、私は、それなりにきびしい流動する国際経済社会というものを敷き写しにしたものではないか、こういう感じがいたしております。しかし、そのような感想を申し述べて私の責任が済むものではございません。そこで政府声明を発表いたしました。その中に明らかにしておりますごとく、歓迎の意を表したが、一方米国政府はこれに不満の意を表し、特に最近に至って、政府間協定が不可能な場合にはすべての国に対して一律に一方的輸入規制を実施するとの態度をとるに至りましただけに、政府は、長期的に見たわが国の国益とその伸長のために協定の締結もやむなしとの判断に基づいて、相互理解と互譲の精神に基づいて話し合いを重ねた結果、大幅な譲歩を得て今日の了解に達した、こういう経過である、このように正真正銘御理解を贈わりたいと思います。
  133. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 おっしゃったことばはわかりますけれども、理解はできません。遺憾ながら理解はできない。ただ、私がなぜこういうことを聞かなければならぬかと申しますと、田中通産大臣は、国民の輿望をになって通産大臣になられた。私も二十年来ずっと信頼してきているのです。で、まあ佐藤内閣の最高の実力者であるといわれていた。大平、宮澤さんお二人がずっとがんばり通してみえたことなんです。したがって、業界もまたがんばっていただけるだろうと期待をしていた。それが君子豹変してしまった。一体どこにその原因があるだろうか。まずこれほど乱麻のごとく乱れました繊維状況の原因を追及し、これを除去しなければならぬ。そこであなたにお尋ねしたのですが、あなたも一致してやむなしとおっしゃるところを見ますと、それは田中大臣や官房長官のところにはなくて、もう一つ別なところに原因があるのではないかと思われます。したがって、お忙しい官房長官はどうぞ御自由になさっていただけばけっこうでございます。自由になすっていただけばけっこうでございます。  そこで、国益その他の問題につきましてはあとでお尋ねいたしますが、この繊維協定がアメリカ国民に与えた衝撃はどのようであろうか、こういうことについて、私はワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズ、ザ・ウォールストリート・ジャーナル——もとより知人がおりますししますので、何度もここへはおたずねしたこともありますし、その後いろいろ意見を徴してみました。きのうもきのうとて、ニューヨークの某大学のプロフェッサーが私のところに参りましていろいろ話し合いを行ないました。ワシントン・ポストがその間の消息を実にうまくとらえております。読み上げて見ましょう。「繊維クォータの代償」一九七一年の十目十八日です。「ニクソン大統領の日本の繊維輸入規制は、その国際経済政策の最も悪く、かつ危険な面を示すものである。外国では最大限の怒りと不信感を引き起こし、国内では最小限の利益しか生まないこの新しい政府間協定と、ニクノン大統領がこれを遂行したやり方は、事態の好転に役立つことはまずあるまい。」というて、ずっとその粗野な圧力のかけ方から、ニクソン自身の問題からあれこれ述べて、次に「ニクソン大統領自身、公然と期限をつけて脅迫したのである。そして協定が仮調印されたまさにその日、大統領とその随行員一行は、意気揚々とノースカロライナに乗り込んだのである。これは、大統領のこれまでの努力の成果を誇示するためのものであり、それは来年の大統領選挙で南北カロライナ州の選挙人票を手に入れるには大きく役立つが、経済には何の役にも立たない。」途中抜かしまして「東京で発表された米国のステートメントは、米国が繊維に対する一〇%の課徴金をはずし譲歩を行なったと示唆している。しかし、繊維はいまや新しく自主規制のもとに置かれており、日本は繊維に対する課徴金の撤廃が何の意味もないことをよく知っている。なぜなら、クォータのもとに置かれている輸入品には課徴金が適用されたことはないからである。」以後、ずっとございます。これはひとつ、吉野アメリカ局長、その当時の公使さんと一問一答をやる間によく検討しておいてください、大臣。  吉野アメリカ局長さんにお尋ねいたします。ニクソンと佐藤総理大臣との間に沖繩協定が相談されたころ、あなたはアメリカの大使館にいらっしゃったのですか。
  134. 吉野文六

    ○吉野政府委員 お答えいたします。  当時、おりました。
  135. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 一九犬九年十一月十九日、佐藤首相とニクソン大統領の間で始められたと覚えておりますが、そのころあなたはアメリカの大使館詰めでいらしたはずでございますね。
  136. 吉野文六

    ○吉野政府委員 そのとおりでございます。
  137. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そのおりに、ニクソンさんのほうから、一体日本の佐藤さんに対してどういうことが要求されましたか。同時に、佐藤さんは何の目的で、どの場所でニクソンさんとお会いになりましたか。
  138. 吉野文六

    ○吉野政府委員 会談は、思い出す限り、三日間続きました。いずれも佐藤総理は、三回にわたってニクソン大統領とホワイトハウスでお会いしたわけでございます。しかしながら、この会談はあくまでも佐藤総理とニクソンとの二人だけの間に行なわれましたものですから、われわれ随行の者は、内容につきましてはその後間接に承知しておるだけでございます。
  139. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 二人だけで会われたのでございますか。通訳も何もなかったのでございますか。
  140. 吉野文六

    ○吉野政府委員 二人だけというのは、その対話をしたのは二人だけでありまして、もちろん通訳が双方から一人ずつ出ていたと記憶しております。
  141. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 では、あとから書類を見たとおっしゃられましたが、その書類の中に、日米繊維の解決の問題と、自動車を含める資本の自由化を柱とするところの自由化要求がなされたと、アメリカの新聞は書いておりますが、あなたはそれを知っておりますか、おりませんか。
  142. 吉野文六

    ○吉野政府委員 あとから承知したと申しますのは、別に書いた書類をもって承知したというわけではございません。その会談の前後におきましていろいろ事務的に相談がございまして、その間において、たとえば沖繩協定については核抜き本土並みの要求がどのようにいれられたかいなか、こういうようなことについてわれわれは承知した次第でございます。  なお経済問題につきましては、第二日目、第三日目と論じられたと思いますが、これにつきましては日米経済関係一般の問題が主として論ぜられた。しかしながら、その中で、たとえばいま先生のおっしゃられたように、自動車の自由化を先方が要求した、このようなことはわれわれは承知しておりません。またいま記憶にはございません。
  143. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 あなたはここでそれを承知しておりますとか、アイ・アンダースタンドなんと言おうものならたいへんなことになりますが、これについてアメリカ側の報ずるところによれば、佐藤総理はわかりましたと——田中大臣のこの間答えたテークノートではなくて、アイ・アンダースタンドと答えたとなっております。このことをあなたは御存じですか、御存じありませんか。
  144. 吉野文六

    ○吉野政府委員 繊維問題についても話題にのぼったことは、先ほど申し上げましたような事情のため、われわれも察することができた次第でございますが、いま先生の言われたような特別の表現をして、この問題を表現をしたかどうか、こういうようなことについては一切存じておりません。いずれにせよ、当時の新聞もいろいろ書いていたようでございますが、これらもすべて憶測に基づいて書かれたものだと、われわれは承知しております。
  145. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 あなたは私の質問に答えたらいいのです。評論家に来てもらって評論を聞いておるんじゃない。すべて憶測というならば、しからばワシントン・ポストのいま読み上げたこれも憶測から発していますか。そうじゃないでしょう。もしあなたのように、憶測から出たことであって事実無根であるとおっしゃるならば、私はもっと突っ込んで聞きますよ。しからば下田君はなぜあんなにがんばったんです。なぜ牛場君があんなにがんばらなければならぬのです。冗談じゃないですよ。牛場君がどう言っておるか、下田君がどう言っておるか、ちゃんと知っています、直接会って。  それじゃあなたにお尋ねしましょう。  次いで七〇年十月、佐藤さんはニクソン大統領と会っております。覚えていますか。
  146. 吉野文六

    ○吉野政府委員 覚えております。
  147. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 その前日にニクソン大統領から佐藤総理に手渡しされた書類がありますね。それ記憶しておりますか。
  148. 吉野文六

    ○吉野政府委員 ニクソン大統領から佐藤総理に手渡された書類というようなものは、一切記憶にございません。
  149. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 記憶にないとあなたはこの場では言わなければならぬでしょう、この場では。しかしその書類の中に、いま行なわれました政府間協定の内容が全部盛られている。それは一夜さのうちではとてもわかり切る内容のものではない。ところが翌日あらわれた佐藤さんは、その書類を突き返されましたか、そのまま受け取っておられたですか。
  150. 吉野文六

    ○吉野政府委員 この会談もやはりトップレベルの会談でございまして、われわれの想像するところも、また当時の状況から判断いたしましても、そのようなこまかい技術的な細目に入るような話は一切されていないとわれわれは承知しております。
  151. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 補佐が足りない。もしあなたの言うとおりであったとするならば、あなたたちは何のために大使であり、何のための公使であったということだ。重要な要求を突きつけられて、その内容も理解できぬままにどうしてアイ・アンダースタンドになるのです。  最後に、あなたに対する質問はこれでおしまいにしますが、あなたは大森実という人を知っておられますか。
  152. 吉野文六

    ○吉野政府委員 知っております。
  153. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 この協定が結ばれる、協定というよりは話し合いが行なわれる前後に、あなたはワシントンにおいて大森実さんと会っておられますね。
  154. 吉野文六

    ○吉野政府委員 大森実さんとは最初にワシントンに赴任したころからよく知っております。それから私の最近のワシントン在任中もたびたびお会いしたことがありますが、その当時、つまり先生お話しの昨年の十月ごろですね、彼に会った記憶は一切ございません。
  155. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私はここで突っ込んであなたに発言させて、そうしてあなたを窮地に追い込むようなことはいたしません。しかし大森君はペンを取られれば石ででも書くのです、彼は。やがてまたこれが書かれることがあるでしょう。なぜかならば歴史はあとに残った者が書くからです。いずれ、真実は一つしかない、その一つがはっきりするときがあるでしょう。なぜかならば本件は非常に大きな影響を、日本の財界のみならず世界の繊維業界にも、日本の政界にも、はたまたアメリカの政界にも影響を持つことだからでございます。いずれ時あらば大森君にここへ証人として来ていただきまして、あなたと対決をしていただかなければならぬことに相なるかもしれません。私はそのことを委員長に要求しておきます。真実はなるべく早く周知させたほうが、かえって歴史の歯車を正しく回すゆえんだからでございます。  以上です。けっこうでございます、あなたは。  次に、通産大臣にお尋ねいたします。  そもそもこの問題は、だれしももうみんな知っていることでございますけれども、アメリカ大統領の選挙公約から始まった問題なんです。考えてみれば、繊維問題というのは経済問題なんです。それが政治問題に取り上げられてしまったということの発端は、アメリカ大統領の選挙公約なんで、す。次に行なわれるのが、これがニクソンと佐藤密約説。説じゃないのだ。これは事実なんです、だれが何と否定しようと。それは日本の国会ではそういうことになっておるのですから、ここしばらくはそれで通るでしょう。しかし、アメリカへ行ったらもう公然の事実なんですよ。事実だからこそ、ワシントン・ポストがちゃんと書いたじゃないか。時を移さずニクソンが自分の選挙区、南部カロライナへ行って報告をした。軌を一にしているのです。  ところで問題は、あなたが幹事長時代に自主規制が行なわれた。そのときに、時の総理大臣危いしは幹事長が、相手方のニクソンに対して、何か、こういうふうにきめたからとか、これでミルズさんが承知すると言うからとか、この問題についてニクソンさんに連絡をとられたことがありますか、ありませんか。
  156. 田中角榮

    ○田中国務大臣 私からは全くありません。
  157. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 日本政府、外務省からはいかがでございます。
  158. 平原毅

    ○平原政府委員 私の知っておる限り、そういうことはございません。
  159. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 だから、こういうふうにどじを踏んでくるのです。前に前提として佐藤・ニクソンの話し合いがずっと行なわれているのです。それはあくまでカテゴリー別、品目別の規制を内容としたものなんだ。それの身がわりにミルズさんがこれでいいと言うたからといったって、それで官房長官や幹事長さんまでが歓迎の意味だけを日本で言って、そのときにアメリカの大統領に、これでかんべんしてくれとか、これでもう話はついたそうだからこれでオーケーにしてくれということを、なぜやられないのか。それはもう外務省の責任であり、時の通産省の責任である。  さて、それはもう死んだ子の年なんです。今度田中さんは、遺憾ながら過去の歴史これあり、全面降伏なすったわけだ。だれが何と言いつくろおうと、これは全面降伏だ。ところが、全面降伏したとたんに、先に約束があるのです、ミルズさんと。ミルズさんは自主協定でよろしいと言っているのだ。自主協定受けて立つ、私は下院の多数党の一番古いパワー者である、私の腕にはパワーがあると言っているのです。だれにでも言っているのです。大蔵大臣もあなたの名代で会っておられるでしょう。向こうで自主協定でけっこうだと言っているのです。だれに対してでも。そういうやさきに、今度はジューリック——ニクソンさんかだれか知らないけれども、忍者部隊の言うなりになった。それで今度、ミルズさんにこの問題についてオーケーをとられたか、とられないか。
  160. 田中角榮

    ○田中国務大臣 私からは、ミルズ氏に連絡をいたしておりません。
  161. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 外務省はいかん。
  162. 平原毅

    ○平原政府委員 直接に牛場大使がミルズに連絡をとったことはございません。
  163. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 何にもせずの音なしですか。切って、切り捨てごめんですか。そういうことをやるから、よけいにあつれきが生ずるのです。
  164. 田中角榮

    ○田中国務大臣 これは通産大臣になってからのことではございませんが、私が党の幹事長の職にありまするときに、繊維問題に対しては、福田元通産大臣及び党の商工部長が中心になってこの問題を処理してくれておったわけでございます。私は、もうしろうとが中へ入って混線することをおそれることもございましたし、他にもなかなか雑多な用がございますので、このようなむずかしい専門的な問題はこういう党の機関にお願いをしておったわけであります。その後、政府間協定を行なったということに対しては、それまでに何回も訪米をし、政府当局者及びミルズ委員長ともお会いをし、意見を聞いておった党の責任者として、党の機関から正式に御通知を申し上げたというようでございます。
  165. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 ミルズさんの了解を得てオーケーをとられましたか。以前のことじゃなしに、今度協定を結んでから。
  166. 田中角榮

    ○田中国務大臣 オーケーをとられるということよりも、いろいろお世話になっておりましたが、こういうことでございますということを通告をして、御理解をいただくということだったと思いまして、その間の事情、その後ミルズさんがいろいろなところでもって発言をしておられることは、私も承知をいたしておりますので、それは反対だと言われたとも思いませんが、まあいずれにしても、まだその後のことは承知をいたしておりません。(加藤(清)委員「かんかんにおこっておる」と呼ぶ)おこっておられるとすれば、遺憾でございます。
  167. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 だから、だれかが連絡をとりましたか、オーケーをとりに行かれましたか、聞いておる。
  168. 田中角榮

    ○田中国務大臣 その間の詳細は、党から聞いて私からお答えをしてもいいと思いますが……(加藤(清)委員「外務省はいま、してないと言っているでしょう」と呼ぶ)これは外務省ではなく、自民党として、党機関として——党の繊維対策特別委員会及び商工部会として動いてもらったわけでございますから、党の機関として御了解を得べく、いろいろお世話になりましたがついこうなりましてということだと思いますが、その間の事情を報告を必要とすれば、つまびらかにいたします。
  169. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 わかりました。じゃ、それはいつだれがおやりになりましたか。
  170. 田中角榮

    ○田中国務大臣 ですから、その間の事情等つまびらかに報告を必要とすれば、調査の上お答えをいたしますと、こう述べておるわけです。
  171. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 いつだれがどういう場所で行ないなさったかをぜひ至急聞かしてもらいたい。  次に、私は、あなたが期待をかけられていたにもかかわらず、結果からいえばジューリックという人についつい降参してしまった、これに非常な疑問を持つものでございまするが、ジューリックとは、あれは軍人ですか、それとも、あの人は肩書きは何ですか。
  172. 田中角榮

    ○田中国務大臣 彼は大統領特使、顧問ということでございまして、財務省の役人でございます。まあ日本でいえば、大蔵省における局長と次官との間、次官補というように理解をいたしております。
  173. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 ときに国務省補佐官といい、ときに大統領顧問といい、ときに財務省顧問といい、さっぱりわからない。しかもそれは、在日アメリカ大使館を頭越しに越して、もっとも頭越しが近ごろはやりですが、頭越しに越して、あなたと交渉してみえる。これは軍人ですか。
  174. 田中角榮

    ○田中国務大臣 軍人と話はいたしません。
  175. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 重ねてお尋ねする。あの人は軍用機に乗って、日本の軍事基地をお使いになっておるようでございまするが、日本の軍事基地は安保条約によって民間人に貸すことは可能でございますか。
  176. 田中角榮

    ○田中国務大臣 これは政府の特別機でございまして、われわれがアメリカへ参りますときアメリカの軍用機に乗ったり、またカナダの軍用機に乗って軍用飛行場でもって乗りおりをしておるということでございまして、これは政府の外交特権と、こう理解していただければいいと思います。
  177. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 政府の外交特権と答えが返ってくるようなことは初めから承知で聞いておる。しかし一般民間人にはこれは理解できない。神出鬼没まではいいけれども、それが軍事基地を自由自在に使って神出鬼没をしたということになると、これはちょっとその道の専門家までが首をひねる問題なんです。本日これを詰める時間がございませんので、いずれあとで時間をいただいてやることにします。  次に、このジューリックさんとあなたとの間で交渉が進んでいったようでございます。——首振りてみえるから、それじゃあとで……。違うことを聞きましょう。あの相手が二者択一で来た。協定を結ぶか、それとも先ほども答弁にちょっと出ておったようでございますが、一括してやっつけるか。外国にも影響がある——いま官房長官は言いましたけれども、諸外国にまで及ぼすぞと言われた……、それは協定を結ばなかったら、一体何法の何条によって何をすると言われたのですか。
  178. 田中角榮

    ○田中国務大臣 先ほどの問題にちょっと答えさしていただきたいと思いますが、交渉した相手はケネディ特使といたしたわけでございます。そして、言うなればジューリック氏はケネディ特使のアシスタント、こう理解していただければいいと思います。事務当局ということでございましょう。そういう意味で接触はいたしましたが、協定に至る交渉はケネディ特使と行なった、こういうことでございます。
  179. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 こういうときだけことばの仕分けをきちっとなさるのですね、あなたは。それじゃ、これはたいへんなことになりますから順番にいきますよ。私はことばじりをつかんだり、ことばのまぜっ返しをしようなどとは思っておりません。しかしジューリックとの事前打ち合わせ、それもことばがいかぬとおっしゃるなら何でもいいのです。事前座談会でもいいのです。事前に組み伏せられたでもいいのです。ついに組み伏せられたことだけは事実なんだから。何法の何条によって、協定を結ばなければ別なペナルティーといいましょうか、罰則といいましょうか、つけると言ったのですか。
  180. 田中角榮

    ○田中国務大臣 十月一日までに協定を結ぶことができなかったならば、十月の十五日付で七月一日にさかのぼって一方的規制を行ないます…。一体そんな法律があるのか、こういって聞きましたら、ございますということでございます。あなたはまさか対敵取引法をお使いになるんじゃないでしょうな——これは明確にいたしてございます。日本は敵ではないんだからと、こういうこともちゃんと言ってございます。私は、あなたは何者なりやということさえも聞いたのでございますから、相当明確にただしてあります。(加藤(清)委員「そうしたら何と言った」と呼ぶ)そうしたら対敵取引法も大統領権限が行えるように規定してあるものの一つであることは事実でございます……。では、そのほかに農業法の二百四条を使うんでもないだろうな、なぜならば化繊は農業産品ではないから、こういうことももちろん言ってあります。これに対しては黙して答えずということであります。なおそのほかにあるのかと言ったら、まだあります。それは何か、こう言ったら、それはあるんです。それはわれわれが言うのではなく、法律の専門家が、適用する法律はあるのだ、幾つもある、こういうことでありますから、そういう問題に対していま明確に申し上げませんが、あります。われわれもなぜそれを申し上げないかというと、日米間で話し合いがまとまらないということは困るのだ、何とかしてそのような法律を適用しなければならないような事態を避けたい、こういう前提がありましたので、そこまでは言わなかったのである——私はそのように理解をしたわけであります。幾ら何でもこのような法律を適用するとまで言うに至っては、これは私ももう少し日米間の問題に対してももっともっと掘り下げなければならなかったとも思います。さすがにやはりそれは適用したくない、そのような事態は避けたいということでありましたから、準拠する法律は述べなかったわけであります。その後日本の法制局等いろんな——法制局というよりも日本の法律家等が研究した結果、発動するとすればまさか対敵法ではない、同じような法律がある、それはアメリカの銀行法である、こういうことでありましたから、銀行法で繊維を一体やれるのか、こういうことを言ったのは、それは違法でなくても妥当性はどうも考えられないねと、こういうふうに私は省内で発言をしたことは事実でございますが、しかしまあそういう法律は幾多あったことは事実のようでございます。
  181. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 さすがあなたは佐藤内閣の大もの大臣だけはある。すなわち対敵法ではない、農業法二百四条でもない、銀行法でもないということを先刻御承知で話してみえるのですから。対敵法をもし適用したとするならば、これは日本だけ適用はできないのです。もしそれを適用したとすれば、安保条約はくずれていくのです。日米友好通商航海条約もくずれていくのです。しかもこれは日本だけではなくて、同じ繊維輸出関係国に全部適用しなければならぬ羽目になる。それをイギリスがかってやって、チキン戦争になった。ゆえにこれは三カ月たつやたたずして消滅しておる。こんなものははめるはずはない。農業法二百四条、これはコットンにのみ適用するためにくっつけた。あのときに挿入した条項なんです。コットンにのみ適用できる。化学繊維は石油製品なんです。農業製品ではない。だからこれは適用できない。しかも御案内のとおり、一九七〇年法案もこれと同じような内容で仕組まれたけれども、アウトサイダー規制においてこれが不可能である、日本を含めなければ不可能であるということがはっきりしてきておる。それは二つ以上の国が結んだ場合に過半数を占めなければアウトサイダー規制はできないということになっておるから、だから一九七〇年法案においても、これはもちろん上院ミルズさんが良識を持ってつぶしちゃった。銀行法の第何条によるかお答えがない。あれば私、受けて立ちます。それも研究しておりますから。ところでそれじゃいかなる法律によって規制するというのだ。何か知らぬ、わけがわからぬけれども脅迫されたのですか。あなたがそれだけよく先刻御案内であれば、法律によらずして、文句なしに頭からガツンときたら、これは不法行為なんだ。不法行為を一国の通産大臣が受けなければならぬのですか。何法によるのです。
  182. 田中角榮

    ○田中国務大臣 加藤さんもその間の事情、私よりもよく知っておられるわけでございますから御理解をいただきたいのでございますが、実際アメリカは対敵法とか農業法二百四条とか、また銀行法とか、それ以外にもあるんだと、そういうほこりをかぶったような法律さえも持ち出してきて、そして対日一方的輸入規制を行なわなければならないという事態にあったことは事実でございます。それは確かに日米繊維交渉にイニシアルをいたした後に、賛否両論があることは御指摘のとおりでございますが、事実をそのまま認める方々の発言の中で一番やはり大きく、われわれがすなおに受け取るのは、長いこと日米間のガンのようになっておった繊維の問題が片づいたことによって、日米間はまた話し合いの状態に戻った、こういうことは日本人としてもやっぱりすなおに受け取らなければならない問題だと思います。それは裁判でものを争うというような仲にはないわけであります。それは日本の二百億ドルの輸出の三分の一が対米輸出である、その中の六億ドル繊維のうち五%か三%押えられるかもしれないということで、これだけ大問題になるのです。これがいま申し上げたような対敵法やその他どんな法律であるにしても適用されて、日米間がザ・ストップのようになったときに、それは日本のためになるのかならないのかということを、それはやはり深刻に考えざるを得ないのであります。しかも、私は日米経済閣僚会議に出席のときには、政府間協定ということよりも、日米の間では自主規制が最上のものなんだ、これ以上は困るのですということをるる述べたのです。しかし前提が変ってきて、その上になお自動車も、それからテレビも電卓もというような問題が矢つぎばやに提案をされようとしておるときに、繊維問題というものを、やはりただ片づけるというのではなく、日本の繊維業界や輸出を正常な状態に守ることに最善の努力を傾けなければならないことはもちろんでございますが、やはり日米間の話し合いの場をこわしてはならない。何か労働組合の間に、これをやらなければあしたから工場をとめてしまうというか、ゼネラルストライキだ、こういう提案がどっちかからなされたと同じようなことで、そんなことはやれるわけはないからやらしてごらんなさいという感じもわからなくはないが、やはり正常な労使関係を、話し合いの場を守っていくためには、日米間のノーマルな状態を守っていくためには、やはりあの時点においては理屈だけでは通らなかった、通せなかった。それが実情でございます。
  183. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 わかりました。  ことばを非常に吟味なさるあなたが、ポイントに来ると感情論へ持っていきなさる。これは私には解かせないことなんです。  そこでお尋ねしますが、法律的な根拠はない。法律的根拠は何度尋ねてもお答えがない。そこで次の問題、あなたのいまのお答えでございますと、協定を結ばなければ諸外国に悪影響があるだろう、対敵法を適用されるであろう、繊維が譲れば他はもう押されずに済むであろう、これが自民党のこの間の本会議の演説の趣旨ですよ。私はちゃんと記録しておった。そういう感覚が確かに日本の大企業のトップグループの中にあることだけは事実なんです。これをアメリカの新聞評論家、ザ・ウォール・ストリート・ジャーナル、ワシントン・ポストの編集長はどう評しているか。日本の財界の代表がアメリカへ来ると、必ず、オーケーとは言わないけれども、まあやむを得ないという態度をとる。それはたくさんの商売をやっているのだから、こっちで損してもこっちでもうければいいという感覚があるからだ。これではほんとうの民主主義ではないではないか。これはミルズさんも私にそう言っておる。そこでお尋ねする、繊維が人柱になったら他の商品は救われますか、と尋ねた。人柱の意味がわからない。そこでいけにえとか犠牲とか、いろんなことばを使った。その結果オー・ノーと言った。それは東洋思想である、アメリカ政府が日本に向かってあれこれの品物の制限を要求するのは、アメリカの国内における同業者政府に対する圧力の関数によると答えておる。これはケインズの経済学に明らかなところなんです。一人が犠牲になったり人柱になったら他が救われて、他が難をのがれるであろうなんという、そんな観念は、そんな哲学思想はケインズのどこを探してもない。むべなるかな、もうやってきたでしょう、いまこれを結んでおる最中に。家電はどうです。三億ドルのペナルティーを要求されてアメリカで裁判にかかっておるでしょう。陶器のモザイクタイルから壁タイルはどうなっているのです。次から次と、むしろ繊維がいままで防波堤になっていた、これがくずされたのですから、一挙にわれもわれもと同じようなことを要求するであろうということは、向うの政界、財界、新聞界の要人たちははっきりと言うておることなんです。もしも、それじゃあなたが繊維が犠牲になったら他が救われるというのだったら、どうです、アメリカへ行って証言したら。そういうことを約束したから家電の三億ドルのペナルティーはこれでただにしてくれと言えますか。言えないでしょう。  同時に、この問題は諸外国に悪影響をと言う。冗談いっちゃいけませんよ。極東三国も、EC諸国も、日本が一番数量的に多いので、それがやられたら多国間協定になってしまう。それはLTAの繰り返しである。困る、がんばってくれと言うてきておる。結ぶことが困るのであって、結ばないことを要求している。それを逆手にとっておるでしょう。これは大きな間違いであり、国際信義をあやまつもとなんです。それで否と言えるなら、あなたはどうぞ例をあげて言ってください、私の言うことが違うというのなら。コットンの二国間協定がSTAになりLTAになったときにどうなった。とたんにカナダが日本にも要求してきたでしょう。とたんにEC諸国が要求してきたでしょう。EC諸国は、ついに、ペナルティーはアメリカと同じようにはつけなかったけれども、ガット三十五条第二項の援用をいまだに続けておるじゃございませんか。自由平等の恩恵を与えられていないでしょう。そのゆえにこそ欧州諸国へは日本のコットンはほとんど輸出不可能でしょう。及ぼす影響の大なることをよく認識してもらわなければ、いいかげんな論を本会議あたりでやったり、委員会でやってもらっちゃ困るのですよ。これは、アメリカへすぐ知れていく、EC諸国へすぐ知れていくのですから。
  184. 田中角榮

    ○田中国務大臣 まず一つは、繊維をいけにえにしたということでございますが、私も加藤さんと長いおつき合いでございまして、あなたがそういうことばで攻撃する人でございませんから、私もことばじりにどうこうなどと考えておりませ。おりませんが、しかし繊維はいけにえになったんだということは、私にはそういう考えは毛頭ないといりことだけは、これは予算委員会でも述べてございますから、結果的にそうなったじゃないかという御判断に基づく御発言ならけっこうでございますが、私はまだいろいろな状況として、いろんなこういうものもありましたしという、状況判断として申し上げておるだけであって、私が繊維というものを政府間協定によらなければならなかった最大の理由は、日米間を最悪の事態に追い込んではならない、それは、日米政府間協定に移る繊維の問題よりもはるかに大きな損害をこうむるのは日本である、こういう考え方が前提であったということだけ、ひとつ十分御理解をいただきたいと、こう思うわけでございます  なお、この繊維問題が非常に重要であるということを私も理解をしておりましたが、この日米間の繊維交渉を行なった犠牲があまりにも大きい。それを協定にイニシアルをした人は、当然そこに気がついてそれを考えなければならないという御指摘でありまして、それは、私もいろいろ言っても、いまの時点においては行き違い、すれ違いのようになってなかなか交差をしないと思います。しかし、私は、三年たち五年たてば必ずわかると思うのです。同じ問題が日本にも起こってくると思います。同じ問題が三年後五年後——三年後五年後にならなくても、来年韓国や台湾や香港が日本に同じ状態になってきたときに、これに耐え得るために無協約で入れ得るかどうか、日中問題が、門戸を開く場合は、もう時の問題だと思いますが、その場合どうなるのか、同じ状態が日本にも起こってくる。私は、やはりノーマルな状態を守るというためには、二国間交渉もあり得るし、綿製品協定というものが理想的なものではないし、批判の多いものであっても、では綿製品協定を全然しないで無協約で過ごせたかということも考えねばならないことであって、やがては評価をしていただける、また、いただかなければならない、こう思います。
  185. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 大臣、与えられた時間が短いので、話をよそへ持っていっちゃいかぬ。いまの発展途上の国に対する問題については、私はもうこの席上で何度も言うておる。もしアメリカの政府間協定をのむとするならば、しからば返す刀で韓国のしぼりをどうするか、いままでもう何度もやっているのですよ。韓国のしぼりは、いまや日本のオール生産の七〇%を食っちゃっているのですよ。冗談じゃないです。そういう例があまたあるけれども、それはまた別な問題なんです。それをお互いに保護主義でカット、カットをやったら、これはもはやケネディラウンドもなければガットもなくなってしまうのです。それだから、ガットの精神、ケネディラウンドの精神を生かすためにお互いに苦労しているわけなんです。話をはぐらかしちゃいかぬ。  そこで今度は、あなたを責めるばかりが芸じゃないから、あなたが、おれは国益のためにやった、国益のためにやったとおっしゃる。国益のためにどれだけ相手の要望から何かをかちとっていただいたのか。そこをひとつ、まあ項目別でいいです。こまかいことはみんな知っておりますから、委員長にしかられるので、時間がないから。  そこでお尋ねしたいのですが、あの弾力条項。あなたが弾力条項をかちとったとおっしゃる。それからシフトをとったとおっしゃる。それからトリガーも協議事項にしたとおっしゃる。どうもわからないのですね、そこらが。われわれにはわからない。それからもう一つの問題、あの覚書第六項、これをどう考えていらっしゃるのですか。そこから聞きましょう。覚書第六項。
  186. 田中角榮

    ○田中国務大臣 第五項は、基準数量九億五千万平方ヤードでありますが、これは原案は、これが協定が行なわれなかった場合にどうなるかというと、七億七千万平方ヤードだったと思います。これは後ほど、正確な数字が必要であれば事務当局から申し上げますが、この七億七千万平方ヤードを基準として、これに対して年率三%ということでございましたから、これが九億五千万平方ヤードになり、綿からのシフトが一〇%になったことによって、九億五千万平方ヤードプラス五千万平方ヤード、十億平方ヤードになったと思います。そういうような状態と、五%ということと、死にワク活用に対していろいろな制度ができた。まあ、原案よりも六、七点改良はせられておると思います。  これは率直に申し上げますと、この中のほんとうにポイント部分は、最終的に私とケネディ特使の間で、最後のどたんばまで交渉の結果そうなったというのでございまして、ジューリック氏と接触の過程においてかかるものが解決ができるような状態ではなかったということだけ、念のため申し上げておきます。
  187. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 大臣、あなたは私の三倍も五倍も頭のいい人ですから、頭をクリアにして話を進めてくださいよ。  了解覚書というのがありますね。了解覚書、それの第六というところがありますね。これらが、あなたのおっしゃった弾力条項をかちとったの何のというのに当てはまるところなんです。どうぞゆっくり調べてください。私はあなたを立ち往生させようとは思っていませんから。予算委員会と違うのです。おまけにきょうは、新聞記者もカメラマンも全部抜きにしてありますから、ほんとうの話し合いができるように。(「おるじゃないか」と呼ぶ者あり)いや、カメラマンはおりませんということを言っておる。  そこでお尋ねしますが、これ、かちとった、かちとったとおっしゃられますが、これ実行に移されますか。移されないことなんですよ、これ。これはできるなんと思っておったらとんでもない大間違いで、できるというなら、いますぐやってもらいたいことがある。  それは、ここに第六、ちょっと読んでみましょうか。第六のところ、「日本国が、この取極による規制の結果として、合衆国への輸出が規制を受けている第三国に比して不公平な立場に置かれていると考え、または、当該国の合衆国への輸出が著しく増加しているというような要因により他の」—そこか大事だ。「他のいずれかの国と比較して実質的に不利な立場に置かれ、もしくは置かれるおそれがあるときは、日本国は」云々と、こういうことが書いてあるでしょう。わかりますね。これは、私の目から見るときわめておかしな話であって、もしほんとうに他のいずれかの国と比較して実質的に不利益な立場に置かれている、もしくは置かれるおそれがあるときに何々するというたら、直ちにやってもらいたい。なぜかならば、今度規制されました合繊糸、これはアメリカの総輸入量がきめられておるのですよ。欧州は七〇%なんです。日本は三〇%なんです。毛製品にしてもそうです。毛製品にしてもアメリカの総輸入量はきまっておるのですよ。日本は何ぼ、イタリアは何ぼ、イギリスは何ぼときめられているのですよ。そのきめ方がきわめて日本には不利になっているのです。不利になればこそ、コットンの場合でも同じようにLTAで規制を受けながら日本はいまどうなっているとお考えですか、全体のワクの量の五七%しか食えないのですよ。香港は食い過ぎるのですよ。香港は売れやすいのです。だからアメリカのバイヤーはどうするかといったら、日本のものが輸出ワクはあるけれども輸出ができないから、香港へ行ってワクを持ってくるのですよ。そしてメイド・イン・ジャパンのコットンが、メイド・イン・ホンコンという名になって売られているのですよ。それはだれが得をするのですか。香港のバイヤーだけだ。香港のメーカーだけだ。アメリカ国民もそれだけさや取りされる。日本のメーカーもそれだけ欠損させられる。そういうことが具体的に行なわれているのですが、この条項一つをとってみたって不利もしくは不利になろうとするというならば、いま現在不利だからこれを直してごらんなさい。できますか。できないでしょう、それは。
  188. 田中角榮

    ○田中国務大臣 私もあなたほど専門的なことはよくわかりませんが、私が申し上げることをすなおにお聞きいただければ、協定を結ばなかった場合どうなるのか、それは原案でやります、原案と協定を結ぶことによるメリットはどうなったか、それで協定案文がどのように修正されて、一方通行でもって規制を受けることよりもメリットがあったのか、デメリットがあったのかということに関して申し述べておるわけでございます。これは御承知のとおり、この一番初め持ってきたものは、原案は、アメリカ側が規制を行ないますということでございました。そうすると、そのままでもって調印すればどうなるかというと、五%増し、毛は一%といっておりますが、死にワク活用が行なわれないということになると綿製品協定と同じように対米輸出は漸減するおそれがある。ですから五%増しまで完全にとれるとすれば、死にワク活用ができるとすれば、それは自主規制をそのまま政府間協定にやったことでございますから、それは文句はないと思います。しかしそこまでできないにしても、綿製品協定といういい例があるのですから、その例のとおり、指摘をされているとおりに減っては困る、そのためにどうするのかということでもって、前文を挿入いたしました。それでこれは第七項に救済条文を置いたわけでございます。それでこの七項によって話し合いをするときには、前文の趣旨によって、両国は処置しなければ、善処しなければならない、こういうふうにしてございますから、五%増しまで完全にできるということはできないにしても、コンサルテーションをやるわけでございます。もうすでに第一回を今月やろうとしておるわけでございます。そういうことであって、お互いに少なくとも日米がこの協定によってどっちか不当な利益を受けるようでは困る。日米間というものはどうしても話し合いの場を持って、すべてが話し合いで片づくということでなければならぬのだということが、この協定の精神であり前提になっておりますから、少なくとも私は、一方規制を行なわれるというような状態よりもはるかにメリットがあった。メリットがあったということを言うとまたきっとしかられると思いますから、メリットなんということを言わなくとも、一方交通のデメリットは押えた、こういうことはいえると思うのです。
  189. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 前文に挿入したとおっしゃいますが、前文は精神規定であって、具体的にこれは何にもならないのですよ。しかし私は、この際田中大臣の努力がゼロであったなどということを言おうとしておるのではない。しかしせっかくとったと思っていらっしゃるところの弾力条項やシフトやらというものは、これは何にも適用にならないということを申し上げる。そこでもう与えられた時間が過ぎましたからこれで本日はやめます。しかしやめて承知のできないのは業界なんですよ。次から次へつぶれていくから。  そこで最後にあなたによく知っていただきたいことがある。それはせっかくとったと思っておったシフトや弾力条項が何にもならないという証拠を見せます。これをよく鑑定してみてください。そうすると一番よくわかる。これはきのうきょう始めたことじゃない。いままで何度も何度も申し上げておることなんです。このいずれ一つでもいいから調べて、そうしてあなたたち鑑定してみてください。どなたでもいいですから。できますか。できないでしょう。たとえばLTAにおいてはこれが繊維製品に数えられるのですよ。これがなぜ繊維製品に数えられるか、ちょっと区別ができ、ないのです。よく見ておいてください。LTAの場合だとそういうことがあったのです。だから何度も何度も私は人形を持ってきた。この人形を佐藤総理大臣にも差し上げた、予算委員会で。写真を見てください。私のとった写真じゃないけれども、これを区別できますか。これが綿で、これが毛で、これが合繊でという区別ができますか。できないから十ぱ一からげに目方でいってしまうのです。これは全部中身のどろ人形のところまで目方でいってしまうのですよ。あなたの郷里の近くで出ておるこれをみてください。ジッパーです。これは綿の目方に換算されるのです、金属部分までが。ちょっと一ぺんこれを区別してみてください。どなたでもいいからわれこそはという人は区別してください。これが綿製品であるか、毛製品であるか、合繊であるか、区別ができない。LTAの場合は六十四品目なんですよ。季節割りで四つ横割りになっていますが、それでさえもこういうものになってくるとどうにもならぬからというので目方でやられてしまったことがある。国会の予算委員会でこれを論じた結果これは除外になった。あまりにも無謀だということで除外になった。ところが今度行なわれようとするのは六百四十一品目に分けられて季節割りになるのですよ。田中さんのおくににも繊維屋さんがたくさんありますが、四半期だけで注文を受けてシッピングに間に合わせることができますか。それはできないでしょう。できっこないですよ。ですから、ワクはあってもそのワクは食えない。その結果がコットンの五七%しか食えないということになる。それでもって中身のうちにあるものさえもよう使用ができないものを、よそに五%ある、二%あるといったって、そんなもの食えっこないじゃないですか。それがこれなんですよ。特に輸出のシッピングのときにだれが検査するのです。これをきめることはかってですよ、机の上で。そんなら具体的にこれをどうやって検査するのです。
  190. 鴨田宗一

    鴨田委員長 加藤さん、委員会が終わってから拝見します。
  191. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 できないでしょう。できないことをやれというのですから、繊維局長さんなり通商局長さんの陣頭指揮で税関へ行って一ぺん検査しますか。だって、その人自体がわからぬでしょう。だれがそんなこまかいことをやるのです。あなた六百四十品目を年間四つ割りにしてごらんなさい。四、六、二千四百のようになりますよ。そのワクへはめ込まなきゃならぬですよ。どうやってやるんです。間に合わなくなっちゃうんですよ。みんな食えない。それがLTAの歴史、だから業界が困っている。  結論に行きます。この結果は中小企業の倒産が続出です。国益だとあなたはおっしゃったが、通産省に試算させてみたって、三分の一は削減ということなんです。三分の一の削減は、中小企業が続々倒産する。三人や四人倒れたってやむを得ぬと言った大臣は首になりました。食管法にちょっと触れた大臣も首になりました。しかしこの問題は触れただけじゃないですよ。具体的に次から次と、特に、もう先月からずっとふえてきております。来年の三月あたりにはたいへんな倒産になります。そんな補助金だの融資だのなんて言っている場合じゃありません。次から次へ倒れます。どうするんです、これは。二法案がどんなに通ってみたって、これは救うことはできません。コットンの場合はまだウールや合繊に逃げ道があったんです。今度は逃げ道はありませんぞ。どうするんです。あなたは選挙区にあるからわかるでしょう。選挙区になくても、きょうだい、親戚にそれがあったらどうするんです。これは繊維機械に影響するんです。もう繊維機械はキャンセルがどんどん来ている。さっき横山さんは名前をあげなかったが、豊田も豊和もキャンセルがどんどん来ている。これはどうするんです。
  192. 田中角榮

    ○田中国務大臣 繊維一筋というくらい、加藤さん長いこと繊維の専門家としてやってこられたことは、私自身も商工委員長時代から十分承知をいたしております。今度私が行なったイニシアルというものが、繊維企業に対してどのような影響を与えるかということが、これは非常に大きな問題であることも理解をいたしております。私もこれだけのことを行なう以上は、ただ日米間をよくし、現状を確保していかなければならないということだけではなく、繊維自主規制から政府間協定に移った、その結果受けるであろうマイナスに対しては、全力をあげて救済対策を行ない、またそれよりも一歩進めて、アメリカに対する貿易を確保するために全力を傾けなければならないということは私も承知をいたしております。ですからこれから一年間なら一年間たって、日本からアメリカに対する繊維輸出というものが、あなたのいま御指摘にあるように、ほんとうに激減をするような状態であるならば、日米間としてはこの問題を新たな議題として取り上げるべきだと思います。そういうことを避けるためにも一カ月に一ぺんずつコンサルテーションを行なおう、正式協定が行なわれない現時点においてさえ第一回の接触をやろうと言っておるのでございます。あなたがいま御指摘になったような人形とか、またジッパーテープとか、スリッパとか、かばんとかの問題は、確かに綿製品の問題としてはいろいろありました。今度は、ここには、通産省でも、もう分類はちゃんと支度してございます、規制品目ではございませんというようなことが書いてございますが、何百品目の、これから出てくる無数の、無限ともいうべきものを、これを全部分類することはそんなに簡単なこととは思っておりません。ですから日米間に対してはほんとうに精力的に誠意をもって、とにかくこの協定を仕上げた歴史の上に立って考えてみれば、これを激変させるような、一年後、二年後、三年後にアメリカにはまったのじゃないかというような協定にしないためにも全力を傾けるべきだと思います。私もこのような事態に置かれておるのでありますし、私のみずからの責任も十分感じております。それは国内対策だけで片づくものではないという程度の理解はいたしております。ですから、私もまた政治家の職にあります。あなたが指摘されるように、来年のいまごろになって対米輸出規制が三億ドルになったというような場合になれば、こんな協定がそのまま日米間に存在するはずはないと私は思います。これはほんとうに私も、ただアメリカから言われたので協定に応じたというものではありません。二十五年の歴史の上に立って、またあしたからの日米間の問題も考えながら、真にやむを得ない処置として行なったわけでございまして、この協定が、あなたが指摘されるような面が絶無だという自信はありません。あなたのほうがよほど専門的であり、綿製品協定に対しては長い経過を承知しておられるのですから、あなたの発言に対しては敬意を払います。私自身もこれから勉強もしますし、わからないときはこれからあなたのところに聞きに行きます。しかしこの協定が真にやむを得なかったものであるということだけは、私はまじめに述べておるつもりでございます。また避けがたい事実であったということも述べておるのでございます。あと残る私の責務は、いま御指摘のように、これがほんとうに対米輸出をゼロにするような協定にしないように、自主規制をそのまま履行したんだというように、私はそれに近いものになるべく全力を傾けたい、これが現時点における私の心境であります。
  193. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 委員長の命に従いまして——本日はまだ話は序論です。ほんとう対策並びにその他の問題、内容にはまだ触れておりませんから、いずれ近い機会に時間をいただくとして、本日はこの程度で……。
  194. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次回は、来たる十二日午前十時理事会、十時三十分委員会を開くことにし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時三十七分散会