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1971-12-09 第67回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十二月九日(木曜日)    午後一時三十八分開議  出席委員    委員長 床次 徳二君    理事 金丸  信君 理事 國場 幸昌君    理事 二階堂 進君 理事 湊  徹郎君    理事 毛利 松平君 理事 久保 三郎君    理事 細谷 治嘉君 理事 中川 嘉美君    理事 門司  亮君       天野 光晴君    池田 清志君       石井  一君    宇田 國榮君       小渕 恵三君    大石 八治君       大野  明君    大村 襄治君       加藤 陽三君    木野 晴夫君       佐藤 文生君    佐藤 守良君       正示啓次郎君    關谷 勝利君       田中伊三次君    田中 龍夫君       谷垣 專一君    谷川 和穗君       藤波 孝生君   三ツ林弥太郎君       箕輪  登君    武藤 嘉文君       森  喜朗君    山下 徳夫君       豊  永光君    井上 普方君       石川 次夫君    川俣健二郎君       木島喜兵衞君    武部  文君       西宮  弘君    松浦 利尚君       美濃 政市君    山口 鶴男君       伊藤惣助丸君    桑名 義治君       樋上 新一君    小平  忠君       田畑 金光君    東中 光雄君       米原  昶君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         外 務 大 臣 福田 赳夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 高見 三郎君         通商産業大臣  田中 角榮君         建 設 大 臣 西村 英一君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 竹下  登君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (農林大臣臨時         代理)     山中 貞則君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 江崎 真澄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      木内 四郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         人事院事務総局         管理局長    茨木  広君         総理府総務副長         官       砂田 重民君         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         防衛政務次官  野呂 恭一君         防衛庁参事官  高瀬 忠雄君         防衛庁参事官  鶴崎  敏君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛施設庁長官 島田  豊君         防衛施設庁総務         部調停官    銅崎 富司君         沖繩北方対策         庁長官     岡部 秀一君         沖繩北方対策         庁総務部長   岡田 純夫君         沖繩北方対策         庁調整部長   田辺 博通君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省条約局長 井川 克一君         大蔵省理財局次         長       小幡 琢也君         文部省初等中等         教育局長    岩間英太郎君         食糧庁長官   亀長 友義君         建設省道路局長 高橋国一郎君  委員外出席者         沖繩及び北方問         題に関する特別         委員会調査室長 綿貫 敏行君     ————————————— 委員の異動 十二月九日  辞任         補欠選任   武部  文君     松浦 利尚君   二見 伸明君     樋上 新一君 同日  辞任         補欠選任   松浦 利尚君     西宮  弘君 同日  辞任         補欠選任   西宮  弘君     武部  文君   樋上 新一君     二見 伸明君     ————————————— 十二月六日  沖繩教育委員公選制存続等に関する請願(大原亨紹介)(第二九四〇号)  同(川崎寛治紹介)(第二九四一号)  同外一件(木島喜兵衞紹介)(第二九四二号)  同(斉藤正男紹介)(第二九四三号)  同(三木喜夫紹介)(第二九四四号)  同(山中吾郎紹介)(第二九四五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案内閣提出第一号)  沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律案内閣提出第二号)  沖繩振興開発特別措置法案内閣提出第三号)  沖繩における公用地等暫定使用に関する法律案内閣提出第六号)  国家公務員法第十三条第五項および地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院地方事務所設置に関し承認を求めるの件(内閣提出承認第一号)  沖繩平和開発基本法案細谷治嘉君外十六名提出衆法第一号)  沖繩における雇用促進に関する特別措置法案川俣健二郎君外十六名提出衆法第三号)  派遣委員からの報告聴取      ————◇—————
  2. 床次徳二

    床次委員長 これより会議を開きます。  本委員会において審査中の各案件審査のため、昨八日、大阪府に委員を派遣して、各界代表者から意見を聴取いたしてまいりましたので、この際、派遣委員から報告を求めます。毛利松平君。
  3. 毛利松平

    毛利委員 今回の委員派遣は、本特別委員会に付託されている七案件審査に資するため、十二月七日、八日の二日間、沖繩県出身者が比較的多いといわれる大阪府に委員を派遣して、現地において、それぞれの各界意見を徴することに相なったものでありまして、この際、派遣委員団を代表して、概要を簡単に御報告申し上げます。  派遣委員団は、団長である私のほか、國場幸昌君、湊徹郎君、細谷治嘉君、石井一君、正示啓次郎君、山下徳夫君、豊永光君、木島喜兵衞君、桑名義治君、小平忠君、米原昶君の計十二名で構成されました。  会議は、十二月八日午前十時より午後四時まで、大阪府議会議場において行なわれ、帝塚山学院大学教授岡田孝男君、沖繩県人会兵庫本部会長上江洲久君、沖繩関係資料室主宰西平守晴君、評論家梶谷善久君、松本病院院長松本敏君、全日本労働同盟大阪地方同盟会長室屋定三君、以上の六名から参考意見を聴取したのであります。  岡田孝男君は、沖繩問題は、まず沖繩返還が先決問題であるとし、公用地等暫定使用は、所有者との合意につとめるため必要である旨の意見を述べ、上江洲久君は、提供基地の規模、密度から本土並みとはいえず、公用地等暫定使用は期間を短縮すればよいというものではないとし、対米請求権の放棄、裁判の効力の引き継ぎは県民人権尊重しておらず、自衛隊の配備は米軍の機能を引き継ぐものである旨の意見を述べ、西平守晴君は、二十六年間の悲願であった祖国復帰がおくれてよいというのは県民考えとは思えないとし、将来基地のない平和な島を目ざし、人間尊重地域開発を進めるべきであり、なお本土には沖繩勤労青少年のホームの建設が必要である旨の意見を述べ、梶谷善久君は、日中友好の推進が必要なとき、沖繩基地を固定化しようとする法案には反対であり、むしろ沖繩の非軍事化政策を進めるべきである旨の意見を述べ、松本敏君は、返還協定は、国際外交軍事の視点から承認を推進すべきであるとし、復帰後は、本土国民とともに沖繩建設をなすべきであるとする旨の意見を述べ、室屋定三君は、県民に不安がない沖繩とは、核抜きを明確にし、基地整理縮小につとめることであり、また、将来沖繩雇用対策として、関西における受け入れ体制の確立をはかるべきだとする旨の意見を述べたのであります。  以上の陳述に対し、各委員との間に沖繩開発基地縮小などの各般にわたる質疑応答が行なわれたのでありますが、詳細につきましては、報告書委員長の手元に提出いたしておりますので、会議録に掲載されるようお願いいたします。  以上、御報告を終わります。(拍手)     —————————————
  4. 床次徳二

    床次委員長 この際、おはかりいたします。  ただいま毛利君から申し出のありました報告書につきましては、会議録に参照として掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 床次徳二

    床次委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は本号(その二)に掲載〕      ————◇—————
  6. 床次徳二

    床次委員長 内閣提出にかかる沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律案沖繩振興開発特別措置法案沖繩における公用地等暫定使用に関する法律案国家公務員法第十三条第五項および地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院地方事務所設置に関し承認を求めるの件、細谷治嘉君外十六名提出にかかる沖繩平和開発基本法案及び川俣健二郎君外十六名提出にかかる沖繩における雇用促進に関する特別措置法案、以上の各案件を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。石川次夫君。
  7. 石川次夫

    石川委員 私は、きょうは開発問題、経済問題に限って質問をしたいと思うのでありますけれども、電力問題、尖閣列島問題、中小企業問題、海洋博問題その他一々、経済問題だけに限っても、十時間以上なければとうてい質問できないと思うのであります。しかし、きょうは時間が限られておりますので、答弁のほうは、ひとつ簡にして要を得た御答弁を願いたいことをまずもってお願いをしたいと思うのであります。  それで、経済問題は、この沖繩対策あめとむちである、こう総評されておるあめの部分に当たるわけでありますけれども、はたしてこの経済対策財政措置その他があめに値するものかどうかということの結論づけのための質問を行ないたいと思うのであります。  最初に、総理に基本的な姿勢の問題について伺いたいのでありますけれども、沖繩から、沖繩県民気持ちをくんで、切々たる思いを込めて建議書が出ておるわけであります。その中で、沖繩開発についてのいわゆる三原則なるものが提示をされておるわけであります。これは三八ページ以降に載っておりますから、おそらく総理もお読みになったと思うのでありますけれども、その第一点は、たとえば本土では、大企業中心GNP第一の政策を行なったために、過密、過疎の問題、都市問題、公害問題を生んでおる。したがって、人間主体開発でなければならない。すなわち、県民福祉向上を重点にした開発でなければならぬというのが第一点であります。第二点は、沖繩亜熱帯地方であり、非常に特殊な地域と離島的な性格を持っておりますので、地域独自性多様性を豊かに開発をさせるためにはどうしても自治権というものを尊重してもらわなければならぬ、これが第二点であります。第三点は、基地の持つ非人間的、退廃的性格、それから基地が非常に大きな地面を占めておるということからくるところの、いわゆる統一的、総合的な土地利用あるいは工業開発計画、そういったものの非常な障害になっておる。そういうものを考えながら平和で豊かな県づくりというものを行ないたいという、この三点が強調されておるわけであります。  これに対しまして首相は、この基本的な考え方は正しいんだ、そしてこの基本方針に沿って、沖繩県民気持ちに立って開発を行ないたいということのお考えなのか、それとも、これに対して何らか反論する御意見があるのかどうか、この点をまず基本的な姿勢としてお伺いをしたいと思うのであります。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 三原則はそのまま尊重すべきものだ、かように考えております。
  9. 石川次夫

    石川委員 ところが、私ども考えますと、どうもこの三原則尊重されておらないのではなかろうかという疑問が多々存在するわけであります。私は、この基本問題について多くを議論するつもりはございません。時間がございませんから、意見だけを申し上げておきたいと思いますけれども、たとえば県民福祉という場合に、日本の全体の社会保障制度それ自体もGNPの大体六%、ヨーロッパの先進国の一六%程度に比べると三分の一程度にすぎないし、そのまた半分が医療費になっておるという状態である。ところが、沖繩では、また日本の三分の一程度にすぎないというようなことを含めて考えると、どうも県民福祉向上というものは容易ならざるものがあるのではなかろうかということを懸念するわけであります。  それから、第二点の自治権尊重という点でありますけれども、これは朝日新聞にも、かつて「自治を脅かす沖繩開発三法」というのが出ております。これはごらんになったかと思いますが、これで要点だけを申し上げますと、たとえば、沖繩総合開発事務所をつくる。その第一点は、このような総合事務所は、国家行政組織の体系からはずれた奇形的存在であるという点が第一点。第二の問題点は、このような総合機関によって地域開発が推進される場合には、防衛計画地域計画の中に組み込まれる可能性が高くなるという点が第二点。第三点は、強大な総合事務所存在沖繩地方自治を空洞化し、県民権利を奪うものであるというのが第三点であります。そのほかに、最小限二つの歯どめが必要ではないか。その一つは、総理大臣開発審議会委員を任命するときと、総理大臣開発計画を決定するときには、沖繩県知事の同意を得るように法案にはっきり明記すべきではないかというような点がいわれておるわけであります。  そのほかでもいろいろございますが、たとえば、振興開発特別措置法の十六条の一項、二項に、特定事業所の認定については、当然これは沖繩県知事と協議をするということがあってしかるべきではないか。あるいは自由貿易地域の第二十四条でありますが、これを認めるといたしまして、その中における事業の認可というものは、知事がこれを行なう。この沖繩特殊事情というものをよく理解できるのはどう考えても知事しかないということで、知事がこれを行なうということにすることが当然ではないか。そういうこまかい点も取りまぜて考えますと、自治権尊重などということは、とうていいえたものではないのではないか。経済だけに限定をいたしましても、そう考えざるを得ないわけであります。  それから、第三点の平和で豊かな県づくりでありますけれども、この建議書にもありますように、基地の持つところの非人間的、退廃的性格、したがって、基地があったのでは平和で豊かではない、こういうことをきめつけておるわけであります。  ところで、沖繩の心というのは、この委員会でもよく議論をされておるわけでありますけれども、私なりの考え方で、こういうことは言えないだろうか。私の憶測では、こことここでは平和で豊かということは両立をしなければならぬ。たとえば、豊かであるということのためには平和ということは前提である、こういうことが並列的にいわれておるわけです。しかしながら、沖繩では、かつて凄惨な戦争の犠牲にさらされたという経験が、なまなましく今日も生きておるわけであります。わずか五十万人の中で十万以上も死んだということ、そういう事実と、あと異民族の徹底的な人権じゅうりん支配下にさらされたというようなことで、ぎりぎり決着のところで平和と豊かというものが二者択一を迫られたときには平和を選ぶのだ、こういうぎりぎり決着のせっぱ詰まった気持ち沖繩県民がいるんだということを、われわれは理解をしなければならぬと考えるわけでありますけれども、その点、総理はどうお考えになりますか。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん三原則が、いま本土に返ったその瞬間に、直ちにそのまま実施される、そうして、たいへん見違えるような状態になる、かようなことは、私ども、沖繩の方々もまさかそこまでは予期してはおられないだろうと思います。ただいまの三原則は三原則、その方向でものごとが進む、かように私は考えておりますし、われわれの取り組む姿勢も、過渡的にはいろいろ考えなければならないこまかな点のあること、これは御承知のとおりであります。多くは申しませんが、過渡的にはある程度そこに現実の問題との差のあることも、私は了承しております。
  11. 石川次夫

    石川委員 そこで、私は防衛問題とかあるいは条約問題は全くしろうとでございまして、その点について議論をしようとは思いませんが、それだけに素朴な国民の疑問として、ひとつ外務大臣に伺いたいのでありますけれども、実はANZUS条約というのがございます。その前に、今度の沖繩返還に伴いまして、佐藤総理共同声明を発表する、あるいはプレスクラブでもって談話を発表する中では、韓国台湾日本防衛にとってきわめて重要であるということを言ったことが、多くの疑念を呼び起こしておるわけであります。その点については、あえて私はこの場では触れようとは思いませんけれども、それ以前の問題として、ANZUS条約というものがございます。  これは、私は見て驚いたのでありますけれども、これは日本講和条約が結ばれる以前の条約でございますけれども、合衆国琉球軍隊を駐とんさせ、「かつ、行政上の責任を有し、」ということになっておりますけれども、今度復帰実現をすると仮定をすれば、行政上の責任はなくなるわけであります。しかも、このANZUS条約というのは、御承知のように占領下において、講和条約が結ばれる以前の条約であったわけであります。  この条約の中で、韓国台湾は、先ほど言いましたけれども申すに及ばず、オーストラリアニュージーランドまで日本が守る、しかも、その日本中核として沖繩が現存をするということが、この中で明記をされておるわけであります。沖繩の島民では、これを知っている方も多いでありましょうけれども、知らない方もかなりあると思いまするし、こういう条約のもとに、日本が全然関係のないところで、アメリカニュージーランドとそれからオーストラリアと、こういう遠隔の地にわたってまで、日本沖繩中核として守らなければいけないのかという素朴な疑問をぬぐい去ることはできないと思うので、この点については、私は、復帰がいい時期でございますから、これは改廃——改廃というよりはむしろ廃止を求めるというお気持ちがあるのかないのか、念のために外務大臣に伺いたいと思うのです。
  12. 福田赳夫

    福田国務大臣 安保条約ANZUS条約、これはいささかの関係もございませんです。ただ、沖繩がわが国に返還をされない以前におきましては、沖繩基地における米軍の行動は自由でありますから、あるいはAMZUS地域に対する出動というようなことがあり得たかもしれない。しかし、返還実現をしたという後におきましては、これは安保条約制約下沖繩も置かれるわけであります。したがって、沖繩基地から安保条約対象地域、つまり極東であります、フィリピン以北であります、その地域以外に出動をするということはあり得ないことに相なる次第でございます。
  13. 石川次夫

    石川委員 フィリピン以北に行くことはあり得ないということになれば、この沖繩に駐とんをさせ、行政上の責任を有して、ニュージーランドオーストラリアまでこれを守るのだということは、これは失効をするということですか。これはどうなんですか。
  14. 井川克一

    井川政府委員 確かにお話しのように、いわゆるANZUS条約前文の中に、「合衆国が、同国軍隊フィリピンに駐留させる取極を締結しており、琉球において軍隊維持し、かつ、行政上の責任を有し、及び日本国との平和条約効力を生じたときには、日本地域における平和と安全の維持に資するために日本国内及びその周辺軍隊を駐留させることがあることに留意し、」という前文があります。この条約の主たる規定は第五条でございまして、「いずれかの締約国に対する武力攻撃は、いずれかの締約国本国領域、又は太平洋にある同国管轄下にある諸島又は太平洋における同国軍隊公船若しくは航空機に対する武力攻撃を含む」という規定がございまして、それに対して、第四条で、「各締約国は、太平洋地域におけるいずれかの締約国に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」こういうふうになっているわけでございます。  そこで、ただいま申し上げました第五条の「いずれかの締約国本国領域、」それはアメリカ合衆国ニュージーランド、豪州でございます。「又は太平洋にある同国管轄下にある諸島」これにまさしくいままでは、返還時までは琉球沖繩が入っているわけでございます。ところが、沖繩がこれから抜けるわけでございます。抜けまして、ここにいうところの「太平洋にある同国管轄下にある諸島」ではなくなるわけでございます。  そのような意味からいたしまして、この前文も多少意味が変わってくるとは思いますけれども、いずれにいたしましても、この条約は、日本との直接の関係を持っておりませんで、この三国がよその国から攻撃されたときに助け合う条約、こういうわけでございまして、しかも、幸いに琉球が返ることによりまして、その地域自身からは琉球がはずれる、こういうふうになっているわけでございます。
  15. 石川次夫

    石川委員 これは琉球に駐とんし、そして行政上の責任を有すということだけではないのですよ。日本国領域における平和と安全保障維持を助けるために、日本国内及びその周辺軍隊を駐とんさせることがあることに留意し、ということになっておるわけでありますから、日本に返ってきたからといって、沖繩中核でありますけれども、日本が、この国際上の地位がこの協定の中において変わるということは考えられないと私は考えるのです。しかも、安保条約によってフィリピン以北出動しないということになっておるとすれば、オーストラリアあるいはまたニュージーランドまで、どうして沖繩中核となって責任を持たなければいけないのかという素朴な疑問は、沖繩日本に返ってくるから、今度は沖繩だけの関心事ではなくて、日本関心事に当然移ってこざるを得ないということになると思うので、私は、当然この条約にも日本のことについては排除してもらいたい、削除してもらいたいということを言う権利があるのではなかろうか、こう思わざるを得ないのです。この点は、外務大臣どうお考えになりますか。
  16. 井川克一

    井川政府委員 この条約は当時の事実関係に基づいてできているわけでございまして、したがいまして、先生も御指摘のとおり、私も御答弁申し上げましたとおり、前文の中で、合衆国フィリピン軍隊を持っている、また琉球軍隊を持ち、かつ行政上の責任を持っている、日本の中にも軍隊を持っている。また一方、「オーストラリア及びニュー・ジーランドが英連邦構成国として太平洋地域の内外において軍事的義務を有していることを確認し、」そして先ほど申し上げました、三国が侵された場合には三国共同してこれに当たるという条約なわけでございます。ところが、先ほど申し上げました「太平洋にある同国管轄下にある諸島」というのが、これがこの当時には、また現在でもそうでございまするけれども、沖繩も入っているわけでございます。行政上の責任を有している、施政権を持っていると前文に書いてあります。このことも事実でございます。  しかし、これが沖繩返還協定によってなくなってしまうわけでございます。なくなって完全なる日本施政権のもとに入ってくるわけでございます。そうなりますると、そういうところの島でなくなるわけでございます。そして、その事実関係としても、施政権を有しているということがなくなるわけでございます。したがいまして、ここのところは、そういう意味において変更を受けるということでございますが、いずれにいたしましても、日本関係のないよその国の条約でございます。よその国の条約においてもろもろの事実関係が異なってくれば、その事実を異なったように基礎を置いて読まなければならない、三国間において読まれるということはまた当然のことでございます。
  17. 石川次夫

    石川委員 これは私の専門ではありませんから、あまり深く追及するつもりはないのですけれども、しかし、日本国との平和条約効力を生じたときには、日本国領域における平和と安全保障維持を助けるために、日本国内及びその周辺軍隊を駐とんさせることを留意をしながらということになっておるわけであります。したがって、このことは、現時点においては、平和条約が発効したのでありますから、この留意をするという事項は消えてなくならぬわけですね。これは厳然として残るわけですよ。しかも、安保条約ではフィリピンまでだというのだけれども、オーストラリアニュージーランドまで今度は守らなければいかぬということは、厳然として残ってしまうのです。こういうわれわれのほうに無関心に——国民に聞かしたら、おそらくそんなばかなことがあるかといわれるような、このような遠隔の地にまで日本、特に沖繩が——この文面だけを読むと沖繩軍隊を駐とんさせとなって、しかも、沖繩が極東戦略の拠点であるということは常識でありますから、これは何らかの措置をとってもらわなければ困ると思うのです。非常な不安を持たざるを得ないと思うのです。  外務大臣、一体これはどういう措置をとりますか。このまま、ニュージーランドオーストラリアは、沖繩基地として、あるいは日本基地として、やはり戦争が起こったら出ていって守るんですよと。日本関係ないといっても、アメリカ軍が出ていったにしても、日本は巻き込まれざるを得ない。日本がこれを援助するという性格には全然変わりはないわけなんで。非常にしろうとっぽい議論で恐縮なんでありますけれども、何らかの改廃を必要とする時期にきているのではないか、こう思いますけれども、どうですか。
  18. 福田赳夫

    福田国務大臣 ANZUS条約は他国の条約であります。そこで、この条約において、いま条約局長の話を聞きますと、わが国に米軍が駐留しているということに留意しということになっておるようでございますが、日米間の条約、つまり安保条約は、わが国の平和並びに極東の平和と安全を保持する、こういうことになっており、その極東の範囲というのはフィリピン以北の一定の地域に限定されておる、そういうことでありまして、おのずからわが国に駐留するアメリカ軍隊——沖繩返還後におきましては沖繩を含めての米軍でありますが、この行動範囲は制約されておりますので、ANZUS地域におきまして何事か起こった、わが国はこれに関しまして何らの関係もない、安全保障条約上それの影響を受けることはいささかもない、かように考えております。
  19. 石川次夫

    石川委員 私は、素朴な国民感情としての質問をしているわけでありますが、しかし、国民がそれを聞いても納得できないと思うのですよ。知らない間に日本が巻き込まれるような形にならざるを得ない、そういう危険な要素を含んでいるANZUS条約をこのまま放置する。まあアメリカニュージーランド、それからオーストラリアは、三国で日本基地をもととして守るのだ守らないのだというようなことを、日本の意思を無視して、その当時としては、これはできたわけです。それがそのまま温存されるということは、どう考えても納得がいかないことじゃないかという点を、私は強く申し上げておきたいと思うのです。  きょうは、平和で豊かということの一つの例として私はANZUS条約を申し上げたわけでありまして、そういう点で、平和で豊かな沖繩開発の三原則というものはいろいろな点で疑惑があり、あめとむちの、あめがいろいろな点で多くの疑問を国民に投げかけておる、特に沖繩島民にとっては不満な点が多々あるということの一つの例として申し上げたわけであります。  質問を次に移しますけれども、沖繩はいわゆる基地依存経済だということになっておるわけであります。この基地依存経済ということになりますと、これは実は沖繩へ行きまして公聴会をやったときに、沖繩経済界の商工会議所の代表がこういうことを言いました。それは、終戦後から五〇年までは大体混乱と収拾の時期であった。一九五〇年から六〇年までは回復期に向かってきた。六〇年から以降というものは経済も非常に成長をして、いわば沖繩の発展期であって、これら基地に依存するところがきわめて大きい。私はこれを聞いてがく然としたのでありますけれども、総理府総務長官、このいまの、基地によって経済が隆々として栄えたという沖繩の経営者団体の代表、しかも、これは自民党の推薦の方であります。非常に基地さまさまという意見を申しておったわけでありますが、それに同調されますか。
  20. 山中貞則

    山中国務大臣 これは同調するしないの問題じゃなくて、沖繩の中には、ほことたてがともに両立しておる問題がたくさんあるわけであります。いわゆる基地というものは、強制的に占領され、あるいは取り上げられたものであって、断じて容認できない。しかしながら、そこに基地があって米軍のいろいろの需要がある。それに対して、その周辺において基地依存経済というようなものが当然の姿として、まあ追い詰められた形でもあるかもしれませんが、コザ市のごときは、戦前の数千の人口をかかえた村から、いまや十倍以上の人口の市になっておることでもわかりますように、やはり生活のよりどころを求めて、新しい分野における収入源を求めて人が集まって仕事が起こったということも、三次産業を中心にして事実でありますので、その点は、やはり基地経済の依存から平和経済へすみやかに切りかえることを、われわれは至上の目標命題としなければなりませんが、しかし、現実にその基地のあることによって、個々の所得なり経済に貢献する比率が非常に高い、その事実は、私たちは黙視してならないと思うのです。したがって、そのことを、ショックを与えないで、あるいはまた円滑に平和経済に転ずるための諸施策、あるいは国の基本的な補助負担等を含む問題とか、あるいは金融公庫の問題とか、法律による転廃業の問題とか、いろいろの問題について十分配慮をして受け入れ体制を整えていきませんと、そのような一面の真理もまた存在するところに沖繩のむずかしい問題があるというふうに受け取っておるわけでございます。
  21. 石川次夫

    石川委員 基地依存経済というのは、第三次産業というもので相当恩恵を受けておる。これは戦前第一次産業が大体七六・三%だったものが——これは全国で最高であります。これがわずか九・八%に落ち込んでおる。それから第二次産業が九・八%だったのが若干ふえて一七・七%、それから全国で最低であった第三次産業の一三・六%が七二・六%というふうにふえておるし、また基地収入に依存する度合いというものが相当高いという事実は、われわれは否定しませんけれども、しかしながら、この就業人口からいって、五七・五%というような第三次産業の就業率、これは東京に次いでおるわけですね。東京は、これは情報化社会にどんどん進んでくるということで、文明発展の当然の帰結としてサービス産業というものはふえざるを得ない、こういうことで第三次産業がふえておるのでありますから、これは自然の形でふえておる。しかしながら、基地沖繩というものは、非常に不自然な形で、国民所得の関係からいえば七二%も第三次産業に依存をしなければならないという消費放漫経済になっておるという事実は、これは認めざるを得ないと思うのです。  そこで、いま、基地からの恩恵というものがあったんだというふうな御説明がありましたけれども、われわれはごうまつもそうは考えたくない、考えられない。ということは、基地からの恩恵の受益者ではなくて、たいへんな犠牲の負担者が沖繩であったのではないか。それは経済面でもいえると思うのです。農業部門というものが、その自立性というものを全然破壊をされました。そうして経済外的な強制でもって土地を強引に取り上げられた。この取り上げられた内訳というものは、いまさら私から申し上げるまでもないと思うのでありますけれども、それとともに、伝統産業というものは壊滅状態に近いほど破壊をされておるわけであります。それで、労働力というものを基地に吸収をして、基地の建設、基地維持するためにのみ産業というものを育成するという形になってきておるわけであります。  私は、こういうふうに基地維持する目的と背馳しない限りにおいてのみ産業というものは育成をされ、助長されてきたという事実を多く知っておるわけでありますけれども、確かにアメリカのやり方というものは、外資法の規定や何かについてもそうでありますけれども、基地維持以外のものについては極力育てない。外資は別です。アメリカの外資は別で、どんどん強引に最近入ってきておるわけでありますけれども、それ以外は、日本の産業といったら、日本から入ったにいたしましても軽工業ですね、消費産業です。アメリカから来ているものは、基本的な産業をがっちりと押え込んでおるというような状態になっておるし、確かに沖繩自体の経済の観点から見ますというと、産業の開発と育成というものは、基地維持の目的に背馳しない限りということでもって行なわれてきたというこの事実は認めなければならぬと思うのですが、いかがでしょうか。
  22. 山中貞則

    山中国務大臣 米側から見れば、あるいはそういう形の経済的な施策を意識して展開した部門も確かにあると思います。しかしながら、沖繩経済全般から見れば、先ほど言われました三次産業の七三%というウエート、これはまことに戦前の状態から見ても、あるいは今日の沖繩本土各県に比べて通常あるべき姿から見ても、異常な就業・就役率であります。このようなことを考えますと、この現実に目をつぶるわけにはいきませんので、これらの現実の生存して職業を営んでおられる方々について、私たちが、基地経済の依存から脱却の過程において十分の、みずから好んでそういう形態を選んだのではないということにこたえられるだけの配慮をするということが必要であるということについては、私も同感でございます。
  23. 石川次夫

    石川委員 まあ結論的にいって、形の上だけでいえば、第三次が非常に肥大化して奇形的な産業の形になったということも、基地依存経済のもたらした結果であるし、それから、やむを得ざる基地依存経済であったということは、これは総務長官といえども認めざるを得ないと思うのです。したがって、この基地依存から脱却するためにはどうしなければならぬかということは、経済開発の根本的な条件、目標というものにならざるを得ない。  それで、たとえば電力、水道、エネルギー、金融、こういう産業開発の基本的な点は、全部アメリカの側でもって完全に管理され尽くしておったというようなことも、これは否定はできないと思うのであります。たとえば、外資の問題について言いますと、外資の問題の布令、いろいろ見てみますと、なるほど沖繩の産業開発のためにはということで、非常に美辞麗句は並べてあります。並べてありますけれども、現実には民政府の承諾を得てという一項にひっかかりまして、完全に沖繩島民の立場に立って工業が開発できる、産業が育成できるという立場での外資の導入というものは行なわれておらなかったことは、厳然とした事実でございます。この基本的な産業は全部軍が押える。  それから、たとえば沖繩でもって一番有望な産業というと、だれが考えても製糖業ということになりますですね。製糖業が沖繩で許可になったのは一体いつだとお考えになりますか、総務長官。
  24. 山中貞則

    山中国務大臣 いま許可と言われる意味がよくわからないのですが、もう少し説明していただきたいと思うのです。
  25. 石川次夫

    石川委員 地場産業として製糖業を行なうということについて、製糖業は占領後しばらく許可にならなかったのですよ。——私のほうから申し上げましょう。占領は一九四五年です。一九五〇年になって、やっと製糖業をやってもよろしいという許可が出たわけなんです。地場産業として最も中核ではないかとわれわれが常識的に考えられるこの製糖業ですら、五年間もたたなければ沖繩県民の手によって行なうことができなかったというような事態、こういうふうなことを見ると、いかにこの基地を育成するためにだけ、農業を破壊して、人が余ったら全部基地維持するために集めるというような、第一次産業を破壊してまで基地に依存するのだ、維持するのだ、こういう観点でだけ、あそこの経済というものはいや応なしに引きずられてきたということは認めざるを得ない。  したがって、われわれといたしましては、この対外収支構造なんかをみましても、御承知のように、大体一九七〇年でいいますというと、三億八千万ドルの入超であります。これは日本からの輸入ももちろん入っておりますけれども、非常な輸入依存度の高いというかたわな形になっておる。  それから産業構造というものは、先ほど申し上げたように、第三次産業というものが異常に高くて、第二次産業が異常に低い。しかも、第二次産業の中で、零細企業というものがほとんどであります。第二次産業を、全体を一〇〇といたしますと、鉱工業が一〇%、建設業が七・六%というようなことで、たとえば日本でいえば、労働人口の三三・五%が第二次産業である鉱工業産業でありますが、沖繩ではこれが非常に低い。こういうようなことで、まことに奇形的な形にならざるを得なかったというのも、基地依存経済のもたらした姿ではないのかということを言わざるを得ないし、それから、産業が非常にモノカルチャー的な性格になりまして、御承知のように七五%が農産加工だ。しかも、土地を取り上げられた非常に狭い地域の中における農産加工でありますから、これでは発展の余地はきわめて少ない、こういうことにならざるを得ないと思うのであります。  したがって、基地依存経済から脱却するためにどうするかという点でまず考えられることは、土地がこれだけ広大に占拠をされる、こういう状態であったのでは、第一次産業の農業というのは、日本に対して大体沖繩は四〇%の収入しかないということがいわれておる。これは土地が少ないのでありますから、もうやむを得ないことではないかと思うのでありますが、そういう状態をいわゆる本土並みということに近づけるためには、どう考えても、基地存在したのでは本土並みにはなり得ないのだということ、それから正常な経済の形にするためには、基地があったのではどうにもならないのだ、こういう大きな障害があります。  先ほど申し上げたように、中部地区に至っては三二・八%ぐらいの土地が占有されて、中南部のほうで横断をしてしまって、全体的な道路もできなければ、総合的なゾーニングというものも全然行なうことができないという結果になっておるわけであります。したがって、私たちは、この基地撤去ということを強く要求したいのでありますけれども、たとえそれを百歩譲って、縮小整理ということにしても、沖繩経済というものを立て直すための基本的なあり方というものは、基地がなくならなければだめである、こういうことにならざるを得ないと考えるのであります。その点は総務長官、どうお考えになりますか。
  26. 山中貞則

    山中国務大臣 究極的には私もそう思います。ただ、農業との関係になりますと、まだ公文書が届いていない旨は、おとといも答弁したところでありますが、琉球政府が計画し、そして今後相談をしていきたいといわれる、現在の基地のないもの、一応全部返されたものとしてのあと地に対するレイアウトというものが、一応明らかになっております。これは琉球政府の理想として描かれたものでありますが、それによっても、返る基地の大部分は農業用地として使うという計画にはなっていないようであります。もっとも沖繩の人口の配分が戦前と著しく変わってまいりましたし、また、沖繩経済というものも変わっておりますから、当然そういうことになるのでありましょうが、中部等において、農業等の場合は、先般も答弁いたしましたように、基地周辺農業的な収益性の高い土地利用というものに今後切りかえていかなくてはならぬだろうと考えるわけでありますが、農業においては、主として本島北部あるいは南部、そしてその他の周辺の全体の拠点等を中心とする離島、こういうものに対して見落としのないような配慮をしてまいらなければならぬと考えておるわけでございます。
  27. 石川次夫

    石川委員 たいへん抽象的な答弁で、われわれとしては納得できないのでありますけれども、やはり基地が戻って、それは農業になるかどうかわかりませんが、農業それ自体もまことに貧しい農業ですね。行ってごらんになるとよくわかると思いますけれども、日本の農業も、なるほど第二次産業、第三次産業に比べれば農家は貧しいということが一目見てわかりますけれども、しかし、沖繩の農家を見たらほんとうにみじめです。こんなみじめな農家が、一体これで生活ができるんだろうか、台風に一体このうちが耐えられるんだろうか、こういうような思いにかられざるを得ないわけでありますけれども、そういうような農業を自力的な方向に持っていくということも、やはり一つの柱にしていかなければいけないのではなかろうか、こう思うので、われわれとしては、沖繩県民の全体の気持ちとして、やはりこの基地依存からは何とか脱却をする、これは積年の願望だと思うのです。これは否定できないと思うのです。したがって、沖繩のいろいろな経済再建、経済計画というものを立てる上において基地をどういうふうに縮小するか、こういうことの具体的な提示というものがなければ、なかなか島民は納得できないのではないか。これは前の質問にも出ておりますから、繰り返すような形になっておりますけれども、この基地を撤去するための方策いかん、具体的な計画はどうなるんだというようなことについて、これは総理、何か御所見があれば伺いたいと思うのです。
  28. 山中貞則

    山中国務大臣 総理は、すでに衆議院の決議を受けて表明しておられますように、復帰を待たないでも、沖繩基地整理縮小という院議を尊重しつつ、また、沖繩の豊かな未来図の設計のための巨大な支障となっている基地整理縮小というものを、積極的に外交努力を展開しつつ、県民の期待にこたえたい旨述べておられますし、事実そのような決意をもって進んでおられるようであります。したがって、沖繩における米軍が、予算上の問題とかあるいは戦略上の問題とか国際関係、なかんずく極東の情勢の緩和、変化等によってそれぞれ撤収していくでありましょう、そういう未来図をいまここで完全に設計をしてみても、それは事実の問題と日時において隔たりが——しかも、的確につかみ得ないものでありますから、琉球政府あたりのそういうあるべき未来図というものは、これは真剣に検討させていただく参考資料としながら、すみやかにそういう未来図の描ける沖繩になるような努力を絶え間なく続けていくことだ、これは今後復帰しても残された課題であると考えております。
  29. 石川次夫

    石川委員 実は向こうから返ってくる内容を見ますというと、那覇市内にありますところの与儀のガソリンタンクあるいは石川ビーチあるいはまた八重山、それから宮古島におけるところの民政府の支所、これは当然引き揚げていくものですね。そういったものだけで、目ぼしいものは何ら返ってきていないという現実を見ると、これから先一体どのぐらい基地が戻ってくるんだという不安を強く持たざるを得ないと思うのです。いま決意の御表明をいただきました。決意だけでは納得できないと思うのです。決意だけではなくて、早急の間に具体的にはこうしたい、こうするのだという決意の表明というものがなければ、沖繩島民はなかなか私は納得できないのではないかと思うので、この点はよく考えていただいて、一体どのぐらい、いつごろまでにそういうふうな具体的な計画ができるかという点があれば——あればというよりは、つくってもらわなければならぬと思うのですけれども、その点、総務長官から御答弁を願いたいと思うのです。
  30. 山中貞則

    山中国務大臣 これは外交折衝の問題でありますし、いまここでどの飛行場がいつ返る、どの基地がいつ返るということが、なかなか私としても見通しは立てにくいところであります。しかしながら、先般来答弁もいたして、例にあげておりますように、那覇市が返ってくれば県庁所在地になる。そのときに、県庁所在地の中で牧港住宅街というものが、都市計画の上にいかに必要な、かつまた切実な場所であるか等については、外務大臣も同感の意を表しておられますし、したがって、折衝の過程においても、B表の注にわざわざ別掲してA表を引っぱってきてあるくらいでありますので、これらの問題を一例といたしますが、姿勢はこのような考え方でもって、すみやかに沖繩県民のために返さるべきものについては、本来の沖繩県民の要望に沿えるように今後も努力を続けていく必要があるとしか、具体的な計画をいまここで申し上げる立場にないということであります。
  31. 石川次夫

    石川委員 その程度答弁でしたら何回も繰り返し聞いておりまして、そのことだったら沖繩島民はもう聞き飽きた、もっと具体的な提示がないのかという切実な気持ちというものは否定できないと思うのです。それで、何らかの近い機会に、具体的にどうこうということが言えないなら、面積でもいいと思うのですよ。こういう面積のうち大体このぐらいはいつまでに返し、将来は、われわれの立場からすれば全部撤去するには大体どのぐらいで、大体どのぐらいずつ返さしていくのだ、何年度にはどのぐらい返させるというような見当をつけただけでも、私は、だいぶ島民の気持ちを安堵させるに役立つのではないかと思うのですが、そういうこともできませんか。
  32. 山中貞則

    山中国務大臣 私は外交権を持っておりませんので、それ以上の答弁をいたしかねるわけでありますが、私としては、いままで申し上げたとおりの姿勢をもって、外交権の持ち主である外務大臣あるいは全体を総理する総理大臣に対してそういう御要望を申し上げ、また、それらの線に沿って努力しようという御決意の表明もあっているということにとどまらざるを得ないわけであります。
  33. 福田赳夫

    福田国務大臣 お尋ねの基地の問題につきましては、先般衆議院において御決議があった次第でございます。政府は、それに対しまして、御決議を尊重して全力を尽くすということを厳粛にお答えをいたしておるわけでございますが、これからの基地返還の問題は、やはり極東の情勢、沖繩を含むわが国をめぐる国際環境、これが非常に大きな影響を持つであろう、こういうふうに考えておるわけであります。  しかし、それを待つまでもなく、沖繩本島における中部地域に非常に基地が密集しておる。この問題に、私は着目をいたしております。また、レクリエーションの施設、そういうもの等におきまして何かできないか、さらには、沖繩における米軍の機能を維持しつつも、この機能を越える施設の提供がありはしないか、そういう点につきまして、ただいまアメリカ側と話を始めております。その実現は、これは沖繩返還後の問題になると思いまするけれども、ともかく、もうすでに話を始め、鋭意この話を煮詰めていきたい、こういうふうに考えておるのでありますが、長期の見通しは、ただいま申し上げましたような事情で立ちかねると申し上げるほかはないのであります。
  34. 石川次夫

    石川委員 基地に依存する経済というのは消費放漫型になる。基地の収入というのはどうしても域外に流出をする可能性が多くて、域内の波及効果というのは生まないのです。こういうきわめて不健全な経済になっている。したがって、そういうものから自力でもって自分で産業を興し、自分の国で自給自足をし、そして自分の足で立ち上がりたい、これが島民の切実な気持ちで、それの障害をしている最大のガンは何かといえば、だれが見ても、これは基地以外の何ものでもないのです。したがって、その基地がどういうふうに縮減をされ撤去をされるか、この見通しが立たないで、アメリカと交渉をしていますから、そのうち何とかなるでしょうという程度答弁で、島民に対してあめを与えたと思ったら、たいへんな間違いではないか、われわれはそう言わざるを得ない。  そこで、私はひとつ外務大臣に伺いたいのでありますけれども、サイミントンの小委員会の議事録、おそらく御存じだろうと思うんです。その中にいろいろなことがいわれております。われわれとしてもかんにさわることがたくさんあるし、国民が聞いたら腹が立つことはたくさん出てくるわけですが、その中の一つの例といたしまして、この基地公害で、騒音がうるさくて困るというようなことが起こっていることは確かである——これはアメリカの高官が言っているのですよ。だが、その問題について、日本政府は、一向われわれに対して、正当に住民の利益を代表して言ってこない、だからわれわれは、のうのうとして基地に安住できるのである、こういうことばが責任あるアメリカ政府の代表として言われておるわけです。あと一つ。日本側が「用意を整えてくれるならば、殆んどすべての又は全部の施設を移転する用意があるという立場を常に日本政府に対してとってきた。」ところが、それができないのは、日本政府が無能力なためである、こういうことも言われておるわけであります。でありますから、われわれは、国民の利益に立って、基地公害の点を相当強腰に外務省は折衝してくれているんだと思ったところが、サイミントンの議事録が——これはうそならうそで、あなた方抗議してくださいよ。非常に弱腰で、何にも国民の利益を代表して言っていないんじゃないか。日本政府は何にも言ってこないし、日本政府は無能力だ。こういうような態度でアメリカと折衝しているとするならば、基地を縮小してもらいたい、撤去をしてもらいたいなんということは、決意の表明が幾らあっても、国民は全然納得できないとぼくは思うのです。一体どのくらいの決意——決意というとおかしいんですけれども、ほんとうに基地を撤去させる、あるいは徹底的に縮小をさせる、こういう決意を外務大臣はお持ちなんですか。それとも、先ほど言ったのは全然事実無根であるというようなことをおっしゃるつもりがありますか。
  35. 福田赳夫

    福田国務大臣 基地公害というような問題につきましては、わが国といたしまして、ずいぶん米軍当局に対しまして注意を喚起し、要請もいたしておるんです。おるんですが、この注意や要請が行き届かない。なぜかというと、これは沖繩が三権を保有しておる、こういうことに基因するわけであります。今度は返還になりますれば、これは内地と同じように、もうより以上の強力なる発言を持ち得るわけでございまするから、何とか早く返してください、これがかなめじゃないか、私はそういうふうに考えておる次第でございます。どうかひとつ御協力のほどをお願い申し上げます。
  36. 石川次夫

    石川委員 基地公害で騒音がうるさくて困るというのは、私は別に沖繩のことを言っておるんじゃないんですよ。基地全般のことについて言っているのですよ。基地全般のことについて、公害がうるさくて困ると国民は訴えている。それはアメリカはよくわかっている。しかし、政府のほうからは何にも言ってこないじゃないか、だからわれわれはのうのうとしているんだということを言っているのは、別に沖繩だけの問題ではないんです。それをうそだというんなら、うそだということをはっきりアメリカに抗議したらいいと私は思うんです。抗議もできないようなかっこうで——サイミントンの小委員会というのは、これは相当権威のあるものだとされておるわけですね、小委員会ではありますけれども。これはフルブライトとサイミントンが中心になって、アメリカの側の高官と一緒になって小委員会を設けているわけです。でありますから、こういうふうな態度でアメリカと折衝を続けるんなら、われわれは基地を縮小いたしましょうという決然たる決意を示すんだと言ったって、われわれは絶対に信頼できない。おそらく日本国民全体が、いままでのような交渉の態度であるならば、基地の縮小について期待ができるとはごうまつも考えられないんじゃないか、こう思わざるを得ないのです。
  37. 福田赳夫

    福田国務大臣 内地を含めてのお話だということでありますが、いま施政権というか、この内地におきましては、これは厳重に、そういう問題がありますれば抗議をしておるわけです。また、要請もしておるわけです。それに対しまして、アメリカ側におきましても協力もしておる。しかし、わが国においてなすべき問題というのが非常に多いのでありまして、そのわが国においてなすべき問題、たとえば、騒音にいたしますれば騒音防止のための諸施設、そういうものはできる限りのことをやっておる。今後もますますそういう問題に留意していくということは、しばしば申し上げているとおりでありまして、これは御承知のとおりでございます。
  38. 石川次夫

    石川委員 一応そういう話をしているのかもしれませんが、アメリカ局長と向こうのだれかと窓口になってやっておるのかもしれませんが、声が小さいんですよ、言っているとすれば。堂々と胸を張って堂々と要求をする、こういう姿勢が皆無なんではないか、そう思わざるを得ないのです。こういうことが堂々と議事録に載せられて、それで言われておるような態度であることがほんとうだとすれば、われわれは、どうも基地の縮小という問題については全然期待ができないということを言わざるを得ない。もっと腰を据えて、沖繩島民の気持ちになってください。とにかく、平和と豊かなという二者択一を迫られたら平和をとるんだ、こういう非常にせっぱ詰まった気持ちにおちいっている沖繩県民気持ちに立つならば、われわれは、いままでのような交渉の態度では何か——たとえばベトナム戦争にしてもそうですよ。あれは、白色人種の手によるところのアジア人に対するところの残虐な、理不尽な殺人行為です。これに対して、協力いたしますと政府は言いました。そのうち爆撃を開始をしました。爆撃は戦争終結のために賛成ですと言って協力をいたしました。爆撃をやめました。やめたら今度は、平和のために大いに歓迎をすると言いました。まるっきりもう腹話術でもって、アメリカの言うことをそのまま口移しに言っているんではないかという印象を国民は強く持っているし、また、サイミントンのこの議事録を見ますというと、まるっきり日本人は何も言ってこないんだというような印象を与えているということは、国民にとっては非常な不満だと思う。したがって、この沖繩県におけるところの基地の問題にいたしましても、縮小するために、国内においては、内弁慶かどうか知りませんが、決然たる決意というふうな態度を示すかもしれませんけれども、私は、とても期待ができないんではないかというのが偽らざる国民気持ちではないかと思うのです。したがって、この基地の問題については、いつまでには必ずどうこうしますということをちゃんと示すということを確約をしてもらいたいと思うのです。その決意がない限りは、私は、沖繩県民は絶対に、今度のあめとむちの、あめも全然もう無意味である、ナンセンスだということに受け取らざるを得ないのではないかと思うのです。再度外務大臣の御答弁を願います。
  39. 福田赳夫

    福田国務大臣 さような長期計画につきましては、先ほどから申し上げておるとおりで、これはここで確約いたしかねます。
  40. 石川次夫

    石川委員 だから基地依存経済は、いつまでたってもどうにもならぬということにならざるを得ないと思うのです。で、そのあとあとのことについてはまた経済問題で触れますから……。私は、いまの答弁に非常に、私は国民の立場に立って、怒りを感ぜざるを得ないのです。沖繩の、平和を愛する心、経済再建を何とか自力でもってやってのけようとする気持ちに相反するいまの答弁だといわざるを得ない。  それから、次に問題を移しますけれども、きょう、松浦委員の要求にこたえて、この三億二千万ドルの一部の内訳について出されたわけでありますが、七千万ドルの内訳についてはまだ出てきていないようであります。いま見ただけでは、私は、これに対する内訳がどうのこうのということを申し上げられないのが非常に残念でありますけれども、この三億二千万ドルという総額、これが妥当、公正なものであるのかどうか、アメリカ側の要求は一体どういうものであったかということを、結論的でけっこうでございますから、外務大臣から伺いたいと思うのです。
  41. 福田赳夫

    福田国務大臣 アメリカ側の要請は、これはかなり多額なものであったんです。これは交渉の機微に関する問題でありますので、その数字を申し上げることはできませんけれども、三億二千万ドルどころのものじゃないのであります。これは相手のある交渉の問題でありまするから、私どもといたしましても、できる限りわが国の負担を少なくしたいということで、粘りに粘った結果の結論が三億二千万ドルであると、こういうことであります。その内容の概略につきましては、お手元に差し上げた資料のとおりでございます。
  42. 石川次夫

    石川委員 実は、これはあまり確たることとしてお話はできないのでありますが、私も金融界に実は友人がありまして、ドル・ショックでもって世界じゅう全部、各外国為替市場というものを閉鎖をいたしました。日本だけは、これを依然として閉鎖をしないで続けました。そこで、日本の大手の商社やその他が相当多くの利益をおさめたのではないかというようなことが、国会でも論議の対象になったわけでありますけれども、私の友人、名前は言えませんが、どうもこれは沖繩がからんでいるなということを言っておりました。そのことは、そのことによって円の切り上げによる損失というものを、何とか為替市場を開いて続行させていく中でカバーをして、それで沖繩の買いものというものをなるべく安く押えても損がいかないように操作をしているなという話を聞いたことがございます。しかし、そのことは確報ではございませんから、そういうことをある特定の筋ではうわさをされておる、こういうことだけを一応申し上げておきたいと思いますけれども、しかし、私は三億二千万ドルという買いものが、はたしてそれが妥当かどうかということについて非常に疑問を感じておるんです。  ということは、沖繩電力あるいは水道、あるいは銀行、三公社の基本的な財産というものは沖繩県民のものだというふうに、沖繩県の人は考えておったわけです。ガリオアの問題やその他は、一応ここでは繰り返してお話は申し上げませんけれども、したがって復帰の際には県民に譲り渡すべきものではないか、こういうふうに考えておったわけです。県民が非常な労力を吸い上げられて、ばく大な利益を出したこれらの利益というものは、米議会でも証言されたことがあるのでありますけれども、いずれは県民に移管するものであるというふうにされておりました。沖繩の立法院でも、これらの資産の奪い取りに対しては反対の決議をしたのでありますけれども、しかし、いつの間にかアメリカの財産になって、日本の政府がこれを買い取らなければならないような状態になってしまっておったわけであります。御存じだと思うのですが、琉球政府庁舎の入り口には、これは琉球住民に献呈するという堂々たる看板が出ておったわけですね、琉球政府に献呈をする。ところが、いつの間にかこれはアメリカの財産になっちゃって、日本が買い取るということになってしまった。これは、沖繩県民としては何としても納得がいかないだろうと思うのです。  沖繩があの基地維持するために非常な犠牲を払っておる。先ほど私が申し上げたように、決して基地経済によるところの恩恵の受益者ではなくて、非常な損害の負担者であった。そういう犠牲を払ったがために、沖繩基地というものはアメリカの意図どおり維持されてきた。それから、施政権者として当然やらなきゃならぬ、たとえば琉球政府の建物を建てるなんていうこと、その他の問題も、たとえば水道にしても電力にしても、突き詰めていえばそういうことになると思うのでありますけれども、施政権者として当然なさなければならなかった道路とか港湾の問題、そういうものもみんないつの間にかアメリカの財産だということで、買い取らなきゃならぬという必要が一体あったんだろうか。私は、金を払うというのじゃなくて、逆にいままで維持をしてきた、そういうことによって、これはおつりが出て余りあるんではないかと思うのです。払うこと自体が私はおかしいんではないか、こう考えるのですが、外務大臣はどうお考えになりますか。
  43. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいまの琉球政府のビルにつきましては、これは一億七千五百万ドルという資産の評価ですね、その中には入れておりませんでございます。その他のものにつきましての御言及でございますが、これらは沖繩県民にとりましても有用な資産である。これを米軍が置いて帰るわけでございます。そういうようなものに対しまして、私どもといたしましても何かの支払いをいたしたい、こういうふうに考え、これを三億二千万ドルの中につけ加える、こういうふうにいたした次第でございます。
  44. 石川次夫

    石川委員 それじゃこれはどうお考えになりますか。琉球銀行と三公社の利益、これはどのぐらいになっておりますか。——これは、じゃ、時間があまりありませんから、私のほうで一方的に申し上げます。  土地の無償使用、これによる利益が四百十五万ドル。地代が不当に安い、これに対する利益。それから不法行為の損失補償というものは、要求に対して二〇・四%しか満たされておらない。こういうのを一九四五年から大体一九六八年まで計算した資料というものが、こまかに国会図書館の資料の中にも出ておるわけであります。この金額が十二億ドルを下らないであろう、こういうふうになっております。したがって、当然この利益は還元されるというふうな約束があったところから考えても、十二億ドル以上もアメリカ人はそれによって利益を受け、あるいはまた、アメリカ施政権者として当然行なわなければならなかったというような財産があり、そういうものを買い取るということは不当ではないか。逆におつりが出てきても当然ではないか。あなたは、たいへん安く買ったというようなことを言っておりますが、私は妥当だとは考えられない。これはむしろ何か、のしをつけて向こうから進呈をしてもらって、なおかつ感謝の意を表してもらうことぐらいしてもらっても当然ではなかったか。あなたは安い買いものをしたと言っていばりたい気持ちがあるんでしょうけれども、われわれの計算からいうと、ごうまつもそういうものは出てこない。大体大ざっぱに計算して十二億ドルというものを交渉の過程でこちらから強く要求いたしましたか。
  45. 福田赳夫

    福田国務大臣 この支払い問題は、相手のある交渉でございますので、わがほうの言い分だけできまるわけにはいかない。そこで、三億二千万ドルというのは、私はこの交渉としてはうまくいったほうだ、こういうふうな判断をいたしております。  また、資産の評価が一体どうだ、適正にいっておるのか、こういうようなお話でございますが、これは大蔵省の政府委員のほうから御説明申し上げます。
  46. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 資産の引き継ぎ関係でございますが、私どものほうで、協定の六条一項、二項によって引き継がれます資産につきまして一つ一つ評価いたしました。その結果、三公社が、先般資料としてお出ししておりますように合わせまして一億五千万ドル、それからその他で二千八百万ドル、合計いたしまして一億七千八百万ドル余りという数字になったわけでございます。これは評価額でございまして、こういうことを考慮しまして、一億七千八百万ドルのうち、かた目に一億七千五百万ドルというのを、この資産引き継ぎの項目に関する支払い額ということで交渉が妥結した次第でございます。
  47. 石川次夫

    石川委員 私は、資産の現在ある形のものをそのまま評価して安いとか高いとかという性質のものではないということを申し上げておるのです。いままでさんざん出た利益でもって十分——現在形のある財産よりもはるかに多くの利益というものを、三公社ではもうすでに受け取っておるわけなんです。したがって、それを評価すること自体ナンセンス、私はそう言いたいのです。したがって、三億二千万ドルが、肩で風を切って何か安い買いものをしたというようなことは、どう考えても私は受け取りにくい。しかもその交渉の過程で、いま何も御答弁がなかったわけでありますけれども、十二億ドルということは権威のある数字としてはっきり出されておるわけでありますが、そういった数字については、どうも触れられた形跡がない。いままでのある種の建物が高いか安いかということだけで判断をして、安い買いものをしたという考え方は、沖繩島民の意に沿うものではないと私はあえて申し上げたいのです。したがって、三億二千万ドルは安くて済んだなんて思ったら大間違いである。われわれは、おつりが出るのではないか、こう言いたいのです。  その次に移ります。その次は、沖繩経済を立て直すための十カ年計画というのが出ております、これは沖繩振興開発特別措置法のたぶん第三条であったと思うのでありますけれども。  そこで、まず前提として伺いたいのでありますけれども、琉球処分ということが再々いわれております。これは慶長年間と明治の年間で行なわれたというようなことで、沖繩の資本の蓄積はだいぶ不足しておる。この沖繩の資本の蓄積がどのくらい固定資本の形成の面で不足をしておるかということについて、これはどなたがおわかりになるか、総務長官がやっぱり御担当だと思うのでありますけれども、資本不足の内容についておわかりでしたら、ひとつ教えてもらいたいと思うのです。  どうも、資本の蓄積の計算のしかたが非常にむずかしいと思うのです。思うのでありますけれども、これは最近出ている資料によりますと、一九五五年から七〇年の間で日本においては——政府の固定資本形成だけを見ますと、五・五%しか行なわれていない。日本本土では比較にならないほど高い一人当たりの国民所得、GNPでありますけれども、八・五%なされておるということが、政府の固定資本形成の問題だけについてもいわれておる。  それから、私は私なりに計算をしたのでありますけれども、総資本形成であります。終戦後の一九五五年から六九年の十五年間です。十五年間に沖繩では五千二百十三億の総資本形成がなされております。それから、本土では百四十一兆九千二百八十一億円という資本形成がなされております。それを沖繩並みに直しますと、大体一兆四千億円であります。でありますから、この十五年間だけとりましても、本土並みという場合に、資本の蓄積というものが一兆円だけ少なくなっている。したがって、本土並みという場合には、固定資本の形成というものをどうしても充足させるということが一つの眼目となって、十カ年計画が立てられなければならぬと思うのでありますけれども、その点考慮されておるかどうかということについて、ひとつ総務長官に伺いたいと思うのです。
  48. 山中貞則

    山中国務大臣 まず、社会資本的な公共投資を中心に五カ年計画で本土並みにする。その他、教育あるいは社会福祉政策、こういうものもほぼ五カ年で本土並みにするという目標をもって予算編成を進めてまいりたいと思います。
  49. 石川次夫

    石川委員 私が聞きましたときに、資本蓄積の不足というものがすぐに出てこないというような状態では——私は経済問題についてだけ申し上げているのですよ。経済の再建計画といいますか、そういう問題についてだけ申し上げておるのですが、いま言ったように十五年間で一兆円の資本の蓄積、いわゆる総資本の形成というものが本土並み考えた場合にはおくれておる、こういうことになるわけであります。  それから、それ以外にもいろいろ資料があるんでありますけれども、たとえば琉球処分というのは慶長年間と、第二次には明治七年だ、一八七二年だ、こういうことになっておりますが、それからずっと引き続いて琉球処分というものが恒常的に行なわれてきたということは、おおうべくもない事実であります。たとえば国税の問題で言いますと、大正九年に国税を納めたのが三百八十一万円、それに対して沖繩に戻ってきたのはわずか七十二万円であります。こういう点で、沖繩というものは苛斂誅求というものをほしいままにされてきた。昭和十五年になりますとだいぶその差が詰まっておりますけれども、しかし、それでも納めた税金の半分くらいしか国税としては戻ってきておらない。こういうことで、なおさら沖繩県民の疎外感というもの、差別感というものを、こういう経済的な数字の面でも身にしみて県民は味わわされてきたということは、まぎれもない事実であります。そういうような以前の問題を除外して考えることはできないのです。あの凄惨な戦争によってあの国土が荒廃に帰したというような事実、それを立て直すためにはたいへんな資本というものも投入しなければならぬという事実、こういうものを除外したごく最近の十五年間を見ただけでも一兆四千億円、こういうような資本の蓄積の差が総資本の形成の中だけでもある。  ところで、これは農林大臣としての総務長官に伺いたいのであります。  たとえば、一次産業というものはいまのままでは困る、何とかしなければならぬ、これは当然の結論だろうと思います。そこで農業基盤整備事業、政府の出した資料によりますと、耕地一ヘクタール当たりの土地改良、これは一九七一年、ことしの予算で本土は三万四千六百六十円、沖繩は四千九百四十円。農業の問題は、あとで同僚の議員から質問が出ると思いますから、一つの例として申し上げたいのでありますけれども、本土に対して一四・三%しか一ヘクタール当たりの土地改良費は予算がことしは組まれなかった、来年は初年度であるから、沖繩が返ってきた、まあお花をつけようということで、総花的に相当大量な要求が出ております。三千二百億円といわれております。その中で土地改良は一体どうなっているかというと八千七百九十円ということでございまして、これは本土に比べると二二%にしか当たっておりません。ようございますか。こういうことで一体本土並みということになるのはいつの日だろうか、こういう不安を沖繩の農民は持たざるを得ないと思うし、あそこはほんとうに土壌というものは地味が肥えておりませんから、どうしても土地改良の必要は強く要請されてしかるべきだと思うのであります。その土地改良費が、本土並みといいながら、わずかに二二%にしかなっておらないという事実が一つ。  それから、漁港について言いましても、使用可能の港というのは、海岸線との比較においてでありますけれども、本土に比べて沖繩ではわずかに三%です。これは失礼かもしれませんが、一番日本で低位置に位しているといわれております鹿児島を例にとってみますと、鹿児島と比べても可能の漁港というものはわずかに六%であります。  こういうような状態でありますので、この資本の蓄積のおくれというものは戦前からずっと積み重なってきているわけでありますけれども、これを埋めるという一つの目標、この目標を立てた上で十カ年計画というものがつくられなければいけないのだ、こうわれわれは、県民の立場に立ったときに考えざるを得ないのであります。その点は通産大臣も関係があることでありますし、農林大臣も大いに関係のあるところでありますけれども、お二人から、この資本の蓄積のおくれ、固定資本の形成のおくれ、こういうものを押えて、これを十カ年計画の中で完全に消化して、何とか本土並みにするのだ、こういうような決意というものは、裏打ちをされなければ県民は納得できないであろう、こういうことを考えざるを得ないのでありますが、どうお考えになりますか。
  50. 山中貞則

    山中国務大臣 土地改良は確かに本土に比べて、一九七二年、本土の四十六会計年度でいえば二二%にしか達しておりません。また漁港については、これは海岸線延長百キロメートル当たりの指定漁港数でありますから、沖繩本土について、本土のほうは百キロ当たり二七%でありますけれども、沖繩のほうは二七%の三%ではなくて、百キロメートル当たりの使用可能漁港というものが三%であるということになると思います。この点は、私どもも、現地を見てもすぐわかることでありますし、漁港については、五カ年でもって各島々の漁港を本土並みの一応の水準にしたいという念願を持っておりますし、土地改良についても、これは平均投資額ではものが言えませんので、やはりそれぞれの島に応じた、あるところは基盤整備の中でも水の問題になりましょうし、あるときは圃場整備になりましょうし、いろいろな形で、これもすみやかに基盤整備を本土並みに近づけていかなければならぬというつもりでおるわけでございます。
  51. 田中角榮

    田中国務大臣 基準年次が違いますが、沖繩は四十四年、本土は四十五年で見ますと、二次産業比率は、人口比率で本土は三五・二、それから沖繩は一四・六ということでございます。所得比率で見ますと、本土の三八・一に対して一七・七でございますから、先ほどから述べられておるように、基地経済をだんだんと縮小し、なお本土並み水準に近づけなければならないということになれば、当然二次産業比率を上げていかなければならないということになります。そういう意味で、これから港湾の整備、それから工業用水、ダムの築造、電力の増強というような面から、通産省所管の面についても、沖繩県民所得、また二次産業比率の増大のための基盤拡大のために施策を行なってまいるということでございます。
  52. 石川次夫

    石川委員 私の質問したのは、資本の蓄積の不足、こういう問題をとらえて、それを十カ年計画の中で消化をする、こういう一つの柱を立てなければ、経済再建をするということは、単に総花的に三千二百億円ことしは出します、要求します——要求したって、どのくらい予算化されるかまだ未定の問題ですよ。十カ年計画の中で一つの柱として、この資本の蓄積の不足というものはこのぐらいあるから、これをだんだんこういうふうに埋めていかなければならぬのだというのを一つの柱として立てなければ、沖繩島民は納得はしないだろう、こういうことを申し上げているのです。  時間がたいへんなくなってきましたのでまとめて申し上げますけれども、あと一つは、柱として立てなければならないのは、この基地依存経済のために非常に産業の形態がいびつになっておるし、特に輸入の依存度が非常に高い。去年はおそらく三億ドルでしょう。そういうふうな形でいつまでも続くわけはないのです。しかも、基地依存経済ということになれば、全部これは輸入してしまって、域内における、島内におけるところの波及効果はきわめて少ない。そういうようなことで、この第二次産業をどうするかという問題も当然課題にのぼってくるわけです。そのためには電力の問題、水道の問題、港湾の問題あるいは輸送の問題をどうするかという問題を聞きたいのでありますが、時間がございませんから、基本的な問題だけを伺うわけでありますけれども、貿易の赤字を埋めるのに一体どうしたらいいのかというのが重大な課題であります。一つは過去における資本の蓄積、固定資本の形成というものは非常に少ない、これをどうやって埋めるかということを十カ年計画の中で明らかに明示をした、そういうものでなければならない。それでなければ、正しい経済の再建も成り立たないし、沖繩県民も納得しないであろうということについてどうお考えになるかということが一つ。  しかも十カ年計画は、沖繩振興開発特別措置法の第三条の中に書いてあることは、ただ単に「四十七年度を初年度として十箇年を目途として達成されるような内容のものでなければならない。」と書いてあるだけで、この十カ年計画を順守をするというようなことの規定は、何にもないのですね。だから、単なる目標にすぎないということになる危険性がきわめて強い。これでは私は納得しないのじゃないかと思う。  それから、あとひとつまとめて質問をいたします。  これは沖繩の琉政で出しておる十カ年計画でありますけれども、一九七〇年は三億二千二十万ドル、総固定資本形成であります。それから一九八〇年になりますと、十カ年計画として八〇年は十億六千六百万ドル、これを全部合わせますと、十カ年の総固定資本形成というものは九十億九千五百四十万ドル、三百六十円として計算いたしますと、これは大体三兆円ぐらいになります。この計画は過大だとお考えになりますかどうですか。この点を総務長官に伺いたい。  それから、先ほど言ったように、資本形成の不足、それから輸入の過大、こういうものを解消するという二つの目標を持った十カ年計画であり、その十カ年計画は単なる目標ではなくて、私がおそれておるのは、この前の石炭国会ではありませんが、沖繩国会が終わるとさっぱり沖繩に関心を持たなくなるという心配がある。しかし、石炭国会の場合には、裏づけとした法律がたくさん出たのです。今度もこの補助金や何かの分については幾多出ておりますけれども、しかし、やはりそのしっかりした裏打ちとなるものがなければ、沖繩県民としては納得しないであろうから、十カ年計画をちゃんと順守をする。しかも、その十カ年計画というものは、こういう柱を立てておるのだということが経済の面で明確にされない限り、なかなかあとにこれが残ってこない。そういう点に対する沖繩県民の不安というものを解消するための手段としては、最低限それだけは守ってもらいたい、こういうことをお願いしたいと思うのですが、いかがですか。
  53. 山中貞則

    山中国務大臣 現在は琉球琉球政府の形をとっておりますから、したがって、貿易収支の赤字ということが一つの大きな問題点になっておるわけであります。また、それに従って、関税という名前こそ持っておりませんが、同じような役目を果たす物品税が置かれておることも御承知のとおりでありますけれども、復帰いたしますと、貿易収支という形では、本土でも、各県それぞれに貿易収支的なものは考えておりません。ただ問題は、沖繩経済の体質というものは本土依存経済である、また逆にいうと、沖繩県そのものからの本来産出すべき高い収益をあげるものが少ないというような体質の問題でもありますので、これはやはり、沖繩本土各県よりもすぐれた条件というものを引きずり出して、その上に立って逐次これらの体質の改善という意味で、貿易収支の今日の赤字問題というものが現実において処理されていくようにしたいと考えます。  なお、十カ年計画は、復帰沖繩県知事が原案を作成する振興開発計画の文字どおり裏でございますから、その十カ年計画について十分の計画性と見通しを持ったものとして、その初年度にたえ得るものを四十七年度予算というふうに考えておるわけであります。  昨年、琉政が提出をいたしました沖繩長期経済開発計画というものを、私も、直接作業に当たりました企画局の若手の職員十数名と、この作業の苦心談、あるいはそれらのものについて意見を交換してみまして、非常に熱心な作業を真摯に続けてきたものであるということを確認をしたわけであります。全体の金額を別段過大だとは思いません。しかしながら、その前提、あるいはまた初年度がことしの予算から想定されておること等について、一、二問題点があります。一、二の問題点は、ことしが初年度であったこと、あるいはまた、十年後には完全に基地というものがなくなっているであろうことを想定しておる。そこらのところが、現実の問題でそのようになればけっこうでありますが、それを前提にしての計画に若干危惧される点がありますから、これらの点は今後の具体的な実行計画で、よく琉政の立てました計画というものを参考、念頭に置きつつ、尊重しながら具体的な計画の策定を進めてまいりたいと思います。
  54. 石川次夫

    石川委員 時間がなくてたいへん残念であります。  実は、一番大事なことを最後に申し上げたいと思うのでありますけれども、最近の人口の流出、それからこれからの見通し、これを簡単にひとつお知らせを願いたいと思うのです。
  55. 山中貞則

    山中国務大臣 最近、ここ四、五年、人口流出が相当高くなっておりまして、ことに本土復帰がきまりましてからは、そのスピードが異常に高まっておることを非常に心配をいたしております。したがって、本土と一緒に行ないました四十五年の国勢調査も九十四万五千百十一名にとどまっておるというようなこと等、端的にあらわれておるわけでありますので、最近の流出が、一九六七年は四千四十名であり、六八年は四千七百四十七名であり、六九年は八千二百七十二名であり、一九七〇年に入りまして一万九百三十四名と、急速度にこの一両年高まっております。ことに中高卒の、これから沖繩の発展をささえていってもらわなければならない若い諸君の流出が非常に激しくなりつつある。この点は、いわゆる復帰ショックというもので、沖繩の現地の方々の企業の求人がやや手控えぎみな傾向にあることが一つの理由でもありますが、反面においては、本土のほうに魅力ある企業その他というものを見つけながら、もぐり求人などもだいぶあったようでありますが、相当な数が本土にやってきておるというようなことを意味しておると思いまして、このままの状態が続きますと、沖繩をどんなにりっぱな青写真をつくってみましても、そのにない手がいなくなってしまうおそれが多分にありますので、沖繩を過疎県にしないという問題を解決するためには、この人口流出の根源の那辺にありやをいま少しく追跡、分析をして、そして、これらの流出した若い人口も沖繩にUターンして帰ってもらえるようなところにしたいというつもりでおるわけでございます。
  56. 石川次夫

    石川委員 時間がなくてたいへん残念でありますが、いまの数字は労働省のほうの数字だろうと思うのですが、しかし、入国管理局のほうが正確だと思うのです。それによりますと、一九六八年が九千二百名、一九六九年が一万五千三百九十五名、一九七〇年が一万九千八百四十五名、こういうことになっております。したがって、だいぶ数字の開きがあります。  それで、先ほど伺ったのは、これから先どうなるかという問題についての御答弁はなかったわけであります。しかし、これは非常に行政当局の無責任ではないか。ということは、最近、アメリカのシンクタンクじゃありませんけれども、予測の方法というものは相当進んでおります。たとえば黒人暴動があって、どういうふうに発展をして、どこのうちがこわされるということが予測できるところまで、アメリカ並みじゃないでしょうけれども、この予測技術というものは発達をいたしておる。そういうところからいえば、大体復帰という、かきねが一つとれた時点でどのくらい流出がふえるかということを、中高年齢層と若年層でもって想定をするということは不可能ではないはずなんです。それを全然怠っておる。これは私は、行政上の非常な怠慢ではなかったかと思うのです。したがって、そういう人口が流出をしないために、そういう人口をどうとらえていくかということのための雇用の大体三カ年計画ぐらいを、本土復帰に際しての十カ年を目途として達成される内容の再建計画といいますか、経済計画といいますか、こういうものの中に埋めて、特に三年間ぐらいの流出の予定を立てて、その立てたものに対して、どうやってこれを県の中にとどめておくかということの対策を相当重要な柱として立てなければいけないのではないか。ということは、本土のほうの求人は少なくなったとあなたはおっしゃいますけれども、一九六七年には、本土の求人に対して充足率が一四・五%だったのです。それが一〇・四、一一・五となりまして、一九七〇年、昨年ではわずかに九・二%であります。しかも、この沖繩県の中における従業員は四十一万三千人というのが一九六七年、ところが一九六九年も四十一万四千人、一九七〇年でもおそらく四十一万台であろう、こういわれておるわけです。一つもふえないのです。しかも、本土の要求に対してきわめて低い充足率にしか当たらないでおるにかかわらず、一万五千人から一万九千人、ほとんど二万人です、こういうふうにどんどんふえておる。この人口の流出を食いとめるという具体的な方策が立たなければ、沖繩県民に対してほんとうに親身になってこの沖繩県というものを繁栄させるのだという意図を疑われてもしかたがないのじゃないか。この流出人口というものをなぜ的確にとらえる努力をしなかったか。あまり考え問題点が多過ぎるものだから、重点がしぼり切れないでおるのではないかと思うのでありますけれども、この十カ年計画は、先ほど言ったように固定資本の形成というもののおくれ、これを十カ年を目途に取り戻す。したがって、琉政の要求するものは決して過大ではないと私は考えておる。むしろ、そういう点から見る限りにおいては過小ではないか。したがって、そういう柱を立てて、その中で流出人口をちゃんと予測をして、それをどうとらえるかということを具体的に対策を立てるということがなければ、ほんとうにあたたかく迎えようということにはなり得ないのではないか、この点で非常に私は行政上の怠慢を追及せざるを得ないのであります。  それで、時間がありませんので、その答弁を求めることはできませんけれども、それに対する御所見と、それから、最初に質問いたしましたANZUS条約でありますけれども、オーストラリアニュージーランドまで含めて、沖繩本島を中心としてこれを守らなければならぬというような形に据え置かれた条約がそのままになっておるということは、どう考えてもわれわれは納得できない。したがって、状況が変わったのだから、これに対しては当然改廃をするということを通じて国民に納得をさせる。安保条約がこうだからだいじょうぶだとか、ほかの国の条約だから日本関係ないのだとかいったところで、もう宿命的に埋め込まれておるという文字がちゃんと出ておるわけです。この改廃を強く私は要請せざるを得ないのでありますけれども、その点について外務大臣と、それから、先ほどの問題について総務長官の答弁をいただいて、質問を終わりたいと思うのです。
  57. 山中貞則

    山中国務大臣 復帰時並びにそれから三年ぐらいの期間をとらえて人口流出を想定しろというお話でありますが、いまのような速度で流出をしてもいけませんし、また、先ほどの出入国管理関係からチェックしたという数字もありましたが、これはことしの干ばつ等による出かせぎ等もあるいは入っているかもしれぬと思いますので、そこらの点はさらに慎重に調べますが、この想定はきわめて困難であります。たとえば、それらの人口の中には、今度復帰いたしますと、カラーテレビも本島は全部本土並みになります。そういう場合に、東京や大阪にあこがれて出る青年たちをとめることもなかなかむずかしいでありましょうし、要するに、私が先ほど申した、雇用がゆるくなったというのは沖繩現地においてでありますから、したがって、それらの事情が、今後沖繩復帰のアウトラインあるいは生活の設計というものが逐次なされていくに従って、企業の雇用を高める進出あるいはまた沖繩の既存企業の保護育成、それを妨げるような企業の進出を拒む、あるいはまた、沖繩の各種地域における雇用事情に貢献するような企業振興を重点的に行なう、こういうような政策をあわせ行なうことによって、復帰記念事業や公共事業等が相当大量的に投資されること等の影響もおそらく出るでありましょうから、要するに、これらの自分たちの島から、県から外に出ていきたくないという、所得の手近にある県にしたいということが念願であります。しかしながら、三年ぐらいの流出に対応する雇用計画を立てろということも、あるいは復帰という、いわゆるパスポートを常時持っていなければならぬというようなことから瞬間にして解放されるということを考えますと、このことはやはり真剣に考えておくべきことの一つであると思いますので、ただいまの御忠言を受けて、なお努力をいたします。
  58. 福田赳夫

    福田国務大臣 ANZUS条約の問題でありますが、安保条約は、その対象地域フィリピン以北の一定の極東地域であります。オーストラリアニュージーランドアメリカ、これはその対象地域に含まれておりませんから、わが国に駐留する米軍がこれらの地域出動するということは絶対にあり得ない。どうか御心配ないように御了解お願い申し上げます。
  59. 石川次夫

    石川委員 流出人口の予測の問題ですけれども、これはデルファイ法とかなんとか、いろいろ科学的に進歩をした予測の方法があるわけなんです。これは公共事業を起こしても、中高年齢層の対策になり得ても若年層の対策にはなり得ないと考えざるを得ない。そういうことも含めて、若年層は一体どうなるんだ、こういう予測は私は幾らでも、やる気になればできると思うのです。非常にむずかしい予測だって、アメリカのシンクタンクなんかはやってのけているんです。日本だって相当進歩をしております。やる気がないからできないんだと、私はあえて言いたい。したがって、そういうことの予測を何とか立てて、三年間くらいの間は、そういう連中をどうやって引きとめるかということを真剣にひとつ考えてもらわなければならぬ。これを一つの柱にして、それを中身の柱にしながら十ケ年計画というものを、ちゃんと固定資本形成をどう埋めていくかということを柱として立てるという真剣な態度というものが必要で、それを守っていくんだということがなければ、県民は納得しないであろうと思うのです。それを意見として強く要望をしておきたい。  ANZUS条約は、まあ当然入らないんだからいいんだということだけでは、これはANZUS条約を読んだら、だれも国民は納得しませんよ。国民は、沖繩に駐とんして行政上の責任を持って、しかも日本周辺軍隊が駐留することのあるべきことに留意をして、それでニュージーランドオーストラリアに問題があったらそこから軍隊が出ていくんだ、こういうことになって、日本疎外でもってかってにきめられている条約ですね。したがって、日本では安保条約があるからそんなことは関係ないんだと言っても、なかなかこの文面を見る限りにおいては不安感は除けない。したがって、私は、何らかの改廃をこのANZUS条約については強く要望したいと思うのです。  終わります。
  60. 床次徳二

    床次委員長 この際、伊藤惣助丸君に補足質問を許します。
  61. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私は、この沖繩の国内関係法案の中で、いままで二回質問いたしました。それは在日米軍基地の核の問題でございます。  私が、この沖繩法案の審議中に、なぜ日本にある在日米軍基地の核の疑惑について質問するか。すでにこの委員会または返還協定委員会において、あらゆる委員から詳細に核の問題については質疑がございます。私は、いまさらそのことを繰り返す考えはございませんけれども、いずれにいたしましても沖繩には核がある。そして、その核は一九七二年返還時にはなくなっている。そしてまた、その撤去費用は七千万ドルの中に入っておる。しかし、その中身は言えない。また、核の問題については、米国の最高の軍事機密であるから、その所在すらも明らかにできない。このように言われてきております。私は、そのことにつきまして、再三再四、米国の最高の軍事機密かもしれませんけれども、しかし、この核問題については、日本国民はもちろんのこと、沖繩県民も非常に心配している、そういう観点から見まして、核はほんとうに撤去されるのだろうか、あるいはまた、核が撤去されるときにはどういう方法で撤去されるのだろうか、核事故が起きやしないか、こういう心配もあるのであります。私は、そういう面から言いましても、政府は前向きで国民の疑惑に答える責任がある、このように言い続けてきております。  特に指摘いたしたいことは、毒ガス撤去のときであります。政府と米軍が十二分に打ち合わせをした上で撤去作業を行ないました。しかしながら、残念ながら毒ガス事故は二回起きました。そこで、その当時の状況を私たちは調査いたしました。そういたしますと、米軍人あるいはまた米家族、米国民間人、この方々には、毒ガス撤去については解毒剤がちゃんと配付されております。わが日本人はどうかといいますと、そうではなくて、ただ朝早く起きて山に逃げた、あるいはまた仕事を休んで避難した。幸い住民には直接影響を与えるような事故がなかったわけでありますが、同じように、核の問題についても、私はひそかに、この撤去作業の中でもしか事故が起きたらどうするのだろうか、それについて、また政府は、どこまでも米軍を信じて何にもしないで、七二年返還まで手をこまねいて見ておって、そうして一切米軍責任があるということだけで責任がとれるかどうか、私はその点については、現在の政府の態度にたいへん疑惑を持つのでございます。  いずれにしても、そういった沖繩の核問題——国民は、米軍沖繩にいる限り、また米軍の核部隊が存在する限り核は撤去きれない、必ずや核隠しになるのではないか、こういう疑念も持っているのであります。ましてや、その質問に政府は前向きに答える何ものもなく、ただ単に、総理とニクソン会談の中でそのことは明確にしているのだからそれでいいんだと、その点に集中しているわけであります。私は、こういった面から、この在日米軍基地についても——二十数年前、核持ち込みについては事前協議を通じて持ち込ませない、いわゆる核というものは事前協議の対象とし持ち込ませない、こういう意味の岸・ハーター交換公文等を通して国民の疑惑を晴らしたわけであります。しかしながら、御存じのように、米軍の共産圏に対する極東戦略というものは、いかなる部隊にも核装備できる、または常に核の訓練をしている部隊がございます。日本においてもそういう部隊の存在は、これはもう天不周知の事実であります。したがって、私たちは、そういう部隊がいる以上、さらにまた沖繩にそういう部隊が存在する以上は、やはり核の存在、これは否定することはできないのじゃないか。こういう点から、この国会において非核三原則を院の決議とした。そしてまた、われわれは特に院の決議というものを尊重する立場からも、少しでも疑点があれば晴らさねばならない。そういう点で公明党は、非核調査本部を設置いたしまして核基地の調査を行なっているわけであります。  そこで、先日私が横田の問題について幾つかの疑点を申し上げました。一つは、横田にはシンボル4というファイアシンボルがあること、第二番目には、その核のための消防訓練が行なわれているということ、または暗号であるヨギ・ベアというものが運ばれたということ、さらに核の戦術戦闘連隊であるところの四七五という部隊の司令部が横田にあること、さらにB52の部隊である三七六戦略空軍が横田にいること、そういう点を私はあげまして疑惑を指摘したわけであります。それについて簡単に政府から答弁願いたいと思います。
  62. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 前任の防衛庁長官のころに非常に詳しく御指摘になったという話は、私も就任いたしましてから聞いております。非常に重要な御指摘でございまするので、事務当局に、十分調査をしてよく私にも認識をさせてくれるようにということで話し合っておるわけでありまするが、シンボル4の標識のある弾薬庫には、通常の弾薬類のうち比較的危険度の高い弾薬類が入っておる。4から7までありまして、それを収容しておるというふうに聞いておりますが、御説の点についても今後ともわれわれも十分留意いたしまして、万間違いのないようにしたいと思いまするが、横田に核があるということは、これは絶対ないと私ども確信しております。  それは、あれだけ長期にわたり、しかもどろ沼的な様相を呈しましたベトナム戦線におきましても、米軍は核を使いませんでした。それから、よく御指摘がありまするように、現在米中会談が気がまえられつつ、極東の情勢が徐々に雪解けに向かっておるというようなことがいわれまするときに、日米安全保障条約、それからまた非核三原則というものを無視してまで一体核を持ち込まなければならぬだろうか、これは私、ないというふうに思うわけでございます。
  63. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 防衛庁長官がそう明確におっしゃる根拠ですが、まず、シンボル4が核ではない、こうおっしゃいますけれども、それはどんな根拠に基づくかということですね。私は前回も申し上げましたように、このシンボル4、沖繩調査に行って初めてわかったわけでありますが、メースBの基地、これは御存じのように核専用弾頭であります。そこにシンボル4がございました。これはわが党の黒柳議員の追及もございました。現在ではございません。それから知花にございましたシンボル4、これも毒ガスの撤去の後はなくなりました。現在辺野古がございます。これも海軍の基地でありまして、これにもポセイドンあるいはまたポラリスとかサブロックというようなものがあるのではないか、こういわれている基地であります。さらにナイキハーキュリーズの基地にもございます。それはまだ撤去してございません。  ところが、わが党の非核調査本部の調査によりますと、ことしの四月から五月にかけて、三沢にミサイル部隊がございました、その三沢の部隊の建物八七三、八七四というミサイル建物がございます、そこにもシンボル4があったわけでございますけれども、それも取りました。御存じのように、横田もシンボル4があったわけでございます。ところが、その福生市長さんがそのことを申し入れたところ、基地司令官は、現在Cエリアで弾薬庫を改造しまして住宅を建てようとしております。その地域に案内して、もしあったとしても、もうこのようにないのだ、だから安心してほしいということを言ったそうであります。私は前々回にお示しいたしました写真というのは、確かにCエリアはございました。あのエリアは三つに分かれております。A、B、Cと分かれております。Cエリアは確かに取りましたけれども、まだA、Bエリアは残っております。ところが、その後私が参ったときにはシンボル4ははずしてあります。その写真がございます。そのA、Bエリアについて、じゃ全然なくなったのかといえば、からもあるけれども、入っているのもある、こういうことでございます。  そこで、長官に伺う前に施設庁長官に伺いたいのです。これは御存じのように、グラントハイツが移転される、それは横田の弾薬庫あとに移転されると聞いております。そこで、その弾薬庫のあと地にどういう計画で住宅が建てられるのか、現状について簡単にお伺いしたいと思います。
  64. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 御承知のとおりに、グラントハイツ、グリーンパークの住宅地帯を横田の基地の中に移設をするということで、数年前からこの問題についての準備を行ないまして、現在第一期工事を横田の基地の中に進めつつあるわけでございます。そうして、その場所は弾薬庫地帯でございまして、私も現地に行きましたけれども、その地帯は、弾薬庫はもうほとんど弾薬庫としての使用をされておらない、そこがグラントハイツの移設の予定土地、こういうことになりましていま進捗をいたしておるところでございます。
  65. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 施設庁長官に伺いますが、私の聞くところによりますと、三期ないし四期に分けて弾薬庫を移転する、そしてそこに住宅を建てる、このように伺っておりますが、その点いかがですか。
  66. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 お話しのとおりに、現在第一期工事をやっておりまして、近く第二期工事にかかります。将来計画といたしましては、お話しのように四期までかかるわけでございますが、その弾薬庫を他に移転をするということでなくて、弾薬庫のありましたところにこの住宅を建てる、こういうことで、弾薬庫そのものはもうなくなる、こういうふうな状況でございます。
  67. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 施設庁長官、それは正確な答弁ですか。要するに私が申し上げたいのは、じゃBエリア、Aエリアはいつから工事にかかるわけですか。
  68. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 現在は、いまのA、B、Cのエリアのほかに、北のほうにあります弾薬庫の地帯に住宅を建築中でございます。
  69. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私が伺っていますのは、現在Cエリアは完全にもう掘り起こして、そのあとはありません、その反対側のBエリア、Aエリア、この点であります。そして、施設庁は間違いなく、どこの地域にも弾薬庫はつくらない、つくらせない——あるいはまあ、つくらせないとはいえないでしょうけれども、弾薬庫はつくらない、こういうことになっているわけですか。これはきわめて大事なことでありますから、明確に伺っておきたいと思います。わからなければ、電話かけて聞いてください。
  70. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 お話しのABCのエリアというのがよくわからないわけでございまして、現在のグラントハイツの移設計画のところは間違いなく弾薬庫でありまして、そこのところは、弾薬庫をすでに弾薬庫として使っておりませんので、そこのところは住宅の予定地になる、こういうことでございます。  なお、一部弾薬庫の移設という話も出ておりますが、まだあまり具体的なことになっておりません。
  71. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 申し上げます。これが横田基地の鳥瞰図であります。施設庁長官はこの弾薬庫——これが弾薬庫であります。Cエリアはここです。Bエリアはこのまん中辺です。Aエリアがこの端です。そして、これによりますとパーマネントビルディング、すなわち永久の建物が、この黒いところがそうでありますが、五カ所ございます。そして、この弾薬庫のA、Bエリアは一部、からはございますけれども、まだその中にあるという話もございます。  施設庁、もう一度伺いますが、検討中と言いますけれども、この弾薬庫をなくしてほかにつくるわけですか。もし弾薬庫をなくすとするならば、ほかに弾薬庫をつくってあげる必要はないと私は思うのです。
  72. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 現在までのところ、弾薬庫を移設するという具体的なアメリカからの要求は、まだわれわれとしては承知いたしておりません。
  73. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それでは、今後はそういう要求があってもつくらない、そのように確認してよろしゅうございますか。
  74. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 今後要求がございましたならば、その必要性等につきまして、私どもとしては慎重に検討いたしたいと考えます。
  75. 床次徳二

    床次委員長 伊藤君に申し上げますが、補足質問でありますので、簡潔にひとつお願いしたいと思います。
  76. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 質問が済みませんから要点を早く申し上げますが、まず防衛庁長官、前回にも、シンボル4というものは、沖繩にあるシンボル4はわからぬけれども、国内にあるシンボル4は通常兵器である、こうおっしゃったわけです。しかし、先ほども申し上げましたように、この三沢にありましたシンボル4は、横田とともに取ったわけであります。どういうものを根拠にシンボル4には核がない、こういうふうにおっしゃるのか、その根拠について伺いたいと思います。
  77. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 御指摘がありましてから、防衛庁として先方に照会をいたしまして、それを確認したわけでございます。
  78. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 横田のどの方に照会したわけですか。
  79. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 防衛局長から答えさせます。
  80. 久保卓也

    久保政府委員 アメリカのエアフォースのエア・ミューニションズ・ジェネラルというマニュアル、六八年改訂でありますが、この中に入っておりますので、この点について統幕の事務局第一室長から府中の司令部の、ちょっと名前は忘れましたが、大佐のほうに照会をしたというふうに聞いております。
  81. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 その根拠でございますが、私も、シンボル4が核を含む貯蔵庫である、ストレージ、弾薬庫である、こういうふうにここで申し上げるからには、いいかげんな根拠では申し上げられないわけであります。私が前回も申し上げましたけれども、本日は明確に申し上げますが、これは米国の国家消防協会認可、そして防火用ハンドブック、この本であります。この本の中に、このシンボル4というものについて詳しく書いてございます。そして、この本を見てまいりますと、核というものは一緒には貯蔵されない。本体がシンボル4で、ボンヘッド、これは弾頭でありますが、これがシンボル4に入って、起爆剤の点火線とも思われるものはシンボル1、すなわち小銃弾と同じ場所に入れられる、このようにこれに述べられてあります。そして核兵器については、このCBR兵器、毒ガスとともに、十八項目にわたって詳しくその特徴が書かれてあります。  私は、この権威ある本に基づいて、前回もその前も指摘したわけでございます。ですから、この4のついたところ、確かにファイアシンボルであります。一般のファイアシンボルではありません。武器弾薬、兵器に対する火災標識であります。しかし、これを掲示しなければならぬと明確に出ております。この中身を知らない人はシンボル4は何かわかりませんけれども、少なくともこの本を読んだ方は、ああ、あそこには高性能爆薬並びにCBRが貯蔵されているところだなということが明確にわかるようになっております。また、それがわからなければ消火ができないのであります。そして、このシンボル4には、もしか物材に火がついた場合には、消すことはない、ただ逃げろ、こう書いてあるのであります。  したがって、私は沖繩に参りまして、メースBのシンボル4、さらに辺野古のシンボル4、そうしてナイキハーキュリーズのシンボル4、さらに知花のシンボル4、みんな私はこの目で点検いたしました。これに間違いない、そう信じて、私は今回これをもとに質問したわけであります。したがって、シンボル4が核ではない、通常兵器であるというならば、その根拠を示してほしいというのが、私の第一の質問です。
  82. 久保卓也

    久保政府委員 お手元にある資料もあるいは確かなのかもしれませんけれども、私どもも、米側と連絡した上での正式の軍の資料でありますし、もう一つは、申し落としましたけれども、そのファイアシンボルに対応する、つまりそれぞれの、どういう弾薬を入れるかというクラス1から7までの資料については、米陸軍のマニュアルでありますセーフティマニュアルというのが七〇年版でございますけれども、これに基づいて資料として整理をいたしております。
  83. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私が指摘しておりますのは米空軍発行のものであります。
  84. 久保卓也

    久保政府委員 私どもがいまの資料に基づいて米側に照会したところ、それと同じであるという返答を受けました。
  85. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そうしますと、この資料はインチキだというわけでございますか。
  86. 久保卓也

    久保政府委員 インチキであるとは申しません。それはそれなりのものであるかもしれませんけれども、もし調べる必要があれば、お貸しいただいて照合させていただきたいと思います。
  87. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 たくさん質問ありますからね。私は、この問題についてはこれで結論にいたしますけれども、少なくともこれに基づいた消防訓練、これに基づいた標識がある。私は、在日米軍基地に核があるなんて、まだ一回も言っていない。疑いを持つのは、こういう本があるから私は指摘しているわけであります。第五空軍といえば、沖繩にもその部隊があります。ですから、在日米軍基地にも、日本にもこれがあるということは、少なくともそういう疑いがある、こういう認識なんですが、その点について防衛庁の認識を伺いたいのです。  というのは、どこまでもこのシンボル4を、この間防衛庁長官は、通常兵器だけである、核は別なんだというような発言をしているわけであります。もしこれが違うとなれば、その根拠を私は言ってもらいたいということですね。あなたはそれなりの価値のある本だと認めるならば、やはりこういうものに基づいて沖繩も取り扱かわれておった、しかし日本には核はないと言うかもわかりませんけれども、そういう認識を伺っておきたいと思うのです。
  88. 久保卓也

    久保政府委員 再々ここで御説明したごとく、また伊藤議員も御存じであるごとく、ファイア・シンボル4というのがクラスの4から7まである、そのそれぞれに通常弾薬が明記されてあるということで、私どもの認識としましては通常弾と断ぜざるを得ない。しかし、お手持ちの資料に核兵器のことが予想されるような記事があれば、私ども、それに基づいてまた米側に再照会してもけっこうだと思います。
  89. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 御指摘の点はまことに重要だと思うのです。あなたの非常に御熱意を傾けられた調査、しかも、それにある資料の解釈とこちらの照会と二途に出るということは、これはやはり疑問をはっきりする必要があると思いますから、責任をもって照会いたします。
  90. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 申し上げますが、あなたの言うのはクラス7でしょう。これはクラス8まであるのです。——申し上げますか。
  91. 久保卓也

    久保政府委員 一番初めに私はクラス7ということを、いつかの委員会で申し上げましたが、間違っておりまして、クラス8現在ございます。  もちろんこのクラス8は、爆発の危険がないとみなされるクラスのものでありまして、明示がございませんが、貯蔵量と安全距離の関係をはっきりさせてないということであります。ちょっといま資料を手持ちいたしておりませんが、あとで調べて……。このクラス8は危険性のないもののはずであります。
  92. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私が持っておりますこの米国消防協会認可、そう簡単に変わるものじゃないと思うのです。「クラス8の爆発物」「このクラスに指定される兵器の種類は、普通爆発的要素と一緒に保管されないCBR(化学、生物、放射能兵器)及び爆発物、ないし爆風や破片飛散などの危険がほとんどないような爆発物である。米空軍にはこれとは別に爆発の危険を生じるような一つの付加的なグループないしタイプの物質がある。この種類の兵器はファイア・シンボル1(火災標識1)に貯蔵されている。」こういうふうにございます。したがって、この面を見ますと、このCBRというものは、一つはクラス1に入れてある、あとはこのクラス7の中に——最後のほうであります。——言った以上は、あとでこれを私は提出します。  クラス7に含まれる兵器の種類は爆弾、ボムヘッド、これは弾頭、要するに原子物質のつく弾頭で、いまアメリカでは1CBM、ポラリス、スプリントあるいはハーキュリーズ、ポセイドン、これらの弾頭は全部ボムヘッドと言い、英語で使われております。英英辞典にはちゃんと出ております。したがって、この中にありますことは、この弾頭はクラス7として表示され、この本体はシンボル4に入っておる。そして、そのいわば点火線ともいうようなものは小銃弾と同じところに貯蔵してあるということになるわけであります。ですから、沖繩にあったシンボル4、日本にあったシンボル4、ともに核兵器を含むシンボル4である、このように認識するわけですが、その点いかがですか。
  93. 久保卓也

    久保政府委員 現在の段階では、私どもの手元の資料及び米側の証明といいますか米側の説明を信ぜざるを得ないので、私どもとしましては、シンボル4は通常弾頭、通常弾薬であろうと思っております。
  94. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いま申し上げましたけれども、これではいかがですか、これでも信じられないわけですか。
  95. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 だから、これは御指摘がありましたですから、私どもはないと確信を持っておりますが、なおひとつその資料をお貸しいただいて御納得のいくように調査したい、こう思っておりますので、御了承願います。
  96. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 調査してくださいますね。  それでは、次に申し上げます問題でありますが、これはまず前提として伺いたいのでありますが、米空軍は常に、戦略部隊あるいは戦術戦闘連隊、こういう空軍は核を持っておる、こういわれておりますが、たとえば核を持って日本の飛行場に着陸するようなことがございますか。
  97. 久保卓也

    久保政府委員 これは、日本政府が非核三原則をとっており、また、その政策に背馳しないことを米側が再々申しておりまする以上、われわれとしましては、まさかに空軍機が核兵器を積み込んで本土に来るであろうということは、予想もできません。
  98. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 絶対にないということでございますか。
  99. 久保卓也

    久保政府委員 絶対にないと信じております。
  100. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それじゃ伺います。私もあってはならぬと思うのですが、しかし、米軍が横田において核の事故の訓練をしているわけであります。その点は前回も指摘いたしました。これはどういうためですか。
  101. 久保卓也

    久保政府委員 別の機会に照会した際に米側から回答があったものによりますと、これは海兵隊を含めてでありますが、米軍は世界的な統一の基準に基づいて訓練を行なっているということでありますので、私は、核の訓練をやったというふうには承知いたしておりませんけれども、どこに移動いたしましてもそういったことが可能であるように訓練をすることは、可能性はあろうと思います。たとえばトレーニング・アンドNBCの係があるというようなことも指摘されましたが、そういうことを予想されるのかもしれないと思っております。
  102. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それはどういう内容なんですか。
  103. 久保卓也

    久保政府委員 内容については承知いたしておりません。
  104. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私がいま申し上げたい点は、飛行機による事故あるいはまた攻撃に対しての事故、いろいろあると思うのですね。当然この日本の国において、そういうCBR攻撃に対する避難計画とか訓練——わが自衛隊においても、CBRのいろんな訓練をやっているようには聞いておりますけれども、その程度のものは、これは核を持つ実力部隊を持つ以上は当然だと思うのです。ですから、その中身を私は聞いているわけであります。いかがでしょうか。
  105. 久保卓也

    久保政府委員 中身については、照会をしたこともありませんし、また、私どもの知識としても承知をいたしておりません。
  106. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それじゃ、これも時間がかかりますから私のほうから申し上げますけれども、避難計画はEWOというのです。これももちろん横田でやっております。ところが、もう一つ訓練をやっているのであります。それは、いわゆるブロークンアロー・エクササイズということであります。  ブロークンアロー・エクササイズ、これは前回も指摘いたしましたように、今年度、七一年度六月までに十六回、七〇年度は二十回、ブロークンアロー・エクササイズをやっております。このブロークンアローについては、前に防衛局長がおっしゃいましたように、これはあのスペインの上空でB52が、KC135という給油機と接触をして二十五メガトンの水爆を四個落とした、そういうときに使ったことばがブロークンアローである。ブロークンアローということばは、核事故発生せりのニックネームである。これはもうニューヨークタイムズや、またいろいろな本や何かに明らかであります。  その点を防衛局長はおっしゃったわけでありますが、しかし、ふだんこのような訓練をやっているということですね、これを私は問題にしているわけであります。先ほど申し上げましたEWO計画であるならば、これは攻撃に対する避難訓練であります。しかし、この訓練をやるからには、やはり、そういう核兵器あるいはCBRを積んだ飛行機がわが国に来る可能性があるからだと、こう考えざるを得ないわけであります。これが疑問の第二であります。それについては承知しておりませんと言いますから、答弁できますならば答弁していただきたいと思いますが、答弁できますか。
  107. 久保卓也

    久保政府委員 内容について承知をいたしておるわけでありませんが、この種のものは、米空軍であれ海兵隊であれ、日本に永久的に存在するということであれば御疑問も起こるかもしれませんけれども、そういった部隊が外国にあるいは本土に帰るわけでありますから、部隊の本然の訓練として行なうということはあり得るのではなかろうかと想像いたします。
  108. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それを極秘といいますか、一般にはわからないような方法でやっているわけですよね。——であるならば、ぼくは堂々とやるべきじゃないかと思うのですね。  そこで、きょうは新しく提示したいわけでありますが、「横田空軍基地における弾薬火災消火方法手順」というのがございます。これを見て私は驚いたわけでありますけれども、これには全部詳しく、英語と日本語で書いてあります。そして、シンボル1には何が入っている、シンボル2には何が入っている。クラス1はこういうたまで、また砲弾がこうだとか、全部入っております。  そして、私がきょう新しく問題提起いたしますことは、毒ガスのことであります。この毒ガスのクラスに、ABCDという四段階に分かれて載っております。そして、このAというものは非常に危険である。グループA、永続性である。どういうものがあるか。からしとルイサイトがある。これはともにびらん剤であります。そして、この防御器具としてはこういうものを使え、救急用具としてはこういうものを使え、消火はこうしなさいと書いてあります。また、グループB、これには毒ガス、刺激薬、煙。このグループは、ホスゲン・クロロピクリンなど致命的な肺刺激剤、青酸、青素等致命的な毒血剤。これはまた、防御衣類としてはガスマスク、ゴム手袋、ブーツ、それにエチルアルコールに入れた硫化ナトリウム液、こういうようなものを持ってやれ。それから、グループCは黄燐の詰まった爆薬だ。それで、これを吸い込むと猛毒がある。もし極少量が肉体内に入ると、血液がその毒を吸収して、これを吸い込んだと同じ結果になる。そうして一般的には死んでしまう。こういうふうに書いてあります。また、それに対する防御衣類、救急用具、消火法。グループD、焼夷弾及び早く燃えるもの、このグループはテルミット及びマグネシウム金属のごとき焼夷弾用物質、早く燃焼するもの。いろいろ出ております。  こういう点、政府は知っておりますか。
  109. 久保卓也

    久保政府委員 大体そのとおりだと思っております。  グループDは、焼夷剤とか引火性物質とか有色発煙剤その他で、特別の注意は必要ないけれども云々といったような記述も出されております。AからDまで、大体おっしゃるような分類がされていると思います。
  110. 床次徳二

    床次委員長 伊藤君に申し上げますが、補足質問でもありますし、他にも質問者が多数ありますので……。
  111. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 理事会の話し合いどおり私はやらせていただきます。
  112. 床次徳二

    床次委員長 委員会の話し合いは、さような話し合いでもって補足質問を認められておりますので、すみやかに結論をひとつお出しください。
  113. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私は、委員長、こういう大事な問題がありますので……
  114. 床次徳二

    床次委員長 もちろん大事だと思いますが、委員会の話し合いをひとつ尊重していただきたいと思います。
  115. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ですから、質問の時間についてはいましばらく容赦願いたいと思います。  それで、外務大臣に伺いたいのです。  こういう核の問題については事前協議の対象というふうに明確になっておりますね。ところが、毒ガスについてはまだないわけであります。そうして、こういうものが持ち込まれているのではないか。具体的に書いて、防御衣類も出ております。この点についての認識をまず伺いたいと思います。
  116. 福田赳夫

    福田国務大臣 毒ガスの使用につきましては、これは国際条約において禁止されておる。そういうものを米軍が保有しておるということは万々あるまい、かように承知しておりますが、もしそれで疑わしいような資料でもお持ちに相なるということでありますれば、私のほうでも調査してみます。
  117. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この問題も提起いたします。  それから、次に外務省に伺いたいのですが、四七五戦術戦闘部隊、それから三七六戦略部隊、これの部隊の内容、機能について簡単にお願いしたいと思います。
  118. 久保卓也

    久保政府委員 四七五戦術戦闘航空団は、三沢におりました部隊でありまして、現在は韓国に移駐いたしておりますので、この部隊は本国へ帰っていることになっております。それから三七六戦略航空団、これは現在SR71あるいはKC135、そういった給油機、それから偵察機などがありまして、沖繩に配置されております。
  119. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 どういう飛行機ですか。  つけ加えますが、四七五の司令部は横田にあると、われわれの調査でもわかっているわけですが、その点いかがですか。
  120. 久保卓也

    久保政府委員 四七五は、私どものほうでは三沢にあった部隊だと承知いたしております。
  121. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 伺いますけれども、わからなければ調べていただきたい。四七五部隊は核装備可能な戦術戦闘連隊でありまして、これは司令部は横田にあると、われわれの調査でわかっております。その点、もしわからなければ調査していただきたいと思います。  さらに三七六部隊、これはB52の戦略空軍である、こういうことでよろしゅうございますか。
  122. 久保卓也

    久保政府委員 三七六戦略航空団はB52とSR71が編入されておりましたけれども、B52が撤去された後にはそれはもちろんありませんで、KC135、SR71等であるということであります。
  123. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 つまり、この点も疑惑の一つであります。四二五二戦略部隊、これはB52の戦略部隊であります。そしてその部隊が横田にいるということ、一たん有事のときにはそういう部隊が直ちに横田に来れるという条件になっていること、これも大きな疑惑の一つであります。  それから、私が申し上げたい点はこのシンボル4というものでございますけれども、わが非核調査本部の調査によりますと、これは、時間がありませんから、そのカラー写真を急に伸ばしたわけでありますが、これは川上弾薬庫にございますシンボル4でございます。それからもう一カ所のシンボル4は秋月弾薬庫であります。そして、この弾薬庫に対して、私は幾つかの疑問を持っております。いま現在、私は核があると言っているのじゃないのですよ。この米国国家消防協会認可による、そのきめられた規定によってそういうシンボルが存在し、そして運用されるならば、核倉庫と思われるのではないかという疑惑であります。  最近米軍が、去年からことしにかけまして、弾薬庫をきわめて急激に移動をしていることは知っております。ただ、私がここで申し上げたい点は、たとえば現在ないとしても、二十数年の間にひそかに日本に毒ガスや核が持ち込まれておって、われわれの追及がきびしくなってきたため、あるいはまた沖繩返還と呼応して毒ガスや核が撤去されたというようなことが、あとでもしわかったとしても、これは日米間の国際信義において許されるべきことではない、こう私は思うわけであります。しかも、そういった基地について申し上げますと、数々のやはり疑惑がございます。  まず第一にこの写真の中で——総理、写真ごらんになりますか。   〔伊藤(惣)委員、写真を示す〕
  124. 床次徳二

    床次委員長 伊藤君、時間を取らぬようにしてください。
  125. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この写真は、わが党の非核調査本部で調査したものであります。  そこで、まず第一に広島県にございます秋月弾薬庫、これは広、川上弾薬庫とともに重要な弾薬庫になっております。広には、こういったシンボル4などはありません。そしてまず疑惑の第一点でありますけれども、それは、米兵には毒ガスマスクその他核防御用のマスクが配られております。第二に、数年前まではヤギがいたことがあります。現在は別な方法で弾薬庫の管理をしているということであります。それから第三番目には、この弾薬庫は常にハワイと連携がとられているということであります。次に、事故点検表によって弾頭点検が行なわれているということであります。また、以前はキャンプ座間に司令部がありましたけれども、これが現在では秋月が司令部になった。いままでの司令官、大尉が今回からは中佐に格上げされたということでございます。  さらに、川上弾薬庫であります。この川上弾薬庫については、社会党の楢崎委員より何回となく、CBガスの持ち込みについて質問をされております。第六十三回衆議院の外務委員会、また同じく予算委員会と、この弾薬庫の追及が行なわれております。従来弾薬倉庫が二十四あったものが、最近では二倍の四十八倉庫になっている。そして、特にこのシンボル4のあるところは隧道かなんかありまして、たいへんに大きな洞窟の中に弾薬が入れられてある、こういうことでございます。その点についていかがですか。
  126. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 いろいろな事例を具体的におあげでありまするが、私どもは、そういう危険な核とか毒ガスとかいうものはない。しかも、伊藤さんの質問に基づいて正式に調査、照会をしたわけでありまして、その回答が、ないといっておりますのでないというわけですが、さっき申し上げましたように、重ねて——それは国民的不安です。こういう審議の場が国民に伝わっておりまするので、よく再調査をしたいと思います。
  127. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そこで、きょうはひとつ提案をしたいわけです。  その一つは、毒ガスについてであります。先ほどからも、毒ガスは日本にはあってはならない、また前外務大臣である愛知さんも、これは事前協議以前の問題である、ジュネーブ議定書において禁じられておる毒ガスについては、絶対に日本に持ち込ませないし、事前協議なんかとんでもない、それ以前の問題である、こう言われておりますが、まず外務省に、その一九二五年のジュネーブ議定書はどういうものか伺いたいと思います。
  128. 福田赳夫

    福田国務大臣 ジュネーブの議定書は、これは戦時において毒ガスの使用を禁止しておるものであります。平時においての貯蔵、製造、これは禁止してない。これは私ども日本とすると非常に不満としておるのでありまして、これもこの条約に加うべきであるという主張をいたしております。
  129. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いまの外務大臣のお答えは、この問題も事前協議の対象とすべきだ、こういうふうに主張をする、こういうことでございますか。
  130. 福田赳夫

    福田国務大臣 ジュネーブ協定におきましては、戦時において毒ガスを使用するということを禁止しておる。しかし、平時における製造、貯蔵、開発、これは禁止されておらない、そういうかっこうになっておる。それは非常に不完全なものである、そういうふうに考えまして、わが国の立場といたしましては、この議定書の中に製造、貯蔵、開発、これまでも含めたいという努力をいたしておるということを申し上げておるわけであります。  それから、この毒ガスにつきましてはもう事前協議以前の問題だ、そういう見解でありまして、昭和四十四年七月の二十日にアメリカ政府は、わが国において化学兵器は存在しないということをはっきり申し越しております。
  131. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私は、わが党の調査によってCBR、特に毒ガス等についても、まだ本土にあるという疑惑を持っております。そしてまた、米国のその毒ガスに対する考えはどうかといいますと、外務大臣御存じのように、ジュネーブ議定書には米国は参加しておりません。もうすでに十年近く前から、CB兵器については通常兵器と同じような扱いを受けております。またそういったことは、ベトナム戦争の中にもありますように、数多くのCB兵器が使われておることも、これはもう事実であります。したがいまして、私たちは、こういう日本では禁じている兵器については断じて持ち込ませない、こういうことを再確認したいわけであります。  そこで、先ほどからいろいろな角度で申し上げましたけれども、すべてこれをいま一度調査をして、国民の疑惑を解くように努力していただきたい、私はこう思うわけであります。  さらにもう一点だけ、この沖繩の問題について伺いますけれども、SR71、これは三七六部隊の中にある、要するに沖繩から中国の領空を侵犯してスパイをして、写真をとって沖繩に戻るといわれております。その点で伺っておきたいわけですが、沖繩返還になれば、このSR71は今後絶対に中国領を侵犯しない、こういう約束を、私は日米協議委員会等においてすべきだと思います。その点について外務大臣から伺っておきたいと思います。
  132. 福田赳夫

    福田国務大臣 今日におきましても、アメリカにおきましては、SR71が他国の領空を侵犯しておるというふうには申しておりません。それから、中国から抗議も来ておらぬようであります。ただ、五回ばかり北鮮のほうからそういう抗議があったやに聞いております。しかし、沖繩返還され、わが国の領土となる。そこに駐在しますところのSR71が、国際法の原則に反しまして他国の領土を侵犯するということは、わが国としては絶対に許しがたいことでありますから、これはそのとおり処置する考えであります。
  133. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 最後に総理に伺いたいのですが、いままでの幾つかの疑問に対して、まだ不十分な面がございます。その点についてはいま一歩再調査をして、国民の前にその疑惑を晴らすようにすべきだと思います。その点について、総理のこの問題に対する見解を最後に伺って、質問を終わりたいと思います。
  134. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 沖繩の核、これは返還後は核はない、こういうことを最高責任者であるニクソン大統領と私が確約したのです。それが信用できないとおっしゃるなら、これはもう大統領並びに総理、これはうそをつく、こういうことになりますから、その点はない、かように私も確信しておりますし、大統領が私を裏切るようなことはない、どうかその点は御信頼を願いたいと思います。  また、先ほど来、日本の国内におきましていろいろの問題をあげられて、疑問がある、疑問があるというお話をされております。しかし、これまた、米国大統領は日本の意思に反して云々しない、こういうことは申しておりますので、これは確約でございますが、私は、よもやさようなことがあろうとは思いません。しかしながら、事柄が非常に軍事的専門のことでございますから、そういう意味から何か誤解を受けている、かようにも思いますので、この点は、伊藤君の出された資料等をもとにいたしまして、先ほども防衛庁長官が、さらに実情を調査する、かように申しておりますから、これは防衛庁長官の調査にまつ、かように御理解をいただきます。
  135. 床次徳二

    床次委員長 次に、松浦利尚君に補足質問を許します。  補足質問でありますので、どうぞ十分お含みの上御質疑を願いたいと思います。松浦利尚君。
  136. 松浦利尚

    松浦(利)委員 私は、先般質問をいたしまして資料を要求いたしましたが、その資料が参りましたので、その資料を具体的に質問をいたしたいと存じます。  福田外務大臣にまずお尋ねをしたいのですが、やはりもう一ぺんあなたの発言を振り返ってみたいと思うのです。それは、なぜこういうことを申し上げるかというと、このいただいた資料をチェックすればするほど、どうも疑問がわいてくるわけであります。これは抽象的な疑問ではなくて数字的な疑問であります。きわめて具体的であります。  それで、もう一ぺん御発言を読み上げてみたいと思うのでありますが、第六十五回国会の衆議院外務委員会とこの本委員会との連合審査会議録第一号二六ページ、「資産引き継ぎについて、気前よく何億ドルも出すのはまずいのではないか。」という質問に対して、「国民の税は大事にするというのが対米交渉にあたっての財政当局の基本的態度である。米国は、同時に、沖繩に多額の投資を行なった、そのうち何がしか沖繩県民のために利益になるというものがあれば、それに対する支払いがあってもいいじゃないかというのが米側の言い分である。平和的に領土が移譲されるという沖繩交渉が、あまりけちけちしたためにうまくいかないというのでも困ると思うので、公正妥当、沖繩県民はもとより日本国民に理解していただける範囲で支払いをしたい。」   〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕 大蔵大臣のとき、こういうふうに答弁しておられますね。同時に、これは先般も読み上げたのですが、同じく六十五国会の衆議院決算委員会会議録十四号二二ページ、「資産引き継ぎについて、日米共同声明第九項の中に財政及び経済上云々というのがあるが、こういったものが基礎になって政治的配慮に基づいてやるのか。」こういう質問に対して、「これは政治的配慮のもとに総額をきめて中身を理由づけをするというものではない。払うべきものは払う、払うべからざるものは払わない、どこまでもそういう考え方で積み上げをして総額が出てくるという性格のものである。」こういう御答弁を大蔵大臣当時しておられるのです。  この前、資産の買い取りではない、資産の引き継ぎだ、こう言っておられたのですが、資産の引き継ぎという考え方でもけっこうでありますが、いま私が読み上げた考え方というものは、外務大臣になられても、今日まだ変わっておられませんですか。そのとおりですか。
  137. 福田赳夫

    福田国務大臣 前段の、連合審査会ですか、そこでの私の答えは、まさに今日においてもそのとおりであります。  それから、後段の部分はこういう意味なんです。初めから支払うべき金額を幾ら、こうきめて、そしてあとで内訳をつける、そういうやり方はしない。議論をいたしまして、そして払うべきものは払う、こういう形できめていきたい、こういうことを申し上げたように記憶いたしております。そういう考え方はいまも、外務大臣となりましたけれども、今日なお変わっておりませんでございます。
  138. 松浦利尚

    松浦(利)委員 大蔵省にお尋ねをいたしますが、この前要求をいたしましたこの資料は、絶対に数字的に間違いありませんですね。
  139. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 私どもが評価した額でございます。
  140. 松浦利尚

    松浦(利)委員 大蔵省に質問いたしますが、福地ダム資産増加見込みとして、一九七〇年七月一日以降復帰の日までの勘定が、ここに建設勘定が出されておるわけでありますが、これが八百四十万ドル、こういうふうになっていますね。ところが、これは米軍の工作隊ですね、あそこの工事をやっておるのは米軍工作隊でありますが、現地の説明、さらに琉球水道公社の資料、なおかつ、きょう資料をいただいたあとすぐ、水道公社のほうに直接電話をして聞いたわけでありますが、第一期の福地ダムの工事が一九六九年六月着工、本年の十月終了でありますが、第一期工事として百四十万ドル、第二期工事として五百七十万ドル。これは一九七〇年五月に着工して、これは現地で調査をいたしましたが、工事自体がおくれておるのですが、総額七百十万ドルですね、七百十万ドルの資産増加見込みしかないのに、何で八百四十万ドルという評価見積もりをしたのですか。その点を数字的に明確にしてください。
  141. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 福地ダムの建設でございますが、全体で千二百十四万八千ドルというのが米国の工兵隊の予定であり、かつ、これだけは絶対に確保するという数字でございます。  それで、先生がいまおっしゃいました数字は、おっしゃるように、一九六九年六月に第一期の建設工事の施工契約、これはアジアアメリカンという建設会社と契約したわけでございますが、この契約の金額が百四十万。それから、第二期工事は一九七〇年五月に着工したわけでございますが、これは大城組と契約いたしまして、これもこの施工契約の契約金額が五百七十万。しかし、これ以外にもいろいろな要素がございますので、そういったもの全部入れまして千二百十四万八千ドルでございまして、このうちすでに出資済みのものとそれから今後の資産増加と分けますと、残りが八百四十万ドルとなるわけでございます。
  142. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それはおかしいんじゃないですか。いろいろなものいろいろなもの、こう言われますが、福地ダムのダムそのものとして計上されておるでしょう。ダムは貯水設備、これでいきますと、きょう水道公社で聞いた総額は七百十三万三千ドルですね。  それでは、もっと具体的に聞きましょう。前田タンクほか七カ所百万ドルとこうありますね。きょう具体的に水道公社に電話をして聞いてみました。前田タンク二十二万八千ドル、平良、福地ポンプ二十万四千ドル、それからジャクポンブというんですか、これのパイプラインが八万ドル、倉庫及びその他修理が一万八千ドル、井戸開発が八万ドル、天願タンクが四万五千ドル、公社事務所建設が三万六千ドル、合計六十九万ドル、これがいま水道公社自身が、一九七〇年七月一日以降今日まで建設勘定として、資産増加見込みにあげておる数字ですね。ところがこれは百万ドルでしょう。ここにも数字の差がありますね。こういった数字というのは、これはごまかしではないですね。  資産の引き継ぎである、こう言っておられるけれども、実際に琉球水道公社のこの決算諸表を見ますと、あなたのほうで計算をしておる純資産額三千三百十三万ドル、これが、実際にこれで見ますと三千九十六万ドル、現実にある資産の評価そのものも、ここで二百二十万ドル近くの差が出ておるのですね。これは実際に数字はごまかしではないですね。これはあなたがちゃんと設備ごとに評価してと書いてある。どうなんです。
  143. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 数字はごまかしではございません。いまおっしゃいました前田タンクほか七カ所、百万ドルでございますが、これは、先生のおっしゃっておりますのは、一九七二年度だけの分をたしか公社が先生にお話ししたと思いますが、それ以外にも、その後の分として平良、福地ポンプステーションとか前田タンクの残り分とかいうのがありますし、そういう一切の、今後のアメリカ側の出資増加見込み額、これを全部入れれば、先生にお出しした数字にぴしゃりと合うわけでございます。  それから、このバランスシートの問題でございますが、確かに公社の帳簿価額資本合計三千九十六万ドルでございますが、私どものほうの評価は三千三百十二万六千ドル、約二百十六万六千ドル多くなっておりますが、これは先般も申し上げましたように、公社のほうのこの金額は、公社の実際の取得価額というものを基礎としまして、毎年総合償却法で減価償却引き当てを積んでおりますものの合計でございます。私どものほうは、評価時点を一九七〇年六月三十日といたしまして、その時点におきましてこれを再調達すれば幾らかかるかというのを全部積み上げまして、それからわがほうの減価償却の耐用年数、こういうもので減価償却を一つ一つやりまして、そして出したわけでございますから、当然違いがあるわけでございますが、ではなぜふえるかという問題でございますが、これはやはり公社のほうの取得価額というものと、わがほうが評価しました時点におきまする物価等の上昇、それが入っておりますので、どうしてもわがほうのほうが多くなるわけでございます。
  144. 松浦利尚

    松浦(利)委員 そんなばかな話ないでしょう。実際水道公社がこういうオープンに出しておる資料よりも多く見積もって買い取るということは、どういうことですか、先ほど言っておるように、大蔵大臣は、国民の血税だから少しでも少なくやろう、しかし払うべきものは払おう、そう言っておるでしょう。  こういった資料を出してもらって検討してみても、なお対米支払いについて疑問があるでしょう。こういうことをしておって国民が納得すると思われるですか。われわれの血税をこういう形で、ああ、琉球公社の資産は評価してみましたら四千七百三十万ドルでございました——払うほうは簡単ですよ、税金取って払えばいいのだから。しかし、納めるほうは国民ですから。あなたが大蔵大臣のときに、公正妥当、沖繩県民はもとより日本国民に理解していただける範囲で支払うのだ、こう言っておられるにかかわらず、支払いの根拠は非常にあいまいじゃありませんか。さらにここに出さない資料があるなら、また出してください。ここに来ておる資料は、あなたはまたいろいろあると言ったのだけれども、その他その他とさっきから言っておるが、そういう資料があったら、それも全部出してください。  外務大臣どう思われますか。あなた自身のいまのこの考え方からいって、ああいった大蔵当局の答弁はどうです。
  145. 福田赳夫

    福田国務大臣 引き継ぐべき資産につきましては、大蔵省でこれはずいぶん努力をいたしまして計算をしてみたのです。それでありまするから、いま私は松浦さんと政府委員の応答を聞いておりまして、どこかで食い違いがあるような感じがするのです。これはよくしさいにつき合わしたなら必ず御納得がいけるだろう、こういうように思います。ずいぶんこれは精細な厳正な調査をした結果こういうような数字になっておる、こういうふうに承知しております。
  146. 松浦利尚

    松浦(利)委員 水道公社の決算書が出ておって、その決算書を見て、なおかつ政府のやつを比べてみてこうなんですよ。こっちのほうがおかしいのじゃないのですよ、水道公社のやつは正しいのですからね。公認会計士のほうからもちゃんと出されておりますね、この資料は。ところがこれよりもさらにふえる。償却してだんだん減るならわかるけれども、逆にふえてくるのです、今度は。そんなばかなことはないと思うのですね。
  147. 福田赳夫

    福田国務大臣 なお納得のいくまで政府委員から説明いたさせます。
  148. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それじゃ、この内容については大蔵省の——ここでいろいろ議論しておりましても、数字ですから、またいろいろあるでしょうから、時間的にこの数字でいろいろしてもしようがありませんので、この問題は私は保留いたします。   〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕  早急に大蔵省のほうで、もっと具体的な資料を提出してください。そして、いま外務大臣が言われたように、どこで食い違っておるのかを明らかにしたいと思うのです。その点委員長、取り扱っていただきたいと思うのです。
  149. 床次徳二

    床次委員長 資料につきましては、御要求のとおり理事会にはかりまして取り扱います。
  150. 松浦利尚

    松浦(利)委員 私はその資料が、七千万ドルが、いろいろ核の問題をめぐってあります。しかし、三億二千万ドルを除いた部分についてもこうした問題があるわけでありますから、やはり資料をもっと正確に出していただいて、そういった不満をなくす。三億二千万ドルについて出していただいてなくす。そのことが福田前大蔵大臣の言われた国会における答弁の趣旨に当たっておると思いますから、ぜひそういうふうにお願いをいたしたい、こういうふうに思います。これは保留をさしていただきます。  次に、道路の問題です。建設大臣、私は軍用地の問題については質問をこの前しておりませんので、関連質問だそうですから、それはまた日をあらためて、どこかのときにさしていただきたいと思いますから、道路の問題についてお尋ねをしたいと思うのです。  資料が出ました。この資料については、率直に申し上げて、道路の評価について調べるすべがありません。できればこの各路線別の評価額ですね、これがどういう算出根拠でこういう一号線が五百三十九万ドル、あるいは三号線が八万ドルという積算根拠になったのか。さらに詳細な資料があれば、その資料もぜひ大蔵省のほうから出していただきたい。これだけではもう調べようがありません。そういうことを冒頭申し上げて、この問題も保留させていただきます。もっと正確な資料を、評価額の資料を、積算根拠を出していただきたい。保留させていただきます。  そこで、建設大臣にお尋ねをするのですが、この前もちょっと質問をして保留させていただいたのですが、二十二路線の一千四百五十七万ドルの支払いをするわけでありますが、そのほかにこの道路が日本返還されたあと、本土における道路構造基準に照らしてみて、当然一次改築、二次改築というものをしなければならぬと思うのです。ですから、これが日本に返ってきた場合に、これを一次改築、二次改築する場合に幾ら経費が要るのか、どれくらいの予算が要るのか、その点の積算があったらお示しいただきたいと思うのです。
  151. 西村英一

    ○西村国務大臣 まず、復帰とともに道路は返るわけでございますが、軍道として二百三十キロが復帰とともに返ってまいります。その道路の中には二車線も四車線もございます。いまお尋ねの件は、その道路が道路構造令に適合しておるかどうかということでございます。これは詳細な調査はしておりませんが、大体において構造令の三つの大きい問題、幅員の問題あるいは勾配の問題あるいは曲線の問題というようなことについては、大体支障はないようでございます。ただし、そのほか側溝あるいは歩道、こういうようなものが、全然ないわけじゃございませんが、非常に少ないと私は思っております。したがいまして、正直なところ、詳細に調べないと、これは幾らかかるかということはなかなか申し上げられませんが、まあ目の子で言いまして——いま一番欠いておるのは歩道でございます。歩道は、内地でつくりますとキロメートル一千万円、両方ですからキロメートルでやっぱり二千万円くらいかかりましょう。それから側溝は歩道の約半分、キロメートルで五百万円、両方でございますからこれがキロメートルで一千万円。全部つけますと、二百三十キロでございまするが、まあ半分くらいこれをつけたと仮定いたしますると、約三十五億くらいな勘定になると思います。四十億くらいな金で、側溝と歩道は何とかやれるのじゃないか。その他歩道の下にはいろいろの施設物もあるように聞いておりますので、精細に調べないと、いま目の子で言っただけでは私も自信がないわけでございまするが、引き継ぎ後詳細にこれは調べてまいりたい、かように思っております。
  152. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いま建設大臣は、まだ詳細にチェックしておらない、概略三十五億から四十億程度の改築費が要るのではないか、こう言っておられるわけでありますが、そういったことはこの道路を引き継ぐ場合に、対米支払いのときにアメリカと話し合いをなさいましたか。大蔵省と話し合いになりましたか。その点どうでしょう。
  153. 西村英一

    ○西村国務大臣 まあ私のほうは、詳細にそういうことを大蔵省と話し合ったことはないと思います。ただし、この協定の第六条に基づきます合意議事録についてどういう路線をあげるかということについては、ちょっと話がありましたが、その算定基礎等については、私どものところではあまり関係はいたしておりません。
  154. 松浦利尚

    松浦(利)委員 大蔵省にお尋ねをするのですが、日本政府が引き継いで、そしてそれをまた日本の道路構造基準に従って改築をする。極端に言うと、不良財産をもらって改築せぬといかぬわけですね。そういったものは、対米支払いのときに積算根拠の中で議論しましたか。大蔵省、どうです。
  155. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 私どものほうは、そこにあります道路舗装部分とか、いわゆる価値のある部分を評価したわけでございまして、不良な部分につきましては評価いたしておりません。
  156. 松浦利尚

    松浦(利)委員 外務大臣、対米支払いのときに、物を引き取ってそれに見合った評価額で払った、そしてさらに今度、われわれ国民が四十億円入れて道路を改築しなければ本土並みの道路にならない。そうすると、実際にこれは千四百六十万ドル、こういうふうに言うけれども、さらにプラス四十億円積み上げた額ということになりますね、結果的には。数字的にはそうなるでしょう。
  157. 福田赳夫

    福田国務大臣 その積み上げが四十億円になるのかどうか、私はその数字については申し上げかねますが、いずれにいたしましても、引き継いだその米軍資産ですね、これを内地並みにするという場合におきましては、わが国が三億二千万ドルのほかにおいて負担をする、そういうことに相なります。
  158. 松浦利尚

    松浦(利)委員 私は、当然そういったものは、事前に対米折衝のときに交渉されるべきだと思うのですね。おれのところに返ってきても、これだけは支出してまた直さなければいかぬ、だから、その分だけは削減せよという交渉は、当然対米折衝の中にあってしかるべきだと思うのです。  なぜそれを言うかといいますと、いまは国道一号線をとりましても軍用一号線をとってみても軍優先なんです。軍優先で住民道路として併用されておるのですね、これは。ところが、先ほどから議論があるように、この委員会でも議論があるように、沖繩基地の態様というのは変わらないのですよ。現実に日本に返ってきても、その国道はあるいは県道は米軍が使うのですよ。返ってきたからいままで以上に一号線なりあるいは三号線その他の路線を米軍が走るのを差し控えるというような定めがあれば別だけれども、実質的には、いままでどおり米軍基地維持のために使うんでしょう。これは軍用と併用して使っていくわけでしょう。その点どうなんです。もう全然向こうは使わぬのですか。
  159. 福田赳夫

    福田国務大臣 本土におきましてもそうなんです。米軍の使うところの施設区域、これに対する費用負担、これはわが国がするのでありまして、これは沖繩においても、返還後におきましては同様のことに相なるわけであります。
  160. 松浦利尚

    松浦(利)委員 だから、道路の問題についても、極端に言うと、小笠原返還のときには道路、飛行場という不動産は無償引き継ぎですね、これは。小笠原返還のときには、道路その他は沖繩に比べて問題にならない施設だけれども、内容的には施政権者が住民福祉として行なったという、そういった理論の上に立って無償で引き継がれておるのですよ。本来無償であるべきものを、対米支払いとして、われわれは有償引き継ぎとしてやっておるわけですから、少なければ少ないほどいいわけですね。そうなってくれば当然米軍も使う道路です、これから手を入れなければならぬ道路だから。そういったことが当然対米支払い交渉のときに議論されるべきだったのですよ。そう思いませんか。その点はどうです。
  161. 福田赳夫

    福田国務大臣 この交渉はアメリカから承継すべき財産の、その価値計算をした、こういうことになるわけでありまして、したがって、その承継以後において手入れを要する、そこまで考えましてこの評価をきめたわけじゃない、かように御了承願います。
  162. 松浦利尚

    松浦(利)委員 やっぱりいろいろ言い方はあるでしょう、見方もあると思うのですね。しかし、ここで大蔵大臣のときに言っておられるように、やはり血税だからできるだけ少ないように押える、そういった立場からいくなら、当然そういったことも対米支払いの中で議論されてしかるべきだったと私は思いますね。しかし、いずれにしてもこれはここで言っても水かけ論ですから、数字的な問題についてまた大蔵省のほうから資料が出たら、その問題を中心にしてこの問題についても議論さしていただきたいと思うのです。  ここでひとつ総務長官にお尋ねをしておきたいのですが、沖繩振興開発特別措置法案の第六条「(沖繩の道路に係る特例)」というのがございますね。総務長官は担当でしょうから一番お詳しいと思って質問したわけですが、もしあれでしたら建設大臣でけっこうですが、この道路の問題で、県道となる軍道の維持管理は、従来米軍がこれを負担しておったんですね。ところが、この六条でいきますと、新設または改築については、道路法の規定にかかわらず建設大臣がこれを行なってくれる、こうなっておるのです。ところが、県道となる軍道の維持管理が、今度これが市町村の管理に付された場合、あるいは沖繩県に移管をされた場合、その維持管理費の負担というものは、当然大きなしわ寄せが沖繩県にくると思うのですね。そうしたものに対する特例措置、配慮というものがなぜ行なわれなかったのか、その点についてお聞かせいただきたいと思うのです。
  163. 山中貞則

    山中国務大臣 この第六条では、ただいまお話しのような点について定めているのでありますが、その他の道路については、いずれも県道、市町村道について特別の補助率を定めておりまして、これはお手元にも届いておると思いますが、県道については改良、橋梁舗装等について十分の十、市町村の同じものについて十分の八、特殊改良については、県道について十分の十、市町村二分の一、交通安全については、一般が二分の一、通学路が三分の二、これはいずれもかつて本土存在した補助率でありますが、たとえば旧奄美、旧北海道等あるいは旧離島振興法等を含めて、最高なし得る補助率の一ぱいをここに適用しておるわけでありますので、したがって、大体において県道に関する限りは十分の十が原則であり、市町村については、おもなる部分について十分の八ということで支障なく行なわれると存じます。その他のそれに対応する地元負担分については、沖繩県に適用されます交付税の算定の中にも当然入ってまいりますし、その他必要な単独事業等についての起債等も見ておるわけであります。
  164. 松浦利尚

    松浦(利)委員 建設大臣にお尋ねをいたしますが、本土の道路法第五条ですね、これは沖繩の情勢に応じて緩和をする、そういう立場で現在臨んでおられるのですか、その点どうでしょう。
  165. 西村英一

    ○西村国務大臣 第五条がどうであったか、ちょっと私覚えておりませんから、政府委員に……。
  166. 松浦利尚

    松浦(利)委員 建設大臣、やはりこれは大切な問題ですからね、建設大臣がこういったものは知っておられてしかるべきだと私は思うのです。
  167. 西村英一

    ○西村国務大臣 第五条、それは内地と同じようにその指定ができるわけでございます。内地と同じようなその法律で指定ができるわけでございます。
  168. 松浦利尚

    松浦(利)委員 道路局長でけっこうですが、緩和するという考え方はないのか、こういう質問です。
  169. 高橋国一郎

    ○高橋(国)政府委員 第五条は「(一般国道の意義及びその路線の指定)」の条項でございまして、これは本土の国道の指定をいたします場合に、この第五条に従って指定しておるわけでございますが、今回の沖繩復帰に伴いまして、沖繩にはただいま軍道、政府道、市町村道がございますが、国道の規定はございませんので、日本内地と同じこの第五条に従いまして指定することにしております。  ただいま御質問のように、これを緩和せずにも、この条文でもって十分国道の指定ができるというふうに考えております。
  170. 松浦利尚

    松浦(利)委員 この問題で議論しておりますと、また時間がありませんから、緩和についての問題は、具体的に次の機会に質問をさしていただきたいと存じます。  それでは次に、この前いただきました資料で「沖繩県民の生活行政に関する調査」の資料から沖繩の物価問題について、若干時間をいただいて質問させていただきたいと思うのですが、総務長官、沖繩県における流通機構ですね、具体的にお尋ねをしたいのですが、電器製品はどういう流通過程を通っておられると理解をしておられますか。
  171. 山中貞則

    山中国務大臣 本土と違って、一ぺん本土との間に商社間でLCが組まれて、そしてそれから沖繩の輸入業者から卸、小売りの流通経路をたどっておると思います。
  172. 松浦利尚

    松浦(利)委員 私たちが現地に行って調査した限りでは、本土のような流通機構というのは全くないのです、沖繩においては。一つの例でありますが、この電器製品を例にとりますと、電器製品は本土メーカーから直接、現地の輸入業者とタイアップいたしまして、その輸入業者に送り出す。その輸入業者が完全に小売り、末端まで支配をして流しておるという形なんですね。実際に即、小売りという段階は省略されておるのですよ、沖繩県においては。  そういったことを考えてみますと、いま物価問題で、一番流通問題がいま議論をされておるのです。私は、沖繩復帰するからということで、沖繩県民の皆さん方を試験的にとか、試行的にとかいうつもりはありませんけれども、こういった流通機構の問題が非常にいま問題になっておる段階で、この本土において問題の多い流通機構の態様が沖繩県にはないわけでありますから、そういった意味では、ある程度流通機構の予算というものを沖繩県に対して計上して、物価対策の中の流通機構を沖繩で具体的に試行してみるという考え方があるのかないのか。そういった構想に対してどういうふうに思われるのか。その点について長官のお考え方を伺いたいと思うのです。
  173. 山中貞則

    山中国務大臣 経企庁参っておりませんが、いま言われましたのは、沖繩の輸入業者は、同時に即その商社が、市場が狭いですから、卸売り業者の行為を行なっているというふうに見ていいと思うのです。そこで、復帰いたしますと、今度は商社行為が本土との間にはなくなるわけでありますから、やはり同じ機構になると思います。問題は、やっぱり卸売市場等の整備がおくれておりますので、これは農林行政等においては、卸売市場の現地における整備にも予算要求をしておるわけであります。
  174. 松浦利尚

    松浦(利)委員 その流通対策で、沖繩県に対してどれくらいの予算を長官としては考えておられますか、改善策として。
  175. 山中貞則

    山中国務大臣 公共事業を中心として、一括計上分と見積もり調整分と、それぞれの各省において支出する予算と三つに分かれておりますので、ちょっと経企庁に来てもらわないと即答いたしかねますが……。
  176. 松浦利尚

    松浦(利)委員 実は経企庁長官、御出席をお願いしたのですが、御病気で急にお医者さんのほうに行かれたそうで、御出席を見合わせていただいたのですが、病人の方は来ていただくわけにいきませんので、また先ほどから秘書官が、総理大臣もちょっとはずしていいのだろうかという質問がありましたが、ぜひおってくれというお願いをしたのです。まあお疲れでしょうけれども、最後までつき合っていただきたいと思うのです。  国民生活局長、来るようにお願いしておいたのですが……。   〔「公取は来ておるか」と呼ぶ者あり〕
  177. 床次徳二

    床次委員長 松浦君に申し上げますが、公取は事務局長が来ております。
  178. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それじゃ、国民生活局長、来ておられないようですから、公取のほうの吉田事務局長のほうにお尋ねをいたします。  御承知のように沖繩には、いま独禁法がございません。御承知のように野放し状態でございます。しかし、これが復帰をすると、本土の独禁法の適用を受けるようになります。いまこの「沖繩県民の生活行政に関する調査」の中では、消費者サイド、財界、サービス業、学識経験者、新聞社、そういったところからいろいろな意見が出されております。公正取引委員会としては、本土復帰した場合、独禁法のワクに入った場合どういった問題点が出てくるということで把握しておられますか。
  179. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生おっしゃいましたとおり、現在まだ沖繩には独占禁止法は施行されておりません。しかし、沖繩復帰してまいりました暁には、これは独禁法が、カルテルの規制、それから不当景品の問題、不当表示の問題、持ち株会社の規定を除きまして即時施行されるということになっております。  最近、沖繩におきまして非常に問題がございますのは、カルテルが多い、あるいはまた景品つきの販売、これは本土企業が沖繩に出ていって、いわゆる景表法に違反するような景品つき販売を行なっていたという事例がございまして、こういうものに対しましては、たとえ復帰前でございましても、独禁法はまだ施行されてはおりませんけれども、やはり施行されれば違反になるというおそれのあるものに対しては、事前に、たとえば本土企業等に対しましてはそういう行為をやめるように指導して、やめさせております。これはたとえばしょうゆの場合でございますと、景品をつけて沖繩に進出するというのが違反の疑いがあるということで、醤油協会に対しまして、昨年の暮れ、それから最近におきましてもやめさした事例がございます。
  180. 松浦利尚

    松浦(利)委員 総理にお尋ねをしたいのですが、実は、いま沖繩では復帰ショックの一つとして、復帰前に物価が上昇をしてきておるのです。その上昇してきておる内容というのが、本土復帰をする以前に、いま公取の事務局長が話をしましたように、価格協定ですね、こういったことをやりまして、実質的には価格をつり上げておる。しかも市場が非常に狭いために、お互いにシェアを協定し合っておる、こういったケースが非常にふえてきておるのですね。復帰前にこうした問題に手をつけておかないと、復帰したあとでは、物価がさらに上昇するおそれというのがあるわけです。ですから、復帰前にこういった問題に対して、どういう対策を政府としてお打ちになるのか。もちろん琉球政府を指導してやられるわけでありましょうけれども、具体的にどういうお考えで臨まれようとしておるのか。その点をお聞かせいただきたいと思うのです。
  181. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、ただいまは琉球政府、これがただいまのような点、民生についての全責任を持って指導しておることだと思いますし、またもう一つ困った問題で、私どもが特に注意しておるのは、いわゆる為替相場の変動と申しますか、ドル・ショックと申しますか、そういう点でどうも価格維持がなかなか困難ではないか。このほうについては、すでに本土政府が特別な手当てをしたことは御承知のとおりだと思いますが、それらの点が十分理解されると、ただいまのような点も、解消とまでは申しませんが、よほど変わった現象を来たすのではないだろうか、かように思います。  要は、問題はやはり供給者と需要者、その間の調整をとれるような立場でないと、どうも物価の問題は簡単には片づかないように思います。先ほど公取のほうからも指示がございましたが、琉球政府におきましても、それらの間において地域住民の生活を安定さすように、この上とも努力すべきであろう、かように思います。
  182. 床次徳二

    床次委員長 松浦君、補足質問でありますから、できるだけひとつお含みの上、御質問を進めてください。
  183. 松浦利尚

    松浦(利)委員 国民生活局長が来ればやめるのですけれどもね。  公取事務局長にお尋ねいたしますが、いま沖繩に進出しておる本土企業、電器製品でも医薬品でも、すべて本土から八〇%輸入をしておるわけでありますが、それが先ほど言いましたように景品つきで、事務局長がお話しになりましたように景品つきで不当競争をやっておる。こういった景品つき販売なりあるいは不当表示による販売等について、本土の企業に対して協力要請をする、沖繩に対してはそういうことは一切やめろということについての指導を強化する、こういったことは現在の法律の中でやれると思われますか。やれないのか。あるいは、それはやれないとすれば、希望的にもあるいは行政指導という面でも、そういったことを要請するということはできないのか、そういうことについて、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  184. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 ただいまの復帰前の段階におきましては、法律的にはそれは強制できないと思いますが、行政指導で本土におります企業あるいは沖繩存在する企業、これらに、琉球政府を通じまして、そういう違反になる、違反の疑いのあるような行為はやめろという指導はできるというふうに考えております。
  185. 松浦利尚

    松浦(利)委員 ちょっと事務局長沖繩の企業じゃなくて、本土から進出する企業に対して、本土におる企業に対してそういった指導をやってもらえるかどうかということです。
  186. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 それは、そういう行政指導はできると思いますし、先ほど申し上げましたように、しょうゆ等につきましては、現実に指導してやめさせております。
  187. 松浦利尚

    松浦(利)委員 これは総理にお尋ねをしておきたいのですが、何といっても沖繩本土から離れております。これが本土復帰をしてまいりますと、当然その間の距離というものが沖繩における物価に影響してくるわけです。そういったものについて、いま具体的にここで数字的に金額を出せとか、そういったことは申し上げませんが、何らかの処置をして復帰ショックという、急激に物価が上がるというようなことについての指導、そういったことにならないような指導体制、こういったものについて総理としてお考えがあるのかどうか、その点をお聞かせいただきたいと思います。
  188. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 むしろ、ただいまの点は円高、ドル安、その影響が非常に大きいのではないだろうかと思います。と申しますのは、いまも御指摘のありましたように、本土物資に依存しておる度合いが非常に高い、八〇%は本土から受け入れている、こういうような状態でございますから、経済状態がさような状態でありますだけに、ただいまの問題が強く響くのではないだろうか、かように思います。したがって、そういう意味でこれが特別に高くならないように、その点をある程度穴埋めする、こういう意味の制度をわれわれは考えたということでございますから、なおこういう点で実情を出先機関が十分把握すること、これに注意をいたしまして、特別な事態が起こらないように、もう今後の返還の時期も目睫に迫っておることでありますし、その間にあまり混乱ができないようにわれわれも気をつけてまいりたい、かように思っております。
  189. 松浦利尚

    松浦(利)委員 国民生活局長が来ておられませんので、なかなか質問がしにくいわけでありますが、いずれにしてもわが党の理事のほうからも——質問の約束の時間もありますし、おらない人を待っておってもいつ来るかわかりませんので、一応この問題は保留さしていただきまして、次のこの資料が出てきたときにまた質問をしますので、そのときにあわせてまた時間をいただいて質問をする、こういうことにして、私の質問は一応これで終わらしていただきたいと思います。よろしいですか、委員長
  190. 床次徳二

    床次委員長 ちょっと待ってください。いま呼んでおるのですが……。
  191. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それでは保留さしていただきます。
  192. 床次徳二

    床次委員長 次に、美濃政市君。
  193. 美濃政市

    ○美濃委員 私は、最初に総理大臣にお伺いをいたしたいと思いますが、総理はよく核抑止力ということばを使われますが、日米安保体制の中で日本の安全なり平和を守るために、核抑止力に対してどのような期待を寄せておるか、これをまずお伺いいたしたいと思います。
  194. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 核抑止力、これは結局戦争が起こらない、こういう意味において核戦力、こういうものを評価すべきではないか、かように私は申したのでございます。いわゆるいまの五大国、まあ三大国、かような国々はみな核兵力を持っておる。日本などは核を全然持たない国ですけれども、しかし、日本が日米安全保障条約、そのもとにおいてはやはり核の戦争抑止力、これをやはりたよることが望ましいのではないか、かように私は申して、そういう意味の話をたびたびいたしたわけでございます。
  195. 美濃政市

    ○美濃委員 これは現実に使う抑止力でなくて、いわゆる戦争回避の抑止力、いろいろお考えはあろうかと思います。しかし、核抑止力に期待をするということになると、率直にお伺いしますが、日米間で安保条約で核抑止力を使う意味ではないというお話ですから、それはそのとおりすなおに受け取りますが、使う使わぬは別として、やはりいまの状態の中で核抑止力に一応の平和を期待するということになりますと、それに対するいわゆる核戦略なり核戦術について、その期待に対する協力というものが出てくるのではないですか。その点はどうお考えになっておりますか。どれだけの協力をするかは別として、やはり協力という問題が、どうしてもそれはやはり米側の意思の中には——どれだけの問題が出るか出ぬかという現実の問題は別として、米側の意思の中には、やはりそういう条約によって危険だ危険だという核をそれの抑止力に期待するというときには、その戦略、戦術というのは、具体的に使う意味のものじゃなくて、たとえば保管するとかそういう問題についての協力というものがあってしかるべきだという米側の態度が、どこかに出てくるのじゃないですか。そういう気持ちになるのじゃないですか。どうですか、その点は。
  196. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは考え方がいろいろありますね。たとえば中国においては、日本の日米安全保障条約、それが日本が核を持たない一つの柱にもなっておる、こういうような表現をした場合もあります。私は、いまの日本の核武装、これはやはりしないということを申しておりますので、また非核三原則、つくらず、持たず、持ち込みも許さない、こういうことでございますのは、この基本的な態度はよく関係国は知っておるはずでございます。でありますが、核保有国から見ると、やはり核を持たない国の安全を確保するという、そういう保障をしないと、世界各国がみんな核を持つようになるのではないだろうか、こういう一つの心配もある。そこらにも思いをいたしていただきたい、かように私は思うのでございます。  ただいまのところ、日米安全保障条約アメリカ日本に期待するものは一体何なのか、おそらく日本が核武装しないことだろうと私は思います。そういう点で、日本が危険を感ずるだろう、そういうところはおれのところで引き受けよう、こういうのがいまの日米安全保障条約のでき上がった基礎ではないだろうか、かようにも理解しておるわけであります。  ただいま具体的に、それでは日本に何を期待する、こういうことはございません。でありますから、最近の輸送手段あるいはその他の進歩、これは科学技術的な発展がございますので、必ずしも本土にあるいは沖繩にさようなものを持たなくとも、十分の核の抑止力、これは発揮できる、こういう状態ではないかと私は解釈いたしております。
  197. 美濃政市

    ○美濃委員 そういうことであれば、当然日本の立場は、全く核保有国がほんとうの好意的なものであるということであれば、日本はあくまで非核三原則を守るためには、すなわち安保条約の事前協議の対象になっておるそういう必要はないんじゃないか。絶対そういうことが約束されるなら、事前協議などというものを排除したほうがどうか。絶対それがかたい約束であれば、事前協議の対象にする必要がないでしょう。持ち込まないということがほんとうに約束したのであれば、事前協議からカットしちゃっていいんじゃないですか。一月に総理大臣アメリカに行くというのですが、事前協議から核持ち込みはカットする。その他の問題は、現在あるのだから、いまここで、核以外の問題の中の事前協議の問題は別として除きます。核についてはもう事前協議の必要もない。絶対持ち込まないのだから、持ち込まさないのだから、事前協議の対象から除く、そこまでそういう約束をはっきりすれば、今回この国会を通じてずいぶん核問題が出ておるのですが、かなりの信頼感と安心感ができるのでないか。事前協議の対象にあり、核のいわゆる抑止力に依存しておる、期待をしておるというところに、国民はぬぐい切れない危険感を感じ、そして本土基地にも核兵器があるのでないかというかなり条件の整った証拠等をもって、そういう論争がこれから先も繰り返されていく。この点はどうですか。きちっとそこを、ほんとうに国民が安心できて、そういう論争はしなくてもいい条件というものをつくるということについて、どうお考えですか。
  198. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 美濃君にお答えいたしますが、私は、核兵器が世界にもうなくなれば、ただいまのような点が事前協議の対象になる、そういう心配もないと思っております。しかし、現実はそうではない、かように私思いますので、わが国の危急存亡の際に、また日本防衛のためにアメリカが核兵器を持ち込もうというような事態が全然ないと、これははたして言えるかどうか。そこらは、祖国を愛する者のことばといたしましてはいかがかと私は思います。私は、いまどうこうしようというのじゃございません。しかしながら、ただいまのようなお話には私は賛成できない、このことだけはっきり申し上げておきます。
  199. 美濃政市

    ○美濃委員 そうすると、条件によっては持ち込む場合がある、こう受け取れるわけです。そう解釈していいわけですね。
  200. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そういう事態はないと私は思いますし、また、事前協議に持ち込まれればわれわれはノーと答える、こういう状況でございます。
  201. 美濃政市

    ○美濃委員 どうもそこが私——この問題になりますと、総理と私どもの考え方はだいぶん違っておりますから、平行線になる面もあろうかと思うけれども、しかし、平行線になるならぬの問題でなくて、実際の話として、ほんとうに行なわないのであれば事前協議の対象から除く、そこまで私は行くべきだと思うわけです。たとえば共同声明の中でも、日本国民の核兵器に対する特殊な感情をニクソン大統領も理解して、しかし、理解しながらも、事前協議制度に関する米国の立場を害することなく、と入っているわけですね。これは前提をつけて沖繩返還を背馳しないよう実施する旨の確約をしたと、こうあるのですが、どうもここが、やはりノーと言う、こう言いますが、これは今まで国会で決議したというけれども、この問題でなくても、繊維の問題でもあるいは自由化の問題に対しても、特に農産物の自由化の問題等に対して国会で決議しても、そのことが事後において——その時点では、それぞれの立場において、ただいまの決議は尊重いたしますという表現を政府はやるわけですけれども、そのことが守られない、約束が守られぬということがしばしばあるわけですが、この問題もそうなるんでないか。そういう条件が、こういう状態で置けば絶対という条件ではないんでないですか。この点どうですか。絶対という条件ではないんではないか、非核三原則というのは。いかがですか。
  202. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、最近の科学技術の進歩から申せば、日本に持ち込むというようなことは断わっても、ただいまのように核のかさのもとにある、こういうことはいえると思いますので、私はその点は心配はないように思えますけれども、しかしながら、ただいま非核三原則を国会で決議した、それより以上にこの問題をさらに進めていこう、かようには私は思っておりません。
  203. 美濃政市

    ○美濃委員 そうすると、もう一回尋ねますが、私の申し上げたいわゆる絶対という条件ではない、こう解釈せざるを得ないのですが、まあ、あるかないかという問題になると、いまその事態が発生していないのですから、あるなしの問題をここで論じようと思わないのです。将来ともアメリカが必要だという見解に立ったときには、核持ち込みということは非核三原則に従って絶対条件ではない、こう判断せざるを得ないのですが、総理大臣の話を聞いておりますと……
  204. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 美濃君にお答えしますが、絶対条件ではないというのは、どういうことを考えておられるかと思いますが、私は、いま、さような点を考慮する必要のない問題じゃないだろうか、かように実は思っておりますので、ただいまこれが絶対だとか、あるいはもう——ちょっとこの問題に触れることはいかがか、かように思いますがね。
  205. 美濃政市

    ○美濃委員 この問題だけで——しかし、いまの応答を聞いておる国民は、やはりそこに、将来の核持ち込みということに対して一まつの不安を感じると思う。総理が絶対それはないんだといえば、この問題は高い信頼、いわゆる核に対する、持ち込みは絶対ないという信頼に変わると思う。いまの総理の表現では——まあその絶対という表現が適当かどうかという問題はありますけれども、適当の問題は別として、私自身はいまの話を承って、非核三原則というものは、抑止力に期待を持っておる以上、絶対にはならない。  そこで、この核というものを人類の幸福のために持っておって使うぞという威嚇の抑止力が大切なのか、絶対核というものを否定するということが大切なのか、どうお考えになりますか。総理としては否定するという気持ちにはなれませんか。否定してしまえば、当然安保の事前協議からも除く、もう日本は核兵器というものの抑止力には絶対依存いたしません、こういうものが地球上に存在することは人類の滅亡に通ずるものである、断じて否定いたします、こういうお考えはどうですか。
  206. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは日本だけの問題ではございません。私どもは否定するからこそ非核三原則、これを採用し、また国会でも決議をされた、かように思っております。しかし、各国がそれぞれ——必ずしも持たない国ばかりではない。持っておる国、それが一番強力な国だといわれておる。そういうことを考えると、どこかにわれわれの安全を確保する方法はないものだろうか。これが持ち込みは許さない、かように申しましても、とにかく持ち込みは許さないが、遠方からでもやはりその核のかさの庇護を受ける、こういう状態は、われわれが考えたって当然ではないだろうか、かように思いますので、私はその点を先ほど来申し上げておるのであります。私どもの考え方、理想は、申すまでもなく、人類は核は持つべからず、こういうことでありたい、かように思いますけれども、現実にはそうはいかない。現に、国連においての常任理事国五カ国がみんな持っておる。そういう状態ですよ。そういうことを考えると、安全確保のためにわれわれがやはりどこかの国との提携、そのもとにおいて安全を確保する、これは当然のことではないだろうか、私はかように思います。
  207. 美濃政市

    ○美濃委員 これは平行線になりますからこの辺でやめますけれども、いまの総理のお話をもって了解には達しません。これはもう私どもの考え方と違う、相違点でありますから、まあ、歴史が解決する場合があるかもしれません。総理においても、この核問題は、申し上げた点をよく慎重にひとつ考えていただきたいと思います。  次に、返還に伴う国内法が今回提案されておるわけですが、これはすでに質問もございましたが、もう一回私はここで、短い時間で確認をしたいと思いますが、返還に伴う米国の期待する前提条件となっている法律は何と何ですか、今回提案されておる……。それとも全部ですか。
  208. 福田赳夫

    福田国務大臣 先般のアメリカにおきまする上院の沖繩返還協定の審議にあたりまして、本会議に対する同委員会報告書のコメントといたしまして、四つばかりの事項があげられております。その一つのコメントに、この協定の批准は日本におけるこの協定関連の諸法律案の成立を前提とする、こういうふうに書いてあるわけです。そこで、日本政府といたしましては、アメリカに、この諸法律案というのは一体どういうことですか、また、このコメントの意味はどういうことなのでしょう、こういうことを聞いてみたのです。そうすると、アメリカの返事は、個々のことを言っているのじゃありません、抽象的に申し上げております、つまり、この返還協定を結ぶ——一つの例です。これはただ一つの例だけを申し上げますが、まだほかにもいろいろありますが、VOAの問題がある。国内法ができなければ、あれは実施できませんからね。とにかく先方の言いますのは、これらの法律ができ上がって、そうして円滑な沖繩返還が実施される、そういうようなことを言っておるのだ、こういうことでございます。  これは余分かもしれませんけれども、わが国の政府といたしましては、ただいま御審議をいただいておるところの諸法案全部が、円滑なる沖繩返還というものに必要である、そういうような見解をとっております。アメリカアメリカとしてそういう考えでありますが、わがほうはわがほうとして全体の法律が成立をする、それを強く期待し、要望している次第でございます。
  209. 美濃政市

    ○美濃委員 その中で、私は、法律というものは、立法の趣旨、それから運用、あるいは政令等によって具体的に適用するという行為は、これは高度な常識と道徳に合致するものでなければならぬと思いますが、その見解はどうですか。法律というものはそれから逸脱することはあり得ないと思うのです。立法の趣旨、それから法律の運用あるいは適用ですね、これはやはり高度な社会常識と道徳に合致する立法の趣旨であり、運用であり、適用でなければならぬ、こう考えるのです。それからいわゆる逸脱するものがあっても——あることは考えられもせぬし、許されるべきことではない、こう思うのです。いかがですか。
  210. 福田赳夫

    福田国務大臣 まあ、大体そういうことかと思いますが、もっと具体的に申し上げますれば、憲法の精神に背馳してはならない、そういうふうに思います。
  211. 美濃政市

    ○美濃委員 私は、憲法そのものがそうなっておるんでないか、いま申し上げたことは、それが即憲法に定められておる各条項の精神ではないのか、こう考えるわけですが、いかがですか。
  212. 福田赳夫

    福田国務大臣 たとえば、自由を憲法は保障しておる。その自由がしかし制限を受ける場合もあり得ることを、これは法律できめ得るようにもなっておる。いろいろまあ憲法では、わが国の国民のあり方というものについて規定しておるわけでありまするが、それらの条章に法律というものは必ず合致するものでなければならぬ、そういうふうに考えております。
  213. 美濃政市

    ○美濃委員 次にお尋ねいたしますが、暴力やもしくは不当な権力をもって所有者の合意なく資産なり財産——まあ財産といっていいわけですが、強制使用されて、使用する側の一方的な判断によって借料が払われる。そうすると、その権力に対抗できない者は、抗議してもかえって痛みを感ずるだけであって、抗議する手段、方法を失った者は泣き寝入りになって、黙認せざるを得ないわけですね。こういう現象というものは、まあ講談等ですからよくわからぬですけれども、昔の幕府政治の時代には、かなり物語としてはありますね。そういうときに、いわゆる行政権力の乱用という行為が行なわれた歴史はあるわけです。それが行なわれると、政治の信用が極端に失墜するし、世相が悪化していくわけですね。そう考えますが、どうですか。
  214. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまお述べになったことは私もたいへん政治に携わる者として心がけ、気をつけていかなければならぬ点だと、かように思います。
  215. 美濃政市

    ○美濃委員 したがって、このような行為はやはり否定しなければならぬし、また黙認しておるからといって、その姿をもって正当な賃貸借の契約が成立しておる、こうみなすべきではないと私は思うのです。その点いかがでしょう。
  216. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いわゆる契約の自由の原則は、そういう場合には成り立たない、一方的な権力だけで契約ができている、かような非難が当たるだろうと、かように私は思います。
  217. 美濃政市

    ○美濃委員 次に、もう一点お伺いいたします。  社会の公共福祉を守るために、やはり公共用地として国民の土地を求める場合——国の立場ということになりますけれども、求める場合、これはやはり、私の考えは、その国民の立場が、貸してもいい余裕資産であって、賃貸借で合意のできるものはそれでいいと思うのですね。その人が合意をするわけです。しかし生活必需資産、自分の入っている家とか宅地とか、こういうものは賃貸借の——そういう暴力か権力でなければ、通例は使用賃借では応じられないわけです。したがって、収用する場合の原則としては、そういう資産については、土地については適正な対価で買収する、工作物については十分な移転補償をして代がえ生活手段が求められる措置をとって応じてもらう、これが原則でなければならぬ。国民の生活必需資産を借り上げで強制するということは、これは許されないことじゃないのか、その人の立場に立てば。その立場でない人はがまんしてもらいたいという意見もあるかもしらぬ。そういうものではないんじゃないか。いかがですか。
  218. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 美濃君もたいへん気をつけた発言、表現をされましたが、私は、まあ私権というものはどんな場合でも絶対なものではない、かように思います。やはり私権が公共の用に供せられる、そういう意味で制限を受けることはあるものだ、かように思います。そういう場合に、私権の保護と、公共の用に供するという、そういう間の調和をとることが、やはり何といっても政治の大きな課題ではないか、かように私は思いますので、ただいま言われるような点はあえて公共の用に供することを否定はなさらない、かように思いますが、その点さえ否定なさらないならば、大体私もおっしゃることが理解できないわけでもございません。
  219. 美濃政市

    ○美濃委員 否定するかしないかは、その人と条件によると思うのです。たとえば、国民教育の学校を建設する用地を求める場合もあるでしょう。道路を建設する場合もあるでしょう。私は、公共用地にそういう誠意を尽くして、まず前段に合意を求めて、そして公共用地に使うということを否定はしておりません。ただ、その条件ですね。人の条件その他によっては否定する場合がありますけれども、原則として、ある程度やはりそういう合意的な手段を求めたとしても、移転する人にしてみれば、それは非常な精神的な苦痛もあるわけです。しかし、あえて公共の福祉のために、個人にそういう金銭上や経済上のことは、客観的に見てまあ十分な補償ができたとしても、そのほかに住居に対する、居住地に対する愛着というものもあるわけですから、そういうことがあったとしても、それを否定しておるものではないわけです。しかしまあ、その人なり方法なりによって否定する場合がありますけれども、これは否定しなければならない、否定するのじゃなくて、否定しなければならない条件というものがあれば、これは別ですが、なければ、それはこれからも時代は進歩していくわけなんです。  そこで、いまこの三つの原則についてはそれぞれまあ私の考えと合っておるわけですが、ここで今回提出されておる公用地使用暫定措置法というのは、いまお話のあった三つの原則からいずれも離れておるわけですね。まあこれから、たとえば百歩譲って合意的な手段をするといったって、この法律を適用してからあとの手段は、これはあくまであとなんでありまして、前段としてこの法律どおりに、合意のない、正当な契約とみなされない、それを、現在使用しておるんだから継承するんだという行き方、これはただいま申し上げた三つの原則からはずれて、いわゆる行政権の乱用であると私は思うわけですね。総理は、日本の最近の世相というものをどういうふうに見ておられるかわかりません。そういうことが行なわれると、これは単に沖繩の地主だけでなしに、やはり国民の世相に与える影響ということは重大な要件としてわれわれは考えなければならぬ。全体に与える影響。行政権の乱用というものが行なわれる。厳重にこれは注意していかぬと、世相を悪化する根源であると思うのです。いかがですか。——法的見解はいいです。政治家の良識を聞いているわけですから。あなたの抽象的な法律論を聞いてもしようがないですから。
  220. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 美濃君がいま言われるように、法律的見解じゃない、かようにおっしゃるが、さらに国民はこれを通じて聞きますから、これはやはり法律的な見解も、必要なときには聞き取っていただきたいと思います。ただ、いままでお話しになったことは、直接法律的見解についてのお話ではないし、いまの政治の要諦、それに触れられている、かように私は思います。必ずしも公用地の今回の法案に頭から反対だというようには言っておられないのだと私は理解したのです。  と申しますのは、あの法案法案でありますが、実際には、とにかく話し合いでものごとを片づけていこうという、それに一番全力を注ぐ。だから、地主等が移住したりあるいは不明の場合にはこれは困りますけれども、また特別にいろいろな話をいたしましても理解してくださらない、こういう場合には、最終的にどういう処置をとるか、その段階できめればいいことで、これはもういま言われるような権力の乱用だ、かようなことがあってはならない、どこまでも契約でものを片づけていくという、これはことばを費やしていままで説明しておりますから、その点は誤解はないだろうと思います。  ところで、ただいまの権力の乱用、これは国民一般から見ましても、私ども、いまの民主主義の時代、それは許せないことなんだ、権力の乱用、それがあってはならない、また、政治がそういうことで片づけられては、これは真の民主主義は育たない、かように私は思うのでございまして、そういう点はやはり明確にしておく必要があるだろうと思います。  ただ、私が申し上げたいのは、かつても言っているように、政治家は率先垂範というようなことばを使ったこともありますけれども、それで率先垂範することが必要であるが、同時に、それをやらないからといって、不法行為が合理化されても困るのですね。だから、先ほど御指摘になったように、各人の常識あるいは憲法の精神によって行動すべきだ、かようなことはやはり守るべきだろうと私は思いますので、そこらは誤解のないようにお願いをしたいと思っております。ただいま言われる点、いわゆる権力の乱用、これは断固排撃、そうしてわれわれは民主主義、そのもとにおける政治、生活をより実りあるものにする、こういう努力をしておる、かように御理解をいただきます。
  221. 美濃政市

    ○美濃委員 私はいまの総理のお話を聞いて、原則総理も理解しながらも、この法案の仕組み、出し方は、何といっても——これはもちろん、法律の第一条には、誠意をもって合意契約に努力するということはうたってはおりますけれども、この法律のいわゆる適用そのものが、合意前に適用するわけです。そういうところに、それは事後の処理において乱用を防げますという気持ちで言っておるのではないかと思うのです。法律はそういうものじゃないのじゃないか。法律をきめるときに、事前に乱用を起こして事後措置で済ませばいいじゃないかというのであれば、人のものを盗んでも、返せばそれでいいじゃないか、こういう極端な卑近論になるかもしれません。返して損害を与えなければいいのではないか、こうではないと思うのですね。  この間も沖繩の公聴会に行ってまいりましたが、地主の代表も公述人で言っておりました。三%くらいですね、所在不明は。中には、一方的に支払っておる使用料を受け取りに来ない者も若干ある、これは三%だということを言っておりました。こういうものに対する特別措置はやむを得ないかもしらぬ。在村して所在の明確な者に頭から今回の使用法ごときを適用するようなことについては、これはあくまでいけないという意見と、多少緩和した意見とありましたけれども、全島民ひとしく、やはりそういう法律につきまして歓迎をするという態度ではないわけです。よろしゅうございますという態度ではないわけです。がまんしなければならぬという姿勢と、許せないという姿勢がありまして、合意をした姿勢というものは、それはおるとしても、幾らもいないと私は思うのですね、沖繩県民は。  そこで、こういう法律によらなくても、もう少し、これはやはり事前に、法律をつくるときに、あたたかく沖繩を迎えるというのであれば、つくりようはあったのではないか。きのうの公聴会でも、法律学者は、つくりようがあるということを言っておるわけですね。これは憲法違反のこり固まりみたいな法律だ、世界の歴史にもないし、日本の歴史にもない、こんな法律は見たこともないというわけですね、法律学者の公述人は。それは公述人の全員じゃなかった。  そういうことで、これをいかに正当化しようとお考えになっても、これはやはり無理だと私は思うのですね。それは無理です。無理だという解釈に良識ある政治家は立つべきだと私は思うのです。良識がなければ別ですよ。良識ある政治家は、こういう法律の立法は無理なんだという理解を持たなければならぬと思うのです。いかがでしょうか。
  222. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうもはっきり美濃君と私との間では、理論的な構成でも話がかち合わないようでございます。ただいまは、総理は常識のない政治家だと言わんばかりの言い方をされますが、ただいま提案している法律、それをつかまえて、かような法律をやる者は常識がない、良識がない。常識と言われたか良識と言われたか、ちょっとわからないのですが——良識ですか。良識がないのだ、かように言われましたが、私は、今日この法律を出すことは、返還時においてやむを得ない措置だ、かように思っております。私、これが最高のもので、一点の瑕疵なし、かようには申しておりません。しかし、どうもただいまのような御意見になると、これは御意見として伺う以外には方法がない。これは質問の域ではなくて、もう御意見のように思いますので、どうもさっきの安全保障条約と同じように否定なさる、こういうことじゃないだろうかと思います。
  223. 美濃政市

    ○美濃委員 したがって、この問題は、さっき世相の問題を申し上げましたが、良識問題になりますと、たとえばみずからが正さねばならぬという中でも、これだけではなくて、人のやることですから、善政もあれば悪政もあるでしょう。しかし、ことわけは申しませんが、国民佐藤総理大臣は大みえを切って約束した、みずからの正常化についてのお約束は果たさなかったでしょう。はっきりと小骨一本抜きませんと約束したことが実行されていない。客観的情勢が動かなかったのか、あなたの良識が働かなかったのかもしらぬ。約束した事項が果たせなかったものもあるわけですね。全部が悪いとは申し上げません。したがって、今回もまたそう言われておるけれども、私どもとしては、こういういわゆる行政権力の乱用の法律、したがって、乱用でありますから憲法には抵触する、憲法違反の法律である、これは何としても考え直してもらわなければ——ほんとうにこれは夜分まで皆さん、大臣方、毎日この審議を続けておるということは、かなり疲れておるし、御苦労だとは思いますけれども、まあ客観的情勢から見て同意をしようでないかというわけにいかぬと私は思うのです。いかがですか。
  224. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも、結論を出して、同意するわけにいかぬとおっしゃるが、そうおっしゃらないで、この運用についてわれわれが最善の努力は払うという、そういうこともお約束いたしておりますから——この契約は、できるだけ事前に契約に取りつける、その努力はいたします。いわゆる外国に行ったりして不在だ、こういうふうな場合にはどうもこれはやむを得ない、かようなケースになると思っておりますが、あらゆる努力をして、しかる上でどうしても契約のできないものについて、説得のできないものについて、いまのようないろいろな理由があるでございましょうが、そういう際にやはり継続して土地を使用する、こういうことをいま考えておるわけでございます。最初から、いま審議の途中でございますから、まだ反対をされないように、どうかこの上とも御協力願うように、私のほうからお願いしておきます。
  225. 美濃政市

    ○美濃委員 これはまあ各質問者から平行線になっておるところでありますから、何ぼ話してもこれは一致した線にはならないと思いますけれども、しかし、これはやはり重大な問題として——総理みずからも言われておるように、万全なものではない。まあ提案した以上、そういう表現しかないと思いますけれども、やはり行政権力の乱用の疑いは十分ありますから、これはいまここで結論めいたことを申し上げることもどうかと思いますが、まことに困った法律だ。重ねて私に言わしめれば、困った法律を提案してきたものだと言わざるを得ないです。これはもうあとの全般的な問題にも響くでありましょう。まことに困った法律を、万全な法律ではないという注釈を加えて出してきたものだ、こういうふうに判断せざるを得ないわけであります。  そこで、次へ進みます。平行線をたどってもこれは同じことになりますから。  沖繩基地でありますが、この沖繩基地の機能ですね。これは防衛庁長官はいないし、外務大臣はいないし、まあ総理大臣がおるからいいでしょう。沖繩基地の機能、これはどういうことになっておりますか。
  226. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 返還後、祖国に復帰後は、この基地安保条約上の施設、区域、そういう性格になるわけでございます。だから、本土におけると同様な基地性格になると御理解いただきます。
  227. 美濃政市

    ○美濃委員 この基地機能と言って質問したわけですが、これは具体的にいきます。軍事機密や何かに関するものじゃなくて、通例、行政上どういう基地なんだという区分が——まあこれは法律で区分しているものじゃない。まず第一に、しからば安保条約の範囲であれば、これは日米安保条約に基づいて、日本のみの——安保条約の可否は別に論じます。われわれは安保を否定しておるけれども、まあ総理大臣は、安保の繁栄とこう言っているわけです。この見解の相違は別といたしまして、言うところの安保条約の範囲において、日本国のみの防衛なんですか。それよりか、もう一つは、直接戦略戦闘基地であるのか。もう一つは、いわゆるアジア地域における同盟国の結合の基地であるのか。こういう問題があるわけです。それから、アジア地域において国際紛争が起きた場合、介入する規模の基地であるのか、こういう区分があるわけです。これは何も軍事機密に関する事項じゃなくて、行政上こういうものであるという表現を行なわれて支障のないものです。機密に関する事項ではございませんから、これらの話し合いはアメリカと行なったことがおありになるかもしれません。たとえなかったとしても、地位協定に基づいてその用地を提供する以上は、日本政府の考え方としても、どういう規模のものであるか、基地機能というものはどういうものであるということは、ただ安保条約に基づくものであるというのじゃなくて、その機能ですよ、これはどの類に属する機能になるとお考えになっておりますか。また、アメリカとの話し合いで、はっきりこの機能のものなんだということがあれば、それを率直に言ってもらえば幸いであります。
  228. 井川克一

    井川政府委員 協定第二条にも明記してございますとおりに、安保条約がそのまま適用になるわけでございます。安保条約第六条に「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」沖繩返還とともに沖繩はこの「日本国」の範囲に入るわけでございまして、ただいま読み上げました条文がそのまま適用されまして、そのようなために提供される基地は、施設及び区域となるわけでございます。
  229. 美濃政市

    ○美濃委員 大体想像はつくんですが、しからばその四国を具体的に言ってもらいたい。四国というものは具体的なんでしょう。具体的にどれどれの国、四国とは。
  230. 井川克一

    井川政府委員 申しわけありません。私、あるいは聞き違えたかも存じませんが、「日本国の安全に寄与し、」……
  231. 美濃政市

    ○美濃委員 四国と言ったんじゃないんですか。
  232. 井川克一

    井川政府委員 日本国でございます。失礼いたしました。
  233. 美濃政市

    ○美濃委員 そうすると、今後、日本国のみのいわゆる局地防衛基地と、こういうふうに受け取って、将来ともそれから違背した使用が行なわれないということが言えますか。
  234. 井川克一

    井川政府委員 第六条に明定されておりますように、ただいま読み上げましたように「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」このような規定になっているわけでございます。沖繩が返りましたら、その施設、区域は、全く現在の本土の施設、区域と同じようにこの規定の適用を受けるわけでございます。
  235. 美濃政市

    ○美濃委員 その場合、たとえば補給基地であるとか、いろいろいわれているわけですが、他の基地関係は別といたしまして、沖繩基地は、そうすると、その範囲内に入っても、その極東の安全ということは入っておるわけですが、私の聞いておるのは、ほんとうに日本安全保障以外にこの基地が使われることはないんだということなのか、それとも、いま言ったように、その「極東における」云々という字句の解釈から派生して、従来アメリカ施政権下において使われておったように、極東地域に戦争行為等が起きると、朝鮮戦争あるいはベトナム等におけるように介入使用する場合があるのか、どういう規模の基地なのかということを聞いておる。その具体的なことを聞いておるわけで、どういう規模の基地なのか。どういう規模で使用されるという基地なのかということを聞いておるわけです。
  236. 井川克一

    井川政府委員 この基地は、日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するために日本国が提供するわけでございまするから、この両方の目的のために使用することが許されるわけでございます。  念のため申し上げますると、しかしながら、この第六条に基づくところの交換公文がございまして、「合衆国軍隊日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更並びに日本国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用は、日本国政府との事前の協議の主題とする。」その最後に申し上げました、特に問題になりますのは、日本国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての施設及び区域の使用は、事前協議の対象となるということでございまして、従来は、沖繩における基地は、日本の安全及び極東の安全というふうなまず制限もございません。そしてそれをどのような目的に——アメリカ施政権のもとにあったのでございまするから、制限なく使い、理論的には使い得たわけでございます。それが今般日本に返ることになりまして、まず第六条の目的の範囲内にとどまるということが第一点でございます。第二点は、この事前協議のワク内にとどまる。これがいわゆる自由出撃もなくなるというふうなことでございまして、これが今回返りまして沖繩における基地性格に大きな変更がもたらされるゆえんでございます。
  237. 美濃政市

    ○美濃委員 どうも質問のしかたが悪いのかもしれませんが、それはわかっておるわけです。そういう法文上の解釈でなくて、実際に、たとえば何それ基地は補給基地である、こういう基地の機能というものがある。沖繩だけの基地本土にはないですよ。本土の面積からいっても、本土にある全体の基地面積よりも沖繩の面積が五〇%も多いわけですから、本土にない機能の基地なんでありますから、条約上の解釈もさることながら、たとえば、そういうことに使う場合には、事前協議があるという場合であっても、事前協議で、しからば本土にある百数十の基地沖繩基地と同じ機能を持って同様に使われるとは、私、解釈していないわけです、事前協議がある場合には。どういう意図に基づく基地なのかということを聞きたい。六条の目的以外に使う場合には事前協議の対象であるが、しかし、事前協議があるからといって、本土にある基地の全部が沖繩基地と同じ能力を持つ、同じような使い方が行なわれるとは、機能が違いますから、考えていないわけです。機能が違います。これはどういうふうに政府としてはお考えになっておるか。アメリカと話し合ったことがあれば、それを具体的に話してもらえばいい。ないにしても、地位協定に基づいて日本政府で金を出して土地を提供して、軍事基地を共同で維持する以上は、そういう見解というものは私は明らかでなければならぬと思う。機密を聞いておるわけじゃないです。行政上のいわゆる基地機能の判断ということになる。具体的なものがあれば、具体的に答弁してもらいたい。具体的なものがなければ、責任ある判断でけっこうです。こう考えるという判断でけっこうです。これは私は、機密に関する無理な質問じゃないと思うんです。
  238. 福田赳夫

    福田国務大臣 基地の機能は、これは本土におきましても、その基地基地によってみんな違うと思うんです。同じだというようなものはほとんどなかろうというふうに私は思います。今度沖繩日本に返ってくる。日本に返ってくる米軍基地の機能、これも沖繩にはたくさんないろんな部隊がおる。その部隊によってその機能はいろいろ変わっておると思うんです。しかし、統一して申し上げ得ることは、事前協議の対象としてその行動が規制される、そういうことでありまして、特に申し上げたいことは、自由出撃ということは、今後本土沖繩を通じまして一切なくなる、こういうことと御理解願います。
  239. 美濃政市

    ○美濃委員 それは、お尋ねした基地機能の具体的な判断はないんですか。判断なり、具体的なアメリカとの話し合いなり、機能について——これは事前協議前の問題です。機能のないところで事前協議したって使い道にならぬわけですから。別の六条以外の目的に使うときには事前協議の対象であるということは承知しておるわけです。しかし、事前協議ということは、事態が発生したときの協議事項であって、機能のないところから、事前協議によって機能のない使い方はできないはずですね。そうでしょう。その機能を聞いておるわけです。使う場合には事前協議の対象であるということは承知しております。そうすると、事前協議だけで、人間同士の話し合いで、機能のない基地、機能の整わない基地を利用しようとしたって、これは機能がないから使えないですよ。その機能を聞いておるわけです。
  240. 福田赳夫

    福田国務大臣 この駐留米軍の機能は、各基地によって千差万別というか、たいへんいろいろあるわけです。そこで、防衛局長は、大体概略はそれを把握していると思います。ちょうどいま見回したんですが、防衛局長がおりませんので、私からはお答えできませんが、必要があれば防衛局長の出席を求めてお答え申し上げます。
  241. 美濃政市

    ○美濃委員 これは私は、やはり基地機能というものは明らかに聞いておく必要があるわけです、今後の問題として。いろいろな問題が出てまいります。
  242. 吉野文六

    ○吉野政府委員 大体A表に載っております基地は、御存じのとおり、たとえば訓練場だとか、それから通信施設だとか、飛行場だとか、弾薬倉庫とか、あるいは普通の倉庫とか、それからサービスセンターと称して修理その他をやるところとか、あるいは将兵の慰安施設とか、そういうようなものからなっておるわけでございますが、それ以上に基地の機能と申しますと、いかなるものでございますか、われわれちょっと理解いたしかねますから、もう少し具体的に御説明願いたいと思います。
  243. 美濃政市

    ○美濃委員 一回申し上げたのですが、私が聞きたいことは、事前協議がありますから、事前協議がととのえばこの基地の機能は直接戦略戦闘基地の能力を持っておる基地なのか。それから、これは先ほど話しました日本だけの防衛基地ではないのですね。しかし、条件としては日本防衛だけの基地なのか、それともアジア全体に対して他からの侵入排撃をする抑止基地なのか、それともアジア地域において戦争が起きた場合介入する意図の基地なのか。いままではこの基地は介入に使ってきておるわけですから、返還後も、条件によって、もちろんそれは事前協議が行なわれるであろうけれども、それを意図して、そういうことが起きた場合にはそういう意図に基づく装備を持つのか、そういう装備は撤去してしまうのか。全く日本だけの安全のためにということは、ぐっと縮めていうわけですね。それから、アジアにはアメリカとの軍事同盟の国があるわけですね。この数カ国の軍事同盟の結合基地として、軍事同盟国内の抑止のための役割りを果たすという範囲のものなのか、この区分を、どこからどこまでという線は、やはりいろいろ基地がある以上——私どもは否認しておりますけれども、佐藤総理であれば、日本の安全にも役立つんだということは言うと思うのです。これはそうなると思うのですが、しかし、主たる目的ですよ。そういうふうに共通して使われるであろうけれど、最高ですね、戦闘戦略基地としての能力を最高発揮するのか。それはその他にもそういう——戦略基地としては、直接戦闘戦略基地というのが、一番武装した最高の、戦闘用としては最高——最高という表現が適当であるかどうか知らぬけれども、最高の基地と私は思う。そういう装備を持っておるものであるのか。さっき言ったような段階で最高の目標、最高使われる場合の基地機能はどこなのか。最低は聞かなくてもいいわけです。併用する使い方があるはずですから。最高の機能はどこまでの機能を目標としておるのか。それを使う場合には事前協議であるということは承知しておる。しかし、繰り返しますが、機能のないところは使えないでしょう。機能のない基地を事前協議で使うといったって、機能がないから使えない。事前協議がととのった場合、最高の機能はどこまで発揮し得る基地なんだ、これを聞いておるわけです。
  244. 福田赳夫

    福田国務大臣 機能といたしましては、安保条約の目的に沿うに足る機能を持っておるわけであります。つまり日本国内防衛に当たる、こういうものが最低といいましょう。しかし、同時に、安保条約日本の安全を保持すると同時に極東の平和と安全に寄与する、こういう任務を持っておりますので、安保条約の対象になる区域、つまりフィリピン以北の区域ですね、韓国台湾、この地域はもちろん含まれるわけでありますが、そういう地域に対する機能も持っておる、こういうふうに御理解願います。
  245. 美濃政市

    ○美濃委員 ベトナムはどうなりますか。これが返還された場合、ベトナムの戦争が終結していなかったら、ベトナムはどうなるのですか。対象地域外ですか。
  246. 福田赳夫

    福田国務大臣 安保条約の対象区域というのは、これは確固たる区域の規定があるわけじゃないんです。つまり極東の安全、その極東の安全とはどこだ、こういいますと、わが国の安全が中心になる。わが国の安全を保持するためには、台湾だとか、あるいは韓国だとか、あるいはフィリピンだとか、そういう地域がまず問題になる、これははっきりしているのです。ところが、ベトナムになりますと、これはそのベトナムの戦闘の様相によると思うのです。これがわが国に火の粉が降りかかってくるか、そういう状態性格のものであるかどうか、そういう非常に機微な判断を要すると思うのです。つまり私どもが、フィリピン以北、そして韓国台湾を含む、こういうふうに申し上げておりますが、その周辺地域ですね、これは客観情勢のいかんによっては、その周辺地域につきましてもまた備えをしなければならぬ、こういう問題があるわけでありますが、これはそのときどきの客観情勢によって判断される問題である、こういう理解をいたしております。
  247. 美濃政市

    ○美濃委員 共同声明では、ベトナム戦争の終結が起きてない場合にはあらためて相談するというふうに書いてあったと思う。いまここに持っておりますけれども、そういうふうに書いてあったと記憶しているわけです。いまの外務大臣の説明は、その原則的な地域を言われたと思うのです。  総理大臣にお尋ねしますが、これが返還になって、ベトナム戦争が終結してなくて、あの基地から出撃する相談を受けた場合、どうお考えになりますか。
  248. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 実はいまのニクソン大統領と共同コミュニケをつくった際、その際にやはりベトナムが一つの問題であった。だから、もしもベトナムの戦争が継続していて、非常にそこに出かける必要があると、返還自身について再協議するというか、その段階で話し合おう、こういう規定のあったことは、御指摘のとおりであります。ところが、ベトナムの戦争はもちろんまだ続いておりますけれども、この返還協定を話し合った場合に、ベトナムの話は全然出てこなかった。私どもが六九年に、その予定した共同コミュニケ、そういう事態があるだろうと思ったことには、全然アメリカ側からも意見が述べられておりません。幸いなるかなその協定の調印ができた、こういうことでございますので、これは私どもが、念には念を入れろというような立場で、あの際に、第四項でしたか、ああいう規定を設けましたが、それが必要がない、こういうことでただいまスムーズに返還協定の調印ができている、かように御理解いただきます。
  249. 美濃政市

    ○美濃委員 先ほどもこの基地の縮小の話がありましたが、基地の縮小は努力をするということですが、これは単なる意識的な努力するという表現は承っておりますけれども、問題は、意識的な問題だけで処理されるとは思われぬので、ここで条件をお聞きしたいと思います。  基地使用をする要件というものは、これは用地や何かを地位協定によって提供しておる日本側に、その基地縮小について主体性がどれだけあるのか。私は、これは推定ですけれども、これはやはり先ほどもお話がございましたが、アジアの情勢その他を踏まえて米国側の選択の一方的条件でないのか、アメリカが要らぬと判断したときに縮小がされるのであって、日本の要求や日本沖繩開発計画によってこれだけをぜひ返してくれという契約によってアメリカ側の縮小を拘束するところまでいきますか。主体性というものはどうなりますか。縮小に対する実質権限の主体性はどこにあるのですか。
  250. 福田赳夫

    福田国務大臣 わが国は、わが国の安全、この安全というものはわが国の最大の問題でありますが、この安全につきましては日米安保条約を締結しておって、これによってわが国の安全を確保するという立場にあるわけです。そこでアメリカが、極東の平和並びに日本の安全、このために尽くす、そのために必要な基地は提供しなければならないという立場に置かれておるわけであります。現に本土におきましてもずいぶん基地を提供しておる。その密度が沖繩におきましては非常に高い、そこに問題があると、こういうふうに思っておるわけであります。ことに沖繩本島の中部地方におきましての密度が特に高い。また、レクリエーションの施設、そういうようなものにつきましてもわれわれとしては考えてみたい。また、現在の基地機能をそこなうことなく最小の施設でどのくらいまでいけるかという問題も検討してみたいと、こういうふうに考えておるわけでありまして、これはどっちに主体性があるというわけではありません。これは両方で協議して適正なところに解決の結果を求むべき、そういう性格なものだと思います。  そこで、かねてからずっとアメリカ側と話し合っておるわけでありますが、今後とも、ただいま申し上げたような方向を踏んまえまして、協定発効後においても基地の整理、縮小が行なわれるということを何とかして実現をしたい、こういうふうに考えております。
  251. 美濃政市

    ○美濃委員 今回安保体制による基地は強化されたというふうな判断を私は持つわけです。たとえば、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、面積も、日本全体の現在ある五〇%も多い。その基地の中に沖繩があるというような条件であります。兵員も五万人以上おるということで、非常に安保条約による体制というものがこれによって強化されたんではないか。現実の問題としては強化されたということになると思うのです。それはどうですか。
  252. 福田赳夫

    福田国務大臣 それは逆でありまして、いま米軍、たとえば特殊部隊の一部はもうすでにこれを撤去するという約束も、わがほうに対していたしておる。それから、残留する米軍にいたしましても、いままではもう自由自在な行動ができたのですが、今度はそれができないのです。安保条約制約下に置かれる。自由出撃などはもう絶対にできないという立場に相なるわけであります。それから一番大きな問題は、何といっても核の問題です。核が撤去されて返還時にはなくなる、またその後においても核は絶対に持ち込まぬ、こういうのですから、基地機能につきましては、この条約の発効後においては非常に変化を生ずる、こういうふうな見解です。
  253. 美濃政市

    ○美濃委員 あなた方はそういうふうに見るだろうけれども、現実まあ施政権アメリカにあったわけですから、それを肯定すればそういう判断にも立つだろうけれども、現実に地位協定によって行なわれる部分はふえるのではないですか。いままでは、施政権が向こうにあったということで、向こう側がかってにやっておったことです。そうでしょう。現実にはふえるんじゃないですか。地位協定に基づくもろもろの諸条項というものはふえたんじゃないですか。現実の問題としてはふえたんじゃないですか。減ったんですか。
  254. 福田赳夫

    福田国務大臣 地位協定に基づきまして、たとえば米軍がどこの地域からどこの地域に移転をするという場合があるかもしれない、そういう際においてわが国が施設をつくってやるというようなそういう負担はありますよ。ありまするけれども、米軍自体の機能というものは非常に縮小された。私は、アジアの緊張緩和には、皆さんがいろんな議論をされまするけれども、非常にこれが役立っておると、そういう認識です。
  255. 美濃政市

    ○美濃委員 防衛庁長官が来られたから、先ほど答弁が保留されている部分ですね、沖繩基地機能の問題、これは防衛庁はもう少し把握しておるんでないかということだったので、どういうふうに判断されておるか。
  256. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 アメリカ軍の基地の機能でございますね。そうですか。——今度配備しようという自衛隊のでございますか。
  257. 美濃政市

    ○美濃委員 そうじゃなくて、アメリカ軍のです。事前協議に基づいて最高使い得る能力と言ったほうがわかりやすいと思います。最高使い得る機能です。
  258. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 わかりました。それじゃ正確を期する意味防衛局長から答弁させます。——いま防衛局長が来ておりませんので、ちょっとお待ちください。すぐ申し上げます。
  259. 美濃政市

    ○美濃委員 それでは次に進めますが……
  260. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 いま出ました。お答えしましょうか。  沖繩に所在する米軍でありまするが、これは陸海空いろいろあるわけでございますが、簡単に御紹介しますと、陸軍関係の部隊としては、第二兵站コマンド、アジア特殊活動部隊第一特殊部隊群、第三〇防空砲兵旅団、第七心理作戦群等があるわけです。  それから、空軍関係の部隊としては、第一八戦術戦闘航空団、それから第八二四戦闘支援群、第六一三五航空基地群、それから第一九六二通信群、第三七六戦略航空団等があるわけです。  続いて海軍でありまするが、海兵隊関係の部隊としては、第三海兵両用戦部隊、スメドレー・D・バトラー基地隊、琉球艦隊の基地隊、それから第五艦隊混成飛行隊、第七艦隊哨戒部隊等がある、こういうふうに承知いたしております。
  261. 美濃政市

    ○美濃委員 その機能は、事前協議がととのった場合、どこまで機能を及ぼす能力があるか。
  262. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 事前協議におきましては、しばしばこの席で話になっておりまするように、あくまで日本の平和をどう確保するか、それをまず第一義に考えて対処していく。ですから、イエスという場合は、よほどの場合、よほどの例外でない限りは、これはないというふうに理解いたしております。
  263. 美濃政市

    ○美濃委員 お尋ねしておるのは、あるなしの問題ではなくて、機能の問題ですから、ととのった場合ですから、それは日本がノーと言って、そうならぬかもしれません。そういう問題が派生するとか、イエスとかノーとかというのではなくて、どれだけの——いま対米その他聞きましたが、これはこれからもいろいろ、今回の問題でなく、将来の問題だと思うのです。これは膨大な資料ですから全部見てないのですが、資料で提出されておりましょう。いままで出していなければ、いま読み上げたものを資料として提出していただけますか。
  264. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは公表して一向差しつかえのないものでございますから、資料として後刻お届けいたします。
  265. 美濃政市

    ○美濃委員 ですから、機能をもう少し明確にひとつ御説明願いたいと思うわけです。能力です。
  266. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 この部隊の概要といいますか、任務について説明をしろ、そういう意味ですね、おっしゃる意味は。——それでは申し上げます。  一、第二兵站コマンド、所在地は牧港、人員規模は約五千八百人でございます。任務は、東南アジア各地からの返送物資の受け入れとその修復。  二、アジア特殊活動部隊第一特殊部隊群、所在地はキャンプ・サンソン、人員規模は約千二百人、任務は、現地におけるゲリラ戦対ゲリラ戦及び民生支援活動等、こういうことになっております。  三、第三〇防空砲兵旅団、所在地は瑞慶覧、人員規模は約千三百人、装備はナイキハーキュリーズ、ホーク、任務は、沖繩の防空。  四、第七心理作戦群、所在地は牧港、人員規模は約五百四十人、任務は、西太平洋における各部隊の心理作戦の支援。  五、第一八戦術戦闘航空団、所在地は嘉手納、人員規模は約四千人、装備はF105、F4C、RF4C等、任務は、配属された航空機と要員の即応体制を維持し、戦闘及び戦術偵察任務を遂行する。  六、第八二四戦闘支援群、所在地は嘉手納で、任務は、航空基地施設等の管理。  七、第六一三五航空基地群、所在地は那覇、任務は、航空基地施設等の管理。  八、第一九六二通信群、所在地は嘉手納、任務は、沖繩の空軍通信網の維持。  九、第三七六戦略航空団、所在地は嘉手納、人員規模は約三千人、装備はSR71戦略偵察機、KC135給油機、任務は、空中給油及び戦略偵察の実施。  十、第三海兵両用戦部隊、沖繩所在部隊のみでありますが、所在地はキャンプ・コートニー、編成、第三海兵師団、第三六海兵航空群などで、人員規模は約一万七千人、任務は、不測の事態が発生した場合に急速に紛争地域に派遣されてこれに対処する機能を有し、かつ紛争発生の際における派遣に即応し得る体制を常時保持すること。  十一、スメドレー・D・バトラー基地隊、所在地はキャンプ・マクトリアス、任務は、沖繩の海兵隊施設の維持管理。  十二、琉球艦隊基地隊、所在地は那覇、任務は、第七艦隊艦艇に対する支援等。  十三、第五艦隊混成飛行隊、所在地は那覇、任務は、第七艦隊の艦艇、航空機への空中目標の提供。  十四、第七艦隊哨戒部隊、所在地は那覇、装備は対潜哨戒機P3B、任務は、西太平洋における対潜作戦、船舶監視及び台風偵察の実施。  これがお尋ねの内容であります。ただし、これは現在のということでありまして、今後これがだんだん減っていく体制にもあり、また、御趣旨を体して減らしてもらうように努力をしていかなければならぬ、こういうふうに考えております。
  267. 美濃政市

    ○美濃委員 私の意図する機能の問題は、お尋ねしておる全部を聞くことが不十分でありますけれども、これ以上、時間の関係もありますから、これは保留するという意味ではなくて、あとでまた聞く機会もあろうかと思います。  次に、地籍調査の問題ですが、これはさっきの質問にも出ておりましたが、今回公聴会に行きましたときも、全く地籍は不明です、特に軍用地については。個人所有者が、自分の土地の所在は全くわからない。もともと自分の所有地ですから、この辺だということはわかる。所有者は境界というものは全然わからない。それからまた、これは地主会の副会長の話でありましたが、中には、ああいう熾烈な戦闘行為がありましたが、公簿あるいは公図というものが不明確で、おおよそ確認したところ何ぼだということでつくったものもある。こういうことで、たとえば、これは軍用地の地主からはぜひ明確にしてくれという要請であり、今回農地法が、六カ月ほどずれますけれども、施行されて、買収売り渡しをするということになった。公図も不明確であり、公簿もあいまいだ。中には重複しておるものもある。地積更正をしなければ合わないというような現況を、国の責任で買収して売り渡している。事後、地籍調査をしたら、地積更正によって反別が減るなどという問題が派生する危険性があるわけです。これはこの間行ったときも、念のために琉球政府の担当の局長に電話を入れて聞きましたら、これは土地調査法を適用してもらって、まず軍事基地の測量については、周辺、境界、こういうものの測量については、日本政府が政治折衝をしてくれなければ、政治折衝に基づかなければ、とても琉球政府であっても沖繩県になっても不可能である、それからまた、その測量技術、規模からいっても全く不可能である、こういうことなんでありますが、これはこの前の山中長官の説明では、何かテスト的に琉球政府に財政援助をして、やらしてみるという話がございましたけれども、とても財政援助だけではこれはできないし、土地調査というものは、沖繩開発の根幹だと思うんです。これを早期に明確にしなければ、土地改良であるとか、いま言った買収売り渡しであるとか——土地も、飛行機の上から見ればあのとおり、たとえばサトウキビの機械化をはかるなどと農林省は言っておるけれども、とても、ああいう原始的な土地の形成をしておりますから、機械化などというときには、もう土地の区画整理をして、四角な畑にしなければ——円匙で耕してサトウキビの植えかえをしておる。あの土地のおのおのの所有地の形成というものでは、機械化などというにはほど遠い土地、分筆条件といいますか、境界条件といいますか、全体的な地形じゃないわけです。したがって、区画整理をしなければならぬ。その基本をなすものは、あくまで土地面積と所有境界を明らかにして、交換分合の方式なり、そういうものを急速に進めなければ、これがまず復帰と同時に——いろいろ大切な問題もあるでしょうが、かなり重要な要件、開発計画の前提処理をしなければならぬ要件ではないか。それが行なわれなければ、農業構造の改善や土地改良、機械化なんといったって、これは全然合わないということになりますから、とてもこれは、いささかの財政援助をして、琉球政府でやってみれという範囲のものでないと思うんです。どうですか、これは。  もう一つ、ついでにお伺いしておきますが……
  268. 床次徳二

    床次委員長 時間ですから、簡潔にひとつお願いしたいと思います。
  269. 美濃政市

    ○美濃委員 特別立法を要するか、それとも土地調査法の適用によってやるのか、やるとすれば。
  270. 山中貞則

    山中国務大臣 これは、二つに沖繩の場合は分けなければなりません。というのは、現在の軍用地であるところ、そして復帰後も施設、区域として提供される地域、これはちょっと、私のサイドなり沖繩県というものからは、なかなかお示しのような問題についての解明はむずかしいと思うんです。  ただ、沖繩でも、国土調査法に基づく調査が、わりに本島中南部を除いては進んでおりまして、いま五七%ぐらいに達しております。本土各県平均が大体一〇%だと思うんですが、その意味では、沖繩本島の中部、南部の一部というところを除いては、順調にいっているものと私は見ております。  したがって、あと残された問題は、それらの農地法等の円滑な施行あるいは今後の土地区画整理、改良、こういうものをやります場合にでも、やはり一番問題になるのは、戦場に化してしまって、そのあと境界の確定しがたいものというようなもの等をどう確定するかの作業が、非常に難渋をきわめるだろうと思うのです。これは、さらに、沖繩において時効十年というのを停止しております。このことは、一ぺん沖繩でも公簿、公図を整えてみたのですけれども、やはりどうも、このまま時効で最終確定とするには問題が多過ぎる。主として本島でありますけれども、そういうことで時効も停止しているようでありますから、これらの問題は、やはり予算措置もしてあげなければいけませんし、本土のほうも加勢をしなければなりませんが、最終的にはやはり民事訴訟によるしかないと思いますけれども、しかし、同じ部落の人たちがみんなで、だれかそこに権威のある者が入って相談をし合うということで、おおむね片づくと思うのです。でありますから、全滅家族の屋敷あととかあるいは圃場とかというものなども、復帰までに部落で相談をして、そして適正な処理をなさって、耕作の用なり、屋敷あと等で使えるところはもうお使いになって、その代金で永代供養等を部落ごとになさったらどうかということも、一応私の差し出口でありますが、お願いもしておいた次第ですけれども、そのようなことをほっておきますと、復帰後は国有地になってしまうものでありますから、国ももちろんそのようなことを希望しておりませんし、したがって、沖繩のいまの公簿、公図の境界確定の最終的な作業というものは、どうしても本島部において急がなければなりません。その中の典型的なものが与那原地区であるということは琉政側の希望でありまして、では、そこをまずひとつパイロット的にやってみようじゃないかということで、いま話をしているところでありますが、いずれにしても、お話しになりましたことは、今後の沖繩の、ことに農地の基盤整備をいたしまする場合にきわめて重大な問題点になりますので、よく承って善処したいと思います。
  271. 床次徳二

    床次委員長 美濃君に申し上げますが、お約束の時間が来ておりますので、簡潔に締めくくりをお願いいたします。
  272. 美濃政市

    ○美濃委員 この特別措置法百五十六条の問題ですが、これは今回提案されておる措置法のほか、法律を政令に委任せよというのですね。これは前にも、条件は違いますけれども、いわゆる自作農特別措置法買収地の政令の委任の範囲を越える問題が出た。これは国会できめれば、あのときの解釈とは違いますけれども、やはり法律というものを政令に委任せよというのは少し冒険じゃないですか。政令で暫定措置なり特例措置をとるのであれば、これは政令の範囲ですから、政令の範囲で現在の実勢と違う部分を一定の期間調整していくというのであれば別ですけれども、これだけの法律を出して、なお足らぬから、法律そのものを政令に委任せい、これはいかがですか。
  273. 山中貞則

    山中国務大臣 ここの百五十六条でいう政令の委任の規定においては、そう問題になる——いま、法律を政令で定めるのはどうかというお話の、そういう問題はあまりないと思うのです。しかしながら、たとえば国民健康保険みたいなものがございますですね。これは現在、立法院で決議したものについて主席が署名を拒否したというようなこと等がありまして、ちょっとこの法律までには、沖繩側においてどのような処理がなされるか、また、なされようとしておったわけでありますから、その意味でここで読むしか手はないだろう。こちらのほうで本土法を復帰と同時に押しつけるというような形もやはりとらないほうがいいのではないかという配慮等で、一部そういうお話しのような性格のものもございますが、大体はそうでないもので、漏れているものについてはここで救済するということをいっておるわけであります。
  274. 美濃政市

    ○美濃委員 漏れておるものでなくて、予定しておる政令の中に、法律一本そのものを、しばらく適用しないなどというのを——暫定措置法なりで出さないで、政令で法律の適用を拘束しようとしておるものはないですか。
  275. 田辺博通

    ○田辺政府委員 末項の百五十六条で政令委任事項がございますのは、御指摘のとおりでございますが、これは一般に他の法律におきましてもある程度の政令委任事項を置いておるのは、御承知のとおりでございますが、今回の場合におきましては、大体沖繩の制度と本土の制度が似通っているものがございます。その場合のほんとうの経過的な引き継ぎであるとか、本土の法令を若干期間延期するとか、そういった軽微な事項を政令にゆだねている部分がございます。
  276. 床次徳二

    床次委員長 美濃君に申し上げますが、どうぞ結論をお急ぎください。
  277. 美濃政市

    ○美濃委員 どうしてそれは法律で出さなかったんですか。いま予定されておるものがあるのですね。それは何件ですか。
  278. 田辺博通

    ○田辺政府委員 たいへん恐縮でございますが、いまこの法律が成立いたしますと、政令をつくることになるわけでございますが、目下も政令案につきまして各省とそれぞれ協議中でございます。したがいまして、この政令が何件あるかということは、たいへん恐縮でございますが、現在の段階ではお答え申し上げかねます。
  279. 美濃政市

    ○美濃委員 いまの予定政令の中で、これにかけて法律まるまる、しばらくこの法律は沖繩に適用しないなどという政令を予定しておるものはありますか。そういうものはありませんか。
  280. 田辺博通

    ○田辺政府委員 本土の法律全体をそっくりそのまま適用を延期するというようなものは、目下のところありません。ただ、たとえばいろんな特定の何々会であるとか、特別の法律に基づきまして設立されたような、あるいは特定の資格を与えられているような法人あるいは個人が本土の法令にございます。その場合に、大体におきましていわゆる名称使用制限、そういったような名称を他人が使用してはならないというような規定がございます。これは万一の問題でございますが、特定の名称を沖繩で現に使用しているものがあるかもしれない。そういった特定のものは大体ないと思われますけれども、もしあった場合に、たちまち、その本土法が何らの経過措置もなく適用されますと、名称使用制限の罰則にかかる、こういう問題も出てまいりますので、そういったものにつきましては、若干の猶予期間を置いて適用をする、こういうぐあいに考えております。
  281. 美濃政市

    ○美濃委員 けさ、その予定政令で出てきたものが、件数は多くですから、全部掌握できませんけれども、私はあると思うのです。これは、私から言うなら、法律一本を適用しないというのは、こういう法律を前提として、いまの時点で予定政令事項で出してくるということは、私は認められぬと思うのですね、それは法律の主体から。予測できないもの、ごく軽微なものであればどうか知れませんが、政令で法律を拘束するということは、元来原則としていけないことですね。政令に委任する。それはわれわれが決定して委任すればいいのかもしれません。それなら、この特例法そのものを政令に全部委任してくれと出して、政令委任で全部出してもいいということになります。そうではないでしょう。いまの趣旨と答弁と違うのです。法律一本を政令に委任するということで、この法律はしばらく沖繩には適用しないと、政令事項で出てきているものがありますね。暫定措置法に出てこない。
  282. 田辺博通

    ○田辺政府委員 本土のある法律のそっくりそのままを適用を延期するというようなものは、目下のところ考えておりません。  それから、おことばでございますけれども、政令委任事項と申しますのは、その範囲は、やはりこれは程度の問題だろうと思います。おっしゃるとおり、一条でもって今回の措置を全部政令に委任してもできるのか、こういうようなことでございますけれども、これはやはりそのようなことは適当でない。つまり今回の法律に提案をいたしました内容は、施政権返還に伴うところの重要な事項、それから各個人の権利、義務につきまして重要な変更なり経過措置を必要とするものというものを全部拾い上げまして、法律の条項として明らかにした。しかしながら、先ほど申しましたような比較的軽微なもの、これにつきましては、大体本土法の適用時の経過措置もございますし、常識的に考えられる範囲内においては政令にゆだねられるのもやむを得ない。これは国会の御承認を得てのことでございますけれども、その結果政令で措置をする、こういうぐあいに考えておるわけでございます。
  283. 美濃政市

    ○美濃委員 それでは……
  284. 床次徳二

    床次委員長 まだ質問ですか。もう予定の……
  285. 美濃政市

    ○美濃委員 現実にあるのです。大切な問題ですから。
  286. 床次徳二

    床次委員長 だから、はっきり質問していただいて、結論をつけていただきたいと思うのです。
  287. 美濃政市

    ○美濃委員 やったらどうしますか。
  288. 床次徳二

    床次委員長 質問をはっきりしていただいて——時間が過ぎておりますから……。
  289. 美濃政市

    ○美濃委員 あるのです。これは再提出になりますか、どうですか。法律の再提出になりますか。
  290. 山中貞則

    山中国務大臣 私どもは、一年有半、徹底的に各省庁と琉球政府とともに長い作業を続けてまいりまして、ありとあらゆるものについて法律で措置しております。そして政令にゆだねるべき部門は、その要綱案ともいうべきものをお手元に配っておるわけであります。しかし、もしそれでも万が一ということがあって——先ほどは国保の例をとりましたが、これは琉球政府の方針待ちということで書かなかったということでありますから、もし何もなければ、復帰本土法がそのままに何も措置なしで適用されることはあたりまえのことでありますので、その他のものでもし落ちがあった場合にはいけないからということであって、私どもが作業した限りにおいて、別に立法を必要とすべきであったというようなものがここであらためて登場しようとは考えておりません。
  291. 美濃政市

    ○美濃委員 予定政令が配付された中で、これは日本のいわゆる食糧管理法との関係で、それも米の問題も少しやると時間がないですから残念ですが、ここで法律関係だけ触れておきますから。  これはやはり暫定措置法では、取り扱い方式は現在の実勢でやるということになっておって、これも実勢だから、取り扱いそのものについてはやむを得ないと思っておりますけれども、しかし、これを長く続けるわけにはいかない。食糧管理法との関連で私どもが重要事項と思っております農産物検査法は出ていないのでしょう。農産物検査法は暫定措置法に出さないで、政令事項で「一定期間は、沖繩県の区域内においては、適用しないものとする。」出ておるのじゃないか。こんなのがたくさんあるのではないですか。多いから全部見るわけにはいかない。私はあるということです。答弁と実際とは違うということ。やはり農産物検査法というものは、そんな法人の名称の適用や何かというような軽微なものではない。食管とからんで重要な事項である。
  292. 山中貞則

    山中国務大臣 政令を決定します際には、一定期間というのは一カ月というつもりでおりますから、移り変わるためのきわめて短期間ということに解釈をしております。
  293. 床次徳二

    床次委員長 だいぶ時間が過ぎましたから……
  294. 美濃政市

    ○美濃委員 しかし、一カ月で食糧事務所機構を全部つくれますか。いまないのです。私はこれは重要事項だと思う。いま一カ月という答弁ですが、いま沖繩にない食糧事務所の機構を、復帰した一カ月間でつくれるのですか。全然答弁が食い違ってくると思う。一カ月でつくれるものではないと私は思うのですが……。
  295. 山中貞則

    山中国務大臣 これは、法律の適用はそういうふうにいたしますが、御承知のように、現在沖繩においては農協が集荷をし、検査をし、そうしてその不足払い制度というものがとられておりますので、その点は何ら遅滞なく実施していける、実務としてやっていけるということであります。
  296. 美濃政市

    ○美濃委員 そんなことを私は聞いておるのではないのです。法律の問題を聞いておるわけです。これは、やはり日本の食管法という問題の関連では重要法律である。そんな軽い、軽微なものではない。最大重要だという表現はしません。その重要法律を政令の委任事項で予定を出してきておる。政令の委任事項において一定期間——いまの答弁は一カ月という。私は、米の取り扱いに支障を来たしておるんじゃないかということを言っておるのではない。いまの実勢がそうなっておるから、暫定措置法で実勢で、補給金でいくということについては、これは私どもは、やはり一カ月くらいで、いわゆる国営検査の機構をもって食管取り扱いを本土と同じようにすぐ適用するということには至難であろう。だから一定期間、いわゆる農協が取り扱って補給金で出すということには、だめだという考えは持っておらぬ、やむを得ぬだろうと思っておる。それをあなたは一カ月なんだ。そういうことでは私は済まされぬと思うわけであります。
  297. 山中貞則

    山中国務大臣 これはその二番目に、農産物検査法関係の(2)、これは「(1)の一定期間経過後も、沖繩産米穀の生産者が沖繩県の農業協同組合に売り渡す等の場合には、農産物検査法に基づく強制検査の規定を適用しないものとすること。」としてありますから、したがって、いまおっしゃるような実務というものがいま行なわれておりますから、それをそのまま政令で受けているということであります。
  298. 美濃政市

    ○美濃委員 そうじゃないでしょう。そういう実勢を私は言っておるんじゃないのです。法律事項を言っておるのであります。食管と関連のある重要な農産物検査法を適用しないということを、政令の委任事項で——先ほどの答弁は、法律まるまる一本の暫定措置は出してありませんというのでしょう。それと違うじゃないか、答弁と中身とが違っておる。それを言っておるのであって、さしあたり復帰後の米の取り扱いの実態を言っているわけじゃない。いわゆる特別措置法第百五十六条の政令の委任事項というものは、よほど軽微なものでなければ——かなり重要な法律は、今回定めるもののほか政令に委任してくれというのは困るではないかと言ったら、ごく軽微なもので、まるまる一本というものはありませんという答弁、あるじゃないかと言ったら、それは一カ月だとか、取り扱いがどうだとか——そういう質問を私はしていないわけです。ですから、これは再提出するのかどうするのか、決着つけてもらわなければ、これは体系の問題ですから。いままで前段のころは、一委員三時間ぐらい質問しているわけですから、時間は聞いてもおりますし、あれするけれども、この問題の決着をつけてくれなければ、時間だけ委員長、言ってもらっても困ると思うのですね。
  299. 床次徳二

    床次委員長 すわられないと答弁できません。着席してください。
  300. 亀長友義

    亀長政府委員 御承知のように、農産物検査法は農産物の流通に関する検査でございまして、食糧管理法における買い入れというのは、政府が物品を買う場合の受領行為でございますから、日本の国内におきましても、農産物検査というものと食糧管理の買い入れ行為というのは、事実上国内においては同時に行なわれておりますけれども、法律的には二段で行なわれているわけでございます。  沖繩に関しましては、先ほど長官からも御説明ございましたように、政府の直接買い入れというのはしない、農協が従来買っておったものに対して、国が不足金を補てんをして農家の価格支持をするという制度でございます。したがいまして、現在の農協の規格というものは国内の米の規格等とはかなり違っておりますので、これをそのまま適用することには問題がございます。また、従来農協が検査をすべき人を持ち、農協の規格で検査をしておりますので、その実態を尊重しまして、今後も米に関する検査の体制はそのようなことを続けるという考えでございまして、先ほど長官の答弁のように、一定期間経過後、農産物検査法を適用いたしますけれども、米に関しましては農産物検査法は適用しない。これは農協の検査でやっていくという考えでございます。もちろん、一定期間経過後、その他の物資につきましては農産物検査法が適用されることになります。沖繩の場合ですと、イモであるとかあるいはなま切り干しというようなものは、農産物検査法が一定期間経過後は適用されるということに相なりますが、そのようなものは依頼検査でございまして、強制検査ではございません。生産者が希望する場合に、希望に応じて検査をするという性格のものでございますので、規格等の調整も比較的やりやすいということから、一定期間後実施をすることにいたしているわけでございます。  食糧管理法と農産物検査法との関係はそういう関係でございまして、直接的な拘束的な関係という立場ではございません。
  301. 美濃政市

    ○美濃委員 それは聞かぬでも、私どもはわかっておりますよ。しかし、そういう関連もあるから直接だとは言ってない。食糧管理法との関連もあり、国営検査というものは、農産物流通の上に、亜熱帯を利用してこれからの農業開発の中では、やはり流通の便をはかるために検査事項に載っけてこなかった、そういうことを言っているわけではないわけです。したがって、そういう関連、相関関係から見て、農産物検査法というものはそう軽い法律ではない。そうでしょう。農産物の格づけをして流通の便を与えておる国営検査であります。軽い法律とは私どもは解釈しない。なぜそれを特別措置法に出さないで、政令の委任事項で、予定政令で出してきたかということを聞いている。そんなものはないという答弁ですよ。まるまる一本かなり重要な法律を政令に委任して出しているものはありません。——あるのですよ。それを言っているわけです。そんな取り扱いや何か言っているわけじゃない。ですから、この際追加提案するなら追加提案する、はっきりしてもらわぬと困る。答弁と食い違っておる。
  302. 山中貞則

    山中国務大臣 これが出てきたのは、特別措置法に定めてある食糧管理特別会計の沖繩に対する適用のしかた、生産者米価、消費者米価等について定めてあるものを受けて出てきたものでありますから、そういう意味で、重要であるとかないとかという意味ではなくて、政令にゆだねてもしかるべしということにしたわけであります。しかし、御意見は御意見として、私ども別段それを反対であるという意見答弁しているわけではございません。
  303. 美濃政市

    ○美濃委員 ですから、答弁の趣旨もそうなんだし、長官みずからも、それは軽微な法律だとはいえない——これは追加提案をすると約束してくれれば、私はいつでも終わるのです。追加提案すべき事項です。まだこれに類するものがあれば、全部追加提案してもらわなければならぬ。そういうものは出しておりませんというのです。そうですね、この現場で短い時間の中に、出していないと言う。あるというじゃないかと言えば……それは言いわけの答弁にはならないと私は思うのです。ないと言ってあった以上は、追加で出してもらわなければならぬ。
  304. 田辺博通

    ○田辺政府委員 御指摘の、農産物検査法のこの法律全体を一定期間適用を延期する、これは農林省のほうから政令案の要綱として出ておりますけれども、目下いろいろと調整中の政令案でございまして、このような措置はもっと別の方法でもって、つまり政令につきましては部分的な適用延期なり、あるいは別途の経過措置を講ずるということでできはしないかということで、目下検討中のものでございます。御了承をお願いしたいと思います。
  305. 美濃政市

    ○美濃委員 それじゃ確定しないのじゃないですか。  そこで委員長、時間の関係もありますから——農林省関係は私の専門ですから、見ているうちにこれはあったのであります。ほかにもあるかもしれないのです、まるまる一本政令に委任せいというものが。そういうものはありませんといって、あるかもしらぬ。ですから、この部分は、あとで長く時間をかけませんから、一応保留さしてもらいたいと思いますので、理事会でも検討してもらいたい。ないというものがあるということは、法律の体系としてまことに好ましくない、こういうことになりますから、お取り計らいをお願いいたします。
  306. 床次徳二

    床次委員長 ただいまの美濃君の御質疑については、理事にはかりまして善処いたしたいと思います。
  307. 美濃政市

    ○美濃委員 そう長い時間をかけようというものではありません。
  308. 床次徳二

    床次委員長 次に、西宮弘君。
  309. 西宮弘

    西宮委員 私は、実はぜひ総理にお尋ねをしたかったのでありますが、総理が所用があってお帰りになりましたので、総理総理個人の心境を聞いたり、そういう点はあとでまた聞かしてもらいたいと思うのでありますが、いわばその前段の問題点を整理をする、こういう立場で関係大臣にいろいろ御所見を伺っていきたいと思います。  そこで、まず第一は、近く佐藤・ニクソン会談が持たれる、こういうことでありますが、これが開かれましたならば、そこで論議をされる議題は、あるいは中国問題があり、あるいは通貨調整の問題があり、あるいはまた当面する沖繩の問題等があり、その他等々、重要な問題がたくさんあると思うのでありますが、   〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕 特に沖繩の問題について考えてみますと、これはいわゆる核兵器の問題、それから基地の問題、こういう問題が中心ではないかと思います。  ついては、それらの問題についてですが、核の問題はだいぶいままでも論議をされましたので、私は基地の問題を中心にしてお尋ねをしたいと思うわけです。基地の問題については、いわゆる基地の縮小、そういう問題についてはどういう取り組みをされるのか、どういう姿勢でこれに臨まれるのか、まずその点を伺いたいと思います。
  310. 福田赳夫

    福田国務大臣 基地につきましては、日米安保条約のたてまえ上、基地を提供するということは、これは沖繩におきましてもやむを得ないというふうに考えます。ただし、今回の返還協定によりまするところの基地の提供、これによりますると、かなり密度が高い。特に沖繩本島の中部地区において高いと思います。  それから第二は、沖繩基地に駐留するところの米軍の機能、その機能に照らしまして、過大の土地を使用するというような傾向はないか。また、レクリエーションのいろいろな問題がある。そういうようなことについてなお再検討をする余地はないか等を中心といたしまして、まあ話し合ってみたい。  安保体制下において基地を提供する、これは私どもはその責任があるというふうに考えておりまするけれども、沖繩県民の心情も考慮するときは、なるべく基地が早く整理縮小されたほうがいいというふうに考えておる。同時に、国会においても、御承知のとおり御決議があった次第でございまするから、その御決議の趣旨を踏んまえまして、日米会談におきましては対処していきたい、こういう考えでございます。
  311. 西宮弘

    西宮委員 沖繩県民気持ちも理解をしながら話し合ってみたいと、こういういまの答弁でありましたけれども、私は、いわゆる話し合ってみたいという程度では、この重要な基地の問題は容易に進展はしないのではないかというふうに心配をするわけであります。したがって、これは単に話し合ってみるという程度で、いま大臣が言われたような、沖繩の人たちが期待しているようなそういう結論はとうてい出てこないと私は思うわけです。これにはもっと強い姿勢、態度、そういうものが当然に必要だと思うのですけれども、そういう点について大臣の決意、つまりこの問題は、この点だけは絶対に解決をする、こういうかたい決意がなければ、あるいはそういう強い態度がなければとうてい問題の解決にはならぬと、こう考えるわけですが、その点、もう少しはっきり聞かしてください。
  312. 福田赳夫

    福田国務大臣 国会の御決議を踏んまえまして、これを尊重する心がまえで話し合いをいたします。
  313. 西宮弘

    西宮委員 私は、沖繩における基地の問題は、これはいまさら私が申し上げるまでもなく、きわめて重大な問題になっておるわけです。私は、公の席でありますから、もちろん個人的な感情なんというものをはさむべき筋合いではないと思いますけれども、多少私の私情を差しはさむことを許していただくならば、私は、実はかつて沖繩に住んでおったことがあるわけであります。三十数年前でありますが、住んでおった。その当時の沖繩というのは、部隊などはもちろん一つもない。あるいは部隊に属するそういう軍人などもおらない。ただわずかに徴兵事務を担当する軍人が五、六人か六、七人おったと思います。これがいわば日本の唯一の軍人でありまして、そういう意味では、全く平和そのものの島であったわけであります。そういうときに私はあの島に生活をしておったので、それと今日の状況を比べてみると、あまりにも極端な変わり方をしておるわけであります。したがって、その中に住んでいる沖繩の人たちの気持ちというのは、私にはよく理解をされるわけでありまして、いまの大臣の答弁、この間の決議の趣旨を尊重して云々ということだけれども、もう一ぺん繰り返しますけれども、さっきの御答弁のような、まあとにかく話し合ってみよう、相手がどう出るかわからぬけれども、まあとにかく話し合ってみよう、そういうなまやさしい態度では、とうていこの問題の解決には役立たないというふうに私は痛感をしているわけです。ひとつその点、もう少しはっきりしたことを聞かしてもらいたいと思います。
  314. 福田赳夫

    福田国務大臣 私としては、先ほど申し上げたつもりでございますが、基地提供、これはわが国といたしましては、安保体制下において、アメリカに対してはその義務、責任を負っておる、こういうふうに考える。ただ、沖繩におきましては、その基地の密度が濃密に過ぎる、こういうふうに考えているのです。特にそのうちでもこの中部地区、那覇周辺、あの辺の密度、これは非常に高い。また基地、演習場等を見ましても、基地機能の維持という見地から見まして再検討を要するようなものもある、そういうふうに見ております。また、さらにレクリエーションの問題につきましても再検討の必要があるのじゃないかというふうな考え方もしておる。そういうような問題もありますので、国会の御決議を踏んまえまして十分お話しいたしてみたい、こういうふうに申し上げているのです。これ以上の答弁はなかなかむずかしいのです。
  315. 西宮弘

    西宮委員 たとえば、いままで、過去の日米首脳会談ということになりますると、これは全部、沖繩における米軍存在を高く評価をする、こういうことを共同声明の中にうたっているわけですね。これは毎回それを繰り返してきているわけです。今度はそういうことは一切ないわけですな。
  316. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま共同声明を出すことは考えておりませんです。
  317. 西宮弘

    西宮委員 共同声明は出さない、こういうお話でありますが、私は非常に心配をいたしますのは、過去の共同声明はことごとく、そういう理解をもって共同声明が行なわれてきておるわけですよ。つまり、沖繩における米軍存在を高く評価をする、こういう大前提に立って常に折衝が行なわれておる、こういうことでありますから、私は、沖繩米軍存在というものに対してそういう理解をもって折衝に当たったのでは、なかなかさっき大臣の言われたような、いわゆる沖繩県民の心にこたえるような結論、あるいはまた、先般の議会の決議を尊重すると言われましたが、それにもまた沿うような結論はおそらくは出てこないではないかということを非常に心配しているわけです。
  318. 福田赳夫

    福田国務大臣 今回沖繩返還によりまして、沖繩における米軍の機能は非常に変わってくるのです。いままでは自由出撃、自由自在だ。これが今度は安保体制下に移りまして、これは事前協議の対象となる、こういうことです。最も大事な点は、核が今度はなくなる。これはもうはっきりいたしておるわけでございまして、これは沖繩における米軍の機能というものは総体として非常な変化を来たすことになる、こういうふうに考えておるわけです。  しかし、先ほどから申し上げておりまするとおり、それにもかかわらず、沖繩における基地は非常に密度の高い状態だ。これに対する沖繩の方々の感触、これは私もよく承知しております。あなたは三十年前に住んでおられたというが、私は、十年前に自由民主党の政調会長として初めて、党の役員として初めて沖繩に渡っておる。それは私の、福田赳夫後援会というのが沖繩にできた。後援会が沖繩で初めてできたというのは私なんです。よく私も沖繩のことは承知いたしておるのです。その間の沖繩県民の心情というものはよく理解をいたしております。ですから、沖繩において、安保体制下において、特にいままで米軍があれだけの駐留をしておった、それを急に撤退というわけにはまいりません。まいりませんが、しかし、沖繩県民の心情というものはよく理解できますので、その理解を踏んまえまして話をしてみたい、こういうふうに申し上げておるわけでありまして、どこまでも国会の御決議、これは尊重してまいりたい、かような考えです。
  319. 西宮弘

    西宮委員 十年前に行かれて沖繩に後援会ができた、こういうお話で、たいへんけっこうでありますが、しかし、十年間に、十年前から今日まで、いわゆる共同声明というようなことが何べんも出たわけですよ。福田さんは、あるいは外務大臣という席ではなかったかもしれませんけれども、政府なりあるいはまた与党の枢要な地位におられたわけです。十年前に沖繩を認識をして、よくその心情がわかったということであれば、今日までの共同声明で、ああいうふうな沖繩基地に対する理解のしかたということは、これは、私はとても沖繩県民の心情を理解した人のやることではないと思うわけですね。   〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕 つまり、繰り返して申しますけれども、基地存在を高く評価する、ことごとく軍事優先、米軍優先、こういうことで今日まで政府は取り組んできているわけですよ。私は、十年間の間にそういうことがたびたびあったと思う。とても福田さんが、十年来今日まで沖繩について十分な心情を理解して、それでその政治をやってきたというふうには残念ながら思われないので、私は十年前の福田さんの心境が、そのときも非常によく理解したのだというのであると、やはり今度もたいした進歩がないのじゃないか、進歩というか、今度の折衝においてもたいした発展がないのじゃないかというふうに心配せざるを得ないわけです。  たいへんくどいようですけれども、今度その点についてどういう態度で、つまり、いわゆる沖繩の心情を十年前から理解をしておる、そういう態度で——過去において行なわれた共同声明でいわゆる軍事優先、こういうことが強くあの中には取り上げられておるわけです。だから、軍事優先のああいう理解のしかたは間違っておったのだ、したがって、今度はそういう点を根本的に修正をするんだ、そういう話し合いをするんだ、こういう態度でしょうか。
  320. 福田赳夫

    福田国務大臣 沖繩におきます米軍基地の密度の高さ、これは、沖繩で日米間で本土決戦が行なわれた、それから引き継ぐところの米軍支配二十六年間、またアメリカの極東における政策、そういうものから見まして今日のような状態になってきておるわけなんです。  しかし、私は、沖繩県民が一番こいねがっていることは、何といっても本土と一体化することである、日本国に早く返ることである、こういうことだろうと思います。ですから、そういう現実というものを根本的に変えるんだ、こういうことをやっておりますれば、これはなかなか返還の実があがらない。そこで、この現実というものも見詰めなければいかぬ。見詰めた中におきまして最大の努力をした。その後におきまして沖繩返還実現をする。沖繩返還が非常に大事であるということは、私は、これは沖繩県民非常に大多数の人がそう考えておられるだろうと思うのです。とにかく急ぐものはそこなんだ、そういうことです。屋良主席さえも、とにかく粉粋論がありますとか、あるいは延期論とか修正論とかあるが、しかし、とにかく私は行政府の責任者として、それに同調すること、これについては慎重たらざるを得ない、ここまで言っているのですよ。ですから、何とかして沖繩島を日本施政権を返してもらわなければならぬ、そのためにはある程度のことを忍ばなければならぬ、そういうふうに思うのです。  そのことがこの基地の問題にもにじみ出ておる、こういうふうに思う。ですから、この協定におきましてはA、B、Cという米軍基地の扱いをきめております。そして、そのA表におきましては返還時において提供すべきもの、こうされておりますが、それにもかかわらず、それはそれといたしまして、さらにただいま申し上げたような国会の御決議を踏んまえまして交渉をいたしていきたい、こういうふうに申しておるのでありまして、これ以上のことは、幾ら言われましても私にはできませんのです。
  321. 西宮弘

    西宮委員 さっきお尋ねをしたことに端的にお答えをいただきたいと思うのですが、つまり、十年前から沖繩については十分な理解を持っているというのであれば、過般行なわれた——その間にたびたびあったわけですが、いわゆる共同声明で、軍事優先のそういう共同声明が行なわれておる。軍事優先ということばがまずければそう言わなくてもけっこうですが、要するに日米両国とも沖繩における米軍存在を高く評価をする、こういう大前提で折衝が進んできたわけですね。ですから、それはいま考えてみると間違っておったのかどうか、こういう点ですよ。つまり、いま盛んに国会の決議を尊重する云々と言われておりますから、かりにそれを基準にいたしますると、そういう立場で考えてみると、いままでとられたああいう態度は、つまり基地を評価する、そういう態度は間違っておったのかどうか。間違っておったのだ、こういうふうにいま反省をしながら今回の日米会談に臨もう、こういうことでおられるのかどうか、これが質問の要点です。
  322. 福田赳夫

    福田国務大臣 沖繩返還実現されるその前におきましては、沖繩には潜在主権はありまするけれども、われわれは三権、施政権というものを持っておらない。でありまするから、この島をどういうふうにするかということについての主導的立場というものはアメリカが持っておった。われわれが、沖繩島におけるアメリカの軍備をどうしようこうしよう、これはもう、力のない立場にあったわけであります。ですから、しようない、今日に至ったわけでありますが、しかし、その状態を急にまた変えるわけにもいかない。それを急に変えまして、これは平和の島である、米軍のいない島だというようなたてまえをとろうといたしますれば、これはどうしたって返還協定はそう簡単にはできません。これは私、はっきりそう申し上げます。しかし、そういう中において返還実現をする、同時に、沖繩県民の心情もとらえていかなきゃならぬというところに、私どものむずかしい立場があるわけなんです。  基地につきましては、返還後におきましても、アメリカは日米安保体制下における制約を受ける、核も持つことができない、こういうことにはなりまするけれども、かなり戦略要点としての重みをここに置いておるわけでございますが、それにもかかわらずわれわれは、ただいまあなたからもお話しのような、沖繩県民の心情を踏んまえましてできる限りの努力をしていこう、こういうことなんでありまして、御理解を願いたい、かように存じます。
  323. 西宮弘

    西宮委員 私ども、沖繩日本復帰をするということについては、これはもちろん、ぜひそうなくちゃならぬということを、われわれも衷心から考えておるわけですよ。ただ問題は、もうすでにわれわれの主張については御承知のように、私どもは、いまのようなああいう沖繩では困るんだ、こういうことを常に主張をして、そのためにいろいろ意見を申し上げたりしておるわけです。したがって、復帰することはたいへんにけっこうなことでありますが、ただ、復帰しさえすればあとはこっちのもんだ、どうにもなるんだというふうに考えるとすれば、たいへんな間違いなんで、つまり、かつて行なわれた共同声明とか、そういうことに全部制約をされてきているわけですよ。だから、私はその点を非常に心配をするので、それではもう一ぺん伺いますが、ああいう沖繩存在する米軍基地を高ぐ評価をする、そういう態度は、あるいはそういう考え方沖繩の心情には沿わないんだ、あるいは沖繩県民の心情にはそむくんだ、このことだけは御理解いただけましょうか。
  324. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、過去の共同声明沖繩軍事基地を高く評価するというようにいっておるかどうか、さだかに承知しておりませんが、とにかくそういう状態にあったことは事実なんです。それから、今度は日本に返ってくる。返ってきて、突然変異を起こしまして、沖繩の戦略要点たる地位が全然変わってしまうというものでもないと私は思います。しかし、いま、共同声明を今度佐藤・ニクソン会談において出すのかという話がありましたが、出すにせよ、出さないにせよ、そのことを、沖繩軍事的価値というものをあらためて強調するというような今日ではないんではないか、そういうふうに思います。とにかく沖繩における米軍軍事的機能というものは、先ほど申し上げたように、非常に大きな変化をするわけですから、それをあらためてここで強調するという必要のない事態になってきておる、そういうふうに思います。
  325. 西宮弘

    西宮委員 それじゃ今度は共同声明は出さないと——出しても出さなくても、そういう基本的な態度で臨まれたのでは、とても沖繩の心情にはこたえられない。大臣は、そういう共同声明がされたことをさだかに覚えてないというお話でありますが、これはぜひごらんになっていただきたいと思う。いままで常にそれを繰り返してきているわけですよ、米軍基地存在ということをですね。それを評価をしながら常に折衝なり声明なりが行なわれてきているんで、これはもう過去の事実でありますから、ぜひそれはごらんになっていただきたいと思いますが、とにかく私は、それでは沖繩の心情にはそむくんだ、こういうことはまず十分御理解いただいたと思うので、ぜひそれでいってもらいたいと思います。  総務長官にお尋ねをいたしますが、先般復帰対策要綱の第一次分が出たあとで、沖繩の立法院ではそれに対する要請決議をしてきているわけです。その要請決議の中には、軍用地の問題については、軍用地関係という見出しの中の第一には「軍用地の開放」「沖繩経済社会の開発発展に支障をきたしている軍用地は、早急に開放することとし、そのための計画を明らかにして、実施すること。」と、こういうことを要請をしてきているわけです。これは、その第一次の復帰対策要綱が出たに際して沖繩立法院として意思決定をしたわけですが、これが二次、三次と出た復帰対策要綱の中にこの問題は取り上げられてまいりましたか。
  326. 山中貞則

    山中国務大臣 これは、一次対策要綱で入ってないから二次対策、三次対策要綱で入れるというものと少し性格を異にいたしますから、まずその前に、返還協定のための交渉の中でこれらのことも念頭に置きながら、私は交渉当事者ではありませんが、外務大臣、ときには総理等にお願いをしつつ、まず沖繩の民生安定上必要な個所についての早期返還実現について協力を求めてきたものであります。  この問題については、復帰後においても具体的な基地の撤収計画並びにその基地が撤去された後の再開発の計画というものがなければいけないじゃないかという御質問も、本日もございました。私もそのとおりであると思いますが、しかし、なかなか現在沖繩基地を早急に全部開放するということも現実には困難な点がございますし、また、それをいつどこが開放されることを前提に、それに対して計画を明らかにするということはなかなか問題があると思います。しかしながら、復帰後策定されます、沖繩県知事の原案を作成して作業の始まります振興開発計画等の中では、すでに琉球政府で、まだ公文書こそもらっておりませんが、新聞等で見ますところ、現在の沖繩の軍用地というものを全部一応撤去されたらということを念頭に置いて、レクリエーション地帯とかあるいは緑地帯とか工業地帯とか住宅地帯とか分けて、いろんな計画をつくっておられるようであります。こういうことはたいへん地元の意思としてけっこうであるし、尊重していかなければなりませんので、私は、沖繩の豊かな未来、平和な未来を建設するのに、ぜひともそういう意向も入れながらよく相談をして、すみやかなその実現が期せられるようにしていきたい。実質上はこの決議の趣旨にこたえるための努力を展開していかなければならぬと考えております。
  327. 西宮弘

    西宮委員 立法院がこういうふうに、いま読み上げたとおりの決議をしている。これはもちろん、沖繩の立法院の多数党はいわゆる自民党、保守党の皆さんでありますが、そういう方で組織をしている沖繩の立法院で、ただいま申し上げたとおりの沖繩の軍用地の開放ということをうたっているわけですから、これは本土の政府として、あるいはまた自民党としても、当然に最重要課題として私は考えてもらわなければならぬ問題ではないかと思う。福田外務大臣沖繩についてはよく御承知だということでありますから、釈迦に説法になるかもしれませんが、私は、試みに最近の沖繩を、ちょっと新聞記事から拾ってみたわけでありますよ。御紹介しておきたいと思いますが、これは沖繩の現地新聞、十月と十一月の記事を拾ったわけでありますが、十月の二日、アメリカ兵のタクシー強盗。十月三日、麻薬が米軍基地周辺で出回って被害が続出をしておる。十月四日、ガルフ社の石油が漏れて漁場が汚染されて緊急役員会。それから、同じ日に黒い貨物輸送があって、それは毒ガスの移送ではないか。天願桟橋で米軍秘密作戦が行なわれている、こういう記事。十月五日、タンクの原油が逆流をした。同じく十月五日、八十歳の御老人が海兵隊のオートバイで重傷を負った。十月六日、外人がレンタカーを使ってひったくりが二件あった。同じ日に、外人の大麻の栽培が発見された。十月九日、またも外人のひったくり、婦人が十六ドルとられた。もう一つは、酔っぱらい運転の米兵が激突をして妊婦がショックで死産をした。十月十一日、酔っぱらい外人車が暴走してタクシーに激突、三人が大けが。白人兵がダイヤを奪った。米兵がタクシーの強盗をした。十月十三日、外人の無謀運転続出。今月に入ってすでに十三件——十三日で十三件というのですから毎日一回というわけですね。十月十四日、酔っぱらい米兵の運転で下校中の小学生がはねられて死亡した。ところが、これはつかまえたけれども、犯人は犯行を否認している。したがって、第二の金城さん事件になるのではないかというので、たいへんな問題になっておる。十月十八日、米兵がまたもひき逃げ。高校生三人が乗用車で追跡をしてとらまえた。危うく隊内に逃げ込む寸前でとらまえて那覇署に引き渡しをした。同じ日、米兵が大あばれ、強盗、ひったくり、無銭飲食などが続発をしている。他の場所では婦女の暴行未遂事件。十九日、タンカーからの流出で汚染をして海岸——具志川海岸でありますが、大騒ぎをしておる。十月二十四日当間君の——さっきの小学生ですね。そのひき逃げ事件について、対策委員会を設けて村民大会が開かれた。二十七日、ガ社の原油汚染によって、操業中止を要求した議会の抗議。二十八日、麻薬を所持しておる米人が逮捕された。二十九日、米軍ジェット機が墜落をした。パイロットは脱出をした。同じ日に、米兵が婦人二人をひき殺した。三十日には、前の小学生の問題で村民抗議大会が開かれた。十一月の一日には、タクシー運転手殺さる。空気銃でねらい撃ち。同じ日に、外人主婦に乱暴。十一月二日には、無免許の女性米人がタクシーに衝突をした。四日には、ホステス殺しに——ホステスを殺したんですけれども、無罪の判決になった。同じ日に、外人のかっぱらい二人がつかまる。同じ日に、米軍機がまたも墜落をした。乗員は救出をされた。あくる五日は、自動車の車賃の踏み倒し、タクシー運転手が騒ぐ。七日には、ヘロイン六万ドル分押収され米兵逮捕。八日には、米兵がタクシーで強盗、うしろから棒で頭をなぐった。同じ日に、また米兵がひき殺す。九日、酔っぱらい米兵が幼児をはねる。十一日、米兵の酔っぱらい運転。乗用車が焼き討ちをされた。十二日、米兵が坊やをはねて殺した。十三日、無灯火オートバイに乗って乗用車に激突をした。十五日、拳銃を突きつけて脅迫をしたという事件。もう一つは当て逃げの米兵の事件。十六日は、米兵三人組タクシー代を踏み倒す。十七日、客船が入港しても、軍艦が入るために入港できない。十九日、米人少年はね飛ばす。二十日には、運転手をなぐって金を奪う。米兵のタクシー強盗。米軍機が滑走路でパンクをして、二時間も空港が閉鎖をされた。二十二日、外人少年がバスに投石をして、乗客の婦人がけがをした。二十五日、麻薬の密輸の問題。二十七日、麻薬ヘロイン一万ドル分が押収された。二十九日、麻薬を吸ってふらふらになっている米兵が車をぶつけて逃走した。同じ日に、米兵のタクシー強盗があって、かぎと金をひったくられた。  こういう事件が相次いでおるわけです。(「毎日だ」と呼ぶ者あり)全く毎日、連日連夜こういう事件が続いておるわけです。  こういう問題は、単に施政権が返ってきたということでは何の解決にもならないわけですよ。これはその基地が減り、あるいは米軍人が減る、こういうことにならなければ、問題の根本的な解決にはとうていならない。そういう点について、沖繩の人たちが毎日戦々恐々として過ごしておるというのが実態であります。  この間、このいわゆる返還協定締結と強行採決というような問題に抗議をいたしまして、沖繩で十二万の労働者がストをやった。あるいは六万人の市民が集まってデモをやった。こういうことは、これは非常に重大なことだと思うんですね。ストにしてもあるいはデモにしても、それはだれかが命令するから機械的に集まってきたんだろうというふうにお考えかもしりませんけれども、沖繩で十二万の人間がストをやったということは、日本本土の場合ならば千二百万の人間がストをやったことになるわけですよ。あるいは那覇市で六万人のデモがあったということは、東京ならば六百万の人間がデモに参加したということですね。東京で六百万の人間ということになれば、東京都に住んでおるおとなは、成人はまず全部参加をした、こういうことになるだろうと思うのですね。それに相当する抗議の意思表示が行なわれたということは、まことに重大な問題。おそらくそういう気持ちは、いま私が読み上げた、ここに新聞を持ってまいりましたが、この新聞などは、もう全く全紙面をいまのような事故で埋めておるわけです。こういうことが連日連夜行なわれておる。これはもう施政権返還では解決にならぬわけですよ。一日も早く基地がなくなりあるいはまた米軍人がいなくなる、そういうことにならなければ問題の解決にはならぬ、こういうことを身にしみて痛感をしておる、はだで実感をしておる、そういう人たちの抗議の行動だと思うのですね。そういう点を十分に理解をしてもらわなければ——那覇では三分の一を御承知のようにアメリカが占領しておるわけですね。那覇で三分の一をアメリカが占領しておるということは、東京二十三区の中で八区はアメリカ人が占領しておる、こういうことになるわけですね。ですから、東京二十三区の中で八区が米人が住んでいるんだ、こういうことになったら、あとの残った東京都民は全く息もつけないほど息苦しくなるだろう、呼吸困難になるほど息苦しくなるだろうと思うのです。そういう生活を毎日毎日しておるわけですよ。私は、これはあだやおろそかじゃないと思うのです。  何もことばじりをつかまえるわけじゃありませんけれども、大臣が一番最初に言われた、今度行ったら基地の縮小についても話し合ってみよう、こういう最初の出だしでありましたので、私は、話し合ってみようというような程度ではとてもとても解決のできない重大問題なんだ、こういうことを特に強調したわけです。  なお、立法院の決議とそれから屋良さんが持ってきた建議書ですね、これは冒頭の書き出しから、ほとんど全編が基地から発生してくる問題で埋まっていると言ってもいいと思うのであります。実に切々として、基地に独占されておる沖繩の苦痛を訴えているわけです。私は、今度会談に臨む総理にも、ぜひもう一ぺんその点は申し上げたいと思うのであります。外務大臣からその点はよくお話をしてもらって、これは総理にぜひもう一ぺん聞いてもらいたい問題であります。したがって、その問題は、あとで総理にまたお尋ねをすることにいたします。  もう一つ。よく新聞に世論調査などが出ております。しかし、あんまり新聞等で紹介されておらない、つまりこれは学生のやった世論調査でありますが、ひとつ御紹介をしておきたいと思います。  それは高等学校の学生の意識調査でありまするが、高等学校の学生を対象にいたしましたのは、つまり、高等学校の学生というのは戦争の経験を経てないわけですよ。戦後の国民ですね。そして、アメリカからいろいろお世話になりあるいはまた教育をされてきている、こういう人であります。  ついでながら申し上げると、ちょうど私、東北に勤務をしておったときでありますが、いまの主席になった屋良さんとかあるいは参議院に当選した喜屋武さんとかああいう人が日本全国の学校を回って、沖繩の学校の、いわゆる馬小屋学校といわれたそういう学校の窮状を訴えて募金をしたわけであります。私もその当時から、そういう関係でおつき合いしたわけであります。ところが、せっかく全国を回って金を集めて学校を改築しよう、あるいは建設しようとしましたところが、アメリカの民政府はこれを禁止してしまったわけですよ。つまり、そういう日本本土の人たちの金で学校が改築をされる、こういうことになると、沖繩の児童生徒、学生は心情的に動くのではないか、本土に対する感情で動くのではないかというので禁止をしてしまった。ずいぶん残酷な話だと思うのでありますが、禁止をした。そしてアメリカ政府がたいへん金をかけて、たいへんりっぱな学校をつくりました。そういうことで、アメリカはたいへんに自慢をいたしておりますが、すばらしい、昔に比べたら見違えるような学校をつくった。  そこで教育を受けた子供たちですよ。いわばアメリカにお世話になって教育をされたそういう子供たちでありまするから、だいぶ意識が違うんではないかというので調査をした結果でありますが、それによりますると、たとえば基地の問題について言うと、基地をどう思うかという質問に対して、悪いと思うという答えが八四・五%であります。よいと思うというのはわずかに三・一%しかない、こういう状態であるわけであります。あるいは、米軍がいなくなると生活が苦しくなるから、米軍は帰らないほうがよいという意見についてどう思うか、こういう質問に対しても、そうは思わない——せっかくそういういわば誘導質問のような質問をいたしましても、そうは思わないという子供たちが約六割を占めておるわけであります。特に基地に対する子供たちの考え方がいかに切実であるか。八五%が基地は悪い、こういう認識をしているわけです。もう一ぺん福田さんの心境を伺って、私は次に進みたいと思います。
  328. 福田赳夫

    福田国務大臣 基地の島、基地の町における県民、市民の心情、私はよくわかるような気がします。しかし、それにもかかわらず早く本土復帰をしたいという気持ち、これも私どもは、そういう気持ちの者が多いということをよく承知しております。その辺の妥協点をどこへ求めるか、こういうむずかしい問題に当面しているのだろう、こういうふうに思いますが、どうも西宮さんのお話を承っておりますと、すれ違いのような感じがするのです。西宮さんは基地というものを全然否定するような立場、安保条約を否定する立場に立っている。私どもは、これを肯定する立場に立っているのです。そこで、これはもう議論はどこまでいきましてもかみ合わぬということになりますが、そういう沖繩の置かれておる立場に対しまして深い理解を私も持っておるのだという点につきましては、私はあなたと共感を覚える次第でございます。
  329. 西宮弘

    西宮委員 先ほど大臣から、たとえばレクリエーションに使われている土地、こういうのはできるだけ整理をしたいという話があったので、事務当局でけっこうでありますが、いわゆる大臣の言うところのレクリエーションに該当するのは何と何で、どの程度の大きさがあるのか聞かしてください。
  330. 福田赳夫

    福田国務大臣 さしあたり私の頭にありますのは、まずゴルフ場です。
  331. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 米軍がいま娯楽施設と申しますかあるいは福利厚生施設と申しますか、そういうものに使っておりますのは、いわゆる奥間のレスト・センター、屋嘉のレスト・センター、それから那覇にございますところのハーバービュー・ホテル、こういうものがそれに該当するかと思います。
  332. 西宮弘

    西宮委員 外務大臣に申し上げておきますが、いわゆるゴルフ場などは、私は、元来米軍がそういう土地を占領しているのはおかしいと思うのですよ。これはあとで見ていただきたいと思いまして刷りものを持ってまいりましたが、あれを見ると、いずれも緊急とか、あるいは民政府の長官が特に必要ありと認めた場合ということで、要するにそういう軍事上きわめて緊急なものが土地収用の対象になることになっておるわけです。  さらに私は、もう一つ例をあげて申し上げると、たとえば、前におりましたレムニッツアーという民政府の長官でありますが、この人の書いたものには、書いたものというか、これは立法院で演説をしたわけでありますが、それによると、「この最小限度の要請を決議するにあたってわれわれが適用した基準は控え目のものであって、われわれの軍の活動にもある程度の制限すら加えるものである。」こういうことで、つまり現に使われておる米軍基地は、この人の、レムニッツアー長官の見解によれば、自分たちが軍事活動に要するのにも支障を来たす程度のものである、こういう報告をしておるわけですよ。ところが、その中にいまお話しのゴルフ場などがあるということは、私はまことに奇怪千万だと思う。それじゃ大臣、そういうものは今度は一切なくする、少なくともそれだけはなくするということはお約束できますね。
  333. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほどから申し上げておりますような問題点が私の頭の中にある。これから話し合いをするわけでありまして、これが実現するんだということにつきましては、ただいまのこの席ではお答えできませんです。
  334. 西宮弘

    西宮委員 ぜひともそういう緊急ならざるもの、これは完全に整理をしてもらうということで当たってもらいたいと思います。  それじゃ今日までいわゆる米軍基地ができてきた経過でありますが、これはいままでも、この委員会でも何人かの方から指摘をされておりますので、ただ私はそれを整理をして申し上げたいと考えまして、先ほどの印刷物を持ってきたわけであります。ちょっとごらんをいただきたいと思うのであります。印刷物はあとでけっこうです。  まず、米軍沖繩に進駐をしてまいりまして、一九四五年の三月二十六日、沖繩の人にとっては終生忘れることができないと思うのでありますが、午前八時四分に慶良間島に上陸を開始したわけであります。それから沖繩本島においても戦闘が行なわれて、六月二十三日には戦争は終結したわけですね。それから、八月十五日には日本はポツダム宣言を受諾したわけであります。それから、九月の二日には降伏文書に調印したわけです。そうすると、もう少なくともその時点では、六月二十三日に事実上の戦闘が終わって、八月十五日にはポツダム宣言を受諾して、九月二日には降伏文書に調印をする、こういうことになったわけでありますから、もう戦闘は完全に終わっておるわけです。ところが、それにもかかわらず、沖繩県民を全部収容所に収容して、これは軍人と非戦闘員も同じように収容したわけですよ。同じようにといっても場所は別々にして、十六の地区に分けて非戦闘員を収容して、初めて第一回の収容所からの解放が行なわれたのは十月三十一日であります。全部終了したのはあくる年の、一九四六年の四月であります。そういう長い間その収容所に非戦闘員を収容しておく、これそのものが、これは実に重大な問題だと思うのですね。  そこで、その当時の根拠になりますのは、いわゆる陸戦法規慣行に関する条約、ヘーグ条約であるわけです。ところが、ヘーグ条約はそういうことはもちろん全然いっていない。そういうことは全然禁止をされておる。ヘーグ条約によって禁止をされておるのですよ。ところが、沖繩県民を、非戦闘員をそういうふうにして収容しておいて、その土地を、全く無人の野を行きながら基地にしていったわけですね。そうして基地をつくってしまって、あとその基地に要らない、当分要らないというところを、これはみんなで適当に使え、こういうことで解放していったわけですね。ですから、私は、これは実に重大な問題だと思う。そうして、しかもそういう状態が長く続いたわけですね。  私は大臣にお尋ねをいたしますが、その間のアメリカ占領軍の占領目的、任務は何であったわけですか。
  335. 福田赳夫

    福田国務大臣 終戦までは——終戦というか戦闘状態が終わるまで、それまでの間は、これは事実上の戦闘だと思います。それから平和条約ができるまでの間、これは事実上の占領である、戦闘行為を伴わないが事実上の占領状態である、その後の状態施政権を行使する、そういう形のいわば占領とでもいいましょうか、そういう状態がとにかく続いた、こういうふうに考えます。
  336. 西宮弘

    西宮委員 つまり私が申し上げたのは、講和条約の発効するまで、それまでは、これはポツダム宣言を受諾をしたわけでありますから、ポツダム宣言とそれから降伏文書に調印された、そこにうたわれたのが米軍の占領目的であったわけですよ。任務であったわけですよ。それは日本の軍国主義の解体、それからもう一つは民主主義の育成、この二つだけしかなかったわけです。それにもかかわらず、問題は、その間に次々に基地を拡張していったわけであります。たとえば一九四九年の暮れから拡張が始まって、十二月には北谷村、あるいは一九五〇年の五月には浦添村、六月には真地村、九月には越来村、一九五一年の二月には読谷村、あるいは十月には国頭村、十二月には具志川村、こういう状況で、要するに講和条約発効前、施政権を握る前にこういう拡張が行なわれていった。こういうことは、さっき申し上げた日本軍隊の軍国主義の解体とか、あるいは民主主義の育成とか、そういう問題とは全く無縁なんですよ。これは当然にアメリカとの平和条約にも違反をいたしますし、そういう点は十分に反省をしてもらわなければならぬ問題であります。  私がさっきからるる申し上げているのは、ことごとく、今度交渉に当たる際にどういう態度、姿勢で臨むか、こういう質問に関連をして申し上げているので、私はぜひともそういう強い態度で、あるいは高い姿勢で——つまり、アメリカが今日までやってまいりましたことは、いわば国際法にも完全に違反をした、そういうやり方で今日まで来たのだ、こういうことを申し上げているのですから、その点は十分な認識を持ってもらいたいと思います。そうでないと、やはり折衝にあたってこっちの立場が弱くなってしまうというので申し上げているわけです。  そこで、講和条約発効前は、このヘーグ条約でありますから、これには完全に違反をしているということが一つ。それから、講和後にはそれじゃどういうことになっていったのかと申しますると、二ページ以下、その基礎になりました布令を全部書いてありまするけれども、これらは全部、要するにアメリカが必要があるときには収用宣告ができるんだ、宣告をすればそれは全部アメリカがそこについては使用することができるんだ、そういう規定になっているわけですよ。だから、その収用されるということに対して、それに対しては抵抗する道が全くないわけです。次々とたくさんの布令が出ておりますけれども、どれをとりましても、その収用されるということに対して異議を申し立てるということは全然許されないわけであります。その訴願ができたり、そういうことができるのは、ただ単に借地料の問題、金銭的な問題、それだけは訴願等ができますけれども、これもここに書いてあるのを十分ごらんをいただきたいと思うのでありますが、その訴願も、これは全部アメリカが一方発に判断をするだけでありまして、全くの非民主的な扱いであります。たとえば土地裁判所なんというのがあるけれども、それは裁判所の実体も日本の裁判所とは全く違うので、単にアメリカの軍政府の職員が決定をするだけでありまして、名前だけは裁判所といっておりますが、裁判権は備えておらない、こういう点であります。  大臣、一番初めの一ページの「米大統領行政命令」という、これが講和条約が発効してからの沖繩における憲法になるわけですね。この憲法を見ていただくと、この紙では一番終わりの第十二節というのを見ますと、たとえば「言論・集会・請願・宗教並びに報道の自由、法の定める手続によらない不当な捜索並びに押収及び生命、自由又は財産の剥奪からの保障を含む基本的自由を保障する、」こういうことをいっておりますけれども、何ら保障されておらない。あるいは、せっかく立法院で立法いたしましても、それは、その前の十一節というところにありますとおり、マルをつけておきましたけれども、(1)、(2)、(3)とあります。そういうふうに、せっかくの立法なども全部、民政府の長官の裁断によってそれが否決されてしまう、あるいはまた修正をする、あるいは四十五日以内には無効にされてしまう。こういうふうで、せっかく立法しても、民政府の長官の、高等弁務官の裁断で、全部それは抹殺をされてしまうわけです。  そういうきわめて非民主的なやり方で今日までやられてきているわけです。したがって、この間じゅう——沖繩出身の二人の議員が述べておられましたけれども、あれだけではないのですね。おそらく時間が足りないので、あの程度にしかお話をされなかったと思うのでありますが、まだまだあれに類することは一ぱいあるわけです。私は何回か沖繩に参りまして調べてまいりましたので、報告したいのでありますが、時間がありませんから省略をいたします。  それに対して、アメリカから上院議員の調査団が来たわけですよ。そのとき公聴会を開いて沖繩関係者の話を聞いたわけでありますが、実に上院議員の姿勢などは傲慢無礼と申しますか、速記録を見ますと、全く沖繩の人ははらわたが煮えくり返るような思いをしたのではないか。まことに白々しく、たとえばパターソンという議員でありますが、この人などは、「アメリカに於ては他の国他の土地に於て土地のすべての交渉をする時に於てアメリカというものは他の国の住民の権利というものを最大に尊重するということを私は申したいと思ってます。時々は適正以上に金額を払っているという事実もあります。」こういうようなことを言っているわけです。全く事実に反するわけでありまして、その金額などもきわめて零細な金額、当時の妥当な金額から見ると十分の一、十五分の一、二十分の一というふうにいわれているわけです。そういう金が支払われておるのでありますが、アメリカというのはすばらしい国だ、こういうことを言っておる。この人たちもその実地調査に行ったわけであります。さすがに実地調査に行って見ると、これはもう容易ではない、こういうことになったのだろうと思います。  そこで、その人たちが現地で発言したことばを拾ってみますと、「全く気の毒でたまらない」あるいは「沖繩の軍用地問題を眼のあたりにみて実に同情に堪えない。」「北中城ゴルフ場や、西原飛行場をみるにつけても我々はこの問題を慎重に検討しなければならぬ。」あるいは「地主たちが土地を失ったり、家を立退かされたりしている事実をみることは実に何とも云えないことである。」「沖繩住民の福祉を考え、適正な決定をなすべきだと思う。」こういうようなことを、現地調査に行った人たちは口々に言っているわけであります。  家を焼かれたりあるいは飲み水——沖繩は、御承知のように水源のないところでありますから、雨水をタンクにためて飲料水にしているわけでありますが、そういうものを片っ端からぶちこわしてしまう。そして天幕に居住をさせて、食糧だけ補給している。琉球政府はこれに対して生活保護費を出しましたけれども、それも米軍の命令で禁止をされてしまった。こういう事態等が至るところにあったわけであります。そういう現実を見て、さすがにこの人たちも、これはたまらぬという気がしたのだろうと思います。  ところが、それにもかかわらず、アメリカに帰って出てまいりましたアメリカの対策なるものは、これとは全く関係のない、全然問題にされておらぬ、実に沖繩にとってはどうすることもできないプライス勧告なるものが出てきたわけであります。  それで、それ以来沖繩ではこれはたいへんだというので、これに対するたいへんな反撃が燎原の火のごとく燃え盛ってまいりまして、いわゆる沖繩あげての島ぐるみ運動、島ぐるみ抵抗、こういうことが起こってまいりましたことは、おそらく大臣も御承知ではないかと思うのでありますが、そういう一方において、払う金も払わない。最初、一九四五年から一九五〇年ないし五一年ころまでは、全然土地代も払っておらない。それから払い始まってからは、さっき申し上げたようなきわめて零細な金額しか払っておらぬ。そういう状況であるわけですが、それと対照的に、今度はアメリカ民政府が管理をしておる、つまり国有地、県有地、これはアメリカ民政府が管理をいたしまして、そこでは、土地を借りたいという人には非常に高い金を取って貸し付けをしているわけです。まことに無情と申しますか、実に残酷なやり方だ。沖繩の住民は、自分の土地は取られてろくな金も入ってこない。土地を取られたからよそに行って土地をさがして、そこで代替地を獲得する。そういうことになると、そこでは高い金を払わなければならぬ。こういうことでとても生活ができないというので、全く見るも無残な生活をしておったわけであります。  しかも、最初のうちは沖繩の人たちも、アメリカに抵抗すると直ちに共産主義者だ、反米主義者だ、こういうことで指摘をされて、そういう反米分子だというので逮捕される、こういうことになるとたいへんだというので、最初出てきた陳情書などは——もう彼らは、土地を接収をされるということはまさに死の宣告に相当するわけですよ。死の宣告に値するわけですよ。にもかかわらず、沖繩県民が出した陳情書は、ただ、土地の接収をする場合には、なるべく早く通告をしてもらいたい、余裕を持って通告をしてもらいたい、そういう陳情しか出しておらないわけです。あるいは、アメリカの民政府と折衝する際には一切おこらないこと、必ずお願いしますと言うこと、最後にはにこにこ笑ってあいさつをする、そういうことを申し合わせをして折衝に当たっているわけです。全くいじらしいと思わざるを得ないわけであります。  そういうふうに、自分の土地はただ同様に取られてしまって、自分が今度は引っ越して住もうというところは高い金を取られる、こういうことであるわけでありますが、事務当局でけっこうでございまするが、そのいわゆる国有地、県有地としてアメリカが管理をしておったのはどの程度か。そして、それに対してどの程度の使用料をアメリカ民政府が徴収をしておったか、聞かしてください。
  337. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 いわゆる軍用地として米側が取得しておりました中に、国有地、県有地がどれだけあるかということについての資料がちょっとございませんが、今回八十八施設として米軍に提供いたします土地のうちの国有地が約九千万平米、それから県有地が四百十五万平米、こういうことでございます。
  338. 西宮弘

    西宮委員 日本のもとの国有地、県有地でありますから、それをただで接収をして、沖繩県民に貸す場合には高い金で貸しておる。だからその金は幾らだということを聞いたのに、それに対する答えがなくては、とても私は議論ができないのですね。これはぜひ資料を出してもらいたいと思います。それがなければ、その対比はとうていできない。
  339. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 米民政府の管理しておる国有地のうち民間に賃貸借しておる土地の面積は約六百二十四万四千平方メートルで、その年間の賃貸料は一千四百万円程度でございます。
  340. 西宮弘

    西宮委員 それは円ですか、いま答えたのは。
  341. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 いま一千四百万と申しましたのは、円でございます。
  342. 西宮弘

    西宮委員 それから、接収した土地を沖繩の地主には幾らで払っておる、それから逆に沖繩の住民に貸しておる土地は幾らだ、こういうことでたいへんな違いがあるわけですよ。ぜひこれを、どの程度の違いがあるかということを聞かしてください。つまり坪当たり単価についてどういう相違があるか。——もちろん、その土地土地によって違うわけですから、それを詳細に調べて、ぜひ出してもらいたいと思います。
  343. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 これは大蔵省の所管事項になると思いますので、さっそく調べまして後刻御報告申し上げます。
  344. 西宮弘

    西宮委員 それでは、その資料が出てきてから、またその問題についてはお尋ねをいたします。  沖繩に対する基本姿勢がいろいろ問題が多いわけでありますが、私は文部大臣にひとつお尋ねをいたしますが、日本の教育の中で沖繩の問題をどういうふうに教えておられるかということであります。
  345. 高見三郎

    ○高見国務大臣 日本の教育の中でとおっしゃいますけれども、沖繩の教育の中で、社会科の教育の課程の中に沖繩の現在置かれておる地位というものを、学習指導要領の中につけ加えておる。それだけが日本の内地の教育と違っておったところである。私は、そういう意味において沖繩の教職員の方々というものは、非常に何と申しまするか、日本人的な感覚の方々の集まりであったという感じを持っておるのであります。
  346. 西宮弘

    西宮委員 お尋ねをいたしましたのは、あるいは要領を得なかったかもしれませんけれども、この間の公聴会の席で問題が指摘をされたわけで、実は高等学校の教科書に、昭和二十七年四月二十八日に講和条約が発効して日本は独立国になった、あるいは国際社会に復帰をした、こういうことはどの教科書にも載っている。しかし、沖繩が分断されて、沖繩が他の国の施政権下に入った、こういうことが教育をされているのかいないのか、こういう点に私は非常に疑問を持ったわけですよ。したがって、その点はどうなったか、どういう教育をされているかということです。
  347. 岩間正男

    ○岩間政府委員 沖繩の問題につきましては、小学校、中学校それから高等学校の社会科におきまして、地理あるいは歴史的な分野におきまして取り上げております。たとえば、ただいま先生がおっしゃいましたような、沖繩アメリカ施政権下にあるというふうなこと、それから、最近本土復帰するというふうなことの記述がございます。
  348. 西宮弘

    西宮委員 会然答弁が違うのですよ。沖繩において沖繩の児童にどういうことを教えておるかというのではなしに、日本本土の教科書の中に沖繩の問題をどういうふうに——つまり講和条約が発効したときに、沖繩は分断されてアメリカ施政権下に入ったのだ、こういうことを教えているか教えてないか、こういうことなんですよ。
  349. 岩間正男

    ○岩間政府委員 ただいま申し上げましたのは、日本本土における学習指導要領ないしは教科書のことについて申し上げたわけでございまして、先生の御指摘になりましたようなことは、ただいま日本本土におきまして教えておるということでございます。
  350. 西宮弘

    西宮委員 それでは、教科書に、高等学校の教科書にそのことが明瞭に書いてありますか。
  351. 岩間正男

    ○岩間政府委員 手元に資料がございませんが、小学校の高学年それから中学校、高等学校におきまして、それぞれ記述がございます。
  352. 西宮弘

    西宮委員 それでは、ぜひその資料を出して見せてもらいたい。実はこの間、公述人は高等学校の教諭でありますが、この人は、高等学校の教科書は、どれをとってもそのことは書いてない、したがって完全に沖繩は無視されておる、こういうことを訴えておったわけであります。ですから、もし書いてあるならば、この次、出して見せてもらいたいと思います。  きょうはどうしても総理の心境をお尋ねしなければならぬ問題がたくさんあったわけですが、その点は、御本人がおられなくては何ともいたし方がありませんので、これはこの次ぜひ聞かしていただきたいと思います。  最後に一つだけお尋ねをいたしますが、先般同僚の横路君が指摘をいたしました問題ですね、三億二千万ドルの中に四百万ドル程度の復元補償の費用がぶち込んであるのじゃないか、こういう質問があったわけでありますが、その問題に関連してちょっと一つだけお尋ねをしておきたいと思うのです。  そういう疑いがある、そういううわさがある、こういうことは、ほとんどの新聞が書いているわけです。しかし、この持ってまいりました「法律時報」、これは日本でも権威のある学術図書でありますが、この中にはこう書いてあります。「約四三〇万ドルについては「対米支払い」の三億二〇〇〇万ドル(沖繩協定七条)の中に含ませるという約束のもとになされていることからして、第一項の請求権放棄条項と本質的に異なるところはないといえる。」こう書いてあるわけですね。もう一ぺん読んでみますと、「四三〇万ドルについては「対米支払い」の三億二〇〇〇万ドル(沖繩協定七条)の中に含ませるという約束のもとになされている」と、こう書いてある。注には、「この約束は、日米両国政府の公然の秘密とされている。」こう書いてあるわけです。だから、これは、うわさとかなんとかいうのではなしに、まさに断定的に書いてあるわけですよ。これはいかがですか、大臣はお認めになりますか。
  353. 福田赳夫

    福田国務大臣 その点につきましては、横路委員から御指摘がありましたので、当時の関係者いろいろ調べてみましたが、四百三十万ドルを三億二千万ドルの中に見合いとして入れた、それによってこの支払いが米軍によって行なわれるということになったといういきさつについては、ついにこれを確認することができませんでした。
  354. 西宮弘

    西宮委員 確認することができませんでしたというのは、入っているか入ってないかわからぬということですか。
  355. 福田赳夫

    福田国務大臣 横路委員からせっかくの御指摘でございましたけれども、その事実は確認できませんでした、そういう意味であります。
  356. 西宮弘

    西宮委員 それでは、この雑誌に書いてある、いま申し上げた、これはきわめて断定的に書いてあるわけですが、この事実はいかがですか。これは間違いですか、それでは。
  357. 福田赳夫

    福田国務大臣 したがって、さような事実はない、こういうふうに考えております。
  358. 西宮弘

    西宮委員 もしそうならば——これはさっきから申し上げているように、全く断定しているわけですよ。もしそれが事実に反するならば、これは当然に名誉棄損等で訴えるべきだと思うのです。ぜひそうやるべきだと思うのだけれども、いかがですか。(福田国務大臣「どなたが書いたんですか」と呼ぶ)ちゃんとこれは署名入りの原稿ですから。二人の、大学の教授と助教授です。  いや、大臣にお尋ねをしているのは、それならば名誉棄損で訴えるべきだ、訴えるか訴えないかということだけ答えてください。
  359. 福田赳夫

    福田国務大臣 条約局長がただいま御指摘の論文を全部見たそうです。しかし、さような事実はございませんです。
  360. 西宮弘

    西宮委員 ございませんならば当然に訴えるべきだと思う。これは福田赳夫さん個人の名誉の問題ではないのですよ。もしそういうことが全く事実に反するというのであれば、これはいわば国として名誉を棄損されたことになるわけですから、これはもう当然に訴えるのがあたりまえだと思うのです。
  361. 福田赳夫

    福田国務大臣 名誉棄損で訴えるか訴えないか、これは当方の自由でございまして、西宮さんから強制をされることはございませんです。
  362. 西宮弘

    西宮委員 当方の自由でしょうけれども、それは福田さん個人の判断ではないわけですよ。もしそういうことが事実でないならば、それによって被害をこうむるのは国なんですから、われわれ国民を含めて国なんですから、それは当然に、われわれはその点を明らかにしてもらうということを要求する力があると思う。
  363. 福田赳夫

    福田国務大臣 国といたしましても、その点は国の自由でございますから、西宮さんから強制をされる覚えはありませんと、こういうことであります。
  364. 西宮弘

    西宮委員 私は、国がもし事実に反することを、国の名誉を棄損されているというならば、それはもう当然に執行者としてはその汚名をそそぐ、こういうことをするのはもう当然だと思うのですよ。私は、それをやらないのならば、横路君が指摘したような問題に一まつの不安があるのだ、こう解せざるを得ないわけですね。それならば、その自信があるならば、当然堂々と法廷で争うべきだと思う。もしそれをやらないというならば、私は、そういう点について大きな不安を持っているからだというふうに解すほかない。私は、この問題についてもぜひひとつ、またこれはどうせ横路君も、さらにこの問題については詳細追及いたしましょうから、大臣のほうでも、いまの態度についても十分研究しておいてもらいたいと思います。  委員長にお願いいたしますが、どうしても総理に心境を聞かなければならぬ問題がありますから、その点だけ、長い時間とりませんから……。
  365. 床次徳二

    床次委員長 この扱いにつきましては、理事会で相談いたしまして善処いたします。  明十日は、午前十時から、法務委員会、文教委員会、社会労働委員会及び逓信委員会との連合審査会を開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後八時四十八分散会      ————◇—————    沖繩及び北方問題に関する特別委員会派遣    委員報告書  今回の委員派遣は、内閣提出の「沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案」、「沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律案」、「沖繩振興開発特別措置法案」、「沖繩における公用地等暫定使用に関する法律案」及び「国家公務員法第十三条第五項および地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院地方事務所設置に関し承認を求めるの件」の五案件並びに「沖繩平和開発基本法案細谷治嘉君外十六名提出)」及び「沖繩における雇用促進に関する特別措置法案川俣健二郎君外十六名提出)」の二法案審査に資するため、十二月七日及び八日の二日間、沖繩県出身者が比較的多いといわれる大阪府に委員を派遣して、現地において各界意見を聴取することを目的とするもので、この際、派遣委員団を代表して概要を簡単に報告する。  派遣委員団は、団長毛利松平のほか、國場幸昌君、湊徹郎君、細谷治嘉君、石井一君、正示啓次郎君、山下徳夫君、豊永光君、木島喜兵衞君、桑名義治君、小平忠君、米原昶君の十二名で構成された。  会議は、十二月八日午前十時より午後四時まで、大阪府議会議場において行なわれ、毛利団長から派遣委員及び意見陳述者の紹介並びに議事運営等についてあいさつを行なった後、帝塚山学院大学教授岡田孝男君、沖繩県人会兵庫本部会長上江洲久君、沖繩関係資料室主宰西平守晴君、評論家梶谷善久君、病院院長松本敏君、全日本労働同盟大阪地方同盟会長室屋定三君以上六名から意見を聴取し質疑を行なった。  以下意見の要点を説明すると  まず、岡田孝男君は「沖繩問題は、まず沖繩返還が先決であり、協定の強行採決はタイミングの問題としてやむを得ない。国内諸法案県民に安定した生活を与えるためのものであると考える。公用地等暫定使用は、三万数千人の所有者の合意を得るため、また、海外移住者、所在不明者との契約のため五年間はやむを得ない。自衛隊の配備は、外国への脅威を与えるような装備をさけるべきだと考えるが予定される程度の配備は妥当である」旨の意見であった。  次に、上江洲久君は「提供基地の規模、密度及び特殊部隊を含む実態は、本土並み返還とはいえない。公用地等暫定使用は、期間を短縮すればよいという性格のものではなく、対米請求権の放棄は、県民の正当な要求に応えておらず、裁判の効力の引き継ぎは、県民人権を侵害するものである。自衛隊の配備は、民生協力、災害救助を名目としているが、機能的には、米軍の肩代りであり、再び沖繩本土、米国防衛の盾になるのではないかとの不安がある。返還は切望するが協定は認め得ないので強行採決は無暴であり、この公聴会も国内諸法案の強行採決の口実であってはならない」旨の意見であった。  次に、西平守晴君は「二十六年間の悲願であった祖国復帰がおくれてもよいということは、県民考えであるとは思われない。公用地等暫定使用法案は、復帰に影響する最重要法案であろうが、基地による被害をなくし、今後整理縮小を目指し、基地のない平和な島が約束できるよう留意して欲しい。自衛隊の配備も、必要最小限とし、平和を願う県民感情を十分配慮すべきであろう。開発は、本土の公害問題の轍をふまず、県民の生活安定、福祉向上の立場に立った人間尊重地域開発を望む。また、教育環境を整備し、本土との格差是正を図り、年々増加する青少年の本土就職に対して勤労青少年ホームの建設を、また、中高年齢層の本土移住者には住宅の確保を要望したい」旨の意見であった。  次に、梶谷善久君は「沖繩米軍基地は、戦後の国際情勢の変化と表裏一体の関係をもって、その性格、役割りが変化してきているとし、米国の戦略が、欧州の防衛を重点とした時代から、極東の中国封じ込めを重点とする時代を経て、さらに最近は、ニクソン訪中にみられるように、米中武力対決は、対話へと変化しているとし、この日中友好の推進が必要なとき、沖繩基地をそのまま固定化しようとする国内法に反対であり、むしろ沖繩の非軍事化政策を進めるべきである」旨の意見であった。  次に、松本敏君は「米国が血であがなった沖繩日本返還するということは、日米の信頼関係と、アジアを中心とする国際情勢の推移によるもので、この問題は、国内問題としてより国際問題としての観点から考えられなければならない。また、沖繩に対する施策は、戦争による犠牲は沖繩だけでなく、本土沖繩の相違は、異民族の支配を受けたということであり、精神の復興を図り、一億本土国民とともに沖繩建設は、進められるべきである」旨の意見であった。  次に、室屋定三君は「日米安保条約の枠内で、核抜き本土並み、七二年返還が重要なのであり、県民に不安のない沖繩返還にするには、核抜きを明確にし、基地整理縮小をさらに図ることだとし、また、現地沖繩から一万人近くが関西に移住しているが、沖繩雇用対策を確立することは勿論であるが、本土においてもその受け入れ体制の確立を図るべきである」旨の意見であった。  以上の陳述に対し、各委員との間に、返還協定の審議経過、核問題、請求権の放棄、裁判の効力の引き継ぎ、公用地等暫定使用、自衛隊の配備、経済開発基地整理縮小経済開発と基盤整備、本土企業の進出と現地労働運動との関係、労働力の流出、本土勤労青少年ホームの建設、無医地区対策、教育委員会委員の公選制及び国内諸法案の修正など各般にわたる質疑応答が行なわれたが、詳細については、会議の記録を参照願いたい。  以上、報告する。     —————————————   〔派遣委員大阪における意見聴取に関する記録は附録(その二)に掲載〕