○
佐野委員 それから問題は、時間もありませんのでひとつ要望という形で二、三述べさせていただきたいと思いますが、先ほど来のお話を聞いておりまして、私やはり
住宅公団の性格、
住宅公団の使命、
住宅公団の発生の
沿革、これが相当大きく変わろうとしておるのじゃないか、たいへんな危険な道を歩いておるのじゃないか、こういうことが気がかりになってくるわけであります。
そこで私、本
委員会におきましても討議したことを思ってみますと、たとえば
昭和四十一年、あき家に対するところの
家賃値上げの問題が出てまいったのであります。このときにおける瀬戸山
大臣と私たちの
質疑の中で、
住宅局長、やはり記憶にとどめておいていただきたいのは、先ほどの
質問に対しましても、特別いろいろな補修費がかかる、この部分を
値上げに求めるのだ、こういうように言っておるわけですけれ
ども、しかしあのときの審議の状況におきましては、二割は補修費だ、八割は新しく
建設する
住宅団地の費用に回るのだ、このように言っておられるわけですね。先ほどの
質疑を聞いておりますと、みんながみんな団地に入る人たちの修繕なり模様がえなり、あるいは台所なり風呂場なり、そういうところに向かうのだという御
説明だったと思うのですけれ
ども、その点ひとつまたよく
検討していただきたいと思います。
と同時に、そういう
質疑の中において一番心配されましたのは、あき家
住宅の
家賃を上げる。そういたしますと、一つの団地の中においてあき家の人たちが上がってまいる。五年たったものから上げていくわけですから、いろいろ団地の不
均衡が出てくるのじゃないか。不
均衡が出てくることを予期しながら、そういう結果として居住者のいわゆる
公団家賃の
値上げを誘発するのじゃないか。誘発するのじゃなくて、そのことをすでに予想してこういうあき家
住宅の
家賃の
値上げを
決定したのじゃないか、こういうことが
質疑の中で大きく論争されたわけです。このとき瀬戸山
大臣は、
公団法の
公団の使命、これに基づいて絶対そういうことはない、ですから勘ぐりはやめてもらいたい、これはあくまであき家の皆さんに対してある程度の補修をさせてあげたい、八割は新しい団地の
建設費を低くするのだ、こう言っておられたわけですね。そのいきさつから考えてみましても、やはりそのときでも私たち問題にいたしましたのは、皆さんも
住宅公団法の
規則の第十条を常に
説明にあげておられるのですけれ
ども、これは「
家賃及び敷金の
変更等」という題目がついているのです。ですから
家賃の値上がりということをうたっているわけじゃないのですね。この点をひとつ誤解を解いてもらいたい。第九条にはいわゆる
家賃の
算定方法を明確にしており、十条には例外
規定を設けておる。この例外
規定は、皆さんのとかく先ほど来の
説明に出てまいりますところの第一号の「物価その他経済事情の変動に伴い必要があると認めるとき。」というこのことは、現在における物価その他の状態の中で
勤労者の困窮する
住宅を充足するのだという、この趣旨から考えてまいりますと、物価が上がる場合は
家賃を下げてもよろしい、こういう場合にも用意をされておる。この
規則ができました
昭和三十年八月二十五日の当時における考え方はこれから出発したのじゃないですか。上げるための
規定を設けておるのじゃなくて、逆に下げる場合もある。その場合は下げなさい。このことが誤解されておるのじゃなかろうか。私が先ほど述べましたように、三十四年の四月三十日に、四千円で出発したものがわずか二、三年にして五千円に上げなくちゃならない、
勤労者の平均所得賃金その他から見てまいってむちゃである、下げなさいという行管庁の勧告が、この
委員会の中において出ておるでしょう。この勧告が出てまいりましたのも第十条の第一号が基礎になっておるわけですね。だから、そういう勧告を皆さん受けられた、そのときのいろいろ苦労したことは
公団十年史の中にちゃんと記録されておるでしょう。皆さんあのときの状態はどうであったか。だから
公団の使命なり
公団の役割りというものを、物価云々、だから
値上げしてもよろしいのだ、逆に値下げしてもよろしいのだという、二つのものが第十条に含まれておるということを、やはり留意しておいていただきたいということが第一点です。
きょうは時間がありませんからそういう問題点だけを
指摘して、また別の機会に論議を深めさしていただきたいと思います。
ですからその場合におきましても、不
均衡是正ということになってまいりますと、結局現在の居住者の
公団家賃を上げなくちゃならぬじゃないかという危険性があることに対して、そんな勘ぐりはやめてもらいたいと、瀬戸山さんがことばを荒々しく述べているわけですね。しかし、やがて不
均衡是正という問題がここに出てくるのじゃないか。この場合はどうなんだ。去年の場合に、第二回の
値上げがありましたね。四九%という驚くべきあき家
住宅の
値上げが
昭和四十五年の四月一日付をもって行なわれましたね。このときにおきましても国会の中で論議されておるわけです。だから、そういうことになってまいりますと、やがてこれは
公団の現在居住しておる人たちの
値上げへと発展していくのじゃないか。不
均衡是正ということになってまいりますと、こういう危険性をもすでに包含しておるのじゃないか。ですから、この第二号における不
均衡是正ということも、立法の趣旨に従って、
公団を設立したときの状態を考えてやはり考えなくちゃならぬじゃないか。
と申し上げますのは、局長さん、そのころから公務員
住宅は
建設されてまいったわけです。公務員
住宅は公務員の
住宅困窮者に対して提供する。公務員
住宅というのは御存じのとおり無利子の金が入っておるわけですね。無利子の金が入っているから非常に安い。国有地を使っておる。地代の計算も用地費の計算もやらない。しかも無利子の金がここに投入されて、これは
家賃には影響がない。となってまいりますと、非常に低廉なる公務員
住宅というものが出てまいっておるわけでしょう。ですから、今日における公務員
住宅は、国、地方全部を合計いたしますと
公団住宅を上回っておるわけでしょう。
公団が十六年間かかって
建設をしてまいりましたところの
建設戸数よりも、地方公共団体なり国が公務員の給与
住宅として
建設しているのは、ほぼ匹敵か、それを上回っている。しかも金額においては安いわけでしょう。安くしなければ公務員としての任務を果たせない。現在の公務員の給料、公務員の実態から見て、このような
家賃でなくちゃならないのだという一つの前提のもとに行なわれておるわけでしょう。
そうなってまいりますと、そういう公務員
住宅に対して、
公団の原価主義でいく場合におきましてこれが上回ることもあり得るではないか。そういう場合には不
均衡是正という措置をとってもよろしいじゃないか。原価主義であるけれ
ども、不
均衡是正、いわゆる安いほうに――国民、
勤労者の
住宅困窮者に対して供給をするのですから、その
意味において問題を考えなさい、これが
昭和三十年にできた
公団法並びに
公団政令なり
公団規則を貫いておるところの一貫した考え方だと思うのです。この考え方がほとんど逆になってしまっておるということですね。皆さんは逆に、第一は、物価が上がったから上げてもよろしい。第二は、新しい
公団住宅を
建設していくのは非常に経費がかかる、あるいは土地が二〇%も上がっている、工事費が六%も上がっておる、たいへんだ。公共関連施設もやらなくちゃならぬ、自治体は引き受け手がないからやらなくちゃならぬ。原価主義でいけば、ここで非常に高い
住宅ができてまいる。そうなってまいりますと、不
均衡是正だから、これを上げなければおかしいじゃないかという論議を皆さんが持ってきておるわけですね。ですから、立法の当初の考え方とみんな逆の考え方をやっていかなければ、
公団というのはやはり
運営していけないという立場に追い込まれている。
公団の
総裁もお見えになっております。林さんともその問題で論議したことがあるのですけれ
ども、そういう点に対してひとつ
住宅局長、十分
検討してみていただきたいのです。立法の趣旨がなぜ変わってきてしまったのだろうか。逆の
運営をしなければ
公団を維持していくことができないのだ、こういう点、どこに原因があるかという点をひとつやっていただきたい。
それからもう一つは、四十一年度のいわゆるあき家
家賃値上げと同時に、そのころから一世帯一
住宅という形において第一期五カ年
計画も出てまいりました。ですから、皆さんの計算によると一世帯一
住宅が完成するのだ。私はそれは不可能だと言う。皆さんは、できるのだ、一世帯一
住宅は
政府の公約だ、やれるのだからこの五カ年
計画を
承認してもらいたいと言う。私たちはこれは不可能ではないか、こう言ってまいりましたけれ
ども、それは別として、それを契機として出てまいりましたのが出
資金に対する打ち切りであったわけです。そういう状況だから出
資金はもう要らぬではないか。出
資金が
昭和三十九年度は九十五億円、この一般会計あるいは産投会計から出資されておった出
資金が三十九年度をもって打ち切りになっておるわけですね。そこで、先ほどのお話では、利子補給があるではないか、だからいいじゃないかと言うけれ
ども、この場合におきましても、利子補給はいままで四・一%だったのを、これを機会に五%に引き上げてしまったわけでしょう。では見返りは一体どうだろうか。金額で見てまいりますと、
昭和三十九年度には九十五億の出
資金があったのに、翌年度の四十年度には四・四億円だ、その次の四十一年度は十六・二億円だ、四十二年度には三十九億二千万円だ、合計五十九億八千万円、これだけの利子補給がなされて、
昭和四十六年度の
予算を見てまいりましても補給金が入っていないわけですね。そこで皆さんどうなんだと言うと、いやこれは単年度の概算払いから三カ年後の決算における精算払いになってしまったと言う。ですから、四十二年を最後といたしまして四十六年まで、実は補給金は一銭もないわけですね。こうなってまいりまして、先ほど来
指摘しておられる
公団の
財政そのものが非常に危機に立たざるを得ないということが出てまいっているのでしょう。利子補給のほうは四・一から五%に上がってくる。出
資金は打ち切られる。補給金はわずか五十九億八千万程度だ、あとはないんだ。こういうところにも、第一期五カ年
計画の
住宅建設計画が、いわゆる一世帯一
住宅ができることを前提として、
公団の役割りというものがチェックされてきておる。こういう結果がいろいろな面から出てきておるのだろうと私は思います。そういう点をもう少し掘り下げる必要があるのじゃないか。
先ほ
ども申し上げました公務員
住宅を見てまいりましても、あるいはまた雇用
促進事業団のほうを見てまいりましても――この場合は新しい発足にして、三百八十億円のいわゆる出
資金が特別会計の中から出ていっておるわけでしょう。だからこういうところに
公団住宅との不
均衡があるのでしょう。こういう点もひとつ十分
検討していただきたい。なぜ彼らのほうが安くなっておるのだろうか。公務員
住宅のある川崎の近くに行ってごらんなさい。ここには国家公務員の
住宅がある。同じところに
公団の団地があるのですよ。そこに一緒に住んでいる。たとえば国会職員だからその恩恵がない。
公団住宅に入っている。同じ学校を出て、同じ形であっても、片方は国家公務員になった。だからこれは非常に安い。片方は非常に高い。一体これはどうなんだろうか。こうなってまいりますと、やはり原価主義であっても、状況によってその原価主義をいかに薄めるか。そのためにはやはり政策
家賃というものがなくちゃならぬのじゃないか。ここに官房長がおられますけれ
ども、官房長が
住宅局長の時代は一いわゆる生計収入の一〇か一五%を目標に努力していきたい、こう言っておられるし、世界の情勢を見てまいりましてもそうだろうと思います。一〇%が大体普通になっている。それ以上オーバーする場合には、補助なりいろいろな形をもって家計費の一〇%に
公団住宅あたりの
家賃が押えられてまいっておる。日本の場合、一体どうなんだろうか。どうして一〇%を下げることができないのだろうか。この点もひとつ
検討していただきたい。
そこで最後に、そういう中で、今度のドル・ショックを通じていろいろな教訓もありますけれ
ども、輸出第一主義なり民間設備投資主導型
財政運営というものがいかに愚かしき、むなしい努力であったかということを、ニクソンの声明によって私たちは身をもって教えられたと思います。そういうときに、片方においていわゆる社会資本、国民生活基盤、その
住宅は一体どうだろうか、世界の先進国から見れば、
住宅投資を比較して見てまいりましても、一世帯一
住宅といったにもかかわらず三百六十万の人たちが
住宅難にあえいでおる。しかも劣悪な中で入っている人たちも数多くかかえておるし、今日の
住宅難だということになってまいりますと、ここに根本的に考え直さなくちゃならない問題点があるのじゃないか。きょうは
大蔵省の主計局長か大蔵
大臣にその問題はもっと突っ込みたかったのですけれ
ども、また別の機会にいたします。そういう点もひとつ皆さん真剣に
検討する中で、今回における
予算編成に
建設省の態度というものを明確にしていただきたい。次官おいでになりますが、そういう点で次官も非常に真剣な決意の表明もありましたし、
公団の
総裁もお見えになっておりますから、みんな力を合わせて、国民生活を中心とする、その中心点に
住宅を置く、これぐらいの決意を持ってひとつ当たっていただきたい。こういう点を
意見を申し上げまして、いずれ別の機会にこうした
住宅問題をひとつもっと掘り下げていただきたいと思います。
以上によりまして私の
質問を終わりたいと思います。(拍手)