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1971-11-22 第67回国会 衆議院 沖縄返還協定特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十一月二十二日(月曜日)     午前十時二十三分開議  出席委員    委員長 櫻内 義雄君    理事 青木 正久君 理事 小沢 辰男君    理事 西銘 順治君 理事 福永 一臣君    理事 渡辺美智雄君 理事 西中  清君    理事 河村  勝君       上村千一郎君    奧田 敬和君       加藤 六月君    梶山 静六君       唐沢俊二郎君    北澤 直吉君       小金 義照君    小坂徳三郎君       左藤  恵君    塩川正十郎君       高鳥  修君    竹内 黎一君       中島源太郎君    中村 弘海君       中山 正暉君    永田 亮一君       野田 武夫君    浜田 幸一君       福田 篤泰君    古内 広雄君       別川悠紀夫君    松野 幸泰君       松本 十郎君    山崎平八郎君       山田 久就君    大久保直彦君       正木 良明君    渡部 一郎君       曽祢  益君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 前尾繁三郎君         外 務 大 臣 福田 赳夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 高見 三郎君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         通商産業大臣  田中 角榮君         郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君         建 設 大 臣 西村 英一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)   中村 寅太君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 西村 直己君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大石 武一君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         法務省刑事局長 辻 辰三郎君         外務省条約局長 井川 克一君         大蔵省理財局次         長       小幡 琢也君     ————————————— 十一月十八日  沖繩返還協定批准反対に関する請願(青柳盛  雄君紹介)(第一五九〇号)  同(浦井洋紹介)(第一五九一号)  同(小林政子紹介)(第一五九二号)  同外三件(田代文久紹介)(第一五九三号)  同(谷口善太郎紹介)(第一五九四号)  同(津川武一紹介)(第一五九五号)  同(寺前巖紹介)(第一五九六号)  同(土橋一吉紹介)(第一五九七号)  同(林百郎君紹介)(第一五九八号)  同(東中光雄紹介)(第一五九九号)  同(不破哲三紹介)(第一六〇〇号)  同(松本善明紹介)(第一六〇一号)  同(山原健二郎紹介)(第一六〇二号)  同(米原昶紹介)(第一六〇三号)  同(青柳盛雄紹介)(第一六四〇号)  同(浦井洋紹介)(第一六四一号)  同(小林政子紹介)(第一六四二号)  同(田代文久紹介)(第一六四三号)  同(谷口善太郎紹介)(第一六四四号)  同(津川武一紹介)(第一六四五号)  同(寺前巖紹介)(第一六四六号)  同(土橋一吉紹介)(第一六四七号)  同(林百郎君紹介)(第一六四八号)  同(東中光雄紹介)(第一六四九号)  同(不破哲三紹介)(第一六五〇号)  同(松本善明紹介)(第一六五一号)  同(山原健二郎紹介)(第一六五二号)  同(米原昶紹介)(第一六五三号)  同(大出俊紹介)(第一六五四号)  同(金丸徳重紹介)(第一六五五号)  同(佐藤観樹紹介)(第一六五六号)  同外一件(田中恒利紹介)(第一六五七号)  同外二件(内藤良平紹介)(第一六五八号)  同(中谷鉄也紹介)(第一六五九号)  同外二件(八木昇紹介)(第一六六〇号)  同外一件(瀬長亀次郎紹介)(第一六六一  号)  同(青柳盛雄紹介)(第一六七六号)  同(浦井洋紹介)(第一六七七号)  同(小林政子紹介)(第一六七八号)  同(田代文久紹介)(第一六七九号)  同(谷口善太郎紹介)(第一六八〇号)  同(津川武一紹介)(第一六八一号)  同(寺前巖紹介)(第一六八二号)  同(土橋一吉紹介)(第一六八三号)  同(林百郎君紹介)(第一六八四号)  同(東中光雄紹介)(第一六八五号)  同(不破哲三紹介)(第一六八六号)  同(松本善明紹介)(第一六八七号)  同(山原健二郎紹介)(第一六八八号)  同(米原昶紹介)(第一六八九号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第一六九〇号)  同(青柳盛雄紹介)(第一七六五号)  同(浦井洋紹介)(第一七六六号)  同(小林政子紹介)(第一七六七号)  同外一件(田代文久紹介)(第一七六八号)  同(谷口善太郎紹介)(第一七六九号)  同(津川武一紹介)(第一七七〇号)  同(寺前巖紹介)(第一七七一号)  同(土橋一吉紹介)(第一七七二号)  同(林百郎君紹介)(第一七七三号)  同(東中光雄紹介)(第一七七四号)  同(不破哲三紹介)(第一七七五号)  同(松本善明紹介)(第一七七六号)  同(山原健二郎紹介)(第一七七七号)  同(米原昶紹介)(第一七七八号)  同(相沢武彦紹介)(第一七七九号)  同(井岡大治紹介)(第一七八〇号)  同(井野正揮君紹介)(第一七八一号)  同(大野潔紹介)(第一七八二号)  同(岡田利春紹介)(第一七八三号)  同(角屋堅次郎紹介)(第一七八四号)  同(金丸徳重紹介)(第一七八五号)  同(木島喜兵衞紹介)(第一七八六号)  同(黒田寿男紹介)(第一七八七号)  同(小林信一紹介)(第一七八八号)  同(坂井弘一紹介)(第一七八九号)  同(坂上安太郎紹介)(第一七九〇号)  同(島本虎三紹介)(第一七九一号)  同(田中武夫紹介)(第一七九二号)  同(武部文紹介)(第一七九三号)  同(楯兼次郎君紹介)(第一七九四号)  同(辻原弘市君紹介)(第一七九五号)  同(土井たか子紹介)(第一七九六号)  同(内藤良平紹介)(第一七九七号)  同(中井徳次郎紹介)(第一七九八号)  同(中谷鉄也紹介)(第一七九九号)  同(日野吉夫紹介)(第一八〇〇号)  同(堀昌雄紹介)(第一八〇一号)  同(山本幸一紹介)(第一八〇二号)  同(安井吉典紹介)(第一八〇三号)  同(横路孝弘紹介)(第一八〇四号)  同外一件(瀬長亀次郎紹介)(第一八〇五  号)  同(加藤清二紹介)(第一八〇六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  沖繩返還協定について      ————◇—————
  2. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 これより会議を開きます。  開会前に、日本社会党日本共産党出席を求めましたが、出席がないようでございます。無所属の安里積千代君、瀬長亀次郎君には出席を求めていますが、いまだ返事がございませんので、なお出席を求めております。したがって、やむを得ず委員長としては会議を開きました。  沖繩返還協定に関し発言を求められておりますので、順次これを許します。河村勝君。
  3. 河村勝

    河村委員 きょうは、わが党といたしましては、ほんとうはわれわれの友党であります社会大衆党安里積千代君に質問をしてもらうつもりでおりました。ところが、安里君はこの委員会出席をして質疑をやる意思がないということで、私が急遽立って質問するわけでございます。一体、なぜ安里さんが質問に立たないか、それを、総理、私はお聞きをいただきたいと思うのです。  それはなぜかと言いますと、今回の強行採決が行なわれまして、きょう一応本会議から委員会に移されて、ここでもって質疑が行なわれるわけでありますけれども安里氏にしてみれば、これは、どう考えても、自民党のやった強行採決ていさいを整えるためにやる、そういうことでしかない、だから、そういう場に出たのでは、沖繩県民の心にも決してそぐうものではない、それでは質疑に立つ意味がないから、きょうは自分は遠慮したい、こういうことでございます。今回の強行採決というものが、いかにそうした深刻な問題をはらんでいるかということをよくお考えをいただきたいと思うのです。  私は、現在の国会の体質的な欠陥とでもいいますか、与野党間の根本的な不信というものがなくならない限り、場合によってはどうにもならなくなって、一種の緊急避難的な意味強行採決が行なわれざるを得ない、そういう場合もあることを、残念ながら認めないわけにはまいりません。でありますが、今回の場合、そうした緊急性というのは全くないわけですね。まだ審議日程はたくさんございます。審議日程があるにもかかわらず、単に参議院における本協定自然成立をはかる、そういう目的、さらに、それも全然異常なほど早く、何にも委員会質疑が停滞している状態でもないにもかかわらず、だまし討ちにもひとしい強行採決が行なわれた、そのために今日これだけの紛糾が起きている。沖繩協定というのは、ほんとうに、単に日本国内だけでなしに、対外的にも非常に大きな問題です。われわれも、ほんとうに真剣になってこれを突き詰めて議論していかなければならない、われわれも賛否の態度をほんとうにきめるためには、まだまだ審議を尽くさなければならない、そう考えておりました。それにもかかわらず、こういうことが行なわれたことをほんとうに遺憾とするわけでございます。  一体、総理は、こうした事態を招いたことについて、どのような考えをお持ちであるか。これは、形式的には国会の問題でございます。しかし、実質的に、政府あるいは自民党の首脳として、当然責任がないとはいわれないと思います。そういう意味で、まず総理に対して、その所信をお伺いしたいと思います。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 河村君にお答えいたしますが、ただいま河村君が言われるように、事柄委員会のことだ、だからこれは委員会のことだと、こう言ってしまえば、政府とすれば一応答弁が立つかもしれぬと思いますけれども、私は、同時に自由民主党の総裁です。したがって、議会制民主主義、その立場に立つ限りにおいて、十分審議が尽くされなければならないこと、これはお説のとおりであります。  ただ、いままでもしばしば経験したことでありますが、とかく、それぞれの党派がそれぞれの党是によって、いわゆる質疑が完全に行なわれない、いわゆる平行線をたどる、こういうような事柄をしばしば見受けるのであります。そのいわゆる平行線をたどっている場合に、一体どういうような結論を出すべきか、これは委員会において、そういう際にこそ、真に議会制民主主義とは何だ、どういうことだ、こういうことをやはり結論を出すべきその時期ではないだろうかと私は思います。いわゆる早いとか、時間がどうだったかとか、こういうことでなしに、とにかく本来の基本的主張が平行的な立場に立ったときに断が下される、こういうものではないだろうかと思います。  もちろん、話し合い、これは十分——お互いにそれぞれの立場がございますから、幾ら平行線をたどるといっても、お互いに話をすれば、強行採決後の今日の委員会の再開だって、これがあり得るのです。私は、お互いにそれぞれの立場主張しながら、相互にやはりお互いが円滑な運営をしていくためには、ある程度の妥協もやむを得ないじゃないか、かように考えます。そういう点が十分に考えられること、そこに初めて議会制民主主義本来の大筋が保てるのではないか、かように思う次第であります。  私は、今回の事柄が、本来の議会制民主主義、その大原則が守られる、こういうことであるならば、われわれもやはりしんぼうすべきじゃないか。お互いにそれぞれの立場はあっても、その大筋においてやはり協議に参加する、こういうことが望ましいのではないだろうか、これは総理大臣としてではなくて、自民党総裁立場からさように私は考える次第であります。
  5. 河村勝

    河村委員 私は、いま総理の御答弁を聞いていて、ほんとうに今回の強行採決というものの本質を何かそらしておられるように思われてならないのです。いまお話を伺っておりますと、こういうやり方で、それが議会制民主主義にかなうのだ、だから、平行線をたどった審議の中では何かあたりまえみたいな話に聞こえるのです。そんなことでもってやられておったならば、いつまでたったって、日本国会議会制民主主義なんというものは私はほんとうに生まれてくる可能性はないと思う。今度の場合、われわれ民社党は、本来、議会制民主主義を尊重する立場から、審議拒否というものをやらないという基本線を貫いてきました。それにもかかわらず、今回の強行採決にあたっては、何としても審議拒否をしないわけにはまいらない、そういうことで挙党完全に一致したという、ほんとうに異例な状態なんです。それを私は総理によく反省をしていただきたいと思います。  私は、いま協特理事でもありますから、今回の沖繩問題審議重大性にかんがみて、何とかしてここでもって、従来必ずといってもいいくらい、重大な問題ほどこういう似たような経過をたどりがちである、そういう弊害を正すためにここで新しいルールを確立したい、そういう希望を実は持っておりました。だから、政府与党も、ただ参議院に持っていって一カ月の期間を置いて自然成立をはかるというようなことでなしに、十分の期間を持って両方でほんとう審議を完全に終わりたい、そのために、今月の十一日からこの問題の実質審議が始まりました。だから、それから十二月の二十四日までの日程を半分に分けて、それで半分ずつの期間で、そこにいろいろな、委員会審議だけでなしに、公聴会であれ、あるいは連合審査であれ、そういうものを含めて完全な日程を組んで、そこでもって完全に審議が終わるように、与野党ともにその目標に向かって努力する、協力する、そういう提案をいたしました。しかし、残念ながら、先ほど申したような本質的な与野党間の不信感がありますから、これは結局、単に自民党だけの責任ではなしに、やはりできなかったわけでありますが、しかし、それにしても、それからあとがいけないのです。今度のやり方くらいほんとうにだまし討ちというほか言いようがないような強行採決はないのです。これは佐藤総理はおそらく御存じないでしょう。それからここに並んでおられる自民党の方々も、少数の方を除いては、私はおそらく知らないままに強行採決をされたんじゃないかと思う。だから、私はあえてこの機会をかりて、別段佐藤総理答弁を求めたいとは思わない、だけれども、ここでもって、もう一ぺん私は委員長はじめ智さんに反省を求めるために、どういう事情のもとにこういうことが行なわれたかということを聞いていただきたいと思うのです。  委員会段階で当時議論になっておりましたのは、十九日に沖繩現地公聴会を行ないたいということについて理事会で懸案になっておりました。もちろん、自民党は十七日と言っておりまして、これに賛成はしておりませんでした。しかし、いずれにしましても、これは未決定のままでありました。それで、一応、十九日はきまらないけれども、十八日までの審議日程はつくって、その中に安里氏をはじめ人民党瀬長委員まで含めて、沖繩議員日程をそこに組んで、とにかく十八日まで審議をやる、そういう約束になっておりました。そういう状態なんですよ。そこで十七日の委員会が始まりました。十七日の午後に入りまして、どうも自民党の動きが騒然としてきたことは私らにもわかりました。だけれども、その間にあって自民党理事のほうから、適当な時期に審議を一応打ち切って、そこでもって理事会を開いて、最終的に、十九日の公聴会をやるかやらないか、これを相談しようという提案があって、われわれはそれを了承しておりました。それから十分もたたないうちに強行採決です。およそこのくらい——議会内の理事会ですべての運営が行なわれます。当面きめた理事会での申し合わせすら——ここにおられる理事さんたちは私はよく聞いてもらいたいと思う。私は決して事態を誇張したり、いいかげんなうそを言ったりしない。客観的な事実を私は言っていることを、よくあなた方はおわかりだろうと思う。そういう中で、一応質疑を打ち切って理事会を開いて相談をしましょうという連絡があって、その直後に強行採決。おまけに手が込んでおって、その直前には、あしたの安理さんたち質疑にはテレビを入れますよという連絡までしている。一体これは何ですか。そこまでの小細工をやっているのですよ。それが現場のだまし討ちの実態です。  さらに、根本的には、十九日の公聴会をやるかやらないかをきめるという手続が残っている。しかも十八日には、すでに審議日程をつくってこれからもう審議に入る、そういう段階にしておったことは、委員長もよく御承知のはずだ。そういう中で突然、全く突然に、おそらく自民党の中でも知っている人は少ないぐらいの状態で、それで強行採決が行なわれる、こんな非常識な背信行為が世の中にありますか。これでおこらなかったら、それはおこらないほうがばかです。  われわれ民社党は、常に議会制民主主義を守る立場から、逆に、非常に右と左の黒白をはっきりしないと満足しない人たちから、とかくの非難を浴びてきました。しかし、われわれはそれをあえて甘んじて、議会制民主主義を守るためには、ときには非難を浴びようとも審議拒否をしないで堂々と審議に応じてきました。しかし、今回の場合だけはそれができなかったのです。  そういう事情を、私は、総理は、自民党総裁として、ほんとうにそうしたことは御存じなかったのだろうと思う。もし知っていたとしたならば、それはほんとうに許しがたい行為です。これは再度、総理に対する質問ではありませんけれども、私がこれだけのことを言って、委員長質問するわけにまいりませんから、総理に、どうお考えか、私のいままで申し上げたこと、私は繰り返すようですけれども、事実を寸分間違いなく言っております。決して誇張もしておりません。そういう事実をあなたはどうお考えであるか、それを再度御答弁をいただきます。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま経過をいろいろお話しになりました。私は、もちろん事前にさようなことは聞いておりません。もちろん知りません。しかしながら、一昨日いろいろ与野党双方で、いかにこの事態を収拾するか、こういうことで皆さん方が鳩首協議された、そうして各党ともその協議に応じて国会正常化に努力された、このことを、私は、当然のこととはいいながら、国会正常化各党がいかにして努力するかという、それを如実にあらわしておられる、こういうことで、国民各党協議を高く評価している、かように思います。したがって、ただいまのような経過はあっても、ただいまの状態といたしましては、その点にまた触れるということは逆戻りするおそれもありますから、私は、やっぱり前向きで、一昨日来の話のその上に立ってそうして十分話を進めるべきではないか、かよように思います。もちろん、ただいまのような点については、私どもも深く反省するところがございます。十分考え国会民主主義議会制民主主義、これを守るということについてわれわれもやぶさかではございません。そういう意味において、その非難があれば、これは私ども国民に対してまことに相すまない、かように申し上げなければならないと思いますが、ただいまの段階は、もうすでに土曜日以来各党話し合いがされたのでございますから、問題をまたもとへ返すこと、そういうことをしないで、前向きでぜひとも進めていただきたい、かように私は思う次第でございます。私は、その意味において深い反省をしているものだ、これだけは国民皆さま方にもわかっていただきたい、かように思います。
  7. 河村勝

    河村委員 私どもは、とにかく、不満ではあっても、議長のあっせんをのんで、それでこうしてこの場にも出て質疑をしているわけです。ですから、私は別段事態を前に戻して、それをどうこうしようというのじゃないのです。やっぱり今度の場合は、特に自民党の中ですら多くの人が知らないままにこういう非常識なことが行なわれている。だから私は、皆さんに、ほんとうの、実際あったことはこういうことであったのだということをよく知ってもらって、今後の反省のかてにしてほしい、そういう意味であえて質疑の時間をかりてやっておるわけなんです。ですけれども、同時に私は、佐藤総理にもほんとうにもう一ぺんよく考えていただきたいと思うのです。こんなことを繰り返しておりましたら、日本議会はだめです。ほんとうに残念だと思います。佐藤総理最後に、反省するとおっしゃいました。それをほんとうに心からなる反省として、これからのことをほんとう考えていただきたいと思います。私はこれ以上申しません。しかし、ほんとうに深い深い反省を再度お願いをする次第であります。  そこで、こういうぎりぎりの、一つの限定された形でもって私も質疑をしなければならぬことになったことをほんとうに残念に思います。しかし、わが党は、この沖繩協定の問題につきまして、他党と違いまして、無条件全面返還という主張をとってはおりません。御承知のように、われわれは、当初から、核抜き本土並み返還要求という主張を掲げて戦ってまいりました。それが最後には国民の合意を得て、政府与党もそのラインに沿って協定を進めてこられた、その点、私たちは努力を多とし、したがって、その結果がほんとう名実とも核抜き本土並みであることを期待をしてまいりました。しかし、残念ながら、われわれが、その後、協定以後にいろいろ詳しく点検をいたしました結果、どうしても核抜き本土並みというのにはかなりにほど遠い。その中にあるいろいろな疑問点不満な点、そういうものを解消しない限り、われわれとして納得のいくものではない、そういう立場に立って今日まで質疑を続けてきたわけであります。現地にも調査に参りました。佐藤総理現地にお行きになったことがないと思いますが、われわれは少なくとも法律的な議論は別にして、戦いに負けて取られた領土を取り返すのですから、容易なことではございません。だから、基地の返還がそうたやすいことだとは思っておりませんが、しかし、実際に現地に行って私自身が目で見てまいりました。その返還の量が少ないというより、実際ほとんど返還がなされていないといってもいい状態に、ほんとうに私はびっくりいたしました。現存する部隊というのは全部そのまま残ったままです。それらの部隊自分たちの持っている土地の中から、現在すでに使っていないもの、不要不急——というより、ほとんど不要のものだけが返されてきておる。あと目玉商品といわれる沖繩空港につきましても、だんだん突き詰めて洗ってみますと、返ってくるのは滑走路だけで、あとはほとんど返ってきていない。滑走路だけなら前々から使っているという状態でございます。そういう中で沖繩県民の不安、不満というものが非常に大きくて、それは、もう決して単に相対的に満足できないというだけでなしに、ほんとうに本質的な不満がそのまま残ってしまうという状態を見ざるを得なかったわけです。それが実態です。  それからもう一つは、客観情勢の違いというものを考えないわけにはいかない。一九六九年の佐藤ニクソン共同声明から以後、極東の情勢というものは逐次緊張緩和が進んでおります。ベトナムの撤退等も、われわれが予想したよりも順調に進んできて、そこにもってきて、協定以後にニクソン訪中というできごとがございました。ニクソン訪中によってこの情勢の変化が大きく加速されることになって、さらに、それがつい先ごろの国連におけるアルバニア決議案の可決、こういうことによってさらに加速されつつある。こういう状態であれば、佐藤ニクソン共同声明、その基礎になっておりますアメリカの極東戦略、それからさらにその骨になっておりますアメリカの中国封じ込め政策、こういうものがいや応なしに変わっていく、そうすれば、沖繩の基地というものがアメリカの極東戦略の一環として存在するということだけは——これは総理もはっきりお認めになっているところであります。そういう事態であれば、協定そのものはともかくとしましても、返還実態というものはもっと変わるべきではないか、また、政府にその意思があれば変えることはできるし、また、それが同時に、いまの状況であれば、アメリカ自身にとってもメリットがあるのではないか、そういう考え方に立たざるを得ない。そういう意味で、国民の願い、沖繩県民の悲願にこたえるためにも、そうした可能なる道をぜひとも政府にとっていただきたい、それがわれわれの願いであって、そういうことによって、単に形式的に安保条約を沖繩に適用したというだけではなしに、実質的にもできる限り核抜き本土並みというにふさわしいものにすべきではないかというのが私ども主張でございます。  そういうつもりで、われわれは前々から核抜きの問題、それから基地の整理、縮小の問題、それからVOAの早期撤去の問題、この三つについて政府にも申し入れをいたしました。また、審議の中でもこれを明らかにしていくつもりでございました。しかし、残念ながら、今日までわが党の質問者は、この委員会においては曽祢委員からの質問が一時間余り行なわれる機会を得たのみでございます。それから、沖繩特別委員会において同僚の小平忠君から質問がございまして、やはりこの三項目についての政府の所信をただしてまいりました。しかし、その中で核問題等つにいてかなりの前進を見ることはできましたけれども、それきり機会を得ないままに、ついにきょうは最終の時期になってしまいました。でありますから、たいへんそういう意味ほんとうに残念でありまして、私はこの機会に、もう最後の機会でありますから——われわれが核抜き本土並みを実現をしたい、この願いはもう最後まであきらめておりません。いままでの段階ではわれわれもとうてい納得がいかない、反対をせざるを得ないという状態でありますけれども、われわれは最後まで努力をあきらめないで、この機会をかりてただしていきたいと思います。そういう意味で、私はこの際、総理、外務大臣、防衛庁長官、いずれの方々にも、ほんとうに率直かつ明快な御答弁をいただきたいと思うのです。  そうした極東情勢全体の変化の中で今後やり得る余地が政府にもあるんじゃないか、また、実態ほんとう核抜き本土並みというのにはあまりにもほど遠いではないか、私のそうした意見に対して、総理は、総括的にどのようにお考えになっているか、まずそれを先にお伺いをいたします。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 河村君にお答えをいたしますが、私は沖繩の現地には参ったことがあります。(「基地は見てない」と呼ぶ者あり)これは基地も見ております。しかも、私自身がキャンプ内に一晩過ごしたこともあります。したがって、よく知っております。したがって、私は、参りまして、とにかく沖繩の返還なくしては戦後は終わらない、こういうことを言って、皆さんからも、これがそのとおりだといって評価されたように思っております。私はまずその点を明らかにして、私は東京にいてぬくぬくとしている、現地の苦労を知らないんだ、こう言われると、何だか私は話が違います。おそらく、戦後の総理として現地を訪問したのは、私が初めてのように思います。したがって、その点だけは、現地の実情についてはだ身に感じておる、それだけは十分ひとつ理解していただきたいと思います。  私は、それにつけましても、民社党の曽祢君が過日この席でお尋ねになりました核抜き本土並み、早期返還、これは、やはり私ども主張民社党主張は同一だ、かように思って、どれだけ力を得たかわかりません。私はジョンソン大統領とこの沖繩復帰について交渉を持ちましたが、その前にやはり小笠原をまず返す、そうしてその機会に沖繩の問題について触れることができたということは非常な成功であった、かように感じたものであります。そこで、小笠原が祖国に復帰したその暁においては、両三年以内に沖繩復帰、これが実現するんだ、こういうことで国民皆さん方からも絶大なる御支援をいただいて、そうして私どもはやってきた、かように思っております。これこそ一億国民の心であり、沖繩百万の同胞の心だ、かように考えるがゆえに、積極的に私はこの問題と取り組んだつもりであります。  幸いにして、ただいま祖国復帰の協定、この調印ができた。アメリカ自身ではすでにもうこの協定が上院を通過しておる。しかも多数で、いまだかってないような多数で可決されている。そのことを考えても、日本もやはりこれは国民の願いではないか、また県民百万の願いではないか、熱願だ、さように思うと、いろいろ不満もあるだろうが、この際にぜひとも早期に復帰を実現して、そして足らないところ、不満の点、そういうことは復帰後においてわれわれが解決すべきじゃないだろうか、かように実は思っておるのでございます。  過日も、協定をやり直せ、こういうお話がありましたが、私は、やり直すことはいたしません、さように申したのも、一日も早く祖国復帰、これを実現して、そうして不満や不足の点は、われわれともども沖繩県民ともども手を携えて解決すべきだ、かように思っておるのでございます。  私は、それにつけましても、いま必要なことは、早く協定国会において承認を賜わること、同時にまた、それが真の核抜き本土並みであること、少なくともこのことだけははっきり言える。私とアメリカの最高責任者ニクソン大統領と共同声明で、核抜き本土並みを約束したのであります。また最近は、上院においてのロジャーズあるいはパッカード国防次官等の証言でも明らかなように、返還時においては核はないんだ、かようになっておるわけであります。しかし、私は、それでもなお足らないというのでございますから、何かさらにまだわれわれ考える方法はないか、こういうことで、福田外務大臣とともども、ただいま苦心しておる最中でございます。  私は、皆さん方が、やはり民社党が、本土並み核抜き、早期返還、こういうことを打ち出された、これが政府やわが自由民主党にも非常に力を与えてくれた、これを心から感謝するものでございますが、そのためにも、一日も早くこの協定を賛成願うことが何よりも必要なことではないかと思うのであります。(「中身が違う」と呼ぶ者あり)まあ不規則発言でございますが、しかし、ことに春日委員長の御発言ですから、私も重要に考えて、その違う点があれば、これはまた必ずしも御賛成はできないだろうと思いますけれども、しかし、それにいたしましても、私は、核抜き本土並み、核抜きであることだけは、ただいまのような経過から見ましてもこれは信頼していただきたいと思う。私は、その意味においてなおさら努力をするということも、この委員会を通じまして国民皆さま方にも申し上げたのでございます。もっとこれならば御安心がいくだろう、こういうような方法もいたしたいと、ただいま努力しておる最中でございます。  私は、何よりも基地の縮小、整理、これこそは、沖繩が、経過的なことから見まして、密度が高いとか、あるいはまた、今日まで自由に使用した、そういう点からその基地が非常な役割りを果たしておること、これは本土では考えられないような状態だ、このことは、私どももよく認識しておるつもりであります。また、ただいま一部の変化はありましても、依然として太平洋のかなめ石である、この役割りはしている。あるいは各種の演習、その他の演習地等の使用等においても、本土とはこれは比べものにならないような状態だ。ここらにさらにもっとわれわれが積極的に整理統合すべき点が残っておるのじゃないだろうか。これは、今回の審議を通じましても、われわれは急いではいるが、しかし、これらの問題、指摘された点について、これから政府にも責任がある、こういうことも内輪では話をしておるような次第でございます。  これらの点について認識を皆さん方とあるいは特に誤っておる、かようには私は思いませんし、皆さん方は、政府、またわれわれ同様、あるいはより以上に深い関心を示しておられる、そのことはよくわかっておるつもりでございます。
  9. 河村勝

    河村委員 われわれは、いま協定を再交渉しろと言ってはおりません。この協定があっても、やれること、やる気があればできることをお尋ねをしているのですから、間違えないようにしていただきたい。  それから、具体的なことはこれから次々にお伺いをいたします。  最初に私は、この前、曽祢委員の質問に対して、ナショナル・プレスクラブにおける佐藤総理の談話に対する、われわれから見れば一つの軌道修正と見られる、重大ではあるけれども、好ましい発言があったと、私はそう思っております。そこで、その点は新しい極東情勢に即応した発言のように思われますので、その点についてもう少し詳しく総理にお伺いしたいと思います。  総理は、この朝鮮条項、朝鮮に武力攻撃が発生した場合の事前協議の扱い方について、「前向きにかつすみやかに」「ポジティブリー・アンド・プロンプトリー」この「前向き」のほうだけをとってしまった、「すみやか」なほうだけ残された、そういう感じでございます。ただ答弁を見ますると、なかなか慎重でございまして、ちょっと読みますと、「いかにも前向きということばは不適当のように思います。ただ、私があえて弁解するならば、実は事前協議だと、これが早目に結論を出さなければならないことだ、かように思っておりますので、そういう意味からも、あまり時間を置かないでこの事前協議についての返事はしたい、意向をはっきりさせたい、こういうことを実は申したのであります。これがただいまのような表現、これは多分に誤解を受けることでございますから、私はこの機会に明確にしておくがいいと思っております。」こういうことでございまして、「こういうことを実は申したのであります。」といいますと、一九六九年当時、ほんとうはこういう意味で言ったんだというふうに御答弁になっておるようでございますが、しかし、実際は、内容はすみやかに返事をするということであって、前向きという表現はとってしまうのだ、そういうことでありますから、明らかな修正だと私は考えますが、さよう考えてよろしゅうございますか。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 曽祢君のお尋ねに対しまして、はっきりと、その「前向き」がさような意味において誤解を受ける、こういうことで、これを訂正したつもりでごごいます。したがって、その点はもう明らかになっておるだろうと思います。
  11. 河村勝

    河村委員 このプレスクラブにおける談話というものは、通常の新聞記者会見の談話とは違って、私は、特殊な意味を持つ、まああえて言うならば、共同コミュニケとワンセットの問題だというふうに理解をしておりますが、この共同声明との関係はどういうものだというふうにお考えになっておられますか。
  12. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 共同声明とプレスクラブの談話、これがワンセットだと、さようには私は思いません。共同声明、これはやはり両政府間の話し合いでございまして、プレスクラブの問題は、これはプレス対私との問題でございます。米国政府との関係はございません。このプレスクラブを編成しておるあの各国の記者諸君のことを考えれば、これはもう明らかに別なものだ、かように思います。  しかし、そこにおいて表現されることが全然別なことであってはならない、またそれは見過ごすような筋のプレスクラブの諸君でもない、かように私は思いますから、これは忠実にやるべきだ、かように思っております。
  13. 河村勝

    河村委員 総理がニクソン大統領と共同声明を発表された、それからナショナル・プレスクラブにおいて談話を発表された、ちょうどその中間の時間帯に、当時のジョンソン国務次官がホワイトハウスで記者会見をやっております。その際こういうことを言っておるのです。「本日の共同声明の意味については二つの要素があり、第一は、お手元の共同声明、第二は、本日正午にナショナル・プレスクラブで佐藤総理が行なう演説である」ですから、まだおやりになっていないうちからこれが二つの要素のうちに入っておるわけですね。そこで、この二つは非常に密接な関係がある、だから、共同声明とともに総理のそのナショナル・プレスクラブでの演説をお読みになって考えてほしい、そういうことを言っているのですね。演説は正午に発表される、総理が演説の中で述べられることのうち幾つかは私は言及するつもりであるが、演説が行なわれるナショナル・プレスクラブで公表されるまではそれを公表しないように要望する、こういうことなんですね。ですから、少なくとも事前に大統領、次官等には提示をされておるということだけは間違いございませんね。ただ、私は、決してこのプレスクラブの談話が相談の上、合意の上つくられたということを申し上げているのではございません。ないけれども、確かにそういう事前に渡されておるというところから見ますると、はっきりとそれがワンセットというべき性格のものだというふうに考えざるを得ないと思いますが、いかがでございますか。
  14. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 プレスクラブにおける演説の原稿は、私自身が責任を持ってつくり、私自身政府部内で出したものであります。アメリカ政府には相談はいたしておりません。ましてや、その後の質疑応答、これなどは相談の余地はございませんから、これはもう自由にやっているものだ、かように御了承願いたい。
  15. 河村勝

    河村委員 私は相談してつくったとは考えませんと言ったはずでございます。そうではなしに、少なくとも発表前に、事前に手渡しをしたというところまでは事実でございますね。
  16. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はどうもそこのところがいま記憶にございませんけれども、相談したものでないこと、それから、私の演説が確定すれば、おそらく、それは広報官を通じてこういう演説をするというぐらいのことは連絡はしておるだろうと思います。しかし、ただいま言われるように、あと質疑応答、これはその場でやる取引でございますから、その相談の余地のないことは、御了承ができるだろうと思います。
  17. 河村勝

    河村委員 私はあと質疑応答のことを言っているのじゃございません。総理の談話を印刷して配った、そのもののことを言っているわけです。ですから、その点については事前にお渡しになったはずだし、したがって、私どもはいま佐藤ニクソン共同声明を取り消せなんという伏線で言っているのじゃありません。ですから、率直にお答えいただきたいのですがね。少なくとも、佐藤ニクソン共同声明を法律とすれば、このナショナル・プレスクラブの演説というのは、政令ぐらいの関係、佐藤ニクソン共同声明の解釈をしたものだ、そのくらいの性格のものだというふうに理解をするのですが、大体そんなものでよろしいわけですね。
  18. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま、決定後においては渡しているかもわからぬと申しましたが、もし渡しておれば、これは儀礼的なものだ、当然のことだと、かように御了承いただきます。私がつくるのに相談をしてつくったものでないこと。(河村委員「そんなことを言っていませんよ、私」と呼ぶ)だから、渡したとすれば、ただいま言うように、儀礼的なものだ、これはあり得ることだ、かように思います。
  19. 河村勝

    河村委員 そうすると、これはジョンソン国務次官のブリーフィングですから、新聞記者にも手渡したものですね。それに、これから佐藤総理の談話があるはずだが、この中身になるものは共同声明とともに二つの要素になるものだと言ったのは、これは持ってもいないものをうそを言った、こういうことになりますが、そういうことでございますか。
  20. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そうでなくて、いま申したように、渡したとすれば儀礼的だ、かように申しておるのですから、その儀礼的にいただいたものを、ジョンソン国務次官が中で話ししている、こういうことであるなら筋が立つようですね。御了承いただきたい。
  21. 河村勝

    河村委員 絶対にこれがワンセットのものである、あるいは共同声明の解釈というような性格のものでもないというふうに突っぱるお考えのようですから、これは言ってもしかたがないのですが、これはしかし、どう考えましても、客観的な経過はどうもそういうふうには思われない。ですから私は、率直にお認めになったらいいと思うのです。佐藤ニクソン共同声明が法律で、この談話が政令なら、政令のほうは別段共同声明をいじらなくても変えることはできるのです。いわんや、当時から、どんどん極東の情勢は変わっていくわけです。変わっていけば、それに対して解釈のほうは、法律だって時代が変われば解釈が変わるぐらいのものですから、変わっていって少しもおかしくないんで、それを総理がお逃げになるのがおかしいんで、堂々と解釈を情勢に即応するようにやっていったらいいと思うのです。  今度総理がずいぶん重大な発言をされましたが、アメリカからの反響は何かございましたか。外務大臣いかがですか。総理の「前向きにかつすみやかに」の「前向き」を取っちゃったことについて、アメリカ側のほうからどこか反響はございましたか。
  22. 福田赳夫

    福田国務大臣 この間の、実はそこにおられる曽祢委員の御質問です。私は、非常な真摯な気持ちで傾聴いたしましたというふうに申し上げたわけです。これはもうほんとうに、私は、憂国の至情を吐露された、こういうふうに受け取りました。そこで、あの際に私ははっきりお答えした。曽祢委員の御質問の要点は、まず核……(河村委員「私の質問だけ答弁してください。」と呼ぶ)いや、そこまで言わぬとちょっとお答えにならない。  曽祢委員の御質問、核については三つ具体的な御提案があったわけです。核がないということの点検はできるか、それからもう一つは、核がないということの大統領声明はできないか、それから第三は、核のないということについて政府間の書簡の交換のようなことはできないか、こういうことでございます。そこで、私はそういうことについての真剣な検討を始めたわけですが、点検の問題、これは、曽祢さんにお答えいたしましたように、これは不可能なことだとはっきり言っているのですが、その他の二つについては、これは検討いたしますというお答えをした。それに対する反響はどうだ、こういうことかと承ったのですが、そうじゃないのですか。
  23. 河村勝

    河村委員 どうも外務大臣は、私のいままでの総理に対する質問をお聞きになっていなかったように思われますが、私が伺っているのは、ナショナル——じゃ、総理
  24. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 何にも反響はございません。もし反響があったら外務省から私のところに言ってくるはずですが、全然私に反応がございませんから、ないものだと思っております。
  25. 河村勝

    河村委員 私は、反響がないのはたいへんけっこうだと思うのです。ですから、ニクソンも知っているかもしらぬけれども、それでいいと思っているのでしょう。だから、そういう点において、極東情勢の変化があるということについて日米両国首脳が意見が一致をした、だから解釈は日本政府の解釈でけっこうだ、こういうことだと思えば私はよろしいと思うのです。ですから、これからもどんどん積極的にやっていただきたいと思うのです。  そこで、台湾問題ですね、台湾条項のほう。韓国の問題について「ポジティブリー」を取ってしまう、それくらいに総理は、いまの極東情勢緊張緩和状態、そういうものを認識をされたと私は理解をいたします。そうしますれば、この台湾条項、何か台湾地域に武力攻撃が発生したら云々なんということは、この条項はもう死文と化した、これは別段、書いたものだから、過去のものだから消えないけれども、事実上なくなったと見てもよろしい、そのくらいのお考えになるんだと思いますが、いかがでございますか。
  26. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 韓国条項あるいは台湾海峡条項、これがどうも問題のようですが、私はそのときもはっきり申し上げたように、これは隣の、とにかく卑俗な例で申すならば、火事をほうっておくわけにはいかない、われわれが防火準備にかかるのは当然じゃないか、こういうことを申したと思っております。私は、これはまだ解決してはおらない、解消はしておらない、したがって、韓国に問題が起きたときに、これは対岸の火災視するわけにはいかない、われわれ身近にそれを感ずる。台湾海峡においても同様でございます。これはやはり私ども問題が起こらないことを願っている、万一問題が起きたらどうなのかという、そういうことに対する考え方でございます。皆さん方からしばしば聞かれるように、そういう問題について私どもは無関心ではあり得ない。これはいまだに同じであります。国際情勢、よもやさようなことが起ころうとは思いませんけれども、万一起これば、それはどうも、あれは韓国のことだ、あれは台湾のことだ、こういうことでほうっておくわけにはいかないと思う。私どもはやはりみずからを守る、そのための防護施設は当然する、こういうことであります。
  27. 河村勝

    河村委員 総理のお話を聞いておりますと、韓国と台湾と一緒にしておられるようですね。韓国の問題は一応別にしたらどうかと思うのですね。これはわれわれも、常識的に言って、若干対岸の火事みたいな感じがございます。あるけれども、台湾問題は、これは本質的に違うのじゃありませんか。ところが、どうも総理は、この間の質問でも、隣の火事を黙っているわけにはいかない、韓国においてはまさしくそうだ、台湾海峡でも同じことだ、まるきり同じに並べてしまっているのですね。その上で、もし万一そういうことがあれば、これはまた近火に対してはわれわれみずから火の粉を受けないような処置をとる、これは当然と思う。台湾問題について、近火に対してわれわれみずから火の粉を受けないような処置をとる、これはどういう意味でございますか。どういうことをおやりになるのですか。
  28. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私どもは、私どもがそういう問題に関与しないようなそういう措置をとるのはあたりまえじゃないか、かように思うのであります。したがって、私どもは、御承知のように、新しい憲法、そのもとにおいて、軍国主義じゃございませんから、また私どもの自衛隊は、この国土は守りますけれども、外国に脅威を与えるようなものではありません、そういう立場でわれわれの必要なことはする、こういうことであります。
  29. 河村勝

    河村委員 関与しないようにという御発言がいまありましたね。関与しないということは、単に自衛隊が出かけていかないということだけではないはずです。そうですね。だから、もし沖繩米軍が出動するという事前協議があったならば、それも断わる、ノーと言う、そういうことで理解してよろしゅうございますね。
  30. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 事前協議の場合は、わが国の国益に照らして私どもは態度を決定する。これはいままで何度も申したことで、いまこの機会に変えた考え方を持ってはおりません。
  31. 河村勝

    河村委員 そうしますと、韓国のほうで「前向き」というほうを取ってしまった。それで、すみやかに対応するというだけになりましたね。そうすると韓国も台湾も全く同じである。だから、いますでにアルバニア案が可決をされて国連における地位を確立して、それで佐藤総理自身も、台湾問題は中国の内政問題であるというところまで進んでこられましたね。その考え方は少しおかしいのですけれども、この間の質問に対して、台湾の場合には、中国は一つということで、内政的な問題ですから、われわれはとやかく心配しないでも問題は起こりっこない——内政問題だから問題は起こりっこないでなしに、むしろ、それなるがゆえに問題が起こるのですよ。そうすると、あえて内政問題と言いながら、やはり事前協議の場合にはイエスと言う場合もあり得る、そういうことでございますか。もうくどいようですが、重ねてそれだけお伺いいたします。
  32. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまのアルバニア案が成立した今日、台湾海峡の問題は変わったか変わらないか、こういうお尋ねだろうと思います。私は、まだ同じような状態が続いておる、かように思っております。  申すまでもなく、私どもは、日華平和条約、これをやはり台湾にいる蒋介石とやったのでございます。その条約はまだ今日もはっきり残っております。また、アメリカ自身が結んでおるのも米華防衛条約、これは残っております。そういう事態でございますから、アルバニア案が通過して国連に中華人民共和国が加入した、また安保の常任理事国になった、かように申しましても、この実情自身はまだ変わっておらないのです。これはまたニクソン訪中——もう訪中したかのような言い方をされますけれども、まだ訪中はしておりません。二回にわたってキッシンジャーがいろいろ準備をしておる、出かけられたら一体どういうように話がつくだろうか、かように思います。私も、中華人民共和国との国交の正常化ははからなければならない、その場合において日華平和条約はいかにあるべきかということが相談をしてきまるべきだ、かように申しております。もうアルバニア決議案が通った今日は、日華平和条約を無効にしろという、そういう考え方とは私は意見を異にしておりますから、そこらの点を私ども立場に立ってお考え願うならば、先ほど来のお尋ねはやや的はずれではないか、かように思います。
  33. 河村勝

    河村委員 私は、ニクソン訪中が実現したからといって、台湾防衛条約がすぐなくなるとも考えておりません。また、日華条約が現在あることも承知しております。その上で、しかし、やはりアメリカは、それは古い友だちを見捨てないというようなことは言っております。言っておりますけれども、訪中決定をするからには、それは、古い友だちを見捨てないということを言わない限りはアジア全体の動揺になりますから、言いますけれども、台湾については、防衛条約の問題は別として、とにかく平和的処理、どんな形であれ平和的処理、そういうことについての話し合いができるくらいのことは、これはもう常識だと思うのです。  訪中の結果、福田外務大臣も、何か、ニクソン訪中は、帰ってみなければわからぬというようなことを言っておられたようですが、みなくてもその辺まではわかるのですから、そういう状態の中で日本だけが何かそのしわ寄せを受けておるような状態でおることは好ましいことではない。だから、先ほどプレスクラブの発言を修正されたと同じように、台湾問題でもその程度の責任解除ですか、そういうようなことをやったからといって、別段どこにも傷がつくことはないし、それで日本国としては非常に立場が有利になる、そう考えるのですけれども、その辺まで踏み切るお考えはないのでしょうか。
  34. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのところ、ちょっとそこまで考えるつもりはございませんが、ただ、お話の筋から見まして、内政にお互いに干渉しない、それぞれの立場を尊重すべきだ、こういうことは私ども主張しておりますから、そのことはそれなりに理解すべきだ、相互の立場を理解し合う、また内政には不干渉、こういう原則はこの機会にもはっきりしておきたいと思います。
  35. 河村勝

    河村委員 内政不干渉であれば、やはり沖繩の基地から米軍が飛び立って台湾攻撃をするというのにイエスと言うのは、これは内政干渉じゃございませんか。
  36. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 今度は沖繩の米軍の事前協議ですが、事前協議については、先ほど来申し上げたような、イエスもありノーもある、それをきめるのは何か、国益だ、その場合の国益は一体何かと申せば、日本が戦争に巻き込まれないこと、これははっきりしておる、かように思いますから、その立場でやはりわれわれがきめるべきだ、かように思います。
  37. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 曽祢益君から関連して発言の申し出があります。これを許します。曽祢益君。
  38. 曾禰益

    ○曽祢委員 総理に伺いますが、きょうの河村委員に対する御答弁で、第一に朝鮮の問題ですね、これについては、はっきりと、いわゆる前向き、つまりイエスですね、ポジティブリー——事前協議の場合にイエスと言うという印象を与えたナショナル・プレスクラブの「前向き」というのは、はっきり取り消した。つまり、それは国連の動きとか、世界の世論の動向だとか、武力攻撃の規模とか、そういういろいろな情勢考えて、慎重に、むしろなかなかイエスと言うのではなしに、局地紛争みたいなときに、かりに朝鮮半島の事態でも、それなら前向きというような感じを与えた自動的の包括的の承認だというようなことは、はっきり否定されたと思うのです。私はそれなりに一進歩だと思う。ところで、われわれはむしろ当時から一言っておったのですが、この朝鮮半島の問題は、何といっても国連の決議、いろいろないきさつがありまして、必ずしも対岸の火災視ということは間違っているのではないか。ただ、台湾海峡の問題になりますと、より日本に対する緊切な平和、安全の関係がやはり遠のくことは間違いないと思うのです。ですから、日米共同声明の字句でもおのずと違っているわけですね。韓国に対する武力攻撃に対しては、韓国に対する武力攻撃は日本の安全と非常に緊密な関係がある、台湾については、台湾地域の平和と安全もまた日本にとって重要である、やはりそこにトーンを変えているところが共同声明ですらある。また、ナショナル・プレスクラブの総理の説明は、これはもう河村委員が言われましたように、ほんとうの共同声明の解釈に相当する非常に重要な勇み舌だと私は思うのです。台湾の問題については、共同声明が台湾海峡では平和でなければ困るということだけ書くべきであって、台湾地域における平和と安全というものは、ナショナル・プレスクラブに来ると、はっきりと中華民国に対する武力攻撃の場合ということも書いてある。そういう場合にはアメリカと国民政府との条約が発動するだろう、そういうことを受けて、なるほど、この場合にはすみやかにかつ前向きということばは使っておられないけれども、別の表現で、中華民国に対する武力攻撃に際しての米国の防衛義務の履行のような事態においては、日本を含む極東の平和と安全に対する脅威と認識して対処していく。脅威と認識して対処していくという言い方は、これはもうやはり日本に対する脅威なんだから、アメリカ軍の出動にはイエスだという含意のほうを強くとるのは私は当然だと思うのです。ですから、その点はむしろはっきりさせて、朝鮮半島の重大な事態についてすら、日本の平和と安全に直接絶対必要な場合以外にはアメリカ軍の出動はイエスと言わないのだという決意のある総理は、台湾海峡の事態については、それは中国側から見れば内政問題であるかは別として、やはりあそこで戦争をやられてはかなわないのですから、両方に戦争手段による台湾問題の解決は困るというのが日本国民の当然の態度であって、その意味で、総理がもしそういう意味で、日本としてはいわゆる近火に巻き込まれないように、これが主だというなら、不幸にしてかりに台湾海峡において中国と国民政府との間に武力衝突が起こり、したがってアメリカが応援義務を発するというような場合は想定したくないけれども、そういう場合に、日本のほうがもう軽々しくこっちがイエスと言うのだという予約みたいな、このナショナル・プレスクラブの日本を含む極東に対する脅威と認め、そして対処していく、つまり、そういう場合にはオーケーだと言わんばかりのこのナショナル・プレスクラブのこっちの台湾海峡条項のほうを、むしろ朝鮮のほうよりもさらに強い態度で否定すべきじゃないか。絶対にそれは自動承認じゃない。戦争をやっちゃ困るということが重点なんだ。返ってくる沖繩の基地を含めてわが国からの台湾海峡への出撃なんということを、これはもう軽々に許すなんという印象は、この際むしろこっちよりはっきり払拭すべきじゃないか。私はそういう意味でこのほうがより大きな軌道修正が必要だと思うのですが、河村委員の御質問の趣旨も私の申し上げておるのと同じだと思うのです。もう一ぺん、その点は、戦争に巻き込まれないということに重点を置いたはっきりした御答弁を願いたい。
  39. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 曽祢君から重ねて、ただいまの点で事前協議があったらどうするか、こういうお話、これはニクソン訪中、その結果どういうことになりますか、これはたいへんしあわせのことだろうと思いますが、私のナショナル・プレスクラブのこの結論でも、「幸いにしてそのような事態は予見されないのであります。」こういう結論が出ておりますね。いまのような問題が起こるんじゃないか、こういうようなお話がありますが、ちょっと読んでみると、「米国による台湾防衛義務の履行というようなこととなれば、われわれとしては、わが国益上、さきに述べたような認識をふまえて対処して行くべきものと考えますが、幸いにしてそのような事態は予見されないのであります。」こういうことで、これは先ほど来言われるように、ニクソン大統領の訪中の結果、さらにまたそういうことは予見されないというか、そういう事態になるんじゃないでしょうか。私はたいへんしあわせのことのように思います。  とにかく、いま言われるように、この問題について事前協議というものは慎重な上にも慎重に扱えというその御意見なら、私もよくわかりますから、そんないいかげんな事前協議、これに対する態度を決定する、こういうことはしないつもりでありますし、これは十分慎重な上にも慎重に考える、わが国の国益に照らして決定さるべきものだ、かように御理解をいただきたいと思います。
  40. 曾禰益

    ○曽祢委員 確かに国益の判断ですけれども、国益というところに——極東の平和と安全と日本の平和とは不可分である。したがって、台湾海峡においてアメリカが応援義務を発動するような事態には、国益に照らしてイエスだというインプレッションは非常に強いわけですよ。これははっきり否定して、国益はむしろ不介入、頭から不介入と言えば、それはアメリカと国民政府との条約等の関係もあろうし、そうは言えないから、非常に慎重な、とても自動承認ところの——冗談じゃない、朝鮮についてすら、これはもう非常にノーに近い自主的決定だ、台湾海峡については、もっともっと、情勢の変化もあろうけれども日本政府の腹としては、国民が望まない台湾における武力衝突の際に、日本が、基地提供という形にせよ、介入するということは得策にあらず、国策にあらず、こういう意味を強く含んでの御答弁ですか。その点だけもう一ぺん伺いたいと思います。
  41. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 曽祢君の御意見を交えてのお尋ねでございますが、私は、先ほど来申し上げますように、事前協議を受けた場合に、もちろん、われわれは慎重な上にも慎重にこれに対処する、こういう考え方でございます。最もおそるべき、また避けなければならないことは、日本が戦争に巻き込まれる、こういうようなことがあってはならない、かように思うものでございます。
  42. 河村勝

    河村委員 慎重の上にも慎重な御答弁で、ほんとうは、私が先ほども言いましたように、もうそこまで慎重にされなくとも、台湾問題についてはナショナル・プレスクラブの軌道修正を韓国条項以上におやりになっても、それによって日米間にそごを来たすようなことは絶対にない。だから私は、一日も早くそういう態度を明確にされることが、日中関係を含めて日本の国益にかなうゆえんであるということを特に申し上げておきたいと思います。  これから三項目の問題について入りたいと思います。  第一に核でありますが、核の問題については、今日までの曽祢質問以来の論議で、もう大体来るところまで来つつある段階でございます。そこで、この前の総理の御答弁は、「さらに私は外交的なルートで話し合う一つの道ができたようにも思えます。その辺は、十分最善を尽くしたい」これが総理答弁です。それから、わが党の小平委員の質問に、これは沖特のほうで、外務大臣はそれを何か一歩進めて、すでに外交ルートで打診中だというように聞いております。また、きのうの読売新聞で見ますると、復帰時に核抜きの通告をすることを公文書の形でアメリカが約束したというところまで新聞には書いてございます。この辺でこの問題について明確な答弁を伺い得る時期だと思いますので、その点だけを核抜きについて確認をしたいと思います。
  43. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほどお答えをしかけた問題でございますが、曽祢さんから三つの具体的な御提案があったわけであります。  まず第一に、核なし点検という問題でありますが、これはどうも、私は、そのときお答え申し上げたとおり、さらに話し合ってみましたけれども、これは困難そのものでございます。  それから第二の問題は、大統領声明あるいは政府間の書簡の交換、こういうような御提案でございますが、これは私は、すでにアメリカの上院におきまして、政府当局は、返還時においては核はありませんという答弁もいたしておる、証言をいたしておる、そうなっておる以上は、いかに重大な核問題でありましても、わが国の政府に対して直接説法、直接対話の方式で話のできないはずはない、また大統領がこれを声明するということのできないという理由はないというふうに申し上げまして、ただいまアメリカ側と話し合っておるわけなんですが、私は、この話し合いはかなりの説得力を持ちつつある、こういうふうに思います。まだこの席でアメリカ政府から回答が来たということを申し上げることができないのが非常に残念な次第でございまするが、私は何とかこの二つの方法の一つ、まあでき得れば、私は、もうすでにアメリカ側はアメリカの上院においてアメリカの国民に対しましてはああいう発言をしておる、これを重ねて大統領がアメリカの国民に向かって声明するというよりは、直接にわが国政府に対し、わが国の国民に対してこの答えをするという方式のほうが、これは的確な心証の資料となる、こういうふうに考えておりますが、いずれにいたしましても、そのいずれかの方法、特にアメリカ政府日本政府に対する意思表示という形で実現ができないものかと、最善の努力をいたしておるのですが、何とかして御期待にこたえたい、かように考えております。
  44. 河村勝

    河村委員 政府の努力を期待をしております。これはやはり客観情勢次第で、本気にやる気があればできることがまだまだあるという証拠みたいなものだと思うんですね。何かかってなことを言うようですけれども、私はそうだと思うのです。それは、かつては、核というものはあるかないかわからないところに核の抑止力がある、それで効果があるという時期もあったと思います。しかし、いまや、沖繩なんかの場合については、アメリカだって、中国向けの最前線基地である沖繩に核は置かないよ、核がないんだよということが、これからの米中接近に有利だというメリットはあるはずだ。やはりそこに日米間の利害の一致するところがあったので、そこに福田外務大臣が大いに努力されたので実りつつある、そういうふうに思うんですね。だから、核抜きはひとつ最後まで御努力願います。  これからあと二つばかりまだ問題が残っておりますが、それについても、私は、同じ客観情勢があるので、やる気さえあれば、返還協定そのものはどうあっても、やれるはずだと思いますので、特に前もってそれをお伺いして、それじゃ、重ねて外務大臣があそこまで言われているのですから、さらに総理が、これはもう胸をたたいてだいじょうぶだというくらいの返事をひとつお願いします。
  45. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま外務大臣がお答えしたとおりであります。また、政府はそういうことで意見の一致を見ておりますから、御安心願います。
  46. 河村勝

    河村委員 次に、基地縮小の問題に入ります。  そこで、まず第一に、もうかねがね問題になっております特殊部隊の問題ですね。大きいものは第七心理作戦部隊——まあ極東放送の問題でずいぶん議論がなされました。これも、第七心理作戦部隊がなくなってしまえば、たちどころに問題は解消する性質のものですね。これ自体が、北鮮、ベトナム等を中心にして心理作戦、印刷物による情宣活動や何かをやっている部隊ですね。これはすでにサイミントン報告なんかでも、沖繩を基地とする活動は再検討さるべきだと、アメリカ自身が言っている部隊です。それからいわゆるグリーンベレー、これも、全極東地域でゲリラ戦、謀略、そういうものの活動を主たる任務とするものです。こういうものについて、一体こういう安保条約の目的を明らかに逸脱するようなものは存在が許されるのか。これについて、私は、前々から福田外務大臣の答弁を聞いていまして、さっぱりわからないのです。特殊部隊の問題についてこういうことを言っておられます。「われわれから見て不満とするところもあります。しかし、復帰前といえどもその不満とするところを解消してもらいたい、こういう交渉をしております。しかし、いやしくも復帰時点が到来したという際にはそういう不満は一切なくなる、こういうふうな保証を取りつけておるわけであります。」これは一体どういうことなんでしょうか。どういう保証を得て、特殊部隊があっても問題はないんだ、そう言っておられるのか。これは予算委員会の席上で社会党の上原康助委員からの質問に答えた中身です。これは、外務大臣、あなたですよ。
  47. 福田赳夫

    福田国務大臣 いわゆる特殊部隊につきましては、現在の状況ではどうも好ましからざる状況が認められるわけであります。しかし、復帰時点以後におきましてはそういうことのないようにいたしたい、こういう趣旨のことを申し上げておるわけです。しかし、それの復帰実現の事態前といえども、もう徐々にそういう体制に移行してもらいたい。たとえば、そういうような見地から、いまお話しのグリーンベレー、これが第三国人の訓練をいたしておるわけであります。好ましからざることだ、こういうふうに考えております。これは米軍におきましては、もう復帰までにはこれを廃止いたしますということを言っておるわけであります。それから問題のCSGですね。これにつきましても、七月一日ころまでに撤去いたすということを言明をいたしておる。あるいは、これも問題になるわけでありますが、SR71の存在であります。これが朝鮮半島あるいは中国大陸に出動する、そういうようなことで物議をかもすが、これの処置をどうするかという問題があるわけでありまするが、これは、ただいまの状況におきましては、領空侵犯、いやしくも第三国の領空を侵犯することなきようにということを現在におきましても要請をし、アメリカ側においてもこれを順守するというふうに申しておりますが、それにもかかわらず北朝鮮の国境におきまして紛争があるようである。しばしば私どもはそういうことに対して警告を与えておるようでありまするが、とにかく、わが国の施政権下になるということになりますれば、今日と事情が違うんです。われわれは日米合同委員会において、これらの特殊部隊がどういう機能をするかということにつきましては、十分な発言をすることができます。これは国際法に違反するというような行為につきましては、断じてこれを容認をいたしません。そういうようなことにおきまして、特殊部隊の問題、これを解決いたしていきたいと、さような考えであります。
  48. 河村勝

    河村委員 CSGがなくなったことは承知しておりますし、それから第三国人の訓練をやめたということも承知しております。そういうものはもうわかっておるんですが、いま、そういうものをのければ、第七心理作戦部隊やグリーンベレーはあってもちっとも支障ないような御答弁に聞こえるんですね。だけれども、一体どうなんでしょうか。これらの部隊がそれぞれ特有の性格を持っているんですから、そういった第三国人の訓練をやらないからといったって、本質は変わらないんですね。そういう極東全域にわたるゲリラや謀略をやる部隊が、一体、外務大臣、あなたは、安保条約のワクの中におさまる、安保条約の目的にかなう軍隊である、そうお考えになっておられるのかどうか、それを伺いたい。
  49. 福田赳夫

    福田国務大臣 返還実現後におきましては、わが国の防衛並びに極東の安全、つまり安保条約の目的と相背反するような行動があってはならない、こういうふうに考えております。日米合同委員会という制度があるわけでありますから、そういう場を通じまして、それらのワク、わが国の防衛と極東の安全、このワクを逸脱することのないように厳重にこれを確保していきたいと、かように考えております。
  50. 河村勝

    河村委員 確認をしますけれども、そうすると、そういう特殊部隊が残っても、日米合同委員会等の協議を通じて、安保条約のワクの中にその活動を押えることができる、こういう意味ですか。
  51. 福田赳夫

    福田国務大臣 問題は、そういう名前の部隊が残るかどうかということじゃないと思うんです。その機能がどうだと、こういうことだろうと思うんです。その機能がわが国の防衛と極東の安全という域を逸脱をするということがありますれば、私どもはこれを容認することはできない、こういうことでありまして、形式的な名前の問題、そういうことに私どもはそう関心は置いてない。問題は、機能が日米安保条約のワクを逸脱するかどうかということだろう、こういうふうに理解しております。
  52. 河村勝

    河村委員 私も名前にはちっともこだわっておりません。別段、第七心理作戦部隊が第十一心理作戦部隊になっても——要するに、この中身というものはわかっておるんでしょう。おわかりですね。だからもう繰り返して言いませんが、こういう全アジアにわたって謀略、ゲリラ、そういうものをやる部隊、そういうものは、これは名前をどう変えたって、実体は変わらないんですよ。第三国人の訓練をやめたぐらいで実体は変わらないんです。そういうものが安保条約のワクの中におさまるのかどうか、おさまらなければどうするのか、それを私は端的に伺いたい。
  53. 福田赳夫

    福田国務大臣 安保条約のワクにおさまらないという場合におきましては、これはもう厳重な措置をしなければならない、こういうふうに考えます。
  54. 河村勝

    河村委員 厳重な措置というのは、どういうことでございますか。(「お引き取り願う」と呼ぶ者あり)
  55. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま私語がありましたように、お引き取りを願うということも含めての意味であります。
  56. 河村勝

    河村委員 お引き取りを願うということを含めるというと、何かほかに含むんですか。
  57. 福田赳夫

    福田国務大臣 お引き取りを願う前に、いろいろ警告をするとか、あるいは抗議をするとか、そういうようなこともある、そういうことを申しておるわけであります。
  58. 河村勝

    河村委員 どうも愛知外務大臣のときと、特殊部隊の扱いについてはだいぶ後退をしてきたようです。安保条約の目的に適合する軍隊とは何であるかということについて、愛知さんはこう言っているんです。安保の目的とは何ぞや。これは国連憲章五十一条に考え方を発するところの自衛に徹した考え方である。その性格に適合するような軍隊というものがこの条約にいわれる軍である。だから、事前協議のワクさえあればいいのかという質問に対しては、行動の制約について何らかの保証があればそれでいいか悪いか、制約だけでは納得できないものがあります。これはどうしても去ってもらわなければなりませんということで、返還までに安保条約の目的外の軍隊というものは去ってもらわなければならぬということをはっきり言っているのですが、これは外務大臣がかわるとその辺方針が変わるのでしょうか、どうでしょうか。
  59. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、前任愛知外務大臣から直接その話は聞いておりませんけれども、まさか全部特殊部隊を撤去するという言明はしておらないのじゃないか、こういうふうに思います。要は、特殊部隊がこの極東の緊張を激化するような行動をとる、そういうものであるかどうか、こういう問題だろうと思うのです。私は、撤去を必要とするというようなものがありますれば、それはそういう措置をとる、これは当然でありまするが、しかし、名前は残っておりましても、機能はもうほんとうにあなたのおっしゃるように自衛的な性格のもの、その自衛的な性格の範囲内においてのわが国の防御、極東の安全の確保、そういうものに必要であるということであれば、何も名前にこだわる必要はない、そういうふうに考えておるわけであります。
  60. 河村勝

    河村委員 コンニャク問答ですね。私も名前のことを言っておるのではなしに、第七心理作戦部隊なんというのは、現に極東放送の問題でずいぶん議論されたように、実際アメリカですら沖繩に置くのはまずいと言っておる部隊でしょう。ですから、ちょうど核の問題で大いに成果をおあげになったように、特殊部隊なんというものは同じことなんですよ。いま沖繩に置くメリットというものはアメリカにはない。こんなものはどけましたと言ってニクソンが発表すれば、それでだいぶ点数が上がって米中がうまくいく、そういう時期に来ているわけですね。いかがですか、こんなものも片づけるんだというぐらいのことをおっしゃったら、返還まで。私はあれこれ言っておるんじゃないのです。ほかにも特殊部隊は一ぱいあるのですけれども、限定して、むずかしいものもあろうと思って、特に悪質でかつ除去可能なものを選んで申し上げておるので、そのぐらいのことは返事されたらいかがですか。
  61. 福田赳夫

    福田国務大臣 第三国の平和を乱したり緊張を激化するような行動が続くというようなことは、断じてこれを許すべきものじゃない、こういうふうに考えております。警告にもかかわらずそういう行動をとるという場合におきましては、お引き取りを願うというほかはない、かように考えます。
  62. 河村勝

    河村委員 それ以上望んでも無理でしょう。要するに、それじゃ何か安保の目的に反するような行動があれば、たちどころに出てもらう、そこまでいまおっしゃったわけですね。そう考えてよろしいわけですね。
  63. 福田赳夫

    福田国務大臣 厳重な警告をし、がえんぜざればお引き取りを願います。
  64. 河村勝

    河村委員 もう一つお伺いしておきますが、たとえば第三海兵師団と称せられるものですね。これは厳密にいうと、安保のワクの中に入るか外にいるか、これはちょっと境目くらいの部隊ですけれども、実際問題として、いつでも、戦闘作戦に出動するときには、公海にある第七艦隊の空母に乗って出かけてしまうのですね。ですから、事前協議制度のワクがあっても押えようがないという部隊なんですが、こういうものはわが国に置いておくことは適当でないのではないかと思うが、その点いかがでございますか。
  65. 福田赳夫

    福田国務大臣 条約局長からお答え申し上げます。
  66. 井川克一

    ○井川政府委員 御存じのとおり、事前協議は、わが国の施設、区域を利用しての、この場合は戦闘作戦行動のための発進でございます。先生おっしゃいましたとおり、軍艦に乗りまして遊よくするという状態になりましたならば、第六条の交換公文の事前協議の対象にはならないことは、これは明らかなことでございます。
  67. 河村勝

    河村委員 解釈は別段変わったことはない、そのとおりなんで、私は政治的に、そうした事前協議のワクで押え切れないものは——普通は事前協議で押えて、安保の目的外のことはやらせないということなんですけれども、それが事実上不可能なものは、やはり特殊部隊なんかと同じような扱いで、いなくなってもらわないと、日本の国益に反する場合があり得るのではないか、その見解を外務大臣にお聞きしておるわけです。
  68. 福田赳夫

    福田国務大臣 御指摘の水陸両用部隊ですね、これは第七艦隊の一部が沖繩に駐とんをしておる、こういうことでございます。駐とん自体につきましては問題はないと思いますが、しかし、これが戦闘行動のために出動する、こういう際には、もちろんこれは事前協議の対象として厳密な考慮をいたす、こういう考えでございます。そういう際における事前協議の対応、これは総理からしばしば申し上げておるとおり、慎重に国益を踏んまえて、イエスもありノーもある、こういうことでございます。
  69. 河村勝

    河村委員 私の言っていることを誤解されているようであります。常に、公海にある第七艦隊に搭乗するわけですね。その第七艦隊が戦闘地に行って、敵前上陸するような地域に行ってしまうわけですね。ですから、出るときは、公海にいる軍艦に乗るというだけの、少なくとも法律上、条約上はそういう関係になってしまう。だから、沖繩を出るときに事前協議の余地がない部隊なんですね。そういうものは困るんじゃないか、そう私は言っておるのですが、それを何かチェックする方法はありますか。
  70. 福田赳夫

    福田国務大臣 どこかの水域において海戦が行なわれておる、それに参加する、これは沖繩基地からの出動になる、こういうふうに私は考えます。そういう際には、事前協議の対象として、ただいま申し上げたような方針で対処する、こういうふうに申し上げておるわけであります。
  71. 河村勝

    河村委員 どうも議論が食い違って、答弁にならないのですね。事前協議ができる場合のことを言っているのではないのです。第三海兵師団というのは、常時事前協議の対象にならないような行動をとって、実際は事前協議の必要な行動をやっておる。だから、そういうものは日本としては国益上置いておくべきではないではないか、こういう意味のことを言っているのです。おわかりですか。——公海にいる第七艦隊にいつでも乗っちゃうんですね、沖繩の港から出かけていくわけじゃなしに。だから、そういうものは事前協議のワク外に常になってしまう。そういうものは置いておくのはおかしいではないかと言っているのですか……。
  72. 福田赳夫

    福田国務大臣 第七艦隊は、現在の状態においていずれの国とも交戦状態にはないのであります。でありまするから、その第七艦隊に搭乗する意図をもちまして沖繩から出動する、こういうことは、事前協議の対象にはいたさないつもりであります。しかしながら、万一、これは想像したくもないし、想像もできませんけれども、第七艦隊が第三国と交戦状態に入った、それに参加する意図をもってこの部隊が出動をするというようなことがありますれば、これは事前協議の対象といたしまして厳重に対処する、こういうふうに明瞭に申し上げているわけであります。
  73. 河村勝

    河村委員 あまりよくないですね。ほんとうは第七艦隊全部が戦闘作戦行動、交戦状態に入るということはないのですからね。だから、沖繩の沖にいるのは交戦状態に入らない第七艦隊、それに乗っちゃうから困るのですけれども、これはいつまでもやっていますと時間切れになってしまいますから、もう次の問題に移ります。  一般的な基地の縮小、整理について、われわれはかねがねから要望をしております。それについて福田外務大臣の発言に、何か、現在のA、B、C表、あれがまるっきり動かし得ないもののような発言がございます。基地の態様はA、B、C表に記載されている。アメリカの上院もこの協定を可決した。「米側の法的措置ができたわけです。ですから、A、B、Cという表を法的に動かすということは、わが国としては今日もうできない。」こう言っておりますね。ほんとうに、A、B、Cを動かすというのは法律的にできないのですか。いかがですか。
  74. 福田赳夫

    福田国務大臣 A、B、C表は、この条約に付随する了解覚書の中に入っておるわけであります。そういう了解のもとに協定ができておるといっても差しつかえないかと思うのです。そこで私は、このA、B、Cというこの表を動かすことはできない、こういうふうにお答えを申し上げておるのでありますが、しかし、一面におきまして、、私は、基地が非常に沖繩においては多過ぎる、特に都市中心地域におきまして密集しておる、また、リクリエーションというようなカテゴリーのものが多過ぎる、こういう認識を持っておるわけであります。でありまするから、A、B、Cというこの形式的な表は動かしませんけれども、米軍に提供するというこのA表につきましては、できる限りこれが整理縮小に努力をいたしたい、こういうことを申し続けきておるわけでございます。  具体的に申し上げますと、私が陛下のお供をいたしましてヨーロッパ訪問旅行に出るその途次、アンカレッジにおきましてロジャーズ国務長官に会いまして、厳重な話し合いをいたしておるわけであります。また、その後岸元総理がニクソン大統領と会われるという際にも、私の重大な関心事はこの問題です、この問題をひとつ特に大統領にじきじき申し入れてもらいたいというお話をしておる。これは本委員会におきましてもすでに申し上げたかと思うのです。それから、この間来日いたしましたコナリー財務長官に対しましても、るる、地図まで繰り広げまして一つ一つの説明をいたしております。そういう状態でありますので、アメリカも何とかしてこの問題に対して前向きの対処をというふうに期待をいたしておるわけでございまするが、この問題は、今後といえども執拗に取り続けまして、何とかして皆さんの御要望にはこたえていきたい、かように考えておる次第でございます。
  75. 河村勝

    河村委員 これからの御努力の点については、最終的に最後にお伺いいたしますけれども、A、B、C表が動かせないということも、これは私はうそじゃないかと思うのですね。この沖繩における施設及び区域に関する了解覚書のA表のところには、「日本政府及びアメリカ合衆国政府がその間で別段の合意をしない限り、」という前提を置いて、それで最終的に決定するのは、協定の効力発生の日にこの覚書が締結されるわけですね。そうであれば、いま現在から具体的にこの協定が締結されるまでの間は、これは「別段の合意」をする余地が幾らもあるので、A、B、C表が法的に確定して動かせないというのは、私はうそじゃないかと思いますが、いかがでございますか。
  76. 福田赳夫

    福田国務大臣 まあとにかく政治的に見ますと、もうこの表も、A表も前提となってアメリカの上院を通過しておる、こういうような次第でございまして、そういうことを踏んまえますると、このA、B、C表を動かすということは、これは不可能である、こういうことを申し上げておるわけなんです。ただ、実際上——この表は動かさぬが、しかし、さらば一体どういうふうになっていくかというと、たとえば、この間この委員会でもお話が出た数個の訓練場におきまして、いま地主との間で無契約状態のものがあります。こういうものが返還時までに解決されないというような事態になりますると、事実上A表が質的に変化をする、こういうようなことにもなるわけでございますが、まあそれはそれといたしまして、A表にはこだわらず、私どもは、返還後といえども、このA表にはこだわりなく整理縮小、この方向を進めたい、その努力は返還前の今日もすでに開始しておる、こういうことを申し上げておるわけであります。
  77. 河村勝

    河村委員 私もA表にこだわらないでもよろしいのですけれども、何か外務大臣が、いかにも、アメリカで条約がきまったからA、B、Cは動かせないんだということで、むずかしさを強調されるから、ちょっと気に食わないから伺っているので、大体アメリカ上院で審議をされたものも日本でやったものも、英文と日本文の違いだけで、同じですよね。そうすれば、英文だって、やはりその中には、返還時までに「別段の合意をしない限り、」というのは、向こうだって入っているんですよね。ですから、アメリカで条約が批准になったからといったって、これが動かせないという理由はないでしょう。その点だけはちょっとはっきりしておいていただきたいと思いますが、いかがですか。
  78. 福田赳夫

    福田国務大臣 あなたのおっしゃるとおりなんですが、その別段の取りきめをするということが非常にむずかしい、そういうことを申し上げておるわけなんでありまして、したがって私は、このA表を動かす、そういうようなことについて御期待を持たれると、非常にこれは困難なことじゃあるまいか、そういうふうに考えておるのです。したがって、政府の方針といたしましては、A表を動かす意図はない、しかし、事実上の問題として最大限の努力をする、こういうことでございます。
  79. 河村勝

    河村委員 A表を動かす意図がないというのは、少し言い過ぎじゃありませんか。可能なものなら最後まで努力するのがあたりまえで、初めから意図を持たなければ、可能な条件があったって、できっこないですね。ですから、A表にこだわらずというのは、A表も動かし得るということを頭に置いてやるべきだと私は思います。  しかし、いずれにしましても、前々から総理の御答弁ども聞いておりますが、返還前といえども積極的に、絶えずアメリカとの連携を緊密にしてやっていきたいというような答弁はされているわけです。  そこで、どうでしょうか、これからの努力と見通しの問題ですけれども、もう返還前にアメリカと具体的に、基地が返ってくるのは返還後でもよろしいけれども、基地縮小整理のプログラム、スケジュール、そういうものについて協議をするということの合意をアメリカとやることは不可能ですか、いまの段階で。
  80. 福田赳夫

    福田国務大臣 もう協議を始めておるんです。先ほど申し上げましたように、私とロジャーズ国務長官、また、私とコナリー財務長官、また、岸元総理と大統領と、さらに、先ほどはつけ落としましたが、この間来日いたしましたジョンソン国務次官、こういう人といろいろ話をいたしております。しかし、これは非常にアメリカといたしましてもわが国の要請に対しましては抵抗を感ずる、そういう問題と私は受けとめておるわけであります。しかし、どうしてもこの問題は整理縮小の方向に進めなければならぬ、そういうふうに考えております。  それで、三つ問題があると思うのです。一つは、リクリエーションだとか、あるいは密集地帯の問題でありますとか、それは客観情勢、この極東における客観情勢というようなものにかかわりなく進行し得る問題だという立場に私は立っております。それからもう一つは、先ほどから御指摘がありますように、極東情勢が緩和の状況で定着をしてくる、こういう情勢になりますれば、これは沖繩における基地問題におきましては大きな変化が出てくるだろう、そういうふうに考えます。もう一つ問題がある。それは、アメリカの財政状態です。アメリカが海外に兵を保有しておる。金のかかる問題です。そういうような見地から、アメリカがどういう考え方を沖繩に対して打ち出してくるか、こういう問題。その三つの立場に立ちまして、これからこれらの問題の処置に対処していきたい、これが私の考えでございます。
  81. 河村勝

    河村委員 私は、前々から言っておりますけれども、極東情勢というものの変化、もう少しこれに敏感に対応して、自信を持ってやっていただきたいと思うのです。前にも、私、外務大臣の御答弁を聞いておりますと、とにかく、ほんとうに、現実に情勢が完全に動くのがしろうとでもわかるくらいにならぬと行動を起こさないという印象の答弁があるので、非常に心配なのです。やはり全体の情勢は、極東情勢は緩和の方向に動くし、アメリカの財政状況は、経済状況はよくなる可能性はないというのが大体確実なのですから、きょうここでもって御答弁できないのは残念ですけれども、どうか一日も早く返還のスケジュールづくりの協議——私は、すぐ返還のスケジュールを出せと言うのじゃない。スケジュールをつくることについての協議ぐらいは始めることにアメリカと合意する、そのくらいの御返事は、どうですか、総理、ひとつできませんか。
  82. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま、問題点を指摘しながらアメリカ側と協議をしておるということでございますから、もうしばらく、ひとつ具体的なスケジュールにつきましてはお待ち願いたい、かように存じます。
  83. 河村勝

    河村委員 VOAの問題について伺います。  VOA放送について、電波法との関係は前々から明らかになっておりますが、放送法との関係は一体どうお考えになるのか。放送法の第一条には、「左に掲げる原則に従つて、放送を公共の福祉に適合するように規律し、」となって、第二には「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保する」というのが放送法の基本ですね。こういう基本法との関係を一体VOAについてどうお考えになっておりますか。
  84. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 ただいま御指摘のように、VOAは電波法の適用をかぶりませんので、したがって、放送法も適用がないわけでございます。電波法によって免許をもらった放送局だけが放送を引き受けるということになりますわけでございます。  ただし、放送法の適用を受けませんけれども、交換公文、これによって規制するというようなことになっておりますわけでございます。
  85. 河村勝

    河村委員 電波法によって免許を持たないといっても、電波法の特別措置法をつくって、それでやはり免許はやるわけでしょう。そうじゃないのですか。
  86. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 協定の第八条に、ああいうことで明記されておりますし、それから取りきめ、つまり交換公文の規制によるということになっておりますわけでございまして、電波法と放送法の適用は排除されております。
  87. 河村勝

    河村委員 うまいこと脱法的に逃がしてあるらしいのですけれども、放送法というものは一種の憲法でしょう。憲法ともいうべき放送の不偏不党性、真実、こんなものは、一体、VOAに守られる可能性はないですね。電波法というのは、単に外国法人を認めるか認めないかという一つの技術的な法制ですね。放送法というのは憲法なのですよね。だから、それを簡単に、電波法から排除したから放送法の適用がないんだと言うのは、これは三百代言というか、法律的な解釈であって、精神的には、やはり放送法の精神にのっとることが保障されなければいけない、そういうものじゃないでしょうか。
  88. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 そういう放送の内容の詳細につきましては、交換公文に相当詳しく規定いたしておりますわけでございますから、それにのっとってやるということになりますわけでございまして、もともと電波法の適用がございませんから、放送法もないわけでございます。
  89. 河村勝

    河村委員 どうも、そういういいかげんな答弁をされちゃ困るので、交換公文によっても、こっちから意見を言うだけでしょう。やっちゃいけませんという権限は何もないのですね。憲法的な、不偏不党、真実、表現の自由、こういうものを規制する道はない、それだけは間違いないんでしょう。
  90. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 VOAにつきましては、アメリカ政府がその責任において放送するということになっておるのでありまして、これに対しまして日本政府が異存を持つ、異なった見解を持つというような場合には、日本政府の見解を表明することができる、こういうことになっておりますわけでございまして、そういうようなことによって、十分、心配のないような指導ができるかと存じております。
  91. 河村勝

    河村委員 法制局長官、一応、形式的には放送法の適用は排除されているように見えます。しかし、そういうことでよろしいんですか、法の精神として。いかがです。
  92. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ただいま郵政大臣からお答えがございましたが、ともかくも、ヴォイス・オヴ・アメリカの施設につきましては、わが法制上一番基本的に問題になりますのは電波法でございますが、電波法上の解釈としても、このまま、電波法の適用上これでいけるかどうかというような疑問もございまして、われわれそこを大いに検討したわけでございますが、やはりそれは無理であろう、電波法のワク内でこれを処理することはとうてい無理ではないかという結論に到達いたしまして、電波法の関係は、もうすでに御承知のとおりに、特にその特例規定を設けまして処理をするということにいたしました。  放送法の関係のほうがお尋ねの基本のようでございますが、このほうは、特にいまのような問題点があるものとは考えなかったと思います。と申しますのは、法制局におきましても、それぞれ分担をきめまして検討を重ね、処理をしたわけでございますが、その辺のことは特に問題とはならなかった。つまり、いま特別措置法も持っておりませんが、先ほど来郵政大臣が言われましたとおりの結論がとられているものでございます。
  93. 河村勝

    河村委員 私は法制局長官の見解を聞いているので、みんながやったんだからそれでいいんだろうという話を聞くために質問したんじゃありません。——法制局長官、あなたの見解を聞いているのです。ほかの人がやったからいいんだろう、法制局長官というのはそういう役割りですか。
  94. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 結論だけを申し上げまして、その理由の筋を申し上げなかったために御理解をいただけなかったと思いますが、御質疑の中心は放送法の関係でございますね。放送法の四条等に放送事業者という定義がございますが、放送事業者ということばが使ってあって、放送事業者についての規制が加えられておるわけでありますが、放送事業者は、法律の規定によりますれば、「電波法の規定により放送局の免許を受けた者をいう。」ということになっておりますので、そうでないものはこの放送法の適用に乗ってこないということからいって、はなはだ形式的な御答弁になりますが、法律的な形式論理とすれば、いま申し上げたようなことから、結論的に申しまして、先ほど申し上げたとおり、郵政大臣がおっしゃったとおりの結論になるわけでございます。
  95. 河村勝

    河村委員 だから、形式的には排除されているというのは私は認める。けれども、完全な脱法でしょう。放送法というのは放送の憲法ですよ。電波法では外国法人は認めない。そこで特別法をつくって、とにかく資格だけやったのでしょう。それは単に技術的に電波法を排除しただけであって、それで放送法からまるごと抜けてしまって好きかってなことができる、そんなものは、法律技術としてはできても、法の趣旨、法の精神として一体許されていいのですか。
  96. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 私の御答弁になりますと実はそこで終わるわけでございまして、その先に、さらに政策的当否の問題になりますと、私が申し上げるのはいかがかと思います。これは郵政当局御自身の御答弁をお求めいただくほかはないと思います。
  97. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 法制的に申しますと、先刻来私が答弁いたしておりますように、電波法の適用を排除いたしておりますから、したがって放送法も排除される。放送法というのは、電波法によって電波の免許がありました放送局に対して適用するわけでございますから、そういう免許がないものでございますから放送法の適用はないということになりますわけでございます。しかし、VOAの放送の内容の規制につきましては、先刻お答えしましたように、交換公文がある。これによって規制をしていくということ以外に方法はない、このように私どもは解釈いたしておりますわけでございます。
  98. 河村勝

    河村委員 それならば、電波法からはずれて放送法の直接適用がないというならば、やはりそれを取り押えるだけの法制措置がなければ、これは憲法違反ですよ。そういうものじゃありませんか。こういういいかげんなことでやっているのは一番けしからぬのであって——とにかく、いずれにしても、どけてしまえばそれでよろしいわけであるから、即刻どけることを考えてもらいたい。  それで、いまこの協定においては一二年後に協議ということになっておりますね。これは二年後でなければならぬということはないのでしょう。二年以内ならいつでもいいわけですね。そうですね。
  99. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 協定の第八条で、二年後にはあらためて将来の運営について協議に入るということになっておりますので、二年後にはどういうような交渉もできるというようなことに私どもは解釈いたしております。
  100. 河村勝

    河村委員 外務大臣、二年後に協議するとなっておりますけれども、二年たたないで協議をすることを妨げるものではない、そうですね、協定上。
  101. 福田赳夫

    福田国務大臣 協定は権利義務の関係を示しておるわけでありまして、事実上の話し合いがある、これを妨げるものではないと思います。
  102. 河村勝

    河村委員 そうであれば、どうですか、電波法だけを議論しておるだけでなしに、放送の真実、不偏不党、そうした法律的なものに完全に違反するものでしょう。ですから、謀略宣伝放送であって、日本に置くべきものでないことは、さんざん議論されましたから、私はここでもってもう繰り返して言おうとは思いません。思いませんし、同時に、VOAそのものがアメリカにとっては使い得ざる施設ですね。いま使っているのは、中国語、ロシア語、朝鮮語、そういったもので、いまもう謀略放送をやる意味がなくなってきているのですね。害ですらある。こんなものも、先ほど申すように、情勢の変化を考えれば、いつでも、いますぐにでも話をして——代替施設さえあれば、アメリカだっていつでもどくはずですね。私どもの聞くところによると、もうアメリカは代替施設をさがしているという話すら聞いている。いかがですか、ひとつ即刻協議をして撤去するようにこれから努力をするということは言えるでしょう。いかがですか。
  103. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 VOAの放送の内容、あるいはまた軍機関とのつながりというようなことについて、先日来いろいろ心配になるようなお話も承っておりますわけでございますけれども、しかし、日本の本土の施政下に入りましたならば、私どもといたしましては、ただいま御指摘のような日本の放送法の精神もありますわけでございまして、そういうような精神、それを織り込んでおりますのが交換公文だと思っておりますわけでございますが、その交換公文の精神にのっとって、しかも、先日曽祢先生にはっきりお答え申し上げましたように、傍受の施設もやることになっておりますから、そういうようなものを十分利用いたしますし、そして、御承知のように、私どもが非常に心配になる、異見を持つ、異なった見解を持つ放送がございましたならば、交換公文の内容に従って、外交機関を通じて日本の見解をアメリカにぶちまけるということができますわけでございますから、そういうような機能を十分発揮いたしまして、心配のないようなりっぱな放送をしてまいりますように指導してまいりたい、このように考えておりますわけでございます。
  104. 河村勝

    河村委員 総理、あれでは事務的な答弁でありますが、いまお話し申し上げたように、放送法の精神からいうと、許されるものではないのですね。電波法なんというのは、これは技術的なものです。放送法違反ということは憲法違反ですよね。そういうものがあってはいけないのです。実際アメリカがもう要らなくなった時期に来ておりますから、どうかひとつ、いますぐからでもこれを撤去する交渉を進めるということを、総理の口からお言いになるわけにはまいりませんか。
  105. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 河村君の御意見はよく伺っておきますが、ただいま言われるように直ちに交渉を始める、ここまでは言えないですね。まだいま皆さんの御審議をいただいているこの段階、過日委員会強行採決した、こういっている、そういうものでございますから、ただいま御破算にという、そういうわけにはいかない。しかし、先ほど来いろいろ論議がかわされているように、外国の放送が日本の国内においてある、これはなかなかむずかしいことだ。ましてや、ただいまのようなVOAというようなものになれば、これはよほど国際的、外交的なルートで決定さるべきもので、ただいま憲法論議がありますけれども、私は、そうでなくて、やはり外交上の交渉ごとだ、かように思っておりますし、また、そういうものが長く日本の国内にあるべき筋のものではない、これはわかりますけれども、そういう意味で、やはり絶えず連携を緊密にして、こういうものがわが国の法制からも了承される、こういうことはないでしょうが、とにかく存続する限りにおいてはそういうものであってほしい、かように思います。いずれにいたしましても、外交上の協定の問題でございますから、一方的にこれをとやかく言うわけにはいかない。御了承願います。
  106. 河村勝

    河村委員 時間がありませんのでこれで終わりたいと思いますが、防衛大臣せっかくおられるので、一つだけ、久保・カーチス協定の性格、これだけちょっと伺っておきます。
  107. 西村直己

    西村(直)国務大臣 久保・カーチスは、これは取りきめでございまして、協定ではございません。これは御存じのとおりに、沖繩が本土に復帰いたします、そうすると、わが国の国の作用あるいは責務といたしまして、陸上あるいは海上、あるいは防空、また民生協力のために自衛隊を配置する、これはもう当然の国の責務でございます。もちろん、やり方につきましては、いろいろこれは慎重な方法をとります。そこで、それを配置しますのにあたりまして、率直に申しますと、防衛力であるとか、アメリカは軍の作用でございます、したがって、かなり技術的なものが要るわけであります。また自衛隊自体も、一つの単位をもって、最小限の単位を組み上げていくに専門的な準備、知識も要る。それを円滑に運びたいために、アメリカの防衛当局、それから日本の防衛当局者の間で、技術的、事務的に円滑に運ぶためのメモと申しますか、取りきめというものをいたしているのがこの性格でございます。
  108. 河村勝

    河村委員 これはアメリカの上院では交換公文並みに扱われて審議をされておるし、とにかく、本来自主的に自分でやるべきはずの自衛隊を、アメリカとの何らかの取りきめでやるということに非常に国民全体が違和感を持っている。特に沖繩においては、それでなくても自衛隊に来てもらっては困るというときに、こういう形できめられているというところに非常な抵抗があるのですね。いま伺っておりますと、事務的な取りきめである。そうすると、政府は別段これに拘束されない、そういうものでしょうか。
  109. 西村直己

    西村(直)国務大臣 これは私のほうももちろん義務というような、日米間で義務をしょったとか、そういうものではございません。ただ、事柄があくまでもアメリカの従来施政権下であって、軍事に使っておった場所、設備、そういうものを使い、そしてただいま申し上げましたような特殊な専門的な知識も要る、そしてそれができれば引き続いてという、空白を置かないというような技術的な用意のためにやっております。私のほうとしては、法律上の義務をしょっているものではございません。
  110. 河村勝

    河村委員 そうしますと、今後三千二百人とかあるいは最終的に六千八百人とかいうような数字がございますが、そういうものも、実際の局地防衛、日本固有の局地防衛のためにそれだけのものは必要はないということになれば、それもどんどん減らすことも可能だ、そう考えてよろしいですね。
  111. 西村直己

    西村(直)国務大臣 もちろん、共同声明にすでに出ておるように、局地防衛は徐々に日本責任でやるという、あの共同声明に出ておりますね。そこでアメリカとしても、相当これは日本として局地防衛をやるということを見届けたいという強い関心は持っておると思います。したがって、われわれはああいうラインでいきたいが、一番大事なのは、国民の自衛隊でございますから、県民、国民の方々のできるだけ御理解を得つつやっていきたい、そういう中でいまの問題も含めてやっていかなければならぬ、こう考えております。
  112. 河村勝

    河村委員 私がいま伺ったのは、まず性格として、別段あれにとらわれないでこれから自主的に兵力等考えていって差しつかえない、そういう意味でお尋ねをしたのです。最後総理にちょっと伺いますが……。
  113. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、ただいま米軍がいる、それが自衛隊にかわる、こういう関係でございますから、あの久保・カーチス協定、そういうものはあってしかるべきだろうと私は思います。しかし、実際の実施部隊になれば、私ども政府としてこれは十分考えて、現地の地域の方々の十分の理解を得なければ、せっかく送りました自衛隊が反対を受けるようではこれはだめですから、そこらになお私どものなすべき事柄があるように思います。したがって、門衛隊としてそれぞれの、防衛庁自身が一つの計画を持つことは当然でありますけれども、その実態については政府としてもさらに十分検討いたしまして、現地の理解を深める、こういうことでありたい、かように思っております。
  114. 河村勝

    河村委員 質問を終わります。
  115. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 午後一時四十分再開することとし、この際休憩いたします。    午後零時三十五分休憩      ————◇—————    午後一時四十七分開議
  116. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  続いて発言を許します。渡部一郎君。
  117. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、末席にこうして質問する前に、質問するチャンスを与えていただきましたことにまずお礼を申し上げたいわけでありますが、この議論を進めるにあたりまして、深い遺憾の意を表さざるを得ないのであります。  十七日の日、同僚の楢崎君の質問の途中に、午後の三時十五分、本委員会において強行採決が行なわれました。このやり方というものに関しては、私たち末席にすわっている者にとっては、声も聞こえなければ内容も不明であるという状態のままに、後ほど御説明によれば、返還協定に関する採決を終了したとのことであります。  私は、まず委員長に対して、はなはだ深い遺憾の意を表さなければならないのであります。委員長は、従来、本院においては、むしろ自由民主党員の中にあって人格者をもって呼称された方であります。少なくとも議会民主主義の本道というものが何であるかは百も承知であり、重々わきまえておいでの方であると私は信頼もし、尊敬もしておった一人であります。  また、強行採決のきっかけをつくった青木君は、あえて名前を言うのでありますけれども、これまた有識の方であり、その今日までの経歴を考えてみるに、議会民主主義がどれほど大事なものであるかということは百も承知、二百も承知のはずであったはずであります。それなのに、何たる暴挙であったか。私はこれを考えるときに、血の逆流する思いを禁ずることができないのであります。  議会民主主義というものが、自分の意見を一方的に相手に押しつけるものであるならば、議会民主主義は要らないのであります。それは暴力で応酬すればよい。機関銃を撃ち、大砲を撃ち、射撃し合い、殺し合えばいいのであります。あえてそういうところはとるまでもない。政治が何で議会民主主義を今日まで発達せしめ、それを最高の権力を取り扱う方法として採択したかというならば、言うまでもなく、議会民主主義の中に、最も犠牲を少なく、最も大衆の動向を察し、最も大衆の意見を的確に把握する、そういう制度として最も優秀であると認めたからにほかならないのであります。しかし、その制度は、単に自分がそれを制度として自由かってほうだいに悪用することを続けるならば、その制度自体は崩壊に瀕するわけであります。議会民主主義の名をとりながら、今日に至るまで幾たび世界の歴史の中で議会民主主義が崩壊し、議会民主主義の名をかたりながらファッショ政権が登場し独裁化が横行したことでありましょうか。われわれはそういうことを断じて許してはならないのであります。  私は、先ほど総理がお話しになりました中にも、はなはだ挑発的な言辞があったことを悲しむものであります。総理は、あの民社党の同僚議員に対して何と言われたか。議論平行線になったら、この平行線になった議論にケリをつけるために断を下すしかないと、こう言われました。そして、その断というのは、横暴なる採決をもってあらわれたのであります。このような挑発的言辞を私は許すこと自体が、本院の名誉に対する重大な挑戦であり、侮辱であると言うしかないと思うのであります。  私がこのような初歩的な議論をあえて申し上げる理由は、少なくとも議会民主主義というものをわれわれが一番大事にしなければならないいまの時点であります。私たちは、沖繩県民の問題を扱い、そうしていま取り扱われているものは、沖繩県民だけでなくて、日本の将来すべてをここに論じているのであります。少なくとも日本がこれからどういう国家にならなければならないか、ここでは議論が続いていると思うのであります。その問題を取り扱う際において、かくのごとく議会民主主義の崩壊を来たすような暴挙というものは二度とあっていいものではない。  私は、国会に登場さしていただいたのは、足かけ四年前であります。しかし、それ以前から本院の議会民主主義というのは崩壊を続けてまいりました。安保国会しかり、日韓国会しかり、そうして社会保障に関するさまざまな法案に対する採決しかり、防衛二法に対する採決しかり、常に議論というものは徹底的に行なわれず、秒読み、時間読みスケジュール闘争が行なわれ、そして最後は、何ら重厚なる議論が行なわれないままに、いきなり強行採決が行なわれるというような悪いパターンができ過ぎてしまいました。もうこういうようなばかばかしいパターンというものを、こういうものを二度と後代に伝えてはならないということこそ、われわれが肝に銘じて考えるべきことではないでしょうか。私は、少なくともその反省の中から立つのでなければ、私たち共通の地盤というものが全くなくなってしまう。あとはいたずらに暴力へ暴力へと走る風潮に、われわれ自体がその暴力を肯定する作業をすることになると思うのであります。  表に、最近は爆弾事件が続いております。火炎びん闘争が続いております。その問題について、総理も、あるいは尊敬すべき閣僚の各位も、しばしば批判のおことばを述べられました。しかし、暴力にかわる政治体制が日本にいまあるのかどうか。その批判に対する反批判にこそ私はこたえなければならぬと思います。いまその問題を考えますときに、国会に行ったってしょうがないんだ、国会ではねたってサル芝居なんだ、国会議論は何を言ったって同じではないか、われわれが腕力をふるい、火炎びんをふるうしかないではないかという青年の叫び声にどうしてこたえることができましょうか。私は、十一月十七日の三時十五分という、このそれこそ汚辱に満ちたるあの強行採決は、二度と、本院の品位を傷つけるものとして、これは絶対に阻止しなければならないやり方であると思います。  私はきのうタクシーに乗りました。タクシーの運転手さんがこう言っておりました。十七日から二十二日までの間の五日間、その間本気で議論をやったら、議論はほとんど片づいたんじゃないでしょうかと、そのタクシーの運転手さんは言いました。本院において審議された時間は、総合計してみますれば、沖繩返還協定についてはわずか二十三時間四十四分と記録されております。寝ないで議論すればまる一日です。そして、空転したこの日数というものはすでに五日間であります。この五日目の本日を迎えるにあたって、何でこんなむだをしなければならなかったのか、私はもう一回こうした声なき声の庶民の叫びに対して、政治がこたえる責任があると思います。何でこんな妙なことをしなければならないのか、何でこんな意地の張り合いをしなければならないのか、私は考える必要があると存じます。そして、いたずらな挑発的なこういうパターン、そして衛視に囲まれながら退場された総理の心境と委員長の心境に対して、私はもうそれこそさげすみを覚えずにはおられないのであります。なぜかといえば、議論の府であるこの国会の中で、腕力によって守られ、腕力によってその意思を貫徹したという事実は、あなた方の政治的生命に重大な影響を与えるだろうからであります。私は、それは議員としての資格を放棄するものであったとしか断ずることはできません。  また、今回の強行採決はあまりにもひど過ぎた。日韓国会ですらも審議時間は十日でありました。しかし、今回は足かけ七日であります。あの日韓国会ですら、審議時間は三十三時間を記録しております。それに対して、今回は二十三時間四十四分であります。総理は日韓国会には十回お出になりました。そして今回はわずかの六回であります。質問者は、あのときですら十五人なのに、今回は十人、関連質問を含めて十二名であります。安保を論じるならば、六十年安保のときでさえも、審議時間は三十七日、時間は百三十時間四十六分、総理出席は三十三日間にわたったといわれております。質疑者は四十六人であったと伺っております。沖繩問題はいままで長い間議論されてきました。総合計すれば二百時間にも及ぶ議論が行なわれていると聞いております。しかし、協定が出されてからのこの議論はわずか二十三時間。少なくとも日本の運命をきめるものが、こんなやり方でよかったのか。私は、日本国民の前にわれわれがこたえなければならないことはあまりにも多過ぎると、もう一回申し上げたいと思うのであります。  私は総理にも重大な反省を求めます。私はテレビで、総理が衛視に囲まれながら退場していく姿をじっと見ていました。総理はうすら笑いを浮かべておられました。私はそのときに、あなたは何もわかってないなあと、もう腹の底から感じないわけにいきませんでした。総理、私は総理のことを頭からけなしているのではありません。少なくとも本院が国民にこたえるという原点に戻らなければならぬという点については、総理もおそらくは共感されることと私は思います。  私のきょうの質問は、単なる質問というよりも叱責であります。そして私たちは、もう一回この本院における委員会審議を常態に戻すためには、私たちの理性がもう一回常態に戻らなければならないと思います。少なくとも、人類が数世紀にわたってつくり上げたこの英知であるところの議会民主主義というものを守るためには、それこそわれわれは血のにじむ思いを今後もしなければならぬと思うのであります。  総理は、単なる総理ではなく、自由民主党の総裁であります。そして私は、総理あとを継がれるところのたくさんの次の総理、またその次の総理、おそらくは日本の政界に重大な影響を持つであろう自由民主党の皆さん方に申し上げておきたい。二度とこんなことはあってはならない。少なくとも、論議が平行線ならば断をたれなければならないなどというような暴言を吐くなんということは、総理としてあるべきものではないと私は申し上げたい。私は総理反省を求めます。こんなことでいいんでしょうか。こんなことで……。  私たちはここのところに同僚議員の空席を迎えております。この座席を見ていただきたい。私たちは、選出された数百人の議員は、全国民からの負託を受けてここへ登場いたしました。ここで扱われているものは全国民の主権であります。そして、それを代表して選ばれた者たち一人ずつが、その主権について十分に討議をし、十分に議論することこそ、われわれの大きな使命であったかと思うのであります。しかし、その主権を取り扱うには、代表者の数が足らないのであります。この社会党議員の席を見ていただきたい。この声なき声を見ていただきたい。私たちは、彼らの意見を封殺してここへ入れることのできなかったわれわれというものに対して、無力感を感じないわけにはいかない。私は、できることであるならば、本院においてほんとうに、意見の対立はあろうとも何をしようとも、この審議だけを尽くすというのがたてまえだと思います。そして、そのために私たちは全力を尽くして戦います。しかし、結論はこういう結論になります。  私の座席はあの一番最後部でありますが、最後部の一番かどの、曲がりかどのところには安里積千代君の席があります。彼は沖繩を代表してここにやってきました。そして、瀬長亀次郎君の席はこのうしろにあります。彼らは両名とも欠席せざるを得なかった事情を私は察してやるべきだと思います。沖繩県民は、どれほど大きな真心と愛情を込めて、多くの期待を込めて、そして、異なる政見を五人の代表に託して本院へ送ったのであります。しかし、その代表のうち、すでに二人は欠けました。そうして、彼らの空席は何を物語っているか。本院の決議というものが沖繩の心を一つも理解していなかったということを、彼らはその欠席をもって意思表示をしているのであります。私はこの席におる者として、この二人の欠席を重視せざるを得ない。少なくとも、あの二人にしゃべらすことすらできなかった日本のこの議会民主主義というものに対して、私たちはもう一回反省をするべきではないでしょうか。各党の意見の対立、各党のさまざまな意見の対立というものがあるのは当然のことであります。意見の対立は当然でありながらも、その意見の対立が沖繩県民の傷ついた心をさらに傷つけたという重大な事実に対して、われわれはいかに考えたらよいのか。私は、それに対する大きな反省と謝罪があってしかるべきだと思います。  そして、この大きな空席をかかえたまま、本院は協定委員会の続行をしようとしているわけであります。しかし、協定委員会における信頼は失なわれ、そうして本協定委員会における無数の前提が傷つけられたままであります。参考人を招いて意見を聞こう、こういう約束も確かにできたはずでありました。審議は十分に尽くす、質問時間は制限しないでやろうと取りきめたこともまた打ち破られました。要求資料は全部提出する、政府は何回もそう申しましたけれども、その要求資料もことごとくまだ出ておりません。そうしてまた、他の関係委員会との連合審査を行なうことも決定しながら、その約束も破られました。なかんずく、沖繩現地における公聴会は、たび重なる要求にもかかわらず、とうとうこの公聴会を開くことが不可能になりました。  沖繩県民の心というのは、平和を願う心であり、自治を願う心であり、人権を尊重する心であると、ある沖繩の方が言われました。私は、沖繩県民が平和憲法にあこがれて、日本国にほんとうの信頼を持とうとしている直前にあたって、この返還協定審議のあり方は、彼らのかすかに抱いた期待をむざんに打ち破るものであったことを私は悲しむものであります。  返還協定委員会のあり方というものが、今後の本土の沖繩政策のすべてを象徴するものであると、沖繩の方々はきっと受け取られることでありましょう。この悲劇的な事態を回避するために、私たちは本協定委員会出席してまいりました。空白国会に終止符を打ち、審議を再開し、少なくとも、ここにおいて沖繩のすべてが論議され尽くされたという実績をつくるために私たちはやってまいりました。そして、私たちの態度は前後一貫していないのであります。矛盾だらけであります。議会民主主義を打ち破った自由民主党になぜ協力しなければならないかという批判は、たくさん聞こえてまいっております。私たちはその多くの批判の中にここにやってまいりました。それは、沖繩県民の少しでも慰めになり、議会民主主義に対する一歩前進になればという、つらい気持ちを抱いてきょうはこうして立っているのであります。  私は、先ほどからひとつもおもしろくはない、憂うつな、憂うつな重苦しい感じであります。こんな重苦しい感じのままにいま私は審議を再開しようとしております。総理にも、委員長に対しても、また自由民主党の同僚諸君に対しても、閣僚の諸君に対しても私は申し上げます。これでいいのでありましょうか。私は、もう一回胸に手を当てて、今後の国会審議議会民主主義の基本的ルールの上に立たなければ、たとえここにおいてどういう法案が可決されようとも、私たちは沖繩の人人に顔向けのならない事態を迎えることでありましょう。そして、その法律は守れず、暴動に次ぐ暴動が沖繩県民の心をゆさぶり、そしてさらにひどくは、せっかく本土に復帰されたと思った沖繩が、形式の上だけであって、その実態というものははるかにお粗末な、心の離れた沖繩というものを迎えるだけのことになるでありましょう。愛情の通わなくなった家族というものは崩解するしかないのであります。そしてそれと同じように、心の通わない沖繩は、沖繩ではないのであります。それは、依然として米軍の軍政下に置かれているだけの沖繩にしかすぎないのであります。  私は破格な質問を続けてまいりました。質問というよりも、単なる私の意見の開陳のごとくに見える意見を述べてまいりました。私は、日本国民議会民主主義に対する深い絶望の感情をいまここに込めて述べました。そうして、沖繩県民の絶望しているこの感情を込めてここに申し上げました。私は、その意味で、総理並びに関係閣僚にしか御答弁が求められないのは遺憾であります。しかし、自由民主党の総裁としてのお気持ちもあわせてここに意見を表明していただくことを求めたいと思います。私は、その御見解を述べていただくことにすらためらいを感じております。総理ほんとう反省してくださるのであろうかどうか。先ほどの河村君との意見の交換を見まして、私は遺憾な気がしておるのであります。  いまや、私たち議会馬主主義を考え直す段階に来ております。そして、沖繩返還協定というもので一番大事なものは何だったか。私はこれだったと思い当たっているのであります。核兵器も大事でした。軍事基地、米軍基地をどう追い出すかという議論ほんとうに大事でした。しかし、沖繩県民の心をどういうふうに受け入れることができるか、それのほうがもっともっと大事なことでした。そして、日本国民議会民主主義に対する信頼を取り戻すことは、そのまた何十倍も大事だったと私は思います。いま私はこの議論を開始し、こうしてお話しをしているにつけましても、その大事な問題こそ、まさに本院の議論の冒頭に行なわれなければならなかったと痛感しております。残念な気がしております。どうか、深い反省を求めると同時に、一言の反省のことばを私は国民の前に要求するものであります。
  118. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま渡部君からるる御意見を述べられました。最も大事なことは、議会制民主主義を守ることと、同時にまた、あたたかく沖繩をわれわれ同胞が迎えることだと、かように言われたと思います。私は、議会制民主主義の過去の歴史におきましても幾多の汚点が流されており、またそれを守るためにお互いが努力してきた、しかし、なかなかその努力が報いられない、こういうような結果になっておると思います。  それについて、ただいま、ほんとうに声涙ともに下る、議会民主主義を守らなければならない、こういう御意見を述べられました。私は謙虚に、ほんとうに謙虚に、しかも静かに承ったつもりでございます。私の民社党河村君に対する答弁がけしからぬ、こういうおしかりも受けました。私は結論はあるいは急いでいたかもわかりません。しかし、少なくともただいまの渡部君の御意見については、私は謙虚に、しかもまた静粛に承ったつもりであります。われわれの当然守らなければならない議会制民主主義、その観点に立って深い反省もしなければならないと思います。この点、私は、渡部君から要求されたからではございません、口先で反省した、反省だ、これだけではもの足らないと思います。私は、議会制民主主義を守る、そのためにも、今後のあり方、それこそが最も大事なことだと思っております。  私は、公明党が一昨日の申し合わせによってこの場に御出席になったというその事柄について、感謝もいたしますが、同時に、非常な勇気ある行動だと、私は全国民が評価しておるのではないかと思っております。また、ただいまもるるお話しになりましたその御意見も、これ詳細にこの場を通じて国民に訴えられておると思います。私もまたそれに答えようとしておる。私は、何度も申しますが、謙虚にお話を伺った、そういう意味で、心から反省もしながら、今後の国会正常化について積極的に前進をはかりたい、かように思っている次第でございます。
  119. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は同じ御答弁を外務大臣に求めます。  私は総理の御答弁だけで、それに対してあまりにも信頼が欠除したことを、お答えを聞きながら感ぜざるを得ませんでした。そしてこの協定を通すために力を尽くしてこられた外務大臣が、本協定審議において多くの一番大事なものを傷つけてしまった責任者として、考えられなければならないと存じます。すでに本院において不信任決議案が出されました。それについて、一事不再議、すべて不問に付せられてはおります。しかし、外務大臣が決意されるところは私は重要であろうと存じます。一度とこういうことがあっていいのかどうか、その議会民主主義の原点に戻って外務大臣の御答弁を求めます。
  120. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は一議員といたしまして、国会正常化、民主的運営、これには格段な関心を持っております。私は、すでに自由民主党の幹事長といたしまして、そういう気持ちで、ずっと事に当たってまいりましたが、どうもなかなか私の思うようにいかない、一歩前進一歩後退、こういうような状態であったことを、私は今日もはなはだ遺憾としておるわけであります。  今回の本委員会運営、この運営は、私は、これは異常な運営だということ、これにつきましては、いま渡部さんの御指摘のようなことであります。問題は、こういう異常な状態を再び繰り返してはならぬ、そういう反省、これが大事だと思う。  私はいま静かに、この状態を見まして反省の念にかられておるわけでありまするが、これからの国会運営というものは、審議審議を尽くす、そうして議会制民主主義を守り抜く、こういうことでなければならぬ、こういうふうに思います。いま総理がその心情を吐露されましたが、結論的にいいますれば、私は総理と全く同じ意見であります。これからも十分御審議を尽くしていただきたいとお願い申し上げます。
  121. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、ただいまの御意見を幾ら聞いても心が晴れぬのであります。それは、今後において、強行採決というような、採決にあらざる採決を強行して国民との断層を深めることに対する深い反省がないことであります。この具体論なくしては反省とは認められないと私は思います。  それからもう一つ沖繩県民をどれほど深く傷つけたかということに関して、残念ながら、お答えの中には何一つなかったように私は存じております。総理のおことばはその点では無力であります。その無力さを総理はどう反省されておるか、私は追加してお答えを求めます。
  122. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど簡単に、あたたかく沖繩の同胞を迎えることだ、これが私どものただいまの決意だということを申しました。その点において、あるいは沖繩同胞の心情にまだつかみ得ないものがあるんじゃないか、こういう点でもっと反省、熟慮すべきだ、こういう御注意かと思います。  私は、総理になりましてから、沖繩を最初に訪問したのが、戦後の総理としては私が初めてでございます。私自身が、その場合に、沖繩本島ばかりではない、先島にも出かけました。そうして各地で私が見聞したものは何であったか、これが、あのいわゆる、沖繩の返還なくしては戦後は終わらない、こういうことばになったのでございます。これは私がつくったことばじゃありません。私が各地において沖繩同胞に接したときにみずからこのはだ身で感じたその気持ちであります。私はそれから長い年月、沖繩返還交渉にアメリカと取り組んでまいったのであります。いまようやく実が結んで返還協定に調印をし、皆さん方の御審議をいただいておる際でございます。いろいろ御不満もあるだろう、また御不安もあるだろう、これから返ったらどうなるだろうかというような不安もあるだろう、しかし、私は、何と申しましても、一億国民が一丸となって初めて沖繩県の再建も復興もここに実現ができるのではないかと思います。生活の改善もこれなくしてはできないように思っておるのであります。私は、そういう意味で、皆さん方に積極的な御審議の御協力をお願いしておるわけであります。  私のことばが不十分だ、こういうことでありますが、私自身が取り組んできた一番大きなこの仕事であります。私自身はほんとうにこの仕事をやり遂げたい、そのためには、個人でできることではありません、国民皆さま方の御協力なしには、まず第一にこの国会の承認を経なければ、御協力なければ、これできるわけではありません。私はいまなお皆さん方の積極的な御支援、御協力、同時にまた、政府の不十分な点については御鞭撻を賜わりたいと思います。そうして沖繩が祖国に復帰した上で、さらにわれわれの不十分な点を是正していこうじゃありませんか、これがいま皆さん方に申し上げ得る私の決意でもあります。どうぞよろしくお願いします。
  123. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 沖繩の返還協定というものの実態について、私は先回においてだいぶ議論をいたしました。そしてその沖繩返還協定というものは、返還協定という部分と新しい軍事条約という部分と二つあるというような言い方で、この内容についてきびしく論議をいたしました。沖繩の返還国民の多くの支持を得ながらも、返還協定に対する不満がたくさん渦巻いているのは何であったか。私は、ここに現代の問題点のことごとくが集約されておったと思います。少なくとも、この返還協定が無数の問題点を含んでおったということに関しては、それは総理自身がお認めになったとおりであります。基地は多い、特殊部隊はいる、しかも青年にとって理解されない、総理はその三つの傷をあげられました。その三つの傷は、明らかに本土並みなどというものとは全く違った大きな傷を沖繩に与えたことを示しております。そればかりではなく、沖繩のこの返還協定それ自体の中には、国民全体がどちらから見ても不満だという個所がたくさんありました。たとえば私の質問した中では、A、B、C、D表は実にずさんな検討しかされていないことが明らかになってきました。そしてこういうずさんな個所はそこらじゅうに見当たりました。こういう内容のものをそのまま通していいのか悪いのか、国民非難は多くあったわけであります。私はそれを思いますときに、単なる選挙演説のような荒い話ではなくて、こまかく見れば、何とかしなければならぬポイントはもうたくさんあったと思うのであります。返還協定とその付属のものを全部一括して持ってきてイエスかノーかというような検討を政府がなさるのでしたら、それは議会民主主義の成立案件にはならないと思います。そこで、よき意見はとり、まずき意見は排除するという雅量がなければならないはずでありました。そしてその雅量において欠除なさっておりました。  この返還協定審議の冒頭にあたって、ある新聞の論説は、沖繩返還協定に二者択一を迫るようなことでなく、少なくとも米軍基地を縮めるための何らかの付属的な取りきめはできないか、あるいは特殊部隊の存在に対して何らかのブレーキを今後かけ得るということが明らかにならないか、そういうような新しい点を米軍基地を洗い直すことによってやることはできないのか、そういったことこそ審議を詰めるべきではないかというような提案さえしておりました。私は、この沖繩返還協定に伴うそういう問題点がそれこそ明らかにされるためには、今後その論議を詰めなければならぬと思っていたやさきでありました。ですからこそ、逐条に一つずつ問題点を確かめにかかっていたところでした。しかし、強行採決で全部御破算になさいました。もはやこれでは論議ではない。イエスかノーか、そうした回答を迫るのは、戦争にしかあり得ないことです。少なくとも、野党の議論の中からは掬すべきは掬し、国民の不安の中から不安のおもなものを拾い上げていくという謙虚なる政治姿勢、それこそ謙虚なる政治姿勢が欠除していたことを遺憾ながら認めざるを得ないのであります。総理が何回も繰り返して言われました謙虚な姿勢は、少なくとも今日まではあらわれておりませんでした。そして政府の姿勢にはあらわれていなかったと、もう一回言わなければなりません。そして少なくとも明らかにされた国民の大きな不満、核の問題あるいは米軍基地の問題、VOAの問題、請求権放棄の問題、それこそ言語に絶するような大幅な譲歩というものをあえてした事情に対して、私は、それを回復するために今後それこそ血みどろの努力が行なわれなければならぬと存じております。したがって私は、もう細部について議論する意欲がありません。明らかに返還協定は重大なる傷を持っております。もはやそれは明らかです。今後その傷をどう取り除いていくか、そして今後この協定不満を表明している国民に対してどうお答えになるか、それをここで総括して述べていただきたいと存じます。
  124. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が沖繩を訪問したのは一九六五年で、六五年に占領状態に私は接したのであります。そうして沖繩同胞がどういう生活をしておられるか、たいへんその苦難の生活の一端にも触れるような気がいたしたのであります。その次に私がアメリカに参りましてジョンソン大統領と交渉したのが六七年であります。そのときに小笠原諸島は帰ってまいりました。私はその次、ジョンソン大統領と両三年のうちという約束を取りつけた。その取りつけたことによりまして、六九年にニクソン大統領との間で私は返還交渉の話をまとめることができたのであります。ちょうど六五年から六九年までずいぶん長い間の交渉であります。それから先のことを考えると、この六五年になるまで沖繩の方々はたいへんな苦労をなめてこられたのであります。申し上げるまでもなく、本土防衛の決戦の場となった、同時に、戦後これが占領されて、それの継続で、講和条約は締結されたけれども、サンフランシスコ条約の第三条によって沖繩の施政権はアメリカが持つようになったのであります。私は、この長い交渉の経過もやはり考えていただきたいと思う。  あまり時間をとるつもりはございませんが、ただ申し上げたいのは、私が取り組んでからでもすでに五年かかっておる、そういうことを申し上げたいのであります。私ども今回のこの交渉によって初めて日の目を見ようとしている沖繩祖国復帰であります。その準備がずいぶん不足だと、こういうことでおしかりを受けております。おりますが、私は、何よりもまず沖繩が祖国に帰ることだ、施政権を取り戻すことだ、そして本来あるべき姿にすることだと、かように実は思っておるのであります。そういう意味の御協力を皆さま方にお願いしておるのであります。  私は、核の問題については、この機会にはっきり言えると思います。祖国に復帰するときには核はない、核抜きでこれは帰ってくるということであります。また、先ほど来問題になっておる特殊部隊、この特殊部隊についてはいろいろの議論があります。しかし、安保のワク内においてのみ米軍の駐留あるいは施設、区域の使用が認められるのでありますから、在来とは今度は中身が変わってくると、かように私は説明してまいりました。しかもこれは、いわゆる事務当局の相談ではなしに、最高責任者同士の相談であります。大統領と総理、その間の約束であります。私は、そのとおりが実施される、実施されなければならないものだと、かように思っておる次第であります。私は、非常に困難なことだか——一どきにこれを減らすというわけにはいかないと思います。しかし、最近ベトナムの四万五千名撤兵というような話を聞くにつけても、やはり沖繩の米軍がいつまでもこの状態ではあり得ようとは思いません。また、米国の上院においてもいろいろ議論されておる。パッカード国防次官は説明しておるじゃありませんか。今度は安保の条約になるから、米軍の施設費その他を支払うこともなくなるんだ、みみっちい話だけれども、そういう計算までしておるじゃありませんか。せんだってのアメリカの財務長官訪日の際、二度目に私は会見を申し込まれた。どんな話をするかと思って非常に心配したのでありますが、そのときの話は、ベトナムから四万五千名が撤兵すること、それを閣議で決定した、この点をまず知らせる、こういう話でありましたから、まさか帰る米兵が沖繩に立ち寄るようなことはないだろうな、実はここまで話をしたのであります。一切さようなことはないから、心配しないでくれ、こういうことを実は申しております。  沖繩の方々が、ほんとうに直接の戦場になった。なるほど本土も空襲は受けました。しかし、米軍と直接戦うようなことはございません。しかし、沖繩ではその苦い経験があります。苦しい経験があります。したがって、さような意味からも、軍、基地について、また自衛隊が駐在することについても、ずいぶん疑問を持ち、不安を持っておる。これは私は、沖繩同胞の過去の戦争から受けたその傷あと、これはぬぐい去ることができないからじゃないかと思います。私は、一日も早く祖国に復帰して、そうして国内、本土と同じように地方自治体ができて、地方自治体を中心にし、これが復興をはかっていく、そうして繁栄への諸計画を進めていく、これが何よりも大事なことではないかと思います。  たいへん長くなって失礼いたしましたが、そういうような意味で、自治体ができれば、自治体を中心にしてやるんだ、しかし、自治体だけでできないこともずいぶんありますから、中央の政府はもちろんこれに力をかして、自治体の完全なる発意、同時にその発動を促す、そういうような意味で支援、協力をするつもりでございます。具体的には、なおそれらの点についてお尋ねがあれば、所管大臣からお答えいたします。
  125. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、返還協定の、あと残された部分について、その違憲性について申し上げておきたいと思います。これは記録にとどめておかなければ、やがて大きな問題になると思うからであります。  木協定四条の対米請求権は、ヘーグ陸戦法規などの国際法に違反いたしておることについては、すでに論議が出ているところでありますが、少なくともこの陸戦法規に違反しているという明白な事実は、憲法九十八条二項に定める「確立された國際法規は、これを誠實に遵守することを必要とする。」という項に違反するわけであります。同ヘーグ陸戦法規は、戦時においても占領軍は被占領地住民の生命、私有財産、宗教等を尊重し、不法行為によって国または個人が被害を受けたときはその賠償を請求できる。平和が回復したときは押収、使用したものを還付しかつ賠償する。さらに占領地が領土所属国に返還されるときは、原則として占領前の状態への回復が原則とされている。こういうような賠償請求あるいは使用したものの還付、あるいは原状回復という原則に関してこれらの国際法に定められている正当な請求権を一切放棄したことは、憲法九十八条に違反するばかりか、沖繩県民の財産権を侵害するものであり、憲法第二十九条に違反すると私は思うのであります。  また、このヘーグ陸戦法規だけでなく、文民保護に関するジュネーブ条約によりますならば、さらに占領軍はこのような被占領地の国民に対する大幅な保護に当たるものであり、少なくとも財産あるいは生命その他に関して重大なる危害を加えないように努力することが約束されており、しかもその請求権についてはこれを放棄しないことを約束しているのであります。このジュネーブ協定は一九四九年でありますから、つい最近のことであります。そしてこのつい最近のこと以後に行なわれた分だけを拾ってみましても、重大な問題がたくさんあるわけであります。数々の米軍人犯罪はこれに対する明白な違反であります。同百四十八条には、「違反行為に関し国が負う責任」を述べており、「締約国は、前条に掲げる違反行為に関し、自国が負うべき責任を免かれ、又は他の締約国をしてその国が負うべき責任から免かれさせてはならない。」と述べております。すなわち、請求権を放棄すること、請求権を放棄するように要求することは、ともにこの協定に関する違反であります。しかもこの中には明確に日本国及びアメリカ合衆国の代表によるサインがついております。これほど明らかな憲法違反並びに国際法違反に対して、もはや答えることばはなかろうと私は思います。ないならないでよいのであります。いかにひどい目にこの協定において日本があったかということが世界にわかるように言うことこそ、私たちのこれからの態度の第一歩であると思うからであります。私はこの問題に対する所管大臣のお答えを求めます。
  126. 福田赳夫

    福田国務大臣 請求権につきましてとったこの条約上の措置は、憲法違反とは考えておりませんです。ただ実態上、政策上の問題といたしまして、請求漏れという問題がある、これはこれからつぶさに検討いたします。これは国家において何らかの措置をとる必要があるという認定が出ましたものにつきましては、そのような措置をとるという考えでございます。
  127. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ただいま福田外務大臣が憲法違反ではないと述べられたことは、これから先において福田さんの政治生命にかかわると私は思いますよ。よろしいですか、それで。そういう荒い答弁で。私はおどかしているわけでも何でもないけれども、そういう乱暴な御答弁をなさるのは控えられたほうがいいのではないでしょうか。
  128. 福田赳夫

    福田国務大臣 憲法上の問題はただいま申し上げたとおりでありまして、なお必要があれば法制局長官、また、ジュネーブ協定との関連で必要がありますれば条約局長からお答え申し上げます。
  129. 井川克一

    ○井川政府委員 先生のお示しなさいましたヘーグ陸戦法規及び一九四九年の戦時における文民の保護に関する条約、いずれも戦時における適用条約でございます。そして沖繩に関しましては、現在国会に御審議願っておりますのは返還協定でございまして、返還協定のまさしく第四条に、二項で、引き続き請求権が認められるもの、三項に、新しく認められるもの、そしてそれ以外のものについて四条一項で放棄しているわけでございますが、これらのものは、いずれにいたしましても、平和条約後の第三条地域になりましてからの問題でございます。そしてその前の問題、戦時中のもの、ましさく陸戦法規及びジュネーブの文民保護条約が適用される部分につきましては、平和条約第十九条ですでに解決されている問題でございます。
  130. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ただいまのような御答弁をアメリカ政府にかわるかのごとくお話しになることにつきまして、私は深い遺憾を表明するものであります。  次に、私は、同沖繩返還協定第五条、米軍施政権下に行なわれた裁判の効力について、民事、刑事ともに原則としてそのままに有効と評価し、日本国がその効力を引き継ぐことをきめた問題に関しましては、公平な裁判を受ける権利を保障した憲法三十二条以下の規定に違反するものであり、日本の独立と主権を侵すものであって、全く認めることができないのであります。すなわち、奄美大島返還協定とこの協定を比べてみただけでも、刑事裁判については、奄美大島返還協定でさえも、これは裁判を全部やり直して、刑事裁判権については本土に移管したという前例があります。しかるに、奄美大島のほうと全く違った態度をとって、沖繩については民事、刑事の裁判権を放棄し、従来の民事、刑事裁判の結論というものをそのまま承継するということは、明らかに憲法違反の疑いが濃いと思うのであります。  すなわち、この沖繩において行なわれていた布令に基づく刑法は、何よりもその軍事性に特色があり、罪のほとんど半ばは安全に反する罪であり、憲法三十一条に基づく罪刑法定主義の精神に反し、言論、表現、出版、報道、集会、結社等の自由を著しく制限する可能性を含んでおることを、すでに日弁連の報告書等において表示しております。たとえば、米国政府を武力をもって顛覆することを主張する勢力、組織の利益のために偵察行為をする罪であるとか、この場合の偵察行為のあいまい性であるとか、あるいは公の騒乱、暴力行為に導くと思量される行為のあいまい性であるとか、合衆国または民政府に対する文書誹毀であるとか、未登録政治団体の政治行動に関する制限であるとか、ワイヤー、ケーブル所持に関する罪であるとか、極端なる推定と挙証責任の転換であるとか、あるいは米軍要員たる婦人の強姦またはその他の暴行罪の刑がその他の米軍人、軍属の場合に比し著しく重いことであるとか、本土刑法とその内容をきわめて異にするものであります。かかる裁判権の内容の大幅な差というものは、住民に対して大きな問題点を含むと思われるのであります。  しかも、法制局長官がそこにおられるので、あえて法制局長官の言を引いて申すのでありますけれども、前に法制局長官が——それはまたあとで述べるとして、奄美大島返還協定における裁判の問題については、奄美群島での琉球政府裁判所すなわち巡回裁判所の判決は、終始、連合国軍に隷属する琉球政府裁判所の裁判であり、外国の裁判に準ずるとして、刑法五条を準用したのはわが最高裁であります。このような前提は何を意味するかといえば、琉球政府裁判所の判決の効力を否認したものであります。一方ではこれを否認し、一方ではこれを承認するということは、まことに不穏当のそしりを免れないものでありまして、このようなバランスのとれない、むしろ、率直に言うなら、でたらめな裁判権の処理というものは、とうていあるべきものではないと思われるのであります。  したがいまして、この問題に関して法務大臣または外務大臣の権威ある御答弁を記録にとどめたいと思いますので、御答弁をいただきたい。
  131. 福田赳夫

    福田国務大臣 法務省のほうからお答え申し上げます。
  132. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 お答えいたします。  奄美大島ではやり直し方式をとりました。ところが、今回はそれをとっておりませんのは、御承知のように、占領後あるいは施政権をゆだねまして以来、相当の期間がたっております。そこで沖繩にはそれなりに法秩序ができております。それをいまやり直すということになりましたら、かえって法的な安定性を害し、そしていろいろな混乱を生ずる。したがって、一応は全部引き継ぐわけでありますし、また引き継がなければ、今度は直前のいろいろな問題が混乱を来たす、こういうことになるわけであります。ただ、引き継ぎました後に、また引き継ぐにつきましても、政令で、公序良俗に反するというようなものは引き継がないことにいたしておりますし……(渡部(一)委員「それは民法だけですね」と呼ぶ)ええ。また、現在国内で行なわれておりますいろいろ減刑とか、あるいは恩赦あるいは再審の制度、そういうものを十分に生かして活用するならば、私は、何ら御心配になる点はない、かように考えておるわけであります。
  133. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 いま法務大臣のお答えになったのは、相当荒っぽい議論をなさいました。私は刑法のことを伺ったら、途中から民法のことを御返事になりました。大臣、そういう御答弁ではあとで恥をおかきになりますよ。もうちょっとちゃんとお答えになりますように。御答弁がでなきないら、私は、局長が御答弁くだすったほうがいいと思います。
  134. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 ただいまの裁判権の引き継ぎでございますが、刑事裁判につきましては、もとより、これは原則として刑事裁判権を引き継ぎ、刑事裁判の効力を認めるわけでございます。そのうちで、ただいま御指摘になりました沖繩の布告、布令犯の一部というようなものにつきましては、日本の刑事司法の基本的原則という点から問題がある条項もあるようでございますが、そういうものにつきましては、引き継ぎ後こちらで裁判いたします場合には、そういう布告の効力を認めないという措置を特別措置法案のほうで規定をいたしております。さらにまた、先ほど法務大臣が答弁されましたように、具体的な案件に応じ、著しく妥当性を欠くものであるとか、そういうものにつきましては、日本の法に基づきまして再審の手続を認めるとか、あるいは恩赦法の適用を認めるとか、かような措置を特別措置法案において講じておるわけでございまして、かような措置と相まちまして、この刑事裁判の引き継ぎは、終局的には具体的に妥当な措置になるものと確信をいたしておるところでございます。
  135. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それは、法律的な答弁を求めたのに、政治的な答弁をまずされたわけであります。要するに、こまかい特別的な措置を講じて、そして裁判の有効性、刑事裁判の不当性というものを何とか救済するという言い方であります。私が述べているのは、この憲法上の条項に照らしてみましても、刑事裁判の有効性をそのまま認めたということは、日本の主権の侵害であり、許すことのできない日本憲法に対する侵害であることを述べているわけであります。私は、こうした立場というものをそういう形でしかお答えになることができなかったことを記録にとどめて、そして次に移りたいと存じます。  私は、次に、第六条の問題に移りたいと存じます。  「琉球電力公社、琉球水道公社及び琉球開発金融公社の財産は、この協定の効力発生の日に日本政府に移転し、また、これらの公社の権利及び義務は、同政府が同日に日本国の法令に即して引き継ぐ。」こういう問題について申し上げておきたいと存じます。  先日すでに水道公社の財産内容について伺いましたところが、非常に不明確な御答弁が相次ぎまして、大きな不安がございました。きょうは電力公社の問題について一言申し上げておきたいと思います。  電力公社の範囲は一体どこからどこまでで、どこからどこまでを返還されるのか、その点について明確であるかどうかを伺います。
  136. 福田赳夫

    福田国務大臣 政府委員からお答えいたさせます。
  137. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 お答えいたします。  琉球電力公社の日本国に移転されます資産は、公社の積極財産及び消極財産全体でございます。
  138. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ただいまお話しになりましたのは、いいかげんな答弁の見本であります。すなわち、電力公社というものはどこからどこまで持っているのか、あなたは御存じがないようでありますから、私はめんどうくさいから表でお話しいたしましょう。  ここに持ってまいりましたのは沖繩の電力系統図であります。いま電力公社が持っておりますのは、電気をつくる部分と、そしてその配給する部分との両方の機能がありまして、黄色くなっているのが配給部分であります。この配給部分を見てくださればわかるように、一番もうかりそうな沖繩本島の中部、南部は幾つかの配電会社によって配電されておるわけであります。すなわち、名護配電、中央配電、比謝川配電、松岡配電、沖繩配電、こうなっております。そうして離島の配電を引き受けているわけであります。ここでの問題点はこの前の水道公社の分とは違う。ここの電力系統についてはこちら側に移管されることにほぼきまっております。  ところが、ここで問題点は次のポイントであります。お金の問題なのであります。ここの電力の諸設備というのは非常に古くて、そして直さなければならないものであります。ところが、この地域におきましては電力に税金がかかっておりません。また、石油が本土より三〇%安いという状況にあります。したがいまして、この琉球の電力公社は相当の資産を持っておるわけであります。ところが、アメリカはこの資産に対しましてどういうことをやったかというと、この返還協定ができてから、その資産の中からお金を充てまして米軍の電力料金を削減したのであります。そうしてその上にこの配電会社、幾つかの配電会社を買うための費用を——約九十万ドルと称せられておりますが、その九十万ドルの費用をこの配電会社から払わせているわけであります。これはどういうことかというと、返還協定が終わってから日本の財産となるべきものに対して、アメリカはその中の財産を奪い取って自分のほうの電力料金を下げ、そしてまた諸設備の改善ということをやろうとしないで、どんどんやっているという事実を示しておるわけであります。これでは返還協定で幾ら何億ドルときめたところで、含み資産の、買い取り資産の料金はますます高くなると同じ結論を招いているわけであります。こんなでたらめなことが許されていいかどうか、こういう抜け穴が返還協定にあるということに対してどう思われるか、外務大臣、御答弁ください。
  139. 福田赳夫

    福田国務大臣 その辺の具体的な事情承知しませんので、政府委員からお答え申し上げます。
  140. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 資産の内容を詳しく御説明いたしますと、ただいまお話がありましたように、琉球電力公社の発電施設は、現在牧港発電所、金武発電所、北谷発電所、新牧港発電所と四カ所ございまして、これは私どものほうでは、その取得年月日を見まして、現在これを取得する場合は幾らかかるかという再調達価格を出しまして、それから取得時点から復帰時点までの減価償却相当額、こういうものを控除いたしまして現在の価格を評価したわけでございまして、たとえば牧港発電所は非常に古いじゃないかというお話でございますけれども、この辺は十分減価償却を落としております。それからまた、送電施設でございますが、おっしゃいましたように、現在百三十八キロボルトの送電線、変電所、それから六十九キロボルトの送電線、変電所、それから十三・八キロボルトの配電線あるいは変電所、いろいろございます。こういうものを全部ただいま申し上げましたようなことで評価したわけでございます。
  141. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ただいまの政府委員の御答弁は、御答弁になっておりませんですね。私はそんなことを聞いておるんじゃない。そういうぼろいものだから、それを現在の資産で直すというならわかると言っているのです。ところが、そういうことに使わないで新たなる配電会社の買い取り、それは当然米軍側でやるべきことを、そのお金からやらす、そして米軍の配電料金をその後ぐいと下げた、こういうことをどう考えておるんだ、こう言っているのです。  しかも、ついでにもう一つ申し上げておくのですけれども、全然お調べになっていないものだから御答弁ができないでしょう。何にも大事なことを調べていないんだもの。私はもうほんとにいいかげんなのにあきれておるのです。この間水道料金の値上げ問題があったのです。総理、よく聞いておいていただきたい。そうしたら、その水道料金の値上げに対して現地でいろいろな反対運動もあったわけでありますが、水道料金に対する評価というものは、ことごとく赤字というものに対しては調整をしないで、赤字はうんと積み上げておいてそのまま日本政府に渡すというふうに米軍側は話をきめております。また赤字がふえて返ってくるわけであります。それは返還時点までのいろいろな問題点は幾つかあるわけでありますが、そういう形でアメリカ軍が一つずつ一つずつきたならしいお金もうけの手段をやっておるという事実、そしてこちらのえらい人が何にもそういうことがわかっていないという事実、こればかりはもうどうしようもない。  私は、この問題についてもう一つ申し上げておきますが、大体この資産の引き継ぎについてはいろいろ問題点があり過ぎたと思います。すでに、これについては、ガリオア、エロア資金に基づく援助に基づいてこれはできたものでありまして、御承知のとおりであります。ところが、当時の米琉球軍司令官あてのリッジウェー米極東軍総司令官指令の中のガリオア資金についての部分、D−(3)−Gにおいては、「疾病および社会不安の防止、同地方の統治および経済復興のために使用された資金を米国に払い戻させるために、琉球人に負担をかけることを期待してはならない」と、すでに言明が行なわれております。また、米国の会計検査委員会における陸軍長官の発言は、「これらの資金は琉球の人たちのために考えられ、また使用され、さらに琉球の人たちのために保有された信託勘定といった性質のものであり……米国財務省の所有する外国資産だとは思わない」と、こう明確に述べております。また、前の法制局長官だそうでありますが、林修三さんは、ガリオア資金の債務性というものはもうないんだ、「ガリオア見返り資金は統治権行使者としてのアメリカ政府が、民生安定のために当然に支出すべき性質のものであったといいうるであろうし、法的に返済義務はないものと考えてよい」と、沖繩タイムスに述べております。  このような見解を考えますならば、これらの問題に対して重大なる譲歩であったといわざるを得ないわけであります。そこへもってきて、なおそのようなきたならしい資金かせぎをする実態に対して、政府は当然重大なる抗議を表明するのがあたりまえのことであると思います。十円でも百円でも節約の対象とするべき日本政府の行政あるいは司法が、こうしたものに関してこのようなゆるみ方を示しているということに対して、私は深い遺憾の意を表明せざるを得ないのであります。ガリオア、エロアの問題に関してはおそらく意見が違いましょうけれども、少なくともそれだけの問題性のあるものが、さらにきたならしい資金かせぎのそれこそ手づるになるということは、とうてい認めるわけにはいかぬと私は思うわけであります。  その上に、これはもう御答弁は要りませんが、次の問題に移りまして、第八条におきまして、ヴォイス・オヴ・アメリカというものについて結んだということは、そしてこういうような、ある国を敵視するような意図のもとに放送を行なうということは、謀略放送というように言われたとしてもやむを得ない、少なくとも世界のすべての国国と仲よくしていき、関係を良好ならしめようという日本外交の基本的方針に違反するものであると考えるわけであります。  総括して私は最後に申し上げておきたいと思います。これらについてはすでに論議されたところであり、同僚議員の論議がありましたので、このVOAの問題はこれでやめます。  最後に、私は申し上げたいと存じます。  私は、公明党を代表してここに立っているわけでありますが、この返還協定に対して、少なくとも日本国民の相当部分を代表して深い遺憾の意を表するものであります。すなわち、第一条における沖繩の返還に対してはこれを了とするも、前書きにおけるところの、沖繩の返還というものが共同声明の基礎の上に行なわれたという表現をとっておりますがために、あるいは台湾あるいは韓国というような諸国との間の実質的な軍事的連携を深め、しかもその上に、二条以降はことごとく日米間の大きな新たなる軍事的協定であって、この協定を結ぶということはわが国にとって大きなマイナスになったということを明らかにしたいと思うのであります。  そうして、この協定に関して、私たちは、沖繩返還という名のもとに行なわれたこの協定の内容の大きな危険性を今後も凝視しつつ、日本のあらゆる部面にわたって、この問題を、さらにこの危険性を取り除くためには今後大きな努力とくふうが要ることであろうと思うわけであります。私もまたそれに大きく努力をしていきたいと考える一人であります。そうして今後、政府におきましては、本協定にあるさまざまな問題点に対して、今日までのような及び腰ではなくて、全力を尽くして取り組み、この不平等性と不利益性、少なくとも世界の平和に対する重大なるマイナスとなるものを取り除いていくために全力を尽くされんことを要望するものであります。  それでは、私の質問は終わります。
  142. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 この際、暫時休憩いたします。    午後三時三分休憩      ————◇—————    午後四時五十分開議
  143. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、沖繩返還協定に関連して、自由民主党、公明党及び民社党を代表して、自由民主党の西銘順治君、公明党の西中清君、民社党河村勝君から、本委員会において決議を行なうべしとの動議が提出されました。  提出者から趣旨の説明を求めます。西中清君。
  144. 西中清

    ○西中委員 私は、自民、民社、公明の三党を代表いたしまして、提案の趣旨を説明いたします。  本委員会における協定審議の過程において種々なる問題点が指摘されました経緯にかんがみ、本委員会として次の決議を行なわんとするものであります。  決議案の文案を読み上げます。    非核兵器ならびに沖繩米軍基地縮小に関する決議(案)  一、政府は、核兵器を持たず、作らず、持ち込まさずの非核三原則を遵守するとともに、沖繩返還時に適切なる手段をもつて、核が沖繩に存在しないこと、ならびに返還後も核を持ち込ませないことを明らかにする措置をとるべきである。  一、政府は、沖繩米軍基地についてすみやかな将来の縮小整理の措置をとるべきである。   右決議する。   〔拍手〕  以上であります。  皆さま方の御賛同あらんことをお願いいたします。
  145. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  146. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 本動議について別に発言の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  西銘順治君外二名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  147. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 起立総員。よって、本動議は可決されました。(拍手)  本決議の政府に対する参考送付等の手続は委員長に御一任願います。  この際、政府より発言を求められております。これを許します。外務大臣福田赳夫君。
  148. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいまの御決議に対しましては、政府といたしましてもこれを尊重し、これが実現に最善の努力を尽くす決意であります。  なお、特に非核三原則につきましては、本土、沖繩を通じこれを実忠に守り抜くことをここにあらためて声明いたす次第であります。(拍手)
  149. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 内閣総理大臣佐藤榮作君。
  150. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 非核三原則を遵守することは、すでに繰り返し申し述べているところでありますが、このたび本委員会における決議の採択にあたり、政府として非核三原則を遵守する旨をあらためて厳粛に声明するものであります。  また、沖繩県民の心情を考慮し、返還時に核抜きがさらに明らかにされるよう適切な措置を考究いたしたいと存じます。  核の持ち込みに関しましては、本土、沖繩を問わずこれを拒否することは、政府が従来から明らかにしているところでありまして、この機会にあらためてこれを確認するものであります。  沖繩における米軍基地の整理縮小につきましては、復帰後すみやかに実現できるよう、現在からこの問題に真剣に取り組む方針であります。  ここに政府考え方を明らかにしておきます。(拍手)
  151. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 一言申し上げます。  本委員会の本会議報告の際に、ただいま御決議のございましたこの件をあわせて報告することを御了承いただきたいと思います。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時五十五分散会