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1971-12-10 第67回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会法務委員会文教委員会社会労働委員会逓信委員会連合審査会 第1号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和四十六年十二月十日(金曜日)     午前十時十一分開議  出席委員   沖繩及び北方問題に関する特別委員会    委員長 床次 徳二君    理事 金丸  信君 理事 國場 幸昌君    理事 二階堂 進君 理事 湊  徹郎君    理事 毛利 松平君 理事 久保 三郎君    理事 細谷 治嘉君 理事 中川 嘉美君    理事 門司  亮君       池田 清志君    石井  一君       宇田 國榮君    小渕 恵三君       大石 八治君    大野  明君       大村 襄治君    加藤 陽三君       木野 晴夫君    佐藤 文生君       佐藤 守良君    正示啓次郎君       關谷 勝利君    田中伊三次君       田中 龍夫君    谷垣 專一君       谷川 和穗君    藤波 孝生君      三ツ林弥太郎君    箕輪  登君       武藤 嘉文君    森  喜朗君       山下 徳夫君    豊  永光君       井上 普方君    石川 次夫君       川俣健二郎君    木島喜兵衞君       武部  文君    美濃 政市君       安井 吉典君    山口 鶴男君       新井 彬之君    斎藤  実君       二見 伸明君    正木 良明君       小平  忠君    田畑 金光君       東中 光雄君    米原  昶君   法務委員会    理事 小島 徹三君 理事 田中伊三次君    理事 高橋 英吉君 理事 羽田野忠文君    理事 畑   和君 理事 岡沢 完治君       大竹 太郎君    鍛冶 良作君       永田 亮一君    黒田 寿男君       日野 吉夫君    三宅 正一君       林  孝矩君   文教委員会    委員長 丹羽 兵助君    理事 久保田円次君 理事 河野 洋平君    理事 谷川 和穗君 理事 西岡 武夫君    理事 山中 吾郎君 理事 山田 太郎君    理事 鈴木  一君       有田 喜一君    稻葉  修君       床次 徳二君    中山 正暉君       野中 英二君    松永  光君       森  喜朗君    吉田  実君       渡部 恒三君    川村 継義君       木島喜兵衞君    小林 信一君       楯 兼次郎君    三木 喜夫君       有島 重武君    多田 時子君       山原健二郎君    安里積千代君   社会労働委員会    委員長 森山 欽司君    理事 伊東 正義君 理事 谷垣 專一君    理事 増岡 博之君 理事 田畑 金光君      小此木彦三郎君    大野  明君       小金 義照君    斉藤滋与史君       橋本龍太郎君    箕輪  登君       向山 一人君    渡部 恒三君       大原  亨君    川俣健二郎君       小林  進君    後藤 俊男君       島本 虎三君    山本 政弘君       古寺  宏君    古川 雅司君       渡部 通子君    寺前  巖君   逓信委員会    委員長 高橋清一郎君    理事 本名  武君 理事 水野  清君    理事 古川 喜一君 理事 樋上 新一君    理事 栗山 礼行君       池田 清志君    宇田 國榮君       小渕 恵三君    亀岡 高夫君       佐藤 守良君    坪川 信三君       中村 拓道君    羽田  孜君       森  喜朗君    阿部未喜男君       武部  文君    中野  明君       池田 禎治君    土橋 一吉君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 前尾繁三郎君         外 務 大 臣 福田 赳夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 高見 三郎君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君         労 働 大 臣 原 健三郎君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣 渡海元三郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 江崎 真澄君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第四         部長      角田礼次郎君         人事院事務総局         管理局長    茨木  広君         総理府総務副長         官       砂田 重民君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛施設庁長官 島田  豊君         防衛施設庁総務         部調停官    銅崎 富司君         沖繩北方対策         庁長官     岡部 秀一君         沖繩北方対策         庁総務部長   岡田 純夫君         沖繩北方対策         庁調整部長   田辺 博通君         法務大臣官房司         法法制調査部長 貞家 克巳君         法務省民事局長 川島 一郎君         法務省刑事局長 辻 辰三郎君         法務省保護局長 笛吹 亨三君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省条約局長 井川 克一君         大蔵省主計局次         長       吉瀬 維哉君         文部省初等中等         教育局長    岩間英太郎君         文部省大学学術         局審議官    安養寺重夫君         文部省社会教育         局長      今村 武俊君         文部省管理局長 安嶋  彌君         文化庁次長   安達 健二君         厚生省公衆衛生         局長      滝沢  正君         厚生省医務局長 松尾 正雄君         厚生省薬務局長 武藤琦一郎君         厚生省社会局長 加藤 威二君         厚生省児童家庭         局長      松下 廉蔵君         厚生省保険局長 戸澤 政方君         厚生省年金局長 北川 力夫君         社会保険庁医療         保険部長    穴山 徳夫君         郵政大臣官房長 森田 行正君         郵政大臣官房電         気通信監理官  柏木 輝彦毒         郵政大臣官房電         気通信監理官  牧野 康夫若         郵政省郵務局長 溝呂木 繁君         郵政省貯金局長 石井多加三君         郵政省簡易保険         局長      野田誠二郎君         郵政省電波監理         局長      藤木  栄君         郵政省人事局長 北 雄一郎君         労働省労政局長 石黒 拓爾君         労働省労働基準         局長      岡部 實夫君         労働省職業安定         局長      住  榮作君         労働省職業訓練         局長      渡邊 健二君  委員外出席者         最高裁判所事務         総長      吉田  豊君         最高裁判所事務         総局総務局長  長井  澄君         最高裁判所事務         総局民事局長  瀬戸 正二君         最高裁判所事務         総局刑事局長  牧  圭次君         日本専売公社総         裁       北島 武雄君         沖繩及び北方問         題に関する特別         委員会調査室長 綿貫 敏行君         法務委員会調査         室長      松本 卓矣君         文教委員会調査         室長      石田 幸男君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君         逓信委員会調査         室長      佐々木久雄君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案(内  閣提出第一号)  沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律  案(内閣提出第二号)  沖繩振興開発特別措置法案内閣提出第三号)  沖繩における公用地等暫定使用に関する法律  案(内閣提出第六号)  国家公務員法第十三条第五項および地方自治法  第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院の  地方事務所設置に関し承認を求めるの件(内  閣提出承認第一号)  沖繩平和開発基本法案細谷治嘉君外十六名提  出、衆法第一号)  沖繩における雇用促進に関する特別措置法案  (川俣健二郎君外十六名提出衆法第三号)      ――――◇―――――   〔床次沖繩及び北方問題に関する特別委員長、   委員長席に着く〕
  2. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 これより沖繩及び北方問題に関する特別委員会法務委員会文教委員会社会労働委員会逓信委員会連合審査会を開会いたします。  内閣提出にかかる沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律案沖繩振興開発特別措置法案沖繩における公用地等暫定使用に関する法律案国家公務員法第十三条第五項および地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院地方事務所設置に関し承認を求めるの件、細谷治嘉君外十六名提出にかかる沖繩平和開発基本法案、及び川俣健二郎君外十六名提出にかかる沖繩における雇用促進に関する特別措置法案、以上の各案件を一括して議題といたします。     ―――――――――――――  沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案  沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律  案  沖繩振興開発特別措置法案  沖繩における公用地等暫定使用に関する法律  案  国家公務員法第十三条第五項および地方自治法  第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院の  地方事務所設置に関し承認を求めるの件  沖繩平和開発基本法案  沖繩における雇用促進に関する特別措置法案   〔本号(その二)に掲載〕     ―――――――――――――
  3. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 質疑の申し出があります。これを許します。久保三郎君。
  4. 久保委員(久保三郎)

    久保委員 私は、昨日、同僚美濃委員佐藤総理に核の持ち込みについて質問をいたしましたが、これに関連しての総理答弁は、はなはだ不穏当であり、われわれとして奇怪しごくに存じますので、この際、真意のほどをあらためてお伺いしたいと思うのであります。  御承知のように、美濃委員質問は、非核原則をたてまえとして堅持するならば、安保条約によるところの事前協議対象の中で、核の持ち込みについてだけは対象からはずすのが当然ではないかという質問であります。これに対して総理は――正確を期するために、昨日の御答弁の内容をそっくりもう一ぺん繰り返します。佐藤総理はこうお答えしています。「美濃君にお答えいたしますが、私は、核兵器が世界にもうなくなれば、ただいまのような点が事前協議対象になる、そういう心配もないと思っております。しかし、現実はそうではない、かように私思いますので、わが国の危急存亡の際に、また日本防衛のためにアメリカ核兵器を持ち込もうというよう事態が全然ないと、これははたして言えるかどうか。そこらは祖国を愛する者のことばといたしましてはいかがかと私は思います。私は、いまどうこうしようというのじゃございません。しかしながら、ただいまのようお話には私は賛成できない、このことだけはっきり申し上げておきます。」と、たいへん断定的にお話がありました。もちろんこのあとにおいて、事前協議についてはノーと言います。とおっしゃっておりますが、案外、事前協議は形式的なものであって、この、いま私が読み上げた昨日の総理答弁が、政府並びに総理真意ではないかと思うのであります。  しかも、ここで見のがしてならないことは、危急存亡のとき、そのときにという、まさに民族にとれば一番弱いときをねらって、それでも核兵器持ち込みは拒否しますかという、国民に残酷な問いかけをしていることであります。  そしてもう一つは、「祖国を愛する者」というおことばを使っておりました。これまた、いかにも愛国心のない者を非難するよう立場から逆手に持っているのではなかろうかと思うのです。  しかし、いずれにいたしましても、このことは、危急存亡のときには、総理はじめ政府は、やむを得ぬなというふうに考えていることが、はしなくも美濃君の質問に導入されて出てきたのではないか、こういうふうに思っております。  そこで、あらためて美濃君からしつこくお話がありまして、その末、これはいかぬということで、事前協議の場合にはノーと言いますということをおっしゃったわけです。  私はこれは、今回の返還協定の基づくところの共同声明、これのジョンソン国務次官背景説明にも見られるように、アメリカ核兵器持ち込みの権利を留保するということをはしなくも裏書きしたものだと考えておるわけでありまして、重大な御発言だと思うのでありますが、真意のほどをあらためてお尋ねします。
  5. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 この問題でたいへんな疑念あるいは不信を持たしたことは、私の答弁が不十分であったと、かように思います。いまも久保君が御指摘になるように、最後には、事前協議があってもノーと言う、かようにはっきり申しておりますから、その点では別に、結論としては誤解はないだろうと思います。  しかし、その間に、やりとりとして、いかにも誤解を招くようことばが出ておる。そういうことが、一々いまあげられたのであります。あらためて明確にして、今度は申し上げます。  私どもは、非核原則を守る、これを厳守する、こういう立場でございますし、また、過日も国会において決議がなされました。このときは社会党の方は不幸にして御出席でございませんでしたが、その際に、私どもははっきり政府所信をこれについて申し述べたのでございます。  申し上げるまでもなく、これはどういうことがあろうとも、事前協議があればその場合にノーと言う、これはもうはっきりしたことでございまして、あえて重ねて申し上げるまでもないことであります。ただ、私があえて弁解するならば、世の中に核兵器がある。核兵器があると、核兵器保有国としてはいろいろの話を持ち込むだろう、そういう事前協議制というものが出てくる、こういうことを申したのであります。それで、皆さんのほうからいえば、事前協議からはずせ、こういうことでございますが、核がある限りにおいては、核を持っておる国から事前協議を持ちかける、こういうことは容易に想像のつくことでありますし、そういう際にはっきりノーと言えば、これで疑念は、また不安もなくなる、かように私は思いますので、この点ははっきり申し上げまして、疑念をひとつ晴らしていただきたいし、また不信を取り除いていただきたい、かように思います。
  6. 久保委員(久保三郎)

    久保委員 お答えがありましたが、どうもいまのようお話だけでは、われわれとしては疑問がたくさん残ります。  そこで、あらためて昨日の答弁一つ一つについて若干お尋ねしたいのであります。  いま総理もおっしゃったように、事前協議ノーと言えばもうはっきりしているのだとおっしゃるが、そのことを信用しようにも、前に私が読み上げたようなことがあれば、どうも信用しかねるということだと私は思うのであります。そこで美濃君も、そんなにはっきりノーとおっしゃるものならば、事前協議対象からはずすことが、まず第一、国民に対する信頼感をとることじゃないか、いまのままでは疑念が残りますということを繰り返しきのうも質問しているわけであります。だから私はここで、いまもお話がありましたが、アメリカ危急存亡――きのうのお答えでは、危急存亡というおことばをお使いになりましたが、日本危急存亡のときには核兵器を持ち込むことが、そういうことを言ってくることが予想されますか。
  7. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 これはいまからいろいろのことを考える必要はないことだと思いますけれども、とにかく核を持っておる、その持っておる国はそういう事柄についても、やはり可能性を考える、これはやはりあるだろうと思います。しかし、それでも私のほうはそういうことがあればノーと言う、これははっきりするわけでございます。
  8. 久保委員(久保三郎)

    久保委員 それじゃ持っているから持ち込むということを、やはり予想しないわけにはいかない。だから事前協議があって、そこでノーと言う、こういう御返事でありますが、きのうの美濃君の質問でも申し上げているように、ノーと言うならば、絶対どういう場合でもノーと言うならば、核兵器持ち込みについてノーと言うならば、事前協議対象からはずすことがやはり正しいと思うのですが、いかがでしょう。
  9. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 私は、事前協議対象からはずしていつの間にか核を持ち込まれたら、それこそたいへんだと思います。だから私は、やはり事前協議対象にして、そうして持ち込むならば、その場合に日本ノーと言う、このほうがはっきりするんじゃないか、これを自由に対象からはずしてしまって、それはあなたのほうの御自由だというようなことになったら、それこそたいへんじゃないか、私はそのほうの心配のほうをおそれますが、いかがでしょう。
  10. 久保委員(久保三郎)

    久保委員 なるほど、ことばというか考え方というか、いろいろ表現はあるものだというふうに思います。しかし総理、これは一国の国民全体の危機に関することであります。安全に関することであります。そこできちんと核の持ち込みはさせないというのならば、やはり事前協議対象からはずせということは、単純にことば遊戯ではありません。これは遊戯じゃありません。もちろん言うならば、アメリカに核の持ち込みは一切断わるという拒否の約束をさせろというのが美濃君の質問であり、私ども考え方なんであります。単に事前協議からはずせという単純なことじゃありませんぞ。核兵器については、一切日本には持ち込みをさせないという約束をさせない限りは、日本国民はいま安心できないということですよ。そのことを聞いているのですよ。
  11. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 安全保障条約を否定されれば別です。私どもよう安全保障条約が必要だ、こういう考え方を持っておりますと、ただいまのよう日本に持ち込まれては困るもの、そういう兵器については、はっきり事前協議対象にして、そうしてその場合にはっきりノーと言う、それでものごとをきめていく、こういうことのほうが正しいようであり、また明確であるように思います。また、事前的にさようなことは一切やらないという、これは安全保障条約自身が非常にその制約を受けるという、これは困るだろうと思います。私は、いまの核に関する問題ではなしに、一般的に申すのでございますが、そういうようなことも考えなければならぬだろうと思います。しかし、核に関する限り、事前協議があれば必ずノーと言う、これは非常にはっきりしたことですから、このことははっきり申し上げておきます。
  12. 久保委員(久保三郎)

    久保委員 おことばでありますが、安保をたとえば認めるとしても、なぜ、その中から一つだけ核兵器持ち込みは除くということが、どうしてできないのでしょう。安保を認めるにしても、安保というのは、核兵器持ち込みについての事前協議だけをきめているのじゃないのでしょう。そうでしょう。事前協議対象は大まかに見て三つでしょう。そのうちの一つ核兵器持ち込みでしょう、そうでしょう。そうだとすれば、われわれが言っているように、その一つを取り出して、一番大事だから、これをひとつ約束させることでやったらどうですかという提案なんですよ。拒否される態度がどうもおかしいと思うのです。だからいまのようお話でいきますと、きのうの答弁のとおりフィルムは逆戻りしてまいります。またフィルムは逆戻りする。危急存亡のときには核の持ち込みを持ってくるだろう。そのときには祖国を愛する者としてどう言ったらいいのでしょうかというようなことで、あなたはノーとは言い切れないのじゃないかということを、われわれはますます疑念を深めるのでありますが、いかがでしょう。
  13. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 私はさようには考えません。これはどうも久保君と私との間で意見が食い違っておるようですが、この事前協議対象になっておるものについてイエスもあればノーもある。かよう原則を申しておりますが、核に関しては一切どういうときでもこれはノーだ、こういうことをはっきり申し上げておけば、この点では安心され、また政府考え方、また所信を、これは明確にしたことになる、かように御理解がいくのではないだろうかと思います。ただいま申し上げますように、具体的の場合にノーをはっきり申し上げます。また、それがどういうときであろうと、それは問題ではない。必ずそうだ。どうかかように御理解をいただきます。
  14. 久保委員(久保三郎)

    久保委員 いかなるときでもノーと言うからいいじゃないか。それを信用できない事態にいまきているのじゃないでしょうか、はっきり申し上げると。  それから私の意見平行線だと言うが、ちっとも平行線じゃないのです、これは。ほんとうのことを突き詰めれば一緒だと思うのですよ。それをただ、あなたがことばの、何というか、ノーほんとうに言うのなら、私が申し上げることで、そのとおりとおっしゃればいいんじゃないですか。いかなる場合でも、どんなときでもノーと言うのなら、てまえどもが提案していることを率直にお認めになるのが、一番国民立場に立っている御意見じゃないのでしょうか。平行線だと言う。どうも何が平行線だかわかりませんね。どうもきのうの御答弁の中で、危急存亡のときには核持ち込みもあるのだということを頭の中に、心のすみに、どこかにやはり持っていらっしゃるから、事前協議でカバーしていこう、ベールをかぶせていこうと、どうもそういうふうにとれてしかたがありません。それは決して――そういう意味でおっしゃるなら平行線ですよ。これは、どこまでもベールをかけていこうというのじゃ……。いま現に日本の本土にも、沖繩にはもちろんでありますが、核兵器があると騒がれているのでしょう。核兵器がありませんという答弁をしても、だれも信用しない事態になっていることをあなたはどう思いますか、総理。私はくどいようでありますが、せっかく今度一月に、ニクソン大統領にお会いになるというのなら、この際、非核原則を堅持するというのなら、事前協議であらゆる場合に、いかなるときでも全部ノーだというのならば、事前協議対象からはずすことを美濃君の質問どおり、これは実行される約束が必要だと私は思うのですが、これはどうでしょうか。
  15. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 どうも事前協議対象からはずすことについては、私は反対でございます。これは核兵器がある限りにおいては、どんなことを核兵器を持っている国がするかわからない。これは心配でございます。幾ら同盟国でも、それはやはり心配だ。これは私の考え方でございますから、それはやはり事前協議対象にする。そうして日本はそういう場合にわれわれの堅持しておる、また国会の、最高機関が決議したその線を守る、こういうことで、あらゆる場合にノーと言う。これは非常に明確ではないだろうかと思います。ことに、いまのような核戦術、この発展の模様を見ると、必ずしも日本の本土にそういう基地を設ける必要もないように思いますし、核の抑止力、これは日本に持ち込まなくとも十分に達成している。かように私は考えておりますので、その御心配はないように思います。だからただいま言われるように、むしろはずすことが、先ほどはものの言い方もいろいろですね、こういう言われ方をされましたが、私はむしろ核が世の中からなくなる、こういう状態なら、これは非常にはっきりいたしますけれども、核が存する限りにおいて、その核を持っておるものがどんな使い方をするかわからない、そういう場合に事前協議対象にして、そうして相談を持ちかける。そこで縛ることが最も必要じゃないか、かように私は思います。
  16. 久保委員(久保三郎)

    久保委員 情勢としても、核を使うようなことはないだろうというお話なんであります。そうなれば、ますますアメリカに対しても、核の持ち込みは一切お断わりであるということを宣言し、向こうに承知させることは、まず必要だと私は思うのですよ。  それから、核兵器がなくなれば、とこうおっしゃるが、なくなれば何もそんなもの、事前協議もへったくれもありませんよ、そうでしょう。そんなことを国会で議論するのはおかしいじゃありませんか、総理。私どもがいまお聞きしているのは、事前協議というものは必要ないじゃないか、いままでほんとうことばで、総理はじめ政府側の答弁をそのまま正直に受け取れば、事前協議対象に置くのはおかしいじゃないですかと言っているんです。ところが、事前協議をはずせば持ち込まれてたいへんだろう、私ども事前協議をはずしてそのままでいいということではないですよ。アメリカに対して核兵器持ち込みは、われわれは一切断わる。包括的に断わったらいいじゃないですか。事前協議というのは、ケース・バイ・ケースですよ。ケース・バイ・ケースであるところに、結局きのうの答弁の、何か不明確と言っては語弊があるが、危急存亡のときにはケース・バイ・ケースだから、イエスと言うときもある、こういうふうにとるのが当然じゃないですか。しかも総理は、きのう「このことだけはっきり申し上げておきます。」と言っているのですよ。そうなりますと、ますます疑念は深まる一方なんですね、いかがでしょう。しつこいようでありますが、どうもこれだけでははっきりいたしませんので、ほんとうにいかなる場合でも、これは持ち込みはさせませんというならば、一月においでになるときに、はっきりお約束してきてもらいたいと思う。いかがでしょう。  それともう一つは、言うまでもありませんが、国会で決議したことだけでは、残念ながら政府を拘束する力は多少足りません、いまのような態度では。だから政府みずからがきちっと宣言をする、そういうことだと思うのです。ただ、事前協議対象になったときにはノーと言いますという繰り返し、テープレコーダーの繰り返しみたいなことをやったって、これはだれも信用しない。そこに問題があると思うのです。いかがでしょう。
  17. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 お答えをいたしますが、私の頭を何か透視していただくと、ただいますみっこのどこにもないと、私の脳みそのどこにもないと、こういうことがはっきりするのですが、私は、いま政府が云々と言われますけれども、これだけはっきり持ち込みについてどんな場合でもノーと言いますというのが、これが政府の宣言じゃないでしょうか。私は、国会の委員会、これで、はっきり総理がどんな場合でも事前協議ノーと言います。これが何よりもりっぱな宣言ではないか、私、かように考えております。これはもう国民の皆さんもお聞き取りだと思いますし、必ずこの久保君と私とのいまのやりとりは詳細に報道されると思いますし、したがって、これこそ何ら疑点を差しはさむ余地のないものだ、かように思います。昨日の美濃君とのやりとりについては、これは不十分だと、かようにお考えで再質問されたことだと思いますけれども、これは非常にはっきりしておる、私はかように思います。  なおまた、いま御注意がございましたが、来年早々ニクソン大統領に会えば、こういう点も明確になるだろう、これは御期待されてしかるべきだ、かように思います。
  18. 久保委員(久保三郎)

    久保委員 いままでのお答え、それじゃここでやりとりを長く続けても、あなたがおっしゃるよう平行線かもしらぬ、これは非常に心配です。私は別に政党が違うから、どうかではなくて、ほんとうにしんから核兵器を持ち込んだり、持たせたり、つくるというようなことは絶対にないのだということを、いま国民は一番保障が必要なんです。ところが、その保障が必要なときに、きのうのよう美濃君に対する答弁ようなことが出てくると、ああこれは本音だなと、こういうふうに受け取らざるを得ないのが、残念ながらいまの国民大衆の気持ちだろうと私は思うのです。立場の云々じゃありません、これははっきり言って。総理も近く総理としてしめくくりをされる時期だそうでありますが、その時期は別として、やはり疑念を残さない正直な総理として私はしめくくってもらいたいと思うのです。そういう意味からいっても、それじゃきのうの美濃君に対する御答弁危急存亡のくだりはお取り消しになりますか。
  19. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 私はそのことば自身があるいは不穏当だ、かようにおっしゃれば取り消しても差しつかえありませんが、答弁はやはり全体としてお受け取りをいただきたい。その片言隻句が問題よりも、一体何を答えたか、こういうことをひとつ御理解いただきたいと思います。きょうははっきりただいま申し上げておりますから、そういう点で、昨日の私の答弁と本日の答弁で食い違っていると、かようにお考えなら、きょうのほうを正しい政府の見解だ、また総理考え方だ、かように御理解いただきます。
  20. 久保委員(久保三郎)

    久保委員 総理のおことばでありますから、私は信用したいと思います。しかしながら、きのうの御発言は不穏当ですよ、もしきょうの御答弁が本物ならば。そうしてこれは断定的であります。断定的でありますから、私はあえて取り消せなんという命令はしません。お取り消しになったほうがいいんではないかと思うのですが、どうでしょう。もう一ぺん読みましょうか、これを。断定的ですよ。しかもいままでの御答弁とは全部これは違うんですよ。まるっきり違うんですよ。ここに気持ちがあらわれているのじゃないかという疑念がありますから、ほんとうにこれはまずい。違うんだというならば、これはお取り消しになったほうがいいのじゃないかと私は思うのです。私は、そういうあなたに対して取り消せなんということは言いませんけれども、そのほうがいいのじゃないかと私は思うのですが、どうでしょう。
  21. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 久保君の御親切な御忠告でございますが、きょう私が久保君といろいろ取引を――取引と申したことばは不適当でございますが、これは、これこそ取り消しますが、やりとりが明確にいたしましたように、昨日の問題はきょうのこのやりとり、応酬で一切明白になった、かように御理解をいただきまして、昨日の問題は、美濃君にはたいへん御迷惑だと思いますが、それを削除していただければ、それにこしたことはございません。しかし私は、先ほど申しますように、ことば自身よりも全体の答弁をやはりつかんでいただきたい、かように申しましたから、その点では美濃君にも別に御迷惑がかかってないのじゃないか、かように思いますけれども、ただいま御指摘がありましたように、どうもやりとりから見て、昨日のは総理真意でもないようだ、かようなことを申されたと思いますが、きょうのが間違いのない、はっきりしたところだ、かように御了承をいただきます。きょうのところを御了承いただきたい。
  22. 久保委員(久保三郎)

    久保委員 だいぶお話がありましたが、どうもやはりお取り消しにはならないようでありまして、非常に固執されているのでありますが、美濃君は別に迷惑はこうむっていません。彼は終わってからわれわれと相談しましたが、ずいぶん本音を吐いたじゃないかという話をしている。私はそこが問題だと思うのですよ。だから、ぜひお取り消しになるなら、この際ほんとうにそうなら、――しかし形だけ整えたって、これはいたし方ないことでありますから、このくだりは論理一貫してないですから、あとのものとは全部違うんですから、だから、全体として答弁をまあ聞いてくれ、議事録を読んでくれとおっしゃいますけれども、そうでないんですから、これはそういうふうにお考えになったほうがいいと思うのです。  それからもう一ぺんお尋ねしますが、それじゃ来年一月、ニクソン大統領に会見される際には、核兵器持ち込みについての問題をやはり議論しますか、提案しますか。私どもが申し上げるようなことで御提案になりますか。いかがですか。
  23. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 別に昨日の答弁に私こだわるわけじゃございませんから、きょうの答弁と矛盾しておる点は、これは削除されて、きょうので私の真意が伝わった、かようにお取り扱いを願いたいと思います。  それはそれとして、またもう過日来しばしば申し上げますように、来春早々の訪米、ニクソン大統領との会談に際しましては、各党と党首会談をいたしまして、十分各党の御注文、御意見も伺うつもりでございますから、これがいまいかなる日になりますか、年内、ちょうどこの審議があったり、あるいは予算編成等なかなか忙しい際でございますが、しかし、それでもただいま申し上げますように年内に各党首と会談を持ちまして、そうして各党の御意見を十分伺ってまいるつもりでございます。ただいまそういう点については、久保君が御指摘になったような点に触れられることだろう、かように思います。
  24. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 安井吉典君から関連質疑の申し出があります。この際、これを許します。安井吉典君。
  25. 安井委員(安井吉典)

    ○安井委員 きのうの美濃君の発言から総理の御答弁があって、いま久保君の質疑が続いているわけでありますが、私もちょっと関連でお伺いをいたしたいのは、アメリカ核持ち込みの危険性があるから――それは安保条約がなければ、そんなことはあり得ないはずなんです。しかし、安保条約があるのだから、そういう事態もあり得る、こういうふうに総理の御答弁が出ているわけでありますが、それではいかなる事態アメリカ核持ち込みをすると予想されておりますか。
  26. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 これはいまから予想することは、たいへんむずかしいことでございます。そういうむずかしい問いをなすっても、私すぐ答えられません。しかし、私は非核原則、これは非常にはっきりした日本の主張でございますから、そういうことで、よもや向こうから持ちかけてくるとは思いませんけれども、どういう場合にと言われると、私にはちょっと想像がつかない、こういうことであります。
  27. 安井委員(安井吉典)

    ○安井委員 私どもは岩国に核が持ち込まれているのではないかという疑問を一つ提示しておりました。それから公明党の諸君も横田その他への核持ち込み疑念政府に追及をしておるわけであります。いま、別に戦争をやっているわけでも何でもありませんから、こういうときにまさか核は持ち込みをすまいというふうに政府はお考えになっているようでありますが、そういう段階でも疑念があるわけです。ですから、もしも相当日本が戦争の状態になったというふうなときにも、核持ち込み可能性があるのではないかというふうな心配国民に一そう強まっていると思います。いつ何どきでも絶対ないというのなら、これは私は美濃質問のあの場合に立ち戻って、あり得ないことではないか、こういうことになると思うのですよ。やはりいつかそういう可能性があるのではないかと心配されておるのじゃないですか。どうなんですか。
  28. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 先ほども申しましたように、持っている国がある限りにおいてそういう危険がある、こういうことをばく然と申し上げておるのですよ。
  29. 安井委員(安井吉典)

    ○安井委員 昭和四十五年九月七日、核拡散防止条約の審議の際であります。この際、この第十条の規定で、その第一項の初めの部分をちょっと読んでみますが、「各締約国は、この条約の対象である事項に関連する異常な事態が自国の至高の利益を危うくしていると認めるときは、その主権の行使として、この条約から脱退する権利を有する。」つまり危急存亡の場合には、これから脱退してもいいという。これに関連して、当時の中曽根防衛庁長官は、日本の核武装についても、そういう危急存亡の場合は別だというふうな答弁をされているわけであります。ですから、アメリカ核持ち込みどころか、日本の自前の核までも防衛庁長官が保有の場合もあり得ることを言明されている、そういう事実が前にあるだけに、私は今度の佐藤総理の発言は、これはきわめて重大だと思うのであります。この点どうでしょうか。
  30. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 私の所信は、さっきから久保君に大きい声ではっきり申し上げたとおりでございます。
  31. 安井委員(安井吉典)

    ○安井委員 それでは、中曽根防衛庁長官のこれまでの答弁国会の速記録にきちっと残っておりますよ。その答弁については、どうお考えになりますか。
  32. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 当時の中曽根君がどういうお答えをしたか、私はその記録を実は読んでおりません。重大なる問題ですから、私が当然目を通さなければならないのですが、そういうことは、はっきり申して私も聞いておりません。ただいま申し上げますように、私は総理といたしまして、非核原則を守る。そうして持ち込みはいかなる場合でもノーをはっきり言う。これで御安心をいただくようにお願いをいたします。
  33. 安井委員(安井吉典)

    ○安井委員 それでは、中曽根防衛庁長官の発言は、これは間違いなんですか。はっきり取り消しますか。
  34. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 私は、当時の中曽根長官がどういうことを言ったか、それは申し上げておらない、私は知らない、かように申しておりますので、取り消すも取り消さないもないし、私自身が最高責任者として、核の問題については全権を持っておりますから、さようなことを私のもとで申しましても、それは違う、かように御了承をいただきます。
  35. 安井委員(安井吉典)

    ○安井委員 私は見たことはない、こうおっしゃるが、それは、いまそこにはないですよね。しかし、私がいま申し上げたような趣旨の発言は、これは間違いですね。ひとつ明確にしていただきたいと思います。
  36. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 私は、さようなことはできないこと、これを中曽根君は考えているんじゃないだろうか、かように思います。とにかく中曽根君は、直接自衛隊の長官でもありましたが、当時におきましても、最終的な最高責任者は私自身でございますから、私自身が、さような重大な問題を知らないわけはございませんから、私が相談を受ければ、それはノーと言う。これをはっきり先ほど来申し上げておる、これで御了承いただきたいと思います。
  37. 安井委員(安井吉典)

    ○安井委員 それでは、実質的に中曽根発言をはっきり総理が否定された、こう受けとめます。よろしいですね。――そこで核の問題は、アメリカではマクマホン法によりまして大統領の専管事項だ、こうなっておりますね。いままで日本に対して、核の持ち込みについて事前協議アメリカからされたことがありますか。
  38. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 一度もありません。
  39. 安井委員(安井吉典)

    ○安井委員 もし事前協議が行なわれることとすれば、これは大統領から直接電話で佐藤総理にくるのでしょうか、それとも国務省長官から外務大臣にくるのか、どういう仕組みになるのですか。その事前協議のあり方ですね、それをちょっと伺っておきたいと思います。
  40. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 ただいま直通電話がまだございません。いわゆるホットラインというものをつくろう、こういう話はございますが、そういうことがまだありません。したがって、ただいまの状態ではその必要もないから、いまのような設備も整備されていないのだ、かよう理解されるほうがむしろ正しいのではないだろうかと思います。私は、モスクワとワシントンの間にもそういう直通電話がある、こういうことも伺っておりますけれども日本との間にはまだございません。かつて日本との間にもそういうものをつくろうかというような話がありましたが、そういうものができてしょっちゅう使われていろいろな要望をされても、ただ限定されれば別ですが、貿易その他のことについても直接話されても困るから、いまのような状態でまあまあと思っております。けれども、最近の日米両国の緊密化等の点から見ると、大統領と直接話をする、そういう方法が必要ではないだろうか、私は軍事的な問題ではなしにそういうことも考えておりますけれども、これはお尋ねとは別のことかと思います。
  41. 安井委員(安井吉典)

    ○安井委員 私は、アメリカの大統領と総理大臣に直通電話ができて、繩と糸を裏取引したといううわさがあるくらいですから、そんなことに使われちゃたいへんだと思います。そんなことを望んでいるわけではありません。私が申し上げたいのは、核があるのかないのかわからないということを、アメリカは核抑止力の一つ原則として踏まえている以上、日本に核は持ち込みますがどうでしょうか、岩国に核を持ち込みますが、横田に入れますが、それはどうですかと、そういうふうなことを事前協議で打ち合わせてくるようなことは大体あり得ないのじゃないか。あり得ないといったら言い過ぎかもしれませんけれどもほんとうに入れるなら黙って入れているのじゃないですか。核があるのかないのかわからないというふうなところまで、そういうふうなことを言いながら持ち込みのことを相談に来るのかどうか。そしてそういう事前協議があったら、その事前協議によって核の持ち込みを許しましたということを総理は公表されますか。
  42. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 安保条約承認している私どもと、否定しておられる社会党の立場では、これはずいぶん違うと思います。私ども安全保障条約を結んでおる限りにおきましては、やはり日米の間が相互信頼の関係にあること、それを前提にしてすべてのものごとが動いておるということであります。したがって、大統領と私との約束は、これはお互いに信義、これを守る、こういうことでありますから、沖繩の問題にいたしましても、現状についてとやかくは申しませんが、返還後においては核はない、核抜き、こういうことではっきり約束をいたしたわけであります。この点では別に心配は要らないと思います。また本土につきましては、その前にやはりアメリカは、日本考え方に反してとやかくはしない、こういう約束をしておりますし、また、ただいまのような点については事前協議対象になる、かようにきめておりますので、そういう点では私は、相互信頼、これこそが国が別々である場合においては最も大事なことだ、やはり信義を重んずる、そういう立場でないとこれは話がつかないと思います。  これはしかし、やはりそれぞれの政党においてはそれぞれの立場がございますから、それを私はとやかくは申しませんけれども日本の場合はただいまは日米安全保障条約、そのもとにおいて相互信頼で両国の関係を規律しておりますから、そこに疑念があるとかあるいは疑惑があるとか、そういうようなことはあってはならないし、またそういうことではございませんから、その辺は私どもとやや立場が違うかな、かようにただいまのお尋ねを伺っていたわけでございます。
  43. 安井委員(安井吉典)

    ○安井委員 お尋ねを伺っていたと言いますけれども、その答えがないのですよ、いまの御答弁では。ほかのことをおっしゃっている。私が申し上げているのは、いまのような核があるかないかを明確にしないことで核の抑止力をと、こういうアメリカ原則の中で、日本のほうに、これから何月何日に核を持ち込みますよというふうな相談がはたして行なわれるのかどうかという、そのこと自体に私は疑問を投げかける。これが一つ。それが日本政府にもし相談が投げかけられてイエスかノーかおっしゃる。そのことを国民に公表するかどうか。私はそれを伺っているわけです。端的にその問題だけをお答えください。
  44. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 アメリカ日本との間に相互信頼がありますから、約束したことはアメリカも守ります。日本政府もそれについてはちゃんと、いままで言ったことを、そのとおりを言います。いわゆる非核原則、これは、はっきり非核原則を明らかにして、事前協議に対してはノー、かように答えます。これを国民にどうするかという、ただいまのマスコミはなかなか有能でございますから、政府が隠しても、おそらくそういうものは漏らすでしょう、必ず報道されるだろう、かように私は思います。
  45. 安井委員(安井吉典)

    ○安井委員 関連ですから、もうあまり多くは申しませんけれども、私は、いまの御答弁では、いま置かれているアメリカの核戦略体制、それからそれを効果あらしめるためのマクマホン法、そういうような中から、核の問題が日本に持ち込まれる、持ち込まれないというそのこと自体に、事前協議に大体されるのかされないのかということ自体にまず疑問を投げかけておいて、その疑問に総理は的確なお答えをしていないということだけ申し上げておきたいわけであります。  そこで、いま繰り返し繰り返し御答弁の中で言われるのは、日米の相互信頼ということ、信義ということばもお使いになりました。大統領と総理大臣が共同声明でそのことも明確にされたはずであります。その上、さっき久保委員が指摘されましたように、二十四日の本会議において、私どもはその効果に疑問を持つというために参加はいたしませんでしたけれども、ああいう決議が行なわれました。その相互信頼があるという事実が一つあって、ああいう決議が行なわれたというその上に、あなたはきのうの発言で、それにもかかわらず安保条約がある以上、核の持ち込み可能性があるとおっしゃったじゃないですか。相互信頼があって、決議があって、それでだいじょうぶだとおっしゃったが、その上に、それでもなお持ち込み可能性がある、そういうふうに言ったじゃないですか。だから問題なんですよ。いかに国会がどのような決議をしても、相互信頼があるといったって、あなたは口の裏からとうとう本音を言っているじゃないですか。どうなんですか。
  46. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 よけいなことを言うとだんだん間違うようですから、はっきり申しますが、事前協議があれば、どんな場合でもノーと言います。したがって御安心をいただきたい、かように思います。そのことをはっきり申し上げておきます。
  47. 安井委員(安井吉典)

    ○安井委員 私は、事前協議のあとの問題じゃないのですよ。持ち込む可能性がある、そう言いながら信頼関係があるんだという。信頼関係があって決議があって、そんなものは何もならぬのだ、やはり持ち込む可能性があるのだとおっしゃった。そこを問題にしているのですよ。事前協議という形になれば、これは処理の方法があるかもしれませんよ。その前段のあなたの考え方、あなたのかまえ、それを私は問題にしているわけです。
  48. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 その前段が、核が全然なければ問題はございません。しかし、核を持っている限りにおいては前段がある。前段があるから事前協議対象になる。そして事前協議ではノーと言う。それでもう問題は解決するのではございませんか。全然核を持たないところにプロバビリティー、可能性というものはない。しかし核を持っておるからこそ、そこに可能性というものがあるんじゃないですか。可能性が一〇〇%とは申さないですよ。何%か知らないが、とにかく可能性がある。そういう場合に、その可能性に基づいて事前協議をする。そのときに日本政府ノーとはっきり言う。これでもう問題は解決じゃございませんか。その問題は可能性があるとかないとかいうそこにこだわらないで、返事はどうなのか、最終的な返事は何か、私どもがその返事に迷っていたら、これはおしかりを受けても、また私どももこれは当然のことだと思いますが、これはいま申し上げますように、どんなことがあろうともノーと言うんだ、これは非常にはっきりしておりますから、どうぞ御心配なく御了承いただきます。
  49. 安井委員(安井吉典)

    ○安井委員 すぐにお答えをいただけるように、立っていていただいてもけっこうですが、私が申し上げているのは、事前協議ノーと言うのを、それが間違いだとか、イエスと言いなさいとか、そんなことを私言っているわけじゃありません。前段の問題で、信頼関係があるんだから心配はないと言っておきながら、核の持ち込み可能性があるということは、やはり信頼関係に、幾ら信頼関係があったって、これはもう欠けるところがある。国会が決議したって、それでもアメリカは持ち込むことがある、信頼関係は一〇〇%じゃない、欠けることがあるんだ、国会の決議もそんなのはだめなんだと、そういうことをあなたは前提にして核の持ち込み可能性がある、相談の可能性がある、こうおっしゃっているわけですね。
  50. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 可能性があろうとなかろうと、どんなことがあろうと事前協議の場合にはノーとはっきり言う、かように言いますから、これはもう国民は安心されてしかるべきだと思います。
  51. 安井委員(安井吉典)

    ○安井委員 それじゃ信頼性というものについて、私ども国民は疑問を持っていいわけですね。
  52. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 とんでもない話ですよ。信頼性があるからこそ私どもは日米安全保障条約を結んだのです。これが疑念があるような、疑わしい国ならばさような信頼関係は打ち立てられない。安全保障条約というのは、これはたいへんな信頼関係ですよ。だから、国民は疑ってもよろしいのですか、それには私は断固さようなものでないことを申し上げておきます。いま皆さん方も御心配になっていらっしゃる、私が声を大にしてお答えしておるのは、核の持ち込み、それが問題なんだろう。それがどんな場合においても一切持ち込みについては相談を受ければノーと、こう言っているんだから、この点は御安心ではないか、かように申し上げておるのです。それでもう、それをノーと言うから信頼関係はないんだ、かように言うのは非常な論理の飛躍じゃないでしょうか。その辺は安井君、平素の非常に論理的な、ロジカルな話をされる方が、これだけはちょっと私は了承できないように思います。
  53. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 安井君、関連質問でありますから、適当に結論をお願いします。
  54. 安井委員(安井吉典)

    ○安井委員 これで終わりますけれども、指摘しておきたいのは、私は論理的に言っているつもりです。だから、私は前のほうの総理が仮定をされている問題と、あとのほうの処理と、論理的にきちっと分けて質問しているのですよ。あとのほうの事前協議があった場合の処理については、ノーと言うのはあたりまえですよ。だから、私はそのことを言っているのじゃない。前段のほうですよ。いままで総理はこの沖繩国会のすべての論議を通して、日米安保条約事前協議と、それからいわゆる共同声明のあの核政策に背馳することなくという日米の信頼関係、そればかりをいままで金科玉条のようにして言っていたじゃありませんか。その口うらからきのうひょっと本音が出て、それだけあってもやはり持ち込み可能性があるとそういうことをおっしゃったから、私は追及しているわけです。信頼関係というものは、あれだけ信頼関係があっても、ニクソン訪中を三分前に知らせたり、あるいは繊維の問題に関しても、恥も外聞もないような仕打ちで日本にたたきつけてくる。そういう信頼性のなさというものを、私どもはいろいろ議論しましたけれども、きのうの論議の中で、そういうようなものにもかげりがあるということを総理自身がはっきり認められたと、私はそういうふうに受けとめてきのうの発言を問題にしているわけです。あと、これで問題はすべて終わったわけじゃありませんが、一応関連ですから、これで終わります。
  55. 久保委員(久保三郎)

    久保委員 あとから各党からも御質問があるそうでありますから、簡単に私は少し続けたいと思うのです。  先ほど総理お話の中にも、繰り返し核兵器を持っている国がある限りはという前提をつけて、事前協議の御説明をなさるわけでありますが、その持っている国がある限りはという、その持っている国とはいかなる国でしょうか。アメリカという国を限定しているのか、それともよその国もあるということで、事前協議の必要性を説いておられるのか、いかがでしょうか。
  56. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 いまさら私にお尋ねにならなくとも、核を持っている国は御承知のとおり五つあります。これは米、ソ、中、仏、英、五つあること、これは御承知のとおりであります。
  57. 久保委員(久保三郎)

    久保委員 そうしますと、先ほど来お話の中に出ている前提、事前協議の必要な前提というのは、核を持っている国がある限りはというのは、いま幾つかの国、五つの国、そういうものを前提に置いてお話しだと思うのですね。そうですね。――そうなりますと、きのうの美濃君に対する答弁は生きてくるのですね、いやだけれども危急存亡のときには云々ということが出てくるのは、そこの背景じゃないかと私は思うのですが、いかがでしょう。そうですか。
  58. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 安全保障条約がわが国の足らざるところを補う、こういう意味において私どもアメリカの核のかさのもとに安全を確保しておる、この事実は昨日美濃君にお答えをしたとおりであります。しかし、持ち込みということでなくとも、いまの核のかさ、これは技術の進歩によりまして十分達せられるのではないか、かように私は思っております。
  59. 久保委員(久保三郎)

    久保委員 総理お答えいただきましたが、私がお尋ねしているのは違うのですよ。いまお話しの、核を持っている国がある限りは事前協議が必要である、こういうふうな御答弁を繰り返しなさっているわけですね。そうですね。そうでしょう。そうじゃないのですか。――そうだとするならば、これは危急存亡のときが予想されるのだというふうに思うのです。たとえば、アメリカ以外の核保有国が日本を中心にして核兵器を使用する、あるいは使用する機運になったというときにはアメリカが持ち込んでくる、そういう場合には、きのうの美濃君に対する答弁のとおり、危急存亡のときには祖国を守る立場にある者としては云々、そのくだりがずっと生きてきて、これはイエスと言う、持ち込みを許す場合があるというふうに受け取らざるを得なくなってくるのでありますが、それはいままでの御答弁と反しませんか。いかがでしょう。
  60. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 少し私の答弁のほうが先ばしったかわかりませんが、私はただいまのところ、日本に持ってこなければ、持ち込みをしなければ日本防衛、安全確保はできない、かようにまでは結論を持っておりません。ただいま申しますように、たいへんな技術が進歩しておりますから、そこで核の持ち込みなしにもアメリカの核のかさのもとにある、いわゆる戦争抑止力は十分働く、かように私考えております。
  61. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 久保君に申し上げますが、あと、質疑者がありますので、適当に簡潔にお願いします。
  62. 久保委員(久保三郎)

    久保委員 十分わかっております。大事なことでありますから、しばらくお許しください。  そこで、いまのとおりだとすれば、佐藤・ニクソン共同声明のくだりでありますが、この八項、「総理大臣は、核兵器に対する日本国民の特殊な感情及びこれを背景とする日本政府の政策について詳細に説明した。これに対し、大統領は、深い理解を示し、日米安保条約事前協議制度に関する米国政府立場を害することなく、沖繩の返還を、右の日本政府の政策に背馳しないよう実施する旨を総理大臣に確約した。」こういう声明は、結局事前協議制に対するあいまいさが出てくるということじゃないですか。なるほど御説明はあった。日本国民の、言うならば核兵器に対する考え、感情を説明はして、理解は示したが、事前協議についてはここに書いてあるとおり。これではどうもあいまいさが多分に残ってくるじゃないですか。  だから、私は先ほどから美濃君の発言をそのままきょうも申し上げているとおり、近くアメリカにいらっしゃるのですから、核持ち込みは一切断わる、アメリカも了解してくれと、両方で共同声明を出してほしいのですよ。相互信頼に立つ限りはそうだと思うのです。総理が繰り返し繰り返し事前協議があってもノーですよ、断わりますよということを言っていらっしゃる限りは、これは当然アメリカに対しても要求されてちりともおかしくないし当然だと思うのですね。くどいようですがお答えをいただきたいし、それからなるほど、先ほどの核を持っている国がある限りは、のくだりは、御説明のとおり、核兵器のいわゆる技術の進歩もありますから、日本に持ち込まなくても抑止力のかさの中には入っていられるということになりますが、それについては、美濃君がきのう詳細に質問されましたが、これも多分に疑問が残っております。そういうことが許されるのかどうかという問題です。むしろこの際、日本核兵器によってきちっと守られる国ではない、非核原則をとる立場からは、他人のふんどしで、と言ってはたいへん表現が悪いが、相撲をとるようなことは、日本国民としてははっきり言ってとるべきでない、ほんとう非核原則を守るならば、そういうきちっとした態度でいくべきだと思うのですが、これもあわせてお答えいただきたい。
  63. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 もう先ほど来、大きい声でずいぶん明確に答えたように思いますが、事前協議されればこれはもうはっきりノーと言う。それがどんなときであろうとノーと言う。これで御安心をいただきたいと思います。それで日本の国の安全は十分確保されるのか、こういうお尋ねがあれば、それはだいじょうぶ安全は確保される、こういうことでございます。また、各国とも核兵器の進み方によりまして、むしろこれでは国際的な戦争、この危険は人類を滅亡する、こういうような意味で、核保有国もたいへん慎重でございます。したがいまして、米ソ二大――核の強大な保有国もSALT等の話し合いを始めておる、こういうような状況でございますから、私はただいまのところではその心配はないように思います。  また日米共同声明について、いろいろことばについてのお話がありましたが、その中も含蓄のある書き方をしているので、あるいはやや少し端的に書いてないということで誤解もあるかのような御説でございますが、私はこれで十分双方の信頼関係に立って、しかも今回の沖繩祖国復帰も実現できる、かように考えておりますので、そこらは何ら疑念のないことだ、かように思うわけでございます。  第三点は――大体以上の点で尽きるかと思いますが、まあ問題は、私どもがどんな場合でも核の持ち込みについてははっきりノー、これを言うことが確信が持てる、国民の皆さん方も疑念を持たれない、政党は違っても日本が核戦略の一翼をになう、こういうようなことがあってはならない、かように私は思いますので、その点をはっきりさせておきたいと思います。ありがとうございました。
  64. 久保委員(久保三郎)

    久保委員 まだ終りませんのでありますが、先ほどの共同声明も、お話しのとおりたいへん含蓄に富んでおりますので誤解があろうかというお話でありました。誤解じゃないのでありますよ。先ほど来申し上げたように、ジョンソン国務次官が、背景説明の中ではこの事前協議、核についての権限というか権利を保留しているということをはっきり明言しているんですね。そこに持ってきてきのうの御答弁でありますから、これはどうしてもだれもほんとうにする人はないんじゃないかという気持ちが多分にあるわけです。繰り返してもどうかと思うのでありますが、きょうの私らがいま質問に立ったゆえんのものは、きのうの危急存亡のくだりに立っているのでありますから、どうかお忘れなく、これをどういうふうに国民に氷解して今後説明されるかは、ことばじゃなくて態度で実施をされることが私は一番大事だと思うのです。一言だけ最後に申し上げて、私はきょうは終わりにします。
  65. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 別に答弁は要求されないようですが、私は、先ほど来申し上げましたように、昨日の美濃君に対する答えで不十分な点は、ただいまの久保君とのやりとりで明白になったと思います。きょうの久保君とのやりとり、これを基本的に御理解いただきまして、核についての私どもの内閣、これが持っておるもの、またおそらくこれはずっと自民党である限り同じ考え方だろうと思いますが、これをはっきり確認しておきたいと思います。
  66. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 正木良明君
  67. 正木委員(正木良明)

    ○正木委員 特に委員長並びに委員各位の御好意によって発言を許されたわけでありますが、きのうの美濃委員に対する佐藤総理の発言がきわめて不穏当でありまして、不穏当というよりも大問題でありまして、この点について総理真意というものをここにただしておきたいと思うわけであります。  そこで、まず第一にお伺いいたしておきたいのでございますが、佐藤総理がいまの二人の、久保さんとそれから安井さんとの応酬でいろいろなことをおっしゃいました。全然解明されていないのは、総理は片言隻句というふうにおっしゃいましたけれども、なぜこのようなことをわざわざ答弁の中でおっしゃったかということであります。全般的に見て、非核原則を順守し、並びにそれを中心とした国会決議を尊重するということを厳粛に声明なさった総理が、事前協議においても必ずノーと言うということを言いながら、なぜこのようなことをおっしゃったか、その真意というものをまずお聞きしておきたいと思います。
  68. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 そこらのところがいろいろ問題であるから、久保君からもいろいろただいまお尋ねがあったのでございます。私は問題を、時間もたいへん経過しておりますから、簡単に申し上げますが、結論として、どんな場合でも事前協議についてはノーとはっきり言う。これはどんな理由があろうと、ということをつけ加えておきます。
  69. 正木委員(正木良明)

    ○正木委員 時間のことを非常に御心配になっていらっしゃるようでございますが、私は、いま質問を始めたところでありまして、時間のことはどうぞ御心配なく、沖繩問題に関連してもきわめて重要な問題でありますので、とっくりとお答えをいただきたいと思います。私はもうしつこい聞き方はいたしませんから、明快にお答えをいただきたいと思います。  ただ、きのうの発言だけをとらえてみると、片言隻句という、私はこういう表現は妥当じゃないと思いますが、しいて片言隻句というふうに強弁なさってもいいかもわかりませんが、しかし、いまも話がございましたように、かつて中曽根防衛庁長官もこれに似たようなことを発言なさっておられます。同時にまた、日米共同声明、すなわち一九六九年十一月の佐藤・ニクソン共同声明ジョンソン国務次官背景説明の中にも、またニクソン共同声明の中にも、またサイミントン委員会におけるところの発言の中にも、それぞれアメリカ側が考えておる日本の本土並びに沖繩における核の持ち込みということについては、総理と同じような発言がずいぶん見受けられるわけであります。したがいまして、私どもといたしましては、あくまでも核に反対する立場からいって、きのうの総理ことばだけを、それだけを取り上げるというわけにはまいりませんで、これのよってきたるところの背景というものについて、十分な考慮がめぐらされていかなければなりませんし、そこから引き出された結論は、現在は非核原則を順守すると総理は言明なさり、また国会決議を尊重すると言明はなさってはおるけれども、はたして実際においては危急存亡のとき、ジョンソン国務次官は緊急事態ということばを使っておりますが、このときに核の持ち込みが行なわれ、それに対していわゆる前向きに承諾を与えるということもあるかもわからないということが予想をせられるわけであります。そういう意味において、私は、きのうの発言はそれだけではなくて、よって来たるところから導き出された結論は、きわめて重大な発言として受け取らざるを得ないし、また国民もそのように受けとっているに違いないと思うのです。そういう意味から考えまして、従来のそういう経緯を否定する意味からもきのう発言なさったこのくだりにつきましては、前後のことばから考えましても全く言わずもがなのことであります。無用なことばであります。したがって、これは佐藤総理においてお取り消しになることが最も賢明なお考え方ではなかろうかと私は痛切に感じますので、このことをお尋ね申し上げたいわけであります。
  70. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 正木君からもたいへん御親切な御注意でございます。先ほど久保君にもその点でずいぶん深く話し合ったのでございますが、きょうの久保君と私とのやりとり、これを正確な、また正式なものと考えてください、かように申しておりますから、ただいま、昨日の美濃君に対する私の答弁中、その点でどうも疑念を持つような点はこれは取り消された、かように御了承をいただきたいと思います。
  71. 正木委員(正木良明)

    ○正木委員 取り消しだということでございますので、それはけっこうであります。  さて、そこでこれに関連しての話でございますが、佐藤総理はきのうの発言の中で、もしこの全世界に核兵器がなくなったらという意味のことをおっしゃっております。したがいまして、この核兵器の撤廃ないしは核軍縮というものについてどのようなお考え方をお持ちになり、また具体的に国連等においてどういう行動を起こそうというふうにお考えになっているか、この際あわせてお聞きをいたしておきたいと思います。
  72. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 いままでのところは核の拡散防止条約、これを調印しておりますが、これもまた批准をそのうちに受けたい、かように思っております。これが一つ。  もう一つは、あらゆる核の爆発実験、核実験に反対をしておる。こんなものは一切やめるべきだ、かように言って、核のこれからの開発、これを停止することを提案しておる。これによりまして、御承知のとおり日本の核についての態度、これは非常に明確だ、かように御了承をいただきます。
  73. 正木委員(正木良明)

    ○正木委員 今度の中国の国連復帰によりまして、国連の安全保障理事会の常任理事国は、くしくもこの五大国すべて核保有国となったわけであります。いわば核においては核大国といわれる五カ国が常任理事国となったわけであります。したがいまして、経済力等は別の問題と考えましても、まあ大国と中小国というふうに世界を分けますと、これは核を持っている国、持っていない国というふうにも分けられるのではないかというふうに考えます。そういう意味から申しまして、中国がかねてから核を先に使わないという宣言を何べんもいたしております。同時にまた私どもは、私どもというのは中国でありますが、中国は、中小国の立場に立つということをやかましく何回か世界に向かって宣言をいたしております。私は、これを核を持てる国、持たない国というふうに分けますと、結局中国はみずからは核を持っておるけれども、核を持たない中小国の側に立って、核兵器を全廃するという方向に向かっていきたいという考え方をそのまま述べているのではないかというふうに考えるわけです。したがいまして、だからといって、いわゆる核軍縮並びに核兵器の撤廃というような問題を、核を持った大国にまかしておくわけにまいりませんし、同時にまた、中国にだけまかしておくわけにはまいりませんでしょう。したがってわが国は、いわゆる非核保有国のリーダーとして全世界の核兵器の軍縮、いわゆる核兵器の縮小ですね。同時にまた核兵器の撤廃ということについて、これは非常に息の長い、根強い、ねばり強い戦いをしていかなければならないと思いますけれども、核大国五カ国を全部向こうに回すということではなくて、少なくとも、中国はそのことについて味方をしようという言明をいたしておるわけでありますから、そういう意味での核軍縮、核兵器の撤廃という方向にもっと積極的に、中小国を代表しいわゆる非核保有国を代表して、日本がその活動を活発にしていかなければならないのではないかというふうに考えますが、その点いかがでございますか。
  74. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 御鞭撻を得まして、ただいま核兵器がなくなるようにわれわれも一そう努力したい、かように思います。
  75. 正木委員(正木良明)

    ○正木委員 まあ、一そう努力をするというのは、いつでもそれで済んじゃうんですけれども、実はそれでは困るのでありまして、一そう努力をするという場合には、一そう決して努力をなさらないのが過去の実績でございまして、この点、私は非常に不安な答えであると思います。  ただ、総理、聞いていただきたいのは、さっき明確に昨日の発言をお取り消しになりまして、いわゆる核に対する態度というものを少なくとも本日は明確になさいました。しかし、この核の問題というものは、特に核兵器の問題というのは、またそれが特に日本の本土並びに沖繩基地における米軍の核兵器の問題というのはなかなか疑惑が解けないわけであります。なかなか疑惑が解けない。それはなぜかと申しますと、この核軍縮とか核兵器の撤廃というものにそれこそ非常に根強い、そうして精力的な活動をしないで核兵器のなくなるわけは私は絶対にないと思いますし、しかもそういう努力が、実際問題として、日本政府がおやりになっているのでは私はまだまだ足りないと思っているわけでありますが、それで核兵器がなくなることを期待なさっている。その反面、核兵器がなくなるということを大きく期待しながら、総理はいつも非核原則を尊重すると言いながらいわゆる核の抑止力というものを非常に強調なさるわけです。核兵器をなくすという方向と、そうして現実の問題として核の抑止力を認めるという立場と、まあ私は現実の政治の上で自民党の政策としては無理からぬところはあるとは思いますけれども、しかしこれはもう全くの矛盾でありまして、核の抑止力ということを事実あなた方がお認めになり、しかも認めるだけではなくてそれを前面に強く押し出して強調なさる限り、私は日本核兵器の撤廃という動きについては、これを希釈されざるを得ないだろうというふうに考えるわけです。そういう非常に矛盾をはらんだ問題がある。しかし、現実政治の上においてはどうしてもいたし方ないというならば、少なくとも国連におけるところの核軍縮に対する活動というものの先頭に日本はもっと強く立たなければならぬし、活発に行なっていかなければならぬ、このように私は思うのであります。  要するに、いま国民の前に、核兵器の問題の疑惑というものを一切なくするためには、これは各野党が政府に迫っておりますように、本土にしろ沖繩基地にしろ、核兵器が存在するかしないかということの確認というもの、査察というものを行なわない限り、これは絶対に安心することはできないと私は思うのです。それも、査察もすることはできない、しかも相手の信頼にだけたよるという形でこの問題を処理しようとなさる場合には、この点についての国民の疑惑は一切断つことはできません。したがって、私は、そういう問題、いわゆる査察の問題、しかも安保条約におけるところの核の抑止力の問題、これを、査察は否定し、そうして抑止力だけを認めるという形で政策が進められていくとするならば、私は、この問題についての国民の疑惑というものは永遠に解けないのではないかというふうに考えます。したがって、どうしてもやはり核兵器に対する国民の疑惑というものを解いていくためには、私は、いわゆる日米安保条約によって核の持ち込みのきわめて危険性のある、疑いのあるアメリカに対して、佐藤総理ニクソン大統領との間に何らかの形の、核を日本本土並びに沖繩に持ち込まないという確言がなくてはならないと私は考えるのです。そういう点についていろいろ状況を、私の考え方を申し上げましたけれども、この点について結論としておっしゃっていただきたい。  なぜこのことを申し上げるかといいますと、一月に総理アメリカへおいでになるわけです。しかも、この間衆議院においては非核決議が行なわれたわけでありまして、これを院の決議を背景として、強くアメリカに迫まることもきわめて可能であろうと私は考えますので、そういう意味において、ニクソン大統領と何らかの、この核の持ち込みを一切しないということの約束をなさって、それを内外に宣明なさることが必要ではないかというふうに考えるわけであります。
  76. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 先ほど久保君にはっきり、どんな場合でも、どんなことがあろうとも、持ち込みについての事前協議、これにはノーだと、こう言って返事をすると申しておりますから、私はこれでもう事足りると思っております。正木君もお聞き取りだったと思います。  そこで、ただいま正木君が、中国が核を持っている、しかしみずからは進んでこれを使用することはしないという。だから、これはやはり中国自身も、核の抑止力というものを見ているんではないだろうかと私は思います。かような意味が、やはり核を持たない国としてはたいへん心配なのです。だから、その核抑止力というものをやはりどこかに求めなければならない。これが日米安全保障条約であると、かように御理解をいただきまして、しかし、それかと言って、日本に核を持ち込むということは私どもは許さない。いまの技術をもってすれば、ただいまの状態では、日本に持ち込む必要はない、こういうような状況でもございます。われわれは、アメリカの核抑止力にたよって、そうしてそのもとで平和を享受していると、かように私ども理解しております。
  77. 正木委員(正木良明)

    ○正木委員 それはよくわかりました。最初にお答えになったのが私の結論のお答えではないかというふうに思いますが、なお確認の意味でもう一度申し上げますが、十一月二十四日の非核決議、ここで総理は「非核原則を遵守することは、私がすでに繰り返し申し述べているところでありますが、本日、本会議における決議の採択にあたり、政府として非核原則を遵守する旨、あらためて厳粛に声明するものであります。」「また、核の持ち込みに関しましては、本土、沖繩を問わずこれを拒否することは、政府が従来より明らかにしている政策でありまして、この機会に、さらにあらためてこれを確認するものであります。」このようにおっしゃっていらっしゃるわけであります。私は、これは非常に重要な問題でありまして、決議そのものの意味というものもきわめて重要な意味を持ったものであると私は思います。同時にまた、それに対する政府の決意表明も、きわめて厳粛に行なわれたものであると確信をいたしております。したがって、いわば国会の総意として、非核原則並びに核兵器に対する考え方が明確になったわけでありまして、これは、単に政府の政策を日米共同声明で大統領が理解を示したということを越えて、国会の決議ということになったわけでありますから、少なくともこの国会の決議、いわば国民の総意というものをアメリカ側にそれを示して、ニクソン大統領佐藤総理との間の、共同声明を出されるのかどうかよくわかりませんけれども、しかし共同声明を出されるならば共同声明を、また共同声明をお出しにならないならばこの二人の合意の何らかの文書というものを、この訪米のときに発表なさって、その文書の中には、一切日本本土並びに沖繩に対して核兵器を持ち込むことをしないという、このことを明確にしていただきたい。このことが私どものむしろ総理に対するきわめて強い要請であります。その点について再度お答えをいただきたいと思います。
  78. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 ただいま公明党からの強い要請を承りました。私は、来春早々のニクソン大統領との会談にあたりましては、年内に各党党首と会談をいたしまして、皆さん方の御注文を十分承るつもりでおります。ただいまその一端としての御要請があったと、かように私受けとめておきます。
  79. 正木委員(正木良明)

    ○正木委員 それでは、非常に前向きにそのことを受け取っていただいて、努力をしていただけるものと考えて、私の質問を終わりたいと思います。
  80. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 門司亮君。
  81. 門司委員(門司亮)

    ○門司委員 私は、ごく率直に二、三の点だけを聞いておきたいと思います。先ほどから、やりとりだと言われておりますから、私はやりとりだということばを使っておきますが、やりとりの中をずっと聞いてみますと、佐藤さんの心境というものがはっきりしないのですね。あなたの心境の中で一番私は懸念しておるのは、片言隻句ということばを使われたということです。これは国民はそうは受け取りませんぞ、危急存亡のときにああだこうだということは。あなたはこれを片言隻句だとお考えになっているかもしれませんが、国民は、少なくとも総理大臣が国会で、核の問題について危急存亡のときにはあるいは持ち込むかもしれないというような疑惑を受けるようことばを使ったということは、国民立場から考えてみますると、そうは私は考えないと思う。したがって、この際、いままでのやりとりの中ではそれを取り消すようなことを言ったんだから、それでそのことは取り消したんだというよう立場に立ってお話をされておりますけれども、私は、国民全体に対する疑惑としては、総理大臣が国会で言ったことを取り消すということについては、総理大臣のこけんにかかわるというあなたの心境は私はあろうかと思いますよ、あろうかと思うが、ここはひとつ国民全体に安心を与えるということで、片言隻句あるいは国家危急存亡のときにあれこれと言ったことは、この際取り消されたほうが、あなたのためにも私はよろしいと思いまするし、日本国民も安心するのじゃないかと考えるが、もう一度その点の心境を伺っておきたいと思いますが、どうですか。
  82. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 もう昨日の美濃君に対する私の答弁と、きょうの久保君に対する答弁と、久保君に対してはよけいなことを申していませんから、非常にはっきりしている。これで私の答弁は尽きている。したがって、きょうの久保君に対する答弁を私の、また内閣の正式な考え方とお受け取りをいただきたいと、かように申しておりますので、昨日の話は、もうただいま、ちょっともう三人目になりますと、お気の毒ながら、久保君の話で非常にはっきりしているから、これもう御了承いただきたいと思います。
  83. 門司委員(門司亮)

    ○門司委員 それは非常に私は不穏当なことばを聞いたのであります。三人目であろうと八人目であろうと、国会議員としてものを言っているのですよ。そんなことをあんたが言うんなら、これから何時間かかるかわかりませんが、聞きますよ。そういう国会議員の発言を頭から侮辱しているよう考え方があるから、あなたは不用意なことばをときどき使うのですよ。これは佐藤さん、あんたもひとつ国会政府立場を考えてくださいよ。党が小さいとか大きいとか言っているものでもありませんし、いろいろ言われておりますけれども、それなら、あなたの言う核の抑止力というのは一体どういう意味なんですか。最初から聞き始めますよ。
  84. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 戦争というものはやはり力の均衡だ、こういうことがしばしばいわれます。私は、核戦争、そういうことは、やはり核攻撃をすれば核報復を受ける、こういうようなことがたいへんおそるべき結果を招く、こういうことで、ただいまのような核戦争抑止力、こういうことが言われるようになってきた、かように考えております。この点はおそらく門司君も御承知のことだろうと思います。
  85. 門司委員(門司亮)

    ○門司委員 そのことはわかっております。  かさというのは一体何のかさです、これは。かさというのは物体ですよ。物ですよ。日本アメリカの核のかさをかぶっているからそれでよろしい、こういうことですか。
  86. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 アメリカの核のかさというのは、これは通俗のことばだと思っております。私は日米安全保障条約、それがやはり戦争抑止力の一端になっている、こういうことを申し上げたいのでございます。アメリカ自身が核の保有国である、日米安全保障条約を締結している日本に対して、これはやはり攻撃は簡単にできない、こういうことを考えておる、かように申して、いわゆる戦争抑止力がそこにあるということであります。
  87. 門司委員(門司亮)

    ○門司委員 いまの戦争抑止力ということばと核のかさということばは、非常に大きな開きのあることばなんですね。核が戦争の抑止力になるということは、社会通念の上からそういうことがいえるのであります。核のかさに安全を求めておるということは、そういう社会通念から離れた具体的の問題にならざるを得ないのであります、かさという一つのものが出てきました以上は。  そこで私が聞きたいのは、いまのお話ようアメリカは核を持っている、その核は世界の戦争の抑止力になるのだという社会通念だけで片づけようとするわけには私はいかないのじゃないか。そういうお考えなら、何もこの核のかさなんとよけいなことは言わなくともいいのです。社会通念として核が戦争の抑止力になるのだということだけお知りになっているというのなら、かさなんてよけいなことは私は言わなくてもいいと思う。それなら、アメリカ日本のために核を使うということが万一あるということが考えられますか。それが考えられない限りは、かさの下にいるというわけにはいかぬでしょう。
  88. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 日米安全保障条約からこれはまた読み直す必要があるかもわかりませんが、御承知のように、日米安全保障条約では、日本の安全を確保してくれる、そこにアメリカの協力がある、かように私は理解しております。
  89. 門司委員(門司亮)

    ○門司委員 総理答弁はそういう答弁だけでよろしいと私は考えない。私の聞いておりますのは、日米安全保障条約があるからよろしいんだということをあなたは言われておりますけれどもアメリカの核を使うということが、日本のために、佐藤さんのことばをそのままとれば、日本危急存亡よう事態がかりにできたとしたときに使うアメリカの核というのは、これは日本のために使ったということになれば、日本が核を持たないといっても、アメリカの核に依存しているということであって、アメリカがいつ使うかわからないでしょう。アメリカ自身が日本に持ち込まなければ、何も核を使ったからといったところで、日本事前協議対象にならぬのですよ。アメリカの領土の中から核を使用した場合に、これは核の運搬は幾らでもできるはずですから、私は核自身というものがあるとかないとかいうよりも、一番大きな問題は、運搬する機械を持っているか持っていないかということが非常に大きな問題であって、そういうことを考えていきますと、あなたのよう考え方では、これはあぶなくてしようがないですね。アメリカさんはちゃんと核を持っているし、核を運搬するものを全部持っているのです。ただ、日本に持ち込まないということだけで、日本が核を使わないという保障はどこにもないと私は思う。こういうふうに考えてくるとすれば、どう考えても核のかさだとあなたの言われることは一向われわれには理解ができない。ここに国民一つの大きな不信感があると私は思う。アメリカに軍事的にすべてを依頼している。いわゆる従属国家といわれるのはその辺からきているのじゃないですか。核の使用すら日本のためにアメリカが――強要されることはないでしょうけれどもアメリカがかってに使うかもしれない、そういうことを考えてくると、どうしても、核のかさだということは、私はこれも総理大臣のことばとしては取り消してもらいたいのです。そして、日本はいかなる場合でも核は使わないという、いわゆる戦争を否定いたしております憲法を持っておる日本が、アメリカの最も大量殺戮の兵器である核の下に安全を保つなどということは、総理大臣のことばとしては、これまでしばしば使われておりますけれども、私はこの機会にこれを取り消しておいていただきたいと思うのです。これはどうなんです。私はこれを取り消しておいてもらったほうがよろしいと思うのです。
  90. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 これはそう簡単には取り消せません。大事なことですよ。私は抑止力ということを申している。抑止力は戦争をやらないものなんだ。その抑止力がちゃんと働く限りにおいては戦争にならない、こういうことであります。いま門司君が例としてあげられたことは、戦争になって核兵器が使われた、そのことを言われるようであります。私は、そういうことをいま言わない、そこまでは言っておらないのです。戦争にならない、そのならないための核兵器というものの効能をただいま考えておるということであります。
  91. 門司委員(門司亮)

    ○門司委員 私が聞いておりますのは、昨日の美濃君の質問に答えられたことが原点にあるのですよ。あなたは危急存亡のときとか言われておりますが、そのときはどうも核を持ち込ませるのではないか、いわゆるアメリカが核を持ち込んだらどうかというときに、あるいはノーと言わないでイエスと言うのじゃないかというような印象を与えたからこういう問題になっているのであって、何も私自身が発言していま言っているわけではありませんで、あなたの気持ちがそうではなかったかということを言っているのです。そういうふうにずっと考えてきますと、いまの核のかさにということば自身というのが非常に大きな問題であろうと私は思います。しかし、いろいろ時間もございましょうから、私は長くは申し上げませんが、私に対するきわめて侮辱的なというよりも、党に対するきわめて侮辱的なことを言われたことのついでに、ひとつ取り消しておいてもらいたいということを私は強く要求いたします。同時に、私はこの際、国会で核を持ち込まない、つくらないというような、非核問題の決議をいたしました。これとは別に、政府自身が何か日本国民に、戦争はしないのだ、核は絶対に持ち込まないのだという安心感を与えるような方法はほかにございませんか。
  92. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 別に民社党をどうこうしたということはございませんが、その点は、さっきのことばがお気にさわったらそれを取り消すことはちっともやぶさかではございません。ただ、利の申し上げたいのは、昨日の美濃君に対する答弁の段階と、きょう久保君に私が答えたこととずいぶん事態が変わっておりますから、その原点を昨日の状態でお話しになってもそれは困る、こういうことを申し上げたいのであります。やはり私の立場も十分理解していただきたい。これは、民社党の立場立場、私の立場立場でございますから、その辺は十分御了承いただきたいと思います。  さらに、その次に、国会において厳粛に政府が声明をした、このことをさらにもう一度何かはっきりさす方法はないか、こういうことでありますが、国会の委員会で私が、あらゆる場合に、どんなことがありましても事前協議にはノーと答えます。これは非常にはっきりしておるので、それより以上国民にまた別な声明などする必要はないように思っております。これは国会が最高の審議機関でございますから、その場所でやること、これにはもとらない、かように御了承いただきたいと思います。
  93. 門司委員(門司亮)

    ○門司委員 それならば具体的に申し上げておきますが、いま総理が言っております、核を持ち込まないという最大の根拠というのはどこにあるかといえば、私はニクソンさんとの話し合いの中から、大体そこに最近ではそういう原点を置いておられると思います。それを信用せよと言われるのがあなたのことばであって、だからもう一つ進んで、アメリカとの間に、核は持ち込まないんだというような、条約だか協定だかわかりませんが、国民のすなおに納得のできるような方法は講じられませんか。ただ、あなたとニクソンさんとの話がこうだったからといったって、あなたはいつおかわりになるかわからぬのですよ。そうなんですよ。私は、やはり国と国との間にそういうものをはっきりさせるというのなら、もう少し明確な――総理大臣がいつかわろうと、前の総理大臣はそう言ったかもしれないけれども、私はそうは考えないというような大臣が出てこられると困りますからね。国民全体に安心を与えるにはやはり国と国との間にはっきり――安保条約のあることはわれわれも知っておる。われわれも安保条約の問題については、これはやめてもらいたいと考えておる。しかし、そこまでここで議論しなくても、私が考えてもらいたいということは、いままでではどう考えても、片言隻句などが出てくると、また核の問題で議論しなければならぬようなことになりますので、そういうことのないようにするには、ほかに手段と方法がないかということです。いま沖繩の問題を議論いたしておりますけれども、あなた方、沖繩の核が返還時までになくなるなんということを言っておりますけれども、これはうそなんです。なくならないでしょう。アメリカとの約束をはっきりしてから二カ月以内に返ってくるんでしょう。二カ月以内にあの核が全部、どんなのがあるかわかりませんが、撤去ができるという保障はどこにもないのですよ。批准されて、批准書が取りかわされなければ効果のないことですからね。それから二カ月のうちにこれが返ってくるということになりますと、二カ月の間に核がなくなるという、撤去するという目安なんですね、実際は。事実上の問題として、これが容易に行なえるとは考えられないのです。あの毒ガスを運ぶにもあれだけの時間がかかりましたからね。そう簡単にはいかないと私は考える。そういうことを考えると、国民に安心を与えるためにはひとつ進んで、先ほどから、党首会談をやるからそのときに意見をいろいろ聞いて、こうおっしゃっておりますけれども、そういうことを待たないで、いま疑惑を受けておる、国民が非常に心配している核の問題については、別途のアメリカとの、恒久的にということばを使えばあるいは少し行き過ぎかもしれませんが、少なくとも憲法の九十八条が示しておりますように、外国との条約は尊重しなければならないという憲法を日本は持っておるのでありますから、外交の中でこれが確約のできる、いわゆることばでも取りかわしたから、声明だからそれでいいんだというんでなくて、もう一歩進んだ、国民の安心のできる協定なり条約なりで、これをひとつ、持ち込まないということを明確にする必要がこの際ありはしないかと私は考えるのですが、あなたはそういう考え方には立たれませんか。
  94. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 私は、いま門司君のお話ですが、国会における決議があり、その決議に対して厳粛に政府が声明した。また昨日来、きょうは非常にはっきりと、どんな場合でも持ち込みについては事前協議を受ければノーと言う、これは実ははっきり国会の場において声明をしておりますので、これを信頼していただきたい、かように思います。  なお、ただいまの沖繩事態につきましては、返還後において核がなくなる、こういうことについて私どもも、何らかさらに確認する方法はないか、ただ、大統領と総理だけの約束では事足らないと言われるのだが、もっと何か具体的にそれを説明して、そうして事態について安心を与えるような方法はないか、そこらも考えてみようということで、外務大臣もいろいろくふうしておる最中でございます。私は、ただいま言われるようなことも一つの方法だろうと思いますけれども、そればかりでもございませんし、私は、いままでのところでは、大体政府としては一応考えられる道を考えたように思っております。なおこの上さらにどういうことが考えられるか、いろいろくふうもいたしますけれども、どうもいままでのが最善ではないだろうか、かように思っております。
  95. 門司委員(門司亮)

    ○門司委員 終わりますが、先ほどから聞いておりまして、いまの最後の、といいますか、具体的にどうこうと言われますけれども、その中で一つ私がひっかかるのがあるのは、総理がそういうことを言われます前提となっておるのが、沖繩の核が返還後にないから、そのないということについて十分に査察するか、何らかの方法で国民に安心を与えるような方法がないであろうかという、こういうことに一応苦労されておるということを私ども了承をするわけでありますが、さらにそれを進めてもらって、いま申し上げましたように、将来とも核は日本には使わないのだ、日本には置かないのだ、日本にはないのだという安心感を国民に与えることは私は必要だと思う。それにはさっき申し上げましたように、ただ口約束だけ、総理大臣がこう言ったからそれでよろしいのだということだけでは、私どもとしてはなかなか安心ができない。やはり国民全体が安心できるには、国際間で信頼のできる取りきめというものがこの際必要ではないかということであって、あなたのほうでは、安保条約があるんだから、安保条約安保条約と言われるけれども、私は安保条約があろうとなかろうと、そういうことに、この際それを持ち出されることは非常に迷惑である。私ども何もここで安保条約があるからどうのこうの言っておるわけではありません。問題は核の問題であって、いわゆるこの最も使ってはならない核であって、先ほどからあなたが言われておるように、危急存亡のときに、万一のときにアメリカが核を使ってごらんなさい。それの報復手段というのは一体どこに来るかというようなことを考えてくると、ほんとう国民は安心をしていられない。そこでこれに安心を与えるためには、さっき申し上げましたように、憲法の条章にもちゃんと、永久に日本政府を縛ることのできる、永久ということばを使えば行き過ぎかもしれませんが、かなり恒久的に日本の国の方向を縛ることのできる手段としては、総理の確約よりも、私はやはり条約なり協定なりというようなもののほうが効果的であり、国民が安心するんじゃないかということが考えられる。同時にそのことが、世界に対する日本の平和に徹するという一つの行き方にもふさわしい一つの方向ではないかということが考えられる。同時にそういうことが、非核問題についての、いわゆる核拡散防止の批准等に対しましても効果的なものではないかということが考えられる。そういうことを総合いたしまして先ほど一応申し上げたのでありますが、この点については、ひとつ特に総理も考えを及ぼしていただきたい。そうして日本がいま一番心配しておりますのは、何といっても核を持ち込み、戦争につながるのではないかということでございますので、その点はひとつ総理も了解しておいていただきたい。このことを最後に申し上げまして、もし総理の御発言があるなら、三番目だから答えなくてもいいというようなことを考えないで、ひとつお話しを願いたいと思います。
  96. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 具体的な御意見でございますから、この際にはっきり申し上げれば、たいへんけっこうだ。それよりも事柄が事柄ですから十分考えろ、かような御意見でもありますので、よく慎重に検討してみることにいたします。
  97. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 畑和君。
  98. 畑委員(畑和)

    ○畑委員 私は法務関係の問題につきまして、いままでのいろいろの質問とはずいぶん違いまして、きわめてじみでございますけれども、しかもきわめて短い、四十五分という持ち時間でございますので、広範にわたりたいとは思いますが、それができません。一、二の点について質問をいたしたいと思います。  まず、協定第五条による裁判の効力の問題について質問をいたします。裁判の効力の存続あるいは承認、これにつきましては、民事裁判と刑事裁判とを区別して考える必要があろうと思います。その理由は、民事裁判は人の基本的人権の問題ではあるとは申しましても、その内容が主として財産権に関する問題である。これに対して刑事裁判は、基本的人権に関するものの中でも、人の生命あるいは身体あるいは自由に関する問題であるからであります。  民事裁判に関しましては、協定の五条の一項及び二項におきまして、沖繩における米国民政府の裁判所及び琉球政府裁判所のやりました確定裁判、またこれらの裁判所に係属する事件につきまして、これを承認し、あるいは引き継ぎ、かつ引き継いだ裁判を引き続き裁判をして、そして執行すること、これを規定いたしております。これは、これらの裁判所に対して、日本国の主権に基づく裁判ではないにもかかわりませず、何らの留保なくして同一の効力を認めることでございます。このことは、外国裁判所の判決に効力を認めることであり、わが国の主権が侵害されるのではないかというような疑問もございます。しかしながら、民事の判決は当事者の私法的な関係を確定するもので、その判決の効力を認めても、当然にはわが国の主権を侵害するというものではないと思われます。  わが現行民事訴訟法の第二百条は、この前提のもとに立ちまして「外国判決の効力」として、一定の条件をきめてその効力を承認して、またその執行についても、同法の五百十四条で、外国判決の適法かいなかの判定による執行判決、これだけによって執行を認めておるのがいまの現状であります。今度沖繩復帰に伴いまして、その日米間の協定で、前に述べましたように、民事判決等の効力を前述の民事訴訟法の規定にかかわらず、何らの留保なくしてこれを認めても、わが国の裁判主権の問題は生じない、それは国家間の合意に基づく譲歩である、こういうことで、この措置は今度の措置だけに限らず、奄美群島の場合にも同様であります。あの第五条でもその処置がとられております。したがって、それ自体には問題はない。  ところがこれに反して、協定第五条の三項、四項、これは刑事裁判の効力についても民事裁判と同様に扱っております。表現は若干違ってはおります。けれども大体同じような扱いであります。刑事裁判の効力を民事裁判と同様に扱ってよいかどうかということが、私が問題にするところであります。  なぜと申しますならば、最高裁判所が昭和二十三年の三月十二日の大法廷判決で申しておりまするように、人の生命は非常に貴重である、全地球より重いといっておりますが、人の身体の自由に関するものであるからであります。そこで、罰則の適用については、法律なければ刑罰なしというマグナカルタ以来の人間の英知に基づく罪刑法定主義の大原則、これを保障しておるからであります。この原則は、各文明国の憲法に規定しておるところでありまして、わが国の憲法にも、同じく三十一条にこれが規定されております。人の生命、身体の自由は最大の尊重をしなければならないことから、国家といたしましては、自国民に対する刑罰権の放棄を認めない。と同時に、自分の国の国民に対する外国の領土主権に基づく刑罰権の行使も、わが国では、刑法第二条国外犯、第三条国民の国外犯、それから第四条の公務員の国外犯について、刑法第五条のただし書きの範囲で、外国判決の効力の問題として、その刑罰権の執行の事実を単に事実としてだけ認めておるだけであります。  ところが、今回の協定は、沖繩における民政府及び琉球政府の裁判所の判決をそのまま認めるわけであります。このことは、奄美の復帰に伴う場合の協定第六条とたいへん違っておる。今度の協定は、締約国間の合意に基づく協定でありますが、これが外交辞令である限りは、国民を拘束しないから問題はないけれども、しかし、国民を拘束するということの問題になりますと、事は重大である。  沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案の第四章第二節の刑事関係第二十五条、これは「罰則に関する経過措置」ということで規定されておりますが、これによると、沖繩において行なわれた法律あるいは判決の効力を全面的に認めております。このようなことは、私は、罪刑法定主義の原則のもとに、とうてい認められるべきものじゃないというふうに考えておるのでありますが、この点についてひとつ政府の考えを承っておきたい、こう思うのであります。まずこの点について、担当大臣である法務大臣、ひとつ簡単にお答えを願いたい。
  99. 前尾国務大臣(前尾繁三郎)

    ○前尾国務大臣 ただいまお話しのとおり、民事の場合と刑事の場合は非常に違うと思います。しかし、刑事にいたしましても、一般的な法益も守っていかなければなりません。その点につきまして、われわれが裁判権を引き継いだということは、もしそれを引き継がなかったとしましたら、引き継ぐまでには、無法状態といいますか、非常な混乱が起こる。その点は、奄美大島の場合と今回の場合と全く逆の行き方をいたしましたのも、もう二十数年間にわたりまして、一応の法秩序ができており、また、沖繩で行なわれておりますところの刑法その他につきましても、いわゆる内地との一体化というので引き継いでいってもいいような状態が現出してきておるわけであります。そこで、われわれといたしましては、いままで行なわれておりました沖繩法律、これは率直にいいまして、裁判機構その他に多少の違いはありましても、いわゆる罪刑法定主義にしましても、あるいはいろいろな刑法の諸原則にしても、先進国といいますか、現在行なわれております日本国内の諸原則を十分貫いたものである。したがって、この際は、それを今回の法律によりまして、その法律を内容として、今後裁判権を行使していったほうが、より法秩序が安定される。また、率直にいいまして、政令によって引き継がないものもあるわけでありますが、それによって非常に一般の人の権利が侵害されるということのないような配慮もいたし、また、引き継ぎました後におきましては、手続法はすべて日本国内の現在の法律によって行なわれるわけであります。したがってまた、再審なりあるいは恩赦というよう規定も適用されるわけでありますので、それによってそうみんなの権利を侵害するということがない。むしろそれよりは無秩序のあるいは無法状態を現出しましたほうがより国の公益から考えますと問題があるのではなかろうか。その点、奄美大島と現在のようにもうすでに非常に経済活動なり社会活動の活発な沖繩本島とは違えて考えていったほうがより妥当ではないか、こういう考え方に基づくものであります。
  100. 畑委員(畑和)

    ○畑委員 いまの法務大臣のお答えによりますと、奄美の場合との違いとして、奄美の場合は非常に期間が短かった。今度の場合は相当長くて、しかも法秩序が奄美の場合よりもずっと現在まで安定して保たれておった。したがって、そうした法律の秩序の安定状態をそのまま引き継ぐほうがむしろよろしい、こういうようお話ようでありました。  ところで、これは筋論としてはあくまで私は奄美の方式がよろしいと思います。これは日本の裁判主権というものがあるのですからね。沖繩はなるほどわれわれ潜在主権を持っておった、そしてほとんどの構成は全部日本人である。ところが、例のサンフランシスコ条約第三条によって、残念ながら立法、司法、行政の全部または一部がアメリカの施政権のもとにゆだねられたというようなかっこうになっております。しかし、あくまで主権は日本の国にあったはず。しかしながら、それが妨げられておった。これが今度の場合回復するわけであります。したがって、いまの法律秩序そのままのほうがむしろよろしいと言われましたが、筋から申しますと、あくまで裁判主権というよう立場に立ちますと、いままでの沖繩は、幾ら民政になって琉球政府自体の意向が大体通っておったとは申しますけれども、最高の主権者はやはりアメリカの弁務官であります。したがって、ある意味では軍政であります。したがって、その中にはいろいろサンマ事件というようなああいう不愉快な事件などもあったぐらいで、たまたま講和条約が発効するまでの間置かれた日本本土の場合と――それ以上であります。その日本の場合におきましても、やはりあの期間におきましてはそうした問題がたくさんあった。裁判に関する干渉が激しかった。したがって、その間に死刑になったようなものについては特別に再審の理由をもっと緩和して、そしてもう一度裁判をする機会を与えてやろうじゃないかというよう考え方で、われわれ社会党はかつて再審特例に関する法案というものを出したことがございますけれども、やはり非常に干渉されておっただけに、完全な主権ということがなかった。琉球の場合も、私は、最近の場合は日本のその当時よりももっと制限のもとにあったと思うのです。したがって、筋から申しますと、やはり奄美でやられたと同じような方式で、民事についてはこれを承認して、刑事については第六条で全然いまと違った規定をしております。現に服役中の者あるいは事件が係属中の者に対しては、「日本国の法令及び手続に従つて刑事裁判権を行使することができる。」こういうふうになっておった。ただ、証拠関係等については、いままでの裁判等について「相当な信頼を置くものとする。」こういう程度でありまして、あくまで刑事裁判権は日本が持つ、こういうことであります。それで、またその特別措置法のほうにおきましても「民事訴訟等に関する経過措置」として、第七条に民事関係のものは載っていますが、それにカッコをして「(刑事に関するものを除く。)」としてあります。これは明らかに当時の奄美の場合の措置法におきましても、刑事の問題は別である、効力をそのまま受け継いでいない、こういうことになる。これはあくまで日本の主権という立場からすると当然だと思う。ところが、政府が今度のような協定あるいは措置法、こういうものをきめたことは、これはあくまで便宜主義だと私は思うのですよ。これは裁判のやり直しなんかやるとずいぶん時間もかかる、金も非常にかかる、人も要る、こういう点からの便宜主義だと思う。法律秩序がそのまま大体維持されるのが望ましいということも理由でありますけれども、裁判をやり直すと、相当金がかかったりなんかしてたいへんだというような配慮だと思うのでありますが、しかし、これはあくまで主権の問題ということからいたしますと、これは間違っておる。奄美のほうがはっきりしておる、日本立場がはっきりしておる、こう私は思う。総理も、沖繩の問題が解決しない限り戦後は終わらない、こういういわゆる名言を吐かれましたが、このことによって沖繩は返ってくるということになるのだろうと思いまするけれども、その場合には、あくまで協定についても奄美と同じように筋を通して、いままで日本の国の潜在主権があった、ただこれがアメリカの施政権によって妨げられておった、それが復活をするのだというよう立場から、その間日本の主権あるいは裁判権、刑事法規等が行なわれていなかったのだという立場で、新しく日本の主権によって裁判をやり直すということが私は望ましかった、こう思うのです。そういう点からいっていまのやつは間違いだ、こう考えるのですが、その点、総理いかにお考えになりますか。協定を締結された責任者の総理、いまの裁判主権という立場から見て、どうもアメリカのあれをそのまま認めたような感じが私はしてならない。やはりこの点ははっきりして、それがなかなかたいへんだということになれば、それだけの行政的な措置を講ずればよろしかったのだ、私はそう思います。総理、この点については基本的にはどうお考えになるか。
  101. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 先ほど法務大臣からこの扱い方について詳細に説明をいたしました。私は、政府考え方は先ほど法務大臣からお答えしたとおりだ、かように考えております。  ただいま言われるように、もちろん本来日本人である、潜在主権はある、こういうよう立場からものごとを考えるにいたしましても、やはり返還というこの大事態に対していかに処すか。奄美大島の先例があるじゃないか、かように仰せられますけれども、どうも事態はそのときと今回はだいぶ違っておるようです。問題は広範でもあるし、その影響するところが大きいという立場で、法秩序を維持するというか、やはり秩序維持に重点を置いて今回はあと始末をする、こういうので、さきほど法務大臣が答えたとおり、どうも畑君の考え方とやや結論が違っておりますけれども、私は、それにいたしてもやはり一応制度そのものは承認しても、全然救済方法がないわけでもないのですから、これは返ってくれば、当然手続上の救済方法、それは講ぜられる、かよう理解しております。
  102. 畑委員(畑和)

    ○畑委員 私は奄美の方式によりましても、やり方によってはそんなにくどいことはないと思うのです。事件が相当多い関係もございますけれども、しかし、これは外国判決の規定、これによって大体はまかなえる、国外犯等の規定によって相当まかなわれると思うのです。それで、それに該当しないものがある、したがってそういうものは奄美方式じゃぐあいが悪いじゃないか、こう言われるのだろうと思うのでございますが、国外犯で処理する場合、それはそれでよろしい。それ以外の場合におきましては、やはり日本の裁判によって裁判をする、やり直しをやる、再裁判をする、こういうことが必要ではないかと私は思うのです。どうしてもそれが、いま言ったようなことで、なかなかめんどうであるというようなことであるといたしましても、何らかの方法を講ずる必要があると思うのです。再審の場合なども日本法律によりますと、御承知のように、再審の窓口というのは非常に狭いのです。御承知のとおり、なかなか再審の要求というものは入口で断わられてしまう。だから、先ほど申し上げましたように、われわれは日本の本土でやはり占領状態にあったときの死刑囚の場合だけは特例を考えてやるべきではないかというので、かつて提案をしたのですが、このままだと、やはり沖繩の場合にも相当私は問題があったと思うのですよ。沖繩の裁判官の素質というものは、本土の裁判官の素質に比べたら私は確かに劣ると思うのです。そういった司法関係の方々――そう言っては失礼だけれども、しかもああした占領状態にあるところで、サンマ事件等も起きるようなところで、裁判をそのまま引き継いで効力を認めるということは危険である、日本の主権を侵すことになりはせぬか、こう思うのです。これはいままで奄美の場合にも最高裁がその立場でありますから、裁判所もそれに見合うようなやはり外国判決、国外犯といったような形でこれを処理してきておる。まあ数は少ないからたいした問題はなかったと思うけれども、そういう形でやってきておるのです。  それで、日弁連でかつて沖繩復帰対策に関する要望書というものを出しておるのです。これは一つの提案なんですが、それによりますると、「刑事確定判決に対して、復帰後六カ月以内に被告人から申立があったときは再裁判をする。」こういうふうにしたらいかがだ、こう私は思ったのです。全部が全部でなくて、本人のほうから復帰後六カ月以内に申し立てがあったときには再裁判をする。「検察官は前項の規定にかかわらず、死刑または無期の懲役、禁錮の判決」これは重大な事件ですから、それらの「判決を受けて拘留中の者につき」――それも済んじゃったものは別として、「拘留中の者につき職権で再裁判を求めなければならない。」もう一つ、「刑事再裁判の場合に適用すべき実体法および証拠法は犯罪時に有効であった法令とする。ただし、日本の法令に規定のない罪については、この限りでない。」こういうふう九要望書をかつて出しておりますが、これは最小限にして必要欠くべからざる措置ではないかと思います。この点、こうしたやり方でやるべきだったと少なくとも私は思うのです。そうすれば裁判主権を侵すようなこともない、日本のメンツもちゃんと立つ。こういうことで、こうあるべきだと思ったんですが、この点について日弁連の要望書の、いま私が読み上げました意見、これについての政府の見解はどうか、その見解を承りたい。
  103. 前尾国務大臣(前尾繁三郎)

    ○前尾国務大臣 先ほど来申しておりますように、やり方には二つの方式があると思います、奄美大島の場合と沖繩の場合と。ただ、そこで、沖繩の場合におきましても大部分は日本人の裁判官がやったわけであります。また、感情的にはまあ外国の支配ということがありますが、現実問題としては、私は、いわゆる内容においては一体化をされてきたわけでありますし、また再審をただいまお話しのようなことにやるということは、率直に言ってやはりやり直し方式に通ずるものである。ただいまお話しのように、現在の日本国内の再審は非常に狭いもののようでありますが、しかし、非常に再審の要求のあるような、あるいはまた非常に著しい違法なり妥当性を欠いたというような裁判は、再審請求があれば、必ずまた再審に適格するんじゃないか、そういう意味で私はそう御心配になるような点はないんじゃないか、かように考えておるわけであります。
  104. 畑委員(畑和)

    ○畑委員 そういう場合には再審の制度があるから、大体沖繩の場合などには再審の制度を活用してそれで済む場合が多い、こういうお話ですが、これは法務大臣はしろうとですから、そう言われますが、これは沖繩であろうと日本であろうと、なかなか法規はそのとおりですからね。再審の事由というのは非常に狭いんですね。そこで、私はそういう日弁連の提案をそのまま提案したわけですが、まあこの場になっちゃどうしようもないということなのか、御賛成が得られない。ところで、再裁判をいま言ったとおり六カ月以内に申し立てをした場合だけですよ。その再裁判をだめだ、これは賛成できないということであるといたしますならば、いまの再審制度を活用してもらう。ただし、いまの日本の本土に行なわれておる再審制度でなくて、その再審事由を、先ほど私が申した、社会党がかつて提案をした例の再審特例に関する法案と同じように、ああした占領状態におった沖繩の人たちの人権を守るために、いいかげんにされた裁判があるいはあったかもしらぬというようなことで、あるいは米軍の干渉等がいろいろあったというようなことを顧慮して、再審の事由をもっと緩和をして人権の保障に遺憾なからしめるというようなことで、救済の措置を講ずるような配慮をなぜされなかったかということです。それを一つ承りたい。そのくらいの配慮はあってしかるべきだ。何でもかんでも沖繩のは日本人の裁判官がやっているんだからそれでいいんだというんじゃない。私は、あくまで最高の責任者は米軍の高等弁務官だと思うんですよ。その点をやはり重要に考えてやらなければ、日本の裁判主権というものの権威に関する、私はそう思う。それをあっさりとアメリカさんの、全部よろしゅうございますということは間違っておる、こう私は思うのです。再審の事由の緩和あたりでも考えなかったかということをちょっと聞きたい。
  105. 前尾国務大臣(前尾繁三郎)

    ○前尾国務大臣 そのいきさつについては刑事局長から説明させます。
  106. 畑委員(畑和)

    ○畑委員 簡単でよろしゅうございます。
  107. 辻政府委員(辻辰三郎)

    ○辻政府委員 沖繩におきます確定の刑事裁判の救済の方法につきまして、先ほど来法務大臣から御答弁があったわけでございます。これは本土と同じように、まず再審制度を活用するということでございますが、これについてかつて再審特例法案というのを社会党がお出しになりました。この関係はいかがかということでございます。これにつきましては、刑事訴訟法の四百三十五条の六号でございますが、これが今回の場合あるいは現在の本土の場合におきましても再審事由として最も活用されている事由でございます。これは御案内のとおり「有罪の言渡を受けた者に対して無罪若しくは免訴を言い渡し、刑の言渡を受けた者に対して刑の免除を言い渡し、又は原判決において認めた罪より軽い罪を認めるべき明らかな証拠をあらたに発見したとき。」と、こういう条項になっておりますが、御提案は、この「明らかな証拠」を「相当の証拠」というふうにしてはどうか、特に沖繩の場合についてはそういう措置を講じてはどうかという御提案であろうと思いますけれども、私どもはこの現在の四百三十五条六号の事由で救済は十分できると考えておるわけでございます。沖繩の裁判と本土の裁判とを区別してその救済方法を考えますことは、結局は沖繩の裁判の権威を否定し、ひいては沖繩の法秩序の安定というものをそこなうものであろうと考えておるわけでございます。
  108. 畑委員(畑和)

    ○畑委員 しかし、再審というのは日本においてもなかなか開始をされないんだよ。それは沖繩においても同じですからね。沖繩においてだけそれの特例を設けるということになると沖繩の裁判の権威というか、いままでの効力、そういったものについて権威がかえってそこなわれる、自家撞着だと、こう言われるのだけれども、それなるがゆえに私はむしろ私の説を主張したい。しかし、議論していると時間がなくなっちゃうから、この問題はこれだけにいたします。  その次に進みます。せっかく最高裁もお見えになっておるので、最高裁のほうに対する質問に移ります。  最高裁に聞きたいのは、この特別措置法の十五条において、米国民政府上訴審裁判所及び米国民政府民事裁判所の事件に関する手続の費用に関しては最高裁判所の規則に委任しております。ところが、これは憲法八十四条及び財政法第十条に租税法律主義というものを規定しております。その解釈として、法律できめることを要するものは、租税に限らず、事実上強制賦課の性質を有する訴訟費用等、司法上の手数料及び行政上の手数料は、租税と同一に取り扱われるべきものであるというふうに学者も申しております。また現実にも刑事あるいは民事の訴訟費用については法律ではっきり規定しております。本条において最高裁判所の規則に委任したことは、結局憲法の精神及び財政法の趣旨に違反してはいないか、こういうことが私の質問です。なおまた憲法七十七条、目前高裁規則制定権、これにもいろいろ場合が三つばかり述べてあるのですが、これの中の一つにも入らぬのではないか。ただ委任されるんだから、委任するのが法律だから、規則制定権は最高裁は限られたものしかないけれども、しかし、それ以外でも法律が委任したんだからいいんだというような解釈もあるかもしれない。けれども、憲法七十七条との関係もあるし、また法律できめなきゃならぬ、こういうようなことにもなる、こういうふうに思う。それが一つ。  関連いたしますからもう一つお聞きいたします。もう一つの問題は、同じようなことでありますけれども、六十三条の規定で裁判所職員の定員の問題。この問題の規定、これまた委任をされておりますね。これはやはり憲法の精神――憲法には最高裁のことしか書いてない。下級裁判所の裁判官や何かの定員については別に定めると、裁判所法にも第五条に書いてあるんですね。そういうことで、いずれにしろ裁判所の職員についての定員に関する規定というのは、これは法律でなければならぬ、こういうふうになっておるわけです。ところが、これを「当分の間、……最高裁判所規則で定める」、こういうふうにしてあるんです。このこともやはり定員である以上は、憲法並びに裁判所法の規定からいたしまして、あくまで法律でなければならぬと思う。最高裁判事何名、あるいは下級裁判所の判事何名というような裁判所職員定員法という規定がございます。ところが、それと別に、沖繩については当分の間、最高裁判所規則できめる、こうなっておるのです。それよりもいっそのことはっきりと裁判所職員定員法を変えて、員数を書いたらいいじゃないかと私は思う。ところが、最高裁の規則に委任をする、一種の政令委任です。これは私はやはり問題だと思うのです。  この二つの問題について、これまた最高裁の規則制定権の条文にも違反している。これはまあ考えようによってはそうでないということは簡単に言えるかもしれませんけれども、いずれにしろ法律でなければならぬというたてまえから、委任することが可能なのかどうか、いけないのじゃないかというふうに思います。この二つの点をひとつ簡明に答えてもらいたい。その上でまたお伺いします。
  109. 瀬戸最高裁判所長官代理者(瀬戸正二)

    ○瀬戸最高裁判所長官代理者 まず前段の民事事件の費用についてお答えいたします。  民事事件の手続の費用をどのように定めるかということは、裁判所の審理の手続と密接に関連しております。特にアメリカ政府裁判所の事件につきましては、たとえば復帰後におきまして当事者から訴状、準備書面等の訳文を新たに提出させるということが必要になろうかと思います。したがって、これらの審理手続につきまして特別の経過措置を定める必要がございまして、これらの手続との関係におきまして、その費用を訴訟費用に組み入れるかどうかというような問題が生じてくるわけでございます。ただいま御指摘の特別措置法第十五条第二項はこのような趣旨から、アメリカ政府裁判所の事件の引き継ぎに伴いまして、当然に必要とされる手続の費用についての経過措置は最高裁判所規則で定めるべきことを明らかにしたわけでございます。司法手数料につきましては、強制課徴金の実質を有することにかんがみまして、これについて定めをするについては、憲法第八十四条の精神が尊重されなければならないことは言うまでもありません。しかし、今回規定されます翻訳費用等は、司法手数料ではなく、制度の引き継ぎに伴い当然に必要とされる細目的、技術的な訴訟費用の経過措置でありまして、これにつきまして法律規定することは立法技術上の観点からも相当ではなく、これを最高裁判所規則に委任することにしても何ら憲法には反しない、こう考えている次第であります。特に今回の最高裁判所規則におきましては、アメリカ政府の裁判所から引き継ぐべき事件、これは現在のところわずか一件にすぎませんが、この事件につきまして、新たに手数料を徴収するというような措置は予定していないのでありまして、憲法第八十四条の問題は生じない、このようにわれわれは考えている次第であります。  定員の関係につきましては、総務局長から答弁があると存じます。
  110. 長井最高裁判所長官代理者(長井澄)

    ○長井最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  立法の問題でございますので、法務省当局からお答えいただくのが筋かと存じますが、御指名がございましたので、私からお答え申し上げます。  憲法第七十七条は、御承知のように、最高裁判所の内部規律の問題その他について規則制定権を与えてございます。規則制定権は憲法の規定上は限られておりますが、このほかにも、司法権に関する事項に限りまして、法律の委任がございます場合には規則を制定することができると解するのが通説及び判例の示すところでございまして、すでに簡易裁判所判事選考規則、司法修習生に関する規則等、委任によりまして制定の先例がございます。定員に関する事項につきましては、最高裁判所の裁判官の数は法律で定めるべきことが憲法に明定されてございますが、それ以外の下級裁判所の裁判官その他の職員につきましては、法律で明定することを憲法上の要請とはされておりません。裁判所法の規定の中で別に法律で定めるということになっております。この点につきまして、先ほども御説明申し上げましたように、通説、判例により規則制定権に委任をしても憲法に違背するものではないということに相なり、先例もございますので、このたびの規則に対する定員関係の委任も憲法に違背するものではない、このように解しておるわけでございます。  なお、「当分の間」と申しますのは、奄美の先例の場合には、約六カ月の間に事件の実態を見ましてこれを定員法に組み入れておりますので、引き継ぎました暁には、早急に機構の規模を明確にいたしまして、あらためて法律で手当てをしていただくことになることと存じます。
  111. 畑委員(畑和)

    ○畑委員 反論もしたいのですけれども、時間がございませんので、ほんとうの最後に、今度は総務長官にちょっとお伺いします。  特別措置法百五十六条、雑則の「政令への委任」の規定ですが、これはもう全般について最後に、たいていの場合、何でもかんでも政令に委任できるようなふうに私たちは考えるのですが、ほかにももちろんたくさん政令委任がありますが、ここで一番最後にまとめて百五十六条で「政令への委任」の項目がある。これは非常に包括的な白紙委任的な規定じゃないか、政令委任の場合でももちろんいろいろ――政令というのは一体どういうものかというと、法律の施行の細則をきめたり、あるいは具体的に委任をされた場合に、法律から委任された場合についての規定だったり、相当具体的ですね。ところが、この百五十六条の規定はきわめて包括的な白紙委任だというふうに考えるわけです。しかも、一体どういう場合なのかというような場合もほとんど明らかにされておらぬというような状態においては、まさにどうも白紙委任だ、何でもかんでも政府が政令でやれるのだといったよう規定じゃなかろうか、私はこういうふうに思うのです。この点についてひとつお答えを願って、それで私の質問を終わりたいと思います。
  112. 山中国務大臣(山中貞則)

    山中国務大臣 これは昨日も議論になりまして、ごく軽微なものであって、この法律の中でもし大きなものがあるとすれば、琉球政府国民健康保険をどのよう復帰前に決定されるであろうかということが一番大きなものとして念頭にございました。しかしながら、その他についてもそう大ざっぱに言っておるわけではありませんで、ほとんど書いておかなければならないものは法律に書いてございますし、政令等にゆだねた部門も明らかにしてあるわけでありますので、ここで言う包括したような感じの委任については、必要ならば事務当局で、少しこまかなことになりますが、この際御説明をいたさせたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  113. 畑委員(畑和)

    ○畑委員 ではひとつしてください。
  114. 田辺政府委員(田辺博通)

    ○田辺政府委員 百五十六条に基づきましていろいろな政令案を目下作業中でございますけれども、これは、大体御説明いたしますと、昨日も申し上げましたように、本土の法令と全く同じような同種類の制度が沖繩にある、こういうものにつきましても、あたりまえだと思われるようなものも法令上はちゃんと引き継ぐ必要があります。たとえば許可、免許等の処分、これをみなすという措置は、五十三条によりまして措置をするわけでございますけれども、そういった処分そのものではない、たとえば登記簿を登記簿とみなすあるいは戸籍を戸籍とみなす、そういった帳簿とか一定の事実を――そのほかにも医療法等によりますところの診療録であるとか、あるいは古物営業法によりますところの品ぶれであるとか帳簿とか、そういうものも全部みなすというような措置を必要といたします。それからこれに類似いたしますが、免許そのものではないが、免許を得るための資格あるいは受験資格とか、そういった人の地位と申しますか、それに関するものがございます。これも同様な制度が沖繩にある場合には、一定の学歴なり経験なりあるいは講習等を終了した者につきましては一定の資格を与える。たとえば医師の国家試験あるいはその予備試験の受験資格であるとか、あるいは琉球政府の職員としての採用名簿に登録された者は、復帰後、国家公務員となる場合の国家公務員の試験を合格したものとみなすというような措置が必要になってまいります。この例もかなりたくさんになるわけでございます。  それから昨日も例にあがりましたような、やや本土の法令制度と沖繩の制度が違っておる、全く同じような同種類でないというものにつきまして、本土の法令の一部の規定を適用延期する。その代表的なものは、昨日も申し上げました名称使用制限の規定を一定期間延期するとか、昨日も問題になりました農産物検査法の所定の規定を適用しないというような問題がございます。  それからこれは、本土法をそのまま適用しても何も問題はない――問題はないのでございますが、復帰前に生じた事実につきましても本土法を適用したほうがよろしい、そういうものがございます。たとえば復帰前に発生した災害に対しまして激甚災害の関係の法律がありますが、これをどうやるのだ。正確にいうと、それは復帰後に発生した災害からではないかというような議論もございますが、しかし、それでは酷であろう、復帰前に発生した災害についてもその適用がある、そういうよう規定を置くとか、同様な天災融資法の問題もあります。  そのほか、なお従前の例によると、しばらくは沖繩の制度をそのまま置いておいたほうがよろしい、こういうものがございます。これは復帰前に生じました事実につきまして、大体原則として沖繩の制度によって処理をする。この例に当てはまるのが、適当かどうかわかりませんが、沖繩にも株式会社がございますが、これはドルが一株の額面金額の単位になっております。わが国の商法では五百円をもってその単位といたしております。したがいまして、すでに発行している株が五百円未満の株である場合には、その会社はやはり従前のそのドルを円に換算した金額に相当する額面の株式を発行することができる、そういったよう規定が必要になってくるわけでございます。
  115. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 中野明君
  116. 中野(明)委員(中野明)

    ○中野(明)委員 私の質問に入る前に、建設大臣が過日の連合審査で非常に重要な発言をなさっておりますので、このことについて真偽をただしたいと思います。  まず、正確を期するために、私どもは議事録のでき上るのを一応待っておったわけでありますが、過日わが党の新井議員が土地収用に関しまして適用範囲を質問した中で、建設大臣はこのよう答弁しておられますが、「それは法律でございますから、時代の変遷とともに変わるのは当然じゃなかろうかと私は思います。憲法それ自身がやはり変わったのでございます。その憲法のもとにおいて、その解釈でもって新しい収用法が変わるのは当然と思います。」このように述べておられるのですが、そのとおりでございますか。
  117. 西村国務大臣(西村英一)

    ○西村国務大臣 私へのいまの御質問でございますが、この前の説明で不足したりあるいは表現がちょっと悪かったために誤解を受けておるように思われますので、私は、憲法が旧憲法から新憲法に変わったのであるから、それに基づいて新しい土地収用法ができたんだという趣旨で言ったわけでございます。それがちょっと表現が悪かったように思われます。したがいまして、新憲法のもとにおきまして自衛隊は認められておるのでございまするから、したがって自衛隊の施設はこの土地収用法の対象になる、こういうつもりであったわけでございます。
  118. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 新井彬之君から関連質問の申し出があります。これを許します。新井彬之君。
  119. 新井委員(新井彬之)

    ○新井委員 建設大臣にお伺いしますけれども、この土地収用法は新憲法のもとに策定された法律ですね。お答え願います。
  120. 西村国務大臣(西村英一)

    ○西村国務大臣 さようでございます。
  121. 新井委員(新井彬之)

    ○新井委員 そうすると、ただいま答弁がありましたように、憲法が旧憲法から新憲法に変わったから、土地収用法の内容が変わるのだということはおかしいじゃありませんか。
  122. 西村国務大臣(西村英一)

    ○西村国務大臣 そういうことを言ったわけではございません。私は、新憲法に変わったのでありますから、新憲法は新憲法としての内容を持っておるということでございまして、旧憲法とは内容が変わった、こういうことでございまして、あなたの質問とちょっと取り違えたか食い違ったようなところがあるのでございまして……。
  123. 新井委員(新井彬之)

    ○新井委員 新憲法のもとに土地収用法ができて、その提案理由の説明のときには、軍事施設等は入らないということははっきりしておりますね。それを御存じですか。
  124. 西村国務大臣(西村英一)

    ○西村国務大臣 その土地収用法の、旧収用法から新しい収用法に変わったときにいろいろな説明があったということについては、法制局長官から前に詳しく申し上げられて、前の収用法の中には国防、軍事その他若干のものが入っておったけれども、これは新しい収用法については適当でなかろうという疑義がございます。したがって、それに基づいて、それを削除して、新しいこの土地収用法ができたのでございます。
  125. 新井委員(新井彬之)

    ○新井委員 要するに、いま建設大臣が言っておることは全然わからないのですけれどもね。結局、新憲法ができた後にその土地収用法というのができたわけですね。そしてその軍事施設等は、そういうようなものについては、これはその土地収用法は適用しないのだということははっきりしておるわけでしょう。だから、要するに憲法というのは、新しい憲法ができて現在まで変っておるわけじゃありません。したがって、その憲法の解釈がどんどん変わって、そしてその適用が変わってくるということであれば、これは大問題だと思うのですね。そういうことについてどのようにお考えですか。
  126. 西村国務大臣(西村英一)

    ○西村国務大臣 私、憲法につきまして、そういう軍事上のことは、古い、旧憲法時代の軍というような思想のものは、新しい収用法において削除されたのでございます。しかしながら、新憲法において認められておる自衛隊のものは、これは自衛隊はそれ自身新憲法で認められておりまするから、それは土地収用法の対象になる、こういうことを言っておるのでございます。
  127. 新井委員(新井彬之)

    ○新井委員 提案理由の説明がそういうことで削除されておる。それからまた、三十九年にこの土地収用法の一部改正案があったときにおいても、公共施設ということについて河野大臣が答弁をされております。そのときといまとその答弁が変ってきた理由は何ですか。
  128. 高辻政府委員(高辻正巳)

    ○高辻政府委員 大体大臣からお答えがございましたが、いまのお尋ねもございますので、私は補足して申し上げますが、土地収用法、御承知のとおりに「国防其ノ他軍事ニ關スル事業」というのがございまして、これは旧土地収用法にあったわけでありますが、それが新憲法になりましてその適用というものはもうあり得ないことであったわけです。そこで、新土地収用法をつくりましたときにそれを削ったというのは、これはきわめて当然な成り行きだったと存じます。その後自衛隊というものができたわけでありますが、その自衛隊というもの――これは自衛隊というものについての規定はむろんございません。どこを見てもございませんが、毎度申し上げることでありますが、三十一号に、国が設置する庁舎その他直接その事務の用に供する施設という規定がございます。防衛庁設置法等をごらんになればわかりますように、防衛庁は三軍の自衛隊の管理、運営に関する事務をつかさどる。その所掌事務を遂行するために営舎、庁舎、演習場その他の施設を設けるというのが所掌事務に書いてあります。したがって、それを全部合わせていえば、まさに三条三十一号の、国が設置する、直接その事務の用に供する施設というものに当てはまるではないかというのが、従来御説明を申し上げていることでありまして、これは最近お話がありましたのでお答えしておるわけではなくて、もう十八年も前にその見解が出ておる、その見解を申し上げておるわけであります。  それからもう一つ、いまおあげになりました公共の中にはそういうものは入らぬではないかという、かつて大臣の答弁があったという御指摘がありましたが、これは公共用地の取得に関する法律案の審議の際の、その「公共」に入るかどうかの議論であったわけでありまして、その議論をいまの問題に当てはめるのは無理ではないかと考えております。
  129. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 新井君に申し上げますが、関連質問は割り当ての時間の範囲内でもって御質問願うことに申し合わせがなっておりますので、お含みの上御質疑を願います。
  130. 新井委員(新井彬之)

    ○新井委員 とにかくこの前、私は非常に短い時間の中で、この沖繩の問題について一生懸命に質問をしたのでございますけれども、その中で、先ほど中野委員のほうから読みましたけれども、「法律でございますから、時代の変遷とともに変わるのは当然じゃなかろうかと私は思います。憲法それ自身がやはり変わったのでございます。その憲法のもとにおいて、その解釈でもって新しい収用法が変わるのは当然と思います。」これはほんとうに何が言いたいのか。要するに私は納得ができないわけです。この件については、私は今後もいろいろ質問をしたいと思いますけれども、関連質問でありますから、このぐらいできょうはおいておきますけれどもほんとうにこれはもう大きな問題、このように私は思っております。
  131. 中野(明)委員(中野明)

    ○中野(明)委員 いま新井委員が言われましたように、これはたいへんな重大発言だと私は思います。ですからこの問題は、一応留保して本題に入りたい、このように思います。  では本題に入りますが、政府沖繩復帰に際しまして、核抜き本土並み、このことを大前提に大宣伝をしておりますが、過日来、委員会で問題になっております核の疑惑だとかあるいは米軍の基地の状態、はたまたVOA、極東放送の存続を認めるなど、これらの問題は本土並みでない典型であると私は思います。  そこで私は、郵政関係の放送関係について質問をしたいと思いますが、VOA、極東放送の存続については、電波を監理している郵政当局も最後まで反対であった、このように私どもも承知をしておるのですが、その反対を押し切って最終的にやはり決断をされたのは総理自身じゃなかろうか、このように私は思いますので、決断されるに至った総理の心境と申しますか、弁明といいますか、あらためてお尋ねしておきたいと思います。
  132. 福田国務大臣(福田赳夫)

    ○福田国務大臣 私がかわってお答え申し上げますが、御指摘のように、この問題は交渉の過程において最後まで決着がつかない。それはどこに事情があったかと申しますと、わが国は統一電波行政をやっておる。この行政の方針を守りたい。それに対しまして、アメリカにおきましては、このVOAというのは日本ばかりじゃない、沖繩ばかりじゃないのです。各地においてやっておるのであって、アメリカの施策を解説し、アメリカ側のニュースを提供するという平和的な施設である、これが返還と同時に消えてなくなるということははなはだ遺憾である、こういう主張でございまして、この二つの両国の主張というものが最後まで対立をしたのでありますが、考えてみますと、沖繩の返還、これは急がなければならぬ、そういう事情もあります。また、VOAの問題だけにこだわっておるということで返還が立ちおくれるということになりましても、これは本土一億の国民はもとより、沖繩県民の意向にも沿いかねる、こういうふうに考えまして、とにかく両方で歩み寄りまして、五年間を限ってこの放送を認めましょう、こういうことにいたしたわけであります。まことに、沖繩返還を実現をするというたてまえから申しましてやむを得ざる措置であった、かように考えます。
  133. 中野(明)委員(中野明)

    ○中野(明)委員 二言目には沖繩返還がこのことによっておくれては困るというような言い方をして、米軍の基地も、あるいは土地収用の問題も、あるいはまたVOA、極東放送の問題も、そういう答弁に終始しておられるわけであります。ほんとうに電波を考えてみましたときに、私どもも日ごろから逓信委員会で電波行政を議論しておるわけでありますけれども、国内法を改正して特例措置まで設けてこのVOA、極東放送の存続を認めるということは、電波法の権威の上からも電波行政をないがしろにすると、私どもはこのように受け取る。非常に遺憾であります。こういう放送局の存続を認めるわけにいかないというのがわれわれの立場であります。  そこで、あらためてお伺いをするのですが、今回の特別措置法の百三十二条、この百三十二条ではいろいろのことが書かれてあるわけでございますが、この百三十二条というのは何を根拠にしてこの法律をおつくりになったのですか。
  134. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 百三十二条は、愛知書簡を受けて、電波法の特例法を設けましたわけでございまして、御承知のように愛知書簡は、極東放送会社、この英語の放送、これは米人の経営でございますから、御承知のよう日本法律では、電波法では認められないということになっておりますけれども、ただいま申しましたような、外務大臣が申されましたような、沖繩返還に伴う各種の事情によりまして、これを特に暫定的に五カ年だけ継続して日本において放送することを認めるというような趣旨の書簡でございます。これを電波法の特例法で認めていくということになったわけでございます。  それといま一つは、極東放送会社ではございませんけれども、財団法人極東放送、これができましたならば、これを日本において、これは日本の法人になるわけでございますけれども日本の国内において日本語で放送をやらせるという趣旨の手紙でございまして、これが百三十二条の第二項にその趣旨が盛られておりますわけでございますが、第二項は、財団法人の極東放送ということは表面に出ておりませんけれども、将来そういうものができることを予想し、御承知のように財団法人極東放送はただいま琉球政府にその申請が出ておりまして、これが審査されておりますけれども、返還までにはたして財団法人の許可と放送の免許が出るか出ないかわからないのでありまして、出ないということになりますれば、これは返還後に日本政府に引き継がれるわけでございまして、日本政府におきまして審査をしなければならない。それが相当期間がかかるだろうというので、特に第二項を設けまして、その審査の期間の余裕をとっておりますわけでございます。
  135. 中野(明)委員(中野明)

    ○中野(明)委員 いま愛知書簡の話が出ましたが、私非常に疑問に思うのでありますが、愛知書簡というのは、これは法制局に答弁いただきたいと思いますが、この愛知書簡というものの国際法上の性格と申しますか、愛知書簡というのはどういう力を持ったものか、そこのところを……。
  136. 角田政府委員(角田礼次郎)

    ○角田政府委員 愛知書簡の法律的性格という御質問でございますので、法律的な面だけでお答えいたしますが、愛知書簡につきましては、その冒頭に述べられておりますとおり、沖繩復帰後における外国企業の一連の取り扱いにつきまして、日本政府の方針を決定したということを、一応そういう方針であることを通告をいたしたものでございます。したがいまして国家間を拘束するような意味の条約というよう法律的効力を持っているものでないことは言うまでもないと思います。
  137. 中野(明)委員(中野明)

    ○中野(明)委員 いまの御答弁でも明らかなように、国際法上から見ましても何ら拘束力を持たないという答弁でありますが、そのような書簡でもって、一国の当時の外務大臣であった愛知さんが、国内法に相反するようなものを相手に約束をしてはたしてそれでいいものかどうか。それを根拠にして今度の百三十二条という法律を出してきて、何とか審議をしてくれ、これではまるで逆でありまして、国会軽視といわれてもしようがないのじゃないか、私はこのように思うのですが、外務大臣、その点御答弁をお願いしたいと思います。
  138. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 私どもの解釈では、条約とかあるいは協定というものは、これは法律に優先するというように考えておりますが、愛知書簡は、これはそういうようなものじゃございませんけれども、国の方針、方向というものを定められましたきわめて重要なよりどころであるということについては間違いないのでありまして、そういうような精神を尊重いたしまして、百三十二条の条文をつくることにいたしたわけでございます。
  139. 中野(明)委員(中野明)

    ○中野(明)委員 それでは、どうして協定の本文にそれをあらわさないのか。いまおっしゃったように、そのよう考え方であるならば、当然協定の本文にうたっていいんじゃないか。それをわざわざ協定と分けて、書簡でこういう大事な約束をされて、しかも、それが束縛を受けたかのように郵政大臣が受け取って、こういう法律をつくってこられるということ自体、私は大問題だと思うのです。  それで、そういうことで押し問答しておってもしようがありませんが、特にいま郵政大臣は、さきの答弁でも、百三十二条に第二項を置いたこのことについてるる述べられました。過日の当委員会で武部委員の質問に答えられて、この第二項を設けた、新しくつくられるであろうと想定されたこの財団法人極東放送に対して、競願が出てきた場合は競願の処理をするということを明確にお答えになりました。そういたしますと、私、外務大臣にあらためてお尋ねするんですが、この愛知書簡の、放送事業のところの第一項、日本政府は云々と続いておりますが、そこの解釈をもう一度お願いします。
  140. 福田国務大臣(福田赳夫)

    ○福田国務大臣 「日本政府は、日本国の関係法令に従い、財団法人極東放送による日本語の放送を許す。」こういうことでありまして、これは書いてあるとおりでございます。
  141. 中野(明)委員(中野明)

    ○中野(明)委員 そうしますと、郵政大臣のこの委員会で答えられたのとこの書いてあることとは違いますね。郵政大臣は、競願が出てきたら競願処理をする、こう言っているわけです。ところが、ここには明らかに、日本政府は、日本国の関係法令に従って財団法人極東放送による日本語の放送を許しますと、競願を否定しております。これはどういうことになるのです。
  142. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 これは先般武部委員にもお答えいたしましたように、競願が出ました場合は、電波法の規則にのっとって競願の審査をやる。これは、ただいま外務大臣がお読みになりました、財団法人極東放送は日本国の法令に従って許すということになっておりますから、そういうような順序を踏みますわけでございます。
  143. 中野(明)委員(中野明)

    ○中野(明)委員 いまの答弁では、私の言ったことに答えておられません。明らかに、日本国の関係法令に従って財団法人極東放送に日本語の放送を許すと、結論を言っているわけです。ここで結論を言っているのならば、大臣が競願処理をすると言われたことは、あれはうそなんですか。競願処理をすれば、財団法人極東放送に許可がおりるかおりないかは未知数であります。これから競願の処理をしてみなければわからぬことです。ところがこの愛知書簡では、明らかにアメリカに、財団法人極東放送の日本語の放送を許可しますと、向こうにもう約束しちゃっているのです。こんなばかなことがありますか。
  144. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 それは、ごらんになりますように、日本国の法令に従ってということが書いてありますわけでございまして、したがって、財団法人の設立につきましては民法、電波の免許につきましては電波法、こういうようなものに照らして、許可することが不適正である、あるいは公益を阻害するというようなことでございますならば、たとえそんなことが書いてありましても許すということにはならないわけでありまして、法令に照らして、適格なものであれば許すと申しましたわけでございます。  なお、電波法に基づきまして免許をいたしますわけでございますが、競願の場合はそういうことになりますわけでございますけれども、愛知書簡が厳存するということ、国の方向を示したという愛知書簡が厳存するということは、もちろんその免許にあたりましては考慮しなければならない、これは当然のことでございます。
  145. 中野(明)委員(中野明)

    ○中野(明)委員 いまの大臣のお話を聞きますと、競願というものは、これはもう全然形式的なものであって、たとえどのような優秀な競願者が出てきても、結論としては財団法人極東放送に免許をおろす、こういうことですか。
  146. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 これは、ただいま申しましたように、そういうような申請がございましても、不適格でありますとか、あるいは内容が穏当でないというようなことであれば許さないということになりますわけでありまして、たとえ財団法人極東放送という名称で申請がありましても、財団法人の許可も出ませんし、あるいはまた放送の免許も出されないということになりますわけでございます。
  147. 中野(明)委員(中野明)

    ○中野(明)委員 じゃ外務大臣、アメリカのほうに、この愛知書簡の意味は、いま郵政大臣が言いましたように、競願の相手が出てきて、しかも日本の国内法令にのっとって、より公共的な放送が出てくれば、財団法人極東放送には許可はおりぬかもしれませんよと、こういうふうにアメリカお話しできますか。
  148. 福田国務大臣(福田赳夫)

    ○福田国務大臣 形式的に言いますといろいろそういう議論があろうと思いますが、私は外務大臣として、愛知書簡が尊重されるということを切に期待してやみません。
  149. 中野(明)委員(中野明)

    ○中野(明)委員 それでは郵政大臣の答えと違うわけです。競願処理を否定しているんです。明らかに日本の国内法規を無視しているわけです。こんなべらぼうなことを、外務大臣が約束してきたからといって、もう一度向こうへ、そういう意味じゃありませんよということを言い直すことが当然必要じゃないでしょうか。いま郵政大臣のお答えは、競願が出てくれば競願処理をすると言っている。私は納得できません。初めから競願処理をうたいながら競願を否定するようなことをアメリカ約束して帰って、国会答弁では形式的に、競願処理はいたします――冗談じゃないですよ。でたらめですよ、これは。しかも、現在琉球政府のほうに、先ほど郵政大臣も言っておりましたが、出ております、財団法人極東放送。私も目を通して見ましたけれども、郵政大臣、これはこのままでは許可できますか。日本の国内法に照らしてどうです。
  150. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 まだ正式に連絡を受けておりませんので詳細な調査をいたしておりませんけれども、非公式に聞いたところによりますと、ただいま琉球政府に出しております申請には米人の理事の名前が連なっておりますようでございまして、そういうままでございますと、当然、財団法人でございますから、許可も免許も与えることはできないということになりますわけでございます。
  151. 中野(明)委員(中野明)

    ○中野(明)委員 明らかに日本の国内法に違反するような申請をすでに出してきている。ですから、このままでもし琉球政府がこの極東放送に許可を与えたら、本土に復帰になったときには、電波法七十五条で、欠格条件として放送の免許を取り消さなきゃならぬ、そういうふうな性質の申請がすでに出ているわけです。ですから、いまのお話をはっきりしておいてもらわないと、とんでもない放送局が、日本法律に照らして適格でない放送局が誕生するおそれが十分にあるわけです。ですから私は競願のところにこだわっているわけです。  しかも、時間がありませんので、いろいろ申し上げたいことがありますけれども、これは総理もよくお聞きいただきたいと思いますし、御了解だと思いますけれども、電波というのは、これはわが国の憲法で言論の自由というものが保障されている中でも、放送局は免許制をとっているのです。これはどういうわけか。すでにおわかりだと思いますけれども、国際法の上から日本の国に割り当てられている電波に限りがありますので、国際電気通信条約の無線通信規則で周波数の配分を受けているわけです。この数少ない電波に、それこそ一つの放送局をつくるのに百、二百と競願者が出て大騒ぎになっていることはもう現実の問題なんだ。このような貴重な、この国際会議では電波の割り当てをとるのに、それこそ血で血を洗うような激しい電波の争奪戦が行なわれて、やっとの思いでわが国に電波の割り当てがきている。だから電波法でも、外国性の排除ということを強くうたいまして、せっかく日本の国に割り当てられた電波を日本国民の福祉向上のため公共的に使わなきゃならぬ、こういうことになっているわけです。ですから、今回のVOA、極東放送をお認めになること自体私は――日本の関係者がそれこそ一生懸命になって割り当てを持ってきたいわば国家的財産です、電波というのは。国民の共有財産、これを五年間なら五年間と期限をつけているといいながらも、アメリカのほうに無条件で引き渡すということはたいへんな国損になるわけです。それは、本土でもいま安保条約がありますから、地位協定によって日本の数少ない割り当てられた電波を米軍に提供しております。その残ったところで、国内で電波の争奪戦がこれまた放送局で演じられているわけでして、国民はたいへんな不自由を忍んでいるわけです。そのために電波が不足してきて、VHF帯からUHF帯へ移行するというようなことまで本気で考えなきゃならぬほど逼迫しているわけです。この返還にあたって、そういうふうな大問題をどの程度までお考えになったのか。  しかも、私がもう一点指摘をしたいことは、極東放送とVOAが五年間存続してそれでなくなってしまうというのならば――これでもわれわれは大反対しておるわけですけれども、いまの郵政大臣のお話では、新たに財団法人極東放送というものをつくって、永久にそれは放送局として沖繩の返還とともに残るというわけです。なぜそこまでサービスをしなきゃならぬのだろうか。日本の国内では二百社、三百社と、それこそ死にもの狂いで競願をして放送局をつくる、このような大事な貴重な電波、それを現在あるものをそのまま五年間残して、それでおしまいですというだけじゃなしに、新たにここに財団法人極東放送として沖繩一つ残す、こう言っているわけです。しかも、アメリカがそれに対して非常なこだわりを持っている。ところが、日本の国内法では、外国性を排除している。国内法にのっとってこの放送局をつくろうとしたら、外国性を排除したらアメリカの執着するところは何にもないはずです。十分に断われるはずです。ところが、アメリカのほうは、たって、どうしてもこの財団法人極東放送を一つ放送局として永久に沖繩に残せと言っている。しかし、日本の国内法では、アメリカの望むような放送局は残すわけにはまいりません。そうすると、当然断わっていいはずです。断われるはずです。それは先ほど郵政大臣も言いましたとおりです。いま出ている極東放送のこの申請書では、日本では許可できないと言っている。不適格だと言っている。ですから、これを適合するように申請を変えてきたら、アメリカは何にも執着をする余地はないはずです。どうしてこんなものまで認めなきゃならぬだろうか、あまりにもひど過ぎると思うわけです。その上に、現在沖繩の電波を見てみましたとき、新たにNHKにも電波を渡さなきゃならぬでしょう。そして現在民放が二局あります。一局は英語の放送までやっておりますので、これまたたいへんな電波のふくそうした状態で、日本の東京、大阪以上の電波の現状になります。
  152. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 中野君に申し上げますが、お約束の時間が来ましたので、簡潔にお願いいたします。
  153. 中野(明)委員(中野明)

    ○中野(明)委員 そういうことを考えてみましたとき、はたして沖繩でそういうことをして民間放送の経営が成り立つのだろうか、私たちは非常に心配しているわけです。この辺総理から御答弁をいただいて、私、時間が参ったようでありますので終わりますけれども、こういう問題点をかかえて、そして本土並みだ、このようにおっしゃっていること自体、とうてい納得できないわけであります。御答弁をお願いします。
  154. 福田国務大臣(福田赳夫)

    ○福田国務大臣 これからできまするところの財団法人極東放送、これは日本国の法令に従いまして設立されるわけであります。先ほど郵政大臣から答えられましたように、日本国の法令によりまして、適格でないというものでありますればこれは許可にはなりません、設立もされませんから、問題はないわけであります。日本国の法令に適格であるという際におきましては、これを日本国の電波行政の対象下に置いて認めていこう、こういうものである。いまの極東放送、現在日本語と英語をやっておる、これの評価を聞いてみると、これはたいへん評判がいい、歓迎をされておるというふうに聞いておるのであります。しかも、アメリカにおきましては、沖繩における私企業、これをどうするかということを非常に問題にしておる。わが国としても、沖繩返還協定だというそういう際におきまして、アメリカが今日まで営んできたところの私企業、こういうものを一日にして解消をするということもできない。そこで愛知書簡というものをつくりまして、これは暫定的ないろいろな措置を取りきめた――取りきめたというか方針をきめた、こういうことになるのでありまして、これが適法のものであり、わが国の法令から見まして十分認め得るものであるという前提でありますれば、私は、これがこれから沖繩において、英語放送は五年でやりまするけれども日本語放送を行なうということは、沖繩県民にとりましても意義あることである、またアメリカに対しても、わが国が、二十六年間続いてきた施政権下におきましてアメリカ系の人が営んだ私企業、これを尊重し、日米友好の関係を持続していくゆえんではあるまいか、そういうふうに考えております。
  155. 中野(明)委員(中野明)

    ○中野(明)委員 いま大臣が、国内法に適法であればとおっしゃったのですけれども日本の国内法に適合するようなものならば、アメリカは何も執着を持つ必要はないのです、外国性を排除しているのですから。それではアメリカは、財団法人極東放送をずっと残せというふうに執着を持つわけはないのです。アメリカに何の得もないわけです。アメリカが残してくれと言う以上、愛知さんがそれを約束されている以上は、やはり日本の国内法に照らして違反するようなところがあるわけです。だから私は問題にしているわけであります。そこのところ、これはいま外務大臣の御答弁ではとうてい私納得できません。たいへんな問題がこの中にひそんでいるわけです。  時間がありませんので以上で終わりますけれども、最後に一点だけ、郵政大臣せっかくおいでいただいたので……。
  156. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 簡潔にお願いいたしたいと思います。
  157. 中野(明)委員(中野明)

    ○中野(明)委員 私、沖繩の問題につきまして、沖繩の県民たちが戦事中に郵政省に貯金をしておりました郵便貯金と保険、これの払い戻しが四十六年から開始されました。いままでずっと凍結されておったわけです。それに対する支払いが非常に遅々として進んでいないということが一つと、それから、ことしの十二月二十四日でこれが一応の期限が切れるということになっております。法定金額と見舞い金、これではあまりにも気の毒だ。いままでの権利を持っておる人が、十二月二十四日で見舞い金はもらえない、法定の金額だけしか支払われないということはまことに気の毒ですので、この期限の延長を私はぜひこの機会にやってもらいたいということ。それから、この法律で廃止になっております郵便貯金保険会館、これが改廃法で廃止になっております。しかし、廃止になったらこれは根拠を失うわけですけれども、まだ郵便貯金保険会館はできておりません。四十四年に強行採決までして大急ぎでなし遂げたこの法律が、いまだに土地を買っただけでそのままになっております。とんでもないことだと私は思うのです。あたたかく沖繩を迎えるといいながら、法律国会で強行採決しておいて、現実にまだ二年たっても影も形もない。そして法律はなくなる。この法律は何の役目も果たさないでなくなってしまうわけです。もちろん国内に引き継いでやられるでしょうけれども、これを将来建てた後の運営管理の問題、たいへんな問題があるわけです。せめて沖繩復帰までに地元の人たちに、日本政府としてはこのように努力しておりますということで、くわ入れ式ぐらいまでは努力されるべきだ、私はこのように思います。そして、でき上がったあとの運営管理、この問題についても非常に問題が残っておりますが、その点だけお答えいただいて終わりたいと思います。
  158. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 終戦のときに、郵便貯金と簡易保険の法定支払い金が約一億円ございまして、その後いろいろな問題があったわけでございますけれども、御承知のように四億円の見舞い金を日本政府から差し上げまして、合わせて約五億円、これを昭和四十四年の十二月から逐次支払いいたしておりますが、郵便貯金におきましては、ただいま七割程度の支払いができております。簡易保険におきましては約六割。ところが、その期日が十二月二十四日に御指摘のように迫っております。したがって、この問題は琉球政府の問題でございますけれども、私どもといたしましても非常な関心を持っております問題でございますので、これにつきましては、ただいま鋭意琉球政府にお願いいたしまして、払い戻しの周知宣伝に努力していただきまして、そしてなるべくすみやかに払い戻しを完了するようにということにお願いいたしております。しかし、十二月二十四日でございますから、そのことは琉球政府からも一応告示しておりますけれども、ただいま御指摘のような問題がいろいろございますので、これにつきましては琉球政府と十分連絡をとりまして、やはり払い戻しの期間を延伸する必要があろうか、こういうように考えております。  それから、これに伴って郵便貯金の奨励と簡易保険思想の普及徹底のために、何か那覇に施設をして差し上げるということをお約束いたしまして、約五億円の経費を投入いたしましてやるということをお約束いたしておりますが、これはただいまお話しのように、貯金保険会館をつくることで進んでおったわけでございますけれども、敷地の入手に、どうもあそこは軍用地が多いものですから、たいへん骨折ったようでございまして、なかなか選定ができないというようなことで、やっと選定ができまして、これに基づきまして、ただいま設計を急いでおるわけでございますが、設計ができましたならば、直ちに工事にかかるということになるわけでございます。竣工は、沖繩本土復帰がいつ実現するかまだわかりませんけれども、おそらくそれまでには間に合わないのではないかと思っております。このことにつきましては、ほんとうに皆さま方にあの法律の制定につきましてはたいへんお骨折りをかけました、そういうことを考えますと、まことに申しわけないと思っておるわけでございますけれども、そういうような事情で、急ぎながらもまだ完成に至っておらないという状況でございまして残念に思っておるわけでございます。  ただ、でき上がらないということになりますと、ただいま中野先生御指摘のように、沖繩政府には無償でこの建物を貸し付けるということにいたしておりましたお約束が、具体的に実現ができない、現実にはそういう約束を果たすことができないということになるわけでございます。その後の管理につきましては、郵政省のほうで引き取りまして、郵政省の設置法に基づきます業務施設ということで、保険あるいは貯金の加入者、預金者、こういう方の便宜を考え、またそういう思想の普及のために有効に使うというようなことで、沖繩政府にお約束いたしました精神を生かして、今後最も有効に利用していくように管理いたしてまいりたい、こういうように考えておるわけでございます。
  159. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 本会議散会後再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後一時三十五分休憩      ――――◇―――――    午後二時二十八分開議
  160. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 休憩前に引き続き連合審査会を開きます。  質疑を続行いたします。羽田野忠文君。
  161. 羽田野委員(羽田野忠文)

    ○羽田野委員 まず、外務大臣にお伺いいたします。  協定第四条で請求権の放棄をいたしております。これは、沖繩の返還を実現するためにやむを得なかった措置かとも考えますが、講和などの場合、いわゆる戦勝国と戦敗国の話をつける場合におきましては強制的要素が入ってまいりますので、請求権放棄というような条項が入ることが一般的でありますが、今回の返還協定ような強制的要素のない場合に請求権を放棄するということは、沖繩を早く返すためとはいえ沖繩県民の非常な不利益になるおそれがある。そういう面から、国内的な措置によってもこの救済をするような措置が急速にかつ強力にとられなければならないと思いますが、外務大臣の御所見を承ります。
  162. 福田国務大臣(福田赳夫)

    ○福田国務大臣 いま羽田野君が放棄、放棄と、こういうふうにおっしゃいますが、全部放棄しているわけじゃないのです。これはアメリカの国内法令、また現地における布令等によりまして、アメリカ側が補償責任を負うものにつきましては、アメリカ側がその責めに任ずる。また、そういう法令上の根拠はないにいたしましても、軍用地の復元補償でありますとか、あるいは海没地の補償問題でありますとか、これもアメリカの責任において片づけましょう、ここまで言っておるわけなんです。  しかし、御案内のように、補償問題というのはこれは百万県民、この一人一人の問題なんです。ですから、補償と申しましてもこれは千差万別、いろいろな種類のものがある。そういうものを一一ここで調査をして、これはどういう措置をするかということがあの返還協定に調印をする段階においてはとり得なかった。しかし、さらばといって、返還後においてそれらの請求権者がアメリカへ出かけていって裁判を起こす、こういうようなことになりましてもこれはたいへんなことだろう、そういうようなことも考えますと、ここで日米間の債権債務の関係ははっきりさせておいたほうがいい。そういうことで、アメリカが責任を負う以外のいわゆる請求権問題の処理は国内措置でやりましょう、私はこのほうが非常に親切な行き方じゃないか、そういうふうに考えております。
  163. 羽田野委員(羽田野忠文)

    ○羽田野委員 以下、これに関連して明確にしておきたいことを順次質問をいたします。  協定四条一項の「放棄」というもののその性質ですね、これは実体的な権利の放棄であるのか、あるいは外交保護権の放棄であるのか、この点はいかがでしょう。
  164. 井川政府委員(井川克一)

    ○井川政府委員 国家間の請求権の放棄と申しますのは、したがいまして四条一項に書いてございます請求権の放棄は、第一に日本国の放棄でございまするが、第二に日本国民の請求権ということになるわけでございます。個人というものが国際法の主体であるということはきわめてまれなことでございまして、したがいまして、この種の請求権というものは相手国の国内法上の請求権、こういうふうになるわけでございます。そのようなものを相手国が否認いたしましても、その責任を日本国として追及しないという意味の請求権の放棄でございます。
  165. 羽田野委員(羽田野忠文)

    ○羽田野委員 お答えでは、私の言ういわゆる外交保護権の放棄というふうに解釈されるわけでございます。そういう場合に、沖繩県民の人の実体的権利はまだ残っておるといたしまして、この実体的な請求権を実際に行使する手続があるのか。また行使する手続があったといたしましても、外交保護権が放棄されている状況において、実際にこれが実効をあげることができるのかどうか、この点の御見解はいかがでしょう。
  166. 井川政府委員(井川克一)

    ○井川政府委員 実体的の権利でございまするけれども、四条二項にございますように、現在、現地法令及びアメリカの法令で認められておりまするのは、四条二項で引き続きアメリカが処置に当たるということになっているわけでございます。そして、先ほど申し上げましたように、これはアメリカ国内法のものであるという意味からいたしまして、いわゆる請求権といたしましての実体的な請求権というものがはたしてあるとしますならば、それはアメリカ連邦法の規定に基づくものであるということになるわけでございます。アメリカ連邦法といたしましては労災法その他の規定がございまして、これは現に四条二項で適用があるわけでございます。そういたしますと、それ以外のもので連邦法の適用があるものということになりますと、これはたいへんむずかしいことになりますのは、もともと外国の法律でございますが、特にアメリカ法はいわゆる英米法でございますので、すべて判例主義によらなければならないわけでございまして、したがいまして、それを一々この法律がどうだというふうに、あるいは大陸的なあるいは日本的な観念ではなかなか割り切れない問題がございますけれども、いずれにいたしましてもこの連邦法の規定が、判例によりますると、たとえばアメリカ憲法につきましては、オクラホマというところの地方の裁判所で連邦憲法の適用がないというふうな判例があるわけでございまして、そういう意味からいたしましても、連邦法の適用があるかということにつきましては、現実にこれが訴訟手続になりますと、それが原告の所在地ということになってまいりまして、原告の所在地における裁判所となりますが、民政府裁判所等にはそのような権限が与えられておりませんので、現実にはなかなかむずかしい問題であろうと思うわけでございます。
  167. 羽田野委員(羽田野忠文)

    ○羽田野委員 やはりこれは条約局長から御説明いただいたほうがいいと思いますが、この四条の関係で、特に一項の関係ですが、これはこの委員会でも前に論議があっておるか――この請求権には講和前補償を含むかどうか。言うなれば、平和条約十九条(a)項によって、沖繩についてもこの講和前の請求権はもう放棄されておるかどうかということがいつも問題になっておるようであります。条約局長、この点はどういうふうにお考えになっておりますか。
  168. 井川政府委員(井川克一)

    ○井川政府委員 講和前補償につきましては平和条約第十九条で、すでに放棄になって処理済みでございます。
  169. 羽田野委員(羽田野忠文)

    ○羽田野委員 私はこの点がちょっと問題であると思うのです。と申しますのは、サンフランシスコ平和条約が締結された、いわゆる効力を発効した昭和二十七年の四月、このころは、沖繩の置かれている立場と申しますと、ニミッツ布告で昭和二十年の七月から司法、行政、いわゆる日本の統治権は停止されておる、そういうふうな状態がずっと継続している状態でございます。統治する権限がない、実際に司法、行政の権限が停止されておる地域の人の権利を放棄するということは、これはあり得ないことです。そこで、この点につきまして前にやはり問題になって、昭和三十一年七月十二日の当院の外務、内閣、法務の連合審査会で下田説明員、これは条約局長ですが、この人がこの点に触れて、いわゆる沖繩については請求権は放棄されていないのだ、将来沖繩が返るというふうなことがあった場合には、平和条約十九条だけで機械的に処理されるというようなことは私はないと思うと、はっきり見解を述べております。これは私は沖繩の人の請求権のためにも、やはり前の下田説明員の考え方のほうが適切ではないかというふうに考えておりますが、どうでしょうか。
  170. 井川政府委員(井川克一)

    ○井川政府委員 私が持っております書類によりますると、下田条約局長は、三十一年五月でございますが、沖繩におる日本国民の請求権も平和条約十九条によって放棄しておるというふうに国会で御答弁申し上げているわけでございますが、いずれにいたしましても、この当時二つの問題があったわけでございます。平和条約十九条で放棄したかいなかという問題と、その放棄したあとに、アメリカが施政権者としてその施政権者としての責任を持っているので、放棄されたものであっても何らかの救済の措置をとらなければならないという道義的責任があるというのが、実は日本政府の主張でもあったわけでございますけれども、いずれにいたしましても、その平和条約十九条の放棄の問題と、それを処理する後の道義的責任の問題が、あるいは下田局長の御答弁の中にも多少まじっているところがあるようにも、私ほかのところで拝見いたしたわけでございますが、いずれにいたしましても、このとき以来日米両国政府の見解も、この十九条によりましてすでに放棄しておるということは、きわめてはっきりしているところでございます。
  171. 羽田野委員(羽田野忠文)

    ○羽田野委員 いままでいろいろな私の疑問点を聞いたわけですが、これは、そのことをあくまでここではっきりしようということではなくして、私は冒頭に申し上げましたように、沖繩県民の方々の請求権をできるだけ完全に満足させるような状態をつくってほしいということを申し上げる、その前段階で明らかにすることを申し上げたわけで、いまからが本論でございますが、これは防衛庁長官にお伺いいたしたいと思います。  終戦後現在まで、沖繩と本土の間におきまして、請求権の取り扱いということが非常に違っております。言うなれば、本土のほうが権利としてはっきり認められ、その請求手続も裁判手続まで認められているような状態、沖繩ではこういう状態がいままでほとんど認められていない。そして今度の四条一項の放棄はもちろん、四条二項で例外的に認められている請求権も、やはり請求権について国家的制度としての裁判上の権利保護制度のある完全な請求権ではない。やはりアメリカの機関が来て支払いをするということでありますが、完全なる請求権ではない。これは言うなれば制限された、いわゆる恩恵的な制度というような性格を非常に強く持っております。したがって、こういう歴史的な事実からして、沖繩に対する国内的な措置を十分やっていただきたい。  これをちょっと歴史的に見てみますと、まず講和前の請求権につきましては、沖繩のほうには布令六十号がございまして、それによっていわゆる補償をいたしてまいっております。それから講和後の問題につきましては、外国補償請求法によって補償してきておる。しかしこのいずれも、先ほど私が述べましたように裁判上の権利保護制度はない。向こうの言うとおり、これだけ払う。よければ払う、悪ければ払わないというようなことで処理してきておりますので、まだ未処理のものもあるし、処理されたものの中にも非常に不十分なものがある。これに対応する、この期間における本土の請求権実行制度はどうなっておるか。講和前のものにつきましては、昭和三十六年に被害者給付金法を立法いたしまして、人的損害についての補償をいたしておる。講和後につきましては、昭和二十八年の特別損失補償法によって、通常の行為に対する損失補償をしておる。それから、日本の国家賠償法に相当するものにつきましては民事特別法をつくって、この両方いずれも完全なる補償をする。もしそれに不満ならば裁判をしてでも請求権の満足を得るというような方法が購じられておる。  私は、こういう両地域の請求権の取り扱いについて、沖繩が非常に不利益な立場に立っておるということを気の毒に思います。そしてまた、その原因が那辺にあるかということは、結局沖繩が地上戦闘によって占領され、ニミッツ布告が出、サンフランシスコ条約で施政権がアメリカのほうに一時移っておったということが原因で、沖繩それ自体の責任に帰することがないとするならば、今度返ったときに本土がアメリカに対して完全に取ってやるか、それができなければ、やはり日本政府が、沖繩に対してはこの請求権を完全に満足させるような状態にしてやらなければならぬ、こう思います。  そこで防衛庁長官、先ほど外務大臣にもお聞きしたところですけれども、国内措置、いわゆる請求権に対する国内措置はどういうふうにお考えになっておられるか、これを質問いたします。
  172. 江崎国務大臣(江崎真澄)

    ○江崎国務大臣 御指摘の点はきわめて重要な点を言っておられると思うのです。確かに不公正な事例が、一々検討していけばずいぶんあるだろうと思うのです。ただ、終結したものはどうもこれはいたし方ありませんが、たとえば不当に棄却された、こういったもの等で、本人等々から申し出があります節は、一応四条二項によって米側にこの措置が残るわけですから、現地で補償措置をとる職員、関係者が米側に対して、これは施政権がわれわれのほうに戻ってまいりますから、当然こういうものは不当ではないかということを強く米側に申し入れていく、口添えをしていく、こういうこともあろうかと思うのです。また、そういうことをきめこまかに努力してまいりたいというふうに考えております。
  173. 羽田野委員(羽田野忠文)

    ○羽田野委員 御意思は私も非常に力強く承ります。  そこで、今度防衛庁のほうで出されておりますこの法案の中で、特別措置法三条で、講和前の人身損害に対する見舞金支給という条項が出されております。これは私は非常に適切な措置だと思いすす。先ほど条約局長と論議をしました講和前の云云ということがありますが、これはどう解釈されるにしても、やはり日本政府が、講和前の損害であっても、請求権を満足さすべきものについてはさせるような方途を講じて差し上げなければいかぬということは異論のないところだと思います。しかしこの三条も、見舞金の支給という点は非常に弱いと思う。私はこれは、アメリカが布令六十号で恩恵的な支給だというようなことを書いてある、これを受けたんだと思いますが、やはり恩恵的なものでなくして、請求権を認めて差し上げるというぐらいの強いものにしていただきたいと実は思いました。  それからもう一つは、講和後のものにつきましても四条二項で権利が認められておる。そしてアメリカのほうからこの解決のために職員を派遣する、こういうことになっておりますけれども、これも私が先ほどから申し上げますように、最後に裁判的な保障のあるほんとうの権利ではない。アメリカ沖繩の権利者が交渉する。それを実現するために、日本は外交保護権によってなるべくこれを有利に解決してあげようという長官の御意思はよくわかりますけれども、私はもう一段引き上げたものにしていただきたいと思うのです。それは、講和後本土においては、民事特別法や特別損失補償法のごとく、アメリカ軍から受けた日本人の人的あるいは物的損害に対してこれを請求する権利を与え、最後に満足を得なければ裁判によってこれを実現するという方法を、講和後日本はずっと与えておるわけでございますから、講和後のこの沖繩県民の請求権につきましても、やはり裁判によってこれを認めて差し上げるというぐらいな強い事後措置を講じていただきたい。  それからこの民事特別法によりますと、本来アメリカが被害者に支払うべき請求金を一応日本政府を相手に請求をして、日本のほうで支払って、それに対して七五%を今度はアメリカのほうに日本国が請求して求償するという制度になっております。私はこれは非常に、被害者といいますか請求権者に対して親切な制度だと思うのです。そこで今度沖繩の場合も、復帰後はもちろんそうなりますが、講和後復帰前までの請求権について、この民事特別法のような、日本政府を相手にこれを請求をして、そして日本政府が払う、その払ったものはアメリカ日本政府が請求をして求償する、こういう制度をお考えいただきたいと思うのですが、この点はいかがでございましょうか。
  174. 江崎国務大臣(江崎真澄)

    ○江崎国務大臣 だんだんの御質問、きわめて温情にあふれる話ですし、条理を尽くしたお話だと思います。現段階ではそこまで考えておりませんが、まあ何といってもこれは千差万別、いろいろあるわけですが、きめこまかにめんどうを見ていく。被害者に、正直者がばかを見るといったようなうらみを残さないように努力していきたいと思います。
  175. 羽田野委員(羽田野忠文)

    ○羽田野委員 長官から非常に御温情あふるる解決の御意思を承りまして、力強く存じます。どうか、これは今後のことでございますから、実情をひとつ御調査くださいました上で、やはり沖繩地域が特別であったために特に本土より損害が大きかったとか、あるいは請求権が完成されないというようなことのないように、公平なる恩恵に浴するように、ひとつぜひ御配慮をいただきたいと思います。これは希望でございます。  それからその次に、最高裁判所にちょっと一、二問お伺いいたしとうございます。  いよいよ沖繩が返ってきまして、裁判権、いわゆる司法権も、ニミッツ布告によって停止されていたものがいよいよ日本の司法権に返ってくる、きわめて喜ばしい状態でございます。そこで司法権が返ってきた場合に、沖繩の裁判所のいまの状態、裁判所の機構だとかあるいは人的なもの、そういうふうなものは、いつ返ってきてもすぐ引き継ぎができ、その日からスムーズに裁判ができるような状態にあるかどうか、この点ひとつ実情を御説明いただきたい。
  176. 長井最高裁判所長官代理者(長井澄)

    ○長井最高裁判所長官代理者 沖繩の司法制度は、戦後二十五年間非常な変革を経ておりますけれども、昭和四十四年一月一日から施行されました新しい裁判所法によりまして、現在の日本における裁判所と同じような組織、機構につくり変えられまして、沖繩がいつでも日本に引き継げるような体制の確立に非常な努力を傾けております。引き受ける側の最高裁判所といたしましても、これを円滑に引き受けることがきわめて緊要と考えまして、機構、組織、人員及び施設、建物の点に至りますまで詳細に検討いたしまして、支障のない引き受けができるように努力中でございます。何ぶんにも予算を伴うことでございまして、予算の関係がただいま大蔵省に概算要求中で、確定的なものは出ておりませんが、全体の機構といたしましては支障なく引き受けることができるように万全の準備に努力いたしておる次第でございます。
  177. 羽田野委員(羽田野忠文)

    ○羽田野委員 地方裁判所、それから簡易裁判所、家庭裁判所、検察審査会、こういうふうなものについては、一応今度の関係法案にどういうふうにするかということが出ております。ただ高等裁判所の関係におきましては、地域管轄が福岡高等裁判所の中に入るということになっておりますが、御承知のよう沖繩は離島でございます。それから今度返ってくる関係で、いままで権利の実現をしようと思ったけれども、返ってからと待っている人もたくさんあると思う。あるいは特殊な事件もある。そういう特殊性があるし、先ほど防衛庁長官にお願いしたように、請求権などが法的に請求できるようなことにでもなると、この高等裁判所関係も、福岡まで行くということはなかなかたいへんなことだと思うわけです。それで支部の設置とかそういうようなことについては、最高裁はどういうふうにお考えになっているか。
  178. 長井最高裁判所長官代理者(長井澄)

    ○長井最高裁判所長官代理者 裁判所の設置のうち、法律をもって規定することを要しますものはすでに法案に明記されておりますとおりでございますが、支部に関しましては、最高裁判所の規則にゆだねられておりますので、この点について簡単に御説明申し上げます。  高等裁判所の支部の問題につきましては、御指摘のように占領体制からの復帰というきわめて複雑な法律問題を内蔵した事件が提起されることになるわけでございますので、沖繩側におきましても、高等裁判所の支部を設置してほしいという一致した強い要望がございましたので、これを受けまして最高裁判所といたしましても、その方針を確定いたしまして、那覇に福岡高等裁判所那覇支部を設置する方針でただいま諸般の準備を進め、法案が成立いたしましたら、即刻那覇支部設立の規則を制定いたしたいと、このように考えております。  そのほかに地方裁判所、家庭裁判所の支部につきましても、現状のまま引き継ぐことができますように、最大限の努力をいたしたいと思っております。
  179. 羽田野委員(羽田野忠文)

    ○羽田野委員 非常に適切な措置だと思います。  終わります。
  180. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 水野清君。
  181. 水野委員(水野清)

    ○水野委員 私はVOA放送の存続問題、並びに極東放送について御質問申し上げたいのでございますが、防衛庁長官はおいでいただかなくてもけっこうでございます。  実は、ことしの五月、私はたまたま逓信委員会の有志数名と、これは社会党、公明党、民社党も含めまして現地を見てまいりました。VOA放送の施設その他を見てまいりましたし、ちょうどその前日の放送の内容なども録音テープを向こう側から受け取ってまいりました。この現地の状況をここで御紹介申し上げる必要もないのでありますが、行く前には週刊誌などで、何か非常に強力なる放送局であって、何かその辺の枯れ木から音楽が聞こえてきたり、あるいは鉄塔の下で農耕をやっている牛が感電死をしたというような奇抜な話もあったので、半分そうではないかというつもりで現地へ行ったわけであります。この点は全く杞憂でありまして、そんなことは何もございませんでした。むしろ地元の国頭村の村長さんその他から、まあこれは現地の一つの段階的な問題でしょうけれども沖繩の軍用地の借地料よりは、このVOAは国務省の中にある組織だそうですが、借地料も高い、まあでき得れば存続をしてほしいというような陳情も受けました。ただ、私はそのとき疑問に思いましたのは、これは現地の方々の小さな生活の問題であって、VOA放送というものがわれわれ日本国民にとって、日本の国の主権にとってどういう関係があるかということについては、私は疑問に思って帰ってきたわけでございます。  まあ、その後いろいろ調べてみましたことについて、主として外務大臣と郵政大臣に御質問申し上げたいわけであります。  まずVOA放送の前に、電波の問題でございますが、国際電気通信条約というものがございます。この国際電気通信条約というものは世界的な、いわゆるグローバルな、物理的に限界のある電磁波というものを各国が国際条約で分け合って、日本がある部分をもらって帰ってきているわけなんです。これは政府国民にかわって、日本の国内でさらに放送局をやりたいという放送事業者に対して、またこまかく割り当てをしているわけなんであります。郵政大臣は御承知だと思いますが、国際電気通信条約のその前文の要旨を読んでみますと、「各国に対しその電気通信を規律する主権を十分に承認して、電気通信の良好な運用によつて諸国民の間の関係及び協力を円滑にする目的をもつて、この条約を締結する」というような内容であります。その前文の趣旨に基づきまして、いま申し上げたようにグローバルな立場から電磁波の割り当てをしているわけであります。  しかし、ここに一つ問題があるのは、いわば電波の割り当て、いわゆる放送局の免許というものは、日本の国の主権というものに付随する大事な仕事であります。この割り当ての中に、問題はこの沖繩返還協定の八条に規定されておりますVOA放送の存続を認めるということになるわけであります。もちろん、沖繩返還協定の中には、野党の諸君からいろいろ沖繩の返還について問題があるというお話があります。VOA放送などはその最たるものであるという御非難もあります。しかし、VOA放送を云々するあまり、沖繩の返還をさらに延ばしてもいいとか、交渉をやり直せとかいうことまで、私は実はこの問題を非難していってもしようがないと思います。私はこの主権の問題について少し続けて承りたいのですが、VOAが使っている周波数というものについては、いまはどんな内容であろうとも、返還後日本でこれを使いたい、ここのちょうどVOAに割り当てをした電波で放送をしたいと思っても、これはともかく当分はできないわけであります。しかも、その放送の内容その他についても、かなり問題を起こす可能性というものは、幾らも考えられるわけであります。この点について極端な言い方をすれば、これは主権侵害であると、私はそう言いたいのであります。主権侵害であります。この主権侵害という疑問についてひとつ承りたいのであります。  沖繩復帰のためにはやむを得ないといいながら、われわれの国家の持っている主権の侵害について、そう簡単にも認めるわけにはいかない。一体、政府は、アメリカ政府とこの返還協定をおつくりになった最中どういう交渉をおやりになったのか、さらに日本の主権というものを守ることについて十分配慮をなさったのか、交渉の経過を含めてまずそれをひとつ御説明を賜わりたいと思います。
  182. 福田国務大臣(福田赳夫)

    ○福田国務大臣 沖繩返還交渉の中でVOAの部門は、これは実は最後まで、もめたというと大げさかもしれませんが、論議をされた。この論議されたゆえんのものは何かというと、電波というものは非常に大事なものであります。これは水野君の御指摘のとおりです。そう考えており、わが国においては電波は統一的な管理をしておる、ぜひともこれは沖繩返還を機会に沖繩から取り除いてもらいたい、こういう主張をしたわけです。ところが、アメリカ側におきましては、このVOAは沖繩ばかりじゃないのです、世界各地でやっておる、しかも、これは平穏公正に運営しておる、アメリカの情報の解説あるいは情報の提供、そういうことが任務であり、これが沖繩に存続をすると、日本の国の行政執行にそういう面から御迷惑を及ぼすというようなことはあり得ない、そういうようなことで、この永久存続を主張したわけであります。しかし、これをどいてください、永久におります、この二つの主張が対立しておったのじゃ沖繩返還協定がまとまらぬ。そこで、まず期限を区切ったわけです。五年間、しかもこの放送内容、これがわが国の放送行政をやっていく上に支障のないような措置、つまり事前においていろいろな放送番組というようなものについて相談し合う、また相談の結果、日本意見を述べた、その意見についてはアメリカがこれを尊重する、そういうような規制も加える、そういうようなことで、これを臨時、経過的に認めていこう、こういうことにいたしたわけであります。これは、沖繩返還協定をとにかく急いでまとめなければならぬ、そういう上から言いますと、まことにやむを得ざる措置であった、こういうふうに考えております。
  183. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 ただいま水野先生は、国際電気通信条約の前文に、主権は尊重しなければならないということが書いてあるということを引用されましての御所説でございましたわけでございますけれども、私は、あそこに主権は尊重しなければならないと書いてありますのは、こういうように国際的な条約は結ぶけれども、しかし、おのおのこの締結に参加した各国家は、独自の主権というものを持っておるものだということを明らかにしたものだと思うのでございまして、ただいま、VOAを認めざるを得なかった事情については、外務大臣から御説明のとおりでございますが、その根拠であります協定を締結する、これは御承知のように第八条に明示してあるわけでございますけれども、その協定を締結するということについては、日米が主権をおのおの持っておるという対等の立場で協定を締結したことは間違いないと思いますわけでございます。しかも、周波数につきましては引き続きアメリカの波を使用するように、これは復帰後、日本アメリカとの間で協議が進められるわけでございますけれども、そういうようなことに、つまり、交換公文の中に明示されましたその基本的な方針に従っていろいろ取りきめをするということになっておるわけでございますから、これは主権を侵害するというようなことではないと私ども考えておりますわけでございます。
  184. 水野委員(水野清)

    ○水野委員 いま両大臣の御説明を承りましたが、さらに電波法との関連でもう少し承りたいのですが、これは郵政大臣御承知のように、電波法の五条というものには明らかに外国性というものを排除しておるのです。一般の、いわゆる電波無線は――たとえばその中で、外国人の議決権である株式の保有であるとか、役員の数であるというものを三分の一まではいいというふうにしてありますが、放送局に関してはさらにきびしく五分の一までしかやっちゃいかぬ、認めてはいかぬというきびしい内容になっております。私は、これは明らかに、一般の無線――タクシーの無線であるとか、船舶の無線というようなもの、そのほかの無線についての営業があるでしょうが、こういうものはまだいいが、放送というものは国民に非常に広範囲な影響を与える。文化的な影響を与える。場合によっては非常におそろしい影響力も持っている。だから五分の一以上の議決権というものを、その企業体の中に、外国人には与えないんだという精神だと思うのです。これは先ほど申し上げた国際電気通信条約の精神を受け継いでできた電波法の五条であります。これと、いま郵政大臣の御説明にもありましたが、同じ国際条約でありますが、沖繩返還協定という条約と、先ほど申し上げた国際電気通信条約は矛盾をしないというようお話でございました。矛盾をするのかしないのかということ、さらに電波法五条、これは国内法であって、返還協定は国際協定であるから、国際協定が優先するというふうな判断を政府でしておられますけれども、私はこの場でさらにその点について明快にお答えをいただきたいと思います。
  185. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 御指摘のように、日本の国内法であります電波法の第五条におきまして、外国の政府でありますとか、あるいは外国の法人には国内において放送を許さないというように明記されておりますわけでございます。この趣旨は、外国性――日本でない外国の性質と申しますか、外国性の排除、あるいは先ほど冒頭に御指摘のありました電波というものは非常に貴重なものだという、その電波の数が非常に少ない、希少性と申しますか、あるいは有限性と申しますか、数が少なくて有限的なものである。その有限性あるいは希少性に基づいて、それとただいま申しました外国性というようなことに立脚いたしまして、第五条というものが外国のものを排除するということに定められておる、私どもはかように解釈いたしておるわけでございます。ところが、同じ電波法の第三条に、そういうふうに外国のものは排除するけれども、条約に別段の定めがありますときはこの規定に従うということになっておるのでございまして、協定――協定というのは条約と同様に国会承認を必要とするという、条約と同等の性質を持ちました協定、その協定の第八条にVOAのことが明記されまして、これが五カ年だけ日本の国内において放送されますことを認められておりますわけでございますから、その規定に従って、電波法の第三条によって日本におきましても放送をしても差しつかえないというようなことになるわけでございます。
  186. 水野委員(水野清)

    ○水野委員 VOAの、協定の第八条の問題について両大臣から御説明をいただきました。私は、若干この主権の問題についてひっかかるところがありますけれども、先ほど申し上げましたように、沖繩の返還という大前提のもとに、やむを得ず私もこの問題には両大臣の御説明を納得せざるを得ません。  しかし、続けてもう一つ承りたいのは、株式会社極東放送というものでございます。御承知のように、現在はアメリカの株式会社極東放送というものがございまして、これは愛知書簡といわれるものの内容に、将来この極東放送株式会社に相当――文章を読んでみますと、「日本政府は、日本国の関係法令に従い、財団法人極東放送による日本語の放送を許す。」こういう約束をしておられます。極東放送の運営というものについては、将来財団法人の申請をお出しなさい、それをお出しになれば認可をして日本語の放送を許す、こういうことをいっておられます。この点について私は少し御質問申し上げたいわけであります。  まず、財団法人極東放送というものは、将来――将来のことでありますから、わからないといわれればそれまでですが、アメリカの本土にある極東放送株式会社というものと縁が切れてしまうのか。いわゆる支配権を脱して純粋の日本の財団法人として運営するのかどうかということを簡単に伺いたいのであります。
  187. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 愛知書簡の趣旨は、ただいま水野先生がおっしゃったとおりだと考えておりますわけでございますが、財団法人極東放送として日本語を放送いたしますものは、これはまさに日本の法人でございます。五カ年だけ特に継続して放送を認めます極東放送会社――カンパニー・インクということばを使っておりますようでございますが、その極東放送カンパニー・インク、これはまあ有限会社と訳しますか、単に会社とわれわれ申しておるわけでございますけれども、これは五カ年だけ英語放送として許します。これは御承知のようアメリカの放送でございます。その財団法人極東放送の日本語の放送はアメリカの資本が入るか入らないか、その性格はまさに日本の法人でございますけれども、また日本の財団法人でありますだけに、アメリカ人の理事というようなものは絶対認められない、そういう申請でありますれば免許はできないということになりますわけでございますが、その資産の状況につきましては、どんなようなことになりますか、極東放送会社の施設の一部を使うというようなことで、共用のそういう施設、資産なんというものがあるかないか、どうも私どもまだはっきりいたしておりませんけれども、あるいはそういうように資本、資金的には一部の共有というようなことがあるのではないかと考えておりますわけでございます。
  188. 水野委員(水野清)

    ○水野委員 いまの郵政大臣の御答弁、ちょっとわからないところがありますが、時間がありませんから先へ進めますが、私が危惧しているのは、VOA放送は国際協定で定められていて、一応原則として五年間は置くけれども、それから先は置かない。放送局を許可することは主権の侵害であるけれども、これも大事の前であるからやむを得ないということでありますけれども、極東放送については、私はむしろいろんな疑問点が多いわけであります。  そこで、大臣、いま承ったのでありますが、これは私は、大臣のおことばをいただいていると時間がなくなりますから、問題点だけを申し上げて、むしろ政府当局は、今後この点について、特に郵政省は真剣に監視をしてもらいたい。  疑問点を申し上げますと、たとえば、まず大体、財団法人極東放送というものを将来許可しますよという愛知書簡が、将来をアメリカ政府約束すること自体がこれはちょっとおかしいのです。いいですか。放送局の免許というのは、国内のものに対して、外国性の排除された国内の法人であろうと会社であろうとそれに許可するものを、いま極東放送会社というものが沖繩にあるから、これは何年か先にはなくなるだろうが、それに代替するようなものを財団法人で形をかえてお出しになったら、これは許可しますよというようにとれる愛知書簡というもの、これ自身が私は若干問題があると思うのです。  さらに、この極東放送会社というのは、いままでの経営の内容というものを調べてみますと、収入の六六・九%というものがアメリカ本国から献金が行なわれて、そして成り立っているわけです。沖繩の電波のいわゆるテレビと放送の広告収入源というものからいって、現に私どもが現地に行ったときに、現地の放送会社の幹部の方々が、この極東放送について認可を与えないでほしい、将来広告放送をやることになると、ただでさえも狭い沖繩における広告収入源というものはさらに再分割しなければならなくなってくる、自分たちの経営の危機になる可能性があるから、ひとつこれは許可をしないでほしいという陳情も受けました。いいですか。そうすると、財団法人になると日本の財団法人だから今度はだいじょうぶですというような御答弁をすでにこの国会でやっておられますが、よく考えてみると、いままで六七%近い本国の送金があったから成り立っている極東放送で、じゃあ広告をとればいいといえば、広告をとればこれはなかなか広告だけではやっていけそうもない。そうすると、新しくできる、将来予測される――予測すること自身がおかしいのですが、予測される財団法人極東放送というものの財政的基礎というものも、この点はかなり疑問があるわけです。また何らかの形でアメリカからの送金を受けなくちゃいけない、こういう経済的事情にも追い込まれる可能性があるわけであります。そうすると、これ自身が電波法五条にある外国性の排除という問題をおかす可能性があるわけでございます。電波法の第七条第一項第三号にも、財政的基礎が危ういものについては放送局の免許を与えちゃいかぬ、与える資格がないということもはっきり書いてあります。  いろいろな観点から見ますと、私は、VOA放送については、むしろ表に出ているだけに、まあ五年間というものをがまんすれば、一部侵害された主権というものを取り返すことができる。戦争で取られた沖繩を外交交渉で取り返したのですから、少しくらい問題があるかもしれません。しかし、この極東放送については、一ぺん財団法人を許可すれば、これは永遠なんであります。この点については、私はもっと詳しく申し上げれば幾らも疑問点がある。これについて、時間がございませんが、郵政大臣から、私の申し上げた疑問点について直ちにお答えいただければけっこうでございますし、また、今後の郵政省の財団法人極東放送に対する認可の態度、方針というものをここで御説明をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  189. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 御指摘の趣旨はよくわかるのでございまして、したがって、財団法人極東放送につきましては、愛知書簡は尊重いたしますけれども、免許そのものは電波法によって厳正にしなければならないという考えを持っておりますわけでございます。  なお、その後の運営については、放送法、電波法ともにかぶっておりますわけでございまして、しかも、いろいろ御指摘の点も私ども当然考慮しなければならない重要な問題だと思いますので、今後の管理につきましては万遺憾なきを期してまいりたい、こういうように考えておりますわけでございます。
  190. 水野委員(水野清)

    ○水野委員 私の質問を終わります。
  191. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 岡沢完治君。
  192. 岡沢委員(岡沢完治)

    ○岡沢委員 佐藤総理に最初にお尋ねいたします。  きょうは十二月十日でございますけれども、どういう日か御存じでございますか。
  193. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 何を言われておるのか、私、十二月八日ならよくわかりますが、十日、どういうことでしょうか、教えていただきたい。
  194. 岡沢委員(岡沢完治)

    ○岡沢委員 このただいまの御答弁で、ぼくは、総理の国連に対する考え方、人権に対する考え方がわかろうかと思うのでございますが、きょうは世界人権デーでございます。二十三年前の国連の第三回総会で世界人権宣言が発せられた記念すべき日でございます。あえて、これで総理に一本取った気持ちはございませんが、西村防衛庁長官は、国連軽視の発言でその職をおやめになりました。人間尊重をおっしゃり、国連中心の外交をおっしゃる佐藤総理が、世界人権デーをお忘れであったということにつきましては、いささかさびしい感じがいたします。  その人権の最後のとりでは裁判所でございます。そして、その裁判を受ける権利というのは憲法第三十二条で「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」という規定がございます。  そこで、最高裁判所にお尋ねいたしますが、ここでいう憲法三十二条の裁判所というのは、私は日本人の裁判官による日本の裁判所、ことばも当然日本語であるべきだと思いますし、適用法律日本法律だ、あるいは日本の憲法だと思いますが、御見解を聞きます。
  195. 長井最高裁判所長官代理者(長井澄)

    ○長井最高裁判所長官代理者 日本国憲法の定めでございますから、おっしゃるとおり、日本人の裁判官による日本の裁判所を規定しているものと、私、かたく確信いたしております。
  196. 岡沢委員(岡沢完治)

    ○岡沢委員 そこで、法務省でもけっこうでございますし、最高裁判所でもけっこうですが、沖繩におけるいわゆるアメリカ政府の裁判所の裁判の実態――私は御承知のとおり三十分しか時間が与えられておりません。往復でございますので、答えが長くなりますと、質問事項のすべてに触れるわけにまいりません。琉球政府の裁判所の裁判と分けまして、民政府の裁判所の裁判の特色というものを簡潔に、電報文的な要領でお答えをいただきたいと思います。
  197. 辻政府委員(辻辰三郎)

    ○辻政府委員 沖繩におきます米国民政府の裁判所でございますが、その刑事裁判の関係について申し上げます。  民政府の裁判所は、上訴審裁判所と第一審裁判所に当たります高等裁判所と下級裁判所、この二審制度の裁判所でございます。そして刑事の管轄権は、軍属、米国政府の被雇用者である米国国民、それから米軍構成員、軍属及びこの米国政府の被雇用者である者の琉球人でない家族の犯した犯罪について裁判権を持つのでございます。さらにまた、これらの者が犯した罪でなくても、米国の安全、財産または利害に影響を及ぼすと認める特に重大な事件、これについては民政府が裁判権を持つことになっております。  そこで、これは、今回私どもが引き継ぎの対象といたしておりますこの米国民政府の裁判所の刑事……(岡沢委員「電報文要領で簡単に答えてもらわないと時間がなくなるから」と呼ぶ)はい、これは大体九千件でございますか、最近五年間は、民政府裁判所における裁判は非常に少のうございまして、最近五年間は年間約十件程度でございます。
  198. 岡沢委員(岡沢完治)

    ○岡沢委員 答弁を求めますと、私の聞きたいことが答えてもらえないようですから、私の言うことが間違いであれば、裁判所からでも法務省からでも御指摘いただきたいと思います。  米民政府による裁判所の裁判の実態は、その裁判の基礎になる実体法は、いわゆるアメリカの軍事利用を目的とする統治政策を具体的に具体化した布告、布令が実体法であります。そして、その実体法の中身を見ましても、安全に関する罪が四十六カ条もございます。裁判の公開の例外が非常に多い。もちろん裁判官はアメリカ人であります。手続がすべてアメリカの米国法、米国刑事訴訟法、米国民事訴訟法が基本になって行なわれる。そうして、その刑事訴訟法の規則なんかも一般には公表されていない。ことばが英語であり、弁護士の選任につきましても非常に困難がある。この私の解釈に間違いがあれば、裁判所からでも法務省からでもけっこうです、指摘していただきたいと思います。
  199. 辻政府委員(辻辰三郎)

    ○辻政府委員 米国民政府の刑事裁判につきましては、その適用法規は布告、布令、それから琉球立法院の立法による琉球の立法、それから旧日本法のうちでなお琉球で効力を有しておる法令、それと琉球の条例、規則、すべて琉球政府の裁判所と同じ法律をもってその適用法規といたしております。手続につきましては、米国連邦の訴訟規則に準じて手続が行なわれております。
  200. 岡沢委員(岡沢完治)

    ○岡沢委員 いま、こまかい点についての指摘はありましたけれども、基本的に、米民政府による裁判がアメリカ人によって、アメリカの実体法を基本にして、手続的にはアメリカの訴訟規則によって行なわれる、ことばも英語であるということを考えました場合に、これが憲法三十二条でいう日本人全体に保障されたいわゆる裁判所の裁判でないということは、私は否定できないのではないかと思います。冒頭申し上げました世界人権宣言の第十条には、「何人も、その権利及び義務の決定に関して、また、自己に対するあらゆる刑事上の訴追の決定に関して、独立した公平な裁判所による公正かつ公開の審理を受ける完全に平等な権利を有する。」と宣言しているわけであります。米民政府の裁判が、これとおよそ縁が遠いということは明らかでございます。ことに、琉球政府と米民政府との関係を考えました場合、米民政府の裁判所の権限が非常に強いと申しますか、むしろ、これが、琉球政府の裁判所の裁判に対してその自主性、独立性を疑わせるような機能を持っておるということは、たとえば琉球政府の裁判所のしました判決に対して、一定事件については移送命令ができる、あるいは琉球政府の裁判に対して再審ができる、琉球政府の裁判に対する高等弁務官の恩赦の権限等を考えました場合、高等弁務官によりまして、琉球政府の司法権自体を制止させるような権限を持っておるということは言えるかと思います。琉球ではよく、彼らアメリカ人はわれわれをさばくことはできるけれども、われわれは彼らをさばくことはできないということばがございます。  こういうことを考えました場合、今度の法案によりまして、あるいはまた協定によりまして、いわゆる琉球政府の裁判と米民政府による裁判とを、区別することなしに、すべてその効力を、原則として認めるというお措置をおとりになりましたことは、どうしても納得できないわけでございますが、琉球政府の裁判と米民政府による裁判とを、やはりその実態等に照らしまして、あるいはまた憲法の精神等に照らしまして、分けて考える御意見はないか、お考えはないか、法務大臣にお尋ねいたします。
  201. 前尾国務大臣(前尾繁三郎)

    ○前尾国務大臣 結論から申しますと、分けて考える必要はない。と申しますことは、もう従来から言っておりますように、やはりいろいろ行なわれております原理原則は、近代法制またわれわれの内地の法制と何ら変わりがない。手続の点あるいは裁判官が異国人であるということでありますが、しかし、たとえば移送命令と申しましても、その適用を受けた者はほとんどない、二名でありましたか、そういうような状態で、私はむしろ逆に、これを引き継がないというほうが、法的な安定性を失うのじゃないかというふうに考えてまいったわけであります。
  202. 岡沢委員(岡沢完治)

    ○岡沢委員 けさの畑委員と法務大臣との問答を聞いておりましても、結局、大臣等のお考えは、法的安定性あるいは法秩序の維持が前面に出まして、いわゆる人権尊重あるいは人権侵害に対する救済という面が欠けておるのではないか。憲法の精神からいたしましても、どうしても私は納得できないところでございます。  それにつきまして、けさもいわゆる沖繩の裁判を受けた方々に対して、再審の制度について特別の配慮をする必要があるのではないかという質問がございましたし、それについては、そういうことは考えないというお答えがございました。しかし、沖繩裁判の実態、憲法の、先ほど来繰り返しております裁判を受ける権利、あるいはまた沖繩裁判所の裁判の現実の姿等を見ました場合、私は、やはり再審の道は、日本の現在の現行法による再審よりは、幅広く解釈されて、あるいは確用されてしかるべきだと思いますが、重ねてこの点についての見解を聞きます。
  203. 前尾国務大臣(前尾繁三郎)

    ○前尾国務大臣 これも先ほど答弁したわけでありますが、非常に違法なもの、あるいは異常に妥当性を欠くもの、そういうものは、当然再審の場合に考えられることでありますので、私は、やはり何らかの意味で再審の理由を持っておるものじゃないか、かように考えております。したがって、現在の内地の再審の規定によっても十分その目的を達し得るのじゃないか、かように考えておるわけであります。
  204. 岡沢委員(岡沢完治)

    ○岡沢委員 けさの質問に対しまして、総理も、救済方法がないわけではないという御答弁をなさいましたし、法務大臣も、いまの日本の再審の制度で救済できるというお答えでございますが、午前中も問題になりましたように、再審制度がきわめて狭い門であるということは、御承知のとおりでございます。  そこで、けさの法務省刑事局長答弁にありました刑事訴訟法四百三十五条の「明らかな証拠をあらたに発見したとき。」という、その「明らかな証拠」というものを相当広く解するか、あるいはまあ沖繩の実態が、平和憲法の精神と全く反する軍事目的利用の米軍占領であったというようなことを考えました場合に、客観的な事実として、沖繩の、特に米民政府裁判所による刑事裁判が、再審の理由になるといういわば公然の事実があるというふうな解釈で補うという御方針であるのか、やはり個々のケースについて、この違憲性、あるいはまた憲法九十八条の解釈からくる問題点を指摘しなければ再審の事由にならないとお考えなのか、その辺についての見解を聞きます。
  205. 前尾国務大臣(前尾繁三郎)

    ○前尾国務大臣 再審の規定を特に曲げて広げるという考えはありませんが、結局、再審に相当する場合が多いんじゃないか、事実上の問題として多いんじゃないか、かように考えております。
  206. 岡沢委員(岡沢完治)

    ○岡沢委員 それでは、ちょっと別の問題になりますが、沖繩の確定した刑事裁判を前科として扱うのかどうかという問題について、お尋ねをいたします。  返還協定の第五条によりますと、「民事の最終的裁判が有効であることを承認し、かつ、その効力を完全に存続させる。」と、民事については明文がございます。刑事には全くこういう規定がございません。私は、そういう意味からいたしますと、刑事裁判につきましては、すでに確定し、執行の終わった裁判についてまで効力を維持することを明記してないわけでございますから、これらの事件を、いわゆる日本の刑法にいう前科とすることはできないと解すべきだと思いますが、見解を聞きます。
  207. 前尾国務大臣(前尾繁三郎)

    ○前尾国務大臣 お説のとおり、前科と見ないのであります。と申しますのは、現在におきましても、沖繩で犯罪を犯した人が内地でまた犯罪を犯しても、前科とは見ておりません。それ以上に、今度は向こうが内地になってくるわけでありますが、現在の場合よりもよりきついといいますか、そういうことはとるべきでない、かように考えておりますので、前科と見ないということにいたしておるわけであります。
  208. 岡沢委員(岡沢完治)

    ○岡沢委員 その点はよくわかりましたが、前科と見ない、したがって、当然、累犯加重等の対象にならないという解釈だと思いますが、そうすれば、この確定判決等は、法律的にはどういう判決になるんですか。たとえば刑の執行猶予につきまして、取り消されることなしにその猶予の期間を経過しますと、刑の言い渡しが効力を失うのと同じような解釈にされるのか、その辺の法的な解釈を明らかにしてほしいと思います。
  209. 辻政府委員(辻辰三郎)

    ○辻政府委員 この特別措置法案第二十七条一項の一番最後のところの「沖繩の刑事関係法令規定によつて生じた効力は、本土の刑事関係法令上の相当の効力とみなす。」という条項によりまして、沖繩における確定裁判を日本の確定裁判とみなすということでございまして、沖繩の確定裁判の既判力と原則として執行力とを認める、こういう趣旨でございます。
  210. 岡沢委員(岡沢完治)

    ○岡沢委員 この点はもう少し論じたいところでございますが、持ち時間が十数分になってしまいましたので、別の問題に移ります。  佐藤総理にお尋ねをいたします。  四十四年十一月二十一日、総理も記憶に新たな日米共同声明第四項に「韓国の安全は日本自身の安全にとつて緊急である」、総理がみずからおっしゃっております。「台湾地域における平和と安全の維持も日本の安全にとつてきわめて重要な要素である」、これも総理自身がお述べになっております。その後、二年間の経過の中で、中国の国連加盟、ニクソン訪中の発表あるいはニクソン・ドクトリンによるアジアからの撤退等を考えました場合、特に佐藤内閣も、台湾は中国の一部であるという新しい認識にお立ちになっておる現時点において、「台湾地域における平和と安全の維持も日本の安全にとつてきわめて重要な要素である」ということは、中国の一部における平和と安全の維持も、また日本の安全にとってきわめて重要な要素であるという解釈に帰せざるを得ないと思うわけでございますが、この二年前の四十四年十一月二十一日の韓国・台湾条項に関する確認は、現時点においてもお変わりないかどうか、お尋ねいたします。
  211. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 台湾やあるいは韓国、まあ事態が起こらなかったことはたいへんしあわせでございました。まずその点を喜びますが、もしも事態が起こると、私どももやはり類焼しないように気をつけなければならぬ、こういうことはいままでたびたび申したとおりであります。私は、今日もそういう感じがいたします。  中国の領土である、台湾がその一部だ、こういうことは認めておりますが、それにいたしましても、政権が二つある今日の状況でございますから、そういうところが問題がないことを心から願っておるというのがほんとうの心境でありまして、いわゆる共同コミュニケのその条項をとやかくしよう、こういうわけではございませんし、私どもまた積極的にそこに出かけてどうこうする、こういうものではないことは、もうこの委員会を通じてしばしば説明したとおりでありますから、もう誤解はないだろうと思いますが、私どもは類焼をしないように十分気をつけていきたいと考えております。
  212. 岡沢委員(岡沢完治)

    ○岡沢委員 類焼の問題――基本的認識に変わりはないか……。
  213. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 基本的な問題については変わりはございません。
  214. 岡沢委員(岡沢完治)

    ○岡沢委員 その同じ共同声明の第四項に「万一ヴィエトナムにおける平和が沖繩返還予定時に至るも実現していない場合には、両国政府は、南ヴィエトナム人民が外部からの干渉を受けずにその政治的将来を決定する機会を確保するための米国の努力に影響を及ぼすことなく沖繩の返還が実現されるように、そのときの情勢に照らして十分協議する」、いわゆるベトナム再協議の条文がございます。これは従来の政府の御答弁からいいますと、ベトナム再協議はその心配はない、そういう事態は起こらないという解釈でお逃げになっておりますけれども、この条文をすなおに読みます場合、そうしてまたベトナム情勢の実態を考えました場合、政府が予想される四月一日あるいはアメリカの希望する七月一日、来年のいずれの時点においても、まだベトナム戦争は継続しておるというのが当然の認識かと思います。そうしますと、やはりこの協議の問題、単に私は、この協議は沖繩返還の実現だけと結びつけた解釈とは思えない。これにつきましての当時のジョンソン国務次官背景説明等を見ましても、やはりこの共同声明あるいはアメリカ大統領と日本総理の合意の前提として、アメリカの基地機能を害されない、あるいはアメリカが諸外国に約束をしたコミットメントの遂行について障害を来たさないということを言っているわけでございまして、そういうことを考えました場合、ベトナム出撃とこの沖繩返還――当時の新聞は、ベトナムへの沖繩からの直接出撃については、やはりその時点において再協議というような見出しで報じておる有力新聞もございました。もうB52は撤去された、そう心配はない、と私は軽く考えて済ませる問題ではないと思いますので、この点についての総理の見解を聞きます。
  215. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 これは返還協定アメリカにおいて審議が終了したことを考えますと、用意万端整えたコミュニケではありましたが、この点にあまり心配しなくて私ども返還協定を調印することができた。また、アメリカでもそのまま返還協定の審議が終わった、こういう状態でありますから、ただいまから考えますと、十分考えられたことではあったが、そこまで考えなくてもよかったのだな、かように思っておる次第でございます。
  216. 岡沢委員(岡沢完治)

    ○岡沢委員 私は、総理の解釈で、あるいは政府の解釈で済めばいいと思います。この解釈は単に沖繩返還の実現だけにかかっているのではなしに、実現した段階においても、ベトナム戦争が継続しておる場合には、このアメリカの義務遂行に支障のないような姿勢ということがいわば事前協議のある種の制約として規定されているという解釈も、すなおに見た場合、あるいは日本にとって不利かもしれませんが、考えられるのではないか、その点を私はお尋ねしているのです。重ねて答弁を求めます。
  217. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 当時の状態が、ただいまも申し上げますように、何らの支障なしに調印ができた。そうしてその後、新しい話し合いもやられておらない。またその条項に基づいての協議もなされておらない。そのことを申し上げて、これはたいへん注意には注意をしたのだけれども、その項目が働かなくて済んだ、これを喜んでおる、かように御理解いただきます。
  218. 岡沢委員(岡沢完治)

    ○岡沢委員 少し議論がかみ合わないわけでございますが、私の解釈のほうがわが国にとっては不利かもしれませんので、その点は必ずしも突っ込んでお聞きはしません。ただ具体的に、沖繩の米軍というのは御承知のとおり十八戦術戦闘航空隊、第三海兵隊、いずれも核、非核両用兵器で武装された緊急出撃部隊でございます。B52はないといいましても、先ほど申しましたベトナム戦争がなお続くという前提のもとで、事前協議の解釈と申しますか、政府の姿勢についてお尋ねをいたしたいわけでございますが、万一沖繩からベトナムへの直接出動について事前協議の要請があった場合、ノーお答えになるということをはっきりこの際明らかにしていただけるかどうかお尋ねをしたいと思います。
  219. 福田国務大臣(福田赳夫)

    ○福田国務大臣 現実の問題といたしますと、さよう事態は万々予想できないところでありますが、まあかりに、これは仮定の問題といたしまして、ベトナム出撃が事前協議対象として議論をせられる、そういう際におきましてわが国はどういう態度をとるか、こういうと、ベトナム戦争、ああいう遠隔な地域の問題でわが国に火の粉をかぶるというよう事態にはなるまいと思います。でありまするから、大体私はそれに対する出撃はノーだ、こういうふうに思います。ただ、これは仮な、仮定の議論でありますが、これが非常な大規模なものに展開いたしまして、これは日本にも火の粉がかぶりそうだ、こういう際におきましては、その際はあるいはイエスという返事があるかもしらぬ。これは非常な仮定であり得ざることでありますが、仮定の仮定のというようお話でございまするから、あえて申し上げた次第でございます。
  220. 岡沢委員(岡沢完治)

    ○岡沢委員 いまの外務大臣の答弁は、安保のいわゆる極東の範囲とも結びつけてぜひ詰めたいところでございますが、私には残された時間がわずか五分でございます。  もう一点だけこの第四項に関連して総理にお尋ねいたしますが、その末尾でございますが、「総理大臣は、日本としてはインドシナ地域の安定のため果たしうる役割を探求している旨を述べた。」とある。二年前に探求している旨を述べられたのですから、どういう探求をされたか、その結果はどうかお尋ねいたします。
  221. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 日本は軍事的には何らインドシナ半島に手を伸ばすようなことは考えませんけれども、いろいろ戦争の惨禍を受けておる地域住民についての人道上の保護あるいは援助、こういうことには私どもも協力を惜しまない、こういうことでございまして、これはすでに赤十字を通じて私どもが地域住民に対するそれぞれの援護処置をとったこと、これは御承知のとおりであります。私どもそういうことを申し上げた、約束したのでございます。
  222. 岡沢委員(岡沢完治)

    ○岡沢委員 きのうきょうの新聞によりますと、防衛庁長官は、水田大蔵大臣、竹下官房長官等と御協議の上で、四次防の発足を一年延期はしないで、来年から予定どおり発足するというふうにおきめになったそうでございますが、事実でございますか。
  223. 江崎国務大臣(江崎真澄)

    ○江崎国務大臣 今朝閣議のあと、水田大蔵大臣、官房長官、私、三者で協議をいたしまして、来年度五カ年計画の一環として四次防を推進しようと――ただ、経済的な基礎がきわめて流動的と申しまするか、まだ固まっていない現状において、五カ年全部の計画をいま直ちに予算編成を前にして策定することは困難を伴いまするので、年度内にでき得べくば決定するというような方向で事務的折衝に入りたい、こういう大筋を決定いたしましてございます。
  224. 岡沢委員(岡沢完治)

    ○岡沢委員 質問時間がございませんので、一括して防衛庁長官を中心にお尋ねいたしますが、長官はこの理由として、新聞等の報ずるところによりますと、四次防を一年延期する積極的な理由はないとおっしゃいました。私は逆に、四次防を来年から発足させなければならない積極的な理由もないんではないか。いまの御答弁にございましたように、通貨調整後の経済情勢の見通し等もまだ不確定要素多分でございます。また、軍国主義批判が諸外国からあることも御承知のとおりでございます。財源難、言うまでもございません。国際情勢のいい方向への変化ということも考えました場合、私はあえてこの時期に――いま五年間という長期のことは別としてという御答弁はございましたけれども、必ずしも来年から発足させなきゃならないという理由こそむしろ乏しいんではないか。また、防衛庁長官は、いわゆる自衛隊から手論をぶち上げられまして、相手が攻撃してきたときだけ果敢にはねつける。攻撃してくる可能性のある相手が日本に存在するのかどうか、いまの日本を取り巻く国際情勢を考えました場合、そういう脅威がほんとうにあるのかどうか。これは私は感心して、江崎長官就任の当時の新聞を読んでおりますと、長官が四十一年九月、文化大革命のさなかに中国を御訪問になって中国人民解放軍をごらんになった。そのときの感想として、この軍隊、中国の解放軍は外へ出て戦う軍隊ではないということを知ったと発言なさっております。そういうことになりますと、中国からの日本への脅威と――その後の中国の姿を見ましても、私はそう見るわけにはまいらない。考えられるのは――名前をあげることは避けますけれども、朝鮮半島。しかし、どう考えましても日本に対する直接の脅威ということは考えられません。また、日本はよくいわれますように、いわゆる海洋国家として四面海に囲まれておる。日本海あるいは沖繩と台湾との間を見ましても、東シナ海の存在等を考えました場合、この海に恵まれておるというだけで、百万の陸上軍に相当する防衛能力が、自然のうちに恵まれた価値として与えられておるというようなことを考えました場合、このいま申しました、しいて、見通しの困難な財源の不足する時期に、私は、ほかの五カ年計画は延期する、この四次防だけは来年から発足するという新聞報道等見ました場合、佐藤内閣の正体見たりという感じも含めて納得できないものがございますので、私の二、三の質問に対して、長官、最後に総理からもお答えいただきたいと思います。
  225. 江崎国務大臣(江崎真澄)

    ○江崎国務大臣 御指摘の点でありまするが、なるほど私も、現在日本の周辺に日本を直接攻撃するという雰囲気はだんだん緩和されてきたというふうに理解いたしております。これは平和を確保する任務を帯びておりまする防衛庁といたしましても、非常にしあわせなことであります。御指摘のように、中国の軍隊もまさに侵略性を持っておるというより、やはりあの広大な大陸を背景にして、いわゆる他国の軍隊を引き入れてたたく式のものである、私、しろうとながらにそんな感じがいたしたことも事実であります。しかし、もともと日本の自衛隊は仮想敵国を持ってこれが整備されておるわけではありません。日本の独立を維持し、平和を確保していくための最低限の自衛力、これを確保しようということで今日まで計画が進められてきておるわけであります。経済の情勢必ずしも芳しくありませんが、そうかといって、武器は古いものはもうだんだん使えなくなる。御承知のとおり、私、ちょうど十年前に防衛庁長官をやったわけでありまするが、その当時の武器はおおむね破棄する段階にきておるものも、もうすでに破棄されたものもありまするし、多いわけであります。そうすると一ときに予算がたくさんつきまして、ここにあるものを買ってきて充足すればそれで間に合うという性格のものではないわけですね。やはり防衛関係の機器というものは、あらかじめ注文をして何年かの後にそれが入る。しかもまた専門家の、といいますのはユニフォーム等等の意見を徴しましても、これを自由にマスターするためには最低四年から五年はかかる。ほんとうにフルに使えるのは六年、七年、八年といったあたりだということを申します。そういう見地に立ちまして、古くなったものを更新させる。これはぜひひとつ御理解を得たいものだと思っておりまするのと、もう一つは、自衛隊の隊員の環境を整備していく。日本もだんだん経済的に豊かになってまいりましたので、それに合わせて、でき得べくんば二段ベッドは一段ベッドで済まないものか、老朽隊舎は新しいものにかえていくことはできないのか、あるいはまた教育そのものを、たとえばこういう国際環境が緩和しておりまするときに教育の内容を整備充実していくとか、たとえば防衛医科大学校の設立というようなことが、いまわれわれ部内で検討しておるわけでございまするが、そういうような面で、充実をしたり整備をしなければならぬ問題は一ぱいあるわけでございまして、そういうものをひとつ着実に片づけていきたいという意味で四次防計画を来年度もその初年度として実施したいという構想で、これから事務折衝に入ろうとしておるわけでございます。
  226. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 いま防衛庁長官から詳細にお話しをいたしましたから、私から申し上げる必要はないように思いますが、基本的には私どもは自衛力の整備、国力、国情に応じてこれを整備するというそういう基本方針をとっておりますし、また同時に仮想敵国などは日本は考えておりません。そういうことをはっきり申し上げて誤解のないようにお願いします。
  227. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 時間が過ぎましたから……。
  228. 岡沢委員(岡沢完治)

    ○岡沢委員 答弁は要りませんが、一言だけ。  国力、国情に応じて自衛力の整備、そのほうだけは着実に実行される。国民の福祉のほうは口先だけということのないように、特に新聞の報じますように、防衛力の整備がほんとうの必要性からではなしに、増原長官また西村長官が相次いで首になった、それで自衛隊員の士気に影響する、そういう政治的な配慮から、あるいは水田大蔵大臣が十二月十七日に十カ国蔵相会議に行かれる、そのとき通貨問題と引きかえに自衛力の増強をアメリカから要請される、その布石だというような自主性のない防衛力の整備計画、四次防であってはならないということを指摘させていただきまして、質問を終わります。
  229. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 山中吾郎君。
  230. 山中(吾)委員(山中吾郎)

    山中(吾)委員 私は、文教政策の立場から、今度の沖繩復帰対策要綱並びに沖繩復帰に伴う特別措置法案を一べついたしましたが、結論的には、本土並みという単純な基準のもとに文教問題も処理されようといたしておりまして、文教政策の特殊性に対する配慮あるいは沖繩の歴史的事情に対する配慮、沖繩県民に対する、この間の木島委員のことばをかりれば、沖繩の心に対する理解というものがほとんど見えないと感じて、まことに遺憾に思っておるのであります。そこで文部大臣に、そういう観点から、広範な文教政策でありますので四十五分ではとても意を尽くすことはできないので、二、三象徴的な事項を取り上げてお聞きいたしたいと思うのであります。時間がありませんから、簡明に、端的に御答弁いただきたいと思います。  まず第一に、沖繩の小中高に至る設備、施設の整備について文部省はどういう計画があるのか、これについてお聞きいたしたいと思います。  私の調査によりますと、文部省基準からいいますと、沖繩の義務教育諸学校、高等学校の施設設備は大体四割、六割程度の水準である。例を申し上げますれば、特別教室、いわゆる物理、化学等の実験教室その他は三割程度しかない。普通教室においても、一つの教室を二つに区切って授業をしておる。私は沖繩に行ってこの目で見てまいりましたが、那覇市付近の小中学校はいまなお戦災当時と同じような姿にある。屋内運動場に至ってはほとんどありません。二%程度しかないと報告をされておるのであります。さらに教材につきましても、理科の備品あるいは聴視覚教材は、本土の水準からいって大体二四%程度である。これが沖繩の現実の教育水準であります。  ここでぜひ文部大臣並びに総理大臣にも聞いていただきたいと思うのでありますが、第二次世界大戦によって校舎は全滅して、ゼロから出発しておるんだ、そしてあらゆる努力を払って現在に至っておるのでありますが、ことにその当時の戦争状況からいいまして、当時の沖繩の教員二千二百名のうちの七百名が命を捨てた。師範学校の生徒五百名が全滅をしておる。六千人の児童が殺されて、そうして校舎もない。教員もそういう状況の中で出発をして、あらゆる苦心をしていまの状況になっておるのであります。これに対して、本土に復帰するときに、やはりこれについては本土の水準に引き上げる、国が全責任をもって、財政的にも年次計画を立てて引き上げる政策がなければならぬと私は思う。特別措置要綱その他を見ますと、そういうものは見当たりません。文部大臣においてどういう計画をお持ちになっておるか、お聞きいたしたいと思うのであります。
  231. 高見国務大臣(高見三郎)

    ○高見国務大臣 お答えいたします。  山中先生がいま御指摘になりましたように、沖繩におきまする公立学校施設の保有状況はお説のとおりであります。基準面積の達成率を見ますと、校舎では、本土の九一・四%に対しまして六二・三%という低さであります。屋内運動場に至りましては、本土の七〇・三%に対してわずかに一二・三%という状態であるのであります。  沖繩の公立学校施設の整備計画につきましては、本土に復帰いたします昭和四十七年を初年度といたしまして、昭和五十一年度までの五カ年間で基準面積に達する保有面積の達成率を本土並みに引き上げることを目途といたしまして、五カ年計画を策定中でございます。なお、補助率等につきましては、沖繩の財政等の特殊事情を考慮いたしまして、高率補助とする等特別の措置を講じてまいりたいと存じます。  また、御指摘がございました沖繩における教材につきましては、昭和四十四年に小中学校について本土と同内容の教材基準を定めて、その整備を進めてまいってきたところでありますが、理科教育設備については、早くから本土と同一の設備基準に基づいて整備が進められておりますけれども、本土との格差は、この面ではやや少ないと言えるのでありますが、教材の整備、理科設備整備ともに復帰後に一定期間高率補助を行なわなければならないと考えておるのであります。また産業教育の実験、実習のための施設整備については、これはお話にならぬほど低いのでありまして、大体本土の半分と見なければならぬ状態であるのであります。実験、実習の充実をはかります上で大きな障害になっておりますので、これを本土並みに引き上げることが必要であると考えて、これについても復帰後高率の補助を行ないまして、できる限り早急に本土との格差の解消をはかっていきたいと存じております。
  232. 山中(吾)委員(山中吾郎)

    山中(吾)委員 年次計画として考えておられますか。さらにその補助率はどうでありますか。
  233. 山中国務大臣(山中貞則)

    山中国務大臣 補助率は私のほうで一括してまとめましたので、御答弁いたします。  沖繩において補助率の基礎的な考え方は、かつて本土に存在しましたあらゆる高率の補助率を下回らないように、旧北海道、旧奄美その他現在とられております僻地とか離島とか山村、その他のあらゆる地域かさ上げ法、後進地域補助率の特例に関する法律等も全部念頭に置いて、それを下回らぬものにいたしたわけでありますが、その立場からまいりますと、まず義務教育で、小中学校においては、校舎、屋内運動場については、御承知のように本土では小学校が三分の一、中学校が二分の一となっておりますが、これはいずれも十分の九にいたしております。特殊教育学校の小中学部の教室、寄宿舎、屋内運動場、統合校舎屋内運動場、危険校舎屋内運動場、寄宿舎等はいずれも本土においては二分の一で、わずかに過疎が三分の二の例がございますが、沖繩においてはいずれも四分の三ということであります。  第二点は、公立小中学校の一般教材、これは盲ろう、養護学校の小中学部を含みますが、これに対しても本土の二分の一に対して四分の三であります。産業教育設備、公立の中学校、これも盲ろう、養護学校の中学校を含みますが、本土の三分の一に対して四分の三。次に理科教育設備については、公立の小中学校、盲ろう、養護学校の小中学部を含んで、本土の二分の一に対して四分の三。次に僻地教育施設の教職員住宅については、本土のほうが二分の一で、わずかに過疎に三分の二の例がありますが、住宅については沖繩について四分の三。僻地集会室については、公立の学校について三分の二であります。それから学校給食施設等については、公立小中学校について、本土の三分の一に対し沖繩は四分の三。高等学校までは一応省略いたしますが、公立小中学校の水泳プール、これはいずれも本土三分の一に対して四分の三のかさ上げをいたしておるわけでございます。
  234. 山中(吾)委員(山中吾郎)

    山中(吾)委員 私は、この沖繩の教育施設の引き上げについては、戦災復旧という思想で処理してあげなければいけない問題であると思うのです。いま高率の補助ということが政府の方針にあるので、それで満足しますけれども、それでもその足らぬ部分は起債その他で、あの貧乏な沖繩県に対して負担をかけないように措置してもらいたいこと。同時に、この公立学校の施設整備計画は、一応文部省は年次計画といっておるけれども、年度ごとの予算要求で、絶えず大蔵省のほうから年度ごとに査定をされ、たいてい年次計画が一年か二年延びるというのが長年のほとんど常識である。  この際、あまりこれを論議しておる時間がないので、端的に、大蔵大臣、この沖繩の教育施設の復旧に対しては、またいろいろの理屈をこねてあとへあとへ引き延ばすということのないように、ここで明言をしていただきたい。
  235. 水田国務大臣(水田三喜男)

    ○水田国務大臣 いま文部大臣が言われましたように、基準面積に対する達成率や基準教室数に対する達成率において、屋内体育館それから特別教室というようなものは内地に比べて非常に劣っておりますので、これは実情に応じてこういうものの整備改善を急がなければならないと思います。非常におくれておりますので、これを急速にするというわけにはまいりませんから、したがって、関係官庁等の要望によって、どうせ計画的に、これを何年でこうするという一つの目標を持った改善策をやらなければいかぬと思いますので、その線に乗った予算の計上を今度はするつもりでおります。
  236. 山中(吾)委員(山中吾郎)

    山中(吾)委員 文部大臣は五カ年計画と言っておるのを大蔵大臣は頭に入っていない。こういう問題ぐらいは簡単にここで言えないのですか、一体。
  237. 水田国務大臣(水田三喜男)

    ○水田国務大臣 言えないのではございませんで、いまやっておりますので、これはやります。
  238. 山中(吾)委員(山中吾郎)

    山中(吾)委員 必ずやるという大蔵大臣の言明でありますから、今後監視をしながら期待をいたしております。  なお、この施設、設備の計画に、単なる本土並みという理想のない考えでなくて、あの地域の学校――植木その他、苗木を向こうに送って学校の緑化をはかるという計画があると仄聞しておるのです。まことにいいことである。向こうを視察いたしましても、非常に惨たんたる、潤いのない学校環境であるので、沖繩の小中高を全部緑化するという構想はぜひ実現をされることを私も期待をしたい。ことに公害問題が出たあと、教育のあり方を根本的に検討すべき段階に来ておると私は思うのだが、大体学校の施設、設備というのは物理化学の実験施設、いわゆる物理化学主義である。そうでなくして、学校が植物園であり動物園であって、子供が義務教育を終えるまでに、ある木を植えて花を咲かす体験を持たすとか、あるいはこん虫を飼育して生命の尊重を体験さすというふうないわゆる生物科学主義の教育に転換しなければ、現在の公害を教育政策として解消するなにはない、そういうふうに考えておるので、この機会に沖繩の学校を全面的に緑化をして、植物園なり動物園であるような学校にしたい、こういう構想を持っておると仄聞をした。わずかに文部省が、一つの教育政策としての識見が出たような感じがしておるのでありますが、これは事実でありますか。
  239. 高見国務大臣(高見三郎)

    ○高見国務大臣 これは沖繩復帰の記念事業といたしまして、学校に植樹をするという計画を持っております。
  240. 山中(吾)委員(山中吾郎)

    山中(吾)委員 文部大臣はあまり十分に聞いていないようだが、どのぐらいの予算を計上しておるのですか。文部大臣、あまり知らないようだな。
  241. 高見国務大臣(高見三郎)

    ○高見国務大臣 私のほうで要求いたしておりまする予算は二千万円でございます。
  242. 山中(吾)委員(山中吾郎)

    山中(吾)委員 たった二千万円で沖繩の小中高を緑化できるのならば、これは実にわずかな予算で実現できる。ぜひこれはここで端的に実現をする約束をしてしかるべきである。大蔵大臣、私が答弁を要求しないけれども立っておられたのだが、どうですか、それは。
  243. 水田国務大臣(水田三喜男)

    ○水田国務大臣 二千万円は少し要望としても少な過ぎると思います。やるのならやはり一定の構想をもってやったほうがいいので、予算要求は出ておりますが、やり方については、大蔵省は文部省などと相談して、さっき言われたような、単に木を植えるだけでない構想も取り入れたやり方をしたいといって、いま予算の査定中に、そういうことも考えているところでございます。
  244. 山中(吾)委員(山中吾郎)

    山中(吾)委員 水田文部大臣から答弁を受けたような感じをいたしましたが、高見文部大臣のほうが非常に消極的で、いかぬのじゃないですか。いま日本列島が公害化しようというふうなときで、人間不在の物理化学主義から、こういう生物科学主義に教育課程も転換すべきである。十八世紀の古くさい期待される人間像などを卒業しなさい。この機会に私は、沖繩をモデルとして、そういう設備、施設の方向を明確にしてやることを期待いたします。大蔵大臣がさらにもっと理想を持ったものに、文部省を指導しながら予算を計上する、二千万円ぐらいではないと言っておったのでありますから、大蔵大臣に期待をしながら、高見文部大臣、大蔵大臣より低姿勢の消極的なそういう答弁ではまことに残念だから、もう一度答弁をしてください。
  245. 高見国務大臣(高見三郎)

    ○高見国務大臣 山中先生に感謝いたします。私のほうではできるだけ――多々ますます弁ずるのであります。
  246. 山中(吾)委員(山中吾郎)

    山中(吾)委員 高見文部大臣も静岡県選出の衆議院でありますが、先般の西村防衛庁長官も静岡出身で、失言をして罷免になった。その前の小林法務大臣も静岡選出で罷免になった。二度あることが三度あるとすれば、高見文部大臣も静岡選出でありますが、もっと失言を――罷免をされないような、佐藤内閣がつぶれても高見文部大臣は留任をさせたいというような失言をしなければいけませんよ。いまのような非常に消極的な――こういうことこそもっと失言をしてロマンチズムを出すくらいでないと、文部大臣の資格がない。三度目の失言は留任されるような失言を期待いたします。あまりにも消極的です。  次にお聞きしたいのですが、沖繩の小中学校――高等学校を含むかどうかは明確でありませんけれどもアメリカの軍用地に校地が没収をされて、現在やむを得ず他の地域を借りて借用賃を出して教育をしておる。これは私は、日本の憲法、教育体制のもとに沖繩の学校が戻ってきた限りは、自分のおもやがアメリカの軍事基地に使用されて、かりにほかの土地を借りて教育をしておるということでは、子供の教育はできない。そこからは日本国民の誇りある人間形成はできないと思う。このままでいいですか。
  247. 高見国務大臣(高見三郎)

    ○高見国務大臣 御指摘のように、沖繩の学校は、基地に校舎を接収されておりますのは十三校にのぼっております。が、全般に見まして、校地の面積が、本土の校地の面積に比べますると、大体本土では小中学校については児童生徒一人当たりの面積が三十一平方メートルということになっておりますが、沖繩の場合は二十五平方メートルと下回っておるわけであります。  そこで、軍用地接収によりまして現に校地を借用いたしております小学校につきましては、当該用地の買収を必要とするものにつきましては買収に要する経費の一部を国庫補助をする。また、那覇、浦添などのように社会増の市町村もあるわけであります。こういう地域につきましては、小中学校用地の買収に要する経費の一部を、これも国庫補助をするというたてまえをとっております。なお、沖繩地方公共団体が借用いたしております国有地がございます。この国有地につきましては、今度の法律案によりまして、政令の定むるところによって無償で譲渡または貸与するという制度をとっております。これは学校だけの問題じゃありませんが、学校の校地についてもそういうことをやるつもりでおります。  以上に該当する以外の公立小中学校の借用地について買収を必要といたしまする場合には、買収に要しまする経費、この経費については、政府資金等による起債措置について自治省において予算措置をしておられるところであります。
  248. 山中(吾)委員(山中吾郎)

    山中(吾)委員 私の申し上げておるのは、子供の教育、子供の国民教育という立場から、自分のほんとうの学校は、学校の敷地は異民族の軍事基地に使われておるのだ、いま住んでおるのは仮住まいなんだ、そして借地料を払って教育を受けておるなんということの現実をへ本土に戻ってからでもその姿の中で教育はできないのだ、誇り高き国民としての教育をするのには、教育的立場からここがいい教育環境だから移ったのであり、この校地、敷地はわれわれのものだという事実に切りかえてやらなければできないのだ。これは大事な、私はだから今度の沖繩返還のいろいろの措置の中で、他の行政と違って、教育政策は人をつくる政策だということを深く認識して、それに応じた措置をしなければならぬと主張するのに、そういう考慮がないから、私は一つの例をあげながら文部大臣に質問をしておるのです。したがって、現在の仮住まいのそういうふうな姿でなくて、それはもうほんとうの自分らの学校なんだ、そこに切りかえるんだ、借用賃を出して教育を受けているんではないんだ、先生がわれわれはもとの地域よりもこちらの地域がもっといい環境だから移ったんだ、これがほんとうのわれわれの学校だということに切りかえなければいかぬということを私はいま言おうとしているのです。したがって、国が責任をもって土地を借りて教育をしておるんだ、軍用地から追い出されてきておるんだというものを払拭しなさい、それの措置をとりなさいと私は言っているのであります。いまの答弁はそうなっていないじゃないですか。
  249. 高見国務大臣(高見三郎)

    ○高見国務大臣 借用地が本土に比べまして非常に多いということは、お話しのとおりであります。本土におきましても借用地は六・八%ぐらいあるのでありますが、沖繩においてはこれが、一四・何%というものが借用地になっておる。山中先生のおっしゃるとおりに、学校であるからには、これは公有地であるのが最も望ましい姿であります。私どももその方向に向かって進みたいと思えばこそ、ただいま申し上げましたような国有地を無償で貸し付けるとか、あるいは借用地を買い取りたいという希望のあるところに対しては、補助金を出すとかいうような方法をとっておるわけであります。御趣旨におきましては、私は、先生のいま御指摘になりましたように、学校は自分の学校だという感じを子供に持たせるという方向へ進んでいきたいと考えておるわけであります。
  250. 山中(吾)委員(山中吾郎)

    山中(吾)委員 いまの沖繩の小中学校の周辺には、アメリカ軍隊の弾薬集積所があるところ、あるいは高圧線がかかっておるところ、ガソリンタンクがあるところ、飛行機の爆音によって授業ができないところ、そういう中で教育されておるのであるから、もっといい環境があるのなら根本的に学校移転をするとか、あるいはそれを教育環境としてこれから定着をしていくならば、そういう非教育環境を整理するというようなことを私は日本政府が責任をもって、本土に返還になるときにこれこそある程度の補助金を多くするとか、あるいは借用地というものを一部残してどうだという不徹底な考えを持たないで、あそこの沖繩の子供の教育を、ほんとう日本国民教育というイメージを切りかえる措置を徹底的にすべきであるということを言っておるのであります。軍用地その他の法律問題はここには私は出しません。教育政策として、なぜ根本的にイメージを切りかえるために案を出さないのか。いまは、ただ自然に、本土にだんだん切りかえるについてある程度の措置をするという文部大臣の考え方なので、それでは子供はかわいそうじゃないか、もっと端的に、本来のほんとうの学校として移転をするなら移転をする、そこがいいならばそれに応じて全部所有権を獲得するとか、何か方針を明確にして対処すべきではないかということをお聞きしているのです。そのくらいのはできないのですか。
  251. 高見国務大臣(高見三郎)

    ○高見国務大臣 学校周辺におきまする危険物等の施設の撤去につきましては、これは復帰後基地の整理、縮小を検討する段階におきまして、学校の安全性について実情を十分調査した上でこれらの危険物の撤去についてもあわせ考えたいと思いまするが、現に沖繩の琉球政府からいってきております危険物が周辺に所在するという実態につきましては、軍演習場の付近の学校が小学校十五校、中学校六校、それからガソリンタンク周辺の小学校が二校……(山中(吾)委員「いいですよ。時間がないから、あなたの方針だけ聞かしてください」と呼ぶ)それでは、先ほど申し上げましたように基地の縮小、撤去等とにらみ合わせまして、これらの危険物のない状態をつくりたい、かように考えております。
  252. 山中(吾)委員(山中吾郎)

    山中(吾)委員 仮住まいで教育をされておるという意識をとるために、きっちりと、あなたが責任をもって土地の所有権をとってやってください。  次に、公選制の教育委員会についてお聞きいたしたいと思います。まことに時間がないので遺憾でありますが、徹底できないことは残念でありますけれども、次に移ります。私は、この本土並みということと教育行政の基本方針との関係を明確にしていただきたい。戦後の教育行政の基本方針、戦後のわが国の教育行政の基本方針は何ですか。
  253. 高見国務大臣(高見三郎)

    ○高見国務大臣 これは教育の民主化ということであろうと思います。
  254. 山中(吾)委員(山中吾郎)

    山中(吾)委員 抽象的に当たりさわりなくいえばそれまでだが、もう少し具体的に、教育行政の基本方針として、中央統制の弊害をなくして教育行政の地方分権化ということと、地域の民意を尊重するという意味におけるいま文部大臣がそのつもりで言ったと思いますが、教育基本法のことばをかりれば、直接国民に責任を持つ、民主化という二つの要素があると思うのであります。そういう基本方針をあなたが確認されておるならば、本土並みにという理想を持たない単純なる方針等ばかりでなくて、教育関係だけでは、その地域の住民の意思を尊重し、民主化というものを前提として返還の措置を考えるべきだと思うのであります。そのときに、本土における与えられた公選制教育委員会でなくて、向こうの軍政のもとにおいて一つの抵抗を示して、そして日本国民教育というものを堅持するために、植民地教育を排除するために沖繩県民が戦い取った歴史的なこの公選制教育委員会をへ本土並みという一点の単純なる基準に基づいて、県民の意思を尊重しない、県民の意見も聞かないで、なぜ任命制に切りかえられるか。
  255. 高見国務大臣(高見三郎)

    ○高見国務大臣 私は、教育行政の制度というものは、少なくとも沖繩が本土に返ります限りは、本土と同じような姿になることが最も望ましいことではないかと思うのであります。   〔床次委員長退席、毛利委員長代理着席〕 教育行政の制度が地域によって異なるということでなしに、一定の姿で――何も私は画一的にするという意味ではありませんけれども、本土と同じ水準で、同じ程度の教育が受けられるために、地域によって教育行政の制度が変わるということは必ずしも望ましいことじゃない。ことに山中先生御承知のとおり、昭和三十一年にわが国でも公選制を任命制に切りかえたのであります。そのときいろいろないきさつはございましたけれども、自来、この制度でやってまいっておるのであります。今度沖繩が本土に返ってくるという際に、私は、沖繩の教職員の諸君が異民族支配のもとにおいて任命を受けることは快しとしないというので、公選制というものを非常に強く主張せられたその勇気には敬意を表しますけれども、今度は客観情勢が変わっております。日本の本土に返るわけであります。日本沖繩県になるのであります。したがいまして、教育制度が沖繩だけ一つ違った行政制度でやるということが、必ずしも望ましい姿ではないと考えまして、これは本土と同じようにすべきではないか、かように考えておるわけであります。
  256. 山中(吾)委員(山中吾郎)

    山中(吾)委員 戦後のわが国の教育行政の基本方針に全く無理解である。教育基本法をお読みになっておられない。教育委員会制度を設定するときの、現在の中教審の会長である当時の森戸国務大臣は、この国会において教育行政の基本方針を表明いたしておるのであります。これは森戸国務大臣のわが国会における公的な表明であります。「教育基本法は、その第十条におきまして、「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである。」「教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。」と、規定いたしてありますが、教育基本法は、教育憲法あるいは教育宣言とも申すべき性格を有する法律でありますので、教育行政改革の方針は、前述の規定に基きまして、その方向づけがなされたものと考えられます。」この基本法の目的に基づいて、教育行政は、「権限の地方分権を行い、その行政は公正な民意に即するものとし、同時に制度的にも、機能的にも、教育の自主性を確保するものでなければならないのであります。」こういう立場に立って、教育行政の地方分権は「権限上一般行政機関から独立した教育委員会を設置して、その地域の教育に関する責任行政機関といたしまして、従来国が教育内容の細部にわたるまで規定し、かつこれを監督していた態度を改めまして、教育の基本的事項のみを定めて、これが実際上の具体的運営は、これら委員会の手に委ねることといたしました。」こういう趣旨のもとに「教育委員会の委員の選任方法は、一般公選といたしまして、」「地方の教育は、国の基準に従つて、地方民の代表者の手によつて、その地方の実情に即して行われることになるわけであります。」これが戦後の文部省の一貫をした教育行政の基本方針であるはずであります。この間、木島委員の質問答弁においても、あなたは、国家権力支配を排除するということを、不当の支配に服さない意味は何かということに対してお答えになっておる。昔の、戦前の内務官僚の統制を排除する、軍部の支配から排除するということから国の教育の基準は国が定めるが、地方の第一線の教育行政は地方分権の趣旨に従い、これが教育の民主化だということを文部省において明確にして現在に至っておるはずなんです。したがって、今度の沖繩の公選制、教育組織についても、その地域がああいう特殊の事情で植民地化されようとしたときに、沖繩の民族の主体性を確立するために戦い取ったとうとい歴史的金字塔だと思う。それを単にいまのような、あなたの教育行政は中央行政一本だという答弁とは全く矛盾をしておる。もしそうならば、なぜ沖繩県民の意思を聞いて納得さして切りかえるという手続をおとりにならぬのか。あなたのおっしゃることは、戦後の文部省が公に表明しておる、しかも教育基本法の精神に基づいた教育行政の基本方針に全く無理解答弁であると思いますが、いかがです。
  257. 高見国務大臣(高見三郎)

    ○高見国務大臣 私は、教育委員会制度に対して理解を持たなくて答弁を申し上げておるつもりはございません。少なくとも、教育委員会制度を設けましたのは、これは教育の自主性というものをはっきり定めたのであります。その後に至りましていろいろな経緯はありましたけれども、昭和三十一年法律改正を行ないまして、いまの任命制に切りかえた。そこで教育委員という制度がすでにあります。この教育委員制度というものは、地方行政の制度とは別な制度として存在をしておるのであります。そういう意味から申しますと、これが公選制である、でなければならぬということもなし、同時にまた、任命制がけしからぬということにもなるまいと思うのであります。任命制と申しましても、この任命は、少なくとも地域住民が直接選挙をいたしましたその自治体の長が、地域住民が直接選挙いたしました議会の承諾を得て任命をするのであります。したがって、これが民意を無視した任命制度であるとは私は考えておりません。
  258. 山中(吾)委員(山中吾郎)

    山中(吾)委員 公選制教育委員会をわが国で採用した歴史を少しも御存じないと思う。地方教育行政は、戦前において教育に何の知識も経験もない内務官僚によって支配をされて、外から教育が支配をされてきておるから、専門的な教育行政組織を持つべきだというところから出発したはずですよ。そのために、教育基本法の直接国民に責任を持つという文章で方向づけられた線から公選制が生まれてきたのであります。中央の教育行政は議院内閣制度でありますから、したがって、その閣僚が文部大臣として責任を持つ、そのことは否定をしておるのでなくて、地方自治におけるところの教育行政は、いわゆる一般行政を担当する知事あるいは市町村と別の専門の教育行政組織でやれということが最初の出発点である。したがって、国民に直接責任を持つ手続として公選制が生まれてきたはずであります。市町村長が、知事が選ばれたからその任命でというふうなことから生まれた教育委員会制度で絶対ない。いわば中央は三権分立であるが地方は四権分立で、市町村に対しては自治大臣が、あるいは教育委員会に対しては文部大臣がという形で助言、指導する権限にとどめて、地方の自主的教育行政にまかすということが出たはずなんです。大臣は少しも理解していないじゃないですか。私は、公選制の県の教育委員会の教育長を七年つとめましたが、私はその中で、このまま続けば実にいい日本の教育行政ができると確信をいたしておりました。次元の低いいろいろの政党の利害、打算、その他からこれはつぶされたことは間違いないのである。教育委員はいろいろの思想を持った人が選ばれてきても、教育委員になったときには、教育というものに対する責任から良識的にだんだん判断するようになってきておった。また、知事と教育委員会の予算の配分についても、最初はいろいろと摩擦があったけれども、調和をとれるように運営の中で鍛えられてきておった。また、教育委員会の選挙だけは買収はなかった。お金はずいぶんかかったが、教育委員というものは別に利益がないので、あるいは政治ぎらいの良識のある者も教育委員にだけはといってみこしをあげて、そうして政治の中に入ってきた優秀な人がたくさんあった。私は、日本の民主政治の最も模範的な学校だと思って期待をしておりました。それはだれがつぶしたのか。それは言わず語らず政治家の腹の中にはあると思うのでありますが、したがって本土全体においても公選制教育委員会というものは、日本の教育行政の中立性を、ほんとうの意味の中立性を保持するのに妥当な制度であり、朝令暮改をせずにあと十年存続しておけば実にいいものが出てきておったのではないかと、いまでも私は残念に思っておるのであります。  それはそれとして、沖繩においては、いわゆる本土のように過保護で生まれた教育委員会公選制ではなくて、軍政府において任命制に押しつけ押しつけきたのを排除して、そしてみずからの手でかちとった公選制なのである。そうして、長い経験の中で、沖繩の公選制から出てきておる教育委員の顔ぶれも各階層から出ておる。中立的な性格をだんだんと持ってきておる。及び主席と予算の折衝についてもうまくいっておる。もしこれを本土並みにというときにこれをもとへ戻すならば、少なくとも県民が納得するまで、県民の意向というものを聞きながら納得するまでそのまま保持して、納得した線において、アメリカの軍政関係から離れて日本の国土に入ったからもう要らないのだということが、沖繩県民自身がわかったときに切りかえるならまだわかる。何らの意思も尊重していないじゃないですか。   〔毛利委員長代理退席、床次委員長着席〕 沖繩県民はこぞって保存したいと言っておるではないですか。アメリカ軍部から奪われたところの軍用地というものは、これはそのまま存続しようとして、沖繩県民がみずから戦い取ったこの制度を逆に廃止しようとするのは片手落ちじゃないですか。総理大臣、これが沖繩県民に対する愛情ですか。教壇に立った教師も沖繩の子供に向かって、われわれは、このアメリカの支配のもとにおってもがんばってこの日本の教育行政は守ってきたんだ、われわれがかちとった公選制なのだということを子供に教えることによって初めて民族の主体性ができるんでしょう。こういうものをかってに取ってしまって、一体沖繩の教師が子供に何を教えようとする、教えるものがなくなるじゃないですか。佐藤総理大臣のいまの人生観、人柄も書物からきたものはないと私は思う。山口県の風土の中で、そこの歴史の物語を親から、教師から聞きながら育ってきたはずなんです。ただ一つ沖繩県民の歴史的に誇りとすべきこの制度を、何らの意思も聞かないで、一方的に、単に教育行政だから一本にすればいいという単純な指導で文部大臣は切りかえようとするんですか。私は、断じてそれは認めるわけにはいかない。それならば、なぜ沖繩県民にもっとひざつき合わして聞かないのか。もうアメリカの支配じゃないから、あと心配ないんだということが沖繩県民にわかったときにこそ切りかえるべきではないんですか。文部大臣並びに総理大臣の御意見をお聞きしたい。
  259. 高見国務大臣(高見三郎)

    ○高見国務大臣 私は、少なくとも公の教育というものは国の基本的な問題である、地域によって教育行政制度が異なるということは決して望ましいことではないと思っております。いわんやこの制度の切りかえは、私は、ある意味においては沖繩が本土へ復帰する一つの大きな意味を持っていることだと考えております。その点においては、山中先生とは意見を異にすることをまことに残念に存じます。
  260. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 山中君の話を聞いていると、教育行政と教育と、ところどころかみ合って区分が明確でないようです。私の出たところは山口県だ、どういうような教育を受けたか、こういうような話になると、これはもう教育の分野なんで、教育行政の分野ではございません。だからそこらの点が明確になること、私は、沖繩の教職員の方々が異民族の支配から独立する、そういうところでき然として戦ってそうして公選制をかちとった、この点は高く、また大きく評価してしかるべきだと思います。しかし今日、異民族ではなくて日本復帰する、そういうときになるとやはり本土と一体になる、そういう気持ちにもまたなるのではないだろうか、また言われておる教育行政はそこにあるのではないか。三十一年に公選制あるいは任命制、この議論はずいぶん戦わされた、そのときに評価された大体の問題ではないか、かように私は先ほどのお話を伺ったような次第でございます。でありますから、私は文部大臣がお答えをしておるとおり、やはり本土と一体になるべきだ、かように思っております。
  261. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 山中吾郎君、申し上げますが、約束の時間が過ぎておりますから、簡潔にお願いいたします。
  262. 山中(吾)委員(山中吾郎)

    山中(吾)委員 本土の公選制を任命制に切りかえたときは、警察官を導入してまで、ああいう騒ぎの中で切りかえられたので、私は地方でまことに残念に思ったことをいま思い出しておるわけなんです。総理大臣が言われたのでありますけれども、私の言うのは教育行政と教育は混乱していないのです。教師が教育エネルギーというものをその地域において、われわれの祖先が、そしてわれわれがという立場でこういうほこり高き経験が、歴史があるんだということを語りぐさすることによって子供は育つのである。そのときに私は、沖繩の先生方がアメリカの支配の中にあったときにわれわれで戦い取ったものは何だ、教育なんだ、そのために、教育行政をいわゆる県民の公選制にわれわれは持ち続けることができたんだという語りの中に教育というものができるんだと思うのです。たった一つなんです、沖繩県民が戦い取って得たものは。そのときに、本土返還のときに、県民の納得しない前に、ただ教育行政組織であるから一本にすればいいんだというだけで切りかえたときに、向こうの教師だって挫折感が出るでしょう。教壇に立ったときに誇り高く子供に教えることによって子供が育つのである。私は、日常差別の中で育ってきた沖繩の子供の中に、ほんとうの意味の祖国愛を持った、民族の主体性を持った人間が生まれるのではないかとある意味において期待しておるのです、過保護の本土の子供よりも。そういうことを考えたときに、たった一つ教師も胸を張って語りぐさのできるもの、子供がそういうことを聞いて、われわれ沖繩県民はやはり日本祖国を守ってきたんだというおい立ちというものの中に体験を持って、おとなになっていく一番大事な物語になる制度だと私は思う。この教育行政組織が沖繩において公選制になっておった。こちらは任命制に切りかえた。文部大臣は精神は変わっていないというのだから、その地域地域の特殊性に基づいて、どうして教育に害があるのですか。沖繩の公選制を廃止する理由はどこにもないじゃないですか。もし廃止をするとしても、県民が納得する時点でいいのではないですか、こういうことを言っておるのです。その法律がもとに戻っても、改選は一年、二年あとであります。その前に私は、もっと親切に沖繩県民の心を聞く何らかの配慮をすべきであると思うのです。この改選の前に、総理大臣の御意見をもう一度お聞きいたします。
  263. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの段階では、先ほどお答えしたとおり、私は、やはり本土と一緒に任命制にすべきだ、かように考えております。
  264. 山中(吾)委員(山中吾郎)

    山中(吾)委員 もう一度聞きます。いまの段階ということをおっしゃるから、この措置法が――返ってきても、改選になるのは一年あと、二年あとなんです。その間に県民のこぞって望んでおるこの教育委員会制度でありますから、総理大臣は何らかの方法でやはり県民の意思を聞く努力、態度を少なくとも続けていくということは、現段階で総理大臣が当然考える立場ではないか、私はそれをお聞きしたいのです。
  265. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 私が現段階でと、かように申しましたのは、山中君のような御意見もあることを念頭に置いて答弁をいたしたのでございます。
  266. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 古寺宏君。
  267. 古寺委員(古寺宏)

    ○古寺委員 最初に厚生大臣にお尋ね申し上げますが、現在沖繩におきましては、まだ国民健康保険が発足をいたしておりません。今後この国民健康保険に対しまして、厚生大臣といたしましてはどういうふうに措置なさるお考えか、承りたいと思います。
  268. 斎藤国務大臣(斎藤昇)

    斎藤国務大臣 古寺委員御承知のように、沖繩におきましては、ただいま国民健康保険をどのように取り扱うかということにつきまして、主席とそれから立法院との間に意見の調整ができておりませんので、政府といたしましては、なるべく早くその意見の調整をされて、そうして復帰と同時に国民健康保険が実施できることを期待いたしておるのでございますが、ただいま、そういう状況でございますので、一日も早く意見の調整ができますことを念願し、また、さように現地側と連絡をとりつつある次第でございます。
  269. 古寺委員(古寺宏)

    ○古寺委員 総務長官にお尋ねしたいのですが、今年の八月でございますが、沖繩の紛糾する保険問題を解決するために、国民健保の市町村管掌を琉球政府に移管させたい、こういうような総務長官は発言をなさっておられますが、この意図はどういうお考えでございましょうか。
  270. 山中国務大臣(山中貞則)

    山中国務大臣 これは最終的には琉球政府の中で御決定になることであることは言うまでもありませんが、私としては、沖繩の各離島の小さい島島を回ってみまして、単に無医村というものを数えただけでは、もっと問題は深刻であって、島々一つ一つがいわゆるその単位で医者がいるかいないかを考えなければならない非常に切実な問題であり、そしてかつまたこれが現金給付でございますから、けがや病気のときに、まずさいふに相談しなければ、かりにそこに介補がいるといえども門をたたけないという実情を見まして、すみやかにこれを国民健康保険をもって沖繩もカバーしてもらわなければいけないということで、四十五年度予算においても、実施のための国庫負担分を三カ月分組んだわけでありますが、ことしの予算を組むにあたりましても、年度全部、いわゆる年度当初から出発できますかということを主席に念を押して、八億九千万円、予算が、国庫負担分が組んであるわけでございます。しかし、その後なかなかそれが進みませんので、私としては、鹿児島県でちょうど三島村、十島村という二つの村があります。これがなお現在も国民健康保険が実施できないでいる。このことはちょうど沖繩と似たような状態、ことに十島村は本土が独立いたしましたあとで返ってきたような島でもありますし、このことを考えますと、この悔いを沖繩に残してはならぬと考えまして、そこで市町村管掌というものが本土の普遍的原則でありますけれども、それらの足らざるところは、復帰後は県が、現在は琉球政府が管掌しても、私としては、琉球政府の意思がそうであるならば、むしろそのほうが沖繩の現状から見てカバーできるのではないかというようなことを考えて、そのようなことを申したことがございます。
  271. 古寺委員(古寺宏)

    ○古寺委員 総理府が派遣いたしました山野調査団あるいは厚生省の派遣いたしました松下調査団、このいずれもが本土と同じような市町村単位の国民健康保険制度というものを今日まで琉球政府に対して指導してまいりました。それを琉球政府は忠実に今日まで推進してまいったわけでございます。ところが、こういうような総務長官の発言、あるいは沖繩の現実のいろいろな問題をかかえて、この問題が与野党の対立となって、今日なお国民健康保険の発足を見ていないわけでございます。そこで、一番犠牲になるのは沖繩の住民であり県民でございます。こういうような今日の事態を招いたその調査団のいわゆる報告あるいは今日までの指導というものについて、厚生大臣並びに総務長官は、その責任をどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、お願いしたいと思います。
  272. 山中国務大臣(山中貞則)

    山中国務大臣 その報告の中には、琉球の現状から見て、復帰後もやはり現金給付というものでいかなければならないだろうというようなことまで書いてありますが、私は、やはりこれは現物給付でなければならぬ、本土と同じでなければならぬと思っておりますし、また、繰り返しませんけれども沖繩では、市町村管掌でやれといってもやれない町村が相当できますし、またやってもらえない島々が数多く存在いたします。したがって、いずれを原則にするかは御自由でありますけれども、それらの穴のあいた部分をカバーできる立場にあるものは県でございますので、したがって、現在は政府でありますが、その管掌もでき得るような措置をとっておかないと、名のみの国民皆保険に沖繩はおちいってしまうということを心配しておるわけでございます。
  273. 斎藤国務大臣(斎藤昇)

    斎藤国務大臣 ただいま総務長官のお答えいたしましたのと変わりはございません。私といたしましては、できるだけ沖繩の現状に即した、そして沖繩政府と立法院の意見の合致したものを一日も早くつくってもらいたい、かように念願をいたしております。
  274. 古寺委員(古寺宏)

    ○古寺委員 そこで、厚生大臣にお尋ねしたいのですが、現在沖繩の医療扶助の赤字はどのくらいになっているとお考えでしょうか。
  275. 斎藤国務大臣(斎藤昇)

    斎藤国務大臣 六月末で約三億余り、かように聞いております。
  276. 古寺委員(古寺宏)

    ○古寺委員 四十六年度の決算で大体二百万ドルの赤字が予想される、こういうふうに琉球政府では申しております。この医療扶助の赤字のために、医療機関に対する支払いが何カ月も停滞いたしております。こういう問題があるために、沖繩の医師会あるいは医療機関等におきましては、もしも市町村単位の国民健康保険が発足した場合にはこういうよう事態が起こるのじゃないか、こういうことが、非常に大きな本土の制度と同じにすることに対しての反対の理由でございます。そこで、この赤字に対して、何とかこれを解消して、すみやかに医療費を医療機関に対して支払うような措置が必要だと思うのですが、こういう点については、厚生省としては心配していらっしゃるのでしょうか。
  277. 斎藤国務大臣(斎藤昇)

    斎藤国務大臣 復帰いたしました後の保険は政府の責任でございますから、そういった赤字のできないような対策を十分に講じてまいりたい、かように考えております。
  278. 古寺委員(古寺宏)

    ○古寺委員 現在国民健康保険の予算として、先ほど総務長官がお話しになりました八億九千万円という予算があるわけでございます。これを流用することによりまして、いままでの未払いの医療機関に対する支払いというものができるわけでございますが、こういう点について、総務長官はどういうふうにお考えでしょうか。
  279. 山中国務大臣(山中貞則)

    山中国務大臣 予算の筋から申しますと、これは制度があって、それに伴う義務の国の負担分でありますから、その制度が出発いたしませんと、会計法上では、それは不用額として執行できないという金に原則としてはなるわけでありますので、私としてはそう硬直した意見を言っているわけじゃありませんが、原則はそういう金でありますので、そう簡単にそれを右から左に流用できるというものではないと考えております。
  280. 古寺委員(古寺宏)

    ○古寺委員 しかしながら、現実に医療費の支払いができない。そのために国民健康保険制度の発足がおくれている、こういうよう沖繩の実情を考えた場合には、当然これは流用するような措置をお考えになったほうがいいのではないか。人命の問題であり、健康を守る立場からいっても、また、本土と同じ国民皆保険を一日も早く実現するためにも、こういう措置というものは、私は緊急の必要な問題だと思うのでございますが、この点については、総理から御答弁をお願いしたいと思います。
  281. 山中国務大臣(山中貞則)

    山中国務大臣 総理にそこまでこまかいことは気の毒でございますから、出しゃばって恐縮でありますが、私から……。私も、琉球政府の現在のそういう事態が発生いたしました理由は、やはり財政難ということの一点に原因は尽きると思うのです。したがって、復帰いたしまするまでに、それらの諸問題は、いわゆる義務経費の支払いでございますから、琉球政府としても、そのような支払いについては政府の義務があるわけでありますので、そういう問題をどう処理するかは、累積赤字の処理問題等とも関連をいたしながら相談をしてまいるつもりでございます。
  282. 古寺委員(古寺宏)

    ○古寺委員 時間がございませんのでなんでございますが、国民健康保険の特別調整交付金でございますが、これは本土においては五%でございます。しかし、奄美大島の場合には一五%のようでございますが、沖繩についてもこういうような財政的な裏づけがなければ国民健康保険の発足ができない。一方では医療扶助の医療費の支払いもできない。医療機関の不信がだんだん高まるばかりでございます。こういう点からいって、当然この医療費の支払いの問題を解決すると同時に、琉球政府に対して、特別調整交付金については、奄美大島のように、こういう財政的な措置をしてあげるんだということを県のほうに示してあげませんと、この国民健康保険の発足というものはなかなか思うようにいかない、こういうふうに思うわけでございますが、この点について、厚生省は、琉球政府とどういうようお話し合いをいままでなさったんでしょうか。
  283. 斎藤国務大臣(斎藤昇)

    斎藤国務大臣 復帰をいたしました後の国保の財政調整は全国的に行なわれますので、したがいまして、沖繩に要する医療費と沖繩の財政事情としいうものを勘案いたして財政調整を行なうわけでございます。その場合におきましては、ただいま奄美大島について仰せになりましたが、本土の各市町村に対する財政調整よりも調整分は沖繩には相当高くまいるということになるわけでありまして、それらの事情、大体どの程度になるかということは、琉球政府もよく知っているはずでございます。
  284. 古寺委員(古寺宏)

    ○古寺委員 ところが、この建議書をごらんになれば、そういうようないわゆるプランなり、あるいは財政計画というものをはっきりと今度のこの関係法案の中に織り込んでもらいたいということを建議書の中では要望しております。ということは、琉球政府が、そういう点についてまだ十二分に厚生省のお考えというものを納得してない、こういうことがこの建議書を見てもわかるわけでございますが、こういう点について、具体的に、それでは一五%なりあるいは二〇%なり、そういう特別調整交付金というものを考える、こういうようお話を琉球政府となさったことはございますか。
  285. 斎藤国務大臣(斎藤昇)

    斎藤国務大臣 事務当局同士では、国保が実施できれば奄美大島程度の助成はいくであろう、調整交付金はいくであろうということを十分徹底しているようでございます。
  286. 古寺委員(古寺宏)

    ○古寺委員 次に、医師確保の問題でございますが、これは総理が昭和四十年の八月に沖繩においでになりました際に、琉球大学に医学部を設置するというようなことを現地でお話しになっておられます。その後、総理府には、そのための懇談会もつくられ、また、現在琉球大学には保健学部も発足をいたしております。しかしながら、今後の沖繩の医師を確保していくためには、どうしても私は医学部を設置するということが緊急の課題だと思うわけでございますが、本土復帰を前にして、まだこの医学部設置の具体的なプランができておりません。琉球から本土に留学生が参りましても、大学病院がない、大学院がない、あるいはまた教育病院も非常に限定された現在の実情でございます。したがいまして、せっかく国費で留学生を出しても、沖繩に帰っていく人がほとんどいない、こういうことでは、医師の確保ができないわけでございます。したがいまして、国民健康保険が発足をいたしまして皆保険になったとしても、保険あって医療なしというような実情が沖繩には発生するわけでございます。どうか、この総理のお約束になった医学部の設置というものを、総理から、沖繩の県民に向かって、この約束は必ず果たすということをきょうは御答弁いただきたいと思うわけでございます。
  287. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 いろいろこの問題につきましては山中君がくふうしておりますから、山中君からお聞き取りをいただきます。
  288. 山中国務大臣(山中貞則)

    山中国務大臣 総理が昭和四十年に現地で陳情に対して確かに約束をされました現場には、私も立ち会っておりました。したがって、その後、お話ような保健学部の出発となり、医学部がありませんが、復帰後は国立大学の付属病院となるべき付属病院もほぼ完成に近づいておるわけであります。しかし、医学部を実際上出発させるとなりますと、やはり教官の確保その他きわめて沖繩現地においてはむずかしい問題がございまして、これらの問題をどうしても慎重に検討しなければなりませんので、お話のありましたような懇談会をつくって今日までやってまいりました。しかし、総理のほうから、もう沖繩復帰する、自分の約束の医学部設置をそろそろ予算化してもらいたいというお話もございまして、したがって、すぐに建築費にかかるわけにもまいりませんので、来年度は、千四百万円の大学医学部設置の調査費というものを計上いたしまして、ここに具体的に医学部設置の意思を明らかに予算の上で打ち出しますとともに、医学部の建設完了、そして医学部の開部に至るまで、これからは遅滞なく年次的に進められていくことになると考える次第でございます。
  289. 古寺委員(古寺宏)

    ○古寺委員 そこで、沖繩復帰にあたりまして沖繩の県民が一番望んでいる問題は、基本的人権の確保の問題であると思うわけでございます。この人間性回復のためには、総理がいつもおっしゃっておりますところの福祉なくして成長なし、この沖繩の県民の所得を向上し、そして生活を安定し、また沖繩県民の福祉を向上していくためには、この本土復帰の際にこそ、私は医療と福祉の総合的な計画というものをつくらなければならなかったはずであると思うのでございますが、今後このような医療と福祉の総合計画をつくって、日本は経済大国といわれながら、世界の中では福祉小国といわれております、この日本の中で、沖繩こそ私は福祉の、また医療のパラダイスをつくっていただきたい、こういうふうに心から願うものでございますが、そのような総合計画をおつくりになるお考えがあるかどうか、承りたいと思います。
  290. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 古寺君にお答えいたします。  とにかく福祉なくして成長なし、経済発展ばかり、成長ばかり言っているときではない。真のしあわせはお互いの福祉の向上にある、かように思いますので、そこに政治の重点も置かなければならない。経済の発展も、お互いのしあわせをもたらすためでございます。  ところで、沖繩におきまして特におくれておるのは、いままでもそうですが、医療施設、これが不十分であります。また、いわゆる本土においていろいろ考えられておる。これは皆さんからまだ不十分だといわれておりますが、その福祉施設、そういうものがよほどおくれておる。しかし、これは本土に復帰をいたしましても、沖繩本島自身についてはわれわれも比較的力がいたしやすいと思いますけれども沖繩県として考えた場合に、先島、さらにまた大東島等、それらの多数の島々を持っておる、そういうところまで、いま言われるような医療施設その他の療養施設、そういうものが整備されなければならない、これはたいへん困難なことでございます。しかしながら、このことをやらない限り真のしあわせはもたらされない、かように思いますので、これは年次計画でもつくって、そうして順次整備していく、そういう方向でありたい、かようにいま関係省庁を督励しておる最中でございます。
  291. 古寺委員(古寺宏)

    ○古寺委員 次に、防衛施設庁にお尋ねしたいのですが、本土復帰に伴いまして、現在米軍関係の労働者の中で第四種になっている方々がございます。特に請負制の関係でございますが、こういう方々は、もともと一種、二種の方々であったわけでございますが、この点については今後どういうふうな配慮をなすっていくのか、お尋ねしたいと思います。
  292. 江崎国務大臣(江崎真澄)

    ○江崎国務大臣 お尋ねの点は、四種の者を間接雇用にしたらどうだ、こういう御指摘だと思いますが、これは本土にも四種のよう立場の例がございまして、ちょっとそういうわけにはまいらないと現時点では考えておるわけでございます。詳細につきましては、施設庁の長官が来ておりまするので、答弁をいたさせます。
  293. 島田(豊)政府委員(島田豊)

    ○島田(豊)政府委員 いま防衛庁長官から御答弁がございましたように、四種につきましては、沖繩におきまして従来一種、二種であった者が、合理化等のために米国が直接請負業者をして業務をやらせるということで、それの被用者になる者がいわゆる四種でございますが、従来一種、二種でありまして、それが米側の都合によりまして四種になったということで、いろいろ待遇面で、一種、二種に比べまして格差があるというのが実情のようでございまして、これらの措置につきましては、いろいろとわれわれとしても考えておりますが、沖繩復帰になりまして本土のいわゆる直接雇用形態になるという時点におきまして、この四種は、ただいま長官から御答弁がありましたように、本土にも同様の形態がございまして、それとの関係においてこれを間接雇用の領域に入れるということは非常にむずかしいというふうに考えます。ただ、この四種の取り扱いにつきましては、いろいろ私どもとしていま検討いたしておりますし、それに関連する予算を実は概算要求中でございまして、これにつきましては、その対象の範囲等いろいろ問題がございます。地元からもいろいろな要望がございますので、そういう点を十分勘案して、関係省庁との間に慎重に協議をして解決をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  294. 古寺委員(古寺宏)

    ○古寺委員 山中総務長官は、この第四種の重要産業の方々について、これは第一種あるいは第二種として取り扱うべきであるというようお話をなすったことを新聞記事で拝見いたしましたが、この点について、総理府総務長官はどういうふうにお考えでしょうか。
  295. 山中国務大臣(山中貞則)

    山中国務大臣 当初私の手元で予算までやるつもりでおりましたので、そのつもりで琉球政府と打ち合わせをいたしました。最終的には、琉球政府の副主席、労働局長と一緒に、私の手元で、布令第百十六号の第十三条に指定された重要産業、すなわち、スト権の禁止された人たち、これらの人たちは、米側から見て便宜上間接雇用にしているけれども、ストをしてもらっては困るということは、明らかに一種、二種と同じ重要な仕事をさしておるということの裏の証明でもあると考えましたので、どこで線を引くかが非常にむずかしゅうございましたが、そこで合意をいたしまして、二千七百二名でありますか、二千二百七名か、どちらかでありますが、二千名ちょっとという者、それに対して、復帰のときに、いままでに少しずつではありますが、退職金等をもらっておる例もありますので、それらを控除することはもちろん了承されたわけでありますが、それらを前提として、軍労並みに一九五二年から起算した退職金の計算をして、一時金を支給しようではないかということで意見が一致いたしておりました。私のほうとしては、その一致した意見をもとに、予算を所管することになります防衛施設庁のほうにその旨言い添えて送ったわけでありますが、その後、防衛施設庁のほうで、軍労の関係者等との御接触もありまして、もっと違った形でこの問題を処理していきたいという意向があるようでありますので、現地の方々が喜ばれる方向が発見できるならば、あえて合意した布令の線を引く重要産業の従事者だけであるということにこだわる必要もあるまいと思っているところでございます。
  296. 古寺委員(古寺宏)

    ○古寺委員 次に、たばこ製造業者の問題についてお尋ねしますが、本土復帰に従いまして、たばこの製造業がつぶされるのではないか、こういうことで非常に心配をしていらっしゃるようでございますが、この点についてどうなっているのでございましょうか。
  297. 北島説明員(北島武雄)

    ○北島説明員 現在沖繩には三つのたばこ会社がございますが、これが沖繩が本土に復帰いたしまして一体となりました場合におきましては、専売法上のたてまえから、沖繩県に民営の会社を置くというわけにはまいらないわけでございますが、会社のほうにおきましても、適当な助成措置が講じられるならば、復帰までに廃業したい、こういう申し出がございましたので、今度の法案におきましても、それに沿って立てられているわけでございまして、目下予算要求中ではございますが、廃業をするたばこ会社に対しまして特別の交付金を交付し、またその中には、転廃業のやむなきに至る職員の方に対する退職手当の分をも含めて要求いたしているわけでございます。
  298. 古寺委員(古寺宏)

    ○古寺委員 このたばこ産業につきましては、専売公社のほうでは二十四億円でございますか、補償するのは。二十四億の補償をいたしまして、復帰の前日でこの工場をやめさせるというような予定のようでございますが、実際にはたばこ業者からは百六十億円の請求が出ておったそうでございます。それを二十四億円に補償、額を引き下げて、はたしてこの工場で働いている人たちを補償することができるのかどうか。また、現実に働いていらっしゃる六百人の方々は、今後もこのまま引き続いて専売公社の工場で働きたい、こういうような御要望のようでございます。しかも、この企業と専売公社の話し合いについては、琉球政府も、そしてまた現在工場で働いている労働者の方々も、全く知らないうちに話し合いというものが進んでいるようでございますが、この点についてはいかがですか。
  299. 北島説明員(北島武雄)

    ○北島説明員 ただいまお話しのように、最初たばこ三社の補償要求額が百六十億円見当でございましたが、その後、沖繩・北方対策庁が中に入りまして、業者と調整いたしまして、その結果、業者の修正要求額が二十四億円ということになっております。公社におきましては、これに基づきましてそのままいま予算要求いたしておる、こういう次第でございます。  なお、三社の廃業に伴いまして、職を離れる方方に対しましては、特別に現在国家公務員の整理退職基準に基づく退職手当のほか、六カ月分の加算をいたしましてお支払いできるように要求の中に入っております。  それからまた、専売公社にそのまま就職したいという方々に対しましては、まず第一に、地元の専売公社の出先機関が考えられます。それからまた、本土に御勤務の希望の方には、できるだけその御希望に沿うようにいたしまして、なおかつ、沖繩におきまして大体百五十名程度の製造工場を設置する必要があろうか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  300. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 古寺君に申し上げますが、予定の時間が参りましたので、簡潔にお願いいたしたいと思います。
  301. 古寺委員(古寺宏)

    ○古寺委員 沖繩の方々は、この復帰に関するいろいろな関係法案を見まして、いろいろな不安、不満あるいは疑惑、そしてまた、要望等をお持ちになっているわけでございますが、そういう県民の声というものが、現実には反映されていない。このたばこ製造業の場合には、琉球政府も知らない。また、その工場で働いている人も知らない。総理府長官がお仲人さんをおやりになったのかどうかわかりませんが、家族が全然知らないうちにお嫁さんとお婿さんがきまって、いま結婚式を前にして大騒ぎをしているというような状況になっているわけです。こういうよう沖繩県民の声というもの、願いというもの、願望というものをほんとうに吸い取ってあげた措置でなければ、今後本土に復帰いたしましても、いろいろな問題が発生してくるわけでございます。こういう点について、総理府長官は、この調整についてはどういうふうなお考えで調整をなさったのか、承りたいと思います。
  302. 山中国務大臣(山中貞則)

    山中国務大臣 これは民間の私企業でございますから、琉球政府のほうからも、その点は具体的な折衝その他の要望としてはあがってこないわけであります。従来からも直接専売公社と話をして、きざみ等の受注等をもらっていたようなことでもありますし、専売公社との間に話を進めていたようでありますけれども、これが非常に天地の差のある要望と回答になっておりまして、これではとても沖繩の現地の私企業三社のたばこ企業の方々は、労働者の方々の御要望はもちろんでありますけれども、妥協のしようがないだろうということで、私が沖繩側の人々とよく相談をして、専売公社並びに関係の大蔵省筋となるべく妥結されるまでの話し合いを御援助申し上げたわけであります。もちろん企業としては、従業員の方々ともよく相談をされてきておられるわけでありまして、その意味においては、要望額と妥結額のうち大きく開いたものは企業の補償に類する額でありまして、労働者の方々の退職支給金に関するもの等は、大体においてそう大きな開きはないわけでございます。
  303. 古寺委員(古寺宏)

    ○古寺委員 この建議書の中に、このたばこ産業の製造業の問題についても建議がなされております。こういうふうに、きょうは限られた時間でございますので、限られた問題しか質問できなかったのでございますが、この琉球政府日本政府に対する建議書というものを十二分にひとつごらんになられまして、そして沖繩県民が、琉球政府がどういうことを不満とし、どういうことを願っているかということを今後ひとつはっきりと把握された上に立って、今後の復帰の時点におけるいろいろな措置というものを考えていただきたい、こういうふうに御要望申し上げます。  最後に、総理から、本土復帰にあたっての沖繩に対するそういう御心境をひとつ承りまして、質問を終わらしていただきたいと思います。
  304. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 沖繩は、戦中戦後たいへんわれわれの百万に近い同胞が苦労の生活をされてきたのでございます。しかし、このたびの復帰ようやくかなおうとしている。ただいま各般の法律、制度等についても御審議をいただき、皆さん方から、熱心に沖繩の現況を把握してのお話を伺っております。私はたいへんしあわせだ、かように感じておる次第でございまして、あたたかく沖繩県を皆さま方とともどもに迎えたい、そうして豊かな沖繩県づくりに一そう精出したいものだ、かように私どもの決意はますます固くなる次第でございます。どうぞよろしくお願いします。
  305. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 栗山礼行君。
  306. 栗山委員(栗山礼行)

    ○栗山委員 限られました時間でございますから、私は、主として逓信の所管の問題のごく重要な問題点のみにしぼりまして、お尋ねを申し上げてまいりたい。  総理、トップバッターでたいへん恐縮なんでございますけれども、なかなか出ていただけぬから最初に出ていただこうと、かように考えておりまして、御了承いただきたいと思います。  てまえみそを言うようでありますけれども沖繩返還は、お話のございましたように、やはり国民的な課題であり、悲願でございます。また、総理の名言も私どもお伺いをいたしておりまして、いかに心胆を砕いて返還の実をあげてまいるか、こういう御苦心のほどを、私どもその経過を一面承知をいたしてまいったわけでございます。ただ、顧みまするときに、沖繩の返還方式のあり方について、相手方がございますが、アメリカがどうこれを受けとめて臨むかという問題ももとよりございます。特にアジア情勢、国際情勢の推移等に関連いたしますることも当然でございますが、諸般の事情がございまして、ときには沖繩返還方式をめぐりまして百家争鳴の感がございます。総理のほうの政党にいたしましても、核つき返還というようなものが出てまいりましたり、あるいは総理ことばの上におきましては全く白紙だというようなことで、一体これは総理が表現をし得ないという一つの苦悩の中にあるのじゃないかというようなことを私ども立場理解いたしましたほど、百家争鳴の感がございます。それぞれの立場があったのでありますけれども、最終的にはひとつすみやかに核抜き本土並み返還、こういう現実的にして、しかも建設的な沖繩返還方式が最も望ましいということを主張いたしましたのは、わが党の委員長でございます、私も四十年友人として取り組んでまいりました故西村でございます。当時は一笑に付されておったのでありまして、沖繩に参りましても、それから内地におきましても、世論を進めるということはなかなか困難であったのでありますけれども、最終的にはいろいろ御検討いただいて、早期核抜き本土並み返還、こういうようなことで、私は主として関係大臣ということよりも、総理がやはり民族の将来と国の方向に思いをいたして決意を深めてまいると、こういうような重要な政治課題であったと思うのでありますが、そういう点でトップバッターの総理にお伺いをいたすのであります。  いろいろ議論がございましたが、特にVOAの問題につきましては、その間に最も強い反対の意見の存したところであったと承知をいたしております。私、ずいぶん資料を持っておるのでありますが、一々それを朗読いたしまして、彼がどう言った、どう答えなすったというようなことは無意義な内容でございますから――特に所管をいたしまする前の井出郵政大臣のごときにおきましては、もう明確にみずからの信念を吐露いたしまして、それは許すべきことではございませんというようなことで、いろいろ関係方面と折衝いたしてまいって進めてまいりたいというようなことが委員会でも論議をされてまいったところでございますが、いつの間にか、折衝の結果というものが、表面は核抜き本土並みというような返還でございますけれども、いろいろ具体的な内容を検討いたしてみまする場合において、はなはだ遠い感がございます。相手方がございますのと外交上の問題でございますから、なかなかそのものずばりというようなわけにはまいらないことを承知をしつつ、あまりにもこれは本土並み核抜き返還という事柄について、その内容的の問題に疑義と貧困さがある、なぜこういうふうな結果の協定を結ばざるを得なかったかというようなことが、私ども非常に疑問視する点なのであります。個々のいろいろ具体的な問題等もございますけれども、やはり基本的にその経過を顧みて、そしてこういう一つ事態を招いた、こういうような筋も原則論もたければならない、私はかように考えておりますので、この点はひとつ率直に意の存するところをお伺いいたしたい、かように考えます。
  307. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 この沖繩祖国復帰、まあ今回の委員会あるいは返還協定、その審議にあたりましてもまだまだ現実はなかなかたいへんなむずかしい問題だ、それを幾つも残しておること、これは御指摘のとおりであります。ことに核抜き、これは大統領と私との間の約束ですから、返還後は核はない、このことを私はかたく信じておりますが、それにいたしましても本土に比べて沖繩の基地がたいへん密度が高い、また各種部隊がいる、そういうようなことから、この密度あるいはその基地を縮小整理する、こういう事柄も一つの大きな問題であります。そういう意味で、もちろん私どもも返還されるときにおいてはこの問題がはっきりすること、安全保障条約の体制の中に入るものとすれば、これはやはり縮小さるべき筋のものだ、かように考えますので、たいへん力を入れたのでございますけれども、どうも返還のをの時期に、直ちにただいまのような縮小整理、こういうところにはいかない、しかし核抜きはできる、本土並みというその本土並みは、安全保障条約のワク内にその行動がとどまる、こういうことでありますので、しばらく時間をかしていただきたい、かように思います。  そういうような意味においてVOAの問題があります。本来申せば軍事的な施設、これについては安全保障条約があるから、これまた特別な、密度が高くてもそれが将来縮小される、こういうことが予想されれば、経過的な問題として一応納得がいくけれども、ボイス・オブ・アメリカ、そういうものまで残さなければならないのか、これはまことに残念なことでありまして、これは最後までなかなかきまらなかった。しかもVOAばかりじゃない、極東放送等もある、こういうことを考えると、これはたいへんな返還協定の中身をなすと皆さん方からこれについて忌憚のない批判が加えられ、私どももこれに対して十分実情を説明申し上げたつもりでございます。これは申すまでもなく相手方のある問題でございますし、何といっても交渉ごとでございますし、私ども、やはりこの際にとるべきは円滑なる祖国復帰ではないだろうか、そして早期にそれを実現すること、そして幾多の不満、不平、そういうものは日本の国内において、日本の施政権下において解決すべき問題ではないだろうか、こういうような意味で、最終的にただいまのよう返還協定、その他の諸施策を決定したわけでございます。  したがいまして、私もたびたびこの席から申し上げておりますように、今回の返還協定が万全なものだとは思わないけれども、しかし、これなくしては沖繩百万の長い間の御苦労、御苦心、それに対して報いることができないのだ、そういうことをしばしば申し上げて、皆さま方の御了承もお願いしておるような次第でございますが、どうかいまのお尋ねの点も、ただいま申し上げるような観点に立ちまして、今後直すべき、正すべきそういう一点ではないだろうか、かように私は思いますので、そのことを申し上げておきます。
  308. 栗山委員(栗山礼行)

    ○栗山委員 若干私とのすれ違いの意見も存じますけれども、時間がございません。主として郵政大臣と所管の長官でございました山中総務長官にこれをお尋ね申し上げます。  いまお伺いいたしましたような経過の中で、非常に疑問に存じておりますのは私一人ではない。VOAの問題について五年間一応存置する、こういう事柄については非常に多くの問題点を投げかけておるということであろうかと思うのであります。したがって、その衝に当たられた山中長官であろうかと思いますが、五年間という一つの協定が結ばれるということについては、それはどういう内容を持つのか。あなたも非常に早口だし、私も早口でありますから時間を、即決にまいりたいのでありますが、端的に申し上げますと、五年間という期間の存置という一つの内容はどういうものだ、こういうことが一つであります。  それから、いまちょっと私は総理から求めたかったのでありますけれども、VOAの問題、しかも軍事的な施設に活用されておったこともいま否定することができないのでございますから、そういう問題についてこれが存続をするということでは、本土並み返還ということについてはナンセンスだ、いろいろ苦衷や経過がございますけれども、私は基本認識としてそういうふうに考えておるわけでございます。あなたの頭の回転の早いところで、よしきたと、こういうことでひとつ率直に御答弁をいただきたい。  廣瀬郵政大臣に対しましては、井出さんのあとでございますので、おれは実は苦労しなかったんだ、ごもっともだ、こう思うのでありますけれども、現時点における輝ける郵政大臣でございますから、私はいまのこの問題を進めていくにあたっての郵政大臣としての見解をひとつお伺い申し上げたい。  以上です。
  309. 山中国務大臣(山中貞則)

    山中国務大臣 はなはだ申しわけないのでありますが、私は全くタッチいたしておりません。タッチいたしましたのは、特別措置法の中に入れて一緒の法律の中に書きましょうという段階でタッチしただけでございます。
  310. 福田国務大臣(福田赳夫)

    ○福田国務大臣 VOAは、栗山さん御指摘のとおり、これは非常に沖繩返還交渉の問題点であったわけであります。申すまでもありませんが、電波は貴重なわが国の財産である。また、わが国はこの大事な財産に対しまして統一的な行政を施行しておる。そこに例外を設けるのですから、これは大きな問題である。ところが、アメリカ側の主張は、VOAはこれは非常に平和的な活動をしておるんだ、いまだかつて沖繩において緊張を刺激するというような行動はしておらぬ。また、世界各地にそういうものを置いておるわけでございますが、友好国であるわが日本においてそれを存置し得ないという理由はどこにあろうか、これについての無期限の存続を主張したわけであります。これは最後まで交渉の重大案件として残りまして、最終的段階で五年という年限を区切る。また、その運営につきましては、これは外交上の見地から見まして、適正な放送が行なわれるようにこれを確保する、そういう措置を講じまして、臨時的、経過的に存続させる、こういうことにいたした次第でございまして、この問題が片づかぬとどうも返還交渉自体がなかなか妥結せぬ、こういうよう事態でありましたので、まことにやむを得ない、そういう措置として了承した、かように御理解願いたい。
  311. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 VOAにつきまして、私の前任者であります井出大臣がなかなかがえんじなかったというお話でございますが、私もさように承っておりますけれども、しかし、このことについてはただいま総理大臣、外務大臣から苦衷をるるお述べになりましたように、外交折衝上の問題、沖繩の返還を一日もすみやかに達成したいという悲願からこういうようなことになったかと思うわけでございまして、その国の方針はわれわれ十分納得をしなければならないわけでございます。  御承知のように、VOAは返還協定の第八条にも明記いたしておりますとともに、今度の特例の百三十一条にもしかと明記いたしておりますわけでございまして、また御承知のように、このVOAにつきましてはあやまちがあっちゃならない、国際友好関係にもとるようなことがあってはならないということで、傍受の設備もいたしておりますわけでございまして、こういうことを最大限に活用いたしましてりっぱな放送たらしめたい。一たん放送事業として日本に渡りました以上は、私ども郵政事業の一端ということになりますわけでございますから、責任の重大さを感じて十分勉強してまいりたい、このように考えておりますわけでございます。
  312. 栗山委員(栗山礼行)

    ○栗山委員 法制局の方のお越しをいただいておると思います。これも短い時間でけっこうです。ちょっと総理の話を伺って私も話をすると、もう十三分しかないというように、時計に合せるというような結果になるのでありますが、電波法の第三条と特例の百三十一条との関連というものを、法的にその関連の御説明をいただきたい、こういうふうに考えておるわけであります。と申しますことは、この法律日本の電波法を全面的に排除しております。そこで、第三条と特例の百三十一条との関連というものを明確に法的にひとつ御説明をいただきたい。  私の持ちます資料によりますと、日本の国内にありますアメリカ合衆国の軍隊の用に供しております無線局につきましても、これを単独法によって電波法の特例に関する法律という形で制定をいたしておりますことは、これは御承知のとおりであります。ところが、今回の協定はいま申し上げましたような内容でどうしてこれが結ばれたかというようなことが、法律上あるいは政治的な問題が非常に存すると思うのでありますけれども、私は法制局には、政治上の問題はしろうとだろうからお聞きをいたしませんが、法律的な解釈として、こういう事例から見て、VOAがいま申し上げますような電波法を全面的に排除、こういう一つの内容を持っておることは、これは事実でございますから、これの関連についてお尋ね申し上げたい。
  313. 角田政府委員(角田礼次郎)

    ○角田政府委員 電波法第三条と特別措置法第百三十一条との関係についての御質問と存じますが、御指摘の電波法の第三条の趣旨は、条約の規定と電波法の規定とが矛盾する場合、あるいは電波法に定めのない事項について条約が定めている場合には、条約の規定が国内法の規定として優先的に適用される、こういう趣旨であろうかと思います。  ところで、返還協定の第八条では、わが国はVOAについて運営継続に同意しているわけでございます。したがいまして、これと矛盾する電波法の無線局の免許あるいは無線局の運用に関する規定はVOAについて適用されないということは明らかでございます。その限りにおいては、あらためて国内法として百三十一条の規定を設ける必要がないという議論もむろん立つと思います。ただ、これらの規定も含めまして、電波法の規定をVOAについて全面的に適用しないということを明らかにする、あるいはまた、VOAがわが電波法制上特例的なものであることは、これは否定できないと思いますが、それが五年間の暫定措置としてわが電波法制上特例的な地位を占めている、こういうことを明らかにしたい、この二つの理由から、特に返還協定第八条と別個に特別措置法の中に一条設けまして、いま申し上げたような趣旨のことを明記したような次第でございます。
  314. 栗山委員(栗山礼行)

    ○栗山委員 お説はそれなりにお伺いいたしたのでありますけれども、私は、日本における軍事基地における電波の問題等についても、こういうような電波法を一つオミットした形においてということよりも、単独法制化されてものを進めておる。なぜVOAの問題だけこういうようなことをするのか。私は法律屋でございません。したがって、高邁な法律論はわからないのでございますけれども、その点がどうしても得心がいかないわけで、少なくとも法律的技術論といいますか、法制化のたてまえ論からいきますと、そういう電波法を否定せずして、やはり特別措置の独自的法律案をもって臨んでまいるということが一番筋の通った進め方ではないのかというのが私のしろうとの法律的解釈でございますから、これは一言だけもう一ぺん御答弁をいただきたい。どうもわからぬ。
  315. 角田政府委員(角田礼次郎)

    ○角田政府委員 VOAにつきまして電波法の規定を適用しない、こういうことはこれ自体は実体的な問題とからんでおりますけれども、御指摘の趣旨が、もし、安保地位協定の実施に伴う電波法の特例の場合は単独法として別に制定したわけでございます、それとの関連において、このよう特別措置法の中へこういう一条を設けまして、電波法の規定を適用しないということとの比較についてのお尋ねでございましたら、これは確かに御指摘のとおり、安保地位協定の実施に伴う電波法の特例は単独法でございます。ただその際は、実は電波法の特例のみを単独法として制定したというわけではございませんで、安保の場合には、一切の国内法上の措置を全部関係事項ごとに個別に特例法をつくるという方針を全体としてとったわけでございます。今回の沖繩復帰に伴って必要となるいろいろな法的な特別措置は、原則としてこの特別措置法一本にまとめる方針をとったわけでございます。  確かにVOAは協定から出発したものではございますけれども、その中身は要するに電波法の特例でございます。いろいろ電波法の特例は、ほかに関係の事項もこの特別措置法の中に規定しております。そういう意味におきまして、むしろ電波法の特例という点から、一括して特別措置法の中に、ほかのものと比べて規定をした。この前例として、小笠原とかあるいは奄美にもその例がある、こういうことでございます。
  316. 栗山委員(栗山礼行)

    ○栗山委員 どうも法制局の御説明は、わかるようでわからぬというのが法制局の法律的解釈だ、こういうふうに理解をせざるを得ないようなことでございますが、もう時間がございません。  外務大臣にちょっと一つお伺いをいたします。私は、率直に申し上げまして、この交渉過程にいろいろ御苦労の存じたということを理解し、評価もしたい、こういう前提なんですよ。私はヒューマニストですから、非常に甘いんです。ところがその交渉中に、適当な移転先というような問題等も公式、非公式で話にもならなかったのかどうかということが一点であります。VOAの移転の問題です。あなたちょっと入院されておったから不勉強であったのか知りませんけれども、そういうことなんです。交渉の過程で、こうもしたいけれども、いまはこうもできないんだ。それじゃ交渉の過程として日本は、もう一つどっかに移転してくれ、こういう話を大体しまりもつけぬと進んだのであるかどうか、こういう一つの疑問を感ずるのです。  もう一点お尋ねいたしますことは、代替施設ができなかった場合、遷延条項が協定文で議事録に記載されている。そういたしますと、暫定期間が実質的にあいまいになった。五年だといわれておるのでありますけれども、適地適材がございませんというた場合に、これは永久化のおそれすらあるというような、非常にこれは飛躍論でありますけれども、その危惧の念はやはり禁じ得ない、こういうことなんでございます。したがって、この問題は非常に重大な問題であって、五年という年限を切っておるけれども、議事録にこういうような新しく移転する場所の遷延条項というものの協約が結ばれておったら、どれだけ努力してもないんだからということになると、さらにこれを継続する、こういうかっこうで、恋人だからせいぜい自分のほうに長い間置いておきたい、あそこにいたいんだ、こういうよう意見に発展しかねない、こういう危惧は明確に危惧として感ずるのでありまして、この点ひとつ群馬県流に明確にお答えをいただきたい。
  317. 福田国務大臣(福田赳夫)

    ○福田国務大臣 私どもは、移転先どころじゃないのです、とにかく撤去してもらいたい、こういう要請をしたわけであります。ただ、先ほども申し上げましたように、なかなかこれはアメリカ側として執着のある問題でございまして、無期限の存続を主張した。そこで、ただいま申し上げましたように、五年間という時限を限っての妥結、こういうことになったわけでありますが、しかし、いずれにいたしましても、これはアメリカ側では移転ということを考えておるようであります。その移転先がきまり、そして工事が行なわれる。その工事が不測の事態によって遷延をするという場合におきまして五年をこえることがあるかもしれない。そういう際には格別の配意を願いたい、こういうことをアメリカは主張しておるわけでありますが、同時にわがほうといたしましては、二年たったらひとつ両国間でこれから先のそれらの問題を協議いたしましょう、こういうふうにいたしておるわけでありまして、私どもはこの協議を早急に取り進めまして、そして五年というふうに一応期限は区切ってありますけれども、なるべく五年前に御移転願いたい、こういうふうに考えております。
  318. 栗山委員(栗山礼行)

    ○栗山委員 よくわかりますが、いま言われた、これの効力発生の二年後にそういう諸問題の協議を行なっていくというところにも、どのようにこれを理解して把握すべきかということにつきましては多くの疑問がございます。私一人としてもかなり疑問を抱いておるところなんであります。いみじくもそれを言われたのでありますが、そうすると、五年ときめたら明確に、どういうことがあっても移転をしてもらうんだということの確約が大臣とれなかったのかどうか。あるいは断じてそれは五年で移転するということの確約をとっておるという一つの内容を明らかにしていだだかなくちゃならぬ。二年後に協議をするということについては、非常にむずかしい一つの問題が存ずるので、実行してみて二年後にもう一ぺん会うてどうするか語り合ってみましょうや、こういうところに私は、五年と二年という年限のあり方について非常に大きな不安を感ずる。これが本質的な私の質問をなさんとするところでございます。いろいろおしかりを受けると思うのでありますけれども、非常に重要な問題でございますので、その点を明らかにしていただかなくちゃならぬという点じゃなかろうかと思います。  ついでに郵政大臣に申し上げておきますが、私は参議院における記録も持ってまいりました。それから同僚の武部君が尋ねましたときにも、あなたの御答弁がなされましたいろいろ記録等も持っておるわけなんでありますが、VOAの問題については傍受する、こういうことを言われたのでありますが、それは統一見解だということで参議院における統一見解を述べられておることは御承知のとおりであります。さて困ったことを言われておるなと、一体これは、まあ中国語もあるいはソ連語もございましょうし、いろいろ各国語の問題がございますが、どのような形でそれを傍受するという具体的な内容はまだ御検討中でありましょうけれども、できるのかできないのかといったら、結局女に何か出せと、こういうふうな不可能な政治論の答弁をなさっておるやに私は統一見解としての評価をいたさざるを得ないのでありますが、それはもう栗山君違う、傍受は何ぼ彼が言ってもやるのだ、こういうふうな一つの内容が存するかどうか。特に、御承知のとおり放送内容については、日本が見解を表明するということで終わるわけであります。アメリカが自由に決定するということについては、既存の事実であります。  こういうふうな条件からまいりますと、いま私が前段でお尋ね申し上げていることが非常に重要な課題になってまいる。それの具体策いかん、こういうことをお尋ね申し上げ、大蔵省の大臣がいらっしゃらないのでありますけれども、どうも渋い、金出すのだけはいやだ、持ってくるものと取るものだけは好きだというような主計局の方がお見えになっていると、こういうことなんでございますが、どの程度の予算を要求されてこれについて対処しているかということをひっくるめてお尋ね申し上げまして、私は適正な御答弁をいただければこれでひとつ終わりたい、こういうことでございます。
  319. 福田国務大臣(福田赳夫)

    ○福田国務大臣 協定第八条にこの存続期限は非常に明快に書いてあります。つまり「日本政府は、アメリカ合衆国政府が、両政府の間に締結される取極に従い、この協定の効力発生の日から五年の期間にわたり、沖繩島におけるヴォイス・オヴ・アメリカ中継局の運営を継続することに同意する。」ところが、これは普通の場合、移転を考えると思うのです。その移転に不測の事態が起こってその工事がおくれるというような場合におきまして一体どうするか、こういう心配がある。これはかなりの精密な機械等を必要とする工事でございます。台風だ、地震だというようなことがないとも限らぬ。そういう場合に備えまして、これは合意議事録におきまして「ヴォイス・オヴ・アメリカ日本国外への移転の場合において、予見されない事情により代替施設が同条にいう五年の期間内に完成されないことが明らかとなつたときは、日本政府は、その五年の期間の後その代替施設が完成するまでの間沖繩島においてヴォイス・オヴ・アメリカの運営を継続する必要性に対し、十分な認識を払う用意がある。」これは未来永劫に続くというのじゃないのです。これは何か不測の天変地異で工事がおくれたという際に、暫時延びるという場合があり得る、こういうことでありまして、私どもは二年後に始める協議におきまして、なるべく五年を待たずしてこれが撤去されるという方向に進むように努力をいたしたいということをはっきり申し上げます。
  320. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 ボイス・オブ・アメリカの傍受についてでございますが、栗山先生御承知のように、放送をほんとうにモニターするということになりますと、あるいはソ連あるいは北鮮あるいは中国等の現地においてラジオ聴取する。そしていろいろ各方面の意見を聞くというようなことが最も効果的だと思いますけれども、これは御推察のようにたいへんむずかしいことでございまして、そこで参議院におきまして、傍受をいたしますということで御了解いただいたわけでございますけれども、この傍受というのは、御承知のようにVOAは非常に指向性の強い電波を出しますわけでございますから、日本の本土あたりではなかなか聴取しにくいというようなことらしいのでございますけれども、幸いに、沖繩の中継所のごく近くであれば、全部の放送が一つの設備で聴取できるということが大体わかってまいりました。そういうような方法ですべての放送を聴取しようというようなことで進めておりますわけでございまして、これは間違いなく実現ができます。  ただ、経費の面につきましては、大体四、五千万円程度かかるようでございますが、大蔵省といろいろ折衝いたしておりますが、大蔵省もこれを国家的にきわめて必要な大切な施設であるということを了承いたしまして、大体こちらの願いどおり予算を出していただけるのじゃないか、こういうように期待をいたしておりますわけでございます。これは絶対に確保いたしまして、傍受、聴取に遺憾なきを期せなくちゃならない、かように考えておりますわけでございます。
  321. 吉瀬政府委員(吉瀬維哉)

    ○吉瀬政府委員 ただいま郵政大臣からお答えがありましたとおり、VOAの傍受に必要な予算といたしまして四千六百万円の要求がございます。施設に三千万円、運営に千六百万円でございます。目下予算の編成作業中でございまして、結論は申し上げられませんが、私どもといたしましては、郵政当局とよく相談いたしまして、必要にして十分な予算を講ずる方向で検討しております。
  322. 栗山委員(栗山礼行)

    ○栗山委員 ちょうど時間が参りまして、御答弁はいただきませんが、私一、二の要望だけ申し上げておきます。  やはり沖繩の核抜き本土並み返還というものについては、筋を立てなくちゃならない。そのためには、特例法に依存する方向では真の本土並みの返還ということにはならないのだということが、私の一つの愚論でございます。いろいろ御意見がございますでしょうが、私はさように考えております。  二番目には、やはり何というても今日ほど政治の改革を望む声はございません。不信の高い状態、私どもも含めて、謙虚に反省をいたしてみなくちゃならぬということでありまして、これは有言実行でございまして、私はあるところで言うたのでありますけれども、ひとつ大胆な勇気が要る、それから大識見を持って事に臨んでまいらなくちゃならぬというのが、今日要請されておる政治についての国民的な要望であろうか、私はかように存ずるのであります。  たいへん私の短いことばを申し上げていかがなものかと思いますけれども、心して沖繩の完全本土並み返還への実現の努力にひとつ精力的に御活躍をお願い申し上げます。
  323. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 土橋一吉君。
  324. 土橋委員(土橋一吉)

    ○土橋委員 私は外務大臣に端的に質問をいたしますが、A表のリストに載っておる沖繩県と台湾との軍事的な海底ケーブルを私は六月の十日の日に発見をいたしまして、そしてこれを十二日の日に発表いたしました。政府は十月二十九日の予算委員会におきまして、わが党の松本議員の質問に対し、このケーブルについてアメリカが事前に了解を求めてきたことはないと答弁しておられるのであります。ところが、沖繩のランパート高等弁務官が、六月の十三日、十四日の新聞で発表しておりますように、事前に協議をした、こういうふうに発表しておりますので、たいへんな食い違いがあるのであります。アメリカ側がうそを言っているのか、日本政府がうそを言っているのか、まことに疑問といわなければなりません。もしわが党がこのケーブルを発見しなかったならば、日米両国はやみからやみへとこのケーブルの問題について処理をしようとしていたのではなかろうか。あるいはこのような重要な海底軍事ケーブルの存続が基地リストの(注1)に書いてあるのであります。このことは、リスト全体から見ても、その内容がいま申し上げまするようなことをきわめて証明しておるじゃないか、私はかように考えますが、外務大臣は一体どう考えておられるのか、御説明を願いたいと思うのであります。
  325. 福田国務大臣(福田赳夫)

    ○福田国務大臣 この折衝に当たりました政府委員のほうからお答え申し上げます。
  326. 吉野政府委員(吉野文六)

    ○吉野政府委員 ただいま先生の言及なさったランパート高等弁務官からわがほうに相談があったかということにつきましては、これは残念ながらございませんでした。
  327. 土橋委員(土橋一吉)

    ○土橋委員 いまの答弁でもわかりますように、どちらがほんとうのことを言っておるのか、きわめてこれは重大であります。私はただいまの吉野局長の説明は信用することができません。  ところで、アメリカ軍は、このケーブルは秘密でない、すでに発表しておる問題だ。それでは、一体アメリカはどういうふうな形でこれを公表したのであるか、どういうような経過でこれを公表したのか。また政府沖繩-台湾間のこの海底ケーブルの詳しい経路図を持っておるはずだ。その経路図があればこれを直ちに提出をしてもらいたい。どうでしょうか。
  328. 吉野政府委員(吉野文六)

    ○吉野政府委員 われわれの知り得た経緯によりますと、米国は一九六三年ごろより海外通信網の整備につとめておりましたが、本件ケーブルもその当時から計画されていたものと聞いております。しかしながら、予算その他の関係で計画の具体化がおくれまして、昨年五、六月ごろから予備調査の上、年末にキャンプ瑞慶覧地先から台湾のキャンプ・マコーレーの間、約六百七十六キロにわたりまして六十回線の海底電線を布設したものと承知しております。  なお、この海底電線がどこを通っておるかということは、瑞慶覧の地先である領水を除きましてわれわれとしては承知しておりません。
  329. 土橋委員(土橋一吉)

    ○土橋委員 私はそんなことを聞いているのではないのです。それは六月の十三日にランパート高等弁務官がちゃんと三つの事実をあげて指摘しているのであるからして、その経路の図があるならば図を出せ、またこれを示してもらいたいということを言っているのに、とんちんかんの答弁をしておるわけです。もっとしっかりしてください。どうなんですか。それがあるのですか、ないのですか。私の言うことをよう静かに聞いて答弁しなければだめだ。
  330. 吉野政府委員(吉野文六)

    ○吉野政府委員 先ほど申し上げましたように、沖繩の領海に関する限り、すなわちキャンプ瑞慶覧から三海里の間に関する限りは大体の略図はございます。
  331. 土橋委員(土橋一吉)

    ○土橋委員 私は外務大臣と郵政大臣にお聞きをしたいのですが、独立国家で他国の軍隊が国際的な軍事ケーブルを布設した例があるのかどうか、これは外務大臣、郵政大臣、そういう点について答弁してもらいたい。独立国であって外国の軍隊が海底軍事国際ケーブルを布設した例があるのかないのか。わが国においてももちろんであるが、そういうことについて答弁してもらいたい。――あるのですか、ないのですか。
  332. 吉野政府委員(吉野文六)

    ○吉野政府委員 外国の軍隊が独立国の領海その他において海底電線を布設したことがあるかどうかという御質問でございますが、この点につきましては、われわれは実際の正確な知識は持っておりません。ただし、この場合には、沖繩に関する限りは施政権はいまだ米側にございますから、したがって、先生の御質問の点はこの場合には該当しないと思います。
  333. 土橋委員(土橋一吉)

    ○土橋委員 重大な問題でありますので、その点を聞いたわけです。政府がわが党の松本議員の質問に対して、沖繩-台湾間のケーブルは地位協定合意議事録三条五項で適法だ、こういう解釈を下しておるのであります。ところが合意議事録三条五項というのは、私がここで読み上げますが、「合衆国が使用する路線に軍事上の目的で必要とされる有線及び無線の通信施設を構築すること。前記には、海底電線及び地中電線、導管並びに鉄道からの引込線を含む。」という規定をしておるわけであります。  そこで、現在わが本土内において合意議事録三条五項の規定に基づいてつくられておる有線の通信施設は一体どこにあるのか、どういう問題であるのか、簡単に説明してもらいたい。あるのか、ないのか、どういう施設の状態であるのか。
  334. 吉野政府委員(吉野文六)

    ○吉野政府委員 これはございませんです。
  335. 土橋委員(土橋一吉)

    ○土橋委員 それじゃどこにもないのですね。  それでは続いて、国際的に、国内的にも例がないとただいま言っておるわけです。また本土の場合にもそのことについてはわからないと言うておるわけです。安保条約や地位協定にも前例がない。しかも松本質問に対しては、福田外務大臣も、このようなケーブルは話し合いできめるのだから今後は認めることはございません、御安心ください、こういう答弁をおやりになったと思うわけです。私は、このケーブルはそういう内容から見ると要するに全くめちゃくちゃな布設であるといわざるを得ないのです。なぜ一体、日本はこの沖繩と台湾間のアメリカ軍の海底ケーブルだけを認めようとしておるのか。この点について総理大臣も、「現状においてはこれをそのまま認めることもやむを得ない」こういう答弁をしていらっしゃるわけです。こういうあいまいな答弁で、一体この沖繩-台湾間におけるアメリカ軍の海底ケーブルは許すことができるものであるのかどうか、なぜ一体交渉のときにこれの撤去を主張しなかったのか、なぜ一体存続させるというような、そういう明確な内容の基礎もないのにかかわらず、これを認めたのか、ここのところを明確に答弁していただきたいわけです。
  336. 福田国務大臣(福田赳夫)

    ○福田国務大臣 返還の時点においてすでに現存をいたしております海底ケーブルです。そういう実態の上に立ちまして、これが返還後も引き続いて存続するということを認めたわけでありまして、なおこれは地位協定上も許される問題である、こういう見解であります。なぜ地位協定上許される問題であるかということにつきましては、条約局長から詳しく申し上げさしてけっこうでございます。
  337. 土橋委員(土橋一吉)

    ○土橋委員 聞きましょう。
  338. 井川政府委員(井川克一)

    ○井川政府委員 地位協定上の根拠は、先生も御存じのとおり、第三条と、それに基づきまする合意議事録でございます。今後日本の完全な領土になりましたならば、第三条によりまして、施設、区域の外の場合には原則として日本政府がやる、あるいは合意によりまして合衆国政府が外の部分をすることができるというふうになっております。
  339. 土橋委員(土橋一吉)

    ○土橋委員 そうすると、いまの説明の内容からいうと、地位協定三条一項の規定で、アメリカ軍はその施設、区域内においては自由になし得る。施設、区域に隣接した地域について、または出入りの関係とかあるいはその他の関係でごく近接をした地域については、アメリカ軍が請求したときに日本政府は協力するというふうに、三条一項の次のパラグラフには書いておるわけです。その次の項目に書いておるその根拠でどうしてできるのか、それだけでどうしてできるのか。台湾まで海底ケーブルを布設できるというのは、それだけの根拠でどうしてできるのか。
  340. 井川政府委員(井川克一)

    ○井川政府委員 これは、ただいま外務大臣も申されましたように、すでにできているものでございます。第三条が適用になりましてこれからつくるのは、施政権が返った後に第三条の規定がそのまま適用になるわけでございまして、ただいまの台湾と沖繩の間の海底電線は、すでにできているものでございます。
  341. 土橋委員(土橋一吉)

    ○土橋委員 それは地位協定の基本的な態度を決定した条文であります。地位協定の合意議事録の三条五項の末段の規定をあなた方は解釈しなければならぬと思うのですが、どうですか。地位協定の合意議事録の第三条五項の一番下の条項が具体的にそこに適用になるわけです。
  342. 井川政府委員(井川克一)

    ○井川政府委員 施政権が返った後のお話と思いまするけれども、その根拠はもともとは三条でございます。三条でございまするが、合意議事録はそのうちの権能というようなもの、権力、こういうふうなことが行なわれるということをただ詳細に規定しているものでございます。
  343. 土橋委員(土橋一吉)

    ○土橋委員 その詳細に規定しておるという内容は、ここにこう書いておるわけなんです。第五項に「合衆国が使用する路線に軍事上の目的で必要とされる有線及び無線の通信施設を構築すること。前記には、海底電線及び地中電線、導管並びに鉄道からの引込線を含む。」と、こういうふうに書いておるからして、結局わが国が、復帰したときには、この規定はどういうふうに活用されて、これが合法であるかということをどういう説明でやるのかということであります。
  344. 井川政府委員(井川克一)

    ○井川政府委員 先ほども申し上げましたように、この三条は、これからつくるものというものを考えているわけでございます。すでに台湾と沖繩の間にあるわけでございます。これを今後つくる問題ではないと私は思うわけでございます。しかし、すでにできているものを活用させるかどうかということは、この三条の趣意、地位協定の趣旨からいたしましても、もともと双方の話し合いによってつくり得るものならば、これを活用さしてさしつかえないと思うわけでございます。
  345. 土橋委員(土橋一吉)

    ○土橋委員 いまの条約局長答弁は、答弁になっていないわけです。つまり、復帰をしたときに、これが有効適切であると、政府はできたものをこういう規定によって認めるんだということを説明しなければならないわけです。つまり、その根拠というのは、地位協定三条一項の規定による、また地位協定の二条の一項の規定によるんだ。アメリカ軍から要請があったときには、その近接地域においてある程度の協力はする、こういう規定があるわけなんです。したがって、いま問題になっておるのは、このケーブルはきわめて不当な、むちゃくちゃなものであるからして、どこまでもこの規定の内容を制限をしなければならぬわけなんだ。この合意議事録の三条五項の規定というものを十分解釈をしてかからなければならないわけなんだ。  ところが、外務当局はこの内容について、条約局関係のMという担当官は、この規定の中に国内に限って制限をするということがないからして、これは要するに台湾まで続くのですと、こういう説明を私にしておるわけなんだ。そうしてくると、この合意議事録の三条五項という規定は地位協定を受けて、地位協定の中からさらに合意議事録の三条一項から六項までみんな規定を設けておるわけなんだ。その規定を適用しないでかってにできるものではないわけなんだ。復帰した後には当然この規定が適用されなければならないわけなんだ。そのことすらもわからないよう答弁をしているのじゃ話にならぬじゃないか。ただ、地位協定の第二条の規定や三条の一項の規定でございますと言ったって、具体的にどうするかということは、合意議事録の三条の一項から六項まで規定しておるわけなんだ。その五項の規定にどういうふうに該当するとこれを解釈するかという問題であるわけだ。きちっとした、まじめな答弁をしなさい。
  346. 井川政府委員(井川克一)

    ○井川政府委員 先ほど御指摘がありましたように、その施設、区域のA表の(注1)に出ているわけでございまして、これをどういうふうにするかということでございまして、地位協定とどう結びつけるかという御質問だと思いまするけれども……。
  347. 土橋委員(土橋一吉)

    ○土橋委員 そんなことを質問していない。いま話したように、既存の海底ケーブルが布設をされておる。それではわが国は今度の沖繩協定に従って、また従来の諸規定に従って――今度の協定は、わが国が自主的にこの内容をきめてアメリカに許可をしてやる、こういう内容の規定になっておるわけだ。そうすれば、この地位協定というのは、日米安全保障条約規定を具体的に生かす規定として、もっと厳密に解釈をしなければならない。ところが、現実にケーブルは敷いてしまっておるということだからして、この合意議事録の規定から見てどういうふうに解釈をしてそれが適当であるというふうに見ておるのか、そこのところを聞いているわけだ。
  348. 井川政府委員(井川克一)

    ○井川政府委員 わかりました。
  349. 土橋委員(土橋一吉)

    ○土橋委員 わかっているのでしょう。そこのところを答えなければだめだ。あるからしようがないというものじゃないのだ。
  350. 井川政府委員(井川克一)

    ○井川政府委員 条約的に申しますと、それが地位協定でどのようにして了解部分について提供できるかということになるわけでございます。そういたしますると、地位協定第三条の路線権として提供するわけでございます。その趣旨がまた、このA表の(注1)に出ているわけでございます。
  351. 土橋委員(土橋一吉)

    ○土橋委員 それでは、地位協定三条の一項に、路線権ということを言っておるが、路線権でそういうものが、実際日本にいままで認められておるのかどうか。これは路線権でそういうものが認められていないという――ただ一つ、岩国の通信基地とを結ぶところのそういうものが、対ソウル関係において一つだけ路線権といえば路線権で、これは中国電力が持っておる。鉄塔の下まで公道から行くというのを認めておる、こういうことを説明しているわけだ。それ以外にどうして路線権があるのか。ないと外務省はいままで言っておったのじゃないか。そういう路線権が認められていないではないか。先ほど私は聞いた。路線権の問題について、有線でどういう施設があるかと聞いたら、ないと言っているのだ。ないのに、どうして路線権という問題で出してくるのですか。頭を冷静にして、きちっとして、私の言うことをよく聞いて説明しなさい。
  352. 井川政府委員(井川克一)

    ○井川政府委員 私はあまり実態のほうは詳しくございませんが、路線権として提供しているものは、要するに電線のほうはいまないというお話を聞きましたけれども、路線権として、地役権的な通過の便宜というふうにして提供しているものは無数にあると思います。ただ、電線についてはないそうでございます。
  353. 土橋委員(土橋一吉)

    ○土橋委員 委員長も聞いておわかりになるように、問題は、台湾と沖繩県との間における海底ケーブルについて、彼は最初は路線権だと説明しておる。ところが、いまの説明だと、その路線権について怪しい説明をしておるわけですね。これは路線権の説明ではできないわけなんだ。地位協定の三条一項の規定は、幾らも話すように、アメリカ軍がその地域あるいは施設について自由にできるという問題、三条一項の後段の規定は、要するにアメリカが請求したときに、その隣接した地域において日本政府が協力してやるという、こういう規定なんですね。ところが、現実に敷いてしまったからしようがないということでは解決できないわけなんだ、それはなぜかというと、この地位協定の合意議事録の三条の規定は、一から六まであるわけなんです。その規定に当てはめなければ、これはえてかってに、つくったものだからしようがないから認めておきますというようなことの理由にならないわけなんだ。何回言わすんだ、あなた。それならば、適用されるとするならば、結局これは合意議事録の三条の五項の規定だろう。五項の規定を読んでみれば、結局有線、無線について通信施設はどうかということを書いておるわけなんだ。その有線はございませんと、いま答弁したわけなんだ。それならば、海底電線と地中電線と導管と引込線の問題についてどうかということの解釈をしなければ、現在敷いてしまったこの海底ケーブルの解釈はできないではないか。しっかりしてくれよ。そんな頭の悪い答弁じゃ……。あるからしようがないわけじゃないわけなんだ。これは不法不当なものであるから、どういう解釈をしてこれを認めておるのかということを聞いておるわけなんだ。
  354. 井川政府委員(井川克一)

    ○井川政府委員 先生のおっしゃることを承っておりますると、新しくつくるときにどうなるか。新しくつくるときは、確かに第三条のそのままの規定が適用になる。現在あるものを、今度は沖繩が返ってまいりまして、それを利用するときに地位協定との関係でどうなるかということを私は申し上げているのでございまして、それはまさしく第三条の路線権として提供するものである。つまり、いままで持っておりました基地を、新しく第二条によりまして施設及び区域として提供する、路線権につきましては、第三条に基づいて路線権として提供する、こういうことを申しているわけでございます。
  355. 土橋委員(土橋一吉)

    ○土橋委員 この条約局長、何も知らない。これは規定によって、新しく効力が発効したときに日本が新しくこれを許可をするという形をとっておるわけなんだ。従来のものをそのままずっと継続して認められるという内容ではないわけなんだ。これは協定全体の基本方針がそういうふうになっておる。現在の協定の三条を見てもそういうふうになっておる。そうすれば、新しく認めるということについて、不法不当な海底ケーブルについてどういう解釈によってこれを認められるかといえば、いまあなたもちょっと言ったように、二条の第一項の規定の(a)によって認めるか、あるいは第三条の一項の規定によって認める以外方法がないわけなんだ。そうすると、その規定をさらに裏づけておる合意議事録の第三条一項から六項までの規定があるんだ。その規定のどれに該当してこれを認めようというわけか、そこを説明しなさいと言っておるわけなんだ。――はっきりしておるじゃないか。何も考えることはない。この不当不法な海底ケーブル、これを合法的に、要するに新しく政府が認めようということについては、どういう法的な根拠で認めるか、それは二条一項と三条一項しかないわけなんだ。しいていえば、三条の一項の後段に当たるところの、要するにアメリカ軍が請求したときには協力してやる、こういう隣接地域における問題があるだけなんだ。そうじゃないですか。そうすれば、それを具体的にはどういう解釈で認めなければならぬかということになってくる。それが結局、合意議事録の三条の一項から六項までの規定でこれを説明していかなきゃならぬわけなんだ。そんなこともわからないで合意議事録なんか書いているのかね。  外務大臣、どうですか。私はこれで四回くらい、同じ内容をしゃべっている。答弁ができないじゃないか。新しく効力が発生したときには日本政府が許すという形をとっておる限りは、どういう規定によってこれが合法的だという説明をするのか。ただ、あるものだからしようがないから認めましたというようなことでは説明にならないじゃないか。なぜ撤去しなかったのか。なぜこのときに合同委員会において十分論議をして、わが国の領海や領土の内じゃ困ります、撤去してくださいとなぜ言わなかったのか。簡単に願いますよ。冷静に考えて策弁をするの。
  356. 井川政府委員(井川克一)

    ○井川政府委員 申しわけございませんけれども、御質問の趣旨がほんとうに私よく理解できないのでございますけれども、つまり、基地及び路線権を地位協定によって提供する、そしてその路線権というものを、現在われわれは合意によって提供しようとしている、こういうことを私は申し上げているわけでございます。そして――あるいは、その海底ケーブルの所有権云々という御質問じゃございませんね。そういたしますと、やはり路線権だけになりまして、路線権提供の根拠というものは幾らでもあるわけでございます。
  357. 土橋委員(土橋一吉)

    ○土橋委員 時間がもったいないし、こんな答弁では話になりませんが、あなたは冷静に、合意議事録の三条の、つまり一項から六項まで書いてある内容をもう一回吟味して、あとでもよろしいから答弁をしてもらいたい。そんな答弁では話にならない。何回も言うように、路線権は、日本の場合には有線についてはないと言っているじゃないか。有線についてないということは、海底電線にもないということなんだ。また地中電線にもないということを意味しておる、有線なんだから。一つの物体であるわけだ。それが合意議事録の――いわゆる地位協定の一条で認められておりますとか、あるいは二条並びに三条の一項で認められておるというような、そういう説明では問題にならないわけなんだ。ないと言っていながらこれを認めるというのはどういうわけだ。   〔床次委員長退席、金丸(信)委員長代理着席〕
  358. 井川政府委員(井川克一)

    ○井川政府委員 日本にただいま現実にないということと、そのようなものを路線権として提供することができるということとは、これは別のことだと思います。あのA表のうしろについております、その他の導管、パイプライン、海底電線、すべてこれらのものは路線権として提供し得るというのが地位協定の規定でございます。そのうちどれだけのものが内地に現にあるかどうかということは、私は存じません。
  359. 土橋委員(土橋一吉)

    ○土橋委員 結局、問題は、もしいまのような解釈を続けていくならば、アメリカが要するにパイプラインをつけた、あるいはそれが石油であろうと水道であろうとあるいは薬品であろうと、外国にそういうものをつけることを認めることになってしまうし、極端な例を言うならば、橋をかけることもできるわけだ。極端な例を言えば、トンネルを掘っていって、そして向こうまで連結をさしても、これはやむを得ないという結論にならざるを得ないわけだ。ところが、地位協定は、わが国におけるアメリカの軍隊とわが国におけるアメリカの基地の問題について規定しておるのであって、外国にこれは及ばないことは言うまでもないことだ。それをそういう説明でごまかそうとすることは、まことに不都合千万といわなければならない。もしそういうことを徹底的に進めていけば、つまり外国の領土にパイプラインをつけていってしまう、あるいは橋をかけてしまう、あるいはまた地下トンネルをくぐってずっと向こうまで行ってしまう、それもやむを得ない事実だ、こういうことを認めるような結果になるわけであります。いかに不都合であるかということは明瞭である。でありますから、地位協定は、わが国におけるアメリカ軍のいわゆる施設、区域に関する問題と軍隊に関する問題であって、外国の領土との関係はないわけなんだ。これは明瞭であります。でありますから、こういうものを、そういうわけのわからない説明で認めようとすること自身がまことに不当であるし、私は、こういうケーブルの存続を認めることができません。また、完全な説明も加えておりません。まことに残念といわなければなりません。  私は次に、松本質問に対して当時の吉野アメリカ局長は、保護水域のようなものを何か設けなきゃならぬと思っておる、こういう説明を言いました。保護水域というのは一体どういうものであるのか、法律規定によって、どこに根拠を持って保護水域というものを認めようというのか、説明してもらいたい。
  360. 吉野政府委員(吉野文六)

    ○吉野政府委員 お答えいたします。  おそらく私は制限水域と申し上げたんじゃないかと思いますが、どうもその前後の連絡がわかりませんものですから、的確に申し上げることはできません。
  361. 土橋委員(土橋一吉)

    ○土橋委員 保護水域と制限水域とは全然違うんだよ。制限水域というのは、横須賀軍港における岸壁などについて若干の距離を認めるということなんだ。保護水域というのはいまだ規定がないわけなんだ。新しい事実をあなたは想定して説明したわけなんだ。どこの法律の根拠にそういう保護水域なんてものがあるのか。保護水域の性格なりそういうものがどういうものであるか説明してもらいましょう、そんなものはないんだから。
  362. 吉野政府委員(吉野文六)

    ○吉野政府委員 先ほどもお答えいたしましたとおり、私は制限水域と申し上げましたが、制限水域はすなわち、水域であろうと陸上であろうと、つまり地位協定によってわれわれが米軍に提供する地域を、水の上でいえばこれを制限水域ということになります。
  363. 土橋委員(土橋一吉)

    ○土橋委員 彼は、保護水域というものも制限水域というものも全然知らないで答えておるわけなんです。制限水域は、先ほど言うように、横須賀の軍港の中の、埠頭の中の近くにその船舶がくっつくために必要な地域を認めているのだ。保護水域というものは全然規定がないわけなんだ。地位協定の規定は合意議事録の中にないわけなんだ。そういう発想は、これは記録によってはっきりしておるのですよ、吉野さん。あなた、そんな、ごまかしたってだめですよ。ちゃんとはっきり書いてあるのですよ。そういううそを国会答弁するということはもってのほかであります。こういうあいまいな答弁。また、いま申し上げまするように、合意議事録の一項から六項までも全然勉強していない。ただ、地位協定の二条の規定と三条の一項の規定へいきます、というような簡単な説明をしておる。合意議事録の内容について、明らかにこれは国内に限りという制限がないからやむを得ないと答弁をしておるわけなんだ。こういう法規の拡大解釈によってこのアメリカの、台湾と沖繩との海底ケーブル施設を認めようとしておる。まことに不都合千万といわなければならない。まことに乱暴な解釈であって、私は直ちにこれを撤去しなければならぬというふうに思っておる。また、わが国が主権を持っておる限りは、その海底ケーブルについては、私が申し上げるまでもなく総理大臣もよく御承知でしょう。これがどういう国際的な作用をするものであるか、電波の場合とは違うわけです。それは、先ほど申し上げた引込線の例とかパイプラインの例とかトンネルまで敷いていいというような結論をつけてくるならば、ゆゆしき問題である。ですから、私はここのところを明確にするように何回も聞いておるけれども、条約局長、とぼけたかなんか知らぬけれども、全然答弁になっていない答弁をしておる、こういうことであります。  私は、時間がもうございませんので先を急いで、総理大臣に最後にお聞きしたい。郵政大臣は答えていないけれども、お聞きをしたい。  国際ケーブルの設置というのはまことに重大な主権行為であります。また、国家が委任をした、たとえば国際電電株式会社というような特定のもの以外にはこれを設置をしてはならない。特に事由があるときは郵政大臣が許可をする。これ以外に国際海底ケーブルは設置する方法がないわけです。政府はこの沖繩-台湾間の軍事ケーブルのような国際的なケーブルを今後は決して認めないというように、福田外務大臣もこの前も答弁をし、今日もそういう答弁だというふうに私は思うのです。この答弁で明らかなように、今度の沖繩と台湾との海底軍事ケーブルがいかに不当なものであるか、どういう解釈を下しても、合意議事録の三条のいわゆる五項の規定から見ても解釈にならないことをして、これを認めようとしておる。しかもVOAなど、まことに違法な放送施設についても、これは全くその取り扱いを異にしておる。これは御承知のように、韓国というところへつながってしまうわけなんだ。この海底ケーブルを無期限に存続させようとしておるわけなんだ。何という不当なことだ。日本の主権を持っておる現政府がこんなことをやっていいのかどうか、私はこの点について非常に遺憾に思うわけだ。また、いまの答弁を見ても、国民を納得させるよう答弁は何一つない。条約局長アメリカ局長も適当な答弁をしてしまっておる。私、日本共産党が繰り返しこの問題について糾弾をしておるおもな理由は、この海底ケーブルは、沖繩の施政権返還ということを通じて、日本全土をあげてアメリカあるいは韓国、さらには台湾などのアジアの多角的な軍事同盟に直結をさせる、そういう内容のものであります。このことは、沖繩県だけではなく、新たに日本本土を、沖繩が返ってくることによって日本全土を太平洋のいわゆるキーストーンに仕上げるという、こういう内容のものであります。この無法、不当なケーブルを、政府が地位協定のこじつけの解釈でこれを是が非でも置こうとしておるのも、このケーブルの存続という問題がまことに重大な問題であるからそういうことをやろうとしておるのであります。  さらに、このケーブルは、中華人民共和国に敵対をして設けられている台湾のアメリカの軍事基地と結んで、そしてこの軍事ケーブルが一環をなしておる、こういう事実であります。御承知のように、これは中華人民共和国に対する乱暴な国家主権の侵害であります。中華人民共和国の領土のうちにこんなものをつけて、そうしてやるということは、国家主権の侵害である。こうした米軍のケーブルを、日本政府があくまでも国際法規を無視をし、さらにその合法性を与えようということは、いま国民が非常に要望しておる日中国交回復という全国民の願いに文字どおり反対をして、これを是が非でも認めようとしているという結論にならざるを得ないのであります。  こういうケーブルが日本の主権行為に将来どういう影響を及ぼすのか、あるいはどういう害悪を及ぼすかということは、もう私がたくさん説明しなくても、いま申し上げたような事由によってきわめて明瞭なものであります。わが国をアメリカの極東戦略の中に一そう深く組み入れてしまって、そうしてわが国がのっぴきならないような状態を、この海底ケーブル一つを通じても、佐藤政府はやろうと、こういう結論にならざるを得ないのであります。政府はこの不当、不法な沖繩-台湾間におけるアメリカ軍事ケーブルを撤去しなければならない、すみやかにこれをなくするようにしなければならぬと思うのであります。     〔金丸(信)委員長代理退席、委員長着席〕  まだ、委員長、先ほどの討論でおわかりになりますように、外務当局は、この海底ケーブル一つについても正しい解釈もできない、また説明がとんちんかんな説明をしておる。こういう事実から見ても、私は討論をもっと継続させる必要があると考えておるのであります。
  364. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 いや、あなたの御希望はわかりますけれども、なお他に質疑者がございますので、御考慮いただきたいと思うのです。
  365. 土橋委員(土橋一吉)

    ○土橋委員 こういうような審議であっては、沖繩協定が、ほんとう国民が納得をして十分な審議をしたということにならないので、私は、後日ひとつ、これが再びやはり本委員会において十分討論されるよう、そして政府に、もっと勉強してちゃんとした説明ができるよう、私は念願をします。  ここに聞いておるすべての委員の皆さんも、政府の諸君も、いまの外務省の答弁では、全然答弁になっていない――私は非常に残念に思います。ですから、すみやかにこの問題についてりっぱな解釈をきちっとして、国民に納得できるような体制をとられるまでは、本委員会の継続を強く主張して、時間が参ったようでありますから、私の質問は中途、保留をして終わる次第でございます。
  366. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 時間が参りましたので、これは終わっていただくわけでありまして、質問の処理は、別途委員会において討議いたします。
  367. 土橋委員(土橋一吉)

    ○土橋委員 まだ、先ほどの水域の問題、説明もないわけですから……。
  368. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 時間が経過しましたから……。  大原亨君。
  369. 大原委員(大原亨)

    ○大原委員 夜もだいぶおそくなりましたが、ひとつ目のさめるような質疑応答をやりたいわけであります。ただし、私の分担はきわめてじみな問題です。  最初に、山中総務長官にお尋ねいたしますが、沖繩の本年度の予算の規模は幾らであるか。それから類似県の予算の規模は大体どのくらいであるか。第三に、昭和四十七年度の各省の概算要求の合計は幾らであるか、これをひとつ明快にお答えいただきたいと思います。
  370. 山中国務大臣(山中貞則)

    山中国務大臣 現在、琉球政府は国政相当分の仕事もしておりますから、ただ琉球政府予算だけをつかまえますと二億六千万ドルで、約九百三十億でございますけれども、大体県分相当額を推定いたしますと六百億余になると思います。  類似県といいましても、これは面積とか人口とかいろいろとりょうは幾つもあると思いますが、大体人口の似通ったところの佐賀、宮崎、高知、島根、徳島等のおおむねの平均を見ますと、一応出ておりますのは四十四年度決算が出ておりまして、これがおおむね五百三十億ぐらいでありますから、本年度に趨勢値で直しますと六百九十億ぐらいと推定されます。これはあくまでも推定でありますけれども、したがって琉球政府の県政相当分というものを推定したものと比較すると、なお六百億対六百九十億という開きがあるということになるわけであります。  なお、来年度の予算要求額はおおむね三千二百億円でございます。しかしながら、これには各種のものが含まれておりますので、いわゆる国政の沖繩分等も入っておりますから、これを大体琉球の、沖繩県の分だというものを推計いたしますと一千三百七十億程度であろうかというのが、現在の予算要求にあたっての試算でございます。
  371. 大原委員(大原亨)

    ○大原委員 総務長官、これは議論するわけじゃないのですが、大蔵省が出しました昭和四十七年度の各省の概算要求の合計は二千九百九十三億円でありますね。これはどちらがほんとうですか。
  372. 山中国務大臣(山中貞則)

    山中国務大臣 その後ほとんどが先般ドル・チェックを行ないました、それの交付金の支払いに充てる経費が大部分でありますけれども、その差額、ドル・チェックだけで二百億をこすわけでございますが、その分の算定基礎は一二・五%に一応置いておりますけれども、あるいはこれよりかふえるかもしれませんが、それが大部分でありまして、数字は違っておりません。
  373. 大原委員(大原亨)

    ○大原委員 大蔵省がいうところの二千九百九十三億円の概算要求と振興開発法にいうところの振興開発計画と特別措置法との関係、これはいかがですか。
  374. 山中国務大臣(山中貞則)

    山中国務大臣 あるいは私の答弁が御趣旨と違うかもしれませんが、大体この予算は来年度の、沖繩県並びに市町村というものが本土に返ってまいりまして、本土の県市町村ということになる場合に、それに対して開発計画等も念頭に置きながら、その初年度にふさわしい予算であるように積算をしておるわけでありますから、いまの御質問に、私ちょっとつかみがねるところがありましたので……。
  375. 大原委員(大原亨)

    ○大原委員 勘のいい総務長官としてはちょっとあれですが、つまり昭和四十七年度は、振興開発法によりますと十年間の時限立法ですから――十年で格差を是正するというのでしょう。開発計画を立てるというのですから、その初年度に当たる、こういうふうに考えてよろしいか、こういうことであります。
  376. 山中国務大臣(山中貞則)

    山中国務大臣 そのとおりであります。
  377. 大原委員(大原亨)

    ○大原委員 予算査定の時期が迫っておるわけですが、年内か年明けかは別にいたしまして、大蔵大臣は、この概算要求は、これはほとんど一〇〇%査定をされる、通るものだ、こういうふうに考えてよろしいか。
  378. 水田国務大臣(水田三喜男)

    ○水田国務大臣 この十年計画の初年度に実質的には当たるべきものとして私どもは予算を計上するつもりでございますが、これは御承知のとおり、この法案が通ってから沖繩県知事がこの計画を立てて、それからこの十年計画はきまるものですから、形式的にはこの十年計画はきまらない。したがって来年度、四十八年からが形式的には第二年度というようなことにあとからきまってなると思いますが、最初は、予算編成のときは、それが形式的には十年計画になりませんので、実質的に初年度になる予算としての査定をしたいと思います。
  379. 大原委員(大原亨)

    ○大原委員 いままで山中総務長官や総理大臣や各省大臣、行政庁長官答弁をいたしましたことは、たとえば山中長官は非常に名答弁した、あんなによくなるんだったならば返還はいいじゃないかというような印象を与えました。あなたの長答弁佐藤内閣の名物の一つでありますが、つまり山中ペースといまいっておるわけですけれども、あなたの答弁は非常に期待をさせておるわけです。これを予算上の数字でいうならば、大蔵省の根拠でいえば二千九百九十三億円だというように資料を出しておるが、これは開発計画の十カ年計画の初年度である、こういうふうに、法律の構想からいうても特別措置法からいうても当然規定されるわけですが、盛んにいいことをしゃべっておいて、終わったとたんに予算の査定でがさっと切るということが、十分あり得るわけであります。そういうことであったのでは羊頭狗肉でありますよ。総理大臣いかがですか。
  380. 山中国務大臣(山中貞則)

    山中国務大臣 予算編成はあくまでも大蔵省に編成権がありますので、各省大臣が責任をもって折衝をして、最終的に全体の国家の予算としてきめるわけであります。しかしながら、私の責任をもって計上いたしました一括計上分並びに各省の見積もり調整分等も含め、沖繩県の出発にあたってどうしてもその予算を必要とすると私の考えております点は、大蔵省にも特段の御理解を願うため、実績としてはもうすでに二年予算もつくっておるわけでありますから、大体沖繩の担当者の方方も一応の御信頼をいただいておりますので、その信頼にこたえるだけのことをしなければならぬと考えます。
  381. 大原委員(大原亨)

    ○大原委員 この二千九百九十三億円の概算要求は、実行いたそうといたしますと、これは沖繩県や地元の市町村の独自の負担が非常に大きいわけであります。一体幾らの負担になりますか、自治大臣が御承知であるならばお答えいただきたいが、あなた御承知じゃないですか。大体これは、提案いたしましたのが総務長官でありますから、あなたはまあびっくりされておるから、山中さんに答弁いただきましょう。あなたは何でも答弁するから……。
  382. 山中国務大臣(山中貞則)

    山中国務大臣 これは補助率を全部読み上げるつもりはありませんが、別表にも書いてあります十分の十以内等々の表現の内容についてはすでに大蔵と合意をいたしておりまして、いかなる本土の特例にも劣ることのない最高の補助負担の特例を適用しております。しかしながら、なお沖繩県の今日までの累積赤字等の処理もございますので、これらの点についても本土政府において責任を持つべき予算処理もいたしておりますし、身軽になりました沖繩県に新しく賦課される地元負担金対応費というものについては、その方式についてまだ理論的に自治省と私と一致していないわけでありますけれども、要するにいかなる名称になるにせよ、交付税及び特例交付金というものを含めて六百億をこえる金が県市町村にまいるわけでありますから、自主財源としても十分のものが、私としては国からも出るものであると考えておる次第でございます。
  383. 大原委員(大原亨)

    ○大原委員 大蔵大臣、いまの御答弁ように、それぞれの項目はあげませんが、公共事業その他の施設の補助については、高率補助を、本土以上の補助を、いまお話しのように要求をされておるわけですね。その補助率については了承いたしておるのか。  もう一つは、地元の超過負担や税外負担、その他たくさんあるわけですけれども、そういう問題を含めて、非常に地元の負担が大きいわけですけれども、足りない場合には地方債を発行する、そのときには政府が財政投融資その他で全額見ていくという、そういう原則については大蔵省は了承いたしておると思うけれども、それを前提としていま議論をしておるのかどうか、この点について大蔵大臣の見解をお伺いいたします。
  384. 水田国務大臣(水田三喜男)

    ○水田国務大臣 補助率の問題は合意しておりますが、起債の話はまだ別に、そういうところまで話が詰まっておりません。とにかく沖繩予算は、いま策定作業の進行中でございますので、その進行の過程においてそういうような問題が起こったときには、関係庁と十分相談の上いろいろ善処をしたいと思っております。
  385. 渡海国務大臣(渡海元三郎)

    ○渡海国務大臣 いま問題になっております地方負担の件につきましては、各省が要求しておられます事業の積み重ねによりまして、沖繩県が県として持たなければならない分の地方負担を、六百三十億の特例交付金と百五十七億の起債で十分まかなえるものとして要求しておるわけでございます。しかしながら、それらの量は、いずれ予算折衝におきまして、事業量その他によって変動することもあり得るのじゃなかろうかと考えております。
  386. 大原委員(大原亨)

    ○大原委員 私は現地の調査をいろいろいたしまして、今日まで長い間の言うなれば軍政下におきまして、たとえば社会福祉施設にいたしましても、保育所や養老施設や身体障害者の施設にいたしましても、社会福祉施設全体の数からいいますと、本土の各県は平均四百三十二で、沖繩県の類似県をあげてみましても三百であるのですが、沖繩は百三十五というふうに非常に悪いわけであります。  これは総理大臣か文部大臣にお聞きしたいのですが、私が実際に中央部の北谷村というところに行ってみましたら、町長さんや町会議員さんが超党派で陳情されました。北谷村の中央の北谷小学校という小学校は、北谷村にはなくてコザ市にあるわけであります。よその学校へ行っているわけです。そのすぐそばには、村の全体の七五%がアメリカの軍事基地ですが、そのどまん中に――これは政治家としての感想ですから、小またすくいじゃないから……。全体の七五%を占める軍事基地の中で、アメリカ軍人、軍属のための中学校が、各種学校であるけれども、中学校が非常にりっぱなのがあって、そうして敷地も広々ととっているわけです。しかも、そのアメリカ人の中学校は基地の中に計算をされておると思うのですね。  基地の中のアメリカの学校は非常にりっぱである、北谷村の子供たちは村外に出て教育を受けている、こういうことは、将来施政権が返るということを論議をいたしておりますが、一体どうあるべきであるのか。アメリカ人の学校も基地であるのかどうか。日本人の北谷村の小学校を村外のコザ市に求めるというふうなことは、はたしてまともなことであるのかどうか。こういう事実に対してどういう御感想をお持ちですか。総理大臣、ひとつ眠けざましに立って答弁してください。
  387. 高見国務大臣(高見三郎)

    ○高見国務大臣 大原先生御質問の点、そのとおりであります。北谷村では戦後、住民が桃原、謝苅等に集合して居住をいたしました。その他の地域は軍用地になったのでありますが、当時桃原では、北谷村の境界線近くの越来村内にちょうど学校をつくる適地がありましたので、村の区域外ではありますけれども、部落の近くであるので通学上の支障がないというので、当時の北谷、越来両村長が協議いたしまして、その地に小学校を設立することになったものであります。  まことに遺憾な状態だと思っておりますが、桃原部落は、現在北谷とコザ市とにまたがった町になってつながっております。このような事情から、区域的にはコザ市に属する住民の子弟も、北谷小学校に通っております。全体で六百人の生徒のうち、コザ市の子供が北谷小学校へ二百五十人通学をいたしておる。けれども、いずれにいたしましても、確かに旧北谷国民学校というものは軍用地に接収せられて、そして村域を越えました地域で教育を受けておるという遺憾な事態があることは事実であります。
  388. 大原委員(大原亨)

    ○大原委員 総理大臣、いまのは上のほうをすらっとなでた答弁ですが、事実は違うのです。  どういうことかといいますと、七五%を占めておるアメリカの基地は、平地で一番いいところばかり占拠しておるわけです。そしてあとの二五%は、谷合いか山なんです。そこへ二千名の沖繩の同胞が閉じ込められておるのです。たまたま、そういうことになっておりますから、いま文部大臣がお話しのような結果になっておるわけであります。何も近いからそこにできておるわけじゃないのです。現地の同胞が追い込められて谷間と山の斜面にあるからそういう結果になって、しかも外に出ておるわけです。ですから、郷土愛とかなんんとかいうことを言いましても、そんな形はおかしいでしょう。  私は現地へ行ってびっくりいたしましたが、社会保障や社会福祉施設や教育とか、沖繩の同胞の生活や身辺の生活環境にかかわる問題は――社会保障の問題は逐次申し上げますが、ほとんどこれは放置されておるのです。医療保険も先般できたばかりだし、年金もほんとうに一年前ぐらいにできてばたばたしておるわけです。国民健康保険はできていないで大騒動になっておるわけであります。つまりアメリカの軍政、施政権というものは、パンか大砲かといえば、全くの大砲一本やりなんです。基地優先なんですよ。  しかしながら、たとえば部分的には社会福祉もよくなっている。というのは、性病とかハンセン氏病とかあるいは下水などというのは、いまアメリカの軍人は四万八千人余りおりますし、軍属その他はまだたくさんおりますが、自分たちの生活の環境に関係する下水道の問題とか、あるいは自分たちの家族やその他に伝染するハンセン氏病とか性病の問題等については、かなり金を使うような方向にあるわけです。沖繩住民のための社会福祉とか社会保障というふうなものは、これは放任状態なんです。  これは全くの植民地的な支配なんですね。だから、返ってからよくするんだというようなことをあなたは答弁するでしょう、これはオウム返しにいつもそういうことを言っておられますからね。  そういう実態を十分踏まえてこれからの施策をやらなければならぬし、実際に今回の復帰に伴う諸施策でそういう措置がなされておるかどうか、こういうことが、私どもが論議をする、ほんとう沖繩の同胞の関心の深い中心的な課題であると思うわけであります。ですから、財政上の特例措置の問題等にいたしましても、この実態を踏まえたそういう施策をやらなければ、本土並みとかそういう議論というものは、全くたてまえと本音が違う――いままであなたが任命した各大臣がやったように、たてまえと本音が違うことになると思うのですね。総括的に総理大臣から、決意や感想があればひとつお聞かせいただきたいと思います。
  389. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 沖繩の実情について、ただいまるる大原君からお話しになりました。同時に、その実情を踏んまえて、しかる上で施策をしろ、こういう政府を鞭撻された大きな声で私も眠けがさまされたと、こういう実情でございます。これは、かように申すと、私がいかにもふまじめに聞いておるようですが、そうではなくて、ずいぶん長い間の御苦労、これに報いるだけでもこれはたいへんなものだ。その上に、ただいまのように本土との間の格差が非常にある。こういうことがあらゆる面に出てきている。北谷村の学校の問題や、さらにまた、社会保障のあらゆる問題について、先ほど来いろいろ、お医者さんの足らないことも、また各施設の不十分なこと等々についてもお話がありましたが、またただいまは大原君から御鞭撻を受けて、まことにありがとうございます。お礼を申し上げておきます。
  390. 大原委員(大原亨)

    ○大原委員 お礼は要らぬです。お礼は要りません。  そういう実態にあるわけですが、大蔵大臣、あなた眠っているんですか。――大体予算は年内にやるんですか。年明けですか。予算はいつきめるんですか。大体、この審議をするときに、沖繩の問題については予算をきめておいてやるべきなんだ。これから政令の問題もやるけれどもね。それをきめておいてやるべきなんですよ。そして、山中国務大臣がべらべらべらべらとしゃべって、まるで、できたこともできぬことも一緒にしちゃってやっておる。そしてわあっとやって、返ってきたらよくなるような印象を与えておいて、強行採決なんかやるということだろう。――予算査定はいつやるのですか。
  391. 水田国務大臣(水田三喜男)

    ○水田国務大臣 年内編成をするという方針もきょうきめましたので、十二月の三十日までに予算編成を終わりたいと思っております。
  392. 大原委員(大原亨)

    ○大原委員 ついでにですが――ついでにと言っては悪いけれども佐藤総理、あなたは総理大臣をいつまでやるのですか。(笑声)いかがですか。いろいろ諸説紛々だけれども
  393. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 お尋ねになると答えなければならないというのがどうも国会ようですが、ただいまのはちょっと私も答えかねるというようなことでございますから、これはお許しを得たいと思います。
  394. 大原委員(大原亨)

    ○大原委員 ちょっとしばらく脱線いたしますが――脱線でなしに、このことに関連いたしますが、山中長官、あなたは非常にもの知りで有名でありますね。一を聞いて百を知るというか、知らないことまでしゃべるというような(笑声)そういうような……。  佐藤内閣に三つの名物があるのです。三つの名物がある。これ知っておりますか。
  395. 山中国務大臣(山中貞則)

    山中国務大臣 どうもその一つは私らしいことはわかります。
  396. 大原委員(大原亨)

    ○大原委員 あなたにも関係がある。これは念のために言っておきます。一つは、総理大臣のネクタイが毎日かわる。これはテレビに出ています。これは名物です。これは非常に台所からテレビを見ておる人は関心がありまして、佐藤内閣に対する支持率は最低になっておりますけれども、二三%、その中で一〇%ぐらいはこのかわるネクタイだなんていわれている。(笑声)しかし、あのとおりネクタイはかわるし、大臣もどんどんかえていくから、自分もかわったらどうだと、こうまあ国民は言うておる。これは名物であります。  それから第二の名物は、これは大蔵大臣、あなたは非常に福徳円満で、トレードマークがあるわ、ここに。これが名物であります。  第三の名物は、山中長官の長答弁と、ここの長いやつです。あるところで話題になりまして、あれはもみ上げというのだそうだけれども、長いもみ上げ。話題になりまして、あれはおしゃれだねと言う人もあったし、あれは不良少年みたいだねと言う人もあった。それで私は、あれは総理府の青少年対策本部の副本部長なんだよと言いましたけれどもね。これもかなり名物ですよ。  しかし、いずれにしても、私は、佐藤総理はやるべきことはやって、そして昔からよく、初めあるものは終わりなかるべからずと、こういっておるのだから、あなたはさっさと最後を全うされることが、国民の心から願っておることだと思うわけです。わかりますか。(笑声)
  397. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 いや、どうもありがとうございました。御意見を伺わせていただいて、お礼を申し上げます。
  398. 大原委員(大原亨)

    ○大原委員 それじゃ問答にならぬようですから、次に進みます。  本土並み本土並みと言うけれども、何も本土の悪いことや矛盾したことを沖繩へ持ち込んで沖繩を混乱させてはいけませんよ。医療保険の問題がその典型ですが、厚生大臣、いかがですか。
  399. 斎藤国務大臣(斎藤昇)

    斎藤国務大臣 医療保険は、御承知のように、健康保険は本土並みに直ちにできるわけでございますが、国民保険のほうは、ただいま主席と立法院と意見がなかなか合致をいたしませんので、本土復帰に間に合うように、できるだけ意見の調整をはかってそうして沖繩に適切な国保の形を整えてもらいたい、ただいま念願をし、いろいろと相談に乗っているわけでございます。
  400. 大原委員(大原亨)

    ○大原委員 二つお尋ねいたします。  いま、琉球政府の立法院、主席の間をめぐっていままで議論も若干あったようですが、非常にもめておるわけです。国民健康保険の実施――いままで実施されていないということもおかしいんですよ。おかしいんだけれども、まあ非常に混乱いたしております。  一つお聞きいたしますが、これは県の経営にするというのと市町村の経営にするという意見がありますが、これはどっちをとるのですか。それから特別措置法には何ら規定いたしてありませんけれども、法的にはどういう手続をとりますか。
  401. 斎藤国務大臣(斎藤昇)

    斎藤国務大臣 立法的には、政令で本土の例外を規定することができるという一般原則がございますから、それによりたいと存じております。  そこで、県営の形にするか市町村営の形にするか、この点で政府側と立法院とが意見がまだ合致をいたしておりません。したがいまして、できるだけ早く、折衷案でもとにかく実施可能ないい案をつくってもらいたいと、こういまいろいろと相談をし、琉球におきましても、そういう考えで、施行前までにつくり上げたいという努力をしておりますので、したがいまして、県営が主体になるか、市町村営が主体になるか、その折衷になるか、ただいまここで申し上げることのできるような事情にはなっておらないことを御了承をいただきたいと存じます。
  402. 大原委員(大原亨)

    ○大原委員 私はほかの議論しようとは思わぬけれども、たとえば教育委員会の制度でしたら、これは問題になっているように、つまり、アメリカは形式的には民主主義の制度を入れたけれども、社会福祉でも何でもほとんど住民のことを考えてやらなかったんですよ、私が例示したように。しかしながら、屋良さんの教職員会は、教育委員会制度を通じて教育を守ってきたんでしょう。そういう問題は、実績をちゃんと尊重して暫定措置法の中へ組み入れることは当然でしょう。そのことは議論いたしません。いたしませんが、このことについては、具体的には折衷案というのはどういう構想なのか。それを政令できめるのか、その政令はできておるのかどうか。案があるのかどうか。その案を示されなかったら、これは審議は進みませんよ、こういう重大な問題は。その案もなかったらだめですよ。そんなものは審議なんかできませんよ。いかがですか。
  403. 斎藤国務大臣(斎藤昇)

    斎藤国務大臣 本土復帰までに琉球政府のきめるものを当分沖繩において実施をする、そういう政令を書きたい、かように思っております。
  404. 大原委員(大原亨)

    ○大原委員 それでは、国民健康保険法の条文は読まないけれども国民健康保険法とは全然別の法律をつくるのか、それとも政令でやるのか。政令でやるのかどうかということを言っているのです。
  405. 斎藤国務大臣(斎藤昇)

    斎藤国務大臣 政令で書きます。
  406. 大原委員(大原亨)

    ○大原委員 これは重要な問題ですから、この問題は、あとに関連がありますから、置いておきます。最後にこれはいたします。  もう一つは、国民健康保険に対応いたしまして医療保険という制度があるわけです。総理、これは約四割五分の沖繩の同胞に対して適用があるわけです。これは被用者保険であります。一本であります。本人七割、家族七割であります。これは療養費払いですから、あとで払うことになります。  そこで私は申し上げたいのですが、たとえば、沖繩の医者の数は本土の三分の一なんです。せいぜい、補をとりましても二分の一に足りません。看護婦も足りません。それから病院の数やベッドの数にいたしましても、それぞれ六割程度であります。医療の供給面が非常に劣っておるわけです。一方には、医療保険をどれだけとるのか知りませんが、いまのままでまいりますると、ばらばらの被用者保険になります。政管健保、組合健保、共済組合健保その他になります。そういたしますと、健康保険法で千分の七十の負担になります。現在医療保険で沖繩が実施いたしておりまするのは千分の三十ですが、総報酬ですから、標準報酬に直すと千分の四十です。千分の四十が、本土に復帰いたしますと片方は千分の七十に上がるわけです。医療に対するサービスの機関は非常に低いのです。半分の程度です。それでこっちの保険料のほうはばかっと上がるわけですよ。こういうのはどういうふうに実施をするのですか、厚生大臣。
  407. 斎藤国務大臣(斎藤昇)

    斎藤国務大臣 この点は詳細に琉球政府と打ち合わせをいたしまして、ただいまのところでは、本土並みの保険料率をとり、そして給付は本土並みの給付ということにいたしまして、大体これで保険料とそれから給付とがつり合う、こういう計算に相なっておるわけでございます。  なお、医療の供給体制は、御承知のように、被用者保険は、ほとんど医療機関の多い市町村に住まっておられますので、したがって供給体制にはこの健康保険は支障を来たさない、かように考えております。
  408. 大原委員(大原亨)

    ○大原委員 斎藤厚生大臣、医療の供給面は、これから実施される国民健康保険も関係あるのです。それから被用者保険も関係あるのです。両方に関係あるのです。ですから、理屈から言えば、沖繩の医療供給の水準は大体半分であるから、この医療供給面を公共投資その他で改善する十カ年計画が振興開発法だろう、十年間の時限立法だと山中長官が言っている分であろうということですね。そういう水準が低くて医療機関が都会に偏在しているわけです。本土以上の僻地医療が多いわけです。ですから、それを改善する総合計画を立てながらできるのだから、本土の水準を基礎にして立てながら、そして医療の保険料のほうもこれは千分の四十を逐次上げていくというふうなことをやるのが、本土における健康保険の精神であり、憲法の精神ではないかと思うわけですよ。そういうことはやらないで、取るほうの保険料だけはひったくって取っておいて、施設については海のものとも山のものともわからぬということで放置することは、私は沖繩の一人一人の県民の立場に立って納得できないと思うわけです。いかがですか。
  409. 斎藤国務大臣(斎藤昇)

    斎藤国務大臣 医療の供給体制を至急に整えなければならないことは、お説のとおりでございます。十カ年の沖繩振興開発計画の中におきましても、特に医療は優先して、十年かからないででもやりたい、できるだけのことをやりたい、かように考えておるわけでございます。  ただ、いまお説の被用者保険につきましては、先ほど申しますように、被用者がほとんど市に住まっておりまして、医療機関の比較的充実しておるところに住まっておりますので、したがって、これが本土並みの給付になりましても変わりがない、かように思います。  なお、給付の内容は、現在やっておりません現金給付が加わりますので、また現在の七割給付が本人は十割給付ということにも相なりまするし、給付内容がいままでよりも充実をいたしますから、したがって、千分の七十の保険料を取っても、それに見合う給付ができる、かように勘定をいたしております。
  410. 大原委員(大原亨)

    ○大原委員 家族の給付は、原則として七割が五割になるんでしょう。あなたは七割が十割になると言うが、十割の中に一部負担があるんですよ。いいところだけ言っておいて悪いほうを言わぬというのはおかしいじゃないか。いかがですか。
  411. 斎藤国務大臣(斎藤昇)

    斎藤国務大臣 家族給付は七割が五割になりますが、本人給付は七割が十割になります。そうして、この比率を考えてみますると、給付全体としてはよくなるという、こういう計算に相なります。
  412. 大原委員(大原亨)

    ○大原委員 どんなによくなるのですか。――そこで、時間もたちますから、私は重要な問題を提起いたしたいと思うのですが、いま議論いたしておりました国民健康保険の問題ですね。この実施にあたってはこれは政令でやるということです。被用者保険も、現在ある、積み上げてきたところの沖繩における被用者保険をばらして、一部は給付が悪くなるわけですが、それはやはり移行措置をやりまして政令でやるというんでしょう。その政令の根拠はどこにあるのですか、御答弁いただきたい。
  413. 斎藤国務大臣(斎藤昇)

    斎藤国務大臣 基礎は百五十六条でございます。
  414. 大原委員(大原亨)

    ○大原委員 法律の百五十六条なんです。そこで私は政府に対して要求いたしたいのですが、山中長官、これが大きな関心である国民健康保険と政府管掌健康保険がこれからどのように移行するかという、これは政令でやるという手続はわかっておるが、百五十六条を根拠とする政令の中身、この案を示してもらいたい。これが第一。これは、審議をしているのは法律案だけを審議しておるのじゃないわけですから、その裏づけを審議をしなければ意味がないわけだ。  もう一つの問題は、これは例であるが、百五十六条に基づく政令でやるということは、日本の憲法や法律体系からいって政令の限界を越えるものである。それは政令の中には、法律を実施するための技術的なそういう政令もある。しかしながら、法律の根拠に基づくそういう委任政令もあるわけです。二つあるわけです。この百五十六条を読んでみますと、「この法律に定めるもののほか、本土法令の沖繩への適用についての経過措置、この法律において法律としての効力を有することとされ又はその例によることとされた沖繩法令の規定の技術的読替えに関する措置その他沖繩復帰に伴い必要とされる事項については、当分の間、政令で必要な規定を設けることができる。」ということで、非常に包括的、抽象的に政令委任をきめておるわけです。しかし、これは内閣法の十一条、憲法の関係条文、健康保険法の内容やあるいは社会保険審議会、社会保障制度審議会の設置の法律、いままで国会で議論したことですが、そういう憲法や法律から考えてみまして、このような抽象的、包括的な政令委任立法というものは、これは政令の限界を越えるものである。しかもその中身が示されていないというふうなことは、この問題はわれわれが責任をもって審議をするわけにはいかない。できない。明らかにこれは越えておるのです。学者のいろいろな通説を見ましたけれども、検討いたしましたが、限界を越えているのです。非常に抽象的です。非常に包括的です。具体的に、そして内容がはっきりわかるよう法律に基づいて委任をされて初めて政令ができるのです。最近は行政府全体が、国会における審議を免れようとしてそして何でもかんでも政令に委任をして、国会軽視の風潮があることは、御承知のとおりだ。私が具体的な例を申し上げるまでもない。私は、このよう沖繩の諸君や全国民の生活に深い関係のあるようなそういう医療保険の制度の問題について、本土の矛盾をぱあっと持ち込む、手続も政令の中身は明らかにしない、しかも根拠法規の百五十六条も、明らかに、今日までわれわれが議論した政令の限界を越える不法、不当かつ違憲の疑いのあるものであるということは、これは私は納得できない。ここだけじゃない、まだ例をあげればたくさんあるんだ。まだあるのですよ。政令が未決定なもので重要なものがある。山中長官は、総括大臣として、提案者として、この問題についてかっこうのいい答弁をひとつ要求いたします。
  415. 山中国務大臣(山中貞則)

    山中国務大臣 これは国保を例にとりますと非常に大きな問題でありますが、しかし、国保については、現在琉球政府のほうで、立法院で可決され、あるいは主席が署名を拒否するといういろいろの過程にありますので、したがって、もし琉球政府が何か復帰までにきめてもらえたら、それを当分の間沖繩に適用するものとして書くのであって、もしそれが復帰までにできなければ、何も書いてありませんから、本土の国民健康保険がそのとおり沖繩に適用されることになります。しかしながら、その点は、沖繩の現状から見て、無医村、ことに無医島というものが非常に一ぱいありますから、はたして本土並みに市町村だけでやれるのか、やれないのか。鹿児島県に私は先ほど例をとったのでありますが、三島村、十島村というのがいまだ健康保険ができない理由は、実はそういうところにあるわけでありますので、その点をいま心配しておるわけであります。しかし、それを琉球政府のほうで最終的に御決定をなさったら、それを当分の間は特例として認めようということを書くつもりでありますが、きまらなければ本土法どおりということであります。したがって、ここの該当にならない。その他の百五十六条のこまかな点は、先ほども一覧表をつくって全部読み上げたのでありますけれども、しかしながら、先ほどのその書類を、いまここにないということでありますけれども、一応田辺調整部長よりそのアウトラインについて説明をいたさせます。
  416. 大原委員(大原亨)

    ○大原委員 私が議論しておる範囲内で答えてください。  そこで問題は、保険料の負担、保険税の負担と医療機関、サービス機関というものは、少なくとも並行しなければならぬ。だから、こちらに見合わないような、医療供給に見合わないような保険料を課するというようなことは――たとえば財政法の第三条は、租税その他の排他的、独占的な公共料金等については法律できめるというふうになっているのです。そういう財政法三条の精神からいっても、総合的な計画をやっておるうちは暫定措置をとって、保険料を減すとか、そういう措置をとるべきだ。国民健康保険については、一般財源を保険財政に持ち込むことは本土ではできないけれども沖繩については一般財政から、交付税の対象とするかどうか別にして、持ち込めるようなそういう特例措置をとっておく、そういうことを通じて全体の医療水準を上げていくということが、これが法の精神です。だから、私は、政令でやるということ自体が問題があるけれども、特例法を出してもいいからこれは法律で当然やるべきであるけれども、包括的に政令にまかしておくだけでなしに、政令の中身がわからぬというようなことで、しかも医療供給面と保険料の負担、そういうものがバランスがとれないかっこうで本土並みということをしゃにむにやっていくというふうなことは、これは法の精神をじゅうりんするものである。そんなことは包括的、抽象的に政府に委任はできない。具体的なそういう根拠がなければできないです。法律全体を一々吟味をいたしてみる時間がありませんが、調整部長か調整局長かだれか知らぬが、いろいろしゃべったって、一つ一つをやれば問題となるだけである。こういう問題についてそういう具体的な構想や財政的な裏づけ――国民健康保険であったならば、市町村の経営ということになれば、五十四カ町村の中で十八カ町村しかできる能力はないのです。あとは担税能力はないのです。それでは機会均等もないし、医療機関もないじゃないですか。こういうことで問題は絶対に解決されないと私は思う。年金の問題もあるし、福祉施設全体の問題もたくさんあるが、この問題については政府は納得できる答弁をしてもらわなければ、私どもは建設的な審議を進めるわけにはいかぬ。  委員長、ひとつこの点は賢明な委員長でしかるべく納得のいくような取り計らいをいただきたい。私は何も引き延ばしのためにやっておるのじゃないです。いかがです。
  417. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 政令の扱いとしては、田辺調整部長から先ほど来発言を求められていますから――簡潔にひとつ。
  418. 田辺政府委員(田辺博通)

    ○田辺政府委員 簡潔に、百五十六条に基づく政令案の考え方について申し上げます。  まず、本土の制度と沖繩の制度がかなり似通っているというものにつきましては、たとえば許可、免許というような処分をみなす措置は第五十三条でやっておるわけでございますが、それに付随しまして、たとえば免許証を免許証とみなすとか、あるいは、そういった処分ではなくて、帳簿であるとか事物であるとか、そういうものをみなす措置が必要であります。それから、本土と沖繩の制度がそう類似していない、多少違っている、そういう場合には、あるいは本土法の適用、本土法の規定の一部分を適用を若干延期するとか、あるいは沖繩の法令をしばらく適用する、そういうような措置をするわけでございます。  そこで、いま御質問になっております国民健康保険に関する特例の措置、これは私どもは関係省と相談をいたしまして、沖繩の制度の例をなるべく尊重すべきではないか、こういうことを考えておるわけでございますが、いまは沖繩にはその制度が実施されておりません。ところが、たまたまこの法律案を提案する時期におきましては、立法院におきましてある案が可決されたのでございます。しかしながら、その後時間の経過を経ましても琉球政府の行政主席の署名が得られていない、こういう状態でございます。また一方、沖繩におきましてはなおその両方の意見の一致を見るべく努力は行なわれているようでございます。したがいまして、その沖繩におきます制度の成案が得られましたならば、それを十分尊重して、その例をならいながら暫定期間それを適用する、こういうことを考えざるを得ないわけでございますが、いまその政令案を示せ、こうおっしゃいましても、現実に現在向こうの制度がまだ検討中のものでございますから、いかようにもしかたがない。しかしながら、一方におきまして、沖繩復帰の時点におきましては、本土法と沖繩法とのその適用の関係に一点のズレもあってはならないわけでございます。空白があってはなりませんから、そのやむを得ざる措置は、やや重大ではございましょうが、政令でやらざるを得ない、こういうものがあるわけでございます。
  419. 大原委員(大原亨)

    ○大原委員 だめだ。かってなことを言って答弁をしちゃだめですよ。私が一つだけ事実をあげておきます。  国民健康保険に対応して、すでに実施されている被用者保険があるのです。医療保険という一本立ての保険があるのです。本土では、地域保険と被用者保険を合理的に調整すべきであるという意見が、抜本改正の中で議論されているのです。ばらばら縦割りの被用者保険をずっと持ち込んで、矛盾を持ち込んで、保険料だけ巻き上げるようなそういう制度はいけないということを言っているんだが、あなたは、現実にある制度の中において改善すべきものがある、そういうものがあればそれをとるんだというようなことを言うのだったら、いまの被用者保険である医療保険はまさにそうなんだ。七割の給付なんですよ。家族を七割にしておいて、本人十割給付にすればいい。そして一本にしておいて、事務費その他をできるだけ少なくして、医者の手続も簡単にしておいて、十幾つかの共済組合の短期給付等を含めてやるというようなことをしないで、そういうことをやっておいて、沖繩には、狭い土地ですから、離れている土地ですから、そういう医療機関の改善を急ぎながら、本土の全体の情勢を見ながらこれをやっていくというようなことは、あなたの答弁からいえば、被用者保険の医療保険のほうを議論するならば、そういうことが現実にある制度があるんだから、それをやるべきであるということになるだろう。かってな言い方をして国民健康保険だけについて言うことはいけない。そのすべてを、みそもくそも一緒にして政令でやるということで、ややこしいものについてはすべてここへまかしておくというようなことで、そしていいかげんなことで私どもは本土並みの議論をし、切実なそういう住民の要求について素通りをするようなことはできない。あなたが政策の内容について言うのならば、私は政策のことは知っているんだから、あなたはかってなそういうことを言って、それで何でもできるようなことを言うのは、これは第百五十六条によって包括的、抽象的に委任するということは間違いなんだ。法案自体が間違いなんだ、構想が。  ですから、委員長、そういうことについては私は納得できる答弁を要求いたします。この問題については、こまかに私が指摘をいたしました点をあげて、政府としては将来こう考えるんだ、財政措置については、国民健康保険の問題もある、赤字の問題もある、そういうことを含めて、納得できるようなそういう政府の見解を整備して、沖繩の百万の同胞がわかるよう答弁をしてもらいたい。私は引き延ばしのためにやっているのではない。議論は当然の議論といたしましてやっておるのであります。委員長、いかがですか。
  420. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 大原君に申し上げますが、予定の時間が参りましたので、御質疑の点につきましては、理事会において善処をいたしたいと存じます。
  421. 大原委員(大原亨)

    ○大原委員 委員長の御答弁で納得ができませんが、一応引き下がります。これは美濃君の同じよう答弁の問題もありますから、そういう問題は、調整部長の言うような、ばあっと形式を素通りした議論ではだめなんだ。中身の議論をしなければだめだ。そういう議論をすることが本委員会の任務ですよ。そういう面において、私は、委員長理事会における納得できる取り計らいをされるように要望いたしまして、私の質問は留保いたします。
  422. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 有島重武君。
  423. 有島委員(有島重武)

    ○有島委員 私は、おもに文化と教育の問題について質問さしていただきますが、最初に、人口の見通しについて伺っておきたいわけなんです。  すべての内政の基礎になる人口の問題につきまして、琉球政府で出しました長期経済開発計画、この中には、一九七〇年が九十八万二千人、県外十八万人、十年たつと、一九八〇年には百九万一千人、県外に二十六万人、これが十年後の望ましい県民生活である、こういうことに予測されておるわけであります。     〔床次委員長退席、金丸(信)委員長代理着席〕 この見通しをどのように評価されておるのか。政府としては、過疎化現象をどう見込んで諸施策を講じようとしておられるのか、そういうことをまず最初に伺っておきたいと思います。
  424. 山中国務大臣(山中貞則)

    山中国務大臣 この点は私も先般もお答えいたしたのでありますが、非常に憂慮をいたしております。ことに、昨年の国勢調査が九十四万五千人にとどまったことは、私ども沖繩県側においても、その人口増加がきわめて鈍化していることにやはり驚いたわけでありますが、その鈍化も、出生率の低下とか死亡率の増加ではありませんで、中学校、高校の卒業生を中心にした一番働き盛りの、これからの沖繩県の未来をになっていただかなければならない人たちの流出度がきわめて高くて、しかもここ一両年が急激にふえております。この点は、施政権の壁がなくなって本土の沖繩県になりました場合に、これは加速度的にふえるのではないかという、私としては非常な心配をいたしております。そのためには、今回の法律案のあらゆる面において、あるいはまた、予算、金融等の面において配慮いたしましたことは、沖繩県においてあらゆる客観的にマイナスの情勢が生じても、それを補ってカバーできる雇用需要というものを沖繩に喚起できるように、企業の面なりあるいは地域の資本投下の問題なり等について、全面的に、沖繩を自分たちの島として定着したい、あるいは、流出しておる若い諸君もUターンしてもらうような島にしたいということをいま念願しておるわけでありまして、ただいまの御指摘の点は、琉球政府の見通しのとおりに私たちもしたいと思いまするし、そのためには相当な努力が必要であると考えて、いま心を痛めておるところでございます。
  425. 有島委員(有島重武)

    ○有島委員 総理にいまの問題を伺っておきたいのですけれども、公害のない島である、しかも過疎化現象を起こさないようにする、こうした課題があるわけでございます。こうした中でもって、特に人口の比重が老化しないように、若い人たちが残っていかれるように、そういう手だて、そういった目算がはっきりおありになるかどうか、その点を承っておきたいわけです。
  426. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 ただいま山中君がお答えいたしましたように、どうも最近の人口調査から見ましてたいへん心配な点があると、かように思います。したがいまして、特殊な状況下にある、これはいわば島からできているその沖繩県の将来、これがやはり汚染されないで、しかも人口も過疎現象を起こさないで、豊かな平和な島である、こういうようなことを目標にして私どもは策を積み重ねていかなければならぬ、かように思っておるところでございます。
  427. 有島委員(有島重武)

    ○有島委員 非常に抽象的なお話で、そうしなければならぬと思うということですが、私が伺っているのは、そういった目算がおありになるかどうか。この人口の問題がやはり内政のすべての基本になるわけでありますから、そこがはっきりしていないと、その上に乗っかっているものは全部何か当てにならない、そういうことにもなるわけであります。  それで、いまおっしゃった豊かな平和な、しかもそこが公害のないところ、こうした中において文化と教育の問題、これは非常に大きく位置づけなければならないのじゃないかと私は思うわけでありますが、いまうなずいていらっしゃいますから、そのようにお考えだと私は思いますけれども、それで、教育の問題に入ります前に、過去二十六年間、米軍政下にありまして日本語の教育を続けて、それで日本民族としての誇りを維持、鼓吹して今日の返還の内的要因をつちかってこられたこの沖繩の県民の方々、ことに教育の関係の方々の御苦労をしのんで、その功績をたたえたいと私は思うわけですけれども沖繩の教育委員の方々、また教職員の方々に対しての御所感を一番最初に総理から承っておきたいと思うわけです。
  428. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 私は他の機会にも申し上げたように、教育のあり方、りっぱな日本人を育てあげるという、そういう教育とみずから教職員の方々が取り組まれた、これは私高く評価さるべきだ、かように考えております。これが御承知のようにドルの生活ではあるけれども日本の教科書も使っているし、そういう意味で日本人をりっぱなものをつくる、こういうことでほんとうに力をいたされた、かように思っております。
  429. 有島委員(有島重武)

    ○有島委員 こうしたいままでの御苦労に報いるということが総理の一番の課題であるんじゃないかと思いますが、教育委員会の問題に入ります。  その基礎になる問題として、私は、地方自治の尊重という問題が基本にあると思うのです。現在のわが国は、明治以来生産第一主義で来てしまったということが、大ざっぱに言えると思います。そうした矛盾と行き詰まり現象が、公害となり、物価高となり、都市の過密だ、あるいは農村の過疎である、そうして交通災害、そういった姿をとって国民生活をいま脅かしている。それから、諸外国からは軍事国家への傾斜じゃないかと心配されるようなそうした客観情勢の中にあって、そうして先般来佐藤総理も言われておりますように、ここでもって内外ともに政策転換を迫られているような、そういうような客観情勢の中にあると思います。それで、総理が、沖繩県民の生活程度は内地の水準から五、六年おくれている、そういうように言われまして、本土並みというのが大サービスであるかのように言っておられますが、いままでの質疑を聞いておりまして、特に米軍あるいは米国に対する非常に懇切なる配慮、サービスと対蹠的に、県民に対してはやや実質的な差別待遇があるということが国民の前にたくさん明らかにされてきたのだ、そういうように私はこの委員会を通じて思います。  さらに申し上げたいことは、先ほどもちょっとお話ありましたけれども、本土必ずしも理想ではないわけです。いわんや、制度が本土並みになったからといって、必ずしも生活水準が本土並みになり内容が本土並みになるということにはならないし、あるいはいろいろな水準が数字の上にあらわれます、そうした数量的な画一化が、そのまま沖繩県民の生きがいに通じていくとはこれまた限らないわけであります。  それで、むしろ、私は、ここで文化、教育に関しては、特に本土ではいままでの大きな百年の惰性のゆえに転換し切れなかった福祉充実、また地域尊重、こうした内政課題を本土に優先して沖繩に県民の意をくんで行なう御覚悟がぜひ必要なのじゃないかと思います。重ねて言いますけれども、特に文化と教育に関して沖繩の地域的な、歴史的な個性を十分に生かしていく、それが政策の基本になるのじゃなかろうかと思うわけでありますけれども総理の御見解をここで確認しておきたい。
  430. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 私は、いずれの地域でも、また、いずれの時代でも、教育は最も大切なものだ、その民族そのものをささえる基本的な基盤だ、かように考えますが、そういう意味からも、沖繩におきましても教育は同様のことだ、これが言えると思っております。文化というのがどういうような表現、中身を持っているか、これは別な問題ではございますが、教育についてはただいま申し上げるように思っております。  ことにまた、教職員の方々が、占領下、外国の施政権下におきましても、りっぱな日本人をつくるという、そういう意気込みでほんとうにこの問題と取り組まれて、そうして今日まで子弟の教育に携わってこられた、これを私は高く評価するものでございます。  私は毎年一回は必ず沖繩の豆記者諸君と会談を持つものでございます。いわゆる中学校の生徒、これが豆記者として本土に参りまして、そうしていろいろ私どもと接触する、そうしてその感じを、それぞれの機会に彼らが持っておる感覚をそのまま私受け入れておりますが、最初に会ったときから見ますと、もう六年もたつその以前のときと、最近の豆記者諸君の育ち方、これはよほど違う。ほんとうにいわゆるひがみもなく、すくすくと成長していると、私は教職員の方々にほんとうに心から感謝せざるを得ないのでございます。  先ほど来言われるように、政府はいかにも米軍に対しては考慮しているけれども沖繩同胞のこの苦しみについて、心では同情すると言いながら、何にも払っておらぬのじゃないか、こういうようなおしかりのことばも出ましたけれども、私は、施政権が日本に返ってくるという、これは何よりも一番大きな――ただいまの文化、教育についても本土と一体化するということで、ここに希望が持てる、かように私考えておりまして、これが私の力でできることなら、ぜひとも円滑なる本土への移管、これをしたい、かように実は取り組んでおる次第でございます。もちろん、ただいまの状況のもとにおきましては、米軍の施設がたいへん大きいとか、また、その他の面におきまして沖繩本島における不便もさることですが、先島等においてはなお一そう不便、不都合がある。これらの点をも考えながらあたたかくわれわれが迎えなければ、御苦労に対しても理解の一片を示すというその気持ちすらもないといわれてもしかたがないのじゃないだろうか、かように思いまして、努力しておる最中でございます。
  431. 有島委員(有島重武)

    ○有島委員 いろいろお答えいただいたわけでございますけれども、私が一番聞きたかったことは、福祉の充実、地域の尊重という点において、今後も、これは本土、沖繩を限らず、努力していかなければならない問題であるが、本土必ずしもこれが十分ではない。先ほどのいろいろな質疑を通しても、本土並みをそのまま持っていかれたらかえって迷惑だというような問題がたくさんございます。特に教育の問題、文化の問題ではそうした配慮をしていただきたい。それを御納得いただいたものとして、もう時間がありませんから、先へ参ります。  それでは、教育行政における地域の尊重という問題でございますが、わが党は、今国会に社会党、民社党と共同でもって、地方教育行政法一部改正案を提案いたしまして、教育委員の公選を復活する、こうした立場を明らかにしておるわけでございます。  ここできわめて基本的なことなんですけれども、憲法の第九十二条に「地方公共團體の組織及び運營に關する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」とあるわけでございます。この「地方自治の本旨」これをどのように考えていらっしゃるか。たいへん基本的なことでございますが、承っておきたい。
  432. 山中国務大臣(山中貞則)

    山中国務大臣 「地方自治の本旨」というところしか聞いておりませんから、間違えたらおしかりを受けるかもしれませんが、地方自治は、やはりその地域の自治体の住民の選んだ者によって行なわれる政治というものが守られていくことが、地方自治の本旨だろうと考えます。
  433. 有島委員(有島重武)

    ○有島委員 高辻さんいらっしゃいますか。
  434. 高辻政府委員(高辻正巳)

    ○高辻政府委員 「地方自治の本旨に基いて、」という地方自治の本旨、これは、説明すればいろいろな説明のしかたがあると思いますが、基本は住民自治の理想といえば足りると思っております。
  435. 有島委員(有島重武)

    ○有島委員 住民自治の理想だ、それに沿っていけというお話ですね。総理もうなづいていらっしゃるから、それでいいです。  それでは、わが国の教育行政組織が、戦前は天皇中心の教育勅語の教育であった、また、中央集権、国家統制のそういった教育行政であった、その反省から憲法、また教育基本法に準拠した国民中心の、それから地方分権ということを重んじた、また民主統制の教育行政組織が確立せられた、たてまえとしてはそういうことになっておりますね。ですから、地方分権、それから地域尊重の実をあげることが国の教育行政の根本である、そういうように考えられますけれども、この点お考え、どういうことか、一ぺんたださしていただきたい。
  436. 高見国務大臣(高見三郎)

    ○高見国務大臣 事柄は教育委員会の問題であろうと思いますが、私は沖繩が本土に復帰いたしまして沖繩県になる、この場合に地方教育行政の制度を本土と一体化するということは、何より大切なことじゃないかと思うのであります。と申しますのは、教育行政という、事、教育という国民の基本的な問題が、地域によって行政制度が異なるということは、決して望ましいことではございません。その点から考えますると、この際、いま野党の皆さんが御提案になっております法律案の審議はまだ済んでおりませんので、この際は、私は本土の制度にすることが沖繩復帰の重要な意味である、かように考えておるのであります。
  437. 有島委員(有島重武)

    ○有島委員 私が伺っているのは、そういうことではなしに、地方分権、地域尊重の実をあげることが国の行政の根本姿勢であろうと、そういった基本的なことだけを確認しているわけです。いかがでございますか。
  438. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 教育が、教育行政が中央集権的であってはいかぬ、これは地方分権的な、そうして分権的であるべきだ、こういうことがまず第一の条件だと私ども理解しております。
  439. 有島委員(有島重武)

    ○有島委員 御承認いただけたのかと思いますが、国の行政の一番の基本はそこにあるのだ、その地方分権を助けていく、そこに基本があるのだというふうに受け取ってよろしゅうございますね、いまの。きょうは時間がございませんから、今後いろいろな論議を展開するのに、きょうのそのお答えが非常に大切だと思いますから、確認しておきます。     〔金丸(信)委員長代理退席、床次委員長着席〕  次に、本土における教育委員会の任命制の運営についてなのでございますが、先ほどからの論議で、ここではその論議を省略していきますけれども地方の知事の任命になるのだから、だから自治ではないか、教育委員が任命制だとはいっても、それは地方の知事の任命になるものだから、結局自治の中に入るのではないかというようお答えがあったようでございます。それで、これは確かにそういった論理もあるかもしれませんけれども、それは直接的な自治になるのか、間接的な自治になるのか。教育委員会委員が公選である知事によって任命されるのであるから、したがって、公選――公選とはいわない、これは地方自治の中にあるのだ、これは間接的といえるのではないかと私は思うのです。総理どうお考えになりますか、直接だと思いますか、間接だと思いますか。――総理に伺っているのです。
  440. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 私は、教育と教育行政、これはやはり分けて観念していただきたい。ただいま議論しておられるのは、教育そのものではなくて、教育行政のように思いますが、そのほうでしょうね。――教育行政だとなると、これは中央のわれわれも関心もあるが、地方自治体も関心がある、これは同じように関心があると思います。また教育そのものについても、中央のわれわれも関心があるし、地方自治体も関心がある、そういうものでございます。  そこで、教育のあり方は、これは不偏不党でなければならぬ、また中央集権的な教育では困る、こういうようなことが指摘される、かように思っております。しかし、中央も関心を持っていることだけは忘れないでいてほしいし、また教育行政となれば、これはもう中央を無視して教育行政は成り立たない、かようにお考えいただきたいと思います。
  441. 有島委員(有島重武)

    ○有島委員 たいへんけっこうなお答えをいただいたわけでございますけれども、残念ながら、間接的だと思いますか、直接的だと思いますかと、その点だけが抜けていたわけなんです。いかがでございましょうか。
  442. 高見国務大臣(高見三郎)

    ○高見国務大臣 教育の地方分権という問題は、有島先生御指摘のとおりであります。教育委員会制度というものが、まさに教育の地方分権を意味しておるのであります。そこで今度の任命制というものは、単なる任命制じゃない、昭和三十一年に法律を改正いたしましたときのいきさつから考えましても、いろいろな弊害があるというところで法律改正をいたしたのであります。その反省に立って、直接に県民が選挙をいたしましたところの知事が、直接に県民が選挙いたしました議会の承認を得て任命をするというたてまえになっております。形式から申しますならば、間接だとおっしゃるならば、そのとおりであります。
  443. 有島委員(有島重武)

    ○有島委員 具体的に、地方教育行政の組織及び運営に関する法律、これが強行採決されて、任命制にかわって今日に至っているわけでございますが、これらの是非についていまここでもって論じるわけにいかないけれども一つだけ。  じゃ、いまやっている本土における任命制の教育委員会というものは、いかなる地域住民にせよ、教育の普及または発展に関与することができる、またあるいは意見を具申して、その意思を反映する手段方法が、いま本土において明らかになっておるかどうか、具体的にこれは伺いたいのです。そういった実例があるならば、お示し願いたい。地域の住民が直接に教育にその意思を反映さしていくという手だてがあるかないか、実例をあげていただきたい。
  444. 高見国務大臣(高見三郎)

    ○高見国務大臣 御承知のように、教育委員会という制度がございます。したがって、この制度は知事部局の所管ではない、独立した行政機関であります。その意味から申しますと、教育は、はっきり独立しておるということが申し上げられると思います。
  445. 有島委員(有島重武)

    ○有島委員 私が言ったのは、そういったたてまえにはなっているけれども、実際にはどうなっているかということなんですよ。実際にそれなら伺ってもかまわないけれども、じゃ皆さん方、ここにいらっしゃる方々一人一人、御自分の地域の教育委員の方はどういう方だか御存じないんじゃないかと思うのです。実際にそれじゃ何か言うときにはどうなっているかといいますと、これは選出議員を通じて、そうして政党を通じて間接的にしか意思がいま反映されておりません。そういう実態なんです。そうじゃない実例があったら言ってください、いま実例を言わなかったから。実例はないのですよ。ですから、地域住民が直接に教育行政に意見を反映する手だてはない。したがって、国民が教育のあり方、教育行政に正当に関心を持っていくということがだんだん薄くなっておるわけです。ですから政府のきめた、文部省のきめた基準に合致する、そういった試験のための勉強がまるで教育のように思われて、それで大きな弊害を生んでいるというのが実情じゃないですか。  ここでもう先に参りますけれども、昭和四十五年、総務長官が沖繩訪問の際に、制度のよしあしにかかわらず、沖繩の教育制度はすべて本土並みに切りかえると言ったと伝えられているわけです。それから坂田前文部大臣が、沖繩の教師には政治的運動など問題の多い教師があって、教育の中立維持ということから問題がある、こういうことを言ったと伝えられ、また沖繩の教育委員の公選は日本の土壌になじまない、こういうことが伝えられておりまして、いまなお深く沖繩県民の心に傷を残しているということは、これは総理も御存じだろうと思うわけです。それは、小さな子供たちと会っていらっしゃればそういうことはないかもしれないけれども、非常に大きな傷を残して、いまなおこれは語り草になっているのですよ。この委員会におきましても、高見文部大臣が、同じ制度で同じ教育を受けることが大切だと言われました。それから、沖繩の心は自治を求めるのが沖繩の心なんで、早く本土と同じ自治を与えて、日本人としての共通の利害関係に立つことがいいことだ、そういうようなお考えだったと思うわけです。これは政府の都合さえよければ、内容というものは二の次、三の次だ、行政の手間が省けるのが結局県民にもいいことであろう、これが親切なんだろう、そんなふうに、非常に上のほうで考えていらっしゃる感覚と、それから県民自身からの感じとはまるっきり違うわけなんです。  十一月に出されました琉球政府復帰措置に関する建議書、特に、この教育行政組織について、本土政府においては、その取り扱いについていま一度検討をし直していただきたい、そう懇願してきているわけですね。それは御存じだと思うのです。これを冷然と却下していくのか、あるいはいま一度御検討なされる余地がおありになるかどうか、そのことは総理から承っておきたいのです。いま一度検討なさる余地がおありになるか、それともここでもって冷然と、そういうことはない、かまわぬとおっしゃるか、その辺のことを承っておきたい。
  446. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 私は建議書も見ました。また文部大臣も建議書は見ておると思います。そういう上に立って、やはり本土と一体の教育委員会の制度がよろしい、かような結論をいま出しておるところでございます。でありますから、ただいま御意見は御意見としてお述べになりましたが、政府といたしましてはただいますぐ変える、かようには考えません。その建議書は十分検討した上でございます。御了承願います。
  447. 有島委員(有島重武)

    ○有島委員 そうすると考える余地は全然ない、こういうことでございますか。
  448. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 こういう制度は、全然ない、こういうように申しますと、いかにもたいへん対立的なはっきりしたことになるようですが、私は、ただいまの状態では考える余地はない、かように思っております。
  449. 有島委員(有島重武)

    ○有島委員 あと有形、無形の文化財保護問題一点だけやっておきたいのですが、今後、特にこれは本土より以上な扱いをしなければならないと思いますのは、一つには、国土の緑化、都市公園、街路樹の手当て、それから有形、無形の文化財に関する各省庁の調整連携ということが大切だと思うのです。この点について、これはもう本土並みであってはいけないので、むしろ優先的に集中的に、将来の日本のひな形をつくっていくような気持ちで、それでもう国庫からの支出を、そんなに大きい金ではありませんから、せめて政治のあたたかい血をここには通わせていただきたい。  特に緑につきましては、現地の古老に聞いてみますと、首里や那覇のあたりというのは、かつてうっそうたる緑の都市であったということですね。いま非常に索漠たるコンクリートと鉄とペンキみたいなそういうような町を、南国の緑したたる町並みにしなければならない。先ほど山中先生から、学校の緑地の話があったようでございますけれども、私は、むしろ荒廃された国土にこの緑化を集中的にやらなければいけないのだ、もう時間がないから聞けませんけれども、実はたいした計画がない。計画以外にこういったことはしなければならぬ問題だと思います。  それから、文化財の中でもって有形の文化財、これは申すまでもなく大切でございますけれども、特に言語だとか風俗だとか作法、それから芸能、歌だとか踊りであるとか、こういった無形の文化事象というのは、これは非常にあと回しにされる傾向がございます。ところがこれが沖繩と本土、あるいは日本と中国、日本と東南アジア、そういうものを歴史的につなぐ非常に貴重な資料なわけです。これがいま急速に滅びつつあります。本土の各地方なんかは、もうテレビの普及によってどんどん自分たちのいいものを放棄してしまって、中央のまねをしていく、そういったことがございます。それで、沖繩の重要性、それから非常にこわれやすいものである、これは早く手を打たなければならないわけです。これについて、もう時間がなくなってしまったから論議できませんけれども、これは十分手を打っているなんということを言われるかもしれないけれども、去年文部省のほうでもって無形文化財の調査のために九つの学会の総合調査をいたしました。ところが、このために払ったお金は幾らだと思いますか。八百万円です。それでけっこう一生懸命やっているのですけれども、まだまだ島が多うございまして、十分なことは何もできません。ところが、ことしの予算を見るとどうか。これが無形文化財の調査として百万ですよ。それから、無形文化財の保護に必要なのは七百万円ついておりますけれども、これは無形文化財といっても踊りか何かを保護するというほうについておりまして、調査して記録して、資料をつくっていくという方向は何もないわけです。こんなことでは、日本の文化の将来に対して非常に憂うべきことであると思いますので、これは一つの提案でございますが、十分このことをお考えいただいて、これは何年計画なんというものではなしに、早いうちに手を打たなければどうにもならない問題ですから、どうかこのことだけは手を打っていただきたい。緑化の問題と無形文化の問題ですね。これはお願いします。
  450. 山中国務大臣(山中貞則)

    山中国務大臣 緑化については、私も戦禍に荒れた沖繩県の国土の緑化ということは何より大事でありますので、沖繩において復帰記念の植樹祭を国家の手で行ない、そしてそれを機会に、琉球政府、そして復帰後の沖繩県、市町村ともに国土緑化の一大前進を開始する機会にしたいと考えておるわけであります。  さらに琉球に伝わりました古い文化というようなものをどのように無形文化財も含めて残していくかという問題は、私も就任当初から、あれだけの長い歴史と伝統を持つものを埋もれさせちゃならないと考えまして、先ほど言われました古典舞踊も、あれは組踊りの保存をするためにカラーで撮影してとっておくための予算でございます。また、琉球王城の正殿の復元をするために、歓会門から復元に着手するために、あるいは円覚寺その他の各種のそういう文化財等について、すみやかに現在の状態を復元をしていこうということで、努力をいたしております。また、沖繩の首里にあります博物館が非常にスペースが狭いということでもございますので、二階の展示場を増設をいたして、そこに貴重なものを展示できるように、そういう心の問題等についても十分に配慮をしていかなければ、物だけのものではだめであるということは私も全く同感でございます。
  451. 有島委員(有島重武)

    ○有島委員 総理、いまの山中さんのお答えをお聞きになったと思うのですが、ざっとこのくらいずれているわけです。私が申しましたのは、有形無形の文化財保存は大切だ、それをやってくださっているのはわかっておる。だけれども、いますぐやらなければ滅びてしまう、そういうものがあるんだ、それは文化財というようなりっぱなものにはなっていないで、話しことば、歌、それから作法、そういうものはいまそのまま文化とはいわれなくても、それをフィルムにしておくなりテープにしておくなり、そういったような資料として収集しておかないとあとで取り返しのつかないことになる、その面が抜けておりますので、その点をぜひともしっかりやっていただきたい、そう申し上げたわけなんです。よろしゅうございますね。
  452. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来述べられたことは私も同感でございます。これは大事にしなければならない。政府が十分やっている、かようには私いま申すことはできません。いま山中総務長官からもお話しをいたしましたように、琉球政府でもいろいろの企画を持っておる、中央政府もこれに対して適切なる援助の方策をとっておる、こういうことでございます。いまおっしゃった事柄、これは一々ごもっともでございまして、私も同感の意を表する次第でございます。
  453. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 阿部未喜男君。
  454. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 私は、逓信行政を中心にする具体的な二、三の問題について質問をさしてもらいたいと思います。  まず、総理にお伺いをしたいのでございますけれども、今日までの国会の議論の経過を顧みますと、政府沖繩復帰に伴う行政の姿勢としては、本土並みということを原則にしながらも、なお沖繩の置かれておる今日的な事情、沖繩の今日までの歴史的な経過、そういうものを勘案をして、特別措置法を設けて、たとえばこの沖繩における公用地等暫定使用に関する法律案であるとか、ボイス・オブ・アメリカの中継局の継続使用であるとか、あるいは外国企業の取り扱いに関する愛知書簡、こういう措置を例外的なものとしてとろうとなさっておるよう理解をいたします。ところで、これとはまるで逆に、現在沖繩で行なわれておる制度の中で、沖繩県民がそのまま現行の制度が続けていかれることを期待をし、しかもそれが今日の本土の法律に抵触をしないものがあるとするならば、当然総理としては、そういう措置について県民の要望をおいれになっていただけるものと理解をいたしますが、他意はございませんので、総理の気持ちを率直にお聞かせ願いたいと思います。
  455. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 ただいまあげられたのは、祖国復帰をするその際にあまり喜ばれないことばかりでございます。これらの点については、私どもしばしばここで一挙にそれらを、基地にいたしましても整理することはできないその他の事情のあること、これをひとつ十分理解してほしい、かように申しております。しかし、他の面でただいま御指摘になりましたように、いいところのもの、たとえば私生活上の税制その他の面で、沖繩の方方があまり急激に変更してはお困りだろう、こういうようなものは、いましばらくその状態を続ける、こういうような配慮はいたしたつもりでございます。その配慮がまだ不十分だとおっしゃるものがあれば、それは考慮してしかるべきだ、かように私は思っております。
  456. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 特に去る十一月十七日、これはちょうど協定の委員会で強行採決の行なわれた日でございますけれども、くしくもこの日に琉球政府の屋良主席が上京されて、県民の声を集めた建議書なるものをお持ちになって、翌十八日には総理にもお目にかかって、るる県民の気持ちを伝え、建議書を提出されたように承っております。したがって、その建議書の中で、先ほど私が申し上げましたように、特に本土の法令に触れなくて、しかも県民が期待をしておる施策については、総理として可能な限り実施をしていただける、そう理解をしてよろしゅうございましょうか。
  457. 山中国務大臣(山中貞則)

    山中国務大臣 これは、協定の問題あるいはまた軍用地等の公用地の問題、そして国内法の各種法案の問題、いろいろ分かれておりますので、意見の違うものもありますし、また私の所管いたしますもの等については、建議書の結果の文章はともかくとして、作成するまでの段階には、おおむね意見の一致を見たものであるというふうに考えておる次第でございます。
  458. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 私、冒頭お断わりしましたように、逓信行政に関する具体的な問題でございますので、郵政大臣にお伺いいたしますが、先ほど御質問申し上げました屋良主席の建議書は、大臣もごらんになったでしょうか。
  459. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 私に関するところは拝見いたしました。
  460. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 それでは郵政大臣は、この大臣の所管される事項についての屋良主席の建議について、どのようにお取り計らいになるお考えでございましょうか。
  461. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 できることもあればできないこともあるようでございまして、いろいろございます。
  462. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 大臣、そう大きい項目はないのですよ。大臣がごらんになったならば忘れない程度の短い項目で、六つですね。一つは公衆電気通信法に関する特例。二つ目は電波法に関する特例。三つ目が極東放送。四つ目が公共放送に関する特例。五つ目が未実施郵政事業に関する特例。最後の六つ目が特定郵便局に関する特例。しかもその建議の内容はきわめて明瞭なものでございます。したがって、それらについて各項どのようにお考えか、お伺いしているのです。
  463. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 この項目について一々お答えするのでございますか。――VOAによるその周辺地域のテレビ、ラジオ等の受信妨害等について、これはVOA当局に、そういう妨害については支障のないように運行してもらいたいということを要求するつもりでございます。  VOAの周波数使用が電波割り当て計画に与える障害、これも先ほどのことと関連いたしております。  各種公社等及び各種共済組合等の職員の身分の承継について、これは御期待に沿えるかと思っております。  第百三十条、公衆電気通信法に関する特例、これは沖繩は本土と比較いたしますと、電話の加入状況等についてはだいぶ格差があるようでございますから、電電公社等におきまして五カ年計画を継続いたしまして、なるべくすみやかに加入電話の普及をはかりましたり、あるいは公衆電話を拡充いたしましたり、また全国の即時通話網になるべく早く編入したりするようなことをいたさなくてはならないと思っております。  電波法に関する特例でございますが、これはVOAのことでございまして、これは協定に定めたとおりの方法しか考えられないわけでございます。  次の第百三十二条の極東放送でございますが、これも既定の方針で進まざるを得ないわけでございます。  公共放送に関する特例でございますが、難視聴の解消、その他放送サービスの向上、これは御承知のように、ただいま公共放送は沖繩におきましてはカラーテレビしか放送いたしておりませんけれども、これはさらにカラーテレビの二放送をふやすことにいたしておるのでありまして、このことについては、佐藤総理が特に沖繩にはカラーテレビを放送のできるような措置を急げということで、ただいま御承知のようにマイクロウエーブの開設を急いでおるわけでございまして、来年の返還の時期、それからちょっとおくれるかもしれませんけれども、そのころまでにはカラーテレビの放送が一波だけはできることになるかと期待いたしております。さらに中波の放送、またFMの放送、こういうようなことを拡大することにいたしておるわけでございます。  それから未実施郵政事業に関する特例、これはたとえば速達郵便の創設でありますとかいうようなことにつきましては、急いでやりまして、日本の本土並みの郵便制度になるべくすみやかに持ってまいりたいと思っております。  最後が特定郵便局に関する特例でございますが、これは現在のままにしてくれという御要望のようでございますけれども、これにつきましては、諸制度が復帰とともに本土並みにするという方針でございますので、この問題についてはその方向で検討を進めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  464. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 各項について、私は非常にいまの大臣の答弁では納得ができないのでございますけれども、時間の関係もありますから、きょうできなかった問題は次の逓信委員会ででもまた質問をさしてもらいますが、いま最後の特定郵便局の問題ですけれども、いまの大臣の答弁は本土並みにしたいのだ、こういうふうに理解していいわけですか。
  465. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 そういう方向で検討いたしたいと思っております。
  466. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 屋良主席のほうからの建議書では、この特定局というふうなものは持ち込んでもらいたくないというのが建議の内容になっておるようでございます。ところで、沖繩にそういう特定郵便局というふうなものをつくらなければならない理由、それから郵政省設置法上、特定郵便局なるものは一体どこにどういう形で法定されておるのか、お伺いしたいのです。
  467. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 沖繩におきましては、御承知のように終戦までは特定郵便局が存在いたしたのでありまして、アメリカに施政権が移った後に模様が変わっておりますわけでございますけれども、私は、特定局制度は本土におきましてその長所を発揮いたしておると思うのでございまして、こういうようないい制度は沖繩にも拡充してまいりたい、つまり特定局制度を沖繩におきましても復活したい、そういう方向で検討を進めてまいりたいと思っております。
  468. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 いま大臣は特定局制度ということばを使われましたが、私が質問したのは、郵政省設置法の中にそういう特定郵便局などというものがあるのかないのか、それをお伺いしておるのです。
  469. 森田政府委員(森田行正)

    ○森田政府委員 お答えいたします。設置法上特定郵便局の根拠はございません。
  470. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 ただいまお聞きのように、この特定郵便局というのは、これは単なる公達で、郵便局の呼び名、いわゆる呼称にかかわるものでございます。その内容は、特定郵便局長を長にするところの局が特定郵便局だというだけであって、分掌する業務の内容にも全然普通の郵便局と変わりがないわけでございます。したがって、沖繩の県民の皆さんが、そういう特定郵便局などというものをわざわざ持ち込まずに、現行の制度のほうがいいんだから、しかも先ほど大臣から御答弁のありましたように、戦前沖繩にこの制度はあったんです。だから両方とも経験をした上に立って、なおかつ沖繩の県民の皆さんは、こういう特定郵便局というものはないほうがいいという建議であるわけでございますから、したがって、特に特定郵便局をつくらなければならない理由が見当たらない限り、県民の要望をいれていただく、これが私は本旨でなければならぬと思うのですが、総理いかがお考えでしょうか。
  471. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 特定郵便局につきましては、ただいま阿部先生御指摘のように、公達によってそういう制度が本土に現存いたしておりますことは御承知のとおりでございまして、この制度のよしあしということについて、先年来いろいろ論議が続けられましたけれども、そのために相当多数の委員にお願いいたしまして、特定局制度の功過と申しますか、その長所短所について御検討願って、特定局制度は存置すべきものである、こういう長所、美点を持った制度というものはあくまでも存続さすべきものであるというようなことの結論が出まして、その後、特定局制度の整備あるいは拡充ということについては、私ども努力をいたしておりますことは御承知のとおりでございます。  私、特定局長制度の長所をば二、三あげてみますと、御承知のように、特定局制度というのは、部内、部外を通じまして、人材を広く局長の地位に採用することができる、それは自由任用制の形でございますが、そういうような長所を持っております。そして、各地域地域におきまして、人望の高い者がそういうような自由任用ということによって採用されておるのでありまして、そういうような地域とのつながりを強く持った人望の者が、人材が、局長の地位にすわっておるということによりまして、地域とのつながりが強く、事業の運営上非常に大きな寄与をいたしております。ことに、貯金や保険の奨励については多大な効果をあげておりますわけでございまして、これは阿部先生御承知のとおりでございます。また、経営につきましてもきわめて合理的に、また経済的に、共同服務というようなことによって非常な長所を発揮いたしておりますわけでございまして、さらに局長の定年というようなことにつきましても、定年じゃございませんが、老齢退職というようなことにつきましても、一般の普通局長は五十八歳、特定局長は六十八歳ということによって、従業員の優遇をいたしておりますわけでございます。さらにまた、局舎の敷地また局舎の提供も特定局長にはお願いすることができるというような長所をたくさん持っておりますことは、御承知のとおりでありまして、こういうような長所を持っております特定郵便局制度でございまして、どういうわけでこれをやめなくちゃならないか、どういうわけでこれを沖繩に適用しちゃならないかということについては、私は理解に苦しむのでございまして、むしろ本土並みにこういうようないい制度はふえん、拡充していくべきものだと私は確信をいたしております。
  472. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 大臣、これから新しくつくるのならば、いまの大臣のお答えも一応理解ができます。しかし、すでに沖繩には百数局にのぼる郵便局があって、特定郵便局長を長としない局長がおるわけです。現存しておるわけです。しかも、私が冒頭申し上げましたように、沖繩の今日までの経過的な歴史があり、今日の情勢があるように、本土における特定局制度というものはそれなりの歴史の上に成り立っておるのです。たとえば、いま大臣がおっしゃったように、自由任用制の問題とか、局舎提供の義務の問題とか、あるいは特定局長の定年制の問題とか、そういう郵政事業がまだ初期においてやむを得ざる措置としてとってきたものが残されており、いま直ちに廃止することは困難であり、またしたがって、郵政審議会はこの運用には妙味があるのだ、こういう答申を出しました。それは私も承知をしております。しかし、まず、いま沖繩にある百幾つかの郵便局で、一体どこに特定局長を自由任用するのですか。これは全部いまおる職員でまかなわなきゃならぬでしょう。大臣は、まず第一に自由任用制があるとおっしゃいましたけれども、いまそれぞれの局には全部局長がおいでになるのです。これをやめさして特定局長を自由任用するというなら、たいへんな問題ですよ、この点はどういうお考えですか。
  473. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 特定局制度を沖繩に持っていくかどうかという問題と、現在の局長の任用をどうするかとの問題は全く別の問題でございまして、私どもの考えは、ただいま百二ばかり沖繩には郵便局がございますが、そのうちの数局は非常に大きな局でございますから、これは普通局の形態をとらしたいと思っておりますし、他の小規模の局は、大体漸次特定局に持ってまいりたいと思っておりますが、現在の局長におられます方はよほどの適格者でない限りは成績はよくわかっておりますわけでございますから、適格者でないという方はそのまま特定局長にすわっていただきたい、こういうように考えておりますわけでございます。
  474. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 いまの、大臣は言い間違ったのだと思いますが、適格者についてはほとんどそのまま局長にする、よほどの不適格者についてはやめてもらうかもわからない、こういう趣旨だろうと思うのですけれども、いずれにしましても、百二ある郵便局に現に、すでに局長がおいでになるとすれば、大臣がおっしゃった自由任用制で妙味があるのだという点については、議論にならない。まずこの問題は消えます。  二点目に、局舎提供という義務を負わしておるというお話がございましたが、現にいま沖繩の郵便局では、局舎を提供してもらわなければ郵政事業の運営ができないところはない。全部局舎の確保は、借り上げもあるけれども、でき上がっておると思うのですが、これはどうですか。
  475. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 私は局舎とか敷地の提供もお願いすることができるとさっき申したのでございまして、沖繩の実情はそうでないこともよく知っております。  そこで、現在の局長をとりあえず特定局長になっていただきますけれども、漸次そういう人が更迭するというような場合は、本来の特定局制度の純粋のものができてくるというようなことになろうかと思っておりますわけでございます。
  476. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 もう一つお伺いしますが、最後に、大臣はこの定年が長いのは非常にいいことだというお話がございましたが、特定郵便局長というのは、これは規定ではないが、現行六十八歳までおおむね局長をつとむることに相なっております。政府の方針は、六十八くらいまで公務員としてつとむることが最も望ましいとお考えになっておるのか、これをはっきりさしてください。
  477. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 定年制の問題になりますと、いろいろな議論が出ております。幾らがいいのか、それはずいぶん最近は変わってまいっておりますから、いままでの定年制のあの年齢でいつまでも固定しておくことは私は無理じゃないだろうか、かように考えております。  ただ申し上げておきますが、幾らがいいということは私はまだ申しませんから。
  478. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 定年の延長は望ましいというのが総理のお気持ちのようですし、郵政大臣のお話によると、六十八歳までつとめられるのだから、これは非常にいい制度だというふうにお話しのようですから、そうしますと、この機会に単に特定局長に限らず、総理も望ましいと言われ、大臣も望ましいと考えておられるのならば、政府のほうで、特に郵政職員については六十八までみんなつとめさせる、これが望ましいという結論をまず聞かせてください。
  479. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 総理も年齢を何歳にするかということは問題だ、しかしこういうことについては、いろいろな意見もあるけれども、まあなるべく長いほうがよかろうという程度のことをおっしゃったのでございまして、私も、普通局長は五十八歳でおやめになりますけれども、特定局長は六十八歳まで働きができまして、部内者の優遇という点から申しますれば、そちらのほうが得をしておる、優遇の道が開かれておるというように申しただけでございます。
  480. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 きわめて、大臣、根拠が薄いようですが、したがって、大臣があげてこられた本土にある特定局長を長とする郵便局というのを、沖繩に置かなければならぬという根拠はきわめて私はもう薄弱なものだと思います。しかも先ほど申し上げましたとおり、業務上、それでは呼び名を特定郵便局長としなければ仕事のできない業務がありますか、ありませんか、それを聞かしてください。業務上支障があるかどうか。
  481. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 私は特定局という局の呼称、名前を呼んでそれがいいとか悪いとか、そういうことは考えておりませんけれども、そういう制度がございますから、その制度は、私は非常に長所を持っておるものだ、名前のいかんにかかわらず長所を持っておるのだということで沖繩のほうに拡充してまいりたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  482. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 先ほども申し上げましたが、大臣、誤解をしないで、制度はないのです。郵政省設置法上にもそういう制度はないのです。単に呼び名として特定郵便局なる呼び名があるだけなんです。したがって、業務の内容についてもこれは分掌規程のところまでいかないと出てこないものでございまして、業務の分掌上もこれは変わらないのです。たとえば特定局の中でも集配事務を取り扱う局もあれば、扱わない局もあるのですから、この呼称によって業務の内容が変わるものではないと私は理解しておるのですが、呼称によって業務の内容が変わるか変わらないか、そこをはっきりしてください。
  483. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 呼称によって業務の内容が変わると思っておりませんけれども、ただ特定局におきましては、共通服務というような面がかなりございまして、こういう点では経済的に運行ができている、こういうふうに私は考えております。
  484. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 共通服務というのは特定局じゃないとできぬものでございますが、普通局では共通服務してはいけませんか、大臣。
  485. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 小規模な局でございますから、その可能性は普通局よりも多いと思っております。
  486. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 それでは普通局にもあり、特定局にも共通服務があるのならば、何も特定局という呼び名をせぬでも共通服務ができるわけですから、そのことが特定局と呼ばにゃならぬ何の理由にもならぬじゃありませんか。どこに理由があるのですか、それは一体。
  487. 森田政府委員(森田行正)

    ○森田政府委員 お答えいたします。  特定局という名称がなければ仕事ができないということはございません。  ただし、大臣が御説明申し上げましたように、特定局制度の利点、これは地縁性に基づくとか、いろいろ御説明があったとおりでございますが、こういう非常に本土においてはりっぱな制度であり、かつ沖繩ように島嶼の多い、また非常に交通不便な地理的環境にあるところでは、特定局制度を採用して施行したほうがいいであろうと私どもは思っております。
  488. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 官房長、あなたは制度と言いますがね、さっきからぼくは聞いておるのですが、郵政省の設置法のどこにそういう制度があるのか聞かしてください。あなたが制度とおっしゃるなら、私は疑問があるのです。
  489. 森田政府委員(森田行正)

    ○森田政府委員 いわゆる法律上、特定局制度というものはございませんが、特定局のいろいろな点を、われわれが内部のあれとして特定局制度と呼称しているわけでございます。
  490. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 あなた方がどう呼称するかはかってですが、公達の上では、これは単に郵便局の呼び名として呼ぶだけであって、制度でも何でもないし、業務の内容もそれによって変わるものではない。これは明らかでしょう。いま大臣よくわからなかったですが、官房長、呼び名によって業務の内容が変わるものか変わらぬものか。間違いなく変わらないでしょう。どうですか。
  491. 森田政府委員(森田行正)

    ○森田政府委員 呼び名によって変わるものではございません。
  492. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 それでは、先ほどから大臣のあげてこられましたこの特定局の局長の自由任用制の問題とか、あるいは定年制の問題とか、局舎、敷地の提供の義務等については、少なくとも現在沖繩では、それをしなければ業務が運行できないような状態ではない。この点は間違いありませんか。
  493. 森田政府委員(森田行正)

    ○森田政府委員 復帰の暁には、特定局の現在の利点を活用したほうが郵政事業発展のためにいいと思っております。
  494. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 そこでもう一ぺん繰り返しになりますが、本土の特定郵便局制度という、あなたが言うところの制度というものは、こういう呼称を設けてやっておるということは、それは本土の置かれてきた今日までの歴史的な経過、本土の郵政事業の財政的な面、そういうものを含めてやむを得ず認めておる。沖繩ではすでにやっておった経験があるのですね。ずっとやっておった経験があるが、終戦後、いわゆるアメリカの占領下においては、これはなくなってきたわけです。そしてその二つを沖繩県民が比較をしてみて、しかもないほうがいいのだ、こう言っておるのです。しかも、それが何ら本土の法律に抵触する部分はないし、特定郵便局と呼ばなければならぬ理由は何もないわけです。呼んでもよければ呼ばなくてもいいのです、これは。そうでしょう。特定郵便局長さえ置かなければ呼ばぬでいいわけですから。そうすれば、これだけ沖繩県民の要望のあるものを、法的にも何ら抵触しないものを、業務の運行にも支障のないものを、なぜそんなに固執して、置くんだ、置くんだとおっしゃるのですか。私はあなた方が固執される理由がわからないのです。もっと具体的に私を納得せしめるように、沖繩に特定局長を長とする郵便局を置かなければならない理由をはっきり教えてください。
  495. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 名称だけであって、内容は何も違わないじゃないかというようなことでございますれば、日本の本土に普通局の制度があり、特定局の制度がありましても、何も先生方は差を感じないということでございますね。私どもはそう思っていないのでありまして、特定局は特定局制度の長所があり美点があり、普通局と違うところを持っているんだということでございますから、沖繩におきましてもそういう制度をふえんしてまいりたい、こういうように考えておるのであります。ただ、人の問題ということになりますと、現在の局長にすわっていただくということになろうかと思いますが、日本におきまして特定局制度と普通局制度の区別がありますように、漸次沖繩もそういうような状態にいたしたい、こういうように考えておりますわけでございます。
  496. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 私は何べんも繰り返して言いますが、そういう制度は本土にはないのですよ、大臣。そういう制度はないものを、たまたま公達でもってこういう呼び名をしますということをつくって、従来温存されてきた制度を、そこで本土では残したのです。これは歴史的な経過ですから、そのことを私はいま責めようというのではないのです。だから、本土にこういう経過でもってこれが残っているのはわかっているけれども、それをもう一ぺん沖繩に持っていかなければならないという理由はないではありませんか、こう言っておるのです。
  497. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 阿部先生は、本土におきましても普通局と特定局制度の区別はないというようにおっしゃっておりますけれども、私どもは区別があると思っております。それで、特定局は特定局といたしましての長所、美点を持っておりますので、それを沖繩までふえんしてまいりたい。そこは見解の相違でございまして、私は区別がある、こういうように考えております。
  498. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 見解の相違と言われれば、私も黙って引き下がりません。見解の相違であるならば、郵政省の設置法の法律のどこに特定局という制度があるか、明確にしてください。
  499. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 それはさっき申しましたように、公達によってそういう呼称をとっておりますわけでございまして、そういう名称のもとに、特定局が置かれておりますわけでございます。
  500. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 だから、公達によってそういう呼称をするということにはなっておるけれども、特定局という制度は法的に何もないでしょうと私は言っておるのです。ありますか、ありませんか。
  501. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 それは、先刻申しましたように、局長の任命から違っておりますわけでございまして、特定局長は自由任命、自由採用ということになっておりますわけでございます。一定の試験を通らなければ採用しないというような条件はないのでありまして、自由任用という、これが一番大きな普通局長との違いでございます。
  502. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 どうも大臣と議論をしておると焦点がぼけてしまうのですが、それでは、大臣のいまのお話によりますと、特定郵便局長というのはどんなのでもなれるということですか。試験も何もせぬでかってになれるということになるのですか。そういうものじゃないでしょう。
  503. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 これも常識でお考えになればわかりますように、局長任命については、一定の基準というものが必要であります。選考の基準というものが必要でございます。ただ、部内にどれだけの経験がなければ局長になれないとか、上級職の試験を通らなければ局長になれないとかいうような条件はございません。
  504. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 それは局長――大臣……(発言する者あり)まあ大体局長ぐらいな答弁ですよ、それは。大臣、私はその本土における自由任用制がいいか悪いかについては、きょう議論する気持ちはないのです。これは別の場で議論します。いま本土にある特定局長の自由任用制がいいか悪いかは、別の場で議論をしますけれども、現行沖繩にはそれがないのです。現行沖繩にはそういう制度がなくても、ここ二十六年間これで運営をしてきて支障がなかったのです。支障があるのならば、大臣おっしゃるように、そういう呼び名の局をつくるのもいいかもわかりません。しかし、二十六年間の経験の上に立って、沖繩の郵政事業に支障がなかったものを、しかも沖繩の県民がそういうものは持ってこぬでくれと言っておるものを、あなたがいいからといったって、向こうは経験の上に立って悪いと言っておる。それをなぜそんなに強引に、持っていく、持っていくとおっしゃるのか、その思想が私はわからないのです。
  505. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 先生は沖繩においては、また本土でも同様でございますけれども、特定局と普通局の区別はないじゃないかというようにお考えになれば、お考えになってもけっこうなんでありまして、私は、沖繩におきましては、現在の局長をなるべくそのままにすわっていただきたい。しかし私どもの考えは、特定局制度の前提としてそういうことを考えておりますわけでございまして、それについても区別はないじゃないかというように先生がお考えであれば、それでもけっこうでございます。私は区別はあると思っております。
  506. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 大臣、そんな失礼な話はありませんよ。大臣は私の先輩ですから、私はずいぶん遠慮してものを言っておるつもりですけれども、大臣、そんな失礼な話はありません。ここは立法府ですよ。法の解釈を明らかにしなければならぬですよ。私はあると思うが、あなたはないと思う、それはかってだというような理屈がありますか。それはありませんよ大臣、何ぼ何でも。いまの問題はもう一ぺん訂正してください。そういうことを言うたら、ぼくは質問をやめますよ。
  507. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 失礼なことがございましたらばつつしんで取り消しますけれども、阿部先生が特定局と普通局の区別はないじゃないかというふうにおっしゃるから、私どもは区別があると思っております、あなたは区別がないとお考えであれば、私はそれでもけっこうだと申し上げただけでございます。私どもはあると思っておりますから……。
  508. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 大臣、私が言っておるのは、一つは、いま法律の上ではそういう制度はないではないかということを明らかにしたわけです。法律の上ではないでしょう。少なくとも郵政省設置法の上でそういうものはないのです。しかし、呼称としてそういうものがある。これも事実です。そして、そういう呼称によって呼ばれる特定郵便局長を長とするところの分掌事項はあります。あるいは任命の項についても、大臣のおっしゃるような内容があります。それはあることを私は認めますよ。しかし、それは法的に制度としてあるものではなくて、そういうものがあったものをこの呼称によって認めてきておるのが実態ではないか、こういうわけですよ。  ところで、この議論はまた別の場でやりますけれども、かりに本土にそういうものが現実にあるとしても、それが本土の今日までの郵政事業の経過の中で残っておるものであり、二つのことを経験をした沖繩の県民がないほうがいいと頼んでおるものを、法にも抵触せぬものをなぜ無理をして沖繩に持っていかなければならないか、それでは沖繩の県民の意思を踏みにじることになるじゃないか、だから初めからそのことを他意はない、こういう問題で申し上げているのです。総理、どうですか、私の申し上げていることが、総理も郵政大臣をなさっている経験があるはずですから、これを沖繩にことさらに持っていかなければならぬという理由は私はどこにもないと思うのです。将来ですよ、将来もし必要が起こったときにはこれはいつでもできることなんです。さしむきいま間に合うているものを、来ぬでくれと言っているものを持っていって押しつけぬでいいじゃないですか。総理、どうお考えですか。
  509. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 どうも現状で郵便局はもう事足りている、こういうことが一つの前提になっているが、必ずしもそうでもないかもわからない。そこらは十分調べてみないと、あの広い沖繩ですから、本島だけではございませんし、そういう点を十分調べて、そうしてまたいまあるものにつきましてもその交代の時期が来ているものもあるかもわからないし、またそういうものを一体どういうようにすればいいか、こういうような議論もあるだろう、かように私は思いますので、ただいまあなたと私のほうの大臣とでやりとりしているのを聞いていると、どうもそこらにも食い違いがあるのだろう、かようにも思います。いまのものをやめて新しいものをそこへつくろう、こういう場合には、いまのような特定局もこれはけっこうだと思いますけれども、私はもうそんなことは必要ないんだ、いまの状態で事足りるのだ、こういうことを言われておるようでもありますし、またもう少し足らない、いまあるのでももうすでに局長の交代の時期に来ているものもある、また適当でない場所もあるだろう、こういうようなところから、いまのようなそういうときに動かす場合には特定局の制度でやりたい、こういうこともあるだろうと思うのです。問題はその現状の把握の認識のしかた、そこで問題が分かれているんじゃないだろうか、かように思っております。
  510. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 これは総理、郵政事業の組織のようにきわめて膨大な局を置くのならば、こういう方法でやらなければやれないということもあるかもわかりません。しかし、いまから沖繩に郵便局を置くにしましても、私はその数はもう知れておるだろうと思いますし、善悪は別にして、先般簡易郵便局制度なるものもできました。これでもう間に合うところも相当あるだろうと思います。そうすると、ことさらにこの制度をいま持っていかなければ沖繩の郵政事業が回らない、そういう事情ではないようでございますから、そこで総理にお願いしたいのは、もっと議論をしたいのですがあとの問題がありますので、この問題についてはもう少し部内で検討していただいて、そしてもしどうしても沖繩に特定局制度を持っていかなければぐあいが悪いというような問題が起きたときには、またひとつ国会でなり相談をしていただく、そういう方針でさしむき対処してもらいたいと思います。
  511. 佐藤内閣総理大臣(佐藤榮作)

    佐藤内閣総理大臣 廣瀬郵政大臣も、もちろんそうかたくなに問題を解決しようと言っているわけじゃないと思いますので、先ほど来卓をたたいてまでやっておりますが、私は、こういう問題は地域住民の皆さんのお役に立つという、そういうサービス機関ですから、そこらは十分考えてそしてお役に立つようにしたい、かように思っております。
  512. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 総理の決断を聞きまして、たいへんありがたく思っております。期待をしております。  それでは次に入りたいと思いますけれども、極東放送の問題につきましては、すでにもうこの委員会でも相当議論をされておりますので、ただ私自身が納得のできない一、二の点について質問をさしてもらいたいと思いますが、愛知書簡をすなおに解釈をいたしますと、一つは、極東放送に対して復帰後五年間英語の放送を認める、これが一つだと思います。それからもう一つは、財団法人極東放送なるものをつくってここに新たに免許を与える、これが一つと、この二つが私は愛知書簡の内容だと思いますが、そう理解をして間違いございませんか。これは外務大臣でしょうね。
  513. 福田国務大臣(福田赳夫)

    ○福田国務大臣 愛知書簡は、これは沖繩復帰によりまして米系の企業が急にこれが廃止になる、これじゃ困る、そういうのでそれに対する経過措置を設けた、こういうものであります。
  514. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 さすがに外務大臣は幅が広いのです。私はその愛知書簡全体についてではなくて、愛知書簡の中の一番最後の項の放送事業に関するところをやっております。冒頭申し上げましたが、私は逓信行政について質問をしておりますので、したがって、この放送事業に関する愛知書簡の内容は、いま私が申し上げました二点であるかどうかということをお伺いしておるのです。
  515. 福田国務大臣(福田赳夫)

    ○福田国務大臣 その二点でございます。
  516. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 そうしますと、外務大臣がこの書簡によって極東放送に対して、まず英語の放送のほうでございますけれども、これは極東放送そのものに復帰後五年間継続して放送することを認むる、こうなりますと電波法の五条にこれは違反するような気がするのですが、いかがでございましょうか。
  517. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 おっしゃられたとおりでございます。外国の法人でございますから日本の国内では放送ができないというのが一応のたてまえでございます。でございますから、今度特例法をつくりまして特に認めるということにいたしたわけでございます。
  518. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 もう一つ外務大臣にお伺いしますが、もしこれがこのままいきますと、私は民法の三十六条にも影響が出てくるように思いますが、これはいかがですか。高辻長官、だれでもいいです。
  519. 福田国務大臣(福田赳夫)

    ○福田国務大臣 私は民法のことまでは承知しませんでしたので……。
  520. 角田政府委員(角田礼次郎)

    ○角田政府委員 お答えいたします。  民法三十六条でございますが、私法上の行為については、外国法人は国なり国の行政区画及び商事会社を除くほかわが法律上認められない、こういうことでございますから、別に極東放送自体の電波法との関係にからまる問題としては関係のない問題だと思います。
  521. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 これは商事――非商事でございますか、極東放送は商事でございますか。商事でなければひっかかるはずですよ。
  522. 角田政府委員(角田礼次郎)

    ○角田政府委員 ただいま申し上げましたとおり、この民法の規定は私法上の行為についてでございます。極東放送は御指摘のように商事会社じゃございません。
  523. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 時間が少なくなったから、その問題は、民法上の問題はまた別の場で論議しますけれども、そこでお伺いしたいのですが、総理、本来この法律の改正というものは、これは国会でやる性質のものだと私は思います。したがって、この極東放送の問題につきまして、これがもし事の善悪は別にして協定事項、協約事項として協約を結んだから、その批准をせよというのは手続として私は了解ができます。しかし、一国の大臣が単なる法的な効力のない書簡によって、法律を改正することを前提に、外国と約束するということは越権行為じゃないでしょうか。国会無視だと思いますが、どうお考えになりますか。
  524. 福田国務大臣(福田赳夫)

    ○福田国務大臣 これは、もとより国内法でそういう立法ができるということを前提としての手紙であります。
  525. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 立法ができるということを行政府がかってに考えて、こういう立法をするからこういう約束を先にするということができるならば、これは国会無視も私ははなはだしいと思うのです。だから手続としては協定で結んだ、これなら私はまあ手続としては了解ができます。しかし、行政府の一代議員が法律の改正を前提に、外国と約束することができるならば何でもできることになりますが、これはどうお考えですか。
  526. 福田国務大臣(福田赳夫)

    ○福田国務大臣 これは何でも手紙でできるということじゃございません。これは法律上の権利義務を規定しているものじゃないのです。ただ政治的にそういう立法ができるということを期待をしておる、そういう前提の手紙であります。
  527. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 外務大臣、期待をしているとあなたはおっしゃいますけれども、愛知書簡はこれは期待じゃなくて、こうしますという約束をしているのです。したがって、もし法律の改正ができないときには、アメリカにうそを言ったことになります。特に放送事業の第二項のほうをごらんになるとはっきりしますが、これは認めるということになっているのです。認めるということは約束をしたことになるのですよ。いま外務大臣もおっしゃるように、国内法の改正をしなければ実行できない約束を、国内法の改正をすることを前提にして行政府がやっておるということは、立法府に対する越権行為じゃありませんか、どうお考えですか。
  528. 福田国務大臣(福田赳夫)

    ○福田国務大臣 この書簡にも書いてありますとおり、「日本政府がこの問題を同情的に取り扱うことを希望して次の方針を決定したことを通報いたします。」方針であります。
  529. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 どうも外務大臣は人をだますようなことを言いますがね。その方針の内容は認めるということなんでしょう。認めないのですか。たとえばもしものことがあって、これが認められない、法律ができなかったときには、この約束は守られない、そういうことになるわけですか。
  530. 福田国務大臣(福田赳夫)

    ○福田国務大臣 そういうことになりますが、その際には、われわれは非常に大きな政治的な責任を感じます。
  531. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 もう一ぺん繰り返しますけれども、行政府が立法府の内容に立ち入って、法律の改正を前提とするようなことを外国に対して約束をするその行為が正しい、越権行為ではないとお考えかどうか、もう一ぺんはっきり答えてください。
  532. 福田国務大臣(福田赳夫)

    ○福田国務大臣 どこまでも、これはこの手紙によって両国間に権利義務の関係を設定したものじゃないので、わが国がこういう方針であるということを通告してある、それにとどまるわけであります。
  533. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 私は、その外務大臣の答弁では納得ができません。少なくとも一つの国が他の国を相手にして、こういうふうにしましょうという約束をして、そして国会で責められたからといって、それは単なる約束で、できぬときはしかたがないんだ、そういう国際間の約束というものが簡単で、愛知書簡というものがそういう権威のないものである、そう考えていいのですか。
  534. 福田国務大臣(福田赳夫)

    ○福田国務大臣 権威はあるのです。つまり、そういう方針をきめたということを通告してあります以上は、その手紙どおりにいかなかったならば、われわれとしては重大な政治的責任を感ずる、こういうことであります。法律上の責任を感ずるわけじゃございません。
  535. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 阿部君に申し上げますが、時間が参りました。
  536. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 時間なんか来ませんよ。私、三十二分から始めているのですから、まだもうちょっとやらせてもらわなければ困ります。  それではもう少しお伺いしますが、外務大臣、あなたはアメリカに対しては政治的な責任を感ずるとおっしゃっていますが、私が申し上げておる立法府に対しては責任は感じないのですか。
  537. 福田国務大臣(福田赳夫)

    ○福田国務大臣 立法府がこの書簡に沿って立法措置を講じてくれることを切に期待を申し上げます。
  538. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 結局、これは私は外務大臣の話だけでは納得できませんけれども、しかし、もう一つ聞きたいことがありますから、これもまた逓信委員会で後日あらためてお伺いいたしますが、同じくこの書簡のもう一つの柱でありますところの財団法人極東放送なるものをつくって、これに免許を与える、これも外務大臣のことばをかりれば、できぬときばしかたがないんだ、こういうことになるかもわかりませんが、こういうふうになっておるようですが、間違いございませんか。
  539. 福田国務大臣(福田赳夫)

    ○福田国務大臣 そのとおりになっております。
  540. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 さて、外務大臣のお答えように、愛知書簡によれば免許を与える、こういうふうになっておりますが、郵政省のほうの御答弁を見ますと、免許を与えるとなっていないのです。国内法の規定に従って、他に競願が出た場合には審査をして、どっちをやるかはそのとききめるとなっている。愛知外務大臣はあなた方に免許しますといっておるが、郵政省のほうの答弁は、廣瀬大臣の答弁ですよ、これははっきり、ほかからもそういう競願が出たときには、突き合わせてみて、そのいいほうをとらなければならないという国内法の趣旨をはっきりおっしゃっておる。そうすると、これは明らかに外務省と郵政省の見解は違うのですが、どうでしょうか。
  541. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 外務省と郵政省は見解を異にいたしておりません。財団法人極東放送の日本語の放送につきましては、御承知のように、ただいま琉球政府に申請が出ておりますようでございまして、これが本土復帰までに許可なり免許が出ますと、そのまま日本に引き継ぐということになりますわけでございますけれども、それができませんときは、日本政府が引き継ぎまして、その申請に対して審査をするということになりますわけでございます。その際は、その書簡に書いてありますように、財団法人極東放送の日本語の放送につきましては、日本の国内の法令に従って許可するということになっておりますわけでございます。したがって、財団法人極東放送の日本におきまして放送を始めるということにつきましては、まず財団法人につきましては許可を与え、そして放送につきましては免許を与えなくちゃならぬことになりますわけでございます。その免許につきましては、電波法の基準に従って免許をするということを申し上げたわけでございまして、もちろん、それについては愛知書簡の趣旨というものは尊重いたしまして、免許するということになりますわけでございます。
  542. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 だいぶん話が違うようですけれども、かりに大臣のおっしゃるように配慮するとすれば、これはやはり予断をもって免許をするということになりますが、そういう国内法の運用がございますか。あらかじめ十分配慮をしながら、愛知さんがそう言ったからこれを配慮するということが法律上可能でありましょうか、どうですか。
  543. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 前回もそういうような趣旨で御答弁をいたしたつもりでございますけれども、その免許を審査いたします場合に、その申請が公益に反するとか、あるいは電波法令に照らして不適格であるというようなことになりますれば、免許ができないわけでございまして、その免許ができないということになりますれば、国内において放送するということはできないわけでございますから、そういうような、まず免許の審査については国内法に照らしてやる、つまり電波法に照らしてやるというわけでございます。
  544. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 これで終わりますが、これは非常におかしいんです。大臣、それは詭弁だと私は思うんですよ。大臣のおっしゃるように、もしかりにそれでは財団法人極東放送からいま免許の申請が出て、琉球政府なりあるいは日本政府が許可をすると仮定いたしましょう。その場合に、片方においては財団法人でない、いまある極東放送に日本語については一年間、英語については五年間を認めるのです。そうすると、一つは財団法人極東放送が免許をもらって放送をし、片方特別措置法百三十二条によって、いまある極東放送も日本語の放送が向こう一年間できることになるんですよ。そんな、沖繩に二つもの放送局を認めるというような考えがおありかどうか、そこをはっきりなさってください。
  545. 廣瀬国務大臣(廣瀬正雄)

    ○廣瀬国務大臣 財団法人の極東放送が免許されますれば、アメリカの法人であります極東放送会社の日本語の放送というものは、自然消滅するということになるかと思っております。
  546. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 法的にはそういう理屈にならないでしょう。いま琉球政府がかりに財団法人極東放送に免許を与えた。一方、この法律が通れば、特別措置法の百三十二条では、現行の極東放送に向こう一年間は日本語の放送を認むる。これは解釈のしかたによっては、極東放送と財団法人極東放送と二つが一年間は並存することになるんですよ。そういうばかなことがあるわけはないですよ。だから、先ほどおっしゃっておるのは詭弁だと私は言うのです。
  547. 藤木政府委員(藤木栄)

    ○藤木政府委員 お答え申し上げます。  先ほど郵政大臣からも御答弁申し上げましたように、復帰前に財団法人極東放送が沖繩政府において免許になれば、それはこの措置法によりまして、復帰後には自動的に日本国の放送局になるというわけでございます。したがいまして、この百三十二条の規定は必要じゃないということになるわけでございます。
  548. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 時間がありませんから非常に残念ですけれども、電監局長の解釈もちょっとおかしいんですよ。財団法人極東放送なるものに免許が与えられ、いまある極東放送に対しても向こう一年間日本語の放送を認むる、法解釈はこうなるはずですよ。この点をもっと勉強しておいてください。この次の逓信委員会なりで議論をします。(「本委員会でやれ」と呼ぶ者あり)わかる、ちょっとそれならいまのをもう一ぺん答弁してください。いまの私の解釈がなぜ違うのか、どこに極東放送が財団法人極東放送になるのかどうかですね。その根拠はないはずですよ。
  549. 藤木政府委員(藤木栄)

    ○藤木政府委員 お答え申し上げます。  私ども、免許方針といたしましてそういうことをしないということでございまして、私も先ほどちょっとことばが足りなかったわけでございますが、法律的にはそういうことも可能かと思いますけれども、私どもの免許方針としてはそういうことをやらない、そういうふうに考えておるわけでございます。
  550. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 不規則ですけれども、与党の理事さんも、この問題、結論出しておいたほうがいいんじゃないかというふうなお話もありますから、もうちょっといまの問題だけやらせてもらいますが、電監局長、あなたがさっき、大臣もおっしゃったが、場合によっては財団法人極東放送は琉球政府によって免許されることもあり得るのですよ。その場合、それは、当然復帰後は日本政府の郵政大臣の免許したものとみなされてこれができるわけですね。これは財団法人極東放送です。  一方、特別措置法百三十二条によりますと、今度はいまある、財団法人ではないいまある極東放送も、向こう一年間に限ってはこれは日本語の放送ができると、こうこの法律はなるわけですよ。そうすると、これは二つの放送局が向こう一年間はできる可能性ができてくるのですよ。どうですかこれは。
  551. 角田政府委員(角田礼次郎)

    ○角田政府委員 法律問題に関連しておりますので私からお答えいたしますが、まず、現在琉球政府に対して、琉球民法に基づきまして財団法人の申請が出ている、それは同時に、琉球の電波法に基づく無線局の免許の申請も出ているわけでございます。これがかりに復帰前に法人の許可がおり、無線局の免許の申請がおりたといたしまして、これは日本法人ではございませんけれども、いわゆる琉球の法人としてそういう無線局が認められるわけで、アメリカ法人ではないわけでございます。琉球の目から見てもいわゆる琉球法人でありまして、アメリカ法人でなくなるわけでございます。これが復帰の日までまいりますと、これは特別措置法の別の規定がございますが、四十八条という規定がございまして、この琉球法人はわが民法に基づく財団法人になるわけでございます。そして同時に、その無線局の免許は、これは特別措置法の五十三条だったと思いますが、それに基づく政令によりまして、わが電波法に基づく無線局の免許とみなされる、こういうことになるわけでございます。それはいま申し上げたとおりに、日本法人として切りかわるわけでございます。そうなりますと、百三十二条の二項をよく読んでいただくとわかるのでございますが、これは、米国法人が復帰の日に日本語放送をやっている場合には一年間暫定措置を認める、こういうことでございますから、いまのように、復帰の日に日本法人に切りかわって日本語放送をやるということを認められれば、百三十二条の二項の規定の適用はないわけでございます。これを先ほど電波監理局長は空文になるというふうに申し上げたわけであります。  それから、もう一つの場合がございます。ただいま琉球政府に出されております法人の許可の申請なりあるいは無線局の免許の申請というものが、復帰までにおりなかったという場合がございます。こうなりますと、現在はアメリカ法人でございます。復帰になりますと、何にも措置をいたしませんと、そのまま電波法の規定の適用があるわけでございます。そうしますと、アメリカ法人である極東放送の日本語部門というのは、少なくとも電波法に違反する状態になりまして、無線局の運用ができなくなるわけであります。そこで、おそらくそういう場合には、復帰後あらためてわが民法に基づきまして財団法人の許可の申請が郵政省へ出てくるだろうと思います。それから、同時に電波法に基づきまして無線局の免許の申請が出てくると思います。これは民法なり電波法でございますから、全然特例措置がないわけでございます。先ほど競願の処理の問題にからみましていろいろ御議論がございますように、法律的には特別措置、何にもございません。したがって、その場合のことはこの特別措置法には何にも書いてございません。これは電波法がまるまる適用になる。ところが復帰の日以後は、いま申し上げたように、いろいろ申請があって、それを審査しますまでには相当の期間が要る、技術的に当然考えられるわけであります。そうしますと、かりに復帰が四月一日だといたしますと、四月から当分の間は極東放送としては電波を出せないわけです、放送ができないという状態になるわけであります。そこでそのつなぎの措置としまして、かりに琉球政府の免許がおりなかった場合、そうして日本政府になってからその免許がおりるまでの間のつなぎの措置として百三十二条の二項がある。これはアメリカ法人のまま残っておるわけでありますから、まさに百三十二条の二項の問題で、ほったらかしておけばできない。ほったらかすというのは語弊がありますが、何の措置もしなければできなくなるのをできるようにした、こういう意味でございます。
  552. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 よくわかるんです。だから私は言いたい。私もそのよう理解しておるんです。したがって、いま琉球政府が事前に免許した場合と申し上げましたが、しかし、かりに琉球政府が免許しなくとも、復帰日本政府が財団法人極東放送に免許をした場合でも、理屈の上ではこの法律が通っておれば、アメリカ法人であるこの極東放送が、少なくとも向こう一年間はやはり日本語の放送ができる権利ができるわけです。片方では愛知外務大臣の書簡によって、今度は財団法人極東放送がまた日本語の放送ができるという理屈になるんですよ。だから私が言うのは、あらかじめ愛知書簡をぴしゃっとここに持ってきてやらせるために、あなた方はこういう法措置を講じてあるのではないか。言うならば、すでに愛知外務大臣がこの書簡を発したときに、明らかに国内法を変更するという趣旨のもとに、あなた方はこれを考えておられたじゃないか。それを先ほど大臣が、いや、審査をやってみてぐあいが悪ければ片方やるかもわからぬ、免許しないかもわからぬ、そういうでたらめを言うと、この法の趣旨は全然うそになってきます。この法の趣旨は、明らかに愛知書簡に基づいて、日本の電波法を改正するということを原則にして考えられておるんでしょうがと、それを詭弁を弄して言いのがれをするからおかしなことになってくるんじゃありませんか、こう言っておるんですが、どうですか。はっきりしたらどうですか。
  553. 福田国務大臣(福田赳夫)

    ○福田国務大臣 特別法の改正は、愛知書簡を実現するために考慮している、こういうふうに思います。この愛知書簡を出すにあたりましては、これは外務省それから郵政省、緊密なる相談をいたしまして発出しておる次第でございます。
  554. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 だいぶ時間になりましたので……。
  555. 阿部(未)委員(阿部未喜男)

    ○阿部(未)委員 実は、私は最後にそれを聞きたかったのですけれども、どうも私の見る限りでは、その辺で外務省と郵政省が緊急な連絡がなかった。なかったからこういう違う解釈が出てき、違う法律ような食い違いが出てきた。もう少し政府が提案をする以上は、十分外務省にしても書簡を出す以上は郵政省と打ち合わして、少なくも解釈が食い違わないように、競願があれば審査しますなんというばかなことを言わないように、これはこうする以外に方法がないんですとはっきりみんなの了解を求め、納得を求むるような提案をすべきである。私はそこに政府部内の意思の不統一があったように思えてならないんです。この法案について決して賛成できませんけれども、大体政府のお考えはわかりましたので、質問をこれで終わります。(拍手)
  556. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 これにて本連合審査会は終了いたしました。  次回は、明十一日午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後九時三十八分散会