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1971-11-09 第67回国会 衆議院 社会労働委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和四十六年十月十六日)(土曜日) (午前零時現在)における本委員は、次の通りで ある。    委員長 森山 欽司君    理事 伊東 正義君 理事 小沢 辰男君    理事 澁谷 直藏君 理事 谷垣 專一君    理事 増岡 博之君 理事 田邊  誠君    理事 大橋 敏雄君 理事 田畑 金光君       秋田 大助君    有馬 元治君       井出一太郎君   小此木彦三郎君       大野  明君    大橋 武夫君       梶山 静六君    唐沢俊二郎君       木村 武雄君    藏内 修治君       小金 義照君    斉藤滋与史君       田川 誠一君    中島源太郎君       橋本龍太郎君    早川  崇君       箕輪  登君    向山 一人君       渡部 恒三君    川俣健二郎君       小林  進君    後藤 俊男君       島本 虎三君    八木  昇君       山本 政弘君    古寺  宏君       古川 雅司君    渡部 通子君       寒川 喜一君    西田 八郎君       寺前  巖君 ――――――――――――――――――――― 昭和四十六年十一月九日(火曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 森山 欽司君    理事 伊東 正義君 理事 小沢 辰男君    理事 澁谷 直藏君 理事 谷垣 專一君    理事 増岡 博之君 理事 田邊  誠君    理事 大橋 敏雄君 理事 田畑 金光君       秋田 大助君    有馬 元治君      小此木彦三郎君    大橋 武夫君       梶山 静六君    唐沢俊二郎君       小金 義照君    斉藤滋与史君       田川 誠一君    橋本龍太郎君       向山 一人君    渡部 恒三君       小林  進君    斉藤 正男君       島本 虎三君    八木  昇君       山本 政弘君    古寺  宏君       古川 雅司君    渡部 通子君       西田 八郎君  出席政府委員         法務省刑事局長 辻 辰三郎君         労働政務次官  中山 太郎君         労働大臣官房長 道正 邦彦君         労働省労政局長 石黒 拓爾君         労働省労働基準         局長      岡部 實夫君         労働省婦人少年         局長      高橋 展子君         労働省職業安定         局長      住  榮作君         労働省職業訓練         局長      渡邊 健二君  委員外出席者         警察庁警備局警         備課長     鈴木 貞敏君         大蔵省主税局総         務課長     山内  宏君         農林省農政局就         業改善課長   井上 政行君         通商産業大臣官         房審議官    牟田口道夫君         労働省職業安定         局失業対策部長 遠藤 政夫君         建設省計画局建         設資材労務調査         室長      藪崎  忍君         建設省道路局道         路総務課長   森田 松仁君         日本国有鉄道副         総裁      山田 明吉君         日本国有鉄道常         務理事     原田 種達君         日本国有鉄道工         作局長     男沢  伸君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ――――――――――――― 委員の異動 十月十六日  辞任         補欠選任   寒川 喜一君     春日 一幸君 同月二十五日  辞任         補欠選任  小此木彦三郎君     江崎 真澄君 同月二十六日  辞任         補欠選任   西田 八郎君     佐々木良作君 同月二十九日  辞任         補欠選任   佐々木良作君     西田 八郎君 十一月一日  辞任         補欠選任   江崎 真澄君    小此木彦三郎君 同月二日  辞任         補欠選任   西田 八郎君     寒川 喜一君 同日  辞任         補欠選任   寒川 喜一君     西田 八郎君 同月五日  辞任         補欠選任   寺前  巖君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   東中 光雄君     寺前  巖君 同月九日  辞任         補欠選任   後藤 俊男君     斉藤 正男君 同日  辞任         補欠選任   斉藤 正男君     後藤 俊男君     ――――――――――――― 十一月一日  職業病法制定に関する請願浦井洋紹介)  (第二〇号)  同外一件(田邊誠紹介)(第二一号)  同(谷口善太郎紹介)(第二二号)  同(寺前巖紹介)(第二三号)  同(土橋一吉紹介)(第二四号)  同(東中光雄紹介)(第二五号)  同(不破哲三紹介)(第二六号)  同(松本善明紹介)(第二七号)  医療保障拡充に関する請願青柳盛雄君紹  介)  (第二八号)  同(小林政子紹介)(第二九号)  同(田代文久紹介)(第三〇号)  同外一件(田邊誠紹介)(第三一号)  同(谷口善太郎紹介)(第三二号)  同(津川武一紹介)(第三三号)  同(寺前巖紹介)(第三四号)  同(土橋一吉紹介)(第三五号)  同(東中光雄紹介)(第三六号)  同(林百郎君紹介)(第三七号)  同(松本善明紹介)(第三八号)  同(山原健二郎紹介)(第三九号)  同(米原昶紹介)(第四〇号)  同外一件(田邊誠紹介)(第五九号)  医療保険診療報酬引上げに関する請願外一件  (田邊誠紹介)(第四一号)  海洋戦没者実態調査促進に関する請願外一件  (安倍晋太郎紹介)(第五六号)  同(松野幸泰紹介)(第五七号)  国民健康保険改善に関する請願成田知巳君  紹介)(第五八号)  腎臓病患者救済に関する請願伊東正義君紹  介)(第一九七号)  同(大橋敏雄紹介)(第一九八号)  老齢福祉年金増額等に関する請願外二十八件  (西岡武夫紹介)(第一九九号)  老齢者医療費全額公費負担等に関する請願  (前田正男紹介)(第二〇〇号)  障害福祉年金増額に関する請願宇野宗佑君  紹介)(第二〇一号)  失業対策事業就労わく削減措置撤回等に関す  る請願大橋敏雄紹介)(第二〇二号)  リウマチ専門病院等設立及び治療費公費負担  に関する請願林義郎紹介)(第二〇三号) 同月二日  職業病法制定に関する請願浦井洋紹介)  (第二一二号)  海洋戦没者実態調査促進に関する請願(菅野  和太郎紹介)(第二一七号)  腎臓病患者救済に関する請願寺前巖君紹  介)(第二一八号)  清掃事業地方自治体直営化による転廃業者の  補償救済に関する請願向山一人紹介)(第  三九一号)  スモン病等に対する健康保険制度改善に関する  請願渡部一郎紹介)(第三九三号)  スモン病等難病対策に関する請願鈴木善幸君  紹介)(第四〇〇号) 同月四日  盲人福祉の向上に関する請願武藤嘉文君紹  介)(第四八一号)  スモン病等に対する健康保険制度改善に関する  請願外一件(麻生良方紹介)(第五九〇号)  同(伊藤卯四郎紹介)(第五九一号)  同外九件(内海清紹介)(第五九二号)  同外一件(岡沢完治紹介)(第五九三号)  同外一件(川端文夫紹介)(第五九四号)  同(河村勝紹介)(第五九五号)  同外一件(栗山礼行紹介)(第五九六号)  同(小宮武喜紹介)(第五九七号)  同外九件(佐々木良作紹介)(第五九八号)  同外二件(塚本三郎紹介)(第五九九号)  同外一件(西尾末廣君紹介)(第六〇〇号)  同外八件(門司亮紹介)(第六〇一号)  同(吉田賢一紹介)(第六〇二号)  同外二件(吉田泰造紹介)(第六〇三号)  同(渡辺武三紹介)(第六〇四号) 同月八日  国民健康保険改善に関する請願外百四十一件  (寒川喜一紹介)(第六四五号)  腎臓病患者救済に関する請願山本政弘君紹  介)(第六四六号)  スモン病等に対する健康保険制度改善に関する  請願外四件(今澄勇紹介)(第六四七号)  同(寒川喜一紹介)(第六四八号)  同(西田八郎紹介)(第六四九号)  同外七件(吉田之久君紹介)(第六五〇号)  リウマチ専門病院等設立及び治療費公費負担  に関する請願田中榮一紹介)(第七一五  号)  同(林義郎紹介)(第七一六号)  同(天野光晴紹介)(第八一八号)  同(大村襄治紹介)(第八一九号)  戦争犯罪裁判関係者見舞金支給に関する請願  (江藤隆美紹介)(第八一七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十一月八日  戦没者遺族処遇改善に関する陳情書  (第二六号)  社会保障費国民健康保険国庫支出金増額に  関する陳情書(第  二七号)  離島の医療整備に関する陳情書  (第  二八号)  社会福祉関係事業に対する補助基準額等に関す  る陳情書  (第二九号)  医療問題に関する陳情書  (第三  〇号)  がん対策に関する陳情書  (第  三一号)  原爆被爆者援護法早期制定に関する陳情書  (第  三二号)  建設国民健康保険国庫補助増額等に関する陳  情書(第三三号)  医療抜本改正に関する陳情書  (第三四号)  国民年金制度改善に関する陳情書  (第三五号)  国民健康保険財政健全化に関する陳情書  (第三六号)  国民健康保険事務費全額国庫負担に関する陳  情書  (第三七号)  高年齢者雇用促進対策拡充に関する陳情書  (第三八号)  中高年齢者等雇用促進に関する特別措置法  に基づく特定地域指定に関する陳情書  (第三九号)  老齢福祉年金増額等に関する陳情書外一件  (第四〇号)  予防接種事故に対する救済措置に関する陳情書  (第四一号)  家庭奉仕員法早期制定に関する陳情書  (第九六号)  公立病院に対する財政援助強化に関する陳情書  (第九七号)  ポリ容器使用禁止等に関する陳情書  (第  九八号)  老人福祉対策に関する陳情書  (第九九号)  年金スライド制実施に関する陳情書  (第一〇  〇号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  労働関係基本施策に関する件(日本国有鉄道  における労働問題及び雇用に関する問題等)      ――――◇―――――
  2. 森山欽司

    森山委員長 これより会議を開きます。  まず、国政調査承認要求に関する件についておはかりいたします。  一、厚生関係基本施策に関する事項  二、労働関係基本施策に関する事項  三、社会保障制度医療公衆衛生社会福祉及び人口問題に関する事項  四、労使関係労働基準及び雇用失業対策に関する事項 以上の各事項について、その実情を調査し、対策を樹立するため、小委員会を設置し、関係各方面からの説明聴取及び資料の要求等方法により、本会期調査を進めたいと存じます。  つきましては、衆議院規則第九十四条により、議長の承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 森山欽司

    森山委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 森山欽司

    森山委員長 この際、労働省当局より発言を求められておりますので、これを許します。労働大臣官房長道邦彦君。
  5. 道正邦彦

    道正政府委員 ただいま委員長のお許しを得ましたので、沖繩復帰に伴う労働省関係施策について、その概要を御説明申し上げます。  まず、沖繩振興開発特別措置法案第六章の「職業の安定のための特別措置」について申し上げます。  本法案においては、総合的な沖繩振興開発計画を策定し、これに基づく事業を推進する等により、沖繩振興開発をはかり、もって職業の安定に資することにしておりますが、特にこの章においては、沖繩復帰に伴って予想される社会経済情勢変化米軍基地縮小等による雇用失業情勢の変動に対処して、労働者職業の安定をはかるための特別措置を講ずることとしております。  その主要な内容は次のとおりであります。  第一に、沖繩労働者雇用促進し、その職業の安定をはかるため、職業紹介職業訓練、就業の機会の増大のための事業実施等に関する計画を作成し、必要な措置を講ずることとしております。   〔委員長退席伊東委員長代理着席〕  第二に、沖繩振興開発計画等に基づく公共事業について失業者吸収率を定め、失業者就労促進することとしております。  第三に、沖繩復帰に伴う事業活動に関する制度的変更、輸入の制限または禁止に関する法令の失効、米軍基地縮小等による失業者に対しては、その就職活動を容易にし、生活の安定をはかるため、有効期間三年の求職手帳を発給し、就職促進手当を支給するほか、雇用促進事業団において職業訓練手当自営支度金雇用奨励金支給等の各種の援護措置を講ずることとしております。  次に、沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案中の労働省所管法律の適用に関する特別措置について申し上げます。  この特別措置においては、沖繩の諸制度から本土の諸制度への円滑な移行をはかるために必要な経過措置を定めております。  その主要な内容は、次のとおりであります。  第一に、労災保険及び失業保険については、復帰と同時に本土法が適用されることとなるわけでありますが、その際経過的に不利益が生じないよう合理的な引き継ぎ措置を講ずることとしております。特に、日雇い失業保険については、一定期間、その受給要件等について沖繩失業保険法における場合と同様の取り扱いをすることとしております。  第二に、沖繩軍関係離職者等臨時措置法離職者は、本土駐留軍関係離職者等臨時措置法離職者とみなして同法を適用することによって離職者対策に遺憾なきを期しております。  第三に、復帰の際の沖繩失業対策事業就労者については、本土緊急失業対策法を適用し、引き続き失業対策事業就労することができることとしております。  第四に、労働条件関係については、本土労働基準法にない若干の保護規定につき、これを直ちに消滅させることは、労働関係に急激な変化をもたらすおそれがあり適当でないので、そのための暫定措置を講ずることとしております。  以上のほか、労働委員会委員引き継ぎ等労働関係に関する経過措置を定めております。  なお、沖繩復帰に伴う関係法令の改廃に関する法律案において、沖繩居住者等に対する失業保険に関する特別措置法を廃止するとともに、それに伴い関係法律規定整備を行なうこととしております。      ————◇—————
  6. 伊東正義

    伊東委員長代理 次に、労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出があります。順次これを許します。斉藤正男君。
  7. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 私はまず最初に、旧法によれば不当労働行為実行行為者に対する処罰の条項が明らかにされておりましたけれども、法律改正に伴ってこれがなくなっておるわけでありますけれども、旧法には不当労働行為実行行為者に対する罰則がどのようになっていたか、労働省関係者から伺いたい。
  8. 石黒拓爾

    石黒政府委員 お答え申し上げます。  昭和二十四年に改正になります前の労働組合法におきましては、いわゆる直罰主義がとられておりまして、労働組合組合員であること、あるいは組合活動をしたことのゆえをもって不利益取り扱いをするということにつきまして、いわゆる直罰主義がとられておりまして、刑の量定はいかになっておりましたか、ちょっとただいま記憶がございませんけれども、違反者に対しましては労働委員会の請求を待って直罰の規定がございました。
  9. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 答弁のとおりでございまして、旧法によれば不当労働行為実行行為者に対しましては当時の金で罰金五百円以下、禁錮六カ月以下の刑に処せられるということが明記をされておったわけであります。法律改正に伴ってこれがなくなっておりますけれども、不当労働行為なるものがいかに不届きなものであるかということについては、法は改正になりましたけれども、精神はなお生きているというように思うのでありますけれども、いかがでございましょうか。
  10. 石黒拓爾

    石黒政府委員 御指摘のとおり直罰主義規定原状回復主義命令主義に改められたわけでございますが、不当労働行為をやることは、反労働者的な行為として許されないということにつきましては従来と変わりはございません。
  11. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 国鉄から山田総裁がお見えでございますので伺いたいと思うのでありますけれども、まず、御承知のような国鉄マル生運動と称するやり方に対し、すでにしかるべき機関から結論が出ている事案がございます。しかし国鉄の出先におきましては、あの公労委決定のあった問題だけについて総裁陳謝をしたのであって、ほかのことについては、あやまったわけではない。したがって、悪いことをしたのはあれだけであって、ほかにはあやまる理由もないというような言い方が今日依然として堅持されておる。こういう風潮に対し、副総裁はどのように把握されておられるでありましょうか。
  12. 山田明吉

    山田説明員 総裁がおりませんので、私かわって出席いたしましたのですが、総裁がおそらくこの前のこの委員会にも出席しておりますし、それからほかの場でも不当労働行為、抽象的な不当労働行為でいいものと悪いものとあるというような、そういう考えは毛頭持っていないはずでございます。たまたま先月静岡鉄道局管内国労関係不当労働行為があったという公労委決定がなされました。それから先週は大阪鉄道局管内で、動労関係で二件ばかりやはり不当労働行為があったという決定がなされました。それにつきましては、もう先生承知のように、国労には決定どおり陳謝をいたしております。動労につきましては、つい先週末のことでございますので、まだその決定実行の段階までには至っておりませんけれども、これも国労関係と同じような取り扱いをいたしたいということで、実はもうすでに一般的な、過去においていわゆる不当労働行為組合側が申しております事案全体を含めた——先般労働大臣からも労使不信感を払拭するような努力をすべきであるというようなお話もございまして、その線に沿いましてすでに国労動労の間で紛争対策委員会を設けまして話し合いの場に入っております。それで、その中で先生がおっしゃいましたような不信感の根源をなしておりました、いわゆるそういう一連の行為についての解決策を前向きに話し合っていこうじゃないか、そういう場をすでに設けて話し合いに入っておりますので、その中で根絶していきたいと思います。したがいまして公労委に取り上げられたものだけの解決でなくて、全般的な解決をめどに今後話し合いを進めていくつもりでございます。
  13. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 私はその後続々と、だれが見ても不当労働行為であるという事案を、事もあろうに静岡管理局管内から数十件調査をいたしておるわけであります。したがいまして、中央に紛争処理委員会が設けられ、各管理局管内にもこれが地方版として設けられ、これで対処していくといわれますけれども、国鉄当局の基本的な姿勢がぐらぐらしておったのでは、いかなる機関を設けようとも抜本的な解決にはならぬという考え方から、特徴的なものを二、三申し上げますので、この場で山田総裁の見解を伺いたい。  その第一は、事もあろうに静岡管理局総務部厚生課長高橋守雄は、直属の部下であります貯金係長保坂金造に命じ、本人と一緒になって次のような行為をやっておるのであります。すなわち、保坂貯金係長部下である国鉄労働組合員薄井はるみさん、杉井由利美さんの二人、国労組合員であります。これに国労を脱退するよういろいろな方法で激しく工作をいたしました。特に昭和四十六年九月二十日、お二人が出勤をいたしましたら、何の前ぶれもなく、何の目的も指示せずに、いまから東京へ行きなさいということで出張命令を出しました。そして新幹線の往復切符も与え、東京へ行ってこい。お二人は何のために東京へ行くのか、出張命令内容が明らかでないということで拒否をいたしましたけれども、とにかく行けばいいんだ、そして午後四時に国労脱退意思電話で連絡をせよということで、二人を静岡管理局から出したのであります。この二人は女性でありますけれども、かなりしっかりした女性でありまして、二人でいろいろ相談をして、東京へ行けというが、一体何だろう、何をするのだろうというようなことでありまして、相談をした結果、実は東京へは来ずに現地にとどまって、指定された時間を若干おくれましたけれども、電話で、国労にとどまり、国労を脱退しないということを報告をした。私が伺いたいのは、これまでには課長係長が再三にわたってあの手、この手で二人の国労脱退を強要した事実もありますし、また二人が何のために東京へ行くのかわからないのに、出張命令を出されたということで非常に困ったという事実も持っておりますけれども、一体こういうことが国鉄においては行なわれていいのかどうなのか。   〔伊東委員長代理退席委員長着席目的も与えずに突然出張しなさい。そして時間を指定して、電話国労脱退意思を知らせなさい。一体こういう出張国鉄ではさせておるのでありましょうか。そしてまた、この行為はだれが聞いても不当労働行為だと思うのでありますけれども、いかがにお考えですか。
  14. 山田明吉

    山田説明員 いま御指摘の事実、どういう内容のものか、私全く初耳でございますので、しばらく調べるのに時間をかしていただきたいと思います。
  15. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 調べなければはっきりしたことが言えないというのですけれども、感じとしてはおわかりでしょう。私はうそを言っているのじゃない。これには人的証拠物的証拠もそろっているということをつけ加えておきます。  それから、過日の法務委員会で、同僚畑委員からお尋ねがあって、これは山田総裁も御承知だと思うのです。浜松機関区長建守幸二は、同事務助役佐藤一夫とともに、九月二十八日から焼津で行なわれる予定の青年研修会国労組合員である二人を強制的にも参加させようとした。そして、なるほど一たんはそれでは行きましょうということになったけれども、ほかの連中に聞いたところ、だれも行かない。二人だけだということで、朝になって断わったわけですよ。そうしたらその朝、タクシーへ押し込めるように二人の若い国労組合員を乗せて、東名高速道路を六千円のタクシー代を払って静岡まで突っ走って、事もあろうに静岡県警の寮である、県警ですよ、芙蓉荘という寮へ二十六、二十七の二日間軟禁をした、佐藤助役がつきっきりで。そして二十八日焼津で行なわれた研修会出席をさせておる。しかもこの二人の扱い年休になっているわけですよ。年休扱い意思のない二人を前日、前々日二日間、事もあろうに警察の寮へ軟禁同様にして閉じ込めておいて、二十八日の青年研修会出席をさせている。この事実、それは旅館がなかったから警察の寮を使った、こう言うかもしれませんよ。しかし隣の部屋、向かいの部屋、みんな警察人たちが使っているのです。その一室を使って助役が付き添って、前二日間も泊まらなければならない理由がどこにあったか。この事実は調べてと言うわけにはいきません。畑さんから文書による回答も求められていると思います。これを年休扱いにしておって、拘束をしたというようなこと、警察の寮を使ったというようなこと。それからまた、そのうちの一人が勤務しようと思っていたのですよ。それが腹が痛いから、きょうは休ませると当直に助役みずから連絡をしておる。もういろいろな犯罪のおそれのあることが重なっているのですよ。どのようにお考えですか。
  16. 山田明吉

    山田説明員 いまの問題、事実調べをしてございますので、職員局長から事実関係の御説明をお聞き取り願いたいと思います。
  17. 原田種達

    ○原田説明員 ただいま先生から御指摘のございました件につきまして、私どもの調査といたしましては、まず第一に青年講座というのは国鉄の教育機関で前から行なわれているものでございまして、当産性の研修とは別個のものでございます。私どものほうの現地の調べでは、二日前から静岡で待機するということにいたしましたのは、浜松機関区では、だいぶ以前から研修参加者に対します組合のいわゆるいやがらせがございまして、当時もそのような事態が予測されましたので、本人と助役話し合いまして、そのような行動をとったということでございます。本人の年休といたしましたのは、本人が休んで静岡に行くこととしたものでございまして、決して拘束したものではございません。  また警察の寮という話がございましたが、保養所を使ったという点はございますが、参加した両名に対しまして、強制したりあるいは連行して軟禁状態にしておいて監視したという事実は、私どもの調査での事実では全くございません。
  18. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 原田職員局長、あなた新任の局長だけれども、そんな調査をしてここで答弁をして、出るところへ出て申し開きができるのですか。いまの言動に責任持ちますね。どういう手続で調べたのか。当事者、二人の青年にも聞いていますか。あなた非常に重要な答弁ですよ。よろしいな。
  19. 原田種達

    ○原田説明員 私ども本社の関係でございますので、鉄道管理局を通じて調べたものでございます。
  20. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 どうせそう言うだろうと思ったのですよ。だから答えをいただくまでもなくいまの答弁には絶対責任を持ってもらう。事実と違っておったら、それ相当の私どもはあなたに対する責任追及を続けますから、心得ておいていただきたい。  時間がありませんので、もう一件だけ。これは差別問題ですけれども、お尋ねをいたします。  やや古い話ですけれども、去年の暮れです。助役試験に合格をした、かつて鉄労の組合員であった佐野何がしという男が、これは沼津の問題でありますけれども、非番の日に酒を飲んで勤務場所へやってきた。そして伊藤君という国労組合員を湯のみ場に強引に連行して傷害事件を起こしたのであります。これは国労組合員であろうと、鉄労の組合員であろうと、ノンポリであろうと、傷害を起こした事案については、当然国鉄では厳重な処分をしておる。ところが、この傷害事件については、ここに診断書もありますけれども、もみ消しを当局がやったのであります。そしてもちろん刊事事件にはなっていない。しかも四月の昇給にあたって、二号俸抜てき昇給を行ない、四号のところ六号に上げているのですよ。こういう事実があるのに、これが国鉄労働組合ならば何の配慮もない。しかしこれが助役であった、あるいはかつて鉄労の組合員であったというようなことから処罰どころの騒ぎじゃない、抜てき昇給の該当者にしている。これは差別ではありませんか。
  21. 原田種達

    ○原田説明員 ただいまの先生のお話でございますけれども、全く初耳でございまして、私どもそういうことのないように、過日来管理局長並びに総務部長を通じましてよく徹底しておる次第でございます。またそういう事実が現にございますとすれば、先ほど副総裁から申し述べましたように、当面の紛争処理委員会あるいは地方に設けるその中で、こういう問題が解決されていくということを期待しております。
  22. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 時間がありませんので、以上三件、簡単に申し上げましたけれども、副総裁、先ほど労働省側から御答弁がありましたように、私は過日、総裁が大臣から厳重注意を受け、総裁はまたあの不当労働行為実行行為者に対して処分をしたと言っておりますけれども、そんなものは処分でも何でもない。事実何の実効もあがっていない。私はやはりいま申し上げましたようなことは氷山の一角であって、ここに数十件の事案を持っておりますけれども、後ほどまたしかるべきところで追及はいたし、これを扱っていきたいと思いますけれども、要するに、総裁陳謝をしたというようなことは、あれほど指示徹底が行き届いている国鉄の管理部門においても、現場には何の変化もないということです。相変わらず高慢ちきで、高姿勢で、態度が変わっていない。現場の責任者の指導、監督について副総裁からもう一度見解を伺って終わります。
  23. 山田明吉

    山田説明員 いま一例として、先生お話にございましたそういう事例が数多くあるということを私どもも耳にいたしております。それで、過日の国労に関する公労委決定が出ましたこれを契機といたしまして、新しい姿勢で労使間の不信感の一掃に本格的に前向きで取り組んでいこうということで、先日人事の異動を含めました一連の措置をとったわけでございますが、過去のことは——過去と申しますと、たいへん適切な表現ではございませんけれども、その新しい姿勢で取り組むという意味で、過日、全管理局長、全総務部長を呼びまして徹底的な指示をいたしまして、今後は絶対に不当労働行為というものは根絶する決心を内外に表明したわけでございます。それから、その過程に、過去において起きております労使間の不信感の根源をなしたような一連の事象に対しましては、先ほど申しましたように、現在、紛争処理委員会というものを国労動労の間で設けてこれが活動を始めておりまして、これは本社だけでなくて、地方の対応機関の間でも設けるように指示をいたしておりますので、その中で私ども前向きの姿勢でこれからの事態の改善をはかってまいりたいと思います。
  24. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 終わります。
  25. 森山欽司

  26. 田邊誠

    田邊委員 前回の委員会で、国鉄のいわゆるマル生運動に関連をして質問いたしました。その後、私は国鉄の現場に参りましていろいろと実情も調査をいたしてまいったのでありますが、国鉄の職場は私どもが予想した以上に非常に暗い状態であります。これでは私は国鉄の再建もでき得ない、労使の正常化ということもまだまだ先の遠い話である、こういうことを実は痛感をしたわけであります。したがって、委員会総裁から表明のありました労使の正常化、不当労働行為は根絶するというそのことばが額面どおり実行されることを私は心から期待をしておるわけであります。  そこで、まず労政局長にお伺いいたしまするけれども、さきに国労に対して公労委が命令を出しましたけれども、去る十一月六日に、動力車労組に対して二件の不当労働行為ありとして、陳謝すべきであるという命令が発せられました。この内容は、さきの陳謝命令とそのよってきたるところ、その現象等について大体共通をしているものとわれわれは判断をいたします。起こった個々の現象について若干の相違はありましょうけれども、その流れるものは大体共通点がある、こういうふうにわれわれは認識をしたわけですけれども、いかがですか。
  27. 石黒拓爾

    石黒政府委員 去る六日に公労委から出されました動労に関する不当労働行為救済命令につきましては、御指摘のとおり、やはり特定の組合から脱退して他の特定の組合に加入することを管理者が勧誘、慫慂するという点におきましては、前の事件とはなはだ似通った点があると存じております。
  28. 田邊誠

    田邊委員 そこで、国鉄側はこの命令が出されたときに、非常にこれは残念である。われわれとしては、そういったものについてはないという観点でいろいろと意見を述べてきたけれども、こういった命令が出されたことについては非常に残念だという、いわば半ば抗議めいた話が新聞紙上に載っておったのでございまして、私はもしそれが事実であるとすれば、あなた方の態度は非常に間違った態度ではないかと思うのです。さきに国労に対して陳謝命令が出されて、総裁は、個々の事実は別として、包括的に現状から見て、これに服すると言われました。私はそのことば自身についても不満がありますけれども、いずれにしても服されたわけでございます。それと全くその根底において同一なもの、具体的に国労を脱退し、ないしは動労を脱退し、第二組合にいくべきだという、こういうようなことを示唆した、こういったことについて国鉄当局がやはり謙虚にこれに耳を傾けるという態度がなければ、私はあなた方がいかに不当労働行為を根絶すると言っても、それはなし得ないと思うのであります。  そういった点から、この六日に出されました今次の問題に対する二度目の不当労働行為であるというところの公労委指摘に対して、国鉄当局は一体どういうふうにお考えになりましたか、またどういうふうに処理されようとするお考えでございますか、明確にお答えをいただきたいと思います。
  29. 山田明吉

    山田説明員 大阪の事件は、動労が申し立てましたのが五件でございまして、そのうちの三件は申し立てを却下されておりまして、二件について不当労働行為であるという認定がなされたわけでございます。  その事案は、ことしの初め、二月と四月にかかるものでございまして、新聞の解説と申しますと、少しことばが穏当ではございませんけれども、決定が出された場合の取り扱いについて、これはもう釈迦に説法でございますが、法律上も裁判上争う道が開かれているということは申すまでもございません。それで国労の問題につきましては、これはすでに御承知のように、法律問題として争うことが根本的な労使間の不信一掃につながるかどうかというような総合的な判断でこれを受諾することにいたしました。今回の問題につきまして、その事実問題そのもの、それからそういうような事実があったとして、その起こったバックグラウンドの考え方、これらについても法律問題として争う道が開かれてはおりますけれども、動労に対しましても、国労と同様に労使間の不信を一掃して、そして国鉄の再建に協力してもらうという、そういう意味で総合的にこれを受諾しようということで、昨日も動労に対しまして、そのような意味で紛争処理委員会の席上で話し合いをいたしております。
  30. 田邊誠

    田邊委員 私は、ことばのやりとりについては、とやかくきょうは言いたくはありません。しかし、副総裁、私はこういうことはやはり率直に認むべきものは認める。話し合いをすべきものじゃないのですよ。あなたのほうでもってこれは命令に服するということの考え方に立てば、それは相手方に対して陳謝命令に従った陳謝文を渡せばいいわけでありましょうから、いわばあなた方の態度いかんにかかっておるわけですね。あなた方がこの事実の問題について一体これを是とするのか、あるいはまたがえんじないとして裁判に訴えるのか、そのいずれかであると私は思うのです。何か遠回しに、いわば現在の労使関係の正常化を願う気持ちという、そういう精神的なものだけでもってこの問題に対して対処しようというのは、私は基本的に誤りだと思うのです。この不当労働行為という事実に対して公労委が下した判断に対して、あなた方はこれを認めるか、認めないかということだと私は思うのです。それは認めるというように解釈していいわけですね。
  31. 山田明吉

    山田説明員 動労関係のその決定に服するということは、それを認めるということでございます。その意味で、私どもこれを契機に動労との不信感の一掃にも前向きの姿勢で取り組んでいきたい。そのように申したわけでございます。
  32. 田邊誠

    田邊委員 まあ副総裁のことばが、そういう言い回しであるために、非常に私はこの成り立ちをむずかしくしているんじゃないかと思うのです。磯崎総裁も同じだと思うのですね。あなた方は非常に頭がいいから、こういうような言い回しをして焦点をぼかそうとするけれども、この種の問題はそういう言い回しで事を済ますべき問題じゃないと思うのですね。やっぱりこういうことは間違いがあったとすれば、誤りとしてこれを認める。その上に立って今後の対処をするという、こういう私は姿勢こそが、やはり百万べんの理屈を並べたり、言い回しをするよりもとうとい、相手方に訴えるものがある、こう思うのです。その点に対してぜひ御理解をいただきたいと思うのです。その種のことは、いわば私が前回指摘をいたしましたことに端的にあらわれていると思うのです。  職員局長から理事懇談会を通じて本委員会に対して、前回の質問に対する国鉄側の回答が出されました。その数点については誤りであったことを認めていらっしゃるわけでございます。しかし、のがれられるものについては極力のがれようという姿勢がいまだに残っていると思うのです。たとえば「札幌電力区の管理目標について」という、いわゆるマル生運動という目標、拡大目標、これに沿った実施方法国労脱会を計画するということが具体的に書いてありましたね。ところが、これを指摘いたしましたところが、国鉄から持ってまいりましたのは、これは実は案であった。その後四日置きました日付でもって実は正式のやつをつくりまして、これが実は管理目標でございます。その中には、この「国労脱会、鉄労加入を実施する計画である。」ということは書いてない、こういうのでありますね。なぜこういったことについて、こういう言いのがれをするのか。現実に私は、これは札幌電力区長から入手をしたものじゃない、下部の職場にあったものを私どもは手に入れたのです。見せてもらったわけですね。実際の職場に、この管理目標として実施方法をうたったものが流れておるという現実の姿。ところが、それをまた私は指摘いたしましたら、いや、それは実は案をつくる作成の過程において下部に意見を聞いたのだというのであります。どうしてまた二重、三重に言い回しをしなければならぬのか。私はそういう国鉄の態度というものが今日、やはり事態を混迷にしていると思うのです。この電力区長がいずれにしても作成したことは事実ですね。それで、それが誤りであるということを指摘されたこともあるいは事実かもしれない。それで新しい管理目標というものを設定した。これが正しいといたしましょう。正しいといたしましても、この中に明らかに国労非難、そして「許されない違法行為等を批判しながら」この「あすなろ会」を拡大するという拡大目標が書いてある。自主的な団体であるべき「あすなろ会」の拡大に対して、電力区長がいわゆる管理目標の実施方法として具体的に五十四人から八月十七人、九月十五人、計八十六人をいわゆる拡大する目標である、こういう業務方針の一環としてこのことが指摘されている。これですらも問題でしょうが、自主的な組織とはいいがたいじゃありませんか。いずれにいたしましても、そういう誤りをおかしたこの現実に対して、あなた方は一体どういう措置をとろうとするのか。四日後新しい文書を出した。その中にはまぎらわしいものもあるけれども、そのものずばり不当労働行為なりといわば指摘をされ、指弾をされるような表現が表面に出ていないからいいといって、それでもって済ませるのですか。私はそれだけで済まない問題があると思うのです。そういう形の中でもって、誤った管理目標を作成したこの札幌の電力区長の責任は一体どうするのですか。四日後新しい文書ができたからそれでもっていいというのですか。現実に下部に流れておるものを見ておる下部の人たちがおります。この管理目標の七月十六日付のこの書面を見て、これによって意思をいわば決定をし、その具体的な実施を懸命にはかっているという、こういう事実はどうしますか。私は、そういうことを言いますと、いや、しかし現実にはこの「生産性運動グループ参加者が職員の半数を超えた時点で組合組織の変動をきたしたというような事態は起っていない。」こういうふうにあなたのほうの回答がなされておる。こんなことを私は問題にしているのじゃありませんよ。作成したこと自身に対してあなた方の負うべき責任は一体どうなのか、このことを私は問いただしているのです。どうするのですか。
  33. 原田種達

    ○原田説明員 私からちょっと説明さしていただきたいと思いますのは、ただいま先生指摘がございました点について、若干、経営計画がどういうふうに立てられているかということを御説明したいと思います。
  34. 田邊誠

    田邊委員 それは聞いたからいい。責任をどうするかだけ言ってくれ。
  35. 原田種達

    ○原田説明員 そういうことで、局の経営計画、それに基づきまして現場長が立てるものでございます。したがいまして、その案がたまたま置かれてあったということでございまして、総局はその案が不適当であるということでございまして、これは訂正さしたわけでございます。したがいまして、このようなことが現場長のこういう計画が不適当であった、そういう点につきましては、私どもも反省いたしまして、そういうことのないように過日から管理局長、総務部長あるいは総局の現場長の会議におきまして御趣旨を徹底し、決して不当労働行為と思われるような、疑わしきようなことをやってはいかぬということで、厳重に指示しておりますので、御了承いただきたいと思います。
  36. 田邊誠

    田邊委員 こういうことを意図してこういう計画を立てたこの電力区長の管理者としての責任は一体どうするのですか。明らかにこの札幌の電力区長は、いわゆる生産性運動の拡大という目標のもとに「国労脱会、鉄労加入を実施する計画である。」というこの計画を立てた張本人でしょう。そういう意図を持ち、そういう計画を立てた電力区長の責任は、これはもういいのですか。これはいま改まっているからいいというのですか。その後のそういうものの考え方を持っている、現にそういうことを計画したこの本人の責任は一体どうするのですか。それを聞いているのです。
  37. 原田種達

    ○原田説明員 私ども、こういう現場長のこういう考え方については今後とも十分戒めたいと思っておりますので、何とぞ御了承いただきたいと思います。
  38. 田邊誠

    田邊委員 そういうことを言っちゃ困りますよ。現にこれをおかした者は一体どうするのか。今後じゃありませんよ。そういうふうに先へ先へと問題をずらしていったのでは、実際言うと、この問題の根本解決にはなりませんよ。信賞必罰。あなた方からすれば、忠実にあなた方の意図を実行した区長かもしれぬ。しかし、事態がここまで来れば、明らかにそういう誤りをおかしたというその者の責任は、泣いて馬謖を切るという勇断がなくて、一体何であなた国鉄の再建ができますか。口に国鉄の再建と言い、そしてまた、不当労働行為はしないと総裁、副総裁は言明しておるけれども、そういったものを意図し、計画をしたその者のいわゆる考え方を、いわば処分をするなり処置をするなりという形でもって明らかにしなくて、部下に対して、国鉄四十万の職員に対して、何で威令を行なわせることができますか。どうしますか。
  39. 原田種達

    ○原田説明員 たいへんきびしい御指摘でございますが、本人は家族にわび状を書きまして、よくこの中止の趣旨をあやまっておりますので、なお私どもといたしましても、今後こういうことのないよう十分に指導し、かつ戒める決心でおります。
  40. 田邊誠

    田邊委員 何で家族にあやまったのですか。何でこのことでもってあなた方が家族にあやまらなければいけないのか。あやまったなら、あやまった事実を示してもらおう。どんなあやまり方をしたのか。
  41. 原田種達

    ○原田説明員 たいへん私、失礼申し上げまして、この件では家族の問題でございません。懇談会の関連と私間違えたので、つつしんで訂正さしていただきますが、この問題につきまして、先ほど申しましたように、現実に区長が総局と相談し、中止し、かつそういう決意を新たにしておりますので、どうか私どもも十分指導していく考えでおりますので、(田邊委員「何を指導するのか、どう指導するのか」と呼ぶ)今後こういうような誤った指導のないように指導していく所存でございます。
  42. 田邊誠

    田邊委員 私は、問題を幾つも広げてみても、いまの一つがはっきりしなければ、これは一波万波でございまして、何にもならぬと思うのですよ。しかし、あなたがいみじくも間違えられた札幌の、これは運転区のいわゆる家族懇談会の問題、これをあなたは言われたのですが、家族にあやまったというあやまり状をいただきました。これは何と書いてありますか。調査団が来て——しかも、この言い分がまたこれはたいへんなものです。「最近新聞紙上をにぎわしております社会党の議員と」云々と書いてある。いろいろと言ったけれども了解点に達することができなかった。このままでは大きな問題を残すと考えられますので、父兄懇談会を一応中止することにいたしました。あやまっちゃいませんよ、あなたこれは。いいですか、あなたのほうでは、この国鉄からいただいた書類によれば、この懇談会の中でも、思想問題についてという文言があったことについては、これは不穏当な文言であった、こういうようにいっておるのですね。このあやまり証文どこを見ても、この思想問題について不穏当だったから、この懇談会は中止したと書いてありませんよ。社会党の調査団が来ていろいろと指摘をされたから、了解点に達しなかったから、やむを得ず懇談会をやめたと書いてあるじゃありませんか。こんなあやまり状を出して、それでもって事足れりとするところに問題があるのです。  実はきょうまでこの問題を取り上げないつもりだったけれども、けさ読ましてもらってわれわれのことが書いてあるから……。社会党の調査団が来ていろいろ指摘されて、確かにそう言われれば、われわれの考え方は誤りだった、不穏当でありました。したがって懇談会を中止しますというなら、これは話はわかる。そうじゃないでしょう、この手紙は。非常に読みづらいけれども……。しかも、やる気十分の職員のために全力投球すると書いてある。これは、管理者は一部の者のために全力投球するのですか。この文言の中に流れているところのその考え方は、まさに職員の思想を規制をし、いわば昇進、昇格の基準にしようという意図が歴然としている手紙じゃありませんか。これはあなた、懇談会を中止したこのあやまり状なるもの、文面そのものが問題なんですよ。これは一体どうするのですか。この運転区長は一体どうするのですか。
  43. 原田種達

    ○原田説明員 ただいまの懇談会の中止に対しますわび状についてでございますけれども、先生のお話のございましたような内容につきましては、私もまだ細部をよく読んでいませんので、そういう趣旨がございましたら、これは私どもといたしましても、今後徹底的に改めさしていきたいというふうに考えております。
  44. 田邊誠

    田邊委員 それじゃまた機会を改めてお伺いすることにいたします。  もう一つの指摘をいたしました安中保線支区におけるレールボンド盗難事件ですね。いわゆるレールボンドを抜き取られたことに対して、事実を正確に確かめない上に立って退職を強要したという事件がありました。これも「一部の者の証言と事実の状況のみで本人に退職しようと受けとられるような言葉を用いたことは適切ではなかったと思われる」、こうあなたのほうの答弁書は書いておるのですね。これはもちろん「退職しようようと受けとられる」ものじゃありません。そのものずばり退職を強要している。これは証言がありますよ。このうちへ訪問いたしましたところの列車課長なり、あるいは課長補佐なりの言っておることは、すなわち、もうやめなさい、やめなければ懲戒処分にできますよ、懲戒免職にできますよと言っているのですよ。「受けとられるような」言動ですか。やめなければ懲戒免職にできますよと言っているのですよ。そういったことから、「退職しようようと受けとられるような言葉」というあやふやなことばですか。そのものずばり、この四人の家族に対して、おまえたちのむすこなりは、これはレールボンドを抜き取ったのだぞ、やめなさい、やめなければ懲戒免だぞと言っているのですよ。一体こんな明確な証言があって、なおかつ、それを善意に受け取られるとあなたおっしゃったような、この前の理事懇談会で職員局長は、善意でやったかもしれぬ——何が善意ですか。善意で懲戒免できるということが言えるのですか。これは私はそういう言いくるめをしようとするところに、あなた方の態度があると思うのです。いま不当労働行為をやったものに対して、あなた方は服するような状態だけれども、実際に下部の管理者は、私会いましたが、おこっていますよ。いままで自分たちをここまで追いやっておきながら、何でもかんでも、いわゆる不当労働行為でも何でもやれ、マル生のためには国労を減らせ、動労を減らせ、どんどん奪還しろ、こう言っておったにもかかわらず、いま世情がこういう形になってきたら、国鉄の幹部だけは何かうわべは変わったような態度をしている、われわれは宙ぶらりんだ、二階へ上がってはしごをはずされたような気分だ、こう言っている現場の管理者もおるのですよ。ですからあなた方が、いや、それはあくまでも自分たちの命令でやらしたのだというならば、それはそれでもってよろしゅうございましょう。そうでない、総裁、副総裁が言っているように、自分たちの意図が通じなくて下部の管理者が誤ったのだというならば、泣いて馬謖を切りなさい。人権侵害と思われる四人の辞職強要、この問題に対して明確な御答弁をいただかなければ、私は絶対に引き下がらない。やった者に対して何らの処分をしなくても済むという、そういう確信と内容があなた方におありならば、ひとつお示しをいただきたい。どうですか。
  45. 山田明吉

    山田説明員 この前の委員会で御指摘になりました事件でございますが、事実問題は、資料、文書でお手元にお届けしてございますので、繰り返して申しません。  それで、これにつきましては何ぶん四月の時点で発生した問題でございまして、実は本社としては大体落着したと考えていたわけでございますが、最近、また組合のほうで鉄道管理局に対して裁判で争う考えもあるような申し入れがございまして、新しい局面も出てまいりましたので、事態を見守りながら、古い事件ではございますが、私どもも事実問題をさらに詳しく調べたいと思っております。それで、これも少し時間をかしていただきたいと思います。
  46. 田邊誠

    田邊委員 これは私ももう一度やり直します、そんなことでは済みませんから。組合が訴訟を起こそうが起こすまいが、問題は、あなた方がこれに対してどういう厳格な態度をとったか、どういう厳正な処分をするかということにかかっておるのですよ。厳正な処分をして、なおかつ訴訟を起こすようなことはありませんよ。これだけ明確な人権侵害と思われるような辞職強要をしておきながら、それに対してほおかぶりをして、その当事者に対して何ら処断をしないところに、訴訟も起こってくるでしょう、いろいろ言い分も起こってくるでしょう。しかし私は、組合の訴訟云々という問題とは別に、われわれ自身が現に証言をいただき、そして当委員会でもってこの問題を取り上げた本人として、あなた方の検討によるところの厳正な処断、山田総裁の言うところの処分、磯崎総裁の言うところの処分を含めた、いわゆる適切な処置に対して明確なお答えをいただくまで、あらためてまた追及をいたします。  以上、その三点についてのあなた方の回答はすべて不満でございまして、私はあらためてこの問題に対して当局からの厳正な態度表明があるまで、当委員会において引き続き質問することを留保いたしまして、きょうは時間がございませんから、一応終わりたいと思います。
  47. 森山欽司

    森山委員長 次に、山本政弘君。
  48. 山本政弘

    山本(政)委員 前回の社労委員会での論議の中で、国鉄総裁マル生運動について三つのことを言っておるのです。一つはマル生運動はやらぬ、もう一つは労使関係の軌道修正を考えない、第三には不当労働行為はやっていないと確信をしているということが、十月十一日の論議の中で、総裁のことばとして出ておる。一番目と二番目については、これは有馬委員からの質問に答えて、そういうお答えをしたと思うのです。  お伺いいたしたいのは、この基本的な考え方が今日においても変わっておらぬかどうか、そのことをまず初めにお伺いしたいと思います。
  49. 山田明吉

    山田説明員 生産性運動がどういういきさつで始まったか、この前私は委員会に出ておりませんでしたけれども、おそらく総裁がるる述べたと存じますが、これは現在破産状態になっているといわれております国鉄を再建しなければいけないという、その理念から発想したものでございまして、したがって、この前総裁国労の事件について公労委決定に服するということを申した際に、純粋な生産性運動は間違っていないと思う。ただその実施の過程におきまして、国鉄には非常に多くの職場がございますが、その過程においてその真意が歪曲されて、たまたま不当労働行為という不幸な事件が起きたのだ。したがって再建に通ずる理念としての生産性運動は、これは労使の問題を超越した問題だと思うという趣旨の発言をした——ことばがそのとおりかどうかわかりませんが、その趣旨で申したと思います。  それから、不当労働行為が起こっていないと思うと言いましたことも、確かだったと思います。その点につきましては、私どもの指導が必ずしも万全でなかったというような意味で、本社の担当理事も更迭をいたしました。それから、私以下一連の始末をつけまして、新たな体制に取り組んだ。それで、そのまた過程におきまして、国労不当労働行為に次いで、先週動労不当労働行為公労委決定をされました。この決定に服するということは、その点では、不当労働行為があったということを認めたわけでございます。  それから、提訴されていないが、先ほど諸先生からの御指摘にありました、不当労働行為に類する、その疑いがあるものがまだ数多くあるじゃないかということ、これも私は絶無であるとは申しません。そういう問題を今後一掃する意味で、紛争処理委員会で前向きに解決しようじゃないかというのが現在の私どもの考えであり、また、それを受けて、国労動労の諸君もその話し合いの場に入っている状況でございます。
  50. 山本政弘

    山本(政)委員 それでは、まず不当労働行為についてお話をお聞きしたいと思うのですけれども、総裁不当労働行為はやっていないと確信をしていると言ったその同じ時刻ごろに、水戸で能開課長不当労働行為を扇動しておったという事実がある。あるいは、先ほどの田邊委員の話ではありませんけれども、札幌電力区長の文書がある。そういうことになると、不当労働行為はやっていないと確信をしているということは、実はそういう論拠がなくなってきたのじゃないか、あるいはくずれ去ったのではないかというふうに私は理解をするのです。だからこそ、いま山田さんがおっしゃったように、当事者が責任をおとりになったということが出てきたのだと思うのです。ですから、そういうことから考えれば、不当労働行為というものは明らかに存在をしておったというふうに私は理解をしたい。この点で、イエスかノーでけっこうですが、簡単にお答えをいただきたいと思うのです。
  51. 山田明吉

    山田説明員 静岡鉄道管理局、大阪鉄道管理局管内の事件につきまして公労委決定に服したということは、国鉄当局としても、あったということを認めているわけでございます。
  52. 山本政弘

    山本(政)委員 そうすると、マル生運動というのは、総裁のことばによれば、精神運動である、こう言っておられる。私は、マル生運動というのは精神運動だけじゃない、そういうふうに理解しておるんですけれども、少なくとも総裁の議会における答弁を聞くと、精神運動だ、こういうふうにおっしゃっておられる。一体マル生運動というのは精神運動なのか、あるいは合理化、近代化と言っているものも含めてのことなのか、この辺ひとつ明確にしていただきたいと思うのです。
  53. 山田明吉

    山田説明員 生産性運動そのものは、先ほども申しましたように、再建をはからなければならないという理念、哲学と言ったら少し大げさになりますが、それでございますが、しかし口だけで言ったんではお経となると同じでございまして、これを現在の国鉄のあらゆる組織、その組織もいろいろな工場もございますし、駅もございますし、あるいは保線もございますし、運転もございますし、そこら辺いろいろなニュアンスを変えた方法で具体化していかなければならないことは申すまでもございません。その過程におきまして、合理化という問題も出てまいりましょうし、近代化という問題も出てまいりましょうし、配置転換という問題も出てくるわけでございます。
  54. 山本政弘

    山本(政)委員 十月の委員会で、私どもの同僚委員の質問にこう答えておりますね。不当労働行為マル生運動の歪曲によって生じたことは残念に思う、これが第一点。  第二点は、マル生運動は精神運動であり、精神運動であると言っている管理者が、この運動に名をかりて不当労働行為をしたことは間違いである。マル生運動が歪曲されて正しくない運動となっているので、これを純粋なマル生にするために努力をしていきたい、そういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  55. 山田明吉

    山田説明員 総裁がそのように申したと思いますが、私もそのとおりだと思っております。
  56. 山本政弘

    山本(政)委員 それではお伺いいたしますけれども、マル生運動が歪曲された、あるいはマル生運動に名をかりてと、こう総裁自身が強調しているのは、国鉄のマル生そのものに問題がある。だからそういうふうにおっしゃったんではないだろうか、こう私は思うのですけれども、その点はどうなんでしょう。   〔委員長退席田邊委員長代理着席〕
  57. 山田明吉

    山田説明員 その生産性運動を非常に常識的に言えば、よく働いて国鉄をよくしようという考え方、これ自体は間違っていない。ただ、それを現場に応用する過程において、これが不当労働行為を伴ったという不幸な事例がございました。これは先ほどございましたと言ったとおりでございまして、その意味でどういうところでそういう誤解を生じ、そういう不幸な事態が起きたか、それを見直そうという意味で、たまたま職員局長もかわりましたので、新しい職員局長の目で見直すということをいまやっているのが現在の事態でございます。
  58. 山本政弘

    山本(政)委員 ここに十月の十一日の総裁の声明があるのですよ。「これまで、純粋な生産性運動がいわゆる不当労働行為によって歪曲して理解された」そして答弁の中には精神運動だということが強調されている。つまり国鉄当局が、私自身はマル生運動そのものが精神運動であり、あなたのおっしゃるような合理化運動であるかもわからぬ。だけれども、国鉄労働組合とかあるいは動力車の労働組合というものが、マル生運動そのものに問題がある、こう言っている場合に、あなた方の弁明としては、精神面だけはマル生運動の中で歪曲された部分であります。こちらは純粋な生産性運動でございます。こう言って、何かマル生運動そのもの自体をあなた方自身が歪曲されて、そして精神運動の面だけを、この辺には問題があった、あるいは偏向教育があったと言ってお逃げになっておるような気がしてならぬわけです。つまり、歪曲をされたというのは、だれが歪曲をされたのかといえば、中間管理者が歪曲をしたのではなくて、むしろ国鉄当局が歪曲をして指導をするようにしむけておったのではないかということ、私はその疑念が抜け切らぬわけであります。その点、一体どうなんでしょう。
  59. 山田明吉

    山田説明員 総裁がどういう表現をしたか、私は速記をまだ見ておりませんが、私なりに信じていることを申し上げたいと思いますが、国鉄の現状にかんがみまして、再建の理念としての生産性運動、これは私は当然必要であろうと思います。ただ、いまも申しましたように、それの実施の過程におきまして不幸にして不当労働行為指摘された事案が起きたこと、これは非常に残念に思いますが、その意味におきましてそのような事例が起きた、いわゆる総裁が歪曲されて解釈されたという点において、私自身の指導が至らなかった点もあると思っております。
  60. 山本政弘

    山本(政)委員 工作局長お見えになっておりますか。——「(秘)あつかい」で、「工工第六八六号」これは「昭和四十六年六月十日」に出されたものであり、「各工場長殿」となっております。そして「写送付先」は「北海道総局車両管理室長」「広島鉄道管理局車両管理室長」「橋本自動車工場長」こういうふうになっておるわけですけれども、この中で、合理化に努力をしてきたけれども、なかなか実態としては形骸に流れてうまくいっておらない。そして一々、工場の中でこの点はこうである、あの点はどうであるということを実は指摘しております。  そうしますと、私は少なくとも工作局長の指導というものを考えてみますと、合理化というものと、そしてここに書いておる「信賞必罰」とか、あるいはいろいろなことが書いてあります。ほんとうの信賞必罰であるかどうかというのは別問題といたしまして、ここに書いていることについては、どう見ても差別支配あるいは偏向教育と感ぜられる文章がここに幾多出ておる。この点について、私は副総裁の答弁はいまいただきました。合理化と偏向教育、そして差別、ここには抜きがたい一体のものが、私は象徴的に出ているような気がするわけであります。そのことについて、「工場における職場管理の正常化について」ということに対して、簡単でいいですから、工作局長のお考えをお伺いしたいと思うのです。
  61. 男沢伸

    ○男沢説明員 お答えいたします。  ただいまの先生の御質問でございますけれども、工工第何号とおっしゃられましたが、たくさんの書類が出ておりますので、それを具体的に拝見いたしませんと、私、急に言われましても内容がちょっとわかりませんでございます。が、しかし、いろいろな書類の中に差別待遇その他というお話がございましたけれども、おそらくその書類の中に盛られておるものは、先ほど副総裁からもいろいろお話がございましたように、国鉄の現状に立脚してその再建をはかるのには、どうしても職員が国鉄職員としての自覚のもとに協力一致して力一ぱいやらなければいかぬだろう、そういう方向にみんなが納得していくのには、どうしたらよかろうかというようなことについて述べてあるものと思われまして、その中におそらく差別待遇云々ということはないかと存じます。ただ、差別待遇と感ぜられたかもしれないことは、ほんとうに働く者と、それからこの職場の中においても、ときには規律を乱し、能率のあがらないという者もないわけではございません。そこら辺を従来ややもすると同じような扱いをやっておりますので、その間に何らかのその勤務成績に応じての差も考慮すべきであるというような指導もいたしておりますので、その点に触れられたのではないか、こう思います。
  62. 山本政弘

    山本(政)委員 時間があまりないようですから、簡単にお答えいただきたいと思います。  労政局長にちょっとお伺いしたいのですが、従来協約を結びますね。そうするとその協約とか協定について、管理者側が破棄をしろとかあるいは何とかというような指令がもし出ておるとすれば、それは正しいことであるか正しくないことであるか、そのことだけ……。
  63. 石黒拓爾

    石黒政府委員 一般論として申し上げますと、有効期間の定めがある協約は期間中に破棄はできません。有効期間の定めのないものは九十日の予告を置いて破棄をすることができます。
  64. 山本政弘

    山本(政)委員 そういう通達が流れておるということを職員局長あるいは副総裁御存じですか。
  65. 原田種達

    ○原田説明員 そういう通達が流れておることを存じておりません。
  66. 山本政弘

    山本(政)委員 あなたが流したのでもないし、副総裁が流したのでもないからあるいは御存じないかもしれませんが、現実にそういうものが中間管理者のところに出てきておるのですよ。そうすると、それは私がいま申し上げたように、マル生運動というものを何が何でも推進をさせるというためには、みえも外聞もかまっておられぬ。差別支配だろうが偏向教育だろうが何をやったっていいから生産性向上というものをやれ、こういうふうな考えになっておるのじゃないだろうか。とすれば、マル生運動そのものに問題があるのではないだろうか、こう思うのです。もしあなた方が純粋なマル生運動では差しつかえないのだ、そういうふうに理解をする、こういうことになるなら、そういうふうに歪曲をされたと、こういう表現をしているのだけれども、一体歪曲がどこでされたのだろうか、つまり当局首脳部の中でされたのだろうか、中間管理者の中でされたのだろうか、そこをはっきりしないと責任の所在が明確にならぬと私は思うのです。ここまで大きな問題になってきておる。しかもこれはもう一年ぐらいこの問題が出てごたごたしておるわけです。とするならば、国鉄の首脳が紛争対策委員会というものをつくって、それから調べるというのではおそいのではないか。あまりにも無責任ではないのか。私自身は第三次調査団にも加わりました。それからいろいろな報告もお伺いいたしました。しかしこれはちょっと見ただけでもたいへんです。私は参議院の中の抜き書きをしてきましたけれども、それだけでもほとんど全国的といえるようなそういう不当労働行為が起こっているわけですよ。あるいはあなた方のおことばでいえば、不当労働行為に類似するというような事件が至るところに起こっている。集計すれば三千件をこすような事件というものが起こっているわけです。それをそのままにいままでに放置しておいた責任は一体だれが負わなければならぬのか。総裁と副総裁あるいは職員局長その他の当事者というものが責任を負われた、こうおっしゃる。しかしその程度の責任でいいのかどうだろうか、これが第一点。  第二点は、歪曲をされたというけれども、歪曲をしたのか歪曲をされたのか。されたとするならば、どの辺でされたのか。つまり中間管理者——あるいは中間管理者ということばが不適当ならばもう少し上の管理者、管理局長あたりのところが、あるいは歪曲をして指導したのか、この辺を明確にそろそろすべき時点にきているのじゃないだろうか、私はこう思うのであります。  第三点は、不利益を受けた人たちがおるわけであります。こういう言い方を申し上げることは、たいへん不遜な言い方になるかもわからぬが、不利益を受けた人は訓告とか戒告ではなくて、昇給が、昇格が、昇任が全部ストップされておるわけです。その人たち不利益を受けたものを回復してやるのは一体どうお考えになっているのか。対策委員会をおつくりになったというけれども、対策委員会をおつくりになっても、そういうことが処理をされなければ労使の信頼関係というものは生まれてこないだろうと私は思う。幾らトップクラスの話があったって、仕事をするのは末端であります。とすると、その辺は一体どうなっているのか。このことをひとつお伺いしたい。
  67. 山田明吉

    山田説明員 前段の、どこの段階で歪曲されたかというおことばでございますけれども、これにつきましては先ほどから申しますように、私自身総裁を補佐するに欠けていた点もあったと思いますし、また部内を指導する点においても十分ではなかったと思います。その点で責任は痛感をいたしておりますし、また具体的にだれがどこでとおっしゃるおことばでございましたけれども、この大きな組織を動かす生産性運動でございますので、その点はどこがどうという具体的なことがお答えできないのは非常に残念に思いますけれども、そういう問題を含めまして、一連の人事異動を含めた新しい責任体制をとったという点で御了承いただきたいと思います。  それから、不当労働行為によって不利益処分を受けたというような問題の処理、これはいまやっております紛争処理委員会そのものの内容でございますが、これにつきましては原田常務理事から説明をさせていただきたいと思います。
  68. 原田種達

    ○原田説明員 先ほどの先生のおっしゃいました第三点の問題につきましては、十月の二十九日に引っ込めまして、国労動労と一応テーブルにつく、労使協調の線で行こうという話に戻しまして、十一月の二日にいわゆる小委員会というのを設けまして、労使各四名ずつで当面の紛争を解決するための対策委員会を設けたわけでございます。その中で審議すべき事項のうちに、ただいま御指摘のございましたような職場における紛争処理というものも一項目入れてございます。
  69. 山本政弘

    山本(政)委員 私は、いまの答弁では不満足なんです。よろしゅうございますか。磯崎さんは私どもの久保委員の質問に答えて、こうおっしゃっているのですよ。「私の意思に反して、また私の意思を無視して下部職員がやったことにつきましては、私はそのままに放置するわけにはまいりません。」とすると、総裁は無過失、無責任ということになる。そうすると、一体だれが「私の意思」に反したのか、また「私の意思」をだれが無視をしたのかということが当然問題になるでしょう。それは管理局長なのかあるいは区長の段階なのか、あるいはもっと下の人たちの末端の管理職の段階なのか、その辺が究明されなければ、この不当労働行為の解明というものは一切進まないということになると私は思うのです。「私の意思」に反したのはだれであるか、「私の意思」を無視したのはだれなのか、磯崎さんの言う不当労働行為という來雑物を入れたのはだれなのか。そのことを私は、いまはっきりしてもらいたいと思うのです。工作局長も、いまの御答弁であったとすれば私は工作局長にも責任がなさそうな気もする、伺った範囲では。それで済まされるのかどうか。これは単に工作局長だけを申し上げているのではなくて、一つの例として申し上げたのであります。その点が明確にならなければ対策委員会を幾らつくっても不信感というものはぬぐえないで、対策委員会というものは、これもことばの言い過ぎかもわからないけれども、全逓の委員会と同じような結果になってしまって何ら解決を見ないということになってしまう。そのことを私はおそれるから、そう申し上げているのであります。あなた方も正常な労使関係に戻るということを望んでおられるとするならば、そこにメスを入れない限り解決することは、私はできないだろうと思うからお伺いをしているわけであります。その点をはっきりしていただきたいと思います。
  70. 山田明吉

    山田説明員 先ほども申しましたように、大きな組織の中でございまして、ケース・バイ・ケースで、不当労働行為の一例をとりましても、本社から現場の末端に至るまでの過程におきまして積み重なって歪曲された例もあろうかと思います。その点で新しい体制をとったということで、いままでの少なくともそういう歪曲されるような体制を全面的に変えたというふうにぜひおとりいただきたいと思いますし、それから、これから不当労働行為が起きるか起きないかというその問題につきましては、たびたび申しましたように、部内の人も集め、文書でも流し、絶対に不当労働行為は根絶するように、これは総裁もおそらくこの前申し上げていると思いますし、私自身もそのつもりで取りかかっているわけでございます。
  71. 山本政弘

    山本(政)委員 それじゃ問題をもう一ぺん戻しましょう。たしか和田委員の質問だったと思うのですけれども、磯崎総裁それから真鍋常務理事がこうお答えになっておる。問題のマル生運動については、当局が考えておる正しい生産性運動とは国鉄利用者に対する誠実なサービスと、国鉄に対する職員の愛情を育てることに目的があるから、これをやめる考えはない、こう言っているのですよ。一歩譲って、このこと自体を見れば正しいかもわからぬです。だけれども、純粋な生産性運動が歪曲をされておる、とこう言っているのですよ。歪曲をしたことをお認めになっているわけだ。そうすると、認めた以上は、だれが歪曲したかということは当然追及されるべきでしょう。そのことなしに労使関係が正常化になろうとは私、実は思われないのですよ。そうすると、重ねてお伺いいたしますが、純粋な生産性運動、これ自体私は問題があると思うけれども、それは別として、純粋な生産性運動が歪曲されたというのは、一体だれが歪曲をしたのだろうか。どの辺でもけっこうであります。その辺が明確にならない以上は問題は進まないだろうし、なぜそんなことを言うかといったら、マル生教育でこちこちに労務管理教育をたたき込まれて、そういう駅長さんや助役さんたちの末端職制が一番迷惑をしているのじゃないかと思うのですね。しかし末端職制が実は一番職員と組合員人たちと接触をされているところでしょう。この辺が改善されなければどうにもならぬ。よもや私は、末端の職制に責任があるとあなた方はおっしゃるまいと思うから、お伺いをしているのであります。再度御答弁願います。
  72. 山田明吉

    山田説明員 先生が最後におっしゃいましたように、私どもも末端の駅長、助役が自分かってな解釈でただいま指摘されましたような不当労働行為を起こしたとは考えておりませんが、本社で考えております国鉄再建のその発想につながる生産性運動が大きな組織を通じて下部にいった過程におきまして、たまたまそういう事例が出たわけでございまして、   〔田邊委員長代理退席、委員長着席〕 その点で私どもしばしば繰り返しておりますように、本社の姿勢も正し、それから今後は、絶対誤解あるいは自分の主観で不当労働行為にわたるようなことはやってはいかぬ、そういう指導をしていきたいと思っているわけでございます。
  73. 山本政弘

    山本(政)委員 副総裁のおことばから少しずつ問題がほぐれそうな気がするわけです。末端の職制、つまり私が申し上げたように、駅長や助役のところに責任はない、これだけは明確になったわけですね。   〔委員長退席小沢(辰)委員長代理着席〕 そうすると、それから上、ことばとしてはたいへん失礼かもわかりませんが、理事、副総裁総裁までも含めた、そこの辺までには責任が、まだどこがどうであるかわからぬけれども、存在をする。少なくとも駅長クラス、それ以下の職制に対しては責任がない、これは明確になってきた。そうすると、部長クラスか局長クラスかあるいは理事のクラスか、この辺に問題があるしかないわけになってくるのだけれども、一体その点はどうなんだろうか。本社としては、正すべき姿勢は正したとおっしゃるけれども、本社の中において正すべき姿勢が正せたのだというならば、私は本社に責任がある。つまり日鉄法によれば、私は理事会にあるというふうな感じもする。それならば、理事会の全理事が責任をとっておるかといえば、総裁、副総裁、常務理事しかおとりになっておらぬ。当時の職員局長しかおとりになっておらぬ。あとの理事人たちは責任は無責任なのかどうなのか。責任なしとするのかどうなのか。工作局長あるいはその他の局長クラスは一体どうなのか、この点についてのお考えをお伺いしたい。
  74. 山田明吉

    山田説明員 私、先ほど末端の駅長、助役の責任なしと言いましたのは、具体的に静岡の事件でも、大阪の事件でも、不当労働行為だといわれましたケースに該当する発言をした氏名は、これは明示されております。したがって、その明示された管理者が言わなかったというわけにはまいりません。しかし、そのゆえをもってそれに責めを負わせるつもりはないという意味で申し上げたわけでございまして、したがいまして、それではそういう事例に至らしめたのはだれかという先生の御質問でございますが、これは先ほどから申しておりますように、大きな組織でございますので、個々の一々の例がどういう状態で起きたかということは、ここで申し上げる材料を持っておりませんが、私は、総裁なり私なりがそういう一連の世間を騒がせた責任は当然痛感しておると、しばしば申し上げておるわけでございます。
  75. 山本政弘

    山本(政)委員 私の記憶に間違いがなければ、日鉄法第九条に、総裁理事会の承認を得て、かくかくのことをきめていくんだ、こういうことがたしかあると思うのです。そしてその第一項は、たしか管理・運営業務のことについてのことではなかったかと思うのです。とすると、総裁と副総裁の、一に私どもの責任であるということにはならぬのじゃないか。理事会全体の責任じゃないのだろうか。しかも理事会の構成については厳格な規定がある。たとえば国会議員はなってはいけないとか、あるいは物品を納入する人たちはなってはいけないとか、つまり利益関係を持っている人たちは入ってはいけないとかという厳格な規定がある。そして公正な人たち理事会を構成しているわけでしょう。そうすると、その決定に私は大きなものがあると思うのです。生産性向上運動というものは、よもや総裁が、あるいは副総裁が、拡大をしても職員局長三人で、そういうことをおきめになったのではないはずであります。そうすると、国鉄首脳全員を含めて私は責任があるような感じがするのですが、この点はどうなんですか。
  76. 山田明吉

    山田説明員 理事会は最高意思決定機関としてございますが、一々の件名を必ずしも理事会にはかっているわけでもございませんで、ある程度総裁なり、あるいは総裁までいかないで副総裁が代決と申しますか、というようなこともしばしばやっております。
  77. 山本政弘

    山本(政)委員 そうしますと、生産性向上運動はさまつな問題だから理事会ではやらなかったということになりますか。
  78. 山田明吉

    山田説明員 一々の指導については理事会にははかっておりません。
  79. 山本政弘

    山本(政)委員 そうすると、当面の責任者というのは、どなたと、どなたと、どなたと、どなたになりますか。
  80. 山田明吉

    山田説明員 これは、先ほど申しましたように非常に大きな組織でございまして、一々あげつらうのは不可能でございますけれども、総裁、副総裁、当時の常務理事である職員局長、これがやはり責任は痛感をいたしておりますし、これからの事後処理についても責任は当然負うべきであろうと私は思っております。
  81. 山本政弘

    山本(政)委員 時間があまりないから先へ進みますが、たいへん不満足な御答弁なんです。  職員局長にお伺いいたしますけれども、就業規則第三十八条というのがありますね。その条文の中には、国鉄の名誉を棄損した場合には功労章を取り上げることができるというような意味のことがあったと思います。  そこでお伺いいたしたいのは、国鉄の名誉を汚すということは、ストに参加をしたら国鉄の名誉を汚すことになるのかどうか、この点ひとつお伺いしたいのです。
  82. 原田種達

    ○原田説明員 国鉄は公共企業体でございますので、公労法によりまして違法なストは禁止されております。したがいましてストに参加した者というのは、当然一つの要素として参考になるものと考えております。
  83. 山本政弘

    山本(政)委員 参考になるということは、それじゃ国鉄の名誉を汚すという、具体的でなくてもいいです、抽象的でもいいですが、こういうことは名誉を汚すことになりますか。たとえば管理者が泥酔をして大衆の面前で寝てしまう、これは国鉄の名誉を汚すことになりますか。
  84. 原田種達

    ○原田説明員 かりにそういう事実があるとすれば、それは名誉を汚すことになると思います。
  85. 山本政弘

    山本(政)委員 ストに参加したら、それは功労章を剥奪をする一つの要素である、こういう御答弁であります。私は、組合員がストに参加をすることは、上部の機関の指令に基づいて参加をすることであるから、かりに要素になっても、そういう意味ではほんとうに小さい要素でしかないというふうに理解するわけですけれども、国鉄の名誉を汚すということは、第三者が客観的にそういう事実をとらえたときに、一体国鉄に対してどういう評価をするのかということが、たいへん抽象的ではあるけれども基準になると思うのだけれども、私が調査をしたところでは、そういう首席助役がおるのですよ。そしてそういう首席助役が、不当労働行為については私どもは間違っておりません、こう言っているのです。先ほどの話に戻りますけれども、だれかがどこかでこういうことをやれという指導をなされない限りは、私はそういうむちゃな不当労働行為をやるはずもないと思うのです。とすると、だれかがやはりそういうことを指導したに違いないし、もう一つはそういう首席助役というものが適当であるかどうか。これこそまさに私は功労章を剥奪されなければならぬと思うのです、もしお持ちになっておれば。同時にその人たちは処分をされなければならぬと思うけれども、その人たちは依然としてそういう地位におられる。これは私は常識的に考えてたいへんおかしいと思うけれども、もしこの委員会を終えて、それであなたのほうでそういう事実をお知りになりたければ、私はちゃんとした事実を具体的にお知らせをしたいと思うのですが、ともあれ功労章をもらうということは、私はたいへん功績があったと思うのです。それがストに参加をしたということだけで剥奪をしていいのかどうだろうか。そういう国鉄の姿勢に問題がありはしないだろうか、こう思うのですけれども、その点はどうなんでしょう。
  86. 原田種達

    ○原田説明員 先ほどから繰り返して申し上げましたように、やはり法律に禁ぜられたストに、上部機関の命令であろうと自発的であろうと参加したということは、やはり国鉄を利用する大衆旅客に非常に迷惑をかけておるという現実からいたしまして、これは当然功労章の規定からいきましても、勤務成績が特に優良な職員に対して表彰するということには当たりませんと私は思います。  それから先ほど先生がおっしゃいました酔ったという事実は、たまたまそういう事実は私存じませんけれども、大衆の前で寝たというような事実、これは当然国鉄の名誉を傷つけるということになろうかと思います。
  87. 山本政弘

    山本(政)委員 時間が来たそうでありますから、幾つかの例をずっと話をいたしまして、そして一括して答弁していただきたいと思うのですが、マル生運動、マル生教育の再検討というものは、皆さん方は必要を認めておる。そうすると、一体その方向をどういうふうに持っていこうとされておるのか、そしてその内容をどうしようとされておるのか、これをまず第一点お伺いしたいのであります。  時間がないのでたいへん残念ですけれども、第二点は、マル生運動は自主的なものだ、こうおっしゃっておる。だけれども現実は自主的でないわけであります。十月十三日の参議院の連合審査会の速記録を読みますと、マル生教育が出張扱いになっておるわけであります。そうすると、これは自主的ではなくて明らかに当局が指導しているということになる。  第三番目、労使間における不信感がつのってきているのは事実である、こう言っているんですよ。労使といった場合には、おそらく末端の職制をさしているのではあるまいと私は思う。少なくとも国鉄の首脳部を使というふうな使い方をするのが一般的な常識であると思うのです。そうすると、その不信感が増大をした原因というものは一体どこにあるのだろうか、これをひとつはっきりとおっしゃっていただきたい。  以上三点、私は申し上げました。それについて明確な御答弁をお願いしたいのと一緒に、先ごろある新聞に渋谷のセンターの話が出ておりました。しかしそれ以外にも実はあるわけですよ。業者から金を集めて、日食あるいは弘済会とか広告業者、これは駅関係の広告業者であります。名目は構内の業者との打ち合わせということで現実にお金を集めている。そしてそれを否定しておりません。渋谷の駅長も、四万六千円集めて九千円使いましたと言っている。しかし、私ども組合員から聞いたら、実態はもっとたくさん集めている。そうしたら、その差額というのは一体どうなっているのだろうか。だれかが途中でネコババしたのだろうか、あるいは巡回中に週刊誌やチョコレート——そういうことを私は言いたくありませんけれども、そういうものを黙って持っていって、弘済会の主任が穴埋めをしているという事実もあるわけです。これも私は確認をしておるわけだ。そういうことがあるとすれば、末端におけるあなた方の指導というものが一体どうなっているのか。末端を責めるよりか、あなた方が責められなければならぬわけでしょう。そして御答弁なさるときには、何しろ世帯が大きいからというだけであります。そんなことを言わせれば、和田委員の質問に答えて労政局長も、歴史的な、経過的な事実から管理者が多いんだ、こうおっしゃっている。そういう歴史的な事実を積み重ねいったのは、実はあなた方なんですよ。人が多いからということで自分たちが免罪になろうとすることは、管理者としてのあるべき態度ではない、私はこう思うのです。そういうことを抜きにして幾ら対策委員会をつくってやろうとしてもやれっこないですよ。  そうして最後に申し上げたいのは、昇任ができなくて、昇格ができなくて、昇給ができない人たちをもとへ戻してやらない限り、どこに信頼関係ができますか。片一方はずっと上がってきているのですよ。おそらく同じような勤続年数、勤務成績でしょうよ。そういう差別というものをもとへ戻してやって、そしてその上で対策委員会を設けるということなら、私は出発点として成り立ち得ると思うけれども、そういうことをやらないで対策委員会をつくりますからということでは、そういうことにならぬと思うのです。これは私の考えであります。  いずれにしても三点、はっきりお答えを願いたい。もう一つは、私が申し上げた渋谷のことに対して文書をもって私に知らせてもらいたいと思います。  以上であります。
  88. 原田種達

    ○原田説明員 初めに生産性教育の方向についての質問がございましたけれども、私がいまさら申し上げるまでもございませんですが、生産性の理念の前提は労使協調でございます。それが一点ございます。そういうことをもとにいたしまして、やはり国鉄再建のための職員の自覚と信念というものをいかに喚起させるかということでございますので、そういう原点に立ち戻った形で生産性教育を進めていきたい。これが総裁、副総裁からも、ずっと先ほどからも申し述べておりますようなことでございます。  第二点の生産性の教育の出張扱いの問題でございますけれども、これは本人の意思を確かめまして、承知した者についてそういう出張扱いをやることにいたしております。  第三点の不信感の除去という問題につきましては、そういうことを踏まえまして去る十月の二十九日に、いわゆる生産性の教材の点検を含めて二カ月間、検討、点検をするということにしたわけでございます。  最後の渋谷の件の問題は、私が聞いておりますところでは……(田邊委員「あとで文書で答えなさい」と呼ぶ)文書でよろしゅうございますか。——じゃ、そうさせていただきます。
  89. 山本政弘

    山本(政)委員 最後に私申し上げたいのですが、対策委員会の方向あるいはその内容について、きわめて詳細にということではなくて、方向だけを知らしていただきたいと思ったけれども、これも満足な答えではありません。それで私が申し上げておるのは、あなた方は違法ストだ、こう言っておるのです。実は違法だと言っているけれども、あなた方自体が違法をやっているじゃありませんか。鉄営法二十六条に何と書いてあるのです。鉄道係員が旅客をしいて定員以上車中に乗り込ませてはいけない、こう書いてある。しかし新宿の駅を見てごらんなさい。しり押しをして定員以上何倍も詰めておるじゃありませんか。違法をやっておるのは、あなた方ですよ。鉄営法二十六条にはちゃんと明確に書いてある。それが困るなら、法規を変えなさいよ。自分たちが変えないで、そしてあなた方は、何かをやれば違法だ、そして不当労働行為をやっていく、そういう姿勢というものは、私は間違っておると思うのです。答弁にしたって、あなたは一生懸命お答えになっておるのかもわからないけれども、しかし先に対して何らの展望を持たないお答えというのは、私はお伺いしていて非常に不愉快です。私はあらためてそういう点についてお伺いをしたいと思います。きょうはこれで終わります。
  90. 小沢辰男

    小沢(辰)委員長代理 次に、西田八郎君。
  91. 西田八郎

    西田委員 私も国鉄関係マル生運動にからむいろいろな問題、あるいは最近国鉄内部にひんぴんと起こっております暴力問題等について質問をいたしたいと思います。  最初に労政局長にお伺いしますが、この問題が起こってきて解決するためにということで、労働大臣が仲介の労をとられました。それで国労動労と当局との間に話し合いをするということになったわけでありますけれども、一体労働大臣が示されました仲介の内容というものは、どういうものなのか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  92. 石黒拓爾

    石黒政府委員 お答え申し上げます。  一般に仲介と申されておりますが、第一段階におきましては、十月の八日、九日に事情聴取をしたわけでございます。その後しばらく様子を見まして、労使間で話し合いの機運も出てきたように考えましたので、二十二日に労使に対しまして、相互の隔意のない話し合いによって事態の解決をはかれという勧告をいたしました。具体的には、これがいわゆる仲介の中身になっておるわけでございます。
  93. 西田八郎

    西田委員 それでは、これは労働大臣がやられたのですけれども、少なくとも労政局長労働大臣を補佐されたでありましょうし、またその内容についても多少知っての上だろうと思うのでありますけれども、国鉄の内部に組織されている労働組合が四つあることは御存じですね。
  94. 石黒拓爾

    石黒政府委員 承知いたしております。
  95. 西田八郎

    西田委員 そのうち生産性向上運動に対して反対している労働組合とこれをまともに受けて、ひとつ推進しようという労働組合とに分けられると思うのですが、それのあることも御存じですね。
  96. 石黒拓爾

    石黒政府委員 国労動労はマル生粉砕ということを叫んでおります。それから鉄労は生産性運動に全面的に協力するというふうに言っております。全施労につきましては、つまびらかにいたしておりません。
  97. 西田八郎

    西田委員 そうしますと、今度の不当労働行為が主としてマル生運動に関連をして起こってきたということは、もう労働省も十分承知の上だったんですね。
  98. 石黒拓爾

    石黒政府委員 今回の事案は、御指摘のようにマル生運動に関連した点が多うございます。
  99. 西田八郎

    西田委員 そうしますと、不当労働行為が起こってきた、この現実、これは断じて許せないと私は思うのですが、その不当労働行為が起こってきたのがマル生、生産性向上運動、これにからんできておるということであれば、生産性向上運動というものに対して何らかの結論を出さなければ、私はこの問題に介入できなかったと思う。その場合、労働省の態度はどういう立場で臨まれたのかひとつ……。
  100. 石黒拓爾

    石黒政府委員 労働大臣が介入するにあたりましては、マル生運動であるとか不当労働行為であるとか、具体的な事象につきましては、労働省として十分つまびらかにもしておらないし、また不当労働行為等につきましては、公労委その他の機関が判断すべきものである。したがって、それらについてとやかく言うことはしないけれども、ともかく不信感の除去のために努力をしてもらいたいという立場で介入した次第でございます。
  101. 西田八郎

    西田委員 それはちょっとおかしいのじゃないですか。せんだってこの委員会労働大臣にそういう質問をされたのに対して、労働大臣は生産性向上運動は必要だということを強調しておられるわけですよ。そうすると、生産性向上運動を必要だと認めた労働省が、今回その生産性運動にからんで起こってきた不当労働行為、こういった問題で労使間の不信感をなくする、労使間の不信感を起こしておる問題も、いろいろな問題が積み重なってきておるけれども、私はこの生産性向上運動に集大成されて出てきたと思うのですよ。そうだとすれば、やはりそれに対する態度というものを、反対なのか賛成なのか、生産性向上運動はやってもらいたいのか、やめてもらいたいのかというその意思を明らかにしない限り——片や反対しているのですよ。片や当局側が推進したい、こういっているわけですね。相反するものをとらえて中に入って仲介しようというときには、一体どういう処置をとらなければならないのかということは、おのずからこれは明らかになってくるわけですよ。それにかかわらず、つまびらかにせずに、その態度を保留したままで臨んだということになると、一体労働省はこの生産性向上運動というものをどう見ているかという質問に変わってしまうのですよ。どうなんですか。
  102. 石黒拓爾

    石黒政府委員 労働大臣が事情聴取に臨みましたときの態度はさようでございますが、その過程におきまして、労働大臣としましては、御指摘がございましたように、生産性の向上に努力するということは、およそ企業である限り、なかんずく、また公共性の強い企業であるので当然のことであるという立場を明らかにいたしております。しかしながら、いわゆるマル生運動の具体的な個個の行為につきまして、それがいいとか悪いとかという点については、つまびらかにしておらないということでございます。
  103. 西田八郎

    西田委員 そうすると、大綱としては承知しているけれども、具体的には指摘できない、こういうことですか。あれがいいとか、これがいいとかいうのは、どういうことなんです。もう少し明確に答弁してください。
  104. 石黒拓爾

    石黒政府委員 生産性運動がいかなる方法で、いかなる状態において行なわれておるか、そういう点につきましては私ども調査する手段もございませんし、権限もございませんし、そういう点につきましては、結局労使話し合いにおいて十分合理的な解決をはかってもらいたい。われわれが一々たとえば教材のどこが悪いとかいいとかということを指摘して直させるという立場に労働省はない、こういう次第でございます。
  105. 西田八郎

    西田委員 そういう教材だとかなんとかいうことを言っておるわけじゃないのですよ。生産性向上運動というものに一体賛成なのか、反対なのか。労働省が賛成なら、やはり賛成という立場に立って動労国労と話をし、そしてまた国鉄当局話し合いをし、そこで両者がその運動を進めるにあたっては不信感を取り除くことが大切なんだということになって、それで不信感を取り除くために、こういうことになると思うのですよ。これが筋だと思うのですよ。ところがいまのように教材がどうとかこうとか、これは枝葉末節の話ですよ。赤字の国鉄を再建するために、一体生産性運動というものが、それはいままでやった形は悪いとしても、今後一体必要なのか、どうなのかということをはっきりさせなければ、私はいやしくも政府の一省の責任者である労働大臣が乗り出すわけにはいかなかったと思うのです。そこのところを聞いているのですよ。
  106. 石黒拓爾

    石黒政府委員 ただいまの点につきましては、先ほども申し上げたつもりでございますが、生産性の向上に努力するということそれ自体は必要なことであるというふうに考えておるということを大臣は国労動労に対しても述べておられます。
  107. 西田八郎

    西田委員 そこで国鉄の副総裁にお伺いをいたすわけでありますが、総裁は何回かこの委員会における答弁において、生産性運動は進めたい、こういうふうに非常に強調をされたわけでありますが、それを中止された理由はどこにあるのですか。今回中止されることになりましたね、その理由はどこにあるのですか。
  108. 山田明吉

    山田説明員 生産性運動そのものは、私が先ほどから申し上げておりますように、国鉄の再建に通ずる理念である、これを捨てるつもりはございません。  ただ、その実施の過程におきまして、先ほども申しましたように、応用する職場が非常に広範にわたっております。それから地域的にもいろいろなニュアンスがございます。そういう点で残念ながらその過程におきまして不当労働行為が起きてきた、これは私は生産性運動と不当労働行為とは理論的につながるとは考えておりませんが、たまたまその過程において起きたことは事実でございます。その点でもう一回見直して、どうしてそういう間違いが起きたかという意味で、点検をしよう、その点検の内容は教材の問題もございましょうし、それから具体的なやり方の見直しもございましょうし、そういう点で、たまたま当面の責任者であります職員局長も更迭いたしましたので、新しい目で見直すという意味で、一、二カ月の間点検に時間がかかろうという状況でございます。
  109. 西田八郎

    西田委員 そうすると一、二カ月時間がかかる、結局これは中断ですね。そうすると一、二カ月すればその生産性運動というものをもう一回再開するということになるわけですが、その再開する時点において、現在反対しておられる国労動労の組合と大かたの納得がいけるという見通しがあるのですか。
  110. 山田明吉

    山田説明員 そこは別にいまの時点ではっきりした約束をとっているわけではございませんけれども、いままでの話し合いの場でも、国鉄の再建は必要だということは、国労動労の諸君も認めているところでございます。したがいまして、先ほどから申しておりますような再建に通ずる新しい姿の生産性運動というものは、これは納得をしてもらえるという確信をもっていま話し合いを進めているところでございます。
  111. 西田八郎

    西田委員 それは断言をされましたが、実際に納得をしてもらえる自信はありますか。どうです。
  112. 山田明吉

    山田説明員 ぜひ納得をさせるような努力をするつもりでございます。
  113. 西田八郎

    西田委員 自信があるかと聞いたら、努力すると言う。そうしてどうするのだといえば、納得してもらえる、こう言う。一体どっちがほんとうなのですか。そういうあいまいな態度だから、おかしくなってしまうのですよ。ほんとうに努力しても、もしできなかったら、どうするかという質問に飛び火していくわけですけれども、ほんとうにどうなんです。納得してもらえるのか、それとも納得してもらうようにあなた自信が努力するつもりなのか、どっちなんですか。
  114. 山田明吉

    山田説明員 どうも私、ことばがまずくてあれですが、納得をしてもらうような努力をいたしますし、それから鉄道の再建そのものには反対はいたしておりません。その観点に立ちますと、やはり国労動労とも再建という共通の土俵にはもうすでに上がっておりますので、その方向で話はまとめてまいりたいと思っております。
  115. 西田八郎

    西田委員 そうしますと、その過程で片や鉄労という組合があります。この組合は、生産性運動に対しては何ら反対もしていないわけですよ。そうしますと、その過半数を占めるかどうかということは別として、少なくとも国鉄四十五万の中の十一万という労働者が組織されている組合が、これに対してはひとつ協力していこう、こういう態度をとっているわけですね。これは、先日の石川の大会できめられたことなんです。そうしますと、その十一万のやる人たちに対しては、一体どういう態度で臨んでいかれるのか。今日までは協力してくれと言って呼びかけてこられたわけでしょう。ところが、こういう事態になってきた。しかし、将来も続けていくのだということになると、それらの人たちにも中断で、少し待てということになるのか、それともどういう姿勢で臨もうとするのか、その点を明らかにしてもらいたい。
  116. 山田明吉

    山田説明員 生産性運動そのものは、精神運動と申しますか、再建の理念から発想したと申しますか、それを実際に実行に移さなければ、再建という究極の目的ができないことは申し上げるまでもございません。それで、その過程におきまして、合理化とか近代化とか、あるいは新しい職場の開発とか、ごく最近では新幹線の開業というような点もございます。   〔発言する者あり〕
  117. 小沢辰男

    小沢(辰)委員長代理 静粛に願います。
  118. 山田明吉

    山田説明員 それらについての、各職場ごとのいろいろな具体的な施策がございます。それについては、鉄労という組合は、ものによってはもちろん団体交渉で意見のぶつかり合いもありますが、再建という共通の土俵にはすでに上がってまいっておりますので、そういう施策につきましては、今後も従来どおりの協力は求めていくつもりでございます。
  119. 西田八郎

    西田委員 それは少し考え方が甘いんじゃないですか。職場には、いろいろな組合の組合員が働いているわけですよ。そして、その中の一人は賛成だ、一人は反対だ、こういうことだ。しかも、一人の所属する組合はいま中央で話をしている、一人の所属する組合は、これはもう中央でそういう態度はきまっているのだ、こうなりますと、職場の全体の力を合わせなければ生産性運動というものは前進しないのですよ。   〔小沢(辰)委員長代理退席、委員長着席〕 しかも片一方で反対の組織と、片一方は賛成の組織、こういう組織がある場合に、一体当局としてはそれに対してどういう態度で臨んでいくのか。おかしいですよ、これは。
  120. 山田明吉

    山田説明員 いま生産性運動についてのお話でございますが、現実に国鉄に、最近できました組合を含めまして、大きな組合が四つあることは事実でございます。それぞれ世界観なり、あるいはその組合のイデオロギーというものが差異があることも、もう申すまでもないわけでございまして、あらゆる問題について意見の調整をはかるというのが、やはり私どもの仕事であろうと思っております。
  121. 西田八郎

    西田委員 しかし、意見の調整をはかるといったって、これは水と油なんですよ。だから、その中で再建をしていこうというわけでしょう。だから、きわめてむずかしい、困難な問題なんです。それをどうするかということを聞いておるわけですよ。調整をとれるはずがないでしょう。どうされるのですか。一方のほうで休んでくれと言うのですか。
  122. 山田明吉

    山田説明員 それは、私ども微力でございますが、いままでのたとえば合理化試案一つをとりましても、四つの組合の——施設労組は最近できたばっかりでございまして、これは一応論外としても、三つの組合がいままでございました。その間の意見の食い違いは、過去においてもあったわけでございます。それを何とか意見を調整してやってまいったわけでございまして、その努力は、今後もいままで以上に必要かと思いますけれども、その努力は捨てないでやっていくつもりでございます。
  123. 西田八郎

    西田委員 そこで、方法論になるわけですが、結局、いま国労動労と当局側で話し合いを進めている、こういうことになっておるわけです。それで、鉄労からは労使協議制をひとつ確立せよということを要求されておりますね。それに対して、四者土俵の上に上がって、あるいは五者土俵の上に上がって、国鉄再建という問題について一体ほんとうに労使協議する姿勢があるのかどうか。私はそれがはっきりしない限り、生産性運動というものは、先ほど職員局長の答弁では協調だと言われたけれども、労使協調で生産性運動は進まないと私は思う。労使が対等の立場に立って、同じレベルで協議をすることによって初めてここで成立をすると思うのです。また成果が出てくると思うのですね。そういう協議制度というものについて、一体どうされるつもりなのか。今後そういう協議制度というものを国鉄労使の中に持って、そうしてこの問題を、あるいは今後の問題を相談していこうというそういう姿勢があるのかどうか、これをまず伺いたい。
  124. 山田明吉

    山田説明員 いま御指摘労使協議制という一つの問題をつかまえましても、国労動労、鉄労の申し分がそれぞれ相当大きなニュアンスの違いがございます。しかしながら、国鉄の再建に職員、あえて組合員とは申しませんが、職員の協力が必要なことは申し上げるまでもないことでございまして、これから私ども三つの組合、四つの組合がある現実を踏まえまして、たゆまない努力で共通の場で話し合いを持っていこう、そう考えているわけでございます。
  125. 西田八郎

    西田委員 持っていこうということは、それはそういう決意である、労使協議制というものを確立して、その中においてこの問題、あるいはこの問題に限らず労使間の問題を協議するという、そういう新しい体制をつくる意思があるというふうに受け取っていいわけですね。
  126. 山田明吉

    山田説明員 その考えは、もうすでに過去ずいぶん古いといいますか、長い歴史を持っておるものでございますが、現実にまだそれができておりません。確立はいたしておりません。それが現実の姿でございます。しかし、職員の協力を求めて再建をやっていかなければならぬという気持ちは変わりはございません。(小林(進)委員「職員の協力はいいけれども、組合の協力はだめだ、そんなもの」と呼ぶ)
  127. 西田八郎

    西田委員 いま小林先生もおっしゃいましたが、職員というものの考え方が、結局は労使協議制というものを発足させ得ない大きな原因になっておるのじゃないか。やはり当局は経営者側として、管理側としての立場と、労働者を代表する団体、すなわち労働組合、そしてその労働組合に組織される組合員、こういう立場で、対等でものを考えるということでないと、生産性運動なんてとても進められませんよ。そういう理念が確立されていないから、不当労働行為が起こるのですよ。だから、私はそこではっきり言いたいことは、いわゆる労働組合というものの存在をどのように評価するかということから始まってくると思うのです。だから、そこのところをどう考えて、それでこれからどういう位置づけをして進んでいこうとしておられるのか。これがはっきりしない限り、この問題の解決にはならないと思うのですが、副総裁考え方を……。
  128. 山田明吉

    山田説明員 私があえて職員と申しましたのは、これは非常に理詰めで申し上げたかもしれませんが、うちの組合はオープンショップでございますので、組合に加入しない職員もいるわけでございます。その職員についても、やはり国鉄の職員である以上、国鉄の再建には協力してもらわなければならない、そういう意味で申したわけでございまして、それで現実の問題として、先ほどからしばしば申しておりますように、大きな強力な組合が三つございます。これはいまも申しましたように、それぞれイデオロギーは違っておりますが、国鉄の職員を組合員とする組合でございまして、したがいまして国鉄を再建しなければならない、国鉄をもっとよくしなければならないという理念においては、私どもは共通だと考えておりますし、また三つの組合の諸君もそれには異議はないはずでございます。それで問題は、それらの組合が公労法の規定労働組合法規定、あるいは国鉄法の規定に忠実に、公共の福祉を増進し、それを擁護する、これは法律の明文でもございます。その目的に沿うような行動をしてもらいたい、そういうことを期待していろいろな話し合いの場をつくっておるわけでございます。
  129. 西田八郎

    西田委員 とにかくずっと先日来から、前回から続いておるこの問題ですね、どうもまだやはり国鉄当局が生産性向上運動というもの、さらにはもっとそれを突っ込んで労使関係というものについての理解というものが、私は非常にあいまいではなかろうかと思うのです。国鉄の職員、それはわれわれの配下にあるんだ、こういうようなものの考え方が左右しておるから、いろいろな問題を引き起こしてくると思うのです。ですから、今日、近代産業の中には民間であれ、官業であれ、そのいかんを問わず、やはりその労働者で組織する、あるいは職員で組織する労働組合というものがある限りにおきましては、その労働組合を認識する上に立っての運動でなければ、私は成功をしないと思うのであります。したがって、まだあとの質問がありますので、私はこれは意見にしておきますけれども、そういう点、もっと新しい感覚における労使関係というものを樹立されるように、まずその点国鉄当局者が姿勢を正すということが大切ではなかろうかと思うのです。これは私は七月の委員会でも真鍋職員局長に強く要請したことなんですけれども、現在もそれが確立されていない。そこに問題があると思うから、その点をやはりはっきりした態度というものを、き然たる態度というものをとってもらいたい。とにかく国鉄というのは国民の足なんですから、安全を確保すると同時に、税金のむだ使いをしないように、しっかりと、やはり自分たちはそれをまかされているという、そういう使命感に立って国鉄をどう経営するかということを考えてもらわなければ、私はこの問題は解決しないと思いますから、その点強く要請をいたしておきます。  時間がありませんので、結論が出ないままに次の質問に移りますが、最近、国鉄の内部で非常に暴力事件が多発しておるというふうに聞いておるわけでありますが、職員局長、この点はどの程度把握しておられるか、ひとつ把握しておられる範囲でお聞かせをいただきたい。
  130. 原田種達

    ○原田説明員 私どもが本社として把握しております暴力事件の件数といたしましては、約百十九件ございます。そのうち労使間の事件が七十九件、組合員間の事件が四十件ございます。
  131. 西田八郎

    西田委員 それらの事件が発生してきた時期というのは、今度のこのマル生運動とからんで非常に頻発してきておるように思うのですけれども、それを職員局長どのようにながめておられますか。
  132. 原田種達

    ○原田説明員 ただいまの御質問につきまして、当たっておりますかどうかでございますけれども、加害者と被害者の関係を見ますと、加害者の組合別に、分けてみますると、国労が加害者で管理者に対するものが三十六件、鉄労または脱退者に対するものが十八件、合計五十四件ございます。加害者が動労のものでは、管理者に対するものが十九件、鉄労または脱退者に対するものが二十件、合計三十九件でございます。それから鉄労が加害者のものでは、国労に対するものが二件、動労に対するものが一件、合計三件でございます。それから管理者が加害者になっておりまして、国労に対するものが四件、動労に対するものが一件、五件ございますが、これは組合側が管理者を加害者として告訴しているというものでございます。なお、先ほどの数字と全部合わないものがございますが、加害、被害の関係がはっきりしないものがあるために、数字のトータルは、ただいまの加害者と被害者の関係では百一件で、その数字の合わないのは、ただいま申し上げました関係のはっきりしないものでございます。
  133. 西田八郎

    西田委員 私は件数の数字は先ほど聞きました。いまも言われたのですが、そういう事件が起こっておる職場環境といいますか、国鉄内部のいろいろな動きがありますね。それを職員局長として、どうとらまえているかということを聞いているのですよ。
  134. 原田種達

    ○原田説明員 これは、明るい規律ある正しい職場、国鉄はそうでなければならない。職場としてはまことに遺憾なことだというふうに存じております。このような状態のままでは、あるいは不測の事故になっても困るという問題がございますので、ぜひこれは防止したい。特に最近の労対労、組合員同士の争いでございますが、組合組織の一般的な感じで申し上げますと、組織の変動が非常に激しくなってまいりましたので、いよいよこれが激化されておるように思われます。特にことしの春闘の時点におきます生産性反対運動、春闘とからめて十九時間の国労動労のストがございましたけれども、あれ以来管理者に対する暴行事件、あるいは組合脱退者に対するつるし上げ、あるいは鉄労の組合員に対する暴行事件というものが非常にいろいろ多く出てきております。大体こういうような事案は一部職員の衝動的な行動にあるもののようでございますが、一がいにその背景を明らかにすることは非常にむずかしいことでございます。しかしながら、私どもといたしましては、職場においてそのような事態が現実に起こっておるということは、輸送の安全を第一としている国鉄としては一番心配しておる点でございます。これを何とかしてひとつ明るい方向に持っていきたいというのが私の考えでございます。
  135. 西田八郎

    西田委員 それじゃ、明るい方向に持っていくために、またそれをなくするためには、やはりそうした問題が起こらないようにしなければならぬですね。起こらないようにしなければならないわけです。しかし、起こったものに対しては、やはり信賞必罰といいますか、これは厳重に処分していかなければならぬ。その点で、警察あるいは検察庁と連絡がとれているのかどうか。暴力ということは、いかなる場所においても許さるべきではない行為なんです。それが再建をしなければならない国鉄の中にひんぴんとして起こっておる。しかも昨年の、一年じゅうとは言わない、三、四月ごろから多発をしてきて、百十何件。これは職員局長として掌握をしておられるというか、本社として掌握しておられる数字であって、そのほかいろいろな事件があるわけで、そういう事件が起こっておるということは、もうすでに国鉄の内部における職場規律も紊乱しておるということだし、さらにはそのことが、結局職員間の信頼感というものも根底からくつがえっておる、こういうことの証拠だと思う。したがって、それを除去するための努力をするということでなければならぬし、そのためには、起こってきておる問題を早急に解決をするということでなければならぬのじゃないですか。それに対してどういうふうな態度で臨んでこられたか。
  136. 原田種達

    ○原田説明員 職場の実情によっていろいろ実態が異なります。全部が全部職場規律が乱れておるわけではございませんので、国鉄の大部分は私はいい職場であると思っておりますけれども、そういう起きましたところにおきましてケース・バイ・ケースによりましてやっておりますが、いま御参考までに申し上げますと、警察との連絡、これはもちろんそのケースによりまして連絡いたしておりますが、刑事手続の進行状況のからむものが全部で七十九件ございます。刑の確定いたしましたものは四件、それから起訴が一件、起訴猶予が八件、それから不起訴が二件、書類送検済みが二十六件、警察が捜査中が三十一件、捜査打ち切りが七件というものでございまして、暴力事件の件数と合わないものもございますが、これは実行行為者が不明のものとかあるいは告訴、告発がないため、警察の御当局で捜査しなかったもの、こういうことでございます。
  137. 西田八郎

    西田委員 この質問、ちょっと預かって、警察関係の方、お見えになっていると思うのでお伺いをしたいわけでありますけれども、警察庁においては、こうした国鉄内部におけるいろいろな事件というものをほとんど掌握しておられるのかどうか、まず、それからお伺いをしたい。
  138. 鈴木貞敏

    鈴木説明員 お答えいたします。  警察といたしましても、五月中旬の段階から全国的にいろいろ対立がございまして、それに伴っていろいろ不法事案が発生しております。現在までの状況を見てみますと、したがって日時は五月の二十日以降の件数でございますが、これで見ますと発生状況、そういう不法事案の発生が九十七件ございまして、検挙したのが六十件、検挙人員が九十七人というようなことでございまして、現在捜査中のものがさらに三十七件、こういう数字になっております。
  139. 西田八郎

    西田委員 警備課長警察の取り調べといいますか、捜査段階における捜査のやり方が何か手ぬるいような気が私はするのです。ほかの事件ですと、まず選挙違反なんかだったら手きびしくやるくせに、こういう暴力行為にかけて、非常に手ぬるい。五月の二十日に起こったといえば、もう半年以上経過しておる。そういう問題に対してもまだ起訴されていないという問題も出てきておるし、先日起こりました熊本駅でお茶の中に毒物が投入されていたこの問題、御存じですね。それに対して一体どういう毒物が入っておったのか、鑑識の結果、これは公表しなければならぬ問題だと思うのだけれども、それも当事者に対して何の公表もされない。しかもそれの公表を迫れば、言を左右にして逃げ腰である。一体どういう態度なんですか、警察としては。
  140. 鈴木貞敏

    鈴木説明員 いま御質疑の、やる気がないじゃないかというふうなおことばでございますが、警察としましては、もとより申すまでもございませんけれども、こういう不法事案というものにつきましては、やはり警察の責務上はっきりした措置をとるという方針で全国的にやっております。  不法事案の発生の経緯でございますが、五月段階から非常に多くなりまして、六月、七月、八月、九月、十月と、それぞれ相当二けたクラスの事件が全国的にずっと起こっておるというふうな状況でございます。  いま御質疑の中にありました熊本の件でございますが、これにつきましては、やはり非常に悪質な事件でございます。お茶の中にそういうものを入れまして、四人の方が胃腸炎なり胃炎にかかるというふうなことでございまして、熊本県警としては、そういう悪質な事件であるという観点から専従捜査員を組み入れまして、現在鋭意捜査中でございます。ただ、その鑑定の結果その他の詳細なものはまだ聞いてございませんけれども、とにかくそういう専従班をつくって犯人の検挙ということに現在鋭意邁進しておるという状況でございます。
  141. 西田八郎

    西田委員 時間がもうないので、ほんとうにいらいらしながら質問をしておるわけですけれども、刑事局、お見えになっていますか。——現在書類送検されておる者が相当多数にのぼっておるが、これまた処分未定というのが、未処分のものがだいぶあるように聞いておるわけですが、その辺はどうなんでしょう。これはやはり早く結論を出したほうがいいというふうに私は判断するのですが、処分ができないようないろいろの事情があるのかどうか、ひとつお伺いしたい。
  142. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 お答えいたします。  本年五月二十日以降に国鉄の職場におきまして、国鉄職員間に発生いたしました暴力事件につきまして、全国の検察庁が現在までに受理いたしております件数は三十五件八十七名でございます。これはそういうふうに私ども報告を現在受けておるわけでございますが、そのうちで現在までに処理いたしましたものが十五件四十二名でございます。この処理の内容は、四十二名の内訳は、公判請求をいたしました者が八名、略式請求で起訴いたしました者が六名、不起訴にいたしました者が二十八名でございます。なお、報告を受けました件数のうちでも二十件が未済であり、四十五名が未済になっておりますが、私どもは全国検察庁におきまして、国鉄業務の公共性及び重要性にかんがみまして、この種の事犯は特に迅速に処理するよう十分の努力をいたしておるところでございます。
  143. 西田八郎

    西田委員 警察並びに法務省の刑事局両者にお伺いいたしますが、組織内に起こっている問題だから、この問題あまり立ち入ってというような、労働組合の組織内問題というようなことで手控えるというと、いささか——私はそういうことばの使い方はしたくないのですけれども、要するに特殊事情というような考え方で扱うというような姿勢は全然ないでしょうね。ひとつ御両者から伺いたい。
  144. 鈴木貞敏

    鈴木説明員 お答えいたします。  仰せのとおり、暴力行為あるいは正当性の限界を逸脱しました違法行為、こういったものにつきましては厳正に取り締まる、こういうことで終始そういう方針でまいっております。
  145. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 検察庁が受理いたしておりますこの種の事件は、傷害であるとか、暴力行為処罰に関する法律違反であるとか、いわゆる暴力事件でございます。検察庁におきましては、暴力に関する刑事事件として厳正に捜査し、処理をいたしておるところでございます。
  146. 西田八郎

    西田委員 そこで職員局長に、あるいは副総裁じかにお答えいただいてもいいわけですが、こうした問題ですでに処分のきまった者に対して何らかの処置をとられたかどうか。そして今後そうした処分が決定した場合には、どういう処置をとるように考えておられるか。なぜこういうことを聞くかといいますと、現在でもいろいろないやがらせ等が行なわれておる。暴力まではいかないけれども、いやがらせが行なわれておって、たとえば飯田町の機関区から出ていこうとする場合に、たった一人組合の組織が違うものですから、職場ではなかなか感情的なものがある。そこで、四人に一人ということになると、三対一ということになると、仕事がしにくい。しかたがないから休暇をとって休んでいるというような組合員もおるわけですよ。そういうことは、結局は国鉄全体に対していい影響を及ぼさないことになるわけです。しかもそれが職員間の不信感を招くということになるわけですから、そういう問題等考えますれば、私はこの問題に対してはやはり厳重な処分、そして信賞必罰を明らかにしなければならぬと思うのですが、その点について副総裁から尋ねましょうか、どういう処置をとられるか、ひとつ明言をいただきたい。
  147. 山田明吉

    山田説明員 その処分の件数は後ほど職員局長から報告させますが、おっしゃるまでもなく、そのケース・バイー・ケースにはなりますが、反社会性の程度に応じまして厳正な処分はいたしております。
  148. 原田種達

    ○原田説明員 ただいまの先生の御指摘ございました暴力事件は、これは労働問題以前でございますので、これについてはどの組合に属するとかあるいは組合に属さないとかいう問題ではございません。職員の問題として厳正に処分していくという所存でございます。ただいままでの懲戒処分の終了は二十三件でございまして、刑事休職が一件となっております。
  149. 西田八郎

    西田委員 先ほど質問いたしました生産性運動といい、この暴力事件といい、とにかく国鉄内部におけるいろいろな問題が現在もからみ合ってしまってどうにもならないような状態になっておる。ひいては、それが国鉄再建ということに対して大きな私は支障になると思うのです。したがって、当局者も信賞必罰、不当労働行為が悪いなら悪いであやまって、そしてこういう暴力事件を起こした者は、悪いなら悪いで処分する。そういう中からほんとうに国民の国鉄だということの認識の上に立って、今後の問題を処理してもらいたいということを強く要請をしまして、時間が来ましたので終わります。
  150. 森山欽司

  151. 田畑金光

    田畑委員 資料要求をひとつお願いしておきますが、委員長において処理されることを希望します。  国鉄、それから警察庁、法務省、いままでいろいろ暴力案件についてお話がございましたが、それぞれ把握しておられる国鉄内部における暴力件数、暴力事件の内容、あるいは管理者に対する、あるいは組合相互間における等々の態様等について、いまお話がありました各件数について、詳しい資料を提出願いたいと思います。  第二の点としましては、特に警察のほうでいま取り扱っておられる事件の内容について、すでに送検したもの、捜査中のもの等々。  それから法務省にお願いしたいのは、起訴された暴力事犯について、いかなる罪名で、どういう法律違反ということで起訴され、不起訴処分についてはまた、どのような事情で不起訴になったか。  ひとつ、それぞれの省から、国鉄警察庁、法務省のほうから、先ほどの暴力案件について、詳しい資料をすみやかに御提出いただきたい。  それに基づいてまた、しかるべき機会にあらためて私のほうからこの問題について質問をしたいと思っております。以上。
  152. 森山欽司

    森山委員長 ただいまの資料要求、関係官庁で十分準備しておいていただきます。  この際、午後二時まで休憩いたします。    午後一時十四分休憩      ————◇—————    午後二時十五分開議
  153. 増岡博之

    増岡委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について質疑を続行いたします。島本虎三君。
  154. 島本虎三

    島本委員 この問題は特に労働省全体の問題として大臣に承りたい事項に属します。せっかく政務次官もお見えでございますので、大臣にかわって見解を明らかにしてもらいたい、こう思います。というのは、失対行政であります。あの中高年齢者等雇用促進に関する法律案ができてから、当時までは人手不足、こういうようなことが前提であったわけですが、一年たつやたたずや、もうすでにドル・ショックその他のたび重なるこういうような経済情勢の変動が起こりまして、そしてかつての人手不足というような状態も、もうすでに中学卒業生また高校卒、こういうようなものの就職さえもままにならないような状態になって、変わってきておるわけであります。したがって、もう失業者対策考え直す必要が当然あるのじゃないか。この事態の中で、労働省はどう対処するつもりでありますか。まず御高見を拝聴させていただきたいと思います。
  155. 中山太郎

    ○中山政府委員 お尋ねのございました今回のドル・ショックあるいは円問題等に関しまして、年末を控えてわが国の労働情勢に大きな変化があらわれるであろう、それに対する基本的な姿勢はいかがかというお尋ねであろうと思いますが、私どもといたしましても、八月以降のアメリカの関係あるいは繊維あるいはまた関連産業に関しまして、その雇用状態、非常に不安定であるという点に関して、今後の推移を慎重にただいま見ておるという状況でございます。御案内のように、中卒、ブルーカラーといわれる方方の求人が、昨年は約三倍、七十万に対して二百十万ございました。ことしも大体それくらいでございますが、去年と比べて約六、七万人の減を見ておる、こういうふうな形になっておりますので、若年労働力に関しては目下のところ特に特筆すべき大きな変化は、まだ現在の状況ではあらわれていない、ただ今後あらわれる可能性があるかと存じております。もっとも一番私どもが心配いたしておりますのは、先生指摘の中高年の問題であります。企業においても若い労働力はほしいけれども、年をとった労働力は一等先に整理をしたいというような考え方を持つ企業もございますので、この対策に特に力を入れなければならない、これを基本的な考えの中の一本に立てておることを御了解をいただきたいと思います。この状況も目下のところいろいろと労働組合の幹部の方々からも御意見を十分いただきながら、いかなる方策をやるべきかということを、労働省としては検討いたしておりまして、その実数については現在の段階で何人が解雇されたとか、解雇予告を受けたとかいうふうな報告は十分受けておりませんけれども、これからの傾向を見ながら適時適切な手、施策を打ってまいりたい、かように考えております。
  156. 島本虎三

    島本委員 適切な施策は現象が起きてからこれを発動する、こういうような考え方では全く後手後手になるのです。もうすでに繊維の問題では二十万人をこえる失業者が予想される。関連産業を含めたら四十万人をこえるであろうといわれておるわけです。それにドル・ショックによる被害者の救済、こういうふうなものは当然もうすでに考えられなければならぬはずのものです。そういう現象が起きてからというようなのがどうも政府全体の姿勢であって、中国問題でも、いろいろな問題を含めて後手後手に回る。いまここで、私はあなたを優秀なる政務次官であると思っておるのに、考え方や施策がまた後手後手に回るような、佐藤総理のあとを追いかけているような考え方では、まことに私は残念でならないわけです。こういうような現象が予測され推定され、公害のいろいろな救済でさえも推定によって行なわれるようにもうなっているんですよ。労働問題なんか、もうすでに現象としてあらわれている。もうそういうようなのはわかり切っている。それに対して何ら手を施してないというのでは、また後手に回る。これではだめだ。繊維産業やドル・ショックによるところの被害者の特別措置、こういうようなものに対しては、時限立法的にでも何か救済策を考えてもいいはずなんです。そしてまたこれも失対の中へ入っていく。失対のほうはもう入れないです。こういうような状態にしておいたら一体どうなりますか。私、それを考えると、もう一回この失対事業全体を洗い直さなければいけない時期に一年をたたずして来た見通しの誤りについて、やはり労働省も十分反省しなければならないんじゃないか、こうさえ思うわけであります。  大体聞くところによりますと、非公式な議題として職安審議会のほうに、ドル・ショックによる被害者の救済の、これは時限立法ながらも特別措置について、これを出しているとかなんとかということを聞いておりますが、そういうような手を打っているならよろしい。こういうようなことについて全然手を打たないのかどうか、いまのは単なるうわさであるのかどうか、ひとつこの点も明確にしておいてもらいたい。
  157. 中山太郎

    ○中山政府委員 ただいま御指摘の点でございますけれども、中高年齢者雇用促進特別措置法に基づく求職手帳制度をこの機会に積極的に活用してまいりたい、こういうふうに考えております。  それで、特に中小企業からの離職者につきましては、求職手帳有効期間の延長について特別な配慮を加えたい、また失業情勢に著しい変化が見られる地域につきましては、特定地域の指定を積極的に行ないたい、こういうふうな点を掲げまして、同法の運用につきましては、雇用・失業情勢を十分考慮しながら、積極的な姿勢で労働省としては取り組んでまいる所存でございます。  なお、いま御指摘のございました、失対事業に吸収できない、この問題について根本的に考え方を変えるべきではないかという御示唆がございましたけれども、労働省といたしましても、このような対象になる方々のために特段の配慮をいたして、関係方面とも十分目下相談をいたしておることをこの機会に報告申し上げたいと思います。
  158. 島本虎三

    島本委員 佐藤総理のまねをして原稿を読まなくてもいいですよ。言ったとおりに答えてくれればいいんです。私が聞いているのは、こういうような失業情勢、いまのようなドル・ショックや繊維の問題なんかによる被害者の救済について、特別措置によって、たとえば時限立法的なものでも、非公式ながら議題として職安審議会にこれは出されたと聞くが、こういうような対策は十分考えて進めておられるのかどうか、その辺解明してもらいたいということなんですが、どうも与えられた原稿ばかり読んだら、総理のようにあなたもまた失敗しますから、この際一対一でやっているんですから、原稿なしに答えていただきたい。
  159. 中山太郎

    ○中山政府委員 この問題につきましては、職業安定審議会において御検討願っておることを御報告いたしたいと思います。
  160. 島本虎三

    島本委員 いろいろ中高年のことにつきまして、それぞれ進めているということであります。  前国会、中高年齢者等雇用促進に関する法律案が審議されました際に、こういうようなことを大臣答弁として言われております。新聞、ラジオ、テレビ等の各種報道機関を通じ周知をはかるとともに、公共職業安定所に求人受理、就職相談等においてもこの制度が中高年齢失業者に積極的に活用されるよう、必要に応じて指導助言をする、こういうようなことを労働大臣がはっきり言っている。これは議事録によるとです。新聞、ラジオ、テレビその他の報道機関を通じて、これを何回宣伝し、何回PRしたか。大臣もしたというんですから、この点は事務当局でもよろしい、ひとつ御答弁願いたい。
  161. 遠藤政夫

    ○遠藤説明員 この法律の施行につきましては、法律が本委員会の御賛同をいただいて五月十九日に成立いたしました以後、各都道府県、市町村、安定所を通じまして、いま仰せのとおり、新聞、テレビ、ラジオ等で、もちろん周知をいたしました。同時に、この法律を知っていただきたいのは、安定所の窓口に求職に来られる中高年労働者層の方々でございますので、安定所の窓口におきましては、こういう求職者に対して特に懇切にこの法律の趣旨を説明いたしまして、積極的にこの制度を利用されるように周知いたしてまいっております。
  162. 島本虎三

    島本委員 新聞、テレビ、ラジオによってこれを宣伝したというのを、不敏にして私まだ聞いておらないです。その他チラシによってやっておるのは聞いております。この他地方自治体にいろいろ指導されておるようですが、大臣が言ったように新聞、ラジオ、テレビ等の報道機関によって何回したかと言う。これをする、と大臣は言っていたのです。いま政務次官も大いにこの点PRしますと言うのだから、大臣答弁によってここまで言っているのだから、では何回したかと言うのです。
  163. 遠藤政夫

    ○遠藤説明員 何回か回数はここでつまびらかにいたしかねますけれども、各都道府県、市町村、それぞれの地域で、地方版の新聞紙等におきましても、あるいは地方放送におきましても、この法律の趣旨が数回となく繰り返し報道いたされております。
  164. 島本虎三

    島本委員 それはまことにPRが弱いのです。ほとんどしてないです。ただもう法律を通すためにそれを言っている。これは、国会はやはり国権最高の府でありますから、皆さんのほうは、いかに優秀なる官僚であろうとも、国会を侮辱することは許されない。まして前に答弁したことに対して粉飾したり、またはそれを偽ったりすることは当然許されないことなんです。この点は十分考えておられることだと思いますが、やっておりませんよ。やっておらないどころじゃなくて、これは各団体等によって勧奨を受けてきた者、こういうようなものだとわかると、これを求職者と認められないような態度をとっておられるように聞いているのです。これは少し行き過ぎじゃないかと思いますが、いかがでしょう。
  165. 遠藤政夫

    ○遠藤説明員 この法律制度を利用されます方々は、安定所の窓口においでになります中高年齢の求職者の方々でございます。こういう方々につきましては、失業保険の受給者のような離職者であろうと、あるいはそれ以外の失業者でございましても、積極的にこういう制度を利用されるように勧奨いたしてまいっておる次第でございます。
  166. 島本虎三

    島本委員 どうもぴたっと合いませんね。合わせるように答弁してください。ただいい日本語をそのまま羅列してもだめなんですよ。こっちのほうの質問と合わないのだから……。合わない人と幾ら結婚せいといっても、そんなもの、むだなものだよ。あなたの場合は、どうも別々な行動をとって、だめです。あなた、立法府を侮辱することばです。政務次官、少し注意してやりなさい、的確に答弁しなさいということを。  これは、そういうことないと思いますが、こういうようなのを、逆に、PRが不足なものだから、組合がやってやると、労働組合に聞いてきたと言えば、地方の職安では、それはもう手当を目的にしてきたというので、これはだめだと断定してしまうのです。これは行き過ぎだというのです。どこから聞いても、新聞、ラジオ、テレビを通じてPRをやるというのにやってないのだから、逆に組合がそれをやって、聞いてきたと言ったら、それを受け付けてやるのが一般の労働行政だ。そういうことが下部で行なわれておりますから、これは本末転倒でありまして、十分注意すべきだろうと思います。これは今後、政務次官、注意しておいてもらいたいと思います。注意すると一言言っておいてください。
  167. 遠藤政夫

    ○遠藤説明員 ただいま先生仰せのような事態につきましては、厳正な運用をはかりますよう十分注意してまいりたいと思います。
  168. 島本虎三

    島本委員 当時問題になりました特定地域の開発就労事業、こういうようなものについて、現在どういうふうになっておりますか。
  169. 遠藤政夫

    ○遠藤説明員 先般法律の審議の際御説明申し上げましたように、本年度下半期におきまして一応五千のワクでこの事業の執行を予定いたしております。十月一日以降特定地域に指定されました全国の安定所管内の市町村におきまして、この事業の実施を目下準備中でございます。
  170. 島本虎三

    島本委員 この特定地域開発就労事業を実施する特定地域、これは審議の段階において、現在失対をなくするという前提には立たなくなった、立たないということで、これは当然御存じのように、現在失対事業を実施して、その地域には全面的にこれを行なうんだ、取り入れるのである、そして、その中には軽作業部門といわば普通の重労働に対するこういうような部門を入れた措置をとりたい、こういうようなことを言っておるわけです。その後、少なとも百カ所以上になるであろうと、こういうように言われておったわけですけれども、その情勢がだいぶ進んでおる、こういうように私は理解しております。しかし、いま何カ所ぐらいになっておりますか、それと同時に、対象のワクをどういうように消化してございますか、ひとつその辺をお聞かせ願いたいと思います。
  171. 遠藤政夫

    ○遠藤説明員 十月一日から法律が施行になりまして、その時点でこの特定地域に指定されましたのは、安定所の管内の数にいたしまして全国で七十職安管内でございます。で、この特定地域の指定は今後逐次追加をされることも予想されておりますし、来年の四月には、四十七年度の当初にあらためて指定のやり直しと申しますか、新年度についての指定をいたしますので、今後ふえてまいることも十分予想されるかと考えております。
  172. 島本虎三

    島本委員 失対事業を現在実施している地域、そこには全部これをやるので、これはもう失対事業の閉鎖または首切り、こういうようなことにはつながらないんだということ、しかしながらこれは、現在やっているところを見ますと、そうではなさそうでありまして、これはなかなか、前の答弁との違いがあるようであります。しかし、そういうようにしては困るのです。まあ、しかるわけじゃありませんが、答弁はその法律を通すための便宜手段であってはだめなんです。したがって、言った以上そのとおり実行するのでなければだめなんです。これは失対を打ち切るためじゃない。したがって、現在失対が行なわれている現場、ここには全面的にこれを実施する。その中に現在の失対のような軽作業部門、そしてそのほかに重労働部門、こういうようなのを置いて、重労働部門に対しては千六、七百円以上の賃金を支給することも考えておるんだというのが、これが答弁なんです。したがって、そういうような地域をここにつくるのでなければならないのです。ところが、いま聞いてみると、さっぱりつくっておらない。これからつくるんだという答弁に承ったのです。じゃ、私どもにいままで答弁したのは、あれはうそなんですか。うそじゃないと思いますけれども、まあ、まだその辺まで十分いっておらないようでありますけれども、この点はどうも私としては不満足でありまして、この点は国会侮辱もはなはだしい、こう言わざるを得ないのです。この点はひとつ、そういうようなことがあってはだめなんですが、政務次官、こういうような事態ですよ。どうしますか。あなたも参議院議員として議席へ帰ったならば、議員の一人として、これは行政機関に侮辱された、こういうようなことになったらとんでもないことになります。共通の立場があるはずです。そういうようなことをやる官僚を、あなたはたしなめなければならない立場にあります。あなたの部下はいまそれをやらんとしております。答弁はちゃんと、きちっとしておるのです。決意を承ります。——いやいや、あなたはだめですよ。次官から……。
  173. 遠藤政夫

    ○遠藤説明員 仰せの事業内容につきましては、先生指摘のとおり、どういう事業が行なわれますかにつきましては、さしあたっては、現在予定されておりますのは道路舗装事業等のようでございます。この事業の中での作業内容は、いま先生指摘のとおり、重労働に属する作業もございますし、比較的軽易な作業もございます。したがいまして、この中高年齢の人たちの体力、能力に応じてそれぞれの作業に従事していただくというようなことで、現在もう準備が進められておりまして、間もなく事業実施の運びになろうかと思います。  実施地域は、現在失対事業を実施いたしておりますのは約百安定所管内でございます。この前の委員会で御答弁申し上げましたのは、特定地域に指定されますのも、おそらくそれと同じ程度の数になるのではなかろうかという予測を申し上げたわけでございますけれども、現実には、今年度につきましては、ただいま申し上げましたように七十にとどまっておりますが、これは都道府県なり市町村からの申請に応じて、その申請によって私どものほうは指定いたしておりますので、今後申請が出てくれば、その申請によって指定を追加していく、こういうことでございますので、ただいまの段階では、失対事業の実施地域よりは数が下回っておるという状態でございます。先ほど申し上げましたように、今後ふえていくだろう、こういうふうに考えております。
  174. 島本虎三

    島本委員 その事業内容や運営方針、これはやはり、就労する中高年齢者、この人たちに無理のないような点を配慮してやっていきたい。これは住さんの答弁かあなたの答弁、どっちかだったと思う。これはもうこういうような点では十分に考えられておると思いますけれども、この事業内容就労の資格、これについてひとつ承っておきたい。  なお、法律が四十五歳から六十五歳までを労働力と認めておりますから、この点とあわして指導が間違いないかどうか。
  175. 遠藤政夫

    ○遠藤説明員 この事業、新しい特定地域開発就労事業就労いたします人たちの資格要件と申しますか、就労できる人は、中高年齢者雇用促進特別措置法制度によりまして、求職手帳の発給を受けまして、その求職手帳有効期間が切れてなおかつ就職できない人たちについてこの事業就労をさせていく、こういう考え方でございます。  ただ、本年度につきましては、これも本委員会で御説明申し上げましたように、この求職手帳有効期間切れによる就労資格と申しますのは、少なくとも半年以上の期間が必要でございますので、本年度につきましてはこういう対象者はごく少数かと存じます。本年度五千のワクを用意いたしておりますのは、従来、九月三十日までに失業対策事業就労しておった人たちの中から、希望する人についてこの新しい事業に切りかえていく、こういう考え方で事業を実施いたしておりますので、本年後半この事業就労する人たちは、いま申し上げました後段の失対事業就労者の中から希望によって、新規の開発就労事業就労を希望する人たちがこの事業就労することになろうか、かように考えておる次第でございます。
  176. 島本虎三

    島本委員 その場合に、体力、能力、職歴、こういうようなものから見て適当と認められるものを選定して紹介するんだ。事実上は、五十五歳以下程度に制限してこれを各職安では行なっておる。実際はこれは、六十五歳までを労働力と認めるということは、何度も大臣が言明しているが、下部では五十五歳の線を引いておる。これじゃ少し何かおかしいのじゃないか。六十五歳までをはっきりとこれは労働力と認めて出した法律を、その実施の過程で五十五歳に変更してしまうなんということは、これはいけません。こういうようなことをさしてはなりません。政務次官、こんなことを下のほうでやらせているのですが、これは今後是正しないといけませんが、これは次官の決意を承っておきたい。
  177. 中山太郎

    ○中山政府委員 お説のとおりでございますので、法律考え方、法律の精神が十分末端に浸透するように指導してまいりたいと考えております。
  178. 島本虎三

    島本委員 まあ、国鉄マル生運動にもあったわけですが、そういう答弁はいいのですが、今後、いまの次官が省を代表して言ったことばに違反したり、そういうようなことに対して従わなかった者に対しては厳重なる処分をしなければならない、これくらい強い態度でやらなければならないと思います。やはりそういうような強い態度をいまから打ち出しておくべきじゃないかと思いますが、次官、いまあなたの機会ですから、十分その決意のほどをやって、上から下まで一体になった強力なる労働行政を実施するようにしてもらいたい。私は心から希望するのですが、ひとつもう一回その決意を承ります。
  179. 中山太郎

    ○中山政府委員 申し上げましたとおり、下部まで法律の精神が浸透いたしますように十分指導してまいりますとともに、この目的を達成するために下部機関の一そうの努力をさすようにもあわせて指導してまいりたいと考えております。
  180. 島本虎三

    島本委員 現在、この失対の就労者の自立促進、この措置を受けた今回の場合には、これは数は幾らございますか。
  181. 遠藤政夫

    ○遠藤説明員 まだ最終的に集計できておりませんで、手続中のもの等ございますように聞いておりますが、十月末現在で私どものところに報告が参っておりますのは約四万一千でございます。
  182. 島本虎三

    島本委員 その場合には自立、営業その他条件は全部具備しておりますか。
  183. 遠藤政夫

    ○遠藤説明員 この四万一千の方々はいずれも就職ないしは自営ということで、自立の条件を具備しておるものと私は考えております。
  184. 島本虎三

    島本委員 これはあくまでも自由意思によることと安定した職業につけるということが前提であります。その点でなおはっきり私はこの点ひとつ皆さんに申し上げておきたい。ことに次官、よく聞いておいてもらいたい。  これは十月八日の朝日です。大分版です。そこに「ひととき」という囲み投書欄がございます。その中に一老人が投書してございます。その投書の中に、  関係者は貧乏人にはのどから手のでるほどの退職金をちらつかせながら、いとも親切げに主人の再就職を世話してくれた。日当が失対よりはるかに多いことが魅力で、まとまった失対退職金と再就職での月給があれば、どうにか生活できると希望を持って失対をやめる決意をかたくした。   さっそく、紹介状を手に企業主にあったところ、パン製造工場で夜の勤務とわかった。七十四歳の年寄りが、いくら健康に自信があるといっても徹夜作業は無理。それならと今度は建築会社の倉庫番。これなら昼の勤務でよかろうと思ったら、仕事内容がひどい。建築現場からトラックで運ばれる資材のあげおろし。血気はやる若者となんらかわることのない重労働だ。再就職のあっせんはありがたいことだけど、もう少し労働条件をちゃんと調査するくらいの親切さはほしい。お役所仕事とはこんなことだと承知しておりながら、形式的な処置が腹立たしかった。  こういうのが投書欄に出ているわけです。  いま言ったとおり、ちゃんとそれをつかんでおられて皆さん指導されておられるようですが、中にこういうような投書もあるということです。これはやはり労働省として、これらの四万一千人に対して自立、営業ともにりっぱにやっておるとするならば、四万一千人がどういうふうな方面に就労したのか、就職したのか、これに対してデータはあるはずだと思います。ございましたならば、この点はっきりさしてもらいたい。首切ればいいんだということで、ただほうり出してやるような法律でもなし、そういうことをさせないことになっていたんだ。ところがこの投書を見ると、あまりにもひどいじゃないか。七十四になる人が倉庫番にと言われながらも荷物の上げおろしをさせるというようなこと、そして徹夜勤務のところに就職をあっせんしている、こういったようなことは、次官、ちょっとひどい。下部のほうのあっせんは形式的であって、血も涙もない、こういうようなふうに受け取られたらとんでもないことじゃないかと思うのです。四万一千名の人たちがどういうような状態の仕事をしているのか、さしておるのか、この点はやはり資料として出してほしいと思いますが、出せますかどうか。出せないとすると、かってにこれをやっておるということになって、おかしいことになる。この点についてはひとつ私は資料を要求したいと思います。いかがでしょう。
  185. 遠藤政夫

    ○遠藤説明員 約四万一千の方々がどういう形で就職なりあるいは事業をされておりますか、その詳細の報告はまだ私どもの手元に届いておりません。いま先生指摘の大分の新聞紙上に出ておりましたような、七十四歳の方にそういう就職をあっせんしたとは思われませんけれども、これは事実を調べさせていただきたいと思います。  私どもは今回の自立促進措置をとりますにつきましては、先般の国会でも御答弁申し上げましたように、これは本人の希望なり本人の体力、能力に応じた御相談をしてまいっておるわけでございまして、この点はくれぐれも行き過ぎのないように、私どもは強制にわたらないように各都道府県、市町村関係者を指導してまいったつもりでございます。最近私どもに集まりました報告を見ましても、そういった強制にわたるような事例はなかったように聞いておりますので、いま御指摘の例につきましては十分調べてみたいと思っております。
  186. 島本虎三

    島本委員 これは札幌では百九十人やめました。そして定職に現在ついているのは三十名だけである。そうしたならば、ほかの百六十人の人たちはやはりやめさせられるか、えさにして、こういうような雇用条件やその他整わないままに路頭へほうり出されたということになるのじゃなかろうかと思うわけです。これは私もちょっとおかしいなと思うのですが、この点等についても札幌の時点を十分調べておいてもらいたい、こういうように思うのですが、これも私は資料としてほしいのです、どういうような状態になっているのか。これはいかがでしょう。
  187. 遠藤政夫

    ○遠藤説明員 今回の自立促進の対象になりますのは、先ほど申し上げておりますように、就職ないしは自営という形で失対事業から離れていかれる方に支度金を給付する、こういうことでございますので、全部が全部就職ではございませんし、その内訳が、どの程度が就職し、どの程度の人の数が自営を行なっておられるか、これは先ほど申し上げましたようにまだ詳細な資料が私どもの手元に届いておりませんので、ここで申し上げかねる状態でございます。
  188. 島本虎三

    島本委員 やはり強制にわたらない、こういうようなことは、わたってはいけないのです。強制にわたれば、これはもう間接的な首切りになるのだから、こういうようなことは法の精神からして当然行なってはならないことです。ところがこれにも私、どうも不可解千万なことが一つあります。土佐清水の一つの例なんでありますが、三崎というところがございます。この三崎というところで、ほとんど女の人ですが、九月の三十日、職安の分室に手帳返上、支度金の申請を行なうことに、この人たちは言われるままに決意した。その後、十月の一日午前九時までに職安に自立を取り消す者は言ってきなさいといってきたので、よく考えてみたらあぶないので、十八名の人が九月の二日にこれの取り消しのお願いに行った。ところが一日まではいいが、二日の日になったら、これは県当局と職安十分相談の上、これはまかりならぬということを言ってきた。そして現在なお支度金ももらわないで、就職を希望しながら十五名の人がまだ残っている。女の人ばかりです。強制にわたらないならば——この答弁は、したしない、こういうようなことで私はここでやらない。こういうようなことに対しては——やはり五十七歳から六十七歳という人たちです。若い人で四十八歳ですが、こういうような人たちの場合は十分考えて、一日までならばよろしいといっておいて、二日の日に行ったらもうだめだ。一日でも二日でも同じなんですから、そういうようなことはすべきじゃない。この点は、強制にわたらないならば、十分調べて、こういうような救済策とあわせて十分対処すべきである。私は涙をもってこの点を要請申し上げたいのです。これは次官、この点の処置は今後あなたから命令して、十分行き過ぎのないように、そしてそういうような事態であるならば今後救済策も講ずる、こういうようなことにして対処しておいてもらいたい。もしそうでなければこれは強制ですよ、強制になってしまうのですよ。いままで自主的に、こういうようなことは強制にわたらないようにといっていたのが、うそになってしまいます。この点は今後は追及いたしませんが、こういう事例があるならば十分善処したい、また善処させるべきだ、こういうように思います。この点は労働省の代表である次官としての見解を承って、次へ移りたい。
  189. 中山太郎

    ○中山政府委員 現場からの報告をまだ手に入れておりませんので、この時点でその件に関しまして詳しく御報告申し上げることはできませんけれども、御指摘のような点はできる限り善処いたしたいと考えております。
  190. 島本虎三

    島本委員 それを十分調べて、そして善処しておいてもらいたいと思うのです。  それからこのやり方、どうでしょうか。私自身社労委員会理事である田邊誠議員とよくこの点は相談してみましたが、若干これはどうかなと思う点があるわけです。といいますのは、法的にはどうなっているかまだはっきりしないから、望ましいのか望ましくないのか、この点だけを承っておきたいのですが、行政機関の職員が、自己が行なっている仕事に関連して、その利益のため、または利益を誘導するために、直接職務に関連する仕事に国家公務員である自分自身が保証人になってやる。それは万やむを得ない場合じゃない。数として四、五十人、多数にわたるような人の保証人になってやる。こういうようなことが妥当か妥当でないか、国家公務員法に触れるか触れないか、またはその他の関連法に触れるか触れないか。なかなかこれは疑義のあるところだと思うのであります。私はこの点等につきましてもひとつ次官の御見解を承っておきたいのですが、現場の職員がそういうようなことをしてもいいのか悪いのか。また、これをやれという指導をしていなさるかどうか。この点について御高見を拝聴いたします。
  191. 中山太郎

    ○中山政府委員 現場の国家公務員、地方公務員、それらの者がそういうふうな保証をするようにという指導は労働省といたしましては一切いたしておらないことをこの際に明言いたしておきたいと思います。なお、個人的な保証関係、個人保証の点に関しまして、法律的に制約があるかどうかということにつきましては、十分な資料を手にいたしておりません。ただ、個人的に保証するということは、社会慣習上あり得ることではないかと考えております。
  192. 島本虎三

    島本委員 私は、これはあまり好ましくないと思って聞いたんです。今後あまりやってほしくない問題。というのは、同じ中高年齢者雇用促進法、これにのっとってやめていくために保証人が要る。保証人に職安の所長がなって、それも一人、二人の、十分にもう事情を参酌して当然であると思われる人じゃなしに、これを促進するかのように——兵庫県神戸の神楽職安の井上所長が一人で四十人もの保証人になってやめさせてしまったというのは、私はこれは国家公務員としては行き過ぎじゃなかろうかな、こう思うのでありますけれども、これは望ましいことでしょうか、望ましいことでないでしょうか。これは失対部長。
  193. 遠藤政夫

    ○遠藤説明員 ただいま政務次官からお答えがございましたように、私どもといたしましては、こういう保証に立つというようなことを指導はいたしておりません。ただ現実の問題としまして、就労者の皆さんは安定所の職員とは顔なじみの人が多い。そういったような関係から保証に立つというようなこともあり得るかと思います。法的にはこれは違法という問題ではないと思いますけれども、望ましいか望ましくないかというお尋ねでございますが、必ずしも望ましいことだとは思いません。しかし実情から考えますと、これは就職支度貸付金でございますので、保証人がほかにないという場合には安定所の職員も就労者の方々のために保証に立つという措置はやむを得なかった処置ではなかろうか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  194. 島本虎三

    島本委員 ピリオドを打っておきたいと思ったのですが、その辺じゃ困るのですよ。一人で四十人、もしこれを本人が退職金を全部やっても足りなくなる。これは千六百万円をこえる。もしものことがあった場合はそういうようなことになる。それを一人の職安所長が、あんたやめて行きなさい、そのために私は保証人になってあげますよ、これと同じことなんでありまして、これはやはり好ましいことじゃないんです。厳重注意を要します。もしこれをあなたが望ましいと言うなら、いま次官が言ったことと相反するのです。ですからこれはちょっと困ることなんですが、こんなことは命令でやらしたんじゃないということはわかった。しかし下部ではこういうようなことが行なわれておる。これは結果的に、結局は追い出しになってしまったということになる。その人たちが、いまや四十万円の金を手にしながら泣いているかもしれない。こういうような点をそのままに放てきしておいてはならないし、それを促進した者はいわゆるマル生運動に協力するかのごとき所長であるかもしれませんけれども、これはやはり行き過ぎです。だめです。厳重に注意しておいてください。こういうようなことは、今後さしてはならない。また、これに対して十分の注意を喚起すべきである。政務次官、いかがです。
  195. 中山太郎

    ○中山政府委員 いろいろと全国各地の安定所におきましては、それぞれの特異なケースもあろうかと存じます。個々の事態について、十分資料を集めておらない現段階におきまして、はっきりとお答えいたすことはできませんけれども、労働省といたしましては、先ほど答弁申し上げましたとおり、一切そのような指導をしていないということでひとつ御了解をいただきたいと思います。
  196. 島本虎三

    島本委員 そういう行き過ぎたことをする人は、命令に違反をしてそういう行為をやったことになりますから、失対部長も今後注意しておきなさい。  それから手当の関連による支出についてちょっと伺っておきたいのですけれども、失対労務者失対労務者といっておりますが、失対労務者の身分はどういうふうになりますか。
  197. 遠藤政夫

    ○遠藤説明員 地方公務員法上の非常勤の特別職の地方公務員でございます。
  198. 島本虎三

    島本委員 そういうような非常勤の特別職の地方公務員ということになりますと、臨時の賃金は、いろいろございましたけれども、これを今度支払うことになりましたから、これはなにですが、衆議院、参議院、この問題に対しては附帯決議をつけてやった、この内容を御存じだと思うのです。したがってその賃金については、趣旨を十分尊重して、これまでの経過に徴してその改善に努力する、こういうようなことが一札あったはずです。そうすると、これはどうなんですか。労働大臣も、今後については十分考えていかなければならぬと考えますと、この点言っておりますので、そうなりますと、増額ということは当然考えてもいいはずだと思います。国家公務員の夏期手当は、去年は〇・二カ月分、本年は〇・一カ月分増額を勧告されておるわけでありまして、失対の手当はまだそのままにしておくということになると、いかに非常勤の特別職であろうと、身分は地方公務員ですからね。非常勤の特別職の国家公務員の衆議院議員島本虎三というこになるのだから、非常勤の特別職の地方公務員が失対労務者であったら、地方公務員と国家公務員の違いくらいのものです。そうだとするならば、この点は十分考えてしかるべきじゃないか、こう思うのです。これはやはり決議違反じゃありませんか。これは考えてやる必要があると思います。この点は政務次官、いかがでございますか。
  199. 遠藤政夫

    ○遠藤説明員 本年の年末の臨時の賃金につきましては、先般の国会での御指摘もございまして、従来の二十二・五日分に対しまして一日分増額いたしまして二十三・五日分を支給することにいま決定いたしております。来年度以降につきましては、今年末の来年度予算の編成の際に、国会の御意向を十分尊重いたしまして検討してまいりたいと考えております。
  200. 島本虎三

    島本委員 国会の意向を十分尊重して善処する、なかなかいいことばですが、そのとおりやってくださいよ。  そうすると、この手当については、少なくとも就労者の生活に激変を与えないという条件があったはずですが、現在は手当二十三・五日分を予定しておられる。これはいままで二十二・五日ですから、一日よけいについております。そのかわりなかなか締めつけがきびしいようですが、これはどうなんですか。失対就労者ということでありますけれども、民間のほうへなるべく行きなさいといって、末端の職安ではそういう指導をなすっておった。その指導に乗って民間のほうへ出ていった。出ていったら手当支給の対象からは、ずれてくる。こういうことになったら、どうもおかしいのじゃないか。  それと同時に、出勤した日はやはり一日として考えてやるべきじゃないかと思います。ところが実態は賃金カットした日は全然その日に繰り入れておらない。早引けしてもだめである、病院へ行ってもだめである、こういうようなことは少し酷に過ぎるのじゃないか。条件緩和は可及的すみやかに行なわれなければならない問題じゃないかと思います。出勤した日、これは一日と認めてやるのが当然です。これは現在、聞いてみますと、いろいろ過酷なワクをはめられておるようでありますけれども、これではせっかく二十三・五日手当をやったとしても、これに該当する人は数少なくなってしまう。該当しない人がよけいになる。したがって二十日くらいの分見てやっても、上のほうは二十三・五日にしても実害がないという結果になってしまうのじゃないか。これではまさに手当制度をつくってもどうにもならないことになってしまうわけですから、こういうことがあってはならないわけです。それでどうですか。出勤した日は今後一日に加算して考えるようにこれは措置してやらなきゃいけないと思うのです。そうでなければ、これはもう前からの国会に対しての答弁に違反することになりますが、この点はひとついかがでしょうか、住局長
  201. 遠藤政夫

    ○遠藤説明員 この夏期、年末の臨時の賃金につきましては、もう先生方御案内のとおりでございまして、実は、失業対策事業ないしは失業対策事業就労者に対してこの数年来いろいろ批判がございました。この大きな批判の一つが、臨時の賃金の支給内容、条件等についてのものでございます。で、従来の制度は、この夏期、年末の臨時の賃金は、月に一日働けば満額支給される、つまり、月一日働いた人も二十二日働いた人も同じように一律に支給されるというところに非常に大きな問題があったわけでございます。そこで先般の法律を御審議いただきました際に、これも御説明申し上げたわけでございますが、その人たちの稼働日数に応じて合理的な支給方法を検討して、これを制度化しようということで御説明申し上げた次第でございます。今回、この年末からとられますこの支給制度は、月に十五日以上、半年間に九十日以上働いた人につきましては一〇〇%、満額が支給されることになっております。それ以下は順次稼働日数に応じまして、三段階に区分をいたしまして支給をすることになっておりますが、月に十五日ということになりますと、あとの七日間——二十二日就労保障いたしておりますので、あとの七日間は民間なりあるいは公共事業等に就労いたしましても、それはまるまる失対で働いたと同じとみなして一〇〇%支給することになっております。したがいまして、十月一日以降失対事業に残っておられます方々の就労構成、まだ正確には把握いたしておりませんけれども、比較的高齢の方々が多くなっておりまして、民間や公共事業に常時就労しておった人たちが、大体再就職という形で、九月三十日までに失対から自立をされたというような傾向が出ておりますので、したがいまして、十月一日以降に残っておられます方々については、失対事業に依存される方がいままでよりも非常に割合が多くなってきておる、こういうふうに考えられまして、私どもの推定では、一〇〇%満額支給される人が全体の九〇%をこすのではなかろうか、こういうふうに私どもは推測いたしておるわけでございます。そういうわけで、先国会で御答弁申し上げたように、新しい段階制をとりまして、夏期、年末の臨時の賃金の支給を合理化いたしましても、失対の就労者の方々の生活に激変を与えるようなことにはならないのではなかろうか、こういうように私どもは考えておる次第でございます。
  202. 島本虎三

    島本委員 このしばりつけ、この規制がきびしいのだ。これによると、病院へ行ってきたりなんかする人は、一日にさしていない。賃金をカットされた人も、これも出勤にみなされない。それから三十分以上の労働時間不足の人も、これは通院によって三十分以上かかった者はだめだということになっていますね。三十分で行ってこられる病院なんかいまありませんよ。こういうようにすると、病気になった人もだめだ、落とされる、通院はもちろんだめだ、早びけはだめだ、こういうようになって、賃金カットされたものは全部就労の日に入らない計算だとすると、せっかくりっぱなものをつくって——あまりりっぱなものじゃないけれども、これをつくっても、入る人が制限によって十分恩恵を受けられない、生活に激変を与えられるということになってしまうということなのです。これじゃだめなのです。ですから、これはもっとこの点、出勤した日は一日とみなして、病院の通院のために行く、この日は当然認めてやるべきだ、こういうようなことなのです。これは官僚じゃだめだから、政務次官、あなたのこれに対するあたたかい答弁をひとつ賜わりたい。
  203. 遠藤政夫

    ○遠藤説明員 事務的なことをちょっと御説明申し上げますので……。  稼働日数の計算につきましては、今回新しく変更を加えたものではございませんので、従来、十月一日の法律施行前の稼働日数の計算方法と同じで、全く変更を加えておりません。この月に十五日で九十日というような段階制をとりましたことにつきましては、一般の民間の事業場におきます年末のボーナスあるいは国家公務員、地方公務員のボーナス支給の基準よりははるかに緩和した制度をとっておるつもりでございます。先ほど申し上げましたように、大部分の人が満額をもらえる、こういうつもりで私どもは処置いたしておる次第でございます。
  204. 島本虎三

    島本委員 ことばと実態がばかに違う。もしそういうふうにしてあたたかく失対労務者を見るならば、これは地方公共団体の失対の就労者のために福祉的な措置であるというような解釈をとるならば、規制するということにはなりませんと言って、住職安局長が言った地方自治体の単費手当、これに対してでも、もしそれをやるなら補助金を差し上げませんとか言って、落とすような手段を講じておられる。就労日数の点についても、月に二十二日しか保障しない。しかしながら答弁では、労働大臣が、できるだけ多く就労の機会を与え、またその方々の所得をふやすということは賛成でございます、したがって、それを制限するようなことはいたしませんと、野原労働大臣、これははっきり答弁になっていながらも、山形県、岩手県では、労働省のほうから十月一日から月二十五日就労を一方的に二十二日就労に切り下げさせておるわけでありますが、これはやはり答弁違反ですよ。決議違反ですよ。この問題は、総括的に野党側を代表して田邊理事が確認をとっておりますけれども、そういうようなことに対しても、これをやるということは、どうも私はいただけない。もしこういうようなことがあるならば、答弁どおりにこれは今後考え直さなければならないのではないか、こう思うのですが、これはもう官僚のほうはいいですから、政務次官、あなた、この問題に対しての所信を明らかにしておいてください。これは大事なんです。前の答弁とはもうこれは違いますから、こういうようなことできょうは引き下がらないつもりでありますから、はっきりこの点を答弁していただきます。いままでやってきた人に答弁させてはいけません。これからそういうようなことを指示させるのだから、これは大臣、次官でないとだめなんです。
  205. 中山太郎

    ○中山政府委員 御指摘の点は、野原大臣がすでに当委員会において答弁をいたしておると存じております。私どもといたしましても、前大臣の意思に沿って行政を進めてまいるつもりでおりますので、さよう御了承を願いたいと思います。
  206. 島本虎三

    島本委員 では前大臣の趣旨に沿って、二十二日に切り下げるようなことはしない、自主的にやる地域があるならば、その点は尊重する、こういうようなことになりますから、この点だけはきつく念を押しておきたい、こういうふうに思います。もう一度……。
  207. 中山太郎

    ○中山政府委員 一律に規制をいたすようなことはいたさないということをお答え申し上げたいと思います。
  208. 島本虎三

    島本委員 それなら個々で規制するということですか。
  209. 中山太郎

    ○中山政府委員 ケース・バイ・ケースで処理していきたい、さように考えております。
  210. 島本虎三

    島本委員 そこを遠慮しなくてもいいのです。前に大臣がはっきり言っておりますから、そのことは、もう同じ内閣の同じ省のあなたは政務次官ですし、この点についてはそこにいる住局長もはっきり言っているのですから、それを現在まで二十五日就労を山形、岩手その他で二十二日に切り下げられたのだから、今後地方の意思を尊重して、いままでの措置を認めます、むしろこうでなければおかしいのです。ですから、この点少し……。
  211. 中山太郎

    ○中山政府委員 御指摘のように、内閣もかわっておりませんし、前大臣の発言を尊重して私どもは行政をやっていきたいと考えております。重ねて御答弁申し上げます。
  212. 島本虎三

    島本委員 じゃ満足いたします。しかしながら、これは十分今後次官として監視してやってほしい、心からこれを要望しておきます。  なお、私に与えられた時間もあんまり少ないようで——まだ若干いいようでありますが、それでよくわかりました。よくわかりましたけれども、これはどんなものですか。私どもも方々で所得制限云々ということを聞かされるのですが、この国会では、就労者の一人一人を厳重に洗い上げて、所得幾らあるのか、こういうような調査はとうてい事務的にもできませんから、この点はあっても一切心配しないように、こういうふうに承っておりました。まさにそのとおりなんです。ところが、所得制限をするような文書を下部にずっと流していますね、こういうような者は申し出なさいとかなんとか。調べる能力もないし、自分らでやってやる意思がなければ、そういうようなことを通達する必要はないのです。そういうような事実があるかどうか。これを十分確かめて、そして国会で答弁したとおりこれを実施するように、私は心からこれを要請しておきたいと思うのです。この点いかがですか。
  213. 住榮作

    ○住政府委員 今回の措置によりまして、従来の通達を必要最小限度に修正した部分がございます。そういう意味で先生おっしゃることは、新しく今回通達を流したんだ、こういうようにお受け取りのようでございますが、これは従来の通達の線を変えているわけではございません。方針はかねて御説明申し上げておるとおりのことでございますので、御了承いただきたいと思います。
  214. 島本虎三

    島本委員 これは最後に承っておきたいのですが、高齢者のための就労対策について、いろいろと高齢者関係の仕事、これは社会保障対策の充実と合わして、新たな仕事に対する対策の確立、これは十分努力しますというのが労働大臣でしたけれども、この高齢者、老齢者に対する仕事、または開拓、こういうようなものに対してはさっぱり行なわれておらないようでありますけれども、何か前進した開発が行なわれましたかどうか、この点について承っておきたいのであります。
  215. 住榮作

    ○住政府委員 現在の失対就労者について申し上げますと、今度の措置によりまして再就職なり自立をした方々も相当おられるわけでございます。その後の失対就労者の年齢構成等がどうなっておるか、こういう実態を実は調べておりまして、今後の失対事業の運営にあたりましても、現在、これから失対に働かれる方々の年齢構成等も考えまして、事業計画をそれにふさわしいような体制にしていきたい、こういうように考えております。  それから一般的に高齢者対策の問題でございますが、これは法案審議のときにも御説明申し上げましたように、基本的には私ども労働省の範囲として労働力政策としての雇用促進対策をやっていく、こういうことで、たとえば安定所におきまして高齢者向きの求人開拓をすると同時に、そういうような高齢者の就職相談、これはいろんな条件がございますので、手厚い相談その他の措置をとります。そのためには、高齢者コーナーその他の施設を安定所内に設けまして、紹介体制の万全を期しますとともに、市町村の当局とも連絡いたしまして、非常に広い意味での、単に職業相談ということではなくして、生活の面も含めたいろいろな意味での配慮、措置をしていかなければならない、こういうように考えておりまして、そういう連携体制を今後一そう強めていきますとともに、厚生省との連携も密にいたしまして、社会福祉協議会等におきます無料の職業紹介等につきましても労働省としては積極的に協力をいたしまして、総合的に対策を深めていきたい、こういうように考えております。
  216. 島本虎三

    島本委員 ではこれで質問は終わりますが、次官、労働省の立場、態度、これをもう少し強力に今後各省との関連において考えなければならないと思うのです。というのは、農業関係では四兆円の総収入の見込み。それに対して農業でも米、麦、その他果実、いろいろな点でもうストップになるような状態でありながらも、税金で一兆二千億なんです。本来の農業予算九千億に、地方自治体からの繰り入れで三千億ですから、一兆二千億。労働省関係の予算は、その十分の一の千二百億ですよ。ただし労働省関係しているこの労働、こういうものは無限大の生産を生み得る原動力なんですよ。これに対しての予算が農業予算の十分の一に満たない、こういうようなことでは、労働省自身が労働力そのものに対する評価、それから労働省自身の心がまえ、こういうようなものに対して、まだまだ不足なものがある。ただ単に恩恵的にやればいいんだという考えではだめですから、これから新しい日本を開拓するためには、もっともっと強力なる見解のもとに、この行政を実施する決意を持って当たっていただきたい。このことを心から私は申し上げまして、私の質問を終わる次第であります。長い間ありがとうございました。
  217. 増岡博之

    増岡委員長代理 次に大橋敏雄君。
  218. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 さきの予算委員会で、いわゆるドル・ショック問題または繊維問題等がかなり深く審議されていたわけでございますが、それは経済的な問題あるいは商業ベースの問題がかなり多いように思われました。要するに労働者の立場でという話は少なかったように思いますので、きょうは、私は労働者の立場に立ちまして、そういう問題をお尋ねしていってみたいと思います。  雇用・失業情勢というものの、いわゆる策定といいますか見通しといいますか、そういうものは、わが国の社会情勢あるいは経済事情あるいは世界の動向等、総体的にひっくるめたその上で、当然そうした掌握の上から策定され、それに対応する施策が行なわれるのだろう、こう思うわけでございます。労働省といたしまして、特に職安行政の立場からは、この雇用・失業情勢の見通しというものは非常に重要な問題であろうかと思います。したがいまして、たとえば四十五年度あるいは四十六年度等も、その見通しに立った上での対策が講じられてきたと思うわけでございますが、御承知のように、ドル・ショックという問題あるいは繊維の政府間協定等による問題というものは、その予想する時点にはなかった、いわゆる突発事故的なものなんですね。つまり一つの雇用・失業情勢を見通した道があった。その道の上に思わないがけくずれでもあったかのような事柄が起こっているわけでございまして、新しくその立場から雇用・失業情勢の見通しを立てなければならぬ。ましてや、わが国はそういうドル・ショックの問題だとか繊維の政府間協定の問題から、いよいよ経済は不況に落ち込むであろう、このようにいわれております。したがいまして、今後の雇用、失業情勢の見通しはどのように立てられているのか、大きな立場からまずお尋ねしてみたいと思うわけであります。
  219. 住榮作

    ○住政府委員 ただいま先生指摘のとおり、私ども従来雇用対策を進めていくにあたりまして、たとえば雇用対策基本計画を閣議決定いたしまして、五年程度の中期の雇用情勢の見通しのもとに、その五年間でどうやっていくか、さらにはその五年間の対策考えるにいたしましても、さらにそれに続く先の五年間をおおむねどういうように見通すか、こういうようなことを考えまして、中期の計画をつくって、さらに個々の年度ごとにおきましては年次の雇用計画をつくりまして、それぞれ当該年度の対策を円滑にやっていく、こういうような基本的な仕組みでやっておるわけでございます。  そこで本年度の問題でございますが、本年度におきましても実は雇用対策基本計画の最終年度に当たっておったわけでございます。それで年次計画におきましても、基本的には本年度の経済の成長というものはどうなるか。これは御承知のように年次の経済計画では経済成長率一〇・一%、こういうようなことで私どももそれに即応した雇用需要あるいは求職動向、そういうことを立てまして本年度の計画を進めておったのでございますが、ドル・ショックなり、あるいは繊維問題、非常に変わってまいっております。現に本年度の経済成長率も当初一〇・一%の見通しも五、六%程度に低くならざるを得ない、こういうようなことになってきております。そういう意味で雇用、失業情勢をどう見るか、こういうようなことが非常に大きな問題になっております。  で、当面の雇用、失業の特徴点をごく大まかに申し上げてみますと、大体昨年末以来の景気の鎮静化の影響というのが本年の上期の雇用、失業の状況に非常に影響してまいりまして、たとえば求人が減少する、求職者がふえる、あるいは失業保険の受給者もふえる、こういうような傾向がドル・ショック以前においてもあらわれてまいっております。そこでその後におきまして、さらに大きなドル・ショックなり、あるいは円の変動相場制への移行とか繊維協定とかいうことで非常に大きな変化が起こっておるのでございます。こういう変化雇用にどういうような影響を及ぼすか、実は私どもいろいろな観点から現在検討中でございまして、当面の短期見通しにつきましては各県それぞれ動員いたしまして、まず実際の状況の把握が先決であるということで、たとえば一週間おきとか月二回とか、そういった定期的に県内なり安定所の管内における雇用、失業情勢の変化を、報告を求めまして、私ども現在それをまとめて、今後どう見通すか。それと同時に、たとえば繊維協定の影響がどうなるか。実はこの繊維協定の影響につきましても、政府がどのような対策をとるかということによって、雇用、失業面への影響も変わってまいると思いますけれども、そういうようなとられようとする政府の対策と、それによってもなお影響を受ける雇用、失業問題、こういうものについて目下検討をいたしておるのが現状でございます。
  220. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 るる御説明があったわけでございますが、一口に申し上げまして、先ほど局長がおっしゃったとおり、雇用、失業情勢というものは五カ年計画の策定の上からいろいろ対策をしてきた。しかし、これは五年前に計画したことと、その経過の内容においては多少変わったことが起こってくるであろう、しかし大体大まかに見て失業、雇用情勢というものはむしろ好転してきていた、あるいは最近になって、いま局長は、非常に求職者の数が少なくなってきたというようなことも言われておりましたけれども、大まかに見て大体好転してきておったのは事実ですね。そういうことからいきますと、この五年間の見通しの上に立った場合、そのドル・ショックあるいは繊維協定の問題等がなかったならば、非常に好転した姿で雇用情勢は解決されていったのである。それがたまたまそのドル・ショックあるいは繊維交渉の問題が出てきた、そういうことで問題が起こったけれども、プラスマイナス大体うまくいっているのだというふうに見ていいのか。それとも確かに今度のドル・ショック問題等から急激な問題が起こってきた、これは何とかしなければならぬというふうに見られているのか。いまのお話ではいろいろ調査をし、そうしてその状況をいま把握しつつあるのだというお話がありましたけれども、それ以上のことはなかったというのですね。それについてもう一言……。
  221. 住榮作

    ○住政府委員 先生ただいま御指摘のように私ども、ドル・ショックなりあるいは円問題、そういうようなものが起こらないならば、かねて申し上げておりますような労働力不足が非常に深刻化していく、ごく一般的にはそういうふうに考えておったのでございます。そこで一般的には、今年下期ごろから景気が浮揚していくであろう、そうするとやはり従来一時鎮静化しておった景気が本年下期あたりから浮揚するならば、そういう見通しに乗って雇用問題というものは改善されていくんじゃなかろうか、こういうように私ども考えておったわけでございます。  そこで、いま御指摘のようないろいろな変化が起こっております。それでこれは率直に申し上げまして、私ども政府としては、いろいろな意味での財政金融面にわたる景気浮揚策なり、中小企業対策なり、繊維対策なり、そういうものが講ぜられることによって、その講ぜられる度合いによっても雇用、失業面への影響の度合いが違ってくると思うのでございますが、率直に申し上げまして、今回の変化雇用、失業面へ与える影響、これは相当なものがあるのではないだろうかというふうに私は考えておるのでございますが、はたしてそれではごく大まかでも数的にどれだけになるのであろうか、こういうことになりますと、確たることは現在の段階では申し上げられないのでございますが、雇用、失業面への影響というものはかなりあるんじゃないだろうか、こういうように考えております。
  222. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 政務次官、いま安定局長は、数字の面からいえばまだはっきりしたものまでつかんでいないけれども、ドル・ショックあるいは繊維問題等からかなり雇用、失業関係には大きな問題が出てきそうである、こう言っております。私も一般新聞等で見る限りにおいては、これは大問題だ、こういう印象を受けるわけです。  たとえば中小企業庁が産地別のいわゆる円・ドル問題影響調査として四十六年の十月に、それを実施いたしております内容を見ますと、三百四十六産地、これは全国全産地の数ですね。これを対象として調査しているわけでございますが、輸出比率一〇%以上が、いま言いました三百四十六産地の中に百二十産地がそれに当たるそうでございまして、その中身を見てまいりますと、繊維が四十九で、雑貨が三十六、金属製品が十一、食料品が七、このように占めているわけですね。そして、その稼働率といいますか、これを見ると、要するに機械をフル回転させている状態を一〇〇と見た場合、このニクソンのいわゆるドル防衛政策が出される以前のその状態、それを一〇〇と見たときに、その稼働率というものが八月下旬には九三%に落ちております。それから九月には八八%に落ちております。十月には七六%に落ち込んでおるわけですね。ということは、これは操業短縮の状況を明らかに示しておる姿であり、また輸出関係の激減の姿を示している数字であろう、私はこう思うわけです。また、商店や問屋さんの支払い状況をその調査から見てみますと、八月の十五日以前、この現金比率というものは五七%であった。それから調査された十月のその時点においては五四%であった。それで十月以降は五一%にやはりこれは落ち込んでいっておるわけですね。また対米輸出、アメリカのみの輸出だけ考えたときに、八月の十六日以降は輸出契約の出来高、あるいは通常ペースに対して一八%もダウンしている。あるいは受注残高では四十四日分、操業短縮しても五十七日分である。ことしの年末以降はお先まっ暗である。このような状態であったということですね。それから、四十六年の輸出見込みは、四十五年に対して、食料品が四七%減である。繊維は一七%の減である。全体で一四・九%の減である。こういうふうに中小企業庁の調査を見ても明らかでございます。数の上ではまだはっきりしたものがつかめていないかもしれませんけれども、これはかなりの問題が私は起こってくることを予想するわけです。  また、現にドル・ショックの倒産によって、九月の姿を見ますと、これは帝国興信所の調べでございますけれども、負債一千万円以上で倒れた企業が七百四十二件あるのです。これは前月比八・八%の増になっております。あるいはその負債金額を合計いたしますと、四百七十二億九千五百万円、前月比七・九%の増であるということです。これはたいへんな問題であります。この原因を調べてまいりますと、その全体の四六・六%というものは、ドル・ショックそのものが直接原因ではないかもしれない。その企業自身の、ある意味では放漫な経営が、そういうショックを受けてその波にのまれたという感じかもしれないけれども、はっきりそのドル・ショックによって輸出が不振になった、そういうことで倒れたのが八月に四件ある。九月には十四件もあるぞ、このようにいわれておるわけです。  そのほかいろいろと調べられておりますけれども、いずれにいたしましても、これは相当の企業に対する悪影響であるし、それにからんで労働者のいわゆる失業者が続出してくるんではないか、私はこう思うわけでございます。これに対してかなり職安行政の立場からは真剣に対策を講じようとなさっているかしりませんけれども、現実に労働省としてどのような手を今日まであの後に打たれたか、それをおっしゃっていただきたいと思います。
  223. 中山太郎

    ○中山政府委員 先生指摘のとおり、アメリカのドル問題、これが出ましてから日本の企業における失業問題というものが起こる可能性があるというのは御指摘のとおりだと思います。労働省といたしましても七月下旬の会議におきましては、失業保険金の支給が去年は対象人員を四十五万人と見ておったわけでございますけれども、今年度はなかなかいろいろな経済の変動のために対象を五十一万人に広げる必要があるということで予算の要求を事務的なベースで処理させてやっておったのでありますけれども、その後の状況を見てまいりますと、なかなかそのような簡単なものではまいらない、こういうことで労働省といたしましては、最近さらに詳しいデータを集めまして、いま御指摘のような資料も私どもも集めて鋭意——まあ失業が出た場合、出ないように景気浮揚策をとにかくとるように、内閣におきましても、労働省といたしましていかなる方策でこれをやるべきか、景気浮揚策はいかなる方策をとるべきかということで、御存じの産業労働懇話会、これはまあ非公開の会議でございますけれども、日経連、日商並びに総評、総同盟、各種労働組合の幹部の方々と、それから公益を代表されている方々、あるいは私ども労働省の幹部が出まして、労使が同じテーブルにつきまして、これからの経済動向並びにそれによって起こる国内への影響、そういう問題を労使双方が定期的な会合を持ちまして、意見の交換をいたしておるのであります。  その会合で出てきました一つの問題で労使代表それぞれが同意をしたという点が明確になりましたのは、やはり公共投資をすみやかにやるべきだ。公共投資の中でもかねがね住宅不足ということが日本ではやかましくいわれておりましたけれども、特にこの機会においては勤労者住宅の建設に国家が大幅な公共投資をすべきである、こういう御議論が出まして、これには満場一致を見たものでございますので、大臣は閣議において、私は次官会議において、労働省側の意見として、全国各地の住宅不足、特に勤労者住宅を建てることによって関連産業あるいはそこに働く人々の所得を安定させるべきだ、生活を安定させるべきだという方向で目下努力をいたしておる最中でございます。  なお先般、御案内のように内閣には繊維対策特別本部が、田中通産大臣を本部長に迎えまして、通産省の大臣、政務次官、事務次官、大蔵省の両政務次官、事務次官、それから労働省から私が選ばれて入りまして、そうして繊維問題に関する失業の問題について、特に労働省としては各委員の御意見等も十分参酌しながら反映をさせてまいりたいと考えております。  現在の時点で、そのようなことを御報告申し上げて、御理解を賜わりたいと思います。
  224. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 実はわが党でも調査をしました。四十六年九月です。産地の実情調査でございますけれども……。それをまとめてみますと、要するに受注残高が十一月あるいは十二月で期限がくる。あるいは操業短縮をほとんどのものがやっていた。またそういう企業が、何といってもお金である。これは労働省に直接の問題にはならぬかもしれませんけれども、いわゆる中小の三金融機関からの融資ワクの拡大をもう熱烈に要求しておりました。それから私の福岡県でございますけれども、田川関係には輸出産業が全部で十八社ございます。実は千八百八十人、従業員がおるわけでございますが、これも現状はまあまあ何とか保っているけれども、やはり融資の関係ではどうなるかわからないという、まことに危険な状態にあるわけでございます。実は、すでに東洋敷物というカーペットメーカーがございますが、ここは輸出部門の全面切り捨てを実施した、子会社の二工場の閉鎖もやった、従業員の一部を残して全員解雇だ、こういうことですね。これは東洋敷物です。また世界長は、これはゴムはきものをやっている会社でございますけれども、西宮、岩滝工場を十一月末で閉鎖をする。これは従業員六百人、それから百八十人を徳山の工場へ配置転換をするとか、残り四百二十人、それから本社従業員の一部七十人を合わせて四百九十人の希望退職をつのるんだ、こういうことですね。それで、労使協議をいまやっている最中だ、こういうわけですね。あるいは大阪チタニウムという会社、これは金属チタンメーカーでございますが、二百四十六人の人員整理をやる。これも労使話し合いが行なわれているということです。これは米国がドル防衛政策からSST開発をストップしたとか、そのほかいろいろと状況をあげておりますけれども、とにかくやめさせよう、首を切ろうというのが、いままで申し上げた会社のほとんどの実情でございます。玉川紡績も、売れ行きの見通しがないから廃業しよう、こういっております。そこには百二十五人の従業員がおるわけですが、廃業するわけです。あるいは浜田精機、印刷機の会社でございますけれども、ここも五百五十人、会社更正法の適用をすでに申請している。また、輸出の件については商談が不成立になりまして、在庫増でものすごく苦労しておるそうです。スタンダード工業では、これは中堅家電メーカーでございますけれども、人員を半減しようという合理化政策をもうすでにとりつつある。あるいは日本コロムビアでは、系列会社を含めて二千人の整理をしようとしている。三井東圧は来年の三月まで千三百人から千八百人、これも整理する。あるいはユニチカは、四十八年まで五千人を削減していくんだという。  今度のドル・ショックという問題が起こってきてから、特に目立ってこういうことが続々と起こってきているわけですね。いままでもかなり忙しい職安行政であったでしょうけれども、いよいよこれからはほんとうに忙しくなります。ただ忙しいというだけではなくて、失業した人に対して、それではこの職業につきなさいという簡単なものではないと思うのですね。やはり失業していく者自身、自分はこういう職業につきたいんだ、再就職したいんだという問題があるわけでございますから、何が何でもこの職業をあっせんしさえすればいいという問題ではないわけですからね。いよいよ職業安定行政の仕事の重要なときが来ているわけですね。これに対して、局長でけっこうですけれども、どういう具体的な決意のもとにこれをなさろうとしておるのか、配慮をなさっているか、聞かしていただきたいと思います。
  225. 住榮作

    ○住政府委員 先ほど申し上げましたように、私も、雇用失業情勢が深刻になるおそれがある、そういう事態に対処して、どういう対策をとるかということにつきまして、まあ率直に申し上げまして、本年度の問題につきましては既定予算の活用によりまして、失業保険の問題にしても、あるいは一般会計のたとえば職業転換給付金等の問題にしても、これは対処できるのではないだろうか。ただ、それ以降の問題につきましては、雇用失業情勢は、経済の変化よりは若干のタイムラグを持ってあらわれてまいります。そういう意味で、むしろ来年度の対策においてどういうような対策をとるかということについて、先ほど申し上げましたような、一つには現在の実態なり、それに基づく見通し、それに即応する適切な対策はどうあるべきか、こういうものについて、たとえば明日も中央職業安定審議会を開いていただきますけれども、そういう安定審議会の御意見とか、先ほど政務次官もおっしゃられましたような意味での対策の確立をいたしまして、そういうことを含めまして来年度予算を編成し、予想される雇用失業問題に備えていきたい、これが基本的に考えている方向でございます。
  226. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 時間もずいぶんたってきますので、次に移ります。  ここでもう一つ大きな問題が起こっていることは、新規中学あるいは高校卒業者、この求人取り消しが続発しているということですね。その状況は大体おつかみになっているんですか。——時間の関係がありますので、私自身がつかんだものをまず申し上げておきましょう。  これは日立製作所のある日立市の就職戦線に異状ありということで報道されていたことでございますけれども、来春の中学・高校卒業生の新規採用が中止になった。これは、大体、中学生で三百五十人、高校生で千四百人ぐらいが日立製作所に毎年就職しておった。中学生の四十六年度卒業見込みは約二千五百人でございますけれども、その中から三百五十人は日立に行く。今度、高校生約二千人の中から千四百人は日立に行く予定であったというのですね。これが全面ストップ、取り消しになっておるわけです。また、操業短縮や残業廃止等で、実際、現在働いておる人自身も、一人平均一万円から一万五千円のマイナスになっておるんだそうでございますが、それはさておきましても、こうした中学生あるいは高校生の新規学卒者の採用が中止されているというような問題があるわけですね。  それから、これは職安のほうの発表でございますけれども、八月の十六日から三十日までに取り消しをしてきたのが、中高新卒者で三百社、事業所で四百三十、総取り消し数が五万一千二百三十二人だ。その内訳を見ましても、中学生の卒業者が一万三百六十八人、高卒が四万八百六十四人になっておるわけですね。これは五万一千二百三十二人の内訳でございますけれども、三十人以上まとめて取り消ししてきたものだけの集計がこうなっておるというわけです。だから、実際は、もっともっとこれより以上にたくさんの取り消しがあるのではないか、私はこう憂慮しているわけでございます。  こういう状況に対して、まず、どの程度つかまれているか、それを伺ってから次の問題に移りたいと思います。時間の関係がありますので、要点だけすぽっと答えてください。
  227. 中山太郎

    ○中山政府委員 御指摘の点につきましてお答えをいたしたいと思います。  いまの求人取り消しの問題点に関しまして、現在、最近までの数字では、新しい卒業者総数七十万に対して、求人が三倍の二百十万、こういうことに相なっております。昨年と大体同じような数字を示しておりましたけれども、昨年と比べて七万ほどの落ち込みを見ておる。しかし、中卒においては五・三倍、高卒においては二・八倍、合計三・二倍、約三倍の求人申し込みがある、そういうことでございます。なお、私ども労働省といたしましてこの問題についても特に関心を払っておりますが、御案内のような昭和四十一年の不況の当時の雇用関係を御参考に申し上げますと、その当時もやはり相当な、いわゆる求人の予約のキャンセルがございましたけれども、四十一年当時はやはり中小企業の求人が非常に盛んでございました。大企業のキャンセル分が全部中小企業の員数のほうに回ってしまった、こういう歴史的な経過がございます。今回、はたして四十一年どおりいくかどうかということは、現在の時点では私は答弁の限りではないと存じますけれども、一応、現在まだ求人のほうがたいへんな数を示しておるということを御報告申し上げておきたいと思います。
  228. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 そこで、先ほど私が心配だと言ったのは、数字の面では確かにそういうことになるかもしれませんですね。数字の計算の上ではあくまでも求人数が多いし、まだまだだいじょうぶだ、就職はできるということでありましょうけれども、問題は、その新規学卒者が、どこそこの会社に行きたい、自分が希望し、また自信を持って、行きたいというところに行けなくなって、思いがけないところにやられるということが起こってくるわけですね。そこを私は心配するわけでございます。要するに、こういう新卒者というのは、年も若いし、心理的に見ても非常に過敏症の方ばかりであるし、とにかく昼間学生などで働いている青少年とはちょっと状況が違うのですね。それだけに最初の就職のことについて挫折した、そういう挫折感を味わうということは、人生の出発において大きなマイナスである。私はそういうふうに感ずるわけです。そういう点も配慮しながらの就職活動をしてもらわなきゃならない。これが一つです。  それからもう一つ私が言いたいことは、何といいますか、求人取り消しが続々と出ている。そしてそれが、ひいてはもうすでに採用しようと内定している人を取り消していくんじゃないかという、ここにもちょっと心配があるわけですよ。こういうことに対して労働省はどのような予防的な措置をとろうとなさっているのか。これをしっかり聞いておきたいと思うのです。お願いします。
  229. 中山太郎

    ○中山政府委員 御指摘の問題につきましては、先般、九月三十日でございますが、労働大臣から異例の談話を発表いたしております。事業主の協力を求めますとともに、職業安定局長名をもって主要な六十九の事業所、団体に対して、そのような事態を招くことのないような協力方を呼びかけておりますが、各都道府県、公共職業安定所に通達をいたし、これらの機関を通じて事業所に対する指導を強力に行なっておる現状でございます。  なお、今後公共職業安定所職員による事業所の訪問等を一そう強化して、その企業内の雇用情報を的確に把握をいたしますとともに、採用内定の取り消しを行なおうとする事業主に対しましては、事前に通報を求めることによりまして極力その回避について指導するなど、遺憾のないように対処してまいりたい、そのようにただいま行なっております。
  230. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 それは単なる通達だけで終わらないように、ほんとうにその通達の意思が徹底されて行政面にあらわれることを強く要求しておきます。  それから最後に、もう時間がございませんから、一言だけ申し上げます。パートタイマーについてのことでございますけれども、私は、パートタイマーそれ自身の問題は大きな問題として取り上げて、またの機会に深く質疑をしてみたいと思っておりますが、今度のドル・ショックの影響を受けて、パートタイマーを中止しようという企業が目立っているわけでございます。このパートタイマーの失職について、労働省としてはこの求人開拓に努力すべきであると思いますけれども、これに対して何らかの手を打っているかどうか。と同時に婦人少年局ですか、この方面でパートタイマー関係については非常に熱心に調査をなさり、具体的な資料も出ているようでございますけれども、労働省自身のそれに対する対策というものが必ずしも十分ではない、私はこう感じておりますので、その点についてお答え願いたいと思います。
  231. 住榮作

    ○住政府委員 パートタイマーの状況でございますけれども、まず現状を申し上げてみますと、ことしの八月から九月までのパートタイマーの求職希望者が約二万五千でございます。これに対しまして求人が約三万三千でございますが、これは昨年の八月、九月に比較いたしますと、求人が減り、求職者がふえる、一般の求人、求職の状況と似たような傾向になってまいっております。しかしながら、いま申し上げましたように現在のところ、求職者よりも求人のほうが上回っておるということで、パートタイマーの雇用状況というものは、いまのところ必ずしも深刻になっていないのじゃないだろうかというように考えておりますが、先ほども申し上げましたように雇用、就業情勢が全体として悪くなりますと、パートタイマーへの影響の度合いが一般よりも早くあらわれる、あるいは強くあらわれる、こういう傾向があると思います。そこで私どもの対策といたしましては、パートタイマーの求職者に対して安定所で、たとえばパートタイマーのコーナーを設けるなどの準備をする、あるいはパートタイマーに対しましてテレフォンサービスによる求人状況の伝達を行なう、それから求人開拓もこれは安定所で積極的にやっていく、と同時に、Aの安定所では求人を持っておるけれども、Bの安定所では求人が少ない、こういうような安定所の持っている求人のアンバランスの状態、こういうものも安定所間の連絡によってならしていく、そういうようなことでいろいろ対策を講じていきたいと考えております。
  232. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 もう一つ。いまいろいろ御説明ありました。確かに局長は「労働時報」といいますか、ことしの初めだったと思いますが、ごあいさつなさっておりますね。そのごあいさつが載っておりますが、その中に、きわめて婦人労働に対しては関心の深い記事が載っておりました。パートタイマーの問題にしても、しかりです。私は職安局長のこの熱意を多とし、期待をしておったわけですけれども、いまの答弁ではまだちょっと認識不足ですね。時間があればゆっくりやりたいのですが、きょうはちょうど婦人少年局長さんを呼んでおるので最後にちょっと聞いてみたいのです。  いまのような考えでは、ほんとうのパートタイマーの対策にならない。たとえば労働条件の向上、こういう問題から雇用の契約などは、いまほとんどなされていないのが実態だそうですよ。パートタイマーの労働条件というのは、いわゆる就業規則、これはあるところもありますけれども、ほとんどないところが多い。これはおたくの調査で出ておるのです。時間がないからもうやりませんけれども、あるいは日曜だとか休日、それに対するパートタイマーとの関係、これも検討しなければならぬということが出ております。  最後に婦人少年局長さん、時間があまりありませんけれども、今後の婦人パートタイマーのあり方の一番ポイント、問題点を言ってもらって、職安局長によくその中身を教えていただきたい、以上でございます。
  233. 高橋展子

    高橋(展)政府委員 私どものほうといたしましてもパートタイムの問題につきましては、かねてからパートタイムに従事する婦人の保護と労働条件の向上という点から各種の調査を行ない、また啓発あるいは行政指導等を行なってまいってきたところでございます。特にこの問題が社会的にも非常に関心を持たれるようになりました最近におきましては、昭和四十四年に専門家会議を特に設置いたしまして、専門のお立場の方々にこのパートタイム問題をどのように考えるべきか、今後の日本におけるパートタイム雇用の姿はどうあるべきかといったようなことにつきまして御検討をお願いいたしたわけでございます。その専門家会議の御報告をいただきまして、またさらにそれを一つの参考といたしまして、労働大臣の諮問機関であるところの婦人少年問題審議会に御意見を伺ったわけでございます。その審議会から一昨年意見書が出されまして、今後のパートタイム雇用に対する労働行政のとるべき姿勢についての幾つかの御意見をちょうだいしたわけでございます。これに基づきまして昨年の一月でございますが、いわば基本的な通達を各局と御相談の上に出させていただきまして、その中にただいま先生の御指摘の、たとえばその労働条件がパートタイムの場合はっきりしないではないか、そのような点に対しまして行政指導として打つべき措置について明らかにしているわけでございます。  なお、この基本通達は、大体その受け入れ体制の面と、それからパートタイマーとして就業する者に対する指導、その両方にまたがっておりますが、そのねらいとしますところは、パートタイム雇用というものが、これは近代工業国家においてはどこの国でも非常に多い女子の就業形態でありまして、ある意味では避けられない趨勢であるとするならば、そのパートタイム雇用があいまいな半人前的な就業の形であっては困るわけで、これは一人前の本格的な労働力として、近代的な労働者として権利と責任を持つ、そのような労働者像というものを想定いたしまして、そのような雇用の管理またパートタイマーの意識の近代化というものがはかられるべきである、そのような方針に基づいておりまして、通達を出しました以後、このような線で指導いたしておるところでございますが、今後も一そうそのようにつとめたいと思います。
  234. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 このパートタイマーの問題については、次の機会にまた本格的にやってみたいと思います。  じゃ、私はこれで終わります。
  235. 増岡博之

    増岡委員長代理 次に古寺宏君。
  236. 古寺宏

    古寺委員 最初に労働安全衛生対策についてちょっとお伺いしたいと思います。  去る九月二十三日に青森市内の採石事業場において十五名生き埋めという事故が発生をいたしましたが、幸いにしてこれは生命には別条がなかったわけでございます。この事故を契機といたしまして、青森労働基準局では採石事業の安全衛生の一斉監督を行ないました。ところがその結果、全事業場六十八のうち五十九事業場、八六・八%が法違反をしている、こういう事実が明らかになったわけでございます。これは、いままでの労働省の監督行政というものが不十分であったために、こういうようなことが判明したわけでございますが、こういう採石業に対するいわゆる労働省対策というものがどういうふうになっているのか、まず承りたいと思います。
  237. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 御質問の採石場、採石業に対します基準法の適用関係につきましては、特にいま御指摘のように、従来の監督の実績からいいましても、残念ながら違反率が相当高い。現実にいろいろ問題もございましたので、採石業における労働災害のために特に安全衛生規則を四十四年に改正をいたしまして、採石を行なう場合の工法について安全なしかたをとるというようなことを内容といたしました新しい規則を制定いたしまして、それに基づいて監督を実施し、たとえば監督のやり方につきましても、定期監督で行なうことはもちろんでございますけれども、そのほか重点的に調査、指導、監督というような形で、どこに問題があるかというようなことを重点とした監督を実施する等鋭意努力はいたしておるわけでございますが、現実には御指摘のような事態が間々起こりますので、今後ともさらにこの規則が完全に実施されるような方向で監督指導をさらに強めてまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  238. 古寺宏

    古寺委員 全国の採石場でもって違反の事実がわかっておる件数と、死者が年間どのくらい発生しておるかお尋ねしたいと思います。
  239. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 採石業におきます定期監督の実施状況からとりました数字によりますと、たとえば四十五年におきましては、採石業におきまして監督を実施いたしました事業場が四千六百八十、そのうちで、いろいろな違反事項がございますが、何らかの形で違反がございましたのが三千三百十五、七〇・八という数字になっております。なお採石場におきまして死亡した件数につきましては四十五年は二百十七名、四十四年が二百六十名、四十三年が二百三十八名というような状況になっております。
  240. 古寺宏

    古寺委員 そこで、全国では採石業の事業場は大体どのくらいございますか。
  241. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 手元にございますのが四十四年の数字でございますけれども、労働基準法の適用を受けております採石の事業場は全国で一万二千六百二十八事業場になっております。
  242. 古寺宏

    古寺委員 毎年二百名以上の犠牲者を出している採石業に対する労働安全衛生対策というものが非常にずさんである、こういうように私は考えるのですが、今後事故が起きてからではおそいわけでございますので、全国の採石場について総点検を行なっていただきたい。そして事故を未然に防止していただきたい、こういうふうに御要望申し上げておくわけです。  さらに、今年の一月から、これは猶予になっておるそうですが、採石事業場では労働安全衛生規則から、今度ベンチカット方式というものがとられることになったそうでございます。この工法を用いる場合には相当多額の設備投資が必要になってくるわけでございますが、こういう面については労働省としてはどういう対策をお考えでしょうか。
  243. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 御承知のように、ただいま労働省といたしまして、全般的に安全衛生に関していろいろ投資をする場合に、そのうちの必要あるものについては安全衛生融資という制度を設けまして、一定の資金ワクを準備いたしまして、必要な方には低利で比較的有利な融資をして、安全設備の改善とかあるいは工法の改善、機械設備の改善等についてこの融資を活用できる道を講じております。ただ、御指摘のいまのベンチカット工法を行なう場合の用地等に対して資金が相当かかるということを聞いておりますが、目下のところ安全衛生融資の対象としては取り上げておりませんけれども、私ども規則の改正によりまして、この工法を義務づけるということになってまいりますので、その工法を今後安全衛生融資の対象として、どこまで取り上げていけるかというようなことを中心に検討してまいりたいというふうに考えております。
  244. 古寺宏

    古寺委員 この「産業安全衛生施設等特別融資のしおり」というのがございますが、これを見ますというと、災害防止のために中小企業等も貸し付けを受けることができるようになっておりますが、実際に中小企業、零細企業の業者にいろいろお聞きしてみますと、非常にワクが少ないと申しますか、貸し付けの制限があってなかなか思うように借り入れができない、こういうふうにいろいろと相談を受けるわけでございますが、現在この産業安全衛生施設等特別融資のワクは一体どのくらいで、その融資の内容はどういうふうになっているか、お尋ねしたいと思います。
  245. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 お尋ねの産業安全衛生施設等の特別融資は原資といたしましては約三十五億を準備いたしておりますが、ただいまのしおりの中にございました各費目によりまして、四十五年の四月から四十六年三月までにこの融資を利用された状況を見ますると、全体で七百十三件、二十四億八百万円強ということになっております。
  246. 古寺宏

    古寺委員 二十四億が七百十三件に貸し付けになっているのですが、この内訳は大企業がほとんどであると思うわけです。こういうような中小企業、零細企業、労働災害の一番大きい事業所に対してはこういう制度がほとんど活用されていない、こういうふうに私は思うのでございますが、この二十四億のうちで中小企業には何件、何億ぐらいが貸し付けになっておりますか。
  247. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 ただいまの二十四億でございますが、この融資は中小企業金融公庫及び国民金融公庫の中の特別ワクとして設定されておりますので、大半は中小企業向きに融資をされているものと私ども理解しておるわけでございます。ただ、いま手元にございますこの資料によって、どれだけがいわゆる中小規模の事業所であるかということが実は明確にいまなっておりませんが、この融資の性格といたしましては、ほとんど中小企業を対象に貸し出しをしておるという状況になっておると心得ておるわけでございます。
  248. 古寺宏

    古寺委員 それでは、後ほど資本金五千万円以上の企業に対してこの融資がどのくらい行なわれているか、その点について資料の提出を願いたいと思います。と同時に、来年の一月から、もう間もなくスタートを切るわけなんですが、このベンチカット方式については、現在その融資の対象になっておりません。したがいまして、こういう違反件数の多い零細な中小企業の採石場は、これは倒産のやむなきに至る、あるいは事業を中止しなければいけない、いろいろな問題が発生してまいります。こういう点についてはどういうふうに対策をお考えでしょうか。
  249. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 御指摘の工法によりまして相当な資金がかかる。この場合には、その工法をとります場合の用地の取りくずし等にいろいろかかるということを聞いております。それでその用地の取りくずしといいますと、用地そのものの取りくずしが採石とも非常に関連をいたしますので、純然たるいわゆる安全衛生施設に対する融資であるかどうかというような点の若干の疑問がございます。ただ、私ども安全衛生規則でこの問題を取り上げておりますので、それが実行されないということでは規則を変えた意味もございません。その実効があがらないと、それをやれないということが、もっぱらその資金的な面にあるということもある程度理解できますので、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、今後のこの工法に要する経費をどの程度いわゆる産業安全衛生施設等融資の対象に取り上げられるかを十分検討してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  250. 古寺宏

    古寺委員 今後早急にこの融資制度内容を根本的に洗い直して、そして労働災害というものを未然に防止するのに役立つ、実効のある制度に変えていただきたい、充実していただきたい、こういうふうに御要望を申し上げまして、この問題は一応これで終わります。  次に、出かせぎ対策の問題についてお尋ねをいたします。  この問題につきましては、前回の社労の委員会で大臣にも若干質問を申し上げたのですが、青森県の例で申し上げますと、中高年齢者、こういう方々に対する出かせぎ求人が非常に減少をいたしております。昨年の九月−十月では二万一千十八人ございましたが、今年の九月−十月の現状では一万五千五百二十二人、大体六千人近く減少いたしております。こういうように減少をしたとともに、さらに労働条件の比較的によい製造業、こういう関係事業からの求人が三八%の減少を示しております。そこで、先日の委員会の際に、労働省は臨時労働対策本部というものを労働省内につくって、季節労務者を含めた一般労働対策に対して、新たなる事態に直面して万全の策を進めている、こういうような大臣の御答弁があったわけでございますが、この出かせぎ者、いわゆる季節労務者に対する対策としては、どういうような措置を現在講じておられるか承りたいと思います。
  251. 住榮作

    ○住政府委員 出かせぎ対策といたしまして、私ども従来実施してまいりました対策をさらに強化していきたいということでいろいろ考えておるわけでございますが、第一番目の問題といたしまして、就労する前の、就労先における職場環境の状況その他いろいろ出かせぎ者に知っていただくというような意味での講習会とか、あるいは健康診断を実施するということに加えまして、これから来年度以降の問題といたしまして、就労先における、つまり東京なら東京におけるそういう出かせぎ労働者のいろいろな相談に乗る相談員をつくるとか、あるいはふるさとだよりを送ってあげるとか、そういう意味で出かせぎ労働者と故郷との連係の強化、それから労働者就労先で疾病なり負傷にかかった場合に家族が見舞いに出てくる旅費とか、あるいは留守宅が災害等を受けた場合に国へ帰る旅費を支給するとか、そういった援護事業について県なり市町村の助成を考えていきたい。  それからさらに第二番目といたしまして、受け入れ地におきます出かせぎ労働者の福祉の増進をはかるための福祉施設も設置してみたい。さらには、出かせぎ就労事業場の指導の強化、あるいは賃金不払いの問題も起きますので、そういった賃金支払い保証制度に対する事業主の指導等を強化していきたい。こういうようなことで現在対策をまとめておる次第でございます。
  252. 古寺宏

    古寺委員 いま私がお尋ねをしているのは、ドル・ショックの影響、それから減反、休耕によりまして、出かせぎ労務者、季節労働者が非常にふえているわけです。ところが企業からの求人が少ないため、いままで出かせぎに出ておられた方々が非常に困っている状態なのです。これに対して、労働省はどういう対策をお考えになっているかということを承っているわけでございます。
  253. 住榮作

    ○住政府委員 先ほど先生から青森の求人、求職の状況の説明がございました。全般的には昨年の、たとえば八月−九月に比べますと、出かせぎ労働者に対する求人が二割ほど減っておりますが、それと同時に、求職者の状況を見ますと、なお求人のほうが上回っておる、こういう状況でございまして、求人倍率としては一・六倍ぐらいになっておる、こういうように考えております。  そこで、県によってはそういう求人の連絡のアンバランスもあるかと思うのでございますが、私どもといたしましては、一つはできるだけ求人の確保をはかるということで、需要地における安定所を督励いたしまして、そういう求人の確保方策をやらしておるわけでございます。それと同時に、その供給地と申しますか、送出地と申しますか、そういう県に対しまして、できるだけ求人情報を流しまして、適職紹介と申しますか、就労者の希望相談に応じまして、その求人に紹介していく、こういう体制を強化いたして、減った求人に対する求職者の対策をいたしておる次第でございます。
  254. 古寺宏

    古寺委員 どうも私の質問の内容が行き違っているようでございますが、青森県は御承知のように出かせぎ労務者というのが数字の上では六万五千人になっております。これに対して、四十五年度には二万一千十八人のいわゆる求人があったわけです。これが四十六年度、今年の九月−十月においては一万五千五百二十二人に減少しておるわけです。したがいまして、いままで出かせぎをしておった方が出かせぎができないというような実情になっている。それが、求人が非常に少ないために、縁故就職等が問題になりまして、労働災害、賃金不払い、いろいろな問題が起きているわけでございます。こういうような問題について、労働省はどういうふうな開拓を考えてくれているのかということをお尋ねしているわけでございます。
  255. 住榮作

    ○住政府委員 その点につきまして、たしか先ほど申し上げましたように、求人が減っておるということは事実でございます。そこで私どもといたしましては、できるだけ求職者の方々が希望するところに行っていただけるように、そういうことをいたすためには求人開拓をして、できるだけ求職者の希望に沿う求人の確保をはかる、こういうことが大前提になりますので、職業安定局の対策としましては、そういった求人確保をまずはかる、それが一つでございます。  そこで、その場合、確保された求人の連絡のしかたでございますが、ほうっておきますと各県それぞれ非常に片寄るとかあるいは、何と申しますか、均質の求人というものの連絡ができない、こういうようなことになっては困りますので、ただいま先生がおっしゃいましたように、青森の求職者の数なり希望就労地等ともかみ合わせた求人連絡を、たとえば東京なら東京から青森にしてやるというようなことで、できるだけ求職者の御希望に応じた紹介ができるような体制を、ちょうど幸い安定所間の連絡を緊密にいたしまして、まずそれをやっておる、こういうことを申し上げたわけでございます。
  256. 古寺宏

    古寺委員 その中高年齢者のいわゆる就職、出かせぎというのは非常に困難になっているわけです。県のほうでも一生懸命開拓をやっておりますが、なかなかその求人がない、こういうような実情で、失業者が非常に多くなるわけですね。それに対する対策をお尋ねしたんですが……。  それでは農林省に。  農林省で、農業者出稼改善特別対策というものを発表いたしておりますが、この内容についてお尋ねをしたいと思います。
  257. 井上政行

    ○井上説明員 お答えいたします。  農業者の出かせぎに伴いますいろいろな問題がございます。これにつきまして、農業者が農業者の立場で少しでもいろいろな国の補助、援助、そういうものが円滑に受けられますように、そのような仕組みをまず考えることが必要であろうということで、国、地方公共団体だけでなくて、農業団体をも加えた組織を中心とする援護組織、その確立を中心といたしましていろいろな事業を行なってまいる、それを基礎といたしまして出稼改善特別対策事業というものを来年度から行なうべく、ただいま予算要求中でございます。  中身といたしましては、農業団体に対しまして、農業者の実態なり健康状態の追跡調査その他の委託をいたしますと同時に、ただいま申し上げました国の援助のもとに地方公共団体なり農業団体が一団となった組織を通じて、農業者の出かせぎの集団の育成、あるいは出かせぎ先におけるいろいろな問題に対しての相談員による特別な相談事業、あるいは出かせぎ先における農業研修を推進するための事業、そういったものを考えておる次第でございます。
  258. 古寺宏

    古寺委員 いま御説明がございました中になかったんですが、新聞の記事を読みますと、四十七年度の税制の改正に関する考え方としまして、出かせぎ控除というものを考えている。出かせぎ者の給与所得に一定額の必要経費控除を認めることで、出かせぎのための上京、盆暮れ、正月時の帰省及び再上京、出かせぎ終了後の帰郷は不可欠のものとしているほか、二重生活からくる生活費の当然増分も生まれるので、これらの費用を必要経費として所得から控除するというように説明がついておりますが、この点についてはいかがでございますか。
  259. 井上政行

    ○井上説明員 先生のお話のような線でただいま大蔵省、自治省と協議中でございます。ただ、この問題につきましては、出かせぎに伴う往復旅費あるいは生活費の増高、いろいろございますけれども、それと全く同じようなケースがほかの、たとえばサラリーマンの単身での赴任なり何なりいろいろな問題がございまして、いろいろ問題も多いようでございます。ただいま各省と調整中でございます。
  260. 古寺宏

    古寺委員 いま農林省のほうから農業者出稼改善特別対策というものの概要を御説明があったわけでございますが、この問題について労働省としては、どういうふうにお考えになっておられますか。
  261. 住榮作

    ○住政府委員 労働省としての来年度の対策について、先ほどちょっと御説明申し上げたのでございますが、いま農林省からの御説明の明年度以降の対策と、私どもの考えております対策とかなり重複しておるような点もあるかと思うわけでございます。そういう意味で農林省との調整ということで、いずれにいたしましても出かせぎ対策というものは強化していかなければならない、こういうことでございますので、ダブっている面、そういった問題等もございますので、これから調整をはかって、出かせぎ対策を強化していく、こういうように考えております。
  262. 古寺宏

    古寺委員 いま、農林省のこの発表によりますと、農業者の出かせぎが四十年の二十五万から四十五年には四十一万に急増している、そのためにこういう対策考えているというような記事になっておりますけれども、労働省も出かせぎ対策考える、農林省も考える、しかし一向に実効はあがらない、いろいろな問題がいつまでたっても解決されない、こういうふうになっているのですが、農林省としては、こういうふうにいままでこの出かせぎ対策というものを放置しておいたその理由は何でしょうか。
  263. 井上政行

    ○井上説明員 この問題、まあいろいろむずかしい問題があろうかと思います。農林省としていままで放置しておいたということではございませんのですけれども、具体的な対策として特に出かせぎだけを取り上げた問題としては、来年度からの予算としての要求が初めてでございます。それは事実でございます。
  264. 古寺宏

    古寺委員 これは実現の見通しがあるのですか。
  265. 井上政行

    ○井上説明員 これからの各省との調整の問題でございます。相手のあることでございますから何とも申しあげられませんけれども、私としましては、これが契機となって農業者の出かせぎ問題についての考え方が一歩でも前進すればという気持ちで現在取り組んでおります。
  266. 古寺宏

    古寺委員 そこで、この農林省の構想を実現するために農業者就業改善対策協議会、こういうものを農林、労働、通産の三省で発足することになっている、こういうふうにいまいわれておりますね。これはいつごろから具体化するわけでございますか。
  267. 井上政行

    ○井上説明員 昨年の八月から農林、通産、労働三省の共催で、離農円滑化対策連絡協議会というものを開催をいたしております。その名称を、来年度はやや広げまして、ただいま御指摘のような農業就業改善対策協議会といったような名称にしようということでございまして、まあいわば現在ありますものをさらに発展をさせようという考え方でございます。
  268. 古寺宏

    古寺委員 そうしますと、これもまた労働省とダブるわけですが、労働省はこの農業者就業改善対策協議会というものについては御存じでしょうか。
  269. 住榮作

    ○住政府委員 ただいま農林省から説明がありましたように、私ども従来からやっております離農者のための協議会、これは承知しておりますが、将来の構想についてはまだ聞いておりません。
  270. 古寺宏

    古寺委員 そうしますと、農林省がおっしゃっているところの出稼改善特別対策というのは、これは離農者だけが対象でございますか。
  271. 井上政行

    ○井上説明員 離農者だけを対象とするものではございませんで、やはり将来とも農業を続けながら出かせぎにたよらざるを得ないような人々をも対象として考えております。
  272. 古寺宏

    古寺委員 そこで、現在予算要求をしているというお話でございますが、出稼福祉センターというものは一体どこへつくるわけでございますか。
  273. 井上政行

    ○井上説明員 出稼福祉センターというものについては、各末端の意見を聞きますと、いろいろな意見があるようでございます。その要望の程度、その利用者の将来の規模、あるいはそれをどこに、どういうふうな形で、どのくらいの規模のものをつくったらよろしいか、こういう問題については今後大いに検討を要する問題があろうと考えまして、農林省から要求をいたしております予算の要求の中では、来年度はこれについて調査費をいただいて十分調査研究をしようということを考えておるわけでございます。
  274. 古寺宏

    古寺委員 次に、景気浮揚対策として約五千億の公共投資が発表になっておるわけでございますが、建設省にお尋ねしたいのですが、この建設関係についての地方配分、これについてはいつごろ決定になる予定であるか、お尋ねしたいと思います。
  275. 森田松仁

    ○森田説明員 補正予算につきましては、今回の計上にかんがみまして各地方公共団体からも早急に配分してほしいという要求がございます。それで、省といたしましては、現在すでに設計の審査などの実質的な手続を大半完了しておりまして、補正予算の成立後直ちに配分したい、こういうふうに考えております。
  276. 古寺宏

    古寺委員 その際に、地方で非常に心配している問題は労務賃金の問題です。東京等におきましては、二千円以上が積算基礎になっております。ところが地方へ参りますと、千二百円とか千三百円くらいの積算基礎になっている。こういうことでは景気浮揚策ではなくて、ますます地方の労務者の生活というものは苦しいことになるわけでございますが、このいわゆる積算基礎はどういうふうになっているわけですか。
  277. 藪崎忍

    ○藪崎説明員 公共工事にかかる設計労務単価につきましては、四十五年度までは、これは昭和三十八年からでございますけれども、いわゆる五省協定——五省といいますのは大蔵、農林、運輸、建設、労働、この五省協定に基づきまして労働省の行ないます屋外労働者職種別賃金調査の結果に基づきまして、設計労務単価標準額を決定してまいったわけでございます。ところが、このような方式につきましては若干問題がございましたものですから、さらに改善を加えるために昭和四十六年度から三省協定、これは農林、運輸、建設三省が直接調査をいたしまして、そしてその調査結果に基づいて地域別、職種別に賃金をきめるという形をとってきております。この調査は、九月十五日から十月十五日までの一月につきまして調査いたしまして、実際に支払われます賃金のいわゆる賃金台帳、これがまあ決定帳簿でございますが、それから調査票に転記いたしまして、そして実態を把握する。その実態調査の結果に基づきまして地域別、職種別に設計労務単価をきめていくという方式をとっております。なお、この設計労務単価につきましては、この標準額に上下二〇%のアローアンスを設けまして、地域の実情——地域の実情といいますのは、支払い賃金の実態でございます。その他工事の施工時期等を勘案しまして、このアローアンスの範囲で適正な積算をやっていくというようなたてまえになっております。
  278. 古寺宏

    古寺委員 いままでは出かせぎに来まして青森に帰りますと、失業保険を千八百円くらい受給するわけでございます。ところが労働省が入った、いわゆる五省協定ですか、この線で積算された賃金というものは千二百円から千三百円でございます。こういう非常に地域の実態に合わないために、おそらく今度は五省協定ではなくて三省協定になったと思うのですが、この三省協定の中には労働省が入っていないわけです。いかに労働省労働者に対する調査というものが不十分であるかということがこの事実を見てもわかると思います。さらにまた農林省は、出かせぎ者が激増しており、そしていま就職をする先がないので、非常に困っておる。それでこれからいろいろ出かせぎ対策を講ずる。減反、休耕が行なわれておるわけです。こういうことでは出かせぎ者はいつまでたっても浮かばれないわけですね。よくなるわけがない。こういうことについて労働省と、それから農林省から、もう一ぺん今後の抱負なり決意というものをひとつ承りたいと思います。
  279. 住榮作

    ○住政府委員 必ずしも所管でないので恐縮でございますが、従来公共事業の中における労務費の積算、これは民間の屋外日雇い労働者賃金調査に基づきまして関係各省で御相談の上、労務費を算定しておったわけでございます。その後、ただいま建設省から御説明があったところでございますが、公共事業に払われております賃金、こういうものをもとにして労務費のコストをきめる、こういう関係から五省協議の中から労働省がはずれていった、こういうように考えております。  いま先生の御指摘もございましたように、大体出かせぎ労働者が帰って受けます失業保険金は最高額の千八百円が多かろうと思います。そこで私ども非常に困っておりますのは、そういう高い失業保険金があるために、帰ったところでの再就職と申しますか職業紹介が円滑にいかないというようなことで、むしろ失業保険金が再就職の妨害になっておるのじゃないか、こういうような悩みを持ってもおりますが、いずれにいたしましても基本的には、それは地域間の賃金格差の問題にも基因しているところでもあろうかというように考えております。
  280. 井上政行

    ○井上説明員 先生指摘の賃金格差の問題、いわゆるPWの問題は、実は私の所管ではございませんので責任ある御答弁というわけにはまいりませんけれども、この問題、公共事業の予算の執行の問題とも関連をいたしますいろいろ根の深い問題かと思いますけれども、確かにしろうと目で見まして、いろいろな問題点を含んでおろうかとも思いますので、これからあと関係の部局とも御連絡をとってみたいと思います。  農業者の出かせぎ問題、非常に困難な状態のもとにございます。この基本的な解決考え方としては、やはり出かせぎしないでも済む農業政策、そして農業経営を実現するということでもあろうかと思います。この問題については、農林省をあげて取り組まなければならぬ問題とも思いますが、やはり現実の問題といたしまして、早急には出かせぎの解消を目ざすというのがなかなかむずかしいということを頭に置きまして、私ども先ほどから御説明申し上げておるような考え方で、現にいろいろな制度の谷間にある農業者に対して、制度の恩恵あるいは国なり県なりの保護というものが実際に受けられるような仕組みなり政策というものを考えて、いまいろいろ研究をいたしておる状態でございます。これからあと十分この問題について各省とも協議をし、できる限り国全体としての対策の推進をはかるべく努力をしてまいりたいと思います。
  281. 古寺宏

    古寺委員 それでは時間でございますので、これで終わりますが、建設省においてはこの賃金格差、東京と地方都市では非常に格差が大きいわけでございます。こういう面を十分に検討いたしまして、実態に即した積算をしていただきたい。そうでなければせっかくの公共投資が景気浮揚策にはつながっていかない、そういうふうに考えますので、その点を要望いたしまして終わります。
  282. 増岡博之

    増岡委員長代理 次に西田八郎君。
  283. 西田八郎

    西田委員 通産省見えてますか——それでは審議官にお伺いしますが、今度日米の繊維政府間協定が締結されました。特恵の供与、そして七月の業界の自主規制、続いて今度の自主規制ではいけないということで政府間協定、こういうことで繊維はトリプルパンチを受けまして、相当な被害をこうむっておるわけでありますが、その被害に対して、一体通産省として、労働者数においてどの程度、また企業数においてどの程度縮小される、あるいは転廃業というようなものもあろうと思いますが、そうしたものについて掌握しておられるかどうか、もししておられましたら、その数字的なものをお聞かせをいただきたい。
  284. 牟田口道夫

    ○牟田口説明員 お答えいたします。  ただいま先生指摘のような点につきましては、今回の政府間協定の実施に伴いまして最も気をつけてその実態を見きわめ、その対策に万全を期さなければならない点と考えます。  まず、今回の政府間協定を行ないました場合に、どのような影響があるかということにつきましては、これは実は前の自主規制のときに、先生承知救済措置というものをいたしましたが、このときに救済措置を積算いたしましたときに、おのおの業種ごとに積み上げていたしまして、全体でマクロでは出さなかったわけでございますが、今回はさらにそれが実は、先生承知のようにカテゴリー規制になっておりますので、ぱっと全体を出すと危険でございますので、目下鋭意業種別、品目別に詰めておるところでございます。
  285. 西田八郎

    西田委員 いまおっしゃった、自主規制のときに四万八千六百台の織機を買い上げるということで計算されましたのが三万四千百六十七人、それで概算いたしますと、織機一台当たりが結局〇・七人ということになると思うのです。それと、今度は逆算しまして、通産大臣の発言等から考えますと、十万台の織機を買い上げるということになりますと、織布関係で七万人という数字が出てくるわけですが、そういう数字を一応想定していいかどうか。
  286. 牟田口道夫

    ○牟田口説明員 前の自主規制のときの買い上げ織機台数にいま先生のおっしゃった数字をかけますと、そのとおりになると思いますが、今回の十万台というのは、実は十万台見当ということでございまして、それから、これが実は今回の自主規制の分と、本来多少過剰ぎみではなかろうかと思われる分とを合わせて含んでおりますので、はたしていまの数字をかけてよろしいかどうか、いまのところ、目下鋭意検討中でございます。
  287. 西田八郎

    西田委員 鋭意検討中なんで、資料のないところで伺ってもしようがない、押し問答になるわけですが、労働省は一体どれくらいの計算をしておられるのか、まずそれからお伺いしたい。
  288. 住榮作

    ○住政府委員 実は、全体の影響する数につきまして、私どももいろんな理論上の計算もある程度できるかと思うのでございますが、なかなか従来の経験からいいますと合致もしない。そこで、ただいま通産省から説明がございましたけれども、織機を買い上げた場合、〇・六人ないし〇・七人の影響があったと、それはある程度の計算だと思うのでございますが、実際にはそのような数では出てないんじゃないか、こういうようにも推定されるわけでございます。それから、経営者の方の御意見等を聞きますと、今度の措置によって生産が三〇%ほど影響を受ける。人員に対する影響が二〇%くらいになるんじゃないか。あるいは全繊の試算した数字も私ども聞いております。そういうように、いろんな実は数字をいまの見通しとして聞いておるわけでございます。それなりに私どもも計算しておるのでございますが、と同時にひとつ実際の調査もしてみぬといかぬということで、過剰織機の買い上げ等の離職状況を調べておるのでございますが、これが廃業した場合とそうでない場合との出方が非常に違っております。そこで、今度の織機の買い上げにつきましても、ほんとうに事業が休止になるのは一体どういうことになるのだ、あるいは一部縮小になるのはどういうことになるんだ、こういうようなことによっても数が非常に違ってくるんじゃないか、そういうようなこともございますので、実は慎重にやっておるのでございますが、できるだけ私どもは、一つは実地の状況がどうか、それからそういう実地の実際の見通しがどうか、それと労使の見方がどうだ、こういうことを参考にして、いま検討しておるのでございますが、いずれにいたしましても、これは来年度予算編成にも関係あることでございますので、私どもといたしましては、できるだけ早く労働省としての数字、これは通産省と十分連絡をとってもやるわけでございますが、労働省の数字をまとめようということで鋭意努力をしておる最中でございます。
  289. 西田八郎

    西田委員 いま通産、労働両省からその被害状況をとにかくつかみがたいということで、ことばを濁すというと悪いかもわかりませんが、明確に答えてもらえないのですけれども、少なくとも、私は、大体どれくらいというものは、つかんでおられると思うのです。しかし、それを公表することによってそれだけ出るというと、あとでまたしっぺい返しが来るといかぬというので慎重を期しておられると思うのです。ただ織機十万台というものが、それは政府間協定だけではないけれども、その以前の自主規制ということも、やはり日米繊維交渉から来た問題だし、その場合、特繊法に基づく構造改善という問題もある。しかしこの関係では、私はあまりたくさんの織機の廃棄申し込みはなかったと思うのです。したがって、一連の今度の日米の政府間交渉といいますか、繊維交渉から来る、やはり先行き不安、そうしたことから転廃業するものがふえてくるし、そうして十万台というような大台に一気に乗せたのではなかろうか、政府も大体そういう見通しであろうと思うのです。そうしますると、その十万台というものを基礎にして計算をいたしますと、これが〇・七人ということで織布関係で約七万人、そうしますると、それとの関連を持つ紡織——紡績ですね、さらにはそのあとの染色あるいは二次加工等、総体を労働者数概算で計算いたしますと、約二十八万八千人、三十万相当数にのぼるというふうに考えられるのですが、その辺のところの判断で、私はそういうふうに思うのですが、どういうふうに判断されるか。ほぼそのくらいだというふうにお考えになるかどうか。これは労働省も通産省も、できたらひとつ聞かしていただきたいと思う。
  290. 住榮作

    ○住政府委員 いろいろな試算ができるかと思うのでございます。さっきもちょっと申し上げましたが、その買い上げの買い上げ方によっても影響する度合いが違ってまいりますし、それからそれが二次製品なり、あるいは染色なり、あるいは糸の関係にどういう影響を及ぼすか、これは実はいろいろな係数が考えられるわけでございます。私は、先生のこの数字はどうだという意味も、別に根拠のない架空の数字だ、こういうように申し上げているわけじゃないのでございますが、ただ私はそんなには出ない。そんなにはということは三十万ということでございますが、そんな数にはならぬのじゃないだろうか、現在のところそういうように考えております。
  291. 牟田口道夫

    ○牟田口説明員 先生指摘の十万台を根拠にして、それから〇・七人をかけて同様の他の業種を推測するというのも一つの方法であろうかと存じますし、また先般来、全繊同盟等が試算いたしておりまする全体の輸出の減り方を二二%とかあるいは三〇%とされまして、それから全体を推測していくという方法も一つの方法だろうと思いまするが、私どもはこういうのはやはりきめのこまかいポイントをついた対策でなければいけないのじゃないかと思いまして、業種別にあるいは先ほど申し上げました品種別に詰めてまいりたいと存じまして、人員の関係につきましては、労働省が御専門でもございますので、そちらともよく打ち合わせて、なお詰めたいと考えております。
  292. 西田八郎

    西田委員 安定局長、三十万にのぼらぬとおっしゃった。それでは幾らと考えておられるか。自分の考えがなかったら、三十万を批判するわけにいかぬと思うのです。幾らと考えておられますか。
  293. 住榮作

    ○住政府委員 私はその三十万の根拠を否定しているものではないわけでございます。そこでいろいろ雇用関係を見る場合に、やはり雇用需要としての減少、こういう見方もあると思うのです。これはある程度いろんな係数その他で理論的に生産がかりに三〇%落ちた場合に、雇用需要としてはどれだけ落ちるか、こういう問題と、それと実際にこれは入職、離職の関係先生承知のようにございますので、たとえば現在とられておりますように中途採用の停止だとか、あるいはいろいろ問題はあるのでございますが、臨時と申しますか季節的な労働者の手控えとか、そういう意味でのそういうものを総合した雇用需要の減、こういうような見方と、それから私ども離職者対策としてやっていく場合の現実に出てくる離職者の数、こういうものをどう見るか、これもそれなりの見方があると思うのでございます。それで私ども現実にどれだけの離職者が出てくるであろうか、それに対してどのような対策を講じていくか、そういう場合にやはり地域別なり性別なり年齢別とかそういう推算もしなければいかぬわけでございます。そういうことで、それじゃおまえどれだけの数字を考えておるのか、こういうようなお話でございますが、先ほども申し上げましたように、そういう点はやはりいろんな面から判断しませんと、軽率に判断しますと、非常に問題もございますので、現在慎重にそういう数字をはじくべく努力をいたしておる、こういうことでございます。
  294. 西田八郎

    西田委員 これもどうやら水かけ論になりそうですけれども、おそらく私は対策を持っておらなければ、予算の組み方もない。したがいまして、ある程度の数字は持っておられても、いま公表することによって非常に問題を起こすということでの配慮からのわかったようなわからぬような答弁だと思うのですけれども、それは了承するといたしまして、これは潜在的に出てくるのが、離職という形で出てくるのが私の考えでは三十万近く出てくるのではないかと見るわけでございます。そのほかに織機がぽんぽんつぶされるのがテレビ等で放送されておりますから、こんな工場におったのではたいへんだということで、かけ足でやめていく工員も産地においては相当あるわけです。そのことの防止策に手を焼いているという状態も生まれてきておるわけですから、そういう潜在的なものも含めれば、私はそれぐらいな数字が、いわゆる三十万そこそこの数字ではきかないのではないかという気がするわけでありますけれども、この数字が根拠にならないと、実はこれからの対策というものも立てにくいと思うのですけれども、今度はそういう点の対策についてお伺いをしたいわけです。  問題はどういう対策を立てておられるか。たとえば織機一台について二十五万円出す、そしてそれを買い上げる。しかし買い上げた金は全部業者に入っていくわけです。ところが、そこの工場が企業を縮小する、あるいは転業するというような場合に、そこに残されておる労働者は一体どうなるのだ。その織機を買い上げてもらった金では、一切の補償金はもらえないわけです。一番ばかを見るのは労働者だということになるわけですね。一体その場合にどういう措置考えておられるのか。これは未曽有の時期にきておると思うのです。ということは通産省あたりでは、こういう時期がなかったら繊維の構造改善なんてやれぬのだ、だからこういう機会にという声も一部にあるようですけれども、私は直接聞いたわけではないから、そういうことがあったとは言いませんけれども、少なくともそういう姿勢でおられるようだとするならば、これは繊維産業の重大な、構造改善とそれから危機に瀕しておるわけですね。そういうときに私の言うような三十万、それ以上の労働者が転職を余儀なくされる、あるいは失業を余儀なくされる、すなわち職を離れるという、こういう問題について一体どういう対策をお立てになっておるか、ひとつ伺いたい。
  295. 住榮作

    ○住政府委員 実は内閣全体といたしまして、通産大臣を本部長とする対策本部ができております。そこでいろいろ今回の政府間協定に伴う対策が立てられるわけでございますが、われわれ労働省の立場として見ますと、退職をどのようなかっこうといったら、ちょっと語弊がありますけれども、退職条件をどのようにするかという問題、これは先生指摘のとおり一つあると思います。それから離職を余儀なくされた方々に対する離職後の対策をどのようにするか、この問題につきましては従来非常に手厚い離職者対策といたしまして、よく例にあげられます石炭鉱業の離職者に対する措置とか、駐留軍離職者に対する措置とか、こういうことがございますが、そういうようなものを十分頭に入れ、それから繊維産業の労働者という特性、これも考えに入れまして適切な対策を講じなければならない、こういうように考えております。
  296. 西田八郎

    西田委員 その適切な措置を講じなければならぬというのは、もう予算委員会で首相からも言われておることなんです。だからもう労働省にはその指令がいっていると思うのです。だから問題は、適切な措置とはどんな方法かということなんです。たとえば繊維産業の労働者というのは二十五歳までの女性が非常に多いわけですよ。そうすると、一たん離職をしますと、次の転職先というものは幾らでもあるようであって、なかなかないのです。これは皆さん簡単におっしゃる。しかし、それはなかなかないのです。したがって第三次産業に流れてしまうのですよ。これはゆゆしき青少年問題にもかかわるわけです。私どもそういう面で非常に頭を痛めて、関係の団体とも話し合って、また企業者とも話し合って、そういう問題の起こらないようにという努力をしてきておるわけですけれども、なかなかこれは食いとめられないのです。そういう問題もあるから、やはり適切な職業の再訓練であるとか、あるいは就職あっせんであるとかいうような措置が講じられなければならぬし、そのためにはその期間、自分だけ、それは何ぼひとり身といえども食わぬわけにはいかぬのですから、やはり食っていくだけのそういう生活保障というものも考えていかなければならぬわけですよ。ですから、そうした方法をどういうふうに考えておられるかということが一つです。もう一つは二次製品関係の縫製あるいはメリヤスという関係に入ってまいりますと、家内労働者が相当多数にのぼっておるわけです。これはおそらく通産省でもチェックにのぼってないと思うのです。労働省でも、この家内労働法の施行がつい最近のことでありますから、実際に的確に把握しておられない。特に最近のように若年労働力の不足という関係から、都市においてのそうした事業の成り立ち要件が、立地条件が非常に悪くなってきているので、最近は農村の山村僻地までそうした工場の建設が進んでいるわけです。そうしますと、せっかく過疎地帯における就労の機会が与えられた人が職を失うということになってくるわけです。ところが、そういう人たちははたして離職と見るかどうかという問題が出てくるわけです。これはよほど適切に措置していかないと、公正妥当な救済ができない。一面においては救済されても、一面においては救済されない方々が出てくる。しかもその人たちの数が非常に多くなってくるのではないかという問題があります。  幾つかありますけれども、もう一つ重要な問題は、大手の関係で、あるいはその企業に労働組合等が存在をして、労使間で退職金規定があるなり、あるいは中小企業退職金共済会に入っている場合はいいですよ。ところが入っていない場合、しかも業者がこれから伸びようと思って、いろいろな設備投資をしておいたところが、もうがたっときてしまってどうにもならぬというようなところでは、退職金はおろか、給料も払えないという事態が生まれてくると思う。そういうものに対して一体どう処置をしていくのかという問題があると思う。したがって、こういうような問題について労働省としてお考えになったことがあるか。またそれに対する具体的な対策というものを実際に立案しておられるのかどうか、ちょっとお伺いしたいと思うのです。  特に私が申し上げておきたいのは、駐留軍にしましても、炭鉱離職者にしましても特別措置法ができました。それはやはり世帯主が中心になった労働者であったからという見方であったと思うのです。しかし労働力という関係においては、あるいは人間という関係においては、世帯主であろうと、個人であろうと、その生活の必要とする経費の額の差こそあれ、生きていくということについての条件は変わりはないと思う。したがって、独身者だからといって軽率に扱うことは許されないと思うのです。その点どうですか。私の申し上げたような点をどう考えておられるか。
  297. 住榮作

    ○住政府委員 先ほども申し上げましたように、離職後の対策、石炭関係労働者とか駐留軍関係労働者、これは離職者対策としては一般のものよりもかなり進んだ対策になっておりますので、そういうことを考えて、しかも繊維産業から出てくる離職者の実態、それは先生の御指摘のように、女子の場合あるいは家内労働的な場合、特に失業保険の適用のない人たちもおられるわけでございます。一般的には、それは失業保険の受給期間中は失業保険金、こういうことになるのでございますが、失業保険金を受けられない者につきましては、やはり生活を維持しながら求職活動をせぬといかぬわけですから、そういう人に対しては、たとえば手当を考える。もちろんそういう措置も含めて、実態に即して、それは石炭なり、駐留軍の例を参考にしながら、目下御指摘のような面にわたりまして対策を作成と申しますか、検討をいたしておる段階でございます。
  298. 西田八郎

    西田委員 検討をしておられる段階なら、その検討の結果はいつごろ出てきますか。
  299. 住榮作

    ○住政府委員 少なくとも所要の法律措置が必要ということになれば、これは次の通常国会、こういうことになります。したがって、それは予算の裏づけの必要もあるということになれば、予算の措置もしておかぬといけないと思います。そういう意味で、時期というものは、申し上げるまでもなく限られておると思います。検討しておるというのは、いつまでも検討しておるということではなくて、予算の時期も近づいてまいっておりますし、そういう意味で検討は急いでおる次第でございます。
  300. 西田八郎

    西田委員 たまたま、いま法制化ということばが出ましたけれども、その特別措置をする用意があるのかどうか、そういうことも考えておられるのかどうか、これはひとつ次官からお答えいただけませんか。
  301. 中山太郎

    ○中山政府委員 御指摘いただきました点は、さきの先生に対する御答弁で申し上げましたとおり、通産大臣を長とする臨時繊維産業対策推進本部ができておりまして、労働省から私も出ております。御案内のように、この輸出ライセンスの受注状態、いろいろな問題で、ここ一カ月ぐらいで大体結論、見通しというものがはっきり出てくるのではないか、そういう視点に立って、こういうふうな繊維関係の方々に対する政府の政策というものを基本的に打ち立てたい、こういうふうに考えておりますので、今後ともよろしく御指導いただきたいと存じます。
  302. 西田八郎

    西田委員 その、よろしくというのではなしに、立法化する意思があるかどうか、特別措置を法制化して講ずるかどうか。
  303. 中山太郎

    ○中山政府委員 その特別措置も含めて検討さしていただきたいと考えております。
  304. 西田八郎

    西田委員 私は、特にこの席上をかりまして要望しておきたいのですが、特別措置はぜひ立法化によって講じてもらいたいということを要請をいたします。ということは、今回の犠牲といいますか、こうした被害が出てくるということは、これは再三申し上げたことで、政府側としてはそうじゃないとおっしゃるかもわからぬけれども、少なくとも政府間協定をすることによって——その協定自身もやはりいろいろな問題があったわけです。しかしその協定をすることによって、働きたい意思のある人が職場を失う。ということは、憲法二十七条による労働する権利というものを政府みずからが剥奪したことになります。同時に憲法二十七条の働く義務ということに対しても、働きたい一人にその職場を与えなかったということになるわけでありますから、当然これは政府の行なった行為によって起こってくる問題でありますから、どんなことがあっても、これは政府の責任において解決しなければならぬ。  そこで申し上げたいことは、労働者がお互いに共済の意味を持って、あるいは使用者も加わって失業保険というものが法制化されて失業保険制度があるわけですが、そういう保険の金をこういう政府の失敗によって起こってきたところへ使うということは、私は許されない。したがって、そうした金は政府が特別の措置を講ずべきであるというふうに考えることと、もう一つは、先ほど言いました繊維労働者の特殊性から考えましても、二年ないし三年待てということは、きわめてむずかしい問題だというふうに考えられるので、その場合には一時的な救済措置、たとえば企業から払われる退職金に相当するものが考慮されるというような点をひとつ要望したいわけでありますけれども、そういう考え方について、今度は局長から、そういう構想があるかどうか……。
  305. 住榮作

    ○住政府委員 先生の御趣旨、わかるのでございますが、一つは失業保険受給者、要するに離職した方が失業保険受給資格がある、こういうことであれば、やはり失業保険のたてまえは、そういう事態に備えるための労使あるいは政府も負担いたしましての保険でございますので、私は、受給資格のある方々に対しては、まず失業保険で対処する、これは御納得いただけるのではないかと思います。ところが、失業保険受給者でない方々、これは五人未満の事業所で働いておられる方もおりましょうし、家内労働的な形態で働いておられる方もおられるわけであります。そういう方々に対する離職者対策、これは私は一般会計に当然なると思うわけでございますが、いずれにいたしましても、対策としては、どういう対策を立てるか、そしてそれに必要な経費を計上する。これは政府としての当然の責務であろうかと思っております。
  306. 西田八郎

    西田委員 そうしますと、やはりそれは現行の失業保険法が適用できない人ができてきたりした場合は、法の特別措置というのは必要になってきますね。どうです。
  307. 住榮作

    ○住政府委員 現在、離職した場合に失業保険の受給資格のない方につきましても、これは対策の必要であるということは申し上げるまでもないことでございます。そういう方々をそれじゃほうっておいていいかということには決してならない。したがいまして、その金というものは、財源というものは、どういうことだということになりますと、それは失業保険から手当てをするということは筋違いじゃないか、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  308. 西田八郎

    西田委員 だから失業保険で筋違いで、しかもそういう金を払うということになると、一般財源ということになるわけでしょう。一般財源では現在それを適用する法律はないわけです。何か法律がありますか。
  309. 住榮作

    ○住政府委員 現在、御承知のように中高年につきましては、四十五歳以上でございますが、これは受給資格のない方々でも、そういう対象にしておるわけでございます。それが特定地域あたりになりますと、年齢を下げるとかなんとかいう問題がございます。そのほかに職業転換給付金制度がございまして、これは現在三十五歳以上の者を対象にいたしております。しかし、それで足りるかどうか、こういう問題になるわけでございます。それからまた、かりに失業保険の受給資格者であっても、最長期が十カ月、さらに特定地域で三カ月延ばすということがあっても、その期間に就職できる方はいいわけでございますが、その期間を徒過してなお再就職ができない、こういう方々に対しても、それは失業保険の金ではなくて一般会計の金で対処する、こういうことになろうかと思います。
  310. 西田八郎

    西田委員 時間ももうなくなってしまったのですけれども、いまおっしゃるように、準拠する法律もないのに支払いようがないでしょうが。失業保険法に基づいて行なうものは保険法があります。ところが保険資格を持っていない者、無資格者に対する措置というものは一体どれによるのか。そうすると、従前の例によりということで、炭鉱離職者なり駐留軍離職者に該当するものは、これは法律でははっきりしているわけですよ。炭鉱離職者については、駐留軍離職者については、ということで明記されているわけです。そうすると、そこへ繊維労働者をつけ加えるというのは、ちょっと変なことですよね。そうだとするならば、それに対する準拠する法律をつくらなければ、少なくとも国民の血税である予算というものを一般会計といえども使うわけにいかないと思うのです。ですから、私はやはり当然ここに特別措置というものが出てくるのではないかというふうに考えて申し上げておるわけです。これは準拠する法律を私は知らないのですが、安定局長、何かあるのですか。中高年齢のやつは四十五歳ですし、いまおっしゃったのは三十五歳ですね。ところが繊維の労働者というのは、御承知のように非常に年の若い者がいるわけです。二十歳未満の者も多数今度の犠牲になると思うのです。そういうものに対して何か適用する法律があったら教えてください。
  311. 住榮作

    ○住政府委員 現行の制度といたしましては、先生ただいまお示しになられたような制度になっております。しかし法律のワク組みといたしましては、雇用対策法に基づく職業転換給付金制度というのがございます。これは政令で要件を定めることになっております。したがいまして、現在の法律上の根拠で絶対にやれないかということになりますと、雇用対策法に基づく職業転換給付金の政令の支給要件を検討すればやれないことはない、こういうことになるかと思います。
  312. 西田八郎

    西田委員 それはもうゴリ押しですよ、そういう法律解釈は。職業転換給付金というものと、やはりこういうために離職をしていく者に対する生活を保障する意味での失業保険というものとは、それは全然別個です。そういうものを無理にそこに引きつけようとされると、私は問題が起こると思う。こういう重大な危機に一つの産業が瀕したわけだ。したがってそれには当然その措置を講ずべきだ。私はこれは要求をしておきます。  次に、もう一つ要求をし、回答がいただければと思うのですが、こういう問題は、やはりいつもえてして業者側、すなわち経営者側のサイドで問題が処理される場合が非常に多いわけであります。たとえば一つの工場が倒産をする、そこには未払い賃金なり退職金も、協定がきちっとあって、規則があって、退職金も支払うべき義務がある。ところが会社が倒産をしたのだからということで、せっかく先取り特権を与えられても、結局担保されているものは、その債権者に先取りをされてしまうということで、労働者は最後は泣かなければならぬという事例を私は幾つも扱ってまいりました。今度の場合も、やはりそういう問題が必ず起こってくると思うのです。したがってそういうことのないように、やはり労働者の意見が十分反映をされ、そしてこれは労働省ならできると思うのですけれども、これは労働者の分だということで、特別ワクの設けられるような方法というものも考えてもらいたい。その点を特に要望したいわけでありますが、この労働者側の意見を吸い上げる、たとえば繊維労連だとか全繊同盟だとか、これは組織の数がだいぶ格差がありますから、どちらをおとりになるか、労働省の判断によりますけれども、やはりそうした全国的な労働者の団体、そういうものと事前に十分協議をしてほしいと思うのですが、そういう用意があるかどうか、ひとつお伺いをしておきたいと思います。
  313. 中山太郎

    ○中山政府委員 御指摘の点に関しましては、労働省といたしまして十分その線に沿って、労働組合の方々からも御意見を聴取させていただいて、善処をいたしたいと考えております。
  314. 西田八郎

    西田委員 それでは終わります。
  315. 増岡博之

    増岡委員長代理 この際、御報告申し上げます。  第六十六回国会の閉会中に、高知、愛媛の両県及び富山、新潟の両県にそれぞれ委員を派遣いたしました際の調査報告書は、同国会の委員会議録附録に掲載してありますので、御参照願いたいと存じます。  次回は明後十一日木曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十八分散会