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1971-11-16 第67回国会 衆議院 沖縄返還協定特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十一月十六日(火曜日)     午前十時八分開議  出席委員    委員長 櫻内 義雄君    理事 青木 正久君 理事 小沢 辰男君    理事 西銘 順治君 理事 福永 一臣君    理事 渡辺美智雄君 理事 大出  俊君    理事 中谷 鉄也君 理事 西中  清君    理事 河村  勝君       上村千一郎君    加藤 六月君       梶山 静六君    唐沢俊二郎君       北澤 直吉君    小金 義照君       小坂徳三郎君    左藤  恵君       塩川正十郎君    高鳥  修君       竹内 黎一君    中島源太郎君       中村 弘海君    中山 正暉君       永田 亮一君    野田 武夫君       浜田 幸一君    福田 篤泰君       古内 広雄君    別川悠紀夫君       松野 幸泰君    松本 十郎君       山崎平八郎君    山田 久就君       上原 康助君    堂森 芳夫君       楢崎弥之助君    堀  昌雄君       松本 七郎君    安井 吉典君       横路 孝弘君    林  孝矩君       正木 良明君    渡部 一郎君       曽祢  益君    松本 善明君       安里積千代君    瀬長亀次郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 前尾繁三郎君         外 務 大 臣 福田 赳夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 高見 三郎君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         通商産業大臣  田中 角榮君         運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君         郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君         労 働 大 臣 原 健三郎君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣 渡海元三郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      中村 寅太君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 西村 直己君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      木村 俊夫君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大石 武一君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛施設庁長官 島田  豊君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省条約局長 井川 克一君         大蔵省理財局次         長       小幡 琢也君     ————————————— 十一月十五日  沖繩返還協定批准反対に関する請願(阿部助  哉君紹介)(第一五六九号)  同(大出俊紹介)(第一五七〇号)  同(勝澤芳雄紹介)(第一五七一号)  同(金丸徳重紹介)(第一五七二号)  同(小林信一紹介)(第一五七三号)  同(田代文久紹介)(第一五七四号)  同外二件(田畑金光紹介)(第一五七五号)  同(土井たか子紹介)(第一五七六号)  同(広瀬秀吉君外一名紹介)(第一五七七号)  同外一件(中谷鉄也紹介)(第一五七八号)  同(東中光雄紹介)(第一五七九号)  同(柳田秀一紹介)(第一五八〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリ  カ合衆国との間の協定締結について承認を求  めるの件(条約第一号)      ————◇—————
  2. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 これより会議を開きます。  琉球諸島及び大東諸島に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑を続行いたします。渡部一郎君。
  3. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は、本日は、沖繩返還協定それ自体につきまして、逐条的に問題点を明らかにしたいと存じます。  沖繩返還協定は、その沖繩返還の事実と相まって返還協定といわれているわけでありますが、私は、この返還協定を逐条的に申し上げる前に、私の立場を明らかにしておきたいと存じます。  返還協定に対して、わが公明党はこれに対して反対の意向を持っております。  その内容は何かと申しますならば、沖繩返還が、確かに返還が行なわれる第一条に関して私たちは異議を差しはさむところはないわけでありますが、少なくともその前文、少なくともその三条以降については、明らかに軍事的な取りきめを優先するものでありまして、返還協定というよりも、むしろ新たな軍事条約であると言ったほうが適切にその内容をあらわすものであると考えるわけであります。このような批判については、当然、総理や、あるいは外務大臣総務長官は、御自分でみずからその条約を知悉しておられる関係上、性格については十分御存じであろうかと私は思うのであります。返還協定が、ほんとうの意味でどういうものが返還協定らしい返還協定であるのか、あるいは返還協定であるべきものかというものについての、正式な、それこそ返還協定本体論のようなものは今日まだあるわけではありませんから、当然、返還協定内容にあたって多くの妥協的条項が含まれるのもまたやむを得ないという議論も成り立つかもしれません。しかし、ここで私たちが拝見するところでは、返還協定それ自体においてはあまりにも多くの妥協が行なわれ、あまりにも多くの譲歩を日本側がせざるを得なかったという点について、まことにその将来に残す問題点というのは大きいものである。日本は明治初年以来数々の不平等条約で悩まされ続けてまいったという法制上の歴史があるわけでありますが、この返還協定は、そのたび重なる不平等条約の中でも特別にひどいものではなかろうか、こういうふうに考えるわけであります。したがいまして、私たちといたしましては、この返還協定返還部分についてはそれは賛成することはもちろんできるのでありますが、他の返還協定と称するものの中に含まれている新たなる軍事的取りきめとその日本国土に対する強制に対しては、私たちは多くの批判を持たざるを得ないことを申し上げたいと存ずるわけであります。  私は、このようなものの中で特に注目しなければならないのは、沖繩返還協定前提になった共同声明の第七項であります。この共同声明の第七項におきまして、総理大臣は、「沖繩施政権返還は、日本を含む極東の諸国の防衛のために米国が負っている国際義務効果的遂行の妨げとなるようなものではないとの見解を表明した。大統領は、総理大臣見解と同意見である旨を述べた。」このように明記されておるわけでありまして、おそらくはこの部分が最も大事な部分であろうかと思うわけであります。すなわち、この返還協定に基づいて、返還協定前提となった共同声明の七項に示されているとおり、沖繩返還協定は、まさに返還協定とは名のみであって、新たなる軍事対決を東洋の各地に巻き起こす多くの危険性があることを私は指摘せざるを得ないわけであります。  その意味で、私は返還協定内容につきこれからいろいろと申し上げたいと存じておるわけであります。  まず、返還協定について、私は、総括して内閣総理大臣外務大臣国会でお述べになりましたそのおことばにつきましては一応伺ったわけでありますが、返還協定をどう見ておられるか、まず一番話の出だしといたしまして、お二人から、返還協定をみずから、単なる選挙のときにお話しになるような調子ではなくて、真実にどう見ておられるか、今後それについてもう一〇〇%何も言うことがないとおっしゃるならまた別でありますけれども、今後どうしたいと思っておられるか、率直な御意見をまず伺いたいと存じます。
  4. 福田赳夫

    福田国務大臣 しばしば申し上げておりますように、沖繩は島をあげて戦場化した、また、百万県民はその過程においてたいへんな御労苦を受けられた、しかも、いくさが終わりましてからも四半世紀の間異民族支配下にあった、一刻も早くわが国復帰してもらわなければならぬ、こういう念願が本協定において整った、こういうふうに見ておるわけであります。  ただ、復帰後においてこの協定を実施してみる場合におきまして、いろいろの不平不満、これがあることはよく承知しております。しかし、この不満不平というものは、これは返還が実現をされるということによって有効に解消していく、そういうふうに思います。返還が長引く、そういうことになりますと、これらの処置は非常にむずかしくなり、また長引くと、こういうふうに見るのでありまして、私は、日本国にとりましても、百万沖繩県民にとりましても、協定が早くでき上がる、多少のきずはありますけれども、協定が実施に移される、これが何よりも最善の措置である、こういうふうに考えます。
  5. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 外務大臣がただいまお答えいたしましたから、なるべく重ならないように申し上げます。  本来、沖繩本土と切り離されるべき領土ではございませんし、また、ここに住んでおる県民は、これまたみんな日本人であります。私はそういうような前提を十分わきまえ、これがなぜアメリカ施政権下に置かれているか、そのことに思いをいたさなければならないと思います。これがサンフランシスコ条約第三条だ、あるいはその前に戦争が行なわれた、そうしてこれが本土防衛の第一線になり、全島あげて焦土と化した。当時は百万ではございませんが、全島民あげて戦禍をこうむった、十四万の死者を出した、たいへんな犠牲でございます。三分の一だといわれておる。そういう状態で苦難をなめてきたこのわれわれの日本領土の一部、しかも、それが戦後においては、異民族アメリカ施政権下において長い苦しみを続けてきた、こういう事柄を考えると、私ども、県民の熱願、同時にまた、日本国民全体としても、ぜひとも早く返したい、かように念願するのは、これは当然でございます。  渡部君もただいま、それらの点については理解でき、あるいは同一の意見であるというような発言であったろうかと私は受け取ったのでありますけれども、しかしながら、その取りきめがどうも気に食わないことが多いとか、新しい軍事協約になっているのではないかとか、こういうような御指摘でもありました。私は、いまの祖国復帰協定返還協定そのものが、いま言うようないきさつから生まれてきておる、そこらに現実上無視できないものもある、それがあるいは妥協の産物であるかもわからない、こういうことをも言わざるを得ないのではないかと思うのであります。しかし、基本的な考え方、その基本的考え方は何か、本土並み、核抜き、早期返還、これはこれによって実現される、私はかように思いますので、その点の御理解をぜひともいただきたい、かように思う次第でございます。
  6. 渡部一郎

    渡部(一)委員 まずお二人の御説明につきましては、これは保管しておきまして、あとで話を詰めさせていただきたいと思うのですが、総理府総務長官に、ひとついまと同じ問題について、まず話の論議を進める前に伺っておきたいと思います。
  7. 山中貞則

    山中国務大臣 沖繩人たちの期待にこたえるために、今回の返還協定、これは完全にその意思に沿うものであるかどうかということであれば、今日沖繩の県内において世論がまつ二つに割れて議論が展開されておりますとおり、問題なしとせざるを得ないところでありましょう。   〔委員長退席福永(一)委員長代理着席〕 これが日本の国家の自分意思によってすべてが解決できるものであるならば、おそらく、沖繩人々にとっては、戦前の姿の沖繩というものを私たちは実現させることが可能であったし、また、そうすべきであったろうと思います。しかしながら、日本が第二次大戦に敗北し、そして沖繩は敗戦前にすでに完全に占領されてしまったというような現実から、サンフランシスコ条約においても、四囲の情勢どうにもならなかったとはいえ、沖繩県民のみが切り離されまして、そうして今日の状態においていま返還を迎えようとするわけでありますが、総理外務大臣の言われましたとおり、私自身としても、とにかく祖国の手に早く抱き取って、そして沖繩人々のこの長い間の苦しみについて、われわれは、内政の面からも、また、さらに今後アメリカを中心とする外交の面からも、沖繩人々考え方沖繩の人の希望というものを最重点に取り上げて、すみやかに沖繩の方々がこれでよかろうというところまで努力をしなければならないものがまだなお残っている、そのためには、政府というものも、あるいは本土のすべてのものが沖繩に対して償わなければならないものがなおたくさん残っているんだということを私は感じております。
  8. 渡部一郎

    渡部(一)委員 次に、今度は、話を始める前に福田外務大臣にまず認識を伺っておきたい。  沖繩は御承知のようにアメリカ軍占領されたわけであります。これはアメリカの国であったのか、日本の国であったのか、あるいは一時的に占領されておったのか、施政権は一体どうなっておったのか、その辺のところを、外務大臣の御自分言い方で、ずっとひとつ法的な立場をどういうふうにごらんになっておるか、お答えいただきたいと思います。
  9. 福田赳夫

    福田国務大臣 アメリカ占領が続いている間はアメリカ占領下にあった、こういうふうに理解しております。また、平和条約が発効し、アメリカ施政権下に移されたわけでありまするが、その時期から今日まで、立法、行政、司法、すなわち施政権、これが沖繩においてはアメリカに移った、そういうふうに理解しております。
  10. 渡部一郎

    渡部(一)委員 外務大臣、少しお話が荒ぽいようですが、まず第二次大戦中に沖繩においては沖繩戦が行なわれました。そのときに、占領されるまでは沖繩日本の国であったわけです。ここまでは問題ありません。占領されました、そうして終戦までの間は、この間の施政権あるいは領土権、あるいはこれらに対する支配というものはどういう関係になっておるか、まずそれを伺います。
  11. 福田赳夫

    福田国務大臣 日本領土であります。しかし、米軍に実力をもって占領された、そういう状態と理解しております。
  12. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうしたら、今度は終戦の日からサンフランシスコ平和条約までの間はどうなっておったか、それをちょっと伺いたい。
  13. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは同様の状態でありまして、日本領土である、しかし米軍占領下にあった、かように理解しております。
  14. 渡部一郎

    渡部(一)委員 今度は、サンフランシスコ平和条約から以後、今度の沖繩返還協定調印まではどうなっておったか。
  15. 福田赳夫

    福田国務大臣 日本領土であります。しかし、その上に行なわれる施政権アメリカ政府に移っておる、こういうふうに理解しております。
  16. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうすると、それから今度は、返還協定が実際的に効力を発揮したという時点をこれから迎えたとします。それからあとはどうなりますか。(発言する者あり)
  17. 福田赳夫

    福田国務大臣 日本領土であります。その上に施行される施政権わが国返還をされるということになります。したがって、一点瑕疵のないわが国領土となるわけであります。
  18. 渡部一郎

    渡部(一)委員 こういうことをわざわざ私が申し上げたのに対して、非常に不規則発言が奇異なる感じを持たれているやに聞こえてくるわけであります。ところが、このあたりまえなことに対して誤解があったのではないかと私は思います。それは、これは総理大臣もちょっと言われたことがありますけれども、むしろ外務大臣がはっきりおっしゃいましたから言うのでありますが、戦争によって奪われた領土についてという言い方をなさいました。それが戻ってきたことは一回もない、その国へ戦争によらずして戻ってきたことはないという表現をなさったことがあります。ここは戦争で奪われた領土なんでしょうか。あなたは、先ほどからおっしゃいましたように、沖繩返還協定調印までの間は日本領土であると明確に述べられました。ダレスさんの言い方によれば、潜在主権があるところである、こういうおことばですね。そうすると、これは日本領土で、奪われたものではない、施政権が一時的にちょっと移動していただけの話である。それを、奪われた領土、奪われた領土というふうに言われるのは、少しおかしな表現ではなかったか、法理的にはおかしな表現ではないかと思いますが、どうでしょうか。
  19. 福田赳夫

    福田国務大臣 古今東西歴史におきまして、戦争で失った領土を取り戻す、これは、まず話し合いということは非常にまれであります。これは血をもってあがないとらなければならないというような事態であります。沖繩の場合は、正確に言いますれば、これは領土権返還ではございません。施政権返還だ。しかし、大体これは実体としては似ておるような問題である。私は、そういうふうにはっきり施政権返還であるということを前提として申し上げておるのですが、しかし実体は似ておるのです。だから、これを並べて、沖繩返還が偉大なるできごとである、こういうふうに理解するのは、これは私は国民大体が共通したところではあるまいか、そういうふうに見ております。
  20. 渡部一郎

    渡部(一)委員 福田外務大臣、いまのお答えは、悪いですけれども、二つ違っておるのです。当時の残存主権については領土権があるというふうに解釈した議論は立っておりませんでした。そのときは、領土処分権があるというふうにいわれたのが日本国会の確定的な解釈です。だから、ただいま日本領土であると言われたのは、その意味で違っております。それは高辻さんがうしろでうなずいておられるから、あとでお聞きになったらいいと私は思います。そんなことを言う必要はないと私は思うのです。何も恥をかかせるつもりもありません。  もう一つ間違っておるのは、戦争で奪われた領土は血であがなわねばならぬと、あなたは軽率に言われましたけれども、そんなことはありません。日本歴史においてもそれに近いことがありました。日清戦争のときに、日本遼東半島というのを奪いました。そうしてその中国遼東半島を奪ったときに、それは血でもって取り返されたかというと、そうではない。当時、いわゆる三国干渉日本側がいっておる外交交渉によって、日本はそれを中国に返しました。そういう事実が目の前にありますよ。だから、血で取ったものは血であがない返さなければならない、そういう単純なる宣伝は、私は慎まれるべきであろうというのがまず始まりなんです。どうでしょうか。
  21. 福田赳夫

    福田国務大臣 私もその辺は注意深く言っておるのです。つまり、話し合いで一国の領土が他国の領土に移る、これは古来まれである、まれであるということを言っておるのです。その辺は……(渡部(一)委員「ないことはない」と呼ぶ)そんなことは言いません。古来まれであると言っておりますので、私の表現はきわめて慎重であるというふうに御理解願います。
  22. 渡部一郎

    渡部(一)委員 この問題について私とやかくがあがあ言うつもりはありません。ただちょっとずつこういう論戦のときに両方で大げさなことを言う。両方で大げさなことを言って、聞いている国民の皆さんはどっちもわからなくなるということがよくある。戦争で奪われた領土は血であがなわねばならぬなんて、それはどこかの演説会か何かでおやりになるなら、それは拍手する方もあるだろうと思うけれども、戦争で奪われた領土について、血であがなわないで交渉で移動した例は、世界じゅうにたくさんあります。そんなものは幾つもある。それについて、さもさも血であがなわなければならぬというような印象づけるような宣伝文句はやめていただきたい。こういうことを地道に議論するのが、ほんとう言って、この沖繩返還協定委員会のありがたみだと私は思うのです。そうでなかったら、宣伝文句の応酬で、両者の間には話の交流がなくて終わってしまう。そういうことになってしまう。だから、いまこの領土の問題についても、奪われた日本領土などという簡単な問題について私は法理上お伺いしている。すると、あなたは、実体的に奪われたと同等だと御返事をなさった。それはそのとおりなんだ。法理上は奪われていない、これは確かです。そうなると、この問題については、やはり奪われてしまった日本領土などという簡単な言い方ではちょっとまずいのではないか、私はそう思うのです。もう少し正確な意見を、ここでは少なくとも日本を代表してお話しになるのですから、きちっとお話し合いをなさるべきだと私は思うのです。  これについて、私は法務大臣に、私のいまの議論福田外務大臣意見とどっちが正しいのか、ちょっと御意見をここへ来て述べていただきたい。
  23. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 私が答える問題だとは思いませんが、非常に少ないということは事実でありましょう。
  24. 渡部一郎

    渡部(一)委員 へたなことにお答えしにくい事情もよくわかりますから、法務大臣に対する質問は、あまり文句を言いませんで、ここのところを通り抜けてまいりましょう。  ただ、これから先に、それでは私はいよいよ前文から始めまして、返還協定の中身に取りかかっていきたいと存じます。  まず沖繩において私たちが一番心配しておりますことの一つは、従来安保条約及び安保条約と似たアメリカ及び諸外国との条約というものがこの周辺で取りきめられているわけであります。たとえば米韓条約米台条約と私たちは言っておりますけれども、米華軍事条約あるいは米比、あるいはANZUSあるいは東南アジア条約機構、こういったものの条約幾つか結ばれておりますね。この条約が一体どこからどこまでの範囲を持っているかということについて、沖繩がいままでこれらの条約適用範囲の中にあったということについては、すでに外務省から御意見の表明があったと思います。さて沖繩返還されて、返還協定範囲の話になってまいりまして、沖繩はこれらの条約適用範囲内に入るのか入らないのか、入っているのか入らないのか、これはきわめて微妙な問題であります。そして条文を見たところでは、きわめてわかりにくい表現になっていることも事実であります。御承知のとおりであります。一体、この沖繩返還協定の成立とともに、これらの条約はどれとどれが沖繩あるいは沖繩を含む周辺地域周辺領海、領空を含めた地域に該当するか、これはちょっと問題だと私は存じます。この際ひとつ明らかにしていただきますようにお願いいたします。
  25. 福田赳夫

    福田国務大臣 外国条約の解釈問題でありますので、なかなかお答えがむずかしいんじゃないかと思いますが、条約局長からお答えをいたさせます。
  26. 井川克一

    井川政府委員 まず米韓条約につきましては、第三条に、行政的管理のもとにある領域における締約国に対する太平洋における武力攻撃という規定になっております。米華条約におきましては、西太平洋地域においていずれか一方の領域に対して行なわれる武力攻撃、第五条でございます。そして領域とは、中国については台湾、澎湖諸島をいい、米国についてはその管理下にある西太平洋諸島をいうということになっております。これは第六条でございます。米比条約におきましては、太平洋地域における締約国に対する武力攻撃、第四条。太平洋地域にある締約国管理下の島または軍隊公船航空機を含む、第五条。ANZUSにおきましては、太平洋地域における当事国に対する武力攻撃、第四条。太平洋における当事国管轄下にある島または軍隊公船航空機を含む、第五条。SEATOは関係ございません。というふうになっておりますので、沖繩返還されますると、米韓米華条約上は、行政的管理下にある領域または管轄権のもとにある西太平洋諸島ではなくなります。そうしてこの両条約には、軍隊公船航空機に関する規定はございません。したがって、両条約とも沖繩との関係は消滅いたします。米比ANZUS条約は、管押下にある島ではなくなりますが、軍隊公船、軸空機の規定がありますので、在沖繩米軍はこの雷隊、航空機になるわけでございますけれども、これは本土における米軍と全く同じでございます。最後に、SEATOは関係ございません。
  27. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いまのお答えで十分でございますから、それはよろしいと思います。  そうしますと、今度は米韓、米台、米比ANZUSと並びまして、米比ANZUSのほうには、お話しになりましたように、太平洋地域における軍艦あるいは軍隊あるいは飛行機等の問題になりますと、これに攻撃された場合には連動して戦闘が開始されるという事情が働くわけであります。ところが、米韓と米台であります。これは条約的には今度は沖繩地域に働かないように見えるわけであります。ところが、その補完措置として、この共同声明七項あるいは本協定前文の精神によりますならば、台湾及び韓国の安全について、あるいは緊要であると述べ、あるいは重要であると述べられました。すなわち、これらの諸国の領域に関しまして日本はその安全保障に関して大きな責任を有することは、総理みずから述べられておるわけであります。そうすると、結局、米韓、米台の軍事条約沖繩にいままでは向こうから網がかぶっておった。そうして米比ANZUSの網がかぶっておった。今度は米韓、米台の網は二枚取り除かれた。ところが、今度は日本のほうから佐藤さんの網が向こうにかぶっていることになる。米韓と米台の二つの間に今度はこちらが網をかぶしておる形になる。これでは、極東の軍事的な焦点としての沖繩の地位、つまり米軍流の言い方をすればキーストーン・オブ・パシフィック、軍事力における太平洋のかなめ石という機能は全く変わらないではないかというのが私の意員なのであります。これについて御見解をお願いいたします。
  28. 福田赳夫

    福田国務大臣 今回の返還に伴いまして、沖繩米軍の戦略的地位、これはかなり変わってくるだろうと思います。それは何かというと、これはわが国安保条約並びにその関連法規の制約下に入る、その点が非常な変化である。また、これからアジア情勢も変わっていくだろう、そういうことにつれての変化もこれはあり得ることであろう。これは将来の問題ですが、直接この協定と関連しますと、協定に伴う変化、こういうものを私どもは期待しております。
  29. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 米韓、米台、この網はなくなったが、私のほうから網をかけた、こう言われるのですが、私のほうから網はかけてはおりません。ただ、先ほど来、いまも外務大臣お答えいたしましたように、わが国の場合に、とにかく、韓国やあるいは台湾海峡に問題が起きて、そうしてわれわれが何も知らない、われ関せずえん、あれは韓国のことだ、こういうように言っておられるような地理的な関係でないんだ、したがって、われわれは重大なる関心を持っておるという、どちらかといえば、これこそ心情的な気持ちを率直に出したつもりでございます。しかし、われわれはもう平和国家、またそういう意味で、戦争などするとか、あるいは脅威を与えるとか、こういうようなことはいたしませんから、これは新憲法のもとにおいて、現行憲法のもとにおいてわれわれはどこまでも平和を祈念しておる、そういう事態が起こらないように、こういうことを実は申し上げておるのでございまして、こちらのほうからかわりの網をかけておるわけではございません。これはひとつ誤解のないようにお願いしたい。これは絶対にさようなことはございません。
  30. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いまのお話は、共同声明を知っているにもかかわらず、ときどき総理大臣は知らぬ顔をされるくせがありますから、総理大臣は非常にうまくやられますが、福田外務大臣は、おなれになってないので、だいぶぼろが出ておりますから、福田外務大臣のほうからまず……。  この沖繩返還協定と一緒に、福田外務大臣は、軍事的な米軍の戦略的地位が変わるであろう、戦略的なポテンシャリティーの意味なのでしょう、そうおっしゃいました。それは安保に入るからであり、またアジア情勢が変わるからである。うしろのほうは、アジア情勢が変わるというのは、政治的対応条件ですから問題がありませんが、この協定の法的な効果として、安保に入るから変わるのだという言い方をなさいました。しかし、それは間違いです。間違いの理由は、先ほどから私が申し上げておるように、共同声明第七項において、「沖繩施政権返還は、日本を含む極東の諸国の防衛のために米国が負っている国際義務効果的遂行の妨げとなるようなものではない」と佐藤さんがおっしゃったんです。アメリカのやっていることに対して、国際的義務の遂行に関してそれを変えるようなことはしないぞと、佐藤総理がおっしゃった。それで、ニクソンさんが、けっこうですと、こうおっしゃった。しかも、これを今度は返還協定前文の中に持ってきまして、その返還協定前文の中で、共同声明の基礎の上にこの協定はつくるんだということを述べておられるわけであります。いいですか。そうしますと、返還協定共同声明によって指定された基礎の上にできているのですから、この返還協定が、絶対に、アメリカ軍の戦略的地位や、アメリカ軍がそのほかの国々に対するいろんな仕事をしようとしている問題に対して、ブレーキをかけたり変えたりするようなものではない、こういうことはもうあたりまえのことになりますね。だから、外務大臣、ちょっといまの御答弁はおかしいじゃありませんか。どうです。
  31. 福田赳夫

    福田国務大臣 返還が実現しますと、非常に沖繩米軍の基地機能というものは変わってくる、また戦略的意義も変わってくる。一つ例を申し上げますれば、核がなくなる。これはやはり沖繩アメリカの戦略的立場から言いますれば、核がある、ないということははっきりは言いませんけれども、私は核があると思っている。その核が、返還時には、ない状態になる。これはアメリカの戦略としますと非常に大きなできごとである、こういうふうに考えるわけであります。なおまた、この核以外の問題につきましても、すべて事前協議の——すべてというか、事前協議が発動される、こういうことになる。沖繩基地からいままでベトナムへ自由発進をしておった、今度は事前協議の対象となる、自由発進というようなことはあり得ないことになる、これはまたもう非常に大きな変化でございます。そういうことを考えまするときに、この協定によって米軍沖繩における戦略的価値に変化がない、これは私は、変化がないと言うほうがおかしいのじゃないか、そういうふうに考えます。
  32. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私の申し上げたことは、沖繩返還協定法理上の問題をいま述べておるわけです。外務大臣は、いま核だとか事前協議だとかの問題でお答えになりました。これは論理がすれ違っております。まず私のことばに答えていただきたい。核があるのかないのか、それについてアメリカ側は述べておりません。なくなったときに、あるかどうかを述べることも、おそらくはしないだろうと思います。  それについて、これから先まだ議論を詰めなければなりませんから、ちょっと預かりにさせていただきますが、このような沖繩返還協定前提になっている共同声明第七項、そしてその共同声明を基礎としている沖繩返還協定、こういったものがある以上は、これは諸国に対する米軍の効果的な義務の遂行に対してブレーキをかけることにはならないとこちらに書いてある。だから、それが変わるようなことはあり得ないでしょうと私は言っているのです。あなたがそれを否定なさると、あなたは、佐藤・ニクソン共同声明反対する画期的な外務大臣ということになる。どうなんですか、これは。だから、そういう御答弁ではだめなんですよ。私はさっきから心配して聞いておるのです。もう自民党みたいな質問だ、これじゃ。ちゃんと答えてくださいよ。変な話なんだな。
  33. 福田赳夫

    福田国務大臣 総理大臣と大統領との共同声明、これは両巨頭の間におけるアジアにおける事態の認識、こういうことについて述べておる、こういうふうに私は理解しておりますが、要するに、今度の協定、これは渡部さんも、法理的に聞いておる、こう言うのですが、これはもうこの第一条以下、これが両国を拘束をする、こういうものでありまして、前文は、そういう両国を拘束する内容協定がどういういきさつでできたのか、そういういきさつを述べているわけでありまして、前文自体に法的な拘束力はないんです。しかし、実態を見てみれば、先ほど申し上げたように、非常に米軍の機能というものは変化をする、こういうことを申し上げている。
  34. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまのでおわかりかと思いますが、私は、アメリカ沖繩返還するその協定調印したことは、これは、しても米軍の機能は減退しない、変わらない、こういう確信を持ったと思います。しかし、沖繩本土に返れば、いままで自由かってに使用していたものが、安全保障条約のワク内にとどまること、自由出撃などはできない、それはもうすべて事前協議になるのだ、しかし、そういうことがあっても米軍の機能は低下させない、かようにアメリカは判断したからこそ私どもの協定に賛成した、かく解すべきで、ただいま、いままでと変わらないのだ、その前文がこう書いてあるから変わらないのだ、こう言ってしまうことは——やや変わるんではございませんか。と申しますのは、いろいろ戦術、技術だって変化がございますから、それはいままで沖繩に持っているような機能を現実に持たなくてもだいじょうぶだとアメリカは考えたかもわからない。そういうこともやはり頭のうちに置かなければならぬだろうし、そういうこともありましょうし、私は、ことにこの前帰ってきたときに一番問題になったのは、沖繩返還だと言うが、ベトナム条項は一体どうなんだ、これは現に戦争を遂行している、たいへんじゃないかと言ってずいぶん皆さんから責められたものです。しかし、今日のように、ニクソン訪中、そういうものが実現するとか、あるいは最近発表されたように、ベトナムからも撤兵する、こういうような事態が起こると、もうそのほうの危険はない。B52も早い時期に撤去した。よほど変化しておりますね。B52を撤去することによって沖繩の基地はその機能を減殺したかというと、そうではないと私は思うのです。だから、その辺の議論は平行になるかわかりませんが、私は、そういうことは別に心配は要らぬことだ、かように思います。
  35. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理大臣言い方は非常にうまい言い方をなさったわけですが、米軍がその国際的義務の遂行にあたって、機能を低下しないという気持ちがあったから沖繩返還協定調印したのであろうという言い方は、これはよろしいのです。こういうふうに外務大臣が御答弁になるべきだったのです。ところが、今度はそういうふうに答えてくださらないと、私の次の質問ができない。私が言っているのは、だからこそ、米軍のこの太平洋地域における実力というものも、いままで米韓、米台、米比ANZUS、この四条約沖繩と、その沖繩をかなめにしてつくっていたと同じ、能力を低下しない米軍によるそういうワク組みが同じようにできてしまっているではないか、これでは、太平洋地域におけるところの戦争の緊張を能力的に一つも低下させるゆえんにはならないではないか、沖繩返還協定によって同じことになっているではないかと私は申し上げたわけなんです。
  36. 福田赳夫

    福田国務大臣 どうも私の話と渡部さんの話、すれ違いのようですが、私は、米軍の価値、これは非常に減ってくると思うのです。つまり核がなくなっちゃう。また、その他の問題につきましても、自由発進がなくなっちゃう。そういうようなことをひとつよく御了解願いたいと思うのです。そういうようなことから考えて、米軍は、沖繩、少なくとも沖繩におけるところの戦略的な意義というものにつきましては、これは少し減るということについては、もう正確な判断を、そのとおりしていると思うのです。ただ、アジア全体において一体米軍の戦略体制がどうなるか、ニクソン・ドクトリンというような問題がどうなるか、あるいは極東の情勢がどうなるか、そういうものにも関連しましょう。それから、核は沖繩にはなくなる。なくなるが、核を一体どこに今度配置するかというような問題もありましょう。そういう東南アジア全体としての米軍の戦略的地位、それがどうなるか。これは今後に待たなければなりませんけれども、しかし、少なくとも沖繩におきましては事態はかなり変わってくるんだ、こういうことを申し上げているわけです。
  37. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは別のことをちょっと伺っておきます。  米比ANZUSの二つの条約が、日本及び日本周辺太平洋地域においてかかっておる。それはきわめて失敬な話だと私は思っているわけであります。沖繩日本領域になるにあたって、米比ANZUSなどがかかっているなんということは非常におかしなことであります。それは米軍施政権下にあるところであるというなら、まだ話はわかります。しかし、この領域日本返還されたときには、沖繩及び沖繩周辺、領海、領空、領域に関して、あるいはその周辺の海域に関して、少なくとも米比ANZUS条約のようなものは、もうその領域としないようにしてもらいたいと意思表示をすることが妥当だと思いますが、どうでしょうか。
  38. 福田赳夫

  39. 井川克一

    井川政府委員 これは、先ほどちょっと申し上げましたけれども、沖繩に特殊な問題ではございません。日本本土における在日米軍についても同様の問題でございます。しかしながら、このことはその領域の問題と関係があるわけではございません。アメリカとフィリピンがそういうふうな条約を持っておるということ、このために、わが国は何もフィリピンを防衛する義務は全くないわけでございます。また、フィリピンがわが国防衛する義務は、日本国との関係においては全くないわけでございます。そこで、かりにまた、たとえばフィリピン及びANZUSが、米国との関係条約の発動の義務を負っているとしましても、沖繩はこれこそわが国領土になります。日本本土と全く同じになるわけでございまするから、このたびの返還によりまして、これらの諸国が、わが国の主権のもとにおける領土わが国の許可なくして来援するというふうなことは絶対にできないことでございまして、これも一つ沖繩返還意味であろうと思うわけでございます。
  40. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私が言っております意味をだいぶ取り違えておられますが、たとえば、具体的な例でいくと、沖繩のすぐそばにフィリピンの軍艦が来たといたします。そして、そこと他の国との交戦が始まったといたします。そうすると、沖繩にあるアメリカ軍米比条約に基づいて出動をいたします。そうしますとどういうことになるかというと、沖繩にある基地を中心といたしまして、日本はその地域の安全保障に責任を持っておりますから、日本の自衛隊も出動することになったり、あるいは実質的な支援義務を行なったりすることになります。ですから、この米比条約があの地域にかかって存在していることは、沖繩の自衛隊までを巻き込んで、そうして戦争に引きずり込まれてくることになってしまうではないか、こう言っておるのです。そうでしょう。そんなことありますよ。
  41. 福田赳夫

    福田国務大臣 自衛隊の話にお触れになりましたが、自衛隊が他国の戦争に介入をする、これは断じてそういうことはありませんでございます。これははっきり申し上げておきます。  それから、沖繩に駐とんする米軍、これが出動する、これは事前協議の対象になります。その事前協議において、わが国として沖繩からの出動を認めるか認めないか、これにつきましては、その時点のいろいろな客観情勢を精細に調査して、公正な立場に立ち、国益を中心といたしまして判断を下す、こういうことに考えております。
  42. 渡部一郎

    渡部(一)委員 だから、そのときに——ついでに福田外務大臣言い方を続けますと、そのとき、イエスと言う場合もあるし、ノーと言う場合もある。イエスと言う場合があるわけですね。そうして、イエスを言えば巻き込まれてしまうわけですよ、これは。イエスを言わない保証がないんですから。だから私は、ANZUSだとか米比条約が、沖繩地域を、沖繩の海域を、沖繩周辺領域を、こうした地域を、要するに範囲内にすることは不当だと、こう言っておるのです。だから、私の質問は明らかに何を言っているかといえば、軍事力のネットワークとしての沖繩の存在、キーストーンとしての沖繩というものの存在の力というものを切り下げていく、そうすることが妥当なんではないか、もしそれに対して少しでも配慮があり、また、純粋に外交上の問題を言うなら、少なくとも自分の国家の周辺地域にほかの国の条約の適用地域があって、その中で戦闘が行なわれる、戦闘開始の火つけが行なわれるというようなことに対しては、それはよけいな迷惑であって、意思表示をするのが当然のことじゃないか、こう申しておるのですが、どうでしょうか。
  43. 福田赳夫

    福田国務大臣 いずれにいたしましても、事前協議の問題、これが非常に重大だと思います。沖繩島の周辺で他国の間において戦闘が開始された、その際に沖繩島を基地として米軍が出動する、そういう際にわが国が他国間の戦争に巻き込まれる、こういうようなことはもう絶対に排除しなければならぬ問題だ、こういうふうに考えます。そういうことになるのかならないのか、そういう問題、これは客観的な情勢をよく判断しなければならぬと思いますが、国益を踏んまえましてそのイエスかノーかということをきめる、こういうふうにするほかはない、こういうふうに考えます。  まあそう言うほかはないと思いますが、いま渡部さんは、外国条約適用範囲のことに触れられておるわけでありますが、これがどういうふうな影響をわが国に対して及ぼすか、これはわが国としても同じような問題をかかえておるわけでありまして、そういう問題につきましては、なお検討してみたいと思います。
  44. 渡部一郎

    渡部(一)委員 もう全然わかっていられないみたいなんで、私はだんだん質問の意欲を失ってきました、ほんとに。これじゃもうしようがないんだな。(「早くやめちゃえ」と呼ぶ者あり)もう確かにやめたほうがいいかもしれない、この質問は。いまのやじが言っているように。だけれども、考えていただきたい。それは、たとえば日本のまわりに、ドイツとかフランスとか、地球の反対側の例まで持ち出さなければはっきりしないでしょうから、言っておきますけれども、そういう国々がこの地域で起こった騒動に自分たちは直ちに一緒になって戦うんだというようなことをきめたとしたら、まことにおかしな話であって、日本のまわりで何もそんなことを取りきめる必要はない。この地域わが国領土、領海、領域ではないか、またその周辺地域ではないか、そこのところで何をなさるかというようなことになると思うのですね。少なくともそれぐらいのことを意思表示することは、独立国日本の首脳としてできるのじゃないか。だから、ANZUSとか、それからこの米比条約のようなものの適用地域については、非常に範囲が広がり過ぎておる。今度沖繩返還協定によって返還ができたら、ひとつ御両所とも考えていただきたいと、両条約締約国に対して意思表示をすることはできるかできないかと、こういうふうに伺いましょうか。御返事を賜わりたい。——いや、総理大臣に聞かなければだめですよ。
  45. 福田赳夫

    福田国務大臣 まず私からお答え申し上げますが、先ほどからお答えしておるのです。よく聞いてもらいたいのです。聞いてもらいたいのは、これは外国間の条約だとか申し合わせだとか、そういうような問題でありまするから、これはわが国としてどういう影響をそれによって受けるかという点につきましてはよく検討してみますと、こう言っているのです。まっ正面からお答えをしておると思います。
  46. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理、どうぞ。
  47. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの問題で私よくおわかりがいただけたと思うのですが、先ほど来、沖繩施政権日本に返ってくる、そうして今度あそこに駐留する米軍の機能が日米安保条約のワク内ことどまる、こういうことで非常な行動の制約も受ける、また装備についても変化がある。したがって、在来から言われていたキーストーン、そういう役割りはよほど変わってくるのじゃないか。ことに、先ほど、米華条約あるいは米韓、そういうものは関係ございませんと言っておる。その米台の地域を越しての米比、そういうものはもちろん、われわれはそういう事柄で事前協議を受けた際にノーと言うことは、およそわかりいいことだ、かように私は思っております。しかし、ただいま御注意がありますように、さように考えるなら、この締結の際に、アメリカとしても、米比条約、その関係沖繩に駐留する米軍を使わないようにしてくれろと、かような話し合いをしてみたらどうだ、こういうような御注意でございますから、これは私どもももちろん十分それを注意して、ただいまの御意向を伝えることは、これはやぶさかではございません。しかし、そのために必要な事前協議という体制がございますから、その事前協議の体制において、先ほど外務大臣が答えるように、これは十分慎重に扱います、わが国が戦火に巻き込まれる、他国の争いの中に引き込まれる、さようなことはいたさないつもりでございます、かように私は申しておりますから、いかに政府が事前協議の場合に慎重な上にも慎重に対処するか、これはおわかりだろうと思いますから、私はあまり多くを申し上げる必要はないように思います。しかし、たいへん御心配ですから、それらの点については誤解のないようにいたしたいものだ、かように思います。これはしかし、ただいまのような交換公文でとかあるいは条約でどうこう、こういうようなことにはならない、かように御了承おき願って、われわれのほうといたしましても、もちろん、さようなことは台湾を通り越してのことだから問題ないだろうなという程度のことは説明ができる、かように思っております。
  48. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ただいまの総理の御答弁で、あるニュアンスが浮かび上がってきたわけでありますが、こういうことをなぜ言わなければならないか。これは、返還協定がずさんだったからと私は言うしかないと思うのです。こういうような問題点が実にたくさんあります。私は、いまの総理の御答弁が、注意するというような非常に含みの多い表現で言われましたので、ほとんど日本語として聞き取れないほどのふしぎな表現をたくさんなさいました。私は、この総理の一つの意思表示というものが政府の方針として確定することを求めておきたいと思います。  では、次にちょっと移ります。  また今度は妙な話でありますが、この協定が発効いたしますと、平和条約第三条は、これはもう対象とされるところが、奄美大島の返還、小笠原の返還というものが行なわれたわけでありますから、これは事実上空文化というか死文化というか、平和条約第三条はそういった形のものになると思われます。ところが、奄美大島、小笠原のような場合には、平和条約第三条の中でも一部でありますから、まだ問題となるポイントというものは少なかったかと思います。しかし、アメリカ側がその権利を放棄するから、もう第三条についていま触れる必要はないというふうに政府はいままで御答弁されてこられたわけなのであります。ところが、今度の協定はそれだけの解釈でいいかどうか、これはちょっと問題になるわけで、いよいよ平和条約第三条部分という対象のところがなくなるということになるわけでありますから、その点をどう考えておられるのか、御答弁をいただきたいと思います。
  49. 福田赳夫

    福田国務大臣 確かにこの点は渡部さんのおっしゃるとおりですね。もう内容がなくなる、消滅した、こういうふうに見ております。つまり、第三条は実際上は死滅したと、こういうふうに見ます。手続として、この平和条約を改定するかどうか。これはまあたいへんな手続を要するわけでありまして、私は、手続の改正を行なうというまでもなく、もう当然死滅、消滅し、その機能を失っておることである、そのまま放置して何らの支障は生じない、かように見ております。
  50. 渡部一郎

    渡部(一)委員 このときに、今度は、平和条約の署名国が平和条約第三条との関係で異議を申し立てたらどうなるかという問題であります。これは架空の質問のように聞こえるだろうと思いますから、御注意を申し上げておきたいと思いますが、最近におきまして、最近の日中関係の変化にあまり好意を持たない国家が、国家といいますか、政府といいますか、それが沖繩返還協定それ自体に対しておもしろくない、こういう意思表示をする用意があるというような新聞報道があったわけであります。そうしますと、平和条約署名をなさった、これは国と認められるかどうかに多少疑問はありますが、これを政府はいままでは国として認めてきたわけでありますから、この平和条約署名国が、沖繩返還協定についての異議を申し立てたといたします。そうしますと、平和条約の「紛争の解決」の中の第二十二条、「この条約のいずれかの当事国が特別請求権裁判所への付託又は他の合意された方法で解決されない条約の解釈又は実施に関する紛争が生じたと認めるときは、紛争は、いずれかの紛争当事国の要請により、国際司法裁判所に決定のため付託しなければならない。」となっております。「日本国及びまだ国際司法裁判所規程の当事国でない連合国は、それぞれがこの条約を批准する時に、且つ、千九百四十六年十月十五日の国際連合安全保障理事会の決議に従って、この条に掲げた性質をもつすべての紛争に関して一般的に同裁判所の管轄権を特別の合意なしに受諾する一般的宣言書を同裁判所書記に寄託するものとする。」こうなっております。国際司法裁判所は、一方がそこに訴え出たとしましても、それに相手の国が応戦するのでなければ、そこでは取り上げられないことになっておりますが、この二十二条の規定は、明らかに、一方が訴え出たときに、もう直ちにそのまま国際司法裁判所で片づけるのだということを無条件にきめたものであります。したがいまして、これは日本のほうに被強制力があるわけであります。したがって、これがもめ始めますと国際司法裁判所にたちまちに持ち出されてくるわけであります。この場合にどういうような法的根拠をもってこれに対抗することができるか、その用意があるか、当然お考えであろうと思いますが、これに対して御返事を賜わりたいと思うのであります。
  51. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま渡部委員から御指摘の問題につきましては、奄美の場合も、また小笠原の場合も、何らどこの国からも異議は申し立てておりません。それはなぜかと言いますと、平和条約第三条は、実体的にこれは日米両国の問題である、日米両国において協議がととのえば、それはそれでもう平和条約関連諸国において容認すべき問題である、こういうふうに解釈されてきておるからである、こういうふうに見ておるわけであります。ですから、私どもの頭の中には、平和条約参加の国でありまするが、日米以外の第三国が、日米の取りきめに対しまして異議を申し立てるということは、もう予想だにしておりません。しかし、万一そういうことがあったらどうするか、司法裁判所の手続はどうなるか、こういう問題になります。その問題は、条約局長のほうからお答えをさせることにいたします。
  52. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いまの御答弁で、いい分と悪い分とがまたあると思うのでありますが、これは日米両国間の取りきめであるから、他の諸国が介入すべきでないという立場をとられるんだろうということが、一ついま明確になりました。それについて私はどうこう申し上げておりません。しかし、国際司法裁判所に持ち出されるということに関しては、これはもう事実しかない。それはお答えになりませんでしたから、それは容認せざるを得ない、そうしたら、国際司法裁判所でそれに応戦なさると、こういう意味でございますね。
  53. 井川克一

    井川政府委員 最後の点だけ申し上げます。  先生の、国または政府とおっしゃっておりますのは中華民国だといたしますならば、中華民国はサンフランシスコ条約当事国ではございません。(「第三国があった場合だ」と呼ぶ者あり)失礼いたしました。第三国があった場合でございますね。第三国があった場合、そのようなことはもうほんとうに私ども想像もできないところでございまするけれども、もし国際司法裁判所に出ますならば、喜んで出まして、絶対に勝つ自信を持っております。
  54. 渡部一郎

    渡部(一)委員 非常に不遜な発言が続いているのでありまして、私は、もうはらはらはらはらさっきからして、これ以上質問をいたしますと、また何かぼろを出すんじゃないかと、日本国家のために憂えているのであります。もう少しそういった問題もよく研究されて——思いも寄らぬことでありましてなんということを条約局長が言うべきじゃない。条約局長というのは、ありとあらゆる、とんでもないことまでちゃんと考えているのが条約局長であって、ああいうのは外務大臣が言うべきことである。  次へ参りましょうか。  今度は、沖繩復帰という問題に関しまして、私たちが心配していることはたくさんあるわけでありますが、先ほど外務大臣は、何回も、事前協議の問題を言われましたので、この前文との関連性において事前協議のことをちょっと申し上げておきたいと思います。  事前協議におきまして、日本の国益を考えたり、いろんな条件を先ほど述べられましたが、もしそのときに日本側が、イエスとノーとあると、総理大臣のお話でおっしゃいまして、かなりニュアンスが共同声明とは変わっておるわけでありますが、イエスとノーとあるといった場合に、ノーと言った場合、総理大臣外務大臣がノーと言われたらという場合、アメリカは、日米共同声明第七項及び第八項の不履行、それを誠実にやらなかったということで日本政府の責任を追及するということがあるのではないかという問題であります。つまり、私たちが心配しておりますのは、諸国の防衛のために米国が負っている国際義務効果的遂行の妨げになってはいかぬ、こう七項で述べ、第八項において、事前協議の関係におきまして「米国政府立場を害することなく」という一節が入っているわけであります。そうすると、この両方の問題の場合に、特に、御承知でございましょうが、ジョンソン国務次官の背景説明の際にそれが言われているわけでありますから、この七項、八項の不履行ということで向こうから責められるおそれなしとしないわけであります。その点、総理はどうお考えになっておりますか。
  55. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは法律的な義務、そういうものの不履行、こういうものではないだろうと、私、思います。しかし、いろいろな双方に行き違いがある、こういう事柄があるだろうと思います。御承知のように、かつては、事前協議の場合でも、アメリカ日本政府の意向に反してどうこうすることはない、こういうことを言った。これが米軍に対する大きな歯どめだ、こう言って野党の諸君からかっさいされたことがございます。また、そういう事柄もいまなお残っておると思います。(「かっさいしない」と呼ぶ者あり)かっさいしないと首を振っておられますが、これは一つの歯どめだ、こういうことを言われておる。しかし、こういう事柄がいまなお続いておることは、御承知のとおりですね。また、ただいま言うように、アメリカ側の意図をそこなうことなし、こういうことを言っておる。こういう問題が、いわゆる法律的な問題ではないが、そのために両国親善友好、これを厚くすること、また、その間に誤解や疑惑や不安のないようにすること、これが何よりも大事なことだと私は考えておりますから、そういう問題が起こらない事前に、そういう事柄について十分話し合っておくことが必要だ、かように思っております。
  56. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いみじくもいま総理が言われましたけれども、そういうことにつきまして起こらないということは保証できないわけでありまして、総理は、いま、友好親善と事前の話し合いを通して、米国がそういう理屈をもってかかってこないようにうまくやるんだということを言われたわけであります。非常に不安定な日米関係の上下構造を決定する御発言だろうと私は思います。だからこそ、私たちはこの協定内容について非常な不満があるわけであります。つまり、しょっちゅうアメリカ側のごきげんをそこねないように気にしていなきゃならない。総理はホワイトハウスのほうばかりを、そちらばかりを見ていなきゃならない。これは非常にまずい外交ではなかろうかと思います。だから、結局は、どうしてそんなことになっちゃったのかということを、もう一回考え直さなきゃいけない。少なくとも事前協議の場合に、これはどういうことを意味するかというと、事前協議をノーと言えないということを必然的に物語ってくるわけであります。そんな幾ら首を振ったって、絶対にそういうことになってくるわけであります。ですから、アメリカとの間が少し友好でなくなったといたします。先ほど申されたことの裏返し、あるいは親善友好がだめになってきだとすると、事前の話し合いができないようなことになってくる。むしろ、この事前協議の規定はそういうときにこそ役に立つような条項なのでありますから、そのときに友好親善というものか破壊された事態においては、事前協議というものはイエスと言わざるを得ない。アメリカ軍がどこへ飛び出すについても、核兵器を持ち込むということについても、それこそアメリカ側の御意向に気がねしながら判断をしなければならない。友好親善はいまやすでに破られた、お話し合いもすでにできぬ、向こうがこういう理屈でかかってきた、そうなったときに、それに対抗する論理というか法理というものがないじゃありませんかと私は申し上げておるのです。
  57. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまのその友好親善ということと、私どもが事前協議に対応して協議する、そうして独自の姿勢から返事をするという、そこらに相いれないものがある、こういうことだろうと思います。私は、どこまでも独立国家としての独自性から事前協議に対して対応する、しかし、それが疑惑や不安や疑念を持たれて、そうして事前協議も対等な状態でできない、こういうようなことがあっては、これは独立国家としてたいへんな損失だと思いますし、また、そういうことがあってはならない、かように思いますから、先ほど来言うように、こういう事柄は何でも話ができるような状態になって、疑惑や疑念を持たれないようにする、そういう状態が平素からできていなければならぬのだ、そこに独自性もあるのだ、かようこ私は割り切っております。これは一部で、どうも従属しているのだ、こういうような批判がありますけれども、私はそうじゃなくて、独立国家としては当然独自性を持って堂々とそういう話し合いに応ずべきだ、そういうときにこれは当然主張すべきことだ、われわれが平和愛好の国家であり、戦争に巻き込まれる、他国の争いに巻き込まれる、そういうことがあってはならない、かように思いますから、その際には何も遠慮することはなしに堂々と話して、イエスでもノーでもこれははっきり言う、これがそのままことばどおり行なえるような状況をつくっておく、これが必要なんだと思います。これは申すまでもなく同盟国、安保条約締結しておる、そういう関係から申せば、ただいまのような疑念はないはずでございまして、そういう意味からも、独自性を保って話ができる、かように御了承いただきます。
  58. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いまの総理のお話は非常にりっぱなお話なんですね。聞いていてほれぼれするほどのりっぱなお話だと思うのです。第七項と第八項に出てくる総理大臣とは別人のようですね。ですから、私が言っておるのは、そういう精神で初めから対等の条約でなかったということに返還協定の問題がある。いま言われたような総理大臣であるならば、私は何も問題にしてない。ところが、総理がいま言われたような、独立国家として独自の立場で、それこそ疑惑や疑念が持たれないようにすることが大事なんだと割り切っておると言われた。その割り切っておるというのは、心配を無理やり引きちぎって振り捨てておるような感じが私はしてならない。それは私の単なる感じではなくて、共同声明の七項では、要するに、アメリカのいろいろな極東諸国の戦争というものに対する効果的遂行の妨げになるようなことはしないと言われておる。そうして八項においては、「日米安保条約の事前協議制度に関する米国政府立場を害することなく」と、わざわざ言われておる。これはどういうことになるかというと、さらに止ほど申し上げましたジョンソン国務次官のお話にもありましたような話というものがどうしても山てくる。こうして出てくることから私たちが推測でき得ることは、事前協議において向こうの——もっとはっきりジョンソンさんは言われておる。前向きにこれを検討していく、むしろ、これに対する佐藤総理の言明をずっと突き詰めていけば、結局、事前協議というものは、アメリカのこういう国策に反しないというワクの中に入っているのだ。だから、言うなれば、私に言わせれば、まあ馬の自由で、たとえるならば、馬小屋の中の自由と同じことである。あなたの言われているのは、馬小屋の中における独立性を論じられておるのと同じことである。馬小屋の中ではおれは自由がある、カッパカッパと前後左右に動けるのだ、こう言っておられるのと同じだ。しかし、馬小屋のかんぬきの中には、この七項、八項というかんぬきががっちりかかって、全然出られないようになっている。そしてあなたは、ふだんから疑惑を抱かせないように、馬小屋の中で元気はつらつと、馬小屋をぶちこわさないぞという確信を持らながら飛んだりはねたりしているのだ、こういう議論と同じじゃありませんか。
  59. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの馬小屋論ですが、このわが国が持っている自衛隊、専守防衛、これははたして馬小屋論でしょうか。私は……(「馬小屋以下だ」と呼ぶ者あり)馬小屋以下という話もございますが、馬小屋でけっこうなんじゃないでしょうか。専守防衛、これは、私どもは日本を守り、それにもっぱら力をいたす、そしてわが国外国から侵害を受けない、そのための守りだ、かように私は思っております。ただいま言われるとおりなんで、また馬小屋の中の自由、その範囲ではち切れる元気を養っている、これがいまの状態じゃないでしょうか。(笑声)馬小屋論を何かぶち破るうとしておる軍国主義的な議論がありますけれども、私どもはそれに反対している。それはよく御理解をいただいて、軍国主義でない、ここにあるじゃないか、かように思います。
  60. 渡部一郎

    渡部(一)委員 話がどうも妙なたとえになってしまいましたが、言っておきますが、その馬小屋の内容は、私は、アメリカのワク組みの中においで、日本の自由も独立も、外交に対する判断も、ことごとく規制されている状況をたとえて言ったわけであります。変にその中で張り切っているのは問題だなどという議論をするために言ったわけではない。それはすりかえであります。  じゃ、私は、もう一つ、今度は別のほうからこれを議論してみたいと思うのです。  沖繩返還は——これはある考え方だと総理は見られるかもしれませんけれども、アメリカとして沖繩統治というものがある程度もう限界に来てしまった、そして、沖繩における米軍基地の保持というものもまた限界に来てしまった、こういうような認識のもとに沖繩返還というのはせざるを得ない時期が来た、こういう認識があったと私は思うのでありますけれども、また、外務当局が米軍交渉なさる途中においては、このままほうっておけば実際上沖繩統治というものは空洞化してしまって、沖繩施政権というものは働かなくなってしまうぞ、だからこの辺で日本に渡せばいいというような議論もされただろうと、私はかってに推測しているわけです。  ですから、まずその認識の問題から伺うわけでありますが、総理は、沖繩施政権返還というものは——外務大臣から伺いましょうか。外務大臣は、この沖繩施政権返還というものは、日本政府の努力だけでできたというようなお考えはよもや持っていらっしゃらないだろうと思うし、こういう状況の変化というものが沖繩自体の中にあった。また国際情勢の変化にもあった。しかし、いま述べているのは、その国際情勢の変化じゃなくて、沖繩自体の中に沖繩施政権返還をなさざるを得ない状況があり、アメリカ自体の中にそれをしなければならない状況があったのではないか、こう思っておるのですけれども、外務大臣はどう思っておられるでしょうか。
  61. 福田赳夫

    福田国務大臣 私はかねがね、この返還はどうして実現したんだろう、こういうことを言っておるわけでありますが、これは三つある。一つは、沖繩県民返還に対する非常な意欲、熱望であります。これが非常に大事だと思う。それからもう一つは、やはり歴代政府の努力、これを見のがすわけには私はいかぬと思います。その努力の背景には、日本の国が超大な国になったというようなこともありましょう。それからもう一つの問題は、日米の友好な関係です。第三の問題です。やはり日米が友好親善関係になければ、私は、この問題はこういうふうに早く進行しなかったであろう、こういうふうに思います。この三つが重なり合ってこの返還というものが実現した、そういうふうな認識をとっておるのであります。
  62. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん、いま言うように、沖繩県民をはじめ日本国民が一体になって、施政権を早く返してくれ、これは当然の要求ですから、そういう要求、その願望が達したと思いますが、その背景をなすものは、やはり日本の国力がしからしめた、かように思います。  また、私は直接その衝に当たった者ですが、最初にジョンソン大統領と交渉した際、沖繩の問題は、これは相手方とすればなるべくそれに触れないように扱ったものでございます。ただ、私は、当時、まず小笠原の返還を主張する、これは比較的容易じゃないかと思う、その際に沖繩についてのある程度の手がかりをつける、こういう事柄が望ましい、かように思っておりました。まあそれが実現した、かように理解をいたしております。  ただいま、アメリカ自身が限度に来たのじゃないか、こういうお話もございますが、私は、アメリカの限度に来たというよりも、日本の国力がやはりアメリカ返還を決意さした、かように考えてしかるべきではないかと思います。これは、日本の国力というのには、もちろん、沖繩県民百万の結集した力、祖国復帰への熱願、そういうものが実を結んだ、かように申していいかと思います。ただ、ただいま申すように、限度だ、こう言うと、いかにもアメリカの理解あるいは好意的なものを無視するような気がいたしますから、私はそのことばを使いたくありません。そうして事実、沖繩、これはアメリカがやはり日本に対して好意的な、あるいはまた、ただいま申し上げるような理解の結果これをもたらされた、かように私は思います。  まあ、いずれにいたしましても、実現すること、今日の状況になれば、いろいろの取りきめその他において不満の点がありましても、これはやはり返った後に片づけるべき問題ではないだろうか、かように思います。一部の方が、それは両三年おくれても差しつかえないじゃないかと言われるけれども、私は両三年おくれてその間に完全無欠な協定ができるとはどうも理解できませんから、そういうことを考えると、やはり日本国民の手によってあたたかく沖繩を迎え、そうして住みいい沖繩をつくること、その県づくりに励むこと、これは一緒になってやるべきじゃないか、かように思います。
  63. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理のいまの御答弁の最後のところの部分だけ、ちょっと横道に入りますが、伺わしていただきたい。  返還協定をつくり直しますと両三年かかるのですか。その見通しを何か持っておられるのでしょうか。
  64. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、両三年かかるという意見があると言ったので、私はさように思ってはおりません。私は、おそらくこの話が非常にむずかしくなるだろう、かように思いますから、私は一部の意見を率直に披露しただけで、私は、両三年で必ず完全なものができる、かような確信は持っておりませんから、もし、それは私が思っていると、かように思われたら、これは誤解でございます。そういう意見のあることだけはもうすでにこの席でも過日出ておりますから、これを……
  65. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理はどう思っておられるか。
  66. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いまの問題が不十分でも祖国復帰を一日も早くして、そうして今度はほんとうに同胞手を携えて、豊かな住みいい沖繩県づくりをする、これがわれわれの願いだ、かように思っております。
  67. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ただいまの議論を私がずっといたしましたことの目標をちょっと申し上げておきたい。  私は、総理がいみじくも最後に言われましたように、返還協定のやり直しあるいは補充あるいは補正、こうした問題について、いまからちょっとお話をしてみたいと思っておるわけであります。  そのときに、いま総理が言われたように、日本の国力というか、そういったものが沖繩返還というものを決定づけた第一のものである、その件については私は間違いがなかろうと思います。私も同意見です。ともかく日本という国を友好的な国家の一つとして確保したいというアメリカの大きな政治的、戦略的要請があったことは、もう間違いがありません。しかし、それと同時に、今度は具体的に、ここに私がいま手にしておりますのは、返還協定上院外交委員会聴聞会におけるロジャーズ国務長官の冒頭説明、きのう私のほうにいただいたものでありますが、この仮訳によりますと、この翻訳が正確かどうか私は照合する時間がありませんでしたけれども、この中に「第二次世界大戦後二十五年余りにわたる米国の軍の施政下で未だに百万人の日本人が生活しているという状態を今後も継続させねば琉球諸島におけるわれわれの地位及びわれわれと日本との関係を一層の緊張に追いやってしまうであろうということは、一九六九年においてすでに明白であったが、それは今日でも明白である。このような状態は最早維持できない。それは米国の性格及び国家利益に一致せず、また歴史とも相容れない。」こう述べているわけであります。すなわち、ここで述べていることは、このようないままで施政権が続いてきたが、この米軍というものを置いておくということは、もう緊張が高まるばかりだし、これはできないのだ、こういったことを述べているわけであります。これはまず国務長官の第一の認識であります。   〔福永(一)委員長代理退席、委員長着席〕  次に、もうちょっと先のほうを見てみますと、佐藤・ニクソン共同声明部分の説明があったあとに「更に、沖繩返還が遅れれば遅れる程返還を要求するデモ隊と基地を守る米軍との間の衝突の機会が増大するであろうと信ずるだけの理由もあった。即時復帰を謳う屋良主席の一九六八年における選出と沖繩の学生及び左翼の急進派の好戦性の増大はこれ以上返還協定を遅らせることは、沖繩における基地の継続的な効果的活動に必要な住田の黙諾を早急に瓦解させるということを明らかならしめた。住民は、特に人口稠密な沖繩本島において、基地のための労働力を大きな割合で供給している。軍は孤立して存在しているのではなく、それどころか、軍と沖繩の社会は相互に関連しているのである。それ故、住民が米軍の存在の継続に強く反対すれば沖繩の基地を有効に使用することは極めて困難であるばかりでなく、ほとんど不可能になってしまうわけである。住民の反対の下に米国の存在を継続するためには強力なる警察のコントロールによってのみ可能になるわけであり、これはきわめて望ましくないことであるとともに高価なものにつくことになる。」こう述べております。この点については別に御異議も何もなかろうと思いますが、この国務長官の発言を見ても明らかなように、米国側はその軍事基地を効果的に、また、いままでと同様の能力を維持させるために、この地域の基地を維持するために返環を考えておることは明らかなのでありまして、この状況を考えますとき、返還協定のやり直し自体というものの要求を日本が正式に要求する立場になった場合に、全然沖繩返還がおくれてしまうとか、あるいは沖繩返還それ自体がだめになってしまうとか、そういうようなことはあるものではなかろうと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  68. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そういうことがあってはたいへんだと私は思いますよ。ただ、そのいま言われておる事柄が、この種の運動はたいへん加速度的にエスカレートしている、これは事実ですね。おそらく、この三、四年前までにはこういう現在の状況を考える人はだれもなかったろう、かように思います。だから、そういう事柄もやはり頭に置いてそうして問題と取り組まなければならない。だから、施政権下にある場合に、これが一体、はたしていま成功してきているものが逆転をする、そういう場合はないか、そういうおそれもやはり考えておく、頭のすみに置いておかないと、これは意外な結果が出るのじゃないか。私はそれをおそれております。
  69. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そこで、私はここのところで申し上げておきたいことは、このように米軍というものが——先ほどから時間ばかり食っておりますから、話をパッカード国防次官の、この会における十月二十八日の説明の中から、一言申し上げておきたいと思います。  これは、中にはどんなことが書いてあるかといいますと、この中では、いろんな協定やら何やらの説明があった後に、「日本の自衛隊が沖繩防衛任務を引き受けるに伴い、国防総省は年間約三千五百万ドルを他の任務に振り向けることが可能となる。このことは、われわれの部隊の一部が引揚げて他の任務につくことを意味し、その限りにおいて、われわれは年間大体のところ三千五百万ドルの節減を実現しうるのである。」お金の話です。もうかるぞという話をしておるのです、向こうは。次に、「行政責任の移管は、米国にとつて、年間約二千万ドルの節約になる。これは、沖網返還交渉の開始決定以前の援助支出も含めた米民政府運営費であった。この金額は復帰を見込んで、すでに大幅に削減されている。」その次に、「現在われわれは沖繩で基地として使用している民有地を賃借している。安保条約及びこれに関連する地位協定規定によれば、日本米国に無償でわれわれの必要とする施設・区域を提供する。従って、現在年間一千万ドル以上も掛つている沖繩の地代は、復帰とともに日本政府によって区引き受けられる。」その次、「現在の沖繩では、軍が必要とする現地人従業員を直接雇用している。しかしながら、日本では、必要な現地人従業員の提供のため日本政府との間に基本労務契約を締結している。従って、日本における現地人従業員は、日本政府を通じて間接的に雇用されている。この制度は、日本での現地人従業員との間の労務紛争を著しく減少させるという大きな利益がある。われわれが基本労務契約にもとづき支払う賃銀及び給付は、日本政府政府自体の職員に支払っているものと実質的に同一のものとなるので、われわれが沖繩で毎年行なっている賃銀交渉は、なくなるであろう。」こういうふうに片っ端から述べているわけであります。  ここにあることは何か。ここのパッカードさんというのはどういう方か、私はよく存じませんけれども、非常にもうかる話を、非常に丁寧に述べてあるわけであります。アメリカはもうかるぞと、沖繩日本に返して大もうけだと、あれも日本、これも日本、この紛争も日本と、最後には、ここに読み上げませんでしたけれども、基地の警備なんというやっかいな問題についても、軍事力を使わないで、日本の悪名高い機動隊、まあ悪名高いとは書いてないが、そういう機動隊におまかせできるのだ、けっこうなことじゃないかと、一生懸命書いてあるわけであります。  このようにアメリカのほうの説明というものを私は考えてみますときに、アメリカ沖繩返還協定の実施によって、まず経済的にもうかるんだということがアメリカのほうの口から明確に述べられていること、そうして、このロジャーズ長官の口から言うならば、米軍基地というものは、これ以上維持すればもう危険な状態になるという危機感が明瞭に述べられているということ、この二つは、私はまさに重大だと思うのです。だから、沖繩返還協定は、特別の恩恵としてアメリカ日本が返してもらったものではない。アメリカは、大もうけの種として今後米軍基地を日本に渡そうとして返してくれたにきまっておる。私は、これについて総理外務大臣もしゃべってくれと頼んではおりません。こんなこと言いにくいだろうと思いますが、私が一方的にただしゃべります。  こういう状況にあって佐藤さんは呼びつけられて、沖繩基地を渡されて、これを今後はしっかりお守りしろよ、そして米軍に貸すんだよ、東南アジアの防衛も引き受けるんだよ、少しお金もたまったから、少しお金も出すんだよ、いいかい、今後もしっかりやるんだよと、頭をなでられて帰ってこられた。そういうやむを得ない状況におありになったということが言えると思うのです。  このような状況にあるときに、沖繩返還協定というものに対してあまりにも条件が大きくつき過ぎているということは、私はあまりにもあまりだと思うのです。これだけの条件を考えてみたって——沖繩返還というものが、それこそ私はむぞうさにできる交渉だと言っているわけではない。しかし、沖繩返還というものに対して、少なくとも三条以降につけられているような米軍基地の強大な存在を、もうそれこそ引き受けておいて、たくさんのお金を払わせられておいて、なおかっこのようなたくさんの日本の主権に対するブレーキをかけられておって、そうしてなおかつこれに対して文句も言わないで、ただその国会の通過をはかるとしたら、私はそれはちょっとおかしなことじゃないか。少なくとも、この協定にはたくさんの不満がある——不満があるということは先ほども述べられた。その不満というものは多少あるがと述べられた。その不満が、多少どころではない、たくさんある。このたくさんの不満というものを何とかしょうと考えることこそ、まさにここにおける審議の対象になるべきだとぼくは思っておる。ところが、政府のほうは、ともかく沖繩返還協定は無傷でここをかけ抜ければいいというふうにいこうとする、これをただ阻止しようとするというだけでは、論理は発展しないと私は思う。いまこの返還協定という難物をかかえて、私は、この返還協定の伴う日本国主権に対する大きなブレーキと、そして日本が当面しなければならないたくさんの危険と大きな財政的支出というものをいかにブレーキをかけてやっていくか、そこにまさに問題点があるんだと思うし、それについての努力を今後どうするかということをまず伺ってみたい、こう思います。   〔発言する者あり〕
  70. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 不規則発言やめてください。  ただいま渡部君から、るる、返還協定並びに沖繩の実情についてアメリカでどういうようにこれを受け取っているか、こういうお話が出ました。私は、これは最近の平和愛好の、いわゆるハト派議員の代表的なものからいえば、まさしくいま言われるとおりだろうと思います。数は少なかったが、やはりタカ派の議員は返還協定反対をしております。これは一体何なのか、そこをやはりわれわれも考えておかなければならないのではないかと思います。タカ派の議員わずか六名とはいいながら、これは全部、いままでの防衛計画が総くずれだと、そういうような意味から非常な反対をした。(「佐藤さんほどタカ派はいないよ」と呼ぶ者あり)これはアメリカのことですから、誤解のないように願っておきます。したがって、私は、いま言われること、渡部君のお話が全然無根だとは申しません。そういうこともあるだろう、また、それは大いに関係しておる、かように思います。ことにアメリカがドル防衛に立ち上がった今日、これはもう説得するのに最もいい材料だろう。政府当局あるいはパッカード国防次官がそういう問題をひっさげて上院議員を説得すること、これは当然のことだろうと思います。そういう政治環境に現在あるのでございます。またアメリカ自身も、最近はベトナムから四万五千も撤兵する、こういう計画まで発表しておる。こういう事柄がやはりこの一連の継続しておるニクソン・ドクトリン、グアム・ドクトリン、その延長だといわれるものであります。私は、こういう事柄が緊張緩和の方向に向いている、われわれはやはりその機会をつくるべきだ、かように思っておりますから、大いに返還実現の暁において、われわれの日米安保条約の運営にあたりましてもこれらは絶えず念頭に置いて、わが国の平和またアジアの平和を確保する、こういう見地からこれと取り組まなければならぬ、かように思っております。  そこで、ただいま、返還後、東南アジアの防衛、それまで引き受けると、こういうお話がありましたが、私はそんな話はいまだかつてニクソン大統領からも聞いておりませんし、その他の米国の首脳からも、私にさような意味の話をしたことはございません。これははっきり、どこかでもしも渡部さんがそういうことを念頭に置いておられれば、日本がいま専守防衛の自衛隊は持っているけれども、この専守防衛の自衛隊が東南アジアの防衛をも引き受ける、そういうものでないこと、その誤解を一掃していただきたいと思います。これはどうもマラッカ海峡防衛論がときどき声に出ておりますから、それはそんなことないだろうと言われるかもわかりませんが、さようなものは私ども真剣に考えておりません。さようなものがまたあろうとは思いません。今日の状態から申せば、さようなことは考えられない。  また、ただいま問題になっておる沖繩における米軍基地、この密度は高い。いままでも何度も申しております。これはやはりもっと密度を減らす、薄くすること、これはわれわれが努力しなければならないことだと思います。また特殊部隊、そういうものが、言われるようなものがあってはならないと思いますから、こういう点が、返還後のわれわれの縮小、整理すべき対象になる、このことを実ははっきり申し上げておきたいと思います。  また、そういう意味で、自衛隊を派遣する場合におきましても、県民の理解なしには自衛隊が十分にその機能を発揮することができませんから、もっと理解を深めるように努力をすることでございます。私は、沖繩県民の方々は、もう戦争が済んでからずいぶん青年諸君も成人してまいりましたから、従前の状態は知らないと思いますが、とにかく戦争前は沖繩には兵隊はいなかった、こういう事柄は頭に残っておる、これが言い伝えられるだろう、かように思いますので、年をとられた方々は、さきの戦争の惨禍、これをみずから経験された方々ばかりでございますから、いま成長している青年諸君にそのいきさつを教えておるに違いない、かように思いますので、自衛隊についてももっと理解していただかなければならないように思います。これらの足らない点はこれからわれわれが努力する、こういうことで、とにかく沖繩県が一日も早く復帰するように、そうして住みいい沖繩県づくりをする、そうして手を取り合って、本土国民県民も一丸となって住みいい沖繩県をつくろうじゃないか、これが何よりも大事なことではないかと思います。ただいまの自衛隊の問題にしても、ずいぶん誤解があるようでありますし、また、ただいまも返還協定打破、破棄、それを叫んで青年諸君がはるばる沖繩から東京に出てくる、こういう状態は、私はどこかにわれわれの考え方と食い違いがあるように思っておりますから、十分それらのものも理解していただくようにいたしたいものだ、かように思います。  長くなりました。失礼しました。
  71. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いま総理が言われたことばの中に、私は、私の質問に対するお答えがなかったのを残念に思います。私が申しましたのは、返還協定アメリカ側から見たら非常にいいものであったということは、上院の外交委員会にお いて満一致でした。満場一致であったということは、そしてまた、いま総理は六人の反対者があったと言われました、しかし圧倒的な多数でアメリカのほうはすらすらと通りました。もう議論も、ここで繰り広げられているようなそれこそ強烈な、かつ、しつこい議論というのはほとんどなかったわけであります。それがどれくらいアメリカにとってプラスであったかという大きな前提というのをはずしていま議論なさるということは、私は間違いではなかろうかと思います。ですから、全体的に言ったらこの協定アメリカにプラス、そして日本にはマイナスであったと私は思います。だから、個々の交渉においてこのマイナスの部分を今後どう縮めていくか、それについて私は伺ったわけであります。総理は、まずこの返還協定のマイナス部分について、みずからいま言われましたところが四つございました。一つは、米軍基地の密度が高過ぎる、これは何とか減らさなければならぬと言われました。そして二つ目には、特殊部隊はないようにするのが当然だし、そう努力すると言われました。そうして三つ目には、自衛隊の派遣というものについて、これはよほど考えなければいけないし、いまはそれがむずかしいことを認められました。そして四つ目には、青年に理解がされていない、特に現地の青年に理解されてないということを述べられました。この四つ、総理が認められたこの四つだけでも、私はこの返還協定の大きな傷だと思います。という理由は、この米軍基地の密度で比較いたしますならば、日本本土の二百倍ですね。それは御承知のとおりです。この膨大な米軍基地の存在というものは、明らかに本土の態様とは違っております。ということは、総理が一番最初に述べられましたように、本土並みという事実とは全然違うということであります。本土と同じではない。特殊部隊のあることも本土と同じではない。これは宣伝文句で応酬するときの話ならまた別です。しかし、正直に言って、総理もいま認められたように、この協定にはこういう傷がある。この協定を大きく見るか小さく見るかは、総理と私で大きな見解の相違がございます。しかし、傷であることには間違いない。そして、不平不満があると、さっき外務大臣は言われました。その不平不満であることにも間違いない。そしてそれは国民の不満、沖繩の不満であるだけではなくて、少なくとも国会議員の不満であるべきだと私は思う。ここで先ほどから私をやじられた方でさえも、同じ不満はおなかの中に内蔵しておられるのだと思う。もしその不満が全くないというのだったら、それは日本人として少しおかしいのじゃなかろうかと私は思う。そして私はその立場から、この不満を今後解消するためにはどうしたらいいかという問題に話が移らなければならない。いままではそういう問題に話が移らない。総理のほうは、ひたすら、返ってきたら何とかすると言うだけである。返ってきたら何とかすると言うだけでは話が進まない。私の言わんとするところは、したがって、返ってきてから何とかできることと、返ってきてから何ともならぬこととあると、まず申し上げておきたい。つまり、現地の人々に対して、要するに社会保障をどうするかという問題になったら、それは返ってきてから何とかなる問題という部分は非常に多くあるとし、何ともならない問題がある。たとえば米軍基地の問題なんということは、一ぺん返ってくる前にはっきりしておかなければ、何ともならない問題の続出であります。そして、アメリカ軍の権益を一ぺん認めてしまったらどうしようもないという問題点もあります。そうすると、このような返還というものに対する態度、その弱腰というものに対して、私は、これはもう一回考え直しをするべきものではなかろうか、こう思っておるわけであります。少なくとも、返ってきたら全部片づくというべき問題ではない。この返還協定返還部分反対する者はだれがおりますでしょうか。きのうの雨の降るまん中で青年たちと私は握手をしながら思いました。この青年がこれほど怒るその理由というものは何か、その気持ちが総理にわかるだろうかと私は思いました。いまのお話を聞くと、はたせるかな、あまりわかられている気配がない。そこで私は申し上げるのです。返還することにだれも不満は持っていないでしょう。しかし、返還協定の持つ政治的な立場と日米関係というものと、東南アジアにおけるさまざまな軍事的な立場というものは、青年の不安をかり立てて余りがある。それをどうしなければならぬかということが論議の主題となるべきだと思うのですけれども、総理はどうお考えでしょうか。
  72. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの中で私ちょっとわかりかねるのは、返還協定に対する政治的立場、その相違がいろいろな問題を起こしておる、かように言われましたが、もう少しその点を詳細に、わかりやすくお話しを願いたいです。
  73. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理がそういうふうに反発なさるのでしたら、私はお話し合いがまことにできにくくなるのでありまして、総理は何か途中でほかのことを考えておられたのではないかと私は思いますよ。総理、私が言ったのは——よろしゅうございますか、まず総理に申し上げたのは、私は、この返還協定にたくさんの不満のポイントがあるんだ、それは総理が認められているとおりだと申しました。それを今後どう減らすか、それから議論が始まらなければならぬと私は申しました。そしてそれに対して、私は、返還されてから片づけるべきものと、それから返還される前にもうよほどかっちりきめておかなければどうしようもならぬ問題と、両方あるんだと申しました。だから、今後その問題については十分気をつけるべきである。政治的立場がそれは総理と私とは違います。そのことを私は議論の対象にしているのではない。私が申し上げているのは、これから、じゃどうしなきゃならぬか、そのために私は、返還協定のあまりにも軍事的な部分に対して、あまりにも軍事協定、新しい軍事協定という部分に関して、これをブレーキをかけるなり何なりの再交渉をするべきであるというのが、私がさっきから申し上げた立場であります。そして、総理はこの協定をやり直すということは言えないかもしれませんけれども、私が言っているのは、だからこの協定についてこういうふうな改正を試みたいとか、今後こういう努力をしたいとか、こういう外交交渉を続けたいとか、そういったことが当然出てくるでしょうと私は申し上げておるのです。それをお話ししていただきたいと思います。
  74. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いや、たいへん失礼な反問をいたしました。ただいまのでよくわかりました。まさか安保反対、そういう立場でいろいろのお話が出ているのかと思いましたが、そうじゃないようです。だから、私が疑問を持ったことは、これは私も平静に、過去を払拭して、そうしてお話し合いをしたいと思います。  ただいま言われておりますこの沖繩施政権返還、この問題を考えるときに、あるいは話をすりかえたと言われるかわかりませんが、いろいろ日本自身が当面しておる場合に、日本領土自身、これが失われておる、これは北方領土、これはもう明らかにいまだに私どもに返ってこない。手づるさえ実はない。しかし、アメリカ施政権を持っているその沖繩日本返還する、そのこと、その一事を考えても、これは外国の例をあげる必要はないんです。また、遼東半島、そんなもの考える必要はございません。私ども自身がいま当面しておる現代の問題です。それでもそういうように違うわけなんです。北方領土については話し合いはできない。しかし、施政権を持ち、強力なる軍事基地をつくり上げたその沖繩日本に返してくれる。これは、アメリカ自身が日本を理解し、また日本に協力するというそういう立場から決意したということでなければならないんじゃないですか。ただ単に、アメリカ自身もうこれを持ちこたえることができなくなった、毎日毎日のデモでもうこれは限度にきたんだ、そういうことでこれが返ってくるんだと、こういうように評価するということは、事実は違うんじゃないでしょうか。私は北方の領土を考え、同時に沖繩を考えた場合に、アメリカはやはり日本を十分理解してくれておる、やはり日本をよきパートナーとして持つ、そして世界の平和を維持する、こういう立場に立っているんだ、かように思います。先ほど来申すように、沖繩、これに対するアメリカが限度にきている、限度に近いと、こういうような表現には私は賛成はいたしませんけれども、しかし、この種の運動が非常に急激にエスカレートしていることは、私も認めたとおりであります。したがいまして、それはそれとしておいて、とにかく日本沖繩百万、同時に一億の国民全体の熱願にアメリカがこたえてくれたと、かように思います。私は北方の領土を考えても、これはたいへんな問題だと実は思い起こすのであります。まあ私はそのことは別としても、ただいまのような状態、このままに長く推移することは、これは両国のためにもならないと思っております。したがって、今度はっきり日米安保条約のワク内にその部隊自身、また軍の行動自身、運営その他が入ってくるとすれば、これは先ほど来言われるような、金もうけのためだとか、あるいはこれだけの予算を使わなくて済んだとか、こういうようなこともありましょうけれども、そう考えるよりも、もっと本来の姿にこの事態を返すということにやっぱり取り組んでいくのが、日本政府の当然のことでありますし、沖繩県民の長い御苦労を考えれば、なおさらわれわれも努力しなければならないと、かように思うのでございます。  そこで、それがいまのうちにやっておかなければできないのか、あるいはそれができるまでは、施政権返還、それがおくれてもいいのか、しかし、まあ先ほども言われるように、施政権返還についてはだれ一人反対するものはない、それはみんな賛成だと言っておられる。ただ、もっと条件を楽にならないのか、こういう意味政府を鞭撻しているんだ、かように仰せになりますが、私どもは最善を尽くしておる。また、この国会を通じて皆さんの御意見もどんどん入ってきておりますから、これから取り組むべき事柄、そういうこともあるか、そういうこともあるかというような、われわれの不明、不知、そういうようなものについても啓蒙していただきましたから、大いに力を得て、われわれはこれから解決すべき事柄についてはおろそかにしないつもりであります。これはぜひとも皆さん方の御鞭撻のもとに最善を尽くしてまいりたいと思います。ただいま折衝しておる状態におきましても、そういう意味で取り組んでおること、その姿勢だけは御了承いただきたいと思います。
  75. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は返還協定のこのさまざまな問題点についてさらに逐条的に明らかにしていきたいと思うのでありますが、ただいまの総理のお話を伺えば伺うほど、多くの前提を消化しなければならないと感じております。そのお話し合いの中でたくさん欠けておりますのは、総理アメリカのことを非常に気がねしておられるのでありましょうから、パッカード国防次官であるとか、あるいはロジャーズ国務長官の述べたこの説明でさえも、非常にこうやさしくやさしく受け取られておられるのは明らかにわかっております。私は、政治の上においていろいろなかけ引きのあるのもわかっておりますが、この両発言が述べておりますとおり、アメリカはみずからの国益のためにこの問題を明確に扱っているのであり、そしてその立場は、われわれもまた同じくとらねばならぬと、まず思います。そうして、それについては総理もおそらくは賛成されるだろうと思います。  その次に、私は、沖繩問題と北方問題とをここで対等に議論することはできないと存じます。いまは沖繩問題を扱っているのであり、北方問題に関する議論をしている場所ではないのであります。そうしてこの(発言する者あり)協定委員会だよ、何いっているか。——この沖繩問題に関するさまざまな議論の応酬はありますけれども、私はここではっきりしておかなければならぬことは、この協定に関して最善を尽くしたと総理が言われるのはわかりますけれども、最善を尽くしたにもかかわらずこの程度であったかというのが、表を通っているデモ隊の大きな不満であるということを私は申し上げなければならない。したがって、私は、総理がこれから——きょうはこのあと委員会理事会をなさるそうでありまして、私は次回に質問を譲らなければなりませんけれども、この返還協定及び返還協定に伴うさまざまな取りきめが今後において十分検討され、これに対する疑惑というものを一掃し、そしてより充実したものにするために、政府は私の審議中にもっと積極的な発言をされることを望みたいと思います。  私は、いま、返還協定を、むしろ政府を鞭撻するかのごとく話しております。返還協定を認めるかのごとく話しております。そして、その立場においてすらも問題がかくもあるということを論じております。そしてきょう明らかになったことは、少なくとも、いままで政府が述べたような、奪われた領土を云々などというような宣伝というのは少し大き過ぎたこともわかりました。そして、本土並みと言いながら、本土並みとは全く違う米軍基地をかかえていることを総理が気にされているということも明確になってまいりました。そして、そういう点は、私は、率直な議論をする上には進歩だと思っております。次回においてはさらに積極的な中身のある御答弁をお願いいたしまして、本日の私の質問を終わりといたします。
  76. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、本会議終了後再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時十一分休憩      ————◇—————    午後四時開議
  77. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。渡部一郎君。
  78. 渡部一郎

    渡部(一)委員 本会議前に引き続きまして、いよいよ協定の中身の問題につきまして質問をしたいと存じます。  あまり時間がないようでございますから、この返還協定の一条、二条、三条と順を追っていきたいのでありますが、まず第一条におきましては、米国の上院外交委員会の対外公約小委員会で、ジョンソン国務次官とサイミントン議員との間でお話し合いがされているわけでありますが、サイミントン議員が、沖繩日本に返すことに同意する取引の一部として極東防衛における日本の役割りの拡大を日本に約束させたのか、こういうことを質問しております。極東防衛に対する日本の役割りの拡大を日本政府に約束させましたかと、サイミントンさんが聞いておるわけです。それに対してジョンソン国務次官は、肯定的に返事をしているわけであります。これに対して御見解をお願いいたします。
  79. 西村直己

    西村(直)国務大臣 そういう約束はした覚えございません。
  80. 渡部一郎

    渡部(一)委員 向こうは国務次官が言われておることでありますから、それに対する日本政府見解というのはかなり重大なものを含むわけですから、外務大臣お答えください。
  81. 福田赳夫

    福田国務大臣 自衛隊の役割り、これについては、日米共同防衛体制のもとでありまするから、これはまあいろいろ話はしておると思いますけれども、そういうお話のような約束をしたということは聞いておりませんでございます。
  82. 渡部一郎

    渡部(一)委員 その問題につきましてあとに保留しておきまして、第二条に移りたいと存じます。  第二条の規定につきましては、本来これは言わずもがなの規定ではないか、そういう感じが、一見すると、するわけであります。確かに小笠原協定におきましてはこれとほぼ同等の規定がありまして、安保条約であるとか、その他関連取りきめというものを沖繩に適用するのだということがうたわれております。それじゃ、どうしてこういうものを沖繩に適用するということを、わざわざ安保条約を取り上げていわなければならなかったのか、また、この安保条約と友好通商航海条約を含むというように、この友好通商航海条約というものの名前をあげて含まなければならなかったのか、この辺は、しろうとが見てもはなはだ疑問であろうかと思います。この規定は要らないのじゃないか、こういうふうにまずしろうとが言うような質問に対して、外務大臣どうお答えになりますか。
  83. 福田赳夫

    福田国務大臣 私もそう思いますが、しかし、本土並みということがこの協定をつくる上におきまして非常に重要な眼点になっておる、あらためてこれを確認をいたしておきたい、こういう趣旨かと思います。  なお、通商航海条約のことにつきましては、条約局長から御答弁申し上げます。
  84. 井川克一

    井川政府委員 仰せのとおり、第二条は確認規定でございます。これが不要であるか——法律的にこれがあるためにこの条約が適用になるというものではございません。おっしゃるとおりでございます。しかし、第一点にただいま大臣がおっしゃいましたように、もともと核抜き本土並みというときに、本土並みというのは、自由発進ということばに対しまして本土並みということばは使われておりましたような関係もございまして、安全保障条約と、それから友好通商航海条約はこれは経済面における柱でございますので、この二つの大きな柱を例示的にこれにあげて確認したわけでございます。
  85. 渡部一郎

    渡部(一)委員 さて、非常にこれから問題が起こってくるわけでありまして、いわゆる一九六九年「条約法に関するウィーン条約」の規定によりますならば、「別段の意思条約から明らかであるか、又は他のなんらかの方法によってそれが証明されない限り、その条約は、各当事国のすべての領域に適用される」と、二十九条に規定されておるわけであります。だから、何にも取りきめがないか、そういう意思表示がなければ、条約は各当時国の領域規定されておる。だから、そういったものでは別に取り上げる必要がない、書く必要もない、こういうふうに言えると思います。いま外務大臣条約局長の御返事では、確かに要らないのだ、確認規定である、あらためて二重に重ねて確認したというような意味合いであります。一体そんなに要らないものをくどくどと第二条になぜ書かなければならなかったか、ここに私は重大な問題があると思っておるわけであります。  そこで、その問題は何なのか。日米安保条約と日米友好通商航海条約がここに二つ特記されておるわけであります。ところが、両者の間にはたくさんの条約があります。たとえば、一八八六年日米犯罪人引渡条約、一九〇六年日米間追加犯罪人引渡条約、一九六四年日米領事条約、むしろこんなものこそいわなければならないと思います。一九五五年日米相続贈与税調整条約、一九五三年日米民間航空協定、また一九六八年以降におきましても、原子力平和利用協定、小笠原協定太平洋諸島信託統治地域に関する日米協定、所得税調整条約、こうしたものが、たくさんの多数国条約と一緒に次から次へと日米間には橋が渡されておるわけであります。そうしたら、こういうものの中で、なぜ日米安保条約と日米友好通商航海条約とこの二つ、だけを述べたのか。  私は概括的にぱっと申し上げますが、これは一つは、日米安保条約について、いままでの日米安保条約と変質したものがこの両国に規定をされておるということが一つ。それからもう一つは、日米友好通商航海条約、こうしたものについては一種の変質というものが始まっておるということを申し上げたいのであります。それはどういう形で始まったのか。  時間がありませんようですから、この日米友好通商航海条約につきまして、ただいまからちょっと申し上げてみたいと思うのでありますが、この日米友好通商航海条約の中に、非常におもしろい規定があるわけであります。この規定の中に、お互いの国の間で商売を自由にすることができるのだ、そういう規定があるわけであります。自由職業に関する規定というのがあるのであります。この八条の二項というものは、ここであらためて私が講義するみたいで恐縮ですけれども、「いずれの一方の締約国国民も、外国人たることのみを理由としては、他方の締約国領域内で自由職業に従事することを禁止されることはない。」要するに、日米両方ともがお互いの国の中で商売が自由にできるのだ、とう規定したわけであります。ところが、これに対して保留がついておるわけでありまして、交換公文がありまして、その八条の二項、これについては、アメリカ合衆国のほうではこの条項について保留をしておる。そうしてこの分だけは適用しない。あるいは州、あるいはその他の特別区、そういったごとに日本人の職業に対して制限を設けている条項があるので、それを生かすのだ、こういっておるのであります。そうしてそれに対して、日本政府は同じような規定自分たちのほうにも持っておるわけでありまして、向こうがそういうふうにするのだったら、それと見合うやり方をこちらもしますということをここに規定しておるのであります。ところが、この沖繩返還協定の中を拝見してみますと、その交換公文の規定というものが沖繩に適用されない、つまり、言うならば、沖繩における人々は、本土における人々と全く違った差別の対象になってしまう、こういうおそれがあるわけであります。ここのところをどうお考えか、ここのところを私は伺いたいと思います。
  86. 福田赳夫

    福田国務大臣 条約局長からお答え申し上げます。
  87. 井川克一

    井川政府委員 ただいま御審議を願っておりまする返還協定に書いてありまする日米通商航海条約は、もとより留保を含めたものでございます。留保を含めたものとして適用されるわけでございます。そして、八条の留保と申しますのは、これは先方の法制上のたてまえが、自由職業につきましては州によって制限することができるということからああいうふうな留保がついたわけでございまして、わが国もこれを受諾したわけでございまして、これは全くこの沖繩の場合と関係がないわけでございます。当該アメリカ国民が属する米国内の州などが日本国民に自由職業に従事することを制限または禁止する場合には、日本で医師、弁護士等の自由職業に従事することについて、わが国がその同種の禁止または制限を課すことができる権利を留保するというだけの話でございまして、もともとアメリカの国内法が一本でございましてそれが統一的なものであるならば、また自由であるならば、それは問題はないわけでございますけれども、弁護士になる場合、各州によりましてその弁護士資格によって違うというところから起こっておるものでございまして、こちらの日本のほうは一つの国で、州などというものはございませんで、全く均一でございますので、それが沖繩がどうであるからということはあり得ないことでございます。
  88. 渡部一郎

    渡部(一)委員 条約局長に重ねて伺っていきますが、そうしますと、日本人の自由な商売をどこの州がどういうように規定しておるか、そして、そういったものについての情報と資料を持っておられるかどうか、ちょっとお伺いしておきたいと思います。
  89. 井川克一

    井川政府委員 ただいま手元に持っておりません。必要に応じまして、先生のあれによりまして資料として提出さしていただきます。
  90. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは、ただいまのを資料として出してくださるように要求いたします。  次に、この沖繩返還協定によって、この友好通商航海条約というものがなぜ出てきたか。それは、沖繩においていままでいたところのアメリカの企業、アメリカの企業家たちに対して、この友好通商航海条約のワクをさらに突き破るようなたくさんの自由を認めた。たとえて言いますならば、返還前所得に対する遡及課税の免除、民政府による投資認可の継続、沖繩に働く第三国人身分の保障、沖繩県有地借地権の継続、沖繩企業の本土への自由進出、沖繩でのドル資本の本国への送金などの移動の自由、弁護士、医師などの資格保障、輸入制限措置の適用免除、こうしたものに対して向こうは強く要求しておったわけでありまして、その大部分については政府はほとんどこれを容認した。そうして、それは愛知さんの書簡において、一方的に認めるという形でこれを承認した事実というものがすでにあります。そうすると、これはどうなっているのか。友好通商航海条約というものをわざわざここへ適用すると述べた理由は、そのように愛知書簡によって裏づけられた、要するに、規定以外の規定によって裏づけられた、全くいままでともう一つ不平等性の強いものをここで認めたということをあらためて再確認した、そういうことになると思うのですが、この点、条約局長まず御答弁ください。
  91. 井川克一

    井川政府委員 通商航海条約は、御存じのとおり、一般的な普通の場合を前提としておりまして、日本アメリカとの間の貨物の往来、人の往来、職業の問題、関税の問題その他につきまして、原則として最恵国あるいは内国民待遇を与え合うという規定でございます。それらのものが、またガットの精神に従いまして、日本国アメリカ国との間の経済交流の基準をなしているものでございます。沖繩につきましても、それが今後一〇〇%当てはまるわけでございます。一方、沖繩におきまして、この施政期間中に平穏無事に職業に従事していた人、そういう人たちにある種の特別扱いをしなければならない、このことは、通商航海条約と全く面の違う問題でございます。したがいまして、全然面の違う問題でございまして、それを愛知外務大臣が、このような方針でやりたいという書簡をマイヤー大使に出されまして、国内法的措置が要りますものは特別措置法の中に規定されて、今回の国会に提案されているわけでございます。
  92. 渡部一郎

    渡部(一)委員 愛知さんの書簡というものは、外務省で私たちにばらまかれたこのパンフレットの中に載っておりますが、「復帰後の沖繩における外国人及び外国企業の取扱いに関する愛知外務大臣発マイヤー駐日アメリカ合衆国大使あて書簡」となっておりまして、ここにおける事業活動、私有財産、国有地及び県有地の賃貸借、外貨送金、自由職業者、すなわち弁護士、医師及び歯科医師、獣医師、公認会計士、また課税、輸入割当て、放送事業、そのことごとくについて特殊な規定を設けたのであります。この特殊な規定というのは、この友好通商航海条約で認められている範囲をはるかにオーバーするものでありまして、わが日本国の権利、権原というものを大幅に削除したものであります。この形というものは、もう明らかに認められているとおり、友好通商航海条約と違う面であるといま述べられましたが、全く同じ面でありまして、経済という問題についてのどういう待遇をお互いの国が与え合うかという点については全く同じものであります。そして、それについてこれほど大幅な譲歩をしたというところにこの二条の意味があったと私は考えるわけでありますが、外務大臣はいかがお考えですか。
  93. 福田赳夫

    福田国務大臣 愛知書簡とただいま御指摘の第二条、これは関連のないことであることは、いま条約局長から申し上げたとおりであります。  いま条約局長から申し上げましたように、沖繩アメリカ施政権下にあった、そこで施政権下においてアメリカ人が平穏無事に営んできたいろいろな経済的な行為、これを、返還だというので断絶ができてはいかぬ、それに対してできる限りの配慮を払う、これは、それらの企業が、あるいは経済団体が、沖繩におきましてもそれなりにその沖繩の発展のために貢献してきた、それをにわかにここで断ち切るということは妥当でないという考え方から出発した一連の案件でございます。
  94. 渡部一郎

    渡部(一)委員 従来いろいろな議論が行なわれておりますから、私はここのところであまり議論を重ねたくないのでありますが、いまの御返事によれば、明らかに特殊なお取り扱いを外務省がおやりになったことは確かであります。そして、それに対して今度はこの「米国上院外交委員会安全保障取極及び対外約束小委員会聴聞会議事録「日本及び沖繩」」その第一分冊、外務省から御提示いただきましたものの中で、私は、先ほどの事前協議の問題につきまして、総理大臣おいでになりませんから、外務大臣に対してわかっていただこうと思っております。この中で、ジョンソン国務次官が、ここの聴聞会、サイミントン委員会で証言をしておるわけであります。その中で、事前協議の問題についていままでとは変わっておるんだということをかなり発言しておるわけであります。どういうふうに変わっておるかというと、事前協議というのは、事前に協議してそれからやるのだというのではなくて、事前協議のまさに予約というべきものを彼が述べているところが何カ所かあるわけであります。  まず、お聞きをいただきたいと思うのです。  「佐藤総理は一九六九年四月二十四日の国会で次のとおり述べている。「米側は、日本国民感情を考慮して、日本からは偵察機を護衛するための飛行機の発進は行なわない、かような方針でありますが、もし、かりに護衛戦闘機が日本から発進することがありましても、これは偵察活動に対する不法行為の発生を防止するためのものであり、その発進自体は、ここが大事なところですからよく聞いて下さい。その発進自体は、戦闘作戦行動として行なわれるものではありませんから、事前協議の対象にはなりません。」と述べたこの佐藤総理発言が特に議事録用に提出され、受け取られております。これがまず第一。つまり、偵察機の問題については事前協議の問題にしないで、これはまず認めてしまう。事前協議の予約分に入れたわけであります。  次にジョンソン次官は、「沖繩返還されてもそれは他の国々における米国の約束を履行するための米国の能力を減じないであろうし、他の国々における米国の約束を履行するわれわれの能力を減じさせないという日本の了解を取付けることが重要であった。」つまり、外地へ直ちに出動するとかあるいは軍隊を直ちに敏速に移動するとか、そうしたようなすべての能力を減じさせないという日本の了解を取りつけることが大事であり、それに成功したと述べているのであります。  その次、「これらの基地及び施設は他の地域における米国の約束を履行する上に重要であり、日本が「ノー、米国が韓国における抵抗を支援すべきであるとは考えない」あるいは「ノー。米国が台湾における抵抗を支援すべきであるとは考えない」といわないようにすることが重要であった。」日本側が言わないようにすることが重要だ。「さもなくば、米軍基地は役に立たないものとなり、その主要な目的を果さなくなってしまう。これが日本政府によって共同声明において述べられている中で重要な点なのであった。」つまり、韓国に出動あるいは台湾に出動という、米国軍がそういう態度をとろうとするときに、基地及び施設が、事前協議をしたときに日本側がノーと言わないようにしておくことが大事であったと述べておるのであります。そうして、それはうまくいったと、文脈の上で述べているのであります。  それから、さらに次官はこう述べております。「日本側が「イエス」という方に傾いているということである。それが全体としての文脈である。」、その証言の最後にあらためてこう申しているのであります。  事前協議の問題についてはまだあとたくさんございますが、いままでの事前協議に対する態度とは全く変わったことを、はしなくもこのジョンソン国務次官の証言は明瞭に物語っておるものであります。まず、これについて外務大臣はどう考えておられますか。
  95. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま三つのことをおあげになりましたが、要するに一つの問題だと思います。  そこで、この事前協議の態様が沖繩については変わってきておるのだというようなお話でありますが、私どもの理解は、全然そういうことはありませんです。事前協議制度が内地、本土並みにそのまま適用になる。これがいま御指摘の協定第二条。そういう問題について疑義が生じてはいかぬ、そういうことから、これは書かずもがなのことである、こういうふうに存じましたが、特にこれを特掲した、こういう理由になっておるわけであります。
  96. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ないとおっしゃっても、向こうがそうおっしゃっているわけですよ。ジョンソン国務次官とここで討論していただければ一番話が早いのでありましょうけれども、向こうのその発言に対して、そうでないと言うだけでは、これは片づかないわけであります。  そうしてその意見というものに対して私が次に申し上げておきたいことは、外務大臣の答弁を横に置いて次に話を進めますと、結局、安保条約、その安保条約の適用に関しましては、いまの事前協議事項が一つの例なのでありますが、全く中身が変わってしまっておる。そして中身の変わった事前協議事項に関する考え方をくっつけて、あらためて適用するんだ、そしてまた日米友好通商航海条約、日米間の経済関係を規制する最も重要なものでありますけれども、これについても、その経済問題について愛知書簡によりまして全く大幅な妥協をしてしまうというようなことをいたしまして、そのように実質的に中身の変わってしまった友好通商航海条約と、その二本をわざわざ両国において新たに堅持することをうたったのであります。本来ならば、条約あるいは協定というものが実質的な内容に全く大きな内容変化が行なわれるなら、これはあらためて再交渉あるいは協定破棄、そうした手続が必要なわけであります。そこでどういうことが行なわれたかというと、この中身の変わってしまった二つの条約を特にここにあげて、第二条をまた新たに設けてそうしてここに書き込まざるを得なかった。それが第二条の存在理由であって、福田外務大臣条約局長までが首をひねるような二重の規定というものをわざわざ第二条に書かざるを得なかった、ここに理由があると私は思うわけであります。ですから、この第二条については、これは二重規定であるとか、あるいは確認事項であるというような御返事が局長からもありましたけれども、確認事項というのはまさに言い得て妙であって、このように変質したものをいままでの条約と同じようにここのところであらためて日米両国政府は確認をして処理していく、認めていくということを確認した、つまり、同じものだと確認したのではなくて、違ったものを同じものと同様の立場で確認するということを明確にしたのがこの第二条である、私はこう信ずるわけであります。まさに論理のいたすところはそのとおりであると私は思うのであります。これについて外務大臣の御所見は必要であろうかと私は思います。
  97. 福田赳夫

    福田国務大臣 渡部さんのお話を聞いておりまして、まあずいぶん変わった見方があるものだなという感じがするくらい、私の解釈と渡部さんの解釈は違います。これはあくまでも本土並みという問題が政治的に沖繩返還問題の焦点になっている、つまりそのことを強調したい、こういう意味合いで、まあ普通なら入れぬでいいかもしれぬ、いいかもしらぬものを特に取り上げた、こういうことでありまして、これは真実疑いのないもの。私どもは思ってもおらないところでございます。どうかひとつ御了解願います。
  98. 渡部一郎

    渡部(一)委員 全く了解できないのですね。本来入れなくてもいいものだとおっしゃった。入れなくてもいいものをわざわざ条約に書き込んだなどということを現職外務大臣が言われたのは、これが初めでですよ。これはとんでもない、世界じゅうの笑いものです。書かなくてもいいような規定を書いた条約が、日本にもたくさん条約がありますけれども、この中のどこにあるでしょう。書かなくてもいい規定をわざわざつけ加えた、ちょっとくどいと思うけれども、わざわざ書いておいた、ばかなやつのためにもう一回書いたのだというような、そんな変な規定というものはないのであります。だから、これはまさに、変質してしまった二つの条約をわざわざここに取り上げて書かざるを得なかった、これがほんとうの正体なのであって、そして私は、それに対して外務大臣がここで、私の言うとおりですとは、それは言いにくいのは察しております。言いにくいのは察しておりますけれども、そういう第二条の規定それ自体が、返還協定の一つの隠された面を如実に浮き彫りしておりますがゆえに、私は特にこうやって申し上げたわけであります。  これについて御答弁を迫ることはちょっと気の毒でしょうから、私は次へ行きましょうか。——外務大臣、よろしいですか。どうぞ。
  99. 福田赳夫

    福田国務大臣 せっかくの御所見でございますが、これは私どもは全く正反対立場をとります。つまり、これは核抜き本土並みというものが非常に大事な問題である、かるがゆえに特掲した、こういうことであります。御理解願います。
  100. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは、私は次に移りまして、第四条のほうへ移っていきたいと存じます。  第四条の第一項の請求権の放棄でありますが、すでに同僚社会党の議員より、請求権の放棄に対する憲法違反の問題あるいはヘーグ条約との関連性の問題について、るる指摘があったわけであります。私もその点について意見を同じくするものでありますから、あらためてもう一回総括いたしまして、ヘーグ陸戦法規などの国際法に違反するという点、そして憲法九十八条二項に定めた「確立された國際法規は、これを誠實に遵守することを必要とする。」という項、この二つに照らして、これはまことに遺憾なる請求権放棄であったといわざるを得ないと存じます。したがって、この内容のきわめて濃厚なる違憲性について、今後多くの裁判が持ち上がったり、多くの地元における争乱が起こったりする可能性というものを含んでおると私は思います。ですから、この規定に対して請求権を放棄してしまったということは、もうその内容、それからその対価、実態、そういったものも確かめないでそうしてつかみ金でやってしまった。つかみ金の一部へ繰り込んでしまった。現地沖繩の方々がこの条項に強い強い不満を持たれているということも、私はうなずけるわけであります。そして、その不満というものは、沖繩県民の意向を無視して本土がどうしてそこまで私たちの正当な権利まで放棄してしまうのか、そういう恨みにもなろうかと思います。  私は、この問題が単なるそういう道義上の問題というだけでなくて、こういう明らかな国際法、その国際法にそむいておるという点について、外務大臣にもっとがんばっていただいて、そうしでアメリカ交渉してもらいたかったな、この規定についてはずいぶんひどいあれをしたなという感じをせざるを得ない。たとえて言うならば、ヘーグ陸戦法規において、占領軍は非占領地域人民の生命、私有財産、宗教等を尊重し、不法行為によって国または個人が被害を受けたときはその賠償を請求できるし、平和が回復したときは、押収使用したものを還付し、かつ賠償するものとされており、さらに、占領地が領土所属国に返還されるときは、占領前の状態の回復が原則にされておる。これを全部一括してぱんと放棄してしまった。私は、との規定ははなはだまずい規定であったなと、こう思うわけであります。もういま放棄したんだからしようがないというような議論もあるかもしれませんけれども、この辺は、請求権放棄は当然などという議論と違って、そして日本国の問題だけでなくて、現地の人々の問題です。現地の方々は、第三の琉球処分だ、私たちの意向を聞かないでここまで処分していいのかというふんまんが強くあるわけであります。これについて、総括的にひとつ御意見を承っておきたいと存じます。
  101. 福田赳夫

    福田国務大臣 この四半世紀の間とにかく沖繩米軍占領また施政権のもとにあった、そういう関係から、いろんな事態があると思うのです。そして、それが請求権というような問題につながるケース、これが無数にあると思うのです。しかし、返還協定締結する場合に、これら一つ一つの、その無数の請求権を整理することはできない。しかしながら、アメリカが国内法あるいは沖繩における布令によりまして賠償の責めに任ずるという性質のものは、これはアメリカ政府に賠償してもらう、それから、そういう法的な根拠はないけれども、あるいは復元補償の問題とか、あるいは海没地の問題とか、これもアメリカに補償をしてもらう、こういう取りきめをしておるわけであります。そうしますと、その他に幾多の請求権というものは残ることになりましょう。これは現在においてそうさだかにわかってないのですが、しかし、その中ではっきりしておる問題があります。それは講和前人身損害の問題。これにつきましては、別途法律案におきまして、日本政府の国内措置として見舞い金を出す、こういうことにいたしておりますが、その他の問題につきましては、これから各方面の御協力を得ましてそして事態を明らかにして、もしそういう措置をとる必要がありますれば、これを行なう、そういう方針をとっております。
  102. 渡部一郎

    渡部(一)委員 要するに、外務大臣は非常に言いにくい答弁をいまなさったのだと思います。それで、請求権について、今後も何かの代替的な措置をとって、そうして現地の人々の持っていらっしゃった請求権に見合うものをいろいろな形で補償するというような措置をとりたいというようなニュアンスだと私は受け取りました。そうすると、この項に関しては、外務大臣も相当な残念な気持ちがしておられるのではなかろうかと私は思っております。そうして、この請求権の問題について今後十分な——協定の成立、不成立という問題と別に、請求権の問題については、今後においていろいろな手当てをしていきたい、放棄された請求権の中に属しちゃった問題については、そういう態度でいらっしゃる、こう理解してよろしゅうございますね。
  103. 福田赳夫

    福田国務大臣 そのとおりでございます。残された問題は、国内措置としてこれを解決するという方針であります。
  104. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは、私は、この項の問題のところで、今度は次の問題に急いで進んでいきたいと存じます。  私は、この問題の三条のところを少し飛ばしてしまいましたから、三条にもう一回戻りまして……。  沖繩のこの返還協定の最大の問題点というのは、御承知のとおり、第三条のこれは一つの大問題点でありますのは、米軍に基地その他を提供している、施設及び区域を提供しているという部分であります。これは条約の表側の文章、その表側の文章から議論いたしますと、非常に話がやりにくいだろうと思いますから、私は、ここのところについているA、B、C表について外務大臣にちょっとお伺いしておきたいのであります。  まず、このA、B、C表の見方でありますけれども、外務大臣はこれをどういうふうにごらんになっておるか、それをお伺いしたいのです。
  105. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは第三条を具体化したものである、こういうふうに見ております。つまり、このA表——A表が大事な問題ですが、A表は、日米合同委員会において合意する用意のある設備及び用地である、こういうことにしておるわけでありますが、このA表に掲げる施設、土地、そういうものを米軍に基地として提供いたしますと、具体化したわけであります。
  106. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いまこの条項を具体化したものであるとおっしゃいました。そこで、具体化されておるこのA表、B表、C表でありますが、公明党の沖繩調査団の報告資料をここに私は持っておりますが、外務大臣総務長官お読みになっていただいたろうと私は思うのですが、お読みになりましたですか。
  107. 福田赳夫

    福田国務大臣 私自身は読んでおりませんです。
  108. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それじゃ、社会党がお出しになりました調査報告書についてあるいは日本共産党がお出しになりました報告書はお読みになりましたですか。
  109. 福田赳夫

    福田国務大臣 私自身は読んでおりませんです。
  110. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それじゃ、非常に残念なことですけれども、初めから全部おさらいをしなければならぬわけでありまして、非常に残念なのでありますが……。困りましたな。  それじゃ、問題が非常にたくさんありまして、このA、B、C表は、実はもうぼろぼろの表なんですね。ぼろぼろのと申しますのは俗語ですから、正確に言えば、大体このA、B、C表は、米軍の施設、区域を全部収覧したものではない。それから、ここにある米軍の施設、区域の面積というのは相当間違っておる。それから、米軍の施設、区域に入っているものについて、非常に妥当性を欠くものがある。また、この中には、基地の使用の法的根拠の全く疑わしいものがある。それからまた、この中においては、使われていないで、当然日本側に返さなければならないものがうんとある。これは、もう各野党がその機関紙等を通じていままでさんざん述べてさておいたところであります。  外務大臣は、そのような重大な問題、重大な批判について、もうとくと御承知かと私は思っておりましたが、御存じないとなると、私はとてもやっかいな議論をいまからしなければなりません。そういう非常に重大な問題、特に返還協定の中で一番大事な問題の一つであるA、B、C表、これについて御存じないというのは、ちょっとぐあいが悪いのではなかろうかと私は思っております。今後こういう大事なことを審議するときは、もう少し勉強していただいて、あらかじめ事前に聞いていただかなければいかぬと私は思います。私は、しようがありませんから、大臣と総務長官と、それから事務当局がお答えくださるならば、事務当局のお答えも含めながら、ゆっくりやっていくしかないだろうと思います。  まず、このA表の中で、基地使用の法的根拠の全く疑わしいものが幾つかあるわけであります。これは高等弁務官布令第二十号に基づく基地でありまして、市町村の許可を得て米軍が使用してきたものでありまして、登記もされていない、こういうものがございます。これについての見解はどういう見解をお持ちであるか、外務省当局から御返事をいただきたい
  111. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほど、公明党やその他の各党の調査資料、私は、特に私自身はと申し上げましたが、外務省においては拝見しておりますから、ちょっとつけ加えておきます。  それから、いまお尋ねの問題は、吉野局長からお答え申し上げます。
  112. 吉野文六

    ○吉野政府委員 お答えいたします。  いま先生の質問の意味が必ずしもはっきりいたしておりませんですが、沖繩における土地の使用権の取得の方法としては、御存じのとおり、布令二十号によるほか、市町村の許可を得て直接米軍が取得する方法、それから建物の全部または一部をその所有者との直接契約によって取得する方法、この三つがございます。それぞれによりましてその取得の方法は違いますけれども、要するに、米軍米軍の用に供するために取得するものでございます。  なお、先生の言われました、登記がしてないとおっしゃられるのはどういうことか、われわれよく理解できないことでございます。
  113. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いまの布令二十号による取得というものにつきまして、現地のほうで、川田、瀬嵩等の訓練場につきましては、一九七一年七月一日で契約期限がすでに切れておりまして、市町村当局は再契約を拒否しております。これらの訓練場は、ここ数年来米軍が使用してないことからいって、事実上の基地拡張であると、社会党の調査報告は述べております。私たちが調べたところもほぼ同じであります。こうしたものについて、地位協定二条四項の(b)によって米軍の一時使用とされており、自衛隊の管理下に置かれるということになっているわけでありますが、これは自衛隊の訓練場先取りの、それこそ悪らつなる手段であるといわれてもやむを得ないんじゃないかと私は思います。だから、こういう協定関係について、このような基地使用根拠が不明である。名前をあげますと、川田訓練場、久志訓練場、屋嘉訓練場、浮原島訓練場、前島訓練場、こうしたものについては、一体どういう法的根拠を持っているか。いま局長が述べられたのは総括的なものでありまして、これらについてはどういう判断を持っておられたか、私はお伺いいたします。
  114. 吉野文六

    ○吉野政府委員 お答えいたします。  いま先生の御指摘になりました安波訓練場、川田訓練場及び瀬嵩訓練場につきましては、御存じのとおり、これらは、実は関係市町村の許可をもって米軍が従来、一年にたとえば三日とか十日とか、演習のために使用していたものでございます。そしてこれらの市町村と米軍との間には、われわれの解釈によれば、少なくとも民有地に関する限りは契約が成立していたわけでございます。そしてこれらの地域につきましては、協定調印の際には彼らは引き続き使用しておった基地でございます。ところが、ことしの七月から、この安波、川田、瀬嵩の三訓練場につきましては、まだ契約の更新ができておりません。しかしながら、これは目下米軍が鋭意契約更新のために努力中でございます。いずれにせよ、これらの地域は、彼らが引き続き使用している場合には、われわれは、返還後は地位協定の第二条四項(b)によりまして一時使用として提供することになっております。いずれにせよ、これらの地域につきまして、何も自衛隊がこのあとに入るとか、あるいは自衛隊のためにこれらの地域米軍に提供しているのだということは絶対ございません。この点だけはひとつよく含んでおいていただきたいと思います。
  115. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いまの御発言でおわかりになりましたように、外務大臣もよくわかっていただきたいのですが、三カ所についてはいま契約ができてない。契約のできてないものについて、この協定が行なわれておって、A、B、C表の中に繰り込んである。これはもうきわめて遺憾なことですね。だからA、B、C表に載っける根拠がない。もうこれは米軍が強制的に巻き上げて、断固、基地だというならまたあれでありますけれども、ここは地元住民と米軍の契約によって、契約が拒否されている地域が三つある。いまお答えのとおりです。そうすると、A、B、C表に入れることが妥当か妥当でないか、私は外務大臣の政治的判断をお伺いします。
  116. 福田赳夫

    福田国務大臣 御指摘の個所におきまして契約の期限が切れた、こういう問題があるんです。今日まあ無契約状態、こういうことであります。しかし、そういう状態ではありまするけれども、米軍はいま現地の土地所有者と折衝中であります。そしてこれとの間に何とか契約を成立させたいという努力をしておる。その努力に期待をいたしまして私どもはA、B、C表を作成した、こういうことでありまして、それができなくなれば、もうしようがないことです。われわれはその米軍の努力ができることを期待しておる、こういうふうに了解します。
  117. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうすると、その三カ所については期待しておるが、できなければしようがないと、いま、ぱんと言われましたけれども、しようがないということはどういうことなのか。そうすると、それは基地としてA、B、C表の中に書いてあるけれども、返還後においてA、B、C表の中に入ったものとは認めないという意味ですね。
  118. 福田赳夫

    福田国務大臣 A表には載っておるけれども、いま米軍がやっておる努力が成功しないということになりますれば、提供という行為が行なわれなくなる、こういうことでございます。、
  119. 渡部一郎

    渡部(一)委員 わかりました。明快な御返事でございました。  それでは次に、A表の一七番、ギンバル訓練場、A表の二一番、ボロー・ポイント射撃場、それからA表の四八番のホワイト・ビーチ地区、これらにつきましては、メースBはすでに撤去は完了しておりまして、そうして現在は使われていない。同じメースB基地でありました嘉手納第四サイトというものにつきましてはC表に入っておりまして、返還されるわけであります。したがいまして、メースBというのが撤去されたので使用されないのでありますならば、ギンバル、ボロー・ポイント、ホワイト・ビーチのこの三つのサイトは、当然、日本側に嘉手納第四サイトと同じように返還されるのが妥当である、こう思いますが、いかがでしょうか。
  120. 福田赳夫

    福田国務大臣 吉野局長からお答え申し上げ季す。
  121. 渡部一郎

    渡部(一)委員 けっこうです。
  122. 吉野文六

    ○吉野政府委員 お答えいたします。  実は米軍の基地につきましては、このAリストに載っておる基地の構成は、必ずしも一つの目的のみに奉仕する基地を一つの基地として集めた永のではなくて、ここにも、現行の名称と、それ九らAリストの名称との違いがあるとおり、たとえばギンバル訓練場、一七につきましては、ギンバル訓練場と、それから嘉手納第三サイトというように、二つの基地が地域関係上一緒になっているわけでございます。しかしながら、たとえばボロー・ポイントにつきましては、ボロー・ポイント射撃場と嘉手納第一サイトとボロー・ポイント陸軍補助施設、読谷第一陸軍補助施設、これが四つ一緒になっておるわけでございます。したがって、一つの基地の嘉手納第四サイトにつきましてメースBが撤去されたから返還されても、ほかの基地にあるメースBのサイトかわかりにメースBが撤去されましても、これらは返還にならなかった、これが現状でございます。
  123. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いまの話はまことに明瞭を欠いておるわけですね。ギンバル訓練場と嘉手納第三サイトというのは同じことを言っているわけなんですよね。それを何かたくさんのサイトが集まってギンバル訓練場ができたようなことを言われた。それは局長は行っていないから無理もないけれども、そんなおかしなことを言ったら審議は進まない。ギンバルの訓練場とボロー・ポイントとホワイト・ビーチ地区は、いままでの名前は、嘉手納第三サイト、嘉手納第一サイト、嘉手納第二サイトという名前なんです。そうしてそれについては、いまメースBは、この間黒柳議員がさんざん質疑応答をやったときに、ランチャーが残っている残ってないで騒動が起こったところなんです。メースBの弾頭は抜かれているのです。ほかには使われていないじゃないですか。それとも吉野局長は、一体そこの地域はまた別のことに一生懸命使われているとかなんとか、新事実を発見されたのかどうか。ここで言ってください。
  124. 吉野文六

    ○吉野政府委員 私の前回の説明がことば足らずで申しわけございませんでした。メースBのあったところは、嘉手納第二サイト、それから嘉手納第三サイト、嘉手納第一サイト、それから恩納ポイント陸軍補助施設、この四つでございます。ところが、いまのギンバルの訓練場につきましても、嘉手納第三サイトは、ギンバル訓練場と嘉手納第三サイトと一緒になりまして、Aリストの一七、ギンバル訓練場になっておるわけでございます。それから嘉手納第一サイトにつきましては、A表の二一のボロー・ポイント射撃場の中に、ボロー・ポイント射撃場と嘉手納第一サイトとボロー・ポイント陸軍補助施設と読谷第一陸軍補助施設が含まれておるわけでございます。このように、かりにメースBが撤去されましても、その基地がメースBの基地としてはもはや使用されておりませんが、しかし、ほかの目的のために使用されているわけでございますから、これは返還ができなかったわけでございます。
  125. 渡部一郎

    渡部(一)委員 だから私が申し上げているのは、嘉手納第ミサイト、第一サイト、第二サイト、恩納ポイントという言い方でいま言われましたけれども、このいままでメースBの基地であったところを切り離して返還したらどうですかと言っているのです。だから、メースBの基地であったところを返還すればいい。それをほかの基地にくっつけて、ほかの基地とくっついちゃったから返還できないなんというのは、論理の逆転です。そうじゃありませんか。
  126. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 ギンバルの訓練場にございますのが嘉手納第三サイト、それからボロー・ポイント射撃場にございますのが嘉手納第一サイト、それからホワイ・ビーチ地区にございますのが嘉手納第二サイトでございまして、これはそれぞれ御承知のとおりにすでに閉鎖をされておるわけでございますが、この部分がこれらの基地の中にございますので、その部分だけを分離するということが非常に困難であるということで、それは現実に使用はされておりませんけれども、それぞれの基地の中の一つの建物と申しますか、そういうものとして残しておる、こういうのが考え方でございます。
  127. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いまのはお答えになっておりませんよ。基地のまん中にあるのじゃありませんよ、それは。道路から見えるところにあるじゃありませんか。それで施設庁長官は御自分でのぞきに行かれたのですか。基地のまん中にあって返せないなんて、そんなことを言ってはだめなんですよ。道路ぎわにあるじゃないですか。そのサイトは道路から見えるのですよ。いまのはお答えになっておりません。こういう愚劣な論争をするのじゃ次に話が進まない。次の話にいきますから、それまでに調べておいていただきたい。  それから、ハーキュリーズの基地の中で、私たちの調べたところによりましては、いままでにナイキハーキュリーズの基地としてありましたAの二一のボロー・ポイント射撃場、それから読谷第一陸軍補助施設、Aの二四の石川陸軍補助施設、Aの四七の西原陸軍補助施設、Aの五一の普天間飛行場、Aの七四の与座岳陸軍補助施設、こういったものにつきましては、現在これが使われておりません。こうしたものにつきましては、ナイキハーキュリーズ基地という独立した機能を持っているものであり、他の施設、区域と連動すべきものではありません。したがって、こういう使われていないものは当然返還されるのが妥当だと思いますが、どうでしょうか。
  128. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 ナイキのサイト八サイトのうち、御指摘のようにすでに四つが閉鎖をされておりますが、これはそれぞれ事務所なりあるいは倉庫に使用されておる、かように承知しております。
  129. 渡部一郎

    渡部(一)委員 事務所や倉庫ぐらいなら——沖繩の本島の中ではいま二五%の面積を占めておるわけなんです。このA、B、C表のとおりやったとしても、二一%が米軍基地です。そんなばかでかいところを占領しているアメリカ軍が、倉庫や事務所にそんなところをわざわざ使わなければならぬ理由がどこにあるでしょうか。返してもらうように努力するのがあたりまえじゃないでしょうか。だから、いま言われていることはこれまたお答えにならない。私は、外務大臣はこういうのは何とかしようと今後お考えにならなければいけないのじゃないか、こう思うのですが、いかがでしょうか、あえて外務大臣に御意見を伺っておきたいと思います。
  130. 福田赳夫

    福田国務大臣 この基地の問題については、私も実あ頭を痛めておるわけです。いまアメリカ政府との間にA表、B表、C表をきめた。これを変えることはできませんけれども、これとは別に、またこれが整理、縮小につきましてはいま努力をしておる、また、この返還後におきましてもさらに努力を積み重ねていきたい、こういうふうに考えております。
  131. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それから、A表の中に現在全く使われていない基地があるのですね。これは金武ブルー・ビーチ訓練場。金武のブルー・ビーチ訓練場は三十六万二千六百平方メートルあり、Aの二七の読谷補助飛行場、これは読谷村にあって、二百六十五万六千三百平方メートルあります。これは過去五年間使用されておりません。この使用されていないものを何で確保しているのか。日本にもし返ってくるならば、安保条約に基づく行政協定あるいはその他の関連取りきめによって、こういうふうに使わないものは日本側に返すことになっているじゃないですか。それがなぜA表の中にこうやってだらしなく、こういう使われていないものを残しておくのか。防衛庁長官、これをどう思われますか。
  132. 西村直己

    西村(直)国務大臣 これは先ほど来施設庁長官がお答えしたとおり、メースBの基地なんかでも、一つの基地のワンセットになっておるものですから、なるほどランチャーは取り除いたけれども、私は返還の対象になっている、こう思います。
  133. 渡部一郎

    渡部(一)委員 この使われてない二つの話ですよ。
  134. 西村直己

    西村(直)国務大臣 それは施設庁長官からお答えさせます。
  135. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 金武ブルー・ビーチ訓練場でございますが、これは第三海兵師団のレインジャー部隊及び通信部隊の水陸両用作戦訓練場として使用しておりますけれども、陸上では水陸両用車が毎日使用いたしておりますし、海浜なりあるいは海上は、年間百二十日程度、水陸両用訓練のために使用されておるものでございます。  それから読谷の補助飛行場、これは従来の読谷補助飛行場と中野サイトの統合名称でございますが、現在補助飛行場、それから人員の降下訓練場並びに軍用犬の訓練場として使用されております。  なお、この読谷飛行場につきましては、地元からも非常に返還の要望の強いところでございますので、これは今後、復帰後におきまして十分検討してまいりたい、かように考えます。
  136. 渡部一郎

    渡部(一)委員 どうもあまり御存じないみたいなので、私、これをここで議論してもしようがないので申し上げておきますが、これは使われてないのです。それは米軍の説明なんです。あなた方はお行きになって、実際使っているかどうか見てくるというわけにいかないのかもしれませんけれども、そういう向こう側の一方的な話だけで話をしてはしようがないと私は思うのですね。私たちは現場に乗り込んでいって、地元の人からちゃんと情報を集めて、しかも確認をしてまいりました。これは使われてないのです。こういったものについては、強硬に、返せというのがあたりまえのことなんですね。たとえば百二十日使ったといたします。だけれども、ほかにたくさん訓練する場所があるわけだ。何もここを使う必要もない。そうすると、このA表自体もすごく問題なんですね。  ところが、私はここでA表のことで問題にするだけでなくて、まだここで申し上げておきたいのは、米軍の区域と施設の中でこの、A、B、Cの表の中に入っていないところがある。私はその入っていないものがあるということがわかってきましたので、私はもう議論するのもめんどうですから、防衛施設庁にお願いして取り寄せた資料を中心にして議論しましょう。  これが私が命名しておるD表と称するものであります。つまり、A、B、Cにないものがこれだけあります。十五項目にわたってあるわけであります。この中には、水道公社とか電力公社とか、他の部分にあるものもありますが、わからないのもあります。  防衛施設庁長官にお願いいたします。ここに載っていないもの、このA、B、C表に載らないもの、その名前をあげ、面積を述べ、そしてなぜ載せなかったか、ここで説明してください。
  137. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 了解覚書のA、B、C表のいずれにも記載されておらないものといたしまして、まずバックナー記念碑約一千三百平方メートル、東恩納RTサイト一万七千九百平方メートル、それから電力系統施設が二百二十万七千六百平方メートル、道路系統が二百六十三万八千二百平方メートル、水道系統施設が八十二万四千四百平方メートル、それから宮古、八重山にあります民政府の事務所、これが四万九千八百平方メートル、航空支援施設、これが七百平方メートル、それから三角点と称するところでございますが、これが五百平方メートル、それからUSIA百九万六百平方メートル、カルテックス関係が三万八百平方メートル、その他の公益施設二万一千七百平方メートル、合計七百八十八万千五百平方メートルということでございまして、これはもともとはいわゆる軍用地でございましたけれども、本来米軍が今後復帰後におきましてこれを使用するという意図は全然ないものでございまして、A表は、御承知のとおりに、米軍が今後使用すべきものとして提供する予定のものでございますし、C表は、もともと米軍が使用できる性質のものでございますけれども、それを返還をしたということでございます。このA、B、Cいずれにも入っておりません施設は、元来が軍用の目的に使われておりませんし、また今後もそういうことでもございませんので、もともとA、B、Cの表の対象にならなかった、こういう性質のものでございます。
  138. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私はいまの回答に全く不満であります。なぜ不満か。これは防衛施設庁に要求してぼくのところへ持ってきた資料であります。コピーされているものですから、原本が向こうにあるはずなんです。いま述べた数字と全く違うのです。防衛施設庁長官が述べた資料と、資料要求して出してきたのと全く違う。名前まで違う。こんな変な話はあるでしょうか。これでは私はもう審議するわけにいかないですよ。こんな不当な、だらしのない話はあるでしょうか。私のところにこうやって資料を持ってきたのだから、そっちにあるはずじゃないですか。どっちが正しいのですか。それがわからないぐらいいいかげんなんですか。返還協定の中身というのは一体こんなものなんですか。いいかげんにもほどがある、ほんとうに。まじめに審議してもらいたい。こっちはかんの虫を押えて丁寧に議論しているじゃないですか。そのまじめな議論に対して、何ですか、いまの返事は。面積も何も全部違うじゃないですか。施設庁長官はどうしたのですか。こんなだらしのない返事はありますか。資料が違うよ。返答を求めます、ぼくは。こんなばかな話はないですよ、ほんとうに。人をだまかしておいて、何を言っているのだ。これですよ、外務大臣。全然違うのだから。数字から何から全部違う。
  139. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 しばらくこのままでお待ちください。——協議ができましたか。島田施設庁長官。
  140. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 この面積の数字が、その後いろいろ米側とさらに詰めていく過程におきまして若干の変動があることはやむを得ないことだと思います。  そこで、バックナー記念碑、これは先ほど申しましたのが一千三百平方メートル、先生にお出しいたしましたのが一千平方メートルでございますので、これはおそらく端数を切り捨てたのではなかろうかと思います。それから、東恩納RTサイト、これは先生にお出しいたしましたのが一万八千平方メートル、先ほど御説明いたしましたのが一万七千九百平方メートルでございますので、まあ百平方メートルぐらいの差がございます。それから電力系統の施設、これは先生にお出しいたしました中で、電力系統と電力公社、これを合計いたしますと、二百四十二万三千平方メートル、先ほど御説明いたしましたのが二百二十万七千六百平方メートルでございますので、これには若干の差がございます。それから道路系統、これはほとんど同じでございます。それから水道系統、これは先生にお出ししましたのが、水道系統と水道公社、こう二つに分けておりましたので、それを合計いたしますと、先ほど私から御説明いたしました数字になるわけでございます。それから民政府の宮古、八重山関係、これは先生にお出ししましたのを分けておりますけれども、これを合計いたしますと五万平方メートル、先ほど御説明いたしましたのが四万九千八百平方メートル、これもほとんど同じでございます。それから航空支援施設、これは全く同じでございます。それから三角点、これも全く同じでございます。それからUSIA、VOA関係、先生にお出しいたしましたのが百九万一千平方メートル、先ほど私が御説明いたしましたのが百九万六百平方メートルでございますので、これもほとんど同じ。それからカルテックス、これが、先生にお出しいたしましたのが十一万二千平方メートルでございますが、先ほど御説明いたしましたのが三万八百平方メートルでございますので、これに違いがございますが、実は最初のこの十一万二千平方メートルは、いわゆる那覇空港の中にあるカルテックスのことでございまして、この三万八百平方メートルというのは、ブラック・ターミナルという、那覇空港の外にありますカルテックスの施設でございます。これはここで取り違いがございました。それからその他の公益施設は、先ほど御説明いたしましたのが二万一千七百平方メートル、先生にお出しいたしましたのが二万二千平方メートルでございますので、これはほとんど変わりません。  合計におきまして、先生にお出しいたしましたのが八百十七万九千三百平方メートル、先ほど申しましたのが七百八十八万三千五百平方メートルということで、先ほどから御説明いたしましたような若干の違いがございますので、集計においてもそれだけの差が出てきた、こういうことでございます。  これはその後米側といろいろ調整いたしました結果でございますので、私が先ほど読み上げましたのが現在の正しい姿でございます。
  141. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうすると、私がここに持っているのはにせものの資料ですか。ここのところに四十六年十月二十七日と書いてあるけれども、どっちがほんとうかわからないじゃないですか、いまのは。それで、米軍との打ち合わせによってつくった資料とおっしゃるけれども、先ほどあなたは、電力系統と電力公社を分けておっしゃった。そのときにあなたは、電力系統については二百二十万とおっしゃっている。電力公社については二百六十六万平方メートルとおっしゃった。いまの足し算の結果でまた違うじゃないですか。ぼくはちゃんとメモしてありますよ。そういうふうに一回ごとに言うことが違って、どっちがほんとだと言われたって、こっちは審議のしようがないじゃないですか、あなた。日本領土ですよ。領土がきまるときに、面積が——ちょっとあなた待ってください。私はもう一つ言っておくけれど、あなたは、百平方メートル、これは大体合っておりますとか、先ほど三角点のところで申し上げたけれども、そちらに申し上げたのは千平方メートルであって、こちらでとっておるのは千三百平方メートルで、大体合っております——三割違うですよ。三割。三百平方メートル、そんなのは簡単に済むなんと考えて、その地域が問題になったらどうするのですか。三百平方メートルあれば、そこのところにナイキハーキュリーズだってちゃんと置けますよ。そういう面積をいいかげんにして返還協定でございなんて言ったって、わけが違う。しかもこのD表にある部分はもっと問題がある。ともかくその面積の把握すらできてないじゃないですか。正確な資料を出してもらいたい。そんな一回ごとに言うことの違うような資料ではしようがないじゃないですか。あらためて資料をお出しください。そうでなかったら、話は進みませんじゃありませんか。
  142. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 資料を提出いたします。
  143. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ただいまのきわめて不穏当なる防衛施設庁の御様子で、私はあきれ返っておるのです。防衛施設庁は面積もわからないのだから、中身聞いたらよけいむだだとは私は思うのですけれども、今度はその中身について聞かざるを得ない。  じゃ、このA、B、C表に載ってない、いわゆる私の言うD表、このD表に載っているものは、復帰になったとたんにこれはどうなるのですか。いままではこれは米軍施設です。米軍施設のものを、これから復帰の時点においてこの部分はどうなる、この部分はどうなるというのが当然なければならない。それでなかったら、A、B、Cの表に全部載せるべきだ。ところが、これだけぼそっと落っことしてある。一体これについてはどういう規定返還協定の中にあるのか、それを明示してもらいたい。
  144. 吉野文六

    ○吉野政府委員 お答えいたします。  これらの地域は、実は地位協定による施設、区域にはなり得ない性質の地域でございまして、返還後は当然民間同士の間の契約によるのか、あるいは水道公社その他の公共施設が使用する土地になるのか、あるいはその他、いずれにせよ、地位協定によって米軍の施設、区域としてわが国の提供できないものであり、したがって、これらの地域は最初からA表ないしはB、C表の対象にならないものであったわけです。したがって、これらは先方は軍用地として主張していたわけでございますが、われわれとしては、これらは最初から問題にならぬということで除外した地域でございます。
  145. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それなら、米軍施設に入ることは問題にならぬと言われた。ほんとうに問題にならないだろうか、私はそれに重大な疑問がある。この表は相当数字が間違っておるかもしれぬけれども、少なくとも水道公社や水道系統はここに入ってしまう。ところが、水道管の相当部分アメリカの施設内に入っておる。これは米軍基地なのか、基地でないのか、そしてそれは米軍の基地中の水道管だけ全部こちらに取り返すことができるのかどうか、そんなことを言うのなら返事々してもらいたい。米軍基地の中にはダムもあるし、浄水場もあるし、量水計もあるのだ。
  146. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 水道につきましては、これは復帰後は沖繩県の水道事業として運営をせられるわけでございます。現在いわゆる軍用地の中にも水道施設がございますけれども、これは将来沖繩県の水道ということになりますと、その部分は施設、区域からはずれるわけでございます。そこで、ただ、米軍が今後軍用地の中のいわゆるメインの水道管から取水をするということがございますので、そういうものは施設、区域の中に入る。水道のいわゆる幹線並びにそれに関連するものは、沖繩県の水道事業として経営されるものはこれは除かれる、こういうことでございます。
  147. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いまのお話聞いて、全くわからないことをおっしゃっておる。いま現地においては、水道の幹線はどこからどこまでを米軍の施設にしようかという話し合いが行なわれておる。そうでしょう。それにもかかわらず、ああいういいかげんなことを言われておる。水道の施設の中では、米軍基地の中に入っておるある部分については、これは米軍基地の施設であるというふうになりそうな気配がある。だから私言っているのじゃないですか。水道と書いてあって、この中には米軍の基地が入ってしまっておる。だから、どこからどこまでが米軍基地で、どこからどこまでが米軍基地でないかをはっきりするためには、これはA、B、C表から抜くわけにいかないじゃないですか。A、B、C表に入れなかったら、これはまた米軍基地に戻されてしまいますよ。規定のないところにはルールはない。表に載らなかったら、どこまで水道はこちら側に取り返せるかわからない。吉野局長は、いいかげんな、きわめていいかげんな答弁をなさる。これは米軍の施設でないというような簡単な言い方をなさった。一見そう見えます。しかし、中はいろいろ分かれておる。だから、それを明確にするためには、なぜA、B、C表にちゃんと入れないのか、私はそう言っている。あとごたごたが起きたら何と答弁するのですか。そんないいかげんな交渉でいいのですか。御答弁を求めます。
  148. 井川克一

    井川政府委員 ちょっと、協定と表の関係でございますので、表自身は私の所管ではございませんけれども、念のために申し上げます。  六条一項でございます。六条で一項と二項と実は書き分けたわけでございます。一項がいわゆる三公社、二項がその他のすべての財産でございます。そうして、なぜこういうふうに書き分けましたかと申しますと、二つの理由があるわけでございます。第一は、三公社は一つの事業団体でございます。したがいまして、権利及び義務というものを引き継がなければならない。ほかの財産というものは、そのままくるからそれでいいわけでございますけれども、三公社は事業団体である、これが第一の理由でございます。第二の理由は、三公社の財産というものは、施設、区域の中にもあるのでございます。電線だとか水道だとか、もう一つ、何でございますか……(「ガス」と呼ぶ者あり)ガスじゃございません。いずれにしても、それがあるわけでございます。それで、それのためにこの一項と二項を書き分けたわけでございます。そしてこの施設、区域の表と申しますのは、先ほど来施設庁長官と吉野局長が申し上げておりますように、もともと本質的に軍事施設であるもののみを書き分けたわけでございます。したがいまして、その施設、区域のC表の末段の注をお読みくださいますと、「琉球諸島及び大東諸島に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定第六条の規定によつて使用を解除される他の設備及び用地もある。」ということがここに書いてございまして、性格の異なるものをこのC表に入れなかったわけで、ここにちゃんと頭が出ているわけで、それがいままでのお話の、多少数字が違ったようでございまするけれども、その差であるわけでございます。
  149. 渡部一郎

    渡部(一)委員 またいいかげんなことを言われた。もういやになっちゃうから、子供並みに私は紙芝居のように写真を一枚——これはぼくがとってきました。これは、ユナイテッド・シーメンズ・サービスと書いてあります。飛行場からおりて那覇市街に行く途中にあるんです。この間まではシーメンズクラブであった。そして、クラブと書いてあって、これは個人の経営者がやっておったのです。  これは返還の対象に入っていますか、入ってないですか。条約局長、答弁してください。そしていまのあなたのおっしゃったもののどれか、言ってください。
  150. 井川克一

    井川政府委員 私の所管ではないのでございますけれども、いま聞きましたら、A表の六十五番に入っているそうでございます。
  151. 渡部一郎

    渡部(一)委員 A表の六十五番というのは、いま条約局長がいみじくもおっしゃったけれども、軍事基地のはずですね。これが軍事基地でしょうか。防衛庁長官、これを見て返事してください。この中はビーフステーキを食わせる、それこそ何でもないところです。普通の店ですよ。そして私はこの間この中へ行ってめしを食ってきました。これは米軍の基地なんというしろものじゃない。これは周辺の基地とはくっついてない。そしてこの間まではクラブであった。一般に経営されておった。それを急にA表の中に突っ込むのはどういうわけなんですか。クラブという名前をサービスと取りかえてA表の中へ突っ込んだ。何をやっているんだ、これは。私は腹を立てざるを得ない。それは条約局長をおこっているんじゃないですよ。条約局長、だれを指さしているんですか、いま。そんな表に出ていやしませんよ、あなた。その表にないよ。こういうようなやり方なんですよ、結局は。だから、米軍基地とこのA表に入っている中でこんなものもあるんだ。何にも基地と関係のない、軍事施設と関係もないめし屋まで入っちゃった。そうでしょう。そうしておいて今度は、軍事基地の中に入るかもしれない水道公社の境目のところ——私のほうに、ここへ持ってきてくだすったのは、水道公社と水道系統とちゃんと分けてある。ところが、水道公社と水道系統というのは分けざるを得ない。なぜかというと、統合上水道網というのがある。水道網というのは一括されておる。それは米軍の水道部が握っておる。そしてその中に、水道公社というのは下にくっついておる。そして水は全部整理して一生懸命やっておる。それを一部だけ買って、そして皆さんに配管して売っておるのが水道公社。だから、ほんの一部。ところが、水道網というのは相当部分米軍施設になっておる。ところが、この二つはいまや切り離せない。返すのだったら全部返すのか、それとも、ある程度ごっそり置いてくるのか、どっちかしかない。しかも、ダム、浄水場というのは、米軍基地のどまん中にある。  そこでさっきの話にまた飛び火するのだけれども、施設庁長官は、メースBの基地というものはまん中にあるから取り返せないとおっしゃった。まん中にあるから取り返せないというのなら、ダムから浄水場はほとんど全部そうじゃないですか。ダムはいま六つあるでしょう。五つまでは米軍基地の中にありますよ。ダムを取り返さなかったらどうなるのですか。それは水道公社じゃない、水道お金取り屋ぐらいのものでしかない。そういうことになるじゃないですか。根本的姿勢が間違っておる。どこからどこまでが米軍基地で、どこからどこまでが米軍基地でないのか、いまや回答はまことに不明確、先ほどから聞いておれば。何にも根拠法がないじゃないですか。明快なる回答は一つもない。そしてここに明らかに施設庁が出したこのD表がある。そのD表の範囲は不明である。面積まであやしい。少なくとも百平方メートルないし三百平方メートル以下については全くわからない。これで返還協定を御審議くださいなんと言ったって、そうはいかないじゃないですか。  まだ私はありますよ、材料が。  外務大臣、これはカルテックスの写真ですよ。これはカルテックスですけれども、これは金網が入っていますでしょう。そうして、ここのところを見ますと、明らかに立ち入り禁止の命令が——米国政府所有地、こう書いてあるのです。これも私がとってきた写真です。ようございますか。そして、この写真によれば、これはカルテックスは米軍政府用地になっているじゃないですか。そうしたら、これを取り返す何かの方法がなければならないじゃないですか、カルテックスに対して。この看板をおろす保証はどこにあるのでしょうか。私は証明にとってきました。A、B、C表に載ってない。このD表に載っておる。A、B、C表に載ってないで、これの扱いがどうなるか、カルテックスに対しては不明です。しかも、いま面積は三万平方メートルと十一万平方メートルと違っておる。これじゃ一体われわれは何をいま審議しているのでしょうか。  私は、資料が不足なんという問題よりも、基本的態度がめちゃくちゃだったために、もういま収拾のつかないほどでたらめな答弁が繰り返されておった。これはちゃんとまとめて御答弁いただかなければどうしようもないのじゃないでしょうか、外務大臣。これはもう、私が一カ所詰めれば一カ所ぼろが出る、二カ所詰めれば二カ所ぼろが出る。どこからどこまでが米軍基地かは、いまや不明であります。そして、その不明なるものについてD表に落とした理由もまた不明になってきました。これではどうしようもないのだな、ほんとうに。私はまさかこんなところがごたごたすると思わなかった。面積が不明、所管が不明、米軍基地がどうかが不明。  まだほかの写真がありますよ。(「答弁するよ」と呼ぶ者あり)答弁できますか。じゃあ、まあやってごらんなさい。
  152. 吉野文六

    ○吉野政府委員 われわれといたしましては、できるだけ論理的に御説明しておるつもりでございますが、われわれの説明が十分でなくて、はなはだ恐縮しております。  いまのカルテックスの施設につきましては、これは少なくともブラックオイルに関する限りは、これは将来民間に払い下げられて一般の民有地になります。それからもう一つのバルクオイルのほうにつきましては、これもまた払い下げられた場合には民間が使うことになりますし、そうでなかったら軍の施設になるか、いずれにせよ、それはこれからわれわれが交渉するあるいは話し合う問題でございます。  なお、水道のダム等につきましても目下米側と話し合っておりまして、いずれはどちらかに管理がきまることになるだろうと思います。  それからシーメンズクラブの問題につきましては、これは将来はこの場には米軍の酒保ができまして、それが先ほど申しました那覇センターになるわけでございます。したがって、これはやはり米軍の施設としてわれわれは先方に提供することになります。
  153. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いまの御答弁は、どう考えたって、私はふざけているとしか考えられません。カルテックスの問題について、いま、バルクオイルのほうに関しては、これから民間のものになるか、軍のものになるか、不明でありますと、ばんと答えられました、平然と。そんなことを言うんだったら、これは軍の施設になるんだったら、A、B、Cの表のどこに入るのですか。ならなかったらどこに入るのですか。この私の持っているほうのこっちのどこに入るのですか。そうすると、ここに出した表も、さっき述べた数字も、どこまで民間かどこから軍かまでもわからないで、ただいいかげんに数字を述べたにすぎない。またごまかすじゃないですか。A表の面積も変わる、このD表の面積も変わる、それについて何にもわからないで、ただ、ばんと述べたにすぎない。水道のほうはこれから交渉いたしますとあなたは言われた。まさに白状されたんだ。この水道の面積についてだって、どこからどこまでが米軍のものか、こっちのものか、それもわからないで、平然としてこれだけ通そうとした。それで私がつかまえたら、とたんに、これからまだ交渉いたしますとおっしゃった。ほんとうなんです。交渉をしているのです、現地で。こんな付属表の中身すら不明で確定しない間に、そして確定しないなら確定しないだけの何かの方法があってしかるべきだ。これとこれとこれについては目下交渉中とか、琉球政府交渉するとか、何かの方法があってしかるべきだ。それもない。財政法の精神について私はここで述べるつもりなんかないけれども、少なくとも、相手とし、対象とする財産が不明確で金を出すなんていうのは、不見識だ。しかも、日本の大量にいるタックスペイヤーの代表としてわれわれが議論するときに、こんなことで済むわけがない。カルテックスのこの写真見てください、もう一回。米民政府、米政府と書いてあるのですよ、ちゃんと金網の中に。これでほっておけば米軍政府のものです、これは。A、B、C表に載っていない。そしていま交渉すると言って、交渉がしくじったらこれは軍に入るかもしれないとおっしゃった。そんないいかげんなものがあるか、ほんとうに。
  154. 吉野文六

    ○吉野政府委員 私の説明が少し舌足らずであって、はなはだ失礼いたしました。  先ほど申しましたように、カルテックスの施設につきましては、ブラックオイルに関する限りはこれは民間に返ります。したがって、その標識も返還後には民間のものになります。それからバルクオイルにつきましては、これは軍のためのみにオイルを供給するということになりますと、これは那覇軍港の一部になります。  そして水道につきましても、先ほど申し上げましたのは、ただ単に非常に細目についてこれからまだ交渉するということでありまして、水道施設は公共施設に返りますから、これも軍の施設になりません。その意味で、いままで地位協定によって米軍の施設として提供できないものは、たとえいま米軍の管理するところでありましても、これは民間その他の一般の所有者ないしは正当な管理者に返還される、こういうことになるわけでございます。
  155. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いまのお話がまたいいかげんな話なんですね。水道公社の私は資料をちゃんと持ってきております。水道公社についてはいまどんなことを交渉しているか。細目どころじゃないのですよ、交渉している対象は。  そろそろ総理府総務長官のほうに飛び火するのですけれども、総務長官、またすごいことを言われておるんだな、この水道の問題について。それで、一つずつ違っているので、私は、もう何というのか、どこから議論を進めていいか、ちょっと見当もつかない感じなんだけれども……。  いま資料がそちらにないでしょうから、私が申し上げますよ。  全島統合上水道と、こういう名前がついておるのです。その統合上水道の中で、瑞慶山ダム、ハンセン・ダム、平山ダム、この三つのダムが御承知のとおりいま米軍の施設の中に入っておりますね。総務長官は御存じのようです。それから群井戸というのがあります。嘉手納地域、天願地域、登川地域、これも米軍の中に入っておりますよ。浄水場でいうと、タイベース浄水場、天願浄水場、桑江浄水場、与座浄水場、これだけが米軍の中に入っておりますよ。ポンプ場でいいますと、ハンセン・ポンプ場、嘉手納群井戸、天願群井戸、桑江浄水場系統、与座浄水場系統、登川群井戸。これは琉球水道公社の資料です。そして私がこれらの人々から議論して聞いたところでは、これは大体こちらに移されることを希望し期待をしておるけれども、いま交渉中で、わからないと彼らは述べております。総理府総務長官は、参議院における沖繩・北方特別委員会の席上で、これは日本側になりますと言われました。なりますと言われたけれども、その時点ではまだ決定的なものではありませんでしたので、総務長官は、少しうしろで、ニュアンスをやわらげる発言をしておられます。私はそこまで調べてみましてよくわかったのですけれども、これについてどれが返ってくるか明確でないのに、そうしてこのあるものは米軍施設の中に繰り入れられてしまう可能性が厳として存在しているにもかかわらず、この水道系統全部についてA、B、C表から落としたこと自体が問題、そしてそういう状況になっていることを明らかにしないこと自体が問題、そしてそういうことをここのところでごまかしながらうまく通り抜けようとしたことが問題、面積がわからないにもかかわらず、わかったような顔をすること自体が問題、そしてどの地域米軍に入り、どの地域がこちら側に渡されるかわからないのに、面積を堂々と公開したこと自体が問題。全部違っているじゃないですか。私が返還協定に問題があると言ったのは、こういうぽろぽろな、こういうでたらめなことを——でたらめと言うしかない、みんな違っているんだもの。そうして、それに対して平然としたら、これはもうどういうことになるのか。私は、むしろ、こういうような論議が、日本外務省防衛庁や防衛施設庁の声価を落とすことをおそれる一人です。こんなことがあっていいものじゃないと思っている。もっと頼もしい外務省であってもらいたい。だけど、何でしょうか、こんないいかげんな話は。みっともなくて議論のしようがない。私は、水道系統だけですよ、ここで議論しているのは。  ついでに三角点の問題についてお話ししましょうか。  三角点、一体何カ所あって、どこにあって、どういうかっこうをしているのですか。そしてその面積について、いつ日本側にどういう形で渡されるか。何にもありません。もう答えないでいいです、調べたって出てこないのだから。そんな下僚に命じて調べろなんて言うべきじゃない。いまごろやったって無理だ、そんなのは。  私は、これ以上こういうような答えのない議論をしてもむだだと、ほんとに思っております。したがって、私は質問を続けたいのですけれども、もう時間も参りました。そして、ほかの尊敬すべき議員に時間を譲るように理事からお話もありましたから、これは次回に留保するしかないと思います。しかし、私の質問に対して何一つ答えられていない。何一つ答えられていないというこの事実、そして何にも返事をしなかったという事実だけ残りましたよ。
  156. 山中貞則

    山中国務大臣 私は、事務当局がどうしてああいう答弁をするのかよくわからないのですが、少なくとも原則の確認事項として、アメリカ側との間に、琉球の復帰後の沖繩県営の広域水道に帰すべきものとして、先ほどの瑞慶山ダムその他言われましたけれども、ダムあるいは取水のポンプ施設、そういうもの一切を含めて復帰までにも作業を進めて現在の公社に移しておく、そして復帰の時点においては完全に広域供給のできる水道公社に沖繩県営で引き継げるようにする。ただし、その後明らかになりましたところで、そのうち、桑江のうちのポンプが二つ、これは地下水をくみ上げている小規模のものらしいですが、これはその中で米軍のみが使用しているということでありますから、これは広域上水道に関係ありませんので、それぐらいはあるいは残るかもしれません。しかしながら、原則的に全部沖繩県に引き継がなければ県営上水道の経営はできないということになりますから、明確であります。
  157. 渡部一郎

    渡部(一)委員 明確でありません。それについてはまだ交渉中であって、前途はきまっておりません。それは総務長官が一番よく御存じじゃないですか。さもここできまったようなことを言うのは、あなたの悪い癖です。私はぴしゃっと申し上げておきます。だから困るのだな。ほんとうにもう何と言っていいかわからない。  あともう一つ宿題を出しておきます。
  158. 山中貞則

    山中国務大臣 大蔵省からいまの答弁……
  159. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いいですよ。
  160. 山中貞則

    山中国務大臣 ちょっと私のほうと——でたらめなことを……
  161. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そう、でたらめなんだから、しようがない。
  162. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 私どもは水道公社の資産を評価いたしたものですから——いろいろ調査しますと、まず、瑞慶山ダムとか天願ダム、ハンセンダム、これは現在公社の所有資産でございます。それから、先ほどおっしゃいました平山ダムその他は現在米軍が所有しておりますが、御承知のように、統合上水道といいますのは、現在公社の資産と、それから現在米軍の施設と両方統合してなっておりますが、この軍の施設につきましては、先ほどの桑江浄水場を除きまして、全部復帰前までに公社に出資されまして、復帰時点におきましては、公社の資産として第六条第一項の規定によって日本側に引き継がれる、こういうことになっております。
  163. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうしますと、米軍基地のどまん中にあるところでもそうなるわけですね。そして、それによってそこへ通行権を日本側に生じるわけですね。それについては米軍側は了承しておりませんよ。私はついでに申し上げておくけれども、そういうふうにお話が簡単にいくと思ったら間違いなんだ。だから、これは十分お調べ願って、もう一回、水道公社について、現在の水道施設のどこからどこまでが完全に引き継がれるのか、アメリカ政府からの明確な返答をここへ持ってきていただきたい。これを要求しておきたいと思うのです。  そして私は宿題をもう一つ出しておきますよ。それは、ここのところで伊波城ホテルというのがありますね。伊波城ホテルといって、このA、B、C、Dの表に全部載っていない、変なものがあります。いいですか。名づけていうならE表ともいうべきものでしょう。これは総務長官、御存じでしょう。そうしてこのホテルが経営不振の末、約二、三十万坪近い大きなホテルが、米軍との個人的契約によって海兵隊がいまここへ入っております。そうして海兵隊は、ここの前に米軍施設という看板を出して、ここに一般人の通行を拒否しております。これと同じやり方で行なわれたものがC表に入っております。憲兵隊司令部であります。コザの憲兵隊の兵舎がこれと同じやり方で、個人契約で契約されたものがC表の中に入っております。コザの憲兵隊のこうしたものが、面積は非常に小さいものですけれども、このC表の中に載っておる。ところが、伊波城ホテルの分はどうなったのか。大きなところです。その大きなホテルについて何にもここのところでは話をきめていない。そしてこのA、B、C表にも載っていない。私はもう、きょうそれを丁寧に議論して皆さんから確答を得る時間がございません。私の党の次の議員に譲るために、伊波城ホテルの写真もとってきましたから、お見せしておきます。伊波城ホテルって、ここです。ここにある大きなホテルです。そして、これもその一部です。そして私は、そのホテルの契約関係が問題になるといけませんので、それも全部持ってまいりました。ここにある面積がそうです。これだけの大きな地域であります。そして私のここに持っているのは、土地所有者所有証明願という、この証明であります。ここにあります。そしてこれはまさにいままでA表、B表、C表の中に入っていたと同じようなものが海兵隊によって占拠されております。そして、地元の猛烈な反対を押し切って警察官に守られた海兵隊がこの地域に入ったことがすでに大紛争の種になっております。御存じと思います。御存じなかったら、十分調べていただきたい。それをなぜA、B、C、Dの表に載せなかったのか。私は、D表にも載っていないから、言っているのです。A、B、Cに載っていないのは、わかる。私にD表として出してくれた、これにさえ載っていないじゃないか。もう矛盾も何も通り越しておる。そしてこういうようないいかげんなもとに、いま返還協定のA、B、C表はわれわれの前に表示されておる。私はこれに対して深い憂いを抱いておる一人であります。  私ばかりが質問するのも確かに問題でありますし、残りの質問は次回に留保して、質問は終わることにしたいと思います。私はまだいままでやったと同じような質問をあと五包み持っております。これをやる余裕がない。これほど返還協定には問題があるということをわかっていただきたい。きょう私は前文から四条までのところを議論しました。五条から先は私はまだ議論しておりません。返還協定は、返還という美しいことば、第一条にある美しいことばの陰に隠れて、内容といい、問題点といい、多過ぎているということをここにもう一回指摘したいと思います。ですから、私はけさ申し上げた論点にもう一回戻って、私の立場を明らかにしておきたい。  それは、返還自体は私たちはけっこうなことだと思っております。しかし、第二条以降にあるところに示されているもの、そして前文に示されているところのものは、明らかなる新しい米軍との軍事協定であります。そしてこの新たなる米軍との軍事協定沖繩と結ぶだけでなくて、日本本土全体に網をかぶせてしまったということに関して、私は、日本国民の将来と、そして日本国民のある部分にある大きな不満を代表して、きょうは十分の反省を要求したいと思うのであります。また何とかしていただきたいとも思っておるのであります。だから、私は頭からただだめだと言っているのではありません。きょうは私は与党の議員かのごとく質問しました。そして丁寧に一つずつ聞きました。そして御回答はこの程度のものでありました。この事実こそ、私の質問こそ、こうして明らかになってきたところは、返還協定がいかにずさんかということを国民に知らしめるものになったと私は思っております。そしてこれは日本外交課題として今後この問題を取り直すために、いままでも努力をされたかもしれませんけれども、それを否定はしておりません、しかし、これから先、日本はかつての不平等条約に悩まされた明治初年と同じような苦労を、またうんとひどい思いで続けなければならないだろうと私は申し上げておきます。また、それに対する決意をしていただくように要望いたしまして、私の質問を終える次第であります。(拍手)
  164. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、先ほどから、この条約に対する基本的な姿勢、これは遺憾ながら渡部さんと違う、こういうふうに申し上げました。何としても返還を実現する、その上に立って不平不満を片づけていく、こういうことを申し上げているわけなんです。その点につきまして、まあいまの基地の問題、それから私は渡部さんのお話を聞きまていろいろ参考になったところがあります。ありますが、いま私どもが米軍に安全保障条約によって提供せんとしておる基地はA表でございます。A表以外には、わが国が責任を負う土地はありませんです。それ以外のものをとらえましていま渡部さんがいろいろ議論をされている、そういうことがあるので、いろいろお答えも行き違いができてきておる、こういうふうに見るわけであります。つまり、いま米軍が使っておる軍事基地を、A、B、Cと分けた。軍事基地には入らないものなんです、D表とおっしゃるものは。これは軍とあるいは民間等の契約によって——軍ではありませんね。軍以外で、しかし軍に近いような関係のあるものが、あるいは民間と契約をいたしまして、そして使っておる。たとえば水道公社みたいなのがそうなんです。そういうようなものにつきまして私どもはこの協定上は論議はしておらないのです。われわれが提供すべきものはすべてA表に限られておる。このことはとくとひとつ御了解おき願いたいということを最後に一言申し上げておきます。
  165. 渡部一郎

    渡部(一)委員 委員長、まことに恐縮ですが、私は質問をやめようと思いましたけれども、あまりそういう変な話をなさらないほうがいいと思います。私は外務大臣に望みますことは、私がいまあげたいろいろな証拠に対して、十分な御回答ができるように研究努力をされることを私は強く要望しておきます。  私の質問を終わります。
  166. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 渡部委員の質問中、留保事項のあることを委員長は了承いたしました。  楢崎弥之助君。
  167. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 総理が来られるまでの間、昨日の松本委員の質疑中私の関連部分について、まずそこから入りたいと思います。  私が昨日、マリアナ群島が安保条約のいわゆる極東の範囲、そしてその極東の周辺までも含めて入るかという質問をしました。お答えは、外務大臣が聞かれておるとおりです。しかし、この問題は、小笠原返還の直前にわが党の岡田春夫委員が質問をいたしております。当時の外務大臣三木さんは、小笠原が返還になったとき統一見解を出しますと言われたが、そのまま統一見解が出されていない懸案の問題であります。したがって、ここでひとつ、もしございましたら、統一見解をお伺いしたい。
  168. 井川克一

    井川政府委員 ただいまの件、楢崎先生の御指摘のとおりでございます。昭和四十三年三月十六日に岡田春夫委員から三木国務大臣にその質疑がございました。三木国務大臣は「これは、小笠原の返還協定のときに、こういう岡田君の疑義にも明白に答えるようにいたしたいと思います。」というお答えがございました。そして昭和四十三年四月十九日、衆議院本会議におきまして、いわゆる小笠原協定締結について承認を求めるの件の本会議でございまして、依田圭吾議員の御質問に対しまして、佐藤総理大臣が次のようにお答えになっております。「そこで、問題になります極東の範囲の問題でありますが、小笠原諸島返還に伴いまして、これらの諸島が、安保条約第五条の条約地域になることは当然であります。ただいま申したとおりであります。小笠原が安保条約の第五条地域に入ったからといって、第六条の極東の範囲が広がる性質のものではありません。ただし、地理学上、極東の範囲が正確に固定されているわけではありませんし、安保条約で極東といっているのは、そこにおける国際の平和及び安全の維持について、日米両国が共通の関心を持っている地域であり、元来、明確な線で区画されるような性質のものではありません。したがいまして、マリアナ群島であれその他の太平洋における島々であれ、その一つ一つについて、安保条約でいったところの極東に入るか入らないかということを答えることは、本来適当とは私は考えておりませんが、しいて申し上げるならば、グアム島を含むマリアナ群島は、安保条約にいう極東の一部とは考えておりません。これは、私が、この機会にはっきりこの具体的な問題を申し上げておきます。」以上でございます。
  169. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 沖繩返還された後、沖繩に駐留する米軍のうち、在日米軍となるのはどの部隊ですか。
  170. 西村直己

    西村(直)国務大臣 在日米軍になります。——沖繩返還後の沖繩にいる軍隊は在日米軍になるか、こういう御質問でしょう。
  171. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 念を押しておきますが、それでよろしゅうございますか。それで間違いありませんか。念のためもう一ぺん、全部在日米軍になりますか。
  172. 久保卓也

    ○久保政府委員 沖繩にいる米軍は、復帰後は在日米軍になると思います。
  173. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 従来、政府は、在日米軍について二通りの解釈を示しておる。正確にいえば、在日米軍とは、安保条約第六条の交換公文による日本に配置された軍隊である。ただ便宜的に、第六条本文によって一時的に日本の基地を使う米軍については、これは一時的に在日米軍という場合もある。このような解釈です。いまの答弁でいいですか。
  174. 井川克一

    井川政府委員 在日米軍と申しますのは、安保条約関係におきましては、はっきりした在日米軍という観念はございません。楢崎先生御存じのとおりに、安保条約との関係では、私は三つのものが関係してくると思います。配置された米軍、それから、たとえば寄港などしておりまする米軍、さらには通過、飛行機が領空を飛んでおります、このようなものも安保条約関係する。したがいまして、この三つのカテゴリーがあるのではなかろうかと私は思っております。
  175. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 第一のカテゴリーに属する在日米軍はどの部隊でありますか、沖繩に残留する部隊で。
  176. 久保卓也

    ○久保政府委員 第一の分類が、沖繩に配置される部隊でありますから、たくさんございますけれども、琉球米陸軍、その下に第二兵たんコマンドその他、それから空軍の関係で第三百十三航空師団、そのおもなものは第十八戦術戦闘航空団、それから第七艦隊の指揮下にあります第三海兵師団その他であります。
  177. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 一番最後に言われました第三海兵師団は、安保条約の六条交換公文にいう在日米軍。間違いないですね。
  178. 久保卓也

    ○久保政府委員 間違いありません。
  179. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 第三海兵水陸両用部隊はどうですか。
  180. 久保卓也

    ○久保政府委員 それも同じであります。
  181. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 KC135、第九百九給油機部隊はどうですか。
  182. 久保卓也

    ○久保政府委員 同じであります。
  183. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 もう一度念を押しますが、安保条約六条交換公文による在日米軍。間違いないですね。
  184. 久保卓也

    ○久保政府委員 沖繩に配置されている部隊は、交換公文にいう在日米軍であります。
  185. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ただいまの日本側見解は、米軍もそのとおり合意しておりますか。
  186. 吉野文六

    ○吉野政府委員 日本におる米軍と、こういうことになりますと、返還のときに沖繩におる米軍が、日本におる米軍と、こういうことになるわけでございます。
  187. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなた、またもとに戻しちゃだめですよ。日本におる米軍は全部在日米軍じゃないと、さっき、厳格にいえば、三つの概念があると——あなたは何局長ですか。何省ですか、あなたは。——アメリカ局長ですか。外務省でしょう。その前に答えられたのは条約局長外務省でしょう。どうしてあんなに違うのですか。
  188. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 間違いのない答弁をしてください。
  189. 吉野文六

    ○吉野政府委員 日本におると申しますのは、日本に配置されたと、こういう意味でございます。もっとも、日本の港に寄港しておったり、あるいは日本の上空を飛んでおったり、そういうものも全部いわゆる安保条約の第六条に関する日本におる軍人、日本に配置された在日米軍と、こういうことになるわけでございます。
  190. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 では、一時寄港しておる艦船も、配置された軍隊ですか。
  191. 井川克一

    井川政府委員 沖繩に配置された軍隊は、吉野局長ただいま申し上げましたように、復帰時にアメリカとはっきり話をいたしまして——その配置されたと申しますのは、本拠としてそこに駐留するものでございますから、その軍隊をはっきりアメリカ側と把握いたしまして、その配置された軍隊をはっきりいたします。そして、吉野局長が申し上げましたのは、寄港などをしているものも六条の交換公文にかかるということを申し上げまして、ただ楢崎先生の御質問の趣旨には含まれておりませんでした。
  192. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ただいまの条約局長の解釈が正しいのです。だから、あなた、自信のないことでここへ出てきちゃいけませんね。  それでは、総理がお見えになりましたから、本論に入ります。  まず、沖繩返還協定の位置づけと申しますか、それを明白にしておきたいと思います。  私どもは、いわゆるニクソン・ドクトリンの日本化が佐藤・ニクソン共同声明であると見ております。そして、その日米共同声明条約化されたものが返還協定である。そして、その返還協定の本質は軍事協定、すなわち久保・カーチス協定である。久保・カーチス協定を土地問題として裏づけておるのが、いわゆる公用地暫定使用法案である。同時に、久保・カーチス協定を実力の問題として裏づけておるのが、いわゆる四次防である。久保・カーチス協定の目標、方向を位置づけておるのが、いわゆる共同声明による韓国条項、台湾条項である。そのように私どもは思わざるを得ません。したがって、沖繩返還協定と四次防、あるいは台湾条項と関連して中国問題というものは、全部からみ合った問題だとわれわれは考えておるわけです。そう考えてまいりますと、今度の沖繩返還協定は、単に返還協定の条文だけの問題ではない、日本の今後の進路を決定するまさに重要な一つのポイントになっておる、そのように私どもはこの協定を考えておるわけです。  そこでお伺いをいたしますが、例のフルブライト委員会におけるロジャーズ証言の中で、ロジャーズ長官は、協定関係法案がともに日本国会承認されないと、ニクソン大統領は批准書を交換しないと言っておるという証言があるのです。この協定関係法案とは一体どのように把握されておりますか。
  193. 福田赳夫

    福田国務大臣 その証言につきまして、私まだ聞きませんが、上院の外交委員会、これがコメントといたしまして、この協定を大統領が批准をする、それにあたっては四つの条項が必要である、その一つとして、この協定に関連する日本の国内法の整備、こういうことを言っておるのです。そこで、外務省では、これはどういう意味なんでしょうかと、こういうことを国務省に問い合わせたわけであります。そうしますと、これはひとの国の法律のことを具体的に個々にさして言っていることばじゃないと思います、これは沖繩が円滑に返還されるための前提としては、これを円滑に返還せしむる準備としての諸法制が日本において整う、これが必要である、こういう意味で一括、包括的に、抽象的に申しておるのであります、こういうことでありまして、個々のどれとどれをと、こういうような意味でないことを答えてきております。
  194. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、協定だけが国会承認を受けた場合、それだけで批准書の交換は可能であると日本政府は判断しておられますか。
  195. 福田赳夫

    福田国務大臣 協定だけが成立したという事態では、批准書の交換は不可能である、かように判断をしております。
  196. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それはどういうわけですか。
  197. 福田赳夫

    福田国務大臣 条約にきめられたわれわれ日本側の責任遂行、これが不可能になるということが一つ。それからもう一つは、やはり沖繩を再建しなければならぬ、そのための準備ができない、そういうことは沖繩の円滑なる返還に支障があると、そういうふうに考えます。
  198. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 しからば、いま外務大臣がおっしゃっておる関係国内法は政府提案のとおりに通らない、たとえば修正なんかがされた場合には、これはだめなんですか。政府の提案どおりに国会を通過しないと批准書の交換はむずかしいと日本政府は判断されておりますか。
  199. 福田赳夫

    福田国務大臣 修正の場合は、その修正の内容によると思います。つまり、円滑な沖繩返還が実現される、そのための準備としての法制が整うということを総合的に判断して批准の態度をきめるべきである、こういうふうに考えます。
  200. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 協定はともかくとして、国内法の修正の度合いについてまで一つの制限的批准書交換の条件をつける、制限をつける、アメリカの大統領がです。そういうことが許されますか。
  201. 福田赳夫

    福田国務大臣 いや、アメリカの大統領というか、アメリカ政府の言うことは、先ほど申し上げたとおり、抽象的だと、こういうことを言っておるのです。あなたは日本政府のことを聞くから、私は日本政府の態度を申し上げておる、こういうふうに御理解願います。
  202. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、日本政府としては、どの程度の修正まで——たとえば、例をあげましょう。(「いいじゃないか」と呼ぶ者あり)何を言っておるのですか。   〔発言する者あり〕
  203. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 御静粛に願います。
  204. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 たとえば、公用地暫定使用法案、五年という期間がありますね。これは長過ぎるではないかという意見がある、過去の同様の法案に比べて。どの程度のたとえば修正というものがあなたの判断では許されると思いますか。
  205. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま仮定のお尋ねで、非常に答えにくいのでありますが、とにかく総体的に見まして沖繩返還が円滑にできる、こういうことを申し上げたい。そういうことをその時点において総合的に検討して判断いたします。
  206. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまの外務大臣お答えは、ことばは、なるほど、ある程度の修正ということは可能かもしれないというような言い方ですけれども、結局は認めていらっしゃらない。  それで、ちょっと例を引いてみます。私がなぜ今度の返還協定の本質が久保・カーチス協定だ、そうしてそれを土地問題として裏づけておるのは公用地暫定使用法案である、なぜそのように判断するかというと、まず佐藤総理大臣は、十月十九日の所信表明の中で「軍用地等の継続使用は、返還前提となっておる」、次に西村防衛庁長官、九月三十日衆議院内閣委員会、「自衛隊の使用する土地収用は話し合いを原則とするが、時間切れとなれば、暫定つまり強制収用もやむを得ない」、次に島田防衛施設庁長官、九月三日記者会見、「これがうまくいかなければ沖繩返還実体がないことになる」、次、十月十七日那覇における小坂善太郎自民党政調会長の記者会見、「軍用地の継続使用の法案が国会で可決されないような事態になると、返還協定批准も無理だろう」、次、野呂防衛政務次官、九月二十三日那覇での記者会見、「今度の国会の焦点は、基地提供問題と自衛隊沖繩配備の二つである、この二つは、沖繩返還の根幹をなすものだ」、これは私が言っておるのじゃないのです。いま明らかにしましたとおり、政府が言っておるのです。だから、われわれは、今度の返還協定内容は、まさに本質は軍事協定であり、久保・カーチス協定であり、公用地暫定使用法であり、四次防であるというのは、そこから来るのです。政府が言っておるのですね。いいですか。  そこで私は、そのことを明確にした上、次の問題に入りたいと思います。  まず、沖繩返還時における核抜きの問題であります。再三野党側としてはお伺いをいたしました。核部隊の存在、核貯蔵庫の存在、あるいは核兵器の存在、あるいは核兵器の投下訓練の問題、いろいろと出しました。しかし、政府のおっしゃることは、明文になっていない共同声明の八項、それからいわゆる七条の七千万ドル、これだけですね。あとは信頼してくれ。じゃ、七千万ドルのうち、はっきりと言われないならば、大体どのくらい核撤去費用に使われるのか。それすらも全然わかりませんか。
  207. 福田赳夫

    福田国務大臣 全然わかりませんです。
  208. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 外務大臣もちょっと口をすべらせられましたが、それじゃ全くつかみ金じゃありませんかと言わざるを得ないでしょう。いいですか。それをもって核抜きの一つの証明にしようなんというのは、これはどういうことなんですか。いいですか。この返還協定が今度の国会でもし承認されたら、来年度からこの金額がずっと予算書に計上されますね。計上される。そうすると、来年から実際に予算書に計上されるこの三億二千万ドルの中身というものは、私も予算委員をしておりますが、これは審議のできない、全くタブー、神聖化された聖域として残されるわけですか。
  209. 福田赳夫

    福田国務大臣 三億二千万ドルのうち、一億七千五百万ドルは、これは資産承継に見合う。それから七千五百万ドルは労務費です。これは御説明できます。しかし、返還交渉の過程におきまして、その合計二億五千万ドルのほかに、ずいぶん多額な要求があったわけです。これは、ときに高度の政治判断というものも必要になってきます。非常に多額な要請でありましたが、それを七千万ドルというふうに押える、こういうふうにいたしたわけでありまして、この中身を、どれがどれに該当するかということは、なかなかこれは御説明いたしにくい。それらを総合いたしまして三億二千万ドル、こういうふうにきめたわけであります。
  210. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは審議のしようがありませんね。どうですか。
  211. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういういきさつを踏んまえまして御審議願いたい、こういうふうに思っております。
  212. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 具体的にどうするのですか。——大蔵大臣、具体的にどう審議したらいいのでしょうか。少なくとも七千万ドルについてはどう審議したらいいでしょうか、教えてください。——大蔵大臣にお願いします。きょうは私もわからないことは言いません。事務当局でいい場合はそれでいいと言いますから、これは大事な問題ですからね。
  213. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 条約が批准されれば、当然条約上の義務として来年度の予算に計上することになります。
  214. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その前にいまわれわれは協定を審議しているのです。そして、いま七千万ドルを審議している。いまのような政府お答えでは、どう具体的に審議したらいいのでしょうか。国民にどうわれわれは説明していいのでしょうか。審議に対してわれわれは責任を持っておりますが……。
  215. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この問題は、私どもが引き継ぎを受けたときの説明によりますと、いままで外務大臣がしばしば説明しておるとおりでございまして、最後に核撤去その他を含めて全体として七千万ドルという合意に達したということでございまして、それでは積算の基礎はあるかということでございますが、これもしばしば説明されているとおり、高度の秘密に属する核兵器の問題でございますから、その積算の基礎は向こうからも内容々示しませんので、積算の基礎はないということでございます。
  216. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、三億二千万ドルが三億ドルになったらいけないのですか、二千万ドルちょっと削って。つまり、七千万ドルが五千万ドルではいけなかったのですか、どうでしょうか。
  217. 福田赳夫

    福田国務大臣 当時、私は大蔵大臣でその折衝に当たりましたので、お答え申し上げますが、これはアメリカ側からはかなり多額の要求があったのです。わが国といたしましては、なるべく少ない負担がよろしいというふうに考えた。しかし、核抜き本土並みということで沖繩返還を早期に実現しなければならない、これはわれわれの与えられた任務だ、こういうふうに考えたわけです。そこで、高度の政治的判断といたしまして、七千万ドルを二億五千万ドルの上に乗っけるということで妥結をした、そういう性格のものであります。
  218. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 委員長もお聞きのとおり、この七千万ドルについては審議のしようがないのです。とにかく認めてくれ、それだけです。予算は当然決算を伴う。これも縛ることになりますね。決算委員長のお考えを——決算委員会でいずれ問題になると思いますけれども、結局……(「決算委員会でやれ」と呼ぶ者あり)あなたは黙ってくれ。まじめにやっているときに。ふまじめじゃないか。それで国会議員か、あなた。こういう審議ができない金額の内容について、それだけあなた方がおっしゃるなら、佐藤内閣は非常な責任がありますよ。いいですか。  結局、沖繩からの核撤去、この問題の結論はどういうことになるかというと、いままでの審議の結論は、協定には核という明文は一つもありませんですね。そしてその有無、種類、数量も公式的には全く明らかにされない。さらに、撤去の方法、撤去の時期なども具体的には一切明らかにされない。そして最後におっしゃることは、返還時にはきれいになっておる。とにかく日米間の信頼関係なんだ、信頼してくれという、最後は精神論ですね。そういうふうな結論でしょう。総理、どうでしょうか。いままでお互いやってきましたこの核抜きの問題の結論を言うとそういうことになるのでしょうか、総理
  219. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま楢崎君もたいへん御理解をいただいておるようですが、ただいま言われるような結論になります。
  220. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうしますと、この信頼関係が破れたら、佐藤内閣としては運命をかけるほどのたいへんな政治責任が出てくると思いますが、どうでしょうか。
  221. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりです。
  222. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 もし日米間の信頼関係にいささかの疑惑でも生じた場合には、協定の基礎そのものがくずれることになると思いますが、どうですか。
  223. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はいまの日米関係がくずれるとは思わないが、くずれて、返還協定がそのまま実施されなかったら、これはたいへんなことですよ。私はもうもちろんこうして皆さんにお目にかかるわけにはいかない、かように思います。
  224. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私が申し上げておるのは、あなた方は、核抜きの問題でも、最後には日米間の信頼だ。そうすると、この協定の基礎というものは日米間の信頼関係になるじゃありませんか。だから、もしこの日米関係にいささかの疑惑でも現実に生じた場合には、返還協定の基礎が完全にくずれることになるではありませんか。これを聞いておるのです。
  225. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま日米関係に亀裂が入っとか入らないとかいうことよりも、やはり問題は、御審議願っておるように、返還協定がそのまま実施されるかどうか、このことじゃないかと思うのです。もっと具体的に言えば、核抜きで返るかどうか、これが問題なんで、そこに集中されているんじゃないですか。日米間に亀裂があったら核抜きでなくなるのだ、こういうような疑問を論理的に並べられましても、さように論理的にものごとが進むのではないんだ。私は、皆さん方に御審議をいただくその関係は、どこまでも返還協定できめたこと、そのとおり核抜きで実施されるかどうか、こういう問題です。それでまた実施されなかったら、私は責任をとる、かように申し上げておる。
  226. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 力強い決意のほどを伺って、私は安心をいたしました。しかし、残念ながら私は、その日米関係の信頼性について、アメリカ政府に対しても、佐藤内閣に対しても、双方に対して不信を表明せざるを得ないわけであります。  以下、私が明らかにいたします事実は、返還協定の基礎をなしておるとおっしゃる日米関係の信頼にかかわる重大な問題でありますから、ひとつ政府の責任ある御答弁をいただきたいと存じます。  まず、岩国に司令部を置きます第一海兵航空師団と、沖繩のキャンプ・コートニーに司令部を置く第三海兵水陸両用部隊との関係、及び第七艦隊の第七十九機動部隊、TF七九との関係を明らかにしてください。
  227. 久保卓也

    ○久保政府委員 岩国にあります第一海兵航空団は、沖繩の第三海兵水陸両用部隊の指揮下にあります。また、第七九タスクフォース艦隊海兵部隊は、第七艦隊司令官の一つのタスクフォースになっております。
  228. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 おっしゃるとおりですね。この岩国の第一海兵航空師団は、沖繩にある第三海兵師団及び第三軍役務連隊とともに七十九機動部隊をなしておりますね。そして第七艦隊に対して、二カ月おきに、一個大隊の上陸チーム約千五百人、中型ヘリ輸送中隊、HMM、これを交互に乗艦させておりますね、この第三海兵師団は。間違いありませんか。
  229. 久保卓也

    ○久保政府委員 間違いありません。
  230. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 つまり、太平洋における米軍の戦闘即応部隊ですね、コンバット・レディ・フォース、いつ何が起こってもすぐ飛び出していく、出撃をする部隊です。これがいざというときに事前協議の対象になるかどうかは問題を残しております。  そこで、御承知のとおり、昨年十一月、ベトナム民主共和国ソンタイ収容所からのアメリカ兵捕虜のいわゆる救出作戦がありましたね。御案内のとおりです。ところが、この救出部隊が、岩国基地からその作戦支援部隊が出動をいたしておりますが、その事実を把握しておられますか。
  231. 久保卓也

    ○久保政府委員 私は承知いたしておりません。
  232. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは岩国から出ておるのです。もし岩国から出ておった場合に、これは事前協議の対象になりますか。
  233. 井川克一

    井川政府委員 御存じのとおり、事前協議の対象の、いまの問題は、戦闘作戦行動のための発進基地としての使用でございます。私、岩国からその防衛局長も存じておらないような事実を全く存じませんので、これについて判断を下すことはできません。
  234. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 もし事実だったら、事前協議の対象になりますか。
  235. 井川克一

    井川政府委員 その態様によるわけでございます。これは海外の地に移動し、そこを基地として出発するというような場合には事前協議の対象にならないことは、よく御存じのところでございます。私、全然実態を存じませんので、判断は全くできないわけでございます。
  236. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 直接救出作戦に出撃した場合には、事前協議の対象になりますか。
  237. 井川克一

    井川政府委員 実態がわかりませんので、ほんとうに——そういう仮定の御質問にはここで答えにくいわけでございます。
  238. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は条約の解釈としてお伺いしておるのです。もし実態論をおっしゃるなら、あなたは知られないから、すぐ米軍にお問い合わせをいただきたい。そしてこの事実を明らかにしてもらいたい。いいですか。
  239. 吉野文六

    ○吉野政府委員 お答えいたします。  いまのソンタイの捕虜救出作業は、われわれとしてはニュースとしては心得ております。しかしながら、これは岩国から直接捕虜救出作戦に参加するということは、われわれとしては考えられないわけです。これは距離から申しましても、何から申しましても——即戦、知らない間にぱっと行って救出することになっておったわけでございますから、したがって、岩国のごとき遠いところから直接これに参加することはあり得ないことだろう。われわれ、アメリカの軍人が何を考えておるかわかりませんですが、一般の戦略的な見地から見れば、日本からわざわざベトナムまで飛び出して、そして一分か二分を争う捕虜の救出作業をやるということは考えられない、こういうふうに考えます。
  240. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私はあなたの戦略的な見解を聞いているんじゃないのです。何を言っているんですか。あなたは外務省の——大体、何ですか、あなたは。戦略的な見解なら防衛庁長官がおりますよ。失礼じゃないですか、防衛庁長官がおるのに。何を言っておるのですか、しろうとのくせに。  私は、このソンタイ作戦の支援計画は、もちろん、ああいう事態ですから、シークレットに運ばれると思います。そして、最小必要限の小部隊で行っております。特に、ECCMとECMを備えたEA6A、これはエレクトロニクス機です。これが含まれております。これは岩国の部隊です。だから私はこうして聞いております。もしこれが事実ならば事前協議の対象になる、だから米軍に問い合わしてください、それを言っておるのです。そんなはずはないからといって、何かえらくおっしゃいましたが、はずがあるかないか、それを聞いておるのじゃないのです。問い合わしてくださいと言っておるのです、重要問題ですから。こういうことを明確にしないと、事前協議がほんとうに骨抜きになるのです。問題は具体的なんです。
  241. 福田赳夫

    福田国務大臣 アメリカ政府に照会してみます。
  242. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私の質問がどのくらい続くかわかりませんが、私の質問の間にひとつ御照会をいただきたいと希望をいたしておきます。  岩国基地にC141スターリフト、C130ハーキュリーズ、これがおりますか。
  243. 久保卓也

    ○久保政府委員 ことしの春現在では、いないというふうに承知しております。以前についてはちょっといまわかりかねます。すぐ調べます。
  244. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 すぐお調べになる、今度はそちらからおっしゃっていただいて、たいへんけっこうでした。すぐ調べてください。  事実を申し上げておきます。これらの巨大な輸送機は、ベトナムのダナン基地、タイのウドン基地、そこを往復飛来しております。戦場に直接空輸するこのような任務は、戦闘作戦行動だと私は判断をいたします。そこで、これまた当然事前協議の対象になる可能性のある問題でありますから、事実をひとつ明白に、先ほどと同じようにお問い合わせをいただきたい。
  245. 福田赳夫

    福田国務大臣 問い合わしてみます。
  246. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 結局、総理、お聞きのとおりですね。政府は何も米軍の行動について具体的に把握されていない。これは日本政府ばかりが悪いのじゃないと思うのです。米軍のほうが決して知らさないからです。つまり、こういう戦闘行為というものは緊急を要するのですよ。そしてまた機密を要するのです。それを一々事前に明らかにして、どうでしょうか、行っていいでしょうかというような事前の協議を求めると考えるほうが非常識なんです。だから、事前協議は、事実問題として完全に骨抜きになっております。したがって、日本本土の岩国でもそうですから、ましてや、沖繩のあのような膨大な米軍基地、先ほども明らかにしたとおり、戦闘即応部隊がおるというような、この第三水陸両用部隊がおるというようなあの沖繩米軍が、たとえ基地の継続を許しても、返還されたらそういうことは安保で縛るのだと外務大臣はたびたびおっしゃいましたけれども、沖繩返還される前に、日本本土に現在おる米軍がそういうふうなんです。事前協議は骨抜きになっておる。いいですか。これが事実なんです。  そこで、事前協議が骨抜きになっておることは明らかにしましたが、今度は、いわゆる核抜きの問題に移りたいと思います。  いまアジアにおいて核兵器を使用する任務と権限を与えられておるF4ファントムの部隊はどの部隊か、把握しておられますか。
  247. 久保卓也

    ○久保政府委員 F4が核攻撃をし得る任務を与えられているかどうかということについては、私は存じません。しかしながら、核装備をし得るF4があるのは、岩国もそうでありますし、韓国、沖繩であります。
  248. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その部隊、つまり、アジアにおいて核兵器を扱う任務と権限を与えられておる海兵隊のファントムの部隊は、第二一一海兵攻撃飛行大隊ただ一つであります。VMA二一一部隊です。この部隊はどこに駐留しておると思われますか。
  249. 久保卓也

    ○久保政府委員 実は夕刊を見ましたので調べてみたわけでありますが、第二一一攻撃飛行隊は、F4ではございませんで、A4Eということになっておりました。
  250. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いいですか、去年の五月、ベトナムから岩国に引き揚げてきました。その当時はA4Eスカイホーク二十機、いまもそう思っていらっしゃいますか。
  251. 久保卓也

    ○久保政府委員 現在岩国におりますF4はF4B、あとは、先ほど申し上げたA4EとA6Aということになっております。
  252. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは、先ほど申し上げたとおり、七〇年五月、ベトナムから引き揚げてきた時点の構成です。だから、現在の時点における新しい構成をひとつお調べいただきたい。よろしゅうございますか。
  253. 久保卓也

    ○久保政府委員 承知いたしました。
  254. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この部隊は、昨年の三月から六月にかけて例の米韓合同演習、ゴールデンドラゴン作戦、これに岩国から参加しておる部隊です。そのような部隊なんです。  ところで、米軍は、爆弾、つまり弾頭部分を色で表示をいたしております。核弾頭はどういう色で表示されておりますか。
  255. 久保卓也

    ○久保政府委員 話として聞いたことはありますけれども、確認をしておるわけじゃありませんので、責任ある御答弁は控えさせていただきます。
  256. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 話としてはどういうふうに聞かれておりますか。
  257. 久保卓也

    ○久保政府委員 実際かどうか知りませんけれども、人の話では、赤い線で弾頭のほうをマークしてあるということを聞いております。
  258. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 まさにその話のとおりであります。核弾頭は赤です。ナパーム弾は黒です。毒ガス弾は黄色です。普通弾頭は白です。核弾頭は、弾頭の先端に赤色のラインがついております。これ永確認をしておってください。  ここで私は佐藤総理に申し上げたいのであります。  いま、御案内のとおり、私どもは沖繩の核抜き問題を一生懸命にやってまいりました。政府も熱心に答えられております。ところが、実は沖繩返還時の核抜きどころか、この本土に核が貯蔵されておる疑いがある。岩国基地をまず例にあげます。岩国に、核貯蔵庫及び核点検室並びに核兵器、そして、事もあろうに、生物兵器バイオロジーと化学兵器毒ガス、これまでも全部そろって貯蔵をされておる疑いがあります。つまり、CBRが全部岩国にそろっておる。これは私どもの党の軍事プロジェクトチームが数カ月をかけて観察と追跡調査をした結果、今日の時点における事実を私はいまから明らかにしたいと思います。  まず、その場所を明らかにしたいと思います。施設庁長官、岩国基地の米軍の地図はありますか。
  259. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 先ほど読売の夕刊で見ましたので、さっそく取り寄せてございます。
  260. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ちょっとことばがわからなかったのですが、そこに用意してありますか。
  261. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 ございます。
  262. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それじゃ、私はその場所をまず総理に明らかに示したいと思いますので、総理にひとつお渡しをいただきたいと思います。  委員長、ちょっと総理のところに行ってその場所を示したいと思いますが、よろしゅうございますか。
  263. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 どうぞ。
  264. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いま私は、まず基地のどの辺にその核貯蔵庫と思われるもの及び核点検室と思われるものがあるかを示しました。いまから、今度は写真をお示しをいたしたいと思います。
  265. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 資料提供を許可します。   〔楢崎委員、写真を示す〕
  266. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 まず、私がお示しをしたところに六つ倉庫がありますね。そのうちの、二重のフェンスで囲まれたところが問題の倉庫であります。核貯蔵庫と思われるものは、6のところ、一つだけ飛び出ておるところです。そこで、まず特徴を申し上げます。  私は、ことしの五月十五日の内閣委員会において、核貯蔵庫が日本本土内にあるかどうかという質問をいたしました。それと同時に、第五空は事故防止点検表を所有しておるかどうか、これを質問したのです。当時は中曽根長官でありました。そして私は文書で回答をいただきました。米軍に問い合わせたところ、その点検表はある、しかし核貯蔵庫は日本にはない、ここに政府の文書の回答がございます。  そこで、第五空が認めましたそれは、一九六五年三月一日付五空傘下の各部隊指揮官及び監督官あてに通達されました「事故防止点検表」、膨大なものです。この中の核兵器関係部分、これはいろいろ項目に分かれております。「指揮」それから「指揮及び点検」それから「核安全計画」「安全規程」「保安」「訓練」「操作」「事故−災害」そういう各項目にわたりまして詳細に点検要領が記載されております。これは五空のものでございますが、海軍もそう違うはずがありません。  そこで、私がお示ししましたこの貯蔵庫は、いま申し上げた「事故防止点検表」に述べられておる基準にぴったりはまっております。必要なところだけ明らかにしてみたいと思います。  ただいまの「事故防止点検表」の中の「保安」のところです。「兵器貯蔵施設は柵をした地域内に置かれ、柵の周辺並びにそれへの接近を有効に照らす灯火を備えておるか」灯火が写真にありますでしょう。そして二重のいわゆる柵に囲まれております。「鎖型の柵は七フィートの高さを持ち」そのとおりです。「その上にまたがる張り出しの有刺鉄線を加えて全高八フィートに達するようになっておるか」そのとおりです。「安全に守られたところから外部に出された兵器は、常に少なくとも二名の武装護衛兵によって守られておるか」これはあとで明らかにします。「核兵器の積載、積みおろしの作業は、許可のない人員から容易に見られないような場所で行なわれておるか」これもあとで明らかにします。「核兵器の積載、積みおろし作業に対する保安は、この兵器が安全な貯蔵所にあるいは積載、積みおろしの場所への護送下にある場所を通じて一貫して行なわれておるか」「護送手続は確立されておるか」等々、たくさんあります。全部当てはまっております。  それから、これは沖繩の原水禁と軍事評論家の小山内さんたちが合同調査で出されております「沖繩における核第一次点検調査報告」、この中の「核貯蔵施設の諸条件」のところを明らかにしたいと思います。  「核貯蔵施設は地下式、半地下式の完全な硬化貯蔵庫であり、エアコンディション装置を有するという特徴のみではない。」写真には大きな換気管がついているでしょう。「各施設は二重ないし三重のフェンスで囲まれ、基地内においても隔離される体制をとっておる。沖繩においてもこれら特殊施設は、従来は監視塔上から常時監視員が警戒にあたり」監視塔がありますでしょう。「しかし現在は監視塔は置かれておるが、警戒はレーダーその他の電子装置にかえられており、警備兵の姿のないのに安心して侵入する者を確実にキャッチして、二、三分のうちにパトロールが急行して逮捕するという警備システムになっている」、これが沖繩の核貯蔵庫の点検の施設の条件であります。  そこで私は、いまの私が明らかにしましたこのような核貯蔵庫の、いわゆるフェンスで囲まれた状態、これは上原議員も地図によってかつてお示しをした。いまあらためて全く同じであるということを上原議員からひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  267. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 関連質問の申し出があります。これを許します。上原君。
  268. 上原康助

    ○上原委員 いよいよ、核抜きの問題がますます疑惑を持たれているわけですが、私がせんだって予算委員会で明らかにいたしましたように、辺野古の弾薬地域もやはり三重の金網で囲まれております。このように、特殊兵器である以上、厳重な警戒体制の地域に核が貯蔵されていることは、いまや公然の事実となっております。もしよろしければ、この金網のかっこうというものを総理も上くと見ていただきたいと思います。  さらに、これは沖繩のある米軍地域の飛行場の地図ですが、これにもやはり核を運搬する手段としての地域が二重の金網で示されております。  こういう沖繩の現状からしても、いま楢崎委員が示した岩国の飛行場の実態というものは、まさしく、日本の核抜きという問題、あるいは事前協議の問題が骨抜きであり偽りであるということが証明をされていると私は確信をいたします。その意味でも、沖繩の核抜き本土並みということが、政府がいろいろと御熱心に答弁をなさっても、七千万ドルの中身も明らかにできない。現在ある核も、どう撤去するかも、その手段も明らかにしない。そうして復帰の時点においてはなくなっているんだというようなことでは、信用できないということを、さらに証明、裏づける証拠として、私はここに問題を提起いたしたいと思います。
  269. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いま上原議員の関連質問によっても明らかなとおり、沖繩に貯蔵されておる核兵器、その貯蔵庫の様相も、全く私が指摘した岩国の貯蔵庫と同じであります。  そこで、御承知のとおり、これは総理もたびたびおっしゃるとおり、非常にトップシークレットの問題でありますから、この公開の場所でありますので、若干の事実について、公開の場所という条件のもとで言われる範囲でいまから明らかにしたいと思います。  昨年十月、岩国基地における核兵器取り扱いに関する新しいコードの確認が行なわれた疑いがあります。どういうふうな確認かと申しますと、「一、核兵器が運搬されるときは、担当の士官はだれであるかということ。二、もし必要が生じた場合の核兵器と関係書類の運搬のしかたに関すること。三、緊急の場合の核兵器の撤去に関すること。緊急の場合には三六〇に連絡すること。」三六〇というのは、あとで示しますが、司令部の建物の番号です。「四、核兵器が必要になったときには輸送機によってこの基地から搬出すること、搬出はまず輸送機を第一にすること。五、地上においてどのように運ぶかというその運び方。六、岩国基地における核兵器の作戦の指示、」こういう内容であります。  次に二番目、明確なものだけ申し上げておきます。本年の一月二十二日夜、A6−イントルーダー二機に核兵器の積みおろしの作業が行なわれた疑いがあります。  三、これは直接核とは関係ありませんが、本年二月一日の夜、B52が一機飛来しております。そして二日夜明けに飛び去っております。  四、ことしの三月、ハウンドドッグと思われる核兵器の出入りがあった疑いがあります。  五、本年五月、ペンタゴンの指示により岩国から沖繩へ三つの核兵器が移動された疑いがあります。  六、これは、参議院では公明党の黒柳委員が、沖繩の部隊の伊江島での核模擬爆弾投下演習を指摘しました。当委員会では共産党の不破委員により、同じく沖繩の十八部隊が伊江島で韓国の仁川の付近への爆弾投下演習の事実が指摘されました。  私は、それにさらにつけ加えたいと思います。実は、この第二一一部隊が岩国から約一時間半かけて伊江島にときどき演習に行っております、核投下演習に。並びに、朝鮮にもこの岩国から二一一部隊が行っております。  以上の点は、公開の席上で指摘し得る内容です。すべて「疑いがある」と、ことさらにそういうことばで私は表現をいたしました。  そこで、もしこれが事実ならば、沖繩返還時に核抜きをする、返還時には核はきれいになっておるんだというようなことがどんなに虚偽に満ちたものであるか。沖繩どころか、本土に核と生物兵器と毒ガスが置かれておる。一体どうしますか、これは。そこで、これはまさに日米の信頼関係に関する問題であり、この審議しておる沖繩返還協定の基礎をなす重大な信頼関係の問題に私は重大な疑義をはさみました。  そこで、これ以上は私は非常にデリケートな問題もありますから、秘密理事会で総理以下関係大臣の御出席をいただいて、なお説明を追加したいと思います。そしてその上に立って、私は、直ちに当委員会から私が指摘した岩国基地に対して核点検のための調査団を派遣されたい。総理あるいは外務大臣は、黒柳氏の質問に対して、あるいは不破氏の質問に対して、沖繩の問題で核点検は、いま沖繩施政権がないからむずかしいとおっしゃっていた。岩国は施政権がまさにあるのです。ぜひこの点検の調査団を派遣されたい。これが明らかにならぬと、何が核抜きですか。お願いいたします。(拍手)
  270. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 暫時休憩をいたします。    午後七時十五分休憩      ————◇—————    午後七時十七分開議
  271. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  本日はこの程度にいたしまして、次回は、明十七日午前九時三十分より理事会、午前十時より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後七時十八分散会