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1971-12-01 第67回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十二月一日(水曜日)     午後一時三十五分開議  出席委員    委員長 渡部 一郎君    理事 佐々木義武君 理事 近江巳記夫君       海部 俊樹君   小宮山重四郎君       田中 正巳君    橋口  隆君       橋本龍太郎君    細田 吉藏君       田中 武夫君    堂森 芳夫君       三木 喜夫君    山中 吾郎君       吉田 之久君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      木内 四郎君  出席政府委員         科学技術政務次         官       粟山 ひで君         科学技術庁長官         官房長     井上  保君         科学技術庁原子         力局長     成田 壽治君         水産庁次長   藤村 弘毅君         運輸大臣官房審         議官      見坊 力男君  委員外出席者         科学技術庁研究         調整局長    千葉  博君         環境庁水質保全         局水質規制課長 山中 正美君         海上保安庁警備         救難監     武市 一郎君         参  考  人         (日本原子力研         究所理事長)  宗像 英二君     ————————————— 委員の異動 十二月一日  辞任         補欠選任   大石 八治君     田中 正巳君   福井  勇君     細田 吉藏君   森  喜朗君     橋本龍太郎君 同日  辞任         補欠選任   田中 正巳君     大石 八治君   橋本龍太郎君     森  喜朗君   細田 吉藏君     福井  勇君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  科学技術振興対策に関する件(原子力開発及び  防災科学技術に関する問題等)      ————◇—————
  2. 渡部一郎

    渡部委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  このたび科学技術庁長官に御就任になりました木内国務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。木内国務大臣
  3. 木内四郎

    木内国務大臣 私は、このたび、平泉前長官あとを受けまして、科学技術庁長官を拝命いたしました。まことに至らぬ者でございますけれども委員皆さま方格別の御支援、御協力をお願いいたしたいと思います。  ところで、私から申し上げるまでもなく、御案内のとおり、私は今回のローム斜面実験事故関係で、ああいういきさつをもちまして科学技術庁長官を拝命いたしたような次第でもありまするので、私といたしましては、さしあたりこの問題の善後処理最善努力をいたさなければならぬ、かように考えておるのでございます。  御案内のように、あの事故によりまして十五名の死者を出し、また十名の負傷者を出す、まことに遺憾のきわみでございまして、この点につきましては私ども深く反省をいたしておるのであります。私といたしましては、当面これらのなくなられた方あるいは負傷された方に対して、お見舞いの問題あるいは補償の問題、そういうものにつきましては最善努力をいたしてまいりたい、かように思っております。  それと同時に、科学技術庁におきましてはいろいろの研究をやっておりますが、その研究開発はいずれも相当な危険を伴っておるものでございますので、こういう科学技術庁全般にわたりまして、将来は安全性確保安全確保体制確立ということが非常に大事な問題になってきていると思いますので、安全管理体制の再検討を効果あるようにひとつ進めまして、そうしてこういう事件を重ねて起こすことのないように努力をいたしたい、かように思っておるのであります。  それとともに、今回のこの事件を契機といたしまして、国民一般科学技術に対する関心がある意味において相当高まってきておると思うのです。いい意味もあるかもしれませんが、同時にまた悪い意味もあると思うのですが、ひいて科学技術自体に対する不信の念が一部に多少起こってきておりますので、今後その不信の念を除去するように努力をいたしたいと思うのでありまするが、それと同時に、もしこれによって科学技術研究開発に従事する人たちが萎縮をするようなことがあっては非常に困ると思いますので、安全管理体制確立はもちろんですけれども研究開発にあたっては、そういう失敗によって萎縮することなく一そう積極的に科学技術研究開発につとめてもらうようなふうにいたしてまいりたい、今回の事件に関連しましてはさよう考えております。  科学技術振興一般につきましては、私からいまさら繰り返して申し上げるまでもなく、前長官、前々長官等からたびたび申し上げておるところですが、私も科学技術全般振興対策として科学技術研究基盤強化、こういう方面についてはもちろん力を大いにいたしてまいりたいと思いまするし、さらに御案内のように、先端的部門におきまするところの原子力開発平和利用あるいは宇宙開発の問題、海洋開発の問題、あるいは情報産業情報関係研究開発、こういうものにつきましても大いに努力をしてまいりたいと思いますし、また国民生活に密着しておる問題、あるいは公害除去の問題、あるいは環境整備の問題、そういう問題につきましてはもちろんであります。その他におきましても、科学技術研究開発全般にわたりまして、研究から開発あるいは利用に至るまで、縦にも横にも十分に連絡をとりましてこれを進めてまいりたいと思うのであります。  この研究開発にあたりましては、先ほど来申しましたように、また今回の経験に徴しまして、今後は人間尊重、安全第一、これを基本の考え方として進めてまいりたい、かように思っておる次第でございます。  はなはだ微力でありますが、いま申し上げましたような点、まだ十分ではありませんけれども、二、三申し上げて、いま申し上げましたような考え方によりまして、今後科学技術振興努力をいたし、微力をささげてまいりたいと思いまするので、委員皆さま方格別の御支援、御協力をお願いいたしまして、はなはだ簡単ですが、私のごあいさつといたしたいと思います。失礼いたしました。      ————◇—————
  4. 渡部一郎

    渡部委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  原子力開発に関する問題について、本日、日本原子力研究所理事長宗像英二君を参考人として意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 渡部一郎

    渡部委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、御意見の聴取は質疑応答の形で行ないますので、さよう御了承を願います。     —————————————
  6. 渡部一郎

    渡部委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。近江巳記夫君。
  7. 近江巳記夫

    近江委員 先般、川崎事故がございまして、そういうことで責任をとられて前長官がおやめになって、本日、当委員会としては初めて木内長官をお迎えしたわけであります。いま長官所信表明といいますか、大臣就任のそうしたお話があったわけでございます。今後研究等について、そうした安全性問題等特に重点としてやっていくこと、そのとおりだと思います。  そこで、いまちょうど時期がいよいよ予算の年内編成にもかかっておりますし、非常に大事な時期を迎えておるわけです。長官としてずっと一連のことをお話しになったわけでございまして、私どももこれを了解いたしておりますが、特にいま大きな流れからいいまして、今日、日本経済国民総生産世界第二位である。ところが、そのひずみということが非常に大きな問題になってあらわれてきておるわけです。御承知のように、公害問題をはじめとして、住宅問題、物価の問題とか、さまざまな問題が出ております。そこで政府としては、国民優先ということで人間尊重立場で政治をやっていく、これは私もそのとおりだと思います。そこで、いま長官ずらずらとおっしゃったわけでございますが、そういう人間優先という立場から考えて、科学技術も当然そうあるべきである。いままで、ともすればこのビッグサイエンスに片寄っておったわけでございますけれども、当然それは今後のあらゆる状態から考えて力を入れなければならぬ問題でありますが、さらに国民に密着した、そういう中で科学技術をいかに今後生かしていくか、こういうことが非常に大事じゃないかと思うのです。  その点、いま非常に総花的におっしゃったわけですが、特に長官が今度就任されて、私としては特にこの点を力を入れたい、この特に力を入れたいという点が話がなかったものですから、特に長官が今後力を入れていかれる問題はどういう問題ですか、具体的にひとつお考えをお述べいただきたいと思います。
  8. 木内四郎

    木内国務大臣 いま私は科学技術庁長官として、私の全般的の考えを申し上げたわけです。それは、今回の事件かんがみまして、いまお話がありましたように、人間尊重人間中心にしてものごとをひとつやっていきたい、こういうことを申し上げます。安全第一としてやっていきたいということを申し上げたわけであります。それと同時に、科学技術全般について、私は科学技術研究基盤強化をはかっていきたい。これは当然私は考えるべきことだと思いますが、そのほか先端的の分野におけるところの原子力開発平和利用海洋開発あるいは宇宙開発、それから情報関係の問題、そういう問題に力を入れますが、同時に、さっきも申しましたように、国民生活に密着した部門研究、こういうところに非常に力を入れてまいりたい。これはこれまでもそういう方面に大いに力を入れてきておったようでありまするけれども、ことに今回の事件に顧みまして、公害除去あるいは環境整備、そういうことに大いに力を入れていきたい。そうして科学技術振興研究から開発から理論に至るまでをフルにひとつ利用いたしまして、そういう線に向かってやっていきたい、かように思っております。あとのどれに一番力を入れていくかというようなことは、いま私の立場からは、どれを力を入れてあとあと回しにするということはちょっと申し上げかねますので、そういう点をひとつ御了承を願いたいと思います。
  9. 近江巳記夫

    近江委員 科学技術庁関係されておられるのは、関係各省統轄していくという意味においていろいろ多岐に私はまたがっておると思うのですが、それでもなおかつまだまだわれわれは見ておって力を入れてもらわなければならない点が多分にあるんじゃないか、このようにも思うわけです。特に科学技術庁資源調査所もありまして、そういうような面にも非常に力を入れておられる。非常にけっこうなことだと私思うのです。  ちょっと具体的な問題についてお聞きしたいと思うのですが、昨日新潟沖リベリアタンカージュリアナ号事故を起こしまして、そうして約四千トンからの原油がいま流れておるというような問題です。こういう問題が起きたわけですが、当然これはエネルギー政策から考えても、現在二億キロリットルくらい輸入しておりますけれども、さらにこの石油の需要というものはウナギ登りにこれからますますふえてくると思います。当然原子力も力を入れていらっしゃるわけでございますけれども、そういう点からいって科学技術庁としても、そういう点は資源の問題からいろいろと研究されておると思うのですが、当然科学技術庁には防災センターもあるわけですし、そういう都市災害を含めていろいろと研究も進めていかれるんじゃないか、このように思っておるのです。  今回のこの事故につきまして、なぜこういう事故が起きたか。船がいかりをちゃんとしておれば、こういう季節風ぐらいはあの時期になれば吹くということはわかっておるわけですよ。二十メートルぐらいの季節風であれば、日本海側であれば吹くわけです。それにもかかわらず、船が流されたとかなんとかいってああいう事故が起きておるわけですが、その事故原因ですね、これについてはどういう見方をされておるんですか。きょうは関係各省みな来られておりますが、まず運輸省からお聞きしたいと思います。
  10. 武市一郎

    武市説明員 お答えいたします。  先生のただいま御指摘のとおり、冬分の大体日本海におきましては季節風が二十メートル程度吹くというのは月間数回あるわけでございますが、この原因につきましては、目下、救助いたしました船長等の取り調べをいたしておりまして、詳細なことはわかりませんけれども、大体一般常識的な注意を怠らなければ、この程度海難は私どもは防げるんじゃないかというような考えは持っておりますが、現在これから冬分に向かいましてそうした季節風等が吹きますので、冬季の海難防止強調運動というようなものを実施いたしまして、今後そうした事故のないように、今後とも一般船舶その他に指導していきたい、こう考えておるわけでございます。
  11. 近江巳記夫

    近江委員 この程度季節風であれば、注意をしておればこういうことはなかったという御答弁があったわけですが、そういう点からしても明らかに今回は人災だと私は思うのです。今後いろいろ調査されていけばその点はっきりとしてくると思いますが、こういう安易なことでこういう重大な事故が起きておるわけです。これについて、科学技術庁として当然エネルギー政策から考えても、石油必要性ということは常にいろいろな調査レポート等でもおっしゃっているわけですが、安全性とかそういうようなことについては科学技術庁はチェックしていなかったのですか。
  12. 木内四郎

    木内国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、この間川崎の問題で、ちょっとした不注意がああいう災害を生み出すような結果になったのですが、そのほかのことにつきましては、原子力にしても海洋開発にしても宇宙開発にしても、あるいはその他の面においても、相当危険な研究を扱っているわけでございます。したがいまして、科学技術庁研究者というものは平素非常な注意を払っておると私は見ています。しかし、これは人間のやることでありますので、ときどき魔がさしたり、あるいはわれわれの努力以上のことが起きまして、災害等が起こることがあるわけでございます。  そこで、この船舶の安全のことはいずれまた担当省からお話があると思うのですが、数年前にイギリスの海峡で今度の船よりももっと大きなタンカー事故を起こしたことがあるのです。それが非常な問題を起こしましたので、関係各省あるいは科学技術庁などはその際直ちに、将来万一のことがあると日本の海域においてもそういうことはあるかもしれないというので、いろいろ協議をして万一に備える研究はいたしておるのであります。そういうことにつきましてはひとつ担当省から御報告願いたいと思います。
  13. 見坊力男

    ○見坊政府委員 船の安全性の問題でございますが、今度起きました船はリベリアの船でございますが、日本の船につきましても非常に船の型が大型化してきておるような状況でありまして、御承知のように「ぼりばあ丸」「かりふおるにあ丸」というような船の遭難もございまして、船の堪航性につきまして船舶技術研究所等研究を進めておりますが、昨年「かりふおるにあ丸」が遭難いたしましたときに調査会を設けまして、そこでいろいろ検討をされましたが、そのときに船舶が大型化してまいりますと、いままでの造船工学ではわからない面もある、そういう点は学問的にも謙虚に研究を進めなければならないということで、波浪外力研究であるとか、特に船に波浪計を備えつけまして外力を測定するという実験もやっております。  それで、タンカーの問題に限って申しますならば、船体の問題もございますが、その安全対策そのものが重要であろうというように思うわけでございます。そこで、本来であれば海上交通法を早く制定いたしますとともに、海上交通情報システム確立であるとか、あるいは狭水道の掘さくであるとか、そういうような抜本的な対策が必要なわけでございます。当面の措置といたしましては、船舶にレーダーを備えつけるとか、船舶危険物を積載している場合の表示をつけるとか、そういうような指導は別途対策としていま進めておるところでございます。
  14. 近江巳記夫

    近江委員 英国のトリー・キャニヨン号の場合はたいへんな被害を及ぼしたわけでございますが、この点、きょうは環境庁も来られておりますし、今後考えられる被害はどういう点が非常に心配であるか。これは研究調整局長も、前長官もおっしゃっておりましたが、エコロジーの問題、いろいろ魚介類に及ぼす影響等原子力汚染等も含めて重点研究でやっていくということをおっしゃっておられたわけですが、この点はどのように把握されておりますか。環境庁研究調整局長にお聞きしたいと思うのです。
  15. 山中正美

    山中説明員 お答え申し上げます。  私ども水質汚濁防止法でいろいろな油の汚染状態について現在規制しているところでございますが、こういうふうな大事故につきましてのいろいろな対策というのはもっぱら運輸省中心になってやっております。こういうふうな大事故につきましての環境上のいろいろな影響というのは、今後運輸省等とも御相談申し上げまして対策に遺漏なきを期していきたい、こういうふうに考えております。
  16. 千葉博

    千葉説明員 油が漏れまして、それの影響と、一体それに対する対策がどうかということでございますが、実はトリー・キャニヨン号事故が起こりまして直後、科学技術庁中心になりまして実は総合的な対策研究をいたしております。これは昭和四十二年度の特別研究促進調整費によりまして、それで一年間にわたりまして金額が二千六百万円をかけまして総合的な研究をいたしたわけでございます。  それで、その内容を申し上げますと、まず油が出てきますと、これが一体どういうふうに拡散していくか、これは非常にむずかしい問題でございますが、これの実験研究をした。これは運輸省船舶技術研究所でいたしたわけでございます。  それから第二段が、一体この流出した油をどういうふうに処理したらいいか、その処理のしかたでございますが、これにつきましても運輸省船舶技術とそれから通産省の大阪工業技術試験所にお願いいたしましてこの研究をしております。これはまず第一が、流れ出た油を拡散しないようにオイルフェンスを海につくる。要するに浮き袋を海面に浮かべましてそのオイルが漏れないようにしよう、こういう考え方のものでございます。それから第二が、この油の回収を一体どうやってやろうか、油をバキュームあたりで吸い込んで回収をいたす、こういう考え方が第二段。第三段が、この出た油を化学処理いたしましてこれを沈めようというような考え方をとっております。これにはポリウレタンを使う、それからむしろを使う、そういったようなことでいろいろ化学処理をするとか、いろいろ考えまして、当時ございます考え方をいろいろ実験いたしてございます。  それからその次が、こういった油が流出しますと必ず火災を起こす。その火災が一体どんなふうに燃えていくか、これをどうやって消火しようかということでございます。こういった点につきましても、実は八丈島の付近で二百トンばかりの油をまきまして、それに火をつけまして、それで実際にこれを消すというような実験をいたしております。これには、自治省の消防研究所、そのほか海上保安庁警備救難部、それから大阪工業試験所とかいうようなところで、政府関係の各機関を動員いたしまして研究をいたしたわけでございます。  それで、その成果によりまして、海上保安庁がきのうからかけていろいろ流出油処理に対する対策をやっておりますが、こういった研究成果を相当生かしてやっておりますので、期待をしているわけでございますが、何ぶんにもいろんな気象条件あたりがいろいろ問題でございますので、たとえばフェンスのようなものはとてもあの強風の中では使えないというような状況もあるかとも考えております。私どもといたしましては、四十二年度にやりました成果がここで大いに実を結べばというように考えておりますが、問題といたしましては、やはり油を沈めても、魚介類あたりにはどうしても影響が出てしまうというような問題がまだ将来残るというように考えております。そのほか、今度の貴重な経験で、これに対するまたさらに突っ込んだ問題点が出るかと思っております。その辺のところもさらに、そういった問題をどう解決するかというような問題を今後いかに取り上げるかということは今後の問題だと思います。
  17. 近江巳記夫

    近江委員 科学技術庁がそういう研究調整費を使い、それぞれ出先のそういう研究機関等でそういう実験をやってこられた。しかし、今回のこの事件を見ても、実際にそれじゃオイルフェンスにしたって十分なのか、中和剤にしても十分か。東京からYSで中和剤を運んでおる。全国からかき集めても、まだ全然足らない。いまタンカーからいけば、大きいのは二十五万トン、さらにはもっと大きいのもできるというような話も出ているわけでしょう。これは一万数千トンですね。出たのが四千トン。もしもこれが二十五万トンのタンカー事故を起こしておったらどないになったかということなんです。そういう点からいけば、皆さん方のやっている研究成果というのは出ていないんじゃないですか。そういうことだったら、何も役に立たぬと思うんですよ。それをもっと関係各省にもさして、実際にそれだけの準備をしなければいかぬと思うのです。たとえば、全国四十五の基地ですか、そこにはそういう協議会等を設けてやっておるというようなことも聞いておりますけれども、しかし、いざとなった場合には、もう全国からかき集めても、一カ所の——二十五万トンクラスの事故等から比べれば小さい、これはまだ一万何千トンですから小さいわけですけれども、それでも一押えることができない。もう被害は、千五百メートル、幅三百メートル、さらに拡大しているというのです。だからもっと、そういう研究されたことをどんどん現実に準備をして、ほんとうに防災という点でそれを生かせるようにしてもらわなければ何にもならぬと思うのですよ。いまのこの事故処理について、満足にいっているのですか。いまは右往左往しているだけと違いますか、担当官
  18. 武市一郎

    武市説明員 お答えいたします。  処理剤は、全国で大体、海上保安庁独自の備蓄量が百トンでございます。それから民間関係団体あるいは関係業者等備蓄量が約一千トンあるわけでございまして、油の一トンに対して約五分の一の処理剤があれば一応処理できるというのがいままでの実績でございますので、海上保安庁といたしましても昨夜来、発生以来そうした関係方面協力を得て、本日の午前中まで約一万二千かん、トン数にいたしまして約六百トンになるわけでございますが、さらに本日中に約二万かん、約一千トンの処理剤を現地に送るという手配でございまして、流出油の量からいたしまして今後さらにこうした必要量が増加いたしますもので、これにつきましても総計四万かん。約二百トンの処理剤を手当ていたしておるわけでございまして、一応現在の三千六百トンの油に対しては、処理剤の量といたしましては手当てができたかと考えておるわけでございます。  なお、私どもといたしましては、毎年、予算要求的なことは、年次計画を立てまして処理剤備蓄量の増加をはかっておる次第でございます。
  19. 近江巳記夫

    近江委員 流れた油が大体四千トンとか四千五百トンとかいわれているんですが、ちょっと多目に見て四千五百トンとした場合には、九百トン要るというのですよ、処理剤が。それでいまあなたが集めておるのは二百トンでしょう。全国から集めても、もうこれ以上集まらないのですか。
  20. 武市一郎

    武市説明員 いま集めておりますのは一万二千かんでございますので、約六百トンでございます。それで、流出油は現在大体三千六百トンというぐあいに推定されておりまして、現在の天候状態で全面的にいまの六百トンが一挙に使用できるという状況でございません。海上がしけておりまして、主として現在やっておりますのは陸上から処理剤を散布しておる。海上がなぎ次第、海上保安庁でも十五隻の巡視船を動員いたしておりますし、それから新潟港付近で多数の小型船艇を動員いたしまして、天候の回復を待って全面的に実施するという方針でございまして、第二段、第三段のかまえとしては二百トンの処理剤を手当ていたしておるわけでございます。
  21. 近江巳記夫

    近江委員 それで、全国にこの処理剤というものは何ぼあるのですか。こういうことを考えて何ぼ用意しておったのですか。
  22. 武市一郎

    武市説明員 全国ですぐ使えるものが一千トンあるわけでございます。それで、処理剤は、これは他の化学薬品と違いまして非常に製造が簡単といいますか、安易といいますか、全国に大体十社くらいのメーカーがございまして、私ども、その中の六社と、流出油処理懇話会というのをつくらしまして、これと常時連絡をとって、事故がある場合には処理懇話会のメンバーの協力を集めて全国のその千トンをかき集めるとともに、なお、大きい工場では日産百トン以上の製造能力がありますので、そうした方面整備をさしておるという状況でございます。
  23. 近江巳記夫

    近江委員 幾ら早くできるか知らぬけれども事故が起きてからそういう製造をやるというのは、そういう考え方は基本的にいいのですか。これはまだ二十五万トンクラスに比べれば小さい船ですよ。そうでしょう。早く手を打てば拡散していくのを防げる、被害を食いとめられるのですよ。それが、事故が起きてから製造する、そういう体制でいいのですか。
  24. 武市一郎

    武市説明員 先生の御指摘のとおりでございますが、今後、こうした問題につきまして、関係官庁あるいは関係団体、関係業者等打って一丸としました、より前向きな強力団体で対処できるような対策を立てていきたい、こう考えておるわけであります。
  25. 近江巳記夫

    近江委員 そこで、非常に汚染対策が不完全である。たとえば魚介類のそういう影響調査もほとんどやってない、あるいは中和剤にしてもこんなお寒い状態だし、あるいは消防艇にしたって足らないし、要するに非常に不完全であるということはもうはっきりしているわけですよ。これについて責任の所在はどこにあるのですか。政府といえば政府ですけれども、どこが中心になってやるのですか。この間の川崎事故だって、あれだけりっぱな研究者が集まったんですよ。ところが、皆目その事故、安全という面についての責任者がおらなかった。だからあんな、現場へ行ってみればほんとに驚くようなところで、十五人もとうとい命をなくしているのです。これも同じケースじゃないですか。どこが一番中心になって責任を持つのですか。それを一ぺん聞かしてください。
  26. 木内四郎

    木内国務大臣 いろいろ御意見、まことにごもっともな点があるのですが、こういう大型の災害、大型の船が事故を起こした場合、今度の場合は一万数千トンですが、二十五万トンの船が起こした場合ということになると、これは大事故でありまして、それに対してはまだ十分の備えはありませんけれども、今度の事故の規模につきましては、さっき申しましたように、政府におきましても、科学技術庁中心になりまして、研究調整する経費などについて出しまして、そうして数年前に対策をいろいろ検討した。それが、いま各省から御説明があったように、相当役立っておると私は思うのですが、今後におきましても、これよりも大型の災厄があった場合には、みな集まりまして、これをどうすべきかということを緊急に研究する必要があると思っておるのでございます。
  27. 武市一郎

    武市説明員 実際の現場につきましては、私ども海上保安庁では、全国にこうした大型タンカー事故が起こりました場合に、大型タンカー事故対策連絡協議会というのを四十二カ所主要なコンビナートの港につくって、こうした事故の起こりました場合の対策は立てておるわけでございますが、今後とも、こうした整備につきましては、関係各省と御連絡して前向きに検討してみたい、努力してみたいと考えておるわけでございます。
  28. 近江巳記夫

    近江委員 被害は、沿岸にかかわらず、沖合いでも同じですが、特に沿岸を見た場合でも、日本の沿岸のタンカー事故が、四十三年に百二十八件、四十四年に百三十二件、四十五年は百七十件も起きているのですよ。それだけ事故がふえておりながら、先ほどあなた方御答弁されたわけですが、そういうお寒い状況なんですよ。たとえば、消防艇一つ見ても、大型消防艇などは三隻でしょう。そういうような状況ですよ。全国で百九十隻といわれておりますけれども、何かにつけてこういうようなお寒い状態で、しかも、これから何億キロリットルというように量がさらにふえるわけですよ。これは私は重大な政府の責任だと思うのです。これがまだ——東京湾とか瀬戸内海でこれが起きておったらたいへんだと私は思うのです。もしも火災でも起きてみなさいよ。そこに行っておる船なんか全部焼けますし、沿岸に林立するタンクが爆発するわけですよ。大事故が起きておるわけですよ。そういう点から考えたときに、実際政府がとっておる対策というのは話にならぬと思うのです。  いま科学技術庁長官は、研究調整費等を出してそちらのほうをやっておるということをおっしゃっておるわけですけれども、しかし、私は、もっと責任体制政府がきちっとつけて、そうしてただ小手先の四十二カ所ですが、協議会を設けてどうだ、それも大事ですけれども、たとえば大型のタンカーはどこどこを通ってはいけないとか、要するに全国の情報網といいますか、そういうものを確立して、全国的な規模のもとにおいてこういう防災体制もちゃんととれるような一貫したそういう総合体制をはっきりと確立しなければいかぬと思うのです、研究ももっと進めなければなりませんけれども。そういう点において、研究の面から、また応用の面から、何かにつけて全然これは不十分ですよ。話にならぬわけです。いままでいろいろお考えかと思いますけれども、具体的に一これはまたあしたひょっとしたら起きるかもわからない、あしたひょっとしたら瀬戸内海で今度は何万トンのタンカー事故を起こすか、それはわかりません。ですから、これは緊急にやらなければならぬことですよ。こういう緊急にやらなければならぬ時点において、これから考えますでは、おそいわけですよ。具体的にどういうことを考えていますか。関係各省どなたでもけっこうです。
  29. 見坊力男

    ○見坊政府委員 海上における交通安全対策につきましては、運輸省がその中心となりまして対策を進めるわけでございますが、いま御質問の、さしあたりどういうことを考えておるのかという点につきましては、一つには、先ほどちょっと申し上げましたが、海上交通法案、これをいま検討いたしまして、国会に御審議をお願いするようにその準備を進めております。われわれとしましては、まず第一に、この海上安全交通法案、仮称でございますが、その法案を早く成立させたいということを考えております。  それからさらに、タンカーが湾内に入りましたときに、御指摘のように、そこで事故が起きた場合たいへんなことになるということで、湾外にシーバースをつくりまして、そこにCTSをつくる。そこでタンカー一般船舶を分離しまして、安全な荷役ができるようにという構想を持っておりまして、現在東京湾におきましてその調査を進めておるところでございます。将来の考え方としましては、東京湾の富津みさきよりももっと外のほうに石油の集積基地をつくりまして、そこから湾内はパイプラインで通すというような考え方があります。そういうことを実現するためのものとして、本年度東京湾につきまして調査を進めておるわけでございます。
  30. 近江巳記夫

    近江委員 海上保安庁はどういう体制をとっておるのですか。要するに関係各省がこういうことについて緊急に話し合ったのですか。要するにばらばらなんですよ。運輸省はこうする、わが省はこうする。それも各省でよく話し合った上での対策をとってもらわないと、うちの省はこんなに力を入れている、あなたのところはこれだけか、それではいかぬわけですよ。いま御答弁になったこともよく話し合った上でやったのですか。
  31. 木内四郎

    木内国務大臣 先ほど来調整局長から御説明申し上げましたように、イギリスのトリー・キャニヨンですか、それの事件かんがみまして、直ちに研究促進調整費を出しまして、関係各省が集まってそれに対する対策を技術的には研究したのです。それに基づいて運輸省のほうにおきまして、海上保安の立場からどうすべきかということをいまやっていただいておるのでありまして、各省ともにその研究などは十分に連絡はとっておるつもりですが、あと対策のやや不十分な点はあるかもしれませんが、運輸省におきましては、運輸省中心としてこの問題と前向きに取り組んでいただいておると私は了解しています。今後におきましてもその方向でやっていくことと思います。
  32. 近江巳記夫

    近江委員 それで、科学技術庁はいまこういうような研究をされていたわけですけれども、これから都市災害等も地震の問題とかいろいろなことがまた考えられますし、あらゆる点を考えていきますと、非常におそろしいそういう事故発生の要因がたくさんあると思うんですよ。そういうことも含めて、特にこのタンカー問題等についてはこれからますます巨大化してくるし、事故が大型化してくるわけですよ。しかもその事故発生の船がそれだけ多くなってくれば危険性がさらにふえてくるわけです。したがって、最重点の一つとして力を入れてもらわなければ困ると思うのですよ。いままでと同じような踏襲のしかたではいかぬと思うのです。その点、長官としてはこれをどういう気持ちで受けとめていらっしゃるのですか。
  33. 木内四郎

    木内国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、科学技術庁としてはそれに対するいろいろな研究を各省と手を組んでやっておるわけですが、それに対する対策は、各省、運輸省におきましても前向きにいま申し上げましたように取り組んでおるようであります。ただこの事故が、船がだんだん大きくなって、二十五万トンが起こったらどうかと言われると、あるいはまだ運輸省のほうでやっておる対策が十分でないかもしれませんけれども、今後運輸省としてもこの問題と真剣に前向きに取り組んでいっていただくと思うのであります。
  34. 近江巳記夫

    近江委員 それで国際的に考えていきますと、IMCO、政府間海事機構ですね、ここにおいても、事故が起きた場合に海に流出する油の量を三万立方メートルに押えるようにタンカーの安全最低基準を考えて、来月の一日から発効するようになっているということを聞いておるわけですが、わが国の場合、もっとシビアに事柄を考える必要があると思うのです。その辺の安全基準等に至るまで、そういうこまかい点、さらにはこの油による汚染の事故の場合における、たとえば公海上の措置に関する国際条約、こういう点、いろいろ国際的にもきめていかなければならない事柄がたくさんあると思うのです。その点、一番油の輸送量が多いわが国が、やはり先頭を切ってやっていくべきだと私は思うのです。その点、何かあまり、ついていくというような感じでわが国の姿勢をとっているのです。私は非常にその点はけしからぬと思うのです。そのことについてはどういう反省をしておりますか。また、そういう安全基準等についてもどう考えていますか。
  35. 見坊力男

    ○見坊政府委員 安全の問題は、申すまでもなく今後さらにあらゆる機会をとらえまして研究を進め、対処していかなければならぬと思いますが、ただ、いま先生の御指摘の公海におけるIMCOの条約の関係でございますが、これは昨年の海洋汚染防止法の中に国内法化されまして、条約もその後批准をされておるというふうに承知しております。
  36. 近江巳記夫

    近江委員 そのできた、批准した条約は、それを守ってやっていくということはもう当然でありますし、そのほかにいろいろ気をつけなければならぬ問題点がたくさんあるのだけれども日本がイニシアチブをとって積極的にやってもらいたい、こういうことなんです。  それから千葉研究調整局長、いま長官が大体の方向を、今後前向きにやっていくということをおっしゃったのですが、第一線の指揮者としてあなた自身はどうなんですか。   〔委員長退席、佐々木(義)委員長代理着席〕
  37. 千葉博

    千葉説明員 実は先生の御指摘のとおり、前に相当な大規模な実験をやりましたけれども、さらに今度の事故かんがみまして、それからさらに将来のタンカーの大型化とかというような点も考えまして、研究体制といたしましては、運輸省はじめ関係各省研究機関を十分に使いまして、その専門の方々とよく打ち合わせをいたしまして、そして問題点を追及いたしまして、それで当庁といたしましても、これに必要な対策の実施措置をとることといたしたい、かように考えております。
  38. 近江巳記夫

    近江委員 この問題はこれで置いておきますけれども、いずれにしても、そういう危険性ということはほんとうにあすでも起きかねないようないまの海上のラッシュの状態でもあるわけですし、ほんとうに真剣に政府としてはそういう国民の不安をなくし、やっていただくように力を入れてもらわなければ困ると思うのです。この点を特に長官をはじめ関係各省の皆さんに要望しておきますので、必ず帰って大臣にお伝え願いたい。そして大臣に御要望したいことは、閣議においても、本委員会においてこういう意見もあったということでさらに力を入れていただきたいと思うのです。これは長官、やっていただけますか。
  39. 木内四郎

    木内国務大臣 御趣旨の点は十分了解いたしましたので、できるだけそういう線に沿って努力したいと思います。
  40. 近江巳記夫

    近江委員 それでは次の問題にいきたいと思いますが、きょうは宗像理事長に来ていただいておりますし、いま、原子力安全性の問題をはじめとして、エネルギー政策から考えても原子力発電所がどんどんふえてきておりますし、そういう点で国民の関心というものは非常に高まっておるわけです。また、この原子力行政を進めていただく上におきまして、平和、民主、公開、この三原則をあくまでも、原子力基本法にもうたっておりますし、これを守ってやってもらわなければならない、このように思うわけです。また原子力というのは非常にむずかしいということで、国民が理解する上においても非常に困難な面もあるわけですが、そういう点においても正しいそういうPRなり、まあそういうことについても政府としてもいろいろやっておられると思いますけれども、まだまだ不十分なように私は思うのです。そういう点においてもどんどんと第一線級の人がそうした問題についてわかりやすくPRもしていく、そういう仕事も大事じゃないか、私このように思うのです。  ところで、私、具体的にお聞きしたいと思うのですが、原研において、もう少し具体的に申し上げますと、十月十五日ですか、仙台市で開かれた北日本漁業経済学会、ここで「原子力開発と海洋調査の現状について」のテーマで原研の保健物理部の福田さんという人、また討論メンバーとして、同原子炉化学部の中島さんという人にそれぞれ出席を依頼した。この学会から所に対して依頼書を出したわけですが、これに対して所は本人にも知らせずに学会に拒否の回答を行なっているわけです。この問題で中島さんは山本所長にも会見したけれども、所長は、君が出席して話すには関係のない学会だと思ったから断わった、また福田氏は話したがらなかった様子だったから、このように答えておられるようですが、福田氏は全く意向を聞かれていないわけですよ。こういう表現をとめるということは、これは原子力基本法にうたっておる自主、民主、公開の原則に当然反してくるんじゃないかと私は思うのです。これについて、なぜこれはとめられたのですか。私、大事な問題だと思うのです、こういう問題は。具体的にお聞きします。
  41. 宗像英二

    宗像参考人 ただいま近江先生から御指摘の点について、近江先生が御理解なさっておられますことと若干筋が違っている点もありますので、よく御説明申し上げたいと思います。  もともと原子力研究関係して自主、民主、公開というようなことを守らなければならないということは、私重々よく承知しておりまして、先年いろいろ先生方から御指摘がありましたころに、印刷いたしましたもので先生方にもよく御説明申し上げまして、ことに公開という問題についてはどうするんだということで何度か御説明申し上げまして、御了承をいただいたその当時の所信とちっとも変わっておりません。  ただ、私いつも考えておりますが、いま先生が御指摘のように、原子力の問題は研究している者自身もベストを尽くしておりますけれども、全部真理をうがつだけに行き届いているわけではありませんので、いろいろこれに関係して、これに関心をお持ちになる一般の方々に誤解を招かないようにしなければいけない。決して隠すことじゃない、しかし誤解を招かないようにしなければいけないということは、いつも強く考えております。誤解を招いたために、せっかく国のたくさんの費用を投じて日本一の研究環境をつくっていただいて、そこで原子力の自主、民主的な研究をしていこうとするその成果が間違って伝えられて、そのために多くの方々の御期待に沿い得ないようなマイナスの結果が出てはたいへんだということも案じております。  いま御指摘の例について少し申し上げなければならないと思いますが、十月十五日のことでございますけれども、十月十七日の河北新報の記事によりますと、十月十五日から二日間にわたって仙台市で開かれた北日本漁業経済学会で、原子力と漁業公害ということに関係した件で発表することを申し込まれたのでありますが、いままでもわれわれと関係している人たちが、われわれとしてはきわめて公正なつもりで発表するのを、聞く方々が非常に曲がって、違えて、われわれが言っていることと全く違ったことに解釈なさって、そして新聞にお出しになったり、あるいは印刷物につくってみんなにお知らせになったりするようなことがありますので、発表する場所のことについて非常に注意しなければならないということを何度か経験しております。  今回のものもそれについて非常に心配しました。この心配するのは、原子力研究所では、あそこにたくさんの研究者がおります。その研究のしかたや研究成果については、まだ私自身も非常に不十分だと思って恥じておりますが、その研究をしている人たちは、いずれは、やがて日本の国で原子力開発が盛んに行なわれるときに、それに一緒になって自分も発展していきたいということをみんな——みんなといいますか、大部分の者はそれを信じて、そのために努力しているわけであります。私ども原子力研究所にいる人たちがみんな育って、そうして日本原子力開発と一緒にどんどん伸びていくことを期待しておるわけであります。ところが、そういうふうになるためには原子力研究所は信頼される、実力のある研究所にならなければならぬと私どもはそのために日夜努力をしているつもりなのでございますけれども、聞き手が少し違ったように解釈されるようなところへ出ていって話をされると、現にそういうつもりでないといって、話した人たちが帰ってきても、すごく意に反したことを言われたということで憤っている例さえあるくらい、聞き手について十分考えなければならないということを実際に知っておりますものですから、誤解をされるようなところに、ことに研究者ですと、行きまして話はする、あと質疑応答があったときに、ついとてつもないようなところのことを答えなければならないというようなことになりまして、それがもとになって誤解を招くということが往々あるものですから、それで私ども非常に慎重にしまして、そういうことのないように、この福田、中島両人については、山本東海研究所長がよく当たりまして、それでことに中島は研究員で理学博士ではありますけれども、この人は分析する機械の改良をすることだけしか知っていない人なんですね。そういう人がよそへ行っていろいろなことをしゃべること、もちろん常識的に知っていることをしゃべることは一向差しつかえないともお思いになるでしょうけれども、それを飛び越えた質問が出たときに答えざるを得なくなって答えてしまうというようなことがあるものですから、それに福田はその漁業関係のほうに若干近い研究をしておりますけれども、その人となりから見て、やはりそういう心配が——もしもほんとうにこの学会が正式に理事長に宛てて依頼があれば、私が責任を持ってもっと適当な人を派遣する自信は十分ございますので、そういう人を派遣しなければ、原子力研究所は、せっかく原子力研究所の多くの人が原子力開発のために良心的な精進をしているのが曲がり伝えられること、それはいずれば原子力研究所の人たち原子力開発とともに発展していくのを阻害するというふうに考えますので、これは理事長として原子力研究所を担当し、研究者を育て、技術者を育てて将来の日本原子力開発に信頼される人材をつくって送り出そうとするのにそむきますので、そういう点で私はこの山本所長がとった処置はこれでけっこうだ、私が責任を持つからよろしいということを言って、これをしたわけでございまして、決していま近江先生がおっしゃるように民主、自主、公開のうちの重大な公開を踏みにじって隠したりなんかするということは一向ないわけでございます。  よくその点の事情を、私は口がへたでございますから尽くしませんかもしれませんけれども原子力研究所の中の人たちが誤解をされて発展しそこなうようなことが起こるような、原因になるようなことが原子力研究所からは出ないように、出ることは原子力研究所の人たち原子力研究所を盛り立てていくのに非常に差しつかえると私は思いますし、追っては日本原子力的に誤解を招くもとじゃないかしらというふうに思いますので、私はその処置を私の責任においてよかったというふうに考えております。
  42. 近江巳記夫

    近江委員 私たちは将来のエネルギー政策考えて、当然石油はやはり何十年か先には枯渇してしまう。そういう点でこれだけの大きなエネルギーである原子力平和利用ということは基本的にわれわれも今後は大いに進めていかなければならぬ。しかし、ああいう放射能公害とか、いろんなそういう安全性という点から考えて、これを忘れた研究開発の推進であればやはりこれは問題だ。その辺は十分ウエートをかけてやっていくべきである、こういう基本的な考えにわが党としても私としても立っているわけです。  そこで、この研究所の方々は組合等もあるわけですけれども、そこでやはり確認していることは、この原子力開発というのは平和利用三原則にのっとり、国民の大多数の支持を得て進めるべきである。さらに、原子力開発公害などを起こさないよう安全を期して、時間をかけて慎重にやる必要があることを国民に理解してもらう。こういう二点のことを確認しておるわけですよ。これについては理事長も異論はないと思うのです。  そこで、いま理事長がいろいろおっしゃったわけですが、こういう所のやり方を許すならば、本来自由に発言できる場である学会の意義というものは私は失われるんじゃないかと思うのです。また国民は、自分たちの望む専門家の意見を聞くことが不可能になるんじゃないか。こういう点からいきますと、本人の了承もなしに断わるということは、私はこれは人権無視であり、憲法違反だと思うのです。さらに自主、民主、公開の三原則の違反じゃないかと思うのです。ですから、私は基本的なことを考えると、これは決して小さいことじゃない、非常に大事な大きな問題じゃないか、このように思うのです。それについてはどうですか。
  43. 宗像英二

    宗像参考人 先生がただいまおっしゃいました本人にも相談せずにという点は、それは先生のほうに入っておりますニュースが間違っております。中島は、君は専門が違うからそこに行くのは不適当じゃないか、君は分析学会かあるいは分析機器の改良に関する検討会なら行ってもいいけれども、間違いを起こしやしないかと言いましたら、中島は行かない——事実は行きましたが、中島は行かない。それからもう一人の福田も山本所長が呼びまして——間接に呼んだのかもしれません。ちょっと私そこのところはっきりしません。こういう環境での講演会に君は行くかいということを言われたら、それはやめましょうということでやめたのでございます。ですから、いま近江先生がおっしゃったのとは違います。  それからもう一つ、先生にぜひ申し上げておかなければならないと思いますのは、こういうことでは学会なんかに発表をしたりするのをふさぐんじゃないか、専門家から直接の声を聞けないんじゃないかということの御心配、これについては私も皆さんに知っていただきたいということはかねがね思っておりますので、正当な場で正々堂々と話をする場、そういう場で発表をする。あるいは適当な人が発表をする。力の、実績のある人が発表をする。それならば喜んでわれわれのほうでも発表することは許しております。それは原子力研究所はたくさんの研究発表をしております、年に四千ぐらい印刷物を出すのですから。それくらい出して発表をしておりますから、先生が御心配になるようなことは私はないと思います。  また先生、個々について、私の知っておりませんことでこれがあったじゃないかということがありましたら、ぜひそれは御指摘いただきたいと思いますけれども、しかし、原子力研究所のあの規模で年に四千も印刷物が出るというのは、ずいぶんよく発表していると私は思うのでございますが、私はそう考えております。
  44. 近江巳記夫

    近江委員 まあ政府がつくっておるこの答申においても、七〇年代のこの科学の発展において、異なった分野での協力はきわめて重要であるということを指摘しているわけですが、こういう意味からしても、君には関係ない分野だからという断定というのはきわめて一方的じゃないかと思うのです。少なくとも理学博士にもなっている人が、そんなもの全然わからないというそんなことは絶対ないと私思うのです。きわめて常識的な発表をなさると思うのですよ。それをそういう言い方でとめるということは、判断として正しいかどうかということなんです。どうなんですか、その点は。
  45. 宗像英二

    宗像参考人 私、実は昨晩東海村に行きまして研究所員に——この間うちからずっと研究所員に、それこそ理学博士もおりますが、そういう連中に教育をしまして、いままでの原子力研究所の研究のしかたはまずいんだ、もう少しこうしないと、多くの納税者の人たちからたくさんの金を出してもらって研究をしているこの原子力研究所が成果をあげないということはまことに申しわけないんだから、研究のしかたを変えなければいけないじゃないかということを申しまして、私も就任しましてからこれで三年半越しますが、その間ずいぶん努力をして、だいぶ効果があがったんじゃないかしらと思っておりますが、やはりなかなかそういう効果はあがらない。それでいま近江先生、理学博士なら相当だろうと言われるんですけれども、それが問題でございます。  実は昨日、東海へ持っていって話をする連中に渡して、それを参考にしながらみんなに話をしようとしたものをここに持っておりますから、これを差し上げて御参考に供したいと思うのでございますが、少し研究のことになりますけれども日本原子力研究所のようなそういう研究所で研究している者は、先生もたぶんおわかりと思いますけれども、まず日本研究所は、研究所に入っている人たち研究準備として学習の段階のことをやっているのがかなり多いのです。それからそれが少し進んで、学究と私は言います。学習はスタディであります。学究はアドバンストスタディであります。日本の国ではアドバンストスタディで、研究だと全部思っている。これが日本の国が自主技術ができなかったり何かする大もとでありまして、アドバンストスタディ——それはアドバンストスタディの成果は学位がとれます。学位をとるときに、これは大学の先生方にあるいは異論があるかもしれませんけれども、やはりお手本があるもので勉強すれば、ものさしがありますから学位の審査のときにやさしいのですね。そういうアドバンストスタディの程度のものがもう原研にたくさんいます。アドバンストスタディをやっている間はまねごとです、お手本があるんですから。博士にはなるかもしらぬけれども、まねごとなんです。ほんとうはその先へいく探求に入るような研究者をもっと育てたい、こう思っております。しかし、残念ながら原研のいままでの長い間の歴史、習慣から、それに入るだけの、熱を入れて研究する人が非常に少ないのですね。成果をあげている人が何人かおります。こういう人はみんな探求をやっております。しかし、学位を持って、もうあとはうしろ向きに批判とかあるいは評論ぐらいの程度でお茶を濁しているのがざらにあるわけです。こういう人たちに方々から、原研にいる人はたいしたものじゃないかしらといって、いわれるほど原研としてはうれしいのでありますが、私は、将来をまたさらに探求をして、実力をつけて、将来の日本原子力開発を進めていく人のためにはこれではいけない。これではまねごとをしているだけじゃないか。博士かもしれない、しかし、まねごとをしているだけじゃないか。   〔佐々木(義)委員長代理退席、委員長着席〕  そういうようなことではいけないと思って、いま一生懸命原研の中の体質改善をし、探求をするためには実験的な精進をうんとしなければならない。実験的精進が原研では足りないのです。りっぱな図書館があります。文献がたくさんある。文献を読んでいればそれでもう博士にもなれるんですね。日本の学位の制度というのはいまは三年勉強すれば学位がとれるのであって、大学卒業よりもちょっと大学院卒業が博士、ことにそういう博士が原子力研究所の博士であるということでひょこひょこ行って、そして自分の専門でないことを、自分では言うつもりはなくても、質問されたときに答えなければならぬ。そういうときについ誤解を招くようなものを言ってしまうわけです。そういうもののないように、われわれも原研をりっぱにする。原研にいる人たちがりっぱに育ってりっぱに世の中に出て、原子力開発に役に立つ、そして皆さんの役に立つようにするためには、やはりそういうふうに原研を仕向けなければいけない。  そういう意味からも、私は先生がおっしゃった、博士もいるんだから、りっぱなものだろうと言われるけれども、それが先生、外地、ことに方々行きますと、博士が来てしゃべったんだからあれはもっともだろう、そういう誤解のもとに、誤解から誤解を招いていった例があって、そのために原研の人たちが妙な目で見られて、せっかく発展しようとするように私が推薦しようとしても、名ざしをされてそれがうまくいかないというようなことも現に起こっているわけです。そういうことの起こらないようにしたいために、私はやはり人をよく見ることもしなければいけない。決してそれはその人をいじめるとかその人の立場を悪くするとかということでは、概観的には、総括的には、私はないと思う。そしてしかも、その総括的な意味は、それが原子力研究所をりっぱに育て、日本原子力開発のために役に立つようにするための私に課せられた責任だろうと思います。ですから私は、いまやっておりますとおり、ちっともうしろ暗いことなしに、いままでの道を進めていきたいと考えております。
  46. 近江巳記夫

    近江委員 それでいままで講師に出た人、ちょっと私、じかに名前は出しませんけれども、原発へ講師を派遣しているんですが、Aという人は元執行委員長ですよ。分析化学の研究者で理学博士、分光学会副会長、学術会議立候補中、副主任研究員です。数回行ったということで、元執行委員長ということで、主任研究員に昇格せず、室長に任用せず、期末手当減額ですよ。  Bという人は、元執行委員長、核物理研究者、学術会議特別委員、副主任研究員。主任研究員に昇格せず、室長に任用せず、期末手当を減額されている。この人は一回行っている。先ほど申し上げたAという人は数回行っている。  Cという人は、環境放射能研究者で、元執行委員長。一回行った。副主任研究員、課長代理にも任用せず。  Dという人は、同じく一回行っておりますが、期末手当を減額されています。元執行委員長、物理科学者、副主任研究員。  Eという人は、一回行っておりますが、これは海洋物理研究者です。主任研究員に昇格せず、期末手当減額。部付にして、仕事上の力が発揮できないようになっております。  Fという人は、元執行委員長、一回行っておりますが、放射化学研究者、理学博士。副主任研究員にもならないです。研究所講師から排除されています。  Gという人は、元執行委員長、一回行っておりますが、放射線防護研究者。五級昇格がおくれ、将来の見通しを非観して退職しております。  それはいろいろ理事長もおっしゃるかもしれませんが、少なくともこういう学者として良心を持って、国民にもそういうほんとうのことをいろいろ話そうという、そういう積極的に行動した人について、そういうような、かりそめにも押えるというような行動があるということになってくれば、自主、民主、公開にこれは反することになりますし、あるいは人権の問題からいっても憲法違反になってくる。こういう点やはり、少なくともこれは、政府機関の中でも最も政府としても力を入れておられるこの原子力研究所において、こういうことがあるということは、これはやはり非常に大きな問題だと私は思うのです。  私がいま申し上げたことについて、理事長として何か言われることがあればお聞きしたいと思います。
  47. 宗像英二

    宗像参考人 いま先生が御指摘になった回数、それに比べまして、先ほども申しましたように、一年間に四千もの報告が出ておりますのですから、それ以外の人がたくさん報告をして世の中に貢献しているわけですね。ですから、そこに数回というのは、ほんのちょびっとであります。そして、それが、いま先生おっしゃった、副主任研究員から上に上がらないというようなことのなにをしているのは、一つは、先ほど申しましたように、学習だけをしている人を主任研究員にすることはできないのです。これは大学ですともうはっきりそういうことがあります。大学ですと、御承知のとおりに、学校に残って、助手で残る、しかし資格がないと助教授になれなくて、そこでふるわれる。助教授になっても、力がないと教授になれない。そういうふるいがあるわけです。ところが原子力研究所は、ここ十五年間のしきたりで、何となしにみな上がるようにしてあったわけです。これはいけない、これは悪平等だということで、私が責任を持つようになってからは、そこをふるいました。三度試験を受けて受からない人は、これはやはり転向しなければいかぬ。ちょうど世の中で、三年助教授になれない人は、やはりそこでよそに行くものなんですね。ところが、原研の中は、給料もいいし、勤務時間だって楽なんですよ。勤務時間も驚くほど楽なんです。たとえば一月のうちに十五日事故欠をやっても二月の給料はそのままくれる。そういうようなノーワーク、ノーペイの原則に、私ども考えて常識だと思うような、そういうようなことでなしにできている。これは原研創立のときに、原研に来る人はみんな良心的に探求、先ほど言いました学習や学究じゃなくて、探求まで入る人がみんな来るだろうと思って、そういうゆるいルールをつくって、それがそのまま行なわれているわけです。私はこれは直さなければいけないと思っておりますが、それは十五年の惰性を直すのはこれから十年くらいの実績をかせがないとできないと思いますから、たいへんなことだと思いますけれども、しかし、そうしなければ、国のたくさんのお金を使って、東海村、高崎、大洗あるいは大阪にりっぱな研究施設をつくってもらっている、それに対して、国の期待に対して、こたえることができないと思いますので、私はどうしてもこの姿勢は直さなければいけないと思います。  ですから、先ほど言いましたように、何回かしゃべった、こんな人がどうして上がらないんだろうかというのは、これは大学かあるいはよそに行ったら、それはもう助教授になれない、あるいはどこかの会社にいたらどっかにかえられる。しかし、かえられたからといって、今度かえられて、その人たちは、研究には適しないけれども、ほかの仕事に適するという才能があるかもしれない、あるいは批判者として育つとか何かになるかもしれない。そうしたらそこでりっぱに育っていくんですから、私は、適材適所の人事措置ということを原研の中でどうしてもしなければならない、またそうしなければ、研究員のような一人の力でもって仕事をする人は、そういう適材適所の配置をぜひしてあげなければならないと思いますにつけましても、ぜひ先生が先ほどおっしゃったようなそういう考え方を変えていただいて、原研で適材適所の配置をするようにしなければいけない、みんなが励むようにしなければならぬということを科技特の諸先生が支持してくださるというふうにあってほしいと私は思うのですが、いかがなものでございましょう。
  48. 近江巳記夫

    近江委員 先ほど一番最初私が申し上げたこの二人のあれについて、発表を差しとめた、これは、あなた何ぼでもいろいろ言うかしらぬけれども、向こうから、学会のほうから来さしてくれと言うているのを、やめておけ、これは、憲法の面から、三原則からいったって、もう話にならぬわけですよ。こういう運営が行なわれておるということについて、直接の上司である原子力局長、あなたどう思うのですか。
  49. 成田壽治

    ○成田政府委員 問題の点につきましては、講演のテーマが原子力と漁業公害というテーマであったようでありまして、向こうから依頼の御両人は、原研の判断によりますと、依頼された講演に関する専門家ではないので、原研として責任をもって講師として派遣するのは適切でないという判断でとった措置と聞いております。  それで、実際その人が適任であるかどうかというのは、これは原研の判断によらざるを得ないのでありまして、われわれとしては、その限りにおいては、その措置も適切であったのではないかという判断を持っておりますが、ただ、一般的にこういう原子力開発は、公開、民主、自主の三原則がありますので、今後も公開の原則に徹底して原研の運営を行なわれるように厳重に注意していきたいと思っております。
  50. 近江巳記夫

    近江委員 それじゃもう原子力研究所の要するにおめがねにかなった方向に行く人ばっかり出す。たとえば、主催が北海道電力株式会社、後援が岩内商工会議所、岩内原子力発電所建設促進協議会——建設促進協議会ですよ、推進していこうというところです。「無料ご招待 講演「原子力発電所の安全性日本原子力研究所動力試験炉部長理学博士村主進氏」とごっつい広告入れて、それで「映画「春のいぶき」「くらしと原子力」 同時上映ドリフターズのいい湯だな全員集合」こういうのにはどんどん出して、ちょっと都合が悪い、それであれば押える。もっと自由にすべきと違いますか。これはどうなんですか。
  51. 宗像英二

    宗像参考人 その村主というのは、安全の関係では、原研の中でも最もエキスパートです。そういう人が公の堂々としたところで話をするのは、私のほうでも差しつかえがないし、それから、そういうふうにして原研が信頼されるように進めるようなところには私は出していいというふうにしていままで進めております。
  52. 近江巳記夫

    近江委員 そうすると、そういういいとか悪いとかいう判断はどこでなさるのですか。
  53. 宗像英二

    宗像参考人 原研に対して求められるときには私がいたします。しかし、原研に対してでないときには、私のほうでまたその関係機関とよく相談してきめます。
  54. 近江巳記夫

    近江委員 そこで、講師をいろいろな会合なり何なりに出される場合、そう言ってきた場合、一体いいとか悪いとか、それはどこを基準にしておっしゃるのですか。
  55. 宗像英二

    宗像参考人 それは、私も多年研究者を育てております。この人はどれくらいの力があるかということも、実験室を回って私はよく見ております。よくいろいろなことを言うけれども実験室を回ってみると、ほこりばっかりたまっていて何にもやっていない、三度行ったのにいないというのがいるんですよ。そういう人は、やはりほんとうならもう少し違った仕事で発展されるほうがいいんじゃないかしらというふうに思うような人もおりますね。そういう方がよそに行ってお話しになると、やはり誤解を招くことになって、皆さんが御迷惑なさるのじゃないかと私は思いますがね。私は、研究者のことについては、もうだいぶ長いこと、ほかのいろいろな部門でございますけれども、指導して、この人はやはり創意くふうが足りない人だな、じゃ、やはり道を変えたほうがいいんだなというふうなことはわかるつもりでございますが……。
  56. 近江巳記夫

    近江委員 しかし、いまあなたの長い御答弁をずっといただいたのですが、私は納得できないですね。だから私は、これは三原則、また憲法にも抵触してくるし、そんな簡単に納得できる問題と違いますよ。いずれにしても、政府機関がそういう疑惑を持たれるようなことをかりそめにもやっておるということは、非常によくないと思うのです。もっと民主化しなければいかぬと思うのです。原子力基本法にも三原則がうたわれてあるわけですし、こういう点みずからがそういう疑惑を招かないように運営をしていくのがあたりまえじゃないかと思うのです。長官あとで入られたから全部をお聞きになっていないと思いますけれども原子力研究所がいろいろな団体なりいろいろな学会とかそういうところへ講師の依頼を受けたところが、原子力研究所のほうでは、いろいろ本人のチェックをして、行ったらいいとか悪いとかやるわけですよ。そういうことがはたしていいことか悪いことかということなんです。  ですから、私はもうあと、質問の時間もだいぶ食って申しわけないと思うので、これで終わりますけれども、そういう点で最後に局長と長官に、こういう少なくとも疑惑を持たれるような運営でいいか悪いか、また今後どうされるか、反省を込めた所感をひとつお伺いしたいと思うのです。
  57. 成田壽治

    ○成田政府委員 原子力の基本的な研究所である原研が原子力三原則の運用に問題があるという疑惑を受けておるということは、非常にわれわれも重大な問題でありますので、今後そういう疑惑を持たれることのないよう、行政指導上も厳重に監督していきたいと思っております。
  58. 木内四郎

    木内国務大臣 私は実は参議院のほうの採決の関係があって席をはずしましてたいへん失礼しました。  ところで、いま伺っております問題、この問題につきましては、近江委員はかねてから御意見を述べられておった機会もありまして、私も、きょうのことは伺いませんけれども、多少拝聴しておると思うのですが、いま原子力局長からお答えしたのは原則論でありまして、私は、このわが国の原子力研究の本山とでもいうべき原子力研究所のやり方というものは非常に大事だと思うのです。  原子力研究所は、御案内のように、非常な権威あるわが国の原子力研究機関であります。ですから、その権威を落とすことのないようにということで理事長が非常に御配慮をしておる。私はこの理事長の御配慮はまことに正しいものだ。そこで、この原子力基本法には公開という原則がありまするために、よく往々にして、これに従事しておる者は、自分の扱っていることを何でも発表していいというふうに考える、あるいはときによると、自分の研究しておる資料を外へ発表してもらいというようなことを考える人もあるのです。これは私は非常な間違いだと思うのです。原子力基本法の根本精神を誤って解釈しておるものだと思うのです。おのおのこういう研究所において公開することは、当然これは公開すべきものでありますが、公開するには、公開の責任者がそこにおって、私は、どう答えられたか知らぬけれども、当然ある種の研究がまとまって成果をおさめたときに、それを管理者の方が発表するという、これは原子力基本法の精神だと思います。何でもかんでも研究の途中において発表したらいいとかなんとかということは、私は賛成しかねます。  そこで、私はちょっと記憶しておりませんけれども原子力研究所の規則にそういう関係の規則が置いてあるはずだと私は思います。それは当然でありまして、もしそれがなければ、たいへんな間違いでありまして、その規則に従って宗像理事長が指示しておられる、私は宗像理事長の指示に全面的に賛成でありますし、これを支持して、また信用しておるのでありまして、私は間違いないと思うのですが、人間のことですから、今後万一間違いがあっては困りますから、そういう際には間違いのないように監督官庁、監督者として私は善処したい、かように思っております。
  59. 近江巳記夫

    近江委員 もうこれで終わろうと思ったのですけれども長官の発言で、これはちょっと終わるわけにはいかぬわけです。  要するに、それは秘密の研究中のことであれば、長官がおっしゃったその辺のことは、これは私も理解できないこともないわけですよ。だけど、こういう学会の場合には、これは何もそんなこと言うておるのと違うのですよ。「原子力開発と海洋調査の現状について」ですよ。しゃべる人だってそんな秘密のことなんかしゃべらぬと思うのですよ。ごく一般的なことじゃないですか。そんなことの講演に何でとめなければいかぬわけですか。そんなばかなことは絶対ないですよ。何の反省も長官にはない。そういう疑惑を与えた行為をしておって、当然研究所の理事長支持すると、こんなばかな、そんなこと私はないと思うのですよ。  なるほど、この原子力研究所では「就業規程」というのを出されてますよ。第七条で「職員は理事長の許可を受けないで、次の各号にかかげる行為をしてはならない。(1)事業を営み又は他の事務にたずさわること。(2)業務に関して新聞、雑誌等に寄稿し又は出版し若しくは講演等をすること。(3)業務以外の事由で庁舎又は物品を使用すること。(4)留学すること。」これは第七条でいっているわけですけれども、しかし、本人が、そういう研究者が、私先ほど申し上げましたが、二項目のことをお互いが了解してやるということは、国民にとっては、いろんなほんとうのそういうようなことについて正しい理解をするということにおいて、これは非常に大事なことなのですよ。そんなこと言って、憲法に保障された表現の自由とかそういうことを全部とめていくということについては、これは非常に問題ですよ。原子力基本法からも問題ですし、少なくともそういう疑惑に対して、何の反省も長官がせずに、それは原子力研究所を支持すると、そんな態度は私はないと思うのですよ。少なくともあなたが謙虚に考えるならば、そういうような疑惑があるならばこれからいろいろとそういう点については疑惑を受けないようにやっていくとか、何らかの答弁があってあたりまえじゃないですか。それじゃ昔の、戦前と一緒ですよ。あなたは戦前役人やっていて、その辺のなごりと違いますか、これは。
  60. 木内四郎

    木内国務大臣 いまたいへんおしかりを受けたようですけれども、私はさっきも申しましたように、基本の原則は、さっき局長から申しましたように、そういうことがあれば間違いのないように今後やるということを申し上げておる。しかし、私は基本のことで、最も適当な人を選んで発言させるという、そういう原則論を私はさっき、宗像理事長がやっておられることが正しい、規則でもすでにそういうことをきめておるのですからそれは正しいと思っているのですが、具体的な事件において反省すべき点があれば、これはもちろん私ども反省します。私もさっきそのことを最後に付言しておいたつもりであります、原則論はこうだと。しかし、具体的に、人間であるから間違いもあることはあるかもしれない、そういうときには私は十分に監督に注意していく、これは特に私はつけ加えて申し上げたつもりでありまして、御趣旨とは全く違った点はないと私は思うのですから、その点はひとつ誤解のないようにお願いいたしたいと思います。
  61. 近江巳記夫

    近江委員 もう一問だけ申しますが、それでは理事長のおめがねにかなった人は行かす、極端にいえば、気に食わない者は行かさない、どないにでもできるわけではないですか。そんな独裁があっていいのですか。どういう尺度でそんならいい悪いの判断をするのですか。
  62. 木内四郎

    木内国務大臣 そういうことを私は申し上げておらないのですよ。自分の気に入った者だけやって、ほかの者はやらない、もしそういう考え宗像理事長が持っておられるなら、私はそれは反省しなければならない問題だと思っております。そういうことまで認めるようなことは、私自身の発言としてやった覚えもありませんし、そういうことは私は適当なことでないと思います。私は、宗像理事長は決してそういうことのない人だと思っております。
  63. 近江巳記夫

    近江委員 いずれにしても、この学会が要請をした人をとめたということについては、原子力研究所についても非常に大きな疑惑の目でみんな見ているわけですよ。最も自主、民主、公開を守ってもらわなければならないそういう研究所が、しかもそれを監督なさっている政府が、それをしごく平然に容認するような態度でおるとなれば、私は問題だと思います。少なくともえりを正して、そういう疑惑を受けないようにあらゆる点を注意していく、こういう謙虚な姿勢が一番大事と違いますか。そういう姿勢は長官にはないのですか。
  64. 木内四郎

    木内国務大臣 そういう姿勢の問題とかなんとかいう問題に私は触れておらないと思うのです。ですから、さっき原子力局長は、もし間違えがあれば、そういうことに対してはひとつ大いに気をつけて監督に間違いのないようにするということを言ってました。私はその原則でいいと思うのです。だから、私は間違いないと思うのです。もし間違えがあれば、やはり深く反省して改めるべきものだ、これは当然のことでありますから、そういうことまでやらないというような、そういう偏狭な、けちな根性は毛頭ありませんから、誤解のないように私はお願いいたしたいと思います。
  65. 渡部一郎

    渡部委員長 関連質問のお申し出がありますので、これを許します。田中武夫君。
  66. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほど来の近江委員の質問、それに対する答弁をそばで聞いておりまして、ちょっと気になりますので、基本的な問題からお伺いいたしたいと思うのです。  原子力研究所は、言うまでもなく、原子力研究所法によってつくられた特殊法人です。したがって、その運営は第一条の「設立の目的」及び二十二条の「業務の範囲」内においてやるべきであって、それを離脱したことはやれないと思うのです。そこで、まず講師の派遣とかあるいは要請ある講師をとめるとかいうのは、この規定からいってどれに当たりますか。——聞いていることがわかりませんか。原子力研究所は原子力研究所法によってのみ存在し、よってのみ運営せられるわけですよ。したがって、先ほど来、近江委員が言っておりますことは、一体この原子力研究所法の何条に基づいての行為なんですか。まずそれをお伺いします。一条の「設立の目的」と二十二条の「業務の範囲」、それ以外のことはできないわけだ。特殊法人なんですよ。いまここで私は法人擬制説とか実在説等を云々するわけではありませんが、少なくとも特殊法人は法に、設置法に許された範囲内においてのみ活動が許される、だからその何条によっての行動なのか、まずそれを聞いておるのですよ。
  67. 宗像英二

    宗像参考人 原研には、いまおっしゃいました原子力研究所法がありますが、それを具体的に私のほうで実施するために、これに準じてもう少しこれをかみ砕いた就業規則がございます。その就業規則に従ってやっております。
  68. 田中武夫

    田中(武)委員 就業規則といえどもこれに根拠がなくてはできないわけですからね。少なくともそれであるならば二十四条に基づいたのではなかろうかと思うのです。そうじゃないですか。「業務運営の基準」これは総理大臣の認可を受けることになっていますね。いいですか、二十四条の「業務運営の基準」これに基づいて就業規則ができたのではないですか。少なくとも根拠法がなくしてそんなものはできませんよ。
  69. 宗像英二

    宗像参考人 いま私ちょっと先生のおっしゃることに即答をいたしかねますけれども、とにかくこの原子力基本法、原子力研究所法、それに抵触しないようにして、それに基づいてこれをかみ砕いて実施しやすいようにつくった就業規則がございます。それによって処置しております。
  70. 田中武夫

    田中(武)委員 だから、就業規則といえどもかって気ままにはつくれないでしょうと言っておるのです。少なくとも私法人である民間企業でも、就業規則をつくるときは、御承知のように過半数の労働者を代表する者の同意を得て、意見を聞いて、労働基準監督署の許可と認可をとらなければいけないわけなんです。いわんや特殊法人ですよ。就業規則はどういう手続できめたのか、どうなんです。
  71. 宗像英二

    宗像参考人 就業規則は原研創立のときに手続を通して、いま先生がおっしゃったように関係筋の許可を得て、そしてつくったものです。その後若干手を入れてあるところがございますが、それもみんなちゃんと筋を通して、そして許可を得てきておるものでございます。
  72. 田中武夫

    田中(武)委員 私はこれは詳細に見ていませんが、特殊法人がそういった就業規則なりあるいは給与その他をきめるには、少なくとも主務大臣の許可を得なければいけない。そうして初めて今度は労働基準法に基づくところの手続を経てきめられるのです。だから、その運営の基礎はどこにあるのかということです。あなたがおっしゃっているのは、なるほど就業規則の第一条に、労働基準法に基づいてこれをつくるということが書いてあるわけです。ところが、それをつくる前提としては、運営の基準とかその他は、たとえば給与法をつくるにしても、全部主務大臣の認可を得なければならない、そういうことになっているはずなんです。だから、その運営の一環としてやるのであるならば、私はやっぱり根拠は二十四条、それには「総理大臣が定める」云々によって計画を立てて運営しなければならぬ、そういうことになっておると思うのです。答弁ができなければあとで資料を出してもらえばよろしい、それらの一貫したものを。少なくともあなた、先ほどから聞いておると相当自信を持っておったと思うのです。ところが、根底から聞いて、一体これのどこから出ますか、それがわからないようなことで一体どうなるのですか。特殊法人の理事長なら自分の所属しておる特殊法人の基本規定ぐらいのことは知っておきなさいよ。そして、えらそうなこと言うなら、それは何条に基づいてこういう手続をとりまして、それでできました就業規則の何条によってやっておりますと。それなら、とめるとかとめないとかいうことが就業規則の何条に書いてあるのです。そういう自信のない答弁はやめておきなさい。
  73. 宗像英二

    宗像参考人 その点につきましては、私不勉強でございましたから、いまここでお答えできませんけれども、帰ってさっそく勉強しまして、ちゃんと書類をつくってお届けいたしましょう。
  74. 田中武夫

    田中(武)委員 関連質問だからこれでおきますが、ともかく自信ができたら言ってください。いつでもぼくは質問しますから。  以上です。
  75. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 関連して。理事長お帰りになりますから、私の質問のときいませんから、いま関連で聞いておきたい。  いま大臣は、災害問題、特に安全性という問題について、これから十分考えていかなければいけない、安全性考えなかったためにできた大臣だから、安全性を特に考える、こういうように強調された。そこで、この講演会というのは、裏日本原子力発電所が多いでしょう、それに対して不安の念を持っているのですよ。災害が起こらぬかということを考えておるのです。だから現地の人はそれについて十分知りたい。知りたいという要求と、それからこちら側でいろいろ研究されておる研究というものを国民につなぐことが私は原研の一つの仕事じゃないかと思う。隠蔽することが私は原研の仕事じゃないと思う。そうなりますと、ここであなたにお聞きしておきたいのですけれども、私たちもいま社会党の中で原子力発電に対するところのいろいろな意見が出てきておるわけです。非常に危険性もふえてきたという危惧の念を持ってきているわけです。だから、ここに名前のあがっておるような人はよく研究しておられると思うので、お招きしたいと思う、来てもらって徹底的にこれをやらなければならぬときが来たと思うのです。私たちも当然徹底的にやらなければならぬときが来ているからやりますけれどもね。ここでもやらなければならぬ。そのとき、あなたはやはり強権を発動してとめられますか、それをお聞きしておきたい。
  76. 宗像英二

    宗像参考人 そのような正々堂々とした場所には、よろしい、出ていこうということであります。
  77. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 じゃいま要請されておるのは、正々堂々とした要請ではなかったのですか。どこが正々堂々でないかということを言ってください。国会なら正々堂々で、民間の研究団体が不安を持って、それについて聞きたいということがなぜ正々堂々でないのですか。それこそ国民無視の言い方じゃないですか。
  78. 宗像英二

    宗像参考人 原子力研究所に依頼がないのでございます。それでわれわれのほうではそれを引き受けることができないのです。
  79. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 私は、この文章だけ見るので、実態を調べておりませんけれども、あなたのほうで差しとめられたということは、依頼がないものをどうして差しとめられたか、どこからかの指示で差しとめたのですか、かんぐって差しとめたのですか。そういうふうにかってに行ったらいけないという、かってな行動はいかぬという立場で差しとめられたのですか。その立場を明らかにしてください。
  80. 宗像英二

    宗像参考人 差しとめたのは先ほどのたった一つなんです。あとのはみな、私どもに正式にいってきてないで、事後にわかったものです。
  81. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 そのたった一つはどこですか。
  82. 宗像英二

    宗像参考人 先ほど近江先生のおっしゃった、仙台の漁業経済学会、それ一つなんです。
  83. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 関連ですからその辺だけ聞いておきたいと思うのです。この問題は重大な問題になるのです。国民の知りたい一番大切な問題になってくると思うのです。それでその点を聞いておきたいと思うのですが、いま言うように、これは正々堂々でなかったのですね。正々堂々なら出されますね、どこの研究会でも。——わかりました。
  84. 宗像英二

    宗像参考人 そうして、先ほどから私が申し上げましたように、この問題はいろいろ誤解を招くことがございますので、誤解を招くと皆さんにも御迷惑をかけるし、原研の発展にも差しつかえるものでございますから、その点が適当である人をもって私どもでは発表していきたいと思っております。
  85. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 何かあなたはことばの裏に、奥歯にものがはさまったような言い方がありますね。何が誤解を招くのですか。これは公式の場ですから、あなたは誤解を招くというようなことを言われたが、何か聞きたい。何ですか、誤解を招くとは、何を誤解を招くのですか。
  86. 宗像英二

    宗像参考人 これは一つの例でございますが、私のほうと関連のある機関で中立のある先生をお願いして、あるところで講演をしてもらって、そうしたら、先生が話をしたことと全く違うように印刷物に出てしまいまして、その先生がもう非常に憤慨してわれわれのところにも連絡なさった。ですから、そういうところは非常に先生方にもお願いしたいのでございますけれども、しゃべった人とその解釈をする人、これは結局全体のPRの問題なのかもしれませんけれども、そういうところはひとつぜひ先生方にもお考えいただきたいと思うのでございます。全く違ったふうに出ていることがございましてね。
  87. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 もうこれだけでおきます、関連ですから。  そこで、あなたは中立とおっしゃったが、何に対して中立ですか。中立だったら、中立でないものと、それから両極端あるはずですね。この極端は何ですか。まん中と言われるなら、柱は何ですか。
  88. 宗像英二

    宗像参考人 先生おっしゃるなにには、非常にむずかしいことになるわけでございますけれども、私どもやはり一番中立なのは、よく著述なんかをなさって、われわれが見ても、ほかの男が見ても、この方のおっしゃることなら妥当だなと思われるような方に出ていただくほうがいいというふうに私ども思っております。また少し研究のことになにしますが、われわれ自身は研究を一生懸命やっておりまして、われわれがわれの態度を批判することは、ちょうど相撲取りが行司になるようなことになりますものですから、これは非常に自分でも自戒して、そして科学技術のことなんでございますから、進歩がございまして、それでそれに応じてやはり現実に忠実でなければいけないということをわれわれいつもなにしております。  私ども原子力がそれじゃ絶対絶無安全かということについては、私どもやはりずいぶん心配します。そして、われわれが創意くふうをして、安全な道をつくらなければいけないということを考えたりしますので、いま先生にお答えするどれが中立かというのは、いままでの著述、あるいは言動、そういうようなことを見まして、それでやはり多くの人たちがこの人なら、一番みんなに妥当だなと思われるような人に原子力開発についてのいろいろなお話をしていただくことがいいんじゃないかと思います。その中には、原子力研究所の者もおりましょう。それから大学の方もおられる……。
  89. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 注意してください、委員長。たくさんものを言われたけれども、私の質問には一つも答えていない。中立の人がいいというのだったら、その両端があるはずだから、両端は何をさしますかというのです。あなた、原子力局長から注意されて、中立の説明ばかりしておる。自分の考えだけ言うておるわけだ。そこに原研の問題がひそんでいるんですよ、あなたの考え方、両方言わないということに。よろしいか、これはソ連でも中国でも、学問に対する真実性というものは、それがどんなイデオロギーがあろうと、それは真実は真実ですからね。そんなところで思想、宗教、信条、こういうものによって曲げて中立だとか、中立でないとかという判断をあなたはするのなら問題ですから、私は聞いておるのです。あなたの答えはいま何もない。何でそんな不誠実なことをおっしゃるのですか、理事長ともあろう人が。
  90. 渡部一郎

    渡部委員長 委員長より申し上げますが、ただいまの三木委員の御質問に対して正確にお答え願います。
  91. 宗像英二

    宗像参考人 それは私ども研究しておりますときに、プラスのものとマイナスのものとございます。これはプラスのものとマイナスのものがあって、それの両方とも観測がはっきりしていない間は、両方とも信頼性についてやはり若干どっちをとっていいか、それでこっち派もできるし、こっち派もできる、それで私はその平均をとったものということを言うわけです。
  92. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 これはまた論議いたします、関連ですから。何かおかしいですけれどもね。
  93. 近江巳記夫

    近江委員 すみません、えらい時間がたちまして。すぐ終わりますが、もう一ぺんここのところを申し上げますと、「中島氏は山本所長と会見したが、所長は「君が出席して話すには、関係のない学会だと思ったから断った。また福田氏は話したがらなかった様子だから。」と答えているが、福田氏はまったく意向を聞かれていない。」のですよ。  さらにもう一つ問題は、これは原子力研究所ではありませんが、もう一つのテーマで発言が取り消されたのは日本原子力発電所技術部次長板倉哲郎氏の発表が大会直前に取り消された。御承知のように民間のそういう電力会社がどんどんできているのですよ。ところが、この人もとめられておる。これはなぜか。そうすると、会社から急に板倉氏の国際会議出席がきまったので発表は不可能と同会社から連絡があった。そこで事務局が国際会議の日程などについてこの日本原子力発電所に問い合わせたけれども、答えられないという返事で、かわりの講師派遣依頼も断わられているわけです。民間のそういう会社もやはり同じような動きがあるわけです。少なくとも自主、民主、公開を原子力基本法でうたわれておるわけです。そういうところがこういう秘密主義というか、そういう基本的なことが疑惑を持たれるような行動をしていくということについては、将来の問題として非常に心配だから私は言っておるわけですよ。そういうような何らかの圧力があったのか、勘ぐりたくなるわけですよ。  この辺について、われわれとしてはいまずっと非常に時間かけてお聞きしたわけですが、何となしに納得できないわけです。非常に何か不自然なものが漂っておる感じなんです。ですから、こういうことはもっと民主的に、そうして伸び伸びとできるようにやってもらわなければ困ると思うのです。あとの方もいらっしゃるので、私は特に要望をして、これについて総括的に長官にもう一度重ねてお聞きして、終わりたいと思います。
  94. 木内四郎

    木内国務大臣 先ほど原子力局長からも申し上げましたように、私もそれをそのとおりだということをさっき申しましたのですが、こういう問題は非常に慎重にやらなくちゃならぬ問題でありまして、もしその間に間違いがあるようなことがあれば、これは困ったことでありますし、また外部に対する影響もありまするし、原子力研究所の威信にも関することでありまするので、そういう点を慎重に検討いたしまして、今後においては皆さま方に御心配をかけることのないようにひとついたしたい、かように思っております。
  95. 近江巳記夫

    近江委員 終わります。
  96. 渡部一郎

    渡部委員長 次に三木喜夫君。
  97. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 長官、きょうは初めての委員会で所信を表明されました。また、この委員会に時間までおいでになって非常に慎重な態度で取り組んでいただいていることに対しましては、最初に敬意を表したいと思います。  しかし、いま長官も冒頭お触れになりましたように、今回のローム斜面実験の結果、たいへんな犠牲を出した、その結果私が長官になったので、今後こういう不慮の災害を起こさないように、実験に当たっておってこういうことを起こさないように今後全面的に注意をしたい、こういうお話があったことは私も賛成です。  それで、あなたのお話の中に一つ気になることは、国民が科学と科学技術に対して関心を非常に高めてきた、しかしながら不信の念もあるので、こうおっしゃっております。不信の念もあるのでときょう言われましたが、私はそこが気になる。私もそれをいままでずっと思っておったのです。あなたもそう思っておられる。そのあなたの不信の念というのと私の不信の念ということがきっちり合うか合わぬか、あなたの不信の念というところを聞きたかったのです。
  98. 木内四郎

    木内国務大臣 三木さんにおかれては、今日まで科学技術振興に対して非常な熱意を示していただいて、私ども科学技術振興に対して激励やら御鞭撻をちょうだいしておりまして、常々深く感謝を申し上げております。  先ほど私が申し上げましたのは、いろいろな意味もないじゃありませんけれども、特に、俗なことばで説明申し上げれば、科学技術庁は専門家を集めていろいろ試験をしたり計算をしたりして、ここなら安全だと思ってそこへ観測の陣をしいておったところが、科学技術庁の役所の、科学技術庁中心になってやった計算の何倍もの速度で、何倍もの量のロームが崩壊してきてあの事件を起こした。科学技術庁科学技術研究所の人がそれほど集まって熱心に研究したそれが、こんなに四倍もの量、また速度でくる、そんなようじゃどうも科学技術のほうも信用できないじゃないか。俗な説明のしかたをすれば、それが今度の大きな原因だと思うのですが、直接御質問がなかったので、私はこの機会にちょっとこの点についても御説明申し上げさしていただきたいと思うのです。  実は御案内だと思うのですが、わが国の地盤、ことに東京から神奈川、この辺のロームの層というものは非常に多くて、しかもあぶないのですね。ところが、そこのところへもってきて宅地の造成がどんどん進んでくる。そして、つくったところが地盤があぶない。私は、そう言ってはあれですけれども、人生今日まで大蔵省の主計局長をしたり主計局の役人をしたり、また議員になっても二十四、五年になります。その間に災害を視察して歩いて大体——こう言ってはおこられるかもしれません、独断といわれるかもしれませんが、その経験からして、がけの上とがけの下と川っぷちは住んではいかぬということを、常に災害視察のときは言っている。御本人のときには災害が起きなくても、子供や孫のときにやられるじゃないか、危険があるではないか。それを見て歩きますと、ちょっとした山がくずれて数戸のうちを押し流す、押しつぶすという例はたくさんあるのですね。それを関東、神奈川の実例について見ますと、二十四年から二十年ばかりの間に、何とこれが五千六百九件ものロームの崩壊が現にこうしてあったのですよ。五千六百九件というとたいへんなケースです。それで、どういうことをやるかというと、たとえば、三十六年の夏の災害では四十八人がそのために死んでおるのですよ。それから、四十一年の夏のときには、どうですか、そのときは三十三人がロームのがけで死んでいる。国民が死んでいる。それから、四十二年の七月のときはどうかというと、神戸とか呉とか、あそこで三百七十一人という行くえ不明が出ているのですよ。  そこで、私は、前に長官をしていたときに、これはほっておくわけにいかないというので、研究調整費を出しまして、これはローム崩壊のほうをひとつ研究しなければ、こういうのを年々やっていたのでは、四十二年の三百何人、たいへんなことだというのでこの計画が立てられた。三年がかりで計画を立てた。この計画は、私はよかったと思う。すべての計画がよかったが、やはり人間のやることで、魔がさすのですね。最後の段階でその安全性に対する配意がちょっと足りなかった。ちょっと足りなかったことが大きくなって、このちょっとがたいへんなんですよ。このちょっとというところが非常に重大なんで、そのためにあの災害を起こしている。  私は、あの現地を視察して驚いた、あの急斜面になっているところで。それでどうしたかと聞いてみたら、この前はこんなにひどかったのか、いやくずれてくる前まではここに草むら——木のあれがあったというのですね。相当高い木があって、木がはえておった。ずっとはえておった。それだものですから、しかも四分の一くらいしかないと思って、そこに多少間違いがあったのですが、木の林みたいなものが向こうが見えないくらいのがあったのですね。そこが人間のあれなんですよ。まさかこの森を越して、くずしてきて、ここまで来るとは思わなかったのですね。そこに魔がさしたのだと私は思うのですよ。そうして観測しておったところから、写真をとる人などはその線からまだ数メートル、十メートル、二十メートル前へ行って、そして写真をとっているのですね。それはなぜかというと、そこに森があった。それがやはり人間のあれです。それで、計算からいうとそれほどでないという。それで森があった。私に言わせれば、そのときに池のこっち側まで来ていればあの事件はなかったろうと思うのです。そこがたいへんな、やはり人間ですから魔がさして、その最後の瞬間のちょっとしたところがこの原因になっているのです。それまではずっとよかったのですが、そこに大きなあれがあるのです。  それで、そこを私はこれからの研究についても非常な安全性のある余裕を見てやらなくちゃならぬ。その森に幻惑されてしまった。そこを私はそう思うのですよ。それだから、報道人の方も、そこにいた、すわったところよりももっと前まで行っている。研究者とすればこういう、心理がある。なるべく近くで見たいという研究者の心理もあるのです。それとこうみんな交錯してあの事件になったものと私は思うので、非常に遺憾なんですが、そういう意味で、今後におきましてはそういう点に十分配意をして、そうして間違いのないようにいたしたい、かように思っております。
  99. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 不信の念という長官の思いはわかりました。どこに不信の念があるかということがそれでよくわかりました。  私は、念のために、長官、この前あなたが長官になられたときの所信表明を読んでみたのです。そういたしますと、ちょうどきょう言われたことと同じことを言っておられるわけです、災害に対してもそれから公害に対しても。ローム斜面の崩壊がなかっただけで、言っておられることはこの前と版で押したように同じことが言ってあるのです。だから、いつまでたっても科学というものは——大事なところは大事なところだと思うのです。あなたはこの前長官になられたのは四十三年ですね。三年たって、こういう不幸があって、それを一つの主体にして、そして所信表明は同じことを言われておるのですね。それだけに私は、あなたが言われるように、科学というものは先へ進みにくい問題もあるし、真理は真理だと思うところがあると思うのです。しかしながら、ここで一つ考えねばいかぬことは、いま近江さんの質問にありましたように、原子力に対する不安があると思うのです。この前のときも同じ質問が出ておるのです。ジョンソン・メモが出ておるのです。ジョンソン・メモに対して科学技術庁の対処のしかたというものが非常に不信を呼んでおるじゃないかという、そういう質問から始まっているのです。石川君が質問し、私も関連質問してその不信というところに焦点を合わしてこの前の所信表明のときには質問がされておるわけです。だから私はあなたの不信という問題は原子力に対する一つの不信、それから宇宙開発に対する不信、これもなかなか重要ですよ、問題ですよ、あなた。どういうようにレクチャーをされておるかされてないか、それはわかりません、研究されておるかどうかわかりませんけれども、いままで計画を立てられたことがほとんど計画になっていない。宇宙開発もおくれてしまっております。アメリカの技術を入れようか入れまいかということについても非常に問題がある。こういう点も考えに入れてこの不信ということをあなたのほうで言っておられるのかどうかということが私は非常に聞きたかった。  それから、もう一つは原子力の中の放射能の問題ですね。これもここでどんどん質問がありましたけれども、これは日をかえて一ぺんやりたいと思うので、先がた宗像さんにああいうような質問をしておいて御了解を得たのですけれども、これも非常に心配が出てきましたよ。たいへんに原子力発電が盛んになってきましたけれども、一方ではそれについて非常な心配がある、こう言わざるを得ないわけであります。  それから、これはまとめて答弁してください。もう一つ政治の姿勢です、原子力行政に対してあるいは科学技術行政に対して。この前あなたは、研究費が足らぬじゃないか、施設が老朽化されておるじゃないか、だからしっかりと予算をとるように私は努力いたしますということは言われておるわけです、この前のとき。しかしながら、科学技術庁ができてから何年になるのですか。これは局長でいいですから、今日何年になってその間何人大臣がかわったのですか。あなたに当てつけがましく言うのじゃない。あなたは二回目でベテランですから、あなたをとやかく言うわけじゃないのですけれども科学技術庁ができてから何年になって大臣何人できたのです。しろうとの大臣みたいなものばかりよこして、そのたび情熱を新たにしてやると言って、十年一日のごとく同じことばかり言っておっては科学技術は進まない。
  100. 木内四郎

    木内国務大臣 最初にちょっとお答えしますが、この不信という問題ですね、先ほど私が申し上げたのは、ここで私がいま説明申し上げたとおりだと思うのですが、いまお話しになった原子力開発宇宙開発が予定どおりいっておらないじゃないかという意味不信もあるというお話ですが……。
  101. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 原子力は危険性、宇宙開発は予定がおくれたということです。
  102. 木内四郎

    木内国務大臣 予定がおくれたとかそういう不信意味で私はさっき申し上げたのじゃないのです。科学技術庁がやっておることも、安全だと言ってやっておることもああいう危険があるじゃないか、こういうことに対する国民不信があって非常に困るということを申し上げておったのです。もちろん原子力開発あるいは宇宙開発のほうなども予定どおり進んでいないなどという点は、これは遺憾なところでありますけれども、そういう意味不信という意味で申し上げたのじゃないのですから、その点を御了解願いたいと思います。
  103. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 ちょっと官房長、説明してください。何年になってどうなったか。
  104. 井上保

    ○井上政府委員 科学技術庁ができましたのは三十一年でございまして、現在まで約十五年でございます。その間の大臣の数でございますが、非常に短期の大臣もございましてはっきりいたしませんが、大体二十数代程度じゃなかろうかと思います。非常に短期の、非常に短い期間の大臣もだいぶおられたそうでございまして、ちょっとその数字がはっきりわからないのでございますけれども、いまのところは大体二十代をこえておるのじゃないかというようなあれでございます。
  105. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 十五年間に科学技術庁の大臣が二十人ですか。
  106. 井上保

    ○井上政府委員 はっきりいたしませんけれども、非常に短い方が多かったらしくて、その関係がちょっとわかりませんので、後ほど詳しく調べましてお知らせします。
  107. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 いや、大見当でけっこうです。それでよろしい。別に調べてもらわないでよろしい。こういうわが国の科学技術庁のあり方というのは、木内さん、あなたは参議院の大御所です。議長になられるような方ですから、もう少し大所高所から科学技術庁のあり方を見てもらわなかったら、不信感は足元にあるのですよ。十五年間に二十何人科学技術庁長官ができた。大臣づくりにはいいかもしれませんけれども、これでは科学は進まぬということが一つ。  もう一つ申し上げましょう、足元の行政の問題で。通産省からやってくる、運輸省からやってくる、農林省からやってくる。日浅い科学技術庁ですから、当面はそれでいたし方なかっただろうと思う。いま官房長お話では十数年たっております。やはり各省の出向のこれが草刈り場ということになるのなら、科学技術庁の自主性どこにあるかということを言いたい。そしてある程度実績をおさめたといいますか、大過なく終わりましたならばまたもとへお帰りになる。そういうここは練習場、それでいいのですか、そういうやり方で。近江君がおったらおこるだろうと思うのですが、近江君、質問したらどこかに行ってしまったけれども
  108. 木内四郎

    木内国務大臣 いまお話しになりましたように、科学技術担当者がなるべく長くおってやっていくことがいいということ、これは私はそう思います。しかし、これはいろいろ総理大臣の組閣の方針などによりまして、いまお話にあったようにしばしば交代しているのですが、まあそういう点は大いに考えなくてはならぬ点もあると思う。これはお説のとおりだと思います。あなたは従来からそういう点を非常に御心配になっておられることで、私もそれをたいへん感謝しているのですけれども、そういうふうになっていないことはたいへん遺憾なことだと思うのです。この役所はできてまだ間もないものですから、子飼いといってはあれですが、子飼いで下から上がった人はまだ少ないのですよ。そういう点も私は非常に遺憾な点があると思うのです。だんだん年を経るに従って、科学技術庁で採用した人もそこで成長してくる、こういうふうになっていますから、これまではあれでしたけれども、だんだん私はそういう点は直ってくるのじゃないか、かように思っておりますし、また期待を持っておるような次第です。
  109. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 まあ場当たり的な御答弁をいただいて感謝いたしますけれども、ほんとうをいえば、いま課長級まで育ってきておるわけです、科学技術庁のベテランは。その上にぽこんと郵政省からだとか、あるいはまた通産省から一番よく来るのですね。そういう姿勢を改めますかということです。またあなたは、良識の府の参議院の長老じゃないですか。それくらいのことを言えるじゃないかという私は期待を持ってお伺いしておるのです。二度のおつとめですから。一回目ならこんなことは言いません。また新米の大臣がやってきたなくらいのことを思っていますけれども、しかし、今度はあなたベテランで来られたのですから、科学技術庁に対するところの姿勢をしっかり踏み固めてやってもらいたいと思う。その信念があるかどうかということをお伺いしているのです。所信表明をきょうやられたのだから。一番大事なことですよ。
  110. 木内四郎

    木内国務大臣 大体だんだん役所のほうで養った人たちが成長してきますと、そういうことは実行し得るようになってくると思います。まだできたばかりで方々から人はかり集めてこなくてはならぬ、子飼いの者はいないという場合には、不本意ながらいまあなたが御批判されたようなこともあったろうと思います。これから先はだんだんそういうことがないようになっていくだろう、こう思うのであります。その点を御了解願いたいと思います。
  111. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 佐々木さんもいまおいでになったからちょうどよかったと思うのですが、科学技術庁の創設時分に苦労なさった佐々木さんもおいでなんですが、要するに私の言いたいのは、日なお浅い科学技術庁なら、外国へどんどん研究にやられるとか、二重の人間を養成するというかたくわえておいて、そうして少なければ少ないだけの対策をしてもらわなかったらいかぬと思うのですよ。これだけ日進月歩の科学技術が進んでおるときに——それは他の省におられてだめだというのじゃないですよ。専門にやってくれというて私は言いたい。それくらいの気がまえをもってやってもらいたいと思いますし、そういう機運になってきておるといまおっしゃっておりますから、私はそこに信頼を置きたいと思います。  それからもう一つ不信の問題を申し上げたいと思います。原子力だとか宇宙だとかいうお話をいたしましたが、この前もその心配を持っておったんですが、軍事と科学の結合でございます、問題は。軍事が科学と結合したときにはこわいと私は思っております。科学技術庁が軍事の研究の手助けをせられたときにはこわいと思っております。今回だけでなくて、あなたの前の長官をされておったときと、また今回にかけて、たとえばロケットの研究が奥羽地方のところに防衛庁のがありますね、ロケットの研究をやるところが。こういうところとの関連が科学技術庁はございませんか。軍事研究科学技術研究所単独の研究との関連がないかどうかということが一つ。  それからもう一つは企業、名前は申し上げません。これこれこれこれというのが宇宙開発にあるでしょうし、これこれこれは東大の宇宙研究のほうには企業があるでしょうし、原子力にはこれこれこれというものがあるでしょうが、それとの関連において国民不信が抱かれるというような関係はございませんか。これは長い将来に御質問したい問題ですから、いま姿勢だけ承っておきたいと思います。
  112. 木内四郎

    木内国務大臣 いろいろ御配慮願っておって非常に感謝しておるのですが、もしそういうことで不信があるということであると、私は非常に困ったことだと思うのですが、私どもは、科学技術は軍事の関係とは絶対に関係はありません。その点をはっきり申し上げておきたいと思います。ことに原子力基本法によりましても平和のためにということでやっておりますから、そういう面はないと思っております。  また、企業との関係、これは非常にむずかしいので、疑いを受ける点があったら困ると思うのですが、たとえば宇宙開発のロケットをつくる、衛星をつくる、簡単にいかないのですね。すぐにどこの会社へでも注文してどうというわけにはいかないのですね。そこでどうしてもある会社に注文する。ある会社は技術の進んだ外国の会社との関連で導入してくる。しかもそれは簡単にいかない。一カ月や二カ月ではできないのですよ。二年も三年もかかってやる、こういうことになりますから、ある一つの会社に注文してやらざるを得ない。そうすると、どうもあそこと関連があるというような疑惑を受けることがあっては困るのですが、私どものほうではそういう関係は絶対にありませんから、その点はひとつ御了解願いたいと思います。
  113. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 老婆心までに申したようなかっこうになりましたけれども、一つ例を申し上げたいと思います。  三年前に当科学技術対策特別委員会において、水俣病の問題が取り上げられました。そのとき公害発生源であろうと思われる企業に対して、われわれは一斉に不信の念を持っていろいろ御質問申し上げた。幸い両三年かけまして、これに対して研究班ができました。あるいは疫学とか臨床とかというような調査班ができて、水俣病の原因はここであろうという結論が出されたときに、科学技術庁の一役人によってその原文は書き直された。そして世間に発表された。その中には、その一企業の名前は隠されておったということは、この委員会で何回も追及され問題になったところです。これはもう隠すことのない事実です。せっかく三班に分けて、何年もかけて結論として出されたものを、科学技術庁で総括なさって世間に発表されたときにその疑いというものが完全に抹殺されておった、ぼかされておった、これは通産省から来た者の通弊だと思います。一説によると、当時通産省からやってきた役人がそれを書き変えた、こういううわさが流れておりました。御存じなかったら、一ぺんよく帰って調べてください。こんなものは、だてやていさいでものを言うんじゃないのですから。そんなことが抹殺されたり、そんなことがごまかされたりするようでは、真実を追うところの科学技術庁じゃないと私は思う。企業を守るためか、国民に不安を存えぬためか、その真意は知りません。そういうことがかつてあった。現状認識の上に立って現状どうだという問題については今後の問題ですから、きょうは所信表明のところだけですから、念のために老婆心だけではないということを申し上げておきたいと思う。だから、科学技術庁オンリーの、技術庁の職員あるいは責任者というように私はしてもらいたいと思う。それで申し上げる。
  114. 木内四郎

    木内国務大臣 私はいまのお話初めて伺うんですが、科学技術庁におきまして科学の立場から離れてそういうようなことがあったとすれば、これは非常に困ったことですが、私はまだ全然そういうことを聞いておりませんので、いろいろ取り調べまして、そういうことのないようにひとついたしたい、かように思っております。
  115. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 以上で終わります。
  116. 渡部一郎

    渡部委員長 次に、吉田之久君。
  117. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 長官が再度科学技術庁長官就任されまして最初の委員会でございます。特にわれわれから長官にこの時点で望みたいこと、一、二質問しながら申し上げたいと思います。  いま三木委員の御質問に対する答弁を聞いておりまして、特に今度のローム斜面のがけくずれの問題、さすがに相当な長官だと思いました。実に大ざっぱだと思いました。しかし、私は、いかに経験のある大長官であっても、今度ああいう事故あと就任されただけに、ほんとうに足元から起こりつつあるこの種の事故をいかに絶滅していくかということをほんとうに見直す長官であってほしい。脚下照顧というんですかね、そういう意味でもう少しあの事実の認識もしておいていただかないと、死んだ人たち、やめた長官がかわいそうだと思うのです。  木のさくがありました。いつの間にか、長官、木が森になり、森があったが、それがくずれたのが魔がさしたのだろうとおっしゃっておりますけれども、われわれ現地を見てまいりましたけれども、森なんてございません。雑木の林状のものが続いておっただけです。新聞記者がそのさくの前まで行っておったと言われたんじゃ、私は記者たちもおこると思うんです。全然さくより奥へは入っておりません。その辺は、隣にいらっしゃる粟山政務次官がよく御存じのはずです。さすがに女性の政務次官は罹災者の記者の人たちを病床に見舞っておられました。私もある場所で政務次官と居合わせました。だから、そういう記者の人たちのなまなましい当時の話を次官は御承知です。科学技術庁人たちが絶対ここまでは来ない。池よりは向こう、さくよりは前ですね、その間にみんな立っておったから、だからわれわれしろうとの新聞記者は、専門家がだいじょうぶと言うのだからだいじょうぶだろうと思ってそこにおった、こう証言しておるわけなんです。しかも、いろいろ聞きますと、やはり科学技術庁あるいは各省庁にもまたがる四つの連合実験でございますけれども、非常なやはり油断があったと思います。  というのは、これは一つの話ですけれども、その木のさくの前のほうにVTRというんですか、ビデオテープの機械だろうと思います。これは科学技術庁のものです。それを研究班の人たちが前々日に土の上に板を置いてそのまま敷設しておった、こう言うんです。そこで新聞記者の人たちが、なけなしの科学技術庁の機械じゃないか、もしもここまで土がこぼれてきたらどうする、一回の実験で捨てるの惜しいと思わないか、こう言ったら、それもそうですなということで、翌日は三脚を立てて、その上にVTRの機械を置かれた。三脚を立てたって土が来たときは一緒じゃないか、めったに来ないでしょう。しかし、やはり万が一ということがあるじゃないか、ロープででもつったらどうだ、こういう新聞記者の意見を聞いて、科学技術センターの人たちが、両方の松の木にロープを張ってぶら下げて、そしてもしもこれでも土が下まで来たらだんだん両方でロープを引っぱって引き上げようや、というようなゆうちょうなことを言っておられたそうです。私はこれが実態だと思うのです。そういうゆうちょうさ、そういう全く科学技術らしくない油断、そういうものが根底にあってこの事故が起こっておるというやはり認識をはっきりしてもらわないと、ただ魔がさしたんでしょうだけでは、長官のいまの立場としての、これからの任務を遂行されるのにいささか私ども心配な点がございます。
  118. 木内四郎

    木内国務大臣 いまお話しの点、まことにごもっともだと思うのです。私の説明がちょっと足らなかったと思うのですが、私は安全をもう少し見て、池のこっち側に来ておればよかった、かように実は私は思っておったのですが、いろいろ計算はした、その計算を過信したのがやはり大きな原因だと思います。自分たちが試錐をしたり、どろの容積をはかったりいろいろしておるのですが、それの計算を過信して、そうして現実の災害というものは、自然の勢いというものはあれほどおそろしいものだということに対する認識に欠けておったのですね、そこでああいうことが起こったのです。いましばらく写真をとった方が云々ということを私が申し上げたのは、それは間違いだったかと思いますが、とにかく写真をとるのに、こっちのほうのものを前に行って写真をとったりしていたわけですね。そんなこともあったりして、魔がさしたというのは私はちょっとやはり言い方が悪かったかもしれませんが、あそこまでいろいろなことをやっておりながら、しかもその安全性に対する配意に欠けるところがあったというところが私は魔がさしておるのだ、こういうふうに申し上げたのですが、とにかくやはり科学といいますか、自分たちの計算を過信してああいうことをやったというところに私は間違いがあったと思います。さっき森と申し上げたのはあれですけれども、たくさんの林が、雑木の林があったことだけは確かで、それがまた人間ですから、それによってちょっと錯覚を起こした点もあるのじゃないか、こういうふうに考えているのです。  いずれにしましても、科学的にもう少し安全性を見ておけばよかったというのが私の考え方です。
  119. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 災害が起こった直後、委員会や本会議でわれわれも質問しましたけれども、この時点ではまだてんやわんやの状態で、一体当初計算されたデータが何であったかということはほとんど完全にはわれわれにはつかめなかったのです。しかし、だいぶ日がたちましたからそろそろその辺はやはりつかんでおられるだろうと思うのです。私どもの認識では計算間違いだとは思わないのです。ほとんど計算と違っていないのです。五秒といったものが三秒半で落ちてきているだけなんです。三秒半も五秒も被害は一緒なんです。だから、実際の当初の計算があるいは実験室から出たデータによる推測が、ほぼどのくらいの速さで、どのくらいの量がどのくらいの規模で、長さで落ちてくるものだったのか、この辺はやはりもうそろそろデータが出ておるはずでございますから、私は一ぺん後日あらためて長官の責任において委員会に発表していただきたい。あとからですから若干われわれからいえばまゆつば的な要素も出てくるかと思いますけれども、それはそれでいいですから、ともかくこういう計算だったのだ、こういう現実だったのだ、この辺をはっきりしてもらわないと、総理の答弁でも、ともかく計算間違いであったというだけで押し切ろうとしておられますけれども、われわれはそんなに計算と実際とは違っていない、計算をほぼしながら、なおかつそれをなめておったという感じがするわけなんです。この辺はひとつ、いずれ明らかにされるべきことを強く要望いたしておきます。  それから、その後この種の被害があって犠牲者が出た、長官が更迭されたということでございますから、新しい長官としてはこの種の災害を再び惹起しないためにどういう通達を各級機関に出されたか、それからこの事故に顧みてどういう組織の改革を考えられようとしているか、それから今後どういう新しい角度からこの種の事故を再び起こさないための予算の要求をしておられるか、という点をやはり聞きただしておかなければならないと思うのです。もう一度申し上げますと、下部に対してどういう通達をされたか、これはもうされてなければならないと思います。それから組織の改革をどう考えられておるか、それからこの種の災害を起こさないための新しい予算の要求をどういうような視点からしておられるか。この辺をまずお聞きします。
  120. 木内四郎

    木内国務大臣 まだ私は再び就任いたしまして日が浅いのですけれども、さっきも申しましたように、この安全性確保の問題、安全管理の問題ですね、これについては全力をあげてこれをやるつもりでありまして、各機関に対して安全性の総点検をするようにという命令が出ているわけです。しかもそれも総点検をしただけではなく、それの様子を報告してくれるようにと、こういうことを言って、いまみな総点検をさせておる次第でありますから、それがまとまりますれば、報告がありますればそれに対して適切な措置を講じてまいりたい、かように考えております。  行政組織のほうは、いま直ちに行政組織をどうするということでなくて、各研究担当機関において、また担当者においていままでよりも一そうこの安全度というものに対する監視と配意を強めていくということが必要だと思います。  それから予算の問題は、ことしはすでに予算も要求しておるのですが、必要があれば研究促進調整費のほうからひとつ必要な費用を出してやりたいと思います。なおこういう際でありますから、もし必要があれば予備費から出してもらって適切な措置を講じたい、かように思っております。
  121. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 特に組織の改革の点についてでありますけれども、さきに各委員も申されましたけれども、やはり各省庁が寄り合い世帯で何となく意思の疎通を欠いたばらばらな構成でやっておるところにずいぶん問題がある、ということが今度でも証明されております。だから、やはりこの種の研究、さらにはいま問題の、もしも関東大震災級の地震が起こったら東京はどうなるかという問題がございますので、いろいろと実験は急がれなければならない。ついてはよほど強力な組織というものを、そういう科学技術のじみちな実験のための一元化された組織というものが必要だと思うのです。   〔委員長退席、近江委員長代理着席〕 この点はひとつ、さらに長官の責任において真剣に御考慮をいただきたいと思います。  時間がございませんので、ちょっと一、二の点だけをお伺いして終わりたいと思いますが、今度はさらに大きなプロジェクトの問題の一つとして、先ほどから問題になっております原子力の問題があります。特に来年度の予算が編成される前、この時点において私どもが一番気になりますのはウラン濃縮の問題です。これはガス拡散方式でいくのかあるいは遠心分離方式でいくのか、日本はいずれかの選択をしなければならない時期に来ているはずなんです。その辺の選択をどうしようとしておられるのか、お聞きをいたします。
  122. 成田壽治

    ○成田政府委員 ウラン濃縮の問題は今後の原子力開発推進の上において非常に大きな問題でありますので、原子力委員会としましても四十五年度から四十七年度までを特定総合研究というものに指定しまして、重要プロジェクトに指定いたしまして、ガス拡散法、遠心分離法の両方法を四十七年度までに研究をして、そしていろいろな問題の解明の見通しを得ることを目標に現在までやってきております。それで、四十六年度の予算におきましては、ガス拡散法が五億四百万、遠心分離法が八億三千万、両方式並行の方法で四十六年度はやってまいっておるわけでございます。ただ最近アメリカあるいはフランス等から国際的に合同事業として、これはガス拡散法による濃縮ウランの生産共同事業でございますが、これに対する提案もありまして、日本原子力委員がワシントンにおける予備会談にも出席して検討していろいろ話を聞いてまいっておりまして、いままで両方式を並行して研究開発をやっている方針と新しいガス拡散法による国際共同プロジェクトに対して参加するのかしないのかという問題、これから早急に、委員会として一年ぐらい予備調査をやらぬといけないと思いますが、これから検討をやることになるわけでございます。   〔近江委員長代理退席、委員長着席〕 したがって、もしも国際事業に入るとなりますと、入る前提の、ガス拡散の計画に入った場合に日本がどういう形で技術開発に参加していくかという形を、必要な分野に重点的にしぼるとかそういう問題が出てまいると思いますが、これは四十八年度以降の問題になるんではないか、むしろいまのところは従来の方針どおり両方式で四十七年度まで検討をやり、そうしてその間に国際共同事業に対する参加問題を、これは政府あるいは関係業界実れまして十分検討——入るべきかどうか、あるいは入る場合の条件とかそういう検討をして、その方針がきまったときにはまた両方式の研究開発にも相当な変更があると思いますが、それは四十八年度以降の問題として考えてみたいと思っています。
  123. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 ちょっとおっしゃることがわからないのです。二つを同時に並行的にいま研究しているわけなんでしょう。ということは、どちらにメリットがあるか、どちらのほうが日本に適するかというたてまえから、したがって日本は独自でやるならばどちらの方法でやるかということでいま研究を続けてるんだとぼくらは思います。一方において国際事業でやろうじゃないかという呼びかけがある。この間、日本原子力委員会がアメリカの原子力委員会といろいろその辺の予備折衝を行なった。そうすると一方では自前でいろいろ研究をしながら、それはそれとして横に置いておいて、国際的にアメリカあたりから呼びかけられれば、そのほうが非常にいろいろな条件が満たされるようであるならば、今度は一つのメンバーとして入っていくのですから、日本独自でやるわけではないですから、そちらに入ってもいい。それなら独自の検討なんて要らなくなりはしないか、この辺いかがなんですか。
  124. 成田壽治

    ○成田政府委員 現在は御指摘のとおり両方の方式を自主開発をやっていくという計画を進めております。それで、これは一年先の問題だと思いますが、もしもマルチナショナルの計画に日本が参加する、これはガス拡散法でございますが、そのときにはガス拡散法の研究開発を全然日本がやめるということにはならぬのじゃないか、参加する場合でも、全体をつくる場合に日本がどこまで技術的に入れるかという問題もありますが、日本の必要な研究はやっておく、そのほうがまた参加のしかたを効果的にもするし、また事業をやっていく上でも日本が相当技術的にマルチナショナル・プロジェクトに対して協力というか、日本が果たす役割りの分野もありますので、そういう分野の研究は国際計画に入るという方針がきまっても重点的にやっていく必要がガス拡散法についてもあるんじゃないかという考え方でございます。したがって、従来の両方式を自主開発をやっていく方針を当分続けてまいりますが、国際計画に入るということがきまった場合には、ガス拡散法の研究開発に対しては変更というか修正を要することになるという考えでございます。
  125. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 長官、ちょっとおかしいでしょう。自主開発をやるならば、遠心分離法とガス拡散方式、これはことし来年一ぱい金をぶち込み、研究陣をぶち込んでやるだけやって、どちらかでやろうということをきめればいいわけです。ところが、いまの局長のお話でしたら、それはそれとして、諸外国から呼びかけてくる、それも無視できないし、だから、アメリカを中心としてガス拡散の国際事業でやるならばその中に入り込んでいく、独自でやった研究もむだにはならない、独自でやった遠心分離法もむだにはならないという御説明になると思うのです。私はそれほど日本のウラン濃縮の技術開発の問題に余裕はないと思うのです。また、それほど財政的にあり余った状態ではない。だからたとえばドイツ、イギリス、オランダなんかが遠心分離法で三国一緒にやろうといってはおるけれども、特に日本とは離れてもおるし、現に呼びかけもない。フランスからはあるらしい、これはガス拡散だ。あるいはアメリカ側からある、もちろんガス拡散方式になるだろう。だとするならば、一応独自の自主開発は差し迫ってはやれないのですから、やらないという判断に立つならば、こちらの研究をストップしてないしはガス拡散方式のほうに集中して、そして諸外国と入っていくためのすべての準備をやっていこうということならば私はより明快だと思う。その辺何だかはっきりしないし、ひどい言い方をすれば何か税金のむだ使いに終わるといえば少し言い過ぎかもしれません、長い目では役に立ちますよ、しかし、あとで申し上げますけれども、ウラン濃縮という問題はそんなに長期的な問題じゃないんですね。やっぱり高速増殖炉とかいう問題が先に出てまいりますから、ここ短期的な、原子力発電の欠くべからざる一つの過程としてどう対処するかという短期的な問題ですから、いまのお考え方は非常にセットしてないというふうに私は思います。いかがですか。
  126. 成田壽治

    ○成田政府委員 国際的な共同事業は、これはウランを生産する事業として参加するわけです。そして参加する場合にも、日本がガス拡散法の技術を全然やってないという状態の参加よりは、相当基礎的な研究開発を持って参加したほうが非常に効果的な参加のしかたであるんではないかという考え方に立っているわけでございます。それで研究開発は、実際事業を日本で、たとえば遠心分離法の工場をつくるとしましても、おそらく昭和五十五年ごろよりもっとあと、五十年代の後半だと思いますが、実際工場をつくるかどうかというのは、もっと技術的な開発研究を進めた上でないと判断ができないので、いま原子力委員会のとっている考えは、両方式を一応研究開発だけは進めていく、そして国際的なマルチナショナルのプロジェクトにもしも慎重に検討して参加するとなった場合には、いままでのガス拡散法に対する研究開発のあり方に相当変更を加えていく必要があるんではないかということでありまして、この点は、ガス拡散法の、隔膜だとかコンプレッサーとかいろいろな分野がありますが、じゃどこをどういうふうにやっていくか、重点的に取り上げるかというのは、これからいろいろ専門の委員会でもつくって十分検討はしていくことになっております。また、国際的な計画に入ることも、これは今後一年以上の期間をかけて検討しないといけない問題でありますので、四十七年度に関しては両方式を踏襲して、来年度二十一億円の予算要求をやっておる状態でございます。
  127. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 いまのお話の半分はわかるのです。しかし、遠心分離法のほうの研究がそれじゃ一体今後どうなるのだろうか。あとでまた機会をあらためて論議いたしますけれども、少しゆうちょう過ぎる、また気の長い、あるいは、いわゆる研究開発はしているんだという点では筋は通りますけれども、当座の間に合わない、実用的でない、純学理的な研究をなさっているというふうにしか受け取れないような気がしてまいります、半分のほうは。だから、その辺のところはいよいよ国際的な共同事業としてやっていくのかどうかという決断を早くしないと、やがて問題は大きくなると私は思います。  それから、かりにそういう国際事業の中でやっていく場合、現在のようにすべてアメリカに濃縮をお願いしている場合、そのよって来たる経費なんかは相当画期的に違うものなのかどうなのか、この辺もやはり一応そろばんをおいてみないといけないんじゃないかというふうな気がいたします。私の考えでは、五千万キロワットの発電を発生するであろうウラン濃縮をつくり上げるためには、一兆八千億円ぐらいの濃縮費を払わなければならないというふうに聞いております。一兆八千億円もの金を外国に払うのであるならば、むしろある程度の金をかけてでも、日本独自で自主開発をしたほうがいいではないか。全くできないというほど、貧しい科学技術の現状ではないというふうに思います。この辺、経済的判断からもこの時期に検討されないと、たいへんいいかげんなものになる心配がございます。その点、現在のままでアメリカとの話も乗らないで、しかもいまのようなことではなかなか自主開発もできないならば、要する濃縮費用はどのくらいであるか。共同で開発していった場合にはその費用というものがある程度削減されるものなのかどうなのか。あるいは単独自主開発でやった場合には、どの程度日本ででき上がるだろうか。どの程度まで金をかけるならば、日本独自でつくっても値打ちがあるではないか。この辺の検討をどうなさっておりますか。
  128. 成田壽治

    ○成田政府委員 昭和六十年度におきまして、原子力発電、いま長期計画で検討やっていますが、大体六千万キロワットぐらいを想定しております。六千万キロワットの場合に、昭和六十年度一年間で三%低濃縮ウランが約二千トン、必要でございます。二千トンの濃縮ウランの購入費というのは、大体八百億ぐらいでございます。そして濃縮ウラン工場をつくるというのは、これは非常に建設費その他コストがかかるのでありまして、十億ドルとか、一つの工場で経済規模十億円といわれておりますので、単独で工場をつくるということは相当高いコスト、あるいは資金的にも非常に多額なことを要することになると思います。
  129. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 これはちょっと数字が合わないのですが、私の読んだ本では亜細亜大学の倉前義男という学者の説によりますと、天然ウランの鉱石を持ってきて、これをイエローケーキにして、そのあとの濃縮をアメリカに頼む場合、その濃縮費が五十万キロワットで百八十億円かかる。そうすると五千万キロワットだと、一兆八千億円もの外貨をアメリカに対して払わなければならない。こういうふうに書いているのですが、局長さんのお答えだとまるで数字が違いますね。
  130. 成田壽治

    ○成田政府委員 いまもうちょっとはっきり調べますが、おそらくウラン濃縮費だけでなくて、ウラン鉱から全部を入れた外貨支払いで計算しているんじゃないかと思いますが、至急調べて計算してお届けしたいと思います。
  131. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 その辺の数字は、またあとでお互いに研究し合っていきたいと思いますが、そこで私の聞いておりますのは、かりに国際事業で進めた場合、相当経済的にメリットがあるんだろうかどうだろうかという問題はいかがでありますか。
  132. 成田壽治

    ○成田政府委員 ウラン濃縮の工場、今後経済規模といいますと、六千トンとか相当大きな生産規模にならないと経済ベースになかなか安くつかないと思います。そういう意味で世界の一カ国で、まあアメリカ等は十分でありますが、日本等の需要から見ますと、やはり三カ国くらい共同でつくって金を出し合って、そしてその製品をお互いに出資に応じて受け取るというほうが非常に経済面からも適当なんじゃないか、そしてまた四、五年たって需要が大きくなった場合には、また第二のといいますか、それに続く国際的な計画工場をつくる、そういう行き方のほうが国際的にもまた日本から見ましても経済的な行き方だと思うわけでございます。
  133. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 最近われわれの耳にいたしました話では、アメリカのほうは御承知のとおりたいへんドルの危機に見舞われておりまして、したがって、アメリカが世界じゅうのウラン濃縮を引き受けるのはとてもめんどうが見切れない。金を持ってくるならば、持ってくる国に対してはひとつ大いにやってみようじゃないか、日本なんかは相当金持ちの国になっているんだから、ひとつ金で解決しようじゃないかというふうな姿勢が見られるように聞いております。だから一方では、そういう共同でやろうじゃないかという話もあるようですけれども、実際アメリカが現在持っておる処理能力というのはどの程度なのか、日本が今後昭和六十年あるいは六十五年ぐらいまでに想定される濃縮ウランの必要な量はどれくらいなんだろうか。向こうの能力とこちらの需要との見合いですね、その辺からの分析はどうなさっておりますか。
  134. 成田壽治

    ○成田政府委員 米国は現在三つの濃縮工場を持っておりまして、この三つの工場で分離量として一万七千トンの能力を持っております。それから米国においてもこの三工場の増強計画を持っておりまして、これがまだ具体的になっておりませんが、これによって大体九千トンぐらいの増量を三工場の増強計画として持っておるようでございます。したがいまして、これを合わせますと二万五千トン分離量ぐらいの能力になるわけであります。それで日本が先ほど、三%低濃縮ウランで二千トンといいますのは、大体分離量では八千トンであります。それで一九八〇年といいますと昭和五十五年、五十五年では五千トンぐらいであります。したがって、二万五千トンぐらいのアメリカの計画に対して、昭和五十五年で見ますと、五千トンの所要量が日本は需要量として出るわけでございます。
  135. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 われわれも大体昭和五十年で三千トン、五十五年で五千トン、六十年で九千トン、六十五年で一万五千トンぐらい要るのではないかというふうに聞いております。で、アメリカの能力が一万七千トン、さらに稼働し得る工場全部動かしていくとして二万五千トン、だから二万五千トンのうちの五千トンを日本にもらうということになれば、やはり相当なウエートだと思います。またアメリカで二万五千トンを生産させるについては、相当やはり日本から金も持っていかなければならないじゃないか。  それで、われわれが考えますのは、金を持ってこいというのか、あるいはほんとうに技術を国際的に取っ組んでやろうとするのか、その辺のところもよくわからない。その辺のところがわからなければ、ことし、来年、再来年の日本科学技術の進め方もはっきりしない。一体この間、日本原子力委員会が向こうの原子力委員会とどの程度まで話をされているのか、また、どんなメンバーでどの程度責任ある交渉をなさったのか、明らかにし得る点はしていただきたいと思います。
  136. 成田壽治

    ○成田政府委員 御質問の最初の点でございますが、アメリカがこの増強計画に日本から金を持ってこいと言っているのかというお話ですが、われわれはその点は、アメリカの現在の三工場の増強計画に日本が金を出すという話はいわれていないし、またそういうことは聞いておらないのであります。ただ、これはまだはっきりしませんが、アメリカは第四工場の建設計画もいろいろ検討しておるようでありまして、これは一九八〇年、昭和五十五年ごろになると国際的にあるウラン濃縮も非常に端境的になる、足りなくなるというので、第四工場の一万トンの計画が検討されておるのでありまして、これに対して日本が金を出せという話はもちろん出ておりませんが、そういうことが一つ将来の問題としてあるわけでございます。  それから先月の一日、二日にワシントンにおきまして予備会談が行なわれまして、日本から有澤原子力委員と山田原子力委員が出、それからアメリカでも原子力委員が、担当の委員が出ております。それから日米のほかにカナダ、オーストラリア、イギリス、フランス、西ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギー、ニュージーランド及び欧州共同体、ECの委員会も出ておりまして、最初太平洋会談というふれ込みだったのですが、ヨーロッパ勢も重大な関心があるというので出てまいっております。それで二日にわたって会談がなされましたが、そこであまり具体的な話は実際は出なかった。ただアメリカとしては、濃縮ウランを将来とも海外の諸国に供給する方針ではあるが、アメリカが独占ということは考えておらぬので、将来国際的な共同濃縮工場の成立にはむしろ大いに期待しているんだ、その場合には必要な技術も提供する用意があるということであります。  その次は、第二には、アメリカが自分で濃縮工場をマルチナショナルのかっこうでつくるということを音頭をとるような問題ではなくて、むしろウラン濃縮の消費国とか、そういう国がイニシアチブをとってグループ化をはかって、そしてアメリカにいろいろ話し合いを持ってくれば、アメリカも具体的な条件をいろいろ検討しよう。そういう意味で消費国とかその他関係国のグルーピングをまずいろいろつくって、検討をやってから、いろいろ具体的な話し合いに入ろうではないかという点が第二点でございます。  それからウラン濃縮は当然軍事機密の関係もあって、機密の保持については、これはアメリカの原子力法との関連で、そして法律の改正も考えておらないので、かなりきびしいものになるんではないかという感触が出されております。ただ機密に関してはこういうことも言っております。参加国が機密の事項には関与しない形でこの合弁事業に参加することも可能であろうということも言っております。  それから、これが一日、二日の予備会談でございますが、そのあとで十六、十七日に今度はヨーロッパEC諸国が中心でアメリカとの予備会談が行なわれまして、日本からも原子力委員じゃありませんが、原子力局の担当者等もオブザーバーで出しておりまして、そこでは大体一日、二日の予備会談と同じような内容でありましたが、ただ新しいといいますか、機密保持の分野は全体の二五%ぐらいではないかということをアメリカ側は新しい点としては言っております。単なる予備会談でありまして、それで終わったのでありまして、むしろこれからは関係国がいろいろグルーピングをして、いろいろ検討をしないといけないという段階になると思います。
  137. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 大体わかりました。ただわれわれいずれ機会を改めまして、参加されました有澤、山田両先生らからもさらに詳しく承りたいと思います。  やはりアメリカ人はずいぶんかってなところがありまして、ともかくあくまでも秘密主義を堅持してやってきたことは事実です。また諸外国が遠心分離法なんかで相当な実験を進めると、それを身ぐるみ全部アメリカへ連れていって、飼い殺しにしたようなことをしたという話も聞いております。あるいは日本にもそういう例があるのかないのか、まずないとおっしゃるだろうけれども、なかなかに油断できないと思います。一定の独占を終えて、もうもはや独占をする必要がなくなったときに自由参加を求めるということは当然考え得ることでありまして、この辺のところもよほど深刻にわれわれが検討を進めていかないとならない。またあまり具体的な話が出なかったのでは、まあ予備会談だからしかたがないとしても、それではめどが立たないわけでありまして、次の本交渉はいつごろ行なわれるのか、またともかく日本とアメリカとの核濃縮の関係をどのように正確にセットさしていくか、この辺の問題がはっきりしないと、わが国の科学技術の進め方がいつまでもぐらぐらぐらぐらすると思うのでございますが、きょうはこのぐらいの質問にいたしまして、いずれ機会を見ましてさらにひとつ——この種の問題はわが国のエネルギーにとっては根本的な問題であります。ひとつ時間をかけた検討を行なわしていただきたいと思います。  以上で質問を終わります。
  138. 渡部一郎

    渡部委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時四十七分散会