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1971-11-15 第67回国会 衆議院 沖縄返還協定特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十一月十五日(月曜日)     午前十時七分開議  出席委員    委員長 櫻内 義雄君    理事 青木 正久君 理事 小沢 辰男君    理事 西銘 順治君 理事 福永 一臣君    理事 渡辺美智雄君 理事 大出  俊君    理事 中谷 鉄也君 理事 西中  清君    理事 河村  勝君       上村千一郎君    奧田 敬和君       加藤 六月君    梶山 静六君       唐沢俊二郎君    北澤 直吉君       小金 義照君    小坂徳三郎君       塩川正十郎君    高鳥  修君       竹内 黎一君    中島源太郎君       中村 弘海君    永田 亮一君       野田 武夫君    福田 篤泰君       古内 広雄君    別川悠紀夫君       松野 幸泰君    松本 十郎君       山崎平八郎君    山田 久就君       上原 康助君    堂森 芳夫君       楢崎弥之助君    堀  昌雄君       松本 七郎君    安井 吉典君       横路 孝弘君    林  孝矩君       正木 良明君    渡部 一郎君       曽祢  益君    松本 善明君       安里積千代君    瀬長亀次郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 前尾繁三郎君         外 務 大 臣 福田 赳夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 高見 三郎君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         通商産業大臣  田中 角榮君         運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君         郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君         労 働 大 臣 原 健三郎君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣 渡海元三郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)   中村 寅太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      平泉  渉君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 西村 直己君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      木村 俊夫君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大石 武一君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛施設庁長官 島田  豊君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省条約局長 井川 克一君         大蔵大臣官房審         議官      前田多良夫君         大蔵省理財局次         長       小幡 琢也君         郵政省電波監理         局長      藤木  栄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリ  カ合衆国との間の協定締結について承認を求  めるの件(条約第一号)      ————◇—————
  2. 櫻内義雄

    櫻内委員長 これより会議を開きます。  琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑を続行いたします。大出俊君。
  3. 大出俊

    大出委員 前回の質問軍用地問題に関しまして、山中総務長官から御答弁がございましたが、冒頭に軍用地の問題について防衛庁総理府関係を明確にしておいていただきませんと、私のこれからの質問がそこに関連をいたしますので、山中総務長官にまずもって、沖繩対策特別委員会の席上で中谷質問お答えになりまして、公用地の問題はわがほうに関係はないということをおっしゃっているのでありますけれども、その間の事情について御答弁をいただきたいのであります。
  4. 櫻内義雄

    櫻内委員長 大出君に申し上げますが、統一見解防衛施設庁長官島田君よりお答えをすることに政府のほうで打ち合わせができておりますので、ひとまずお聞き取りをいただきたいと思います。
  5. 大出俊

    大出委員 その前に、実はこのいまの七カ所問題等を含めまして、七カ所も強制収用をする個所がございますから、協定からいきますと、協定Aリストに載っておりまして、しかも公用地に関する法律が出ておりますので、したがって、ほんとうにその気があるのかないのかという点がまず問題になるわけであります。これには実は経過がございまして、中谷委員沖繩対策特別委員会質問をいたしました。あと、私が九月三十日に西村防衛庁長官質問いたしました。両方の関係がございまして、山中さんに、あらかじめ、どういうお考えかということを明確にしておいていただきませんと、統一見解をいただくわけにまいらない。私は総務長官の御出席はお願いを申し上げたのでありまして、どなたかほかの方がお答えいただければですが、これは山中さんの答弁でございますから、まず明らかにしていただいた上で統一見解に入っていただきたい、このように思います。
  6. 櫻内義雄

    櫻内委員長 山中長官間もなく見える予定でございますから、このままでしばらくお待ち願います。——大出委員に申し上げます。山中総務長官お見えでございますので、質問趣旨が徹底しないといけませんので、再度御発言をお願いいたします。
  7. 大出俊

    大出委員 山中さんおいでになると思って御質問したのでありますが、質問をして気がつきましたら、おいでにならぬということでございまして、私の責任ではございませんのでお許しをいただきたいと思います。  一昨日、私が軍用地に関しまして御質問を申し上げたところが、山中総務長官から御答弁を賜わりました。私も関係があるからというお話でございましたが、そこで、明確にしておいていただきませんと、統一見解をいただくについて困ることがございます。  まず、山中総務長官に承りたいのでありますが、十月十七日の琉球新報を私ここに持っておるのでありますけれども、この中で、西村山中冷戦、まあこれは過ぎたことですからどうでもいいんですけれども、お二人そこにいて、いまで本冷戦じゃ困るんですけれども、この米軍自衛隊用地のめんどうを見る防衛庁が、最初に考えたのが小笠原方式、つまり、小笠原返還にあたっては、米軍基地強制使用の規定を小笠原復帰に伴う特別措置法に一括して盛り込んだ前例があることから、沖繩の場合も、沖繩復帰に伴う特別措置法案米軍自衛隊用地暫定使用を織り込む段取りだったというのでありますが、中谷委員沖繩対策特別委員会でいろいろ御質問山中さんになさいました。その席上で、どなたが発言をされたか私知りませんけれども、米軍用地のみならず、自衛隊用地に関する公用地が当時は入っておりませんでしたが、強制収用、こういう措置をとらざるを得ぬ、こういう話が出てきた。そこで、どうも総務長官防衛庁見解がたいへんに違いがある、こういうやりとりがございました。そこで、私その翌日でございますが、九月三十日に、西村防衛庁長官にこの間の経緯を含めて御質問申し上げたわけであります。ところが、一昨日は、質問過程で七カ所問題について総務長官からちょっと御発言がございました。この間の経緯は一体どういうことになっておりますのか、まず明らかにしておいていただきまして、再度総務長官防衛庁長官に御質問があるわけでありますが、どうもすっきりしないものですから、まずここを明確にしていただきたい。
  8. 山中貞則

    山中国務大臣 内閣構成員でございますから、きまった方針というものは私も含めてきまったわけですが、しかし、なぜ総理府責任をもって出す五法案の中に土地収用に関する法律が入らないのかという問題については、当初から返還協定並びに基地提供等の交渉について総理府総務長官たる私は一切タッチいたしておりません。また、それは私を除く、すなわち、防衛庁長官、それから外務大臣マイヤー大使によって構成される日米安保協議会において決定をされる内容でございますから、したがって、私のところでその法律所管するわけにはまいらぬということを私が申していたのは事実でありますし、また、そのとおりであると思います。土地の問題については、過程で二度ほど、場合によっては総理も出てもらいました会もありますが、いろいろと意見を述べ合いました。最終的にはいまのような形になりましたので、私も現在は、経過は別として、このような措置について異論を唱えるものではありません。
  9. 大出俊

    大出委員 西村長官に承りたいのでありますけれども、長官たいへんこれは御努力をされて、ここには苦肉の策という表現がしてありますけれども、佐藤総理以下おいでになった宮崎の一日内閣でございますか、ここまで長官がお出かけになって、建設大臣なりあるいは運輸大臣なり、だいぶ苦しい折衝があったようでありまして、ところが、建設省にしても運輸省にしても、どうもあまりこの話には乗り気でない、この沖繩というところを対象に自衛隊用地に関してまで強制収用をしようということは、いささかいかがかという実はニュアンスがあったというようにここに書いてある。私も実は、七カ所のようなきわめてあいまいなものをAリストにお入れになったという経緯等から見て、かつ強制収用というふうなことは、いささかこれは無理がある、こう私自身思っている。当時、政府部内の大多数そういうお考えがあった。山中さんにもあったはずだと思う。そこらのところを西村さんがどういうわけでいささか強引に公用地法案まで持っていったのかという点については、例の久保・カーチス合意書なるものとの関連が見られる。この間の経緯をひとつ明らかにしておいていただきたいわけであります。
  10. 西村直己

    西村(直)国務大臣 ちょうど私、全日空事故あとを受けまして、急遽——わずか三カ月前後でございます、その間にこの問題を扱わされたわけであります。経過等もいろいろ調べました。決してこれは久保カーチス協定そのものから出ておるものではございません。(「協定か」と呼ぶ者あり)取りきめですね。失礼。それで、私としましては、国のファンクションとして、いろいろ国家がやらなければならぬファンクションというものがある、これを引き継いでいく、その場合には、確かに公用地あるいは公共用地——直接でないものもあります。公共団体等が受けるもの。しかし、いずれにしても、国家ファンクションとして引き続いて円満に諸行政を進めていく、その中の一つとして、自衛隊国家一つ行政機能ファンクションである、こう考えまして、最終的に取りまとめるようにいたしたわけであります。
  11. 大出俊

    大出委員 この点は後ほど私詳しく承るつもりでおりますが、統一見解を紙でお出しいただくかと思いましたら、口頭でというお話でございますので、それを実は少し明らかにしておきたいと思って質問しておるのでありますが、山中総務長官の側で、自衛隊用地まで強制収用するということについてはどうも御賛成でない御発言が当時委員会等に見られるわけでありますが、当時の山中さんのお考えをここでもう一ぺん——いまは、政府がきめたのだからと、こう言うのでありますが、当時いろいろ答えておられましたことを総括すると、自衛隊用地を含めてということについてはどういう御感触をお持ちであったのか、一言ひとつお述べおきいただきたいと思うのであります。
  12. 山中貞則

    山中国務大臣 私は自衛隊用地のことには触れておりません。飛行場とか道路とか電力会社の敷地とか、そういうものについては必要ないということは、立法もしないということも委員会等で明言をいたしておりました。しかしながら、その後、閣内の調整をいたします際に、本来の所管大臣である建設、運輸あるいは厚生等所管大臣より、やはり引き継ぎの場合に間が切れるということは心配であるという旨の表明がありまして、私は総括の担当大臣でありますから、そのような所信は国会においても答弁をいたしておったものでありますが、担当大臣の御意見でありますから、私のほうでそれ以上意見を申し上げることは越権になりますので、大勢に私は従った。現実においては、結果、提出されたものに対して異論を唱えるものではありません。
  13. 大出俊

    大出委員 いまのお話の中に、飛行場とか道路とか公社用地とかいうふうなものについては強制収用の必要がない、こう考えておったというのでありますが、実際には、沖繩復帰以後を含めまして、何も公社であるとかあるいは道路であるとかいうのが必ずしも——関係はありますけれども、防衛庁所管ではない。にもかかわらず、公用地というものが頭に乗っかってきた。そうなりますと、たいへん大きな問題でございまして、西村さんのほうは、ずばり言えば、所管である自衛隊用地あるいは軍用地強制収用というものをお考えになるのなら話はわかる。しかし、そこに公用地というものをくっつけてきた。山中沖繩担当大臣のほうは、いわゆる公用地についてはその必要はない、こう考えていた、こういうことが実は明白になったわけでありまして、山中さんの筋から言えば、本来、防衛庁公用地なんというものを冠して法案をつくる必要はなかった、こういうことに実はなるわけでありまして、この点をひとつこの際明確にしておきたいと思うわけであります。  その上で、時間の関係がございますから、順次御答弁を賜わりたいのでありますが、残った問題といたしましては二つ問題がございまして——私の質問通告は五点に及んでおりますけれども、そのうちのちょうど二つ論議をいたしました過程で、皆さんのほうで、検討させてくれ、統一見解をと、また、資料がない、こういうふうになりまして、以下に入れないままに途中で継続になっているのであります。このお出しいただきました「第七心理作戦群琉球通信」、こういう文書がございますが、これは何か御説明の要はございませんですか。このまま読み流せばそれでいいというつもりの資料提出でございますか。
  14. 福田赳夫

    福田国務大臣 できるだけ詳細な資料と存じまして作成したものでありまして、御一読いただきますればそれで御了解願えるものだ、こういう前提の資料でございます。
  15. 大出俊

    大出委員 もう一ぺん、せっかく御答弁いただきましたから、外務大臣に承りたいのでありますが、これは舌足らず、あるいはこれは少し簡単過ぎたなどというふうなことはございませんですか。間違いございませんな。
  16. 福田赳夫

    福田国務大臣 できる限り詳細にかつ正確にと、こういうふうな趣旨でございますが、なお御疑念等がありますれば、御質問願えますればできる限りのお答えを申し上げます。
  17. 大出俊

    大出委員 これはできるだけ詳細にといって、一枚と五分の一くらいですな。三下り半というのは三行半ばそうですが、これはちょっと多いですけれども……。どうも私、三下り半を突きつけられたような気がするのでありますけれども、それを称して、大臣は、できるだけ詳細に——どうもずいぶん不親切きわまる御答弁だと思うのでありますけれども、ほかならぬ福田さんですから、がまんします。  ところで、承りたいのでありますが、金城五郎さんという方がおいでになりますが、これは極東放送解説を六時十分からおやりになっている方であります。沖繩皆さんのほとんど知った顔になっております。この金城五郎さんの、つまり身分と申しますか、この方は極東放送解説をやっておられるわけでありますが、この方は一体どういう人でございますか。
  18. 福田赳夫

    福田国務大臣 琉球通信という個人企業責任者である、さように聞いております。
  19. 大出俊

    大出委員 せっかく詳細にお調べをいただいたそうでございますけれども、第七心理作戦群第十五分遣隊の、私が指摘をいたしましたジャパニーズブランチ、この方々を含む分遣隊名簿というものがございます。私持っておりますが、これをお読みになったことがありますか。
  20. 福田赳夫

    福田国務大臣 私はまだその名簿は見たことはございませんです。
  21. 大出俊

    大出委員 せっかくここまで機構図——これはずいぶんそっけない文章だと思うのでありますが、外務省型でございましょうから、がまんいたします。ここに第十五心理作戦分遣隊電子技術部印刷物宣伝部ラジオ宣伝部、このラジオ宣伝部の中に、韓国語班中国語班日本語班スタジオ班情報分析班、こうなっておるのですね。これはインフォーメーション・インテリジェンスなんと、下のほうの原文には書いてあります。ところが、日本語班というのがここにありますが、あなたのほうでここにお出しになった資料からして、琉球通信職員である、こういうふうにお述べになっておるとすれば、何で一体第十五分遣隊日本語班の中の名簿に明確に金城五郎君が書いてあるのですか。でたらめを言っちゃいけませんよ。私は持っているんだ。
  22. 福田赳夫

    福田国務大臣 政府委員からお答え申し上げます。
  23. 吉野文六

    吉野政府委員 お答えいたします。  金城五郎さんはこの琉球通信社長でございますが、同時に、第七心理作戦部隊契約を結びまして、これは一年ごとに更新されておりますが、そこで日本語ないしはその他のあれをやっておる。この琉球通信企業の中で、九人の日本人が、いわゆるコントラクト・エンプロイ、こういう形で第七作戦部隊の仕事をやっております。しかし、これらはあくまでも契約に基づく関係でありまして(「雇用契約か」と呼ぶ者あり)さようでございます。そこで、いずれにせよ、軍人軍属のごとく第七心理作戦部隊自体職員ではございません。
  24. 大出俊

    大出委員 だから私は大臣に、言い足りないこと、あるいはまた、つけ加えることはございませんかと聞いている。十月の一日現在の名簿がここにある。英文で横に書いてあります。この名簿の中に、いまおっしゃったのは私もここに原文を持っておりますが、この中に雇用契約がちゃんと歴然としている。雇用契約を結んで九人の方々日本語班職員に入れている。職員名簿と書いてある。職員であることに間違いないから職員名簿に書いてある。雇用契約がいずれのものであれ、エンプロイという形を明確にして職員名簿に載せている。載せている限り、職員だと考えるのは常識じゃないですか。つまらぬ言い抜けをする必要はない。だから、私がこの間から申し上げているのは、事実は事実として認めたほうがよろしい。相手があるんだから、うまくいかないということだってある。あるから、そのことは率直に申し述べて、相手があってうまくいかぬ、だからひとつ各党協力をして、疑わしきものは晴らさなければいかぬのですから、きちっとこれは疑いなくこうだということにして、その上で沖繩皆さん気持ちなり国民の皆さん気持ちなりというものを、どういうふうに疑念解決のためにわれわれは努力するかという、そこが私は取り組む姿勢の一番ポイントではないか、こう言っている。にもかかわらず、何であなた方は職員名簿に載っかっている者を職員じゃないと言うのですか。名簿出してください、全部。そんないいかげんなことがありますか。
  25. 吉野文六

    吉野政府委員 先ほど提出いたしました書類の注に書いてあるとおり、「琉球通信上記契約関係以外第七心理作戦群と組織上全く関係がなく、社長従業員とも同群雇用員ではない。」(「雇用契約があればいいんじゃない」と呼ぶ者あり)これは業務契約でございます。業務契約でございます。これは英語ではコントラクト・エンブロイと書いてありますが、これは法律的には正確な表現ではなくて、あくまでも業務契約して請け負っておる。したがって、これらは……   〔発言する者あり〕
  26. 櫻内義雄

    櫻内委員長 静粛に願います。
  27. 吉野文六

    吉野政府委員 第七心理作戦部隊職員ではございません。
  28. 大出俊

    大出委員 だから原文名簿出してください。職員名簿と書いてあります。したがいまして、コントラクト・エンプロイ、それはわかりますよ。わかりますが、それは明確に雇用契約なんです。だから職員名簿と書いてある。十月一日現在。お出しください。出していただきます。
  29. 吉野文六

    吉野政府委員 たびたび御説明したとおり、これはあくまでも業務契約でございます。したがって、これらの九人の日本人琉球通信職員である。したがって、第七心理作戦部隊職員ではない、こういうことでございます。
  30. 大出俊

    大出委員 私の手元にある資料に基づきますと、さっきから申し上げておりますように、本年十月一日現在、第十五心理作戦分遣隊放送宣伝部名簿、こういう文書であります。第十五心理作戦分遣隊放送宣伝部名簿、十月一日現在。この中に明確に載せられています。これが間違っているというのならば、いまの御主張はわからぬわけではない。間違っていない限りは、第七心理作戦部隊職員である。あたりまえであります。だから、あなたのほうもお調べになったとおっしゃるのだから、足らぬことはないのかと私は聞いているのだから、お出しください。その上で論議しましょう。
  31. 吉野文六

    吉野政府委員 いずれにせよ、第七心理作戦部隊が……   〔発言する者多し〕
  32. 櫻内義雄

    櫻内委員長 静粛に。
  33. 吉野文六

    吉野政府委員 先方の自分の目的のために名簿をつくって出したとしましても、それはわれわれの関知するところでございませんが、しかしながら、琉球通信のこれらの九人の名簿を提出いたします。
  34. 大出俊

    大出委員 琉球通信の九人の名簿出してもらったってしようがない。意味がない。私が申し上げているのは——念のためにもう一ぺん言いますが、何べん言わせればいいのですか。第十五心理作戦分遣隊放送宣伝部名簿、本年十月一日現在。出してください。横文字で書いてありますから、横に。もっとも横文字は横にしか書けぬけれども。出すのですか、出さぬのですか。
  35. 櫻内義雄

    櫻内委員長 大出君、資料要求ですか。
  36. 大出俊

    大出委員 はい。とにかくいまの答弁は、琉球通信職員でない、エンプロイと書いてある、そう言ってみても、私の持っている名簿に明確に載っておるものを、幾ら否定されたって、そんなこと信用できるはずがないじゃないですか。あなたが雇っているのじゃないのだよ。第十五分遺隊が雇っているのだ。君が雇っているのじゃないのだ。出しなさい。
  37. 櫻内義雄

    櫻内委員長 大出委員に申し上げますが、先ほど来、質疑応答が行き来しておるようでございまして、大出委員資料要求のことでもございますから、後刻理事会においてこれを取り上げて御協議申し上げます。そういうことにしたい。
  38. 大出俊

    大出委員 せっかくお出しをいただきました「四十六年十一月十五日、外務省」ということで、「第七心理作戦群琉球通信」といわれてお出しになった資料ポイントが、金城五郎君という人は第十五分遣隊職員ではないということに尽きるのです、この中身というのは。これが該当のポイントなんです。その名簿は私が持っている。第十五分遣隊職員名簿なんです。だから、それをお出しにならぬで、いずれにせよなんて言われてみたって、いずれもへちまもない。せっかくお出しいただいたこの資料ポイントはそれしかない。第十五分遣隊職員であることは間違いない。やっていることをこれから言うけれども、私は実はここからはほんとうは審議したくないけれども、せっかく委員長のおっしゃることだから、もう少し聞きましょう。  金城五郎氏が、第十五分遣隊、この中のジャパニーズブランチ、ここのジャパニーズブランチ名簿に明確に載っている人、この人が極東放送ニュース解説をやっているというのはどういうわけですか。どういう資格でやっているのですか。
  39. 福田赳夫

    福田国務大臣 極東通信金城五郎氏のこの企業、この間にそういう契約があるのだろうと思います。現実の問題といたしましては、極東通信に対し金城五郎氏は資料提供をいたしておるようであります。
  40. 大出俊

    大出委員 どうも福田さん、気をつけてことばを使ってくださいよ。極東通信なんというものは世の中にないのだよ。
  41. 福田赳夫

    福田国務大臣 極東通信というのは、極東放送の誤りであります。
  42. 大出俊

    大出委員 つまり、大臣、これは常識でお考えいただけばわかるでしょう。おおむね七、八年も六時十分からニュース解説をずっとやってきている金城五郎さんという人は、だれが考えたって、極東放送のれっきとした職員であり、解説員ですよ。そうでしょう。一週間や十日やっているのじゃないのだ。長年にわたってニュース解説をずっと担当してきておられる金城五郎さん、この方が極東放送解説員であり職員であることぐらい、だれだってわかる。常識ですよ。いいですか。その方が第十五分遣隊職員名簿に載っかっておって、そこでニュース解説その他のいろいろなものをつくっておられるということになるとすると、第七心理作戦部隊の中で、しかも同じ建物で、一体これはどういう関係になっているのですか、第七心理作戦部隊極東放送は。これは常識であなたに御判断願えばわかるじゃないですか、こんなことは。だから、そういういいかげんなものは認めるわけにはいかぬと言っているのだ。
  43. 福田赳夫

    福田国務大臣 常識で判断しますと、琉球通信というものは、第七心理作戦部隊、これと同じビルにおるわけです。そうして、いまあなたと吉野局長見解が違いますが、いろいろ深い関係がある。それが同時に極東放送に対して資料提供しておる、こういうことははっきりしておるのです。そういう関係でございます。
  44. 大出俊

    大出委員 またそういういいかげんなことばかり言う。琉球通信というものはいつできたのか、あなたは御存じですか。前は何といったか知っていますか。
  45. 吉野文六

    吉野政府委員 一九五六年以来第七心理作戦部隊業務契約を毎年結んでおります。
  46. 大出俊

    大出委員 外務大臣外務大臣は第七心理作戦部隊の構成図その他をごらんになってお調べになったことがございますか。
  47. 福田赳夫

    福田国務大臣 詳細に調べたことはございません。ただし、私どもの政府委員においては調査をしております。
  48. 大出俊

    大出委員 琉球通信というものをまん中に置いた形をとって、そして極東放送が、平日は一日八回、日曜日は六回、ニュース、ニュース解説、今日の暦から以下原稿をつくるところはどこかというと、第十五作戦分遣隊の九一〇号という建物で、日本語をまず英語に翻訳をしてニュースB、ニュースFというふうに記号をつけていきまして、これを第十五分遣隊責任者アレックス・ヨリチのところへ出して、その上に責任者もう一人おりますが、ここでおのおの点検をし許可をする、こういう形をとって、これを極東放送に持ち帰って、ここで金城五郎さんが、事もあろうに、また自分でニュース解説をする、こういう仕組みをつくった。この仕組みが、実は第七心理作戦部隊がとっている灰色の宣伝という部類に入っている。これはサイミントン報告に明確になっている。いま大臣がここでいみじくもおっしゃった形、いま局長お答えになったこと、これが実はサイミントンの議事録の中に明確になっている第七心理作戦部隊がやっている灰色の宣伝、こういわれるものなんです。  第七心理作戦部隊には三つの宣伝形式がある。これも明確になっている。何と何と何だか、まずお答えいただきたい。
  49. 吉野文六

    吉野政府委員 先生のおっしゃるのは、おそらく白と黒と灰色、この三色の宣伝活動だろうと思います。白は、普通にやっておる宣伝活動、灰色は、その他の放送、それから黒は、やっていない、こういうことになっております。
  50. 大出俊

    大出委員 外務省が翻訳をなさっておる、米国上院外交委員会の、いわゆるサイミントン委員会の議事録がございます。この中に、第七心理作戦部隊の証言をずっと続けておる。ここに「帰属の範囲」の「総則」というところがございまして、「太平洋軍地域の心理作戦活動は、主として「白」であり、つまりこの宣伝活動の起源については偽わりはない。「黒」の宣伝は他の米諸機関の責任下にある。」黒の宣伝というのは、調整はするけれども、ほかの米機関、CIAその他いろいろありますが、そこの機関の責任下にある。責任はそっちにある、手伝いはするけれども。「「灰」色の宣伝というのは起源は明らかにされないが、それについて宣伝の対象とされる人々が自ら判断を下しうるような宣伝である。」下のほうにございますけれども、こういうふうな書き出しで書いてある。  これは第七心理作戦部隊のテキストにもうひとつ詳細に載せられている。どう載せられているかというと、灰色の宣伝、グレイ・プロパガンダ、こういうふうに定義をいたしまして、灰色の宣伝、出所を明らかにしない宣伝、こういう意味である、こうなっている。長所、短所が書いてある。その長所、敵の宣伝と受け取られない、これが長所の一つ。二番目は、直接的に追及されずにセンセーショナルな問題を提起するためには非常に都合のいい宣伝である。ところが、弱点が書いてある。弱点は、分析されるといかなるものかということが比較的わかりやすい、そういう弱点を持っている。それから出所を明らかにしないと権威を保つことが非常に困難である、こういう欠点がある。こういうふうに、これは第七心理作戦部隊のテキストの中に明確に記載をされている。  いまお答えになった灰色の宣伝、つまり金城五郎君を中心とする極東放送と第七心理作戦部隊関係というのは、第七心理作戦部隊がやっている宣伝形式の中の灰色の宣伝にみごとに該当するものである。そうなると、この点の事実について、まず局長に明確にしていただいて、第七心理作戦部隊極東放送関係は、単にニュースをそこからもらっているという関係ではない。第七心理作戦部隊が計画をして、やらせている灰色の宣伝、この形式に該当するものである。明確な結論が出ている、私はこう思うのでありますが、この点あとから大臣に明確にしていただきたいのであります。
  51. 吉野文六

    吉野政府委員 第七心理作戦部隊極東放送との関係は、これは軍と、沖繩にある、施政権下にある放送局との関係でございますから、その関係につきましてわれわれがいまここでとやかく言う立場にないと思いますが、沖繩返還後はこれらの関係は一切断ち切られる、われわれはこういうことを彼らに要求しておりますし、また彼らはこれを承諾しております。したがって、このような関係は返還後には一切なくなります。
  52. 大出俊

    大出委員 私はいまそこから先を聞いているんじゃない。灰色の宣伝に該当する、そういう結論が出るが、いかがかと聞いている。  大臣、サイミントン議事録にも明確になっておりますように、灰色の宣伝というのは何カ所かやっている。それは私がいま申し上げたテキストにもありますように、そういう形でやっている。それに該当するのかしないのか。この点はもうすでに明確でございます。そのことをまずお認めになって、その上で、いまあなたがいろいろ言っていることは、これから出てくる。順番にいきましょう。
  53. 吉野文六

    吉野政府委員 先ほど申し上げましたように、いずれにせよ、現在の第七心理作戦部隊極東放送との関係は、これはわれわれとしてもこれ以上的確につかみ得ません。しかしながら、すでに申し上げましたように、ともかく返還後は、極東放送はあくまでも一般の民間放送として日本語の放送を続けることができるということに相なるわけでございますから、したがって、このような関係が現在あるとしましても、これは返還後は一切なくなります。
  54. 大出俊

    大出委員 一昨日の質問のときに、皆さんは何もおわかりにならぬ、お答えにならぬ。だから私が問題点をあげて、調査を願いたい、あなた方、調査するとおっしゃった。そこでお調べになって回答いただいたわけであります。現状把握ができないで、返還後と、こうおっしゃるけれども、対処のしようはないはず。  だから、もう一ぺん整理すれば、責任者金城五郎さんという方が琉球通信を五四年におつくりになった。そして那覇の中央郵便局に百四十九号という私書箱の申請をされた。住所は浦添市屋富組三百五十六という番地。そして御自分の電話が軍電の(九)七六一二三、こういう電話を正式に届け出ている。これが一つ。  ところで、ジャパニーズブランチなるものが、先般お聞きしたら、おわかりにならぬとおっしゃったが、きょうはわかっておられるけれども、第七心理作戦部隊の中の十五分遺隊の中にジャパニーズブランチというものがある。いま外務省の訳によると、日本語班になる。ここの電話が、何と、琉球通信が中央郵便局に届け出た電話の(九)の七六一二三と同じ電話。ジャパニーズブランチの電話は(九)の七六一二三。同じ電話。ここの責任者はアレックス・N・ヨリチと申します。こういう人であります。全く同じところのビル。このビルを調べてみたら、九百十号というビルであります。電話をかければ、琉球通信ですか、とかければ金城さんが出てくる。日本語班ですか、とかければヨリチさんが出てくる。こういうことであります。これ自体がまことに奇怪な話でありますが、しかもジャパニーズブランチを通じて人を募集しているのであります。琉球通信が募集したのじゃない。ジャパニーズブランチ日本語班の名前に基づいて募集している。その資料もここにあります。つまり、第七心理作戦部隊第十五分遣隊日本語班、こういうことで、ここが雇いますということで人を雇った。構成員九人。だから、この九人は第十五心理作戦分遣隊職員名簿に載っているわけであります、十月現在。この構成の九人の方々調べてみると、この名簿によると、金城五郎さん、田仲康清さんから始まりまして、全部一人残らず名簿に載っている。そして、琉球通信が作成しているとあなたはいまおっしゃいましたが、つまり十五分遣隊日本語班職員がニュースをいろいろ分析をするのでありますが、これは情報分析課という課が別にある、日本語班じゃなくて、十五分遣隊の中に。この情報分析課のほうで、日本のニュース、沖繩のニュースあるいは世界各国のニュースを分析をいたしまして、これを分析をした結果がいまここにございます、日本に関係のある、沖繩関係のあるものはジャパニーズブランチに回す、ここでお隣の情報分析課が調べた中身というものを持ってまいりまして、これに対して反論をする。日本のNHKならNHKのニュースがこうこうであった、どうもベトナム戦争の問題等について少し攻撃が過ぎるというようなことになりますと、少しこれを手直しをする。ここに向こうの米軍がございますけれども、ここにリサーチ・インテリジェンス・ディビジョンというのがございます。この中に実はいま申し上げましたジャパン・オキナワ・デスクというのがもう一つある。つまり、情報分析、インテリジェンス、情報を分析いたしまして、それをここにあるジャパン・オキナワ・デスクがいろいろチェックをする。そうしてこれをレイディオ・プロパガンダ・ディビジョン、日本語班のあるこっちに回す。こっちで、チェックされた、ここはまずい、ここはまずいというのを入れかえて直していって、ベトナム戦争というのは正当なものだという調子に直していってニュースをつくる。これをつくっている中心が、さっき申し上げました日本語班の主任アレックス・N・ヨリチさんと金城五郎さん、ここでつくる。そうしてそれをそこから上の部長さんのところに上げて点検をいただいて、それがニュースBとかニュースFとかいう名がついているわけでありますが、そこで許可になったものを、これは英語に翻訳して持っていくわけでありますが、許可になったものを持ってまいりまして、事もあろうに、金城五郎さんが自分で極東放送解説者として解説をする、こういう仕組みになっておるのですね。これは日本だけじゃありません、沖繩だけじゃありません、各国に及んでいる。ずいぶんたくさんございます。ジャパン、沖繩だけではない、中国も入っておりますし、ベトナムも入っておりますし、朝鮮も入っておりますし、ずいぶんたくさん入っている。キューバまで入っている。こういうことになっているのが第十五分遣隊です。だから私はその意味で、これはサイミントン報告にございますように、明確な灰色の宣伝、グレイ・プロパガンダである。あたりまえのことであります。しかも、先般申し上げましたように、サイミントン議事録の中では、政府機関ではない、政府の補助機関ではない、そういう機関からニュースを放送をしているということを明確にしている。つまり、ここに灰色の宣伝というように書いてある。したがって、明確に極東放送は第七心理作戦部隊が行なう灰色の宣伝機関、こういうことになる。この現実を正しく御認識をいただいた上で、極東放送に対する愛知書簡というものが一体正しいのかどうかという点、ここまで言及をしていただかぬと、現地沖繩県民の皆さんの疑惑は解けない。  だから、作戦的に心理的にいろんなことが沖繩県民の皆さんにこの十年間与えられてきていることは事実なんだ。  このことが実は沖繩タイムス等を通じて世の中に出た時期がございます。出た時期は、一九七一年、本年の三月十九日、「心理作戦部隊と連携」ということでタイムスが取り上げた。取り上げた時期は、民政府がやがて復帰とともになくなる、ランパート氏のいる民政府がなくなる、したがって、そのかわりにUSIAが沖繩に入ってくるということで、とりあえずUSIAの沖繩支部というものをつくった。これはどこにつくったかといいますと、つまり、国頭のVOAの個所にUSIAの沖繩支部をつくった。USIAは、御存じのとおり、アメリカの広報庁でございます。広報庁の役割りは、第七心理作戦部隊、国連軍放送その他を、CIAも入っておりますけれども、調整をする役割りを持っている、これは皆さん御存じのとおりだと思う。ところが、事もあろうに、このサイミントン報告には——三月十九日、ここにこんな大きな沖繩タイムスがございますが、このときに支部ができたことになっているのです。ところが、そうじゃない。実はこのUSIAというものの司令部は、サイミントン報告によりますと、旧来から沖繩にあった。どこにあったかわからない。いいですか。クーパーという議員が、USIAの主要な司令部は沖繩にあると理解していいか。ピンカスという担当の役人は、そのとおりであると答えている。何と、サイミントン報告ははるかいにしえであります。支部ができたというのは、三月十九日の新聞に載ったこのとき、本年です。ところが、サイミントン報告は、アジアにおける司令部は沖繩にあると、これは一年前の一月の段階で明確にしているのです。そうでしょう。そういうからくりがあっては困るというのでタイムスが取り上げて、このときに何といっているかというと、沖繩にはUSIAと密接な関係があるVOA、FBIS、外国放送情報センター、これは読谷村のボロー・ポイントです。FEBC、つまり極東放送です、ファー・イースト・ブロードキャスティング・カンパニーですから。FEBCなどの対外宣伝機関があり、これを第七心理作戦部隊が全面的にバックアップしている、こういうふうに書いてある。  これは総理にお聞きいただきたいのですが、書いたらどういうことが起こったかということ。たいへんな騒ぎが起こった。何が起こったかというと、渡久山寛三さんが沖繩の工業会の理事長さんで、今度は新しい財団法人極東放送責任者理事長、こういうことで申請を出しています。渡久山寛三さんの工業会に激しい攻撃が起こり、沖繩タイムスに抗議が出てくる、第七心理作戦部隊からも出てくる、沖繩経営者連盟からも出てくる、たいへんな騒ぎが起こった、真実を明らかにしたから。だがしかし、これは動かせない真実をすでにマスコミ五社の方が握っていた時期、こういうわけであります。  そうすると、沖繩皆さんは、このことが表に出ましたから、極東放送に対するたいへんな疑惑を今日持っているのですよ。そうすると、本土並みだといって復帰する、VOAもさることながら、極東放送なるこの怪しげなものも、財団法人極東放送の名前に肩がわりをし、衣がえをして置いておかれる、とんでもない話ではないかということになってきている。現実です、これは。だとすると、この問題が、愛知書簡で世の中にない財団法人極東放送というものを頭越しで認めてしまっているという協定関連取りきめ、これをこのままに見過ごすわけにはいかないのですよ。だから、なぜ一体こういうものができたのかということを、ことばは悪かったが、佐藤さん一枚かんでいるのじゃございませんかということまで実は申し上げたのです。そうでしょう。だから、この点を、総理、御理解をいただいて、極東放送というものは沖繩においてかくのごとき状態にあるのだから、これは政府に、愛知書簡を改めるなり、極東放送は抜いていただくなり、しかるべき処理をお考えいただかなければ、単に復帰後こうするからいいという問題じゃない。総理、いかがでございますか。
  55. 福田赳夫

    福田国務大臣 第七心理作戦部隊から極東放送がニュースを受けておる、これはアメリカ政府がはっきりそういうふうに言っておるのです。そこのニュースを受けている場合の受け方の実態、これがいろいろあるのだろう、これはひとり沖繩放送ばかりじゃない、日本のいろんな企業におきましても、独立の子会社というか、そういうようなものが親会社と一体的運営をするというような場合は間々あることですから、いまお話を承りまして、そういう面もあるのかなあというような感じがいたしましたが、また、琉球通信につきましても、第七心理作戦部隊と同じビルにおる、しかもそれが極東放送資料提供いたしておる、こういうことはもうはっきりアメリカ側も申しておるわけでありますから、それには違いはないと思いますけれども、その資料提供の態様につきましても、いろいろあるかもしれません。しかし、はっきり申し上げたいことは、この第七心理作戦部隊から極東放送に対して資料提供する、これは返還後においてはなくなります。それから琉球通信、これは第七心理作戦部隊と一緒におるわけです。一緒におるわけでございまするけれども、これは今度返還ということになりますれば、この一企業米軍と同居させるというわけにはまいりませんから、われわれの提供する米軍の施設から出ていただくという方針を持っております。
  56. 大出俊

    大出委員 これまた、外務大臣、全く事情をお知りにならぬでそういう簡単なことをおっしゃるのだが、出ていただくといったって、あなた、財団法人極東放送なるものは、一昨日明らかなように、申請を出しているのでしょう、免許の申請を。そうでしょう。ここに趣意書から約款から、一括書類全部ございます。計画書もございます。しかも新しい財団法人極東放送にして、すでにパンフレットまでつくっている。パンフレットの中身はこれだけある。これだけ。新しい計画も全部載っている。お読みになったことございますか。
  57. 福田赳夫

    福田国務大臣 ありませんです。
  58. 大出俊

    大出委員 御存じなくて、なくなるなんと言ったって、この間、原子力潜水艦の問題だって、寄せつけませんなんということをあなたは言ったけれども、あなたは寄せつけないと言ったって、寄りついてきちゃうのです、向こうが。そういうわけにいかない。そうでしょう。この中身をお読みになれば、一ぺんであなたは気がつく、ここまで論議をすれば。ここまで論議をしないから、あなた方お調べにならないから気がつかない、それだけのことを。一体この中で申請している極東放送なるものは、敷地その他の関係はどうなっておりますか。
  59. 福田赳夫

    福田国務大臣 郵政省のほうからお答え申し上げます。
  60. 藤木栄

    ○藤木政府委員 お答え申し上げます。  先生のお持ちのパンフレットは私どもも入手しております。ただ、それはあくまでも財団法人のほうではなくて、現在の極東放送のパンフレットでございます。  それから、財団法人のほうの申請書は、現在琉球政府のほうで審査中でございまして、私どもはその詳しいことは現在よくわかっておりませんけれども、できれば指導したいということで、連絡はとっておりますけれども、詳しいその内容の資料はいま持っておりません。
  61. 大出俊

    大出委員 あなたは簡単に前のだと言うけれども、この中に社長——ロバート・ボーマン極東放送の本社の社長さん、この方が、社長あいさつをもうすでに——あなたお読みになったですか。極東放送はかくかくしかじか変えるのだ、資金も何とかできれば持ってくれ、こう言っているのだ、この中で。こういうふうに変えるのだと、ボーマン社長のこれ、あとでお読みになってください。あとでいいから。つまり、ここでいっているのは——ここに資料全部ございます。申請書から何からここに全部あります。寄付行為から、全部ございますが、この中で問題は、ここに抜き書きをいたしておりますけれども、実はこの財団法人極東放送で申請している計画の中に、依然として軍用地に計画がある。お答えください。
  62. 吉野文六

    吉野政府委員 お答えいたします。  極東放送は、返還後は純然たる一民間企業として活動することになるわけでございますから、アメリカの基地内における活動は一切なくなるわけでございます。したがって、現在極東放送が行なっておる地域は、これはアメリカの基地から切り離されて、純然たる民間の土地ということになるわけでございます。  なお、奥間に一つ放送局がございますが、この放送局も廃止となります。
  63. 大出俊

    大出委員 純然たる民間の土地になるとおっしゃるが、どこでございますか。
  64. 吉野文六

    吉野政府委員 これはいま現在の五十六の牧港補給地区の中の一部にございますが、これはさくをもって区切らせまして、そしてその後は極東放送と地主との関係になるわけでございます。
  65. 大出俊

    大出委員 あなた、全然だれも行ってみないでそんなことを言って……。これは、さっきあった三月段階にうるさくなったものだから、さくをこうしたのですよ。外へ出した形をとった。そうしたら、そのあとでいろいろ軍施設に関係するデモが起こりましてね、この地域の方々の。あわててコンテナなんかを積み上げた。それで向こう側に引っぱったの取っちゃって、またこっち側に網をつくった。いま中へ入っちゃっていますよ。あなた方は全くもう——現地でもう少ししっかり調べたらどうですか。いま施設の中にちゃんと入っている、今度また。こういうかっこうになっておって、しかも申請書の中に、いまある建物の土地もそうだが、アンテナというのはどこにありますか。放送所はどこにありますか。
  66. 吉野文六

    吉野政府委員 先ほど申し上げましたとおり、これは放送施設の一部は牧港補給地区にありますが、これは返還後は境界を限りまして、基地からはずされます。このことは確言いたします。  それから奥間の放送局は、御存じのとおり、廃止になりまして、これも民間に返されます。
  67. 大出俊

    大出委員 いまここに申請されている申請書のアンテナの位置、送信所の位置は、返還協定A表五十六牧港補給地区の中に入っているじゃないですか、明確に。そんな申請認められますか、あなた。軍の用地で、軍の機関でもないのに。何を言っているのですか、あなた。
  68. 吉野文六

    吉野政府委員 これは先ほど申しましたように、返還時には境界線が変わりまして、わがほうが提供すべき地域と、それから一般の民間が使う地域とは区別されるわけでございますから、したがってその地域は絶対基地にはなりません。これはわれわれ自身が現地において確認してきた結果でございます。
  69. 大出俊

    大出委員 隣はA表の五十七、第七心理作戦部隊倉庫、牧港海軍倉庫、こう並んでいる。そこが牧港補給地区、そのまん中にあるものを、境界を張るも張らぬもないじゃないですか。一緒ですよ全部、その米軍施設と。そこへ張っちまったら、米軍施設までなくなってしまうじゃないですか。そんなことができますか、あなた。アンテナ、送信所一緒じゃないですか、米軍と。そんなものを一緒にどけられますか。考えてごらんなさい。何を言っているんだ。
  70. 吉野文六

    吉野政府委員 たびたび申し上げましたように、現在は基地の中にございますが、この分は全部切り離されまして区別されることになっておりますから、どうぞ御安心なすってください。
  71. 大出俊

    大出委員 それじゃ、そのいまお話に出た切り離すというのは、どことどういうふうに話し合ってきめたのですか。
  72. 吉野文六

    吉野政府委員 これはもちろん、われわれが交渉中にそういうことになったわけでございます。
  73. 大出俊

    大出委員 交渉中にそういうことになった。なったのなら、何で一体、財団法人極東放送の申請書の計画の中にこのアンテナから何からみんな現状のままにしてあるのですか。これは、外務大臣、これで許可ができるはずはないじゃないですか。何で一体特例法まであなた方はお考えになるのですか。現実にできないじゃないですか。現地へ行ってみたこともない人がそんなことを言ったって。大臣、いかがですか。許可のしようがないじゃないですか。何で一体愛知書簡で国内法改正までなさろうとするのですか。無理がある。
  74. 福田赳夫

    福田国務大臣 私もこの関係よく聞いてみたのです。牧港の基地の中にただいまの施設がある、そういうことは私も承知しているのですが、これを移転をする、これは容易なことじゃない、そういうようなことでありますので、とにかく厳重なさくをいたしまして区分をいたしまして、これを切り離す、こういうことになり、軍用地からははずれる、こういうことになるわけです。  また、その新しい財団法人の認可申請につきましては、郵政省のほうからお答えを申し上げます。
  75. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 お答えいたします。  ただいま外務大臣が御答弁申しましたように、返還後厳重なさくをいたしまして境界をはっきりいたしまして、隣地を与えるつもりでございます。
  76. 大出俊

    大出委員 基地のまん中に軍用アンテナその他あるところを、厳重にさくをしちゃったら、これはどうなるんですか。この場所じゃできないのですよ。極東放送の方だって知っているんだ、そんなことは。総理、実は、これは、この間私取り上げましたロスからの電報の中に、一番最後に書いてあるんです。ブロンソンという副社長さんは何と言っているかといいますと、これはニクソンさんのおじさんのマッシュバーンという方は、食料雑貨等の大きなお店をやっておられるというふうに述べまして、最後に、同放送局、これは那覇の二ステーション、奥間の一ステーションは、七二年の返還時には廃止せざるを得ないという予定をいたしております、こう言っている。現地でもだいぶやかましくなっているものですから。那覇は、いまのアンテナや送信所は軍と切り離せないですよ。それをほかに建てるとすれば、たいへんな金がかかるのです。そうでなくても、さっき私が申し上げた極東放送のパンフレット、社長がここで言っているのです。金はいま全部米資本ですよ。今回渡久山寛三さん以下を並べて申請は出したものの、資金が集まらないのですね。だから、日本側が持つ——渡久山さん以下全部日本人の役員にするのだけれども、持つ資金というのは六%しかないのです。九四%は依然としていまの形のままの資本なんですよ、これは。そこへもってきて、アンテナから送信所から、牧港の軍用地のまん中なんですから、区切りようもなければ、網の張りようもないのです。ほかへつくるよりしようがない、やるとすれば。できない。できないから、そういう話が本社のてっぺんでいま出ておるわけです。いいかげんなことばかり言ってもだめですよ、あなた方。だから、私が前から言っているように、そういう、せっかく極東放送のてっぺんでそういう話になって——ここに電文ございますけれども、ここまできているものを——CSGの問題、あれも私よく調べておりますけれども、松本君が取り上げたら、何か六分か七分か、七分三十秒ですか知らぬけれども、前にやめることになったと言ってきたというのだけれども、こういう怪しげなものは、愛知書簡で麗々しく載せておかないで、きちっとやはり処理をしていただかぬと、現地の疑惑は解けない。ここらは、総理、あなたは善処していただかぬと、これはやはり現地の感情というものをさかなでしてはいけませんよ。せっかくいま私、副社長さんの言っていることを、電報を訳したんですけれども、書いてあるからそのとおり読んだのですけれども、そこまできているものを——那覇の二ステーションといえば、日本語と英語しかないんだ。奥間というのは中国語なんだ。これはなくなることになっている。ここまできているものを、あなた方は、この場が過ぎていけばいいという回答の出し方はなさらぬで、やはりそこまでものごとをお考えいただかぬと、現地の方々はまた逆にとる。そこのところは総理から私は御答弁賜わりたいのですが、いかがでございますか。
  77. 福田赳夫

    福田国務大臣 米系企業というのが、施政権下の沖繩ですから、存在する、それをどういうふうに処理するか、こういう問題の一環でございますが、この極東放送につきましては、いま英語と日本語の放送をやっているのです。特に、日本語の放送につきましては、私の知る限りにおきましては、私が報告を受けておる限りにおいては、たいへん評判がいい、こういうふうにいわれておるのです。そこで、英語放送をそう残すのはいかがか、こういうふうに思いまして、これは五年でやめよう、五年間の期限を区切ろう、しかし、日本語放送につきましてはこれを存続させよう、こういう判断を最後にいたしたわけでありまして、それに伴う立法措置をまた協定外においてお願いしましょう、こういうふうにいたしておるのです。とにかく、私の知る限りでは、この極東放送という実態、これは現地ではかなり評価されておる、こういうふうに承知しておるのであります。
  78. 大出俊

    大出委員 マスコミ五社どこを取り上げましても、あなたが考えておるように評価なんか全然していない。これはここで時間がないところで言ってもしようがありませんけれどもね。  そこで問題は、もし琉球政府が、かかる疑わしい内容があり、軍用地にアンテナがあり送信所がある、こういう形で、許可のしようがない、その場合に、結果的にどうするおつもりですか。琉球政府が許可されなくても、極東放送というものは何らかの形であなた方お続けになる。外務省はこの間、だいぶ持って回った、一回り回っちまうような法律の説明をされましたが、そこはどうお考えでございますか。
  79. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま基地の中に放送施設もあるし送信所も、いろいろ塔も建っておるという話ですが、今度は基地でなくなるのです。基地外になってしまうのです。それはひとつまず御了解願いたいと思います。  それから、申請が出ておる財団法人極東放送に対して免許をするかどうか。私は、免許してもらいたい、こういうふうに思いますが、はたして認可するかどうか、これは郵政省のほうでお答え申し上げます。
  80. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 お答えいたします。  ただいま琉球政府に対しまして、日本語の財団法人沖繩極東放送の申請が出ておりますことは、御指摘のとおりでございますが、これに対しましては、ただいま外務大臣答弁いたしましたように、琉球政府で、財団法人に対しましては許可、放送に対しましては免許ということになるわけでございますが、それをやってもらいたいというように考えておりますけれども、もしそういうような処分が行なわれないということになりましたならば、日本の政府に返還後は入ってくるわけでございますから、日本政府で引き受けまして新しく審査するということになるわけでございまして、そのことについては、昨日も答弁いたしましたように、一般の電波法のルールに従って、競願というその取り扱いで措置いたしたい、かように考えておるわけでございます。
  81. 大出俊

    大出委員 この郵政省がお出しになっている、第六十七回国会、沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案、郵政省関係、この中に、復帰の際日本語による放送を行なっている場合には、日本語による放送をする無線局について復帰の日に郵政大臣の免許を受けたものとみなすこと、こうなっておるのです。そうすると、復帰の際日本語による放送を行なっていなかったらどうなるのですか。
  82. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 それにつきましては、ただいまお答えいたしましたように、行なっておるという事実がありますれば、別の法律で日本のほうで引き受けてそのまま放送ができることになっておりますけれども、許可なり認可なりがまだ出ていないということであれば、行なっていないということになるわけでございますから、そうなりました場合は、会社のままで一カ年間は期限を認めておりますから、その間で新しく日本の政府で審査をするということになるわけでございます。
  83. 大出俊

    大出委員 そうはなってないじゃないですか。復帰の際日本語による放送を行なっている場合には——私はあなた方の説明を受けたんだ、これは。大臣、あなた方の説明を受けた。そうしたら、財団法人極東放送はまだ日本語放送をいたしておりません。復帰の日に財団法人極東放送日本語放送をしていなければ該当いたしませんと答えておられる。許可できないじゃないですか。
  84. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 これは、ただいまお答えしましたように、免許ということはできないわけでございますから、そのままなんでございます。そこで、新規に日本の政府に対しまして申請があるということになるわけでございまして、そういうふうにさっきお答えいたしたつもりでございます。
  85. 大出俊

    大出委員 そうでなければ、この法律法律違反になってしまう。復帰の際日本語放送をやっていない。財団法人極東放送は許可になっておりませんから。そうなると、現在も放送はしていない、復帰のときも日本語放送をしていない、こうなると、この例外規定は適用できない。できないから、全く白紙で新たに国内法に基づきまして免許申請をする、これは自由であります。当然競願も自由であります、こういう措置になる。よろしゅうございますな。はっきりしてください。
  86. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 そのとおりでございます。
  87. 大出俊

    大出委員 私は、やはりこういう灰色の作戦だ、宣伝だといわれているようなものを現地でたくさんの方々が知っている今日の事情から見て、こういうものを外資企業の中に入れて愛知書簡で処理をするというのはおやめいただきたいと思います。やはりそれならそれで、新たに国内法を適用されてからやる方法は幾らでもある。そうでないとこれは疑惑は消えていかない、こういうふうに思います。この点だけ申し添えておきます。  軍用地の問題でございますが、最初に、おとといアメリカ局長お答えになった中で訂正を願いたい件があるのでありますが、屋嘉の訓練場につきまして妙なことをお答えになっているのですが、もう一ぺん答えてくれませんか。私が、六年間使ってない、したがって許可もない、書類も、三年保存だから、廃棄処分で、なくなった、こう言ったら、第一と第二がありまして、先生が言うのはこの第二のほうだと言う。これはたいへんなことをあなたはおっしゃるのだが、もう一ぺん答えてください。議事録に残っておりますから。——アメリカ局長答弁だよ。あなた答えなさい。あなた、自分で答えたんじゃないですか。はっきりしてください。
  88. 吉野文六

    吉野政府委員 お答えいたします。  この前お答えいたしましたのは、屋嘉にはナンバー・ワンとナンバー・ツーの訓練場がある、そしてそのうちのナンバー・ワンのほうはいまはもう使っておらぬ。そしてナンバー・ツーのほうは、ここに書いてある一六の基地でございます。そしてこれにつきましては、これは二4(b)になっておりますが、すでに関係市町村との間に引き続き使用するということに了解ができております。
  89. 大出俊

    大出委員 屋嘉の訓練場につきまして、一六、ここには第一とも第二とも書いてないですね。協定Aリスト、一六、屋嘉訓練場、地位協定第二条四項の(b)の使用。第二というのはどこに載っていますか。屋嘉第二。
  90. 吉野文六

    吉野政府委員 屋嘉第一訓練場というものはすでに廃止されております。でございますから、基地の対象にはならないわけでございます。
  91. 大出俊

    大出委員 つまり、屋嘉訓練場というのは、私が現地を調べた限りは、一つも二つもない、屋嘉しかない。屋嘉訓練場というのは、六年前にベトナム戦争が始まったときに、一切もう許可はしないということになって、ここにちゃんと人の名をあげてある。金武村役場、安富信栄助役。私がどこを調べても米軍地図を調べても第一、第二になってない。屋嘉は一つだけ。第一、第二になっているのは瀬嵩。瀬嵩は確かに第一、第二になっている。第二は使っていない。だが、屋嘉練訓場というのはあくまでも一つ。地図上も一つ、第一も第二もない。だから安富信栄助役は、屋嘉訓練場は、ちょうど六年前にベトナム戦争が始まって実弾演習の話が出たときに、一切これはお断わりをした、以来許可は今日までしていない、屋嘉にはしたがって訓練場は今日一切ございません、というのが安富さんの答弁です。だがしかし、この地域ははげ山だけなんだから、自衛隊の話が出たら、あらためて自衛隊さんから話があるのならば、お貸ししてもいいとは思ってはいるけれども、今日訓練場はないのです、六年間ございません、こう言っている。この事実を、あなたは何で第一だ第二だなんていうのですか。第一も第二も屋嘉にはありはせぬですよ。どこにもそんなものはない。
  92. 島田豊

    島田(豊)政府委員 米側の一時使用訓練場につきましては、当初二十九施設がございまして、その後、御指摘の屋嘉第一訓練場は、これは使用を停止いたしておりますので、最近までありましたのが九施設でございました。そのうちの奥と瀬嵩第二が今回Cリストに載っておりますので、提供するものが七施設、こういうことでございまして、屋嘉第一訓練場は、われわれの資料によりますと第十番目でございまして、これはすでに米側が使用しておらない、こういうことでございます。
  93. 大出俊

    大出委員 そうすると、この一六の屋嘉訓練場というのは何ですか。二八の屋嘉訓練場というのは何ですか。協定Aリストの一六、ここにある屋嘉訓練場というのは、金武の、これは何ですか、あなたのいまの説明からすると。
  94. 島田豊

    島田(豊)政府委員 先ほど来アメリカ局長から説明しておりますように、屋嘉第一訓練場と第二訓練場がございまして、第一訓練場はすでにもう使用しておらない。
  95. 大出俊

    大出委員 それはないのだ。
  96. 島田豊

    島田(豊)政府委員 はい、ありません。
  97. 大出俊

    大出委員 そうなれば、第一も第二もないものを、何ですか、あなた。そこのところだけを明確にしておきませんと、また地元から問題が起こる。
  98. 島田豊

    島田(豊)政府委員 屋嘉の、従来第二訓練場として使用しておりましたのはございますので、これはAリストに載っておるわけでございます。
  99. 大出俊

    大出委員 屋嘉の第一というのはもうない。だから屋嘉には、いまここに載っておる屋嘉訓練場しかない。  もう一つ承りたいのですが、国頭の安波訓練場、ここの面積はどれだけございますか。
  100. 島田豊

    島田(豊)政府委員 安波訓練場の面積は八百三万六千八百平方メールでございます。
  101. 大出俊

    大出委員 八百二万六千八百平方メートル、これは一昨日の質問にからみますから申し上げるのでありますが、いまの点が間違いない。そうすると、私の手元にある国頭村の安波訓練場——ここに許可証がございます。この許可証の面で、エーカーで出ていると思いますけれども、一体幾らになっておりますか。許可のほうは幾らになっておりますか。いまは許可しておりませんが……。
  102. 島田豊

    島田(豊)政府委員 ちょっと私の手元にエーカーの面積数ございませんので、調べまして御報告いたします。
  103. 大出俊

    大出委員 国頭の許可証によりますと、村長が許可して——旧来ですよ。六月三十日で切れておりますが、旧来許可してまいりましたのは千九百八エーカー。いまあなたがお答えになりましたのは八百三万六千八百平米。こうお答えになりましたね。間違いないですな。そういたしますと、この間にたいへん差があるのでありますが……。——この千九百八エーカーというのをはっきりしてください、先に。
  104. 島田豊

    島田(豊)政府委員 許可証が手元にございませんが、この八百三万六千八百平米、この中には民・公有地が七百七十二万一千二百平方メートル、国有地が三十一万五千六百平方メートルございますので、もしエーカーとこの合計数との間に差があるとしますれば、民・公有地の部分ではないかというふうに考えられます。
  105. 大出俊

    大出委員 千九百八エーカーというのを直してみてくださいよ。千九百八エーカーというのは何平米になりますか。
  106. 島田豊

    島田(豊)政府委員 面積を平米で申しますと約七百六、七十万平方メートル、こういうことになると思います。——御指摘のエーカーを平方メートルに換算いたしますと、約七百七十万平米ぐらいでございます。
  107. 大出俊

    大出委員 千九百八エーカーと、この許可証に書いてある。島田長官、千九百八エーカーと、この国頭の安波訓練場の許可証には書いてある。これ、非常に大きな問題でございまして、一エーカーというのは四千四十六・八六平米でございます。まるっきりこれじゃ算術の時間みたい。いいですか、一エーカーは四千四十六・八六平米とここに書いてございます。そうすると、千九百八エーカーというのは幾らになりますか。私が先生であなたが生徒じゃぐあいが悪いけれども——結論を言いますと、七百七十二万一千四百八・八八平米、こうなる。そうすると、あなたのおっしゃる八百三万——先ほどの平米に直して差し引きをいたしますと、三十一万五千三百九十一・一二平米差が出てくる。この差は、一体あなたのほうは何だとお考えになりますか。
  108. 島田豊

    島田(豊)政府委員 先ほど申しましたように、民・公有地が千九百エーカーに相当いたしまして、いまの差額の約三十一万五千六百平米はこれは国有地、こういうふうに考えられます。
  109. 大出俊

    大出委員 またそういうことを言う。そうではない。部落、つまり家のあるところ、そこに個人の所有地がある。それを除いて許可をしているのですよ、安波というのは。この許可証の中身というのは、部落、家があって人が住んでいるところを抜いている。抜いてそれ以外を初めから許可している。初めからこれはそうなんです。だから千九百八エーカーになっている。あなたのほうは、それも何もみんなひっくるめて八百三万六千八百平米だと言う。それでこのA表には、あなた、現在の境界線においてと書いてあるんですよ。現在の境界線ならば千九百八エーカーになるものを、何であなたのほうは三十一万五千三百九十一平米よけいに八百三万六千八百平米にしちゃったんですか。現在の境界線に入ってないんだ、これ。はっきりしてください。それまで質問しない。たいへんなことだよ、現地の人にしてみれば。
  110. 島田豊

    島田(豊)政府委員 先ほど八百三万六千八百平米と申しましたのは、先ほど申しましたように、国有地が三十一万五千六百平米ございますし、民・公有地が七百七十二万一千二百平方メートルでございますので、この三十一万五千六百平米という差がありますのは、国有地ではないかと思われます。  そこで、今後この安波訓練場を米側に提供いたします場合におきましては、これから個々の日米合同委員会における協定締結が必要とされますので、具体的にその面積、範囲をどうするか、あるいは使用条件をどうするかということは、これから日米間で具体的に協議をしていく、こういうことでございます。   〔発言する者あり〕
  111. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御静粛に願います。
  112. 大出俊

    大出委員 説明をいたします。これは明確にしていただきませんと、質問できない。私は琉球政府に電話連絡をいたしまして、この相違について琉政の土地の担当者に現地に行っていただきました。現地の助役さんの説明によりますと、部落、つまり、うちのあるところ、中心です、ちょうどまん中、これを抜いて許可をいたしております、旧来から。それが三十一万五千——あなたは六百と言いましたが、そうじゃない。三十一万五千三百九十一・一二平米、これはまん中の部落その他を除いて許可をしている。この安波訓練場で米軍相手に大騒ぎが起こって、補償要求にまで発展してすわり込んだりしたのは、許可をしてない部落に入ってきてパンパン空砲を撃った、三日間女子供は外へ出られなかった、こういう現実が起こって大きな騒ぎになった。明確なんです、これは。それをあなた方は、部落のあるところを、許可をしてないところ、そこまで入れて八百三、こういう数字をお出しになるから——現在の境界線と書いてある、これには。現在の境界線は、部落を抜いてある。それまで入れて八百三万、明確な間違いじゃないですか、あなたのほうの。これで現場が納得するはずはないでしょう。これはだめです。お調べください。
  113. 島田豊

    島田(豊)政府委員 その問題につきましては、これから具体的に日米間で合同委員会の手続をいたします場合のいろいろな調査をやり、また米側の意向も聞き、また地元の御意向も伺うのでございますので、現在の境界線の範囲内ということでありまして、もしそういうことがございましたならば、そういう線で今後協定締結していく、こういうことになるわけでございます。   〔発言する者あり〕
  114. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御静粛に願います。——大出君に発言を許可しました。
  115. 大出俊

    大出委員 こうしてください。地元の部落の方々は腹を立てておるんだから。旧来許可もしてないところまで入れて八百三万だなんていうから地元は文句を言っておるわけだから……。これは個々の所有権にかかわるんだから、御調査ください、明確に。私は琉政の民事部でちゃんと調べて回答をもらってあるわけだから。この八百三じゃ困りますと、現地の琉政だって言っておる。Aリストにあげている地域が、個人有地のところまで、許可もしてないところまで——あなたの言い分を間違って認めたにしたって、済むことじゃない。明確にお調べください。出してください、資料を。
  116. 島田豊

    島田(豊)政府委員 先ほど私が申し上げました面積は、米軍資料をもとにして現状がそうなっておるということを申し上げたわけでございます。  そこで、今後提供いたします場合には、御指摘のように、A表のところで、現在の境界線内で、沖繩復帰の日から使用する施設及び区域として、合同委員会において合意する用意のある設備及び用地である、そうして具体的には、合同委員会における協定は、この協定の効力発生の日に締結されるということでございますので、これは一つの現在予定される予定のものとしてこの八十八施設が掲載されておりますが、この一つ一つの基地につきまして、その範囲、面積等をきめ、また使用条件等をきめるというのは、個々の合同委員会の合意によりまして締結をするわけでございますので、その辺は実態に即して今後十分米側と協議をしていく、こういう問題になるわけでございます。   〔発言する者あり〕
  117. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御静粛に願います。
  118. 大出俊

    大出委員 はっきりしてくださいよ、いまの点。生きている人間が住んでいるのだから、あぶないからというので許可地域から抜いてあるのだから。それまで入れてしまってA表に載っけられて、黙っているばかはないでしょう。あなたはそうじゃないと言うが、はっきりしてください。わからないなら調べてください。
  119. 島田豊

    島田(豊)政府委員 先ほど御指摘のように、現在の境界線内だということになっておるわけでございますので、具体的に個々の基地につきまして数量、面積なり使用条件を今後米側と協議いたします場合に、この問題が当然尊重せられる、こういうことでございます。
  120. 大出俊

    大出委員 現場の国頭村の安波の部落の皆さん、この方々が、自分たちの生命に危険があるというので、部落を除いて許可してきたわけですよ。いまこの差は何だと私が詰めたら——数学の先生じゃあるまいし——一エーカー幾らまであなた方にお教えしたんです。計算してもらったら明確に差が出るでしょう。この差は何だ。許可してないんだ。許可地域だからとおっしゃるが、それならば、許可していないところを何で入れたんだ。しかもいまだにあなた方は何でこの差が出るかはっきりしない。私は、つい最近において、琉政の土地係の方に現場に行って調べてもらってきている。この差は何で出たんだ。地元の部落の方々は、抜いたところまで入れられたといって、かんかんになっている。だから、いまだに許可していないでしょう。だから私はこの席で、議事録に残るのだから、部落なら部落なんだ、それを間違って入れたのなら入れたんだと、調べた結果ちゃんと答えを出してくれぬと、現地の方々に対して、一体何を審議したことになるんですか。出していただかぬ限りだめですよ。   〔発言する者あり〕
  121. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御静粛に願います。
  122. 島田豊

    島田(豊)政府委員 各七つの施設につきましての市町村長の許可証につきまして、安波訓練場の部分をいま持っておりませんので、いまさっそくそれを調査いたしまして、後ほど御報告いたします。   〔発言する者あり〕
  123. 櫻内義雄

    櫻内委員長 他の御質問をお続け願いたいと思います。
  124. 大出俊

    大出委員 それでは、別に時間をかけることが本旨ではございませんで、時間をかけることが本旨でこういうことを言っているのではなくて、現地の皆さんの心配は解決をはからなければいけないでしょう、国会が開かれているのですから。私のほうは、私自身が六回も現地を歩いて知っているわけでして、それでも不確かだから、琉球政府に参りまして土地課の皆さんと相談をして、わざわざ現地に行ってもらったんですよ。三日の日が休みでございましたが、四日の日に現地に行ってもらったんです。土地係長さんが現地に行って調べてきた。その結果、現地の言い分は——村長さんがいなくて、助役さんに会っておられるのです。助役さんの話によりますと、部落というものを除いて旧来許可をしてきているのだ、だから前回その部落に踏み込まれたから大きな騒ぎになったのだ、こういう説明なんですね。だから、それが八百三万と実際の千九百八エーカーの差なのだというふうに実際にはっきり言っておられる。ここにもございますが、この国頭の助役さんは饒波正一郎さんという方ですね。  だから、私がここでもう一つ外務大臣に承りたいのは、A表というのは、これは中身は動くのですか。あなたは、動かない、A、B、Cともに動かさないという御答弁を何回もされました。ここにも私は議事録を持っておりますが、その上であなたは何と言っているかというと、聞き捨てならぬことをおっしゃっておる。「A、B、Cの区分をしたわけです。それを今度は、たとえばAにつきまして米軍提供するその手続は、これは安保条約またそれに基づく地位協定、そういう諸取りきめに従って一日の間に一挙にやっちゃう」、あなたはここで何回も言っている。「一日の間に一挙にやっちゃう」「ばばっとやっちゃう」——そんなに、あなた、こんなことなんて、ばばっとやれますか。そうすると、A表というものは動かさざるを得ぬでしょう。あなたは動かないと言っている。一日でぱっとやっちゃう——ここに「一挙にやっちゃう」、ちゃっとやっちゃうと書いてある。そんなにちゃっとやれはしませんよ、あなた。これどうなんです。
  125. 福田赳夫

    福田国務大臣 A表は、米軍にこれを提供します。その提供する個所がA表としてきめられておる。その個所個所につきましては、境界線がありまして大体わかっておるのです。その境界線の中において——それを越えることはないのですが、その境界線の中において日米合同委員会で決定した地域を提供する。こういうことになっているのです。  それから第二の御質問ですが、一日で一挙にきめる——手続はもう一日できめなければならぬ。しかし、その前に、事前に事実上の準備作業は十分に進めなければならぬ、それには時間的の余裕を十分とらなければならぬ、これはもちろんでございます。
  126. 大出俊

    大出委員 つまり、現在の境界線においてというのだけれども、境界線がわからないのでしょう、いまの話は。いまは境界線のやりとりをしているのですよ。境界線がわからぬものを、審議しようがないじゃないですか。だから私は、部落がどうなっているのかという——旧来許可してきている、それをもとにしてあなた方は統一見解までいっているのでしょう。だから、統一見解をいただく前に、こういう具体的な問題はどうなんだ、はっきりしておいていただかなければ、部落まで強制収用で持っていかれちゃったら、たまったものじゃないでしょう。今まで歴史的に許可もしていないものを。この訓練場は強制収用がくっついているのですよ。だから、部落まで境界に入れられてしまったら、強制収用で一日にちゃっときめられてちゃっと持っていかれちゃった日には、五年間部落までさっさっとなくなってしまう——一挙にやってしまうとあなたは言っているのだから、一挙になくなってしまう。一挙にやられたらたいへんなんですよ。だから審議できぬと言っている。はっきりしてください。
  127. 福田赳夫

    福田国務大臣 施設提供の手続は、これは返還日の前の日までは米軍の施設でございますから、これはその翌日日本に返還される。この手続はほんとに瞬間的に行なわなければならぬ、こういうことになっているのです。そこで、しかし、事前には十分調査をしておかなければならぬことはもちろんでございまして、これは日米合同委員会においてその瞬間的作業ができるように十分作業をしておくとこういう意味を申し上げておるわけであります。
  128. 島田豊

    島田(豊)政府委員 御指摘の安波訓練場につきましては、北部の中心にございます部落は、これは除かれてございます。
  129. 大出俊

    大出委員 だから、除かれているというのが何で一体八百三万と入っているんですか。北部の中心的部落は除かれているといまおっしゃったですね。先ほどと御答弁が違う。さっきは国有地だと言った。そういういいかげんで、これ審議しろといったって困りますよ、私だって。これだけ私が粘って申し上げなければ——中心の部落は除かれていました——まあいいです。あなたお答えになったからいい。  大臣、先ほどは国有地とおっしゃっておった。今度は、中心的部落は除かれています、私の指摘のとおりです。そうなると、もう少し正確にやっていただけませんですか。ここまできて、大体Aリストにあがっているものを、複雑ですから検討さしてくれというのもおかしいんだ、ほんとうを言うと。Aリストにあがっているものを、複雑ですから検討さしてくれ、むずかしいから検討さしてくれ。Aリストというものは判こをついちゃったんでしょう、日本とアメリカで。それが複雑だからいまから検討して見解を出す、そんなばかなものじゃないでしょう。そんならやり直してくれと私言いたい。そうでしょう。いまの件だって、地元の身になってごらんなさい、あなた。長年あぶないからといって部落だけは認めないで、まわりを許可してきている。それを今度は一括八百三万平米と入れちゃった。地元の人はびっくりしちゃう、これは。いままで許可もしていないのに、それを強制手続が今度はついているんでしょう。あなたのように一挙にさっとやっちゃうんでしょう。部落のものはみんなさっといっちゃうんですよ。そんなことを捨てておけますか。こんなばかばかしい話を、あなた、議論にならぬじゃないですか。総理、お聞きになってどうですか、こんなばかなこと。
  130. 福田赳夫

    福田国務大臣 Aリストの個々の土地につきましては、それぞれ境界線があるわけです。その境界線の中において、日米合同委員会で、返還さるべきものと、また引き続き基地に提供するものと、また基地にならないものと、これをきめていく、こういうことで、瞬間的に手続はきめるんですけれども、前広に準備はしておく、こういうことであります。いま施設庁長官からのお答えで、まあちょっと手間どっておったと、こういうことでございますが、手間どって申しわけございませんけれども、とにかく十分慎重な準備をいたしまして、返還日、その日に手続を一挙に進める、こういうふうに御了承願います。
  131. 大出俊

    大出委員 これはたくさんございまして、いまの一つだけつかまえてみても、国有地であるとおっしゃったり、いや、そういう差はないとおっしゃったり、ここでまたいまになってみると、許可証もお持ちにならぬでおって、これは中心の部落は除かれていると、今後はこうなってきた。これは一々議事録に残るんですからね。そうでしょう。地元の皆さんの立場がおのおのあるんですから、自分の所有地なんですから、そうでしょう、自分の家があるんですから、だから、そうなってくると、これはそう簡単に言われたって、前広でといったって、前広で八百三万に広げたんじゃ入っちゃうんだから、ここで問題提起しなけりゃ入っちゃう、そのままなら。そうでしょう。(「言いがかりつけるな」と呼ぶ者あり)言いがかりじゃないじゃないですか。自分の家のことを考えてごらんなさい。あなた、何が言いがかりだ、君、冗談じゃない、そういうことじゃ困るんです。これはどうしてくれるんですか、一々食い違うのは。
  132. 福田赳夫

    福田国務大臣 あくまでもこの現在の境界線の中でちゃんとその区画をはっきりさせまして、それをその準備は前広にいたしまして、返還の日にはきちんと手続が一日で済むようにいたします。
  133. 島田豊

    島田(豊)政府委員 面積の問題でございますが、先ほど申しましたように、民・公有地は七百七十二万一千二百平米。そこで、この民有地の面積の中には、先ほど申しましたように、部落の面積は入っておりません。そこで、総体として八面三万六千八百平米とのこの違いは国有地である、こういうことでございます。
  134. 大出俊

    大出委員 基本的に、この許可制度というものについてまだ統一見解いただいてないですけれども、これからいただきますがね。この間から皆さんが何べんもお答えになっている筋からすると、さっき例にあげましたこの国頭村の安波訓練場、ここに書いてある千九百八エーカー、これ以上に出てはいけないんですよ、実は。いいですか、これ以上に出ているでしょう。あなた方は八百三万とお話しになったでしょう。もう一ぺん言いますが、八百三万六千八百平米とあなたはおっしゃった、そうでしょう。この許可証にあるのは七百七十二万一千四百八・八八平米、これしか初めから許可をしてないのですよ。歴史的に一番最初から。そうでしょう。これ以上に許可してはいけないのですよ。してないんだから、これ以上のものを協定Aリストに載せることはできないのですよ、いいですか。これは大臣、いいですか、よくお聞きください、もう一ぺん言いますから。——待ってください、あわてなくてもいいから、十二月二十四日まであるんだから。——もう一ぺん言いますが、七百七十二万一千四百八・八八平米、千九百八エーカーですから、一エーカーが四千四十六・八六平米ですから、おかけいただけば、七百七十二万一千四百八・八八平米、これが許可されている面積なんです、いいですか。だから、皆さんの論理からすると、許可していたんだからということで、そこをAリストに載せて二4(b)というのでしょう。八百三万というのは許可してない地域を含めてAリストに載せたんでしょう。間違いないでしょう、いいですか。ちょっと待ちなさいよ、まだしゃべっているんだから。あなたはわかっていても、大臣がわかっていなかったら困る。許可地域というのは、あくまでも七百七十二万一千四百八・八八平米、エーカーで千九百八エーカー、これしか許可してない。それを事もあろうに、Aリストに、七百七十二万を八百三万なりというふうにうたって、そういう計算で判こをついちゃったということは、許可している地域よりも三十一万五千三百九十一・一二平米よけい広げて日米間で判こついたことになる、そうでしょう。許されないですよ、そのことは。大臣いかがですか、わかりますでしょう。
  135. 福田赳夫

    福田国務大臣 御指摘のように、三十一万平米ですかエーカーでしたか、それを控除した額をもって境界線と考えます。
  136. 大出俊

    大出委員 私の質問に……。   〔発言する者あり〕
  137. 櫻内義雄

    櫻内委員長 大事なことですから、島田施設庁長官にはっきりさせます。——発言を許しました。
  138. 島田豊

    島田(豊)政府委員 ちょっと、認識に不正確なところがあってはいけませんので、私が申し上げますが、要するに、市町村長が許可をいたしておりますのは市町村有地及び民有地でございまして、国有地はすでに従来から民政府がこれを管理いたしておりますので、これは市町村長の許可の対象にはなっておりません。したがいまして、御指摘のような面積の市町村長が許可をしているものは、これがさらに拡大をされるということはあり得ないわけでございまして、こういう国有地はまた別の取り扱いということでございます。
  139. 大出俊

    大出委員 これは国有地であれ、字有地であれ、部落有地であれ、現在許可されている——つまり許可制度というのはそういうものなんですよ。許可されている千九百八エーカーが許可制度に基づく米軍の訓練地なんです。いいですか。国有地であれ何であれ、この千九百八エーカー、つまり市町村長の許可以上のものを約束することは、演習地の外に新しい土地を拡大することになる、これは許されない。何有地であれ許されない。これは村長の許可地域というのが対象になっていて、七カ所は全部許可制度の土地でありますということを言っているじゃないですか、初めから。そうでしょう。許可制度のところというのは千九百八しかない。それを出ることは許されない。初めからこれは根本的に間違い、直してください。Aリストを直してください。だめです。
  140. 福田赳夫

    福田国務大臣 演習地には、許可分と国有地分が混在をしておるわけです。大出さんのおっしゃる三十一万平米、これは国有地に相当する分である、こういうことでございます。  そこで、国有地の分はまずさておきまして、民有地につきましては、これは拡大はしない。その境界線の範囲内において米軍との間に適切なる区分けをきめる、こういうことでございます。  それから、先ほど私が申し上げたことをちょっと訂正させていただきますが、三十一万の国有地、これをどういうふうにするかということにつきましては、おそらくこれは、国有地でありまするが、米軍に基地の一部として提供する、こういうことになろうかと存じます。   〔発言する者多し〕
  141. 櫻内義雄

    櫻内委員長 質問者からお願いいたします。(発言する者多し)御静粛に願います。疑問点は質問者からやっていただきます。(発言する者多し)疑問点は質問者からお願いをいたします。(発言する者多し)暫時お待ちください。——協議が終わったようですから、答弁を許します。(発言する者多し)いま協議しておるようですから、ちょっとお待ちください。——しばらく御静粛に願います。——福田外務大臣。(発言する者多し)答弁を求めました。
  142. 福田赳夫

    福田国務大臣 委員長のお許しを得ました。  そこで、ごく簡単ではありまするが、ここに地図があるからちょっとごらん願います。   〔「何をやっているんだ」と呼び、その他発言   する者、離席する者多し〕
  143. 櫻内義雄

    櫻内委員長 間もなく正式に答弁をいたさせます。(発言する者多し)それぞれ着席をお願いいたします。——答弁を許可しておりますから……。
  144. 福田赳夫

    福田国務大臣 ごく簡単な地図でございまするが、ここにありますが、安波訓練場といいますと、八百三万六千八百平米であります。その中で国有地が三十一万五千六百平米になります。それから七百七十二万一千二百平米、これが民・公有地になります。この民・公有地につきましては、これを現在ある区画より拡大はしない。その範囲内において合同委員会においてこれをきめます。こういうことになるわけです。それから三十一万五千六百平米の国有地、これにつきましては民間との関係は起きませんけれども、政府としては、おそらく合同委員会の話し合いの結果先方にこれを提供する、こういうことに相なろう、こういうふうに存じます。  そうしてA表と申しますのは、この安波訓練場全体を呼称いたしております。これはもう御承知のとおりのことでありまして、私から申し上げるまでもございませんけれども、そういう事情であることを重ねて申し上げます。
  145. 大出俊

    大出委員 そういうことをおっしゃっても、それはだめなんですよ。  ここに地図がございましてね。これは米軍の地図なんです。安波訓練場というのは、色が入ってないこれをいうんです。隣は全部北部訓練場なんです。境界がきまっているんです。安波訓練場と北部訓練場との境はこうなっている。この白紙の地域がつまり村長の許可地域なんですよ。それがいま言っている千九百八エーカーです。いいですか。まるっきり妙な形で変だけれども、だから問題は、いまの国有地というのは旧来訓練場に入っていない。入ってないものを提供するというんなら、あなた、新規提供ですよ。それは訓練場じゃないのだから。だから、あなた方のほうでこの地図を出してくれと言ったのに、あなた方出さぬでしょう。手のうち見せざるを得ぬじゃないか、そうなれば。   〔発言する者多し〕
  146. 櫻内義雄

    櫻内委員長 大事な問題ですから……(発言する者多し)  大出君、申し上げますが、いまそこでお話しのことが委員全体に明らかでないようでございますから、事態を明白にするために再度御質問を願います。
  147. 大出俊

    大出委員 この千九百八エーカーというのが許可証の中身であることは、さっきから再三申し上げました。これは少し御理解いただきたいのでありますけれども、土地問題で沖繩にいろいろ大きな問題が起こりました際に、ワシントンまでお出かけになった安里積千代先輩おいでになりますけれども、この方々がたいへんな努力をワシントンまで行ってされた。そして何とかこの際、沖繩土地使用について、特に訓練地、演習地について明らかにしたいというので御努力をなさいまして、ここにございますが、琉米両側委員間の訓練地についての話し合いが延々と行なわれまして、三分科会ができた。その後三分科会から一名ずつ代表をお出しになって、そこで話し合いをさらに進めた。そして結果的にまとまりましたのが、ここにございますけれども、実は許可制度による演習地はこれしかない。それは一九五八年十月二十八日に、特別委員会琉米両側委員間の同意事項について、この中身は、演習地について、使用期間から、使用の手続から、補償の算定から——補償の算定というのは、前回問題になりましたが、地価を評価する基準がないものですから、布令二十号の中で地価を算定しておりますから、それを基準にして、その何分の一とか何割とかという形の補償額しか計算のしようがないというふうに話がまとまったわけです。まとまって、それを一日以上使ったら一〇%とかいうふうに、それは賃借権じゃない、許可ですから。だから補償という、つまり、踏み荒らされたり、入り会い権の問題や耕作権の問題がありますから、そういう意味の補償をするということできまった。これだけ全部。そうですから、経過を読んでみると明確になっている。その上できめた。だからこれは非常にきびしいものなんですね。演習地というものはこういうものですということがここで合意された。それがいま申し上げた一九五八年十月二十八日の特別委員会琉米両側委員間の同意事項について、こうなっている。ここに明確に、市町村長の許可がなければこれは使えないことになっている。一年単位になっていますから、そこできめたのが、先ほど申し上げました米軍——米軍のと言いたくなかったからこの間出しませんでしたが、ここにございます地図というのは、米軍が一番わかりやすいという意味でここにこういうことばを使っていますが、御参考までに申し上げておきますが、一番わかりやすい地図、そういう表現を使っております。USインスタレーションズ アンド ファシリティーズ イン ザ リューキーズ、こういうことになっています。つまり、一番わかりやすいということでこれをつくって——明確な軍用地図ですよ。DEが所管です。つまり地区工兵隊、米側はそこが所管でございますから、そこと琉球政府のこっちの関係のところとずっと長年話し合ってきているわけですよ。この演習地についてはどうなっているのかということで話し合ってきて、軍用地ではない、だから色刷りのところから抜いて白紙にしてある。北部訓練場の中の安波訓練場というのは——北部訓練場は基地ですから色がついておりますが、この中の安波というのは、そういう意味で村長の許可になっている。許可地域はこれしかないのですから、そういう意味で、千九百八エーカー、これ以上のものは訓練地になっていない。あとは布令二十号に基づくきまっている軍用地、それ以外は許可地域、それしかない。あとは埋め立てたところというのはクラブだとかなんとかいろいろありますが、これは別なんです。北部訓練場という色刷りのところも、もともとは国家総動員法で旧日本軍が全部とって収用したんですね。それがアメリカの管財、ここに全部戦後一括されまして、北部訓練場ができた、こういう経過ですから、それしかない。だから、そのほかにあること自体が初めからおかしい。そういう申し合わせになっているのですから。片や布令二十号、片や許可制度、琉米両側委員間の打ち合わせ同意事項、これしかない。それ以外に、八百三万というと差が出てくるが、国有地であれ何であれ、それが訓練場に使われているとすれば、いままですでに違反であった。使われていない、許可地域で明確になっている、こういうことなんです。だから、八百三万というふうに、許可されていた面積をふやしたこと自体にすでに大きな問題がある。それが国有地であれ、村有地であれ、部落有地であれ、私有地であれ、問題がある。そういう経過がある。これは沖繩皆さんならよく知っておられる。私もずいぶんこまかくこれは現地で何回も念押して聞いてみた。だから、それをここで適当に、一ぺんお答えがあったら、今度は変わる、今度はまたお答えが変わる、また変わる、そして整理をされて大臣がここにおいでになってこうだと言われても、それでもこの地図は違う。そういう理屈はないのですから。だから、私はやはり、これはこれ以上皆さんに承ってみても、二転、三転ならまだいいけれども、御答弁が四転、五転ずるのでは——調べいただいて、これはやはりいま私の申し上げた論点を整理していただいて、説明のつくようにしていただけませんか。   〔中谷委員委員長」と呼ぶ〕
  148. 櫻内義雄

  149. 中谷鉄也

    中谷委員 いま大出委員のほうから整理をして論点を申し上げたのだけれども、もう一度私のほうから関連をして論点を申し上げますなら、こういうことなんですよ。  要するに、三十一万平米という土地は、これはわれわれの調査によると、使われておらない。これはもうはっきりしている。しかし、政府に対して統一見解を求めるのは、一体これは使われているのか使われておらないのか、これが一点ですね。統一見解を求める一点。  第二点は、何べんも申し上げますけれども、われわれの何度かの調査によれば、これは絶対使われておらない。しかし、かりに使われておるというふうに主張されるなら、その権限は一体何なのか。先ほどから何べんも私たちは申し上げていましたね。許可その他について申し上げてきた。その権限は一体何なのか、この点についての統一見解をいただきたい。この点であります。
  150. 福田赳夫

    福田国務大臣 基地の実態に関する問題でありますので、施設庁長官からお答え申し上げます。
  151. 島田豊

    島田(豊)政府委員 先ほど申しましたように、現在米軍が使用いたしております安波訓練場、この中には国有地と民・公有地がございます。民・公有地につきましては、その権限の取得につきまして市村町長の許可を得ておる。国有地につきましては、これは一九四八年四月七日の軍政府布告第七号、これに基づきまして民政府がこの国有地について管理をいたしておりますので、その管理権におきまして米軍が演習に使用しておる、こういうことでございます。
  152. 大出俊

    大出委員 たくさんの土地国家総動員法の時代に日本軍が接収をいたしました。先ほどの極東放送のあの場所も実は当時の接収地なんです。いまあるところも接収地なんです。そしてそれをアメリカの、簡単に言ってしまえば、つまり米軍の管財ですね、ここに所管をさせた。だから、ここに私、統一見解とってあるのですけれども、簡単に申しますが、三つございまして、場所を例をあげてもよろしゅうございますが、一つは布令二十号です。もう一つがそうなんですが、米国民政府財産管理課の割り当てにより米合衆国軍隊が使用している国・県有地というのが一つある。ところが、やたらそういうことで米軍がお使いになったものだから、沖繩じゅうをゆるがすような大きな土地騒動になってしまった。そんなことをいったら、自分の土地もかつて日本の陸海軍に接収されていた、それは自分の土地なんだ、沖繩現地の方の。それを、アメリカの、いま申し上げました米国民政府財産管理課に、戦後一括みんな接収されてしまった。そこで、これは一括接収したのだからというのでやたら演習をやられたのではたまったものではないから、大きな土地騒動が沖繩で起こりまして、さっき申し上げたように、安里先輩やなにかみんな苦労されてワシントンまでおいでになった。そして沖繩で三つの分科会ができて延延と論議をされた。そこでも話がつかない。だから、その三つの分科会から一人ずつ代表を出して、法的根拠はないのですが、アメリカ側の代表と話し合いをした。話し合いで、演習地というものはこういうところなんですよ、これ以上使ってはいけませんということで話し合いがまとまって、許可地域と軍用地と、こういうふうに分けたのですから、それ以外のものがあったのでは、これはこの地図にもありませんけれども、これはたいへんなことになる。根本的な問題に触れます、いまの御答弁は。だから、そういう意味で、福田さんではございません、愛知さんの時代ですから、私も、福田さんが御存じない点があっても、そのことをとやかく言っているのじゃない。問題がはっきりしなきゃ困るから言っているだけです。だから、米側と折衝をなさって——上原質問のときに福田さんがお答えになったのは、資料に基づき、図面に基づいてやったとおっしゃている。この間も外務省吉野さんから、アメリカ側の図面に基づいてやったとおっしゃっている。だとすれば、向こうの図面はこれしかないはずなんです。現地でもこの図面に基づいて話をやっているのですから。そうでしょう。だから、これを出していただいて、この図面の上でどういうふうにアメリカ側と折衝されておきめになったかということを回答としていただきたいと、この間申し上げたのです。だから、それを出していただかなければならぬのだけれども、お出しいただけない。統一見解だけだという。そうすると、いまの論議をしないで統一見解へいっちゃうと、私どもとしては問題が明確にならない。ならないから、具体的に安波訓練場の面積の相違を表へ出しまして詰めてみないとはっきりしないということで問題を提起した。そうしたら、皆さんお答えは、一転、二転、三転まではがまんするけれども、四転、五転、六転だ、いまの話じゃ。そうなるとこれは論議のしようがないので、ほかの方にも御迷惑をかけますから、だから理事が提起しておりますように、休憩なら休憩をしていただいて、大臣お見えになろうとどなたがお見えになろうと聞きますから、地図もございますので、どうなっているのかという点を、皆さんの認識と私どもの調べた認識とを表へ出してみて、どうするかということをおきめいただけないかと私は思うのですよ。いかがでございますか。
  153. 櫻内義雄

    櫻内委員長 関連質問を許します。中谷君。
  154. 中谷鉄也

    中谷委員 先ほど関連質問統一見解を求めたのですけれども、私は、あれは統一見解でも何でも——私は、答弁になってないと思うのです。  重ねて申し上げますけれども、一九四八年の布令がある、そんなことは百も承知ですよ。問題は、事実関係として、この三十一万平米のところが訓練地として使われているのか使われていないのかという問題点が一点。  それといま一つは、先ほど大出委員質問したように、その法的根拠なんです。いわゆる国有地については一九四八年の管理権がある、かりにそこまで認めたとしても、それが訓練場だ、訓練地だということの根拠が何もないじゃないですか。その点について話を飛ばしちゃいけませんよ。論理を飛ばしちゃいけませんよ。統一見解出して明確にいたしていただきたいと私は思います。
  155. 櫻内義雄

    櫻内委員長 午前中の会議はこの程度といたし、午後一時半まで休憩をいたします。    午後零時三十三分休憩      ————◇—————    午後一時三十六分開議
  156. 櫻内義雄

    櫻内委員長 休憩前に引き続きこれより会議を開きます。  質疑を続行いたします。山田久就君
  157. 山田久就

    ○山田(久)委員 きょう午前中は、なかなか地をはいずるような、寝わざ専門のような議論がたいへん多い、まあひとつ角度を変えて、もう少しやはり返還というものを現在の協定のような形で行なうというこの選択というものが、政治的に見て賢明であるかどうかというこの点が、やはり国民によりよく納得されなければならない、そういう角度でひとついろいろお尋ねをしてみたい、こう考えているわけであります。  御承知のように、去る十一月十日に、沖繩返還協定が八十四対六という圧倒的な多数によって米議会で承認されたということは、大局的に見て私は非常に御同慶にたえないと考えます。むろん、このことは、つまり外交の本質である、日米間いろいろお互いに問題をかかえていると私は思う、にもかかわらず、互譲の精神と努力の結果のあらわれであると私は考えまするけれども、しかしながら、同時に、いまの沖繩に対する日本の主権というものを、つまり守っていくというところから出発した、サンフランシスコの平和条約締結以前から始められたところの外交的な努力、やはりその結果でもありますし、また、その後における累次の努力の積み重ねというものが、今日に至っておるところの非常に大きな要因をなしておる、私はこう考えるものであります。そういう意味で、この段階において、歴史的な真実、その後の経過というようなものをよく国民に理解してもらうという努力を十分行なわれることが必要だ、私はこう考えるのです。  ちょっとこの点で回顧してみますると、一九五〇年、つまり、サンフランシスコの平和条約会議の開かれる前に、アメリカは日本との講和条約というものを予定して、連合国間でいろいろそれについての協議、準備を行なっておったことは、御承知のとおりであります。   〔委員長退席、福永(一)委員長代理着席〕 ただ、それじゃ当時の沖繩に対する連合国側の意見は一体どんなものであったろうかということを考えてみると、日本に沖繩の主権をそのまま残しておくべきだ、こういう考えを持っておった国というのは、もうきわめて少ない、一、二程度のものであったわけであります。そういう連合国側の事情というものを反映いたしまして、一九五〇年の十一月に、アメリカの国務省によりまして対日平和七原則というものが御承知のように公表された。その七原則の第三が領土問題に触れているわけでありまするけれども、それを基礎にして、五一年の一月に日本に対して内々その意見を徴するということが行なわれたことは、大臣も御承知のとおりであります。ところが、この七原則の第三項、領域の問題は一体どういうことになっていたかということをここで一ぺん回顧してみることは、私はむだじゃないと思う。  すなわち、領域の点が以下のように定められているわけです。(い)は、日本は朝鮮の独立を承認する。(ろ)は、琉球及び小笠原諸島については合衆国を施政権者とする国際連合信託統治制度に同意するということ。(は)は、台湾、澎湖島、南樺太、千島列島の地位に関する英国、ソ連、中国及び米国の将来の決定を受諾する。しかしながら、条約発効後一年以内に決定がなされない場合には、国際連合の総会がこれを決定する。そういう案になっておるわけです。  そこで問題は、沖繩についての点でございますけれども、これには、国際連合の信託統治下に置く、これに同意するということでございますから、これはもう少しはっきり申しますと、これは国連憲章の七十七条等の規定を見てもわかりますように、つまり、日本の主権からはこの地域は分離するということを意味しておる。そういうことが要求されておる条項でございます。しかもこの信託統治というのは、独立あるいは高度の自治に持っていくということでございますから、このままの規定で押しつけられたということになるならば、むろん、一国でも信託統治理事会で反対すれば実現——もう高度の自治をかりに日本とちょっと結びつけようなんという意見があったところが、それは問題にならないということで、永遠に日本からは切り離される、こういう事態にあったわけであります。当時吉田総理は、この沖繩というものを日本の主権下にとどむるということの非常な重要性、また日米関係の将来ということを非常に大所高所から考える必要があるということで、この沖繩の主権をわがほうのもとにとどめていくということについて、ダレスに対しても熱心にこれを説き、対米申し入れを行なったわけでございまするけれども、その結果、御承知のように、現在いろいろこれについて問題にしておりまするけれども、つまり平和条約の第三条というものにこれが落ちついた。したがって、日本の主権の放棄ということを認めるという点は、これが消え去って取り除かれたというばかりでなくて、潜在主権というものを日本に認めるということに相なり、また、沖繩にいるところの同胞は引き続き日本人である、こういう地位を持っていくということに相なったことは、御承知のとおりでございます。  私は、こういう点をやはりこの機会に一ぺんよく回顧してみる必要があると思う。と同時に、その後のわが外交路線というものはまた非常に重要だろう、こう考えるのであります。日米間はお互い敵国として相戦ったわけでございまするけれども、しかしながら、サンフランシスコの条約は、やはり非常な恨みを晴らすという行き方よりも、むしろ、つまり和解の平和ということを求めた面も非常に強かったわけであります。そういう一つの環境のもとにおいて、その後においてわが自民党の政府は、太平洋の平和と安定、またわが国の繁栄ということのために、日米間が、つまり相互の理解によってパートナーとしてそして今後共存して生きていく、協力して生きていくという、こういう外交路線をとった。かりにいまわが国でいろいろ主張されておる反米路線というような外交路線のもとにおいて、かりにですよ、サンフランシスコの条約において大きな突破口を開かれたとしても、そんな外交路線のもとで一体返り得たものかどうか、われわれは結論は明瞭であろうと考えるわけであります。  自後においては、御承知のように、岸・アイクあるいは池田・ケネディ、佐藤・ニクソン、累次の外交的な努力ということ、つまり、これが今日われわれが待望の返還というものをいよいよ導いてきたそれの長い路程でもあるし、その努力の積み重ねであると私は考える次第でございます。  この点はいろいろ政府でも説明しているけれども、しかしながら、あらためて、こういうような点については、この意義を正しく理解されるためにはもっともっとひとつ努力する必要がある、率直に言って、私はそういうふうに考えるわけでございまして、この点についての外務大臣の率直な所見をまず承りたいと思うわけであります。
  158. 福田赳夫

    福田国務大臣 沖繩返還の意義、これは歴史的な重要性を持つと思うのです。私から申し上げるまでもございませんけれども、沖繩全島をあげて米軍に占領される、しかも、講和条約が発効した後におきましてはアメリカの信託統治ということになって今日に至っておる、その沖繩県民の御労苦を察し、何とか一日も早く祖国へ復帰していただきたい、こういうことは歴代内閣ほんとうに悲願であったわけでありますが、今日いよいよそれが実現をしようといたしておる時期に差しかかっておるわけです。私は、この沖繩返還ということは、私も政治にずっとタッチしてきておりますが、十年前くらいは、むずかしい問題だろうというふうに考えられておったと思います。私も、十年前において、十年後に沖繩が日本に返ってくるというようなことは非常にむずかしいことだろうと思っておった。  私は、ちょうど十一年前になりますが、ソビエトへ農林大臣として漁業交渉に行ったのです。そうしてフルシチョフ首相にクレムリンでお目にかかりました。そのとき私は最後に、不法に占拠しておる北方領土の返還を迫ったわけです。そのときフルシチョフ首相は、アメリカが沖繩を手放しますれば、それは考えなければならぬ問題ですよと言っておった。これは非常に独裁者らしい大きな発言である、こういうふうに聞いておりましたが、私は帰ってみて、なぜフルシチョフ首相がそういう発言をしたか、こういうと、アメリカが沖繩列島、これを手放すごときは、これは想像もされないことである、そういうことがフルシチョフ首相の頭にあったんだろう、こういうふうに思います。それがとにかく今日わずか十年そこそこでわが国に返ろうとしておる。しかも、平和裏におきまして、一国の領土が他国の領土に移し変えられる、これは非常に異例なことであると思うのです。何といっても、戦争で失った領土を取り戻す、これは血をもってまた取り戻さなければならぬというのが、これは古今東西の歴史の示すところです。今度の沖繩島は、領土の返還じゃございません、施政権の返還でございます。しかしながら、これは実態は似ておる。それが今度アメリカと日本との間の話し合いによって平和裏に返還をされる、施政権をわが国に取り戻すということができることになる。これはなぜそういうことになったかということを踏んまえてみる必要があると思うのですが、私は、やはり沖繩県民の悲願、これが最も土台として根底にあると思います。しかし、その沖繩県民百万の悲願を踏んまえまして、わが国の歴代政府がまっ正面からこの問題の解決に取り組んだ、これが一つ。それからもう一つは、やはり日米間の友好親善関係、これを忘れてはならない。私はこういうふうに思うのであります。この三つがうまく結びついた成果、これが沖繩施政権の返還である、こういうふうに考えています。  そこで、これから一体どうなるか、いま世界の情勢は多極化だという。あるいは日米間の問題を考えるにいたしましても、あるいは日中間の問題を考えるにいたしましても、他の極の問題を度外視することはできない。いま日中間が問題になる。日中間の問題の解決、これにはやはりもう一つの極であるソビエトのこと、もう一つの極であるアメリカのこと、もう一つの極になろうとしているEEC、ヨーロッパのこと、多角的に考えて結論を導き出さなければならぬような立場に置かれておる。しかし、その多極化時代におきまして、私どもが何としてもゆるぎなきものにしておかなければならぬのは、私は、日米関係だ、こういうふうに思うのです。わが国はアメリカを必要とします。またアメリカも日本を必要とする。そして相互依存の関係というものがここに成り立っておる。これがやはりわが国の一番重要視しなければならぬ一点である、こういうふうに考えますが、この日米関係におきまして多年の懸案であり、また、日米友好親善のために、これを放置いたしますと大きなきしみというか、の原因ともなりかねない沖繩問題が解決されるということ、そうなりますと、わが国は、戦争で失った奄美大島も、また小笠原のこれらの施政権、これはすでに返ってきております。今回沖繩が施政権が返ってくる、こういうことになる。そうすると、戦後処理が日米間においては完全に終わるという時代になるのでありまして、この日米間に横たわってきた施政権問題、これが完全に解決されるということになりますならば、私は、日米間、これは沖繩返還ということを踏んまえましてまた新しいスタートに立っていける、そういうふうに思うのでありまして、この意義は幾ら強調しても強調のし過ぎがないくらいな大きなできごとである、こういうふうに考えます。  ただ、いろいろの見方もあるわけでありまして、あるいは完全無欠な姿で返ってこなければ意味がないじゃないかということが言われてもおりますけれども、そこは私は賢明なる一億国民が選択すべき問題である。政府のとったこの選択、これは沖繩の県民も不平、不満なところはありましょう。ありましょうが、何よりも何よりも先立つものは、わが国に施政権を取り戻すことであるというこの考え方に立つ政府の選択は、私は支持してくださる、こういうふうに確信をいたしておるわけでございますが、この上とも政府におきましてはあらゆる努力を続けまして、この沖繩返還の意義の重大性、こういうものにつきましては御理解につとめたい、かように考えております。
  159. 山田久就

    ○山田(久)委員 引き続きその点についてはひとつ政府の国民に対する啓蒙に御尽力をお願いしたい、こう思うわけです。  ただいまソ連との問題に触れられたわけでございますけれども、私も駐ソ大使の時分にこの問題をフルシチュフ首相との間に意見の交換をやったことがあります。まあ率直に言って、アメリカはとてもじゃないが返すはずがないというような立場に立っておられるという印象は、私の場合もこれは同様でございます。私は、いまの北方領土問題の現状というものを見てみると、アメリカがこの問題に踏み切った、こういう点は、やはりいろいろな問題があるにしろ、私は正しくこれを理解する必要があると思う。ちょうど安保改定の当時でございましたけれども、御承知のように、あの改定によって対等者間の条約にこれを切りかえよう、そしてあの条約ではっきりと日本防衛の義務、それもアメリカにとってはまかり間違えば核戦争に巻き込まれるという大きな義務を負担するのに対して、一体日本はこれに対してどのような義務を負担してくれるのだということが当時上院でも問題になったわけでありますけれども、日本の憲法上の制約その他の関係から、結局、米軍に対してその極東における平和と安全に寄与するという任務のために基地を提供するということに相なった。それが代償というようなことになっているわけですけれども、当然これについては非常に大きなバランスが欠けているじゃないかという議論もいろいろあった。しかしながら、日本は沖繩で代償を払っているというようなことも当時補足的に言われた。その沖繩の大きな地位というものを考えてみると、今日、アメリカがいろいろな要求はあったろうけれども、これをとにかく本土並みということで返還するということになった、この点は、私はやはり正しく理解すべきだと考えております。  これに関連して、ただいま外務大臣も触れられた点でありますけれども、何といっても、戦争の不幸なできごとの結果とはいえ、四半世紀にわたって異民族の支配下にとにかくわが同胞が立たされておったということは、まことに悲しむべき事実であって、このような点からも、この沖繩返還協定の基本的な目標というものを考えてみると、これはとにもかくにも一日も早く沖繩県民に対する米国の施政権というものに終止符を打って、これを日本の施政権下に取り戻すということが、あくまでも私は基本的な目標でなければならぬと思う。そうかといって、条件はどうでもいいということを言おうとしておるわけではない。しかも、今度の協定におきましても、その返還の条件というものは核抜き本土並みということで行なわれたというそういう事実を見るならば、先ほど私が触れましたような、つまり安保改定当時も言われていた沖繩というもののいろいろなむずかしい地位ということからいって、私は今度のこの外交交渉の成果というものは高く評価していいと思う。外交交渉というものは、大体私もいろいろなことをずいぶん長く手がけてやってまいりましたけれども、それぞれの国にはそれぞれの立場というものがあるわけで、まあフィフティ・フィフティというようなところで話がつくなら、まず外交交渉というものはそれで大体成功だったといって私は差しつかえないと思う。今回の場合には、私は公平に見て、いろんな点から見て、やっぱり八〇%はわがほうに非常に分のある解決方法が得られたということを、私はっきり申し上げることができると思う。いま起こっている議論は、そういう意味で、ずいぶんここでもやりとりがありましたけれども、この二〇%の中に不満がある——これは外交交渉ですから、不満のある半面もあるでしょう、その二〇%の中にいろいろ不満があるというようなことで、あたかも結果においてあとの八〇%の利益は捨ててしまえと言わんばかりの、つまり、そういうようになるような意見というものは、これは外交交渉というものの見地からいっては、非常に現実離れをしておるか、あるいはこれはほんとうの言いがかりじゃないかと思われるようなことであって、はなはだ私は残念だと思う。過去においても、われわれもいろいろな外交交渉の経験で、オール・オア・ナッシング、完全でなければみんなやめちまえというような議論がないわけではなかった。これこそまさに非常な利益をぶちこわしてしまう、あるいは平和を破って戦争への道というような外交のそういうものの考え方に通ずるというようなことに相なるので、私は、それは断じてとってはならない点だ、こう考えるわけであります。  そこで、私は、そういうような点から見て、まず第一に、いまの条件は核抜き本土並みでありまするけれども、とにもかくにもこれを一日も早く日本の施政下に持ってくるということが、現実にわが国あるいは沖繩における同胞に与える具体的な利益ですね、そういう点、これが非常にあるわけなんで、裏返してみれば、今日まで基本的な人権の尊重をはじめいろんなことについて非常に長く苦しみ、問題があったという点、つまり、それがなくなるんだということに相なるわけだろうと思いまするけれども、この点の実質的な利益ですね、早く日本の施政権下に持ってくるということの具体的な利益という点について、この際あらためてひとつ具体的に、それを国民によくわからせるというような意味で、御説明、御答弁願いたい、こう思うわけであります。
  160. 福田赳夫

    福田国務大臣 まず何よりも大事な点は、沖繩百万の同胞が平和憲法のもとに入ってくる、こういうことだと思います。平和憲法による保護というものを完全に受け得る立場になるわけであります。ここは私は非常に大事なことだと思います。したがいまして、いままで異民族支配ともいうべき状態にあった沖繩県民が、今度はわが国の憲法の庇護を受ける。いま沖繩では米軍人犯罪に対する抵抗が非常にある。これはなぜ起きるかというと、あそこにおける、沖繩島におけるところの米軍人の犯罪、これは米軍のジュリスディクションといいますか、司法権下にあるわけであります。今度はわが国があそこにおける問題、人権問題を取り扱う、こういうことになる。とにかく人権のほんとうの意味における尊重というものは、私は、返還が解決されるということによって実現される、こういうふうに考えておるわけであります。  第二の問題は何であるかといいますると、沖繩がいままで異国の支配下にありまするが、返還後は沖繩県としてわが国の一環をなすわけであります。この一環体制のもとにおいてわが国の政治体制、行政体制あるいは司法体制、立法体制というものがそのまま沖繩に施行されることになるわけであります。そういうことになりまする結果、まあ本土並み本土並みと、こういうことばが使われておりまするけれども、そのうちの多くの問題がこれによって解決される。特に大事な問題は、私は核の問題だと思います。返還時におきましては、とにかく核は沖繩にはなくなる。いままでは核について沖繩の人はずいぶん心配しておった。それがきれいにここで解決される。また、内地にも米軍基地があります。沖繩にはよりたくさんの基地があるわけでございまするけれども、その基地の地位というものが非常に大きく変化をするわけでありまして、今度は内地同様に安保条約並びにその関連諸規定の支配下にこの米軍基地というものが置かれることになる。これはまた非常に大事なことでありまして、私どもが本土並みとこういうふうに言っておりまするけれども、まさに米軍の地位につきましては本土並みが完全に実施されるということになるわけであります。   〔福永(一)委員長代理退席、委員長着席〕  その他、今度は、いろいろ立法等もこの国会でお願いいたしまして、本土の水準に、あらゆる問題の水準を本土のように引き上げていこうというための努力が行なわれるわけでありまするが、とにかく施政権の返還が実現されればこそそういう問題も解決されるわけでありまして、総理大臣も、あたたかい気持ち沖繩県民を迎え入れなければならぬと言っておりまするけれども、このあたたかい気持ちを幾ら持っておりましても、返還が実現をされませんというのでは、これを届かせる手はずもこれはつかぬわけでございますが、今度沖繩が返還される、そういうことによって沖繩県民の地位というものが本土同様となる。まあ若干の不満はあることは私はよく承知しておりますが、これは返還が実現された後において、わが国の施政権下に入った、これを踏んまえましてアメリカ当局と折衝すべき問題である、そういうふうに考えております。
  161. 山田久就

    ○山田(久)委員 その点は私も同感で、国民にきわめて端的な目標というものをひとつ大いにわかるようにこの上とも努力いただきたいと思うわけです。  次にお尋ねしたいのは、日本の施政権下に取り戻すというその基本目標であるけれども、それは核抜き本土並みという条件でやるんだということを政府は明示しておりますし、そのようになっているわけでございます。この核抜き本土並みということについては、ずいぶんいろいろすでに本委員会においても議論が行なわれているわけでございまするけれども、多少趣を変えて別な観点からひとつこの問題についてお尋ねをしてみたいと思います。  沖繩が太平洋戦争によって非常な大きな戦禍に見舞われたという事実、また、その後において沖繩の地位ということの関係で、いろいろ軍事的なものに取り囲まれてきたというこの沖繩県民の気持ちからいうならば、確かに少しでも軍事的なかかわりの少ない姿の中で生活していきたいというこの気持ち、その願望は、もうわれわれもよく理解される点だ、こう思います。  ただ、私がここで、この問題で、本土並みということであらためてはっきりしておいたらどうかと思う点は、つまり、いまの安保改定が行なわれてつくられたあの条約及び付属取りきめで、本土の中における基地というものが一体どのような取り扱いにされているのかどうかということ、これをあらためてここではっきり私は認識する必要がある。と申しまするのは、あの協定と付属取りきめがそのまま適用されるということになっているからこのことをお尋ねしようと思うわけでございます。  現在の沖繩基地と、日本の本土に返ってきてからの根本的な性格の違いというのは、つまり、日本の安保条約の制約下に立たされるという性格、これが非常に根本的な違いだ。このことは、この間もロジャーズ国務長官が、この点が基本的に性格が違ってくる点だということを証言しておりますけれども、まさにそれはそのとおりであろうと私は考えます。  そこで、日本の基地の問題でありまするけれども、現在の日本の基地、これには、日本の防衛の目的のためにアメリカに貸与された基地があるわけですけれども、いわゆるこの基地に対する制限というものは一体何があるかということをここで考えてみますと、現行の諸協定、取りきめにおいては、この基地の規模であるとかあるいは機能がどうでなければならない、その内容はどうかというようなことについては、これは御承知のように何らの制限は設けられておりません。ただ、制限というのは、この基地の使用に関して制限が設けられておる。つまり、この使用にあたっては、一般的に、安保条約というものは国連憲章の補足をなす地域取りきめであるという点からいたしまして、つまり国連憲章の制約のもとに立たされるという点がその第一点。その次には、その使用について、つまり、大きな移動であるとか、あるいは装備の変更であるとか、あるいは直接戦闘作戦行動にこれを使うという場合には、事前協議の対象になる、これがつまり現在の国内における基地というものについての制約にほかならないわけであります。むろん、今後われわれが、にもかかわらず、沖繩の基地については、さっき言った県民の気持ちというものをできるだけ取り入れて、基地もできるだけ小さくできるものはできる、いろんなことを考えていくということは必要であるとして、この原則そのものからいうならば、制約はいま申し上げたとおりであって、したがって、沖繩における基地の規模が大きい小さい、機能がどうだということで、それが返ってきたならば安保条約の性格が変わるんだというようなことは、いまの現行安保条約のたてまえ、規定からいって、全くそれには当たらないということをはっきり私は言えるんだ、こう思うのです。  その点で、核抜きの核についての取り扱いも、これは安保条約の改定のときにりっぱな約束がちゃんとできているわけであって、まずこの本土並みという点がどうなっているかということをはっきりした前提に置いてそれから議論するのでないと、聞いている人に対していろんな誤解を与えるような点があるのではないか、こう思うのです。むろん外務大臣としてはその点はおわかりであろうかと思いまするし、私の申し上げたところに大体間違いない、こう思いまするけれども、大臣にこの点についての見解を一応念のためにひとつ確認しておきたい、こう思います。
  162. 福田赳夫

    福田国務大臣 その点はきわめて明瞭である問題であるのみならず、またきわめて重大な問題であります。つまり、今回の協定第二条におきまして、米軍沖繩における基地を提供します、しかし、この米軍の地位は、安全保障条約の制約下に置かれる、こういうことが明瞭になっておるわけであります。したがって、沖繩でいままで議論をされてきております核の問題につきましては、先ほども申し上げたとおりでございまするけれども、自由出撃、こういうことはもう沖繩からはあり得ない、こういうことになるのであります。人によりましては、沖繩の本土化というようなことを言う人もありまするけれども、全く事実と、それからこの条約の構成内容というものはその逆である。沖繩が本土並みになる、文字どおりそういうふうに私どもは考えているということをはっきり申し上げます。
  163. 山田久就

    ○山田(久)委員 私はこの根本問題をなぜお尋ねするかというと、何か本土並みということについての基本的な条約上のたてまえというものが一体理解されているのか、されてないのかわからぬようないろんな議論が行なわれておるので、私は念のためにこの点をはっきりしてやろうということで……。   〔発言する者多し〕
  164. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御静粛に願います。
  165. 山田久就

    ○山田(久)委員 次にお尋ねいたしたいのは、日米関係の今後についての問題の点でありまするが、日米関係は、御承知のように、将来にわたってもわが国にとっては最も重要な外交的な主柱であることはもちろんでございます。にもかかわらず、現在日米間においてはいろいろなむずかしい問題をかかえているわけでございまするけれども、この際、永年の悲願であった沖繩返還、こういうことが実現する運びになったというこういう時点において、今後日米間の外交方針ということについて政府はどのように考えられているか、ここでその点についてあらためてお尋ねしたいと思うのです。  というのは、御承知のように、ニクソンの訪中というようなことも行なわれておるわけでございまするが、むろん、中国問題ということは、日米間のパートナーとしては共通の大きな関心を持っているところの問題であることは御承知のとおりであります。そういうような点から考えてみまして、これは現在の中国側の立場のほうから今度は逆に、なぜ一体中国がアメリカとの接近というもの——これはただアメリカからの申し入れというようなことだけじゃなくて、中国側の利害関係ということから考えてみても、どうも相当大きな関心を持っておる、この綱を断つというようなことをなかなかやりたくないというようにうかがわれる。これにはそれなりの彼らの考えておる胸算用というようなものもいろいろあるかと思いますけれども、しかしながら、いずれにしても、先ほど指摘いたしましたように、日米間においては中国問題というものは非常に重要な問題でもあるので、ニクソンの訪中という問題に関して、もっと突っ込んで両方でよく意思の疎通をはかっておくということは、私は非常に重要な現在の日米間の案件だろうと思うのです。むろん外務省としても大いにやっておられるのだろうと思うけれども、率直に言って、はたから見ていて、もっともっと突っ込んでやる必要があるのではないかという印象をわれわれは持っているわけでございます。つきましては、この点について外務大臣としてももっとこの問題をどうやろうと考えておるか、ひとつ率直な御意見をこの機会にお聞かせ願いたい、こう思うわけであります。
  166. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほど私は多極化時代ということを申し上げた次第でございますが、その多極化時代下における外交、そのかじのとり方、これの中で、わが国としますとやはり日米関係が一番大事である、私、そういうふうに考えておる次第でございます。日米関係の相互信頼、それから共存共栄、こういう基本的な面におきまして私は今日いささかも動揺しておる事実があるとは考えておりません。ただ、経済上の問題につきまして、まあ日本の経済がここまで強大化したということに伴いまして若干の摩擦が出ておる、これは事実であります。しかし、事は経済上であるとはいえ、この摩擦現象をほうっておきますと、これが場合によりますと日米の友好関係の基本にまでひびが入ってこないとも限らない。そこで私は、日米の経済の調整ということ、これにいま非常に努力をいたしておる次第でございます。  それからいま御指摘の日中問題、これも私は日米間で十分議論を戦わせる必要がある、こういうふうに考えております。ただ、わが国がアメリカと違う点は、もうすでに中国との間には二千年の歴史を持っておる、そういう間柄であります。しかも、この一衣帯水というか隣組である、しかも、われわれと中国との間には、文化あるいは思想、そういう面において共通点もずいぶん持っておる。その辺がアメリカと非常に違うのでありまして、アメリカとの間に私は議論もし、理解もかわさなければならぬと思いますけれども、とるべき手だてが必ずこれが一〇〇%アメリカと一緒でなければならぬ、こういうふうには考えておりません。わが国にはわが国の立場もある、違った方向をとるにいたしましても、その際は、これはほんとう日米間で理解というものがかわされたその上に立って行動をとるという必要があるのじゃあるまいか、私はそういうふうに考えております。日米間の接触につきましてどうも脆弱だというような御批判もいま承りましたが、私は、日米間の問題については最近はかなり突っ込んだ話をしておるつもりでございます。ニクソン大統領の訪中問題、これをめぐる問題につきましても、十分米当局と話し合いをいたしておりますが、今後とも鋭意、そういう問題につきましては、日米間の理解と協力、そういうことが大事であろう、こういうふうに思いますので、努力を続けてまいりたい、かように存ずる次第でございます。
  167. 山田久就

    ○山田(久)委員 いまの問題に関連して、ニクソンの訪中等の事態、これによってつまり極東の国際情勢に根本的な変化が生じたのじゃないか、そういうような情勢では、この協定というものをひとつここでやり直す必要があるんじゃないかというような議論があることは、御承知のとおりであります。国際的な政治、経済というものに非常に大きな影響をいやおうなしに受ける立場にあるわが国といたしましては、そしてまた、極東においてその地理的条件等から、ソ連、中国等も控え、これまた安全保障上の問題としても国際的な強い影響のもとに立っているわが国といたしましては、しかも貿易上は、ほとんど大多数の資源というものをわが国は入れてくる、またその製品を売らなければならぬ、これも長い海上輸送線に依存しておるという、こういう立場に立つ日本としては、日本ぐらい世界平和の維持ということに大きな関心を持っている国は私はないと思うのです。そういうような意味においては、米中関係であろうと、あるいはその他の国による外交的な努力の一つの動きであるにしても、その平和的な条件を強め、緊張を緩和するというような点についての外交的な努力というものは、日本は一番歓迎するという立場にありますし、まあそういう意味で、むろん米中接触というものもこれはたいへんけっこうなことであろうというふうには考えますけれども、しかしながら、さりとて、この変化は変化としても、それがいまの沖繩の問題というものを根本的に考え直すような、そういう大きな変化があったというふうにこれを考えるのはまだ非常に早計でもあるし、これは正しい情勢分析というものでもないという考えを私は持っております。これは、今後のわが国の外交政策を考えるについても、あるいはいまの沖繩問題についてのいろいろな反論などというものを考えてみても、重要な点であろうとも思いますので、この点について一体外務大臣はどのような情勢分析を持っておられるか、また、その点についての見通し、見解、どのようなものを持っておられるかという点について、ひとつここでお聞かせを願いたいと思うわけであります。
  168. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほど申し上げましたように、私はいま世界の情勢が、冷戦態勢というか、二極態勢といいますか、米ソ対立下で動かされてきた情勢が、多極化時代を迎えつつある、こういうふうに申し上げたわけでありますが、そういう意味では、私は、世界情勢が大きな転換のきざしを見せておる、こういうふうに観察しております。  ただ、いま山田さんが御指摘のニクソンの訪中、これで米中関係が決定的に変わってくる、そしてそれは必然的に極東に緩和をもたらす、だからわが国はそれに対応いたしまして極東の軍事事情、安全保障体制というものを考え直さなければならぬ、べきだ、こういうふうなことに触れられましたが、私はそうは考えないのです。アメリカの大統領の訪中は、これは七月に発表されております。沖繩返還協定の調印は六月に行なわれておるわけであります。まあ七月に発表された米大統領の訪中、これはまだ実現はされていないんです。おそらく私は来年になるだろう、こういうふうに思いますが、しかし、これにつきまして、さて具体的に米中関係というものはどういうふうになっていくかということにつきましては、私もはっきりした展望を持ちかねます。アメリカ当局が言っておることは、まだ何らの、米中間に政治的原則についての約束ごとを詰めてそうして訪問する、そういう状態ではない、こういうことを言っておりまするけれども、確かに私はムードは出てきていると思うのです。米中接近、それがまた極東の緩和に与える影響、確かに緊張緩和のムードというものは出てきたと思うのでありまするが、まだこのムードは固定化をしておりません。そういう段階である、こういうふうに思うのでありまするが、ムードだけを見て大事な安全保障問題を論ずるわけにはいかぬ、こういうふうに思うわけでありまして、したがって、六月に返還協定が調印をされた、七月にはニクソン訪中が発表された、たいへんアジアの情勢が変わってきたというような論をなす人もありまするけれども、私は、国の安全、そういうようなことを真剣に考える立場といたしましては、まだそういう時期ではない、かような認識を持っております。
  169. 山田久就

    ○山田(久)委員 私も、まあ大きな動きではあるけれども、なおその成り行きは、いろんな観点から、流動的で、よく見定めてそしてものを考えていく必要があるのだという点では、私も大体同様な考えを持っているわけであります。  この国際情勢のそういう分析の問題に関連してなお一つお尋ねしてみたいと思うのは、ニクソンの訪中ということには、ベトナム問題というものの解決に資したいということ、アジアにおけるいろいろな立場からして一応緊張緩和というようなこともねらうということで、アメリカの経済的な面あるいはその他の面に貢献したいというねらいであることはむろんと思いまするけれども、先ほどもちょっと触れましたけれども、しからば一体、中国側のかなりこれに御執心であるところの胸算用は一体何であろうかという点でございます。私は、根本的には、アメリカはやはり解決すればベトナムから兵を引くんだ——これは最初中国では、ああいうことを言っているけれども、兵は引かないというような判断に立っていたのが、やっぱり引くらしいということが、これは中国側がいろいろ問題を考えていく一つの大きな要素であろうと思います。次にはソ連、つまり、アジアの問題に対してアメリカの引いたあとにソ連がいろいろ出てこようということも考えているようであるし、中国というものを包囲しようというような動きもあるというようなことで、中国側としては、自分でむしろソ連に対抗してやはり発言権というものを確保する、場合によっては、ソ連というものをできるだけ手を縛って締め出すというような考慮も私は持っているんだろう、こう思います。それに、台湾問題についても、いろいろな面からこの際きっかけをつくろうということもいろいろあるでしょう。また、日米間の問題について、この際一つのくさびというか、何らかの将来へのいわば布石をひとつやっておきたいという考慮もこれはあると思う。ここら辺の点について、外務大臣は、中国側の胸算用、これは今後の情勢を見ていく上にわりあいに大事な点だとこう思うので、何か、差しつかえない範囲で、こういう点で自分はこういうふうに見ているというような情勢判断の見解がございましたら、ここでひとつお聞かせおきをいただきたいと思うのです。
  170. 福田赳夫

    福田国務大臣 今日の世界情勢下におきまして、特に中国が国連に加盟をするという事態になりました後におきまして、中国がどういうふうな考えをもって世界に臨もうとしておるのか、また、特にわが日本に対してどういう接触を持とうとする考えであるか、その辺につきましては、私は私なりにいろいろと観察もし検討もいたしておるわけです。しかし、これは、山田さん、あなたはまあ外交の大先生でありまして、そういうことを私がかような席で申し述べる、それがいかなる影響を及ぼすか、ことに日中関係きわめてデリケートな際に、中国問題について私が私の見方を開陳するということがいかなる影響を持つか、こういうことにつきましてはまあ十分御理解を得られると思いますので、失礼でございますが、この点は省かしていただきたいと存じます。
  171. 山田久就

    ○山田(久)委員 それでは、この沖繩問題に関連いたしまして、御承知のように、まだベトナムの問題も根本的には解決していないという状況でありまするので、例のニクソン声明にも関連しての、いわゆる再協議といいますか、そういう重要な問題がありまするけれども、これは後日あらためてひとつ総理に直接その点についての御意見をお伺いするということにいたしまして、私の質問は本日はこの程度でとどめさせていただきたいと思います。(拍手)
  172. 櫻内義雄

    櫻内委員長 ただいまの山田委員の発言は、委員長了承いたしました。  大出俊君。
  173. 大出俊

    大出委員 先ほど決着のつかぬままになりましたのですが、私は、やはり地元の皆さん、つまり沖繩皆さんが、四半世紀長らく御苦労なさっての上のことでございますだけに、あるいは皆さんからごらんになって、実態に即しております関係でいささか執拗という感じをおとりになるかもしれませんけれども、実は深刻な問題が現地にはありますから承っておりますので、ぜひこれについても明快な御答弁を賜わりたいのです。  特にこのAリスト等の基地リストは動かないものだというたび重なっての御答弁があるのでありますけれども、私はやはり、いままでの論議だけで見ましても、私ここにまだ六つ七つ似たような問題を持っておりまして、一例だけあげたのですけれども、動かさぬものだというふうに断定的に御答弁が出てまいりますと、動かしていただかなければならぬという論議をどうしてもひとつしなければならぬことになると思うのであります。したがって、そこのところをもう一ぺん念のために承りたいのでございますが、動かさないものだという断定を頭から押しつけるという気持ちがまだおありになるのかどうか、しかと承っておきたいのであります。
  174. 福田赳夫

    福田国務大臣 まだそういう考え方をとっております。つまり、Aリストには、個々の訓練場とか演習場とか、いろんな土地、施設をかかえております。そして、それを名前で呼びますと一応区域がわかるわけです。その一応わかった区域の範囲内において日米合同委員会で具体的な決定をする、こういうことになっておりますので、内容は多少引っ込むということはありますが、しかし、そのA表の基地の配列、これは変わりません、こういうことでございます。
  175. 大出俊

    大出委員 じゃ、ここで一ぺん統一見解なるものをお聞かせをいただいて、その上にさしていただきたいと思います。
  176. 福田赳夫

    福田国務大臣 施設庁長官からお答え申し上げます。
  177. 島田豊

    島田(豊)政府委員 沖繩におきます米軍の一時使用訓練場の性格について、政府見解を申し上げます。  いわゆる一時使用訓練場にかかる市町村長の使用許可は、おおむね米会計年度ごとに更新されております。米軍は、一年を通じ訓練のために実際に使用した日数に応じて対価を支払うほか、その使用の直接の結果として何らかの損害を与えた場合は、これに対して正当な賠償を支払うこととされております。このような土地の一時使用につきましては、市町村長の授権または許可というような区々の表現がとられておりますけれども、これを法的に見れば、私有地については、市町村長を代理人とする地主と米軍の間の土地使用に関する契約であると観念すべきものでございます。この使用にかかる対価につきましては、補償金なる表現がとられておりますけれども、法的には借料と見るべきものと解されます。右のことは、市町村長が米軍に与えております土地使用許可証において、関係地主にかわり、また彼らの代表として米軍土地使用に同意し、許可するとあるところからも明らかであると考えられます。  以上でございます。
  178. 大出俊

    大出委員 この点は、いまそこに私のほうの委員の中にも御存じのとおり法律を専門になさっている方々が何人かおいでになります。許可即契約であるというこの論法に対しましては、真正面から大きな反論がございます。かつまた、琉球政府見解を読み上げましたが、そこまで私まだこの間は触れておりませんが、こういうふうにここに琉政の見解が述べられておりますが、この返還協定の付属文書一つである了解覚書中A表に記載されている七つの訓練場は上記軍用地には該当しない。一九五八年十月二十八日特別委員会琉米両側委員間の同意事項についての同意事項及び同委員会の報告書を承認した一九五八年十一月三日の第五回土地政策会議の共同声明により、関係市町村長の許可書の入手によって、演習地域として使用されることになっている。そこで、しかしこれについては、一、関係市町村長において、個人有地及び字有地をも含めて、米軍に対する使用許可権があるかいなかについて、法制上多分に疑義がある。これはどういうことかといいますと、委任行為というんだけれども、手続も何もとられていない。字有地なんか全然ありません。そういうふうなこれは歴史的な慣行でありまして、地元の皆さんが長らく運営をしてまいりました結果から見て、相手方もその意思がない、こちら側もその意思がない。いわば黙認耕作地と同じ意味における便宜的許可である。契約ではない。こういう見解が実は琉政の見解であります。したがいまして、いまの統一見解とおっしゃるわけでありますが、まっこうからこれは見解が異なっている。こういう実は事情にございます。したがいまして、これをここで詰めようということになりますと、実は多少の時間はいただきませんと詰め切れないわけであります。私は実は関連質問等もございますけれども、この点については保留をさしていただいて、なおこの委員会の進行の過程におきまして、いずれのところかでひとつもっと詰めた議論を資料に基づきましてさしていただきたいと思います。いまここでやりますと全く時間がなくなると思いますので、そういうふうにさしていただきたいと思うのであります。  あわせて、いま読み上げられました点は口頭でございますので、ひとつそれを文書にしていただきましていただきたいと思うのでありますが、読み上げたものでございますので、その御配慮は賜わりたいと存じます。  そこで、先ほどの点については、何かその後御相談の上で御見解があれば、この際あわせて承っておきたいと思うのでありますが……。
  179. 島田豊

    島田(豊)政府委員 事実関係でございますが、まず、安波訓練場には御指摘の部落は含まれておらないということが第一点でございます。  それから、先ほど申し上げましたように、安波訓練場には民・公有地の部分と国有地の部分がございます。民・公有地は村長の使用許可により使用するたてまえとなっております。ただし、昭和四十六年七月一日以降、使用許可は出されておらないということでございます。  国有地につきましては、米国の施政権下にございますので、布告第七号、「財産の管理」により、民政府財産管理官の割り当てにより使用することとなっておりまして、実際にも使用してきたものでございます。  安波訓練場にある国有地は、戦前より国有地でございまして、戦時中国家総動員法により国有地としたものではない、かように承知をいたしております。  以上でございます。
  180. 大出俊

    大出委員 いまの点も、先ほど私の申し上げました点と全く対立をする見解でございます。これまた、ここで詰めるとなりますと相当な時間がかかることになると思うのであります。私は、何よりもやはり長らく御苦労をかけている現地の沖繩県民の皆さんの立場というものがある、だからその上に立ってものを考えていただく必要がある、こういうふうに思っているわけでありまして、現地の琉球政府見解なり、米軍との長い間やってきているいろいろな立場がありまして、米軍見解なり、こういうものがございます。  私はここで、この間申し上げましたように、米軍との間で折衝されて皆さんAリストをおつくりになったわけでありまして、外務大臣の御答弁によれば、かくて、地図を含む資料を向こうから出させている、そうしておきめになった、こう言う。おきめになったやりとりを、やはりこれは資料出していただきたい。どういう資料を向こうから出したか。つまり、皆さんのほうはどういうふうに御主張になってAリストがきまったか、この点は私は出していただきたい。なぜかといいますと、現地の軍用地を扱う米軍のセクションは、地区工兵隊でございます。DEでございますが、こちら側は、この七つの訓練場はいわゆる軍用地の扱いを今日までしてきていなかった。これは長い間琉政との間に、いまの屋良さん以前からやりとりがずっとあったわけでありまして、いまだかつて一度も七つの訓練場については今日に至るもいわゆる軍用地の扱いをしていない。だから、先ほどお見せいたしました米軍用地地図におきましても、空軍なりあるいは海軍なりあるいは水陸両用部隊なりというふうに色分けを全部してあります。してありますが、七つの訓練場はすべて白紙であります。皆さんが交渉をおやりになる前の地図も、やっている最中の地図も、全部白紙でございまして、軍用地の扱いは米軍自体がいたしておりません。にもかかわらず、協定Aリストに七カ所の訓練場が載ったということになりますと、向こうはその気でないのになぜ載ったか。日本政府の側から、つまりこの七カ所の訓練場はAリストに入れてくれ。かくて備考欄に二4(b)——地位協定の二条四項(b)、つまり引き続き米軍が使っていくということにして、合同委員会で効力発生の日に手続が行なわれ、協定が結ばれたとたんに自衛隊に管理権が移る、七カ所は。もうこうなるとこれは許可ではない。許可期限が切れたからといって個人の所有権には戻ってこない。管理権は自衛隊にある、こういう結果になる。これが協定A表における七カ所の訓練場の扱いであります。いまならば、六月三十日をもって、毎年期限が切れれば、許可をしない限りは個人の所有地にそのまま残っており、字有地であり、部落有地であり、私有地なんです。ところが、このA表に基づいて効力発生の日に手続がとられれば、個人には返ってこない、あるいは部落有地とはならない。管理権は自衛隊にいってしまう。つまり自衛隊用地の先取り計画だと私は言いたいのであります。そういう性格のものでありますから、この問題はそう簡単に決着をつけるわけにいかない問題であります。  そこでこの際、いまの論点は、ひとつこの委員会の開会中いずれかで、いま私の申し上げた地図なり、先ほど大臣の持っておられた地図を含む区分等についても、私どもには資料をお出しいただかないのですから、あれさえお出しにならぬのですから、出していただいて、やりとりもひとつ資料出していただいて、その上であらためてその点の見解の相違については詰めさせていただきたい、こういうふうに思うわけであります。  そういう前提でひとつ承っておきたいことがあるのであります。ここに皆さん出しておられます公用地に関する法律等があります。これは向こうの委員会で論議をいたしますから、詳しくはそちらにゆだねますけれども、関連がありますので、ここで承っておきたいのであります。  私は、これを防衛庁からいただきましたが、沖繩における公用地等の暫定使用に関する法律案要綱というのがございます。要綱の三枚目をあけますと、うしろから五行目に——お勉強になっておられますのでおわかりいただけると思うのであります。これは皆さんからもいただいたのでありますが、この要綱に基づきまして三枚目をあけますと、「この法律の施行の際沖繩においてアメリカ合衆国の軍隊の用に供されている土地又は工作物で、次に掲げるもの」云々と、こうなっている。  さてそこで、まず一点承りますのは、これはアメリカ合衆国軍隊が復帰の前日まで適法かつ有効に使用してきている土地であるのかどうか、まず第一点、これを聞きたい。不当に占拠したなんということもあるわけでありますから、そういう意味で、まずその点を明確にしていただきたいのであります。
  181. 櫻内義雄

    櫻内委員長 答弁の前にちょっとお断わり申し上げます。  先ほどの大出委員のお申し出の資料の件は、理事会でのお話し合いもございますから、理事会の席上で協議をして、それを検討いたしたいと思います。
  182. 大出俊

    大出委員 了解いたしました。
  183. 西村直己

    西村(直)国務大臣 おっしゃるとおりであります。
  184. 大出俊

    大出委員 適法かつ有効に使用してきている土地、こういうことになりますと、「アメリカ合衆国の軍隊の用に供されている土地」、「供されている」、供されていたのではない。そうすると、「この法律の施行の際」と頭にかぶっている、この条文は。「施行の際」とは、一体効力発生の日をさすのかどうかという問題がある。まずこの点を明確にしていただきたいのであります。
  185. 島田豊

    島田(豊)政府委員 そのとおりでございます。
  186. 大出俊

    大出委員 だとすると、この前段でいっておる適法有効に使用してきている土地、「用に供されている土地」、供されていた土地ではない、「供されている土地」、「供されている」という時点は、法律の施行の際、つまり効力発生の日、いま御答弁がありました。四月になるのか、七月になるのか、それはわかりませんが、つまり、四月の一日なり、七月の一日なり、効力発生の日、こういう解釈になる。そのときに使用されている土地になる。統一見解の賛成反対はともかくといたしまして、扱い上そうなる。そうなると、問題は、今日、Aリストにあげてある七カ所のうち、許可をしていないところ、三つだけ申し上げますが、一つは瀬嵩第一、これは本年六月三十日更新を拒否いたしまして解約のままであります。私は七月二十三日に話してまいりましたが、先般連絡をいたしましたら、やはり今日も、ここは学校の建っている地域であり、かつまた、ここにもう一つ学校ができる。この地域でさんざ、時間外を含めましたたいへんな演習が行なわれまして、部落民のたいへんな反対が出てまいりまして、一切貸してはならないという部落の意思が決定されている。防衛庁皆さんなり民政府方々も含めてかもしれませんが、私どもが新聞でものを言いましてからたいへんな努力を続けられておられるようでありますけれども、何があっても断じて許可をいたしませんという回答でございました、数日前に。どんなことがあっても許可をしない部落のかたい意思決定であるという。そうすると、この瀬嵩第一は許可をする可能性はない。  もう一つ、東村の川田訓練場、これはすぐ上にベトナムに行くゲリラの訓練場がありまして、そこに上がっていく通行路にもなっている。しかし、これは明らかに村有地である、部落有地である。言いかえれば字有地でもある。ここは部落総会が開かれまして、皆さんはずいぶん、地元の方方をたよって、部落の中に、毎日毎日部落民が額を合わせて、ああでもない、こうでもないといって、部落会部落会で開かにゃならぬような騒ぎを起こされた。しかし、そのことをいまここでとやかくは申しませんが、結果的に、部落総会を十月の十日に開きまして、今後、小さな農道も含む部落内の演習を一切拒否する、このことを村長さん以下決定をして米軍に申し入れている。これは、通過だけさしてくれといって、実は通過だけではなしに、そこに天幕を張って、二日間米軍が野営をして演習をやった。この東村の川田訓練場の川田部落は、実はちょうど半分が私有地、個人有地になっている。パイン畑が至るところにできている。これをたいへん踏み荒らした。女子供も家から出られなかった。通過だけといって三拝九拝して頼んでおいて、この結果は何だということになって、断じて貸さない、部落総会でこれまた決定いたしております。これまた連絡をいたしましても、断じて貸す気はない、部落総会の満場一致の決定である、こうであります。  先ほどの国頭の安波訓練場、ここも皆さんがいろいろおやりになって、四千何百ドルも一ぺんに持っていって払っちゃったりするもんだから——補償金の倍額ぽんと払っちゃった。こんなに金が払えるんなら、初めから払えばいい。演習を三日間やって、部落の女子供が表に出られなかった、奥さんが働けなかったといったら、では休業補償一日四ドル、三日分出しましょうといって、総額ぽんと置いていっちゃった。こういう形をとっている上で、なおかつ、断じて部落には入れない、それだけを除いて許可をするならしてもいいという雰囲気が一つあった。ところが、実は部落だけどけてしまいますと、この安波訓練場のまん中ぐらいまでいっちまう、訓練場として使いものにならない、こういう現実もある。それらのことを踏まえまして、最終的にこの部落はどうなったかといいますと、皆さんのたいへんな努力にもかかわらず、貸さない、許可しない、こういうふうに最終的に固まった。これが国頭の安波訓練場であります。  この三カ所は、先ほど私が例をあげてお聞きいたしましたように、「用に供されている土地」、つまり「この法律の施行の際」「用に供されている土地」、三十日で期限が切れて、一日から許可をしていないこの三地域、用に供されてはいないという結果がこの法律の効力発生の日に出てきた場合に、あなた方はこの三地域についてどういう措置をお考えでございますか。この法律には該当しないはずであります。いかがでございますか。
  187. 西村直己

    西村(直)国務大臣 いま、三点、私もよく状況を聞いておりますが、復帰時点までに市町村長の一時使用のいわゆる使用許可がおりない場合、そういう一時使用訓練場の地域はこの法律案の対象からははずれるわけであります。
  188. 大出俊

    大出委員 明確な御答弁でございますが、対象からはずれる、つまり強制的に収用はできない、こういう結果になる。そうすると、許可が切れてしまっているのでありますから、これは明確に個人の所有地であり、部落有地であり、あるいは字有地であり村有地である、そういうことになる。そうすると、この返還協定Aリストというものの中に七カ所おあげになったのだが、あげた当時、この七カ所の中には許可のないものもあった。六年間も、ないものがあった。一ぺんも使っていないところもあった。久志訓練場なんというのはそうであります。七カ所あげた。たいへんこれは不用意なあげ方であり、当時すでに、東村においても国頭においても、あるいは瀬嵩第一においても、たいへん大きな、村じゅうあげての大騒ぎが起こっていて、現実米軍に補償請求をやっていた。貸さないという意思表示を部落会議がきめていた。そういう現実があるのに、何で一体この七カ所をリストに載せたかという点。だから、許可をしないという限り、いま申し上げた例を三カ所だけにしぼって考えましても、Aリストにあるこの三カ所は落書きであります。用をなさない。地元の皆さん気持ちからすれば、こういうものをすみやかにAリストから削除をして、落として、地元の方々に、御安心ください、たいへんな心配をかけて、夜の夜中まで——御存じのとおり、七時過ぎまで明るいのですから、野らに出て働いて七時過ぎる。家へ帰ってふろへ入ってめし食えば九時過ぎる。それから部落会議が開かれて十二時、一時、二時、そんなことを連日起こさせた責任というのは一体どこへいくのだということになる。そういう意味の政府責任を明確にしていただかぬと、地元の諸君は腹がいえない。明確にこれをAリストから削除していただきたい。いかがでございますか。
  189. 福田赳夫

    福田国務大臣 その点は、私ども頭の痛いところなんです。いませっかく米軍において契約の取りつけ方を努力いたしております。米軍においては何とか契約を取りつけたい、かように申しております。
  190. 大出俊

    大出委員 大臣、頭の痛いところだというお答えは率直な御答弁だと受け取ります。  ただし、問題は、米軍のほうから——私はさっきから資料出してくれと言っておるのは、現地の米軍から私は間接的に聞いたのでございますが、さすがに私が前に出て現地の米軍と渡り合うわけには、残念ながらいかない。かどが立つ。だから、いろんな方々を介して私は米軍の意思を聞いている。軍用地の扱いをしていない七カ所の訓練場、これは米軍側から入れてくれと言うたんじゃないと言っている。それはそうでしょう。米軍から言ったのなら二4(b)を認めはしない。このAリストの七カ所に限り、備考欄は二4(b)、地位協定二条4項(b)というのは、福田さんがおっしゃっている、合同委員会で効力発生の日にさっさっと一挙に結んでしまうという、このときに同時に二条4項(b)の協定ができ上がることになっている。そうならば、米軍が継続して使用というのは見せかけであって、効力の発生の日に自衛隊の管理になってしまう。そうでしょう。そうして、一定の期間ということで米軍に貸すことがあるということになる。そうでしょう。そういう形だからこそ、現地の諸君が、知らなかった皆さんですけれども、気がついて、これはたいへんなことになるということになってきているのです。こういう、米軍から言いもしないものを、あなた方のほうから自衛隊用地の先取り計画でものを言う。外務省のベースで、防衛庁のベースではない。そこまでわかっているのだ。施設庁は知らないのだけれども、聞かれればしようがないという。  そういうとんでもないことをやっているのですから、頭が痛いとおっしゃるなら、地元の皆さん気持ちを買って、すっきり削除して直してあげないのですか、あなたのほうは。沖繩皆さんの二十何年苦労された方々に対する、政府の当然とるべき方法です。外務省に承りたい。このやりとりの中には防衛庁はからんでいない。
  191. 福田赳夫

    福田国務大臣 どういう交渉であったか、その点をお尋ねなんですが、これは交渉の折衝に当たった吉野局長がおりますから、吉野局長のほうからお答え申し上げます。
  192. 吉野文六

    吉野政府委員 お答えいたします。  先ほど御指摘のとおり、この米軍の一時使用の土地は、先方のいわゆる基地の地図の中には載っておりません。しかしながら、先方は、一時使用として、毎年現地の市町村長の許可証を得て使用していたわけでございます。そして彼らは今後も引き続きこれを使用したいということを強く主張をいたしまして、われわれはこれといろいろ交渉したわけでございますが、いずれにせよ、最終的な解決としては、たとえば奥というような同じ種類の基地もございました。しかし、これは先方はあきらめました。そうして結局、残る四カ所につきまして交渉した次第でございます。このうちの一カ所につきましては、屋嘉につきましてはすでに市町村長の許可がございますから、法律上はこれによって引き続き使用することになるわけでございますが、残りの基地につきましては、さらに米軍が現地の市町村長と交渉中だとわれわれは承知しております。  なお、なぜこれを二4(b)としたかと申しますと、これはあくまでも米軍が一年に十日ないし、あるいは三日四日、このくらいの日に使う、こういうことでございまして、何も一年間引き続き使うわけではございません。ところが、これは、このような使用ぶりでありましても、現在の地位協定といたしましては、法体系上、これは二4(b)というような形で許容する以外には、われわれとしては提供の方法がないわけでございます。したがって、二4(b)という形で提供する、こういうことでございます。  これは何も自衛隊が先取りするとか、あるいはそのあと使うとかいうこととは、全然関係ございません。これは政府が使用権をこの間において取得して、そうして先方に提供する、こういうことになるわけでございますが、しかしながら、先ほど御説明したとおり、もし米側が引き続き許可証をとり得ないならば、先ほどの暫定土地使用法ではとれない、こういうことになるわけでございます。
  193. 大出俊

    大出委員 いまの御答弁の中からも一点はっきりしたことは、現に使用しているというかっこうになっておりますから、許可証をとり得ないのであれば使用できない、二4(b)の適用ももちろんできない、この点は明確ですから、落ちる。福田外務大臣が頭の痛いところとおっしゃっているように、適用できない。つまり、あくまでも地元の皆さん個々人の所有地であり、村有地、部落有地、字有地であるそのままでいく。このA表からははずれる。だから、私はこれを削除せいと言うのでありますが、いまの局長答弁からするならば、まことに奇怪な話で、政府が預かっている——政府のどこが一体預かるのですか。  そこまで言えばきりがありません。ありませんが、いまの点はそこで切りますが、いま出た話の中に、奥訓練場という話が出てきた。ごまかしてはいけない。奥なんかほとんど使っていない。奥だけではない。第二瀬嵩訓練場だって使っていないから、使わないということになった。だから、七カ所だって、一日か二日しか使っていないのだから、そんなものは断わればいい。奥訓練場ははげ山だから言いますけれども、C表の中で返ってくるのは何と千五百万坪、坪数にして返ってくることになっているけれども、いま話の出た奥訓練場だけ一つで千百万坪ある。そうすると、C表は千五百万坪返ってくると大きなことを言うけれども、奥訓練場というとんでもないはげ山だけで千百万坪あるのだから、残りは四百万坪しかないのだ、C表なんというものは。まだその中に瀬嵩第二も入っている。C表もきわめてでたらめであります。  いまの点については、このCリストも含めまして、どれもこれもきわめてでたらめであります。私は、その点について皆さん方が現地ということをお考えになるならば、直すべきものは直す、この姿勢はあると思うのでありますが、ここで総理からひとつ御答弁をいただいておきたいのであります。
  194. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 返還の際に、これらの諸問題、いろいろ問題ございますが、これらをできるだけ現地の同胞の要望にこたえるようにいたしたい、その方向で最善の努力をすることを、この機会にはっきり申し上げておきます。
  195. 大出俊

    大出委員 それでは、先ほど来、私幾つか申し上げましたが、見解の相違いたします点は見解の相違ということにしていただきまして、どうしてもこのままで捨ておける筋合いものではございませんから、総理も、だんだんお聞きをいただきましておわかりをいただいていると思います。したがいまして、そういう点につきましては、ひとつこの委員会経過をながめまして、いずれかで提起をさしていただきたいと思います。  以上をもって終わります。
  196. 櫻内義雄

    櫻内委員長 松本七郎君。
  197. 松本七郎

    松本(七)委員 久しぶりの質問でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  私は、この質問を展開するにあたりまして、どういう観点、どういう立場かという、おもな私どもの基本的な観点をまず明らかにしておきたいと思います。  佐藤総理は、かつて、沖繩返還なくして戦後は終わらないということを言われました。確かに、日本の戦後の外交課題の中で、沖繩の施政権返還というものはきわめて大きな、意義深い問題だと思います。しかし、その背景になっておる一昨年十一月の共同声明、これが基礎になっておるという今回の協定文の前文の趣旨から考えましても、また、最近の中国の世界政治におけるきわめて大きな動きにかんがみてみましても、ほんとうに戦後が終わるのは、私は日中国交回復が実現した時点だと思います。したがいまして、この協定の審議にあたっての第一の立場、第一の観点は、やはりこの沖繩協定をめぐる諸問題がすでに日中の問題と表裏をなした観点からとらえられて初めて真の評価ができるという、こういう立場が第一であります。  第二は、国際問題、外交問題は、当面の目先のことばかりではなしに、遠い将来を展望したその展望の中に立って処理されなければならないという観点であります。  このことは、きょう山田さんの外務大臣との質疑応答の中にもちょっと出たのであります。当時の吉田総理の苦労話も出ました。吉田茂総理あるいは外務大臣は、われわれと基本的な立場に大きな相違がありました。戦後の処理についても大きな相違がありました。しかし、さすがにあの国際的な感覚と申しますか、あとで触れまするが、やはりいずれは、中国の正統政府をいずれにするか、はっきりした選択の時期を持なければならぬという一応の先見を持ちながら処理をされたということについては、私は大きな敬意を表しているところであります。  今回、この歴史的に重要な意義を持つ沖繩返還協定を審議する際にも、私は佐藤総理に望むのは、やはりこのように、あなたの大先輩であり、そうして吉田学校の校長さんでもあるこの吉田茂さんのような長期の展望に立って、これを国益に踏まえながら対処をしていくというこの姿勢が大事ではないか、これが私が質問をする第二の観点であります。  第三は、私は、今日、もちろん沖繩施政権返還協定をめぐる審議ばかりではありませんが、全体に議会制民主主義というものが重大な危機に際会しておるのではないかと思います。このことは、議会制民主主義を守るという与野党共通した立場、この立場に立った場合に、国会における審議のやり方ということも、この議会制民主主義を守る上からは非常に大切な要素になっておるのではないか。私どもがこの国会の審議について真剣に考え、善処するのでなければ、私は、国民の議会に対する信頼はだんだんと地に落ちていき、やがては、私どもが共通の力で守ろうとしておるところの議会制民主主義の重大な危機におちいるであろうということを心配するものであります。これが、私がこの質問を展開するにあたっての第三の観点でございます。  この点をよく踏まえていただくならば、私は、佐藤総理答弁についてもここで十分反省をしていただき、そして今後展開される——前回から大出氏から基地の問題をずいぶん鋭く追及をされました。しかし、大出氏自身も指摘しておるように、基地問題はまだ七つも八つも問題点がある。前回から出た問題は、その一点、一角にすぎない。そうして、その政府側の答弁もしどろもどろ。これからの沖繩審議を深めていくために重要なことは、何と言っても——いろいろ立場の相違からもの別れになる議論も、それは展開されるでしょう。平行線をたどる議論も、それはあるでしょう。しかし、いままでの安保や、あるいは日韓や、あるいはベトナム審議、これと一番大きく違っておるのは、過去の場合には、外国の実態をここで明らかにするということはきわめて困難な事情にありました。しかし、今回は日本の領土であり、そして、いよいよこれから施政権が日本に返ろうという、その沖繩の実態をあいまいのままで、私は審議をうやむやにするわけにはいかないと思います。したがって、これからの審議は、この沖繩の実態を、与党ばかりではない、政府ばかりではない、われわれ与党と対決し対立しておる立場にある野党も、それぞれの立場から真剣に調査に取り組んできたところです。したがって、お互い調査した材料をできるだけここにたくさん提供する、そうしてそれに基づいて、最も実態に即しながらお互いの議論を展開し審議を尽くすということが、一番大切ではないかと思います。このことをよくひとつ踏まえて今後の答弁に当たっていただきたい。これは私の最大の冒頭のお願いであります。  少しお耳は痛いかもしれません。しかし、最近の報道関係者の批評を問いてみますと、まあ池田内閣当時までは、どうにかこうにか答弁というものに何らかの建設的な意味を感ずることができた。しかし、最近は逃げの一手、あるいは困ったときにはごまかし、これ以外の何ものでもないというのが、残念ながら報道陣におけるあなた方の答弁の評価ですよ。これはあなたは心外に思われるかもしれぬ。そういう覚えがないと言われるかもしれません。しかし、残念ながら、私もそういう感を非常に強くするのです。(「具体的にやりなさい」と呼ぶ者あり)具体的にやりますよ。ゆっくり待ってろ。そんなに急ぐな。茶々を入れると、こちらもそっちへ向かってものを言わなければならなくなる。せっかく佐藤総理と……
  198. 櫻内義雄

    櫻内委員長 私語をしないようにお願いいたします。
  199. 松本七郎

    松本(七)委員 私語は、向こうを禁じてください。何を言っているんだ。
  200. 櫻内義雄

    櫻内委員長 両方に言っている。
  201. 松本七郎

    松本(七)委員 静粛にさせるのが委員長の任務だ。
  202. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御静粛に願います。
  203. 松本七郎

    松本(七)委員 さっきから委員長の運営を見ていると、大体だらしがなさすぎる。
  204. 櫻内義雄

    櫻内委員長 緊張しております。
  205. 松本七郎

    松本(七)委員 私は、この答弁の問題だけではないと思います。もっともっと、この議会制民主主義を守ろうという観点から、取り組むべき問題はたくさんあると思うのです。いま自民党の中で、木村武雄さん方が中心になって官僚主義反対運動が起こっておるでしょう。これも私は重視すべきだと思うのです。聞くところによると、もう百五十名以上、自民党の議員で賛成者がいるそうです。(「わしも入っておるぞ」と呼ぶ者あり)ああ、そうですか。私はこれはたいへん注目すべきことだと思います。  それで、先ほどから具体的な例をあげろと言われましたから、たくさんありますが、二、三あげたいと思うのです。  まず、先般の本会議におけるわが党石橋誤記長の質問に対するあなたの答弁。石橋書記長が、平和条約第三条のいわゆる信託統治の問題、施政権返還問題に触れられて、あたかも領土が返ってきたように総理大臣は以前から何回も言っておった。しかし、これは大きな間違いであって、施政権の返還と領土権というものを混同しておるのではないか、こういう趣旨質問をしました。あなた、何とあのとき答弁しましたか。全然答弁していない。そして、むしろ切り返すような態度で、いま施政権が返ろうというときに領土をどうのこうの言うよりも、そういうことばの争いをやるよりも——という意味でしょう、おそらく——施政権が返ること自体を問題にすべきじゃないか、こういう答弁をされております。私は、これは非常に軽率だと思うのです。軽率というよりも、むしろ意図的にそういう答弁をしたのではないかと疑わざるを得ないのです。  なぜ私がこのことをそれほど重視するかを、いま少し申し上げたいと思うのです。  先ほど福田外務大臣は、山田さんとのやりとりで、やはりそれと同じようなことを言われた。あなた、もう忘れたでしょう。このごろはもの忘れがたいへんいいから。一つの国から他の国に領土を平和的に移すと言ったじゃないですか。何だったら速記を調べてきてごらんなさい。そう言ったあとで、あなたはちょっと総理大臣と違っていた。それは総理大臣答弁が間違いだということに気づいたから、あなたが訂正する意味でそういうふうにつけ足したのかもしれません。あとで、正確に言えば領土ではなくて施政権の返還です、こう言いましたよ。確かにあなたは注釈をつけました。けれども、その前に言った、一国から他の国に平和的に領土が移るという表現そのものに、実は私は問題があると思うのですよ。  それは、総理大臣も長年苦労されて、そして施政権返還のこういう交渉をやられて協定をまとめた。だから、国民にわかりやすく、施政権の返還について、俗なことばで、領土が平和的に返る、こういう気持ちで言われる。その気持ちはわかりますよ。けれども、私が言いたいのは、このことが決してそういった安易な気持ちで取り上げられてはならない問題を、私どもは実は以前から感じておったのです。それは、最近でこそアメリカの議会の証言で、これは決して領土権の問題ではなくて、施政権が返るにすぎないということを、首脳部も言っております。けれども、長い間——アメリカのごく一部は別ですよ。あの無理な規定を挿入することを決断したダレスその他の一部の人は別でしょうけれども、大部分は、アメリカの政治家連中でも領土だと思っていたんですよ。アメリカの領土だと思っている発言が一ぱいあるのです。  一番身近な具体的な例は、わが党の佐々木委員長時代、私はちょうど国際局長をやっておりまして、一緒にアメリカ大使館にライシャワー大使に会いに行きました。ライシャワー大使といえば、むしろアメリカ人の中でも親日家の一人です。ここで私どもは、沖繩の問題やその他をやりとりしていました。ライシャワー大使が何と言ったか。沖繩はアメリカの領土だと言ったのです。私はそれははっとしました。ライシャワーにしてこういう認識なんです。そこで、私はそのときにすぐ、これはあなたのたいへんな間違いなんだ——ライシャワーにですよ。平和条約三条には、領土権はちゃんと日本にあるということが、あれを読めば一目りょう然、施政権だけがこの信託条項とかね合いの中でアメリカに確保するということになっておるんだと指摘しましたところが、わざわざライシャワー大使はそのときに条約集をとりに行きましたよ。そこでああそうだったということさえ言えない。条約集をとってきて調べて、第三条を見て、なるほど、あなたの言うとおりでしたと、こう言いました。私は、これはいかにこの第三条というものが挿入当時から欺瞞的なものであったか、あの当時からの問題の本質というものをいやというほど、私はこのライシャワーの態度、ライシャワーの発言によって知らされたのです。  当時、これは放置すべき問題ではない。大統領というかアメリカの国の代表ですよ。大使は国を代表するものです。それがそういう発言をしたということは、大統領に対してもこのライシャワー発言を持ち出してそしてこれを問題にすべきだということを党で協議しました。しかし、当時のあの状態の中でまあそこまでやるのは無理だろうというので、私どもの党では、やむなく公開質問状という形をもってアメリカの大統領に抗議をしたにとどまりました。  それからずっと私は、この第三条をどう扱えば——このように、アメリカの大使さえ、沖繩はアメリカの領土だと考え込んでおる。こういうアメリカを向こうに回して、ほんとうに国益に合致した返還協定を結ぼうとすれば、これはよほどの覚悟がなければならない。私どものかねがねの主張はやはり正しいのだということを、もう一度ここで考えさせられました。  そして、考えてみればその機会はあったはずです。第三条というのは、政府はずっと、これが合法的だ、効力は存続しておるという立場を継続して今日まできました。しかし、もうこれは何度も議論されたことではありますけれども、いまのライシャワー大使の発言を通じてもわかるように、アメリカは軍事占領を続けよう、あるいは、あわよくばアメリカの領土にしたかったのです。けれども、あのカイロ宣言やポツダム宣言その他の条項に照らせば、それはできない。そして、信託統治にすることは不可能なような規定であることがわかっておりながら、あのような条項を挿入することによって永久占領をはかったのです。軍事占領の継続を策したわけです。この根本的なアメリカの対沖繩の態度、日本の講和に臨む態度というものを、誠心誠意、日本の国民の立場に立ってしっかり把握しているならば、当然、私は、日本が国連に参加したときに、国連の加盟国になった日本の領土を、一部であってもこれを信託統治にするということは完全に無効であるという運動を、なぜ国連の場で展開しなかったのでしょうか。そういう国際的な正義に基づいた運動が展開され、それを背景にして施政権の返還というものが交渉されて初めて、私は、今日見られるようなあのような屈辱的なものでない協定に到達することができると思うのです。この点についての反省を私はこの際もう一度佐藤総理から聞きたい。それが第一点ですが、あなたの心境を披瀝してもらいたい。
  206. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えをいたします。  私も、別に逃げの答弁をしたり、あるいはごまかしの答弁——聡明な皆さん方ですから、私などからとてもごまかされるようなはずじゃございませんで、そのことは、新聞が何と言おうと、私もさようには思いません。また、厳粛なる意味で、国会の審議、これを通じて、ただいま沖繩の施政権を——外国の施政権下で苦しんでおる百万同胞をあたたかく迎えようという返還協定、その御審議を願っておるのでございますから、ただいま御指摘にあるとおり私も考えております。  ところで、過去なぜこれをやらなかったかと、こう言っておしかりでございました。どうもまことに残念ながら過去においてそういうことができなかった。今日考えてみると、いわゆる信託統治、そういうものに触れないことがやはりけっこうなことで、早く返ってくる、そういうことにつながるのではないかと私はいま考えておりまして、過去のことをいろんな批判があると思いますが、これから先、残されたその状態では、われわれは一日も早く沖繩の祖国復帰を実現することじゃないか、かように思います。理論的にはいろんな御議論があり、また御不満もおありでございましょう。しかし、われわれが沖繩県同胞の熱願、同時にまた同胞の熱願、これを一日も早く実現すること、それについてただいま御審議をいただいておりますから、私はそういう方向で最善を尽くしてまいりたい、かように思います。おしかりはおしかりとして、これまた十分反省してまいります。
  207. 松本七郎

    松本(七)委員 この同胞のためにも早く施政権が返ることが大事だという、それはもう一貫した政府の立場でございますが、その協定の内容を、あるいはいまの沖繩の実態というものを、国会を通じて国民の前に明らかにしていく。そして、いま私どもに言わせるならば、この協定の内容なり実態が明らかになればなるほど、多少おくれることがあっても、もう少し前向きのものが獲得できる協定でないと、日本の国益にも一致しないではないか、こういう意見になってくると思うのですね、審議の過程でいろんな問題が出れば。政府のほうは、いや、この程度なら、一日も早い施政権返還のほうを選んだほうがよろしいという立場になってくると思うのです。だから、その場合に、国民のほうを向いて、国会の答弁のやりとりでどうこうというのではなしに、やはり国民大衆の最後の審判を仰ぐという意味で、この沖繩の実態なり両者の言い分というものをできるだけ国会を通じて明らかにしていくというのが、この国会の私どもに課せられた最大の使命だと思うのですよ。そういう意味で、さっき、この領土云々の、施政権のあなたの答弁を問題にしたのです。  いま確かに、世間では、やはりあなたの言うとおりです。やはり早く返ってきたほうがいいじゃないか。それが、施政権ということばを使う人はあまりいないです。私の友人なんかでも、施政権という理解をしている人がほとんどいない。大部分が、領土と、こう言っていますね。これは、先ほど指摘したようなアメリカの態度が自然に日本の中にも流れてきますから、これはもう領土をとられているんだというような気分を持っておった人が多数いると思いますよ。けれども、責任のある立場にある政府が、わざわざその俗耳に入りやすいようなことばで、領土が平和的に返るんだ、返るんだと、こうあまりに強調することが、私は、意図的にそういう空気をつくる前々の工作のような疑惑を持つわけです。持っているんだ、現に。そうでしょう。わかるでしょう、それは。客観的にはそうなっているんです。そうなっているんですよ。そのことが今度は——まだ大出質問では氷山の一角、基地の問題でも。そのぐらいしか出ておらないのに、ニュースの解説なんか聞いてごらんなさい、もうあたかも国会の審議では問題点全部出たかのごとく放送していますよ。そうすると、もうあとは、いつ採決があるかなんて、そういうことが問題の焦点だなんていう、そういう報道までなされておる。それは、全体の国会の審議を見守る国民の気持ちというものを、だんだんだんだん政府ペースのほうに引っぱり込まれてしまうんじゃないか、そういう危険があるでしょう。それはあなたも認めるでしょう。だから、川崎寛治君が、強行採決の問題を、この間、委員会の冒頭に出しましたよ。あのときに総理大臣は何と答弁しました。(発言する者あり)それが、あなた、少しおかしいんだ。
  208. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御静粛に願います。
  209. 松本七郎

    松本(七)委員 あなたはあれと同じことを言った、あのときに。それは国会でやることだ、こう言われた。これは私は間違っていると思います、その態度は。間違っていると思うんです。それは間違っている。それはアメリカのように完全な三権分立なら別ですよ。あなたは国会に議席を持っている。国会の議決によって総理大臣になっている。議院内閣制をとっている。そういう立場で、しかも法制局長官以外は、全員が国会議員としての身分を持っているわけです。ですから、総裁として、そして総理大臣が、当然、議会の運営についても大きな関心を持ち、また積極的に協力するのが、私は、民主的な審議を徹底する上には大事なことだと思うのですが、どうでしょうか、その点は。
  210. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国会が民主的に運営される、これはもうもちろんでございます。また私は、総理だからそんなものは知らぬ、かような逃げ口上は申しません。私も一党の総裁でございます。したがって、与党の国会の活動についても全責任を持っている。そういう立場にございますから、さようないいかげんなことはしたくはございません。民主主義にはそれぞれルールがございますから、それぞれのルールに従ってそういうものは最終的には決定される、これだけは申し上げておきます。  ところで、先ほど来、新聞がどうこうおっしゃるけれども、私は新聞をあえて非難するわけじゃありませんが、どうもやや先ばしっている新聞記事、そういうものがあるのじゃないかしら、それがたいへん松本さんをいら立たしている。私はたいへん残念に思います。まだいま審議している最中でございます。だから、そういう点は別に——この国会がいつ結論を出すか、そういうようなことは皆さん方国会議員の手にあるのですから、これは新聞でどう予測しようと、そういうことはあまり気になさらないで、私どもとともども、落ちついてひとつ審議しようじゃございませんか。これはひとつ私はお願いをします。どうぞよろしく。
  211. 松本七郎

    松本(七)委員 それがほんとうにそのとおり実行されれば、私はたいへんけっこうなことだと思います。ただ、私が心配するのは、それは新聞の動向を気にするなと言われるけれども、やっぱり新聞のそういう解説なり記事というものは、ある程度自民党の内部の、あるいは首脳部の動きというものを取材して後の報道なんですよ、これは。そう言われるけれども、新聞はどう書こうが、わが道を行きさえすればいいというふうにいかない経験を私どもは持っているわけですよ。あの安保のときでもそうです。あのときは、国内関係法はほとんど審議していないです。わざわざ私どもは、この安保条約そのものに関する点でも、問題点で審議不十分な点をずっと拾って表にしました。国内法関係には全然触れてなかった。当時は、なくなられた椎熊三郎さんと私はずいぶんこの点やり合いましたよ。先ほど私が冒頭に言ったように、将来の日本の議会制民主主義を強化していこうという観点からは、お互いが審議をほんとうに尽くす、この点で協力する以外にないということを申し合わせたことがあります。椎熊さんも当時それには大賛成でしたよ。賛成してくれて、しかも努力もしてくれたと思います。けれども、あそこから入ってきて扇子一本でサインを下して、そして質疑打ち切りをやった。横路さんのおやじさんがここに立っていたんじゃないですか。立った瞬間に質疑打ち切りをやって、強行採決をやったじゃないですか。椎熊三郎さんが当時嘆いた。自分はそういうふうに民主的な審議をやろうと努力したけれども、結局、自民党の国会対策という最高の方針でそれは圧殺されてしまったのですよ、その良識は。日韓会談のときの審議もそうですよ。園田直さんが私とやり合いましたよ。絶対にないという保証を彼はしたのですよ。しかも国会対策の方針でその意見は踏みにじられておりますよ。だから、報道がどうであろうが、そういうことは意に介する必要はないと言われるけれども、私どもはあの当時の経験から、やはり報道人の取材しておるものは、ある程度客観的な事実としてそういう動きがあるということは物語っていると思うのです。それを無視することには私どもは絶対に反対です。  では、ひとつ率直に伺いましょう。  いま大方のやり方、これは条約審議のとき、いつも、従来からそうでしょう、参議院の三十日間の審議というものをあらかじめとって、そうして逆算して衆議院の日程をきめる。これは私は根本的に間違っていると思うのです。おそらく理事会でもわが党からそれを主張していると思います。もう少しそういうやり方をこの際改めるということが、やはり民主的審議を実質的に確保する具体的な道だと思うのです。その点に対する意見を、総裁としてひとつ聞かせてください。
  212. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 総裁としてお答えをいたしますが、その点は、議運でも十分議論がかわされておるのではないでしょうか。私は、そういうことこそ、この委員会で御審議される——これはしちゃいかぬとは申しませんよ。また誤解されると困りますからね。けれども、そういうことは、やはり専門的には議院運営委員会で十分各党の意見がかわされておる、かように私は思っております。私は、そういうことで十分ではない、だろうか、かように思います。
  213. 松本七郎

    松本(七)委員 議院運営委員会を中心で協議するということは筋ですし、それを否定するものじゃない。それは大いにやってもらわなければならないけれども、しかし、本来の筋論から、総裁として、あるいは国会議員として、総理大臣として、この重要な審議にあたっては、この根本問題について一応積極的な意見を持ってしかるべきじゃないでしょうか。ただ議運にまかしておいていいということで済まされるところに、私は、ほんとうに国民のほうを向いていない、もう少し国民の側を向いた態度というものがほしいという気持ちからこれを言っているのです。
  214. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 冒頭に長く松本君から御訓示をいただきました。私は、その中で、われわれは議会制民主主義を守る、このことをはっきり申しました。私は一党の総裁だから、総裁としてもそれを忠実に守ります、総理という立場じゃございません、こうまでつけ加えて、はっきり申し上げたのです。それでもなおかつまだ不足ですか。これだけはっきりしたことを申し上げております。そういう点は、私、十分責任をもって議連の諸君にも注文をつけております。どうかよろしく。
  215. 松本七郎

    松本(七)委員 それではそのことは信用しましょう。そうして、先ほど言われたように、審議についてはまだ序の口とは、あなたは言われなかったけれども、そういう採決のような段階じゃないということも言われたし、それから、理事長をもって任じておる福永さんも、NHKの放送討論会で、強行採決はしないと言明されておりますから、そういう線でひとつ今後の審議を進めてもらうことを強く要望しておきます。  ちょっと一つだけつけ加えておきます。  ただ、心配なのは議長の態度なんですよ。船田議長——議長といえば国会の最高の権威ですよ。(発言する者あり)そういうことを言うから困るのよ。みんなが議長の態度を監視すべき任務を持っているのじゃないか。(発言する者あり)すべて議長にまかせるのか、君は。  十三日の正午、名古屋で、来週には決着をつけるということを船田議長は公に言っていますよ。そういうことを議運にもはからないで——あなた、議運、議運と言ったじゃないですか。議運にもはからずに、それから、この審議状況がまだ今日の段階である、本会議でやっと終わっただけ、それだけ見て議長はこういう発言を公にするというのは、不謹慎じゃないですか、これは。どう思いますか。
  216. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 申すまでもなく、議長、最高裁長官総理、これはもう三最高機関といわれております。だから、議長を私はとやかく批判することはいかがかと思いますので、これは差し控えさせていただきます。  それから、やはり議長は、どこまでも民主主義を守る、議会制民主主義を守る、その立場にある方だ、かように私は信じておりますから、これが私の答えだ、かようにお聞き取りいただきたい。
  217. 櫻内義雄

    櫻内委員長 委員の皆さんに申し上げます。  先ほどから私語が多いようでございますので、自粛をしていただきたいと思います。
  218. 松本七郎

    松本(七)委員 委員長もお聞きのように、総理大臣も、十分な審議をするということを再三言われておるのですから、さっき私が具体的に出した問題、つまり参議院の三十日を確保して、あとの中でやろうという、このやり方を根本的に再検討するという問題は、十分ひとつ理事会で協議してください。そのことをあなたに特に強く要求しておきます。
  219. 櫻内義雄

    櫻内委員長 松本君の御意見は尊重して、理事会でよく協議をいたします。
  220. 松本七郎

    松本(七)委員 それからその次は、これも本会議で、再交渉問題ですね、これはもうたびたび、いまの段階でわかっておる沖繩の実態なり、それから協定の内容からいっても、これは再交渉すべきではないかという議論がだいぶ出ました。これに対して総理は、ただ、そういう意思はない、こう言われただけです。総理自身、佐藤内閣自身がその方針ではないということはわかりました。けれども、この問題も、まだほんとうに国民が納得するような説明はなされておらない。ちょうど六十年安保の審議のときに、冒頭に条約修正権の問題が出ました。覚えておられるでしょう。国会に条約修正権ありやなしや、これは非常な論議をかわした結果、結局議院運営委員会に小委員会を設けて検討しようということになったわけです。けれども、以来十年以上たっておりますが、まだ結論は出ていない。それは、その問題のむずかしさを物語るのかもしれません。けれども、この修正権の問題は、結局再交渉の問題になってくるわけです。これは国会で修正するという意見がもしも多数できまった場合には、再交渉しなければならない。交渉をやり直す以外に手はないわけですね。この点をもっと率直に、国権の最高機関としての国会、しかも議院内閣制をとっておる日本の制度のもとにおいて、この戦後の処理の非常に大きな沖繩返還の協定審議の際に、これはもう少し十分協議して何らかの結論を出す必要があるのじゃないでしょうか。そう思いませんか。
  221. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの話を聞いていると、この辺で結論を出せ、採決してきめたらどうかと言わんばかりの言い方のように私には聞こえるのですが、国会で多数できまればそれでいいじゃないか、こう言われると、何だかもういきなり結論を出す、採決をしろ、こう言われるように——これは、聞いておられる国民もそういうように誤解するかもわからない。私は聞いていて、まことに大胆な御発言だ、これは野党で十分の自信がある、さような意味で否決してみせる、かような意味からお話しになったかと実は思ったのですが、私はそうじゃないだろうと思います。先ほど来、審議しろ審議しろと言われるのだから。手続上の問題は、それは最後にきまることであります。まだこの段階では中身の審議の問題じゃないだろうか。さような意味で私もただいま立ち上がったのでございますが、ただいまのような話を聞くと、何だかもうさっきからのお話は全部手続上の問題のように、私に対する御質問もそういうように聞き取れるのです。いまこの委員会にかけている行政協定、その問題じゃなさそうな気がするのです。国会の本来のあり方、そればかりをお尋ねになる。どうもそういう点については、これは松本さんに御注意申し上げて、やはりこの中身を先にやっていただくほうがより有効ではないか。そうして、そういうものが、いまの——おっしゃるように、多数によって否決されればそれに従うというのがわれわれの立場であります。多数によってそれが認められればそれが成立をする、これがわれわれの立場であります。そういうのが議会制民主主義というのじゃないでしょうか。
  222. 松本七郎

    松本(七)委員 それは、あなた、誤解しているのですよ。これは、基本的な姿勢がいま非常にくずれかかっている。このことは、同じ議会制民主政治を守ろうというわれわれの立場からいうと、非常に憂慮にたえない。その基本的な姿勢の問題として出しているわけなんだから、協定を審議する、それに取り組むときの姿勢をいま問題にしているのですから、きわめて大事なことであるという認識がなければならないはずなんです。いまの問題も、私どもから言わせるならば、この国権の最高機関としての国会で、条約の調印をしてきた政府に対して、これはもう一ぺんやり直せという、そういう立場をとるのが、新しい憲法の趣旨に沿っておるのではないかという、そういう意味で結論を早く出すべきだと、私は以前から言っているのですよ。それが十一年も放置されておるということは、このわれわれの立場が正しいにもかかわらず、それをやらせたくない。あなたが政府として再交渉しませんという方針は、わかりますよ。けれども、国会としては、その再交渉を命ずる権限というものが、最高の機関としてあるのではないか。そういう明確な態度をこの重要なときに打ち出す時期だということを言っておるのですよ。だから、政府行政方針として再交渉はしませんというのと、国会として、基本的に、そういう再交渉をさせる、要求する権利があるということは別ですよ。その基本的なことを言っておるのです。(発言する者あり)通る通らないは別ですよ、そのときの力関係だから。
  223. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま国会で審議するのは、ただいま御説のとおり、私はそれを否定するものじゃございません。いま私語なすったそこが大事なんです。通る通らぬは別だ、こうおっしゃった、そこが大切なところだ、こういうことを申し上げて、やはり御注意を願いたいと思います。
  224. 松本七郎

    松本(七)委員 通る通らないというのは、国会の意思というものは多数できまるわけですから、そのときの多数の意見を尊重するということは当然なことなんですよ。けれども、いまの基本的な問題は安保のときに出されたんだから、この問題をいつまでも放置しておくのは、憲法に忠実なゆえんではないと、私どもの立場を述べているんだから、いまあなたの政府が再交渉はしないという方針はそれとして、その基本的な問題についての率直な総裁の意見を聞いているのです。いまの憲法下でもそんな必要はないと言われるのか、あるいは十分それは研究する必要がある問題だと認められるかということを聞いているのです。
  225. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、過去についてのおしかり、これはおしかりとして私は十分反省します。これで先ほど来の御意見に対する私のお答えははっきりしたとお聞き取りをいただきたいと思います。  私は、国会の権能を無視しておるわけじゃございません。したがって、ただいまのように、おしかりを謙虚に承っておるこの状態でもおわかりだろうと思います。国会の権能を頭から無視はしておらない。しかし、国会の意思は多数によってきまるという、それがやはり大事なことだ、これだけはお忘れのないように願っておきます。
  226. 松本七郎

    松本(七)委員 その多数の意思を決着するまでの過程を、十分民主的な審議を尽くしてくださいということを繰り返して言っているわけですから、そのことは十分留意しておいてください。おそらく、これから審議を重ねるにつれて、この問題点というものは、いまの実態が明らかになればなるほど、この協定で妥結したこと、そして施政権返還だけを非常に急いでおられることが、きわめて危険なものだということがだんだん明らかになってくると思うのです。私はそう思います。その場合に問題が非常にたくさん出てきて、このままではどうにもならぬというような世論になってきたときは、やはりあなたは謙虚な態度で考えなければなるまいと思いますが、その気持ちだけはお持ちでしょうね。とにかく早いほうがいいんだから、何が何でも早く返すだけ、そういう態度をあまりここで強く出されることは、私は審議そのものの妨害になってくると思うのですよ。議論にいつもあなたは何かふたをするような口ぶりなんです。とにかく返ってくればいいじゃないか、内容はもうたいしたことないと言わんばかりの態度が出るのですよ。私はそれを心配しているのです。
  227. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もし私の発言で押えつけるような発言をしておれば、それは私の不徳のいたすところです。私はどこまでも十分審議は尽くしていただきたいし、また、国民の皆さんにも、アメリカの施政権下にあって沖繩の同胞がさぞ苦しんでおるだろう、また苦しい思いをしておられる、そういうことを考えると、一日も早く祖国に復帰していただきたい、かように思っておりますし、ただいま行政協定返還協定それ自身に不満であり、不足であるとか、こういうようなものがありましても、やはり帰ってこられて、その上でこちらで直す、そういうこともできるのではないか。さっき、よほど思い詰めた考え方から、完全なものをやれ、二、三年あとでもいいじゃないか、こういうようなお話までありましたが、私は、帰ってこられて、そして日本の政府の手で、本土、沖繩ともどもにそれら不都合の点を直していく、こういう努力をすべきじゃないか、かように思っております。この点は、遺憾ながら、いままでのところでは一致はいたさない、これは対立であり、並行線である、かように思いますが、私どもの望むところは、ただいま申し上げるような不都合あるいは不満な点、そういうものを日本の本土国民ともども解決する、これが望ましい姿ではないか、かように思うのでございまして、その点で重ねて私どもの意見を申し上げておきます。
  228. 松本七郎

    松本(七)委員 ですから、政府は、問題はまだある、あるが、これらは施政権が返った後にひとつ解決したい、これは政府の一貫した態度。私が心配するのは、今後審議を重ねるにつれて非常に問題が多いから、とにかく施政権を獲得した後の解決にはとても手に負えないような問題があるのではないか、その場合に国民がいずれを選択するかという、その選択のしやすいように十分な審議を尽くそうというのが私の趣旨ですから、その点を、与党の皆さんはもちろん、総理も十分考えておいていただきたい。  そこで、そういう観点からこれからいろいろと問題が展開されると思いますが、その前置きとして核の存否をここで一度確認しておきたいと思います。  外務大臣は、核兵器はあるとにらんでいるというような表現をされたのですが、ロジャーズ国務長官の証言によれば、返還時にはなくなる、こう言って明言しております。そしてこの撤去費として七千万ドルを予定しているのですから、論理的に言うならば、もう核は存在すると断定して間違いないと思うのですが、その点をまず確認しておきたいと思います。
  229. 福田赳夫

    福田国務大臣 アメリカ政府は、わが国に対して、核があるのだということを明言しておりませんけれども、私は、諸般の情勢から、核はある、こういうふうなにらみをしておるわけであります。
  230. 松本七郎

    松本(七)委員 続いて問題になるのが点検の問題です。総理大臣は、本会議答弁でも、核の点検についての質問に対して従来しばしば言われておったのは、アメリカの国内法、原子力法ですか、これを言っておられた。最近、国際法ということをあなたは言われる。国際法上できない、その国際法はどういう条項をさしておられるのでしょうか。それは、総理大臣——総理大臣、その条文知らなければ知らないで、あとで問題にします。
  231. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 軍隊というものは一つ——外国の軍隊、これには、一切、干渉あるいは査察、あるいは中身、こういうものを秘密を保つ、そういう権能が与えられているようであります。これは国際法上どの条項になりますか、それは法制局長官に答えさせます。
  232. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ただいま総理が言われましたところに尽きていると思いますが、要するに、古いことばでありますが、治外法権ということばがございます。そういう意味で、他国に駐留する軍隊につきましても、あるいは現在は施政権のもとにありますから当然のことでありますが、これについてわが国が強権をもって点検をすることはできない。その根拠は何かというお尋ねのようでございますが、その根拠は実定条約にあるかどうか、私も条約必ずしも詳しくはございませんが、国際慣習法、いわゆる国際法、このものの原則的に認めるところであります。
  233. 松本七郎

    松本(七)委員 慣習法ですね。確認したいですが、根拠は慣習法ということになりますね。
  234. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 いわゆる国際慣習法と申します、国際法とも申しますが、いわゆる国際社会を律している基本の法関係、それでございます。
  235. 松本七郎

    松本(七)委員 だから、国際法なら国際法で、その条文というものがあるはずなんですよ。(「ないよ」と呼ぶ者あり)慣習法と国際法は違うよ。どちらに根拠を置いているのか、はっきりしてください。
  236. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 国際法と申してよろしゅうございます。
  237. 松本七郎

    松本(七)委員 どういう条文によってそれは根拠があるのですか。
  238. 井川克一

    ○井川政府委員 法制局長官が申されましたように、国際法は国際慣習法と条約とから成り立っております。外国軍隊の特権は、国際慣習法、いわゆる条文化されたものは私はないと思っております。個々の場合につきましてはあり得ると思います。たとえば、領海の場合における軍艦の権限云云というふうなものが個々の場合に出てまいりますけれども、軍隊の特性、治外法権、不可侵権というものを一般的に規定いたしました成文化されたものはないと思いますが、これは国際慣習法として確立しているものでございます。
  239. 松本七郎

    松本(七)委員 私は、この核の問題というのは第二次大戦後の新しい問題ですから、旧来の慣習法などでずるずるとこれを律していいものとは思わないのですよ。特に日本の場合は世界でたった一つの被爆国ですね。しかも、その核兵器は持たない、非核三原則を佐藤政府でも政策として出しておる。そして今度の協定では、とにかくアメリカのほうも、核は撤去します、返還時にはなくなる、こう言っているのですから。しかも日本は平和憲法を持っておる。こういう一つの、世界の政治における先進的な主張をなし得る立場に日本はいまあるわけでしょう。たまたまこの返還協定の問題に際会した。こういうときに、この従来の慣習法をやはり新しく原子力時代にふさわしい方向に変えていくという努力を、私は日本こそすべきではないかという感じがするのです。そういう点から、この核の点検にもう少し政府は取り組むべきではなかろうか。ただ国際法上もうこれはできないんだから、慣習がそうなっているからあきらめようというのは、少し早いような気がする。もう少しねばり強くこの点はアメリカに当たるべき問題ではなかろうか、こういう観点からお伺いしておるので、率直な意見を伺いたい。
  240. 福田赳夫

    福田国務大臣 沖繩に返還時に核があるかないか、これにつきましては、日米の巨頭会談の共同声明で非常にはっきりしておるわけです。さらに、この巨頭会談の共同声明を本協定に引用いたしまして確認をいたしておる。これで私は、核が返還後には沖繩に存在しない、こういうことにつきましてはきわめて明瞭になった、こういうふうに思っておるのですが、アメリカの上院におきまして、ロジャーズ国務長官、パッカード国防次官、この両者のきわめて明瞭な声明というか発言があります。こういうことで、もう核問題につきましてはこれ以上のことは必要はないんじゃないか、こういうふうにも考えます。しかも今度は、協定第二条によりまして米軍の基地の態様は本土と同じくなる。核を持つというようなことにつきましては、あるいは、核は返還時にはないにしても、将来持ち込むというようなことにつきましては、これは事前協議の対象にする。しかも累次申し上げておるとおり、政府は核の再持ち込みについては絶対にこれにノーを言う、こういうふうにも申し上げておるわけでありまして、再点検論がありまするけれども、どうもこれはアメリカが非常に核政策を大事にしております。そういうような状況下におきまして、これは交渉はしてみておるのですが、なかなかむずかしい。御期待をお持ちくださるような発言が私はこの席でできませんです。しかしながら、この間の小平さんの御質問でありましたかにもお答え申し上げたのですが、その他の方法でなお重ねて核の不存在を立証するという方法があれば、何とかこれをそのようにしたい、こういうことでせっかくいま努力をしておる最中である、こういうふうに御了解願います。
  241. 松本七郎

    松本(七)委員 その他の方法というのがよくわからないのですが、私の希望は、やはりさっき言ったような日本の持つ特殊事情、核時代における日本の今後の国際政治における発言権の増大という、そういう観点から考えて、やっぱり特殊の時代ですからね、施政権を握られているということ自体がまた例のないことだし、そしてこれが返還になるという好機ですから、やはり核兵器については点検をさせるという、そういう要求を国連の場で持ち出すとか、何かそういうふうにすることが、同時に日本国民に対して不安をなくすることにもなるわけですから。それから将来、やはり遠い将来の展望に立って、核時代において日本は絶対に核を持たないというこの政策を貫く意味からいっても、そういった核についての日本が点検をするということには大きな政治的意味があると思うのですよ。そういう意味で、もう完全に撤去されるということになれば、結果としては、それはそこまでしなくたってよかったという結果もあるいはあるかもしれないけれども、いま国民はかなりそこのところに疑惑と不安を持っているわけですから。  それともう一つ、国際的の、平和の日本の発言力を強めるという意味からも、国連あたりでもう少しこういう問題を持ち出す、あるいはアメリカに直接根強い交渉をする、そういうことが必要ではないかと思うのですがね。どうでしょうか。
  242. 福田赳夫

    福田国務大臣 松本さん御承知のように、わが国においては非核三原則を政府として基本方針としてとっておるわけです。また、そういう政策の上に立ちまして、世界に対しましては、核の平和的利用、これはまあ大いに進めなければならぬとは思いまするけれども、これが軍事的に使われるということにつきましては、非常に強い発言をいたしておるわけです。まあ私は、日本という国は、とにかくこれまでの経済力になってきた。技術も非常に高度化しておる、核を持たんとすれば持てないことはない、その日本が、非核三原則、核は持ちません、こう言っているのです。これは非常に世界の核政策につきましては強い立場になっておるし、あなたが最初の被爆国だとおっしゃられる非常に貴重な立場をとっておると思うのです。そういう問題は国連の場においても展開したいと思う。展開をいたしておりまするし、また今後これを強化します。ことに今度は、中国は安全保障理事会理事国になってきた。しかも常任理事国である。これで世界の核保有国五つが全部国連の常任理事国になってきた。この常任理事国あたりの動き、これは私は非常にこれから大きな期待を持っていいのではあるまいかとも思うわけでありまして、そういう見方、またわが国の置かれておる立場、そういうものを踏んまえまして、国連の場ではこれは大いに一般的な核の惨禍を防ぐ方向の施策を進めます。しかし、事は、いま問題になっているのは、当面の日米両国間の問題なんです。この問題につきまして、まだ核問題に対する大きな転換がない、世界的転換がない、そういう今日におきまして、アメリカが、核というものを、非常な、安全保障条約の大きな柱としておる、そういう状態において核点検を求める、また、話は私はいろいろしてみました、しかし、アメリカはこれには絶対に応じない立場をとっております。そういうことも私どもは理解もできる。そういうような状態で、国連の場で一般的な方向については大いに努力しますけれども、当面の日米間の核の問題、特に核点検の問題については、松本さんに御期待されるような発言が今日できない、かように申し上げるほかはないのであります。
  243. 松本七郎

    松本(七)委員 だから、国連の場では一般的な問題として扱うので、日米間では折衝はしておるが、むずかしいというのがあなたの御答弁ですけれども、私の言わんとするのは、日米間でむずかしければむずかしいだけに、この問題は国際的な規模でやはり問題にすべきじゃないか、それには国連の場というものがあるのだから、日米間の問題を、つまり、具体的に言えば、核点検という問題を国連の場でも問題にして、そして国際的な世論を味方にする努力をしたらどうですかということを聞いておるのです。
  244. 福田赳夫

    福田国務大臣 当面する沖繩の核の問題について、これを国連の場で問題にする。私は、いまもうとにかく協定に調印はいたしました。その協定の御審議を願っております。しかも来年の四月一日を目してこの条約の効力発効を念願しております。そういう立場の私として、国連でいま運動展開しましたからこの問題が解決いたしますと、こういうふうな見通しは立たない。観念的には考えられるかもしれませんけれども、実際上それは実現不可能な問題である、かように考えます。
  245. 松本七郎

    松本(七)委員 それでは、個々の国にやはりこの問題を訴えながら、日本の主張の正しさを国際的に明らかにしながら協力を求めるという運動は展開してくれますか。
  246. 福田赳夫

    福田国務大臣 それは、核点検についてアメリカに同調せしむるということにつき、一つ一つの国に、賛成せい、アメリカにそういうことを強要せよ、こういうことをさすと、こういうふうに思いまするけれども、これも頭の上では考えられます。しかし、実際問題とすると、それが、来年の四月一日を目標にしていま一生懸命やっておるこの沖繩返還協定に間に合うとは、とうてい私は考えませんです。
  247. 松本七郎

    松本(七)委員 そういう国際的な運動を背景にして日米交渉というものにこの核点検の問題を出せば、まだまだ私はそれはあきらめるのは早いと思いますがね。総理大臣、どうですか、そういう点少し考えてみたら。
  248. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど外務大臣からの、これは実際の議論でございます。しかし、メースBの撤去後全部を見せてくれた例もございます。だから、いま言われるように、そう簡単にあきらめないで、それを確認しろと言われると、そういうことについていろいろ、確認も一つの方法だし、あるいは確認と同じような効果のあがる、両国の最高責任者が核はないということでも声明するか、またわれわれの安心のできるような方法があるか、そういうこともいろいろ考うべきではないかと思っております。御承知のように、これは沖繩の問題ではありませんけれども、核拡散防止条約、これには調印はした、しかし、どうも査察の問題がなかなか意見が一致しない、そういうことでこれはまだ批准交換にまでは至っておらない。また、過般行なわれたアメリカの地下核実験についてわれわれが抗議をしたことは、御承知のとおりであります。われわれはもう広範に、この核兵器についてどうもなじまないというか、絶対反対だ、こういう態度でいわゆる非核三原則を堅持しておる、そういう国柄でありますから、これは機会あるごとに国民の納得のいくような証明方法をとる、これが政府の態度でなければならない、これは御指摘のとおりに思います。ただ、いまの状態で、先ほど来申しますように、お互いに信頼し日米安全保障条約締結したその仲とはいっても、この軍隊の中を査察するとか、あるいは詳細にこれを検分するとか、こういうことは大体ちょっとむずかしいように思います。しかし、これはあきらめるわけじゃございません。また、そういう機会があれば、私どもも、ぜひともみんなが納得がいき、安心がいくような方法をつとめたいと思います。何だか、そういうことを断わる、こういうことになると、国民のほうからいえば、逆に、どうも政府は、ない、ないと言うけれど、査察についても非常に消極的だ、何かを持っているのじゃないかというような疑問でも持たれたらこれはたいへんだと思いますので、私は、ぜひともそういう点について納得のいくような、安心がいくようにこの上とも努力したいと思います。
  249. 松本七郎

    松本(七)委員 来年の四月になるか七月になるか、それまでにそういうことをやる見通しは非常に暗いということを外務大臣言われるわけですけれども、それでは返還になってから——返還時にはなくなるということがはっきり証言には出ているわけだけれども、なくなった時点で、完全になくなったかどうかを点検することは、これはもう核がないのだから、今度は原子力法の影響もないわけですから、それは非常に可能性が多いと思いますがね。そしてそれは長期的に要求できる一つの項目になるわけだから、それはやれますね。どうですか。
  250. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほどから私が申し上げているのは、それがむずかしいのだ、こういうことなんであります。私もできたらそういうふうにと考えますが、核があるかないかということについての問題になりますと、非常にこれは高度の、アメリカの最高軍事戦略に関する問題、そういうような次第でありまして、核撤去につきましては、これが撤去後における点検、話をしてみましても、なかなかこれは見当はつかない、こういうことを先ほどから申し上げているのです。ですから、この点につきましては御期待を持たれぬように、こういうふうにお願いを申し上げる次第でございます。
  251. 松本七郎

    松本(七)委員 撤去時にはないと言っているのだから、ないことを確認する点検ならできるでしょう。これがまた、いつまでも先はあるのだから、今度は期限がないのだから、国連でもそれを持ち出すことは可能でしょう。そういう姿勢が大事なんですよ。それを聞いているのです。どうですか。それはできるはずなんだ。
  252. 福田赳夫

    福田国務大臣 姿勢につきましては、先ほどからるる申し上げておりまするとおり、わが国は非核三原則である。核兵器の世界的な絶滅、それに向かって最大の努力をしておる。しかも国連ではそういう場も設けられてきた、こういうようなことでありますので、そういう方向の施策も考えなければならぬ、こういうふうに考えておるわけでありますが、それと沖繩の当該問題、これはとても一緒にということは、これは頭の中では考えられる問題だ、しかし実際的にはさようにはいかぬ、こういうふうに考えております。
  253. 松本七郎

    松本(七)委員 非核三原則ということをしきりに強調されるけれども、これはまた何回も問題になるように、それほどこれを強調されるならば、最高機関で決議したらどうか。なお政府の政策を国際的に保証することですからね。これは国内的にももちろんそうです。なるほど、それほど保証するのなら安心できるだろうということに初めてなってくるので、何か政府は、もう非核三原則政策をとっているのだから、わざわざ国会の決議をする必要はなかろうという答弁ばかりいままで繰り返されておる。この機会にひとつどうですか、もう一度国会でこれを決議するということに賛成してもらったら。私はなぜこれを再三要求するかというと、こういう発言があるのですよ。これは大平さんでした。私が国会討論会でこの問題をやったときに、大平さんは、いや政策としてやっているので、国会決議をやって、そして永久不変なものにされたのでは、これは困る、こういうことを言われたのです。これは一時的な政策ならいいということに通ずるわけですね。そうでしょう、総理。それから、予算委員会であったと思いますよ。これはあなたがたしか答弁——松野頼三さんの質問で、あまり将来のわれわれ、まあ若い者の道を閉ざさないように、核の道もあけておけというような、ずいぶん露骨な質問があったことがあるのですね。そういう意見。大平さんのは、特に政策としてやっているのならいいけれども、国会の決議となると永久不変のものになるから困る、こう言われる。そういう発言を公にぽんぽんされれば、これは非核三原則(「知らぬからだ」と呼ぶ者あり)だから政府意見を聞いているんだ。政府は、それじゃ、国会の決議がなくても、これは永久不変の政策としてどこまでも続けていきたい、日本の国是としてゆるがないものにしたいという、その決意の表明ですか、これは。それを聞きたい。
  254. 福田赳夫

    福田国務大臣 国会の決議でありまして、これは政府には関係のない問題なんです。政府はあくまでも非核三原則を堅持していく。おそらく自由民主党政権が続くであろうと思いますが、この佐藤内閣の方針はわが自由民主党内閣を背景にしている政策でありますので、当然次の政権にも引き継がれていく、かように考えております。
  255. 松本七郎

    松本(七)委員 冒頭からお話ししているように、そういうときに限って、今度は政府というものと議会というものを機械的に分ける議論をする。そうでない。やはり議院内閣制を持っている以上は、総裁としての総理大臣佐藤榮作、もう少し国民の不安というようなものに目を向けて、そして最高機関で決議しようというなら、賛成だ、なぜそのことばが出ないのですか。必要ないと言う必要ないでしょう。答弁でそう言っているんだ。内閣で政策をとっているのだから、国会の決議は要らないと言っているじゃないですか。それじゃ、決議があればなおいいわけでしょう。どうです。
  256. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはもう内閣としても非核三原則、また、自由民主党としてもこれを党是として基本的にきめております。また、国内において各政党とも核は大きらいだ。皆さん方が政権をとられても、核を持つような内閣ができようとは私は思いません。したがって、ただいまのような非核三原則、これを国会で決議するには及ばないのじゃないか、かように思う次第でございまして、もうこの点はほんとうに耳にたこができるほど、口がすっぱくなるほどたびたび申しましたので、御了承いただきます。
  257. 松本七郎

    松本(七)委員 最初に申しました、平和条約第三条に基づいてこれをいつまでも有効だという立場で交渉したことが、いかにアメリカにいろいろな要求を突きつけられたか。私はここにやはり根源があったように思うのですね。あの当時、たしか総理大臣に私は本会議質問したことがあります。これは繊維交渉とからまっているのじゃないかということを申し上げた。当時総理大臣は、繊維交渉とはからまってないという答弁でした。確かにアメリカも、その繊維規制をやればそれは施政権返還に応じましょう、こういう言い方でからませてはそれはいないでしょう。けれども、あれ以来の繊維交渉その他の経過考えますると、明らかにこれはアメリカが、その施政権返還ということを一つの、まあ露骨な言い方をすればえさにして、そして繊維交渉も規制もアメリカに有利なものを獲得してきている。それからこの返還協定の内容にしても、あるいは請求権の放棄なり、VOAの存続なり、あらゆる点で無理が生じているように思うのですよ。そういう反省がないと、私は、今後これらの問題について政府は真剣に反省しながらこの問題点を国会を通じて国民の前に明らかにしようという態度が出てこないのじゃないか、その点を心配するわけですから、繰り返して御答弁をお願いします。
  258. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 繊維交渉と沖繩の施政権返還交渉、これは関係はございません。日米間にはいろいろ関係がございます、いろんな問題がございます。しかし、それ一つ一つがやはり見方によっては関係がありというような見方もありますけれども、ただいま申し上げるように、返還交渉、同時に繊維交渉、これは直接の関係のないことだ、これだけははっきり申し上げておきます。
  259. 松本七郎

    松本(七)委員 ここで今後問題になる点を少し、本会議その他の委員会での説明で——きょうの資料にごく簡単なあれが出ているようですが、この三億二千万ドルの積算基礎というものはちっともはっきりしたものが出てこないようですが、この点はこれ以上の御説明はできないのでしょうか。
  260. 福田赳夫

    福田国務大臣 三億二千万ドルにつきましては、そのうち一億七千五百万ドル、これが資産の承継に関するものであります。それに見合うものであります。それからさらに七千五百万ドル、これは米軍労務者の退職金、これを内地並みにいたしたい、こういうために必要なものであります。それで合計いたしますと二億五千万ドルになります。ところが、日米折衝の過程におきまして、その二億五千万ドルの上にさらに、米側から、あるいはこれから米軍がどんどんと引いていくような事態も起こるでしょう、そういう際には、米軍の施設、それを無償で置いていくというような事態になる、それからまた、日本側の要請でいろんな、たとえば特殊部隊の整理とか、そういうようなものも起こる、そういうようないろんなことを考えましてということで、実に多額な要請があったわけです。二億五千万ドルのその上積みといたしまして多額の金額を要請する。そこで、わがほうといたしましては、その多額の要請に対しまして、これを七千万ドルと、こういうふうにしたわけです。しかし、その七千万ドルといたしたのは、一つは、両巨頭会談、共同声明において核の問題に触れておる、また、今回の協定第七条におきましてもそれに触れていることになりまするけれども、何とかして、この両巨頭の共同声明、核はもう返還時にはありません、こういうことを協定上においてもこれを明らかにしたい、こういうふうに考えまして、ごらんになる条文第七条のような趣旨を込めまして、そして七千万ドル、こうきめたわけでありまして、そういう非常に高度の政治的判断によって取りきめた、こういうことであります。一億七千五百万ドル、また七千五百万ドル、したがいまして、この二つにつきましては大蔵省のほうからまた追加の説明ができるかもしれませんけれども、残りの積み上げました七千万ドルにつきましては、それ以上の説明はできないのであります。
  261. 櫻内義雄

    櫻内委員長 大蔵当局、説明がありますか。
  262. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 お答えいたします。  三億二千万ドルのうち、六条の一項、二項の規定に基づきまして引き継がれる資産についての支払い額でございますが、一応一億七千五百万ドルということになっております。これは私どものほうで現地につきまして調査いたしました結果、このうち直接民生用に供する資産だけの評価額が一億七千八百万ドル余りになったわけでございまして、それでこの項目につきましては一億七千五百万ドルということで交渉いたしまして、きまったわけでございます。  それで、一億七千八百万ドルの内訳でございますが、これは先ほど資料をお出ししておりますが、琉球電力公社、琉球水道公社、琉球開発金融公社、この三公社の合計が一億五千万ドル程度でございます。それから那覇空港、行政用建築物、道路構築物、航空保安施設、航路標識、それから渡嘉敷の陸軍補助施設、こういうものを合わせまして二千八百万ドル、合わせまして一億七千八百万ドル、こういう評価になっているわけでございます。
  263. 松本七郎

    松本(七)委員 いまの問題はいずれ同僚議員からまた詳細な質問を予定しておりますので、先に進みたいと思います。  先般ジューリックが来て柏木さんと会談しましたね。このときのジューリックの資格、それから来日の目的、それからいつごろ来たのでしょうね。はっきりしていればお知らせ願いたいです。
  264. 前田多良夫

    ○前田政府委員 お答えいたします。  ジューリックのその当時の資格は、財務長官の特別補佐官、こういうことでございます。それから、交渉には再三参りましたが、第一回の交渉は六月でございます。
  265. 松本七郎

    松本(七)委員 来日の目的は……。
  266. 前田多良夫

    ○前田政府委員 これは主として資産の引き継ぎの事務的な交渉を行なうために参りました。
  267. 松本七郎

    松本(七)委員 ケネディはどういう権限を持って来たのでしょうか。
  268. 前田多良夫

    ○前田政府委員 ケネディは、アメリカ側におきまして本件の交渉を行なう権限を持っております。
  269. 松本七郎

    松本(七)委員 これは日本政府にいつごろ通告がきていますか、来日の通告は……。
  270. 前田多良夫

    ○前田政府委員 お答えいたします。  先ほど六月と申しましたのは、去年の六月でございます。  通告は、その直前に行なわれております。
  271. 松本七郎

    松本(七)委員 通告はどこで受けたのですか。これは大統領専用機で来たのでしょう。これは日本政府が通告を受けたのは、どの機関が受けたのですか。
  272. 前田多良夫

    ○前田政府委員 通告は大蔵省のほうで受け取っております。
  273. 松本七郎

    松本(七)委員 それで、専用機で来たのは間違いないですね。
  274. 前田多良夫

    ○前田政府委員 専用機ではないと思います。その辺ははっきり確かめておりませんが、おそらく普通の飛行機だと思います。
  275. 松本七郎

    松本(七)委員 これを聞くのは、専用機で来て、そして正式の通告がないこういう人が、目的もはっきりしないで来ていることがひんぱんなようなんですよ。だから、そこのところをはっきりさしてもらいたいということです。
  276. 福田赳夫

    福田国務大臣 前田審議官がただいまお答えいたしましたのは、おそらく財務長官在職中のことだろうと思います。ですから、普通の飛行機でやってくる。ところが、ことしの何月ごろでしたか、いま覚えておりませんけれども、財務長官を退きまして、今度大統領の特使という立場になったわけであります。そういうことで、あるいはアジア諸国、あるいはヨーロッパを回ったようであります。その一環といたしましてわが日本にも訪問をしておる。これは、問題は繊維の問題であります。繊維に関する交渉権限を大統領から与えられましてやってくる。そしてその場合は軍用機でやってきて——軍用機というか専用機でやってきておるようです。そしておもに立川に着陸をする。その際における入国の手続、そういうものは、普通の手続を、旅券だ、ビザだとか、そういうように普通の手続をいたしておる次第でございます。
  277. 松本七郎

    松本(七)委員 普通の手続を全部済ませているのですか。
  278. 福田赳夫

    福田国務大臣 普通の手続を全部済ましております。
  279. 松本七郎

    松本(七)委員 それは日にちだとか、その手続のあれをあとで提出してほしいのですが……。
  280. 福田赳夫

    福田国務大臣 あとで書面でお届けしましょう。
  281. 松本七郎

    松本(七)委員 それから、これも従来の答弁にしばしばあるのですが、基地返還後は今度は安保のワク内に入れるのだ、こういう趣旨ですね。ところが、米国側では現在の基地機能を損傷しないということをたてまえにしておる。こうなりますると、ここにいろんな疑問が出てくるわけです。  その第一は、例の安保のときにずいぶん問題になりました極東の範囲、これが歴代の内閣でだんだん拡大して、極東の周囲ということまで広がっていったことは、御承知のとおりです。いま安保のワクの外にある現在の沖繩の基地というものについては、これは何らの制限はないわけですから、これからいよいよ安保のワク内に入れる、返還後は入れるということになれば、当然この極東の範囲の問題はまた新たに問題になってくると思います。そこで、やはり国民の不安を除くためには、この際、この極東の範囲というものを、いままでいわれておったように周辺というようなばく然とした言い方ではなしに、その周辺とは具体的にどういうことなのかということをひとつ明らかにしておいていただきたい。
  282. 福田赳夫

    福田国務大臣 安保にいうところの極東の範囲、これにつきましては、沖繩返還が行なわれましても何ら変更をするというふうに考えておりませんです。つまり、一般的な用語として用いられておる「極東」は、地理学上正確に画定されたものではないが、安保条約上の極東は、日米両国が平和、安全の維持に共通の関心を特に有しておる区域であって、かかる区域は大体においてフィリピン以北云々であることは、安保国会当時の統一見解に示されておるとおりであります。このとおり、これは何べんとなく歴代の外務大臣あるいは総理大臣から申し上げておることであり、外交通の松本さんはもう耳にたこができるような状態であると思いますが、この沖繩返還協定の成立によってこの解釈を変更する意図はございませんです。
  283. 松本七郎

    松本(七)委員 いや、周辺と言われただけではばく然としておるので、この際もっと具体的に規定する必要がないかということを言っているのです。
  284. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいままでとっておる政府見解を変更する意図はございませんです。
  285. 櫻内義雄

    櫻内委員長 関連質問を許可いたします。楢崎弥之助君。
  286. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 では、具体的に聞きます。マリアナ群島は入りますか、周辺に。
  287. 福田赳夫

    福田国務大臣 条約局長からお答え申し上げます。
  288. 井川克一

    ○井川政府委員 ただいま福田大臣お答え申し上げましたとおりでございまして、また歴代の大臣全部お答えになっておるとおりでございまして、どこの地域がどこに入る、そういうきわめて画一的な性格を持った用語ではございませんことは、楢崎先生よく御存じのところでございます。したがいまして、極東の安全の維持、日本国との関連において極東の安全の維持という観念が先でございまして、どこの地域が極東に入るとか入らないとかいうことにつきましては、いままでもほとんどコメントを申し上げていないわけでございます。
  289. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 では、場合によっては入るということですか。
  290. 井川克一

    ○井川政府委員 御存じのとおりに、どこの地域が極東に入る入らないということは御答弁申し上げていないわけでございまして、いわゆる先ほど大臣が申されましたような政治的な意味でこのことばは使われている。しかしながら、その区域は、大体においてフィリピン以北並びに日本国及びその周辺の地域であるということを申し上げているわけでございます。
  291. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いままではっきりしていないからいま聞いているのですよ。いままで言うてないから言われぬということはないでしょう。  場合によっては極東周辺にマリアナ群島は入りますか。もう一ぺん聞きます。
  292. 井川克一

    ○井川政府委員 いままで申し上げておりませんのは、こういう地域がここに入るとか、これだけ除かれるとかいうふうな性格の概念ではないから申し上げておらないわけでございまして、したがいまして、現在も申し上げないわけでございます。
  293. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 安保条約第六条によって、日本の基地を貸す場合には、日本及び極東の安全と平和に寄与する任務を持つ米軍にしか貸せないのです。世界全体に寄与するような軍隊には貸せないのです。そうすると、おのずから範囲というものがあるはずです。だから、いま具体的に私はお聞きしているのですよ。答えられないなら答えられないでいいですよ。場合によってはマリアナ群島は極東周辺に入るか、場合によっては極東の範囲の周辺に入るかということを聞いているのです。私は具体的に聞いているのです。外務大臣、どうでしょう。具体的にあとに問題が出てきますよ。
  294. 井川克一

    ○井川政府委員 福田大臣がお読み上げになったとおりでございます。「地理学上正確に固定されたものではない。しかし、日米両国が、条約にいうとおり共通の関心をもっているのは、極東における国際の平和及び安全の維持ということである。この意味で実際問題として両国共通の関心の的となる極東の区域は、この条約に関する限り、在日米軍が日本の施設及び区域を使用して武力攻撃に対する防衛に寄与しうる区域である。かかる区域は、大体において、フィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であって、韓国及び中華民国の支配下にある地域もこれに含まれている。」しばらく飛ばしまして、「しかしながら米国の行動には、基本的な制約がある。すなわち米国の行動は常に国際連合憲章の認める個別的又は集団的自衛権の行使として、侵略に抵抗するためにのみ執られることとなっているからである。またかかる米国の行動が戦闘行為を伴うときはそのための日本の施設の使用には、当然に日本政府との事前協議が必要となっている。」というふうに書いてございまして、これが政府統一見解でございます。
  295. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、何回でも同じことを答弁されますから、今度は、外務大臣、御答弁をいただきたいと思います。  それでは、今度は角度を変えます。  太平洋全般に寄与するような部隊に日本の基地が貸せますか。
  296. 井川克一

    ○井川政府委員 楢崎先生のおことばがその軍隊の能力という問題でございましたならば、軍隊というものは非常に強い能力を持っていてまたそれが非常にけっこうなことではないかと思うわけでございまするが、そのことと、直接この極東の範囲ということとは私は関係がないのではなかろうかと思います。
  297. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 では、安保条約で能力を縛るとはどういうことなんですか。どういうふうに能力を縛るのですか。具体的にどのように縛るのですか。どこから以上は出ていかないとかなんとか縛るのですか。
  298. 井川克一

    ○井川政府委員 そういう意味であるいは大臣も御答弁なさっておられないのだと私は了解いたしております。たとえば、米国軍隊である以上、米国本土防衛の能力と任務を持っていると思います。しかしながら、安保条約に認められてわが国に駐留を許される限り、それらの能力及び任務というものは潜在的になるものでございます。それが、私どもが安保条約のワク内に入ると申し上げているところでございます。
  299. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 答弁になっておりません。私は関連ですから、もうここでやめますが、では、安保条約のワクとは何ですか。ワクとは、具体的に何ですか。
  300. 井川克一

    ○井川政府委員 安保条約のワクとは、第六条に明記されてございます。「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」この点から根本を持っております。さらに、交換公文の基地の使用云々につきましては、別の制限がございます。
  301. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だから私は、太平洋全般に寄与するような軍隊には基地を貸せないですねと言っておるのです。だから、極東の範囲ということが、六〇年の審議の際にも重要な一つポイントになったじゃありませんか。いま、沖繩における米軍の性格という、あるいは能力という、まさにその一点にかかっておるのです。これから具体的に問題が出てきますよ。いまのようなあいまいな答弁では困ります。
  302. 井川克一

    ○井川政府委員 それが、私先ほど申し上げました、それらの任務、能力というものが安保条約のワク内に入って潜在的なものとなるということを私が申し上げましたのは、ただいまの先生の御質問に対してお答えしたつもりであったわけでございます。
  303. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、太平洋全般に補給するような部隊は、日本として基地を提供できますか。
  304. 井川克一

    ○井川政府委員 日本国の安全に寄与し、及び極東の平和と安全に寄与する部隊につきましては、そういう目的を持っておるものは日本国に置くことができます。
  305. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、極東の範囲のその周辺というのは際限がないということですね、結局は。そういう解釈でしょう。つまり、極東の安全に関係があると判断すればその範囲はどこまでも広がる、こういうことですね。
  306. 井川克一

    ○井川政府委員 ちょっと、私の御答弁があるいはお答えになっておりませんかとも思いまするが、それは、私先ほど政府統一見解を読みますときに実は飛ばしてしまったわけでございます。それは、極東の「区域に対して武力攻撃が行なわれ、あるいは、この区域の安全が周辺地域に起こった事情のため脅威されるような場合、米国がこれに対処するため執ることのある行動の範囲は、その攻撃又は脅威の性質いかんにかかるのであって、必ずしも前記の区域に局限されるわけではない。」と、こうはっきりと政府統一見解に入っているわけでございます。したがいまして、能力の点も、この点から判断されるべきであろうと思います。
  307. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だから、いまの統一見解でいけば、際限がないということですね。外務大臣はどう聞かれました、いまの統一見解——外務大臣の御見解を聞きたいのです。あなたの考えはもうわかったから、外務大臣の御見解を聞きたい。
  308. 福田赳夫

    福田国務大臣 この問題に対する政府見解は先ほど申し上げましたが、かねてから申し上げているその範疇を一歩も出ない、こういうふうに御了承願います。
  309. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは外務大臣極東の安全に関係があると判断すればその範囲は際限がない、このように解釈しておられるわけですね、統一解釈は。イエスかノーだけでよろしゅうございます。
  310. 井川克一

    ○井川政府委員 そういうわけではございません。まず、政治的な意味におきましてこの極東の範囲というものがございます。そして、しかしそれが周辺から脅威があるとか武力攻撃があるということの場合にはこういうふうになるということを先ほど申し上げたわけでございます。したがいまして、かかる意味において、無制限ではございません。
  311. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 じゃ、関連ですから、最後に一問だけしておきます。  そうすると、際限がないかと聞いたら、際限はあると言う。その際限は一体どこかと言うと、言えないと言う。そのような答弁でわかりますか。総理、おわかりでしょうか。いまの条約局長の御答弁、わかりますか。(発言する者あり)いや、具体的に私が例をあげたら、答えないのですから。あの統一見解では抽象的過ぎるから、具体的な例をあげて聞いているんです。(発言する者あり)
  312. 櫻内義雄

    櫻内委員長 質問に答えないでください。
  313. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、皆さんに言っておるんではないですよ。条約局長があそこにいるから皆さんのほうを向いておるんです。
  314. 井川克一

    ○井川政府委員 この周辺の範囲というものは、これは明定とか、はっきり申し上げられる、性格的にそういうものでないことは、これは楢崎先生よくおわかりくださっているところだと思います。これはまた相対的なものでございます。先ほど読み上げました部分につきましても、武力攻撃があった場合というふうな、どこからあるか、これはまたほんとに相対的な、脅威につきましても相対的なものでありまして、どこであるかということはこれは申し上げられないことは、もうこれは御了解くださることと私は信じております。
  315. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私はわからないから聞いておるのですよ。わかっておって聞いておるのじゃないのですよ。結局あいまいですね。あいまいということですね、結局は。その周辺の範囲というものはあいまいだ。  私は質問時間は別にありますから、今度は具体的にお伺いすることにします。
  316. 松本七郎

    松本(七)委員 この問題はさらに楢崎さんの時間のときに詳細に問題にします。  次は事前協議についてですが、この事前協議の構成メンバーを確認しておきたいのです。
  317. 井川克一

    ○井川政府委員 事前協議につきまして特別の機関を設けてございません。したがいまして、メンバーということは申し上げられないわけでございます。特別の機関がございませんから。しかし、もとより、最高責任者は、日本国におきましては総理大臣でございます。
  318. 松本七郎

    松本(七)委員 アメリカはどういう機関が出る予定になるのですか。
  319. 井川克一

    ○井川政府委員 ただいま申し上げましたとおりに、機関は——したがいましてメンバーも出ておりません。したがいまして、だれが来るということはわかりません。そのときに、緊急事態であるとか、そういう事態に応じて適当な連絡方法がとられるということになっております。もちろん、結局のアメリカの最高責任者は、これは大統領であろうということは間違いないことだと思います。
  320. 松本七郎

    松本(七)委員 この米軍沖繩の基地と、それから日本本土の基地、それの指揮系統というか命令権というものは、おそらく一本じゃないと思うのですが、その間の事情をおわかりでしたら説明してもらいたい。
  321. 西村直己

    西村(直)国務大臣 現在は米軍の施政権下にありますことであります。したがって、わかる範囲で米軍の指揮系統を申し上げます。沖繩の現地の指揮系統です。
  322. 久保卓也

    久保政府委員 陸海空によって違っておりますが、陸軍は、沖繩の陸軍とそれから本土の陸軍は、太平洋陸軍司令部のもとにあります。それから海軍は、両方とも第七艦隊の指揮下にあります。これは両方同じであります。それから空軍については、府中の第五空軍司令部が、韓国、沖繩、それから本土と、この三つのものを指揮下に入れております。返還後のものは、おそらく沖繩の司令部が本土の司令部の下に入るであろうというふうにいわれております。これはまだ観測であります。
  323. 松本七郎

    松本(七)委員 これも明日さらに問題にすることになっておりますから、少し先を急ぎたいと思います。  これは一度問題になって、当時の愛知外務大臣からの答弁があるんですけれども、きわめてあいまいなので、もう一度はっきりさしていただきたいのですが、KC価給油機による空中給油ですね、これは戦闘作戦行動として事前協議の対象になるかならないか、この点を明確にひとつ。——大臣答弁。これは愛知外務大臣答弁しているのです。
  324. 井川克一

    ○井川政府委員 私、実は給油のことはよく存じてないのでございまするけれども、御存じのとおり、戦闘作戦行動のいまの場合に一番近いのは、日本国から行なわれる戦闘作戦行動——第五条に基づいて行なわれるものを除く——のための基地としての日本国内の施設、区域の使用でございまするから、私は、そういうものは、給油は入らないと思います。
  325. 松本七郎

    松本(七)委員 入らないんですか。
  326. 井川克一

    ○井川政府委員 はい。
  327. 松本七郎

    松本(七)委員 それは間違いないですか、大臣。これはいずれ今後問題になる点だからはっきりしておいてほしいのです。大臣、愛知外務大臣答弁といま違うのだ、全然。
  328. 井川克一

    ○井川政府委員 ただいま防衛局長に聞きましたら、空中における給油だそうでございまして、これは入らないと私は思います。
  329. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、今度は給油でなくて、戦闘作戦行動に出る軍用機が日本の領空上をただ通過するだけ、そういう場合は、これは野放しですか。
  330. 井川克一

    ○井川政府委員 これは事前協議の直接の対象には、基地としての施設及び区域の使用となっておりまするから、なりません。しかしながら、いまちょっと先生の御質問を伺いながら考えておったのでございまするけれども、これを事前協議の対象からはずして、わざとそういうふうなことをするというふうなことになりますると、これはもちろん脱法行為でありまして、そういうふうな悪いことが万一ありますような場合には、これはわが国としては事前協議の対象になるべきものだと主張することができると思います。
  331. 松本七郎

    松本(七)委員 給油機の問題は、愛知外務大臣が参議院で答弁しているのとだいぶん違うんです。これはまた後ほど問題を深めますので、十分従来の愛知外務大臣答弁調べて、そして統一意見をあらかじめまとめておいてください。外務大臣、いいですね。  それから、それと関連して、C130、C141輸送機の問題はどうですか。これは対象になるか、ならないか。
  332. 井川克一

    ○井川政府委員 私も、まことに申しわけございませんけれども、軍事的知識が非常に乏しいもので、その輸送機がどうなるかということを、ちょっとまたあとで聞いてみますけれども、いずれにしても、普通の輸送の場合には事前協議の対象になりません。しかし、これが、たとえばどこかですでに戦闘が起こっていると、その戦闘地域に、そこに兵隊をこの飛行機が乗せられるかどうかは知りませんけれども、そのパラシュート部隊を乗せて、そこで降下させて直ちに戦闘に参加させるというふうな場合には、事前協議の対象になります。
  333. 松本七郎

    松本(七)委員 さらに先へ急ぎたいと思います。  との共同声明、一昨年の共同声明の台湾条項についての問題に移りたいと思います。  これは、いやしくも日本政府としては日華条約締結して、そしてこれを正統政府として認めているわけですから、当然この台湾条項を共同声明に入れるについては、国民政府と何らかの接触があったと思うのです。どの程度の接触と何らか特別のこれについての協定が国民政府との間に成立したものか、あるいは今後そういう話し合いをさらに深める意図があるものか、その間の事情を明らかにしてもらいたい。
  334. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国民政府との間には別に相談はございません。これは一方的に日米間でコミュニケを出した、こういうことでございます。
  335. 松本七郎

    松本(七)委員 いやしくも日本政府としては、これを一つの正統政府という立場をとってそして条約を結んだ間柄ですから、それに関する重大な項目を、日米の間で、そういうふうに一方的に、何らの相談もなしにやるというようなことが、これは国際法上——国際法上というより、国際政治上許されるものでしょうかね。
  336. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 別に、台湾海峡の問題に触れたからといって、私は、中国の問題を、日本にとって隣の問題だ、こういう意味で重要視しておる、関心がある、こういうことでございますから、これは韓国の場合も同様に、別に話し合いをしてコミュニケをつくった、こういう経過はございませんし、また、あのコミュニケをつくったその関係で国府並びに韓国政府に交渉を持つと、かようなことをするつもりはございません。
  337. 松本七郎

    松本(七)委員 これが今度は逆に、いまの中華人民共和国政府、中国との国交回復の問題にとっては、現時点では非常に大きな障害になってきていますね、共同声明のこの台湾条項というものは。これはもう御存じのとおりです。以前には、日本政府の国会を通じての答弁では、この日本の安全ということとアジアの安全ということは一応分離した立場をとられておった。これは金門、馬祖のときもそうですね。明らかにこれを分離して考えておられた答弁がなされております。今度の共同声明によると、このアジアの安全と日本の安全というものは一体化されておるというところに新しい特徴があると思う。このことは、ジョンソンのあの背景説明の中にも、日本の安全とアジアの安全が一体化したというところにこそ今度の新しいメリットがあるのだということを強調しておるほどですから、この点を、この共同声明の問題を評価する場合には、私どもは非常に関心を深めざるを得ないのです。以前から私どもが、この安保がアジア安保に拡大発展しているのだということを、また、するのだということを強調しておったことが、このジョンソンの背景説明でも明らかになったし、また、共同声明の台湾条項あるいは韓国条項というものによって、具体的にこれが立証されてきておるという立場を私どもはとっておるわけです。そこで中国が、この沖繩返還というものについていこの協定の内容について非常に疑惑を持ち、そして警戒の念を持って注目してきておるという傾向が出ておるのは、やはり私はこの共同声明の台湾条項にあると思います。中国がすでに国連における代表権を獲得してしまった今日のこの時点で、台湾条項というものは私はもう意義がなくなったと思うのですね、この新しい事態によって。むしろ、意義がなくなったというよりも、これは有害無益なものになってくる。そういう点を重視いたしますと、従来からの政府の説明、特に台湾の領土帰属の問題なり、あるいは台湾政権をどういうふうに扱うかという問題について、この機会に明確化しなければ、日中国交回復を目ざすという以上は、私は、これが単なる口先だけのことになる、足踏みをせざるを得なくなるんではなかろうかという心配があるわけです。この間、曽祢さんの質問で、プレスクラブにおける佐藤さんの演説、あの前向き云々が問題になりました。一応ことばの上では、この前向きというものは、積極的な肯定という誤解を受けるおそれがあるということを率直に認められて、そしてなるべく早期に事前協議の結論を出す意味だ、こういうことで、説明の上では一応これを訂正されておりますけれども、この共同声明の内容からするならば、それからジョンソンの背景説明その他の全体の関連において考えてみますと、沖繩返還後の中国と日本の関係というものを肯定するか、あるいはこれが大きな障害になるかということが非常に大きな問題点になってきておると私は思うのです。  そこで、先ほどもちょっとこれは話に出ましたけれども、ダレスさんと吉田さんがこの交渉をされるころ、確かに、正統政府をいずれかにするという問題は、これは国際的に一つの大きな問題点であったわけです。当時はどの国もこれは迷っておりましたよ。ところが、今日はこういうふうに国際的に中華人民共和国政府が正統政府として認められたんですから、その点は大きく事情が変わってきたわけです。当時、私がこの点について国際的な先見があったということをちょっと申し上げたのは、吉田さんが一応ダレスのああいう強い要請、要求にこたえて日華平和条約というものは結んだけれども、しかし、当時からずっと日本政府の説明では、これは限定条約である、全中国との全面的な平和条約としての性格を持ったものではない、これは限定された条約であるということが一つと、それからもう一つは、台湾政府というものは全中国を代表する正統政府ではなくて、これは支配の範囲を限定されておるところの限定政権であるということも、これは当時からかなり長い間、条約局長答弁にもはっきり出てきているわけです。こういう政府答弁を土台にして私どもはこの問題を討議してきたんですが、だんだん自民党政府は、この点が拡大解釈というか、変わってきまして、いつの間にか、台湾の国民政府が全中国を代表する正統政府のような答弁をされたこともあります。  それから台湾の領土の帰属については、一貫して、その放棄はしたけれども帰属は未定論ということでずっときているのですね。この点はいまも変わらないような気がします。  しかし、当時、いずれが安定した、全中国を支配するような政権になるかということがまだ見通しがあまり立たないで、非常に流動的な状態で、しかも日本は早く講和条約を結びたいという、また結ばなければならぬという当時の情勢から、やむを得ず日華条約というものを吉田さんは結んだと私は思うのです。けれども、将来、中華人民共和国政府が正統政府として国際的に力が安定する、国際的に資格が確立する時期はあるだろう、そういうときに、日華平和条約が全中国との全面条約だという規定をしておくと、そのときの障害はもっと大きくなる、私は、こういう見通しを持って、限定政権であり、限定条約であるという解釈を当時からされておったんだと思うのです。ですから、いろいろな政治的な課題についての意見の対立はあっても、この吉田さんの選んだ路線というものは、国際連合の代表権を中華人民共和国政府が獲得してそうして国際的に認められるという状況になった今日においては、せっかく吉田さんの敷いた路線というものをいまの内閣によって生かすような態度をとるのが私は正しいと思うのです。そういう意味から、台湾は日本は放棄しただけで、帰属は未定だという従来の説明は、もうここではっきりと終止符を打つときではなかろうか。もう国際的に中華人民共和国が正統政府と認められたのですから、それならば、放棄した台湾も当然これは中国の領土なんですから、もうこれは歴史的な事実。それならば、中華人民共和国政府の支配する中国の領土の一部ということをここで明確に打ち出す時期ではないかと思うのです。それがどうしてできないでしょうか。総理大臣からこれは答弁してもらいたい。
  338. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの問題、台湾の帰属の問題、これにはやはり相当前置きがございます。少し時間をかけてお聞き取りをいただきたいと思います。  サンフランシスコ条約、これに全面講和あるいは多数講和だ、こういう表現がされておりますが、われわれが一番残念に思うのは、戦争の起こりであった中国の代表者がこのサンフランシスコ会議に招かれなかった、このことが一番悔いられておるわけであります。当時もうすでに北京に、また国府は台湾に、こういうことで二つの政権のあったこと、これはもう御承知のとおりであります。そうして、しかも国際的な承認の状況、これは当時は国民政府承認している国が四十数カ国、また、中華人民共和国を承認している国が二十四カ国程度ではなかったかと思います。したがって、サンフランシスコ会議に中国の代表が出られなかった、こういうことで、われわれはソ連と講和条約もできなかったが、同時に、肝心な中国との講和条約ができなかった。そのサンフランシスコ条約に引き続いて今度は日華平和条約、これを結んだのは、日本の選択で中華民国、こういうことになっております。そこで、この中華民国は、当時中国大陸に対して施政が及んでおらない、そういう状況でございますから、ただいま限定政権という呼び方をされましたが、私は、吉田さんが中国の代表として中華民国を選んだ、そのことは、当時の国際承認国の多数と、こういうことに基づいてやったんだと思います。しかしながら、施政権は中国大陸に及んでおらない。だから、その戦争は終結したけれども、この条約の及ぶ範囲は、中華民国の施政の及ぶ範囲だと、かように条約を規定したこと、これは当然だろうと思います。そこで、これがただいま問題になっておるわけですが、当時のことは、私は間違いではなかったろうと思う。私どもそのまま肯定してしかるべきだと思う。これが国際世論だと思っております。しかし、今日になってみると、その状態で日本が権利、義務を持った日華平和条約、これが支障を来たしておる、こういうことになっております。  ところで、この台湾の帰属でありますが、これはもう一切の権利、権原を放棄したものだ、これだけは日本政府ははっきり言えることであります。同時にまた、この台湾は、いわゆるカイロ宣言その他の連合国側で相談したときに、戦争で失った領域はもとの宗主国に返す、しかし、新しくその領土は拡張しない、こういう申し合わせがありますから、その申し合わせによって、私は、これは中国の一部になったんだ、かように思うほうが理の当然ではないかと思います。どうもそこまで云々することはよけいだと、かような議論もいままでしておりましたが、なお私は事態を、その歴史的事実から見まして認めることがよろしいのではないか。  もう一つあります。これは台湾を領有している中華民国とわれわれは日華平和条約を結んだ。そこにいる中華民国、蒋介石総統は、中国は一つだ、こういう表現をしております。したがって、私どもはいまさら台湾の帰属を論議する筋合いではないのではないか、かように思うのでありまして、この点は非常に明確であります。  ただ、私はあえてもう一言つけ加えさせていただきたいのは、昨年の国連の総会におけるわれわれの態度と今回の国連における態度、これは非常な変化を来たしておるはずであります。これは、中華人民共和国を承認する多数の国が世界にある、そういう立場から、いわゆるアルバニア案が通過はいたしましたが、アルバニア案と、われわれの提案した案との相違は一体どこにあるのか。それはただ一点、台湾の処遇の問題だけが違うのであります。アルバニア案では、台湾を追放しろといっておる。われわれは簡単にその追放はできない。しかし、中華人民共和国を国連に迎えること、同時にまた、安保の常任理事国にすること、これはアルバニア案と同様であります。ただ、私どもは、いままで忠実に国連憲章を守ってきたこの台湾を、追放という処置はとらない。これが違うところであります。それならば、二つの中国、あるいは一つの中国、一つの台湾、そういうような考え方かと、かように申しますと、そうではない。私は、アルバニア案が通る前から、中国は一つだと言っておる。これは蒋介石総統自身が、中国は一つだと言っておる。また北京においても、中国は一つだと言っておる。大体この国が二つであるとか、一つの台湾、一つの大陸だと、こういうようなことを外国人がとやかく言うことはないと思います。ましてや、戦争で負けて放棄したその地域についてとやかく言う筋のものでないこと、これはもうはっきりいたしております。私は、それぞれの政府を代表するそれぞれが、いずれも中国を代表する正統政府、かように言っているのだから、その点は中国の問題としておきめをいただきたい、かように申し上げておるわけであります。ただいまお尋ねになりました点は、非常に明快にお答えできるように思います。
  339. 松本七郎

    松本(七)委員 首相自身は明快なつもりかもしれないけれども、ちっとも明快じゃない。  第一、大事な点、二つあると思うのです。このいまの説明は、再三本会議場でもやられた。いままでの国連のときの態度と違うのだということをしきりに強調される。確かに、形式論から言うと、いままでは中華人民共和国政府の国連代表権を認めないという態度をとってきたわけですね、積極的に、二重代表で。それを今度は入れることは認めるのだから、たいへんな前進だと、こういう印象を与えるような答弁をされるわけだ。だけれども、内容的にいえばどうかというと、けっこうです、お入りなさい、そこだけとると、さも前進のように見えますよ。けれども、一方で今度は、国民政府の追放には反対だ、こういうのでしょう。これでは新しく入ろうという中華人民共和国の立場からいったらどうなりますか。入りなさいといいながら、一方では自分が入れないような条件をぽんと出しているのでしょう。これは同じ阻止なんですよ、内容的には。結果的にそうなるじゃないですか。入れないような条件を出しておいて、お入りくださいというのだから、戸を締めて、かぎを中から締めておきながら、お入りくださいというのと同じですよ。ほんとうに入れるならば、このかぎをあけなければならぬ。それは台湾をもう国連代表でなくなるという入れかえをやらなければ、これは入れないのだから。その明快な態度を出さないで、そうしてあたかも政府が非常に前向きに一歩前進したような答弁をやるのが、私は非常に遺憾なんですよ。国民の側から見ていれば、ああそうかな、佐藤さんも一歩前進したのかなという錯覚を起こしますよ。形式論だけ、それは。内容的には入れないような条件を一緒に出しているのだもの。これは中華人民共和国の代表権を阻止する戦術が変わっただけのことなんです。その正体というものを国民にごまかすためにそういうふうな説明をする。はなはだ遺憾ですよ。(「冗談じゃないよ、ごまかすわけないよ」と呼ぶ者あり)結果においてはごまかしているじゃありませんか。  それでは、もう中華人民共和国政府は代表権を持ったのだから、これからほんとうに日本との間をよくする努力をあなたはされるわけでしょう。その具体的な手段を聞きたいですね、今度は。  まず、保利書簡というのはどういういきさつですか、あなた、これを御存じなんですか。この経過を伺いたい。
  340. 福田赳夫

    福田国務大臣 保利書簡のほうは、私のほうが総理より少しよけい知っておりますので、私からお答え申し上げますが、保利自民党幹事長は、日中間の国交正常化、これに非常に熱心であり、真剣であります。で、かねてから何とかしなければならぬ、自民党の幹事長に就任した、またそういう機会におきまして、その立場において何とかこの問題の解決に当たりたい、こういう情熱を示しておる。私はそれに対して非常に敬意を表しておったわけでありますが、私が陛下のお供をいたしましてヨーロッパを回って、十月の十四日に日本に帰ってまいりました、その直後だと思いますが、保利幹事長は私に巻物を見せまして、読んでみると、これは日中国交打開につきましての周首相にあてた書簡であります。私、ざっと斜めにこれを読んでみたのでありますが、これは非常な名文である。そしてまた、自分の筆で書かれておる。私はずいぶん苦心をされた文章であるという受け取り方をいたしたわけであります。  内容はさだかには覚えておりませんけれども、大体最初の部分は、周恩来首相が、二十二年間、建国以来たいへん努力をされて今日の中華人民共和国の体制を固められた、これに対して敬意を表する。第二項というか、その次は、日中間の問題です。日中には古い長い歴史がある、しかるに今日国交の正常化というものがない、これは非常に残念だ、何とかして私は日中打開の道を探す、お互いに探すべきものだ、こういう綿々たる日中打開に対する必要性、また歴史的な要請、そういうものについて書かれてあります。そこで、ひとつ私自身が北京に参って日中国交打開について話し合いたい、こういうようなことになっておるわけであります。  私はその手紙を見まして、非常に心を打たれるものがあったわけでありますが、これを差し出すということになったようであります。それが北京に届けられまして、北京からも何らかの反響があったようでありますが、その反響につきましては、美濃部・周恩来会談、そういう席での話でございますので、私も、日中打開について何かしなければならぬ、こういうふうに考えておるものといたしまして、美濃部さんがお帰りになりましたらば、とくとその印象なりというようなことにつきまして伺ってみたい、こういうふうに考えている次第でございます。  それから、この手紙は総理にはどういうふうにされたのですかという質問を保利さんに対して発しましたが、そうしたら、これは総理には見せておりません、しかし、私は周恩来首相に対して手紙を出すという決意であるということは総理に申し上げてある、こういうお話でございました。  以上が、私の知っておるこのいきさつでございます。
  341. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、総理は事前には内容は御存じない。外務大臣は横読みして内容の概略は知っていた、こういうこと。総理は内容を全然御存じないのですか。
  342. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 最近になって読ましていただきました。
  343. 松本七郎

    松本(七)委員 いや、事前に。
  344. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 事前には私は別です。知りません。
  345. 松本七郎

    松本(七)委員 これほど大事な問題を、しかも幹事長という要職にある方が書簡を出すということは御存じであって、内容を知らないというのはどういうことですか。これは、いまの外務大臣答弁では、政府が指示して保利さんにいってもらったものじゃないらしい。保利さんのほうから、こういうことをやろうと思うが、どうかという相談の形で持ちかけられたように聞くのですけれども、それを外務大臣が了承した、けっこうなことだといった経過だろうと思うのですよ。それだったら、当然、内容を、それは政府としてはあなた了承している以上は、総理大臣にぐらい相談して、あらかじめこれを認めなくちゃ、これはたいへんじゃないですか。
  346. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まあこの問題はいろいろいきさつもある、かように思いますが、私は、幹事長が積極的に日中国交の正常化について力をいたそうという、そのことを高く評価いたしております。私は、一々そのどうこうする文句というようなことは、これはまた別ですが、とにかく積極的な意図のあること、それはしっかりやれ、こういうように私は激励しておる。
  347. 松本七郎

    松本(七)委員 それは文句だとか内容は別だと言われるけれども、別じゃないのですよ。さっきから問題にしている——さっき飛ばしましたけれども、もう一つの問題点は、あなたは、中華人民共和国政権あるいは国民政府政権、それの選択は、中国の解決すべき、外国が云々する問題じゃないと言われたけれども、これは国際法上はそうじゃないのです。一国の中で内乱が起こって二つの政権ができることもあるでしょう。革命によって暫定的に二つの政権があることはあるでしょう。そういう場合に、それぞれの国がどちらかを承認するということは、これは国際法上の独立国が認められた基本的な権利ですよ。だから、これはその国のことだと言っておられないのですよ、すでに国際問題なんだから。いずれかの政権を選択するのは、その国の権利なんですよ。この日華条約当時の選択については、それはいろいろな国の関係もあったでしょう。それは国民政府との関係を持っている国のほうが多いとか、いろいろなこともあったでしょう。吉田さんはそのあらゆる条件を勘案しながらああいう態度をとったのですよ。ですから、その現実の状態が両政権の間にずんずん変化するのですから、その一定の時期がきて、こちらが正統政府と認めるという態度をとらなければならぬときがくると思いますよ。それがいま国連の代表権が認められることによって中華人民共和国政府が国際的にただ一つの正統政府として認められたことになるのですから、この際は、日本の国際法上持っておる本来の基本的な権利を行使して、そしてこの国際的に認められた中華人民共和国政府こそ唯一の正統政府であるということを明確に打ち出す機会ではないか。そういう大事なときに、保利幹事長が書簡を向こうに行く美濃部さんに託する、こういう重要なことをやられるのなら、内容こそ大事なんです。その証拠に、その内容として伝えられておるものが、中国で受け入れられないという反応がきているじゃないですか。それは、中国はただ合法政府と書いてある。唯一の正統政府ということは書いてない。それからもう一つは、台湾は中国国民の領土である。さっきから言うように、放棄はしている。中国の領土。その正統政府は中華人民共和国政府だということが国際的に認められた今日の段階では、放棄した中国の領土は当然中華人民共和国の領土であるということに論理的にもなるじゃないですか。この新しい時点に対処する態度というものがどうであるかということによって、あなた方は前進できるか停滞するかきまるのです。ですから、さっきからこの点聞いている。
  348. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この保利幹事長が出した手紙というのはいわゆるアルバニア案が成立する前でございます。したがって、これはたいへん時期的に大事な点であります。われわれがいわゆる日米共同提案いたしました国連に中華人民共和国を迎え入れる、同時に安保の常任理事国にする、こういう段階、同時にまた、台湾の問題をわれわれが擁護している、そのときに出されたものである。それをひとついまのような問題とあわしてお考えをいただきたい。だから、非常にはっきりした今日になりますと、保利幹事長の手紙、それが実情に合わない点があるかもわからない。しかし当時はそのとおりであります。ことに、どうもわれわれが使うことばと中国で使っていることばは非常に違うようでありますね。いま国民ということばを使っている。中国の国民の領土である。国民ということばがどうも気に食わない。中国では人民だと言っている。ここらにそういうような行き違いもあるようですね。だから、そこらはもっと話をすることが必要なんじゃないか。お互いに直接にぶつかれば話がわかる。ただいまのようなことばが問題になっている。これは最近私も少し勉強いたしまして、そういう点もわかるようになったのですが、御了承いただきたい。
  349. 松本七郎

    松本(七)委員 私はことばの問題ではないと思います。ことばをどう使うということでなくて、やはり基本的姿勢、さっきから私が強調しておるように、やはり原則をはっきりさして基本的な姿勢を明確にしなければ、前進できないと思います。  そこで、あなたはいま答弁で、保利書簡の時期からだいぶんズレがあるようなお答えでしたが、幹事長も、何か新聞の報ずる談話によりますと、書簡が中国に届くかどうかが最大の関心事だった、こう言っている。で、今後は事態の変化を踏まえて新たな姿勢で対処する意向だと言ったということがいわれておるのです。そのことをいまあなたは言われたのだろうと思うのですね。この考え方にあなたは同調されるわけですね。時期が違うのだから、これから少し新しい態度を出そう、それはまことにけっこうなことですが、それじゃどのような内容で当たられるかということが、今後一番大切になる。その点は、さっきから繰り返すように、やはり正統政府をはっきり認めることと、台湾の帰属について、いままでのような態度でなくて、明快な態度を打ち出すということ、これがきめ手になると思いますので、その点は十分念頭に置いておいていただきたい。  外務大臣は、十月二十六日でしたか、ちょうど国連代表権の中華人民共和国政府獲得が決定された日に、NHKの座談会で、アヒルは、一見静止しているように見えるが、見えないところで水かきを動かしているのだと、なかなか自信たっぷりなことを言われておった。ところが、そのアヒルは一体これからどうなるのですか。先見性を疑いますな。今度のこの保利書簡で、実はこのアヒルは、水かきを持っていない鶏の足をつけたアヒルだということがはっきりしたわけですよ。全然前に進めないのですよ、これじゃ。こういう態度ではだめなんですよ。全くその正体が暴露された。ここをよほどよく考えておいてもらわないと、従来から繰り返し政府の述べておる国会での説明では、もう一歩も前進しないと思います。どうしても、先ほどから言うように、二つの点、原則を明快にしてもらわなければ、もう佐藤さんが、幾ら沖繩返還は自分の手で、そして中国の国交回復も自分の手でやると言われてみても、これはことばだけに終わるでしょう。ですから、その点をひとつ反省してもらいたいんです。
  350. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 謙虚に御意見は承っておきます。
  351. 松本七郎

    松本(七)委員 私はこの保利書簡をめぐる今度のあれで、今度共同声明に基づくところの沖繩返還協定、この返還協定の前文に、御存じのように、この佐藤・ニクソン共同声明を基礎にするということが明記されてありますね。ですから、この共同声明を背景にし、基礎にしてこの協定というものはできているわけですから、その共同声明の中の台湾条項というものが、中華人民共和国政府の国連代表と、それから、いま言うような保利書簡をめぐって、いかような方針で臨まなければ一歩も前進することができないかというような事態が明らかになった以上は、今日このままの政府の姿勢では、この共同声明というものの基礎がくずれているわけですから、一番大事な韓国条項とか台湾条項というものが、もうこれは宙に浮いているんですから、したがって、根底から返還協定というものの基礎がくずれているという認識が皆さん方にされないんですか。どうですか、その点。論理的にそうなるんです。
  352. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 沖繩返還協定、これはアジアの緊張緩和には役立つと私は思います。それが何か激化するような言い方に……(松本(七)委員「激化とは何も言ってない」と呼ぶ)激化ということばは使われないけれども、何かそういうようにとれるようなお話のようにいま聞けたのですが、そうでなければ、これは緩和に役立つ、このことは非常にはっきりしている、かように思います。したがって、ニクソン大統領が訪中してどういう状態が起こりましても、別に沖繩の祖国復帰を妨げるようなものではございませんし、また、どんな事態が起きても、やはり本来あるべき姿にするのが当然だと思います。日本領土権、また、そのもとにおける日本国民、それが施政権をアメリカにというような状態では、本来あるべき姿ではない、私はかように思いますので、この点は、いま前文も外務大臣と読んだのですが、別に、共同声明、これを基礎にしたというものではございません。これは一応経過を説明しておる、かようにお読み取りをいただきたい。
  353. 松本七郎

    松本(七)委員 まず緊張を緩和するのに一番いま大事な要素は、何といったって日中関係ですよ。これを国交回復するということがアジアの緊張緩和には大きな要素になっていることは認められるでしょう。そうなると、それの妨害になるような行動は一切なすべきじゃないですよ。だから、最初から言っているように、沖繩返還協定というものと中国問題というものはもともと切り離せない相関関係にあるのですから、その点の認識をしないで、ただ、これを切り離して、施政権が返ること、そのことがアジアの緊張緩和にいいじゃないかという、そのことだけを強調されることは、私は間違いだと思いますね。それとすべての問題の関連の中での返還というものを位置づけて評価しなければ、私は正しい評価は出てこないと思うのです。すぐそういう言い方をするから、意図的にそこに持っていこうとしているということになるのです。そこで、私どもに言わせるならば、政府はこれから日中関係を好転させるいろいろな手を打とうというのでしょう。そのやさきに、保利書簡は大きなマイナスの要因だったということを私は申し上げる。  まだありますよ、マイナスの要因が。この間のユネスコの総会で、なぜわざわざ日本はこれに棄権したのですか。二十九日のユネスコの執行委員会で、同機関に中国を代表するのは北京政府であることを認め、国府代表を追放することをきめた。この決定をする際の日本の態度は、結局棄権していますね。そうして、そのあと政府筋談として、今後も棄権するという報道がされております。これは政府の指示によるのでしょうか、この棄権は。
  354. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ユネスコに関してのお答えは、後ほど外務大臣がいたしますが、私は、先ほどの、緊張緩和に役立つ、これがとんでもないことだ、かようなおしかりを受けましたが、私は、その点は緊張緩和に役立つ、かように思っておりますし、また……
  355. 松本七郎

    松本(七)委員 一部にすぎないと言っているんです。
  356. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 一部にすぎないとおっしゃるけれども……
  357. 松本七郎

    松本(七)委員 ほかの関連との間で位置づけしなければ正しい評価はできませんと言っているんです。
  358. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 その点をよくもう少しおわかりになるように申し上げたい。  私が申し上げるまでもなく、施政権が日本に移れば、そこにいる米軍は、安保条約の範囲内のワク内にとどまるわけであります。ただいま施政権をアメリカが持ち、米軍がこの状態を続けるなら、米軍は自由かってな行動ができるわけであります。しかしながら、今度は、祖国に復帰したその状態において、米軍日米安保条約のワク内にとどまる、行動まで制約を受ける、これがアジアの緊張緩和に大きく役立つのだ。この一つというような小さいものではない、大きく役立つ。このことをよく御理解いた、だきたいと思います。
  359. 福田赳夫

    福田国務大臣 ユネスコでどうして棄権をしたか、こういうお話でございますが、あれはたしか、二十六日に国連の決議がありまして、二十九日にユネスコの理事会、こういうことだったと思いますが、とにかくああいう決議があった早々のことでありますので、とりあえず棄権をいたす、こういうことにいたしたわけですが、どうも先ほどから松本さんのお話を承っておりまして、私もいろいろ感想があるわけでございますが、私どもは外務委員会でも申し上げたのです。松本さんもお聞きだったと思いますが、とにかく中国問題につきましては、日中国交の正常化ということは、これはもうほんとうに歴史の流れだ、どうしてもこれとまっ正面から取り組まなければならぬ、こういうふうに申し上げておるわけです。ただ、わが国は、一方において国民政府との間に日華平和条約を持っておる、また、事実上深い各面の交渉を持ってきたわけでありまして、この関係を弊履のごとく捨て去るというわけにもいかない立場にあるのだ、こういうことをこれははっきり申し上げたわけです。とにかく十月の二十六日には国連においてああいう決議がありましたので、これを踏んまえまして、さらに日中国交の正常化、これには努力しなければなりませんけれども、そういう国際信義上の一面における問題というようなのも、これも慎重に考えていかなければならぬではないか、こういうふうに考えておるわけなんであります。今後、いろいろ国連の下部機構について、あるいは国連と関連のある機構について、国府、北京、この両者の扱いをどうするか、こういう問題がありまするが、とにかく慎重によく考えて、あやまちなく対処していきたい、こういうふうに考えております。
  360. 松本七郎

    松本(七)委員 あなたは、ユネスコの総会は、国連総会の決定が二十六日で、ユネスコ総会が二十九日だったから、あんまり直後のことだから、とりあえずと言われるけれども、それじゃ、その各専門機関に今後も棄権するという指令を出しているという話も聞くのですが、その点はどうですか。それでは今後改めますか。
  361. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういう指令は出しておらぬと思いますが、各国がどういうふうにこの問題に取り組もうとしておるか、この各国の動向もよく調べてみなさい、こういうことは指示してあります。
  362. 松本七郎

    松本(七)委員 時間もたいへんおそくなりましたから、この程度で一応切り上げておきたいと思いますが、この中国問題は、今後それじゃ具体的に前進できるどういう対策をとるかということが焦点になりますので、やはりさっきから論議しておりますように、返還協定も、確かに、施政権が返るというそのことは、これは大きな前進でしょう。けれども、中国との問題と無関係でこれをやられたのでは、せっかくプラスの要素ができても、マイナスの要素をよけいつくったということになると、これは全体の情勢はよくならないということになりますから、それで特に私は中国問題は強調しているわけですから、そのせっかく返ってくる施政権をアジアの平和なり、これで緊張緩和に十分役立つような環境づくりについて今後特に努力してほしい。そのために私は中国問題というのを強調しているわけです。  もう一つ、この航空協定の問題について問題点がありますから、いずれこれは詳しくは御当人からやりますけれども、本日一応関連して横路君から質問したいと思いますので、お許しを願いたいと思います。
  363. 櫻内義雄

    櫻内委員長 関連質問の申し出がありますので、これを許します。横路孝弘君。
  364. 横路孝弘

    ○横路委員 いま、いろいろと日中国交回復についての政府の姿勢について答弁があったのですが、具体的に問われている問題の一つが、現在台湾の中華航空が沖繩に乗り入れをしているわけです。もし、この施政権の返還後この乗り入れを認めるとすれば、これは航空協定の内容がオランダやイギリスと違いますから、新たに航空協定を結ばなければならないと思いますけれども、運輸大臣、その新たな協定が必要かどうかという点に関してお答えをまずいただきたい。
  365. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 日華航空の取りきめの問題と思う次第でございますが、この問題につきましては、ただいま、御承知のとおり、日米の今回の沖繩返還協定におきましても明記してございますが、沖繩を通るということになりまして、沖繩から大阪に来る、こういうことになりますと、カボタージュの問題であります。カボタージュの禁止ということは、これはもうICAOその他ではっきりきまっていることでございます。私どもはその線に沿いまして、日華のただいまの取りきめにおきましてもその点の修正を求めるということで、ただいませっかく折衝中でございます。
  366. 横路孝弘

    ○横路委員 つまり、台湾の中華航空が今度は沖繩経由で大阪に来るという場合には、いまお話があったようにカボタージュに触れるわけですね。そうすると新たな航空協定というのが必要になるわけです。いま何か交渉なさっているようなお話だったのですけれども、そこで総理にお尋ねをしたいのですが、いま日本航空なり全日空は、北京なり上海の乗り入れということで中国側と接触を持っているということは、御承知だろうと思うのです。結局、この中国との国交回復、これを実現するためには、台湾問題にケリをつけなければならないということは、これは明確になっている。そうすると、この際、台湾との関係は、深入りしていくのではなくて、だんだん切り捨てていく、関係を綿密に持っていくのではなくて、その関係をできるだけ切り離しをしていくということは、やはり日中国交回復を実現する私は重大な要素だろうと思うのです。そういう意味では、今度のこの沖繩返還協定にからんでこういう状況になって、航空協定を結ばなければならないわけですから、これを台湾との間には結ばない、もう沖繩に関しては乗り入れを拒否をする、こういう姿勢を政府として貫くことが、これがやはり国交回復の一つの重大な私は要件になってくると思うのです。総理大臣答弁を伺いたい。——姿勢ですから、総理大臣に伺いたい。
  367. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 私が担当しているものですから、私からひとつお答えいたします。  ただいまの問題は、カボタージュはあくまでも禁止するという方針でいま進んでおりまして、これができるように努力している次第でございますが、必ずこれには賛成をすると思う次第でございます。
  368. 横路孝弘

    ○横路委員 カボタージュの禁止というのは、それは国際民間航空条約できまっていることなんですよ。  具体的に、では、今度沖繩復帰の暁にここに乗り入れるかどうかということは、日本航空、全日空が北京や上海の乗り入れを——これは国交回復が実現しないと実際はなかなかむずかしい問題だろうと思いますが、話をしている。したがって、私は、台湾との関係にケリをつけることが日中国交回復の前提であるとするならば、台湾との関係はこれはできるだけ切り離しをしていくという意味で、台湾との間の航空協定は結ばないということを政府の方針としてとられることは、日中国交回復を実現していく重大な要素になるだろうと私は言っているのです。したがって、これは具体的な政府の方針としてどういう方針なのかということを、これは総理大臣からぜひ御答弁をいただきたい。
  369. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま日中間に一つの航空協定もあるべきだ、こういうお話が出ましたが、横路君が言われるように、そういう個々の協定もさることだが、まず国交の正常化をはかること、これが何よりも第一だ、かように思っております。  そこで、新しく台湾との関係を創設するということについては、これはやはり慎重でなければならない、かように私は思いますので、これは運輸当局におきましても同様の考え方だと思っておりますし、また私が、そういうことは方針としてきめるべきだ、新しいものについては慎重に処理すべきだ、かように思います。
  370. 横路孝弘

    ○横路委員 従来の総理の、慎重にという答弁は、これは何もやらないということだから、そういう趣旨でいくといいのですけれども、やらない、やはりいまお話があったように、台湾との結びつきを強めていくことは、日中国交回復の阻害になるわけですから、そこのところを十分ひとつ認識をして、いまのその慎重にというのは、実は結ばないという方向で私たちのほうでは解釈したいわけでありますが、再度その辺を明確にして、積み重ね——日中国交回復が前提だ、それはもちろん、個々の航空協定、気象協定の積み重ねでは日中国交回復は、実現できないような段階に来ているわけですね。ただ問題は、台湾問題のケリがこれは大きな問題になっているわけですから、そんな意味で再度御答弁を願って、関連ですから、これで終わりにしたいと思います。
  371. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは文字どおり慎重にやります。御安心願います。
  372. 松本七郎

    松本(七)委員 日中問題は、佐藤総理は、日中の話し合いの中でいろいろな問題を解決していきたいという態度のようですけれども、私どもの見たところでは、やはり話し合いをするためにも、原則的なものはきちっとした態度を打ち出さないとその話し合いもできないと思いますよ。そのことを十分考えて、いま横路さんからは航空協定についての慎重論が出まして、文字どおり慎重だと言われるから、その点はけっこうだと思います。なるべくそういう阻害要因になることは慎重に、かつ、前進要因になることは勇敢に、ひとつ前向きに、積極的に前進していただくことを特に強く要望しまして……。  それから、今後のこの協定についての審議は、最初に何回も言いましたように、あの安保のときのようなああいう暴挙を二度と繰り返さないように、ひとつぜひお互いに努力をしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。(拍手)
  373. 櫻内義雄

    櫻内委員長 渡部一郎君。  渡部君にあらかじめ申し上げますが、理事の間の申し合わせで、大体三十分程度きょうはお願いすると、こういうことでございますので、お含みの上で御質問をお願いします。
  374. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この次にその続きはできるわけですね。
  375. 櫻内義雄

    櫻内委員長 はい、承知いたしました。
  376. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私はたくさん御質問を申し上げなければならぬことがございますし、かねてから総理がおっしゃっておりますとおり、慎重審議というたてまえを貫いてがっちり質問させていただきたいと、だいぶ材料も集めてまいりましたのですが、ただいま委員長からお話がありましたように、約三十分とのことでございますので、きょうはとりあえず、いままでの質問、それからその他の中で詰められていない問題につきまして多少申し上げておきたい、こう思っておる次第であります。  その第一は、先回私は、予算委員会におきまして、HEの問題につきまして申し上げました。また、参議院におきましては黒柳議員から徹底的な追及がございまして、もうHEの名はおそらくは防衛庁長官の脳みそにもしみ込まれたと私は思っておる次第であります。このHEの破壊力の強烈かつむざんなことにつきましては、核兵器撤去の際によほど気をつけなければならないものである。私がここで述べましたときに、長官は、核兵器につきまして有無というような問題は抜きにしまして、ひょいと口をすべらせられたのか、核弾頭については、HEと弾頭部分とは取り離して別別に運ばれ得るものらしいというようなことをひょいと申されました。おそらくあれは相当のすごい発言になろうかと私は思います。  核弾頭とHEとの関係について、まず防衛庁長官に、どう思っておられるか、ひとつお答え願いたいと思います。
  377. 西村直己

    西村(直)国務大臣 HEということばでございますね、これがどういうふうにとられるかといいますと、大体高性能爆薬ということでありまして、HEそのものというのは、いろいろな種類があると思います。それで、HEそのものにつきましては、今日そういう核以外のいわゆる通常兵器にも相当使われておる。国内においてもいろいろなそういうものは当然使われておると考えています。ただ、核との関係で、これがいかなる形に起爆されているかということは、これは私どもにはわからない。  なお、HE等のこまかな内容につきまして防衛局長から説明させてもよろしゅうございますが、大まかに申しますと、HEそのものについては、いろいろな種類がある、しかし、相当な性能の強いものである、しかも今日はいわゆる爆薬としてはHEがほとんど中心になりつつある、通常兵器におきましてもなりつつある、核との関係では、この内容については私どもはわからない。
  378. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 核との関連についての御発言がただいまありましたのは、おそらくは、その核弾頭にどういう形でくっついているかについて、防衛庁長官は前回の発言を撤回されたものと私は思います。それでありますならば、今度は、核弾頭にHEが付着しておるという問題については、先回黒柳君が提示いたしましたランドルフ空軍基地提供の書類の中に明示されております。したがいまして、核兵器を撤去するという作業においては、HEの部分だけに限りましても、相当な爆発あるいは相当な打撃というものが予想されるわけであります。これを移送する際に、あの資料の中で、二万人の人々に対しておおよそ被害が及ぶであろうというようなことが、もうはっきり明示されておりました。いままでのような毒ガス移送と同じ経路をたどっただけでも、こういうたくさんの人々が犠牲になるということが明らかであります。そうしますと、毒ガスを運ぶときは平気でおる、HEを運ぶときは問題にする、その逆で、今度は、毒ガスを運んだときは問題にしたけれども、HEを運ぶときには平気である、沖繩の人々に知らせない、それでおまえたちはただ黙って寝ておれ、爆発したら安心して天国に行けと言うに近いようなやり口でいく、こういうことになったとしたら、非常に片手落ちのそしりを免れないのではないか。したがって、HEが通る、HEとくっついている核弾頭が通るという場合には、毒ガスと同じような扱いをするべきではなかろうか、こう思っておるのでありますが、どなたでも御見解を承りたい。
  379. 久保卓也

    久保政府委員 HEについて危険性があることは、御指摘のとおりであります。ところで、米側の説明では、HEが、たとえば熱でありますとか衝撃度の点で問題があるということで、例示として、飛行機から落ちた場合であるとか、あるいは列車が衝突した場合に、その状況によって核爆弾についているHEが爆発することがある、その場合には、おっしゃるような非常な危険であるということで、移送の事前の段階としてどういうふうにやるかということとはちょっと別の問題のように思います。いずれにせよ、そういった爆発の起こらないような情勢、条件をつくることが必要であろうということは確実だと思います。
  380. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 いまの方はどういうようにぼくの話を聞いておられたのか、全くとんちんかんのことを言われたですね、あなたは。そういう変な話をしておるのじゃない。この間ランドルフ空軍基地の書類を出したときに、HEを運んだら危険だということは論証済みです。ところが、あなたはその話をしないで、米軍のいわゆるHE爆弾をかたい包装だとか大きなカバーに入れて落っことした場合には意外と安全だという、全然別の資料の話をされておる。私が言っておるのは、核兵器に伴うHEを移送した場合は危険だということは、この間の書類に出ておった。そしてその分の話はもう終わっておる。だから今度は、それを運んだときは危険だと言っておるのではないですか。あなた方のほうからいただいた資料を私が拝見したら、核弾頭にくっついておるHEとは全然関係のないHE、普通砲弾の中のHE、それを火にかけて燃したら何時間燃えなかったとか、け飛ばしてもだいじょうぶだったとか、そういうくだらぬことばかり書いてある。そんなことを聞いているのじゃないのだ。しっかり人の言うことを聞いてもらいたい。そうしなければ、慎重審議どころか、もう審議がおくれて、何百時間かかっても終わらないじゃないですか。
  381. 久保卓也

    久保政府委員 いま私が申し上げたのは、核爆弾についているHEのことであります。
  382. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 核爆弾についているHEというその資料はどこにあるのですか。じゃ、その資料出してください。あなた方はその資料はないと言ったじゃないですか。いままで、出せない出せないと言った資料が出てきたのですか。出してもらおうじゃないですか。
  383. 久保卓也

    久保政府委員 米側の説明の過程でわれわれが見ておりますが、この前に長官が申されたのは、その分の資料はございますが、米側との関係もあるのでお出しできません、こう申されたと思います。
  384. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 核弾頭に伴うHEの資料があるということを明示されたわけですから、その資料をここに出していただいて、安全性その他に関する審議のために出していただくように要求いたします。
  385. 櫻内義雄

    櫻内委員長 渡部君の要求は理事会において協議をいたします。
  386. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それではちょっと申し上げるわけでありますが、次に、そのHEを運ぶ場合の危険性について、そこの町の中を通る危険性につきましては、先日の資料に明らかでありますので、総理にお伺いしたいのでありますが、そういうものを実際に町の中を通す場合、毒ガスに対してと同じような配慮が何とかしてできる方法はないかと私は考えたわけであります。確かに、必ずしも私はむちゃを言っているわけでないのでありまして、核弾頭があるとかないとかについて言えないということを、総理は何回も述べられました。また、その存在を明らかにするようなのはなかなかやりにくいとは思います。しかし、ある時期において町のどまん中を、沖繩の住民の危険性にもかかわらずそれを通して、住民の被害というものを全く顧慮しないでそういうものを移送するということは不可能なはずであります。したがいまして、それについて何らかの方法をとらねばならない。それについて総理の御見解を承りたいと思います。
  387. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 毒ガスの場合も、不測の事態が起こらないように、こういうことでいろいろ注意してまいりました。私は、HE、さらにまた核の撤去、こういうような場合には、これが事故を起こさないように安全第一であること、これはもう当然だと思います。ただ、私の知識をもってすれば、どうしたら安全になるのか、そういうことが私もよくわからないのです。したがって、それを説明することはできませんが、まず第一に必要なことは安全第一だ、このことを強く米軍にも要求し、米軍もその点を考えてやっておることだと思います。ただ、これは想像の域を出ない。お尋ねになることは、おそらく、具体的にどういうことをやるんだ、こういうことだろうと思いますが、それについての私には答えができません。
  388. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうしますと、委員長、これは総理米軍に対してそう要求をし、そうして向こうもやっているだろうというお話だけでは済まないと思うのです。というのは、町のまん中を通るといたしますと、やっているだろうじゃなくて、だれかが寝ておったり通行しておったりするわけでありますから、やっているだろうという想像は当たらないと思います。どうしても危険な人が出てくる。そうすると、何らかの方法で町を遮断するなり道路を遮断するなり、何か別の名目をつけてもそういう方法が必要なのではないでしょうか。お答えを願います。
  389. 福田赳夫

    福田国務大臣 しばしばこの問題につきましては御指摘のあったところですが、わが国といたしましては、米国政府に対しまして、この問題は非常に地域住民の関心のある問題であるので、厳重に注意をしてもらいたいということを申し入れておるわけなんです。米国政府におきましても、慎重にこの問題は取り扱います、決して御迷惑はかけません、こう言っているので、それを信頼をする、こういうことですが、この上とも当方としてできるだけのことはしてみたい、かように考えております。
  390. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私はむずかしい高級な理論をもてあそんでいるのではなくて、期待されるというのはわかりますし、米軍に対して要望するというのもわかります。しかし、その道から人をどけない限りはHEを運ぶのは危険だと、あの本には書いてある。そうしたらどうするのですかと私は聞いておるのです。そうしたら、通る時期なり何なりを適当にこちらで指定して、このときにお通りください、そうして町を遮断するしかないと私は思うのです。毒ガスのときにはそうした。ところが、毒ガスの何十倍、何百倍の危険性を持つ核兵器の移送の場合にはそうしないとあってはいけないと私は思う。  それは、こちら側の日本政府並びに琉球政府の処断でもってできる話ではないでしょうか。だから私は、それについて米軍にただお願いするのではなくて、道の通りを人を遠ざけて、そこの住民を疎開させてということは、こちら側でできることです。向こうに希望するだけの話じゃない。琉球政府に号令したっていい、住民に布告したっていい、そうしてその結果をもって米軍に、何月何日と何日は道路をあけておきますから、どうぞお通りくださいぐらいのことを言ったっていいはずです。そういう知恵を出さないで、米軍にただ期待しておるだけでは危険じゃないでしょうかと私は申し上げておるのです。これはやさしい話なんです。ぜひお答え願います。
  391. 福田赳夫

    福田国務大臣 渡部さんは、沖繩につきましてたいへんいろいろ研究された。きょうもまたいろいろお話を承るだろうと思いますが、そういうものも踏んまえまして、厳に米国政府に交渉するということにします。ただ、なかなか普通のものの扱いじゃないものですから、そこに非常に困難な問題があるということだけは御承知おき願いたいと存じます。
  392. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 その後段の部分はよくわかっています。  そこでもう一回、私の言ったことを踏んまえてくださるのはたいへんけっこうですから、道路を通って移動するそのときには、少なくとも核弾頭なり何なりが移動するときは、そこにいる住民は疎開させるという約束をしていただきたい。そうしなければ、住民は、いつ通るかわからない、自分の家の前を何か大きな車両が通った、またあれかもしれないと、毎日恐怖を感じなければならない。そういうのは、私は政治じゃなかろうと思います。ですから、少なくともその怪しげなものが通る瞬間——別にぼくらは中身を聞いているわけじゃない。中身をさわろうというのでもない。何もアメリカの大統領の権限を侵そうとしているわけじゃない。道路をあけるふしぎな日を何日かきめてしまえばいいと言っている。そうしたら、そのときに米軍がそこを通ろうが通るまいがいいじゃないですか。そういう日を、怪物移動の日とでも名づける日を何日かとる、そうしておいて安全性を完全に確保してしまえばいいじゃないですか。それぐらいおやりになったらどうでしょうかと申し上げておるのです。どうでしょうか。
  393. 福田赳夫

    福田国務大臣 それでありますから、渡部さんの御意見なんかをよく聞きまして、できる限りの努力はしてみる、こういうふうに申し上げておるわけです。
  394. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それでは、総務長官が何か言いたそうな顔をしておられるから、どうぞ総務長官——それじゃ、総理どうぞ。
  395. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま外務大臣お答えしたとおり、とにかく安全性を確保しなければ、これが一番大事なことだと思います。ただいま渡部君から御提案になりましたようなことも一つの方法かと思いますが、どうも専門的に、はたしてそういうことが可能かどうか、あるいはもっとその専門的な知識を持たないと、むだな努力をしてもあまり効果はないとかいうようなおしかりを受けることにもなりますから、どうもちょっと、こうしますということは言えない。まことに申しわけございませんが、そういう状態でございます。
  396. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうしますと、ともかく専門的知識はないからと、総理は非常に慎重な、また謙虚なお申しようでありますけれども、私はこれについての知識はふえないと思います。なぜかといったら、米軍がしゃべらないのですから、そして先ほど防衛庁長官もおっしゃったとおり、ふえないのですから、総理がいかに知識を得たいと心から望んでもだめなのです。だめなものをおっしゃるということは、やる気がないということです。それでは話になりません。  ですから、私は何回も申し上げておるとおり、この問題について、ほんとうに小学校の生徒がわかるような明らかな方法、要するに、米軍が今度核兵器を抜くけれども、そのときは、住民の皆さんに心配させないで、こういうようにやりますよと言える方法、アメリカ軍の意見にも引っかからないようないいやり方を研究していただきたい。私はもうすでに一つの案を述べました。それに対して、総理外務大臣が寄ってたかってお考えになっていい知恵が出ないわけは断じてないと私は思っております。ですから、これについての御返事を、いますぐいただかなくてけっこうでありますから、この沖繩審議の最中に、いずれかの方法で述べていただくように私は希望したい。また、それと関係なく、沖繩の住民に直接言っていただきたい、そう思うのですが、いかがでしょうか、外務大臣
  397. 福田赳夫

    福田国務大臣 安全につきましては、先ほどから申し上げておりますが、核というものの性格上、なかなかこれが私どもの思うようなぐあいにいかないのです。しかし、これはやはり第一には、米国政府がこの問題にほんとうに安全第一ということで取り組む、これが大事であろうと思います。この点については、絶えずそういう要請をしておるわけで、アメリカでもそういうことを考えております。おりますが、なおいい方法があれば、こういうことでいろいろ知恵も出してくださる、そういうことも踏んまえまして今後とも対処していきたい、かように考えます。
  398. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それでは、いまの外務大臣のおことばを信じまして、しかるべき御返事が行なわれることを期待しております。そして、その御返事の模様によりましてまた質問したいと思います。  それから、今度は総理にちょっと苦情を申し上げなければなりませんけれども、私がここの予算委員会で申し上げましたときに、写真を十何枚か持ってまいりました。そして、特殊兵器の倉庫のようなものが米軍の手によって建設されておると申し上げました。そしてこれについて私は総理に申し上げましたところ、それについては総理は非常に慎重な態度であって、よく連携を保ってそれは調べるとおっしゃいました。総理はそれをお調べになるように下命されましたでしょうか。そして、その後のお調べの状況はどうでしょうか。
  399. 福田赳夫

    福田国務大臣 そのことは私どもよく承知しております。そこで、沖繩米軍当局に照会し調べたところ、さようなことはいたしておらない、こういう返事になっております。いま局長の回答では、そういうことになっておりますが、なお念査したいと思って調べておるところである、かようなことでございます。
  400. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 いまの答弁は私は納得がまいりません。工事に参加した人間を私はつかまえて面会をしてまいりました。工事をした人が、つくったと言っているのに、そんなことはしていないと言うのは、それは全くおかしな話であります。そして、明らかにそれはつくられたものであります。何なら、私は今度あの大きな——あれは縮めた写真でありますが、大きな原版の設計図約二十枚をここに提示してもよろしゅうございます。それには明確に、工事を開始した日が、佐藤総理がニクソン共同声明をつくられた後であり、そして完成したのがことしの春であることを明示してあります。しかもその内容は、明らかに普通の弾薬庫ではありません。そしてその内容につきましては、大きな背信行為であると私は思わざるを得ない。だから申し上げておるのです。もしそれが核弾頭の倉庫でない、あるいは毒ガス兵器の倉庫でないということが明らかに米軍から言われるものであったとするならば、そうしたら私は、その中を見せてくれと言うことは一向に差しつかえないと思います。毒ガス、核兵器のものであるならば、見せろとか見せないとかぼくは言いにくいと思いますが、初めから否定するのだったら、私は見せてもらうことは一向に差しつかえないと思います。また、その核兵器が、そういう倉庫がないと言うのだったら、こっちはあると言っているんですから、そのある場所と、ない場所とを私は照合することは一向に差しつかえない。そこのところに行ってのぞいてみて、そうしてこちらがあると言っておるにかかわらず、向こうはないと言うのだったら、そこの地点にあるかないかぐらいのぞくことは、一向に米軍基地に対する妨害にはならぬと思います。いかがでしょうか。
  401. 福田赳夫

    福田国務大臣 一応、ないという返事を得ておりますが、なお調査中であるというのでありますので、最終的な調査の結果はまたいずれ御報告申し上げます。
  402. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 では、ただいま外務大臣に報告をされたのはアメリカ局長ですか、そのアメリカ局長にちょっとここへ出てきていただきたいと思うのです。  アメリカ局長、自分の口から、どんなことがあったか言ってください。そういううそばかり言う人はちょっとがっちり締め上げなければ……。
  403. 吉野文六

    吉野政府委員 お答えいたします。  この問題は、われわれ自体が基地の中へ入りまして見るわけにはまいりません。したがって、あくまでも、アメリカ大使館を通じまして、現地の司令官を通じまして調査する次第でございます。そしていままで調査したところは、そのような新たに建設しているものはない、こういうことでございます。
  404. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、アメリカ局長さんは全く知らないわけですよね。お気の毒な立場だと思うんだ、私も。知らない人に文句言ってもしようがないのですけれども、ついこの間まで建設していて、つくったことには間違いがないのに。何人も何人もそれに従事した沖繩の人がいるんですよ。よろしゅうございますか。それで何人も言うておるのだ。そうして、彼らは、米軍というのは、核兵器が抜かれると言うけれども、われわれのつくったものは、これはもう核兵器の倉庫にきまっておる。私はここで詳しい報告はいたしませんけれども、明らかに核兵器の倉庫であるという証拠は何十通りもあります。その図面を専門家が見ればすぐわかります。そういうものをやっておいて、そうしておいてなおかつ核抜きだなんというようなことを言うんじゃ、もうとても信用がならぬと、地元の人たちは言っておるのです。ただ私が言っておるんじゃありません。だから、これについて、あるかないか、それはもう一回確実に調べる必要があるし、そうして、先日ランチャーの問題につきまして黒柳さんが質問した際に、外務省は、あるいは防衛庁は、そのランチャーのあるなしをのぞきに行かれたという輝ける実績を持っておられる。防衛庁の一佐さんはそこをのこのこのぞきに行った。そして一つだけのぞいてきてみんな見てきたような報告をなさったけれども、ともかくのぞいてきた実績があるじゃないですか。外務省はおそろしくてできないなら、防衛庁へ頼んだらどうですか。私のほうは憶病でとってもできません、どうかお願いしますと言ったらいいじゃないですか。  ともかく、それほどの問題が起こっていて、だれもやらなくて、そのときになると急に、アメリカ大使館のごきげんを損じないようにというので、アメリカ大使館にやさしく言って、その言ったことがそのまま返ってくる。それではあなたは主体性をもって仕事をしているとは私は言えないと思いますよ。ちゃんと返事していただくように、防衛庁長官でもけっこうですし、外務大臣でもけっこうですから、もう少ししっかりしてくれなければ、国民が心配していることに対して返事しないなんて、そんなのはけしからぬですよ。明らかに証拠の上からは、私のほうから言わせれば、あなたのいま御報告になったこととは違っているんだ。そんなものはつくっておりませんなんて言っている。つくっていて、それは別のものですというならまだわかる。つくっておりませんとは何ですか、ほんとうに。こっちは見ているんだ。設計図まで持っているんだ。その設計図まで持って、それに日にちまで書いてある。それを、つくっていませんなんて、そんなこと言えますか。ふざけてますよ。私は、防衛庁長官でもけっこうですし、外務大臣でもけっこうですし、これはもう一回お調べ直すようにお願いしたい。お願いします。
  405. 福田赳夫

    福田国務大臣 もう一回調べてみましょう。
  406. 西村直己

    西村(直)国務大臣 メースBは、御存じのとおり、あれはもうすでに撤去の際に一つだけは公開したんです。そうして残り三つが確認されてないから、公開されたものをさらにわれわれとしては見せてくれ、こう言って見せてもらいました。したがって、事柄が核に関係して見せろということになると、なかなか私はいまの状況では簡単にはいかない。メースBはもう撤去してしまったランチャーを中心に公開して、それをさらにわれわれは残り三基を確実にした、こういうふうになっております。
  407. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私はその中に核が入っているかどうか調べろと言っているのではない。それは私はあのときずいぶんことばを選んでお話ししました。私は、あれは特殊兵器の倉庫のようであると申し上げました。ちゃんと。そしてどうも毒ガスではないでしょう、米軍が抜いたといっているんだから。そうすると核のおそれもある。そうしてみんなは心配しておる。弾薬庫群のまん中につくられておる。だから、その弾薬庫の中身が心配である。だから、そういうものがつくられているんですか、いないんですか、そうして、何を入れようとしてそんなことをなさったのかということを聞くぐらいはいいんじゃないですかと、こう質問したんです。そうしたら、そんなものはつくっておりませんというすごい返事が戻ってきた。だから私は申し上げておるのです。  防衛庁長官、これはひとつ、いろいろな御事情のあるのはわかっておりますけれども、外務大臣と御協力の上、もう一回御調査をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  408. 西村直己

    西村(直)国務大臣 実は私はこの間の地図とははるかかなたで、見ておらないのですが、もしそういう資料をお貸し願えれば私のほうも、建物等がどういうふうになっているかということは、場合によれば、状況——核自体についてどうということになると、先ほど来のような困難な問題がありますが、建物がどうなっているかということは、もしお差しつかえなければそういう資料を見せていただいて、努力をしてみたいと思います。
  409. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、それでは後ほど防衛庁長官とその点は御相談したいと存じます。  それでは、その次の問題に移りたいと存じます。もうほんの一息の時間になりましたので……。  今度は、先ほどランチャーを調べました際、非常に防衛庁では御苦心をなさったんだろうと私は思いますけれども、共同査察というようなやり方を、共同監察あるいは共同行動というようなやり方で、米軍の軍人と防衛庁職員の方が一緒に行ってランチャーを見てこられたと承りました。私は、このやり方は、正直言って非常な進歩ではなかったかと、こう思っておるわけであります。米軍基地の中をのぞくということは、いままでとってもやりにくかった。共同査察とか共同行動とか、いろいろな名目があるでしょうけれども、そういったやり方で、米軍基地内の米軍状況というものについて、あるいは私たちの心配している問題について明らかにされていくということは、非常に賢明な、また、うまいやり方ではないか、久しぶりで私は佐藤内閣にかっさいを送った一人であります。  それで、こういうやり方に基づいて、これからアメリカ軍との間において、このやり方を一つの方式として、そうして先ほど言われておりますような問題点につきまして調査されたらいかがかと、私は率直に思っておるわけであります。これについて御見解を承りたいと思っております。
  410. 福田赳夫

    福田国務大臣 この問題はたいん大事な問題ですから、慎重にお答え申し上げますが、どうも核の撤去点検、そういうことにつきましては、ただいままでのアメリカ政府、これは相当高いところまでいっての話ですが、しておるのですが、非常に困難であります。まあ努力はしてみまするけれども、これに対して期待をお持ちくださるということになると、期待はずれということになるおそれがある。まあとにかく私は努力はしてみておるのです。相当高度の努力もしてみておるのですが、なかなか困難であるということだけは御承知おき願いたい。
  411. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 外務大臣にお尋ねいたしますが、大統領が核兵器の有無について発言できない根拠法は何でしょうか。
  412. 福田赳夫

    福田国務大臣 私の理解するところでは、核は最大のアメリカの戦略戦術の中心である、こういうようなことから、核がどこに存在するとか、あるいは核はどこからどこへ移動したとか、そういうようなことにつきましては、これは最高の責任者である大統領がきめるというような性格のものである、こういうことでございます。
  413. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 何となくそういう気が私たちもしておりましたので、私も調べてみたのですが、外務大臣にもう一回、まあいまお答えなさるのも無理だろうと思いますが、向こうの大統領は一体いかなる根拠法といかなる決定に基づいて核の存在、不存在を言えないか、その問題について明確でございません。向こうも法治国家であります。法治国家がそれを言えないというのはおかしなことだと私は思います。
  414. 福田赳夫

    福田国務大臣 法律のことは、私、率直に申しまして、よく存じませんが、とにかく戦略兵器といたしましてこれはもう非常に大事なものである、これは私は御理解いただけると思うのです。それでありまするからこそ、どういうふうに核の問題を扱うか、これは最高の判断を要する、最高の判断は大統領が下す、こういうことに理解をしておるわけであります。
  415. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ただいまのお答えは、残念ながらお答えになっていないように思います。私は、率直に申しますけれども、そういったことを禁じた法律は、米国法にどうやらないようであります。ところが、私たちは外務大臣等から何となく聞かされておりまして、核兵器の問題は大事だから、国民よ聞いちゃいけないのだという宣伝に、私たちは何となく身も心も縮こまっておるわけであります。そうして外務大臣はひたすらそう言われておるわけであります。テレビだとかラジオだとか新聞を通して外務大臣は言っておられる。ところが、そんな法律はないのだ。ない法律に大統領はどうして拘泥する必要があるのでしょうか。だからこそ、アメリカにおけるところの審議の途中においてアメリカの議員たちは、なぜ核兵器があるのかないのか言えないのか、そんなことのためになぜ金を払わなければならないのかと徹底的に議論をしたという事情があるのです。まあちょっとごゆっくり聞いてください。ないんです、それは。だから、ないものについて守るという必要はないと私は申し上げたのです。だから、ないものだったら、戦略的な要請やその他だって、私は、そうなれば、日本国を代表した外務大臣なり総理大臣が大統領に会うなり大統領の差し向けただれかに会う際に、いや、いまはもうなくなっておるんだよ、だいじょうぶだよとか、いや、いままだあるんですというようなことぐらいはしゃべれるのがあたりまえであって、そういう法律の規制もないのにそういったことについて言われるというのは、守るというのは私は筋違いではなかろうか、こう思っておるわけですが、いかがでしょうか。
  416. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、大統領の核に対する権限について法制的にどうのこうのということを申し上げたことはございませんです。私が申し上げていることは、核はアメリカにとって最大のこれは貴重な兵器である、この運用につきましては、これはもう最高の判断を要する、最高の判断を与える人はだれかというと、これは大統領だ、こういうことを申し上げておるわけでありまして、これはもう日本だってそうですよ。それは政策上の判断で総理大臣、何も規定、根拠、そういうものに基づかなくとも、秘密を守らなければならぬ問題というのはずいぶんあります。それは私はアメリカでも同様だろう、かように存じます。
  417. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私、この議論を続けるつもりはありませんけれども、向こうにとって、大統領の政策決定として一番大事な問題であることは了解できます。それはわかります。しかし、ここはこれから日本の国であります。そうしたら、その国において核があるかないか、そしてそれについて確かめようとかかることは、それは今度は、大統領の権限でなく、佐藤総理大臣の権限です。そして福田外務大臣の権限です。そんなことぐらいわからないであの地域を引き取ったんじゃ問題になるわけです。だから私は、それについては明確にする方法というものは当然あるべきだし、アメリカの根拠法は、別に法律による規制がない以上は、大統領の裁決によっていろいろできることであり、政治判断によってできることである、それを申し上げたいのです。ところが、何かすごい法律があって、絶対さわれないみたいな印象があったから、私は申し上げておる。ですから、今後においてそれを知る努力を継続されることは、決してアメリカの法律に違反するものではない、また、日本の政府の要求としても不当なものではない、アメリカの議員たちが果敢にアメリカ上院で議論したように、徹底的に議論することも不可能ではない、私はそういう気慨を持っていただきたい、こう思っておるのです。何かびくびくしたみたいな、核というともうそばへ手を出すことすらいじいじしなければならないような、何かおどおどしたような、何かこう背中を縮めて歩くみたいな雰囲気ではなくて、果敢にひとつこの問題に取り組んでいただかなければならない、それであって初めてこの問題も取り扱える方法があるし、核を抜く方法についても、先ほどのHEを抜く問題についても、できると私は申し上げたのです。少なくとも核兵器が通る道路ぐらいきれいにしておいて、向こうが通る時間的タイミングを与えてあげるぐらいのことができないはずがない、それを私は申し上げたいので、特に申し上げたのです。いかがでしょう。
  418. 福田赳夫

    福田国務大臣 まあ御意見傾聴いたしましたので、それを踏んまえましてなお努力してみます。
  419. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それじゃきょうはこれで終わります。
  420. 櫻内義雄

    櫻内委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は、明十六日午前九時三十分理事会、十時委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後六時三十六分散会