○武部
委員 外務大臣は、このVOAの内容の
質問に対して、
米政府に照会した結果、軍事活動ではなく、広義の戦略であって、信頼できる、正確で客観的な報道をしておる、こういうふうに、たしか十一月四日だったと思いますが、参議院の
予算委員会で述べております。廣瀬
大臣は、きわめて穏やかな内容のようだ、こういう
答弁でありました。私は
沖繩へ参りまして現実にVOAに参ったのであります。そこのデービス所長に会ったときに、所長はわれわれに対して、その放送の内容について次のように述べました。
この放送内容は、主としてニュース、文化放送、音楽、アポロ
計画、こういうものの実況放送で、宣伝放送ではないと思っておる。一体放送する目的は何なのか、こういう
質問に対して、直接接触できない国の人々に情報を提供するのが目的であって、
日本のNHKの海外放送と同じようなものだ、こういう
答弁があったのであります。さらに、私どもは、中継局のデービス所長から渡されたVOAのあらましというものを見たのでありますが、これによりますと、
沖繩におけるVOAのあらましとして、ソ連及び共産中国の支配下にある人々との間のコミュニケーションのおもな手段として存在するものだ、こういうようなことが書かれたものをもらったのであります。
ここに、
沖繩で刊行された、VOAに関する高等弁務官の発行したものがあるわけでありますが、これによりますと、高さ八十一メートルの大きな鉄塔が六つ、大体いまの世界でこのような大きな放送塔はない、そして、これは鉄のカーテンの向こう側に住んでおる世界の人々の三分の一、これは世の中の
ほんとうのことについて耳をふさがれておる、したがって、彼らを支配しているものにとっては都合のよいことかもしらぬ。しかし、読んだり聞いたりできないのだから、共産諸国の
人たちにも世界のニュースやあるいは情報を電波に乗せて知らせることはたいへんに重要な仕事である。なぜなら、共産諸国内の大多数の人々は労働者と農民であって、世界のことを知る方法がない。あっても、
政府がそれを統制していて、都合の悪いことは知らさない、こういう内容を書いておるのであります。これはきのう大出君も述べておった、極東放送の内容が発表されておった「守礼の光」という、
アメリカの
——帰属は高等弁務官に所属する、こういう内容の文書であって、これは第七心理作戦部隊第十五分遣隊で編集、配付されたのであります。九万七千部毎月発行しておる。そして同じくサイミントン報告書によりますと、この「守礼の光」は、明らかに
沖繩高等弁務官に帰属をするとなっておるのであります。そこで、私は、この
アメリカ広報庁、そして第七心理部隊、これが一体となって、VOA、これを通じて謀略放送をやっておる、こういうことをこの文書の中から明らかにうかがい知ることができるのであります。
そこで、時間の
関係で先を急ぎ、内容を説明いたしたいのであります。ただいまも、謀略放送ではないとか、あるいは政策の解説だとか、いろんなことをおっしゃっておる。私は、そうでないという事実を具体的にお示しをいたしたいと思います。
これはわれわれが現地のVOAの所長からもらったテープであります。これは朝鮮語、中国語あるいはロシア語になっておりまして、全部これを翻訳してみました。何も、謀略的な内容があるものを特に選んでわれわれは翻訳したり、持ってきたものではないのであります。これは同日のものであります。これを翻訳をしてみたところが、次のような内容が明らかになってきました。これは、
外務大臣、よく聞いていただきたい。あなたのおっしゃっているような内容、あるいはきわめて常識的な内容を持った放送だということにはならぬと思うのであります。
たとえば五月二十八日、これはロシア語の放送であります。この放送は、内容をずっと全般的に最後までこれを読んでおりますと、きわめて巧妙な放送をやっておるのであります。
あとでほかの国の
協定文にも触れて申し上げたいと思うのでありますが、最初は女の声、順次かわって女と男が交互に放送いたします。「こちらはワシントンVOA放送局です。ラジオをお聞きの親愛なる皆さん、こんにちは」から始まって、ニュースの番組を最初流すのであります。そうして、その中に、まずこのロシア語放送で「モスクワの西側記者が伝えるところによると、半年前に
米国に亡命しようとした、リトアニアの船員に対し十年の刑が言い渡された。詳しいことは半時間後にお送りします。」その
あと、当日起きた世界各地のいろんな断片的なニュースが入ってくるのであります。そうして、音楽が入ったり、いろんなダンスのことが入ったりして、再びこの問題が出てくるのであります。
「
アメリカは、リガで行なわれた四人のユダヤ人に対する裁判事件に関してソ連を非難した。
米国国務省は、同裁判で下された有罪判決の内容は、多くの国々では罪とみなしていないと述べている。同国務省は、反ソ宣伝をしたかどで、四人の被告に対してリガ市で行なわれた裁判は基本的人権を侵すものであると述べた。さらに同省は、ソ連でいまなお続いている秘密裁判のならわしは、
アメリカの深く憂えるところであると述べた。」こうして「リガで行なわれた裁判で四人の被告はイスラエルから入手した反ソ資料を流布したかどで有罪となった。被告は一年から三年の禁錮刑を宣告された。」そうしてその次には、
先ほど申し上げた「モスクワの西側記者の伝えるところ」といって、「
米国に亡命を求めようとしたリトアニアの船員シマス・クジルカは、リトアニア共和国最高裁で、十年の禁錮刑を宣告された。」
あと読みません。どのような経過で亡命しようとして、それが
アメリカの沿岸警備艇に乗り移ったところが、ソ連の船員が力づくで彼をソ連船に引き戻し、そうして船員に対する同情と沿岸警備艇に対する非難の声があがって、結果的には、
アメリカの沿岸警備艇の艦長は他の職に回され、沿岸警備の海軍将官とキャプテンは退職させられた、こういう内容がここで報道されて、またずっとほかのことが出て、またぞろ「モスクワの西側記者の伝えるところによると、」「半年前に
米国に亡命をしようとしたリトアニアの船員に対して十年の刑が言い渡された。」三回、このただ一つの放送の中に、ソビエトを非難をする文章が出てくるのであります。これは解説を含めて述べられておるのであります。一体、それならばソビエトの刑法はどういう刑法を制定しておるのか、明らかにこれはソビエトの刑法に従った判決であります、こういう内容になっておるのであります。これは五月二十八日のロシア語放送であります。
さらに、今度は五月三十一日の朝鮮語の放送、これは北朝鮮向けであります。これは「世界のきのうときよう」という番組でありますが、「ソ連が職業的なスパイと暗殺者を訓練して使っているという事実は、全世界によく知られているが、その中でも特に有名なのは、一九六一年西側に亡命し、自分の過去のすべてを告発したボクダンスタンスキーです。」以下、長々と物語式に、このソ連が職業的なスパイと暗殺者をいかに使ったかということが、るる放送されておるのであります。
さらに中国語、これは同じように私どもがもらって帰った五月二十八日の夜の中国語ニュースであります。これも全部翻訳をしてみました。これは明らかに
——全部読むわけにいきませんから、こういう内容ということだけであります。「中共が何とかして、アジアの隣国との
関係を改善しようとしているとき、北京の宣伝機関は暴力革命に対する支持を重ねて述べている。以下は、VOA時事問題分析員ベイヤーが「北京外交政策の矛盾現象について」の評論であります。」これは評論であります。そうして「北京がアジアの隣国に対してとっている外交政策は、北京の解説者にとっては実に明確であり、論理にかなったものであるかもしれませんが、外部の者には奇怪に感じ、理解しがたいのであります。北京は一方でフィリピン、ビルマ、タイ、マレーシアなどの国国との
関係を改善したいと表明しています。このため、宣伝面でもビルマ、タイ及びマレーシア三国内で進められている中共式武装革命運動に対する支持は少なくなってきました。しかし他の一方では、北京の重要な新聞や刊行物は最近論文を発表し、あらためて北京がアジアその他世界各地の
政府を転覆させる革命運動を支持すると声明しています。」
こういう論文が解説としてずっと長々と続いておるのであります。たいへん長いものですから、最後まで読み上げることができませんが、しかし、この中で最後に、「中国大陸は依然として非常に貧乏である。だから中国の共産主義者は、ソ連の共産主義者より政治思想をさらに重要視している。」、しかも最後に、要するに「北京が二面外交政策をとる原因が何であろうとも、北京が暴力革命を支持していることの
ほんとうのねらいが何であるかという、アジア人のさまざまな疑念を減少させることはできない。」
これはただ単なる、
外務大臣が育っておるような、客観的事実を伝えたニュースではないのであります。これは明らかに解説であります。そうしてこの放送は、非常に強い、千キロワットの中波で、その指向性は、中国語は北京であります。いま一点は、朝鮮語は同じように指向性は平壌に向けております。中国語はウラジオストクに向けておるのであります。最初読み上げたロシア語は、沿海州を中心とした極東ソ連地区とサハリンにこの放送は及ぶということが、私どもがこの中継局からいただいた資料に歴然といたしておるのであります。そういうような内容を持った放送が毎日続けられておる。そうしてこれには、必ず全般的に、全部の番組を通して一つの
目玉番組があるのであります。ここが問題なのであります。これをしも、まことに穏やかな番組で、そうして何らの主観的な放送ではない、客観的な事実をそのまま伝えておるというふうに
外務大臣はお思いになりますか。いかがですか。