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1971-11-11 第67回国会 衆議院 沖縄返還協定特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十一月十一日(木曜日)     午前十時六分開議  出席委員    委員長 櫻内 義雄君    理事 青木 正久君 理事 小沢 辰男君    理事 西銘 順治君 理事 福永 一臣君    理事 渡辺美智雄君 理事 大出  俊君    理事 中谷 鉄也君 理事 西中  清君    理事 河村  勝君       上村千一郎君    奧田 敬和君       加藤 六月君    梶山 静六君       唐沢俊二郎君    北澤 直吉君       小金 義照君    小坂徳三郎君       左藤  恵君    塩川正十郎君       高鳥  修君    竹内 黎一君       中島源太郎君    中村 弘海君       中山 正暉君    永田 亮一君       野田 武夫君    浜田 幸一君       福田 篤泰君    古内 広雄君       別川悠紀夫君    松野 幸泰君       松本 十郎君    山崎平八郎君       山田 久就君    上原 康助君       川崎 寛治君    楢崎弥之助君       堀  昌雄君    松本 七郎君       安井 吉典君    横路 孝弘君       有島 重武君    大久保直彦君       林  孝矩君    正木 良明君       曽祢  益君    松本 善明君       安里積千代君    瀬長亀次郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 前尾繁三郎君         外 務 大 臣 福田 赳夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 高見 三郎君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君         郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君         労 働 大 臣 原 健三郎君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣 渡海元三郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 西村 直己君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛施設庁長官 島田  豊君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省条約局長 井川 克一君         大蔵省理財局次         長       小幡 琢也君     ————————————— 委員の異動 十一月十一日  辞任         補欠選任   堂森 芳夫君     川崎 寛治君   渡部 一郎君     有島 重武君 同日  辞任         補欠選任   川崎 寛治君     堂森 芳夫君   有島 重武君     渡部 一郎君     ————————————— 十一月十日  沖繩返還協定批准反対に関する請願(浦井洋  君紹介)(第九〇四号)  同外一件(大出俊紹介)(第九〇五号)  同(貝沼次郎紹介)(第九〇六号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第九〇七号)  同(谷口善太郎紹介)(第九〇八号)  同(田代文久紹介)(第九〇九号)  同(土橋一吉紹介)(第九一〇号)  同(中嶋英夫紹介)(第九一一号)  同(東中光雄紹介)(第九一二号)  同(平林剛紹介)(第九一三号)  同外五件(藤田高敏紹介)(第九一四号)  同(不破哲三紹介)(第九一五号)  同(津川武一紹介)(第九一六号)  同外一件(大出俊紹介)(第九五三号)  同(田代文久紹介)(第九五四号)  同外三件(八木昇紹介)(第九五五号)  同(藤田高敏紹介)(第九五六号)  同(新井彬之君紹介)(第九八四号)  同(北側義一紹介)(第九八五号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第九八六号)  同(樋上新一紹介)(第九八七号)  同(大出俊紹介)(第九八八号)  同外一件(松浦利尚君紹介)(第九八九号)  同(青柳盛雄紹介)(第一〇七二号)  同(浦井洋紹介)(第一〇七三号)  同(小林政子紹介)(第一〇七四号)  同外一件(田代文久紹介)(第一〇七五号)  同(谷口善太郎紹介)(第一〇七六号)  同(津川武一紹介)(第一〇七七号)  同(寺前巖紹介)(第一〇七八号)  同(土橋一吉紹介)(第一〇七九号)  同(林百郎君紹介)(第一〇八〇号)  同(東中光雄紹介)(第一〇八一号)  同(不破哲三紹介)(第一〇八二号)  同(松本善明紹介)(第一〇八三号)  同(山原健二郎紹介)(第一〇八四号)  同(米原昶紹介)(第一〇八五号)  同(赤松勇紹介)(第一〇八六号)  同(井上普方紹介)(第一〇八七号)  同外二件(井岡大治紹介)(第一〇八八号)  同(石川次夫紹介)(第一〇八九号)  同(川崎寛治紹介)(第一〇九〇号)  同外一件(川村継義紹介)(第一〇九一号)  同外一件(川俣健二郎紹介)(第一〇九二  号)  同(木原実紹介)(第一〇九三号)  同(黒田寿男紹介)(第一〇九四号)  同外一件(小林信一紹介)(第一〇九五号)  同外四件(阪上安太郎紹介)(第一〇九六  号)  同外一件(下平正一紹介)(第一〇九七号)  同(田中恒利紹介)(第一〇九八号)  同(土井たか子紹介)(第一〇九九号)  同(内藤良平紹介)(第一一〇〇号)  同外一件(中井徳次郎紹介)(第一一〇一  号)  同外一件(畑和紹介)(第一一〇二号)  同(長谷部七郎紹介)(第一一〇三号)  同(華山親義紹介)(第一一〇四号)  同(八百板正紹介)(第一一〇五号)  同(山口鶴男紹介)(第一一〇六号)  同(横山利秋紹介)(第一一〇七号)  同(米田東吾紹介)(第一一〇八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  球琉諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリ  カ合衆国との間の協定締結について承認を求  めるの件(条約第一号)      ————◇—————
  2. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 これより会議を開きます。  琉球諸島及び大東諸島に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川崎寛治君。
  3. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 私は、日本社会党の第一陣といたしまして、この四分の一世紀異民族支配のもとに置かれてまいりました百万の同胞祖国に迎えるにあたっての今回の返還協定について、総括的な質問をいたしたいと思います。  質問に入るに先立ちまして一言申し述べたいと思うのでありますが、実は私たちの先輩であります戸叶里子代議士が、七日の日になくなりました。たいへんお忙しい中を総理には弔問いただいたのでありますが、心から感謝をいたしたいと思います。  ただ、戸叶代議士は、あなたが総理になります前、三十九年の十月、日本社会党が、米軍計画によらない、自主的な初めての調査をいたしましたときに、その第一回の調査に、戸叶代議士、私も一緒に参りました。自来、戸叶代議士は、永年勤続で表彰もされたのでありますが、外務委員としてがんばってこられましたと同時に、この沖繩完全返還沖繩を平和の島にするということのためには、情熱を注いでおられました。先般の屋良主席の公選の際にも、みずから選挙の応援に参ってかけ回ったわけであります。病床にありまして戸叶代議士は、この歴史的な返還協定審議には参加をしたい、こういうことで、ベッドの上で勉強しておられたのでありますけれども、残念ながら、それを果たすことができずになくなられました。私は後輩といたしまして、その戸叶さんの気持ちも十分にくみながら、そして百万県民立場を踏まえながら、質問をしてまいりたい、こう思います。そのことを最初に申し述べさせていただきたい、こう思います。  次には、昨日沖繩ではゼネストが行なわれました。一日も早く帰りたい、一日も早く帰りたいと願う者が、なぜゼネストをしなければならないか、そして抗議をしなければならないかというところに、この返還協定の大きな問題があるわけであります。本土におきましても、百万の同胞を迎えたい、そして平和の島にしたいと願う者が、昨日は全国の各地で集会を持ちましたし、デモもございました。ところが、総理は、この行動に対しまして、東京地裁が決定をいたしましたことに対し、異議申し立てをやりました。これは、佐藤総理国会周辺デモを封じましたのは、四十二年の六月十日以来今回で七回目であります。行政事件訴訟法の二十七条、それに基づいてやられたのでありますが、正々堂々と組織的に行動する総評その他の団体のこのデモに対して、なぜ異議申し立てをされたのか、このことをまず明確にお答えいただきたいと思います。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま冒頭に、戸叶代議士の御逝去をいたまれたおことばがございました。皆さん方先輩の遺志を継いでその審議に全力を傾ける、こういうお気持ち、私もこれを心から了承し、また同時に、沖繩問題はさほどにわが国にとりまして、また沖繩県民には申すまでもなく、重大な問題でございますから、十分御審議のほどいただきたいと、かように思います。  ところで、昨日は沖繩ゼネストが行なわれた。一部過激派の言動とはいえ、警官が死亡する。その写真までけさは伝えられております。私はたいへん残念なことであったと思います。屋良琉球主席がこれについて談話を出しておられる。私はたいへん残念なできごとだと思います。私はいまそういうことをも考えながら、今回私のとりました処置、これは予測しない事態が起こるのだ、琉球においてかような事態がよもや起ころうとはだれも考えなかっただろう、かように思います。しかし、国会開会中ではありますし、しかも重大なその審議が始まろうとしておるこの際でございます。したがいまして、われわれは予測しない事態が起こり得る、そういう危険をも考える、こういうことから、私は、国会周辺デモはこれは取りやめていただきたい、かように思って処置をしたと御了承願います。
  5. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 本土における組織的なデモ、これは従来ずっと行なわれておるわけであります。それからこの行政訴訟法の二十七条は「公共の福祉」と、こう掲げておりますけれども、まさに総理の措置というのは民主主義に対する挑戦にほかなりません。そういう態度でこの沖繩返還協定をしゃにむに押し通そうということに対しては、私は抗議をせざるを得ないと思います。  総理にまずその点を申しますと同時に、この返還協定審議が、当初の日程からしますならば、政府与党からするとたいへんおくれたと思うのです。しかし、それは政府与党の蹉跌であって、野党側がどうこうしたという問題ではございません。国連における問題や、アルバニア決議案が通ったということ、さらには外務大臣のハプニングの問題であるとか、こうしたことからおくれておるのでありますから、そういたしますならば、私は総理にこの際明確にしていただきたいと思いますことは、この協定審議、あるいは関連国内法、これらの審議について、もういますでにささやかれておりますことは、与党強行採決日程に組んでおる、こういうことがいわれておりますが、これはまさにまた民主主義に反することであります。衆参両院において国会がほんとうに百万県民のこの二十六年間の苦痛というものを考えながら十分な審議をして、そして百万県民の経済の復興と開発という方向づけをしなければならないのがわれわれの任務であります。でありますから、自由民主党総裁として、強行採決はしないということ、衆参における審議を尽くすということ、このことをまず明確に答弁を願いたいと思います。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、国会において十分審議が尽くされることを心から願っております。また同時に、国会の場は民主主義ルールによって行なわれるものだ、このことをかたく信じておりますから、皆さん方の御協力をお願いしておきます。
  7. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それは私の質問に対して答えていないわけであります。だから、強行採決をしない、そして十分な審議を進める、そういう政府側立場も、問題を明らかにしたいと——政府側答弁に対しても国民はたいへんな疑問を持っているわけです。特に総理中国問題等に対する発言は、いま自由民主党の中でもてんやわんやしておるじゃないですか。そういたしますならば、国会の中におけるそういう論議というものを明確にしていくということが、今日の歴史の転換点におけるこの沖繩返還協定審議にあたっての姿勢でなければならぬと思います。総理、もう一度明確にお答えいただきたいと思います。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、国会のことは国会でおきめになると思います。しかし、私が総理であり、同時に総裁である、そういう立場において、どこまでも審議は尽くされるべきだ、同時にまた、それが民主主義ルールに乗って行なわれること、これがわれわれの願いだ、こういうことを申し上げておるのです。
  9. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 審議は尽くされるべきだ、民主主義ルールに乗ってと、こうあるのでありますから、強行採決民主主義ルールに反するわけでありますから、そういうことはとらないというふうに私は受けとめておきたいと思います。  では、具体的な問題に入ってまいりたいと思いますけれども屋良主席が、今回の返還協定あるいは国内関連法案等について非常に苦悩を訴えております。行政主席としての立場から屋良さんの気持ちがよくわかるのでありますけれども、私ども復帰運動は、本土に帰りさえすればよいというものではなかった、核も基地もない平和の島、本土犠牲にならない沖繩、それが要求だった、しかし、そのことが今回の返還協定で満たされていないという不満を訴えておりますし、そして昨日のゼネストもまたそれを物語っておるわけであります。こうした核も基地もない平和の島、本土犠牲にならない復帰要求というのは、沖繩県民の身がってな要求なんでしょうか。そしてまた、そういう要求になぜこたえられなかったのか。そのことを明確にお答えいただきたいと思います。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は沖繩県民心情理解を全然持たない男ではございません。私は十分戦時中また戦後の苦労を考えればこそ、祖国復帰も実は急いでおるわけであります。そういう意味からも、県民が当面しておる当惑に対して私もわからないわけではありません。またいろいろな不安もあるだろう、これらのことについても十分理解しておりつもりであります。しかし、なかなか私ども考えどおり県民方々理解されない方もあるようでございます。と申しますのは、いまの状態において完全復帰といわれるけれども、さような状態にはなかなかならない。ことに基本的な問題に、皆さん方のかねてから主張しておられるように安保のない日本というようなことを考えておられるとしたら、これはもう基本的に私ども反対であります。安保条約、そのもとにおいて日本の安全は確保されておるのでありますから、安保条約を否定しておられる皆さん方と私どもの主張の基本的な相違のあることは、これは御承知のとおりであります。そういう意味で、私どもはいろいろ県民方々にも御理解を得るように、ただいままで占領下で続いてきたそういう状態が、今度は、復帰すれば安保条約のワク内において米軍基地、施設を使用し、また基地を提供することになるのだから、その実質的な変化があるのですよと、こういうことをいままでいろいろ申しておりますが、どうもこれについての理解がまだまだ十分でございません。したがって、ただいまのような状況のもとにおいてこれを説得するということは、私、非常に困難なことだ、かように思っておりますが、しかし、われわれはわれわれの考え方、これは日本国民としての考え方、それについては県民も同じ気持ちでございますから、ともに手を携えて、そうして基地統合整理、あるいは平和な島、これを建設することについて積極的な態度で臨もう、そのためにも一日も早く復帰を実現することだ、かように実は念願しておるような第次でございます。いろいろ問題のあることは私も承知しております。
  11. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 なぜ沖繩基地規模機能縮小できなかったか。ほんのわずか、役に立たないところだけ返されますけれども、その基地機能、なかんずく機能ですね、これを変えることができなかったということ。総理安保条約の問題について触れましたが、これは後ほど具体的に基地形成過程の中でお尋ねしたいと思います。県民は、少なくともこの返還によって基地は相当程度縮小されるものだ、せめて縮小されるものだと考えておった。本来ならば昔の沖繩にして返してもらえる、祖国に帰れる、こう思うのが心情であります。  では、昭和二十年から今日に至るまでの間で沖繩がどんなに変わってきてしまったか。すっかり変わってしまっているわけです。すっかり変わってしまった沖繩で返るわけです。そこに問題があるわけですね。これは後ほど具体的にお尋ねしてまいりますけれども、あなたはいまのままで返ればそれでまずいいんだというお気持ちでありましょうけれども、そうではない。この異民族支配のもとにすっかり変えられた沖繩、それをなぜ変えられなかったかということ、これは共同声明がその問題点を明らかにしておるわけでありますけれども、そこの点が明確にならなければ県民は納得をしません。なぜ基地機能縮小できなかったか、もう一度明確にお答え願いたいのであります。
  12. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、沖繩本土防衛の第一線になり、沖繩決戦が行なわれたその場所でございます。これは焦土と化した、かように申しても過言ではないと思います。沖繩県民すべてがその戦争の惨禍を受けたわけであります。私は、その後引き続いて米軍基地が残った、かように理解しております。しかもその後、その占領当時の状況のものばかりでなく、さらに強化されたものもあるだろうと思います。これが施政権下にあるアメリカの行なったことであります。私はこれを考えながら、現在の日本本土における米軍基地縮小された基地、それを考えながら、今日までのこの縮小状態に到達するまでにわれわれは一体何年かかったか、これはずいぶん長い間かかっております。この状態を同じようにやろうというわけでじゃございません。われわれもずいぶん基地縮小について努力し、いろいろ卓をたたいてまで折衝して、そしてようやくA表B表C表、そういうものがきまったわけであります。しかしながらそれが不十分であることは、今日われわれもわかっておりますから、今後ともさらにこれについて整理統合を積極的に進めるべく努力する。これは島民の皆さま方にもお約束のできることであります。私は県民皆さん方をあたたかく迎えて、そうして県民皆さまとともども米軍基地縮小整理について努力したい、かように思います。
  13. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 本土基地縮小されるのに時間がかかったんだから、返ってくる沖繩はこれから時間をかけてやればいいんだ、こういうふうに受け取れます。冷たいじゃないですか。平和条約が発効したのは一九五二年の四月二十八日ですよ。その講和条約沖繩にも及んだのです。しかし、沖繩に及んだその講和条約は、平和条約の第三条でアメリカが自由自在に、生かすも殺すも自由自在という状態になったわけです。同じ平和条約の中で差別をされてきた沖繩の問題です。そしていま世界の情勢が大きく変わる中で、その変わる方向すら差し示すことのできない今回の返還協定であります。でありますから、いまの総理考え方、そしてこの返還協定の本質、そういう問題は具体的にひとつこれから詰めてまいりたいと思います。  ではお尋ねをしますけれども、いまアメリカアジア太平洋から軍隊をニクソンドクトリンに従って撤退しつつあります。米軍削減をいたしつつあります。その事実をお認めになりますね。そこで、ベトナムタイ韓国台湾日本本土沖繩、ここにおける米軍削減状況というものを、防衛庁長官、お答えいただきたいと思います。
  14. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 防衛庁長官答弁の前に、先ほどの私の答えでどうも誤解しておられるようであります。本土が今日の状態までなったのにずいぶんかかっております、沖繩もそのとおりでございますとは申しておりません。そういうような状態になってはならない、沖繩はもっと早く本土並みにしなければならない、かように思ってわれわれは当然努力いたします、かように申上げておるのでございますから、これが、ただいまのように、本土が二十数年かかったから沖繩も二十数年かかる、かように結論をなされることにはならないように、この点が誤解があるようですから、誤解のないようにお願いしておきます。
  15. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 防衛庁長官、ちょっと待ってください。  その前に、総理コナリー財務長官がやってきたら、縮小の話をするなとかなんとか言っておりますね。そういう国民に耳ざわりのいいことばかり言ったってだめなんですよ。  では、今日の返還協定にあたって、規模縮小機能の縮少というものについて具体的な展望というものを相談されたのかどうか、明確にしてください。
  16. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは基地全体につきまして十分検討し、そしてA、B、Cという区分けをいたしたわけです。しかし、A、B、Cという区分け、これはさらに協定成立後におきましても、これが、特にA表につきましてわが国返還されるという方向につきましては最善の努力を尽くしたい、そういうふうに考えております。
  17. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 具体的に……。
  18. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま申し上げましたとおり、具体的に話し合いをいたしましてA、B、Cという区分けがきめられたと、こういうふうに御理解願います。
  19. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 この問題については、私に続きまして大出君から具体的にまた基地問題等については追及いたしますから、私は譲りたいと思いますけれども、いまの総理外務大臣答弁は、国民県民の納得する御答弁じゃないのです。そのことを申し上げておきたいと思います。  では、防衛庁長官、いま米軍ニクソンドクトリンに基づいてアジア太平洋からどのように削減しつつあるか、現状を具体的に数字でお答えいただきたいと思います。
  20. 西村直己

    西村(直)国務大臣 ニクソンドクトリンは、御存じのように、できるだけアジア地域において、大規模戦争の場合は別として、一応局地の紛争等に対してはなるだけ自助でいってもらいたい、セルフヘルプでいってもらいたい。それは、マンパワーとか、あるいはそれぞれの国の事情に応じてというような段階に入っているわけであります。いま一つは、ベトナム自体は、すでに御存じのとおり相当な撤兵をしておりますし、韓国もやっているわけであります。台湾等については、私どもはあまり具体的に聞いておりません。  数字を具体的にということは、必ずしも的確には答えられないかもしれませんが、防衛局長から、簡単に要点だけさらに補足させます。
  21. 久保卓也

    久保政府委員 ニクソンドクトリンは、御承知のように、六九年の七月でありますが、ほぼそれ以降を申し上げますと、南ベトナムにおきまして、六九年の九月ごろで最高五十四万人おりましたが、逐次第何次かの消滅計画が行なわれまして、七〇年の末で三十六万、七一年の末でおそらく十八万になるであろうというふうに見込まれております。それからタイ国が、やはり六九年の九月で約四万九千、五万人ぐらいでありますが、二回ばかりの撤退計画の結果、本年の中ごろで三万二千人になるであろう。フィリピンが、二万四千人ばかり七〇年でおりましたが、若干減りまして、ことし中ごろで一万八千人ばかり、韓国が、約六万人七〇年中ごろでおりましたが、削減計画の結果、七一年の中ごろで四万三千人、沖繩が、七〇年末で五万三千人ばかりおりましたが、ことしの中ごろで四万八千人ばかり、それから日本が、七〇年九月で三万九千人でありましたが、ことしの中ごろで二万七千人ばかり、そういうような撤退状況であります。
  22. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 総理、いまお聞きのとおりです。アジア、太平洋からずっといま引いているのですよ。  いまの久保局長の、沖繩については、一九六九年の六月三十日は四万五千ですが現在五万ということで、これは数字の取り違いをやっているというふうに私は感じます。そのこと自体はあまりこまかく言いませんけれども、しかし、ごらんのとおり、ベトナムは半分以下——十一月十五日、大統領がまた新しい撤兵計画を出すでありましょうけれども、減っている。タイからも減っておる。フィリピンからも減っておる。日本本土からも減っておる。その中で沖繩だけは、減るどころか、むしろふえる。横ばい。なぜそういう状況にあるかということが問題なんです。  総理、この点について、なぜ沖繩だけはそういう状況にあるかということについて、これはひとつ明確にお答えいただきたいと思います。
  23. 西村直己

    西村(直)国務大臣 まあ沖繩の戦略的な価値の論議でもあろうと思うのであります。そこで、沖繩の戦略的な価値としましては、結局は、一つは補給、通信、訓練等もございましょう。それからもう一つは、アジアにおいて何かあった場合における一つの前進基地体制は、戦争抑止力として私どもはとっておる。こういう意味で、一つのアジアにおける戦略的な意義はあろう、こう思います。しかし、それも、御存じのとおり、効率的にやらなければならぬ。こういう意味からいきますと、私は、効率化する過程においては、今後も十分基地縮小はあり得る、またやらなければいけない、こういうふうに考えております。
  24. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 答弁でありませんね。あり得るとか、しなければならないとか——あなたがやるのですか。
  25. 西村直己

    西村(直)国務大臣 私がやるとか、そういう問題でありませんで、これは沖繩県民立場から考えても、占領下基地の体制、それからその後において、アジア情勢に対処する米国施政権期間における基地の体制というものはきわめて不効率になっている、こういうものは当然整理統合するということは、われわれ政府としても、沖繩県民立場に立っても、強力に今後も推進し得る、またしなければいかぬ、こういう考えです。
  26. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そうしますと、これは要するに、先ほどニクソンドクトリンの説明もあったわけでありますけれども沖繩ニクソンドクトリンのすべてが集中されてきておる、ニクソンドクトリンを展開する拠点になっておるということが、いまの沖繩基地の現状というもので明確になったと思うのです。それは要するに、共同声明というものを受ける限りにおいては、この沖繩基地機能というものは変わらない。それは、今回のアメリカの上院における公聴会その他を通じても明確になっておるわけです。だから、この政策が変わらない限りということになってまいるわけでありますから、その点をひとつはっきり指摘をしておきたい、こういうふうに思います。——何かありますか。
  27. 西村直己

    西村(直)国務大臣 補足いたしておきます。  もちろん、沖繩基地自体の地上におけるそういうような要素も残るでありましょうが、問題は、七艦隊の役割りというものがございまして、海上における一つの戦争抑止力というものにもある程度力が移されていくという面もあるのじゃないかと私は思います。
  28. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 私はこの議論をずっとやろうと思っているのじゃないのです。つまり、沖繩基地が、そういうアジアの中でずっと米軍が撤退をしている中で、沖繩に集中してきておる。ということは、沖繩基地の役割りというものが従来以上に高まっているということが、ここで明確に証明されると思うのですね。——それを否定しますか。では、どうして縮小できなかったのですか、もう一度お答え願いたい。
  29. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 沖繩祖国復帰し、日米の安保条約並びにその取りきめは本土そのまま沖繩にも適用になる、これをずいぶん口をすっぱくしていままで説明したとおりであります。私は、そこに変化があるのだ、ただ、現状そのものは、いままである基地というものは、そう簡単に右から左になくなる、そういうことはできないから、その状態においていまのような基地の密度が高いのだ、だから、これを、これから本土復帰したのちに、日本施政権下に帰ってきたそのときに、われわれは日米安保条約のワク内に米軍をとどめる、これがわれわれの基本的な方針であります。そういうたてまえで今後整理統合する、こういうことをお約束しておるのであります。(「それはできない方針なんだ」と呼ぶ者あり)それはできます。それは御心配なく。——不規則発言をあまり相手にしてお話しすることもございませんが、とにかくこれが私どもの一番のねらいであります。だから、一日も早く沖繩日本施政権下に返す、そのことが何よりも大事だ、かように申し上げておるのでございまして、どうかその点は御了承願いたいと思います。
  30. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 アメリカの上院ではそういうふうに言ってないのですよ。無期限に持ちます、少し柔軟性はなくなるけれども機能は変わらないと。あなたは、安保条約、関連取りきめが適用されるから変わるんだと、口をすっぱくして言っておられます。しかし、機能は変わらないとアメリカでは言っておるのですよ。特に韓国台湾の条項というものを高く評価をしております。これは後ほど具体的にお尋ねをしますけれども、変わらないとアメリカは言っている。その基地を使うアメリカのほうは、変わらぬと言うのに、総理のほうは、変わるんだ、変わるんだと言ったって、実態は変わらぬじゃないですか。むしろ基地は強化されているのですよ。  そこで、私は、変わらない沖繩基地機能というものが、ではどうしてこういうふうにつくり上げられてきたかという、つまり、今日沖繩県民がこの返還協定反対をしている本質の問題に少し入りたいと思うのです。それは、今日のようなあの巨大な極東一の軍事基地がどうしてできたか、そして、沖繩基地機能というものがどのようにしてきたかということを少し詰めていきたいと思います。  それは土地の取り上げの問題でありますが、ここに喜屋武参議院議員の東京地裁におきます違憲訴訟の証言があります。違憲訴訟というのは、国を相手どって、沖繩県民が憲法から離されておることに対して訴訟を起こしてまいっております。きのうも公判があったわけでありますけれども、この中で、土地の取り上げの問題を、喜屋武さん自身が自分のことに触れて言っております。それは、喜屋武さんは奇跡的にこの沖繩戦で生き残ったのでありますけれども、こう言っております。「昭和二十年六月二十三日終戦、沖繩県民が山から壕からおりてきたら、すでに山河もあらたまっており、基地は毎日拡充強化されていました。私の家もつぶされて基地になっていました」こういうのですね。「八月十五日以降」、これはつまり一九四五年の六月二十三日からで、八月十五日無条件降伏したあと、「八月十五日以降も同じで、いまだに帰れないでおります。戦後今日まで、沖繩本島のこういう状況というもの、それはほとんどが強制収用の形で、了解もくそもないわけであります。戦争中も、戦争が終わっても、自分のほしいところを基地として占領してしまって、その状態をいまも続けておるのであります」こういうふうに喜屋武さんは証言をしております。つまり、米軍にはこのように土地を取り上げて基地をつくる権限があるのですか。総理にはおそらくその辺が理解できないと思うのでありますけれども、その点をひとつ明確にお答えいただきたいと思うのであります。
  31. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは法律問題じゃない、戦争そのものの力の問題だと私は考えます。そういう意味で、戦時中における焦土化した沖繩県民、またその後引き続いた占領状態、これをそのままにしておくことはほんとうにお気の毒だ、これは御苦労をかけた、こういうことを私は心から思うのでございます。こういう問題は、法律的にいま議論していく、そういうような問題でなしに、実力の問題だ、かように私は理解します。
  32. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 実力の問題だということで米軍の行為を是認をしたかっこうになっておりますが、それは今回の返還協定の本質に触れる問題なんです。  では、昭和二十年の四月米軍が攻撃を開始、占領を始めましてから、八月十五日まで、これはどういう法体系のもとにあるわけですか。——これは基地の問題だし、施設の問題だから、防衛庁長官
  33. 西村直己

    西村(直)国務大臣 これは、もうすでに上陸してから八月十五日の終戦までの間というものは、一切戦場になっている状態であります。したがって、かりに国際法的に言えば、戦時国際法が適用になる、一切の国内法というものはそこで事実上戦時の状態で押えられてしまっているのではないか、こういうふうに私自体は考えております。
  34. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 これは公用地の土地収用法の所管大臣になるあなたですよ。それを、そういういいかげんなことでどうしますか。   〔発言する者あり〕
  35. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 御静粛に願います。
  36. 西村直己

    西村(直)国務大臣 それは確かにおっしゃるとおり、私どもはそういう解釈をしておりますが、事柄は法律問題でありますから、さらに専門家の法制局長官から答弁させます。私としては、防衛庁長官としてはそういうことで解釈をいたしております。
  37. 井川克一

    ○井川政府委員 交戦法規が適用になっていたわけでございます。交戦法規でございます。
  38. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そうしますと、六月二十三日から八月十五日、正確に言えば九月二日の降伏文書、ミズリー艦上までになりますけれども、それは何になりますか。
  39. 井川克一

    ○井川政府委員 六月二十三日は、たしか事実上いわゆる戦闘状態が終了した日だと記憶いたしております。いずれにいたしましても、陸戦法規の適用が続いております。
  40. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 停戦、それから無条件降伏と、こうなるわけですが、停戦下においてヘーグの陸戦法規はどういうことになっておりますか。陸戦法規では、明らかに私権の尊重、四十六条には、「私権の尊重」として「家ノ名誉及権利、個人ノ生命、私有財産並宗教ノ信仰及其ノ遵行ハ之ヲ尊重スヘシ。私有財産ハ之ヲ没収スルコトヲ得ス。」その陸戦法規を無視して、総理は、実力で取ったんだからしかたがないと、こういうふうに言っておりますけれども、ヘーグの陸戦法規はそれを禁止しております。そういう状況の中で取られた基地ですよ。そうしてそのことは、返還協定の中に、米軍が最初に取得をした状態と、こういうことを返還協定で明確に今度は受けるわけでありますから、そうなりますと、国際法に違反をした状態で取り上げた状態というものから始まっておる。沖繩県民にはそれがたまらぬのです。それが耐えられないのですよ。ヘーグの陸戦法規に違反をしておるということについてお認めになりますか。
  41. 井川克一

    ○井川政府委員 ちょっと私、御質問の趣旨がほんとうは実はよくわからなかったのでございますけれども、問題は、二つ問題点があるのだと思います。   〔発言する者多し〕
  42. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 御静粛に願います。
  43. 井川克一

    ○井川政府委員 第一点は、いかなる法規が適用になりましたか。確かに陸戦法規の、しかもその占領の法規でございます「陸戦ノ法規慣例ニ関スル規則」の占領の部分が適用になると思います。  そして、ただいま後段におっしゃられましたのは、三条二項のお話ではなかろうかと思うわけでございますが、この点はまた、私どもといたしましては、全然違う発想からつくった条文でございます。御存じのとおりに、結局これが返ってくる。返ってくることになりまして、それが引き続き提供するというふうな場合に、地位協定との関係をどうするか。返りますときの……(発言する者あり)それに従いまして、三条二項を「それらが合衆国軍隊に提供された時の状態」というのを書いておるのでございまして、これは日米間における地位協定との関係について書いたものでございます。
  44. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 これは全然本質を理解していないのですよ。つまり、総理は、力で取ったのだからしかたがないんだと、こうきめておるのですね、まあそれは大ざっぱですけれども、あまりにも大ざっぱ過ぎるのですよ。しかもあなたは、沖繩返還なくして日本の戦後は終わらないという名文句を吐いたのですよ。その沖繩が、なぜ先ほど私が取り上げたような極東の基地になったか、その極東の基地になった経過、それをいま私は具体的に詰めたいのです。それがわからなければ、この返還協定に対する沖繩県民気持ちというのは、あなたにはしょせん理解できない、こう私は言わざるを得ないと思うのです。喜屋武さんも言っておるように、山からおりてみたら、もう自分の家はなかった、それっきり今日まで自分の家に帰れないのだ、こう言っているのですよ。それが力だというのですか。だから、沖繩の問題は、一九四五年の、つまり占領が始まって、事実上の停戦になります六月二十二日までと、それから六月二十二日以降八月十五日までと、それからその八月十五日から一九五二年の四月二十八日までと、それから一九五二年の四月二十八日以降平和条約第三条下にある今日までの沖繩、こういう区分けをして沖繩の問題を考えなければ、これは法理にかなわないのです。あなたは道理を言うけれども、これは道理にかなっていないのです。ところが、いま、力で取ったのだと、こう言う。私はその指摘をしましたけれども、ヘーグの陸戦法規の、その私権の尊重ということに違反をするではありませんかという、その点をひとつ明確にしてもらいたいのです。
  45. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 条約局長から、法律の問題ですから、説明させます。   〔「政府委員じゃだめだ」と呼び、その他発言する者多し。〕
  46. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 御静粛に願います。
  47. 井川克一

    ○井川政府委員 仰せのとおり、占領軍は陸戦法規に従ってその占領をいたさなければなりません。また、たしか布告第二十六号によりましてもその旨述べられていると思います。   〔発言するもの多し〕
  48. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 御静粛に願います。
  49. 井川克一

    ○井川政府委員 いずれにいたしましても、川崎先生のこの三つの時期を分けるというお話は、仰せのとおりでございます。そして現在、政府がここに提案いたしておりますのは、平和条約によりまして第三条地域になりました沖繩返還させる協定でございます。それ以前の問題は平和条約において解決されているところでございます。
  50. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 全然答弁になってないのですよ。そう思うでしょう、総理も。答弁になってやないじゃないですか。停戦になったあとの——戦争がないのですよ。いいですか、停戦状態の中で武力で土地を取り上げるということが、ヘーグの陸戦法規に違反しませんかと私はお尋ねしているのです。
  51. 井川克一

    ○井川政府委員 武力で取り上げるということばの意味でございますが、占領軍の権力に基づきまして、陸戦法規に基づきまして土地を収用するというようなことは、これは陸戦法規に違反することにはならない、こういうことでございます。
  52. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 「之ヲ没収スルコトヲ得ス」ですよ。それから喜屋武さんが東京地裁でも証言しておる。自分自身が被害者なのですからね、喜屋武さんは。喜屋武参議院議員は被害者なのですよ。没収されたまま今日まで至っているのです、こう言っているのです。だから、「没収スルコトヲ得ス」、こうなっている陸戦法規に違反しておりませんか。それを、いま条約局長は、占領軍の権限で取れるのだ。これは米軍はその解釈をとっているのです。米軍はその解釈をとって取り上げてきたことを後ほど明確にいたしますけれども、しかし、私はあと平和条約三条に入ろうとするのに、まだ条約三条に入る前でとまっているのですよ。これはひとつ明確な政府の統一見解を出していただくようにお願いします。
  53. 井川克一

    ○井川政府委員 川崎先生御存じのとおり、陸戦法規と申しますものは、交戦者の権力とその交戦者の支配下にある人民の保護との二つの観点の調合から成り立っているわけでございます。したがいまして、私有財産は原則として尊重しなければならない。しかしながら、また、略奪してはならない、没収してはならない。したがいまして、その私有財産を完全に没収する、剥奪するというふうなことは、所有権を恣意的に取り上げるというふうなことはいけないことでございます。それはいやしくも占領軍というものがいわゆる永久的状態というものを考えているわけではございません。しかしながら、占領に伴うところの、占領目的のための権力というものは、十分に強く持っているわけでございます。したがいまして、私有財産を、占領目的のために、軍の目的のために収用する、またそのときに金を払わねばならぬとかいうようないろいろの規定があるわけでございます。そのようにして行なわれる占領軍の権力は、これは陸戦法規に違反しているということはできないと思います。
  54. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 これは、外務省の条約局長は、沖繩県民立場に立っているのか、米軍立場に立っているのか、私は判断に苦しみますよ。いまのが政府の統一見解ですか。つまり、取っていいのだというのが政府の統一見解ですか。
  55. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 私、この事実関係を必ずしも詳細に承知しているわけではありませんが、事は法規の問題でございますので、ただいま条約局長からお話がございましたのと変わるところはないと思いますが、要するに、アメリカ占領いたしまして、その占領に基づいていろいろな権限がある、これを占領行政権と申しておりますが、それの根拠は何かといえば、陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約、これは間違いなくそうであります。また、陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約には、御指摘のように、「私有財産ハ之ヲ没収スルコトヲ得ス」という規定があることも、そのとおりでありまして、アメリカ政府が私有財産を没収したということは、私はないと思っております。(発言する者あり)その後に、占領が終わった後にどうなるかといえば、むろん、この陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約によって律することはできなくなりますから、アメリカ占領当局としては、その土地を使用する権原を他に求めてこれを使用しなければならぬことになります。その権原を他に求めるための措置を、私の知る限りでは、この占領が終止しまして平和条約発効後に至りましてから、いろいろな手を通じてその措置を講じております。たとえば、琉球列島米国民政府布令九十一号、いまのは一九五二年であります。それから一九五三年には、琉球列島米国民政府布令第百九号、それから一九五三年でありますが、布令第二十六号、最後には布令二十五号、二十号、こういうように、その権限の取得には、アメリカの施政権者としてはむろん当然の法的措置を講じていると私は理解しております。
  56. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 いまの法制局長官の答弁は全然なっておらぬですよ。いま焦点はしぼってあるのですから、そういう停戦の状態の中で没収することはできないということ。それからもう一つ、戦時における文民の保護に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約も、第四条で移送及び立ちのきの禁止、それから第五十三条で破壊の禁止ということで、非戦闘員に対する保護をしておるわけです。ところが、それらのものに全部違反をしておるわけです。だから、違反だということをまず明確にしてください。それを明確にすれば私は次に移ります。以前ですよ。いまの法制局長官の答弁は、八月十五日以降の問題について触れたわけであります。五二年の四月二十八日以降の問題は、これは平和条約の三条の問題として先般来本会議でもいろいろ問題になっておりますから、条約三条のもとにおける土地の取り上げの問題をやりますからね。それをごっちゃにしてはいけませんよ。だから、いまの状態は違法だ。「没収スルコトヲ得ス」——救済措置はとっておりません、それはあとになって金を払っただけのことで。そういう請求権は放棄しているじゃないですか。だから、これは違法だということをひとつまず明確にしてもらいたい。   〔発言する者あり〕
  57. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 政府からしっかりした答弁をさせます。井川条約局長
  58. 井川克一

    ○井川政府委員 私有財産の没収ということでございますけれども占領軍が占領軍の権力に基づきまして私有財産を使用するということは、これは認められているところでございます。したがいまして、没収が占領軍の権限に属する限りにおきましてこれは適法なものでございます。御存じのとおり、陸戦ノ法規慣例ニ関スル規則は、主として占領地の人民の保護の見地から書いてあるわけでございまして、占領軍の権限というものをその意味において制限しているわけでございます。しかしながら、ただいまの川崎先生の御発言でございますけれども、その所有権を完全に恣意的に奪ったということではなくて、占領軍の目的のために使用したということでございますならば、それは完全に合法である。私はこの陸戦ノ法規慣例二関スル条約の解釈の見地から申し上げているわけでございます。
  59. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 だめなんですよ。家屋は破壊されているんですよ。なくなっているのですよ。それは何ですね、ほんとうに。だから、条約局長県民立場に立たないで条約を解釈する、このことが私には耐えられないですね。家屋の破壊、この点どうなりますか。
  60. 井川克一

    ○井川政府委員 家屋の破壊ということでございますけれども、私、具体的事例を存じ上げませんので、そういうことを申し上げるのはいかがかとは思いますけれども、その八月十五日以後における家屋の破壊につきましては、やはり陸戦ノ法規慣例ニ関スル規則に従いまして正当なる代価を払わなければならないと思います。
  61. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 これは実態はわからぬで条文づらをただ解釈しているだけなんですよ。そこには百万県民の痛みというのがわからぬわけです。この問題は後にずっと展開をしてまいりますけれども、要するに、いまの政府側答弁というのは、没収された、破壊をされたそういうものに対して、米軍側の立場に立ってこれを保護しておるということを私はたいへん残念に思うわけです。だから、財産の没収、つまり、補償されておらないということを喜屋武さんも言っておるのですよ。収用されたままです。明確にしてもらいます。
  62. 井川克一

    ○井川政府委員 第一の、現実に戦闘が行なわれました時期、第二に、いま川崎先生の御発言は、現実に戦争が行なわれてない時期から、あるいは八月十五日から第三条地域に移転されるまで、それから第三条地域、こういうわけでございますね。そのまん中の部分は、先ほど来、先生も御指摘のとおり、私が申し上げておりますとおり、陸戦法規の占領に関する規定が適用になるわけでございます。したがいまして、占領法規を守ってアメリカ軍はやらなければならないと思います。そこで私有財産の略奪、没収は禁止されておるわけでございます。しかしながら、占領軍の権力といたしまして、占領目的のために、没収であるとか略奪であるとか恣意的なものではなくて、正当なる代価を払うということによってそれは占領軍の権力に入っておるわけでございます。
  63. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 占領軍の権力ということで合法化されたわけでありますけれども、つまり、一九四五年の占領が始まって停戦になるまで、六月二十二日、それまでは、いまのヘーグの陸戦法規が実質的にも形式的にも全面に及ぶ、こういうことになるでありましょう。しかし、六月二十三日以降八月十五日までは、これはもう戦争状態はないのですから、その中でやられておるわけです。これはまさに違反であるということ。そしてその八月十五日以降五二年の四月二十八日の講和条約発効までも、実際に戦争が行なわれておると同じような状態で没収されてきておるわけであります。だから、これは明らかに八月十五日以降においても違反行為は続けられてきておる。このことをひとつ明確に認めていただきたいと思うのです。
  64. 井川克一

    ○井川政府委員 陸戦ノ法規慣例ニ関スル規則の第三款、第四十二条以降でございますが、「敵国ノ領土ニ於ケル軍ノ権力」「一地方ニシテ事実上敵軍ノ権力内ニ帰シタルトキハ、占領セラレタルモノトス」、そこの「占領セラレタルモノトス」というところにおきまして大きな意味があるわけでございまして、ここに占領軍の権力というものが確立するわけでございます。そして占領軍の権力は、それ以降に掲げられておる条項に従って行使されなければならないということでございます。そこで、占領行政上家屋を収用しあるいは土地を収用するということは認められているところでございます。
  65. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 これは全く答弁になってないのですね。私は、ここのところにかかっておりますと、あとのまだたくさんの問題に触れることができなくなるのです。  総理、どうですか。いまいろいろ聞いておられたでしょう。あなたは、力で取ったんだからしかたない、こう最初にぽんと言われましたけれども、やはりそのとおりだと思いますか。
  66. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 戦争中の行為、これは力だ、このことはお認めだろうと思います。私はその状態を言っているので、ただいま言われるように、なるほど、法律はずいぶんこまかく規定しているものだなあと、かように、私は専門家の説明を聞きながらただいままで感じたわけでございます。だから、講和条約締結後においてさらにそういうものについての状態は、これは救済が法は別に考えなければならない、かように思っておりますので、それは請求権という形においていろいろ処理される問題だろうと思います。
  67. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 家を焼いた、土地を取り上げた、それはヘーグの陸戦法規に違反をする、そのことはお認めになりますね。
  68. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 直接の戦闘行為以外のこと、これは陸戦法規に違反する、ただいま説明したとおりであります。
  69. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そのとおりに受け取りましょう。  そうしますと、いま請求権の問題に触れられたけれども、これは後ほど私の同僚が詰めますが、そういうことを全部放棄しているのですよ。だから県民はこの返還協定反対をしているわけです。そのあとの条約三条以下の問題もずっと詰めますが、結論を言いますならば、そういう違法行為によって取り上げた不法な状態の土地、それの上につくり上げられた軍事基地、それをそのまま今度は返還協定で受けとめましょうというのだから、県民反対するわけなんです。当然じゃないですか。法律というのはそんなにやかましく規定しているのかなあと言う。ずいぶんしあわせな総理大臣だとぼくは思います。なぜそんなに主席までがこれに対して不満を言っておるか、それではその真意がわからぬわけです。異常な状態に二十数年間置かれてきておった者の状態というものを考えるためには、条約三条や、あるいはそれ以前の陸戦法規の問題や、そういうものは十分に踏まえてあなたはニクソン大統領と交渉しなければならぬのです。ところが、そういうかまえがないから、中身がだめになるのです。そのことをまず指摘をしておきたい、こういうふうに思います。  そこで、五二年の四月二十八日以降——五二年の四月二十八日というのは、平和条約の発効であります。平和条約の発効ということは、総理、どういうことですか。これは、沖繩県民を含む日本国民全体が受けたのが平和条約であります。平和条約の発効ということは、国民にとってどういうことになる状態をいうのでありますか。その基本を総理からひとつ明確に答弁をしていただきたいと思います。
  70. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 間違いのないように、法制局長官からお答えいたします。
  71. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答え申し上げます。  平和条約締結されて発効した意味に関する御質問でございます。これは平和条約をごらんになればわかりますように、まず第一に、戦争状態が終了した、それからまた、わが国は主権を回復した、これが柱でございまして、そのほかにいろいろこまかいことがあることは、あえて申し上げるまでもない。それが基本でございます。したがって、ついでながら、いままでの御質疑の中にもありましたが、戦争状態の終了したのはまさに講和条約締結、発効でありますので、その前の時点は、沖繩における米国の行政権は何に基づいているかと言えば、先ほどの陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約支配するところであった。したがって、その前の時期を二つに分けておられましたが、同じようにその条約の適用下にあったということを申し上げておきます。
  72. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 平和条約の発効ということは、戦争の終結、主権の回復、そうでありますね。そうすると、平和が戻らなければいかぬわけです。しかし、沖繩県民にはどうなりましたか、佐藤総理
  73. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 平和条約第三条によりまして、いわゆる立法、司法、行政の三権をアメリカ合衆国が行使をする、いわゆる施政権の行使の根拠ができて、沖繩は以来その施政権のもとにあったわけであり、また、現にその施政権のもとにあるわけであります。
  74. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そうしますと、そのことは沖繩に平和がよみがえった、平常な状態になったということとは違うわけですね。——この点はひとつ総理から……。
  75. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 本土とは違っておること、これはただいま法制局長官がお答えしたとおりであります。
  76. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 日本国憲法のどこに、百万県民をそういう差別をしていいと——法のもとに平等、こういうことになっておりますが、国会で多数できめたから、こういうふうに法制局長官は答弁になるでしょう。しかし、国会できめたこと自体も、これはあの当時は受ける以外になかったのだ、こういうことかもしれませんが、しかし、百万県民が憲法の上から平和条約三条で離されたということについて、憲法はそれを了承する規定はどこにもありません。禁止する規定がないからいいのだ、こういうふうに政府側答弁すると思いますけれども、そのことは、人権を国家権力や憲法で差別をすることはできないのです。ところが、いま総理も言われましたように、沖繩の百万県民は、この条約三条のもとで、平和でもないし、人権も否定をされてきたわけです。そのことについては、総理、お認めになりますか。
  77. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 沖繩が施政権のもとに置かれることになった、平和条約第三条でそうなったことは、つとに御存じのとおりでありますが、それがわが日本国憲法に違反するのではないか、そういうことを許している規定もない、政府は逆に、そういうことを禁止している規定がないからいいだろうと言うのではないかというお尋ねでございましたが、そういうような考え方でこれができたものであるとは私どもとうてい思えません。まず何よりも、その前には、あれだけの大戦争がありまして、日本が敗戦のうき目を見た、その結果占領をされた、そうしてともかくも、いろいろな評価がございますが、憲法というものができ上がった、その憲法も、実は平和条約締結されるまでは——平和条約によって主権が回復されたということは、先ほど質問者御自身がお認めになっておりますが、実は憲法はそのときにほんとうの実効力を得たわけであります。憲法ができましたのはその前でありますけれども、実は憲法がほんとうにその息を吹いたのは、平和条約締結の際であります。その平和条約と憲法との関係を論ずることは、私はちょっとどうかと思っております。要するに、沖繩平和条約第三条のもとで米国の施政権のもとに立つことになった、それと、そういう条約締結した際に日本国憲法はまさにその実効力を発揮した、そういう関係にあるわけでございますので、その余をあまり御説明申し上げる必要もないと思いますが、そういう関係でできております両者の関係を、憲法に違反するとか違反しないとかいうようなことを論ずるのは、私は、あまり適当なことではないのではないか、こういうふうに考えます。  なお御質疑があれば、その辺また必要があれば御説明申し上げます。
  78. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 憲法が独立以後においても百万県民を差別してきておるというその実態を私はいまあなたとここで論争しておりますと、もう時間が非常にあれですから、やりませんけれども、具体的にひとつ詰めていきたいと思います。それは、条約三条そのものをこれからひとつとって解いてまいりたい、こういうふうに思います。  つまり、ヘーグの陸戦法規でかってな解釈をしながら没収をしてきた。それが都合が悪くなってきたので、五二年の四月二十八日以降、布令の九十一号で、五二年の十一月一日、一つやります。しかし、これでは実効があがらないので、五三年の四月三日に布令百九号、土地収用令を出してまいります。ところが、この四月三日の土地収用令を出すやいなや、布令を出すやいなや、今度は契約ということを表には出しておりますけれども、しかし、強制収用、即時占有、そういう定めをいたしております。それに基づいて、五十三年の四月十日、強制収用の第一号をやるわけです。  私は、沖繩のすぐれたジャーナリストであり、また良心家であります、琉球新報の池宮城社長の「沖繩アメリカ人」というものここをに持ってきております。私から言うよりも、そうしたなまなましい具体的なことを申し上げてみたいと思うのです。  「一九五三年四月十一日の朝、那覇市と真和志村の境にある上之屋に、米軍が数台のブルドーザーを乗り入れた。」そしてこれが「剣付銃やピストルを腰にしたMPと兵隊を出動させて住民を威圧し、工事を容赦なくすすめた。戦争が終って八年ほどたっていたが、上之屋の住民たちは再びアメリカの剣戟の音におびえることになった。」こういうふうに、条約発効後、本土が主権を回復したという中でこういうことが行なわれておるわけであります。平和条約第三条はこの行為を許しておるのでありますか、どうでありますか。これは公用地の使用法案に関係するわけですから、防衛庁長官にひとつ……。
  79. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 発言のお許しがありましたので申し上げますが、要するに、平和条約第三条によって、立法、司法、行政上の三権をアメリカが持つことになりました。その場合に、日本に対する関係では、平和条約三条のワク内のことであるかどうかということが問題になるのと、それからアメリカの関係法規の関係が問題になると思いますが、いまのお尋ねは平和条約第三条のことでありますが、平和条約第三条は、まさに、ごらんになればわかりますように、立法、司法、行政の三権をアメリカが行使することを認めております。そうしていま御指摘のようないろいろな立法措置を講じたことは、われわれの目から見ますと、陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約のお世話になって使用権を取得するというようなことができなくなりましたので、アメリカは、先ほども申し上げましたが、新しい権原を取得する必要がある。その新しい権原を取得するためのアメリカの施政権の範囲内の権限行使であろうというふうに考えます。
  80. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 平和条約の第三条は、私がくどくど申し上げるまでもなく、信託統治制度に置くということを前段で前面に置いているわけです。後段で、国際連合に提案をし可決されるまでの間立法、司法、行政一切の権限を行使することを認める、こういうふうになっておるわけであります。そうしますと、五十二年の十一月にこうした布令を出す、さらに翌年、五十三年にはまた布令で新たに今度強制収用、即時占有、そういういやおうなしの、銃剣づきで土地を取り上げることのできる権限をとった。それが施政権ですか。そうすると、施政権というのは、あの平和条約第三条で前段でうたっておる、前面に出しておるそういう信託統治制度の目的にも反するような、そういう基本目的にも反するような形で、まさに軍事占領と変わらない銃剣づきで土地を取り上げるという権限をも平和条約第三条は許していたというふうにあなたは解釈をされるわけですか。  総理、どうですか。現に私がここで申し上げておりますように、立法、司法、行政一切の権限を行使できるのだから、何でもできるのだ、こういうふうに受け取っておられるようでありますけれども、そういうことは許されないのです。銃剣づきで、ブルドーザーで家をこわし、土地を取り上げる、それが平和条約第三条に与えられた権限でありますか。それはまさに国際法違反だ、私はこういうふうに思います。その点をひとつ、総理、明確にしてください。
  81. 井川克一

    ○井川政府委員 平和条約第三条は、完全に無制限なる権利をアメリカに与えたものではございません。先ほど来申し上げておりますように、占領自体につきましても、占領軍の権力というものは強大なものではございまするが、陸戦ノ法規慣例ニ関スル規則によりましてその占領軍の権力に制限があるごとは、申し上げましたとおりでございます。しかも、この場合、占領軍の権力はなぜ非常に強大であるかということを申し上げますと、やはり占領という戦時状態であるということから出発いたしているわけでございます。  ちょっと前に戻らしていただいてよろしゅうございますか。——そういたしますと、そのように戦争中に起こったもろもろの事件、請求権あるいは不法行為、そういうものを全部解決するのが、サンフランシスコ平和条約のみならず、あらゆる平和条約のたてまえでございます。したがいまして、四月二十八日までのそういう種類のものは平和条約によって解決されている、これはよその国のあらゆる平和条約と同様でございます。そしてこの平和条約第三条に基づきまして与えましたところの施政権は、形式的に立法、司法、行政の全部を含んでおるわけでございまするが、すでに占領軍の権力について陸戦ノ法規慣例ニ関スル規則におきまして制限があるのでございますから、その上に、交戦状態というものが終了しているわけでございますから、その制限はもっと強いものである、こう私は理解いたしております。
  82. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 制限はもっと強い。そうなると、条約三条のもとでは、そういうふうな銃剣づきで没収などということはできぬ。違法じゃないですか。そういう違法の状態の中で沖繩の今日の極東一の基地というものはつくられてきたのですよ。そうして核を持ち込むことも自由、B52を飛ばすことも自由、毒ガスの持ち込みも自由、そういう自由が平和条約第三条にあるのだ、だから、いまこの国会が始まって以来、総理が、核の問題についても、いまあることが問題でない、こう言われるでしょう。返ってくるときにあるかないかが問題だ、その考え方の中に、平和条約第三条は何でもできるのだという考え方をあなたは持っておられる。だから、そういう土地の取り上げというのが違法だ、そういうことをひとつ総理も明確にお認めいただきたい、こういうふうに思います。   〔「総理に聞いている」と呼び、その他発言する者多し〕
  83. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 一応発言を許可しました。井川条約局長
  84. 井川克一

    ○井川政府委員 私が申し上げましたのは、先ほど、施政権者としての権限に制限があると申しましたのは、従来の川崎先生の御質問が特に私有財産の尊重に関連してのことでございますので、その意味で申し上げた次第でございます。  核の問題は、御存じのとおり、核を持ち込む持ち込まないという問題は、これは安保条約の問題でございまして、安保条約は現在のところ沖繩には適用されておりませんので、これはまた全然別問題でございます。
  85. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 総理、あなたは、八年間沖繩返還のためにがんばってきたのだ、こう言うのですよ。しかし、やってきたのだと言うのだけれども、その解決が、しかも選択が、私たちからすると、たいへん間違っておる。そして県民の多くもあなたのその選択に反対をしておるわけなんです。その根幹にあるのは平和条約第三条なんです。その第三条についてあなた自身が明確な考えを持たずにアメリカ側と交渉してこられた、そこに誤りがあるのですよ。そこに冷戦構造の落とし子である沖繩基地——後ほどその問題については入ってまいりますけれども、その冷戦の一番の落とし子が、日本の国内においては沖繩ですよ。そうでしょう。その沖繩について、あなたが、冷戦の中の一番——あのサンフランシスコ平和条約の体制の中での一番問題になります平和条約第三条、それと日米安全保障条約との結びつき、そういうものについて、あなたが平和条約第三条というものを何でもできる権限だというふうにお考えになって交渉してきておるから、県民の痛みというものはわからぬわけですよ。だから、私有財産が武力で、銃剣づきで、ブルドーザーでこわされたり取り上げられたり——それはあとで補償されたらいいんだという問題じゃないんですよ。しかもそれが補償されていないのでありますから、そういう行為までも平和条約第三条は許しておるとあなたはお考えになりますか。総理にお尋ねをしたいと思います。
  86. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 平和条約第三条はさようなことまでを是認してはおりません。
  87. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 是認をしておらないということになりますと、まさにそういうことが、この沖繩の土地取り上げについては、一九四五年の占領以来ずっと今日まで続いてきておるのです。そして一方では、いまでもわが同胞が米兵にひき殺されておる。しかし、とうとう返ってくるまで人権の保障ということについては手を触れることができなかったのです。平和条約の第三条というのは、そういう人権を無視してもいいと——裁判権移送問題その他ずっとありましたね。その平和条約第三条の権限というものを、人権を無視してもいいと、そこまで、あなたは条約三条ではしかたないというふうにお考えになりますか。
  88. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 平和条約第三条のもとで沖繩同胞が非常な苦しい思いをされておること、これは私は心情的に御同情申し上げております。しかし、私ども施政権を持たないものですから、これを救済する方法がない、そこに、私どもが一日も早く返還を実現したい、祖国復帰を実現したい、そうして、われわれがただいま言われるようないろいろの不法、不当な行為の取り返しをしよう、これが私ども考え方でございます。
  89. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 不法、不当な行為だというふうにお認めになりました。そうしましたならば、条約の第三条のもとにおける今日までのアメリカの不法、不当な行為というものをお認めになったわけであります。それは平和条約第三条というものがいかに国際法に違反をしておるかということもお認めになったと、私はこういうふうに思います。
  90. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 平和条約第三条、これはまた社会党の持論ですが、私ども、この第三条が取りきめられておることをそんなに不都合だとは思っておりません。
  91. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 この条約三条が合法だと、こう言う。しかも、信託統治制度を前面に出しておりながら、実際のねらいは、いま五二年の土地の取り上げ、五三年の土地の取り上げの布令、そういうものを見てみても、ねらいはどこにあったかということは明らかなんです。そうしますと、この平和条約第三条が法の虚構であるということは、まさに明白であります。といたしますならば、不法、不当な、そしてこの絶対的な権限を取り上げるための国際的なペテンである平和条約第三条というものについては、これはもともと不法なんですね。しかし、よしんばそれが一歩後退をするといたしましても……   〔発言する者多し〕
  92. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 御静粛に願います。
  93. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 一歩後退をするとしても、日本が国際連合に加盟をしたそういうときにおいては、国連憲章の七十八条からいたしましても、この平和条約第三条というのは当然廃棄されなければならない。それを、つまりアメリカが提案し可決されるまでの問いつまでも持てるんだという考え方平和条約第三条のもとに沖繩を置いてきた、その考え方というのは、これは私は認められない行為だと思います。でありますから、平和条約三条が本来不法であるし、日本が国連に加盟をした時点においては当然廃棄されなければならない、しかも一九六二年のケネディの沖繩に対する新政策で、信託統治制度にしないということを明確にいたしたあとにおいては、この平和条約第三条が廃棄される交渉、そのことが当然日本政府側からもなされなければならなかったのでありますけれども、それがなされずにきた、アメリカ沖繩への絶対権限を持っての統治を日本政府側は許してきた、こういうふうに指摘をせざるを得ないと思います。でありますから、平和条約第三条がもう不法であり、無効である、そのことについて私は指摘をいたしたい。総理は、このことを、いま不法、不当だと言われたそういう平和条約三条というものの本質をどうお考えになるか、明確にしていただきたいと思います。
  94. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 平和条約第三条が、国連憲章等との関係でこれは無効なものではないかという御主張があることは、私どもも前々から十分に承知をいたしております。しかし、同時に、それが、われわれの——といいますか、政府としてはそういう見解をとらないということも、しばしば申し上げております。そこで、いままでの御説に立って、これは当然不法——無効とおっしゃっておるのかどうかわかりませんが、これは当然破棄せられるべきであろう、こうおっしゃるわけでありますが、それはむろん一つの説として御主張になるのは御自由でありますけれども政府としてはそういう説をとらないし、また、わが国は、先ほども触れましたように、敗戦の結果——まあ敗戦が憲法違反かどうかということまで言えば別でございますが……   〔発言する者多し〕
  95. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 御静粛に願います。
  96. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 敗戦の結果ああいう関係に立たざるを得なくなった日本国と連合諸国との間に条約締結をされてきた、その締結をされてきた条約を、わが国として、これを無効とし、当然にこれを、何と言いますか、その存在を認めないというようなことになるわけにいかないことも、これは十分にお察しがつくだろうと思います。こういう説も少なくもあり得るということは、少なくもおわかりいただけるのではないかと思います。  で、私どもといたしましては、平和条約三条が、御指摘のように、信託統治に付されるまでの間ということがありますように、あるいはわれわれの手から離れることになるのではないかというような危惧さえ持っていたわけでございますが、それがわが方にこの際戻ってくるということは、それなりに大きな意義があることではないか。  それからまた、先ほど総理大臣は、不法なものであるというような御説がありましたが、あるいは、不当であるというような御説がございましたが、それは、私はそばで聞いておりまして、その三条の問題ではなしに、沖繩におけるいろいろなこの施政権の行使としての施策、それについてのお話であったように伺っております。(発言する者多し)それにいたしましても、わが国は、沖繩においてアメリカが施政権を持っている以上は、われわれはそれについてたいへんな危惧の念を持ちはいたしますものの、それについて法的にこれを強制する手段を持ちません。施政権がわが国に戻ってくれば、これは日本がその責任において統治をすることになるわけでございますから、これまた本質的にたいへんな相違である。この点を加えておきたいと思います。
  97. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 敗戦が憲法違反といえばという、いつそんなことを言いましたか。そういういいかげんな答弁をしてはいけません。総理……。   〔発言する者多し〕
  98. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答え申し上げます。  私は、……
  99. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 静粛に。聞こえませんから。
  100. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 私は、質問者が敗戦が憲法違反だと言ったと申し上げているわけではむろんなくて、先ほどの速記録を見ればわかると思いますが、ということになれば話は別ですがということを、私の思考の過程として申し上げただけであります。しかしながら、誤解を招くようでありますならば、この点は、お許しを得て取り消させていただきます。
  101. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 私はなお、具体的な土地取り上げの実情というものと条約三条、布令、布告の関係、そういうものを詰めてまいりたいと思いますけれども、結論として、先ほど総理も、条約三条下における米軍の権力の行使というもの、人権問題も含めて、土地の取り上げや人権問題、そういうものに不法、不当なものがあるということをお認めになったわけであります。そうなりますと、つまり、今回のアメリカの上院の証言等でもありますように、ウエスト・モーランド陸軍総参謀長が言ったり、あるいは国防次官等が言っておりますように、あの朝鮮戦争の際に、アメリカ基地の投資をした、そのことが六〇年代役立つことがわかったし、これからもまた沖繩基地を持ち続けなければならないのだ、こういうふうに言っておるわけです。そうしますと、平和条約の第三条というのが、どんな理屈をこねてみても、沖繩県民の人権や生命、財産を守ったり、生活向上ということよりも、戦争目的であった、そういうことは明確になります。そして、そういう中で軍事行動の自由と土地取り上げの自由、そういうものが積み重なって今日の沖繩基地が形成をされてきたということになります。(「だから返せというのだ」と呼ぶ者あり)だから返せという前に、その問題は、一九四五年の占領以来、講和条約発効前の問題についても、陸戦法規との関係で詰めました。五二年の平和条約第三条のもとにおけるその基地の取り上げの問題についても、不法、不当だと言われました。そういう不法、不当な状態で取り上げられてきた今日の沖繩基地というものを、請求権を放棄して、そして今度の返還協定平和条約第三条が有効だとし、これを安保条約の地位適用下にしていこうと、こういうのです。そうしますと、本来、原状回復の原則というのが国際法上あります。でありますから、沖繩においては、先ほど来こまかな議論がありましたように、あの五二年の四月二十八日平和条約発効の際に、沖繩は一ぺんこれをきちんとしなければならぬわけです。そのことなしにずっと今日まで参りました。そして今日また、原状回復という問題には全く触れずに、土地収用法等で強制収用をやろうとする。これは布令の二十六号とまさにその本質を同じくするわけでありますが、平和条約第三条、そのものとにある布令、布告で取り上げてきた基地、軍用地を、今度は返還協定でこれを認め、そしてさらに国内法でその布令や布告の法内容と同じ本質をもってこれから継続をしよう、そのことは、私は絶対に許されない。でありますから、佐藤総理に、原状回復の原則という問題に基づいてこれをもとに戻すこと、それから特にいま不法、不当という点について触れられましたけれども、そういう私有財産、基本人権、そういう問題についてこれをそのまま引き継いでいく、不法な状態というものを継いでいくということは、極端に言わしてもらいますならば、基本的人権をやみからやみに葬り去ることになるわけでありまして、私は、総理がお認めになった条約三条下における沖繩基地の形成という過程からして、このことはたいへん許されないことである、そのことについて明快なお答えをいただきたいと思います。
  102. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 平和条約第三条についてのかねてからの社会党の皆さん方の御意見は伺っております。ともすると、この三条から、国連信託統治、そういう点をちらほらされます。私は、沖繩が信託統治にならなかったことが、早く返れたゆえんじゃないかと思っております。いまだにその点ではゆるぎない私の信念でございます。私は、ただいまのような御議論が、いま信託統治の問題は別として、もう社会党もそれは考えておらぬとおっしゃるならば、はっきり、この際、もうそんなことは考えておらない——しからば、アメリカが持っておる施政権、一体いつまで持っている、この終期は規定してありますか。終期規定なしに平和条約第三条を締結したのでございます。私はそのもとにおいてはっきりしている。信託統治になるまでは、アメリカが立法、司法、行政の全部または一部を行使する、はっきり書いてある。しかし、それが布令に従っただけで全部が是認されるものでもないと思う。ときには、その布令自身も、私はたいへん不愉快に思うような布令すらある。さような意味から、先ほど来、不当あるいは不法ということばを使ったのであります。私は、終期のない沖繩占領状態、これに早く終止符を打つことが、県民、同時にわれわれ同胞の念願ではないか、かように思うのでございます。私は、それらの点についても、先ほど来いろいろの御議論がございましたが、第三条の問題でなしに、そういう大局的見地に立ってぜひともこの問題を御審議をお進めいただきたいと思います。
  103. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 もともと信託統治制度にできないのです。できないことを前提にして、無期限に施政権の権限ありとする政府に問題があるわけです。だから、この点については、沖繩県民の権利というものが無視をされてきた、そういう経過というものについてはお認めのとおりであります。この点については明確にしておきたいと思います。  それからなお次に、私は、この沖繩基地を無期限に持つ、しかも沖繩基地がある限りにおいては極東の平和と安全が守れるんだ、そういうことで、沖繩基地機能というものについてはアメリカの議会でもいろいろとあります。特にその中で韓国台湾について、あの共同声明で、総理が、韓国台湾の安全は日本の安全と一体であるということを約束をした。つまり、アメリカ側は何にも言っておりません。あなたが積極的に発言をし、約束をしたわけでありますから、このことが、これからの沖繩基地を含みます日米安保条約全体の基本的な問題になってまいります。  そこで、私は次に朝鮮の問題に移りたいと思います。  まず第一に、佐藤政府は、日本外交の基本として、国連第一主義、それからアジアの一員としての外交、これを従来主張してまいりました。その点に間違いございませんですか。
  104. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりを申してきました。
  105. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは次に、福田外務大臣は、十一月四日の参議院の予算委員会で、中国の侵略者決議は死文化したと思うと、こういうふうに答弁をしております。中国の侵略者決議は、つまり、一九五一年二月一日の中国侵略者決議は死文化した、そういうふうに明確に受け取ってよろしいですか。
  106. 福田赳夫

    福田国務大臣 実際上死文化したように見るべきものである、こういうふうにお答えしておりますが、そのとおりであります。
  107. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そういたしますと、その死文化ということは、決議の内容が解消し消滅する、そういうことになるわけでありますけれども、そういうふうに政策を佐藤内閣がとったのは、二重代表制で、国連への中国の復帰安保常任理事会への議席、それを逆重要事項指定方式と一緒におきめになったそのときでありますか、それとも、アルバニア決議案が国連総会で採択をされた時点をそういうふうにお持ちになりますか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  108. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま二つの時期を申されておりますが、その二つの時期のいずれかというようなはっきりした認識じゃないのです。つまり、中華人民共和国が国連に加入する。国連というのはどういう場所であるかといえば、平和愛好国家の集団です。そういうことでありますから、歴史上、ああいう問責決議案というようなものがありましたが、しかしながら、今日になってみると、それはもう過去のものである、死滅したも同然である、こう理解すべきものである、こういうことを申し上げておるわけです。
  109. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 よっぽどこの間の不信任案がこたえていると見えて、問責決議案というように言っておりますけれども……。  この一九五一年二月一日の中国侵略者決議が消滅をしたということになりますと、それでは、次に具体的な問題をお尋ねしたいと思いますが、日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定、これは御承知のとおりでありますが、この一九五一年二月一日の総会決議に従う云々と、こういうふうになっております。この国連軍の地位協定の基本が、それでは侵略者決議が消滅をするのであれば、その前提がこわれた、くずれた、そういうふうに理解をしてよろしいですね。当然のことですね。
  110. 福田赳夫

    福田国務大臣 私が申し上げておるのは、あの侵略者非難決議が消滅したというふうに言っておるのではないのです。それはもう歴史的事実として存在するのです。しかし、今日になってみますると、これはもう今日の時点の政治論としては意味のないことである、これは事実上消滅した、こういうふうに考えておる、こういうことを申し上げておるわけであります。
  111. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 じゃ、消滅をしたのであれば、それを基礎にしておる国連軍の地位協定は基礎がくずれたことになるじゃないですか。日台条約も同じですよ。(「日華、日華」と呼ぶ者あり)日台条約も同じですよ。だから、国連軍の地位協定——よろしいですか、外務大臣、国連軍の地位協定並びに吉田・アチソン交換公文、この基礎はくずれたと、こういうふうに当然考えなければなりません。この点をひとつ明確にしていただきたいと思います。
  112. 福田赳夫

    福田国務大臣 私もその法的関係についてはつまびらかにしませんので、条約局長からお答えいたさせます。
  113. 井川克一

    ○井川政府委員 御存じのとおり、国際連合の軍隊の地位に関する協定第二十四条におきまして、「すべての国際連合の軍隊は、すべての国際連合の軍隊が朝鮮から撤退していなければならない日の後九十日以内に日本国から撤退しなければならない。」というふうな規定があるわけでございます。そして、現在、国連においてどういうふうになっておりますかと申しますと、一九六六年以来毎年採択されておりまする総会決議に基づきまして、この朝鮮における国連軍は、この地域の平和と安全を確保することを唯一の目的として駐屯し続けているわけでございます。さらに、毎回、国連は、毎年総会におきまして、派兵国は、韓国政府から引き揚げの要請があったとき、または、総会が定めた恒久的解決の条件が満たされたときは、いつでも朝鮮からその残存勢力を引き揚げる用意があることに留意する趣旨を含む決議を採択しているわけでございます。  もう一度申し上げまするけれども、要するに、国連としていまだに国連軍を韓国に維持しておる、そしてそのことから、ただいま申し上げました国連軍協定に従いましてわが国に国連軍協定は生きている、こういうことになるわけでございます。
  114. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それは答弁じゃないのです。一九五一年二月一日の決議が消滅した、死文化した、そうなれば、それを基礎にしておる国連軍の地位協定は基礎がくずれたことになるじゃないですか。くどくどと逆のことを言っておる。そうじゃないのです。基本がくずれてきたのです。基本がくずれた中でこれをどうするのですか。吉田・アチソン交換公文並びにこの国連軍の地位協定、それらの基礎がくずれたということは明確じゃないですか。
  115. 井川克一

    ○井川政府委員 国連軍協定の前文に、確かに、お説のように、一九五一年二月一日の総会決議というものが引いてございます。しかし、国連軍の根本的な基礎は、その前に引いておりまするところの一九五〇年六月二十五日、六月二十七日及び七月七日の安全保障理事会決議であることは、これは国連において確立されておる解釈でございます。したがいまして、このうちの一つの決議がどうであるかということによって基礎がくずれたものではないと考えるわけでございまするし、いずれにいたしましても、国連はいまだに、総会におきまするように、国連軍というものを韓国に維持しているわけでございます。
  116. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それはきわめて非論理的なんですよ。これは国連軍自体がもういまいけないのですよ。(発言する者あり)だからそれはあとで言いますよ。国連の地位協定というものについては、日本が主体です。当事者なんですよ。そして、その基礎である大事なこの一九五一年二月一日決議が死文化したのですから、そうなれば、この国連軍地位協定の二十三条によって、「この協定の各当事者は、いずれの条についてもその改訂をいつでも要請することができる。」こういうふうになっておるわけであります。日本外務大臣が決議が死文化したというふうに考えるのであれば、当然この国連軍の地位協定というのは変えねばいかぬでしょう。基礎がくずれているんですから。これは一連の朝鮮決議全部がそうですよ。外務大臣、どうですか。
  117. 福田赳夫

    福田国務大臣 中国非難の問題ですね、これはもう私は事実上消滅した、こういうふうに申し上げているのです。それが国連軍の地位憲章とどういう関係になってくるか、あるいは朝鮮に滞在しておる国連軍、その法的関係、そういうものにつきましては、私は、非常なむずかしいお話のようでありますから、責任の解釈のできる条約局長にお答えいたさせます、こう申し上げているわけでございます。
  118. 井川克一

    ○井川政府委員 先ほど来申し上げているとおりと思いまするけれども、国連の立場から見た朝鮮事変といいますものは、まず北鮮から、北からの侵略に始まったということになっております。そして、ある一定の時期をおきまして中華人民共和国の軍隊が、義勇兵が介入した。そのときにおきまして中共非難決議ができたわけでございます。そして、いわゆる休戦協定ができたわけでございまするけれども、朝鮮における事変はその前から始まっておるわけでございまして、国連軍と申すものも、その前から、戦争状態に入りましたときにつくられたものでございます。そして現在、休戦協定のもとにあるわけでございます。その板門店における休戦協定委員会におきまして中共の代表者もいまだに出席しているわけでございまして、休戦状態が続いている。そして、その間に中共の介入があった。その中共の介入に対する非難の決議は、形式的には、国連において——それは国連の決議でございまするから、国連において今後どういうふうに取り扱うかということを審議されることと思いまするけれども福田大臣が申されましたとおりに、平和愛好国として国際連合に中共が加盟したということによりまして、実体的に意味を失ったものだ、こういうことになるわけでございます。
  119. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 五一年の二月一日決議だけでなくて、さらに、五一年の五月十八日の第五回総会決議においても、「中華人民共和国中央人民政府及び北鮮当局」云々と、こういうことで、二つ並べてあるわけですね。そうしますと、その一方の中華人民共和国のほうの中国侵略者決議は死文化したけれども、一方のほうはまだ残っておるんだ、つまり、平和の破壊者として諸決議が生きておる、そういう立場日本政府は立っておるのでありますか。外務大臣、いかがですか。
  120. 福田赳夫

    福田国務大臣 少なくとも、中華人民共和国が国連に参加する、国連は平和愛好国の集団である、そうしますと、これが平和を撹乱する国であるという前提は両立し得ない、こういうふうに考えております。ですから、中華人民共和国に関する限り、私は、国連の問責決議、これは事実上死滅しておるのだ、こういうふうに解釈しないと、理議が一貫しない、こういうことを申し上げているわけでございます。
  121. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それじゃ、その侵略者決議が否定をされるということになれば、当然にこの国連軍の地位協定というものは前提がくずれたことになる。当然じゃないですか。その点はひとつ明確にしてもらわなければいけません。だから、国連軍というのが、日米安全保障条約の極東条項の問題にいたしましても一つの抜け穴になっておる。これはさらに吉田・アチソン交換公文についてもいま私が指摘したとおりです。両方とも一九五一年二月一日決議というものを土台にしておるわけです。当然この基礎はくずれたということについて、外務大臣、お認めになりますね。
  122. 井川克一

    ○井川政府委員 先ほど来申し上げておりますように、中共の介入というのは後ほどのことでございます。そして在韓国連軍と申しますものは、これは一九五〇年六月二十七日の安保理決議、第八十三条の勧告に基づいてつくられましたところの国連軍——軍隊でございます。そして日本との国連軍協定は、先ほど私が読み上げましたとおり、第二十四条におきまして撤退の時期を定めている。しかして第二十五条において、それがすべて撤退されなければならない日にこの協定は終わるということが規定されておるわけでございます。そして、繰り返して申し上げまするけれども、この国連軍は、現在いまだに国連によりまして大韓民国の中に維持されている軍隊でございます。したがいまして、国連軍協定が失効するということはあり得ないことでございます。
  123. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それは答弁じゃないのですよ。条約論としてもちっともなってないじゃないですか。韓国の中に国連軍があるからいいんだ、そうじゃない。わが日本が当事者になっておる、アメリカと結んだその国連軍地位協定の中で前提がくずれているのです。くずれたのですから、これは当然変えなければならないじゃないですか、こう聞いているのです。
  124. 井川克一

    ○井川政府委員 おことばでございますが、私ども、国連軍協定の中に引用されておりまする一つの決議が死文化したことによりまして、この国連軍協定が全部無効になったとは考えておりません。しかもこの決議は、先ほど来申し上げておりますように、国連軍ができましてから後ほどの決議でございます。そして、それは、中共に関する限り、福田大臣がおっしゃっておりまするとおりに、意味を失ったものであろう、こういうわけでございます。現実に国連軍は国連の決定によりまして大韓民国に駐在いたしております。休戦協定支配いたしております。この休戦協定に四カ国の委員も出席いたしております。そして国連軍協定は、国連軍協定二十四条、二十五条に定められたところに従って失効するわけでございます。その失効の条件というものは、国連の立場から見ていまだ充足されておらないわけでございますので、われわれといたしましても、これを一方的に廃棄するというふうなことはできないわけでございます。
  125. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは総理にお尋ねしますが、総理は、参議院の本会議で、韓国との関係等について、公明党の多田議員の質問に対し、北朝鮮に対する敵視政策をとっていないんだ、こういうふうに言われました。それでは、一九五〇年の六月の諸決議、平和の破壊者という決議は生きておるというふうに総理はお考えになっておるのですか、どうですか、明確にお答えいただきたいと思います。
  126. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 過去の決議が生きているかどうか、これは先ほど来いろいろ御議論されておりますから、その決議が生きておることは、これは御承知のとおりであります。  ただ、私ども北鮮に対して敵視政策をとっているかとっていないか、敵視政策の内容にもよると思いますが、私どもは、あらゆる国と仲よくする、こういう考え方でございますから、一国に対して敵視政策をとっているとか、そういうものではないことだけ、これはこの機会に、決議がどうあろうと、そういうことははっきり申し上げておきます。
  127. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それならば、国連の中で、一九六六年以来、つまり第一回のASPAC会議をソウルにおいて開いて以来、日本政府は、国連の朝鮮問題決議について、この決議を継続する共同提案国になっております。参戦国でもない日本が、この朝鮮問題の決議にアメリカとともに共同提案国でやっておるということは、今日まで国連の中で、国府を擁護するために、これまで重要事項、さらには逆重要事項という、今回のあの国際舞台におけるぶざまというか、すさまじいまでの姿を示してやってきたわけでありますが、私は、これは中国に対する国府擁護、それから朝鮮問題に対するこの朝鮮民主主義人民共和国への非難決議、その二つを続けてきておる冷戦政策の継続、こういうふうにいわざるを得ません。その点、総理、どうですか。
  128. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 川崎君も御承知のように、日本は北鮮とまだ国交を開いておりません。私どももそういう状態にあることを前提にして、われわれは敵視政策は持っておらない、かように御了承をいただきたいと思います。  また、中華民国との間に日華平和条約があること、これはわれわれの権利でもありますし、同時に義務もございますから、これを守ることも、やはり国際信義、それを重んずるゆえんだ、かように思っております。しかし、中華民国を、ただいまこの平和条約、これだけでというわけにいかない状態が今日出てまいりました。北京にある中華人民共和国と国交の正常化をはかる、その場合にただいまの日華平和条約の取り扱いなどもきめていこう、かような考え方を持っておること、これは数次にわたって説明したとおりであります。
  129. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 六五年の日韓特別国会で、総理は、なくなった横路節雄議員の質問に対して、今日の国際情勢は、東西の冷戦のもとに平和が保たれておる、こういうことをあなたは答弁をしておられるわけであります。世界の体制が行き詰まったということについても、総理は、私の先般の緊急質問の際にも、その東西冷戦の問題について触れております。そうしますと、この朝鮮についてもそういう冷戦構造が平和を保っておるんだという考え方に基づいて、今回の朝鮮半島における危機、それから韓国の安全が日本の安全と一体である、そういう考え方に立ったのであるかどうか、その点を明確にしていただきたいと思います。
  130. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま使われた冷戦ということば、これはまあいろいろ——私はそのとおり使ったかどうか、私、疑問に思っております。いま、国際平和、これがやはり力のバランスで維持されている、かようなことは申し上げたと思いますが、いわゆる冷戦——冷戦というようなことばが口を出ますと、何だか私どうも抗弁せざるを得ないような気がするのです。とにかく、国際平和、その維持はやはり力のバランス、そういうものがあるんだ、こういうことは、今日の情勢においてもいなめない事実だ、かように私は思っております。
  131. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、台湾問題では国連で敗れたわけであります。いずれ、中国の国連復帰によって、朝鮮問題は来年の国連総会の非常に大きな課題になってまいるでありましょう。それから冷戦構造をいかに解消していくかということがこれからの重大な問題でありますけれども、そのことについて、その一番かなめになります台湾と朝鮮、この二つの問題についてアメリカと共同歩調をとってまいったわけであります。そうしますと、六六年以来この朝鮮問題についての決議の共同提案国になっておるわけでありますけれども、来年もその共同提案国を続けるつもりなのかどうか。私はもう共同提案国からおりるべきだ。それは特に外務大臣も、中国侵略者決議が死文化した——その同盟国が朝鮮側であります。そうなりますと、この問題について日本政府は——来年はおそらく佐藤内閣ではないと思いますけれども、その朝鮮問題の決議について、続けていくつもりなのかどうか、ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  132. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいままだちょっと考えてないことを聞かれたので、私どもびっくりしたのですが、そういう問題は、御意見は御意見として伺っておきます。ただいままだそういうことについて政府ははっきりした考え方をまとめておりません。そのことだけ申し上げておきます。
  133. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 先ほど来休戦協定のことを言っておりますけれども、あの休戦協定で朝鮮における戦争状態は終わったわけです。だから、休戦協定をどう実行していくかということが問題です。そのことについて、あの休戦協定を実行していない。中華人民共和国のほうはすでに撤退をしております。しかし、米軍は依然として国連軍として残っておるわけです。そのことは私は休戦協定違反だと思います。外務大臣、いかがですか。
  134. 井川克一

    ○井川政府委員 休戦協定の最も主眼は、第十二項にありまする、双方の司令官は、その支配下にある陸海空軍のすべての部隊及び人員を含むすべての軍隊が朝鮮におけるすべての敵対行為を完全に停止するように命令し、かつ実施しなければならないというところが基本的な規定だと思います。そこで米軍の撤退というものはあるとはございません。なぜかと申しますると、国連軍というものはそこにおいて休戦状態のまま維持されているわけであるからでございます。
  135. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 川崎君、ちょっと申し上げますが、申し合わせの時間も相当過ぎておりますので、結論をお急ぎいただきたいと思います。
  136. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それではもう一問。朝鮮問題ですね。総理は、共同提案国については考えないと言ったけれども、そういう歴史の流れの中で、いかにして戦後の冷戦体制を変えていくかということが問題です。そして日本がその中で、朝鮮にしましても、中国の問題にしても、ベトナムの問題にしても、全部かかわり合ってきておるわけです。といたしますならば、この共同提案国からおりるということが、今日の日本としてとり得るせめてもの態度だ。これは逆重要事項指定方式のときに、おりなさい、自民党の中からもたくさん出ました。しかし、この問題について逆重要事項指定方式のそういうあやまちをおかさないためにも、極東の緊張緩和をしていくためにも、ここで共同提案国からおりるということが日本政府のとるべき最善のせめてもの道だ、私はこういうふうに思いますので、その点については考えていないということではなくて、方向を明確にしてもらいたい、こう思います。
  137. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、川崎君の御意見を聞きながら、またお尋ねを聞きながら、何だか日本のあり方について基本的に疑惑を持っていらっしゃるのではないか、かように思わざるを得ないのです。私どもは平和愛好の国でございますし、戦争をするというような考え方はございませんし、したがって、平和憲法を忠実に守る、そういう立場でございます。したがって、私どもが自国を守るための自衛隊、これは持っておりますが、いわゆる軍隊ではございません。でありますから、先ほど来言うような韓国とか台湾との中にあってと、いわゆる冷戦状態、そういうような話はどうもなじみにくい御議論でございます。そのことを私はまず基本的に申し上げておき、そうして先ほど来、国連中心にわれわれは平和を進めていく、こういう考え方でございますが、この国連における諸決議において共同提案国になるな、いろいろ誤解を受ける、こういうような御議論を社会党を代表してただいま伺ったばかりであります。私は、この点については、先ほど申しますように、政府はまだ態度を決定しておりません、こういうことを申し上げたのでございますが、そういう際に社会党の御意見を率直に聞くことができたことはたいへんしあわせだったと、厚くお礼を申し上げておきます。
  138. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、共同声明四項で、あなたは、韓国の安全と日本の安全が一体だ、こう言われた。六五年の日韓特別国会では、日本の安全は日本自身が守っていく、韓国がどのような状態をとっているか、それは韓国の問題であるので、政府の関与していないことです、こういうふうにあなたは答弁をした。しかし、今度の共同声明の中において、そしてまた、アメリカ沖繩基地機能がこれからも十分守られるという中の一つに、いわゆる韓国条項、台湾条項というものがいわれておるわけでありますけれども、この日韓国会答弁をしておる考え方と、そしていま冷戦体制の解消という問題について何らかの前進を示そうという気持ちは出しながらも、しかし実際には冷戦構造を強めていく今日の共同声明。なぜ、六五年の日韓国会ではこういうふうに、韓国自身の問題だ、しかし、それが今度は、韓国の安全は日本の安全と一体だということで前進をしてきたか、その点をひとつ明確にしていただきたいのであります。
  139. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これもしばしばいままで申し上げたと思いますので、重ねて申し上げますから、笑わないで十分聞いていただきたいと思います。  私は、隣が火事になったときに、あれは隣のうちだ、こう言って自分のうちはじっとしている、そんなことは、自分のうちを守るためにもとるべきことじゃない、かように考えておるのでございます。(発言する者あり)しかし、いま、出かけていくのかという不規則発言がございますが、われわれは出ていかない、これはもうはっきりしておる。われわれの憲法ではそういうものを禁止しておる。だから出かけていかない。また、ここにいる米軍が、いわゆる安保条約、その体制のもとにおきましては、出撃する場合には事前協議の対象になる。事前協議には、ノーもありイエスもある、こういうことを申し上げておるのでございます。そのとおりをやっていく、今後も変わりません。そこで私は、先ほど来問題になります沖繩米軍基地、これが本土並み安保条約が適用され、諸取りきめがそのまま適用になるというその状態を考えると、これはよほど質的に変わるのではないか、量的な変わり方が今日できないこと、これはまことに残念ですが、質的には明らかに変化する、この重大なる質的変化を認めていただきたい、かように思う次第でございます。
  140. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 質的な変化は、いささか柔軟性を欠くとだけしかアメリカ側でも理解をしていないわけなんです。機能はちっとも変わらない。それは、事前協議でこういう韓国条項や台湾条項で十分果たされるというふうにアメリカ側は理解しておるわけなんです。そういたしますならば、すでに先ほど来繰り返し言っておりますが、中国の侵略者決議が死文化をした今日、なお朝鮮半島におけるあの休戦協定をめぐります前後の問題について諸決議を依然として守っていくのかどうか。私は、この中国の侵略者決議が死文化したと同時に、一九五〇年の六月二十五日、二十七日、そうした一連の決議は全部当然死文化しておる、そうならなければならないと思います。外務大臣、いかがでありますか。
  141. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいまの問題は国連の問題です。でありますので、国連でこれをどういうふうに扱うか、これはまた、わが国も代表を出しておりますから、よく相談をいたさせます。ただ、事は中国の問題に発しておるわけですから、関連してその他の問題がぞろぞろぞろぞろと出てくるというような状態ではなかろうか、そういうふうに見ております。
  142. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 中国の問題に関連してぞろぞろぞろぞろ出てくるのではないだろうか、こういうふうに、問題の深い根をばく然とながら外務大臣は知っておられるわけですね。言われたわけです。だから、一連の決議です。もう国連総会でこれをどうするかというのが来年問題になります。ことしはたな上げしました。しかし、この国連における朝鮮問題をほんとうに休戦協定に基づいて解決をしていかなければならないという段階にきているわけなんです。あなたが敵視政策をとらない、こういうのであれば、平和の破壊者としての国連の諸決議、それは当然死文化すべきである、その点を私はなお重ねてお尋ねをしたいと思う。
  143. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は国連で相談をするというふうに申し上げましたが、いま国連で問題になっておりますのは、直接には日中問題、これに関連していろいろな問題が起こってくるだろう、こういうふうに申し上げておるのです。それが他のいろいろな国の問題に波及してぞろぞろと出てくるという状態とは見ておりませんという、逆のことを申し上げておるわけであります。
  144. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そうではなくて、これは当然出てくるのです。では、共同提案国からおりますか。外務大臣いかがですか。
  145. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは来年の秋の問題で、これから慎重に考慮いたします。(発言する者あり)
  146. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、はっきりと、不規則発言が出たように、いまの内閣では方針が出せない、こういうのが意見のようでありまして、そこで私は台湾の問題についてお尋ねをしたいと思います。  いま自由民主党の中で、中国問題についての意見が、つまり総理が党議を越えてかってに前進しつつある——前進していると思わぬのですけれども、何か変わりつつある、こういうふうにいっております。でありますから、ここでほんとうに日中間の問題を解決する道は、アヒルの外交ではもうだめです。そんなことで、水の下でやったり、手紙を出したり、いろいろなこともやっておるようでありますし、いろいろな手も通じておるようでありますけれども、いま大事なことは、原則を明確にするということであります。日中国交回復についての自由民主党の決議が出ておりますけれども、こうした自由民主党の決議で日中の国交回復ができる、そういうふうに総理はお考えになっておりますか、いかがですか。
  147. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはたいへん重大な問題ですから、そう簡単に結論を、あるいは見通しを申し上げることはいかがかと思います。しばらく預からしていただきます。
  148. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、日台条約をそのままにして日中の国交の回復——つまり、日中の国交回復ということは、最終的には日中間に平和条約を結ぶことだと思います。その点いかがでありますか。
  149. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日台条約というのは、日華平和条約の誤りじゃないかと思いますが、条約ははっきりその名前を言っていただかないと、日台条約というような条約はございませんから、それだけはっきり申し上げておきます。
  150. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 日本台湾との条約をそのままにしておいて、日本と中国との間に国交回復をし、平和条約を結ぶことができますか。
  151. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日華平和条約は、私はたびたび申し上げておりますが、北京にある中華人民共和国と国交の正常化をはかる、その間においてこの取り扱い方を協議したい、これが私の考え方でございます。
  152. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 川崎君、時間が参っておりますので、よろしく願います。
  153. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 蒋介石総統自体、これは六八年でありますが、日本の新聞社の編集者の訪台団に対して、日本と中国との国交回復をしたときには日台条約は廃棄するということを、蒋介石自身も言っておるわけであります。でありますから、当然、日本と中国との国交回復にはこの条約の廃棄ということがなければならない。この点を明確にしていただきたいと思います。
  154. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 中華人民共和国ではさように言っているようなうわさは、私は聞いておりません。けれども、私は、日本政府としては、日華平和条約、これには、権利もあるが義務もある、こういうことをたびたび申し上げております。しかし、ただいまの情勢と日華平和条約を結んだときの国際情勢とは変わってきております。どういうように変わったか。これは、明確に申せば、日華平和条約を結んだときは、中国の代表者として中華民国を承認している国が、中華人民共和国を代表者として承認している国よりも多かったという、そういう事実でございます。しかしながら、今日は、中華人民共和国が中国を代表するものとしてこれを国連に迎える、こういう状態になっておりますから、その状態を踏んまえて、ただいま、過去において結んだ条約、これをいかにすべきか、これを十分協議したいと思います。
  155. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 川崎君、いかがですか。時間がきておりますから……。
  156. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、台湾については、中国の領土である。ただ、台湾の地位はまだ未定でしょう。この議論は、もう時間がありませんから、長々できないのですけれども、しかし、台湾の地位はまだ未定ですね。領土の帰属は中国だ、こういうふうにあなたは言っておるけれども台湾の地位については、これは未定である。愛知外務大臣も、国連総会で、台湾海峡をはさんで二つの政府がある、こういうふうに言えば、これは一つの中国の中に二つの政府があるという、一つの中国、二つの政府論を展開しておるわけです。そうしますと、その中で、私はこの沖繩基地と関連をしてまいりたいと思いますけれども台湾が中国の領土だということが明確になりながら、その中国の領土の安全が日本の安全と一体であるという、いわゆる共同声明の第四項、このことは、アメリカが米華防衛同盟条約を今後も続ける、守るということが続いていく中においては、この日米共同声明台湾条項というのはずっと生き続けるわけです。そうすると、この中国の領土の安全が日本の安全と一体であるという考え方、そして日本台湾との条約をそのままにして、それで日中の国交回復という方向に進み得るというふうにお考えになるのでありますか、どうでありますか。
  157. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日本には日本立場がございますし、また中国には中国の立場があると思います。そういう点は、お互いに主張し合わないとはっきりしないのじゃないですか。もういままで皆さん方も北京といろいろ接触されて北京側の言い分は十分お聞き取りですし、しかしながら、私どもは、日本政府として日本立場のあること、それを十分理解してもらいたい、かように思っておりますが、これで——いろいろ言われました。いろいろ言われましたが、結論だけ申せば、ただいまのことで私の答弁は終わるのかと思いますが、これでよろしゅうございますか。
  158. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 この際、午後一時まで休憩いたします。    午後零時三十五分休憩      ————◇—————    午後一時四分開議
  159. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。西銘順治君。
  160. 西銘順治

    ○西銘委員 沖繩の全県民が長年待ち望んでおりました祖国復帰を前にいたしまして、その最後の手続である返還協定審議にあたりまして、自由民主党を代表いたしまして質問の機会が与えられましたことは、沖繩代表といたしましてまことに感無量であると同時に、その重責をひしひしと感ぜずにはおられないのであります。  そこで、これから具体的な問題に入りますが、沖繩県民が納得のいくような明快な御答弁をお願いいたします。  沖繩県民は、戦後一貫して復帰運動を推進してまいりました。顧みるに、サンフランシスコ平和条約締結される前の昭和二十六年のことであります。私は、同志数名とともに、祖国復帰の署名運動を展開いたしました。きびしい米占領下で、実に県民の八〇%の署名を得まして、吉田全権に請願いたしたいきさつがあるのであります。戦後初期の復帰運動は純粋な民族運動であり、県民こぞって日の丸を掲げる運動でありました。それが、今日では、反安保、反体制運動の道具となって、言うなれば、目的が手段となってしまったことは、まことに遺憾にたえません。(拍手)  ところで、県民の悲願である祖国復帰は、アメリカの厚い壁ではね返りました。結局、平和条約第三条による琉球処分となってあらわれたのであります。わずかにダレス声明によりまして、日本の残存主権と申しますか、残余主権に希望をつないだのであります。それから十余年、アメリカの壁は依然としてかたく、ようやく、昭和四十二年十一月の佐藤・ジョンソン会談で、沖繩返還を両三年の間にめどをつけるということがきまったときには、それに対するさまざまな疑問が投げかけられたことは事実であります。ことに、佐藤・ジョンソン会談後における同年十二月の国会における野党の質問を見ましても、そんなことができるはずはない、そういう立場佐藤総理を追及し、返還のめどづけについてさえきわめてきびしい批判があったのであります。  当時、佐藤総理が渡米される前に、沖繩現地の有力紙が世論調査をいたしました結果、基地はそのままにして核だけを撤去して本土並み基地にしたいというのが四〇・三%を占めております。また、一方におきましては、即時返還は無理だから段階的復帰でも希望するのが三二・九%もあったのであります。それほどむずかしい状況下にあったのであります。  さらに、当時の復帰協議会の会長でありました屋良主席も、非公開の席上におきましては、たまたま、自分が生きているうちは返らぬかもしれぬと述べておったほどであります。  それだけに、四十四年十一月、佐藤ニクソン会談で、核抜き本土並み、七二年返還が合意されたとき、沖繩県民をはじめ日本国民は、それはほんとにできるだろうかと、信じられぬくらいでございました。しかし、岸内閣以来歴代内閣、特に佐藤総理の精力的な努力によりまして、返還の厚い壁は破られたのであります。しかも、金と時間をかけて譲った点もあるのでありますが、とにかく返還の原則は貫いてまとまったことは事実であります。  そこで、返還協定の取りきめにつきましては不満も不安も多いのでありますが、しかし、早く復帰したい、その上で問題を解決することが最も現実的で得策だと思うのでありますが、佐藤総理の見解をお伺いしたいのであります。
  161. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、沖繩を訪問して、そうして空港に立ったとき、また各地を巡歴した際、ほんとうに沖繩方々が、戦時中の御苦労もさることながら、戦後も引き続いてこの苦しみを耐えておられる。それにほんとうに涙なしには実は古戦場も回れないような次第でありました。私は、ことばの上で申したのではない、沖繩復帰なくしては戦後は終わらない、こういうことを実は実感を持ったその人間でございます。  しかして、アメリカと接触をしてみますると、沖繩基地が強大でありますだけに、なかなか簡単に沖繩の問題と取り組めない。まず日本占領されておる小笠原諸島、この復帰と取り組んだ。このほうは、広範な地域ではございますが、また住民等もきわめて少数であり、いわゆる純粋の日本人はみんな東京に疎開している、そういう状態でございましたが、この問題と取り組んだら、まずこれができた。比較的容易にこの返還交渉に応じた。その際に、同時に沖繩の問題についても何らかの取りつけをしたいと努力をいたしました結果、数年のうちに沖繩の問題も解決しよう、こういうことに話ができたのであります。さきのジョンソン大統領の時代、さらにその後のニクソン大統領と——このジョンソン大統領との取りきめによってさらに私どもニクソン大統領と積極的に取り組んだ。そうして今回の返還協定に調印をした。  返還協定は歴史的な意義を持つできごとでありますし、また、その協定自身も、最近の状態では宇宙中継して同時に放送する。おそらく県民方々もあの実況をテレビ放送を通じてごらんになったと思います。私は、おそらく胸を去来するもの、それは、ああというような、これでいままでの苦労が実を結んだ、こういうようなお気持ちではないかと思います。  しかし、ただいま野党の諸君から指摘されるように、あの返還協定をもって満足すべきでないこと、これはもう申すまでもございません。ただいまも西銘君もその点に触れられました。われわれも一そう努力しなければならないことは、これはもう申すに及ばないことであります。われわれが過去の長い長い幾多の沖繩同胞の御苦労を考えると、われわれはもっとその御要望にこたえるような協定はできなかったかと、かような反省もございます。私は外務当局を責めるわけではありませんが、この協定締結するまでの外務当局の苦労、これはやはりわかっていただきたいと思います。そういう苦労の後にようやく返還協定が調印できたのであります。  これには、ただいまも申しますように、これで十分ではないんだ、今後われわれが努力すべき方向、これは、もう先ほどの午前中の社会党の川崎君との質疑応答でも明らかにいたしましたように、平和の島にする、本土と同じ待遇を受ける、これははっきりしておりますが、まだまだ本土並みとはいえないじゃないか、こういう問題が残っております。基地が非常に密度が高い、あるいはまた、いままでも特殊部隊を持っている。あるいはその装備にもいろいろ危険な問題があるんじゃないのか、こういうことで御心配の種が尽きないようであります。私は、返還が実現すれば、安保条約、同取りきめ、これは本土と同様に何らの変更なしに沖繩に実施される、そこにぜひ期待を持っていただきたいし、また、その立場から沖繩が平和な島になれるんだ、したがって、いままでのような自由使用、こういうような問題はもうないし、自由出撃などあろうはずはございません。したがって、この質的な変化、それも同時にあわせて量的にも変わったものにするという、そういうことにわれわれが努力しなければならないと思います。私が沖繩選出の西銘君にお答えする、あるいは逆かもわかりませんが、本島をはじめ離島、先島等、これは平地に恵まれない、まことに荒れている領土でございます。私はそういうことを考えながら、これを豊かにするために、われわれは今後、幾多のむずかしい問題にぶつかっておる、それと取り組まなければならない。ただいま御指摘になりましたように、結論としては、一日も早く本土復帰を実現して、そうして本土のわれわれとともどもに、格差のない沖繩県、豊かな沖繩県づくり、これを邁進しようじゃないか、これが私どもの決意でもございます。どうかそれらの点について、それぞれの党には党の立場がおありだと思いますが、野党の諸君もぜひ御賛成をいただきたい。西銘君に申し上げるまでもない、西銘君はわが党の同志でございますから、政府の苦労も御理解いただけると思いますが、同時に、西銘君を通じて県民皆さま方も御理解を一そう深めていただきたい、かように思う次第でございます。  長い答弁になりまして失礼しました。
  162. 西銘順治

    ○西銘委員 返還協定粉砕とか交渉やり直し論がございますが、まず、社会党の成田委員長が、八月二十九日の毎日新聞で、沖繩復帰が「半年や一年遅れても、核も、基地もない平和な島として、復帰させるべきです」という趣旨の発言があるのであります。   〔委員長退席、福永(一)委員長代理着席〕 これは沖繩県民のほんとうの心を知らない、言うなれば、根拠のない発言といわなければならないのであります。この種の議論は民間にも出ておりまして、たとえば、朝日新聞の十月十五日の夕刊で東大の坂本教授が論じておりまするし、月刊「世界」の十一月号で大内兵衛教授も同じような論評を試みておられるのであります。これらは、現実を無視した、あまりにも学究的な意見であると私は考えております。最も進歩的な文化人といわれる方々の中におきましても、評論家の中野好夫氏は、月刊誌の「世界」十一月号の中で、「わたしとしては、もうこれ以上沖繩同胞に向って、これまで通りの異民族支配を耐えよなどとは、どう考えても言い切る勇気がない。」という、きわめて良心的な意見があるのであります。  ところで、十一月一日の琉球新報の投書欄におきまして、二局校生の早期国会承認県民の願いという内容の投書があるのであります。この投書の内容の一部を朗読いたしますと、「協定に不満はあるにせよ、異民族支配から一日も早く抜け出したい気があれば、まず協定を批准し、一応復帰をから取った後に全国民立場で、基地縮小や撤去を考えてもおそくはない。復帰をこれ以上おくらす言動こそ断固粉砕しなければならない。」これが那覇市における二局校生の切なる願いであるのであります。(拍手)  このように、やり直し論は、多年にわたる県民の悲願を踏みにじるものと思うのでありますが、これに対する総理の見解をお伺いしたいのであります。  同時に、かりにやり直しができると仮定した場合、その成算ははたしてあるのかどうか、あわせてお伺いしたいのであります。
  163. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど長いお答えをいたしました。今度は短くお答えをいたします。  いままでも最善を尽くして返還協定の作成に従いました。私は、現時点においては、返還交渉、返還協定の作成に当たった外務当局その他の関係者の努力を多とするものでございまして、私は、これをやり直せという御議論には実は賛成いたしません。また、これをやりましても、現段階でいまより以上の協定ができるとは思いません。このことをはっきり申し上げまして、それよりも、一日も早くこれを批准して、そうして祖国復帰を実現して、その上で不十分な点を直していく、かように取り組みたいと思います。
  164. 西銘順治

    ○西銘委員 次に、核の問題についてお尋ねいたします。  核問題につきましては、沖繩県民は依然として不安と不満があるのでありますが、これに対する政府の基本的な姿勢を伺いたいのであります。  ところで、去る十月二十八日の米上院外交委員会でのロジャーズ証言及び十一月三日の外交委員会の上院への報告は、返還協定第七条及び一昨年十一月の共同声明八項の趣旨、すなわち、日本政府の政策に背馳しないということを明確にしたものと思うのでありますが、これに対する政府の見解をお伺いしたいのであります。  また、核の撤去にあたりましては、その安全性の確保について、県民の納得できる十分な措置がとられねばならないと思うのでありますが、そのこともあわせてお伺いしたいのであります。  そこで、核の撤去後、何らかの方法で核抜きの確認をすべきと思うのでありますが、具体的な腹案があれば示してもらいたいのであります。  外務大臣答弁をお願いいたします。
  165. 福田赳夫

    福田国務大臣 核についての御見解、私は西銘委員と全く同じでございます。つまり、両巨頭の共同声明、また、今回御審議をお願いしている協定第七条、これではっきりしておるわけであります。さらに、アメリカの上院外交委員会におきまする政府側答弁、これは非常に明確にアメリカの意図を表明しておるわけであります。そういうことで、もう私は、国民の皆さんに、返還時におきましては核はないんだということについては十分御信頼いただけると、こういうふうに存じておりますが、しかし、西銘委員御指摘のように、不安を持つ者もあるかもしれない、そういうようなことも考えながら、なお有効な方法があればと思って、頭をいまひねっておるというところでございます。  それから安全性の問題、これにつきましては、これはガスにつきましてもそうでありましたが、これは沖繩県民たいへん心配されるだろう、そういうふうに考えておるのです。そこで、米当局に対しまして、この安全性の保持につきましては万全を期するようにと、こういう申し入れをしております。それに対しまして、アメリカも、万遺憾なきことを期します、こういうふうに言っておるわけであります。  ただ、この核というものは、これはアメリカの戦略、戦術の最高の機密の事項に属しますので、それをどういうふうな経路でどういうふうにするんだというようなこと、これはアメリカ当局としては明らかにしません。それから、もとより、その前提として、私どもはそうは思っていないのです、あそこには核はあるだろう、こうにらんでおるのですが、アメリカ当局は正式には核があるとも言っておらないような状況でございますが、とにかく米政府とこれは厳重に話し合いをいたします。先方におきましても、遺憾なきを期すということをほんとうに真剣に考えておりますので、どうかひとつ県民に対しまして御理解いただけるようにお伝えを願いたいとお願い申し上げます。
  166. 西銘順治

    ○西銘委員 次に、基地整理縮小についてお尋ねいたします。  沖繩米軍基地本土並みを考えるときに、まずその性格が問題として取り上げられなければならないのであります。私は、協定におきましてはすべて安保条約並びに関連取りきめのもとに置かれることになって、したがって、沖繩基地の性格は全く本土のそれと同じであると思うのでありますが、これに対する政府当局の御見解をお聞きしたいのであります。  また、先日の米上院外交委員会でのパッカード国防次官の基地縮小に関する証言は、これを裏づけしたものと思うのでありますが、そう解してよろしいのであるか、お伺いいたしたいのであります。  ところで、沖繩基地の質と量についてでありますが、米外交委員会報告の中では、基地縮小の可能性について勧告しておるのであります。復帰後すみやかに対米協議が行なわれまして、合理的にかつ計画的に縮小をはかることになると私たちは期待をいたしておるのでありますが、その見通しをお伺いしたいのであります。  次に、米側に提供する土地の契約更改については、関係地主と十二分に話し合うことにつとめるべきだと思うのでありますが、これに対する政府の見解をお伺いしたいのであります。  さらに、公用地等の暫定使用に関する法律案のねらいとするところは、この公用地を強制的に提供させろというのではなくして、最悪の場合の歯どめである、こういうふうに理解しておるのでありますが、これに対する見解をお伺いしたいのであります。
  167. 福田赳夫

    福田国務大臣 基地に関する部分のお答えを申し上げます。  今度、協定によりまして、A表によって米軍に提供される基地の性格は、全く本土基地と同じでございますから、さよう御理解願います。  それから、基地についてアメリカ政府が上院において証言をしておる、この証言の趣旨は、未来永劫に基地を保有するという趣旨ではございませんです。これは、だんだんと整理さるべきものである、こういうような意味合いでございます。全くあなたと同じ私は理解をいたしております。  それから基地につきましては、しかしながら、現況、沖繩の皆さんが言われておる叫び、これはほんとうに私も理解できるのであります。きのうちょうどコナリー財務長官が来た。このコナリー財務長官は、基地につきましては特別の関係を持っておる。関係を持っておりますというのは、先般岸元総理アメリカを訪問いたしまして、そのとき私から依頼したのですが、大統領にぜひじきじきにお願いしてもらいたい、それは、沖繩基地は非常に稠密な状態である、今後の沖繩の建設に計画作成上も支障がある、またいろいろな問題があるが、その困難な問題は基地の問題に関連をしておる、どうか、A、B、Cという、今回協定で、付表でお願いしておりまするこの種類分けを変えるという意味じゃないけれども協定成立後においてもすみやかに基地縮小について考えてもらいたい、こういうことの伝達をお願いしたわけなんです。そうしますと、大統領は、岸元総理に対しまして、この問題は私も実情をつまびらかにしない、ちょうどコナリー財務長官日本に立ち寄るから、財務長官によく説明をしてもらいたい、判断は私がいたします、こういう返事だったのです。そこで私は、昨日コナリー財務長官に会いました。そして、財務長官、あなたは、この基地状態、いま沖繩状態、これを御存じですか、財務長官は、抽象的には知っておる、いま今日この時点で、百万県民、その一割にも及ぶ十万人の人がゼネストで立ち上がっておる、これは何だ、米軍人犯罪に対する抵抗、そういう名前ではあるけれども、その背景として基地の問題がある、これをよく理解してもらいたい、そして地図を広げまして、こういう状態である、こういう状態である、ことに中部地方においてずいぶん稠密な状態基地が集結しておる、村々の状態はどうだ、あるいは慰安施設というか、そういう施設においてこういう状態が存在しているのです、そういう数々のことを私から指摘いたしまして、ぜひこの状態を大統領にお伝えし、御判断を願いたいんだというふうに申し上げたんです。それに対しまして財務長官は、そのとおりお伝えします、私はここでお答えすることができない立場でありますが、あなたの心情はよくわかりましたので、ひとつお伝えを申し上げます、こういうことでありましたが、A、B、Cの表を変更するということは、これは私は不可能だ、こういうふうに存じます。しかし、基地として提供されるA表整理縮小、これにつきましては今後とも最大限の努力をいたしてみたい、かように考えておる次第でございます。
  168. 西村直己

    西村(直)国務大臣 ただいま委員長理事、御質問の方のお許しを得ましてちょっと公用で出ておりまして、その間に御質問があったと思いますが、公用地等の暫定使用に関する法律案のねらいと申しますか、これは強権発動というようなことが中心ではなくて、最悪の場合の一つの歯どめじゃないかというような御趣旨の質問があったそうであります。そこでお答えをいたします。  公用地等の使用にあたりましては、土地所有者と円滑な賃貸契約を結ぶことが、そして使用権を設定さしていただくということが基本的態度でございまして、これは法律案の第一条第二項にもはっきり明記をさしております。そして、現在のような形でまいりますと、現地の地主連合会とも私ども接触を始めておりますから、大部分の地主の方々とは円満に契約ができるものと思っておりますが、ただ一部に海外の移住者、居所不明その他の理由で契約のできないものがありますので、こういう場合の歯どめとして本法を制定するということでございます。こういう趣旨でございますことを御理解願いたいと思うのであります。
  169. 西銘順治

    ○西銘委員 次に、自衛隊の配備についてお尋ねいたします。  沖繩復帰する以上わが国の領土の一部でありますので、沖繩に自衛隊の一部を配備いたしまして防衛の任に当たることは、私はしごく当然のことと考えておるのであります。しかしながら、今次大戦におきまして戦争の悲惨を体験してまいりました沖繩県民の自衛隊に対する理解は、きわめて乏しいのであります。したがって、その県民感情を十分理解するという上に立って配備がなされなければならないと思うのであります。したがって、自衛隊の配備にあたりましては、県民理解と支持が得られるような立場で、これまでの日米間の協議、これを基礎としながらも、しかも配備の時期と申しますか、また、配備要領などにつきましては慎重な態度をもって臨むべきであると思うのでありますが、これについての防衛庁長官の見解をお伺いしたいのであります。
  170. 西村直己

    西村(直)国務大臣 お説のとおりでございます。また、本土におきましても、私は着任以来、自衛隊の原点に返れ、言いかえますれば、国民の自衛隊だ、政府の自衛隊ではございません。したがって、できるだけそこに基礎を置く、これは当然、沖繩復帰の場合でも、国土の一部に復帰される以上は防衛任務は遂行さしてもらう、ただし、その場合の配置にあたりましても、あくまでもその精神に立脚する。特に沖繩におきましては、過去のいわゆる戦争の大きな被害から受けておられるいろんな感情もあろうと思います。また、占領下、その後における施政権下におけるアメリカ軍との各種の事件等も考えまして、軍事と申しますか、そういうものに対するいろんなお考えも持っておられることも理解できるのであります。そこで私どもとしましては、事前にも、自衛隊の特に行なうべき任務あるいは性格、そういうものの御理解を十分いただいて、その上で十分準備を整えて、御理解のもとにひとつやってまいりたい、こういう考えでございます。
  171. 西銘順治

    ○西銘委員 次に、請求権の問題についてお尋ねいたします。  返還協定第四条によりまして放棄される県民の請求権につきましては、佐藤総理は、しばしば、万全の措置をとるということを明らかにされておるのでありますが、具体的にその方針を明らかにしていただきたいのであります。   〔福永(一)委員長代理退席、委員長着席〕  また、同条二項、三項にある米側の措置が不十分であった場合、政府のとるべき措置を明確にされる必要があると思うのでありますが、その辺の見解をお伺いしたいのであります。  ところで、このほど請求権の問題に関連いたしまして日弁連の出した報告書の中で、政府の請求権放棄は違憲であるということをいっておるのでございますが、政府の見解をお伺いしたいのであります。
  172. 西村直己

    西村(直)国務大臣 請求権の問題は、条約四条によって放棄の分がございます。しかし、返還協定付属文書で明らかに米国政府が処理すべきものとなるもの、こういうものは、もちろん、当然復帰後におきましてもこの処理をわれわれの政府としても促進をするようにいたしてまいりたいと思いますが、米政府が処理すべきことになる以外の沖繩県民の請求、これはたくさんございます。請求権という概念の中へ入るもの、あるいは入る入らぬは別としても、過去において起こった不当ないろんな事柄についての、たとえば通常損害という、通損といわれておるものとか、漁業上の損害であるとか、入り会いの問題であるとか、その他各種のものが、私も陳情を受けております。そこで、これらにつきましては、復帰米軍に引き続いて提供する土地の復元補償、これはもうはっきりしておりますし、講和前の人身損害補償の漏れておるもの、これは特に今回は法律の中に見舞い金を出すということを法定しております。その他の諸請求につきましては、実態をできるだけ正確に把握をしたい。これには現在琉球政府の御努力も願わなければならぬし、やがては沖繩県の県庁にも御協力を願ってその実態を明らかにし、そのために十分な調査を終えて、そして誠意をもってそれぞれの形で処理をしてまいりたい、こういうふうに考えております。  日弁連のことにつきましても、私はまだ精細にはこれを見ておりませんが、十分これを検討はしてみたい、こう考えております。
  173. 西銘順治

    ○西銘委員 次に、VOAの点についてお尋ねいたします。  返還協定の交渉経過の中におきましてVOAの存続を余儀なくされたということは、わが国にとりましてまことに残念な話でありますが、しかしながら、幸いにして一応期間が限定されておるのであります。協定第八条の「五年の期間」という規定がございますが、この「五年の期間」というのはあくまでも最終的な期限であって、延長されることはないと理解してよろしいか、そのことは間違いないものとして受け取っていいかどうか、お伺いしたいのであります。  次に、協定第八条によりまして二年後に予定されておる協議、さらに、米側の移転計画の進展などによりまして、五年を待つことなく期間が非常に短縮されまして沖繩から撤去されることもあり得るか、その見通しについてお伺いしたいのであります。
  174. 福田赳夫

    福田国務大臣 不測の事態の起こらない限り、五年をもって限度といたします。  それから第二の、二年後に協議が始まりますが、その協議の結果、五年という限度が繰り上がることがあるかというお話でありますが、繰り上がることがあり得ます。
  175. 西銘順治

    ○西銘委員 ところで、VOAの問題につきましては、現地沖繩の国頭村におきましては、存置していただきたい、こういう強い要望があるわけでございます。したがって、これを撤去するに際しましても、何らかの措置または企業誘致等、これにかわる収入源と申しますか、こういった面も考慮する必要があるのではないかと思っておりますが、現地国頭村の存置に対する要望についてお伺いしたいのであります。
  176. 山中貞則

    ○山中国務大臣 沖繩には各種の矛盾が矛盾でなく存在をしております。それはすなわち、ただいま言われたような、撤去してほしい、ただし、撤去するためには、自分たちの周辺の地域の、本来なら荒蕪地であったようなところにVOAの基地ができたために、月給がもらえたり、あるいは労賃収入があったり賃貸料が入ったりというようなことで、関係者の人たちにとってみれば実は収入源ともなっておる。したがって、そのような、一見表面的には、ほことたての現実も存在しておるのが、沖繩の今日の偽らざる実情であると私は思います。したがって、今後の沖繩の新しい振興開発計画等の策定の際には、そのようなことは十分に踏まえながら、単にそれらの撤去によって職を失う人たちのためでなくて、地域のためにも配慮するところがなければならないと考えておりますので、そのようなことは各所に存在いたしておりますので、十分念頭において努力をしたいと思います。
  177. 西銘順治

    ○西銘委員 次に、尖閣列島の問題についてお尋ねいたします。  外国の一部におきましては、尖閣列島の帰属につきまして異論を唱える向きがあるのであります。尖閣列島は、国際法上も、歴史的に見ましても、わが国固有の領土であることに疑いはないと信じております。したがって、政府は、き然としてと申しますか、この尖閣列島問題については、紛糾の原因となることのないように対処すべきと思うのでありますが、政府の見解をお伺いしたいのであります。
  178. 福田赳夫

    福田国務大臣 尖閣列島がどうなるか、いまお話しのように、一部の国において私どもと違った見解が述べられているということは承知しておりますが、今回の協定文におきましても、どういう地域が今回わが国返還されるのかという地域をきめております。その地域は、経緯度をもって示しておるわけであります。この経緯度の中に尖閣列島ははっきりと入るわけであります。  そこで、問題になりますのは、それでも疑義があるのかどうか、こういうことでございますが、平和条約ができた、そしてわが国本土と見られる沖繩諸島、これは平和条約第三条の対象になったわけであります。つまり、アメリカ政府施政権下に移されたわけであります。それから、固有の領土であると見られない台湾島及び所属の諸島、これは日本が放棄をするということになった。そういうたてまえで第三条の沖繩の地域がきまり、また、わが国が放棄する台湾諸島というものがきまった。そのままが復元をされてきておるわけであります。  そういうことで、尖閣列島が、経緯度の規定がなくても、これはもう明らかにわが国のものであるということではございますけれども、今回協定で経緯度まで示しまして、尖閣列島もわが国に所属するということがはっきりしたわけでありまして、これはいろいろ御意見を申す人がありますけれども、このことにつきましては一点の疑いも持たぬということを申し上げます。
  179. 西銘順治

    ○西銘委員 最後に、本国会は、沖繩の運命を決する重大な岐路に立たされたものと解釈しておるのであります。冒頭で述べましたように、早期返還の実現に向かって全力を投入すべき時期だと私は考えております。  米上院も、すでに八十四対六でもって協定案が可決になっておりますし、返還協定承認が行なわれるというふうに観測をし、そのときロジャーズ国務長官も上院外交委員会で述べておりまするとおり、わが国国会返還に必要な関連法規を成立させるまで、ニクソン大統領は協定批准書を寄託しないということを言明していることからいたしましても、きわめて重大な時期を迎えたと思うのであります。したがって、本国会で日の目を見なければ、沖繩県民は救われないのであります。百万県民にいつまでも犠牲をしいることなく、一日も早く祖国へ帰ることを念願いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  180. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 本会議終了後再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後一時四十九分休憩      ————◇—————    午後二時五十九分開議
  181. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。西中清君。
  182. 西中清

    ○西中委員 私は公明党を代表いたしまして、総理並びに関係大臣に質問をいたします。  今回の沖繩返還は、長い異民族支配にありました沖繩県民の長年の悲願であり、同時に全日本国民の大いなる願望でありまして、日本人としてだれ一人この返還を望まない者はないと思います。この協定の批准を前にして、政府は核抜き本土並みというこの返還の内容をうたっておりますが、われわれは、この政府のおっしゃることがほんとうであれば、これはその正しいと信ずるおのおのの政策に従って、核抜き本土並みそのものの論議をいたすわけでございます。わが党は、沖繩の長い御苦労に対しましては、条件つきでない、核のない、基地のない沖繩、少なくとも平時には軍隊のなかったこの沖繩でございますから、そういう基点に立って返還されるということが、県民が最も熱望しておる道であったろうと信じております。したがって、そういう立場からいきますと、本土並みそのものが、基地があるという現実から考えても、本土並み核抜きそのものはいいとは言い切れない。しかしながら、先ほども申しましたように、それ以前の問題として、政府は核抜き本土並みということを繰り返しおっしゃっておるけれども、それはほんとうなのか、それとも疑わしい点があるんじゃないか、こういうことでわれわれも論議をしなきゃならぬということは、まことに悲しい状態であるというふうに私は感じております。核抜き本土並みがよいか悪いかの判断をする前に、ほんとうかうそか、こういう論議をしておることは、まさしく、政府が、たとえば核の撤去につき、そして安全性につき、明快な回答ができない。いわんや、また、再持ち込みその他攻撃的機能を持つ特殊部隊、こういったものに対する歯どめとなるものが、いまや非常にぼやかされてきておるという事態等々によりまして、私たちは、どうしても、この政府のおっしゃる核抜き本土並みが明快に国民の前に示されないという点について、政治不信というものが今後国民の間にますます助長されるという憂いを持っておるわけでございますが、最初にこの点について総理の御見解を伺っておきます。
  183. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほども、西中君のいまお尋ねになりますような点について、西銘君にもお答えをいたしたのでありますけれども米軍占領地域を本土に返してもらう、こういう交渉はなかなかむずかしい交渉でございました。比較的抵抗の少ないところから私ども始めまして、小笠原諸島の返還をまず実現さした。その際に、沖繩祖国復帰も数年の後に引き続いて協議する、こういうことで始まったのでございます。ちょうどジョンソン大統領の当時から始まった問題であります。そうして、ニクソン大統領といよいよ私どもが取り組んで、本土並み核抜き——本土並みというだけでいいんですが、特に核についての日本人、沖繩方々気持ちからも、はっきりその点を申すことが必要だ、かように思いまして、本土並み核抜き、一九七二年、こういうような返還の大筋をきめました。そうして鋭意これと取り組んでまいりました。そうして、過日、いよいよ返還協定に調印する、こういう運びになりました。ただいまのお尋ねになりましたような点で疑問は残っておると思いますが、あるいは、私は最高責任者といたしましてニクソン大統領とそう約束をした、そのことが履行されない、かようには私は考えておりません。したがって、本土並み核抜き、これは実現すると確信を持って、ただいまの協定の実施を皆さん方にお願いをしておるような次第であります。
  184. 西中清

    ○西中委員 信頼をしておるということでございますが、それは後ほどまた論議をいたすとして、午前中もいろいろと委員から質問があったわけでございますが、今回の返還交渉の基本的な姿勢についての、基本的な、また法律上の問題としての論議が展開されておったようでございます。これは重ねてやることを避けますが、政府は、沖繩返還をもっぱら米国政府の恩恵的、好意的によるかのごとき宣伝を、ないしは演説をしておられた。返還されるその態様、内容いかんにかかわらず、これを歴史的事実であるというような仰せでありました。なるほど、沖繩が返ることは歴史的事実でございましょう。しかし、この協定に示されるような、米国の軍事機能を維持することを絶対条件とした施政権の返還というものは、これは歴史的事業であると同時に歴史的汚点になる、私たちはそのように考えるわけであります。言いかえますと、基地そのものがほとんど返還をされないという、こういう実態からいけば、アメリカ沖繩返還して返還せずという、こういう言い方が適切ではないかと感ぜざるを得ないのであります。  返還交渉に対してけさほど論議があったように、幾多の問題点をかかえておるという点からいけば、そしてまた、政府自身が、たとえば領土不拡大の原則とか、国連憲章の信託統治制度に関する、固有領土に適用されない等の法理をきちっと踏まえてそうして対米交渉に臨んでおる、これであれば、少なくとも——基地に私は絶対賛成いたしませんけれども、わずか一%や二%の基地しか減らないというようなことじゃなくて、少なくとも半分になったとか、三分の一になったとか、こういう内容になっておったのではないかと感ぜざるを得ないのであります。  私は、この協定は主権の平等の大原則に基づいた条約ではない、まさに屈辱的な性格を持っておるというように感じております。しかも、総理が現在までおっしゃっているように、アメリカ政府の恩恵的好意というような要素がもしも強くあったとしたならば、基地をほとんどいままでどおりに置いておく、ガリオア資金によってつくられた施設の買い取りを強要する、核の撤去費用も出せという、請求権にも十分応じない、この次はひょっとすると防衛分担金まで持つようにというような情勢であるというような、これがはたしてアメリカ政府の好意と言い切れるのかどうなのか、国民はそうは思っておりませんが、総理はどのようなお考えであるか、お聞かせ願いたい。
  185. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この点も、西銘君に先ほどお答えしたとおりであります。私どもは、沖繩百万の県民ともども一億の国民が、祖国に返してもらいたい、施政権を排除するということ、そういうことでこれは長い念願でございました。ただいまその念願がようやく達成されようとしておる。私どもの願望なしに、ただアメリカ側の恩恵的な、それだけにすがっている、そういうような情けない、自主性のないものではございません。われわれの願望が理解された。その理解されたところにはアメリカの好意もあるでしょう、そういうものでとの願望が達成された、それをいま返還協定、その形で実現しようとしておるのであります。
  186. 西中清

    ○西中委員 交渉の過程においてこの程度に落ち着いたということであれば、これは政府としても努力したんだ、こういう言い方も成り立つとは思いますけれども、しかしながら、実態がそれに沿っていないというところに問題があります。午前中の論議を見ましても、私は、ことばはそれはあっても実態がないという、こういう問題であろうと思います。  そこで、具体的に私は御質問をこれから進めてまいりたいと思うのでありますが、沖繩が今日まで非常に御苦労された。それはもう言うまでもなく、沖繩県民アメリカ合衆国の施政権下に置かれ、そして戦後日本が失った主権と独立を回復する、言うならば、その引きかえといえば非常に悪いですが、そういう結果に基づいて、今日まで本土沖繩とはすごい格差ができたわけであります。総理は、演説においても、答弁におきましても、しばしば、あたたかくお迎えをいたしたい、こう申されておりますが、それはほんとうのお気持ちでございますか、どうですか。
  187. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ほんとうの気持ちでございます。率直に申し上げます。
  188. 西中清

    ○西中委員 そうしますと、あたたかく迎えるということの内容は、一つは、今日までにこの沖繩県民が受けました数々の人権問題または補償に関する問題、こういう問題がございます。これを具体的にはっきりとした形で補償し、それに報いていくということが一つの形でありましょう。もう一つは、今後の対策でありましょう。私は、いまその過去の問題について、ほんとうに本土沖繩の格差を埋めるという点では、精神的にはいかんともしがたい。問題になるのは、何といっても第四条の請求権の問題であろうと思います。これが具体的事例においての沖繩県民をあたたかく迎える形でなければならぬ。そうなりますと、この請求に対して、第四条一項の請求権の放棄は一体どういうお考えでなされたのかということは、非常に理解に苦しまざるを得ないのであります。この条項は、対日平和条約第十九条(a)項と同じ趣旨を含んでおります。この内容は、話すまでもなく、もちろん戦争状態が存在したと認めた行動から生じた請求権の放棄でありますから、われわれとしても一応の納得はできるわけであります。しかし、本協定における第四条一項の請求権の放棄は、なぜ、占領から施政権行使の期間を通じて、すなわち施政権下における請求権まで放棄をすることが必要なのか、なぜそれに同意をされたのか、占領期間と施政権期間とは、法的地位は根本的に違うのではないか、このように私たちは認識をいたしますが、その点はどうでしょうか。
  189. 福田赳夫

    福田国務大臣 請求権と申しますと種々雑多です。たいへんな数のものがあるだろうと思う。そこで、これが捕捉はなかなか困難でありましたが、琉球政府等の御協力を符まして、ある程度のことが捕捉できた。それを整理をいたしまして、請求権問題の処理に当たったわけですが、そのうち、米軍当局の法令に基づくものにつきましてはアメリカが補償をする、それから法令には基づかないが、個別の問題につきましては、復元補償漏れ、また埋め立て地、そういうものの補償をする、こういうことにいたしたわけです。これは奄美でもそうですし、あるいは小笠原でもそうなんですが、何か一定の区切りをつけておかぬとこの債権債務の関係がはっきりしない、そういうことからそういう措置をとったわけですが、その他の請求権、これは外交保護権を放棄する、こういう措置をとる、こういうことにいたしたわけであります。しかし、まだまだ補償漏れというような問題が残りますので、それらにつきましては、調査の上適正な処置をしたい、そういう考えであります。
  190. 西中清

    ○西中委員 調査の上適切な措置とは、一体どういうことをさしておるのか、これは具体的にどういう形でなされるかということがはっきりしなければ、これは沖繩県民だって安心できないですよ。私は先ほども言っているように、四条一項の規定そのものは筋が通らない。施政権下におけるいろいろな問題もあるわけです。また、外務大臣が言われたように数々の問題がございます。一部復元補償、人身補償についてはございますけれども、漁業権、その他通損補償、または入り会い権、漁業権、つぶれ地、滅失地、その他基地公害、これは山ほどあるわけです。こういった問題をいろいろと、琉球政府からも、また沖繩県人からも、何とかしてもらいたいという強い要求がある。政府は、それに対して、いままでは、何らかの処置をするというだけで、これに対して決定的な回答を与えておらないし、また現地では、法的な措置をとってもらいたいという要望が出ておりますが、いまだにそれに対してはっきりした線を出せない。どういうわけなのか。この点について御回答願いたい。
  191. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいまの時点で調査しましてはっきりしている問題があるのです。それは、講和前人身傷害補償であります。これは今度法律を御審議願いまして、これが成立すればその補償ができる、こういうことになるのであります。しかし、その他にもたいへんいろいろな御要請があろうと思います。それらは十分調査をいたしまして、そしてそれぞれ理由のあるものにつきましては適正な措置をする。つまり、法律が必要であるというならば、法的措置も講じなければならぬものも出てくるかもしらぬ。あるいは予算的措置で足りるというようなものもあるかもしらぬ。しかし、いずれにいたしましても、調査をしてみないと、これも実態がよくわからない。調査をいたしました上、適正な処置をする、これははっきり申し上げます。
  192. 西中清

    ○西中委員 調査をしてというお話がございますが、これに対する調査費はついておりますか。
  193. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 御指摘のように、復帰後におきまして、沖繩県民からの各種の請求に対しましてその措置をするという必要がございますが、すでに、今回の返還協定並びに付属文書におきまして、米側が処理することとなっているものがはっきりしているものがございます。それ以外の各種の請求につきましては、日本政府として当然何らかの措置を講ずべきであるということで、ただいま外務大臣からも御答弁ありましたように、各種の請求権そのものが……(西中委員「聞いておるのは、ついているか、ついていないかということです」と呼ぶ(来年度の予算要求におきまして……(西中委員「いま、だ。いまはどうなっているのか」と呼ぶ)入り会い補償あるいは基地公害の補償、その他各種の漁業なりあるいは農業の損失補償、こういう点につきまして、これは実態を把握することがまず先決でございますし、そういう点に関しての調査費を来年度要求いたしまして、十分調査の上、計画的にこれを処理してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  194. 西中清

    ○西中委員 ことしはどうなんだ、ことしは。
  195. 山中貞則

    ○山中国務大臣 今年度予算にはその種の調査費はついておりません。しかしながら、来年度予算においては、ただいま説明がありました講和前人身被害補償漏れの法律並びにに予算の金額、並びに入り会い権その他、調査をしなければ琉球政府自体も把握していないもの等については、調査費をつけて調査の上、本土政府並びに復帰後の沖繩県、両者一緒になって作業をして、その実態を把握したいと思います。
  196. 西中清

    ○西中委員 来年なんと言って、この協定はいま問題になっている。県民が非常に不安になっているわけです、なぜそれを早くつけないのですか。少なくとも琉球政府から、各党にわたって、こういうような漏れた部分がたくさん来ているじゃありませんか。総理府、見ているでしょう、これは。どうですか、総務長官
  197. 山中貞則

    ○山中国務大臣 団体からも、それから琉球政府からも、二度、三度いろいろと数字の変更がありまして、したがって確認できないものという空欄もあるはずであります。したがって、これは正式に予算をつけて調査をしなければならぬということにしたわけであります。
  198. 西中清

    ○西中委員 だから、これについては特別措置なり何なりして、早く調査するのがあたりまえじゃないですか。先ほど私が言ったのは、あたたかく迎えるというなら、これを具体的にやることが大事なんだ、口先じゃだめだということだ。これについてはいろいろといわれておる。私はあえて申しませんけれども、この請求権について何だかんだと政府はなかなか応じない、こういう話も聞いておる。しかも、非常にのんびりして、来年の予算でというような姿勢で長年の御苦労におこたえするなんということは、いままで私たちはいろんな面から追及をしておるけれども、姿勢として、私は非常に現地の人にとっては不満足である、こう思わざるを得ない。総理、どうでしょうか。
  199. 山中貞則

    ○山中国務大臣 ことしの予算は私の責任をもって組んだわけでありますから、私に答弁させていただきます。  それは、今年度予算を編成いたしまする過程において、全然、琉球政府からも、そのような事態についての費用とかあるいはそのような要求というものはございませんでした。本年度予算が決定をいたしました後において、そういう被害者の連合会等から陳情等がありまして、こういう民間の団体のそういう書類を、私としては見識のない書類とは思わないけれども、やはり琉球政府の確認された公文書にしてほしいということでお願いして、ようやく正式なルートに乗ってきたような次第でありますので、双方ともに責められるべき点があるとすれば、私どもは甘んじて受けますけれども、少なくとも、予算編成の段階に、そのような議論がどちらからも持ち上がっていなかったということは事実であります。   〔発言する者あり〕
  200. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 御静粛に願います。
  201. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま山中君がお答えしたとおりでございます。とにかく、施政権下にない地域のことでございますから、前もって予算を計上する、こういうこともなかなか困難な実情にあること、これは御理解いただきたいと思います。
  202. 西中清

    ○西中委員 こういう問題は、何も返還協定時点で問題が起こっているわけじゃない。何年も前から問題になっている。琉球政府が具体的に持ち上げるまでは絶対にそのことはなかった、話に乗れない、ですから、私が言っているのは、政府の姿勢としてなぜこういう問題を取り扱わないのかということです。そのとき話に出ていなかったから予算は組めません、そういう冷たい姿勢で沖繩返還がなされては、たまったものではない。これは現地のほんとうの心情だろうと私は思います。先ほどの御答弁というものを考えると、私はほんとうに情けない思いです。  このまま押し合いしてもなんでございますから、さらにこの点に関連をいたしまして、協定第六条の埋め立て地の問題についてお伺いをしておきたい。  この三項で、アメリカは、埋め立て地を日本政府の財産として移転することになっておりますが、全部が移転の対象になっておりますか、どうですか。また、そのうち実際に開放される土地はどれほどか、また、米軍が使う基地はどれほどか、その辺についての御回答をお願いします。
  203. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 お答え申し上げます。  協定の第六条第三項に基づきまして日本国政府の財産となる埋め立て地でございますが、米国の民政府の資料によりますと、現在、那覇の軍港地区内、それから牧港の補給地区内等にございまして、数量は全部で約六十万平方メートル、坪数にいたしまして十八万坪でございます。しかし、このほかにも、当方の調査によりますと、たとえば那覇の奥武山公園地区、あるいは奥武山地区のほかに、那覇空港の滑走路の延長のところにございまして、大体それが約二十五、六万平方メートルくらいございます。こういたっ埋め立て地につきましては、協定に基づきまして復帰の際に日本国政府に当然帰属するとなっておりますので、この処理につきましては、このうち引き続きまして米軍に提供するものを除きまして、普通の国有財産といたしまして、主として公用その他適切に処理する方針でございます。
  204. 西中清

    ○西中委員 面積。
  205. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 面積は、先ほど申しましたように、全部で……
  206. 西中清

    ○西中委員 開放部分。——全部か。
  207. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 このうち提供する部分が三カ所ばかりございます。面積にいたしますと、先ほど申し上げました数量のうち約五十七万平方メートルばかりは米軍に引き続いて提供する。これはA表該当の地区内にあるわけでございます。  以上でございます。
  208. 西中清

    ○西中委員 そうすると、いまの回答では、大勢はほとんどは返らないということですね。こういう協定があるけれども、五十七万平方メートルは引き続き米軍に提供されるという基地になっているわけですね。
  209. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 これは、所有権はわが国に移転しまして国有財産になるわけでございます。それを提供するということになるわけであります。  それから返る部分が少ないじゃないかという御質問でございますが、たとえば、このうち本部の採石所はC表に該当する地区でございまして、これは返ってまいりますし、先ほど申し上げました奥武山地区あるいは那覇空港、これは返還するところにあるわけでございます。
  210. 西中清

    ○西中委員 こういうようにいかにも日本政府に財産が移管される、ひょっとすると私たちはこれは開放されて沖繩県民のために使われるのじゃないかというような気がいたすわけでありますが、内実は米軍が使用する基地が非常に多いわけなんです。これもまことにおかしな話でございます。  さらにこれに関連して、海没地の問題の解決に関する交換公文、これを交換しておりますが、これは那覇軍港内の土地を削り取ったために、その土地が海没したので、この土地所有者に対していかに補償するかの問題に対して、アメリカが埋め立てた土地十九万坪——いま十八万坪と聞きましたが——の一部をこれに充てるというものであります。しかし、ここで問題となりますのは、海没地の地主が埋め立て地の代替で満足するのかどうなのか、はたして満足すべき土地を代替地としてこの埋め立て地をもらえるのかどうなのか、返してもらえるのかどうか、もしもこの埋め立て地が不服であるというような地主に対しては、どういうような措置をするか、この辺はどういうぐあいになっておりますか、御回答願いたいのです。
  211. 井川克一

    ○井川政府委員 海没地に関しまする交換公文にございますとおりでございまして、「アメリカ合衆国政府が、日本国政府と協議したうえ、これらの諸島において埋め立てた土地で現に保有しているものを必要な限度において処分することにより那覇軍港内の土地の海没から生じた問題を解決する」ということになっているわけでございます。もちろん、このためには、地主の方々と十分に話さなければなりません。そして現在も、御存じのとおり、このような土地から、実は布令二十号の対象になっておりまして、地代を受け取っておられるわけでございます。そのような面からいたしましても、十分地主さんの御了解を得て、日本政府もそれに介入いたしまして、主としてこれはアメリカ側でございますけれども日本政府もできるだけ御援助申し上げて、地主さんの御満足のいくような解決に向かいたいと思っております。
  212. 西中清

    ○西中委員 いま条約局長から説明があったわけですが、地主とよく話し合ってという答弁をしておりますが、その点はアメリカ側と一方的に話すんじゃなくて、地主とよく話し合って、この埋め立て地についての代替地というものをきめていくのかどうか、その辺はどうでしょう、外務大臣。大臣でなければこんなもの責任持てないでしょう。
  213. 井川克一

    ○井川政府委員 仰せのとおりでございます。
  214. 西中清

    ○西中委員 どういう形をとってそれじゃ話し合いをするのか、その点はどうでしょう。
  215. 井川克一

    ○井川政府委員 現在もすでにアメリカ側との協議を始めている段階だそうでございます。
  216. 西中清

    ○西中委員 何言っているんだ。地元の地主とどう話し合いをするかと聞いているのだよ。アメリカとの話し合いじゃないですよ。
  217. 井川克一

    ○井川政府委員 失礼いたしました。  地元民の納得を得なければできないことでございます。地元民の方々が、いわゆる埋め立て地でほしいとおっしゃる方もございましょう。あるいはお金でほしいとおっしゃる方もあると思います。そのようなところを十分地元側と打ち合わせてこれを処分する、こういうことになっております。
  218. 西中清

    ○西中委員 要するに何にもきまっておらぬということですね。話し合うというだけのことばしかもらえません。まあこれはいいでしょう。  さらに関連して、この海没地として取り上げられ、補償の対象となっているのは、現在那覇軍港だけになっておりますが、これ以外に海没地はどことどこにどれだけの面積が、何人の地主であるか、御回答願いたい。
  219. 井川克一

    ○井川政府委員 私ども協定交渉をいたしておりまするときに、琉球側から正式に通知がございましたのは、海没地といたしましては、那覇の軍港の中のものだけだったわけでございます。私は、実は数日前に、沖繩政府からさらに詳しい表をいただきました。相当数、相当坪数のものを、新たに琉球政府が市町村を通じてお調べになった数字を、ほんの数日前にいただいたわけでございます。この数字は後ほど詳しく申し上げていいわけでございまするけれども、このいただきましたものを拝見いたしましても、たとえば海没原因が、太平洋戦争の向こうの砲撃、爆撃の結果沈んだとか、あるいは日本側でしたというような記述がございまして、したがいまして、どのようなものが現実にはあるかということは、これは琉球政府にもう一ぺんお願いして、さらに照査をしていただくという現在の状態でございます。
  220. 西中清

    ○西中委員 質問に答えないで質問以外のことに答えているのですね。もう一ぺんやり直しだ。
  221. 井川克一

    ○井川政府委員 数日前に受け取りました琉球政府からの調査書を申し上げます。市町村名、読谷村。海没面積、四万四千六十二坪。請求金額、二十一万八千六百四ドル。
  222. 西中清

    ○西中委員 総計だけでいい。何カ所で何平米か。
  223. 井川克一

    ○井川政府委員 たとえば読谷村にありましても、読谷村の中で八カ所あるわけでございまして、関係市町村が八カ村、そして地域といたしましては二十三地域。したがいまして、向こうの調査によりますと、海没面積は二十三万一千三百八十九・六坪、請求金額が七百四十三万七百七十八・八ドル二十六セント、筆数が三百九十一というのが、数日前に受け取りました琉球政府調査書でございます。
  224. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 外務省より資料でお出しを願います。
  225. 西中清

    ○西中委員 こうなりますと、海没地に関する交換公文というものは、那覇軍港だけしかその処置について補償はされておらない。いまたくさんの数字があげられましたが、なぜ那覇軍港だけあげて、ほかのところはほったらかしにしてあるのか、交換公文でなぜ那覇軍港だけを取り上げたのか、その点の御見解を大臣より……。大臣、答えてくださいよ、協定の問題じゃないですか。
  226. 井川克一

    ○井川政府委員 先ほど申し上げましたかと存じまするけれども、私ども協定を交渉いたしておりますとき、調印時までに、琉球側から正式にこの海没地の問題として指摘されましたのは、那覇軍港だけであったわけでございます。
  227. 西中清

    ○西中委員 それは外務大臣に聞いておかなければならぬのです。土地がなくなったのです。そうでなければ、責任ある方から聞かなければ、あとの土地は一体これはどうなるのか、この辺どうですか、大臣。協定でなぜ軍港内だけに限ったのか、この辺どうですか。
  228. 福田赳夫

    福田国務大臣 その海没地のうち、米国政府の補償対象にならない八カ所でありましたか、その分につきましては、なお調査いたしまして、何らかの対策をとる必要があるものであるかどうか、これをきめたいと思います。
  229. 西中清

    ○西中委員 私が聞いておるのは、那覇軍港とそれ以外の土地は、本質的に交換公文に載せると載せないという問題があるかどうかということを聞いているのです。どうでしょうか。
  230. 井川克一

    ○井川政府委員 先ほど申し上げましたように、調査の結果を私どもが拝見いたしましても、爆撃の結果海に落ちたとか、そういうふうなことが書いてあるものもございまして、このままではたして那覇軍港と同様の取り扱いをしていいかどうか判断ができない状態にあるわけでございます。したがいまして、詳細なる調査をこれはもう一度お願いしなければならない。詳細な調査ができましたらば、判断ができることになると思うわけでございます。
  231. 西中清

    ○西中委員 そうしますと、事実これは漏れておるわけですね、現実に。そうしますと、この交換公文を結んだ時点においては、調査が非常にあいまいだったから那覇軍港しか載っておらないという意味ですね、外務大臣
  232. 福田赳夫

    福田国務大臣 この協定締結時点におきましてそういう調査がなかった、その結果生じてきた問題だ、そういう理解であります。
  233. 西中清

    ○西中委員 少なくとも交換公文をかわすのですから、いまたくさんの事例が報告をされましたが、それが少しもわからなかったという意味ですか。
  234. 井川克一

    ○井川政府委員 私ども海没地の問題を具体的に沖繩で調べるという手足を持っていなかったわけでございます。したがいまして、琉球政府側からの公式の調査の結果に基づいて行なったわけでございます。調印時までにおきまして、公式の調査に基づいて琉球政府からはっきりと申されてきましたのは、那覇軍港における海没地のみであったわけでございます。
  235. 西中清

    ○西中委員 おかしいじゃないですか。それでは、そういう言い方をするなら、これは米軍基地全部についても調査する手だてがないから、こういうような論法が新しく生じてきますよ。その点、私はあとの質問でまたどうしても引っかからざるを得ないことなのです。  それはそれとして、交換公文は、明らかにたくさんの海没地が落ちておった。これはおかしいでしょう。だから、新たにまた交換公文をつくるか、それとも、これをやり直すか、どちらかしかないわけです。その点どうでしょう、外務大臣
  236. 福田赳夫

    福田国務大臣 調査をいたしまして、これは補償を要するものであるという認定をいたしますれば、そのとおりの国内措置をいたします。
  237. 西中清

    ○西中委員 それでは、なぜ那覇軍港だけ交換公文をやるんですか。
  238. 福田赳夫

    福田国務大臣 条約締結時におきましては那覇軍港分だけしかわかっておらなかったのです。ですから、それだけを交換公文をかわす、こういうことになりましたが、この補償漏れというか、米国政府による補償漏れにつきましては、もし、調査の結果、これを補償しなければならない、こういう際におきましては、適正なる国内措置を講ずる、こういうふうに申し上げておるわけです。
  239. 西中清

    ○西中委員 わからない、わからないとおっしゃいますけれども沖繩政府復帰対策要綱の中には、那覇軍港だけではないと書いてあるのですよ。それでは、交換公文の中にそれをなぜ明記しないのですか。その点どうでしょうか。知らないとは言わせませんよ。
  240. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは、返還協定の際は、私のほうも担当大臣として沖繩立場からいろいろと要求もしました。その際に、海没地についてほかにもあるらしい、読谷、北谷等にもあるらしいから、どういうふうな形状で海没しておりますかということも何回も公式に聞いたのですけれども、よくわからないということでありまして、それはリーフと、もと土地であったところとは、上から見れば色も違うわけだから、そこらのところは埋め立てをすればまたもとの土地が生まれるわけだし、調べてほしいということもお願いしたのですが、やはり、四、五日前に書類が来たと言っておりますが、最終的にそのような具体的な個所、面積等について全然調査報告というものをいただけなかったということであります。
  241. 西中清

    ○西中委員 わかっておるんでしょう、そうすると。先ほどは、わからないと言ったじゃないですか。どちらがほんとうですか。
  242. 山中貞則

    ○山中国務大臣 読谷とか北谷とかにあるのじゃないですかという話も聞きましたから、そう言って聞いたのですが、わからないという返事があったわけであります。
  243. 西中清

    ○西中委員 それならば、なぜ那覇軍港に限るのですか。那覇軍港等という表現だってできるわけです。
  244. 福田赳夫

    福田国務大臣 条約締結時には那覇軍港の分しかわかっておらない、そこで、それを米国政府の補償の対象とする、こういうことにしたわけでありますが、しかし、今日の時点になってみると、まだ問題がありそうだ、こういうお話であります。したがいまして、それを調査の結果、補償を要するという結論になりますれば、これは国内措置を講ずる、こういうことを申し上げておるわけであります。
  245. 西中清

    ○西中委員 これは国内措置でと言われますけれども、これはどういう根拠でそういうことをやられるのですか。これはこの請求権の第四条に関して、明らかに米政府が埋め立て地を代替としてそれで処理をすべき問題じゃないですか。
  246. 福田赳夫

    福田国務大臣 国内措置と申し上げますのは、あるいは予算措置で片づくかもしれない、あるいは法律を要するかもしれない、それは検討を要しますが、いずれにいたしましても、補償を要するものは補償をする、こういうことを申し上げておるわけです。
  247. 西中清

    ○西中委員 そうすると、この第四条の請求権に関しての問題は非常にいいかげんである。しかも交換公文もいいかげんだ。そして行政措置で何とかするというお話でございますけれども、事は、日本の国土が海没したという領土権に関する問題ですよ。そんなもので簡単に事が済まされてたまったものじゃないですよ。どうでしょうか、それは。
  248. 福田赳夫

    福田国務大臣 条約締結時にはわかってない問題ですから、これはもう処理のしようがありません。しかし、その後において新しい事実が発見されたというならば、これは国内措置をとる、これはもう適正なやり方である、こういうふうに考えます。
  249. 西中清

    ○西中委員 こういう土地を、国の行政だけで、政府の行政だけで処理するなんて、そんなばかなことはないでしょう。これは領土権の問題ですよ。たとえ小さいといえども日本の国じゃないですか。沖繩県じゃないですか。これはアメリカが当然補償すべきものでしょう。それをなぜ政府が負担しなければならぬのですか。しかも、こういうことが明らかにあとでわかってきたのだから、この交換公文はいいかげんなのだから、これに対してはやはりもう一度何らかの取りきめをするのはあたりまえではないかと言っているのです。その点どうでしょう。
  250. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは、日米間の権利関係は、ある時点を画してきめておかなければならない、そういうふうに思います。条約締結時には、海没地は那覇軍港以外にはわかっていない。そこで、いま那覇軍港に限定される、こういうことになったわけなんです。その後の新しい事態として、その他に問題があるということが出てきたわけでありますが、それは国内で処理します、こう申し上げているわけです。
  251. 西中清

    ○西中委員 一歩譲って、少なくとも那覇軍港の分については交換公文をやっているのですから、当然、ほかの部分についてもあらためて新しくやるか、どちらかにおいて処置を講ずべきじゃないかと言っているのです。一歩譲ってもですよ。
  252. 井川克一

    ○井川政府委員 まず第一に申し上げたいことは、那覇軍港の海没地は、いわゆる講和前のものでございます。すでに平和条約十九条で放棄されている分でございます。しかしながら、今回特に私どもが努力いたしまして、四条三項及びこの海没地、講和前のものを向こうに引き受けしめる、こういうことになったわけでございます。そして、そのときに那覇軍港だけしかわかっていなかったということを申し上げましたけれども、確かにそのとおりでございまして、当時から、九十八筆、一万八百六十四坪、地主九十人という方があるということがわかっておりました。しかも、その場所が、那覇軍港米軍専用桟橋の係船地として使用されていることもわかっておりました。しかもその上に、ここの地主さん方と米軍との間にはいろいろ話し合いがありまして、一九五九年九月に関係地主の陳情がある程度認められまして、土地が存在するという擬制をとって、一九五〇年七月一日にさかのぼって、布令二十号に基づく軍用地賃借料の支払いが行なわれているわけでございます。このように、非常に具体的に公式にわかっておりました。ほかのものは、山中大臣がおっしゃったように、どうもありそうだというだけで、どうもありそうだというだけではとても交渉の対象にはならないわけでございます。そして、その材料は、先ほど申し上げましたように、数日前に受け取りましたけれども、私どもが拝見いたしたところによりますると、請求権云々のもっと前の段階で、はたしてこれがいわゆる請求権になるのか、アメリカの責任なのかどうかというふうなことすら、私どもとしては判断できないような状態にあることを申し添えたいと思います。
  253. 西中清

    ○西中委員 アメリカの責任であるかないかなんということをいまごろ——基地になっているところだからわからなかったと言うのでしょう。それならだれの責任なんだ、そういう言い方されるのなら。
  254. 井川克一

    ○井川政府委員 アメリカ軍の行為に基づいてある種のことが行なわれる、そしてそれがアメリカが法律的責任を持つというのが、請求権の問題でございます。ところが、先ほど来申し上げておりますように、日米両軍の爆撃で沈んだとか、あるいはその後暴風が非常に強くてだんだんと海没したというふうな記述があるわけでございます。このような記述のもとにおきましては、私ども、どこの責任であるかというふうなことは判断できない状態にあるということを、先ほど来申し上げているとおりでございます。
  255. 西中清

    ○西中委員 まだ調べてもおらぬのにそういうことを言うべきではないと私は思います。少なくとも私が調査した範囲では、やはり米軍がいじって海没しているところがある。たとえば嘉手納村もそうだ。  そこで、私はいずれにしても、現実問題として那覇軍港だけが処理をされて、あとはないという現実、もう一歩譲りまして、やはりこれは漏れておったということは事実だ。これに対して、政府としてはもう少し何らかの措置をしなければならぬ、このようにお考えかどうか。もうこれ以上突っ込んでもしようがないですから、どうでしょう。
  256. 福田赳夫

    福田国務大臣 調査いたしまして政府として補償する必要がある、こういうふうに認定いたしますれば、これはそのとおりの措置をいたします。
  257. 西中清

    ○西中委員 法的にそういう措置が必要だと判断されたら、やはりつくられますか、そういう……。
  258. 福田赳夫

    福田国務大臣 国内措置として、予算だけでいかぬ、立法措置が必要である、こういうならば、立法措置がとられる、そういうことになります。
  259. 西中清

    ○西中委員 非常に残念なこういう内容でございますが、私もこれ以上追及いたしません。しかしながら、非常にあいまいな点も多いので、確認の意味をもちまして、第六条についてもう少しお聞きをしておきたい。  第六条に関する合意議事録がございますが、日本政府に移転される財産の目録というものがずっと列挙されております。これらは全部有償なのですか。それとも、無償で移転されるものがあるのかないのか、その辺はどうでしょうか。
  260. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 お答え申し上げます。  六条第一項と第二項に、日本国政府に移転される資産がございます。この有償、無償の問題でございますが、これに対しまして何らかの支払いをするということで第七条の金額が出ているわけでございまして、このうちどれが有償、どれが無償という問題になりますると、必ずしも御質問に正確にお答えすることにならぬかもしれませんけれども、私どもの評価におきましては、このうち、自衛隊の専用使用する部分並びに琉球政府の庁舎、これは沖繩住民に対して献呈されるという碑文がございますので、県民感情等を考慮いたしましてはずしております。  結局、以上要約いたしますと、琉球政府庁舎、それから自衛隊が専用する施設、この部分をはずして評価したわけでございます。
  261. 西中清

    ○西中委員 それについては、いろいろと新聞報道でも非常にあいまいな、疑いを持たざるを得ないような部分がございますが、要するに、三億二千万ドルの支払いについては、いろいろなものを含んでおるので、それがときには自衛隊に関係するもの、また米軍に関係するものがあるんじゃないか、こういうことでいろいろと報道がなされておるわけなんです。  この際、私は委員長にお願いをいたしたいのでありますが、三億二千万ドルの支払いの内容、特に買い付け物件の評価額というものを明確にした資料をお願いしたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  262. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 はい、了承いたしました。
  263. 西中清

    ○西中委員 そこで、この範囲内において一つだけお聞きをしておきたいのですが、新聞の報ずるところによりますと、アメリカは、那覇軍港からP3哨戒機を撤退させるための施設費として二千万ドルを要求してきているといわれておりますが、この事実関係はどうなっておりますか。
  264. 吉野文六

    ○吉野政府委員 P3撤去につきましては、復帰前までに撤去する、こういうことになっておりますが、そのために要する費用はどのくらいかかるか、これは目下アメリカ側に照会中でございます。
  265. 西中清

    ○西中委員 それは三億二千万ドルの支出の中に入るのか、入らないのか、その点はどうでしょうか。
  266. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これは入っておりません。
  267. 西中清

    ○西中委員 そうしますと、われわれの認識しない部分でたくさんの負担をしなければならない、こういうおそれが多分にございますので、三億二千万ドル以外に負担すべき費用は何と何か、この点を明快にしていただきたいと思います。
  268. 井川克一

    ○井川政府委員 三億二千万ドルが返還協定に伴う全額でございます。そして、ただいま吉野局長が申し上げましたのも、お金で何千万ドルとかいうものを払うわけではございません。地位協定の精神にのっとりまして、内地において行なわれておりまするいわゆるリロケーションのために、施設をこちら側につくってそれで移転させる、こういうあれでございます。  その他、財政負担といたしましては、地位協定とは関係なく、わが国の完全な施政権下沖繩が戻りますので、施設提供費その他のものが出てくることは当然でございまするけれども。これは地位協定と直接の関係を持っておりません。
  269. 西中清

    ○西中委員 そうしますと、返還にあたっての費用負担は全くないという見解ですか。
  270. 福田赳夫

    福田国務大臣 アメリカ政府に対する支払いは、これは三億二千万ドルであります。別に日本政府が、日本政府で使用する、こういうものが将来あるいはたとえば那覇周辺の住宅を他に移転をする、そういうような際に出てくる可能性はあります。
  271. 西中清

    ○西中委員 明快な答えがどうも返りませんけれども、次に核撤去に移りたいと思います。  七千万ドルが核撤去費用である、そしてそのほかに一部があるというお話でございますが、その一部を除い核兵器の撤去費は幾らになりますか。
  272. 福田赳夫

    福田国務大臣 核撤去費というのは、これは御説明いたしかねるのです。つまり七千万ドル、七千万ドルというのがよく核撤去費だというふうにいわれますが、それは正確じゃないのです。総額として三億二千万ドルの支払いをいたします。しかし、そのうち一億七千五百万ドルは資産承継のための費用である、こういうふうに一応理解しております。それから労務者ですね、これの退職金を内地並みにするというために七千五百万ドル、そこで二億五千万ドル、こういうことになるのです。ところが、アメリカ側におきましては、将来基地米軍が引き揚げていく、そういう際に資産も残していく。その投資はばく大である。あるいはその他特殊部隊というような問題もあります。まあいろんなそういうための財産ですね、残していくことがあるわけです。それが無償になる。そういうようなものも考慮いたしまして、実に多額の支払いの要求があったわけです。それを勘案いたしまして、それから、同時にまた、核の問題、これを何とか協定化したい、こういうふうに考えたわけです。そして核につきまして、私どもはあそこに核はあるんだというふうににらんでおるのです。あるならばあるで、その費用にも使ってもらいたいということを含めまして、これは高度の政治的判断といたしまして七千万ドルというものを上のせをした、そういう結果になっておりますので、したがって、核撤去費が幾らであるか、こういう内容は申し上げるわけにはまいらぬ、こういうことであります。
  273. 西中清

    ○西中委員 核について金額は言えない、しかしながら、特殊部隊を含めて七千万ドルということは間違いないわけですか。その点もう一回確認をしておきます。
  274. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは将来の米軍の施設が無償で置かれていくものもあるとか、あるいは核が撤去される場合もあるとか、いろんなことを考慮いたしまして、米国政府の多額の費用をそこまで押え込んだ、こういう性質のものでありまして、その意味を私は、高度の政治判断によってきめた、こういうふうに言っているわけであります。
  275. 西中清

    ○西中委員 高度の政治判断ということでございますから、要するにこれはつかみ金と言う以外にないわけなんで、その点は認められますか。
  276. 福田赳夫

    福田国務大臣 ━━━━━━━━━━━
  277. 西中清

    ○西中委員 つかみ金で国民の税金を使うというようなことを平気で、非常にこれは問題です。こういうことは、ほんとうに国民をどのように考えているかという、私たちは政治の姿勢をやはり問いたくなる。核が言えなければ、ほかのものはどれだけだと言ったら、これはどうなりますか。全部出ますか。核が言えなければ、ほかのものは言えるでしょう。そうすると、三億二千万ドルのうちどれだけが明細なのか。
  278. 福田赳夫

    福田国務大臣 ━━━━だと言うとあるいは語弊があるかもしれませんが、要するに……(「言ったじゃないか」と呼ぶ者あり)それではそれは取り消します。取り消します。(「おかしいじゃないか」と呼ぶ者あり)取り消しますが、要するに、私が申し上げておりますのは、これは高度の政治判断として日米の間で妥結された金額である、こういうことでありまして、内容につきましてはこれを説明いたしかねる性格のものである、こういうことなんです。
  279. 西中清

    ○西中委員 言われたすぐあとからすぐに取り消しをされる、そういう姿勢で、沖繩県民が見ている、この辺のところは少しよくお考えいただきたい。私は何もあなたがそういう失言をされたことについて云々したくありません。問題は県民のほうの感情です。  もう一つお伺いをいたしますが、核撤去をしてからそのお金はお払いになるのか、どうなんですか。前なんですか。
  280. 福田赳夫

    福田国務大臣 三億三千万ドルを、協定成立と同時に、たしか一億ドルだと思いましたが、一億ドルを支払う、その他を四年間に均等に支払う、こういうことにいたしております。
  281. 西中清

    ○西中委員 時間もたってまいりますので、この辺も非常にあいまいなところで終わりまして残念でございますが、さきの議院予算委員会で、HEの、いわゆる核の起爆剤、これの危険性が明らかにされました。総理からもかなり前向きの御答弁をいただいておったということを記憶いたしております。  そこで、一つは、米側からHEの安全対策、危険性を明示した文書を取り寄せ、国会に報告する。第二番目は、日米琉合同委員会でHEの危険性をテーマに取り上げ、事務レベルでの検討を国会に報告する、三、毒ガスと同様に安全対策調査団を派遣する、こういった提案をいたしておりますが、これに対して何らかのお答えがいただけるでしょうか。
  282. 西村直己

    西村(直)国務大臣 参議院の予算委員会でそういう御提案があったことは、私も十分存じております。総理は、これに対しまして、一つの御提案ではあるが、しかし、核の問題には非常な困難も伴うが、検討はしてみましょうというのであります。
  283. 西中清

    ○西中委員 具体的に一刻も早くこれはお願いをいたしたいわけであります。  そこで、私は、このHEに関連いたしまして、毒ガスの撤去がすでに終わっておるわけでございますが、この毒ガス撤去について輸送中の事故は何件あって、どういう事故であったか、簡単にお知らせ願いたい。
  284. 山中貞則

    ○山中国務大臣 毒ガス自体の事故は皆無であります。しかしながら、ハッチで、高さ数メートルの船倉内に落としたという事実はございまして、そのときには米兵は毒ガス防毒マスクを着用したということも確認されておりますが、ガス漏ればなかった。その他一、二、車両の、車の事故そのものでございましたが、それは毒ガスそのものには影響ありませんでした。
  285. 西中清

    ○西中委員 私も聞いております。そのほかに、たとえば毒ガス倉庫とか、その近辺とか、いわゆる基地内における事故は報告されておりますでしょうか。
  286. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私の手元には報告はありませんが、ただ、ウサギが、炎暑のもとと、それから長期間の輸送その他で死んだということは聞いておりますけれども、それはガスではないというふうに受け取っております。
  287. 西中清

    ○西中委員 ウキギが死んだのは大事故かどうか知りませんが、私は——輸送が第三船でしたか、十二日目です。本年七月の二十八日ですか、このときに、相当な事故が、基地内、すなわち知花弾薬庫毒ガス倉庫付近であったと聞いておるんですが、その点はお聞きになっておりませんでしょうか。
  288. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私は連日、輸送数量、回数、そして事故の有無はもちろんのこと、報告を徴しましたが、そのような報告はございませんでした。
  289. 西中清

    ○西中委員 これは琉球政府にも報告がなかったので、やむを得ないかと思います。政府の責任とは言いません。しかし、核兵器に対する、その撤去についての安全性という問題は、これは非常な関心事でございます。そういう意味合いで、私がキャッチいたしました事故を簡単に申し上げますと、この毒ガス撤去の倉庫のごく近いところであります。そこで約一千坪の火事がこの二十八日に起こっております。そのときの消防隊の出動は、午前十一時五十分から午後四時にわたっております。すなわち四時間であります。陸軍の指揮車が三台、ポンプ車一台、タンク車二台、海兵隊の消防隊が、指揮車一台、ポンプ車一台、タンク車一台、空軍が、指揮車二台、ポンプ車一台、そして野積みされております弾薬を載せますところの板木というものがありますが、これに類焼いたしております。そのために、空軍も消防隊の入るのを防いでおります。見合わしております。その横二百メートル前後でございますが、毒ガスの輸送が行なわれております。これはまず琉球政府に何の報告もないという、基地内のことだから、それはしようがないといえばしようがない。  今度はもう一つお伺いいたしますが、琉球政府アメリカとの間に、米軍との間に取りかわしました毒ガス撤去に関する、こういうふうに安全対策をいたしますとか、いろいろと約束がございました。それは長官も御存じのとおりだと思います。その中に、毒ガス輸送中には航空機は通さない、着陸させない、すなわち、毒ガスを輸送する天願桟橋と倉庫の間というものは、ちょうど嘉手納空港の着陸上空に当たっております。このときにそういう取りかわしをして、着陸をさせないとなっておりますが、こういう点は守られたかどうなのか、その点どうでしょうか。
  290. 山中貞則

    ○山中国務大臣 その取りきめは守られたと思いますが、三回ほど、戦闘機が、これは嘉手納空港への進入であったかどうかわかりませんが、その輸送隊の上空を通った その事実を直ちに琉球政府は覚書に反するものだと抗議して、米側もこれは自分たちの不注意であったということで、覚書どおりその後は実行されたように聞いております。
  291. 西中清

    ○西中委員 守られておらないという事実は、これは間違いないです、おっしゃったとおりだから。しかも、琉球政府から抗議はいたしておりますよ。それでもずっとこれは続いておるのです。一番多い日は二十九機です、輸送中に。私は、こういう事故があったということについて、日本本土政府はわからぬ、琉球政府にも報告されない——飛行機の件は琉球政府でもわかっております。これが輸送の計画を明らかにしたところの、毒ガスの撤去に関する米軍の姿勢です。こういう危険な状態が続いておって、何にもわからないで、核兵器を返還時点になければいいんでしょう、これで済むと思いますか。総理、どうでしょうか。
  292. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 なかなか取りきめたとおりやられない、不信行為、県民米軍に対する不信、これはなかなか消えないものだろうと思います。私どもも、この毒ガス撤去の経験から、核撤去については十分米軍が住民の安全を第一に考えて、そうしてその撤去の遺漏なきを期してもらいたい、これを強く、ただいまのような御意見からも、さらに注意を促す考えでございます。
  293. 西中清

    ○西中委員 促すぐらいでは、現地にいる沖繩県民は安心できないです。計画まで明らかにして、琉球政府の職員も大挙毎日毎日手伝いに出て、なおかつこういう事態がはっきりとしておらない。私も実際問題、この毒ガス撤去のときに天願桟橋の上のほうで見ておった。真上を飛行機がどんどんおりてくる。何も守らない。まるで沖繩ベトナムか何かの戦場のように、神経が麻痺しておるんじゃないか、そう思うしかない。先ほどHEについて申しましたけれども、そのHEは、一つは衝撃に非常に弱い。山中長官が先ほどおっしゃったときに、数メートル落ちたと言いますけれども、正確に言って、これは十五メートル落下した。これがHEだったらどうなるか。私がいま示しましたこの火災、これがHEだったらどうなるか、火災に弱いから。こういう事実を考えていきますと、沖繩県民皆さん方の、この核に対する安全を願う気持ちというものはたいへんなものです。そして、残念なことには、琉球政府にも知らされない、新聞発表もしなければ、基地内にいる沖繩県民の人にも口どめをするというのが米軍の実態です。口どめをしているのですよ。言ったら左遷されるんだ、こういう過酷な状況の中で核はどう撤去されるのかという、まことに重大な関心を持っていま見詰めておるのです。本土政府総理が申し入れるぐらいのことで、これはほんとうにたよりにしたいけれども、どうもたよりにならぬじゃないか、こう思わざるを得ないです。もう一度誠意のある御回答をお願いします。
  294. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは事故が起きたらもちろんたいへんでございます。私はまた、こういう事柄があってはならないから、一日も早く祖国復帰を実現すべきだ、かように思います。そういう意味からも、ただいまの、監視を厳重にして、あやまちなき万全の措置をとっていただく、そういう意味で十分私どもも注意する、そのことを申し上げておきます。
  295. 西中清

    ○西中委員 その具体的な方法が知りたい。県民が知りたがっているのは、具体的な方法を知りたがっている。安全撤去について、そうして核の点検について、この具体的なものが出てこなければならない。具体的にはどうされるんですか。この点をもう一度御回答願います。
  296. 福田赳夫

    福田国務大臣 核は、御承知のように、アメリカの戦略、戦術、そのかなめと申しますか、そういうふうに考えておる兵器でございます。したがいまして、これがどういう状態であるかということにつきましては、これを公にしない、こういうかたい方針をとっておりますので、そこで私どもといたしましては、何とかして安全ということに最大の注意を払ってもらいたいという要請をいたしておるわけなんであります。米国政府におきましても、その要請には十分おこたえいたしますと、こう言っておる。いろいろ話してみましたが、それ以上の処置はどうもないようでございます。
  297. 西中清

    ○西中委員 そうすれば、具体的には何の方法もとれない、あかせない、こういうことですか。
  298. 福田赳夫

    福田国務大臣 アメリカ政府の善意、誠意に期待するほかはないと、かように考えております。
  299. 西中清

    ○西中委員 それでは沖繩県民に対してはこの点では何ら答えられない、こういうことであろうと思います。しかしながら、本日の新聞を拝見したわけでございますが、メースB基地について、防衛施設庁は幹部を派遣されて現地を視察された。これは核及びそれに付随したランチャーの存在ということがこの基地の態様であったわけでありますが、このように現実に、野党がやいやい言うじゃないか、行ってみようじゃないか——入れたんでしょう、防衛庁長官、この点はどうなっているのですか。
  300. 西村直己

    西村(直)国務大臣 先般来メースBの撤去で問題がありましたので、私どもはさらにメースBにつきましては一応調べてみました。もちろん、これは駐留軍のほうの同意を得てでございます。  詳細申し上げますと、すでにメースBが公開されて——これは御存じのとおり、メースBというのは、もう今日過去の兵器でありまして、将来これを使うという意思はないわけであります。そこで公開されたのが、恩納にありますメースBであります。これは明らかにもうランチャーも何もない。続いて、問題は、ほかのものもどうなっておるかということでありますので、私どもは、ボローの基地あるいは勝連の基地、ギンバルの基地、三カ所それぞれ全部見せてもらいました。もちろん、これはユニホームをもって会ったわけであります。そして一切の発電機、電源あるいはランチャー、もちろんミサイルもない、これを確認いたしたわけであります。
  301. 西中清

    ○西中委員 核につきましては非常な関心がございます。私、先ほど示せばよかったのですが、火事の現場と毒ガスの倉庫と走路については、この地図で明解にしております。  総理、赤いところを見てください。非常に近いでしょう。こういう状態です。  それで、これより方法がないとおっしゃるならば、私はもう一歩話を進めまして、安全性ということはともかくとして、核があるかないかという問題もまだ残っているわけでございますが、これがもしも最後まで、返還時まで明快にされない場合は、何といっても、国民が安心するのは、いわゆる非核三原則を国会で決議をすることが、大きな安心のよりどころの一つであろうと思います。  ここでお伺いをしたいのですが、政府がおっしゃるところの核兵器の撤去については、協定七条で日米共同声明第八項の一部を援用して、これが核撤去の根拠であるかのようにおっしゃっております。そこで、共同声明第八項は「総理大臣は、核兵器に対する日本国民の特殊な感情及びこれを背景とする日本政府の政策について詳細に説明した。」こうおっしゃっております。このことは、アメリカ側に対して、原爆を受けたわが日本の国の被害の状況、さらには政府としての非核三原則等のお話ではなかったかと思いますが、それ以外に何かお話しになっておりますか。ポイントだけでございます、いま申し上げたのは。
  302. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりであります。
  303. 西中清

    ○西中委員 そうしますと、この非核三原則は日本政府の政策とうたってありますが、佐藤内閣の政策でありますか、それとも、佐藤総理はいつまで総理をされるのか知りませんが、ポスト佐藤も引き継がれる政策と解釈をしてよいのでしょうか。その点はどうでしょうか。
  304. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 自由民主党の政策でございます。
  305. 西中清

    ○西中委員 そうしますと、これは自由民主党政府にある限りは続く政策だ。そうしますと、続くという保証はどこにあるといえるのでしょうか。
  306. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは国民の支持でございます。
  307. 西中清

    ○西中委員 政策ですよ。政策である限りは、変更はある、変わらないという保証なんかないでしょう。いつの日にか非核三原則の政策が、これは事情が変わったからといってなくなった場合には、日本の国に核を置かないという保証はなくなるわけですから、われわれ心配なのです。保証があるかないかということを私は聞いておるのです。どうでしょうか、その点は。
  308. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 自由民主党は党議できめておりますし、また、それは国民の支持を得ている、そういう状態でございますから、私は、ただいまのように、変わる心配がある何らの懸念を持っておりません。変わらないものだ、かように信じております。
  309. 西中清

    ○西中委員 絶対に変わらないとすれば、われわれ野党もこれには賛同いたしますので、これは日本の将来のためにも、人類の永遠の平和のためにも、国会で決議したっていいでしょう。これは明らかな保証じゃないですか。
  310. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 各党にはそれぞれの立場がございまして、いろいろ違っております。部分的にこれだけを抜いてと、こういうわけにはいかない。やっぱり防衛計画の全貌というものがありまして、その中の一部でございます。私は、残念ながら、各党はそれは同様だとは思っておりません。最も違うのは安全保障条約、これに反対しておられる、そういう立場では、私どもはこれだけを抜いて国家の安全を確保する、こういうことにはならない、御了承いただきます。
  311. 西中清

    ○西中委員 やはり非核三原則の国会決議を拒否されるということは、政策変換の可能性はあるということにはこれは間違いない、そう思わざるを得ません。国民はやはりそういうような受け取り方をせざるを得ないです。事は核の問題です。これに何のちゅうちょがあるのでしょうか。もう一度だけこれを答えてください。
  312. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 核の問題である、こう言われますが、基本的には日本の安全確保の問題です。そういう観点に立ってただいまの核政策も打ち立てられた、日米安全保障条約も打ち立てられておる、それで初めて日本の安全は確保されるのです。そういうようなものの見方をぜひ公明党もわかっていただきたい。ぜひ御賛成願います。
  313. 西中清

    ○西中委員 そういうあいまいな答弁は、われわれは将来この核の保有について保障になったとは思いません。それはいまのところ政府としては受け入れる姿勢がない。ですから、今後の問題についてまた政策転換、変わってしまえば、おのずから共同声明日本の政策に背馳しないということにうまく合致してきて、核を置くのが正当化されるという可能性はあることは、理論上おわかりでございますね。外務大臣、どうでしょうか。
  314. 福田赳夫

    福田国務大臣 よくおっしゃることがわかりかねます。
  315. 西中清

    ○西中委員 そんなばかなことがありますか。非核三原則というこの立場佐藤内閣にあるから歯どめになるというお答えなんですよ。変われば歯どめがなくなるということじゃないですか。その点どうなのかという、理論的には。
  316. 福田赳夫

    福田国務大臣 佐藤内閣がかわりましても、非核三原則は自由民主党の政策でありますから、自由民主党が続く限り変更はございませんです。
  317. 西中清

    ○西中委員 質問にお答えいただけないですね。時間も非常になくなりましたので、これ以上追いかけません。  しかしながら、ここで私は基地の問題について少しお伺いしておきたいのであります。  A表におきまして、いわゆる二4(b)の適用によりますところの基地がございます。この点についてどういう法的根拠をもってやられたか、詳しく御説明をいただきたい。
  318. 吉野文六

    ○吉野政府委員 お答えいたします。  これらの基地のうち、二4(b)、地位協定の第二条第四項(b)の規定により先方に提供するものにりきましては、これらは、いわゆる北部演習、訓練場に対する入り口というのか通路というのか、演習場への通り道ということでございますから、常時わがほうが提供する必要はない、そういう意味で二4(b)にしているわけであります。
  319. 西中清

    ○西中委員 これは三カ所ですでに再契約を拒否いたしております場所があるわけです。名護市の久志、川田、安波というところがございます。こういう三つの訓練場が契約を拒否したわけでございます。そして復帰の時点におきましても、これは基地としての使用はないわけなんでございますが、これを新しくA表に入れたということは、基地の拡大という問題につながるわけでございますが、その辺、防衛庁長官はどのようにお考えですか。
  320. 西村直己

    西村(直)国務大臣 これはどちらかというと交渉の経過でありますから、外務省から御答弁いただくのがいいかもしれませんが、私が防衛庁として考えるところでは、従来一時使用で、年に一ぺんあるいは二へんとかいう一時使用でございます。したがって、一時使用であっても、それは訓練場、演習場として使う、そういう意味で、過去において契約によってそれをやっておりましたから、A表として取り扱ったんだ、こういうふうに思っております。
  321. 西中清

    ○西中委員 過去にやったからというだけでですか。そういう事実だけでA表に入られたという意味ですか。
  322. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これらの基地は、協定調印日までは、地主というか、関係市町村と米軍の間に契約がありまして、基地として使っておったわけでございます。
  323. 西中清

    ○西中委員 契約はない。もう切れているんですよ、返還時においては。
  324. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これは協定調印日には契約がございました。
  325. 西中清

    ○西中委員 そういうことは、われわれの調査では少なくともこの基地は早くから再契約はしないと明確になっておるのをわかった上でやったという意味ですか。A表に入れたのですか。
  326. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これらの基地は、先ほど申し上げましたように、契約が依然として六月三十日までありまして、またその後におきましても米側としてはあくまでも関係市町村長と交渉して、これらの基地を引き続き使えるようにする、こういうことを先方も申していたわけでございます。
  327. 西中清

    ○西中委員 どうもはっきりしませんが、だれの意向でそういうことを言ってきたのですか。もう一度言ってください。
  328. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これは米側があくまでも関係市町村と普通の従来の契約によりましてこれらと契約する、こういうことでございます。
  329. 西中清

    ○西中委員 米軍が現地の市町村長と契約の話をした、そういう説明で、だから納得しているからということにはならぬわけですね。もう一度答弁してください。
  330. 吉野文六

    ○吉野政府委員 まだ契約ができていないものにつきましては、今後さらに米側が先方と契約締結に努力する、こういうことになるだろうと思います。
  331. 西中清

    ○西中委員 そうすると、現地は反対しておる。米側の意向でこれは一方的にきめられたという意味ですか。
  332. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これらの基地は、現にわれわれが協定締結したときは米側と契約があったわけでございまして、彼らが引き続き使用していたわけでございます。
  333. 西中清

    ○西中委員 使用はしていないですよ。契約してないです。契約もしないということを言っているじゃないですか。わかった上でやっているんですよ。もう一度正確に……。
  334. 吉野文六

    ○吉野政府委員 彼らの契約はおそらく六月三十日まであったはずでございます。
  335. 西中清

    ○西中委員 そんなことを聞いているのじゃない。もうこんりんざいごめんだと言っいてるのです、現地の人は。それを、米軍が話し合いをしてわかった上でやったというようなお話だから、はたしてそうなのかどうなのか、それはアメリカの一方的なやり方じゃないか、これを言っておるのです。それを認めたのですか、あなた。
  336. 吉野文六

    ○吉野政府委員 いまお話ししておりますのは、なぜこれらの基地A表に載っておるか、こういうことでございます。これにつきましては、A表に載っている理由は、当時協定締結のときにはまだ米側は現地の市町村長との間に契約がございまして、それによって彼らは使用する権能があったわけでございます。
  337. 西中清

    ○西中委員 それではもう一度お伺いをいたしますが、A、B、C表すべてにわたってでございますが、現地の意向及び地主の意向はともかくとして、琉球政府の意向、そういうものは考慮されない、または意見を聞かれない、その上でアメリカとだけ話し合いをされてA、B、Cはきめられたということになりますね。どうですか。
  338. 吉野文六

    ○吉野政府委員 われわれは、このA、B、C表をきめるにあたりましては、単に米側の主張のみを聞いたわけでなく、現地の意向も聴取いたしましてきめた次第でございます。
  339. 西中清

    ○西中委員 それではお伺いします。  名護市の久志では、この瀬嵩訓練場は現地の意向も聞いて了解したという意味ですか。——私はきのうもきょうも現地のことを聞いているのだよ。
  340. 吉野文六

    ○吉野政府委員 久志の演習場につきましてはすでに契約ができました。
  341. 西中清

    ○西中委員 おかしいじゃないですか。切れたというのですよ。現地の様子を聞かれたとおっしゃるが、もう一ぺん言ってください。そのほうを聞いておるんだよ。現地の意向も聞いてきめたとおっしゃったから聞いているのです。あなたはA、B、Cについて琉球政府と相談されたのですか。その辺を聞いているのです。
  342. 吉野文六

    ○吉野政府委員 久志の訓練場につきましては、七月一日から契約が更新されております。
  343. 西中清

    ○西中委員 質問に答えてください。
  344. 吉野文六

    ○吉野政府委員 いま契約があるかないかと、こういうことでございますので……(「そんなこと聞いてないよ」と呼ぶ者あり)いずれにせよ、現地の意向を聞きまして、われわれはこの表をきめたわけでございます。
  345. 西中清

    ○西中委員 正確に回答するまでは私は質問をとめますよ。もう一ぺんやってくださいよ。冗談じゃないですよ。意向を聞いたか聞いてないか、琉球政府の意向を聞いたかどうかを私は聞いているのです。
  346. 吉野文六

    ○吉野政府委員 久志の訓練場につきましては、すでに契約が現存しているわけでございます。したがって……(西中委員「そうじゃないよ、相談したかしないかを聞いているのだよ」と呼ぶ)これは米側及び現地の意向を両方とも聴取しております。
  347. 西中清

    ○西中委員 意向を聞いておりますか、ほんとうに。だれが聞いたんですか、言ってください。
  348. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これは琉球政府を通じまして、現地に反対があるかと、こういうことを聞いております。
  349. 西中清

    ○西中委員 それはこの返還協定A、B、Cをきめる時点においての話ですか、それともあとの話ですか、はっきりしてください。
  350. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これは協定締結時におきまして聴取したわけでございます。
  351. 西中清

    ○西中委員 締結時じゃないのです。それは前に意向を十分聞いた上で締結に参加したという意味か、どうなんですか。そこのところはもうちょっとはっきりしてください。わからぬじゃないですか、そんなことでは。ごまかさないでくださいよ。
  352. 吉野文六

    ○吉野政府委員 御存じのとおり、米側と基地の交渉をしておるときには、これはなかなか現地の意向を直接聞くことは困難な事情がございました。(「答弁が違うぞ」と呼ぶ者あり)これは単に個々の地主について当たってみることが不可能であるというだけではなくて、やはりこういう交渉の内容が漏れますといろいろの悪影響を及ぼす、そういうようなわけでございますから、すべて琉球政府を通じましてわれわれは先方の意向を聴取した次第でございます。
  353. 西中清

    ○西中委員 琉球政府から事情を聞いておりますか、ほんとうに。その点も怪しいのですよ。A、B、Cについては、琉球政府は、正式、公式の場所で意見を聞かれたということはないと言っておりますよ。
  354. 吉野文六

    ○吉野政府委員 御存じのとおり、地元から返還要望が出ておったり、あるいは基地提供反対と、こういういろいろの陳情が出ております。しかしながら、先ほど申しましたように、久志の訓練場についてはそのような意向が出ておりません。
  355. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 西中君、簡単にお願いします。
  356. 西中清

    ○西中委員 割り当てられました時間が来ておりますので、私もこれ以上続けられませんけれども、この問題はまだ留保しておきます。ただ、私が先ほどからしつこく言っておるのは、現地の事情も聞かないで、そして琉球政府にも公式的にこの基地の実態について相談をしないで一方的にきめられた、そういう思いがするわけなんです。しかも、いまあげております瀬嵩訓練場というところは、非常に立地条件に問題がございます。これは人道上の問題として私は取り上げたいと思っておるのです。その前で引っかかったわけです。したがいまして、質問はこれで留保いたしておいて、あらためた機会でやらしていただきたいと思っております。  私は、やはり何といっても、この返還協定について、先ほどから申しておるように、たいてい一つ一つの問題について明快なお答えがなかった。したがって、依然として沖繩返還協定に対しては疑点は残っておるのであります。これは単に条文がどうであるとか、または答弁ができるとかできないの問題ではなくて、県民の安全、そして将来の問題でございますから、私は非常に残念な思いで終わらざるを得ません。  なお最後に、昨日はたいへんデモが現地において行なわれております。警察官が一名死亡いたしておりますが、これについての御見解を伺って、同時にまた、沖繩返還協定に対する総理の総括的な御感想をいただいて、私の質問を終わります。
  357. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 沖繩におきまして、いま返還協定審議されておる最中、あの種の事故が起きた、このことは、私、まことに残念に思っております。屋良琉球主席御自身から感想を述べておられることが新聞にも伝わっております。一部の過激な分子、これによりましてかような事故を誘発した、まことにこのことは残念に思います。  私どもは、この国会を通じて、返還協定、これが現状においては最善のものであるということをぜひとも県民にも納得してもらいたいし、また、日本国民全体にも納得をしてもらいたい、そうして一日も早く祖国復帰を実現することがわれわれのつとめではないか、かように思う次第でございまして、昨日のような反対デモ、そして警察官が虐殺、まあなぶり殺しになって、さらに火をつけて火炎びんをかけられる、こういうような事故を見ましても、どうしても祖国復帰を早く実現しなければならない、かように私は思うだけでございます。ありがとうございました。
  358. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 曽祢益君。
  359. 曾禰益

    ○曽祢委員 けさ早く、アメリカの上院におきまして沖繩返還協定が通過いたしました。これで百万の県民、一億の同胞の悲願であった沖繩復帰実現に関するアメリカ側の障害がなくなったようであります。  三年以前から、いまはなき西村君の提唱によりまして、当時まだベトナム戦争が続いているのに早期返還は困難ではないか、あるいは、早期返還ということになれば、やはり基地の自由使用とか核兵器が残るというようなこともあるのじゃないかという懸念もあったし、また、他方においては、基地なき沖繩返還でなければ絶対にいけない、安保破棄、こういうような全面即時無条件返還という声もありましたさなかに、ベトナム戦争継続中といえども、早期核抜き本土並み、これで沖繩返還をやらなければいかぬということを言いました。私は、率直に言って、これがわが国民のコンセンサスをつくることに大きな役割りをしたのではないかと思います。  さらにその後、去年の五月、六月のころには、私も一緒に参りましたが、民社党の国会議員団がアメリカの議会、政府筋をたずねました。民間外交として、早期核抜き本土並みの原則でひとつやっていこうじゃないかということを申しました。幸いに、早期核抜き本土並みに関する民間外交としての一つの軌道をつくることに成功したと思います。  私は、そういう意味で、今度の沖繩協定については、事、戦後処理の問題でもあるし、非常に内容的に多くの不安、不満がございます。しかし、絶対にこれを全部やりかえる、あるいは協定粉砕、こういう立場でなく、何百万の国民、また多くの何十万の県民諸君は、やはりこの内容が最後の最後までもっとベターなものになる、そうして早期返還にしてほしい、こういういささか割り切れない気持ち協定審議を見ておられることと思うのです。私は、そういう意味で、きょうは、  いろいろの内容についての不満点もございますが、ごく重要な点だけに限りまして、そういったような世論をバックにいたしまして、民社党を代表いたしまして御質問いたしたいと思います。主として総理から簡潔に御答弁を願いたいと思います。  項目だけ先にあげますと、第一には、返避協定そのものが前文でうたっている一九六九年の十一月の佐藤ニクソン共同声明、これがやはり協定の基礎になっておる。特に第四項の問題と、これが今後返還後の基地自由使用に通ずるおそれがあるのではないか、これが第一の問題。  第二の問題は、返還時点において核兵器がなぐなる、その後は核兵器の持ち込みは許さない、この問題についての詰めがまだまだ足りないと思います。  第三は、情勢の変化に応じて基地の大幅縮減が返還前といえどもなされるべき情勢に至っておると思うので、A、B、Cの内容についてこの点に対する不満がございます。  第四点が、問題になっておるVOA、これの早期撤去をもっと真剣にやるべきだということであります。  さて、まず第一点に触れますが、これはもう御承知のように、共同声明の第四項で「韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要である」「台湾地域における平和と安全の維持も日本の安全にとってきわめて重要な要素である」こういうことになっております。  私は、当時から、この問題について、特に「台湾地域」云々については、どうも日本として行き過ぎな問題ではないかということを憂えていたものでありますが、特にこの意味が、総理大臣のナショナル・プレスクラブにおける演説によって、単に抽象的に「韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要である」というのではなく、はっきり、韓国に対して武力攻撃が発生した場合には、日本からの戦闘出撃の事前協議にあたって、前向き、かつすみやかに態度を決する。前向きというのは、ポジティブリーと書いてあるのですから、これはネガティブの否定的でなくて、肯定的、積極的という意味で、前向きということばでこれをごまかしてはいけないと思うのです。要するに、韓国に対する武力攻撃があった場合には、事前協議制はあっても、事実上自動承認的なことを言っている。特にこの「台湾地域」となっておりますが、台湾地域の平和と安全、これは日本としてはあそこら辺で戦争が起こってはたまらないということについては非常な関心を持っておるところですが、ナショナル・プレスクラブではそうではないのです。中華民国に対する武力攻撃に際しての米国の防衛義務の履行のような事態においては、日本を含む極東の平和と安全に対する脅威と認識して対処していく。これもなるほど歯切れは韓国の場合よりか少し悪いようであるけれども、しかし、台湾海峡の問題じゃなく、中華民国に対する武力攻撃の場合に、アメリカ軍が応援の義務を発したときには、これも実際上オーケーと言わんばかりのはなはだ不幸なる言い過ぎをやっておられるのではないかと私は思うのであります。  かような状態のもとにいまわれわれがこの協定そのものを審議しているわけであります。自来、何回となく、国会を通じ、特に本院のいろいろな委員会、本会議でもこの問題についての応酬がありました。政府の御説明は、そのつど、一方においては、ナショナル・プレスクラブのように、事実上自動承認ととられるようなことを言っておきながら、公式の御説明、御答弁は、常に、イエスもあり、ノーもある。これは私は、そういう点ははっきりしなければいけないのじゃないか、まず総理からこの点について明確なお答えを願いたいと思います。
  360. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 民社党と私どもと主張を同一にされておる点もありますし、ことに私どもが、核抜き本土並み、そういう意味で早期沖繩祖国復帰を実現する、こういう提案を米国に持ち込んだ、その裏面におきましては、なくなられた西村委員長などの御意見も私は取り入れたつもりでございます。  私は、なかなか容易な事柄ではないけれども戦争で失ったその領土も、これは両国の関係等から見て、日本国民の願望、沖繩同胞の願いから見ると、アメリカもむげには断わらないだろう、しかし、その場合に日本が信頼をつなぐことが必要だ、かように思って実は交渉に臨んだのであります。その場合に何が一体問題なのか。それは申すまでもなく日米安全保障条約、そのもとにわが国の安全を確保しておる。この意味において、私は日米安全保障条約については忠実にこれを守り、そのもとにおいて日本の安全を確保している。率直にその事実を認めたものであります。  しかして、ただいま問題になりました私とニクソン大統領との共同声明、プレスクラブにおける私の説明、その用語が適当でないのじゃないか、かような御指摘でございます。事前協議、このことはもちろん、ノーもありイエスもある、その原則には変わりはございません。それならそのとおりを言えばいい。前向きでこの問題を処理する、かように言ったことは、これはどうも自動承認のような考え方で言っているのじゃないのか、かような点を御指摘になりました。いかにも前向きということはば不適当のように思います。ただ、私があえて弁解するならば、実は事前協議だと、これが早目に結論を出さなければならないことだ、かように思っておりますので、そういう意味からも、あまり時期を置かないでこの事前協議についての返事はしたい、意向をはっきりさせたい、こういうことを実は申したのであります。これがただいまのような表現、これは多分に誤解を受けることでございますから、私はこの機会に明確にしておくがいいと思っております。  私どもは、いま日本の国の安全、同時にまた、そのもとにおいてアジアの繁栄を願っておる、そういう立場から申しまするならば、いわゆる戦争が起こらないようにということを心から願っておるものであります。出撃、これについての事前協議というものも、そのときの情勢によって、われわれが戦争に巻き込まれる、その危険は多分にあるのだ、これが国益に合致するかいなかということを判断すべき重要な点だと実は考えております。われわれは、自由出撃あるいは日本基地として出撃する、こういう場合に、戦争に巻き込まれる、そういう危険がないように心から願っておるものでございますから、そういう判断に立って、われわれは、自由出撃、そういうことが自動的にきまるのではなくて、自主的に日本立場から事前協議に対応して、イエスあるいはノー、これがはっきり言えるようにしたい、かような意味でございます。あるいはプレスクラブにおける私の会見が誤解を招いているとすればたいへん残念に思いますので、国会におきましてその点を明らかにしておきたいと思います。
  361. 曾禰益

    ○曽祢委員 たいへん重要な御発言であったと思うのですが、私はそれはたいへんけっこうだと思う。進歩だと思います。少なくとも去年の一月のアメリカの上院の外交委員会の安全保障小委員会で、これも当時からずいぶん議論されたことでございまするけれども、ジョンソン国務次官が、要するに日本がいままで国際的な平和と安全に関しては全く関心を持たなかった、しかし、沖繩が返って、沖繩が安全保障条約のもとに置かれるということと、言うならば引きかえに、韓国の問題あるいは台湾の問題については、それこそ前向き、積極的に、イエスもありノーもある、こういうことを言ったわけですね。ところが、それがだんだんサイミントン小委員長の鋭い説法で、自分は国防長官をやったことがあるけれども、一体国防省に対して、韓国あるいは台湾でこういう非常事態、不測事態が起こったときに、沖繩を含めた日本基地から出撃できるのか、それに対してわからないという返事をするのかと言ったら、ジョンソン国務次官は、問い詰められた結果、こういうことを言ったのです。ジョンソン国務次官は、全体として言わんとしているのは、日本がイエスというほうに傾いているということだ。要するにイエスとほとんど同じだということ、実質的に同じだ、こういうことを返事している。それに対しては、これはとにかく議会を納得させるための議論だという議論もあるかもしれません。これははっきりそうなんですね。たとえばこういうことをひとつ伺いましょう。朝鮮の場合でも、韓国に対する武力功撃ですね。EC121型偵察機の場合あるいはプエブロ号事件のような、言うならば国境紛争の場合には、これは武力紛争だから、日本は直ちに、それこそ前向きに、日本基地、返ってくる沖繩を含めた日本基地からの自由発進を認めるのかということは、これはとうてい国論が許さないと思うのですね。ただ、朝鮮の場合は国連軍が現に存在しているということから、大規模の武力衝突が起こるような場合には、これはなかなか状況はノーばかりでない場合がある。これは私は理論的にある。こういったような前向き、積極的なんということは、朝鮮の場合でも非常に危険であるし、いわんや、台湾海峡については、これはノータッチにしてほしい、両方とも武力攻撃、武力紛争なんか許さないというのが、日米両方の基本的態度でなければならぬ。いかにもナショナル・プレスクラブでは——第四項もそうだといえばそうだが、第四項だったらまだまだ逃げ道がある——と言うと語弊がありますけれども、必ずしも自動承認制でないんだと言えるかもしれぬ。しかし、ナショナル・プレスクラブのほうは、これはオーケーですよ。自動的オーケーととられるように、みんな第四項の解釈は、ナショナル・プレスクラブにおける日本のプライム・ミニスターの説明でこれを了承しているのです。そういう事態であったことは事実ですね。  しかし、いまや、御承知のように非常に情勢が変わってきているわけです。そういう場合で、いまあなたが言われた第四項、しかもそれを含めて、今度の協定の前文で佐藤ニクソン共同声明が基礎になった。これの解釈からいえば、いま訂正されましたが、ナショナル・プレスクラブの自動承認と思われるようなことは決してないんだ、あくまで日本の、それこそナショナル・インタレストに従って考えるんで、どっちかといえばノーの場合が私は多いのじゃないかと思うのですが、そういうことをはっきりここでもう一ぺん確言できるかどうか、伺いたいと思います。
  362. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまお答えしたのですから、速記をよく読んでいただくと、私の申したこと、これは確認できると思います。  はっきり申しまして、私どもは、日本の国益を守る、こういう立場米軍の駐留も認めておる、これがいわゆる安保の目的とするところのものであります。   〔委員長退席、福永(一)委員長代理着席〕 その意味から申しまして、日本から出撃する、そうして日本が戦禍をこうむる、こういうようなことがあってはならない、かように思います。事前協議という制度がありますのも、そういう意味で、安保の目的、その範囲を越す事柄、それについては事前協議の対象になる、そうして、これはいままでも言ったことですが、日本政府考え方に反して行動することはないということをアメリカ政府も申しておりますから、ただいま言うような、われわれが自主的に決定すべき事柄だ、かように御了承をいただきたいと思います。
  363. 曾禰益

    ○曽祢委員 アメリカの外交委員会の聴聞会の記録を見ましても、総理が六九年にナショナル・プレスクラブで言われたようなことについては、これはもう国防次官も、そういったような情勢の変化はあり得るということを言っているんですね。スパークマン議員がこういうことを聞いている。「六九年ニクソン佐藤共同声明において、台湾日本の安全にとってきわめて重要な要素であると述べられている。日本はこのような立場に、米国の対中国政策の変更、さらには最近の国連における表決の結果にかんがみ、何らかの再評価を加えているものと考えられるが、どうか」これに対してパッカード次官は、「日本の政策について何とも言う立場にないけれども、私は、この種の政策の変更が日本及びその他の米国の友邦諸国によって将来行なわれるであろうということは、われわれとして認めなければならないと考えている」——アメリカのほうがすでにそう考えている。そしてさらに、「現在は国際関係の変革期である。数年前の状況下においてなされた評価については、将来変更せられるであろうことを認めなければならぬ」  私は、きょうの総理の前向きのあれでちょっとはいいのですけれども、どっちが日本の議員で、どっちが向こうの大臣かわからないのが、いままでの態度じゃなかったろうか。ほんとうですよ。ピアソン議員はなお、台湾韓国についての事前協議に関し国防省は肯定的であることに問題ないとしている、つまり、国防省は、そういった場合には有効に使えるということを、国防次官は一応冒頭陳述で言っているのです。それに食らいついて聞いたところが、今度は次官が少し後退いたしまして、「韓国または台湾については共通の関心も幾らかあるということで同意が得られるのじゃないかとのきざしもあったと思うが」——だいぶこう自信をなくしているんですね。「この問題はより長期的に評価しなくてはならないと思う。これは全く両国の関心の共通性がそのときいかなるものであるかということによるものだと思う」  私は、こういうことからいいまして、日本がこの際——いまあなたが言われたことは、非常に重要な軌道修正ですよ。必要なる軌道修正。一々申し上げるまでもなく、米中の接近、こういったような大きな転換が行なわれているわけですね。そうして米軍台湾からの撤退もあるでしょうし、むろんベトナムからの撤退もある。こういうような転換期において、しかも中国が国連に祝福されて迎えられる、こういうときに、私はこの際、ナショナル・プレスクラブの演説の取り消しといいますか修正、むろんでありますけれども、できるならば、近き将来において両巨頭が必ずどっかで会われるだろうと私は思う、そういう場合に、この新しい時代においてもう一ぺん六九年の十一月の共同声明の軌道修正をなすべきではないか、こう考えるのですが、その点をどうお考えですか。
  364. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この共同声明自身はもうすでに出ておりますが、ただいま問題になっているのはプレスクラブにおける私の表明、これが多分に誤解を受けるようなという御指摘であります。その点について私はこれを改めた、かように御了承いただきます。私はいままでも、たいへんわかりいい、俗耳に入りやすいように、隣の火事を黙って見ているわけにいかぬだろう、そのときには私どもがもっと延焼を防ぐようなそういう処置をとるのはあたりまえだ、こういうことを申してまいりました。これが韓国の場合においてはまさしくそのとおりだ、いままた、沖繩祖国復帰すれば、台湾海峡、これまた同じような近火、そういう状態になるだろうと思います。しかし、私は、台湾の場合においては、これは中国は一つだ、こういうことで、内政的な問題ですから、われわれがとやかく心配しなくても、問題は起こりっこない、かように確信はいたしておりますが、もしも万一そういうことがあれば、これまた近火に対してわれわれみずからが火の粉を受けないような処置をとる、これは当然だろう、かように思います。さようなことをも含みながら、事前協議というものをどこまでも自主的に、しかも日本の国益に反しない、その立場でのイエス、これをきめる、こういうことでございます。
  365. 曾禰益

    ○曽祢委員 重ねてお尋ねしますが、近くニクソン大統領とお会いになるであろうし、私はお会いになるべきだと思います。中国訪問するニクソン大統領が、もし日本側の事情が許すならば、むしろその前に日本へ参りまして中国問題を論ずるのが私は筋合いだと思う。その前後は別といたしまして、近くお会いになるだろうし、お会いになる必要がある。そういう場合に、いま申されたような点で軌道修正をすべきだ。それはニクソン大統領でも異存がないと思う。中国本土台湾とが平和的にうまく一体化してくれるということ、これは望みでしょうけれども。ですから、われわれは、どうも冷戦構造で台湾を守る場合に、日本及び沖繩から出撃するのはあたりまえだと言わんばかりの調子のものは、これは軌道修正するには、むしろアメリカの政策にわれわれが、何といいますか、協力する方向ですらあるのだ。そのくらいの軌道修正は当然あたりまえだと思うのです。もう一ぺんその点を確認して次の問題に進みたいと思います。
  366. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私、ただいままだニクソン大統領と最近に会うというような予定をとっておりませんし、また、ニクソン大統領と会談を持つ、そういうこともございません。しかし、ただいま言われるようなこと、アメリカといたしましても、日本国会において論議がかわされること、こういうものに無関心であろうはずはございません。ましてや沖繩返還国会だと、こういう状態でございますから、この国会における審議状況、これはもうアメリカも耳をそばだてておることだ、また刮目して模様を見ていることだと、かように私は思っております。したがいまして、ただいまのような考え方、これが日本考え方、いわゆる自主的に日本の国益を守る、その立場においてコンセンサスを得られるべく日本政府は努力している、こういうことを理解してくれる、かように私は思っております。そういう立場に立って、軌道修正をする要ありと思えば、そのときに軌道修正に積極的に乗りかかるべき問題だろう、かように思います。  ただ、私、聞かれないことまで申して恐縮ですが、簡単に申しますが、ニクソン大統領の訪中が実現して、そうしてどういうような話し合いが行なわれるか、ここには十分その結果を見るべきじゃないだろうか。私は、いままでもニクソン大統領が言っているように、この訪中の結果、古い友だちを犠牲にするようなことはしないと、こう言っている事柄を私どもちゃんと耳に残っておりますので、古い友だち、それは一体どことどことどこを言っているのか、そういうようなことをも考えながら、十分に、ニクソン大統領はどういうような話し合いをしてくるのか、これを見守りたい、かように思っております。
  367. 曾禰益

    ○曽祢委員 核の問題に移りたいと思います。  まず、政府は従来一貫してアメリカの国内法によって核兵器の存在、不存在というようなことは言えない、これが言えるのはただ大統領のみである、こういうふうに言ってこられまして、したがって、共同声明第八項の核兵器に対する日本国民の特殊な感情及びこれを背景とする日本政府の政策に対し、大統領は深い理解を示し、沖繩返還をこの日本政府の政策に背馳しないよう実施する旨を確約した。このことと、さて今度の協定に移りますると、第七条に、返還共同声明の第八項に背馳しないようにすること、これを何か請求権や費用の支払いのことにふっ込めたような変な形で、その中に核兵器撤去費も入っているからこれで十分じゃないか、こういう主張であったわけですね。私は率直に言ってそれは不十分だ。この共同声明の中でも、日本側から見れば目玉商品ともいうべき第八項が、なぜ全文その協定に入らないのか。そのくらいのことができなければ、全くこれはもう交渉当局としてはなってないと私は思う。それができてない。  ところが、再三外国の議会を引いて恐縮ですけれども、私は遺憾ながらアメリカの議会を引かざるを得ない。同僚委員からも指摘されているのですが、今般の米上院外交委員会審議を通じまして、大統領じゃないのですね、ロジャーズ国務長官あるいはパッカード国防次官などが公表した証書、これは一々読みませんが、要するに、返還時点においては核が撤去されている、返還時点では核がないということをはっきり明言しましたね。これは私は一つの新しい事態だと思うのです。  その意味で読み取るべき教訓は、日本政府は何をしていたのか。日本政府はうそをついていたことになるのじゃないか。大統領以外買えない。だからあの抽象的な、要するに日本政府の非核三原則を大いに尊重しますという回りくどい言い方の第八項以外は、せっかくの沖繩協定についても何も言えないということを言ってきたのに、向こうの議会がどのくらいえらいか知らないけれども政府当局がはっきりと、返還時点においては核は撤去されています、それからその後は日本政府の同意なくしては核の持ら込みはできませんということを明瞭に言っていますね。一々読みましょうか。私はこれは重大だと思うのです。そういう協定のつくり方じゃいけないのです。協定の全文やり直せなんかということは私は申しません。しかし、そういう点は真剣にお考え直しになって、同僚委員からも御指摘があったような核不存在の確認もけっこうでしょう。だけれども、まず第一、向こうの政府の高官が議会で言っていることが、日本アメリカの共通のバイラテラルな、二国間の話し合いでこれが確認できないなんてことはないですよ、どう考えたって。その方法は、意思があれば道は通ずるのじゃないでしょうか。どうお考えですか。
  368. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま論理正しく御指摘になりましたが、いままでは私ども、核の問題については、あるということ、これはどうもどういうものがあるかとかということで、言えないのじゃないのか。ないということについては、これは比較的楽に言えるのだ、これは必ずしも大統領でなくとも言えるのじゃないか、かように思っておるのですが、ただいま曽祢君のようなりっぱな御意見もございますけれども、私はどうも、ないほう、これをはっきり言えるということは、やはりいいことではないでしょうか。これはやはりだれが言っても、ないんだ、こういうことになると、われわれも一安心だ。どうもロジャーズでは足らぬとかパッカードでは不十分だとか、こう言われますが、それならさらにもっと大統領に言ってくれとかなんとかいう、そういう点があろうと思いますけれども、しかし、ないことについてはこれは言える。あると、どういうものがあるとか幾つあるのだとかどんなものになっているのだとか、いろいろな議論を誘発する。ないと言えば、それだけではっきりする、かように私は思っておりますが、どうもそこらのものの考え方、ちょっと相違がしているのじゃないか、かように思いますが、私のほうが間違っているでしょうか。
  369. 曾禰益

    ○曽祢委員 私は、政府のいままで言っていたことが不正確である、でたらめであったと言ってもいいと思うのです。ちゃんと政府の高官が言っているのですからね。返還時点においては撤去される、これは明確ですね。いまある、ない、これは言えない、これは変わってません。返還時点においてはっきりないということが、これは第八項から明確じゃありませんか。私はそれが悪いと言っているのじゃない。それができるならば、なぜそれをバイラテラルな両国間の何らかの、追加交換公文ならなおけっこうだし、そうかたくというのじゃぐあいが悪いというなら、それこそ両首脳の文書交換でもいいし、共同声明でもいいし、幾らでも私は方法はあると思うのです。そのことと、むろん再持ち込みに関してはいわゆる日本政府のあれを尊重するということ、返還時点においてはないということを大統領から明言してもらう方法として、ただ向こうの一方的よりも、日本人の気持ちからいって、議会にあれだけはっきり言えるなら、両国間のトップクラスで言えないことはないじゃないですか。文書を交換される、あるいは共同声明を発出するお気持ちはないか。どうしてもというなら、向こうの大統領の声明でも、まあないよりましですから、そこまでひとつ押すべきだというのが私の意見です。
  370. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま言われるとおり、国会であそこまでロジャーズあるいはパッカードが話をしているのですから、両国の間でもっと明確にする方法はないか、かようなお話、これは私どもももちろん考えるべきことだと思っております。これはそういう意味で、ただいまのこの模様も十分米側も聴取していると思いますが、非常にはっきりした御意見でございますから、それを無視する考えでなしに、何か実現する方法に私どももさらにくふうしてみたい、かように思います。  また、再持ち込みの問題は、もうこれはすでに日本政府考え方でございますし、これが事前協議の対象になるのですから、そういう場合にはノーですから、これはもういまさらとやかく申すことはございませんけれども、この核のない事態というか、返還時に核がないという、そういう事柄については、協定締結のときとは変わりまして、国会においてもロジャーズあるいはパッカード等が証言している、そういう状態ですから、さらに私は外交的なルートで話し合う一つの道ができたようにも思えます。その辺は、御注意もございますから、十分最善を尽くしたいと思っております。
  371. 曾禰益

    ○曽祢委員 ぜひやってください。  蛇足ですけれども、外交委員会の正式の報告書にも、「協定によれば米国は復帰後の沖繩に核兵器を保持しないこと」——これは両方にかかると思います、時点においてないということと、その後保持しないことと、これに「委員会は賛成して留意する。」ここまではっきり言っているのですから、現アメリカの領土下においてはどんなものがある、ないという、これも重要なことであるには違いありませんが、それよりも、返還時点における不存在と、その後の持ち込み不許可と、これをもっと明確な形でぜひひとつ取りつけていただきたい。強く要求しておきます。  次に、第三の問題で基地問題に移るのですが、われわれは、先ほども申し上げましたように、基地なしの返還というのは、これはもう確かに沖繩県民のお心持ちとしてはもっともですけれども、そうもいかないのではないか。それから基地の濃度、密度の本土並み、これは少し中期的に見れば、むろんそうでなければおさまらない。当然そうならなければいけない。一番問題なのは、返ってくる時点における基地の内容ですね。どういう部隊、どういう兵器、どういう機能、これが一番大切だ。それが言いかえれば安保並みといいますか——完全に安保並みなのかどうなのか、先ほどの出撃の事前協議もありますけれども、部隊の性質、それから基地そのものの機能、それから兵器、こういうものが全部かかってくるわけでしょう。そうでなければ、なぜB52を追っ払ったんだかわからなくなっちゃう。それから、なぜ毒ガス兵器なんかをいままでも追っ払ったか。要するに、そういう危険は、本土にないようなものは、これは帰ってもらおう、これはあたりまえのことです。核はむろんそうですがね。当然その原則でやってこられた。ところが、どうも多くの同僚委員からも指摘があるとおり、だれが考えても、この協定によるA、B、Cのあの基地は、あまりにもこれはベトナム戦争の大基地そっくりそのままだ。B52はないけれども、核もなくなるだろうけれども、あの嘉手納基地がそのままで、これで一体本土並み安保並みと言えるのかどうか。極東第一の軍事基地がそっくりそのままの機能を引き継いだ、それで、これで返還だ。どう考えてもこれはおかしいんではないか、こういう感じがするわけです。  これはアメリカの国防省や何かの考え方で、従来交渉した人がなかなか思うとおりいかなかったということもあったでしょう。しかし、そこへかてて加えて、冒頭申し上げたことですが、大きな情勢の変化がある。つまりニクソン訪中、それからもたらされるであろう、台湾からの少なくとも九千名のアメリカ軍が撤退する。——第七艦隊は西太平洋から撤退するとは思いません。そういったような変化が起こることは間違いないわけですね、その方向で。そういう場合に、米中の和解が進むのはたいへんけっこうなことであるけれども、それとはうらはらに、沖繩の大基地をかかえた日本が、言うならば大陸に対するいわゆる攻撃性の武器を持った大基地として残る。これはどう考えても矛盾じゃないか。中国側がどう言っておられるということが問題でないとは言わないけれども、その観点ではなく、日本の自主的な平和外交のたてまえからいって、あの基地をそのまま継続していくということが、どう考えても、新情勢から見ると納得できないということに、私はこれは議論の余地はないと思う。いままでだめだったからではなくて、また、全面的に交渉を全部やり直せというのではなくて、せめてこの新情勢から見て——先ほど外務大臣もえらい渋いことを言っていましたが、A、B、Cは動かせないから、返還した後からやるという。そういうこともあるだろうけれども、その前に、新情勢に基づいてもう一ぺんアメリカ側とハイレベルで——このままの基地ではおかしいんじゃないでしょうか。先ほどニクソン大統領とのトップ会談を申し上げたのも、この基地の相当大幅な縮減、それから、それを多少中期的に見てどうなるんだということの話をもう一ぺんやらなければ、私は、沖繩協定をつくるということの意味に大きく欠ける点があるのではないかということを書いたいわけです。どうお考えですか。
  372. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はやや曽祢君と所見を異にしておる、かように思いますのは、とにかく沖繩祖国復帰する、そうすると、安保条約並びにその関連取りきめ、これがそのまま本土と同じように沖繩に適用される、こういうことになるわけであります。そういうことを考えると、沖繩基地はもっと縮小されてしかるべきじゃないだろうか。いわゆる情勢の変化というものもございますが、私は、何よりも沖繩に駐留する米軍の性格は、ただいま申すような安保並びにその取りきめでわれわれが施設や区域を提供しているその範囲にとどまるべきだ、申せば、安保のワク内でわれわれは施設、区域を提供しておる、だからそこの一つの制約を受ける、これが米軍のあるべき姿だ、かように思います。  ただ、どうも、来年中に沖繩が返ってきますが、それまでに直ちにそういう状態を実現しろ、かように言われましても、そう簡単なものではない、かように思っております。だが、私は順次その撤退方法を考えておく、それでないとまたおくれて、そうしていろいろ不安をかもし出す、その心配が多分にあるんじゃないか、かように思います。したがいまして、先ほど来言われるように、A表B表C表、一応きめておりますが、この返還前からも、やはりそういうものについて積極的にさらにこまかく、絶えず連携を緊密にして、そしてこれらのものに理解を深めていく、そういうことでないと、整理縮小、これはなかなか効果があがらないのではないか、かように思っておりますので、私どもその立場で、この沖繩に駐留する米軍、これの基地との取り組み方もそういう姿勢で取り組みたい、かように思っております。  もちろん、米軍がいままで太平洋の守り、かなめ石だ、こういうような表現を過去においては使っておりますけれども、私は、今日の情勢になるとさような点は、御指摘になりましたように、情勢はたいへん変わってくる、また変わりつつある、かように思いますので、こういう点は、協議のいかんによっては意外にスムーズに話は進むのじゃないだろうか。私は少し楽観し過ぎるほうですが、私はそんな気もいたすのでございます。しかし、いずれにいたしましても、ただいまの状態米軍基地が非常に多いのでありますし、また沖繩経済も軍経済依存度が非常に高い、こういうこともございますし、このなくなることは期待、希望いたしますけれども、それがやはり順次縮小される、こういうことが望ましいことであり、双方にとりましてもその円滑なる縮小、そういうことが望ましいのではないだろうか、かように思います。  特に、言われますように、問題になっておる特殊部隊、また特殊兵器の部隊、こういうようなものについては、その他にあまり例を見ない、本土に例を見ない、こういうようなこともありますし、どうも本土のわれわれにもなじみにくい部隊でございますから、そういうものについてはなおさら沖繩県民が納得がいかない、こういうこともあろうかと思います。そういうような点で、これは十分米軍復帰後において、また復帰前からも、ただいま御注意のありましたように、これらの問題と取り組むことが必要だろう、かように思います。
  373. 曾禰益

    ○曽祢委員 これは全く私の個人的な見解で、少し夢物語みたいで恐縮なんですけれども、ほんとうならば、やはり復帰後は、この沖繩は、基地が重要な大陸に向けての戦略爆撃の基地だというような性格でなくなって、それからまた、大陸と台湾とが一体化した暁においては、台湾沖繩もお互いに戦略的な武器を置かないというような方向に、ひとつ兵力の引き離しといいますか、こういうことを大きな展望として私は考えるべきではないか。台湾は、かつては日本の南方侵略の航空不沈母艦だといわれた。そういうのでなくて、日中両国はお互いに戦争しない、侵さない、脅かさない、不戦、不侵略、不可侵、不脅威、こういうようなあかしとして一つの平和地域を考えていくぐらいな、大きなグランドデザインを持っていく必要があるのではないか。そういうことも頭に入れるならば、これはむろんいろいろな時間的要素も加わってまいりますけれども、どうもいつまでも沖繩がかなめ石で、あそこに全部大陸に対していつでも飛び出していく装置を持っている——それはなるほど米軍であるけれども、そこから出た場合には、その責任はわが国が分担するか、むしろ恨まれるのはわが国だ、こういう状態は、決して自主的な平和外交じゃないと思う。わがほうだけ平和地域ということでなく、そういったようなことも考えるならば、いま総理のお話がありましたが、どうも話が少しうま過ぎるので、返還後やろうという中期的なあれもむろん私は否定しません、一挙にできないのですから。しかし、返還前といえども、情勢が変化したのですから——アメリカの上院あたりでも、情勢変化によってということを言っているのに、どうもこの間、六月十七日にきめちゃったから、もうあれで動かすのはいやだ、これは官僚の言うことなんですよ。そうじゃないと思うのです。もう少し大きな見地で、返還の実現の前に、やはりこの問題だけはもうひとつアメリカと話する、私はそれだけの十分な理由がある、こう思うのです。軍人なんかと話したって、なかなかこれは頭がかたくてだめですよ。それをおやりになるお気持ちであるかどうか、もう一ぺんだけ伺います。
  374. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 官僚出身、お互いに官僚の出身でございますから、官僚の立場はよくわかりますが、ものの考え方、これは官僚だと、こう言わないで、まあよさもあると、この程度にお許しを得たいと思います。  ところで、ただいま言われましたもののうち、台湾に触れられたその項、台湾に触れられた点は、私はとやかく御批判はいたしません。これは中国の問題として私は触れない。  ところで、その他の問題、先ほども申しましたように、返還後においてはもちろんでございますが、返還前といえども、私はこれをこのままにしておく、こういうわけではございませんし、また、ことに先ほども御提案があり、それにお答えしたように、核のないということは国会でも話しているのだから、そういう意味の話はもっと両方で煮詰める方法もあるじゃないか、こういう御提案がありました。それについては私も十分考慮します、こういうお答えをいたしたのです。そういう点をも含めて、ただいま言われるように、返還前といえども、われわれが、これは不十分だ、かように考えるものがあれば、それに取り組む。ただ、私がここで重ねて誤解のないように申し上げておきたいのは、いまできておる協定、これが協定当時においては最善のものであった、かように思いますので、ただいま御審議をいただいておるものはそれなりにひとつ評価していただいて、そうしてやはりこれの成立を期す、こういうことに御協力願いたいと思いますし、また、ただいまいろいろ御注意なさいますこれについては、私も心を正して謙虚にその御意見を受け入れてそうしてこれと取り組む、そういう決意であることをこの際に申し述べておきます。
  375. 曾禰益

    ○曽祢委員 外務大臣に伺いますが、先ほど、たしか西銘委員でしたか西中委員でしたか、お許し願いたいのですけれども、コナリーとの話を言われましたが、私はそれがいかぬというのじゃないのです。しかし、A、B、Cに触れないでその後の問題という観点です。私はそれだけでなくて、いま総理に申し上げたように——おわかり願ったと思う。もう一ぺん、このA、B、Cにこだわらずに、もう少し戦略的な爆撃基地等を減らすということを、ただ、何といいますか、感情とか人道上だとかというのでなくて——それはまあ牧港のああいったような、目にぎらつきますわね、あんな町のまん中にでんとある、そういうことも、これは住民とアメリカ側との融和上一つの大きなポイント。しかし、もっとそれよりも、沖繩基地があまりにも米中接近と全然すれ違いの方向になるということを、これはやはり直していくという方向でハイレベルの話をしてもらいたい。コナリー長官との話は、もう機会はないのかもしれません。もう少しそういった意味でハイレベルの話を続けてもらいたい、こういう希望を持っているわけです。  それに関連して、あと特殊部隊のことだけをちょっと聞きますが、いろいろなのがございますけれども、たとえばSR71のごときは、今後もし残っておったとしても、絶対にいわゆる他国の領土領空を侵さないということについてはっきりした保証があるかどうか、これはいかがですか。  それから、いまコナリー財務長官との点について、さらに伺うところがあったらお知らせ願いたい。
  376. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほど来御高説を傾聴しておるのですが、基地の問題についての基本的な考え方ですね、これは私は曽祢さんと少し違うのです。違います点は一つだけなんですが、曽祢さんは、最近の極東情勢が非常に変化してきた、ことに六月十七日、本協定締結した後において重大な変化をしておる、こういうふうな基礎に立って議論をされておる。しかし、私はそうは考えないのです。これは、そういうムードは出てきたのです。しかし、これは定着はまだしておらぬ、そういう情勢判断をしておるのです。そこで多少結論的に違いが出てくるのじゃないかなという感じを持ちながらお聞きしておったのでありますが、しかし、それにもかかわらず、私は、基地状態は、これはA、B、C表、これであらわされておりまするけれども、とにかくアメリカの上院もこの協定を今朝可決した。米側の法的措置ができたわけです。ですから、A、B、Cという表を法的に動かすということは、わが国としては今日もうできない。これはひとつはっきり御了承願いたいし、御理解願えると思うのです。  しかし、実態的のことになればどうかというと、いまとにかく、あの小さな沖繩島の二二%も基地である、しかも、その基地の重要部分があの中心部に密集しておる、そういうような状態を考えると、とにかく付属覚書としてA、B、Cの種類はきまりますけれども、しかし、この協定の成立後において、何とかすみやかに県民の要請にこたえていきたい、そのためには最善を尽くしたい、こういうふうに思っておるのです。しかし、その努力は、何もこの協定の成立を待っているわけじゃないのです。成立前も、先ほども西銘委員に申し上げたとおり、もうすでに行動を開始しておるわけなんでございますから、とにかくお気持ちはよくわかりますので、最善を尽くしたい、かように考えます。
  377. 曾禰益

    ○曽祢委員 不十分で不満ですけれども、次に移ります。  VOAについては、皆さんも御承知のように、二つ問題がある。第一は、要するに、これは基地ではないかもしれませんが、本土並みには一番反するのです。電波法の特例までわざわざつくらなければならない。これはどうもまことにおもしろくない。のみならず、これとからんでいるのは、やはり戦略謀略放送だというのではなかろうか。こういう点から、一体VOAというのは軍事機関なのかどうか。これは外務大臣でけっこうですが、一体軍事機関ですか、そうでないですか。
  378. 福田赳夫

    福田国務大臣 普通の政府機関であります。  それで、いま曽祢さんは、これが軍事機関じゃないか、軍事宣伝のための謀略機関じゃないかというような疑いを持たれての御質問のようであります。そこで、かねて曽祢さんのそういう疑念を持っていることも承知しておりますので、米政府に照会いたしてみました。そうしてみますと、米政府答弁は、これは戦略的と、こういうふうにいわれておるが、これは軍事戦略の意味じゃない、非常に広い意味の戦略的だ、そういう意味です。その活動は、軍事活動とは全然違います、こういうことをはっきり申しておるわけであります。そうしてVOAは、信頼できる、かつ権威あるニュースを伝えるもので、その目的は正確性、客観性的なものである、こういうふうに答えておるわけであります。何かアメリカ国会で、これが、軍事委員会において軍事的なものであるかのごとき議論があったそうでございますが、それは二年くらい前のことで、今日の回答はさようなことになっております。
  379. 曾禰益

    ○曽祢委員 私が聞かないことまでお答えになっているのですが、一九六六年二月七日の米下院軍事委員会の報告に、これはいわゆるプライス法の検討をしたこの中に、こういうことが書いてあるのです。沖繩島は、最も重要な軍事基地だ。このことは、朝鮮戦争、現在ベトナム戦争で示されている。——これはあたりまえ。このほか、沖繩は米国の戦略活動にとっても非常に重大である。一例をあげれば、沖繩にはVOA放送の重要施設がある。——これが一つ。  それから、同じく六六年三月二十三日、下院軍事小委員会の聴聞会の証言録、ホルト陸軍次官代理の証言によれば、沖繩は西太平洋におけるわれわれの安全上の公約を守るための兵力展開に三重の目的を果たしている。いわく、兵站基地、輸送集合地点、作戦基地、重要な軍用通信、輸送の中心地、さらには、VOAの重要な活動地点である。——これはなるほど、六六年で、ベトナム戦争が、北爆が始まって相当激しいときであったと思いますが、そのVOAが、そういったような意味で、少なくとも戦闘作戦行動をやっている地域に対して、戦略的な謀略といいますか、放送をしていたことは間違いないと思いますが、これを否定されますか。
  380. 吉野文六

    ○吉野政府委員 VOAは、先ほど福田大臣が御答弁のとおり、あくまでもアメリカの客観的な正確なニュースを報道する、こういうことになっておりまして、先ほど曽祢先生の引用した件につきましても、わざわざわれわれが照会した結果、アメリカ政府の答えが、先ほど申し上げたとおりのものです。  そこで、ベトナム戦争に対して、たとえば宣伝活動をしているのじゃないか、この点につきましては、ベトナム語の放送はやっておりません。この一事を見ましても、直接軍事行動に加担しておる、こういうようなことはございません。
  381. 曾禰益

    ○曽祢委員 この軍事委員会の報告というのは——この日本の「資料 沖繩問題」というのは、これはまんざらうそを書いてないと思うのですよ。ちゃんと八三ページと九一ページに書いてある。軍事委員会のこういうような報告は、ないのですか、あるのですか。アメリカ政府の説明でなくて、軍事委員会の報告の有無、あるいはそれは間違っているかどうかをはっきり御返答願います。
  382. 吉野文六

    ○吉野政府委員 ございます。
  383. 曾禰益

    ○曽祢委員 あるのならば、少なくとも六六年の時点において、アメリカの下院の軍事委員会の記録において、はっきりと戦略的なものであるということが明らかになっているわけでしょう。それがいまは変わっているというのですか。当時は沖繩からベトナム、それから朝鮮戦争のときには朝鮮の方向に放送していたけれども、中継していたけれども、いまは変わっている。いまは朝鮮語あるいはロシア語、それから英語と中国語、それで主として東北アジア向けの放送をやっている、中継をやっているということを聞いておりますが、これはいまはそうだということなら別だけれども、軍事委員会では、戦略的なものであることを認めているじゃないですか。それは否定できないのでしょう。この点をどう説明されますか。
  384. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先ほど、戦略的ということにつきまして福田大臣からも答弁がありましたように、この戦略的という意味は、あくまでも非常に広義のいわゆる情報戦略、こういう意味合いのものであるということを、わざわざUSIAの長官であるシェクスピアがわれわれに申しております。  それから、ベトナム戦争に関連しての宣伝をしたかどうかということにつきましては、御存じのとおり、ベトナム向けにはフィリピンから放送しておるわけでございます。沖繩のVOAは、朝鮮半島、ソ連、中国、これらの地域に向かって放送しているわけでございます。
  385. 曾禰益

    ○曽祢委員 そうしますと、少なくとも現状においてはベトナムのほうには放送してない、中継地ではないということになったと思うのですが、それは一応承っておきます。方向からいって、方角からいってそうじゃないということのようでありますが、ただ、しばしば上院外交委員会の聴聞会を引いて恐縮ですけれども、これは最後だからひとつお許し願いたいのです。  委員長のフルブライトさんなんかも、すごいことを言っているのですね。「いまや中国に対する態度及び政策を変えつつあると期待し、それを信じているが、そうなると、沖繩のVOAの継続はいかなる理由で正当化できるのか」ということを問い詰めているのですね。さらにこのフルブライトさんは、「VOAは自由ヨーロッパ放送と同様に冷戦の産物であった、冷戦の当時にその起源があり、そのために使うのがもともとの目的であった」——これは否定できないと思うのですね。「われわれは中国との関係改善を重く見ているが、それでも改善させぬように、あるいはその関係を刺激しあるいは冷戦を引き延ばそうと意図している幾つかの活動が継続している」——冷戦緩和に反対する幾つかの活動が、中国側じゃなくて、アメリカ側があると言うのですね。「非常に高価な仕事であるが」——VOAは非常に高いんですね、これ。「なぜ沖繩のVOAが維持されなければならないか全くわからない。VOAも自由ヨーロッパ放送もともに宣伝機関である。近代的衛星通信をもってすればニュースの機会にはこと欠かない。緊急のニュースは別にこれがなくても衛星中継でできるじゃないか」VOAの長官、あなたの親友のシェクスピアさんは、冷戦の継続についてかたく決意しているように思われる。評判よくないのですな、これ。こういうことですから、もう少しまじめにお考え願いたいわけであります。  私は、そういうわけでありまするから、こういうものをどうしても置かなければならないというのは、これこそVOA役人根性だと思うのですね。上院の議員が、単に費用の節約だけでなくていろいろ言うけれども、その冷戦的な感じのあるものは必要ないではないか。なるほど、それは確かに西ドイツにもイギリスにも、またアジアにおいてはセイロンにもありますから、いいじゃないかという議論もありますけれどもアメリカの中にも、こういう冷戦構造の産物はもうやめたらどうだというのがあるのに、日本のほうが唯々諾々としてこれをいつまでもやっていくということは、意味をなさない、これは早期撤廃していくべきだと思うのでありまするが、その費用の見積もりは、郵政省、一体幾らぐらい、同様なものをつくるとすればどのくらいになるかということを、大臣から簡単にその見積もりをお教え願いたい。
  386. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 沖繩と同じ程度の施設、また立地条件も同じだということで、大体二十億円程度でございます。
  387. 曾禰益

    ○曽祢委員 まあそういう二十億円ということになれば六百万ドルぐらいになるんでございましょうか、新しいレートから見ても。ですから、向こうがこういうものをむだにしたくないということはわかります。しかし、どう考えても、これは早くお引き払い願うのがほんとうじゃないかと思うのです。せっかく、二年たったらその後の問題を相談するというのですから、五年を待たずに、これは早くどこかに移すように、もっと決意を持ってやっていただけないものだろうか、これをひとつ総理からお答えを願いたいと思います。
  388. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 VOAは、最初から実は問題がございました。これは本来、日本施政権下に返る、こういう場合に、外国の放送を許しておりませんから、日本の電波法から見ましてこれは特例の特例だ、こういうことでありますので、われわれとしてもこれの存続を認めない、やっている仕事がよかろうが悪かろうが、とにかく法制上そういうことは困るんだ、こういうことでずいぶん強い交渉をいたしたのであります。しかし、どうもそこまでの実を結ぶことができなくて、期限を限って存続を認める、こういうことに実はなったのであります。しかし、私は、さらにこれをもっと短縮ができないのか、二年たてばわれわれは交渉に入り得る、かように思っておりますから、そういう際に、もっとわがほうの法のたてまえを十分説明する必要があるだろう、かように実は思っておる一つの問題でございます。どうも、当初この点をなくすることができなかった、これは私も残念に思っております。それだけ、政府考え方をはっきりさせておきます。
  389. 曾禰益

    ○曽祢委員 最後に一つだけ郵政大臣と、また総理にも最後にお答え願いたいのですけれども、参議院の予算委員会で、これはわが党の木島則夫委員からのきわめて適切な質問といいますか、意見があって、やはり——協定によればアメリカの一応責任となるておりますけれども、なかなかそうはいかないのですね。やはりモニター制度が必要ではないか。そうしたら、それは統一見解として、モニター制度をやろうということになったようですから、ほんとうにすぐやっていただけるものと思いますが、本院のこの委員会においてもはっきりと、やはりモニター制度をやる、そして悪い場合には、これはちゃんと協定にも書いてありますけれども、注意してやめさせる、これをはっきり言えるかどうか、まず郵政大臣、続いて総理からお答えを願いたいと思います。
  390. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 参議院で御答弁申しましたように、傍受の施設をやるということにいたしたわけでございます。ただいまその場所の選定を沖繩の地区内でやっております。日本本土では聞こえるところがないそうでございまして、沖繩で場所の選定をいたしております。その後の具体的な方法につきましては、関係の各省でただいま協議中でございます。
  391. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま郵政大臣がお答えたしたとおりでございます。
  392. 曾禰益

    ○曽祢委員 これで一応終わります。(拍手)
  393. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は明十二日、午前九時三十分より理事会、午前十時より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後五時五十九分散会