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1971-11-30 第67回国会 衆議院 社会労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十一月三十日(火曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 森山 欽司君    理事 小沢 辰男君 理事 澁谷 直藏君    理事 谷垣 專一君 理事 増岡 博之君    理事 田邊  誠君 理事 大橋 敏雄君    理事 田畑 金光君       秋田 大助君    有馬 元治君       大野  明君    唐沢俊二郎君       小金 義照君    斉藤滋与史君       田川 誠一君    中島源太郎君       橋本龍太郎君    渡部 恒三君       川俣健二郎君    小林  進君       後藤 俊男君    島本 虎三君       山本 政弘君    古寺  宏君       古川 雅司君    渡部 通子君       寺前  巖君  出席国務大臣         郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君         労 働 大 臣 原 健三郎君  出席政府委員         防衛施設庁労務         部長      安斉 正邦君         郵政政務次官  松山千惠子君         郵政省郵務局長 溝呂木 繁君         郵政省人事局長 北 雄一郎君         郵政省経理局長 浅見 喜作君         労働大臣官房長 道正 邦彦君         労働省労政局長 石黒 拓爾君         労働省労働基準         局長      岡部 實夫君         労働省職業安定         局長      住  榮作君  委員外出席者         大蔵省理財局資         金課長     福島 量一君         大蔵省銀行局特         別金融課長   北田 榮作君         日本国有鉄道総         裁       磯崎  叡君         日本国有鉄道副         総裁      山田 明吉君         日本国有鉄道常         務理事     原田 種達君         日本国有鉄道新         幹線建設局長  高橋 克男君         参  考  人         (日本鉄道建設         公団総裁)   篠原 武司君         参  考  人         (日本鉄道建設         公団理事)   北原 正一君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 委員の異動 十一月十二日  辞任         補欠選任   寺前  巖君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   東中 光雄君     寺前  巖君     ————————————— 十一月十一日  戦争犯罪裁判関係者見舞金支給に関する請願  (小川半次紹介)(第一一三〇号)  リウマチ専門病院等設立及び治療費公費負担  に関する請願藤本孝雄紹介)(第一一三一  号)  同(林義郎紹介)(第一一三二号)  同(粟山ひで紹介)(第一二四七号)  同(山田久就君紹介)(第一二四八号)  医療事務管理士法制定に関する請願外十六件  (伊能繁次郎紹介)(第一一三三号)  同外十五件(椎名悦三郎紹介)(第一一三四  号)  同外七件(藤尾正行紹介)(第一一三五号)  同外一件(藤本孝雄紹介)(第一一三六号)  同(村山達雄紹介)(第一一三七号)  同外十二件(池田清志紹介)(第一一七七  号)  同外二十八件(宇野宗佑紹介)(第一一七八  号)  同外二十三件(小川半次紹介)(第一一七九  号)  同外二十九件(奧野誠亮紹介)(第一一八〇  号)  同外四件(鍛冶良作紹介)(第一一八一号)  同外五件(北澤直吉紹介)(第一一八二号)  同外七件(齋藤邦吉紹介)(第一一八三号)  同外八件(櫻内義雄紹介)(第一一八四号)  同外七十三件(始関伊平紹介)(第一一八五  号)  同外八十七件(篠田弘作紹介)(第一一八六  号)  同外二件(高橋英吉紹介)(第一一八七号)  同外二十九件(千葉三郎紹介)(第一一八八  号)  同外三件(塚原俊郎紹介)(第一一八九号)  同外五十件(中野四郎紹介)(第一一九〇  号)  同外九件(橋本龍太郎紹介)(第一一九一  号)  同外百件(原田憲紹介)(第一一九二号)  同外八件(坊秀男紹介)(第一一九三号)  同外二十件(松澤雄藏紹介)(第一一九四  号)  同外五十八件(松野頼三君紹介)(第一一九五  号)  同(三池信紹介)(第一一九六号)  同外八件(村上信二郎紹介)(第一一九七  号)  同外十六件(森田重次郎紹介)(第一一九八  号)  同外八件(吉田実紹介)(第一一九九号)  同外六件(足立篤郎紹介)(第一二五二号)  同外八十一件(相川勝六紹介)(第一二五三  号)  同(愛知揆一君紹介)(第一二五四号)  同外二十五件(小澤太郎紹介)(第一二五五  号)  同外二十件(菅太郎紹介)(第一二五六号)  同外三十三件(神田博紹介)(第一二五七  号)  同外十五件(倉成正紹介)(第一二五八号)  同外九件(小山長規紹介)(第一二五九号)  同外三十五件(小峯柳多君紹介)(第一二六〇  号)  同(砂田重民紹介)(第一二六一号)  同外二十四件(田中正巳紹介)(第一二六二  号)  同外七十件(辻寛一紹介)(第一二六三号)  同外二十三件(渡海元三郎紹介)(第一二六  四号)  同外十七件(床次徳二紹介)(第一二六五  号)  同外三十五件(中島茂喜紹介)(第一二六六  号)  同外二十五件(灘尾弘吉紹介)(第一二六七  号)  同外一件(西銘順治紹介)(第一二六八号)  同外十九件(濱野清吾紹介)(第一二六九  号)  同外五件(長谷川峻紹介)(第一二七〇号)  同外十二件(早川崇紹介)(第一二七一号)  同外十九件(福井勇紹介)(第一二七二号)  同外十九件(増岡博之紹介)(第一二七三  号)  同(森喜朗紹介)(第一二七四号)  賢臓病患者救済に関する請願田邊誠君紹  介)(第一二四九号)  同(増岡博之紹介)(第一二五〇号)  老齢福祉年金増額等に関する請願外十五件  (倉成正紹介)(第一二五一号) 同月十五日  スモン病等に対する健康保険制度改善に関する  請願曽祢益紹介)(第一三六五号)  医療事務管理士法制定に関する請願外五件(足  立篤郎紹介)(第一三六六号)  同外十一件(稻葉修君紹介)(第一三六七号)  同外一件(稻村佐四郎紹介)(第一三六八  号)  同外二件(大竹太郎紹介)(第一三六九号)  同外二十件(亀山孝一紹介)(第一三七〇  号)  同外十六件(菅野和太郎紹介)(第一三七一  号)  同外二十二件(田村元紹介)(第一三七二  号)  同外四十九件(永田亮一紹介)(第一三七三  号)  同外八十五件(古屋亨紹介)(第一三七四  号)  同外八十六件(箕輪登紹介)(第一三七五  号)同月十八日  リウマチ専門病院等設立及び治療費公費負担  に関する請願八田貞義紹介)(第一六〇八  号)  同外十六件(武藤嘉文紹介)(第一七三二  号)  医療事務管理士法制定に関する請願外十六件  (天野公義紹介)(第一六〇九号)  同(倉石忠雄紹介)(第一六一〇号)  同外九十一件(小此木彦三郎紹介)(第一六  一一号)  同外三十件(小宮山重四郎紹介)(第一六一  二号)  同外七件(田中龍夫紹介)(第一六一三号)  同外三十件(古川丈吉紹介)(第一六一四  号)  同外九件(森山欽司紹介)(第一六一五号)  同外六件(八田貞義紹介)(第一六一六号)  同外六件(足立篤郎紹介)(第一六九三号)  同外七件(稻村佐四郎紹介)(第一六九四  号)  同外九件(鈴木善幸紹介)(第一六九五号)  同外三十四件(佐々木秀世紹介)(第一七二  七号)  同(竹内黎一君紹介)(第一七二八号)  同外四十七件(田中六助紹介)(第一七二九  号)  同外七件(田村良平紹介)(第一七三〇号)  せき髄損傷者に対する労働者災害補償保険の給  付改善に関する請願中谷鉄也紹介)(第一  六一七号)  同(古川喜一紹介)(第一六九二号)  スモン病等に対する健康保険制度改善に関する  請願外二件(和田耕作紹介)(第一六一八  号)  同(竹本孫一紹介)(第一六九一号)  労働災害以外によるせき髄損傷者援護に関す  る請願古川喜一紹介)(第一六九六号)  消費生活協同組合法の改正に関する請願砂田  重民君紹介)(第一六九七号)  国民健康保険改善に関する請願谷口善太郎  君紹介)(第一七三一号)  薬事行政改善に関する請願河野密紹介)  (第一七六四号) 同月二十二日  元満鉄職務傷病社員等に対する戦傷病者戦没者  遺族等援護法適用に関する請願毛利松平君紹  介)(第一八一〇号)  健康保険保険料是正に関する請願河野密君  紹介)(第一八一六号)  医療事務管理士法制定に関する請願外三件(井  出一太郎紹介)(第一八一七号)  同外六件(小川平二紹介)(第一八一八号)  同外十一件(根本龍太郎紹介)(第一八一九  号)  同外八十三件(福田篤泰紹介)(第一八二〇  号)  同外六件(内田常雄紹介)(第一八八五号)  同外五十件(河野洋平紹介)(第一八八六  号)  同外十一件(佐々木義武紹介)(第一八八七  号)  同(丹羽久章紹介)(第一八八八号)  同外七件(増田甲子七君紹介)(第一八八九  号)  国立寿療養所重症心身障害児委託病棟設置に  関する請願倉石忠雄紹介)(第一九六二  号)  同(増田甲子七君紹介)(第一九六三号)  同(羽田孜紹介)(第一九六四号)  社会福祉関係事業に対する国庫補助増額に関す  る請願倉石忠雄紹介)(第一九六五号)  同(羽田孜紹介)(第一九六六号)  同(増田甲子七君紹介)(第一九六七号)  難病救済対策確立に関する請願倉石忠雄君  紹介)(第一九六八号)  同(羽田孜紹介)(第一九六九号)  同(増田甲子七君紹介)(第一九七〇号) 同月二十六日  社会福祉関係事業に対する国庫補助増額に関す  る請願小川平二紹介)(第二〇七三号)  同(中澤茂一紹介)(第二〇七四号)  同(原茂紹介)(第二〇七五号)  同(松平忠久紹介)(第二〇七六号)  同(井出一太郎紹介)(第二二五一号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第二二五二号)  難病救済対策確立に関する請願小川平二君  紹介)(第二〇七七号)  同(中澤茂一紹介)(第二〇七八号)  同(原茂紹介)(第二〇七九号)  同(松平忠久紹介)(第二〇八〇号)  同(井出一太郎紹介)(第二二四九号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第二二五〇号)  国立寿療養所重症心身障害児委託病棟設置に  関する請願小川平二紹介)(第二〇八一  号)  同(中澤茂一紹介)(第二〇八二号)  同(原茂紹介)(第二〇八三号)  同(松平忠久紹介)(第二〇八四号)  同(井出一太郎紹介)(第二二五三号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第二二五四号)  リウマチ専門病院等設立及び治療費公費負担  に関する請願大橋敏雄紹介)(第二一七七  号)  同(古寺宏紹介)(第二一七八号)  せき髄損傷者に対する労働者災害補償保険の給  付改善に関する請願丸山勇紹介)(第二一  七九号)  同(瀬戸山三男紹介)(第二二八六号)  同(武部文紹介)(第二二八七号)  歯科技工士免許に関する請願伊東正義君紹  介)(第二一八〇号)  同(中島源太郎紹介)(第二一八一号)  同(毛利松平紹介)(第二一八二号)  元満鉄職務傷病社員等に対する戦傷病者戦没者  遺族等援護法適用に関する請願堂森芳夫君紹  介)(第二一八三号)  医療事務管理士法制定に関する請願外三十件  (宇都宮徳馬紹介)(第二一八四号)  同外十七件(橋本登美三郎紹介)(第二一八  五号)  同外四十一件(松田竹千代紹介)(第二一八  六号)  同外四件(足立篤郎紹介)(第二二八八号)  労働災害以外によるせき髄損傷者援護に関す  る請願武部文紹介)(第二二八四号)  同(瀬戸山三男紹介)(第二二八五号)  せき髄損傷者援護に関する請願瀬戸山三男  君紹介)(第二二八九号)  スモン病等に対する健康保険制度改善に関する  請願浦井洋紹介)(第二二九〇号) 同月二十九日  難病救済対策確立に関する請願向山一人君  紹介)(第二三七四号)  同(小坂善太郎紹介)(第二五六二号)  同(下平正一紹介)(第二五六三号)  社会福祉関係事業に対する国庫補助増額に関す  る請願向山一人紹介)(第二三七五号)  同(小坂善太郎紹介)(第二五六四号)  同(下平正一紹介)(第二五六五号)  国立寿療養所重症心身障害児委託病棟設置に  関する請願向山一人紹介)(第二三七六  号)  同(小坂善太郎紹介)(第二五六六号)  同(下平正一紹介)(第二五六七号)  労働災害以外によるせき髄損傷者援護に関す  る請願古川雅司紹介)(第二三九〇号)  同(石橋政嗣君紹介)(第二四六一号)  同(辻寛一紹介)(第二四六二号)  医療事務管理士法制定に関する請願外六件(徳  安實藏紹介)(第二三九一号)  国民健康保険改善に関する請願外二十件(山  田太郎紹介)(第二三九二号)  歯科技工士免許に関する請願有馬元治君紹  介)(第二四六〇号)  せき髄損傷者に対する労働者災害補償保険の給  付改善に関する請願石橋政嗣君紹介)(第二  四六三号)  同(辻寛一紹介)(第二四六四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  労働関係基本施策に関する件(郵政省及び日  本国有鉄道における労働問題並びに労働安全衛  生に関する問題等)      ————◇—————
  2. 森山欽司

    森山委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  この際、おはかりいたします。鉄道建設における労働安全衛生に関する問題について、本日、日本鉄道建設公団総裁篠原武司君及び理事北原正一君に参考人として出席願い、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なしと」呼ぶ者あり〕
  3. 森山欽司

    森山委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  4. 森山欽司

    森山委員長 質疑の申し出があります。これを順次許します。後藤俊男君。
  5. 後藤俊男

    後藤委員 いま国鉄なりさらに郵政関係で、マル生の問題で非常に職場の中では紛争が起きておるわけでありますが、特に国鉄マル生の問題につきましては、たしかここの委員会におきましても九月三日からたびたびにわたりまして多くの人がこの問題を国鉄総裁なり労働大臣なり、いろいろとお聞きしたり追及をしたりしたと思うのです。  そこで、具体的になってまいりますけれども、国鉄労使関係におきましては、紛争対策委員会本社なりあるいは地方に設けて、この問題の解決に当たろう、こういうことで今日まで進んできておられるということは、これは間違いないと思うわけでありますが、その紛争対策委員会の中で、大きく分けますと三つか四つの問題に区分されるんじゃないかと思うのです。  第一番には不当労働行為者処分についてどうするのだ、この問題。それからその次には昇給昇格昇職基準の問題について、労使の間で明確にその基準をきめていくんだという問題。それから、いままで不当な差別扱いを受けた人に対する救済、これをいかにして救済するかという問題。それから今日起こっておる職場紛争をいかに処理するかという問題、これらが大体紛争対策委員会の中の大きく分けて重要な項目になろうと思うわけであります。  そこで、私、考えますのに、これらの問題を労使の間で早急におきめになると思うのですけれども、この三十日、きょうでございますが、日にちを延期いたしましたきょうがもう最後の日でございますので、きょうは当然、紛争対策委員会としての労使協議の結果というのが明確になる日であろうというふうに考えておるわけです。  そのことはあとから触れるといたしまして、まず第一番に、不当労働行為を行なった現場管理者なり職員に対しては、一体総裁としてどういうふうにこれらを処理されようといたしておるのか、どういうふうにこれらを整理して、きちっとして職場正常化を行なおうとされておるのか、この点を第一番にお伺いいたしたいと思います。
  6. 磯崎叡

    磯崎説明員 今般のいろいろな紛争の問題の事後処理の点でございますが、すでに公労委から二つの決定をいただきまして、それについて私といたしましては、過般当委員会で申し上げましたとおり、総合的にケースバイケースに判断して人事的な措置をとるというふうに申し上げましたが、今後ともそれと同じ趣旨でまいりたいというふうに考えております。
  7. 後藤俊男

    後藤委員 そうしますと、いま総裁が言われた、いろいろなケースがある、ですからケースバイケースによって総合的な措置を行なうのだ。これはいままでもこの委員会でも何回も総裁としては言っておられることです。それをさらに一歩突き進んで、それが一体ケースバイケースによりまして十分調査した上で総合的な措置をとるという中身としましては、たとえば配置転換もあるでしょうし、さらには退職される人もあるかもしれませんし、さらには厳重注意という、日鉄法による処分には入っておりませんけれども、あるいは訓告という処分もあるだろうし、さらにまたケースバイケースによって非常に悪質な不当労働行為に対しましては日鉄法による処分を行なう、それらのことも含んでおるでありましょうし、というふうにわれわれは考えておりますし、労働組合のほうとしましてもそういう考え方に立っておると私は思うわけでございますけれども、この点を総裁としてもう少しはっきり明確にものを言ってもらわないと、先ほど言いましたところの紛争対策委員会がなかなか進まない。進まない一つ原因としましては、一体不当労働行為をやった者に対して厳重注意であるとか訓告であるとか、しかもこれだけ多くの問題が出ておって、処分を受けたのは二十名前後の非常にわずかの人数に終わっておると思うのですが、いま申し上げました具体的なその中身については総裁としてどういうふうにお考えになっておるか、この点をひとつ明確にお答えをいただきたいと思います。
  8. 磯崎叡

    磯崎説明員 事後措置につきましては中央、地方を通じましていろいろな始末のしかたがあるというふうに考えております。私は国鉄責任者といたしまして、あくまでもケースバイケースで総合的に判断して人事的に措置をしてまいりたい、こういうことでございます。
  9. 後藤俊男

    後藤委員 それで総裁、私は別に突き詰めた気持ちでものを言っておるわけじゃないのです、これは。いまあなたが言われた、私は国鉄総裁である、悪いことをした者は悪いことをしたように処分します、いいことをした者はいいことをしたように表彰もいたしましょう、それは全責任を持って私がやるのです、こういうことだと思うのです。ところが今回のマル生に基づく不当労働行為の問題につきましては、国鉄労使だけの問題ではなしに、世間の一つの大きな問題になってきたわけです。これらの問題を一刻も早く職場正常化労使正常化をはかるためには、やはり不当労働行為をやった者に対しては厳重な態度で総裁としては臨む。その中では当然、日鉄法による処分もあるだろう。あるいは厳重注意もあるだろう。あるいは訓告もあるだろう。あるいは配置転換もあるだろう。とにかく、おれは国鉄総裁として、これだけ大きな問題を起こしたんだから、いま言ったような気持ちで厳正なる処分を行なっていく、これぐらいなことをはっきりこの委員会で言明してもしかるべきだ。そこから出発しまして、紛争処理対策委員会というのは先ほど言ったような項目が私は前進すると思うのです。その辺がどうも総裁ことばを聞いておると、雲をかけたような形で、ぼかしたような形で、これは私が推察したところによりますと、各現場長やら局長には懲戒処分はやらないんだ、それ以下のところで大体おさめるからひとつ協力してくれよ、これぐらいなことを言っておられるから、そこまではっきり言明できないんじゃないかという憶測さえしたくなるようなことをあなたは言っておられるわけなんですけれども、その点もう少し、いま私が言いましたような点に立って再度ひとつ明確にお答えいただきたいと思います。
  10. 磯崎叡

    磯崎説明員 紛争処理委員会につきましては、すでに、さっき先生の御指摘の問題の中の将来の問題としての昇給とか昇格とかの基準につきまして、組合からもだいぶ従来より前進いたしました案が昨夜おそく出てまいっております。ですから、進展すべき面は進展しているというふうに思いますし、私は極力そういった問題については、きょうじゅうに徹夜をしてでも結論に到達いたしたいというふうに思っております。したがいまして、全般的なあと始末のほうにつきましてはケースバイケースで判断して処置するということに間違いございません。
  11. 後藤俊男

    後藤委員 そうすれば、いま総裁が言われました、不当労働行為についてはケースバイケースによって調査をして処分処置をいたします、そういうことでよろしいですか。
  12. 磯崎叡

    磯崎説明員 いま私が申しました処分——処分ということばでなしに処置と申しましたのは、処分を——言い間違えて処分と申しましたが、すぐ処置と申したわけでございまして、その点誤解のないようにお願いいたします。
  13. 後藤俊男

    後藤委員 そうしますと、これはくどいようなことになりますけれども、総裁としては今時これだけ大きい問題に対する最終的な結末について、不当労働行為を行なった執行者なり現場長なりその関係者につきましてはあくまでもケースバイケース十分調査をして、妥当なる措置をとるんだ、それ以上はもう前進しないわけですか。処分ということには一切触れない。なぜ一体その処分を含んでいるんだということを言われないのでしょうか。私は何もあなたが処分を含んでおると言ったら、処分せいということを言うわけではないのです。ケースバイケース調査をしまして、処分に該当すると思えば処分をすればいいのです。ここであなたが処分も含んでおると言われたから全部処分をするんだという極端な言い方を私は言っておるわけではないのです。何べんも言いますけれども、ケースバイケース調査をして措置をする、こうあなたは言っておるのですから、その適当な措置の中には、総合的な措置の中には処分もあり、厳重注意もあり、訓告もあり、配置転換もあり、これはごく常識的なことを私は言っておるわけです。なぜ一体その中に処分は入っておらないんだ、あるいは処分が入っておるのだ、その辺が総裁としてあいまいになっておるところに、地方における紛争が解決しない大きな原因があるから、私ははっきり言っておるわけなんです。地方におきましても紛争処理対策委員会がありまして、不当労働行為を行なった者を一体どうするのだ。そうすると地方局長あたりは、これは本社の問題だ。本社のほうは、地方におけるケースバイケースの問題だから地方において調べなければわからぬ。だけれども総裁の方針がはっきりきまっておらぬ、こう言っておる局長もあるわけなんです。ですからあなたとして、非常に広範囲なケースバイケースによって調査をして総合的に措置をする。その中身は何だというと、中身は全然言われない。それが地方紛争解決の障害になっておると思うのです。国鉄総裁なり副総裁がここではっきり決断すべきだと思うのですよ。不当労働行為を行なった者にはこうやるのだ。ケースバイケースでいろいろあろうけれども、厳正なる態度で処分すべきものは処分をしていく。そういうき然たる態度があなたにないところに、地方紛争の処理がなかなかできない。それで紛争対策委員会としてもやっぱりひっかかってくる。ですからきょうは三十日ですが、中身の前進は今夜徹夜をしてもやるとおっしゃいますけれども、あなたのほうではそういう気持ちであっても、やはり労使の問題ですから、相手のある問題ですから、あなたの思うようにはなかなか前進しないと思うのです。いま言いました問題がやはり根底に横たわっている以上は、この問題の前進は非常にむずかしいというふうに私は考えるのですよ。おまえ何回も同じことを聞くと言われるかもしれぬけれども、総裁としてもう一ぺんいま私が申し上げましたことに対してお答えいただきたいと思うのです。
  14. 磯崎叡

    磯崎説明員 紛争処理委員会が進展しないというお話でございましたけれども、すでにほかの問題についても具体的に案が出ておりまして、徐々に話が詰めかかっておるわけでございます。したがって、いままで申し上げましたとおり、私は今度のあと始末につきましては、国鉄総裁国鉄責任者といたしまして個々に調査いたしまして、人事的な適切な措置をとるという以外に申し上げようがございません。
  15. 後藤俊男

    後藤委員 何べん言いましても同じこと以上総裁お答えになりませんから、いま適切な措置をとる、こう言われましたので、とにかく適切なる措置をとっていただく、これだけはひとつはっきりしていただきたいと思います。  それからその次には、労使間の問題になろうと思いますが、昇職なり昇格なり昇給なりにつきましては、とにかく国鉄当局、管理者側のほうといたしましても、きょう一ぱいにこれらの基準の明確化のためにとにかく全力を尽くしてやる、こういう気持ちであろうと思うのですがね。それに伴って救済措置の問題ですね。いままで差別扱いで損をしておる人、こういう人の救済については一体どうお考えになっておられるか、この点をお尋ねいたしたいと思います。
  16. 磯崎叡

    磯崎説明員 ことにいまのあとの御質問の一人一人の問題につきましては問題が非常にさまざまでございまして、いま一様な御答弁はできませんが、そういった問題も含めていままでも話し合いをすでにしているわけでございますから、具体的なやり方等につきましてはケースごとにきめていくという以外に、全般的な方法としてどうする、こうするということはちょっと申し上げかねると思います。
  17. 後藤俊男

    後藤委員 それで、私もその一つ一つの問題についてこまかく聞く気持ちはないわけですけれども、明らかになっておる人に対する救済のしかたについては、少なくともこの年度内にははっきり救済していただく、これが妥当であろうと私は思うわけですが、いま総裁が言われたとおり、年度内にこの救済問題についてはおやりになるのかどうか、この点いかがですか。
  18. 磯崎叡

    磯崎説明員 私年度内とは申し上げた覚えはないのでございますけれども、個々の問題につきましていろいろ時期もあると思いますが、明らかなものあるいは不明確なもの、いろいろあると思います。これは具体的に調査し、また御承知のとおりすでに法律で苦情処理委員会ができておりますので、その場で始末するのが、一番適当であるというふうに考えます。
  19. 後藤俊男

    後藤委員 年度内にもできるだけおやりになるということですね。
  20. 磯崎叡

    磯崎説明員 それは、法律によってきめられました苦情処理委員会の進展の模様によると思います。あるいは年度内にかかる問題もあるかもしれないし、あるいは年度を越す問題もあるので、年度というものが必ずしも一つのタイムリミットにはならないと思います。しかし、もし苦情処理委員会に出るような問題があれば、それはなるべく早く解決するというのが筋であるというふうに私は考えます。
  21. 後藤俊男

    後藤委員 いまの問題については、年度内に全部やってしまえということも非常にむずかしいと思いますが、とにかく、早いところ救済の問題については解決をしてもらうということでお願いしたいと思うんです。  それから次は、マル生の問題ですが、この十一月の二十八日でございますか、二カ月の日切れになったわけですね。これからは、このマル生問題について、総裁としてどういうふうにお考えになっておるんでしょうか。二カ月間だけは、一応やめたという形になったと思うんです。やめたというと、あなたのほうからいろいろ意見が出るかもしれませんが、そういうことも含めて、二カ月間はこういう形できた。ところが、二十八日をもってもう日切れになった。それでは一体、国鉄マル生問題は、二カ月以前の姿に戻って、これから徹底してやっていくのかどうか、この点もやはり問題があると思うんです。この点、いかがですか。
  22. 磯崎叡

    磯崎説明員 あの二カ月は、十二月一ぱいと私どもは考えております。ですから、まだ一カ月ほどございます。  私といたしましては、私自身、もう一ぺん勉強し直さなくてはいかぬということで、もう一ぺん書物を読み直しております。また、各級の担当者に命じまして、いろいろ勉強をいたさせておる最中でございまして、主として当委員会並びに参議院の委員会で問題になりました点は、テキストの内容がきわめてけしからぬという御指摘があったと思います。また、一部の先生方からは、当然現在の国鉄としては生産性運動を進めるべきだ、生産性運動そのものには反対しないという御意見があったことも、速記録で明らかになっておりますので、そういった諸先生方の御意見を十分慎重に参考とさせていただきながら、今後の問題については、いませっかく勉強の最中でございます。ですから、明確なことは申し上げられませんが、二カ月後には少なくとも再開するという前提で、現在勉強いたしておるわけでございます。
  23. 後藤俊男

    後藤委員 そうしますと、十二月二十八日で二カ月の期限切れになる、それ以降については、国会なり、その他いろいろ国鉄マル生に対する批判が出た、それらのことを十分考えて、来年の一月一日あたりから、心機一転、国鉄マル生運動をやっていきたい、こういうふうな総裁の言われ方だと私は思うんです。  そこで、先ほどからもいろいろ言っておりますように、紛争対策委員会があるわけですね。この中で、昇給昇格昇職問題なり、救済問題なり、あるいはその他勤務外の勤務の問題あるいは不当処分問題等については、これは紛争対策委員会できっちり明確にして整理をする、そうしてはっきりしよう、こういう体制にいまあるわけなんです。いわば国鉄の、これだけ大きな問題になりましたマル生問題が、この紛争対策委員会の進み方いかんによっては、現在のところどうなるか見当がつかぬといっても、これは間違いないと思うんです。ですから、われわれが考えますのは、このマル生問題に関連するところのいろいろな諸問題を、一ぺん全部きれいに労使の間で話をして、整理をしてもらう。協約、協定を結ぶものは、結んでもらう、処分すべきものははっきり処分してもらう、その上に立ちまして、国鉄マル生運動については、どういうふうにやっていくんだ、それについては労使の間で十分協議をすべきじゃないかと、私は思うんです。ただ、あなたは、もう一ぺん本を読み直しておりますとか——それもけっこうだと思いますけれども、それよりかは、国鉄マル生問題については労使の間で一ぺん十分協議をしてもらう、そこで話がついたものからその運動を、やれるものがあればやっていく、それは再びこういうような不当労働行為を繰り返さないためにも必要じゃないかと私は思うのです。こういう点については、総裁、どういうふうにお考えでしょうか。
  24. 磯崎叡

    磯崎説明員 先生も御承知のとおり、先般、衆議院の運輸委員会におきまして、各党からすべて、国鉄の再建に関する御意見が、公の案あるいは個人の先生の私案という形で出ております。それはもうごらんになったと存じますが、どの党の案を拝見いたしましても、国鉄の経営に対して非常にきびしい姿勢を私ども要求いたされております。と申しますことは、御承知のとおり、現状におきましてはどうしても国民の御協力——と申しますのは、いわゆる国鉄を利用されない方からも税金の形でいただくというふうな、もう思い切った御協力をいただかなければ国鉄は再建できないということは、どの先生方もお認めになっての案がすでに出ておるわけでございます。いやしくもそうである以上、国鉄経営についてはもっときびしくあるべきだという御意見、これもどの先生方も御一致の御意見でございます。そういう客観情勢に立ちまして、いま国鉄の置かれておりますきびしい、ほんとうに生きるか死ぬかの状況に立ちまして、私はこの問題を再検討しているというふうに申し上げたわけでございまして、具体的な案がきまり次第協議という——もちろん紛争問題とは切り離しております。したがって、紛争処理委員会項目に初めから入れておりません。と申しますことは、これは前向きな問題といたしまして、教育の問題として組合側にも十分説明をするという形で進めてまいりたい。しかし、これから編成されます本年度予算を考えますと、私としては、身の引き締まるような思いで今後経営をしなければならないということを実感として味わっておる最中でございます。
  25. 後藤俊男

    後藤委員 こういうきびしい情勢ですから、身の引き締まる思いがする、それは全くそうかもわかりませんがね。ただ、私の言いたいのは、われわれここでもう何回も繰り返したんですが、国鉄職場におけるマル生運動と不当労働行為は、結果的には切っても切り離されない形になるんじゃないか。これはもう何回となくわれわれは主張してきたところなんです。ところが、十二月の二十八日にもう約束の期限が切れるから、一月一日からひとつマル生運動をまた始める。その始めることは、やはり労使の間で十分協議をする必要があると思うのです。団体交渉でやればいいじゃないですか。今度はこういうふうにやりたいと思うが、一体どうだ。これはあなた方が指揮をされるのかもわかりませんけれども、これを職場で実際にやるのは、国鉄労働組合組合員であり、動力車労働組合組合員なんです。ですから、当然、そんなものは労使の間で話がきまったものからやっていくという原則に立つならば、再びこういう失敗は繰り返さないことになろうと私は思うわけです。どうもあなたの考え方というのは、またまた、もう一ぺんこんなような問題が発生するような方向へ進んでいくのではないかという心配があるわけなんです。ですから、いま言いましたように、来年から新しく発足されようとしておるこのマル生問題についでは、ぜひひとつ労使の間できめる、その線に立って、話がきまったことについては推進していく、これだけは原則としてきちっと打ち立てていただきたいと思うわけです。  さらに、総裁は、十一月の二十七日でございますが、記者会見をやられまして、マル生運動は推進していくと言っておられる。これは、新幹線の起工式か何かに行って、記者会見で言っておられますね。これは間違いないと思うのです。そのあなたの気持ちというのは私はわからぬことはないけれども、現在地方におきましても本社におきましても、これだけ紛争対策委員会で一刻も早く労使の間の正常化をやろう、やろうとして一生懸命になっておるときに、総裁が新聞記者会見で、マル生運動は推進するのだ、こういうふうなことを言われると、時期的にもこの紛争処理の、その気持ちに大きく影響すると私は思うのです。そんなことを言わずに、そんなことをやらずに、せっかく対策委員会ができたのですから、この対策委員会できちっと処理ができる、その処理が終わるまではマル生運動は一応中止する、中止をして、マル生コーナーであるとか、あるいはいろいろなPRがありますけれども、こういうのを、職場に張ってあるのを一ぺん全部きれいに整理をしてもらう、そうしていままでの紛争処理を全部やってもらう。これらが終わった暁において、さて次にはマル生運動については一体どうするか、この問題を労使の間で検討すべきであるということを私は申し上げておるわけなんです。ですから、総裁として、いま言ったような方向でおやりになる気持ちにあるかどうか。いや労働組合には一方的に報告だけはしておるけれども、おれはおれなりに一月一日からマル生運動を進めていく、そういう気持ちなのか。その点もひとつ明確にいまの心境を聞かしていただきたいと思うのです。
  26. 磯崎叡

    磯崎説明員 先ほども申し上げましたとおり、来年度以降の私のほうの予算、経営につきましては、よほどのことをいたしませんとやっていけないことは明らかでございます。これはもうどの先生方もお認めのことでございます。したがいまして、私どもといたしましては、その客観状況、国鉄を取り巻く周囲の状況を前提とした上で、この部内の問題を取り上げる、これは私は当然だというふうに考えます。したがいまして、組合にも話はいたします。しかし、いまの紛争処理委員会でこういうものを取り上げるのは、これはもう筋が違いますし、私はあくまでもこの問題を国鉄自体の再建問題の一翼として考えるという方向に変わりございません。
  27. 後藤俊男

    後藤委員 そうしますと、私はさっき間違ってそう言ったかもわからぬが、対策委員会でどうこうという問題ではこれはないと思うのです。  いま総裁が言われましたように、これはやはり国鉄の再建につながるという考え方も私はあると思うのです。さらに、財政経済的にも非常にきびしい情勢にある。これも私はよくわかるわけなんです。ですから、このマル生運動そのものがそれにつながっておるのだという考え方もあるかもしれませんが、いずれにしても、国鉄部内の問題である。ですから、これだけ多くの人々から批判された問題でもあるから、よほど慎重に考えてやっていかないと、再び失敗するぞという気持ち総裁にはある。これは私はよくわかるわけなんです。そうなってまいりますと、部内の問題でありますから、当然相手方の労働組合とも十分相談をしてやっていくのだ、このことは総裁としても明確にお答えになってもいいんじゃないかというふうに思うのですが、この点はいかがでしょうか。
  28. 磯崎叡

    磯崎説明員 国鉄におきましては、いわゆる労使協議制というものをとっておりませんので、十分説明はいたすつもりでございますが、協議という形にはいままだなっておりませんので、私どもの考えました、また部外のいろいろな先生方にいま御意見を承っておりますけれども、新しい純粋な生産性運動のやり方等につきましても十分理解を深めるように説明をいたすつもりでございます。(田邊委員「形だけではないんだ」と呼ぶ)
  29. 後藤俊男

    後藤委員 総裁、いまの話じゃないけれども、形だけを聞いておるのではなしに、もしやろうとする気持ちがありとするならば、先ほどからるる言っております点を十分考えてやっていただかないと、これはいけない。これだけはひとつはっきり申し上げても間違いないと思うのです。  それから、その次には、いま全国ほとんどの職場に——ほとんどの職場というか、ほとんどの地方本部には国鉄関係の不正問題がかなり出ておるわけなんです。たとえば、私がこの前調査に行った梅小路の駅ですね。あそこに参りますと、三十何件でございましたか傷害事故を包み隠してしまって、表彰を受けておる。これは虚偽の申告ですね。さらにはまた、この間大垣の運転電車区へ行ってまいりました。あそこではマル生の会合に指導員を出席さして、一方では出席しておるのに、その晩は添乗したことにして、添乗旅費を支給しておるわけなんです。これは金額で総計しますと約四千円です。添乗しておりもせぬのに添乗したことにして、旅費の支給が行なわれておる。これは勤務表から指導添乗表から全部私は見てまいりましたから、間違いがございませんし、これはほんの一例にすぎませんけれども、私は全国的にかなり多くの不正問題があると思うのです。これらの問題をもっと厳重に、これこそ処分すべきである。おそらくこの社会労働委員会でいままで一、二カ月の間に取り上げた問題だけでもたくさんあると思うのですが、それら全部やりっぱなしにしてあるわけなんです、中には処分されておる問題も、これはあるかもわかりませんけれども。これらの不正問題については早急に処分すべきである、こう私は考えるわけですが、これは総裁の権限においてやれると思うのです。いかがでしょうか。
  30. 磯崎叡

    磯崎説明員 そういった問題につきまして、前回後藤先生から御指摘のあった点もございます。それらにつきましてはあの後即刻調査して、処置すべきものは処置いたしました。しかし、その後なおあるというようなお話でございますので、これは十分調査いたしまして、結果の判明次第適切な処置をとります。
  31. 後藤俊男

    後藤委員 いまもやっぱり適切な処置をとるといって、処分ということはあなたは一切これは言われぬわけですが、何でその処分ということばをそうおきらいなんですか。何も、あなたがここで言うたからやれということを私は言っておるわけじゃないのです。いま言ったような問題については、不正なことをやった人に対しては厳正に処分をしてもらいたいと思うのです。  それからその次の問題としまして、三十六条協定がないときに勤務外の勤務をさせる行為があるわけなんですね。たとえば団体旅行の募集であるとか、さらにはことしの夏でございますか名古屋の駅で、私も行ってまいりましたけれども、勤労奉仕隊というのが出てくるわけなんです。そうしてその勤労奉仕隊の人が、徹夜明けにもかかわらず四時間も五時間も勤務をする、こういうようなことが行なわれておるわけなんです。だから労働基準局としても、ああいうことをやってもらっては職場の秩序を乱す。中小企業のこまかい職場ならそれはさほど影響はないかもわかりませんけれども、少なくともあなたの言っておられるように、ずうたいの大きい国鉄の大企業でございますから、そういうところで、三十六条協定があろうがなかろうが自発的に出てきた勤労奉仕隊だ、あの大東亜戦争を思い出すような勤労奉仕隊。勤労奉仕隊で、徹夜明けの人がやっておるわけなのです。こういうようなことを無秩序にやられたのではこれは問題になると思いますし、そのことが結局マル生運動につながったわけなんですよ。そのことがひいては不当労働行為につながった問題なんです。ですからそういう点についても、現在紛争対策委員会で問題になっておると思うのですけれども、できるだけ早くきちっとした基準と申しましょうか、協定と申しましょうか、そういうのを早く明確に労使の間で話をきめていただく、このことも私は必要だと思うのですが、これは総裁いかがですか。
  32. 磯崎叡

    磯崎説明員 いわゆる勤務時間外にほんとうに職員の善意でもってぜひ働きたいという場合に、それがたとえば休養時間を非常につぶしてしまうとかいうふうな問題ですと、これは事故にもつながりますので、そういうことはいたしませんが、自分のたとえば休暇をつぶして働くとかいうふうなことに対しましては、やはり何か基準を設けたほうがいいということをいま考えておるわけでございます。
  33. 後藤俊男

    後藤委員 時間が参りましたのでもう終わりたいと思うのですが、ただ、いままでこの国鉄マル生問題につきまして、当委員会としてもかなりな時間を費やして、あらゆる面からいろいろと話をしました。さらにまた、きょうで紛争対策委員会の結論の出る期限がきておるわけなんです。ところが、われわれが労働組合なりその他の情勢を調査に入ってみますと、地方における紛争対策委員会が全然前進をしておらぬわけなんです。前進しておるところは、わずかに五つか六つの鉄道管理局だけなんです。それ以外のところは、地方における対策委員会中身は前進しておりません。たとえば不当労働行為処分の問題についてもあるいはその他の問題につきましても、地方における対策委員会は前進しておらぬわけなんです。その前進しておらぬ原因は一体何だろうかと考えてみますると、総裁としてのはっきりした態度というか、はっきりした方針が打ち出されておらないところに、地方は迷っておる。地方で問題がありましても、これはおまえ本社関係じゃないか、本社の方針がきまらぬから何ともしようがない。本社のほうとしましては、ケースバイケースだから地方に聞かなければそんなものは実情はわからぬ。ピンポン玉じゃないけれども、あっちに飛んだりこっちに飛んだりしておる間に二カ月間が終わってしまう。こういうような経過をここ一、二カ月間——それはなるほど総裁の話を聞きますと、一生縣命やっておられることはわかりますけれども、もういまごろは、この国鉄マル生問題については、紛争対策委員会できめるべきことはきちっときまって、それで救済問題からありとあらゆる問題が労使の間できまりました、こういうところへきれいに持ってこなければいけない時期だと私は思うわけなんです。ところが実情を調べてみますると、各地方の対策委員会というのは中身は前進しておらぬわけなんです。二十幾つ地方対策委員会があると思うのですが、その中でわずかな数しか対策委員会中身は前進しておらない、こういう実情であるわけなんです。こういうようなむずかしい情勢に今日来たらしめたということは、どう考えてみましても、総裁のき然たる態度というか方針というものを明確に打ち出されておらない、そこに大きな原因があるんじゃないかと私は思うわけです。たとえば、先ほど言いましたように、対策委員会でいま一生懸命やっておるときに、この二十七日に総裁は新聞記者会見で、マル生運動は相変わらず推進していきます、こういうような発表をしておられるわけなんです。何もそんなことを故意に記者会見で言う必要はないじゃないですか。いままでマル生運動についてはいろんな批判があった、これを紛争対策委員会で処理すべく一生懸命になってやっております、それが終わったあと国鉄におけるマル生は一体どうするかということを私も検討しておるんですと、そういうようなものの言い方をすれば、ものごとの解決は早いと思うのですけれども、片方では処理委員会をやるんだ、やるんだ、片方ではマル生はやるんだ、やるんだ、そういうものの言い方をされるものですから、地方における局長なり現場長は迷うわけなんです。さらに処分の問題にしても、やっていいのか、やらなくていいのか、総裁の方針は一体どうなんだろう。相変わらずケースバイケースで総合的な措置を行ないます、それ以上ちょっとも前進しておらぬ。やられた結果を見ますると、一番きびしいので訓告であり厳重注意、これでは日鉄法処分には一切なっておらぬ。こういうようなことで一体、職場で働いておる、これだけ不当労働行為をやられた職員たちが納得して、これから気持ちよく国鉄再建のためにがんばっていくかどうかとなると、そこに私は疑問が残るわけなんですよ。ですから、ぜひひとつ総裁としても、処分の問題につきましては、これ以上私は言いませんけれども、厳正なる態度で処分すべきものはきっちり処分する。もちろんケースバイケース十分調査なさって適正なる措置を行なっていただく、これはぜひお願いしたいと思うし、さらに昇給昇格昇職の問題についても一刻も早くやってもらう、救済制度についてもはっきりしてもらう、勤務外の勤務につきましても労使の間できっちり話をしてもらう、これらもきょう一ぱいで日切れになると思いますけれども、国鉄労働組合と動力車労働組合もこの辺で真剣に取り組んで、すきっとしたいという気持ちで一ぱいですから、国鉄管理者である総裁のほうとしても、そういう態度を一刻も早く明確にしてもらうということをぜひお願いしたいと思うわけです。いかがでしょうか、それらのことに対する最終的なお気持ちとしては。
  34. 磯崎叡

    磯崎説明員 先生おっしゃること、よくわかりました。きょう一ぱいで詰めるべきものは全力をあげて詰めてまいりたい、また今後労使関係正常化についても、私は全力をあげて努力いたしたいということを申し上げておきます。
  35. 後藤俊男

    後藤委員 終わります。
  36. 森山欽司

    森山委員長 次に、田邊誠君。
  37. 田邊誠

    田邊委員 いま国鉄の問題を取り上げてまいりましたが、それと同様ないしはそれ以上に実は労使関係紛争が続いておる郵政の問題について、若干お伺いしたいと思います。  郵政大臣、最近の郵政の職場は、あなたも御存じの過去のような、まことになごやかな、まことに和気あいあいたる職場ではなくて、まことに陰惨な、まことにとげとげしい職場に変わりつつあるわけですが、一体この主要な原因は何であるとあなたはお考えになりますか。
  38. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 ただいま御質問の郵政業務の職場の件でございますが、私は部内の出身でありまして、いま御指摘のように、以前の空気と現在の空気を比較することができる立場におるわけでございますけれども、ただいま御指摘のこともわからないわけじゃございませんが、私といたしましてはただいま郵政省責任者であるわけでございまして、各担当の管理者職場を明るくいたしまして、郵政事業の推進のために一生懸命にやってくれておるという熱意は買っておるわけでございます。しかし、いろいろ御指摘はあろうかと思いますけれども、暗い、陰惨な、朗らかでないという空気がございましたならば、今後御期待に沿うように、私は先頭に立って労務関係正常化に努力してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  39. 田邊誠

    田邊委員 いま大臣も過去を振り返られて、現在の職場が非常に暗いものであることについては十分御認識をいただいておると思うのであります。いま大臣の言われましたとおり、いわば管理者の人たちがいろいろなことをやっていらっしゃる。しかし、やることなすこと、打つことすべてが、実はいま言った職場の明朗化に逆行する状態であるということについて、私は非常に残念に思うのです。過去数年間、全逓をめぐるところの紛争の問題、郵政の職場の問題を当委員会でも私は取り上げてまいりました。きょうまたそのことを言うことは、私は非常に残念です。しかし、いま大臣のお話のように、どうしても今後明るい職場づくり、そして国民に信頼をされる郵政の職場をつくるためには、やはり払うべきものは払う、間違いは正す、こういう態度でもって今後に対処しなければならないというように私は思うわけです。  きわめて端的にお伺いいたしますから、あまりくどい御説明は要りません。私もかなりのことを承知しているつもりですから、ひとつ明快な御答弁をお伺いしたいと思うのです。  その主要な原因一つに、やはり労使の間でもってかわした約束は、これは厳に守るという態度がその基本になければならないと私は思うのです。労使の間においていろいろな問題が出てまいりましたけれども、つい最近において主要な、基本的な約束は何かといったならば、昨年の四月九日、そしてまた昨年の十二月十四日の労使間における確認、それに基づくところの郵政省の一連の通達やその他の指導、私はこれが基本ではないかと思っているのです。ところが、この四・九なり一二・一四の確認が下部にほんとうに浸透してないところに、実はこの問題が現在も惹起をしている大きな原因があると私は思うのです。  すなわち、いままで省がとってまいった方針の中に、ややもすれば、組合に対する組織介入、不当労働行為、そういったものが非常に頻発をいたしましたから、これをなくすということがこのいわば確認であるはずです。ところが、その後における省の方針が明確に変わった、明確に改善をされたという、そういう実績はあがっておらない。確かに、私がそういう質問をすると、省側は、現在全逓との間において六人委員会等をつくって、これでもって鋭意実は問題点を検討しているのだ、こういうことを言われると思うのです。しかし省の基本的な方針が変わらない、したがって下部の管理者は、六人委員会等でもっていろいろな、具体的な問題なり現象を処理いたしましても、その基本が変わらぬからいままでどおりやっておるということで、いわば差別人事や不当労働行為組合活動に関する制限等が依然としてあとを断たないという状態であります。私もつい最近現場を見せていただきました。私もいささか郵政の職場の実態を知っているものでありますが、予想した以上に実はまことに暗いものがありまして、まことに憂うべきものがありました。これはいま申し上げたように、省の方針が以前から比べて、労使相ともにはかってものごとを律するという、そういう立場に立っていないところにやはりその原因がある、こう私は考えざるを得ないと思うのです。一体どういう具体的な指導をされて、どのような改善の実績をあげられたのか。六人委員会でもっていろいろな問題を解決したという。しかし管理者に対して、たとえば不当労働行為をやった者に対して厳重な処分をする、こういうふうにさきの大臣は明言をされました。一体どういうふうにして処分をされたのか。これがいまだに実は明らかでないのであります。それと私は、この処分をしたという実績をお伺いしたいと同時に、今後は大臣がしばしば言明をされ、省が言明をされているところの不当労働行為や組織介入あるいは組合運動に対する異常な制限というものは絶対しない、そういった保障は一体どこにありますか。どこに保障があるのか、これをお伺いしたいと思うのです。
  40. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 まず労使問題についての基本的な姿勢はどうかということでございますが、これは御指摘にもありましたように、昨年皆さま方にたいへん御心配をかけました労変運動と申しますか、そういうようなことに基づきまして、昨年の暮れ十二月十四日に労使相互間で誠意を持って折衝いたしまして確認事項をきめておるわけでございますが、これが私はすべての根本ではないか、かように考えておるわけでございます。労使お互いに不信感を払拭いたしまして、誠意を持って相対する。そしていろいろ御指摘のあったような問題につきましても、よく相接触いたしまして次々に解決していくということが大切だと思うわけでございまして、その精神を現場に徹底いたさせますように二回にわたって通達を出しておりますし、また私が大臣になりましても、もうすでに二回、地方局長会議がございましたが、そういう際にも、組合問題については誠意を持って不信感を払拭して対処していかなければならない、同じ逓信一家じゃないか、そういうような気持ちを持って一生懸命やってもらいたいということを強く示達いたしておるわけでございまして、そういう精神でやるべきだと思っておるわけでございます。  先般来、全逓の顧問議員団その他関係者が、たいへん熱意を込めて現業局を十四局にわたって御視察をいただきまして、私もいろいろその取りまとめ後の結果についてのお話を承っておるわけでございますが、こんなに問題があったのかというようなことで非常に心痛いたしておるわけでございまして、その一々について御趣旨に従って十分調査検討いたしまして、そして適当な措置を講じてまいりたい。まだ調査の段階にございますものですから、どういうことをするかということははっきり方針をきめておりませんけれども、とにかく誠意を持って、せっかく皆さま方がああまで御多忙中に熱意を込めて郵政事業をよくしたい、ちょっとでも朗らかな職場にしたいというお考えでやってくださった、その御好意にお報い申し上げましてりっぱな職場をつくり上げなくちゃならないということを考えておるわけでございます。  実は私になりましてまだ、そういう不当労働行為があったからということで処分をいたしておるものはないのでございまして、ということは、そのようなものは私あることを知らなかったわけでございますが、御指摘によりまして十分その辺がわかりましたから、今後十分調査をいたしまして、そして適当な措置を講じたい、適当な時期にそのような方法をとりたい、このように考えておるわけでございます。  六人委員会のお話がございましたが、これは私はきわめて有効な制度だと思っておるわけでございまして、この場で十分労使間で意思の疎通をはかり、大いに論議、調査、研究いたしまして、正しい結論を出すというようなことで活用してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  41. 田邊誠

    田邊委員 大臣の熱意を私どもはすなおに受けたいのですけれども、残念ながら具体的な事象について大臣は御存じない。また、大臣に知らされていない。これは郵政官僚の一番悪いところです。したがって、たとえば大臣がまっとうな考え方でもって事を処そうとしても、実はあなたのところに入るところの報告というものは、行って帰ると違うのですね。ですから私は二、三の具体的な事実だけに限ってお話をいたしたいと思います。  大臣、あなたは組合が全逓であれ、あるいは他の組合であれ、そのことによって差別をするというようなことはありませんね。
  42. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 部内に全逓、全郵政の二つの組合があることはよく存じておりますけれども、もちろんその間差別をしようなんという考えは毛頭ございません。
  43. 田邊誠

    田邊委員 しかし現実には、全逓に入っておる者、全逓の組合員は成績不良者、これは悪者、全逓を脱退している者は即成績優秀者、これは良識派、これはよい者、こういう規定づけをいつしたのですか。
  44. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 ちょっと最後のおことばがよくわかりませんでしたが……。
  45. 田邊誠

    田邊委員 あなたは組合のいかんによって差別をしないと言うけれども、現実には全逓に入っておる者と、全逓から脱退している者との間に、実は大きな差別が行なわれている。こういう事実をあなたは御存じですか。
  46. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 それは、今度御指摘をいただきまして、そういう事例があるということを承りましたので、十分調査をいたしまして適当な措置をしたい、かように考えておるのであります。いままでは存じませんでした。
  47. 田邊誠

    田邊委員 大臣は知らなかったわけですから、やむを得ないといえばやむを得ないですけれども、これは知らなかったという不明を恥じなければならぬですね。  これは大臣でなくてもけっこう、人事局長でいいですが、たとえば、現場の郵便局に課長、課長代理あるいは主事、主任というものがおられますね。私は、郵政の職場を見て、それほどむずかしい仕事をしている職場ではない。したがって、ある年限がたてば当然主任、主事なんという役職にはだれがついてもそう誤りをおかすものではないと思うのですね。この主任になるのには、一体どのくらいの年限でもって——幅があるものでございますか。現場長にどのくらいの幅を持たしておるわけですか。
  48. 北雄一郎

    ○北政府委員 特に厳密に規定したものはございませんが、大体実情を見ますと、三十歳ないし三十五歳ぐらいで主任になるという例が多うございます。
  49. 田邊誠

    田邊委員 私は、ついせんだって、東京の南部小包集中局に行ってまいりました。驚くなかれ、ついせんだって、四十六年の十月一日に主任に発令された者を見ますると、大体十年四カ月、十年六カ月、十年十一カ月で主任になっておる。これは私は当然だろうと思うのです。この程度で主任になることは当然だと思う。ところが、一方において、十九年十一カ月で主任になってない。採用されてから十八年六カ月で主任になってない。しかも、この者は四級職の試験を受けて入ってきておる。これと同期の者が課長代理にいますでになっておる。十八年六カ月の者がもう一人います。この人も四級職の試験に受かって入局して、同期の者で課長代理をやっている者がいるが、これがいまだに主任になってない。これはよほどの成績不良者ですか。よほど適格性に欠けている者ですか。私はまる十年近くも、主任になるならないで差があるというようなことは、これはふしぎなことだと思うのです。これはどうなんですか。
  50. 北雄一郎

    ○北政府委員 主任と申しますのは、部下を指導する、こういう職務規程になっております。したがいまして、指導能力というものが十分なければならない。また、勤務実績あるいはその適性、その他いろいろな要素を勘案いたしまして任命するわけでございますので、必ずしも十八年、十年という、その八年間の差というものが一番大きな要素になるということとは考えられない、かように考える次第であります。
  51. 田邊誠

    田邊委員 私は何もそんなことを言っているのじゃないですよ。私は局長の裁量権を全然ゼロにしろと言っているのじゃない。局長に裁量権があることくらい知っている。しかし、さっき私が言ったように、郵政の現場におけるところの主任なんというものは、そんなに裁量権の幅があるものじゃないと思っているのですよ。しかも、いま申し上げたような者、ないしはその以前に主任の発令の際において除かれた者を見ますると、これは何ら支障を来たしたこともない、同僚、上司の信頼もかなりあるということで、私どもが聞いておって、あれが主任にならぬのはおかしいじゃないかと言っておる者が、なってない。あなたの言うように、それは成績の問題その他をわれわれは考えていますよ。それは、私は二年や三年の幅があっていいと思う。そこまで裁量権をなくせと言っているのじゃない。しかし、普通にやってきた者が十年で主任になれるものが、一方において二十年でなれないということは一体どういうわけか。しかも、これが故意か偶然か知らぬけれども、いままで私が申し上げた者は全逓の役員をやっておる者か、あるいはもとやっておった者である。あるいは、その中で処分を受けた者があるかと私は言いたいです。処分を受けてない者もなっていないじゃないですか。それほどの裁量権をあなたは現場局長に認めておるの。裁量権はそんなに幅があるものじゃないと思っておる。一体どのくらいの幅を認めておるの。
  52. 北雄一郎

    ○北政府委員 特に裁量権の幅として、勤続という要素につきまして何年とか、あるいは年齢という要素につきまして何年とかということは、別に定めたものはございません。  ただ、先ほども申しましたように、主任といえども部下を指導するという任務があるわけでありますので、単にそういった年功序列だけでは、これは先生もおわかりだと思いますけれども、そういう任用はしないわけでございます。ただ現実に、そういった人事関係の苦情というもの、それもいわゆる組合の所属にからまっての人事上の差別があるのじゃなかろうかというような問題提起というものが組合のほうからはあるわけでございます。あるいは、あったわけでございます。この問題につきまして、実は昨年一年間のいろいろな経緯にかんがみまして、昨年の十二月十四日に労使間で確認を結びましたときに、六人委員会の中にまた、そういったことを専門に扱う一つの小委員会をつくろうということで、自後両者で検討してまいりましたが、ことしの十月一日からこの小委員会を発足せしめております。したがいまして、そういった問題というものはその中で労使で話をしていくということにいたしております。
  53. 田邊誠

    田邊委員 委員長からも注意してもらいたい。質問の要点をぴしりとひとつ答えてもらいたい。いいですか。  この二十年近くでもって主任になれない者は、私が言ったように、故意か偶然か組合の役員をやっておるのですよ。いまの労働組合の役員というものはかなりの、いわば組合員を指導し、いろいろな運動の先頭に立っておる者ですね。言うなれば、ある程度そういった大衆をリードする力を持っておる者ですよ。これは百人が百人とは言いませんけれども、おおかたそうであろうと私は思うのです。そうでなければ、たちまち批判を受けて、いまの組合の役員はかわるだろうと私は思うのですよ。いわばそういった能力を一面において持っておる者じゃないかと私は思うのです。それがいま言ったように、すべてなってない。これは、元分会長、元支部長、会計監査。そういった役職を持っている者が全部除かれているというのは、一体どういうわけですか。あなたがいかに裁量権を言ってみても、これは個々の対象の問題だと言ってみても、こういった者がなべていわば発令から除かれておる。これだけの差別を受けているということがあっていいのでしょうか、許されるものでしょうか。通例の常識からいって、私がいま言ったように、二、三年の猶予はあっていいだろう。これは大臣にも言ったはずです。これは課長、局長となれば、またその中から選ばれるものでありましょうけれども、まず郵政省現場職場でもって、普通に仕事をやってき、しかも組合の役員でありますから、ある程度の掌握力を持っておる者、そういった者があえて除かれておるところに問題があるじゃないか、私はこういう指摘をしているのですよ。  どうなんですか。あなたは、裁量権のことについて不明確だけれども、一体それは、主任に対して現場長が持っておるところの裁量権は何ほどが適当だ——何ほどが適当だという基準を設けるということは、あなたはいたしますか。そんなに幅があるのだったら基準を設けなさいよ。基準を設けて、三年なり五年なりの幅の中において現場長は裁量権を持つということならば話はわかるけれども、何らの基準もなしに、現場長にすべて一任しているのですか。現場長の見方だけでもって、一方は二十年でもならない、一方は十年でもって主任になる、こういうことが許されていいの。そこに郵政の職場の中における不平不満、疑心暗鬼が生まれてくるのですよ。謙虚に聞いてみてあなたはどういうふうに考えますか。
  54. 北雄一郎

    ○北政府委員 人事につきましては、やはり本人の適性、能力、それからむろん勤続年数、年齢その他いろいろな要素を総合勘案いたしまして、最も公平にきめる、こういうことが人事の鉄則であろうというふうに思っております。部内にも十分その点は浸透さしておるわけであります。お示しのような具体的な例の場合、たとえばある局でお示しのような例の人たちが全然一人も主任になっておらぬという場合、これにつきましては、具体的な個々の人物を私存じませんので、ここではお答え申し上げかねますけれども、しかし結果的にそうなっておるからといって、直ちにそれが不当であるということにはならない。もしそういった問題提起があるならば、やはり先ほどの六人委員会の小委員会というものの活用の中で個々に処理していくべき問題じゃなかろうか、かように考えております。
  55. 田邊誠

    田邊委員 六人委員会で何も全部処理するなんということだったら、郵政省の人事局は要らぬじゃないか。そういう間違いを起こさないところに、あなた方の人事管理の要諦があるのでしょう。私は常識的に見て、だからそれほどの差があってしかるべきじゃないと思うのですね。大臣、どうですか。常識で見てそれほどの差があっていいのですか。普通はそれほどの差があっていいものじゃないと思いますけれども、どうですか。
  56. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 常識的に申しましてそのようなことが言えないことはないとも思いますけれども、ただいま人事局長がお答えいたしましたように、人の問題はやっぱり具体的に個々について御指摘いただいて、これはこういう理由でこういうことになっておりますということを申し上げなければ、はっきりした真実はわからないと思うのでございまして、そういうことを逐次ひとつ進めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  57. 田邊誠

    田邊委員 私は、例外的に一人や二人があったというのなら、これはその者について一つの欠格条項がありはしないかと思いますよ。これは組合の役員をやっておる者全部じゃないですか。私はそれほど判断を誤ってものを言っているつもりはありませんよ。これはひとつ今後の人事の要諦として当然、昇任、昇格についての一つ基準を設ける、現場管理者の裁量権について一つの幅を設ける。原則的には、これは当然先任権が確保されなければならない。勤続年数やあるいは年齢やその他が、もちろん第一義的に考えられなければならない。私は、いま言ったように、局長、課長のことまで言っているのじゃない。大体郵便局における主任がどういう仕事をしているか、私自身もよく知っているつもりです。そういう認識の上に立って、これほどの差があってはおかしいじゃないかと言っているのです。東京の南部小包集中局、私が具体的に例をあげたことについて、ひとつさっそく調査してもらって、個別的な救済措置がとれるものならとってもらいたいということと、これらの昇任、昇格についてのある程度の基準をつくるべきじゃないかという提議を私はするけれども、いかがですか。
  58. 北雄一郎

    ○北政府委員 昇任の基準等につきましては、実は組合のほうからそういう協約を結ぼうじゃないかという話は前から来ております。私のほうでも、別にそういう協約は結ぶべきものでないという言い方はしておりません。しかし、内容の問題につきまして大きな径庭がございますので、この問題につきましては、なおそういった労使間の検討におまかせいただきたいと存じます。  南部につきましては、東京の六人委員会にたぶん出ておるというふうに聞いております。したがいまして、その結果につきましては十分注目をしてまいりたい、かように考えております。
  59. 田邊誠

    田邊委員 断わっておきますけれども、私は六人委員会の結果が云々じゃないんだよ。私が私の調査に基づいてあなたに質問をしていることに対して、委員会を通じて明確に答弁してもらいたい、するのかしないのか。何だ、六人委員会、六人委員会とは。
  60. 北雄一郎

    ○北政府委員 十分調査をいたしまして、結果について御連絡申し上げたいと思います。
  61. 田邊誠

    田邊委員 実は、この南部小包集中局にはまだほかにも問題があります。業務表彰も、まことにふしぎなことに、全逓を脱退している人が多いところの職場については表彰が行なわれておる。脱退者が少なくて、たまたま脱退した者でも若い主任が二人だけであるところの都内差し立て係については、一人も業務表彰を行なってない。大体、外から見たらこれは明らかに差別をしているのじゃないかと思われるような、そういうところが多いのです。これをひとつ調べてもらいたい。これは公平に昇任、昇格もやるべし、業務の表彰もやるべし、そうしなければ公平な人事とはならない、こういうふうに私は思うのですよ。  南部集中局に行きまして実はたいへん重大なことを私は聞いてまいったのでありますが、新しく採用された者に対してある一定期間訓練をするようですけれども、その訓練期間中に、実は管理者が、明らかに不当労働行為にわたるところの発言をしている、こういう事実があります。これはきわめて巧妙に行なわれておりますけれども、間違いなくその管理者不当労働行為であることは歴然たる事実であります。こういうことが明らかであれば、これに対して厳重に処分をいたしますね。
  62. 北雄一郎

    ○北政府委員 南部小包局の場合の具体的なケースについては御容赦願いますけれども、万一管理者不当労働行為をしているということが明らかであるというふうに当方でも考えましたものにつきましては、適正な措置をとるつもりでございます。
  63. 田邊誠

    田邊委員 容赦をしてもらいたいというのはどういう意味か私はわからぬけれども、この庶務会計課長は、新しく入ってきた者に対して、全逓という組合は違法ストをやる組合であって、これはいかぬ組合だ、君たちは全逓に対して加入を迫られたろう——いま全逓しかここはないわけですから。その際に断わる方法としては、私はそのようなものには加入いたしませんとはっきり言えばいいんだ、なまじ考えておくなんというようなことを言うと、あるいはもう少し待ってくれというようなことを言うと、またその加入を迫られるだろう、したがってその場で、加入いたしませんとはっきり言えば、加入するしないはあなたの自由なんだからそれで済むんだ、こういうことを言っておるわけです。これは一人だけに聞いておるのじゃない。新しく入局した者はなかなかもってこういうことは言いづらいのですけれども、実は多くの者がようやく六カ月たったから証言をしているのです。こういった事実は不当労働行為に当たりませんか。
  64. 北雄一郎

    ○北政府委員 私ども、そういう指摘が組合のほうからもなされましたので、実は調べたわけでございますけれども、これは庶務会計課長であります。これは訓練担当の課長でもあるわけであります。これが、ことしの四月のときの特別講話でなかろうかというわけであります。約一時間ばかりいろいろ話しました。その話しました基本は、実は本省でもってこういった新規採用の職員に対する訓練の教科書がございまして、簡単な教科書でありますが、「新しく職員となった人々のために」というのがございます。これを使いまして、その本の前半について要点の説明を行なったということであります。その中で、組合関係の話につきましてこう言ったということであります。郵政省には全逓、全郵政という二つの組合がある。上部団体についてみると、全逓は総評であり全郵政は同盟につながっておる。組合への加入または非加入については全く本人の自由意思であって、自分できめることである。管理者は職員の組合への加入、非加入については関与できないものであるから、相談に応じることはできない。争議行為の禁止について公労法十七条で規定されているから、ストライキ等違法の行為をしないようにすることなどについて話をした、こういうことでございます。
  65. 田邊誠

    田邊委員 そのこと自身も実は問題だといえば問題なんですよ。そういうことを言いながら、実は組合の加入について暗にいわば選別をしている、こういうことがある。ところが、それだけじゃない。それだけじゃなくて、いま私が言った以外に、全逓に加入を勧められた場合には加入しませんとはっきり言いなさい、こういうことを言っておることを多くの若者が実は証言をしておるのですよ。あなたが一方的に課長の話を聞いてみても、それだけでは実はその事実が明らかになるものじゃない。この庶務会計課長はさらに、こういうことも言っていますね。いなかに転勤をしたいか、これは五、六年かかるよ、しかし転勤をしたければ、からだがきれいでないとだめだよ、組合活動をやるのはいなかの局でも引き取らないよ。どうでしょう、人事局長。こういう特別なことばを使っているのをなおかつ、そのものが何か揚言をした、虚偽の話をしたというふうにあなたはとりますか。こういうことを言っているのですよ。からだがきれいでなければならないよというのは何だよ、これは一体。組合活動をやる者はいなかの局もとらないよというのは何だ、これは。そのことを言っている。さっき言った、全逓には加入しませんとはっきり言いなさいと、そういうことばにつながっているのですよ、これは。それで初めて明確になるでしょう。こういう一連の話をしているところに、いわばこの庶務会計課長の組合に対するところの介入がある、こういうことを言っておるのでありまして、唐突にそのことだけ出てきたのではない。いかに課長が、それ以上言わぬ、いま人事局長が説明した以上に言わぬと言っても、そのあとのいなかに転勤の問題は、それを飛び越えてそういう話は出てこない。この一連の話を通じてみても、明らかにこの新規採用者に対して全逓に入るなという、こういう示唆を与えたことは事実であります。ことばの言いまわしはいろいろありましょう。言い回しはありますけれども、彼の目ざすものが全逓加入を何とかひとつ阻止したいという、そういう上に立って行なわれたことは、これは疑いのない事実なんですよ。総合的に判断をして、公労委も国鉄に対して救済命令をいたしました。同じような立場に立って、実はこういったいわば新規採用者という何もわからぬ若い者に対してこういう措置をすることに対して、あなたは一体どう考えますか。
  66. 北雄一郎

    ○北政府委員 先生がただいま御指摘になりましたようなことにつきましては、実は当方に対する指摘がこれまでなかったものでございますから調べてございません。さっそくその線もよく調べたいと考えております。(田邊委員「その事実はどうですか」と呼ぶ)その事実は、そういうことで調べてみるということに相なります。
  67. 田邊誠

    田邊委員 これは、南部の集中局だけの問題ではないのです。同じようなことがどこでも行なわれていますね。調布の郵便局長あてに、調布で採用になった新規採用者が誓約書を出しています。この誓約書がまたたいへんなしろものなんですね。遅刻、無届け欠勤をしない、上司の指示、命令に忠実に従う、違法行為をいたしません。また参加いたしません、反戦運動には参加いたしません、職場においても守るべきものは守ります。ずいぶんつじつまが合わないのだけれども、前後が。そのあとの六番目が、下書きには書いてない。下書きを書いてあったものがある。この下書きを書いたのが副課長である。ここに下書きがある。ところが、六番目だけは下書きに書いてない。ここが実はのがれ道なんですよ。何と書かせるつもりだったか。六と書いてあるけれども、下書きは書いてない。しかし、この六番目におまえは全逓に加入いたしませんと書きなさいと口頭で指示しているのですよ、これは。これを書いてあると彼らが後日証拠にとられて困るから、六と書いてあるが、これは空白になっている。しかし、この六には全逓に加入しないと書きなさい、こう言っておるのですよ。これは一体どうしますか。第一、反戦運動に参加しませんなんてよけいなことだ。思想の自由を縛るものである。これは下書きを書いてやったのですよ、副課長が。それに基づいて誓約書を出しているのですよ。こういう誓約書をあなた書かせておって、これでも組合に対して、あるいはその者に対するところの人権に差しさわりがありませんか。
  68. 北雄一郎

    ○北政府委員 ただいまお示しのことも実は不敏にしてただいま初めて承ることであります。よく調べたいと存じます。ただ、そういったことを本省なり郵政局なりが指示してやらせているということは絶対にございません。
  69. 田邊誠

    田邊委員 そういう本省なりの基本方針というものが下部に流れていくとこういう誓約書になり、あるいは訓練中の庶務会計課長の、全逓に加入しないとはっきり言えという言動になり、いわば組織介入、不当労働行為に具体的につながっているのですよ。これをわれわれは問題にしている。あなた自身知らぬかもしれぬ。しかし具体的にこのことをやることが管理者のつとめであり、実は忠実な労務管理である、こういう認識の上に立って行なわれているところに、非現代的な、きわめて封建的な立場に立ったところのいわば労務管理、暗い職場の横行があるということをあなたは知らなければならぬ。調べてもらいたい。  隣の後藤委員が現地に行きまして、実は驚くべき事実に立って大臣にもお話をいたしました。それは名古屋郵政局管内で毎朝、朝礼のときあるいは正午、あるいは午礼と称して一日に五回程度、実は職員を集めて直立不動の姿勢のもとに歌を歌わせている、こういう事実があります。「結束への挑戦」「ナンバー君」。この「結束への挑戦」というのは御承知のとおり、戦争中に歌われました「露営の歌」の文句であります。あなたは御存じですね。人事局長、御存じですね。
  70. 北雄一郎

    ○北政府委員 そういう朝礼のときに、そういった歌を歌わしておったという事実は存じております。
  71. 田邊誠

    田邊委員 これは後藤委員あとでお話をすれば一番いいんですけれども、これは適切であるとあなた思いますか。
  72. 北雄一郎

    ○北政府委員 これもことしの春ごろからそういうことであったようでございまして、当該局のだれかの着意、発想によってそういうことをしておったもののようであります。当該局のその担当の課長に言わせますと、多数の者が元気よく歌っておったということであります。しかし、御承知かと思いますが、先生御臨局になりましたときに、局長もそういうことなら考えてみたいということであったようでございますし、その後今月の末にすでに、やめということにいたしたと聞いております。
  73. 田邊誠

    田邊委員 適切であったのかなかったのか、どっちだ。
  74. 北雄一郎

    ○北政府委員 多数の者が元気よく、別に多数の者はいやだということでもなく歌って元気に出ていったようですから、それなりの効果はあったと思いますけれども、じゃそれが非常に適切な施策であって、したがって日本全国の郵便局でそれを歌わせるように取り上げるべき問題かということになりますと、そういった問題ではなかろうというふうに存じます。
  75. 田邊誠

    田邊委員 あなた歌ってみたことありますか。歌ってみてください。ちょっと、これを持っていって歌ってみてください。歌ってください。
  76. 北雄一郎

    ○北政府委員 私は、そういう問題が出まして、字づらで見ただけでございますので、節も存じませんし、文句も存じません。御了承願います。
  77. 田邊誠

    田邊委員 これ、ちょっと取りに来なさい。これ持っていらっしゃい、ここにあるから、持っていらっしゃい。——歌えますか。
  78. 北雄一郎

    ○北政府委員 文句をこれまで、さっと見たことはございますが、手にとってよく見るのはいま初めてでございますし、節も存じませんし、またこういった場所で歌うべき歌じゃなかろうというふうに存じております。御了承願いたいと思います。
  79. 田邊誠

    田邊委員 私はたいへんひどいことを言っているとあなた思うでしょう。これは聞いていらっしゃる委員長以下各委員も、田邊のやつもずいぶんひどいことを言うと思うでしょう。国会の正規の場所でもって郵政省の人事担当官にこの「露営の歌」のかえ歌を歌えなんて、非常識な委員であるとあなたお思いでしょう。しかし、私はあえてあなたにここでもって歌を歌わせようというつもりはないですよ。しかし現場の職員は、自分が好まなくても、この歌を一小節ずつ歌わなきゃならない。しかも歌い方が小さかったり、あるいは直立不動の姿勢がくずれれば、それに対してまた注意をされ、もう一度歌い直しをさせられて、そういう中でもっていわば仕事に出発するというこの状態をあなたに知ってもらいたいから、私はあなたにあえてこういう無礼なことを言ったんだよ。何も好んだ者だけが愛唱しておったんじゃありませんよ。現に名古屋中局の郵便局だけの問題じゃないでしょう。これは名古屋郵政局も「指導官だより」で載せて、大いに愛唱してもらいたいといっているじゃありませんか。これは一体どうしますか。中の郵便局でもってやめたから事が済んでいるんじゃない。名古屋郵政局はこれを奨励している。これは一体どうしますか。これはあなたがいまここでもって歌えないような、そういう好ましくない歌を、われわれも戦争中のことを知っているが、そういったことをあえて強制している。強制してきた。この事実に対してあなた一体どうしますか。そうしてそれを愛唱しろといった名古屋郵政局の指導に対しては、あなた一体どうしますか。やめたからいいんじゃありませんよ。あなた、これに対してどういう結末をとりますか。
  80. 北雄一郎

    ○北政府委員 その「指導官だより」も実はいまお示しで初めて存じたわけであります。どういう機会に愛唱しろとそれに書いてあるのかも存じませんのですが、たとえばこの文句の内容そのものは、これはしっかりやろうという歌でありますし、それからナンバー君というのは、私もしかと覚えておりませんが、郵便番号制度を始めましたときに募集したか何かの歌でありまして、文句はいずれもまともな文句の歌だというふうに思っております。
  81. 田邊誠

    田邊委員 一体これは、間違いであるというのでやめさせるのか、いいというので奨励するのか、どっちだかはっきりしなさい。それによってわれわれも覚悟があるから、いいというので奨励するなら、ひとつみずから率先して歌ってもらおうじゃないか。
  82. 北雄一郎

    ○北政府委員 名古屋中局の場合は、多数の者が喜んで歌っていると思っておったけれども、そうでもなさそうだというのでやめるということでありますから、それはそれでいいと思うのであります。
  83. 田邊誠

    田邊委員 そういう、事の理非を明らかにしないでもってうやむやに過ごすところに問題がある。これは後藤委員たちの調査によって明らかになった。なぜそれでは、みんなが喜んで歌っているのなら問題になるのですか。みんないやでいやでたまらぬじゃないか。直立不動の姿勢でもって歌わせられるのはいやでたまらぬのですよ。だから問題になったんでしょう。だからやめたんでしょう。しかし名古屋郵政局はそういうことを指導している。この歌を掲載するから皆さんで大いに愛唱してムードを高めてくださいと、ここに書いてある。そういった形でムードは高まり、郵便が完配され、あるいは郵便番号が完全に書かれるようになるのですか。こういうような思いつき、だれかが思いついたことをよしとして強制をし、これをやらない者は不良職員である、これは不届きであるといってなじるような、その態度が私は問題だと思っているんですよ。だからそれが悪いとするならば、改めるように指導しなさいよ。名古屋郵便局に対して指導しますか。あなたがができないなら、大臣がひとつやりなさい。
  84. 北雄一郎

    ○北政府委員 いやがる者に強制で歌わすということは感心しないと思います。しかしその「指導官だより」、中身を存じませんけれども、歌いたい者が歌う、あるいはそういう人間をふやすということならよかろうじゃないかと存じます。
  85. 山本政弘

    ○山本(政)委員 関連。人事局長にちょっとお伺いしますけれども、いまの軍歌のかえ歌、これを歌わして、そして職場のほうではそのことについて歌いたくない、しかしそれを無理に歌わせておる。先ほどの話じゃないけれども、十八年働いてそして指導の上に問題があるだろうからそれで昇任をさせない、こう言っておる。それじゃ名古屋の中局の局長は、指導上に問題があるとお思いになるか、ないとお思いになるか、この点聞かしてもらいたい。
  86. 北雄一郎

    ○北政府委員 この歌は、その歌の中身からいたしまして郵便関係職場の歌であります。名古屋中局で外勤はほかに貯金局、保険局があるわけでありますし、内勤の職員もたくさんおるわけでありますけれども、これを歌っておったのが郵便関係職場、集配課であったように思います。しかし、局長としても、そういったあまり強制ということで歌わすということについてはこれは問題があるだろうということで、むしろ局長の決断で、今月の二十八日以降やめということにしたようでございますので、その点御了解いただきたいと思います。
  87. 山本政弘

    ○山本(政)委員 局長の決断でやめたということは、つまり議員団の調査があって、そしてそういうことが職場の訴えの中から拾われたわけでしょう。そして、それを指摘したから、実は決断によって何か知らぬけれども、やめたわけだ。そうすると、それまでにいろいろなトラブルがあったと思うのです。職場の人たちにうっせきした不満もあったと思うのです。つまり、ぼくが見てもこの文句は決して正しいとは思いません。しかも曲に至っては「露営の歌」だ。いまどきそういうことをやっている名古屋の中局の指導部の人たちの頭脳を私は疑うんだけれども、しかしそういうトラブルをそのままほおかぶりして、調査に行って、初めて指摘されて、そしてやめたということに対するそういう指導上の問題というものは、指導するだけの、要するにそういう責任がある。つまり、指導するに値する能力があるかどうかということを聞いているのですよ、私は。あなたは先ほど昇給の問題、昇任の問題についても、指導の問題云々と言われたんだから。だからそれなら中局の局長は、そういう問題について指導する能力があるのかないのか。なかったら、そういうことに対して、あなた方は適当な処断をしなければならぬでしょう。だから聞いているのですよ。どっちなんです。
  88. 北雄一郎

    ○北政府委員 全部とは申しませんけれども、まあ多数の職員が元気よくそれを歌って配達に出ておったというふうに郵便関係の課長も言っております。局長も、そういう郵便関係の課長の話でありますので、そのように思っておったと思います。しかし、先生方の御指摘、またいろいろな話がございまして、よく考えましてやめるという決断をした、こういうことだと存じます。
  89. 後藤俊男

    後藤委員 いま局長、自信のない返答がありましたが、私は行って聞いてきたんです。節をつけずにその文句だけ見ますと、まあでたらめは書いてないわけなんです。ところが「露営の歌」、あの大東亜戦争当時のあの節でやるわけなんです。もう私らみたいに五十幾つになった者は、すぐ大東亜戦争のことを思い出すような大きな声でこれをやるわけなんです。軍国調の歌です。これが、先ほど田邊議員からお話がございましたように、一日五回やるわけなんです。しかも直立不動の姿勢で、朝は朝礼、昼は何礼というのか、五回やるわけなんです。時間の長いときには脳貧血を起こして倒れる人もあるわけなんです。歌う声が小さいと、もう一ぺんやり直せ。昔の軍隊とちっとも変わらぬわけなんです。それをいい気になってやってきたわけなんです。はたしてそういうような指導性が妥当であるかどうか、間違いなら間違いで、中郵便局の局長処分すべきである。これはもう私ははっきり局長から言明すべきだと思うのです。  それからもう一つ局長、二十八日にやめたと言われますけれども、なぜ一体二十八日にやめたか、あなたは御存じですか。二十八日にやめた根拠があるのですよ。私が調査に参りましたときには、われわれに聞かすべくやっておるのか何かわかりませんけれども、調査中といえども大きな声で「露営の歌」が聞こえるわけなんです。何だあれはと言ったら、あれは一日もう五回です。えらいことですよ、私のところは。勇んで局を出たからは、昔の戦争の歌とちょっとも変わらぬ軍国調。ところが、そのときに局長はどう言ったかといえば、もうやめる方向で一ぺん管理者と相談をいたします、こうでした。ところが、帰ってまいりましてから、現場組合責任者とわれわれと連絡をとっております。   〔委員長退席、小沢(辰)委員長代理着席〕 やめるどころか、さらにもっとやれ。しかも歌を歌わす人は、全逓信労働組合に所属しておる人を中心に歌を歌わせる。私らが調査に行ったあとは、そういう方向でまた歌を歌わされたわけなんです。そうして二十八日に至って——やめるところか、さらにもうけしかけたような形で歌わしたわけですね。ところが二十八日になりますと、きょうの三十日にはこの社会労働委員会不当労働行為の問題でこれは追及されるぞ、だいぶ激しくやられるぞ、これはやはり国会答弁のためには二十八日にやめたということにしておかぬとぐあい悪いし、一ぺんやめようじゃないか、こういうことで戦術的におやめになったので、あなた、やめた、やめたと、いかにも心から悪かったという気持ちでやめたようなことを言われますけれども、私は中身を全部知っておるわけなんです。きょうの国会に対する対策として一応、形だけこれはやめたわけなんです。これはもうはっきりしていますよ。私は調査に行ってからいつも連絡をとっているわけなんです。おそらく調査が終わって一日か二日後にこの歌はやめになったかと思って連絡してみますと、なに、やめになるどころかよけい歌わせる。歌わせるのも全逓信労働組合、全逓の所属の組合員を中心によけい歌わしておるのだ。えらいことだから、もう一ぺんすまぬけれども電話して局長に話してもらえぬかというところまでいったんです。ところが、繰り返すようですけれども、きょうこの社会労働委員会があるというので二十八日か九日にやめておかぬとこれはかっこうがつかぬのでやめておきましょうというようなことで、真からおやめになったんではなしに、国会に対する対策としてやめた形をとっておるというのがこの問題なんです。ですから、この問題は不当労働行為以前の問題ですよ。こういうことを指導しておったところの中郵便局長、もし人事局長がそういう指導性、そういうやり方は間違いである、こういうふうにお思いなら、先ほどの山本議員の話じゃないけれども、これに対する、いままでやってまいりましたところの責任は一体どうとらせるか、これははっきりと人事局長、お答えをいただきたい。現場に行ってまいりました私からも、田邊議員に対する補足のようなかっこうで現状を申し上げたんです。ぜひ局長からはっきりとした回答をお願いします。
  90. 北雄一郎

    ○北政府委員 現地で十一月二十八日にやめました事情でありますけれども、私ども、どういう歌わせ方をしているのかいろいろ名古屋を通じて調べておりましたら、二十七日になりまして、あしたからやめだという連絡をもらったのでございます。私のほうから本委員会等の話を名古屋へいたしまして、もうやめろと言ったのでは実はございませんので、実情を調べておるうちに、向こうがもうあしたからやめますと二十七日に言ってまいったものであります。
  91. 田邊誠

    田邊委員 私の時間がなくなりましたから、実はいろいろと申し上げたい点はたくさんありまするけれども、いまお話のありましたように、南部集中局の問題にしてもあるいは名古屋の中の問題にしても、実は組合に対するところのいろいろな抑圧政策が行なわれてきているんですね。これは早急に改めてもらわなければいかぬです。しかし、改めたらそれでいいなんと思ったら間違いですよ。いま言ったように名古屋の郵政局が奨励しているでしょう、この「露営の歌」のかえ歌を「指導官だより」で。あなたに見せたとおりです。指導しているんです。この指導も誤りだというならば、これに対して措置しなさいよ。これは誤りだったとするならば、やはりそれに対して、誤った指導をした者に対してどうするのか。ここまでさかのぼらなければ、ほんとうの意味におけるところの、これは誤りを正したことになりませんよ。やめたんだからいいんじゃないんです。その点をひとつしかと腹におさめてもらいたい。大臣、よろしゅうございますね。  私は実はこれから本論のいろいろな問題に入りたかったのでございますけれども、あまりにも短い時間でございましたので入ることができません。いずれまた機会を改めて質問をいたしまするけれども、私は制度的にも、あとでもって島本委員から質問のありましょうブラザー制度あるいは試験制度、そういう中でもってじわじわ、じわじわ組合に対する圧迫をやってきている。このやり方というものを総体的に見て、大臣自身はよしとしないと思うのです。よしとしない部分が非常に多いと思うのです。この際大臣自身がきわめて重要な立場に立って、公平に見て、改めるべきものについては改める、こういう決断をしてもらいたい。それに対する大臣のお答えをいただくことで私はあとを譲ります。  ただ一つあとで御質問がありましょうけれども、ブラザー制度については当委員会と逓信委員会、決算委員会であらためて質問をいたす予定でございまするけれども、これに対してひとつ委員長を通じて御報告をいただきたい。四十五年度は一体どのくらいの経費を使用したのか、費目は何であるか、この内容は一体どういうふうに使っているのか、そして具体的にどのくらい、何件、何人に対して一体行なったか。しかも最終的にこれはいわゆる若年労働力の定着性をねらったものだと言っておりますけれども、いま郵政は赤字でもって悩んでいるときに、この種のものをやることが適当かどうかという判断を私はあらためて求めたいと思うのです。加えて、二つ以上の組合がある職場でもってこのようないわば一対一でやることによって起こる不当労働行為あるいは組合に対するところの干渉、そういったものが行なわれがちな制度について、そういうすき間のある、いわば間違いを起こしがちな制度について、私は当然再考しなきゃならないという立場にいま立っているのじゃないかと思いまするけれども、これに対する大臣の御決意を承っておきたいと思います。
  92. 山本政弘

    ○山本(政)委員 ちょっと関連で……。  ついでに大臣からお答えを願いたいのは、いま、指導能力がないから昇任をさせない、こう言ったのですよ。ぼくの質問には答えていただいてない。職場の人たちには、指導能力がないから昇任をさせなかった。そうすると、名古屋の中局の局長の指導上に誤りがあった、誤りがあったことに対する責任というのはどうするのか。その点だけ最後に聞かしていただきたいと思います。
  93. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 田邊先生の御意見、前段と、途中省いて最後の後段につきましては、御趣旨を体して最善の努力を続けてまいりたいと思っております。中段は資料御要求のようでございましたから、これについてはしかるべく取り計らいます。  なお、名古屋中局の問題につきましては、ただいま御指摘のような見方もあろうかと思いますけれども、さらに十分に調査いたしまして善処してまいりたいというふうに考えております。
  94. 田邊誠

    田邊委員 あとはひとつ島本委員の質問に譲りまするけれども、具体的な問題について私は多くを残しました。残しましたけれども、私の言わんとする趣旨は大臣よくおわかりのとおりでありまして、いまや年末繁忙の重大な時に来ておるときでありまして、この年末時の繁忙を乗り切るための一番の要諦は、何といっても労使関係正常化にある。こういう認識の上に立って事の理非を明らかにしながら、大臣の大胆にして率直なこれに対するところの決意と態度を私は心から要請しておきたいと思うのです。
  95. 小沢辰男

    ○小沢(辰)委員長代理 ちょっと速記をとめて……。   〔速記中止〕
  96. 小沢辰男

    ○小沢(辰)委員長代理 それでは、速記を始めてください。  島本虎三君。
  97. 島本虎三

    ○島本委員 数年来のいわば全逓の中のいわゆるマル生運動といわれた不当労働行為、いままでも何回も議題に供され、それぞれの答弁を承ってきました。新しい大臣になりまして、今回またわれわれの調査した結果に基づいて、ここにいろいろ質問が展開されております。答弁ではだんだんよくなっているはずの労使関係が、意外に悪くなっている。場合によってはこれは不当労働行為というよりも、刑事事件にまでなっている問題があった。こういうようなことで、答弁だけで済まそう、こういうような段階ではもうない。大臣もこの際十分決意して、いわばあなたが全郵政官僚を押える立場にありますから、労働問題はやはり労働省もここに現存しておりますので、今後のためにも全きを期してもらいたい。そういうような重大な決意で私は質問をいたしますから、大臣も隔意なく答弁してもらいたい。これは官僚の作文だけでは決して事態が解決されないということはよくわかりました、大臣もおわかりのとおりであります。  それで労使正常化についての申し入れ、十一月五日に全逓、全電通の顧問議員団として、大臣に対して、こういうような実情に対してはそのままにしておかれないということでこれは申し入れました。その後、大臣はこれに対して十分善処された、こう思うのです。大臣のこれに対してのいままでの経過並びに決意を承りたい。
  98. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 ただいま島本先生のお話しの、十一月五日付であったかと思いますが、先生方が現地の御調査をなさいます直前にたくさんの項目をお書きになりまして私に御要請をされました書類は、まさに拝見いたしたのでございますが、その後十四の局を御視察なされましてたくさんな御指摘事項をおあげになったのでございまして、私といたしましてはその御指摘の事項に基づいて十分調査いたしまして、たいへんな御労作であります各種の事項について最善の努力を続けてまいりたい、このように考えておるわけでございまして、ただいま島本先生が冒頭に言われましたように、こういう問題はことばではないと私は思うのです。やはり誠心誠意不信感をなくしまして、しかも御承知のように私は郵政部内の出身でございますから、事業をよくしたい、事業を愛するという気持ちは人後に落ちないつもりでございますし、そういうことは島本先生と全く同じ立場におりますわけでございまして、私のおりますうちに少しでも職場が明朗になった、郵政事業が非常によくなったというような空気をつくらなくちゃならないという責任を痛感いたしておりますわけでございまして、役人につきましていろいろ御批判がございましたけれども、その全責任は私にありますわけでございますから、その責任の重大さに思いをいたしまして、御期待に沿うように努力を続けてまいりたいと思います。  具体的に申し上げますと、五日に御指摘いただきました御指摘事項、これはその後の御調査があるものだと思っておるわけであります。五日にあったわけでございますが、いろいろ御指摘いただいておりますので、たくさんの御指摘でございますから、一々調査いたしまして御期待に沿うような方向に向かわなくちゃならない、こういうように考えておる次第でございます。
  99. 島本虎三

    ○島本委員 六項目でございます。これは、やはり労使双方の間の正常化についての一つの根幹をえぐった申し入れであります。十分これに対処すれば、当然こういうような不祥事も起こらないわけでありまして、この点はやはり今後の努力を私は期待いたします。  それと同時に、官側といわれる郵政省側の姿勢、この姿勢に対しても、大臣十分にお考えにならなければならない段階じゃなかろうかと思います。何かしら官というとえらいものである、労働組合というと下のものである、労使対等の原則からもうすでに前時代的なこういうような感覚が郵政省の中にみなぎっているんじゃないか。もしそうだとするならば、これは重大な問題でありますから、十分この点は大臣として気をつけてもらいたい。  そこで、呼称の問題でちょっとお伺いしておきたいと思うのですけれども、これは大臣も知っておられますけれども、東京では東京郵政局があるようであります、ございますね。その郵政局長の呼称、これは、東京郵政局長だけは特に長官と呼ばなければならないというような、こういうような制度上の何かがございましょうか。これはもう通り相場ということのようでありますけれども、局長というところを長官と言う。長官というのは、これは公式な職務上の呼称なんでしょうか、それとも尊称なんでしょうか、愛称なんでしょうか。これは何か設置法上の名称なんでしょうか。これはどうも私どもはわからないわけです。現に、私同僚から聞いたことばです。郵政局長を呼び出したら、ちょうどいなかった。そして、秘書課長が郵政局長の不在のためにいろいろさがすそのことばが入ってきた。長官はどこへ行った、長官の行き先はわからぬかと、こういうようにしてさがしておった。これは、郵政局長局長であって、何のために東京の郵政局長は長官と呼ばなければならないんですか。こういうような考え方こそ、組合を俗人と見下げて、そして自分を官として高いところに置くというような、こういう考え方のあらわれじゃありませんか。もう東京にそれがある。いまこういうことが不当労働行為としてあげられたのは、全部その東京の管轄じゃありませんか。まずこの考え方について——大臣、あなたの責任です。なぜこのままのさばらしておくのですか。こういうような考え方が不当労働行為、こういうようなものを行なう重大な一つの要素です。これはやめさせなければならないと思います。なぜやめさせられないんですか、これは。大臣の決意を聞きます。
  100. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 島本先生御承知のように、長官なんということばは、法制上全くないのでございまして、そういうことばが使われておるということになりますと、ただいま御指摘のように、官の不当な高慢心と申しますか、いかにも封建的な感じが伴うようなことばだということも私はよくわかるわけでございまして、そういうことばは使わないように指導してまいりたいと思っております。東京郵政局長だけそのように考えておるのでなくて、全体の郵政局長、電波監理局長、郵政監察局長というのが、そういうようなことばを使ってはならない三局長と、かように考えております。
  101. 島本虎三

    ○島本委員 三局長に対して三長官と言ったり、そういうようなところが問題であって、これはあなたの前任者である井出郵政大臣も、そういうようなことはけしからぬ、言わせないようにする、こう言ってもまだ依然として使われておる。これは官僚機構の中で、あなたがメスを入れないとだめです。いま言ったように、やめさせるというのですからいいです。やめさせますね。はい、ともう一回言ってください。
  102. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 はい。
  103. 島本虎三

    ○島本委員 それから、いろいろございましたけれども、私も前回からいろいろ調査してこの問題だけは明確にしておきたい、こう思う問題がございます。  それは国分寺の郵政局で何かいろいろな不当労働行為があり、それが人権問題にまで発展しております。そしてこのうちで中条和雄、この人が昭和四十五年十月二十五日に同局の郵便課の主任に発令されて、その後九カ月で四十六年八月九日に主事に発令されております。この人はどういうような人なんですか。なぜこのような抜てきをされなければならなかったのでしょうか。この点について承りたいと思います。
  104. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 詳細につきまして北人事局長から御説明させます。
  105. 北雄一郎

    ○北政府委員 当時、国分寺局は非常に業務が乱れておりました。そうして主任にも欠員があったわけであります。そこで郵政局並びに国分寺局当局といたしまして、いろいろ増員をするとかあるいは機動車を入れるとか集配区をふやすとか、いろいろな措置をとって業務の立て直しをはかったわけでありますが、その一環といたしまして、この主任にその人を得るということについても努力をしたわけであります。ところが当該局に適格者が当時いないということで、郵政局に適格者のあっせんを頼んだわけであります。結果、中条という人ほか二名、この人たち、従来内勤ではあったのでありますけれども、外務のほうの仕事にもついてみたいということであり、かつ国際局当時仕事に非常に熱意もあり実績もあり、こういう人間でありましたので、一定期間外務の訓練をいたしました上で国分寺局へ持ってまいった、こういう次第であります。
  106. 島本虎三

    ○島本委員 東京郵政局で優秀な人材と認めてその人を送り出してやった。大臣、これは全郵政の福祉部長ですよ。全郵政の福祉部長であれば無条件でこういうように優秀な良識者だと認めて将来の道を開いてやる、おかしいじゃありませんか。大臣、これが実態です。それだけじゃないのです。暴力行為がこの人によって行なわれておるのです。これはいま優秀な人であるから人材として郵政局から派遣してもらった、こういうような話です。この優秀性について今後やはりわれわれが探求しなければならないと思うのです。この人はおどしつけの常習犯です。から手の名人であり三段である。そして局の中でちょいちょいとドアをたたいたり割ったりすることもある。器物破損です。そして今度食堂が締まっておって酒が置いてあった、錠をあけることができない、さあどうしたか。からだごとぶつけて錠を一緒にこわして、そして中から酒を持ってきて三人組で飲んだ、こういうようなことをはっきり調べ上げてあるのです。調査された結果わかっているのです。優秀だから来ておる。この優秀な人はどういうようなことをやっておるのですか。全部優秀だというこの問題について伺いたいのです。  監視労働について、労働省では基準法上どういうような態度をとっておりますか。これを奨励しておりますか、それともこういうようなことに対しては警戒しておりますか。労働省の態度をこの際、参考のためにはっきりさせておいてください。
  107. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 ただいま御質問の御趣旨がちょっと私わかりかねましたのですが、たいへん恐縮でございますが、監視労働でございましょうか。
  108. 島本虎三

    ○島本委員 監視労働です。
  109. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 お答えいたします。  労働のいろいろな態様の中で、いまの監視の問題は監視断続労働ということで、一定の労働の態様については規定をいたしておりますが、そのほか御質問のような趣旨の監視的労働というのは、これは管理体制の問題でございますので、労働条件そのものとしては特段の規定をいたしておりません。
  110. 島本虎三

    ○島本委員 これはちょっと何ですけれども、じゃ基準局長、あなたは一日に何回小便しますか。
  111. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 私も正確に申し上げることもできませんが、通常数回ということです。
  112. 島本虎三

    ○島本委員 じゃ大便は何回しますか。
  113. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 毎日一回いたしております。
  114. 島本虎三

    ○島本委員 そのたびごとに事務次官にあなたは許可をもらってやっていますか。
  115. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 全く公務に関係ございません。
  116. 島本虎三

    ○島本委員 大臣、官僚になると公務に関係ないから、このとおり一日に数回の小便、大体一、二回の大便、これは黙ってやっている。これはあたりまえの話です。人権の問題ですよ。生理上の問題ですよ。もしここの空気が悪くて、私が演説できないような場合だったら、何ものにも先がけて委員長は窓をあけ、これを正常な状態にするというのが普通の生理上の常識なんです。ところが、この郵政局から推薦されてきた中条主事のもとに行なわれたのは、大便は家でしてきなさい。そして局でする場合は、課長の許可を得なさい。自由にしてもいいのは小便だけである。そしてそれもストップウオッチで大便の長さをはかっている、こういうようなことは一体大臣、どう思いますか。これが郵政局から推薦されてきた、優秀だとして特別九カ月で主事になった人の行動です。大臣、これはびっくりしませんか。
  117. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 お話によりますと、ほんとうに人権侵害になるきわめて極端なことだと思いますけれども、それは何か事情があるかと思いますので、一応前後の事情をお聞き取り願いたいと思っております。
  118. 島本虎三

    ○島本委員 事重要なんです。というのは、こういうようなのがずっと続いているのです。だから問題なんです。何か事件があったならば、それは解決したらおしまいです。ところが、こういうようなことが依然として行なわれておる。それを私どもは聞いておるのです。何のためにストップウオッチを持って大便の長さまではからなければならないのですか。どういうようなことがあっても、これはしてはならない。たとえ私が極悪犯人であって監獄につながれておっても、大便の場合は自分の時間だけちゃんと入れてくれるのです。監獄でもです。何のために国分寺の郵便局だけは許可をもらって、大便に行った人でも長さをストップウオッチではからなければならないのですか。重大だとは思いませんか。労働大臣、こういうようなことが行なわれておることは、労働行政としてあなたも今後は責任を持って解決してやらなければならない義務があるのです。労働行政の問題であったならば、あなたも一端の責任がありますよ。こういうことをやっているのです。これは労働大臣、やらしていいことですか。
  119. 原健三郎

    ○原国務大臣 もしそういうことが行なわれておるとしますと、はなはだよろしくないことだと思っております。
  120. 島本虎三

    ○島本委員 大臣、これはやはりよろしくないことなんです。そして職権を乱用して人権侵犯までやっているのです。昭和四十五年十二月五日午後七時十分、国分寺郵便局の組合事務室の中にこの人たち、中条郵便課主任並びに坂本、真保という主任がやってまいりまして、そして強引に組合員のえり元をつかんで、おまえはサボっている、一体やる気があるのか、なめるんじゃない、おまえを干してやる、こういうような暴言をはきながら暴行しているのです。こういうような人が郵政局から優秀な人材だとして配置されている人なんですよ。暴力団じゃありませんか。あとからあなたにもちょっと聞いてみますが、こんなのは冗談じゃないです。これはもう自分の役職を利用して、仕事に関しての重大な虐待と人権じゅうりんを行なっていることになるではありませんか。大臣、こういうようなことをやるのを認めますか。現に日にちまでちゃんと明らかにしてあなたに言っているのです。念のためにもう一つ、これは職権を乱用しての虐待抑圧行為ですが、大臣、こういうようなこともあるのです。働いているのは集配のまだ若い青年です。こういうような人に対して、昭和四十六年五月二十日午後六時ごろから、郵便局の食堂廊下で、全逓組合員である職員が帰局しようとした。それに対して中条郵便課主任が、おまえの作業態度は悪い、こういうふうにして、帰局しようとするのをとめてしまったり、そうして握りこぶしを柱にぶつけて、おれはから手の何段とかだ、おまえのあばら骨の二、三本はたたき折ってやれるんだぞ、組を連れてきて——組って何だかわかりませんが、組を連れてきておまえらとやろうか、組とは何ですか。暴力団、やくざの一団の尊称ではありませんか、尊称か総称かわかりませんが、組なんていうのは私はわかりません。こういうような脅迫をやるような主事、こういうような人がりっぱに抜てきされて、東京郵政局から推薦された人だという。大臣、これは困ったことじゃありませんか。職権を乱用しての虐待抑圧行為です。それだけではないです。いまいろいろと言われました。田邊委員からも言われましたけれども、長時間にわたって立たせたり、名古屋の例が出ましたが、そういうふうなことが国分寺にもやはりあったということなんです。歌を歌わせない、そのかわり全逓組合員に、郵便課長が課長の机の前に立つことを命令して、きょうは特訓だ、そこに立ったままみなの仕事を見学しておれ、こうやって直立不動の姿勢を命じて立たせたまま午前八時から十時三十分まで、ほかの職員が配達に出てしまったあと、十時三十分から十二時まで、同様に立ったままで、直立不動の姿勢をさせたままで、就業規則の第一条から第百二十七条まで、副課長の前で大声で読ませているのです。片や露営の歌、片や就業規則、この違いでしょう。これをやらしているのが、これまた優秀な職員だとして郵政局から配置されているその人、そして主任から主事に九カ月で抜てきされた人、こういうような人がそれをやっているわけです。そしてこれは昼だけではないのです。午後も一時二十三分から二時三十分までの間郵便課長から命ぜられて、朝と同じように立たせた、こういうようなことです。十六日も十七日も同様にやった。こういうようなことは労働契約による労働提供の範囲を越えた、逸脱したところの重大な虐待行為です。大臣の答弁を求めます。どうもあなたも急ぐようですが、これは大事なことですから、向こうのほうは少しおくれてもいいから答弁してください。
  121. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 たくさん御指摘になりましたお話は、事実だということになれば、ほんとうに不届きな話だと思います。十分調査いたしまして善処いたしたいと思っております。  ゆっくりお話をしたいのですけれども、私に一時に呼び出しがかかっておりますので、この辺で失礼させていただきたいと思います。
  122. 島本虎三

    ○島本委員 ちょっと大臣、こういうような事実が明確になったら、その人に対しての処分は明確にいたしますか、その一言だけ。
  123. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 必ず適正な措置をとりたいと思っております。
  124. 島本虎三

    ○島本委員 処分はいたしますか。
  125. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 措置のうちに処分も含まっております。
  126. 島本虎三

    ○島本委員 処分のうちに措置も入る、こういうようなことでひとつ了解しておきたいと思いますが、よろしゅうございますね。
  127. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 ちょっといまのおことばがよくわからなかったのですけれども……。
  128. 島本虎三

    ○島本委員 さっきと同じことです。
  129. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 そうですか。はい、です。
  130. 島本虎三

    ○島本委員 郵政関係では責任をもって答えてくれる人はどなたになりますか。——政務次官、これはやはり大臣がいなければ、あなたは大臣にかわって官僚を制御する一つの機関ですから、あなたもこの点は十分に、官僚に突き上げられないように措置してもらわなければなりません。   〔小沢(辰)委員長代理退席、田邊委員長代理着席〕  それで、労働契約によって労働を提供する、これを逸脱した行為がたくさんあったということは御承知のとおりなんです。問題はそれだけではないのです。ストップウオッチを持って、働いている職員のうしろからちゃんとそれを監視している、こういうような行動も平気でとっているわけです。労働大臣は、これは望ましいことじゃない、こういうように言っておりますけれども、平気でこういうようなことが行なわれておった。監視労働というのはそれなんですが、どうも労働省のほうも、官僚のほうになるとことばをごまかしてしまって、肝心なこういうようなことについて横にそらしてしまったのです。これは重大な精神的な緊張とともに強圧を与えるものなんです。こういうようなことをしてはいけません。またやらしてもいけないのです、こういうようなことは。ところがやっているのです。それは、郵政局から優良なる職員だとして推薦されてきたその人、その事実がはっきりしたならば当然処断される人、処分される人です。こういうような人が先に立ってこれをやっていたら、これは重大なことでありますから、こういうような点は十分処分しなければなりません。そうして少なくとも大便、小便、こういうような一つの生理的な要求に対しても監視するようなやり方は、まさに監獄よりもひどいやり方ですから、職場が暗くならない理由は断じてありません。こういうようなのがあるから職場が暗くなるので、労働運動があるから職場が暗くなるのではないのです。次官は、この辺の感情のデリケートなことは、女性であるから一番よくわかると思うのです。こういうようなものを絶滅しなければならない。そうして大臣が今言ったように、調査したあとでわかったならば、これを処分する。それは処置を含む処分だ、こういうようなことでありますけれども、この点に対してはひとつ十分善処してもらいたい。そうしてこの質問があった以後は絶対こういうようなことを再び起こすようなことはさせない、こういうような立場でひとつ今後の行政的な措置をしてもらいたい、こう思います。これについて、大臣いませんので、大臣にかわって決意を承ります。あまり官僚の言うことばかり聞いたらだめです、よけいなことを言いますから。
  131. 松山千惠子

    ○松山政府委員 先ほども大臣から申し上げましたようによく調査の上、そういう事実を把握いたしましたからには、おそらく省といたしましても処分を含めての適切な措置をとることと思いますし、私もそのように存じております。
  132. 島本虎三

    ○島本委員 じゃ、この問題は今後に期待して、次に進ましてもらいます。  次に、これは人事局長ですか、灘郵便局事件、昭和四十二年四月六日の判決、それと中部日本放送の事件、これは名古屋高裁、四十四年一月三十一日の判決、この判決は知っておりますか。
  133. 北雄一郎

    ○北政府委員 灘局事件と申しますのは、闘争時のリボン着用の問題をめぐってのケースだと思います。
  134. 島本虎三

    ○島本委員 それを知っているかと言ったら、知るとも知らないとも言わないで説明だけしてやる、それではだめですよ。この判決はどう出ておるか知っていますかというのです。知らないで、かってなことをやっちゃだめですよ。——労働大臣教えてやってください。
  135. 北雄一郎

    ○北政府委員 正確に記憶してないのでございますけれども、第一審の判決は、リボン着用で処分をするということは不当労働行為になる、いけないという判決だったように記憶いたします。
  136. 島本虎三

    ○島本委員 灘郵便局事件、神戸地裁からの昭和四十二年四月六日の判決、これはリボン、ワッペン、腕章着用を理由とするこの処分について違法である、こういうような判決が出ているのです。それと中部日本放送事件、名古屋の高裁、昭和四十四年一月三十一日の判決、これはリボン着用は正当な組合行動であるというような判決が出ているのです。こういうようなことを知っておるのか知らないのか聞いたんだが、どうもよく知らないようですね。あなたはなぜ知らないのですか。知らないでいろいろなことをやるから間違いが起こる。リボン、ワッペンを着用することによっていろいろな不利益処分を皆さんがしているようですが、こういうようなのは郵政部内にありませんか。あったとするならば、それはどういう指導をしておりますか。
  137. 北雄一郎

    ○北政府委員 その灘局事件につきましても第一審の判決がございまして、ただいま当方は控訴中であるというふうに記憶しております。その後、現にそういったリボンの着用等があればどう処置しておるかということでありますが、これはそういうものをつけないように強く説得し、場合によっては取れという命令をしておる、こういう現状であります。
  138. 島本虎三

    ○島本委員 灘の問題でも、これはいかに皆さんそういうように答弁しても、どうもあなたのやつは官僚答弁でまずいですよ、自分で反省しなさいよ、何か逃げ道をつくりながら答弁している。どうもこういうようなのは私は気に食わないのですよ。ほんとうに私は憤慨にたえないのだけれども、きょうはおこらないで言いますよ。それはいかにやっても、中部日本放送事件、これは名古屋の高裁で四十四年一月三十一日にもう判決が出ている。同じようなやつで、リボンの着用は正当な組合運動である、こういうのが出ているのです。四十四年、四十二年、もう二年前に皆さんのやつより新しい判決が出ているのですよ。それなのにまだやらないように指導している。一体何ですかこれは。やったならば、組合運動として正当な行為として認めないのだ、職員の正当な良識ある行動と認めないのだ、こういうような指導をしている。これは重大なる判決に対しての皆さんの挑戦じゃないですか、これは。これこそ労政局長、いませっかくなっているのに、これはこんなことをやらせないようにしているというような当局の考え方は、これはどういうものでしょうかね、妥当なものでしょうか、それとももう好ましくないものでしょうか、せっかく判決が出ているのに……。
  139. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 リボン、ワッペン等の着用につきましては最高裁の判例はまだ出ておりませんが、最高裁の裁判官会議では、裁判所職員のリボン、ワッペンの着用を禁止しておるということもございます。下級審につきましては御指摘のような判決も出ているわけで、たいへん争いの多い問題でございます。中部日本放送におきましては、ケースバイケースで判断するが、この場合は正当な組合活動の範囲であるというふうに申しておりまして、非常にむずかしい問題だと私ども思っておりますが、良識を持って解決されることを期待しております。
  140. 田邊誠

    田邊委員長代理 山本君、関連質問。
  141. 山本政弘

    ○山本(政)委員 ちょっと人事局長にお伺いいたしますけれども、第一審でかりにきめた。あなたはいま控訴中である、こう言った。控訴中であるからということで結論というものをお逃げになっているようだけれども、第一審がきまったら、第二審の判決までは第一審がきまった段階でその判決どおりに行なうのがあたりまえだと私は思うのですよ、少なくとも。そうすると、一審できまったことについては局としては、省としては、そのことをやはりちゃんとやらなければいかぬと思うのです。しかし一審できまったけれども、控訴中であるから、だから私のほうとしては、そのことについて取るように言っておるということは、私は誤りだと思うのです。法の解釈としては、まさにそうだろうと思うのです。そうしなければ法というものはきちんと順守できないことになりますよ。その点はどういうふうにお考えになっているのか。これは人事局長、労政局長、あらためてもう一ぺん御答弁願いたい。
  142. 北雄一郎

    ○北政府委員 先生のお説ではございますけれども、私ども一審判決に不満がございまして控訴いたしておるわけでございますから、お説のようなことにはならないと考えております。
  143. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 灘局事件は、リボン着用をしている者に対してそれを取るように命令して、その命令にそむいたからというので業務命令違反ということで懲戒処分にした。その懲戒処分が有効かどうか争われている事件でございまして、その懲戒処分の有効、無効の件につきましては、地裁の判決に対して控訴中でございますので、なお効力は不安定のままにある事件であるというふうに考えております。
  144. 山本政弘

    ○山本(政)委員 そうすると、不安定のままの状況だということになれば、つけたといって処分をすることはできないはずですね、確定していないのだから。労使の争いの中でやっていることなんですから、確定していないことについて確定したものとして処分することは、私はあやまちだと思うのですが、その点はどうなんですか、北さん。
  145. 北雄一郎

    ○北政府委員 私どもといたしましては、一審の結果は出ましたが、それに不服で控訴しておるということになれば、ずばり申し上げますれば、一審以前の状態と考えていいんではなかろうか、かように考えております。むろん一審でそういう判決が出たという実際のことはございます。
  146. 島本虎三

    ○島本委員 重大な考えですね、それは。そういうようなのがまた職場を暗くしますよ。少なくともこのリボンについての判決が、はっきり次の判決が出るまでの間は、これは不当じゃないんだ、これはもうそれを理由にして処分するのは不当なんだ、違法なんだ、こういうようなことが出ているし、同じような種類のやつが名古屋の高裁でリボン着用は正当な労働組合運動である、こういうように出ている。その判決があるのに、まだ自分のほうの判決が出ないから、出ない間は思うとおりのことをやるのだ、こういうようなことは少し判決に対して軽く見るような、行政運営に対してだけは絶対権があるような大それた考え方じゃありませんか。少なくともその間はその問題については手を触れないとか、いままでやった行動に対しては反省するとか、次の判決が出るまではもう一回振り出しに戻って考える、これくらいはあっていいはずだ。自分の考えだけ先に出してこれを変えない、こういうようなことは司法に対する行政の重大な越権行為ですよ。それがちゃんとあらわれている。リボンをつけて窓口へ出た人に注意して、それにさからうと内勤にこれを回してしまう、北海道で平気でそれをやっている。こんなのもあなたのほうから指示したのですか。もうすでにこう判決が出ているにもかかわらず、こういうようなことを平気でやっておる。これも省の変わらない一つの方針ですか。
  147. 北雄一郎

    ○北政府委員 北海道のケースは、リボンじゃなくてワッペンだったと記憶しております。ワッペンでありますからリボン等よりは相当大きなものだろうと思います。やはりそういったことで、何か内容も二、三の項目が書いてあるワッペンのようであります。そういったものを着用して、窓口でまん前でお客さまと会う、そういう場所では困るということで、同じ貯金でありますけれども二、三列うしろのほうへ回ってもらうということは、これは私ども正しいと考えております。
  148. 島本虎三

    ○島本委員 この際労働大臣、職場を暗くしないためにもいろいろ努力されている廣瀬郵政大臣ですが、いまちょっと出ましたから、大臣に対して、この際ですから私はもうざっくばらんに聞いておきたいのです。  というのは、いま郵政省のとっているその態度は御承知のとおりです。私どもは少なくとも地裁で判決が出た、それに対して提訴している。提訴しているその判決が出るまでの間は、他の判決、これは名古屋高裁ですが、こういうようなのが同じような問題で判決が出た以上、そういうような判決もそれを準用して、そして行為は、やはりそれを準用した上に立っての行為に改められなければならないし、それが一つの三権分立の成果である、行き方である、こういうように考えているわけです。しかしいまの郵政省の態度は、あくまでも自分らがやったのは、自分らの裁判の結論が出ない以上、ごうまつもこれは曲げないのだというかたくなな態度のようです。私はこれは国の行政としてももっと考えるところがあってもいいんじゃないだろうか、こういうように思いますが、大臣もいまの郵政官僚の答弁を、労働省としてもそのまま当然として考えられますか。ひとつこの際、はっきりしておいてもらいたい。どうもこの点も一つの大きいつかえになるようですから……。
  149. 原健三郎

    ○原国務大臣 お答え申し上げます。  これは最高裁判所の判決が出れば、もうこれでずばりであります。しかし下級裁判所の判決が出た場合に、郵政省が不服であるという場合においては、労働省としては、それはおまえ不服を言うのではないぞというようなことはちょっと指示できませんので、残念に存じております。そういうところでございます。
  150. 島本虎三

    ○島本委員 どうも、労働大臣もそういうような考えであるならば、まことに残念でありますけれども、しかし、われわれは、あくまでも良識ある態度をとらなければならない。これはやはり三権分立のほうでも、他のほうでも、同じような判決が、まあ地裁よりも、高裁のほうが出たとなれば、少しはその方面が重大性を持っているんだということぐらい考えても、しかるべきじゃないかと思うのです。これはそのとおりにしておきましょう。しかし、こういうような点も職場を暗くしている重大な原因一つである、これだけははっきりさしておきたいと思います。  それと、私どもが調査した中で、昇進をちらつかせながら不当労働行為、こういうようなものが平気で行なわれておったわけです。わなをつくって不当労働行為に導くようなやり方です。こういうようなことを平気でやらしているのですか。そうして、全逓を脱退するならば、おまえを主任にしてやるとか、全逓から脱退する同志を募るならば、おまえをまた栄進さしてやるとか、こういうようなことを平気でやっている事実がありますが、こういうような点は皆さんのほうでどう思いますか。
  151. 北雄一郎

    ○北政府委員 そのようなことはかたく、ないように指導しておるつもりでございます。そういったことはきわめて卑劣な行為である、私どもはっきりそう申し上げられます。
  152. 島本虎三

    ○島本委員 そういう卑劣な行為をやった者は、はっきりした場合にはどうしますか。
  153. 北雄一郎

    ○北政府委員 個々の事実は慎重によく調べなければなりませんが、もしそういったことがきわめて明確になった場合には、適正な措置をとるべきだ、こう考えております。
  154. 島本虎三

    ○島本委員 これは調査によって、本人の申し出、そして課長のそれに対するいろいろな答弁、こういうようなものと合わして、そういうような事実を突きとめてきているのです。念のためにはっきり聞いておいてもらいたい。それは中原郵便局。昭和三十八年三月一日に中原の局に入った人です。四十一年から四十三年、これは集配分室の責任者をやっておった。四十四年から本年の九月まで組合の執行委員をやっておった。九月の上旬に、主任で統括班長としてまとめてやってくれる人がいない、あなた以外には適任者がない、どうぞ主任の地位についてもらえないか、こういうような要請を阿部集配課長から受けた。そうして、組合役員をやめて主任になるなら主任の辞令をすぐ書くから、組合の役員をやめてほしいと具体的に言った、こういうような事実がはっきりしたのです。そうして本人は、この問題に対してはひとつ考えさしてもらいたい。その結果、自分も、前の話はないことにしてくれというふうに課長に話を返した。課長は、どうしても役員をやめない気かねと、こういうふうに言って、そのときは別れた。晩にその本人の自宅まで電話をかけてきて、心配だから電話するんだ、集配をまとめる人だ、おまえさんでなければやれないんだ、私と一緒にやってくれ、鹿又課長にも話しておいたから、これはよいようにするから、そうしてもらいたい。——鹿又課長という人はその局にいないのです。そしてどこの人かと調べたら、東京郵政局の第一人事部の第一人事課長なんです。そして前の中原郵便局の局長だった人です。そういうふうにちゃんとその証拠があがっているわけです。こういうようなことは、はっきりわなをつくった不当労働行為で、昇進をえさにした不当労働行為だということははっきりするわけです。本人の、あれもあります。はっきりこれを申し述べてありますから、間違いありません。こういうようなことが平気で行なわれているということは、これはまことに残念です。具体的な例、具体的な調査、これによって出したわけです。鹿又という人は、何ですか、これは。こういうような事実があったということに対しては、私いま申し上げましたが、これが正当な行為ですか、不当労働行為ですか。
  155. 北雄一郎

    ○北政府委員 御指摘の具体的な問題につきましては、当方でもその集配課長に聞いておりますが、ただいま先生おっしゃったのとはだいぶ内容が違うような調査の結果に相なっておるわけであります。すなわち、同人、集配課の人でありましたが、集配の仕事はからだがきつい。それで保険か貯金にかえてくれぬかというような話を課長にした。ところが課長が、集配課の人がほかの課へかわりたがってむしろ困っておるぐらいであって、ちょっとできない相談だというようなことから話が始まっておりまして、その集配課長の言によれば、むしろそういうことでありまして、ポストによってつるというようなことは全く言っておらぬと、こういうことであります。また鹿又局長、この話も、相手の秋本という——名前はあれですが、相手の人が、前の鹿又局長時代はいろいろきつかったけれども——何か、鹿又氏の局長時代のことを相手方が言いまして、そして当該課長が、いや、あの局長もりっぱな人だ、あのときこの局は不良局のレッテルを張られたが、短時間で見る見るうちに立ち直ったじゃないか、というような話をかわした程度だということであります。詳細こちらのほうでも当該課長について調べておりますが、非常に長くなりますので恐縮でございますから、要点そういうことでございまして、ポストによって当人をつったということは全くないと断言いたしておる次第であります。
  156. 島本虎三

    ○島本委員 やっぱり大臣いないとだめなんです。あなたの言ったことは、国会議員を侮辱しておることばにもなるのですよ。現に行って、本人と対で、この話はちゃんとわれわれのほうで調査してきているんです。ところが、あとから文書によってやるとそういう文書が出てくるのです。いかに六人委員会にかけても、これじゃ解決するわけないじゃありませんか。天と地の違いだ。それをまた下のほうのその文書を信用しておるのが上のあなたたちでしょう。これじゃ全然だめです。私が行って聞いてきたんです。私と対で、向かってこの調書を取ってきたんです。これが全部うそだというのが、あなた、逆な、課長からの証言なんです。何ですかそれは、一体。それだったら、もうこの郵政の態度というものははっきりわかりましたよ。あなたはやめない限りだめですよ、それは。もうこの場合ならば、何のためにあの主任を四名欠員にしたまま補充しないのですか。それをはっきりしてください。欠員四名ですよ。忙しいといいながら、何のために補充しないのですか。みんな全逓を脱退をするのを待っているんだよ。
  157. 北雄一郎

    ○北政府委員 中原局についてでございましょうか。失礼でございますが、別の局じゃなかろうかと思いますが、中原局じゃなくて。中原局につきましては、そういうことはないように存じております。主任を四人欠員のままにしておるということでございますが、中原局ではないように存じますが……。
  158. 島本虎三

    ○島本委員 中原局にありませんか、欠員は。
  159. 北雄一郎

    ○北政府委員 もうちょっと調べてみますが、中原局じゃなかったように思います。別の局でそういうことがあったように思います。
  160. 島本虎三

    ○島本委員 別の局の局名はどこです。
  161. 北雄一郎

    ○北政府委員 ちょっといま調べてみます。
  162. 田邊誠

    田邊委員長代理 島本君、時間がありませんから、調査をして報告してもらったら、どうでしょうか。
  163. 島本虎三

    ○島本委員 十分調査して報告してください。これは何名も欠員があるのにそのままにしてある。そうしてそれを埋めないで入れようとすると、全逓を脱退しなさい、脱退したならばそこで主任にします、こういうようなことをやっている。調査してすぐに出しなさい。答弁はいい。次の問題をやるから引っ込んでいなさい。  そして昭和四十三年の七月から鹿又局長というのは何年まで中原の局長をしていましたか。
  164. 北雄一郎

    ○北政府委員 去年だったかおととしだったか、ちょっと記憶がございませんので、これもさっそく調べます。
  165. 島本虎三

    ○島本委員 これはどうして東京郵政局の第一人事課長になったのか、それはどういう理由で栄進されたか。この人の行状は、われわれが調査したところによると、労働大臣、これもまた目に余るものがある。勤務時間中一切組合の役職で呼ぶことを厳禁した。これは慣例でしょう。私が全逓の委員長であるならば、労働大臣も、これは委員長くらい言うでしょう。これを一切言わせない。そうしていままで平気で支部長なり組合長、こう言っていたのを、今度はそういうようなことばを使わせないように一切厳命した。それだけじゃない。局へ来た人に対しては五分間だけ面談して、面談も許可で、そうして五分たったら面会者に帰ってもらう。こういうようなことを指導しておった。時間内で組合活動は一切認めない。組合員の話をするのも厳禁。それから胸章をつけたりするのにも、これははっきり厳命して、長というものはみんなピンクの色の胸章をつける。主事、主任は黄色いものをつける。一般の者は白い胸章をつけるのだ。これをつけない者に対しては首根っこをつかんでつけさせておった。これは何か原爆の表示のようですよ。赤いやつは原爆であるとか、黒いのはナパーム弾であるとか、黄色いやつは毒ガス弾であるとか、白いのは一般兵器であるとか、こういうような兵器の区別があるようですが、ちょうどこんなことを厳重にやらせているのです。それで驚いたことには、朝出てきて、おはようと言って配達の中へ入る。そうしてその人がおはようございますと言って答えるならば、次の人へ行く。そうしてまたおはようと言うと、おはようございますと答えるまでは言う、黙っていると別の耳のほうからおはよう、こっちが聞こえないとまたこっちの耳からおはよう、最後に言うことは、これはつんぼだ、メモしておけ、すぐそれを課長に言いつけておった。遠くのほうから声をかけると、あれは何ごとだ、あれもメモしておけ。何でもメモ、メモにしてしまった。こういうような局長ですよ。そうしてしゃくにさわって、その辺をでんとやると、それは器物破損だ。何も破損してないのに器物破損だ、メモしておけ、こういうようなのがいま職場の不満になっているのですよ。その局長は栄転して、これまた東京郵政局第一人事課長鹿又義雄、そうしてこういうような人が推薦してよこした人が、これまた国分寺のあのようなりっぱな行為をするような人である。これも第二組合の副支部長、一連の関係があるじゃありませんか。これが郵政の一つの行き方ですよ。とんでもないです。従業員に聞いてみたら、顔を見てさえも危険感を感ずる。顔を思い起こすだけでもぞっとする、こういうような人が栄進するのですね。これはとんでもないことです。これは幾らその辺の官僚に言ってもだめです。  これは次官、あなた聞いていなすったから、この問題を大臣によく言っておいてください。こういうような例もあるし、これは私どもが行って、私だけじゃありません。国会議員三名です。三名が行って、昼のごはんの間に一人ずつ会って、組合に対する不満、それから官に対する不満、あなたの考えていることは何かあるか、あるあるといって言うことが、こういうようなことです。前局長が栄進している。われらの要求何一つ解決していない。何か言うとすぐまたメモされる、こういうようなことで前の局長の顔を見ても危険感を覚えるし、思い出してもぞっとするのだ、こういうような人がいま第一線に働いている集配の若い人たちです。これで明るい職場ができますか。こういうようなことをやっておいて、これを指導した人がいまやえらくなっている、こういうのが実態ですから、職場が暗くなる。これじゃだめですよ。こういうようなこともありますから、ひとつ十分考えて、これに対して今後対処しないといけないと思います。次官、これは大臣とよく相談してやってください。これをどうしますか。ひとつこういう問題についても所感をはっきりさしておいてください。
  166. 松山千惠子

    ○松山政府委員 先ほどから私といたしましては全く初めてのいろいろな事実をお聞かせいただきましたが、郵政省側で把握しております事実と、先生がおっしゃってくださいました事実と何か食い違いがあるように拝聴いたしましたけれども、決して先生のおっしゃることを御信用申し上げないというわけではございませんですけれども、省といたしましても、省側に入った報告と、それから先生からおっしゃっていただきました事実とをいろいろと調査をいたしまして、そうしてやはり実際の事実を省側としてはっきり把握いたしまして、そして何と申しましても先ほどからいろいろお話が出ておりますように、郵政事業のほんとうの能率的な運用をはかるためには、労使間のほんとうに円満な関係を樹立することが一番大切でございますので、とにかくそういう根本的な精神に立ちまして、これから一生懸命に努力をしてまいる、そういうことでございますので、どうぞひとつ御了承をいただきたいと存じます。
  167. 島本虎三

    ○島本委員 もうそろそろ時間だということで残念なんですが、まだこれだけでもないのですよ。あり過ぎて弱るうちのこれは一つなんです。これまたその辺の官僚に言わせると、これはきれいなことばで、何ら自分らの違法じゃないことを得々として言うのです。  ただ、この中で法的にもこれは重大だと思うことがあるのです。これは名前もはっきりしております。名前もはっきりしておりますけれども、その名前はここで伏せましょう。若い人です。二十歳。もう一人の人は二十一歳、夜、学校へ通っております。かぜで超勤はできない、こういうふうに言ったところが、体温計を課長、主任が出してきて、そうしてその体温計ではかって、これくらいの熱なら何でもない、おまえは超勤やりなさい、そうして超勤をやらしているのです。これは委員長もおりますけれども、こういうようなことを課長や主任がやるとはお医者さんの代行行為でして、これは医師法違反のおそれもある行為を平気でやっているのです。それが課長、主任が体温計を持っていってやっている。こういうふうなものは少し酷じゃありませんか。こういうようなことをやらしてはだめなんです。  それと同時に、年次有給休暇というものは、これは請求があったらやらなくてもいいものでしょうか、やらなければならないものなんでしょうか。これはひとつ労働省のほうから、この問題一つだけ、これは重要ですから労政局長——基準局長ははっきり言うならいいが……。
  168. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 基準法の規定によりますると、年次有給休暇は、労働者が請求したときに使用者が与える。ただ特別の事情がある場合に変更をすることができる、こういうことになっております。
  169. 島本虎三

    ○島本委員 それも勉学に励んでいる人です。それも一カ月前からその日を予定して申し込んでおいたのです。そうしてその日になってから、くれないというのです。あげくの果てに超勤をやれと言われた。そしてこれもまたかぜを引いておったのでだめだというと、また体温計を持ってきてはかって医師まがいの行為をして、しゃにむに超勤をやらしたということです。二人の人から同じような事例を聞いたのです。一カ月も前からちゃんと申し込んでおいて、それを了承して受け付けておいた。それで行動を組んでおいた。ところが、その日になってから特別の理由を付してだめだというほかに超勤をさせておる、一体こういうようなばかなことがありますか。これだってまた何か言うわけでしょう。じゃ人事局長、あなた言ってごらんなさい。こういうようなことはいいんですか。
  170. 田邊誠

    田邊委員長代理 人事局長、簡潔に答弁願います。
  171. 北雄一郎

    ○北政府委員 休暇の振りかえということは、これは業務の繁閑によってはやむを得ないところであります。  体温計云々ということでありますが、そのことはただいま初めて伺いましたので、よく調査をいたしたいと思っております。
  172. 島本虎三

    ○島本委員 これは何回言っても、あなたはだめですね。私、もうあなたに答弁を今後求めません。同じようなことばかりで、何回言っても、これは個人的に言っても公の場で言っても、はね返ってくることばは何ら変わらない。あなたの血には黒い血が流れているのですか、顔の色は青いようですけれども。一体そういうようなことで、あたたかい血の通った行政ができますか。組合活動にしてもそのとおりだ。職場が暗いということ、私はもうこれ以上言いたくない。  ただ、一つの事例を申し上げますが、私、昭和三十八年の十月の半ばの選挙には次点落選だったんですよ。それから三年二カ月の間は苦労しました。それでもやはり自分の生まれが全逓であり、そして全逓の最中に首になり、いま全電通のほうに所属はしておりますけれども、何かあってその場所に行った場合には、郵便局と電報電話局に寄ってくるのです。そういうようなならわしです。いまでもそれはやっているのです。旭川の郵便局に会合があって行った際に、これは昭和四十一年ですが、郵便局長のほうへあいさつに行った。あいさつですと行ったところが、労管か次長か知りませんが、だれか出てきて、会う要件は何ですか、あいさつといってもいろいろございますが、どうしてもあいさつしなければならないのですか、こういうようなあいさつです。郵便局長にあいさつに行って、どうしてもあいさつしなければならないのかという受付がありますか。それはすぐやめて帰ってきました。  そういうような暗い職場にいつの間にかなっているのです。それでも一つ一つあなたに言わせると、理屈にかなったような答弁しかしていない。職場全体は以前に比べて、もうすでに暗い職場になっておって、中に働いている人たちは上司も信頼しておらない。中には、ほんとうに信頼するものは何もないんだ、こういうような気持ちで町のほうに吹っ飛んでいくような気持ちにかられておる若い人が多いのです。それを改めさせなければならないあなたたちが、法規一点ばりの血の通わないような行政ばかりをやって、これで職場が明るくなるようなら、おそらくどこかでそれを喜ぶ人があるんでしょう。あなたたちが全部かわらない以上郵政の職場は明るくならない。そうでなければ、いる人たちの心を全部変えなさい。もう一回十分胸に手を当てて考えてくれるように心から強く要請して、私の質問を終わります。
  173. 田邊誠

    田邊委員長代理 この際、二時まで休憩いたします。    午後一時四十四分休憩      ————◇—————    午後二時十五分開議
  174. 増岡博之

    増岡委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  田畑金光君。
  175. 田畑金光

    ○田畑委員 郵政省にお尋ねしますが、午前中の質問に関連してお尋ねしたいと思います。  ブラザー制度ということばですが、私も実は最近初めてこういう制度が郵政省の中にあるということを知ったわけです。東京郵政局管内ではブラザー制度、こういうことばで運用されておるわけです。大阪郵政局では指導員制度、名古屋郵政局では職場リーダー制度。主として大都市の郵政局管内でこの制度が取り入れられて、いろいろ作用しておるようでありますが、このブラザー制度の目的あるいは制度、あるいはこれの制度を採用した背景が何であるのか。この際ひとつ御説明を願いたいと思います。
  176. 北雄一郎

    ○北政府委員 ブラザー制度あるいは職場リーダー制度、あるいは指導員制度、実はいずれも同じものでございます。昨年の四月から東京で、東京が必要だと考えまして、このブラザー制度を始めたわけでございますが、その後本省といたしましても、その成果のある点を認めまして、本省といたしましても、これを経費面でバックアップしようということにいたしました。ことしになりまして、本省として東京、大阪に経費を出す、名古屋にもある程度のことを考えるということでやっております。いずれも趣旨といたしましては、これらの管内は御承知のように大都会を控えておるわけでございまして、大都会におきましては、離職率も高うございますし、また新規の定員の増という問題もございまして、年々新規採用の職員が多いわけでございます。この新規採用いたしました若年の職員、これのいろいろな不平、不満でありますとか、あるいは疎外感でありますとか、そういうものを持つわけでございまして、こういったことをできるだけ解消いたしますことによって、せっかくそういうことで得ました新しい有力な労働力というものを郵政の中に定着させたい、こういう趣旨でできた制度でございます。
  177. 田畑金光

    ○田畑委員 この世話役になる人の任用というと、ことばは不適当かと思いますが、どういう人をこの世話役に当てておるのか。また、この人方はどういう役割りをになっておるのか。さらに、いま局長のお話にもありましたが、これの運営に必要な経費というのは、たとえば一人当たりどれくらいという経費、それが積算して、たとえば四十六年度では全体としてどれくらいの予算措置になっておるのか。いまの御答弁を聞いておりますと、東京、大阪の場合は必要な経費を計上しておるが、名古屋の場合は何かそれ以下の経費を充てておる、こういうことでありますが、どうして東京・大阪と、名古屋に経費の面で差をつけておくのか、このあたり御説明願いたいと思う。
  178. 北雄一郎

    ○北政府委員 ブラザーにいたします人間でございますが、新規採用の職員と年齢があまり大きな開きがあるとか、あるいは役職上の大きな開きがあるということでは、いわゆる兄と弟というような関係がむずかしゅうございますので、なるべくこれが接近しておって、しかもしっかりした人間という意味で、大体主任前後というようなところの人々をブラザーに委嘱しておるわけであります。  そしてブラザーは、いわゆる職務上の命令でもって任命しておるものではございませんで、そういった青少年に対する指導力のあるしっかりした職員、こういった方々に、君、やってくれるか、やりましょうと言った場合に、それではお願いする、こういう形で委嘱をしておるわけであります。  それから経費的に三郵政に差があるように申しましたが、実は経費といたしましては、そういったブラザーを、ただしっかりしているから、あしたからブラザーになりなさいということでも困りますので、ブラザーに対しては一定の研修をやります。研修をやりまして、カウンセリングの方法でありますとかあるいは青年心理というようなものを十分教えまして、そして実際のブラザーにしておるわけでございます。そのためのブラザーを講習する経費、これにつきましては三郵政へ流しております。それからブラザーが実際にブラザー活動する場合に、いわば職場生活におきましても私生活におきましても、そういった役割りがあるわけでございます。私生活の場合、たとえば二人で話し合うというのも、喫茶店で話し合うということになれば、やはりコーヒー代が要るというようなこともございますので、そういった場合、一件千円以内、しかも一カ月千円以内という厳重な制限をはめまして、本人が一応立てかえ払いをする、そしてその領収書を持ってきたら、これを補てんしてやる、こういうシステムをとっておるわけでありますが、そのほうの経費は東京と大阪にしか流しておらない。結局全体の経費の中からそれだけしかできないのでそうしておる、こういうことでございます。
  179. 田畑金光

    ○田畑委員 よくブラザー制が不当労働行為につながるという批判あるいはまた、このブラザーになる者は一方の労働組合の人だけしか相手にしてない。このような非難等を聞くわけでありますが、いわゆる世話役の仕事についておる、あるいはこれは委託するのか知りませんが、委託を受けた人方というのはどの程度いるのか。さらにその委託を受けておる人方を、たとえば全逓の組織の人、全郵政の組織の人、どのような比率になっておるのか、その点をひとつ明らかにしていただきたいと思う。
  180. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 重要な問題でございますから、私からお答えを申し上げます。  ただいま東京、大阪、名古屋ということでやっておるわけでございますけれども、東京のブラザーの数は三千百名でございます。そのうち全逓に所属いたしております者が千九百名、全郵政に所属いたしております者が残りの千二百名ということになるわけでございます。東京はそういう比例になっております。まあ二対一というようなことになっておるわけでございます。  そこで、ただいま人事局長が御説明いたしましたように、郵政事業として非常に困っておりますことは青少年の新規採用、やめる者が多いのでそのあと補充、また増員しなければならないというその新要員、そういうものが、青少年というようなものが多うございますから、そういう連中に離職してもらわないようにというようなことで、定着を奨励いたします目的でつくったわけでございます。いなかから出てまいりまして、環境の違う東京とか大阪とか名古屋とかいうようなところに飛び込んでまいりまして、どうも郷里のことが忘れられずに毎日もんもんとしているというような連中を東京、大阪、名古屋の環境に馴致しなければならぬ、なれさせなければならぬというようなことで、マン・ツー・マン、一人が一人に対して善導するという形になっておりますわけでございますが、その一対一で善導いたしますというところに、ただいま田畑先生御指摘の不当労働行為というものが介入する心配がありはせぬかというようなことを御指摘になっておられますわけでございまして、私どもはこれはたいへんいい制度だと思っておりますけれども、今度全逓の顧問議員団の方々が十四局を御視察になりまして、その結果、ただいま申しましたような悪弊があるということを指摘いたしまして、こういう制度については十分考えなくてはいかぬぞというようなお話を承っておりますわけでございますが、私どもは、制度の妙味、使命というものは非常にけっこうなものがあると思いますけれども、そういうような弊害があるということになれば、そういう点については改善をしなければならないということで、これから私どもの課題といたしまして、このブラザー制度についてはひとつ十分勉強してまいりたい、こういうように考えております。
  181. 田畑金光

    ○田畑委員 東京郵政局管内を見ると、ブラザーの委嘱を受けた者三千百名、その中で全逓所属の者が千九百、残余が全郵政の組織その他ということになれば、この委嘱の実態を見ると、別に片寄っておるわけでも何でもないわけですね。したがって、これ自体から不当労働行為云々というようなことは、これはうかがえないわけですが、問題は、マン・ツー・マン方式でいろいろ新しく入ってきた人、特に地方から出てきた人方にカウンセリングするにあたって、それは職場問題等々いろいろ指導することだと思いますが、そうなってきますと、当然労働協約の問題であるとか、あるいは就業規則の問題であるとか、こういういわば労働条件に関するような問題等も当然話し合い、また理解を深めていく、こういうことになると思いますが、このブラザー制の採用については、あらかじめ労使の話し合いなどがなされてこの制度を採用なされたのかどうか、この点はどうですか。
  182. 北雄一郎

    ○北政府委員 ブラザー制度をやっておりまして、そのブラザーと新規採用職員との間でどういうことが一番話題になるかということをいまの段階で全部集約してはおらないわけでございますが、先生仰せのようなことも話に出ようかと思います。  この制度は、実は、御承知のように民間の会社でつとに採用されておる制度でございますので、それが定着性の向上に役立つというようなことで導入したわけでございまして、その間組合と協約を結ぶとか、あるいは組合と団体交渉をしてこの制度を採用するというたぐいのものではないというふうに思っておりますので、そのような手続はとらずに採用をした次第であります。
  183. 田畑金光

    ○田畑委員 私は、こういうような一つの制度と申しましょうか、教育機関と申しましょうか、あるいはまた指導機関、こういうような人事管理の問題等についての新規の方針の採用等については、十分労使の話し合いが前提となってしかるべきではないか、こういう感じを持つわけであります。  昭和四十六年十一月二十四日に、全逓の下田善八執行委員長の名前で、郵政当局管理者の全逓労組の正当活動を理由とする国家公務員法三十九条、同四十条違反告訴事件というものが出ておるわけでありますが、この告訴事件の一体骨子というものは、内容は何であるのか、簡単にひとつ説明を願いたい、こう思うのです。
  184. 北雄一郎

    ○北政府委員 先ほど団体交渉はしなかったと申しましたけれども、もちろん団体交渉はしなかったわけですが、当時非公式に組合に話はしてございます。  それから、ただいまのお尋ねでございますが、いわゆるブラザー制度に関するものが五局、それから人事差別ありとするものが十局、これが告訴事件の、大分けにいたしますと、そういう内容に相なります。
  185. 田畑金光

    ○田畑委員 私もその告訴の文書の内容を一読したわけで、大きく分ければ局長の御答弁のとおりでございますが、この告訴のあげた理由の冒頭に、当局の管理者が、午前の質問にも出ておりましたが、昭和四十五年の四月九日及び十二月十日の二度にわたる労使の確認事項違反、こういうことを指摘するわけでありますが、この四・九確認、一二・一四確認違反というのは何なのか、四・九確認並びに一二・一四確認の内容というものは一体何なのか、それは労使の合意の上に確認事項として、お互い将来これを尊重するということで誓い合って出発したものだ、こう思いますが、その確認事項の内容というのは一体何なのか、今回告訴事件で確認違反、こう指摘されておるのでありますが、それはどの点をさしておるのか、当局はそれに対してどういう考えを持っていらっしゃるのか。
  186. 北雄一郎

    ○北政府委員 両度の確認は、内容たいへん多岐でございます。でありますが、一言で、またいまの告訴問題に関連して申し上げまするならば、いずれも当然のことでございますけれども、労使間に現在——その当時でありますが、現在不信感がある。これを除去しなければならない。除去して将来の労使関係の安定をはかるということがどうしても必要だというのが一番の基本であります。そのためには当然のことでありますけれども、組織介入でありますとか、差別人事でありますとか、そういった不当労働行為というものは根絶しなければならぬ。それから同時に、さらに積極的に一歩踏み出しまして、現在の労使間のコミュニケーションというものをさらに拡大していくという方向で進まなければならぬ、こういういわば消極、積極、両方の方法をもちまして、労使関係の安定を策していくべきだという確認でございます。それに違反しておる、と申しますのは、結局そういうことをしかと約束したにもかかわらず、現実に不当労働行為が絶えないではないかというところにあるわけであります。これに対しまして、私どもといたしましては、この四・九確認にいたしましても、なかんずく一二・一四確認というものを、ことしの二月になりまして、その基本部分は大臣の通達、すなわち依命通達というかっこう、それから受けまして、それを補足するようなものとして人事局長通達、この二つの通達、これを合わせて一本になるものでありますが、これを出しまして、以来、将来の管理者の労務管理の基本的な考え方というものは、この二通達の中に全部入っておる、これを定着させていくのがわれわれのつとめであり、そのことによって労使関係の安定を策すべきだということで、あらゆる会議その他を通じて徹底をはかっておるわけでございまして、私どもといたしましては、全国的に見ます場合、非常にラフな言い方かもしれませんが、昨年のいまごろに比べまして、本年ずいぶん事態が改善されているのではないかというふうに存ずるわけであります。しかし、なお努力が足らないという面に対しましては、熱意をもって、さらにさらにこの定着化をはかっていくという所存でおるわけであります。
  187. 田畑金光

    ○田畑委員 このブラザー制の採用は、いまの確認事項に違反するのかどうか、あるいはさきの局長の答弁によれば、このブラザー制採用については、労使間で話し合いをしておると、こういうお話でしたが、その話し合いというのは、お互いこのブラザー制を採用するについて合意に達していたのかどうか、この点をあらためてひとつお答え願いたいと思う。
  188. 北雄一郎

    ○北政府委員 先ほどブラザー制につきまして、当時非公式に組合に話をしたと申しましたが、これは組合に説明をしたわけでありまして、当時組合としても聞きおくという程度であったわけであります。  それからブラザー制度そのものがこの一二・一四に違反するのか、あるいはブラザー制度の運用が一二・一四に違反するのかというお話でございますけれども、このブラザー制度につきましても、ブラザー自体がいわゆる管理者ではないわけでございます。ブラザーも組合員、それからあるいは組合員たり得る人間、それから弟のほうも、新規採用の人間も、当然同様であります。したがいまして、ブラザー間においては不当労働行為という概念はもちろん生まれないわけでありますけれども、その兄貴分を全逓以外の人間から出す、委嘱しておる、あるいはブラザーに旨を含めまして、新規採用の人間を全逓に入れないようにしておる、こういうことが、いわば間接的と申しましょうか、そういう意味で不当労働行為になるのだ、こういうものの言い方だと理解いたしております。
  189. 田畑金光

    ○田畑委員 このブラザー制度の採用によって——先ほどこのブラザー制を採用したのは、特に地方から出てくる青少年の環境に対する順応化をはかるとか、あるいは労働力の定着化をはかるとかいうようなお話でございますが、その効果というか、この指導方法をとってみたところが、どのような成果があったのか、あなた方の期待するような成果があるのかないのか。
  190. 北雄一郎

    ○北政府委員 先ほども申し上げましたように、ブラザー制度は昨年の四月から初めて採用いたしまして、昨年度は東京だけでございました。一年間だけの数字では、はっきりどうこうということはなかなか言いにくいと存じます。今後よくその数字の把握につとめたいと思いますが、昨年だけの数字で見ますと、すなわち一昨年と比較してみますと、東京郵政局管内の普通局でございますが、四十四年度採用者の一年後の離職率といいますか、一年間の離職率といいますか、これは内務の職員が七・六%、外務の職員が九・一%でございました。ところが昨年度採用の場合は、内務が六・一%、外務が八・三%と、それぞれ数字上におきましては若干の向上を示しておるわけでございます。しかし最初に申し上げましたように、数年間見てみれば、はっきりどうであるかこうであるかということはわかると思いますが、一年だけ比べてみますと、よくなっておるということは数字で出ておるわけでございます。
  191. 田畑金光

    ○田畑委員 これは郵政省の中における新規職員に対する指導方法あるいは再教育、そういうことでありますが、よく民間企業において、これは最近といわず、新規の社員に対する社員教育であるとか、社員たるに必要な、もちろん就業規則その他その会社企業の方針、事業計画、生産計画等々、新入社員の教育がなされておるということ、これは周知のことでありますが、こういう民間における企業の新入社員教育というものは、それなりの成果をあげておると評価すべきかどうか、この点は労働省のほうからひとつ労働省の見方をこの際承っておきたい、こう思うのです。
  192. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 民間企業におきまする新入社員の教育というのは、これは期間は二、三日のものから一週間、あるいは長いものは三月、半年と非常に差がございます。どれだけ効果があがっているかということは、これは一がいに言えませんけれども、そういった新入社員教育ということは、今日の企業としては不可欠なことであろうと考えております。
  193. 田畑金光

    ○田畑委員 これは大臣にお尋ねしますが、先ほどブラザー制の問題について所見の発表、お答えがございましたが、先ほど局長のお話を聞きますと、昨年の四月から始めた、ようやく一年を経過したところで、その一年の結果を見るのに、若年労働者の定着率等についてはそれなりの成果があった。しかし、これは一年だから今後数年やってみなければ正確な評価は出てこないだろう、こういうわけでありますが、この制度について、まあ制度というべきものかどうか知りませんが、新入職員の教育等について、今後このブラザー制度についてどういう指導なり育成なりあるいは評価をなさっておるのか、ひとつもう一度御見解を承りたいと思うのです。
  194. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 先刻人事局長がお答えいたしましたように、この制度を創設しまして日なお浅いわけでございますけれども、一昨年と昨年と比べますと、少しばかり定着率が向上してきている。だんだんそういうことで、ずっと続ければ効果は発揮できるものだ、かように考えておるわけでございますけれども、先刻も申しましたように、全逓の顧問議員団その他が現業局を視察されまして、どうもこのブラザー制度が不当労働行為の源になっている心配も非常にあるから、十分ひとつ検討してもらいたいというような御要望もあったわけでございます。そういう御意見も私はごもっともだと思うわけでございまして、制度というものは、悪い点は、悪弊はだんだん改善してまいりまして、そしていいところだけ残すということに進んでいかなければならぬと思っているわけでございますから、先刻申しましたように、そういう意味で悪弊の生じそうな点がございますれば、それを改善いたしまして、だんだんいい方向に持っていくというようなことに、これからしばらく真剣に検討してみたい、かように考えておるわけでございます。
  195. 田畑金光

    ○田畑委員 この問題は、いま大臣の答弁を聞いておると、国鉄の場合、いわゆるマル生運動即不当労働行為、このように世間で受け取られて、今後国鉄当局はマル生運動を継続するのかしないのか、こういう議論がこの委員会でもなされたわけです。これに対して磯崎国鉄総裁は、生産性向上運動ということと不当労働行為というものは、まるきり次元の違っている問題なんだ。しかし今日置かれている国鉄の再建ということを考えるならば、何としても第一に必要なことは国鉄労使関係がまずえりを正し、国民の支持を受ける姿勢をつくることなんだ。その上に立って初めて国民の協力が得られるし、政府の財政援助を仰ぐことも堂々と主張できるわけで、国鉄再建のかぎは何といっても国鉄労使自体が姿勢を正すことだ。このことは一貫してこの委員会等で主張しておるわけです。同時に、今日までの国鉄内部における生産性教育というものがゆがめられた、そのゆがめられた生産性運動を純粋な姿に戻さねばならぬ。そのためには既定方針をあくまでも堅持して悪い面を是正していくんだ、さらに生産性教育を徹底することによって初めて国鉄の職員がその使命感に燃えて、国民には誠意を持って、そしてまた国鉄に愛情を持って、そういう国鉄マンをつくることが生産性教育のねらいである。これが経営理念であり、経営哲学である、こういうようなことを明確に述べて、そうして今日は、十二月まではテキストの検討であるとかいろいろな内部の問題を検討して、来年早々には、また正しい意味の生産性運動を進めるということを明言しておるわけでありますが、いまの大臣のお話というものは、要すれば郵政事業においても、労使関係の正しいあり方なり企業の効率確保をはかるというような、そういう意味においてりっぱな職員をつくらねばならぬというたてまえでブラザー制度というものを取り入れたのだが、この制度はよき面はあくまでも堅持し、これを遂行する、こういうことを言っておるのか、何か全逓顧問団の社会党の議員団から文句が出たから、今度ははいごもっともですと言ってやめようというのか、どっちなんですか。
  196. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 もちろん前者でございます。私も企業精神を大いに強調いたしておりますわけでございます。そうして各部門、郵政事業の成績を向上させるということにねらいがすべてあるわけでございまして、そういう意欲を持って従業員を大いに指導いたしておるつもりでございます。したがって、いまのブラザー制度をてんでやめようという気持ちではなくて、悪い点があればどうせ改めていかなければならないわけでございますし、とにかくいい方向に、事業のためになるようにというような方向に持っていきたい、こういうわけでございます。私は、全逓の方々にもお目にかかったのですけれども、ブラザー制度をやめるなんということは決して申しておりません。悪い点があれば十分検討してまいるということを申しておるわけでございます。
  197. 田畑金光

    ○田畑委員 ブラザー制度は、都会地の郵便局の要員補充が困難で、地方出身者をもってこれに充てるという現状の必要性からこれをとらざるを得ない、こういうことが先ほど来の答弁で明らかになったわけです。地方から出てきた年若い職員が、環境の激変とか仕事のふなれ等から孤独と不安に襲われることを避けるために、あるいはこれを取り除くために世話役を設けて適切な指導をやってきた。そのためにはやはり適切な世話役を確保すること、そういう人材を得ることが一番大事なことだ、私はこう思うのです。やはりそのような責任を持てて後輩の指導ができるりっぱな世話役を任用して、そうして正しい、正義感にあふれた人を、どんどん後輩を育てていくということが、今日民間であろうと、親方日の丸の企業体であろうと、どこにおいても大事なことだ、私はこう思うのです。こういうことを考えてみると、一年やって、ようやく芽が出かけたその芽がほんとうに育つかどうかということは、これからやってみなければわからぬことですね。したがって、この制度によって郵政省労使関係もより健全に、また郵政事業が国民に負わされている仕事を能率的にその使命を遂行して、国民の負託にこたえるためにも、一たんこういう制度を採用されたとすれば、そのよき芽を伸ばすように努力することこそ大事なことだ、こう私は考えるわけでございますが、この点についてもう一度大臣の考え方を承っておきたい、こう思うのです。
  198. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 まことに貴重な御意見といたしまして拝聴いたしました。
  199. 田畑金光

    ○田畑委員 いよいよ年末の一番忙しい時期に差しかかってまいりました。国鉄や郵便の滞貨が出ないで、ほんとうに国民のために、年末のこの大事な時期に国鉄の社員や、あるいはまた郵政省の公務員の皆さん方が、国民のためのサービスをほんとうにりっぱに遂行していただきたい。このことを私は国民の一人として、年末になればなるほど毎年心から願うわけです。  そこで、職員の業務量の負担というのは公平、平等であるべきだと思います。これに対して十分な措置が一体とられているだろうか。もちろんどんな場合でも完全な平等ということは期し得ないわけでありますが、極端な能率差があったり、あるいは故意に能率のダウンをなされるようなことがありとすれば、それを放置しておくこと自体が私は不公平なことだと思うのです。この場合に当然適切な措置が講じられてしかるべきだと思うのです。また時間外労働の場合等、年末には三六協定に基づいて年末繁忙の時期になってくるわけでありますが、こういうような時期に仕事が一部の職員にだけ片寄り過ぎる、あるいはまた、郵政省のいわば定員が仕事の増に対してこたえ切れないほど業務量が多い場合があると思います。やっぱりその場合は臨時の人を採用する等によって補っておる場合もしばしばあろうかと思いますが、それはそれとして、とにかく職場においてまじめに働く人がほんとうに仕事量をたくさんかかえて、そのために非常に過酷な労働条件をしいられておるという場合がしばしば見受けられるわけであります。こういうような場合に、やはり仕事をまじめにやる者にはまじめに当局としてはしかるべくこたえるというのがほんとうの平等だと思うのです。仕事をやらないで、あるいは仕事の能率を故意にダウンするような職員がもしありとすれば、それに対して適切な指導をやり、適切な評価を行なうということは、これはまた人事の管理の面からいって当然のことだと思うのです。私は民間であろうと親方日の丸の企業体であろうと、人事の公平な管理を行なうことが基本的に一番大事な要件であり、それはやはり大臣はじめ管理者のき然たる姿勢でなければならない、このように考えておりますが、一体あなた方はこの問題についてどのようにお考えなのか。
  200. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 毎年のことながら、年末の繁忙時期もだんだん切迫してまいっておるわけでございますが、郵政事業といたしまして、この一番大切な時期をぜひ円滑にやってくれるようにという御好意ある御激励を賜わりまして、まことにかたじけなく存じます。御期待に沿うように十分勉強してまいりたいと思っておりますが、それにいたしましても、この年末にあたりまして例年のごとく全逓から、あるいはまた全郵政からいろいろ御要望が出ておりますので、こういう組合とも精力的に折衝を続けてまいりまして、一日もすみやかにこういう問題を解決しまして、そうして郵便物の疎通を円滑に運行いたしたいというように考えております。  また人事の要諦と申しますか、担務はつとめて公平でなければならない。しかし誠意を持って働く人と、そうでない人との間にはおのずから評価に差別があるべきだというような御趣旨もよくわかるわけでございまして、そういうようなことが人事といたしましては、たいへん大切なことではないかと思いますので、そういうものを踏まえまして全体の郵政事業といたしまして成果があがるように指導してまいりたい、このように存じておるわけであります。
  201. 田畑金光

    ○田畑委員 問題を変えまして局長にお尋ねしますが、よく郵政省職場の中で暴力事件が起きておりますね。最近起きた一、二の事件は、どこでどんな内容の事件か、これを簡単でよろしいから報告を願いたいわけですが、私の申したいことは、職場というものは省が管理しているのでしょう。その職場の秩序の維持というのは、郵政省自体が責任を持って職場の規律を確保することは、イロハのことだと思いますね。ところが、よく職場の中で暴力事件が起きておるということですね。これは遺憾なことだと思うんです。この事例を一、二あげていただきたい。同時に、このような暴力行為に対して一体どのような措置をとっていらっしゃるのか、お答えを願いたい。
  202. 北雄一郎

    ○北政府委員 仰せのとおり、庁舎というものは郵政事業という行政の目的を実現するためのものでございますから、この経営をやっております省におきまして庁舎の管理の全責任を持っておるわけでございます。したがいまして、庁舎の中に生起します事態というものについても、省としてはそういう意味できわめて大きな関心を持っておるわけであります。なかんずく、その中で暴力行為が起こるというようなことは最も避くべきことでありまして、そういった事態にならないように、平素管理者といたしまして、また管理者、職員に十分その意を通してあるところでございます。しかし、現実には多数の職場の中で、ときどきそういった遺憾な事件が起こるわけであります。最近のことを申せとおっしゃいましたが、春以来それは数件ございますが、どれが一番新しいのかちょっと記憶がございませんし、ちょっと古いのを持ち出すと、なぜそれを出したということにもなりますので、具体的なのはちょっとごかんべん願いたいと思いますが、年によっても違うと思いますけれども、正確に覚えておりませんが、年に十件前後そういった遺憾な事態が起こっておる、かように把握しております。
  203. 田畑金光

    ○田畑委員 私も幾つかの、十一月のついこの間起きた牛込郵便局あるいはその他下谷郵便局等で起きた事件、この資料を持っておりますが、よろしゅうございます。これはあとからひとつ資料を出していただきたい。  そこで、私、これは労働大臣にもお答えをいただきたいと思うのですが、まず最初郵政大臣……。郵政大臣も御承知のように、暴力はどんな場合だって、どんな組織の中であろうと、許されないことだろうと思うのですね。労働組合活動に伴う暴力行為、これは労働法上でもどこでも、その行為者を救済するなんということは書いてありませんよ。暴力はいかなる場合でも許されないことなんですね。国鉄の場合においてもしばしばそんなことを私も現地で見たわけでありますが、郵政事業の中にも、いま申し上げたように、最近、十一月末に二、三の局において暴力事件が起きておる。私は、暴力というのはどの点から見ても前近代的なことだ、こう思うのですね。しかも、しばしば親方日の丸の大きな国営企業の中で起きておるということですね。これは納得がいかぬです。民間企業の中では、戦後、生産管理であるとか経営管理であるとか、激しい労使関係というものが企業の中にしばしば起きたことがありますが、もうすでにそれは卒業しておる。官公労働者というのは公務員であり、やはり一定の水準以上の試験に合格した、いわば知的労働者であり、学歴も教養もある方々なんですね。ところが、こういうところで、事の経過のいかんを問いませんが、しばしば暴力行為が起きておるということですね。私は遺憾なことだ、こう思うのです。この点についてどうお考えであるのか。  労働大臣としても、私は、こういうような官公労の職場こそ合理主義で、話し合いで、しかもまた、知的水準の高い職場であるだけに、最終的には団体交渉によって問題が話し合いによって解決される、そういうような職場であるはずなんだが、しばしばトラブルが起きておる。そうしてまた、暴力行為が起きておる。こういう問題等について何に事由があるのか。むしろこの面においては民間におくれておると私は言いたいのだが、この点について労働大臣としては、労働行政を担当されておる大臣として、このような事情についてはどのように判断しておられるのか、あわせて承りたいと思うのです。
  204. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 暴力につきましては、ただいま御指摘のように、最も排除すべきものであり、憎むべきものであると思っておりますが、またお話のように、公務員の職場でそういうことがあるということは、特に国民の公僕であるわけでございますから戒めなくちゃならないことだと思うわけでありまして、先ほど人事局長から御報告申し上げましたように、いまだそのあとを断たないという現状を見ますときに、私どもの今後の指導がいかに必要であるかということを痛切に感じておるわけでございまして、十分そういう点は努力してまいりたい、こういうように考えておるわけでございます。
  205. 原健三郎

    ○原国務大臣 いま郵政大臣がおっしゃったように、こういう職場において、しかも郵政の職場において暴力行為がなお行なわれておるということを知りまして、まことに遺憾千万であると思います。暴力をやるようなことでは、とうてい労働運動などということを口にする資格がないので、最も次元の低いことをやっておることは、私どもはなはだ遺憾と思います。ぜひ暴力などを排除して正常な労使関係、話し合いを進めていくよう、これからも私どもは、民間といわず、そういう政府機関といわず、ともどもにそういう方向に向かっていくように行政指導をいたしたい、十分留意していきたい、御期待に沿いたいと思っております。
  206. 田畑金光

    ○田畑委員 労働大臣の答弁で私は質問を終わることにしたいと思いますが、まず、職場の中で暴力があって、職場で勤務することも戦々恐々として身の危険を感ずるような職場なんというのは、前近代的と先ほど私は申し上げたが、そんな職場があること自体が恥辱だと思うんですね。どうか、私は、先ほど来不当労働行為、いろいろな問題が出されましたが、不当労働行為問題等についても、これは管理者の側の問題でありますが、厳然と姿勢を正すと同時に、いやしくも職場において善良な職員が身の危険を感ずるような、そういう零囲気の中で仕事をせねばならぬような環境だけはすみやかに排除していただきたい。暴力者に対しては厳正な処分をひとつしてもらいたい。これは行政処分ですね。やはり私は何事も信賞必罰だと思う。そうして善良にして勤勉な者にはそれに報いるべし。あるいはそうでない者については、しかるべくあやまちを正す努力をなすべし。どうぞひとつ郵政事業が国民のための郵政事業としてその負託にこたえるように、そのためにはやはり職場環境を明るくすること、労使関係を健全化すること、このことが大事だと思うし、このためには当局も深く反省すると同時に、ひとつ私がいま申し上げたような点等については、また反面措置すべきは勇気を持って対処していただきたい。このことだけ強く申し上げて、大臣のいま一度の所見を伺って私の質問を終わります。
  207. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 お話のように十分心得えて進んでまいりたいと思っております。
  208. 増岡博之

    増岡委員長代理 次に、古寺宏君。
  209. 古寺宏

    古寺委員 昭和三十九年の十月一日から東海道新幹線が開業いたしまして七年を経過したわけでございますが、すでに四億人もの乗客を運び、また山陽新幹線の工事も着々と進行いたしまして、来年の三月十五日に開通をするというふうに承っております。東北及び上越新幹線も起工式を終えまして、いよいよ工事に取りかかるわけでございますが、新幹線は鉄道輸送の花形として、日本の運輸、輸送の中核となる新幹線時代に突入をいたしているわけでございます。  しかし、こうした新幹線の工事の陰に忘れてならないのは、非常に痛ましい数多くの犠牲者がいらっしゃったということでございます。今日の新幹線のはなばなしい登場の陰には、忘れてはならない不眠不休の活動をなさった多くの労働者の方々、そして犠牲になられた方々がいらっしゃるわけでございますが、こういう立場から、今後の工事にあたりましては万全の対策を講じまして、人間尊重、人間優先の、労働災害を撲滅する安全対策というものを講じなければならないわけでございますが、こういう立場から、本日は、新幹線工事並びに海底トンネル工事に関しまして若干の質問をしてまいりたい、こう思うわけでございます。  最初に、東海道新幹線並びに関門海底トンネル工事の際の労働災害の状況につきまして、国鉄当局から御説明を承りたいと思います。
  210. 山田明吉

    山田説明員 東海道新幹線の建設過程におきまして殉職された方が出たことは、まことに残念なことでございますが、年ごとに申し上げますと、昭和三十四年には二名、三十五年には十四名、三十六年には三十名、三十七年には七十一名、三十八年には六十三名、三十九年には三十一名、合計二百十一名の殉職者を出しております。関門トンネルにつきましては、いまちょっと手元に資料がございませんので、申し上げる数字を持っておりません。
  211. 古寺宏

    古寺委員 ただいまの御答弁は死亡者のみの御答弁でございましたが、二百十一名の死亡者のほかには、この三十倍あるいは四十倍に達するような負傷者がいらしたと思うのでございますが、その数につきましてはどうなっているのでございましょうか。
  212. 山田明吉

    山田説明員 ちょっといま手元に資料がございませんので、調べて後ほど御報告申し上げます。
  213. 古寺宏

    古寺委員 それでは、ただいま御答弁がございました二百十一名の死亡者の方々の原因別の労働災害状況について御説明願いたいと思います。
  214. 山田明吉

    山田説明員 いま資料を取り寄せておりますので、しばらく御猶予をお願いしたいと思います。
  215. 古寺宏

    古寺委員 国鉄は、工事を発注いたしまして以後、労働安全対策については元請企業あるいは下請企業にまかせっきりである、こういうような感じを受けるわけでございますが、東海道新幹線の工事にあたりましては、国鉄当局はどのような災害防止対策あるいは安全衛生対策等を講じられたか承りたいと思います。
  216. 山田明吉

    山田説明員 国鉄としては、東海道新幹線の工事のみならず、方々で大きな工事をやっておりますが、一般的にいいまして、労働関係当局の指導を全面的に受けているわけでございますが、国鉄自体といたしましても、極力災害の防止には努力いたしておったわけでございます。東海道新幹線の建設そのものにつきましても、その災害防止ということは常に念頭に置いて、本社なり現地でいろいろなくふうをこらして指導をしてまいったわけでざいます。特に申し上げることは、工区ごとに労働基準局なりあるいは警察なり関係方面と連絡会を設けまして、ときどきその工事の安全点検というようなことにも気を配ってまいりましたし、それから先生御指摘のように、請負工事業者自体の問題ではございますけれども、事あるごとに請負業者並びにその関係下請業者に安全の確保については注意を喚起してまいっておったような状況でございます。
  217. 古寺宏

    古寺委員 ただいま国鉄当局は労働省の指導を受けて安全対策を講じてこられた、こういうお話がございましたが、こういうような工事に際しまして労働省はどのような指導監督を行なってこられたか承りたいと思います。
  218. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 私どもといたしましては、工事の起工にあたりまして、事業発注者並びに事業主との間の安全衛生に関する基本的な事項についての連絡を密にするための連絡会というようなものを直ちに設けまして、それによって基本的な安全衛生対策を検討し、それで実施していただくと同時に、現地における監督機関をその状況に応じて強化をいたしまして、監督を通じてその安全衛生の実施を順守させていく、こういうことでやっておるところでございます。
  219. 古寺宏

    古寺委員 ところが、山陽新幹線工事におきましては、四十二年の三月十六日着工以来四十六年の九月までにすでに六十二名の死亡者を出しております。さらに休業八日以上の負傷者は千八百四名の多きを数えているわけでございますが、これ以上の犠牲者を出さないためには、強力な労働安全対策というものが今後私は必要ではないか、そういうふうに考えるわけでございますが、国鉄当局は東海道新幹線において二百十一名のとうとい犠牲者を出していながら、同じようなことをこの山陽新幹線工事においても繰り返しているわけでございます。今後どういうような強力な対策を推し進めるお考えか、きょうは承りたいと思うわけでございます。
  220. 山田明吉

    山田説明員 山陽新幹線におきましても残念ながら殉職者を出していることは御指摘のとおりでございまして、それにつきまして、先ほど申しましたように、東海道新幹線当時よりもさらに念を入れて種々の通達、指示を本社としても現場の局に出し、また請負業者にもずいぶん回を重ねて指示をしているところでございますが、今後さらに特に重点を置きます点は、先ほど申しましたように関係基準局、警察それから請負業者、その者で委員会を組織しまして、常に現場をパトロールする。そうして関係の向きからの助言を得て万全を期していくつもりでございます。
  221. 古寺宏

    古寺委員 同じく労働省はどうでございますか。
  222. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 私どもといたしましては、工事現場における監督機関を重点的に、特に危険工事につきまして重点を合わせまして、監督を指導強化していくということで、基本的な安全衛生計画が現実に実行されるように監督の面から十分監視をしてまいりたい、こう考えておるところでございます。
  223. 古寺宏

    古寺委員 労働大臣にお尋ねしたいのでございますが、現在わが国には約二千七百名の労働基準監督官がいらっしゃることになっております。しかしながら、その中で第一線において実際にフリーに活動できる労働基準監督官というものは非常に少ないわけです。労働省は再三、千名あるいは千三百名の労働基準監督官を増員する、こういうような計画をいままで発表してまいりましたが、一向にこれが進んでおりません。こういう点について、やはり東海道新幹線あるいは山陽新幹線の数多くの犠牲者を出したその重大な責任は、労働省当局にもあるというふうに私は考えるわけでございますが、その点について労働大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
  224. 原健三郎

    ○原国務大臣 古寺委員の御指摘、私いまその数字を聞きまして非常に驚いておる次第でございまして、深く反省させられております。新たなる時代に処して労働災害をなくしたい、これはもう至上命令でございまして、過去においてこれほどの災害が出ておるし、将来これを防止する、こういうことを災害が起こってからいわれるよりも、将来のために今日こういう警告を発せられていくことに対し、深く敬意を表するところであります。  それで、労働省といたしましていま本質的に私ども考えておりますことは、次の通常国会に労働安全衛生法というのを単独法として提出いたします。労働基準法の中にあるのを単独法としてこれを抜き出して、いま作業を進めております。これによってもっと安全衛生の確保に具体的な法的基礎を与えてやる考えであります。  それから第二は、いまおっしゃられた労働災害の中で、死亡事故で見ますと建設関係が四割の多きに及んでおります。これは何としても、この建設関係等も死亡災害を減さなければなりません。できたらなくさなければならぬ、そう思いまして、一番効果があるのは、やはり具体的には労働基準監督官をふやすことであります。私も前に就任したときからずっと長年これを唱えているし、参議院の委員会においては、いわゆる労働基準監督官をふやすべしという委員会の決議もいただいております。  それで、ただふやせふやせといっても、いま政府の方針としてはどうしても人員整理、行政整理を閣議も決定いたしておりますので、むずかしくなっておりますので、過般私は閣議においてもこれを発表し、いわゆる交通災害は大体年間百万人、労働災害は百六十万人くらいに及んでおります。だからこういう人命尊重の時代にこれをまっ先にやるべきものであるということを閣議にも発言して、その了解を得ております。それを踏まえて過般行政管理庁長官の中村大臣にお会いして、このことを私はわざわざ行政管理庁まで出かけていって交渉いたしまして、書類で出しましたが、私どもとしては向こう五年間に一千人、年に二百人ずつふやしてもらいたい。昨年などは八十人ふやしましたけれども、労働省内部でやりくりしてふやしたようなことなんで、そんなことはいつまでもできないようなことであるから、閣議においても了承を得ておるんだから、ぜひあなたにおいてやってくれということを私も出かけていって文書でも言い、口でも言いました。趣旨については了承する。数については、これは予算折衝のときに大蔵大臣も入れてそれをひとつきめよう、こういうところまでいま来ておるところでありますから、予算折衝もいよいよ年内に始まりますので、それを踏まえて労働基準監督官をふやしたい。また見通しとしては、ふえるであろうと思っておりますので、どうぞよろしく御了承願いたいと思います。
  225. 古寺宏

    古寺委員 了承するという内容はあとでまた御質問申し上げますが、国鉄当局から実際に工事局なり、あるいは元請業者に対していろいろな注意事項が通達として出ております。この第一項なんでございますが、設計の段階において安全性の配慮を行なうこと、こういうことがここに明記をされているわけでございますが、この安全性の配慮につきましては、私は設計の段階において労働省の審査も受けられるような、こういういわゆる安全性の配慮が今後必要ではないか、こういうふうに考えているわけでございますが、この点について国鉄当局は、設計の段階において安全性を配慮したことがいままであるのかどうか。また、労働省はそういう設計の段階におきまして、施工計画書等の審査の時点において安全性を考慮した場合があるのか、配慮した場合があるのか、その点について国鉄並びに労働省に承りたいと思います。
  226. 山田明吉

    山田説明員 御趣旨のような通達を出しておりまして、工事仕様書、これは国鉄がつくるものでございますが、いわゆる設計でございます。設計そのものにおきまして、工事の施工で安全がそこなわれることのないような工事仕様書を現につくっておるわけでございまして、それから現実に仕事にとりかかる際、その工事仕様書を関係基準監督署に御説明することもございます。工事仕様書以外には、たとえば工程で非常な突貫工事的な無理のないような工期も考えるとか、あるいは線路からルートをできるだけ離す、そういうことで死傷事故も起こさないようなそういう配慮をいたしておる次第でございます。
  227. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 私ども従来は設計そのものの段階で安全審査をやることは直接にはいたしておりません。ただ基準法上、工事に着工いたします場合には、必要な届け出を願うことになっております。その際、施工の計画等の御説明はいただきますが、その場合に必要があれば当然設計の段階でも、その段階では御説明願うということはいたしておりますが、いま先生のおっしゃった事前に設計を審査するというようなところまでは実はまだまいっておりません。今後、先ほど大臣のお話しの新法の制定にあたりましては、そういう段階まで何らかの形で実効ある手段が講ぜられるかどうか、目下検討いたしておるところでございます。
  228. 古寺宏

    古寺委員 やはり設計の段階におきまして安全性というものを十分に配慮いたしませんと、どうしても生産第一主義になります。そこでとうとい人命が奪われるわけでございますが、毎年六千名以上の死亡災害を日本の国では出しているわけです。この損害は直接、間接を考慮に入れた場合には、五千七百億円をこえる損害であるというふうにいわれております。その六千人のうちの四〇%、これが建設業による犠牲者でございます。こういう犠牲者を今後出さないためには、どうしても思い切った、こういう安全性の配慮というものが設計の段階においてなされなければならない、そういうふうに私は考えるわけでございますが、労働大臣は、今度の通常国会に提案をされる法案の中にはそういう点を盛り込んでいくお考えがあるのか、ひとつ御答弁を願いたいと思います。
  229. 原健三郎

    ○原国務大臣 たいへんけっこうな御注意で、私どもせっかく新たな単独法を制定するのでありますから、事前にそういう設計の段階においてこれをチェックするように、前向きでいま検討を進めております。御期待に沿いたい、希望を持ってやる考えであります。
  230. 古寺宏

    古寺委員 これは関連の質問になるわけでございますが、きょうの新聞を拝見いたしますと、首相の諮問機関である国土総合開発審議会におきまして、「「国土改造開発計画の進め方」」と題する原案をまとめているのでございますが、この中に「実施すべき緊急課題」「全国的ネットワークの先行的整備」こういう課題がございまして、このことによって来月の十日に審議会では総会で正式にきめて佐藤首相に意見書を提出することになっておりますが、この意見書が取り入れられました場合には、新幹線の工期というものが非常に繰り上げ実施になる、こういうふうに新聞では発表しているわけでございますが、今後新幹線の工事量が増大する、あるいは工期が繰り上げになる、こういうことによって労働強化あるいはいろんな労働災害の危険性というものが多分に増大するわけでございますが、こういう点について現在国鉄当局は対策をお考えでしょうか、承りたいと思います。
  231. 山田明吉

    山田説明員 けさの新聞記事、私も初めて新聞で読んでそういう動きがあることを承知したような状況でございまして、その詳しい内容は実はまだよく承知していないのでございますが、新幹線工事そのものは、現在山陽新幹線は国鉄の手でやっております。それから東北、上越これにつきましては、それぞれ鉄建公団と国鉄とが分担をいたし、また近く成田新幹線につきましても、鉄建公団の具体的な計画が出る運びでございますが、これらにつきまして決して安全の点から無理をする考えはございません。  それから新聞記事だけのあれでございますが、将来もっと大々的に全国的な新幹線工事が始まるといたしましても、むしろ問題はその大々的に始まるかどうか、これもまず第一に資金の問題もございましょうし、具体的な工事にあたっては、用地の獲得の時期等に左右されるであろうと思いますが、私どもこの工事を担当いたします国鉄にいたしましても、鉄建公団にいたしましても、安全の点から無理をするというような考えはございません。
  232. 古寺宏

    古寺委員 去る十一月十五日に、青函トンネルの起工式がございました。その際に、青森県知事である竹内知事が、この起工式に画竜点睛を欠くものが一つある。それは、私のみならず青森県民としてひとしく感ずる問題であるけれども、それはこの起工式と同時に、東北新幹線の計画が盛岡でストップされていることである、こういうお話をなさいました。  そこで私が承りたいのは、盛岡以北のいわゆる計画というものは、国鉄当局はいつおやりになるお考えかということが一つ。  それから、つい二十八日でございますか、起工式が行なわれました東北新幹線に対するいわゆる労働災害の防止対策、どういうような対策を現在お持ちになっていらっしゃるか、その二点について承りたいと思います。
  233. 山田明吉

    山田説明員 東北新幹線は御指摘のとおりに東京−盛岡間ということで、新幹線鉄道網整備法の規定に基づく手続が全部終了いたしまして、これは国鉄が担当するということで、つい先日着工式を行なったわけでございますが、盛岡から先の部分につきましては、これは現在の段階では、鉄道建設審議会から運輸大臣に建議が出されておりまして、盛岡からさらに札幌の新幹線も早急に着工したらどうかという内容の御意見でございます。手続的にはその建議を政府が受けられて、基本計画をきめられるわけでございまして、その基本計画がきまりますと——これは政府がおきめになるわけでございます。基本計画がきまりますと、調査命令が出るはずでございます。その調査命令によりまして、私どもがいろいろなデータを調査いたしまして、整備計画というものをつくります。それでその整備計画がまた政府の承認を受けますと、そのあとで工事の実施計画をつくることになりまして、その工事の事施計画がまた政府の承認を得て初めて着工ということになるわけでございます。その一連の手続の上で、盛岡以遠の部分につきましては、建設審議会から建議が出ている段階でございます。それで、それがだんだん具体化してまいります手続はいま申し上げたような状況でございまして、したがってあの整備法の規定でも、新幹線の建設は、国鉄か鉄建公団がやることになっておりますが、いまの段階では盛岡以遠、国鉄がやるか鉄建公団がやるかもまだ全然きまっていない白紙の状況でございます。その一部をなすと考えられる青函トンネルにつきましては、ただいま先生も御指摘になりましたように、鉄建公団の手で着工されているのが現在の状況でございます。  それから、東北新幹線の工事の安全につきましては、先ほど来東北新幹線、山陽新幹線で申し述べました経験を生かしまして、さらに十分な関係当局との連絡、請負業者、まだきまっておりませんが、きまりました暁には、それの指導監督は十分意を用いていくつもりでございます。
  234. 古寺宏

    古寺委員 私は、国鉄は何でも後手後手であり、そしてほんとうに東海道新幹線あるいは山陽新幹線におけるとうとい犠牲というものを何ら反省してないと思うのです。もうすでに起工式が終わったんです。その段階において、この東北新幹線に対するいわゆる安全対策というものは全くないにひとしい。こういうことでは同じような災害というものを再びこれは繰り返さなければならない、こういうことが私は非常に心配なわけなんですが、この点について今後早急に関係省庁とも連絡をとって、そして万全の安全対策というものを今後早急に措置していただきたい、考えていただきたい。  と同時に、ただいま東北新幹線の盛岡以北の問題でございますが、これは十一月十四日には中曽根審議会長ですか、それから十一月十五日には運輸政務次官が、さらに二十八日には国鉄磯崎総裁が、この盛岡以北の問題について記者会見等をやって新聞に発表いたしております。こういたしますと、副総裁がおっしゃるのと、あるいは各地で新聞に報道されている事実とは非常に食い違いがあるように感じますが、そういう点についてはどうなんでございますか。  この二点についてお伺いします。
  235. 山田明吉

    山田説明員 これからの工事の安全については先生の御指示のように、また私先ほどから申しましたように念には念を入れて安全の問題には取り組んでまいりたいと思っております。  それから盛岡以遠の問題、私いま非常に事務的に手続的に申し上げましたが、新幹線網整備法の精神でございます、まず札幌から鹿児島までの日本の背骨を形成する大動脈を一日も早く完成したいというのは国鉄の念願でございまして、その意味からいいましても盛岡以遠、これは資金的な手当て、先ほども申しましたが、これが非常に大きな問題ではあろうと存じますが、早く政府の方針を決定していただくことを国鉄としても期待している次第でございます。
  236. 原健三郎

    ○原国務大臣 いま古寺先生から青函トンネル工事についての御注意をいただきまして、私どもとしましてもこれはよほど用心しないと、こういうたいへんなトンネルでございますので、労働災害が起こる危険性が多分にあると思います。こういう御注意をいただき、事前にこういう注意を喚起していただくことについて深く敬意を表する次第であります。  それで、この工事が非常に大工事であるし、危険を伴う工事であるということを察知しまして、労働省といたしましては労働災害防止の重点工事にこれを指定いたしております。それが第一であります。  第二は、本年の六月に本工事の発注者である日本鉄道建設公団と労働省の間で青函トンネル安全施工推進連絡会議というのを設けました。そして本工事の労働災害の防止対策について連絡を密にするとともに基本的な対策の検討をさせております。すでに六月と九月にこの青函トンネル安全施工推進連絡会議というのを二回開いて、積極的に対策を研究さしております。特別の御注意もございましたので、あらためて私から労働大臣として、青森の労働基準監督署、基準局及び函館の労働基準監督署に対して、一そうの留意をしてこの工事を見守っていくように、また指導もするようにという大臣命令を出しておきたいと思っております。
  237. 古寺宏

    古寺委員 新幹線の問題なんですが、副総裁は、総裁が仙台の記者会見で発表なさった内容について、御存じでしょうか。
  238. 山田明吉

    山田説明員 正確な発言の内容は存じませんが、大体内容は承知しております。
  239. 古寺宏

    古寺委員 その内容について、それではここでもう一度お話をしていただきたいと思います。
  240. 山田明吉

    山田説明員 盛岡までの工事の起工式でございましたが、これは盛岡でとどめるべきでなくて、一日も早く札幌、北海道をつなぎたい、そういう内容のことをしゃべったはずでございます。
  241. 古寺宏

    古寺委員 鉄建公団のほうでは、海底トンネルについては、起工式が始まる前に労働省と二回も打ち合わせのための協議会を持って、安全対策について措置をしておるわけです。国鉄は、工事を急ぐならば急ぐほど、こういうようないわゆる安全対策について、総裁が発表するなり、あるいは労働省と連携をとって、もっと早く安全対策というものをなぜ講じなかったのですか。
  242. 山田明吉

    山田説明員 山陽新幹線の場合でございますが、労働省から書面で御注意を受けております。それで、東北につきましては、ようやく着工に取りかかる状況でございます。先ほど申しましたように、関係の労働基準局あるいは監督署とは現地で委員会を設ける等、具体的に実際の問題の処理として、今後ともいろいろな御指導をいただいてまいるつもりでございます。
  243. 古寺宏

    古寺委員 労働省にお尋ねしたいんですが、鉄建公団のほうとは二回も海底トンネル工事について打ち合わせをしていながら、なぜ東北新幹線については、今日まで打ち合わせをしなかったのか、その理由について承りたいと思います。
  244. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 私どもは、通常、大規模工事の場合には、大規模工事というように指定をいたしまして、その場台には、安全性について本省が直接監督の指揮等の責任を持つ。現場の監督は、それぞれ地方の局及び署が当たるということにしておりまして、東北新幹線につきましても至急そういう意味の指定をいたしまして、連絡会をつくり進めていく予定にしておったところでございます。御指摘のように、若干おくれておりますが、早急に実施してまいりたいと思っております。
  245. 古寺宏

    古寺委員 そこで、先ほど労働大臣からも千名の労働基準監督官を増員して、万全の対策を今後期したいというお話がございました。さらに、海底トンネルにつきましては、大規模建設工事として指定をして、そして、現地の労働基準局並びに監督署に対して、そういうような御指示をなさるというお話がございましたが、竜飛側の青森県の実情を申し上げますならば、現在、青森基準監督署で、実際に第一線で働ける労働基準監督官は二名でございます。八戸市に二名です。弘前が一名、計五名でございます。ところが、青森県の労働基準監督官の現在の数は二十六名でございます。二十六名の労働基準監督官がいるけれども、実際にそういう監督行政に携わる、第一線で活躍のできる労働基準監督官は五名しかいない。今後どんなに数をふやしたとしても、実際に動ける監督官をつくらないことには、これはどうにもならないわけです。きょうここにいらっしゃる労働基準局長も、おそらく私は労働基準監督官になっていらっしゃると思う。そうしますと、いかに大臣がそういうふうに御指示をしたとしても、数が足りないんですから、これは思うようにできないと思うわけでございます。私は、この動ける労働基準監督官を早急に増員していただくと同時に、さらに、こういう東北新幹線あるいは海底トンネルのような大規模な工事にあたっては、労働基準監督官というものを現地に常駐さして、労働者の生命を守っていくような、安全な労働行政ができるような措置というものが必要ではないか、こういうふうに考えるわけなんですが、この点について労働大臣の御見解を承りたいと思います。
  246. 原健三郎

    ○原国務大臣 御説全く賛成で、そのとおりでございます。本日のこういう委員会における御発言、御鞭撻等を中村行政管理庁長官によく伝えまして、すみやかに基準監督官の増員を認めてもらいたい、そうして、大蔵省とも折衝し、年内、予算編成時までに決定いたしたい、こう思っております。そうして、こういう災害の防止に万遺漏なきを期するべく全力を傾ける所存でございまして、そういう決意でございます。
  247. 古寺宏

    古寺委員 そこで、鉄建公団にお伺いしたいのでございますが、今度の海底トンネルの工事は、世紀の大工事といわれております。当然いろいろな、予想もしない災害が起こる可能性というものは十分にあり得るわけでございますけれども、こういう点につきまして、公団といたしましてはどういうような対策をお考えになっていらっしゃるか、承りたいと思います。
  248. 篠原武司

    篠原参考人 ただいま古寺先生からお話のありました、これまでとってきた青函トンネルの工事について申し上げます。  お話しのとおり、青函トンネルは、いままで世界にもなかったような世紀の大工事でございます。水の深さからいいましても、水面から二百七十メートルのところにトンネルを掘るというようなことになっておりますので、へたをいたしますと、これはたいへんなことであるということで、私どもは常々非常な覚悟をもちまして安全対策には注意してまいっておりました。特に労働省からも、超大型という意味で超大規模作業場に指定されておるわけでございます。それで、労務者の安全はもちろんでございますが、施工上にもし間違いが起きましたらたいへんなことになりますので、安全の上にも安全をとらなければいかぬということで、なるべく機械力を使ってトンネルボーリングマシンの特殊なものを開発いたしまして、これで掘さくを進めていくということを基準にして、いままで調査をやってきたわけでございます。しかし、中に断層がございまして、それだけではなかなかいけないということで、あらかじめ水平に長い距離を小さな穴でボーリングしてまいりまして、悪い地層のあるところを確認いたしまして、その地層に対しては、徹底的にセメントの注入とか薬液の注入をいたしまして、地盤を固めて進んでいくというような措置をとっております。  そういうようなことで、掘っていく場合にもはっきりして、その地層が固まっておりますので、心配なしに掘れるという形にして掘っていくという手続をとっております。その上に労務者の安全のためにいろいろな監視体制を固めまして、始終監視をしております。また救急の訓練だとか診療所の設置とか、無医村といいますか竜飛には医者もございませんので、特別に来ていただいてやっておるというような措置をとっております。しかし、それだけではいけません。特に最近本トンネルの着工を迎える段階になりまして、たくさんの請負者がこれから入ってまいります。そういう人たちに対する安全も十分に考えていかなければならぬということで、特に私としましても、通達といいますか訓示といいますか、そういうようなものをつくりまして、全従業員に注意を喚起して、それから適切な処置をとっていこうというようなことで、案はもうつくってございます、少しつけ加えるものがございますので、私どもとしましてもいまちょっと考えているわけでございますが、二、三日中にこれを出したいと思っております。  そういうようなことで、万全の上にも万全をとっていきたいということで、現場の長にいろいろ創意くふうをとらせておりますが、現在まででも調査の段階でいろいろ注意してやってまいりましたけれども、不幸にして六名の死者を出しております。これはまことに残念なことなんでございますが、今後非常に大きな工事に取り組みますので、そういう点で不幸な事態の起こらぬように、われわれとしても万全の上にも万全の措置をとっていくという覚悟でございます。
  249. 古寺宏

    古寺委員 私は、起工式にあたりまして、犠牲になられた遺族の方も起工式に参列をしていらっしゃるのを拝見いたしました。ということは、実は私は災害でなくなられた方々の御家庭を訪問いたしまして、非常に低い労災補償で困っておられる家庭の方々を回ったわけでございますが、その中にもこの犠牲者の方がいらしたわけでございます。こういう点につきましては、鉄建公団は非常に前向きにいわゆる犠牲者の方々の御家族のことも心配してくださっておるわけでございますが、それに比較をいたしまして国鉄当局は、東海道新幹線あるいは山陽新幹線の犠牲になられた遺族の方々に対して、はたしてどれだけのいわゆる補償なり、あるいは御遺族に対する御心配なりをおやりになってこられたか、その点について承っておきたいと思います。
  250. 山田明吉

    山田説明員 先ほど申しました相当数の殉職者を出したことはまことに残念でございまして、国鉄といたしましては、そのなくなられた方々が請負業者の雇用関係にある方々ではございますけれども、そのときどき誠意をもって弔意を表したのでございますが、金銭的に補償というような関係は、ただいままでのところございません。
  251. 古寺宏

    古寺委員 私はおそらく国鉄では、先ほどの関門トンネル工事の実際の数もまだ御答弁がないようでございますし、さらには東海道新幹線の負傷者についてもまだ御答弁がございませんので、そういう点については非常に冷たい措置がなされてきたのではないかと思いますが、自分の子弟も思うように学校に進学させることができない、あるいは生活保護に転落しているような御家庭もあるわけでございますので、こういう点については十二分に配慮すると同時に、今後は二度とこのような不幸を引き起こさないような万全の対策を推し進めていただきたい、こう思うわけですが、副総裁の御決意をひとつ承りたいと思います。
  252. 山田明吉

    山田説明員 先生が御指摘になるまでもなく、今後ほんとうに一人も犠牲者を出さないということがまず第一であろうと思いますし、万一不幸な事態が起きたときには、いまの先生のおことばを十分わきまえまして善処してまいりたいと思います。
  253. 古寺宏

    古寺委員 次に、青函トンネルの問題につきまして労働省にお尋ねしたいのですが、労働省は四十六年度の労働災害防止実施計画の中で「大規模な鉄道、道路、発電所等の建設拠点については、あらかじめその採用する工法の安全性等について十分検討を行なうとともに、工事施工過程の安全確保のため、中央と地方が一体となった対策の推進をはかる。」こういうふうに申しているわけでございますが、この点について労働省では、海底トンネルの工法についてはどういうような検討が行なわれたか承りたいと思います。
  254. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 先ほど大臣からお答えの中でお述べになりましたように、鉄道建設公団と労働省とで工事の安全施工の推進のための会議をつくる、そこで技術的な専門家が集まりまして、施工につきましての安全面からの点検をその連絡会を通じて必要に応じて進めていく。すでに二回やっておりますが、今後さらに引き続いて必要な検討を進めていくということにしてまいりたいと思っております。
  255. 古寺宏

    古寺委員 いままでの海底トンネル、青函トンネルの工事の例を見ますと、函館の建設局のほうから、労働基準監督署あるいは局から何か指示があれば、局のえらい方が行って現地の方々にいろいろ指示をしたり注意をする。いままではこういうような状態のようでございましたが、今後はむしろ積極的に公団側のほうが、指摘をされる前に安全対策を講じていく、こういうような行き方が私は大事ではないかと思うわけでございます。そこで今後は公団側におきましても、労働省から指摘をされる以前において万全の配慮をしていただきたいわけでございますが、特に大事な点は、工事の責任者あるいは工事に当たられる方々の安全性に対する熱意と安全教育というものが非常に大きな大事な柱になってくるわけでございますが、今後の安全教育について、労働省は公団側とどういうふうにこれを進めていくお考えであるか承りたいと思います。
  256. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 特に大規模建設事業におきましては、先生御指摘のように、現場に働く人あるいはそれを直接指揮する職長等の安全教育の徹底がはかられなければならないことは申すまでもないところでございますので、さらにそれを監督いたしまする公団の職員の方の安全に対する管理体制が非常に大事だと思います。それを通じて職長教育あるいはさらに働く者の現場の作業の教育とあわせて安全教育も実施していただくよう、具体的な案を検討していくように進めてまいるべきであろうと思っておるところでございます。
  257. 古寺宏

    古寺委員 そういう点につきまして、公団のほうのお考えについても承りたいと思います。
  258. 篠原武司

    篠原参考人 私どものほうでは、もちろん一人の犠牲者も出したくございませんし、仕事も十分安全にやらなければ所期の目的を達せられませんので、お話しのとおり、われわれも前から真剣にこれを考えておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。
  259. 古寺宏

    古寺委員 そこでもう一つ公団にお願いしたいのでございますが、いままでの工事では御承知のように公害の問題がございました。これもようやく十二月にはシックナーもできるようでございます。しかし、今後この世紀の大工事を推し進めていくためには、地元の住民との密接な協力体制というものが私は必要になってくると思います。今後労働者の数がふえますというと、当然学校の問題あるいは道路、住宅、治安の問題、いろいろな問題があるわけでございますが、こういう点に対するいわゆる配慮と申しますか、事前の対策ということを現在お考えになっていらっしゃるかどうか承りたいと思います。
  260. 篠原武司

    篠原参考人 これはああいう僻地に非常に大ぜいの人が集まってまいりますので、私もその点は非常に心配しておりまして、都市計画といったら語弊がございますけれども、そのくらいな気持ちで万般の計画を立てて、あらゆる面で支障のないようにやっていかなきゃならぬじゃないかということを常々部下の者にも言っておりますし、そういうふうに実施さしていくつもりでございます。
  261. 古寺宏

    古寺委員 それでは新幹線並びに海底トンネルにつきましては、今後十二分な対策によりまして犠牲者を出さないように心からお願いを申し上げてまして、質問を一応ここで終わりますが、どうかいままでのような悲惨な歴史を繰り返さないように今後とも十分にお願いしたいと思います。  次にお伺いしますのは、先日の委員会の際にも質問申し上げましたが、採石企業の問題についてであります。つい先日も島根県におきまして採石場において事故があったということを承っておりますが、この事故につきまして労働省から御説明をお願いしたいと思います。
  262. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 御指摘の採石場は島根県の堀尾採石場のことであろうかと思いますが、この堀尾採石場におきまして高さ八十メートル、幅八十メートル、約三万立米の山くずれが採石現場においてございまして、労働者三名が生き埋めとなったという事故であろうと存じますが、その事故でございますか、それでよろしゅうございますか。
  263. 古寺宏

    古寺委員 先日も全国の採石事業場の死亡者の問題について申し上げたのですが、四十三年には二百三十八名、四十四年には二百六十名、四十五年には二百十七名という犠牲者を出しておるわけでございますが、この採石場における事故の一番大きな原因は何かといいますと、階段式採掘法、ベンチカット方式を採用していないがために、こういう不幸な犠牲者を出しているということを承っているわけでございます。そこで先日も産業安全衛生施設等に対する融資制度について、こういうベンチカット方式に必要な機械も融資の対象にしていただきたい、こういうことを労働省にお願いをいたしたわけでございますが、この点について労働省ではその後どういうような検討がなされているか承りたいと思います。
  264. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 ただいまの安全衛生融資は、御承知のように中小企業金融公庫を通じまして、そこに特定のワクを設けて一定の対象、個別の機械器具の購入等のために融資をしていくということで、比較的限られた対象品目になっておるわけでございます。そこで今後安全衛生立法を新しくつくってまいるということで私ども検討をいたしております。その中の一つの大きな項目が、やはり安全衛生融資の拡充と強化でございまして、その場合には、やはりその対象になりますのを限られた機械というよりも工事そのもの、あるいは安全工法というものにも向けていかなければならないのであろう。ただ、現実にいま御指摘のベンチカットの工法が直接対象に含まれるかどうかということについては、その工事自体が安全のための工事、安全あるいは災害予防のための工事と一般的な工事との境がはっきりしないようなものもございますが、しかし、そういったものをいままでのように単なる限られた機械器具の購入ということではとても狭過ぎると思いますので、今度の予算編成にあたりましても、実はこの安全衛生融資のワクを広げると同時に、もう少し産業災害の予防と関連づけた安全衛生融資制度をつくるべく要求をいたしておりますので、今後とも関係方面と折衝いたしまして、要すれば災害防止に役立つ安全衛生融資制度をつくってまいりたい、こういうことで努力をいたしてまいっているところでございます。
  265. 古寺宏

    古寺委員 そこで大蔵省にお尋ねしたいのでございますが、わが国の労働災害を防止するためには、産業安全のための資金というものは少なくとも年間百億は必要である、こういうふうにいわれております。しかも、融資を受ける対象の方々はほとんどが中小企業あるいは零細企業でございます。これらの方々が融資を受ける場合には、担保の問題、保証人の問題、あるいはいろいろな、ただいま申し上げましたような規制がございまして、思うように安全施設の整備ができない、こういうような現状になっているわけでございます。この産業安全衛生施設等に対する融資の資金量の拡大並びに今後この貸し付け条件の検討ということについてどのようにお考えになっていらっしゃるか、承りたいと思います。
  266. 北田榮作

    ○北田説明員 産業安全衛生がきわめて重要な問題であるということは御指摘のとおりであると思っております。こういった見地から、ただいまもお話がございましたように、国民金融公庫及び中小企業金融公庫におきまして産業安全衛生のための特別貸し付け制度を設けておるわけでございまして、こういった条件につきましては、一般の貸し付け条件等に比べまして非常に優遇した条件を適用いたしておるところでございます。また資金量につきましても年々拡大をはかっておりまして、たとえば中小企業金融公庫で申しますと、四十六年度のワクは二十億円、国民金融公庫につきましても、公害防止貸し付けと合わせまして現在二十億円というようなワクを設けておるところでございまして、年々その拡大、充実をはかっているところでございます。  今後ともこういった資金量、融資条件等の面では十分考慮をしてまいりたい、このように考えておる次第でございますが、四十七年度の予算に関連いたしまして、いろいろな御要求が出ております。こういった点につきましては、今後予算編成の過程を通じまして十分検討をしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  267. 古寺宏

    古寺委員 いま御答弁がございましたように、中小企業金融公庫が二十億円、国民金融公庫が公害と合わして二十億円でございますが、少なくとも毎年百億くらいの資金量が必要であるというのが日本の現実の姿でございます。これを今後少なくとも三倍ぐらいに資金量をふやしまして、そしてこれらのとうとい、労働災害による犠牲者をなくしていく、こういうようなお考えは大蔵省ではお持ちになっていないのでしょうか、もう一度承りたいと思います。
  268. 北田榮作

    ○北田説明員 国民金融公庫及び中小企業金融公庫の資金量につきましては、ただいま申し上げましたように年々増額をはかっておるわけでございますが、貸し付けの内容が産業安全というような非常に緊急的なものでございますので、特に必要であるというようなものにつきましては、一応のワクは設定をいたしておりますけれども、そのワクに必ずしもとらわれるということではなしに、どうしても必要なものはワクをオーバーいたしましても融資を認めておるというような実情でございます。たとえば四十五年度の貸し付けを見ましても、中小企業金融公庫におきましては、一応のワクとしては十五億程度ということを目標にしておりましたが、現実の貸し付け実績を見ますと十八億八千万ばかりの貸し付けをいたしております。こういったように、どうしても必要なものについてはある程度弾力的に全体のワクの中で融資をいたしておるということでございますが、なお今後ともそういった資金量の充実につきましては十分配意をしてまいりたい、このように考えております。
  269. 古寺宏

    古寺委員 このベンチカット方式に必要な機械はクローラードリルというのですがね。これは四百三十万円でございます。この四百三十万円の機械を一台購入することによって、年間二百名をこえる犠牲者をなくすことができるわけです。こういう災害を絶滅することができる。こういうクローラードリルという機械について大蔵省は御存じでございますか。
  270. 北田榮作

    ○北田説明員 中小企業金融公庫及び国民金融公庫の融資対象といたします機械施設につきましては、関係の省庁といろいろ打ち合わせをいたしまして必要な施設をきめておるというようなことでございまして、どうしても融資の対象として必要なものがあれば、そのつど十分御相談をして考えていきたいと考えております。いまお話のございました機械については、まことに申しわけございませんが、現実にどういうものかというのは、よく存じません。
  271. 古寺宏

    古寺委員 大臣、こういう大事な安全衛生施設があることによって労働者が救われるわけです。ところが、大蔵省のほうは御存じない。こういう点についての労働省の熱意というものがやはり足りないために、今日まで資金量もなかなか思うようにふえないし、また労働災害というものも減少しない、こういうふうに考えられるわけでございますが、今後こういうようなベンチカット方式にはなくてはならない機械、わずか四百三十万円でございます。こういう機械について融資の対象に入れてくださるように大蔵当局に強力にひとつ申し入れていただきたい、こういうふうに思うわけでございますが、大臣のお考えを承りたいと思います。
  272. 原健三郎

    ○原国務大臣 お答え申し上げます。  熱意のほうは決して人後に落ちていないのですが、なかなか大蔵省の査定がきびしいので……。そういうわけで、来年度百五十億の予算要求をいたしております。そして皆さん方のそういう声も大蔵省に届くと思いますので、百五十億すっぱりいただくことになれば、非常に御期待に沿うと思っておりますが、要求だけはいたし、それから折衝も私自身こういう委員会のお声を伝えて、大蔵大臣に直接折衝いたしたいと思っております。  これはたいへん重要なことでございます。ことにさいぜん申し上げました単独法もできるのですから、法律ができても、予算の裏づけがなければ法律だけがから回りいたしますので、十分誠意をもって折衝を続ける考えでおります。
  273. 古寺宏

    古寺委員 そこで最後にもう一つ御要望しておきたい問題がございますが、こういう融資の制度がございましても、実際に業者の方々がこういう制度がわからないために利用できないでいる方がたくさんいらっしゃるわけです。労働省も人員削減で思うように手が回らないということもよくわかりますが、今後こういうような制度の活用というものは十二分に推進していかなければならない、こういうふうに考えるわけでございますが、今後こういうような制度を強力に推進していかれる御決意を承りまして、質問を終わらしていただきたいと思います。
  274. 原健三郎

    ○原国務大臣 労働省の重点施策の一つとして、こういう労働安全衛生を取り上げております。それで、ただいま申し上げましたとおり、そういう予算要求をいたしておりますし、宣伝のほうが行き届いておらぬということでございますが、ごもっともでございますので、これについても十分配慮して御期待に沿うように全力を傾けてやる決意でございます。
  275. 古寺宏

    古寺委員 以上で終わります。
  276. 増岡博之

    増岡委員長代理 次に、大橋敏雄君。
  277. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 ただいま同僚の古寺議員から国鉄の新幹線工事に伴う労働災害あるいは採石場の労災事故等についていろいろな角度から指摘していったわけでございますが、私もこれから労災事故に関係いたしまして質問申し上げるわけでございますけれども、感ずるところ久しく労働災害の一番原因は何かということで問題になってきたことは、いわゆる企業側が、つまり産業優先で人間生命軽視にあると常々これはいわれてきておりますけれども、まだまだこの姿勢というものは改まっていない。底流にはその精神は昔とちっとも変わらないんだと、このようなことを感ぜずにはおられないのであります。  実は去る二十六日の日に新日鉄八幡製鉄所戸畑地区第一製鋼工場の第三転炉が爆発いたしまして、その爆風で吹き飛ばされまして、同製鉄工員の谷口義雄さんら四名の方々が死亡いたしました。また、下請作業員を含む十七名の方々が重軽傷を負った大きな事故が起こったわけであります。  私は、まずこの質問に入る前に、このとうとい生命をなくされたその霊に対して深く冥福をお祈りするとともに、重軽傷を負われた方々が一日も早く健康になられんことをお祈りする次第でございますが、今回の製鉄の事故というのは、もう言うまでもなく、新日鉄八幡製鉄などというのは、世界的にも工業界では屈指の域にあるわけでございまして、いわゆる設備も中身も近代化された企業であり、工場であるわけです。その中においてきわめて原初的な問題ではなかろうかといわれるような事故が発生したわけであります。これは労働省といたしましても、事故発生後、直ちに八幡労働基準監督署、また福岡の労働基準監督署合同で現地調査に走らせているようでございます。その報告もすでに入っているかと思いますけれども、今度の事故は転炉の中に酸素パイプ——ランスといわれておりますけれども、これを切断して落とした直後に起きた爆発である。私は、かねがね製鉄の中を見てまわったことがございますが、その転炉というものもこの目で見たことがございます。直径は五メートル、高さが八・五メートルというちょうどとくり型になった、いわゆる溶鉱炉ですね。回転できる転炉でございますが、ちょうどこういう形をしておりますけれども、この中に水が入っておるように、溶鉱が、いわゆる千五百度からそれ以上の灼熱の溶鉱があるんですが、その中にこういうランスという管を下げまして、この先から酸素を送り込んで化学反応を起こしていくわけでございますけれども、この転炉工場におけるランス、この切断というものは今度初めて行なわれたものではないんですね。しばしば行なわれている作業であるわけでございますが、にもかかわらず、今回のような大事故になったというには、何か従来と変わった特殊的な変異が起こったのではないかと、私はこう思うわけでございますが、その点についてどのような掌握をなされているか、まずお尋ねしたいと思います。
  278. 原健三郎

    ○原国務大臣 ただいま大橋委員からお話がございました十一月二十六日の、この新日本製鉄の事故に対し、死者四名、重軽傷者十九名、多数の被災者を出したことに対し、まことに遺憾千万で、遺憾の意を表するとともに、なくなられた方々の御冥福をお祈り申し上げます。また、負傷された方々の一日も早き御全快を祈ってやみません。  それで、この原因については、いま徹底的に究明させておりますし、さらにまた、被災者の方々に対する労災補償についても、すみやかに支給するよう指示いたしております。詳細は政府委員から答弁させます。
  279. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 この爆発の原因につきましては、目下関係者が寄って最終的な調査を進めておるところでございまして、的確な報告がまだ手元にまいっておりません。そこで、事故の起きました状況は、ただいま先生の御指摘のとおりでございまして、ランスを切断いたしましたときに、あるいはその中の冷却水がまだ残っておったのを知らずに切断いたしまして、それが下の溶鉱炉の異常な熱のために水蒸気爆発というような形になったのではないかといっておりますが、あるいはそのほかの原因がこれに加わって起こったのかもしれません。それらについては、さらに今後の調査に待ちたいと思っておるところでございます。
  280. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 私の選挙区の中の工場のできごとでもありますし、私も事故と同時に地元に帰りまして、企業側あるいは被災者側の関係者といろいろと話し合ってみたわけでございますが、先ほど申しましたように、いま言ったパイプですね。その炉の中にずっとおろして化学作用を起こしていくランスというパイプは、これはしばしば切り落とさなければならない状態になって、今日までもその作業をやってきた。ただ今回の場合は従来と違った状況が起こったのだ。と申しますのは、ランスというのが入っておるわけでございますが、これがいつもこの中の化学作用によりまして飛び散って、地金といいますか、これにずっとくっつくわけですね。そうしていよいよこれを上げるときになって上に上がらなくなるそうです。ところが、いままではそういうことが何回も起こりまして、現場で体験的に経験的にいろいろ切り落としについての基準を考え、つくり上げてきた。私もその中身といいますか、基準を見てまいりましたけれども、それはいつもこのランスが引き上げられて、そうして転炉が四十五度に傾けられたそのあとで切り落としをするのだ。そうすれば転炉の中にはランスは落ち込まないわけですね。ところが今回はランスが転炉の上にある口よりも上に上がらなかった。いわゆる中にあったものですから倒そうにも倒れないわけですね。こういうこれまでにない状況になったというわけですよ。そういう場合に一体どういう措置がとられたのだろうか、あるいはそれに対してどのような対策が打たれたのだろうか、私はその点に非常に疑問を抱いておるものであります。いままでの経験のうちならば、それは当然切り落としもあったでしょう。このランスというのは、いわば消耗品的な扱いを受けているものらしいですね、いつも地金がくっつくものですから。しかし、いまあなたがおっしゃったように、このランスのまわりには、それを冷やすために水が循環しているわけです。それをそのまま落としますと、これは水蒸気爆発といって鉄鋼界で最もおそれられている問題なんですね。それを承知で切り落としたという、これについてどうお考えになりますか。
  281. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 十分調査結果が出てまいりませんので、的確なことをいまの段階で申し上げられないと思いますけれども、通常の場合、冷却水をしばらく蒸発させまして、ほとんど水がなくなった形で切断をするというようなことが行なわれたのではないか。ところが、今回の場合には、その辺の確認が十分でなくて、しかもいまお話を承りますると、この転炉の中に直接落としてしまったというようなこと等の作業のやり方についても、通常の場合と少し違っておったようなことにうかがわれますが、いずれの場合におきましても、直接転炉の中に水が落ちていったそのことのための爆発のように思われます。ただ、そのためには、御指摘のようにいま申しました従来のやり方とどこが違っておったのかというその直接の原因並びにそれに関連する仕事のやり方等との関連も十分調査いたさなければわかりませんので、その辺を目下調査いたしておりますので、もう少しその結果を待って最終的な決断はしたい、判断はしたい、こういうふうに思っております。
  282. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 先ほど申し上げましたように、製鉄所内ではランスの切り落としについては、現場の経験、体験の上からいろいろと想定されて、こういう場合はこうなければならない、こういう場合はこうであるべきだといういわゆる手順、基準がもうつくられているわけでございます。その基準どおりにやってさえいれば、今回の問題は起こっていないわけですね。しかし今回はその手順どおりにはやれない状況が出たところに不幸の最大の問題があるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、いまの手順の手抜きであり、そしてその工場内につくられている作業基準の無視ではないか、これは大きな問題であろうと思うのですね。もし作業基準に照らしてやっていれば、あくまでもそのランスは炉の外に落ちる状態でなければ切断はできないことになっているわけですから、私はその点が問題にされるところではなかろうかと思うのであります。そこで、もう一つ言っておきますが、いま水は業界にとっては水蒸気爆発、よく水爆とまで言われているそうでありますけれども、この脅威は常識的になっているわけですね。ですから、そこの作業に当たる方々も、そのおそろしさは百も承知であるわけでございます。しかも、今回の場合はそのランスの中に水があって、それが中に落ちないわけにはいかない状況にあった。そこで、その水抜きが何よりも先決問題であったわけですね。私はその点についても関係者から聞いてまいりましたが、ランスの上のほうに大きな穴をあけた。穴をあければ、水があれば下の熱によってそれが蒸気になって吹き出てくるはずだ、蒸気がなくなれば水がなくなった証拠であるというようなことで、水はないということで切断された模様でございますが、非常にこれでは不確実であろうと思います。一応蒸気がなくなれば水はないと判断したくなるところでございますけれども、今回の事故を見てみますと、水が中に入らない限りには、あれほどの大事故にはならなかったであろう、爆発は起こらなかったであろうという時点に立てば、やはり水があったんだ。そうしてみれば、そのような穴をあけて蒸気が出なくなったからもうだいじょうぶだ、水はないという確認の方法というものは、これは改められるべきである、私はこう思うわけであります。  それから、その水抜きの確認の方法は、それ以外にないものだったのかどうかという問題ですね、これも今後の検討の中に重要課題として取り上げてもらいたいところであります。  その次に申し上げたいことは、先ほども申し上げましたように、今回は前例のない状況下においてさきのような措置がとられたわけでございますが、当然慎重な検討がなされ、あるいは措置が講じられるべきである、私はこう思うわけであります。ところが、地元の皆さまのお話を承ってみますと、確かに切り落とすまでには、いままでにないほど長い時間検討なされたということです。普通ならば四、五十分で大体結論を出して切り落としていったらしいのですけれども、今回の場合は、先ほど言ったような前例のない状況下にあったからでしょう、三時間近くも検討はなされている模様ではございますが、先ほども言いましたように、今回は切り落とせば必ず転炉の中に入るという状況ですから、それだけに最終的に切り落とそうと決断をする者と、それから、決断をしてその作業をせしめる、指示をする責任者は一体だれなのかということですね。今回実際行なわれたその切断作業をやった人はだれだったかつかまれていますか。それは報告があっていますか。
  283. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 御指摘のような点もあわせて目下調査いたしておりますが、現場の工事担当の係長の職にある方がそのランスを切り落とすことを決断するかどうかの責任者であったように聞いております。なおその点もあわせて詳細にいま調査しておりますが、いま報告を受けておりますのは、ただいま申しました現場の作業工事の係長というようなことを聞いております。
  284. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 実はこの責任者が非常にあいまいであったのではないかということを感ずるわけです。と申しますのは、ちょうど十二時過ぎごろが交代の時期だったのです。ですから仕事を終えて帰る人と、新しく仕事につく人、あと番の方とが一緒になった時間であったわけです。時間が延びたためにたくさんの方がみな爆発事故の起こった転炉のそばに寄ってきておった。そして思いがけない多人数の被害者が出たわけでありますけれども、もしも責任者がはっきりしていれば、いままでにない不安な状態で切り落とすわけでございますので、その責任者がもっと的確な指示をし、そしてたとえば退避させるとかなんとかいうような措置をとっているならば、被害も最小限度にととまったのではないか。作業長あるいは係長——大体現場には工長というのがいるわけですね。その上に作業長がいるわけです。それから係長、ですから当然係長も作業長もその場には来ておった模様です、それほど重要な状態になっているということから。それにもかかわらず、いま言ったような配慮がなされていなかったということは、まだまだ責任者責任あるべき姿が明確でない、こういうふうに私は感ずるわけでございます。そこで、この指揮監督責任者を明確にすることが今後の労働災害を防ぐ大きな問題点ではないか、こう思うのでありますけれども、その点についてはどう考えられますか。
  285. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 御指摘のとおりでございまして、災害を防止するための幾つかの重大な要素がございますが、そのうちの一つといたしまして、安全についてのいろいろなチェックポイントがございますが、それをだれが責任をもってチェックし、安全性を確認して指示をするか、あるいは監督するかということが安全の実効あらしめるための一つの大きなポイントであることは御指摘のとおりでございまして、今後の安全衛生対策の実施にあたりましても、必要なチェックポイントに必ず責任が明確に、それとうらはらになっているという体制を現場においてどうつくるかが一番大きな問題であろうと思います。そういうことで、そういう体制をどうすれば一番いいのか。今後立法の面でも、また現実の作業現場における安全管理体制の組織化の面でも十分考えてまいりたいと思っております。
  286. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 要するに責任体制とその措置、指示の出し方、これによって大きく変わっていくわけでございます。   〔増岡委員長代理退席、田邊委員長代理着席〕 当然企業側といたしましても、今回の事故からそういう問題も再検討されていくはずでありますが、特にいまの問題は重要な事柄でありますので、監督官庁としての労働省の指導を強く要求いたしておきます。  それから、今度のランスを直接切断した者は、私の聞いた範囲においては下請業者であった、こう聞いているのですよ。これも現場で働いている作業員の皆さんから聞いたなまの声でございますけれども、従来はこのような変わった状況が起こった場合は、整備班とかあるいは緊急班というものが別に組織されておりまして、その人々が来て、修理あるいは補修等をやったらしいのです。現在も緊急班だとかあるいは整備班はあるのはある、いるのはいるんだそうでございますが、きわめて員数が少ないのでございまして、今日この事故の起こった第一製鋼とその裏にある第二製鋼、その二工場合わせて整備班というものが四、五名程度だそうでございまして、緊急な場合でも連絡してみても、ほとんどほかの作業、仕事にかかっていて来られないというのが実情だということですね。そういう中にあって、だから、転炉工場の一つの作業をしていればよかった人が、最近ではそうした整備班の方々がやるような仕事までも自然自然のうちに覚えさせられ、実際にやらせられている。多能工みたいな姿になっているわけですね。これは技術を覚える面においては悪いことではないと思いますけれども、これが事、事故に関係する内容であるような場合は、これは絶対やらしてはならぬと思うわけです。ましてや下請の方々は、そういう深い内容まではわかっていないだろう。ただ切り落とせばいいというような感覚でやったに違いない。これも企業側の大きな責任問題であろうと思いますが、今後の調査中身において、この点も明確にしていただきたいと思います。  それから、いま申し上げました整備班、緊急班、こういうものがあってなきような現状になっていることも、これは企業側に改めさせるべきであると思うのですが、こういう点、いままで申し上げました二、三の問題について基準局長の考えをまず聞かしていただきたいと思います。
  287. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 大橋先生の現地を御視察の上の詳細な御指摘でございまして、一々ごもっともでございます。そのうちで特に下請関係につきましては、被災者二十三名のうち六名が下請関係の労働者であったようになっております。その方が、いま御指摘のように直接こういう作業につくということについては、やはり問題が非常にあろうと思います。  ここで私ども、一般に災害の一つの発生原因の多くの中に、構内下請関係に非常に多いということも、製鉄関係等ももちろんでございますが、一般の建設においてもそういうことが数字的に出ておりますので、今後構内で下請の労働者を使う場合のその使い方の問題、また使っていく場合の元請、元方の労働者との安全管理の体制の連絡の問題等、いろいろ検討すべき点がございますが、それらはさっき申しました現場における安全衛生管理体制をどう形づくっていくべきかということの一環として十分検討してまいりたい。  そのほか御指摘の点については、今後の法案の作成の過程あるいはそれに基づく安全衛生計画の立案推進等にあたりまして、重点的な事項として最も実効のある形を考えてまいりたいと思っております。
  288. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 今回の事故は、先ほど言いましたように、前例のない状況下に起こった事故である。企業側も緊急安全対策会議等を持ってこれに対処しようとするでありましょうが、これはその結論が出る前にまた起こらないという保証はないわけですね。実際新聞報道によれば、そのもう一つ横にある——実は三つ同じかまがあるわけですが、横にあるのが翌々日操業されているということを聞きますし、これは事故軽視ではないかという声まであるわけです。同じような条件がそのままあるとは思いませんけれども、もしいま言う安全対策会議の結論が出る前に起こったような場合は、これはどうすればいいんでしょうか。
  289. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 ただいま御指摘になりました、私ども目下調査中でございますが、調査の結果を待っている間に同じような作業が繰り返されるというようなことになってはまことに遺憾でございますので、いま御指摘の点、御懸念の点ごもっともでございますので、問題点を、こういうところに疑点があるということを調査結果を待つ前に整理をいたしまして、新日鉄当局に十分警告をするというような措置もあわせてとってまいりたいと思います。
  290. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 このランスの切り落とし作業というのは、先ほども言いましたように、しばしば行なわれている問題で、その作業自体がもう問題なしという立場から、すぐ横のかまがまた作業を開始しているということでありましょうけれども、実際にその現場で働いている皆さんの心理状態というものは企業側が思っているようなものではないと思う。あるいは逆に、企業のほうが作業員の恐怖感をとるためにすぐ仕事を始めたとも考えられますけれども、これはやはり大きな事柄ではないか。あのような大きな事故が起こったようなときは、その原因が究明されるまで、あるいは安全対策が確立するまでは、やはり作業を中止するとかなんとかという特別な措置が講じられるべきである、こう思うわけであります。   〔田邊委員長代理退席、増岡委員長代理着席〕今回も、たとえ切り落とすにしても、それが中に落ちないような措置をして切り落としたならば、事故にはならなかったでしょうし、あるいはどうしても切り落とさなければならなかったような場合は、これはしろうと考えではありますけれども、かまの中の灼熱した溶鉱がさめるまで仕事をやめてさえおれば、こういう問題にはならなかったわけです。だからこういうものから考え合わせてまいりますと、結局生産第一、やっぱりここにくるんではないか。人命軽視ではないか、このように私は思うわけであります。確かに今度の事故は、人手不足あるいは労働過重あるいは生産優先、こういう実態を浮き彫りしたのではないかと思われることがたくさんあるわけですね。これも現場で働いている作業員の方から聞いたわけですが、たとえば起重機を運転している従業員ですけれども、いままでは、交代制度ですから、交代するときには前任者と後任者が申し継ぎをして、そうして起重機の至るところを点検をして、それを確認した上で作業に入ったものだそうです。これはあたりまえだろうと思いますね。ところが今日は、ほとんどそれがなされていない。なぜされないのか聞いたら、もう仕事が忙しくてそんな点検をするひまがないんだ、すぐ作業にかかるんだと、こういうわけですね。ところが係長さんか、あるいは作業長さんの報告書か知りませんけれども、上司にされる報告の内容は、そういう点検がなされているかのごとき報告になっているんだそうですよ。だから報告書を見る限りにおいては、そういうのは当然行なわれているんだ、もう何も不安はない、心配はないということでありましょうけれども、現実はそうなんですね。これもやはり産業優先、つまり生産第一、こういうことでしわ寄せになってきているんではないか。また、これは新聞報道でございますけれども、工場の中には粉鉄がものすごくたまっているんだそうですね。当然従来は掃除がなされていたそうですけれども、最近はやはり人手不足でしょう、生産を急ぐあまりか、掃除をするひまがないというのだそうですね。その掃除をするには作業を中止しなければならぬとまでその係の方が言っております。それほど労働の環境というものがよくない。こういうことからいきますと、とにかく表面から見る労働環境あるいは労働衛生環境等は、これは実態と相当開きがあるんじゃないか。私は、労働省は監督官庁の立場でもありますし、実際現場で働いている労働者の身になって、もっとそういう実態を把握し、そして的確な指導をなさらなければならないと思うのですね。ああいう大企業になれば、職制がありまして、その職制の権限というのは非常にきびしいものらしいのです。だから、下々というのは失礼な言い方かもしれませんけれども、労働者は泣き泣き無理をしいられて働いているという現実があるわけでございます。そういう点も踏まえて、今後の監督指導を強化していただきたいと思うのですが、これについてどう考えられますか。
  291. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 いろいろ現実的な面からの御指摘でございまして、私どももいろいろ災害の発生のあとを調べてみますると、思わぬところにいろいろな原因がある。そこでたとえば、各企業もいろいろくふうして、安全協力委員会とか下請を含めての委員会組織をつくってやるとか、いろいろやっておりますけれども、結局作業のなれで、チェックすべきところを見のがしたりしております。しかし一方におきまして、トップの責任者、経営の責任者が安全衛生に非常に熱心なところは災害の発生率も非常に低いということも事実でございまして、まずその経営の責任者が、いま先生の御指摘にありましたような生産第一主義というよりも、むしろ安全衛生を最重点に考えて、作業の安全の仕組みをつくっていくということに、私どもの立場からは切りかえてやってもらいたいというふうに思っておりますので、そういう角度から、安全衛生の実効ある推進のために、事業の経営者の側、それから働く労働者の皆さんの御協力を十分得て、具体的に有効な計画を現場に密着させて進めてまいりたい、こう思っております。
  292. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 実は鉄鋼界は、昨年の不況あるいはドル・ショックの中にあって、減産体制に入っているのが実情なんですね。たまたま今度事故が起こったその現場は、逆なんですよ。増産体制ではないか。はっきり増産体制であった。事故の起こる数日前まではフル回転であった。フル生産であったと、こう言われております。これは要するに企業の備蓄生産といいますか、そのしわ寄せがこのようになったのではないか。鉄鋼界は、十二月から予定されております不況カルテルに備えての実績を残すための、このような増産体制ではなかっただろうかというように作業員、従業員は気持ちの中では非常に不満を抱いております。大体減産体制になれば、人手というものは浮いてくるのです。こうした災害も防止できる環境になっていくわけですよね。ところが現実は違う。こういう問題もあるわけでございます。また一企業の経営方針あるいは運営方針について、われわれがとやかく介入する筋合いではないと思いますけれども、しかしその運営方針、営業方針が、労働者の労働条件を不当に圧迫するとかあるいは悪条件をなすとか、そういうことになっていけば、われわれも黙っておるわけにいきません。特に労働災害、いわゆる保安について軽視されるような姿があるとなれば、黙っているわけにはいかぬわけですね。  実はこの事故を起こした工場では、去年の十月からアタック千円という運動が始まっているのです。粗鉱一トン当たり千円のコストダウンをしようという運動なんですね。これなどはものすごく成績をあげているそうですが、働いている労働者の立場から言うならば、やはり相当労働強化になっているのではないか、私はこう思うのであります。とにかく職場の整備、資材の合理化、あるいは節約運動がむしろ安全対策を軽視している、そういう状態、つまりその対策をおろそかにしていく傾向にあるんではないか、私はこう思うのであります。これは労働大臣、真剣に考えてもらいたいわけです。先ほど労働基準監督官の増員について積極的に進めていく、こういうお話がありました。そして古寺委員からは、ただ員数をふやすだけではだめだ、実際に現場を指導監督できる働きのある監督官をふやすべきである、こういうふうに再指摘があっておりましたように、私も同感であります。各企業の現場に参りますと、われわれが想像もしないような姿の中に労働強化をしいられながら働いている現実があるわけでございまして、ほんとうに労働者を守る立場で現実的な指導監督を進めていってもらいたいと思うわけであります。これはもう私の強い要望ですから、労働大臣にその気持ちを伺いたいと思います。
  293. 原健三郎

    ○原国務大臣 さいぜん古寺委員からもお話を承りました。いま大橋さんからも承り、まことに御説はごもっともで、賛成でございます。  それで、さいぜんもお話がありましたように、まず労働基準監督官をふやす。ふやしても、実際に有能な監督官をふやして、そして現場をよく監督していきたい。そういうふうにすることが、やはり労働災害を防止する最善の策であると考えております。非常な決意をもって、その線に向かって人間優先、安全確保等に邁進する決意でありますので、そのことを申し上げておきたいと思います。
  294. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 私の時間が大体迫ってきたわけでありますが、今度の被災者はみんな、年は二十九歳から上は五十五歳の方でございまして、非常に働き盛りの方ばかりであるわけです。なくなられた方は四名ですけれども、三十歳、四十七歳、四十九歳、五十五歳、こういう方々であります。また、そのほかの方々も、三十代の方が九名、それから四十代の方が六名、五十代の方が二名、二十代の方が二名、年がまだ不明なのが二名ということになっておりますけれども、いずれにしましても、一家の大黒柱、また、将来これからという方々ばかりであります。もちろんそれは労災補償の立場から進められていくでありましょうが、会社側のこれに対する補償の程度については、労働省からも特段の指示といいますか、協力方をお願いしたいと思うのであります。大体、現在どのような姿でそれが進められているか、お尋ねいたします。
  295. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 ただいま私どもが知っております範囲で申し上げますと、会社側が遺族に対しまして、弔慰金として一人当たり五百万円、御香典として十万円、それから育英資金として、遺児が残っておられる方について、就学者一人当たり毎月一万円という育英資金を出す、それから負傷者に対しましては、休業補償六割との差額四割を補償して、全額補償にしていくというようなことをやるべく準備しておるように聞いております。
  296. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 とにかく爆風でなくなり、あるいは傷つけられた方々でありまして、その姿はもうそれこそ痛ましいほどでございます。重傷を負った方の顔やからだにガラスが突き刺さり、あるいは鉄粉がもうほんとうに入り込んでいるわけですね。そういう方々ばかりでございまして、これは会社側も全力をあげてその補償に当たっていくとは思いますけれども、ほんとうにお金で済む問題じゃありませんが、やっぱり最後はそうした姿であらわしていかざるを得ないわけですから、会社のほうにその点も、われわれのこの気持ちも労働省のほうから伝えていただきたいということです。  最後にもう一問でございますが、この鉄鋼界の労働災害は、去年は非常に異常とまでいわれたほど多かったわけですね。労働省もそれを見て、さっそく各監督署に通達が出たようであります。その功が奏したのかどうか知りませんが、八幡製鉄所でも、去年に比べますと、ことしは労災事故というものは半減していたことは事実でありますけれども、今回のような事故が起こった。これは一回労働省からしっかりせよというような指示を流せばいいというようなものじゃないのですね。時に応じ機に即して、やはりもっともっと労災に対する観念を深めさせていくという姿勢がなければならぬと思うのです。これも、先ほど言ったように、手が足りないところから起こってくる問題ではないかと思いますけれども、その手があるなしにかかわらず、これはもう適切な指示を与えていく。  それからもう一つ私が言いたいことは、報告書の上における労災の減少というものは、必ずしも信用できるものではない。たとえば腕を一本折った、そういう人は、普通ならば休ませながら療養させる、手当てをするわけでございますけれども、腕一本ぐらい、出ていらっしゃい、仕事をする必要はありませんということで、報告書の中には有給ではないわけですね。つまり有給災害ではない、働きに来ているわけですから。しかし、現実には働いていない。たとえば十人で行なう仕事が、一人そういう者が入れば、現実は九人でその分をやらなければならぬし、しわ寄せが来るわけですね。こういう姿も、もう至るところに見られるのです。これも実際に働いている皆さんの声です。そういうところも踏まえた上で的確な指導をしていただきたい。そして、一回やればいいというのではなくて、適切に、時を見、機を見てやってもらいたいということであります。それについて、最後の答弁でけっこうです。
  297. 原健三郎

    ○原国務大臣 大橋さんの御趣旨ごもっともで、賛成でございまして、一般的にもときどき、そういう機に臨み変に応じて注意を喚起いたしたいと思いますが、このたびの事故については、鉄鋼連盟に対し指示をやる考えでおります。
  298. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 終わります。
  299. 増岡博之

    増岡委員長代理 次に、寺前巖君。
  300. 寺前巖

    寺前委員 大臣、お気の毒だけれども、ひとつ最後までよろしくお願いします。  私は、労働者の基本的な権利というのがすべての場で正しく生きているのかどうかということで、きょうは時間もあれでございますので、基地の中において労働者の権利というのが保障される実態にあるのかどうかという問題について焦点をしぼって聞きたいというふうに思います。  まず第一に、いま沖繩の問題をめぐって論議されております。新しい時点がここに生まれますので、私は、この問題を通じて日本の基地の労務者全体が、一体権利はどうなっているんだろうかということについて触れてみたいというふうに思うわけです。  現在、沖繩には布令第百十六号というのが米民政府のあれに基づいて行なわれております。この布令第百十六号を見ると、その第七条のg項には、「労働組合の各役員が共産党員でなく」とか、あるいは「合衆国政府を暴力又は非合法的手段によって転覆する」団体云々というような問題が書かれているのですね。そうして供述をせいという、宣誓書をやれということがこの布令の中に出てくるわけですね。現在沖繩におけるところの軍労務者というのは、こういう布令のもとにおるわけですけれども、日本国憲法あるいは日本の中で行なわれている労働法との関係で見たときには、この布令は廃止される性格の内容だと思うのですが、大臣、御存じですか、この問題について。お聞きしたいと思います。
  301. 原健三郎

    ○原国務大臣 そのことは聞き及んでおります。
  302. 寺前巖

    寺前委員 それで、その内容として、共産党員でないとか、そういうことを宣誓するとか、あるいは第一種軍雇用労働者は同盟罷業をしたことがないとか、あるいは同盟罷業を主張するとか、その団体の一員でないとか、そういうことが十二条のb項などには書いてあります。ですから、こういう趣旨の内容というのは、日本国憲法や日本の労働法に合致しない性格のものであるということは言い切れますね。
  303. 原健三郎

    ○原国務大臣 合致しないものであります。
  304. 寺前巖

    寺前委員 それでは労働大臣にお聞きしたいわけですが、実は私は、現在の沖繩で使っている軍労務者の履歴書なる用紙をここに持っております。ちょっと大臣に渡してくれますか。——その履歴書の五枚目ぐらいのところに赤線を引いておきました。ちょっと読んでみます。「あなた又はあなたの家族の誰かが共産党か共産系の団体に今加入していますか、又以前に加入していたことがありますか。」云々ということがそこに書かれております。そしてその次のページには「この履歴書中のどの項目についても、虚偽の記述を行なった場合は、直ちに解雇されること、又は就職申し込みが不承認になることもあることを私は承知しています。茲に記述した事柄は私が知り、そして信ずる限り真実であります。その証明としてここに署名をいたします。」これだけのものを出さないことには、現在あそこでは仕事につくことができない、こういうことになっております。そうすると、先ほど大臣が御答弁になりました趣旨、すなわち日本国憲法と日本の諸労働法から見て、この履歴書というのは、復帰した時点においては、このようなことはあってはならないというふうにお考えになりますか。
  305. 原健三郎

    ○原国務大臣 現在においてはそういうことが行なわれておるとしても、これはまあ好ましくないことですが、やむを得ませんが、復帰後においては労働三権その他日本の法律同様にいたしますので、そういうことはあり得ないと思っております。
  306. 寺前巖

    寺前委員 施設庁の人、おりますか。——現在の本土における基地の労務者に対しては、地位協定に基づく基本労務契約というのがありますね。あの基本労務契約に基づいてその内容を見ると、その中にこういうふうに書いてありますね。」日雇従業員の場合を除き、すべて、面接を受けるに際し、「履歴書」の様式に必要な記入をして、提出するものとする。」というのがB節「雇用手続」の4の「紹介」のところに書いてあります。そうしてそのあとで云々が書いてあって、「A側が特に要求する場合には、その応募者自身の紹介によらない者で、過去二年におけるその応募者の行動及び交友関係について具体的に知っているもの少なくとも二人を含む身近な参考人少なくとも三人との面接の結果の報告を添えて、A側に送付するものとする。」こういうことが基本労務契約の中身として書いてあります。  そこで、おたくにお聞きをしたいと思うのですが、先ほど労働大臣から、現在沖繩で使っているところのこの内容というのは、日本国の憲法や労働諸法に基づいてこれは正しくない、やめさせるという御答弁があったと思う。それじゃ、現在の基地労務者の中でここに書かれている「すべて、面接を受けるに際し、「履歴書」の様式に必要な記入」という中に、絶対にこのような信条や思想に基づくところの履歴書はないということが明言できますね。またこのあとの項の交友関係云々の調査、この調査にあたってもそのようなことは絶対にやるべき性格でもないし、やっていないということを明言することができますか。どういうような履歴書の様式になっているのか、説明していただきたいと思います。
  307. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 お答えいたします。  ちょっと具体的に申し上げますと、通常従業員を雇い入れる場合、米軍のほうがこういう職種の人をこういう条件で雇いたいということを、施設庁の事務を委任されております県の出先機関と申しますか、そこに申し入れてくるわけでございます。そして通常は一つのポストに対して三名ぐらいを用意するわけでございますけれども、これは特に指名してくる場合もありますし、通常は職安にお願いしてそういう人を差し出すという形になります。そして差し出す場合には、その職場に適し、その職種に適するかどうかという大ざっぱな考えに基づきまして選んだ方を米軍のほうに連れていくわけでございます。そして連れてまいりますと、そこで面接が行なわれる。そこがまさにここに書いてありますところの面接という問題に入るわけであります。その際に米側が履歴書を求めるわけでございます。そしてその履歴書の様式というのは、これは米軍の内部の組織から出てきました様式でございまして、日本政府のものではないということは申し上げられます。その様式というのは、現在使われておりますのはまさに先生御指摘のような内容があろうと思いますけれども、これはあくまでも日本政府のものでなくて、米側のいろいろな書式の中の一つであるというふうに考えられますし、その問題につきましては、そういう形で処理されているというのが実情でございます。
  308. 寺前巖

    寺前委員 では、労働大臣にちょっとお聞きしたいのです。  いまの施設庁の意見では、まさに、沖繩でその様式の履歴書が使われているという発言じゃありませんか。基地内で働く労働者は日本国憲法、日本の労働法が適用されないという事実が起きているということになったら、この基本労務契約については日本政府とアメリカ政府との間に結んでいる以上は、日本政府としてこの問題に対する責任を明らかにしてもらう必要があると思うのです。大臣の答弁を求めます。
  309. 原健三郎

    ○原国務大臣 いま施設庁のほうの言ったのは、履歴書の様式が似ておるということを言っているのですが、私の申したのは、もっと本質的に労働者に対し区別をしてはならないという法律に従うものである、こういう御答弁を申し上げたのでございます。
  310. 寺前巖

    寺前委員 いや大臣、もっと具体的に詰めてお話をしますよ。そういうようなことは日本の憲法や労働法では許されないことでしょう。もう一度戻って私は聞きますよ。できないことでしょう。——ちょっと待ってくれよ。一つずつ押えていこうじゃないか。そんな中途はんぱにしてもらっては困るじゃないか。長年やってきたことをいまさらがたがたせんならぬことはなかろう。——何分待たすのだ。いや、ちょっと待ってくれ。ぼくは労働大臣に、言っているのだ。もっと原則問題で言っているのだ。
  311. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 お答え申し上げますけれども、日本政府がアメリカ軍と契約しておりますのは基本労務契約というものでございます。その中には、採用のときには履歴書が必要だということは書いてございます。しかし、その履歴書の中身あるいは様式、この問題は米軍部内の書式であって、日本政府のものではないということは申し上げます。したがいまして、どのような様式を使うかという問題については米軍部内の問題でありまして、日本政府が直接は関知しないという形になっております。
  312. 寺前巖

    寺前委員 だから、労働大臣に私は聞くのですよ。今度は間接雇用になる。日本政府がアメリカ軍に人を送るわけですよ。その場合に、その労務者が、働く人が日本国憲法や日本の労働法に基づくところのやってはならないことをアメリカにやられる場合に、日本政府として、どうぞけっこうでございますというならば、基地の中における労働者は労働基本権が守られないということになるではないか。日本国憲法が守られないことになるじゃないか。重大な問題じゃないか。とするならば、日本政府として、この労務契約については、これはやり直す性格のものになってくるのじゃないか。日本人の労働者を日本国憲法で保護されない状態に置いてよいのかという問題について大臣に聞いているのだ。
  313. 原健三郎

    ○原国務大臣 私どもの見解におきましては、駐留軍の労務者に対して、労働法において十分保護されておると思っております。ただ、この履歴書の形式は向こうが持ってきて、そのところでそういうことをやっているということだけで、ほかは全部労働法において、憲法においても保護されておると見ております。
  314. 寺前巖

    寺前委員 大臣、もっとわかりやすく言いましょう。大臣にさきにお示ししたように、これが現在使われている沖繩の軍労務者のアメリカ軍に出す書式ですよ。さっき説明したように、そこに赤線が引いてある部分、これは日本国憲法、日本の労働法に基づいてやってはならないことだからやめなさいという問題について、大臣もそうだとおっしゃっているわけでしょう。確認されたことじゃないですか。その様式が、なに沖繩だけじゃなくして、日本でもアメリカ軍がやっているということですよ。そうすると、やっているとするならば、これはやめさせなければならない問題じゃないか。ところが、それに対して施設庁のほうは、これはアメリカとの間に労務契約としてやったもので、基本労務契約として結んだもので、それについてはアメリカ軍のもとにあるから、われわれのほうでは言えぬと、こうなる。そうしたら、日本国憲法がその分野ではすでに侵されているのだから、この基本労務契約について政府として結び直さなかったら、あなたが最初に言われたように、これはおかしいということが生きてこないということになるではないか。私はその問題を大臣に提案をしているわけですよ。どうでしょう。私は具体的に言っているのだよ。あなたのほうはもうわかっているのだ、話は。大臣だよ。
  315. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 たいへん繰り返すようになりますけれども、履歴書を出すということだけは、日本政府としては確かにアメリカ軍と契約しております。しかし、その履歴書の中身の問題といいますか、それは使用者であるアメリカ側がアメリカ側の書式をつくっているのであって、これは契約そのものにこの様式を使う、使わないということはきめておりません。しかもそれはアメリカ軍部内の問題でございまして、各種の様式がございます。それの一つがそういうものに割り当てられているのだと思いますけれども、しかし、これはアメリカ軍部内の問題でございまして、直接日本政府の問題ではない。それから実態的には、労働三権が守られているというのが実態でございます。
  316. 寺前巖

    寺前委員 冗談じゃないよ、あなた。労働三権が守られている一番基本は、信条によって就職の差別をしてはならないということは明確でしょう。日本国憲法だって、明確じゃないですか。そこをいま問題にしているのに、守られているって、何を言っているのだ。第一、この基本労務契約でも、前段では日本国の法律を守るということを書いてありますよ。アメリカ内部の問題であっても、明らかに問題になることを履歴書に書いてある場合には、前段に基づいて、日本国法律を尊重するという立場から見て、不適当だという指摘をやってしかるべきじゃないですか。これがよろしくないということがはっきりしているのだったら、アメリカ軍に対して言うべきじゃないですか。あなた、どこから守られていると言うのだ。私は具体的事実に基づいて言っているんだよ。この項は日本国憲法、日本の労働法から問題じゃないか。大臣は、そうだとさっき言われたじゃないか。そのことをいまも日本の本土の軍労働者、基地労働者がアメリカにやらされているのだ。やらされているのだったら、それは問題じゃないですか。あなたは問題ないと思うのですか。大臣は先ほど、いま占領下にあるからこういうものを使っているのは、これは事情が違う、日本に復帰してきたら、こんなことはやらしませんということをはっきり言われた。ところが、返ってくるはずの日本の姿がどうですか。あなたが先ほど言われるとおり、これがやはり行なわれている。行なわれているとすれば、これは問題じゃないですか。そして労働三権は守られています——どこに守られているのですか。書式はアメリカ軍内部のものであっても、アメリカ軍内部に日本の労働者を持っていくんじゃないですか。持っていく場合に、守られていなければ、重大じゃないですか。どこに守られているというのですか。
  317. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 私が申し上げておりますのはアメリカ側の書式であって、日本側の書式ではないというのが一点であります。それから、採用する決定の問題につきましては、アメリカ側が決定をしてきて日本側でそれを具体的に採用の通知を出すという手続に入るわけでございます。したがいまして、履歴書の中身がどうなっているかという問題と採用とは直接に関係はございませんというふうに申し上げて、その意味で、ただ、書いては出すということで、おそらくアメリカの書式の中から出てくると思いますけれども、実態的には採用の決定の問題というものは別の角度といいますか、アメリカ側でこの人を採用しようじゃないかという決定をしてくるのであって、そこに書式がどうであろうと、それとは直接関係はないという意味で、三権が守られている、採用時にそういうことを書く書かないは別にきまるであろうという判断をしている、そういう意味でございます。
  318. 寺前巖

    寺前委員 冗談じゃないですよ。書かしておいて、それは採用にかかわらぬなんて、そんなこと言ったって通用しますかいな、世の中は。大体、書かすこと自身問題じゃないですか。あなた、書かしても問題ないというのですか。書かすこと自身が調査じゃないですか、履歴書書かすということ自身が。これは採用には関係ありません——関係ないことだったら、書かせなければいいじゃないですか。あなた、重大問題ですよ。  学働大臣にお聞きしたいと思います。これは日本の労働者が日本国憲法、そして日本の労働法の保護を受けない状態が基地の中において生まれるということになったら重大ですから、現にまた行なわれているのは日本本土の書式においてもやられているというんだったら、労働大臣として御検討いたただいて、私は正式に委員会にどういうことが行なわれているかということの資料と、そしてそれに対する態度を明確に御回答いただきたいと思うのです。きょうは御検討されるんだったら、されてもいいですから、大臣の態度をお聞きしたいと思います。
  319. 原健三郎

    ○原国務大臣 私は重ねて申し上げますが、基地に働く日本の労務者は、労働法によって保護されていると確信いたしております。ただ、この履歴書はどうもアメリカの履歴書で、私自身もあまり好ましいものとは思いません。そういう形式のものをちょっと書かしておるというわけでございますが、それはあまり好ましいものとは思っておりませんが、労働者自身は私は保護されていると思っております。もう少し事情を調査いたしたいと思います。
  320. 寺前巖

    寺前委員 それじゃ、事情を調査してもらって、私は、書式が大臣が好ましくないと言われるとおりなんだから、日本の労働者を基地の中に送り込む以上はそこまで責任を持つということになったら、これは当然やめるべき性格のものとして、アメリカに対して抗議を申し入れてもらう必要があると思う。基本労務契約においても、日本国の法律を守るということが最初にちゃんと書かれておるのだから。あらためて御検討いただいて、また委員会で御質問したいと思います。  本日は、私の質問はこれで終わります。
  321. 増岡博之

    増岡委員長代理 次回は、明後十二月二日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時四十一分散会