○有澤説明員 七月の半ばごろに
アメリカのほうからエードメモワール、これは
日本ばかりではないのです。オーストラリア、カナダ、それからヨーロッパのEC諸国、イギリスに口上書が
アメリカから参りました。これによりますと、
アメリカのほうはこれらの国々がグループを結んで
アメリカと交渉するということになれば、それに対応して
アメリカのほうではガス拡散法の技術を提供する。ただし、これにつきましては機密保証が必要である、そういう趣旨の口上書が参りました。それでこれに応じるか応じないかということはいろいろありましたけれども、わが国といたしましても、いま御指摘のありましたように、濃縮ウランの供給は、いまは
日米協力協定によりましてもっぱらというより、ほかにほとんど濃縮ウランの供給先はありませんので、
アメリカから供給を受けておるのでございます。そして、まず一九七三年着工の分につきましては供給を受ける、その交渉がほとんど妥結に近いところまで進んでおります。七四年以降七六年、そこらあたりに必要な濃縮ウランの供給につきましても、今回の
日米原子力会談でその折衝に入ろうということになりました。
問題は、それから
あとの問題でございます。それから
あとの問題といたしましては、
アメリカは御
承知のように、いまの三工場の設備能力の拡充をはかっております。もしこの拡充が円滑に進みますならば、それ以降の問題につきましても
アメリカは供給をしてくれる。供給をするにやぶさかでない、こういうことになっております。
しかし、それがいまのところAECといいましょうか、
アメリカの
原子力委員会としましては、これは何といっても上下両院合同
委員会の承認を得なければならない問題でありますから、確実なことはもちろん申せない、そういう状況でございますので、
日本といたしましてはおそくとも、まあ七〇年代の終わりごろには何か、もしできればマルチナショナルといいましょうか、数カ国の、多数国の合弁事業による濃縮工場ができることをわれわれは
考えておるわけでございます。そのためにいま
アメリカのほうでは、先ほど申しました口上書によって、
アメリカのガス拡散の技術を独占するつもりはない。技術をシェアする、そしてインベストメントをシェアする、独占のつもりはない、こういう趣旨でいまの多数間の会合が開かれることになりました。
そして、一日、二日は主として太平洋地域、すなわち
日本とカナダとオーストラリアの三国が
中心になりまして、これにオブザーバーという形でヨーロッパの諸国がほとんど全部といっていいほど参加いたしまして、そして引き続いて十一月の十六日、十七日には今度はヨーロッパの諸国が
中心になりまして
アメリカAECと会合を持つ。これには
日本もオブザーバーとして参加することになっております。この一日、二日の会合におきまして、
アメリカAECのほうで説明がありました。その説明によりますと、何と申しましても説明は
アメリカのこの技術提供に関する基本的な
考え方というものが説明されたわけであります。そのために、その基本的な
考え方をあまりこまかく申しますと、またたいへん時間をとって困る、失礼でございますので、ごく概略を申します。
とにかく自分
たちの
考え方では、多数国が、何カ国かがグループをなして
アメリカのAECと折衝を関始するならば、
アメリカとしては相当の具体的な
データを提供いたします。それからこのグループには、つまり多数国でつくるグループには
アメリカそのものは入りません。それから第三には、このグループをつくって
アメリカと交渉して
アメリカの技術を利用するということになりますと、
アメリカとその工場をつくろうという多数の国々との間に
政府または参加国のほうの会社、これが秘密協定を結ばなければなりません。
政府と
政府との間の秘密協定を結ばなければならない。そのもとに民間が参加することもできる。しかし、とりあえずは
政府と
政府の間で協定を結ばなければならない。その協定の中には、いま申しました技術の秘密保証、秘密を守るという条項が入るということでございます。その他こまかいことはかなりありますけれども、おもな点はそういう話があったわけでございます。
それで、私、
日本側といたしましては、この秘密協定について秘密の保証のために国と国との間で協定を結ぶということになると、わが国においては
原子力基本法がありますので、そういう秘密協定を結ぶことができない、こう申しましたら、いや、それについてはまだいろいろ
考えようがある。たとえば、その秘密については
一つのブラックボックスを設けて、そのブラックボックスには
日本が近づかない、そういうふうな協定ならば
日本が参加することができる、こういう説明でございました。
それからまた、この多数国間でできる工場の製品、濃縮ウラン、それと
アメリカの工場でつくる濃縮ウランとの間は、これは自由競争である。だから、
アメリカのほうの濃縮ウランが外国に流れてくることもむろんあるけれども、その多数国間の工場でつくる濃縮ウランが
アメリカに入っていってもよろしい。そしてこの多数国間でつくる工場には
アメリカの会社が参加することも可能である。
政府は参加できないけれども、
アメリカの会社が参加することは可能である、そういうふうな問題が説明されました。
それで、これに対しまして、いろいろの国々からいろいろ
質問がたくさん出ました。しかし、何といいましても、多数国間で濃縮ウランをつくるに必要な具体的な
データというものはまだ発表の域でない。それは多数国間がグループをつくって、そうしてそのグループで一応濃縮工場をつくるけれども、これについてはどういうふうな
データが提供されるか、つまり濃縮工場の建設を
考えるに必要な
データというものはそのグループをつくった上でしか
アメリカのほうでは発表はできない、こういうことでございました。
そういうわけで、一日、二日、この両日間を、総計で九カ国でしたか、九カ国の代表が集まりまして、いろいろ質疑をし、
アメリカ側から答えがあり、それで終わったわけでございます。
それでございますので、この二日間というものは、
アメリカからいってみれば、一方的にいろいろな話を聞き、そうして各国がもし多数国間の工場をつくる、つまりマルチナショナル・プロジェクトに参加するということになれは、自分の国との
関係においてどういうふうな問題があるか、その問題についてある程度質疑が行なわれた、こういう状況でございます。でありますから、まだマルチナショナル・プロジェクトに対しましては、具体的な一歩も踏み出すことができなかったのであります。まことにぼんやりした
会議でございました。しかし、ぼんやりしていたとはいえ、それでは何にも
成果がなかったかと申しますと、必ずしもそうではないと私は思います。
〔
委員長退席、近江
委員長代理着席〕
それは、私はその状況をある席で説明をしましたけれども、ちょうど星雲状態で
アメリカと多数国間の会合を開いた、何が何だかさっぱりわからない、そういう状況であったのではありますけれども、その星雲状態の中に何か、はっきりと姿はまだつかめませんけれども、何か姿ができかかりつつあるような気配もなくはないということでございます。ですから、一日、二日の二日間の会合では、私がいま非常に微妙なようなことばで表現をいたしましたけれども、そういうふうな動き、まだはっきりと姿はつかめませんけれども、各国の間にある種の目に見えない動きがつくられつつあるということであったと思います。これがおそらく十六、十七の両日にもう一度会合が開かれますと、あるいはもう少しはっきりした姿になってくるかもしれません。ですから、
日本側といたしましても、十六、十七——
アメリカ側の説明は一日、二日と同じことを説明すると申しておりますけれども、各国の
質問がありますので、その
質問に対する答弁といたしましては、
アメリカの言い方がいろいろな言い方になり得るのでありますから、その
関係から、十六、十七日には何かもう少し、一日、二日のときに動きかかってきていたものの形があるいはもう少し明瞭に——明瞭というと少し言い過ぎかもしれませんが、もう少し形を整えてくるようになるかもしれません。そういうふうに私は
考えて帰ってきたわけでございます。ですから、一日、二日の会合では、だれかが言いだしっぺになればそれは相当進捗——何といいますか、多数国があるグループをつくるグルーピングがある程度進んだかもしれませんけれども、だれもなかなか言いだしっぺになろうとはしません。お互いにお互いの腹をさぐり合いのような状態でございます。国際
会議というものはそういうものが多いかと思いますが、そういう状態で終始をいたしたわけでございます。十六、十七日の状況を見ました上で、また私どもはこの次のステップをどういうふうに
考えるかということを検討しなければならないかと思います。だれかが、どこかの国が多数国間のグループをつくろうじゃないかというふうな、そう積極的ではなくてもいいですけれども、だれかが第一声をあげないと、なかなかこのグルーピングをまとめていくことはむずかしいのではないかと思います。
むろん、一方にはフランスの技術もあります。フランスの代表は
アメリカの説明者に対しまして、濃縮ウラン技術のパッケージじゃなければ
アメリカからその技術はもらえないのか、部分的にもらうことができるかと
質問をしております。そういうわけで、フランスの技術の問題も一方にあります。
それから、御指摘の三国間の協定に基づく遠心分離の技術もありますが、しかし、この一日、二日の国際
会議、十六、十七日の国際
会議は
アメリカの口上書によって開かれたものでありますから、遠心分離のほうの技術は問題になっておりません。これにつきましては、先般松根さんが団長になりましてヨーロッパの濃縮ウランの視察に参りましたときに、遠心分離の話も多少出ておりますけれども、しかし、何といいましても、まだ遠心分離のほうはパイロットプラントができていないのでありますから、まだその根本問題が、すぐこの問題に関して
日本がどうこうするというふうなところまでは至っており一ません。
それで、もう
一つ最後につけ加えたいことは、
日本の技術開発でございます。いま技術開発は、御
承知のように遠心分離とガス拡散の両方をやっております。両方とも技術上の困難な問題がありまして、思うようにはなかなか進みませんが、しかし、私どもの
考えでは、一九八五年ごろまでにはどちらかの方法で
日本の技術で濃縮ウラン工場をつくることができるであろう、こういうふうに
考えております。しかし、それは八五年でございまするので、八〇年の初めから初めの数年間、この間の濃縮ウランの供給をどういうふうにして確保するかということが大きな問題であろうと思っております。
まあ、ざっとな説明でございますが、今回マルチナショナルの工場に関する国際
会議に出ました感想を申し上げました次第でございます。