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1971-11-10 第67回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十一月十日(水曜日)     午後一時十七分開議  出席委員    委員長 渡部 一郎君    理事 木野 晴夫君 理事 佐々木義武君    理事 田川 誠一君 理事 前田 正男君    理事 石川 次夫君 理事 近江巳記夫君       橋口  隆君    福井  勇君       大原  亨君    田中 武夫君       山中 吾郎君    吉田 之久君       寺前  巖君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      平泉  渉君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房広報室長   松本 芳晴君         内閣総理大臣官         房管理室長   吉岡 邦夫君         日本学術会議事         務局長     高富味津雄君         科学技術政務次         官       粟山 ひで君         科学技術庁長官         官房長     井上  保君         科学技術庁原子         力局長     成田 壽治君         環境庁企画調整         局長      船後 正道君         外務省国際連合         局長      西堀 正弘君         厚生省公衆衛生         局長      滝沢  正君  委員外出席者         原子力委員会委         員       有澤 廣巳君         原子力委員会委         員       武藤俊之助君         防衛施設庁施設         部連絡調整官  平井 啓一君         科学技術庁放射         線医学総合研究         所所長     御園生圭輔君         外務省アメリカ         局外務参事官  橘  正忠君         文部省大学学術         局審議官    犬丸  直君         厚生省公衆衛生         局企画課長   黒木  延君         厚生省国立予防         衛生研究所所長 柳沢  謙君     ————————————— 委員の異動 十一月十日  辞任         補欠選任   堂森 芳夫君     大原  亨君   山原健二郎君     寺前  巖君 同日  辞任         補欠選任   大原  亨君     堂森 芳夫君   寺前  巖君     山原健二郎君     ————————————— 十一月四日  大飯原子力発電所建設工事中止に関する請願  (堂森芳夫君紹介)(第四五七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  科学技術振興対策に関する件(原子力開発に関  する問題等)      ————◇—————
  2. 渡部一郎

    渡部委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大原亨君。
  3. 大原亨

    大原委員 私はきょうは、広島長崎にありますABCCといいますが、原子爆弾傷害調査委員会の問題につきまして、私の質問の論点は、いままで日本政府機関といたしましては厚生省予防衛生研究所公衆衛生局がタイアップしておったわけでありますが、もちろん科学技術庁放射線医学総合研究所関係をいたしておりますし、また文部省大学学術局関係広島大学あるいは長崎大学関係研究機関研究面においては関係をいたしておりますから、これからの展望、この問題を含めまして本委員会において質問申し上げることが適当である、こういうことで質問の機会を与えていただいたわけであります。  第一は、このABCC広島長崎原爆傷害調査委員会は、昭和二十一年にアメリカ大統領のトルーマンの命令でここに設置をいたしましたが、それ以来今日まで、研究の角度やスクールからいうと、日本では想像できないような観点でやってきたわけであります。この間、ABCC調査研究活動の中で、たとえば広島長崎市民だけではなしに、全国的にいろいろな問題が提起されました。市民モルモットになっておるのではないか、あるいはアメリカ原子力戦争のいわゆる軍事利用の側面をになっておるのではないか、まあいろいろな議論がありましたが、その議論はともかくといたしまして、昭和二十一年以来今日に至りますまで継続いたしましてABCC研究調査をいたしましたその経過と、今日の段階に対する評価の問題でありますが、この評価日本のそれぞれの専門研究機関はどのようにいたしておるのかという点を第一の質問にいたしたいと思います。  そこで、これはABCCに併置をされております予防研究所支所責任者であります柳沢所長のほうからまずひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  4. 柳沢謙

    柳沢説明員 私の国立予防衛生研究所は、昭和二十二年の五月二十一日に発足したのでありますが、その翌年の二十三年からABCC一緒仕事をしております。まあ協力をしていると申しましても、向こう予算あるいは人員と比べますと、予研協力はわずかに五ないし六%くらいでございますが、仕事の内容は常に向こう所長予研所長とが相談をし、またアメリカ側学識経験者からなっておりまする諮問機関日本側経験者諮問機関とで研究のあり方などを研究しながら進んでおるわけでございます。  成果といたしましては、原爆が落とされました直後は、御承知のようにいわゆる熱焼ですか、やけどがおもでございまして、そのためになくなった方もたくさんおいでになることは、もう御存じのとおりでございます。その後、そのやけどがなおったあとにいわゆるケロイドというものができまして、これは非常に醜い傷あとになったわけですが、それから二年くらいたちましてから白血病が出てまいりました。それから続いて造血臓器などの障害が起こってまいりまして、そのおもなるものが白血病といってもいいかと思います。それがまず最初に多発することがわかりましたあとで、今度は白内障という目の病気が出てきたことがわかったのでございます。  まあ戦後のことでありますので、あまり統計的のことは、その当時はっきりとした成績は年報にもなかなか出ておりませんけれども、その後ひとまず落ちつきましてから研究のデザインをいたしまして、大きく分けまして三つ研究中心にしてやったわけなんです。それは成人健康調査ということと、寿命調査ということと、それから病理調査、この三つを柱にしてやったのですが、その前に二十三年から二十九年ですか、六年間にわたり遺伝学的の問題、これはたとえば原爆を受けた両親あるいは片親から生まれた子供から奇形児だとかあるいは分べん異常、そういうようなものがないかどうかということを七万人余の人を調べたのでありますが、これは統計学的には有意差がない、被爆をされた者と被爆をされなかった者との間には差がないという結果が出たわけであります。  その後、先ほど言ったような三つのポイントにしぼりまして今日までいろんな研究をしておるのでございますが、小さい子供ほど原爆障害を受けるわけですが、それがだんだん成長してまいりまして、このごろはだんだんと、甲状腺という腺が首のほうにありますが、甲状腺ガンだとかあるいは肺ガンというものがやや有意差があるということがわかってまいったのであります。しかし、日本に多い胃ガンだとかあるいは乳ガンというものについては、目下研究中でありますが、今日におきましては、まだ有意差があると断言する段階にはまいっておらないわけであります。  そういうような次第でありまして、私も現在のABCCダーリング所長また米国学士院学術会議医学部長をやっておられまするドクターダナンさんなどとも相談をいたしまして、向こうの御意向も、ことし三回、私ワシントンのほうにほかの用がありまして参ったのでありますが、実は先月の二十六日にもワシントンドクターダナンさんにお目にかかったのですが、ぜひひとつ今後、若いときに被爆された人がだんだんとガン年齢といいますか、ガンの多発するような年齢になったときにどういうガンが、どういう発生のしかたで出ていくかということは非常に大きな問題であるというようなことで、二十五年間、一九九五年までひとつ続けてみたいと思うということを盛んに、日本ではどうであろうかというようなお話も出た次第であります。これはもちろん非公式でございまして、私とのただ対談で行なわれた次第なのでございます。  また一方、いろいろなレポートは、ここにも持っておりますけれども、毎年年報が出ておりまして、その年その年のいろいろな研究のこまかい資料などが日米両語でもって出されております。私は、たまたま三年前から世界保健機構出向理事になってジュネーブのほうへ年二回ずつ参るのでございますが、そのときにいろいろな方から聞くのですけれども、ABCC予研とのこの研究は、先ほどモルモットがわりとかとおっしゃいましたけれども、東西古今、これ以後あってはならない実験——実験といえば実験で、落とされたわけですから、ありますので、これはしっかりとひとつやってくれ。そしてまた、発表された研究については非常に高く各国が評価しているということも、私はいろいろな外人から聞いておる次第であります。でございますので、私としてはできるだけ政府の御支持、御支援のもとに、この仕事をさらに実り多いものにしていきたいということを念願しておる次第でございます。
  5. 大原亨

    大原委員 逐次お尋ねいたしてまいりますが、ただいまの御答弁の中で、たとえば放射能によって奇形児は生まれない。しかし、生まれてもふしぎはないわけで、たとえばサリドマイドだって奇形児が生まれるわけですから、放射能を受けた者で奇形児が生まれるとか、あるいはガン発生を促進するか、あるいはガンを生むか、こういう問題は当然疑惑としてあるわけです。私は、ABCCは慎重に科学的にやることが必要だと思います、影響することが大きいから。しかし、事実を隠蔽するという印象を与えてはいけない。疑わしい問題についてふたをするという疑惑が出てはいけない。そうすると、ここには研究の結果について、これを秘密としてアメリカだけが利用する。これはアメリカ核独占時代占領直後の一つアメリカ占領政策でもあって、それとくっついているわけですが、当時は原爆の写真も公表させなかったわけですから、これは占領政策で全部焼かしたわけです。その中をもぐって、最近、当時のものが出ておるわけですから、そういうアメリカ核独占時代は去っているわけですけれども、とかくそういう疑惑を受けたことは事実です。  そこで、お尋ねするのですが、具体的な問題で、原爆小頭症というのが原爆被爆者特別措置法認定患者になったわけです。原爆小頭症についてはABCC研究は認めているのかどうかということが一つ。  原爆小頭症というのは知能指数が低くなることでもありますが、当時胎児ですから、いまちょうど二十数歳の娘さんや青年たちがそういうことですが、それはやっぱり一つの催奇形ではないのだろうかと、しろうと的、常識的に私は考えるわけです。だからそういう点について、大きな問題はまたあとで逐次質問いたすといたしまして、たとえば小頭症放射能による影響だというふうにおおむね結論が出ている。催奇性の問題、奇形児を生む問題、奇形児として遺伝的な影響があるかないかは、さらに胎児を通じて放射能障害遺伝するかどうかという問題でしょうが、それはともかくといたしまして、そういう点についてはどういうふうにお考えですか。共同研究ではないが、一緒研究をしてきた側として、どういうふうにお考えですか。
  6. 柳沢謙

    柳沢説明員 小頭症については、これは原爆を落とされた時点で妊娠していたおかあさんから生まれた方には、小頭症が多いというふうに発表されております。  それからもう一つは、先ほどの御質問で、奇形児が生まれないというのではなくて、被爆をされた人とされない人とを比較して、生まれる率に有意の差がない、こういうことを申し上げたのであります。
  7. 大原亨

    大原委員 それは逐次またあと質問がございますが、それでは次に、本来アメリカ原子力委員会予算を出しまして、アメリカ学士院学術会議がこれを引き受けてあるわけであります。これは逐次質問いたしますが、原爆の後障害を、いまのお話のような問題点研究する機関としましては、予防研究所よりも、いまの段階でいうならば、科学技術庁放射線医学総合研究所放医研のほうがタイアップする機関としては適当な機関である。というのは、柳沢所長は非常に熱心にやっておられますが、支所向こうにありますけれども、支所とあなたの研究所との研究の脈絡というものはないわけです。伝染病予防中心ですから、放射能影響というようないまのお話のような研究を受けとめて、これを検討していく、評価をしていくというふうな機関は、あなたの独自の医学的な知識においてはありますけれども、予防研究所としては私はないと思うわけです。これはいままで惰性に流れてきた一つの大きな問題点であると思うのですね。そういう見解についてはあなたはどうお考えになりますか。
  8. 柳沢謙

    柳沢説明員 私の研究所は、先ほど申しました昭和二十二年、占領時代に、サムス准将という衛生福祉部部長をやっておられた方が厚生省に、アメリカのナショナル・インスティチュート・オブ・ヘルス、NIHといっておりますが、そういうものをひとつ厚生省直轄下に置くべきであるというような話からスタートが切られたのでありますが、そのナショナル・インスティチュート・オブ・ヘルスというのは、ヘルスについてのナショナル・インポータンスの問題を片づけていけというその当時の示唆で発足したわけであります。  その当時は、伝染病が非常に蔓延しておりまして、たとえばコレラとか、あるいは戦後みんな帰ってきまして、いろんな病気がありました。あるいは慢性の伝染病としては、御承知のように結核なども非常に多かったわけであります。それと同時に、やはり一番話題にのぼったのは、原爆による障害がどういうふうになるのかということが大きな問題になったので、私たち支所としてやっておったと思います。  現在におきましては、それがただ先ほども申されましたようにそういう組織がずっとできておるのでございますが、私のほうとしましては、病理部というのがございますが、病理部のほうで多少お手伝いをしておる程度でありまして、ほかの研究部門が十六部ございますが、ほかの部門はほとんど支所とは関係を持っておりません。そういうような点では、いま仰せの点は十分今後とも考えなければならないのではなかろうかと思います。
  9. 大原亨

    大原委員 問題点一つは明らかになったのですが、そこで科学技術庁放医研所長にお尋ねするわけですが、科学技術庁放射線医学総合研究所ですか、放医研は、原子力平和利用という問題が提起されたことと一緒に、原子爆弾影響についての研究機関が必要であるということで、言うなれば文部省厚生省けんかをした中で科学技術庁にできたわけです。けんか両成敗の形で科学技術庁にできた。したがって、研究部門を見ますと、いま柳沢博士お話しの研究にタイアップする研究機能を持っているわけであります。しかし、研究のしかたや研究分野、それからそのスケール、こういうものは違うわけであります。  そこで、私は放医研所長にお伺いしたいのは、いまお話がありましたABCCの今日までの研究の結果についての評価ですね、これについて放医研はどのような評価をされているか、お考えを持たれるか、端的にお伺いしたい。  それから、ABCC放医研はどういう関連でこれに対する協力関係にあるのか、あるいは協力をしていないのかどうかという二つの点についてお答えいただきたいと思います。
  10. 御園生圭輔

    ○御園生説明員 放医研人間に対する放射線障害、それから予防、診断、治療ということを設置目的の第一として設立されております。  開設以来、物理、化学、生物、医学分野の者が共同いたしまして総合的な研究を実施しております。われわれの行ないます研究は、主として実験動物を用いての研究でございます。これは実際に放射線のいろんな実験をいたしますためには、人間は相手になりませんので、動物実験主体でございます。そういうことから、現在までにある程度の成果をおさめております。しかし、放射線人間との遭遇と申しますか、そういう点では、線質あるいは線量、いろんな要素がございますので、なかなかいままでやりましたことだけで、あらゆる場合を想定してそれをカバーし得るとは限らないと思いますので、今後もいろんな方面の研究を進めていく所存でおります。  そういう中でABCCがいままでなさいました研究調査結果というものは、これはもちろん原爆被爆者医療という点で非常に有効な役割りを果たしておりますけれども、それ以外に原子力平和利用という上から考えまして、人間についての貴重なデータという意味から申しまして、われわれのやっておりますいろんな研究あるいはその他の研究所大学で行なっております研究人間について評価しようとする場合には、このABCCの従来の研究調査結果というものは非常に大きな役割りを持っておりまして、そういう意味でわれわれはABCCの業績を非常に高く評価しております。  第二の御質問の点でございますが、放医研は設立が昭和三十二年でございますので、ABCCよりだいぶおそくなっております。昭和三十六年、ABCCから要請がございまして、放医研物理部門主体といたしまして研究協力をいたしております。すなわち、昭和三十七年から昭和四十年までの間に、広島長崎における原爆による空気中線量推定という仕事をいたしました。それからさらに昭和四十年から昭和四十四年にかけまして、広島長崎における中性子による誘導放射能からのガンマ線の線量推定ということをいたしております。その後ABCC並びに厚生省などの要請によりまして、約二年ぐらい前から原爆被爆者決定臓器における線量推定という研究並びに被爆者造血器官の反応と申しますか、そういうことについての研究ABCC及びその他の大学と緊密な連絡をとりながら実施しているのが現況でございます。
  11. 大原亨

    大原委員 これは大学関係文部省にもお聞きしたいわけですが、それはまたあとでするといたしまして、もう一つ端的にお二人からお答え願いたいのです。これはまず科学技術庁ですから、専門家意見を重視いたしますから。  これからアメリカは一九九〇年代まで、二十五年少なくとも研究をしなければこの研究は完結しない、こういうふうにアメリカ学士院学術会議はいっておるようでありますが、こういう長期にわたる研究がやはり必要であるかどうか、こういうことについてはどういうふうに、評価の問題とうらはらの関係ですが、所見を持っておられるか、簡単にひとつお二人からお答えいただきたい。
  12. 柳沢謙

    柳沢説明員 たとえば一歳の幼児がちょうど原爆を二十年に受けたといたしますと、その子供は現在二十六歳ということであります。たとえばガン中心にした研究をいたしますと、ガン年齢というものは大体五十代が山になっておりますから、あと二十五年やりましてようやく一歳の子供原爆のためにガンが多発しておるかどうかということがわかるわけでございます。いわゆるガン年齢に達するまではやはり続けるべきではないかというのが一つの大きな根拠であります。  それともう一つは、動物実験と人体の場合とは感受性が違います。また先ほど言った、たとえば甲状腺ガンだとかあるいはその他のガンにおきましても、その臓器によって感受性が違うと思うのです。そういう意味において、せっかくいままで二十四年間続けたものでございますから、さらに二十年ないし二十五年は続けて、そしてその受けた幼児ガン年齢に達したときに受けなかった子供と比べてどういうふうになっていくかまで追及すべきである。おそらくはこういう研究世界では今後あり得ない研究であるという信念に立って、私は米国学士院学術会議先生たちともお話しして、私は個人的には賛成しておる次第でございます。
  13. 御園生圭輔

    ○御園生説明員 柳沢所長の答えられたこととは大筋においては違わないと思いますが、国際放射線防護委員会、ICRPといっておりますものが、放射線影響として指摘しておりますものは、晩発的に、後になって起こるものといたしましては、身体的な障害ともう一つ遺伝的な障害、この二つをあげております。身体的な障害につきましては悪性疾患、その中で一番問題になりますのは  白血病白血病以外の悪性病気ガンのようなものでございますが、それと生命の短縮寿命短縮というものが一応考えられるということになっております。  白血病につきましては、被爆後でございますが、当たってから五年から十二、三年ぐらいの間に大部分が発生してしまうであろうということは、ほかの医療用に与えられた放射線の例などからも推計をされております。ところが、それ以外の悪性疾患ということになりますと、潜伏期がやや長くなりまして、柳沢所長も指摘しましたように、おのおの好発の年齢時期というものがございます。どちらかといいますと、日本人にわりあいに多い胃腸系統ガンというようなものは年齢が高くなってからございますので、まだ相当先にならないと出てこない例が出るかもしれません。  それから寿命短縮というふうなことになりますと、これは人間一つの世代が終わるところまで見ていかなければ、寿命短縮というようなことが起こり得るかどうかということは完全に解明できないことになります。  さらに遺伝的の問題というのは、現在どういうところで手をつけたらよろしいかなかなかわからない部門がございます。特に遺伝の性質によりましては、優性のものですと死産というような形で出ますので、これはちょっと評価ができにくうございます。劣性の遺伝ですと数代にわたって見なければできないというふうなこともあるかと思います。  そういう意味で、もし身体的影響というほうにだけ限定したといたしましても、少なくも今世紀一ぱいぐらいはこれは追跡をしていかなければ、しっかりしたデータは出てこないのではないかと思います。たとえば胃ガンなんかにつきましても、ABCCデータでは、以前の発表では全然有意差が認め得ないことになっておりますが、最近は、有意差は認められないにしても多少ガン発生が多いのではないかというふうな報告が出ております点を見ましても、少なくも今世紀一ぱいは観察の要があると私は考えております。
  14. 大原亨

    大原委員 いまのことで重要な問題があるわけです。いま、たとえば胃ガン認定疾病になっていないわけです。原爆被爆者認定疾病になっていない。これはABCCが、他の被爆以外の一般の国民との間に、差がないという結論、私は科学的な表現ではないですが、そういう意味結論、差があるという結論を出していない。そういう意味においては差がない、こういう考え方で、肺ガンとか血液のガンである白血病等はみな入れておる、白内障等認定患者に入れておるわけですが、胃ガンについては、当然転移するから常識的に考えてみれば胃ガン放射能を受けた人は発生率が多いだろう、認定患者にしていいのじゃ方いか、こういう議論があるわけですが、それを、その壁になっておるのは、一つABCC研究ではないかと私は思っている。しかし、これは逆にいうならば慎重に研究しているということでもあるし、また一生かかって見なければわからぬという御意見もいまありました。これは問題点を私は指摘をしておきます。  それで、もう一つ私はお二人の先生専門家としてお聞きしたいのですが、これはこういうことがいわれているわけであります。アメリカ核独占時代からの発想なんですけれども、原爆のことはこれは一切秘密である。したがって、広島長崎において数万の人々を対象にしてこういう広範な大きなスケールの研究をやっているけれども、その研究は一部だけしか公表しないで、一部はアメリカへ持って帰ってやはり公表していない。秘密にしている。ですから、日本市民や国民がモルモットになっているんだという議論は、いまだに今日まで続いておるわけです。たとえばたくさんの遺体を解剖いたします。そしてスライドをとるわけです。そのスライドで大切なやつは全部アメリカへ持って帰っておって、残りを日本に置いている、こういう議論もあるわけです。だんだんと情勢は変わっておりますが、そういう面において研究の結果が公表されない部面、秘密のままでアメリカが集約をしている、まとめているという、そういう部面があるのかどうか。これは専門家として直接タッチしておられますから、お二人から御所見を、簡単にひとつあるかないかについてお聞きをいたしたい。
  15. 柳沢謙

    柳沢説明員 占領時代のことについては私よく存じませんけれども、少なくとも出版物として出ておる時代から、たとえば昭和二十七、八年、講和条約が結ばれた以後からは、全部英文と日本文ですべての研究が公開されております。またABCCと申しましても、広島の医師の方たちにずいぶんお世話になっておりますので、広島医学という雑誌にもいろいろな研究成果が発表されておる次第でありまして、私の知っておる限りにおいては、秘密にしておくとか、あるいは日本には見せないで向こうだけ持っていっちゃうとかいうようなことは、私の関係した限りにおいては信じられないことだと思っております。
  16. 御園生圭輔

    ○御園生説明員 放医研関係いたしました限りでは、秘密にされた部分はございません。
  17. 大原亨

    大原委員 ただ、評価について、アメリカ側はできるだけ、原爆はたいしたことはなかったんだ、自分が最初、広島長崎に落としたために非難を避けるために、できるだけ被害を過小評価するんだ、こういう気持ちがずっと一貫してあった。政治的にその研究の結果というものが曲げられておらぬか。アメリカでは、学士院学術会議は民間の非営利法人ではあるがかなり権威を持っている、科学についてはかなり尊重するということで。日本は非常に公害でも何でも押えつけるという、政治的にひん曲げるというものを持っている、そういう傾向があるからということも含めて私はそういう判断をしているかもわからぬけれども、そういう疑惑があるということは事実である。しかし、これは科学的な実際上のそういう直接当面している人が言っていることを私どもは尊重するということにおいては、私の意見も変わりはない。あそこには職員が六百数名おって労働組合があるわけですから、日本人側は労働組合をつくってストライキも場合によったらやるわけですから、ですからそれを口を封ずることはできないと私は思っておりますが、専門的な点についての御意見をお聞きいたしました。  以上第一の質問は、これは研究評価についての質問でありますが、そこで第二の質問に移ってまいりたいと思います。  ABCCは法的に、外務省来てますか。——来てますね。ABCCは法的にどういう根拠に基づいて存在をしているのであるかということが一つ。もう一つABCCの上級職員には外交上の特権を与えておるけれども、その特権の範囲は普通の外交官と同じかどうか、簡単でよろしい。そしてその特権を与えている根拠は何か、こういうこと。もう一つついでに、ABCCの上級職員は公務員であるのか。これは外務省が適当かどうかわからぬが、公務員であるのか、あるいは民間人であるのか。この三点について外務省側の見解をひとつまずお聞かせいただきたい。
  18. 橘正忠

    ○橘説明員 最初のABCCの法的な性格でございますが、御存じのとおり、アメリカ側におきましては一九四六年の十一月の米国大統領の命令、これが米国の学士院に対する命令となっておりますが、それが一つと、それから一九四八年の四月に米国原子力委員会米国の学士院との間に締結された契約書という二つの文書がございまして、米国側のABCC設置の根拠がございます。  わが国との関係におきましては、先生お話にありましたように、昭和二十一年ごろから実際上の活動をやっておったようでございますが、平和条約が発効されました時点において、つまり昭和二十七年の十月にこのABCCの活動についての日米両国の話し合いが委とまっております。一九五二年、昭和二十七年に、日本側といたしましても、平和条約が発効した後にABCCのわが国における活動を継続させることが意義があるという判断のもとに政府がその存続を認めました。その際の根拠となりましたのは、昭和二十七年の十月の日米両国間の口上書の往復でございます。  次に第二点のABCCにおきます米側職員に対する特権の問題でございますが、これもただいま申し上げました昭和二十七年十月の日米間に交換されました口上書におきまして原則的な規定が設けられてございます。それは、ABCCに従事して、日本に一時居住している米国籍の職員については、ABCC米国政府機関の性格を持っている、それに伴う特定の特権を認めるという規定でございます。それにより冒して機関の使用します物品の輸入に関します関税、それからその職員の所得に関する所得税、これの課税の免除ということが規定されております。なお、その当時はまだ軍票などもございましたので、軍票も使えるといったようなことも規定してございます。したがいまして、ただいま御質問の点にしぼりますと、米国の職員については、そこで認められましたような関税上あるいは所得税上の特権が認められておる状態でございます。それ以外に特に特権は認められておりません。  なお、第三点の向こうの職員の地位でございますが、これは公用の旅券を持ってこちらに来ております。それでおそらく全員といいますか、そういう意味ではABCCそれ自体がかなり公的な性格を持っておりますので、かなり公務員的あるいは公的な立場を持っている職員が多いと考えております。
  19. 大原亨

    大原委員 ABCCの職員は公用旅券で来ているかもしれないけれども、それは民間人か公務員かといえばこれは民間人なんですよ。アメリカ学士院学術会議というのは非営利法人ではあるけれども、民間団体なんです。そういうのになぜ外交特権を与えたのですか。ある場所においては、アメリカ大使館の付属機関であるという表現もあるし、ある場所においてはアメリカ学士院学術会議機関であるという表現もあるわけです。  それでは、この問題はしばらくおいて——まだこれは続いてやりますけれども、ABCC原子爆弾傷害調査委員会日本に来て、日本政府機関厚生省予研支所一緒になって活動するという法的な根拠はどこにあるのですか。これは所長でなくともよろしい、担当局長でよろしいが、どこに根拠があってああいう活動をしているのですか。いまの外務省の答弁でしたら、口上書によって活動についての便宜を与える、活動を認める、こういう趣旨のことを含めての御説明があったと思うのですが、何らかの国と国との間の協定がなければ、原子爆弾傷害調査委員会日本において活動する根拠があるのですか。ABCCは法人なんですか。単なる個人の集まりで、事実上のグループなんですか。これは外務省から答弁してもよろしいが……。  外務省は外交特権を与えているのだけれども、どういう活動をしているのか、どういう根拠で日本政府機関とタイアップしているのか。プライベートなものがオフィシャルなものとタイアップしているという関係もあるし、整理されなければならない点が非常にルーズな形で放置されているのではないか。この点についてまず外務省から、続いて担当の厚生省から御答弁願いたい。
  20. 橘正忠

    ○橘説明員 ただいまのお尋ねのお答えにはならないと思うのでございますけれども、ちょっと半分だけ申し上げておきます。  ABCCの場合は、外交機関として認めたわけではございませんので、国家機関的な性格を有する機関、それに関する特定の限られた、先ほど申し上げました関税あるいは所得税上の特権のみを認めたかっこうになっております。いわゆる外交機関としての性格ではございませんで、国家機関的な機関という性格を持っておると考えております。  あとの官庁との関係については、他省にお願いいたします。
  21. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 ただいまの法的な問題と別に、われわれといたしましては、当時国立予防衛生研究所が、先ほど所長より御説明ございましたようなナショナル・インポータンスをやる機関として設置され、他にこの問題に対して協力する適当な機関が当時なかったということで、厚生省を通じまして予研研究協力を求められ、二十三年に、国立予防衛生研究所支所といたしまして広島長崎原子爆弾影響研究所設置いたしましたが、これは厚生省設置法並びにこれに基づきます厚生省組織規程の中の六十一条にこれを明確にいたしまして、国内としては予研支所というものを公的なものとして設置し、共同研究ということで、二十七年のいわゆる日米の講和条約ができ上がる以前の問題としては、現地における協力体制ということでやってまいりました。それ以後は、いま外務省から御説明ございましたような口上書等によって、協定に基づいて研究を進めている、こういうふうに理解いたしております。
  22. 田中武夫

    ○田中(武)委員 関連していまの大原質問、それに対する政府委員の答弁を聞いておりまして若干疑問がありますので、交通整理の意味も含めて質問したいと思うのです。  ここに一九四六年四月十三日、アメリカ原子力委員会アメリカの学士院との契約書なるものを持っております。その第一条に「事業の範囲」として「主として日本において研究に従事し、」云々となっておりますね。このときはむろん講和前であります。しかし、日本には主権があったはずです。したがって、「日本において研究に従事し、」云々というような契約は、そのときに当然何らか日本に話があってしかるべきものである。もしそうでなくてやるとするならば、このABCCの活動はポツダム宣言に基づくところの占領政策遂行の一環であったのかどうか。  さらにその後、いまのお話では口上書云々ということですが、そういう活動を日本が独立した後にやるとするならば、当然国家間においてそのことについて何らかの協定がなくてはならないが、その口上書なるものはいかなる性格のものであるのか。また、その口上書なるものをひとつ資料として出してもらいたい。  さらに九条には——九条だけではないのですが、九条には、このことに関する秘密保持その他についてはアメリカの刑法が適用せられるということになっております。これを日本人従業員に対しても適用するとするならば、これは日本国において日本人に対しアメリカの法律あるいは刑法が適用せられることになっておるが、そういう根拠はどこにあるのか。  私もちょっと見ただけで、あるいはポイントをはずしておるかもしれません。しかし、ちょっとのぞいただけでもそれだけの疑問が出てきます。その点についていかがでしょう。
  23. 橘正忠

    ○橘説明員 お尋ねの第一点でございますが、一九五二年、昭和二十七年に日米間で交換されました口上書は、ABCCの出しております年報にも付録として載っておりますので、資料として提出いたします。  それから第二点でございますが、ABCCの職員あるいはその機関に対する特権といったものは、先ほど申し上げましたとおり限定的なものでございます。つまり、特権として認められましたものは関税あるいは所得税法上のものでございまして、それ以外には特に特権を認めておりませんので、たとえばそこにおいて働いております日本人職員に対する法の適用については、当然日本法が適用されるものと考えております。
  24. 田中武夫

    ○田中(武)委員 私は、そういう活動を日本国の領土内において外交機関が行なう場合でも、当然政府間において何らかの協定ないし取りきめがなくてはならないと思うのです。それが条約の形式をとるか、行政上の外交特権として国会の批准を求めなくていいか、それは別問題といたしまして、やはり国家間の協定というものがなくてはならぬと思うのです。  それから、講和後であるならば、アメリカの刑法云々というのがこの契約の九条にありますね。そういうものは当然直すべきである。しかも、講和前であったとしてもかってなことはできないのです。ポツダム宣言の範囲内において、その占領政策すなわちポツダム宣言に沿うところの政策遂行の上石らともかく、でなければ日本に主権があるのです。かってに契約で、主として日本国においてこれこれの研究に従事することを目的とする云々というような契約が許されるべきじゃないと思う。そういう点どうなんです。
  25. 橘正忠

    ○橘説明員 ただいまお話しの契約と申しますのは、アメリカ原子力委員会アメリカの学士院との間の契約でございます。日本側を当事者とする契約ではございません。  それから次に、日本側との関係におきましては、累次申し上げております昭和二十七年の口上書の往復がございます。それによって、そこで限定的にはっきりわがほうが認めた範囲内のことしか、先方としては日本において特権を有しないということになります。これはいわゆる広い意味の外交特権とは異なった特定のものについての特権を認めたという内容になっております。
  26. 田中武夫

    ○田中(武)委員 私は関連でありますし、引き続き大原委員質問すると思います。しかし、私、この問題自体について、いまちょっと質問を聞いておって、これを拝見しただけでも相当疑問があります。あらためまして、私が別にこのことについて質問する機会を留保いたしまして、関連質問を終わります。
  27. 大原亨

    大原委員 これはつまり占領中、トルーマン大統領の命令で原爆の広範な調査活動をやったわけです。その一つとして、アメリカ原子力委員会を通じまして、アメリカ学士院学術会議に委嘱をして、そして占領中漫然とここに入ってきた、こういうことになっておるわけです。ばく然たることで入ってきた。少なくとも講和後においてはこの問題は整理されるべきであったと思うのであります。これについては政府間で交通整理をして、ぴしっとしたかっこうでなければ、依然として原爆を落とした加害国が現地に来て調査しているのですから、そのやり方について疑惑が出てくるのは当然なんです。しかし、その疑惑が続いておる限りは、いまやこういう調査を今後二十五年間も続けていくことはできないというふうな情勢になっているのではないかと、私考えるわけです。だから、いままでのことを弁解するたけでなしに、この問題についてそういう問題点がある、政府間でぴしっとこの研究については双方に認める範囲をきめておきながら、そしてこの職員等の処遇や活動の範囲等について相互に取りきめをしておく必要があったのではないか。でないから日本側は従属的に主体性のない対応のしかたをしているのが今日の状況ではないか、こういうふうに思うわけであります。これはひとつ大臣も見えておることですから、あとでひとつ総括的に御意見を聞きたいと思います。  そこで、問題は第三の問題点に移っていくわけですが、第三の問題は、共同研究の問題であります。公衆衛生局長は共同研究ということばを使われたわけですが、私は人的スタッフの上からいっても機構の上からいっても、あるいは財政的にいいましても、共同研究になっていないのではないか、こういうふうに考えますが、政府はどういうふうに判断をされておりますか。
  28. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先生のおっしゃいますように、共同という体制の理解のしかたにもよると思いますけれども、先生がおっしゃるような意味で、現状のABCC予研支所との関連は、先ほどの所長お話にもございましたように、まあ予算上の二十分の一程度の寄与のしかたでございます。人員におきましても、六百数十名に対して予研支所は三十数名というような実態でございますので、そういう意味で両方が全く対等な意味の共同というふうに、共同ということばを理解しようとするならば、確かに共同研究というには実態としてはきわめて不十分なものであることと考えます。しかしながら、主として予研支所が当時設けられましたいきさつの一部に、医療法に基づきます国内の調査活動あるいは解剖の問題等、国内法に基づく問題の処理ということが一つやはり一面の動機になりまして、国内法に合法的に処理できるようにするために予研支所協力、いわゆる支所をつくって日本側協力を求めることによってその研究活動を円滑にしたい、円滑に持っていきたい、こういう動機も一つあったと、いろいろの資料からは推察できるわけでございます。しかしながら、今後二十五年間、やはり原因、いわゆる起こりました原爆投下といういきさつはともかくといたしまして、原子力関係平和利用あるいは医学を含めた放射能の人体への影響という、非常に国連などで高く評価されておりますこの研究を、やはり日米が共同して実施するという観点に立つならば、率直に申し上げまして、わが国の協力という度合いなり問題の処理について、今後どうするかという点については、関係方面なり、われわれもこれを所管いたしておりまして、各方面の御意見を聞きますと、やはり今後関係方面で協力して十分検討する必要があるという意識は持っております。
  29. 大原亨

    大原委員 ちょっといまの御答弁に関連してお尋ねするのですが、予防研究所支所は、人件費以外に、調査研究の活動のために一年間にどのくらい予算を使っていますか。アメリカ側が出している調査研究のための予算は幾らですか。
  30. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 予算につきましては、わが国の予研支所予算が、人件費あるいは人当的な研究庁費等を含めまして、特殊な機具機材を購入するというようなことは、予研の部の一部門的な機能だけで認めておりまして、具体的には従来大きな予算を投下した実績はございませんで、四十六年の予算は七千万円程度でございます。ABCCのほうは、円に換算いたしまして、三百六十円の換算でございますが、十四億円程度でございます。金額的にはかなり少ない……(大原委員「こちら側の研究費は幾ら、人件費でなしに事業費」と呼ぶ)事業費につきましては、ABCCの、私、数字がちょっと明確ではございませんが、人件費がABCCは八五%を占めております。
  31. 大原亨

    大原委員 金額にしてどのくらい出している……。
  32. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 一九七一年のABCCの人件費、旅費、資材費がございますが、先生のおっしゃる事業費というのが、旅費、資材費その他を合わせるということになりますと、資材費がABCCで円で四千九百万。その他となっておりますが、これはかなり研究費に近いものでございますが、これが九千二百万……(大原委員「それは日本側が出しているもの」と呼ぶ)日本側が出しておる予研のほうの同様の金額は、資材費が八百八十万、その他が二百八十九万、それから人件費が五千一百万という程度でございます。
  33. 大原亨

    大原委員 これは全然日本側はこれに対応して共同研究するような情勢ではなしに、私は具体的なことは全部申し上げませんが、まるでABCCにぶら下がって、給与についてもプラスアルファをもらったり旅費についてももらったりしているわけです。だから、それは共同研究には全然なってないと思うのです。共同研究を、同じ場所で、同じテーマについて研究するという、その基礎というものが、広くいえば国と国との関係だけれども、その点についての申し合わせもない。ですから、こちらが主張する点を主張できるわけはないと私は思うのです。  それで、いずれにいたしましても、いままでのようなお二人の専門家評価を含めて、あるいは問題点を含めて、問題はたくさんあるわけですが、今後将来どうするかという問題が次の問題であると思うわけです。  そこで、長官、私はこういう考え方があると思うのです。これはいままでの運動の中にもあったわけですが、第一の構想は、これは日本政府においてABCC研究活動にタイアップできる機関が完全にABCCを引き取る。日本側が引き取って、アメリカABCC原子爆弾傷害調査委員会には、研究を残しておいて、それこそお引き取りを願う。これが第一案。  第二案は、名実ともに共同研究の体制をとっていく。共同研究の体制をとる際には、これはいままで前例がないのでありますが、アメリカ側も優秀なスタッフがおるし、それから資金を注入しておるわけですから、日米双方から予算を入れて、公団、公社的な特殊法人をつくっていくことはできないか。それが共同研究一つのタイプであるけれども、それ以外に、もう少しこちら側がこの研究について評価をしながら、一方では名実ともに対等な共同研究の体制をとるべきではないか。そのときには、いままで柳沢先生その他御努力になっておりますが、予研支所伝染病研究の本場でなしに、やはり科学技術庁放医研中心となって、予研も、それから大学研究機関協力する、地元も協力をするというふうな、科学技術庁放医研がタイアップしてやるという共同研究のしかたをやって、ここで突端で共同研究しておるけれども、その問題を持って帰って、総合的に原子力影響研究の中で受け取めていけるような、そういう体制の中で主体的な活動をする。これは予研に帰ったならばほとんど関係ないんだから、予研の本所の所長の手元に帰ったならば、これは予研支所研究とのつながりがなくて断絶しているわけですから、そういうことは私はおかしい、占領以来の継続である。  それから第三は、とにかく現状のままでほおかむりをしてずるずるとじり貧の形で研究を進めていくのかということです。  今後二十五年間もあるいは三十年間も四十年間も、この問題の研究を完結させることが必要であるという専門家意見に従うならば、いまや私はその点については総点検、洗い直しをして再出発をするときに来ておるのではないか。その点で、私は三つの案を申し上げたわけですが、まず厚生省、これは厚生省では御協議願っておるはずですから、厚生省は、第一の案、第二の案について、私が申し上げた案についてどのような見解を持っておられるか、ひとつお聞かせをいただきたい。
  34. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 第一案の先生のおっしゃいました、こちらに引き取るという問題でございますが、実は、二、三年前、いろいろ新聞報道等にも出ましたりしまして、一時こちらに譲渡するというようなことで、いろいろ関係者に反響があったことがございますが、現状では、これは相手のあることでございますが、アメリカ側では、こちらに運営を全面的にまかせるというような考え方は全然ないというふうにわれわれは理解しております。今度は、こちら側がこれを引き取るかどうかという問題については、われわれとしては、一九六九年にアメリカ原子力委員会関係者が政府レベルでいろいろ話し合いましたときにも、当面こちらとしては、そのような現状を変革する考えは持っていないということを明確にしてございます。  それから、特殊法人の問題等につきましては、それぞれ、これはなかなか私もこまかい点は十分理解することは困難でございますが、やはりこういう先ほど来議論がございましたような経過を持っておる機関を引き取って特殊法人にするという、そのことまで進める経過全体の中に、条約の問題が必要なのか、そういういろいろの実情の措置を含めまして、不可能ではないかもしれませんが、私は非常に困難な問題ではないかというその一つ考え方を持っておりまして、率直に申して、われわれ担当しておる局におきましては、この問題についてはただいま白紙の状態でございまして、積極的にこれを検討しておるということになりますと、これはむしろ外務省あるいはただいまいろいろ御提案のございました科学技術庁等との関連も含めまして、総合的に検討する必要があるというふうに考えております。
  35. 大原亨

    大原委員 いままで議論しましたことからいって、皆さん方予研支所がタイアップしているということは、共同研究の体をなさぬ、機能上、機構上、こういうことを私は申し上げているのですね、最後のあれは。私は、その点はもう一回いままでの経過を整理して新しい出発点に立つ必要があるのではないか。研究を継続する価値あり、こういう前提のもとにおける判断とするならば、そういう出発から考え直さないと、数万の人々を実際に死体解剖から調査するわけですから、協力が得られぬわけですよ、いままでのままでは。調査はすれども治療しないとか、これは地元の医師会が反対したからやっていないのだけれども、そういう観念をみんな持っておる。それからモルモット扱いにするということですね。しかし、それは研究の結果、調査の結果が全部公表されているかどうかということにも私は関係すると思うわけですが、非常に問題の取り上げ方が消極的であるということですね。疑しい場合については一つの方向を出さ互い。これは研究だから、研究者の処断はそういう点は慎重であるかもしらぬが、これは一つの政策のスタンダードになっているわけです。ですから、そういうことで、いままででいいわけはないでしょう。いかがですか。
  36. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先生のおっしゃるように、共同研究というものがいまの状態で好ましくないという観点に立ちまして、われわれも、現状の持っておる予研支所という性格でございますと、率直に申しまして、予算要求する場合にも、もうきまり切った支所としての予算要求しかできない、それが、現状の国内におけるABCCとの協力の実態から申してそういうことになります。したがいまして、これを強化して共同研究の実を実質的にあげるということであれば、これはやはり私は、あらためて日米外交ルート等を通じて正式にこれが了解され、そのもとにおいて国内で大蔵省等も含めて御了解の上に、その性格が放医研に行くか予研に置くかは、これはまた議論するのは別としまして、これ以上共同研究の体制を強化するには、そういう手続が要るんじゃないか。現状のままでは、じり貧と申しますことは別といたしまして、現状ではなかなか思い切った協力の改革をしていく、こういうことは予研支所という性格の現状では無理である、こういうふうに考えております。
  37. 大原亨

    大原委員 これは外務省かな、ことしの四月かにアメリカ側は——日本の国内においては出ていけという議論もある。しかし、私どもは、ほんとうに役立つ研究であるならば、これはほんとうの形にしてやはり続けることが、これは世界の平和のためにも人道のためにも、あるいは日本アメリカとの真の理解のためにも必要だろう、そういうことは一つ大きな問題だろう、小さな問題じゃ表しに大きな問題だろう。この問題については、厚生省は常に事なかれ主義、白紙と言ったけれども、白紙というより事なかれ主義、くさいものにふたをするというかっこうで逃げ回っておったと私は思っておる。予算によくあらわれておる。ですから、そういう主体性のないことであっては、疑惑は一掃しないわけですから、この問題は、いまの局長の率直なお話のように、総点検をして、そして外交ルート等を通じて話し合いをすべきだと私は思うわけです。アメリカ側もこのことは実際に研究に当たっているのですから、市民協力や従業員の協力がなければいかぬわけです。したたがって、その問題についてかなり具体的な問題をことしの四月かいつかにアメリカ大使館を通じて外務省に申し出ておるという話が伝わっておる。外務省は沖繩の問題とか共同声明とか、アメリカ局なんかはずいぶん忙しいから、それどころじゃないということで逃げ回っておるに違いないと思うけれども、そういうことが今日まで問題を累積さしておると思う。外務省は、そういう世間で言われておることについてはどういうふうに受けとめてきたのか、お答えいただきたい。
  38. 橘正忠

    ○橘説明員 先生お話のように、ことしの五月に東京のアメリカ大使館を通じまして、ABCCの今後のあり方、それからその活動について両国間の政府レベルで話をしたい、できればこの秋、ただいまの時期でございますが、この秋にでも開催したいという申し入れがございました。外務省といたしましては、関係各方面にこの旨も御連絡をして、御検討方を御依頼してあった次第でございます。  その後、私どもの承知しておりますところでは、柳沢所長アメリカに行かれまして、当局間としてのお話向こう側と非公式になすって、そのときに、ひとついろいろの問題を政府レベルで来年のなるべく早い時期に話してもらうということが望ましい、そういうことを期待するというお話が出ておったということを伺っております。先生、いろいろ御指摘になりましたような問題につきましては、それぞれ国内関係方面もございますので、よく議を尽くしていただきました上で、直接当局間のそういう希望の表明もございましたので、政府レベルにおいて明年どうするかということを検討を進めてまいりたいと考えております。
  39. 大原亨

    大原委員 平泉長官、これは最後になるのですが、問題はまだたくさん残っておりますが、時間もあることですから、私は二つの点についてお尋ねをしたいと思うのですね。  いままで質疑応答を重ねてまいりましたが、第一は、科学技術庁放医研ができた経過からいっても、放医研共同研究主体——共同研究でいくならば、あるいは特殊法人に将来進んでいくにしても、共同研究という体制をとるのであるならば、科学技術庁放医研中心となって、厚生省政府委員お話しになっておるわけですが、職員は身分がえをすればいいわけですから、ですからそういうことで、主体的にこっちがかっちり受けとめ得るような共同研究の体制、研究の結果というものが、十分将来にわたってもこれがちょん切れても継続できるような、そういう形のタイアップする体制を、この際新しい観点から科学技術庁中心に、もちろんいままでの厚生省文部省その他等との協力を得ながらとっていくことが必要ではないかということが一つ。  それからもう一つは、やはりこれはどこが窓口かわからぬわけです。どうもほかのところでやっていれば、外務省が窓口だと言ってセクトぶりを発揮するだろうし、実質は厚生省だということになるかもしれない。厚生省も大蔵省に遠慮いたしまして、予算が出せないということになる。これで占領以来うやむやにきておるのが実情だと私は思うわけです。唯一の被爆国ということを言うわけですし、放射能影響研究ということは、平和利用にとっては不可欠なことです。したがって、私は、そういう点でもう一回日米間においてこれは責任ある者が出席をして、双方が——柳沢先生が責任がないとは言わない。しかし、所長は、これは研究者なのだ。研究者としては、みずからも言っておられるように、これは話をするのに限界がある。研究者が幾らやったって、どんなにいい案を持っていったって、予算が伴うことだし、外交上とりきめるということですから、できないわけです。ですから、やはり行政当局が必要なわけですが、私は、科学技術庁長官が中、心となって、もちろん厚生省その他政府部内において指揮統一をされて、そして日米双方で責任ある者が出席をしてやるべきではないか。  そこで、第三の問題は、当然いままでの議論で理解ができると思うわけですが、当然これは原子力影響研究ですから、原子力基本法の自主、公開、民主、平和の原則に従って日本側の対応はなさるべきである、そういうことが明確に出ることが、秘密はないとみんな言っているのだから、そういうことがこの研究を完結させる道でもあるし、市民協力を得る道ではないか。  この三つの点が締めくくりとして、日本政府側がはっきり態度をきめて、今後のこの問題の再出発に当たるべきではないか。それでなければ、いまのように漫然とやっているのだったら、これはちょん切ったほうがいいと私は思う。しかし、いままでやってきた厚生省その他の責任は重大ですよ。そのときは責任を徹底的に追及するよ、材料が一ぱいあるから、幾らでもあるからね。だからやはり第一の提案については、なかなか日本研究体制というものがそこまでいっていない、問題のとらえ方、スケールなりが。だから共同研究であるとするならば、特殊法人の問題、将来の問題を含めて、実質的に自主的な対等な実りのある共同研究の体制にすることである、これはわずかの予算ですから、数億円の予算のことですから。そういうことで、この問題についてどのような見解を持っておられるかということをお聞きをいたします。もう一つ残っておりますが、これをひとつ……。
  40. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 だんだんの御質問でございますが、全般的に見まして、きょう先生が御指摘のようないろいろな問題がある、当方といたしましても、先生の御意見の中で非常に傾聴すべきものがあるのではないか、こう思うわけでございます。  ただ、いずれにいたしましても、すでに長年にわたりましての経緯もございますので、この問題につきまして、アメリカ側、そしてまた厚生省、こういうところとも十分協議をいたしまして、そしてこの問題については妥当な、これからの長い研究である、また重要な研究であるという点を十分留意いたしまして、これは考えていかなければならない、こう思っておるのでございます。先般、厚生大臣にも実は私少し事情は説明しておりまして、厚生大臣も問題はかなりよく御存じでございます。そういう関係もございますので、この席でいますぐに方針を打ち出すというまでには至っておりませんが、十分協議をいたしまして、この問題につきましては新しい方策というものを考えなければならぬと思っておるのでございます。  それから、第二番目の原子力基本法の問題でございますが、現在までこれがアメリカ政府機関の行動であるということから、その点必ずしもさだかでないという面がございます。実際において厚生省及び放医研研究しておる範囲におきまして、全部資料は公表しておりますし、また日本側機関が関与している限りにおいて原子力基本法がガバンしておる、支配しておるという点は疑いをいれないのでございますが、今後ますます名実ともの国際研究、こういうことになる暁においても、日本側としてはあくまでもこれは原子力基本法の精神でやっていく、この点につきましてはそのとおりであると考えるわけでございます。
  41. 大原亨

    大原委員 それから責任ある機関が協議をする、いままでどこでやっているかわからぬ、その点についてはこれはできるはずですから……。
  42. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 今後こういう問題につきまして十分窓口を統一する、そして今後新しい国際研究の場合におきましては、もちろん性格をはっきりさせてやる形で危ければならぬ、全く同意見でございます。
  43. 大原亨

    大原委員 これはABCC評議委員会というので、公衆衛生局長、予研所長などがみんな入ったのがあるのですが、アメリカ側の評議会とか諮問委員会というのは非常に実力を持っておるけれども、日本のは全然とってつけなんです、全然有名無実なんです。名前が出ておるだけなんです。出ておるだけで実際は運営されていないのです。これは共同研究でも何でも、諮問委員会でも評議会でも何でもないわけです。そう言ったらみんな何か言いたいだろうけれども、それはそのとおりなんです。間違いないはずだ。だからきちっとした、きょうは大蔵省も出てもらっているわけですから、答弁いただかなかったが、大蔵省も文部省厚生省科学技術庁も外務省も出ておられるわけですから、全部で、外務省忙しい忙しいと言っているが、もし何だったらほかのほうにまかせればいいんだから、つまらぬことをメンツにこだわる必要はないということなんです。そういうことで実質あるものが出て、少なくとも各省とも局長が出て、一人は大臣が出て、きちっといままで議論になっておる問題点を国民が納得できる立場で整理をする必要があるのではないか。  最後に一つ申し上げるのですが、ドル・ショックの問題で、たとえば三百二十円に一ドルがなるということになると、アメリカが、原子力委員会予算学士院学術会議を通じてABCCに送っておるわけなんですが、これはドルの値打ちが下がるのですから、それだけ大きな研究機関予算に穴があくのです。そうすれば機能自体がじり貧になっていくわけです。これはとんだところでドル・ショックが出てきたわけです。この問題についても労使間の問題になって、いままでの既得権を下げる問題になっておるわけです。そうすれば、将来ある程度納得して仕事を熱意を持ってやることにはならぬわけです。その問題もひとつ政府の間で協議をして、そうしてアメリカがいままでやってきたんだったら、ちゃんと出すところは出せ、安い賃金で雇っているんだから。ときどきは政府厚生省の人はプラスアルファをもらっているかもしらんよ。しかし、一般的には安く雇ってここで研究しておるのだから。大体日本に対してニクソンが要求しているのは日本の賃金が安いとか、労働条件が悪いといってやっておるのだから、その賃金をどんどん模範的に上げていくような気持ちがないものが、何で日本研究ができるのかということにもなりますね。ですからそういう点で、そういう問題はだれが見ても納得できるような形でドル問題は解決する、こういうことで政府においても十分連絡をとった上でアメリカ側に意思表示をしてもらいたい。大臣の最後の答弁を求めます。
  44. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 ABCCアメリカ政府機関ではございますが、わが国の国民を雇用する限りにおきましては、わが国国内法の適用を受けることは当然でありますから、労働条件その他につきましても、従来すでに何かそういう事件が起こったこともあるようでございますが、その際も不当な労働的な措置ではないかということで、当方から注意をいたしまして、先方もそれを了承したという経緯もございます。今後ともアメリカ政府機関の行動でありましても、わが国民に影響のあるような行動につきましては、十分それぞれ担当の部署から注意をいたすという姿勢でまいりたいと思っております。
  45. 大原亨

    大原委員 終わります。
  46. 渡部一郎

    渡部委員長 次に石川次夫君。
  47. 石川次夫

    ○石川委員 私は、きょうは原子力発電に関しましての安全性の問題で質問をしたいわけなのでありますけれども、この問題は非常に複雑多岐にわたりまして、この委員会で十分に意を尽くすということはきわめて困難でございます。したがって、機会をあらためて、この点については原子力委員会なりあるいはまた科学技術庁なり、具体的な打ち合わせをしなければならぬという必要性を痛感しておるわけでございますので、きょうは大体大ざっぱな、中心になる点だけについて質問をするだけにとどめたい、こう思っております。  その前に、有澤さんがせっかくアメリカに行かれまして、核濃縮の問題その他について打ち合わせをしてこられたということで、その報告を受けるということになりますとたいへん時間がかかろうかと思いますので、その中で私が一番心配しますのは、私もだいぶ前から日本の核燃料の確保という問題について注意を換起していたといいますか、このままでいったのではとてもじゃないが日本は核燃料の確保という点について非常なおくれをとってしまって、発電所の計画は進んでも、燃料がこれに及ば互いのではないかということを再三申し上げておったわけであります。日本といたしましては、最近に至ってソマリアとかアメリカのカーマギー社とか、カナダのデニソン、それからリオアルゴム社、そういうようなところと一応提携をして、ニジェールその他で相当の探鉱を始めておるというような状態なのでありますけれども、しかしながら、ニジェールというものを除いて全部日本では資金を出しているだけなのであります。技術陣というものを全然送っておらない。したがって、カーマギー社のブリティッシュ・コロンビアのものなんか大体不成功に終わったというのも、それに原因があったかどうかわかりませんけれども、どうも本格的な取り組みが薄いのではないかという点で、だいぶ前からこの点について私は注文をつけておったわけであります。当時としてはアメリカに依存をしておれば何とかなるだろうというような安易な気持ちがあったように受け取れていたのでありますけれども、今度有澤さんが行かれたときの印象として、アメリカとしてはもうそう長期にわたって日本に対して供給することはできぬ、こういうふうな回答を持ってこられたというので、私の予言が不幸にして的中をしてしまったというような感じがしているわけなのであります。  それと、あと濃縮ウランの問題は、ガス拡散法でありましょうけれども、これはアメリカとしての能力にも限界がある、耐用年数の問題もあったと思うのでありますが、そういう点でこれも非常に大きな課題になっておるわけであります。それをどう日本で打開していくか、いまのところはガス拡散法と遠心分離法と両またをかけて研究を進めておるわけでありますけれども、この研究費がまことに微々たるものであって、軌道に乗らないのではないかというようなことも再三意見として申し上げておったのであります。今度、日本で共同開発をしようというような提案がアメリカからなされたやに聞いておりますけれども、それで、行なうというのは大体ガス拡散法ではなかろうか、こう推定をされるわけです。しかし、われわれの希望とするのは、ガス拡散法というのは相当の電力を食うということになるので、どうしても遠心分離法でやりたいという切望といいますか、念願というものは、私個人としては消え去らない。何とか遠心分離法を成功させたい、それには欧州でやっておる共同開発なんかにも参加をするということも必要なのではなかろうか、こういう感じを持っておるのでありますが、その辺の感触をかいつまんで御報告をいただければ幸いだと存じます。
  48. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 七月の半ばごろにアメリカのほうからエードメモワール、これは日本ばかりではないのです。オーストラリア、カナダ、それからヨーロッパのEC諸国、イギリスに口上書がアメリカから参りました。これによりますと、アメリカのほうはこれらの国々がグループを結んでアメリカと交渉するということになれば、それに対応してアメリカのほうではガス拡散法の技術を提供する。ただし、これにつきましては機密保証が必要である、そういう趣旨の口上書が参りました。それでこれに応じるか応じないかということはいろいろありましたけれども、わが国といたしましても、いま御指摘のありましたように、濃縮ウランの供給は、いまは日米協力協定によりましてもっぱらというより、ほかにほとんど濃縮ウランの供給先はありませんので、アメリカから供給を受けておるのでございます。そして、まず一九七三年着工の分につきましては供給を受ける、その交渉がほとんど妥結に近いところまで進んでおります。七四年以降七六年、そこらあたりに必要な濃縮ウランの供給につきましても、今回の日米原子力会談でその折衝に入ろうということになりました。  問題は、それからあとの問題でございます。それからあとの問題といたしましては、アメリカは御承知のように、いまの三工場の設備能力の拡充をはかっております。もしこの拡充が円滑に進みますならば、それ以降の問題につきましてもアメリカは供給をしてくれる。供給をするにやぶさかでない、こういうことになっております。  しかし、それがいまのところAECといいましょうか、アメリカ原子力委員会としましては、これは何といっても上下両院合同委員会の承認を得なければならない問題でありますから、確実なことはもちろん申せない、そういう状況でございますので、日本といたしましてはおそくとも、まあ七〇年代の終わりごろには何か、もしできればマルチナショナルといいましょうか、数カ国の、多数国の合弁事業による濃縮工場ができることをわれわれは考えておるわけでございます。そのためにいまアメリカのほうでは、先ほど申しました口上書によって、アメリカのガス拡散の技術を独占するつもりはない。技術をシェアする、そしてインベストメントをシェアする、独占のつもりはない、こういう趣旨でいまの多数間の会合が開かれることになりました。  そして、一日、二日は主として太平洋地域、すなわち日本とカナダとオーストラリアの三国が中心になりまして、これにオブザーバーという形でヨーロッパの諸国がほとんど全部といっていいほど参加いたしまして、そして引き続いて十一月の十六日、十七日には今度はヨーロッパの諸国が中心になりましてアメリカAECと会合を持つ。これには日本もオブザーバーとして参加することになっております。この一日、二日の会合におきまして、アメリカAECのほうで説明がありました。その説明によりますと、何と申しましても説明はアメリカのこの技術提供に関する基本的な考え方というものが説明されたわけであります。そのために、その基本的な考え方をあまりこまかく申しますと、またたいへん時間をとって困る、失礼でございますので、ごく概略を申します。  とにかく自分たち考え方では、多数国が、何カ国かがグループをなしてアメリカのAECと折衝を関始するならば、アメリカとしては相当の具体的なデータを提供いたします。それからこのグループには、つまり多数国でつくるグループにはアメリカそのものは入りません。それから第三には、このグループをつくってアメリカと交渉してアメリカの技術を利用するということになりますと、アメリカとその工場をつくろうという多数の国々との間に政府または参加国のほうの会社、これが秘密協定を結ばなければなりません。政府政府との間の秘密協定を結ばなければならない。そのもとに民間が参加することもできる。しかし、とりあえずは政府政府の間で協定を結ばなければならない。その協定の中には、いま申しました技術の秘密保証、秘密を守るという条項が入るということでございます。その他こまかいことはかなりありますけれども、おもな点はそういう話があったわけでございます。  それで、私、日本側といたしましては、この秘密協定について秘密の保証のために国と国との間で協定を結ぶということになると、わが国においては原子力基本法がありますので、そういう秘密協定を結ぶことができない、こう申しましたら、いや、それについてはまだいろいろ考えようがある。たとえば、その秘密については一つのブラックボックスを設けて、そのブラックボックスには日本が近づかない、そういうふうな協定ならば日本が参加することができる、こういう説明でございました。  それからまた、この多数国間でできる工場の製品、濃縮ウラン、それとアメリカの工場でつくる濃縮ウランとの間は、これは自由競争である。だから、アメリカのほうの濃縮ウランが外国に流れてくることもむろんあるけれども、その多数国間の工場でつくる濃縮ウランがアメリカに入っていってもよろしい。そしてこの多数国間でつくる工場にはアメリカの会社が参加することも可能である。政府は参加できないけれども、アメリカの会社が参加することは可能である、そういうふうな問題が説明されました。  それで、これに対しまして、いろいろの国々からいろいろ質問がたくさん出ました。しかし、何といいましても、多数国間で濃縮ウランをつくるに必要な具体的なデータというものはまだ発表の域でない。それは多数国間がグループをつくって、そうしてそのグループで一応濃縮工場をつくるけれども、これについてはどういうふうなデータが提供されるか、つまり濃縮工場の建設を考えるに必要なデータというものはそのグループをつくった上でしかアメリカのほうでは発表はできない、こういうことでございました。  そういうわけで、一日、二日、この両日間を、総計で九カ国でしたか、九カ国の代表が集まりまして、いろいろ質疑をし、アメリカ側から答えがあり、それで終わったわけでございます。  それでございますので、この二日間というものは、アメリカからいってみれば、一方的にいろいろな話を聞き、そうして各国がもし多数国間の工場をつくる、つまりマルチナショナル・プロジェクトに参加するということになれは、自分の国との関係においてどういうふうな問題があるか、その問題についてある程度質疑が行なわれた、こういう状況でございます。でありますから、まだマルチナショナル・プロジェクトに対しましては、具体的な一歩も踏み出すことができなかったのであります。まことにぼんやりした会議でございました。しかし、ぼんやりしていたとはいえ、それでは何にも成果がなかったかと申しますと、必ずしもそうではないと私は思います。   〔委員長退席、近江委員長代理着席〕 それは、私はその状況をある席で説明をしましたけれども、ちょうど星雲状態でアメリカと多数国間の会合を開いた、何が何だかさっぱりわからない、そういう状況であったのではありますけれども、その星雲状態の中に何か、はっきりと姿はまだつかめませんけれども、何か姿ができかかりつつあるような気配もなくはないということでございます。ですから、一日、二日の二日間の会合では、私がいま非常に微妙なようなことばで表現をいたしましたけれども、そういうふうな動き、まだはっきりと姿はつかめませんけれども、各国の間にある種の目に見えない動きがつくられつつあるということであったと思います。これがおそらく十六、十七の両日にもう一度会合が開かれますと、あるいはもう少しはっきりした姿になってくるかもしれません。ですから、日本側といたしましても、十六、十七——アメリカ側の説明は一日、二日と同じことを説明すると申しておりますけれども、各国の質問がありますので、その質問に対する答弁といたしましては、アメリカの言い方がいろいろな言い方になり得るのでありますから、その関係から、十六、十七日には何かもう少し、一日、二日のときに動きかかってきていたものの形があるいはもう少し明瞭に——明瞭というと少し言い過ぎかもしれませんが、もう少し形を整えてくるようになるかもしれません。そういうふうに私は考えて帰ってきたわけでございます。ですから、一日、二日の会合では、だれかが言いだしっぺになればそれは相当進捗——何といいますか、多数国があるグループをつくるグルーピングがある程度進んだかもしれませんけれども、だれもなかなか言いだしっぺになろうとはしません。お互いにお互いの腹をさぐり合いのような状態でございます。国際会議というものはそういうものが多いかと思いますが、そういう状態で終始をいたしたわけでございます。十六、十七日の状況を見ました上で、また私どもはこの次のステップをどういうふうに考えるかということを検討しなければならないかと思います。だれかが、どこかの国が多数国間のグループをつくろうじゃないかというふうな、そう積極的ではなくてもいいですけれども、だれかが第一声をあげないと、なかなかこのグルーピングをまとめていくことはむずかしいのではないかと思います。  むろん、一方にはフランスの技術もあります。フランスの代表はアメリカの説明者に対しまして、濃縮ウラン技術のパッケージじゃなければアメリカからその技術はもらえないのか、部分的にもらうことができるかと質問をしております。そういうわけで、フランスの技術の問題も一方にあります。  それから、御指摘の三国間の協定に基づく遠心分離の技術もありますが、しかし、この一日、二日の国際会議、十六、十七日の国際会議アメリカの口上書によって開かれたものでありますから、遠心分離のほうの技術は問題になっておりません。これにつきましては、先般松根さんが団長になりましてヨーロッパの濃縮ウランの視察に参りましたときに、遠心分離の話も多少出ておりますけれども、しかし、何といいましても、まだ遠心分離のほうはパイロットプラントができていないのでありますから、まだその根本問題が、すぐこの問題に関して日本がどうこうするというふうなところまでは至っており一ません。  それで、もう一つ最後につけ加えたいことは、日本の技術開発でございます。いま技術開発は、御承知のように遠心分離とガス拡散の両方をやっております。両方とも技術上の困難な問題がありまして、思うようにはなかなか進みませんが、しかし、私どもの考えでは、一九八五年ごろまでにはどちらかの方法で日本の技術で濃縮ウラン工場をつくることができるであろう、こういうふうに考えております。しかし、それは八五年でございまするので、八〇年の初めから初めの数年間、この間の濃縮ウランの供給をどういうふうにして確保するかということが大きな問題であろうと思っております。  まあ、ざっとな説明でございますが、今回マルチナショナルの工場に関する国際会議に出ました感想を申し上げました次第でございます。
  49. 石川次夫

    ○石川委員 核濃縮の能力の問題について私ども前から検討しておったのでありますが、アメリカあたりで大体天然ウランとして三万トン内外じゃないか。それから、生産国ではあるけれども、少なくとも一九七五年ぐらいにはアメリカ自体が自給自足ということが不可能になってくるのではないかというようなことを踏まえて、われわれとしては自力でもってやはり核燃料の、これはほかの資源と同じようなことになるわけでありますけれども、開発をしていかねばならぬということで、いま一番有望視されているのがニジェールであります。ニジェールが一九七〇年に完全操業したとして、日本の所要量の大体三%ぐらいしか満たすことができないであろう、こういうような現状でありますので、この核燃料の確保とそれから濃縮の技術——濃縮の技術は、いま遠心分離のほうはちょっと見込みがなさそうなお話がございましたけれども、しかし、ガス拡散法の技術を持っておる英国自体が遠心分離法というものを相当肩入れをしているということから見て、やはりガス拡散ではもの足りないというか、欠陥があるというか、そういう問題があるのではなかろうか、こういうことがしろうととしても判断ができるわけでありまして、そういうことを含めて、この核燃料の加工の問題、濃縮技術というものをいかにしてマルチナショナルでもってやるかどうかということは、今後の懸案事項になるわけであります。また、国際間で機密協定を結ぶというふうなことになりますと、これまたわが国の原子力基本法に抵触をするというむずかしい問題にもなりますから、今後の懸案事項になるのでありますけれども、そういう問題も含めて、われわれとしては、平和的な原子力の利用推進ということについては、原子力基本法をつくった当時から積極的に協力をするという基本的な立場には変わりはないわけであります。  しかしながら、最近になって公害問題が相当大きく取り上げられたということもありますけれども、一体このままの状態で、たとえば昭和六十年に四千万キロワットというのは大体六千万キロワットというふうにスケールアップをした、計画を引き上げたというようなことで、あるいは若狭湾だとかそれから柏崎、それから福島、こういうところに集中的に、大体一千万キロワット以上集中されるのではないかというようなことを踏まえてまいりますと、いま言ったような核燃料の確保という問題あるいは濃縮の技術の問題というようなことについては、官界、財界、みんな一体となって相当熱心にこれに対して取り組んでおるということそれ自体は私は決して悪いことではないし、必要欠くべからざることであると思っております。それから新しい炉の研究としてのFBRとか高速増殖炉とかいうようなものについては、これまたどうしても早く促進をしなければならぬけれども、立ちおくれもはなはだしい。高速増殖炉は相当詰まってきた。彼我の技術の格差というものはだいぶ詰まってきたような印象は受けます。そういうことはありますが、それはそれとしてやらなければならぬ。その点をわれわれは否定するものではないのです。ないのでありますけれども、どうもこのまま、そういう面についてだけはどんどんどんどん予算をつぎ込んでいっているけれども、一体環境衛生の面でそれと同じような比重で考えられておるのかどうかということについて考えますと、われわれとしてはどうもこれに対して否定的にならざるを得ない。したがって、そういう観点で、わが党自体としては、こんなスピードでもっていったのでは将来大きな禍根を残すのではないか、そういうことで建設をすぐとめてしまえというような強硬な意見も出ておるわけであります。理由はいまさら私から申し上げるのも釈迦に説法でありますけれども、大体日本の住める地域といいますか可耕地域といいますか、そのところは非常にパーセントは少ない。したがって、人口はほかの国とは比較にならぬほど密集をしておる。地域が非常に狭い。そういうところでほかの国以上にエネルギー源が少ない。あるいは火力発電というものが非常な公害を生むということで、逆に何か原子力発電のほうが公害がないのだということでどんどん抵抗の少ないところに集中的につくられているというようなことで、ずっとこのまままかせておくということになりますと、将来一体どういうふうな公害が出るかわからぬのじゃなかろうか、こういう不安が非常に濃くなってきたわけであります。その中には御承知のように半減期が非常に長いものがある。二百八十九年というものがあるし、少なくとも十年ぐらいのものはざらにある。核の種類が二百通りもあって、その一つ一つについて十分な検討が加えられておるという段階ではないわけであります。  したがって、この問題がもし将来においてその結果として公害を生んだと仮定をいたしますと、これは火力発電の場合と違って半減期が非常に長いわけでありますから、どうにも抜き差しのならない弊害というものがそこに残ってしまって対策の立てようがない、こういうふうな重大な問題になるんではないか。イタイイタイ病だとか水俣病とか、いつでもそうなんでありますが、企業側は公害のほうの責任者ではないと言い続けていたし、基準というものを相当押えてきたつもりであったけれども、実際問題としては、出てみるとやっぱり企業側の責任であったというような結論に、最近では追い詰められたかっこうにならざるを得ないということになるようなことをもし繰り返すことになったら、これは後世の国民に対してわれわれは責任をとらにやならぬのじゃないか、こういうふうな気持ちがあるわけであります。平和利用というもの自体は絶対にわれわれは否定するものではないけれども、このままのスピードでいくことについてはたいへん危惧の念を持たざるを得ないというようなことに対して、一体政府はどういう対策を立てておるのか。  この中には不活性の問題もございます。これは世界じゅうどこでもたれ流しであります。たれ流しでありますけれども、たれ流しでいいのかどうかという問題があるわけであります。こういう問題についても真剣な取り組みというものは何にもなされておらない。世界的な問題としてこれは取り上げなければならぬ問題なんでありますけれども、いまのところは、これは不活性であるからほかのものに吸着もしないし化合もしないし、やむを得ないのだ、お手上げだということで、これは自然放射能とは全然違った種類のものがどんどんたれ流しというかっこうになっておる。こういうことでありますので、こういう状態でいったのでは将来とんだ禍根を残さなければいいがという点について、われわれは確信を持てない。その点で、原子力平和利用大いにけっこう、けっこうではあるけれども、こういう問題が解決されなかったならばとんでもないことなんで、どうしてもここでもってひとつ建設を取りやめろという強硬な意見も出ざるを得ないということになっている点をまず前提としてお考えをいただいて、この前、有澤さんやそれから原子力局とは個々にはいろいろお会いして話をしているのでありますが、公開の席でまたあらためてはっきり申し上げたいと思うのです。  それは、たとえばそのような発電所で——これは企業の側から発表されたデータではございません。でありますけれども、三十三万キロを出しただけで、四十五年に気体として七万キュリー、四十六年ではおそらく十万キュリーぐらいになるでしょう。液体としては四千六百ミリキュリー、こういうふうな放出がされておるわけであります。これと同じ比率でいくわけではないでしょうけれども、若狭湾、柏崎、福島県などというところは三十三万キロでこれだけでありますから、この比例でいかないとしても、これは一千万キロワットというふうな計画になりますと一体どういうことになるのか。IORPの基準それ自体がいま問われておるときなんです。  御承知のように、ミネソタ州ほか十州では、原子力発電所をやめろということで、州政府がそういう発電所を相手どって裁判をしておるという現実がこれを証明しておるわけです。アメリカのような広い地域ですらそういう問題がいま問題にされて、州政府自体がこれを取り上げておるというような状態のときに、一体日本は——日本としても相当取り組んでおるとは思いますけれども、組織的な取り組みは全然やっておらぬというふうにわれわれは見ざるを得ない。こういうふうな問題について、少なくとも核燃料に取り組む、あるいは濃縮ウランに取り組むという、あるいは新しい炉を開発するという、それらのものと同じあるいはそれ以上の熱情を持って、それ以上の組織体制をつくって、それ以上の予算をつぎ込んで、そうして将来に禍根を残さないというしっかりした体制ができない限りは、われわれどうしてもこのままイージーゴーイングでもって原子力の発電を認めるわけにいかぬのじゃないか、こういう結論にならざるを得ないわけであります。  そこで、まず要望したいことは、安全対策として、いまいろいろな新しい炉については動燃団があり、あるいはまた核燃料については財界と官界が一体となって懇談会をつくるというふうな真剣な取り組みはありますけれども、安全対策で一体——個々にはいろいろ考えておられるかもしらぬが、日本全体が組織的にこれに対処するという姿勢がまず見られない、これは非常に問題ではないか。それでわれわれが言っておるのは、原子力委員会の中に安全性の研究推進特別委員会というふうなものをつくって、常時これに対して対策を立てるということの中身としては、民間の大学の学者とか学術会議とかあるいは原子力研究所、動燃団、あるいは放総研究所、水産庁、こういったところの各メンバーを集めて、絶えずそういう問題について組織的体制のもとにおいてこれに対処していく、研究を進めていくというようなことが少なくとも起こらなければいけないのじゃないか。こういう体制なしに、一方推進するほうだけ進んでしまうということでは非常に片手落ちではないかという点が問題であります。  その研究課題としては、いろいろございます。原子炉それ自体の安全性の問題もあるでしょう。それから各種全般にわたって——全部といっても二百通り全部というわけにはなかなかいかぬでしょう。いかぬでしょうけれども、その中の十種類とか二十種類とか、特に放射能の危険がいま問題にされそうなものは大体限定をされてまいりますから、そういう問題について人体にどういう影響を与えるかというふうなものを組織的に対策を立てる。それから魚介類など生物にどういうふうに凝縮するか、そしてどういうふうにその濃縮が生物に還流され、あるいはそれがどういうふうに影響するかという問題。それから熱汚染によって生物に対する影響は一体どうなんだとか、その他もろもろございますけれども、そういうふうな問題をひっくるめて、この安全性研究の国家的な全体としての取り組む姿勢というものを組織化していくというような姿勢がどうしても必要なんじゃないか。それなくしてこの平和利用というものはあり得ないし、そういうふうな体制なくしてこの反対運動というものを押しつぶしてやろうなんていったって、これはできる相談ではないと私は考えるのですが、その点についてこれは長官と原子力委員の見解を伺いたいと思います。
  50. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 ただいま御指摘になりました安全性の問題。安全性は、一つは原子炉の安全性と、それからもう一つ放射能に対する安全性、大きく分けますとその二つに分けることができるかと思います。  原子炉に関する安全性につきましては、これはあとで武藤委員から少し詳しく御説明願いたいと思いますが、原研を中心に安全性に関する一つ実験計画を立ててこれを進めております。そしてまた、この問題はアメリカ——いま日本に入ってきているのはみな軽水炉型の炉でございますので、これはアメリカで開発をされた炉でございます。アメリカにおきましては、これがすべての発電所の根幹をなしておりますので、アメリカでも軽水炉型の炉に対する安全性研究は非常に進められております。  今回、日米原子力会談におきましても、この原子炉の安全性については双方共通の問題もあり、またそれぞれ分野を分かって、分担して研究するのが非常に有意義であるということで、両方で近くその問題について話し合いをすることになっております。わが国におきましては、いま申しましたように、原研、動燃を中心にして原子炉の安全性の研究を進めております。  それから安全性の審査につきましては、御承知のとおり、原子炉安全審査会というものがありまして、ここには日本における各方面の専門家が集まりまして、具体的な設計に基づきまして、そして周囲の環境状況、気象条件それから海水の流れ、そういうものをも含めてこの安全性に対する研究をやる、安全性に関する審査を行なっておる。そして安全性を確認した上で、炉の安全であることの証明を原子力委員会のほうに提出してもらうことになっております。しかし、こういうふうにどんどん炉が大型化してまいりますし、また非常にたくさん炉ができるようになりますと、その中には新しい機器の開発もありますので、この安全審査会委員が原子炉の安全研究をしたいということを申しております。   〔近江委員長代理退席、委員長着席〕  まあそれの一部は原研でありますが、審査会自身はなかなか研究する設備も持っているわけではございませんので、この安全性に関する審査会の研究につきましては、何らかの形でこれを受け入れるような形を整えたいと考えて、私どもはいまその準備をしております。  それから放射能に対する安全性につきましては、これは御承知のようにICRPの基準があります。これは国際的に共通の基準でございますが、しかし、この基準よりは、わが国においては大体五十分の一のさらに低いところを目安にして炉の運転の規制に当たっております。ですからそこまでまいりますと、大体自然放射能のレベルになっておると私は考えております。しかし、この問題につきましても、そういうローレベルの放射能影響につきましてはなお十分研究する余地があろうと思います。その研究の結果が有意の結果を生むためには非常に大がかりな実験と、それからもう一つはかなり長い期間、時間をかけての研究が必要であろうと思います。放医研のほうでもこれをやっておりますけれども、放医研研究はむしろいまのところ細胞分析、細胞に関する研究、この点では非常に放医研研究は進んでおると私は思いますが、現に今回の日米原子力会談におきましても、その問題が出ましたときに、やはり細胞に関する研究を十分進めることが一つの大きな前提条件である、こういうふうな結論を得ております。そういうわけでございますので、放医研のいままでの細胞に関する研究、これは非常に進んでおると思いますが、それと並んでさらに実験研究のほう、この実験研究もいままでやっておるわけでございますけれども、もっと人間に近い動物を使った研究、これをやりたいというふうに私どもは考えております。来年にはアメリカ放医研の人が出向いてまいります。大規模な動物実験に関するやり方、そしてアメリカ研究との連携、そういう問題について研究調査をしていく。その上で放医研一つの大きな研究体制をつくろう、こういう方針でいま話が進んでおるところでございます。来年度の予算にはその調査費というものが計上されていると思います。  それからフードチェーンのお話もありました。濃縮の話もございましたが、これもアメリカでも相当研究は進んでおります。わが国におきましても放医研が那珂湊で臨海実験をいまやっておりますが、なかなかこの問題もかなりの長期の時間がかかるということでございます。それから熱温水の問題につきましてもその後研究を進めております。  それで、そういう形でやっているほかに、いま御指摘のありました原子炉施設から放射能がとにかく出てまいります。それは許容度よりずっと少ないものであろうといえども、全体の量としては何万キュリーというふうな形になっておりますので、なるべく出るのをそれより少なくしよう、できるだけ少なくしようという努力も続けております。アメリカにおきましてもそれを続けているようでございまして、今回向こうへ参りまして、その点で二、三、私どもは学ぶところがございました。そういう点をさっそく日本に取り入れて、放射能をなるべく出るのを少なくしよう、こういう処置を講じていきたいと思います。  このほかにもいろいろ問題がございますが、そういうものをいま御指摘のありましたように何か体系づける、システム化するということが必要であるというふうに私ども考えます。だから、そういう点でのシステム化をどういうふうにして整えていくか、これはいずれ私ども至急に検討するつもりでございます。いずれ成案を得ましたならばまた御披露申し上げたい、そういうふうに考えております。
  51. 武藤俊之助

    ○武藤説明員 いま有澤委員からお話がありましたことに、原子炉に関しては私から御説明申し上げろということでございますので、もう御承知だろうと思いますけれども、簡単につけ加えさせていただきます。  現在、原研におきまして、軽水炉の事故防止のために安全装置に関する研究といたしまして、いわゆるローザ計画というものをもって推進しております。これは冷却材喪失事故の炉の熱的あるいは機械的な問題の解明をいたします。それを踏まえましてこの防止のデバイスが出てくる、こういうわけでございます。  それから、四十七年度からはこれに加えまして緊急炉心冷却装置の、例のアメリカで問題になりましたエマージェンシー・コア・クーリング・システムの開発研究もつけ加え、かつ反応度事故の炉内の挙動を解明するというために通称NSRR計画と申しておりますが、これを推進していきたいという予定でおります。  それで、両者合わせまして、四十七年度に概算要求しておりますのは約三十五億でございます。  以上でございます。
  52. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 たいへん重要な問題の御指摘だったと思うのであります。従来の原子力に関する安全問題というのは、まだ実際に発電所がそれほど大きな規模にならない段階からかなり量的な面もあったわけでありますが、最近、陸続と原子力発電所が実際に建設されるという段階になりまして、この安全問題というのがかなり実際の住民の間におけるいろいろな問題を引き起こしておるという御指摘であったのではないかと思います。その意味におきまして、確かにこの一年来、ことに最近になりましてかなり各地においていろいろな問題が起こっておるということは、私も十分承知をいたしております。  おっしゃるように、個々のそれぞれの問題につきまして、ただいま各原子力委員からお話がございましたように、われわれは技術的に十分問題の解明に当たっておる所存でございますが、これを全体として組織的に見るということが一つ。そしてさらに、技術の問題を越えて地域住民の心理に与える問題を研究しなければならない第二の問題。そういう問題を総合的に政治の面として取り上げてどのように処置していくかという大きな問題が私は現在あると認識をいたしておるのでございます。その意味におきまして、科学技術庁におきましても、また原子力委員会におきましても、十分この問題については早急に検討をする、こういう考えでおるわけでございます。
  53. 石川次夫

    ○石川委員 有澤さん、ちょっと先ほどの答弁で、私が不敏にして知らなかったのかもしれませんが、ICRPの五十分の一とおっしゃいましたけれども、日本は五十分の一になっておりますか、十分の一じゃないのですか。
  54. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 日本の基準は十分の一になっております。しかし、実際の行政指導は五十分の一、そういうことになっております。
  55. 石川次夫

    ○石川委員 公的には十分の一ということになっておるわけです。  それで、いまお話を聞きますと、アメリカアメリカという話が盛んに出てくるわけです。確かにアメリカは技術的に進んでおるし、工学的な面では確かに見習う点が多いだろうと思うのです。しかし、環境衛生の監視体制という面からいうと、アメリカ日本では全く条件が違うということを私は十分考慮に入れてもらわなければならぬと思うのです。これは言うまでもなく、単位面積当たりのエネルギーの消費量がアメリカの大体八倍、こういうことがいわれておる。それに伴ってやはり公害もそれだけ多くなると常識的には判断をされるわけなので、アメリカではミネソタ州そのほかでもって裁判が起こっておるというのは、やはりIORPの五十分の一以下にしなければならぬということでの裁判になっておるわけであります。  それから、いま勧告をされておるのは百分の一、これは軽水炉の問題でありますが、百分の一以下にでき得るのではないか、そうしろと、こういう問題になっております。アメリカですらそういうことになっておる。しかし、日本ではどうなるのだということになりますと、アメリカがこのくらいだから日本はこのくらいというふうな、以下同文というふうな形になりがちなのです。それではいかぬ。日本の場合は条件が全く違う。したがって、アメリカがこうだからこれでいいのだという考え方は全部払拭していただいて、日本独自の環境基準というふうなものをどうするのだ、これは日本全体が地球の自然放射能に対してどうのこうのということだけではなくて、地域的には相当問題が多いわけです。ところが、地域的な環境基準というものは全然ない。大ざっぱなものはありますけれども、きちっとしたものは全然ないというようなルーズな体制になっておるということも、住民に対してたいへん不安を与えておる原因になっておるということを十分認識してもらわなければならぬと思うのです。  実は私、いまからすぐ行かなければならぬところがあるので、あまり時間がとれないので非常に残念でありますが、こういう問題については列挙する程度にとどめますけれども、そういう問題については原子力委員会なり科学技術庁なりに私のほうから質問書なり申し入れなりというものを持ってまいりまして、十分これは煮詰めた問題にしたいという考え方を持っておるわけです。その中で、たとえばいまの問題でも具体策を早急に考える、こう言うのですが、これはもう必要不可欠な条件である、こういうふうに考えてもらわなければ困ると思うのです。そういう体制あるいは環境基準などをどうやってつくるかという問題について、汚染防止基準の大幅な強化というものをやっていただいて、そういう組織もまた別につくらなければいかぬじゃないか。こういう環境基準でやっているのだから安心だというようなことも並行して行なわれなければ、おそらく反対運動の火の手をとめることは不可能だろうし、これからエネルギー問題を原子力発電所を増設することで解決をはかろうと思っても現実できなくなるという危険性があるので、われわれとしてはそのことも考えながら環境基準についての見直しというものを十分にやっていってもらわなければならぬ、こう考えておるわけなんです。  それ以外に監視体制の問題があります。これはまた最小限度どうしても必要欠くべからざるものではなかろうか。いすのような形でもって、モニタリングを三カ所か四カ所つくってデータがどんどん送られる、こういうことだけでは核の種類の内訳というものは全然説明されておらぬわけですね。そういうことで、しかも地元との協定をやっておるといいますけれども、これはやはり地元の住民とか学者というものが参加をする、それが法制化されて、ある程度の強制力を持つというかっこうで、しかも地元の監視体制といいますけれども、茨城県でも県の衛生研究所でもってやっております。私も行ってみましたけれども、非常に熱心にやっておりますが、まことにお寒い設備状況なんですね。しかし、それでも日本ではたいへん模範的なものだ、こういう説明がなされて私はがく然としたというのが実情であります。したがって、そういうふうな地元地元における監視体制というものも必要でありますけれども、これは住民がいつでもこれに加わって、それの資料がいつでも公開されて、それをいつでも見れるということがまず安心感を与えるために不可欠な条件であろうし、そういう問題が地区地区だけでもってなかなか解決のできない、判断のできない複雑な要素もからんでおるわけですから、そうなりますと中央にそういうものがあって、そこに対してオンラインかデータシステムですぐに判断を仰ぐというシステムがまた出てこなければならぬのじゃないか、こう思うのです。そういうふうなことについて予算はおそらく私は要求されてないだろうと思うのです。しかし、そういうことが最低限なされないと、地元の住民を、ああこれならだいじょうぶだというふうに納得させる手段がないわけなんですね。大ざっぱな基準をつくることも必要だけれども、基準に基づいた監視体制というものができて、その監視体制というものがいつでもオンラインシステムで中央に伝達して中央の判断を仰ぎ得る権威ある中央の機関があるのだ、こういうことでなければ日本の場合は相当問題をこれからも引き起こすことは必定じゃないか、こう考えるわけなんです。  それと並行して、これは前々からこの委員会でもって問題になっておるわけでありますけれども、原子力委員会というものをもっと強化してもらいたい。アメリカのAECほどじゃなくてもけっこうですけれども、まあ原子力委員会の事務局は科学技術庁だというようなことでは、原子力委員会の権威というものは疑われるわけなんですね。この原子力委員会というものが独立した一つ機関として国民の側に立って、しかし、その中でいろいろな汚染対策、環境基準をつくるということにならなければいかぬのじゃないか。私が非常にシビアなことを言っておるようにおとりになるかもしれませんけれども、今後エネルギー問題が重要で原子力というものの利用が不可欠なものであるということを考えれば考えるほど、こういう体制をつくっていかなければならぬと私は考えておるわけなんです。  それとあと一つは、公開資料センターというふうなものがあって、いつでもそこへ行けばいろんなどこかのデータというものが見られるのだというようなことも必要なんじゃなかろうか。  いろいろとりまぜて非常に大ざっぱなことを申し上げましたけれども、そういう点について御意見を一応伺っておきたいと思うのです。
  56. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 ただいま御指摘になりました監視体制、これにつきましてはむろん私どもも非常に留意をしておるところでございまして、特にいま御指摘になりました地方地方にある監視体制モニターによって得られた資料についての解析、そういうようなものを中央でやれるような措置を何か考えたい、これはもう前から実は考えておりますが、どういう姿にしたらいいかということをまだ具体的な案ができないままに少し日がたっておるような次第でございます。御指摘がございましたので、これは至急にその問題を検討して着手いたしたいと思っております。そのためには地方のそういう監視機関を充実するということも必要だろうということもごもっともだと私は考えます。  それから、どこかに資料センターというようなものができて、そこに資料が集められていて、その資料はいつでも見られるというような体制をとるということも、これもその資料にもよりますけれども、大体日本の場合は商業秘密以外のものはみな公開になっておりますので、その資料を集中して一つのセンターをつくるということはむろんできることだと考えております。ただ、これをどういうところにどう置くかというふうな問題はもっと十分検討したいと思っておりすすが、いま御指摘のございました点は、私ども自身としても非常にけっこうなことでございますので、至急にその点を反省して、何か具体的な措置をとりたいと思っております。  それから、原子力委員会の強化の問題でござい貸すが、これはもう数年前にやはり国会のほうから強い要請がございまして、実は原子力委員会を強化するための懇談会というものができ博して、各方面の方々にお集まりを願いましていろいろ検討いたしたのでございます。御承知のように、日本原子力委員会はいわゆる八条機関でございます。行政を行なう委員会ではございません。もし事務局を持ってやろうということになりますと、相当行政機関に近いような形のものにならなければならぬじゃないかといりふうな議論もございまして、結局もっと委員会に情報を提供することのできるような、いま資料調査室と申しておりますが、資料調査室で各国やあるいは国内のいろいろな情報を収集し、分析し、これを委員会に提供するというふうな組織はできたのでございます。  しかし私は、委員会を強化するという考え方の一つには、委員会の監督のもとにいまの事務局である原子力局をもう少し強くするということも考えていいじゃないか、こういうふうに考えております。いまの原子力局は、何といいましても一方では行政をやっておりますので、行政のほうにややもするとウエートがかかるということがあるのでございます。原子力委員会の事務局的な仕事のほうが特に重要なのは専門的な点でありますが、専門的な点においてやや弱いのじゃないか、こういうふうな感じは私もいたしておりますが、しかし、なおいま御指摘のございました委員会の強化、そのもとにおいて原子力発電なり平和利用を進めるほうはむろんいままで私どもは相当やってきたつもりでございますが、今度は原子力平和利用の促進が環境に及ぼすあるいは人類に及ぼすいろいろの影響障害という問題にどういうふうに取り組むか、その観点から委員会の強化という問題を考えてみたいと思います。  以上でございます。
  57. 石川次夫

    ○石川委員 いま一応の御意見を伺ったのですが、たとえば原子力発電所の安全審査専門部会ですか、そういったところ、あるいはまた再処理場の安全審査がやったその報告を見ますと、きわめて簡単なもので、中の詳細なデータというのはほとんど審査委員自体といえども手に入らないというようなことで、自主、民主、公開の公開の原則というものがどうも根本的にくずれそうじゃないかという意見があるわけなんです。一般に公開されないということは、おそらく商業機密、ノーハウというような問題があるのだろうと思うのですけれども、原子力に限ってはノーハウの存在を認めてはいかぬと私は思うのです。これはあくまでも特許の問題として解決をして、やはり公開の原則というものは厳に守るということがなければならぬ。そういうところからも原子力行政に対する不信感というものが出てこざるを得ないという問題が一つあると思います。  それから、たとえば環境衛生の関係で、原子力委員の中にはそういう関係専門家が一人もいない。工学的な方はいらっしゃるし、国際法に詳しい方もいるし、あるいはまた経済に詳しい方はいるけれども、環境衛生の関係の専門の学者は一人もいない。これはまことに片手落ちじゃないかという感じがするわけです。一番肝心な環境衛生が怠られて、何か推進するほうの側ばかり一生懸命になっているという印象を原子力委員会の構成からも私どもは受ける。この点はたいへん私には不可解である、こういう感じをぬぐい切ることができないわけです。  そういうふうな問題をいろいろ考え合わせ、そしていまの御答弁ではそういう気持ちがあることは十分わかるにしても、ここでやりますという断定的な言い方は一つも出てこない。これは予算も伴うし、なかなか原子力委員会だけの判断、たとえば科学技術庁長官だけの判断というわけにもいかないという事情もあろうとは思うのですけれども、たとえば新しい炉を開発するには何百億どんどんやるのだというので、これは簡単に——簡単ではなくて、相当折衝の過程はあるだろうが、どんどん予算も取れる。環境衛生といったら一体どれだけ取っているかということになると、はなはだどうも私はこれに対して不信感を持たぬわけにいかないのです。こういうふうな状態のままでどんどん狭い日本でもって集中的に原子炉を建設するといりことになれば、国民の将来の命と健康を守るという立場から、どうしても反対せざるを得ないという結論にならざるを得ないのであります。  そういうことを十分お考えいただいて、実は時間がないので私は質問をこれで打ち切りますけれども、このままの体制ではどうしてもわれわれは納得いかない。何とかこの環境的な立場で将来の日本の民族の健康と生命を守る、公害から日本人を守る。これを全世界的なアバレージなんかで計算してはだめなんで、やはり地域の問題が相当あるわけですから、日本列島がそれでなくとも公害でもって一等先におおわれて、一等最初に滅亡するのは日本民族ではないか、こういわれているのが定説になっているわけです。そこに加えて原子力の問題が出れば、一たん出てしまえばもう収拾はつかない、取り返しのつかない問題になる。発電所の問題は一日たてば何とかなる、やめれば何とかなるということになりましょうが、原子炉をとめてもどうにもならぬ。不活性の問題とかあるいはまた半減期の長いものがもう大気中によどんでしまって、これはよほどでかい扇風機をもって追っ払えばいいが、そういうわけにもいかぬでしょう。そういうことになれば、これはどうにも収拾つかないというところにまで追い詰められないために、また国民の納得を得るために、いまのような体制では、とてもじゃないが、われわれは協力するわけにいかぬという条件が整い過ぎているということを十分お考えいただいて、あとでこれは具体的に個々に原子力委員会なり科学技術庁なりとよくお話し合いしたいと思いますけれども、現体制のままでは後世に相当大きな禍根を残すのではないかという非常な不安を持っておるということだけを指摘して、あと私、ちょっと緊急な会議がございますので、これできょうの質問を終わります。
  58. 渡部一郎

  59. 近江巳記夫

    ○近江委員 私は、出席政府委員関係で、先に原爆関係のことをちょっとお聞きしたいと思うのです。  原爆が落ちて二十六年の歳月、考えてみますと、被爆者が非常な病苦あるいは貧困あるいは孤独の三重苦にいまなお呻吟しておる現実ということをきびしく認識しなければいけないのではないかと思うのです。要するに、国がみずからの権限とみずからの責任において開始した戦争の結果、原爆投下を招き、そして大量の市民を無差別に殺傷し、生き残ったそういう被爆者の健康と生活を破壊しておる、そういう責任は当然私は負うべきであると思うのです。科学技術庁放医研等を持たれていろいろと研究はなさっておられるわけですが、根本的に大臣としては、どのような率直な反省と、また今後どういう責任を負おうとなさっておられるか、その自覚について初めにお聞きしたいと思うのです。
  60. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 原子爆弾の被害を受けたのはわが国だけでありまして、その意味におきましてたいへん国の責任がある、こういう御議論でございますが、なるほど確かにそういう面がある。この点におきまして、先ほども大原委員から質問がいろいろございましたが、原爆を受けた被害、こういったものを病理的に十分に研究を進めて、何とか治癒を早めるということの医学的な研究を進めなければならない。この点は、科学技術という面から見ましても、いわゆる放射線医学という点からいいましても、こういう研究を進めて、その研究の中で単に学問的な研究ということでなしに、実際に被害にあわれた方々の治療に貢献するということでなければならぬ、こういう決意でおるわけであります。
  61. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういう研究と同時に、この補償等をやっていく、そういう意向であると私は思います。  そこで私、具体的にお聞きしたいのですが、これは非常に科学技術の問題で、特に長官はエコロジーの問題とかあるいはそうした生命の問題等を真剣に勉強なさっておるということも私、聞いておりますし、いまこういう時代を迎えて、私は非常に適切な大臣が就任されたと喜んでおるわけであります。  そこで、今回のこういうような被爆の問題につきましても、政府の対策ははっきりいって、研究においても、あるいはその補償等の対策においても、援護の対策においても非常に手ぬるいということは、これはもう国民だれしもが認めておるわけです。一体政府としてこういうことでいいのかと、だれしもがみな思っておるわけです。ところが、それは要するに直接被害を受けた人だけであって、それから生まれてくる二世あるいは三世にわたるそういうようなことについて、政府は一体どう考えておるかということなんです。私は、当然もうすでに二世が誕生しておるわけですから、また近いうちに三世も誕生すると思うのです。そういう点から、当然こういう健康診断等を実施して、原爆に基因すると推定されるそういう疾病あるいは障害を有する者について、いま大臣のお話があった研究と同時に、手厚いそういう援護を私はするべきじゃないかと思うのです。この辺について大臣はどうお思いでございますか。
  62. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 厚生省との関係もございます。そういう意味におきまして、私がここで科学技術庁の長官として答弁できにくい面もあることは委員もよく御了承のことだと思うわけでありますが、科学技術庁といたしましては、技術的には放射線医学総合研究所、こういうものを持っておりまして、医学的な研究というものを大いに進めておる。その中でわれわれとしてやはり考えなければならぬことは、その中のわれわれが発見したこと、あるいは研究成果というものが、厚生行政の上でこういう点大いに心配してもらいたいという点はどんどん厚生省に申し入れる、こういう態度でなければならぬということだけを申し上げておきたいのでございます。
  63. 近江巳記夫

    ○近江委員 数少ない政府の最高責任者である大臣であります。そういう点についていろいろと研究をし、力を入れ、まあ援護等も厚生省と話はしなきゃいけないけれども、やっていきたい、こういう意味ですね。どうなんですか、もう一ぺん確認します。
  64. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 放射線医学総合研究所において、たとえば放射線というものはこういう危険がある、あるいはこういう点に問題があるんじゃないか、いろいろな問題点が出てくると思うのです。そういう点はあくまでも専門の国立の研究所でありますから、こういうところの成果というものを厚生行政に反映してもらう、そういう努力はわれわれのほうですべきものである、こういう考えでございます。
  65. 近江巳記夫

    ○近江委員 直接の援護についてはいかにもボールをぱっと厚生省のほうへ投げたという感じに私とったわけです。  それで、厚生省も来られておるわけですが、厚生省としてはどうですか。
  66. 黒木延

    ○黒木説明員 ただいまの御質問でございますが、先ほども大原委員の御質問にもありましたとおり、遺伝学的研究につきましては、後遺症の調査関係で、ABCC中心にいたしましていろいろ研究をしてきたわけでございますが、そういう点でいまのところ二世では——胎児は現在対象にいたしておりますけれども、いわゆる二世の問題につきまして医学結論がまだはっきりしたものがないように聞いております。現在のところは直接の施策の問題とはいたしておりませんけれども、私どもとしても今後の医学研究ということについては、非常に今後の研究にまつものがあると考えておる次第でございます。
  67. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういう医学研究成果をまって、そうしてやるというようなことでありますが、それは大臣がいま力を入れるということをおっしゃったわけです。当然二世、三世にこういう影響があるということは、しろうとであっても考えれば何らかの影響があるのじゃないか。それを科学的に解明をしていく、今後積極的に大臣はやっていくということをおっしゃったわけですが、それをただ待つという、そういう消極的なことでいいかという問題なんです。厚生省科学技術庁も一体となって、そうして特に大臣は閣議等でもそれをもっと進言されて、そして政府が責任をもってそういう研究を、そして援護等をやっていくということを当然私は言うべきだと思うのですよ。厚生省は、何となしに非常に消極的なそういう態度ですけれども、いいんですか、そういう態度で。積極的に研究もして、そしてその上で援護もやっていく、こういう意向であるのか。援護はもう一つしたくない、そういうような発想からくるのであれば、すべてが非常に私は後退していくと思うのです。その点どうなんですか。
  68. 黒木延

    ○黒木説明員 ただいまの御指摘でございますが、確かに二世、三世の問題という点は、いろいろな御議論があるところでございます。この問題につきまして、いろいろ先ほどから申し上げておりますように、鋭意今後の研究につきましても、医学研究の方面につきまして私どもといたしまして促進してまいりたい、そういうぐあいに考えておる次第でございます。
  69. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、こういう医学的な面でいろいろな徴候が見える、そうなってくれば当然二世、三世に対してもそういう援護なり何なり、そういうことは当然考えるわけですね。その点だけはっきりしてください。
  70. 黒木延

    ○黒木説明員 その点につきましては、医学上の問題でございまして、現在のところ、先ほどからいろいろ申し上げておりますとおり、たとえば白内障の問題が出ましたときはそれを施策に取り入れてきたわけでございます。そういう点で長期間の検討が必要だというようないろいろな御意見も賜わっておるわけでございます。そういう点、医学上のことにつきまして、先ほど科学技術庁長官のお答えもありますとおり、いろいろ私どものほうに出していただいて検討いたしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  71. 近江巳記夫

    ○近江委員 医学上ばかりおっしゃっていますけれども、何ぼ研究をされても現実にこれから苦しむわけですよ。ですから、そういう人をただ研究だけではなくして、それと同時に、手厚い対策をしてもらえるのかということを言っているのですよ。はっきり言ってください、その点を。どうですか。
  72. 黒木延

    ○黒木説明員 先ほどから申し上げておりますとおり、この問題につきましては、医学的な判断というものが非常に重要な問題でございまして、その点について、医学上の結論というものを私どもは期待しておるわけでございます。
  73. 近江巳記夫

    ○近江委員 それじゃ、やるということであると私は思います。しかし、もっと積極的にやってもらいたいと思うのです。  それで、これは詳しくは社労委員会等で私やりたいと思いますけれども、原爆孤老、病弱者、小頭症等の被爆者の終身収容保護施設、これも当然やるべきです。これもほとんど放置されております。しかも、いまある法律自体も原子爆弾被爆者医療等に関する法律——医療等と、あなたの先ほどの答弁でもいかにも医療医療医学というようなことを言っておりますが、そういう面だけでとらえているわけです。もっと総体的な、原子爆弾被爆者援護法というような手厚い対策をとれるように私はしていくべきだと思うのです。あまり時間がありませんので、この二点についてどういう対策をとられていますか。
  74. 黒木延

    ○黒木説明員 ただいまの御指摘の点でございますが、現在のところ、被爆者の方々の放射線を浴びられたという特殊事情に基づきまして、いま御指摘の原爆医療法をやっておるわけでございますが、そのほかにもいわばいろいろな特殊事情にかんがみまして、特別手当その他を支給するという、いわば原爆特別措置法という法律もやっておるわけでございますが、医療費、手当合わせまして現在八十六億の予算を計上いたしておるわけでございます。  そういうところでございますが、まず最初の御指摘の終身収容施設でございますけれども、広島長崎に現在養護施設がございまして、被爆者中心とする養護施設がございますが、それにつきましていま御指摘のような方々を収容するということも考えております。この広島長崎の両施設につきまして、今後さらに拡充をしてまいりたいという考え方でおるわけでございます。  それからもう一つの点でございますが、いまお答え申し上げましたとおり、現在の対策につきましていろいろ拡充してまいりたい。特別措置を含めまして関係方面と折衝、検討中でございます。
  75. 近江巳記夫

    ○近江委員 この点についてはこれで終わりますが、大臣、当然これはただ科学技術庁長官としてのそういう分野だけの主張であっては私は困ると思うのです。ですから、それを今後もっと政府全体に及ぼしていけるように、そういう医療体制、そして研究体制、さらにそういう援護体制等を、当然科学技術庁長官が先頭を切って、声を大にして厚生大臣とともに進むべきじゃないか、このように私は思うのです。あなたのそういう御決意をひとつ聞きたいと思います。
  76. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 科学技術庁長官といたしまして、科学技術に関しては、私は内閣全体に対するアドバイスをする権利を持っております。また、ことに放射線医学総合研究所を所管しておるという関係で、おっしゃるとおり、こういう問題につきましての最新の知識、報告を受ける立場におけるわけでございます。御鞭撻を受けました趣旨、まことにそのとおりでございまして、そういう意味で、放射線障害のいろいろなおそろしさ、またそういう遺伝的なことに問題がいろいろあるわけでございますから、そういう点につきまして関係各省の注意を促す、こういうことをやってまいりたいと思うわけでございます。
  77. 近江巳記夫

    ○近江委員 それからその次に、私お聞きしたいのは、アムチトカ島の地下核実験について、世界のごうごうたる非難を振り切って、アメリカは七日の午前七時、アムチトカ島において水爆の地下実験をやったわけですけれども、これは、わが国としての立場からしても、世界において一番実験中止の声を高めるのが当然じゃないかと思うのです。政府も何らかの声明等も若干は出しておられるようですが、単なる声明等くらいで、まあ要請はしたか知りませんけれども、見ておって、私は非常に弱いように思うのです。そういう態度でいいかということであります。  そこで、わが国政府、特にきょうは国連局長も来られておるわけですが、科学技術庁は外務省とともにどういう処置をアメリカに対してとられたか、これに対してどういう見解を持っていられるか、国連局長と大臣にひとつお聞きしたいと思うのです。
  78. 西堀正弘

    ○西堀政府委員 アムチトカ島におきます実験が行なわれるという公表がありまして以来、わが国は、実験前には三度にわたりまして抗議を申し入れたのでございます。これは、予算委員会におきまして福田外務大臣が御答弁になりましたとおり、異常ともいえるほどの頻度と、また熱意といいますか、激しさをもって抗議をいたしたわけでございます。にもかかわらず、遺憾ながら実験が強行されたということで、わが国といたしましては、再三にわたる抗議にもかかわらず、アメリカがこの実験を強行したことに対し、さっそくまた深甚なる遺憾の意を表しまして、万が一にもわが国民に被害が及ぶようなことがあったならば、十分の損害賠償ということの権利を留保する旨申し入れさせた、こういうことでございます。  もちろん、抗議にとどまりませず、先生承知のとおり、わが国は核実験というものにつきましては、現在の国際法上におきましては、地下核実験、これは国際協定上は認められているわけでございますけれども、わが国といたしましては全面核軍縮、これを国是といたしまして、ジュネーブにおきます軍縮委員会におきましても、また国連の場におきましても、この全面核軍縮という点を強力に推進すべく、特にわが国の場合におきましては、地震学的知識というものが他国に比しまして非常に発達いたしておりますので、これを利用したところの——と申しますことは、結局、現在のところ地下核実験禁止までに及んでいない、といいますのは、現地査察が必要だという一部の主張がございますので、その点につきまして、地震学的な知識を利用したところの方法でもって、とにかく地下核実験も何とか禁止に持っていきたいということで、先ほど申し上げましたように、ジュネーブ軍縮委員会及び国連の場で強力に推し進めているような次第でございますが、いまなおその成果を見ないということは非常に遺憾なことでございますけれども、政府といたしましては、とにかく核実験、したがって、万が一にもその漏れるかもしれない放射能というようなことにつきまして、十分認識しておるつもりでございまして、外務省といたしましても、十分なと申しますか、何よりも軍縮、特に核軍縮という点につきましては熱意をもって対処いたしておるということを申し上げたいと存じます。
  79. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 ただいま概略の経緯を外務省のほうから御答弁がありましたが、私どもといたしましては、やはり放射能の問題、これが科学技術庁として非常に注意しなければならぬ。国民を放射能から守るということは、科学技術庁の任務であります。その意味におきまして、今回の核実験によって放射能汚染が起こる、これが公海に流出する、ひいてはわが国のいろいろな国民生活に影響がある、こういうことがあってはならぬ、この点が非常に大きなわれわれの関心事でございます。その意味におきまして、実験の前に二回にわたりまして、六月及び十一月、内閣にあります放射能対策本部の幹事会——その本部長は私でございます。幹事長は原子力局長。その幹事会を開きまして、対策の諸問題を一応協議いたしました。今回の実験の諸データを分析いたしまして、一応、従来のいわゆる放射能対策という点からいえば、通常の監視体制でいいのではないかという結論に達したのでありますが、なお、地下核実験でありますために、その放射能汚染がかなり時間がたってから外海に流出する、こういう可能性が考えられるということでありますので、わがほうといたしまして、十分な環境サイドからのデータを収集しなければならぬ、こういう考えで、現在米国政府に対しましてこれを要求する、また米国政府筋から以外にも独自にわがほうも情報を収集する、こういうことで、十分にこの実験あとの状態をフォローいたしまして、そうしてその結果に基づいてわれわれは、すぐに迅速な処置をとる必要があるときはとらなければならぬ、こういうかまえでおるわけでございます。
  80. 近江巳記夫

    ○近江委員 この実験後、ニュース等でも報じられておりますが、地表が陥没したとかいろいろなことがあるわけです。政府が申し入れをやったあれについては、航海中の漁船等に被害が生じた場合、その補償請求の権利を留保する、これは官房長官談話でも発表しておるわけですが、とらえ方が直接的なんですよ。いま大臣は将来のことに若干触れられたようでございますが、それでもまだまだもっと非常に長期にわたるその辺の観点からの発言でないように私受け取ったわけです。地下核実験になれば、当然一年か二年後ぐらいに地下水がまた海水の中にまじってくるというようなことも考えられるのじゃないかと私は思うのです。御承知のようにあの辺は、アリューシャン列島付近はサケ・マスあるいはスケソウダラの重要な漁場にもなっておるわけです。そういう点で、ただアメリカにそういうデータをくれとかそういうようなことだけでいいかということなんです。大臣も、国民の健康と生命を守るということを先ほどもおっしゃったわけですが、この海域の汚染調査、やはり調査をしておいて、そしてこれからもそういう点をきびしく監視をしていく、こういう点が大事じゃないかと思うのです。その点について、大臣としてはどのように処置をされておられますか。
  81. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 近江委員と全く同じ認識に立っておるのでございます。この問題、放射能汚染という点からは十分監視をし、フォローをしていかなければならぬ。こういう観点から、現在たとえば外国についてはアメリカ、ソビエト、カナダ、これらにつきまして、これはいずれも沿岸地域の国々でありますが、そういう国々からも十分に資料を収集する。わが方自体といたしましても、海洋への流出汚染、こういうことがないように、あらゆる点において情報を収集する。こういう努力を十分続ける。しかも、その結果、もし万一、海洋に汚染がある、こういう事態におきましては、これはもう急速にこれを結果というものを予測する。そうして、所要の対策を立てるために各省庁水産庁、気象庁、海上保安庁、これらの船舶によりまして、その影響度というものをすぐさまに調査をし調べる、こういう体制を万々とっておるのでございます。
  82. 近江巳記夫

    ○近江委員 この前の、大気圏内の実験が中止された。これは結局、これも八年前だと思うのですが、結局大気圏内の爆発というものが地球環境を汚染するからという世界の声、その大勢に押されてすなおにやめたわけですが、今回のこの地下実験については、今後どういう規模で地球を汚染していくか、こういう問題なんです。そういう点、今後残された大きな問題でありますけれども、影響がないということはもう絶対考えられないわけです。そういう点において、全面的にそういう実験というものを中止していく——そういう基礎的な研究から、いろいろなことはみなわかっておるわけですよ。ですから、さらに核兵器を拡大していくという前提のもとにやっておるだけの話でありまして、これは全く人類の生存と逆行する行き方です。そういう点、特に国民を守るという大臣のそういう発言等から考えましても、まだまだ——それはやってないとは私言いませんよ。だけれども、まだまだ弱いわけです、その辺の声が。ですから、その点、今後全面的に禁止していくために、長官としてはどういう決意で、またどういう具体的な構想をお持ちか。大臣と国連局長にお聞きしたいと思うのです。
  83. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 実験地域が外国の主権のもとにある、こういう条件でありますので、わが方で主体的に十分調査するということがあるいは存分にいきかねるおそれもあるのであります。しかし、そういう条件でありますが、アメリカ国内にもあるいは政府部内にも、この問題に対する批判的な意見というものがかなりあり、アメリカ国内において環境問題に関する各般の団体、学者そういったものもあるわけでありますから、あらゆる種類の情報、データ、こういうものをわれわれは十分集めまして、そして従来からわれわれが主張しております核兵器実験の全面的禁止と、これに対する環境上からの十分な科学的根拠というものをこれに加えることが必要ではないか。この意味におきまして、近江委員との見解と非常にわれわれは同じ立場に立っておるものと了解いたしておるのであります。
  84. 西堀正弘

    ○西堀政府委員 先ほど申し上げましたように、わが国は、軍縮政策というものをわが国の国是の一つといたしまして、強力に推進いたしておるわけでありますけれども、そのうちでも、この核軍縮というものについては、年来最も重点を置いておるわけでございます。今回のアムチトカ実験に関しましても、アメリカ国内におきましても、それからカナダにおきましても、非常な反対論があったというようなことも、われわれのこの核軍縮の主帳を進めていく上におきまして、非常に有力な材料となるわけでございます。今後ともジュネーブの軍縮委員会あるいは国連といった場におきまして、われわれの核軍縮という方針をますます強力に進めていきたいと考えております。
  85. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで海洋の放射能汚染、これでわれわれが非常に心配するのは、当委員会においてもアメリカの原潜の問題について、そうした保障の問題、今後の環境汚染の問題等、非常にいろいろとここで質問もさしてもらったわけでございますけれども、佐世保、横須賀等でも以前からあの異常放射能問題等もありましたし、その点の疑念というものはいまもって払拭されぬわけです。  そこで、この前沖繩で異常コバルトが検出されたということがあったわけですが、結局コバルト六〇などというものは、これは人工放射性物質なんですよ。ですから、この前にも問題になりましたが、アメリカのエードメモワール等を見ましても、一次冷却水は絶対出さぬということをいっておった。出さないのになぜコバルト六〇があるかという問題なんです。当然沖繩が返還されるわけですけれども、わがもの顔に原潜が出入りしておるわけです。こういう点、今後沖繩が返ってくる点について私非常に心配であります。現在佐世保や横須賀では何回ぐらい入港しているんですか。また、沖繩についてはいままでにどのくらい入港しているんですか。
  86. 成田壽治

    ○成田政府委員 沖繩に対する原子力軍艦の寄港は四十三年九回、四十四年九回、四十五年十六回、四十六年は五月現在ですが九回ということになっております。それから、日本の佐世保に対する原潜の寄港は、最初始まってから現在まで、佐世保は十七回でございます。それから横須賀につきましては四十四回ということになっております。
  87. 近江巳記夫

    ○近江委員 こういう原潜が出入しておるわけであります。それで、いま沖繩の軍港がいろいろあるのですけれども、どういう港へ出入りしておるのですか。
  88. 成田壽治

    ○成田政府委員 沖繩の寄港地は、最初はホワイト・ビーチと那覇港と二つでありましたが、昭和四十五年からホワイト・ビーチだけ、四十五年、四十六年の現在に至りましてホワイト・ビーチだけに寄港しております。
  89. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで大臣も国民のそういう生命、健康を守ることに全力をあげるということをおっしゃったんですが、いままでこのホワイト・ビーチ——那覇は若干調査したようですが、調査しましたか。
  90. 成田壽治

    ○成田政府委員 昭和四十四年の五月に琉球政府の依頼に応じまして、五月十九日から三日間、原潜放射能調査団、これは総理府の特連局とか、あるいはわが科学技術庁の職員、あるいは外務省の職員、それから放射能調査専門家で構成した調査団を派遣して、那覇港とホワイト・ビーチにおいて、いろいろな地形、海流測定機器等によって現地調査を行なって、その結果を琉球政府に対して勧告を行なっております。
  91. 近江巳記夫

    ○近江委員 ところが、異常コバルトが検出されておるわけです。主席もその当時寄港中止を求む声明を出したんです。その後、米軍が一次冷却水を出していないという証拠はあるのですか。それについてどういう確認をとっていますか。
  92. 成田壽治

    ○成田政府委員 沖繩におきましては、四十四年ですかコバルトの発見の問題がありまして、この調査団の勧告にもありますように、放射能調査を厳重にやるべきであるという勧告も出しております。ただ、日本の佐世保、横須賀につきましては、ソードフィッシュ号事件以来放射能調査を非常に強化いたしまして、その後、日本側調査によりますと、そういう異常な結果は発見されておらないのでありまして、日本につきましては、そういう事態が最近はないと言えると思います。そして、沖繩返還になりますと、当然、日本の横須賀の調査と同じような方法で日本側調査することになりますので、こういうことは、沖繩につきましても返還後はないことになると思います。
  93. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、いま沖繩については、佐世保や横須賀にあるようなモニタリング施設というのは全然ないのですか。
  94. 成田壽治

    ○成田政府委員 沖繩はまだ返還になっておりませんので、日本政府のモニタリングポストとか、そういう放射能調査装置はないのであります。ただ、琉球政府がいろいろなサンプリングをとって調査をやっておる状態でございます。
  95. 近江巳記夫

    ○近江委員 この佐世保や横須賀は、これは閣議でも了承をとって、そしてアメリカともその辺のいろいろな交換公文ですかもやって、かなり厳格に予算もつけてやっておるわけです。そういう点からいけば、沖繩が返ってくるとわかっているわけですよ。なぜ政府はもっといままでモニタリング等について真剣に、ただ沖繩から持ってくるだけだというような安易な、ただ受け身のそういう姿勢ではなくして、大臣がいまも生命と健康を守る——沖繩はそれじゃ国民じゃないのですか。なぜもっと真剣にいままでやらなかったのですか。
  96. 成田壽治

    ○成田政府委員 沖繩の返還に備えまして、来年度の予算要求として、科学技術庁から、原潜寄港に関連しての放射能調査に要する予算として、二億五千万円ほど四十七年度予算要求として出しております。そして、これがどこの港に将来寄港になるかはっきりしますと、これは必要があったら、あるいは四十七年度予算、その前の措置も必要になるんじゃないかと思いますが、いまのところ、来年度予算案として二億五千万ほどの予算要求をして、万全をはかるというかまえをとっております。
  97. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、このコバルト六〇がこのように発見されておるということ自体、これは大問題だと思うのです。  そこで、従来から幾らアメリカと約束をしておっても、こういう心配点がたくさんあるわけです。ですから、そういう点で原潜の寄港は基本としてはもう中止さす、そういう強い態度で臨むべきだと思うのです。これについて、外務省としてはどういう見解をとっておりますか。
  98. 橘正忠

    ○橘説明員 原子力を動力とする潜水艦あるいは水上艦艇の寄港につきましては、安全保障条約上もこれをとめるということにはなっておりませんので、他方、放射能その他に関して所要の手当てをして、寄港を認めるということを従来も続けてまいりました。今後ともその点については、放射能の点について技術的にも遺憾のない体制をとっていけば、寄港を認めることは差しつかえないと考えております。
  99. 近江巳記夫

    ○近江委員 その点については、今後も中止を要請していくという強い意思を持って、これからもひとつ交渉に当たってもらいたい、これはもう要望しておきます。  それから、この沖繩返還に伴って、本土であれば佐世保と横須賀ということははっきりとアメリカとの間に明記しておるわけです。そうすると、この米原潜は沖繩のどこに入港させるのですか。その辺の米側との交渉の経過を明らかにしてもらいたいと思うのです。
  100. 橘正忠

    ○橘説明員 いよいよ沖繩の復帰が具体的な問題になるその段階を迎えまして、具体的にどこの港に原子力潜水艦が入るかという話を詰めていく段取りになってまいると思います。従来のところは、先ほど先生もおっしゃいましたように、あるいは政府側の科学技術庁のほうからも説明がありましたように、ほとんどはホワイト・ビーチを実際上使っておるようで、二年半以上、那覇には立ち寄っておらないようでございます。
  101. 近江巳記夫

    ○近江委員 沖繩はわれわれも何回も行っております。わが党としても、沖繩の基地の総点検もやっております。軍港は幾らでもあるのですよ。那覇軍港あるいはホワイト・ビーチあるいは陸軍輸送基地、勝連タンク基地、天願突堤、金武突堤とか、かなり大きなそういう軍港があるのですよ。どこへ出入りするかわかりませんよ。モニタリングをやるということを言われましたけれども、その点について科学技術庁は対策をとっていますか。どういうふうにやっておりますか。
  102. 成田壽治

    ○成田政府委員 返還後どこの港に寄港するかというのがわかり次第、すぐ横須賀、佐世保と同じようなモニタリング体制をとれるような準備を予算要求その他のかっこうで行なっておるわけでございまして、ただ、どこに寄港するかというのを特定しないと、これは地形その他かなりその具体的な条件によって、モニタリングのやり方が変わってまいりますので、その確定を待っている状態でございます。
  103. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすれば、本土では佐世保と横須賀ということをはっきり明記して約束しているわけですよ。そういうことはきちっと、出入国させるその辺もはっきりさす、そういう協定もはっきりしなければいけないし、要するに、佐世保と横須賀のこのモニタリング等について、あるいは保障等について、米国との間にきちっとしたそういう約束を結んでいるわけですよ。沖繩についてもそれをちゃんとするのですか。それでなければ沖繩は不安ですよ。
  104. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 もう本土並みであります。全く本土と同じ取り扱いを講ずるということであります。
  105. 近江巳記夫

    ○近江委員 非常に聞きようによれば抽象的にも私は思うのですが、長官のおっしゃったあとで何ですけれども、国連局長、それは間違いありませんね。きちっとそういう文書にしろ何にしろ一切のことを結びますね。
  106. 橘正忠

    ○橘説明員 アメリカ局でございますが、ただいま科学技術庁の長官の御答弁にありましたように、本土におけると同じような体制で基本的に沖繩に臨むという姿勢でございます。
  107. 近江巳記夫

    ○近江委員 こういう放射能等の問題というのは、非常に後々蓄積されたりいろいろなことでまだまだ未知数であります、その辺の研究が。それだけに慎重にあらゆる配慮を払っていくのが私は当然だと思うのです。そういう点どうかひとつ、あとそういう心配がないように、今後もさらに、長官がおっしゃった国民を守るという立場で真剣に政府として取っ組んでいただきたいと思うのです。  それから、その次にお聞きしたいのは、この放射性物質によるあるいは大気あるいは海洋汚染等、いわゆる放射能による環境汚染問題に対して、現在の公害関係十四法案にあっては、どの法律のどの条項が適用されるかということなんです。公害基本法においては全部、原子力基本法外一連の放射線障害の防止に関する法律等適用するということで、公害十四法案から抜いているわけです。しかし、現在のそういう原子力基本法をはじめ一連のそういうあれではたして環境汚染が防げますか。私は、学者として政治的な発言は要りませんから、学者として、いまのこういう法体系で、たとえば魚介類に蓄積されていく、それを食べたら人間はどういう影響がくるか、そういう環境汚染から何から全部カバーできますか。どなたでもけっこうです、良心のある人に私はお聞きします。
  108. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 いま学者としてお答えくださいというお話で、まことに私としてもつらいのですけれども、大気汚染にしても、それからフードチェーンの問題にしましても、それから低レベルの放射線障害にいたしましても、いま世界的にその研究が進んでいると思うのです。日本におきましても、その研究におくれないように努力をいたしております。何といいましても放射線に関する問題は、実際これが平和利用に使われるようになってから以来の問題でございます。最初は、先ほど石川さんのお話にもありましたように、原子力平和利用にどういうふうにして使うかという問題が最初に大きな問題になっておりましたが、今日におきましては、そこから出てくる放射線、大気汚染にしても、海水の汚染にしましても、あるいはフードチェーン、環境の汚染の問題にしましてもようやくその問題があらわれてきております。基礎的な研究のほうはかなり私は進んできておると思います。  さて、いよいよこれを環境に応用する面におきましては、まだ研究世界的に不十分では安いかと思います。むろんはっきりしている、つまりわりあいに高い放射能、ICRPぐらいの水準の問題でございましたならば、これは研究によってはっきりわかります。しかし、それ以下の、たとえば自然放射能関係等とうらはらになるようなといいますか、似たりよったりのようなところの人工放射能影響、こういうことになりますと、なかなかはっきりしない。有意の結果を得るまでには相当大量の試験が重ねられなきゃならぬ。実際、大量の試験をやってみましても、有意の結果が出るか出ないかもわかりませんが、しかし、この放射能影響がもしあるとすれば、たいへんおそろしいことでございますので、とにかくそれがないということがはっきりわかるまで突き進めていかなければならないだろうと思います。これは、私は物理学者や生物学者じゃないのですけれども、学者の立場から申しますと、そういう現象を突き詰める、突きとめるというのはやはり学問の任務であろうと思います。その任務に向かって、わが国においても放射線に関する研究者も非常にふえてまいっております。アメリカやドイツやその他の国におきましても、世界的に研究者がふえておる。ですから、そういう国際的な問題でございますので、国際的な学者が協力をしてそういう問題を突き詰める、突きとめるということが必要であろうと思います。日本もその国際的な共同的な研究に大きく貢献をしたいと私は考えております。
  109. 福井勇

    ○福井委員 関連して。近江委員質問は非常によく研究された、きわめて私たちの注意しなければならぬ、いい質問だと感心しておりましたやさきに、私もちょっとこの際一分間、調査しておいてもらわなければならぬということを思いまして、関連質問するわけであります。  原子力発電所から出る冷却水の温水などで、英国やまたアメリカの海岸で、そこの近所の魚介類が汚染されておるとか、あるいは死んでおるというような例をあまり現地で私は見てなかったのだけれども、日本では、私たち原子力発電所を海岸に建てる、あるいは川の横へ建てるというときに、何もないということを今日まで言い切ってきた。事実現在でもそう思っている。ところが、場所を言うと波が立つから言わぬけれども、いま現にできておるところで、魚介類が黒くなって死んでおったりするというところがその付近でそこらじゅうにある。それはほかのためであろうというふうに、私たち物理学的に説明をしない範囲で、常識的にそんなの違うよと言っておるのですが、どうもその後、そうでないような質問を受けるので、そういう点については原子力潜水艦のこととは内容は同じですが、別の方向でよく調べておいていただきたい。場所を言うとすぐ波が立ってしまって、科学技術委員会でも言うことになるからそれは言いませんが、よく調べておいていただきたい、こういうわけです。答弁は要りません。
  110. 近江巳記夫

    ○近江委員 福井委員からも、そういう非常に将来にわたる疑問点が出されたわけです。この放射能粒子の放出は、大気なりあるいは海洋に拡散されて、自然のバックグラウンドにかりになったとしても、当然食物の連鎖等を通じて濃縮されていくというような問題があるのです。この辺の研究は実際やっておるけれども、やっているなんということはちょっとふさわしくないくらい、まだ微々たるものです。したがって、当然この現行法によるそういう規制というものがこれでいいのかどうかという問題なんです。その点きょうは環境庁も来られておりますから、どのように思っておられるか、お聞きしたいと思うのです。
  111. 船後正道

    ○船後政府委員 放射性物質による公害防止の措置につきましては、先生も御指摘のように、公害対策基本法第八条では、これを「原子力基本法その他の関係法律で定めるところによる。」ということにいたしておるわけであります。この条文の趣旨といたしますところは、やはり放射性物質の特殊性、すなわち人間に与える影響でございますとか、その取り扱いの困難性でございますとか、そういったことを考慮いたしました場合には、一般の汚染物質と同じように扱うのは適当でない上に、すでに放射性関係につきましては、原子力基本法その他の法律によるところの一元的な体制が整っておりますので、したがいまして、公害対策基本法以下の系統ではこれを除外しておるわけでございますが、このことは、むしろ放射性物質の被害がきわめて重要であるので、一元的、専門的な系統で扱うのがよろしいという趣旨であるとわれわれは考えておる次第でございます。
  112. 近江巳記夫

    ○近江委員 ところが、原子力基本法以下、いろいろ規制はありますよ。あってもそれは大気にしろあるいは海中に放出するにしろ、排出口からどれだけ薄めて出しなさいというだけであらて、それが蓄積されていって魚介類に及ぼす影響とか、それが今後どうなっていくか、ほおり出したらあとは何もないわけですよ。それでいいかという問題なんです。世の中はぐんぐん動いているわけです。そういう点、環境庁は一番環境を守らなければいかぬわけですよ。これからどんどん原子力発電所ができるのです。一カ所に、トータルしますと何万キロワットという原子力発電所が何カ所も固まって、現実に敦賀とかあの辺にもできつつあるわけですよ。先手先手を打っていくのがほんとうに国民優先、生命優先という立場に立つ姿勢じゃないかと私は思うのです。その辺のことを真剣に考えないと、これでこと足れりと思ったら大間違いですよ。長官として、いまの原子力基本法以下の規制で、これを守れますか。真剣に考えておりますか。(平泉国務大臣「これというのは何です」と呼ぶ)大気なり海中に原子力発電所から放流しますね。ただ出る口だけを規制しておるわけですよ、これだけ薄めなさいと。それが蓄積されたらどうなっていくのか、環境の保全とかそういう立場からいった場合、何の法律を根拠にして守るのですか。この点については何もありませんよ。原子力はむずかしくて私らもわかりませんよ。ただそれだけで原子力基本法以下にまかすと、公害対策基本法でもはっきりうたっているのです。これが盲点になっているのです。ほんとうにあなたが健康を守るということをおっしゃるなら、真剣にそのことと取っ組むのがあたりまえじゃないですか。これはまず局長からお聞きして、それから環境庁、それから長官と三人お答えください。
  113. 成田壽治

    ○成田政府委員 放射性物質の環境汚染の防止は、先ほどお話がありましたように、原子力基本法、あるいはこれに基づく原子炉等規制法、放射線障害防止法等の法律によって、原子力委員会の責任の下に非常にきびしい規制を行なってまいっております。  それで、先ほど御指摘の、魚に放射能が濃縮して、それが人の健康に影響を来たす問題等もいろいろ現在放医研の臨海実験場等でもいろいろなデータ研究をやっておりますが、いまのたてまえとしましては、放出口の排出線量というのが、そういうものも織り込んで十分健康に支障がない、そういう国際的なICRPの基準等をまぜまして、そういう見地でできておりますので、フードチェーンの問題とか、あるいはいろいろな原子力発電所が非常に特定地域に集中して、それが非常に放射能のレベルを高めるとかそういうことのない、そういうことを織り込んで規制法による検討をやっておりますから、御心配の点はないというふうに、そういうたてまえになっております。ただフードチェーンの問題とかあるいは遺伝の問題とかいろいろ研究すべき要素、これは世界的に要素も残っておりますので、この点は原子力研究予算等でも十分つけまして、いろいろ研究を鋭意進めておるところであります。  ただ、最近いろいろな原子力の事故等が起きて、われわれも非常に反省しておるのでありますが、これは法律が非常に不十分であるという点ではなくて、むしろ実際作業をやっている人とかあるいはRIを扱う人の処理の油断から来まして、ケアレスミステークをやるとか、そういうところから起こっている問題が最近非常にあるのであります。これは法律が不備であるという問題ではなくて、われわれ法律を運用している者も十分責任を感じておりますが、法律を徹底的に守らせるという点が、これは十分やってもまだ足りないという点がありまして、そういう事故がありますが、これは法律が不備であるというよりは、むしろ法律を十分PRして法律の規則、基準どおりに守らせる。そして仕事のなれからくる油断によっていろいろな問題が起きているのは非常に遺憾に思っておりまして、この点も法の運用を今後厳重に注意してやっていきたいというふうに考えております。
  114. 船後正道

    ○船後政府委員 一般的に汚染物質につきましては公害対策基本法の九条で環境基準を定める規定があるわけでございますが、この環境基準は、人の健康を保護し、生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準ということになっておりまして、これによりまして直接の規制は排出基準ということでそれぞれ企業の煙突なりあるいは排水口なり、そういったところで排出の程度を規制いたしておるわけでございます。原子力系統におきましては、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律等によりまして、こういった厳重な排出規制が行なわれておるわけでございまして、ただ、この排出基準がはたして人の健康なりあるいは生態系に与える点から見てどうであるかという点につきましては、これは私、原子力のことはあまりよく存じませんけれども、一般の汚染物質につきましてもやはりいろいろな科学的な知見というものがまだまだ不足している分野があるわけでございます。これは今後こういった科学的知見の進歩によりまして、当然環境基準そのものあるいは排出基準そのもの、そういったものも見直していかねばならぬ、こういう関係にあると存じますので、先ほど有澤先生がおっしゃいましたように、こういった基礎的な学問の進歩、それから防除施設というものの技術的な可能性、そういったものをにらみ合わせながら両者を常にレビューしていかなければならぬ、こういうふうに考えております。
  115. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 放射線の問題、これにつきましては科学技術庁設置法におきましても、放射線障害、こういうものから国民を守るという職務が与えられておるわけでありますし、また、現行の法令におきましては、放射線関係につきましては放射線審議会、こういうものを置きまして、十分技術的な問題、これはいわゆる一般的な環境問題の中の特別な各論をなす、こういうことで放射線関係の一体をなす一連の法令があるわけであります。そういう意味におきまして、法令としては十分体制は整っておると思うのでありますが、近江先生の言われますように、最近環境に関する意識というものが非常に高まりを見せております。これは私の感覚でありますけれども、従来の放射線障害という考え方は、やはり放射線をじかに浴びる、あるいはじかにそのものを取り扱うというようなことに主眼が置かれて運用されていたというきらいがあるんではないか。そういう点からいいますと、同じ法律であっても、もっとそれを眼光紙背に徹して読まなければならぬ、新しい時代精神において読んでいかなければならぬ、こういう御指摘であると思うのであります。その意味におきまして、私も、この放射線障害防止の技術的基準に関する法律、これはかなり古い法律でありますが、これを見ますと、その中で審議会の所掌事務として「自然に賦存する放射性物質から発生する放射線」というようなことも当初から予見しておる。こういう環境的な意味の広い、本来からいえばきわめて希薄である放射線というようなものもそれが集積するとどうなるかというような問題意識を持って現行の法令を十分生かしていかなければならぬ、こういう御趣旨に全く賛成でございます。
  116. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこで環境庁の局長さん、将来環境基準を設定する、あるいは排出口のそうした基準も設ける、研究するということをいまおっしゃったわけですが、ぜひともそれは早急にやっていただきたいと私は思うのです。放射能は、これはあったらいかぬものです。許容量がこれだけだからそれでいいというものではないのです。これは本来あっていけないものです。そういう点でシビアに原子力発電所の周辺とかそういうところについて環境基準を設けて、そしてまた法改正をするなら法改正をする。そういう総合的な立場で進めてもらわなければ、これは科学技術庁が掌握しているのだから、そういうことであっては環境庁設置の意義が私はないと思うのです。そういう点、大いに今後連携をとっていただいてそれを進めていかなくちゃ困ると思うのです。その点どうですか。
  117. 船後正道

    ○船後政府委員 放射性物質につきまして、環境基準というものが設定できるかどうか、あるいはそういう考えを導入することが妥当かどうか、これにつきましては、なお科学技術庁のほうとも十分検討しなければならないことであろうと存じますが、いずれにいたしましても、先生仰せのとおり、自然に賦存する放射能以上の人為の放射能というものは、人の健康なり生態系にいろいろな害悪を与えるわけでございますから、そういうことがないように、私どもといたしましては、今後環境保全につきましては、総合的にこれを推進する大きな任務を持っておるわけでございますので、科学技術庁のほうとも十分連絡を密にしながら対処してまいりたい、かように考えております。
  118. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、もう時間がありませんので、できるだけ早く進めますが、局長は、法体系は完全である、ただし取り扱いとかそういうことにまずい点があるからだ、いかにも法体系は完ぺきであるというような言い方をされておるわけですよ。たとえばこの間の千葉県下の放射性物質のイリジウム一九二による被曝事故、確かにそれは取り扱いのそういうミスというようなこともあったかもわかりません。だけれども、全国に現在二千二百以上に及ぶ事業所、あるいは作業所だけでも五百カ所以上あるわけですよ。法体系から見ましたら、科学技術庁の部局について二十名ということになっておるのですけれども、現在十七名しかおらぬわけです。十七名でもって二千二百カ所、さらに五百カ所を上回る作業場の監督などどうしてできるのですか。しかも、法に二十名と定めてあって、二十名も置いてないじゃないですか。それで法体系が完ぺきでございますということが言えますか。どうですか、局長さん。
  119. 成田壽治

    ○成田政府委員 確かにRIを利用、使用する工場、事業所等が二千をこえて、毎年一割ぐらいずつの増加で伸びておりまして、これに対する障害防止法上の検査官が二十名、実際十七名しかおらない点は御指摘のとおりでございまして、われわれもそういう条件で非常に重点的な監査をやって、立ち入り検査等もやっておりますが、先ほど御指摘の、千葉県の三井造船における中国エックス線の線源を落として、これを拾った人が障害を受けたという事故等から見ましても、法律を徹底するための検査や業務の強化というのはわれわれも痛感しております。これを基準をしっかりしまして府県にやらせることも、いろいろ検討しておるのでありますが、これにつきましても、府県の財政問題あるいはいろいろな問題があって、まだ確定、解決になっておりませんが、それも検討して、とにかく障害防止法を十分徹底して守らせるための行政指導をもっともっと徹底していく必要があることは痛感しております。そのためのやり方についても、改善をいろいろ検討している点は確かでありますが、現状は遺憾ながら先生御指摘のとおり、二千カ所以上の事業所について十七人の検査官しかいないという現状でございます。
  120. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、あなたは法は完ぺきだと言ったけれども、たとえば放射線の取り扱い主任者ですね。これは国家試験をやっておりますが、年齢にも何も制限がないでしょう。一番若い子は、高校生の十七歳の子も通っているのですよ。これで何十カ所もある現場の責任者の指導をしていけますか。当然その主任者については、十八歳以上ということになっておりますけれども、十八歳といえば、法的にも二十歳が成年ですよ。十八歳で未成年者じゃないですか。普通十八歳の人に、何カ所もこんな危険なものの取り扱いの指導をしていく、そういうような能力がはたしてありますか。そういうことを完全に法律に書いているんですよ。これで法が適切ですか。しかも現在、そういうアイソトープ等の取り扱いについては科学技術庁が許可を出しているわけですよ。ところが、関係各省と連携をとれ、それで労働省なら労働省と相談をするわけですよ。病院関係厚生省、いろいろな各官庁があるのですよ。それで、そこからまた監督に回っておりますというが、現実、そういうところは監督に行ってませんよ。放射線については科学技術庁がやっているんだ、もちつもたれつで、結局は穴があいているんですよ。いまのような十七名の状態だったら、まじめに行ったって五年に一回ぐらいしか行けませんよ。そういうようなことで法が完全ですか。どう思いますか、局長さん。
  121. 成田壽治

    ○成田政府委員 法は完全であるというのは基準等について申し上げたのですが、実際の運用等におきましては、確かに十七名の検査官で二千以上の事業所を検査せざるを得ない事態、それから取り扱い主任者の試験も、十八歳以上でないと主任者の届け出を受け付けないということでありますが……(近江委員「試験は十七歳で通っていますよ」と呼ぶ)試験は十七歳で通っておりますが、十八歳以上にならないと、主任者としてなれないということでございます。ただ、試験については、実地、理論等のいろいろな試験をやって、かなり知識経験の必要な試験制度をとっております。そういう意味では、主任者の問題あるいは検査官の問題等は、御指摘のとおり問題があると思います。
  122. 近江巳記夫

    ○近江委員 十七名がよしんば二十名になったって、できぬわけですよ。法律に基づいて政令で出しているのでしょう。だから、法律が完ぺきでない、また運用も完ぺきでないということは、一つのことを通したって、これははっきりしておるのですよ。ですから、法律が完全でございますというような、そういう結論的なことを言ってもらったら困るわけですよ。ですから、状況に合わせてどんどん法も完備していく、運用も強化していく、あらゆることが相まって、ほんとうに国民に安心できる体制ができるのと違いますか。これだけ原子力発電所の事故が増発しておる、あるいは取り扱い等についても事故が起きておる。今後の体制をどうするのですか。具体的な構想があればお聞かせ願いたいと思うのです。局長さんと長官にお聞きします。
  123. 成田壽治

    ○成田政府委員 原子力発電所がどんどんふえてまいりまして、今後の体制をどうするかという問題、これは先ほどいろいろ御指摘がありましたように、安全性の研究を徹底的にやって、そして作業員等に対するPRも十分やっていく、あるいは安全性のいろいろな問題につきましては、特に環境問題等につきまして原子力委員会に専門の部会を置きまして、いろいろな各専門家意見を聞いて、今後の安全性についての対策を立てるという専門部会を置く方針で、いま検討をやっております。  それから、障害防止の問題につきましても、検査官制度の強化あるいは試験制度の改善等、運用面においては検討、改善していく点が多々あると思います。地方庁に対する委譲問題等も、これはかねて検討しているところでありますが、いろいろまだ支障があって実現されていないという状態でございます。  それから、原子力発電所の安全につきましては、これは炉のメーカー等の研究によって、放射能の排出量を極力少なくするという方法の装置、チャコールベッド等の研究もいろいろ行なわれておりまして、これに対して政府もいろいろな助成等もやって、放射能は許容量以下でならいいという考えでなくて、なるだけ少ないほどいいのでありまして、そういう意味では、そういう研究並びにそういう施設の開発等も検討し、研究して直って、そして原子力平和利用がどんどん進んでも、それによって安全性問題がおろそかにならぬように、十分行政的に強力に進めていくつもりで、予算その他の施策等もいろいろ検討しております。
  124. 近江巳記夫

    ○近江委員 長官の前にもう一ぺん。  そこで、たとえば、いま施行令によって二十名になっていますね。これからますます、非破壊検査とかいろいろな点に使われていくのですよ。こんなもの、政令で二十名でいいのですか。政令を改正するなり法律を改正するなり、私はもっと率直な意見を聞きたいのですよ。現状固定をそれだけ守るのは、私は責任者のあるべき態度じゃないと思うのです。当然政令改正なり法律改正なりに持っていくのがあたりまえじゃないか。率直におっしゃったらどうですか。
  125. 成田壽治

    ○成田政府委員 従来検査官が十七名でやって、大体大きい重点的な検査をやることによって障害防止法の運用が十分達成できるんじゃないかというふうな考えでまいっておりますが、最近の中国エックス線の問題、あるいは最近のいろいろな事故等を考えると、確かに二十人の定員で十七人いるという体制では十分でないというふうに考えておりますので、その点の検討も至急行ないたいと思っております。
  126. 近江巳記夫

    ○近江委員 では時間がありませんから。長官、私いま局長さんといろいろやりとりしたわけですけれども、これで法律なりあるいは政令なりいかに不備であるか、また、運用がいかに目が届いてないかということを十分わかっていただいたと思うのです。長官としても今後政令なり法律の改正なり、そういうようなことも具体的にいま長官がお考えになっていらっしゃることを率直にひとつお聞きして、私の質問を終わりたいと思うのです。
  127. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 たいへん重要な御指摘であると思うのでありますが、この政令は昭和三十五年なんです。昭和三十五年の政令がいまもう十一年。その間定数に変化がない、これは確かにたいへんな見落としではないか、こういう御指摘でありますが、この問題につきましては行政官がどういうふうに実際に運用できるのか。数が少なくてできればこれほど行政の合理化に適したことはない。しかし、それが限度を越しては行政の目的に反する、こういうことでありますから、十分検討しなければならないと思います。  非常に時間がございませんので、きょうの先生の大きな問題点、環境全体を守らなきゃならぬという問題について、全体として私の所感を申し上げる時間がございませんが、私は先ほど来十分、この問題につきましては常に変わる情勢というものに応じた行政をしなければならぬ、また、行政が現実を先取りするほどの意欲でなければならぬという点は、常々指示をいたしておるのであります。ことに最近、原子力発電所が一カ所に集中して発電されるという現実でありますので、こういう地域については特段の、その地域全体の環境を守り、そして住民の不安を静めるという総合的な処置をとるということを年内にやらなければならぬ、こういうことでいま指示をいたしておるのでございます。
  128. 近江巳記夫

    ○近江委員 終わります。
  129. 渡部一郎

    渡部委員長 次に、寺前巖君。
  130. 寺前巖

    寺前委員 いま大臣から、原子力施設の環境を大切にせなければいかぬ、住民の安全、安心をしっかり持たせなければいかぬというお話を聞かせていただきました。  日本原子力施設が集中的にたくさんあるのは茨城県の東海村周辺だと思うのです。それで、あそこにたしか十二の原子力施設があって、原子力発電所や研究所や動燃事業団などがずっと配置されていると思うのです。そこであの周辺の人にとって、私は従来から見て一番の関心事は、動燃の隣にあるところの米軍の例の水戸の射爆場の問題だと思うのです。射爆場が原子炉の隣に設置されている。これは早く取り除いてもらいたい。そこへもってきて再処理工場をつくるという話が出てきて、目下建設中だ。いよいよもってたいへんなことだ。あの射爆場がある限り再処理工場をつくってもらったら困るじゃないかという意見が知事さんをはじめとして県民の多くの人の声になってきたと思うのです。  それで、新しい大臣にお聞きしたいのは、この射爆場の問題に対してどのように処理をされるのか、お聞かせをいただきたいというふうに思うわけです。
  131. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 水戸の射爆場につきましては、すでに閣議決定におきまして、この米軍の射爆場は移転してもらいたい、こういう決定をいたしております。現実には本年の一月一日以降、射爆訓練はいたしておらない、こういうことであります。われわれといたしましては、一刻も早く閣議決定の線に沿いまして、この射爆場が米軍から返還されるということを期待をいたしておるのであります。
  132. 寺前巖

    寺前委員 米軍からの返還を期待するというのは、そうすると、あそこで射撃訓練をやったりあるいは空挺のいろいろな行動をやるということが何か事故が起こってはたいへんだという意味で、その種の施設としてはやめてもらいたいというのが閣議決定の内容なんですか、その辺ちょっと聞かしてほしいのです。
  133. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 米軍の基地が首都周辺からあまり近いところにあるのはよくないのじゃないか、こういう考え方が当時防衛庁幹部なり政府部内においてありまして、そういう一環として、日米交渉の過程におきまして、できる限り首都周辺の米軍基地で移転できるものは移転していこうじゃないか、こういう話し合いの結果、こういうことになったのだと私は了解しております。
  134. 寺前巖

    寺前委員 原子力施設との関係においては射爆場はどうなんですか。原子力関係の施設の横に射爆場があるのは適当ではないという判断はないのですか。
  135. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 この点も、先生承知のように現地の住民の方々が射爆訓練というものは非常に危険なものである、こういう印象を受けておる、そういう点は十分考慮に入って、おるというわけであります。
  136. 寺前巖

    寺前委員 最近、茨城県の射爆場返還推進本部が防衛庁の長官のところに、射爆場のあとの問題という形で訪問しているようなんですね、九月の二日に。そのときに西村防衛庁長官がこういうことを言っているのです。米軍の物資投下訓練は続けていく、いま射爆場の返還についてめどを示す段階にはない、むずかしそうだ、 地元の人の気持ちはわかるが、自衛隊としても習志野の第一空挺師団のパラシュート降下訓練場としてあと地の一部使用を認めてほしい、そういう問題を提起しておる。そこで、原子力施設をたくさん持っている、原子炉をここに持っておる、しかも再処理工場を目下建設している、こういうような環境の地の真横に、こういうような訓練部隊の訓練をさせるという施設をつくるということに対して、将来の公害の問題などを含めて、原子力の担当大臣としてこういうような西村長官の態度をあなたは承認をされるのかどうか。はっきりとそういうものはやめたいというふうな態度をとられないのかどうか。  私は、茨城県のこの地方の諸君たちにとっては非常に大きな問題だと思うのです。明確に私は態度を示してもらいたいと思う。米軍の返還のめどはどうなのか。長官として、返還してもらったあとはそういうような訓練はさせませんという態度を明確に示されるのか。それを閣議ではっきりときめさせたい、そういうように言われるのか。私は問題をしぼって答えていただきたいというふうに思うのです。
  137. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 この問題は、現在まだ決定をされている段階じゃないわけです。いかなることになるのか、まだなかなか返還交渉それ自体がむずかしい面もあるようであります。この点につきまして、ときどき私、西村防衛庁長官と話し合うこともあるわけでありますが、なかなか問題が迅速には解決する方向ではない。いまおっしゃったような面もあるようであります。  しかし、いずれにいたしましても、私どもといたしまして、現在の感覚からいいますと、射爆訓練というものと、今後かりに自衛隊が使用するという場合でも、いまおっしゃるような訓練の方式とはかなり性格も違うのではないかということをわれわれひとつ頭に置いておりますことと、それからいわゆる原子力施設の上におきます飛行機の航行の問題、これについては原子力施設の上空の飛行につきましては、航空幕僚長の通達で四十三年以来原則的に禁止しておる、こういう措置をとっておるのであります。したがいまして、いろいろな観点、こういう点も十分考慮に入れていかなければならぬと思っておるわけであります。
  138. 寺前巖

    寺前委員 いや、考慮に入れておかなければならぬとか言っておられるけれども、要するにそういうことを考慮したら、たとえば現在、先ほど一月以来使っていないようだと言われているけれども、現地の人の話によると、本年の五月に米軍機が原子力施設の上空を飛んだという話も聞いておるわけです。それからまた米軍の四発の輸送機が二ないし四機飛んできて物資の投下訓練をやっておるというような話も現地ではいわれているわけですよ。飛行機のことだから、特に訓練ということになってくると、そんな一キロやそこらというのは空の上のことだから簡単なことなんです。だからそういう危険な行動をやるような訓練場というのは、これはやめるにこしたことはないと思うのだ、はっきりと。これだけの、十二の施設を持っており、目下再処理工場を建設しているという過程の中で、大臣がはっきりと、それはもうやめてもらいたいと私は思うのだという態度がまずきまった上で、それじゃ交渉はどうなるかという問題が私は出てくると思うのだ。態度が明確でない者がなかなかむずかしいとか何ぼ言われたってはっきりしないと思うのです。だから私は大臣の態度を聞かしてもらいたい。大臣の態度として原子力施設の横に一キロのこんな射爆場があっては困るのだ、またそれと同じような、質は違うかしらぬというけれども、パラシュートの降下訓練をするというような部隊では困るのだ、パラシュートの降下訓練というのは飛んでくるのでしょうが。やはり困るという問題を私ははっきり言うべきだろうと思うのです、ほんとうに原子炉を持っているという周辺において。私は、この態度をはっきりされなんだら無責任だと思いますね。その点もう一回聞かしてほしい。
  139. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 いろいろな御意見はあると思いますけれども、しかし、現実問題として、われわれは射爆場というのは返還してもらいたい、こういうことを政府として確認しておるわけであります。したがって、射爆場の問題はこれは時間の問題である、こう考えなければならぬ。相手のあることでありますから、これはやめたいのだと、こうわれわれは主張しておるのです。現実にそれは時間がかかっても方針はそういうふうにきまっておるということであります。
  140. 寺前巖

    寺前委員 そのあとですよ。
  141. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 あともわれわれはきわめて危険な状態、こういうことにならないようにしなければならぬ、これはもう当然なことであります。しかし、危険でないということであるならば、何もこれはその用途について特別な注文をつけるという筋合いはない。危険であるということが一番の判断の基準であります。危険であるかないかという点においてわれわれは十分考慮していくべきであろうと思うのであります。
  142. 寺前巖

    寺前委員 それで、パラシュートの降下部隊という問題が具体的に提起されておる。
  143. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 これはまだはっきり確定しているわけではないし、現実にその基地がまだ返還されておるわけでもございませんから、そういう段階でわれわれはまだ仮定の問題として検討することはできないわけであります。現実にあるのは米軍の基地であります。
  144. 寺前巖

    寺前委員 いや、米軍の基地だけれども、西村長官がそのあとはこういうものとして使いたい、了解してくれという話が出された以上は、科学技術庁の長官として、それじゃどうなんだという見解を聞かしてもらいたい。
  145. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 正式にはわれわれはそういうことを聞いておりません。聞いてからの話であります、もしそういう問題が出るとするならば。
  146. 寺前巖

    寺前委員 防衛庁の担当者おりますか。——いまの話は西村長官から出たのですね。
  147. 平井啓一

    ○平井説明員 西村大臣がどういう機会にそういうことを地元の方に言われたかについては、私は承知しておりません。防衛施設庁として一応将来の一つの計画として考えとしてはあるということは申し上げます。
  148. 寺前巖

    寺前委員 いま正式に、考えとしてはあるという問題を出されました。それじゃ長官、お答え願いたい。
  149. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 われわれといたしましては、すでにもうお答えいたしましたように、問題が環境または付近の住民、また施設そのもの、そういうことに対して危険があるかどうかという点で十分検討いたしまして判断をいたしたい、かように考えておるのであります。
  150. 寺前巖

    寺前委員 もう三百代言的なあれはやめますけれども、住民があとの施設の問題について、こういう部隊が使われるということでは困るという不安を示しておりますから、科学技術庁の長官として十分検討してもらいたいということを申し入れて、この件は終わりたいと思います。
  151. 石川次夫

    ○石川委員 私の地元の問題でありますから、一言質問したいわけです。  それは、もう申し上げれば切りがないのでありますけれども、これは十数年来のわれわれの懸案事項でありまして、茨城県としては県をあげてすべて全面即時返還という、沖繩じゃないんですけれども、この運動がまことに熾烈に行なわれております。地元民は当然のことであります。それから地元だけではなくて県全体が白紙で全部これを返還してもらう、その前提としては、これはいままで数次にわたって相当の事故があったということは、もう御承知のとおりであります。犠牲者も相当出ております。でありますから、いまの答弁を聞きますと、急険でなければそれでいいんだというようなお考えのようでありますけれども、われわれの県あるいは地元の関係としてはもうきわめて熾烈な運動を繰り返す、その目標としては白紙でもって返してもらうということが何よりもの絶対的な条件なんでえそういうことがなくて、片っ方で再処理場を建設するとかなんとかいうことをいっても、これは絶対県民感情としては納得できないということを、これは長官になって日が浅いのでありますけれども、ひとつ十分に認識をしてもらわなければならぬ。  それで、いま危険でなければいいじゃないかというようなニュアンスのことばがあったけれども、これは県民の立場からいったら断じて了承できない。これはそういうことがあればたいへんな反対運動があるであろうということは予想するにかたくないわけなんです。われわれとしてはレクリエーションの場としてあれを生かしたい。あるいはまた流通港湾として、北関東に通ずる港が全然ないのだからあそこへ一つつくりたいというようないろんな案は出ております。固まってはおりませんけれども、それは全部全面返還ということを前提としての計画なんです。いままでも相当の犠牲も出ているし、それから地元民の熾烈な要望というものを十分くんでいただいて、自衛隊が使う、あるいは危険性がなければいいんじゃないかというようなことであるとすれば、いままでのわれわれの運動は全然効果がなかったということになって、相当熾烈な反対運動が出るということを予期してもらわなければならぬ。あそこには御承知のように平和のための原子力研究所というものがありますけれども、ほかの国へ行ってごらんなさい、定期航空路の下には原子力施設はないというのが原則なんですよ。ところが、そこを降下訓練場ということになればやっぱり飛行機は来るんですね。そういうふうなことは日本は土地が狭いからやむを得ないのだということになるかもしれませんけれども、県民感情としては断じてそういうことは了承できない。世界の常識からいっても、定期航空路あるいは飛行機の飛ぶところに原子炉を置く、原子力の施設があるというふうなことは異例のことに属するわけなんです。  そういうことも含めて考えていただいて、これは長官としてはやっぱり科学技術を推進する立場、原子力平和利用を推進する立場に立って、どういうことであろうと自衛隊が使うことは反対である、こういうき然とした態度がどうしても私は必要だと思うのです。そういうことがなくて、長官自体が、まあ危険でなければいいじゃないかというふうなあいまいな態度であるとすれば、自衛隊が来るということはほとんど確定的になってしまうというそういうおそれがあるのです。これはどう思うのですか、どういうふうにお考えになっていますか。  平泉国務大臣 ちょっと誤解を招いたのじゃないかと思うのです。私が危険でなければいいではないかと申したのは、私ども原子力施設を建設しておる側といたしましては、このあと地と、その近傍地帯というものに原子力施設に危険な影響のあるもの、そういうものは断わらなければならぬ、そういう権利もあるわけです。それ以外のどういうものになるのか、これについてわがほうがいまここで公の場でもって、それがいまおっしゃる茨城県でいろいろ企画されておられる計画、そういうものになるか、あるいはまたほかのものになるのか、その辺のことにつきまして、これは私はいまお答えをする立場にもないし、そういう状況でない。私は元政務次官でありました当時から、この再処理問題の土地の問題ということにつきましては、十分地元とも折衝をしておった間柄でありまして、また現地にもしばしば行っておりまして、十分先生のおっしゃいます問題点、これは存じ上げておるのでございます。  私が先ほど申し上げましたのは、たまたまこの原子力施設を建設しておる側といたしまして、危険である、危険でない、この問題が非常に大きな基準である、こう申し上げたのでありまして、その後がどうなるかという問題については、わがほうからその内容につきましてコメントをいたしたわけではございません。
  152. 石川次夫

    ○石川委員 関連ですから多くを申し上げません。結論だけ申し上げますと、科学技術庁長官としては、安全という立場からだけ考えても、ほかの自衛隊の訓練にこれをまかせるというふうなことは不適当である、こういう判断の上に立って、自衛隊がどう言おうと科学技術庁長官の立場としては全面返還をすべきである、こういう決意を持ってもらわなければならぬと思うのです。これはもう自衛隊が使うとかなんとかということになれば、たいへんな反対運動が出ることは想像にかたくないし、また事実われわれが——われわれというよりは県民の皆さん方が非常な熱意をもって、どのくらいの労力とどのくらいの費用を使ったか、これはもう長官御存じだろうと思うので先たいへんな努力を重ねてきて、あげくの果てがやっぱり飛行機が飛んできて降下訓練をやるのだということではもとの木阿弥だということになって、これは県民としては絶対に了承できない問題である。このことは十分に踏まえていただいて、科学技術庁長官の立場としては、自衛隊が使うことは困る、断わる、こういうき然たる態度を持ってもらいたいということを強く要望します。
  153. 寺前巖

    寺前委員 次に、私は日本学術会議の問題について、御存じのように日本学術会議は、日本の戦後の過程の中で科学者が自分の研究した成果が戦争に使われるというようなことでは困る、だから研究した成果をやはり責任を持つ必要があるという立場から、たとえば原子力潜水艦の寄港が六十数回に及んだ段階でも、これに対して学者の立場から四十数回にわたって勧告をなしたりあるいは声明をなしたり、学者としての立場をこの原子力分野でも学問全体の責任の分野においてとってきた、まさに学者の国会的な性格を持っていると思うのであります。  いまこの日本学術会議で選挙がなされておりますが、その選挙の過程で、時事問題研究所というところから「日本学術会議」というパンフレットを、これは定価八十円と書かれていますが、相当部数にわたって関係者の間に頒布されているということを聞いているのですが、学術会議の事務局長さん見えてますか。——事実ですか。
  154. 高富味津雄

    ○高富政府委員 広く頒布されているという事実を私は知りませんです。
  155. 寺前巖

    寺前委員 全然聞いたことない……。
  156. 高富味津雄

    ○高富政府委員 聞いたことありませんです。
  157. 寺前巖

    寺前委員 それでは、このパンフレットは初めて見られたのですか、いまここで。
  158. 高富味津雄

    ○高富政府委員 昨日、私手に入れまして見せていただきました。
  159. 寺前巖

    寺前委員 これは私、電話をかけただけでも、時事問題研究所の女の子が、数万部別のところで発送していますと簡単に答えましたよ、簡単に。学者の中で問題になっていますよ。なぜ問題になっているかというと、これには一人一人の立候補をしている人の色分けがつけてあるのです、思想的な色分けが。名前が全部リストが書いてありまして、マルは日共系と見られる者、三角は反日共系で親中共、親ソ、社会党系、云々とこう書いてある。ちゃんと色分けがしてあるのです。そしてこの全体の内容は、特定の人たちを排除する目的あるいは特定の人を当選させる目的のごとく全体としてなっている。これが郵送で送られてきている。あなたのところには私のほうからも、こういう事実はあるのかということで、こういう問題について知っているかという話をしてますよ、電話で。あなた初めてだというのはおかしいじゃないですか。それではあなたに報告してくれないわけですか、どういうことですか。
  160. 高富味津雄

    ○高富政府委員 おそらく私に報告がなかったと思います。まあ言いわけみたいになりますが、いろいろ新聞紙やいろいろの出版物が出ておりますものですから、若干慢性になりまして、私自身への報告がなかったのじゃないかと思います。私は直接にそういう電話をお聞きしたことはございません。
  161. 寺前巖

    寺前委員 それじゃあなた、いまここで見てもらったらわかりますけれども、これを選挙期間中にばらまいたらどういうことになりますか。学術会議には選挙法があるのでしょう。その選挙法に照らしてどういうことになると思いますか。見ただけでわかるでしょう。そんなむずかしい選挙法じゃないでしょう、学術会議の選挙法は。どういうことになりますか。
  162. 高富味津雄

    ○高富政府委員 学術会議の選挙は、日本学術会議法に基づいた選挙規則でやっておりますが、その選挙違反の規則は非常にこまかくきめられているわけでございます。その内容が選挙法違反かどうかということは、学術会議で選挙管理会というものをつくっておりまして、その選挙管理会がきめることでございまして、それも有権者の提訴によりまして選挙管理会がきめることでございまして、私ちょっと発言しにくいのでございますが……。
  163. 寺前巖

    寺前委員 いや、別に私はそんな、この人がなるかならぬかは別にいいですよ。要するに、ここに書いてあるのは個人名が書かれてあって、それを色分けして、当選させ得る目的かどうかと、こうなったら、学術会議会員選挙規則の第十条は公示前、第十一条は公示後、第十一条の公示後の該当にならないのだろうか。簡単な問題です、こんなものは。別にあなた一般論でけっこうなんです。立候補者の名前が書いてあって、マルがつけてあって、色分けしてあって、全体としてそういう編集がしてある。簡単なんですよ問題は。そうしたらこれに抵触しないだろうかということと、それから三十五条によって「有権者が、第十条、第十一条又は第十二条第三項の規定に違反する行為をし、又はさせたとき」あるいは有権者が云々ということになって、そしてこういう名前をあげられて、その事実を知っておって、これを本人がすぐ通告しなかったら、今度自分はこれに関与してないのにその人間自身が選挙法にひっかかる、そういう簡単な——そんな長い学術会議の選挙規則じゃないんですよ。これ簡単にひっかかる性格じゃないのですか。おたくのほうはこれはだれも研究してないのですか。私はおたくのほうに言うてあるのですよ、私のところから。それでいてだれも何とも考えてもいないのですか。それは具体的にこの選挙法は、学術会議の有権者が選挙の期日から一カ月ですかにはやるというのは、これは選挙法上の手続問題です。しかし、その間に発生している問題について一般的に見てこれはどうなんだというのです。一般的に見て、これは学術会議の選挙法に照らして、こんなものやってもらったら、一切やったらいかぬということになっているからいかぬという性格のものじゃないのでしょうか。どうです。
  164. 高富味津雄

    ○高富政府委員 学術会議の選挙管理会というのは、学術会議の会員もその中へ入れないで、有権者の科学者の人たちによって構成されておりまして、非常に厳正で中立的であるということになっております。事務局のほうからこれはくさいとかなんとかというようなことは一切申し上げないことになっておりまして、立場上そういうことは言えぬわけでございますが、ただ学術会議で選挙運動としてできることは、郵便はがきを学術会議で検印しまして、その分だけをお渡しする、それだけのことしかできないことになっておりますものですから、まあその辺でございます。
  165. 寺前巖

    寺前委員 そうすると、いまのお話だと、これを発送するところがよその団体ですよね、時事問題研究所という社団法人ですか、この団体が郵送した、その内容は選挙に関する内容があった、そうしたら、これはいまあなたがおっしゃる選挙のやり方とは全然違う性格だから、明らかに問題になる性格を持っているでしょうということは言えますね。
  166. 高富味津雄

    ○高富政府委員 先ほどから申しますとおり、うちの選挙運動というのは、検印した郵便はがきを送るだけで、ほかのことはおおむね禁止されております。
  167. 寺前巖

    寺前委員 そういうことでしょう。続けて聞きます。  この社団法人の時事問題研究所というのは、設立するときに国のほうも出資金を出した組織だというふうに私は聞いているのですが、間違いありませんか。
  168. 松本芳晴

    ○松本(芳)政府委員 私は全然聞いておりません。
  169. 寺前巖

    寺前委員 設立当初に出資金三億円を出している。財団法人に基づく認可法人になっている、郵政省・科学技術庁——これはだれも知りませんか、科学技術庁。そしてこの財団は、その後も農林省、大蔵省の監督下で、昭和三十年以来八億三千五百万円にわたるところの金を政府からもらっていますね。これは科学技術庁の人はだれも知らないですね、設立当初に出資金を出してつくった施設だということについて。知りませんね。
  170. 井上保

    ○井上政府委員 全然聞いておりませんが、普通の場合は、財団法人の設立の場合に国が出資することはきわめて例外的で、ほとんどないのじゃないかという感じがします。
  171. 寺前巖

    寺前委員 国が出資金を出したり研究する施設が、さっきから問題になっているように、学術会議という日本の科学者にとって非常に重要な組織ですよね。この組織に対して、それが設立したところの研究所がこのような役割りをしているということになったら、事は重大だと思うのですよ。  そこで、私は資料の提出を要求したいと思います。この時事問題研究所はどういうふうにして設立されたものか、役員は一体だれなのか、ここまで資料要求しておきますよ。  そして、長官にお聞きしたいと思うんです。私は、政府が援助をしているような社団法人は、いま学術会議の事務局長さんのほうから聞くと知らぬとおっしゃっているんだけれども、一般的に見て、これが選挙に対する干渉をやっている、違法行為だということが明らかになったとしたならば、どういうふうに責任をとられますか、お聞きしたいと思うのです。
  172. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 仮定の問題であるので、私よく実態がわからないのです。  それから、その次に私がやっぱり申し上げなければならぬのは、私はこの席には科学技術庁長官として参っておるわけでありますが、学術会議の問題は学術会議法によりまして内閣総理大臣の所管である。内閣総理大臣といいましても、これは内閣の長たる内閣総理大臣ではなくて、総理府の長たる内閣総理大臣、こういうことでありますので、私が答弁するのはいささか管轄外であるということを御了承願いたいと思います。
  173. 寺前巖

    寺前委員 私はさっきちょっと言いましたけれども、設立のときに郵政省と科学技術庁の認可があるというんです。知りませんか。私が調べた範囲ではそういうふうになっているので、その問題については明確にしてもらって、資料を提出してもらって、研究して報告してもらいたいというふうにこれは要望します。
  174. 松本芳晴

    ○松本(芳)政府委員 実はその団体は、私どもが調べたところによりますと、昭和三十二年四月ごろ任意団体としてできまして、そして三十八年の十月に総理府に法人化の申請があったわけです。当時、広報室ができたばかりでしたので、内容から広報室が認可の手続をとったらどうかというので、法人認可の手続だけをしてやった団体のように聞いております。私どもは全然関係がないわけであります。——ちょっと、財団法人ではなくて社団法人。そういう手続をとってやった、そういうことのように聞いております。
  175. 寺前巖

    寺前委員 資料を要求しておきます。  そうすると、これは長官に学術会議の話を聞いたってだめなわけですね。所管外かね、いまやっている選挙の問題。——それじゃやめます。
  176. 渡部一郎

    渡部委員長 ただいまの資料要求の件につきましては、後ほど理事会におきまして決定いたしたいと存じます。  次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時三十七分散会