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1971-11-30 第67回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十一月三十日(火曜日)     午前十時十二分開議  出席委員    委員長 床次 徳二君    理事 金丸  信君 理事 國場 幸昌君    理事 二階堂 進君 理事 湊  徹郎君    理事 毛利 松平君 理事 久保 三郎君    理事 細谷 治嘉君 理事 中川 嘉美君    理事 門司  亮君       天野 光晴君    池田 清志君       石井  一君    宇田 國榮君       江藤 隆美君    小渕 恵三君       大石 八治君    大野  明君       大村 襄治君    加藤 陽三君       木野 晴夫君    佐藤 文生君       正示啓次郎君    關谷 勝利君       田中伊三次君    田中 龍夫君       谷垣 專一君    谷川 和穗君       西銘 順治君    藤波 孝生君      三ツ林弥太郎君    箕輪  登君       武藤 嘉文君    豊  永光君       井上 普方君    石川 次夫君       川俣健二郎君    木島喜兵衞君       武部  文君    中谷 鉄也君       楢崎弥之助君    堀  昌雄君       美濃 政市君    山口 鶴男君       伊藤惣助丸君    桑名 義治君       斎藤  実君    二見 伸明君       小平  忠君    田畑 金光君       東中 光雄君    米原  昶君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 前尾繁三郎君         外 務 大 臣 福田 赳夫君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         通商産業大臣         大蔵大臣臨時代         理       田中 角榮君         運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君         郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣 渡海元三郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         農林大臣臨時代         理       山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      中村 寅太君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 西村 直己君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      木村 俊夫君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      木内 四郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大石 武一君  出席政府委員         内閣官房長官 三原 朝雄君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         人事院事務総局         管理局長    茨木  広君         総理府総務副長         官       砂田 重民君         防衛庁参事官  鶴崎  敏君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛施設庁長官 島田  豊君         防衛施設庁総務         部調停官    銅崎 富司君         沖繩北方対策         庁長官     岡部 秀一君         沖繩北方対策         庁総務部長   岡田 純夫君         沖繩北方対策         庁調整部長   田辺 博通君         法務省民事局長 川島 一郎君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省条約局長 井川 克一君         大蔵省主計局長 相澤 英之君         郵政省電波監理         局長      藤木  栄君  委員外出席者         沖繩及び北方問         題に関する特別         委員会調査室長 綿貫 敏行君     ————————————— 委員の異動 十一月三十日  辞任         補欠選任   佐藤 守良君     西銘 順治君   正示啓次郎君     村田敬次郎君   山下 徳夫君     江藤 隆美君   井上 普方君     楢崎弥之助君   中谷 鉄也君     武部  文君   山口 鶴男君     堀  昌雄君 同日  辞任         補欠選任   江藤 隆美君     山下 徳夫君   加藤 陽三君     佐藤 守良君   楢崎弥之助君     井上 普方君   堀  昌雄君     山口 鶴男君     ————————————— 十一月二十九日  沖繩における公用地等暫定使用に関する法律  案反対に関する請願小林信一紹介)(第二五  四九号)  沖繩教育委員公選制存続等に関する請願外一  件(小林信一紹介)(第二五五〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案(内  閣提出第一号)  沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律  案(内閣提出第二号)  沖繩振興開発特別措置法案内閣提出第三号)  沖繩における公用地等暫定使用に関する法律  案(内閣提出第六号)  国家公務員法第十三条第五項および地方自治法  第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院の  地方事務所設置に関し承認を求めるの件(内  閣提出承認第一号)  沖繩平和開発基本法案細谷治嘉君外十六名提  出、衆法第一号)  沖繩における雇用促進に関する特別措置法案  (川俣健二郎君外十六名提出衆法第三号)      ————◇—————
  2. 床次徳二

    床次委員長 これより会議を開きます。  内閣提出にかかる沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律案沖繩振興開発特別措置法案沖繩における公用地等暫定使用に関する法律案国家公務員法第十三条第五項および地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院地方事務所設置に関し承認を求めるの件、細谷治嘉君外十六名提出にかかる沖繩平和開発基本法案、及び川俣健二郎君外十六名提出にかかる沖繩における雇用促進に関する特別措置法案、以上の各案件を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。中谷鉄也君。
  3. 中谷鉄也

    中谷委員 私は本日、いわゆる軍用地法案を中心として質問をいたしたいと思います。質問の内容は、期間の問題、告示の問題、自衛隊の公共性新規使用に関する問題、そうして最後に、はたして、このような法案がなくとも処理できたのではないか、できるのではないかという私の法律上の見解、これらの問題について順次質疑をしていきたいと考えます。  まず最初に、復帰の際に現にアメリカ合衆国軍隊の用に供せられている土地というのは、すでに協定特別委員会の審議において明らかになったごとく、それは許可、私契約すなわち直接契約、そうして布令二十号、土地収用令、これらの権原に基づくもの、すなわち、これらの権原に基づかないものについては現に用に供されているものにはならないということ、これはすでに論議されたことでありまするから、それを前提として外務大臣お尋ねをいたしたいと思います。  まず、許可の問題。七カ所の訓練場許可の問題でありまするけれども、一般的にいって、市町村長私有地についての許可権限などというものはない。したがって、外務省見解によれば、これは一種の契約であるといわれている。だとするならば、その契約は、契約の当事者は一体だれなのか、私有地、すなわち地主との代理関係一体どうなのか。代表し、授権によりとあるけれども、その権利関係一体どうなっているのか。これらの問題についてお答えをいただきたい。
  4. 福田赳夫

    福田国務大臣 先般協定委員会において、実態的には、これは許可とあるけれども契約だと、こういうふうに申し上げてありますが、その詳細な法的見解につきましてはアメリカ局長からお答え申し上げます。
  5. 吉野文六

    吉野政府委員 お答えいたします。  実体的関係は、先生もすでに御指摘のとおり、市町村長土地所有者代理人として琉政当局契約する、こういうことになっております。
  6. 中谷鉄也

    中谷委員 最初からどうも——質問そのものが理解できてないようですね。演習区域許可の問題をお尋ねしているんですよ。ですから、いまの答弁は間違いですね。
  7. 吉野文六

    吉野政府委員 この一時使用権限につきましては、市町村授権または許可というような区々の表現がとられていますが、これを法的に見ますと、私有地については、市町村長代理人とする地主米軍との間の土地使用に関する契約であるとわれわれは観念しております。したがって、これは市町村長米軍に対して、すなわちユース側に対して、土地所有者代理人として契約しておる、このように解しております。
  8. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、演習地使用許可について——総理、これはあとお尋ねしますが、よく聞いておってください。演習地使用許可について、私有地、すなわち地主全員授権があったなどというふうな実態は、明確に言えますか。
  9. 島田豊

    島田(豊)政府委員 市町村長が米国の民政府に対して一時使用使用許可証を出すわけでありますが、その中に、関係土地所有者にかわって、かつ、彼らの代表として、私何々村長は何年の七月一日から翌年の六月三十日までの期間合衆国軍隊訓練場としてこれこれの区域使用についてここに同意し、許可するということでございまして、先ほどアメリカ局長から御答弁ありましたように、土地所有者にかわって、かつ、彼らの代表として同意し、かつ、許可する。そして、市町村長がこの使用許可証を発行するにあたりましては、地主同意を取りつけて、そしてその代理者として、代表として使用許可を与える。そして、これに基づきまして米軍のほうは使用料を払うわけでございますが、その使用料はそれぞれの地主市町村長を通じて還元をされる、こういうことでございます。
  10. 中谷鉄也

    中谷委員 実態をお聞きしているのです。全部の地主授権、すなわち市町村長に対する代理というのが欠缺なしに行なわれているということが言えますか。かりに行なわれていないとするならば、その部分についての契約は一部欠落ということに相なりますね。こういう質問なんです。  そこで、これは二つの側面を持ちます。防衛庁長官は、この法案についての提案理由の中で、海外へ行っている人もいる、所在不明の人もいる、だからやむなくこの暫定使用法案をかぶせるのですと、こういうふうにおっしゃっている。もしこの七つ訓練場について、完全にすべての地主市町村長に対する代理がなされているというふうな状態であるならば、利害関係人は全部明らかになっているということにならざるを得ない。そうすると、暫定使用法などというふうなものは必要がないことになります。かりにアメリカ局長のおっしゃるように、代理権限について、たとえばAという人が土地を持っておった、その人が死亡した、そうすると、妻と子供が三人おった、一人の子供本土へ来ておる。全部についての代理が要りますよ。そういうふうなものを全部おとりになっているのですか。そういうようなものを同意書として取りつけておりますか。その点はいかがでしょうか。いずれにしても、どちらの答弁が出ても、アメリカ局長の言うとおりであるならば、七つ訓練場についてはこの法案は必要がない。そうして提案理由のとおりであるならば、演習地については許可の一部欠落がある、契約の一部欠缺があるということにならざるを得ないと思うのです。この点についてどちらの答弁政府のほうで統一見解としてされますか。どちらの答弁をおとりになっても私はけっこう。しかし、いずれにいたしましても、そうなると法案がその部分については必要がないということになるか、あるいは演習地が使えないということになるか、どちらかになると思う。いずれにしてもお答えいただきたい。
  11. 西村直己

    西村(直)国務大臣 中谷君は、ただいま七つ演習地の問題で御質問になりました。それは具体問題でありますが、私の趣旨説明は、沖繩の提供すべき基地、その他公用地等全般につきまして、もちろん、海外に行っているとか、あるいは不在者があるとかいう趣旨で、全体をさして私どもは申し上げたわけであります。
  12. 中谷鉄也

    中谷委員 では、総理お尋ねをいたします。  私の質問趣旨は理解をしていただいたと思います。実態は、私の理解するところによりますると、アメリカ局長答弁は私は間違いだと思うのです。そういうふうな授権代理があり得るはずがないと思うのです。しかし、アメリカ局長答弁のとおりだとしますと、この七つ演習場については、関係者が多数で、そうして所在が不明で、だからこの暫定使用法案を適用するのだということの論理性は欠けることになりますね。総理、いかがでしょうか。
  13. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまのは法律関係ですから、法制局長官から説明させます。
  14. 高辻正巳

    高辻政府委員 お尋ねの問題は、現地における許可という形を持った法律行為中身についての問題でございますが、その許可性格は、先ほどアメリカ局長からお話がございました。ところで、御質疑の中にありますように、もしそれが契約でありとすれば、今度の公用地暫定使用法案のごやっかいになる必要はないではないかというところが一つあったかのように思いますが、それがもし契約であるといたしましても、その契約中身がいかなるものであるかにもよりますので、一がいには言えないように思いますが、あるいは私が理解不十分な点もあるかと思いますので、もう一度お願いいたします。
  15. 中谷鉄也

    中谷委員 全く理解不十分です。きょうは法制局長官は昨日のようなわけにはまいりませんから、ひとつ……。  そこで、アメリカ局長にもう一度お尋ねいたしますけれども、許可証というのは文書で出ていますね。これについては委任状をつけなければいけませんよね。これはもうとにかくあたりまえのことでしょう。そういう委任状はついているのですか、一体授権があるのだ、代表しているのだとおっしゃるけれども、一体委任状一つ訓練場について全部ついているというようなことが言えますか。  もうちょっと意地の悪い質問をいたしましょうか。よろしいですか。  たとえば、ある土地について抵当権設定をしている場合がありますね。抵当権設定をしている場合、使用目的が変わってくるということになれば、抵当権者市町村長に対する、そういうふうなことでもけっこうですという代理も要りますね。そういうふうな委任も要ります。そういうふうなものもとっておられますか。とっておられないでしょう。もう大体とっておられないことははっきりしている。  もうちょっと質問を続けます。  要するに、契約中身欠落してきますから、すでに二つ演習場については、協定特別委員会において、用に供されてないということでこれはもう提供できないことになった。あと残り演習場についても、かりに許可された部分、すなわち、契約のある部分とない部分とがあるのだから、演習場として使うということになればどんな使い方をするのか、結局三段飛びをやってもらわなければいかぬ。ここは許可がないから、ここは契約がないから使っちゃいかぬ、ここはとにかく演習場だというふうなことのかっこうにしかなり得ませんね。だから、その授権関係をもう少し詳しく言ってください。
  16. 吉野文六

    吉野政府委員 お答えいたします。  御存じのとおり、この一時使用演習地と申しますのは、一年にせいぜい二日ないし十日ぐらいの間を使うものでございまして、実際には、土地によってはそれほど損害を受けるとか現実に使用されるというようなことが起きない性格のものだろうと思います。したがって、市町村長がその部落代表しまして、地主の承諾を得た上でこの許可証を発出するわけでございますが、しかしながら、地主部落長との関係というものは、やはり一つの小さな部落個々地主との個人関係でございますから、その間は非常にぎくしゃくした形式的な行為を要しない性格のものでございます。したがって、区長といたしましては、このようなことにつきまして法律的に形式行為を必ずしもしていない、こういうようなことがあるのではないかとわれわれは思っております。
  17. 中谷鉄也

    中谷委員 では、法制局長官に出ていただきましょう。  法律案法律論をやっているのですよ。何となしにとにかく許可があったんだ、何となしに代理があったんだ、ぎくしゃくしてないのだからかんにんしてください、そんな話が世の中通りますか、一体。そうでしょう。要するに私が言いたいのは、個々地主との契約だというなら、本来ならその契約書を出さなければいかぬ。結局、本来そういうものを許可というかっこうで擬制しているのだから、委任状が出なければいけません。私、手が痛いから、こうして腕もみしているのだけれども、そういうようなことで、そういうものが出なければいかぬ。  法制局長官、いまのようなアメリカ局長答弁で、一体許可があったとか契約があったとかいうことが言えますか。少なくとも代理関係が明確でないものについて——自分土地ですよ。自分土地を人に貸す場合に、AがBに対する代理関係が明確でないものについて、かりにAがBの代理人として契約をしたとしても、そういうふうなものは契約にはなり得ない。その点については委任しているはずがないのだ。委任してないものについての契約というものはなり得ない、これはもうあたりまえのことですね。法制局長官に出ていただく必要もない。この点いかがですか。
  18. 高辻正巳

    高辻政府委員 お話のように、法律行為をなすにあたりましては、通常そういう代理関係を明確にするということが一般の例であることは、仰せのとおりであります。しかし、そういうものがなければその間に委任がないというのも、実は早計ではないかと思います。要するに、おっしゃるように、立証関係をどう立てていくかという問題に帰着するわけで、それがないからもう全部ないはずであるというのは、少し早過ぎるのではないかという気がいたします。
  19. 中谷鉄也

    中谷委員 少しも早くないのです。何も代理書面によらなければならないとまで私は言ってないのです。法律論として一番簡単な——外務省がすぐ、これはとにかく参りましたと言えばいいところを、なかなかおっしゃらないから、一番簡単なところでこれは時間を食ってしょうがない。  要するに、形式が、書面によらなくても、口頭であっても、代理がないものについては、授権がないものについては、私の土地を貸しますという——沖繩から東京へ来て住んでいる土地所有者もいるでしょう。そういう人が、とにかくそういうことを言わない以上は、その部分については契約はないことになるでしょう。立証の問題まで入っているんじゃないのです。法制局長官弁護人をお願いしているんじゃない。法律論として、代理がなければと言っている。その点いかがですか。あたりまえのことを聞いている。
  20. 高辻正巳

    高辻政府委員 代理なしに代理ができないこと、これはもう言うまでもないことでありまして、代理があるということを、いま政府当局の先ほどの御説明はその点についての御説明であったように伺っております。
  21. 中谷鉄也

    中谷委員 こういうふうなことで時間をとりたくないけれども、アメリカ局長お尋ねいたしますが、代理があったというなら、一体代理形式はどういう形式代理があったのですか。たとえば、一つ訓練場を例にとりましょうか。ある訓練場を例にとって、どういうふうな代理を受けた、実態関係を全部一ぺん言ってください。
  22. 吉野文六

    吉野政府委員 先ほどからたびたび御説明しているように、代理の実質は、口頭による委任だろうと思います。御存じのとおり、これは地主が全部一年ごとに使用料の分配を受けているわけでございます。したがって彼らは、代理あるなしにかかわらずこの契約の利益を得ているわけでございまして、したがって、実質的には彼らは市町村長のやる行為を是認しておるわけでございますし、したがって、その意味でも実質的な契約関係ができておるわけでございます。
  23. 中谷鉄也

    中谷委員 もう一度——きょうは私はかんで含めるようにものを言っているんですよ。  要するに、ある訓練場の近くの村にAという人が住んでいた。その人ととにかく共有している人がB、C、Dまであった。B、C、Dというのは、那覇に住んでおり、本土へ来ている。Aがかりにとにかく地代を受け取っておったからといって、B、C、Dが契約をしたことにもならないし、代理したことにもならないし、口頭による委任があったのでしょうなんということを言ったって通らないのですよ。通りませんね。したがって、どちらにころんでも私はけっこう、この答弁は。あなたがあくまで、とにかく演習場——東京まで調べてあるのです。東京へ来ているその土地所有者さえも、口頭によるとにかく委任をしているのですというふうにおっしゃるなら、この法案は、少なくともこの七つ訓練場——二つはすでにもう欠落をいたしましたけれども、あと残り訓練場については、この法案は必要ないじゃないですか。土地特別措置法を適用すればいいじゃないですか。そうですね、防衛庁長官。少なくともこの五つについてはそうですね。アメリカ局長は、全部関係者がわかっておると言うんだから。とにかく全部の関係者からその点は口頭による委任を受けているんだから、それは全部の所在がわかっておるということなんだから。だから、わかっておらないから、何とかこの法律を通してくださいと言うて——この五つについては法律は無意味なものということに相なると思うのです。だから、どっちにしても、政府は、防衛庁がとにかくこの法案をその部分については撤回しますと言うか、あるいは外務省のほうが、いや、実は委任関係がはっきりしないので、その演習場についてはでこぼこ契約しかないんだというふうに言うか、どちらかを答えてもらわなければどうにもならない問題でしょう。この点いかがですか。
  24. 島田豊

    島田(豊)政府委員 先ほどアメリカ局長からお答え申し上げましたように、正式の文書による代理関係設定というものはございませんが、口頭了解を得ている。その際に部落会を開きまして、各関係者了解を得ている、かように承知をいたしております。
  25. 中谷鉄也

    中谷委員 だめですよ。部落会を開いたって、部落会に参加していない人だっているでしょうが。部落会に参加できない人だっているでしょうが。その部分についてはとにかく代理がないでしょうが。そうでしょう。一体施設庁長官、いつまでこの問題について時間をとらすのですか。
  26. 島田豊

    島田(豊)政府委員 たとえば、海外に移住している者がその中にあるとしますれば、その関係法律的に明確でございませんけれども、事務管理的な性格のものではないか、かように考えます。
  27. 中谷鉄也

    中谷委員 事務管理というのは何ですかという質問さえもしたくなってまいりますよ。ですから、東京におる人間が、そういうふうな代理権限までも事務管理というものは認めている者と認めていない者とがありますよ。そんなところまで島田さん調べられたわけではないでしょう。そうですね。調べておられませんね。調べておられないなら、おられないと言ってください。
  28. 島田豊

    島田(豊)政府委員 一人一人についてその関係を確認をいたしておりません。
  29. 中谷鉄也

    中谷委員 まさに私有地の問題は一人一人の関係でしょう。そうすると、防衛庁長官お尋ねいたしますけれども、この法案は必要ないことになる。かりにそうだとしても、五つ演習場契約があるといっても、でこぼこになってきますね。私のでこぼこと言うことばの意味はわかっていただけますね。要するに、契約のない部分とある部分とがある、そういうふうな演習場だというふうに理解してよろしいですね。そう理解せざるを得ませんね。
  30. 西村直己

    西村(直)国務大臣 七つ演習場のうち、一部は、御存じのとおり、その時点において契約がないという部分については暫定使用法が適用になるわけです。これは先般の協定委員会で申し上げたのでありますが、残った分については、ただいま事務当局の諸君が言われるように、契約としてのあるいは引き続き使っておるという実態があれば、私は、やはり暫定使用法というものはその分においては適用がある。問題は、その契約実態というものがつかめるかどうか、その問題だろうと思います。
  31. 中谷鉄也

    中谷委員 つかめばつかむほど、これは私たちは調べてまいりましたから、口頭による委任だとか、部落会を開いたとか、そんなものが世の中で通るはずがありませんよ。だから、これは、とにかくあくまで外務省のようにおっしゃるなら、でこぼこ演習場ということにならざるを得ない。暫定使用法が必要ですかということを私は聞いたのじゃないですから、でこぼこになりますね、こう聞いたのですから。  まあしかし、この問題にばかりかかわっておっては、一番大事な告示の問題、この法律の一番背骨の問題についての質問ができなくなるから、質問を続けていきますが、演習場使用期間は一年だというふうに先ほどアメリカ局長は申しましたね。これは総理お尋ねしたいのです。ところが、政令によりますと、これは三年ですね。暫定使用というのは一体何かということを私はあらためてここで総理に考えていただきたい。大体衆議院の議員の任期四年。五年というのは、これは衆議院の議員の任期も一体暫定なのか。山中さんと私のつき合いは、これは、私、沖特の委員になってずいぶん長いけれども、それでもとにかく山中大臣就任されてから一体何年なんでしょうか。じゃ一体山中さんは沖繩暫定大臣なのかということになりますね。大体とにかく五年なんというようなものを暫定と言っておることがおかしい。これはとにかく法律家であればだれも、それが公共の福祉によるところの所有権の侵害なんだということになってくるのだけれども、まあ私がここで聞きたいのは、演習期間が一年のものを、無理やりに、何とかかんにんしてください、使わしてくださいという法律が三年だというふうなことは、条理に反しませんか、常識に反しませんか、おかしいと思いませんか。私は総理の御所見を承りたい。
  32. 西村直己

    西村(直)国務大臣 そういうお考えもあるいはあるかもしれませんが、全体として沖繩については、御存じのとおり、演習場契約でまいる、そうして一年ごとの更新ではあります。しかし、状況いかんによってはそれがもめてきて、そうしてどうしてもいまの協定上の義務が果たせないということも困る。そういうようなことを勘案いたしますと、原則的には五年である政令を、この分については、一時使用性格もあるから三年でいいじゃないか、こういう考え方で政令案要綱はきめておるわけであります。
  33. 中谷鉄也

    中谷委員 総理お尋ねいたしますが、一年のものをとにかく暫定で三年だ、本体が一年のものがとにかく暫定で三年に延びるなんということが世の中の条理でありますか。要するに、そもそも一年だったんです。それからアメリカ局長は、これはあまり使ってなかったんですと言いましたね。そんなものが三年になるというようなことは、これは法律論じゃなしに、おかしいと総理は思われませんか。
  34. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま防衛庁長官がお答えしたとおり、私は別におかしくはないように思います。
  35. 中谷鉄也

    中谷委員 お尋ねをいたしますが、一年ずつ更新をしていくというのは、更新というのは、何も更新をしなければ、義務があるわけじゃございませんね。施政権下において、アメリカの軍政下においても断わられたものが、拒否できたものが、なぜ日本国憲法のもとにおいて、三年という期間によって沖繩県民がしんぼうしなければならないのか。それがおかしくないんでしょうか。総理の重ねての御答弁を私は承りたい。もめてくるから困るんだなんてことは、それはお国のかってですよ。政府のかってですよ。もめる権利が国民の場合にはありますよ。困ると言う権利は県民の場合にありますよ。施政権下におった状態よりも悪い状態になるなんてことが、もめてくるから困るんだ、そんなことがあっていいのですか。更新というのは、一年以上のものをさらに一年一年と繰り延べしていかなければいかぬというものじゃないでしょう。であればこそ、二つ訓練場については更新を拒否して提供できないかっこうになっているんでしょう。私はおかしいと思う。こんなものがおかしくないということなら、この法案そのものの、基本的には私は政府の姿勢を疑いたいと思う。いかがですか、総理
  36. 西村直己

    西村(直)国務大臣 私ども防衛庁といたしまして考えておるのは、できるだけ契約というものを原則にいたします。従来も契約でいっております。契約実態については先ほど御議論がありましたけれども。そういうような場合におきましても、もう一つ基本的に考えていただきたいのは、私どもは、安全保障体制、条約の中において、基地提供の義務、そしてアメリカ軍に基地を与え——それもできるだけ狭めるという政府全体の姿勢はあります中ではありましても、基地というものを、一年更改ではあるけれども、ある程度の安定性というものを訓練場は与えていかなければ、ただそれだけで、一年こっきりだから、一年こっきりだからと簡単にいけないということで、基地に与える以上はある程度の安定性というものは、そこに三年という暫定期間を立てるということもやむを得ないのじゃないかと私は考えております。
  37. 中谷鉄也

    中谷委員 違いますよ。施政権下のもとにおいて、一年ごとでいいのだという不安定なものでいいんだと言っておったんですよ。そうでしょう。なぜ日本国憲法のもとにおいてそれを三年にしなければならないのですか。そんなものは、量的にも質的にも期間的にも、まさに基地の強化であり拡大じゃないですか。演習地についてはそんな不安定なものでもいいんですよというのが、施政権下のたてまえだったんでしょう。それが三年になるということが、安定性というようなことばで世間が納得するでしょうか。しつこいようですけれども、総理にもう一度御所見をお伺いしたい。
  38. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま西村防衛庁長官がお答えしたように、私は、一年限りでやむものだ、かようには思いません。使用契約そのものは一年ごとに更新はしておるけれども、それはやはり永続的に使用される、しかし、それがあまり継続的に長くなっては困る、こういうことで、ある程度、期間的に三年ぐらいならその間は大体いいだろう、こういうような考え方で、私は別に矛盾はしておらないと思います。ことにこれがアメリカの施政権下でいろいろな事情がある、そういう場合に、いままでのような使用料等についてもいろいろ問題が起きている、そういうような場合の期限が非常に短かった、こういうことと、今度祖国復帰の後の扱い方、これは私はむしろこちらのほうが本筋で、いままでのような一年ぽっきりでやっていること、これはほんとうに施政権がアメリカにあった、こういう関係でそのことを要求された、かように解釈することもできるのじゃないか、私はかように思います。必ずしもこれは施政権がこちらへ移って非常な不利益になったと、かように考えることにはならないのじゃないか、かように思います。
  39. 中谷鉄也

    中谷委員 総理に申し上げたいと思いますけれども、こういうことでございます。  施政権下における賃借の態様については、不定期賃借権、要するに期限の定めのないものと、暫定賃借権、五年のもの、そうしてこの演習地の一年と、三つあったわけですね。それぞれ使用目的、態様、必要性によってそういうふうにきまっておった。それを、いまの総理説明は、一年でいいのですよとアメリカが言っておったものを、そうして結局、地主の側からいえば、いつでもそれはとにかく更新を拒否できるという権利を持っているものなんです、その権利を奪うことにはなりますね、少なくとも。三年だということにかぶせてしまえば。
  40. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 アメリカの施政権下において一年で更改されたことはないでしょう。それはやはり継続して使われているでしょう。そういう一ことは考えなければならぬ。それをやはり私は指摘したい。   〔中谷委員総理、間違っておられますよ」と呼ぶ〕
  41. 床次徳二

    床次委員長 中谷君、発言を求めてください。——中谷鉄也君。
  42. 中谷鉄也

    中谷委員 七つ訓練場がございまして、そのうちの二つは更新を拒否をして、だから用に供されないことになりましたね。だから結局あと五つについても更新をする、すればこそ一年がさらにまた一年になっていくけれども、そうでない限りは一年ぽっきりになってしまうわけですね。では、あと二つ訓練場の問題、どういうふうに説明されるのですか。
  43. 西村直己

    西村(直)国務大臣 あの協定そのものが、引き続き使用しているという演習場である——引き続きということは、契約なりその実態が引き続き使用される状況であるものという意味で、引き続きこの協定成立までに契約ができれば当然暫定使用法律に入る、これはおわかりになると思います。ただし、それが協定の、いわゆる復帰までの時点に契約ができなければ、これは落ちるであろう、こういう御説明をしたのが前の……。残りの五つについて、要するに一年こっきりである、更改するのを、三年という暫定使用法律の適用をするのは権利の侵害ではないか、確かに、その部分だけを考えれば、一年こっきりで契約できるのが三年という暫定使用権、権利を侵害しているようであります。しかし、同時に、日本憲法のもとで、そして基本的には、訓練場等もさらにできるなら効率使用によって整備したいという、日本政府一つのそういう権利を守る姿勢も出てまいるでありましょう。いま一つは、日本政府の手に移った場合においては、基地周辺整備というような、相当本土並みの手厚い権利擁護の面も起こってまいります。したがって、一方において、今度安保条約に基づく米軍——軍隊というものは、御存じのとおり、訓練がないならもう存在の価値がない。そうなると、訓練には安定性を加えなければいかぬ。そうなると、少なくともそういう法律上の網はかぶせる。しかし、できるだけこれも、そういうものを使わないでいこうというのが、あの暫定使用法の一条二項に書いてある、契約を主眼とすると書いてある精神であります。こういうふうに全体としてこれを御理解願えればいいのではないかと私は考えております。
  44. 中谷鉄也

    中谷委員 この法案が間違いだという立場に立っていろいろな角度から申し上げて、最後にそういうふうな答弁があって、御理解をいただきたいと言っても、理解ができるものじゃございません。しかし、このことばかりやっていてもなんだから、次に参ります。  布令二十号によるものですが、外務大臣お尋ねいたしたいと思います。  布令二十号というのは、適法手続を欠いているもの、適法手続という近代法の原則からははずれたものというふうに理解してよろしいでしょうか。布令二十号による土地の収用、これは適法手続を欠いたものと私は理解いたしておりますが、外務大臣の御見解はいかがでしょうか。
  45. 福田赳夫

    福田国務大臣 政府委員からお答えいたさせます。
  46. 島田豊

    島田(豊)政府委員 布令二十号による各種の契約あるいは収用の手続というものは、これはアメリカの施政権下におきましては適法に行なわれておる、かように考えます。
  47. 中谷鉄也

    中谷委員 適法に行なわれていることが、近代法の適法手続の原則に背馳しているとは考えませんか。私はそのように思うのですが、と申しているのです。
  48. 島田豊

    島田(豊)政府委員 近代的法制というものがどういうことでございますか、よく私理解できませんけれども、少なくとも日本本土における各種の手続あるいは権利関係、こういうものと全く同じであるかどうかということについては、やはり若干の相違はあろうと思います。しかしながら、沖繩のアメリカの施政権下におきましては、これが近代的法制からはずれているというふうには私は考えておりません。
  49. 中谷鉄也

    中谷委員 お尋ねをしておきますが、土地裁判所というものは訴願をすることができました。しかし、土地裁判所は単に収用された土地の地代についての訴願だけであって、土地の収用そのものを争うことはできなかったはずであります。こういうふうなものが、いわゆるアメリカ憲法修正五条、修正十四条あるいは大統領行政命令その他はありますけれども、そういうふうな土地収用令あるいは布令二十号というふうなものが、収用手続において適法手続を欠いておった、これはもうあたりまえのことじゃないでしょうか。そういう趣旨で申し上げている。お答えいただきたい。
  50. 島田豊

    島田(豊)政府委員 沖繩におきます土地裁判所は、これは私詳しく調べたわけでもございませんけれども、いわゆる日本本土におきますところの裁判所の形態とやや異にいたしておりますので、そういういろいろな権利関係の保障等につきまして、土地裁判所がすべてこれを取り扱うということにはなっておらないわけでございまして、したがいまして、そういう意味におきましては、日本の土地収用法におけるいろいろな諸手続と異なっておるということは、これは事実であろうと思います。
  51. 中谷鉄也

    中谷委員 長官答弁に気をつけていただきたい。土地裁判所のことについては詳しく調べておらないとおっしゃいましたね、いま。まさにあなたのほうのお仕事は、沖繩土地の問題について責任を持っているのはあなたなんでしょう。琉球の土地関係法令集あるいはまた布令、布告、そのような問題を、島田さん、あなたは詳細に見なければいかぬ責任があるのでしょう。土地裁判所の問題について詳細に知らない。土地裁判所に関する布令をお読みになったことはないんですか。
  52. 島田豊

    島田(豊)政府委員 読んでおります。
  53. 中谷鉄也

    中谷委員 読んでおるなら、答弁は要りませんけれども、適法手続にふさわしいものではない、適法手続にかなうものではないという答弁は、当然出てくるはずじゃありませんか。それを、二十六年間の異民族支配の中において認められたケースはわずか二ケース、そのこともあなたは十分承知しているはず。土地裁判所の権限についても十分承知しているはず。それを、適法手続があったようなことを答弁しなければならないから、土地裁判所の権限については十分承知してないなどというふうな答弁をされることは、私は不誠実だと思う。今後質問が続いていきまするけれども、そういう不誠実な答弁はやめていただきたい。あくまで、どんな点から見ても、収用手続というふうなものが、近代法にいう適法手続を欠いておったということは明らかな事実じゃありませんか。その点を私は指摘しておきたいと思います。  次に、質問を変えますが、自衛隊が引き続いてというふうなことばを使われているけれども、自衛隊が沖繩において土地使用する、これは自衛隊の新規使用沖繩県民はこのことについて強く反対をしておる。そこで、問題は二つに分けて論議されなければならないと思います。  昨日、同僚委員が、自衛隊の公共性の問題について、特に時間の関係から論議を避けられたので、私はこの問題からまず入っていきたいと思いますけれども、建設大臣おられますね。——建設大臣にお尋ねをいたしたいと思いますけれども、昭和二十六年に土地収用法が改正されました。その以前の土地収用法には、収用の対象となるものについて、国防及び軍事に関するものというのが冒頭に掲げられておった。そうでございますね。その後、昭和二十六年に制定されましたところの新しい土地収用法には、三条三十五号までの間において、自衛隊ということばは出てまいりません。保安隊ということばも出てまいりません。要するに、焼却場、墳墓——お墓まで出てくるけれども、自衛隊ということばは出てこない。これはいかなる理由によるものでしょうか、この点をひとつ簡潔に建設大臣お答えをいただきたい。自衛隊の公共性ありというのが政府答弁。そうでなければこの暫定使用法はその存在の基礎を失う。しかし、土地収用法のどこをさがしても自衛隊ということばは出てこない。廃止されたところの旧土地収用法には、国防及び軍事に関するものというのが冒頭に出ておる。それが出てこなくなってきておる。この間の理由を簡潔に御説明いただきたい。
  54. 西村英一

    西村(英)国務大臣 明治三十三年の収用法は、戦後昭和二十六年に改正になりました。その際に、そういう従来の軍の問題あるいは皇室の問題等が省かれて現在の新しい法令になったわけでございます。そのいきさつは法制局長官から御説明したほうが適当であろうと思います。
  55. 高辻正巳

    高辻政府委員 昭和二十六年でしたか、土地収用法の改正の際に御指摘のような事実があったことは、もう言うまでもなく当然にございましたが、その際の考え方、これは、皇室陵墓の建造あるいは神社の建設等と並んで、従前ありました公益事業の一つとしての「國防共ノ他軍事ニ關スル事業」を新法から除くということになったわけであります。これは、憲法が否定している昔の、いわゆる当時の土地収用法にありましたようなものについては、これはもう入れないのが当然であろうということで落としたように承知をいたしております。しかしながら、憲法が規定していない——これはいろいろな議論がございましょうが、自衛権の行使のための必要最小限度の手段として設けられた自衛隊、それについては、土地収用法のいわゆる公共のための事業として見られるかどうか、これは土地収用法の解釈問題になると思います。
  56. 中谷鉄也

    中谷委員 そこまで聞いてない。要するに、自衛隊が土地収用法の対象になると法制局長官言わなければ、暫定使用法はとにかく土地収用法を将来適用するのだと言っているのだから、お話にも何もならないわけですよ。だから、きょうはそこまで話を先に進められたが、私が言いたいのは自衛隊の公共性ということで、昭和二十六年ですから、警察予備隊はできておったはずですね。そのことについて、一体、警察予備隊の施設が土地収用法の対象にどこにも出てきていないじゃないか。その後土地収用法は何回も改正をされたじゃないか。にもかかわらず、自衛隊、保安隊ということばは出てこないじゃないか。ようやくにして当時の法制局次長の林さんが、保安隊も入るのだという法制局見解を出された。それをどうも政府は唯一のたよりにしておられるようだ。しかし、私が疑問に思うのは、お墓や焼き場まで土地収用法の対象になりますよと書いてあるのに、自衛隊ということばが出てこない。それで公共性があるのだというふうに言いたい、これは一体土地収用法がおかしいのか、自衛隊の公共性というものが公然と国民の前に出すことができないのか、これはいずれかの問題だろうと思うのです。これは法律問題としてではなしに、一ぺん、総理に、こんなふうに土地収用になっているのは総理も先刻承知のはず、この点について総理の御見解を承りたい。
  57. 高辻正巳

    高辻政府委員 法律見解お尋ねになっているようでもございませんけれども、なぜ自衛隊なり保安隊なりというものができた後にそういうものを特設しなかったか、もし必要があるなら特設すればよかったではないかというお話のようでございますが、ただいまのお話の中にありますように、昭和二十八年にこの問題について法制局次長から回答が出ている。その中身御存じのとおりだと思いまするので申し上げませんが、そういう意見の中であらわされておりますように、これまたくどくど申し上げる必要もないと思いますので申し上げませんが、三条の三十一号に、国が設置する庁舎その他直接その事務の用に供する施設という規定がありまして、これも意見の中にあらわれておりますが、それで十分処理できる、まかなえる——と言っては語弊がありますが、これで読めるんだというのが意見でございますので、その後必要があれば入れたでありましょうが、必要を認めなかったので入れなかったということであります。
  58. 中谷鉄也

    中谷委員 きょうは法制局長官少し切れが悪い。昭和二十六年の改正のときには、バス事業、放送事業さえも入ってきた。そのときにとにかく警察予備隊は入らなかった。そういう経過を先刻承知の上でそんなこと言われて、私だってこれだけ資料を持ってきたんだし、お互い、言うてみれば私も法律家の端くれ、もうとにかくわかっていることについて、くだくだ答弁して時間だけを空費しないでください。私、率直に申し上げて、協定特別委員会では一言も発言できなかった。きょうはまさに怨念に満ちて私は質問しているような気持ちなんだ。それを、十二時過ぎにはとにかく委員長質問をやめろと言う。まだ序の口の序の口のところまでしかいっていない。これではもうお話にならぬ。こんなことは私がもうわかり切っていること。私は質問を省略していきますから、質問にだけ簡潔に答えてもらいたい。その点をひとつお願いいたします。  そこで、要するに、法制局長官公共性があると言わなければこれはもう何もかもすっ飛んでいってしまうから言うけれども、おかしいですよ、とにかく自衛隊が出てきてないということは。立法としておかしいでしょう。焼き場、それからお墓まで出てきているのに、それはおかしいということを前提として、そこで私は次に、自衛隊の新規使用という問題についてお尋をいたしたいと思うのです。  沖繩へ自衛隊が行く、これは継続使用でも何でもない。きのう何かちょっとあいまいな答弁があったけれども、米軍と自衛隊とはあくまで違いますね。全く違う。これはあたりまえのこと。引き続き使用なんて言っても、これはあくまで主体が違う。そのことについて、自衛隊が入り込んでいくということは、これは新規使用以外の何ものでもない。そこで私は申し上げたいと思うのですけれども、総理にこれはひとつお尋ねをいたしたいと思いますが、またあと法制局長官答弁されるかもしれないけれども、国家総動員法という法律がございましたね。国家総動員法という法律土地の収用手続と今度の土地の収用手続と、どちらが適正な手続、順序を踏んでいるというふうに、総理は、ばく然と、お考えになりますか。
  59. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは法律論じゃありませんが、ばく然と私は、今回のほうが総動員法よりかやはり民主主義的な処置だ、かように思っております。
  60. 中谷鉄也

    中谷委員 ところが違うのです。私はこの点をまさに執念を持って調べてみた。ほんとうに私はこの問題については執念を持って調べてみた。協特においては発言の機会を与えられない。それで全くこれは調べてみた。そこで、時間がもったいないから、国家総動員法よりもこの法律のほうが手続を踏んでいないことは、法制局長官に耳打ちしていただいたら一ぺんにわかる。ただしかし、そのことは、もうすでに国家総動員法という法律は出た。すでにもう別の人が質問した。別の人が質問したことは私は聞かない。  そこで法制局長官お尋ねしますが、軍事特別措置法という法律があったのを御存じですか。御存じですね。総理、聞いておっていただきたい。この軍事特別措置法という法律は、ちょうど昭和二十年の三月。沖繩決戦が行なわれたのが、昭和二十年の四月一日に沖繩米軍が上陸してきた。昭和二十年の三月に軍事特別措置法というのができて、そうして五月からそれが施行された。この軍事特別措置法という法律、すなわち、当時、一億玉砕だとか本土決戦だとか、すべて日本国民が戦争の渦中にあったときのその法律、そのときの土地収用、その土地収用とこの法律一体どちらが手続を踏んでいるかということを、私は法制局長官お尋ねをいたしたい。
  61. 高辻正巳

    高辻政府委員 私も大体の法律は心得てはいるつもりでございますが、いま執念を持ってお調べになったと言うほど、いま必ずしも十分には知っておりません。   〔中谷委員、書類を示す〕 しかし、現在あります公用地の暫定使用法案、これは収用収用とおっしゃいますが、これはいわゆる収用ではなくて、いわゆる暫定には御異論があるようでありますが使用でございますので、その点が一つと、それからもう一つは、この総動員法なりあるいは軍事特別措置法なりとお比較になりますのは、必ずしも適切ではないのではないか。と申しますのは、沖繩における現在の状態というものが基本になっておりますので、まさにこういう法案が出るのでありまして、総動員法なり軍事特別措置法におけるそのバックグラウンドといいますか、その基底といいますか、そういうものが同一であれば同一に論ずることができますが、その基底が違いますものについては、比較ができないのではないかと思います。  しかし、お尋ねは、どちらの手続が手続として十分になっているかといえば、いまの基底を除いて考えれば、おそらく軍事特別措置法といえども、やはり場面の違う場面における問題としては、それなりの手続があったものであろうと思います。いま十分に読むひまはございませんが、ありがとうございました。
  62. 中谷鉄也

    中谷委員 使用にしろ収用にしろ、国家総動員法、それから軍事特別措置法、そんな手続よりも手続を省略して——あとで一番大事な告示の問題をやりますけれども、手続を省略してやるというふうなことは、これは沖繩県民の中で言っている、自衛隊の沖繩進駐じゃないかということばが出てくることは、私は当然だと思います。そうではないでしょうか。いま法制局長官に私はこの軍事特別措置法をお見せしました。さすがの法制局長官もこれまでは調べておられなかった。しかし、これはちゃんとした収用手続についての手続を踏んでおりますよ。勅令で踏んでおる。そんなことが、はたして民主国家において、近代国家において、いわゆるバックグラウンドが違うんだ、基盤が違うんだ、あるいはとにかく特別な事情なんだと言って許されていいものかどうか、それほど二十九条の三項、個人の所有権というものが奪われていいのかということを私は申し上げたい。二十九条三項というものを、非常に抽象的に論議をするのではなしに、先例との比較において私は論議をしてみたいと思う。そういたしますると、国家総動員法も、総理がおっしゃったようではないのです。国家総動員法も、その収用の手続において、使用の手続においても、きわめて厳格なものを踏んでおる。しかし、そのような国家総動員法というのは、日本の国が敗戦という道へ歩んでいったところのその一里塚になったところの法律ではなかったですか。そんなものよりもひどいものをつくるというふうなことが許されていいのか。これが私の、まずわが国の先例との比較において二十九条三項問題が出てくるじゃないか、そんなことが許されていいはずがないじゃないかというところの議論なのであります。  次に、私は外務省お尋ねいたしたいと思いまするけれども、ザールの一九五七年のときの条約、こういうふうなものについても、私はこんなものはなかったと思う。それからイタリアが戦後一部を返還した、そのときにも私はこんなものはなかったと思う。私はもっといろいろなものを調べてみようと思って調べてみた。満州帝国の現行法令というものを調べてきた。いわゆる満州国という国を日本がつくった。その満州国の軍需徴発法という法律を調べてみた。その軍需徴発法という法律の中にさえも、今度のような土地使用というようなやり方をやっていない。私はこのことを総理に指摘をいたしたい。こういうふうなことをあれこれ考えてみますると、世界にも例がない、外国にも例がない、いまだかつて日本に例がないのがこの法律じゃありませんか。それが憲法の精神に反しないと言えるんでしょうか。これが私の総理の御所見を承りたいゆえんであります。
  63. 高辻正巳

    高辻政府委員 いろいろ戦前の法律を御指摘になりながらの御卓説でありますので、それ自体は私は敬意を表して伺っておりますが、しかし、公共の利益のためやむを得ない必要がありますときに——これをそう認めるかどうか、まあ一つの問題でありますが、そういうときに、公益上の必要性と、それから私人が受ける損失との均衡を考慮いたしまして、妥当な範囲で、通常の場合に経由すべき手続を簡略化しあるいは省略化するということは、国会の制定した法律にそれほど珍しいことではございません。いろいろお調べでございましょうから、あえて申し上げることもないかもしれませんが、すぐ浮かび上がりますのは、安全保障条約発効の際の駐留軍への提供施設についてとられた立法上の措置、それからまた、小笠原復帰の際に、公用、公共用の施設についてとられた立法上の措置、これはいずれも今回の法案とほぼ同様なものであります。  先例としてはこれらをあげるだけで十分でありましょうが、このような措置は、実は、お調べになっているからおわかりでありましょうが、土地収用法の百二十三条にもございます。これはあまり時間をとってもいけませんので、一口で申し上げますが、収用委員会で審理中の事件につきまして、事業の施行が遅延し、その結果、公共の利益に著しく支障を及ぼすおそれがあるときには、収用委員会は、起業者の申し立てにより、直ちに当該土地使用することを許可することができることになっております。この許可がありますと、特定の起業者は土地使用権を取得することになるのであります。私としては、この場合といまの場合を比較して申し上げたいのでありますが、一応これでそういう例があることを申し上げるにとどめまして、必要があればさらにお話を申し上げたいと思います。
  64. 中谷鉄也

    中谷委員 土地特別措置法という法律がある、それを適用したらいいじゃないか、暫定使用法というような法律をつくる必要はないじゃないかということは、従来からの野党の主張、したがって、その法律とこの法律の違いというのはもうはっきりしている。小笠原暫定措置法とこの法律との違いというのもまた法制局長官も私も先刻承知の上での論議なんです。だから、大体似ているということを言ったって、大体似ているからいいのだなんという議論には少しもならない。だから、私が引いたような先例というふうなものよりも全くひどいということがあって、はたしていいものでしょうか。  私はもう一度総理にお伺いいたしたいと思います。  公共の福祉という名において、そこのけそこのけ、お馬が通るというふうなかっこうであらゆるものがけ散らされていいのかどうかということが問題なのであります。国家総動員法よりもひどい法律、軍事特別措置法よりもひどい法律、満州国の徴発法よりもひどい法律、私はそこまで調べがつかなかったけれども、日韓併合のときでもおそらくこんな法律はなかっただろうというふうにさえも私は思う。そんなものがあっていいのかということ、私はそのことを問題にしたいのです。あらためて公共の福祉というものをお互いに——公共の福祉、公共性——この場合は自衛隊の公共性でしょう。公共性があるとおっしゃるなら公共性でしょう。公共性というものを、冷静に、そうして深刻にわれわれは考えてみる。それを考えてみるというのは一体何か。先例ではありませんか。外国の例ではありませんか。それよりも、こんな法律はないということになれば、この法律のひどさというものが浮かび上がってくるのではないでしょうか。法律論としてではなしに、私はひとつ総理の御所見を承りたい。
  65. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 公共性あるいは公共の福祉、これはもちろん尊重されるのは当然だと思います。しかし、それだからといって、私権をじゅうりんしていい、こういうものではない。やはり私権の保護はしなければならない。それがお互いに相反する場合に、いかなる調和、調整をとるか、これが法律であり政治である、かように私は考えております。二つとも大事なことだ、二つとも尊重すべきことだ、かように思います。
  66. 中谷鉄也

    中谷委員 まさにその二つの調和の中において片一方がじゅうりんされている、片一方が全く影も形もなくなっている、これがこの法律だということを私は申し上げたい。二十九条三項論、二十九条二項論、きのう二見君がそれを、かつて私が質問したことをやりましたけれども、そういうふうな法律の解釈はこうですということじゃない。まさにそういうふうな実証的な積み上げの中から私は本日は議論をしていきたいと思う。  そこで、一体、自衛隊がとにかく手続を経ずに土地使用したりすることができる場合というのは、防衛出動の場合に限る。これはもう建議書の中にも出てきている。災害対策基本法の場合は別として、とにかく屋良さんの建議書の中に出てきているし、多くの学者もこのことは言っている。だから、もう政府のほうは答弁を準備しておられるでしょうけれども、総理お尋ねいたしたいのは、公共性というふうに総理は言われるわけですね。自衛隊はそのようにとにかく使わなければいかぬのだ、そうしてとにかく先例にもないようなことをするのはいかぬのだというその公共性、これを防衛庁長官のことばで言えば、国防の空白は一日もゆるがせにすることはできない、こういうふうに聞いた記憶があります。そこで、七十六条を受けての百三条というのは防衛出動の場合ですね。防衛出動、要するに、いよいよ敵の攻撃があった、そういうときの防衛出動の場合に限ってなされる。一体、そんな現存かつ明白な危険というふうなものが現在の沖繩にあるのですか。まさに一種の防衛出動ではありませんか、ということを私は言いたいのです。これは七十六条、百三条の解釈を聞いているのではない。公共の福祉と公共性という中において、その公共性ということによって私権が制限されるのは、まさに現存明白な危険がなければならない。現存明白な危険などというものはあるのだろうか。国防の空白は一日もゆるがせにできないということ、そういうことばだけで、このような公共の福祉という名において私権が制限されていいのだろうか、この問題であります。七十六条相当の場合などというものがないことはあたりまえ。それを、国防の空白を一日もゆるがせにできないということでイコールに結ぶことはできないじゃありませんかというのが私の議論なんです。総理の御見解を承りたい。
  67. 西村直己

    西村(直)国務大臣 ただいまお話のうちで、防衛出動以外には自衛隊が基地をそういう国家権力を背景に取得できないじゃないかという御立論は、私どもは見解が違います。先ほど法制局長官答弁もありましたように、土地収用というような方法もこれはあり得るのであります。単に防衛出動だけではないのです。  それからもう一つは、いま沖繩に国防上脅威があるから出る、私どもはこういうような御理解はいただきたくない。言いかえますれば、自衛というのは戦争の抑止力であります。ですから、脅威があるなしにかかわらず、国の安全を守り、言いかえれば戦争を抑止する、こういう一つの国家機能のあらわれ、これが国会の御承認をいただいた自衛隊法の精神でもあります。  それからいま一つは、当然、自衛隊は、今日、御存じのとおり、各種の民生協力、救難等の活動もやっております。これらは、沖繩がかりに本土であれば、当然今日もう自衛隊の活動というものを国民の皆さんは認められておる。それを、残念ながらアメリカの施政の作業として米軍によってやってもらう、そこを私どもは一日もつないでいくほうがいい。いわんや、今回御承認いただこうという相手あっての協定、その中にも、明らかに局地の日本の防衛は当然日本が徐々に行なう。これらを考えまして、自衛隊というものは国家のファンクションの一つとしてそこへ出て最小限の必要の作業をやる、こういうふうに受け取っていただくのが私はすなおではないか、こう考える次第であります。
  68. 中谷鉄也

    中谷委員 自衛隊の役割りの一つ、ことにPRの作業として、災害対策基本法の中にもうすでに法律として組み入れられているということは私は承知している。しかし、そういう役割りを持っておるからといって、そのことがなぜ公共の福祉、公共性によって私権の制限をこのようなかっこうでしなければならないのか、ここが私は疑問があり、問題があると思うのです。抑止力なんだ。では、抑止力であるということはかりに認めましょう。一応認めたとしても、その抑止力を果たすというその目的のために、なぜ、沖繩の人が言っているように日本軍進駐だというふうなかっこうでこういうふうに土地暫定使用しなければならないのか、新規使用しなければならないのか、このことは私には理解ができない。あらゆるものは調和なんでしょう。総理がさっき言われたように、調和なんでしょう。調和だとするなら、片一方の制限、片一方の侵害というものはあまりにもひど過ぎるではありませんかということを私は申し上げたい。この点について総理の御所見をあらためて承りたい。
  69. 西村直己

    西村(直)国務大臣 調和がとれるかどうか、これは一番大事な点であります。公共の福祉と私権の制限というもの、あるいは私権の擁護と申しますか、これが調和がとれるということが国政の基本でございましょう。また、憲法の精神でもありましょう。したがって、私どももこの法制をつくるについてその点は十分に留意したつもりであります。ただ、御存じのとおり、私がすでに何回も申し上げているとおり、この問題は、今回沖繩返還、そうして局地防衛の責めは日本が背負うのは、これは国家作用としても当然である。そういう中から生まれてくれば、そこに引き続いてという、空白がないほうがいい。そして、同じように国家の作用である以上は、たとえば滑走路の返還、航空保安施設の返還、これも同じように暫定使用の中で、国家の作用として、やはり暫定使用権を、最悪の場合と申しますか、最後の保障として持たせる、それと同じようにお考えをいただく。いわんや、進駐なんということは、われわれも考えておらないし、自衛隊を理解してくださる沖繩の県民の方々も、そういうお考えでない方もまた私はあると思う。その上に、私どもは具体的な配備にあたりましても、できるだけその以前に県民の方々の御理解をいただきたい、こういうふうに考えておるのであります。
  70. 中谷鉄也

    中谷委員 私は、この法律がなくても、航路標識、道路、その他飛行場等は、どんなかっこうだってやれるということの代案を示す。あとで私は最後にその問題を提起をいたします。自衛隊をとにかく新規使用させたいためにそんなものをひっつけてきたのがこの法律なんです。防衛庁長官、そんなことおっしゃっても、こちらも、この問題については、先ほどから言っているように、たっぷり時間をかけて調べてきたのだから、なかなかそういうふうなことで、はい、そうですかと言うわけにはまいりません。  そこで、私は次に質問を進めていきたいと思いまするけれども、昨日の答弁について、まず島田さんに私はお答えをしていただきたいと思います。同僚委員質問に対して、不服申し立ての問題について、これを私はあのとき正確にメモをとってなかったけれども、不服申し立てについてノーかイエスか、こう言ったら、ノーです、こうあなたは答えたことになっておりますね。そんなべらぼうな話はこの世の中にあるものじゃないので、適正かつ合理的な判断を求めておるものについて、米軍区域についてはノーですなんという答弁は、これはもう、いわゆる不服申し立てというものができるとするならば、不服申し立ての精神というものを頭から踏みにじる、け散らすところの答弁である。これは冒頭そういうふうな答弁はお取り消しをしていただいて、私は論議に入っていきたいと思う。
  71. 島田豊

    島田(豊)政府委員 私の答弁は、異議の申し立てがございました場合に、一定の要件を行政庁の処分が具備をしておれば、当然ノーである、こういうふうに実は申したつもりはございませんで、そのときにも、私は最初答弁におきましてもお断わり申し上げたはずでございますが、もちろん、異議の申し立てがございますれば、防衛施設庁といたしましては十分それを慎重に審査いたしましてその結論を出す、こういうつもりでございます。
  72. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、慎重に結論を出す。その結論を出したい結果というものはわかっておる。しかし、それについてはわれわれのほうも争う方法は考えている。だから、その点はともかくとして、昨日の答弁がそういうふうなことであれば、これは私は非常に遺憾な答弁であると思うし、この点についての訂正を求めたわけです。  そこで私は、一番大事な問題ではあるけれども、一番法律的な問題である告示の問題についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。  一体、告示というのは何か、何のために行なうのかなどという質問はもういたしません。いたしませんが、告示の効力は沖繩にいつ及ぶのですか。
  73. 島田豊

    島田(豊)政府委員 告示の時点におきまして及ぶものと考えております。
  74. 中谷鉄也

    中谷委員 告示の効力が、法域を異にする沖繩、施政権下にある沖繩——この法律は、告示だけを抜き出して復帰前に施行になりますね。その告示の効力が、法域を異にする沖繩に、復帰前に、告示のときに及ぶというその法律上の根拠は何でしょうか。
  75. 島田豊

    島田(豊)政府委員 この告示をいたしましたその時点におきまして、この告示によります土地使用権の取得が効力を発生をするということではございませんで、沖繩返還、施政権の復帰ということをいわば停止条件としたところの一つ法律行為の効力、こういうものを私どもは考えておるわけでございまして、この効力はもちろん施政権が返還になりました時点において発生し、したがいまして土地使用権が設定をせられるものでございますけれども、その前におきまして、それを条件にしたところの告示行為をやりまして、それがもとになりましてそれに対する不服審査等が行なわれる、こういう余地をつくるというものでございます。したがいまして、その時点におきまして直ちにこれが沖繩の住民にその効力を及ぼす、こういう性質のものではない、こういうものだと思います。
  76. 中谷鉄也

    中谷委員 ここはむずかしいところですね。告示が条件つきのものであるということはわかりますよ。そうしてその告示が発せられた。告示がとにかく行政処分である。だから、それは本土沖繩土地を持っておる人を——まず本土には及びますね。しかし、その告示の効力が、停止条件つき告示が——停止条件つきでしょう。条件つきです。その告示が告示されたときに、条件つきのその告示が告示されたときに、法域を異にする沖繩にその効力は及ぶはずがないと私は思うのです。だとするならば、琉球政府に対して通知をするという規定がありますね、こういうような規定だって、意味のない規定になってくる。あとで通知が一体意味があるかどうかという論議をまた私はしますけれども、告示の効力は、本土にはその告示をされたときには及ぶでしょうけれども、告示の効力は、条件つき告示そのものの効力も及ぶのは復帰のときではないですか。そうして、同時に告示イコール使用権の発生ということに相なる、こうしか考えようがない。施政権の壁というものを考えてみると、そうしか考えようがないわけです。この点いかがですか。だから、告示の性格だとかなんとかぐじゃぐじゃおっしゃるのではなしに、その点についての解明を——解明というか、反論をしていただきたい。
  77. 島田豊

    島田(豊)政府委員 告示はこの法律施行の日前になされるものでございます。そこで、その告示の効力というものは当然この法律の施行の日から発生をする、こういうものでございます。したがいまして、告示をいたしました場合に、先生の御指摘のように、本土にありますところの沖繩県民は、自分土地に関しましてこの告示で知り得る。したがいまして、本土における沖繩県民にはその効力が直ちに及ぶ。しかしながら、沖繩に居住しておる方々には、この法律、この告示がその時点において直ちに及ぶ、したがいましてその時点において使用権が設定をせられるというものではございませんけれども、法律施行の際にその効力が発生をするという条件のもとにその告示がなされるものでございますので、これはいわば予備的な行為といたしましてその効力は県民にも及ぶものだ、かような解釈をいたしておるわけでございます。
  78. 中谷鉄也

    中谷委員 大体それでよろしいのです。要するに、予備的だといっても、それは全く法律的には意味のないことですからね。本土には告示の効力は告示のときに及ぶ、しかし、告示の効力は沖繩県民には及ばない、復帰のときしか及ばない。そうすると、総理、こういうことになるのです。告示について、告示は行政処分ですから、不服申し立てしてくださいよと、こうでしたね。抗告訴訟を起こしてくださいということですよ。私は少し柄の悪いことを言いますけれども、こういうことなんです。つら貸してくれと言うてぐれん隊が出てきますね。それで、とにかくぐれん隊になぐられたらかなわぬと思って、こういうふうに身がまえる。そういうふうなものが告示の一つのある意味性格なんですね。告示というものは、自分土地が収用されそうだ、だからそれについて身がまえる、防御の機会を与えるのが告示だと思うのです。ところが、本土におって沖繩土地を持っている人に対しての告示の効力というものはその告示のときに及ぶけれども、沖繩の人については一これは大部分沖繩の人ですよね。三万八千人、その人たちのことについては復帰のときしか及ばないとなったら、つら貸してくれと言って、身がまえるといったとたんに頭をなぐられていたというのが、この告示の性格ですよね。そうなりますね。十一月十七日の強行採決みたいなものだ。私は全くあれはもうほんとうに一生忘れられない。身がまえるひまもあったものではない、あっという間にとにかく強行採決——強行採決があるというのはにおいもないというふうなものが今度のあり方。だから、身をもって私はこの告示というものに対して怒りを感ずる。ということを見てみると、一体これは——また法制局長官でしょうね。一体沖繩土地を持っている本土の人については、告示があって不服申し立てばできるけれども、これは事前救済ですね。沖繩の人については、事後救済じゃありませんか。まず事後救済じゃありませんか。これは憲法十四条違反じゃありませんか。ここで不公平な差別がある。これが第一点。  もう重ねていきますよ。第二点は、法務省にも出てきてもらっているから、法務省にもひとつ答弁してもらいましょう。  法務省の民事局長さんにお尋ねいたしますけれども、出訴期間の問題ですね。行政事件訴訟法の出訴期間は、要するに、告示を知ったときからということになりまするけれども、そうすると、沖繩土地を持って、本土に住んでおる沖繩県民は、一体いつから訴訟を——出訴期間の起算点は一体いつなんですか。沖繩に住んでいる人の出訴期間の起算点は一体いつなんですか。こういう問題だって出てまいります。出訴期間の問題について、十四条違反の問題が出てこないかという疑問が私は生じてくる。  いずれにいたしましても、きょうはもう時間がないから、告示の性格、告示とは何か、通知とはどこが違うのか、いろんなことを詳細に聞いてみようと思ったけれども、省略して、その一点を聞きたい。まず法制局長官からお答えいただきたい。
  79. 高辻正巳

    高辻政府委員 まず最初の問題だけについて——せっかくの御指名があるようでありますから、民事局長からお答えを願うことにして、最初の問題だけをお答えをいたします。  それは、告示によって公用地使用権が設定されると効果が発生するのは、まさに、先ほども御説明がありましたように、沖繩復帰の時点でありますが、その効果の発生について利害の関係を有する者、これはお説によれば身がまえた者、これはそういう者であります以上は、その復帰の時点以前に予防的に不服申し立てをすることができないと解する理由はもう全然ないと私は思っております。それは行政訴訟においても全く同様であると考えております。
  80. 中谷鉄也

    中谷委員 私、ひとつ法制局長官とまとめてやります。  要するに、効力が及ばない。要するに、効力が及ばないというのは、知り得ないわけですね。知り得ない人が出てきますね。琉球政府へ通知をして、琉球政府の公報へ載せるとか、あるいはまた、とにかくいろんな手続をするといったって、これは琉球政府を義務づけるものじゃありませんね。そうですね。法域が違うんだから。そんなものについて知り得たとはいえない。だから、たまたま知った人がやったというような問題は、東京地方裁判所へ訴訟を起こせと言いたいんでしょう。そんなことは調べてまいりました。そのことと、これが一体告示の効力が及ばないということとの違いを——きょうはあなは歯切れが悪い。その点についての説明ができておりません。そうですね。できておらない。だから、その点について十四条の違反があるじゃありませんか、そうして同時に、不服申し立てができるんですよ、できるんですよと、こういうふうに窓口は開いているんでよと言うけれども、その窓口というのは、針の穴のような窓口、七十五キロもある人間がその中に入れません。そんな窓口だけを開いておいて、観念的に、不服申し立ての道があるんだといって、そうして土地——悪いことばを使います。無理やりに取りちぎろうというのがこの法律。これで適法手続を担保したと言えますか。そんなことは言えません。そのことを私は申し上げたい。あらためて、法制局長官、御反論があれば承りたい。
  81. 高辻正巳

    高辻政府委員 ただいま伺っておりますと、要するに、知る方法がないではないかということのようでございます。先ほどのお尋ねは、そういう知った者について——知った者についてというか、要するに、それについて訴えを起こしたい、不服の申し立てを出したいという者についてどうなるかというお話だったように承りましたので、そういう者については、むろん不服申し立ての道もあるし、また、後ほどお答えがあるかもしれませんが、訴えを提起することもできるということを申し上げたわけで、容易に知ることができないではないかという点につきましては、これはもう知られるように万全の措置をとるということを申し上げるほかはございません。確かに、沖繩本土はいまのところはその地位が違います。それは、向こうは米国の施政権のもとにあるし、わが国は、申すまでもないことでありますので、わざわざ申し上げませんが、そういう地位の相違があること、これを早く同じにしようというのが今回の全般的な措置であると御了解願いたいと思います。
  82. 中谷鉄也

    中谷委員 いずれにしても、告示の効力が本土の場合はすぐ及ぶけれども、沖繩の場合は法域が違うから及ばないんだから、これはもうすでに完全にそこで違ってくる。そうして、とにかく告示の効力が及ぶのは、結局復帰の時点、そうして使用権の発生となれば、それについては不服申し立ての道があるといったって、これは結局あるという形式があるだけであって、何もないじゃないかというのが私の意見なんです。  そこで、一体告示の時期についてはいつにされるんですか。批准書が交換されて、そうしてその後復帰までの間のどのくらいの時期に告示をされるおつもりですか。告示の方法、そうして小笠原とどんなふうに違うのか、同じなのか、こういう点についてひとつ施設庁長官のほうからお答えいただきたい。民事局長の御答弁あとでお伺いいたします。
  83. 島田豊

    島田(豊)政府委員 告示の方法等につきましては、まだ実はいまきめておるわけでございませんで、これから慎重に検討いたしたいと思います。  告示の日時につきましては、これは復帰の二カ月前に批准書の交換ということになっておりますので、その間におきましてできるだけ早期に告示をするということを考えていきたいと思います。  また、告示の内容につきましては、これもまだ確定をいたしておるわけではございませんけれども、施設、区域、面積、所在、要すれば地番、こういうものにつきまして、告示をいたしますと同時に、図面につきましては、小字の図面等を適当な方法によりまして住民の縦覧に供する、こういうことを告示の中に織り込みたい、かように考えておるわけでございます。
  84. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、じゃ、民事局長に先ほどの御答弁をお願いいたします。
  85. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 出訴期間につきましては、行政事件訴訟法の十四条に規定があります。そのとおりでございます。すなわち、告示があったことを知った日から三カ月以内であると同時に、その告示のあった日から一年以内ということになります。告示があったことを知った日というのは、これは現実にその処分を受ける者が知った日でございますので、通常は、法案によりまして関係権利者に対する通知あるいはこれにかわる告示というものがなされることになっておりますので、そのときから起算されることになろうと思います。
  86. 中谷鉄也

    中谷委員 いつからですか。
  87. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 通知が到達した日、あるいはこれにかわる告示のなされた日でございます。
  88. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、沖繩県民の起算日は一体いつになるんですか。
  89. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 沖繩県民に対して復帰後通知がなされることになっておりますので、その通知が到達した日から三カ月以内、こういうことになろうと思います。
  90. 中谷鉄也

    中谷委員 民事局長、法務省の御所管じゃなかったので、この法律については御研究になっていないんじゃないでしょうか。通知は事実行為であって、全く意味がないんですよという答弁がきのうから出ているのです。いわゆるこの法案による通知ですよ。
  91. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 出訴期間の起算点となるその知った日というのは、これは事実上その処分を受ける者がその処分のあったことを知った日をいうわけでございます。したがって、官報に出てその処分が行なわれたことを知った者については、その官報によってこれを了知した日ということになるわけでございますが、沖繩の場合にはその官報を見る機会がない。したがって、現実には復帰後においてその通知が参ります。その通知によって知ることになるであろう、これを前提といたしまして、その日から三カ月というふうに申し上げたわけでございます。
  92. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、いよいよその不服申し立てについては、昨日、不服審査法の申し立てについては施設庁長官本音をお吐きになって、法律的にはとにかくイエスもあればノーもあると言えばいいものを、ノーなんておっしゃるから、きょうは答弁の訂正をさせられた。それはいいんですが、不服審査の申し立てなんというようなものを——ほんとうにこの土地を収奪されるんだ、この土地を奪われるんだと思っている人は、そんなものを申し立てする人は少ないと思うのです。抗告訴訟を起こす人が多かろうと思うんです。私は、だから裁判所にこの問題が持ち出される、こういうふうに考える。  そこで、山中さんにお尋ねいたします。山中さんは訴状をお書きになったことはないけれども、沖繩土地調査というのは五七%進んで、あとの四三%というのは、中部基地というものを含んでこれは土地調査が行なわれておらない、沖繩の公簿等についてはあるけれども、公簿、公図等はあっても、これは全く正確度の低いものだというのはすでに公知の事実だということは、これは何べんも沖特でもわれわれ論議をいたしましたが、ひとつその点についてお答えをいただきたいと思います。
  93. 山中貞則

    ○山中国務大臣 それはそのとおりでございますから、琉球政府においては一たんそういう帳簿、公図等について確定をしようとしたんですけれども、それに伴う正確性というものに琉球政府自体が疑問を持って、そして十年の時効の成立を停止するという措置をとっていることでそのことは明瞭に証明されていると思います。
  94. 中谷鉄也

    中谷委員 取得時効の停止などということも行なわれているくらい、公図、公簿については信用性がない。公簿についての公信力あるといっても、実際そういうものだ。  そこで、民事局長お尋ねしたいと思うんです。抗告訴訟を起こせというんですね。起こしなさいというんです。事前救済はもうできないことは、大体はっきりしてきた。事後救済だ。使用権の発生——しかし、東京地方裁判所にしろ、復帰後であれば那覇地方裁判所、いずれにいたしましても管轄裁判所はそこ。そこで、訴状の受付を一体してくれるでしょうか。地主Aが、この土地区域として指定されることは、適正かつ合理的ではないんだという請求原因の訴訟ですね、結局。そうでございますね。そういうことになってきます。要するに、暫定措置法というのは、この法律というのは、土地収用法、特別措置法、全部とにかくそれの判断はあとにゆだねているわけですから、適正かつ合理的でないのだということを訴訟を起こす。その場合、自分土地はここですということの、イ、ロ、ハ、ニ、ホという、土地の特定をした図面をつけなければなりませんね、訴状の場合には。ところが、彼らの基地のどまん中にある、知花の弾薬庫のどまん中にある、自分土地はその中にあって、地代は受け取っておるけれども、五百坪やら五百五十坪やら千坪やらはっきりしない。しかし、裁判所には必ず図面をつけなさい、これが裁判のあり方。裁判所だって困るでしょう、図面をつけないような訴訟が起こってきた場合に。訴状が書けますか。この点をひとつ練達の民事局長にお聞きしたい。
  95. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 訴訟を起こします場合に、土地を特定する必要があること、これは仰せのとおりでございます。その特定の方法でございますが、現実に自分の所有地が所有者にはっきり確認できる場合には、これは問題がないわけでございます。しかしながら、いろいろ広い基地の中にあってはっきりしないというような場合がございますけれども、現実には、沖繩におきましては一応の地図ができております。これは終戦後土地の所有権の認定事業というのが行なわれまして、その際、一定の手続によりましてつくられたものでございます。現在の土地使用関係はこの図面をもとにして行なわれておりますので、自分で別にはっきりした確定的な特定ができない場合には、この図面によって行なうということになろうと思います。
  96. 中谷鉄也

    中谷委員 民事局長、そうおっしゃいますが、土地所有権についての布令であったと思いますが、大体土地の調査は終了した、これは布令の中に出てくる文句ですね。土地調査法の第一条には、全然そういう問題がないんだ、なかなか土地の調査ができていないんだと書いてある。山中さんも先ほどそういう答弁をされた。そうすると、この法案には、損失補償の問題についての規定もございますね。自分土地は、公簿によれば五百坪ですけれども、実際は千坪なんです、それで協議がととのわなかったとなれば、ちゃんとした公簿によらないところの図面をつくらなければいかぬわけですね、結局。そうですね。公簿によってはとにかく立証できませんね。しかし、まず訴訟の受付だけは公簿でやってもらえるということですか。図面をつけるのはあたりまえだけれども、訴訟の受付だけは、そういうふうな不正確な公簿をつけて出しなさいということですか。
  97. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 訴訟の受付だけでありますならば、どのような図面を出しても受け付けてくれます。しかし、訴訟である程度主張をし、立証をしていくという場合には、それだけでは足りません。したがいまして、現在は一応公的な図面としてつくられております土地台帳付属地図、これが公図として使われております。この図を基本として訴状を作成するということになろうと思います。また、しかしながら、その図面が実際と相違しておる、これを正すための確証を自分は持っておるという場合でありますれば、その確証に基づいて図面を作成して、これを裁判所に提出して立証していく、こういう方法があるわけであります。
  98. 中谷鉄也

    中谷委員 これは民事局長にどんどんお聞きしていきますけれども、抗告訴訟の場合に、境界確定の訴訟と併合することはできますね。だから、その抗告訴訟の場合に、地主Aが被告Bと国を相手どって境界確定の訴訟を起こしたという場合には、当然基地の中への立ち入りが必要になってまいりますね。こういうようなことはもうあたりまえのことですね。まず、境界確定の訴訟と抗告訴訟とが併合できるんだ、あたりまえのことですけれども、これは外務省等にお聞きする前提として、そうだということをお答えください。
  99. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 抗告訴訟と境界確定の訴訟とを併合することはできないと思います。
  100. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、抗告訴訟と損害賠償の訴訟、これは併合できますか。
  101. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 できます。
  102. 中谷鉄也

    中谷委員 そういうふうな訴訟が起こってまいります。  そこで、外務省お尋ねをいたしたいのですけれども、訴訟の不服申し立てばできるのですというふうに政府は言いたいのです。ところが、訴訟準備のために基地へ立ち入りすることは、日米間でどのようになっておりますか。
  103. 井川克一

    ○井川政府委員 ちょっと私、訴訟準備ということがわかりませんけれども、合同委員会の民事に関しまする合意書によりますると、「日本国の民事裁判所は、合衆国軍隊使用する区域又は施設内で検証することができる。」と書いてございます。
  104. 中谷鉄也

    中谷委員 ちょっと待ってください。訴訟準備というのがわからなければ答弁にならないんで、訴訟が五百坪か千坪かわからないということで、まず裁判所へ提訴する前提として、代理人、本人がとにかく基地の中に入るということについての合意は一体どうなっておりますかと聞いているんです。
  105. 井川克一

    ○井川政府委員 わかりました。私が申し上げましたとおりに、この合同委員会の合意書は、裁判所の検証の問題が合意されているわけでございます。したがいまして、個人が入るというふうな場合にはこの対象となっておりませんで、特別許可が要るものと思います。
  106. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、合意書の二の(三)ですね、その裁判所の場合ですが、「民事裁判所は、合衆国軍隊使用する区域又は施設内で検証することができる。」司令官は「これを許可し、」云々とありますが、「これを許可し、」とあるのは、許可しなければならない趣旨でございますか。原文に当たってきておりませんので、御答弁をいただきたい。
  107. 井川克一

    ○井川政府委員 仰せのとおり、「司令官は、裁判所の要求があるときは、これを許可し、かつ、護衛兵を附するものとする。」こう書いてございます。したがいまして、一般的に申しまして、これは許可をしなければならないということだと思います。しかしながら、この合意書も地位協定の付属文書でございます。したがいまして、地位協定及び安保条約に基づきまする、あるいは国際慣習法に基づきまする合衆国軍隊の属性というもの、機密保護というものによりましてある種の制限をつけることを排除しているものとは考えておりません。
  108. 中谷鉄也

    中谷委員 したがいましてお尋ねをいたしたいのは、そうすると、許可の基準というものがありそうですね。許可基準が明確になっておりますか。許可するのが原則だ、しかし、こういう場合には許可しないんだという、その許可の基準がなければいけませんね。そういたしますと、沖繩土地調査というのは、あるいはまた、沖繩における境界確定の問題、もし米軍の秘密だということがたてになった場合、地位協定のそのことが壁になった場合、いつまでたっても基地内の問題については訴訟も進行しなければ、裁判を受ける権利もあり得ない、こういう問題が出てくると思います。許可の排除される場合の基準というものはあるんですか。一般的にこういう場合は許可されない場合があるでしょうというお話ではなしに、この点についての許可基準を示してください。
  109. 井川克一

    ○井川政府委員 私の知っておりまする限り、その許可基準について文書は存在いたしません。
  110. 中谷鉄也

    中谷委員 外務大臣、この問題は、沖繩土地の調査というものがはなはだ不十分、これは非常に大事な問題だと思うのです。そういう点で、許可基準等について明確にされる必要があると思います。こういう点についてアメリカと何らかの合意を取りつけられる、こういうことを私は希望いたしますが、御見解を承りたい。
  111. 福田赳夫

    福田国務大臣 お話しのように許可基準はありませんが、条約局長から答えられましたように、これは軍の機密、まあ高度の機密ということでしょう、そういうような際におきましてはなかなか検証というものもやりにくいんじゃないか、そういうふうに思います。しかし、検証を認める、こういう精神、これからいいますると、私はできる限り米軍当局の協力を求めたい、そういうふうに思います。はっきりして、ここはもう見せないんだというようなことをここで書いておきますと、かえってこれは検証の実を妨げるというようなことになりはしないか。検証を認めるという趣旨を尊重して、日本政府といたしましても、これに米軍が協力をするということを求めるということが妥当ではあるまいか、そういうふうに考えます。
  112. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、再び暫定使用法使用権の問題に戻ります。検証の問題と関係して戻ってくるわけです。こういうことでございますね。暫定使用法というのは、自衛隊については土地収用法——疑義が私はありますけれども、土地収用法、そうして米軍については特別措置法、その他のものについては公共用地取得の特例法、その他土地収用法、こういうふうな法律の適用をする前提として暫定使用法というものがあるんだということでございますね。だとすると、土地収用法や特別措置法その他において、その土地使用収益することが適正かつ合理的であるかどうかという判断は、暫定使用をする使用権発生の時期においては判断されていない。こういうことでとにかく使用が始まる、こういうふうに一般的に理解をせざるを得ませんが、この点はいかがでしょうか。
  113. 西村直己

    西村(直)国務大臣 一般的には、おっしゃるとおりです。
  114. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、いまの答弁はたいへん重大なんですよ。そういう適正かつ合理的な判断というものがされていない。そうして適正かつ合理的だということを立証する責任は一体どちらにあるのか。これは言うまでもなしに、被告、国でありますね、防衛庁長官。お答えいただきたい。
  115. 島田豊

    島田(豊)政府委員 そのとおりだと思います。
  116. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、検証ができなかった、そのことによって適正かつ合理的だということの立証ができなかったということ、検証ができない、証人が出てこない、文書提出しない、米軍が機密だといって資料を提供しない、そういうことによる不利益は、一体——そうすると、適正かつ合理的だということの立証責任が国にあるとなれば、その不利益をこうむる者はどちらになりますか。言うまでもなしに、国でございますね。防衛庁長官、確認のためにお答えをいただきたい。
  117. 島田豊

    島田(豊)政府委員 御質問趣旨がよくわかりませんが……。
  118. 中谷鉄也

    中谷委員 もう一ぺん聞きましょうか。適正かつ合理的だということの立証責任は国だ、その立証の方法として文書あり、あるいは証言があり、そうして検証がある。検証について、秘密だといって米軍が検証をさせない、あるいは秘密だといって証人が証言をしない、あるいは文書提出もしないということになった場合には、適正かつ合理的の立証ができない。そういうことの損害は、被告、国が負うこと、これはあたりまえのことですね。要するに、訴訟でいえばあなたのほうが負けるということなんです。
  119. 島田豊

    島田(豊)政府委員 これはその適法なりやいなやということについては……
  120. 中谷鉄也

    中谷委員 適正かつ合理的。
  121. 島田豊

    島田(豊)政府委員 適正かつ合理的、これにつきましては、当然裁判の問題でございますので、それにつきましての国側のいろんな説明なりあるいは資料の提出というものが十分でない場合に裁判所でどういうふうに判断されるか、それは裁判の問題だと思いますが、そういう国側において十分な措置がなされない場合に、それが直ちに国の敗訴になるというふうなことは、私はいま直ちに御答弁申し上げられないと思います。
  122. 中谷鉄也

    中谷委員 そういうふうにはかない期待を持っていてください。まあとにかくこの訴訟は、私も実務はやっておりませんけれども、弁護士の端くれだから、こういうふうな法律が万が一にも撤回されないなどというようなことがあれば、身銭を切ってでも私はこの抗告訴訟をやりたいと思う。  そこで、原告適格の問題についてひとつお尋ねをいたしたいと思います。この問題については、いままで私は法制局長官に、非常に、何といいますか、十四条違反じゃないかと、こう言ってきましたけれども、この問題については、おそらく本土公聴会等において著名な民法学者あるいは民事訴訟法の大家も呼ばれることだろうから、私は、むしろこの点は問題を提起したいという気持ちで質問をしたいのです。これはぜひとも山中さんにも聞いていただきたい質問なんです。  どういうことかと申しますと、原告になり得る者はだれか。まず、沖繩県、沖繩市町村沖繩県有地、沖繩市町村有地を持っておって、それが区域に指定されたという場合に、当然、沖繩県及び沖繩市町村は原告たり得ること、これはもう答弁を待たずして明らかでございますね。——もう時間が惜しいから、それはそういうふうに明らかだというふうにうなずいていただいたということで、会議録にとどめておきます。  そこで、訴えについての「法律上の利益を有する者」というものは、一体沖繩県の場合にどの人が入ってくるのだろうかという問題を私は問題提起をし、私はここで多くの日本の民法学者、法学者の意見も求めたい。これは沖繩開発そのものに直接結びつく問題だと思うのです。山中長官に私は申し上げたいと思いますけれども、基地の存在というものが、沖繩の開発というものに対して重大な支障であり、ネックであるということは、これはもう当然のことであります。経済企画庁長官御出席いただいておりまするけれども、新経済社会発展計画というものの達成年度というものはすでにきまっておる、にもかかわらず、そこで暫定使用期間が五年だなんということになってまいりますと、沖繩の場合は全く新経済社会発展計画のらち外に飛び出してしまうだろうという問題だって出てくるだろうと私は思うんです。建設大臣はずっとおいでいただくけれども、縦貫道路をつくろうといったって、そんなものをつくることは非常に困難だろうと思う。厚生大臣おいでいただいておりまするが、病院を建てようと思うけれども、基地があって非常に問題があると思う。そこで私は、原告適格になり得る者というものの中に、たとえば読谷、嘉手納村、一つの村の八〇%も九〇%も基地にとられているというふうな村がある。こういうふうな村がはたして原告たり得ないんだろうかどうか。法律上の訴訟として区域指定についての区域の取り消しを求めることができないものだろうか。まさにこういうような場合は私は原告適格を持っていると考えます。そこで、いろいろなものを私は調べてみた。行政事件訴訟法についての読めるだけの本は読んでみました。この点については判例はないようであります。長沼訴訟について、防衛庁、国は、原告適格を保安林解除について争った。しかし、沖繩という特殊な事情を考えてみた場合には、何が公共の福祉か。米軍が基地を持っておる、そうしてまた自衛隊が基地を持っておる、演習場を持っておるということ、それと、それでは経済開発ができないじゃないか、那覇の都市整備は一体どうするんだ、中部の開発はどうするんだ、良質の電力をどうしてつくるのか、水道はどうするのかという新しい経済計画というものは、これは私は二律背反だと思うのです。そういう場合に、一つの村が、たとえば自分のところが八〇%も九〇%も基地にとられておるというふうなことになれば、自治大臣おいでいただきましたけれども、地方自治法については、地方自治の固有の事務というのが書いてある、住民のしあわせを守る、健康を守る、生活を守るということが書いてあるが、そういうふうなことが一体できるのだろうか。できはしないじゃないか。要するに、人間でいうならば、とにかく自分の行政区画の八〇%も九〇%もとられているということは、手もとられ、足もとられ、そうして胴体もとられ、心臓だけが残っているようなかっこうじゃないか。こん場な合に村が訴訟の原告たり得ないのだろうかどうか。私はそういうような場合に訴訟の原告たり得るのじゃないかと思う。また、沖繩県も、まさに、現在の沖繩の基地というものが、そういうふうな告示に基づく暫定使用による基地の存在というものが、沖繩経済開発に対して非常に不利益であり、ネックなんだということの、いずれが公共の福祉かという訴訟を起こし得るのだというふうに私は考える。  そこで、まずその点について、これは法制局長官の御答弁だろうと思います。しかし、それはだめなんですよというふうな答弁ではなしに——そういうことについての判例はない。学説も、とにかくその点については消極に解しているかもしれない。しかし、一体そんなことを、あの行政事件訴訟法というのは、法律上の利益というときに、考えたのだろうか。村の八〇%まで基地にとられておる。村の組織も運営もできないじゃないか。憲法九十五条論をやった人もおります。九十五条論と同じような考え方で、村が抗告訴訟の原告になり得るじゃないか、それは沖繩県民の心をそういうかっこうで伝えるべきじゃないか、何も政府へ来て基地を縮小してくれということをお願いするだけではなしに、そのような基地のあり方というものは間違いなんだということを、三権の一つの裁判所に対して堂々と訴えることも、私は一つのあり方ではないかと思う。この点について法制局長官の御答弁をいただきたい。これは私自身も、この問題については、この私の発言を機会として日本の多くの法律学者がこの問題に関心を持たれることを期待して、私はこの質問をしたいと思うのです。
  123. 高辻正巳

    高辻政府委員 一つの課題として興味をそそられる問題だと思いますが、しかし、この問題は、いずれにしても、原告適格の問題でございますので、司法部においてどういう考慮を払うかということに結局は帰着をいたします。政府部内でそれがどうのこうのと申し上げるのは、少しどうかという気がいたします。私は、率直に考えて、無理ではないかという考えを持ちますが、いまのような御熱心な御議論の結果につきましては、これをノーということをわざわざ申し上げませんが、しかし、率直な意見としては、無理ではないか、しかし、いずれにしても、政府当局がこれについてものを申すのはいかがかという感じでございます。
  124. 中谷鉄也

    中谷委員 総理の御所見を私承りたいと思うのです。  これは、原告適格という法律上の利益とは一体何か、反射的な利益、反射的な不利益という、まさに訴訟法上の問題であって、まさに学説、判例、あるいはまた多くの人の意見、あるいは裁判所のこの問題に対する判断を待たなければいかぬ問題だと思いますけれども、総理、どういうように考えられますか。先ほど私は、これはうなずいていただいただけでけっこうですと申し上げましたが、嘉手納村が自分の村有地を持っている、そういうような場合、八〇%も基地にとられているというようなところが、自分の村有地について村が訴訟を起こすというようなことは、法律上与えられた当然の権利、まさにそういうふうな訴訟を私は予想もするし、そんな訴訟が起こってくることは沖繩県民の心情としてあたりまえだろう、私はこのように考えますが、総理、いかがでしょうか。
  125. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど法制局長官から一通り法律的な議論は述べた、かように私も聞きましたが、それはそれでいいだろうと思いますが、われわれ行政府がとやかく言うべきことではない、かように思います。  ただ、もう一つ理解してもらいたいのは、いま日米安保条約のもとにおいて米軍基地施設、区域を提供する、こういうことが日本政府にございます。そういうことが、沖繩の祖国復帰という場合に、やはり沖繩も、日本政府が施設、区域を提供する、その区域内、領域内に返ってきた、かように理解していただきたい、かように私は思いますので、ただいまの基地の性格によるが、それが非常に固まって嘉手納村にその負担において基地が設置される、こういうことは非常に困るという、これは困るということはわかりますけれども、理論的にただいま申し上げるような関係から何か善処する方法はないだろうか、かように思います。と申しますのは、過日本会議で、基地の整理縮小等についての決議をいたしました。また政府も、それに対して、われわれは十分この決議を尊重し、その趣旨に沿っての活動をするということをお約束いたしております。したがいまして、ただいまのような問題は、訴訟の問題というよりも、実際の処理として納得のいくものか、あるいはがまんしていただけるものか、そういう点に十分の理解を持っていただきたい、かように思います。どうも答弁にならないような話をしておりますが、問題は、いまの安保というものが前提に一つあるし、いままで存在する米軍基地、これを返還と同時に直ちに縮小はできない、そういう状況を十分理解していただくと、どうもいまのような点は私は地域住民も理解してくださるのではないだろうか、かように思います。
  126. 中谷鉄也

    中谷委員 時間ですので締めくくってくれという理事さんのほうからの御要望があります。協定特別委員会以来、発言の機会を求めて今日まで来て、そうしてほんとうにこれだけの質問で、資料をこれだけ持ってきて、こんなことで質問を終わるのはきわめて残念ですけれども、やむを得ませんから、あと一、二点だけ、委員長のお許しを得て質問をいたしたいと思います。  では、外務省にもう一度お尋ねをいたしますけれども、要するに、安保条約地位協定のワク内へ特殊部隊は全部閉じ込めてしまうのだということですね。しかし、その特殊部隊というのは、今度はもう、沖繩本土復帰してくれば、同じ日本国内におけるところのものは、SR71が横田に来たり三沢に来ることは当然あり得ることですね。それは事前協議の対象にはなりませんね。そういう問題が一つある。そこで、これは本土とも通ずる問題ですが、先ほどの、立証責任は政府にあります、それは政府が被害を受けるのです、それを負担しますということに関係しますが、地位協定の違反があった、たとえば、岩国に核があるのじゃないか、それからきのうは、横田にも核があるのじゃないかという質問が出た。それを私きょうはやるのじゃないですよ。そうして、うちの楢崎委員立証といいますか疎明というのは、非常に濃厚なところまで疎明ができた。そうですね。ところが、トップシークレットだということで、もう一度お聞きしますけれども、政府は、防衛庁の人が行って何か点検をしたらしいけれども、自分土地は核貯蔵庫に使われているのだという場合には、国と国との関係では地位協定違反の違反を追及する問題が出るでしょうけれども、地主との関係においては、そんなことに使われるのはいやだ、安保と地位協定の目的に使われているはずなのに、SR71はとにかくしょっちゅう領空侵犯をしている、そんなものに使われるなら私はいやだという訴訟は、当然起こせるはずです。この訴訟が、明け渡しの訴訟になるのか、あるいは損害賠償になるのか、これは別として、この訴訟は、先ほどの原告適格の問題じゃなしに、起こせるということは、私はもう大ぜいの友人や先輩に聞いてきて、そういう訴訟は起こせるということに聞いてきた。そうすると、トップシークレットだということで、とにかく刑特法これあり、何々これあり、何があるということであなたのほうでその立証をできないという場合には、明け渡し、あるいはまた損害賠償でその損害賠償金の支払い、こういう問題が起こってまいりますね。そういう問題が起こってくるでしょうね、ということをまず一点お聞きしたい。地位協定違反はあるはずがないのですよということでお答えになってもらっては困ります。そんなものがあったという疎明が出てきた場合に、一体どういうふうに対処されますかということが一点。  それから、協特で一言だけ私が質問した点は、いわゆる刑特法には別表で秘密の区分というのが出ておるけれども、これはアメリカ合衆国の秘密区分というものとは一体どういう関連を持っておるのか、この点についてひとつお答えをいただきたい。  私のこの点についての外務大臣に対する質問は、この二点であります。この点についてお答えいただきたいと思います。
  127. 福田赳夫

    福田国務大臣 まず第一に、この訴訟が起こった場合にその結果が一体どうなるか、それはもうそのケースによってまちまちであろう、こういうふうに思います。その場合に国が不利になるのか、あるいは原告が不利になるのか、そういうことはケース・バイ・ケース、そのケースに基づいて司法権というか裁判所が判断をする問題であり、ここで、その場合について具体的にどういうふうになるであろうか、これは私から申し上げる限りではない、こういうふうにいま存じます。ただ、日本とアメリカとの政府間の関係と私人の関係、これは全く別ものである、こういうふうに御理解願います。  それから、第二の点につきましては、政府委員からお答えいたさせます。
  128. 中谷鉄也

    中谷委員 時間がないようですから、では引き続いて締めくくりの質問をしておきます。棒読みいたしますから、正確にお答えください。  要するに、私が問題にしているのは、核だからとにかく点検ができないんだとかいうふうな問題との関連で、私はそういう問題意識でこの問題を提起をしているわけなんです。だから、私の頭の中にあるのは、裁判というものを前面に出しているけれども、刑特法の問題意識も私の質問の問題意識の中にはあるわけなんです。  そういうことでお尋ねをいたしますが、質問一つは、地位協定第二十三条によって「日本国政府は、その領域において」「必要な立法を求め、及び必要なその他の措置を執ることに同意する。」としている。この「立法」というのは刑特法でございますね。「必要なその他の措置」というのは、いかなる措置のことをいうのでしょうか。これが質問の第一点です。  それから質問の第二点、地位協定第二十五条によると、「相互間の協議を必要とするすべての事項に関する」協議機関として設けられた日米合同委員会で、右について合意された事項があるでしょうかというのが、質問の第二点であります。  それから同じく質問は、アメリカその他外国との間に秘密情報、資料の交換について定めた取りきめが存在しますかというのが、私の質問の第三点であります。  次に、防衛庁に同じようなことをお尋ねいたしたいと思いますけれども、いわゆるMSA秘密保護法による秘密保全のための規範的命令としての訓令あるいはその通達等、そういうものがあるならば出していただきたい。これが私の資料要求であります。  それから、同じく質問の第五点は、刑特法上の合衆国軍隊の機密保全のための規範的命令としての訓令あるいは達、通達等を示していただきたい。これは外務省防衛庁に対するところの質問であります。  そして質問の第六は、刑特法上の秘密を供与されたとき、これを一般の行政秘密と区分する標識等取り扱い規定が定められているのかいないのかということについての質問をいたしたいと思うのであります。  それから質問の七は、合衆国軍隊は、刑特法別表一、二、三に掲げる事項のうち、公にするものと秘匿するものとをいかなる基準により区分しているのか。これは先ほどの質問と関連をいたします。先ほどの質問を正確に言えば、こういうふうな質問に相なるわけです。基準となっている法令、規定を示していただきたい。  質問の第八は、部隊の編制、任務、配備、行動について、日本国政府は、合衆国が公にしていない情報の通告を受けているかどうか、この点についての御答弁をいただきたい。  以上であります。
  129. 福田赳夫

    福田国務大臣 政府委員からお答えいたします。
  130. 中谷鉄也

    中谷委員 質問は早口で読みましたし、それからこの点については息の長い論議をやりたいと思いますから、委員長、いまの私の質問については、あとできちっと書面を出していただけますね。資料と答弁です。
  131. 床次徳二

    床次委員長 御要求については、政府から資料提出並びに答弁をさせることにいたしまして、お約束の時間がきましたから、そろそろ完結して——資料提出答弁をさせるように手配いたします。
  132. 中谷鉄也

    中谷委員 では、私の質問は、最後の締めくくりのことばで終わりたいと思います。  要するに、昨日からこのいわゆる軍用地法案について、憲法十四条、憲法二十九条、憲法三十一条、憲法三十二条あるいはまた憲法九十五条、多くの人がこの問題について論議をいたしました。私自身も、まさにこの軍用地法案というのは重大な内容を持っている法案だということで、この問題について論議をしたわけです。まあ法制局長官答弁について、多くの点についてさらに私のほうから再反論をすべき問題もあったと思います。また法制局長官も、私の質問に対してさらに詳細に答弁をされるべきであった、あるいはまた、さらに私の質問に対して強烈な反論をされたいというふうなお気持ちもお持ちになったかと思いますけれども、いずれにいたしましても、本日私の質問を通じて、何らかの形でこの法案の憲法的な問題の一端には触れたと私は思います。まずそういう点で、私はこの法案を今後多くの同僚委員が、公共の福祉とは何か、憲法にいう平等とは何か、あるいは九十五条にいうところのほんとうの問題は一体どこにあるのだろうか、あるいは三十一条の適法手続とは一体何だろうか、これらの問題について論議を続けられることを期待をいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  133. 床次徳二

    床次委員長 午後一時に再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時二十九分休憩      ————◇—————    午後一時十五分開会
  134. 床次徳二

    床次委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。  この際、細谷治嘉君より発言を求められておりますので、これを許します。細谷治嘉君。
  135. 細谷治嘉

    細谷委員 私は、公明党、民社党、共産党及び社会党を代表いたしまして、山中総務長官に真意のほどをただしたいと思うのです。  私はテープレコーダーを持っておるわけじゃありませんし、また実際に私の耳で聞いたわけでございませんけれども、けさの閣議後の総務長官の記者会見におきまして、総務長官が、国会というものは金のかかるものだ、けさの閣議で二億何がしかの予備費の流用というものが、今度の臨時国会及び通常国会等に向けてかかるので、その流用に関連して、国会というものは金がかかるものだ、くだらない質問をするから職員の超勤というようなものも起こって、こういう経費の流用が起こるのだ、こういう趣旨の発言をなさったと承っております。これが真意だとするならば、まさしく国会を軽視した、国会を無視した言動だと申さなければなりません。この特別委員会においても、百万沖繩県民の心をくんで熱心な真摯な質問がかわされておる。その中心的なこの委員会の閣僚が、こういう発言をこの時期になさったということは、もし事実とすれば許されないことだと思うのであります。  そこで、私が申し上げたようなことを記者会見で言ったのかどうか、総務長官の真意を承りたい。
  136. 山中貞則

    ○山中国務大臣 全然事実と反します。私は閣議後の記者会見で一般案件等について全部説明をいたします。しかしながら、ふだんなじみの記者諸君でありますから、ジョークをまじえながら説明をしていくことが多いものでありますから、したがって、予備費支出の際に、国会というものは二国会でこれだけの支出を予備費でしなければなりません、私がこうしてしゃべってむだ話をしている間にも金がかかるのですよという話はしました。しかし、そのあとまたいま記者会見をやり直しまして、問題になったということでありますから、再会見をいたしたわけでありますが、私がという主語があったかどうかはやはり疑問だという意見がございましたけれども、一応、野党の発言とか国会の論議とか、そんなことは全く言っておりません。私がこうしてむだ口をたたいておる間にも金がかかるという意味のことを言ったことは事実でありますけれども、そのことが国会の審議に対して不用意な発言であるとか、あるいは軽視するとかいうことは全く考えておりませんし、私自身、今国会の、沖繩国会の意義というものを私は私なりに受け取めて、担当大臣としての重責を果たすべく終始懸命に私はつとめておるつもりでありますから、念頭にないことをことばにもしておりませんし、その事実はございません。
  137. 細谷治嘉

    細谷委員 ジョークも含めての、自分がいま話しているのにも金がかかるのだ、この程度にしか言っておらぬと言っても、私は、そのこと自体が予備費の流用と関連して担当の大臣としてはやはり誤解を生む、あるいは心の中にそういうものがある、こういうふうに記者団が受け取るのも、無理なことではないと思うのですよ。私は、この問題は、いま長官の真意が述べられたとおりでありますから、ここではこれ以上追及いたしませんけれども、かりにジョークにいたしましても、必ずそれは心の中から出るものでありますから——これは山中長官に限ったことでありません。非常に重要な問題を国会が審議しているわけでありますから、一語一語やはり慎重に、国民に誤解を抱かせないように、言動は慎んでいただきたい、こういうことを強く要求しておきたいと思います。
  138. 山中貞則

    ○山中国務大臣 よくわかりました。
  139. 床次徳二

    床次委員長 質疑に入ります。門司亮君。
  140. 門司亮

    ○門司委員 私は、総理大臣に、きわめてつたない質問のようではございますが、この審議にあたって現地の諸君の気持ちを率直にお話しをして、そうして総理の所信を表明していただきたいと思います。  それは、長いことじゃございません、新聞や、あるいはいろいろな角度から、今度の沖繩協定は第二の沖繩処分あるいは第三の沖繩処分ということがときどき活字になってあらわれておりますが、一体、この第二の沖繩処分であるという、こういう非難といいますか、批評を受けるのに対して、総理大臣はどうお考えになるかということです。
  141. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 沖繩の施政権、これが日本に返るという、いわゆる祖国復帰、これを実現するというそのことが、いま言われる沖繩の第二の処分、さようなことは、私は、毛頭、現地の同胞も考えていないんじゃないか、かように思っております。  私がこの問題と取り組んだのは、一九六五年、総理になった翌年だと思いますが、私が沖繩を直接訪問いたしまして、そうして沖繩をぜひ祖国に迎えたい、これはいつできるかわからないが、ひとつそういうことでこの問題と取り組もう、かように私は決意をいたしたのであります。したがいまして、口先だけで申したのではございません、沖繩の祖国復帰なくして戦後は終わらないと言った、これはその実感が口から出たことばでございます。よもや私の総理のうちにこの問題が実現するとは思いませんでした。しかし、いまから考えてみますと、一九六七年にジョンソン大統領と相談をし、そうして沖繩は両三年のうちに復帰について話し合おう、その前に小笠原諸島を日本に返してくれる、こういう取りきめをいたしました。そうして三度目がいわゆるニクソン大統領と私との共同声明、いわゆる返還協定、これを核抜き本土並みで七二年に返還を実現するという、そういう相談にこぎつけたのでございます、利はそういうことを考えると、いまの処分とか、表現はどうも当たらないように思いますし、日本国民の心、沖繩百万の同胞の心を心としてこの協定を結んだ、かように確信をいたしております。どうかさような意味で皆さま方もやはりあたたかく沖繩同胞を迎えようじゃありませんか、そういう意味で私の所信を申し上げたいと思います。  ただいまのようなことを申しますのも、あしたは現地で公聴会を開かれる、かようにいわれております。私は、この機会に、私どもがこの問題と取り組んだその気持ちを率直に伝えることが何よりも大事なことではないだろうか、かように思いますので、率直に私の非常に素朴な、非常に簡単なその気持ちを表明したような次第でございます。
  142. 門司亮

    ○門司委員 どうも私の質問趣旨とかけ離れた答弁をされておりますので、もう少し詳しく言わなければわからないのかとも思いますが、しかし、総理はこのことは知っているはずなんですね。  沖繩の諸君が第二の琉球処分と言っておりますのは、御承知のように、日本の明治以来の沖繩に対する取り扱いがきわめて過酷であり、しかも沖繩島民の意見というものが全くいれられていないという差別待遇を受けておったことであります。時間がございませんからよけいなことは申し上げませんが、御承知のように、たとえば政治についても、本土では明治二十三年に民選議員ができておる。沖繩で選挙権が許されましたのは明治四十五年でしょう。先島はそれより二年おくれておる。同じ税金を納め、同じ日本の国土であり、同じ日本の沖繩の諸君が、明治時代における政治に参画する資格すら与えられなかったという、こういう過酷な一つの状態、さらに、皆さんも御承知のように、兵隊にはとるが沖繩は守備しなかった、昭和十六年まで一兵も置いていなかったという事実、こういう問題を一つ一つ取り上げてごらんなさい。明治四年に廃藩置県が日本では行なわれた。沖繩で廃藩置県を行なって沖繩が日本の県となったのは、明治十二年でしょう。その間一体日本政府沖繩に対して何をやっておったかということである。沖繩は全く日本の国民であり、日本の領土でありながら、日本の政治のらち外に置かれて、そうして過酷な税金を取られる、と同時に、その権利というものはほとんど認められなかった、いわゆる特殊地帯として置かれておった。今度のこの協定による、いま審議いたしておりまする法案を通じてみて、幾つか本土と違った形のものがある、これが今日の沖繩の諸君が言ういわゆる第二の琉球処分だ。日本政府はあまりにも沖繩を苛烈に扱い過ぎる、私はこういうことだと思う。これに対して一体総理はどうお考えになるかということを聞いているのであって、総理の今日までの行為やあるいは今日こうなったこと等について私は聞いておるのじゃありませんので、ほんとうにひとつしんから沖繩のことを考えて答弁してください。もう一度ひとつ答弁をお願いします。
  143. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま言われることが、あるいは戦争前、いわゆる明治政府とでも申しますか、どういう処遇をしたとか、こういうことがあったり、あるいは戦時中において祖国防衛の第一線になったとか、さらにまた、戦争終結後は施政権がアメリカに移ったとか、私はずいぶん苦労されたと思います。私は、かような事柄があってはならない、特別な扱い方をしてはならない、そのためにはやはりわれわれ本土沖繩百万、これが一体となってほんとうに真の日本国家を建設すべきだ、かように考えておるわけであります。私は、そういう意味で、まず、激戦が展開された沖繩、施政権をアメリカが持っていたこの地域、この施政権を日本に返してもらって、そうしてこれから豊かな平和な沖繩県づくりに踏み出そう、このことを実は皆さん方とおはかりしておるわけであります。私は、その事柄については、あまり過去の歴史を問うよりも、将来明るい未来を望む、またそういう意味で、その意気込みでこの問題と取り組む、これがわれわれの仕事ではないだろうか、また、あるべき姿ではないだろうか、かように思うから、以上のような経過を踏んまえてお話を申し上げたのでございます。
  144. 門司亮

    ○門司委員 いま総理はできるだけ痛いところにさわらないようにお話をされておるようでありますが、いままで協特の委員会、この委員会で数人の人が質問をいたしておりまするすべてのものは、本土沖繩とが違うじゃないか、本土並みというが、本土並みでないじゃないかという、この議論に尽きておりましょう。もし総理がいままでの委員会における質問その他を十分お聞きになっておるならば、私どもの真意はわかるはずである。沖繩の諸君の真意はわかるはずである。私は、それを総理はそういうことをしていないと言われるならば、これからやはりどこが違うかということをまた繰り返し繰り返し質問しなきゃならぬようになるでございましょう。  そこで、第一に、私は総理のいまの答弁に対しては非常に不満であると同時に、総理は逃げられておるということである。率直に、長い間のアメリカの施政権下にあって、同時に日本にもいろいろな国際条約等もあって、沖繩の諸君には不満だけれども、こういう形で……というような謙虚な気持ちがなくて、そうして何かしら、あたたかく迎えるんだと言われたところで、沖繩の諸君がそうこれはあたたかく迎えられているとは私は感じないと思うのです。私は、沖繩の諸君のほんとうの気持ちになって、すなおにひとつ答弁をするなり、総理にさようなものをひとつ願っておきたいと思うのです。  大臣の都合があるそうでありますから、先に申し上げておきますが、いままでも議論になっておりまするたとえばVOAの問題等も、これは本土にない施設でしょう。ここで私は法制局長官にちょっと聞いておきたいと思いますが、このVOAに従事いたしておりまする諸君は、これは一体軍人ですか、軍属ですか、何ですか。
  145. 高辻正巳

    高辻政府委員 せっかくのお尋ねでございますが、この点は、アメリカ局長あたりの現地の問題に詳しい方から御答弁を願ってお聞き取りを願いたいと思います。
  146. 吉野文六

    吉野政府委員 お答えいたします。  VOAは、アメリカの政府の機関であるUSIAの海外事業部であるUSISに属する中継局でございますから、米人職員は全部政府役人でございます。
  147. 門司亮

    ○門司委員 そうすると、軍属でもなければ軍人でもないということですね。  そうすると、基地ということばはいままでどういう意味で使われておりますか。
  148. 吉野文六

    吉野政府委員 現在施政下にございますから、彼らは基地の施設を使っております。しかしながら、復帰後は、これはアメリカの政府機関でございますから、われわれは基地を提供する義務はございません。
  149. 門司亮

    ○門司委員 私は、その点を非常にあいまいにされておると思うので聞いたのであります。これが基地でないとするならば、返還協定のAリストの中にこれがちゃんと入っているのですね、基地として。これは八十八の中に書いてあるでしょう。国頭の桃原の問題にいたしましても、その他の問題にいたしましても。その辺がどう考えてもおかしいんですよ。一体、基地でないということになれば、返還協定に書いてありまするいわゆるAリストの中にある二つのものは——発信と送信と両方ありますが、二つのものは、これは軍事基地でない、したがって基地としての提供地域でないということをここでひとつはっきり答弁をしておいていただきたいと思います。
  150. 吉野文六

    吉野政府委員 先ほど御説明したとおり、返還後はこれはわれわれとしては基地を提供する義務はございません。また、彼らもそれを十分認識しております。したがって、彼らのいまの施設は基地外になることになります。そこで彼らといたしましては、自分土地の手当てをして、五年間、協定によりまして継続する、こういうことになっております。
  151. 門司亮

    ○門司委員 VOAの問題を先にやって、いまの問題については、あとで基地の公用地の問題のところでさらに聞きたいと思いますが、郵政大臣として、国内法を改正してまでもこの法律の制定を見なければならなかったという経緯がおわかりなら、ひとつお話しを願いたいと思います。
  152. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 VOAにつきましては、御承知のように、アメリカ政府海外広報庁の放送でございまして、したがって、日本の電波法によりますと、第五条で、外国の政府は日本の国内におきまして電波の免許をしない、放送させないというようなことになっておりますわけでございます。   〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕 したがって、その限りにおきましては排除されるわけでございますけれども、また別に三条がございまして、条約に別段の定めがあります場合はその規定に従うということになっておりまして、協定の第八条に、VOAは暫定的に五カ年間だけ継続して中継を認めるということになっておりますので、協定でございますから条約と同じものでございますので、その協定に従って五年間だけ継続を認めることになりますわけでございます。そういうようなことでございますから、電波法の適用は排除いたしておりますわけでございます。電波法の適用は排除し、したがって、電波法の適用はございませんから、放送法の適用も排除になるということになりますわけでございます。それ以上に別に法律をつくらないのは、協定第八条に申しております「取極」というのがございまして、この「取極」に相当詳しくいろいろな事項が規定されておるのでございまして、これに従って管理をするということで、別段に法律を必要としない、したがって政令も必要としないというようなことで参りたいと思っております。   〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕
  153. 門司亮

    ○門司委員 先ほど、VOAは軍事施設ではないという、こういう答弁を得ております。そうなってまいりますと、今度の協定について、日本の国内における国内法の改正はともかくといたしまして、実際の軍の基地の中には、日本本土にはこういう設備はないわけですね。いまの理論からいいますと、条約であればよろしいというなら、これは日本本土にも置けるはずなんですね。条約を結べばよろしいというんですから。こういう危険性のものですか、これは。いわゆる電波法の三条を適用して、外国と取りきめのあるものはこれを除くと書いてあるから、それでよろしいんだというなら、本土にもこういう施設は置けるということですか。条約さえ結べばそれでやれるということですか。
  154. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 その協定の八条を受けまして、電波法の特例法を今度つくることになったわけでございます。
  155. 門司亮

    ○門司委員 そのことはわかっております。いまあなたの、協定の八条を受けていわゆるこれを置くことにしたというお話でしょう。そうしてその中に、日本の電波法の三条に、条約によるものはと、こう書いてあるから、五条は排除したんだ、こういうお話でしょう。だから、私はそのとおりに受け取って、もし条約であれば、日本の本土の中にもこういう施設をあなた方はお認めになるかということを聞いているんです。
  156. 福田赳夫

    福田国務大臣 もし何らかの必要がありまして、他の国とわが国が条約を締結して、そして電波法の特例を設けてまでも中継放送を許すということになりますれば、これはまたそのとおり国内法の改正をいたしましてそうしてこれを差し許すことになるわけなんです。しかし、実際上はそういうことはありません。VOAは、沖繩がにわかにわが国に返還をされる、そういうことに伴うところの臨時緊急の措置である、こういうふうに御理解願います。
  157. 門司亮

    ○門司委員 臨時的なものだというお話でございますが、先ほど総理答弁を聞いてみますると、何か本土と変わらないんだというようなことを盛んに言われているものですから、結局こういう質問をせざるを得なくなってくるんです。  それからもう一つ、このVOAで突っ込んで聞いておきたいと思いますことは、これから来る電波障害がかなりひどいものが現地にはあるわけであります。電話も満足に聞こえないというような状態があるわけでありますが、これにはどう対処されるつもりですか。
  158. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 VOAは、中波につきましては一千キロワットというような非常に強力な電力を出すことになっておりますので、そういうような問題もあるいは起こるかと思っておりますけれども、これにつきましては交換公文の中にはっきり書いてありまして、アメリカ政府が責任をもってそうした問題には対処するというようなことになっておるわけでございます。
  159. 門司亮

    ○門司委員 いま郵政大臣は何か仮定のようなお話でありますけれども、これは事実なんですね。これの放送されている間というものは、テレビもラジオも聞こえませんし、電話もほとんど通話ができないという。こういう事実に基づいてひとつお考えをいただきたいのは、アメリカが対処するんだという、これはあたりまえのことなんです。アメリカさんがやっておる仕事であって、アメリカさんが責任を負うのはあたりまえなんです。しかし、そのことが従来まで完全に行なわれておりません。そこで私は聞いておるのであって、日本政府として、ただそういう取りきめがあるからそれでよろしいんだということだけで済まされる問題であるかないかということです。これはもう少し責任をもって話をしていただかぬと、交換公文にこう書いてあるから、このことはそれでよろしいんだというような筋合いのものではないと私は思うのです。  それなら、この交換公文を取りかわしになるときのアメリカ例との話し合いは一体どの程度まで進んでおるのですか。ただ文章に書くのは、アメリカが保障するんだ、責任を負うんだということを書くのは簡単ですけれども、そこまで取りつけられるまでの経過は一体どうなっておりますか。
  160. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 従来のいきさつもございますし、いろいろ事務的になりますので、郵政省の電波監理局長から答弁させることにいたします。
  161. 藤木栄

    ○藤木政府委員 お答え申し上げます。  先ほど大臣からもお話がございましたように、交換公文の中で「アメリカ合衆国政府は、日本国の電波関係法令によって規律される無線局又は受信設備が中継局から受ける混信その他の妨害をできる限りすみやかに除去するため必要な措置をとる。」という条項がございまして、これは現在まででもすでにVOAのほうで、たとえばテレビの受信障害というのがございますが、それを共同アンテナというものを施設しまして救済をしておる、あるいはまた、電話線に誘導が入るというような問題につきましても、ケーブルを地下に埋めまして、誘導がないように、良好な通話ができるようにという措置をとっているという状態でございまして、私どもが聞いている範囲でございますると、現在特別の支障がない、そういうふうに聞いております。しかし、実際ございますれば、当然、先ほどの交換公文に基づきまして、復帰後はそういう措置をこちらで要請する、そういうことになろうかと思います。
  162. 門司亮

    ○門司委員 このVOAの問題は、後ほどまたほかのものに関連して少し聞くことになろうかと思いますが、特にこの際もう一つだけ明らかにしておきたいと思いますことは、いまアメリカ局長答弁にありましたように、これが明らかにいわゆる基地ではないということになりますと、われわれの手元に来ておりますリストの中で、Aリストの中に、これが二つとも、受信所も発信所も入っているわけでありますが、これは間違いですか。
  163. 吉野文六

    吉野政府委員 これらの施設は、基地リストのA表に全然入っておりません。
  164. 門司亮

    ○門司委員 しかし、私どものところに来ておるのには、大体これはみんなそう書いてあるのですがね。国頭のものと、もう一つありますですね。これはVOAの基地であること、送信所であることに間違いがないのであって、一方は受信所であることに間違いがない。こまかくいえば、これはまだほかに五つぐらいこういう電波を受け入れる施設はあるように大体なっておると思いますが、いまの答弁のように、これは完全に軍の基地ではないということに断定しておいてよろしゅうございますね。
  165. 吉野文六

    吉野政府委員 Aリストをごらんになってもおわかりになると思いますが、VOAの施設はこれらのリストの中に載っておりません。そして、先ほど申し上げましたように、断定してけっこうでございます。これらのVOAの施設は基地とはなりませんから、その点は断定してけっこうでございます。
  166. 門司亮

    ○門司委員 これが基地でないということになりますと、次にこれに関連した問題で続いてお聞きをしておいたほうがいいと思いますが、先ほどから非常に議論をされておりまする公用地の問題に関連が出てくるわけでありますが、これはやはり政府としては公用地であるというように解釈いたしておりますか。
  167. 西村直己

    西村(直)国務大臣 私のほうとしては、例の、御審議願っています暫定使用法案とは関係がございません。
  168. 門司亮

    ○門司委員 そうすると、これは何か宙に浮いたようになるのですがね。基地でもなければ公用地のほうにも入っていないということになると、この敷地、この設備というようなものは、一体どこに所属するんですか。今度はどこの担当になるのですか。
  169. 福田赳夫

    福田国務大臣 これはアメリカ政府の機関でございますから、そういう基地とは別のものでございます。また、日本の政府の公用の施設でもございません。どこまでもアメリカの政府の施設である、こういうふうに御理解願います。
  170. 門司亮

    ○門司委員 公用地でもなければ軍の基地でもない、アメリカの土地だということになりますと、VOAのいま占めておりまする地域は、沖繩地主あるいは沖繩の公用地すべての問題との解決はどこでするんですか。
  171. 福田赳夫

    福田国務大臣 敷地の問題ですね。これは土地所有者とアメリカ政府との間の私契約に相なります。
  172. 門司亮

    ○門司委員 私は、個人のものは私契約でよろしいと思うんだが、個々の中には公用地が含まれているんですね。そのリストはあなたのほうにございませんか。国有地がどれだけあって、そうして県有地がどれだけあって、町村有がどれだけあるかということ、これがあったら、ひとつこの機会に出してもらわぬと、話が進みにくいのですが……。
  173. 吉野文六

    吉野政府委員 先ほど答弁いたしましたとおり、VOAが使用している土地はすべて民有地でございます。そして、それらの地主は合計数百名にのぼると承知しております。これらの地主とVOAとの間は、目下土地契約を順調にしておるようにわれわれは承知しております。
  174. 門司亮

    ○門司委員 いまの答弁がほんとうだとすると、私はかなり大きな問題があろうかと思います。それはどういうことかといいますと、私がいまリスト、内容を出してもらいたいと申し上げましたのは、いまの答弁だけで全部が民有地だとは私はどうしても考えられない。あの広範な地域の中に公用地がないはずがないのであって、道路もあったでございましょうし、あるいは農民の使用する排溝渠というようなものもあったでございましょうし、たんぼと畑だけで区切られたものではないと私は思う。道路はだれのものですか。町村の所有であることに間違いないですよ。あの広大な地域の中に村道もなければ県道もない、何もなかった、たんぼと畑だけだったという答弁には私は承服しかねるのであります。
  175. 吉野文六

    吉野政府委員 われわれの調査したところでは、VOAがいま使用している土地は全部民有地になっております。御存じのとおり、国頭の奥間の送信局にしましても、恩納の万座毛受信局にしましても、もともと非常に町里から離れました地域でございまして、したがって、そのあたりには本来あまり道路もなかったはずでございますから、おそらく民有地を道路に転換していることがあり得るかと思いますが、ここら辺を含めまして調べて資料を提出したいと思います。ただし、われわれの現在までに調べたところはすべて民有地である、こういうことになってございます。
  176. 門司亮

    ○門司委員 あとで詳細な資料を出していただければ、それ以上追及はいたしませんが、それからその次に聞いておきたいと思いますことは、いませっかくVOAと土地の問題を少し聞きましたので、あらためて土地の問題についてこれからお聞きをしたいと思います。  この公用地の問題について、これもひとつ総理大臣にお聞きをしたいのですが、巷間伝えられるところによりますると、この問題が解決をしないとアメリカ側が批准をしないだろう、同時に日本政府としても批准ができないんだという、こういうことが新聞や雑誌にときどき見えるのでありますが、これはほんとうにそうですか。
  177. 福田赳夫

    福田国務大臣 法的に公用地の問題が批准の前提条件になっておるというふうには考えませんけれども、しかし、わが国としては、実際上の問題といたしまして、米軍に対しまして基地を提供する義務があるわけです。また、自衛隊を現地に派遣をいたしたいという計画を持っておる。さらにはまた、水道だ、電気だという公共の施設も、これを直ちにわがほうの手によって運営しなければならぬという事情があるわけでありまして、そういうことをひっくるめまして沖繩返還が円滑に動く、これが批准の前提でございますので、円滑に動くその前提といたしましてどうしてもこの法案を必要とするという認識を持っておるわけであります。
  178. 門司亮

    ○門司委員 前提条件ではないということでありますが、しかし、必要だからどうしてもやらなければならぬという、こういう答弁のように聞こえますが、私も大体政府はそういう考え方だと思います。しかし、この公用地の問題については非常に大きな問題を含んでおりますのは、公用地という名前の中で、かつてアメリカが住民との間に持っておりました既得権に、自衛隊がこれに一つ加わっておるという事実であります。これは新たな事実なんです、自衛隊がここを使用するということは。そのことについてはどうお考えになりますか。いままでの基地というものについてアメリカが既得権を持っておる。しかし、それについては、いろいろの条件はございましょうが、米側の既得権を一応認めるということは、私は、いまの政府としてはやむを得ぬことかもしれない、しかし、これに自衛隊が便乗するというこの公共用地の法案については、いささか疑問があるのでありますが、自衛隊がこういうことに寄食していいのですか。
  179. 西村直己

    西村(直)国務大臣 この席からしばしばお答えをいたしておりますごとく、便乗という考えは毛頭ございません。ただ、国土の防衛あるいは局地防衛の責務、これは共同声明でも日米間で双方確認しておる。また、わがほうといたしましては、当然国土の防衛というのは、いつも申し上げますように、他のいろんな国家の行政あるいは公共団体の行政作用と並列して私は行なわるべきだ、そういう中でやる。ただ、従来自衛隊が出てなかったじゃないか。しかし、これは今回新しく自衛隊の基地を設定するのではなくて、従来の機能、言いかえますれば米軍の基地の機能を、レーダーサイトであるとか、そういうものを生かしていく、こういうことでいけば、私は、この法案の中に、自衛隊、それから他の公共用の施設の円滑な引き継ぎ、国、公共団体の作用、これを円滑にさしていく、これは当然あってしかるべきではないか、こういうふうに考えておるのであります。
  180. 門司亮

    ○門司委員 いまお話がございましたように、円滑な引き継ぎといいますけれども、自衛隊は引き継がないのですね。持ってないのだから、引き継ぐ必要はないのですね。アメリカ側に対しては円滑な引き継ぎだというようなことが私は言えようかと思うが、自衛隊には引き継ぎということばはないのですね。新たにこれを求めるということですね。しかもそれがアメリカの従来の既得権の中にやはり入れられてそしゃくされておるという、この事実なんですね。だから、いまのようなお話があるとすれば、一応アメリカ側は必要のないものは返して、そうして日本側は自衛隊が使うことに、必要なら必要ということで別の角度からこれを使用するような方法を講じたらどうなんですか七どう考えても、私どもから考えると、米軍の既得権に自衛隊が何か便乗しているというか、そういう形の法案のように見えるのですね。そうはあなたお考えになりませんか。
  181. 西村直己

    西村(直)国務大臣 こういう逆にも考えられると思います。かりに施政権というものがアメリカがなければ本土、当然やはり国の自衛力というものはそこで戦争の抑止力として働いておるわけであります。しかもその働く機能というものは、たまたま米軍の従来の機能でそれをやってもらっておる。その部分というものは当然やはり機能として、しかも同じ基地内で働くべきものを機能を引き継いでいく、こういう考え方で私は成り立つのじゃないかと思っています。
  182. 門司亮

    ○門司委員 そうだといたしますと、これに五年間の期限をつけて強制収用のできるというところに問題がまた出てきやしませんか。アメリカさんの既成の使用しております権利を一応受け継ぐという——時限的に五年ぐらいの集約が何か事務的にかかるそうでありますからこういうことを認められておるが、日本の自衛隊がここを使用するということになって、これを国内法的に考えてまいりますと、これはおかしなものになりはしませんか。だから、あくまでもこの問題は、自衛隊がアメリカの基地に依存しているというか、あるいは寄食する問題とどうしても私どもは考えなければならない。そこにこの日本の国内法である土地収用法その他との関係が当然出てくるわけであります。アメリカさんが使っておる基地を日本政府に切りかえなければならない、だからその期限は非常に短かい、この調査する、いわゆる借りかえをする場合の、いままではアメリカが借りている、今度は日本の政府が借りなければならぬ、その手続上五カ年かかるというなら、これは基地に対してはそういうことが言えようかと思う。しかし、いま自衛隊はいないのですからね。自衛隊は自衛隊として、新しい角度から土地使用というものを考える必要がありはしませんか。だから、どこまで考えても、いまの答弁のようなことを聞いておりますと、公用地に対しまする法律というのは、アメリカの軍事基地に日本の自衛隊がこの上に一つ便乗しているという概念しか私どもには出てこないのであります。それでもあなた方は、そうじゃないんだ、国土を守るために当然必要なんだからここを借りるんだ。しかもそれが強制的に五カ年というものを、かってに使うということばは悪いかもしれませんが、本人の承諾あるなしにかかわらず、概存のものを使うのだ。既存のものは何かと言えば、これはアメリカのもの、アメリカの既存権なんだ。自衛隊の既存の権利でも何でもないはずである。だから、結局、この公用地法案というものは、自衛隊が便乗するということに私ははっきりなろうかと思う。そういうふうに大臣はお考えになりませんか。
  183. 西村直己

    西村(直)国務大臣 作用を握る者からいけば、アメリカ軍あるいは自衛隊と、かわってまいります。しかし、国土というものを、潜在主権ではありましたけれども、施政権が移されて、そこでもっていわゆる国土防衛という作業というものがやられておったわけであります。そのいわゆる国土防衛の部分というものは、当然日本が国家行政機能の中でやっていく。したがって、たとえば道路についても、同じように契約を主体にするけれども、最悪の保障としての暫定使用を立てる。あるいは那覇の空港の問題でもしかり。私は、特に自衛隊だけを抜き上げていくというには、国の一つの安全を守る作用というものも並列していっていいんじゃないか。ただ、動かしておった主体はなるほど新しくなります。しかし、機能そのものはそのまま引き継げる形になりますから、われわれとしては暫定使用の中に並列的に、自衛隊であるとかあるいは他の関係の機関の作用を並べて暫定使用をやらしてもらう、こういう法案になっておるわけであります。
  184. 門司亮

    ○門司委員 どうもその間が私どもにはよく理解ができないのですがね。どこまでも米軍の基地の使用に便乗して、自衛隊として問題を起こさないように、ここに自衛隊を移駐していこうとする政府の意図であることだけは、私ははっきりしていると思う。  と同時に、この公用地問題のもう一つ裏の問題は、いわゆる久保、カーチスという人との間の取りきめがこの裏にあるのではないかということである。この問題は非常に大きな問題でございまして、四十四年になりますか、一九六九年でありまするか、十一月の佐藤さんとニクソンさんとの話し合いの中にこういうことが予想されるわけでありますが、いわゆる米軍の基地機能というものを一切阻害しないでそうして返還するということばとつながるのであって、それを基地機能をそこなわないようにするという、アメリカ側の撤退に伴ってその穴埋めをするために自衛隊をここに派遣するのだというようなことが、憶測としては考えられる。そうでないとするならば、アメリカのいままで使っておった基地は基地としてこれを存続することのためにどう処置をするかということ、日本の自衛隊は日本の自衛隊として、日本の政府がその目的として使うところはどれだけ使うかということを、この際明確にさるべきである。  と同時に、この問題のさらに裏をなすものが久保・カーチス取りきめでございましょう。ここに何と書いてある。アメリカの意思というものが非常に強く冒頭に書いてあることは、総理も御承知のとおりであります。そうだとすると、今度の返還協定のすべてというものが、どだいは法律にもあらわれないし、国会の問題としても条文的に取り上げられるものではないが、久保・カーチスという、軍事協定と言うと少し言い過ぎるかもしれませんが、やや軍事協定に近い問題がさらに裏にひそんでおる。ここから公用地が発生をしておると申し上げてもちっとも私は差しつかえないじゃないかと考えるが、この辺はどうお考えになりますか。
  185. 西村直己

    西村(直)国務大臣 久保・カーチスの取りきめでございますか、これはしばしば申し上げますように、事柄が、自衛隊あるいはアメリカの軍事——かなり技術的なものであります。言いかえますれば、一つの例を申し上げましても、 レーダーサイトを引き継いで、防空というものは、当然、今日の状況下においては大きな国土の守りの一環になっております。こういうものを技術的に引き継いでいくという場合には、両防衛当局の間で十分な用意がされることは、円滑な引き継ぎになる。したがって、あくまでも防衛当局間において事務的にあるいは技術的に詰め合って、円滑な引き継ぎをやっていこう、こういう趣旨のものでありまして、あくまでもこれは、したがってまあメモと申しますか、そういうことを運ぶための一つの覚え書き、そういうふうに私どもは考えておるわけであります。
  186. 門司亮

    ○門司委員 覚え書きであるから、別に法律でもなければ条約でもないということで、審議の対象からはずれたような形をいたしておりますが、しかし問題は、日本の防衛を——あなた方は始終口にされておるのは、自主防衛であるとか、あるいは専守防衛であるとか、自立性であるとかいうことを言われておりますが、この久保・カーチスの取りきめを読んで見ますると、どこにも日本の自主性はないのですね。ここはアメリカの防衛の一端をになっておるかのような文章になっておるのですよ。いわゆるアメリカのアジアにおける、あるいは沖繩における基地の機能あるいは規模というようなものを損しないという範囲内でこの取りきめがされておるということになれば、日本の自主性というものはどこにもないのである。したがって、明らかにこの公用地の問題にからんで、自衛隊のここにおける派遣はアメリカ軍の肩がわりだということは、協定と、公用地と、久保・カーチス取りきめとの三つを並べてみますと、下からずっと考えていくと、明らかにアメリカのアジアにおける戦略というか、軍略というか、それらの機能を損しない基礎がここにあると申し上げても私はちっとも差しつかえないような気がするのであって、そういう議論をするよりも、自分に与えられた時間が短いのでありますから、長くお話をするわけにはまいりませんから率直に聞いておきますが、あくまでも、この協定あるいは取りきめ、あるいは公用地の問題等をくるめて、どこに日本の防衛の自主性があるかということ、全く私どもから考えれば、先ほど申し上げましたように、アメリカ追従の、しかもアメリカ軍の撤退に伴ってこれを補完するという立場であって、日本の独自の防衛のために自衛隊を派遣するものではないというようなことが考えられるわけでありますが、そういう考え方に対して政府はどうお考えになりますか。
  187. 西村直己

    西村(直)国務大臣 日本の自衛隊の配備そのものはあくまでも自主的であります。しかもこれは防衛庁設置法の権限に従って行なうのであります。アメリカのいわゆる極東戦略の一環としてなどという考え方は毛頭ございません。したがって、配備されるべき部隊等も、やがては正式に計画等も立てますが、必要最小限度の基幹部隊あるいは支援部隊、それと同時に、民生協力、救難活動等にふさわしい部隊を私どもは計画する。ただ問題は、事柄が、自衛隊もある意味では軍人に準ずるものでありますから、部隊の編制あるいは配置あるいは作用、これにはかなり技術的な分野がございます。しかも効率を高めるため、また沖繩にも御迷惑をかけない意味でも、できるだけ従来の使ってきた機能をそのまま生かす、こういうような趣旨から、自衛隊の自主的な判断のもとにこの基地の引き継ぎが技術的には円滑にいけるように取りきめはあるわけであります。したがって、この取りきめ自体は、われわれの自衛隊が何ら法律上の義務を負うものではございません。
  188. 門司亮

    ○門司委員 これはもしいまの御答弁のようなことだとすると、私はもう一度確かめておきたいと思いますが、久保・カーチスの取りきめの全文をひとつどこからか読んでごらんなさい。私もここに持っておるから私が読んでもいいのだけれども、あなた方のほうで一応読んでごらんなさい。どういうことが書いてあるか。どう解釈しても、アメリカのためにというような解釈しかできないような文章になっておるのであります。
  189. 久保卓也

    久保政府委員 この取りきめは、言うまでもなく、日本政府の主権に基づいて部隊が配備される、それが前提になっております。その点についてはアメリカも疑う余地はございません。そのもとに、つまり、政府が計画をして部隊を配備するにあたって、その部隊そのものは、現在は施政権の米側にある基地内に部隊を置くわけでありますから、そういった趣旨で事務的な、技術的なことが書いてあるわけであります。  前文を読んでみます。「日本国防衛庁及びアメリカ合衆国国防省の代表者は、沖繩の日本国への復帰後における沖繩の局地防衛のための自衛隊展開についての日本側計画に関連した両防衛当局間の必要な調整に関する事項を討議してきたので、この取極に述べられている前記の討議の結果は、日米安全保障協議委員会の千九百七十一年六月二十九日の会合において承認されたので、よつて、これらの代表者は、次のとおり合意する。」以下、防衛責務の引き受けの内容を書き、引き受けの時期を書き、それから展開する部隊を書き、その部隊が設置されまする施設を書き、さらに防空の内容、米側が分担する時期、わがほうがやる時期を書き、さらにまた地対空ミサイル、航空警戒管制組織の引き受けの問題について触れ、等であります。
  190. 門司亮

    ○門司委員 いまの前文の次に、もう一つ書いてあるはずですね。
  191. 久保卓也

    久保政府委員 前文の次に1とありまして、「日本国による局地防衛責務の引受け」「日本国は、2に掲げる日程に従い、沖繩の局地防衛の任務、すなわち、陸上防衛、防空、海上哨戒及び防衛庁がその任に当たる捜索・救難を引き受ける。」つまり、局地防衛というものはこういう内容のものであるということをここにうたってあるわけであります。
  192. 門司亮

    ○門司委員 私は、いま一応読まれておりますが、こういう取りきめをしなければならないという背景には、どこまでもアメリカの——ただ文章は、自衛隊が救難、救助だとかなんとかいうていさいのいいことを書いておりますし、局地防衛と書いておりますが、この局地防衛自体というものに対して防衛庁はどういうふうにお考えになっているかということですね。内容は、こまかいことはよろしいですよ。大体、何がどれだけあって、かにがどれだけあるということは、書いたものがありますので、これはわかっておりますが、私が聞いておりますのは、どう考えても、この久保・カーチス取りきめというものは、あくまでも、要するにアメリカの撤退に伴う補完的のものであって、先ほどから言われておりまするように日本の自主的のものではない。あなた方は、そうではない——これを実際はアメリカの補完行政だという答弁はできないでしょう。そう考えておっても、できないでしょうが、どう考えても、この文章を読んでみますと、アメリカの足らざるところを補うのだというように解釈する以外に方法がないのであって、ただそれを文章的に何か局地防衛がどうだこうだ、あるいは災害のときの救難がどうだこうだということが書いてあるようには見えますけれども、実態ではないように見えますが、一体そういうことでここはよろしいのですか。防衛庁長官はこれをどうお考えになるのです。
  193. 西村直己

    西村(直)国務大臣 しばしば申し上げますように、これは日本側計画が一つある。計画に関連した両防衛当局に必要な調整をするための、ということが前文の主体になっております。そして、具体的にはこういうような行き方でいこう。でありますから、私どもとしては、送ります、あるいは配備される自衛隊そのものの勢力からいきましても、御存じのとおり、本土におきましても、基地のあるところにも自衛隊が配備されておる、それと何ら形は変わるものではない。あくまでも本土に対して、本土である以上——しかも外国との接壌地でもあります。そういう地域に最小限の自衛隊配備、これは日本があくまでも自主的に考えていく。沖繩の、言いかえれば、撤退があるからそこを補完する、そういう趣旨は毛頭ございません。
  194. 門司亮

    ○門司委員 それでは、その次にもう一つ公用地の問題で聞いておきますが、暫定期間、五年間の強制収用をする、こういうことになっておりますが、これが長過ぎるということ、あるいは手続上の問題でいろいろ議論がございます。これは、なるほど、議論をすれば、私は、政府のやり方は非常に無法であるということが言えようかと思います。それはなぜかというと、この土地自体をアメリカが使用しているところに非常に無理があったということは、これはよく御存じなんですね。たとえば、はっきり言えば、一九五三年に問題が発生をいたしております。五二年の講和条約前は別にいたしまして、講和後における新たな角度から土地収用が始まっておる。これは五三年でありますが、それから五四年、五五年ころの土地取り上げというのは、よく新聞や雑誌に書いてありますように、銃剣とあるいは戦車によってということばを使っておりますけれども、ここで米軍に収用された土地一体どのくらいあったのか、あるいはこれによって立ちのきその他を命じられて全く職業を失ったものがどのくらいあるか、これの発表をひとつこの際しておいていただきたいと思います。
  195. 島田豊

    島田(豊)政府委員 ことしの一月一日現在で、軍用地の面積、約二億平方メートルございますが、契約件数が約五万四千件、筆数で約十三万三千筆、そのうちに、契約によりますものが筆数で九四%、したがいまして六%が収用、面積で九七%が契約でございまして、三%が収用、件数で九〇%が契約、一〇%が収用、こういう状況でございます。
  196. 門司亮

    ○門司委員 いまのは計数上の答弁だと思いますが、実態は大体政府の皆さんのほうが私どもよりよく知っているかもしれない。たとえば五三年に、あるいは五五年の三月だと思いますが、この時期に行なわれた伊江島の飛行場あるいは宜野湾市の伊佐浜の土地取り上げの状況等は、大臣も私はよく御存じだと思うが、一定の期間を設けて、はっきり言えば三十日でありまするが、三十日の期間を設けて立ちのき通告をして、立ちのかない者については、戦車を持ってきて、あるいは家屋には火をつけて家を焼いてしまう、そのあとブルドーザーでならしてしまう、こういう状態で、中に住んでおる人はいやおうなしに家財道具と一緒に外に出されて、そして仮収容所の大山小学校に収容された事実がございましょう。こういう形で取り上げられた土地であります。あるいは調印したといっても、そういう形の中で取り上げられておるのである。もしそれがうそだというなら、私のところに写真がたくさんございますので、はっきりした証拠を持ってきてもよろしい。ここで土地を取り上げられた住民で他に移転いたしております者は、私のほうから申し上げれば、一万二千人であります。自分の耕作地を全く失って他に移転しなければならない一万二千人の人間はどこに行ったのか。一部は八重山の石垣に行ってパインの栽培に従事したでございましょう。これをいわゆる開拓ソンといっているか開拓ムラといっているか、そういう事実がある。その他の部分は、いずれも本島で生活ができないから南米のほうに移住したということも、これもまた事実でございましょう。したがって、沖繩の軍の土地取り上げというものについては、そうした血のにじむというか、全く人道にはずれた処置の中から土地の収用が行なわれているのであります。この事実は沖繩の諸君はいまだに忘れることはできないでございましょう。本土に返ることによって、やれやれ自分土地が何とか考えられるかという時点にあたって、また五カ年間もその苦しみの継続であって、はっきり言うならば、アメリカ軍は銃剣と戦車によって土地を取り上げたが、日本政府は、そうして取り上げられた土地に対して、地代を六倍あるいは七倍にして、お礼でこれをまかなおうとするのか。こうなってまいりますると、沖繩の心情から申し上げると、やはりそうやすやすとこの土地を手放すわけにはいかないのではないか。同時に、本土における土地収用法と似ても似つかないこの軍用地の大問題に対する法律、しかも条文はきわめて短い。何らの、この土地所有者の抗議であるとか、あるいは土地所有者の意思表示をすることは与えないでこれを収用しようとする行き方、私はこれは法律論を離れて、政治論として、こういう問題が一体許されるかどうかということだ。もう少し沖繩実態——先ほど私は佐藤総理に第二の琉球処分ではないかと聞きましたが、そうじゃないと言うけれども、こうした沖繩の諸君の実態を踏まえて私どもはこの公用地の問題を見てまいりますと、明らかにこの問題の五カ年間というのはこれはべらぼうな処置である。ある意味においては、米軍の永久の基地の存続を許すようなことになりはしないかということである。しかもそれは住民の何らの意思表示のないものである。私はこういうことを考えてまいりますと、今度の五カ年間のこの長期にわたる軍用地の暫定使用というものは、明らかに憲法に規定した財産権の侵害であるということを申し上げてもちっとも差しつかえないのではないか。いわゆる不本意に取り上げられた土地をそのまま続けようというのであるから。この点に対してもし法制局長官に何か御答弁があるなら、ひとつしておいていただきたいと思います。
  197. 高辻正巳

    高辻政府委員 私有財産の保障というのは、憲法が最も基本的に考えていることであることは間違いないわけでありますが、二十九条三項にありますように、公共のために用いる道も開く、これはいわゆる公用収用ないし公用使用でありますから、本人の自発的意思のいかんにかかわらず、公用のために用いるという場合であるわけであります。その場合には、一般の公共のために用いるということでありますから、一般の利益のために一部特定の者が犠牲を受けるというので、そのためには補償を支払わなければならぬということになっておるわけであります。御指摘の問題は、おそらく、そういうようなことはあり得るであろう、あり得るであろうが、それはそれ相当の手続があるべきではないかということではないかと拝察をしたしますが、この場合は、ともかくも防衛庁長官からお話しのように、従前から公用、公共用に供されているために、それを中断させることがむしろそれに反する状況が出てきはしないか、それを中断させないように保持するために、五年が長いという御議論はあるかと思いますが、これは法律をごらんになればわかりますように、五年の範囲内で政令で具体的には定めることになっておりますので、その政令で定める期間——必ずしも五年ではございませんが、その期間だけ暫定的に使用させていただこうというのが今度の法律案であります。それについて憲法上の論議、これは論点としては確かにそういう論点があると思いますが、この点についての憲法上の論議は、もう何べんもお話をしておりますので、あらためては申し上げません。
  198. 門司亮

    ○門司委員 次に、私は、この問題に関連をして、基地の問題について少し聞いておきたいと思います。  御答弁はどなたからでもよろしゅうございますが、聞いておきたいと思うことは、沖繩の基地の区分けとでもいいますか、基地の中には、国有地がどれだけあって、県有地がどれだけあって、民有地がどれだけあるかという、こういうことが明確にわかるものがございますか。
  199. 島田豊

    島田(豊)政府委員 今回の返還協定の了解覚書で米側に提供することとなっております八十八施設、これの総面積、提供予定の面積が二億九千四百五十五万九千九百平方メートル、そのうちに、民・公有地が一億九千九百六十二万六千百平方メートル、県有地が四百十五万二千二百平方メートル、国有地が九千七十八万一千六百平方メートルということでございまして、大体三分の二が民・公有地ということになっております。
  200. 門司亮

    ○門司委員 その民・公有地の各町村別の区分けがわかりますか。
  201. 島田豊

    島田(豊)政府委員 各施設別になっておりまして、町村別のものはいま手元にございませんので、後ほど御提出いたします。
  202. 門司亮

    ○門司委員 町村別のものがないということになると、それは問題ですよ。後ほどと言われておりますが、こういう法案を審議するにあたっては、これは非常に大事な一つの要素であります。御承知のように、日本の本土法律では、基地交付金という制度があるでしょう。この基地交付金は何によってやっておりますか。各市町村のそうした地域に対する固定資産税相当額というような形においてこれは配分しておる。したがって、各町村の山林がどれだけあって、畑がどれだけあって、たんぼがどれだけあって、そうしてこれの所有者はどうなっておるかということが明確にならなければ、この基地交付金の交付ができないでしょう。国内法の施行がここにできないでしょう。これは私は明確に出してもらいたいと思うのです。それがわからぬ限りは、全然日本の国内法の適用はできないのであって、もし国内法を適用しないとすれば、これはたいへんなことです。
  203. 島田豊

    島田(豊)政府委員 ただいま手元にございませんので、さっそく調べますが、基地交付金の対象になりますのは、御承知のとおりに、国有財産でございます。
  204. 門司亮

    ○門司委員 国有財産については、国有財産所在市町村交付金というのが別にあります。これは国有財産所在市町村に対する交付金というのが本土法律にあるでしょう。基地の交付金というのは、それと別の問題である。基地に対する交付金でなければならぬ。したがって、その算定の基礎となるものがないということになると、これはどうにもならぬでしょう。これはわからなければ、ここでいくら責めたってしようがないですがね。とにかく一応調べて出してくださいよ。そうしなければ仕事にならない。こんな法律は通すわけにいきはしない。  それから、その次にもう一つ聞いておきたいと思いますことは、これと関連いたしまして最も密接な関係を持っております米ドル資産がどれだけのあるかということである。これの調査ができておるなら、ひとつ明確に知らしていただきたい。いわゆる沖繩におけるアメリカ軍の施設した施設の費用であります。同時に、施設の実態であります。これの明細書が出てこない限りは、調整金の交付ができないでしょう。本土において、これらの施設に対する、調整金というか、お金を出しておるでしょう。沖繩が返ってまいりますならば、当然米ドル資産に対する調査が十分にできていなければならぬはずである。
  205. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 基地交付金並びに調整交付金——基地交付金は、算定いたしまして現在三億、調整交付金が三十一億、この額を予算要求として要求をいたしております。その算定基礎になりました分は、防衛施設庁から自治省がいただきまして概算いたしました。それはいま門司委員御指摘のように各町村に配るのでございますから、各町村に配るところの面積が明らかであり、また、米ドル資産が明らかでなければ配付することはできないのは、御指摘のとおりでございます。概算交付金は全体でございますので、いまのところ、私たちは、防衛施設庁から全体の額としていただいております。これを配分するまでに各市町村にわたって精細にその資料を防衛施設庁と連絡して得た上配分するという姿で、いま作業を進めております。
  206. 門司亮

    ○門司委員 自治省は別に実質上責任があるわけではありませんから、自治大臣は、私はいまの御答弁でよろしいと思います。しかし、これらの問題の算定の基礎になります——いま三億と三十一億という数字が出ておりますけれども、これを概算された基礎がどこかになければならないですね。一体アメリカの沖繩における米ドル資産と考えられるものがどのくらいありますか。
  207. 島田豊

    島田(豊)政府委員 約六億ドルでございます。
  208. 門司亮

    ○門司委員 その六億ドルというのは、いつの調べですか。私の手元にあるのとちょっと違うようですけれども………。
  209. 島田豊

    島田(豊)政府委員 ちょっと調査の時期がはっきりいたしませんが、比較的最近の調べでございます。
  210. 門司亮

    ○門司委員 それなら、私のところに資料のあるのを一応読んでみますから、これが違っておるかどうかということをひとり訂正してもらってもいいと思いますが、投下建設資金というのは約十億ドルと書いてあります。これは一九六六年二月十八日のサブロッキー・アメリカ軍事委員会委員長の証言であります。その次にありますのが、ちょっと古いのでありますが、一九六四年の三月の十七日のキャラウェーの証言、いわゆるこれは高等弁務官であります。キャラウェーの証言によりますと、建設施設面で十億五千万ドル。ほとんど数字は同じようであります。その他物品、役務等を含めて十一億八千四百万ドルという証言がアメリカの国会でされておる。このぐらいのことは、あなたのほうで実際わかっておるのでしょう。こういうことがわからないで一体予算要求を概算でするということは——これは自治省はあなたのほうから受けたもので概算要求するのでしょうけれど、あなたのほうには算定の基礎がなければならない。何も隠すものでもなければ何でもないのであって、いわゆるアメリカの投資した基地の中にある建物がどのくらいあるのか。どういう建物があって、その価格は幾らなのか、私は、いま申し上げましたキャラウェーの十億五千万ドルあるいはサブロッキーの言った十億ドルというようなものを必ずしも根底に置いてはおりません。これはとり方でずいぶん違いますから、年々これを償却していって安く見積もっていくこともできますし、いろいろございますが、しかし、実態としては、この問題が明確になって、どの基地にどういう建物があって、それの価格は幾らだということが明細にわからぬ限りは、本土で交付いたしておりまする調整金の交付はできないでしょう。概算要求だけしたところで、自治省困ってしまいはしませんか。これはもしいまなければ、あとでいいから、明細に提示をしてもらいたいと思います。
  211. 島田豊

    島田(豊)政府委員 アメリカの資料に基づきまして自治省のほうに御連絡いたしております。
  212. 門司亮

    ○門司委員 それは、資料はそうなんです。私もその点は別にむずかしいことを言うわけじゃありません。あなた方が立ち入り検査ができるわけじゃありませんので、米軍の資料であるだろうと実は思います。思いますが、それにしても、その基礎というものの大体の概略は、どこの基地がどれだけのものを持っているというぐらいのことは、あなた方アメリカ側から受けているはずでしょう。アメリカ側から受けているものを出したらどうなんです。そうしなければ、予算要求、概算要求したって、基礎のないものの予算を認めるわけには——これは予算委員会困るでしょう。だから、この点はもう少しひとつはっきりして、なければないと、そして、これをどういたしますということだけひとつ答弁してもらえればけっこうだと思います。
  213. 西村直己

    西村(直)国務大臣 ちょっと御説明いたしておきます。  ただいま門司君からもお話がありましたように、御存じのとおり、現在アメリカの施政権下でありますから、直接私のほうが立ち入って検査するわけにはいかない。したがって、アメリカの資料というものは当然あるでありましょう。しかし、これがまた計算の基礎が違う場合もあります。しかし、いずれにいたしましても、これは外交ルートを通してできるだけ私のほうでは整備をし、そして予算の執行あるいは概算の基礎に間に合うようには努力したい。こういう過程があるということだけ——防衛施設庁が直接なまの材料というものはなかなか入手することは困難でありますが、アメリカ側には当然あるでありましょう、それを当然われわれのほうとしてはまた整理していかなければならぬ、こういうような状況下にやっていくということだけはひとつ御理解を願いたいと思います。
  214. 島田豊

    島田(豊)政府委員 米側の連絡によりまして約六億ドル、これは建物、工作物でございますが、これにつきまして、先般の米国におきますところの国会におけるランバー上高等弁務官の証言でも六億ドルということになっておりまして、その中身については申し上げられないのであります。
  215. 門司亮

    ○門司委員 私のところにある一九六六年のやつは、いまから五年ばかり前でありまするから、必ずしもこの数字が私は正しいとは言いませんが、内容は言われないと言いますが、町村別にはわかるでしょうな。町村別にわからなければ、町村別に配付ができないんですよ、このお金は。当該市町村に配付するお金ですから、アメリカにやるお金とは違うのですからね、この調整金というのは。だから、どこの村には施設が幾らあるということが明細にならなければ仕事にならぬのです。はっきり言いなさいよ。別に隠しておく必要も何もありはしない、そんなものは。
  216. 島田豊

    島田(豊)政府委員 御指摘のように、各市町村別に算定いたさなければなりませんが、現在米国の施政権下にありますので、個々市町村別にその建物なり工作物について立ち入り調査するというわけにはまいりませんので、これは復帰後におきまして十分調査いたしましてその資料を整えたい、かように考えております。
  217. 門司亮

    ○門司委員 向こうさんの施政権下であることはわかっております。私は何も無理なことを言っているわけじゃありませんで、予算の要求をされるにいたしましても、何をするにしても、やはり基礎の数字というものがなければなりませんので、アメリカ側からいま六億ドルという数字が出ておるというならば、その六億ドルの内訳というようなものが各町村別にあるはずなんです。なければならぬはずなんです。これはたいしてむずかしい問題じゃないんですよ。返ってきてからこちらがと言いますけれども、返ってきてから立ち入り検査ができますか。施政権が返還されたからといりて、あなた方は米軍の基地にどんどん入っていって立ち入り検査はなかなか困難でしょう。だから、アメリカ側から出ているリストの基礎を示してもらいたい。そうしなければ市町村に対する調整金の配分ができないのでありまして、政府がお困りになるのですよ。私どもが困るのでなくて、政府がお困りになるのである。だから、政府のほうにはその基礎があるはずである。
  218. 島田豊

    島田(豊)政府委員 各市町村別にこれを洗いますことはちょっと時間を要しますので、十分基地交付金の支給に対しまして支障のないように鋭意調査を進めたい、かように考えております。
  219. 門司亮

    ○門司委員 支障があってはたいへんで、支障のないように調査されるのは政府としては当然なんです。だけれども、私どもがこの暫定法案を審議いたしますには、少なくとも公用地に対しますそうした内容というものが全部わかっていないと、こういう強制的に取り上げようとする土地に対する各市町村、自治体に対する手当てというものを十分検討するわけにいかぬのじゃないですか。おかしな話ですよ。と同時に、そのくらいのことは政府でわかっているはずなんです。私は、はっきり言えば、三月か四月ぐらい前に各省のセクションにずっと当たってみたのだけれども、どこの省に聞いてもわからぬのですね。そのことはわからぬ、わからぬとおっしゃる。自治省が所管だからと自治省に聞けば、私のほうでは権限を持っておりません、施設庁だと言う。施設庁に聞けば、それはわからぬ、アメリカさんと協定を結んだ外務省に聞いてくれと言うから、外務省の例のアメリカ局長に聞いたら、とんでもないことだ、私のほうではそこまでいたしませんということで、それから総理府に聞いてみたら、総理府のほうも、いや、そのことは私のほうではとても担当じゃございませんからということで、これはいま私が質問するわけじゃないんですよ。三月も四月も前に私は——この問題は必ず出てくるので、一応われわれが知っておく必要がある。審議する一つの過程として知っておく必要がある。何も私は、きょうここで質問することのために隠しておったわけじゃないのです。三月も四月も前から、いま申し上げたように各省ずっと一わたり当たってみたのだが、どこでもわからぬと言うから、きょう、しかたがないから、総理大臣の前で聞いたほうがよかろうと思って、総理大臣にもこういう事態を聞いておいてもらいたいと思って質問をするわけでありますけれども、そうすると、大体いつごろまでに出せますか。法案が通ってしまって、審議の必要がなくなったあとでこれをだされてもしようがないですからね。
  220. 西村直己

    西村(直)国務大臣 外務省並びにわれわれの施設庁がございますから、両方協力し合いましてできるだけ早く資料は整えたいと思います。ただ、単価の計算等は、いろいろ基礎が違う場合があることだけはひとつ御了承願いたいと思います。
  221. 門司亮

    ○門司委員 そうすると、大体資料を出すというお話ですけれども、この法案の審議中に出せますか。そういたしませんと、何か質問したことがちょっともわからないで、しり切れトンボになってこの法案を通すわけには私はいかぬと思うのだが……。
  222. 島田豊

    島田(豊)政府委員 現在、軍別、施設別と申しますか、基地別と申しますか、大体把握できておりますけれども、そのそれぞれの、たとえば建物あるいは工作物がどちらの市町村の中に入っているかということについての仕分けが、これがなかなか時間がかかるということでございますので、これから作業を進めまして、これがいつ御提出できるか、ちょっといまのところはっきりしたことは申し上げられません。
  223. 門司亮

    ○門司委員 そうした答弁ではちょっと困ると思うのです。私どもも、何も施設庁の立場、防衛庁の立場を理解しないわけではございません。これを詳細に、どういう建物があって、どういうかっこうをしているというところまで知ろうとは考えておりません。概括的に、先ほどから申し上げておりますように、どの町村にこういう建物があって、これの価格は幾らだということがわかればいいのであって、価格の点については、五年前に十億の建物であっても、毎年それが何%ずつか減っていけば六億にもなるでしょうし、あるいは三億にもなるでしょう。だから、価格の点について、私がいま読みましたアメリカ側の資料によるものが必ずしも私は正しいとは考えちゃいない。しかし、実態は明らかにしておきませんと、私が困るよりも、政府のほうが予算を組まれて配分されるのにお困りになりはしないかということであって、しかし、こういうものを私ども知らないで法案を通してしまうということも、私どもの調査のたてまえからいけばおかしなものだということで実はお聞きをしておるわけでありまして、別に私、悪意で聞いているわけではありません。その辺はひとつ御理解願って、そうしてすみやかに出してもらいたい。
  224. 島田豊

    島田(豊)政府委員 できるだけ作業を進めまして、早くそういう集計をいたしたいと思っております。
  225. 門司亮

    ○門司委員 次に聞いておきたいと思いますことは、この委員会にかけられておりますいわゆる振興計画に対する法案であります。これは建設省その他にも関係があろうかと思いますが、どうもこの法案を見てみますと、非常に規模が大きくて、そして一応は沖繩県で策定して、そうして意見をいれるようになっておりますが、これの委員会の構成その他を見てみますと、必ずしも沖繩の意見が全面的に取り入れられるものじゃなくて、逆に政府の側の人が非常に多いということです。委員会の構成を見ても、半分以上は政府の役人ですからね。現地の人は六人ぐらいしか入っていないでしょう。役人の半分ぐらいでしょう。委員の総数を一応見てごらんなさい。こういうことも、先ほどから言っておりますように、第二の琉球処分といわれる一つの大きな原因だと思う。沖繩の人が参画しない、数が少なくて、そうして国の役人が半分以上いるなどという委員会をこしらえて、そうしてそこで沖繩県で策定したものを審議して、そうしてこれを実行しようというようなことであって、したがって、沖繩県の意見というものが非常に少なくて、やはり役人の一方的な審議会というそしりを受けても私はしようのない仕組みになっておると思うのですが、この辺に対してどうお考えになりますか。
  226. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは振興開発特別措置法五十三条、審議会の組織に関する御質問でありますが、関係行政機関の職員十三人ということで、委員定数二十五人の過半数になることは、これはわかります。しかしながら、何ぶんにも関係省庁が十三だけはどうしても関係をしなければならないという内容を持っておりますために、関係行政機関が十三名になっておるわけでありますが、しかし、県知事、県議会議長あるいは市町村長代表市町村会議代表、これを二人ずつ出しておりますし、さらに学識経験のある者六人以内、これについても、最大限沖繩の立場を代表し、理解し、関係のある人というものを優先的に選定する心がまえをいたしておりますので、役人の十三人というのは、何も本土政府の力で過半数をもって押しつけようというような恣意的なものではありませんで、おおむねの委員会の構成が二十五人ぐらいであるということから、どうしても必要な数の十三名を関係行政機関のほうに持っていったということで、他意はございませんし、そこで、沖繩県の代表者と見られる委員、並びに学識経験者の中で明らかに沖繩県のために選ばれたと思われる人々の意見というものを、関係各省が一致して、過半数だからといって押えつけるというような委員会の運営は、当然なされるはずはないわけでありますから、そこらの点については、私ども十分注意をして、御懸念のような点があらわれてこないように配慮をしてまいりたいと考えます。
  227. 門司亮

    ○門司委員 当該自治体の代表は当然だと思いますが、問題は、やはりこの学識経験者という第三者の数が非常に少ないということであります。ところが、この学識経験者という人の中には、これは悪口言うわけじゃありませんが、必ずしも私は意見は一致しないと思います。そこで、沖繩の意見を代表するものはただ三団体、県と市と町村ということになりますと、六人だけしか出られないということです。こういうことで、学者のほうをふやすか、あるいは地域代表をふやすかという、どちらをふやしても、私はそう差しつかえがないと思いますけれども、とにかく二十五人の中で、十三人が政府の役人であって、六人が学識経験者というような形になっております。しかもこれは、任命権はどこにあるかというと、あなたのほうにあるわけでありまして、選定権は向こうにあるかということまでは書いてないのでありまして、私どもが心配いたしますのは、役人が二十五人の中に十三人もおって、そうして政府の任命した学者だということになりますと、これは沖繩の人はあまり信用しませんよ。   〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕 私は、できるなら、ここではひとつ学識経験者等に対しては沖繩県知事が任命するというか、推薦するという形をとってもらう必要がありはしないかということである。そうしてこそ初めて、私は、沖繩の振興計画が沖繩を中心にした一つのポイントとして行なわれる可能性がある、こういう気がしますが、そういうお考えにはなられませんか。
  228. 山中貞則

    ○山中国務大臣 現在の琉球政府行政主席が、復帰の時点においては沖繩県知事とみなされるということになるわけでありますから、したがって、現在の琉球政府行政主席が、たとえば復帰対策要綱等の審査をされる場合に、沖繩の県民会議というものを立法院の公式なもの以外に設置されました。その内容等を見ますと、非常に公平に、客観的に人選がなされているようでありますので、したがって、当然思想的な立場云々というようなことは越えて、沖繩のためにあるべき人の人選ということになれば、そこに意見の一致も見得ると思いますので、ただいまの御発言は十分念頭に置き、かつまた、一方的な押しつけと受け取られないような人選のための沖繩県知事の意向というものをくんで任命をしたいと考えます。
  229. 門司亮

    ○門司委員 御答弁としてはそういうことだと思いますが、しかし、やはりこの際、沖繩のことを考えるなら、私は、さっき申し上げましたような仕組みのほうが、どう考えてもよろしいのじゃないかという気がいたします。ことに沖繩は、御承知のように、北海道開発とは違いまして、地域は非常に狭いのでありまして、大体アウトラインはわかっているはずであります。だから、ことさらに大きな仕組みというよりも、むしろ、高度な仕組みよりも、現地の情勢を取り入れていった開発のほうが私は効果的だと思うのです。北海道のように非常に広いところであれば、かなり高いところから見なければ全部見えません。しかし、沖繩はそう大きなところではありませんから、そう高いところに上がらなくても大体見えるのじゃないかと思う。そうすれば、やはり地元の意向というものをこの中に十分織り入れていって、そうして沖繩を処分する委員会であるというような誤解を受けないようにしたほうが私はよろしいと思う。同時に、そのほうが実際的だ、こういうことが考えられますので、いまの大臣の答弁でございますが、さらに再考をわずらわしておきたいと思うのでございます。  それからもう一つの問題は、これに関連した問題であって、ここで行なわれておりますいろいろな問題等について、どの辺まで一体沖繩県の問題を処理することができるかということでございますが、この開発庁というのは、単に経済開発あるいはその他をやっていこうとする、ちょうど沖繩振興開発金融公庫とうらはらのものになろうかと私は思います。したがって、この両者の関係をどこで結んでいくつもりかということが、次に私は非常に大きな問題だと思います。振興開発のほうでこういう仕事をしようといっても、金融公庫のほうがそのままそれに従ってくれればいいのですが、なかなかそういかない面があるということになると、策定と実施に非常に困難が出てくるが、この辺の調整はどういうふうに行なわれるつもりですか。
  230. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これはまさにおっしゃるとおり、振興開発法と振興開発金融公庫というものは、たての両面であります。返らぬ繰り言でありますが、できればここで一緒にしてこの法律は議論をしてほしかったと思いますが、それは大蔵委員会であらためてまた一緒になるような形の審議をしてもらうことにいたしまして、少なくともこれらが今後もし御可決を願ったと仮定するならば、それの運用にあたって、ほことたて、表と裏の両面の関係にありますから、これの運用は、完全にその趣旨を体した融資のあり方であり、選定のしかたであり、あるいはまた融資の条件設定でなければなりません。そこで、この開発金融公庫のほうにも協議会というようなものを設けまして、実際上は振興開発法の審議会のメンバーというようなものをおそらくお願いすることになると思いますが、また、運用のいかんによっては、この振興開発の審議会の方々の中に、そういう金融に関するようなメンバーの人たちに相談をかけるようなことも将来できやしないだろうかというようなことも念頭には置いておりますが、要するに、運営としては、これはおっしゃるとおり両方がぴったりと合っていなければ、計画は単なる計画に終わる、あるいはまた、金融方針のみが立っていても、計画がそれにそぐわなければ、ちぐはぐな融資設定になり、貸し出し条件になるということになるわけでありますから、そこら辺のところは御注意を十分踏まえて運用してまいりたいと思います。
  231. 門司亮

    ○門司委員 したがって、私はもう一つ両者の問題で聞いておきたいと思いますことは、さきに沖繩県の人をもう少し審議会のほうに入れたらどうかということを申し上げましたが、この金融公庫のほうにも、やはりそういう審議機関というものを入れて、そして沖繩における実情に即した金融の処置ができるようにしていくことが必要ではないかと思いますが、その辺はどうですか。
  232. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは金融機関のほうに正式な審議会を設けて、そこで金融をやるとなりますと、なかなか利害関係その他もあってたいへん微妙な問題等も起こりがちでありますから、むしろ協議会というような形のもので、運営協議会等で御相談をしていくというほうがよろしいのではないかと思いますが、特別にこだわって絶対認めぬというような意味で申し上げでいるのではなくして、むしろ運用の実態からそういうほうがかえってよろしいのではないか。ただし、振興開発法と不即不離の問題であるということは、当然有機的に結びつけた運用というものでなされなければならぬことは、前に申し上げたとおりでございます。
  233. 門司亮

    ○門司委員 次に、沖繩復帰特別措置法の内容について少しお聞きをしておきたいと思いますが、この内容の中にはいろいろ問題があるわけでございますが、一つの問題として私どもが取り上げなければならない問題は、御承知のように、沖繩のいろいろな施設というものをどう本土と同じような形にしていくかということについては、琉球政府のほうから出ております建議書といいますか、あの中にかなりこまかく書いてあるようでありますが、これらの問題の中で非常に重要だと思いますことを少し聞いておきたいと思います。  先ほど、この中にある百三十一条から二条にわたっておるVOAの問題は一応聞きましたが、その他の法案の問題についてはあまり議論がされていないのであります。私がここでその他の問題について多少お聞きをしておきたいと思いますことの一つは、御承知のように、沖繩は非常にいろいろな角度で施設がおくれておるということであって、その中の一つとして取り上げられなければなりませんのは、例の厚生省関係の社会保険と医療保険が非常におくれておるということであります。厚生大臣、これについてどういうお考えをお持ちになっておるか、一応聞いておきたいと思います。
  234. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 沖繩の社会保険は、できるならば本土並みを即時に実施をいたしたい、かように思っていろいろ事務当局も事前に指導をいたしておったわけでございますが、御承知のように、沖繩には内地にあるような国民健康保険がございませんので、したがって、国民健康保険を事前に沖繩で制度をつくって、そうして復帰のときには即時実施のできるようにというのでいろいろと現地に連絡をいたしておったわけでございます。ところが、国民保険のつくり方について琉球政府とそれから議会との間に意見が合わないで、ただいま戸惑っているという形でございますが、おそらく復帰までの間にはその方針がきまってくるのであろう、かように思っております。したがって、沖繩は医療関係は特殊な事情がございますので、沖繩の最もいいと考えた制度を当分の間実施してまいりたい。医療保険についてはさように考えております。
  235. 門司亮

    ○門司委員 医療保険に関係をして、沖繩では御承知のようにお医者さんが非常に少ないのでありまして、ことに離島などは実は弱っていると思いますが、したがって、本土に返りますと同時に、琉球大学が、これが国大になるかどうか私よくわかりませんけれども、いずれにしても、現在の琉球大学は国が引き取らないわけにはまいらぬかと思いますが、そうなってまいりますと、ここにひとつ沖繩の医療関係として医科を併設するというようなことは考えられませんか。これは沖繩の諸君のかなり強い要望でありますが……。
  236. 山中貞則

    ○山中国務大臣 沖繩に琉球大学が現在ございまして、これを国立に復帰後移管することは、すでに閣議決定をいたし、法の手当てもいたしております。  なお、来年度予算において、琉球大学の復帰後の本土国立大学として保健学部のほかに医学部を設置するための正式な予算上の調査費というものを要求をいたしておるわけであります。  付属病院等は、すでに、変則でありますけれども、本土にはないことでありますが、現在あります保健学部の付属病院を琉球大学付属病院として引き続きいけるように措置がとってございますので、そのもとのよりどころである医学部というものがどうしても焦眉の急であります。したがって、調査費をもとにしていろいろ衆知を集めて、教官の確保その他ありますので、医学部の琉球大学に対する設置を早急に実現したいというつもりでおるわけでございます。
  237. 門司亮

    ○門司委員 それから、もう一つ沖繩の医療関係で聞いておきたいと思いますことは、御承知のように、沖繩にはまだいろいろな、本土ではかなり消滅されておるとする肺結核あるいはハンセン氏病というようなものがあるわけでありまして、特定のこれらの病人に対する何か施設をお考えですか。
  238. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 沖繩には、御承知のように、ハンセン氏病の病院が二つございます。この二つを国立にいたしましてそうして整備をいたしてまいりたい。ただ、病院の施設だけでなしに、現在病院に収容されていない患者も相当多いのであります。自宅療養の患者が相当多うございます。したがいまして、保健所を中心といたしまして、病院に収容するのみならず、ハンセン氏病の今後の発生の予防、それから現在の疾病にかかっておられる人の治療に欠くることのないようにあらゆる努力をいたしたい、かように考えております。  また、結核も本土に比べて相当多いのでございます。したがいまして、いま琉球政府の持っておりまする結核の関係の病院も、これを国立の療養所にいたしまして整備をいたしてまいりたい、かように思います。
  239. 門司亮

    ○門司委員 その次に聞いておきたいと思いますことは、これは非常にこまかいことのようでありますが、沖繩ではかなり切実な問題として考えられておりますので、この振興開発その他の中で農村関係について何か——農林省、だれかおいでになっていますか。——お聞きをしておきたいと思いますことは、御承知のように、伝染病と同じように、あそこには作物に対する伝染病もあるわけでありまして、たとえば先島のほうにある例のウリミバエですか、ウリミバエの問題は非常に大きな問題でありまして、これは沖繩がほんとうに本土と同じような形で農作物が販売されるということになれば、かなり地理的には、あるいは気候的には優位な地位にあります。しかし、ここにはウリミバエがおって、そして島と島との間でも、交際、やりとりができない。石垣島でできたウリ類は本島には持ってこられない、宮古にできたものは石垣には持っていけないというような非常に窮屈な状態であります。沖繩開発の一つの大きな農村計画というものの中には、これはぜひ取り入れていかなければならぬと思う。そして沖繩はやはり地理的あるいは気候的に持っておる力というものを十分発揮させる必要がある。それにはどうしてもウリミバエの消滅が先決問題だと考えておりますが、これに対して何か予算要求なり、あるいは特別の機構でこれに対処するということが行なわれておりますか。
  240. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これはすでに沖繩本島においては、いろいろな試験、調査の結果、ウリミバエがいないということがわかりまして、沖繩本島で栽培されるメロン等の本土への輸出というものは、これは植物防疫を必要としないということで、非常にこれから有望であるということになるわけでありますが、さらに、ミカンコミバエ等もございますし、これらを駆除いたしますと、やはりタンカン、ポンカンあるいはその他のかんきつ等の亜熱帯性の気候に幸いされた作物というものがいろいろと計画はできるわけでありますので、そのような植防上の見地から輸出がむずかしい——復帰後は移出になりますけれども、それらの問題は早急に処理する必要がありますので、現在奄美大島の群島で島ごとに行なっておりますような、一つの島単位でもって撲滅していく駆虫法というものを沖繩でも適用いたしまして、来年度予算にもそれらの措置を要求いたしておりますが、なお、ダニ等も沖繩の畜産振興に非常に大きな妨げになっておりますので、これはことしの予算から、すでに八重山等におけるダニの駆除等に相当甚大な力を発揮することが予算実行上わかっておりますので、さらに引き続き植物、動物の防疫等に努力を傾注し、そして、今後復帰後は沖繩の植物検疫の機能というものを十分に生かして、要するに、沖繩の置かれた亜熱帯的な気候風土から、本土ではできないような農作物の収益性の高いものを営んでいけるような条件をつくっていきたい、そういう障害を排除していきたいと考えております。
  241. 門司亮

    ○門司委員 これは労働省関係にお聞きをしておきたいと思いますが、沖繩が返還されますと、御承知のように、あそこは第一次産業と第三次産業しかほとんどないといっていいくらいであって、第二次産業というのは非常に少ないのであります。したがって、労働力を吸収する機関というのは非常に少ないと思いますが、こういうものに対して何か特別のお考えがございますか。労働省は、こういう失業者が出た場合の救済をどう考えているかということです。
  242. 山中貞則

    ○山中国務大臣 労働大臣がおりませんので、私からお答えいたしますが、一つは、沖繩で制度の変更あるいはまた米軍の撤退、あるいはまた沖繩のその他復帰に伴う環境の変化等によって失業、転業等を余儀なくされる方々、これらの方々に対する措置のしかたとして、新しい雇用先というものをどうしても沖繩現地に、しかもきわめて効率の高いものとしてそれを誘致していかなければならない。いわゆる島外に散らすとなかなか帰っていくのが困難な環境にありますから、したがって、今回の法案の中にも、沖繩において、本土の企業、そういうものが新しく雇用需要に貢献をする。   〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕 たとえば、いま予定しておりますアルミとか、あるいはまた石油精製関係、あるいは造船等の問題も、本土大手の予定は、一応、川崎重工あたりの取り消しがございましたけれども、現地の糸満造船所等、一、二本土の資本と提携をしながら適正な規模の造船所等の建設計画がございますので、こういうものに振興開発金融公庫の融資の対象としてそれを設置させることによって、雇用需要の新しい市場開拓につとめてまいりたいと思いますし、また、来年度は、一応調査費でありますが、自由貿易地域というようなものも考えておりますから、こういうようなものに対しまして、新しく租税特別措置法の自由貿易地域投資損失準備金というようなものも設定をして、そういうところに企業が進出しやすいように、そして沖繩において付加価値、労賃等が現地に落ちるような配慮をしてまいりますと同時に、沖繩の既存企業についても、税制あるいはまた近代化事業、あるいは構造改善等につき、本土ですでに計画は終わって指定がないものでも、新しく起こして五カ年間の計画を認めていこうというようなことを、大なり小なり普遍的に考えているわけでありますが、一方、やむを得ず失業しあるいはまた転業をするというような方々については、これは今回の法律の中で一章起こしておりますけれども、それらの沖繩の特殊事情に伴って離職しあるいは失職した者等についての手帳を発給することによって、本土の駐留軍離職者あるいは炭鉱離職者等の臨時措置法、こういうもの等で措置されております。場合によっては、中高年齢層等の対象等も一部入ってまいりますが、本土法律の中の最も失職、再就職のためのめんどうを見る法律のすべての手段が沖繩に行使できるように、手帳を交付しますと同時に、その交付される手帳の前提としては、先ほど申しました米軍関係の基地関係者、あるいはまた、それに依存しておった業者というようなものも含めて、広範にそれを拾い上げていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  243. 門司亮

    ○門司委員 ここでもう一つ基本的なことを聞いておきたいと思いますことは、設置法と振興法との関連性でございますが、これを見てみますと、なるほどずっとたくさん書いてありますけれども、実際の面でこういうことでできるかどうかという疑問が実は出てくるわけであります。どこに出てくるかといいますと、基地が非常に多いということですね。したがって、沖繩のこの基地の様態が現状のままであるといたしますならば、沖繩には、はっきりした都市計画も立てられなければ、振興計画も立てられない。最も沖繩で優良な土地といいますか、南のほうが、大体まん中が占領されておりますので、真の沖繩の開発というものは、この基地が非常にじゃまになって立てられないのじゃないか。たとえば、縦貫道路をこしらえようとしたって、基地のまん中を貫くわけにはいかぬでしょう。鉄道を敷けなんという説もございますけれども、私は沖繩に鉄道が必要だということはあまり考えませんが、土地の少ないところであるから、せいぜいモノレールくらいは考えられるかもしれないが、そういう計画性というものが実際のいまの基地の様態では私は立たないと思うのですが、この点はどうですか。基地があっても道路計画なりあるいは振興計画はできるという確信がございますか。
  244. 山中貞則

    ○山中国務大臣 いまの基地があることによって非常に大きな障害を受ける計画としては、やはり第二次産業の展望というものの場合に非常に大きな影響がある、あるいはまた、先ほどお話のありました縦断高速自動車道等の設計の場合には直ちに影響が出てくるということでありますが、問題は、業種別に見ますと、一次産業の人々は、ことに本島の南部、北部、あるいはその他の離島はほとんどがそうでありますけれども、やはり基盤整備、あるいは今度のような干害の場合において、本土復帰後二度と沖繩に干害の起こらない施設は、やろうと思ったら可能なわけでありますから、すでに着手をいたしておるわけでありますので、これはやはり一次産業も沖繩においては絶対に放棄できませんから、キビ、パイン等の特殊な条件下に置かれている作物による高収益、そして干ばつ等の巨大被害を排除する公共投資というものを十分に行なっていかなければならぬと考えておるわけであります。したがって、第二次産業並びにまた沖繩の基盤整備、基礎条件の社会資本の投下という場合において、基地の存在というものが大きな障害を来たしておることは、私はもうたびたび答弁をいたしておるところであります。  ところで一方、沖繩の巨大なる基地が存在したことによって、結果的に沖繩の七〇%をこえる三次産業のウエートの高さというものが、現実にはその基地に依存した生活のために収益をあげる職業を営んでおられるということの証明にもなるのであろうと私は考えます。したがって、基地が撤去されることが大前提でありますが、その前提のさらに前提として、その基地があった場合にでも、それらの依存の企業の方々、場合によっては、これは酒場やホテルやそういうものも入ってくるでありましょうが、そういう人々等もやはりめんどうを見てあげたり、あるいはまた、転業等の場合には融資等のあっせんをしてあげるような配慮も、沖繩の場合においては側面的に落としてはならない考えの一つであろうと考えて、そこらも配慮をしておるつもりでございます。
  245. 門司亮

    ○門司委員 これは建設関係にちょっとお聞きをしておきたいと思いますが、沖繩における今後の開発に伴って当然道路がいろいろの形で使われようと思います。その中の一つで、私どもが心配をいたしておりますのは、御承知のように、あそこには石油、いわゆるガソリンを運んでおりますパイプラインがあるわけであります。これがいまの浦添市の中などは旧鉄道敷地をずっと通っておりまして、そして非常に民家の密集した幅の狭いところを通っているのですね。そして、これは現地へ行って聞いてみますと、非常に浅い、こういうのですね。だから、上に本土にあります大きな十トン、二十トンというような車が通れば、必ずその管は破れるだろう、こういうことで、住民は非常におそれているのですが、こういう問題に対する計画はどうなります。いまのままで、あの公用になっております道路の下を危険なガソリンが通っているというようなことは、まるである一定の区間というものに火が走っているような感じがするのでありますけれども、こういうものの調査をされたことがございますか。
  246. 西村英一

    西村(英)国務大臣 軍用道路の下に相当に輸送施設からパイプラインが通っていることは、私のほうでも図面上では調査をいたしております。これは協定によってやはり許さなければならぬものでございますが、御指摘のように、まだその深度等について詳細に全部当たっておるわけではございません。したがいまして、復帰から後におきましては、危険がないように、危険なところにつきましては道路の構造を変更するとかなんとか、安全施設を施さなければならぬ、かように考えておる次第でございます。
  247. 門司亮

    ○門司委員 いまのばく然とした御答弁で一向要領を得ませんが、これは実は沖繩の現地の諸君は非常に危険を感じておるのでありまして、いままでは、まあ強い者にはというようなことで、アメリカさんが強制的にやっておるが、それを検査する方法もなければ、これをチェックする方法もないので、そのまま過ごされておりますが、これはやはり日本政府が、本土復帰した以上は、こういう危険性というものはいち早く取り除くということで、早く調査を進めてもらいたい。ずっとわかっておるのですからね、通っておる区域というのは。私どもの手元にもかなり詳細な地図がございますが、しかし、これを政府に見せてみたところで始まらぬと思いますけれども、そういう意味で、建設関係では特にひとつそういう問題について御配慮を願っておきたいということと、これは建設関係とそれから法務省関係になろうかと思いますが、私の受け持ちが、もうあと五、六分しかございませんので、最後に一つだけ聞いておきたいと思いますことは、沖繩の地籍の調査であります。  いま沖繩では、御承知のように、地籍はわかっております。しかし、実際の地籍というものが十分に所有者との間に確認をする段階に至っておりません。全く焼き払ってしまったあと、軍が、先ほど申し上げましたような、かってにということばを使ったほうが正しいと思いますが、接収をした中でありまして、したがって、そこにおける地形というものは全く変更されておりますので、図面の上では、私の土地がどれだけございます、おまえの土地はこれだけだから、これだけの地代を払うということになっていようかと私は思いますが、実際その本人を連れて行って、おまえさんの土地はどこだと言って聞けば、地形が全く変わっておりますので、その土地はわからぬのであります。こういう実態でありますので、地籍の調査ということは、全島を通じて最も私は大事な一つの法務省の仕事だと考える。法務省においてこの地籍の整備をされる御意思があるかどうかということをこの機会に聞いておきたいと思います。
  248. 山中貞則

    ○山中国務大臣 法務省の地籍調査は、これは当然本土になりますとやらなければならない行政の一つでありますが、問題は、いま言われました沖繩のあの戦争の混乱の中で、戦火がおさまったとき、あるところは基地になり、あるところはかってにみんなが移り住んだための所有権の不明確な点、いろいろありますので、したがって、わりと沖繩全体から見ると調査は進んでいるようでありますけれども、一番肝心の中南部がほとんど進んでいない。沖繩側に言わせますと、与那原地区というものが最も困難である。したがって、与那原が可能であれば全島できますという話もしておられましたので、与那原地区を沖繩土地調査庁の職員によって、モデル的な地域として、全額国庫でもって、一応パイロット地区的なものとして、地籍調査あるいはまた所有権の分明というものをやってみたいということで考えておりますが、将来的には、やはり地籍調査も踏まえながら、すみやかに所有権の確定あるいはまたそれらの帰属を明確にする必要が大いにある。したがって、この点は、土地調査庁を中心に本土のほうで十分琉球政府の行政が展開できるように援助をしなければならぬと考えておるどころであります。
  249. 門司亮

    ○門司委員 その程度の御答弁しか私はできないと思いますが、与那原は私もよく知っております。実にややこしい土地だということを聞いておりますが、これは与那原だけじゃありませんで、要するに、基地として使用されておるところは全然わからぬのであります。それから基地の中に立ち入りも十分に行なえませんので、原形がどういうふうに変更されているかということ等についてもわからぬのであります。  だからこの際、私は、日本に返ってくるという前提の一つの条件として、これは特に佐藤さんにお願いをするのでありますが、アメリカ側と交渉して、基地の中もやはり実測調査をするように、そうして沖繩の地籍というものを明確にするということが、私は本土政府一つの大きな仕事だと思っておりますねそれは基地の中に立ち入りができないとか、いや測量ができないからというようなことでは、基地以外のものの整理はある程度できるかもしれませんが、ほんとうの沖繩の地籍の調査というものはできない、こういうことに私はなろうかと思いますが、総理大臣として、この沖繩の一番大事な地籍の調査というものについて、米軍側とそういう交渉をされて、地籍を完全にしてそうしてやはり本土復帰するという姿が私は望ましいと思う。依然として大きな傷を受けながら本土に返ってくるということでなくして、たとえば、いま申し上げました地籍だけでも十分にわかるような段階にひとつ住民の納得のいく方法を講じてもらう。いま、長官お話しのございましたように、軍がかってにやっておりますので、民有地であろうと官有地であろうと、必要によればどんどん道路をこしらえていく。これは戦争前には、日本軍隊も同じようなことを私はやったと思いますが、したがって、沖繩の地籍というものは全く不明確でありまして、これではほんとうに安心して住める豊かな沖繩にはならない。したがって、地籍を明確にすることのために、くどいようではございますが、アメリカ側と交渉して、基地の内部も測量ができるようにはできないかということであります。実施の方法としては、やはり航空写真をとって、そうして実地を測量していけば、上と下とを合わせれば大体土地実態というものはあらわれてくると思う。その基礎の上に立って各個人の所有というようなものを明確にしていくということが、この沖繩復帰に対しては一つの大きな私は課題だと思うが、こういう点についての総理大臣の所信を最後に伺っておきたいと思います。
  250. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 なかなか困難な仕事だと思いますけれども、ただいま門司君の御意見を私も静かに伺ったのでございます。政府として当然最善を尽くさなければならないことだ、かように考えますので、できるだけのことはいたしたい、かようにこの際に政府の考え方を述べておきます。
  251. 床次徳二

    床次委員長 門司君、お約束の時間がきましたので、簡潔にしてください。
  252. 門司亮

    ○門司委員 もう時間はきておりますけれども、くどいようですが、総理大臣、アメリカとの交渉は、なければやれないのですね、実際あなた方がどんなにやろうといってここで答弁されたところで。向こうさんがちゃんとなわ張りを持っておりますから、そう簡単にはいかない仕事である。しかし、返還後におけるこの基地の様態というのは、いままでの占領の継続とは違うのでありまして、日本政府が責任をもってアメリカ側に土地を提供する、こういうことになっておりますので、提供するほうの側が、どれだけの土地でございますということがわからぬで提供するのは、おかしいと思いますよ。だから提供するほうの側で、その点をひとつ明確にアメリカ側に交渉をしてやっていただくということを再度御答弁を願っておきたいと思います。
  253. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの御意見を伺っておりますので、最善を尽くします。
  254. 門司亮

    ○門司委員 それでは終わります。
  255. 床次徳二

    床次委員長 堀昌雄君。
  256. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、沖繩の協定の委員会で、先回楢崎委員あとで、実は請求権の問題あるいは資産承継、その他沖繩県民の権利に関する問題についてお伺いをする予定でおりましたところが、私どもの予想もしないような事態が起こりまして、せっかく私は沖繩の県民の立場に立って、この国会の中で、少なくとも二十六年間にわたるしいたげられた県民の気持ちになってひとつこの問題を取り上げたいと考えておりましたけれども、残念なことには発言ができなかったわけであります。御承知のように、琉球政府におきましては、すでにこの間総理もお触れになっておりましたけれども、沖繩復帰に伴う沖繩県民の対米請求権処理の特別措置等に関する法律というものをひとつ立法してもらいたいという建議がなされておりますし、これにも関連をいたしまして、きょうはこの問題を中心としてひとつお伺いをいたしたいと思います。  そこで、まず私は、一番、いま私どもがこの沖繩の問題をいろいろと論議をいたします場合に、欠いてはならない前提があると思います。それはこの二十六年間に沖繩県民が通ってこられた道というものが、私どもがこの本土で通ってきた道とは全く想像もできないほど困難な道を通ってこられたということを、実は私たち及び政府の皆さん、議員の皆さんが十分認識をしていただかなければ、私は、この請求権の問題等のほんとうの沖繩県民の気持ちはわからないと考えるわけであります。  そこで、昨日も同僚の久保委員がこの問題について触れたわけでありますけれども、久保委員の場合には、ほかにも問題をかかえておられて、必ずしもこの問題を十分に深めていくことができませんでしたので、私は、まず最初に、総理から、この請求権を扱うという場合における総理の立場といいますか、気持ちといいますか、これをお伺いをしたいと思います。——総理に聞いているのです。あとから外務大臣に伺いますから。政治的な問題ですから、総理にひとつお願いをいたします。
  257. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 交渉の衝に当たりました外務大臣をしてお答えいたさせます。
  258. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、いま請求権の中身の話を伺っておるのではありません。この請求権の問題を取り扱う総理大臣御自身の気持ちを伺っておるわけです。私がいま申し上げたように、この問題の認識のいかんによって、私は請求権の取り扱い方が変わると思います。ですから、政治的なかまえでもけっこうです。総理が請求権を取り扱う場合に、どういう気持ち、どういう立場でこの問題を取り扱おうとされておるのかという総理のお考えを承りたいのであって、あとからいろいろな具体的な問題その他のものは関係大臣にお伺いをいたしますから、最初に、最も重要な立場、私がいまるると申し上げましたような立場についての総理のお考えを承りたいのであります。
  259. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 請求権の問題にいたしましても、その他各種の問題にいたしましても、沖繩が置かれてきた今日までの御苦労に対して私どもがこれに十分報いる、こういうことでなければならない、かように思いまして、その立場でいろいろの計画を立て、すべての問題をそういう立場で処理してまいった。請求権も別なことではございません。
  260. 堀昌雄

    ○堀委員 実は私が特に最初に伺いたいのは、いま政府がやろうとしておりますいろいろな取り扱いは、きわめて行政的な処理の範囲に限られておる、私はこういうふうな感じがしてならないわけであります。本来この問題は、なるほど、行政的な処理をしなければならないものもあります。しかし、実はきわめて政治的な問題は、やはりこれを政治的に取り扱うのでなければ、沖繩県民の立場に立ってものを処理したということにはならないと私は思うのであります。総理は、そういう意味では御苦労に報いる、こうおっしゃっておりますが、私は、まず総理御自身が沖繩県民の立場に立って問題を考えていただけるかどうか、この点を伺いたいわけでございます。
  261. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま私がお答えしたのは、そういう立場でございます。ただ、ここで一つ注意しなければならないことは、経過的な問題があります。どうも右から左にものごとが処理できない。これは御承知のように、戦後二十六年間アメリカの施政権下にあった、そういうもとでいろいろの苦労を重ねてこられた、また、現状自身がその間につくり出された、こういうことがございますから、経過的な問題、時間的な問題もやはりひとつ考慮に入れて、そうしてただいま堀君の言われるような沖繩の同胞の立場に立ってものを考えていく、これでなければならない、かように思います。
  262. 堀昌雄

    ○堀委員 おっしゃるように、確かに問題は長期間にわたっておりますし、複雑多岐な問題であります。ですから、私も、ここで全部を一括的にこうしろ、こう申し上げておるわけではありませんけれども、少なくともこれから論議を進めます立場は明らかにいたしておきませんと、この立場が食い違ったのでは、せっかくの論議は実りないものになる、こういうふうな感じがいたしましたので、まず最初に、その点でお互いに立っておる立場が、少なくとも私も沖繩県民の立場に立ってものを考える、総理もその立場に立ってお答えがいただけるという共通の立場が確認をされなければ、私は、この問題に入っても、むなしい問題が残るかと思いましたので、お伺いをしたわけであります。  そこで、それでは少し具体的にお伺いをいたしますけれども、今度防衛庁から、沖繩復帰に伴う防衛庁関係法律の適用の特別措置等に関する法律案というのが提案をされております。「人身損害に対する見舞金の支給」こうなっておりますが、防衛庁長官は、この「見舞金」というのは一体どういう性格のものだと考えてここにお出しになっておるのか、お答えをいただきたいと思います。
  263. 西村直己

    西村(直)国務大臣 講和前の人身被害につきましては一応済んでおる形でありますが、漏れておる者がある。しかし、大体その実態はつかめる。そこでもって、私どもとしては、これは法文化して実行していかなきゃならぬじゃないか、そういうような意味で、いろいろな観点から特別措置としての見舞金、こういう考え方を持ったわけであります。
  264. 堀昌雄

    ○堀委員 法制局長官にちょっとお伺いをいたしますが、見舞金というのは、法律的にはどういうことを意味するんでしょうか。
  265. 高辻正巳

    高辻政府委員 見舞金の法律性格いかんということのようでございますが、法律的にものを申せば、これは法律的な違法の措置についての損害賠償——賠償ということばを使われますし、あるいは、正当な行為に基づく損失についての補償ということばが使われるのが通常でございます。通常、見舞金といえば、必ずしもそういう性格のものでないものを一般的に称すると思っております。
  266. 堀昌雄

    ○堀委員 いま長官がはっきりおっしゃったように、要するに、賠償というのは、はっきり請求権があるもの、また、それに近い形で補償というものがある。ですから、そういう請求権のない者に、言うなれば恩恵的な取り扱いをして資金を与える、これが見舞金、こういうことですね。それでよろしいですか。
  267. 高辻正巳

    高辻政府委員 そういう法律的な性格を云々することなしに、たとえば賠償とか補償とかいう通常のことばの意味は先ほど申し上げましたが、そういう法律的な性格を離れて、金銭の給付をするということでございます。したがって、見舞金の法律性格いかんといえば、それは違法行為による損失に対する賠償としての賠償でもなし、あるいは適法行為に基づく損失についての補償でもなし、わざわざそういうものとしてとらえているのではなくして、その他のもの——その他のものを積極的に申せというのはなかなかむずかしいのでありますが、そういう性格のものではないと、通常のことばではそう理解されるものであります。
  268. 堀昌雄

    ○堀委員 総理大臣、いま法制局長官が答えましたように、ここで掲げられております「見舞金」というのは、法律的に——これは法律ですから、法律的には、要するに違法行為によるところの賠償でもないし、適法行為による損失の補償でもない。よろしゅうございますか。それ以外のものだ、いまこういう答弁でございますね。  そこで、実はこの見舞金に関連をいたしておりますのは、これは布令六十号でございます。この高等弁務官布令六十号、あるいは米国の公法に基づくところのあれでございますが、ここには前文でこういうふうに書かれております。「一九四五年八月十五日後一九五二年四月二十八日前の期間における合衆国軍隊またはその要員の活動に伴い琉球列島住民がこうむった損害の補償請求に対して恩恵的支払が公法第八九−二九六号によって承認された。」「恩恵的支払」だと布令第六十号が規定いたしております。これを受けて、この布令六十号の支払い漏れの者に対して支給をされるというのが、このいま申し上げた第三条の見舞金だと私は理解をいたしております。防衛庁長官、違いますか、答えてください。
  269. 西村直己

    西村(直)国務大臣 必ずしもそういうような趣旨でもないと思いますが、要するに、これは講和以前の非常にさかのぼった事態でもあるし、特に人道上の立場から、物的損害でない人身の被害であります。そこで、そういうような趣旨から、法制局長官が申したような立場に立って、見舞金制度というものを法律をもって起こしたのであります。
  270. 堀昌雄

    ○堀委員 あなた、私との答弁のやりとりでごまかそうというのはやめてください。お互いが少なくともありのままで論議をしなければ、口先でごまかして問題が解決するような問題ではありませんから。法律はちゃんとこう書いております。第三条「国は、沖繩において、昭和二十年八月十六日から昭和二十七年四月二十八日までの間に、アメリカ合衆国の軍隊又はその要員の行為により人身に係る損害を受けた沖繩の住民又はその遺族のうち、琉球人の講和前補償請求の支払について(千九百六十七年高等弁務官布令第六十号)に基づく支払を受けなかった者又はその遺族に対し、その支払を受けなかった事情を調査のうえ、必要があると認めるときは、同布令に基づいて行なわれた支払の例に準じ、見舞金を支給することができる。」これは明らかに布令六十号に基づいた、そのときに支払われなかった者に対する、言うなれば追加払いといいますか、それを法制化しておるだけではありませんか。その布令の中で私が言った前文、施設庁のほうで一ぺん読んでください、布令第六十号の前文を。
  271. 島田豊

    島田(豊)政府委員 布令第六十号の前文でございますが、「一九四五年八月十五日後一九五二年四月二八日前の期間における合衆国軍隊またはその要員の活動に伴い琉球列島住民がこうむった損害の補償請求に対して恩恵的支払が公法第八九−二九六号によって承認された。」……。
  272. 堀昌雄

    ○堀委員 はい、そこまででいいです。  総理大臣、どうでしょうか。一体、私どもは沖繩県民の立場に立ってものを考えるときに、恩恵的な支払いを見舞金の形でやるなどということが、はたして沖繩県民として納得できることでしょうか。総理大臣の御答弁をいただきます。
  273. 高辻正巳

    高辻政府委員 一応、この法律の第三条に関連しての問題でございますので、この観点からお話をいたしたいと思いますが、布令のほうは、また別の必要があれば、別のほうから御答弁があるかもしれません。  第三条は……
  274. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと待ってください。
  275. 床次徳二

    床次委員長 答弁中ですから……。
  276. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと待ってください。本日は時間が制約をされておるのでありますから、私どもは不必要な答弁はいただきたくないのです。この問題は、私が前段で申し上げておるように、きわめて政治的な問題であって、行政的な冷たい措置をするために私は本日ここで論議をしておるのではありません。ただ、法律の解釈について正確を期すためには、法制局長官答弁を私のほうから求めます。少なくとも私が審議をしております間、私が求めた答弁者以外が答弁に立ったら、私はそれ以後の質問を続行することにいたしませんが、よろしいですか。
  277. 床次徳二

    床次委員長 では、委員長からも政府委員のほうへ申し上げますが、本日、時間の制約もありますので、簡潔にひとつ御答弁をいただきまして、審議を進めるようにいたしたいと存じます。御協力をお願いいたします。
  278. 堀昌雄

    ○堀委員 総理大臣の答弁を求めます。
  279. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの布令の点で、恩恵的な見舞金というか、そういう書き方は、これは納得がいかないとおっしゃること、これはごもっともだと思います。当時、これが占領下において、特別な、占領軍がさような布令を出した、こういうことではないだろうかと思います。そういうのは今後われわれが処理しなければならぬ、かような問題につながっておる、かように思います。
  280. 堀昌雄

    ○堀委員 私が総理にお伺いしたいことは、いまの御答弁ではきわめて不満足なわけです。私は、確かに米軍が、これからあとでいろいろと論議をいたしますけれども、布令六十号に基づいた処置をしたことには、アメリカ側はアメリカ側としての理解があったかもしれません。しかし、少なくともこの法律は、これはアメリカの法律ではありません、布令ではありません。これは日本の法律なんです。日本の法律である以上、沖繩県民が日本人だという認識があるならば、私はこの法律の書き方そのものから改められていてしかるべきだと思っているわけです。見舞金であってはならないと思うのですよ、これは少なくとも。その漏れた者については、少なくとも正当な請求権がある者については、その請求権に見合う補償を行なうというのが第三条でなければ、これは私は沖繩県民を侮辱するのもはなはだしいものだ、こう考えるのであります。総理、いかがでございましょうか。
  281. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうもその結論になると、私は賛成するわけにまいりません。先ほどの布令については、御指摘のとおりだと思います。私どもいままでいろいろの処置をしておりますが、原因をいわゆる賠償請求あるいは損害賠償その他に小分けしないで、いわゆる見舞金という形において処理する場合がしばしばございます、原因を明確にしないで。そういうような処理の方法が今回の処理ではないか、私かように考えますが、ただいまの布令そのもので使ったことばと同じだといいましても、それは違うのです、原因が。そこは明確に、頭のいい堀君に御理解をいただきたいと思います。
  282. 堀昌雄

    ○堀委員 どうもちょっとそこのところは話がかみ合いません。もう少し話を前に進めてから論議をいたしますが、いま、原因を明確にしない、こうおっしゃったわけでありますけれども、実はこれは予算要求をされておるわけでありますから、この対象になっておるものは原因が明確なわけであります。明確なものでなければ当然見舞金の対象にしない、こうなるのが相当だろうと思います。これはそのうしろのほうにもそれに関連する政令の案が書いてありますが、この案の中にも「同布令の例による見舞金の額その他」、こういうふうに、すべてが布令に準じてやるということがこの中には明確になっておるわけであります。よろしゅうございますか。  そこで、では、なぜそういう問題が起きておるかという根本には、私は、どうしてもこれは平和条約の十九条(a)項に関する講和前の請求権の問題というものが少し明らかにならなければ、この問題がなかなか納得のいかない点が残りますから、まずその点を少し取り上げておきたいと思います。  大蔵省主計局長にお伺いをいたします。昭和三十二年八月二十三日に、当時の琉球政府行政主席から総理府南方連絡事務局を通じて「講和条約発効前の米軍使用による土地等の損失補償問題について」という表題に関して、大蔵省主計局長見解が南方連絡事務局を通じて琉球政府行政主席に送られております。この問題は、もちろん、いまから十五年余り前のことでありますから、現在の主計局長が直ちにこの考えと同一であるということを私は申す意思はありませんけれども、少なくとも私も長年大蔵委員として仕事をやっておりまして、大蔵省のいろいろな見解その他は、どちらかというと、たいへん合理主義にのっとって、合理的な見解というものが一般的であると私は実は理解をしておるわけであります。この「講和条約発効前の米軍使用による土地等の損失補償問題について」というので大蔵省が見解を述べられておりますから、この見解と現在の見解が違うのなら違う理由をちょっと明らかにしてもらいたいと思います。  「第一 本件と平和条約第十九条との関係 平和条約第十九条(a)項の「日本国領域」に沖繩地域が含まれていると断定することはその根拠がない。」こう断定をいたしまして、「従って「平和条約第十九条(a)項を本件に適用して、沖繩住民の請求権及び日本政府の責任を論ずることは正確でない。沖繩における第十九条の規定による請求権に相当する請求権は、日本国の分も日本国民の分も平和条約によって何等かの国際法上の決定がなされていると解することは正確でない。奄美については復帰協定によって初めてこの点が明確にされたが、沖繩におけるものはこれと異る状態にあるものである。」「(1) 文理解釈による理由 対日平和条約第三条において、沖繩は日本の通常の施政権の及ぶ地域とも区別され、又、第二条地域とも区別され、国際法上全く新規特別の地域として規定されている。このことについては従来疑いのないところである。従ってこれを従来の国際観念による日本国領域の表現によって表わされている所と同一視することは早計である。」そこで「同条約において特に第三条地域を意識して表現する場合には、第四条(b)項における如く特に「第二条及び第三条に掲げる地域」の表現を用いていることは注目すべきである。」こういうふうに述べられておるのですが、これについて、この見解はどうか、ちょっとお伺いをいたします。
  283. 相澤英之

    ○相澤政府委員 ただいま堀委員が申されました昭和三十二年八月二十三日の主計局長文書と申しますのは、当時南方連絡事務局から講和条約発効前の米軍使用土地等の損失補償問題について照会がございましたのに対しまして、主計局の見解を取りまとめて文書として出したものでございます。これは政府部内における往復文書性格のものでございますので、それが当時における政府の統一的な見解を示すものではなかったわけでございますが、当時そういうような回答を文書をもってしたことは事実でございます。  そこで、ただいま先生が申されましたように、平和条約の第十九条の(a)項の請求権放棄については、沖繩における対米請求権は含まれていないという解釈も成り立ち得るということを申しておるのでございます。それのみが大蔵省としての唯一の見解であるとはいっておりませんが、そういう解釈が成り立ち得るということを申しておるのであります。  そこで、ただいまお話しの平和条約についての解釈でございますが、これは申し上げるまでもなく、条約の解釈権というものは外務省にあるのでございますから、考えようによりましては、当時主計局が条約の解釈につきましてそういう回答を文書をもってしましたことについては若干問題があろうかと存じますが、当時私どもは、沖繩におけるいろいろな人身事故等の損害に対しまして、その補償をアメリカ側に沖繩政府が請求をいたしましたという事情がございまして、それをいわば、何と申しますか、合法化するというような考え方が、相当これは当時先にあったように、私、現在においてはその状況を判断しておるわけでございます。そういうような事情がございまして、この当時、沖繩は平和条約第十九条にいうところの請求権放棄の範囲には入ってないと申したのでありますが、現在におきましては、やはり私どもも、沖繩もこの平和条約にいうところの日本の領土に入るということ、したがいまして、平和条約第十九条にいう請求権放棄の中に沖繩における請求権も含まれておるという解釈をとっておるものでございます。
  284. 堀昌雄

    ○堀委員 答弁になっていません。さっきから私が言っておるように、質問者に正確に答弁をしてもらわなければこの審議を進めるわけにはまいりません。いきさつはいろいろありましょう。しかし、この中で述べられておることは、きわめて合理的な解釈が述べられておるわけです。だから、その合理性の範囲内において——それは合理性がなかったというなら、それは間違いだったと、逐条あなたがそこで答えればよろしい。どこが間違いかをあなたがここで指摘をするならば私も納得をしましょう。少なくとも大蔵省の主計局長というのは、皆さんもよく御存じだと思いますけれども、各種の委員会に出席をいたしません。委員会が要求をしても、予算委員会以外には出席をしないというほど、非常な権威をみずから頼んでおる職員でございます。各委員会で主計局長が出席をした例があったら承りたいと思うのであります。この主計局長——いま相澤主計局長個人をさしておるのではありません。大蔵省主計局長なるものが公文書をもって南方連絡事務局を通じて琉球政府の行政主席に答えたものについては、少なくとも責任がある回答でなければならぬのであります。あなた方はそれでは行政主席をだましていろいろなことをやらせようとしたのですか。事は重大ですから、その点についての見解を明らかにしてもらいたい。
  285. 相澤英之

    ○相澤政府委員 当時主計局長から南方連絡事務局長あてに出しました文書におきまして、平和条約第十九条(a)項が沖繩における対米請求権につきましては適用がないかのような見解を述べておりますことにつきましては、私は、現在におきましてはこれは間違っているというふうに思っております。
  286. 堀昌雄

    ○堀委員 個別的に訂正をしてもらいましょう。私はそれでは個別的に聞きますから。  「対日平和条約にいう「日本国」、「日本国領域」等の地域観念の用例をすべて同条約を締結する直前のものと解することも、第一条(b)項、第四条(c)項等における用例を見れば正確でない。又、一応同条約に「日本国」又は「日本国領域」等の表現を以って規定している地域観念をすべて条約締結前の日本の領域と解し第二条地域乃至第三条地域を含むものとして、更にこれに対して第二条乃至第三条を重複適用すべきであるという考え方にも、例えば次のような無理がある。」  これからひとつ答えてください。いいですか。個別的に答えてください。  「現在沖繩の海底電線の終点施設は沖繩の保有するところである。もしこの事実が、沖繩がその所有権をも所有し、然もこれが条約上合理的な状態であるとするならばこれは第四条(c)項の適用によるものと解する外はない。この場合、同条同項の「分離される領域」は第三条地域をも予定しているものと解される。とすれば同条同項の「日本の終点施設」という場合の「日本」は、第三条地域を含まないことの明瞭な認識のもとに用いられているものである。」  これに対して、もしそれが誤りであるならば、あなたはここでそれを疎明しなさい。
  287. 相澤英之

    ○相澤政府委員 海底電線に関しましては、平和条約の第四条の(c)項に規定されているわけでございます。「日本国とこの条約に従って日本国の支配から除かれる領域とを結ぶ日本所有の海底電線は、二等分され、日本国は、日本の終点施設及びこれに連なる電線の半分を保有し、分離される領域は、残りの電線及びその終点施設を保有する。」かように書かれてございます。  そこで、当時この「日本国の支配から除かれる領域」ということに沖繩が入るかどうかという問題でございますが、沖繩の海底電線の終点施設は戦争及び戦後の混乱によりまして破壊され、その所在が不明であり、戦後その管理及び運用は一切行なわれていないと聞いているのでございます。そこで、このような状態をもちまして沖繩が保有しかつ沖繩が所有権をも所有しているというふう一にいうことは困難でございますので、この点を基礎として、平和条約第四条(c)項にいうところのこの「除かれる領域」の中に沖繩が入るというふうに解釈することは困難であろうというふうに考えております。
  288. 堀昌雄

    ○堀委員 終戦の直後に海底電線及び終末施設が破壊されておるのならば、三十二年の当時にどうしてそれがわかっていないのですか。わかっていたにもかかわらずこういう記載を当時の主計局長がしたというのは、これは琉球政府に対する欺瞞行為じゃないのですか。どうなんですか、大蔵大臣代理にお伺いをいたします。  要するに、あなたも大蔵大臣を長くおやりになって御承知でありましょうけれども、大蔵省の中では、少なくとも事務次官に次いで非常な権威を持っておる主計局長が、公文書をもって琉球政府行政主席に回答をした。その回答したことが、事実無根であることを書いて回答をしておるなんということは、一体これは大蔵省として許せることですか。大蔵省という役所は、そういう意味では沖繩県民をあざむいたことになっておると思うのですが、大蔵大臣の見解を承りたいと思います。——それじゃ山中総務長官
  289. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは当時の南連の問い合わせに対して、主計局は一応役所間の文書として確かに発送簿にも載せた公文書であります。しかしながら、南連としては責任のある回答をしなければなりませんから、外務省等の意見も徴したのですけれども、法制局もありますし、政府統一見解というものが生み出せなかったということで、向こうのほうに資料が行っているかどうかは知りませんが、正式な公文書の回答というものは、この件に関する限り琉球政府にいたさなかった経緯があると承知いたしております。
  290. 堀昌雄

    ○堀委員 実は、いま総務長官、そういう逃げ口上のようなことを言っておられますけれども、しかし、少なくとも私どもの手元にそういう形で、日にちまではっきりとして——よろしゅうございますか。当時の琉球政府の行政主席から南方連絡事務局を通じて照会があった。私は総理府のあなたのほうにもその原文その他を調べてもらおうと思ったけれども、それは十年以上たっておるから何か見当たらぬというような話でありました。私は事実ここに資料を持っておるしするから、あなたのほうから資料はちょうだいをいたしましたけれども、渡ったか渡らなかったかの問題は、いまここで議論をしてもしかたがないことです。少なくとも、主計局長が南方連絡事務局長を通じて行政主席あてに見解を明らかにしたことは間違いがないのですからね。その限りにおいては責任があるわけですよ、文書になっておる以上は。大蔵大臣の御答弁をいただきましょう。
  291. 田中角榮

    田中国務大臣 私はあなたの発言によって初めてその事実を承知したわけでございますが、いま早々の間にその間の事情を聴取いたしました。これはこういうことのようでございます。  いま事務当局の説明するところをそのまま申し上げますと、外務省見解と大蔵省見解二つあるようでございます。この大蔵省見解は、大蔵省主計局長名をもって通達をした御指摘のものでございます。もう一つは、外務省が同じく回答したものがございます。その外務省の回答と大蔵省の主計局長の回答は相反するものであったということでございます。その後政府統一見解をつくりましたときに、いまの、沖繩地区も(a)項に含まれるという外務省見解のとおりになったわけでございますから、その限りにおいて大蔵省主計局長答弁は誤りであったということであります。
  292. 堀昌雄

    ○堀委員 実は取り消す必要がないほど非常に明確に問題点が指摘されておりますから、もう少しこれを進めたいと思います。  「講和発効後沖繩における占領軍占用施設が、九十日以内に日本政府に返還された事実は伝えられていない。第六条(a)項の「日本国領域」に第三条地域を含ませて考えた場合、第六条(c)項の適用に当って、更に第三条を重複適用すれば日本国政府の同地域における施政権の行使が排除されることになる結果日米両国政府相互の合意が事実上又は法律上不可能になることは認められる。然し乍ら、第六条(c)項は、占領軍占有施設は、「相互の合意によって別段の取極が行われない限り、前記の九十日以内に日本国政府に返還しなければならない」と規定しているのであって、この規定を、同項の規定する合意が不可能な場合には、合意がなくても九十日以内に返えす義務がない趣旨を表わすものとは読み難い。(即ち、たとえ合意がなくても九十日以内に返還すべきものと解釈すべきである。)」  ここに、この問題これ一つを見ましても、大蔵省がこの平和条約の解釈にあたってきわめて合理的に明快な実は解釈をしておるわけです。だから、いまのこの点について、主計局長、じゃどこが間違っておるのか、ひとつ答弁してください。しばらく逐条いきますから。この大蔵省の見解は、私は、だれが見ても非常に適正な見解だと思うのです。外務省見解のほうがアメリカに追従しておるので、そのほうの見解をあまりとりたくない。私は大蔵委員であるからひいきをするわけじゃないけれども……。
  293. 相澤英之

    ○相澤政府委員 どうもこの逐条の解釈につきましては、やはり第十九条の(a)項が沖繩に適用がないということを一応の前提といたしまして、いろいろこれを立証するところの証拠を集めたというような感じがあるのでございます。あの三十二年に主計局長が出しました回答について、後輩の私がそういうようなことを申し上げるのははなはだ心苦しいのでございますけれども、どうもいま読んでみますと、そういうような感がいたします。  で、平和条約第六条の(a)項の問題でございますが、当時そういうことを書いてございますが、しかし、この平和条約の第三条に基づきまして、沖繩は、米国の行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有する地域になったわけでございます。つまり米国の施政権下に置かれることになったわけでございます。そういうことになった以上、講和後におけるところの占領軍の撤退義務を規定いたしました第六条の(a)項、及びわが国の施政権を前提といたしました占領軍使用財産の日本国政府への返還を規定した同条(c)は、沖繩には適用がないというふうに解釈すべきではないかというふうに存じております。
  294. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、いまあなたの言う第六条の「日本国」というのの中には沖繩は入っていない、こういうことですね。よろしいですね、それで。
  295. 相澤英之

    ○相澤政府委員 この第六条にいうところの「日本国」には沖繩が入っているわけでございますが、先ほど申し上げましたとおり、平和条約の第三条によりまして、沖繩に対する行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利は合衆国が持つことになったのでございますので、このような連合軍の撤退あるいはその占領軍使用財産の返還というようなことができなくなるのでございます。
  296. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすれば、この条約の中には——まだあとたくさんありますが、時間の制約もありますから、まあこのぐらいにしますが、要するに、沖繩を含まない日本国というものと、十九条(a)項にいうような、いま外務省見解として沖繩を含んでおるという「日本国」と——これはあなたのほう、たくさんここに沖繩を含まない「日本国」というのの例を出しているわけだから。それはいろんなように書いてある。ここでは時間がありませんから略しますけれども、これは法理解釈、文理解釈、条理解釈による理由、論理解釈による理由と、ずっと実は書かれておるわけですね。だから、これらの考え方が——きょうはもう時間の制約があるからこの問題をここまでにしますが、総理大臣、いまこの問題を私が非常に時間をとってやっておりますのも、これが実は沖繩県の住民に対する請求権、権利に非常に重要な関係を持っておるからであります。  それでは、いまの問題はそこまでといたしまして、もう一つ、これは外務大臣にお伺いをいたしますが、請求権の放棄というのは何のためにするんでしょうか。
  297. 福田赳夫

    福田国務大臣 返還時における日米間の債権債務の状態をはっきりさせるというためにいたすものでありまして、あるいは奄美大島の場合におきましても、あるいは小笠原の場合におきましても、同様の措置をとっている次第でございます。
  298. 堀昌雄

    ○堀委員 今度の第四条で、いまおっしゃるように、返還時のアメリカと日本の債権債務をはっきりさせる。わかりました。  では、どうして十九条で、平和条約のときに——債権債務をはっきりさしてもしかたがないときですね、まだ向こうの施政権が続くのですから——十九条(a)項でなぜ、外務大臣、そのときに請求権を放棄したのですか、それじゃ。これは二重に請求権を放棄しているわけですね。よろしゅうございますか。一九五二年四月二十八日に、あなた方のほうは統一見解として十九条(a)項で請求権を放棄した。またここであなたはいま、要するに、アメリカと日本の間の債権債務を清算する。二回清算しなければならぬというのはどういうことなんですか。清算というのは、会社の清算だって一回でしょう。二回も清算できないじゃないですか。一ぺん清算したものはあとには何もないはずだ。これはどういうことでしょうか、外務大臣
  299. 福田赳夫

    福田国務大臣 平和条約第十九条による放棄は、これは講和条約の効力発生以前の債権を放棄する、こういうことでございます。今回はそれ以後のものについてこれを放棄する、こういうことでありまして、二重ではございませんです。
  300. 堀昌雄

    ○堀委員 いま大臣は、二重でない、こうおっしゃっているわけでありますけれども、それではなぜこの前奄美大島のときにはこれを重ねて条約に書いたわけですか。ここでは、奄美大島の返還条約ではこれは二重に書かれておりますね、この十九条(a)項の問題と。(「小笠原は」と呼ぶ者あり)小笠原はいまのところ同じになっておりますから、もうそれは触れる気持ちはありませんけれども、奄美大島の返還協定では、「日本国は、戦争から生じ、又は戦争状態が存在したために執られた行動から生じたアメリカ合衆国及びその国民並びに南西諸島の現地当局及びその前身たる機関に対する日本国及びその国民のすべての請求権を放棄し、且つ、アメリカ合衆国の軍隊又は当局の存在、職務遂行又は行動から生じたすべての請求権で、千九百五十三年十二月二十五日前に、奄美群島で生じ、又は奄美群島に影響を有するものを放棄する。但し、前記の放棄には、千九百四十五年九月二日以後制定されたアメリカ合衆国の法令又は南西諸島の現地法令で特に認められた日本人の請求権の放棄を含まない。」こうありますね。これはいまの大蔵省の主計局長見解にもこれが実は援用されておるわけであります。それではいまのこの問題はここで三回にわたって放棄することになる、こういうことでありますか。これはどういうことでしょうか。
  301. 福田赳夫

    福田国務大臣 平和条約十九条は、講和条約の効力が発生する前の分なんです。今回放棄する分は、それ以後の分でありまして、これは重複はいたしておりません。
  302. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは、そこは水かけ論になりますが、時間がないので、前段の詰めが、もう少し平和条約について各項の議論をすればこの十九条(a)項の問題は明らかになると思いますが、ちょっと時間の制約がありますから——この講和前の請求権がないということが、いまの布令六十号の実は恩恵的な支払いということがそれに基づいて根拠をなしてきておるわけでありますね。アメリカ側としては、私は確かにそういう意味ではそういう理解に立っておったと思います。しかし、いまは、これまで外務大臣総理等の御答弁を承っておりましても、請求権を放棄したのは、外交保護権を放棄したのであって、沖繩県民の請求権は存在をするんだ、実はこういう認識に立っておられると思うのでありますが、総理の御答弁、ちょっとそこを確認をさしていただきます。
  303. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりだと思います。
  304. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで私は最初総理とのお約束といいますか、お互いが沖繩県民の立場に立って考えるとするならば、実際にはアメリカに対する請求権がある。あるけれども、日本の側がその請求権を、沖繩県民のうしろ押しをしてアメリカから補償をもらう、そのうしろだてをはずしたのでありますから、結果としては、請求権があっても、沖繩の諸君はアメリカから取ろうにも、アメリカに訴訟してみたところで、アメリカがそういう見解が違うんだということで、要するに取れない、こうなっておるわけでありますね。そこは御理解がいただけると思います。  そうなれば、その請求権そのものをどうするかという考えですね。要するに、布令その他で行なわれておりますものは、布令二十号によりますものでも、布令六十号によりますものでも、あるいは外国人賠償法によりますものでも、いずれもきわめて不十分なそういう補償的な支払いしかされていないわけであります。これは時間がありませんからあまり多くを触れませんけれども、たとえば外国人賠償法の問題について、この前も同僚議員の中ですでに申し上げている例がありますけれども、たとえば宮城文吉さん、上運天カメさんという二人の人が、一九六一年の十二月七日に事故が発生して、これは川崎飛行場墜落事故でありますが、そうして請求額が三万二千四百三十四ドルという請求に対して、三千二百ドルと二千四百五十ドル、非常に不十分な補償しか全体としてされていないわけであります。それは布令二十号によるところの補償でも大体一五%から五%くらいのうちしか補償がされていないというのが、実は沖繩における調査の結果で明らかになっておるわけであります。ですから、そういう問題を考えるときに、まず沖繩県民がこれまで非常なそういう差別といいますか困難の中でやっております具体的な例を、私はここで一つちょっと読み上げておきたいと思うのです。  「一九七〇年九月一八日白昼、本島南部の糸満町で米海軍二等軍曹トミー・L・ワード(二六歳)が酩酊のうえ、制限速度一五マイルの商店街を五〇マイルの猛スピードで運転中カーブでハンドルを切りそこね、道路端の歩道部分を通行中の金城トヨさん(五一歳)をブロック塀と自動車の間にはさんで即死させる事件が起こった。糸満町民はMPがブロック塀にぶつかってこわれた自動車を運び去ろうとするのを阻止し、証拠品として回りに縄を張り、道の反対側にテント小屋を作って監視しMP、軍当局の不公正な事件処理を許さない態度を示した。  また、糸満町では、町民がただちに「米軍凶悪犯罪糾弾対策協議会」を結成した。そして米軍の司令官を謝罪させたうえ、被害の補償と公開裁判による加害者の厳重な責任追及を約束させた。これまで証拠がないこと等を理由に加害者の責任追及、被害補償をしない例を多く経験してきた沖繩県民は、実力により証拠を保全し、責任者の明確な態度の表明を待って証拠を引き渡すことを認めるという民衆の知恵を発揮したのであった。  しかるに一二月一一日開かれた軍法会議はこのトミー・L・ワード二等軍曹に対し無罪の判決を言い渡した。理由は証拠不充分という。米軍の司令官が公開を約束したにもかかわらず、裁判の傍聴は被害者の金城さんの父親と外数名が特別許可されただけで、筆記具の持込は禁止され、通訳も拒否された。何人かの目撃証人も詳しい証言をしたというから、傍聴人は当然有罪と確信していたら、無罪ということなので呆然としたという。」  これはコザ事件の発生に関連のある事実であります。私も実は沖繩に参りまして非常に感心したことが一つあります。それは、沖繩ではまだ十分に交通信号等の整備が整っておりません。町にも交通巡査等は出ておりませんけれども、私が参ったのは那覇でありますけれども、きわめて整然と実は自動車が走っておるわけであります。この非常にマナーのいい沖繩県民のいろいろな自動車の状態を見まして、本土に比べておそらく沖繩県民による事故というものは比較的少ないのじゃないかという感じがしたわけでありますが、多数の米軍のこのようなめいてい運転、暴走によって被害者が出て、そしてその場合に、外国人賠償法では、少なくとも所属しておる部隊名、官職、氏名等、要するに、行なった者を特定しなければ賠償の請求には応じないといって却下をするという、きわめて困難な状態に実は沖繩では置かれておるわけであります。  ですから、これらを考えますと、私が前段で触れた見舞金の処理などという考え方は、私は、沖繩県民の立場から見れば、日本政府もアメリカ政府と同じことしかやってくれないのか、アメリカ政府が非常な差別の中で行なってきたそういう統治権のあり方を、ここで同じ形で日本政府が踏襲するということについては、沖繩県の住民は大きな憤りを感じておる、こういう感じがするわけであります。ですから、少なくとも沖繩におけるこの請求権問題というのは、もちろん、過去の非常な古い経緯があって調査が十分でないものはいたし方がありません。調査の行なえる範囲のものについては、復帰後日本政府においてあらためて精査をして、その上で必要な補償を考えてあげるというのが、これが私はどうしても必要なのではないか、そのために、琉球政府としては、私が先ほど触れましたところの賠償に関する特別立法を要請してきておる、こう考えざるを得ないのであります。総理大臣、いかがでございましょうか。
  305. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま堀君御自身がはっきりさせられたように、沖繩の住民の人身事故、これは米政府に対しては請求権を持っております。しかし、日本の政府は請求権は持っておらないと、そういう状態でございます。しかし、私どもは復帰後の県民の立場を考えたときに、これをそのままほっておくわけにいかない、それかといって、日本政府がうしろだてになるから訴訟を起こせと、こういうわけにもいかない、かように思います。実際問題の処理として、それは見舞金という形で処理されると、かように御理解いただけないでしょうか。いま考えるところはそういう意味でございます。いわゆる請求権自身は、日本政府が県民に対してその請求権があるという、そういう状態ではない。米国政府は、これは請求権、そのもとで果たさなければならないことだ、かように思います。しかし、私どもどうも県民の置かれておる状態については御同情申し上げますから、それが見舞金の形において処理される、かように御理解いただきます。
  306. 堀昌雄

    ○堀委員 あなたがいまおっしゃったように、請求権はアメリカに対してあるとおっしゃっているわけでしょう。そのあるものを日本政府が協定によって放棄をするのじゃないですか。アメリカが払わぬ、こういう話じゃなくて、日本政府が協定に基づいて沖繩県民の請求権を放棄をしますという以上、それは当然日本政府が放棄をしたことに反対の側としてそれに対する対価を考えるというのが当然なんじゃないですか。だから、私はそれを、たとえば憲法二十九条その他の形式法律論で責任があるから払えという話をしようとしているんじゃないですよ。前段で言っておるように、あなたも沖繩県民の立場に立つならば、沖繩県民の請求権をあなたが放棄したのなら、かわって私が払いましょう、こういうのがものごとの条理ではないのか、これを私はあなたに伺っておるわけなんですよ。形式的な法律論だけならば、おそらく払わなくてよろしいということもあるかもしれません。あるいは見舞金で処理しようということもあるかもしれません。しかし私が言いたいのは、形式は、標榜している名前は見舞金でも何でもいいわけですよ。しかし、中身としては、この特別立法で沖繩の皆さんが要求しておるような正しい補償額を支払うということが肝心なんであります。そこをひとつ総理がそういう認識に立って答弁をしていただかなければ——私は総理にそういう形式的な答弁を求めておるわけではないのでありますから、それが私が前段に申し上げた立場でありますから、そういう意味でひとつお答えをいただきたいと思うのであります。
  307. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま堀君の言われるようなたてまえで、私は、日本政府が見舞金を出す、こういうことでございます。請求権を放棄した、これは日本の政府沖繩県民のうしろだてになるのが当然だ、それをしないという、そういう立場になったものですから、日本政府が見舞金という形で処理する、こういうことでございます。ただいま言われるとおりに私は理解しておりますし、また政府はそういうことでなければならない、それで秘めて日本政府沖繩の同胞に対するつとめが果たせるのだ、かように思います。いわゆる請求権そのものは沖繩の人はアメリカに対しては持っておる、日本の政府に対してはない。そこで、その権利義務の関係はございませんけれども、それが見舞金の処理で片づく、こういうことであります。
  308. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、もう一ぺんちょっとだめを押させていただきますが、法律的表現としては見舞金かもしれないけれども、実質的には請求権に見合う正しい補償である、こういう認識でよろしゅうございますか、総理大臣。
  309. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日本政府が見舞金を支払うというのは、ただいま御指摘になりましたような気持ち、そのつもりで処理する、こういうことであります。
  310. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、いまおっしゃったその気持ち、そのつもりとおっしゃることは、形式は見舞金、実質は請求権に見合う正しい補償だ、こういう理解を、もう一回重ねて、それでよろしゅうございますね。——ちょっと、よろしいと答えてください。
  311. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 それでよろしゅうございます。
  312. 堀昌雄

    ○堀委員 外務大臣にお伺いをいたします。  外務大臣はやはりいままでいろいろ御答弁になっておる中で、これらの補償の問題を予算上の措置でできるものもあるし、必要があれば立法措置をとる、このように昨日も久保委員質問に御答弁になっております。もう何回か答弁されておりますが、そのとおりであります。そこでお伺いをいたしますが、必要ならばという、それはどういう場合が必要なんですか、ちょっとお答えいただきたい。立法措置が必要な場合。
  313. 福田赳夫

    福田国務大臣 私、ただいま総理からお答えしたような気持ちです。そしてなお正確に私の気持ちを表現いたしますれば、実態を調査します。実態に応じまして適正な措置をとる。その適正という気持ち、それはただいま総理大臣から申し上げたとおりでございます。そのやり方、これは堀さんも財政金融の大家ですから御了解いくと思うのでありますが、大体私は予算措置で片づくというようなものだろう、こういうふうに思いますが、念のため申し上げたのです。法律的措置が必要であるという際におきましては、その措置をお願いをする、こういうふうに申し上げたわけでありまして、いまどういうケース、どういう場合におきまして法律的措置が必要であるか、これはちょっと頭に浮かびませんけれども、そういう必要がありますれば、法律的措置をお願いするというふうに考えております。
  314. 堀昌雄

    ○堀委員 それじゃちょっとお伺いをいたしますけれども、いまの沖繩復帰に伴う防衛庁関係法律の適用の特別措置等に関する法律案では、法律として人身損害に対する見舞金の支給がなされておりますね。それではこれはなぜ予算上の措置でなく、これが法律になったのか、ちょっとお答えをいただきたいのです。
  315. 西村直己

    西村(直)国務大臣 これは、先ほど申し上げましたように、事態が明確に把握できておるからであります。
  316. 堀昌雄

    ○堀委員 事態が明確に把握できておれば法律になるわけですね。よろしいですね、防衛庁長官
  317. 西村直己

    西村(直)国務大臣 請求権あるいは請求といわれる場合には、いろいろなものが入ってまいる場合もあります。しかし、中には請求権として一応考えられるものもありますし、沖繩の民政府から出てきておる場合にも、われわれは必ずしも請求権といわないものも、いろいろ損害で諸請求であるものもあるわけであります。したがって、そこいらは実態を明らかにしていかなければならない。少なくとも今回の講和前の人身被害というものは——先ほどお話のあったような講和前でありますが、その法令に基づいて一応処理をされておる。漏れておるものもある。その漏れておるものは大体実態がつかめる。そこで、総理のように気持ちとしてああいう見舞金という形でもってそれを埋めていく、こういうものであります。
  318. 堀昌雄

    ○堀委員 いま防衛庁長官は、精査をして明らかになったら法律で処理をする、こう言っておられますね。  これは、主計局長、ちょっと答弁してもらいたいのですが、いまの第三条のこの資金は、こういうふうに法律を書かなければ資金は支出できませんか。
  319. 相澤英之

    ○相澤政府委員 人身損害に対する見舞金の支給でございますが、こういう種類の見舞金は、もちろん、法律があれば、それに基づいて支給することになるのでありますが、必ずしも法律を必要としないというふうにも存じております。
  320. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、これはいいかげんな法律だということですかね。これは実は困るんですよ。だから私は、いま防衛庁長官が御答弁になった中に、請求権に基づくものと諸請求とがある、こうおっしゃいましたね。  そこで、外務大臣、やはりこんな問題を何となく気が向いたから法律にしたり、気が向かなかったら予算で処理するなんということは、私は、財政のたてまえからいって、これは混乱を起こすと思います。あなたも長いこと大蔵大臣をしていらしてよくおわかりのことであります。当然私はここでは何らかのルールがあってしかるべきだ、こう考えるわけであります。そこで、いみじくもいま防衛庁長官がお答えになっておりますように、少なくともその裏側に請求権があって、それに対する補償として実質的に考えるもの、これは少なくとも立法で措置をする、それ以外の諸請求等について必要のあるものは、これは予算上の措置で処理をする、こういうふうに何らかそこに限界を設けることが、私は、財政上の問題としては非常に重要な問題点だ、恣意的に、これはちょっと法律にしておこう、これはやめておこうでは、問題は解決しないと思いますから、外務大臣、その点はいかがですか。
  321. 福田赳夫

    福田国務大臣 大筋は大体そんなような感じがします。しかし、これは実態調査をしてみないと、これがどういうものであるか、これが米軍に対するほんとうの意味の請求権的なものであるのかどうか、その辺がまだはなはだ私ども調査が進んでおらぬ、こういう状態なんです。考え方としては大体堀さんのようなお考えでしかるべきかと、かように存じます。
  322. 堀昌雄

    ○堀委員 たいへん福田さん、いつも答弁ははっきりするのに、いま二段がまえぐらいに、何かアローアンスのついた答弁でございますので、もうちょっとこれは、非常に重要ですから、きちんとさしてもらいますが、私も、請求権の問題は今後調査をなさらなければわからない問題がたくさんあることは承知をしております。だから、十分調査をしていただいて、そして調査をして請求権があるということがはっきりしたものについては、これはいま私が申し上げたように立法によって措置をする、こういうふうにここで確認をしていただきたい。私も、何でもかんでも立法しろなんてひとつも言っていないんです。だから、財政措置をとる——たてまえ上は、やはりこれは国民が納得しなきゃならぬことでありますから、当然私は請求権として認識を政府ができるものは、それの支払いをするときには立法をもって措置をするんだということを、ひとつ確認をしてもらいたい。大蔵大臣、いかがですか。
  323. 田中角榮

    田中国務大臣 政府がその責めに任ずることは、国民の財産をもって充てることでございますから、これから政府が支弁に応じなければならないような状態が起こった場合、立法によることが望ましいことは言うまでもありません。今度の返還に関し必要やむを得ないものは今度御審議をいただいておりますが、この機会までに定かでないために処理ができなかったもの、新たに起こる事由に基づく支払いに関しては、立法によることが望ましい、私もそう考えます。
  324. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、いまその点で立法上の問題はっきりしましたから、琉球政府のほうでこの問題について望んでおられますことは、結局、審議会議等を設けて、そして公正な調査をすることにしてもらいたいということが、実はこの立法趣旨の中の一つ部分であります。  審議会議の組織は「審議会議は会長及び委員をもってあてる。」「会長は総理大臣をもってあてる。」「委員沖繩県庁を含めた関係行政機関の長から総理大臣が任命する。」「審議会議に相当数の幹事を置く。幹事は沖繩県知事の推薦した沖繩県庁職員及び関係行政機関の職員のうちから総理長官が任命する。」「審議会議の庶務は総理府官房がつかさどる。」  中央対米請求権処理審査委員会は、「総理府に附属機関として中央対米請求権処理審査委員会(以下「委員会」とする。)をおく。」「委員会は次の各号に掲げる処理権限を有する。」云々。  こういうふうになりまして、要するに、私どもは、少なくともいま外務大臣がおっしゃった調査をなさるについては、やはり私が総理と前段でお約束をしたように、沖繩県民の立場に立った調査をしてもらわないと、これが米軍と同じような立場の調査であったのでは、私は沖繩県民に対して申しわけないと、こう思うわけであります。ですから、その点の調査の問題も、これはぜひこの建議書にありますような形を考えて、県民の納得のいく調査をしていただいて、そうして明らかになったものについて、いま大蔵大臣が御答弁になったように、立法措置によってこれにこたえる。こういうことにしていただくならば、私はこの国会にそういうものが提案をされなくとも、沖繩県民としては、そういう沖繩県民の立場に立った調査によって生まれた請求権の補償が日本政府によって確実に立法によって措置されるということであるならば、沖繩県民はこれを非常に多とするものである、こう思うのでありますが、総理大臣、いかがでございましょうか。総理大臣、ひとつお願いします。
  325. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来各大臣の意見を徴された後でありますから、ただいまの建議の趣旨、これは十分尊重すること、これはもう政府の当然のことであります。ただいま、おくれてもいいと言われますが、できるだけ早目にこういう問題は片づけること、これが望ましいことだ、かように思いますから、十分結論を通常国会までには得られるようにいたしたいものだ、かように考えます。
  326. 堀昌雄

    ○堀委員 請求権の問題は、いま総理からお答えをいただきましたから、これで終わりたいと思います。私がおくれてもいいと言ったのは、この国会に間に合わなくてもすみやかにということでございますので、それはいま総理のお答えになった気持ちと同じでありますから、どうかひとつ、関係閣僚すべておいでになるわけでありますから、本日の私のここで申し上げました請求権に関するこの発言を土台として、誠意をもってひとつ沖繩県民にこたえていただきたいということをお願いをしておきます。  次に参ります。時間がありませんから——資産承継の問題も触れたいのでありますけれども、その前に問題があるのは、実は二点ほど、ひとつ財政支出の面でお伺いをしておきたいと思います。  まずP3の移転問題について、外務大臣は協定の委員会及び当委員会で御答弁になっておりますが、これはP3の基地をどこかに移転をする、そうしたらその移転をしたものの費用を払うんだ、地位協定等に準じて払うんだ、こうおっしゃっているわけなんですが、一体そういうものが現在のあれで払えるような情勢にあるのかどうか、それをひとつ。ちょっと代理では無理かな。——じゃ大蔵大臣、答弁してください。
  327. 福田赳夫

    福田国務大臣 私でよろしゅうございましょうか。——P3につきましては、これを返還時までには那覇飛行場から撤去していただきたい、こういうふうに考えておるんです。いまその撤去先を米軍において検討中でありまして、そう遠からず見当がつく、こういうふうに私どもは見ております。その費用はわが国において支払う、こういうふうにしております。もっとも、支払うと申しましても、米軍に対して支払うんじゃありません。米国政府に対してではないのでありまして、わが国において代替施設を建造する、こういうふうな考えであります。その費用につきましては、そういう建造計画がきまりましたならば、あるいは予備費支出ということになりましょうか、とにかく日本政府において支払いの手続をいたす、こういうふうに考えております。
  328. 堀昌雄

    ○堀委員 それは一体根拠法は何ですか。地位協定に基づいて払うのならこれはわかりますよ。しかし、地位協定も援用できない沖繩に施設をつくるというものの予算措置ということは、どういうことになるのですか。これは沖繩というのは日本の施政権下にないんですよ。一体どうするのですか、そんな支出のあり方。だから、そこの支出のところを大蔵大臣に聞きたい、こう言っているんです。
  329. 田中角榮

    田中国務大臣 まだ移転先がきまっておりませんが、移転をするときに必要な支出、費用が必要となれば支出いたしますと、こう申し上げておるわけであります。予備費は、協定が行なわれるということになれば、国会の議決を経た予算の範囲内で支出をされるものでございますし、その意味で予備費で支払います、こういうことを申し上げておるわけです。
  330. 堀昌雄

    ○堀委員 国内で、地位協定に基づいて支出をするのならば問題はありませんよ。沖繩に施設をつくるのですよ。日本じゃないですよ。国内じゃないですよ。日本でないところに施設をつくる以上は、何か根拠法規がなければ、そんなものをかってにどこへでもずらずら金は使えるはずはないじゃないですか。一体根拠法規は何ですか。
  331. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは臨時緊急な必要に対し予備費を支払う、予備費を使う場合にはそういう根拠によることになります。その背景といたしましては、これはまだ沖繩はわが国には返っておりませんけれども、したがって、地位協定の適用はありませんけれども、これに準じた考え方だ、こういうことでございます。
  332. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの答弁、国内ならいいのですよ。緊急でいまの予備費の使用があってもちっともかまいません。国内じゃないのですよ。沖繩です。もしかりにP3をたとえばトラック島かウエーキ島に置くというときに、どうするのですか。これはやはりいまのようなことで処理ができるのですか。同じでしょう。いまの沖繩とウエーキ、グアム、これは事実上は日本の側から見たら同じことになっているわけじゃないですか。それに対する費用の支出を、いまのように、あなたのおっしゃるように、単に予備費で、それから地位協定に準じてなんという——法律は、準じてなんという取り扱いはないですよ。法律は、何々に基づくということ以外にないのですよ。大蔵大臣、そこはどうですか。——そこから先は財政ですから、それは大蔵大臣。財政だから……。
  333. 福田赳夫

    福田国務大臣 私が申し上げておりますのは、これは臨時緊急の必要に基づきということを申し上げておるのです。沖繩をどうしても早期に返還しなければならぬ。そうしてその内容といたしましては、那覇飛行場を返還せしめなければならぬ。沖繩の県民も非常にそれを急いでおる、そういうことを考えまするときに、P3の撤去、これを行なうことは、臨時緊急の必要である、こういう考えです。しかし、それをさらに裏づけする考え方として、その背景に地位協定はまだ施行はされておらぬけれども、地位協定が施行されるに至りますれば、当然支払い得ることであるということを念のために申し添えておりますので、あくまでも臨時緊急の需要ということで予備費を支出する、さように御了承願います。
  334. 堀昌雄

    ○堀委員 財政は臨時緊急なら何でも使えるというふうにはこれはなっておりません。ですから、その点については、私はいまの外務大臣答弁を納得いたしません。大蔵大臣の答弁を求めます。
  335. 田中角榮

    田中国務大臣 正確を期するために文書を読みます。「一般的にいえば、債務負担を内容とする国際的約束は、その内容が法律、条約等に違反することなく、かつ、その債務負担が国会の議決を経た予算の範囲内であれば国会の承認を要する条約とすることなく、政府限りで取り極めることができるものと解されている。」こういうことは、いまあなたが申されたとおり、何でも無条件に使えるというふうには考えておりません。厳密でなければならぬことは言うをまちません。しかし、沖繩返還というものについては、国会でいま法律やいろいろなものを出して御審議をいただいております。しかも、日本にとっては最大の問題として、いま国会の議論の焦点になっておるわけであります。しかし、それはすべてがテーブルの上に乗っておるものではないわけでございます。ですから、沖繩返還を円滑に推進をし、また、そういう業務が行なわれることは国益に合致することであり、日本人としてなさなければならない最大のものでございます。そういうもので未確定のものが確定をして必要な状態が起こったときに、予算できめられた範囲内の歳出で済むものなら予備費の使用は当然である、このように考えるわけでございます。それは、いま災害が海外に起こった場合、この災害のために援助資金を送る場合は予備費の使用をするわけでございます。そういうものと同じものであって、インドや東パキスタンにおいて難民救済のために予備費を支出することと、この沖繩に起こった問題解決のための予備費の支出というものは、その性質上許されることであって、予備費使用の範囲に属するものである、こう理解をすべきだと思うわけでございます。
  336. 堀昌雄

    ○堀委員 外務大臣はこれまで、予備費で支出するか、四十七年度予算で要求をするか、こういうふうな御答弁をしておられますね。四十七年度予算で要求をするとすれば、それは今度はどういう項目で要求をなさるのですか。款項目はどういうことになりますか。
  337. 田中角榮

    田中国務大臣 これは、四十七年度予算が要求される、いま要求し、十二月中にはきめなければいかぬということでございますから、その間に明確に算定ができ、四十七年度に支出を行なうという目的で予算に要求し、計上ができれば当然予算に要求し、計上し、議決を経べきでございますが、その予算を待つことができなく、四十六年度予算中、すなわち来年三月三十一日までに支弁をしなければならない場合には、予備費をもって行なうということでございます。
  338. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、これは先のことでありますから、事実の問題としては、ほかにもまだこの基地関係の移転の問題で、七千万ドル以外に、いまのこういうような形で、基地移転について同じようなケースで日本が支出をするものというものがまだあるのじゃないですか、外務大臣
  339. 福田赳夫

    福田国務大臣 返還前においてはないと思います。ただ、返還後におきましては沖繩が内地並みになりますから、あそこの基地の移転だとか、そういうようなことに関連いたしましてあるいはそういう問題が起こるかもしらぬ、かように考えます。
  340. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、返還前にそういう支出が行なわれるのはこのP3だけだ、こう確認してよろしいですか。
  341. 福田赳夫

    福田国務大臣 そのとおりでございます。
  342. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは一応そこまでにいたしまして、ちょっと一つ防衛庁長官にお伺いをしたいのでありますけれども、昨日も総理がお答えになっておりますが、沖繩にはこれまで自衛隊は戦前にはなかった、それは台湾があったからだ、しかし、今度は台湾がなくなって沖繩が一番端になったから、それで沖繩に自衛隊を派遣するのだ、こういうふうなお話が昨日ございました。  そこで、一体久保・カーチス協定によって沖繩に六千八百人も自衛隊を派遣するというのは、これは私はなかなか重要な対外的な問題を含んでおる、こういうふうに考えるのでありますけれども、防衛庁長官は、これの真の目的は一体何だと考えておられるのか、防衛庁長官の御見解を承りたいと思います。
  343. 西村直己

    西村(直)国務大臣 たびたびこの席等を通じまして申し上げましたとおり、沖繩本土復帰する、したがって、本土の防衛任務、あるいはまた自衛隊のやっております災害救援なり、あるいは民生協力、こういう任務を果たすために、わが国として必要な最小限度のものを配置する、こういう目的であります。
  344. 堀昌雄

    ○堀委員 いま、防衛のために必要最小限度というふうにお話しになりましたけれども、いま日本全体で自衛隊は一体何人おるのでございますか。
  345. 西村直己

    西村(直)国務大臣 陸上自衛隊は一応十七万九千の定員でありますし、海空もそれぞれ定員を持っております。二十数万の自衛隊員がおるわけであります。自衛官がおります。
  346. 堀昌雄

    ○堀委員 割合としては、この沖繩に対する六千八百人というのは比重がたいへん高いのじゃないですか。
  347. 西村直己

    西村(直)国務大臣 比重が高いといえばいささか高い面もあります。しかし、これを全日本に比べてみますと、たとえば北海道のような地域ははるかに高いし、約五万近くああいう大きな師団が行っております。また、九州の平均よりは沖繩のほうが——今回かりに六千八百という数字を当ててみましても、人口に対する割合はまだ九州のほうが高い。しかし、ある程度高い理由は、島が非常に多くて、距離が離れている。したがって、御存じのとおり、ああいう自衛隊の作業というものは、最小限ではありましても、ただ三十人行けばいい、五十人行けばいいというようなものでは完成しません。やはりある程度の基幹的なものがあって、それに支援するような部隊がついていかなければ作業ができない。こういう意味で、離れておるという関係もあって、全国的に見ると少し密度は高い。しかし、最小限のものである。
  348. 堀昌雄

    ○堀委員 密度が高い点には、私はよその国からいろいろ誤解を招く要素が含まれておるという感じがしてならないのでありますが、防衛庁長官は、十月十一日に外国特派員クラブで、アジア諸国に対する自衛隊の災害派遣問題というのをお話しになりましたね。一体これはどういう真意でお話しになったのか、承りたいと思います。
  349. 西村直己

    西村(直)国務大臣 むしろそれよりは、私の話の中心は、自衛に徹する、こういうことを、今回プレスクラブで私の考え方を申し上げたわけであります。言いかえますれば、自衛隊というのは抵抗組織であり、言いかえれば、攻撃があった場合に初めて反応する反応組織でもある。しかもそれはきわめて限定されたものである。日本の憲法の体制、非核政策をとる、あるいはシビリアンコントロールをとる、攻撃的兵器は持たないというような前提のもとに話をしまして、そして、しかもできるならば、それはできる限り民生にも協力するような部隊でなければいけない。言いかえれば、率直に申しますと、日本の自衛隊というのは、海外へ出て武力などで活動することは絶対にないんだ、自衛に徹するものだ、新しい一つの考え方の自衛力である、こういうことを申し上げました。その際に、ただそうなるというと、国連協力全然一切ないか。私は、国連のいわゆる監視機構というようなものでも問題があると思う。したがって、最後に残されたのは、協力面といえば人道主義以外にないじゃないか。しかし、それは個人の意見であり、これから長い将来に向かっての研究課題である、これを申し上げております。ただし、その場合でもいろいろな条件がある。たとえば、国民が賛成するとか、あるいはなにが賛成するとか、非常に条件がある。しかも、自衛隊として行くのではなくて、政府なり民間なりが、何かそういう活動をする場合の中において、機関として機能を発揮する以外にないじゃないか、こういう趣旨のことを申し上げただけであります。
  350. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの御答弁、ちょっとおかしいんじゃないでしょうか。自衛隊が行くんじゃないとおっしゃっておられますけれども、技術集団として自衛隊がやれることを当該被災国にやりたい、こう言っておられますね。自衛隊がやれることを、こうおっしゃっているのですから。いまあなたは、自衛隊として行くんじゃない、こうおっしゃったけれども、正確には、自衛隊で行く、こうなっていますが、どうでしょうか。
  351. 西村直己

    西村(直)国務大臣 その前提に私は申し上げております。政府その他がやる以外に、というのは、もちろん政府その他がかりに救援に立った場合、しかも技能集団、なお、それ以外に——質問の過程におきましても、私はそれをしっかり申し上げておりますし、それから同時に、これは一つの理想の姿であるということも、質問の過程に御説明を申し上げておる。言いかえれば、私個人のもので、防衛庁の意見でもないが、しかし、そういう一つの新しい軍隊としてというか、そういう組織だから、そういうものを将来研究するのはいいじゃないか、こういうことを私は、質問応答も同時に世間へ発表しておりますが、それにも詳しく申し上げております。しかも、これは長い将来にわたっての一つの私の個人としての研究課題ではないか、こういうことを申し上げている次第であります。
  352. 床次徳二

    床次委員長 楢崎君から関連質疑の申し出がありますので、この際これを許しますが、きょうは理事会の申し合わせでもって時間がきめられておりますので、ひとつ申し合わせの時間をお守りをいただきたいと思います。楢崎弥之助君。
  353. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 きょうはちょっとかぜで熱発をいたして、声が小さいかもしれませんが……。  いま防衛庁長官は、アジア災害出動の問題について個人的な見解ということを強調されておっしゃいました。それでは、いまのあなたの個人的見解でけっこうですが、その西村構想なるものは、現行憲法及び自衛隊法で可能と思われておりますか。
  354. 西村直己

    西村(直)国務大臣 もちろんそのためには前提がございます。もしかりに、そういう——これは研究課題として私は申し上げたわけでありますが、かりの場合でも、もちろん国会というものがこれを賛成しなければならぬ。それから、それに必要な法規あるいはそういうものがいかなければならぬ。したがって、そういうことはあくまでもプライベートに——前段というものは、もう一切自衛に徹する、限定されたる中においての反応組織としての戦略を持ち、同時に、しかも自衛力というものが国民に根ざし、国民の自衛隊に返るには、できる限り民生協力等も拡大をしていくという、これがほんとうの将来の日本の自衛隊ではないか、こういう前提に立っておるわけであります。したがって、私の個人の意見というものも、長い将来における一つの理想の姿である。その前提には、国会、国民あるいは関係法令、もちろん憲法を含めて検討もされるでありましょう。そういうものが許された場合にという前提に立っているわけであります。
  355. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 委員長が御注意なさっておるように——そんなことを私は聞いてないのですよ。簡単に答弁するように、ひとつ委員長御注意してください。  私は、現行憲法あるいは現行自衛隊法のもとでその構想は可能かということを聞いているんだから、可能でないならないとおっしゃればいいんです。
  356. 西村直己

    西村(直)国務大臣 もちろん、むしろ現行法令におきましては、われわれは、自衛隊が自衛隊そのもので海外に出るということは考えられておりません。
  357. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 じゃ可能でないわけですね、現行憲法あるいは現行自衛隊法では。可能でないそのような構想をあえて発表されるその真意は一体何です。あなたの御希望は、憲法あるいは自衛隊法を改正してでもこういう構想が実現されるようにという御希望なんですか。
  358. 西村直己

    西村(直)国務大臣 私の全体の真意をくんでいただければわかると思います。私は、今日ときおり問題になりやすい国連協力、しかも、それが平和維持機能の協力でさえも、これは現在の参議院の決議、また同時に、言いかえれば、平和維持機能のような問題であってもなかなか問題があるんだ。したがって、残されたるものはもう人道上の問題、しかし、それにも、国会の承認であるとか、あるいは法律の整備であるとか、そういう問題がある。ただ、私としては、これは一つの研究すべき問題だ、ただ、国内でとどまるにしましても、技能というもの、しかも、それは自衛隊として行くんではないんで、技能者の技能を使ってもらうという方法があり得るかどうかということを申し上げただけであります。
  359. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 必要な場合はあなた方は自衛隊法を改正しているじゃありませんか。たとえばオリンピック支援、南極観測協力、これは改正というよりも、追加してやっている。必要ならするんですよ。だから、あなたはあなたのいまの構想が必要ならば改正してでもやりたいんですかと、それを聞いておるんです。そうじゃないならないでいいんですよ。それはどうなんですか。
  360. 西村直己

    西村(直)国務大臣 私は研究の課題として申し上げているだけであります。
  361. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それじゃ憲法あるいは自衛隊法を改正してでもやる、研究するんですか。
  362. 西村直己

    西村(直)国務大臣 いろいろな諸前提のもとで私自体が個人として研究することは、これは自由に許されたるものだと思います。
  363. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなたは衆議院議員であると同時に、佐藤内閣の重要な防衛政策をになっている防衛庁長官です。外人の記者クラブへ行って、防衛庁長官としてお話をしておるんでしょう。あなたが個人衆議院議員西村さんなら外人記者クラブも話を聞かぬでしょう。防衛庁長官だから聞いているんでしょう。私もまだお呼びがない、普通の衆議院議員だから。防衛庁長官だから聞いているんです。それに、そういう重大な席で、個人的な見解と言ったって通りませんよ。いいですか。いまどういう時期か、あなた認識しているのですか。いいですか。いまアジアの国々が日本をどういうふうに見ているか、それに対してあなたは認識しておられるのかどうか、私は非常に疑問に思うのです。第一、日本の対外援助政策のあり方、これが非常な批判がアジア諸国で行なわれておる。そしてまた日本の軍国主義化ということがやはりアジア諸国で懸念されておる、そういう時期なんです。そして、アジア諸国が最もおそれておるのは、この経済大国、軍事膨張主義、それと軍国主義と申しますか、軍事膨張主義が結合することを一番おそれているのです。このような時期に、あなたが、アジア諸国への災害出動、自衛隊の出動です、そういう構想を出されたときに、どのような反響を呼ぶかぐらいは、防衛庁長官ならば御存じのはずだと思うのです。もう東南アジアのマスコミがどういう批判をしておりますか。たいへんな批判をしております。個人的な見解では通りませんよ、それは。いいですか。  私がなぜこれを心配するかというと、先ほど堀委員が出されました、沖繩に進駐する自衛隊の任務は一体何なのか、真の目標は何なのか。返還協定の前文は、日米共同声明を基礎としておる。その日米共同声明の中に、問題の台湾条項と韓国条項がある。ということは、この沖繩の派遣自衛隊の目標は一体どこかということを、それと韓国・台湾条項と結びつけたときに、非常にわれわれは危惧を感ぜざるを得ないのです。  そこで、あなた方は、九月二十九日から十二日間、海上自衛隊ですが、船団護衛の大演習をなさっていますね。これはどういう目的ですか。
  364. 西村直己

    西村(直)国務大臣 九月から十月にかけましての演習は、通常の、長い間準備された、何ら変わるべきものの特別な演習ではございません。海上において、あるいは警備であるとか、あるいはいわゆる哨戒でございますね、潜水艦に対する警備活動とか、そういうものを訓練の目標といたしたわけであります。
  365. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなた方は、緊急の際に、一応南西航路と称するもの、確保すべき航路の範囲、あるいは南東航路、確保すべき航路の範囲、つまり制海権と申しますか、それとの関連が出てくるわけですが、そういうものを想定しておられますね。御説明をいただきたいと思います。
  366. 西村直己

    西村(直)国務大臣 海上自衛隊のいわゆる任務は、日本周辺を中心にしました海上警備であります。
  367. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それはどのような具体的な範囲ですか。
  368. 西村直己

    西村(直)国務大臣 私の承知しているのは、日本周辺を中心にしましたものであります。したがって、自衛というものの範囲を逸脱するつもりはございません。
  369. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そんな、私がこのような質問するときに、そういう答弁しちゃいけませんよ。緊急の際に確保すべき南西航路、南東航路は、長さがどれくらいで幅がどれくらいときめているでしょう。具体的に言ってください。
  370. 久保卓也

    久保政府委員 南東航路は、東京湾からサイパン方向、ほぼ幅百マイル、長さが千マイル近くになります。それから南西航路は、大阪、九州を経て琉球列島の端まで、幅やはり百マイル程度、長さはちょっと記憶にありませんが、これも千マイル近くではなかろうかと思います。
  371. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 幅四百二十キロ、長さ千六百キロではありませんか、南西航路は。
  372. 久保卓也

    久保政府委員 千六百キロとおっしゃいましたが、千マイルを陸マイルで計算しますと千六百になります。海マイルであれば千八百キロになります。それから幅百マイルでありますから、約百八十キロくらいである。これは目下われわれのほうで検討しておる内容であります。
  373. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうしますと、緊急の際はこれが確保のために全力をあげられるわけですね。
  374. 久保卓也

    久保政府委員 必ずそれぞれの航路を使うということではありませんが、海上自衛隊の防衛力というものが十分でありませんので、集中的にそういった海域を哨戒するほうがより効果的ではなかろうかという判断であります。
  375. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、先ほど指摘をしました九月二十九日から十二日間の海上自衛隊の船団護衛演習は、この航路と関係ありますか。
  376. 久保卓也

    久保政府委員 ただいま申し上げましたように、必ず航路帯を設定して哨戒をするとは限りません。効率的にやるためには航路帯を設定したほうがいいであろう。しかし、その間を通過する、航行する商船も相当あるわけでありまして、そういったものの哨戒も考えております。ただし、今回行ないました演習につきましては、そういった航路帯もしくは航路帯の間の哨戒とは関係ありませんで、日本周辺の海域の中で適当な海域を選んだ、そういうことだけであります。つまり、基本的な基礎的な訓練を行なうのに適当な場所を選んだ。したがって、航路帯を選定をしてそこに重点を置いた訓練をしたということではございません。
  377. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 防衛庁長官、私は、あのアジア諸国への災害出動、これは海外派兵の一つの突破口である、その構想はそう思わざるを得ないのです。防衛庁筋の——筋とあえて言っておきますが、防衛庁筋の方々に聞きますと、敵前上陸の演習なんかやっておらぬという話ですが、そうですか。
  378. 西村直己

    西村(直)国務大臣 重ねて申し上げますが、ただいまの航路帯の一応の考え方というものは、四次防に関連して一応考えられています。私自体としましては、これ自体もまだ検討事項でありまして、はたしてあれだけの航路帯というものを——いまの海上自衛隊、また近くの海上自衛隊で、とてもそういうようなものを想定してやっても無理だ。主力はやはり日本の周辺の海域を中心にし、ただ状況によってはそれを機動的に扱うということはあり得ると思うのであります。
  379. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 委員長、いまお聞きになっておって、私の質問答弁したと思われますか。——総理からですか。
  380. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政府といたしましては、災害であろうが、海外派兵、さようなことは考えておりませんから、自衛隊を派遣するようなことは考えておりません。先ほど来いろいろ誤解を受ける節もあるようですから、はっきり政府の考え方を申し上げておきます。
  381. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、西村構想はそれじゃどう思われますか。
  382. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 西村防衛庁長官は、先ほど来、個人的な研究の課題だ、こういうことを何度も申しております。しかし、研究の課題だ、かように申すと、いかにも政府自身が取り組んでおるようでございますから、そこに誤解を受けるだろうと思いますので、あえて私が立って、さような考え方ではない、こういうことをはっきり申し上げたわけであります。
  383. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、国防会議議長としての総理にお伺いしますが、上陸作戦の演習なんかまさかしてないでしょうね——総理に聞いているんです。
  384. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、演習の実態について一々相談は受けておりません。しかして、ただいま言われるような、まさか、海外の上陸演習、さようなことはやらないだろう、かように思っております。
  385. 西村直己

    西村(直)国務大臣 日本の自衛隊が海外へ出る、武力としても海外へ出る、こういう考え方はないわけでありますから、したがって、敵前上陸などを想定してやるということはあり得ないわけであります。
  386. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 統合幕僚会議教範5−0、表題は「海上作戦輸送教範」昭和四十六年二月、統合幕僚会議、この教範がございますか。
  387. 久保卓也

    久保政府委員 私は承知いたしておりません。
  388. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 すぐ承知されるように調べてください。あるかないかだけでよろしゅうございます。
  389. 床次徳二

    床次委員長 楢崎君、質問をこの際続けていきますか、別の問題で。
  390. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あるかないかわからないで、私が内容を質問して答えられますか。答えられますならば質問を続けます。
  391. 久保卓也

    久保政府委員 御質問にもよりけりだと思いますけれども、あるかないかの有無だけを調べて答えろということですけれども、内容を見てないわけでありますから、その御質問に応じてお答えできるかどうかとなろうと思います。——ただいまお話しの教範はございますそうです。
  392. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは四十六年二月、まさに沖繩に対する自衛隊の配備が日米の間で交渉されておった時期であります。私はこれを見て驚きました。いまあなた方は、敵前上陸作戦の演習なんかするはずがない、総理も含めておっしゃいましたが、どうぞひとつ総理、これを取り寄せて見てください。いいですか。これの想定——これは教範ですよ。ちょっと読んでみますかね。ないそうですから。いいですか。「海上作戦輸送は通常制海及び航空優勢を確保して行なうが、作戦間、敵航空機及び潜水艦による攻撃、並びに機雷による脅威が予想される。また、発地及び着地は味方の支配する海岸または港湾であるが、ゲリラ活動、謀略活動等については考慮する必要がある。」そして「海上輸送作戦は一般に計画、船積み、洋上移動及び揚陸の四段階からなる。」揚陸です。これが上陸です。いいですか。(発言する者あり)委員長、ちょっと静かにさせてください。
  393. 床次徳二

    床次委員長 静粛に願います。
  394. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これの想定をあなた方見もせぬで、何を言うのですか。
  395. 床次徳二

    床次委員長 静粛に願います。御質問をお続けください。——質問を続けてください。
  396. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私はこれを読みまして——図解もしてあります。ちゃんと図解してあるのです。これを読みまして、私は、あの沖繩にアメリカ軍が大挙して上陸してきた、あの上陸舟艇でやってきた、あるいは朝鮮戦争のとき仁川に逆上陸をした、あのときのことを想定せざるを得ないのです。日本の本土でこういうことが行なわれるか。ここに図解があります。まさに私がいま申し上げたような状況をほうふつさせる図解であります。そしてこの中に、あなた方は民間船を雇い入れるようになっている。ネバダ、キャンベラ、ブラジル、スエズ、パナマ、これはどういう船か御存じですか。
  397. 久保卓也

    久保政府委員 承知いたしておりません。
  398. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなた方は、四十三年度の海上自衛隊演習、このときに民間からタンカーを雇い入れて演習されましたね。英雄海運です。そうしてこのような結論になっておるのです。「民間船舶を雇い入れる際、業者の誠実性に依存するところが大であるから、常に適格業者を確保しておく必要がある。拿捕、触雷及び被撃等に対する損害の補償等について、船員に対する身分の保障、及び遺族の補償について、さらに雇い入れる際には、船員の素質についてあらかじめ調査する必要がある。」こういうふうになっているのです。そして、いま申し上げた船が雇用の対象になっておる。どういう船か、申し上げておきましょう。ネバダ、これはニューヨーク航路であります。一万百八トン、川崎汽船、貨物船であります。キャンベラ、香港航路の定期船であります。これは貨物船、四千八百三十九トン、関西汽船であります。ブラジル、これは三井商船、南米東岸航路、一万二百十六トン。スエズ、三井商船、八千五十一トン、これはニュージーランド航路であります。貨客船。パナマ、三井商船、九千百九十一トン、これは中近東航路、貨客船であります。つまり、ここで雇入れの対象になっている五つの船のうち、三つは香港航路、ニュージーランド航路、中近東航路、こういうことをあなた方やっているのです。防衛庁長官、あなたあまりうそを言っちゃいけませんよ、うそを。実態をよく知って、指導しなくちゃだめです。
  399. 西村直己

    西村(直)国務大臣 私はその教範自体は見ておりませんが、しかし、御心配ないように、かなり一生懸命になりまして把握をしておるつもりであります。演習内容なども聞いております。その事態は昭和四十六年、ことしの冬でありますから、私着任以前でありますが、いずれにしましても、海上自衛隊につきましても陸上自衛隊につきましても、海外へ出てそういうことをやろうというのではなくて、国内を守るために、私どもは平時の努力もいたしますが、同時に、最悪の状態の場合に、ある地域が相当広範囲にたとえば占領という既成事実をつくられた場合に、海上なり陸上なりいろいろな輸送力なりをもって、しかも信頼し得る民間の協力も得てやるという演習想定なりするということは、これは自衛隊の本来の任務である、こういうふうに御解釈を願いたいのであります。
  400. 床次徳二

    床次委員長 楢崎君に申し上げますが、関連質問でありますので、申し合わせの時間の範囲内におさめていただきたい。もう時間が迫っておりますし……。
  401. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 先ほどあなた方は何分もあれしたじゃないですか。
  402. 床次徳二

    床次委員長 いや、その時間も十分計算しております。  なお堀君の質問の時間が若干必要だと思いますので、御考慮ください。
  403. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 御協力をします。  そこで、このような内容をお持ちにならぬからあれですが、いま西村長官がまさかとおっしゃっていることが想定の中に入っているのですね。だから、それは出てきた上でまた議論しましょう。このような敵前上陸作戦訓練教範、これが久保・カーチス協定及び先ほどのあなたのアジア災害出動、これとからんだときに、われわれは、沖繩に対する自衛隊の進駐、この目標がどういう目標を持っておるか、たいへん心配になるのですよ。とにかく、あなた方はいままでだってたくさん国民の前にものを隠してきた。大事な問題を。  ここで総理にちょっと念を押しておきたいのですけれども、総理も国際信義ということをおっしゃいました。福田外務大臣総理よりもたくさんことばを費やして、人間は信用が大事であるということをおっしゃった。信用ということは、言ったことを実行することです。口と腹と違っちゃいけません。二枚舌を使っちゃいけません。これが一番人間にとって不信のもとになる。  そこで、急げとおっしゃいますから、いまの不信の点について、私は防衛庁長官が信頼できない。先ほどは、外人記者団に対して、個人的な見解としてああいうことをおっしゃった。今度は、あなたは防衛庁の記者クラブでたいへんなことをおっしゃっておる。先ほど申し上げたとおり、この返還協定は日米共同声明の台湾条項とからんで、中国問題というのはたいへんなんです。だから、日中国交が正常化されるということは、アジアの平和にとって大きなかぎになる、こういうふうに思うのです。そこで、防衛庁長官が中国に対してどのような考え方を持っておられるかということも、非常な重大ながかわり合いがあると私は思わざるを得ません。  あなたは、十月二十六日、国連においてアルバニア決議案が通過した日ですが、この日の朝、院内の政府委員室において記者会見をなさったはずであります。どのようなことをこの席で述べられたか、ひとつ正確にありのままをおっしゃっていただきたいのです。
  404. 西村直己

    西村(直)国務大臣 別に私は、その日のことについて、普通のことをしゃべったと思いまして、何ら記憶はございません。
  405. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは済みません、この資料を、委員長にお断わりしてありますから、ちょっと配っていただきたい。
  406. 床次徳二

    床次委員長 それでは配付いたしますから、時間内に終わっていただきたいと思います。
  407. 堀昌雄

    ○堀委員 早く配ってくださいね。  実は私の手元にこういう資料があるわけです。この会見の中で、新聞記者の皆さんが、「閣議では中国の国連加入問題で何も話はなかったのですか」、こういう記者団の問いに対して、防衛庁長官は「いや何もなかったが、大体、中共が国連に加入することは、事態をますます悪くする。国連というものは、小国も大国も同じ票をもっている。いわば田舎の信用組合のようなものだ。田舎の信用組合は一万円も出せば会員になれる。みんな一票をもらえる。」「何かまずいことがおこると、俺にも権利があるといって騒ぎ、あげくのはてには、ソロバンでなぐり合うようなことになる。国連もまさにその通りだ。中共がはいってくれば、国連はますます悪くなるかもしれない。決してよくなるとは考えられない。動揺して国連中心が果して続くかどうか疑問だ。アメリカは大国だが、」——その次はちょっとミスプリントであります。モルジブという国であります。「モルジブなんかひどい国だ。……の土人国だ。こういうのも一票もっているんだ。」こういうことが述べられたというふうに、実は私の手元に資料があるわけであります。  そこで、防衛庁では記者会見をされたときには正確な記録が最近は残されておるというふうに聞いておりますけれども、この日の記録をひとつ御提出をいただきたいと思います。
  408. 西村直己

    西村(直)国務大臣 私はそういうような発言をしたことは覚えておりません。
  409. 堀昌雄

    ○堀委員 記録はとっておられますね、防衛庁長官
  410. 西村直己

    西村(直)国務大臣 記録も私はおそらくないと思います。記者会見でございますから、一々そういうものはないと思います。
  411. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 長官官房の広報課長はおられますか。——おられませんか。  防衛庁の広報課は、大臣の記者会見は毎回テープにとっておるのです。それは筆写して保管されておる。そういうことをするところなんですよ、広報課というのは。あなたは首振っているけれども、あとでまたまずいことが起こります、そんなことすると。その筆写を担当しているのは、柏木という二佐の方です。おられますか。——いや、そういう方が広報課におられますかと聞いているんですよ。
  412. 久保卓也

    久保政府委員 私の答弁する場ではございませんけれども、おります。
  413. 床次徳二

    床次委員長 楢崎君、時間ですから、結論を急いでいただきたい。
  414. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 柏木二佐は、この日のテープを筆写しておるはずです。どうぞ問い合わせてください。
  415. 床次徳二

    床次委員長 堀君、楢崎君に申し上げますが、資料の御要求に対しましては、委員長のほうからその旨をさらに伝えますが、時間の関係がありますので、結論をお急ぎいただきたい。
  416. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 防衛庁長官がうそをおっしゃっているから、これを言っているんです。これは重大問題ですよ。
  417. 床次徳二

    床次委員長 政府答弁しますか。
  418. 久保卓也

    久保政府委員 いま本庁のほうに問い合わせておりますので、後刻お知らせしたいと思います。
  419. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは非常な重大な発言だと思います。もし事実であったら、これほど国連を侮辱した話はない。中国が国連に加盟して、日本の中川大使は歓迎の辞を述べております。それに対して、中国が入ったら国連は悪くなる。何ですか、これは。これは中華人民共和国に対する最大の侮辱です。私は、もしこれが事実なら、たいへんな問題だから、徹底的に明らかにする必要があると思います。
  420. 西村直己

    西村(直)国務大臣 私に関することですから、はっきり申し上げておきます。  私は、国会のいろいろな委員会の場を通しましても、中国が国連に加盟されたことは、アジアの状況については好ましいことである、歓迎すべきことであると、公式にしばしば発言をいたしております。したがって、そういうような発言をした覚えばございません。
  421. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この全文は中曽根総務会長が持っておられるはずです。これは国際信義にかかわる重大発言ですよ。ほっておけません。
  422. 堀昌雄

    ○堀委員 これは私はたいへん遺憾な事実だと思っておるのでありますけれども、ここまで問題が明らかになってまいりましたら、やはり正しい資料をお出しいただいて問題を解明しなければ、これは総理がこれからやろうとしておられる中国問題に対しても大きなマイナスになるし、あわせて、この中で、モルジブというような特定の、それを小国ということで取り上げられておることも、これも実は国連の問題と関連してきわめて重大な問題だと思います。あわせて、そういう立場におられる防衛庁長官が担当されておる法案が実は当委員会にもかかっておるわけでありまして、このことは総理としては十分お考えをいただかなければならぬ問題だと私は考えます。  ついては、いま委員長のほうから、あとの発言者の時間等もあって私の発言を急がれておりますので、資料をひとつ御提出をいただいて、委員長にお願いをしたいのですが、三日の委員会の冒頭に、これに関する部分だけについてひとつ発言を認めていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  423. 床次徳二

    床次委員長 ただいまの堀君の申し入れの資料要求並びに今後の取り扱いにつきましては、理事会にはかりまして善処いたします。
  424. 堀昌雄

    ○堀委員 どうかひとつ、総理大臣、この問題は非常に国民としても大きな疑惑を持つ問題でもありますので、総理御自身でひとつこの問題を解明をしていただいて、三日の日にそれ相応の御発言をちょうだいをしたいと思いますので、以上で——総理のひとつ御見解をちょっと伺っておきたいと思います。
  425. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの御意見並びに御疑問とされるところは、私自身も冷静に承ったつもりでございます。また、西村防衛庁長官から、さようなことはないとはっきり申したこども、これまた私の記憶にあるところでございます。しかし、問題がこうなれば、私自身もそれを明確にする責任があるように思います。
  426. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは終わります。
  427. 床次徳二

    床次委員長 伊藤惣助丸君。  この際、防衛庁長官より発言を求められておりますので、これを許します。西村防衛庁長官
  428. 西村直己

    西村(直)国務大臣 昨日、本委員会におきまして、伊藤委員から調査要求がありました点につきまして、結果を御報告いたします。  御指摘の件につきまして、直ちに調査いたしました。そうしまするというと、シンボルマークと申しますか、これはいろいろでありますが、ファイア・シンボルと申しておりますが、消火の標準を示すものであって、いわゆる消火標識、こういうふうにわれわれは解釈をいたしました。その中にシンボル4というものが確かにございます。そのシンボル4の弾薬庫は、内容によってクラス4から5というふうに五段階に分かれているわけでありますが、そうして4から7までの爆発物を貯蔵する、こういう貯蔵庫のしるしであります。これらの爆発物は、いずれも通常の高性能の爆薬または弾薬であって、4から5、6、7と行くに従ってその爆発の程度は高い、こういうことが判明したわけであります。したがって、ただいま横田基地の弾薬庫の表示が、核兵器や化学兵器、こういうものではなくて、通常の弾薬あるいは爆薬である、こういうふうに、私どもの調査の結果明らかになりました。  なお、横田基地の性格は、戦略基地の性格ではございません、補給基地でございますから、普通の軍事常識からまいりますと、あそこに戦術核兵器等がある、こういうことは言えないと私ども思って、そういう意見で、核にあそこが関係あるということは御懸念はない、こういうふうに確信をいたしております。
  429. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私はいま長官から答弁いただきましたが、その質問に入る前に、先ほどの質問の中で、防衛庁長官の発言が引き合いに出されました。この問題について、これが事実であれば、はなはだ遺憾であると思います。そのことを一言申し述べて質問に入りたいと思います。  そこで、長官は、ただいまの説明を伺いますと、シンボルは一から5まであるとおっしゃったのでございますか。——4ですね。それでは私が申し上げたとおりであります。そこにはクラス1からクラス7まで入っておる。それが一から4の中に分類されておる、こういうことでございますね。そういたしますと、きのうも写真でお示しいたしましたけれども、沖繩にあるメースBの基地は、御存じのように、あれは中距離弾道弾専用のものであります。そのシンボル4はどういうことになるのか、さらに、辺野古にあるシンボル4についてもそれはどうなるのかということでございます。
  430. 西村直己

    西村(直)国務大臣 沖繩は、御存じのとおり、アメリカの施政権下に現在あるわけでありますから、沖繩に私どもは核があるとかないとかということは、アメリカ施政権下のもとでありますから、云云はできません。ただし、返還の、言いかえれば復帰の時点においては核はないということは、もうしばしば日米間において明言されておる状態であります。事、本土に関しまして、特に横田という地点について、シンボルマークが4ございましたので、これを中心に私どもが調べた結果、核には関係ないということが明らかになった次第であります。
  431. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 防衛庁長官、伺いますが、要するに、シンボル4というのは核はないという御答弁について私がいま質問しているわけであります。長官は核はないと言うだけでございますが、御存じのように、メースBは核専用の中距離弾道弾である、これはもうだれでもが知っていることであります。その基地にあるシンボル4はどうなのかということであります。もしシンボル4に核がないとするならば、メースBは核のない中距離弾道弾であったということになりますが、その点はいかがですか。
  432. 西村直己

    西村(直)国務大臣 少し詳しく申し上げますと、シンボル・クラス1というのは、大体比較的軽いものでありますね。それから、シンボル2、これも信管とか雷管類、こうして順々に追いますと、ファイア・シンボル4の中で、4、5、6というものがございますが、7のものは、対戦車地雷であるとか、あるいは二八〇ミリりゅう弾とか、成形爆薬とか、ロケット弾頭等、あるいは高性能爆薬、爆弾、こういうようにわれわれはアメリカの資料によっても明らかになっているわけであります。事柄は、沖繩自体については、私どもは、これはアメリカの施政権下でありますから、これは直接の資料等は得られないわけであります。
  433. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私がいま聞いている問題は、メースB基地にあったシンボル4はどういうことなのかという一点だけであります。ほかのことは、私はここにもございますし、長官もお持ちのようですから、まずその点を明確にしないと問題の本質がわからないわけであります。ですから、長官に、メースB基地にあったあのシンボル4というものは核を含めたものなのか、非核専用なのか。辺野古も、御存じのように、サブロックだとか、あるいはまたポラリスであるとか、いろいろなことが言われておりますけれども、あることはこれもまた公然の秘密の基地であります。そこにある4というものはいかなる性格のものかということであります。私は、このシンボル4というものは、確かに核以外のものがあるかもしれません、しかし、このシンボル4というものは、核を含む危険なものを貯蔵するシンボル4である、標識である、こういうふうに認識するわけでありますが、その点、長官、いかがですか。
  434. 西村直己

    西村(直)国務大臣 私どもは、沖繩に関しましてはいろいろ内容的に調べる方法がございません。したがって、国と国との間でいろいろ御希望に沿うて努力していかなければなりません、少なくとも返還時に。ただ、具体的に申しますと、昨日は、国内の横田の基地、これに対してのシンボル4、私どもはこういうものは明らかにしたい、そうしてその結果、ただいま申し上げたような結論を得たわけであります。
  435. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 長官、これはきのうお見せいたしましたね、シンボル4でございます。実は第五空軍が管理する部隊は、これは全部日本も沖繩も第五空軍の傘下にあります。メースB基地は第五空軍の部隊であります。そこで扱う弾薬貯蔵の扱い方は全部同じであります。あなたの答弁は、シンボル4は核が入ってないとするならば、あの沖繩にあったメースBの基地は、それでは核がなかったということなんですか。
  436. 西村直己

    西村(直)国務大臣 沖繩ではどういうふうな扱いをいたしておるか、これは私どもの関知するところではありません。本土について私は責任をもって調べて、その結果、そういうような結論を得たわけであります。
  437. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それでは、このシンボル4についてどのような表示があるのか、長官、答えてください。これは第五空軍現在運用中のものであります。この中には、シンボル1から4まで、核を含めて、クラス1から8までの分類がどういう弾頭であり、どういうまた影響があるかということが詳しくここに書かれてあります。長官もお持ちのようでございますから、シンボル4についてだけでけっこうであります。その説明を願いたいと思います。
  438. 西村直己

    西村(直)国務大臣 私のところで米軍にも照会し、また資料等を得まして、横田基地に関するシンボル4としては、ただいま申し上げましたような各種の高性能の弾薬であるとか爆薬であるとか、こういうことはわかりまして、さらに、これは通常のものである、核ではない、これは明らかになりました。と同時にまた、横田は御存じのとおりに補給基地でございます。補給基地に核があり得るということは、私どもは、普通の常識では考えられないところであります。
  439. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 防衛局長に伺います。長官は、何回聞いても、あまり知識はないようでございますからね。  申し上げますが、このメースBの基地にあるシンボル4というのは、この記号は、核がないという記号でございますか。
  440. 久保卓也

    久保政府委員 私どもで確認をいたしましたのは横田についてでありますが、また一般的にシンボル4の意味合いにつきまして、資料及び米側について調整をしたところであります。ところで、それからしますると、いま御指摘のように、メースBについての若干の矛盾が出てまいるかもしれません。これを私、合理的に説明できませんが、いまの写真に出ているものがもしメースBを撤去後であるとするならば、その使用形態においてあるいはシンボル4を驚いたのかもわからない。いずれにせよ、メースBの基地の4について十分合理的な説明はできません。
  441. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 これは写真でも明らかなように、このシンボル4というものは、核を含むきわめて危険なファイア・シンボルでございます。そしてそのシンボル4の中にあります弾頭あるいは弾薬は、どういう種類のものが貯蔵されているか、その点について政府から明確に伺いたいと思います。
  442. 久保卓也

    久保政府委員 シンボル4の中にある弾薬の種類を申せということでありますが、中身はクラス4から7まで長官が申されましたようにございますが、そのクラス4と申しますのは、中口径の固定弾、それから対人地雷などでありますし、クラス5は、ほぼ同じでありますが、やや口径の大きいものとロケットモーターなどであります。それからクラス6がりゅう弾あるいは一二〇ミリりゅう弾等で、相当程度危険性の高いもの、クラス7は爆弾、対戦車地雷、二八〇ミリりゅう弾その他で、全体が連続的に非常に高い燃焼あるいは爆発を起こすもの、そういったようなものがクラス7となっております。以上のものがこのファイア・シンボル4に入っておるようであります。
  443. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 その資料はどのような資料ですか。
  444. 久保卓也

    久保政府委員 これは米側の好意によって提供を受けました米陸軍技術教範でありまして、これに基づいて米側に確認をしたということであります。
  445. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 先ほど防衛局長から、メースBのシンボル4は、メースBが撤去後につけたシンボルだというようなお話がございましたが、とんでもございません。私たちが沖繩に調査に行きましたことしの八月、弾頭のみ取り除いたあと、ランチャーその他がまだ残存しているときに、このシンボル4があったのであります。間もなくこのシンボル4もなくなりました。したがって、私たちは、このシンボル4というものは、核を含む最高に危険な弾薬を貯蔵するシンボルである、このように思うわけでありますが、その点について確認したいと思います。ここにその、現在運用中の弾薬及び兵器の取り扱い、これをお見せいたしますから、それによってまた答弁してくださってもけっこうでございますよ。その点いかがですか。
  446. 久保卓也

    久保政府委員 私どもの資料によりますと、シンボル4は、あくまでも通常弾薬系統のものになるということであります。  そこで、メースBの場合に、いまお説のような過渡的な段階で4がつけられたのであるかもしれない、これは確認しておりませんので、私が確言申し上げるわけにはいきませんが、やはり以前から4があったかどうか、そこのところはまだ少し疑問に思っております。
  447. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それでは、私の持っておりますものと局長の持っておりますもの、多少違うようでございますから——それは大体の資料を伺って答弁したわけでしょう。私は、現在運用中のその資料に基づいて申し上げますから。  まず、「この火災標識シンボル4というものは、弾薬の、クラス4から5、6、7の爆発物を貯蔵してある。この地区には八角形のシンボルを用いている。このシンボル4の物材を包む火事では、物材の性質が厳密にわかっているか事態の程度が正確にわかっているか、消火行動を正当化する何らかのきわめて特殊な事情のない限り、一般的には消火行為を行なってはならない。」とあります。通常弾薬であるならば、消火行為を行なってはならないと、こう規定することがおかしいのじゃないかと思いますね。そうしてしかも、「もし物材自体に引火するように思えた場合には、すべての消防班員は最小限一千フィートの距離まで、あらゆる消火器材とともに後退しなければならない。さらに、大量の爆発物がある場合にはもっと離れたところへ避難すべきである。またシンボル4の火事に取り組む決心をするということは、自分も部下の消防員も消火器具も、すべてきわめて危険な状況下に置くことである。自分たちの後方でいつ爆発が起こるかもしれないとき、一千フィートという距離は後退するには長い距離なのである。消防員の安全性が疑わしい場合は、シンボル4の爆発物を包む火事に対処してはならない。安全な距離に避難しなければならない。」こうございまして、そのあとには、御存じのように、毒ガス及び核兵器の問題が詳しく出ております。これは決して秘密なものじゃない。その道の専門家であれば最低限必要な資料でございます。そしてまた、そのシンボル4というものは、核兵器を含むシンボルであって、それ以上のものについては標識はないのであります。4が通常兵器で5が核であるならば、5の標識があってもいいはずであります。しかし、それはないのであります。ここに明確にそれが出ております。  さらに、CBR兵器についてたくさん書いてございます。これは別な資料でございますが、この別な資料にはこう書いてあります。「新型兵器、非通常兵器の出現によって、防火専門家、監督者及びその部下たちが異常な性質の事態に巻き込まれる可能性がますます増大してきた。ますます多くの化学、生物、放射能、いわゆるCBR兵器が製造され、運搬され、そして貯蔵されている。そしてこれらの兵器の数量が非常に増大し、またその機会が多くなる。非通常兵器はもはや少数の空軍基地やミサイル設備所に限定されない。その貯蔵、使用及び運搬がアメリカ空軍基地間で行なわれることは、いまやあたりまえとなっている。これら武器が広く分布され貯蔵されていることがきわめて当然となってきたため、これらの武器の形、それに伴う危険、事故に巻き込まれた際にとるべき処置などについて知悉することが必要になった。」こういって、核の特徴、それから毒ガスの標識、また弾薬につける色、すべて明確に出ております。  そこで、長官に伺いたいわけですが、ただいま質問いたしました状況から判断いたしまして、私は、シンボル4というものは、核弾頭を含むシンボルの標識である、このように申し上げるわけであります。長官や防衛局長のその手元にございますところの資料は、私は私のと同じではないかと思うのですよ。あるいはまた私のより少し古いかもわかりません。その点、私がいま申し上げましたことについてどう認識し、どう解釈されるか、伺いたいと思います。
  448. 西村直己

    西村(直)国務大臣 アメリカのそういう危険物扱いにつきましての標準、たとえば、先般、岩国につきましても、赤、黄、白、黒と、いろいろありまして、この内容につきましても議論が出たわけであります。また、この標準の扱い方については、ときおり私は変わっていくと思います。いまおっしゃるとおり、いま運用しておるとか、過去のものとか。したがって、その資料自体は、それぞれのとり方によって多少違ってはまいると思います。しかし、事柄は、特にお求めになり、またこの委員会で非常に強い関心のあったのは、横田基地の、いわゆる本土における核の存在の問題であります。したがって、私どもとしては、これは通常弾頭であるということを、この標準の中ではっきりさせたわけであります。沖繩につきましては、返還時においては核はない、それ以外のことについては私どもは直接は関知できない、こういうことを御理解願いたいのであります。
  449. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 どこまでも、防衛庁長官は、シンボル4に核はない、まあ本土にはないということだろうと思います。私も、いまあると言ったわけじゃなくて、この現在運用しているものについてはこういうふうになっているの、だけれども、どうなのかと聞いているわけであります。それはどこまでいっても長官がそのようにおっしゃるならば、事実をもってこれからいろいろ伺っていきたいと思います。  質問の角度を変えますが、次に申し上げること、について、すでに質問通告しておりますので、どういうものかお答え願いたいと思います。  一、ベティー、二、ルル、三、ヨギ・ベア、四、ブロークンアロー及びノーマージン、五、MK116、さらにMK94、MK81、六、クラスA、B、C、D、七、グループA、B、C、D、八、AGM28B、九、AIM26A、それから、これは部隊でございますが、四〇〇部隊、四二五二部隊、第  四七五部隊、さらに三七五部隊、これについて答弁願いたいと思います。
  450. 西村直己

    西村(直)国務大臣 数々あげまして、私のところにはそのお話が出ておりませんが、その中で、ブロークンアローということばは、ちょっとこれは私も雑誌ではたしか見たような気がします。このブロークンアローというのは、何か核事故が起こったことを知らせる暗号名か何かじゃないかというような考え方であります。しかし、いずれにいたしましても、これ自体がどういう御関連で御質問になっているか、私はちょっと意味がとれませんから、お答えはいたしません。
  451. 久保卓也

    久保政府委員 ベティーというのは核爆雷、六八年までに退役をしたようであります。  それから、ルルは核爆雷、現在使っております。対潜機のP3に搭載をいたしております。  それから、ヨギ・ベアというのはわかっておりません。  それから、ブロークンアローというのは、いま長官が言われましたように、アメリカの雑誌で、核事故があった場合の俗称か何かのように使われておるようであります。  それから、ノーマージンというのはわかりません。  それから、マーク116、94、81は、いま私の手元でわかっておりません。  それから、A、B、C、Dのグループのことで、ありますが、これは化学剤の貯蔵区分でありまして、グループAが、持久性のびらん剤、神経剤のものについて、どういうような貯蔵方法をするかというようなことが書いてあります。それからグループBは、訓練ガス、暴動鎮圧ガス、それからGB以外の非持久性ガス、それから発煙用化学弾薬、これについての貯蔵方法、それからグループCは、すぐに火がつく即引火性の弾薬、黄燐弾などでありますが、そういったものの貯蔵方法、グループDは、焼夷剤、それから引火性の物質、有色の発煙剤であります。  それから、AGM28B、これはハウンドドッグでありまして、空対地ミサイル、B52の専用のミサイルであります。  それからAIMの26A、これはファルコンの中でも核用のファルコンでありまして、米本土の防空部隊が装備をしておるということであります。  それから第四〇〇弾薬整備隊、これは沖繩にありまする、再々問題になっておりました第三一三航空師団の隷下にありまして、太平洋空軍あるいは輸送空軍、戦略空軍等に対する弾薬支援を任務としております。  それから第四二五二戦略航空団、これは六五年に嘉手納に編成されまして、その後、現在ではこの部隊は三七六戦略航空団というふうにいわれております。なお、かつてはB52もおりましたが、現在はKC135、SR71、EC価等がおります。  それから第四七五戦術戦闘航空団、これは三沢にあったもので、本年の三月にF4三個スコードロンが韓国に移駐をいたしましたのに伴いまして本国に帰還をいたしております。  以上、私のわかっておる範囲で申し上げました。
  452. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ただいまお伺いいたしましたことは、これから質問する上にきわめて重要なことでございますので伺ったわけでございます。先ほども申し上げましたように、このシンボル4というものに核はないとおっしゃいます。そして横田にある、また、横田にあったシンボル4は、核はなかったとおっしゃいますが、私の調査では、この横田基地においてきわめて高度な消防訓練を現在でもやっているということであります。  たとえばこういうふうになっております。一つは、シンボル4、高性能爆薬HE、MK116、そのほかAIM26A、先ほど核ファルコンと言いました。これらを含めた訓練、タイムファクター五分間、避難距離、消火班は千二百フィート、その他二千フィート、そして空軍プラカードは爆発性、こういうように、一つの消火訓練のためにこまかく区分して書いてあります。しかも、先ほど防衛庁長官が、ブロークンアローというのは、核兵器の事故発生せりということなわけですね。これはかつてスペインの沖で核兵器が事故のために墜落しました。そのときにもブロークンアローということがいわれた。すなわち、核兵器の事故発生せりということは、世界じゅうのマスコミはみな知っておりますし、報道いたしました。  いろいろございますけれども、防衛庁長官久保局長の知っているその範囲で私はこれは質問いたします。  このブロークンアローという、核兵器の事故発生せりというそのエクササイズ、訓練、これは今年度は十六回、一昨年は二十回行なわれております。それについていかがですか。
  453. 西村直己

    西村(直)国務大臣 私どもは、そういう訓練が行なわれていること自体は直接知りません。ただ、米軍性格上、米軍というのは世界各地に交代しては行く場合もあります。したがって、いろいろな兵器によって攻撃されるということを想定したりして、こういうことに対する訓練というものはあっても、米軍性格上は別におかしいことはない。ただ、これが直ちに日本に核があるんだ、こういうふうにつなぐことはできない。ことに、横田基地の性格からいっても、あそこに核を持ち込むなんということは、普通の軍事常識からいってあり得ないことであります。補給基地であります。そういうような意味から、私どもはこの訓練があるということを知りませんし、かりにどういう訓練をやっておっても、米軍というものはあらゆる武器の攻撃に対して対処するという訓練をやることも一応は考えられるわけであります。
  454. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 防衛庁長官、先ほど申し上げました数々のことは、横田基地で知り得た知識でございます。私は、このことがハワイであるとか、アメリカ本土であるとか、グアム島であるとかというところで知り得たことであるならば、何も問題にはいたしません。しかしながら、こういうことを横田で知り得たことに重大な意味があると思うのです。先ほど、横田にはないないとおっしゃる。私はまだそこまで聞いてない。絶対にないんだということをおっしゃるようでございますが、まだそこまで私は質問してない。どういうことなのか、事実に基づいて私は聞いているんです。  それで、横田というところは、非常に人家も周辺に密集しております。したがって、少しラジオをかえますと、これらのことは全部聞こえるわけであります。聞くまいと思っても、電波が混乱したときにはこういうことばが付近の住民のラジオにも入るのであります。しかも、防衛庁長官は、横田は補給基地だと言われるが、それはつい最近じゃございませんか。いままであの横田は第五空軍の極東における最大の戦術戦闘連隊の攻撃基地であります。しかも、いまは補給基地だとおっしゃっておりますけれども、確かに数多くの補給部隊が来ております。またベトナムと直結している基地でもあります。立川が拡張されないために、横田が最近また大きく拡張されております。その主任務は補給でありますけれども、しかし、横田基地には数多くの戦略部隊の分遣隊、戦術戦闘連隊の分遣隊、あるいはまた、四〇〇部隊がいま問題になっている沖繩の核管理部隊だと言いましたけれども、その分遣隊がいるじゃありませんか。それについていかがですか。
  455. 西村直己

    西村(直)国務大臣 私はしばしば申し上げるように、横田は明らかに補給基地の性格を持っております。したがって、私どもは、そういう訓練をやられるということを知っておりませんし、また、その性格上、横田に核弾頭等があるということは、軍事常識上私どもは想定は全然できません。
  456. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ただいま申し上げました中で問題にいたしておりますことは、一つはこの四〇〇部隊、核管理部隊であります。先ほど防衛局長から答弁がありましたが、これは三一二戦術戦闘連隊を含めて、日本、そしてまた沖繩、そしてフィリピン、この戦術戦闘連隊における唯一の核管理部隊が第四〇〇部隊であります。もしいないとするならば、いついなくなったのか、何月何日。  さらに四七五部隊、現在横田はこの基地になっておりますが、その基地のその部隊はどういう部隊なのか。  さらに、先ほど四二五二戦略部隊が解団されたと言いましたけれども、現在三七六部隊になっておると申されておりますが、では、その分遣隊、こういうものは、私たちの調査で、つい最近まで横田に駐とんしているのであります。もしいないとするならば、何月何日いなくなったのか、明確に答弁願いたいと思います。すでに質問通告してあります。
  457. 久保卓也

    久保政府委員 三七六戦略ウイングにつきましては、その分遣隊が横田にあります。これは三七六戦略ウイング、つまりSACと五空軍の連絡に当たっているようであります。  それから、先ほど第四〇〇整備部隊の分遣隊があるようにお話がありましたが、私の手元の組織表から見ますると、横田にあります第四七五航空基地の中に整備部隊があるようでありまして、詳しくもう一度見ますけれども、ちょっといま見当たりません。
  458. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 防衛庁長官防衛庁長官はいまわからないでいいかげんに答弁しているわけですよ。ちゃんと局長がおっしゃっているじゃありませんか。  現在の横田基地というものが、確かに補給基地の本格的な基地になってきております。だからといって、第五空軍の戦術戦闘連隊及び第五空軍の攻撃基地であることは変わりないのであります。だからこそ、こういう分遣隊が来ているのであります。しかも三七六部隊といえば、これはSACと直結しております。このSACの部隊というのは、米本土のネブラスカ州オファット基地を本拠としております。そしてこれはアメリカの核抑止力の中核をなす部隊であります。ですから、一たん有事のときには、この分遣隊の誘導によりいつでもB52が横田に来れる。また、B52が着陸できるただ一つのランウエーを持つ横田基地であります。私は基地司令官にも伺いましたが、現在はそのような形であっても、決して基地の機能は落としていない、一たん有事のときにはすみやかにそういう体制に返るのだ、こういう報道官の話もあるわけであります。いつか横田にB52が来まして問題になったことがあります。それは事故だからおりたんじゃない、こういう分遣隊の誘導によって来ているわけであります。また、極東における核抑止力の中核として常にそういう部隊が存在して、一たん有事のときには着陸もし、また攻撃に出かける基地でもあるということであります。  さらに、四七五部隊というのは、これは三沢におったやはり第五空軍の核部隊の戦術戦闘連隊であります。その基地司令部がこの横田に移ったじゃありませんか。三沢の部隊がそのまま韓国や沖繩に行ったのじゃないのです。その戦術戦闘連隊の司令部が横田に移っただけじゃありませんか。  こういうことから考えまして、当然、先ほど申し上げました数々の核弾頭、核爆雷あるいはまた毒ガス兵器、そういうものを含めて横田には貯蔵されておったし、また今後も、その性格が変わらない限り、貯蔵される疑いがある、こういうことでございます。いかがですか。
  459. 西村直己

    西村(直)国務大臣 まあ具体的にいろいろなことをおっしゃいますが、横田がもうすでに補給基地であるという主任務に変わっておることは、御存じのとおり。したがって、多少いろいろなそういうお話はあったにいたしましても、横田に核が持ち込まれて基地になっているということは、普通の常識から考えられませんし、また、もしありとすれば、警戒なんかも変わった警戒があり得ると私は思うのであります。何らそういう形もとっていない。先ほどまた、横田基地のシンボル4については、ああいうような米軍の回答ももらっておる。これらを勘案しますと、私どもは、核について、少なくとも横田基地の核問題というのは懸念する必要はない、こう考えております。
  460. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私がいままで指摘しましたことについては、それは長官答弁の中でただないと言っただけでは、国民の疑惑はますます深まっても、晴れることはないと思います。その点について、私がいま申し上げたことが間違いかどうか、政府委員答弁を求めたいと思います。
  461. 久保卓也

    久保政府委員 横田の基地としての評価でありますけれども、従来、F4、沖繩に行きましたF4の三個スコードロンがあったことは間違いございません。しかし、その当時といえども、やはりアメリカの極東戦略の立場からいうならば、補給基地として非常に重要な場所である。航空部隊そのものはいつでもどこでも動くわけでありまするから、その意味で特に横田が戦術戦闘上の重要基地であったというふうには思いにくいわけであります。ですから、F4が、部隊がありましても、やはり補給基地としての機能は非常に大きかった。しかし、また同時に、B52その他の飛行機が来れることも、これはランウエーその他非常に大きな施設でありますから、そういうことはあり得ましょう。したがいまして、いろいろな飛行機の中継基地という意味、戦闘基地ではなくて、中継基地としての機能というものもこれまた十分にあり得ようと思います。ただし、そういったような使用形態と、それからそこに核兵器を置かなければならないということとは、全く別のことであろうというふうに私は思います。たとえばB52について言うならば、横田に置くにはあまりにも近過ぎる。むしろグアムならグアムというようなところで十二分に可能であろうというふうに思っております。
  462. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それでは、私が調査した資料に基づいて、事実関係を私は指摘しております。もしこれに疑問があれば、調査を願いたいと思います。  それで、先ほど申し上げました中にブロークンアロー・エクササイズ、これが、先ほど言いましたように、ことしは十六回の訓練をやっております。去年は二十回やりました。そこで問題は、私が入手しましたメモでございます。ここに原文がございます。そして、先ほど申し上げましたこのブロークンアロー・エクササイズというものは、嘉手納基地、横田基地を含む第五空軍全部で事故の発生を常にトータルしているものであります。これはこの事故発生したときに必ず消防自動車が出動します。この一から二十七項目までにその事故発生の種類が出ております。この一から二十七番目までには、その種類がいま申し上げるとおり書いてあります。たとえば、二十六番目にブロークンアロー・エクササイズと書いてある。二十七番目はハイジャックと書いてある。そして十九番目にはヨギ・ベアと書いてあります。ヨギ・ベアというのは核弾頭のことであります。そのヨギ・ベアがこの横田において輸送された。しかも輸送中に事故が二回起きているという統計表であります。これは昨年の十二月であります。  申し上げます。非常に詳しく書いてございますから、何時何分と書かれております。これは事故発生したときの日とそれから時間帯であります。よろしいですか。いろいろありますから全部申し上げませんが……。   十三時十九分、タンカー一号車ガソリン十ガロン補給。   十三時二十三分、タンカー一号車がビルディングNo九一六から弾薬庫のNゲートまでヨギ・ベアを護送。   十三時二十五分、クラッシュ五号車、デルタの東側に待機。滑走路は百八十度の風(南風)が吹いている。   十三時三十九分、タンカー一号車六〇五に帰署。   十三時四十四分、電話局のS氏より「基地外の火災報知器差し込み第六四番が十三時四十五分から十四時四十分まで切れる」(と連絡)   十三時四十九分、管制塔より「エア・バック(撤退用)C141型No五〇二六二機が最終旋回中」   十三時五十分、クラッシュ四号車がエア・バックC141型No五〇二六二機の停止地点へ。第四四駐機場。降機人員は三十二、十一(重体三十二、重傷十一)   十四時〇一分、管制塔より「エア・バックC141型No五九四一〇機が最終旋回中」   十四時〇一分、S軍曹「事故防止柵救護班が十五時十五分から事故防止練習を二回行なう」と連絡。   十四時〇四分、クラッシュ六号車がエア・バックC141型No五九四一〇機の停止地点へ。第八九駐機場。降機人員八、九プラス一(重体八、重傷九、看護一)  ここで申し上げます。エア・バックというのは、ベトナム兵が横田に降りてきまして、その病人のことをここに書いておるわけであります。  続けます。   〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕   十四時〇七分、P軍曹が空軍警察のデスクに以下を報告。「(タンカー一号車の)ヨギ・ベア護送中に、ライセンス(番号)M四八二二という一台のステーションワゴンが、タンカー一号車の傍を通り、タンカー一号車とミサイルを積んだトラックの間に割り込んできた」   十四時十二分、クラッシュ一号車が六〇五に帰署。ガソリン九ガロンを補給。   十四時十五分、給油所がT三三地区の地点一六で洗浄を依頼。   十四時十九分、H氏がヨギ・ベア護送中に(タンカー一号車にのっていた)同氏のそばを通過してミサイル・トレーラーと自分の車の間にひき入れられたステーションワゴンについての調書を作成するため空軍警察のデスクに行った。もうずっとその日の日報であります。事故の日報であります。よろしいですか。これは、要するに、Hという人が何も知らずにヨギ・ベアの護送中の間に割り込んじゃったわけです。そこで空軍の警察に連れていかれた。そこで調書を取られた。そして、ずっとこのあといろいろなことが報告がありますけれども、最後にこのヨギ・ベアは九一六というところから横田の弾薬庫に送られているのです。いいですか。こういう実情がございます。いかがですか。
  463. 西村直己

    西村(直)国務大臣 それはいかなる資料であるか、私はまだ拝見もしておりませんし、それがどういうふうな事実であるか、ちょっと私には判断がつきかねますが、いずれにいたしましても、先ほどから申し上げているように、横田が核などを置いておる基地であるということは、それから考えても感ぜられません。
  464. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私は、こういう事実関係を示して、このヨギ・ベア、核輸送について事実の実態をもって質問したわけであります。それを知らぬ存ぜぬとは、やはり長官、これはますます国民に対して疑惑を大きくさせるだけであります。  そこで、これはたいへんな問題でございますから、総理に伺いたいと思います。そうして、この、問題について、私は、事実かどうか、調査団を派遣していただきたい。そしてその実態を明らかにしていただきたい。うそであれば幸いだと私は思います。もし事実であるとするならば、これはたいへんなことであります。きのうから総理もおっしゃっておりますように、アメリカは日本の非核三原則、また核政策に反することは絶対しない。しかしながら、事実関係はこういうふうにあるじゃありませんか。その点について、総理答弁願いたいと思います。
  465. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 昨日並びに本日、伊藤君から具体的な疑問があるといって、ただいまお話が並べられました。私は、私の内閣、これは非核三原則だ、こういうことを成立以来呼び続けてまいりました。また、私自身がアメリカに行くごとに、日本は特殊な国民、最初の被爆国だ、そういうことで核については非常に敏感だ、だから、安保の条約は必要だけれども、非核三原則は守る、そういうことでよく話はいたしており、また同時に、もしも国内に核を持ち込む、そういう場合には、事前協議をやる、そういうことを話をし、同時にまた、非核三原則、これは日本の意図に反するというようなことはしない、ここまで両国の間は緊密に連携をとってきております。したがいまして、私自身は、本土米軍基地によもや核兵器があろうとは、絶対に疑問を持つようなものではございません。米国自身は、私との約束、これは忠実に守ってくれている、かような確信のもとにただいま日米安全保障条約を結んでおるわけであります。  過日は岩国について、また、昨日は伊藤君から横田基地についていろいろのお話を提供されました。しかし、私はどうも疑問を持つようにならないのです。私自身が疑点を持てば、私自身が必ずそれを晴らす、こういうこともはっきり申し上げました。もしまた万一あるというようなことがあれば、私は職を賭してその事実を国民の前に明らかにする、かように申しました。  しこうして、私はそのことを考えながらも、先ほど来のお話、どういうような点から間違いが起こるものだろうか、どうも、シンボルマーク4、これが沖繩にある、たまたまその4が横田にある、そこらに何か結びつけを考えられている、かようにとらざるを得ないのです。しかし、私は、全然調査もしないで、確信だけで押し通しておるわけじゃありません。先ほど来、防衛庁長官西村君がお答えをいたしましたように、米軍から徴取し得る資料は十分徴取して、そうして、さような核、さようなものはないのだという確信をいよいよ深めておるような次第であります。  また、私は、時期は最近のことではありますけれども、国会におきましても、本会議の場で非核三原則を確認し、さらにまた、持ち込みについても厳重なる警告を発せられたばかりであります。したがいまして、私どものいわゆる非核三原則、これは守られており、将来も長くこの状態は続くと思われる、かように確信をしておるような次第でありまして、ただいま言われたことについては、どうも伊藤君と私との間には、私の持たない知識、それをずいぶん伊藤君は持っておられるようですけれども、その知識をもってしても私に不安を与えるようなものでないことだけを、この機会に、まことに残念に思いますが、率直に申し上げて、アメリカは日本の政府を裏切るようなことはいたしません、どうか安心されて、核はないと、かように御理解をいただきたいと思います。
  466. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 総理、これは私とあなたの対話じゃないのです。国民がみな聞いております。先ほどから角度も変えて状況証拠をあげました。そうですね。戦略部隊が来れる、いままでは攻撃基地であった、現在もなおかつ戦術戦闘核部隊がそこにいる。その司令部である、極東における第五空軍は核部隊である、これはもう公然の秘密であって、世界じゅうの軍事専門家はみんな知っていることであります。しかしながら、そのことを否定されましたので、私は現在の訓練等を通してその実態をいま明らかにしたわけであります。しかし、総理は、私の申し上げたことに対して、何らそれを調査する疑惑というものがわいてこないというのは、私は無神経だと思うのです。いいですか、これだけの疑惑があれば、私は調査すべきだと思うのです。  それで、あの横田基地は、現在、いろいろございますけれども、パーマネント・ビルディング、永久的な弾薬庫がございます。この建物は、知花にある弾薬庫と同じであります。したがって、事前協議の対象には、必ず基地の建設が入るのであります。私が指摘したいことは、先ほど申し上げましたように、九一六という建物は、あるかないか調べたら、ちゃんとあるのです。それはかつて横田からファントムがアラート態勢に入ったときに、核装備をして、その九一六という建物にファントムが二機ずっと待機しておった時期がございます。その建物であります九一六。F4Cファントムのスクランブルの、その待機の駐機場であります。そこからN弾薬庫まで輸送したという、こういうメモがあるわけであります。したがいまして、だから核があったからどうのこうのという前に、こういう疑惑を私は示したわけでありますから、調査すべきだと思います。謙虚にこのことを総理は受けて、米軍に調査をするなり、または、この間の岩国じゃありませんけれども、それこそ防衛庁の専門家、制服がちょこちょこと行って調査したというようなものではなくて、やはり調査に行くからには、局間人を含む学者または専門家なりを通して一つの基地を調査すればいい。私は決して、まだ現在あるということを言っていません。いいですか。そこに核兵器弾頭があったことを知るということは、現在なくても、あったということを明らかにできるものは何か、それはガイガー計数器でわかるのであります。それで岩国の基地点検をやったのです。私はこのように具体的に、米軍の資料によって明らかにし、しかも、このメモを通じて私は明らかにしました。であるならば、当然政府は、あってはならぬことでありますけれども、事実であればしようがないじゃありませんか。米軍の広報官がこう言っていますよ。悪いことは知られてもしようがない。だけれども、悪く言われちゃいかぬ。われわれがいつも注意するのはそのことだ。事故を起こした、こういうことをした、悪い事実についてはしようがないというのです。だけれども、悪いような一つの事態を創作して言われることは一番いやなんだ、こうも米広報官は言っています。ですから、このような事実、このようなことが明らかになった以上は、総理のおっしゃるその非核三原則とは違う事実関係が明らかになったわけであります。しかも、最近院の決議ができたばかりであります。したがって、私は、この問題については、先ほど言いましたように、民間人を含め、ガイガー計数器をちゃんと持っていって、そしてその核倉庫と思われるところを点検していただきたい、こう思うわけであります。
  467. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも、私はたいへんな無神経だ、こういう御批判ですが、私も人並みの神経は持っているつもりです。したがいまして、無神経ではない。むしろ人並み以上に一億国民の安全を考えている。その意味では、伊藤君よりか私のほうが神経過敏であるかもわからない。そこらはもっと適当なる表現をしていただきたいと思います。  それはともかくとして、私は、先ほど来いろいろお話しになりましたシンボル4、さらにまた、いろいろな訓練をしていると。核兵器、核があった場合に、その程度の訓練がどういうような役立ちをするでしょう。私は、爆発物に対する普通の訓練なら、これはわかります。しかし、核の爆発ということについての訓練としては、どちらかというと、あまり役立たないのではないか、こういう感じがいたします。その一事をもってしても、いろいろあげられた事例はあまり参考にならないのです。私の知識の不足ではありましても、私が疑問を持つような材料ではない、かように私は判断をしておるわけであります。したがいまして、ただいま、これだけの材料があるから、政府は直ちに第三者を含めて実地調査をしろ、かように言われましても、私は直ちに、いままで言われたような材料だけでさような調査をする考えはございません。  また、先ほど申しましたように、昨日のお尋ね、御意見で、政府は所要な連絡はし、調査はしたのでございます。その結果は、本日冒頭において防衛庁長官からるるお話ししたとおりであります。したがって、私はただいまのように考えますので、ただいまの程度では私自身が積極的に乗り出すという考えは持ちませんけれども、しかし、念には念を入れ、こういう意味からも、もっと政府は気をつけなければならぬぞ、かように私も謙虚に伺ったつもりでありますから、そういう意味では、防衛庁をして十分連携をとらすようにいたします。私は、ただいままでの材料では、どうもそれより以上に、立ち入り検査する、そこまではいかないように思います。
  468. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私は総理に、国民の立場から申し上げたいと思います。それは、このような重大なことが事実あったのです。しかも、先ほどから言いますように、ヨギ・ベア護送中に事故が二回発生したのであります。御存じのように、スペインにおける事故も、安全弁七つのうち最後の一つだけ残っておった。もしかこれがはずれた場合には、あの二十五メガトンの核弾頭が爆発した、そういう話があります。この東京都の、国会の足元にある横田基地において、過去に核輸送のときに二回事故があったと私は申し上げているのです。よろしいですか。ですから、この事実を調べることが必要じゃありませんか。事実があったと私は申し上げているのです。この事故が小さかったからよかったと思います。もしこれがスペインにおけるあの事故と同じように、七つある安全弁のうち最後まではずれたらどうなりますか。幾つか申し上げましたその弾頭の種類も、私は全部横田で知り得た資料であります。なければ、そんなことばがわかるはずがないし、知るはずがないじゃありませんか。だから、この際、総理は、そういう疑惑に対しては、謙虚に調査をする——マイヤー大使が言いましたが、岩国基地を含め、日本本土にはどこにも核はないというけれども、こういう疑惑があったら、当然国民の前に明らかにすべき総理としての義務がある、私はこう思うわけであります。
  469. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 輸送中の事故が過去において二回あった、しかもそれは核輸送中だ、さように言われますが、それは事実を明らかにして、何月何日と、こういうことが言えますか。それとも、ただ単に、核輸送中の事故だろうというような程度ですか。
  470. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 総理、そうおっしゃいますが、もし私が明らかにしたらどうなりますか。その事実があったら、総理どうしますか。
  471. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、その事実があったらどういうことをするかということは、昨日も申し上げました。また沖繩協定特別委員会でも、はっきり私のとるべき処置を申し上げております。したがいまして、ただいまの点をはっきりさせていただけば、私は調査することが容易だと思うからお尋ねをするのでありまして、そういう意味で御協力を願いたいと思うわけであります。
  472. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ですから、総理、私はこのことについて協力は幾らでもいたします。何月何日といえば言えます。しかしながら、やはり日本の国益という問題がございます。いいですか。総理のまた立場もあろうかと思います。そうして、ほんとうに言えというならば、私は、先ほど言ったとおり、〇月〇日と言ったわけです。あとは全部その事実関係を事故報告書としてちゃんととってある、それを読み上げたわけですよ。だから、総理は、直ちに米軍に対して、こういう報告があるが、いつあったんだと聞けば、すぐわかるじゃありませんか。
  473. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 事柄はまことに重大です。ただ単に私の進退上の問題だけではございません。また、私ども盟邦、これは約束のできる相手だ、パートナーだ、かように考えているアメリカが、日本を裏切ったという、そういう事実でもありますから、たいへんな問題であります。そういう意味で、ただいま出されたことについては、私どもも責任をもって取り調べるつもりであります。そういう意味で、私のことはあまりお考えにならないで、国民の皆さんが御安心がいくように、防衛庁にも材料を提供をしていただいて御協力を願います。
  474. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 総理、この際申し上げますが、この間、岩国基地におきまして米兵が四人ほど本国に送還されました。私が一番おそれるのはその点であります。幾らでも協力しますから、ここで明確に、米兵を含めて日本人すべてに、刑特法の適用だとか、あるいはまた、本人たちの生活権を侵害するようなことはしないということを確約していただきたいと思います。
  475. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまおっしゃることは、どうも私にはわかりませんがね。米兵をアメリカが本国に送還する、これはどういうことでやるのか、アメリカの政府のことだと思いますし、私が日本政府で考えるべきことは——私は政府の首班ですが、同時にまた国会議員でもある。伊藤君とその立場は同じです。守るべきはわが国民の安全だと思っております。そういう意味で最善を尽くそうということを申しておるのでありまして、その意味の材料、資料——また、これは私は伊藤君を疑ってどうこう言っているわけではありません。もちろん、この委員会のこの席上でお話しになるのですから、十分の確信を持っての御議論だと思っておりますし、また、そういう意味で伊藤君をどうこうするという意味で私は申し上げるのではございません。私もいままでは、あまりにもその程度では無理だな、かように思って、あまり疑問を持たなかったのですが、ただいま言われるように、核輸送中の事故だ、かように言われると、私ども知らないうちに核が本土に持ち込まれた、こういうことだと思いますので、これはほうってはおけない。これはただそうじゃないかと思うというようなことでなくて、もうほとんど断定的に、核輸送中の事故が二回も起きている、かように言われましたので、その意味において私は十分調べたい、かように思っておりますし、また、そういう意味の御協力をお願いする次第であります。どうぞよろしくお願いします。
  476. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私は、いま総理にいろいろな例を示しまして、議事録をよく読まれればわかることだと思います。しつこくなりますから何回も言いませんけれども、事実関係を明らかにいたしました。私も、こういう問題をこの場で取り上げる以上は、いいかげんなことは許されないと思います。いままで核論議は、ともすれば、そうじゃないかというようなお話が続きました。これは何年来も言われてきたことであります。しかしながら、そのたびに、ない、疑惑があっても、それはなかった、こういうことだけであります。いま沖繩返還を目前にいたしまして、私が一番心配することはこういうことであります。総理は、返還後にもし核があった場合には責任をとる、そうおっしゃいますけれども、総理は、四選はあったけれども、五選はないわけですよ。そのことを次の総理に引き継ぐことができないわけであります。その意味からいいますと、無責任な発言であります。したがいまして、私は、こういった問題について、ただいま資料をもとに申し上げたわけでございますから、幾らでも協力いたしますので、調査団を派遣していただきたい。   〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕 そしてまた、この資料に基づいてもけっこうでございますから、仲よく調査して、あれば、どうですか、そのことについては、たいへんなことじゃないか、米軍に対してひとつこういう忠告もし、もしそうであるならば、それはそれなりの責任を明らかにして、今後こういうことのないように——少なくとも院の決議があったことでございますから、私たちはそのことについて強く、そういった問題については明らかにすべきだ、こう申しておるわけでございます。したがいまして、調査団を出すか出さないかだけを総理に伺いたいと思っております。
  477. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも私と伊藤君と話がぴったり合わないようですが、私も、信頼するアメリカ、これに対して非常な疑いを持って調べる、こういうことになりますから、はっきりした疑問を持つ十分なものがないと、なかなか動きがとれない。先ほど来申しているのがその点でありまして、そういうものを十分見せていただいて、その上で私ども調査する、かように申しておるわけです。いま全然やらないというわけじゃない。しかし、核輸送中の事故二回、こういうことまではっきりになり、〇月〇日、こう言われると、これはもっとはっきりさせて、そうして明らかにしておくことが必要だろう、かように思いますし、私は、そういう意味政府も責任をとるし、また、こういう話がいつまでも長く尾を引かないように、終止符を打つ方法もあるだろうから、適当に終止符を打つ方法、それとして、ただいまのような資料によって調査にかかるということをひとり御了承いただきたいと思います。
  478. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それじゃ申し上げます。申し上げてよろしいのですね。正確に申し上げますと、一九六九年十二月であります。いかがですか。調査しますか。調査団を派遣しますか。
  479. 西村直己

    西村(直)国務大臣 総理が立たれてしばしば明言されるように、事柄が重大でございます。したがって、御協力の意味で、お手元の資料をひとつ私のほうにお渡しを願って、そして十分それによって判断したい、こういうふうに考えております。
  480. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 何回も申しますとおり、私はこのように言ったんですから、あとは、総理が命じて調査すればいいじゃありませんか。うそか、ほんとうか。まず私が言いたい点は、調査団を派遣してもらいたい。(「〇月〇日はどうした」と呼ぶ者あり)何言うのですか、あなたは。ちゃんと十二月まで言ったら——事故はそんなに簡単に起こるものじゃない。  委員長、不規則発言をやめさせてください。
  481. 床次徳二

    床次委員長 不規則発言は——ひとつ御静粛に願います。防衛庁長官答弁がありますから……。
  482. 西村直己

    西村(直)国務大臣 ただいま御協力いただくというか、資料の御提出を願う、それを私どものほうは精査いたしまして、その上で時間をいただいて総理の判断を請う、こういうふうにいたしたいと思います。   〔伊藤(惣)委員、書類を示す〕
  483. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それでは、最後に総理に、その調査団を派遣するかしないかだけを明確に伺っておきたいと思うのです。
  484. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの資料をいただいて、その上で判断をして、必要があれば調査団を派遣すると、御了承いただきます。
  485. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いままでは、何月何日なのかということを明確にすれば、調査団を派遣するなり考えると総理がおっしゃいました。私がこれを示して、それを見たら、今度は、それをよく見て十分検討して、それから考える、そんなことじゃ私は質問できませんよ。冗談じゃありませんよ。調査団を出すのか出さないのか。また、もしくは、このことについて、先ほどから総理が、次のものを出せば、こうすればと言われるので、私もすなおに出しました。なおかつ、それを今度は、実際に見て、調べて、それから判断するとは何ごとですか。そんなんじゃ質問できませんよ、私は。
  486. 西村直己

    西村(直)国務大臣 ただいまちょっと拝見しました資料自体がはたしてどういうものであるか、これ自体を私どもは確認さしていただきませんと、論議が軌道に乗らないと思います。そして、それによって私どもは、必要があれば米軍なり何に——したがって、こういう大事な問題には十分時間もいただかなければ——そして、最高責任者としての判断のもとに国会で御論議を願う、そうしなければ国民が非常にわからなくなってしまう心配も、政府側としてもあるわけでございます。
  487. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それでは、いろいろございますけれども——まだ資料はあります。これほど明らかにしてもなおかつ疑わしいというふうにおっしゃって、調査団も出せない、こういうことでございますならば、いままで申し上げたことについて、きょうでなくてもけっこうでございますから、私は質問を留保いたします。先にいろんな問題またございますけれども、混乱しますから。いいですか。  そのほかに毒ガスを輸送したこともあります。先ほどグループA、B、Cで聞きました。クラスA、B、Cで聞きました。その中にも毒ガスの輸送があり、さらに放射能物質の輸送もあるのです。ですから私は、調査団を派遣して明確にすべきだ、こう申し上げているわけであります。  私は、これ以上質問いたしましても、おそらく、実際に見てみないと、聞いてみないとわからぬという答弁が続くと思います。でありますから、私は、この際質問を留保して、これでやめたいと思います。  最後に申し上げておきますけれども、少なくとも今国会において、非核三原則が十三年ぶりで決議されました。非常にいいことだと私たち思っております。そのやさきでございますから、こういう問題については十分に政府が検討し、そしてこういう事故があった場合には、やはり日米の親善関係を考えてみても、日本の国益からいっても、決して許さるべきものではない、こういうことから私はきびしく政府を追及いたしまして、私の質問を留保して終わります。
  488. 床次徳二

    床次委員長 次回は、来たる十二月三日、午前九時三十分理事会、午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後七時四分散会