運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1971-12-13 第67回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十二月十三日(月曜日)     午前十時九分開議  出席委員    委員長 床次 徳二君    理事 金丸  信君 理事 國場 幸昌君    理事 二階堂 進君 理事 湊  徹郎君    理事 毛利 松平君 理事 久保 三郎君    理事 細谷 治嘉君 理事 中川 嘉美君    理事 門司  亮君       天野 光晴君    池田 清志君       石井  一君    宇田 國榮君       小渕 恵三君    大石 八治君       大野  明君    大村 襄治君       加藤 陽三君    木野 晴夫君       佐藤 文生君    佐藤 守良君       正示啓次郎君    關谷 勝利君       田中伊三次君    田中 龍夫君       谷垣 專一君    谷川 和穗君       西銘 順治君    藤波 孝生君      三ツ林弥太郎君    箕輪  登君       武藤 嘉文君    森  喜朗君       山下 徳夫君    豊永  光君       井上 普方君    石川 次夫君       川俣健二郎君    木島喜兵衞君       武部  文君    中谷 鉄也君       楢崎弥之助君    西宮  弘君       堀  昌雄君    松浦 利尚君       美濃 政市君    安井 吉典君       山口 鶴男君    横路 孝弘君       伊藤惣助丸君    桑名 義治君       斎藤  実君    二見 伸明君       正木 良明君    小平  忠君       田畑 金光君    東中 光雄君       米原  昶君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 前尾繁三郎君         外 務 大 臣 福田 赳夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 高見 三郎君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         通商産業大臣  田中 角榮君         運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君         郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君         労 働 大 臣 原 健三郎君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣         (北海道開発庁         長官)     渡海元三郎君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)竹下  登君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         農林大臣臨時代         理       山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      中村 寅太君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 江崎 真澄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      木内 四郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大石 武一君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第二         部長      林  信一君         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務総局         管理局長    茨木  広君         総理府総務副長         官       砂田 重民君         防衛政務次官  野呂 恭一君         防衛庁参事官  高瀬 忠雄君         防衛庁参事官  鶴崎  敏君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁装備局長 黒部  穰君         防衛施設庁長官 島田  豊君         防衛施設庁総務         部調停官    銅崎 富司君         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         経済企画庁総合         計画局長    矢野 智雄君         沖繩北方対策         庁長官     岡部 秀一君         沖繩北方対策         庁総務部長   岡田 純夫君         沖繩北方対策         庁調整部長   田辺 博通君         法務省民事局長 川島 一郎君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省条約局長 井川 克一君         大蔵大臣官房審         議官      前田多良夫君         大蔵省理財局次         長       小幡 琢也君         通商産業省重工         業局長     矢島 嗣郎君         通商産業省公益         事業局長    三宅 幸夫君         建設省計画局長 高橋 弘篤君  委員外出席者         沖繩及び北方問         題に関する特別         委員会調査室長 綿貫 敏行君 委員の異動 十二月十三日  辞任         補欠選任   關谷 勝利君     西銘 順治君   川俣健二郎君     楢崎弥之助君   木島喜兵衞君     横路 孝弘君   正木 良明君     伊藤惣助丸君 同日  辞任         補欠選任   楢崎弥之助君     安井 吉典君   横路 孝弘君     中谷 鉄也君 同日  辞任         補欠選任   中谷 鉄也君     松浦 利尚君   安井 吉典君     西宮  弘君 同日  辞任         補欠選任   松浦 利尚君     堀  昌雄君 同日  辞任         補欠選任   西銘 順治君     關谷 勝利君   西宮  弘君     川俣健二郎君   堀  昌雄君     木島喜兵衞君     ————————————— 本日の会議に付した案件  沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案(内  閣提出第一号)  沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律  案(内閣提出第二号)  沖繩振興開発特別措置法案内閣提出第三号)  沖繩における公用地等暫定使用に関する法律  案(内閣提出第六号)  国家公務員法第十三条第五項および地方自治法  第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院の  地方事務所設置に関し承認を求めるの件(内  閣提出承認第一号)  沖繩平和開発基本法案細谷治嘉君外十六名提  出、衆法第一号)  沖繩における雇用促進に関する特別措置法案  (川俣健二郎君外十六名提出衆法第三号)      ————◇—————
  2. 床次徳二

    床次委員長 これより会議を開きます。  内閣提出にかかる沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律案沖繩振興開発特別措置法案沖繩における公用地等暫定使用に関する法律案国家公務員法第十三条第五項および地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院地方事務所設置に関し承認を求めるの件、細谷治嘉君外十六名提出にかかる沖繩平和開発基本法案、及び川俣健二郎君外十六名提出にかかる沖繩における雇用促進に関する特別措置法案、以上の各法案一括議題といたします。  この際、補足質疑の申し出があります。順次これを許します。横路孝弘君。
  3. 横路孝弘

    横路委員 七日の日の連合審査で、四条三項の復元補償、対米請求権の問題について、支払いとして予定されている金額が、三億二千万ドルの対米支払いの中に入っている重大な疑いがあるという問題提起をしたわけでありますが、その点につきまして文書による回答が参っておりますので、その点を中心にして二、三質問を続けていきたいと思います。  七日の日にも指摘をしたことですけれども、今度の対米交渉の中でアメリカ側基本的姿勢というのは、これは議会に対する説明も含めて、返還について一銭も金銭支払いはしないんだという強い姿勢があったわけであります。これについて対米請求権のいろいろな項目、十項目あるといわれていますが、いろいろ詰めていく中で、この間も外務省から御答弁があったように、この復元補償についてだけ、いわば穴ができる、何とかしたいというのが日本側態度である。しかし、なかなかアメリカ側もその点については譲らなくて、一時外務省の中でも、肩がわり論ですね、国内的な立法措置日本政府が肩がわりして支払おうじゃないかというのもやむを得ないというところまでこの交渉の中で追い詰められた。ただ、外務省の中で、特にこれは条約局長中心になって、ここは穴ができるから、やはり何とか埋めなければならぬということで、この四条三項というものができてきただろう。したがって、この四条三項というのは、条文を見ても、非常に奇妙な、「自発的支払を行なう。」という表現になっているわけであります。  そこで、初めに外務省のほうにお尋ねしたいのは、この交渉過程の中で、四条三項の復元補償について、こちらのほうから、大体めどとしてアメリカ側が支払うべき金額の詰めというのをやっているはずであります。これは琉球政府のほうからもいろいろな要求外務省のほうに来ているわけでありますから、したがって、その対米交渉四条三項が入ってくる際に日本側アメリカ側提示をした金額、大体このぐらいになるじゃないかというような金額というのは、どういうような数字根拠にして、もとにして交渉を行なったのか、その辺のところを明らかにしていただきたい。
  4. 福田赳夫

    福田国務大臣 協定四条三項につきましては、横路さんから御指摘がありましたので、横路さんの疑いを持たれる点につきまして詳細に私も事務当局に聞いてみました。しかし、その過程で三億一千六百万ドルというものが出て、そして四百万ドルが上乗せをされたんだというような形跡は全然ないのです。私もいまだかつて聞いたこともない、そういう数字でありますが、四百三十万ドルという、そういう数字琉球政府のほうから出てきたと、こういう事実はあります。おそらくそういう事実があることはアメリカ側にも伝わっておるんじゃないか、そんな感じがいたしますが、詳細は、その衝に当たりました政府委員のほうからお答え申し上げます。
  5. 井川克一

    井川政府委員 数字でございますが、琉球政府から愛知外務大臣に対する要請書(四十五年十月十二日)に、大体約四百三十万ドルという数字が出ております。それから、ことしになりまして、ことしの十月一日現在の数字では、これはお手元にもう差し上げてありますけれども請求金額といたしまして大体一千万ドルという数字が出ております。ただ、この中には布令二十号に基づくものも入っておりまして、その中の具体的にいわゆる講和前のものが幾らであるという詳細は、琉球政府のほうから中を分けては出てきておりません。
  6. 横路孝弘

    横路委員 そういうことじゃなくて、アメリカとの交渉の中で、いまお話があったように、昨年の十月十二日の愛知外務大臣に対する琉政要請書ですね、それによると四百三十万ドル、本年の十月一日現在法務局の調べでは大体一千万ドル。まあ地主連合会そのほかではまだまだこれは多額金額になっているわけですね。したがって、アメリカとの交渉の中では日本側はどういう数字アメリカ側に出しているんですか。これは額が幾らになるか全然わからぬで、ともかく自発的に払うんだということじゃないわけですね。一応めどというのはあったはずであります。その際のこちら側の交渉としては幾らアメリカ側提示をしているのかということなんです。
  7. 井川克一

    井川政府委員 お話でございますが、この復元補償は、その他布令二十号に基づくものも、あるいはその他外賠法に基づくものもすべてそうでございますが、あるいは内地における損害賠償どもそうでございまするけれども請求額がありまして、それによりまして一々査定して支払うことになっておるわけでございます。ことに復元補償の場合には、御存じのとおりに、建物なら建物を置いていくというふうな場合が多いということを聞いております。したがって、額が幾らになるか、その最後の支払い幾らになるかというふうなことは、私どもはわかるはずがないわけでございます。しかし、そのときに琉政から出ている数字約四百三十万ドルというものは、その交渉時点において出ているということはアメリカに申しましたけれども、それは結局支払額幾らになるかということは、これは、四条三項の規定に従いまして、前の布令六十号と同じようにやると、こういうことでございますので、それは幾らになるか、私どもはわかりません。
  8. 横路孝弘

    横路委員 それは支払い額幾らになるかわからぬにしても、この布令六十号で支払った金額と均衡を失しないように払うということで、しかも請求そのものというのも出ているわけですから、大体どのくらいになるかというのは、これは当然アメリカ側としたって、支払うめどというものがあるわけですから、交渉の中で出ているわけでしょう。
  9. 井川克一

    井川政府委員 その数字は出ておりません。つまり、琉球政府から四百三十万ドルという数字はわれわれのところに知らされている。琉球政府の話では、大体これは講和復元補償がそのうちで相当大きいのではないかということがいわれておりましたけれども先ほども申し上げました現在約一千万ドルの中にも、布令二十号に基づくものも入っているわけでございます。その分別が琉球政府ではわからないと、こういうことになっておるわけでございます。したがいまして、四百三十万ドルの中の分もわからないわけでございます。ただ、そういう数字が出ているということは申しております。しかし、それは結局査定に基づきまして向こうが支払うと、こういうことになるわけでございます。
  10. 横路孝弘

    横路委員 そうすると、可能性の問題としてお伺いしておきたいわけですが、これはアメリカ側として、一千万ドルであろうと、二千万ドルになるかもしれない、こういうことですね。そういう可能性はあるというわけですね。
  11. 井川克一

    井川政府委員 現在の知識でございますると、現在の知識では、全部を入れて約一千万ドルだ、その中に布令二十号の分も含んでいるということでございます。したがいまして、常識的にいいますならば、それを全額認めても、一千万ドル・マイナス・布令二十号ということになるわけでございます。ただ、これからまだ開放される土地があるわけでございます。そういうことは私どもには全くわからない。これはわからないのが当然だと思います。
  12. 横路孝弘

    横路委員 現地の要望なり要求というのもあるわけです。したがって確認をしておきたいのは、そういう手続を踏んだ上で、これは査定するのはアメリカ政府がやるのでしょうけれども、いずれにしても、可能性としては、一千万ドルというような金額が支払われる可能性もあるわけですね。
  13. 井川克一

    井川政府委員 それは、先ほども申し上げましたとおり、これから復帰までに開放される土地もあるわけでございます。したがいまして、われわれといたしましては、それは復元補償分を十分、何と申しますか、多額にということばがいいかどうかはわかりませんけれどもアメリカが払ってくれるということが一番けっこうなことだ、こう思っているわけでございます。
  14. 横路孝弘

    横路委員 したがって可能性もある、こういうように理解してよろしいですね。
  15. 井川克一

    井川政府委員 先ほど来申し上げていることで御理解いただけると思うのでございますけれども、その可能性というお話でございますが、結局、そういうことを言っていいかどうかわかりませんけれども請求額がきわめて堅実なものであるかどうかというふうな——これは堅実に相違ないと私どもは思っておりますけれども、そういうふうな、すべて、請求というときと支払いというときとは多少でも、あるいは大きくか存じませんけれども、そこに差が出てくるわけでございますから、その点を私がその可能性がある、ないということを申し上げるということは、これは私にとってちょっと不可能なことだと思いますけれども、御理解願いたいと思います。
  16. 横路孝弘

    横路委員 つまり、私が言っているのは、この間四百万ドルという話をしたわけであります。そういうことはないということですから、つまり、どこどこでもって、日米間の間でもって、この四条三項については金額はここまでに押えるという話はないというわけでしょう、皆さん方は。したがって、私はお伺いをしているのは、それをこえる可能性もあるわけですね。それはもちろん最終的に支払うのはアメリカ政府ですから、査定をした結果幾らになるかということは、それはわからぬわけですよ。わからぬけれども、ともかくそういう根拠のあるものであれば、幾らでもその数字というのは支払われる可能性というのはあるのだ。あと交渉でしょうけれども、あるいは査定の問題でしょうけれども、そういう可能性があって、つまり、私がお伺いしているのは、幾らというような約束というのは、この間、ないということをおっしゃったから、いまの点を確認を求めているわけなんです。
  17. 井川克一

    井川政府委員 ただいま横路先生がおっしゃったとおり、結果はやはり査定によってきまるということでございます。そのときに請求額支払い額の間に差があるだろうということは、これは世の中の常識だと思います。したがいまして、それが幾らになるかということは、先生もお認めくださいましたように、われわれにはわからない。しかし、それが公正なものである、四条三項に従って公正に支払われるということをわれわれは期待しておりますし、向こうは、それが条約に書いてあること、条約上の義務でございますから、十分にそれによって支払わなければならない、こういうことになるわけでございます。
  18. 横路孝弘

    横路委員 その点について、日米間に上限幾らというようなめどというか、取りきめはないというわけでしょう。その点を明確にしてください。
  19. 井川克一

    井川政府委員 それはもちろんございません。
  20. 横路孝弘

    横路委員 そこで自発的支払いなんですけれども手続はどういう手続になりますか。
  21. 井川克一

    井川政府委員 四条二項の後段でございますが、「アメリカ合衆国政府は、日本国政府との協議のうえ定められる手続に従いこの協定効力発生の日以後そのような請求権を取り扱いかつ解決するため、正当に権限を与えた職員を琉球諸島及び大東諸島に置くことを許される。」「日本国政府との協議のうえ定められる手続に従い」と書いてございますが、合意議事録の「第四条に関し、」の第二項、「同条2の規定に基づいて定められる手続には、同条3の規定に従って行なう自発的支払のための適当な措置あと飛ばしまして、「の措置を含む。」というわけでございまして、この手続というものを定めていかなければならないわけでございます。それはこれからやることでございます。
  22. 横路孝弘

    横路委員 それは条約上明記されていることなんです。その具体的な内容ですね。大体期限をどのくらいまでに請求を出させて、それから何年ぐらいで払うのか、その辺のところの概略はどういうことになっておりますか。
  23. 井川克一

    井川政府委員 その手続の詳細につきましては、目下交渉中で、まだきまっていないそうでございます。
  24. 横路孝弘

    横路委員 概略も全然明らかになっていないのですか。
  25. 井川克一

    井川政府委員 いまだきまっておらないそうでございます。
  26. 横路孝弘

    横路委員 四条三項のアメリカ側国内法根拠は何かというこの間の質問に、この条約根拠だという御答弁があったわけでありますが、私がお伺いしたいのは、アメリカ国内の実定法上、この復元補償を支払う法律的な根拠というのはあるわけですか。
  27. 井川克一

    井川政府委員 向こう国内法上の根拠は私は存じません。ただ、私どもが、たとえば賠償とかということによって、賠償を払うというふうなことを条約で何べんもやりましたわけでございます。私どもの感覚から申しますと、それはやはりアメリカ国内法の問題ですから、私たちは存じないわけでございます。それを日本国内法に移しますと、日本では、結局それは条約上の義務として、それから予算をつけて支払う、こういうことになっておりますけれどもアメリカでどうなっているか、私は存じません。
  28. 横路孝弘

    横路委員 私の質問趣旨は、この復元補償についての法律的義務はあるのかということなんです。
  29. 井川克一

    井川政府委員 条約上の義務が明白でございます。
  30. 床次徳二

    床次委員長 横路君に申し上げますが、理事会協議により、常識的な時間の範囲内で補足質疑でありますので、補足質疑範囲を御理解の上、委員会の運営に十分御協力をいただきたいと存じます。
  31. 横路孝弘

    横路委員 まだだいぶ時間はあるようですから……。  アメリカのいわゆる補償についての法律的な義務というのはあるのですかと聞いているのです、趣旨は。
  32. 井川克一

    井川政府委員 ちょっと申しわけございませんけれども条約上の義務がある。私ども条約をつくりますときに、それが両国間の条約上の義務になるということで満足するわけでございまして、あと日本国内のものは日本国内で、つまり、三億二千万ドル払うときには、それを日本国内法によってどういう措置をとるかということは別でございますが、いずれにしても三億二千万ドルを払うという義務条約によって出てくるわけでございます。したがいまして、アメリカについてもその条約上の義務を履行しなければならないわけでございます。
  33. 横路孝弘

    横路委員 法律的な義務がある内容なんですかと聞いているわけです。法律的義務というのは、アメリカサンフランシスコ条約でもって解決済みだと言ってきているわけでしょう。その点について、この四条三項の問題のこの復元補償について、アメリカのほうの法律的義務というのはあるのですかというのが質問趣旨です。
  34. 井川克一

    井川政府委員 失礼いたしました。私が先生質問を理解いたしませんでした。  十九条によりまして講和前のものは放棄済みであるということは、たびたび申し上げているところでございます。したがいまして、アメリカといたしましてはその立場をはっきりととっているわけでございまするから、アメリカとして、サンフランシスコ条約十九条によりまして処理済みのものであるという主張を続けていたわけでございます。しかし、これは布令六十号についても同様でございます。したがいまして、布令六十号に基づいて、法律上の義務ではないが、ここに支払うということに前はなったわけでございます。
  35. 横路孝弘

    横路委員 つまり、アメリカのほうは法律的義務はないということで主張してきたわけですね。それが四条三項の「自発的支払」ということで入った。それと、その基本的なアメリカ側沖繩返還について一銭も金銭を払わないという態度とは、実は非常に矛盾をするわけで、そこに大きな疑惑というのが実はあるわけでありまして、私がこの間指摘した十九世紀末の法律というのも、領事事務に関する何か国務長官権限というようなことで、一八八〇年代の法律なわけですが、それがどうもアメリカのほうの一つ根拠になっているのではないかという指摘をしたわけであります。  そこで、時間もあれですから、本論のほうに入っていきたいと思います。  この七千万ドルの内容について明らかにできないという、これもやはり文書による回答をもらったわけでありますが、この回答によると、支払いは積算になじまない性質のものであって、内容を明らかにし得ないものだ。ただ、アメリカ側支払いについての合意に達して、沖繩早期復帰を実現するためには七千万ドル程度支払いは妥当であると判断した。こういうように、高度の政治的判断によって七千万ドル程度が適当であるというように認めて支払うのだという回答になっているわけであります。従来の議論の中で、七千万ドルについての項目として明らかにされているのは、核の撤去と、特殊部隊撤去と、それからもう一つは、アメリカ側撤去する場合に置いていく財産のいわば承継といいますか、その費用なんだというように項目としては明らかにされているわけです。この間の質疑の中で初めてその辺のところが少し明らかになったわけでありますが、その項目としてはこの三つだけですか。ほかにもまだ項目があるわけですか。この点は、外務大臣、どうでしょう。
  36. 福田赳夫

    福田国務大臣 その三つも、項目ということが妥当であるかどうか。それを配慮してというような私の気持ちなんです。それで、その中でとにかく主力をなすものは核撤去というふうに考えておるのです。アメリカは、核撤去ということを条約上書くことにつきまして非常にこれを渋ったわけです。しかし、沖繩県民が非常に心配しておる、また、わが一億国民も心配しておる、核撤去は何とかしてこれを明らかにしたい、こういうような気持ちを考えるときに、金が少しかかっても、この点だけはアメリカにはっきりさしておきたい、こういう気持ちがありまして、核撤去という項目、これはひとつ掲げよう。それからなお、特殊部隊なんかが復帰前にも帰っていく、そういうような事情もあります。それから、米軍がこれから、時間はかかりまするけれども沖繩撤去します。そういう際には、財産を無償で置いていきます。この財産はアメリカのつくった財産である。こういうことで、地位協定上はいろいろ議論がありまするけれども、これを内容等まで申し上げるのはいかがかと思いますが、これは多額金額にのぼる。そういうものもあるということを配慮しまして、それで七千万ドルで手を打った、こういうことであります。アメリカの主張はその時点においてはかなり大きなものを言っておったわけでありまするけれども、かなりわがほうの主張に近づいた数字になった、こういうふうにまた私は見ておるわけであります。
  37. 横路孝弘

    横路委員 結局、七千万ドル出すことによって施政権を買い取ったというような意味ですね、いまのお話を聞いておると。この七千万ドルの政治的配慮ということの中にこの四条三項というのも入っているんじゃないのですか。
  38. 福田赳夫

    福田国務大臣 それは、特定してそれを入れておる考え方はありませんです。
  39. 横路孝弘

    横路委員 特定してということよりは、つまり、アメリカ側がいろいろ出費がかさむから、それを考慮して七千万ドルをきめたというわけでしょう。したがって、いろいろな出費の中には四条三項という出費もあるわけですから、これもこの政治的配慮の中に入っているんじゃありませんか、こういうことです。
  40. 福田赳夫

    福田国務大臣 それは、七千万ドルの中に含めておる考え方はとっておりませんです。
  41. 横路孝弘

    横路委員 そこで、この間、議事録等が存在をしているんじゃないかということで、それの提出を求めたわけでありますが、ちょっとその誤解があったようなんで、私が要求したのは、日米間の議事録といわれるような、お互いに署名した共用のメモというような意味じゃなくて、いろいろな会議が、この間の質疑の中で明らかになったことは、五月の段階で三回、五月の十一日、二十四日、二十八日、六月二日、六月九日等、愛知・マイヤー会談というのが行なわれているわけです。その議事録というよりは、その交渉過程日本側でメモして部内用にやはり資料として作成して幹部の中に回すわけでしょう、そういう記録が存在をしているから出しなさい、こういう質問であったわけでありますが、議事録ということで何か皆さんのほうで誤解をされているようなんですけれども、そういうものについて御提出を願いたいと思うのですが、いかがですか。
  42. 吉野文六

    ○吉野政府委員 当時の交渉は、非常にデリケートな、最も重要な段階にありましたから、われわれとしては一切そのような議事録というものはとっておりません。みな口頭で先方と話し合い、かつ口頭で関係者に伝える、こういうことで、一切そのような文書はとっておりません。
  43. 横路孝弘

    横路委員 そうすると、たとえばパリ会談ですね、愛知・ロジャーズ会談、こういうような内容というのは——しかしながら、あれでしょう、公電としてちゃんと外務省に入るわけでしょう。
  44. 吉野文六

    ○吉野政府委員 パリ会談は私自身がついてまいりましたから、当時の記憶をたどりますと、あらゆる重要なことは全部電話をもって本省と連絡いたしました。
  45. 横路孝弘

    横路委員 それではもう一度、少し明らかにしていきたいと思いますが、全然メモも何もない、これは常識的に非常におかしいわけでありまして、私たちの調べたところによりますと、一九七一年の五月二十八日の愛知・マイヤー会談の中でこういうやりとりがあるんじゃないかということを指摘をしたいと思うのです。  この中で、マイヤー大使の発言として、財源のめんどうを見てもらったことは多とするけれどもアメリカの議会対策上、日本側から財源が出たということが明確にならない限り、議会説得は困難だ。これに対して愛知外務大臣文書化はむずかしい。マイヤー大使、文書にしないと、日本側が四百万ドルを財源としたということを議会の中で答弁せざるを得ない、それではかえって日本側が困るんじゃないか。というようなやりとりがこの会談の中で出てきているんじゃありませんか。
  46. 吉野文六

    ○吉野政府委員 いま先生がおっしゃったようなことは全然ございません。
  47. 横路孝弘

    横路委員 じゃ、パリ会談の中で、最終的には、いろいろ私たちの調査したところによると、四百万ドルをいずれにしても財源としてこの四条三項を日本側が見るということについては、五月段階で話がついた。ただ問題は、文書化するかどうかということだけが残って、結局皆さん方のほうで最終的に文書化することをあきらめたようでございますが、そのあきらめた過程が、パリ会談の愛知・ロジャーズ会談の中でこういうやりとりとして存在をしているというように思うわけでありますが、それは文書化をして明確にしてくれなきゃ困る、これはロジャーズ側の要求ですね。これに対して愛知外相のほうから、それは文書化した場合完全に秘密に保たれるのか。それに対してロジャーズ側が、それは公表される可能性もないことはないというようなことを言ったから、それでは困るということになって、それで文書化はあきらめた。そういうことで、事務レベルでのアメリカ側要求された文書として、われわれの調査によると、たとえばこんな文書になっている。それは、日本側が四百万ドルを財源として支払う、それを基金として四条三項の支払いに充てるという、非常に簡単な内容でございますが、そういう段階も、事務レベルでの話としては出ていたんじゃありませんか。そういうこともありませんか、全然。
  48. 吉野文六

    ○吉野政府委員 そういうこともございません。御存じのとおり、パリの交渉は、先日も申し上げましたとおり、主として返還日をいつにするかということで、四月一日をわれわれとしては希望するということを申し、それからP3の撤去をひとつ早急にやってほしい、これがおもな議題でございました。
  49. 床次徳二

    床次委員長 楢崎弥之助君から関連質疑の申し出があります。この際、これを許します。楢崎弥之助君。
  50. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまのやりとりを聞いておりまして、ちょっとお伺いをしたいのですが、私その当時の新聞を一応ずっと読んでみたのですね。そうすると、これは日本経済新聞ですけれども、「沖繩返還問題をめぐる愛知外相とマイヤー駐日米大使との会談は、一日午後二時すぎ」——これは四月一日のことですね。「一日午後二時すぎから約二時間にわたって外務省で行なわれ、協定作成のための大詰めの折衝にはいった。」会談には、日本側から吉野外務省アメリカ局長井川条約局長、米側からスナイダー公使も出席した。この愛知・マイヤーの交渉の実質会談は、大体四月一日から始まったようになっておる、新聞を読んでみると。そしてずっと調べてみますと、四月一日から六日までは会談の記事が新聞に載っておりません。七日に愛知外務大臣はラオスの外相代理と会われておりますね。それから八日には、経済協力局長がインドネシア大使らと会われた。同じく八日には、佐藤総理はモブツ大統領とお会いになった。それから法眼審議官とラオス外相代理の会談も行なわれておる。同十日には、佐藤総理はラオス外相代理と会談された等、ざっとこの辺のあれを読んでみると、こういう会談が新聞記事に載っております。こういうものも記録なんかとらないのですか。
  51. 井川克一

    井川政府委員 これは条約局長としてお答えするのではございませんで、私、前に中近東アフリカ局長をやっておりましたので——これは各局によっていろいろやり方があると思います。ただ、私、中近東アフリカ局長のときの経験を申し上げますと、たとえば共同コミュニケというふうなものをつくるとき、これは一生懸命共同コミュニケの案文をつくるわけでございまして、これが発表になるわけでございます。それで、むしろ私どもが、つまり下の者が会うというふうなときには、重要なメモをとるときもありますし、とらないときもある。特に重要なときに、大臣に報告するためにメモをとるというふうなことはございますけれども、大臣同士とか、もっと上の方のときには、共同コミュニケをつくるということ以外のような場合には、ほとんどメモをとらなかったと私は記憶いたしておりますけれども、これは各局のやり方で違いますので、私が中近東アフリカ局長をやっておりましたときは、そういうふうにしてやっておりました。
  52. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまのは私、具体的にずっと日にちをあげたのですけれども、どうなんでしょうか。
  53. 井川克一

    井川政府委員 これは私わかりません。そのときには私、あれでございます。
  54. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 外務省としておわかりになる方がございましたら、ひとつ明確に……。
  55. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の名前が出ましたから……。  モブツ大統領その他と会見したそのおりに、メモはとっておりません。はっきり申し上げます。
  56. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 総理はもちろんおとりにならぬでしょう、それは。外務省が大体ついておるはずですから。だから私は総理にお伺いしておるのは——総理にはあとでゆっくりお伺いします。外務省に聞いておるのですよ。
  57. 福田赳夫

    福田国務大臣 いつ総理がだれと会った、私がだれと会った、事務当局がだれと会った、こういうのは、調べればわかります。しかし、その会談の内容は、総理との会談、そういうようなものになりますると、これは総理からお話のない場合もありますから、これはちょっとわかりかねます。私も総理から、どういう話があったんだと、こういうふうにお聞きして、それは言えない、私までおっしゃったことがあるのです。それから私のほかの人との会談ですね、これも私の裁量で、こういう話があったが、こういう処置をしてもらいたいというようなことを言うこともあるし、言わないこともある。それから事務当局、これは先ほど申し上げたとおりであります。
  58. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私、さっぱりわからないのです、いまの答弁を聞きまして。(発言する者あり)いや、記録はとられておるか、とられていないか。私、具体的に言ったのですよ。横路委員質問、あれは五月段階ですが、沖繩交渉が実質的に始まったのは四月一日からと新聞に載っておるわけですから、私、これは新聞をちょっとメモしてきた。  それで、もう一ぺん言いますよ。七日には、愛知外務大臣はラオスの外相代理と会われた。八日には、経済協力局長がインドネシアの大使と会われた。同じく法眼審議官とラオス外相代理との会談も行なわれた。同じくその日には、佐藤総理はモブツ大統領と会われておる。十日には、佐藤総理はラオス外相代理と会われておる。こういうことが新聞の記事に載っておるのですが、いまあげたようなこういう会談は、記録としてないのですかと聞いておるのです。あるかないかだけでいいのですよ。いままでのお答えを聞きますと、ないというふうに印象を受けるのですが、いいのですか、それで。
  59. 福田赳夫

    福田国務大臣 ですから、いつだれがどなたと会ったということは、これは大体わかっておると思います。  それからその内容につきましては、これは記録されておるものもあるし、ないものもある、こういうことを申し上げております。
  60. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 では、記録されてないものがどれで、記録されておるものがどれか、はっきり——私はいまはっきり言っておるのですから、具体的に——私、新聞をこんなに持ってきておるのですが、一つ一つ聞いていいですけれども……。
  61. 井川克一

    井川政府委員 ただいま外務大臣がおっしゃったとおりだと思います。記録されておるものもあり、記録さたていないものもある。(「何を言っているのだ」と呼ぶ者あり)
  62. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 委員長、注意してくださいよ。
  63. 床次徳二

    床次委員長 楢崎君にもひとつ、関連質疑でありますから、簡潔にお願いいたします。答弁のほうも簡潔にお願いいたします。
  64. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私の聞いておるのは、どの部分が記録があって、どの部分がないかと聞いておるのです。それを聞いたら、あるものもある、ないものもある、何を言っておるのですか。だから、どれがあって、どれがないか、聞いておるのです。与党の委員諸君もおわかりでしょう。事実関係を聞いておるのです。
  65. 井川克一

    井川政府委員 総理大臣と外務大臣に関しますものは、総理大臣と外務大臣からお答えしたわけでございます。事務当局に関しますものは、これも先ほど申し上げたとおりだと私は思います。と申しますのは、その局長の、あるいは審議官の判断で、記録すべきものは記録し、記録しないものはしない、これだけのことでございます。
  66. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうしたら、局長、外務大臣の分については外務大臣がお答えになったとおり、総理大臣の分については総理大臣がお答えになったとおり、ということは、ないということですか。そうおっしゃった。
  67. 井川克一

    井川政府委員 私、外務大臣の御発言を伺っておりました限りにおきまして、外務大臣は、記録したものもあり、記録しないものもある、こうお答えになったと思います。
  68. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 総理の分は確実に総理自身が否定なさいましたね。
  69. 井川克一

    井川政府委員 そのとおりだと思います。
  70. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は一つのことしか聞いてないのです。関連質問だから、たったの一つのことしか聞いてないのです。  もう一ぺん、じゃ、外務大臣にお伺いします。あるものもあり、ないものもある、私が言ったうち、どれがあって、どれがないのです。
  71. 福田赳夫

    福田国務大臣 私がお答えしたとおりなんですが、いまお尋ねの案件につきましては、急に、そのうちのどれが記録にあり、記録にない、それを聞かれたって、直ちには御答弁はいたしかねます。調べればわかります。
  72. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 横路委員は、この種の会議の記録のこと、あるいは会談要録のことをお伺いしている。非常な関連がありますから、これはいま調べてください。
  73. 福田赳夫

    福田国務大臣 調べますが、外国の方々との話し合い、これの内容を公表する、これはできないものもありますから、その点はとくと御承知を願います。
  74. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、理事会か何かだったら明確にできますか。
  75. 福田赳夫

    福田国務大臣 理事会といえども、できるものと、できないものがあります。これは楢崎さんもよく御承知のとおりであります。
  76. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私はもう少し明確に答えがあると思っておりました。条約局長があそこでいま時間を費した。大臣にも総理にもわざわざお伺いした。あなたはうそを言っている。私は総理は責めたくないが、あなたは総理までもうそを言わしておる。いいですか。あるのです。あるじゃありませんか。これは重大な責任ですよ、当委員会でそのようなうそを言うことは。だから、横路君があれほど、五月段階の復元補償問題の会談要録の内容まで言っておるのに、あなたたちはまだしらを切っておる。あるのです。もしあったらどうしますか。責任を負いますか。
  77. 井川克一

    井川政府委員 私がうそを申し上げたという御発言でございまするけれども、私が先ほど来申し上げておりますのは、私は条約局長として発言する立場にないが、中近東アフリカ局長としての経験のときのことを申し上げますと、記録をとったものもあるし、とらないものもある。しかし、大体において、えらい——えらいというか、大臣同士のお話し合いの場合などには、大臣が、あとで、たとえば、この点こういう話が出たから、借款の問題が出たから、もっとうまく話し合って何かしなさいというふうな御指示があるわけでございます。そういうときに私どもは行動に移る。あるいは共同コミュニケをつくるというときに、共同コミュニケの作業を一生懸命やるということでございます。そして、さらに私は申し上げました。私たち下の者がやって、特に重要で大臣に御報告しなければならないというときには、メモにして大臣にお回しする、こういうことを申し上げたつもりでございます。そうして全部があるとかないとか、あるものもあり、ないものもあると申し上げたのでございまして、それがどうしてうそになるかということを、私は、申しわけございませんけれども、理解できないところでございます。
  78. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 メモは全部あるのです。全部あるじゃないですか。全部。私はそれを証明しますよ、ないとおっしゃるのなら。
  79. 井川克一

    井川政府委員 私が中近東アフリカ局長をやっておりましたときに、大統領とか、ほかに総理大臣、外務大臣、いろいろな方が来られました。そのときに全部メモがあるということは絶対にございません。
  80. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 このようないいかげんな答弁をするのだったら、われわれはこの審議に応じられませんよ。総理はメモをとってないとおっしゃるから、私は先ほど、総理自身がとられるはずはないと、わざわざ助け舟を出している。それにあなたは、総理のおっしゃったとおりだと言う。当然外務省のだれかが付き添っているはずでしょう。とっているじゃありませんか。「四十六年四月十日資料番号ア東一、資料NO.四八、佐藤総理とカンパン・パニヤ・ラオス外相代理との会談、四十六年四月十日、南東アジア第一課」ずっとあるじゃありませんか。まだこのとおり、これだけあります。いいですか。どういう形式になっておるか。一番目が「最近のラオス情勢」、総理、何々、カ外相代理、何々、そういうやりとりが逐一載っている。全部あるのですよ。なぜそういううそを言うのです。こういうことで審議は続けられませんよ、そんなうそを言うのだったら。総理の責任問題になりますよ。いいのですか、それで。
  81. 井川克一

    井川政府委員 これは外務大臣が何べんも申し上げたと思いますが、記録をとっているものもあり、とっていないものもある、こう申し上げたわけでございます。
  82. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そんなあいまいな答弁じゃだめです。
  83. 福田赳夫

    福田国務大臣 たとえば、この間アメリカの財務長官のコナリー氏が見えた。第一回の会談と第二回の会談、これは総理との間にあるのです。第一回の会談の内容というものは私は総理から承りました。しかし、第二回の会談というのはどういうのか、こういうふうにお尋ねしたが、総理はお答えがない、これは話すわけにはいかぬ、こういうことなんです。そこであとで承りましたが、数日後に、これはアメリカのベトナムの撤兵計画、あれがこれだったのだよ、こういう話でありました。そういうようなことで、これは私から先ほどから申し上げているとおり、記録にとどめるものもあり、とどめないものもあり、先ほどからお答えいたしているとおりであります。
  84. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 さっき私が四月十日の分もわざわざ明確に言ったじゃありませんか。ないとおっしゃったじゃありませんか。こういうことで審議が続けられますか。(発言する者あり)何がおかしいのだ、気に入る入らぬじゃないですよ。記録、メモがあるかないかがいま重要な課題になっているじゃありませんか。全部あるのです。ないものはない、全部ある。いま私が言ったのは全部ある。そんなにおっしゃるのだったら、私はつき合わしていいです。理事会を開いてください。つき合わしますから。だめです。
  85. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の名前が出ましたから、私に関することを申し上げます。  もちろん私も、総理をやっておると何もかも知っておるわけじゃございません。したがって、外務省から、その国との間にはこういう懸案事項がございますとか、ただいまこういう状態にございますとかいう、大体の私自身が勉強する材料をまず出してくれるのです。それをまず……(「それはあたりまえだ」と呼ぶ者あり)それはあたりまえだと言われるいま不規則発言がありましたが、そのとおりあたりまえであります。私は、そういうことを一応目を通して、それに基づいて会談を持つのが普通であります。その場合に、外務省の役人のおる場合もありますし、外務省からだれも出てきておらない場合もあります。したがって、その外務省から出てきた者がおれば、これは私が命ずるわけではありませんが、どういうような話があったと、こういうようなことをやはり書きとめる場合もあります。しかし、全然書きとめない場合もあります。また、先ほどコナリー財務長官お話が出ましたが、これなどは、相手方として、一切、まあ官僚を同席すること相ならない、どうもそういう者は漏れることがあって困る、極秘の話し合いだからそういうことには立ち会わさないように、こういうような特別な注文もございます。そういう場合には一切そういう者を遠のけますから、これはもうただ通訳だけ、そういう話で全然メモはとらない、こういうことであります。  先ほど外務大臣が申しますように、それぞれの話は、これは向こうで申しましても、閣僚同士これはやはり緊密な連携はとらなければなりませんから、そういう意味で外務大臣に話すものもあります。またもう一つのように、いついつ発表だからそれまでは極秘にしてくれ、こういう問題もありますので、それはそのとおり守っていく、こういう状況でありますから、ただいま申し上げる点は、いま条約局長をお責めになるが、それはむしろ私どものほうに責任がある、かように思って、ただいま立ち上がったわけであります。  これは、私どもが命じて、これはメモをとっておきなさい、こう言えば、これはその会談にはメモがあった、かようなことになると思います。ただ偶然そこに、まあ私どもは監視されておるような形で、出てきた課長が、じっと居眠りしていては申しわけない、こういうことで何か書きとめた、これをいわゆるメモと言われると、まあメモということにはなるでしょうが、いわゆる命じたメモ、あるいはまた会談を、そういう場合に必ずそれを記録しろ、かように要求されているものでないこと、これはひとつ御了承を願いたいと思います。
  86. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だから、四月十日の分は、先ほど総理はメモをとっていない。総理自身がとられるはずはないが、ちゃんと外務省はとっているのです。とっている。だからその点は総理とちょっと認識が——総理はおわかりにならなかったと思うが、しかしとっている。外務省はとっていないと言う。いいですか、これはけさの新聞にほとんど載っておりますね。あの米国国務省筋の、この三億二千万ドルに関係する分として。それで、「同筋によると、このように二国間でそれぞれ相手国に対して支払いを必要とするような交渉では、あらかじめ差し引き計算を行なって二重手間をはぶくことは常識になっている。」したがって、「沖繩返還に伴って日本側が米国政府に支払う実際の額は三億二千万ドルプラス・アルファであるが、米側から支払う沖繩の軍用地復元補償分があるので、これを差し引いた額が三億二千万ドルになると解釈している」。これは、ここの国務省筋のあれは若干横路委員指摘と違います。横路委員指摘している五月段階の日米の会談要録と申しますか、会談記録では、三億二千万ドルの中に含まれている。しかし、ここで共通点があるのは、いずれにしても米側は自分の手出しはしないということだけは一致しているのです。日本側が払うんです、何らかの形で。それをわざわざ四条三項では、アメリカが自発的に支払うという文章になっている。ここが問題なんです。  私がなぜこういうことを言っておるかというと、全部この記録、あるんですよ。あなたがいままで、あるものもあり、ないものもあるという答弁でしたが、全部ある。だから私はそれを突き合わしたい。この分も含めてです。私は理事会要求します。突き合わせます。これは明確にしなくちゃなりません。これは大体沖繩返還協定の分です。それがああいう強行採決で審議ができなかった。四条三項の分です。これは私は明確にいたしたいと思います。われわれも責任をもってこれは出しておるのです。世にいう密約——アメリカのほうは密約と言っていない、あたりまえのことだと言っておる。ということは、アメリカが自分の手出しはしないということは初めからきまっている。これは明確にしていただきたい。
  87. 井川克一

    井川政府委員 密約というものは全くございません。  それから、そのメモにつきましては、これは交渉当事者でございまするアメリカ局長が、ないと申しておるわけでございます。もちろん私の手元にはございません。
  88. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先ほど申し上げましたとおり、メモなるものは全然ございません。
  89. 福田赳夫

    福田国務大臣 横路さんから過日お尋ねがありましたので、私が、この交渉の衝に当たりました両局長につきましてしさいに聞いてみたのです。メモはありません。  それから、横路さんの御質問趣旨ですと、途中で三億一千六百万ドルという数字が出まして、それに四百万ドルを上乗せをした、こういうことになるべきはずでございますが、いかなる段階でも、三億一千六百万ドルという数字が出た、そういう記録も、また両局長の記憶もない、こういうことでございます。非常に私はよく聞いてみたのですが、その点は私間違いない、こういう心証を得ております。
  90. 床次徳二

    床次委員長 このままで三十分間休憩いたしまして、理事会を開きます。    午前十一時八分休憩      ————◇—————    午前十一時五十一分開議
  91. 床次徳二

    床次委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。楢崎弥之助君。
  92. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 先ほど沖繩返還協定が実質的な交渉段階に入った四月一からの外国大統領あるいは外相等との会談について、その記録があると私はさっき明確にしたわけですが、お調べになった結果はどうでしょうか。
  93. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先ほど指摘のあった四月十日、ラオスのカンパン・パニヤ外務大臣代理、外相との会談録はございました。しかし、その他の三つにつきましては、まだいま調査中でございます。
  94. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 失礼ですが、私は全部確認をした分だけしか出していませんから、あるはずです。で、この種の記録は全部あるんです。ただ、重要なこの横路委員指摘の分だけがないというほうがおかしいのであります。おかしいのであります。しかも重要な、これは非常にデリケートな、いわゆる復元補償問題の内容でありますから、当然そのデリケートなところは記録に残さないと、あと日米間で食い違いが出てくるとこれはたいへんになるから、当然あるはずです。当然あるはずです。そして、われわれはそれを確認しておる。  それで、外務大臣にお伺いしますが、結局私ども沖特委員会から、ずっと各党とも、三億二千万ドル、七条の三億二千万ドルを問題にし、特に核撤去費用を含めたと称する七千万ドルの積算基礎については、ほんとうにこれはその根拠をお示し願いたいということをずっと要求をしてまいりました。そして本日、いよいよ最終段階のこの委員会で、横路委員質問に対して、文書で出てきた点を見ても、この七千万ドルは積算基礎を出すというような、そういうものになじまない性質のものである。つまり、政治的なこれは金額である。そうすると、もしアメリカの立場でいえば、これはアメリカの議会で明確になっておるとおり、この沖繩返還問題についてアメリカ側は手出しをしない、これは明確なんです。したがって、三億二千万ドルのうちの、核撤去費用が大部分と称する七千万ドルの中に、アメリカ復元補償で支払う分も政治的にそれに加算して出しておると、われわれはその確認した会談メモによってもそう思うわけですが、それがなくても、アメリカ側が三億二千万ドルの中にその復元補償分を含んでいないという立証は、少なくとも外務大臣としてはおできにならないと思うのですね。政治的な金だというので、積算基礎もわからないというんだから。だから三億二千万ドルの中に含まれていないということを、これは外務大臣といえども立証できないと思うのです。その点はどうでしょうか。
  95. 福田赳夫

    福田国務大臣 まず、二つの点なんですが、一つは、楢崎さんお得意の明快なる論法、三段論法をもちまして、すべての重要会談についてはその記録がある。愛知・マイヤー会談は重要な会談である。したがって記録があるに違いない、こういうことでありますが、この三段の論法は第一段階でちょっとくずれるのじゃないか、そういうふうに思います。つまり第一段階、重要な会談の記録は全部あるか、こう言いますると、全部ないんです、これは。そこで三段論法の結論というものに影響してくるわけですが、それはそれといたしまして、四百三十万ドルという横路委員の御指摘の金が三億二千万ドルの中に入っておるか、こういう点につきましては、日米間ではそういう合意はいたしておりませんです。これははっきり申し上げます。ただ、アメリカは三億二千万ドルを受け取るわけであります。そのうち七千五百万ドルは労務費に使う、これははっきりしておる。しかし、資産継承と見合うところの一億七千五百万ドル、これはアメリカがどういうふうに使おうとアメリカの御自由でございます。それから最後に残りまする七千万ドルは、これは出す以上、核の問題をはっきりしなければならぬ、こういうふうに思います。また、われわれと約束をいたしました特殊部隊撤去、そういうものもしなければならぬ、こういうふうに思いますが、残った金が出るとしますれば、これをどういうふうにアメリカがお使いになりましょうが、これはアメリカ政府の御自由である、こういうふうにお答え申し上げます。
  96. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 くしくも大体問題は明確になってきたようであります。つまり、アメリカ復元補償で出す分をあらかじめその七千万ドルの中に含めて、そして向こう要求したとしても、そして政治的な金額として妥結をしても、いまおっしゃったとおりその中から復元補償分が出されようと出されまいとそれはアメリカのかってだ。つまり、政治的な金であるし、積算の基礎も明確にならない以上、七千万ドルの中に復元補償分が含まれていないという立証はだれもできない。政治的な金である以上、だれもできない。いずれにいたしましても、われわれが確認したところでは、この辺のやりとりは、横路委員指摘のとおり、会談要録メモ、この中に明確になっておる。  そこで、もう一ぺん確認しますが、私が出しましたいろいろな、日本政府と外国要人とのその種の記録は極秘になっていますね。極秘の判が押してあります。どうですか。
  97. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先ほど申し上げました、われわれの確認した四月十日のカンパン・パニヤ外相代理との会談録は、極秘の判が押してあります。
  98. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その極秘の判は——局長、ちょっと見とってください。まあこのくらいの印で、上が極秘で、下にちょっと書いてありますね。しかし、横路委員指摘の分は、違う印が押してあるんじゃないでしょうか。たいへん言い方がむずかしいのですけれども、要するに、われわれが確認しておるということを前提にしてお話をしておるわけです。いずれにしても、この段階で特殊な事情があって、それをここにこれですと出せないことは残念に思います。しかし、これはいずれ来年度の予算の中に当然出てまいる。その段階ではすべてが明らかになる。もし、この事実が明らかになったらたいへんな責任を——まあそのとき外務大臣がどなたか、総理大臣がどなたか知りませんけれども、たいへんな責任問題が出てくる。それだけをここで明確に申し上げておきたい。  それで、いまの極秘の印の関係等は、私は関連ですからこれで終わりますが、あと横路委員のほうから明確にしてもらいたいと思います。
  99. 横路孝弘

    横路委員 いま外務大臣から答弁があり、それから先日の七日の委員会でも、条約局長が、四条三項の金額について、アメリカがどこから出すか、そんなことは知ったことじゃない。確かにこれはアメリカのことですから、どこからお金を出そうがそれは自由です。ただ、アメリカがこの三億二千万ドルの中からお金を払うということ、これは明らかです。返還交渉アメリカ側の基本的な姿勢というのは、アメリカ側から持ち出しをすることはしないというのがアメリカ側の基本的な原則である、これもこの間の質疑の中で確認をされているわけであります。  そこで、一つだけちょっと確認をしておきたいのですが、この外務省文書の取り扱いの中で、斜めに赤線で二本、そして極秘という判を押す、これはどういう種類の文書ですか。
  100. 福田赳夫

    福田国務大臣 四百三十万ドルが三億二千万ドルの中に入っていることが確認されたというお話がありますが、あなたのほうは確認したかもしらぬが、私のほうはこれは全然確認をいたしておりませんから、日米間におきましては三億二千万ドルの中に四百三十万ドル、あるいはあなたはこれを四百万ドルとおっしゃいますが、そういうものが入っておるという了解は全然ありませんから、その辺は、何かあなたの話を聞いていると、私がそれを確認したような響きがありますから、ちょっと訂正さしていただきます。  あとの点は政府委員からお答え申し上げます。
  101. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先生の御指摘文書は、われわれは持っておりません。しかしながら、いま御指摘の斜めに二本線が引いてあって極秘と書いてある、これは、その現物を見てみないとわれわれもはっきり申し上げることはできませんですが、電報の来電は、ある種のものは、そういう判こというのか、そういうしるしがついております。
  102. 横路孝弘

    横路委員 その確認したというのは、アメリカ側がどこからお金を出すかわからないけれども、それは三億二千万ドルの中から払われることもあり得るだろうという先ほどの御答弁があったから、その点を確認をしたわけであります。いまアメリカ局長から答弁がありましたけれども先ほど私が指摘した五月二十八日の愛知・マイヤー会談、それから六月九日のパリにおける愛知・ロジャーズ会談、特にこの愛知・ロジャーズ会談の中身は先ほど指摘をしたとおりで、いま御答弁があったところによると、どうも公電の翻訳をしたもののようでございますが、先ほど楢崎委員からも話があったように、いまの段階で全部を明らかにすることができないのは非常に残念でありますけれども、いずれにしても皆さん方はないということをおっしゃった。その責任というのは、これはアメリカ局長にしても、条約局長にしても、外務大臣も、どこまでもつきまとっていくということだけを明確に指摘をしておきたいと思うのです。  今度の四条三項の交渉の経過を見ていてほんとうに残念なのは、やはり出てきた経過というのが一つアメリカの議会対策、もう一つ沖繩の住民対策というような点からこういうような四条三項というのが規定されて、三億二千万ドル、とりわけ七千万ドルが政治的配慮によるという名のもとに、その中身が全然明らかにされないで、ともかく何かいままでの答弁を聞いておると、核撤去の費用のようなお話でありますが、それがすべてであるわけじゃない。そのほかの要素というのもいろいろあるわけでありまして、その辺のところを皆さんのほうから明らかにされなかったことを非常に残念に思うわけでありますが、責任がどこまでも皆さん方のほうについて回るということだけを私のほうからは指摘をして、私の保留質問をこれで終わりにしたいと思います。
  103. 床次徳二

    床次委員長 午後一時から委員会を再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時七分休憩      ————◇—————    午後一時九分開議
  104. 床次徳二

    床次委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。楢崎弥之助君。
  105. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 総理よろしゅうございますか。——沖繩関係法案の衆議院段階における審議も、東海道線でいえば静岡くらいまで来ておる。しかし、ずいぶん積み残しの問題もあった。もうあと東京駅に着くかどうか、脱線しないようにひとつ……。  そこで、重要な問題ですから、総理に核問題について二点だけお伺いをしておきたいと思うのですが、この沖繩返還協定を通じて政府のこれまでの答弁では、この協定の中に核抜きということはもう明確になっておる。とすれば、少なくとも日本に核を持ち込まないということはこの協定を通じて条約化されている、そのように解決してよろしゅうございますか。
  106. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ニクソン大統領と私との返還に関するその協定、共同声明で、アメリカ日本の意思に反することはしない、本土並み、核抜き、早期返還、そのことを確約をいたしました。これは最高責任者同士の約束でございます。したがいまして、返還後において核はないということ、これはもう重ねて私は申し上げ得ると、かように思っております。同時にまた、返還後において核の持ち込み、これにつきましては事前協議の対象になる。過日もいろいろ問題が、この場で行なわれまして、どんなことがありましても、その事前協議に対してはノーでありますとはっきりお答えをいたしております。またこの点については、衆議院の本会議の議場においても決議がなされておりますし、またそれに対して、政府は厳粛に声明をしておるわけでございます。どうぞその点は、御了承、また御安心をいただきたいと思います。
  107. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、この協定を通じて、これは一つ条約でございますから、日米の間で少なくとも日本に核は持ち込まないんだということが、政府のたび重なる御答弁ではこの協定で明確になっているということですから、この核を持ち込まないということはこの協定を通じて条約化されている、そのように解釈してよろしゅうございますかということを私はお伺いしているわけです。
  108. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 結論だけ申せば、そのとおりでございます。
  109. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それからもう一点だけ。これは四次防との関係がありますから……。  原潜の保有は非核三原則に触れる、このように理解をしておってよろしゅうございますか。
  110. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 推進力として原子力が一般化されておらない現状におきましては、ただいまのような解釈が適当だと、私、かように考えております。
  111. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 原潜の保有は非核三原則に触れる。明確になったわけであります。  そこで、私は先般来保留をいたしました自衛隊の「海上輸送作戦教範」、内容は敵前上陸でありますが、これはいわゆる統幕会議の発行した教範である。したがって、その内容を知っておるのは発行者である統幕会議議長が一番明確に知っておる。したがって私は、制服の方ではございますが、当委員会に説明員としてお越しいただいて、いわゆるシビリアンコントロールの実態、あるいは国会が監視しておるというその姿をこの当委員会で明確にしたかったわけであります。それで、説明員として御出席をお願いしたわけですが、いろいろの観点から今回は見送ることになりました。私が、制服でありますがあえて出席をお願いしたゆえんは、いわゆる国会での監視、コントロールの実態を明確にこの場でしたかったからであります。  そこで、この「海上輸送作戦教範」、これは、これを決定あるいは採用決定する際の内局との関係はどうなっておりますか。
  112. 高瀬忠雄

    ○高瀬政府委員 教範を作成する根拠は、教範に関する訓令という長官の命令がございまして、この訓令に従いまして陸、海、空、統合幕僚会議それぞれの所掌につきまして、その事務について所要の内容を盛りました教範をつくりまして、そうして長官承認を得る、かような手続をもちまして決定をするということになっております。
  113. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そこで私は、この「海上輸送作戦教範」を問題にする前に、これが決定された時期が本年の二月、まさに久保・カーチス協定交渉の時期である。そういう点で沖繩に対する自衛隊の配備問題とも重要な関連がある、私は、そういう位置づけでこれを問題にしたわけであります。  もう一ぺん、私ども沖繩協定の位置づけというものを明らかにしたいと思うんです。  例の六九年七月のグアムにおけるニクソン・ドクトリン、これを日本版にした、つまり日本化したものが私どもは同年十一月の佐藤・ニクソン共同声明である、このように思います。そして前文において、その共同声明を基礎とするというこの条項によって、日米共同声明は沖繩返還協定条約化された。そしてこの沖繩返還協定の本質は一体何であるかというと、久保・カーチス協定という名の軍事協定である。つまり沖繩への自衛隊の配備である。そしてこの久保・カーチス協定土地問題として裏づけておるのが、公用地暫定使用法という名の軍用地強制収用法である。また、この久保・カーチス協定を実力の問題として裏づけておるのが四次防である。さらに、沖繩へ配備された自衛隊の目標は一体何であるかというと、これがまたもとに戻って、佐藤・ニクソン共同声明の中の韓国・台湾条項である、このようにわれわれは見ざるを得ないわけであります。そしてこの久保・カーチス協定と重要な関係がある四次防とは、一体どういう性格のものであるか。これはいままでの三次防が単なる装備の拡張であったのが、四次防は十年間という長期の防衛構想に基づいて、その前半の五年間という意味を持った、つまりいわゆる防衛構想あるいは戦略、作戦を基礎にした装備の増強計画である、このように思わざるを得ません。そしてその戦略あるいは作戦構想の一環としてこの「海上輸送作戦教範」が位置づけをされる、そのように見ざるを得ないわけであります。したがって、そのもとになっておる四次防そのものについて若干の論争をいたしてみたいと思うわけであります。  そこで私は、まず総理にお伺いをしたいわけであります。  この四次防が原案として発表されたのは四月であります。それで、いわゆる四月以前の国際情勢と今日の段階、それから今日以降も含めましてアジアの情勢にどのような変化を総理としては見られておるか、それをお伺いしたいと思います。
  114. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 アジアの状態はよほど変わっております。それはもう御承知のとおり、中華人民共和国が国連に加入したというその一事をもってして、これをめぐる諸情勢がすっかり変わってきた、かように御了承いただきたいと思います。
  115. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうしますと、いま、すっかり変わっておる、私はその認識は総理と一致いたします。そのすっかり変わっておるというこの情勢の変化は、日本の国防上の考えに影響を与えるだけの情勢の変化であると私どもは認識するわけでありますが、総理はいかがでありましょうか。
  116. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、わが国の国防上の問題は、ただいまのような点で非常によくなった面もあります。またもう一つは、やはり心配の面もございます。そこらにやはり私どもは、いままでとっていた国防政策、これに重大なる変更を加える、かような状態ではない、かように考えております。
  117. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうしますと、さっきのお答えでは、中国の国連復帰、国際社会への復帰、これに象徴されるように、すっかり変わっておるというおことばでしたが、しかし、日本の国防上考慮すべきアジア情勢の変化とまではいかないという御認識でございましょうか。——いや、これは一番重大なところでございますから、国防会議議長としての総理のお考えをお伺いしたいと思います。
  118. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりでございます。変わっておらないということでございます。
  119. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、国防白書が発表された時期、それから四次防原案が発表された時期の——御存じと思いますが、中国の位置づけは、それだけとっても変わっておるわけですね。それだけとっても変わっております。そうすると、アジアにおいて日本がいわゆる防衛の対象とする——対象国ということばをよく使われておりますが、当然対象国の中に中国も入っておる。そうすると、中国のそのような国際社会における立場が変わったということは、私は、十分やはり日本の国防上考慮に入れるべき要素ではなかろうか、このように当然思うわけですが、いかがでしょうか。
  120. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、現状においてまだ変更するような状態ではない、かように思っております。したがいまして、わが国はやはり白補力、これは国力、国情に応じたものを持っておる、同時にまた、足らざるところは日米安保条約、これで補う、この基本方針を変える、かような状態ではございません。いままでがあまりにも不整備というか、十分でございませんから、そういう点ではいまなお同じような状況でございます。好ましい状況になっておることは、御指摘のとおり、私も同感でございます。
  121. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 昭和三十二年決定の国防の基本方針、これの一番冒頭に、わが国は国連というものを尊重していく、これがあるわけですね。これはもう余分なことですけれども、国防の基本方針ですから、防衛庁長官としてはこの方針は明確にしなくちゃいけない。先ごろの西村前長官の問題もそこにあったと思うわけですが……。  そこで、国防の方針を決定する、国連に中国が参加した、そういう国連の今日の状態というものを尊重していくということになるわけですから、私は基本においては変わらない。そこも議論がありますけれども、しかし四次防の、いままで四月段階で決定された、前文から入れて、これがすべて変わらないということになると、そこに非常に矛盾が出てくると私は思いますが、その辺はいかがでありましょうか。
  122. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 先ほど総理から御答弁がありましたが、中国の情勢が変わったことは、日本にとってまことに好ましいことだと思います。ただ、極東の真に平和な環境というものが定着するまでにはまだ期間がある、これは御理解いただけると思うのです。  そこで、現在われわれがこれから作業しようとしておりまする内容につきまして、にわかにそうかといって変更をする一つの理由はない。だたし、この四月に発表いたしまして以来、経済的な見通しにおいても変動が出てまいりました。したがいまして、この経済成長率に合わせて従来とも防衛計画が策定されてまいりましたので、そのあたりとにらみ合わせながら、多少の変更はやむを得ないのではないかという見当をしておるわけです。  それから、御指摘の国際環境が変わったではないか、変わったと思います。しかし、これが真に平和的な要素となって定着するまでには、まだしばらくの期間がこれは必要となるわけでありまして、このあたりは十分検討の余地を残しておると思います。しかし、もともと自衛隊そのものが歴史も浅うございます。ゼロから出発したわけでありまして、国力に相応した一つの最低の防衛力、通常兵器による局地戦に対応できる程度の兵力、原則的にこれを充実していこうということになるならば、まだまだ足らざるものがたくさんあるという意味で、いま総理の言われたことは御理解願えるのではないかと思うのですが、しかし、今後にかけまして、極東の平和情勢がだんだん定着してくれば、長期計画でありまするから、当然そこにそういう要素を取り入れて内容を検討するということはあると思います。
  123. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ここで外務大臣にちょっとお伺いしておきますが、国際情勢、アジア情勢とも関連をいたしまして、いま不幸な印パの戦争状態が現存するわけですが、この印パの情勢は、安保条約でいう極東の範囲の、つまり周辺に当たる事件としてこれを見ておられますか、いかがでありますか。
  124. 福田赳夫

    福田国務大臣 さようには見ておりませんです。
  125. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それではこの印パの情勢がどのように一これは一日も早く平和解決をわれわれも願うわけで、日本政府も国連においてその終結への努力をされたことを知っております。で、不幸にしてこれが拡大をして、あるいは国連が実力として動き出す、あるいは一方に関係があるアメリカ軍等が動き出すようなときには、これは安保条約との関連は起こらない、いまの御見解ではそのように考えておってよろしゅうございますか。
  126. 福田赳夫

    福田国務大臣 そのようでよろしゅうございます。
  127. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そこで十日の日に、水田大蔵大臣と江崎防衛庁長官、竹下官房長官、三者でお話し合いをなさって、四次防はやはり四十七年度から始めるということが決定をされたと新聞で見たわけであります。この三者会議の性格はどういう性格でございますか。またそれを開かれた理由は一体何であるのか。
  128. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御承知のように三次防の期限が本年度をもって終わる。来年度から防衛計画については計画のない状態に入ることになりますので、したがって、防衛庁におきましては、この来たるべき計画、四次防の立案についていろいろ骨折っておられたようでございますが、遺憾ながら現在の状態では、この四次防計画をきめることは、予算編成前には間に合わないということがはっきりしてまいりました。そこで、これが間に合わないからといって、財政当局は何もしないでおるわけにはまいりません。さしあたり防衛庁の来年度の予算はきめなければなりませんので、これをどうするかという打ち合わせをやったというこれは会合でございます。  そこできまりましたのは、すでに新聞でも発表になっているようでございますが、計画的なものはすでに本年度で切れるんであるからして、あきのないように、本年度末、三月一ぱいまでにこの防衛計画はきめよう、できるだけ年度末までにはきめることにしようということが一つと、しかし予算編成には間に合わないので、編成のしかたとしましては、いまの防衛庁の実情に基づいた予算査定を私どもはする、現状に基づいて来年度当然かかるべき経費を計上するということと。もう一つは、防衛庁の予算は特殊なものでございますので、長期計画を伴わなければ単年度予算としてきめられないという部門がございます。たとえば、飛行機の問題でございますが、何年間に何機大体生産するというような長期的なものがきまらないというと、来年度の発注機数というものがきまらない。こういう長期計画と関連のあるものが二、三ございますので、これはこれとして別個に、そういう問題の予算折衝は別にしてきめましょうということでございますから、こういう問題は別個の問題として、来年度の予算編成のときに防衛庁との相談で大体きめたいと思っております。そうしますと、今度きめる予算というものは、四次防の予算ではございませんが、しかし長期計画の一、二のものは、四次防的な計画が入り込んでくる。これはこういう性質の予算になると思うのですが、四次防計画はできておりませんから、それに基づいた予算ということにはならないだろう、こういう了解をお互いに得て、私のほうはその了解に基づいてこれから作業を開始するということをきめたわけでございます。
  129. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どなたが開こうとおっしゃったのですか。
  130. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これはもう当然防衛庁側として大蔵大臣に提議したわけでございます。
  131. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまの三者会議の決定の効力と申しますか、決定力とでも申しますか、それはどの程度あるのですか。
  132. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 いま大蔵大臣が詳細に説明をしましたように、今後の具体的な予算折衝に入る大筋といいますかをこなしたわけでありまして、四次防を来年度から発足させるこの基本方針はでき上がったわけでありますが、内容については、四月に発表したものを十分検討する、それは先ほど来の質疑にあるようないろいろな状況等も十分勘案しながらやっていこう、こういうことになると思います。
  133. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは重大な御発言だと思うのです。その程度の三者会議で、四次防の基本方針がきまった、ほんとうですか、それは。
  134. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 私の発言にもしことばが足りなければ補足したいと思いまするが、四次防を四十七年度から始めるということについて事務折衝に入ろう、こういう方向をきめた、こういうことでございます。
  135. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 方針がきまらずにどうして事務的折衝だけ先ばしりするのですか。ここに私は問題があると思うのです。方針がまずきまって、それから事務的な折衝が始まる、こうではないでしょうか。私はいやなことは言いたくないですけれども、大蔵大臣と防衛庁長官は非常に懇意な仲ですから、まあちょっと会ってまあよろしゅう頼む程度のことではないと思うけれども、あのような三者会議、あのような会議でこの四次防の基本方針がきまったとすれば、私はこれはたいへんな問題である、これは国防会議議長としての総理大臣も見のがすことのできない問題だろうと思うのですよ、方針がそこできまったとすれば。
  136. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これはどうぞ誤解のありませんように。方針がそこできまるわけのものじゃありません。官房長官も一緒でしたが、閣議後のごく短時間の間の話ですから。当然、防衛庁の一つの原案の原案みたいなものは発表しておるわけでありまするが、それに再検討を加えて、なお事務的な具体的な折衝に入る。これは楢崎委員御承知のとおり、一年延期したらどうかとか、いろんな記事が新聞等にも大きく出まして、一体始まるのか始まらないのかというような疑問も世上に与えております。したがいまして、これは景気がスローダウンしたから今度は予算をやめておこう、また今度、再来年になれば事情が好転したからにわかに予算をつける、そしてここにあるものを右から左へ買ってくる、武器というものはそういう性格のものじゃありませんので、そこで今後やはり継続していこうということで、事務折衝に入ることを話し合った。方針については、いま大蔵大臣からも申し上げましたように、年度内にきめることをめどとしておることは御承知のとおりであります。
  137. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それで、総理お聞きのとおり、これは与党の中でも、国際情勢あるいは日本の経済情勢を考慮して、この際は一年延期したらどうかという有力な意見もあるわけですね。それから第一次防衛力整備計画、これは三十三、三十四、三十五の三年間、第二次防衛力整備計画は、三十六年を一年飛ばして、三十七年から四十一年まで、こういう過去の経過もあるわけです。だから、こういうふうに議論が一応ある程度出てきて、そして時期的にも——もし来年度から四次防を始めるとすれば、当然第一年度、四十七年度の予算から盛り込まなくてはいけない、時期的にももうこれはぎりぎりのところにきておると思うわけです。それで、もう総理も御案内のとおり、これを決定するのは国防会議であります。もう国防会議を開いて御方針をおきめにならぬと、事務的な折衝だけでは限界があろうと私は思うのですよ。いつごろこの国防会議をお開きになるおつもりなのか、総理の御見解をお伺いしたい。
  138. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いま、国防会議を開くことについてもたいへんあせっております。しかしながら、御承知のように、ただいまこのとおり国会でくぎづけになっておりますので、ただいまのような余裕がございません。そのことはひとつお認めいただいて……。国防会議をおろそかにしておるわけではございません。また、先ほど来の話は、いろいろの御理解はいただいておると思いますが、私の国防会議の議長として考えますのは、来年度予算を編成するにあたりまして、いままでの長期計画は長期計画、とにかく来年度予算はつくらなければならない。ことに、だんだん兵器、武器等が時代おくれのものがございますから、こういうものを交代するような段階にきております。したがって、それは一年ぽっきりのものにいたしましても、そういうものでただいまの予算要求をする、こういうことを防衛庁長官、大蔵大臣さらに官房長官が立ち会って相談をした、かように御理解をいただきまして、これをもって直ちに四次防の一部をこれで実施だとかあるいは四次防はたな上げになっておるとか、かように言われないように。これとは違う、とにかく将来四次防ができ上がれば四次防の一部をなすだろう、かように御理解もいただきたいと思いますけれども、まだ四次防そのものが具体的に国防会議の議題にもなっておりませんから、ただいまのように早期に、早目に四次防の計画を立てるためにも国防会議を持て、かような御要望だろうと思いますが、政府としてもその点はいかがしたらいいか、しかし来年度予算を、この予算編成期におきまして四次防ができないからといってこの予算要求をしない、こういうわけのものではないので、ただいま申し上げるような観点に立ってただいま予算を組んでいる、かように御了承いただきたいと思います。
  139. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は四次防が決定されないと来年度の防衛予算が組めないとは言っていないのですよ。それは引き継ぎの分もあるでしょう。しかし、四次防が来年から始まるということになれば、あとで私明らかにしますけれども、いろいろ新規のやつがあるわけですよ。だから、四次防の方針を決定しないと、結局は三次防の引き継ぎの分だけの予算編成しかできないのではなかろうか、このように私は思うわけです。  そこで、いま大蔵大臣の御答弁を聞いてみますと、これもあとから問題にしますが、大体予算関係、つまり財政の関係では一年延期と同じことになりますね、四次防のあれを組まないんだから。四次防に入るものもありますけれども、それは継続のやつですからね。だから、四次防のいわゆる目玉と申しますか新規のものは予算上は入ってこない。そうすると、実際問題としては、もうこの段階では予算上は四次防が一年空白になると思わざるを得ませんが、いかがでしょうか。
  140. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 さっき防衛長官からお話がありましたように、私どものほうが一年延ばすとかいうようなことをきめたとかなんとか、そういう事実はございませんが、そういうふうに伝わりましたのでみな問い合わせが非常に多くて、どうかというようなこともございましたので、この問題についての意思統一をしなければなりませんでしたが、これは御承知のとおり、防衛計画は国防会議がきめる問題でございますので、私どもにこれを延ばすとか延ばさないという権限はございません。したがって、これは三次防の計画を終わったら当然次の長期計画を間を抜けないようにやるのが常道でございますので、それは国防会議にやってもらうために防衛庁もできたら年度末までにこの計画がきまるように努力するということをきめただけでございまして、私のほうはそれができるできないとは関係なく来年度の予算はとにかくきめなければなりませんので、その予算の査定はこういうやり方でやろうということを防衛長官ときめたということでございます。
  141. 床次徳二

    床次委員長 楢崎君、補足質問でありますから、じゅうぶん時間を考えて御質問いただきます。
  142. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 議論すればたいへん問題のあるところです。おわかりのとおりだと思うのですが、いまも委員長から御注意がありましたから……。やはりこれは国防会議でどうするかはきめられる、方針はきめられるものである。  そこで、中曽根長官時代に、もうこれからは応の長期の防衛構想を持って、そして計画を立てていかなければいけないということで、長期とは一応十年だ、十年の防衛構想を決定をして、そしてその前半の五年間という意味で、つまり、防衛構想に基づいた計画ということで新防衛力整備計画という名になっておった。ところが江崎長官お話を聞くと、日曜日のあの討論会では、第四次防衛力整備計画と呼ぶことにしましたとあなたはお答えになったようですが、いつの間にそう変わったのですか。
  143. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これはきめたわけではないのです。党側の要望が、第四次防衛整備五カ年計画と——従来五カ年計画という名称が入っておりませんでしたが、しろうとわかりというとおかしいですが、わかりやすいように五カ年計画と入れたらどうだ、こういう意見があることを紹介したのであって、こういう名称などについても年度内に正式にきめていく、こういう段取りになると思います。
  144. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは十年の防衛構想、中曽根長官時代にきわめられたそれは、まだ変更はあってないわけですね。
  145. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 先任者の意向でありますから私どもも十分尊重はいたしますが、これは正規の機関できまったものではない、そういうふうに承知をいたしております。そればかりか、この十年の構想に立つということは、通常兵器による局地戦以下の戦闘にたえ得るという、そういう意味を含めての十年と思いますが、国際環境は御指摘のとおりいろいろ変化してまいりますので、十分機宜の措置はとっていかなければならぬと思います。
  146. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 中曽根前長官は、新防衛力整備計画に関連をいたしまして、その平均的なGNPの問題について、ことしの五月三十一日、防衛生産委員会で、これは経団連のですが、講演をされております。ここに議事録がありますが、その中で「GNPの一%程度までは防衛費として出す、これは国際常識からいえばあたりまえのことでしょう、しかし日本のナショナル・コンセンサスという点も考えてみて、われわれは〇・九%前後、そういう程度でよかろうと考えて、今度のわれわれの計画は〇・九二%になっているのであります。」これはいわゆる人件費分も含めての五兆八千億の金額。  そこで経済企画庁長官、ちょっとお伺いをしておきますが、新経済社会発展五カ年計画、これは六カ年になって昨年から始まっておるそうであります。この五カ年間——六カ年になりますが、これはたしかGNPの平均を一〇・六ぐらいに見ておられたはずであります。しかし、今日の経済情勢も入れてこれは当然変更されるとわれわれは見るわけですが、どのようなお考えでしょうか。
  147. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 現行計画はただいま御指摘になりましたように、昭和四十五年度から五十年度までの六カ年計画で、年平均、実質値で一〇・六%、名目値で一四・七%であります。現在なおその計画は存続しております。  これが見直されるかどうかというお話でありますが、いろいろ内外情勢の変化もありますので、経済審議会にことしの春から幾つかの委員会をつくりましてこの情勢の変化、今後予想される問題点について現在研究を始めております。いつ、どういう形で改定するかということは、現在まだきめておりませんが、研究はすでに開始しております。
  148. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、四十七年度のGNPは実質どのくらい見られておりますか。
  149. 新田庚一

    ○新田政府委員 四十七年度のGNPを含みます経済見通しにつきましては、ただいま四十七年度の予算編成と関連しまして、作業検討中でございまして、まだ成案を得ておりませんので、明確にお答え申し上げることはできない状態でございます。
  150. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 全然予想もできないというわけですか。
  151. 新田庚一

    ○新田政府委員 現在、いろいろ作業中でございまして、的確な数字をもってお答え申し上げることはできないわけでございます。
  152. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 では、このくらいであるべきだという一応の目標はお持ちですか。
  153. 新田庚一

    ○新田政府委員 いろんな数字がございますけれども、非常に大ざっぱに申し上げますと、名目で約九十兆ぐらいになるのじゃないかと思いますが、まだはっきりした数字がございません。
  154. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 大蔵大臣は大体どのぐらいの率であるべきだ、あったがいいんだ、四十七年度GNP。どのようなお考えですか。
  155. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま、企画庁の作業を私のほうは待っておるところでございます。これがやはり予算編成方針のもとになるものでございますから、ただいまこの作業を待っているところでございますので、私のほうのこのくらいという希望はちょっといまのところ申し上げないほうがよろしいんじゃないかと思います。
  156. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、結局まだわからないし、このくらいであったほうがいいということもわからない。たいへん私はこれは問題があろうと思う。  そうすると、中曽根長官のあの論法をもってすれば、これはGNPの平均〇・九二と言っておるのですが、こういうことは全然もうこれは基礎にならないですね。江崎長官はどのようなお考えですか。
  157. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 たとえば、防衛庁自体におきましても、四月に発表したものを、本質には影響がない形にしろ、多少の減額をしていかなければならぬと考えたのも、いま議論をされますそのあたりの考慮も入れてのことでありまして、そういう考え方に立っておるわけですから、御了解願いたいと思います。
  158. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、三者会議では、とりあえず四十七年度の防衛費のお話をされたわけですか。四十七年度はどのくらいの伸び率と考えておられるのですか。
  159. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 いや、とてもそこまで議論をする時間もありませんでしたし、また、いま現に企画庁及び大蔵大臣の答弁でもおわかりのとおり、こういう事態ですからやはり年度内ということにしたわけでございます。のみならず、これは年内、なかなかお互いにこういうかっこうでありまするので、時間を見て旺盛にひとつ、この審議でも終わりましたら取り組んでいくわけですが、相当これは骨の折れることだと思っております。
  160. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 減額をしなくちゃならない、スローダウンをしなくちゃならないということは、大体そのようでございますが、そうすると、巷間いわれております大体五、六千億程度はスローダウン、削減しなくてはいけないのではないかという、見当はその辺ですか。
  161. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 一応そういう試算がないわけではありませんが、これらについても、まだ全然固まっておりません。これからということでございます。
  162. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、いま主として財政面、GNPとの関係からも当然これは変わるべきで、削減されるべきであろうと思いますが、これはわき道の問題であって、やはり本筋は、総理も冒頭言明されましたとおり、アジア情勢は、中国の国連加盟を中心としてすっかり変わっておる。この情勢も当然私はこの四次防の手直しの中に入れられるべきである、これが私は本筋であろうと思うのですね。その辺、ひとつ江崎長官の明確な御見解を承っておきたいと思います。
  163. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 長期計画でありまするから、これは十分検討を要する問題だと思います。しかし、さっきも申し上げましたように、ほんとうに安定が定着する、これにはまだ相当時日も要することでありまするので、その辺等もにらみ合わせて検討を加えてまいりたいと思います。  それから、もし将来情勢がほんとうに平和な形で安定が定着したというような場合には、ゼロから出発した、まだまだ足りない面の多い自衛隊のことでありまするから、たとえば、隊員の処遇の改善、世の中豊かになったわけですから、隊舎の改築とか、二段ベッドを一段にしていくだとか、あるいは民生協力ですね、こういった面に積極協力ができるような措置を講ずるとか、研究開発を進めるとか、教育の制度一つをとってみましても、必ずしも十分なものはないと思いまするので、そういう内部を充実するようなほうに目を向けていくことができれば、これは非常にいいことだというふうに考えておりますが、すべてそういったことも今後慎重に検討をしていきたいと思います。
  164. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は江崎長官のこれまでの政治的な立場から考えて、われわれと、それは安保条約に対する考え方は違っても、事実関係について、たとえば、国際情勢の見方等については大いに一致するところがあるのではなかろうか。したがって、そういう面では期待するところが大きいわけです。  そこで、時間がありませんから先に進みますが、せんだってコナリー長官が見えました。そして輸出規制の問題とからんで、四次防の国産化率の一部修正という相当強い要請があったはずであります。通産省は若干の手直しをするということに踏み切ったとわれわれは見ておりますが、具体的に申し上げます。XT−2はどうなりますか。二番目、早期警戒機AEWはどうなりますか。
  165. 久保卓也

    久保政府委員 国産化率の問題は別にいたしまして、いまおあげになりました二つの問題については、T−2もAEWも、原案どおり国産で購入、AEWは研究開発をして、装備については将来に待ちたい、こういうことであります。
  166. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうしますと、四次防の計画によると、XT12は高等練習機としては八十機、これは約四千億円、それから対地支援戦闘機として使うXT−2は百二十六機、計二百六機を調達する、この計画は変わらないということであるのかどうか。もう一つ、それからAEWでございますが、これは二十機ないし三十機という当初の予定でございます。これも変わらないかどうか。
  167. 久保卓也

    久保政府委員 T−2、FSの総機数、これは四次防期間中にはおそらく変わってまいりましょう。総額が削減されますれば、二百六機を四次防期間中に調達することはおそらくできないであろうと思います。それからAEWの装備の機数の問題については、これは四次防では全く決定しておりませんで、研究開発の方向だけをきめておる。装備の機数そのものは五次防の段階でおそらく問題として出されるであろうと思います。
  168. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうしますと、今度は観点を変えまして、三次防の国産化は大体八七%、輸入は、これはほとんど米国でございますが、八%、FMS、これはアメリカからの有償援助の分でありますが、これは五%、これを四次防では、この国産化率は九〇%にして、そして輸入のほうは七%、FMSのほうは三%、この七%、三%、合計一〇%は大体八億ドル見当という内容であったわけですが、この国産化率九〇%の原案は、これは下がるわけですか。
  169. 黒部穰

    ○黒部政府委員 ただいま先生から御指摘ありました九〇%の数字は、防衛庁の全調達の中で、国内から調達するもの、一般輸入のもの、それから先生指摘のFMS、かように三分類いたしまして、その場合に、国内調達がおよそ九〇%である、こういう意味でございます。  それからもしこれを、たとえば国内の業者でございますが、実はライセンス料を払う、あるいは部品を輸入するという面がございますので、これをやや正確に、さような外貨払いの面をとらえまして計算いたします。これは全品目についてはできませんですが、主要の装備品だけにいたしますと、三次防期間中にはほぼ八〇%、七六%程度というのが実績でございます。四次防ではこれがあるいは若干上がるかと思いますが、四次防全体の計画がまだ確定いたしておりませんので、どのような数字になるか、お答えできないわけでございます。
  170. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 大体方向としては通産省、どうでしょうか、この国産化率をいわゆるダウンさせるという方向に向かっておるのじゃないですか。そこで輸入分とFMS分、大体八億ドル程度見込まれておったのを、この手直しによって十億ドル程度に大体持っていくというのが通産省の大方の意見じゃないのでしょうか。
  171. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 先ほど先生が、先般コナリー財務長官が来まして、そういうような話があったということから、通産省の考え方がどうのこうのというような御指摘でございますが、先般コナリー財務長官が来た際、実は私も立ち会っておったわけでございますが、御指摘のような要求はなかったわけでございます。いずれにいたしましても、現在通産省としては、この輸入をふやすとか、あるいは国産をどうするとかということについて、まだ特に御指摘のような考え方を持っておらないわけでございまして、四次防全体として検討中の状況でございます。
  172. 床次徳二

    床次委員長 楢崎君、だいぶ時間が過ぎましたので、どうぞひとつ……。
  173. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そろそろ結論に入りたいと思いますが、それで私は、四次防の内容をいまの国際情勢に合わせるべきである、特にアジア情勢、言われておるとおり、アジア諸国に少なくとも軍国主義化の傾向ありというような脅威を与えないためにも、この四次防の内容から、われわれが考えただけでもこれはおかしいではないか、これは外国領域をねらう兵器とそれらの国から思われてもしかたがないものが入っております。ちょっと羅列してみます。  たとえば八千トン級のヘリ空母、これは大型対潜兵器HSS2、これを六機積む、これは予定では二隻ですが、そのとおりになるのかどうか。  それから揚陸艦、上陸用舟艇です。三千トンクラスの揚陸艦といえば相当のものです。これを三隻予定をされておる。これがこのままになるのかどうか。  あるいはVTOL、これは垂直で上がっていく戦闘機、この前名古屋の航空ショーに来た例の英国のホーカーシドレーのハリアーですか、これを購入するということは、今後空母をつくるその建造の準備と関連をしてくるわけであります。これは非常に有力な戦闘能力を持った戦闘機でありまして、直接いわゆる対象国を攻撃する能力を持ち得る。  それからPXL、これはどうなるのか、開発の着手は四十七年度からになっているが、もちろんP2Jのこれは後継機であります。そしていま開発でその目標となっているのは、いわゆる四発のジェト機、最大速度約九百キロ、航続時間十数時間、搭載兵器は約六トン、これは言うならば重爆撃機並みの大型機になるわけですね。  それからもちろん潜水艦九隻、これは全部いわゆるティアドロップ型ですね。  それから給油機を持ちますね。これがまた六機予定されておる。これは一体何ですか、これは足を長くするためでしょう。一体どこまで足を長くすれば気が済むのですか。この給油機を購入するなんというのも、これは非常に外国に対して脅威を与えると思います。  それからRF4E、これは一体どうなるのか。そしてRF4Eは沖繩配備を考えているのかどうか。  以上まとめてお伺いしておきます。
  174. 久保卓也

    久保政府委員 DLH、LST、これは検討いたします。したがいまして、隻数などが変わってくる可能性はあります。  それからVTOL機は、四次防では全然俎上に乗せておりません。  それからPXLは四十六年度ですでに研究費が入っておりまして、現在継続中でありますので、これは今後も続けてまいりたい。ただしスピードその他PXLの飛行特性からいたしまして、近代の重爆撃機として当然不適格であろうと私は思います。  それから潜水艦の隻数については、これは検討の対象になります。  それから給油機六機というお話でしたが、これは四次防で全然載っておりません。  それからRF4Eは、沖繩配備の計画はございません。
  175. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、少なくともいまあげたような兵器というものは、これはアジアの国際情勢から考えて、長官、これは再検討の必要があろうと思います。われわれは、これはもちろん反対でありますけれども、一歩下がって専守防衛といわれる際にも、この種の兵器は必要はない、このようにわれわれは考えるわけであります。  そこで、詰めに入りますけれども、せんだっての海上輸送作戦、これは長官もごらんになったでしょうか、総理はいかがでしょうか。せんだって問題にしました内容は、敵前上陸作戦教範でありますが、これはごらんになりましたでしょうか。
  176. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 この間、事務説明のときに概略は私、見ましてございますが、どうも時間的にひまがなくて、十分全部読了するというわけにはまいりません。これは敵前上陸なんという性格のものではもちろんなくて、国内において味方の陣地に輸送をするということがあくまで想定の基本になっておりまして、どうぞ誤解のないように願います。
  177. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は誤解もハチカイもしていないのです。私は幕僚会議でつくられたこれを問題にしておるのであって、これをお読みになりましたか、想定のところ。——いや、長官に聞いているのです。お読みになりましたか。味方のところに、国内のところに輸送するのだとおっしゃいましたけれども……。
  178. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 そういうことはまだ具体的に拝見しておりません。
  179. 高瀬忠雄

    ○高瀬政府委員 ただいま問題になっております「海上輸送作戦教範」の内容につきまして、御説明をさせていただきます。  この教範は御承知のように、陸上自衛隊の隊員とかそれから陸上自衛隊の装備とかを海上自衛隊の船でもって輸送をする、運ぶ、その陸と海との共同関係を規定したものです。したがって、これは統合幕僚会議でやる、こういうかっこうになるわけです。共同作戦を書いたわけですが、内容はそういうことです。  それから、敵前上陸というお話ですが、これは敵前上陸ではございませんで、陸の部隊、陸の装備品をある地域からある地域に海の船で輸送をする。そういう敵前上陸を考えておるものじゃありません。ただこの共同作戦の場合、有事の際を考えますので、潜水艦が出てきたりなんかすることも予想されますから、そんなことは注意をしなさいというようなことは書いてございます。敵前上陸というようなことではございません。したがいまして、先ほど申しましたように、海外に出て云云というものではない。これは日本のある一定の地域からある一定の地域に出ていくということでございまして、この教範の中にも、たとえば陸の方面総監の担当する二区域からある他の方面総監の担当する区域とか、あるいは海上自衛隊の地方総監の警備区域から他の海上自衛隊の地方総監の警備区域というようなことで、国内のことをもっぱらやっておるわけでありまして、もちろん先ほど申しました敵前上陸ではありませんし、海外に出るものではございません。  それから、先ほど申しましたように、教範は長官の訓令に従いましてつくりましたもので、言うまでもなく、憲法を守り、国土防衛に徹するという原則に従ってつくられているものでありいまして、海外に出るというようなことは毛頭考えられる性質のものではございません。
  180. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この教範は一冊しかないというお話ですから、ごらんになってないはずです。いまのようなことじゃないのですよ。いいですか。「海上作戦輸送は通常制海及び航空優勢を確保して行なうが、作戦間、敵航空機及び潜水艦による攻撃、並びに機雷による脅威が予想される。また、発地及び着地は味方の支配する海岸または港湾であるが、ゲリラ活動、謀略活動等については考慮する必要がある。」つまり制海及び航空優勢、これは主語がないですが、だれが確保するのですか。
  181. 高瀬忠雄

    ○高瀬政府委員 制海、制空のお話が出てまいりますが、先ほど申しましたように、この訓令は有事の際のことを考えますから、制海、制空というものが出てまいります。制海、制空につきまして考えなくてはならないのは、当然空、海の自衛隊であろうかと思います。
  182. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなたは幕僚会議じゃありませんね。これは航空自衛隊がやるとあなたは断言できますか。そうじゃないでしょう。これは米軍じゃないですか。さっきあなたは、かと思います、そういうあいまいなことじゃだめですよ。
  183. 高瀬忠雄

    ○高瀬政府委員 この教範は、先ほど申し上げましたように、陸海空の自衛隊の共同関係を規律したものでございまして、米軍がどうこうということまではこの教範は考えていないものでございます。
  184. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ちょっとそこへすわっておってください。  大体制海、航空優勢が確保されるような状態ならば、敵から国内に上陸されますか。何を言っておるのですか。こんなでたらめな想定をしてはいけませんよ。こういう制海、航空優勢が確保されるような状態なら敵から上陸されるわけはないのです。あなた、そうでしょう。何を言っておるのです。こんなでたらめな想定やっちゃいけませんよ。だから当然これは、たとえば例でございますから、韓国で問題が起こった、こういう状態のときにこの想定はぴったり当てはまる。だからできもしないことを想定に書いちゃいけませんよ。  だから、こういう想定で海上輸送作戦をやるということ、それから——総理はこれを見てください。これが敵前上陸でなくて何ですか、この絵は。——私はまだ終わっておりません。だから、この内容は完全な敵前上陸作戦です。ずっと読んでごらんなさい。こういうでたらめな想定を私は、江崎さんは今度なられた長官だからこの二月の段階では責任者でなかったからやむを得ませんけれども、こういう教程というものは、これは教程によって実戦訓練をやるのですから、私は内局あるいは長官がこの種の教範はほんとうに目を通していただいて、これはおかしいではないかというチェックをしてもらわないと、いわゆる制服組が独走しますよ。そうしてこういうことがいわゆる沖繩配備の自衛隊の問題とからんでくればどういうことになりますか。歴史をひもといてください。台湾にかつて日本軍が進駐したときには、まず沖繩に六百人の軍人と警官が行ったのですよ。それを基礎にして台湾に進攻したのです。歴史を知っておるでしょう。だから今度沖繩に六千八百人の自衛隊が行く、この目標は一体何であるか。そうすると共同声明の台湾条項と韓国条項が非常に問題になってくるのです。そうしてこういう教範がそのころ出てくる。それを私は問題にしておるのです。これはひとつ——もう時間がありませんから、私はこの点は長官ひとつ十分検討をしてもらわないと、こういうことがあるから私はいわゆるアジアの諸国から軍国主義復活のいわゆる脅威を云々されるのです。これはほんとうに読んでください。そうして私はこれに対する長官の最終的な御回答を明確にいただきたいと思うのです。
  185. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 私、実はまだそれを拝見しておりませんので……(「不勉強だ、不勉強だ」と呼ぶ者あり)まことに不勉強だと思います。しかし、御指摘がありましたからこれも至急ひとつ十分慎重に検討を加えたいと思います。  ただ、この場合はあくまで部隊を送る、機材を送る、それを陸海空総合的にやる。時にまた妨害があってもそれをスムーズにするための要綱というふうに私承知しております。  それからまた、そういういろいろな想定は千差万別、いろいろな場合があるわけですから、したがっていろいろな機宜の措置をとるようにやるということもこれは御理解を願いたいのですが、あくまで海外派兵はしない、これはもう厳然たる事実ですから、いまの想定によって国外派兵をするだの敵前上陸をするだの、もし敵前上陸なんというようなことがあるなら、それは日本の国土の一部が敵に占領された場合、そこへ向かって上陸するということはあるかもしれませんが、よそへ出ていくなんというようなことは、これはもう繰り返し今日まで述べてきておるように断じてありませんので、御安心を願いたいと思います。
  186. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 長官は読んでないから、読んでないならないようにお答えになったほうがいいのですよ、頭で想像されないで。こういう大船団を細めるような状態のときは、国内が占領されておったらこんな大船団は組めませんよ。これを読んでくださいよ、この想定からいって。だから私は、これはだれが読んでも敵前上陸としか思えません。こういう大船団をゆうゆうと組んで行くような状態なら、日本の国内はまだ外国からいかれていないときだ。外国からどこかが占領されておるようなそういう緊迫した状態ならば、こういうゆうゆうとした船団が組めますか。だから、できないことを書いてはいけませんよ。また、できないことをしてはいけない。もし私が言っているのが間違いなら、これは当然いわゆる韓国、台湾条項がひっかかってくるのです。それならこれは生きてきますよ。  そこで、この中に具体的に書いてあるのですよ。この前も言ったとおり、民間船を雇うようになっている、ネバダ、キャンベラ、ブラジル、スエズ、パナマ。これはあれですか、このようなときにはこういう船を雇うということですか。このような会社とも契約しているのですか。お話しなさっていらっしゃるのですか。かってにこういう船をおあげになったのですか。
  187. 高瀬忠雄

    ○高瀬政府委員 教範の中にただいま先生が言われましたような船の名前が確かに載っております。これは先ほど申し上げましたように、陸上の隊員や装備品を送る場合に、どの船にはどんなふうに載せるとか、どの船にどう載せるというようなことで、一例と書いてあったはずでございますが、例示としてネバダとかキャンベラとかという名前があがっておりますが、これはそういうような船を具体的に予想したわけじゃございませんで、またどこから雇うということも考えたわけじゃなくて、ただ例示として船の名前をあげたわけでございます。したがいまして、いま先生言われましたように、特に契約をしているとか、具体的にそういうような船があってそれを考えているとか、そういうことじゃございません。一例として、書類をつくる書き方としてこう一つずつあげた、こういうことでございます。
  188. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だめですよ、あなた。これは作文ですか。教範でしょう。この教範によって制服は訓練するのですよ。だから当然想定しているのですよ。それが証拠に、この前もあげたでしょう。四十三年度の海上自衛隊の演習では、具体的に英雄海運の船を雇っているではありませんか。そのときはタンカーを用船しているのです。そしてどういうふうに今後すると書いてありますが、一たん緩急の場合を想定をして、あらかじめ船会社と契約をして、そしてその船に乗る船員の素行調査までもしておく必要があると言っているではありませんか。私は架空のことを言っているのじゃないのです。私はこういう会社へ行ってみたのです。びっくりぎょうてんしていますよ。冗談じゃありませんよ。それはそうでしょう。ところが、自衛隊ではちゃんとこれを想定している。そしてあなた方の船は緊急の際はこういうふうになるのですよと言ったら、びっくりしていましたよ。これによって訓練しているのだから。もししていなかったらこういう教範はやめなさい。だめですよ、そういう答弁では。
  189. 高瀬忠雄

    ○高瀬政府委員 繰り返しになりますが、そこにある表は表としての書き方の一例をあげたわけでございまして、かりに先ほどのように船会社にそういう船のほんとうの名前がありましたならば、たいへん私どもで迷惑をかけたということになるわけでありますが、そういう船を現実に調べまして、これを予定して書いたわけじゃございませんで、ほんとうに何といいますか、一例として、例示として表をつくる上で書いたということでございまして、特にどこの会社の船で何トンの船というようなことを考えたことでもありませんし、それからそういった会社と特に契約をしているというようなことではございません。
  190. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなたがこの教範をつくっているのじゃないのですよ。だから私は幕僚会議の議長を呼びたかったのです。あなたがつくっているのじゃない。いいですか、単に思いつきでこの船をあげたんじゃないんですよ。この船の内容をこの前言ったでしょう。いいですか、キャンベラ、関西汽船です。四千八百三十九トン。これは香港航路の定期船なんです。貨物船。それからスエズ、これは三井商船、八千五十一トン。これはニュージーランド航路ですよ。貨客船パナマ、これは三井商船、九千百九十一トン、中近東航路なんです。貨客船。こういうものをわざわざ選んでおるのでしょう。架空でやっているのじゃないです。だからあなたがそういう答弁をするならば、私はこの教範をつくった責任者を呼んでもらわないとほんとうの問答にはなりませんよ。単に例示で、思いつきであげた。冗談じゃありませんよ。具体的ですよ、問題は。
  191. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは私も関係者によくただしたわけですが、あくまで仮定の名称だというふうに部内から私にも言っておるわけでございます。そこで、さっきの想定等について行き過ぎがないかどうか、これはいま大いに議論のあるところだと思いますので、私、拝見しまして慎重に検討したいと思います。
  192. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この教範は非常に具体的です、お調べになったらわかりますけれども。そうして用船までも具体的に実在する船をちゃんとあげている。それが単なる例示でないことは、先ほど申し上げたとおり、実際に海上自衛隊としては、四十三年度の海上自衛隊の演習で明確なごとく、船を実際に雇って演習している。そして今後こういうことが起こるから民間船の協力を求めるためにあらかじめ民間会社と契約をしておいて、いざというときにすぐ用船できるように、しかもその船の船員の素行関係も、これは問題があるところですが、素行関係もあらかじめ調査しておく必要がある。長官、こういうことになっているのです、海上自衛隊の方針としては。具体的なんですよ。非常に具体的なんです。だから単なる例示じゃないのです。
  193. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 十分検討したいと思います。
  194. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 長官がなられる寸前の、例の西村長官のときに私はこれを出したものですから、その直後あなたがなられたので、これは十分お調べになっていないかもしれない。ここでそれを要求するのは無理かもしれません。しかし事が重大でありますから、そうして私はこの久保・カーチス協定交渉の時期にこれがつくられたという点を非常に問題にしているのです。つまり沖繩への自衛隊の配備問題とからんで非常に重要でありますから、この沖繩返還協定、参議院段階も通じてこの協定が審議されておる中で私は明確にいたしたいと思います。  そこで、これも含めて最後に総理に御見解を承っておきたいと思いますが、先ほどから申し上げておるとおり、この四次防は、実際問題としても、事務的にも四十七年度というのは四次防の第一年度とはもうなり得ないわけです。そして先ほど江崎長官もおっしゃったとおり、一応中国の国連加盟の問題がこれあり、アジア情勢の変化はあるが、これが平和の方向へ定着するかどうかはもうちょっと時間をかけてみないとわからないという御答弁もありました。しかし、四次防というのはこれから五年先を先取りするのです。とすれば、固定化されてしまいますから、私はこの一年間くらいは、安保の問題なり自衛隊の問題で見解の相違はございますけれども、ここで何とかこの四次防の一年延期、そしてその間にじっくりその問題を検討して、国際情勢も含めて、その十分なる結論を出す必要があるではないか、これが第一点であります。  第二点目は、先ほどの上陸作戦の問題も含めて、国防白書が出されました。これは私も予算委員会で総理とやり合いしましたとおり、閣議決定ではないのですね。閣議了承と申しますか、そういうおことばでした。閣議決定ではない。つまり防衛庁発表の白書であります。そうしてあの中には、いわゆる憲法上の制約として、B52とかICBMとか、あるいは攻撃的な空母、これはいけません。それからまた海外派兵もいけません。それから政策上の歯どめとしては、非核三原則というような羅列がしてありました。  私はこの際、ひとつ総理に第二点目としてお願いしたいのは、防衛力増強の限界ということが叫ばれて久しい。なかなかその限界が明確に示されない。この点は、私は与党の皆さんだって、これは明確にする必要があるとお考えだと思うのです。この明確のしかたはいろんなアプローチの方法がある。一つは、いわゆるあなた方のお好みの財政上の問題から、経済上の問題から、あるいはたとえば社会保障費との均衡の問題からというアプローチもある。あるいはまた装備の面からありましょう、防衛白書にあるように、B52とかあるいはICBMとか攻撃型空母とか。しかし、私はこの際、憲法及び関連の法規、主として自衛隊法、この面から行動上の歯どめとして、行動上の限界として、以下の三つは総理の御答弁の形で、宣言と申しますか、これは国際的に宣言する意味を込めて——まず一つは非核三原則です。これが一つです。二番目は海外派兵をしないということ。三番目は国防白書で削られておった徴兵制度をしかないということ。この三つだけは、憲法あるいは関連法規上の限界として、三原則としてここで宣言できないか、この二点を最後にお承りをしたいと思います。
  195. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど米政府側の所見は部分的にはすでに表明しております。  まず第一は、四次防そのものでございます。私は国防会議の議長をしておりまして、まだ私自身の耳にまで達しておりません。いままでは四次防がいろいろ議論になっております。そうしてその全貌も、ある程度公式の場で発表されておりますから、皆さん方がそういう四次防が進行しておるだろうとお考えになるのは、これまた当然だろうと思います。しかし、私が申し上げますように、まだ四次防そのものが決定を見てないこと、これは事実でございますから——先ほど、官房長官立ち会いの上で防衛庁長官と大蔵大臣との間で過日話し合った、これは来年度予算編成をどういう立場に立って編成するかという、先ほど説明したようなことでございます。全然四次防もきまらないその段階で、とにかく予算はつくらなければならない、一体どういう点が最も力を入れられるか、こういうようなことで話し合った、こういうことでありまして、これで四次防をきめた、かようなものでないこと、これはひとつぜひ御了承していただきたいと思います。  それからまた、先ほど来ここでいろいろお話しになった敵前上陸なのか、あるいは輸送上の問題なのか等々、いろいろいかにも外国へも派兵することのあるかのような、そういう計画が行なわれておるとか、あるいは敵前上陸、外国への上陸がいろいろ計画されておる、こういうようなことでは、わが国の憲法も許しませんし、自衛隊法も許さない。これはもうはっきり禁止しておることでございますから、さようなことはないはずであります。しかしながら、教範等でさような訓練がされておるとすれば、これはわれわれもそれについての責任がありますから、十分検討して、さような誤解を生まないように、憲法を守り、また自衛隊法を文字どおり守る、そういうことでなければならない、かように思います。この点では江崎防衛庁長官からはっきり申し上げておりますから、これからは誤解がないようになるだろうと思いますけれども、ただいまの段階では、いかにも御指摘になりました、それをじっと聞いておると、外国へ自衛隊が送られるのではないか、また敵前上陸などいろいろ演習をやっているのじゃないのか、さようなことは、これはたいへんな問題だ、こういうようにお考えになることも、これもそういう疑念全然なしとなかなか言い切れない、こういうことでありますから、もう一度出直して、自衛隊自身は、さような点は誤解を受けないようにするつもりでございます。  そこで、さらにあわせて徴兵制、さようなものをこの際考えておるのじゃないか、こういうお尋ねでございますが、——そこまではおっしゃらなかったですが、この機会に徴兵制、これは採用しないことをはっきり明確に厳粛に、政府は考えてなければそのとおりを声明しろ、こういうお話でございますので、徴兵制は考えていない。このこともはっきり申し上げておきます。  また非核三原則、同時に核の持ち込み等につきましては、過日の衆議院本会議における決議、それに対して政府の所信を厳粛に声明したばかりでございます。これもあらためてこの機会に申し上げる筋はないかと思っておりますけれども、この点も御記憶にとめていただきたい、かように思います。  以上、お答えいたします。
  196. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 四次防の一年間延期という意味は、重ねて申し上げますけれども、われわれもいろいろまだ意見を言いたいのです。また国民のいろいろな、ほかの専門家等の御意見もあろうかと思います。だからこの一年はひとつ重要な時期だから、一年間を検討の時期にする、そういうこと。それから二番目の点は、いわゆる憲法及び関連法規上の限界として、行動面から非核三原則、海外派丘はしない、それから徴兵制度はしない、これは審法の三つのタブーとして、われわれは今後とも堅持していく、そういう宣言があったものと受け取りまして、これで終わります。ありがとうございました。(拍手)
  197. 床次徳二

  198. 中谷鉄也

    中谷委員 いわゆる暫定使用法案について十一月三十日に質問、その後十二月の四日に質問主意書を提出、十一日に政府から答弁書を受領いたしました。本日は、右答弁書を中心といたしまして、一昨十一日、数十項目にわたる質問通告をいたしておきましたが、特に最も重要と思われる数点にしぼって、あくまで本法案が憲法違反の内容を含むものであって許容し得ない、政府において当然撤回さるべきであるという観点に立ってお尋ねをいたしたいと思うのであります。そこで、事法律論でありますので、正確にお尋ねをいたしたいと思います。  私は、十二月四日の質問主意書において、質問主意書第二項「告示について」二の1、2に詳細な明確な答弁を求めたのであります。この点について、政府は答弁書二の1の(一)において答弁をされました。あらためて告示の性格についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。
  199. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答え申し上げます。  告示の性格については、一昨日でございましたか、東中委員からの御質疑がございまして、それにお答えしたところでございますが、この告示の法律的性質を抽象的に取り上げまして、今回の法案の告示の法律的性質は一般的に何かといえば、これは先般も申し上げたとおりでありますが、私どもの考えでは、準法律行為的行政行為たる性質を有するものだと思うということはかねて申し上げました。さらに何かいろいろ論議が発展するのだと思いますので、一応ここでとどめておきます。
  200. 中谷鉄也

    中谷委員 答弁書二の1の(一)、会議録にとどめる意味で、最大に重要と思われる点でありますので、答弁を引用いたしておきたいと思いますが、答弁は次のごとくであります。   暫定使用法(案)第二条第二項の告示は、同条第一項の規定により使用権の設定される土地等を具体的に明らかにして、あらかじめ関係権利者に知らせる処分であるが、それは、沖繩にわが国の施政権が及ぶ前に沖繩にある土地等について公用使用権を設定するものではなく、沖縄復帰を停止条件として公用使用権を設定しようとするものである。  これが政府の私の質問主意書に対するところの御答弁でありますが、この御答弁中妥当でない、正確でない、不適切として削除さるべき部分があれば、どの部分が削除さるべきでありますか、お答えをいただきたい。
  201. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ただいま告示の法律的性質を抽象的に取り上げて、この告示一般の法律的性質を申し上げたわけでありますが、この告示が具体的な問題として取り上げられるのは、しばしばこの質問があった経緯に照らしましても、またそれをバックにした質問主意書の趣旨から、本旨からいいましても、やはりこれは不服の申し立てなり、訴訟との関係において、いわゆる行政庁の処分に当たるかどうかという点であるに違いないと、私どもは、まずそれを感じたわけであります。私どもと申しますのは、この起草の衝に当たった者を含めてでありますが、そういう感じを持った。それは施設庁長官も申し述べたところでありますが、行政庁の処分になるという考えでございました。  ところで、質問主意書の質問事項は、いま申し上げたとおり、私どもとしては告示の抽象的な性質を法理論上究明するという目的からではなくて、やはり救済手続との関係における実際問題として取り上げられているものと理解をいたしましたので、これをそのよって立つ基盤たる法との関係において、処分としてとらえた次第でございます。  で、その辺が説明として何といいますか、告示の一般的性質とのからみ合いにおいて、これを説明するところに欠けるものがあったかと思いますが、この具体的な問題としては、いま申した訴訟なり不服の申し立てなりとの関係において説明すれば足りるのではないか。あるいは質問の本旨をわれわれ十分につかんでいなかったかもしれませんが、そういう見地で申し上げたわけでありまして、そのようにまた御理解をいただきたいと思います。
  202. 中谷鉄也

    中谷委員 私の質問主意書は、告示の性格について、「告示について」が質問主意書の第二項であり、第三の質問が「不服申立及び原告適格について」であることは主意書記載のとおりであります。  だとするならば、重ねてお尋ねいたしますが、「告示について」という私の質問主意書に対する二の1の(一)のお答えは、準法律行為としての性格を持つ通知行為としての告示、右通知行為には条件は付せられないことは民法の初歩的な原則、そのような前提に立って、この二の1の(一)の御答弁は、答弁書記載事項は、訂正をさるべき個所を私は含むと考えます。いかがでございましょうか。
  203. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ただいま申し上げましたように、告示の抽象的な法律的性質、これもお尋ねでありますとすれば、いま申し上げたような準法律行為的行政行為たる性質を有するものであろう。  ところで、これが具体的に問題になりますのは、訴訟との関係についてであろう。そうなれば、それは行政庁の処分として理解されてしかるべきものであろうという考えを持っておりました。  それをことばをきわめましてるる御説明すれば、あるいは御満足がいただけたものかと思いますが、何ぶんにも私どもがいただきましたのは八日でありまして、この質問主意書を受け取りましたのは。それを国会法は法定期間七日でございますが、いろいろなことをお察しをいたしまして三日で仕上げたということもありまして、きわめてそういう御質問に対する周到な点がなかったかもしれないと思います。これは実は私どもがそういうことの関連において具体的な問題としてとらえたというところに原因があるわけでありますが、その点についての説明は、ただいま本日ここで申し上げたことを補足的に申し上げさせていただきたいと思います。
  204. 中谷鉄也

    中谷委員 委員長に申し上げたいと思いますが、私は土曜日の日に、事は法律の見解をただす、こういう質問でありますので、特に質問内容は数十項目通告をいたしました。そのうち、本日は数点にしぼってお尋ねをいたしたいということであります。時間の関係等もあろうかと思います。しかしながら、委員長の御了承を得たいのは、事は数点はどんなことがあっても、疑義は解明をいたしたいという点であります。したがいまして、その点について法制局長官とのやりとりの中で、委員長お聞き取りいただいておりまして、どうしてもやはりこの点はさらに詰めなければならぬという点については御了承いただきたい、こういうふうに私はあらかじめ申し上げておきたいと思います。質問は数点でありますけれども、この点については、本日は徹底的に疑義を明らかにしたいと思います。  そこでお尋ねをいたします。  答弁であります。「暫定使用法(案)第二条第二項の告示は、同条第一項の規定により使用権の設定される土地等を具体的に明らかにして、あらかじめ関係権利者に知らせる処分である」これはすなわち、あとでこの点についての疑義は提起をいたしますが、まさに第二条第二項の告示についての質問主意に対するところの答弁の柱をなしていると私は思うのであります。その以下、答弁であります。「それは、沖繩にわが国の施政権が及ぶ前に沖繩にある土地等について公用使用権を設定するものではなく、」とある「それは、」というのは「告示」を受けたことばと、この場合読むのが当然であろうかと思うのであります、この答弁書の記載といたしましては、「それは、」とある以上は。だといたしますと、告示によって使用権が発生するものでないことは、これまた法律家であれば明らかであります。しかも通知行為が準法律的行為の性格を持つかどうか。かりに準法律的行為の性格を持ったとしても、通知行為に条件あるいは期限を付し得ないということ、これまた明らかなことであります。だとするならば、この答弁二の1の(一)の「処分である」以下は、私は、告示に対するお答えとしては、本日、私は会議録の施設庁長官答弁等は引用いたしませんが、それらとの関連において誤りを含んでいる、削除されるべきものである、このように考えますが、いかがでございましょうか。
  205. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ただいま御指摘のものは答弁書の二の1の(一)の部分でございます。これは、先ほど来申し上げておりますように、告示の抽象的な一般的性質、これはもう何度も申し上げませんが、それを離れて、訴訟上の問題、行政不服審査上の問題として取り上げてきた場合に、それは行政庁の処分として当然入るであろうというのが一つ前提にあるわけでありますが、ところで具体的な問題でありますが、告示がなされたときには、その後に沖繩返還という事実が到来しましたときに、告示された範囲内の土地について、告示された使用の方法により使用することができる権原が国等に与えられることになることは、法律の構成上明らかなことでありますが、この事実の到来によって告示と法律規定が一体となりまして、これは一昨日は法的基盤と申し上げましたが、一定の法律効果を生ずることになっているところからしまして、もしこれを訴訟の対象として、いままで申し上げたようなことでいえば、これは停止条件つき行政処分になぞらえて考えるのが理解を容易にするゆえんであるというふうな見地から述べたわけであります。  答弁書の本旨は、いま申し上げたような趣旨で申し上げたつもりでございます。
  206. 中谷鉄也

    中谷委員 質問を繰り返したくはありませんが、準法律行為としての通知たる告示について停止条件を付すことはできないわけですから、それになぞらえたこと、それは不正確ではないでしょうか。
  207. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 先ほどの御質問にお答えをしなくて申しわけございません。告示というもののいわゆる法律的な性格、それが準法律行為的行政行為、特に表示行為であるということになれば、これ自体に条件を付することができないことは仰せのとおりであります。  そこで、きょうお話をしておりますのは、実はそれが行政庁の処分という観点から、これを実は言おうとしたものでありますから、その観点から、この訴訟の対象なり行政不服上の対象になるということの見地からなぞらえて申し上げた、こういうわけでありまして、一般的性質の告示自身に条件がつけられないことは、もとより当然のことでございます。
  208. 中谷鉄也

    中谷委員 大事な点であり、適正手続の基本に関する点でありますので、どうしてもこの点は納得いくまでお尋ねをさせていただきます。  答弁書記載の「それは、沖繩にわが国の」以下の「それは、」とあるのは前段記載の「告示」をさしていることは、文脈上、文理上当然であります。したがいまして、「それは、」以下は、告示の性格を、「公用使用権を設定しようとするもの」にと当然読ましめる答弁に相なっているわけであって、それは、公用使用権の設定は本法によって設定さるべきもの当然であります。したがいまして、文脈上、文理上、この二の1の(一)の答弁は正確に、あらためて削除さるべき面は削除さるべきである、私はそのように考えます。したがいまして、この点について削除をいただかない限り、しかも私自身が、削除されないことが合理性がないと考える限り、私は委員長の得了承を得て、この問題について何時間でも質問せざるを得ない。それは当然のことだと思うのです。法案の骨子、柱をなしているところですから、あらためて、適切な表現として二の1の(一)はどのように相なるべきか、まずそれをお答えをいただきたい。しからば、この答弁書において削除さるべき部分は、おのずから明らかになってまいります。
  209. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答えを申し上げます。  「それは、」というのは一体何であるかということでございます。それは、いままで申し上げてきましたところからお察しを願えないかと思いますが、行政庁の処分と不服申し立ての対象あるいは訴訟の対象ということを念頭に置きながら書いているものですから、法の基盤たる、つまり二条一項との関係において、つまり告示の、そういう基盤を持った告示として、つまり告示の実体において、そのことを、実体を踏まえながらこの説明をしたつもりでございます。しかし仰せのように、これはどうもはなはだ明快を欠いているではないかという御指摘については、これは答弁書としては、私がいま申し上げたような趣旨において書いておるつもりでございますけれども、したがって、そういうふうに御理解を願いたいわけでありますが、答弁書としてはすでにお手元に答弁をしているわけでございますので、いま私が申し上げているような趣旨に御理解を願いたいということを申し上げるほかはないわけでございます。また書いたつもりはそのとおりでございます。
  210. 中谷鉄也

    中谷委員 法律が一人歩きすると同時に、私も質問主意書に責任を持ちます。政府も答弁書に責任をお持ちいただきたいと思うのです。したがいまして、当然文理上あるいは文脈上読めないことをそのように読んでもらいたいとおっしゃっても、これは私は読めません。了解をすべきことではないと思うのです。適正手続の基本に関することでありますから、了解をするわけにはいかないわけであります。したがいまして、二の1の(一)は、「暫定使用法(案)第二条第二項の告示は、」という答弁書は、「同条第一項の規定により使用権の設定される土地等を具体的に明らかにして、あらかじめ関係権利者に知らせる処分である」で切ってしまうか、そうでなければ、同じことの繰り返しになりますが、「それは、沖繩に右処分により法定使用権を設定される土地の区域等を指定するものである」とかというふうな答弁書記載であることが、私はあたりまえだと思うのです。ただしかし、これは私のほうから答弁書を記載したようなことを申し上げましたが、問題は、ですからお答えとしては、「関係権利者に知らせる処分である」以下で切るべきである、その以下は私は削除さるべきであると思います。これはどうしてもそうでなければ、従来からの私の質問主意書、土曜日に差し上げましたところの、御答弁によって一そう告示の性格が混迷をきわめてきたという私の質問メモ、あるいは同僚各議員の質問等を私は受けて——おそらく、この軍用地問題については私自身の質問が最後であろと思うのです。どんなことがあってもこの問題については明確にしたい、明確にする義務があると私は考えるのです。お願いいたします。
  211. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答えを申し上げます。  御指摘の点についての私のお答えは、きょうのお答えはお答えとしておわかりいただけるのではないかと思いますが、この答えがこの表現では出ていないではないかということに帰着すると思います。私どもとしては、この表現が、まあ真実、法文の作成のように、正直に言いまして、私がよく練ったわけではございません。ございませんが、いま申し上げたような趣旨において書いたものであるというふうに御理解をいただくようにお願いしたいと思うのでありますけれども、このものをここで削除をするというわけにはこれはまいりません。実はそれでよろしいというわけにもまいらぬと思いますが、しかし、私がきょう申し上げていることについて御疑問があれば、それがこの本旨のつもりでございますので、私が申し上げたことについてひとつ議論を展開していただきまして、私がこれについて十分なお答えをいたしたいと思います。
  212. 中谷鉄也

    中谷委員 法制局長官は、おそらく御答弁の前提として、この答弁書は閣議決定のものである、したがって、ここで削除というわけにはいかない、とおっしゃろうという意味をお含みになっておられるだろうと私は思うのであります。  じゃ、ひとつこういうような聞き方をさしていただきます。二の1の(一)の御答弁として、正確な、誤解を招かない、質問主旨書に沿う答弁としてはどのような答弁であるべきであったか。  これは私は、本日は答弁書と主意書を中心にしてお尋ねをするということを申しました。十一月三十日の会議録等を引用などをしてお尋ねをしないと申しましたけれども、十一月三十日の会議録、島田政府委員答弁、すなわち、告示の性格についての「停止条件としたところの一つ法律行為の効力」というふうに述べておられることの関連において理解をするならば、むしろ、先ほど法制局長官がきょうの私の答弁をもってして了承してもらいたいと言われても、すでにここにそういう会議録がある。政府の従前の見解はそのとおり。だとするならば、私は了承をすべきではないと思うのです。訂正するとすれば、閣議において訂正さるべきことでありましょう。どの点が訂正さるべきでありますか。  むしろ、私は、きょうは法律論の議論をきわめて冷静に、しかも気力を尽くしてやりたいと考えて、この発言台に立たしていただいた。決して大きな声を出すつもりで立ったわけではありません。しかし、むしろ、一言言わしていただくなら、持ち回り閣議をそこでやっていただきたい、私はそのくらいの気持ちであります。  訂正するとするならば、どの部分がどのように訂正さるべきか、最低限その点は明確にしていただきたい。
  213. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 中谷委員質問主意書、これは国会法の規定に従ってお出しをいただいて、それが国会法の規定に従って内閣に送付をされて、内閣では、先ほども申し上げたことでありますが、法定期間をときには延ばしていただくわけでありますが、これをむしろ縮めまして、御要請と推察するところにお答えしようということで出したわけでありますが、内閣から御質問に対する答弁書として実はお手元に届いているはずでございます。したがって、その答弁書にもしもさらに御疑問があれば、それはやはり質問書の形でさらに答弁を求めていただくことは御自由でございまして、そのときには、いま仰せになったような、また私が答えたような趣旨が十分にわかるように、さらに補足をするということはあってもいいかと思いますが、ともかくも、いまは国会の審議中でございますので、御疑問があれば私はすべてについてお答えを申し上げたいと思います。
  214. 中谷鉄也

    中谷委員 国会法の規定によれば、正確に国会法を引用できているかどうかわかりませんが、緊急を要する場合、議員は口頭をもって内閣に対して質問をすることができる、それについては院の議決を必要とするとあります。しかし、すでに告示のこの点については一そう不明確、不明瞭になっているというのが、私の土曜日の際の質問メモであります。もし法制局長官そのようにおっしゃるなら、この問題についてどの部分が、じゃ私が再質問主意書を出した場合に訂正されるべきですかと私は聞いている。されるような想定をお持ちになりますかと聞いている。それを再質問主意書を出す自由があるでしょうというならば、私はきょうは冷静に、重ねて申し上げますけれども、大きな声を出さずに法律論をやりたいと思って出てきた。しかし、そうなれば、わが党の理事にお願いをして、休憩をしていただいて、議長さんのところへ私がお伺いをして、院の議決を受けた上、あらためて口頭で質問を通告をして、再質問主意書の趣旨を申し述べて、そして閣議の御決定をいただいて、そのあと質問に入らなければならぬということに相なってくる。それでよろしいのですか。
  215. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 中谷委員も非常に冷静におやりいただいております。私も冷静にお答えをいたしたいと思います。  ただいま再質問主意書を出すことは自由であるということは、かってな気持ちで実は申し上げたつもりではなくて、あるいはけしかけるつもりでもむろんなくて、とにかく質問主意書に対する答弁書をお出しをして、そうしてその答弁書に対する疑問をお持ちになっているものですから、その疑問にいまお答えをしているわけでごございます。それで、まさに審議中でございますので、十分にこの点についていままさにそれを論議されているわけでありますから、その点についてお答えをさしてください、そのお答えは、大体いままで申し上げたとおりでありますが、そういう点についてのまた御質問点が、もしもそれが自分にとっては中心であるということであれば、中心に焦点を合わせた答弁ぶりというのは、むろんあり得ると思います。あり得ると思いますから、いま実はそういうことを伺ってその御答弁を申し上げているつもりでございますが、それでも足りないということであれば、そういう方法もありましょうということを申し上げたわけで、私、どうも放言的に申し上げたつもりはさらさらございません。その点は御了解を願いたいと思います。
  216. 床次徳二

    床次委員長 このままで十分間休憩いたします。    午後三時十三分休憩      ————◇—————    午後三時三十五分開議
  217. 床次徳二

    床次委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中谷鉄也君。
  218. 中谷鉄也

    中谷委員 私は、先ほどから告示の性格について政府の答弁書に対して疑義を提起をいたしましたが、私が再質問書をかりに提出したとするならば、先ほど読み上げました二の1の(一)以下の「それは、沖繩にわが国の施政権が及ぶ前に沖繩にある土地等について公用使用権を設定するものではなく、沖繩復帰を停止条件として公用使用権を設定しようとするものである。」との点、及び二の2に関する「告示の性格は、1(一)において述べたとおりであって、その条件付き処分としての効力は、」とある「その条件付き処分としての効力は、」とあるのは、「その効力は、」と訂正さるべきと考えますが、総理の御答弁を求めたいと思います。
  219. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私もいろいろやりとりを伺っておりましたが、なかなか専門的な御意見の開陳でございますから、総理といたしましてもどうもお答えようがなかった、かように思ってたいへん残念に思います。しかし、ただいまお話しのように再質問主意書を受け取りました場合には、御指摘趣旨に沿うよう十分に検討を加えて答弁するようにいたすつもりでございます。
  220. 中谷鉄也

    中谷委員 当然前向きに御検討さるべきもの、それは法律論でありますから、そのように了承をいたしたいと思います。  そこで私は、二の1の(一)の「暫定使用法(案)第二条第二項の告示は、同条第一項の規定により使用権の設定される土地等を具体的に明らかにして、あらかじめ関係権利者に知らせる処分」とある点について繰り返し繰り返しお尋ねをしてまいりました。この告示の効力が法域を異にする、現にアメリカの施政権下にある沖繩に及ぶことについては、いまなお理解しがたいし、了承し得ぬものがあるのであります。答弁書は、「沖繩に居住していると否とを問わず、当該告示の日に発生する。」すなわち異法地域である沖繩にも及ぶことが妨げられるわけでないという趣旨答弁をしておられるわけであります。その理由を私は明らかにしていただきたいと思うのであります。施設庁長官
  221. 島田豊

    ○島田政府委員 この告示の効力が沖繩に及ぶかということでございますが、この告示は官報による告示を考えておるわけでございます。したがいまして、官報の告示の効力というものが直ちには沖繩にそのまま及ぶということではないと思いますけれども、この告示という一つの行政行為の効力は、本土におる沖繩在住者に及ぶということはもちろんでございますけれども、これはやはり沖繩の方々にも及ぶというふうに解せざるを得ないわけであります。  そこで、先ほど来この告示の性格論についてお話がございますように、やはりあらかじめこの告示をいたしまして、そして沖繩復帰という時点におきまして、この告示とこの法律とが一体的な意味をなしまして一つ法律効果を発生をする、こういうことでございますので、あらかじめこの使用権の対象になる土地あるいは使用方法というものを公示しますための告示というものは、これはやはり沖繩にも及ぶ、こういうふうに解せざるを得ないわけでございます。したがいまして、それに対するところの各種の異議申し立てあるいは行政訴訟というものがそういうことにおいて可能となる、こういう考え方でございます。
  222. 中谷鉄也

    中谷委員 この法案の配付を受けまして、直感的におかしいと思い、その後執念をもってこの法案に取り組んでまいりました。本日、まあ率直に申し上げまして、施設庁長官よりは私のほうがかなり詳しくなっているんではないか、こんな感じがするわけですが、せっかく御答弁にお立ちをいただきましたのでお尋ねをいたしたいと思います。  大前提がございますね。復帰の日を迎えなければ本土法はすべて沖繩に適用されるものではない。政府が従来言っていた施政権の壁でございますね。  そこでこの法律は、告示、使用権の設定、そうして通知という、こういう法律上の構造を持っている。附則の一によって、公布の日から告示は施行することになっている。ただしかし、公布の日から施行したとしても、告示を先行施行したとしても、本土法が沖繩に及ぶのは復帰の日であることについては何ら変わりがないといわざるを得ないと思うのであります。施政権の壁と法律の告示の効力との関係において、それは私は大前提——なぜ告示だけが、ただそのことだけが沖繩に及ぶのか。これはどう考えても私は論理構成いたしかねる点であります。わからない点であります。理解しがたい点であります。あらためて沖繩にも及ぶと解せざるを得ない、それが官報に掲載するからだとおっしゃること——官報掲載というのは告示の方法であります。そのことがなぜ沖繩に及ぶのかということの、異法地域に及ぶのかということの御説明にはなっていないと思うのであります。むしろ官報に掲載するということ自体が、沖繩に効力の及ばないことの証明にさえなるのではないでしょうか。あとの、私が質問主意書で提出をいたしましたいろんな事実上の措置については、これは法律問題ではありません。法律問題でないことをもって知ったとか知らないとかいうふうなことであるならば、テレビで見たとか新聞で見たとかということと全く同じであります。法的に及ぶのかどうかという点が問題だと思うのです。島田さんの御答弁を、法的な見解を承りたい。
  223. 林信一

    ○林(信)政府委員 非常にむずかしい問題でございます。告示の効力、性格につきましては、先ほど長官からいろいろ御説明申し上げました。この暫定使用法案によります告示は、お説のように二条一項の規定と相まって具体的な法律効果を生ずる。そういたしまして目的たる土地は、現在施政権外である沖繩に存在する、わが国の施政権外にある沖繩に存在いたします。その土地に対して使用権を設定する、こういうことになるわけでございます。  そこで、告示はどういうものかと申しますと、内容は、先ほどのように、その際の強制使用権設定の対象となる土地、工作物及び使用方法、それを具体的にあらかじめ確定して関係権利者に知らせるというようなものでございます。そこで、告示がありますと、少なくともその対象になる土地、工作物の範囲が確定したという効果といいますか、ということは否定できないわけでございます。  そういたしまして、大体告示が一体施政権外にあるものに効力が及ぶかという御疑問でございますが、これは一例をあげますと、たとえば沖繩に居住しております外国人が日本国に帰化したいという場合に、帰化の許可はもちろんこちらでやるわけでございますが、国籍法によりますと、帰化の効力は、官報に公告する、その行為処分によりまして効力を生ずるということは国籍法に規定してございます。その場合に、いま申し上げますように、本人が沖繩に居住しておりましても当然効力が及ぶということに相なるわけでございます。
  224. 中谷鉄也

    中谷委員 私は、想定問答等私自身が想定しまして、そのようなお話があろうかと思ったのです。あるいは沖繩の弁護士に本土の弁護士の資格を与えるという法律をお引きになろうかと思った点もありました。しかし、どう考えてみても、私はいまの場合の適例ではないと思うのです。  そこで、一つ一つお聞きしていきますが、この法律ですね、附則の施行期日に関する——まずこれは告示については「公布の日から施行する。」という規定でございますね。そうでございますね。これは一体復帰までに沖繩に及びますか及びませんか。あたりまえのことをお聞きします。
  225. 林信一

    ○林(信)政府委員 御質問趣旨、正確にとらえがたい点がございますが、この附則第一項ただし書きで、第二条第二項の規定は、公布の日から施行する、こうございます。そういたしまして、二条二項の規定は、内容といたしましてはこういう告示を所定の行政庁がやるということで特に権限を与えろという形になっておりますから、沖繩との関係を論ずる必要はあるかどうか、ちょっと疑問に思います。
  226. 中谷鉄也

    中谷委員 沖繩に適用はされませんね、とにかく。
  227. 林信一

    ○林(信)政府委員 沖繩に適用されるとおっしゃる意味が実はよくはっきりしませんのですが……。
  228. 中谷鉄也

    中谷委員 沖繩で効力を発するのは復帰の日であることは間違いございませんね。この二条の施行期日に関する規定が、幾ら先行して、これだけを公布の日で引き抜いたとしても、法律そのものが沖繩で効力を発するのは復帰の日でございますね。あたりまえのことを聞いているんです。
  229. 林信一

    ○林(信)政府委員 立法、司法、行政三権が及んでおりません沖繩に対しまして、これは立法行為でございますから、沖繩において立法としての意味を持つかという御趣旨であれば、そういうことはないと申し上げざるを得ないわけです。
  230. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、告示についての法律根拠は、まず附則によって、公布の日から施行されることによって、そうして二条二項の規定によって告示が記載されている、こうでございますね。  そこで、本法自身、親の法律であるところの暫定法自身も、当然復帰にならなければ適用されないことは明らか。しかも、当然公布の日から施行するという施行期日に関するこの問題、二条二項に関する部分も、復帰の日でなければ適用されないことは明らか。にもかかわらず、それに基づく告示の効力がなぜ、二条二項が何ら沖繩に適用されないのに、なぜそれだけがすい星のごとく——そうですね、すい星のごとく、あるいはまた暗夜に一条の光がいくごとく、なぜ沖繩に告示の効力が及ぶのでしょうか。及ぶという論理構成の一つとして帰化の問題をお引きになりました。しかし、これは奪うものではなしにまさに与えらるべきもの。だから、結局それは本法の場合の例として引用されることについて、私は友人の行政法学者に見解を聞いてまいりましたが、そんな答弁が万一出たら、中谷君、心臓は弱いけれども笑い飛ばしなさいと、こういうふうなアドバイスを受けてまいったんです。全く、私のほうから先回りして申し上げておきます。弁護士について本土の弁護士資格を沖繩の弁護士に与えるものについても、試験期日の公告等はありました。これはしかし、土地を奪うものではなしに資格を与えるものであったわけです。そしてこれは、実体論は私はやりません。それは法律家であって、沖繩の弁護士は法律家であって、ごく少数であったというようなことは言いませんけれども、それをかりに知らなければ資格試験が受けられなかったという事実が生ずるだけなので、告示の効力が及ぶんですよとか、帰化の問題について官報に掲載されたらと、それはもうとにかく当然本土へ来てそれを知ればいいんであって、要するに官報に掲載されるということ自体、告示の効力は及ばないことになるといわざるを得ないわけです。本法が及ばないのに告示の効力だけが及ぶというのは、私はとうてい納得がいかないわけなんです。別の角度から御説明をいただきたい。
  231. 林信一

    ○林(信)政府委員 お答えいたします。  法令の地域的効力の御趣旨か、どうもちょっと私つかみかねる点もございますが、たとえば別の例で申し上げますと、在外公館、領事館あたりで手数料を徴収いたしますが……(中谷委員「それも聞いてきました」と呼ぶ)この手数料を定める政令なり省令というものは本土内でしか公布行為が行なわれない。にもかかわらず、これは在外公館で定められたとおりの手数料を徴収するということになるわけでございます。  先ほど申し上げました国籍法の例にいたしましても、基本的に申しまして、たとえば属人法的なもの、こういうものは外国にいるからどうかというようなことはないというふうに考えるのでございますが、ただいまの問題は、実は具体的な土地そのものがどうかと、即地的に法律が効力を及ぼすかということであれば、それは及ぼさない。しかし、その土地について権利を持っておる人、その人との関係、その人とこの法律による公用使用権といいますか暫定使用権、強制使用権、将来この法律が施行になります際に、当然具体的に発生いたしますその公用使用権との関係において、現に権利を持っている人は将来そういう拘束を受ける、制限を受けるということが確定されておるということに相なる、かように考えるわけでございます。
  232. 中谷鉄也

    中谷委員 告示によって結局そういうふうな区域の指定を受ける、そのことは、私は法律規定のとおりだと思うのです。そのことによって、だからこそ沖繩三万八千の地主はたいへんな迷惑を受ける。あるいはまた、そのことによってたいへんな社会問題化もしている。そのことと効力が及ぶということとはおのずから別個のことではないでしょうか。要するに、手数料の問題などというのは対人的な問題であって、とにかく沖繩にある土地の区域を特定をするということについての告示の効力が——米国施政権下の沖繩に本土法は及ばないのだといっておる。それはもういま部長お認めになったとおりであります。その本土法に根拠を持つところの、その本土法は復帰の日でなければ適用できないのに、その告示の効力だけが及ぶということは、どう考えたって論理矛盾ではありませんか。法制局も、この点についてはおそらく長官部長、課長、若い課員の方を含めて論議されたところだと私は考えます。  重ねてお尋ねをいたしまするけれども、異法地域に及ぶということを納得のいくように御説明をいただきたい。おっしゃっておられるのは、及ぶのですという結論だけが同じであって、及ぶという論理構成は、私はロジックがないと思うのです。問題はその理論、論理を私は明確にお答えいただきたいということなんであります。
  233. 林信一

    ○林(信)政府委員 非常に微妙な問題でございまして、御満足をいただくお答えができるかどうか自信ございませんが、ただいま申し上げましたように、この告示は、対象となる土地等の範囲を確定する、将来必ず法律上当然に生ずる公用使用権、その対象範囲を確定する、その関係が具体的に権利を持っておる人との間で確定するわけでございますから、その程度の効果はある。つまり告示だけ切り離して効果は制度的には考えられないわけでございまして、あくまで法律と合わされないと具体的な法律効果というものは出てこないわけでございます。そうして、法律はまだ施行はされておりませんけれども、潜在的にはそういうことで確定しておるわけでございますから、かりに、本土にその人がおりましてもその関係は同じであると存じます。沖繩にあるか日本にいるかということについて差異はない。法律がまだ施行されてないという点では同じだと存じます。しかし、二条二項の規定をわざわざ早く施行いたしましたのは、実はそこに意味を持たせまして、これに対して早く訴訟提起をとって、もし違法な手続であるならばそれを取り消し得る道を開きたいという趣旨でかような立法をいたしたわけでございます。
  234. 中谷鉄也

    中谷委員 どうも、第二の質問は五分程度で終わらしていただきたいと思ったのですが、これも終わりませんですね。二条二項については公布の日から施行するという附則の一があればこそ、告示というものを本法の復帰の日に先立って施行するということがなし得るわけでございますね。しかし、その施行期日に関する附則の一は、沖繩には復帰の日からしか適用されないことは明らかである。それは部長もお認めになりました。そうでございますね。本土には公布の日から施行されること、適用されることは、この附則の一があるんだから当然であるということになります。そうでございますね。その沖繩に、復帰の日からしか附則を含めて適用されないもの、それに基づく告示——法がなければ告示はないわけでしょう。法がなければ告示はないわけですね。その告示だけがなぜすい星のように沖繩に効力を及ぼすのですか。異法地域に効力を及ぼすのですか。どう考えてみても、それは施政権の壁によって突き当たってしまうじゃないですか。政府の従来の解釈ではなかったのですか。法が適用されないものについて、法に基づく告示がなぜ異法区域に、異法法域に告示の効力が及ぶのでしょうかということを重ねて聞いているわけです。本土の沖繩県民、沖繩土地を持っている沖繩県民に告示の効力が及ぶということは、前回の質問の際に私が申し上げたとおりであります。その点について、部長と私の間に争いはありません。
  235. 林信一

    ○林(信)政府委員 まだ私の申しました趣旨を正確にお受け取りいただけなかったような感じがいたします。沖繩の区域に及ばないとおっしゃる意味あるいは沖繩に適用がないと、こう言われる意味なんでございますが、私が申し上げましたのは、沖繩にある土地そのものに法律が適用になってどうなるかといったようなことになりますと、それは地域的には及ばない、しかし、沖繩に現に居住しておる土地の所有者、この方は、本土におられる方と、告示がありました際にその法律上の地位は変わらないんじゃないか、同じではないだろうか、沖繩に施政権が及ばないからといって、先ほどの国籍法の帰化の場合と同じに、その権利者、その人との関係においては、本土におる方と同じような関係を生じるのではなかろうかということを申し上げたわけでございます。
  236. 中谷鉄也

    中谷委員 部長の御答弁は、なかろうかという、この点は、私は、部長自身が非常に苦しんでおられる点だと思うのです。なかろうかと思うというのは、法律家の言うべきことではないはずなんです。しかし、そういうふうに言わなければ、結局つじつまが合わないわけですね。  もう一度お尋ねをしますけれども、同じことの繰り返しになって恐縮ですけれども親の法律も、附則の施行期日の法律も、沖繩にはとにかく及ばない。大体官報に掲載されても、官報というのは、これはとにかく沖繩には関係がないものですね。それが、なぜ告示の効力が沖繩に及ぶわけなんですか。それなら、告示の効力は及ぶということになれば、法律だってとにかく及んでいく場合があるじゃないですか。なければおかしいじゃないですか。しかし、それを政府は、従来常に、施政権の壁があるから及ばないんだ、こう言ってきた。それは政府の見解なんです。その法律に基づく告示だけが、なぜ権利者との関係において、所有権者あるいはその権利関係者との関係において及ぶとおっしゃるのか、その意味が説明されていないと思うのです。いかがでしょうか。私の質問は、決して無理を申し上げているわけではないわけです。施政権というものを政府の従来の答弁から考えてみて、及ぶはずがないじゃないですかと言っている。この経過はどういうことかというと、小笠原暫定措置法の法案審議の際に、私が通知行為の点について、無権原状態を生ずるじゃないかということで盛んに問題にした。そこで、おそらく政府としては、苦心の策として告示ということを考えたに違いない。私はそういうふうに考える。しかし、及ばないものは及ばないじゃないですか。幾ら苦心された、努力されたということと、及ばないということは、別の問題じゃないでしょうか。
  237. 林信一

    ○林(信)政府委員 お尋ねに対する答えといたしまして多少角度を変えて申し上げれば、たとえば、その土地所有者が告示当時にアメリカに居住しておるとか、あるいはヨーロッパに居住しておりましても同じことになるという意味におきまして、たまたま沖繩に居住しておるから本土に居住しておる権利者とは違うということにはならないのではないか、こういう趣旨でございます。
  238. 床次徳二

    床次委員長 中谷君に申し上げますが、再三御質問で、また答弁もありましたので、委員会の進行をお考えいただきまして、論旨をお進めいただきたいと思います。
  239. 中谷鉄也

    中谷委員 そこが、いまの部長の御答弁は、まさに自家撞着、自己矛盾を生じましたね。海外へ出張している貿易商社の日本国民というのは、とにかく日本の施政権下にあって、まさに保護されている人でありますわね。これは告示の効力が及ぶんですよ。沖繩県民は、残念ながら、きわめて遺憾ながら、アメリカの施政権下にあるわけでしょう。アメリカに住んでおっても、とにかく海外出張しておる丸紅の社員というのは、これはまさに日本の国民としておる。いまの例を引かれたということが、もう御答弁としては、非常に自家撞着、自己矛盾を生じたんじゃないでしょうか。
  240. 林信一

    ○林(信)政府委員 この問題は、国籍には関係ございませんで……(中谷委員「国籍を言っているのだ」と呼ぶ)日本の施政権下にあるとおっしゃいましたので、日本人であるかどうか、外国人が土地を持っておりましても同じことでございます。
  241. 中谷鉄也

    中谷委員 何ですか。
  242. 林信一

    ○林(信)政府委員 外国人が土地の所有者である場合にも同じことでございます。
  243. 床次徳二

    床次委員長 質問をお進めいただきましょう。
  244. 中谷鉄也

    中谷委員 この法律の経過あるいは法制局が手続省略のために何らかのかっこうで適正手続をとろうとされた、そして適正手続の擬制をされようとした、適正手続という見せかけをつくろうとされた点についての告示というものが生まれてきたと私は思うのです。しかし、「あらかじめ関係権利者に知らせる処分」という、この法益が及ばない異法地域であるところの沖繩については、「あらかじめ関係権利者に知らせる」という告示たり得ないという点を——もうこれ以上は、委員長御注意のとおり平行線になりますから、とにかくこの点については、私は打ち切りたいと思います。ただ、しかし、私は部長の御答弁についてはとうてい了承ができませんし、部長御自身も長官御自身も、内心は、法律家として、率直に言って、きわめて無理なことだと思っておられるんじゃないでしょうか。私はその点を申し上げておきたいと思います。  次にお尋ねをいたしたいと思いまするけれども、告示というのは、「土地等を具体的に明らかにして、あらかじめ関係権利者に知らせる処分である」という、この「具体的に明らかにして、」という点と「あらかじめ関係権利者に知らせる」ということ、この二つが欠けておった場合には、回答書、答弁書に記載している憲法上の問題が出てまいることは言うまでもないと思いますが、いかがでしょうか。
  245. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 やはりあらかじめ土地の所有者並びに関係者に対しまして、自己の関係しておる土地が、この法律が施行された時点におきまして使用権の対象になるということを十分に判断できる、そういう材料がありませんと憲法上の問題になると思います。
  246. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、前回の私の質問の際に山中総務長官から御答弁がありましたとおり、中南部軍用地の地籍調査等については全く不十分、これはすでに公知の事実であるという私の質問に対して、同趣旨の御答弁がありました。また、私自身も、取得時効の停止の問題を引用をいたしました。土地等の区域、所在区域等の指定、しかも、その区域の中身は明確でないというもの、こういうことで「具体的に明らか」と言うことができるかどうか。この点については多くの同僚委員から質問がありましたけれども、疑問の残る点であります。  施設庁長官にお尋ねをいたしておきたいと思いまするけれども、その後の答弁書記載のようなところの種々の措置、事実的な措置というものは、これは法律問題ではないわけですから、この場合は省略されるべきだと思います。ですから、「具体的に明らか」というのは、いわゆる告示、考えられている告示では具体的に明らかではないといわざるを得ないと思うがという質問についてお答えいただきたいと思うのであります。
  247. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 答弁書の二の4にございますように、告示の内容につきましては、「土地等の所在地、区域等、使用の方法及び使用期間を官報に記載する」、なお「土地の区域を明示した図面を縦覧に供する」ということにいたしておるわけでございますが、この区域につきましては、もちろん境界についてこれを明確にするという必要がございましょうし、それからその区域の中におきますところの個々の所有者の土地、具体的にはいわゆる地番なり地籍というものでございますが、これは米国の施政権下におきまして土地所有者との間に確認をされておりますところの現在の公簿、公図というものをもとにいたしまして、この問題の処理をいたすつもりでございますが、これは土地の区域等ということでございまして、全体の区域を示すと同時に、実際に官報に掲示いたします場合に、その辺の、たとえば字でございますとか、あるいは必要がございますれば地番等を明らかにいたしまして、その所有者なり関係人が、自分の関係しておる土地がその中に入っておるということを明確に判断できる、そういう措置を講じたい、かように考えておるわけでございます。
  248. 中谷鉄也

    中谷委員 それは告示そのものではなしに、その後に行なわれる措置、事実上の措置の問題とからめてお話しになったと思うのです。それは意味がないということを何べんも私は申し上げているわけですから、告示の性格にもからんでまいりますが、次に質問を急ぎます。  そこで、法務省にお尋ねをいたしたいと思いまするけれども、法務省は、行政事件訴訟法第十四条の処分があったことを知った日というのは、沖繩に居住する関係権利者にとっては、結局通知が到達した日、またはこれにかわる公示があったことを知った日がこれに該当する、こういうふうにお述べになったわけであります。そこで、そういたしますると、また、これはあらかじめ知らせるという告示の性格とも関連をしてくるだろうと私は思うのでありまするけれども、告示というのがあらかじめ知らせる行為であるということであるけれども沖繩在住者にとっては、通知のあった日が通常であるということ、これは、そこに沖繩と本土の憲法上の差別が生ずる。沖繩の中においても、かりに千歩譲って、部長答弁のように、告示の機会、告示があったということを沖繩居住者で知った人がおったとして、そうすると、知ることができなかった人との間に憲法十四条の問題が生じないだろうか、こういうふうに私は考えるわけです。この通常ということばの意味、それは告示によって知り得るということは例外なんだということを意味することが実態、そういう実態面に立っての法務省の前回の御答弁であったというふうに了解せざるを得ないのでありますが、法務省の御答弁をいただきたいと思います。
  249. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 出訴期間の始期としての処分のあったことを知った日、告示のあったことを知った日というのは、ただいまおっしゃったようなふうに解しております。沖繩の住民にとりましては、日本の官報によって告示されましても、自分の土地がそれに入ったということを官報自体から知ることは困難であろう、したがって、後の通知が到達したときに初めてこれを知ったことになる、そういうことになるのが通常の場合であろうと思うわけでございます。  それから、しからば日本本土におる人についてはどうかと申しますと、この場合にも、やはり官報で知り得るわけでありますけれども、現実に知らないという場合がございます。そういう人にとりましては、やはり通知が来たときに知るということになるわけでございますので、特に本土と沖繩とで憲法上の問題を生ずる、差異が生ずるということはないように思うわけでございます。
  250. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、通知は具体的にということについて、民事局長は、それは区域を単に指定するだけだから、結局それは具体的でないのだ、だから、結局その区域の中にあなたの土地が入っていますよという通知がなければ知ったことにならない、要するに、告示そのものでははっきりしないのだということをも含めておっしゃったことになるわけですね。
  251. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 告示を見て、自分の土地がそれに入っているかどうかわからなかったという場合、まあそういう場合があるかどうかわかりませんけれども、わからなかったとすれば、後の通知によって初めて知ることになる、こういうふうに思うわけです。
  252. 中谷鉄也

    中谷委員 施設庁長官にお尋ねをいたしますが、だとすると、沖繩軍用地というものは地籍調査が行なわれていない。そうすると、民事局長がおっしゃったように、一体自分の土地がそこに入っているか入っていないかもはっきりしないというふうな事実がある。したがって、通知のときから起算点が出発するというふうなことになれば、具体的に知らしたというふうな通知は、全く形骸的なものでしかないじゃないでしょうか、からの告示でしかないではないでしょうか。
  253. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 おそらくいま民事局長の御答弁になりましたところは、復帰前に告示をいたしますが、その告示の内容につきまして、土地の所有者なりあるいは関係人が知り得ないということがありました場合におきましては、通知は個々人に達するわけでございますので、その際に訴訟なら訴訟の出訴期間の開始が行なわれる、こういう趣旨で御答弁になったと思うわけでありまして、公簿、公図に定められておる自分の土地が、実際はその真実と違うという、そういうことのために、通知があった後にこの出訴期間が始まる、こういう趣旨ではないのではないかというふうに考えます。
  254. 中谷鉄也

    中谷委員 施設庁長官はどのようにお考えになっているでしょうか。民事局長が通常知り得るのは通知のときだと言われておることは、告示というものは例外の場合、要するに、あらかじめ知り得ない告示だということを暗に言われたことになると私は思うのですが、施設庁長官、この点いかがでしょうか。——いや、民事局長じゃだめですよ、出てこられたら。
  255. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 確かに、告示によりまして、本人が自分の土地が対象になっておるということを知り得ない場合もあろうかと思いますけれども、民事局長のおっしゃいますのは、おそらく通常というものは、それが要するに通常の状態であって、知り得ないのが普通の状態である、こういうふうな意味でおっしゃったのではないというふうに解釈いたします。
  256. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、民事局長に一点だけ確認を私は求めておきたいと思うのであります。  答弁書によりますと、次のように答弁書は記載をされました。すなわち、答弁書三の2「質問の訴状添付別紙図面は、訴訟の対象たる土地が告示された区域内のいかなる部分に存在するかを識別し得るものであれば足りると考える。」とあります。そこでこの点は、一体「識別し得るものであれば足りると考える。」というのは、どの程度で「識別し得る」ことになるのだろうかという問題点があろうかと思いすが、いずれにいたしましても、法務省、すなわち被告、国は、将来の訴訟において添付図面の不備をもって防御方法とはしないということを、私は確認をしていただかなければ困ると思うのです。ひとつこれは、法務大臣の御答弁をいただきたいと思います。  もう一度申し上げます。訴訟が行なわれる、軍用地の中は、とにかくどこに自分の土地があるかわからない、そして訴訟ができないじゃないですかという私の質問に対して、訴状についてはそれは識別するに足るんだ、識別できればそれでいいんだ、こういうふうに民事局長はお答えになった。これはしかし、被告、国として、将来訴訟をやっているときに、図面が不明確なんだということを防御方法としてお使いになる場合が必ず出てくると私は思うのです。そんなことには絶対にお使いにならない、国としてはそういうことを約束する、境界確定の訴訟についても、所有権確認の訴訟についても、国を相手の損害賠償の訴訟についても、図面が不確定であることを理由にして、実測図面がついていないことを理由にして争わないということを確認をしてもらわなければ、これは答弁書の趣旨と相反するということになろうと私は思います。確認をいただきたい。
  257. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 私から先にお答えさしていただきたいと思います。  実は先生質問書によりますと、抗告訴訟の問題ということで御質問がなされております。したがって、まず先に、抗告訴訟の点について申し上げたいと存じますが、抗告訴訟の場合には、告示のどの部分が不服であるかということを明らかにすれば足りるわけでありますから、必ずしも図面の添付はなくても足りる場合があるわけでございます。土地の町名、字名、地番、これがわかっておりますれば、そういうもので表示することで足りるわけであります。  それからまた、訴状に図面を添付いたします場合には、その図面は、それが告示の中に含まれているこれこれの部分の土地であるということがわかれば、必ずしも正確な実測に基づくものでなくても定りる場合があるわけでございます。これに反しまして、ただいまあとお話しになりました境界確定の訴訟の場合、これは現実に境界がどこかということを定めるものでございますから、実測の正確な図面というものが原則として必要であるというふうに思います。
  258. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、訴訟提起不能の問題が生じますね、検証ができなければ。そうですね。軍用地の中には、訴訟準備の立ち入りについては、回答書、答弁書によれば、そのようなことについては、外務大臣は伝達をするというようにおっしゃった。そういうふうに答弁書をいただきました。しかし、境界確定、所有権確認、それらの訴訟については、検証ができなければ訴訟準備のための検証ができない。実測図面をつけることができなければ結局訴訟を提起することができない。憲法三十二条の問題が当然生じてまいりますね。これは一体、外務大臣からお答えをいただいてもけっこうですけれども、これは訴訟の問題ですから法務大臣に——外務大臣のほうは訴訟準備のために基地立ち入りを伝達するといっている、しかし、裁判所についても、高度の秘密の場合においてそれはクレームをつけられる場合があるだろうというふうに外務大臣はお答えになったし、答弁書にもお書きになっている。そうして実測図面をつけよという。つけられない、訴訟が起こせないという問題は当然出てまいります。そんな場合について被告、国の場合は一体どうされるのですか。私人間の場合ででも、そんな場合はそれでいけぬ、それであっても、沖繩においては訴訟をするというのですか。検証が唯一の立証方法でない云々というようなことを言われましたけれども、訴訟がそもそも起こせないという問題が沖繩においては起こってまいります。それは憲法三十二条の問題ではないでしょうか。大臣の御見解を承りたい。
  259. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 実測図面が必要であるが実測はできないという場合に、訴訟が提起できないということはあり得ようかと思います。これはさまざまな場合にそういうことはあり得るわけで、証拠がととのわないために訴訟が起こせないというわけでございますので、それがために憲法の権利が侵されたということにはならない、かように考えます。
  260. 中谷鉄也

    中谷委員 証拠がなくてという問題じゃないでしょう。自分の土地はあの区域の中に——とにかくこの使用法案によって取り上げられてしまうのでしょう。しかし、その区域の中に自分の土地がある場合があるわけでしょう。その土地についてのその所有権の確認を求めたい、境界の確定を求めたい、自分の土地は五百坪でなくて千坪なんだということを言いたい。それに実測図面をつけなければならないがつけられない。つけられずに訴訟は起こせないとおっしゃるなら、とにかく裁判を受ける権利を奪うことになるじゃないですか。それは唯一の証人が死んだという問題じゃないじゃないですか。そうではないでしょう。これは結局裁判を受ける権利をそういうことによって奪うことになるじゃないですか。立証の方法ができないからというふうな、自分のことを知ってくれておった人が死んだというふうな問題とは別じゃないですか。そういう問題について、この暫定使用法案というものは、そういう派生的な問題を生みます。そういうふうなことについて、一体法務大臣、どのようにお考えになりますか。
  261. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 いま境界確定の訴訟と行政訴訟とごっちゃにしてお尋ねになりましたので、私もその両方の場合を含めて申し上げたわけでございますが、抗告訴訟に関します限りは、実測がなくても多くの場合訴訟の提起が可能であると考えます。
  262. 中谷鉄也

    中谷委員 要するに、とにかく、じゃ抗告訴訟については、実測図面がなくても、それは、法務省は、防御方法としては用いないわけですね。とにかくどんな図面をつけていっても、訴訟は、そのことについてのクレームはつけないということを約束してくれますね。そうして私人間の訴訟について、とにかく訴訟が起こせないという問題について、これは憲法三十二条の問題を生ずるのではありませんかということを私は聞いている。二つについて明快にお答えいただきたい。
  263. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 抗告訴訟の関係におきましては、その土地所有者あるいは関係者に対して、法案の二条三項で通知がなされることになっております。この通知が参りました以上は、土地の所有者あるいは関係者であるということがはっきりするわけでありますから、それによって抗告訴訟を提起することができると考えます。
  264. 中谷鉄也

    中谷委員 時間がないので、私は質問を急いでいるのですが、要するに、抗告訴訟だといっても、東西南北のどの場所だから、とにかくこの土地は使用の必要がないんだ、こういう訴訟を起こすわけでしょう、結局。この場所だからということで訴訟になりますね。やはりその場所の確定というのは私は要ると思うのですよ。この場所は不必要だということ、そういうふうなことについて、東西南北——南だと思っておったら五千メートルも北だった、公図がとにかく信用できないんですからね。そんなことについて、法務省は、防御の方法としておかしいなどということは言われませんねと、それは約束してくださいねと、約束されなければ、識別するに足るなどという答弁書だけでは、はいそうですかと言って引き下がれませんよということを言っているんです。それが一点です。  いま一点は、私人間の訴訟について検証ができない、実測図面がつくれないという場合でも、法務省は、裁判所がそれを受け付けるということを約束はできるのですか。できないとすれば、それは憲法上の問題が生ずるではないですか、こういうことを暫定法の枝葉の問題として聞いているわけです。
  265. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 抗告訴訟の場合に、図面が必要となるかどうか、これはその主張する内容、事案によって異なろうかと思います。したがいまして、場合によっては必要なことがあろうと思いますし、裁判所がこれは決定することでありまして、当事者が決定すべき問題ではありません。
  266. 中谷鉄也

    中谷委員 そうじゃないのです。被告、国としては、とにかく不確定な図面を出したとしても、ここの場所はとにかく不要不急の土地ですから使用を解除してもらいたい、取り消してもらいたい、こういうとにかく抗告訴訟ですね、そういうものが起こってきた。その場合、とにかくそれが南か北かはっきりしないけれども、とにかく私のところは南なんだ、そのことを防御方法としては識別するに足るとおっしゃるんだから、そのことについて、図面がとにかく不十分なことを被告、国としては防御方法として用いられませんねと聞いているのです。裁判所の問題はまた別です。被告、国は、それは防御方法にはされませんねと。よくあなたのほうは、私人の訴訟に対して、国民の訴訟に対して、ていさいが整っていない、図面がだめだというようなことをおっしゃるでしょう。沖繩については、その点についてのその防御方法として、そのようなことはおっしゃいませんねということをここで確認をしてもらいたいと言っているんです。
  267. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 たとえば、一定地域がすべて不要であるということで訴訟になりました場合に、その地域の中に自分の土地が含まれているということであれば別でございます。その場合には、その地域全体が不要だということを主張して、それだけで判断ができる場合には、図面は必ずしも必要はない。しかし、それは事案によります。事案によりますから、いまおっしゃったように、右か左かによって結果が異なるという場合におきましては、これは裁判所がそれを認識しなければ裁判ができないわけでありますので、国としての態度に関係なく裁判所の問題となってくるわけでございまして、私……。
  268. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、答弁書三の2に書いてある「訴状添付別紙図面は、訴訟の対象たる土地が告示された区域内のいかなる部分に存在するかを識別し得るものであれば足りると考える。」とある点は、しかも、こういうふうにお書きになっておられながら、ある場合には、あなたのほうは防御方法として用いられる、とにかくかってに出しなさい、識別すれば足りるんだとおっしゃっておりながら、いざとなれば、あなたのほうは、その点について、それを防御方法として用いられることになるわけですか。あなたのほうが、被告、国が、沖繩の特殊事情を考えて——とにかく土地を収奪されるわけですよ。区域の指定を受けて、そしてその中の土地は一体どこにだれがあるかわからない。それについて防御方法としては用いないということだけ言ってくれたらいいんです。話が少しも前へ進まないじゃないですか。
  269. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 いかなる部分に存在するかを識別すれば足りるということは、やはりその土地の所在がどこであるかということがわかるものでなければならない、そういう意味でございます。
  270. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、民事局長にお尋ねしますが、自分の土地がいかなる場所に存在するかわからないという場合、この場合は、訴訟は起こせませんね、検証というものがなければ。訴訟準備のための検証というものがなければ、訴訟は起こすことができませんね。そういうことは、憲法上の裁判を受ける権利を奪うことになりませんか。公簿、公図は信用できない。憲法上の権利を奪うことになりませんか。
  271. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 それはやはり状況による問題であろうかと思います。たとえば、一定の区画の中に存在しているその区画全体が、いままで米軍に使用されていなかったというような場合でありますれば、必ずしも土地の特定は必要ないわけでございます。そういう意味です。
  272. 中谷鉄也

    中谷委員 もう一度お尋ねします。これは答弁が明確じゃないから、私、この点は一番簡単な質問だと思って聞いたのですよ。  もう一度聞きますけれども土地の識別するに足る程度のものであるならば、そういうものを出してきたならば、本土と違って沖繩の訴訟については、被告、国は、位置等が不明確な点を防御方法とはされませんねと聞いているのです。それはとにかく政府の責任でしょう、軍用地の中をとにかく調査できないというのは。地籍調査が進んでないというのは、政府の責任でしょう。それについて抗告訴訟を起こし、所有権確認の訴訟をわれわれは起こさなければいかぬ。そのことについて防御方法としては用いませんねと、それは国の責任として約束してもらいたいと言っているんです。あたりまえなことを聞いているんですよ。
  273. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 先ほど申し上げましたとおり、事案によって異なるので、常に国は防御の方法としないということは申し上げられないと思います。
  274. 中谷鉄也

    中谷委員 だから、軍用地の中はとにかく調査ができない、そうしてとにかく国民の手を縛っておいて、そうして訴訟を起こしてきたときに、それを防御方法に使う。踏んだりけったりじゃないですか。防御方法として使わないということを言ってください。そうでなければ、土地は収奪をする、そうしてとにかく訴訟においては、おまえの訴状は不十分だというふうなことでは、一体何ですかと言いたくなるんです。いまのはちょっと法律家としては少し議論が荒っぽくなったんですが、その点について、防御方法とはしないということを一言言ってください。
  275. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 沖繩土地が非常に不明確であるということは従来からいわれておりますが、基地の中におきましても、一応の図面ができているわけでございます。その図面をもとにして訴訟が行なわれるということが普通であろうかと思います。しかしながら、その地図が間違っておるという場合には訂正する必要がありますので、自分の土地はこちらにあるけれどもこっちだということが訴訟で問題になることがあり得るわけです。その場合には、当事者がかってなことを言っている場合もあり得るわけですから、それだけのやはり理由を示していただかなければならない、これは当然であろうと思います。
  276. 中谷鉄也

    中谷委員 そういうかってなことを言わないで、まじめにやっていてはっきりした場合、そういうときには防御の方法とはしないということを言ってください。まじめにやっていて、しかもとにかくどうにもならない場合のことを言ってください。防御方法とはしないということを言ってください。
  277. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 ただ、土地の位置が問題になります場合には、これを判断しなければ裁判所としての裁判もできないわけであります。したがいまして、国が言う言わないにかかわらず、裁判所としては当然それを問題にせざるを得ないわけでありますので、こちらが問題にするしないということとは関係なく、その点が裁判において争点となるわけであります。
  278. 中谷鉄也

    中谷委員 ですから、識別し得るもので足るんだなどというふうなことをおっしゃっておりながら、事実上は、とにかく防御方法としては、場所をはっきりしなさいということをおっしゃる。ですから、私は、この答弁についても全く不満なんです。この点について、だから私は、法務大臣に御所見といいますか、御感想を承りたい。こんな矛盾について一体どうすればいいのですか。
  279. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 裁判が行なわれる、抗告訴訟として始まるについては、私は明確なものでなくてもいいと思います。ただ、中で争う場合に、いろいろ事態によって明確にしなければならぬ、そうしなければまた判決ができない、こういう場合が起こり得るということだと思います。
  280. 中谷鉄也

    中谷委員 この問題にかかずらわっているわけにいきませんから、もう一点だけ民事局長にお尋ねしますが、検証がどうも不可能、困難だという問題がありますね。しかし、いずれにいたしましても、南のこの地点がすでにもう不要不急だということで抗告訴訟を起こした、起こしますね。この裁判の既判力というのは、土地調査との関係ではどうなりますか。
  281. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 土地調査とは直接関係ないと思います。
  282. 中谷鉄也

    中谷委員 既判力は確定するんですね。
  283. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 はい。
  284. 中谷鉄也

    中谷委員 総理にお尋ねしておきますが、だから沖繩の軍用地の問題は、裁判としては既判力として確定する、民事局長はいまそうおっしゃいましたね。そうすると、嘉手納の飛行場の、とにかく草むらのところだ、こんなところは要らないでしょうといって訴訟を起こした、ところが、実際調べてみたら滑走路のどまん中だった、実際将来土地調査をやって確定したやつはどまん中だったという問題が出てきた場合、これは一体そういう問題が出てきた場合、どうなるのかという問題です。要するに、既判力として確定すると、こうおっしゃるのですから、その土地についてはとにかく明け渡ししてもけっこうですという問題が出てきた。そうすると、それがとにかく嘉手納の飛行場の実際はどまん中だったという問題、土地調査の結果どまん中だったということになった場合は、それは一体端っこになるのですか。土地調査の結果、裁判所はとにかく端っこだと認定した。それがとにかくどまん中だったという場合、あるいはどまん中についての訴訟を起こした場合、端っこだったという問題だって当然出てくる。そうですね。既判力として確定する、一事不再理だとおっしゃる、軍用地の中はとにかくどうにもならないような、検証ができないような話になると、そういう問題は常に起こってまいりますね、この場合。しかし、確認したいことは、既判力はとにかくあるのだ、将来土地調査がどうなってその土地がどう動こうが、土地調査とは関係なしに認定した土地だということなんですか。それとも、滑走路のどまん中であるということが正しかったということになっても、それはもう動かないのですか。
  285. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 たとえば、ある土地について所有権確認の判決が確定したといたしますと、その判決の効力は、御承知のとおり当事者間に既判力を生ずるわけであります。それ以外のものに対する関係では及びません。したがって、その訴訟の当事者間では争えませんが、それ以外の関係ではなお流動的である、こういうことになろうかと思います。
  286. 中谷鉄也

    中谷委員 したがって、被告、国との関係の訴訟においては、嘉手納の飛行場のどまん中の滑走路のところを明け渡しするという場合だって、軍用地内をとにかく検証させないというときには、そういう場合だって、はなはだ中身がとにかくはっきりしない中で訴訟をやっていくというのだから、そういう場合だって当然起こってくる。だから、やっぱりやる以上は、検証させないのだというところにすべてこの問題があると私は思う。この点は、私、総理に御答弁を求めませんけれども、この点について外務大臣に、訴訟準備の検証については相手方に伝達をするということをとにかく回答書にお書き出しいただきましたけれども、伝達をするというその感触ですね。どの程度一体われわれは訴訟準備のための検証をなし得るのだろうか。これは民事裁判管轄権の合意による検証とほぼ近い立ち入りを代理人はし得るのだろうか、この点についての御感触を承りたい。
  287. 福田赳夫

    福田国務大臣 答弁書にはっきり書いてあります。ありますが、感触を申し上げますと、米軍に伝達をいたします。その伝達につきましては、米軍に機密保持、そういうような米軍の特殊な立場、これ以外の場合におきましてはできる限りの御協力をしていただきたい、かように考えております。
  288. 中谷鉄也

    中谷委員 次に、たいへん時間があれで、最後の一番大事な問題のいま一つの問題に移りたいと思います。  要するに、答弁書の四の3の(二)、すなわち、実体法に関する土地収用法が自衛隊にはたして適用し得るかどうかという問題についての点であります。この点については、すでに同僚議員のほうから疑義が提起をされました。そこで、私は、土地収用法は自衛隊に適用できないのだという前提を堅持をいたします。しかし、その点についての論争をするつもりはありませんが、一点だけ建設大臣にお尋ねをしておきたいと思うのであります。  昭和二十六年に土地収用法の改正が行なわれた際、バス及び放送事業が新しく土地収用法の対象として三条の中に加えられたという事実があったこと、その後、土地収用法の改正は、何回にわたって行なわれたでしょうか。きわめて何べんも行なわれたことは、同僚建設委員会委員から私は承りましたが、非常に回数が多いわけです。今日まで土地収用法三条の中に、前回も申しましたけれども、墳墓とか、あるいはまた、それほど社会、公共の面から見て重大と思われないものだけをずっと列挙している。自衛隊を今日に至るまでこの中に列挙しなかった理由は、一体どこにあるのでしょうか。この点をまずお聞きいたしたいと思います。
  289. 西村英一

    ○西村国務大臣 仰せのとおり、土地収用法は、二十六年に新しい土地収用法が制定されてからたびたび改正はあります。しかし、自衛隊に関するものは、収用法の第三条の適用で、これは適用されるということで改正しなかったと私は思っておるのでございます。
  290. 中谷鉄也

    中谷委員 私がお尋ねをしたのは、質問は次のとおりであります。  いわゆる昭和二十六年制定の土地収用法については、バス、放送事業等が新しく旧法と異なって追加されたという事実があります。その後、なぜいまになって、自衛隊がいわゆる土地収用法の対象になるのだということ、これは私きわめて無理だと思うのですが、そのことをどうしてもおっしゃりたい、言わなければ、とにかくこの暫定使用法案は飛んでしまいますから、どうしても言わざるを得ないけれども、それなら、とにかく三条については、七の二だとか七の三だとかあるいは九の二だとか、次から次へと、どんどんそれぞれの法の制定の過程の中において、収用の対象となるべきもの、三条の適用の対象となるべきものが追加されていっているではありませんか。にもかかわらず、結局最後までこの問題、自衛隊についてはその姿をあらわしてない、この文言の中に、三条の中に姿をあらわしてこないというのは、どのような改正経過によるものでしょうか。これは国民はだれだって素朴な疑問を持つと思うのです。この点を私はもうむずかしい議論はいたしません。その点についての大臣の御見解を承りたい。
  291. 西村英一

    ○西村国務大臣 しかし、自衛隊に対して土地収用法が適用になるかということは、今日この段階で始まったものではありませんので、もうずいぶん前からその解釈をとっておるのでございます。しかも、その適用は、収用法の第三条の三十一号で足りる、こういう解釈じゃなかったかと私は思っておるのでございます。
  292. 中谷鉄也

    中谷委員 建設大臣にもうあまり御質問しないほうがいいと思うのです。非常に失礼ですけれども、それは時間の関係上質問しないほうがいいと思うのです。と申しますのは、自衛隊についてそんな解釈がどこにもございませんでしたですね。昭和二十八年の、保安隊についての法制局次長の回答というものを政府はいま唯一のよりどころとしているわけですね。そういう中で、いかに「公共の」というのが土地収用法、公共用地取得の特別措置法にかかるのだ、「公共の」でくくれるのだ、こう言われたって、この三条の中に、いつでも、かりに政府に自信があり、土地収用法を適用することができるなら、私は加える機会と場合があったと思うのです。それを今日までなぜそういうことをせずに、また現に一件も適用された例がないという、それを暫定使用法案のこの審議にあたって初めて、この土地収用法が本法なんですということを言わざるを得ないのか。それを改正経過の面から私はお聞きをしてみたかったわけなんです。その点、建設大臣にお聞きしないと言ったけれども、そういう改正経過との関係において、加えられるものなら加えておいたらよかったじゃないか。それは自衛隊が土地収用法の対象になりにくい、あるいはそれはなることが困難だという前提があればこそ、たとえば、墳墓等あるいはとにかく焼却場等全部列挙しておる。自衛隊の四次防の予算は一体幾らでしょうか。そんなものはここに列挙されておらないということは、いかにどのように法制局長官が論理を展開されようとも、法改正の経過から見ておかしいではありませんか。このことを私は言いたかったのです。大臣の御見解、はなはだ恐縮ですけれども、もう一度承りたい。
  293. 西村英一

    ○西村国務大臣 経過と申しますか、自衛隊については結局列挙いたしておりませんが、自衛隊は保安庁から——その土地収用法のときは保安庁でありましたけれども、いまの、やはり自衛隊でございます。したがいまして、そういう経過はどうであったかわかりませんが、やはりそれを列挙しないのは三十一号で足りると思ったからじゃないかと思いますが、その経過のほうは、やはり法制局長官のほうが私は適当だと思っております。
  294. 中谷鉄也

    中谷委員 だから、昨日、一昨日、同僚委員がずっとこの問題についてはもう論議をいたしましたけれども、やはり法制局長官がどのような論理構成をされようとも、三条を何べんだって改正機会があった中に入れてないのを、「公共の」ということでくくれるのですよという、それはとにかく立法府に籍を置く者として、法制局の論理展開は、そういう立法経過、改正の経過から見て、私は、非常にとにかく無理があると思うのです。  ただ一点だけ、では法制局長官にお尋ねをしておきたいと思いますが、答弁書によりますと、これは防衛庁にお尋ねすべきことであろうかとも思いますけれども答弁書の四の4によりますと、要するに、自衛隊が暫定使用することについては緊急性がないということにはならないということについてのお答えがあります。この点についてはあとでお尋ねをいたしますけれども、最小限法制局長官にお尋ねをいたしたいのですけれども日本土地法の体系の中において、「公共の」ということで、公共用地取得の特別措置法も土地収用法も全部くくっているのです、だから、自衛隊もとにかく入るのですというのが長官の論理展開でありました。御答弁でありました。  そこでお尋ねいたしたいと思いますけれども、公共用地の取得に関する特別措置法は、「公共の利害に特に重大な関係があり、」——そうですね。「かつ、緊急に施行することを要する事業」について、公共用地取得の特別措置法があるわけでございますね。だとすると、政府は従来から、河野建設大臣の答弁は維持すると言ってこられた。また、本日私もう引用はいたしませんけれども、建設大臣の公共用地取得に関する法律についての制定理由の中にも、委員会における提案理由説明の中にも、その点は明らかであります。そうすると、これも千歩譲るわけです。法律の論理ですから、千歩譲ります。千歩譲るといたしまして、本土の土地法の体系の中、土地収用法あるいは公共用地の取得の特別措置法、米軍については土地特別措置法、いろいろなものがあります。そういう土地法の体系の中で、自衛隊は電力、水道などに比べて、要するに、公共用地の取得に関する特別措置法に書かれてある緊急かつ重大な公共性というものは持っていないということだけは政府としても認めざるを得ない、こういうふうに私は考えますが、いかがでしょうか。
  295. 林信一

    ○林(信)政府委員 お答えいたします。  御質問の趣意は、公共用地の取得に関する特別措置法の改正の際、政令委任の規定が入りましたけれども、その政令は、その前の各号に掲げてあるものと同様に緊急性がある、あるいは公共のため重要なものであるといったようなものを政令で指定するということになっておりますが、その政令で自衛隊の施設を指定するかどうかということに関しまして、時の河野建設大臣が、それは指定しないという趣旨でああいう御答弁をなさったと私どもは理解しておるのでございますが、いまのお尋ねは、自衛隊がしからば緊急性がないんじゃないか、こういう御趣旨……。公共性でございますか。
  296. 中谷鉄也

    中谷委員 違います。質問を理解してくださっていないわけなんです。要するに、公共用地取得の法律の中に規定されている公共性というものについては、重大でありかつ緊急な、特に公共性の高いもの、これは公共用地取得の法律の中に入っておりますね。そこから政府は自衛隊をはじき出しているわけです。そうですね。自衛隊をはじき出しているわけですね。公共用地の取得に関する特別措置法の中からは自衛隊をはじき出しましたね。これは政府従来の答弁でありますね。建設大臣もそのことは何べんもこの委員会で認められました。河野建設大臣の答弁は従来の政府答弁であると言っておられる。そうでございますね。したがって、私が聞きたいのは、法律家の議論ですから千歩譲りますと言っているのです。私は、土地収用法が自衛隊に適用されるはずがないと思うと。しかし、その「公共の」とあるのは電力その他、要するに公共用地の特別措置法に規定されているものに比較して、自衛隊の公共性の重要性と緊急性は、同じ「公共の」ものであっても、劣るものとして本土法の中においては位置づけられていると観念せざるを得ないという論理を私は持ちます。当然のことであろうと思うのです。御見解を承りたいというのが質問趣旨であります。
  297. 林信一

    ○林(信)政府委員 先ほどちょっとお答え申し上げかけましたように、河野大臣の御答弁は、この公共用地の取得に関する特別措置法を適用するかしないかということに関しましてのお答えと思いますが、適用しないという趣旨でお答えになった、政令で指定しないという趣旨でお答えになった。その意味におきまして、この法律が適用になる、つまり政令指定の要件になっておりますそれには該当しないと自分は考える、こういうお答えであったと思います。
  298. 中谷鉄也

    中谷委員 わかるんです。わかるんですよ、そういう答えというのは。公共用地の取得に関する特別措置法の第一条は、「土地等を収用し、又は使用することができる事業のうち、公共の利害に特に重大な関係があり、かつ、緊急に施行することを要する事業に必要な土地等の取得に関し、土地収用法の特例等について規定」をしたんだとありますね。もうそんなこと一々条文を読まなくても、部長のほうがとにかくしょっちゅう読んでおられる。そうありますね。だから結局緊急だ、それから公共の利害に特に重大な関係があるんだ。要するに公共性が非常に高いもの、いま一つは緊急性の非常にあるもの、そのとにかく特別措置法でいくんだ。これは土地収用法の特別措置法でしょう。だから法制局長官は先日非常に奮闘されて、「公共の」ということで、土地収用法の適用は自衛隊にあるんだとおっしゃった。これは私はあくまで納得しない。しないけれども、自衛隊は本土法のたてまえの中においては、日本土地法制のたてまえの中においては、公共の利害に重大な関係があり、緊急であるという点においては、自衛隊は土地法の体系の中で、土地収用に関する法の体系の中ではじき出されておりますねと、これはもうすなおに答えてください、時間がないんだから。あたりまえでしょう。百歩譲って、千歩譲って議論を展開しているんですから。そうでしょう、部長、何とお答えしたいんですか、一体。
  299. 林信一

    ○林(信)政府委員 何度も同じようなお答えになってしまうかもしれませんが、この特別措置法は、土地収用法の非常に懇切丁寧な手続を多少省略いたしまして、緊急性がある場合にいわゆる緊急裁決いたしましてすみやかに土地の取得をする、その対象範囲にいま自衛隊の施設を入れるか入れないか、つまりこの法律を適用するかしないか、その点に関しての大臣の御答弁でありまして、自衛隊が公共性がないという趣旨ではなかろうというふうにわれわれ存じております。
  300. 中谷鉄也

    中谷委員 そうじゃないんです。自衛隊の公共性については、私ば土地収用法が適用できないと思うけれども、法制局長官の論理を一応とにかく認めましょう。法律の論議をしているんだから認めましょう。しかし、その公共性というのは、特に重大なものについて、公共性の程度の高いものについては、土地特別措置法の適用は受けられることになっておりますねと、それは電力その他ですねと。だから、とにかく本土法の土地の収用に関する法律の中では、重大性とか緊急性とか、公共性の高いものの重大性とか緊急性においては、自衛隊は電力などには劣ることになりますねと、そのことを聞いているんですよ。そうでしょう。
  301. 床次徳二

    床次委員長 はっきり答えていただきたい、簡潔でいいですから。
  302. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答えを申し上げます。  おっしゃる趣旨は大体了解しているつもりでございますが、私はこの件に関して何べんか申し上げておりますものですから答弁を差し控えておりましたが、いまの点はまさに別の角度からおっしゃっているようであります。(中谷委員「そうです」と呼ぶ)  そこで、特定公共事業の中にまず取り上げられるべきものなら取り上げられるべきではないかというのが前提にあるのではないかと——そうじゃないですか。(中谷委員「そうじゃないです」と呼ぶ)そうでないとすれば、まあ私は一応申し上げますが、特定公共事業、公共用地の取得に関する特別措置法は、ごらんになればわかりますように、まさに「特定公共事業」といっておりますように、また二条の各号をごらんになればわかりますように、まさにそこにあるのはいわゆる公共事業でございますので、ここに入ってないだけのことであって、だからといってほかのものの性格がここできまってしまうというようなことには少なくもならぬだろうと思っております。
  303. 中谷鉄也

    中谷委員 「公共の」ということで、自衛隊を土地法で一昨日は一生懸命に長官はおくくりになったんです。そこで私は、百歩千歩譲りましょう、法律の論議をしているのだから譲りましょう、「公共の」ということでくくられたんだから譲りましょうと言った。しかし、その「公共性」には、濃淡あるいは程度の差、重さ軽さの差があるはずだ。だから、この公共用地の取得に関する特別措置法の中にほうり込んだものは何かというと、特に重大であり、そうして特に緊急を要するものが特別措置法の中にほうり込まれてきているんだ。だから、かりに千歩を譲って土地収用法の対象に自衛隊がなったとしても、なるという政府の答弁であったとしても、それは電力などよりも、公共性の重大性と緊急性においては劣るものとして観念せざるを得ないでしょうと、土地法の体系の中においてはそれはそういう位置づけをされているんですねと聞いているのです。
  304. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 私も、御質問趣旨をそういうふうな御立論ではないかと思って実は御答弁したつもりでございますが、公共用地の取得に関する特別措置法は、一条から全部ごらんになれば簡単にわかるわけでありますが、「土地等を収用し、又は使用することができる事業のうち、」その「事業」というのは、二条の各号をごらんになればわかりますように、いわゆる公共事業である。その公共事業についてその当時必要性を認めて、これについての特別措置法をつくったことは確かでありますが、だからといって、自衛隊その他、ここに載っかっていないものがすべて緊急性等において劣るものであるということをこれが表明しておるものであるということにまでいくことは、賛成しがたいということでございます。
  305. 床次徳二

    床次委員長 中谷君に申し上げます。  だいぶ繰り返して議論がありまして、すでに答弁もあったんでありまして、進行をしていただきたいと思います。
  306. 中谷鉄也

    中谷委員 繰り返しではありますけれども、納得がいかないし、私はやはり無理を言っているつもりはないんです。無理を言っているつもりはないんですから、その点は委員長も御判断いただいていると思うんです。
  307. 床次徳二

    床次委員長 御質問答弁もあったことはわかります。繰り返されておりますので、進行していただきたいと思います。
  308. 中谷鉄也

    中谷委員 いずれにいたしましても、公共用地の取得に関する特別措置法の第一条は——じゃ、ここにいきます。第一条の「目的」に自衛隊は合致せず、そうして自衛隊ははじき出されている、このことだけは言えますね。要するに答弁書記載のとおり、二条八号からはとにかく自衛隊ははじき出された、たたき出されたわけです。それはとにかく当時の政府の見解、今日の政府の見解なんです。だからこの法律の一条の目的には自衛隊は沿わないのだということで、だからこそはじき出された。その目的には何が書いてあるかというと、重大性と緊急性なんだ。ですから結局自衛隊はこの法律に書いてある各種事業に比べてこの緊急性と重大性においては劣りますね、こう聞いているのです。
  309. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 私はその点に触れて申し上げているつもりでありますが、説明のしかたがまずいと見えまして十分に御理解をいただいておりませんが、第一条は、「土地等を収用し、又は使用することができる事業のうち、」こういうものについてはとありまして、その事業たるや、第二条をごらんになればわかりますように、いわゆる公共事業について規定しているものであります。したがって、事公共事業に関しては、載っているものと載ってないものとの比較対照ができると思いますが、事公共事業に関係のしないものについてこれをわざわざお引き出しになって、それは緊急性がないものと断定なさることは、少し、そこにやや問題がありはしないかということを私は御答弁申し上げているわけであります。
  310. 中谷鉄也

    中谷委員 繰り返しになりますけれども、これは政府にこれ以上、長官答弁を求めませんけれども、少なくとも公共用地の取得に関する特別措置法第一条の緊急性それから重大性からははじき出されているじゃありませんか。じゃ、かりに緊急性があるという点まで認めましょうか。じゃ、そこまでとにかく一万歩譲って認めましょうか。そう認めだとしても、この公共用地の取得に関する特別措置法による緊急性からは自衛隊ははじき出されておりますね、電力、水道等はここに入っておりますねと、そういうことは言わざるを得ないじゃありませんか。だから、あなたのおっしゃっている緊急性と私の言っているこの法律に基づく緊急性とは違うじゃありませんか。はじき出されていることは事実なんだからどうにもならぬじゃないですか。
  311. 林信一

    ○林(信)政府委員 電気の例をおあげになりましたので、それと同程度の緊急性もないじゃないかと、こういう御趣旨には受け取れるわけでございますが、実は電気につきましては、この法律の二条七号にありますように、そのうち「政令で定める主要なもの」というふうにございます。あるいは道路につきましても二条の一号に「高速自動車国道又は一般国道」こういうふうに書いております。それと同程度のという意味におきまして、いまおっしゃったような事柄が成り立つのかというふうに思います。それと同程度に、したがって二条の先ほど申し上げました八号、政令委任の規定、これは前各号と同程度ということで考えておりますから、その中にもし入れないといたしますと、電気一般と同等でないじゃないかということでなくして、電気事業のうち特に主要なもの、それと同程度かどうか、同程度に扱うかどうかという意味でございましたら、河野大臣の御答弁は八号の政令で指定しないという御趣旨のことでございますから、そういうことになるだろう、こういうことでございます。
  312. 中谷鉄也

    中谷委員 要するに二条に書いてあるものよりも緊急性、重大性は低いのでしょうということ、これだけ、こんな簡単な答弁を引き出すのに時間がかかるということはやはり思惑があって、次は中谷委員は何を質問してくるかなということを予想をしておられるから、ここでとにかく答弁を渋られるのですよ。要するに緊急性について差がある。同じ公共性、緊急性なんというものがあったとしても、土地収用法のものとは差がある、自衛隊と電気のある部分については差があるということはとうとうお認めになった。認められましたね。  そこでお尋ねしたいと思うのですけれども、水道事業や電気事業や道路や飛行場や灯台、こういうものは沖繩県民の生活に一日も欠くことができないのだというふうに、これは政府答弁の中にあった。私もそう思います。そういうように思う。しかし、自衛隊の緊急性、重大性については土地法の体系の中においてすでにその差がつけられているじゃありませんか。政府の見解、政府の答弁の上に立っても差がつけられているじゃありませんか。まして土地収用法の適用はないんだという有力な学説、有力な学者の見解があるじゃありませんか。それを同列に置いてきているところに私はこの法案の最も許容できない第二の点、告示と相呼応して第二の点があるわけなんです。その点を私は申し上げたい。  そこでいま一点。これはあと緊急性が——だからその点について道路、飛行場、電気事業その他に比べて、私は緊急性が自衛隊は少ないんだということの論証が一点だけできました。いま一つの論証でありまするけれども久保・カーチスのいわゆる防衛責務の引き受けに関する取りきめは当初展開と追加展開に相なっている。当初展開と追加展開とに相なっておりながらとにかく復帰の日にいわゆる自衛隊用地を確保しようとすること、それは一九七三年七月一日までの追加展開、さらに防衛庁資料によりますると、四次防の末期に六千八百人ということに相なっておる。かりにそれらと相考えるならば、いわゆる自衛隊の緊急性というものは相当年数を余裕を持ったものじゃないか。この点がまず私は言えると思うのであります。水道を一日もとめちゃいけません。電力を一日もとめるわけにいきませんけれども、展開それ自体が久保・カーチス取りきめにおいては時間的な余裕があるじゃありませんか。この点について私は第二の緊急性がないということを主張いたしたいのです。その点についての防衛庁長官の、第二の緊急性について私はそういう疑義を提出した、この点についての御答弁をいただきたい。
  313. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 主権が日本に戻ってまいりますれば、当然沖繩県としての防衛、それから民生に対する協力、災害常襲県といわれる不幸な地理的位置にありますので、その災害救助活動、これは一日も空白の置けないものです。で、アメリカ軍がその後とどまるわけですが、これは日米安全保障条約においてとどまるのでありまして、アメリカ軍がいるからそれにまかせておけばいいというものではありません。主権が日本に戻ってまいりまする以上、これは当然日本の自衛隊が沖繩県の防衛に任じ、民生の協力に果敢に立ち働いていく、これはきわめて緊急な問題だというふうに考えております。
  314. 中谷鉄也

    中谷委員 自衛隊のためにPRするならば、局地防衛、民生協力のほかに、災害派遣ということばもあなたのほうで入れなければいかぬ。それを認めた上で私は言いたい。そんな任務はありまするけれども、公共用地の取得の法律を含むところの土地法の体系の中において、まずそのおっしゃっている緊急性というものは電力などよりも格落ちたものですよ。それが一点。  いま一点は、そういうふうな民生の協力をします、災害派遣をします、局地防衛の責務に任じますとおっしゃるけれども、それは久保・カーチスの取りきめによった一九七三年までの展開という追加展開があるじゃありませんか。それが一つと、四次防の末期において六千八百人の展開じゃありませんか。ということは何も——とにかく復帰の日に全部の土地を取り込んでしまうということとは一体どういうふうに結びつくのですか。それはあくまで先取りじゃありませんかということを私は言いたいのです。その点が説明つかなければとにかくどうにもならないじゃありませんかということを言いたいのです。先取りをしようとするのはおかしいじゃないですか。その緊急性というのは、防衛出動のような状態は考えられないのです。国防の空白は一日もゆるがせにできないというだけのことなんです。そんなことで、先ほどから私が問題にした告示というところのああいうふうなあいまいな手続で、とにかくその緊急性ということの名前、その緊急性も非常に少ない緊急性、電力等に比べれば少ない緊急性、それでやっていいというふうな理由には全然ならないでしょう。引き続き自衛隊が使用するというけれども、引き続きじゃありません。それは結局新規使用以外の何ものでもありませんじゃないですか、というのが私の指摘なんです。だからこの点についての御答弁を重ねていただきたい。法的な見解を承りたい。
  315. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは主権が日本に移る以上、一番根本の大事な問題でして、緊急でもありまた根本的な大事な問題として自衛隊がそこへ配置される、当然だと考えます。そればかりか、なるほど久保・カーチスの覚書はありますが、すでにこれも目睫の間に迫った、もう六千八百人を配置するという計画はできておるわけです。したがって、これを確保することは必要だと考えております。
  316. 中谷鉄也

    中谷委員 計画ができているなら、その計画どおりに計画に基づいて計画に合わしてやればいいんじゃありませんか。何も復帰の日に全部土地を取り込むことはないじゃないですか。これが立論ですよ。だから、とにかくその展開される日と、土地を取り込んでしまう——取り込むということばはきたないことばだけれども土地をとにかく確保される日とがずいぶん間があるじゃないですか。土地を先に取っているじゃないですか。それはとにかく緊急性ということとは矛盾するじゃありませんか。重大ですよ、重大ですよとおっしゃっても、重大だからといって何をしてもいいんだということには世の中少しもなりません。しかも、本土の土地法の体系の中においては自衛隊は政府みずから公共性において一格下と認めているわけですよ。公共性の重大性と緊急性においては一格下と認めているわけなのだが、この点をどう説明されるのですかと聞いているのです。
  317. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 私、さっき高辻法制局長官の説明をここで聞いておったわけですが、自衛隊の配置、自衛隊の土地というものの重要度があれによって差別がつけられておるというふうには聞いておりません。
  318. 中谷鉄也

    中谷委員 そうじゃないのです。先ほど、とにかくその法の体系の中においては特別措置法にいう緊急性には当たらない、重大性に当たらないということを答弁されたのです。では、そういう答弁があったかなかったか、もう一ぺん打ち合わせしてください。
  319. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 どうもまだ御理解いただけてないのははなはだ残念でございますが、簡単に申し上げますけれども、公共用地の取得に関する特別措置法が問題にしておりますのは事業、なかんずく公共事業であります。その公共事業についても、先ほど部長が御説明申し上げましたように、政令で定めるものがこれに載っかる、そうでないものは載っからないと、公共事業の中で濃淡があることはこれは当然でございます。しかし、公共事業についてこの法律規定しているところがあるから、そのほかの自衛隊についてはこれからはじき出されているのだということは当たらないのではないか、何となれば公共用地の取得に関する特別措置法は事公共事業に関して述べているにとどまるからと、こういうわけであります。
  320. 中谷鉄也

    中谷委員 この点については、私自身はまあ先ほどの論争で、論争というほどの緻密な議論はお互いに展開しませんでしたけれども、まあ私自身の言い分のほうがより合理性を持っていたと思いますから、これ以上申し上げません。  では、次に防衛庁長官にお尋ねをいたしたいと思いますが、回答書、大きな三の算用数字の5でございます。そこで「一定の公用又は公共の用に供されていた土地等について、従前と同一又は同種の用途のために、暫定的に一定の限られた期間内において、使用権を設定しようとするもの」とありますが、この一体、ここで「公用又は公共の用に」とあるのをひとつ類別をしてください。そうして「同一又は同種」というのを類別をしてひとつお答えになってください。
  321. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 施設庁長官から答えさせます。
  322. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 公用、公共用の問題でございますが、これにつきましては従来米国の軍隊が使用しておりました土地につきまして、その中に軍が直接使用しておるものがございますし、水道、電力等の公社が使用しているものもございましたし、そういう意味で「公用又は公共の用」と、こういうふうに表現をされておるわけでございます。
  323. 中谷鉄也

    中谷委員 同一、同種は……。
  324. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 この同一、同種の問題を自衛隊の問題に即して考えてみますと、自衛隊が現地において配置されまして任務といたしますところの局地防衛なりあるいは民生協力なりというふうなものが、少なくとも、従来米軍が沖繩の本土の防衛に任じておったその機能を引き継ぐという意味におきまして、これは同種のものである、こういうふうに観念されると思います。
  325. 中谷鉄也

    中谷委員 アメリカ合衆国軍隊と自衛隊が同種ということについては、私はまず自衛隊違憲論の立場という立場を堅持しながら、しかも政府見解に立つとしても、とうてい了承できないわけであります。同種という限りは主要、重大部分において私はとにかく共通項がなければならない。アメリカ合衆国軍隊と自衛隊が同種、したがって引き続き使用などということは、これはあらゆる点に私は問題を生じてくると思うし、このような表現については私はとうてい理解できない、私はその点について特に事が重大だと思いますので、委員長の御了承をいただきまして、安井委員の関連質問をお許しいただきたいと思います。
  326. 床次徳二

    床次委員長 安井吉典君から関連質疑の申し出がありますので、これを許しますが、簡潔にお願いいたします。安井君。
  327. 安井吉典

    安井委員 簡潔にと言われますけれども、私毎日のようにこの委員会に日参いたしておりますので、三、四時間ぐらいやらせてもらってもいいと思うのですが、しかしまあ関連ですから、ごく簡潔にこの法案の問題点、とりわけいま中谷委員が取り上げております自衛隊の土地使用の問題について、ちょっとお尋ねをしたいと思います。  この法案については、過日、社会、公明、民社三党が共同見解を発表いたしましたように、憲法第九条、十四条、二十九条、三十一条、三十二条、九十五条等、実にたくさんの違憲の疑いを持っています。そのうち幾つかの問題について、たとえば告示の問題ではこれは法定手続の保障の憲法三十一条違反、あるいはまた二十九条の財産権尊重の規定違反、あるいは十四条の法のもとの平等の規定違反、そういうような点を実物についていままで中谷委員は取り上げてきたのだと思います。  で、この法律の中に、米軍の占領時の土地をそのまま引き継ぐという内容と、それから自衛隊に米軍の土地をそのまま引き継がせるというやり方と、それから道路や水道等の引き続きの使用の問題と、いわば性格的に三つあると思います。その三つのいずれについても、私がいま取り上げましたような違憲性というものは免れるわけにはいかないと思います。その中でも、私は特に重要なのは、この米軍がいままでいたところに自衛隊がするりと入り込む、それまでをこの法律で、この緊急立法でやろうというところに大きな問題があるように思います。戦後、ずいぶん法律を国会はつくりましたけれども、私は最悪の法律だ、この間予算委員会のときにも言いましたけれども、いまだにその考え方を曲げておりません。特にいま中谷君の質問の中でそういう点が一そう明らかになったと思います。  そこで、その問題の自衛隊の土地使用の問題について中谷委員に対する答弁書、いま取り上げられました部分の問題点でありますけれども、ここにいま中谷委員が読み上げましてちょっと御説明があったのですけれども、「一定の公用又は公共の用に供されていた土地」いままで米軍の土地とそれから水道公社その他の土地がありますね、この公用と公共用と、現在あった土地をひとつ明確に分類してください。
  328. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 ここにございます「公用又は公共の用に供されていた土地」この中には米軍が使用していたものもございますし、それから水道公社あるいは電力公社等のいわば今後におきましては県の事業なりあるいは公共企業体の事業になるような、そういうふうな土地が含まれておるわけでございます。概略そういうことだと思います。
  329. 安井吉典

    安井委員 はっきりしてくださいよ。米軍の基地は公用ですか公共用ですか。
  330. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 米軍の基地をどういうふうに性格づけるかちょっと問題があると思いますけれども復帰後のことを考えてみますと、公用というのはやはり、たとえば自衛隊が使用しますような、要するに国として使用する場合が公用。公共は道路等がその代表的なものかと思います。そのほかに今後の電力株式会社、公法人でございますが、これが公企業体の土地ということになりましょうし、それ以外に米軍の直接使用する土地、こういうことになろうかと思います。
  331. 安井吉典

    安井委員 私ははっきり分けてくれと言っているのですよ。たとえば嘉手納の空軍基地は公用ですか公共の用ですか。
  332. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 これは復帰後のことを考えてみますと、いわゆる駐留軍の用に供する土地、こういうことになろうかと思います。それが国内法でいいますような公用または公共用という、そういう概念に直ちに入るかどうかちょっと問題がありますので、これはやはり米軍の使用する土地、こういうことにしたほうが適当かと思います。
  333. 安井吉典

    安井委員 答弁書には公用と公共用と二つの概念に分けて、それ以外の概念はないのですよ。だからどっちかなんでしょう。それを、どっちかということを聞いてるのです。
  334. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 米軍が使用しておりました土地につきましては、これは一応こういう公用、公共用と分けますれば公用ではないか。ただ今度の法律公用地等暫定使用に関する法律で、これは今後復帰後におきましてそれが公用地に使われる、あるいは公共用地に使われる、こういうことでございます。
  335. 安井吉典

    安井委員 よけいなことを言わなくてもいいですよ、時間がかかりますから。  アメリカという国が使っているんだから公用、それを今度はそっくり日本の防衛庁が使用をする、こういうわけですね。  それから「従前と同一又は同種の用途のために、」ということばがありますね。これからの用途としては米軍が使うやっと自衛隊が使うやっとそれから道路、水道等がありますが、この三つに分けて、同一と同種とはっきり区分してください。あなたでむずかしければ法制局長官でいいですよ。
  336. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 米軍が復帰後におきまして使用する土地、つまりわが国が提供する土地、これは同一と見てよろしいかと思います。米軍が従来の用途に使っておりました土地を引き続き使用する、これは同一と見てよろしいかと思います。自衛隊の場合には、その機能の面におきまして、これは同一ということにはならないと思いますので一応同種という概念に入るのではなかろうか。それから、あとの水道、電力その他につきましては、これは用途が全く同一である、こういうふうに観念してよろしいかと思います。
  337. 安井吉典

    安井委員 米軍が使っていたやつは、自衛隊がそのまま使うやつは、これは同種ということだそうでありますが、自衛隊は憲法第九条に違反しておりますか違反しておりませんか。
  338. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 違反しておりません。
  339. 安井吉典

    安井委員 もしも自衛隊がいまの米軍と同じ装備や機能を全部持ったというふうに仮定いたしますと、それは憲法第九条違反ですか違反でありませんか。
  340. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 御承知のとおりに、今日沖繩の施政権下におきまして米軍が沖繩で果たしておるいわゆる軍事的な機能というものは、一つはわが国の沖繩の防衛ということと、同時に極東の平和と安全に寄与しておると思います。その中で、自衛隊が同種と申し上げましたのは、たとえば局地の防衛でありますとかあるいは災害派遣とかそういう一つの機能に着目して考えれば、これはいわゆる肩がわりといいますか引き継ぎといいますか、その辺だいぶんことばの使い方がむずかしいわけでございますけれども、やはり沖繩の防衛ということに着目いたしますれば同様の機能、こういうふうに見てもよろしいかと思います。
  341. 安井吉典

    安井委員 日本の自衛隊が沖繩へ行くのは、あれは米軍の肩がわりで行くのですか、総理。
  342. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 米軍の肩がわりではございません。主権が戻ってまいりまするから、当然この沖繩県を本土と同じようにしようということで行くわけであります。
  343. 安井吉典

    安井委員 局長、いいんですか。
  344. 久保卓也

    久保政府委員 先ほど施設庁長官が答えられましたように、沖繩の米軍は極東の安全と平和に寄与する任務が一つと、それから沖繩の防衛を担当する任務が一つと、こう二つあります。そのうちで沖繩の防衛の分は自衛隊が引き継ぐわけでありますが、本来日本側がやるべきことをやるわけでありますから、私どもはそれを肩がわりとは観念いたしておりません。
  345. 安井吉典

    安井委員 肩がわりでないのなら、日本の自衛隊は自衛隊として向こうへ行くのなら、これは継続性はないじゃないですか。肩がわりならこれは継続性ありますよ。いままであった土地に自衛隊がするりと入り込む、肩がわりなら継続性があって、なるほどこの法律にあるいは該当するかもしれませんが、肩がわりでないのなら、別なものなら、こんな法律に米軍の土地をそのまま自衛隊を入れ込むというのは間違いですよ。そうじゃないですか。
  346. 久保卓也

    久保政府委員 肩がわりというのは本来AがやるべきことをBがやるという場合に肩がわりというふうに私どもは考えます。ところで、いまの場合には肩がわりという観念ではなくて、たとえば防空でありますとか救難でありますとかそういった機能を引き継ぐということでありますから、その点においては継続性があると私は考えます。
  347. 安井吉典

    安井委員 いままでひとが使っていた土地ですよ、ひとの国が。しかもそれは公用地だという。自衛隊が入り込むのは、そこで防空をやるのは、これは公用なんですか、公共用なんですか。
  348. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 公用か公共用かということになりますれば、公用だ、そういう概念に入ると思います。
  349. 安井吉典

    安井委員 もう概念がめちゃくちゃなんですよね。土地収用法の適用の段階には公共性というようなものを前に出して、さも公共の用のためだというふうに自衛隊の問題を持ち出しておられる。ところが、この場合は公共の用ということばではいかぬわけですよね。米軍は公共の用のためにあそこにいるんじゃないのですから。さっきはアメリカがいるのは公用だと言ったでしょう、公共用じゃないと言ったでしょう。だからそういう意味で、いろんな法律の一番いいところを渡り歩いてこういう法律の解釈をおつくりになっているわけですよ。私はそう思います。  まあ中谷君の時間をとっては悪いですから、そうこの問題だけにいくことはいけないかもしれませんけれども、ただ私がもう一つ伺っておきたいのは、この法律に自衛隊が入るには継続性があるということが一つの要件で、もう一つは緊急性ですね、この二つだということを先ほどからの議論の中で明確にされております。緊急性の問題にいきますか。−いま中谷委員とのやりとりをいろいろお聞きいたしておりましたけれども、同種のものとして自衛隊が引き継ぐのは局地防衛や災害や民生協力だというふうにこれにも書いてあるし、先ほどの御答弁もそれです。局地防衛、沖繩はいま自衛隊が行かなければ、ほかの国が入ってきて沖繩が攻撃されて、沖繩が占領されるような状態にあるんですかね。あるいはいまいるアメリカはずいぶん力が足りなくて、もう外国が来たらつぶれそうな、そういう軍隊なのか。私はまあ緊急性ということばだけをとって議論をすればそういうことになると思うのですよ。おそらく防衛庁長官が言いたいのは、いや戻ってきたんだから行くんだと、こういうことでしょう。戻ってきたら行くんなら——私は土地収用法の中に自衛隊の土地や工作物は入ると思いません。思いませんが、政府が入ると言うのなら、その土俵の中で議論いたしましても、土地収用法によって政府は自衛隊の土地を確保できるというふうに考えておられるんでしょう。そうでしょう、さっきの御答弁で。しかも、何日返還かもわからぬが、その翌日、外国から進攻を受けてとんでもないことになるというふうな可能性がないんだとすれば、土地収用法で、政府がお考えになっているその法律でやればいいじゃないですか。こういう、自衛隊を突っ込むことによってその違憲性が一そう強まるような法律をおつくりにならぬでもいいじゃないですか。長官、どうです。
  350. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 戻ってまいりましたら一日も空白にできない、これは緊急というよりも国の基本の問題で、緊急にまだ優先する問題だというふうに私どもは理解をいたしております。ただこの法律はつくりますが、しかし、その運用の面においては御指摘のような点を十分考慮に入れながら相手の納得のいく形で進めていきたい。すでにいまこの契約ができて、たとえ低い地代にいたしましても何がしかの代償が払われておるという形のもので、やはりわれわれ緊急性を認めるからそれをそのまま肩がわりする。これには、政治的に言うならば基地の島のような形をとっておりまするので、なるべく新たに自衛隊がまた配置するための土地を求めないというようなことも配慮しながら、しかもそれが安いというのであるならば今後はその地代においても話し合いに応じていこうというわけで、運営面において十分御注意の点などは配慮していきたい、こんなことを考えております。
  351. 床次徳二

    床次委員長 関連でありますので、どうぞ簡潔にお願いします。
  352. 安井吉典

    安井委員 もう一つ伺っておきたいのは、これで沖繩返還によりまして、米軍が使っているなら米軍にいくでしょう、それから自衛隊にいくやつもある。それから公共用地として継続使用になるのもある。純粋に沖繩の県民の地主に返る土地はどれくらいありますか。——何だ、それぐらい初めから調べておいてくださいよ。
  353. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 今回の返還協定の了解覚書でC表として掲げられておりますのが、これが復帰の際またはその復帰以前に返還される土地でございますが、これが面積におきまして約五千五十万平方メートルということでございます。
  354. 安井吉典

    安井委員 それは個人に戻るんですね。
  355. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 C表の中には復帰返還後に自衛隊が使用するものがございます。自衛隊のみならず政府機関において使用するものがございますので、したがいまして、その分だけ差し引くということになります。ちょっといま数字につきましては資料を持っておりません。
  356. 安井吉典

    安井委員 県民はいまたいへんなんですよ、沖繩の県民としては。だから米軍が使ったり、自衛隊が使ったり、それから公共用にそのまま使うのもあるでしょう。純粋に地主に戻るのは幾らかということをさっきから聞いているのですよ。
  357. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 全部返還の中で民間に払い下げがありますのが……(安井委員「払い下げとは何だ、どうもそれは考え方が違うよ」と呼ぶ)失礼しました。返還になりますのが四千二百四十九万五千平米、それから一部返還の中に民間に返還になりますのが三百八十九万一千平米ということでございます。
  358. 安井吉典

    安井委員 緊急性とかなんとか先ほどから言われるけれども、実は政府の本音は久保・カーチス取りきめでアメリカに約束をして、自衛隊が行かなければアメリカ協定をうんと言わぬというふうな、そういう仕組みになっておる。それは実はおかしいんですがね。にっちもさっちもいかなくなって自衛隊にもこんな法律を適用してアメリカの約束を果たそうと、私はまあ本音はそういうことだと思うのですよ。それが政府にとって緊急性でしょう。政府にとっての緊急性であって、こういうふうな違憲立法をやらなければならないようなそういう約束をしたこと自体が問題であり、そういう返還協定あるいはそういう久保・カーチス取りきめをやったということ、それにさかのぼって私どもは不当性を指摘しなければならないと思うのです。  そこで現地のほうでは、沖繩の県民の皆さんは、米軍の基地を減らすどころか、政府は減らす減らすと言っているが、「この法案は、沖繩における米軍基地の存続を前提とし、その確保を図ることを目的としています。この法案には、基地をなくするとか、あるいは縮小していくという方向を示すものを見出すことができません。」と屋良主席の建議書ははっきり指摘していますよ。そこが私は問題ではないかと思うのですが、この間、安里さんに対する防衛庁長官答弁ですかね、自衛隊のこの土地はここで確保する以外にさらにもう少し増加する可能性があるということをおっしゃったのはどなたですか。私は聞いておりませんでしたが……。
  359. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 それは私申した覚えはありませんが、また現時点ではもうそういうあと増加をさせるという計画等は持っておりません。これははっきり申し上げておきます。
  360. 安井吉典

    安井委員 それでいいですね。いまのこれ以外に将来ともふやすつもりはございませんね。それをひとつ明確にしておきます。——二人は要らないよ、長官に聞いているんだよ。
  361. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 そういう計画はありません。  それから前段の御質問ですが、アメリカの軍隊が日米安全保障条約に基づいて過渡的に現在たくさんいる、これがいかに強大であろうともそのことと、主権を回復したあと沖繩県の局地防衛を担当し、民生に協力し、災害復旧に責任を持っていくという、この自衛隊の任務とはおのずからこれは別のものでありまするから、やはりわれわれに主権が戻ってまいりました以上は、いっときも猶予を許さず、それこそ空白を持ってはならぬ、こういうふうに考えております。
  362. 床次徳二

    床次委員長 安井君に申し上げますが、関連ですからどうぞ簡潔にお願いいたします。
  363. 安井吉典

    安井委員 もう結論にします。  長官そう言われるけれども、ですから私は緊急性というより重要性というのなら、こんな法律でないで堂々とおやりなさいよ。米軍のとっていた基地をそっくりそのまま盗むように入り込む、こんな法律じゃなしに、それぐらい重要性をお考えなら堂々とおやりなさいよ。こういうことで違憲性をさらにふやすということは、私どもはがまんできないわけであります。特にこの間公明党の公述人の人が、まるで憲法違反のかたまりのような法律だ、こういうふうに批判をいたしました。私はこの法律ができたら、これは必ず違憲訴訟が起きると思います。現実に現地においては、防衛施設庁ですか、調べによりますと、この法律にひっかかるような人がだれもいない、みんな買収に応じますという資料が出ておりますね、さっき見ましたら。それならこんな法律は要らないですよ。しかし、現実にはたくさんあるわけですね。これは私は違憲の訴訟というものは必ず起きると思いますよ。現地ではそういう準備も進んでおります。国会が幾らこんなような論議を続けていても、あとで最高裁判所で反対の結論が出るようなこういう法律をわれわれはこの国会できめるわけにはいかぬと思うのです。  私は、これは法制局長官に伺いたいのだが、あなたもずいぶん法律の本もお書きだし、法律の技術屋としてとにかく内閣の中の一番の長官です、名前のとおり。私はこんな法律をつくる段階において法制局の中でいろいろ議論があったんじゃないかと思うのですよ。こういう違憲性の議論、あなたはこういう法律をつくったことで良心に恥じませんか。そのことをひとつ伺います。
  364. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 前にも申し上げたことでありますが、内閣法制局の職責の一つは、国の政策が憲法上支障がなく遂行できるようにということで法律案の作成に当たる。これはどの法律案も原案は各省庁でつくるわけでありますが、われわれとしてはそういう観点に主眼を置いて当然議論をいたしております。  それからもう一つは、やはりいつかも申し上げたことでありますが、国会の立法活動に対してわれわれは誠実なお手伝いというようなつもりでやっております。したがって、憲法問題はやはり一番の関心事でございます。  そこで、われわれはすべての法案についてそうでありますが、やはりそういう観点から必要なものは修正を加え、あるいは全く問題にならないものは私のところでほんとうに握りつぶしてしまっております。しかし、この法案についてはいろいろな御意見があっても——これはまあ現にわれわれが当面しておりますように、あるわけでございますが、われわれとしてはそうは考えない。そのもとには大いに私は認識というものについてのどうも相違があるように思います。しかし、われわれの考える公用、公共用はそのまま維持していきたい、そういう認識に立つ限り、この法律案が憲法違反ということはないであろうと考えております。ないであろうという趣旨は、心細いことを言っているわけではありませんで、これは仰せのとおりに、これが法律問題として論議されれば、最高裁判所で決定される余地が残っているからそう申し上げるわけであります。
  365. 安井吉典

    安井委員 それじゃこれで戻しますけれども、私はいまの御答弁では満足できません。先ほど来の答弁をずっと私聞いておりましても、絶対的な自信を持ってお出しになった法律に見受けられませんよ。そのことをはっきり申し上げてもとへ戻します。
  366. 床次徳二

    床次委員長 中谷君に発言を許しますが、ひとつ簡潔にお願いいたします。
  367. 中谷鉄也

    中谷委員 あと十分だけで質問を終わりたいと思います。質問は三問だけ、十分以内にやりたい。  第一点は、告示権者と通知権者が違います。公益事業局長、たいへん長いことお待たせいたしましたが、琉球電力株式会社がこのような公法上の通知をはたしてなし得るものだろうか、区域の指定が告示、告示と通知の内容、告示はイコール通知ではありません。そこでその点についての公益事業局長の見解を承っておきたいと思います。御答弁ください。
  368. 三宅幸夫

    ○三宅政府委員 通知業務の円滑な実施について、現在この法律趣旨等につきまして琉球電力公社のほうに説明を十分いたしております。
  369. 中谷鉄也

    中谷委員 通知行為が、公法人であったとしても、またそれが法律効果を持たなくても、そういうものができるんでしょうか。ことに区域の指定の告示しかない。そして実際にはそれを確認して確知できないものは通知または公示をするのが琉球電力公社でございますね。琉球電力株式会社でございますね。そんな公法上の行為を公法人だからといって与えられるというのでしょうか。私はそこに疑義がありますよ、こう聞いているのです。
  370. 三宅幸夫

    ○三宅政府委員 法制局の審議の結果、できるものと了解しております。
  371. 中谷鉄也

    中谷委員 疑義があります。そこで、お約束をしましたから、この点についてはもういま告示が無理だから、そろそろ事実行為としての通知にもそういう問題が出てきたと私は思うのです、公法人としての単なる事実行為だといっても、そういうものについては私は問題があると思うのです。私は、法制局長官ともっと論議をしたい点なんですけれども委員長とお約束をしましたから、質問を残します。  そこで、総理にお尋ねをしたいと思います。要するに私は、この法律質問主意書にも明記をいたしましたように、自衛隊の土地を確保するためのことを唯一の目的としたところの法律だと思う、こういうことを申しました。米軍用地については、安保条約に基づく土地特別措置法を、何らかの形において適切に措置することによって私は可能だというふうに考えていました。また当然それが本土並みだと思うのです。電力、水道、航路標識、飛行場等々についても、法律家であるならば、私が政府委員であるならば、容易にこのような法律でないところの無理のない法律を私はつくることができたと思います。また、そのことについて、私は期間の短縮なんというような問題ではなしにこんな法律ができたと思うのです。自衛隊を何としてでも組み入れようとしたことにこの法律の無理がある、私はこういうふうに思いますが、総理の御所見を承っておきたいと思うのです。この法律なくしても私は代案があると申し上げている。総理はこの点についてどのようにお考えになりますか、御見解を承りたい。
  372. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも中谷君が法制局長官でないものですからこういう法律をつくりましたが——これは冗談にお聞き流しをいただきたいと思いますけれども、とにかく施政権が日本に返ってくる。そういたしますと、あらゆるものが、日本の国内で適用されておる法律制度その他が全部沖繩にも適用される。いわゆる施政権が日本返還される、そういう状態が起こるのですから、そういう場合に円滑な推移、これが望ましいことは私が申し上げるまでもないと思います。また告示等につきましてもいろいろ御議論がありましたのも、一にそこにかかっておる、私はかようにしろうとながら考えておるわけであります。でありますから、いま言われるような諸点も、とにかく日本法律が適用されるその場合に問題を起こさないようになじみやすい状況下に置きたい。これがわれわれのねらいでありまして、何か自衛隊のために特にこれをつくったとか、あるいは公共事業のためにとかいうものでなしに、とにかく円滑な推移で諸行政が運営されること、これを望んでおる。かような意味で法案を整備しておるわけです。
  373. 中谷鉄也

    中谷委員 私は代案ありということについて、委員長のお許しがあれば、三十分程度で明確にその代案なるものを説明いたしたいと思いますが、お約束ですから。ただ、法制局長官も、代案があるということを十分御存じだと思うのです。電力、水道、航路標識、飛行場等については、こんな法律でなくてもできるということがわかっている。その点について私はきわめて遺憾だということを申し上げておきたいと思うのです。  それから、最後に一点、私は十一月三十日、総理に次のような質問をいたしました。それは軍事特別措置法はさておいて、国家総動員法の規定を見てみましても、この法律よりも国家総動員法のほうがさらに踏むべき法定手続を踏んでいる、こういうふうに申し上げた。この点について、国家総動員法とこの法律を比較してどういうふうに思われますかと質問したら、総理は、ばく然と、国家総動員法よりこちらのほうがいいと思いますとお答えになった。  しかし、だんだんの論議の中で、国家総動員法を引用された多くの同僚委員もありました。私は、特に本日まで質問が延びて、さらにこの問題について取り組む機会を与えられましたので、日曜日に、七十三帝国議会の衆議院議事録、すなわち国家総動員法特別委員会会議録というものを検討してまいりました。そこには、憲法を守ろうとする当時の先輩議員の非常な、火花を散らすような議論があることを、この会議録の中から見ました。当時の総理は、この国家総動員法については憲法上種々の疑義があると、こういうふうにあえて申して、その論議を求めている、このことも私は会議録の中から見てまいりました。  そういうふうな中で、私は重ねて申し上げますけれども、あの国家総動員法という法律は、いまにして思うならば、あの法律が、日本が不幸な敗戦に至ったところの大きな歴史的な法的象徴だったと思うのです。この沖繩返還という歴史的な事実を迎えて、この暫定使用法案があらゆる手続を省略する、国家総動員法よりもとにかく省略された手続をもって行なうというふうなことは、憲法の適正手続、憲法を尊重するというところの精神、憲法二十九条の財産権の尊重、あるいは三十一条、三十二条の裁判所の裁判を受けるところの権利、とにかくあらゆる条章に触れないかということについて、私なりに今日まで努力をしてまいりました。  だから、私は最後に総理に伺いたいのであります。  この問題についての私の申し上げたいことのほぼ大半は申し上げました。代案ありという点について、三十日も申し上げるということを申し上げて、本日もそれを最後に回したために申し上げることができなかったけれども、容易に代案は考えられるということを明確に私は申し上げておきたい。同時に、前回のようにばく然と、国家総動員法よりもこの法律のほうがいいと思うというふうなお答えで、私がこの法案に執念を燃やして、多くの同僚、先輩の委員の協力の中で、この軍用地法案なるものについて取り組んできた人間の一人として、そのような答弁の中においてこの質問を終了したくはないわけであります。私は、国家総動員法よりもこの法律が——だからといって総理に、そういうふうな国家総動員法よりも手続において非常に問題があるのだというふうな答弁も求めようとは思わない。法制局長官が言ったように、バックが違うのだ、基盤が違うのだという点も、私は認めます。しかし、私が申し上げたいのは、政治の姿勢として、政治のあり方として憲法上論議があると。これほど憲法上の論議が集中したところの法案というものが、この数年あったでしょうか、私はなかったと思います。そんな法案を、われわれは論議する機会を与えられた。また、論議する責任を負わされた。この法案が将来五年後、十年たった後に、あの法案ができたときに日本がとにかく間違った方向へ行ったのだというようなことがあった場合に、野党の議員である私自身も、この立法府に籍を置く者として厳粛な責任を負わなければならない。幾らこの法案について反対だと言ったからといって、私はその責任を免れるわけにはいかないと思うのです。そういう点で、私は微力ではありますけれども、私の持っている力の範囲内において全力投球をして御質問申し上げた次第です。  総理にお尋ねをいたしたいと思いますけれども、この法案は憲法上の疑義がある。そして少なくとも、バックを除くならば、国家総動員法よりはその手続面においては省略し尽くされている。国家総動員法のほうが、手続においてはさらに詳しい慎重な手続を組んでいる。しかも七十三帝国議会においては、そのことについてさえも火花を散らすような憲法論争が行なわれた。このことについて私は総理の御所見を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  374. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いま中谷君が熱情を込めてお話しになりました事柄について、われわれも十分考えなければならない、かように思っておりますが、それには何よりも運用にあるのではないかと思っております。これらの法案が最善のものだとは私も思いませんけれども、この運用にあたっては、本委員会を通じて野党の諸君からそれぞれ指摘なすった、それらの諸点について十分思いをいたして、いやしくも違憲の行政行為がないように、また最善を尽くして納得を得られるような各種の行為を、この上とも私どももいたす決意でございます。その上で、また暫定的な法案でもありますし、どうか御賛成願えればしあわせに思います。運用において万全を期する、このことをお約束しておきます。
  375. 中谷鉄也

    中谷委員 この法案の問題点についてさらに追及すべき点、立法府に籍を置く者としてさらに掘り下げるべき点について、多くの問題点を残しているのではないかという点について、私自身も謙虚に反省せざるを得ないものがあると思いますが、いずれにいたしましても、お約束の時間が参りました。  しかし、総理のお話にありましたけれども、私は、この現在の段階においてこの法律がどんな附帯決議をつけようとも、この法律の違憲性というふうなものは断じてぬぐい去ることができない。国家総動員法についても、きわめて適切と思われる附帯決議がついております。しかし、あの国家総動員法を通じて、日本はとにかく戦争への道を歩んでいったじゃありませんか。附帯決議なんというふうな問題では断じてない。まさにこの法案の本質、この法案の一条一条の問題にある。しかも、その一条一条の中に違憲の問題がひそんでいるのだということを指摘いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  376. 床次徳二

    床次委員長 東中光雄君から補足質疑の申し出があります。これを許します。  補足質疑であり、話し合いの時間がありますので、十分御尊重願います。東中光雄君。
  377. 東中光雄

    ○東中委員 このいわゆる土地強制使用法について、特にその告示の問題につきまして、一昨日若干の論議をやったわけであります。けさからの審議の中で、私が一昨日指摘いたしました停止条件つき法律行為というふうにこの告示を考える、その分については、中谷議員の質問主意書に対する答弁書から再質問があれば、今後それは削除する、こういう総理の御答弁があったわけであります。それで、私が一昨日問題にしましたのは、主意書の答弁も引用いたしましたけれども、十一月三十日の施設庁長官の本委員会における答弁、それが私の問題の中心点であったわけであります。したがいまして、その際にも引用いたしましたが、施設庁長官が「沖繩返還、施政権の復帰ということをいわば停止条件としたところの一つ法律行為の効力、」云々と言われている部分は、これは答弁書と違いますから、本委員会において、本委員会の審議の過程での発言でありますから、明らかに取り消しをいただきたい、こう思うわけであります。
  378. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 告示の法的性格につきまして、私が法律行為というような説明を申し上げましたが、これにつきましては、法制局長官からお答えございましたように、準法律的行為としての行政行為、こういう法律論としての御説明でございますので、私は、その部分においては法制局長官の御意見に従うものでございます。
  379. 東中光雄

    ○東中委員 結局、それに従って取り消すということを言われたと思うのですが、私がこのことを問題にしますのは、告示はいわゆる観念の表示だ、観念の表示自体によって効力が、法律効果が発生するものではない、法案の二条一項の規定と結びついて、その範囲において発生するにすぎない、このことをはっきりさせることが必要だから申し上げたわけであります。  それで、観念の表示行為なんですから、その表示をする、要するに特定の事項、この場合でいうならば区域の周辺を特定する、その表示をするということは、それは知らせるための表示なんですから、しかも、その手段は官報によって——ただ、図面等の縦覧という問題はそれについておりますけれども、官報での告示がなかったら意味がないわけです。知らせるために官報によって告示をする、その官報が沖繩には行かない、こういう状態では、告示自体が意味を持たなくなるんじゃないか。観念の表示をするといっても、表示する相手である沖繩県民に届かない。官報は届かないようになっているわけです、少なくとも復帰までは。そういう状態で、この告示というのは観念の表示をやるという意味を持たなくなってくる、この点を指摘しておるわけであります。その点についての御見解を承りたい。
  380. 林信一

    ○林(信)政府委員 お答えいたします。  法令の公布の場合も全く同様と考えるわけでございますが、これは相手側に知らせるという行為でございます。で、官報は、いま法律上はっきりした規定を置いておりませんけれども、最高裁の判決も認めておりますように、法令公布の方法として、いわば慣習法的に認められてきておるものである、こういっております。法令を公布する場合に、先ほど申しましたような、別の機会に御説明を申し上げましたような、沖繩にも意味を持つという法令がございますけれども、その法令を公布する際に、必ずしも官報を沖繩に送らなければならぬというわけでもございません。沖繩で官報を購入しようと思えば購入できる手続きがございます。それと同様のことではないかというふうに存ずる次第でございます。
  381. 東中光雄

    ○東中委員 十一月三十日のこの委員会における答弁で民事局長が、「沖繩の場合にはその官報を見る機会がない。したがって、現実には復帰後においてその通知が参ります。その通知によって知ることになるのであります」という趣旨答弁をされています。民事局長、そうじゃございませんか。
  382. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 通常の場合はそういうことになろうという趣旨で、そのような答弁を申し上げております。
  383. 東中光雄

    ○東中委員 あなたの答弁は、通常の場合は、「法案によりまして関係権利者に対する通知あるいはこれにかわる告示というものがなされることになっております」と、これは通常の場合です。本件の場合について、沖繩の場合には官報がないじゃないか。だから現実には、復帰後における通知または告示ですね、それによらなければいけないと。あなた、通常の場合と言ってないです。明らかに分けて言っているじゃないですか。私は、ここで議論をまた繰り返そうとは思いません。  問題は、民事局長が実際にすらっと言っている、それがこの告示の実情ですよ。告示というものの性格が表示行為である以上そうなる。だから、この告示行為というのは、問題の関係人に対してはたいして意味を持たない、持たないのにこれを入れているにすぎないのだ、二条一項自体、要するに法律規定自体によって、何らの手続もしないで土地取り上げをやることになるという点を糊塗するために、二条二項の告示というのは考え出されただけじゃないか、こういうことを指摘したいわけであります。  そこで、私申し上げたいのですが、一昨日の論議で、こういう措置をとったのは、沖繩の祖国復帰といういままでにない状態だから、そういう方法しかとれなかったんだ、こういうように法制局長官は言われた。しかし、小笠原の返還のときは同じ事態だったわけです。小笠原のときには、復帰後に通知をしなければとれない、土地の強制使用はできない、そういうようにはっきり書いてある。復帰という点でいうなら、全く同じじゃないですか。そういう同じ条件であるのに、小笠原は一々通知をする、そうしてからとるということになっておったのに、沖繩のいまはそういう方法をとらなかった。そういう方法をとれなかったと言われるのは一体なぜなのか、その点を明らかにしていただきたい。
  384. 林信一

    ○林(信)政府委員 お答えいたします。  沖繩復帰の場合に非常に近い例といたしまして、ただいま例におあげになりました小笠原復帰の場合がまさにございます。ところで、小笠原の場合のやり方はどうなっておるかと申しますと、ただいま御指摘のように、復帰後に関係権利者に通知をするということになっております。そういたしますと、復帰の日から実際に法律規定によりまして権原を取得するまでの間は一体どうなるのかという問題が生じます。沖繩の場合におきましては、復帰のその日の午前零時から引き続き使用いたしたい、こういう前提がございます。それで、復帰の前に何らかの手続をとるということになりますと、施政権の及んでおらない沖繩におきましては、法律に基づく行為としての通知が、正確な通知、間違いのない通知が一体できるだろうかということが問題になります。一方で、一刻たりとも中断できないという要請がございますから、それを二つかみ合わせました場合に、事前の告示といったような方法がそこに出てまいる、これが、ただいま御提案申し上げているような案になりました経過でございます。小笠原と違う点はそういう点にございます。
  385. 東中光雄

    ○東中委員 いま言われているのは、違いがあるということであって、なぜそういう違う手続をしたのかということの説明にはなっていないわけです。要は沖繩においては、ほんの少しの間でも小笠原でやったような間をあけたら、軍用地の取り上げに反対する人たちがおるから、だからそこをつっつかれたら困るから、法理論上はなはだもって説明のしにくいことだけれども、とにかく先に告示というようなことをやって法律的に取り上げちゃう。一切文句を言わせない。そういう体制をとるために、ほんの一秒もあけない、一瞬もあけない、そういうふうにするために、小笠原と法的な関係でいえば同じ条件であるのに、あえてこういう立法技術を弄して、そして本来の告示としての意味をなさないような告示を二条二項に入れたにすぎない、こう言わざるを得ないのですが、そうじゃないですか。
  386. 林信一

    ○林(信)政府委員 軍用地を主としておとりになるわけでございますが、私どもは、軍用地だけでございませんで、道路にしろ水道にしろ電気にしろ、これは一刻も中断できないものではないか、そういうことで考えております。その中断できないという公共の福祉上の要請と私人の受けます損失、その均衡、バランスというものを考えました場合に、この法案内容、これはやむを得ないというのが私たちの判断でございます。
  387. 東中光雄

    ○東中委員 はしなくもいま言われたのですが、やむを得ないと。必要だからやむを得ない、だから権利を侵害する、だから偽装的な二条二項のような意味のない告示をやる、こういうことを、まさにあなた自身の口から言われておるということになると思います。やむを得ないからやるというのじゃないのです。法定手続をとるかとらないかというときに、やむを得ないからとらないんだ、それが憲法違反になってくる。それが憲法三十一条違反になるということを言っておるわけであります。酔狂でやっているのじゃない。そんなこと、きまり切っています。  そこで、救済との関係での出訴期間についてお聞きしたいのですが、民事局長は、出訴期間の起算点については、三項による通知または公示のあったとき、そういうように言われておりますが、そうですか。
  388. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 行政事件訴訟法によりますと、出訴期間につきましては二つの制限がございます。その一つは、処分があった日から一年内というので、これは告示があったときから一年内と、こういうことになろうかと思います。それから、処分のあったことを知った日から三カ月内、これは先ほど申し上げたとおりでございます。
  389. 東中光雄

    ○東中委員 その処分のあったことを知った日というのは、沖繩においては三項の通知または公示のあったときというふうに、政府見解としては統一されているわけですか。その点はどうでしょう。
  390. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 これは私、前にもお答え申し上げておりますけれども、その処分があったことを現実に知った日でございます。沖繩の場合においては、それが通常通知の到達したときであろう、大部分の場合そうであろうと思われますけれども、一律的に申しますならば、処分のあったことを知った日というのが正確でございます。
  391. 東中光雄

    ○東中委員 いまあなたは、法律規定どおりに、知った日と言われた。問題は、その知った日というのは、了知主義をとるということをあなたは言われているのですか。それから、いま送達された日ということも言われた。それじゃ了知主義じゃなくて、知り得べき状態に置かれたときということでもあるように、いま言われている。矛盾したことを二つ言われているわけです。現実に知ったとき、だから書面が来ても、通知が来ても、それは知らなかったら起算点にならないというお考えですか。それとも送達されたとき、要するに知り得べき状態になったときは起算点になるという考えなのか。もし知り得べき状態になったときには起算点になるということだったら、官報で告示をされたときは知り得べき状態になったという解釈をするのじゃないのですか。その点を明らかにしていただきたい。
  392. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 私が通知が到達した日というふうに申し上げましたのは、これも正確ではございませんで、到達すればおそらくそれを見るであろう、したがってそのときに知るであろうということで申し上げたわけでありまして、通知が来たけれども見ていないとか、あるいは官報に告示されたけれどもそれを見ていないという場合には、まだ知ったうちに入らないわけでございます。
  393. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、この法案については了知主義でいくのだ。いままで了知主義でいっている、日本の法体系上そんなものはないですね。現実に、実際に知り得べき状態に置かれても、それはたまたま知らなかった、そうしたら起算点にならない、こういうお考えですか。念のために確認しておきます。
  394. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 了知主義と言われましたけれども、現実に知ったときから起算される、そういうことでございます。
  395. 東中光雄

    ○東中委員 何を言っているのですか。現実に知ったときということまで言ったのじゃ法文のとおりになっちゃうから、それを厳密にはっきりさせておく必要がある。だから、手紙が来ても通知が来ても、子供が破いて見なかった、所有者は見なかった、そうしたら起算点にならない、こういう見解を政府はとるのですか。その点を確かめているのですよ。
  396. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 これは法の二条三項の通知であるということを知りながら、見たくないので破ったという場合であれば、これはもう通知が来ておることを知っておったということになろうかと思いますけれども、通知が来ても、何らかの関係で見ていないという場合がございます。そういう場合には、これは知ったことにはならない、当然のことであろうと思います。
  397. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、これは政府見解として確認をしておきます。今後もし訴訟になった場合に——そんな暴論を言うのはぼくは初めてですが、それだったら、わしは知らなかった、着いたときに子供が捨てちゃった、女中さんがわからぬで掃除してしまって、わからなかった、そうしたら、送達をされても、それは出訴期限の起算点にはならない。故意に、自分で見て、中を見たらわかるから中を見ぬでおこう——そんなのはわかり切っています。ぼくの言っているのは、送達されても、本人の責めに帰すべき事由じゃなくて、実際に知らなかったというときだったら、たとえば本人は旅行しておった、家に送達された、三カ月たってから帰ってきた、それで見た、そういう場合には、別に起算点としては、帰ってきてから見たとき、そのときからになる、こういう見解ですか。
  398. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 いまの御設例のような場合でございますと、その事実が立証されれば、現実に旅行から帰ってきて見たときが知ったときになろうと思います。
  399. 床次徳二

    床次委員長 東中君に申し上げますが、お約束の時間は六時三十八分までとなっておりますので、その点をお含みの上質疑をされるようお願いいたします。
  400. 東中光雄

    ○東中委員 施設庁長官に聞きますが、告示の時期はいつかということですが、批准後と言われている。これはずいぶん長い時間になります。だから、批准後じゃなくて、批准書交換後あるいは復帰のどれぐらい前ということについては、きめておられるのかおられないか、これが一つ。  それから、通知なり公示はそのあとでやる。「遅滞なく」というのがあります。直ちにでもなく、すみやかにでもなく、遅滞なくということになっておる。どれぐらいの期間でやられる予定か、それを明らかにしてもらいたい。
  401. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 告示の期日につきましては、これはいまいろいろ検討中でございます。その前に、御承知のとおりに米軍に施設、区域として提供します区域につきましては、日米合同委員会手続あるいは閣議というふうな手続も踏まなければなりませんので、そのための各種の準備行為が要るわけでございます。したがいまして、私どもとしましては、権利者保護という観点から、できるだけ早くという感じでございますけれども、それが今後のいろいろな準備の進捗状況を見まして、いつごろになるかということについては、いま直ちにここでは申し上げられないという状況にあるわけでございます。  それから、通知につきましては遅滞なくということでございますが、これも一週間後とか十日後とか、その辺につきましても、できるだけ早くということで、私どもは努力をいたしたいと思いますが、それがいつであるかということについては、まだこれから検討するところでございます。
  402. 東中光雄

    ○東中委員 最大限、通知は、おそくともどれぐらいの期間に通知をするかということについて明らかにしていただきたい。遅滞なくなんていったら、三年ほうっておいたって遅滞なくということになっちゃうのだから、はっきりしてください。
  403. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 施政権の返還後何日ということについては、まだ申し上げられません。しかし、法律が「遅滞なく」ということをうたっておるわけでございますので、この法律の条項をわれわれは十分尊重して運用したいと思います。
  404. 東中光雄

    ○東中委員 遅滞なくということばを使っておるから、それを問題にしているのじゃないですか。あとでというのは、この前も言いました。直ちにといったって、十日や一週間ほうっておくというのは違法でない。それから、すみやかにということになれば、二月も三月もほうっておくのは違法でない。遅滞なくなんていったら、一年や二年ほうっておいたって違法じゃないでしょう。だから、実際にいつやろうとしておるのか、最大限どれぐらいのことを考えておるのかということを聞いておるのです。
  405. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 もちろん一年や二年後ということを考えません。遅滞なくでございますので、やはりできるだけすみやかな機会、こういうことでございます。
  406. 東中光雄

    ○東中委員 すみやかにじゃないじゃないの、法律は。すみやかにと書いてあるんだったらそう言いなさい。法律は「遅滞なく」と書いてある。すみやかでないと書いてあるじゃないですか。法律の解釈上当然そうじゃないですか。そういう責任のがれのことを言っちゃいかぬですよ。どれぐらいの期間かということをはっきりしなさいよ。沖繩県民は官報は来ないのでしょう。そして私たちは、効力は発生しないと考えている。しかし、あなた方は、効力が発生すると言っているんだ。しかし、表示行為の手段である官報は来ないのです。しかも、遅滞なくといって、通知はずっとあとに来たのでは、一体それで裁判はいつやれるのですか。いっ内容がわかるのですか。重大な問題じゃないですか。おそくとも何カ月ということをはっきりさせる必要がある。はっきりさせなさい。
  407. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 通知行為といいますのは、本人が、要するに自分の土地が使用権の対象になったということを知りまして、そしてそれに対する補償手続等を行なうわけでございますので、私どもとしては遅滞なくという、そういう文言を十分尊重したいと思いますけれども、これが何日後、一月後というふうなことにつきましては、まだ申し上げることはできないと思います。
  408. 東中光雄

    ○東中委員 あなたは何日後ということは言えない。私が聞いているのは、そういうことを聞いているのじゃなくて、おそくともどの時期までにやるということをはっきりさせてほしい。それもはっきりしていない。それなら、一年たっても二年たってもかまわぬかもしれないという考えでおられるのですか。
  409. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 一年、二年後を毛頭考えておりません。いろいろな手続をする上におきましても、また、先ほどお話しになっておりますようないろいろな異議の申し立て等をやる場合につきましても、やはり権利者の保護ということは十分われわれも考えたいと思います。ただ、それがいつということは、まだ現在は申し上げる段階でございませんので、これから慎重に検討いたしたいと思います。
  410. 床次徳二

    床次委員長 東中君に申し上げますが、時間が迫っておりますので、すみやかにお願いしたいと思います。
  411. 東中光雄

    ○東中委員 答弁をされないからこういうことになるわけですが、あなたは告示はなるべく早くやる、こう言われておる。批准書交換後じゃなくて、批准後なるべく早くやる、こう言われた。もしことしじゅうに批准されたら——批准書交換じゃないですよ。批准されたら、もうなるべく早く、来年早々でもやる、できるだけそうしたいということじゃないのですか。
  412. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 批准後ということでございませんで、批准書の交換後ということでございます。批准書の交換後に、具体的には米軍に提供します一つ一つの施設、区域について合同委員会で合議いたしまして、そして区域が確定いたすわけでございますので、やはりその間において適当な時期、こういうことになろうかと思います。
  413. 東中光雄

    ○東中委員 批准書交換後とはあなたは言っていないです。いままでの質問主意書に対する答弁だって、そうは言っていない。本委員会だって、そうは言っていない。変更するんだったら変更するでいいです。
  414. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 私はもちろん、この批准書の交換後ということを申し上げたつもりでございますが、その辺にもし表現が不適切な点がございますれば、それは訂正するのにやぶさかでございません。
  415. 東中光雄

    ○東中委員 結局、告示はなるべく早くやりたい。しかし、その告示をやっても効力は——告示の行政処分としての効力は発生するという見解は、あなた方が一方的にとっておられる。しかし、実際には観念の表示としての、一般的通知行為としての、不特定人に対する一般的通知行為としての官報の告示は、官報が沖繩に行かないのだから、沖繩ではわからない。そのことは、まさに民事局長が言っているとおりです。そして今度は、現実の通知はずっとおくれる、こういうことになっているわけです。告示の効力だけが発生して、実際に知り得べき状態に置かれなかったら、一年たったら不変期間で裁判を起こせなくなるじゃないですか。あなた方は、そういう道を切り開くために、いま答弁をそういうふうにはぐらかしているんじゃないですか。重大なことですよ。知ったときから三カ月でしょう。処分のときから一年でしょう。その一年の間は、知らされない状態で、あるいは表示されないような状態でどんどんやっていく。この告示が沖繩に通用しない、現実に知らしめる状態に置かないということであるだけに——本土におる人は別です。施政権の返っていない沖繩にいる人たちにとっては、まさに裁判を受ける権利を、行政事件訴訟法を平等に適用できるような装いをしているけれども、現実にはやれなくなるじゃないですか。期限をなぜはっきりしないのですか。遅滞なくというきわめて長い期限にしてある。長い、違法にならない条件にしている。そうすることによって、沖繩県民の、切実な訴訟を起こすという人たちを、起こし得ないような状態、そういう状態に追い込んでいる。期日をはっきりしなさい。しないんだったらそういう状態になるじゃないですか。いかがでしょう。
  416. 床次徳二

    床次委員長 簡潔にひとつお願いします。
  417. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 あくまで権利者保護の立場で考えまして、その辺は保護に欠けることのないように措置をいたしたいと考えます。
  418. 床次徳二

    床次委員長 東中君に申し上げますが、御約束の時間が経過いたしましたから……。
  419. 東中光雄

    ○東中委員 権利者保護の立場で告示をするんだ、権利者保護の立場で通知をするんだ、こういうようにあなたは言われるけれども、そして、告示は了知主義だと民事局長は言うけれども、通知ができない人には公示なんでしょう。公示だったら、了知し得ないじゃないですか。了知し得なくっても、効力を発生さしていくんでしょう。同じ観念の通知である公示のときにはそれでよろしい、効力を発生させる、しかし告示のときはそれで知ったことにならないんだと、こんな矛盾した理屈はないですよ。公示も、告示も、不特定人に対する一般的な観念の表示行為であるという点では一緒じゃないですか。こういう点で全く、権利者保護だという名前でそういうことでやられていることが、実は裁判を受ける権利を奪っていく、そういう陰険な仕組みになっているということをいわざるを得ぬわけです。  私、最後に、時間が来たということでございますので、総理にお聞きしておきたい。  この法律は、先ほど、運用によって何とかする、こう言われました。運用は、しょうがないんですよ。二条の一項によって、法律で使用権を強制的に取り上げるということがきまっているのです。あとは告示をするとか——これは保護だという名前でやられているだけであります。運用でやれない問題なんです。きまってしもうとるんです。法律によって取り上げるんです。こんな法律は、国家総動員法にもなかったし、そして小笠原の場合もなかったし、戦前、戦後を通じて、戦時中もなかったことなんであります。そういう点で、重大な違憲立法だ。このことを私たちは言っているわけです。運用でと言われたって、運用でやれる分とやれない分がある。その点についての総理の所見をお伺いしたいと思います。
  420. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど私がお答えいたしたことを東中君もよく覚えていらして、運用でという、これはできるだけ運用でやる。しかして、まだ運用でも——運用という限りにおいては、それはやはり限度があります。また、琉球政府におきましても、この返還についてやはり協力態勢でございますから、そういう点では、法律的にはいろいろの議論があるだろうと思いますけれども、私は琉球政府の協力をも、やはりこの問題には意義を十分考えなければならないだろうと思います。私ども、官報に公示する、かように申しましたが、日本の官報は琉球政府に、施政権の返らないうちには参りませんけれども、もちろん琉球政府におきましても、本土への返還、これには十分協力いたしますから、そういうものについては、公示されたものについてやはり琉球政府でとれる処置もあろうか、かように私は思います。そういう点をも含めて、運用の面で十分補っていきたい、かように私恩っておりますから、皆さん方の御指摘になりました諸点、これらの点についてはわれわれも十分考えていく決意でございます。
  421. 東中光雄

    ○東中委員 終わりますが、最後に一言申し上げておきたいのです。  この法律は、私は、必ず裁判になると思います。裁判になったら、この法律は必ず違憲だという結論が出ると思う。最高裁で必ず違憲だという結論が出ると思う。最高裁の裁判官を、そういう裁判官でないように任命がえしちゃったら別ですけれども……
  422. 床次徳二

    床次委員長 簡潔にどうぞひとつ——おやめをいただきたい。
  423. 東中光雄

    ○東中委員 必ず出ると思いますので、そういう性質のものをあえて強行するのは、それこそ、中谷君じゃありませんけれども、立法府におる私たちとして、これは容認できない。問題点は何ぼでもあるわけです。私は、法案別の審議があれば、この問題点について——私、ただ一点しか、いま言う機会がなかったわけです。総括的な、一般的な質問での発言であります。個別法案での審議をぜひやっていただいて、そういう審議を尽くして、違憲性を明らかにして、立法のやりかえをすべきだ、こう考えることを申し上げて、質問を終わります。(拍手)
  424. 床次徳二

    床次委員長 補足質疑の申し出があります。この際これを許します。松浦利尚君。
  425. 松浦利尚

    松浦(利)委員 私は、補充質問をこれで四回やるわけでありますが、きょう要求いたしました資料について、政府のほうから明確に御答弁いただきたいと思います。
  426. 福田赳夫

    福田国務大臣 一昨日の松浦さんの御指摘の問題でありますが、アメリカ側から一札取りつけましたので、それを政府委員から御披露申し上げます。
  427. 井川克一

    井川政府委員 すでにお手元に差し上げましたとおり、アメリカ大使館より日本外務省に対する口上書が参っております。アメリカ大使館より外務省に参りました口上書の翻訳を読み上げます。  「アメリカ合衆国大使館は、外務省に敬意を表するとともに、合衆国政府は沖繩日本国への復帰前に福地ダムを完成するようあらゆる努力を払うものである旨を外務省に通報し、また、同ダムが復帰までに完成されないことが明らかとなったときは、合衆国政府は同ダムの建設のためにすでに割り当てられている一千二百一万二千合衆国ドルのうちの未使用分を復帰前に琉球水道公社に移転するものである旨申し述べる光栄を有する。  さらに、大使館は、合衆国政府は平良・福地ポンプ場改修計画及び前田タンク計画についても、福地ダムの場合と同様に処理する旨申し述べる光栄を有する。」  以上でございます。
  428. 松浦利尚

    松浦(利)委員 口上書の問題についてはあとから議論さしていただきたいと存じます。  ただ、ここでまた数字が変わりました。この福地ダムの建設総額の数字が、大蔵省からいただいた数字と変わってきた理由はどこにあるのか、何が削減されたのか、その点を明確にしてください。
  429. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 数字が変わったわけじゃございません。お手元にお出ししました資料によりますと千二百十四万八千ドルになっておりますが、この中には、実は福地ダムほかを含めました北部水源調査費というのがございまして、北部水源調査費のうちの福地ダム分が十三万六千六十二ドルございますので、これを福地ダムの建設工事費総体に含めたわけでございますが、この十三万六千六十二ドルを引きますと、ちょうどその口上書にございます千二百一万二千ドルになるわけでございます。
  430. 松浦利尚

    松浦(利)委員 大蔵大臣、私は、何べんも何べんも国会に具体的な数字をもらいました。また、大蔵省の理財局の皆さんは、忙しいのに、資料を持って私の部屋に来てくれました。本委員会にも提出がありました。しかし、ここに出されたアメリカの口上書による数字と、われわれに福地ダムの建設総額だと出した数字が、十三万六千ドル違っておる。こういうやり方で、一体正確な水道公社などの財産の承継ができる思っておられますか。その点どうです。
  431. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 これは違っておるのじゃなしに、水道公社の経理上、福地ダムの建設工事費としましては千二百十四万八千六十二ドルというのを、向こうは経理上の帳簿に載っけておるわけでございます。いろんな工事費がございますので、その中にただいま申しました福地ダム分の水源調査費、これを含めて公社は言っておるわけでございます。ですから、アメリカのほうでいま言っております千二百一万二千ドルというのは、そういう福地ダムその他いろいろが入っております北部水源調査費というものは除いておる、その違いでございまして、決して一致しないことはございません。
  432. 松浦利尚

    松浦(利)委員 その違いはありません、違いはありませんと言われるけれども、具体的に福地ダムの数字を持ってこられたのは、そういう数字だったじゃないですか。私が調べたとき、そう言ったじゃないですか。現実にあなたはそう言っておられる。そして、いまそのことを言われたのでは、私はいただけません。  また、「さらに、大使館は、合衆国政府は平良・福地ポンプ場改修計画及び前田タンク計画についても」云々とありますね。これについても、私が二十万ドル指摘したでしょう。この二十万ドル食い違っておるのはどうかとこう言ったら、大蔵省のほうで資料を持ってきて、それは先生のほうの資料が間違っておるのです、明らかにこれが正しいのですと言ったから、私はそのとおり承認したのだよ。現実的にきょうになったら、アメリカのほうから逆にこういうものを言ってきておるじゃないですか。二十万ドルはまだ琉球水道公社に支出されておらぬじゃないですか。私の資料が正確で、大蔵省が出しておった資料が間違っておったのですよ。それを、私は大蔵省のほうが正しいと思って、私の主張は取り下げたのですよ。  外務大臣、あなたは、国民の税金をびた一銭もでらめな支出はしませんと、こう言っておる。前の大蔵大臣のときにそう言っておる。この琉球水道公社の継承について数字を合わせてみたら、きょうですら、アメリカの口上書が出てきてもなおかつ変わってきておるじゃないですか。そして、いまアメリカの口上書が出て、初めてはっきりした。アメリカから資料が出てこなければ、一万七千五百ドルという財産の承継ができない、こういうことがいみじくも明るみに出たじゃないですか。外務大臣、こうした事務のあり方、こうしたものについてどう思われますか。あなたは責任者です。もう事務当局皆さん方のことはいろいろ言いません。最高責任者ならどうです。
  433. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、食い違いはないと思いますが、もう一ぺん事務当局から説明させます。
  434. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 そこに出ております平良・福地ポンプ場の改修のプロジェクト、それから前田タンクのプロジェクトと二つございますが、先般先生に御説明しました際に、金額の違いを先生から指摘されまして、それで確認いたしましてお出しいたしましたのが一昨日の資料でございまして、一昨日の資料の八ページをごらんいただきますと、その全体が出ております。このうち先生が現地に照会されまして、このうちの二十万ドル少ない数字を現地でお聞きになったと思います。  そこで、私どもはいろいろ現地に確認いたしましたが、この二つの計画につきましては、この私どもお出ししました数字に間違いございませんが、ただ、福地ダムと同じように、この二つのプロジェクトにつきましては、たぶん復帰日までに完成すると思うけれども、若干のおくれが予想される、こういうことがございましたので、そういうおくれた場合の万一の場合をおもんばかりまして、福地ダムと同じような処理をしたいということで口上書に織り込んだ次第でございます。
  435. 松浦利尚

    松浦(利)委員 あなたは、口上書に織り込んだ次第ですと言うけれども、あなたがこれを書いたのですか。どうです。あなたが書いたのですか、これは。
  436. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 これは所管は外務省でございますが、外務省といろいろ打ち合わせをした次第でございます。
  437. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それじゃ、こうこうこういうふうにこの口上書は書いてくれとあなたが依頼したのですか、外務省を通じて。明確にしてください。どうです、これは。
  438. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 そういうことではございませんが、口上書をつくります場合に、外務省といろいろ打ち合わせをしましてこういうことになったわけでございます。
  439. 松浦利尚

    松浦(利)委員 外務大臣にお聞きしますが、いまのお話を聞いておりますと、前もって日本政府のほうから、外務省を通じてアメリカ大使館に、こうこうこういうふうに書いてくれぬですかと依頼をするのですか。その点を明確にしてください。
  440. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは政府委員から御説明申し上げます。
  441. 井川克一

    井川政府委員 これは具体的内容につきましては、大蔵省からいろいろお話を聞きまして、またさらに、こういうときには、必ず大体その相手方と打ち合わせをして、こういうふうなものをつくるということになっておるわけでございます。
  442. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それはどういうふうに言ってつくらしたのですか。一体どういう内容でつくらしたのですか。それを教えてください。
  443. 井川克一

    井川政府委員 要するに、この資産承継のその評価云々につきましては、アメリカ側と大蔵省がやっておられたわけでございまするが、この福地ダムその他のものにつきましては、実体的に大蔵省と向こうとの間におきましてこのように取り計らう。福地ダムその他のものは、できるだけ全部向こうでつくってしまう。しかし、万一できないときにはこういうふうにする。これらのものにつきまして明確な話し合い、約束というものができていたわけでございます。したがいまして、今回の口上書ということになりまして、その旨を口上書に書いた、こういうわけでございます。
  444. 松浦利尚

    松浦(利)委員 ちょっと条約局長、あなたは前もって明確にできておったと言うが、いつごろできておったのですか、そういう話は。
  445. 井川克一

    井川政府委員 これは大蔵省からお聞き取り願いたいのですけれども、私もここで拝聴しておりましたし、また直接に聞きましたけれども、こういうふうにできない場合はお金を置いておくという話は、具体的にずっと煮詰まっておったということをかねがね大蔵省も言っておりますし、また、私にも直接に言っておりました。
  446. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それじゃ外務大臣、この問題はたいへん重要な問題です。これは前もってわかっていたのですね。いまのお話では、前もってずっと煮詰めておったということがわかっておったのですね。いつごろからこれはわかっておったのですか。——あなたじゃないよ。外務大臣だよ。何だあなた、出てくるな。
  447. 福田赳夫

    福田国務大臣 さように承知しておりますが、詳細は大蔵省の政府委員から説明をさせます。
  448. 前田多良夫

    ○前田政府委員 これは協定調印の際、すでにそういう点については、はっきり文書はございませんけれども、そういう了解で進めてきておるわけでございます。
  449. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それでは、いまの話は、私はたいへん重要だと思いますね。いま初めて明るみに出ましたね。たいへん重要なことをいまあなたは発言しておられるのです。いいですか。  それでは、この口上書の性格について教えていただきたい。私はしろうとです。一体この口上書というのは、どういう性格で、どういう内容を持ったものですか。それを教えてください。どうなんですか。
  450. 井川克一

    井川政府委員 口上書と申しますのは、正式の外交文書一つの形式でございます。私ども、ずいぶんこの口上書というものを用いまして外交上の処理に当たっておるわけでございます。  内容につきましては、そこに書いてあるとおりでございまするけれども先ほどから大蔵省の方も申されておりますとおりに、話し合いができたものを特に今回こういう口上書にした、こういうことでございます。
  451. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それでは、それほど外交上重要なこの口上書というものが、前もってこういうことが話し合われておって、なぜいまごろこれが出てくるのですか。私が四回も三回も国会でいろいろ議論をして、数字が合わぬから詰めていって、なぜこういうものを出すのですか。初めてわかったじゃないですか。あなた、どうですか、外務大臣愛知書簡を見てください。極東放送が、財団法人極東放送そのものがまだできてもおらないのに、できたらこうしますという、そういう書簡がちゃんと付属関連文書としてあって、いま言ったようなことがすでに前もって約束されておるのに、何でいまごろこれを出すのですか。当然私たちがあの協定を議論するときに、関連付属文書としてこういう重要なものは出されるべきじゃないですか。なぜ隠したのですか。
  452. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは隠しておったわけじゃないので、口約束がある、そういうふうに一昨日も申し上げたわけでありますが、特に松浦さんからその一札をとれ、こういうお話でありますので、特にそういたした次第でございます。
  453. 松浦利尚

    松浦(利)委員 口上書というのはどういう位置づけになるのですか、外務大臣。もう事務官はいいです。
  454. 福田赳夫

    福田国務大臣 外交文書の一種でありまして、この口上書は、アメリカ大使館がアメリカ政府の意思をわがほうに伝達をする、そういう性格を持っております。
  455. 松浦利尚

    松浦(利)委員 この口上書は法的な拘束力はあるのですか。これは、あの協定に関連してこの口上書なるものは拘束力を持っておるのですか。必ず履行しなければならない義務が生じますか。
  456. 井川克一

    井川政府委員 外務大臣が申されましたように、この口上書は、アメリカ大使館が日本外務省に発出した外交上の文書でございます。したがいまして、アメリカ政府はこのことをやるという約束をしているものでございます。約束を確認しているものでございます。
  457. 松浦利尚

    松浦(利)委員 不履行したときはどうですか。口上書というものは必ず履行するという義務を生じますか。不履行の場合はどうなるのです。
  458. 井川克一

    井川政府委員 これはなかなかむずかしい御質問でございます。と申しますのは、外交上の約束というものは、私どもそういうものが不履行であるということを前提として考えるというわけにはいきませんでございます。そういうものはやるのだということを、アメリカ政府がこういうふうにするのだというときには、こういうふうにするのが当然なことでございます。
  459. 松浦利尚

    松浦(利)委員 これが実際に不履行されたときにはどうなるのです。現実に、私がここでこの問題を提起しなかったらどうなります。佐藤総理が目ざしておる四月一日返還という、アメリカの会計年度は七月一日から六月三十日で終わるでしょう、先ほど指摘した百六十八万ドルというのが、かりに四月一日の復帰時点までに琉球水道公社の会計に入っておらなければ、継承する対象にならないじゃないですか、百六十八万ドルは。国民の税金でびた一文たりともむだなものは使わない、そういうことであるなら、当然この口上書というものはあの関連付属文書の中で明確にしておくべき内容だったのじゃないですか。われわれのほうは、国民は沖繩返還にからんで三億二千万ドルアメリカに払う、その中で一億七千五百万ドルは承継費として払う、そういうことをぴしっときめておる。しかも、第一年度で一億ドル、それから以降五カ年間、年賦で払いますということまできめておる。ところが逆に承継する側の日本に対しては、こういう口上書、履行するか不履行するかわからないのが、私たちが追及したら、口約束だけれども、あなたが要求したから、しかたがないから口上書で出しました、こういうことで、内容的は当然相手側の義務履行として、あの関連付属文書の中に入れらるべき性格だったのじゃないですか。これは外務大臣どうです。
  460. 福田赳夫

    福田国務大臣 あくまでもこれは資産の継承の問題です。継承する財産は積極財産もある、負債もあります。その差し引きの残りが継承される、プラス分が継承される、こういうことになるわけなんです。そこで、その積極財産の中に、金銭もあります、あるいは施設もある。その施設をつくろうという計画であったところ、それが工事が間に合わぬかもしらぬ、こういう場合におきまして、その該当する金は置いていきます、その場合には、その施設に見合うところの積極財産である、同じものでございます。
  461. 松浦利尚

    松浦(利)委員 この口上書がいま出てきた、しかもアメリカの支出に関して、アメリカ側の福地ダムあるいはその他の工事に関しての工事費として重要な性格を持つ口上書が出てきた。しかも、これは重要な外交文書である、こう言っておられる。だとするなら、これはあの返還協定一つの重要な内容ある外交文書として添付されるべき内容だと私は思う。いまこの問題を参議院で議論していますね。私はこの口上書というものが、沖繩返還協定に関連をさして、本委員会でも当然前もって知っておった、しかも議論されておった、そのことは私は国会で知らされるべきだったと思う。そのことについては何ら協定委員会では議論されておらない。いま初めて、三べん議論をして四へん目にこれが出てきた。初めて国民はわかつたのでしょう。私はこういうことを考えると、この口上書というものについてはもう一ぺん明確にして、この沖繩返還協定に関連した合意議事録——おそらくこれは議論したときに合意議事録に入るべきものだと思うのですね。そういった意味で、この口上書でなくて、そういった拘束力のある内容あるものに変更さしていただきたい、そのことが私は国民に向かって正しいやり方だ、このように思うのです。どうです。
  462. 福田赳夫

    福田国務大臣 これはあくまでも資産の承継に関する資産評価の問題なんです。そんな、松浦さんのおっしゃるようなお話でありますれば、資産の一つ一つを、みんな明細にこれを協定書に書き上げなければならぬ、こういうことになるわけです。そうじゃないのです。資産の評価をいたしまして、その積極的な部分の過剰分を引き継ぎます、こういうことなんです。これはもう協定内容の問題じゃない、資産承継の問題である、こういうふうに御理解願いたい。
  463. 床次徳二

    床次委員長 松浦君、補足質問でありますので、ひとつ時間を十分御考慮いただきまして、なお関連の申し出もあるようでありますから、簡潔にお願いいたします。
  464. 松浦利尚

    松浦(利)委員 資産の承継でしょう。それなら、百六十八万ドルが琉球水道公社に入っておらなかったら、来年の四月一日現在までに、かりに四月一日に沖繩復帰したと仮定をして、それまでに琉球水道公社にこれが入っておらなかったら、承継できないじゃないですか。この口上書が出てきたから、これが履行義務があるかどうかというのは、これはこれから関連質問があって議論があるでしょう。私は、これは拘束力のない口上書だと思いますね。お互いの、何というか信頼関係だけに存在している問題だと思う。承継、承継というけれども、現実的にこれは承継できなかった。しかし、それをあえて承継できる、こういうのは、先ほど大蔵省なり外務省が話をしておったように、もうすでにこの協定なりこういったことを、資産承継のときにこの話は出ておった、口約束で出ておったと、こういう報告が出されておるのであります。それを国会になぜ出さなかったか、なぜそれを協定の付属文書として明確にしなかったか、私はそのことに対する責任は重大だと思う。そのことを私は指摘しておるのですよ。外務大臣、どうです。
  465. 福田赳夫

    福田国務大臣 承継すべき資産は総額一億七千八百万ドル、それを一億七千五百万ドルと一応いっておるわけです。その中身が金であるかものであるかというだけの話なんです。これは資産評価の問題なんです。そう申し上げているわけです。ですから、当然この物的資産ができなければ、これは金銭がそれにかわるのですから、その金銭で評価する、こういうことであります。
  466. 松浦利尚

    松浦(利)委員 外務大臣、外務大臣の言わんとすることはわかっているのですよ。私の言うこともわからぬですか。アメリカが、民政府が、百六十八万ドルの工事契約ができないのですよ、現実に二期工事がおくれておるから。それを、四月一日復帰前までに琉球水道公社に入れて契約すればこれは別。たまたま四月一日以降でやってしまったら、この百六十八ドルは承継できないでしょう。そうなるでしょう、結果的に。ただ、あなた方が言うのは、いや、そういう場合には、口約束で琉球水道公社に百六十八万ドルを置いていくということだからそういう心配はありません、こう言っておるのだけれども、そのことがこういう口上書という形で出てきたから、ああ、なるほどそうかということがわかるのですよ。こういうのがなかったら食い逃げされたかもしれぬでしょう、百六十八万ドル。ごまかされたかもしれぬでしょう。そのことを私は指摘しておるのですよ。だから、そうであるなら、資産承継の中で一億七千五百万ドルのうち、やはり福地ダムというものも入っておるのだから、それがかりに工事が完成しなかったときには、その分については現金として流動資産の中に入れていきますぞと、そういうことが口約束されておったとするなら、なぜそれを付属文書にしなかったのか、こう言っておるのですよ。VOAという——極東放送などは現実に財団法人ができてもおらぬのに、愛知書簡ということで明確になっておる。金を払うほうは、資産を承継するほうは、こういうことが口約束だけで明確になっておらぬ、そういう外交のあり方は片手落ちじゃないですか、こういうことを言っておるのですよ。
  467. 福田赳夫

    福田国務大臣 わかりました。  資産承継の一億七千八百万ドル、これがきまるとき、つまりこの協定の調印をする場合、その時点におきましては、これは、福地ダムは建設を完了する、そういう見通しです。ですから、その物的施設を書いておいたわけです。この積極資産の中に書いておったわけです。ところが、その後どうもこれがおくれそうだという事態がありまして、大蔵省でもこれは大きな問題ですから心配いたしましたところ、金はちゃんと置いていきます。そういうことになりますると、見合いの金でありまするから、積極財産としてはこれは同じものなんです。そういうことであります。
  468. 松浦利尚

    松浦(利)委員 外務大臣それはよくわかったんですよ。もうあなたが言われぬでももうそのことはわかったんだ。しかし、さっきから言っておるように、工事が完了しなかったときには銭を置いていきますよという約束事があったということははっきりしたでしょう。それは口約束だ、こういうのです。しかも、われわれが何べんも何べんも要求したらこの口上書というのが出てきた。数字が食い違っておるから。現実に現地の琉球水道公社と政府の資料とが、突き合わせ突き合わせしても合わない。そうしたら、そういうことがいま明るみに出てきたわけですよ。よく追求してみたら口約束がありました、そうして、この口上書というのが出てきた。なぜ、そういうことであるなら、この沖繩返還協定の関連の文書として——国民の税金を払う側です、われわれは。承継する側ですよ。その承継する側、金払う側が、もっと付属文書などに明確にしなかったのかと追及しなければ、議論しなければ出てこないでしょう。そういうことを私はあなたに言っておるのです。その責任は重大じゃないですか。  現実に、それでは具体的にお聞きしますが、いま参議院で協定が議論されていますね。この口上書とのかね合いはどうなるのです。
  469. 福田赳夫

    福田国務大臣 この協定ができる段階では、アメリカ側は福地ダムは完成する、こういう見通しだったわけです。ですから何らの問題なかった。ところが、その後どうも多少おくれそうだという形勢が出てきましたので、その場合には金は置いていきます、こういうことになる。そのうち積極財産が金であるかものであるかというだけの話でありまして、総計にはちっとも変わりはないのでありまして、国損には全然なりませんです。
  470. 松浦利尚

    松浦(利)委員 国損には全然関係ないと言われるけれども……
  471. 床次徳二

    床次委員長 関連質問がありますから、簡潔にお願いします。
  472. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いや、もっと明確に答弁してください、わかりやすいように。私にばかり言うけれども、政府にも言ってくださいよ。あなた、私ばかり言うけれども、政府に言ってください。政府がまともに答弁したら質問なんかせぬですよ。
  473. 床次徳二

    床次委員長 これはもう質問される方に対する答弁でありますので、両者とも簡潔にお願いします。
  474. 松浦利尚

    松浦(利)委員 ちゃんとした答弁してください。私がさっきから質問しているでしょう。  私は、この沖繩国会が始まる前に行ったんですよ、沖繩に。そして琉球水道公社その他で調べたんですよ。そうしたら、工期がおくれるということがわかったんですよ。政府もその時点ではもうわかっておった。それなら、なぜそういうことがわかった時点で、こういうちゃんとした文書をつくって審議をしようとして、こうですと、なぜ国会に出さないですか。わかったときは国会が始まる前です。いまこういうことがわかったというなら、これは私はあなたを追及しません。政府を追及したってそれは無理です。物理的に無理だったでしょう。しかし、沖繩国会が始まる以前に私たちはそういう資料を得たんです。その時点で必ずこういうものについては——しかも、口上書というのを追及してみたら、これは外交文書として非常に権威のあるものですと、こう言われる。そういう権威のあるものがいま出てきた。協定はとっくに通ってしまっておる。こういったあり方について、私は非常に不満だと言うんですよ。何でこれは早く出さなかったですか。なぜ国民に向かって審議の資料として提出しなかったのですか。だから私は、いま参議院で議論されておる協定とのからみで、この口上書はどういう扱いになるのですかと、こう主管大臣である外務大臣にお聞きをしておるのです。はっきり答えてください。
  475. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私が調べた範囲のことで御説明いたします。  資産評価のときに、この福地ダムについては、当時の状況は復帰までに完成するという見込みが強かったので、完成したものと仮定した評価をした。ただしその場合に、あとからわかったということではなくて、もし完成しなかったらどうするかということも用心して、そのとき予測して、そのときはどうするかということを言ったら、もし完成しなかった場合には、その残った金額は、完成に要する残額は全部置いていくということだった、約束だったそうですが、当時アメリカの予算のほうにも、はっきりとこの予算がもう盛られておりますので、したがってこの金は、当然そういう場合には復帰前にその金額はこちらに支払われるものということをもう疑わなかったというので、そう重大視しなくてできたものとの評価でこの評価をしたということでございましたが、その問題をたびたびそのとおり説明したのでございますが、そういう問題ならこれは口約束ではいかないじゃないか、万一の場合にはっきりしたものをとっておけというような御要望がございましたので、それで、おとといから外務省の当局がアメリカ政府と話をして、この口上書をもらってきたということでございますので、この口上書はきょう初めて向こうから出されたということでございまして、最初、もしできなかった場合ということを予測していろいろ相談したが、そのとき向こうの約束をこちらはもう信用して、当然そうなるだろうと、しかも向こうアメリカの予算措置もはっきりそういうことがあるので、もう安心して、別にこの問題を大きく取り上げなかった、これが真相だと思います。
  476. 床次徳二

    床次委員長 細谷治嘉君より関連質疑の申し出があります。この際これを許しますが、簡潔にお願いします。
  477. 細谷治嘉

    細谷委員 最初に外務省と大蔵省にお尋ねしたいのでありますが、この口上書にも書いてあるとおり、また、いままでの質問者とのやりとりから明らかなのは、「完成されないことが明らかとなったときは、合衆国政府は」云々とこう書いてあるわけですけれども、お尋ねいたしたいことは、いつごろ、この福地ダムの百六十八万ドル、こういうものは消化されないんだということがわかったのか、ひとつこの月日を知らしていただきたい。
  478. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 百六十八万ドルとおっしゃいますが、そういう数字まだきまっておりませんで、私どものほうは資料にございますように、七二年度分としまして五百八十二万ドル残っている。この分のうち、どれだけが未使用になるかという問題でございます。
  479. 細谷治嘉

    細谷委員 私は、いつ消化し切れない、こういうことがわかったのか、これだけをお尋ねしているのですよ。
  480. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 まだ消化し切れないという米軍からのあれがございませんので、その辺は承知しておりません。
  481. 細谷治嘉

    細谷委員 おとといあれだけ松浦君との間で話が詰められて、最終的には委員長中心理事会が開かれて、そしてこの口上書という形になったわけですね。きわめて明確なんですよ。しかも、いままで話がありましたように、この国会が開かれる前に、完全消化はされない、おとといは百六十八万ドルという数字中心にして議論したわけですね。完成されないということがはっきりわかっておったのでしょう。それがいつごろだったのかということを私はお尋ねしているわけですよ。
  482. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 実は、この問題につきましては公社の内部の資料がございまして、これがことしの九月ごろの資料でございますが、その資料によりますと、一九七二年度は幾ら、それ以降は幾らと、こういった資料がございますけれども、まだその辺米国民政府のほうではその数字をはっきり言っておりませんので、万一ずれることがありましても、百六十八万ドルになるか幾らになるかということはわかりません。
  483. 細谷治嘉

    細谷委員 それでは別の面からお尋ねいたしますけれども、未使用分というのは置いていく、こういうことで両政府の間で了解しておった。その話はいつごろあったのですか。
  484. 前田多良夫

    ○前田政府委員 これは協定調印時までの段階におきましては、米側としては完成させてこれを引き継ぐ、こういう前提を米側としては強くとっておりましたし、現在でも先ほど答弁のように完成させると米側は言っておるわけでございまして、幾らだけ残していくというようなことは言っておりませんが、われわれのほうとして、その点もし未完の場合のことを考慮しまして、その場合には間違いないなという念を押して、それが口約束としてずっときているわけでございます。ですから、お尋ねの件は、すでに当初からそういう考え方であるわけでございます。
  485. 細谷治嘉

    細谷委員 これは、話がもとへ返ったのかどうなったのか、聞くごとにおかしくなってくるわけですね。土曜日の議論の時点でこれを処理したわけですから、その上に立って対処していただかなければいかぬ。外務大臣も大蔵大臣も、金額は申しませんけれども未使用の部分が起こってくる。その未使用分については置いていくんだ、現金で置いていくんだ、こういうことば、口約束になっておったというわけですよ。その口約束ではいかぬから、文書をはっきりとっておけというのが土曜日の理事会の決定で落ちついたわけですね。それでは未完成の部分相当分の金を置いていくということは、いつ話し合って、いつごろ了解しておったのかということを私は尋ねているわけですよ。
  486. 前田多良夫

    ○前田政府委員 評価の際には、もうすでにそういうふうに約束ができておったわけでございます。そのためにダム全体の評価を入れたわけでございます。
  487. 細谷治嘉

    細谷委員 評価の際になんという話じゃないのですよ、土曜日の段階は。これはひとつ事務官ではどうにもなりませんから、外務大臣、あなたはもうはっきりおとといの段階では百六十八万ドルという数字が上がって、その金はもので置いていくのか金で置いていくのか、こういうことなんだ、こういうことであったわけですね。これは私は間違いなくかなり早い時期、返還協定の調印の式の前かあとかは存じませんけれども、かなり早い時期であったのじゃないかと思うのですけれども、これが話し合われて金で置いていこうという了解点に達したのはいつごろなんですか。
  488. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は先ほどから申し上げているとおり、協定調印時におきましては、アメリカ側は全部つくっていく、こういう計画だった。ところが大蔵省は、非常にこれは用意周到でありまするから、もしその後においてこの工事が進行しない、こういうような事態があった場合には、その施設のかわりに金を置いていく、こういう口約束をとってある、それを前提として評価を行なった、こう言うのです。評価といたしますと金であろうが物的施設であろうがこれは同じでありますから、問題は生じない。問題は金を置いていくかいかないか、こういうことだ、こういうふうに考える次第でございます。
  489. 細谷治嘉

    細谷委員 いまの外務大臣のおことばでありますと、理財局次長の答弁と違うのですね。外務大臣のいまのお答えというのは、返還協定調印時には、金を置いていくなんという話はない、一〇〇%完成してもので置いていく、こういうことであった。あなたの話はそのときもわからぬで、金とものが混合でいくかもしらぬという形であったということですから、明確に話は違うわけですね。外務大臣の言うことがほんとうだとするならば、調印時から今日までの間にアメリカとの間で、もしできない場合はその部分のやつは金で置いていくということが話し合われたはずですよ。それはいつなのかと私は聞いているわけですよ。どうなんですか、大蔵大臣。
  490. 前田多良夫

    ○前田政府委員 次第次第にこの完成の見込みが薄れるに従いまして、具体的にそういう現実の問題が起こってきたわけでございまして、いつという特定の日に、そのときからもう完成の見込みがなくなるかもしれないというふうなある時点を区切る、こういうことではございません。   〔委員長退席、金丸(信)委員長代理着席〕
  491. 細谷治嘉

    細谷委員 大蔵大臣……   〔発言する者あり〕
  492. 金丸信

    ○金丸(信)委員長代理 静粛に願います。
  493. 細谷治嘉

    細谷委員 次第次第にわかってきたというのですよ。次第次第にわかってきて、おとといになってこういうことになったのですか。アメリカと話し合ったのでしょうが。次第次第に明らかになった。次第次第に金が使い切れない部分が多くなるということは明らかになったのでしょうけれども、おととい——きょう初めてアメリカと話し合ったわけじゃないでしょう。金で置いていくか、もので置いていくかということについては前に話し合っておったでしょう。いままで全然話し合わなかったんですか。次第次第に事業がおくれたということはあなたの説明でわかりますけれども、次第次第におくれることはわかりながら、アメリカとは全然話し合わなかったのか、話し合ったのか。話し合ったとすればいつごろなのか、これを私は聞いているのですよ。もう事態はきわめて明瞭なんですよ。こんなことで私は時間を使いたくないのですよ。はっきりしていただけばいいわけですよ。
  494. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま、私も事務当局から聞いているのですが、私の聞いたのは、さっき言ったようなことと、それからこの間の説明では、いまでも復帰時にこのダムができないとまだきまっていないのだということで、まだそれがはっきりしているわけではないのだ。評価するときには、もしこれができなかったら現金を置いていくということは、評価のときにきまった話で、その後ずっと様子を見ておったら、できるかできないかということはまだ確定はしていないというときでございますので、何かおとといの議論で百八十万ドルとか百六十万ドルという話が出たときにも、私はふしぎにして、事務当局に完成するかしないかまだはっきりしないもののときに、百六十万ドルというのはどういう数字かと言ったら、いや別にそういう数字はいまきまっているわけではございませんと言うから、そうだろうと私も納得したのですが、まだこれはどの辺まで最後に完成するかどうかは、ほんとうにまだ確定していないのだと私は思います。
  495. 細谷治嘉

    細谷委員 大蔵大臣の話を聞きますと、外務大臣が先ほど答えたように、いまこの時点におきましても返還時には完成するような話ですよ。いままで質問者との間で何日かにわたって詰めてきたのですよ。それはあり得ないということになっているわけですね。しかも質問者の話の中で、もので置いていくか金で置いていくかということはあらかじめ了解を得ておった、話はついておった。しかし証文では書かなかった。きょう初めてこの口上書が出たのですけれども、紙には出ておらぬけれども、口約束はしてあったということでありますから、大体まあ間違いなく復帰時には完成しない、金を置いていく、これはもう外務大臣ももうずっと前から答弁したことなんですよ。そういうことでありますから、私が何べんも口をすっぱくして言っているのは、いつごろそういうことが明確になってきたのか。これはもう返還協定のときはそういうことなかったのでありますから、それから今日までの間のいつごろかということ。何月何日の何時なんて聞いてません。それだけをあらかた答えていただけばいいわけですよ。
  496. 前田多良夫

    ○前田政府委員 先ほど大臣からも御答弁がありましたように、現在まだはっきり未完成ということは米側も申しておりません。そういうことで、だんだん、だんだんにこのおくれが目立ってきているということは事実でございます。そして、そのおくれが目立ってきたごく最近におきましては、そういう交渉がひんぱんに行なわれた、こういう事実でございます。
  497. 細谷治嘉

    細谷委員 最近ひんぱんに行なわれたというのですから、そのひんぱんに行なわれた初めのころはいつごろですか。今度は覚えているでしょう、最近ひんぱんというのですから、最近ひんぱんの最初のころはいつごろだったのですか。
  498. 前田多良夫

    ○前田政府委員 これは日米間でいろいろな資産引き継ぎに関する交渉は、最近におきましてもずっとそういう個別的な話はいろいろなことが続いておりますものですから、いつからそれが、急にある時点を区切って、その日からそれ以後というような、そういうことはございません。
  499. 細谷治嘉

    細谷委員 これは残念ながら聞けば聞くほどわからなくなってしまうのですよ。じゃ、もう一つ角度を変えて聞きます。  いまの話でいろいろ不統一がありますよ。これはひとつ統一した外務省なり大蔵省の見解を明らかにしていただきたい。こんなことではとても理解できませんよ。質問者はぐっと突っ込んでいるのですから、質問者がわからぬのはあたりまえ。しろうとである私でもわからないのですからそれはもう当然のこと。そこで大蔵大臣、お尋ねいたしますが、おとといのこの委員会で論議されたときにあなたが、金で置いていくかものでいくか、そのときの場当たり次第ということではいかぬということで、日曜日でありますけれども、きょうじゅうにアメリカのほうから文書をもらいます、こういうふうに約束されたのですね。じゃ、なぜあなたは文書をもらいますということをここで約束されたのですか。私は、口約束だけではいかぬ、きちんとした文書でなければならぬという議会側の要望もあってやったと思うのですが、あなたも、少なくとも議会から言われたからしようがない、こういうことじゃなくて、それのほうがいいのだということで口上書をきょう取ったのでしょう。そうじゃないのですか、どうですか。
  500. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 さっき申しましたように、この約束は間違いないものと思っておりましたので、そのままでありましたが、しかし口約束ではいけない、やはり念のためにこういうものははっきりすべきだという御意見がございましたので、これはごもっともだということで、きょうその確かなものをもらうということをお約束したわけで、それがこの口上書になったわけでございます。
  501. 細谷治嘉

    細谷委員 これだけ重要な世紀の沖繩国会の中で議論されておる問題、しかも問題は国民の血税、そういうものでありますから、きわめてシビアな質疑が重ねられることは当然だと思うのでありますけれども、いまの答弁をお聞きいたしますと、こういう問題については知っておったけれども、口約束だけでいいのだということで通していってしまう、はしなくもこれが表に出てきた、そこで口上書という文書になった。いままでのお話を聞きますと、いつごろかというのは言わぬわけですから。しかし知っておったことは事実ですよ。そしてこういう口上書になって、この審議の終わりのきょうの段階においてまた問題になっているわけですが、一体こういうふうになった責任というのはどう感じられますか。先ほど質問者も言ったとおりですよ、めちゃくちゃじゃないですか。三億二千万ドル——一億七千五百万ドルは積み上げであります。七千五百万ドルというのは軍関係の労務者のあれです。七千万ドルというのは高度の、何かわからぬ高度のつかみ金であります。そしてだんだん洗っていきますと、一億七千五百万ドルのほうにも、こんな全然わからぬような事態なんですね。これどういう責任を感じられますか。おそらく皆さん方が答えない理由は、いつかという私の質問に答えないのは、先をおそれて答えないのじゃないかと私は思うのですよ。私は悪意で言っているのじゃないですよ。事態がはっきりしたらいいじゃないか、先に進めるのだ、こういうことを言っているわけですよ。どうなんですか、責任感じませんか。
  502. 福田赳夫

    福田国務大臣 資産引き継ぎは、これは物的施設でありましょうとあるいは現金でありましょうと、それが相対応するものでありますれば、これは全部その価値において変わりはないのです。ですからそういう意味において、私は責任があるとは思わない。ただ皆さんから、おととい、一札とれ、一札とらなかったのは不注意だ、こういうふうに言われますと、それはとったほうがあるいはよかったかもしらぬ、こういうふうに思います。しかし、かりにとらなくとも、日米間におきまして話し合いをする、そういう際において口約束ということはずいぶんあることでありまして、ことに、この問題は資産評価承継の問題である。評価の問題、積極財産、消極財産を相対照する問題であります。そういう際の口約束でありますので、口約束で十分であるというふうにも考えましたけれども、しかし御指摘もありましたので、口上書を取りつける、こういうふうにいたしたわけでありまして、いずれにいたしましても、国損は一切生じておりませんです。
  503. 細谷治嘉

    細谷委員 国損は生じない、口約束で十分だ、こういうことで外務大臣おっしゃっているわけですけれども、やはりいろいろな、先ほどVOAの話もありました。アメリカとの関係については、返還協定あるいはいろいろな合意議事録なり了解覚書なりあるいは往復書簡という形できちんとしているわけですね。その一連のものが協定特別委員会で議論された。残念ながら協定特別委員会というのは強行採決がありましたから、詳細にそういう問題についての掘り下げの審議はできなかった。ですから、この委員会でそういう問題というのが真剣に議論される、こういうことになったわけですね。外務大臣認めるように、やはりこれは一連のものなんですよ。返還協定あるいはその付属文書、一連のものなんです。これだって当然一連のものですよ。いま参議院で返還協定は議論されようとしております。衆議院だって責任を持って審議をして、参議院に対して責任ある決定をしてやらなければならぬというのは衆議院の責任でしょう。でありますから、議会が真剣に取り組んでいるのは当然でありますよ。ところがぬるぬるとして何が何だかわからぬ、こういうことではまことに私は遺憾であります。  そこで一つお尋ねいたしますが、先ほど質問者から、もしこの口上書というのが履行されない場合はどうするのか、こういうことが尋ねられたら、これはもう両国の間で約束されたことでありますから心配ありません、こういうふうに答えております。質問者がここまで心配しているゆえんは、内容ががたがたで一向わからぬからこういう質問が出てくるんですよ。当然のことだと私は思うのです。はっきり一つお尋ねいたしますが、もし万が一これが不履行の場合は、これは当然責任が起こってまいりますね。どうですか。
  504. 福田赳夫

    福田国務大臣 これが不履行であるというようなことでありますれば、これはアメリカ政府の重大なる責任であります。その責任は追及します。
  505. 細谷治嘉

    細谷委員 もう私は終わりますが、最後に総理、冒頭、先ほど総理ちょっと中座されておりましたけれども、もう松浦君の質問は、三日間にわたっての議論であります。きょうは四日目でありますけれども、毎日毎日出てくる数字が違ってまいりまして、そしてきょうは新しく、新しいものまで現金で置いていくかもしらぬというものが加えられてこの文書になってきたわけですね。新しいものも出てきた、こういうことであります。いま私もすなおにお聞きしておりますと、それについても的確な答えが行なわれておらない。しかも幾つか議論されましたように、三億二千万ドルというその内容については真剣な論議が重ねられているにかかわらず、このていたらくです。これは私もさっき申し上げたように、やはりもっと返還協定の際に掘り下げておくべきだということを私は痛感いたします。遺憾ながら、それは強行採決でできませんでした。しかし、参議院でこれをやるわけでありますが、この四日間にわたるこの問題についてのやりとり、あるいはけさほどの横路君の四百万ドルをめぐるいろいろな問題、こういう問題を考えてみますと、国会議員ですらもいろいろ疑問を持つのでありますから、国民、納税者は、やはりたいへんな疑問を持つのではないかと思うのであります。これについて、ひとつ総理としてどういうふうにこれを見ているのか、お考えになっているのか、それをお尋ねいたしまして、私の関連質問を終わっておきます。
  506. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 問題の三億二千万ドル、これはもちろん日本側だけでかってにきめた数字ではございません。相手方のあることでございます。そうして外務大臣からしばしば説明があるように、相手国アメリカとしてはずいぶん膨大な要求をした、金額を示した。しかしながら、折衝の結果ようやくこちらで納得のいく数字、それが三億二千万ドル、こういうことになった。それで少なくともその中には、まあ七千万ドルというような高度の政治的な解決を見たものもありますが、少なくとも三公社の問題、公社の問題については、これは財産目録もあり、それと対応してはっきりさしたのだ。これで一応私は、相手方のあることだから、そういう手続をとっておられればけっこうだ、かように思っておりましたところ、その中に、水道公社の中で完成しておらない、一応項目にはあがっておるけれど、そのものがまだ完成しておらない福地ダムというようなものがある、こういうことで、その点を非常に、その扱い方をいかにするか、こういうことで、きょうで四回、こうして話が続けられております。去る土曜日の話では、ただ口約束だけではいかぬ、それに対する十分の明細書を出せあるいは契約書を取りつけろ、こういうような話でございましたから、外務当局も、きょうだだいま口上書を提出をした、かような状態でございます。これにはまたいろいろの問題がありまして、アメリカ側としてはどうしても返還時までに工事は完成して、そして日本に引き継ぎたい、これを努力する、かように申しておるが、いろいろの事情等である程度どうも完成しないというような心配もあるのじゃないか、そのほうがいまなおその疑念が晴れておらない、ある程度は残るだろう、これは細谷君にしてもその点を御指摘になっておるのであります。ところが、これについては、アメリカ側も責任のあることだから、その点については日本側に十分迷惑かけないような処置をとる、かように申しておりますので、私は、この点は口約束だけでなしに、皆さんからの御注意でその口上書にまで発展したことは、これはたいへん国益を守るという上において合致した、効果があったことだ、かように思っておりまして、皆さん方の御努力を私からもお礼を申し上げますが、ただいまのような状態でございまして、ただ残念なことは、ただいまもせっかく努力しているアメリカでございますから、幾らの金が残る、こういう計算はなかなかできないのじゃないか、かように思っておりますので、それらの点は御了承いただき、また皆さん方お話しになったことは、これは十分政府といたしましても感謝している、かように御理解いただきたい。
  507. 金丸信

    ○金丸(信)委員長代理 中川君。
  508. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 関連して。非常に重要な問題が出てまいりまして、私としても黙ってすわっていられない、そういう気持ちで一、二の点をここで確認をしておきたいと思います。  先ほど、口上書に書いてあることをアメリカ返還時において履行しない場合、日本政府アメリカにその責任を追及するかということに対して、外務大臣は、そんなようなことがあればこれはもう重大責任としてアメリカ側を追及する、このように言われたわけでありますが、その場合にどの程度の政府責任、アメリカの政府責任をアメリカ側に対して要求できるか、この点で、いわゆる口上書のアメリカ政府に対する抱束性という立場から御答弁をいただきたいと思います。
  509. 福田赳夫

    福田国務大臣 アメリカは工事を全部やるつもりでおりますが、万一残った場合には残った工事に相当する金を日本に置いていく、こういう約束をしておるわけでありまするから、その金は必ず日本政府としては受け取ります。もしその支払いを拒むというようなことになれば、これはアメリカ日本の国交上の重大問題でありますから、これは責任をもって追及します。
  510. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 ひとまずいまの御答弁を信じるとして、そうでない場合ですね、これも想定していかなければならない。責任を追及するとするならば、先ほどそういうふうに外務大臣はおっしゃったわけですから、その場合の法的根拠ですね、これは何であるか、何をもって根拠としていくか、この点についてどうでしょうか。
  511. 福田赳夫

    福田国務大臣 これはもう大蔵省とアメリカの財務省、この間で口約束があります。この口約束は当然の口約束でありますが、それを根拠にする。なおそれでも疑義があるというような際におきましては、口上書もまたものをいう、こういうふうに考えます。
  512. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 口上書というお話がやはり出てきたわけですけれども、これは先ほど言われたように、外交文書の一種というふうな御説明があったわけですけれども、もっと権威のある文書ですね、先ほどの質疑の中でも出てきておりましたように、合意議事録であるとかあるいは交換公文等の形式が当然考えられなければならない、こう思うのですが、はっきりとしたこの辺の態度を、単に口上書ということでなしに、こういう権威のある文書でやっていくべきであるということに対する政府の態度を表明しておいていただきたいと思います。
  513. 福田赳夫

    福田国務大臣 口上書でありましてもこれは重要なる外交文書であります。でありまするから、この口上書に基づくということで絶対私は間違いない。また口上書がなくても、これは日米間の重要な話し合いでありまするから、これに違反するというようなことはあり得ない、こういうふうに考えております。
  514. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そのように考えていけば、これはどんな方法でも通用するというようにしか響かない。要するにこの件に関しては、この協定合意議事録の中の「第七条に関し、」というところがありますが、「復帰後に行なわれるべき退職手当の計算及び支払に関し、」云々、手当の計算及び支払いまでもずっと述べてある。そういうところがはっきりとここに出てきて、軍労務者の退職手当のことが明記されておりますけれども、したがって、ここで福地ダムに関するいま言われたこの口上書のようなことをもう一項ここに書いて、確認しておけばいいのじゃないか、このように当然考えが出てくるわけですけれども、この点どうでしょう。
  515. 福田赳夫

    福田国務大臣 これはあくまでも資産承継問題なんです。それで協定書並びに付属文書に、資産のどこのダムのどういう部分、どういう部分、どういう部分を引き継ぎます、それを引き継がなかった場合に一体どうなんだ、これと同じ問題なんです。ですから、一々この問題を協定付属文書に書く必要はない。資産評価のこれは一つの部門である、こういうふうに御理解願えば非常に御理解がやすいのじゃないか、そういうふうに存じます。
  516. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 もう時間もありませんので、次に民社党の門司理事もおそらく関連して御質問があろうかと思いますけれども、私どものほうとしては、いずれにしてもこのような形で、こういった問題の責任の所在というものをはっきりしておくべきである、このことを強く主張いたしまして、関連の質問を終わりたいと思います。
  517. 金丸信

    ○金丸(信)委員長代理 簡潔にお願いをいたします。門司君。
  518. 門司亮

    ○門司委員 私はごく簡潔に質問をいたしますが、実はこの問題については、私はかなり公社の資産の引き継ぎについては問題があるのです。いままでの政府の答弁だけではなくて、公社の原資はどこから来ておるかということが基本的に議論されなければ、財産の引き継ぎというようなことはできないはずなんですね。いま設立されている公社の原資はどこから来ておるか御存じですか。どういうものでできておるかということ。
  519. 前田多良夫

    ○前田政府委員 三公社のそれぞれによって、それぞれの……(門司委員「それは違いますよ」と呼ぶ)違いますが、水道公社につきましては、資本金がどこから来ておるかと申しますと、ARIA、これは割り当て資金、それから一般資金、それからUSアーミー、USネービー等の資金及びそういう資本金に加えまして利益剰余金でございます。水道公社の利益でございます。
  520. 門司亮

    ○門司委員 おのおの違いますがね、いまのお話のようにごく具体的に言うと、軍の施設費とそれからガリオアの資金と借り入れ金が一部含まれているということは事実でしょう。これが事実とすれば、私はこれは買い取る必要はないのじゃないかということ。ガリオアはもとよりエロアにいたしましても、援助資金であるということに間違いがないのである。それからその次の軍の施設費というのは、一括された軍の使用し得るお金であって、これは私の解釈であり考え方では、琉球におるアメリカ軍が、これの使途についてはアメリカの国会の承認を得なくてもいいのじゃないですか。これはおそらくせいぜい会計検査院ぐらいのところまで報告しないわけにはいかぬでしょう、国の金ですから。その程度のものであって、と同時にこうした施設でできたものというのは、とりもなおさずアメリカの軍政のための一つの施設と私は見るべきだと思う。したがって、この電力公社にいたしましても水道公社にいたしましても、沖繩住民のためにアメリカがそういう原資を持ってきてこしらえたものではないということが一応私は考えられる。そう考えてきますと、せいぜい借り入れ金くらいはこれは払わなければいかぬかもしれませんがね、ガリオアと軍の施設費は何も払う義務はないのじゃないかという気がするのですが、その点はどうなんですか。
  521. 前田多良夫

    ○前田政府委員 おっしゃいますように、この一般資金につきましては、ガリオアの見返り資金が引き継がれて一般資金にきている。それから一般資金の使用につきましては、予算上合衆国の議会の議決を経なくても、大統領の承認計画に基づいて現地の高等弁務官が使用できる、こういう状況でございます。私たちのほうといたしましては、これらの金を返すとか償還するとか、そういう見地から考えておるのではございませんので、これらの金もやはりアメリカが民生の向上のために、現在では御承知のように、プライス法という法律に基づいて、沖繩住民の福祉の向上のために使わなければならないという資金でできたものでございますが、これはあくまでアメリカの資金、アメリカの所有であることには変わりがございませんので、そういう点を考慮いたしますと、非常に多額の価値のあるものを引き継ぐわけでございますから、その場合にその処理をどうするか、非常に客観的にも沖繩県民の方々に、電力にしても水道にしても、そういう有益なものを引き継ぐわけでございます。しかも、そういうものは非常にまあ多額なものででき上がっている。しかもそれはアメリカの金である、こういう見地から考えたわけでございます。  ガリオアにつきまして御疑念があろうかとは思いますけれども日本でのガリオアは御承知のように、この売買代金を日本政府の内部に見返り資金特別会計とか、あるいはそれを引き継いだ産投会計とかそういう特別会計、つまり日本政府部内の特別会計として運用しておりました。したがいまして、その代金は日米間においては全然決済も何もされてなかったわけでございます。ですから、その処理をめぐってどうするかという問題があったわけでございます。しかし沖繩の場合には、この売買代金は直接民政府に入ったわけでございまして、それはアメリカのものになったわけでございます。その点が琉球のガリオアと日本のガリオアとの非常に大きな性格の違いということになるわけでございます。したがいまして、私たちはもちろん、先ほどから申しておりますように、そういうものを返すという考え方で支払いを考えているわけではございませんので、あくまでそういう有益、有用な物的なものをこちらへ引き継ぐ。そういう引き継ぐことについて、これに関連して一体これをどうするのか。こんなに有用なものを引き継いでどうするのかというような、そういう観点から支払い問題を考えて、この資産引き継ぎについてはそういう考え方で支払い問題を考えているわけでございます。
  522. 門司亮

    ○門司委員 関連でありますからあまり押し問答はしませんが、このガリオアの問題については、いまお話のあった本土の問題と奄美の問題とまた違うんですね。沖繩の問題、また違うんですね。同じガリオアについて本土で処理したのと奄美の返還されたときに処理したのと——これはまだ残っております。あとどうするかというのは多少やっかいなものが残っておりますが、きょうそこまで議論はいたしませんが、そうしてこの沖繩の問題になってくる。私はさっき申し上げましたように、この原資がそういう形でできているものを大まかに、向こうの財産であることには間違いないんだから、これを買い取るんだという大まかな線はわからぬわけではございませんが、しかしこれを対象にするということ自身、私はおかしいと思うのです、実際は。アメリカではすでにもう決済済みのお金なんですね、これは。軍の施設費ですから。大体軍の施設費というのは軍目的、戦略目的のために使ったお金ですから、はっきりいえば、このお金を私は日本補償しなければならぬ筋合いはないと思うのだけれども、これをここでこれから先、議論すると長くなりますので、一応私の意見だけ申し上げておきますけれども………。  それから、その次にこれははっきり聞いておきたいと思うのは、この口上書というのは、参議院でいま審議されております協定に対する一つの参考書というような形で配付されますか、参議院に。これは当然そうならなければならぬものだと思っておりますけれども、いろいろ合意の何とかかんとか書いたのがたくさん来ておりますけれども、その中の一つとしてこれは当然私は配付さるべきものだと考えるんだが、それでよろしゅうございますか。
  523. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは公のものでありますから、配付して一向支障はございませんです。
  524. 門司亮

    ○門司委員 これもずいぶんおかしな話なんですね。もう衆議院を通ったあとから、こうこう、こういう種類がございましたというようなことを一体参議院へ回されるということもおかしな話ですけれども、まあ事ここに来た以上はそうおっしゃらないわけにはいかぬでしょう、これは。参議院は出さないんだというわけにいかぬでしょう。  それから、その次にもう一つ聞いておきたいと思いますことは、これは総理大臣からひとつ御答弁を願いたいと思いますが、先ほどからいろいろ聞いておりますと、問題が、もので返す、あるいはお金で返すというようないろいろ議論はされておりますけれども、いずれにいたしましても、国民の血税がこれに振り向けられることは事実であります。そうなって考えますと、大蔵大臣の言われるように、また総理も言われるように、国民の税金をおろそかに使ってはならないということに私は結論はなると思うのです。     〔金丸(信)委員長代理退席、委員長着席〕 そういたしますと、さらにその問題でもう一つ政府側の態度をはっきり聞いておきたいと思うことは、これはまあそういうものであるが、いままでいろいろな話をしてきたが、最後でなければわからぬというような、事務当局はそういうことを言うにきまっている。四月一日にならなければほんとうの正確な数字がどうなるかということはわからぬのでありましょうから。しかしそういうものでなくて、政治的に見ても、時期的に判断してみても、残るものは残るということである。だからこういういろいろな問題になっておると思います。  そこで私が聞きたいのは、問題は、国民の税金をいかに処理するかということの価値判断の問題だと思う。国民は少なくとも苦しい中から税金を納めておりまするから、この税金の使い道についてはできるだけ詳細に知りたいというのが私は国民の意識だと思う。ところが政府のほうは、口では大事に使わなければならぬとおっしゃるのだが、こういうつかみ金のような形で、一体積算の基礎もはっきりしないというようなことでお出しになろうとするところに、今日の行き詰まった問題が私は出てきていると思う。いわゆる口上書というようなこと、軽い意味でいままで交渉されて、やっとこちらから催促されて、それは重要な外交文書一つだなんという答弁をされなければならないところまで追い込まれてきている。その根底にあるものは、あくまでも国民の税金の使途に対する価値判断の問題だと私は思う。政府は、したがってこの税金に対しまする価値を一体どういうふうにお考えになっているのか。これは聞かなくても、いままでわかったことだと思いますけれども、ここまできた以上は、ひとつ総理大臣からこの点について、はっきりここで御答弁をいただいておくほうが——大蔵大臣はしばしばそう言っているのだから、大蔵大臣から答弁を求める必要は私はないと思いますが、たばねをされる総理から、この税金に対する価値判断について一応の御見解をわずらわしておきたいと思います。
  525. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えをいたしますが、先ほど細谷君にもお答えをいたしましたように、今回はこの三億二千万ドル、この相手方のある交渉につきましては、ずいぶん外務大臣——当時大蔵大臣でしたが、努力したものでございます。相手方と交渉した結果、ようやくそこへおさまったのであります。これは、私は総体的から見ると、まあばく然とはしておりますが、当方にとっては相当有利な条件であった、かように思います。ことに三公社のこの資産引き継ぎにつきましては、これは買い取りというよりも引き継ぎ、こういうものでございますが、これも財産目録によって資産が引き継がれる、こういうことでありまして、これは私、地域住民の方々にもこれを利用していただく。そうして直接効果をあげられる、生活の福祉的な面でも、私はしあわせになるのではないか、かように思っておりますので、この水道公社の財産の引き継ぎ、これは私、だれも反対はされないだろうと思います。ただそれが適正価額であるかどうか、あるいはいいかげんなものであってはならない。これは先ほど来いろいろ議論されており、また平素大蔵大臣は、また外務大臣も大蔵大臣当時はずいぶんけちけちした、かようにいわれております。けれども、とにかく当時の交渉としては、よくあそこへきまった、かように、自画自賛ではなく、みんながさように評価しておるのでございまして、この意味においても、これらのものは地域住民の、沖繩県同胞には必ず役立つ、かように私は思っておりますので、この問題が、ぜひとも福地ダムは引き継ぎの際には完了をして、そうして問題が残らないようにあってほしい、かように思います。もし万一完成しない場合には、先ほどの口上書でも示しておるように、この点が十分確保されている、いわゆる権利が確保されている、かように私認めますので、どうかその点も御了承いただきたいと思います。
  526. 門司亮

    ○門司委員 質問だけ申し上げておきますが、私は冒頭に申し上げましたように、この資産の引き継ぎについては、三公社の分はさっき申し上げましたように、原資自身にそういう要素があるということであって、そうしてしかも目的は米軍の、要するに戦略目的であることに間違いがないのであって、それでなければ、電気だ、水道だのというのは民間にあったものですから、なかったものじゃない、新しくこしらえたものじゃないんですから——水道だってもともと各市町村が持っておったのでありまするから、それを何も軍が集めてやることはなかったと思う。したがって、どこまでもこういう問題について、やはり原点に立ち返って議論すべきであって、現状だけを見て、引き継ぐのと買収するのが違うと総理は言われるけれども、引き継ぐなら、私は無償で引き継いでもらったほうがよかった、借り入れ金ぐらいは払わなければならぬかもしれないが、という私の希望と、したがって非常に大きな不満を持っているということだけ私は表明いたしておきます。
  527. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いま各党のそれぞれ理事の方から関連質問がありましたが、総理からここでいろいろ詰めてもらって、最終的に君たちの要求を入れて口上書という外交文書にした、それは国会の審議のおかげであるという感謝を言われたわけでありますけれども、しかし私は、やはり外交権というのは与党が持っておられる、政府が持っておられると思うのですね。この口上書という内容ですね。私はもっと明確にしておきたいんですが、この口上書という、これに書いてある内容の口約束ができたのはいつでございますか、外務大臣いつですか。
  528. 前田多良夫

    ○前田政府委員 現在におきましても、この福地ダムにつきましては、まだ米軍は完成するように努力するという段階でございますが、一方次第次第に工事のおくれというものが最近に至ってはっきりしてきたわけでございます。そういう状況でございますので、最近においてその口約束の内容ははっきりいたしましたのですが、それがいつ何月何日にそれでは約束したんだ、こういうことになりますと、これはそういうものじゃなくて、ダムが万一未完成の場合には置いていきますよ、そういうことが、未完成になるんじゃないかというようなおそれが出てくる段階になりまして、はっきり明確になったわけでございます。もちろん、当初よりそういう場合を予想していろいろ交渉はありました。しかし、いつはっきりできたんだ、何月何日の時点であるかというようなものではございません。
  529. 松浦利尚

    松浦(利)委員 私が質問しておるのはそんなことじゃないんですよ。総理大臣もよく聞いておってください。ここに書いてある口上書を、先ほどは口約束で完成することが目的だ、しかし、完成しない場合があったときには、こういうことをしていきますよという口約束はあったんです、こう言っておるのです。それが口上書になっておるんですね。それはいつですかと聞いたら、いやそれは最近です。さっきはいやその協定で議論をしておるときにそういう話が——いまもあったでしょう、そういう話が内々ありました。そういったことを考えていきますと、一体それがいつなのかということが私はやはりあいまいだと思うんです。しかも、先ほどの外務大臣の話を聞きますと、そういう口約束をしてもアメリカは履行してくれる。アメリカを信用するのが、これが外交である。相手を信用するのが、これが外交である。相手を信用するのが外交である。そのことはわかります、相手を信用しなければ交渉はないわけでありますから。それでは何で三億二千万ドルアメリカに払いますよ、こういうことを口約束しなかったのですか。日本だけがなぜ義務を負わされたのですか。アメリカ日本を信用したのですか。あるいは愛知書簡で、VOAについてわざわざ書簡をなぜ結ばなければいけなかったのですか。アメリカ日本を信用しておらなかったからですか。そうじゃないでしょう。やはり外交というのは国益に沿って、明確にすべきところは明確にしておかなければいかぬ。それが私は条約であり、交換公文であり、あるいはそれに付随する問題だと思うのですよ。それが国会で議論をされなければ出してこれない。いろいろ議論をして出してきたものは、政府が出してきたものに対して総理大臣の見解としては、ここで議論があって出していただいて、たいへんありがとう、国益に沿ってありがとう、こういう御答弁なんですね。私はこういう国会の審議というのは国民を裏切ると思うんです。出せるものは私は出すべきだと思う。アメリカを信用することも大切でしょう。しかしこういった口上書というものは、当然あの協定をつくった段階で、私は合意議事録なりあるいは書簡という形で残すべきだったと思うんです。そしてこの国会審議の際に、あわせて関連文書として提出さしておくべきだったと思うんです。それを追及しなければ出してこない。しかも口上書が出たにかかわらずのらりくらりと言って、いつだったかということも明らかにしない。これでは私はほんとうに沖繩の心に立ち返って、沖繩の問題を議論をしたということになってこないと思うんです。私は、いまからでもおそくはありません、現に院を通過していま参議院に協定がいっておる、そういう事態から考えてはたいへんむずかしい問題だと思います。  しかし、この口上書というものが出てきて、相手を信用しなければならぬということは事実です。しかし、先ほどから法的に議論を詰めていったら、外務大臣が答弁したように、相手が不履行の場合には徹底的にアメリカを追及いたしますという程度のものです、これは。だとするなら、この際、この口上書というものをさらに上に上げて、日米間における書簡なり、あるいはもっと法的に拘束力のあるものにしておくべきだということが、私は正しいあり方だと思う。その点総理大臣としてどうお考えになりますか。
  530. 福田赳夫

    福田国務大臣 この問題についていろいろ御心配でございますが、これはこの程度で絶対御心配はかけませんです。これは責任を持ってお答えを申し上げます。
  531. 松浦利尚

    松浦(利)委員 この問題について私は非常に不満です。しかし最後に総理、今後もあることです。外交は政府が握っておってわれわれはわかりません。秘密にしなければならぬ内容もあるでしょう。しかし、いやしくも国民の血税を払う、そういったものに関連をしておるこういった文書というのは、やはり日米間における正しい条約あるいはそれに対する付随文書合意議事録なりあるいは交換公文なりあるいは書簡、そういった形でとどめるべきだと思います。私は、もうあったことについては、これは参議院段階で書類を出されるということでありますから、これを関連文書として参議院で議論していただきたいと思います。今後の問題として総理の所信を明確にお聞きをして、私の質問を終わりたいと思います。
  532. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この問題については、先ほど来外務大臣からはっきりしたお答えをいたしております。また政府の考え方も述べております。申すまでもないことでございますが、外交関係だからといって、ものごとは何でも相手方とお互いの相互信頼だけできまっていくと、こういうものではないと思っております。事柄によってはさらに突き進んで明快な条約、あるいは口約束だけではなしにあるいは書簡の交換だとかそれより以上にまだまだいろいろ考える、そういうことをすべきだろうと思います。今回はたいへん時期がおくれ、そうして口上書という形で問題を明らかにしたのでございますが、私は、この型が固定されると、こういうわけでもないだろうと思いますし、もっと疑惑が残らないようにすること、また問題が起こらないように事前にもっと注意すべきだと、かように私は思っております。したがって、今回の問題は問題でございますが、将来はもっといままでの取りきめ同様、はっきりした形で処理される、また処理すべきものだと、かように私思いますので、その点をはっきりお答えをしておきます。
  533. 松浦利尚

    松浦(利)委員 私の質問はこれで終わります。
  534. 床次徳二

    床次委員長 井上普方君。
  535. 井上普方

    ○井上委員 私は最後になりましたのですが、私も簡単明瞭に質問するつもりでございますので、わかったようなわからぬような御答弁はひとつお許しを願いたいと思うのでございます。  そこで、防衛庁は沖繩に自衛隊を派遣するために、二十一人とか何人とか派遣されておるやに承っておるのでございます。おたくの防衛庁の予算要求を拝見いたしますと、約二百億の地代等と書いてございます。要求されておる。この予算要求内容をひとつ詳細にお示し願いたいのと、十月の十九日でございますからもうかれこれ二十日——いただいた資料によりますと、土地契約につきまして沖繩復帰に際して米軍及び自衛隊に供する等の賃貸借契約については現在話し合いを進めている段階であり、近々地主と交渉する予定である、こう申されておるのでありますが、一体どういう交渉を——一カ月たったのですから、しかも二十何人が行っているのですからかなり進んでおるのじゃないか、こう思うのでございます。詳細につきましてこの点御報告願いたいと存ずるのでございます。
  536. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは直接衝に当たっております施設庁長官から答弁させます。
  537. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 防衛施設庁から、現在二十名前後の人を沖繩北方対策庁の出先機関であります沖繩事務局に派遣をいたしております。この職員が主として従来やってまいりましたのは、沖繩の施設庁の業務を進めていく上におきまして必要な資料の収集あるいは調査等を行なっておったわけでございます。そこで、来年度の防衛施設庁関係の予算は、一応二百八十三億を概算要求いたしております。  そこで御質問の借料の交渉の問題でございますが、御承知のとおりに、地元におきましては地主会連合会が地主の方々の意見をまとめられまして、私どもに借料についての要求がございます。この要求も逐次修正をされておるわけでございまして、最終段階におきましては現行借料の大体六・九一倍ぐらいの要求が出ておるわけでございます。そこでわれわれといたしましては、従来沖繩におきます借料が米国の施政権下におきましていろんな制約を受けておりますので、これを本土並みの基準にまで持っていこうということで、そのわれわれの考え方をいろいろ連合会にも説明をし、話し合いを行なっておるのが現状でございます。こまかい数字的なものにつきましては、まだ来年度の概算要求の時期でもございますので、そこまでの折衝はいたしておりませんが、いろんな考え方等につきまして十分話し合い、また御了解いただくだけの努力をいましておる。私どもは地主会の方々の御要望の線に沿って、できるだけ借料につきましても配慮していきたい、かように考えておるわけでございます。
  538. 井上普方

    ○井上委員 そこで施設庁の長官にお伺いしたいのですが、土地を賃借するに際していろいろ交渉されておる。みなあなた方の考え方を示して、了解を得るべく努力しているんだとおっしゃいますが、それをひとつお示し願いたいのであります。  それと、概算要求に「地代等」になっておりますが、地代のほかに「等」は何を含むのでございますか、ここらあたりもお示し願わんことにはちょっとわからないのでございます。
  539. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 借料につきましては、現在概算要求中でありますのは、総額において百八十八億、そのうちに百五十二億が一応借料、残りの三十六億が土地借料関連の経費である、こういうことでございます。
  540. 井上普方

    ○井上委員 私、あなた方の考え方をお伺いしておるのですが。借りる方法についての考え方をお伺いしておるのですが。
  541. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 借料につきましては、沖繩の制度が本土と非常に違っておりますので、本土並みの基準でやるわけでございますが、これは地目がまず第一でございます。つまり宅地であるとか農地であるとかあるいは山林であるとか、そういうものによってそれぞれの計算の基礎が違ってまいりますし、沖繩の場合におきましては、五年間の据え置きということもございましたし、それから地目が、米軍が当初使用を開始しましたころの地目を書いておらない。本土の場合におきましては、地目に必ずしもかかわらずに、その土地の立地条件なりあるいは周囲の開発状況等を勘案して、毎年借料の改定をいたしておるわけでございますので、そういう本土の考え方をもとにしていま話し合いをいたしておるところでございます。
  542. 井上普方

    ○井上委員 そこで、あなた方の本土との基準が違うからといいますことは、新しい基準をつくられるつもりなんでございますか、どうなんでございますか。
  543. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 新しい基準でございませんで、本土の基準をもとにして、各地目において計算をするということでございます。
  544. 井上普方

    ○井上委員 それではお尋ねいたしますが、米軍基地の土地の取得の基準と自衛隊用地の取得の基準とが違うはずでございますね。どちらをおとりになるのでございます。
  545. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 本土におきましても、米軍基地の場合には賃貸借契約が主体でございます。一部所有者のほうの希望がありますれば、買収ということでございます。自衛隊の場合は原則として買収、一部賃貸借ということでございまして、沖繩の場合におきましては賃貸借の方式でいきたい、かように考えております。
  546. 井上普方

    ○井上委員 違うでしょうが。あなた方自衛隊に関しては買収でいくのだ、米軍に対しては借料でいくのだというようなことではないでしょうが。あなた方は米軍の基地の土地を使用するにはちゃんと基準というものをつくっておるじゃありませんか。「駐留軍の用に供する土地等損失補償等要綱」、こういうものがあるでしょうが。これと、それから自衛隊用地を取得する際には、「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」というのがあるでしょうが。この自衛隊の場合と米軍の用地の場合とは、取得する基準が違っておるはずなんです。どっちを使うのです、どっちを。
  547. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 沖繩の場合におきましては賃貸借契約でございますので、本土の米軍の基準をもとにしてやるわけでございます。米軍と申しましても、本土の場合、やはり賃貸借契約におきましては大体同じ基準を使っておるわけでございます。
  548. 井上普方

    ○井上委員 賃貸借契約、それもあります。しかし、この内容におきましてすでに算出基礎が違っておるでしょう。この「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」というものは、これは借料の場合におきましても公正なる価格ということになっておるはずです。片方において調達庁——おたくの前身ですが、おたくの前身もこの土地取得の方法というものは現価主義によっておるでしょうが。違うのですよ、考え方が。どっちをとるのです。そしてまた、沖繩で自衛隊の用地と米軍基地とを取得する方法が違う、考え方が違う。したがって金額の算出方法も違う。違ってきたらどうなるのです。
  549. 床次徳二

    床次委員長 政府委員に申し上げますが、時間が大事でありますので、簡潔に要領よくひとつお願いします。
  550. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 本土における借料基準は、宅地におきましては相続税財産評価額に一定の比率をかける、それから農地につきましては、農業粗収入から農業経営費を引きました、それに一定の比率をかける、山林につきましては、主伐収入プラス間伐収入、それから造林経費を引きまして前側式の係数をかける、こういう方式でいっておりますので、沖繩の場合におきましても同様の基準をもとにして算定をしたい、かように考えておるわけでございます。
  551. 井上普方

    ○井上委員 沖繩では米軍基地だけしか取得しないのですか。
  552. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 自衛隊の基地もございますが、自衛隊も買収ということでなくて、賃貸借契約でいきたい。同じ基準でございます。
  553. 井上普方

    ○井上委員 同じ基準じゃないじゃないですか。使用等に関する基準は違うのですよ。こんなことを知らぬのですか。
  554. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 公共用地の取得基準に準じまして、本土の場合におきまして米軍の基地の場合も算定いたしておる、こういうことでございます。
  555. 井上普方

    ○井上委員 違うでしょう、あなた。わからぬな。よくつとまるね。自衛隊の場合は、いいですか、これは「正常な地代又は借賃をもつて補償するものとする。」、地代はこうなっておるのですよ。そしてそれには農地の場合でも近傍類似の地代、これが中心になって、近傍類似の価格で大体やっているのです。ところがこちらの米軍基地の用地の場合には、これはあなたも御存じでしょう、こんなのは。これは農地の場合は固定資産台帳に登録された価格、これに年利回りを乗じて得た価格になっておる。そうなっているでしょう。これとだいぶ違ってきているのですよ。考え方自体も違うし、結果あらわれてくる地代自体も私は違ってくると思う。同じ沖繩において、自衛隊の基地を使う場合にこちらの公共用地の補償基準を使うのと施設庁のこの基準によって使うのとで金額が違ったならば、沖繩の県民の方はどういうようにお考えになります。だからここらあたりはどう考えるんだと言っておるのですよ。
  556. 銅崎富司

    銅崎政府委員 お答え申し上げます。  確かに、自衛隊の場合準用しますのは公共用地等の損失補償基準でございますが、その前にできております施設庁の訓令に基づいてできておりますのと違います。ただし、われわれといたしましては、それは逐次補正をいたしまして、公共用地の取得の損失補償基準に合わせて時価主義をとってやる算定を現在用いております。したがいまして、現在におきましては同じ基準でやっておるということでございます。
  557. 井上普方

    ○井上委員 逐次合わして現在大体一緒になっておるなんと言いますけれども、私はこれは最新の法規集を持っておるのだ。これは昭和三十七年にできておる、調達庁のほうの基準要綱は。この公共用地の補償基準は昭和四十二年の十二月ですから、佐藤さんが総理大臣のときにつくった。これからどんなに変えていったんです。この考え方そのものがとにかく違ってきているんだ。沖繩ではどれを使うんだ。
  558. 銅崎富司

    銅崎政府委員 沖繩の場合使いますのは、現在あります訓令を基準にしてはじくわけですが、その訓令の基準を現在は補正しておりまして、時価に近い価額で算出するということになっております。たとえば宅地につきまして、従来は固定資産税評価額を用いておりましたが、これを補正いたしまして、相続税の財産評価額を用いて、これに一定の比率をかけて算出する、こういうことで、固定資産税評価額より相続税財産評価額のほうが時価に近い額を示しておりますので、そういうことになりまして、公共用地の取得基準で示されております額と実質的には同じ額が出るような評価をいたしております。
  559. 井上普方

    ○井上委員 私は一番問題になるのは農地だと思います。沖繩における農地の賃借料であります。これにつきましてはこういうことになっております。これはおたくのほうの、訓令に基づくとかなんとかいうのじゃないのですよ。調停官、聞いておってくださいよ。これは補償要綱としまして、調達規第二三号だ、昭和三十六年七月の五日につくっておるものだ。それによると、これは土地の生産主義からきておる。農業収入の八〇%、一切の推定農業収入から、支出すべき推定農業経費を控除した、年間農業所得額の八〇%が賃貸借料になっておる、こっちでは。おたくのおっしゃるやり方では。そうでしょう。それに片一方のほうは、これは近傍類似の価格から類推しておるわけだ、自衛隊のほうは。そこで、考え方がまるっきり違ってくるんだ、農地の場合はどっちをとるんだと言っておるのですよ。沖繩の基地の場合、ほとんどが農地でしょう。だから、私はこの点聞くんだ。考え方が違うじゃありませんか。
  560. 床次徳二

    床次委員長 明瞭にお答え願います。
  561. 銅崎富司

    銅崎政府委員 農地の借料を出す場合は、先生お話しのとおりに出しております。それから、沖繩におきまして農地もございますが、現地の実情から、現在の農地におきましては当初の地目に押えられておりまして、現状が宅地見込み地でありましても農地と、地目設定当時の農地になっておりますので、それで算定するということに従来なっておりましたものを、今回はその開発の状況に合わせまして、農地もできるだけ宅地見込み地ということではじいて算出するようにいたしております。
  562. 井上普方

    ○井上委員 しかしあなた方のこの場合、基地の場合は、これは変えてないのですね。土地台帳の地目に関係なく農耕地、採草地目、草地が牧草地帯として利用せられている土地で、使用により農業が不能となった場合はこういうようにやっている。あなた方は、いまのお話を承ると、基地はほとんど全部これは宅地並みに計算するんですか。
  563. 銅崎富司

    銅崎政府委員 基地全部宅地ということでございませんが、たとえば中部のように開発されたところにおきましては、主たる基地は大体宅地ないしは宅地見込み地ということで計算いたしております。
  564. 井上普方

    ○井上委員 基地にもいろいろあると思うのです。宅地見込み地としてやられるわけですか。それでどれくらいの賃貸借になります。農地の場合と——いままでは農地であった。アメリカ軍は農地でやっておった。今度宅地に切りかえて、六・何倍ですか、六・一倍で上げますというと、そういうようにして変えたところは一体どれくらい上がりますか。
  565. 銅崎富司

    銅崎政府委員 一がいには申し上げられませんが、六・何倍と申しますのも、これは全体を単純平均して六・何倍とか七倍とかいう額が出るわけでございまして、個々に当たってみませんとわかりませんが、高く上がりますところは十倍以上出るということでございます。
  566. 井上普方

    ○井上委員 高いところは十倍だなんていうような数字じゃないでしょう。三十倍になっていますな。私だってこういうように全部軍用地主連盟のほうの資料を持っているのです。それでお伺いしているのだ。  私は農地はそのままやっていってすると思ったのですが、そうなりますと、私ちょっとひっかかってくる。ひっかかってくるといいますのは、暫定使用法の、これは沖繩でも非常な問題になっているのでございますが、復元問題でございます。  暫定使用法の第何条ですか、第四条、「政令で定めるところにより、当該土地又は工作物を原状に回復し、又は原状に回復しないことによって生ずる損失を補償しなければならない。」という項目がある。この原状は現在をいうのですか。それともまたその前の、米軍が接収する前の原状をいうのですか。ここのところをひとつ明確にしていただきたい。
  567. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 この法律復帰の際に使用権の設定をしようとするものでありますので、この第四条に書いてございます原状というものは、この法律の施行のときの原状ということでございます。  そこで、実は米軍が復帰前に形質を変更いたしまして、そのまま復帰後も引き継がれるという土地につきましての原状回復なりあるいは補償につきましては、今後地主の方々と賃貸借契約を結びます場合に、その賃貸借契約の中に、米軍が当初使用を開始したときの原状に回復をするあるいはそれに必要な補償をする、こういうことを契約をするつもりでございます。  また、この法律で使用権を設定をいたす対象の方々につきましても、その原状は、やはり使用を開始したときの原状、つまり復帰前の原状ということで、これは具体的にその土地返還になりました場合に補償契約をする、こういうことで臨みたいと考えております。
  568. 井上普方

    ○井上委員 そういたしますと、もう一度念のために申し上げますが、何でございますか、返還時——この法律が通ったとしてですよ、この返還時の原状である。日本国政府はその原状に戻すのである。そういたしますと、米軍が接収したときの原状には米軍がやるのでございますか。それにかわってあなたのほうが補償を出すわけでございますか。どうなんでございます。
  569. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 これにつきましては、日本国がその米軍が使用を開始したときの原状にさかのぼって補償をする、こういうことでございます。
  570. 井上普方

    ○井上委員 そこで、私は問題を、先ほども横道にそれましたので、またもとに戻したいと思うのでございますが、自衛隊の基地の場合は先ほどおっしゃられたのとだいぶ違ってくるわけですね、公共用地でやっていくと。差は出てきませんか、実際問題として。あなた、契約する御当人が何とでもうまいことを言うのでしょうけれども日本の国内においては、本土においては、自衛隊の用地をとるのには公共用地取得に関する基準で閣議決定したやつを使っている。片方においては、米軍基地の場合には、何ですか、規則でやっておられる。これが大いに違ってくるのじゃないですか。そしてまた、そういう方法をとらざる現在のやり方としましたならば、この両方を使い分けなければならないと思うのです、沖繩においても本土並みでやるのなら。どうなんです。
  571. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 米軍の場合には、昭和二十七年の「駐留軍ノ用ニ供スル土地等ノ損失補償等要綱」というものがあり、ただいま御指摘のように、昭和三十七年に公共用地の取得基準というものをきめましたが、この公共用地の取得基準ができました際に、従来の米軍のこの補償要綱というものを、当分の間、この公共用地の取得基準でいくという方針で施設庁は補償いたしておりまして、これが今日まで及んでいる。したがいまして、おっしゃいますように時価主義でとっておりますので、この基準で沖繩についても算定いたしたいと思いますから、その限りにおいて、米軍の場合と自衛隊の場合、大体同じような基準でいく、こういうことでございます。
  572. 井上普方

    ○井上委員 長官、考え方が違うのですよ。もう一度答弁しなさいよ、違っているから。長官、あなた、こんなことを知らぬかもしれぬけれども、もう一度言ってごらんなさい。違います。そんなあやふやなんで沖繩土地が返るか。
  573. 銅崎富司

    銅崎政府委員 先ほども申し上げたかと思いますが、二十七年にできました訓令は逐次補正をいたしまして、適正な借料を払うということで、公共用地取得の損失補償基準に実態的には合ってきております。したがいまして、それぞれ算出する規定は別でございますけれども、実態的には同じでございます。したがいまして、今度の概算要求におきましても、駐留軍の借料と自衛隊の借料とは同じ基準で——同じ基準といいますか、両方はじいても全く同じということで、適正な借料をはじいております。
  574. 井上普方

    ○井上委員 こんなことで時間をとりたくないのですがね。大体、何ですよ、あなたこの二十七年の基準をずんずん変えたって、最終の基準は何年につくったやつなんです。
  575. 銅崎富司

    銅崎政府委員 その基準の補正は、実は内部の達をもちまして、その年度の借料についてはこういうふうな算出でやるということで、部内の達で通達をいたしております。
  576. 井上普方

    ○井上委員 それは要領でしょう。達でやっておるのは要領でしょう。補償基準要綱というのが三十七年の七月に出ておるんじゃありませんか。これが一番新しいんでしょうが。それとこれと突き合わせて、私は違うじゃないかと言っているのですよ。
  577. 銅崎富司

    銅崎政府委員 その二つの、そのできた時点におきましては確かに違っておりますが、現在の運用におきましては、全く同じ時価主義で、適正な借料を出すということでやっております。
  578. 井上普方

    ○井上委員 適当にやっておるということですか、それは。運用によってこの差をなくしておるということは、適当にやっておるということですか。そんなやり方をやっておるんですか。そんなあほな話がありますか。
  579. 銅崎富司

    銅崎政府委員 算定要領に基づきまして土地建物等賃借料算定基準というものを制定しておりまして、この第一章総則の2におきまして、「本基準ニヨツテ算定シタ土地等ノ賃借料ハソノ土地等オヨビ近傍類似ノ地代、家賃、売買価格等ヲ考慮シテ適正ニ補正シナケレバナラナイ。」ということで、この補正を、先ほど申し上げましたように通達をもって示しておる、こういうことでございます。
  580. 井上普方

    ○井上委員 それは、私が言っておるのは、あなた方の基準になる前の要綱で方針というものをぴっしゃり出しているんですよ。そんなうしろのほうに入ってない。その本のもっと前のほうですよ。
  581. 銅崎富司

    銅崎政府委員 二十七年につくりました駐留軍ノ用ニ供スル土地等ノ損失補償等要綱、これは最終の改正は、いままで先生お話しのように、昭和三十七年の十月二十六日になっておりますが、やはりこの第一章総則の第三条におきまして、先ほど申し上げました土地等の算定基準の根拠になります補正の条項がきめられてございます。
  582. 井上普方

    ○井上委員 あなたはもっと落ちついてそれを読んでくださいよ。実際、これは沖繩土地代をどういうようにきめるかという重大な問題なんです。ここであなたがごまかしてここを通ったところで、問題になるのです。それで、私は、このことについてもう少し時間をかしますから、よく読んでひとつ御答弁願いたい。  この駐留軍ノ用ニ供スル土地等ノ損失補償等要綱の特に重要なのは、私は農地であると思うのであります。その農地の地代というものは、先ほど申しましたように、農業所得の純益の八〇%ときめておるのであります。ところが、片方、自衛隊のほうは、金額にその土地の価格主義をとっておるのであります。そこで大きい差が出てくるじゃないか。これはあなた方は運用によってカバーするというたら、これこそ役人として逸脱した行為であるといわなきゃなりません。  そこで、私はどうしろこうしろ言うのじゃない、沖繩に適したような要綱をつくる必要があるのじゃないか、それはもうすでに施設庁のほうでお考えになっておられるだろう、こういう考え方で、実は私は質問をしておるわけなんです。あるいは本土並みでないという議論もあるかもしれません。しかし、これは、沖繩県民のあの長い忍苦を考えると、当然新しいものを考えてしかるべきじゃないかと私は思うのであります。役人の小手先だけで内規、これをいじくり回したところで根本的な解決にならない、そう思いますがゆえに、私は、自衛隊と駐留軍との土地代の算定基準が違う、これは一体どうすればいいか、こう考えて、もう考え方ができておるだろうと思って、実は私はお聞きしたのであります。ところがこのていたらくだ。防衛庁長官、どうです。
  583. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 私もまだこの問題については、また不勉強で恐縮なんですが、いまここで答弁しておるのを聞いておりますと、要するに二十七年の駐留軍の算定基準になるものは——二十七年というと、ちょうど独立した年でございますね。  そこで、三十七年のいわゆる公共用地の補償基準、この二条で、時価に十分勘案をして補正してよろしいという、総則に規定があることによって、駐留軍の分も、いわゆる米軍の分も、それから自衛隊の分も同じ扱いをして、賃貸借の契約では有利なほうをとっておる、こういう説明をしておるように私聞いておるわけですが、そういうことで、沖繩に対しても極力有利な方法でいく、政治的には私そう了解をしておるわけであります。
  584. 井上普方

    ○井上委員 役人が都合のいいところを両方使うというところから、綱紀紊乱が起こるんでしょうが。それをあなたまた認めるんですか。軍人さんの頂点におるあなたがだ。ともかく、最も規律は厳格でなければならぬのが、そんなことじゃ困るでしょう。  総理、どうでございますか。お話で、ひとつ新しいものさしをつくる必要があると思うんですが、総理大臣、いままでのやりとりの中から——まあ防衛庁長官は最近なったばかりでございますので、わからぬことは、わからぬとおっしゃればいいんです。
  585. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 それは、どうぞひとつ御理解を願いたいんですが、いまの、古い、二十七年の要綱は現に存するわけですが、三十七年の基準で、いわゆるこの現代の物価に合わせながら、補正すべきものは補正をして有利に運んでおる、こういうことの御理解でいかがでございましょう。  それからまた、いまの施設庁などにしますると、これはいわゆる自衛隊とは違うわけでございまして、やはり前線の者はいつも気をつけて、よく話し合いですべてを解決するようにとわれわれ言っておりまするように、これはあくまで賃貸借を結ぶ関係者ですから、土地所有者に有利なほうに事を運んでいくということは、これはユニホームの場合とは全然違うわけですから、どうぞひとつ御了解願います。
  586. 井上普方

    ○井上委員 長官、実はこの基準が違うのですよ。考え方が違ってきているのです。農業補償なんかを見てみますと、米軍の場合は、収入の八〇%が地代になるのです。この公共用地の、四十二年につくられた、閣議できめられたことは、近傍類地の価格で、それに利回りをかけてやっておるのです。あるいは賃貸借を使う。ひどいのになりますと、私も見ましてびっくりしたのでございますが、財産税算定の基準を使うなんというのもありました。おたくのですよ。まだそれが生きているのです。ともかくこういうようなことを、これはどういうことでやっておるんだろうと思って、実は感心しながら見ておったわけです。ところが、運用妙を得てどっちでも使えるんだというようなことでは、それこそたいへんだと思うのです。そうでしょう。どっちでも使えるんだ。駐留軍の場合にも、自衛隊用地のこの基準でいくんだ。これは閣議決定ですよ。四十二年十二月の何日かにつくった閣議決定、これには、最後に、附則として、「この要綱は、駐留軍の用に供する土地等の取得又は土地等の使用に関しては、当分の間、適用しない。」と、わざわざこう書いてあるのです。それで私も、それじゃ一体駐留軍というのはどんなものを使っているのかと思ったら、まるっきり考え方が違った基準が出てきている。これによって作業が進められておるというのを見たから、沖繩では一体これをどうするんだろうということで質問をしておるわけです。こんなのに時間をかけてかなわぬですよ。  いままでの長官お話を承ると、国内においても、本土において駐留軍の土地を取得する場合、それと、自衛隊の土地を取得する場合とをチャンポンにしてやられよったら、これはたいへんですよ。そうでしょうが。買い主のほうに都合のいいようなことでやるというようなことでは困ると思うのです。あなたはいまの御答弁をひとつ訂正なさるお気持ちはございませんか。どっちでも使って、支払われる側が都合のいいような方法をとるんだなんという御答弁は、これはやめてもらいたいと思うのです。お取り消しになりませんか。
  587. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 先ほど、私の説明がちょっと間違っておったかと思いますけれども、もともと昭和二十七年の損失補償要綱というのがありまして、昭和三十七年に、御指摘のように公共用地の取得基準をきめたわけでございます。その際には駐留軍関係をはずしておりますが、実際は、防衛施設庁としては、そういう基準の細則にできるだけ近づけるということで、いろいろ予算要求等もしてきたようでございます。  そこで、損失補償要綱でいきますと、おっしゃいますように、農業の粗収入から経営費を引きましたものに一定の比率をかけるという方式でございますけれども、現実にまた、これは実際上は近傍類地の価格に、おっしゃいますように一定の利回りをかけて算出する、こういうことできておるわけでございまして、私も実はこの辺のこまかいことはよくわかりませんけれども、要するに適正な地料を払うということで、今後この辺の問題については私も十分検討いたしてみたい、かように考えております。
  588. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 もし私の説明が間違っておれば、これは私も、この問題については不勉強でございますから、取り消すにやぶさかじゃございません。ただ、いまの説明を私も一緒に聞いておりまして、本土では、なるほど、いろいろ基準も違いますが、自衛隊の場合は買い取りを主とする。ところが、沖繩の場合は、駐留米軍のも借りですし、自衛隊のも借りていく。したがって同じような基準に合わせる、その条項をもとにいたしまして、できるだけ土地所有者に有利なように交渉をしていこう、きめていこう、こういう説明をしておるように聞こえるのであります。そのことを申し上げたわけです。
  589. 井上普方

    ○井上委員 これはやはり私は沖繩に関しては新しい基準をつくられる必要があると思います。それは、本土における、この両方を使えるような、両刀使いで使えるような方法もありましょうし、いろいろ方法はあると思うのです。これはぜひとも新しいものをつくっていただかなければ——まあ都合によって、人によって、そういうことはないとは思いますけれども、両刀使いをやられちゃ、たまったもんじゃありません。そこらあたりはひとつ十分に——まあしかし、これは早急に手をつけなければできない問題でございますので、ひとつ要綱を早急につくられる必要があると思うのです。この点はどうでございます。つくられますか。
  590. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 十分検討してみることにいたします。
  591. 井上普方

    ○井上委員 そこで、この使用する場合に非常に問題になりますのは、先ほど、原状は、返還時の現状だと、こう仰せられた。沖繩地主連合会からは、原状とは、アメリカ軍が接収したその時点にしてくれという陳情が出ておる。これまた当然だろうと思います。しかし、長官お話によりますと、一つには、原状に回復する、いまの返還時の現状にするのが、この法にいう原状だと仰せられる。それから以前の分は、これは日本国政府がやるのだといいますが、日本国政府は原状にどうやってやるのです。法律ありますか。
  592. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 施設庁長官から答弁させます。
  593. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 この法案によります原状と申しますのは、先ほど申しましたように、この法律施行時の現状ということでございまして、今後アメリカが形質を変更いたしますれば、その原状に回復をするということになるわけでございますが、実は今回の沖繩返還協定の三条の二項で米国に対する請求権を放棄いたしておりますので、これは当然日本政府がやらなければならない。それにつきましては、いまおっしゃいますように、接収時の原状に回復をする、あるいはそれに必要な、それに見合う補償をするということを、今後復帰までの間に賃貸借契約を結びます際に、その中に織り込むということを先ほど申し上げたわけでございます。
  594. 井上普方

    ○井上委員 長官、あなた、ただならぬことをおっしゃる。この沖繩国会においても、アメリカ軍が接収したときの形状にまで戻すということが何にきまっておりますか。日本で何できまっておりますか。国の請求権の放棄はきまっておりますが、しかし、それをやるということは、一体どこできめた、だれがきめたのです。
  595. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 ただいま申しましたように、返還協定の三条の二項に規定し七ありまして、これは結局地位協定四条の適用になるわけでございますが、そこでこれは当然地元からの請求がございます。それで、これはアメリカに対する請求はできませんので、その点を日本の政府において引き受ける、こういうことになろうかと思います。そこで、その法的根拠というものは格別ございませんが、賃貸借契約という合意の中にその点を織り込みまして措置をしたい、かように考えておるわけでございます。
  596. 井上普方

    ○井上委員 請求権を放棄して——これはたくさん請求権問題であなたとお話を申そうと思っておったのですが、いま日本においては、沖繩県民の請求権に対する補償というのは、これは先般総理が堀委員に対しまして、人身事故の見舞い金に対して補償的な性格を与える、その法律は早急に通常国会に出す、こう仰せられたのを私は記憶いたしておるのであります。  そこで、こういうことになると、役人が先走って、まだ法律もできておらないのに、契約の上において接収時の現況に復帰さすんだということを防衛施設庁がお約束いたしている。これはだれかの言ではございますが、政治は水ものと申します。どういうことになるかわからない。あなた方役人というものは、現在の法規、法令、これを十分に守って約束するのがほんとうじゃないですか。それを、法律もないものを、アメリカ軍の接収の時点の現状に戻すとは、一体越権行為もはなはだしいじゃありませんか。どうなんです。だから、もしできなかった場合には、国民から、役人はうそをついたといって恨まれる。役人が怨嗟の的になるのもここらに原因があるのだと思う。軽軽しくそういうことをやってもらっては困ると思うのですが、防衛庁長官、どうです。
  597. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 法的に不備の点があれば、もちろんこれは整備してまいりたいと思います。
  598. 井川克一

    井川政府委員 ちょっと施設庁長官から協定に対するお話がございましたので、その点のところをもう一ぺん念のために申し上げます。  三条二項にございます。三条二項に、「アメリカ合衆国が一の規定に従ってこの協定効力発生の日に使用を許される施設及び区域につき、千九百六十年一月十九日に署名された日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定四条規定を適用するにあたり、同条1の「それらが合衆国軍隊に提供された時の状態」とは、当該施設及び区域が合衆国軍隊によって最初に使用されることとなった時の状態をいい、また、同条2の「改良」には、この協定効力発生の日前に加えられた改良を含むことが了解される。」こういう規定があるわけでございます。そして地位協定四条は、「合衆国は、この協定の終了の際又はその前に日本国に施設及び区域を返還するに当たって、当該施設及び区域をそれらが合衆国軍隊に提供された時の状態に回復し、又はその回復の代りに日本国に補償する義務を負わない。」、これに対応いたしまして第二項に、「日本国は、この協定の終了の際又はその前における施設及び区域の返還の際、当該施設及び区域に加えられている改良又はそこに残される建物若しくはその他の工作物について、合衆国にいかなる補償をする義務も負わない。」、これが対応しているわけでございますが、この第四条一項の読み方につきまして、返還協定の第三条二項がありまして、「「それらが合衆国軍隊に提供された時の状態」とは、当該施設及び区域が合衆国軍隊によって最初に使用されることとなった時の状態」をいっているわけでございます。そして地位協定第二十四条にまいりますと、第二十四条には、合衆国軍隊に関するところの経費の分担で、施設、区域の提供につきましては、「合衆国に負担をかけないで提供し、かつ、相当の場合には、施設及び区域並びに路線権の所有者及び提供者に補償を行なうことが合意される。」こういうふうな規定がございまして、これに基づきまして、内地におきましては、普通の契約の場合にその原状回復の義務を地主との間で契約で負っているわけでございます。そのようにまた施設庁長官沖繩においてもなさるということを申されているの、だと思います。
  599. 井上普方

    ○井上委員 そこで、私は続いて土地の契約についてお伺いいたしていきたいと思うのです。  通常でありましたならば離作料というものが支払われる。これは普通の契約の場合には離作料というものが支払われる。今度の場合——農業の場合ですよ。あるいは営業権の補償というものも行なわれておる。ところが、これが沖繩の農民に対しては全然行なわれていないのですね。アメリカ軍は、営業権であるとか、あるいはまた営農権、耕作権というものに対してはびた一文も全然払っていない。これらに対してあなた方はどうお考えになります。そこまで詳しい人なんだから……。
  600. 銅崎富司

    銅崎政府委員 沖繩におきましては、先生御存じかと思いますが、現在すでに借料が払われておりまして、それをわれわれは先ほど申しました本土の算定基準に準じまして借料を算出して出すわけです。現在、基地の中でいわゆる黙認耕作地ということで農耕が許されておりますが、この問題も米側と調整はいたしますが、二、三年の間は現状を認めていきたい、こういうふうに考えております。
  601. 井上普方

    ○井上委員 アメリカ軍が接収しました際に国際法規を無視した不法不当な土地の接収が行なわれたことは、佐藤総理も、先般、瀬長議員が書かれた「沖繩の悲劇」なる本をお読みになって十分におわかり——十分とは申さないでございましょうけれども、おわかりになったと思うのです。ああいうような悲惨なところでございますので、どういたしましてもこれは、何と申しますか、本土並みの補償というものがなされなければならないと思うのでございます。そこで、アメリカ軍が金を払ったというのは地代がほとんどでございまして、ほかの諸補償はほとんどやっていない。これは私どもは通損補償といっておりますが、これがアメリカ軍はほとんどやっていない。一部はやりましたけれども、やっていない。  そこで、防衛庁長官、あなたにお伺いするのがいいか、建設大臣にお伺いするのがいいですか、いま本土で事業をしようとする、そうしまして土地を買収する、買収したときに、用地費と用地費以外の補償とはどれくらいの比率だとあなたはお考えになりますか。知っていますか。——大臣、よろしい、よろしい。これは四十五年の建設白書、四十四年の実績を見てみますと、土地代が七二・一に対しまして、その他の通損補償が二七・九という数字になって示されておるのです。土地は買収費ですよ。でございますので、土地代の三分の一弱というものが、大体七対三の割合で補償に使われておるのが実態なんです。ところが、沖繩においてはこれらの通損補償というのがほとんどやられていない。通損補償というのはわかっていますか。長官、通損補償ということば、わかっていますか。——どうもおわかりに……。でございますので、本土の諸法令が沖繩に及んでおったならば、当然受けるべき沖繩県民の権利というものが、施政権の分断のために遮断せられ、ほとんどこれらの恩恵を受けておらない。恩恵といいますか、権利行使ができていないのであります。私は土地だけについて申す。これに対して日本は、話は別になりますが、このたびの協定によりまして対米請求権を放棄しておる。この請求権放棄が、これが国としてやるべきでないとか、違法であるとかなんとかいうような議論がございます。しかし、私はそのことを問わない。ただ、佐藤政府が請求権を放棄したのは事実でございます。また、その放棄した協定を私どものところに出して、いま批准を求めておるのでございます。  それでお伺いするのでございますが、これらの沖繩県民が、日本の施政権が及んでおったならば当然受けるべき権利を遮断せられて、それによって損害をこうむっておるもの、これに対しては、少なくとも日本政府は、手厚い保護を加えなければならないと思うのであります。この点について、西宮議員、堀議員あるいは瀬長議員等々が質問されたようでありますが、総理は、もう一度ここで、これらの問題に対しましてどういう対処をされるか、明確なる御答弁を承りたいと思うのです。
  602. 山中貞則

    ○山中国務大臣 通損補償は、今回の借地料とは別個に、残された諸請求権の始末しなければならない本土に課せられた仕事の中の大きな問題の一つであります。これは、しかし、現在琉球政府においてもいまだ通損補償請求すべき実態というものがわかっておりませんので、これは直ちに来年度予算において施設庁のほうで調査費を計上して、その調査で、沖繩県も含めた、関係者も含めた完全な調査を合意の上、それに対して本土政府が必要な補償を支払う、補償に見合う金額を支払うということに処理するつもりで、いま施設庁のほうに移しているわけでございます。
  603. 井上普方

    ○井上委員 いわゆる通損補償だけじゃなくて、あらゆる沖繩県民の諸権利が、ともかく請求権の放棄によって実体的に請求する相手がなくなっておる現状です。そういうようなときに、やはり国は、外交何とか——佐藤総理も、法律はしろうとと先ほど申されましたけれども、私らもどうもしろうとでございますのでわからぬのですが、何か外交保護権とかなんとかいうのを放棄したのだなんという、むずかしいことが書いてあります。一応はわかります。しかし、やはり、国としてはその請求権を放棄したのでございますから、当然国が補償しなければならぬと思います。したがいまして、屋良主席もこの点につきまして明確にひとつ言われておるわけです。そしてまた、調査委員会あるいは調査審議会というものをつくってほしいという要求が出てきておるのでございますが、先般も堀委員質問に対しまして、来国会早い機会に考えるという、まことに御答弁を聞きますと非常に抽象的でございました。したがいまして、私が先ほど申しましたように、沖繩県民が請求権として持っておるものを、これを国が支払うという考え方をもって調査審議会をつくって、これを適正な補償をするというお考えがあるかないか、総理の御見解をお伺いしたいのであります。
  604. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはこの前も申したと思いますが、実情が十分把握できてないから、まずその実情把握のために十分の調査をしないことには対策も立たない。しかし、請求権を放棄したんだから、そこに実損のあることは確かだ。そういう意味で、一般的には、これを、日本請求権を放棄した、それを全然政府が見ないというわけにいかないから、まあ見舞い金という形、形は見舞い金ということばを使っているが、その請求権にかわるような処置をしょう、こういうことを申しました。これが、いわゆる予算的措置で片づくものと、あるいはまた特別立法をする、そういうものもあるかもわからない。いずれにしても、そういう点は、実情を調査して把握することがまず大事なことだ、かようにお答えしたと思っております。また今回も同じお答えをいたします。
  605. 井上普方

    ○井上委員 総理、調査をするということじゃなかったのです。ここに議事録も私は持っておりますが、あのときのそういう考え方で——また、西宮委員質問に対しましても——これは西宮委員が堀委員あとでございました。何かずっとやりとりがございまして、最後に西宮さんも、私が申すように、施政権の分断がなかりせば沖繩県民が受けたであろう権利、その損害というものを国は責任を持って補償するか、こういう質問に対しまして、お説のとおり。ということは、分断なかりせば受けたであろう補償、つまり本土国民と同じような補償を受けることが当然だ、こういうことですね。一言だけちょっと、それでよろしければそのとおり、こう言いますと、佐藤総理は、そのとおりでよろしゅうございますと、こう答えられておる。いまのお話だったら、調査しなきゃ補償の実態はわからぬと言う。これも私わかります。わかりますけれども、それよりも一歩先に進んだ御答弁をなされておる。そこで、また堀委員質問に対しましても、私もちょっと誤解があったようでございますが、堀委員質問も、人身事故の例を引いてやられました。そのときにも、形は見舞い金だけれども、実質は補償的性格のものを考えますと、こう総理は言われた。そこで私は、一貫して総理の考え方としてはあるんだ、沖繩県民が本土政府の保護を受けておったならば当然受けるべき権利が、これが剥奪せられたがために受けた損害は、日本政府がこれを責任を持って補償する、この基本方針をやはり打ち出す必要があるんじゃないか、また佐藤総理はそういう考え方で進められておると信じておったのでございます。いまのお話とだいぶん——ニュアンスが違うどころの騒ぎじゃない。あなた、いま調査することを約束したんだって、だいぶん違いますよ。そこらあたりもう一度明確なる御答弁を賜わりたい。
  606. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 堀君や西宮君に答えたことと、別に井上君に別なことをお答えしているわけじゃございません。先ほども井上君にお答えしているとき、真うしろで堀君も私の答弁を聞いておられましたが、やはり相づちを打っておられます。(発言する者あり)私はその調査に重点は置いておるわけじゃございません。これはその際もはっきり申しましたように、請求権を放棄したのだ、政府の保護権を放棄したと、こう言ったほうがいいのかわかりませんが、そういう状態だから、これは何らかの形におきましてこれを補償する、それが見舞い金である、こういうように申し上げた。その見舞い金は、ものによっては予算的措置で片づくものもあるし、ものによっては立法措置を必要とするものもある、それらの点は、十分実情を把握して、しかる上で処理するのだ、かように申したのでございます。この点は別に変わったことは申しておりません。
  607. 井上普方

    ○井上委員 西宮委員には……。
  608. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま西宮君の話は私ちょっとわかりませんが、おそらく、いまの前提がありますので、そういうものに基づいての結論を申したのではないか、かように思っております。それだけをつかまえていろいろ御議論なさると、あるいは事実が間違うかわかりませんし、私の答弁が不十分かわかりませんが、私は、受けたいろいろの損害に対して政府は請求権は放棄する、これはまた、事実、請求権がありましても、ワシントン、それと交渉するということでは、これはたいへんだと思いますから、これはむしろ放棄して、そうして日本政府がかわって、形は、ことばとしては不適当な——これは当然の請求かわかりませんけれども、見舞いというような形で、それに実質は請求権に合うような、見合った処置をする、こういうことでございますから、その辺は誤解のないようにお願いしておきます。
  609. 床次徳二

    床次委員長 井上普方君——井上普方君、ひとつ質疑をお続けください。
  610. 井上普方

    ○井上委員 この請求権日本政府が放棄した、それに対して何らかの補償をするということは、非常に重要な問題でございますので、質問された堀委員西宮委員が、総理のいまおっしゃるのとニュアンスが違うというお話しでございますので、委員長、しばらく関連質問をお許し願って、ここらの問題を詰めてみたいと思います。
  611. 床次徳二

    床次委員長 堀昌雄君から関連質疑の申し出があります。これを許します。簡潔にお願いします。堀昌雄君。
  612. 堀昌雄

    ○堀委員 いま総理が、私が首を振っておったから、堀君も了解をしたのだろうと、こうおっしゃっておりますので、ちょっとこれは正確にしておきませんと、問題がきわめて重要なところでありますから、会議録によって総理の御発言をもう一ぺん確認をしますと、「先ほど来各大臣の意見を徴された後でありますから、ただいまの建議の趣旨、これは十分尊重すること、これはもう政府の当然のことであります。ただいま、おくれてもいいと言われますが、できるだけ早目にこういう問題は片づけること、これが望ましいことだ、かように思いますから、十分結論を通常国会までには得られるようにいたしたいものだ、かように考えます。」これが総理の御答弁ですが、その前に田中大蔵大臣代理は「政府がその責めに任ずることは、国民の財産をもって充てることでございますから、これから政府が支弁に応じなければならないような状態が起こった場合、立法によることが望ましいことは言うまでもありません。今度の返還に関し必要やむを得ないものは今度御審議をいただいておりますが、この機会までに定かでないために処理ができなかったもの、新たに起こる事由に基づく支払いに関しては、立法によることが望ましい、私もそう考えます。」と、こう前段で大蔵大臣代理が言われたあとで、総理がいま申し上げたことをお述べになっておるのでありますから。私は、総理が「先ほど来各大臣の意見を徴された後でありますから、」と、こうおっしゃっておることは、その各大臣の意見を肯定された上での御発言だと了解しておりますから、そのことは、建議の趣旨に沿って、立法措置によって通常国会までにできるものはやればいい、こういうふうにおっしゃったことだと理解をしておるわけであります。さようでよろしいと思いますが、いかがでございましょう。
  613. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとき、もう一つ、外務大臣の答えたのがございませんか。お読みをいただきます。
  614. 堀昌雄

    ○堀委員 「大筋は大体そんなような感じがします。しかし、これは実態調査をしてみないと、これがどういうものであるか、これが米軍に対するほんとうの意味の請求権的なものであるのかどうか、その辺がまだはなはだ私ども調査が進んでおらぬ、こういう状態なんです。考え方としては大体堀さんのようなお考えでしかるべきかと、かように存じます。」そこで私は、「たいへん福田さん、いつも答弁ははっきりするのに、いま二段がまえぐらいに、何かアローアンスのついた答弁でございますので、もうちょっとこれは、非常に重要ですから、きちんとさしてもらいますが、私も、請求権の問題は今後調査をなさらなければわからない問題がたくさんあることは承知をしております。だから、十分調査をしていただいて、そして調査をして請求権があるということがはっきりしたものについては、これはいま私が申し上げたように立法によって措置をする、こういうふうにここで確認をしていただきたい。私も、何でもかんでも立法しろなんてひとつも言っていないんです。だから、財政措置をとる——たてまえ上は、やはりこれは国民が納得しなきゃならぬことでありますから、当然私は請求権として認識を政府ができるものは、それの支払いをするときには立法をもって措置をするんだということを、ひとつ確認をしてもらいたい。大蔵大臣、いかがですか。」こういうふうな経過でなっているわけですから。
  615. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりだと思っております。そのとおりで、やはり先ほど来申しますように、本来、請求権、これはあるのですから、その請求権を放棄する限りにおいて、本来の損害に対して政府が、形は見舞い金だけれども請求に合った賠償的な意味をもって処理する、これが本来だ、かように思います。そして、それが多くは予算的措置で大体済む場合もありますし、また、実態をつかんだ上で立法措置を必要とするものもあるかわからぬ、そういう場合には立法措置による、こういうことで御了解をいただいた、かように私は承知しておるわけであります。
  616. 堀昌雄

    ○堀委員 私がここで申し上げたのは、請求権として認められるものは立法で、請求権ではないけれども、諸請求として認めるものについては予算措置で、こう区分けをしたわけです。そこで大蔵大臣が、請求権として認められるものは立法措置によるのが正しいと思う、こうお答えになっておりますから、そこをちょっとあいまいにせずに、予算だけで措置できるのは諸請求であって、請求権として確認ができない諸請求は予算措置でやっていただく。しかし、請求権としてはっきり認められるものは全部立法で措置していただく。そこを区切りをつけて御答弁を私はいただいたわけですから、ひとつそういうふうにここでお答えをいただけば、これで私は終わりますから。
  617. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 その区分けは、まことに私むずかしいのじゃないかと思っております。一般的な請求権あるいは立法措置を要するもの、こういうようにいま堀君は観念的に非常に明確だと言われますが、その区別はなかなかむずかしいのじゃないかと私は思います。いずれにしても、もっと実態を把握すること、これが必要だろう、かように思います。
  618. 床次徳二

    床次委員長 西宮君。——関連でありますから、簡潔にお願いします。
  619. 西宮弘

    西宮委員 わかりました。  総理からただいま実態を調査してというお話がありましたが、それはもちろんその実態は十分調査をしていただきたい。ただ、私はその基本原則についてお尋ねをしたわけです。それはおとといですよ。しかもその前の日に私はこういう印刷物を配って、問題点を全部指摘をしておる。それには全部赤い線を引いて、ここをちょっと見てもらえばわかるんだ、こういうことでこの印刷物を全部閣僚の皆さんにお配りをいたしまして、その上で質問をしたわけです。さっき総理は、その前提がわからない、西宮君の質問の前提がわからない、こういうお話でありましたが、これを配って御説明をいたしまして、したがって、今日までとられてまいりましたあの米軍のやったやり方は、土地取り上げのやり方は、あくまでも不法不当だ、しかもそれに対する補償は、たとえば土地裁判所に訴願をしろとか、土地収用委員会に訴願をしろとか、こういう規定もあるけれども、これは、たとえば裁判所なんといったって、裁判所でも何でもない。アメリカの軍人が、前には三人、いまは一人いて、その事務を取り扱っているだけ。そういうところである。しかも今日までそこで解決をしたのは二件しかないわけですよ。二つのケースしかないわけです。それほどそういうものは全くじゅうりんをされて、何ら補償されておらない。ただアメリカがきめたその代金を受け取るだけ。あるいはそれ以外に琉球政府でつくった法律があるけれども、これも最後は高等弁務官が同意をしなければその金額が決定をしない。あるいはアメリカ本国に請求をしろというので外国人補償法というのがある。しかし、これで満足をするんだ、これが最終の要求なんだ、そういうことに判こを押さなければその金は払ってくれない、こういう仕組みになっておるわけです。だから、アメリカが今日までやってきたのは全部ことごとく全く不法不当なんだ、講和前、講和後を通じて、不当なんだ、こういうことを佐藤総理にもこの間るる——まあるるといっても、これの問題は前の日にお配りをいたしておりますから触れませんでしたけれども、終始一貫不当不法なんだ、こういうことをるる申し上げて、間違いがあってはいけないと思うので、私は紙に書いたものを朗読いたしまして、これから日本政府が行なうところの補償は、沖繩に施政権分断なかりせば受けたであろう補償、すなわち、日本本土内の日本の国民が受けたと全く同じものを補償するか、こういうお尋ねをいたしましたらば、結局そのとおりでございますという答弁があるわけです。具体的に申しまするならば、これもその前の日にお配りをしたのに全部書いてあるのです。たとえば、駐留軍の用に供する土地等損失補償等要綱、あるいは日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に基づき日本国にあるアメリカ合衆国の軍隊の水面の使用に伴う漁船の操業制限等に関する法律、地位協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法等々、日本の本土内で損害を受けた国民には、全部この法律に基づいて補償をしているわけですよ。いわば、その意味においては、損害を受けた人は、もちろん不満な方がたくさんあると思いますが、しかし、一応はとにかく至れり尽くせりの制度ができておるわけです。それと全く同じ補償をするかと言ったら、そのとおりでございますという答弁がされておるわけであります。しかも、前にこれの説明をしたときは、佐藤総理はおいでになりませんけれども、一緒におられた閣僚の皆さんは全部そろっておられて、だれも総理の答弁にクレームをつけた人はないわけであります。したがって、私はその総理の答弁を聞いて、たいへんにありがとうございました、私はこれを感謝をいたします、こういうことを申し上げておるのです。私は、佐藤総理も完全にこれを了解した、そういうふうに心得たわけでございます。ですから、これからその調査をする——実態の調査は必要でしょう。しかし、基本原則は、あくまでも、あの沖繩が施政権の分断がなかったならば受けたであろうところの補償、つまり、あの沖繩が三府四十三県の中の一つであったならば完全に受けた補償、それをあの沖繩の国民も受けるんだ、こういうことを申し上げておるのですから、その原則だけ十分御理解を願いたいと思います。もし御異論がなければ、それはこの間の総理の答弁ではっきりしておるのですから、これは完全に私はそのとおりだと了解いたします。
  620. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど堀君にもお答えしたこと、また西宮君からもただいま同じような御意見が出ております。また、実態を十分つかまえなければ、これについて不当不法、こういう判断がはっきりしない、私、かように思います。いままでのところは、いろいろ書いたものは私も読んで、瀬長君の書物もよく目を通しまして、実際沖繩の方は気の毒な状況に置かれていた、これは心から御同情申し上げております。しかし同情だけではなく、ただいま西宮君の言われるように、その実態を十分把握すること、これにっとめなければならないと思います。
  621. 西宮弘

    西宮委員 実態の把握をされることはもちろんけっこうでございます。ただしかし、把握した後に処する処置のしかたはこのとおりだと、そういう原則をお尋ねをしているわけですから、その原則に間違いがないかどうか、もう一ぺんあらためて御答弁願います。ちゃんとはっきり答弁をしているのですから、先ほど答弁のとおりですと言っていただけばけっこうです。
  622. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの御趣旨に沿うように十分努力するつもりでございます。
  623. 井上普方

    ○井上委員 話を少し変えまして、この返還協定四条第二項についてお伺いいたしたいのであります。  特に、協定合意された議事録を拝見いたしますと、まことに不届きなることが書かれておるように思われるのであります。そこで、いま沖繩には土地裁判所なる裁判所とは名のみで実質は異なり、羊の頭を掲げて犬の肉を売るような土地裁判所なるものがあります。この土地裁判所に訴願をしておる、請求をしておる事案につきましての一件でありますが、これは当然、この四条第二項には「正当に権限を与えた職員を琉球諸島及び大東諸島に置くことを許される。」こうあるのでございますが、これはやはり土地裁判所の流れだと考えて差しつかえございませんか。
  624. 井川克一

    井川政府委員 四条二項の該当いたしますものは、先生が御指摘になりましたように、合意議事録にずっとあがっているようなものでございますが、この最後のところの、日本国政府との協議の上定められる手続に従い、正当に権限を与えた職員を置くということになっておりまして、けさほどでしたか、一昨日もお答え申し上げたのでございまするけれども、この手続はまだきまっていないわけでございます。これから話し合いをしなければならないわけでございますが、いずれにいたしましても、土地裁判所はこれは解消いたします。そしてその土地裁判所的、そのようなものにつきましては、その正当な権限を与えられた職員がこれを処理する、こういうことになっているわけでございます。
  625. 井上普方

    ○井上委員 それで、その第四条の第三項の最後に「千九百六十七年の高等弁務官布令第六十号に基づいて行なった支払に比し均衡を失しないように行なう。」こうなっておるのであります。しかし、私が調べたところ、この一九六七年に支払われた金額というものは、非常に何と申しますか金額が安過ぎると思うのです。これは二千二百万ドルではなかったですか。二千二百万ドル、これが正当な条項であるかどうかを調べるために、その二千二百万ドルをどのように使われたのか、項目別にひとつお答え願いたいと思うのです。
  626. 井川克一

    井川政府委員 これは資料としてすでに御配付申し上げてあるそうでございまするが、総額は、いわゆる権限を得たのが二千二百万ドルでございますけれども、実際の支払いは一千七百七十二万八千百十八ドル七十二セントでございます。そして、その内訳を申し上げましょうか。——内訳は、身体損害及び死亡の補償が八十一万八千九百三十一ドル七十七セント。——では紙を差し上げます。     〔井川政府委員、井上委員に資料を示す〕
  627. 井上普方

    ○井上委員 時間がもったいないのでこういうことをお許し願いたいと思うのでありますが、しかし、この補償額を見ましても土地使用料、これは千三百万ドルであります。しかし復元補償は二百十万ドル、それから水利権の補償が五万ドル、それから立木補償が十二万ドル、十三万ドルぐらいになりますか、というように非常に低い金額で押えられております。私は、これは実は書類をくるんであるのですが、ひっぱり出すのが時間がもったいないのでやっておるのでありますが、計算いたしますと非常に低い金額補償がなされておる。この均衡を失しない程度というならば、アメリカ軍が払ったあの金額とこの二千二百万ドルと均衡を失しないというのでございますから、これよりもうんと、日本の施設庁のごとく、六倍も七倍も出すということは考えられない。そこでこういうような問題について、これは補償はできたと、こう一応口実にはなります。アメリカ賠償をやったのだということを言うかもしれませんが、実態は低いのです。あるいはまた、先般も瀬長議員がこの場で申されましたように、このたび防衛施設庁は地代を六・七倍に上げるとおっしゃっておられるでしょう。それがいま日本においては正当な価格のはずだ。これから以前の、それでは沖繩県民がこうむっておった、安い地代で押えられておったその差額というものも、これまた当然補償の対象にしなければならぬというような、非常な問題があるのでございますが、特にこの点につきましては、総理は、瀬長議員の質問に対しまして、それは当然、先ほど申しました見舞い金の範疇に入るのだという御答弁をお与えになっておられますので、この点は了といたしたいと存ずるのでありますが、しかし、いずれにしても、この第四条第三項というのは、私どもはどうも納得いたしかねるものがあると思うのであります。
  628. 井川克一

    井川政府委員 この四条三項は講和補償漏れでございます。講和前の補償は、法律的に申しますと、十九条で放棄されている。それにもかかわらず、琉球の方々の御努力がございまして、アメリカ政府布令第六十号で支払うということになったもののうちの復元補償に関するものでございます。そして、復元補償の分につきましては四条三項によりまして、布令六十号と、講和前のものであります、講和復元補償で、当然そのとき、期日が一九六一年七月一日、六月三十日という期日をとりましたもので、その前のは布令六十号でもらっているのに、それ以後の方はもらっておられない。その不均衡のためにアメリカは道義的責任を感じまして、これを支払うということになったわけでございます。講和復元補償のみでございまして、人身につきましては、すでに各防衛庁長官からしばしば御答弁がございますように、このたび別の法律が出ているわけでございます。これは講和前の補償漏れの人身でございます。
  629. 井上普方

    ○井上委員 土地問題は——これは総理、聞いていただきたいのでありますが、先般も公聴会におきまして、久住公述人がここで公述いたしました際に、私お聞きしたのであります。これは自民党推薦の軍事評論家の久住さんでございますが、私は、沖繩返還の原動力になったのは一体何だ、こうお伺いいたしましたところが、やはり一番問題は土地問題、一九五八年のあの土地問題、あれを契機にいたしまして、祖国復帰運動が起こってきたことが一番大きい原動力になったという自民党の公述人のお話でございました。それほどまでに沖繩の方々は土地に対する執着、あるいはまた特に五八年のあの闘争なんかを見てみますと、アメリカ軍は十七年間も長い間の契約を一度でやろうとしたときに、領土を守れ、この合いことばでもって、そのアメリカの強圧をはね返したのであります。したがって、私はどういたしましても、この土地問題の解決なくしては沖繩問題の解決はないと実は考える次第であるのであります。こういうような問題から、私は総理に土地問題だけについてきょう質問をいたしておるのでございます。いろいろと小さい問題も提示して、アメリカ軍がたとえば道路をこのたび継承するということになっておりますけれども、あの道路を見てごらんなさい。側溝は全然ございません。それから排水する暗渠もありません。そして道路が少しこわれたら、その上その上ヘアスフアルトを乗せていっただけの道路であります。沖繩というところはサンゴ礁でできたところでございますので土地がかたい。ブルドーザーで一ぺん押してその上をローラーで一度なぜて、その上ヘアスフアルトを乗せたらもうすでにアスファルト道路として使えるのです。実に安くできる。にもかかわらず側溝をやらない。コザの町へ行きますと、家の床の高さよりも三十センチ高い道路ができています。したがって、雨があったら水が全部家の中に流れ込むというような実情であります。全く民生ということを考えずに、軍事優先の沖繩占領であった。ここに沖繩の占領政策は、民生関係を非常におろそかにしたゆえんがあると思うのであります。道路にいたしましても、最初のうちは全然買収せずにいきなり道路をつくっていった。それも先ほど申しましたように、ブルドーザーで押してその上をトレーラーで一、二回なぜて、あと五センチぐらいの、あるいは七センチぐらいのアスファルトを置いたのみであります。私も計算してみました。そういたしますと、一平米当たり二千円ぐらいしかかかりません、日本で。そういう道路でございます。道路というものはもともと軍用道路でございますので、この資産継承に金を出すこと自体につきまして、私は疑問を持ちます。そしてその価格がはたして正当なものかどうか、きょう詰めてみたいと思いましたけれども、これは実は時間の関係上割愛して他の機会に譲りたいと思います。  平米当たり二千円でございますので、新しい道路をつくるにいたしましても、あのとおりのやり方をやりますと、大体私らが計算するならば、二車線で一万七、八千円、土台をつくるので大体二万二、三千円でできると思う、新規の道路が。それをこのたびの資産継承の際には、これをメートル当たり二万三千円で買っておる。道路の性格からいたしましても、また今後の問題といたしましても、あれには側溝をつくらなければなりません。側溝をつくるといたしますと、片側に七千円かかるのです。両側ですから一万四千円かかるのです。こういうような問題もあります。道路が高くって暗渠排水が全然ございませんものですから、こちらのほうの片方の水がたまって水びたしになる。床上浸水どころか天井までつかるというようなうちがたくさんあります。これらの補償もなされていないのです。ましてもちろん、それで残地補償というような問題も出てきております。あげれば、日本においては当然に補償しておる事件が、沖繩では全然なされておらないといっても過言ではないかと思われるのであります。したがいまして、これらの問題につきまして、特にいま一番大きい問題といたしまして出てくるのは、土地の所有権関係、公図が実はできておりません。地籍調査、公図ができていない。しかし何をいいましても、所有権を主張するという場合には、先ほど中谷議員の質問ではございませんけれども、地図が要ります。番地を決定しなければなりません。ところが、これを沖繩で指導し担当する役所というものは建設省ですか、あるいは法務省ですか、あるいは沖繩対策庁ですか。この所管のところがまだきまっておらないのじゃございませんか。きまっておったらひとつお聞かせ願って、来年度の予算をどれだけつけるのだ、そしてどの役所が主体となってやるのだという方針をひとつお示し願いたいのです。
  630. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは、現在の琉球政府土地調査庁というものを中心の機構で行ないます。したがって、予算その他は総理府で行ないますが、基本は国土調査法に基づく地籍調査であります。しかしいつも申しますように、最終的には民事裁判によらざれば確定ができない性格のものでもございます。
  631. 床次徳二

    床次委員長 井上君に申し上げますが、申し合わせの時間が近づきつつありますので、どうぞひとつ結論をおつけいただきたいと思います。
  632. 井上普方

    ○井上委員 しかし、この地籍調査あるいはまた公図をつくるというのは、大体が国の事務じゃございませんでしょうか。国が地方に委任しておる事務じゃございませんでしょうか。これの所管庁を一体どこにするか、ここらあたりも問題があろうと思うのであります。  委員長からお示しがございますので、この点につきまして割愛しますが、どうかひとつこの地籍調査をやることが、一つには私は民生の安定になると思います。でございますので、これはひとつ早く調査をやらなければならない。十年もかかっては困ります。これを二、三年のうちにやるだけの向こうに技術あるいはまた人がないのならば、中央から送り込んででもやろうじゃございませんか。そして沖繩の人たちに安心を与えなければならないと思うのでございます。総理、いかがでございますか。
  633. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは土地調査庁という役所もあり、人もおるのです。技術も持っておるのです。しかしながら現在の琉球政府は、形は琉球政府の形をなしておりますが、国のような権力と申しますか、実はそういう行政権限を持っておりません、私有財産の確定について。そういう意味で非常に困っておりまして、そこで国のほうで、この国土調査庁を全部受け取ってもらって国が直接やってくれないかというお話があったわけです。ところがいろいろ法務省その他とも相談をしてみましたが、なかなか国が実際上の境界分明作業というものまでやって、そしてこれを国がやって訴えられたらまた被告になるといういろいろな議論をしましたので、結局はやはり琉球政府とよく相談しまして、土地調査庁の職員とそれから機能というものをそのままでやってもらいましょう。それについては予算的に十分な配慮をすると同時に、与那原等の一番分明困難な地区について、パイロット的な予算をつけて境界策定の作業をやってみようじゃありませんか。これは私権の確定でございますから、どうしても部落単位あるいは村単位の住人の皆さんが協力、理解ということで合意に達しないと、やはり訴訟事件になってしまうと思うのです。そこらのところは私も十分実情をよく知っておりますので、御注意のとおりにはからいたいと存じます。
  634. 井上普方

    ○井上委員 時間がなくなりましたので、最後にひとつお伺いいたします。  先般私どもは宮古の公聴会に、宮古島へ参りました。そういたしますと、旧陸軍が飛行場をつくったんだ。その飛行場をつくったときに、戦争が終わるならばこの飛行場はもとの地主に戻す、こういう約束で接収しておる。これをこのたび、私もその地点を見てみますと、どうも自衛隊に引き継がれるようであります。いままでアメリカ軍が使っておった。ところが、これは総理府の長官に見せてもいいのでございますが、厚生省の援護局長がこういう認定書を出しておるのです。「第二次大戦中日本軍が宮古島に飛行場を設定するため土地を買収するに際し、地主に対し、「戦争が終れば土地は旧地主に払い下げること」を口約したことは事実であると認定する。昭和三十九年十二月十四日、厚生省援護局長」、こういう文書を私は見まして、この土地を、こういう約束をしておる土地をあらためてまた自衛隊に使うということはどうもおもしろくない。この点どうなっておりますか。
  635. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私もいま初耳でございましたから、防衛局長を呼んで聞いてみました。自衛隊がそういうものを使う計画はございません。むしろ私のほうでは、一応それは対価を支払って、そして軍の、国有財産の台帳に載っておりますので、したがってそれらを払い下げるといたしまして、その場合にそれがもとの地主さんであれば問題ありませんが、現在はまた民政府の手で黙認耕作がなされておりまして、そうすると、耕作権を持っておる方と地主と一致しない場合、ここらに非常な農地法の問題と旧地主の問題とがございますから、そこらのところもよく現地と相談の上、現地と意見の食い違いのないような処理をしていかなければならぬと考えているところでございます。
  636. 井上普方

    ○井上委員 私はこの問題につきましては、旧地主と小作人との間の話し合いはついておると聞きました。市役所で聞いたのです。それで、ここに書類を持っておりますから、この地点がそういうようなことでありましたならば、正当な対価を払って、この国がやった口約束でございますけれども、やはり守らなければならぬと思います。これはあとでまた総務長官にお渡しいたしますが、どうかいまおっしゃったような方向でやっていただきたいと思うのでございます。  沖繩問題もいろいろと問題がございます。私も先般来二回にわたりまして沖繩に参りまして、非常な沖繩の苦悩というものを私は感じた次第でございます。何とかして本土並みの生活並びに権利を与えるようにしなければ、こう痛感いたしましたのは、沖繩へ参られた佐藤総理をはじめ全員の感想でなかろうかと思うのでございます。したがいまして、沖繩返還が実現される暁におきましては、どういたしましても国は全力をあげて、本土が全力をあげて、沖繩復興あるいは沖繩の人権を守るために努力しなければならないということを私どもは痛感いたす次第でございます。  時間が参りましたのでこの程度に終えますが、どうか政府当局におきましてもそのことをひとつ御理解くださいまして、なお一そうの奮励賜わりますよう、心からお願い申し上げまして質問を終わります。(拍手)
  637. 床次徳二

    床次委員長 これにてただいま議題となっております七案件中、内閣提出の五案件に対する質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  638. 床次徳二

    床次委員長 沖繩振興開発特別措置法案に対し、二階堂進君外四名から修正案が提出されております。     —————————————
  639. 床次徳二

    床次委員長 提出者から趣旨の説明を求めます。毛利松平君。
  640. 毛利松平

    ○毛利委員 ただいま議題となりました沖繩振興開発特例措置法案に対する修正案につきまして、自由民主党を代表して、提案の理由並びに内容の概要について御説明申し上げます。  案文はお手元に配付してありますので、朗読は省略させていただきます。  まず第一点は、原案の第三条において、沖繩振興開発計画に定めなければならない事項を掲げておりますが、その中に、都市の整備に関する事項を明記しようとするものであります。  沖繩の都市は、基地依存という特殊な経済のもとに無秩序な膨張を余儀なくされており、特に中南部への人口の集中は、都市問題の解決をますます複雑なものにしております。したがって、振興開発計画において、都市の整備に関する事項を定めなければならないとするものであります。  第二点は、職業の安定のための特別措置のうち、雇用促進事業団が行なう業務の中に、求職手帳所持者が公共職業安定所の紹介により移転して就職する場合、宿舎の貸与その他宿舎の確保に関し必要な援助を行なう業務を加えることであります。  御承知のとおり、沖繩復帰に伴う雇用情勢はかなり流動化すると思われますので、本土における炭鉱離職者臨時措置法と同様、この宿舎の貸与その他の援助を本法律においても実施できるようにしようとするものであります。  第三点は、沖繩振興開発審議会の委員の構成を「一十五人以内」から「三十人以内」に改め、学識経験者を「六人以内」から「十一人以内」とすることであります。  沖繩の開発は、自治権尊重の立場に立った開発でなければならないことは当然であり、右措置によって、県民の意向の反映をより一そうはかろうとするものであります。  何とぞ御賛同あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
  641. 床次徳二

    床次委員長 これにて趣旨の説明は終了いたしました。     —————————————
  642. 床次徳二

    床次委員長 これより内閣提出の五案件及び修正案を一括して討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。山口鶴男君。
  643. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 私は、日本社会党を代表し、沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案(以下特別措置法案という)、沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律案(以下改廃法案という)、沖繩振興開発特別措置法案(以下沖繩振興法案という)、及び自民党提出の修正案、沖繩における公用地等暫定使用に関する法律案、以下軍公用地使用法案という、及び人事院地方事務所設置に関し承認を求めるの件、以上四法案並びに一承認案件に対し、絶対反対である立場から討論を行ないます。  私は、討論を行なうにあたり、本委員会に付託された四法案根拠をなしている琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定、いわゆる沖繩協定に絶対反対であり、沖繩県民の要求である基地も核もない平和な島沖繩を実現することこそがいまや緊急の国民的課題であり、そのためにこそ、沖繩協定のやり直しを強く政府に求めるものであります。  しかるに、政府・自民党は、去る十一月十七日、沖繩協定特別委員会において、わが党の楢崎弥之助委員が、本土岩国基地に核兵器が貯蔵されていると見られる重要な証拠があることを鋭く追及しつつあるさなか、きわめて不法不当、かつ議会制民主主義の根底をくつがえすところの強行採決と称する暴挙をあえて行なったのであります。このことが沖繩県民の心をさかなでし、いかに沖繩県民の心を深く傷つけたか、政府並びに自民党は、静かに思いをいたすべきであります。  去る十二月一日、二日、本委員会が行なった沖繩現地公聴会において、公述人として立たれた桃原用行祖国復帰協会長は、沖繩の祖国復帰運動の中心となってきた私たちが、いまは協定やり直しを求める立場にある。その理由は、復帰運動とはすなわち平和を求める運動であり、悲惨な戦争体験を二度と繰り返さないためのものだからだ。今回強行採決された沖繩協定は、極言すれば、沖繩県民に再び玉砕を求める協定といわなければならない。米軍基地をそのまま存続させる上に、さらに多数の自衛隊まで配備するというが、これによって、平和な沖繩を望む願いは、完全にむしり取られてしまった。ましてこの協定の強行採決は全く理不尽であり、審議のやり直しを強く要求する。と述べたのであります。  また、去る十二月八日、東京で開催された公聴会において、沖繩出身の川崎市立工業高校教諭渡久山長輝氏は、みずからの体験を通して、沖繩は約三百六十年前薩摩による第一次琉球処分の昔から、不当な差別を押しつけられたこと、さらに第二次世界大戦後二十六年間、異民族支配のもとで差別と軍事支配にいかにあえいできたかということを涙ながらに訴えられ、米軍の駐留は極東の平和と安全のためというが、沖繩県民は核や毒ガス、B52の恐怖のもと、一日たりとも平和と安全な生活というものはなかったと、切々と述べられたのであります。私は、沖繩県民の心をさかなでし、踏みにじり、あえて強行採決という名の暴挙を行なった政府・自民党の責任を強く追及し、猛省を促す次第であります。  さて、暴挙の行なわれたその瞬間、屋良朝苗琉球政府主席は、四法案中心とする沖繩協定関連国内法案に対する建議書を持って羽田に到着をされました。屋良建議書は、冒頭、顧みますと、沖繩はその長い歴史の上でさまざまな運命をたどってきた。戦前の平和な島沖繩は、その地理的僻地性と、加うるに沖繩に対する本土側の理解の欠如が重なり、終始政治的経済的に不利不運なもとでの生活を余儀なくされた。その上、戦争による過酷な犠牲、十数万人のとうとい人命の損失、貴重な文化遺産の壊滅、続く二十六年間の苦渋に満ちた試練、思えば長い苦しいイバラの道程であった。これらは、まさに国民的十字架を一身ににない、国の敗戦の悲劇を象徴する姿ではないかと述べ、沖繩県民は、過去の苦難に満ちた歴史と貴重な体験から、復帰にあたっては、何よりも県民福祉を最優先に考える基本原則に立って、(1)地方自治の確立、(2)反戦平和の理念、(3)基本的人権の確立、(4)県民本位の経済開発を骨組みとする新生沖繩の像を描いている、と指摘し、具体的に、一、自衛隊の沖繩配備には反対である。二、軍・公用地使用法案は反対であり、再考を求める。三、防衛庁特別措置法案は不満であり、容認できない。四、開発三法案は自治権尊重に対する配慮が欠如している。五、裁判権の効力継承は問題がある。少なくとも刑事裁判については奄美方式をとるべきである。六、対米請求権放棄については、政府がその責任をとるべきであり、対米請求権処理法を制定せよ。七、教育委員会制度は、本土も沖繩と同様公選制を採用すべきである等々の具体的諸要求を列記し、私は、沖繩問題の重大な段階において、将来の歴史に悔いを残さぬため、また歴史の証言者として、沖繩県民の要求と考え方を集約し、県民の代表としてここにあえて建議する。政府並びに国会は、沖繩県民の最終的な建議に謙虚に耳を傾けられることを希望する。と結んでおられるのであります。まさに、屋良建議書は、沖繩の心の集約であり、歴史的証言の書というべきでありましよう  しかるに佐藤総理は、心情的には理解できるが、考え方には大きな隔たりがあるとの冷酷な態度に終始していることは、まことに遺憾であります。また、本委員会に付託された四法案は、屋良建議書の要求を全く無視する内容に満ち満ちているといわなければなりません。  さて、沖繩協定並びに関連国内法案について、本委員会の審議を通じてわが党が重大な疑問点を指摘したにかかわらず、政府側の不誠意きわまる答弁のため、依然解明されない問題点並びに絶対に容認し承服できぬ点を以下申し述べます。  第一に、基本的重要事項について列挙いたします。  一、核問題について。沖繩の辺野古(A表十番)及び知花(A表二十二番)弾薬庫に核兵器が貯蔵されているという疑問、及び本土の岩国等の米軍基地に核兵器が貯蔵され、核部隊が存在するという疑問が全く解明されていない。  二、毒ガス問題について。九月九日に完全に撤去されたとの発表にかかわら、ず、十月下旬より十一月上旬にかけて毒ガスの移動が行なわれ、レッド・ハット・エリアの標識のある貯蔵庫が知花に新設された疑問が解明されていない。  三、基地の密度、機能、特殊部隊について。沖繩の基地の密度、機能は本土と質的に異なっている。各種の特殊部隊が残されることにより、事前協議が骨抜きになることは明白である。このことは、日米安保条約の変質であるというべきである。  四、自衛隊配備について。自衛隊配備を取りきめた久保・カーチス協定の性格、自衛隊配備の目的、任務等が、米中接近、中国の国連加盟など、極東情勢の緊張緩和と関連して何ら明らかにされていない。また、自衛隊配備に対しては、悲惨な戦争体験を持つ沖繩県民の大多数が強い反対の意思を示している。  五、軍用地の範囲について。明らかに米軍用地でない瀬嵩第一(A表八番)、川田(A表三番)、安波(A表二番)訓練場などを基地リストA表に載せていることの誤りが、審議の結果確認された。また、国連軍の声の放送が六月三十日廃止されたのに、放送施設のある平良川通信所(A表三十四番)がA表に載せられてあるなど、軍用地の範囲について疑問点が数多くある。  六、日本政府の財政支出について。米国資産の引き継ぎ等のため、日本政府が米国政府に対して支払う三億二千万ドルの内訳、積算の根拠が明らかにされぬことは国会軽視であり、全く不当である。特に核の撤去費といわれる七千万ドルの内訳が全く明らかにされず、補償漏れに対して米側が支払うべき四百万ドルをこの中に水増ししている疑いは確実である。さらに、福地ダムを含む琉球水道公社の資産継承では、政府は、百六十八万ドルをめぐり無能をさらけ出し、わが党の追及によって福地ダム等に関する口上書の交換を行なわざるを得なかった。  七、対米請求権について。沖繩県民の生命、財産等の侵害に対して、その実態が明らかにされぬまま対米請求権を放棄し、国内的にどう処置しようとするかも具体的にされていない。  第二に、特別措置法案並びに改廃法案の問題点を列挙いたします。  一、VOA放送について。米国国防総省の秘密報告書によれば、CIAが関係しているところの謀略放送であるVOA放送を五年間も存続させることは全く違法、不当である。また放送内容を事前にチェックする保証さえない。  二、極東放送について。米軍の第七心理作戦部隊と深い関係のある極東放送を外国企業というのは問題であり、しかも愛知書簡によってその継続を認めていることは国会軽視である。  三、裁判の引き継ぎについて。戦後二十六年間、不当な米軍統治のもとで行なわれてきた裁判の効力をそのまま継承することは、主権国家として問題である。特に刑事裁判については、少なくとも奄美方式をとるべきである。  四、水道施設の引き継ぎについて。米国資産の引き継ぎのうち、水道施設については、返還されるべき対象が明確にされていない。また復帰後も米軍が水源を広範に所有することも不当である。  五、航空問題について。復帰後も航空管制が米軍によって行なわれることは不当である。台湾航空の乗り入れについても疑問が残る。  六、社会保障について。本土より著しく立ちおくれている医療、年金、社会福祉問題等について、琉球政府の要請が全く盛り込まれておらず、きわめて不備なものといわなければならない。  七、労働問題について。復帰後の雇用安定対策について、たばこ産業、塩製造業、通関業者等転廃業に伴う対策、軍関係労働者対策、いずれもきわめて不備である。公務員関係労働者の労働基本権が全く無視されており、不当である。  八、教育問題について。沖繩県民が異民族支配のもとで苦労し、努力して育ててきた教育の自主、独立、民主的教育制度を否定することが、将来いかに大きな禍根を残すかは言をまたない。沖繩のすぐれた教育制度に本土の制度を改めるべきである。  九、治安及び警察について。沖繩に対する警察の配置は、本土よりきわめて密度が高く、自衛隊にも治安、警備の任務が与えられるおそれがあるなど、米軍基地を警察と自衛隊で守るという疑問が濃厚である。  十、外国企業の扱いについて。外資企業の現地契約等の復帰後の扱いについて疑問点が残されている。  十一、道路交通について。道交法の適用について、これに伴う交通標識並びにバス、タクシー等の整備に必要な財政措置が不明確である。  十二、税、財政、通貨問題について。琉球政府の借り入れ金の処置、沖繩県及び沖繩の市町村の自主財源の確保等の問題は、将来の沖繩の自治に重要な影響を及ぼすにかかわらず不明確である。また税制、通貨問題は、県民生活にとって重要な問題である。しかるに、不安を残さぬ具体的措置がきわめて不十分である。  十三、特別措置法案第百五十六条の政令委任は、立法権への侵害であり、国会軽視のそしりを免れず、きわめて不当である。  第三に、沖繩振興法案の問題点は、次のとおりであります。  一、振興開発計画の決定について。計画の原案作成権は沖繩県知事にあるものの、最終決定権は総理大臣にゆだねている。しかも計画決定に重大な影響を与える審議会の構成は、過半数が、原案によれば政府機関の職員であり、沖繩県民不在の計画作成となるおそれがある。したがって、決定は国会の議決によるか、知事の同意権を規定すべきである。また審議会の構成は、自民党の一部修正のような中途はんぱなものでなしに、大幅に改革の必要がある。  二、自治権の侵害について。沖繩開発庁設置法案による沖繩の総合事務局の設置、沖繩振興法案の道路、河川、港湾等の特例によって、沖繩県の自治権は大幅に侵害されるおそれがあることは明白である。  三、公害について。政府の答弁並びに経営者団体の意向は、アルミ等の公害企業の沖繩進出を企図していることは明白である。沖繩振興の美名のもと、沖繩を公害の島とすることは断じて容認できない。  四、自民党より沖繩振興法案の一部修正案が提案されたが、以上の不備を解消することはできない。  第四に、違憲のかたまりといわれる軍・公用地使用法案について、わが党の見解を明らかにいたします。  一、この法案は、復帰の日に米軍が使用している土地及び工作物を、その所有者に返すことなく、五年間まで引き続き米軍基地、自衛隊基地として使用できるとするもので、特に沖繩県民としては、米軍の暴力による軍事占領の状況をそのまま祖国の法律として追認し、適正化するごときことはとうてい容認し得ないことは当然である。悲惨な戦争体験から米軍基地の撤去、縮小を要求し、自衛隊配備に反対している多くの沖繩県民の声を踏みにじるものである。  二、旧土地収用法(明治三十三年)では、収用の第一は、国防、軍事であったが、昭和二十六年の全面改正の土地収用法では、憲法違反のものを除去し、国防、軍事は土地収用の対象である公共事業ではなくなった。昭和二十八年、内閣法制局は、当時の保安隊用地を国の事業として収用できる旨のこじつけ解釈を行なったが、今日までただの一度も自衛隊用地に土地収用法が適用されたことはない。また昭和三十九年、土地収用法一部改正法案の審議に際し、当時の河野建設大臣は、「軍施設を「公共の」の範囲に入れるということは適当でない、これはもう社会通念じゃなかろうかと私は思います。」と明確に答弁をしている。すなわち、平時における自衛隊のための土地等強制収用、使用の根拠法は全くないのである。ところがこの法律では、純粋の公共用地である道路、水道等に軍事基地を抱き合わせるため「公用地等」というあいまいな言い方をし、使用する主体が国、自治体等なら使用の目的を問わないこととしていることは、憲法第二十九条財産権、第三項の「公共のため」という限定を大きく逸脱し、違憲の法律といわなければならない。  三、米軍用地の使用については、日米安保条約に基づく土地等の使用等に関する特別措置法(昭和二十七年)、以下特措法という——があり、沖繩の場合、政府が土地使用を必要としても、これで足りるはずである。自衛隊用地については、当然この法律の対象とはならず、また、自衛隊は現に沖繩に配備されているのではなく、新規使用であって、継続使用、暫定使用の概念に全く当てはまるものではない。  四、暫定使用期間を五年以内としていることは、地位協定による特借法でも六月以内であり、暫定という名に値しない。五年に近い一方的強制使用は著しい財産権の侵害である。  五、沖繩の本土復帰過程一つ重要な点は、沖繩の地籍が不明確なままに放置されていることである。特に旧日本軍による接収、戦禍、さらに米軍による占領等により、いまだ未解決用地が多数存在していることからしても、この際沖繩全域にわたる地籍調査を実施し、土地の所有関係を明確化することこそ先決課題である。  六、土地収用は、たとえ公共のためであっても、財産権を侵すことになるので、慎重な手続法律要求し、地位協定の特措法による継続一時使用の場合にも、「条約効力発生の日から九十日以内に、使用しようとする土地等の所在、種類、数量及び使用期間を土地等の所有者及び関係人に通知」という手続規定しているが、軍・公用地使用法案では、施行前、すなわち復帰前に当該土地について告示し、施行後、すなわち復帰後、遅滞なく土地の区域と使用方法を所有者、関係人に通知するだけの手続暫定使用できることとしている。しかし、復帰前の沖繩には官報の告示は有効な手続とは絶対に言えないのである。これは、法定の手続の保障に関する憲法第三十一条違反であることは明白である。  七、道路、水道、電気事業等純粋の公共用地の使用について、全く異質の軍用地と抱き合わせる立法措置を講ずることは、法の体系を乱すそしりを免れない。公共用地の強制使用については、必要に応じ、本土に現にある土地収用法及び公共用地の取得に関する特別措置法を適用すればよいのであり、協定に基づき、米軍に継続的に基地を提供するための、前記のような形式も手続も全く無視した強制使用措置をそのまま公共用地についても適用していることは、不当きわまりない。  八、この法律は、以上明かなように、本土で現に適用されている土地収用、使用に関する諸法規よりもはるかに沖繩県民にとって不利な内容法案である。これは明らかに憲法第十四条の法のもとにおける平等の規定に反するものであり、沖繩をあたたかく迎えるどころか、本土並みに扱うことでもなく、沖繩県民に差別を強制するものとして絶対に許しがたい。  九、ところで、政府は、この法律は憲法第九十五条の住民投票に付する要はないとしているが、沖繩の住民を本土よりも冷たく遇するこの法案を制定しようとすれば、この法案こそ沖繩の住民の納得を得る住民投票の洗礼は最低限必要である。  また、軍用地面積は沖繩全面積の十二・五%、沖繩本島では二二%以上を占め、那覇市は三分の一が軍用地、コザ市は六七%、読谷村や嘉手納村などは八〇%から八八%が軍用地といった実態であり、これらの軍用地をそのまま存続させるためのこの法律が、沖繩県及び県内市町村の経済開発や都市計画等を阻害することは火を見るよりも明らかである。沖繩地方公共団体の組織とはいわないまでも、運営を根本的に破壊する性格のものであり、この法律を憲法第九十五条の対象としないならば、第九十五条は全く死文と化したというべきであろう。  十、この法案は、以上述べたように、無理を承知のなりふりかまわぬ悪法の標本であり、内容においても、憲法第九条をはじめ、第十四条、第二十九条、第三十一条、第三十二条、第九十五条等に違反する、まさに違憲のかたまりといわなければならない。  第五に、人事院地方事務所設置に関し承認を求めるの件は、沖繩協定並びに関係国内法の一環をなすものであります。  以上、本委員会に付託された自民党提出の修正案を含めた四法案並びに一承認案件について、絶対反対である旨のわが党の主張とその根拠を述べたところであります。  歴史的な第六十七国会において、衆議院は、さきに沖繩協定の審議に際し、議会制民主主義を踏みにじる暴挙を行ない、沖繩県民の心を深く傷つけるという罪悪を犯したのであります。特別措置法案改廃法案沖繩振興法案、軍・公用地使用法案の審議にあたり、屋良建議書を無視し、沖繩現地公聴会、本土公聴会における切々たる訴えにも一切耳をかさず、特に違憲のかたまりである軍・公用地使用法案を、もし与党自民党が三百議席を頼んで可決することありとするならば、衆議院は、さきの罪悪に加えて、立法府の重要な任務を放てきしたとの罪過を加えたとの批判を免れぬでありましょう。  かつて憲政の神様といわれた尾崎先生は、道理を尽くした論議の結果によらず、ひたすら採決に走ることになれば、もはやそれは議事堂にあらずして採決堂というべきであると喝破されました。いまや国会議事堂は、国会採決堂に堕しつつあるのであります。また憲法第九十九条は、国務大臣、国会議員に憲法擁護の義務を課しています。衆議院みずからが憲法違反を犯すという、きわめて重大な事態になるであろうことをも指摘しなければなりません。  私は、沖繩県民とともに、怒りを込めて、佐藤総理はじめ政府・与党の責任を追及し、その猛省を促して反対討論を終わります。(拍手)
  644. 床次徳二

    床次委員長 湊徹郎君。
  645. 湊徹郎

    ○湊委員 私は自由民主党を代表して、ただいま議題になっております政府提案にかかる沖繩復帰に伴う関係国内諸法案につきまして、賛成の討論を行なわんとするものであります。  沖繩の祖国復帰という一億国民の多年にわたる宿願の達成を目前に控えた今日、私は、返還協定とあわせて、関係国内諸法案のすみやかな成立をはかり、まず第一に、施政権の返還と祖国復帰を一日も早く、しかも円滑に実現することと、第二に、沖繩県の将来にわたる発展をはかるための基礎条件を整え、積極的に振興開発を促進する体制を確立することが、沖繩百万同胞の祖国に対する期待にこたえる道であり、またわれわれ本土の国民の最大の責務であると信ずるものであります。  沖繩は、過ぐる第二次世界大戦において、まさに壊滅的ともいえる大きな打撃を受け、しかもその後引き続き二十六年余の長きにわたり、異国の施政権下に置かれ、異民族支配のもとで、沖繩同胞は、われわれの想像を絶する苦難の道を歩みつつ、祖国復帰の一日も早からんことを願って今日に至ったのであります。  このような事情を考えるとき、われわれは、何よりもまず、沖繩百万同胞の心を心とし、その生活の安定と福祉の向上をはかることを第一義として、いやしくも復帰に伴う不安や心配をなくすよう、各般にわたるきめのこまかい諸施策を樹立することが肝要であると思うのであります。  今回、政府から提案された復帰特別措置法案関係法令改廃法案沖繩振興開発法案及び人事院地方の事務所の設置承認案件並びにただいま提出されました沖繩振興開発法案に対する修正案について見ますと、まず第一に、沖繩は、長らく米国の施政権下にあったため、政治、経済、社会、教育、文化、生活等、万般の事柄が、本土とは全く異なる法令や諸制度のもとで運用され、営まれてまいりました。  もちろん、その間の断層や格差を埋めるため、ここ数年来、実質的に本土との一体化をはかり、復帰準備を進めるための諸措置が逐次とられてきたわけでありますが、隔絶されてきた期間の長さから見て、とうてい十分とは申せません。  いま、一挙に、沖繩をわが国の法体系や諸制度のもとに組み入れ、復帰措置の円滑な移行をはかるためには、極力激変を避け、既得の権益や既存の秩序をできるだけ維持し得るよう、広範な分野にわたり、経過措置や暫定措置あるいは特例措置を講ずることが必要になるわけであります。  第二に、沖繩には、その置かれた立場から、歴史的、社会的、経済的に特殊な事情があり、また自然的、地理的に見て特殊な条件を持っております。それを踏まえて、沖繩の産業や生活の基盤を整え、特殊な事情や条件に即した社会経済の振興開発をはかるためには、本土における各種の地域立法や開発立法を個別に援用するのでなく、それらの手法を総合的に取り入れた特別の振興開発方策を講ずる必要があります。  知事に提案権を認める沖繩振興開発計画、特例的な高率の補助負担制度、工業開発地区や自由貿易地域の制度等は、いずれもこのための具体的措置であります。  またその反面、各種制度の変更、米軍の縮小撤退等に伴う避けがたい事態、すなわち、軍離職者問題、転廃業問題等に対処し、雇用促進や職業の安定をはかるための万全の措置を講ずる必要もあります。  以上、三法案及び承認案件は、いま申し述べたごとく、いずれも、当面する沖繩の円滑な復帰と将来の明るい豊かな県づくりのために必要欠くべからざる前提条件となるものであり、まことに時宜を得た適切な措置であると確信するものであります。何とぞ委員各位の積極的な御賛同を得たいと存じます。  次に、公用地等暫定使用法案について申し上げます。  本法案につきましては、先般来、当委員会においてさまざまな見地から賛否の意見が述べられ、活発な論議が行なわれてまいりましたが、私はこの際、簡潔に賛成の理由を申し上げたいと存じます。  この法案は、過去四分の一世紀の間、異民族の支配のもとにあった沖繩が、祖国に復帰するにあたって、万全の受け入れ体制を整えるために必要な関係国内法案の一つであります。暫定使用の対象となる「土地又は工作物」は、いずれもその性質上、復帰と同時に継続使用を開始しなければならないものであることは明らかであります。長年、異種異質な制度、体制下にあったものを、復帰の時点で、形式的にはまさに瞬間タッチ式に移しかえるわけでありますから、何らかの措置をとらなければ、実態との間に無理や摩擦や空白が生ずることは理の当然であり、政府としてはその責任上、万が一の場合の歯どめとして、これら施設に必要な関係土地等を経過的、暫定的に使用できるような立法措置を講ずることは、やむを得ない最低限度の措置であると思うのであります。  しかしながら、長年労苦に耐え抜いてきた沖繩県民の心情を察し、土地の所有者等が、ばく大な犠牲を払って広大な軍用地のためにその所有地を提供してきた経緯を考えるとき、本法案の実施に当たっては、幾ら細心の注意を払っても払い過ぎることはないと思います。したがって、いささかも強権的な印象を与えることのないよう、一適正な借料の決定、二借り上げ契約を結ぶための協力要請、三可能な限りの補償、救済措置、四基地周辺施設の整備、五暫定使用期間の短縮努力、六告示内容の周知方法、七自衛隊配備についての慎重な配慮、八米軍基地の整理、縮小努力等について、十分配意することが必要であると考えます。  私は、本法案沖繩復帰に伴い、必要やむを得ない措置であるという観点に立って、以上の要望を付して賛成するものであります。  最後に、本委員会の審議について申し上げます。  われわれは、本委員会に付託された案件の本質と性格にかんがみ、あらゆる角度から問題の所在を解明し、広範な法案内容をきめこまかく明らかにするため、各党の理解と協力を得て、審議を尽くすことを基本としてまいりました。私は、日本の戦後史に一時期を画する沖繩の祖国復帰というまさに歴史的な大偉業の成否をきめるこの沖繩国会において、関係国内法案の審議が今回のような形で進められ、民主主義のルールのもと、堂々の論議の末、採決が行なわれることに大きな喜びを感ずるものであります。(拍手)  願わくは、本委員会審議の実績が、今後の国会運営の上でよき慣行として定着することを衷心から念じつつ、賛成の討論を終わります。(拍手)
  646. 床次徳二

    床次委員長 桑名義治君。
  647. 桑名義治

    ○桑名委員 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま議題となりました沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律案沖繩振興開発特別措置法案沖繩における公用地等暫定使用に関する法律案、ただいま自民党の提出しました沖繩振興開発特別措置法案に対する修正案並びに国家公務員法第十三条第五項および地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院地方事務所設置に関し承認を求めるの件を一括し、反対の討論を行なうものであります。  以下、反対の理由を申し上げます。  その第一点は、総論的な観点から述べますが、この一連の法案は、さきに自民党が議会制民主主義を踏みにじる多数の横暴によって強行採決を行なった沖繩返還協定と密接不可分のものであります。  返還協定がいかに国民の期待を裏切り、政府みずからが言う核抜き本土並みが欺瞞に満ちたものであるかは、去る十一月二十四日の本会議の席上、わが党代表の協定承認反対討論で詳細に述べたとおりでありますので、再びことばを重ねません。しかし、その協定のよって及ぼす影響が具体的に悪い面をさらけ出し、沖繩県民はもとより、国民に対し、国家権力による圧迫を加えようとしているのがこれらの法案であります。  本委員会の審議を通じ一そう明瞭になったことは、日米安保条約から一九六九年の佐藤・ニクソン共同声明、沖繩返還協定、さらに久保・カーチス取りきめと、この一連の日米軍事複合体制が至上方針となっていることであります。したがって、この至上方針によるがゆえに、公用地等暫定使用法案に見られる立法構造の混乱や、自民党の多数を頼んでの憲法に対する独断的な解釈、すなわち違憲の疑義をあえて隠蔽し、また復帰に伴う特別措置法案におけるVOA放送、極東放送の現行法無視、裁判権、なかんずく刑事判決確定の継承、請求権処理の不明確等、さらに振興開発特別措置法の沖繩県自治に対するあいまいさを暴露しているのであります。  その結果、これらの法案は、沖繩県民の基本的人権をじゅうりんし、極論すれば、施政権返還の代償に米大統領行政命令による、過酷な占領軍政の法体系をわが国の国内法に組み入れているとさえいうべきものであります。したがって、わが党は、憲法擁護の立場から、平和と沖繩県民の人権を守り、復帰後、沖繩がわが国の地方公共団体として円滑な運営と地域社会の発展の上から、重大な欠陥と不当性を持つこれらの法案に断固反対するものであります。  第二点として、各論的に申し上げますが、沖繩返還の態様のかなめをなすものは、言うまでもなく公用地等暫定使用法案であります。これにつきましては、先ほど社会党代表委員の討論でも述べられたとおりであります。さきに発表いたしました同法案に対する社公民三党の見解に詳細に述べているとおりであります。すなわち、憲法九条をはじめ、第十四条、第二十九条、第三十一条、第三十二条、第九十五条等多くの違憲性を持ち、公聴会における協定賛成論者さえこの法案に対する疑義を投げかけた結果からも、また総理みずからが満足していないとするこの法案をなぜこれを撤回し、少なくとも公共施設用地、自衛隊関係用地、駐留、軍事用地に分割し、現行憲法、現行法律に基づき、本土における用地取得の手法に立ち戻る努力を示さないのか。政府みずからが最も厳粛に憲法を尊重すべきであることはいうまでもありません。  この法案の審議の過程を通じて見られるものは、米軍基地と異質の自衛隊用地を複合し、加えて公共施設用地をも抱き合わせたことは、沖繩の新しい軍事的態様、すなわち、日米軍事複合体制による新しいかなめ石としての沖繩建設のためにする危険な立法措置にほかならないのであります。  このことは、日米安保条約第三条の自衛力の維持発展が憲法上の規定に従うことを条件としていることからも、私権を最大限度規制する土地収用法、あるいは日米安保条約に基づく地位協定の実施に伴う米軍基地の土地使用特別措置法から見ても、不合理きわまりない法案であります。  またかりに、政府において、わが国民の人権を尊重し、同時に、住民と地域をもって構成される地方公共団体の自治権を尊重する良心が政府にあるならば、米施政権下にある沖繩が、日本人の住む日本の領土である限り、この法律土地所有者個人を対象とするも、土地使用が規模と質において現在と何ら変わらない態様から、沖繩県の発展のための権能行使と運営実態に、本土と比較できない制約を受けることから、さらに当然憲法九十五条の本旨から見て、同条に該当すると解すべきが憲法を尊重する立場であり、住民投票への手続が絶対欠かせないものであることは明らかであります。これが当然、地方自治の本旨を尊重する政府のとるべき姿勢であるというべきであります。  復帰に伴う特別措置法案についても、政府の姿勢は同様であります。  沖繩復帰に伴い、本土法制度の円滑な実施をはかることを目的とするこの法案は、あくまでも沖繩県民の要望を尊重し、米施政権下で抑圧された県民の権利を復活し、おくれた県民福祉をすみやかに充実向上することにありますが、その目的と全く異質の、しかも、米海外広報局が共産圏諸国に対して反共宣伝放送活動を行なっているVOAの存続を組み入れ、また、国内法を無視して極東放送の存続を認めていることは、返還協定に追随して現行法を無視し、法案の目的をみずから偽るものといわなければなりません。  また、裁判の効力、なかんずく刑事裁判の判決確定をも承継し、刑を執行することは、国家主権の直接の発効をみずから放棄することにほかならないのであります。  その他、米施政権下で沖繩県民が築き上げた沖繩県民の民主的な教育行政制度の歴史と成果を弊履のごとく捨て去る等、政府の対米請求権放棄に伴うわが国政府の県民対米請求権の処理をなすべきことの法制化の欠如等々から、わが党は、この法案を断じて容認できないのであります。  振興開発特別措置法案については、わが党は、社会、民社両党とともに、沖繩平和開発基本法案提出し、その基本的姿勢を明らかにしております。  軍事基地撤去に対する基本姿勢なくして沖繩振興開発はなく、法案審議を通じて、振興開発のプロセスも明示し得なかったことは、政府自身に自主的な振興開発構想推進の姿勢の欠如をあらわすものにほかなりません。  同時に、審議会の構成内容、振興開発計画の決定に沖繩県知事の同意も得ない本法案には、地方自治を尊重する姿勢が発見できないのであります。  第三点として、本委員会の審議を通じて、米国資産の引き継ぎ支払い金は、資産原資の本質論からわれわれは容認できないものでありますが、さらにその金額の内訳のあいまいさにおいても、とうてい容認はできないのであります。  わけて重大な核撤去の費用については、いまだにその内訳の概貌すら明らかにせず、また、撤去確認方法を何ら明らかにしていないことは、七千万ドルを支払う事実をもって核の存在を国民に公知せしめるのみで、核隠しの疑惑を強く残すのみであります。米軍の核戦略による日米安保体制のもとで、核隠し、あるいは毒ガスに対する疑惑は本土の米軍基地にも及び、わが党の調査のみでも横田、厚木、佐世保、秋月、川上の各基地にわたっておりますが、政府は何ら具体的に打つ手を明示しておりません。これらの問題は、沖繩返還の態様の基礎となる問題であり、このような観点からも、返還協定と表裏一体をなす関係法案に強く反対するものであります。  以上、反対理由を述べて、私は怒りを込めて反対討論を終わります。(拍手)
  648. 床次徳二

    床次委員長 門司亮君。
  649. 門司亮

    ○門司委員 私は、ただいま上程されております沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律案沖繩振興開発特別措置法案沖繩における公用地等暫定使用に関する法律案並びに国家公務員法第十三条第五項および地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院地方事務所設置に関し承認を求めるの件、四つの法案一つ承認案件に対しまして、反対の意思を、ほんとうに怒りを込めて私は申し上げたいのでございます。  同時に、沖繩復帰に伴う特別措置法の内容等については、すでにいろいろ社会党の諸君、公明党の諸君等からも申し上げられておりまするし、私自身も本会議その他でかなり申し上げておりますので、この際、詳細にわたる議論はいたさないでよろしいかとは存じますが、ただ私はここで、この法案の審議にあたりまして最も遺憾に考えておりますことは、総理も閣僚も、沖繩の心を心としてということをしばしば言われております。しかし、ほんとうに沖繩の百万住民の声がどれだけ審議に反映をしたかということについては、私は非常に大きな疑問がある。ことに、いまかけられておりまする四つの法案一つ承認案件は、協定に基づく国内法の、いわば協定に付随した処置であります。したがって、私は沖繩返還協定に対する審議の過程において、沖繩の諸君の意見というものが十分組み入れられて、あの協定が審議さるべきであったと考えております。ところが、屋良主席がせっかく琉球政府の意見として、いうならば沖繩県民の総体の意見として復帰措置に関する建議書を持ってまいられましたが、これが全く協特の審議の過程においては何ら日の目を見るどころか、ほとんど全部と言っていいほど取り上げられる機会もなかったということである。私は、このことは本法案の審議と、さらに協定の決定を見るまでの間に、沖繩住民のほんとうな心からなるこの建議書が、協定の審議の際に何ら顧みられなかったということをきわめて残念に考えるものでございます。こういう状態でこの四法案を審議する、あるいは協定を自然成立させるという政府の腹ではございましょうが、一体これでよろしいかということである。こういう事件は、おそらく将来もあり得てはならないことである。また、過去にもなかったことである。総理の言われる、ほんとうに世紀の一つの大きな事業であることに間違いはございません。その際に、その最も大きな対象になっておりまする沖繩住民の意見、この建議書というものが、協定決定の中にはとんど組み入れられてないということについてはきわめて残念に考えております。したがって、少々時間は長くなるかもしれませんが、私は、全文を会議録に登載しようという意思はございませんが、少なくとも屋良主席が百万島民の意思として携えてまいりましたこの建議書の、「はじめに」という総論だけはぜひ会議録にとどめておきたい。そうすることによって、沖繩住民の真意が那辺にあったかということを今後のいろいろな問題のときの一つの大きな参考にしていただきたいということと、同時に、このことは、政府、総理をはじめとして、閣僚の各位が将来の沖繩に対します態度に対して謙虚にこの気持ちをひとつ対処していただきたい、というよりもこれを体していただきたいということを私は強く要求いたしまして、ここに屋良主席が携えてまいりました沖繩百万の島民の切実なる願いを各条文ごとに、案件ごとにこう書いてあるのでありますが、これを一々登載することは困難だと思いますので、そのアウトラインだけをここに読み上げて、会議録にとどめておきたいと存ずるのでございます。   「沖繩の祖国復帰はいよいよ目前に迫りました。その復帰への過程も、具体的には佐藤・ニクソン共同声明に始まり、返還協定調印を経て、今やその承認と関係法案の制定のため開かれている第六七臨時国会、いわゆる沖繩国会の山場を迎えております。この国会は沖繩県房の命運を決定し、ひいてはわが国の将来を方向づけようとする重大な意義をもち、すでに国会においてはこの問題についてはげしい論戦が展開されております。   あの悲惨な戦争の結果、自らの意志に反し、本土から行政的に分離されながらも、一途に本土への復帰を求め続けてきた沖繩百万県民は、この国会の成り行きを重大な関心をもって見守っております。顧みますと沖繩はその長い歴史の上でさまざまの運命を辿ってきました。戦前の平和の島沖繩は、その地理的へき地性とそれに加うるに沖繩に対する国民的な正しい理解の欠如等が重なり、終始政治的にも経済的にも恵まれない不利不運な下での生活を余儀なくされてきました。その上に戦争による苛酷の犠牲、十数万の尊い人命の損失、貴重なる文化遺産の壊滅、続く二十六年の苦渋に充ちた試練、思えば長い苦しい茨の道程でありました。これはまさに国民的十字架を一身にになって、国の敗戦の悲劇を象徴する姿ともいえましょう。その間大小さまざまの被害、公害や数限りのない痛ましい悲劇や事故に見舞われつつそしてあれにもこれにも消え去ることのできない多くの禍恨を残したまま復帰の歴史的転換期に突入しているのであります。   この重大な時機にあたり、私は復帰の主人公たる沖繩百万県民を代表し、本土政府ならびに国会に対し、県民の卒直な意思をつたえ、県民の心底から志向する復帰の実現を期しての県民の訴えをいたします。もちろん私はここまでにいたる佐藤総理はじめ関係首脳の熱意とご努力はこれを多とし、深甚なる敬意を表するものであります。   さて、アメリカは戦後二六年もの長い間沖繩に施政権を行使してきました。その間にアメリカ沖繩に極東の自由諸国の防衛という美名の下に、排他的かつ恣意的に膨大な基地を建設してきました。基地の中に沖繩があるという表現が実感であります。百万の県民は小さい島で、基地や核兵器や毒ガス兵器に囲まれて生活してきました。それのみでなく、異民族による軍事優先政策の下で、政治的諸権利がいちじるしく制限され、基本的人権すら侵害されてきたことは枚挙にいとまありません。県民が復帰を願った心情には、結局は国の平和憲法の下で基本的人権の保障を願望していたからに外なりません。経済面から見ても、平和経済の発展は大幅に立ちおくれ、沖繩の県昂所得も本土の約六割であります。その他、このように基地あるがゆえに起るさまざまの被害公害や、とり返しのつかない多くけ悲劇等を経験している県民は、復帰に当っては、やはり従来通りの基地の島としてではなく、基地のない平和の島としての復帰を強く望んでおります。   また、アメリカが施政権を行使したことによってつくり出した基地は、それを生み出した施政権が返還されるときには、完全でないまでもある程度の整理なり縮小なりの処理をして返すべきではないかと思います。   そのような観点から復帰を考えたとき、このたびの返還協定は基地を固定化するものであり、県民の意志が十分に取り入れられていないとして、大半の県民は協定に不満を表明しております。まず基地の機能についてみるに、段階的に解消を求める声と全面撤去を主張する声は基地反対の世論と見てよく、これら二つを合せるとおそらく八〇%以上の高率となります。   次に自衛隊の沖繩配備については、絶対多数が反対を表明しております。自衛隊の配備反対と言う世論は、やはり前述のように基地の島としての復帰を望まず、あくまでも基地のない平和の島としての復帰を強く望んでいることを示すものであります。   去る大戦において悲惨な目にあった県民は、世界の絶対平和を希求し、戦争につながる一切のものを否定しております。そのような県民感情からすると、基地に対する強い反対があることは極めて当然であります。しかるに、沖繩復帰は基地の現状を堅持し、さらに、自衛隊の配備が前提となっているとのことであります。これは県民意志と大きくくい違い、国益の名においてしわ寄せされる沖繩基地の実態であります。   さて、極東の情勢は近来非常な変化を来たしつつあります。世界の歴史の一大転換期を迎えていると言えましょう。近隣の超大国中華人民共和国が国連に加盟することになりました。アメリカと中国との接近も伝えられております。わが国も中国との国交樹立の声が高まりつつあります。好むと好まぬにかかわらず世界の歴史はその方向に大きく波打って動きつつあります。   このような情勢の中で沖繩返還は実現されようとしているのであります。したがって、この返還は大きく胎動しつつあるアジア、否、世界史の潮流にブレーキになるような形のものであってはならないと思います。そのためには、沖繩基地の態様や自衛隊の配備については慎重再考の要があります。   次に、核抜き本土並み返還についてであります。この問題については度重なる国会の場で非常に頻繁に論議されておりますが、それにもかかわらず、県民の大半が、これを素直には納得せず、疑惑と不安をもっております。核抜きについて最近米国首脳が復帰時には核兵器は撤去されていると証言しております。ところが、私どもはかつて毒ガスが撤去された経緯を知っております。   毒ガスでさえ、撤去されると公表されてから、二ケ年以上も時日を要しております。毒ガスよりさらに難物と推定される未知の核兵器が現存するとすれば、果して後いくばくもない復帰時点までに撤去され得るでありましょうか。   疑惑と不安の解消は困難であるが、実際撤去されるとして、その事実はいかにして検証するか依然として不明のまま問題は残ります。   さらにまた、核基地が撤去されたとしても、返還後も沖繩における米軍基地の規模、機能、密度は本土とはとうてい比較にならないと言うことであります。   復帰後も現在の想定では沖繩における米軍基地密度は本土の基地密度の一五〇倍以上に依ります。なるほど、日米安保条約とそれに伴う地位協定沖繩にも適用されるとは言え、より重要なことは、そうした形式の問題より、実質的な基地の内容であります。そうすると基地の整理縮小かあるいはその今後の態様の展望がはっきり示されない限りは本土並基地と言っても説得力をもち得るものではありません。前述の通り県民の絶対多数は基地に反対していることによってもそのことは明らかであります。   次に安保と沖繩基地についての世論では安保が沖繩の安全にとって役立つと言うより、危険だとする評価が圧倒的に高いのであります。この点についても、安保の堅持を前提とする復帰構想と多数の県民意志とはかみ合っておりません。県民はもともと基地に反対しております。   ところで安保は沖繩基地を「要石」として必要とするということであります。反対している基地を必要とする安保には必然的に反対せざるを得ないのであります。   次に、基地維持のために行なわれんとする公用地の強制収用五ケ年間の期間にいたっては、これは県民の立場からは承服できるものではありません。沖繩だけに本土と異る特別立法をして、県民の意志に反して五ケ年という長期にわたる土地の収用を強行する姿勢は、県民にとっては酷な措置であります。再考を促すものであります。   次に、復帰後のくらしについては、苦しくなるのではないかとの不安を訴えている者が世論では大半を占めております。さらにドルショックでその不安は急増しております。くらしに対する不安の解消なくしては復帰に伴って県民福祉の保障は不可能であります。生活不安の解消のためには基地経済から脱却し、この沖繩の地に今よりは安定し、今よりは豊かに、さらに希望のもてる新生沖繩を築きあげていかねばなりません。言うところの新生沖繩はその地域開発と言うも、経済開発と言うも、ただ単に経済次元の開発だけではなく、県民の真の福祉を至上の価値とし目的としてそれを創造し達成していく開発でなければなりません。従来の沖繩は余りにも国家権力や基地権力の犠牲となり手段となって利用され過ぎてきました。復帰という歴史の一大転換期にあたって、このような地位からも沖繩は脱却していかなければなりません。したがって政府におかれても、国会におかれてもそのような次元から沖繩問題をとらえて、返還協定や関連諸法案を慎重に検討していただくよう要請するものであります。   さて、沖繩県民は過去の苦難に充ちた歴史と貴重な体験から復帰にあたっては、まず何よりも県民の福祉を最優先に考える基本原則に立って、(1)地方自治権の確立、(2)反戦平和の理念をつらぬく、(3)基本的人権の確立、(4)県民本位の経済開発等を骨組とする新生沖繩の像を描いております。このようなことが結局は健全な国家をつくり出す原動力になると県民は固く信じているからであります。さらにまた復帰に当って返還軍用土地問題の取扱い、請求権の処理等は復帰理事項の最も困難にしてかつ重要な課題であります。これらの解決についてもはっきりした責任態勢を確立しておく必要があります。   ところで、日米共同声明に基礎をおく沖繩返還協定、そして沖繩復帰準備として閣議決定されている復帰対策要綱の一部、国内関連法案等には前記のような県民の要求が十分反映されていない憾みがあります。そこで私は、沖繩問題の重大な段階において、将来の歴史に悔を残さないため、また歴史の証言者として、沖繩県民の要求や考え方等をここに集約し、県民を代表し、あえて建議するものであります。政府ならびに国会はこの沖繩県民の最終的な建議に謙虚に耳を傾けて、県民の中にある不満、不安、疑惑、意見、要求等を十分にくみ取ってもらいたいと思います。そして県民の立場に立って慎重に審議をつくし、論議を重ね民意に応えて最大最善の努力を払っていただき、党派的立場をこえて、たがいに重大なる責任をもち合って、真に沖繩県民の心に思いをいたし、県民はじめ大方の国民が納得してもらえる結論を導き出して復帰を実現させてもらうよう、ここに強く要請いたします。これが総体の全文であります。  屋良主席が琉球政府の責任者として携えてまいりましたこの建議書の内容は、いま読み上げましたとおりでありまするが、この内容は一体どれだけ協定に反映しており、どれだけ関係法案に反映をいたしておるでございましょう。私ども野党はこの問題に対して、沖繩復帰に伴う特別措置法の中にいたしましても、たとえばVOAの問題であるとかあるいは裁判権の問題であるとかあるいは請求権の問題であるとか、重要な問題は、この屋良主席の携えてまいりました沖繩県民百万の声とし、相呼応した態度で今日まで審議をいたしてまいりました。しかし、これはほとんど一考にも顧みられなかった。ただ、沖繩復帰に伴う振興開発法案の中で二、三の修正はございましたが、この修正は全く申しわけ的のものであって、決してこの建議書にいう豊かで平和な、沖繩の諸君が要望する結果にはならないのであって、単に沖繩島民の考えておりますることを、ごく法案自身の運行に差しさわりのない範囲においてきめただけでありまして、その実効は何ら認められないものでありまするので、この修正案に対しましても私どもは反対せざるを得ないのであります。  私は、すでに時間が来ておりまするのでこれ以上は申し上げませんが、どうかひとつこれらの問題が——われわれが反対するということは単に感情的に反対するわけではない。このいま読み上げました切実なる沖繩の百万の島民の声が、この関連法案にほとんど盛り入れられなかった、修正ができなかったということは、私ども野党の非力だといえば非力かもしれない。しかしながら、沖繩県民のことを考えていただきまするならば、総理以下、各閣僚に対しましても、政府の要員にいたしましても、みずから持っておる案件に対する謙虚な気持ちでわれわれの意見をいれていただきたかったのである。ところが何らの反省もなく、今日ここに決定されようといたしておりまする案件に対しましては、沖繩県民のいまの声を声として、私どもは反対をせざるを得ないのでありまして、こういうことをひとつ十分了承するということはいかがかと思いまするが、私どもの意見をひとつ十分に政府は聞き入れて、将来への問題の解決のためになお一そうの努力をしていただきたい。  私は、衆議院におけるあの協特委の強行採決は、こうした県民の意思を踏みにじるものであって、いかにこの四つの法案がいろいろ議論を重ねてまいりましても、内容先ほどから言われているとおりであって、私どもは絶対に了承することのできないということをここに表明をいたしまして、私の反対討論を終わらせていただきたいと思います。(拍手)
  650. 床次徳二

    床次委員長 米原拠君。
  651. 米原昶

    ○米原委員 私は、日本共産党を代表しまして、ただいま議題となりました沖繩協定に関連する諸法案一つ承認案に対し、強く反対するものであります。  第一は、沖繩の米軍と宿衛隊基地の強制的確保を目的とする公用地等暫定使用法案についてであります。  この法案は、別名土地強奪法案と呼ばれていることにも端的に示されているように、戦前の軍国主義時代にさえも例を見なかったファッショ的内容を持つものであり、その違憲性は全く歴然たるものであります。  いまから二十年前、沖繩が吉田自由党政府によって、サンフランシスコ条約第三条によりアメリカに売り渡されてこの方、沖繩県民は、米軍の野蛮な軍事支配のもとで言語に絶する屈辱と苦痛を負わされてきました。現在、米軍が基地としてわがもの顔に占拠している膨大な土地の強奪こそ、その最たるものであります。銃剣を突きつけ、戦車やブルドーザーを繰り出し、沖繩県民を虫けらのごとくけ散らし、問答無用に奪い取った米軍の蛮行は、佐藤総理さえも不法、不当といわざるを得なかったものであり、いかなる理屈をもってしても、絶対に合理化できるものではありません。  ところが、本法案は、このような米軍の野蛮な行動を完全に免罪にする屈辱的、侵略的なものであります。しかもそのやり方は、わが国憲法を公然と踏みにじり、土地法体系に新たな重大な変更をもたらすものであり、断じて容認することはできません。加えて、憲法違反の自衛隊がこれに便乗し、米軍の取得した土地をそのまま引き継ごうとすることは、まさに二重、三重の犯罪といわなければならない。沖繩県民が自衛隊の配備とともに、この法案に強く反対しているのはきわめて当然であります。  それにもかかわらず、佐藤首相みずから、かかる法案協定成立の前提としてあくまで強制しようとしていることは、日米沖繩協定が、核も基地もない平和な沖繩返還という、沖繩県民と国民の要求と全くかけ離れたものであり、その危険な、屈辱的実態を象徴するものといわなければなりません。  第二に、いわゆる復帰特別措置法案についてであります。  この法案は、現行国内法の四百八十一件に関連する膨大な内容と幾多の問題点をかかえております。もし政府が国会の審議権を尊重する立場をとるならば、少なくとも国会の各常任委員会単位に提出するのが当然であったにもかかわらず、わが党をはじめ野党各派の要求を無視して、あえてこれを一本の法律案とし、しかも法律事項の多くが政令委任事項としていることは、それ自身、国会の立法権に対する重大な侵害といわなければなりません。  次に、本復帰特別法案の第一の問題点は、アメリカの謀略心理作戦放送VOAに対して、わが国電波法の適用を除外して、さらに五年間も引き続き存置させ、また、第七心理作戦部隊の謀略機関である極東放送を容認したということであります。社会主義諸国や民族解放闘争ばかりでなく、アメリカの同盟国の国民に対する謀略宣伝を事とするこれらの放送機関を、アメリカの圧力に屈し国内法に反してまで存続させ立法化することは、みずから国の主権を新たに制限し、売り渡すものであります。沖繩協定がいかに屈辱的であるかを具体的に示す一つの実例でもあります。  他方、この法案は、沖繩県民が苦しい戦いの中でかちとってきた教育委員の公選制や公務員の政治活動の自由などの民主的諸権利を、いわゆる本土並みの法適用の名のもとに、一挙に剥奪しようとするきわめて反動的な内容を持つものであります。アメリカに対しては、許すべからざる屈辱的な態度を積み重ねながら、日本国民の当然の権利を敵視する佐藤内閣及び自民党の態度をきびしく糾弾するものであります。  第三は、いわゆる振興開発特別措置法案であります。  政府は、本法案の目的について沖繩の地理的、自然的特性に即した沖繩の振興開発、県民の生活の安定と福祉の向上に資するなどと述べておりますが、実際には、公害企業をはじめとする一連の大企業の沖繩進出の基盤づくりをはかるものであることは、この法案内容を見れば明らかであります。すなわち、振興開発計画の総理大臣の決定、石油、アルミなど公害企業の集中する地域に立地する大企業へ税の減免、特別の融資を行なう工業開発地区の設定などがそれであります。行政職員が過半数を占める審議会の設置の原案を自民党提案のごとく修正いたすとしましても、沖繩の自治権侵害の実態は少しも変わらぬのであります。  以上、私は、個々の法案に即して、その基本的な反対理由を明らかにしましたが、これらの法案は、いずれも沖繩協定と不可分のものであり、協定成立の前提とされている重要案件であります。そこにいかなる内容が盛られるかは、百万沖繩県民のあすの生活と権利に直結し、日本の将来にかかわるものといわなければなりません。それだけに、国会として徹底的に審議を尽くし、国民の疑惑と不安を解消させることこそ、国会に課せられた当然の責務であります。  ところが、佐藤内閣と自民党は、公聴会や連合審査会の開催など、審議の形式を整えることにのみきゅうきゅうとし、核や基地問題をはじめ、国民の重大な関心事に対しては何ら納得のいく答弁をせず、その態度はまことに不誠意きわまりないものであります。  このような審議の段階で質疑を打ち切ったことは、協定の強行採決の暴挙を強行したこととあわせて二重の暴挙といわなければなりません。  本委員会における委員会審議を通じて一そう明白になったことは、このたびの日米沖繩協定が、沖繩の米軍基地の継続、維持を最大の目的としたものであり、返還とは名ばかりで、その実態は非返還協定であり、安保条約を実質的に改悪する新たな軍事協定にほかならないということであります。  このような事態は、沖繩県民が長く苦しい戦いの中で求めてきた祖国復帰とはほど遠いものであり、何ら事態の根本的解決をはかるものでないことはあまりにも明らかであります。このことを強く指摘して、私の反対討論を終わります。(拍手)
  652. 床次徳二

    床次委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより順次採決いたします。  まず、沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律案及び沖繩における公用地等暫定使用に関する法律案、以上三法律案を一括して採決いたします。  三法律案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  653. 床次徳二

    床次委員長 起立多数。よって、三法律案はいずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)  次に、沖繩振興開発特別措置法案について採決いたします。  まず、二階堂進君外四名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  654. 床次徳二

    床次委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  655. 床次徳二

    床次委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しましだ。(拍手)  次に、国家公務員法第十三条第五項および地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院地方事務所設置に関し承認を求めるの件について採決いたします。  本件を承認するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  656. 床次徳二

    床次委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。
  657. 床次徳二

    床次委員長 この際、細谷治嘉君から発言を求められております。これを許します。細谷治嘉君。
  658. 細谷治嘉

    細谷委員 ただいま、沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案外四案件が議決されたのでありますが、私どもは、先ほどの討論で申し上げましたとおり、この五案件については絶対に反対でございます。反対の理由については、討論の中で詳細に申し上げたとおりの趣旨によるものでありますが、この趣旨に基づいてあくまで否決さるべきであるという意見であります。  国会法第五十四条規定に基づき、この五案件に対する反対意見について、本会議において少数意見の報告をいたさんとするものでありますので、ここに日本社会党、公明党、民社党三党を代表して意見を表明しておきます。
  659. 床次徳二

    床次委員長 ただいまの細谷君の発言につきましては了承いたしました。     —————————————   〔少数意見報告書は附録(その三)に掲載〕     —————————————
  660. 床次徳二

    床次委員長 ただいま議決いたしました五案件に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  661. 床次徳二

    床次委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————    〔報告書は附録(その三)に掲載〕     —————————————
  662. 床次徳二

    床次委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後十一時三十九分散会