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1971-11-29 第67回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十一月二十九日(月曜日)     午前十時九分開議  出席委員    委員長 床次 徳二君    理事 金丸  信君 理事 國場 幸昌君    理事 二階堂 進君 理事 湊  徹郎君    理事 毛利 松平君 理事 久保 三郎君    理事 細谷 治嘉君 理事 中川 嘉美君       天野 光晴君    池田 清志君       宇田 國榮君    小渕 恵三君       大石 八治君    大村 襄治君       加藤 陽三君    佐藤 守良君       正示啓次郎君    關谷 勝利君       田中伊三次君    田中 龍夫君       谷垣 專一君    谷川 和穗君       藤波 孝生君   三ツ林弥太郎君       村田敬次郎君    山下 徳夫君       豊  永光君    井上 普方君       石川 次夫君    川俣健二郎君       木島喜兵衞君    武部  文君       中谷 鉄也君    美濃 政市君       山口 鶴男君    伊藤惣助丸君       桑名 義治君    斎藤  実君       二見 伸明君    小平  忠君       田畑 金光君    東中 光雄君       米原  昶君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 前尾繁三郎君         外 務 大 臣 福田 赳夫君         大蔵大臣臨時代         理       田中 角榮君         文 部 大 臣 高見 三郎君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君         郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君         労 働 大 臣 原 健三郎君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣 渡海元三郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      中村 寅太君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 西村 直己君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      木村 俊夫君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      木内 四郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大石 武一君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第二         部長      林  信一君         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務総局         管理局長    茨木  広君         人事院事務総局         職員局長    島 四男雄君         総理府総務副長         官       砂田 重民君         防衛庁参事官  高瀬 忠雄君         防衛庁参事官  鶴崎  敏君         防衛庁長官官房         長       宍戸 基男君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛施設庁長官 島田  豊君         防衛施設庁総務         部調停官    銅崎 富司君         沖繩北方対策         庁長官     岡部 秀一君         沖繩北方対策         庁総務部長   岡田 純夫君         沖繩北方対策         庁調整部長   田辺 博通君         法務省刑事局長 辻 辰三郎君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省条約局長 井川 克一君         大蔵省主計局次         長       平井 廸郎君         運輸省航空局長 内村 信行君         自治省行政局長 宮澤  弘君  委員外出席者         議     員 川俣健二郎君         沖繩及び北方問         題に関する特別         委員会調査室長 綿貫 敏行君     ————————————— 委員の異動 十一月二十九日  辞任         補欠選任   大野  明君     村田敬次郎君   武部  文君     中谷 鉄也君 同日  辞任         補欠選任   村田敬次郎君     大野  明君     ————————————— 十一月十七日  沖繩における雇用促進に関する特別措置法案  (川俣健二郎君外十六名提出衆法第三号) 同月十八日  沖繩教育委員公選制存続等に関する請願(上  原康助紹介)(第一六六三号)  同(卜部政巳紹介)(第一六六四号)  同(川村継義紹介)(第一六六五号)  同(小林信一紹介)(第一六六六号)  同(島本虎三紹介)(第一六六七号)  同(辻原弘市君紹介)(第一六六八号)  同(中澤茂一紹介)(第一六六九号)  同(西宮弘紹介)(第一六七〇号)  同(芳賀貢紹介)(第一六七一号)  同(広瀬秀吉紹介)(第一六七二号)  同(美濃政市紹介)(第一六七三号)  同(山本幸一紹介)(第一六七四号)  同(小林信一紹介)(第一八〇七号)  同(千葉七郎紹介)(第一八〇八号) 同月二十二日  沖繩教育委員公選制存続等に関する請願(小  林信一紹介)(第一八七六号)  同(阿部助哉君紹介)(第一九四八号)  同(石川次夫紹介)(第一九四九号)  同(加藤清二紹介)(第一九五〇号)  同(小林信一紹介)(第一九五一号)  同(後藤俊男紹介)(第一九五二号)  同(高田富之紹介)(第一九五三号)  同(藤田高敏紹介)(第一九五四号)  同(米田東吾紹介)(第一九五五号) 同月二十六日  沖繩教育委員公選制存続等に関する請願(山  口鶴男紹介)(第二二四二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公聴会開会承認要求に関する件  委員派遣承認申請に関する件  沖繩における雇用促進に関する特別措置法案  (川俣健二郎君外十六名提出衆法第三号)  沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案(内  閣提出第一号)  沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律  案(内閣提出第二号)  沖繩振興開発特別措置法案内閣提出第三号)  沖繩における公用地等暫定使用に関する法律  案(内閣提出第六号)  国家公務員法第十三条第五項および地方自治法  第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院の  地方事務所設置に関し承認を求めるの件(内  閣提出承認第一号)  沖繩平和開発基本法案細谷治嘉君外十六名提  出、衆法第一号)      ————◇—————
  2. 床次徳二

    床次委員長 これより会議を開きます。  川俣健二郎君外十六名提出にかかる沖繩における雇用促進に関する特別措置法案議題といたします。     —————————————     —————————————
  3. 床次徳二

    床次委員長 提出者より提案理由説明を求めます。川俣健二郎君。
  4. 川俣健二郎

    川俣議員 私は、提案者日本社会党、公明党、民社党を代表しまして、ただいま議題となりました沖繩における雇用促進に関する特別措置法案について、提案理由とその要旨を説明いたします。  太平洋戦争の惨禍から戦後期を経て今日に至る年月は、日本国民にとって、ひとしく苦悩の道でありました。国民は、大小の差はあれ、戦争が残した傷あとを背負いながら、日々の生活にいそしんできたのであります。その努力と願いにもかかわらず、日本社会国民の平和と福祉を達成できているとはいえません。しかし、顧みて、わずかに幸いであったのは占領時代を短く終え、戦後期から早く脱却できたことでありましょう。  ただ、沖繩県民については、全く事情が異なっていることは御承知のとおりであります。  過ぐる大戦において、沖繩本土の防波堤として直接戦場となり、老若男女を問わず、二十万人余の民間人が戦死し、戦争終結とともに、死を免れた人々米軍キャンプに押し込められたのであります。  米軍キャンプから解放された人々が郷里に帰ったとき、家も田も畑も、金網と銃剣に囲まれ、基地と化していたのであります。  沖繩の戦後はここから始まり、二十五年余の今日まで続いてきたということを忘れてはなりません。  沖繩平野部のほとんどを米軍基地に奪われたために、県民生活基盤を失い、やむなく基地に依存して働かなければなりませんでした。  巨大な基地の存在は産業の正常な発展も阻害し、第一次、第二次産業は停滞して第三次産業のみが肥大するといういびつな産業構造をつくりあげたのでありましょう。  今日の沖繩社会構造を見ると、基地労働者米軍人軍属に使用される者、基地関連産業零細企業従業員、中小零細な企業、商店、過密人口をかかえた零細農家、これらが不安定な営みを続けている、と一口に表現できると思います。  沖繩復帰が実現した場合、沖繩経済環境が激変すことは疑問の余地はありません。その原因が、一定の基地縮小ドル防衛政策による基地経費の削減、本土企業製品の流入、農業不安定化などの点にあることは広く指摘されているところであります。したがいまして、基地労働者のみでなく、中小企業農業など広範な産業分野から多数の失業者が発生すると見なければなりません。しかも、復帰と同時に職を失う者、経済環境の変化に従って時日を経てからあらわれる失業者など、その態様はさまざまでありましょう。  これらの人々に安定した職を確保し、基地経済から脱却して平和経済を建設するためにあらゆる協力を行なうことは、政府本土国民に課せられた義務といわなければなりません。二十五年余にわたる沖繩県民苦悩、今日の沖繩の姿はすべて、政府の方針によって沖繩本土から切り離した結果に負うものであって、沖繩県民に何らの責任を帰すことはできないことを、あらためて思い起こしていただきたいと思うのであります。  本法案の主要な点は次のとおりであります。  第一に、沖繩において職を失った者にはすべて、新たな職につく手助けを政府が行なうことといたしました。  第二に、新たに職につくまでの間、就職促進手当職業訓練手当などを支給し、その間の生活保障することといたしました。  第三に、労働大臣諮問機関として、沖繩雇用審議会を置き、専門に雇用促進をはかることといたしました。  慎重審議の上、すみやかに御可決され、沖繩県民願いにこたえてくださるようお願いいたします。(拍手)
  5. 床次徳二

    床次委員長 これにて提案理由説明は終了いたしました。      ————◇—————
  6. 床次徳二

    床次委員長 引き続き、内閣提出にかかる沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律案沖繩振興開発特別措置法案沖繩における公用地等暫定使用に関する法律案国家公務員法第十三条第五項および地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院地方事務所設置に関し承認を求めるの件及び細谷治嘉君外十六名提出にかかる沖繩平和開発基本法案、並びにただいま提案理由説明を聴取いたしました川俣健二郎君外十六名提出にかかる沖繩における雇用促進に関する特別措置法案、以上の各案件を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。久保三郎君。
  7. 久保三郎

    久保委員 私は、復帰に伴う特別措置法等に関連して若干の質問を申し上げるのでありますが、質問に入る前に、特に総理に一言お尋ねしたいのであります。  この委員会も、順調にいけば、かなり審議が進んでいたはずであります。ところが、御承知のように、この十七日に与党による理不尽な採決というか、われわれは採決とは認めておりませんが、そういうものが、いつもより最もひどくやられまして、そのためにきょう再開ということになったのであります。もちろん政府与党の中では、返還協定はもはや参議院でどうこなそうが自然成立という法律的な効果はとった、あと残りはこの委員会に付託されている関係国内法、あるいは内閣委員会、さらには大蔵委員会にあるそれぞれの法案が日ならずして成立すればよろしいのだというような考えでおられるかもしれませんが、これは単にいままでのような国内法審議とは事違いまして、二十六年間隔絶されたところの沖繩県民日本国土へ迎えるについての重大な法案審議であります。それを考えますと、われわれ野党の一員としては、この委員会でも、言うならば理不尽な、審議中途において強行採決という名のもとに持っていかれるのではなかろうかという心配が一つあります。もちろん、これは少数というあるいは多数という政治の算術からいうならば当然の帰結かもしれません。しかし、こういう形で再び三たび法律審議が打ち切られて成立していくということに相なりますれば、単にその時点におけるところの政治的な問題ばかりじゃなくて、これから未来永劫に続くところの民族、特に沖繩県民の運命に関する問題だと私は思っております。  それを考えますときに、やはりこれからの審議を通して、是と信ずるものについてはあらためて考え直すことがあるのかと——もっとも、是と信ずるか非と考えるかは、もちろんいままでの審議提案のやり方を見ておりますと既定のコースのように見られます。だから、もはや一切の聞く耳は持たぬということでやり通すのかどうかという問題であります。はしなくも返還協定特別委員会では、言わせてやっておくのだという不規則発言がありましたが、これは決して不規則的な発言ではなくて、本音であろうというふうにいまでも私は思っております。そういう疑念を晴らすために、どういう考えがあるのか、あらためてお伺いをしたいと思うのであります。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 久保君にお答えいたしますが、もちろん委員会審議を尽くしていただきたい。また、その間においてそれぞれの立場においての意見の相違はありましても、審議を十分尽くして、ただいま御指摘になりましたように、沖繩祖国復帰施政権日本に返るというその中身をなす当委員会にかかっておる諸法案でありますから、十分審議を尽くしていただきたい。幸いにして皆さん方におかれてはたいへん御熱心に御審議をいただいておるようでございますから、どうかこの上ともよろしくお願いいたします。
  9. 久保三郎

    久保委員 抽象的な質問であり抽象的なお答えでありますから、これ以上続けてもこれは意味のない話でありまして、お互いにこの審議を通してそういう実証があらわれることを私は念願しております。  そこで、返還協定がああいう形で参議院に送られても、問題は依然として一つも解決していない。問題の根っこは何かというと、これは言うまでもありませんが、返還協定の土台になった佐藤ニクソン共同声明中身である情勢が大きく変わったということです。その大きく変わったのにもかかわらず、依然として一昨年の情勢を踏まえての返還協定であり、そしてこれに関連する措置法その他の問題は、言うならば沖繩県民国民が疑問に思っていることに対してちっとも答えようとはしていないということであります。これが問題の一つだろうと思うのです。  しかももう一つは、この返還は単なる施政権返還ではないのか、そしてその施政権返還であっても、わが国がいまから払おうとする、払わねばならぬ国民を含めての支払いは、全くあまりにも大きな代償要求されているということであります。沖繩県民基本的人権までその代償に使われているということについては、われわれは何とも理解し得ないし、納得ができないということであります。そういうふうに考えているわけであります。  こういうものを、その考え前提にして、これからお話というか質問をしたいと思うのです。だから、私どもがこれから質問する内容について、佐藤総理、いま申し上げたような前提に立っていること自体に疑問があるのでありますから、この疑問に対して解明をぜひお願いしたいと思うし、改善するものは改善するという熱意が出てこなければならぬと思うのであります。これを私は聞きたいのでありまして、形式的な答弁をお聞きしようということではありません。  そこで、まず第一に、屋良主席がはしなくもこの十七日に強行採決される瞬間に羽田に建議書を持って到着したという。そのあと総理並びに関係各方面に建議書は届けられたと聞いておりますし、われわれの手元にも届けられております。お読みになっておりましょうか。いかがでしょう。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 目は通しております。
  11. 久保三郎

    久保委員 私は、この前書きについて、「はじめに」という、この建議中身でありますが、これについて佐藤総理はいかように受けとめられておりますか。「はじめに」というところだけ、中のこまかいことは別として。いかがでしょう、お手元にございませんければ……。
  12. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまお尋ねになるのは、平和で豊かな沖繩県づくりとこういうお話でしょうか。
  13. 久保三郎

    久保委員 私は、そういう抽象的なことをお尋ねしているのではなくて、琉球政府が、屋良主席が届けてきたこの建議書の前文についてお読みになったでしょうか、そしてどういうお考えでしょうかとこう聞いているのであります。あまり長文のものではありません。しかし、抽象的なものではないのであります。いかがでしょう。
  14. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この復帰に関する建議書、これをページを追いますと、一番最初に「はじめに」ということが書いて、そして中は、ただいまお尋ねになるような点が詳しく書いてある。このページが約五、六枚、十一ページまである、かように御了承——また私も承知いたしております。
  15. 久保三郎

    久保委員 私の質問というよりはこれをどう受けとめていくかというのがいまわれわれに課された任務でもあろうかと思うので、貴重な時間でありますが、貴重な建議書でありますので、あえて私は、私がここが要点だと思うところを読み上げます。これに対してぜひ一緒に読みながらお答えをいただきたいと思う。  まず第一に、三ページの中ごろに、「県民復帰を願った心情には、結局は国の平和憲法の下で基本的人権保障を願望していたからに外なりません。」こういうふうに書いてあります。それから最後のほうには、「復帰に当っては、やはり従来通りの基地の島としてではなく、基地のない平和の島としての復帰を強く望んでおります。」  それから次のページにまいりますれば、「また、アメリカ施政権を行使したことによってつくり出した基地は、それを生み出した施政権返還されるときには、完全でないまでもある程度の整理なり縮小なりの処理をして返すべきではないかと思います。そのような観点から復帰考えたとき、このたびの返還協定基地を固定化するものであり、」そう述べています。  次に、この四ページ後段のほう、「次に自衛隊沖繩配備については、絶対多数が反対を表明しております。自衛隊配備反対と言う世論は、やはり前述のように基地の島としての復帰を望まず、あくまでも基地のない平和の島としての復帰を強く望んでいることを示すものであります。」その理由が次のページに書いてあります。「去る大戦において悲惨な目にあった県民は、世界の絶対平和を希求し、戦争につながる一切のものを否定しております。そのような県民感情からすると、基地に対する強い反対があることは極めて当然であります。しかるに、沖繩復帰基地の現状を堅持し、さらに、自衛隊配備前提となっているとのことであります。これは県民意志と大きくくい違い、国益の名においてしわ寄せされる沖繩基地の実態であります。」私は、総理はじめ皆さんがどう感じておるか知りませんが、このくだりはまことに痛切だと思うのですね。  さらに、ページをかえて六ページのほうへいきましょう。その一番最初に、「この返還は大きく胎動しつつあるアジア、否、世界史の潮流にブレーキになるような形のものであってはならないと思います。そのためには、沖繩基地態様自衛隊配備については慎重再考の要があります。次に、核抜き本土並み返還についてであります。」こうやって書いて、「県民大半が、これを素直には納得せず、疑惑と不安をもっております。」といっております。さらに六ページの一番最後の行に「疑惑と不安の解消は困難であるが、実際撤去されるとして、その事実はいかにして検証するか依然として不明のまま問題は残ります。」  さらに七ページ最後の段に「次に安保沖繩基地についての世論では安保沖繩の安全にとって役立つと言うより、危険だとする評価が圧倒的に高いのであります。この点についても、安保の堅持を前提とする復帰構想と多数の県民意志とはかみ合っておりません。県民はもともと基地反対しております。」と書いてあるのです。  それからその次の二、三行置いての「次に、基地維持のために行なわれんとする公用地強制収用五ケ年間の期間にいたっては、これは県民立場からは承服できるものではありません。沖繩だけに本土と異る特別立法をして、県民意志に反して五ケ年という長期にわたる土地の収用を強行する姿勢は、県民にとっては酷な措置であります。再考を促すものであります。次に、復帰後のくらしについては、苦しくなるのではないかとの不安を訴えている者が世論では大半を占めております。さらにドルショックでその不安は急増しております。くらしに対する不安の解消なくしては復帰に伴って県民福祉保障は不可能であります。」  次に、九ページになりますと、こう書いてあります。「ただ単に経済次元開発だけではなく、県民の真の福祉を至上の価値とし目的としてそれを創造し達成していく開発でなければなりません。」といっております。  さらに、一〇ページにまいります。前段のほうでありますが、「返還軍用土地問題の取扱い、請求権処理等復帰処理事項の最も困難にしてかつ重要な課題であります。これらの解決についてもはっきりした責任態勢を確立しておく必要があります。」  このページ後段では、「そこで私は、沖繩問題の重大な段階において、将来の歴史に悔を残さないため、また歴史証言者として、沖繩県民要求考え方等をここに集約し、県民を代表し、」云々と痛切に訴えています。  以上が私が気がついたところどころでありますが、これに対して、総理はお読みになったというのです。いかに考えておられますか。同感だと思うのか、あるいはそれとも違うというのか。同感だというならばどうしようとするのか、一言お聞かせをいただきたい。  防衛庁長官、たいへんお退屈のようでありますね。そういう姿勢が、たいへん恐縮でありますが、沖繩県民にどう映るかを私はあなたに申し上げたいくらいですね。よけいなことでありますが、一言つけ加えておきます。
  16. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま久保君から「はじめに」と、こういう書き出しのもとについての注意を引くべき点を指摘になりました。一つ米軍基地の問題だし自衛隊配備の問題、同時にまた核の撤去の問題、さらにまた安保の問題、さらにまた復帰後の生活についての保障問題等々、重要な点に触れられたわけであります。その結論は、この建議に書いてあるとおり、これが歴史の初め、またそういうものが長期にわたっていろいろの批判のある点だから間違いのないように処置してくれろ、こういうのが建議のされたその趣旨だと私は思っております。  そこで、返還協定、この審議にあたりまして、本会議においても基地縮小についての一つの決議がなされた。さらにまた同時に、核の撤去の確認の問題等につきましても、私どもの考え方も明らかにいたしたような次第でありますし、さらにまた自衛隊の問題については、これは申すまでもないことでございますが、沖繩日本復帰されれば、当然わが国の防衛の範囲になるわけでありまして、ここに全然防衛の処置をとらないというわけにはまいりません。以前の状態あるいは戦前はさようなものはなかった、こういうことを言われる点もありますけれども、戦前はわが国の最前線では実はなかった、いわゆる台湾というものがございましたから。今度はわが国の最南端の領域になりますから、これについて所要の自衛体制、これをつくることは、これは当然、またそういう意味では了解をしていただきたい、納得していただきたい、かように私は思っておるようなものでございます。しかし、もちろんまだ現在の状態では県民の十分の理解を得ているとは私も考えておりません。これらの点については、さらにさらに深い理解を求めることが必要だ、かように思います。  さらにまた、復帰後の不安、いわゆるドル・ショック、それらについては、もうすでに、不十分といいながら一応の対策が立てられておる。だから、ドル・ショックに対しましても、将来これについて本土政府は十分対策を立ててくれるだろうという、そういう期待は持たれるだろう、その期待をわれわれは裏切らないつもりでございます。  ただいま申し上げるのはまことに簡単でありますが、第一の米軍基地、これは確かに密度が高い、これはしかし本会議の決議もありますから、そういう方向で今後われわれが努力しなければならない、かように思います。  核の撤去、核はないということはこれは約束されておりますけれども、さらにそれを確認する方法はないか、そういう点においてなおくふうをこらすつもりでございます。  以上、まことに簡単でございますが、二、三、感じました点を率直にお答えしておきます。
  17. 久保三郎

    久保委員 これはお立場からいけばなかなかむずかしいことだろうと思うのです。しかしながら、たとえば一番最初に私が指摘した「県民復帰を願った心情には、結局は国の平和憲法の下で基法的人権の保障を願望していたからに外なりません。」というくだりは、これは、自衛隊配備についての考えは別としても、少なくとも、お忘れになっては返還の値打ちはないんだろうと私は思うのであります。それを忘れて——この関連法その他をずっと見てまいりましても、平和憲法のもとに返れるという保障は何にもない。施政権がただ単にアメリカから日本に移動したにすぎないととっているわけです。また、そういうふうにわれわれも見ております、これでは。これは、十分にこれから具体的に措置を講じなければならぬことだと思うのでありますが、いまの御答弁では、どうも総理のお考えとして自衛隊配備や云々、あるいは安保の問題、そういう考えをお述べになったにすぎないのではなかろうかと思うのであります。非常に不満であります。  しかも、その問題は別としても、それじゃもう一つ、おことばに関係してお尋ねしますが、生活の不安についてであります。  ドル・ショックについては一応の対策をとられたとおっしゃいますが、いまやまさに、十カ国かの蔵相会議においてどういうふうに方向が出るかわかりませんが、ドルと円との関係、これは早晩おきめになるでありましょう。これは、もちろんいままでとられた線に沿って措置されることは当然だと思うのでありますが、もう一つ沖繩では生活の不安には何があるかというと、ドルから円に切りかえる際の問題があります。たとえば、いろんな公共料金一つとっても、これはいまドル建てであります。これを円に切りかえ、換算した場合にどういうふうになるかというと、決して安くはならないということであります。切り上げであります。一つの例でありますが、そういうふうな点。こういうものに対しては、これは山中長官にお聞きしたほうがいいと思うのでありますが、いかような措置をとられるお考えでありますか。生活不安に対する問題の一つとして、公共料金はじめ物価すべて、物の値段、こういうものはドルから円に切りかえる。その場合に切り下げはありません。これはおそらく全部切り上げであります。いかがでしょう。
  18. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは復帰したあとの問題、いわゆる切りかえるときの問題でありますから、現在沖繩が置かれているその問題が一番の大きな困難性は、経済的に本土とつながった円圏であり、貨幣的にはドル圏に置かれているというそこに問題点が存するわけであります。しかしながら、復帰のその瞬間から本土と同じ円経済圏の円圏に入るわけでありますから、その意味においては、交換レートその他の問題は、今後大蔵大臣が決定をされた線に従っていくとしても、少なくとも本土国民と同じ円の価値というものを、沖繩においても実際に生活の面からも同じように適用を受けるわけでありますから、その意味において問題点はないように処理をしたいと考えるわけであります。
  19. 久保三郎

    久保委員 次に、先ほどお話がありました核抜きの問題であります。  これは、沖繩返還協定特別委員会でも議論の焦点になったところで審議がとまりました。最近というか、いまのお話でも、国会で決議がなされた。いま、沖繩県民を含めて日本国民が知りたいのは、お話にもありましたように、政策や決議ではないのであります。そのあかし、実証を示してもらいたいということです。  先般、国連の総会で、二十六日でありましたか、中ソの、核兵器というか軍縮会議案の論争がありました。その際に中国代表が、米国は日本沖繩に核兵器を置いているという発言がありまして、これに対して田中大使は、日本本土に核兵器の配備を許さないというのが日本政府の基本政策であると反論したといわれております。政策はなるほどそうかもしらぬ。総理もたびたび国会内外において非核三原則のお話をしております。しかし、この田中大使の発言をまつまでもなく、少なくともいま日本には核兵器はありませんという断定はどこにもないのであります。しかも、楢崎委員はじめ同僚議員から指摘された岩国の問題一つとりましても、なるほどあとから自衛隊の制服が点検にというか視察に行ったようでありますが、その前の移動というのを抜きにして、だれが、制服が点検してきたからなかったんだなということを、安心して保証する者は一人もいないのです、これは。自衛隊の人が行って調べれば安心だということはどこにもない。アメリカの了解のもとに、いつ幾日何時に行きますから見せていただきたいと言った場合に、疑るわけじゃありませんが、すなおに見せてはくれるだろうが、中身はすなおであるかどうかは疑問があるということ、それほどにいま日本国民アメリカの核兵器持ち込みについての疑惑が深まっているということであります。これを解消しなくては、決議や政策を何べん繰り返しても、これは国民沖繩県民を納得させることにはならぬと私は思うのであります。  最近の発表によりますと、一月の初旬にニクソン大統領にお会いになるそうでありますが、日本国民やそして返ってくる沖繩県民立場に立って、少なくとも核抜きの実証を示す方法を具体的に詰めてきてもらいたいと思うのですが、いかがでしょう。
  20. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私からお答え申し上げますが、返還時において核がないということは、日米共同声明、また本協定の第七条、これで私は十分日本国民の心証を得ていただける、こういうふうに考えておりますが、まあ、いま久保委員から御指摘のような見方もありますので、また国会におきまする過日の御決議もありますので、政府といたしましては、さらにこの御決議や一部の方の不安にこたえまして、何らかつけ加えた措置をとりたい、こういうふうに考えております。  いまお話しのように、一月の六日、七日、サンクレメンテにおいて佐藤総理大臣とニクソン大統領との会談が行なわれる、こういうことになりましたので、その機会などはいい機会である、こういうふうに考えております。いろんなことの話し合いがありますが、その中では、いま御指摘の問題も取り上げて最善の努力をいたしてみたい、かように考えております。
  21. 久保三郎

    久保委員 外務大臣、お話の中で、久保君のような意見もあるからというのでありますが、おそらくこれは私の意見が大半だろうと私は見ているのですよ。少なくとも核抜きが決議や政策だけで安心だなんというように考えている者は、おそらくほとんどないと私は思うのですよ。だから、いまお話しのように、大統領との会談ではこの問題をもうちょっと詰めて、国民の安心がいくような措置をぜひとるべきだと思うのです。これは立場の相違の問題じゃありませんよ、はっきり言って。どうかその点を十分考えてほしいと思うのです。  それからもう一つは、基地縮小整理の話であります。建議の中にも書いてあります。なるほどことばの上ではそういう話が二、三出てきております。先ほどの総理お話でもあります。しかし、もはやそういうお話では沖繩県民だれも真に受けていないのですよ、残念ながら。また、そういうふうにこの審議も進められてきたと思うのです。また日本国民は、審議のしかたは別としても、やはり沖繩県民の最大の願いである基地撤去を目標にする整理縮小、具体的に少なくとも当面の方策があからさまにならなければ、だれもがああそうかという気持ちにならないと私は思うのであります。これもニクソン大統領との間の話になる素材であろうと思うのですが、この点はどうなんですか。
  22. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ただいまの基地の問題も、この間の衆議院本会議において御決議のあった一つの問題点であります。この問題も佐藤総理大臣、ニクソン大統領との会談において取り上げ、最善の努力を尽くしてみたい、こういうふうに考えております。
  23. 久保三郎

    久保委員 最善の努力を尽くすということばだけでは私も承服しかねるのです、実際をいうと。整理縮小の具体案というものを日本そのものが持たないで、手ぶらで行って最善の努力をしますと言っても、これはもう絵にかいたもちであります。具体的な案をお持ちですか、いかがです。
  24. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 これは久保委員ばかりの問題じゃないのです。私の頭の痛い問題でもあるのです。もうしばらく前から——返還は実現をいたしておりません。おりませんが、その以前たる今日、また今日以前からもこの問題をどういうふうに日米間で打開していくかという問題につきましては千々に頭を砕いておる、こういう状態でございますが、これを具体的にいまどういうふうなことを考えているかということにつきましては、この交渉がうまくいく上におきましてかえって支障があろうか、こういうふうに考えまして、内容につきましては申し上げられませんけれども、とにかく最善の努力をするということだけははっきりと申し上げさせていただきます。
  25. 久保三郎

    久保委員 これ以上その問題で応酬しても、それ以上の答弁は出ないのだろうと思いますけれども、私はやはり具体的なものを持っていくべきだし、またそれは、言うならば都合が悪ければ都合の悪いような方法もあるんじゃないですか。  しかももう一つは核兵器の問題でありますが、これは最近わが党は政府にも申し入れをすることになっているのでありますが、少なくとも日本の国には持ち込まれているかもわからぬという疑いがあるのでありますから、総点検をして確認をする。もう一つは、将来にわたって持ち込みませんという協定をつけてくるというのが私は柱だろうと思うのです。いずれ党から申し入れして要求いたしますから、この問題はこの程度で先へまいりますが、具体的にどうするのかをきめてもらわぬければ、だれもが信用しない時点に来ているということをぜひ深く御認識いただきたい、こういうように思います。  次には、請求権の問題でありますが、この協定の第四条第一項で全面的に放棄するという請求権中身は何だろうか、どういうものだろう。放棄するというからはどういうものを放棄するのだ。すべて放棄するというが、そのすべての請求権というのは何だろう。何を放棄するのか、お聞きしたい。
  26. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 請求権はこれはもう無数にあります。千差万別であります。これを一々整理するということは返還協定締結当時とうてい不可能である。しかし、沖繩現地当局の御協力を得まして、ある程度の整理はしてみた。それがいわゆる愛知十項目というようなことにもなっておりますが、これが完全なものであるというふうには言い切れません。  そこで、放棄されるものはどういうものかというお話でありますが、いわゆる請求権のうちでアメリカの法令に基づく請求権、これはアメリカがその補償の責めに任ずる、こういうことにいたしてあります。それからいわゆる復元補償、これもアメリカが法令上の根拠はないものでありまするけれども、補償いたしましょう。それからいわゆる那覇軍港の海没地の問題、これもまたアメリカが法令上の根拠はないのでありまするけれども、賠償の責に任じましょう、こう言っている。そういうことにいたしまして、それらはアメリカにおいて賠償の責めに任じますが、その他のものをどうするか。これはなかなか整理が非常にむずかしい問題でありますが、特にその中ではっきりしておりまする問題は、講和前の人身傷害に対するところの補償の問題であります。これがアメリカによる補償漏れとなる。そういうことになりますると、被害を受けた沖繩県民に非常に気の毒なことになる。そういうような見地から、わが国においてこれに対して見舞い金を支給するという措置を講じたい、こういうふうにしておるわけであります。  その私が羅列いたしましたアメリカの法令によるもの、また復元補償、また那覇軍港の海没地の補償問題、それから講和前人身傷害の問題、これら以外のものが残された補償問題として論議されなければならない、こういうことであります。それらは現地当局の御協力も得まして、資料を固めまして、もしこれが何らかの措置を要するというような性格のものであるという判定がつきますれば、これはあるいは予算上の処置をする必要があるかもしらぬ、あるいはさらにその上法律上の措置を必要とするものがあるかもしれませんけれども、とにかく適正な措置を講ずることとするというのが、これが政府の基本的方針でございまして、この適正な措置が全部終了するということになりますれば、請求権問題の実体的処理は全部これを完了するということになるものと考えております。
  27. 久保三郎

    久保委員 外務大臣、私があまりまだお聞きしないところまでお話がありましたが、問題を整理するために私は一つずつお聞きしているので、御了解をいただいた上でお答えをいただきたい。  再度申し上げますが、放棄される請求権というのはどういうものでしょうか、こういうことであります。四条第一項で放棄される請求権というのは何があるのだろうか。
  28. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 いわゆる放棄、つまり外交権が放棄されるというものは、ただいま羅列いたしましたもの以外の請求権について行なわれる、かように御了承を願います。
  29. 久保三郎

    久保委員 それじゃ、放棄される請求権というのは何の代償として放棄されるんでしょうか。戦争終結の場合ならば賠償という対象になります、これは。今度のこの協定は施政権返還でありまして、戦争終結の賠償などというものではないはずであります。いまのお答えでは、放棄される請求権というのは何であるか明確ではない。放棄されないものは先ほどお話があったもので、それ以外はというお話、そういうあいまいなことでいいんでしょうか、いかがでしょう。いかなる代償のために放棄されるのか、いかがでしょう。
  30. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 沖繩返還が某年某月某日実現される、こういうことになる、その時点におきまして、またその以降におきまして、日米関係沖繩返還協定関係する日米関係法律関係を明らかにしておきたい、こういうことであります。これが放棄の法益ということになるわけです。もしこの関係をただ放置しておくということになりますれば、沖繩県民は一体どうするんだということになると、請求の相手方はアメリカ政府でありまするから、一々アメリカ政府を相手にいたしまして訴訟をしなきゃならぬ、こういうようなことになると、これは煩にたえない。また、そういうようなことが必ずしも妥当なこととも思えない。これはそういうような考え方から、奄美大島の返還にあたりましても、あるいは小笠原諸島の返還にあたりましても、同様の措置をとっておりますが、とにかく、その返還協定締結の時点においてはっきりしておるものは、まあはっきりした措置をとっておる。おるが、まだはっきりしないものにつきましては、これをわが国といたしましては、外交保護権を行使しないということにいたしまして、もし個人として補償、賠償というようなことを、アメリカから受けるような立場にある者がありますれば、それは国内的措置によって適正に処理しよう、こういう考え方をとったわけであります。
  31. 久保三郎

    久保委員 そうしますと、いまのお話だと、請求権の放棄というのは、包括的に、単なる法律関係を明らかにしようとしただけなんであって、実体はないということですか。放棄されるべきところの請求権というのは実体はないんだ、ただ法律関係だけを明記するんだというのでありますか。
  32. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 いずれにいたしましても、わが国に施政権が戻ってくる、その後におきまして、アメリカ政府に対しまして沖繩県民請求権が残っておる、こういう状態でありますることは、これは法律秩序という点から見まして妥当でない。そこで、それらのものにつきましては、つまり外交権の行使、これは放棄する。しかしながら、アメリカに請求したならば、これが妥当な請求であるとして認められるようなことがあるかもしれない、そういうようなものは一々わが国において精査いたしまして、これに対して適正な措置を講ずる。これが法律関係沖繩返還に伴い明確化しておくゆえんである、こういう見解からさような措置をとったわけでありまして、これは沖繩ばかりじゃないんです。奄美でもあるいは小笠原でもみんなそういう措置をとっております。
  33. 久保三郎

    久保委員 どこでもそういう措置をとったからということになると、言うならこういうケースの場合、大体こういうのが原則だ、とにかく何となくそういう措置をしておかなければ困るので、実体はないけれども、というお話に尽きますね、これは。これは問題だと思うのですね。それならあるかないかわからぬものをなぜ放棄するのですか、逆にお聞きすれば。ただ外交的な、外交権の行使はもうやらないことにするからやるんだというならば、なぜそういうふうにお書きにならないのですか。請求権というものをそんなに軽々しく扱っていいものですか、どうでしょう。いまのお話だと、どう考えても実体はないんですね。それなら実体のないものをどうして放棄するんですか、逆に聞きます。そういうことでいいんでしょうか、どうでしょうか。  それからもう一つは、この文言の上では、とにかく放棄するのでありますから、放棄する理由、それは先ほど申し上げたように、戦争終結ならば賠償の対象として放棄しますというのがありますよ。今度は施政権が移動するだけなんです。施政権が移動するのに、どうして放棄するのか。施政権者が全部これは始末をつけるのが原則じゃないんですか。そう思いませんか。いかがでしょう。
  34. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 先ほど申し上げたのですが、これは千差万別、いろいろなものがある。その中で非常にはっきりしているのは、アメリカの法令に基づいて請求権がある、これははっきりしているのです。それから復元補償問題、また海没地補償問題、これもはっきりしている。また講和前の人身傷害問題、これもまあはっきりしておる。しかし、そのうちで、前の三つの問題につきましては、アメリカがこれの賠償に応ずる、こういうふうにし、また講和前の人身傷害問題につきましては、わが国において措置をとる、こういうふうにしてありますが、おそらく見通しといたしますると、これ以外にかなりたくさんなものがあるだろうと思う。これは数え上げれば切りのないほどいろいろな要請というものがあるだろうと思うのです。それを一々いまここでまだ明らかにし得ない、またこれが整理をし得ない、こういう段階にあるわけであります。  したがって、それらの無数にあるところの諸問題、これは復帰後におきまして、わが国の手で十分精査をいたしまして、これは何らかの措置をとる必要がある、こういうふうに認定したものにつきましては適正な措置をとるようにする、こういうことを申し上げておるわけでありまして、これはどうしても、もしそういう措置をとらないでほっておくということもこれは考えられるかもしれません。しかし、沖繩県民が一々アメリカの裁判所に行って提訴をする、これはなかなか容易なことじゃなかろうと思うのです。そこで、一応ここでそういう考え方のもとに線を引く、これは私は常識的にも理解できるし、法理的にもまたこれを理解できる、こういうふうに考えております。
  35. 久保三郎

    久保委員 今度のお話は、実体がいろいろある、しかし、いまよくわからぬということでありますから、そうしますと、先ほどのお話とはずいぶん違ってきますね。  そこで、お尋ねします。存在する請求権というものを政府が放棄するからには、いかなる理由で放棄するのか、これはさっきから聞いているのです。ただあなたのお話では、めんどうだからここで区切りをつけるのだからという単純なものでありましょう。  それからもう一つは、請求権中身がよくわからぬが、これから調べるというのでありますから、放棄される県民立場に立った場合に、いまの国内法のどこを見ても、これに対する保障はないんですよ、外務大臣。何にも保障していない。四条第一項で放棄する請求権については、復帰後はこういう方法をとりますというのは答弁だけなんです。本来ならば権利と義務の関係にもなりましょうが、あわせてこの沖繩琉球政府が出してきた請求権に対する特別措置法を立法すべきじゃないのでしょうか。いかがでしょう。これをやって初めて沖繩県民にはああなるほどなということで保障されると思うのであります。いかがでしょう。いまの御答弁だと実体がこれからそれぞれわかってくるという……。
  36. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 なぜ放棄するかということは、先ほどからしばしば申し上げているとおりです。これを放棄しないでおったらどういうふうになりますかというと、請求権者、つまり沖繩県民が一一アメリカの裁判所に提訴しなければならぬ。これは提訴するということが観念的に考えられるだけであって、実際上、アメリカへ行って訴訟費を使って訴訟を行なう、これはもう不可能なことじゃあるまいか、こういうふうに考えるのです。そこで、返還時におきまして、日米間のそういう権利義務関係をはっきりさせるというために、特定のものにつきましてはアメリカが補償する、また特定のものにつきましては日本政府が適正な措置を講ずる、これはいま講和前人身傷害補償に限っておりますが、そういうふうにするというようにいたし、ここでそれらから漏れました請求権につきましては、もうアメリカの裁判所には行っても日本の外交保護権は発動しない、こういうふうにしたのでありますが、それでは、御指摘のように、沖繩県民もお困りでしょう。これはたくさん請求権という問題があるわけでありまして、それらにつきましては、一々日本政府が精査いたしまして、これは適正な措置をとるという必要がありと認定したものにつきましてはその措置をとる。その方法といたしましては、これは予算措置で足るものもありましょう、それだけで不十分なものもありましょう、そういうものにつきましては法律措置をとる、こういうふうに考えておるのでありまして、考え方といたしますると、久保さんのおっしゃるところと同じようなことでありますが、私どもは御質問を待つまでもなくそういう姿勢で臨んでおるということをお答え申し上げます。
  37. 久保三郎

    久保委員 多少お尋ねが前後しますが、先ほど申し上げたように、これから調べてやるというのならば、立法措置を講じることが一つじゃないのでしょうか。そしてその法律案は、この国会に同時に提案さるべき性格のものだと私どもは思っているのですよ。御答弁がなるほどだんだんそういうふうになってきて、ある程度何とかやってくれるのかなという考えもしましょうけれども、やはり県民の権利でしょう。だから、やはりこれは返還時においてきちっと補償される裏づけがなければ納得しないんじゃなかろうか、こういうふうに思う。中身については異論がありますよ、いままでの御説明中身では。いずれにしても沖繩県民が持っているところの請求権について、いま補償する措置特別立法でお出しになる意思はないのか。もうすぐに、前に琉球政府からはそういう特別措置法に対する要綱というものも出ているんじゃないですか。この建議書の中にも特別に書いてありますよ。こういうものをどうしてお出しにならないのか。出さないところに不信感が出てくるのは当然じゃないですか。いかがでしょう。
  38. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 御指摘の問題につきましては、前提問題といたしまして、請求権の実体というものをまず把握しなければならぬ。この請求権というものは、これは政府の持っておる請求権じゃないのです。一人一人、百万県民の持っている請求権なんです。この一つ一つ請求権がどういうものであるかという実態の把握、これが先決問題である。そこで、ただいまでもそういう調査には移っておりますけれども、特に来年度におきましては本格的な調査をいたしまして、そうしてこういうものにつきましてはこういう措置を講ずべきである、ああいうものについてはああいう措置を講ずべきである、それらの大体具体的な構想をきめた上、予算的に片づくものでありますればそういうふうにする、それで片づかないというようなものであれば立法措置を講ずる、こういうことを申し上げておるのでありまして、また、実体のないものに対しての法制的措置をとるというそういう立法は考えられないのではあるまいか、そういうふうに考えております。
  39. 久保三郎

    久保委員 これは実態調査も当然せねばならぬでしょう。しかし、これは沖繩県民の権利でありますから、請求権の放棄に対する代償を求める権利は保障さるべきだと思うのですね。請求する権利は、日本政府に対して復帰後請求できる権利だけは、これは法的に保障する性格のものでありますよ。実態がおわかりにならぬというが、一方的に調査してこれはこれでやりましょうというものじゃないのじゃないですか、お話の中からいっても。個人個人のものでありますから、個人の権利を放棄するのでありますから。放棄した日本政府になれば、沖繩県民の請求の権利だけは少なくとも保障しておかなければいかぬのじゃないですか、どう補償するかは別にして。百歩譲っても、どれだけ補償をするかは別として、請求権についての中身は別としても、請求をする権利、補償を受ける権利、それはりっぱに裏づけとして保障しなければ、放棄だけしちゃって、あとは愚恵的にぼくらが、政府が調べて、その上でおまえらが足りないところはやってやる、こういうものじゃないんじゃないですか。いかがでしょう。
  40. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 遺憾ながらいま実態が明らかにされておらないのです。そういうことでございますので、とにかく実態調査を取り急ぎます。その上適正な措置を講ずる、こういうふうにいたしたいと存じます。
  41. 久保三郎

    久保委員 これは私は百歩も譲ってお話を申し上げているのですよ。少なくとも沖繩県民が、復帰後において、この協定に基づいて放棄された請求権保障するこということは当然であると思うのです。中身はどの程度かわかりません。いろいろあるでしょう。これは立法措置をぜひとも講じていくべきだと私は思うのです。この国会にお出しになるおつもりはありませんか。
  42. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 手順といたしまして、とにかく取り急いで実態調査をいたしたい、その上必要があれば立法措置をいたしたい、こういうふうに考えております。それが順序である、そういう見解であります。
  43. 久保三郎

    久保委員 その実態調査というのはどの程度——これからやるのでありますか、いかがですか。これからおやりになるのですか。いままでちっともおわかりになっていないのですか。いかがですか。
  44. 西村直己

    西村(直)国務大臣 請求権あるいは諸請求につきまして、アメリカサイドがやるものはもちろんアメリカサイドでやってもらうわけでありますが、日本責任においてやらなければならぬものにつきましては、実態の把握というものが大事であります。ただ残念ながらただいま施政権下にありますから、言いかえれば人のふところまで入り込んでということがなかなか権限上できない。しかし、われわれとしては来年度予算に必要なる調査費を計上して、復帰後直ちに実態調査等をやり、われわれの施設庁等で原則としてやるべきものについては、われわれのやるべきものを明らかにして処置をしてまいりたいという考えであります。
  45. 久保三郎

    久保委員 総理お尋ねしましょう。  この問題は沖繩県民の権利に関する重大な問題でありまして、このまま政府が思うままにやるようなものでは私はないと思うのです。だから、実態調査をしてからだという話でありますが、少なくとも請求権を保留して、日本政府に対し請求できる権利というのはやはりこれは保障すべきだと思うのです。協定だけは通るは、あとは保障されないままで、一方的に恩恵的にやられるものではありませんよ。これは少なくとも立法措置を講ずべきものだと思うのですが、いかがでしょう。
  46. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この屋良主席が持ってまいられました建議書の八一ページですか、そのところに具体的な請求権の項目が並んでおります。この大体の処理は、先ほど外務大臣からお答えいたしましたように、相当処理ができる、かようなものでございますから、ただいまのところ直ちに法律をつくるという、そういう問題はまず起こらないのではない、だろうか。  問題は、実際の損害を、アメリカ側に対する請求権日本政府が放棄した、こういう場合において、損害が生じた県民の補償をどういうようにするか、日本政府がかわってするか、あるいはそれをアメリカからやらすか、こういう問題、そういう内輪の問題——内輪じゃないですが、日米間の政府国民との関係、それで処理すべきものではないだろうか、かように私は思います。したがって、ただいまのところ規定がないから、全然請求権を放棄したのだからその処置はとらない、こういう考え方ではございませんので、そこにもし誤解があってはならないように思いますから、あえて補足いたしておきます。その実態によっては政府がその補償をする、そういうことも考えておるのだ。ただそこまで考えて立法的な処置がどうかな、こういうように実は思って、この国会にはただいま御審議をいただいている以外には法案を用意してはおりません。ただ、いまお話のありますような問題は大体処理ができる、なおそれが残るかな、こういうようなことはございますから、外務大臣が先ほどお答えしたように実態に合って処理する、こういうことに御了承をいただきたいと思います。
  47. 久保三郎

    久保委員 冒頭私から申し上げましたように、もう既定コースに乗っているので聞く耳は持たないというふうに残念ながらとれます。私は中身についてもずいぶんこれは問題があります。放棄されない請求権の中でもこれは問題があります。ありますが、そういうものを議論する前に、私は県民の権利だけはこの際保障するのが当然だということだけにいま尽きているのです。ところが、立法措置もがえんじないという。どうも私は既定コースに乗ったので聞く耳は持たないのだというふうにとれるのが残念であります。お答えいただけますか。
  48. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もうきまったことであとの議論は聞く耳持たない、かような偏狭な考え方で御審議をいただいておるわけじゃございません。ただ私が申し上げているのは、実情を皆さん方にも御理解いただきたい、かように思いますので、この場において十分御審議を尽くしていただきたいし、また政府説明の不十分な点は遠慮なしにどんどん御叱正賜わりたいと思います。
  49. 久保三郎

    久保委員 そこで、請求権中身について一、二お尋ねしたいのであります。  この協定の四条三項でありますが、これでは一九五〇年七月一日前に形質が変更されて、一九六一年六月三十日以降復帰前までに返還されるものは自発的に支払いをいたしますと、こうなっている。  この中身でありますが、すでに返ってきているものはどの程度ありますか、あるいは返ってくるもの、一九五〇年七月一日前に形状変更されて、六一年六月三十日以降、これまでに返ってくるもの、いわゆる自発的支払いをしますというものはどの程度あるのですか。
  50. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 一九五〇年七月一日前に形質変更がありまして、一九六一年六月三十日までに復帰になったもの、これはいわゆる講和前補償として米側が補償いたしておりますが、一九五〇年七月一日前に形質変更がありまして、その後一九六一年六月三十日以降復帰の日の前日までに解放されたもの、解放されるもの、これとそれから一九五〇年七月一日以降の形質変更にかかるもので復帰の日の前日までに解放されるもの、この両者を合わせまして、現在琉球政府で調べたところによりますと、円の換算におきまして三十五億八千四百万円ぐらいのものでございます。
  51. 久保三郎

    久保委員 その金額をもう一ぺんおっしゃってください。
  52. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 一九五〇年七月一日前に形質変更がありまして、六一年六月三十日から復帰の日の前日までに解放されるもの、これが協定の四条三項の関係でございます。それから五〇年七月一日以降形質変更されて復帰の日の前日までに解放されるもの、これが四条二項関係でございますが、この両者を合わせましての請求が、琉球政府の調べによりますと円の換算で三十五億八千四百万円ということになっておるわけでございます。
  53. 久保三郎

    久保委員 わかりました。  この四条三項というのは、いままで原状回復の補償をしなかったものを、復帰までに返ったものについて自発的に支払いますということですね。しかもいま金は三十五億何がし、この金は、言うならば今回のこの協定に基づく対米支払い三億二千万ドルの中に入っているはずですね。
  54. 井川克一

    ○井川政府委員 三億二千万ドルと全く関係はございません。
  55. 久保三郎

    久保委員 全く関係ないというのは、あとで三億二千万ドルの内容については同僚委員からお尋ねしますが、全然関係ないが、この金はアメリカがほんとうに自発的に払う、形はそのとおりだと思う。しかし、中身はこういう支払いの中身に入っているという話を、これは明らかな事実だというので、いま御否定なさっても、三億二千万ドルの内訳をあとで聞きますから明確にお答えをいただくことにしまして、それでは、この四条三項というのは、土地の暫定使用法案関係がある。いまお話があったとおりに、復帰までに返ってきたものは、これはアメリカが自発的に払う三十五億何がしである。大半基地復帰までには返ってこない。その原状回復の補償費はあげて日本政府がこれから負担していくということになる。この関係はそういうふうになるが、そのとおりかどうか。
  56. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 復帰前に米側によりまして形質変更がされまして、その施設、区域が引き続き復帰後におきましても米側に提供される、こういう場合におきましては、これから締結いたしますところの賃貸借契約あるいは暫定使用法によりまして使用する場合に、その分の原状回復は、アメリカが使用を開始したときの原状に回復をする、こういうことでそれぞれ契約なりあるいは協議によりまして日本側が支払う、こういうことになるわけでございます。
  57. 久保三郎

    久保委員 総理、冒頭私から申し上げたように、この施政権のみの返還で、これは一つの例でありますが、県民請求権の問題も含めていろいろな面で、愛知書簡一つとっても膨大な代償をわれわれは払うことになっている。いまの四条三項によるところの原状回復についてもいまの答弁のとおりであります。われわれは日本民族の一人としてやはり疑問を持ちます。総理はどうですか。
  58. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 久保君の言われること、あるいは私は誤解しているかもわかりませんが、日本政府本土における国民沖繩の同胞も同一に扱うものでございまして、その間に区別あるいは差別をするような考えは毛頭ございません。施政権返還、これは申すまでもなく、冒頭にお尋ねがありましたように、平和憲法がそのまま施行される。憲法ばかりではない、国内法全部がそのまま沖繩に施行されることでございます。それが施政権が返るということだ、かように私は理解しております。そこで、どうも先ほど私が憲法について答えなかったことは、いかにも落ち度のようであるかのようにおとりのようですが、私はこれは当然のことで、憲法が適用になる、そこに施政権が返ってくる。そうでなければ、施政権返還、祖国復帰、さようなことは言えない、かように私は思っております。  したがって、ただいま言われることが、あるいは私のどうも理解しにくいというか、御意見を理解しにくいのですが、沖繩の方々、これは私ども国内の本土国民と全然同一の扱い方をするわけであります。ただ問題は、二十六年の長い間米軍の施政権下にあった、そのために直ちに本土法律を適用すること、それが沖繩の方にはあるいは不利益ではないだろうか、こういうようなものはございますが、それにいたしましても、できるだけ早い期間に、さようなことのないような、特別措置等はとらないように、そうして本土と同じような待遇をする、これが日本政府考え方であり、また祖国復帰を実現するゆえんだ、かように実は思っております。ただいまの請求権一つの問題にいたしましても、本土においてもいろいろ米軍に基地、施設を提供しておる等問題がございますが、これも順次解決はされます。  ただ沖繩の場合におきましては、その基地の密度が非常に高い。同時にまた、米軍の施政権下のために一方的に処理されていた、こういうものがありますので、どうも本土の処遇同様にすると申しましても、どうもそこらにぴんとしないものがあるのじゃないのか、かように私思いますから、これらの点について沖繩の方々が十分理解されて、施政権が返ってきた、ほんとうに本土と一体になれた、これでよかった、こういうようにいわれるような状態をつくるべきがわれわれのつとめだ、かように思っております。私はそれをあたたかく迎えることだ、かように申しておるのもそういう点でありまして、ただいま御指摘になりますようないろいろの不都合、不便があるだろう、そういう不満あるいは下安、そういうようなものを解消さすことが今回のこの審議の目的でもある、かように思っておりますので、できるだけ私はそういう点で具体的な問題、先ほど来お述べになりましたような具体的な問題が解消されること、これを心から望んでおる次第でございます。
  59. 久保三郎

    久保委員 私は、繰り返すようでありますが、たとえばいまお尋ねしました四条三項による土地の原状回復の問題一つとっても、さっき申し上げたように、沖繩復帰するまでの間のものは大体三十五億ぐらいアメリカが払うというのですが、その金も三億二千万ドルに入っているとわれわれは承知しているのです。しかも大半米軍基地はそのまま土地の暫定使用法によって網をかぶせられる。それでいま答弁したように、これの原状回復、いわゆる返還時におけるところの基地撤去のあとにおけるところの原状回復は、あげて日本政府がしょうことになっているのでありますよ。先ほどの沖繩県民のいわゆる請求権保障しろということに対しては、いろいろお話がありましたが、明確じゃありません。しかし、こういうアメリカに対して払う代償はかなり明確で、大胆だということなんです。そこに疑問の一つがあるということです。その例証として四条三項を申し上げたわけであります。  それから念のために外務大臣に申し上げておきますが、いわゆる保留される請求権、その中にはいまいろいろあなたから放棄されない請求権としてお述べになりましたのが幾つかありますが、これはすべてが非民主的に隷属的な立場からやられてきたものでありまして、請求権の名に値しない内容のものであることも十分お考えをいただきたいと思う。これに対して沖繩県民は、一人といえども納得していないのですよ。時間もありませんからそのことだけつけ加えて、請求権の問題はあとの同僚議員の質疑におまかせします。  次には、裁判の効力の問題であります。簡単にお伺いしますが、民事、刑事を含めて裁判の効力を全部復帰後も引き継いでくるということ、これは先般も答弁がありまして、そのとおりにしますということでありますが、これはわが国の主権の問題であると思うのですね。そして沖繩県民のこれは基本的な人権に関する問題。それを二十六年間異民族の支配下におけるところの裁判の効力を引き継いでくるということに対して、われわれはこれは憲法違反じゃないかと思うのですよ。この協定においてやはり引き継ぎますか、いかがです。
  60. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 ただいまお話しのとおりに、これを引き継ぐか引き継がないか、引き継がない方式もあるわけであります。というよりむしろ憲法が初めから施行されるというふうに考えてもいいのでありますが、いずれにいたしましても、二十数年間非常に、奄美大島とは違いまして、沖繩の場合には現在までに法的秩序がもう確立されておる。しかも内容につきましては、本土並みというのでだんだん一体化されております。でありまするから、むしろこの際は法的安定性と申しますか、いろいろな混乱を起こさないように、むしろそのまま裁判権を引き継ぐというほうが、混乱を起こさない意味においては妥当である、そういうふうな意味からいたしまして、今回は引き継ぎ方式をとったわけであります。これはずいぶん各国に例のあるところでありまして、憲法違反では絶対ない、かように考えておるわけであります。
  61. 久保三郎

    久保委員 最初の出だしのお答えは、協定の文言どおり、「できる。」と書いてありますから、やらぬ場合もあると言うから、そういうふうな幅を持ったお答えが出るのだろうと思ったら、やっぱり引き継ぐということであります。これはそういうふうに確定されておるのですか。
  62. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 協定の意味は、やはり引き継ぐということになっておるわけであります。ただその中にも、引き継ぐのが不適当なものがある、そういうような意味で引き継ぐことができると書いてあるわけであります。
  63. 久保三郎

    久保委員 それは単に協定の文言上、相手の国の主権を尊重したという意味での「できる。」という表現にすぎない、こういうふうになるわけですね。
  64. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 現実に引き継がないものもあるわけであります。たとえば刑事上の裁判権につきましても、ある種のものにつきましては政令によって引き継がない、こういう場合があるわけです。
  65. 久保三郎

    久保委員 その引き継がない刑事上の裁判の事案というのはどんなものなんでしょう、参考にお聞かせください。しかも、それは政令できめられるようなものではないのじゃないかと思うのですが、いかがでしょう。
  66. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 具体的な一々のものを引き継ぐとか、引き継がないということはありません。ただある種の犯罪につきましては、これをただいま皆さんに申し上げますと、引き継ぐまでのいろんな法的混乱が起こりますので、この際は差し控えたいと思いますが、そういう種のものがあるわけであります。
  67. 久保三郎

    久保委員 そういうものがあるからこそ、これから私がお尋ねするのは、引き継ぐことはおかしいということなんです。裁判はやり直せということです。やり直せ、奄美方式をおとりになることだということであります。奄美方式をとる場合には、いまの法務大臣のお答えでは、法的秩序が確立されているから、だから混乱を起こすと困るから、まあ引き継いだほうがいいじゃないかというような軽いお考えのようでありますが、これは基本的人権の問題であります。憲法に保障された国民の権利であります。しかも、長い軍政下において二十六年間、軍事基地を中心としたところの沖繩県民生活の中で、彼らが、いわゆるアメリカがさばいてきた裁判が正しいと思っている者は、沖繩県民にはいないんですよ。もちろん、民事についてはお話しのような法秩序の問題もあろう、混乱の問題もあろうから、百歩譲っても、刑事事件についてのみは、これはあらためて裁判のし直しをすべきだというのがわれわれの主張なんであります。どうしてできないんでしょうか。
  68. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 これは先ほど申しましたように、二十数年間、おそらく犯罪としましてはもう何十万件とあるわけであります。でありますが、それを奄美大島のようにやり直し方式をやるということになりましたら、私は非常な混乱が起こる、むしろこの際は混乱を起こさないためにも引き継ぎをやり、引き継いだ後におきまして、現在の日本の刑法にも再審の制度あるいは恩赦の制度、いろいろなことがありまするから、それによってできるだけの救済をすれば、まず著しい違法のもの、あるいは妥当を欠くものは救済される、かように考えておるわけであります。
  69. 久保三郎

    久保委員 数が多いからという理由は、残念ながらこれは沖繩県民には通用しない話だろうと思うのですね。数が多いから、数が少ないからといって、そういう差別をつけていい性質のものではないのであります。  私は去る七月の末に沖繩に初めて参りました。いろいろな方に会って話を聞きました。その中の一人のあるお店屋さんの奥さんが、会って話をしたときに、こういう話が出ました。復帰についてどう思いますかと言ったらば、当初は心からいいことだな、早くというふうに考えておりました、いまはだんだん日にちがたつに従って私は復帰に対して不安があります。どういう不安ですかと言ったらば、本土との差別を沖繩に持ち込まれることが一番不安ですと、彼女は言いました。差別というのはおわかりでしょうか、差別。沖繩はいままでずっと差別をされ続けてきたことを本土のわれわれは十分知らねばならぬと思うのであります。  総理、いかがでしょう。裁判一つとりましても、こんな差別でいいのだろうか。特に民政府の裁判所の判決そのものをわれわれは復帰後においても認めることはできない。何万件あろうとも、みんなの力を出し合って、少なくとも日本国憲法のもとで裁判のし直しをやってやることがせめてもの沖繩県民に対するあたたかく迎える心がまえじゃないでしょうか。それを奄美とは違う、件数が多いから、長いことやってきたからという理由で納得させられますか、いかがでしょう。
  70. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 ただ単に件数が少ないとかなんとかいう問題ではありません。  ただいま申し上げましたように、内容的におきましても、大体本土と一体化されてきております。また、琉球政府の裁判所は琉球人によって行なわれたわけであります。また法的に考えましても、民政府裁判所は、異国人ではありますが、やはり近代的な法制のもとに行なわれたものであります。したがって、法の一体性、また法の安定性、そういうことを考えますときには、この際はこれを引き継ぐという原則に従ったほうがよろしい、かように確信したわけであります。
  71. 久保三郎

    久保委員 法の安定性とは、日本法律の安定性だと私は思っています。だから、そういう意味でも——お答えになりますか。
  72. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 引き継ぎ後はもうすっかり日本と同様なあれでありまするから、内地並みのあれでありまするから、要するに問題はいままで行なわれた裁判ということであります。それを全部やり直すということになりましては、これはもう法の安定性といいますか、かえって非常な混乱を起こす、こういうことであります。
  73. 久保三郎

    久保委員 私はお答えには納得できません。それじゃ裁判のやり直しにたいへん無理があるというのならば、少なくとも、いま法務大臣がおっしゃる恩赦とか減刑とか、そういうものは当てはまりませんぞ。なぜならば、恩赦とは、減刑とは、有罪を前提にしてものが考えられている。裁判のやり直しというものは、有罪か無罪か、これはどちらかきめよう、これからきめよう。それを有罪を前提にしての恩赦や減刑というものは、この際はとるべきではないと私は思うのであります。恩赦は一内閣の恩恵で、減刑は刑事政策の誤りから来る手直しだ。これはそういうものではないと私は思うのです。  総理、いかがでしょう。裁判のやり直しが無理だというならば、少なくとも再裁判ができるいわゆる申請の道を開くとか、重刑を受けている者については特別の計らいをするとか、裁判をやり直すとかいうような道をせめても開くことが沖繩県民に対して納得させる道じゃないでしょうか。いかがでしょうか。
  74. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 引き継ぎ後は日本法律に従ってやるわけであります。でありますから、もちろんいままでの効力は、証拠その他につきましても一応は認めましても、それを裁判の過程においていろいろ日本法律なりあるいは日本の裁判の行き方に従ってくつがえされたり、いろいろなことをするわけで、私は、その点についてはそんなにあれじゃない、かように考えているわけであります。
  75. 久保三郎

    久保委員 法務大臣、どうも思い込み過ぎていらっしゃるんじゃないかと思うのでありますが、私は、裁判のやり直しから、せめてものという話を、百歩譲ってしているのです。何とかして沖繩県民の最低限度の権利は確保しておくことが必要じゃないかという意味で申し上げたのです。恩赦や減刑などというこそくな手段でやってはいけません。私は、性質が違う、そういうものではない、こういうふうに思うのです。もう一ぺん御再考願えませんか。
  76. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 裁判の済んだものについてのあれでありましたら、恩赦とかなんとかという問題よりも再審という問題だと思います。まだ裁判の過程にあるものでありましたら、その後におきましては手続法はすべて日本法律によるわけでありますから、裁判の最中にあるものでありましたら、結論においては、日本法律なり日本の手続法に従って行なわれるわけであります。
  77. 久保三郎

    久保委員 私が言っているのは、いまお答えになった後段の話じゃないのです。これはあたりまえの話なんですよ。その前段の話を私はさっきからくどくしているのです。何とか考えるべきだと私は思うのです。しかも奄美方式とどうして違うのか、その理由わかりませんね。奄美は裁判のやり直し、刑事事件は。どうして違うか、ちっともわからぬじゃないですか。先ほどお話があった、数が多いからできないんですかと言ったら、そうじゃないんだ、こう言う。ただ長年やってきて、二十六年もやってきたんだから、法秩序が確立しているから、いまさら混乱を起こしては困るなんて、やってみないで混乱が起きるかどうか——やらぬほうがこれは混乱は起きるんじゃないですか。
  78. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 数のみをもって申しておるわけではありませんが、七十万件の犯罪を全部裁判のやり直しということでありましたら非常な混乱が起こることは、これは免れないことでありますし、すでに現在まで二十数年間にわたって法秩序ができ上がっておるというふうなことを考えますときに、私はやはりこの際やり直し方式では非常な混乱が起こる、かように考えておるわけであります。
  79. 久保三郎

    久保委員 私は、七十万件あるかどうかは別にして、さっきから申し上げているのは、全部やり直しがむずかしいとするならば再審の制度を開いたらどうですかと言っておる。しかも沖繩県民アメリカ施政権下におけるところの人権侵害、そういうものだけは最低限救済することがわれわれ本土国民の義務じゃないですか。責任じゃないですか。日本国憲法のいわゆる基本理念じゃないですか。いかがでしょうか。
  80. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 現在の日本における再審の制度によりましても、私はある程度の救済ができる、かように考えておるわけであります。
  81. 久保三郎

    久保委員 総理、法務大臣は大ものですから、総理お答えしなくてもいいのかもしれませんが、これはやはり基本的な重大な問題であります。いまのようなお答えだけでは私どもは納得しません。私が納得しないだけじゃなくて、沖繩県民が納得しないのじゃないですか。奄美じゃやった、沖繩じゃ違うのだということは、簡単に考えてもおかしいじゃないですか。時間もありませんから、一言お答えをいただきたいと思う。私は、やり直しがだめなら再審の道を開けと言っておるのですよ。
  82. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま再審の道を開けとおっしゃるが、これも私もそういうように思いますが、いま刑事局長が来ておりますから、実際の扱い方を刑事局長から答えさせます。
  83. 久保三郎

    久保委員 刑事局長からお答えいただくのは専門的な技術的なことだと思うのでありますが、総理、われわれの気持ちをおわかりになっていらっしゃいますか。——おわかりになりますか、私がお尋ねしておることわかりますか。おわかりになれば私はいいのですよ。私は技術的なことを聞いているのじゃないんです。私も専門家じゃないんです。沖繩県民施政権下におけるところの基本的人権の侵害をどうして救済するかということで私は聞いているのです。この際、法務大臣を含めて御理解がいただければ私はいいのですよ。いかがですか。
  84. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは大事な問題ですし、この場を通じて国民皆さん方がみんな聞きとりたい、どういうようにするだろうか、こういう問題だと思いますので、専門家の刑事局長から要点を説明させたいと思います。
  85. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 沖繩の裁判を、特に刑事裁判を引き継ぎました理由につきましては、先ほど来法務大臣が答弁されたとおりでございます。その場合に、沖繩復帰時に係属中の事件につきましては、先ほど来法務大臣が答弁されましたように、その後は日本の手続に従って裁判をされていくわけでございます。  問題は、復帰時にすでに確定しておる刑事裁判でございますが、それをどうするかという問題でございます。これにつきましては、特別措置法の二十七条におきまして、向こうの確定裁判はこちらの確定裁判としての効力を認めるように措置をいたしております。そういたしますと、その復帰前に確定いたしました裁判につきましても、本土の刑事訴訟法も確定裁判としての効力が認められるわけでございまして、復帰後におきましてその裁判について不服のある個々的な案件につきましては、日本の刑事訴訟法に基づく再審の条項の適用があるわけでございます。その再審の条項に当たります限り、復帰後、その当事者が日本の裁判所に再審の請求をすればいいわけでございます。かような法律的な再審の手続がとられるように措置をいたしておるわけでございます。  そのほかに、これもまた先ほど法務大臣が御答弁になりましたように、確定裁判としての効力を認めるわけでございますから、この特別措置法案の二十九条におきましては、日本の恩赦法の適用もあることも明記されておるわけでございまして、刑事訴訟法の再審の措置及び恩赦の措置、こういう二つの措置が適用されることになっておりまして、個々的に問題のある事案につきましては復帰後救済がはかられることとなっておる次第でございます。
  86. 久保三郎

    久保委員 私が言っておる再審というのは、いわゆるあなたが言っておる再審とは違うのですよ。私はこの確定裁判を認めない方法を言っておるのですよ、認めない立場から。確定裁判を持ち込んでこない、引き継がぬという立場から、再審の道を開けと言っているのです。あなたがおっしゃる刑事訴訟法か何かにいうところの再審の道というのは、自分で申し出て、自分で費用を払って、それで裁判にかけてもらうのでしょう。そんなことを言っているのじゃないのです。特別措置をこの際は講ずべきだというのです。  それから、恩赦については、さっき申し上げたとおりです。一内閣の恩恵などでこの確定裁判を帳消しにしたり何かできるはずのものではありませんよ、こんなものは。きれいさっぱり、きたない衣は脱いで着させるというのがたてまえじゃないですか。だから、この法案については、われわれは承服しかねる。もう少し考えてもらいたい。いまの刑事局長の答弁は、なるほど筋道は通ったようだが、中身は違います。沖繩県民から言うならば、そんなことは百も承知だ。わかっている。それがいやだから、再三裁判のやり直しをしてくれと言っているのだ。何で奄美方式と違うのかということなんだ。これは御再考をいただきたいと思います。  いずれにしても、この国会は来月の二十四日で終わりでありますけれども、法案審議は、決して二十四日で終わるはずのものではないのであります。時間をかけても、やはり基本的な人権だけは救済するという、これは一番大事だと私は思うのですよ。請求権の問題にしてもそのとおり。それをみんな、一ぺんは聞きました、話はわかりました、しかしながらレールは敷かれているからそのとおり乗っかっていきますでは、事は終わりません。もう一ぺんこれは考えてもらいたい。いかがでしょう、法務大臣。刑事局長の答弁では納得しませんよ。こんなのは、いままでもあたりまえの話じゃないか。これをそこまで考えているのならば、なぜ裁判のやり直しができないのかということです、私から言わせれば。刑事局長の答弁のとおりやるにしても、七十万件あったらどうするのだ、混乱を来たすのじゃないのか、どうなるか。そこまで思い切るなら、なぜ裁判のやり直しの方向をとらなかったのかということです。そうやれば、費用もなければ言ってこないだろう、あまり公表しなければわからぬだろう、わからぬければ言ってこないだろう、これはそういう方法じゃないですか。で、もしもうるさいのがあれば恩恵的な恩赦でごまかしていこうか——恩赦は、聞くところによると、そういうものに関係ないものが便乗するという話も横行しています。沖繩県民の犠牲の上に乗っかって恩赦までやろうという、とんでもない話で、まさか佐藤総理はおやりにならぬと思いますが、そういうことに、いま県民なり国民はとっているのですよ。そういうものを解明しないで、どうしてこれは先に行きますか、審議が進みますか。いかがでしょう。
  87. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 異国民に裁判をされたという感情的な問題はあります。よくわかります。その点はわかりますが、と申しまして、やはり近代的な法制のもとにあるいは有資格者によってなされた裁判を、二十数年にわたってやり直すということは、やはり法的秩序を乱すもので、逆にかえっていろんな不安が残るというふうに私どもは考えております。したがって、この際は、この方法より以外にない、かように考えてきたわけであります。
  88. 久保三郎

    久保委員 法務大臣のことばじりをつかまえるわけじゃありませんが、異民族にさばかれたという感情が残るというようなものではないのですよ、これは。私はそう思っている。そういうものではないと思う。異民族にさばかれた感情じゃなくて、その裁判の確定裁判なんだ。判決なんですよ。処分なんですよ。それに不満を持っているということなんですよ。もしも、ほんとうに感情的なものが残るだろうというふうに軽く見ておられるなら、これは沖繩には理解されないだろうと私は思います。  いずれにしても、こういう裁判の効力についての措置は不当であります。これは憲法にも違反する疑いがあります、はっきり言って。こんなものもやって、どうしてアメリカ施政権下におけるところの裁判を引き継がなければならぬのか、私は疑問であります。もっと努力すべきだ。刑事局長からさっき答弁あったが、ああいうのは普通でもあるんでしょう。別にふしぎな話じゃないですね。再審の方法なんというのは普通でもあるのですね。そうでしょう。特別な方法じゃないでしょう、これは。そういうものを出してきて、何か特別に計らっているような話をされたのでは、県民は、何というか、納得できないじゃないですか。私は、いずれにしてもこの問題は問題があるので、会期が終わるまであるいは審議が尽くされるまでの間に、もう一ぺんお尋ねをしたいと思います。どうかそれまで十分考えてほしい。野党の質問だから受け入れるのは、これはどうもうまくないというのじゃなくて、沖繩県民の声を、一つでも二つでも、基本的なものぐらいは受け入れたらどうかという考えを私は持っておりますから、ぜひ御再考願いたいと思う。  次に、航空協定の了解覚書についてお尋ねします。  これは時間も切迫しておりますから簡単にお答えいただきたいのでありますが、この協定了解覚書ということでありますが、この質問に入る前に、了解覚書とか取りきめとか書簡とか、いろんな形でわれわれの国会の審議にかからぬものがたくさんある。大事なものは全部これで処理されている。返還協定一本だけ。これを裏づけるものが、いま質問しようとする了解覚書であり、あるいは愛知書簡であり、久保・カーチス取りきめであり、いろんなものが出てきている。あるいは合意議事録である。みんな国会の審議には、正式には付されていない。外交官僚等政府の一存でやってこられてしまう。それに基づいて関連法はみんな出てきている。この航空協定に関する了解覚書もその一つであります。そういうところに、われわれ自身も沖繩県民も不満があるのですよ。  それで、この協定の了解覚書でお尋ねしたいが、返還後も、アメリカの乗り入れている企業四つありますが、この四つの企業を五年間は無条件でそのまま続行させる、いわゆる継続させるということであるようでありますが、これは単純に考えても、いま日米間の航空協定は不平等である。従来から不平等。これはもともと日本が民間航空を始めて以来、その不平等は、占領国と被占領国との間の関係は依然として解消しない。それがわが国のいまの対米の航空協定の基本をなしている。そこにいかなる理由があるかわかりませんけれども、五年間沖繩に乗り入れている。しかも、その中の二つ、コンチネンタルあるいはトランスワールド、この二つは、いまだ日本には乗り入れていない航空企業なんです。それを含めて四つの企業が新しく沖繩に乗り入れが可能になるということは、どう考えても、国民感情からいっても納得しがたい。これはもちろん交渉の姿勢によるものだと思うんだが、こういうものをどうして了解してくるのか。しかも、五年たつ前の時限において、このアメリカ企業の運輸権は初めてそこで評価されてどうバランスをとるか、それによって日本にいかなる運輸権を与えるかをきめるというのです。五年先のことをわかりますか、運輸大臣。航空協定は商売ですぞ。五年先、先付け手形をもらっていて不確定な要素がたくさんある、これには。こういう協定が屈辱的だとお思いになりませんか。ちっとも屈辱的でない、いま乗り入れているんだから既得権は認めるんだ、こういうことであります。既得権は認めるならば、わがほうもこれに応じての運輸権を要求すべきであったと思うんだが、なぜ運輸権を要求しなかったか、お聞きしたい。
  89. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 ただいまの了解覚書につきましての日米航空協定の問題でございますが、ただいま久保さんおっしゃったとおりでございまして、私どもといたしましても、アメリカとの航空権益の均衡をはかるために、具体的に申しますると、先般も日米合同経済会議の総会におきましても、私から特に発言を求めまして、航空権益の均衡をはかるために、しかも乗り入れの問題につきまして再交渉を求めるとともに、また今日、ワーキンググループにおきましてそれらの折衝を続けているところでございます。  したがいまして、機会あるごとに、私どもは航空権益の均衡をはかるために折衝を続けていくつもりでございますが、ただいまの四社の問題につきましては、いま御質問のございましたとおり、沖繩施政権がわが国に戻ってまいりますとすると、アメリカから見ますると、外国に一つまた航空の寄港地を認めることになる次第でございまして、したがいまして、従前のとおりにやっておりますると、確かに不均衡になる次第でございます。  しかしながら、ただいま四社におきましてやっておりますことは、これはICAOの一般的規定におきましてカボタージュの禁止というものは当然といえば当然でございますが、今日四社、ことにフライング・タイガーとそれからノースウエストは、やはり沖繩−大阪あるいは以遠というふうにやっておりまして、それらを含めますと、カボタージュ禁止によりまして、便数の約三分の二ぐらいは制限をされるということでございまして、折衝の過程におきましても、それらの問題につきまして、原則は認めますけれども、具体的な利益の問題でいままでやっていた問題がございますから、非常に難航したように聞いている次第でございまして、これらのカボタージュの禁止を認めまして、この経過的措置として五年間、いままでの、従前の権益を認めるということは、現在の需要の状況から申しましてもやむを得ない措置であるというふうに考えておる次第でございます。
  90. 久保三郎

    久保委員 カボタージュは、これは当然のことなんでありまして、別にこれを恩恵として扱うこと自体に問題があると思うんですね。だから、単なる施政権の移動ですねと言われるんですよ。単なる施政権アメリカから日本施政権が戻ったという単純なものだと言われる。カボタージュというのは、施政権が戻れば、実質的にはこれは当然カボタージュの原則によって、アメリカ企業は、東京−沖繩間なり日本本土沖繩間のいわゆる輸送権はないはずなんだ。これは世界共通の原則なんであります。これをとりたてて、だから五年間は沖繩に乗り入れるのはただで認めましょうというのは、卑屈もこの上なしだと私は思うのであります。今度の対米交渉は、全部そういう形なんですね。外国企業は、愛知書簡によっても、全部沖繩で、いままであるいはかけ込み企業も入れて有利に展開しているわけだ。  それで、もう一つ聞きますが、これは五年たったらば、返還時から五年後の運輸権の価値というものは五年後に計算することになるんですか。いかがです。おわかりでしょうか。
  91. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 ただいまのお話でございますが、あの了解覚書の四項によりまして、先ほど久保さんから御指摘がございましたが、航空事情の将来の変化というものはどうなるかわからぬぞというようなお話でございましたが、確かにいま航空のいろいろの情勢、需要情勢というものは非常に変化をしておりますので、五年の先のことはなかなか容易に捕捉できない次第でございますが、やはり五年後のその時点におきまして、われわれといたしましては、これをはっきりと日米航空権益の均衡の上に立ちまして、日本として要求すべきものは強く要求したい、こういうふうに思っておる次第でございます。
  92. 久保三郎

    久保委員 航空局長でもいいでしょう。いまのぼくの尋ねているのは、返還後五年間の四つの企業の乗り入れの運輸権、その価値は、五年の期限が切れる前に評価されて、日本とのバランスをとることになっているのかどうか、それを聞きたい。
  93. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  94. 久保三郎

    久保委員 間違っちゃいないでしょうね。五年後の話をしているんじゃないんですよ。五年間許したその代償は、五年が切れる瞬間にもらうということですね。
  95. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 読み上げてみますと、「同協定に基づく利益の総合的均衡には、3にいう五年の期間の満了後は那覇についての合衆国の運輸権の価値を含むものとする。両国政府は、同協定の附表の必要な修正で、その五年の期間の満了の時における利益の総合的均衡(那覇についての合衆国の運輸権の価値を含む。)によつて正当化される追加の運輸権を日本政府に許与するものを決定するため、その五年の期間の満了前に協議する。」ということになっておりますので、「その五年の期間の満了の時における利益の総合的均衡によって」云々、こういうことでございます。
  96. 久保三郎

    久保委員 大事なところですから、もう一ぺん確認のために局長お尋ねします。五年間の運輸権は、いわゆる五年の期限が切れる寸前というか、その前に清算することですな。ことばをかえていえばそうですね。清算することですね。そうでしょう、いまのお答えは。
  97. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 この趣旨は、五年の間の事柄は、それまでのものは勘定に入れない、五年たった時点において、その直前において、そのことを勘定に入れて五年後についてはバランスをはかりましょう、こういう意味でございます。
  98. 久保三郎

    久保委員 それは明確にもう少し——非常にこのために時間をとるのは残念なんですが、いまのような答弁だというと非常にあいまいなんですね。五年間のアメリカ企業に許した沖繩の運輸権というものの価値は、五年が満了する前にこれを含めて、それから五年後引き続くところの運輸権と合わせて評価するという答弁ですね、いまのは。そうですね。
  99. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 この趣旨は、期間満了前の五年間はこれを全然反対給付なしに与える、こういう意味でございます。しかし、五年たったあとにおいては、これを反対給付の年と考えて、その相互のバランスをはかろう、こういうのがその趣旨でございます。
  100. 久保三郎

    久保委員 全然話が違うじゃないですか。違うじゃないですか。五年間は、言うなら、あなたのいまの答弁は、ただだということですよ。だから私は、念を押して聞いたんですよ。本来ならば、少なくとも、さっきあなたが私の質問に答弁したように、いまは要求しないが、五年間たつ前に、その五年間のものも入れてこれからどうするかも一ぺん相談しましょう、少なくとも、そのぐらいの交渉は外務省がすべきなんです、ほんとうは。百歩譲ってもそのぐらいの交渉があるべきなんです。いまの話だと、五年間はやはり単純にただでやります。ただです。五年間過ぎてからの話は別途やりましょう。航空事情の変化によって、四つの企業があるいはどうなるかわからぬ。あるいはアメリカ沖繩間というものの関係がどうなるかわからぬ。そのときには、まるっきりただの場合もあるということだ。よろしゅうございますか。まるっきりただ。そんな約束は、いわゆる商売の約束としては成り立ちませんよ、はっきり言って。友好国だからまけるというなら、これは話は別ですぞ。全部返還協定に基づくところのアメリカ企業に対しては、この筆法でいっているのです。だから、われわれは、刑に民族主義を高揚するわけでも何でもないけれども、たまらぬ気持ちになっているのです。それで、沖繩県民に対しては差別をした、そういう感じを持っているのです。五年後の保証がありますか、何か。何かありますか、運輸大臣。五年たった時点でバランスをとりましょうというのだが、バランスをとらせるような自信がおありでしょうか。何かありますか。
  101. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 五年後に具体的にどこを寄港地にするかという具体的な問題は、その時点におきまする航空事情、それから世界経済その他の変化によりまして、ただいまから予測はしがたいことでございますが、先ほども久保委員からの御指摘がございましたとおり、私どもは航空権益の均衡というものを絶えず考えておりますので、その観点に立ちまして、アメリカとの折衝におきましても強く要求いたしまして、航空権益の均衡をはかってまいりたいという姿勢で臨んでまいりたい、こう思っておる次第でございます。
  102. 久保三郎

    久保委員 私に対する答弁ならばその程度でもいいのでありますが、これはやっぱりさっき申し上げたように国家の権益ですからね、軽々しくこれは譲歩したりすべきではない性格のものだとわれわれは考えているのです。いずれにしても、この航空協定の了解覚書も、言うならば、先ほど申し上げたように過剰サービスだろうと思っています。(「屈辱的だよ」と呼ぶ者あり)そうなんです。屈辱的ですよ。すべてがそうなんです。請求権もみんなそうなんです。  そこで、次に引き続いて台湾との関係についてお尋ねします。  最近、政府与党姿勢というのは、日中国交回復の方向、これを積極的におとりになるという方向に転換しました。これはアルバニア決議案の通った影響もあろうし、アメリカ姿勢にもよるんだろうと思うのでありますが、しかし、いまや日中間の問題といえば、一日も早く国交回復することだというふうに思っていらっしゃるだろうと思うのですね。その場合、一番障害になるだろうというふうに考えているのは台湾の問題、そうですね。台湾の処理をどうするか。この扱いいかんによっては前進もするし後退もするということだと思うのです。これについて総理、いまどんなふうにお考えでしょうか、お聞かせをいただきたいのです。
  103. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 久保さん御指摘のような問題がいろいろこれから検討される時期になってきておるとは思います。思いますが、いま現実には那覇また日本本土と中華航空が入っておるわけであります。そういう状態下におきまして、この中華航空の航空権をどうするかといいますると、やっぱりわが国が台湾へ日本航空を運航さしておる、この問題とも相応見合いとなるわけです。そういうような現実を考えまするときに、やはり今回沖繩日本に返ってくる。返ってきますが、これは現実を現実のまま認めていく、こういうことにするほかはない、こういうふうに考えます。ただし、沖繩から日本本土への旅客輸送、これは他の場合と同様、アメリカの場合と同様、これはそういうことを差し許すということはできない、これは先方においても了解するところであろう、こういうふうに考えています。  航空の問題はそういう現実的な処理をしなければならぬという考えですが、別途日中間の問題につきましては、大きな外交姿勢として、ただいま久保さんが御指摘に相なったような方向で対処していきたい、ただいま鋭意そういう方向のことを考えておる、こういうふうに御了解願います。
  104. 久保三郎

    久保委員 さすがに総理お答えにならなかった。非常にむずかしい問題でしょうから、外務大臣、ポスト佐藤お答えになったのかもしれませんけれども、まだ早いかもしれませんね。  いずれにしても、早回りで中華航空との問題を提起されましたが、私も、やっぱり中華航空の問題をどう処理されるか、現実的に処理されるというが、その現実的に処理される方法が非常にむずかしいではないかということなんです。残念ながらむずかしいではないか。私も知っておりますよ。しかし、それをあえて目をつぶって先へ行こうといったってこれは行けません。最近というか、との十九日にモントリオールでICAOの理事会がありました。その理事会の中で、これはモンゴルからの提案で、いままで中国の代表は中華民国というか、台湾政府だった。台湾政府は追放されて、中華人民共和国を迎え入れることに決定したのです。これは御承知のとおりであります。いま沖繩に乗り入れ、日本に来ている台湾の航空企業は中華航空、しかも中華航空は、ICAOの中に取り込まれるところのIATAのメンバーでもあろうかと思うのであります。それとの交渉をする前に、いま日本と台湾との間の航空暫定協定、これも取りきめの一種のようでありますが、国会にはかかっておりません。そういうものを土台にしてお話をしなければならぬと思うのでありますが、私は、外交的にはしろうとでありましてよくわかりません。どんな方法をおとりになるのですか、これは。もちろんこの日華というか日台条約というか、そういうものの第八条、これに基づいて暫定取りきめができているようであります。しかも、これは昭和三十年以来だろうと思うのですね。だから十六年も、これはこのままで暫定で一年一年の、一年というか暫定でやってきている。  そこで、あらためて一つ一つちょっとお聞きしたいのは、どうしてこれは暫定取りきめになっているのか。国会の審議にも付されないままで、どうして十六年間も続いているのか、いかなる理由があってやっているのか。  それからもう一つ、時間もありませんからあわせてお答えいただきたいのは、ICAOにおけるところのいわゆる中華人民共和国を迎え入れるという決議、IATAのメンバーである中華航空との関係はどういうふうにおとりになっておりますか。この二点だけお伺いします。
  105. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 ただいまの御指摘でございますが、先般十九日のICAOの理事会におきまして、中華人民共和国がICAOの代表国としての承認を得た次第でございますが、ICAOの機構そのものから申しますと、ICAOは、御承知のとおり保安施設、保安のあらゆる面につきましての国際間の協定でございまして、実際上の両国間の航空の取りきめその他には関係がないことが大体の性質でございます。  具体的に申しますると、先般までは——最近はソビエトがICAOの加盟国になりましたが、それまで日ソ航空協定が結ばれておりましても、ソビエトはICAOの加盟国ではございません。こういうような実情もございますので、中華民国がICAOの加盟国から脱落をいたしましても、それ自体が日華航空取りきめの対象からはずすということには理論的にはならぬと思っている次第でございます。  また、IATAの問題は、御承知のとおり民間航空会社の運輸協定でございまして、ただいまでは、まだIATAには中華民国は加盟していると思っている次第でございます。  現実的の問題といたしましては、先ほど外務大臣から答弁がございましたとおり、日中国交正常化、あらゆる問題の一環として処理すべき問題でございまして、ただいまのところは、日本と中華民国との間にFIRの協定も結んでおります。また、日本からは航空機が三十七便、向こうから十七便も来ておりまして、相当需要も多いような事情でございますので、現実の問題といたしましては、その取りきめにつきましては、いままでのとおり当分の間やっていくつもりでおる次第でございます。
  106. 久保三郎

    久保委員 非常にむずかしい問題だろうと思うのでありますが、ただ、私がこの問題で最後に聞きたいのは、さっきも申し上げたように、たとえば中華航空に対して、返還後は、いまのカボタージュだけは少なくとも認めさせるわけにはまいらぬ。この交渉もひとつあるわけですね、現実に。ところが、いまの暫定取りきめというか、協定に基づいてやるようになれば、関連して台湾との日台条約というか、そういうものをさらにコンクリートする結果を招来すると思うのであります、やり方によっては。そうなった場合には、大きく転換する日中国交回復、中華人民共和国との関係は悪化せざるを得ないんではないか。このやり方について私はどうするのかを聞いているのでありまして、外務大臣、いかがでしょう。
  107. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 航空の問題は、これは相互の利益、ひいてはこれは世界の各国のための利益にもつながっていくわけでありますが、いまとにかくわが国は、いま運輸大臣からお話しのような三十数便という日本航空の台湾航空を実施をしておる。それとまた見合うのが中華航空である、こういう性格のものです。ですから、今度沖繩日本に入ってくる、こういうことになります。いままでは沖繩は米施政権下にありますが、今度は日本本土へ中華航空が入ってくる、沖繩についていえばそういうことになる。そこで、カボタージュの問題があります。これは慣例によって処置しなければならぬ。これを認めるわけにはまいりませんけれども、その他につきましては、この日華航空の現状、これが日華両国ばかりじゃない、世界全体の航空便益につながっている、こういう事態を踏んまえまして措置をしなければならぬ、こういうふうに考えております。  ただし、すでに政府としてはこれを明らかにいたしておりまするように、日中間の問題の解決、日中間の国交の正常化、これにはまっ正面から取り組むということを申し上げているとおりでありますので、それはそれとし、これはこれといたしまして、これを取り進めていく、かような考えでございます。
  108. 久保三郎

    久保委員 いまの外務大臣のお話ですね。はしなくもこれはこれ、それはそれとして進めていくという器用なお話がございましたが、もはやそういう段階では私はないと思うのですね。現実にこの問題の解決を迫られているのは、いまの話からいけば二つあるんですね。中華人民共和国との国交回復をどうするかという大前提がある。それと相反するような台湾政府との関係をどうするかという問題ですね。これは航空協定は現実に問題を処理しなければならぬ一つの事実であります。こればかりじゃありませんよ。たくさんありますよ、これは。  だから、そこで総理にお伺いしたいのでありますが、私は、そういう意味からいっても早急に、いま外務大臣からお話があった中華人民共和国との間の国交回復をはかるという大前提だそうでありますから、その前提を一刻も早く解決することだと思うのです。それには当然台湾の問題もあるでしょう。それ以外にアメリカとの関係もあるでしょう。しかし、そこで私から申し上げておきたいのは、一月の六日、七日でありますかのニクソン大統領との会談の中でも、当然日中問題は討議される大きい柱の一つだと思うのであります。しかし、きちっと今度こそ日本がその方向なり、具体的な手段方法を持って大統領とお会いにならなければ前進はしないし、問題は非常に困難な問題になってくると思うのですね。行ってお話しした上で、まあひとつどうだろうかという程度のものではないと思うのですね、もう時間的に。それからいっても、その大前提としても、国会において、一つの中国、中華人民共和国、台湾は中華人民共和国の領土であるというものを原則にして、あるいは台湾との条約は、これを破棄していくというような、勇断をふるった国会決議が先行さるべきだと思うんですね。ニクソン大統領にお会いになる前に、そういうものを一つ一つ着実に、具体的に片づけていかねばならぬ、そういう時期だと思うんですが、いかがでしょうか。
  109. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 久保君のただいまの御意見は、たいへん私もありがたく、冷静に、また、たいへん御好意のあるお話だと伺って、傾聴しておりました。  ところで、国会の決議についてお触れになりましたが、その点は、各党でそれぞれの決議案を用意しておるようであります。それらの点は、十分各党間の話し合いによりまして、最終的な結論を得ら細ることを私は心から望んでおる、そのことだけをつけ加えておきます。  また、ニクソン大統領と会った場合には、ただいま言われるような点が問題になること、これは、今日から想像もできることでありますから、十分用意して出かける、こういうつもりでございます。
  110. 久保三郎

    久保委員 国会の決議は、もちろん総理の名のもとには、とやかく申し述べることはできないかもしれませんが、総裁としては、この際、やはりイニシアチブを発揮されて、早急に結論をつけるべきだと私は思っているわけであります。  そこで、時間も切迫しましたから、あと二、三お伺いするのでありますが、那覇空港の返還の問題であります。  この間、公明党の中川議員から、那覇空港におけるP3の撤去の問題が出ました。完全にこれは撤去しますという話でありますが、そのあとには、久保・カーチス協定に基づいて、これは海上自衛隊のP2J、そういうものが配置されるというふうになっているんだが、いま那覇空港にあるP3の使用している基地、こういうものは、直ちに海上自衛隊がそこへ展開していくのかとうか。  それからもう一つ、那覇空港の前面、いわゆる海岸寄りにはナイキの基地がある。さらに、もう一つはライフルの、これは演習場というか試射場。それから、エンジンテストの工場等が、四つほどの施設があるんだが、その中でもナイキの基地は、これまた自衛隊がそこに引き継いでいくのか。その場合、ここにあるナイキは核弾頭もつけられるようなナイキであるというふうに承知しているが、これは改造可能なのかどうか、いかがです。
  111. 久保卓也

    久保政府委員 現在アメリカのP3が使っている地域は、民間航空用として使用の予定であります。ただ、現在自衛隊が予定している地域を民間航空が使われる場合に、若干の彼此融通ということは、これは将来の問題として起こり得るかもしれません。しかし、現在の計画では、民間航空の地域として予定されております。  それから、ナイキの地域でありますが、これは移動がなかなか困難でありまして、そのまま使用する予定になっております。  また、ミサイルそのものにつきましては、これを本土で改修をいたしまして、核装備ができないように改修をする予定になっております。
  112. 久保三郎

    久保委員 そこで、これは航空局長に聞いたほうがいいでしょう。  いま話があったように、ナイキの基地が海岸寄りにある。しかも、たとえばP3その他のあれは、いまの話だというと、空港外に出ている。どうしても滑走路、誘導路を横断して、ナイキ基地には出入りする。いまは米軍が自分でやっている空港だから、これはうまくいく。ナイキ基地がそのままの場合において、民間空港との間に支障がないのかどうか、いかがです。
  113. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 ただいま先生御指摘のナイキの基地は、大体空港の西側のほうにございます。それから東側のほうに大体ターミナル部分ができる、こういうふうな全体の地形になっております。そこで、そのナイキに通ずる部分でございますけれども、飛行場の場内に場周道路というものがずうっと通っております。したがいまして、まだ実際に米軍あるいは防衛庁と、その通行のしかたについてすでに話をし合ったわけではございませんけれども、これから話をし合いまして、そういう場周道路を使うことによりまして、民航に支障のないように使わしたい、こういうふうに考えております。
  114. 久保三郎

    久保委員 そんなふうに簡単におっしゃるけれども、そう簡単なものではないと私は思うのですね。これは簡単にはいかぬと思うのですよ。  それからもう一つ、これから返還後、那覇空港は民間空港として整備される必要があるというふうに政府でも考えておられる。その整備されるときに、しかも、われわれいままで聞いている範囲では、ちょうど東側の——ナイキの基地は海岸寄りの西側にある。その真向かいが大体ターミナルになるように聞いている。ナイキの基地がそばにある民間空港なんて、およそこれは安全性を欠くものだと思うんだが、これでもナイキは置かにゃいかぬのですか。しかも、那覇空港は国際空港として将来発展せにやならぬという場所にある。そんなところにナイキの基地を取り込んでおくこと自体に問題があると思うのですが、これはどうなんです。  これは運輸大臣からお聞きしましょう。防衛庁長官に聞いたら、これは必要だということですよ。だけれども、民間に、これは絶対——いまだれもそう思っているのですよ。那覇空港は民間空港として完全に返還されると思っているのですよ。ところが危険きわまりない。少なくとも、防御専門だそうでありますが、防御専門であろうが何であろうが、ナイキの基地があれば攻撃の目標になるのはあたりまえです、最悪の場合に。そんなところに民間航空が拡張されていっていいはずがありません。あなたの所感を伺いましょう。
  115. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 ただいまの御指摘でございますが、ナイキの基地が民間航空に返還をされるその隣接する地帯にある、また、ナイキの基地を利用するのに民間航空を通過するのではないかというお話でございましたが、先ほど航空局長からお話がございましたとおり、飛行場の周辺にずっと周辺道路がございますので、それを通れば民間航空の中心を通らなくて済むということを私も確かめております。  それからまた、ナイキの場合でございますが、ただいま私どもの返還をされる区域といたしましては、御承知のとおり、滑走路、それから着陸帯、そして誘導路、またエプロンその他民間航空に必要な面積は返還をされることになっておりますので、民間航空といたしましてこれから離発着さすのに何ら支障はない、こういうふうに思っておる次第でございます。
  116. 久保三郎

    久保委員 もっとも、支障あると答弁したら事ですから、そういうことになるかと思うんですが、一つ一つあげ足をとるわけではまりませんけれども、真剣にやはりこの際は考えていくというのがたてまえだろうと思うんです。ナイキが必要だという人もいるでしょう。しかし、必要だとしても、民間航空のそばにあるなんということは、これは常識外ですよ。一言申し上げておきます。  それから次には、同じ航空で、航空管制の問題でありますが、飛行場管制は、返還と同時に引き継ぎが可能だ。航空路管制は、当分の間、二年間ぐらいは米軍の手によって運用されるということですが、この運用される場合に、わがほうの航空権は全部返ってきたとは認められない。やはり米軍によって一部は占有される、そういうふうに思う。だから、米軍によって航空路の管制が引き続いてやられるとするならば、いかなる取りきめをするのか。しかも、実際には、日本が、わがほう政府が指揮監督をするのか、いかがですか。
  117. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 すでに久保さん御承知のとおり、航空管制権は、返還と同時にわが国に返ることになっておりますが、航空路管制の諸施設は、ただいまは嘉手納の米軍基地にございます。日本にはそれらの保安施設、管制施設が全然ございません。したがいまして、これに対しまして、長距離監視レーダーであるとか、その他いろいろの保安施設をつくりますのに相当の年月がかかります。ただいませっかく那覇空港付近におきまして場所も物色中でございます。また、それに対しまして管制官も七十数名を要する次第でございます。  それらの観点からいたしまして、私どももできるだけ早くそれらの諸施設の完成を急いでいる次第でございますが、それまでの間、過渡的として、やむを得ず管制権の実際上の仕事を米軍に委託をするということに相なると思う次第でございます。  また、その点につきまして民間航空に支障はないかということでございますが、御承知のとおり、あるいはまた板付の飛行場が返還するまでは米軍の管制下にございましたけれども、私のほうと十分連絡を密にいたしまして、民間航空に支障がなかったいままでの実例もございます。それらを勘案をいたしまして、米軍と十分に協調いたしまして、わがほうからもそれらの管制官を一部派遣する、その他の方法を講じまして、民間航空の運営上、安全道転上支障のないよう、不便のないように取りはからっていくつもりでございます。
  118. 久保三郎

    久保委員 航空路の管制については、いまの運輸大臣の答弁では、何か管制官一人か二人派遣すればそれであとはおまかせするということなんですが、これはやはり国の主権に関する問題だと思うのですね。だから、形の上では一つの協定によって運用されなきゃいかぬ。  それから、実際には指揮監督権はいつでもわがほうにあるということだと思うのです。単なる管制官が出向すればいいんだというようなものではないと思うのですが、この点をあらためてひとつお聞きしたいのです。時間も何ですから簡単に……。
  119. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 ただいまお話がございましたが、管制権は日本政府にある次第でございますので、いま久保さんの御指摘の御趣旨を十分踏まえまして、そしてアメリカとも交渉するつもりでございます。
  120. 久保三郎

    久保委員 これから交渉なさるということなんですが、ずいぶんのんびりと言ったら失礼になりますから、やはりそういうものはきちんとなさって、航空協定なら協定、返還なら返還のものが、原則的なものぐらいはやはりきちんとなさるのが当然だと思う。あらためて申し上げておきます。国家主権に関する問題でありますから、やはり国と国同士の取りきめというか、協定によってこれは運用してもらいたい。もう一つは、いつでもわがほうの指揮監督下にこの航空路の管制は置くということを約束してもらいたい。以上です。  それからもう時間でありますが、もう一つ簡単に、これは環境庁長官か農林大臣でありますが、西表の原生林の問題であります。  これは御承知のように、八重山開発株式会社というものが一九五三年かでありますが、五十年間の契約でその国有林の大半を部分林契約としてやっている。その後、原生林保護というか、そういうものから多少の変化はありましたが、今日では国有林二万四千ヘクタールのうち一万七千ヘクタール以上が契約になっていて、現在契約になっているのは約一万三千ヘクタールですね。これが部分林として八重山開発——これは本土におけるところの大きな製紙会社の傍系だそうでありますが、これと契約している。これは契約していること自体に問題もある。  それと同時に、沖繩の西表の原生林は、言うならば、日本民族の最後の郷土の森かもしれない、そういう値打ちがあるものだとわれわれは思っています。ところが、本土政府の助成のもとに、たとえば先般七月に行ったときに驚いたのは、大きな縦断道路ができている。これは本土政府の助成のもとにやっているそうであります。御承知かもしれませんが、この西表の土質はもろい砂というか岩なんです。これをささえているものは、御承知かもしれませんが、あそこ特有のいわゆる植物というか木ですね、根を張っている。そういうものは、一たん切ったら、もはやその島というか、それがみんなくずれてくる。いまブルドーザーをかけておりますが、ブルドーザーでかけるものは、全部傍若無人のごとくやっているわけです。貴重な一本、一本の木の存在などはあまり眼中に入らぬ形でやっている。だから浦内川というのですか、下を流れている川、これも貴重な川だそうでありますが、そこに土砂がどっと入っていって、そこで保護さるべき幾つかのものが死滅に瀕している。私はその川まで行きませんで、上の構築中の道路から見てきましたが、むざんなごとく原生林が切り捨てられているというよりは押し返されている。  こういうものに対して、外国のほうからも注文がきている。御承知かもしれませんが、天然自然資源保存国際連盟から注文がきていることも御承知でしょう。これに対してどういうふうな考えをいま持っておられるか。時間もありませんから簡単に、あの林道はそれでいいのか、部分林の契約はいいのかどうか。最近、林業白書というか、そういうものが出たそうでありますが、その中には、木はやはり一ぺん切って植え直すことが一番いいのだなどという、そういうものも書いてあるようでありますが、ここでは断じてそういうことはできないはずであります。西表ではできないはずであります。一ぺん切って焼いてしまえば、もはやその地殻はくずれ去るのです。二度と再びその地形はもうなくなってくる。だから、そういう部分林の契約によって西表の森林を保護するとか資源を涵養するとかいうことにはならぬと私は思うのです。これはもちろん返還の暁においてはそういう契約はどうするのか。更新するのかどうか。私の言いたいことは、いまの林道の構築はいま直ちにやめる、部分林契約は、いまはどうにもならぬければ、返還後においては一ぺんみんな返してもらう、あらためて国民全体の郷土の森としてこれは保存する方向を考えるべきだと思うが、いかがですか。
  121. 山中貞則

    ○山中国務大臣 この契約は、ただいまお話のありましたように、八重山開発株式会社と琉球政府が米民政府から管理、運営、処分等をまかされました国有林について結ばれたものであります。当初は一万八千ヘクタールの契約でありましたが、その後自然保護その他の意見も高まってまいりまして、現在は一万三千ヘクタールの契約にとどまっております。しかしながら、琉球政府の新しい計画に対する審議会の答申等もありましたので、琉球政府はこれを六千七百ヘクタール程度までにとどめる計画を一応持っておるようでありますけれども、しかしながら、一方、私も現地に行って、この契約についても基本的に問題があり、また、亜熱帯の全体の原生林そのままの状態を保存すること、そのことが価値のあることであって、もちろんイリオモテヤマネコ等の貴重な、世界にない、あそこだけにしかいない動物もおりますけれども、それらは原則的に廃止すべきであるというようなことも考えてみたのであります。  しかし、まず第一には、西表の地元の白浜、祖納等の部落の人々は、山の生活によってのみ生活があり得る人たちばかりであって、もしこれを完全に打ち切るとした場合には、それらの部落の人たちに対する生活権の付与というものは、その立地条件から見て、ほかに考えられない山に密着した生活の地形であり、人たちであるということ、さらにまた、その契約は、琉球政府が合法的にまかされた国の国有林の経営、管理についての代理権を執行したものとして有効と認めざるを得ないこと、もしこれを認めない場合には、やはり八重山開発に対して国は補償の議論を受けて立たなければならない性格のものであること、これらのこと等も考えまして、現在の方針としては、まず二つに分けて、一つは、自然破壊のおそれのあるものはいまの林道でありますから、この林道は、実に簡単に傾斜地を斜めに切りくずして平たんにして、下の谷のほうへ木も川も顧みないで土砂を捨てていく、こういう軽便な方法をとっておりますから、これは復帰記念循環道路ということの一環にこれを取り入れることにして、十分の十の国の補助でもってこれをきちんとした規格の、すなわち土砂崩壊、流出、そういうことの起こらない道路として開通させることがぜひ必要だ。と申しますのは、西表は、沖繩第二の大きな面積を持つ島でありますが、そこに住む三千六百数名の人たちは東と西に分断をされて住んでおりますけれども、その島における会合にしても、一ぺん石垣に出て、そしてそれぞれ東の部落の会合か西の部落の会合に出なければお互いの島の中の行き来ができないという、島民としての連帯感すら持てないような状態にありますので、どうしても道路は開通させなければなりません。これは島民こぞっての要望であり、また、政府も含めた現地の要望でもございますので、したがって、林道はやめて、これを国の十分の十の補助によるきちんとした規格の道路にすることによって自然破壊をやめよう。  いま一つは、伐採し、植林をしていく部分林契約については、会社のほうも、やはり経営の採算の、長期に見ても成り立ち縛る最低の限度がありましょうから、琉球政府の現在計画書として持っております六千七百ヘクタールというものを参考にしながら、今後やはり山に依存する人だちの生活等の上にも配慮を置きながら、自然破壊の、ことに面積において及ばないように配慮をしてまいるつもりでございます。
  122. 大石武一

    大石国務大臣 いま山中国務大臣からいろいろな説明がありましたが、その補足をいたします。  現在環境庁におきましては、あの西表の原始林を何とかしてできる限り最大限に保護してまいりたいと考えております。ただいまのところは、一番よい場所を約一万ヘクタールほど確保いたしまして、これを国立公園としての基盤といたすことに方針を決定いたしております。この部分林の契約は昭和七十八年まででございますから、あと三十二年ございます。法律的には、現在一応この契約は守らなければならないことになっておるわけでございますが、幸いにその後いろいろな琉球政府の努力によりまして、初めは一万九千ヘクタールであった部分林契約がいま現在一万三千ヘクタールまで減っております。さらに、いまも沖繩政府は努力中でございまして、これももっと減少し得る見通しでございます。そういうことで、でき得る限り、本土返還までは、この琉球政府の努力によりましてできる限りの原始林を守ってまいりたい、区域を広げてまいりたいと考えております。  ただ、返還後はどうするか。これは法律的にいろいろなむずかしい問題はございますけれども、要するに、部分林の契約というものは、契約はいたしております、国の土地を使用させることに契約いたしてございますが、ほとんど大部分、ほとんど全部は、まだ伐採をしようという契約だけであって、植林ということはほとんど一切いたしておりません。したがいまして、この現実を——一部でございますが、その現実を考えます場合に、このままで将来いっていいかどうか、これは返還後に十分に考えまして、そうしてその実態に即するような行政を進めてまいりたいといま考えている次第でございます。
  123. 久保三郎

    久保委員 いずれにしましてもたいへん長い契約でありますし、さっき申し上げたように、部分林契約というのは木を切って植えるという契約であります。木を切ること自体に問題があるところですね。しかも、この長い契約をした裏にはいろいろな問題があろうかと思うのですが、この問題をわれわれいま取り上げようとは考えていません。しかし、やはり八重山開発という会社の企業立場を認めなければならぬというお答えがありましたが、企業立場よりは国民全体の利益というか、そういうものの値打ちのほうが重いということも考えてもらいたいと私は思うのです。沖繩施政権返還だけに、こんなにアメリカにサービスといってはおかしいが、大きな代償を払うまでの思い切りをしたのなら、あそこの自然を保護することや、あそこの県民生活を保護するためにはもっと惜しげなく金は出すべきだとも考えています。  それから山中長官の御答弁の中で、道路はやはりつくらなければならぬと言いますが、東と西が行ったり来たりできないのは、道路がないからも一つ理由でありましょう。しかし、石垣に行って帰ってこなければならぬというのは、港がそういうふうになっている。港の船等解決しなければ、やはり石垣を中心にし、宮古を中心にし、沖繩を中心に、那覇を中心にしての交通しかない地形なんですね。これは総合開発の観点からも、島同士の行き来ができない現実はやはり残るのですよ。それを解決しないで、自然はどうでもいいといっては語弊がありますが、どうしても開通しなければならぬということは、私はなかなか承服しかねる。もっときちんとした、もっと細い道路でもいいと私は思うのです。そういうことを考えて、保護を重点に考えていくべきだと思うのです。  たいへん質問が残って、ほかの閣僚の皆さんにはたいへん失礼なんでありますが、一言だけどうしても申し上げておきたいことがあるので、要望、だけ申し上げておきます。  それは、通行区分の問題であります。いま日本ではいわゆる右側通行というか、ところが沖繩では、アメリカ施政権下で左側通行であります。日本は過去においてはそうだった。これは今回の返還に伴って暫定期間を置いて日本本土と同じにするというのでありますが、どうしてそういうことをしなくてはいけないのか。どうしてしなくてはいけないのでしょう。それはなるほど条約のたてまえもあるだろう。しかし、島なんでありますから、しかも、たとえば韓国といわゆる下関の間には関釜のフェリーがあります。車に乗っていく者は、左側通行から右側に変わるわけなんです。何の痛痒も感じないでいま乗っているのじゃないでしょうか。しかも、この通行区分を変えるために、たいへんな犠牲が伴います。  それからもう一つは、これによって特にバス、そういうものの企業はどうするのか。みんな零細な小さい企業ばかりであります。それを改良する、改造する費用さえこと欠く。ましてや、みんな上等な交通機関じゃありません。この際、どうしても通行区分を改正するというんならば、みんな沖繩のバスは政府でもって新しく日本本土と同じような構造のバスを買ってやる。極端なことを言っているようでありますが、金は三十億程度あれば間に合う。そうしてこれは零細な企業でやっていたんじゃ困りますから、しかも辺地、離島が多いのでありますから、こういうものを考えれば、やはり公的機関の一元的な運用で考えるべきだと私は思うのであります。御考慮をいただきたいと思う。  以上です。終わります。(拍手)
  124. 床次徳二

    床次委員長 この際、暫時休憩いたします。    午後一時十一分休憩      ————◇—————    午後二時六分開議
  125. 床次徳二

    床次委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。質疑を続行いたします。二見伸明君
  126. 二見伸明

    ○二見委員 公用地暫定使用法案についてお尋ねしたいと思いますけれども、お出しになった最高責任者である総理大臣に基本的なことをお尋ねします。どうしてこういう法案をつくらなきやならなかったのか、それについてまず最初お尋ねをしたいと思います。
  127. 西村直己

    西村(直)国務大臣 私から先にお答えさせていただきます。  元来、こういうような一つの権力作用を伴うような法案は出さないことが理想的ではございます。ただ御存じのとおり、今回沖繩復帰いたしますその際に、相当なる基地と申しますか軍用地、また同じように公用地、公共用地と申しますか、そういうようなものを引き続いて使っていかなければならない。基地につきましては非常に大きい、多いというんで、これは復帰後において政府は極力縮小整理につとめる、これは国会でも御決議をいただいたわけであります。しかし、いずれにしましても、国家並びに公共団体がいろいろな仕事をやっていきますのに、引き続いてそこに空白状態を起こさないということ、いま一つは、御存じのとおりに、日本には、安保体制の中で安保条約上の基地提供の義務がある、これらを考えまして、できるだけ多数の地主の方と契約を結んでまいりたい。しかし、その間にどうしても話が短い期間ではできない部分については暫定使用の期間を置いて、そして暫定使用をする期間にお話を続けながら、空白を置かないで、しかもその間に契約でできるものは契約、それからその他の必要な措置をとって引き継がしてもらいたい、これが今回の立法を御審議をお願いしておる趣旨でございます。
  128. 二見伸明

    ○二見委員 実は、これは仄聞いたしましたので、はたして真実であるかどうか、私もちょっと疑っているのですけれども、引き続いて基地を使用する、言うなれば、日本沖繩基地アメリカ軍に提供するという形になると思いますけれども、それならばがたがたするんじゃなくて——これは政府部内にそういう議論があったという、議論というか一つの意見としてあったという話を聞いたわけです。こんなめんどくさい措置をしないで、すでにアメリカの法体系のもとでやっているんだから、それをそのままやったらいいじゃないかという乱暴な意見もあったという話を聞いておりますけれども、その点については真偽のほどいかがでしょうか。また、そういう考えについての長官の御見解はいかがでしょうか。
  129. 西村直己

    西村(直)国務大臣 研究の過程ではいろいろな論があるのは当然でございます。ことに、先ほど申し上げましたように、できればこういうものは円滑な契約でまいる、これが一番であります。御存じのとおり、講和発効時、本土におきましてもおそらくいろいろな議論がかわされたと思いますが、最終的には、期間は短いが駐留軍基地につきましては、やはり今日に至るまで特別措置法、こういう体系をとっておる。それから小笠原の返還におきましても、同様な法制というものを国会で御審議を願ったわけであります。
  130. 二見伸明

    ○二見委員 要するに、あるいは議論の過程ではそういう意見もあったかもしれないけれども、たとえば布令二十号でやるということは好ましくない、それは、アメリカの法体系を持ち込むことは好ましくないというお考え暫定使用法案をおつくりになった、こういうふうにいまの答弁を理解してよろしいでしょうか、長官。
  131. 西村直己

    西村(直)国務大臣 日本の国土に戻ります。したがって、沖繩県民の方々並びに国土を本土として扱う。当然、日本の憲法のもとにおいて沖繩復帰するわけであります。したがって、あくまでも日本の自主的判断で憲法の中においてこれを実行していく。アメリカの法体系とは別個の考えでやっておるわけであります。
  132. 二見伸明

    ○二見委員 ところで、この公用地等暫定使用法案のすでに国会で議論されてきた最大の問題点というのは、これがはたして憲法に適合するかどうかということです。私たちは、これは明らかに憲法違反の法律案であるという解釈と判断を下しておりますけれども、しかし、いままでの論議では、政府はこれは憲法違反ではない、こういう説明に終始されております。それでは、暫定使用できるという憲法上の、条文上の根拠はどこにあるのか。四十三年五月の当委員会で、ちょうど小笠原の問題に関して論議されたときに、加藤政府委員は、二十九条二項の問題だという答弁がありますけれども、政府としては、憲法のどの条文に根拠を持つ法律案だと、こうおっしゃるのでしょうか。
  133. 西村直己

    西村(直)国務大臣 法制上の問題ですから、法制局長官からお願いします。
  134. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答え申し上げます。  ただいま憲法上の根拠はどうかというお話でございました。これは憲法二十九条の規定にございます財産権の問題でございますので、二十九条関係の問題であるということはすぐ言えるわけでありますが、二十九条二項の問題か、三項の問題かというのがお尋ねの本旨であるようであります。二項は、この財産権の内容は法律で定めるということでありますし、三項の問題は、私有財産は補償の上で「公共のために用ひることができる。」という規定でございます。そこで、この財産権の制約の場合には、二項の問題か三項の問題かというのがよく問題になるわけでありますが、ただいまのお尋ねに端的にお答えをすれば、これはやはり個別の私有財産の問題でもありますし、補償のことも規定の上に出ておりますように、いろいろな考え方はあろうとは思いますが、私どもとしては二十九条三項の問題であろうというふうに考えております。
  135. 二見伸明

    ○二見委員 そういたしますと、四十三年五月十四日の当委員会で、これは社会党の中谷委員質問に対して、二十九条二項の問題だという答弁があるわけですが、その答弁は撤回されるわけですか。そうするとあのときは違うというのですか。
  136. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 当時の答弁、質疑応答につきまして、私は遺憾ながら存じておりませんのでございますが、しかし、二十九条二項か三項かと言われて私がお答えをすれば、これは三項の問題だと思います。ただし、財産権の制約の問題でございますので、一般的な制約と見るのかあるいは個別の制約と見るのかということによって、見解は分かれるところでありまして、前の中谷委員に対する御答弁が二項であったとすれば、今度のこの問題についての憲法上の規定は何かと言われれば、三項であると言うのが正しかろうと、法制当局としてはそういうふうにお答えをするわけであります。
  137. 二見伸明

    ○二見委員 もう一点、ちょっと繰り返しになりますけれどもお尋ねしますが、二十九条二項とは全然無関係ということになりますか。二十九条二項に照らしてもこの法律案は正しいということになりますか。
  138. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 御答弁申し上げたところで御理解いただけたと思いましたが、財産権はこれを保障する。「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」という一般的な制約といいますか、財産権の内容の法定ということとは違って、二十九条三項にあります私有財産の収用ないしは使用の問題であろうというのが私のお答えでございます。
  139. 二見伸明

    ○二見委員 要するに二十九条二項ではないというわけですね。  ところで総理大臣、いろんな法律の解釈もございますので、法制局長官にいろいろ説明をしていただくわけですけれども、これはそれで総理大臣に御答弁が全然いかないということではございませんで、その法律の解釈を聞きながら、総理大臣が政治家としてこの問題をどういうふうに御判断になるかという一つの材料としてお聞きをいただきたいと思うのです。  ところで、いま法制局長官は、二十九条三項の問題であって二項の問題ではない、小笠原のときのいわゆる加藤政府委員の答弁はひっくり返したわけです。(中谷委員「民事局長もそう言ったよ」と呼ぶ)質問をされた中谷委員が、民事局長もそう言ったと言っております。要するに、そのときの答弁は間違いだと訂正されるわけですね。あれは間違いだ、あのときは二十九条二項で——中谷委員は二十九条三項で質問しようと思ったところ、二十九条二項の問題ですと言って、あのときは答弁を終始しているのです。あなたは今度は二十九条二項ではなくて二十九条三項だと言っている。要するに、あのときの答弁は違う、間違いだというふうに正式にここで否定されるわけですね。
  140. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 当時の答弁を私そばで聞いておれば、また適当なことが言えたと思うのでありますが、しかし、私は不幸にしてその席におりませんために、その一部始終を存じておりません。おりませんが、しかし、小笠原の問題ではなくて、いまのこの問題について、憲法上の規定との関連はどこかというお尋ねでございますので、私は明確にこれは三項の問題であろうということをお答えしておるわけであります。私が、もしも同じような問題について、前に二項と言い、今回は三項と言うのであれば、私自身が二項と申し上げたのは誤りでございましたと申し上げますが、しかし、そういう一つ法律的な見方、これを御説明申し上げたのだろうと思いますが、私は政府の法制当局といたしまして、この問題についての法制当局としての見解を述べろということになれば、三項だと正直に申し上げるほかはないというわけであります。
  141. 二見伸明

    ○二見委員 要するに、つい二、三年前の同じ政府側の答弁と、今回の答弁と食い違ったのでは論議というのはしようがないですよ。あのとき中谷さんは十二条の問題で聞いているのです。そうしたら二十九条二項の問題だと答弁が返ってきたのです。そのときはそのとき、このときはこのときで一々答弁を変えられたのなら、だれの答弁を信用していいのかわからないじゃないですか。この次同じようなことを言った場合には、また法制局長官が違えば、あのときはそうかもしれませんけれども今度はこうですと、その場その場でくるくる変えられたのなら、そんなことで質問なんかできますか。前が間違いなら間違いとはっきり言いなさい。
  142. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 実は、私自身たいへん困っておりますが、前の小笠原の問題に関連してのお尋ねで、それについて二十九条二項か三項かというふうなお尋ねがあったのかどうか存じませんが、とにかくそのいずれであるかについての御質疑であったように承ります。そこで、二項ということで中谷委員も御了承になったのかどうか、それはよくわかりませんが、もしも三項ということで御質問になる方々、まあ中谷さんを含めて、もしもそれでよろしいということであれば、もうその基盤に乗ってさらに御質疑を展開していただきたいと私は考えます。私自身申し上げたことでございませんので、ただ法制局長官としては政府における法律問題については一応最終的な答弁を申し上げることになっておりますので、そういうふうに御了解を願いたいと思います。
  143. 二見伸明

    ○二見委員 そのときには私は席にすわっておりませんでしたとかそういう、あなたがいなかったことは私もわかっているのですよ。あなたの答弁でないこともわかっている。要するに、そのときの答弁が違うなら違うと言っていただければいいのです。そうしないと、あのときはあのときの答弁で認めておいて、今回の答弁はこのまま認めておいて——その点をまずはっきりしておいてくださいよ。
  144. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 もしもその問題について、法制局にさらに照会があったとすれば、私どもは二項の問題ではなしに三項の問題であると申し上げます。
  145. 二見伸明

    ○二見委員 ところで、この憲法論議は十四条、それから二十九条、三十一条と、これに関して細谷委員あるいは東中委員から、この当委員会でも論議されたわけですけれども、そのときの答弁、そのときの見解、会議録がありますけれども、一応もう一度、十四条、二十九条、三十一条にどうして合憲であるか、そのときの答弁と同じでけっこうですから、もう一度言ってください。
  146. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お尋ねは、十四条の問題と二十九条の問題と三十一条の問題でございます。これは御指摘のように、前にも御質疑がございまして、御答弁申し上げました。答弁の内容はそう変わるわけではありませんが、十四条の一項は「すべて國民は、法の下に平等であつて、」という規定でございます。それで、そのあとを見ればわかるように、「人種、信條、性別、社會的身分又は門地により、差別されない。」ということになっております。この規定をごらんになればわかりますように、どの規定をごらんになっても、沖繩の住民を人種、性別、社会的身分等の人間の個人的条件に基づく事由によって差別するものでないことは、もう直ちにおわかりいただけるのではないかというふうに考えるわけです。  それには、使用法案についてのお話をまた申し上げなければならぬと思いますが、しかし、それはあまりに時間をとりますので、簡単に申し上げて、いまの憲法十四条の一項にありますような事由、それをもう少し広げたとしても、人間の個人的条件に根ざす事由によって差別してないものであることは明らかであると思います。したがって、十四条一項についてはさらに申し上げる必要もなかろうと思います。  それから二十九条、三十一条、これも何か論点を御指摘になれば、そこだけを中心にしてお話ができるわけでありますが、きわめて大ざっぱに二十九条、三十一条ということでございますので、こちらも大ざっぱにお答えを申し上げます。  とにかく、この土地等はどういうものであるかといえば、復帰時に公用、公共用の目的に供されているものであるということであり、それから復帰時以降も、引き続き同様の公用、公共用の目的に供される公益上の必要があるものであることという要件が課されておるわけです。この要件を具備するものが初めて問題になるわけでありますが、このことは実体面についていえば、公共の利益のための特別の必要性があるという認識を基礎とするものである、と同時に、手続面におきまして、復帰による供用の中断を避けるための制約が、いま申したような公共の必要に照らし、やむを得ないものであるという認識を基礎とするものであることは間違いございません。こういう基礎的な認識について異論があれば、これは別でございますが、そういう認識が正しいものであれば、この暫定使用については正当な補償が与えられることはむろんのことでありますし、復帰前に対象土地の区域やその使用方法を定めて、これを告示しまして、復帰後遅滞なく関係権利者に通知する手続も具備しておることでもありますので、憲法二十九条三項に違反しない、あるいは三十一条に違反しない、このように考えておるわけであります。
  147. 二見伸明

    ○二見委員 ところで総理大臣、これは憲法条文の解釈ではなくて、憲法の精神という面から見て、どういうふうにお考えになるかお尋ねしたいのですけれども、憲法三十一条ですね。「何人も、法律の定める手續によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」という規定でございますけれども、この「自由」という中に、財産権というものは含まれていると解すべきなんでしょうか、それともそれは含まれてないと解すべきなんでしょうか。総理大臣、これは政治家としての御判断いかがでしょうか。
  148. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 三十一条の解釈問題でございますので私が申し上げますが、「生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」この自由に入っているかどうか、あるいは「その他の刑罰」というのにも、財産権というのがありますから、そこに入っているのかどうかというようなこまかい問題になれば、いろいろ議論があると思いますが、いずれにしても財産を没収するというのが、この三十一条の適用外であるということには相ならぬということは確かだと思います。  ただし、三十一条は刑事手続における一つ保障であるというのが、明文上は一応そうなっております。ただし、これは行政手続にも適用説というのか、準用説というのか、これまた学者の間ではたいへん議論の存するところでありますが、無視してもいいという問題ではないということはいえると思います。
  149. 二見伸明

    ○二見委員 総理大臣も大体同じ見解でよろしいですか。
  150. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は法制局長官を信頼しておりますので、よろしく……。
  151. 二見伸明

    ○二見委員 ところで法制局長官、「法律の定める手續」というのはどういうことをいえばよろしいのでしょうか。
  152. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答え申し上げます。  口述試験には私もよくそういう問題を出すのでございますが、これはもう先生に詳しく申し上げることもないと思いますが、いわゆる適正手続条項というもので、アメリカの該当条文には公正な手続というのが出ております。日本の憲法にはそういうことが書いてありませんが、どんな手続でもいいというわけのものではない。ただし、それは通常の場合のことであることも言うまでもございません。
  153. 二見伸明

    ○二見委員 普通は、法制局長官の答弁でいきますと、通常の場合にはたとえば告知、弁明、防御、こういった要件は手続として備えなければならぬわけですね。その点いかがでしょうか。
  154. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 三十一条の典型的な場合は、刑事手続等のいわゆる訴訟手続の場合のことでありますが、そういう場合についてこれを通常とい身ば、その場合に告知、弁明等の手続が必要である、少なくも問題を限定すれば、確かにそういえる問題であります。
  155. 二見伸明

    ○二見委員 ところで、今回のこの法律案、これはどういうふうになっているか、手続の点はどうなっているかというと、まず前提として「この法律の施行の日から当該土地又は工作物について権原を取得するまでの間、使用することができる。」五年の範囲内で、これが前提となりまして、そして事前の告示と、それから遅滞なく事後の通知というのがございますね。この場合は、これがいわゆる法律の定める手続ということになるのでしょうか。
  156. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 何度も申し上げておりますが、この憲法の三十一条、いわゆる刑事手続における適正手続条項、これがほんとうの言い方でありますが、そういうものが行政手続にも適用になるかどうか。これは先ほど触れましたが、適用説、準用説、不適用説までもございますが、私どもは立法の場合にどう考えるかといえば、われわれは、やはり刑事手続と行政手続における本質上の相違が通常あるものでございますが、そういう相違に比例した手続の省略、簡略化、これはむろんかまわないけれども、訴訟手続に匹敵するようなものがもしありとすれば、それは適正手続条項をフルに生かしていくべきであろうということが一方ではいえますと同時に、この人の身体の拘束も、警察官職務執行法なんかをごらんになればわかりますように、また伝染病予防法等で患者を隔離病院に入れさせるというような問題についてもわかりますように、事緊急を要し、公共の福祉上の必要があれば、一々その場合にいわゆる理想的な手続を踏まなくてもよろしいということもございます。この場合がどういう場合に当たるかということは問題でございますが、いま申したような手続、いまあげられましたのも一つの手続でございます。
  157. 二見伸明

    ○二見委員 私は、法律はしろうとでございますので、もう一度くどいけれどもお尋ねします。二条二項ですね、「前項各号に掲げる土地となるべきものの区域又は同項第一号に掲げる工作物となるべきもの及び当該土地又は工作物の使用の方法は、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に掲げる者がこの法律の施行前に告示する。」それから、そのあとの三項、「この法律の施行後、遅滞なく、当該土地の区域又は工作物及び土地又は工作物の使用の方法をその所有者並びにその氏名又は名称及び」云々とありまして、「に通知しなければならない。」と、これが憲法でいう、「法律の定める手續」というふうに大みえ切っていえるものなのかどうかということなんです。これは、要するに一方的に財産権を侵害するわけでしょう。財産権を侵害するものに対して、こういう一方的な手続のやり方が、これが法律で定めた、憲法で予定している手続といえるのかどうか。あなたは、いま何とかして、これはそうなんだ、間違いないのだと言いたい顔をしているし、いままでもそう言い続けてきたんですけれども、虚心たんかいにこれは明らかにしていただきたいと思うのです。あなたは法制局長官という立場ですから、悪いことばでいえば三百代言、もう少しいいことばでいえば詭弁、もっといいことばでいえば政府の顔を立てなければならない、答弁をしなければならない、その苦衷は私よくわかりますけれども、この点どうなんですか。
  158. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 まず最初に申し上げたいことは、内閣の法制上の責任当局としての心がまえでありますが、いまかなり辛らつな御批評がございましたが、私どもは、確かに一面は、内閣の政策がわが憲法秩序のもとで間違いなく実施されるように、法制上の措置を講ずるのが一つの任務であります。しかし、同時に、国会における立法の素材を提供することによりまして、国会の立法活動の誠実なお手伝いの役をさしていただいている心組みをほんとうのところ持っております。そうであります以上、法律の内容が憲法に違反しないということは、われわれの最大の関心事であります。現に、われわれ立法の過程におきまして、憲法上の疑義があると——まあこれを疑義があるとおっしゃるわけでありますが、そのほかの問題についても、法制局で討ち死にする中身というものは、これはもう御説明したことはありませんけれども、これは非常に多いものであります。少なくも中身をかえさせるというようなことで、国会における立法活動が、はなはだ不遜な言い方でありますが、これまたわれわれが誠意を尽くして案の内容を吟味し、そして、さっき申し上げたようなお手伝いさんの役割りをさしてもらっているというつもりでございまして、この法案につきましてもその点に十分な検討を加えたことはもちろんのことでありまして、当然のことながら、御指摘の諸点についても憲法違反のかどはないと確信をいたしております。  そこで、それはよけいなことでありますが、いまのお話の条文上の手続が手続であるかと言われれば、これは私は手続であるということを先ほども申し上げましたが、ただ、御質問されるほうからいうと、憲法三十一条の適正な手続というのは、これは何といいますか、すべての場合について、たとえば、訴訟手続におけるがごとき手続が手続であるというお考えではないかというふうに考えるわけで、その手続と違うことは確かでございます。しかし、先ほど来申しておりますように、ある説によれば、憲法三十一条は刑事手続におけることをいっておるのであって、行政手続には適用がないという考えもあるわけでありますが、私どもの法制当局としては、やはり行政面においても、できる限り、その行政手続と刑事手続との相違に応じた措置を講ずべきであろうというので心がけておるわけでありますが、今回の法案は、担当大臣からも御説明がいままでございましたように、私もちょっとさっき触れましたが、とにかく中断なくそれを使用することが公共の利益上必要である、そういう前提に立っておりますが、そういう前提のもとにおける手続としては、これはりっぱな手続であると考えておるわけであります。
  159. 二見伸明

    ○二見委員 たとえば、土地収用法による収用のしかたとこれは違いますね。これは争う場というのはあるのですか。これによって沖繩県民は争う場、異議を申し立てる場というのはあるのでしょうか。
  160. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 少なくも、告示に対しまして不服の申し立てなりあるいは訴訟なりの提起、行政事件訴訟法による訴訟の提起もできるものだと私どもは考えております。
  161. 二見伸明

    ○二見委員 もう一点お尋ねします。  同じ件でお尋ねいたしますけれども、たとえば不服審査法に基づいて異議の申し立てをした場合に、だれに対して異議の申し立てをすればよろしいのですか。
  162. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 二条の規定でございましたか、それぞれ担当の機関がございますが、告示者です、告示者に対して申し立てができます。
  163. 二見伸明

    ○二見委員 先日も、施設庁長官はいまの法制局長官と同じ答弁をいたしました。二条二項の事前告示が一つの処分なので不服の異議申し立てばできる、こういう答弁をしております。いまの法制局長官と同じ答弁です。  ところで防衛庁長官お尋ねいたします。  形式的には不服審査法に基づく異議の申し立てばできるというのが法制局長官の答弁です。軍施設の場合はこれは防衛施設庁長官になるわけですね。長官来てますか。防衛施設庁長官はそういう異議の申し立てをされた場合に、あなたはイエスと言いますか、ノーと言いますか。   〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕
  164. 西村直己

    西村(直)国務大臣 施設庁長官のほうから、それじゃお答えさせましょう。
  165. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 行政不服審査法に基づきます異議の申し立てが、どういうふうな内容のものであるかによって異なってくると思いますけれども、その異議の申し立ての理由が合理的なものであるかどうかということによってそのつど判断をする、こういうことになろうと思います。
  166. 二見伸明

    ○二見委員 そのつど判断するのはあたりまえの話なんです。いいですか。「この法律の施行の際沖繩においてアメリカ合衆国の軍隊の用に供されている土地又は工作物で、次に掲げるもの イ引き続き自衛隊の部隊の用に供する土地又は工作物口引き続き日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の規定に従いアメリカ合衆国の軍隊の用に供する土地又は工作物」この関係から異議の申し立てが出た場合に、あなたはイエスと言うのですか、ノーと言うのですか。
  167. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 一応対象の土地等につきましては、ここに、ただいまお読みになりましたように法定せられておりますし、その内容に関する限りにおきまして異議の申し立てがございますれば、これはもちろんノーであると思います。その他手続上いろいろ問題があります場合には、これはそのつどやはり検討しなければならぬと思いますけれども、告示その他の手続上、私どもとしては適正にやっていくつもりでございますので、その異議の申し立てが合理性があるかどうかということをそのつど判断いたしますけれども、こういう要件に該当しておる限りにおいては、ノーという結論に到達せざるを得ないと思います。
  168. 二見伸明

    ○二見委員 法制局長官は異議の申し立てばできると言った。しかし、防衛施設庁長官はノーと言うのです。形式的には異議の申し立てばあるかもしれない。しかし、それはあくまでも絵にかいたもちであって、施設庁長官はノーと言うのです。最初からノーときまっておる異議申し立てなんてありますか。これで異議申し立てがあるなんて言えますか。  総理大臣、こういう手続でもいい、これでも憲法には違反しないのだ、違反しないのだというのがいままでの法制局長官の答弁です。異議申し立てもできます。しかし、実体は、この範囲に関しては異議の申し立てば全部却下です。沖繩県の人たちは、これに対して、ここに基地があることに対して苦情を言っているのです。抗議をしているのです。反対をしているのです。それに対して、異議の申し立てができますと言いながら、実際にはノーですと言うのです。こんなべらぼうなやり方がありますか。これは、いままでの法制局長官の答弁と施設庁長官の答弁とよく見比べた上で、総理大臣はここで御判定いただきたいと思うのです。
  169. 西村直己

    西村(直)国務大臣 私から先にお答えいたします。  御存じのとおり、今回のこの暫定使用法、特に駐留軍の基地等は、返還協定に基づいてできている部分が相当あるわけであります。それで、御存じのとおり、その基本には、日米安全保障条約に基づく基地提供の義務がある。それを引き続いてやらなければ協定の趣旨が達成できない。しかし、できるだけそれを契約で私どもは円滑に取得し、また大部分の方々は契約に応じてくださると確信はいたしております。しかし、どうしても最終の保障として、引き続いて基地提供をある一定の期間やっていただく、そのための話し合いの期間あるいは法的措置をとる期間というものをいただく。そういう意味ではやむを得ざる理由が成り立つのではないか。それが法制局長官のいう、いわゆる憲法に認められた合法的な手続であるか、告示し遅滞なく通知することによってそれをつないでまいる、これはやむを得ない。私は、やはり今回の日米間の交渉から、沖繩復帰させる、そして、その間に日米の安全保障体制を切れ目なく移行していく。ただ政治的には、したがってそういうような基地の大きいものはできるだけまた制約していく、あるいは整理縮小していく、これは国会の最高の御意思でありますから、政府全体があげてやってまいりますが、法制のたてまえとしてはそういうたてまえにならざるを得ないのではないか、御理解をいただきたいと思うのであります。
  170. 二見伸明

    ○二見委員 協定があるからやむを得ないのだ、安保があるからやむを得ないのだ、やむを得ないからこういうことをやるのだ、やむを得ないからやるわけでしょう、あなたの答弁は。やむを得ないからといって、こういうことが許されていいのかどうかということなんです。ノーと言う。異議申し立てをしてももうノーと言うことにきまり切っている。異議の申し立てというのは事実上は封じられている。それも安保があるからやむを得ないのだ、協定があるからやむを得ないのだ、やむを得ないという立場でもって憲法に違反しない、違反しないという何とかこじつけをしようというのが今回のこのやり方じゃないのですか。
  171. 西村直己

    西村(直)国務大臣 私どもは憲法の条章を曲げてやる考えはございません。また、先ほど法制局長官から答弁がありましたように、憲法三十一条、これはねらいは刑事訴訟法上の人権を守るという、しかし、一般の行政手続にもこの配慮はしなければならぬという趣旨から、十分これは心得つつ、そして処分に対する不服審査の法的解釈も一応できます。そして、それがもし違法であるとか、あるいはきわめて不適当である場合においては、当然受理されて審査の対象にもなる、こういうふうに私は解釈をいたしております。
  172. 二見伸明

    ○二見委員 この問題さらに続けますけれども、この場合事前告示ですね。そうすると、復帰前においても不服審査法に基づく異議の申し立てば当然できるわけですね。これは法制局長官、いかがでしょうか。
  173. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 そのとおりでございます。
  174. 二見伸明

    ○二見委員 いいですか。沖繩の人たちは、これでもって何の弁明の機会もなく、弁解や防御の機会も何にも与えられないで、土地を奪われるのですよ。それが実情なんですよ。そして異議の申し立てばできる。事前告示だから復帰前においても異議の申し立てばできる。しかし、防衛施設庁長官は、そういう場合にはノーと言うと先ほど答えているのですから、まずノーと言う。もう一つ沖繩の人たちが異議の申し立てをする場合に、書面でもできるでしょう。しかし、実情を詳しく言うためには、わざわざ東京まで出てこなければ異議の申し立てばできないでしょう。そんなこと沖繩の人にできますか。できるできると言う。形式論的にはできるだろう。しかし、実体論的には沖繩の人には異議の申し立てばできないのじゃないですか。
  175. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 先ほど、私は、いかなる場合においてもノーと言うということを申し上げたつもりはございません。そのつど異議の申し立てがございますれば、十分慎重に審議いたすわけでございますので、その点は誤解のないようにお願いいたしたいと思います。  なお、この告示の手続等につきましては、これからいろいろ検討いたしますが、先ほど申しましたように、この告示は一つの行政庁の処分でございますので、それに対する異議の申し立てというものは当然認められますし、その時期は復帰前でも認められるわけでございますので、その辺の手続については、今後十分慎重に検討いたしたいと思いますが、現実に告示を行ないますのは、通常は官報の告示ということになろうかと思います。  そこで、現に沖繩におられる方々がそれに対する異議の申し立てをおやりになる、その手続上につきましては、確かに十分の時間が与えられなければ、いろいろな資料を集めたり証拠を集めたりという点について若干の制約もございましょうし、それから本土へ来られるというふうな場合におきましても、若干そういう制約はあろうかと思いますけれども、しかしながら、それによって異議の申し立てというものが、そういう機会を封じられておるということにはならないわけでございまして、その辺は十分保障されておる、かように考えておるわけでございます。
  176. 二見伸明

    ○二見委員 どうもあなた方は形式論でもってここは何とか切り抜けようというお考えのようですけれども、形式的には異議申し立ての機会があることは私も承知しているのです、そういう答弁をしているのだから。形式的にはできるということはわかっている。それはあくまでも絵に書いたおもちですよ。それは食べられませんよと私たちは言っているのです。異議申し立てばできるという形式的な道は開かれているけれども、実質的にできなければ何の役にも立たないじゃないですか。できるかできないかの問題でしょう、実質的に。まず最初にこれだけの土地を押えてしまう。この中から異議の申し立てがあった場合に、あなたは先ほどノーと言いますと言ったのです。これでまず沖繩の人は異議申し立ての機会はありますと言うけれども、実質的には何の効果も出ないことになります。もう一つは、本土に来なければならないという制約がある。これからも実質的には異議の申し立てばできない。異議の申し立てというのは、ことばの上であっても実質的にはできないでしょうというのです。実質的にもできるのですか。じゃあなたはイエスという場合もあるのですか。イエスと言う場合があればいいのですよ。審査した結果、いまきめられている範囲の中から異議申し立てがあればイエスと言う場合もありますよ。それならそれでいいですよ。イエスと言う場合があるのですか。
  177. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 法案での対象になります土地を一応特定いたします場合に、その特定のしかたにおいてもし瑕疵がある、あるいは告示をいたします場合に、たとえば米側に提供をする土地でないところを告示をしたというふうな場合におきまして、やはりそこに問題があり得るわけでございます。そういう手続上のミスというものは、私どもとしてはできるだけ避けるつもりでございますけれども、理論的にはやはりそういう場合もあり得ますし、そういう場合に対する異議の申し立てというものも可能でございます。したがいまして、そういう申し立てにつきましては、私どもとしては個々に検討をいたしまして、十分慎重を期したい、かように考えておるのでございます。
  178. 二見伸明

    ○二見委員 そんなことはあたりまえなんです。施設庁長官、いいですか、これだけの施設を予定をした、間違ってここのところも指定してしまった、この場合、ここから異議が出てくれば、こんなのをイエスと言うのはあたりまえじゃありませんか。そんなことはあたりまえなんです。この中から異議の申し立てが出た場合にはあなたはイエスと言うのかというのです。言うならいいというのですよ。言うなら異議申し立てがあるということばは、実効を伴うものだと私は理解をいたします。しかし、あなたはそうは言わなかった。間違えて指定したところには、文句は聞きましょう、そういう場合には慎重に考慮します、この中に関してはノー、そうでしょう。
  179. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 一般的に申しまして、異議の申し立てがございました場合に、それを十分に審査いたしまして、そこに十分の必要性と合理性があるかどうかということを審査するのは一般的なことでございます。   〔毛利委員長代理退席、委員長着席出〕 したがいまして、その場合に、その異議の申し立てそのものが理由がなければ、おそらく行政庁としましてはこれはノーと言うことになるかと思うのです。したがいまして、すべての場合に異議の申し立てを封ずるということではございませんで、そういう異議の申し立てというものは絶えずやり得るということにおいて、そこに権利の保障といいますか、そういうものを保障しておる、こういうことは言えるのではないか、かように考えております。
  180. 二見伸明

    ○二見委員 この論議をやると切りがありませんから打ち切りますけれども、要するにあなたの言い方、この法律案というのは一方的にここにきめてしまうのです。きめられたところ、間違ってきめたところには、あなた方は異議申し立てがあれば考慮するでしょう。しかし、間違っていない、自分たちとしては、ここはどうしても確保しなければならないのだと最初からきめて、この法律をかぶせたところには異議の申し立てをしない、異議の申し立てがあってもそれは受けつけられないという、最初からそういう態度でもってあなた方は臨むのでしょう。それならそうだと言ってくださいというのですよ、一般論がどうだこうだ言わないで。実体はそうなんだから、それがあなた方の考え方なんだから、そうならそうだと言ってくださいというのです。最初はそういうふうに言ったのだから、この区域内においてはノーと言いますとあなたは答弁したんだから。答弁していないというなら速記録を見てみればいい。
  181. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 異議の申し立てにつきまして、その申し立てそのものに十分の必要性と合理性というものがなければ、これはやはり異議の申し立てを却下すると申しますか、そういうことは一般的にあり得ることでございますので、もし異議の申し立てがございまして、それがこの法律の要件に合致しておる、行政庁の処分そのものに別に瑕疵がない、不当、違法なところがないということになりますれば、これは異議の申し立てそのものが成り立たない、こういうことになろうかと思います。
  182. 二見伸明

    ○二見委員 あなた方は、これをやったことは自分で決して悪いと思っていないんだ。自分のほうに瑕疵があるなんて、だれも思っていないのです、おつくりになったほうは。だから最初から認めないのでしょう。そうでしょう、防衛庁長官
  183. 西村直己

    西村(直)国務大臣 私、先ほどお答えいたしましたとおり、今回の協定そのものにも御満足いただけない基地の部分があろうと思います。しかし、先般来政府から再々申し上げましたように、将来に向かっては、いろいろ基地の整理縮小をすみやかにやる努力はいたします。そして、それぞれこれだけの基地を提供するという協定ができておるわけでございます。そしてそれに基づきまして、さらにそれには安保のいわゆる地位協定に基づく施設提供、これをやってまいる。その手続をきめる段階に、できる限り契約を中心にはいくが、そうでない最小限の保障措置としてはこういうような法制を立てておる。そしてこれは憲法にも許されておる。その中でどうしても違法な手続、瑕疵のある手続をとった場合においては、言いかえれば、その処分に対して異議の申し立て等はお扱いする。そしてそのために、沖繩へは防衛施設局という官庁もそういうような手続を取り扱うためにもできるわけでございます。
  184. 二見伸明

    ○二見委員 もう一点、これはちょっと確認をしておきたいのですけれども、要するに事後の通知ですね。「関係人に通知しなければならない。」というこの通知は、事実行為なんでしょうか、それとも行政処分なんでしょうか。この点はいかがでしょうか。
  185. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 この通知につきましては、事実行為というふうに考えております。
  186. 二見伸明

    ○二見委員 そういたしますと、その通知が間違っていた場合には、これは民事で争うことになりますね。
  187. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 告示が行政庁の処分としての性格を持っておりますので、その告示された部分と通知の部分とがもし食い違っておるというふうな場合におきましては、それは通知の効力というものが——効力といいますか、通知そのものが告示の内容と違反しておりますので、これはやはり告示された部分についてこの使用権の効力が発生をする。ですから効力の発生要件は告示にかかっておるわけでありまして、通知ではない、こういうことでございます。
  188. 二見伸明

    ○二見委員 ちょっと簡単な例でお尋ねしますけれども、たとえばAという人のところに通知すべきものが、間違ってBというところにいってしまった。そのために、たとえば補償金や何やらがBのほうにいってしまったという場合には、民事で争うのですか、それとも行政不服審査法に基づいて争うのですか、どっちなんでしょうか。
  189. 林信一

    ○林(信)政府委員 お答えいたします。  ただいま施設庁の長官から申し上げましたように、告示によって法律の効果というものが確定いたします。したがいまして、通知は実は事後通知でございまして、念のために御通知申し上げるということになると思います。  ただいまお尋ねのことは、おそらく補償請求権という問題だと思いますが、これは、まず当事者間で協議する、協議の相手を誤ったという場合の問題であろうと思いますが、補償請求権が本来の権利者からそのためになくなる、喪失されるということはございませんから、当然に本来の補償請求権者が補償の請求手続をとる。訴訟上請求するかどうか、実はこの法律に一定の手続がきまっておりますから、その手続を求めるということになると思います。
  190. 二見伸明

    ○二見委員 争い方はどうするのだと聞いておるのですよ。民事でやるのかどっちでやるのだと言っているのです。
  191. 林信一

    ○林(信)政府委員 補償手続は、まず両者協議するというのがたてまえになっております。そこで協議がととのわない場合に、収用委員会に裁定を求める。収用委員会の裁定にまた不服があれば、それに対して訴訟をするという段階になります。
  192. 二見伸明

    ○二見委員 要するに、告示の段階で沖繩の人たちは異議申し立てというのは事実上封じられている。そして、その後事後通知において間違った場合も、裁判でもってめんどくさい手続を経なければ——これはお互い同士、AさんとBさんが話し合ってああ間違っていた、そうなれば問題ないのですよ。そうでない、こじれた場合には、やはりそこで沖繩の人たちにとっては不必要な訴訟という手続をしなければならぬ、こういうわけでしょう。林さん、そうですね。
  193. 林信一

    ○林(信)政府委員 お答えいたします。  訴訟手続は、もしかりに訴訟いたしますとしますれば、被告は実は東京におります。そこで、まず被告相手に訴訟を起こすには、東京の裁判所といったような問題が起こると思いますが、これは実は管轄についてもほかに規定がございまして、応訴管轄なり合意管轄なりということもあります。また、不動産の事件でございますと、不動産所在地というような管轄もございますから、それはそれによってきまるわけでございますが、復帰前におきましては、いずれにいたしましても、現地に日本法がいっておりませんから、裁判権もない。したがって、どうしても本土に来て争わざるを得ない。復帰後は、沖繩の那覇地方裁判所ですか、それができますれば、そこへ行って訴訟をすることもできるということになります。
  194. 二見伸明

    ○二見委員 問題点をちょっと変えます。  実はこれも二、三論議になりましたけれども、地位協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法の附則の二というのがございますね。それは「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約の効力発生の日から九十日以内に、使用しようとする土地等の所在、種類、数量及び使用期間を土地等の所有者及び関係人に通知して、六月をこえない期間においてこれを一時使用することができる。」こういう附則の規定がございます。沖繩の場合になぜこれがとれなかったのか、その理由はいかがでしょうか。
  195. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 講和条約発効のときにおきましては、これはすでにそれ以前から日本政府と各土地所有者等の関係人との間に契約がございまして、その関係は引き続いておりますので、かなり明確になっておりますが、沖繩の場合におきましては、米国の施政権下にございますので、しかも関係者が非常に多いということで、もともとこういう効力発生にかかる問題につきましては、やはり復帰の際に確実に、しかも画一的にこれを告示するという必要がございます。施政権下におきます状況でございますので、その関係人を完全に把握するということは、いろいろな制約のもとにおいてむずかしいということで、むしろ、今回の場合におきましては、通知にかからしめるよりも、画一的に、確実に周知できるところの告示という方法をとることが適当である、かような理由から今回のような措置を講じたわけでございます。
  196. 二見伸明

    ○二見委員 要するに、関係者が非常に多くて把握しにくいということが最大の理由でございますか。これは、長官、いかがでしょうか。
  197. 西村直己

    西村(直)国務大臣 もちろん、おっしゃるとおり、地主さんの数が三万八千名、しかも復帰の日までこれはアメリカ施政権下にある、言いかえれば、人のふところにある。そこで、かりにいろいろ事前工作、準備をいたしましても、率直に申しますと、人のふところの中を計算してまいる、こういうような困難。それからいま一つは、沖繩の特殊事情がございまして、海外移住者であるとかいうような面、不在者、こういうところも、いわゆる日本の講和時における本土の状況とはかなり違っておる、こういうところから、今回、公示という——公示は、そのかわり、できるだけ周知徹底をするという手続等はさらにわれわれは努力したい、こう考えております。
  198. 二見伸明

    ○二見委員 ところで、附則の二と、それから今度の関係法との同じ点、違う点を引き比べてみます。  まず、附則の二の、日本国とアメリカ合衆国との間の安保条約の効力発生の日、これは、暫定法でいう協定の効力発生の日、この点は答同じだと思います。ところが、違うのは、まず違う一点を申し上げますと、附則の二では、九十日以内に、使用しようとする土地等の所在、種類、数量及び使用期間を通知するとなっておりますね。暫定法案のほうでは、使用期間というのは入っておりませんね。附則の二のほうは、使用期間が明らかになっている。その点、まず親切、不親切という点でいけば、暫定法よりも附則の二のほうがよほど親切。なぜ使用期間をこの際明示しなかったのか、この点はいかがでしょうか。
  199. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 今回の法案におきまして、通知につきましては土地の区域等ということになっておりますが、実は通知をいたします場合には、当然、この附則二項にございますような土地の所在あるいは種類、あるいは数量、こういうものを通知をする予定でございます。なお、その際に、使用期間というのは、これは政令によりましてさらに具体的にきめられますので、そういう使用期間についても通知をする、かようになると思います。
  200. 二見伸明

    ○二見委員 私は、使用期間がなぜ書いてないかというのですよ。なぜ書かなかったのですか、これは。私は、暫定法案そのものを、まるっきりこれは憲法違反だと思いますよ。全然こんな法律案を認めないけれども、たとえ認める立場からいったって、使用期間を明示しなかったということは、これはおかしいのじゃないか。いつまで使うのだか、三カ月使うのだか、十カ月使うのだか、十年使うのだか、百年使うのだか、わかりはしないです。両方とも暫定的なんですからね。附則の二だって暫定的なものでしょう。附則の二のほうでは、使用期間が明らかになっている。使用期間を明らかにしなければならないというふうに義務づけられている。暫定法案の中では、使用期間については何ら触れていない。どうしてこういう差別をするのですか。差別しなければならない理由はどこにあるのですか。
  201. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 今回の二条の三項におきまして、所有者その他の関係人に通知いたしますのは「当該土地の区域又は工作物及び土地又は工作物の使用の方法」、こういうふうに規定をいたしておりますけれども、この「当該土地の区域」につきましては、先ほど申しましたように、ただ区域というだけでなくて、所在なり、あるいは種類なり、あるいは数量、こういうものも含まれておるという解釈でございます。  なお、使用期間につきましては、御承知のとおりに、「五年をこえない範囲」ということになっておりまして、その土地、工作物の種類等に応じましてさらに政令で定めることになりますので、本人に通知いたします場合には、そういう五年あるいはその他の使用期間についてこれを通知をする、こういうことにいたしたいと考えておるわけでございます。
  202. 二見伸明

    ○二見委員 五年が期間を明示しなかった理由なんかになりますか。附則の二のほうは「六月をこえない期間においてこれを一時使用することができる。」、こっちのほうは「五年をこえない範囲内」でもって暫定使用できるのでしょう。それが期間を明示しなかった理由にどこになるのですか。どうしてそれが使用期間を明示しなかった理由になるのですか。そんなばかみたいな答弁はやめてもらいたいですね。——じゃ、もう一回言ってください。
  203. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 今回の暫定使用期間につきましては、御承知のとおりに、「五年をこえない範囲内において当該土地又は工作物の種類及び設置場所等を考慮して必要と認められる期間」、これにつきましては、いろいろな場合を考えまして、合理的な線においてこういう期間をきめたい、かように考えておるわけでございまして、その間に、個々の使用期間につきましては、いろいろ考慮すべき事情があるということで特に明示はいたしておりませんけれども、個々に通知いたします場合におきましては使用期間を明示する、かようにするつもりでございます。
  204. 二見伸明

    ○二見委員 するつもりを私は聞いているのじゃないのです。この法案になぜ書かなかったのかと聞いているのです。なぜ書かなかったのですか。通知においてはするつもりです、通知において使用期間を明示するようにするつもりです、そんなことを聞いているのじゃないのです。なぜ法律に書かなかったかを聞いているのです。防衛庁長官、いかがですか。
  205. 西村直己

    西村(直)国務大臣 私も法律にあまり専門家でありませんが、大体の立法の趣旨は、先ほど申し上げましたように、講和条約発効後のときにできました措置法、すなわち六カ月ですね、これはどちらかというと、国内ですでに日本の施政のもとで駐留されたものに提供する、そこでもうすでにその以前から契約ができておったり、非常につかみやすい。ところが、今回の沖繩の場合は、残念ながら、施政権下に復帰まではある。言いかえれば、あちらさんのふところの中を探る。そこに非常に困難性があり、しかも、国有地でなくて民有地が三分の二ぐらい、三万八千名の地主さんにお願いしなければならない。そこで、事実行為として努力はいたしまするが、法律論としては、そこに非常に不明確な、つかみにくい状態がある。そこで私ども、法体系としては小笠原の際の式方にして、五年というものを最高の期限にする。ただし、今回これが非常な御議論にもなるので、私どもとしてはすでに国会の委員会には政令案要綱はお届けして、この法案に基づく工作物の種類等々で、あるものは五年です、あるものは三年ですというふうに政令案としてやらせていただいておる、これが立法の経過であると私は考えておるのであります。
  206. 二見伸明

    ○二見委員 沖繩アメリカのふところにある、講和条約発効のときに日本は事実的に非常につかみよい状態にあった、だからそれが使用期間を明示しなくていいという理由になるのですか。いかがですか。
  207. 西村直己

    西村(直)国務大臣 これは考え方の相違だと私は思います。小笠原のときにもむしろ事情が似ているからというので、最高五年以内で政令で定むるというふうにいたしております。したがって、事情は、人さまたくさんいらっしゃるが、しかし、つかみにくいという点では同じであるということで、五年以内。ただし、明示をしないとしても、これは当然、この法が成立すると同時に、私どもは政令案要綱というものも、国会の御意見等も反映したものでおそらく最終的にはきまって、そして施行されていく、そして、あわせてそれが通知にもなっていく、こういうふうにお考えをいただきたいのであります。
  208. 二見伸明

    ○二見委員 長官、それは答弁にならぬのです。非常に苦しい御答弁をして、何とかお逃げになりたい気持ちは私よくわかります。使用期間と一言入れておけばよかったなというふうに、いまおそらく後悔されておるまつ最中だろうと思います。小笠原の例は例になりません。例にならないことは、長官自身よくおわかりのはずなんです。しかしそれをあえて持ってこなければならない苦衷は察しますけれども、しかし、事実としては、何とかしますと言ったって、法律案に書いていないこともこれは事実なんですからね。私は、この法律案がこの一点だけがきずがあるというのなら、まだ救いがある。それ以外のたくさんのきずがある。憲法上の大きな疑念があり、われわれは憲法違反だと言う。あなた方はそうではないと言う。そういう憲法違反だという大きな問題をはらんだ上に、なおかつこういう点にミスがある。こういう点については、では、長官は反省されておりますか。
  209. 林信一

    ○林(信)政府委員 ただいまお尋ねの、事後通知に使用期間のことが入っていないではないかというお尋ねでございますが、実は地位協定に伴う特別措置法の場合は六カ月が最長の期間で、それに相当するこちらの規定を見ますと、法案の第二条第一項のところに「五年をこえない範囲内において」「政令で定める期間を経過した日」さらにその下にカッコ書きがありまして、「(その日前に、事業の廃止、変更その他の事由により、当該土地又は工作物を使用する必要がなくなったときは、その事由が生じた日の翌日)以後においては、この限りでない。」となっておりまして、五年あるいは三年という期間を政令できめると思いますが、その期間前でありましても、こういう事由が生じますと、それ以後はこの法律による使用権の行使はできないということになっております。したがいまして、この期限というのは非常に不確定である。いつ必要がなくなるかということは確定できませんので、せいぜい通知できる事柄は、三年あるいは五年という最長期は通知できますが、この不確定な時期そのものは通知できない、こういうことでございます。
  210. 二見伸明

    ○二見委員 カッコの中の「(その日前に、事業の廃止、変更その他の事由により、当該土地又は工作物を使用する必要がなくなったときは、その事由が生じた日の翌日)」こんなことはあたりまえでしょう。これが使用期間を明示しなかった理由になるのですか。では、附則の二のほうはどうなんですか。附則の二のほうはなぜ使用期間を明示したのですか。附則の二のほうに使用期間の明示がしてあって、こっちに明示してないのはおかしいじゃないか。あなたは、五年を政令で三年に直すとか言うが、五年という問題は附則の二とは別の問題ですからね。別の文章の問題なんですから、その点はすりかえないでもらいたい。使用期間を明示しなかったことについて、はっきりと間違いなら間違いだと言ってもらいたいのです。その点、あくまでそれでいくのならいくでもけっこうです。防衛庁長官の答弁も非常に苦しいし、いまの御答弁などというのは答弁としては認められませんね。明確にだれもが、なるほど、そういうわけで使用期間を明示しなかったのか、よくわかった、いなかのおばあちゃんまでわかるような答弁ではありませんよ。
  211. 林信一

    ○林(信)政府委員 使用期間が五年あるいは三年、これは何年になるか、政令できめてみなければわかりませんが、その前にカッコ書きの事由によって終了するということは、これは法律自体で明記しておりますので、あえて通知を要しないということでございます。
  212. 二見伸明

    ○二見委員 では、この点はもう一つ論議の観点をちょっと変えます。  附則では「六月をこえない期間」こうなっていますね。ところが、今回は「五年をこえない範囲内」です。政令で具体的には三年とか四年とかきまるのでしょうけれども、法律であらわれてくるのは「五年をこえない範囲内」こうなっていますね。六カ月と五年、この差はどうなっていますか。
  213. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 暫定使用期間が講和発効のときには六カ月、これは実はその前にいわゆる撤退期間がございますので、九十日間ございますけれども、今回は五年で、非常に長過ぎるではないか、こういう御質問でございます。今回五年といたしましたのは、先ほどもちょっと触れましたように、講和発効の際におきましては、それ以前から国と土地の所有者との間には契約が締結せられておりまして、それが講和発効のときに引き続きその契約がなされた、こういうことで事前から所有者なりあるいは関係人は十分把握されておったわけでございますが、今回は土地の所有者が非常に多いということもございます。講和発効時よりも三倍程度の三万数千人という地主があるわけで、もちろん、復帰までの間に十分契約の合意に達するようにつとめますけれども、やはりそれが完全に一〇〇%契約に応じてもらうという保証はございません。現在アメリカ施政権下におきましても、契約件数で五%程度が収用の対象になっておるということで、相当の方々とやはり復帰後引き続き契約の交渉をやらなければいけない。それについては相当の日時がかかる。それから沖繩が戦火に見舞われまして、そういう関係もあったと思いますけれども、住所が不明であるという方、あるいは海外に移住しておるという方々が非常に多いわけでございまして、そういう人を一々さがし出して契約にまで持っていくということはなかなか相当の時間がかかるであろう、こういうことでございます。さらに、どうしても復帰後契約の交渉をいたしましてその成立を見ないという場合におきましては、本来の手続でございますところの土地収用法とか、あるいは、米軍の土地につきましては特別措置法を適用いたすことになるわけでございますけれども、これはやはり事前調査からその手続をいたします期間というものは、やはり相当な期間が要るであろう。さらに、この期間は、米軍の土地につきましてはいろいろ返還要求したり、あるいは集約移転をいたしましたり、そういういろいろな面の要素もございます。  そういうものをいろいろ総合的に勘案いたしますと、当時の六カ月というような短い期間でこの目的を達することはとうていできないということで、十分いろいろなものの要素を勘案いたしまして、五年という期間を設けたような次第でございます。しかしながら、個々の土地につきましては政令でさらにそれを短縮することができるということになっておりますので、政令の作成についても十分その辺は慎重に考えていきたい、かように考えておるわけでございます。
  214. 二見伸明

    ○二見委員 まず一つ理由、いまの御答弁を聞いておりますと、五年ということにしたのは、基本的には沖繩なるがゆえにだ、この点はよろしいでしょうか。一つ一つちょっと確認いたします。
  215. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 今回の沖繩返還という非常に異例な特殊な事情にかんがみまして、当時の講和発効時の事情と非常に違っておりますので、そういう特殊事情なり、先ほど申しましたようないろいろな事情を勘案いたしまして五年ということにいたしたわけでございます。
  216. 二見伸明

    ○二見委員 もう一点は、関係者がなかなか把握しにくい、数が多いからだというふうな御答弁もありましたですね。それはそのとおりでよろしいですか。いいですね。——沖繩でただいまアメリカ軍に基地を提供している人の数、ばく大な数になるだろうと思います。それはアメリカの法体系のもとではどういう関係にありますか。アメリカの法体系の上からいけば、たとえば正当な貸借関係にあるのでしょうか。それとも、まるっきりでたらめな関係にあるのでしょうか。いかがでしょうか。
  217. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 沖繩におきましては、高等弁務官布令第二十号によりまして、琉球政府と個々の地主との間に基本賃貸借契約、さらに琉球政府と米国側との間に総括賃貸借契約というものを結びまして、それによって賃貸借権を取得しておるのでございます。
  218. 二見伸明

    ○二見委員 その限りにおいては、関係人というのは明らかじゃありませんか。それは一部海外に行っている者もいるだろう、一部わからない人もいるでしょうけれども、ほとんどは関係人というのは明らかでしょう。明らかじゃないのですか。あなたは把握しにくいと言った。つかみにくいと言った。事実上は、関係人というのは琉球政府を通してはっきりしているのでしょう。関係人というのはまるっきりはっきりしていないのですか。いまのあなたの答弁は、はっきりしているとしか解釈できない答弁ですよ。
  219. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 現在、琉球政府と個人との間に賃貸借契約が締結せられておりますので、その限りにおきましては、土地所有者及び関係人につきましてはある程度は明確でございますが、その後いろいろな移動もございます。それが必ずしも十分その資料が整備されておらないというふうな事情もございまして、これを一つ一つ所有者並びに関係人に突き当たっていきますには、やはり相当な手間がかかる。さらに、この使用権を設定いたしまして引き続き契約交渉をいたすわけでございますけれども、その件数がどれくらいになるかということは、やはり復帰までの努力いかんでございましょうけれども、まだ現在の時点ではよくわかりません。したがいまして、相当な人数であるということもわれわれとしては十分予測をいたさなければなりませんので、そういう方々との契約交渉というものに相当な日時がかかる、かように実は推測をいたしておるわけでございます。
  220. 二見伸明

    ○二見委員 防衛庁長官関係人は、それは明らかでない者もいるだろうと思います。しかし、いままでの施設庁長官の答弁を通して、関係人というのは、明らかにならない部分もあるけれども、明らかになる部分もかなり多いのじゃないですか。地主連合のほうは、自民党と、二百十五億出すとか百何十億出すとかいういろいろな話し合いも進められているというふうに聞いております。これは関係人が明らかだからそういう話し合いが進められるのです。いいですか。今回五年にした理由一つは、沖繩の特殊事情ということ、もう一つは、関係人が把握できない、あまり数が多いのでどうにもならないから、六カ月じゃなくて五年にしたんだ。じゃ、関係人が明らかになっているところだけだって六カ月にしたっていいじゃないですか。附則二と同じやり方でやったっていいんじゃないですか。これはこの法律案を全面的にお認めになっている政府・自民党さんの中からもこういう議論は当然出てくるんじゃないでしょうかね。われわれの立場からは、この法案それ自体、どういうふうに改正されても、修正されても、認めることのできない法律案でございますけれども、たとえばこれを認めるという立場にいたって、関係人が明らかなものに対しても五年という設定はおかしいんじゃないですか。この点は、防衛庁長官、どういうふうに御判断になっていますか。
  221. 西村直己

    西村(直)国務大臣 そういうふうなお説もあるかもしれませんが、しかし、私どもといたしましては、やはり協定を御承認いただく。したがって、米軍基地等を提供するというような場合に、本土の場合におきましては、まず九十日という前提がある。それから六カ月、約九カ月でございますね。こちらの場合におきましては、現在アメリカ施政権下にあって、なるほど、従来も一部はお話し合いがつかないで、何というか、いわゆる供託のような形でいっている部分もあります。それから、今日日本政府に引き取りますれば、より明確にわれわれ政府としては責任をもってきちっとした形で契約を結んでいきたい。おそらく復帰の時点までには相当な方々が残るであろう。なるほど、現在地主会連合会の方ともあるいは役員ともいろいろな話し合いをしております。しかし、これも一応われわれとしては概算要求で借料等も立てておるわけでありますから、これが予算が確定してからでないと具体的個々の地主さんとの交渉というものは動きにくい。そうすると、復帰がいつになるかの時点によっても違いますが、相当部分は残ってまいる。そうしてなおその後に一生懸命契約を進めますが、しかし、どうしても契約が不可能であるような場合におきましては、特別措置法等によって措置もしてまいらなければならぬ期間というものは、御存じのとおり、これはいろいろな手続が要りますから期間がかかる。そこいらを総合勘案すると、五年という行政実務上の推算というものも私は妥当ではないか、こう考えているわけであります。
  222. 二見伸明

    ○二見委員 それはあくまでも防衛庁長官として、行政の担当者としての御都合の論理でございまして、実際にこれでもって財産権を侵害される沖繩の人たちにとってみれば、その行政権優位の論理ははなはだ迷惑の論理です。そういうのを力の論理というんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。それはどうですか。
  223. 西村直己

    西村(直)国務大臣 私どもは、できるだけ力というものを使うべきものではないと考えております。したがって、あくまでも誠意を尽くしてお話し合いというものを——この法のたしか第一条の第二項にも今回ははっきり明文化をして、これを柱にいたしておる次第であります。
  224. 二見伸明

    ○二見委員 九十日プラス六カ月というのは九カ月です。片方は五年です。約十倍の違いが本土沖繩とではございます。沖繩の特殊事情ということでもって何とかこれを言いのがれしよう、何とか理屈づけようというけれども、このこと自体も沖繩に対する差別と考えてもいいんじゃないんですか。沖繩だからそうするんだ、沖繩だからやるんだ。じゃ、本土ならこれをやれますか。本土じゃこういうことはできない。沖繩ならできる。これはまた別の観点から見れば差別に通ずるんじゃないですか。長官、これはいかがですか。
  225. 西村直己

    西村(直)国務大臣 私どもは、本土並みということは、確かに大きな意味では——今回沖繩の方方がお戻りになり、憲法のもとでお迎えをする。これは安保条約体制からいっても本土並みに扱えるわけでありますが、基地の提供というものは、一つは、協定上私どもはいずれ御承認を願って義務づけられてくる、こういうような観点から考えますと、これをやはり円滑に引き継いでまいって、そして基地提供というものもやっていかなければならない。ただし、基地縮小というものは当然考えなければならぬ。ことに、この機会に申し上げたいのでありますが、五年の間には私どもは基地縮小あるいは整理、移転というようなものも当然考えられると思います。移転と申しましても、きょう移転するときまったからといってあしたに移れるものではありません。やはりその間にある時間的なものもいただかなければならない。いろいろな要素を考えますと、こういう期間の中で暫定使用——これはよく世間では強制収用ということばを使っておりますが、あくまでも使用権を暫定的に設定さしていただく、こういう意味で私どもは立案しておる次第であります。
  226. 二見伸明

    ○二見委員 暫定使用であって、強制収用ではないということですね。私たちはこれは強制収用だと思います。  そこでまたちょっと話を変えますけれども、この論議は、どうせ長官のほうも、政府のほうも、こちらの議論は最初から何とか言いくるめようというので、平行線をたどらせようというのが作戦だろうと思いますので、論点を変えますけれども、自衛隊本土において土地を収用する場合にはどの法律でやるわけですか。自衛隊の土地収用というのはどの法律に基づいてやるのでしょうか。
  227. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 自衛隊が、契約交渉が成立いたしませんで、やむを得ず土地を収用するという場合におきましては、土地収用法に基づいて行なうことになります。
  228. 二見伸明

    ○二見委員 土地収用法の三条三十一号の規定をたしか防衛庁としてはおとりになるわけですね。これに基づいてやる。これについて私異論はあります。異論はありますけれども、きょうは複雑になりますので、この論議は別の機会にいたします。  今回沖繩自衛隊が、要するに、二条の一号イ「引き続き自衛隊の部隊の用に供する土地又は工作物」は、自衛隊暫定使用できるのだ、どうしてこういう形をとるのですか。国内の場合には土地収用法でもって、たとえば、私たちはその立場はとりませんけれども、土地収用法三条三十一号でやるのです。ところが、沖繩に対してはそういう方策は何らとらないで、一方的にばっと取るのです。強制収用をするわけでしょう。土地収用法三条三十一号による自衛隊の土地収用というのは、実例は一件もございませんね。本土においては、これが適用できるといっても、実例は一件もございません。まして、暫定使用みたいなこういうやり方で日本本土内において自衛隊基地を取ったことは、当然一件もありませんね。これが沖繩に対してなぜ認められるのか。米軍だというならば、継続使用しなければならぬという一つの、それは政府・自民党の安保体制堅持という、そこからそういう議論は出てくるでしょう。しかし、自衛隊沖繩に継続使用をしていないのですからね。継続使用をしていない自衛隊にこういうやり方で土地を取らせるというのは、どういうわけなんですか。正しいやり方といえるのですか、こういうやり方も。
  229. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 お答えします。  ただいまの御質疑は、要するに、沖繩においては従来自衛隊はいなかったじゃないか、にもかかわらず、何で米軍の基地と同様に暫定使用にかけるのか、こういうことでございますが、確かに自衛隊は現在おりません。しかしながら、施政権復帰になりますと、当然わが国の領土の一部としてその防衛に当たらなければならないというようなことから、自衛隊沖繩配備になり、局地防衛あるいは民生協力、そういったことに当たらざるを得ない。このことは、たとえば道路とか、あるいは水道だとか電気、こういった従来いわゆる米軍用地といわれておったようなものにありました公的な機能、これらは一日も切れることなく継続しなくちゃならないというようなものと、ただいま申し上げました防衛の機能というものは、やはり公的な機能であるということについては本質的に変わりはない、こういうようなことから、従来はおりませんでしたけれども、やはり自衛隊は局地防衛の任務等を引き継ぐために直ちに入らなくちゃならない。しかしながら、自衛隊の土地の取得につきまして、ただいまお話しのありました土地収用法によって取得するということになりますと、これは時間的に相当手続にかかる、こういうようなことがございますので、施政権復帰になるという沖繩の特殊事情から、やはり自衛隊の用地の取得についてもとりあえず暫定的に使用権を確保する必要がある、こういうことでございます。
  230. 二見伸明

    ○二見委員 長官、自衛隊が間髪を入れず沖繩に行かなければならない、土地収用法であれば手続上時間がかかる、だから暫定法でやったんだというのがいまの御答弁ですね。ここで考えていただかなければならないのは、手続がめんどうくさい、複雑だ。これは何のために——たとえば土地収用法に基づく土地収用をかける場合にいろいろな手続があります。なぜそういう手続が必要なんだろうかという、手続がめんどうくさい、なぜめんどうくさいのかという、その原点はどこにあるのでしょうか。簡単に収用法をかけられないという、その原点はどこにあるのでしょうか。それはいかがですか。これは法律論というよりも、政治家としてのお考えでどうかお答えをいただきたいと思います。
  231. 西村直己

    西村(直)国務大臣 そういう法律論以前に申し上げたいというか御理解願いたいことがあるのは、もちろん、国の作用として防衛も一つの機能でございますし、また、道路を提供するというか、あるいは水道あるいは電気、こういった一つの国家ないし公共団体のファンクションというものを円滑に進める、こういうような趣旨からいえば、本質的に私は自衛隊だけが特にどうのという議論は立たないと思うのであります。やはり国の作用としての一つを——ただ実際の運びとしては、私どもはそれは慎重に自衛隊のような場合には考えます。しかし、法制的と申しますか、制度的に考える場合には、国家の機能として自衛隊だけは抜いていくというわけにもいかない。しかし、それじゃすべてそれを契約でいったらどうかという御議論になると、先ほど来申し上げたような、沖繩のいわゆる引き続いての機能を維持するためには非常に数が多いとか、それから相手が明確化しにくいとか、あるいは復帰の日までとにかく施政権下にあるという特殊事情、こういうものはやむを得ない事情で、そういう中で御理解をいただきたい、こう考えております。
  232. 二見伸明

    ○二見委員 もし自衛隊本土内に新たなる基地を設けたいと考えた場合には、防衛庁長官はどういうやり方でおやりになりますか。沖繩におけると同じように、たとえば千葉県における自衛隊用地等の暫定使用に関する法律案とでもいうものをつくって、自衛隊の土地をがぼっと取りますか。沖繩の特殊事情はさておきまして、本土内においてはそういうことをやりますか。それは防衛上非常に必要だという立場でおやりになりますか。どうでしょうか。
  233. 西村直己

    西村(直)国務大臣 話が少しちぐはぐになるかもしれませんが、沖繩で、もちろん水道も電気も同じでありますが、自衛隊配備される区域も、従来のいわゆる米軍がやっておった基地内を使って、新しく外に取るのではありません。従来の機能を生かしていこう、ここが千葉県でただいま新しくつくるのとはちょっと性格が違う。従来の機能——本来なら沖繩日本本土でございます。したがって、日本自衛隊そのものがやはり国家の機能としてやるべきことであります。その機能を引き続いてやろうというところに目を移していただくと御理解がいただけるのではないか。新しく千葉県に自衛隊基地をつくって特別措置法をつくるのとはだいぶ事情が違う。従来のアメリカの軍の機能、これはむしろ日本本土であれば当然自衛隊がやるべき、あるいは警備上の問題、防空上の問題、民生協力、その部分をそのまま継続して使わしてもらうという国家機能の一環として考えていただければ、今回の措置は御理解願えるのではないかと思うのであります。
  234. 二見伸明

    ○二見委員 長官は重要な点のすりかえ論がございます。基地が継続しているのだというような——実体的な面では確かに継続しているのだろうと思います。しかし、復帰と同時に法体系はまるっきり変わるのです。そうでしょう。法体系は変わるんでしょう。あなたそういうふうに答弁をされたのですから。いままではアメリカの大統領行政命令下における法体系であった。復帰したと同時に日本国憲法のもとにおける法体系に変わるんでしょう。基地という実態は継続かもしれないけれども、法体系は変わるんでしょう。ここであらためて日本の現在ある法律でもって——アメリカ軍の場合には、安保条約があるからやむを得ないという、そういう理論も立つでしょうけれども、自衛隊はそうじゃないのだから。日本の現在ある法律でもって自衛隊基地を取得していくというのが、これが正規のやり方じゃありませんか。これが憲法でいう手続を踏んだやり方になるんじゃないですか。そうしたもの一切がっさいを抜いて、もともとあそこは継続していたのだ、だから自衛隊が行ったってどうということはないのだ、そういうやり方というのは許されるのですかね。その点いかがですか。あなたはそれでもいいんだというふうにあくまでも強情を張って抗弁なさるおつもりなんですか。どうですか。
  235. 西村直己

    西村(直)国務大臣 別に私は強情な男でも何でもないのでございまして、ただ、御存じのとおり、たとえば一つ那覇の滑走路を例におとりいただいても、これも一日もすみやかに、できれば引き続いて使おう、できれば管理権そのものを、先ほど委員会でもあったように、早く日本の管理権に移す、これと同じように、国家のファンクションとして防衛業務というものも——防衛業務の中には、復帰後もほうっておけば、民生の協力、救難業務、みなアメリカ軍の手に残る。そういうことのないようにするという、しかも新しくその土地を求めるのではなくて、従来の機能されておった機能、ファンクションという面から見ていただければ、私は御理解ができるのではないかと思うのであります。
  236. 二見伸明

    ○二見委員 国家のファンクションにも二つございまして、沖繩の民生というか、沖繩県民に利益を与えるファンクションもあるし、基地というのは沖繩県民にとってはマイナスの影響を与えるファンクションなんですファンクションだからといって、利益を与えるファンクションとマイナスを与えるファンクションと同列に論じてもらったのでは、私は困るのです。あなたは、沖繩自衛隊が行くということ、アメリカ軍の基地がそのまま残り、自衛隊が行くということが、沖繩県民生活にとってプラスになるという判断なんですか。沖繩県民にとってこれは非常に喜ばしいことだ、沖繩県民はこれで生活水準から何から何まで本土並みになるのだというふうに、あなたはまじめにお考えになっているのですか。いかがでしょうか。
  237. 西村直己

    西村(直)国務大臣 自衛隊に対する御否定論とか、これが害であるという御意見なら、これはまた別論になりますが、私どもは、今日の自衛隊、もちろん県民の方々の御理解をいただく努力はいたしますが、自衛隊は国の法律として存在させていただき、そして同時に、それがまた単に戦争の抑止力という意味で考えていただきます場合には、このファンクションというものは沖繩県民に害を与えるというような立場には私は立たないのでございます。
  238. 二見伸明

    ○二見委員 このことに関する理解というのは、長官と私たちとはまるっきり違う理解でございます。しかし、国家のファンクションだからといって、こういう暫定使用、しかも土地を取り上げる。いままで米軍が使っていたといえばそれまでかもしれませんが、実質的には私権を制限する。それがこういうやり方でやっていいのか、これは私はやはり重大な問題点だろうと思います。長官の御答弁をどう考えても私は納得できるものじゃございません。  これはやはり憲法問題でもう一つお尋ねいたしますけれども、いままでの答弁を通して、三十一条の上にも私たちは問題があるという問題提起をいたしました。二十九条の上からも問題があるという論議をいたしました。そして最後にここで、この問題に関して総理大臣の御見解も承りたいと思っているわけでありますけれども、先ほど法制局長官の御答弁によると、憲法十四条においても何ら問題がないという答弁でした。それはなぜかというと、先ほどの御答弁をそのまま言うと、一つの差別ができる。「ただ、沖繩にある土地等に権利を有する者が、公共の利益のための特別の必要性に基づき、その権利を制限する法律が適用される結果として、他の地域に権利を有する者との相違が生じてくるにすぎない。」要するに、沖繩と、たとえば日本本土、九州なら九州、この間に相違が生じてくるにすぎないという、非常に簡単な御答弁です。「この相違は、事柄の性質に即応した合理的な内容を持つ法律の適用の結果によって生ずるものでありまして、合理的根拠に基づくものでありますから、御存じのように、憲法十四条一項の趣旨は合理的な差別といいますか、合理的な理由に基づくもの、そういうものについては、憲法十四条一項は、何もこれを問題にしていない」こういう御答弁です。三十一条の法律に定める手続の問題、これも現在本土でやっておるやり方とは違う。しかも沖繩にある基地の実態も違う。こういう事実を目にして、ここでいう、法制局長官がおっしゃっている合理的な根拠というのは、一体これはどういう合理的な根拠があるのですか。なおかつ沖繩が差別されてないという合理的な根拠というのを出してください。
  239. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 たぶん、いまお読みになりましたのは、前に御答弁申し上げた答弁だと思います。私はきょうさらにまた御答弁を申し上げておりますが、その御答弁を申し上げたのは、もっと本質的なことを申し上げております。というのは、この憲法十四条一項の、法のもとの平等というのはどこからくるかといえば、個人の尊厳ということからきておるわけですね。個人の尊厳というのは、憲法十三条に規定がございますが、要するに、日本国憲法の民主主義の基本にもなりますが、個人の尊厳というものを最も貴重な民主主義の原理として、憲法はこれを基本的な原理としているわけでありますが、この個人の尊厳ということから照らして、この差別待遇になるようなものは十四条の一項でもってこれを禁ずるというのが、十四条一項の本旨であるわけでありますので、きょうはその本旨のほうを御説明といいますか、御答弁申し上げたわけであります。  その本旨というのは、十四条一項を見ればすぐわかることでありますが、人種、信条、性別、社会的身分または門地により差別してはならない、こういう規定がありますが、そのいずれも沖繩住民をそういう見地から差別していないものであることは明らかではないかということを先ほど申し上げましたが、かりにこういう事由に限定されないとしても、少なくも人間の個人的条件に根ざすところの事由によって沖繩の住民を差別するものではない。かりにそういう事由で差別——これはよく問題になりますが、たとえば高齢者である。高齢者であればかってに差別してもいいのかというような問題が出ましたときに、要するに、個人的条件に根ざす事由が問題になりましたときに、それでも合理的な理由があればそれは十四条一項に違反するものではないというのが、通常立てられる論旨であります。そちらのほうを実は先に申し上げたものですから、ちょっと御理解がむずかしかったかと思いますが、特に、とにかくも、十四条一項の問題としては、沖繩の住民の個人的な、人間の個人的な条件に根ざす事由によって差別したものでないというのが、実は簡単に申し上げますがと言った基本的なところであります。  よく法律の中には、確かに、その定めるところの要件、事実に該当するものと、それに該当しないものとが相違が出てくるのは、この法の世界では当然出てくるものでありまして、実はそれはふしぎなことではございませんが、そういう面から申しまして適用の問題を申し上げたわけでありますが、確かに、沖繩住民とそうでない者とは、法の定める要件に該当するものと該当しないものとの相違が出てくることは確かである。それはしかし、そういう法律が必要であるかどうか、これは先ほど来大いに議論されたところでありますが、その法律法律として認められるものであれば、その適用の結果として相違が出てくるのは、これは法律世界では通常生ずるものであって、これを十四条一項で論ずるのは当たらないであろうということを申したわけであります。きょうの御答弁とあわせて御理解をいただくようにお願い申し上げます。
  240. 二見伸明

    ○二見委員 確かに、今回の沖繩関連法案の中には、沖繩だからといって差別するという条項はどこにもございません。それはあたりまえです。そんなことを書こうものなら、憲法九十八条違反ですね。そんなものはつくれませんね。そんな法律は出せません。そんな文面が出てこないのはあたりまえです。字づらどおりいくならば、あなたの御答弁どおりだろうと思います。あなたは、その前のときには、何も沖繩の住民を、憲法の明文にあるような人種、信条、性別、社会的身分云々、この憲法上の理念にそむいて差別しようというものではないと——確かに、関係法案の中からは、沖繩県民だからといって本土とは違った差別をいたしますよというところはどこにも出てまいりません。しかし、この法律がもし国会を通って、可決された場合には、適用の結果によって差別が生ずるでしょう。沖繩県なるがゆえの差別というのは生ずるんじゃないですか。沖繩県なるがゆえに生ずるんでしょう。形式的には十四条違反ではないだろう、しかし、十四条の精神からいった場合には、沖繩復帰というのは、結局は沖繩を差別する結果になるんじゃないですか。それはもう基地態様からいってもそうだろうし、いままでのいろいろな話からいっても、その点は私は明らかになるんじゃないかと思います。  総理大臣、今回のこの暫定法案というのは、憲法の理念、憲法の精神という面から考えて、総理大臣は、これはもう百点満点だと、胸を張って、あなたは責任をもって沖繩県民日本国民の前で断言できますか。
  241. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えいたします。  先ほど来の政府答弁並びに二見君からのお尋ね等を静かに聞いておりまして、私は、いわゆる憲法違反だ、さようには思いませんけれども、しかしながら、まだまだずいぶん差等がある、そこらに開きがある、かように認めざるを得ない。ただいま申し上げるものは、いわゆる憲法の精神に違反するとは申しません。また、直接にこれに反対だと、違反だと、こういうものではございませんけれども、しかし、本土のわれわれと沖繩との間にずいぶん開きがある、それを感ぜざるを得ません。これは一体何からきているのか、これは問題なしに、アメリカに占領されて、アメリカ施政権下で今日までそうしてきた、それが本土復帰する、そのために特別な考慮をしなければならない幾つかの問題がある、そのものが県民にとりまして都合のいい面もあるが、同時に都合の悪い面もある、それを私も率直に認めざるを得ないと思います。  ただいま五カ年間の暫定使用の土地法案、これなどは、内地においてはさようなものはないのです。でありますから、本土並みと申しましても、かような暫定措置をとらざるを得ないそのゆえんは、先ほど来るる説明したように、これは現に米軍がその土地を使用しておるとか、あるいは現に水道あるいは電気等で使用しておる、その原因がどういうことであろうとも、とにかくいままでも私有権自身は否定はされておらないけれども、しかしながら、強権によってその使用が行なわれておる、この事実は私どもも率直に認めなければならない。それをそのままの状態で今日施政権だけが返ってきて、しかしながらその現実は残っておる、それをできるだけ現状変更なしに依然として公共の用に供するような方法があるかないか、そこらに問題が出てきた、かように私は思います。二見君の指摘されようとしておるのもその点ではないかと思う。  ただ私どもも、理屈を抜きにして、あれは公共の用だからがまんしろ、こういうつもりは毛頭ございません。しかし、ただいま理屈をずっと推し進めてこられると、何だか公共の用に供するのだからがまんしてください、しんぼうしてください、こういうような政府側の答弁だが、私は、それはどうも二見君も満足されないし、そういうことがどうも憲法の精神から見ても不都合じゃないかと、かように御指摘になるのではないかと思います。しかし、私は、かようなことを考えながらも、本土沖繩が一体になる、真の同一民族としての一国家を形成する、そのために、ある程度いまの状態を認めて、そうしてごしんぼう願わなければならぬのではないだろうか。その期間がいかにも長い期間ではこれはしんぼうできない、もっとわれわれがスピードをあげてそうして本土沖繩の一体化をはかるべきではないか、かように思うような次第でございまして、私は、今日まで整備された法案、これもできるだけ本土沖繩を一体化しよう、そういう意味で提案して皆さん方の御審議をいただいておりますが、しかし、先ほど来お話がありましたような点で、なおこれは完全無欠なものだ、十分なものだ、かようには私も言いかねます。したがって、こういうような点は十分皆さま方の御意見も伺って、そうしていま直ちにとは申しませんが、私は、できるだけ沖繩同胞の意向に沿うことが、本土のわれわれの責任ではないか、かように思う次第でございまして、私の感じを率直に御披露いたしまして、お答えといたします。
  242. 二見伸明

    ○二見委員 総理大臣もまさか憲法の精神に違反するとは言いにくい気持ちはわかります。しかし私は、これは明らかに、精神じゃなくて、憲法そのものに違反している法律案だ、もし政府が率直にこの事実を認めなければ、何でこういう憲法違反の法律をいけしゃあしゃあと弁解したんだろうと、後世の歴史家から非難が浴びせられるのじゃないだろうか、こう思うわけです。  ここで、基地の問題に関しまして、同僚の委員から若干の関連質問をさせてくれということでございますので、その関連質問が終わったあと、引き続いて裁判の効力の問題と沖繩の経済開発の問題について若干お尋ねをしたいと思います。委員長、よろしいですか。
  243. 床次徳二

    床次委員長 関連質問要求がありますので、これを許します。伊藤惣助丸君。  ただし、関連質問でありますので、簡潔にお願いいたしたいと思います。
  244. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ただいま同僚委員からもお話ありましたように、基地の問題に関連いたしまして、核の問題について質問したいと思います。  いままで、この席上においても、また返還協定委員会においても、核の問題については政府がるる答弁をなさってきております。そこで、その答弁をもう一回この場において総理並びに外務大臣からも明確に再確認したい、こう私は思います。  御存じのように、岩国の基地には核がない、点検をやったけれどもなかったと言いながらも、なぜか国民は、この核の問題についてすっきりした感じを持たない、いわゆる核の疑惑についてはいまだに持ち続けております。その点について、まず初めに、岩国の基地の問題について、基地撤去状況について報告願いたいと思います。
  245. 西村直己

    西村(直)国務大臣 詳細は防衛局長から御報告申し上げますが、大略申し上げますと、岩国には、核の、あるいは核部隊と申しますか、いろいろな客観的材料があるというような国会での御質問がありました。そこで、外務省を通し米国側の合意を得まして、そうして防衛庁から責任ある統幕の空将補並びに陸上部隊の統幕の責任者、二人でもって参りまして、そして向こうの基地司令官なり関係者立ち会いの上で実態を見せてもらったわけであります。そうして、問題になりましたIA云々と申します、一番問題になりましたあの格納庫等を中心に調査をさしてもらいました。普通の状況と何ら変わりない様子であり、それから、従来、何かこれをいじってしまって隠しているんじゃないかという点も特に念を入れて見ましたが、何らそういう形跡もなしということであります。それから、特殊のために何か消火器その他が置いてあるかというのも、普通の、円匙と申しますシャベル一個とか、普通の消火器が置いてある程度、それから外部からは、約二百メートル先ぐらいには公道がございまして、そこから十分見えるというような状況、それから特別な警戒をしていない、こういうような状況で、まず核は、あるいは核関係のものはない。  それからもう一つは、航空機の関係も見せてもらったわけでありますが、これらも詳細申し上げてもいいのでありますが、それなんかも普通のいわゆる補助タンクを使っておるのでありまして、核を装置していけるような飛行機ではないということ、いわゆる滑走路からいっても、特殊な飛行機が来て飛べるような長い滑走路でもないわけであります。  それからもう一つは、電話帳の問題がございましたが、これらは、向こうのほうから文書でもって、いわゆる核その他の関係の防護のためのものである。これは防護の教育である。これはちょうど自衛隊でありますと、化学学校とか化学部隊とか称しておりますいわゆる防護のためのような系統の機関である、こういう説明がありまして、これを公式に私どものほうから新聞にも発表し、閣議にも報告をした次第であります。  なお、詳細が必要でありますれば、担当局長から御説明いたさせます。
  246. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いま防衛庁長官からお話ございましたが、私はこの調査について一つ疑惑があります。たとえば、この防衛庁からの派遣の制服の方が、共同査察といいますか、そういう形で行なったようでありますが、ただ見たのか、あるいはまた、弾薬の取り扱い、あるいはまた核倉庫の形態、こういう面から学術的に調査をした結果なのか、その辺はいかがですか。
  247. 西村直己

    西村(直)国務大臣 久保局長からお答えさせます。
  248. 久保卓也

    久保政府委員 伊藤空将補でありますが、弾薬であれ、かりに海軍関係の魚雷であれ、当然御本人は十分の知識を持っております。また、視察の目的を承知いたしておりましたので、どういう点を見るべきか、事前にちゃんとチェックをしてまいっております。したがいまして、特に学術的と申されなくても、たとえば、弾薬には文字が書いてありますし、コンテナにも文字があったようでありますから、それらは十分承知してまいったようであります。
  249. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いまの答弁に私は不満なんです。なぜかと申しますと、あとで申し上げますけれども、弾薬庫には、それぞれ米軍の一つの格納する基準がございます。それに基づいてきちっと整理されております。したがいまして、私がここで申し上げたい点は、少なくとも沖繩において毒ガスを撤去したとき、また、その毒ガスを確認に行ったときには、政府から専門家の学者を派遣しました。そしてその専門家の学者は、毒ガスのマスクをかぶってその弾薬庫の中に入り、さらにまた専門的な面から調査をしたのであります。私は、今回この確認について、もしほんとうにないということをさらに詳しくするならば、あの毒ガス撤去より以上に、本土にもしか核があったならばという疑惑に対して、たいへんな提起があったわけでございますから、いま少し慎重に、学者なり専門家なり、民間人とともに共同査察をすべきである。一説によりますと、楢崎委員より指摘のあったその後においてひそかに持ち運んだものがある、こういう報道も実は出ているわけであります。そういう疑問が残るわけでありますけれども、さらに私は沖繩の核問題について伺いたいと思います。  これは参議院の黒柳議員からの質問でございますが、メースBは撤去した、こういう指摘があったときに、いつ、だれが、どうで、どこを歩いたのだ、その質問に対して、政府は、現地にいる三木一佐ですか、彼が行って一カ所の確認をした。だから三カ所も同じだ、こういう理論にはならなかったわけであります。そしてその後、次の三カ所について政府撤去したというようなことを言っておりますけれども、その後の撤去状況についてまた答弁を願いたいと思います。
  250. 西村直己

    西村(直)国務大臣 メースBは、御存じのとおり、すでに退役をしました核兵器でございます。したがって、沖繩において撤去は一部公開はしました。したがって、公開をしたものは当然われわれのほうもはっきり確認をいたしておりましたが、その後国会方面の御要望もありますので、三木一佐をもって残る三カ所をたんねんに、アメリカの合意のもとに、見ました。ランチャーその他全部完全に、電纜その他撤去してあるということを確認いたしましたので、そのことを国会で御報告を申し上げた次第であります。
  251. 床次徳二

    床次委員長 伊藤君に申し上げますが、関連質問でありますから、簡潔にお願いします。
  252. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 大体聞いていますよ。時間はいいということですよ、理事会のほうで。そうですね。
  253. 床次徳二

    床次委員長 簡潔にお願いします。
  254. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それでは問題の核心に入りますが、長官、あなたは、沖繩基地返還後、核問題について疑惑があれば調査をする、こういうふうに発言しておりますけれども、これは間違いございませんか。
  255. 西村直己

    西村(直)国務大臣 沖繩復帰前の問題につきましては、しばしば総理あるいは外務大臣から、扱いについて、核の確認につきまして、アメリカ側の証言、もちろん、共同声明、今回の協定等にもいろいろその気持ちが出ておりますが、それ以外に、復帰後どうするかという不安感の問題があります。そこで、これもなかなかアメリカの——いわゆる核のあるなしを言うことは大統領権限になっておりますから、アメリカとしての立場というものもありましょう。どうしても沖繩において核があるのだという、非常に客観的な、具体的な問題でも起こった場合には、そのときには、アメリカがもし合意してくれるならば、これは核はないとわれわれは信じているし、また、核は置かないとアメリカも言っている以上は、もし、防衛庁が行けというならば、防衛庁の専門職をしてそれは当たらしてもいいじゃないか、こういう意見を私は述べたことは事実であります。
  256. 床次徳二

    床次委員長 伊藤君、ちょっとお待ち願います。     —————————————
  257. 床次徳二

    床次委員長 この機会に、公聴会開会承認要求の件についておはかりいたします。  ただいま本委員会において審査中の沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律案沖繩振興開発特別措置法案沖繩における公用地等暫定使用に関する法律案国家公務員法第十三条第五項および地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院地方事務所設置に関し承認を求めるの件、細谷治嘉君外十六名提出にかかる沖繩平和開発基本法案、及び川俣健二郎君外十六名提出にかかる沖繩における雇用促進に関する特別措置法案の各案件について公聴会を開きたいと存じます。  つきましては、公聴会開会につき議長の承認を求めたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  258. 床次徳二

    床次委員長 得異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、公聴会の開会日時、公述人の選定その他の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  259. 床次徳二

    床次委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  260. 床次徳二

    床次委員長 次に、委員派遣承認申請に関する件についておはかりいたします。  ただいま公聴会の開会承認要求を決定いたしました各案件について、委員を大阪に派遣し、審査の参考にいたしたいと存じます。  つきましては、議長に対し、委員派遣承認申請をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  261. 床次徳二

    床次委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、派遣の日時、派遣委員の人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  262. 床次徳二

    床次委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  263. 床次徳二

    床次委員長 質疑を続行いたします。伊藤惣助丸君。
  264. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ただいま防衛庁長官防衛庁長官の私見みたいなお話をなさっておりますけれども、その疑惑があれば確認をしたい、こういう発言は、米軍と話し合った上での長官の発言ですか。
  265. 西村直己

    西村(直)国務大臣 別にこれは米軍と話し合っておりません。また、軍同士でこういう問題は事柄が事柄だけに話すべきじゃありませんで、外交ルートを通してやるべきだと私は思います。  岩国を先例というわけではないが、しかし、復帰後に非常に状況が混乱でもするような場合があったとき、そういう万一の場合にそういうことがし得るならば、防衛庁としては専門職が当然そういうものの調査に参加してけっこうであるということ、それがやはりまた土地のためになるなら非常にいいことじゃないか、こういう意味であります。
  266. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 防衛庁長官が日米合同委員会とかあるいは米軍との交渉なしに前向きに発言したことだろうと私は思います。このことはぜひそれぞれの話し合いの機関において明確にしておいていただきたい。こういうふうに要望いたします。  ところで、マイヤー大使の核に対する発言についてでありますが、このマイヤー大使の発言の中に、岩国基地には核はない、日本基地のどこにもない、このように発言しております。これについて、佐藤総理はどのようにお考えになっていらっしゃるのか。また、もし岩国基地以外に核のあるような疑惑があれば、それを調査するのかしないのか、その点明確にまず伺っておきたいと思います。
  267. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 本土基地に核はあろうとは考えません。絶対にありません。また、過日の本会議における、非核三原則、これの決議もされた今日でありますし、また、新たなる核の持ち込みについても、はっきり政府の方針も国会の方針もきまった今日でありますから、さようなことがあろうはずはございませんし、またさようなことがあってはならない、そのことをはっきり申し上げておきます。
  268. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 総理は確信を持って、ないと、こうおっしゃっておりますが、前に同僚委員からも質問があったが、もしそのようなわが国における非核三原則の原則を破るようなことが起こった場合にはどうするか、あらためて総理の態度を確認しておきたいわけです。そしてまた、疑惑があれば調査をするのか。または申し入れを明確にして明らかにする必要があると思います。その点について再度確認しておきます。
  269. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま申し上げますように、さようなことがあろうはずがない。もしあったら、たいへんだ。もちろん、政治的責任は重大である、かように私は申しました。今日もその考えに変わりはございません。はっきりさように御了承いただきます。
  270. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そこが大事なところでありますから伺いたいのでありますが、疑惑があれば調査するかしないかということです。それで、あなたは政治責任とおっしゃるけれども、それは何を意味するのか、その点も明確にしていただきたい。
  271. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ただいま総理お答えになっているとおりでありまして、疑惑があろうはずがありませんと、かように考えております。しかし、何か自然な疑惑——つくられた疑惑じゃないということであります。自然な疑惑がありまして、これは解明を要するという場合は、解明のための適当なる措置をとります。
  272. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私は、外務大臣ではなくて総理に伺っております。またあらためてあと伺いますけれども、これが仮定の問題であるから答えられないというなら、これまた問題であります。といいますのは、これから提示いたしますけれども、私がこれから申し上げます問題の中に、やはり総理としてはき然としたその姿勢、あるいはまた、院で決議した非核三原則との間において、われわれも国民としてもこれはたいへんな決意で臨まなければならぬことだというふうに考えているからであります。重ねて総理の御所見を伺いたいと思います。疑惑があれば調査団あるいはまた点検、さらにまた、その申し入れをやるかどうかということを明確に伺っておきたいと思います。
  273. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が疑惑を持てば私が処理します。ただ疑惑がある、疑惑があるというだけでは私は動きませんから、そこは誤解のないように願っておきます。
  274. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 疑惑があれば私が判断してやるというわけですね。そのことは、調査をするなり点検するなり申し入れをやるなりということをお約束できますか。
  275. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、核がありと、またその疑念があると、かように感じたら、私自身が最善を尽くします。ただいま言われるように、みんなが納得のいくような処置をとります。
  276. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 国民が聞きたいのは、そのように私が責任をとるという——まあ考えてみますと、佐藤総理は四選されて、五選はないといわれております。沖繩が終わればやめるのじゃないか、こういううわさもあります。いろいろのことがありますけれども、私はここでは言いません。ただ問題は、国民がそういうふうに疑惑を持ったときに、その疑惑に対しては、前向き、率直に態度を明確にすべきだと思うのです。総理立場は私はよくわかりますよ。ですけれども、やはりこの核の問題についてはいままでいろいろなところで論じられてはおりますけれども、その問題はいつもあいまいであり、抽象的であり、しかもその核心についてはだれもが触れることができなかった。それはいろいろな問題があるからでありますけれども、その点についてもう一回、総理、たいへん失礼でございますが、答弁願いたいと思います。
  277. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 さっき申したのとちょっと誤解があり、あるいは私のことばが足らないために疑惑を持たれたようですから、もう一度はっきり申し上げます。  私自身が疑惑を抱いたり、また疑念を持てば、私がその疑念、疑惑を払うような処置をとって、国民皆さんに安心していただくような方法をとります、こういうことでございます。これがただいま言われるように、あるいはみずから点検するか、あるいはその筋の者をして確認さすか、それらの点は私にまかしていただきたい。ただ疑惑がある、疑惑があると言われても、私自身がどうも疑惑がないのを、しいられて、疑惑があると、かようには私は思いませんから、その点は、いま申し上げるように、はっきりと私自身が疑惑あり、あるいはその疑念があると、かように感じたときには、国民の皆さまにも安心がいくような処置をとります、こういうことであります。これは私の進退問題を含めての云々というのではなくて、その核の有無についてのこれを明確にするということでございます。
  278. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いま最後の一言がちょっと重大でありますので申し上げますが、かつて総理は、楢崎委員質問に対しても、ないんだ、もし非核三原則と違反し、あるいはまた核を持ち込んでおったような事実が判明したときには、責任をとる、これは進退問題も含めてだ、こういう答弁を私は聞いております。それは撤回いたすのですか。
  279. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 それは撤回はいたしません。しかし、ただいま言われておることは、その問題ではない。その核の有無を実証しろ、こういうことですから、それについての私の考え方のほどを申し上げたのであります。楢崎君に答えたこと、私撤回はいたしません。
  280. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それでは防衛庁長官、あるいはまた防衛局長でもけっこうですが、私この写真をお見せいたしますから、どこの基地か、ちょっと言っていただきたいと思います。   〔伊藤(惣)委員、写真を示す〕  どこの基地かわかったら答弁願いたいと思います。
  281. 西村直己

    西村(直)国務大臣 ちょっと突然のことでございますから、わかりません。
  282. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 防衛局長
  283. 久保卓也

    久保政府委員 私、現地を承知しておりませんので、存じません。
  284. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 政府で知っている方いますか。特にそのシンボルに注目していただきたいと思います。何とありますか。  もう一つ申し上げます。   〔伊藤(惣)委員、写真を示す〕  政府委員でおわかりでしたらば、その基地の名前をあげていただきたいと思います。
  285. 久保卓也

    久保政府委員 全く現地を承知しておりませんので、わかりません。
  286. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私は沖繩調査団の一人として八月に行きました。そして常日ごろ新聞を読んでおって、これがメースBの基地であるということは、一回見てはっきり覚えてまいりました。だれが見ても、その写真はメースBの基地じゃありませんか。  それから、外務省当局あるいは防衛庁でもけっこうでございますけれども、二番目に持っていった写真は、あれは有名な辺野古です。あの前に立ちどまることも写真をとることも禁じられている場所であります。そんなことがわからないはずないじゃありませんか。なぜ前向きで答弁しないのですか。まだそこに核があると私は言っていないんですよ。場所はどこだと聞いているのです。政府委員、答弁してください。何十回も行っている防衛庁や外務省がわからないわけないじゃないか。わからなかったら質問進まないよ。
  287. 西村直己

    西村(直)国務大臣 御質問がちょっと御無理じゃないかと思います。その部分の写真だけでこれをどこかといっても、ああいう形の金網を張ってある場所は至るところの基地にある形でありますので、ちょっと判定つきません。
  288. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 メースBの基地は八カ所あるわけです。しかも、上はちゃんとこういうかっこうになっているわけです。かまぼこ型でございます。それは沖繩広しといえども四カ所しかない。それがわからないはずないじゃありませんか。いままで防衛庁や外務省が沖繩に何回、何十回行ったことを聞いております。それほど基地に対して関心なかったんですか。私はただの一度でわかってきて、そしてこれを見て、たいへんなところだというふうにわかってきたんだ。その点についてもう一回。
  289. 久保卓也

    久保政府委員 私はメースBの写真は持っておりませんが、図を持っております。その面からいいますと、この入口が八つあるものはメースBの基地だと思います。それから、このゲートだけある写真は、全くどこであるかわかりません。
  290. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 メースBの基地一つだということをお認めになりましたね。  では、あとのカラーの写真は辺野古です。はっきり申し上げます。そこで注目していただきたいというのはシンボルのことです。  それでは、最後にこの写真をお見せいたします。   〔伊藤(惣)委員、写真を示す〕
  291. 床次徳二

    床次委員長 伊藤君に申し上げますが、関連質問の時間内でありますので、すみやかに二見君の質問に入っていただきたいと思います。また、政府のほうも、すみやかに調査の上、答弁を願いたいと存じます。
  292. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 あとの二枚の基地の写真のシンボルは、横田基地です。この東京都にある横田基地の弾薬庫のシンボルです。いいですか、総理。私は、この核の問題については、国会に来て以来調査してまいりました。ずいぶんと米軍の基地も歩きました。総点検もやりました。しかし、こういうようなことがあるのではないかという疑いは、前から持っておりましたけれども、政府がないないと言うから私はないのだろうと信じてまいりました。しかし、御存じのように、そのシンボルを見てまいりますと、現在ここにありますけれども、米軍が現在使用中の一つの弾薬庫の中にある弾薬をいろんな角度から分けた基準を示した本であります。それによりますと、弾薬庫というもののシンボルは1から1、2、3、4、と、5はない。1、2、3、4とあります。そうして1にはどういうクラスの弾薬が入っているのか、明確にこれに書いてあります。たとえばクラス1、これは小銃弾であります。そして1、2、3、4、5、6、7、8まであります。8はCBRであります。またクラス7というのはミサイルの弾頭あるいはまたたいへんな高性能爆薬を持つ兵器であります。それが明確にあるのであります。それがなぜ横田基地にあるのかということであります。資料はたくさんあります。総理が言えというなら私は言いますけれども、その点について答弁できたらしてください。
  293. 久保卓也

    久保政府委員 1から8までの区別は存じませんけれども、横田は御承知のごとく補給、輸送のセンターでありますので、おそらく弾薬を運ぶ途中一時保管するという意味で弾薬庫があってもおかしくはないだろうというふうに思います。
  294. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 横田は、米軍のどういう部隊が現在おりますか。また、過去にどういう部隊が横田に来ておりましたか。
  295. 久保卓也

    久保政府委員 以前ありましたのはF4の戦術戦闘航空団でありますが、現在ありますのは、それは御承知のように沖繩に参っておりますので、おもな部隊で申しますと、第四七五航空基地ウイング団でありますが、この中でおもなものは偵察中隊、それからやはり飛行機を持っておるものとしましては第五六気象偵察中隊、これが飛行機を持っておるものでありまして、その他は整備業務、施設等の部隊、それから戦略航空団の連絡隊、その他患者輸送、まあこまかいものがいろいろありますが、もし必要であればまた申し述べます。
  296. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 全部言ってください。
  297. 久保卓也

    久保政府委員 それではこまかく申しますと、航空基地群の中に、機体整備、業務、警務、施設、補給、輸送の各中隊、それから偵察技術グループ……。
  298. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それは第何部隊ですか。
  299. 久保卓也

    久保政府委員 これは第五四八偵察技術グループ、それから第六五軍事空輸支援グループ、それから第六一軍事空輸支援ウイングの第六分遣隊、それから第五六患者後送中隊、それから気象中隊の分遣隊、それから先ほど申し上げた第五六気象偵察中隊、それから第二一二七通信中隊、それから司令部空軍第四〇七分遣隊であります。
  300. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 あなた、先ほどは補給部隊だと言いましたけれども、そうじゃないじゃないですか。いいですか。戦略部隊と言いましたね。これをもう少し正確に言いますと、四二五二戦略部隊です。それから四七五戦術戦闘連隊というのは、これはつい最近三沢にいた部隊であります。またその前は三七五戦術戦闘部隊、これは第五空軍が誇る核装備の編隊であります。その飛行機は皆さん御存じのようにF105サンダーチーフ、さらにF4Cファントム、そしてまたその装備できる武器は何か。一つは核ファルコン、核ブルパップ、核スパロー、こういうものを装備する部隊じゃありませんか。しかも四二五二部隊というものの分遣隊が横田にある。すなわち、極東における戦略空軍は沖繩だけでなく、この日本本土も拠点として、現在でもなお戦略空軍の飛行を続けているのであります。これは二、三年前のことでございますが、横田基地にB52戦略爆撃機が来て問題になりました。故障のために飛びおりたということでございますが、そうじゃない。そういう分遣隊が所属しておる。点検整備のために着陸しているわけであります。  もう少し申し上げますと、この戦略空軍、略称SACといいます。これは米本土のネブラスカ州オファット基地を本拠にしております。そして核兵器による大量報復部隊、ICBM大陸間弾道弾とB52戦闘機部隊、これが米軍の戦略上の抑止戦略部隊である、その中核だといわれております。こういった部隊の分遣隊が横田にあるのであります。  先ほど写真を示しまして、私はその答弁を求めているわけでありますが、状況証拠を提出しました。さらに詳しい資料がたくさんございます。この点について政府側で答弁があればしていただきたいと思います。
  301. 久保卓也

    久保政府委員 SACの部隊はナンバーが違っておりますけれども、これが核装備をしたものをこちらに持ってくるというたてまえのものではないと存じております。したがいまして、過去においてF4の部隊がおり、それがまた核装備をする航空機であることは確かでありますけれども、本土において核装備をするというものではおそらくありませんでしょう。したがって、それもありませんし、現在のところはいろんな各部隊の連絡班を中心とし、それから偵察と気象関係、その他は輸送関係が中心になっている基地であるということは間違いないと思っております。
  302. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 シンボル4について説明していただきたい。
  303. 久保卓也

    久保政府委員 いま御提示になりました4、C15という数字が出ておりますけれども、このシンボルについて私どもは資料を持っておりません。
  304. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 総理、どうしますか。——それでは、横田に行ってくるまで待ちましょう。調査をして答弁していただきたいのであります。これはきわめて重大なことであります。
  305. 床次徳二

    床次委員長 伊藤君に申し上げますが、資料の答弁の要求につきましては、防衛庁長官から……。
  306. 西村直己

    西村(直)国務大臣 事前にそういう資料なりについて調査を求められれば、私どもは十分お答えできます。ただ、突然ここでそういうようなことをお求めになりましても、これはやはりそれぞれの部局においての関係でありますから、特にSACというお話がありましたが、SACというのは世界的な一つの系統でありますから……。問題は、核を持っておるかどうかの問題でありまして、いわゆる運搬兵器としての104なら104というものは非核、核両用であることは御存じのとおりでありますから、それ自体では議論になりませんが、問題は、ここで、標識がどういう標識であるかということは、時間さえいただければ私のほうは明快にしてみたいと思います。
  307. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 じゃ、それまで待ちましょう。
  308. 床次徳二

    床次委員長 伊藤君に申し上げますが、資料の答弁の要求につきましては、政府において調査するという答弁でございますので、この点は理事会にはかりまして善処いたしますから、本論の質問を進めていただきたいと思います。  なお、伊藤君に申し上げますが、関連質問でありますので、簡潔にお願いいたしたいと存じます。
  309. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 じゃ、申し上げますが、私がいま示しましたこの問題については、専門家であればわかるのです。いいですか。それを、先ほどからの答弁にもありますように、写真を見てすぐわかっても、わからないと言う、そういう政府姿勢、そして、大きな声を出せば、確かにそれはメースBの一カ所であるなんて。時間があればと——いままで核の問題については同僚委員からもたくさん指摘があるのです。したがいまして、こういうようなことについてはわかっているんです。なぜ答弁しないかということであります。ここでまたいろいろな問題がございますよ。だけれども、総理、ただ、声を大きくしてあんまりおどかすんじゃないぞと先ほどおっしゃいましたけれども、そんなつもりで言っているんじゃないんです。いいですか。いろいろありますけれども、やはり刑特法の問題もある。それからまた、日米関係考えなきゃならぬ。私は、この質問をするときに真剣に考えました。このことを明らかにして、日米関係はどうなるだろうか、このことを通してわが国の国益がどうなるだろうか、真剣に考えました。しかしながら、核をめぐる論議というものは、常に抽象的であり、不誠意な政府の答弁ばかりであります。しかも、岩国の基地にいたしましても、あのように点検したから、ほかの基地もするかと言えば、ない、これは異例のことであると。そして、先ほどの防衛庁長官の答弁からいたしましても、米国とも何も話もしないで、疑いがあれば調査する、向こうとは話していない、そういうことを話したい、そんな希望的観測みたいなものを話して、悪いことばで言えば、国民を欺いている。
  310. 床次徳二

    床次委員長 伊藤君に申し上げますが、関連質問でありますから、簡潔にひとつ結論をつけて、二見君のほうに質問をお譲りいただきたいと思います。
  311. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ですから、このシンボル4について御説明をいただきたい。先ほど総理が、そういう疑惑があれば善処すると言いましたね。いいですか。だから、その点たいへんな疑惑が生じたわけでありますから、どういたしますか。
  312. 久保卓也

    久保政府委員 私、この数字についてお答えをする用意がございませんが、さっそく調べます。
  313. 床次徳二

    床次委員長 ただいま政府委員の答弁がありましたので、ひとつ二見君の質問に入っていただきたいと思います。
  314. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 何言っているのですか、委員長。いいですか。申し上げます。もう一回最後に申し上げますが、先ほどごらんになりましたメースBの基地のシンボル4、総理、ごらんになりましたね。それから辺野古のシンボル4、ごらんになりましたね。横田基地のシンボル4、これもごらんになりましたね。それで調査して答弁するとは何事ですか。
  315. 床次徳二

    床次委員長 伊藤君に申し上げますが、ただいま伊藤君の御質問に対しましては、政府も調査をいたしまして後刻御答弁を申し上げますから、御承知をいただきたいと思います。
  316. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 もう一回確認しておきますが、このシンボル4は核であるという一つのシンボルなんですよ。メースBに核以外のものがございましたか。そうでしょう。それから辺野古にもサブロックやポセイドンやポラリスがあるというような同僚委員指摘もあります。横田にもあるわけですよ。当然それが大きな疑惑となっているわけであります。ほかの基地にはないのですよ。だから、これを後刻調査して答弁するなり、あるいは総理責任を持って善処されるというならば、私はこれで質問をやめます。
  317. 西村直己

    西村(直)国務大臣 非常に短い時間の間にうまくお出しになりましたから、これ自体は私のほうで責任を持って御回答できるようにひとつ時間の余裕をいただきたいと思うのであります。先般、実は赤、黄の問題も、赤は核であるという御質問が盛んにありましたが、実態的には赤はある、こういう形の魚雷であるとかいう説明が正式に回答があったわけでありまして、御質問の点もわかりますが、同時にまた、正確なる御回答をする用意をいたしたいと思います。
  318. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それでは、調査の結果、報告をしていただくことを約束して、質問を留保してやめます。  総理、その実態が明らかになったときには、どういう姿勢で臨まれるのか、最後に御答弁願って質問をやめたいと思います。
  319. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど答えましたから、速記録をよくお調べ願いたい。
  320. 床次徳二

    床次委員長 引き続き二見伸明君質問を続行していただきます。
  321. 二見伸明

    ○二見委員 軍用地の問題をお尋ねしましたけれども、今度は裁判の効力の問題について二、三お尋ねをしたいと思います。  これは午前中久保委員のほうがだいぶおやりになりましたので、重複しないように質問いたしますけれども、重複する点がありましたら、その点は御容赦いただきたいと思います。  最初に、法制局長官、またも御足労をわずらわして申しわけないのですが、沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案の二十八条の七項「民政府の裁判所が裁判権を有していた刑事に関する事件(民政府の裁判所の最終裁判があつた事件を除く。)についてこの法律の施行前にされた手続は、この法律の施行後は、事件の受理を除き、その効力を有しない。」これはどういうふうに解釈されればよろしいのでしょうか。
  322. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 特別措置法案二十八条七項でございますが、これは「民政府の裁判所が裁判権を有していた刑事に関する事件についてこの法律の施行前にされた手続は、この法律の施行後は、事件の受理を除き、その効力を有しない。」ということでございまして、特にこの条文でカッコ内で「民政府の裁判所の最終裁判のあつた事件を除く。」といっておりますから、この復帰の際に民政府の裁判所に係属しておる事件でこの法律の施行前になされた手続につきましては、この民政府の裁判所に係属しておる、民政府の裁判所に受理されているという意味の事件の係属という効力を認めまして、その民政府の裁判所で復帰の前に行なわれた手続については、その効果を認めないという趣旨でございます。
  323. 二見伸明

    ○二見委員 たとえば民政府の裁判で判決が確定した段階でちょっとお尋ねをしますけれども、復帰前に死刑の判決が確定した場合には、本土復帰後、この死刑についてはこれはどういうことになりますか。日本政府としてはただ単に死刑を執行するだけになるのでしょうか。その点はいかがでしょう。これは法務大臣。
  324. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 こまかい点でございますから私から答弁いたします。  実例といたしまして、民政府の裁判所で死刑の裁判が確定しておる——があったということはございませんけれども、一つの仮定論として申し上げますと、民政府の裁判所の復帰前における確定裁判、これにつきましては、民政府の確定裁判としての効力を、復帰日本として認めるわけでございます。
  325. 二見伸明

    ○二見委員 いいですか。いまの答弁は非常に重要なことです。私がたとえば死刑という例示をいたしましたけれども、たとえば復帰前に死刑の判決が確定した場合には、復帰後、日本政府は死刑にするわけですね。そういうことになりますね。
  326. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 確定裁判としての効力を認めるということでございますけれども、それを、あくまで理屈の問題でございますが、その確定裁判を日本側が執行するという段階におきまして、日本政府としてこれについての再審であるとかあるいは恩赦の措置をとり得るということは別途あるわけでございます。
  327. 二見伸明

    ○二見委員 私は恩赦の話を聞いているのじゃないのです。死刑の判決が確定すれば、本土復帰後、この法律のたてまえからいけば、それは日本は死刑の執行をすることになるのでしょうと言うのです。
  328. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 確定裁判の効力を認めるわけでございますから、執行する場合もございます。また再審をする場合もございます。
  329. 二見伸明

    ○二見委員 いいですか。再審の話をしているのじゃないのですよ。いろいろとごまかさないでもらいたいのです。あなた、正式にいえばここは死刑の判決が確定されれば、本土復帰後それは死刑になるのです。だけれども、死刑になると、そういうふうに言ったのじゃ困るので、恩赦がありますとかなんとか言って逃げを打っているけれども、現実的には死刑になるのでしょう。  じゃ、あなたの言い分でいけば、そういう場合もあるということになりますね。いずれにしてもそうなるのでしょう。
  330. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 民政府の裁判所が死刑の判決を言い渡してそれが確定したという場合には、復帰日本政府といたしましても、民政府の死刑の判決が確定したという事実は認めるわけでございます。
  331. 二見伸明

    ○二見委員 だから、死刑にするわけじゃありませんか。死刑にするわけでしょう。  ところで、お尋ねいたしますけれども、また先ほどに戻りますけれども、憲法三十一条の「何人も、法律の定める手練によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」という、この条文の「法律」というのは、これは日本のこの国会で制定した法律のみをいうのでしょうか、それとも、たとえば布令であるとか立法院の立法だとかいうところ、それも三十一条でいう法律ということになるのでしょうか。いかがでしょうか。
  332. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 憲法三十一条にございます法律日本法律でございます。
  333. 二見伸明

    ○二見委員 沖繩復帰後、沖繩県民はこの三十一条というものを一〇〇%適用されるのでしょうか、それとも一〇〇%適用は無理なんでしょうか。いかがでしょう。
  334. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 復帰後におきましては憲法の適用を当然全面的に受けるわけでございます。
  335. 二見伸明

    ○二見委員 ところで、憲法三十二条に、これは裁判を受ける権利ですね、「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」という、この規定にある「裁判所」というのは、これは憲法七十六条に規定されたいわゆる裁判所なんでしょうか、それともいわゆる米民政府の裁判所もこの中に入るのでしょうか。いかがでしょうか。
  336. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 憲法三十二条にいいます裁判所は、この憲法で書いてある裁判所を意味すると解します。
  337. 二見伸明

    ○二見委員 ところで憲法三十二条は、復帰沖繩の方々にも一〇〇%適用されるのでしょうか。これはいかがでしょう。
  338. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 ただいまの御質問の点は、復帰前に確定いたしました琉球政府の裁判所の確定裁判であるとか、非常に数は少のうございますが、米国民政府の確定裁判を復帰後に執行いたします場合に、この憲法三十二条の裁判を受ける権利という保障、これに抵触するのではないかという御質問であろうと存じます。  この点につきましては、今回の沖繩復帰というものが憲法的にどうなるかという問題であろうと思うのでございますけれども、憲法がこの復帰とともに新しく沖繩に適用されるわけでございます。そういたしますと、この復帰前の沖繩というものは、ちょうど、たとえが多少違うかもしれませんが、現在の新憲法、現行憲法が施行をされる前の旧憲法当時の日本の状態と憲法の適用という関係においては相似ておるわけでございます。ところで本土の場合に、現行の憲法が施行されました場合に旧憲法当時に確定いたしました裁判、その裁判の中には新しい現行憲法が認めていない軍法会議その他の裁判もあったわけでございますけれども、そういう裁判を含めまして、旧憲法当時の裁判につきましても新憲法後これを執行しておるわけでございます。これを執行いたしますにつきましては、これは憲法の九十八条の第一項でございますが、「この憲法は、國の最高法規であつて、その條規に反する法律、命令、詔勅及び國務に關するその他の行爲の全部又は一部は、その效力を有しない。」、こういう条文がございますけれども、この条文と、旧憲法時代に確定いたしました旧憲法下の裁判を新憲法下に施行する場合に、この九十八条一項に抵触するのではないかという問題があったわけでございますけれども、その点に関しまして最高裁判所の判例は、これは内容が憲法の精神に反しない限り、旧憲法下の裁判所が言い渡した刑についても、その実質が憲法に適合しておる限りにおいては、それを執行しても違憲ではないという判断を最高裁が下しておるわけでございます。  ところで、そういうことを前提にいたしまして今回の沖繩復帰前の確定裁判というものを見ますると、これは琉球政府の裁判所につきましてはその実体法も手続法も、現在日本本土で行なわれておるものとほとんど変わらないわけでございます。それから民政府の裁判所につきましては、多少その手続その他において違うところがございますけれども、これまた近代法の諸原則を全部備えた近代的な司法制度でございます。そういう司法制度のもとにおいて行なわれましたそういう裁判の効力をこの復帰後に日本において執行することは、これは今回の沖繩復帰ということの趣旨にかんがみまして、ごうもこの憲法違反の点はないと確信をいたしておるところでございます。
  339. 二見伸明

    ○二見委員 まことにおみごとな論理を展開なされました。  お尋ねいたしますけれども、まず沖繩で使っていた——政府委員が出てきて困るのですけれども、ここら辺は法務大臣にほんとうは御見解いただきたいところなんですよ。いま、沖繩で使われていた法律というのは日本本土法律とは実体的には変わらぬからいいということですね。法体系は、沖繩の法体系と日本の法体系、現在の憲法を頂点とした法体系は同じでしょうか、違うでしょうか。
  340. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 体系としては違いますが、いわゆる条規といいますか、趣旨というか、原理においては変わらぬ、こういうふうに考えております。
  341. 二見伸明

    ○二見委員 原理は同じだけれども法体系は違う、向こうも近代法の体系だからそれをそのまま持ってきてもかまわないんだ、先ほどそういう乱暴な御答弁がございましたけれども、その前に旧憲法と新憲法、いまの憲法ですね、ここのところでもう一度お尋ねしますが、これがそうだから沖繩もそうだというけれども、これは同じに扱ってよろしいんでしょうかね。同じに扱ってもまずよろしいのかどうか、ちょっと御意見を伺いたいのですがね。
  342. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 先ほど申し上げましたように、旧憲法下の裁判と現在の復帰前の沖繩の裁判とは、これは違うわけでございます。私は現行憲法との関係の一例としてそれを申し上げたわけでございます。  ところで、憲法は沖繩復帰ということを予想した規定を置いていないわけでございます。もともと、また憲法が沖繩復帰というものを禁じておるということではさらさらないわけでございます。そういたしますと、そういう前提で、法秩序は形式的には現在の沖繩の法秩序と旧憲法下の日本の法秩序とは、これは違うわけでございますけれども、現在の憲法が沖繩復帰というものを禁じておるわけではさらさらないのみならず、そういう場合も予想していないという前提に立ちまして、そして沖繩の特殊性、先ほど申し上げました、ほとんど実質的には、琉球政府の裁判所の場合には法律が違わないというような点を考案いたしますと、そういたしますと、先ほど来申したことはごうも憲法違反のそしりを免れぬわけではない、かように申し上げているわけでございます。
  343. 二見伸明

    ○二見委員 また一つすばらしい御答弁がございました。憲法が予想してないんだ——これはまた別に論議いたしましょう。  その前に、九十八条の問題を出されましたので、それでまずお尋ねしますけれども、旧憲法のときを持ってきて、最高裁としては内容が新憲法の内容に反しない限りはいいんだという御答弁ですね。それでは民政府の裁判所において死刑という最終判決の確定があった、これが沖繩県民にプラスの問題、プラスの面であるならば九十八条は持ってきてもいいですよ。刑事の問題は、これは人権にかかわる問題ですよ。人権にかかわる問題だから憲法でも三十一条からずっときびしく書いてあるのでしょう。これはなぜ書いてあるかといえば、基本的人権を守らなければならぬという大前提で三十一条があり、三十二条があるのでしょう。じゃ、死刑にするということが、九十八条の、あなたの先ほど言われた憲法の精神に反しないんだ、そんな乱暴なことできるのですか。あなたがもし死刑の判決を確定されるとされた場合だったらば、これも憲法の精神に反しないからやむを得ないと、あなたはそういうように言うのですか。そんなべらぼうな答弁はやめていただきたいですね。
  344. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 私が先ほど申し上げましたのは、憲法九十八条第一項にございます憲法の「條規に反する法律、命令、詔勅及び國務に関するその他の行為の全部又は一部は、その敷力を有しない。」という規定でございますが、これに関します最高裁の昭和二十四年四月六日の大法廷判決は、「新憲法は第九十八條において「その條規に反する法律、命令、詔勅」等の効力を有しないとを規定している。したがって、その反面解釈として、憲法施行前に適式に制定された法令は、その内容が憲法の条規に反しない限り効力を有することを認めているものと解さなければならない。」こういう判決をしておるわけでございまして、私はそのことを申し上げたわけでございます。  ところで、ただいま御設例の死刑の判決ということでございますが、そういうことは実例としてはないと私は思うわけでございますけれども、それに関連いたしまして、この特別措置法案の二十五条第一項でございますが、「この法律の施行の際沖繩に適用されていた刑罰に関する規定は、政令で定めるものを除き、この法律の施行前の行為について、なおその効力を有する。」云々と規定いたしておるわけでございます。これはあくまで新しく裁判する場合のことを書いてあるわけでございます。これは復帰前の行為について、復帰後裁判する場合の適用の実体法のことを書いておるわけでございまして、その場合に、復帰前の行為については復帰の際、沖繩に適用されていた刑罰に関する規定を適用して裁判をするということをいっておるわけでございますが、その場合に、復帰後適用する法律のうちで政令で定めるものを除くというふうにいたしておるわけでございます。これは日本の現在の法律制度から見まして、多少問題のある布告、布令なんかもあるようでございますから、そういう布告、布令は、午前中法務大臣が答弁なさいましたように、この政令で除外されるわけでございます。したがって、そういう除外されるような法令によって、もしただいま御指摘のような非常に重い刑罰がすでに確定しておるというような事例がございますならば、それは当然その他の関係におきまして救済の措置が理屈上とられてしかるべきものであろう、かように考えておるわけでございます。
  345. 二見伸明

    ○二見委員 あなたは政令でもって逃げようとなさいます。私も、政令で逃げるのじゃないかと思っていましたけれどもね。これは政令でもって云々できる問題じゃございませんよ。  法務大臣、どうですか、これは。たとえば、死刑の判決が確定されるということを政令で除くんだというような、そういう単純な解釈でよろしいのですか。そういう解釈は認められるのですか。
  346. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 死刑というのは、個人的には考えますと非常に不幸なことでありますが、やはり現在の憲法下において、死刑は国内法においても認められておるわけです。やはり常軌から考えて逸脱したものではないというふうに私は考えるわけであります。
  347. 二見伸明

    ○二見委員 法務大臣、ではお尋ねしますけれども、憲法の三十一条「何人も、法律の定める手續によらなければ、」その生命は奪われないのですよ。法律の定める手続によらなければ命は奪われないとなっているのです。先ほど法律は何かと聞いたら、国会でつくられた法律だというのです。米民政府でつくった法律じゃない。この日本の国のこの国会でつくった法律によって生命もしくは自由を奪われる——生命は奪われるのですよ。米民政府の、向こうの法律で奪われるのじゃないですよ。本土復帰ということは、もうそのときから日本の憲法下に入ることでしょう。ではこれは、その人だけは憲法下に入らないということですか。法務大臣、どうなんですか、いまの答弁は。
  348. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 この特別法律によりまして前の裁判を引き継ぐということは、結局において、その裁判が国内法で行なわれた裁判と同様に考えるべきだ、こういうことだと思います。したがって、裁判なしに死刑になるという問題ではないと思います。
  349. 二見伸明

    ○二見委員 要するに、この特別措置法をつくるんだ、だからこれが言うなれば法律の定めるものなんだ、この法律に当たるんだという、こういう、言うなれば強引なやり方でしょう。——そうでしょう。向こうの裁判というものを認めた上で、向こうの法律をそのままこちらに、その法体系そのものをこちらに持ってこようというやり方でしょう。どうなんですか、法務大臣。
  350. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 法体系を持ってくるというのではなしに、すでにその以前の法体系によって行なわれた裁判をそのまま国内の裁判をしたものと認めていこうということだと思います。
  351. 二見伸明

    ○二見委員 そこに問題があるのじゃないですか。  ではもう一つ聞きますよ。私が公用地の暫定法案のときに、一番最初お尋ねしたときに、政府の内部では、向こうでいままですでに貸借関係やその他があるのだから、向こうの法体系をそのまま持ってきたらどうか、向こうのやっている布告ですか、布令ですか、それを持ってきたらどうだという意見も聞いているけれどもどうだと言ったら、それはアメリカの法体系で日本の憲法下の法体系ではない、アメリカの法体系だからだめだと言ったのです。いいですか、公用地についてはそういうやり方はできないと防衛庁長官は言ったのです。ところが、この刑事の問題に関しては、アメリカのその布告、沖繩のそのものをこちらに持ってくる。それも、持ってきたことによって沖繩県民がプラスになるのならいいですよ。プラスになるものまで持ってきちゃいかぬと言うのじゃないのです。命を奪われる、あるいは懲役十年とか十五年の刑が科せられる。いわば人権を侵害するのでしょう。そういうものを持ってくるというのはどういうわけなんですか。まず、土地についてはそういうことはできない、こっちについてできる、その矛盾はどういうふうに釈明してくれるのでしょうか。
  352. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 いかなる場合にも、刑事問題はそのときの法律によって罰せられるということであります。したがって、復帰前の状態において行なわれたということでありますから、それはそれとして認めて、そうしてその後において、手続法におきましても、ただいま申しましたような再審の制度あるいは恩赦の制度、そういうものを活用していくべきだ、それがむしろはっきり法秩序を守っていく上に混乱がない、こういうふうに考えておるわけです。私は憲法違反だとは考えておりません。
  353. 二見伸明

    ○二見委員 私ちょっと確認したいのですけれども、再審の道を開いているというのですけれども、裁判の判決が確定したものについて、再審の道はどこで開いておりますか、法律の上では。
  354. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 特別措置法案の第二十七条でございます。
  355. 二見伸明

    ○二見委員 二十七条のどこですか。
  356. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 二十七条の第一項でございます。  少し長くなりますけれども読んでみますが、「刑事訴訟法、少年法、監獄法、犯罪者予防更生法その他の政令で定める刑事に関する法律及びこれらに基づく命令並びに刑事に関する最高裁判所規則のうち最高裁判所規則で定めるもの(以下この節において「本土の刑事関係法令」という。)の規定(刑罰に関する規定を除く。)は、この法律の施行前に沖繩において生じた事項についても適用する。」ということで、その次に「この場合において、この法律の施行の際沖繩に適用されていた刑事に関する法令(以下この節において「沖繩の刑事関係法令」という。)の規定に関する事項で本土の刑事関係法令にその規定に相当する規定のあるものは、当該本土の刑事関係法令規定に関する事項と、沖繩の刑事関係法令規定によつて生じた効力は、本土の刑事関係法令上の相当の効力とみなす。」ということで、復帰前に沖繩で確定いたしました裁判は本土の確定裁判とみなしておりまして、そういたしまして、先ほどるる読み上げましたように、刑事訴訟法の規定を適用するということでございますから、本土の確定裁判と同じ効力を持って、そして本土の刑事訴訟法が適用されるということになりますと、本土の刑事訴訟法の再審の規定の適用があるということでございます。
  357. 二見伸明

    ○二見委員 二十八条の七項「民政府の裁判所が裁判権を有していた刑事に関する事件(民政府の裁判所の最終裁判があつた事件を除く。)」ここのところです。民政府の裁判所の最終判決があった事件については、これはそのものについては効力がもうあるのでしょう。再審の道は閉ざされているのでしょう。民政府の裁判所の最終判決があった、判決の確定が行なわれた、死刑だとか十年だとか十五年だとか確定されたものについても再審の道を開いているのですか、この文章は。そうじゃないですよ、この文章は。
  358. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 ただいま御指摘の、この特別措置法案の二十八条七項でございますが、これは特にカッコ内で「民政府の裁判所の最終裁判があつた事件を除く。」ということで、復帰の際に最終裁判でない事件、現在係属中の事件をいうわけでございます。それについては、現在裁判所に係属している事件については、係属しておるというだけの効果を認めますというのがこの七項でございまして、すでに確定しております事件の裁判の効力については、先ほど私が読み上げました二十七条一項の適用がある、こういう趣旨でございます。
  359. 二見伸明

    ○二見委員 私は、いわば本土復帰した段階で、米民政府下に置かれた裁判そのものを認めるということ自体にも——要するに、再審の道を開くということは、すでにそこで確定された刑については認めるということですね。これ自体についても疑義があるわけでしょう。これは午前中たしかこの質疑は行なわれているはずです。これについても疑義があるはずです。しかし、再審の道を開いてはいるけれども、最終的には再審の道を開いているといっても、実質的には、たとえば民政府の裁判所の最終判決が確定した段階ではそのとおり執行するわけでしょう。そのこと自体がいいかどうかということなんです。そういう規定を設けているこの法律案というものが認められるものかどうかということなんです。それはどうなんですか。
  360. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 ただいまお話しの点は、要するにこの法律が憲法違反であるかどうかということだと思うのであります。それは、九十八条については、ただいまるる説明いたしましたように、国内法の憲法から考えましても、条規を逸脱したものではないものを採用することについては、要するに九十八条には触れないんだ、われわれはそういう見解をとっておるわけでありまして、そういう点で、憲法違反ではない、かように考えておるわけであります。
  361. 二見伸明

    ○二見委員 法務大臣、沖繩の、たとえば米民政府のもとで行なわれた裁判がどのように悲惨なものであり、どのようなたいへんなものであるかということは、すでにいままでいろいろな人からここで論議されております。日本のわれわれが考えているほど向こうでは——われわれが本土において基本的人権を享受しているのに、沖繩の方々は、二十六年間われわれと同じ条件で同じ内容の人権を保障されて、基本的人権というものが擁護されてきたのか。これはもうそうでないという実例がたくさんあるわけでしょう。それも結論は、大統領行政命令ですか、そういう体系下の中で全部行なわれてきたわけでしょう。その実態も一つは知っていただきたいということです。  それから、時間がありませんので、少しはしょりますけれども、この特措法二十五条から三十条、これは私たちはもう違憲きわまりないものだという断定を下します。これははっきり言って、こういうやり方というのは憲法違反です。しかし、あなた方が憲法違反ではないというならば、一体憲法上どの条文に当たるのか。これもまず明らかにしていただきたい。憲法上どういう根拠を持っているのか。法務大臣、憲法上どこに根拠を持っているのですか、こういうやり方が。
  362. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 従来行なわれておる裁判が、まあいろいろ感情的から言いましてもあるいは実態においても、沖繩県民としては耐えがたいものであったろうとわれわれも推察いたします。でありまするから、早く復帰をして、われわれの従来の国内と同様なことをやっていきたい、そういうふうに考えておるわけであります。  また、ただいま憲法違反だというふうに断定をされるのでありますが、ただいま申し上げましたように、われわれは九十八条にも違反していない。十四条にも違反していない。したがって、憲法違反ではない。かように考えておるわけでありますし、また、沖繩の法秩序を円滑に移行しますためには、やはりこういう措置でいくべきだ、かように考えておるわけであります。
  363. 二見伸明

    ○二見委員 いまの大臣の答弁の中で、一つ重要な問題があると思うのです、九十八条の問題で。九十八条の一項「この憲法は、國の最高法規であつて、その條規に反する法律、命令、詔勅及び國務に閲するその他の行爲の全部又は一部は、その敷力を有しない。」あなたはこれに違反しないと、こうおっしゃいました。しかし、その前に、沖繩の方々が向こうで受けたのは非常に耐えがたいものだったと言っています。実態的にも内容的にも耐えがたいものだと言った。要するに耐えがたいものだということは、その耐えがたいものを持ってくるということが、その条規に反しない法律になるんですか。あなたは、米軍支配下における沖繩の受けた処置というのはたいへんなものだという、あなたはそれを認められている。しかし、なおかつ九十八条違反ではないと言っている。そういう矛盾した答弁というのはあるんですか。あのときも、米民政府における法律その他すべて、これはもう日本と、本土とまるっきり同じだ、むちゃなものは何もない、だから、この条規に反する法律、命令ではない、こういうふうにおっしゃるならいいですよ。あなたそう言ってないもの。
  364. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 法律として考えますときには、私は何ら条規に反しておるものとは考えておりません。ただ、いろいろ感情的に、あるいは具体的な事例で、いろいろあるように伺っておりますが、条規として、また法律制度として、私は憲法違反というふうには考えていないわけであります。
  365. 二見伸明

    ○二見委員 もう一点。もう一度むし返すようにお尋ねしますけれども、あなたは全然問題ないとおっしゃっているんですね。ところで、さっきのどなたかの答弁の中に、憲法が予想していなかったんだという答弁がありましたね。大臣もこの点は認めますか。今回のこのやり方は憲法が予想していなかったんだという……。
  366. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 予想——そういうような、まあ施政権返還されるという事態は想像していなかったでありましょう。しかし、旧憲法から新憲法に移り変わる際の経過的の場合と、事情は非常に同じような形態をしておるので、ただいまそういうような説明をしたんだと思います。
  367. 二見伸明

    ○二見委員 これは私の聞き間違いだったらたいへん申しわけないのですけれども、午前中の質疑の中で、久保委員が質疑された中で、なぜ日本の刑法でやらないんだ、やり直しということばはいいのかどうかわかりませんけれども、沖繩で行なわれた裁判を、日本復帰するなら、日本の憲法体系のもとでもう一度やり直したらどうだというような内容の御質問があったように私記憶します。そのときには、大臣は七十万ぐらいあるんでできないんだというような御答弁があったように記憶していますけれども、その点はいかがでしょうか。
  368. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 事実上できないということは申しましたが、それよりはやはり法秩序の維持の面から考えますと、ここで全部むし返しをやるというようなことは、逆に非常に法律的に法秩序の混乱を起こす。むしろその点が奄美大島、その他の場合と非常に違う、かように申したわけです。
  369. 二見伸明

    ○二見委員 こういうやり方というのは、たとえば本土復帰をした。しかし、本土復帰をしたけれども、沖繩県民は——総理大臣、ちょっといままでの論議からいろいろな総理大臣の御意見、御感想をいただきたいと思うのですけれども、言うなれば、たとえば死刑の話に戻りますけれども、そういう処置を受けていながら本土に来て、この法律のたてまえからいけば死刑を執行されるというこういう返還のやり方というもの、しかも刑事問題についてはまるっきり向こうの法律をそのまま持ってきて、しかも刑事事件というのは非常に人権にかかわる問題ですね。懲役になったり死刑になったりするのですからね。それを日本の法体系に入れる場合、たとえばこれはことばが適切かどうかわかりませんけれども、もう一度日本法律として見直すというのがむしろ沖繩県民の人権を守るというか、そういう点からいっても適切な行為じゃなかったのだろうか。この規定は明らかに沖繩という特殊事情——特殊事情ということでございますけれども、特殊事情ということを理由にした不当なやり方じゃないかとわれわれ考えているのですがね。総理大臣はそれでも、いやこれは非常にいい、けっこうなやり方だと、こういうふうにやはりいまでもお感じになっておりますか。
  370. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 施政権返還という非常な特殊事情からいいまして、またあるいは、要するに復帰前の施政権をゆだねたという点において沖繩県民が非常にお困りになったということについては、われわれ同情もし、またそれなるがゆえに復帰を急いでおるわけでありますが、復帰を円滑にやるという面から考えますとやむを得ない措置であろうと思いますし、また施政権返還されました後に、先ほど来申しておりますような再審の制度あるいは復権の恩赦法の制度、そういうものを活用して、ほんとうにできるだけの努力をしたい、かように考えておるわけであります。
  371. 二見伸明

    ○二見委員 要するに、これは恩赦とかいうそうした事後的な、何というか技術的な方法論で済まされる問題じゃないのですよ。そういうやり方が憲法の精神に合致するかどうかという憲法に対する解釈と認識の問題に関するのですよ、これは。恩赦があるからいいんだ——たとえば死刑の判決を受けた。しかし、復帰沖繩恩赦でもって罪一等を減ずるなんていう、だから死刑にはなりませんよなんていう、そういう筋合いのものじゃないのですよ。こういうやり方で人権を侵害するということが、憲法の三十一条や三十二条に照らしてまじりっけなしの正当といえるのかどうかという認識の問題なんですよ、これは。あなたはすりかえよう、すりかえようとされますが。じゃ、総理大臣、これはどうお考えになりますか。
  372. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも私、法律論は苦手でよくわかりませんがね。しかし、いまのをこう考えてみて、民政府で、その裁判で死刑の判決を受けた、それが確定した、まあ日本復帰してきたらいまのような議論だが、もし復帰しなかったら一体どうなるか。それはおそらく民政府の裁判がそのまま執行されるんじゃないかと思うんですね。そうすると、今度は日本復帰した、そうなると、これはそのまま死刑が執行されるか、もう一つは、先ほど言うような再審の規定日本の手続による再審の恩典というか、そういうことができるかどうか。こういう問題じゃないだろうかと思います。  私どうもしろうとでよくわからないですが、復帰してきたら民政府の裁判が確定していてもそれに対する救済方法はあるんだ、もし復帰しなかったらその救済方法はないんだ、こういうふうに感じますが、間違いでしょうか。
  373. 二見伸明

    ○二見委員 間違いでしょうかといって、私のほうが答弁を求められるとは、私もこれこそほんとうに予想をせざる事態でございまして、驚いておりますけれども、総理大臣の御認識は、私ははっきりいって間違いだろうと思います。  この論議、私さらに続けたいのですけれども、私のあとにまだ社会党の山口委員質問もございますので、このあとまた別のときにこの問題、さらに沖繩開発の問題については質疑をさせていただきたいと思いまして、本日は、これで私終わりたいと思います。  要求しておきながら、山中総務長官その他の方方に、とんだ御足労をかけましたけれども、あしからず御了解のほどをお願いいたします。
  374. 床次徳二

    床次委員長 山口鶴男君。——山口君、ひとつ質問願います。
  375. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 要求大臣が一人お見えにならぬ方がありますし、また歴史的な沖繩返還に伴うところの国内法審議、きわめて重要な審議であるというのにかかわらず、与党席が過半数を割っておる、こういう状況で質問しろといっても無理じゃありませんか。
  376. 床次徳二

    床次委員長 与党委員はすぐにいま出席方を督励しておりますから、御了承いただきたいと思います。——山口君ひとつ質疑を……。山口鶴男君。
  377. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 要求大臣がおそろいにならない、また与党側の退席が非常に多いということで貴重な時間を空費いたしたことを非常に残念に思います。わが党の理事からの御指示もありますから質問をいたします。  私も、数回沖繩に参りまして、沖繩現地の方々といろいろ話し合いをする機会を持ちました。そこで、琉球処分ということばをしばしば聞いたのであります。ちょうど衆議院の沖繩返還協定特別委員会におきまして、きわめて不当な暴挙が行なわれました直後、屋良琉球政府主席が参りまして、この建議書を持参をいたしまして、政府並びに私どももいただいたわけでありますが、沖繩の心を政府並びに国会に訴えようとなされました。そこで、先ほどわが党の久保委員からもお尋ねがあったわけでありますが、この建議書を見ますと、具体的な事項を明確にしるしておるのであります。  自衛隊沖繩配備反対である。軍用公用地使用法案については反対であり、再考を求める。防衛関係特別措置法案については不満であり容認できない。  開発三法につきましては、具体的な問題点をあげて自治権の尊重その他を要望いたしております。  先ほど来二見委員が質疑をされました裁判権、効力の問題につきましても、刑事裁判については奄美方式を踏襲してもらいたい、こういう要求を出しております。  また、厚生、労働関係につきましても、年金等具体的な事例をあげまして、具体的な要求をされております。  教育、文化につきましても、教育委員会制度、これはむしろ本土沖繩並みにせよ、こういう要求をいたしております。地公法、教特法、これらにつきましては、特別措置を講ずることを要求をいたしております。教育の中立性確保法案につきましては、適用するなということを具体的に要求しておられます。  税制、財政、金融の問題につきましては、住民税あるいは自動車重量税、これらの具体的な問題をあげて要求をいたしておりますし、また一ドル三百六十円によって切りかえろという具体的な諸問題を列記をしておられます。  これらの建議書を拝見いたしますと、明確に反対である、再考すべきである、こういうことをいっておられる項目が数々あるわけですね。こういった沖繩要求といいますか、沖繩願いというものをこの際総理はどうされるおつもりでありますか。いま私どもは具体的にこの国内法審議をいたしているわけでありますが、われわれが審議をいたします対象の国内法について、明確な意思表示がある。こういう段階で、私は政府としてこの琉球政府建議書に対して明確な意思表示をされるのが至当ではないかと思うのですが、その点ひとつ総理から明確にお答えをいただきたいと思います。
  378. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 屋良主席の持ってこられた建議書、これはただいま言われるように、いろいろ私どもの考え方との間にずいぶん開きがあります。この建議書中身について、心情的に私どももわからないではございません、そういうものもありますけれども、ただいま用意をして皆さん方に御審議をいただいておるこの案が、ただいまの段階では政府のとり得る案だ、かように考えておりますので、どうかただいまの建議建議、御審議は御審議としてお進めを願いたいと思います。
  379. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 たいへん残念な御答弁であります。  そこで私は、冒頭申し上げたような琉球処分ということばを思い出すのであります。歴史的に振り返ってみますと、第一次琉球処分、一六〇九年、慶長十四年だそうでありますが、島津藩主家久が樺山久高を総大将として、兵三千、船百隻でもって当時の琉球に進攻いたしました。ついに首里城は落城をいたしたという歴史があるそうであります。そして、その後この琉球、沖繩をどう扱ったか。当然薩摩に対して貢租を強要いたしました。しかるに、一方におきましては、当初は明だったようで、その後清にかわったようでありますが、中国からの冊封使が琉球に来島することを認める。いわばこの琉球は、一方は薩摩に属する、一方は中国に属する、こういった両属というような状態を薩摩は琉球にしいたわけであります。これは当然、中国貿易を独占することによって利益を得ようとした、そういうことがその理由だったろうと思いますが、薩摩藩はこのようにして、この琉球に対して、わが国の他の領土には見られないこの両属という、きわめて不当な差別というものを琉球にしいた、こういう歴史を私どもは忘れることができないと思います。  次に、第二次の琉球処分といわれるものでありますが、一八七四年、明治七年、西郷従道が兵三千六百を率いて征台におもむく、その際の清国とわが国との紛争の過程で、台湾の生蕃、日本国属民に対しみだりに害を加えたということで、沖繩の人たちを日本国の属民である、日本国民であるということを認めた、これが公文書における沖繩の方々を日本国民として認めた最初の文章だといわれております。その後、当初琉球藩は外務省の管轄化にあったそうでありますが、やがてこれ々内務省に移した。当時の内務卿は大久保利通だったそうでありますが、琉球処分案を作成いたしました。いわゆる第二次琉球処分というものをこの沖繩にしいたといわれております。琉球藩を廃し、沖繩県を置く、そうして県庁は首里に置くということを最終的に処分決定いたしましたのは、明治十二年三月十一日といわれています。そしてその後、内務大臣山県有朋が初めて沖繩に来島する。明治二十年に総理大臣伊藤博文が大山陸軍大臣を率いまして、軍艦で来島をするという過去の歴史があるそうであります。  そこで、私は総理お尋ねをしたいと思うのです。  このようにいたしまして、わが国は第一次、第二次琉球処分を通じて、いろいろな形でこの沖繩の人たちに差別をしいた。現に、明治二十三年から第一回の帝国議会が開かれたわけでありますが、この沖繩県の方々が衆議院選挙を行なうことができたのは明治四十五年、実に本土に比べまして二十二年おくれている。ことほどさように、この沖繩の人たちに対しては差別をしいた。  そこで問題なのは、第一次琉球処分のこの立て役者は薩摩、いまでいえば鹿児島県でしょう。それから第二次琉球処分の立て役者になった大久保利通、薩摩、鹿児島県でしょう。それからまた、明治十二年三月十一日、最終的に琉球処分を確定したときの内務卿は伊藤博文、山口県、長州でしょう。そして沖繩に初めてわが国の大臣として訪れた山県有朋、これは長州、山口県でしょう。総理大臣として訪れた伊藤博文、これも山口県、長州であり、いま沖繩返還協定の締結に努力をし、そしてまた、具体的に沖繩国内法七本の関連法案、そのうちの五本を中心になっておまとめになったのは山中総務長官であります。  私はこういう歴史を見ますときに、薩摩、長州の方々が、この際、琉球政府屋良主席が出しました建議書沖繩の心をいれて、国内法については撤回すべきものは撤回をする、修正すべきものは修正をする。そういうことなしに、沖繩の心を踏みにじって無理やりに押しつけようとするということになれば、当然今回の措置も第三次琉球処分、そうしてその中心になったのは長州と薩摩であった。たまたま床次委員長も鹿児島県の御出身でありますけれども、そういったことを後世の歴史家に言われないように、そういう意味を含めて、私は、この建議書に対して佐藤総理並びに山中総務長官は謙虚にひとつこれを受け取ってもらいたい。撤回すべきものは撤回をする、修正すべきものは修正をする、そういうことが必要ではないかと実は申し上げたいのであります。
  380. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 山口君、別に御意見を求められたとは実は感じなかったものですから、立ち上がるのがたいへんおそくなりましたけれども、あれだけお話しなさったのですから、政府は所見を述べるのが当然だろうと思います。  私は、いま言われる長州の出でございます、山口県。私は、しかし、長州と薩摩、山口県と鹿児島県だけが沖繩と取り組んでいる、かようには考えません。  申すまでもなく一億の国民、これはもう全体が沖繩、これをアメリカ施政権下に置いてはならないという、また沖繩の百万の県民も、とにかく同じ日本人ではないか、どうしてわれわれが一体になれないのか、こういう感じではないかと私は思っております。私自身が六五年でしたか、沖繩を訪問いたしました際に、各地において、ここにも日本の子供がいるんだ、こういう立て札が出ておりました。私はそれを見て、できるだけ早く祖国復帰を実現しなければならないと、かように決意いたしたのであります。いまなおその感じは残っております。  ただいま山口君の話を聞いていると、琉球処分というようなことばで表現されますが、私どもはそういうような扱い方をするつもりは毛頭ございません。一億国民が、同胞が、お互いに手を取り合って、そして豊かな平和な沖繩県を建設しよう、つくろう、これでただいま立ち上がっておるのでございます。屋良主席とは、事柄、表現等におきまして相当の開きはありますけれども、屋良主席も言っておるように、やはり祖国復帰、これは実現すべきだ、そうして、その上で不足、不満、不平、そういうような点を改めていくべきだ、こういうこともしんみりと言っておられるようです。私は、むしろそのしんみりした気持ちで、屋良さんのことば、発言を受けとめる、それがわれわれ本土のたてまえじゃないか、かように思います。  あえて山口君の御意見に対して、私は私なりの考え方、それを表明いたしておきます。別に意見を求められたわけではありせんけれども、あまりにも山口君と私の考え方が相違がありますから、その点をはっきりしておきます。
  381. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 先ほど来わが党の久保委員が、この建議書に対して総理考え方はどうかということをお尋ねいたしました。冒頭私に対してお答えをいただきましたような趣旨のお答えがあったわけです。私はそれでは残念だ。私ども、決して沖繩が返りますことについて反対をいたしたことはありません。平和条約三条の問題について十分わが党から議論をいたしましたように、私どもは沖繩の祖国無条件全面返還、これをいち早く主張して政府要求をしてきたことは、佐藤総理もよく御存じのとおりだと思います。ただ、そういう中で、今回出てまいりました国内法関係において——二十六年間異民族支配のもとに呻吟をいたしました沖繩の方々、沖繩の総意が結集されて屋良主席が実現をしたわけでありますから、屋良主席が持ってまいりました建議書というものは、沖繩県民大多数の気持ちを反映した建議書、こういうふうにわれわれは受けとめるべきだし、また政府もそうでなければならないと思います。その建議書の趣旨からいって、今回われわれが審議をいたしております国内法はあまりにも違いがあり過ぎる。過去の歴史のことをくどくど申し上げたのは、少なくとも過去にもそういうことがあったではないか、したがってそのことに対してわれわれは十分な反省を持たなければならない。それは第二次琉球処分いたしましたときの大久保内務卿にしても、伊藤内務卿にしても、これは長州あるいは薩摩の出身であっても、当時の明治政府は、これは日本国民政府だったわけです。そういうことについては、現在も私は変わりがないと思います。そういう中で、過去のそういう歴史があるだけに、私は、琉球政府建議書というものについては、政府並びに国会が謙虚にこれを受けとめ、そうして撤回をすべきものは政府が撤回をする、そうして修正すべきものは修正をする、こういう形で、少なくとも二十六年間異民族支配のもとに呻吟いたしました沖繩の心というものを、要求というものを、できる限りわれわれがこれを受けとめ、実現化していく、このことが必要ではないかということを申した次第であります。いま一度総理の御見解を承りましょう。
  382. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の所見は先ほど詳しく申し述べましたから、速記であらためて十分御検討願います。
  383. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 きわめて残念なお答えであります。また、これらの問題につきましては、今後各委員から、それぞれ具体的な問題をひっさげましてお尋ねがあると思いますから、これ以上繰り返すことは避けたいと思います。  さて、私はこういった沖繩要求というものを考えました場合に、やはり沖繩の自治権というものをできる限り今後尊重していく、それは心情的、精神的ばかりではなしに、制度の上からいって沖繩の自治権というものを尊重していく、確立をしていく、こういうことが必要ではないかと思うのであります。  その具体的な問題といたしましては、先ほど私が触れましたように、この建議書は、沖繩法令の民主的な諸制度というものはできる限りこれを存続してもらいたいということをいっているわけであります。  教育委員会制度につきましては、沖繩は言うまでもなく公選であります。この制度を本土においてもひとつ実施したらどうかということを提案をいたしております。  それからさらに、沖繩の市町村の職員、沖繩の教育区の教職員、これらの人たちは、現在沖繩法令のもとでは労働三権が保障されております。また政治活動の制限もございません。こういった制度については特例措置を講じて存続をしてもらいたいと要求をいたしておるのであります。  これらの具体的な要求について、まず、文部省なりあるいは自治省なりは一体どうお考えでありますか、お答えをいただきたいと思います。
  384. 高見三郎

    ○高見国務大臣 お答え申し上げます。  屋良主席がお持ちになりました建議書、これには私は二つの重要な問題が盛り込んであると存じます。その一つは、本土との教育の格差の是正に特に力を入れろということであり、他の一つは、教育行政制度を現状のままに残しておいてほしいという御要請もあると存じておりますけれども、私は、沖繩県の方々が今日まで積み重ねてこられました教育に対する御努力というものに対しては、非常に高く評価いたしております。また、この格差是正については全力をあげてやらなければならぬことだと存じておりますけれども、教育制度につきましては現状のままにしておけという御意見については、私は、教育という基本的な事柄が、日本全体を通じまして、異なった地域において異なった制度が行なわれるということは決して望ましいことではないと存じております。沖繩の子供たちが、本土と同じ制度のもとに充実した教育を受けることができますように配慮することこそ、沖繩が祖国へ復帰するに際してとるべき教育行政の最も大事なことではなかろうかと思うのであります。このため、教育制度につきましても、復帰後は本土の制度と一体化して本土の制度を適用いたしたい、かように考えておるわけであります。
  385. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 自治権の尊重につきましては、山口委員指摘のとおり、私たちは常に意を用いなければならないところであると考えております。沖繩が二十六年間わが国の行政から分離されておったということの特殊性がございますが、その特殊性のゆえをもっていささかも自治権が侵されてはならないと考えております。そのために、今回の暫定措置におきましても特別規定を設けず、復帰と同時に本土の府県また市町村と同じように、沖繩の県並びに各市町村が組織をみずから定め、また条例、法規を制定し、行政が行なわれるように計らっておるような次第でございます。  いま地方公務員制度のことを申されましたが、現在、沖繩復帰されましたなれば、一日も早く本土と同等の地方公務員法を適用していきたい、こう考えております。現在の公務員制度の中には、公正でかつ能率的な運営をはかると同時に、また職員の身分の保障というものをはかっておるのでございますが、復帰と同時にこの法律を適用することによって身分の保障をはかり得ると思います。本土と同じような職を行ないます沖繩の市町村のあるいは県の公務員にのみ本土と違う法令を用いることは、大体公務員の規定というものが一体的な体系をなしておるところから、この体系を乱すことになりますし、また他の地方公共団体との均衡から考えましてもとるべき態度でない、このように考えておるような次第でございます。
  386. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 教育制度についても全国が同じ制度のもとに運営されることが好ましい、地方公務員の制度についても同様である。したがって、本土並みの制度に沖繩を持っていくんだ、こういうような御趣旨の答弁でございました。教育委員会制度あるいは教育問題につきましては、また他の委員から具体的にお尋ねがあると思いますから、私はこれ以上申し上げることを避けたいと思います。  具体的にこの市町村の職員、教職員等のいわゆる地方公務員の労働基本権の問題、これについてさらにお尋ねをいたしたいと思いますが、自治大臣、過般東京地裁で行なわれました都教組の刑事罰に対するところの最高裁判決にのっとりまして、東京地裁で行政罰についても無罪の判決が出ましたことは御存じだと思います。  そこで、お尋ねいたしたいのでありますが、この判決を見ますと、従来文部省も、それから自治省もそうだったのですが、大体争議行為などをやった連中、あるいは怠業行為などをいたした諸君については、地公法でいえば地公法三十七条第二項によって、分限上の身分保障を行なえ、これを当該地方公共団体に対して主張することができない、こういうことを一貫して主張してこられたようであります。したがって、争議行為を行なった職員が処分を受ける、これに対して不利益処分の審査の請求があってもこれは棄却をしろという趣旨の指導を自治省はやってきましたね。文部省も同様だろうと思うのです。さらにまた、公務員は他の民間の労使関係とは違うんだ、いわば特別権力関係にあるんだ、だからこのような争議行為、怠業行為などは全くけしからぬ、こういうことを、これまた言ってきたと思います。現在でもそうですか。
  387. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 いま山口委員の述べられました東京地裁における判決、私も詳細に読ましていただきましたが、あれが最終判決でもございませんし、また、いろいろな事件の中で最高裁までまいりましたものの判例とも食い違っておる点もございます。なお、地方裁判所で行なわれましたものは、裁判の手続におきまして確定をいたした段階でございませんので、私たち、現在のところ従来の態度は変えておりません。
  388. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 人事院総裁がおられると思うのですが、国家公務員法におきましても、九十八条ですか、先ほど私が申し上げました地公法三十七条第二項と同じような規定があります。国家公務員の諸君が、これまた一斉休暇その他いろいろな形におきまして、人事院勧告の完全実施その他の行動をされたことは、人事院総裁も御案内のとおりです。これらの行為をいたしました諸君に対して行政罰が科せられる。当然これらの諸君は、人事院に対して審査請求を出しておられると思うのです。これに対して人事院はどのような措置をおとりになっておられますか。
  389. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 国家公務員法では、そのような場合については、処分を受けた職員は対抗することを得ずというような表現になっておったと思いますが、結局私どもとしては、それは棄却ということを意味するものだという立場で、原則はそういう立場を貫いてきております。しかし、よくよくの、ものによりましては、違った観点から棄却でない扱いをしているものも間々ございます。大体は棄却の扱いでまいっております。
  390. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 この国家公務員法九十八条、地公法三十七条二項の問題につきましては、学者の方々もいろいろな見解を示されておるようであります。特にその中で、大勢的な意見としては、「「任命又は雇用上の権利」とは、職員が任命または雇用されていることに基づいて有する権利、すなわち職員たる身分を有することの権利をいう。すなわち、それは職員たる身分を有することの権利であって、そのことから派生するいっさいの権利、たとえば、俸給を受ける権利、恩給期待権等を含むものではない。また不利益処分に対する審査請求権のような身分保障的な請求権も含まれない。」こういう意見もございます。また、昭和二十七年二月二十八日、当時の法制局長、「人事院に対して不利益処分の審査を請求することはさしつかえない」こういう見解を出しているではありませんか。佐藤人事院総裁はそのことは御存じのはずだと思います。
  391. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 お答えします。  それはそのとおりなので、不利益処分の審査請求がくれば、われわれのほうではそれを受け取って、中身を見ておるわけです。その点はその場で、窓口で突っ返すというようなことは絶対にやっておりません。
  392. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 そうしますと、不利益処分の審査請求をすることは当然なんだということで、人事院も対処しておられるわけですね。それは審査をいたしまして、内容を却下するかどうかはその次の問題だ、要するに審査請求権はあるのだということは、人事院としてお認めになっておられるわけですね。  そこで、私は自治大臣にお尋ねしたいのですけれども、自治省はこれらの行為に対して、一方的な法律解釈というのを文書でどんどん自治体に流しているじゃありませんか。そういう事態であるからこそ、沖繩の諸君も、現在労働三権を持っている、本土並みに扱うということになれば、いままでとは違った非常に過酷な状態が来る、このことを非常に懸念をしておられると思うのであります。自治省は具体的にどういう指導を地方団体にしておりますか。
  393. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 いま審査請求の件で人事院総裁お尋ねがございましたが、これにつきましては、私たちの指導も、人事院総裁の答弁になられたとおりの指導をいたしております。
  394. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 自治省が各地方団体にお流しをいたしました資料を拝見をいたしました。「地公法三十七条と公平審理について」「争議行為を行なった職員は、地方公務員法第三十七条第二項により、地方公共団体に対し法令に基づいて保有する任命上又は雇用上の権利をもって対抗することができなくなるものであり、地方公務員法に基づく公平審理を受ける権利を有しないものである。したがって、1処分理由が争議行為によるとされており、かつ、不服申立においても、職員が争議行為を明らかに自認しているものであれば、人事委、公平委は審査する権限のないものとして却下すべきである。」こういう文書を出しているじゃありませんか。
  395. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 ただいまのお尋ねでございますが、内容を審査いたしまして争議行為であるということにきまりましたら、そういうふうな措置をするということでございます。
  396. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 争議行為と見るかあるいは一斉休暇による行動と見るか、これは最高裁の判例あるいは各種裁判所の判例によりましても、その実態を実にこまかく精査しているでしょう。それを調べなければわかるはずはない。また、それが現在の憲法に一体どう抵触するかということも、当然審査の対象になっているわけだ。しかるに、自治省のこの指導によれば、いわば公平委員会なり人事委員会がこれを争議行為だというふうに認めればどんどん却下していい、こういっているのですよ。先ほどの人事院総裁の答弁と明らかに食い違うじゃありませんか、これは。どうですか。
  397. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 前にも答弁いたしましたように、実態の調査というものは、いま山口委員指摘のとおり十分行なわなければならないが、争議行為と認定した以上は却下して差しつかえないという指導をしておるのが実情でございます。
  398. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 そういう行政庁が一方的にこの認定をする、そういう中で国民の権利、こういうものが侵害されるということは非常に問題じゃありませんか。  ひとつ私は要求したいと思うのですが、自治省としてこれに対して出しております文書、地方公共団体等に対して指導いたしております文書を、一括ひとつ提出をいただきたいと思うのです。その上でまた議論をいたしたいと思うのですが、問題は、そういう行政庁の一方的認定で、これは争議行為だ、だから不利益処分の審査を受ける権利もないんだということで、現に本土の中ではやられているケースがある。そういう中で、現在労働基本権を持っておられる沖繩地方公務員の諸君が、少なくともこれについては適用除外をしてもらいたい、少なくとも暫定的な措置を講じてもらいたい、こういうことを要求し、また屋良主席も、建議書の中で同じような趣旨を触れているということも、私はこれは当然だと思うのですね。ひとつ自治省どうですか。いまの点と、それから私の要求いたしました資料についてはいつごろ出していただけるか、お答えをいただきたいと思います。
  399. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 現在御要求になりました資料は、できるだけ早く提出さしていただくように取り計らいます。
  400. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 それでは、その際にまた議論をするといたしまして、先に進みたいと思います。  沖繩におきまして、各種法令で本土より有利になっているものが、待遇その他の面においてございます。共済組合あるいは各種年金、国民年金、厚生年金等でありますが、これらの問題について既得権を認めていただきたい、期待権を認めていただきたい、こういう要求が出ております。これは本来沖繩の方々が、本土施政権下にあるとするならば当然受けたであろうところの年金、それに対する期待権というものを表明されることは、私はこれは十分理解できることだと思っております。こまかい点については、連合審査その他の機会もあるでしょうから、私はその際に具体的にはお尋ねをしたいと思います。  この場では、国民年金、厚生年金、まあ厚生大臣がおりませんから、主としてさいふを預かっております大蔵大臣から考え方を聞きたいと思いますが、こういったもの、それから共済組合につきましても、これは当然国家公務員につきましては大蔵省が所管をいたしております。そういう意味で、各種共済について期待権、既得権、こういうものを尊重するおつもりでありますか、そういう形で政令等を施行するおつもりでありますか、基本的な考え方を承っておきたいと思います。
  401. 田中角榮

    田中国務大臣 各種共済組合等の本土移行に対する引き継ぎの経過措置についての御質問でございますが、沖繩本土にするわけでございますから、法令の適用は本土と軌を一にすることが望ましいことは言うまでもありません。ただ一部、あなたがいま指摘をせられたように、沖繩で受けておる現行制度の中で本土のものよりも有利なものありとすれば、その部分だけは残したらどうかということでございます。先ほど文部大臣に対して、公選制度等いいと思われるものは残されてはどうですかという質問と軌を一にしておるわけでございますが、これは四十七の都道府県の中の一つ沖繩県になるわけでございますから、これは本土の法令が適用せられるということが望ましい、またそうなければならない、こう思うわけでございます。今度の措置の中で一部本土のいいものというようなものは、これは適用するようにいたしておりますが、準拠する法令そのものはこれは本土と同じものを適用して、本土と同じ状態をつくるということが目標でございます。
  402. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 私が本土より有利なものということば、私自体のことばも十分意を尽くしていなかったと思いますし、受け取り方も誤解をされておるようでありますので申し上げたいと思うのですが、確かにこの共済組合あるいは国民年金、厚生年金、当然施政権下にあったとすれば掛け金をしておったであろう方々が、沖繩法令でこれらの制度ができたのがおそかったために掛け金をしていなかった。そうしますと、掛け金をしていないから割り落としをするんだ、こういう形になるわけですね。そういう意味で、何も沖繩のほうが不当によくしておったということではない。問題は、施政権沖繩に及んでいなかった、また沖繩においてこれらの社会保障制度の確立がおくれたということのために、本来であるならば当然かけておったであろうこういう方々が、かけておらなかったという理由で、結局、本土においてかけていなかった人は割り落としになるのだから、沖繩の方々も割り落としですよ、こういう形の適用がなされる。これについて私は、やはり不都合ではないだろうかということなんです。沖繩のほうがたいへんいいものをそのまま何もおっつけろ、こう言っているわけじゃないのです。施政権が切り離されておりましたために、かけようにもかけることができなかった、そういう制度がなかったためにやむなく掛け金をしなかった、そういう方が本土に入ってきたときに、いままで掛け金をしないものはだめです、こういう扱いは、私は幾ら何でもひど過ぎるのではないか。そういう意味での期待権というものは当然認めていいのではないか。現に、そういう点で沖繩法令、たとえば公立学校共済組合の制度では、当然本土ならかけておったであろうということを想定いたしまして、かけていなかった期間もかけていたものとしてこの適用をする、こういう措置沖繩法令でとっている。ところが、本土へくればそれはだめですということでは、これは明らかに既得権、期待権の侵害ではないのかということを申しておるわけであります。こまかい点は連合審査その他で申し上げることにしまして、概括的に申し上げた次第です。  いま私が申し上げた程度のものについて、この期待権、既得権を認めることは当然じゃありませんか。大蔵大臣代理、さらには、共済組合の問題についても触れましたので、自治、文部いずれでもけっこうでありますから、お答えがあればいただきたいと思います。
  403. 田中角榮

    田中国務大臣 二十六年前、沖繩がこのような状態にならなかったならばという、当然受くべき権利というようなものについては、できるだけそういうものについて今度の特別法で措置をいたしておるわけでございますが、いま御指摘になったようなもの、これは掛け金をかけておらないものが、四十七都道府県と同じ状態にあった場合を仮定して、かけたものとして措置せられたいということでございますが、制度の上としてそういう措置がとれるかどうかということは問題であります。ですから、国がこれから負担すべきものについては、自今負担をしてまいるということは当然でございますが、さかのぼって、保険金をかけておらなかった時代の保険金も満額支払えという理論でありますから、どうもいまの段階において採用することは考えておりません。こまかい問題、具体的な問題については政府委員からより詳細に答弁をさせます。
  404. 平井廸郎

    ○平井政府委員 ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、基本的には厚生年金なり各種共済組合等は社会保険の原理に立って運用されているわけでございまして、その点からいたしまして、相互扶助に基づき、掛け金をかけていない部分について保険金を支払うということは、基本的には非常にむずかしい問題であるということを御了解いただきたいと思うわけでございます。
  405. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 ただいまのような御答弁では、きわめて残念であります。割り落としのしかたについても方式がいろいろあります。できる限りやはり有利な扱いをするように、私は、政令その他実施の段階で配慮をいただくように強く要請をいたしておきたいと思います。  さてそこで、沖繩におきましては、それぞれの共済組合運営審議会あるいは連合会というものがありまして、年金を所管をしていることは本土と同じであります。ところが、これが本土に返りまして、それぞれの共済組合の系列下に入りますと、沖繩の人たちをこの運営審議会あるいはその共済組合の会議員というものに入れることがきわめて困難であります。しかし、いままでそういった機関がございまして、それぞれ運営に参加をしておった。本土復帰したことによって九州ブロックだというようなことで、九州の他の県から委員がただ一人出ているということでは、私は先ほど来申し上げましたように、沖繩の制度と本土の制度に差がありました関係もあって、沖繩の人たちは納得をしないと思います。  過般自民党の湊委員が、OHK、沖繩放送の問題に関連をして、当然沖繩からNHKの経営委員に加えたらどうかということを主張しておられました。廣瀬郵政大臣、たいへんものわかりがいいわけでありまして、それでは現在十二人だが、このうち地方区八人、全国区四人と、こうなっているのを一人ふやして、沖繩から一人この経営委員を出すようにいたしましょう、こういう御答弁をされておったのを私は拝聴いたしました。同じ政府の一員である郵政大臣がそう言われるのでありますから、同じような形の各種委員については沖繩の代表を加えるということが当然だ、私はかように思っております。共済組合運営審議会あるいは連合会の会議員、こういうものに対して、郵政省と同じような配慮を自治省もされると思いますが、いかがでしょうか。あるいは大蔵省も国家公務員の関係についてはなされると思いますが、いかがでしょうか。
  406. 田中角榮

    田中国務大臣 国家公務員のほうはブロック制代表は出ておらないようでございますから、沖繩の代表を特に郵政大臣発言のように加えるということは考えられないわけでございます。しかし、現実的な問題として沖繩本土復帰せられれば、法制上の問題は別としても、発言をし、意思を表明できる機会は当然しんしゃくせらるべきものである。こういうことで、現実的には、法制の改正が必要であれば改正すればいいことでございますし、現行制度でもって、そういう制度がなくともだれでも員外発言もできますし、員外発言としても、それよりもより以上なウエートをもって聞くであろう引き受け側のお互いの気持ちを考えれば、あなたがいま御発言になられたようなことは十分実現できるというふうにお考えいただいたほうがいいと思います。
  407. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 地方共済制度におきましても、いま大蔵大臣がお述べになりましたように、特にそのために人数をふやし、制度を変えるということは考えておりませんが、それぞれ労使双方の代表は、本土沖繩を加えまして四十七の都道府県なりまた全国の市町村なり、そのものの意図を体して行なわれましょう。現実的には、特にこのたび新たに入りますところの沖繩のことにつきましては、それらの方々によりまして十分反映して運営されると思いますし、また私たちもそのように指導してまいりたいと考えております。
  408. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 自治大臣、この地方公務員の共済組合につきましては、これはブロック選出をとっているわけですね。ですから、私は、大蔵大臣のお答えになったことと自治大臣のお答えになることとは、性質が少し違うと思うんですね。少なくともブロック制をとっておりますこの運営審議会等については、当然NHKの経営委員と同じようにやはり追加をして、正式構成員として加える、このくらいの配慮ある措置のしかたをすることが当然ではないか、かように思います。いかがでしょうか。
  409. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 山口委員の御要求、御要望につきましては十分検討いたしておりますが、ブロック制の選考は行なっておりますが、本来それは選考のやり方の問題でございまして、本来としては、全委員が全自治団体の代表として意見を述べていただくという制度になっておりますので、沖繩を特に制度の上から一名加えるということは、現在いたさない方針をいたしております。しかしながら、運営面におきまして、おのおのの委員によりまして沖繩の事情は十分反映していただくように指導申し上げたい、このように考えておるような次第でございます。
  410. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 きわめて残念な答弁ですね。沖繩の人たちの要求が反映できるように今後考えたいというのですから、できぬなどということを言わぬで、さらにこれは検討してください。郵政大臣ができて、自治大臣ができぬことはないでしょう。しかも片方はNHKの経営委員という機関、それに対してまで一名加えようというのですから、経営委員の数よりは人数の多い共済組合の運営審議委員あるいは市町村の連合会の評議員、こういうものは私は加えられぬということはないと思うのですね。それは政府姿勢だと思います。これはひとつ、できる限り沖繩の人たちの主張が通るように前向きで検討するというくらいのことをおっしゃっていただいたらどうでしょうか。
  411. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 十分検討はさしていただきます。しかし、ただ単に制度を変え人数を変えることだけが反映をさす道ではないと考えておりますので、沖繩の意向が十分反映されるようなあり方を検討さしていただきたいと思っております。
  412. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 沖繩返還協定国内法の問題を審議する、こういうことを十分見越しまして、私ども国会におきましても国政参加法という法律をつくって、そして沖繩の現地から参議院二名、衆議院五名の人たちを選んでいただいて、そして現在審議に参加をいただいているのじゃありませんか。これは沖繩の人たちの要求が十分反映するようにとこう考えれば、沖繩の代表を入れるということが当然のことじゃありませんか。まあ沖繩の選出の議員の発言もないまま強行採決をやった、それが政府・自民党の体質だ、こう言えばそれは話が終わりになるかと思いますけれども、私はそうではないと思うのです、そうとばかりは。したがって、沖繩の人たちの要求が反映するようにという大臣の意向をひとつ十分生かす形を御検討いただきたい。要求をいたしておきます。
  413. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 現在員数等は法定制度でございますし、いま言われました山口委員の要望よくわかりますので検討をさしていただきますが、いまのような構成ができませんでも、その他の方法におきましても沖繩の反映が必ずできますような措置を考慮さしていただきたい、このように考えております。
  414. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 地方公務員共済組合法等の一部改正というのは毎年毎年出るわけなんです。ですから、次の通常国会でも当然、共済組合法等の一部改正案は政府提出で出るでしょう。改正する機会というのはいつでもあるわけです。そういうことを踏まえて私は要求を申し上げている。したがって、次の通常国会、共済組合法等の政府提出の際までにひとつ前向きに御検討をいただきたい。
  415. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 よく御承知のとおり、共済組合の法案は毎国会に提出されます。そのときまでに検討しろということでございまして、十分検討さしていただきます。
  416. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 そのように早くお答えをいただけば時間がかからぬで済むわけで、うしろの方からの耳打ちを気にされぬように、ひとつ政治家の立場で御答弁をいただくように要求をいたしておきます。  次は、沖繩振興開発につきまして、基本的な考え方だけを若干お尋ねをいたしておきたいと思います。  私はこの際、特に沖繩の自治権を尊重いただきたい、このことを強く要請をいたしたいと思うのであります。  過般わが党の細谷委員が、沖繩開発庁、出先の事務局というものが非常な権限を握って沖繩の自治権を侵害するのではないかということを、繰り返しお尋ねになりました。私も全く同じような意見を持っております。  さてそこで、私は具体的に山中総務長官にお尋ねをしたい。  少なくとも琉球政府は、本来国が行なうべきところの国家事務というものを今日まで十分こなしてこられたわけですね。私はそういう立場に立って見ましたときに、国が持っておりますところの権限、これを思い切って沖繩に委譲してもよろしいのじゃないか、それだけの経験は沖繩にあるのだ、かように思います。  いま過密過疎、都市問題、これが国政の大きな課題になっております。佐藤総理も、七〇年代は内政の年だと言われました。いま都市問題で悩んでおります東京、大阪、こういうものを考えましたときにも、あるいは北海道開発庁がありまして現在開発を進めております北海道、こういう地域は——御案内のように市の中にも、都道府県の権限を一部委譲した指定市の制度というものがあるわけですね。同じような意味で、私はやがて東京、大阪あるいは北海道、こういうものについては思い切って国の権限を委譲して、そうして各府県の自主的な立場で仕事がやれるようにするということはいまや必要ではないかと思います。しかし、そういった全般的な制度の問題はしばらくおくといたしまして、少なくとも沖繩については、今日まで国政事務を処理した経験がある。こういう実態の上に立って、私はこの沖繩開発庁、沖繩開発庁の出先機関である総合事務局、これが処理する権限の相当部分を知事に委譲する、地方自治法の別表の中に具体的にそういう措置をとるということぐらいはやってもよろしいのではないかと思います。そういった考え方に対して、総務長官いかがでしょうか。
  417. 山中貞則

    ○山中国務大臣 現実には、確かに国の事務も琉球政府として遂行してこられたわけでありますから、その能力において実際上国政事務を執行し、あるいはそれにまた、国の法令に明るい諸君もおられるわけであります。しかしながら、沖繩県の自主性という立場から考えて、それらの人々をそのまま県の職員として残して、引き続き国政相当事務をやらせるということは、やはり別な弊害も考えられます。したがって、沖繩事務局についても、建議書では表現が違っているようでありますが、琉球政府との間の打ち合わせを事務的に合意をいたしました段階では、少なくとも沖繩県の職員が国家公務員に相当移る。その場合において、今日までの特殊な環境あるいは立地条件から考えて、復帰後といえども、沖繩を離れて他の事務所において国家公務員として過ごそうという人は、非常に数が少ないと思うので、出先の事務局というものをぜひ設置してもらいたいという要請を私どもは受けていたわけであります。  しかしながら、その前提として、前にも御答弁いたしましたように、新生沖繩県の知事並びに市町村長の持っておるべき本来の自治権の侵害ということを厳に慎まなければならぬ。あるいはまた、十分の十等の補助率が基本的な施設整備についてはほとんどでございますが、そのことによって行政上の実際上目に見えない自治権の侵害あるいは操縦等をしてはならぬということも心がけていかなければならないところでありますし、法律の上からも、知事、市町村長たるの、本来本土の各府県が持っております権限を制約するような条項はどこにもないわけであります。したがって、沖繩事務局においては、そのようなことが十分に配慮をされた運営がなされていかなければなりませんし、沖繩県の今後の振興開発計画の作成にしても、北海道とは違って、沖繩県知事がその立案権を持つというようなことに踏み切ったのも、そういう配慮をしたからのことでございます。
  418. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 自治大臣どうでしょうか。自治省としては、国が現在やっておりますところの権限、許認可権限、あるいは事業の執行権、調査権、こういったものをより自治体に委譲できるものは幾らもあるじゃないかということで、かつて大規模な調査をおやりになったこともあります。また地方自治法の附則で、本来都道府県知事の権限であるべきものを当分の間という形でもって国の事務とし、あるいはそこに働いております職員は国家公務員にしているという形もあることは、自治大臣よく御存じだと思います。この際私は、本土全体を含めてこの自治権をさらに確立をしていく、自治体の事務、財政というものを強化していくということが必要だと思いますが、同時に、今日まで国家事務をあわせ行なってきた沖繩県の実体、琉球政府の実体というものを考えたときに、今日まで非常に異民族支配のもとに苦労してきたという実態も踏まえて、この際私は、沖繩県に対しては、先んじてその権限の委譲をやってもおかしくない、かように思います。自治大臣、地方自治の本旨を守るという立場でひとつお答えをいただきたいと思います。
  419. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 国と地方の事務配分の問題でありますので、特に沖繩だけを例外的に取り扱うということは非常に困難でなかろうかと思います。しかし、開発庁並びに沖繩現地におきますところの総合事務局等に対しましては、いま総務長官から御答弁になりましたように、法令的にも現在の地方自治の侵害というものはございませんけれども、実際の運営の面においてそういうふうにならざるよう、法令的にもいま言われましたように、原案で沖繩知事に認めておるというふうな点、あるいは審議委員沖繩の知事並びに沖繩県議会の議長あるいは町村代表、議員等を加える等の配慮を加えまして、十分実際の運営におきましても地方自治の侵害がなきように行ないたいと思っております。  なお、いま御指摘になりました地方事務移管の制度でございますが、これも沖繩だけ例外的に取り扱うということは困難でございますが、第一次、第二次の行政改革におきましても、これをすみやかに解決するように要請もされておりますし、目下鋭意検討中でございますので、全国の一環として処置をいたしていきたい、かように考えております。
  420. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 先ほど来公明党の二見委員が繰り返し指摘をしておりましたが、裁判権の問題あるいは軍・公用地使用法案、これらについては、沖繩の人たちに対して不当な不利益といいますか差別をしいている。一方、今日まで国政事務を処理してまいりました琉球政府の実体というものを考えて、少しでも自治権の尊重を考えたらどうかということについては、これは国の制度の一環として沖繩だけ区別をするというわけにいかぬからというような御答弁を終始なされる、私はそこにやはり問題があるんじゃないかと思います。  さらに私は、自治権の問題について具体的にお尋ねしたいと思うのですが、防衛庁長官が繰り返し、軍・公用地使用法案については小笠原の例があるということを盛んに言われる。私は、この法案の内容についての質疑は一切するつもりはございません。自治権という側面からのみ若干のお尋ねをしたいと思うのです。  小笠原が返還をされまして五年以内にこの土地を使用することができるという条項に従いまして、防衛庁は昭和四十三年六月二十六日、防衛施設庁告示九号というのを発せられました。そうして小笠原村の父島、それから硫黄島、これらに対しまして、三年あるいは五年という形で一定の土地を暫定使用する告示をなされたわけであります。その際、当然小笠原は東京都に帰属をするわけでありますし、小笠原の振興開発の中心になるのは東京都であり、東京都知事に対して、どの地域を自衛隊の用地として使用したい、どの地域をロラン基地その他米軍の基地として使用したいということにつきましては、当然事前に連絡があるはずだ、これが私は常識だと思います。ところが、私どもが美濃部知事を呼びまして、昭和四十三年六月二十六日、防衛施設庁の告示がなされる段階で東京都に対して何らかの話し合い、了解というものがあったかと聞きましたら、いや全く話はございません、突如として、知事に何らの連絡なしにこの告示は行なわれたというのが、国会における美濃部知事の答弁でございました。  今回、防衛庁長官どうなんですか、法律が通るか通らぬかわからぬ段階ですから、将来のことといえば将来のことですが、そういう告示については、当該都道府県知事に対して全く関係なしに、つんぼさじきで一方的に告示をする、こういうおつもりでありますか、考え方だけお尋ねをいたしておきたいと思います。
  421. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 告示いたします場合には、当然琉球政府並びに関係市町村の長に対しまして、あらかじめ通知をいたすつもりにいたしております。
  422. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 当時、東京都に対しては何で連絡をしなかったのですか。
  423. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 当時の状況をちょっと私承知いたしておりませんけれども、当時委員会が構成をせられて、その中に東京都も入っておった、こういうふうなことであったように承知しております。
  424. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 この点につきましては、私が所属しております地方行政委員会美濃部知事も呼びまして、その証言も求めました。議事録に載っております。また、防衛施設庁の担当官も呼びまして、その点を質疑いたしまして、これまた議事録に載っております。一切相談がないということは事実ですよ。要するに告示をするその二、三時間前に、こういう形で告示をしますという一方的な連絡が東京都の関係の行政局に対してなされたという事実しかありませんですよ。全く相談なんというものじゃない。一方的な通告ですよ。したがって、知事は何らの相談も受けなかった。当然でしょう。ひとつ議事録も調べて当時の状況をあらためて説明をしてください。
  425. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 さっそく調べまして、後ほど御報告申し上げます。
  426. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 都合のいいときだけ小笠原の例をたいへん引いて、こういうことになるとさっぱりお答えができない、遺憾だと思います。実情が明らかになりました段階であらためて質疑をすることにいたしまして、その点は留保をいたしておきます。  さてそこで、特に問題は硫黄島です。ここに硫黄島の地図がございます。硫黄島の大半自衛隊基地、それからロラン基地を中心とする米軍の基地になっております。全島のほぼ六割であります。父島は三年の暫定使用でありましたが、硫黄島はすべて五年の暫定使用であります。法律案関係する部面は私は避けたいと思いますから、こまかいことはお尋ねをいたしませんけれども、問題は、この硫黄島については小笠原振興計画からすべて除外をされているという問題なんです。いまこの沖繩の振興開発計画に対して、わが党から別個な対案を出しました。基地撤去することなしに沖繩開発は不可能であることは、政府もお認めだと思います。問題は、そういう中で硫黄島について大半基地暫定使用されたということで、東京都知事が、あるいはその関係の硫黄島にかつておりましたところの住民が、一日も早く振興計画に組み入れてもらいたい、こういう要求を強く出しています。ところが、いまもってこの硫黄島は、小笠原開発基本計画からは除外をされています。私は、今後の沖繩開発についてもそこが一番問題ではないかと思うのです。沖繩県知事が沖繩開発に対して、このような地域はこのような開発をしたい、したがってこの地域は振興開発計画に組み入れたい、こういう要求をしても、小笠原の前例を見る限り、そういった知事の要求というものは全く拒否されている。確かに計画の作成権は、今度の法律では知事ですよ。知事ですけれども、審議会を通じて総理大臣がこの決定をする段階で、これは基地だからだめですという形で、この小笠原における硫黄島と同じような状況が繰り返されるのではないか、この点を非常に私どもは懸念をいたしております。  まず、小笠原の経過についてお尋ねをしたいと思うのです。  自治大臣、この小笠原振興計画の場合は、決定は自治大臣ですね。なぜ東京都知事の要求、それからかつて硫黄島におりましたところの地域住民の要求というものをお取り上げにならないのですか。基本方針からこれを除外しておられるのですか。この点をお尋ねをいたしたいと思います。
  427. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 行政局長に答弁させます。
  428. 宮澤弘

    ○宮澤政府委員 硫黄島につきましては、山口委員指摘のように、実質的に現在小笠原の振興計画の対象にはなっていないわけでございますが、この点につきましては、これも重々御承知であろうと思いますが、硫黄島自身がたいへん激戦が行なわれまして、まだ違骨の収集あるいは不発弾の処理というような問題につきまして問題が残っているわけでございます。おっしゃいますように、帰島をしたいという人がおりますことは事実でございますけれども、そういう事情もございまして、現在小笠原の振興計画、実質的には対象になっていない、こういう事情でございます。
  429. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 そういう御答弁があれば、私も聞くのは控えようと思いましたが、施設庁にお尋ねしたいと思うのです。  硫黄島は暫定使用期間五年ですね、昭和四十八年六月二十五日をもって切れるわけです。かつて硫黄島には硫黄島産業株式会社というものがございました。甘蔗、デリス等をつくっておられたそうであります。で、土地は会社の所有地でありますが、当時七十一名の農民の方々が働いておられた。これらの方々の耕作権は当然あるわけです。したがって、当然五年のうちに、これらの方々との契約をお進めになっておると私は思うのですが、もう間もなく切れるでしょう。一体七十一人の農民の方々、硫黄島に即時復帰をいたしまして、かつてと同じような耕作をいそしみたいと希望しておられる方々、契約の状況は一体どうですか。
  430. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 お答えします。  硫黄島において現在自衛隊が使用している施設は飛行場等でございますが、その中に、御指摘のように硫黄島産業の所有しておる土地がございます。面積としましては百三十四万九千平方メートルばかりございます。そのうちの約十二万三千平方メートルにつきましては、暫定使用法によって三年間だけ使用権が設定されておるということでございまして、この土地につきましては、本年の六月二十五日で暫定使用権が切れる、こういう形になっております。そこで、いろいろ政府としてもこの所有者と折衝を進めてまいったわけでございますが、この六月の期限の切れる前に、おおむね所有者の方々とは同意を得ておるという形になっておるわけでございます。
  431. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 きわめて楽観的な御答弁をされました。私は、東京都の小笠原対策室、これらを担当しております職員の方を呼びまして、その後の契約状況がどうなっているかということを詳細に調べてあるんですよ。全く進んでいないじゃありませんか。全く進んでいないですよ。それでありながらぬけぬけとそういう御答弁をされる、きわめて遺憾です。片方では、そういう契約もさっぱり進んでいない。そういう中で、東京都知事やこの島民の人たちが要求したにかかわらず、いつまでたってもこの振興開発計画に組み入れられない、これが硫黄島の実態ではありませんか。私はそのことをここで強く指摘をいたしておきたいと思うのです。  総理の御都合があるそうですから、私はそのことも考えまして先に進みたいと思うのですが、その前に、山中長官、どうですか。私は、沖繩開発について、小笠原のように地域住民や沖繩県知事が振興開発計画に組み入れたいという要求をいたしましても、決定権は総理大臣、佐藤さんのほうにある。小笠原の二の舞いはまさか私は踏まないだろうと思うわけでありますが、総務長官、総理からひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  432. 山中貞則

    ○山中国務大臣 確かに沖繩の新しい振興開発計画を策定する場合において、ことに沖繩本島における中南部の基地の存在というものは非常に大きな障害である。このことは、那覇市の都市計画における牧港住宅一つとってみても明瞭な事実でありますし、あるいは那覇から北のほうに縦貫高速道をつくろうとしても、現在の状態では石川市までしか行けない。その理由は、先は軍用地であるから、行こうとすれば東か西の現在の国道に編入する予定になっておる路線に出るしかない。それでは高速道の意味をなさないというようなことが実態として明らかに示されておりますから、当然沖繩県知事の作成する原案というものは、それらのことを踏まえた、少なくとも沖繩現地においても基地の状態というものは熟知しておられますので、ここらの計画は、当然日本本土政府アメリカと交渉をして、そうして開発計画の中に組み入れてほしいという個所が出てくると思います。そのときは、本土政府においては、当然その計画に従ってアメリカ側に基地態様に応じて交渉をし、そしてなるべくその基地が、開発の対象の計画としてレイアウトできるように努力をしていきたいと思います。しかしながら、今日の時点で考えますと、たとえば嘉手納空港等の例をとれば、これらの空港を直ちに開発計画の地域に策定することは、これは現地でも御存じでありますが、すぐには困難であろうというような、一々の場所については想像のつく場所がございますが、しかし、基本的にはわれわれも、やはり沖繩開発計画というものは、総理大臣が本会議において決議に対して表明されましたように、絶えず今後は琉球の、沖繩の新しい開発計画と基地のあり方について積極的な外交姿勢を展開していきたい、かように考えておる次第でございます。
  433. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 個々の問題については、時間もありませんから議論をするのは避けたいと思います。  それから、小笠原の問題は、これは先ほどの答弁では私は納得しません。これもひとつ実情を調べてください。その上でひとつ審議をすることで、保留させていただきたいと思います。  そこで総理、やはり知事権の尊重という立場から、この開発計画の作成権、沖繩県知事にあるわけですね。審議会の議を経て決定権は総理、あなたにある。私はそのときに——個々に嘉手納をどうするとかということを私は聞いているわけじゃありません。東京都のこの硫黄島の轍を踏むことなく、原案作成者である沖繩県知事の意向というものを総理大臣は尊重する、こういう姿勢を貫いていただきたいと思うのです。この点ひとつ総理からお答えをいただきたいと思います。
  434. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま山口君の言われるように、自治体、地方自治権、これを尊重することもちろんでございます。したがいまして、ただいまのような開発計画が出てきた、それを十分尊重する、その態度で取り組んでまいるつもりでございます。
  435. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 法案にあります知事の原案作成権が形骸化しないように、強く要請をいたしておきます。  総理の時間があるそうでありますから、質問の順序からだいぶ飛ぶのでありますが、総理お尋ねをいたしたいと思います。  沖繩自衛隊配備をなされる予定のようであります。当委員会でも、久保・カーチス協定の問題をめぐりまして、いろいろな御議論がございました。そこでお尋ねしたいと思うのですが、総理沖繩自衛隊配備する——この屋良さんの建議書に待つまでもなく、あるいは琉球新報等が行ないました沖繩世論調査に待つまでもなく、沖繩県民の意思は自衛隊配備反対です。しかるに、政府のほうはどうしても自衛隊配備を強行したい、こういう御計画のようであります。自衛隊配備するその目的は一体どこにあるわけですか、お尋ねをいたします。
  436. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、沖繩が祖国に復帰すれば、当然私どもはその防衛の任に当たる、自衛隊の防衛のワク内に入る、かように私は理解しております。そういう意味でただいまのような問題が出てくると思います。  しかし、屋良主席にしても、同時にまた沖繩県民といたしましても、いわゆる軍人というものについては、自衛隊はそれではございませんけれども、どうもそれに類似のものだ、こういうことでたいへん感じが悪いというか、したがって、どうもさきの戦争で祖国防衛の第一線になった、そのときにどんどん陸海軍が出ていった、こういうことで、どうもその感情を払拭できないというのがいまの状況ではないかと思います。したがって、私ども、自衛隊としては当然の国土防衛、その任に当たるのでありますが、地域住民の十分な理解を得なければその目的を達することはできない、かように思いますので、そういう意味においての理解を深めるような措置をとりたい、かように思っております。  ただいま自衛隊配備を強行する、こういうようなお話ですが、そういう意味でなしに、やはり十分理解を得てそうして国土防衛、その意味においてこれは役立つ、こういうことにみんなが理解してくれることが望ましい、そういうような処置をとりたい、かように思っております。
  437. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 国土防衛が主たる目的であるというような御答弁でございましたが、実は第六十五国会衆議院内閣委員会の議事録を持ってまいりました。佐藤総理がわが党の大出委員質問に対して、自衛隊の任務について御答弁をいたしております。これは委員部のほうからいただきました沖繩北方対策特別委員会の主たる論議の収録の中にも入っております。  佐藤総理、あなたは次のようにお答えになっております。「そこで、肩がわりということばが出ました。アメリカのかわりに自衛隊が肩がわりする、こういう問題がありました。しかし、これは強力なもので、非常に強大なものをやる、まあ昔の軍隊というようなことになるとこれはもう基本に触れる問題だから、さようなことはございません。肩がわりと申しましても、治安維持上の問題が主たるものだ、かようにお考えいただいていいんじゃないだろうか。」かようにお答えになっておりますね。だから、佐藤総理は、自衛隊沖繩配備をするのは、沖繩協定特別委員会等でもずいぶん議論がありましたが、アメリカの肩がわりということをわれわれは考えるのではない、しかし、治安維持上の問題だというふうに言っているのですね。治安維持とは一体どういうことですか。治安維持のために自衛隊沖繩配備する、こういうことですか。
  438. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 治安維持といえば、これはもう警察の担当することで、これはもう自衛隊ではございません。先ほど申すような国土防衛、これが第一でございます。同時に、しかし施設部隊などは、生命財産、これを守るという、暴風雨あるいは災害の際はいろいろ活躍もいたしますから、そういう意味の役割りもやはり果たしてくれる。それにしいて言うならば治安維持、こういうような問題にもからむかと思います。しかし、どうもはっきり——山口君の言うのは治安維持なら警察だ、こう言いたいだろうと思います。私もさように思います。だから、この前の私の答弁はことばが不十分だ、かように御理解いただきます。
  439. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 いまのようなことでは納得できません。総理の言われるように、治安維持はこれは警察の役割りです。そうですね。それをあえて治安維持ということばを自衛隊に対して総理がお使いになった、私はこのことはきわめて重要だと思うのです。しかも、これはこの議事録にもありますし、特にこの私どもがいただきました沖繩北方対策特別委員会における沖繩問題のおもな論議集の中に、明確にそのことが記載をされております。そのことは、私はやはりすべての人たちが、この総理発言は非常に重要な意味を持っているというふうにお互いが確認をした何よりの証拠ではないかと思います。  そこで、私はそのことを指摘をしてお尋ねしたいと思うのですが、沖繩返還協定上院外交委員会の聴聞会、十月二十七日、ロジャーズ国務長官が冒頭説明をいたしている資料をいただきました。次のように述べております。なぜ沖繩返還協定を行なうに至ったかというその理由、経過を説明をいたしております。「長い間認められてきた「潜在主権」が顕在化すべき時期が一九六九年までに到来していたのは明らかであった。安全保障条約の最初の十年の期間は、一九七〇年に終り、ここに条約はいずれか一方による一年前の通告によって終了されうることとなった。本件記念日にあたっては、日本の国会における激しい討議や米軍基地に対する暴力的デモが予測された。これらが起らなかったということは、一九七二年の沖繩返還のための活発な交渉が行われようとしているとの一九六九年十一月の佐藤ニクソン共同声明における宣明に負うところが大であったといえよう。更に、沖繩返還が遅れれば遅れる程返還要求するデモ隊と基地を守る米軍との間の衝突の機会が増大するであろうと信ずるだけの理由もあった。即時復帰を謳う屋良主席の一九六八年における選出と沖繩の学生及び左翼の急進派の好戦性の増大はこれ以上返還協定を遅らせることは、沖繩における基地の継続的な効果的活動に必要な住民の黙諾を早急に瓦解させるということを明らかならしめた。」こう言っています。  したがって、アメリカがこの沖繩返還協定に踏み切らざるを得なかった経過をロジャーズ国務長官はこのように言っています。そしてサイミントン小委員会その他いろいろな議事録を拝見をいたしましても、問題は、沖繩米軍基地の維持——総理のことばを使いまするならば治安維持、そのことに非常に懸念をしているということをしばしば表明をいたしております。  総理、ずばり聞きましょう。自衛隊米軍基地の治安維持にお使いになるつもりですか。
  440. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 さようなことはございません。先ほど答弁いたしましたように、治安維持は、これは警察のやることです。自衛隊自身は、直接そういう任務を持ってはおりません。だから、その点では、いわゆる米軍基地を守るための治安維持、それに自衛隊を使う、さようなことは考えておりません。
  441. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 そうしますと、第六十五国会における内閣委員会佐藤総理の答弁は、取り消しをされる、訂正をされる、こういうことですか。
  442. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど申しましたように、ことばが足らないと、かように御理解をいただきます。
  443. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 ことばが足らぬという釈明では、私ども納得できません。これは明らかに佐藤総理が、このアメリカとの返還協定の過程、特に米軍基地沖繩日本返還されたあとの米軍基地の治安維持にアメリカが非常な関心を示し、それに対して佐藤総理、その懸念を何らかの形で解決をしたい、こういう気持ちがやっぱりこの答弁にあった。具体的に言えば、いま私どもが懸念をしている自衛隊法にいうところの治安行動、まさにこの沖繩配備する自衛隊は、いざというときには治安行動にいわばこれを使おう、そういった気持ちがあるからこそ、佐藤総理も御答弁になったような、本来警察の任務であるべき治安維持というおことばを佐藤総理はあえてお使いになった、かように私どもは考えざるを得ません。再び総理のお考え方を、総理の退出の時間もあるようでありますから、ひとつお聞きをしておきたいと思います。
  444. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど申しましたように、自衛隊、これは国土防衛、これが主体でございます。同時にまた、国民の生命、財産を守る、こういうこと、まあ災害についての救助等でこれが明らかであります。そういうことを任務といたしておりますので、いわゆる治安維持、このほうは警察の役割りだと、かように思いますので、ただいまのような点は、これはもうはっきり申し上げますが、米軍と地域住民との激突を避けるために自衛隊を使うとか、かような考え方は毛頭ございません。これは私の説明が不十分であるために誤解を招いたものだと、かように思います。  また、先ほども申しましたように、自衛隊は、沖繩が祖国復帰をすれば当然わが国の防衛の領域に入るわけでございますが、しかし何と申しましても、地域住民の十分な理解と協力がなければその目的を達するわけにまいりませんから、それらについての理解と協力を求めるように一そう努力するつもりでございます。いわゆる自衛隊の駐留を強行するとか、かような考えではないということを申し添えておきます。
  445. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 それでは、事沖繩に対しては治安出動というものは一切総理考えていない、佐藤内閣は一切そういうことは考えていない、かように受け取ってよろしゅうございますか。ひとつ確認を明確にいただきたいと思います。
  446. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 その事柄の性質にもよりますが、いわゆる治安出動を考え自衛隊を配置すると、かようなことは考えておらないということであります。
  447. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 そうしますと、事態によっては治安出動もあり得る。総理大臣の権限ですからね、これは。そういうものを考えておる、こう受け取ってよろしいわけですか。
  448. 西村直己

    西村(直)国務大臣 私からも、大事な問題でありますから補足さしていただきます。  沖繩への自衛隊配備の目的は、施政権返還によりまして当然これが本土に入るわけであります。したがいまして、いつもこの席で申し上げますように、国土防衛、国の安全を期するということは、自衛隊の任務であります。ただ、これはあくまでも、私がいつも申し上げますように、自衛隊は、国民の理解、協力なくしては意味がない。国民自衛隊という原点に戻れというのも、そういう意味であります。したがって、十分県民の方々の御理解をいただく。ただ、沖繩は、過去の歴史におきまして非常な、軍を中心に御苦労をされました。昭和十六年ごろまでは連隊区司令部はありましたけれども、軍という存在はない。これはまあ一つは特殊の理由で、外国との接壌地でなかったという一つ理由もあります。しかし、いずれにしましても、軍というものに対する御理解が非常に困難な土地であります。それは十分私どもも心得ます。  そこで、返還後におきまして陸海空の部隊を展開するものでありましても、この部隊の任務は、本土におきますと同様、直接間接の侵略に対し、わが国の防衛に当たるということをはっきり申し上げます。と同時に、民生協力であります。ただ、治安対策につきましても、法規上は、法律規定に従っては治安出動という仕事は与えられております。しかし、沖繩の現在見通す段階におきまして、自衛隊が治安出動をするような必要は全くないと考えておりますので、治安出動を目的とした部隊配備などは考えてない次第であることを御理解いただきたいと思うのであります。
  449. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 沖繩自衛隊配備をする、その際に治安出動を念頭に置いてやるわけではないというふうに言っておりますが、しかしそのことばは、将来この基地反対闘争、たとえば本土でもそうでしょう。サンフランシスコの講和条約が発効いたしました以降、あるいは妙義において、内灘において、軍事基地反対闘争が大きく展開をされたことは、これはもう私どもも知っておるし、あなた方も御存じでしょう。特に沖繩におきましては、膨大な米軍基地がある。五万人になんなんとする米軍がおる。先ほど来、伊藤惣助丸委員指摘をいたしましたように、核兵器の問題もあるでしょうし、あるいはかつて毒ガスその他の問題もありました。したがいまして、この沖繩において、返還後、当然住民の中から沖繩を平和な島にするために、あるいは沖繩県民生活の向上のために、一日も早く基地撤去してもらいたい、こういう運動が起きることは、これは私は当然だと思うのです。本土の例を見てもそうです。特によりひどい基地の密度を持ち、また米軍が多数駐留しております、また駐留することを日本政府が認めたこの沖繩において、基地反対闘争がいわば保守、革新というようなことではなしに、住民全体のいわば共通の願いとして大きな大衆運動として盛り上がるという可能性は、当然私どもは予見し得ると思うのです。そういうことを米軍は一番懸念をしているのですよ。サイミントン小委員会の議事録あるいはその資料を見てもそうじゃないですか。そういうことを私ども常識で考えた場合に、当然あり得るだろう。そうしたときも、この治安出動などというものは絶対やらぬ、治安出動はやらない、いま考えていないというのではなくて、佐藤内閣としては治安出動はやらぬ。この点ひとつ明確にお答えをいただきたいと思うのです。
  450. 西村直己

    西村(直)国務大臣 自衛隊の最高の運用はもちろん総理大臣にございますが、私もその次に責任があります。この席ではっきり申し上げます。今日国内におきましても、御存じのとおり、いろいろな基地問題をめぐっての葛藤がございました。しかし、日本本土におきましても、自衛隊の治安出動などは全然ないのであります。私は、国民自衛隊ということを申し上げておる。国民を相手にして戦うような自衛隊では、あってはならない。ただし、外敵あるいは間接直接の侵略等に対しては、国民の協力のもとに戦争の抑止力として訓練し、また駐在もしなければならぬ。しかし、その駐在もあくまでも県民の御理解を得る中でやってまいりたい。したがって、国民そのものを相手にして自衛隊が出動して戦うというようなことは万々考えておりません。ただ、秩序というものは維持されなければなりません。それにはどうしても警察がこれを第一義に十分やっていただくつもりであります。
  451. 中村寅太

    ○中村国務大臣 ちょっと治安の問題に関係がございますから、私から補足の説明をさしていただきたいと思います。  山口委員は、沖繩の特殊事情等についてのいろいろの配慮から治安を御心配になっておるものと思いますが、私は、もう沖繩復帰いたしました後は、警察力を特殊事情に対応するようないろいろの点の配慮をいたしまして、人員もいまよりもある程度増員するし、あるいは器材、装備、その他警察力を強化、充実いたしまして、沖繩県民の不安のないように万全の処置をとっていく準備をいたしておりますので、いま御心配になるような自衛隊の力を借りるというようなことは毛頭警察としても考えておりませんし、警察力で治安は万全の確保ができる、沖繩の施設だけで不十分な場合は本土の警察力の応援をもってこれに当たってまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  452. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 防衛庁長官あるいは佐藤総理に対しましては、また、警察の問題を少しお尋ねをいたしましてからお尋ねをいたしたいと思います。  国家公安委員長、警察力をもって第一義的な治安の維持をはかる、こういうふうにお答えになりました。沖繩の警察官、現在は琉球警察でありますが、定員は千九百五十二名、機動隊はうち何名でございますか。
  453. 中村寅太

    ○中村国務大臣 機動隊員は八十三名でございます。
  454. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 現在千九百五十二名、うち警察官が千八百六十人、そして機動隊の方が八十三名、こういうことですね。復帰後は、今度は県警本部ということになろうと思いますが、九州管区のもとにおける沖繩県警本部、定員はどのくらいになされるおつもりですか。これは警察法の施行令によってきめることだと思いますが、一応お考え方をお尋ねをいたしたいと思います。  特に、さらにお尋ねしたいのは類似県。沖繩と同様人口ほぼ百万の類似県に比べて、この定員は著しく多いですか、あるいは少ないですか、あるいは類似県並みの定員でございますか。
  455. 中村寅太

    ○中村国務大臣 第一間の増員の予定計画でございますが、四、五百人ぐらい増員いたしたいと思っております。  それから本土内の県との比較でございますが、特殊事情等がございますので、一がいに沖繩の状態と同じような県との比較は考えておらぬところでございます。
  456. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 類似県に比べて多いですか、少ないですかと聞いているのですよ、これは警察法の施行令を見ればはっきりしているわけですから。どうも国家公安委員長御存じないようですから、私から申し上げましょう。  宮崎県、人口ほぼ百万、警察官の定員が千四百六十五名。佐賀県、これも人口ほぼ百万、千二百二十五人。高知県、これも人口ほぼ百万、千二百五人。島根県、これも人口ほぼ百万、千百二十五人。多いじゃないですか。現在でも多いのを一体将来どうするのですか。さらにどんどんと大きくするのですか。
  457. 中村寅太

    ○中村国務大臣 私は、特殊事情がございますから、人員が必ずしも人口等によって均衡がとれておらぬということを申し上げたのでございまして、沖繩は、御承知のように、米軍がおりますので特別の事故等も多いし、あるいは島がたいそう離れておりますというようなこと等がございますので、国内の、本土内の人口その他の類似県との比率は沖繩が多いという実情でございます。
  458. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 多い上に持ってきて、四百ないし五百人さらに増員をしたいということですね。非常に自衛隊の密度も高いということが当委員会でも指摘になりましたが、警察官の方々の密度も非常に高いということになると思います。しかし、機動隊八十三人、これは将来さらにどの程度増員をするつもりですか。
  459. 中村寅太

    ○中村国務大臣 大体、先ほど申しましたように、全体の増員を四、五百人と踏んでおりますが、その中で機動隊をどのくらいにするかというようなことにつきましては、関係省庁ともいろいろ関係がございますので、打ち合わせながら復帰ごろまでのうちにはきめたいということでいま考えておる段階でございまして、いま何人機動隊をふやすというようなところまで考えが煮詰まっておるわけではございません。
  460. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 千葉県における成田あるいは最近における沖繩国会のさなか、今月の十九日あるいは二十四日、このような段階では、聞くところによりますと、全国から機動隊、成田の場合は約一万二千、また、今回の国会審議中の大衆行動につきましては一万八千もの機動隊をこの東京に集中をした、かように聞いております。私は、何も沖繩において現在過激派学生がやっているような過激な行動が起きるとは思いませんけれども、しかし、かつてのコザ事件の経験もございます。二十六年間異民族に支配をされた沖繩民衆のやはり積もり積もったこの不満の爆発というものは、私は当然予想されると思います。それが本土におきまして、サンフランシスコ講和条約発効以後、全国的に基地反対闘争が盛り上がった。同じようなことを考えますならば、沖繩返還後において、沖繩において何も過激なことをやるということは別にいたしまして、数多くの大衆が基地反対のための運動を展開をするということは当然考えられるわけでしょう。そういった本土における経験を考えまして、それでは、この九州管区に入る沖繩県警本部に対して、あくまでも治安維持は警察の任務だということは総理もお認めになっておるわけでありまして、一体どのような計画で、どの程度、どのくらいの時間のうちに配備をするということを警察としてはお考えですか。また、どれだけの能力がございますか、お尋ねをいたしたいと思います。
  461. 中村寅太

    ○中村国務大臣 沖繩の治安の確保につきましては、先ほど申しましたように、現在の力に加えまして増員計画あるいは装備等を強化いたしまして、そして沖繩の警察力で大体間に合わせていくという基本方針でございます。治安を守るということの中には、やはり正常な大衆のいろいろの要求運動等も守ることが必要でございまして、沖繩も、最近はやはりこの間の事件等を考えますと、だんだん学生等の運動も過激化しておるような傾向もございますので、これは、やはり彼我両方の国民の生命、財産を守りながら、けが人、死傷者を出さないような形で治安を確保していくということが至上命令でございますので、そういうことを考えて、大体沖繩に装備した力でやっていけるという自信を持って進めておるところでございます。
  462. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 そういたしますと、国家公安委員長は、同じ人口百万の類似県よりもだいぶ警察官の方々が多い。将来四百ないし五百増強するということでありますから、類似県に比べまして倍とはいきませんけれども、一・八倍あるいは一・六倍ぐらい多い警察官をあそこに配備をする、そうして沖繩において基地反対の大衆行動、その他起きましても、本土から警察官を急遽空輸するというようなことは考えないで、そういうことはやらないで、あくまでも沖繩の警察官の力をもってこの治安警備に当たる、それに対しては自信がある、かように受取ってよろしいわけでございますね。
  463. 中村寅太

    ○中村国務大臣 原則としては、いま私が申し上げましたように、沖繩の警察力によって対処していく。しかし、沖繩の警察力で力が足らないというような情勢が予想されるような場合は、本土からも援助するということは考えの中にはあるのでございますが、当面の情勢から考えて、それはいますぐそういうことが必要であるとは思っておらぬということでございます。
  464. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 考えの中にはある、いま思っていないというのですが、考えの中にあるこの増強計画は、具体的にはどのようなものでございますか。
  465. 中村寅太

    ○中村国務大臣 そのときの情勢によりまして治安を確保するに必要な所要の人員、装備等を考えていこうと思っております。
  466. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 警察の考え方は、十分ではありませんが、いまのお考え方についてはお聞きをいたしました。  そこで、先ほど総理がおられますときに指摘をいたしましたアメリカ上院外交委員会安保取りきめ及び対外約束小委員会、通称サイミントン小委員会といっておりますが、ここに提出をされました沖繩の米陸軍第一憲兵隊の項におきまして、次のようなことがありますね。「群衆鎮圧および市民騒じょう鎮圧の現在の構想は、防衛の第一線に琉球政府の通常(シビリアン)警察を立て、これを現地人保安警備員に擁護させ、これにつづくものとして憲兵増強部隊、最後に軍特別任務部隊とし、すべては施設の入口で使用すべき携帯式障壁の使用を最大限とする。われわれの理解によると、沖繩返還後、米軍に対しなんらかの外部から群衆の脅威が生じたときは、日本政府責任を負うものと思われる。そのときには、米軍と現地保安警備員は米国の基地および施設の内部の保安のみに責任を負うことになる。返還後の時期の枠組みのなかで、沖繩に対し構想されているところにしたがえば、上記と同じ取決めが行われるものと想定できよう。返還後の沖繩で市民の騒じょうがおこり、これが現地警察の処理能力をこえると思われる場合には、おそらく、日本政府が、日本の他の県から通常(シビリアン)警察増強部隊を導入(空輸)するものと思われる。」こう述べておるようであります。  先ほど国家公安委員長は増強も考える、こう言われたのでありますが、そういたしますと、サイミントン委員会で述べられた、提出をされたアメリカの陸軍第一憲兵隊の資料——アメリカが期待をすることだと思いますが、それと同じことを警察もすでにお考えになっておる。サイミントン委員会のこの資料と、ただいま国家公安委員長がお述べになったこととは符合している、こういうふうに思われますが、いかがですか。
  467. 中村寅太

    ○中村国務大臣 私は、それは全然知らないで警察の責任者としての考えを述べたのでありまして、それがいま山口君から聞くとおおよそ似たようなことでありますけれども、全然それと関連を持って私は考え方を申し述べたのでもございませんし、計画を立てたのでもございません。
  468. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 とにかくサイミントン小委員会で出たアメリカ側の期待と、いわば日本政府のこれからの計画というものが奇妙に符合しているということを指摘をしておきたいと思います。  それから同じように、このサイミントン小委員会の証言でありますが、ジョンソン次官が次のようなことを言っています。「日本本土内における場合と同様の意味でおそらくそのようにいうことができるであろう。日本本土における緊急の通常兵器による防衛といつたが、日本には米軍基地が存在している。日本は自国の防衛に関して役割りを担っており、その役割りを日本が遂行する限りにおいて在日米軍基地も保護を受けるということである。」返還後の沖繩に対する日本の防衛についても同様だということを述べております。  長官、どうですか。警察に対してシビリアンが空輸をして努力をするであろうということを一方では述べ、警察はそのようにすでに将来の計画としてお考えになっておる。総理が述べた、自衛隊の任務は治安維持だということをこれまたアメリカは明らかに期待をしているじゃありませんか。どうなんですか。
  469. 西村直己

    西村(直)国務大臣 本土からごらんいただきますと、別に本土アメリカ駐留軍が、日本自衛隊によってこれを直接騒擾等から守ってもらおうというような考え方は全然ないことは、すでに皆さん御存じのとおりであります。そこで、沖繩におきましても、本土と同じように、自衛隊は国土の守り、民生協力に従事し、治安維持は警察の仕事であります。ただ御存じのとおりに、外部からあるいは直接、間接の侵略があったような場合におきまして、基地も当然国土の一部でありますから、これは当然国土の一部として外敵から守られるという場合は、万が一にはあり得るかもしれませんけれども、一応基地そのものを治安維持の目的をもって自衛隊が守るということは考えておりません。
  470. 中村寅太

    ○中村国務大臣 警察といたしましては、本土の中におる人は、それはいずれの国の人であろうとやはり生命、財産を守って治安を確保するという責任がありますので、その責任立場に立ってすべての問題を考えてまいる所存でございます。軍事基地だけを守るとかそういうことは毛頭考えておりません。
  471. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 それでは角度を変えてお尋ねをしたいと思います。  かつて国会で問題になりました治安行動草案、それから指揮官心得、これはいかなる措置をなされましたか。それから現在沖繩国会を控えまして、自衛隊の演習場におきましては治安出動の訓練が行なわれております。これは一体どのようなものを根拠にして行なっているのでありますか、お答えをいただきます。
  472. 西村直己

    西村(直)国務大臣 細部にわたりましては防衛局長のほうから答弁させてよろしゅうございますが、大綱を申し上げますと、私の現在扱っているところでは、かつて治安行動教範なるものが問題になりましたが、これはもうすでに、草案ではありましたけれども、今日廃棄されております。  いま一つは、指揮官心得もかつて数年前の国会において、そういう心得的なものの草案みたいなものはあったといわれましたが、これもいたずらにただ人心を刺激し、論議を起こすだけではないかというので、これも現在はないと考えております。  ただ自衛隊には、御存じのとおり、自衛隊法によるところの治安出動、命令による出動という義務と申しますか、条章がございます。したがって、治安出動をした場合における法規の扱い、いろいろな人権擁護の法規もございますし、いろいろな法規があります。そういうような科目の教育であるとか、それに基づくいろいろな勉強、それからそれに基づくところの多少の訓練というものは、これは自衛隊法が認めている以上やらざるを得ない。あくまでもそれは訓練としてただやっていく、目的そのものは直接はない、こういうふうに御理解をいただきたいのであります。
  473. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 私どもが特に治安出動で問題だと思いますのは、自衛隊法八十九条「治安出動時の権限」それから第九十条であります。御案内のように、現在機動隊が成田あるいは東京におきまして治安維持に当たっております。警察の場合は警察官職務執行法、これによりまして武器の使用については限定をされております。警職法第七条「武器の使用」具体的にいえば刑法の三十六条の「正当防衛」それから三十七条の「緊急避難」これに該当する場合を除いては武器を使ってはならぬ、こうなっております。これはもう国家公安委員長がよく御存じのとおり。ところが、自衛隊法八十九条、九十条を見ればそういう制約はありません。武器の使用が当該指揮官の命令によれば広範に使用できるということになっている。それからまた「職務上警護する人、施設又は物件が暴行又は侵害を受け、又は受けようとする明白な危険があり、」——「受けようとする明白な危険」というのはきわめて危険な規定だと思います。「武器を使用するほか、他にこれを排除する適当な手段がない場合」、「多衆集合して暴行若しくは脅迫をし、又は暴行若しくは脅迫をしようとする明白な危険があり、武器を使用するほか、他にこれを鎮圧し、又は防止する適当な手段がない場合」この場合には武器が使えるとなっているでしょう。しかも自衛隊の有する武器たるや、これは私が何もここであげる必要はないと思う。警察官が持っている警棒それからピストル、こういうものとは全く違う非常な威力を持った武器を自衛隊は持っています。このように警職法によって武器の使用が限定されている警察官の場合と違って、この治安行動の場合には、先ほど死刑に関連して人の命のことがたいへん問題になりました。まさに非常な威力を持った武器の使用が堂々許されるじゃありませんか。このような規定がある上は、当然この武器の使用等について十分な限定なり訓練というものが必要でしょう。それが指揮官心得だったのじゃないですか。そうでしょう。いま一体これは何を根拠にしてやっているのですか。
  474. 久保卓也

    久保政府委員 現在指揮官心得等の教範がございませんが、自衛隊法の関係各条及び治安出動に関する訓令というものがございます。それでただいま御指摘のところは、武器の使用に関するところでありますけれども、武器の使用については現場における指揮官の命令でなければならない。特にできるだけ最上級の指揮官の命令によって行なわれねばならない。またかりに状況が緊迫をして、他に手段がない場合には、先ほどの正当防衛、緊急避難の場合でなければ個人としては使えないというのが、この訓令の中に書いてあります。そういったようなものを基礎にいたしまして訓練いたしております。
  475. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 その訓令は具体的にどういうものですか、資料としてひとつ提出をいただきたいと思います。
  476. 久保卓也

    久保政府委員 差し出します。
  477. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 九月から十月にかけまして、沖繩国会を前にしてだと思いますが、大体この国会で自衛隊の治安出動が問題になるのは六〇年安保あるいは日韓の国会あるいは七〇年安保、そういう直前に各地において治安出動のための訓練が非常に激しく行なわれるということから問題になったという経過は、これは防衛庁長官も否定なさらぬだろうと思うのです。それに軌を一にいたしまして、最近九月から十月にかけましてこの治安出動の訓練が行なわれたようであります。明らかに人を呼びかけたりいたしておる訓練でありますから、だれが聞いても治安出動の訓練だということはわかる。その際に、私が指摘をいたしましたら、一体何でやっている、指揮官心得でやっております、こういうふうに堂々たる答えが返ってきておるんですよ。  長官、どうなんですか。防衛局長は先ほども答弁いたしましたが、廃棄をしたと言います。一線の指揮官は——はっきり名前をあげることは私は控えたいと思います。御本人にも迷惑でしょうから、一応この場において名前を指摘することは私は避けたいと思いますが、私の質問に対して、指揮官心得で訓練をやっています、こういうふうにはっきり答えているんですよ。長官どうですか、これは。廃棄をしたというのはおかしいじゃないですか。
  478. 西村直己

    西村(直)国務大臣 私はそういう事実は存じておりません。ただ特にこういういろいろな事態があるからやっておるんじゃないと思います。自衛隊法に基づいて治安出動というものも一つ自衛隊責任任務になっておりますから、そういう意味でやっております。やる場合に、ただいま局長から申し上げましたような訓令等の趣旨にのっとって、幹部は幹部なりの考え方で運用しておるんではないかと、こう考えております。
  479. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 いまのような御答弁ですけれども、はっきり私に指揮官心得で訓練をやっておると答えているんですよ。そういう事実があるんですよ。事実の確認をひとつしていただきたいと思います。
  480. 久保卓也

    久保政府委員 そういう話を以前聞きまして確認しましたところが、本人が間違えておったということのようであります。非常に軽率な答弁を先生にしたように私ども聞いております。
  481. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 いやしくも師団の幕僚長です。幕僚長といえば大体陸将でしょう。ないしは陸将補でしょう。昔の兵隊の位でいえば少将ないし中将です。そういう人が間違えてというようなことで一体通りますか。どうなんですか。
  482. 久保卓也

    久保政府委員 私も通らないと思いますけれども、本人の話では、以前にやはり指揮官心得の話を聞いたのが、先生から御連絡があったときに頭にひらめいて、ついその面を答えた。しかしながら、現実にその部隊には指揮官心得そのものは置いてないわけでございますから、本人の間違いであったと思います。
  483. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 指揮官心得は置いてなかった、しかし、頭の中で答えたというのですから、頭の中に指揮官心得が記憶されておって、現にその記憶をされておる指揮官心得に従って訓練がやられておったということになるじゃありませんか、そうでしょう。
  484. 久保卓也

    久保政府委員 そういう意味ではありませんで、四十三年に前の教範がなくなりました後に指揮官心得をつくっておったようであります。それが昨年完成しないままに途中でやめておるそうでありますけれども、そういった経緯が頭にあったものですから、ついそう言ったということを申しております。
  485. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 私は西村長官に強く要請したいと思うのです。自衛隊はシビリアンコントロールでしょう。国会で指揮官心得あるいは治安行動草案、こういうものが問題になり、廃棄をするということを明確にお答えになっている。この指揮官心得についていえば、中曽根防衛庁長官の当時国会で議論されて、廃棄をするということが明確になった。ところが一線の、シビリアンではない武人のほうですね、制服のほう、そういうほうではこの国会における答弁とは違って、この指揮官心得がいまなお亡霊のごとく生きておるというところに問題があるのではありませんか。私はこれは自衛隊姿勢の問題であり、基本的な問題だと思うのです。どうなんですか。
  486. 西村直己

    西村(直)国務大臣 私は、昭和四十五年でございますか、この国会で指揮官心得が問題になったと記憶をいたしておりますが、それ自体の内容は必ずしも十分存じておりません。ただ自衛隊法に治安出動というものがあります以上は、何らかの形で訓練もし、また、その指導者は何らかの形で考え方を持たなければ、これはむしろ大衆に非常に御迷惑をかけるようなことがあってはいけませんし、また法律を勉強しておかなければいけない、こういうような意味で訓令というものを根拠にしてやはり今日は動いている、私はこういうように考えております。いまお説のシビリアンコントロールにつきましては、十分私どもは今後も気をつけてまいるつもりでございます。
  487. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 角度を変えてお尋ねいたしましょう。  この治安出動というのは確かに自衛隊法にございます。したがいまして、この条文がある以上、国民の指弾を受けないような形で、それに対する訓練というものを最小限度考えなければならない、そういうような御趣旨をお話になっているようであります。この治安行動に対して今日まで自衛隊はどのような事態を想定し、研究を重ねておられますか、この点をお尋ねいたしたいと思うのです。
  488. 西村直己

    西村(直)国務大臣 率直に申しますと、自衛隊が動くということはたいへんなことであります、たとえ治安出動ということでありましても。したがいまして、国の全体の安全にかかわるような事柄でなければ、私どもは現実の問題としてはあり得ない、こう思っております。
  489. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 自衛隊の中に防衛研修所というのがございますね。この防衛研修所では「暴動鎮圧研究の参考」とかあるいは「国内紛争と革命の一般的考察」とか、いろいろな形で治安出動が予想される事態について研究をしておられると聞いていますが、さようでございますか。
  490. 西村直己

    西村(直)国務大臣 防衛研修所は確かに所員を置き、また自衛官はもちろん、各省から毎年学生と申しますか研究員が入って勉強をやっております。その内容の中心は、やはり国の自衛力を中心にした安全保障施策を勉強しておるわけでございますが、なお細部につきましては参事官から御返答申し上げます。
  491. 高瀬忠雄

    ○高瀬政府委員 防衛研修所は、自衛隊の管理、運営に関しまして、その基本的な事項を教育、訓練し、それから調査研究をするところでございまして、いろいろな国防と政治、経済、外交あるいは科学技術との関係、そういったことの研究をしております。  それで、そういった研究を所員が発表することがございますが、ただいま先生が例としてあげられました「暴動鎮圧研究の参考」というものでございますが、これはたしか防衛研修所資料ということで昭和三十三年ごろ岡本という所員が研究したものであるかと思います。この研究は、研修所の所員として、個人として研究をしてまとめたというようなものでございまして、これが直ちに隊員の行動の準拠になるとかあるいは基準になるというものではございません。  それから、そのあとであげられました資料でございますが、これはおそらく防衛研修所で発行しております「防衛論集」というのに掲載されたものであるかと思います。「防衛論集」は、御承知のように、初めにも書いてありますように、研究者の個人の資格で研究の成果を発表したものでございまして、したがいまして、防衛庁あるいは防衛研修所としては直接の責任を持たないものであります。これは先ほど申しましたように、その資料の前に断わってございます。そういう性質のものでございまして、これが直ちに防衛庁の施策なり何なりに反映するというような性質のものではございません。
  492. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 内容をいろいろ拝見をいたしました。現在国会に議席を持っている政党、これも一つではありません。具体的にいえば社会党、共産党、これらの政党の活動その他についていろいろ分析をされておられますね。あるいは他の団体についても、革新団体についても検討をされておられる。また、わが党の内部の傾向等についてもいろいろな分析をなされておる。さらに労働運動、そして現在のわが国の治安法規、これらについてもいろいろな批判をし、改正の方向について提言をしておられます。かつて国会で三矢作戦が問題になり、あの研究の中で、国会において国家総動員法に類するような法律を、次々にこういうものをつくったらどうかというような研究がなされていることが国会で問題になり、大きな批判を受けたことはお忘れではないと思います。何でそのような国会に議席を持つ政党、わが党の内部の傾向、こういうものを批判し研究する任務が自衛隊にあるのですか。防衛研修所にあるのですか。この防衛研修所で作成している治安行動関係に対する研究の資料一切を私は国会に提出をいただきたいと思います。
  493. 西村直己

    西村(直)国務大臣 もちろん国会というものは最高の機関であり、また政党というものはりっぱに国民のそれぞれの層を代表したものであり、またその行動は憲法に保障された自由であるべきであります。したがって、防衛研修所としていたずらにこれを批判するということは、これは避けるべきでありますし、またあり得ないことだと私は思います。ただ、国全体の安危に関する研究、これは治安出動あるいは防衛出動等の問題をしょっておる防衛研修所では検討はさしていただきたい。  それから、なお資料につきましては、これは委員長の御指示、理事会の御指示があれば、また必要なる資料は御提供する、こういうふうにお答えいたしたいと思います。
  494. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 「破壊活動団体の軍事組織とその戦術」というような項がありまして、具体的な大衆団体、政党、その戦術、動向等について分析をいたしております。また「国内紛争と革命の一般的考察」におきましては、具体的にいえばわが政党の内部の傾向について分析をし、また、現在国内にございますところの治安関係法律その他についてその批判を行ない、その改正について提案を行なっております。  私は、このような研究資料というものは、私ども国会として重大な関心を持つことは当然だと思います。先ほど西村長官の御答弁もありますので、ひとつ委員長を通じて、防衛研修所が行なっておりますこの治安行動関係の研究のすべてについて国会に提出をいただきますようにお計らいをいただきたいと思います。その上で私はまたさらに質問をいたしたいと思います。
  495. 床次徳二

    床次委員長 山口委員から資料の請求がございましたが、右に関しましては、理事会にはかりまして善処いたしたいと存じます。
  496. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 それじゃ理事会にはかって資料が出るようになるだろうと思いますから、その際に私ども質問を続けさせていただくといたしまして、出るまでどうもただ待っておるというわけにも、おかしいわけでありますから、ひとつ即刻理事会を開いて対処いただくようにお願いをいたします。
  497. 床次徳二

    床次委員長 次回は明三十日午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後八時二十七分散会