○福田国務大臣 私からお答えを申し上げます。
この印パ問題につきましては、私
ども政府として非常に憂慮をいたしております。そこで、この印パ戦争の現況をまず申し上げたいのでございますが、昨年の十二月にパキスタンにおきます総選挙がありました。その総選挙を
契機といたしまして、パキスタン内部に混乱が生じてきておるのであります。だんだんとそれが高じてまいりまして、三月の時点になる。そうすると、なかなかこれは容易ならざる事態だ、こういうふうに判断されたわけでありますが、やがて雨季になりまして、十月まで戦争の状態というものが鎮静化してきておる。ところが、十一月二十一日、雨季明けになりますと、東パキスタンの印パ国境におきまして武力衝突が起こるという事態があり、その成り行きを憂慮しておりましたが、去る十二月三日に至りまして、これが西パキスタンにも影響を及ぼしてきておるのであります。
東パキスタンの戦況は、これはこまかい地図でおわかりにならぬかもしれませんが、南部のパキスタンの軍事
基地ジェソール地区というのと、それから北部のパキスタンの軍事
基地ラングプールというところを
中心にいたしましての武力の紛争が起こっておる。それが西パキスタンにも波及して、今度はカラチ軍港の砲撃というような事態まで
発展しておるわけであります。
そういう事態に対しましてわが国はどういう措置をとっておるか。まず第一に、居留民の保護の問題であります。この居留民の保護につきましては、三月の中旬にダッカにおります居留民の引き揚げを指導いたしまして、大かた引き揚げをいたしたわけであります。
日本航空の協力を得たということを、この際御報告申し上げます。それからさらに戦争が激化するに伴いまして、逐次、在留居住民団に対しましては、情報の提供並びに適切な措置をとることを要請してまいりました。それからさらに今月に入ってからの西パキスタンにおける戦闘の波及、これに対しましては、全面的にこれらの邦人に対しまして、インド駐在あるいはパキスタン駐在の大使館を
中心として適切な措置をとっておる。そして最後の手段といたしましては、飛行機の手配、それから万一飛行機が使えない場合の食糧だとか、医薬品だとか、そういうようなことの手配、これに万遺漏なきを期しておる、こういうふうな状態でございます。
そこで第三には、わが国のこの問題に対する処理方針でございますが、これは紛争が激化しようという三月ごろから、わが国はこの難民の救済、つまり東パキスタンからインドに流入いたしました一千万といわれる難民、これに対しまして、累次にわたって救済接助の措置を講じております。同時に、基本方針といたしまして、この印パ戦争の発生に至らないように両国が自制をするようにという要請を、
総理大臣から累次にわたって両国の首脳に対して発出をいたしておるのであります。
そこで、この紛争を回避するにはどういうふうにするか。
総理大臣から直接両国の首脳に呼びかける、これはもとより大事なことでございますが、同時にこの問題は非常に多角的な利害
関係を含んだ問題でありますので、それで、これは
国連においてこの問題に介入するほかはあるまい、こういうふうに
考えまして、
国連がこの問題に取り組む以前から、わが
日本は、先頭に立ちまして安全保障
理事会、個別的にではありまするけれ
ども、この安全保障
理事会の会合の発動ということを要請してまいりましたが、私
どもの要請、これも相当影響力はあったと思います。
その要請のもとにというところまでは申し上げかねますけれ
ども、とにかく安保
理事会が開催されるということになりまして、去る十二月の四日に安保
理事会開会、その席で、わが国は、
アメリカやイギリスやイタリア、ベルギーなどと協議をいたしまして、正式の安保理開催要求をいたしたわけであります。この安保理開催の正式九カ国要求を受けまして、安保理が同日開催されました。
その同日開催の安保理におきまして、まず
アメリカが即時停戦、それから両軍の撤退、また
国連によるオブザーバーの派遣という決議案を出した。ところが、これはソビエトロシアのビート発動によりまして否決に相なっております。その他もろもろの決議案が出ましたが、収拾のための有効なる決議ができません。
そこで一たん休憩になりましたが、五日の午後六時に再びこの
会議が開催になりまして、ソビエト提案、これはどちらかというとインド寄りになる提案でありますが、これが否決に相なりました。それからわが国と八カ国が提案いたしました即時撤兵、停戦の決議案これはソビエトのビートによって否決になっております。また中国案は、どちらかというとパキスタン寄りの態度、姿勢になっておりまするが、これもまだ結論に至らず投票延期、こういう事態になっておるわけであります。
そういうふうに、わが国が直接
総理大臣から両国の首脳に対して折衝を行なう、同時に
国連におきまして、わが国も先頭に立ってこの平和的処理を提唱しておる。基本の方針とするところは、両国の首脳が良識をもって戦闘という事態を避けられたいということが
一つ。
それからもう
一つは、この戦争の背景にあるものは何だというと、これはいろいろこんがらがった政治
関係があります。多角的な大国間の利害
関係が伴っておりまするけれ
ども、もう
一つの理由は、これは難民の問題なんです。一千万といわれる難民の処理、これが解決されないと戦争の根源というものは除かれない。この問題に、力ある国々は思いをいたすべきである。そこで、わが国は、力あるそれらの国々に対しまして、何とかして難民の問題の解決をしようじゃないか、そして力ある国は応分の協力をしようじゃないか、そういう呼びかけをいたしております。今後ともそういう方針をもってこの問題には対処していきたい、かように
考えております。