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1971-11-13 第67回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十一月十三日(土曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 床次 徳二君    理事 金丸  信君 理事 國場 幸昌君    理事 二階堂 進君 理事 湊  徹郎君    理事 毛利 松平君 理事 久保 三郎君    理事 細谷 治嘉君 理事 中川 嘉美君    理事 門司  亮君       池田 清志君    石井  一君       宇田 國榮君    小渕 恵三君       大石 八治君    大野  明君       大村 襄治君    奥田 敬和君       加藤 陽三君    木野 晴夫君       佐藤 守良君    正示啓次郎君       關谷 勝利君    田中伊三次君       田中 龍夫君    谷垣 專一君       谷川 和穗君    西銘 順治君       藤波 孝生君   三ツ林弥太郎君       武藤 嘉文君    村田敬次郎君       森  喜朗君    森下 元晴君       山下 徳夫君    豊  永光君       井上 普方君    石川 次夫君       川俣健二郎君    木島喜兵衞君       武部  文君    美濃 政市君       山口 鶴男君    伊藤惣助丸君       桑名 義治君    斎藤  実君       二見 伸明君    小平  忠君       田畑 金光君    東中 光雄君       米原  昶君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 前尾繁三郎君         外 務 大 臣 福田 赳夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 高見 三郎君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         通商産業大臣  田中 角榮君         運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君         郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君         労 働 大 臣 原 健三郎君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣 渡海元三郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 西村 直己君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         人事院事務総局         管理局長    茨木  広君         総理府総務副長         官       砂田 重民君         防衛庁参事官  鶴崎  敏君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛施設庁長官 島田  豊君         防衛施設庁総務         部長      長坂  強君         防衛施設庁総務         部調停官    銅崎 富司君         沖繩北方対策         庁長官     岡部 秀一君         沖繩北方対策         庁総務部長   岡田 純夫君         沖繩北方対策         庁調整部長   田辺 博通君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省条約局長 井川 克一君         農林政務次官  伊藤宗一郎君         郵政省電波監理         局長      藤木  栄君  委員外出席者         沖繩及び北方問         題に関する特別         委員会調査室長 綿貫 敏行君     ————————————— 委員の異動 十一月十三日  辞任         補欠選任   天野 光晴君     奥田 敬和君   木野 晴夫君     森下 元晴君   佐藤 文生君     村田啓次郎君   箕輪  登君     西銘 順治君 同日  辞任         補欠選任   奥田 敬和君     天野 光晴君   西銘 順治君     箕輪  登君   村田敬次郎君     佐藤 文生君   森下 元晴君     木野 晴夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案(内  閣提出第一号)  沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律  案(内閣提出第二号)  沖繩振興開発特別措置法案内閣提出第三号)  沖繩における公用地等暫定使用に関する法律  案(内閣提出第六号)  国家公務員法第十三条第五項および地方自治法  第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院の  地方事務所設置に関し承認を求めるの件(内  閣提出承認第一号)  沖繩平和開発基本法案細谷治嘉君外十六名提  出、衆法第一号)      ————◇—————
  2. 床次徳二

    床次委員長 これより会議を開きます。  内閣提出にかかる沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律案沖繩振興開発特別措置法案沖繩における公用地等暫定使用に関する法律案国家公務員法第十三条第五項および地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院地方事務所設置に関し承認を求めるの件及び細谷治嘉君外十六名提出にかかる沖繩平和開発基本法案、以上の各案件を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。中川嘉美君。
  3. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 七二年に沖繩本土復帰するということはたいへんに喜ばしいことでありますけれども、返還協定の中身を見るときに、やはり日米間に多くの問題が残されておる、このことは隠しきれない事実だと思います。沖繩・北方問題に関する特別委員会としては、やはり沖繩特別措置法をはじめとする関係法案慎重審議を行なう場でありますけれども、これらの土台である、返還協定というものを抜きにしては考えられないということもまた事実ではないかと思います。  そこで、私はきょうは、この返還協定にも関連をしつつ質問を進めてまいりたいと思います。  まずお聞きしたいことは、返還協定政府目玉商品である、このようにいっておるところの那覇空港のことですけれども、この那覇空港は、はたして間違いなく日本全面返還されますかどうか。きょうは総理も御出席をされておりますので、この第一問、総理にひとつこの点を伺っておきたいと思います。
  4. 福田赳夫

    福田国務大臣 私がかわってお答えを申し上げますが、那覇空港返還時には間違いなくわがほうに復帰されると信じております。
  5. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 いま外務大臣の御答弁をいただいたわけでありますけれども、先ほど私が申し上げたように、那覇空港というのは全面返還、私はそういうふうな表現をさっき使いましたけれども、これは間違いありませんか、どうでしょうか。
  6. 福田赳夫

    福田国務大臣 申すまでもなく全面返還でございます。
  7. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 これは外務大臣がそのようにおっしゃるわけですから、いまのところはそういうことを前提としてお話を進める以外にないと思いますけれども、それではさっそく具体的な質問に入ってまいりたいと思いますが、返還協定の七条に「この協定効力発生の日から五年の期間にわたり、合衆国ドルアメリカ合衆国政府に対し総額三億二千万合衆国ドルを支払う。」こういうふうに出ておりますけれども、この三億二千万ドルの中に、対潜哨戒機移転費用がはたして含まれておるかどうか、この問題が私いままっ先に実はお聞きをしたい点でございます。先ほど申したように、もうここからすぐ具体的な質問に入るようでありますけれども、この点に関して、はたして含まれているかどうか、御答弁願いたいと思います。
  8. 福田赳夫

    福田国務大臣 それは含まれておりませんでございます。
  9. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 含まれていない、こういう御答弁でありますけれども、含まれてないということであれば、これはそれでは、はたして何年度予算でこの分を支出するのか、この点どうでしょうか。
  10. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは大蔵大臣の分野でございますが、三億二千万ドルというのは、これはアメリカ政府に対して日本国が支払うという額でありまして、その中にはP3の撤去費は入っておらぬ。それじゃその撤去費はどうするのかといいますと、地位協定の精神に従いましてわが国において支払う、こういうことになります。  そこで、その支払い方につきましては、あるいは四十七年度予算お願いをするということになりますか、あるいは場合によりましてはまた他の支出方法をとるか、その辺はまだきめておりませんけれども、いずれにいたしましても、わが国においてこれの支払いをするという手続をとります。
  11. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 いま大臣は、四十七年度予算という形で御答弁されたわけですけれども、これは、それじゃ本年度じゃないということですが、これからこの質問を展開する前に、本年度でないということをちょっと大臣確認していただけませんか。いま四十七年度からとおっしゃった。本年度予算の中には入ってないということですね。
  12. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいまのところ、本年度予算には入っておりません。ですから、四十七年度予算として支出お願いしますか、あるいは予備費を使用するというような事態が起こりますか、まだ大蔵当局検討中であります。
  13. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 ここに、愛知外務大臣背景説明が私の手元にありますけれども、これは御承知のとおり、六月十七日の夜、いわゆる沖繩返還協定調印式あとで、愛知外務大臣がこの背景説明というものを行なっている。その中でP3の移転の問題につきましてずっと述べておられるわけですけれども、この中を見ますと、「P3の完全撤去に必要な経費は三億二千万ドルには含まれておらず」、これはもうおっしゃるとおりです。ところが、「日本国政府の本年度予算から経費支出することになる。」はっきりとここにうたわれております。  これは、ちょっと外務大臣、その辺の連絡がどうなっておるのやら、いまの御答弁では、これは全く食い違った。愛知外務大臣は四十六年度、これはもう背景説明できちっと言っておる。それに対して、四十七年度というそういう御答弁が返ってきたわけですけれども、私は、ここはすんなり通ってしまうかと思ったけれども、まずここでつまずいてしまったような気がする。  そういうわけで、外務大臣福田さんがおっしゃったいまの御答弁からしますと、この愛知外務大臣のこの背景説明というものは、これは何ですか、訂正されるわけですか、この場所は。
  14. 福田赳夫

    福田国務大臣 その支出は、ことしの補正で実は組むかどうかということについて検討したんです。ところが、そのときはまだどのくらいの費用が必要なのかということが補正に間に合いません。したがいまして、補正予算には組み入れなかったんでありますから、したがって次の他の対策をとらなければならぬ。他の対策とすると、いま重ねて補正ということを考えておりませんものですから、四十七年度予算になるかあるいは四十六年度予備費支出ということになるか、いま大蔵当局検討中であると、こういうふうに申し上げておるのであります。趣旨は愛知外務大臣背景説明と変わっておりませんでございます。
  15. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 まあ、変わってないというふうにおっしゃるわけですが、これは結果的に、まあ今年度ということは無理であれば、これは来年度という答弁が出ざるを得ないけれども、ここでもって、私がひょっとつついたところだけで、もうこういう変更が出てきている、こういうことになると思うのですが、この中には、愛知さんはこういうふうにおっしゃっておる。「那覇空港については、復帰までに懸案の対潜しょう戒機P3も完全に撤去され、同空港完全復帰となる。」そして、この次は先ほど私が読んだところで、三億二千万ドルになっていくわけですが、こういうふうに、一たん背景説明が時の外務大臣によってきちっとなされたことが、もうこういうことでぐらぐらっときておるということは、私はただ単にこの予算面だけではなしに、このほかにいろいろ対米請求の問題、あるいは協定全体の評価、あるいは基地自由使用の否定、VOAの問題、いろいろこう出てきておりますけれども、前外務大臣といまの福田さんとの間でもうすでにそういうような予算面における食い違いが出てきておる。こういうことで非常に、私いまここでこういったことが心配されるわけですけれども、まあこのまますぐ次へ進んでみます。  先ほどからP3ということを申し上げておりますけれども、このP3が撤去されるための必要経費というものは、いま四十七年度というようなことでしたけれども、これはどのぐらいの額になりますか。その撤去費用、どのぐらいの金額になるか、お答えをいただきたいと思います。
  16. 福田赳夫

    福田国務大臣 その額はまだわかっていないのです。つまり、その額がわかってないというために補正予算に計上することができなかった、こういうことで、いま鋭意その額を見積もっておるという最中でございます。
  17. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 額がわからないとおっしゃるのは、それは私はおかしいと思いますよ。私も沖繩へ行って現に見てきた、あのP3の施設関係。私はしろうとですから、はたして、そういった建物なりいわゆる施設関係とか宿舎とか格納庫とか、そういったものがどのぐらいするものか、これはしろうとで判断できません。しかしながら、少なくとも外務省なりあるいは防衛庁なり、調査された専門家であるならば、そういった施設がはたしてどのぐらいするものか、これは当然もうこ段階にわかってなければならないと私は思います。  それじゃ、これと関連してお聞きしますけれども、那覇空港にあるようなP3の施設移転するわけですから、別につくるとなると、それはどのぐらいかかりますか、費用は。
  18. 福田赳夫

    福田国務大臣 大体二千万ドル以下というふうには踏んでおるのです。しかし、具体的にまだ、そのP3が嘉手納飛行場移転するのか、あるいは他の飛行場移転するのか、そういうような基本的なことがきまっておりませんので、したがって、まだ精細な見積もりをすることができない。補正予算をいやしくもお願いをするということになれば、これは精細な内容を持たなければならぬ。それができなかったものですからお願いすることができなかった、そういうのが実情でございます。鋭意いまそれを詰めておるという最中でございます。
  19. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 そうすると、まあ二千万ドルとおっしゃったのですが、この金額、このぐらいはとれるのですね、そうすると二千万ドル。これはどうですか。
  20. 福田赳夫

    福田国務大臣 せいぜいまあ二千万ドルぐらいだろう、こういうふうに思っておるのですが、これは米国政府に支払うんじゃないのです。わが国がそれだけの金を使って施設を建ててやる、こういう性格のものであります。米国政府に支払う金額は三億二千万ドル、これ以上のものはございませんです。
  21. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 これはまあ当然そんなことはもうわかってなければならないということですけれども、そうでないと、結局、いわばアメリカの言うなりになってしまう。したがって、こんなことでは、いわゆる米側との交渉とかなんとかいっても、現時点でまだそういう段階であるということは、これはもうおそろしい以外の何ものでもないと思いますけれども、先ほど二千万ドルとおっしゃったこの金額というのは、円に直せば七十二億円。この七十二億円といっても、結局は国民の税金からこれは払わざるを得ないという、そういうものじゃないですか。これは結局、実際の査定もしないで——先ほどよく詳しく調べておりませんとおっしゃったのですが、査定もしないでアメリカに支払うと、これはもう重大問題だと私は思います。  そういうことであると、これはもう最初から、もう少しあとで、私はずっといろいろとこまかいところをお聞きしようと思ったが、初めのところでどうも突っかかってしまったような感じがしますけれども、きょうはやはりテレビとかラジオで皆さん聞いたり見たりしていらっしゃる。こういう国民の皆さんが、こういうことではやはりどうも信頼できないということになってくるのじゃないか。まあ来年の七月に、どんなにおそくても刊縄は返ってくるとなれば、こんなことはもうとっくにきちっと金額なんというものはわかっていなければならないと私は思うのです。  そういった意味で伺いますけれども、はっきりとしたこの移転経費、これはいつごろわかりますか。さっき二千万ドル程度あるいはそれ以下とおっしゃったのです、か、どうでしょうか。
  22. 福田赳夫

    福田国務大臣 中川さんのことばじりというわけではございませんけれども、二千万ドル以内という額は、アメリカ政府に対して支払うんじゃないのです。これはわが国が精細に見積もりまして、そしてわが国においてその施設を築造する事業を取り行なう、それに二千万ドル、つまり七十億ぐらいな、あるいはそれ以内の金額がかかるんじゃないか、こういうふうに踏んでおるのですが、どういう施設をつくる、またそれをどこにするんだというようなことになりますと、まだその行く先がきまらぬという前提もありまして、精細な見積もりができない。そこで四十七年度予算になりますかあるいは本年度予備支出ということになりますか、そういうふうにしたいと思っておるのですが、これは鋭意いまその調査を進めておるという最中でございます。
  23. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 先ほどから申し上げておるP3ですけれども、これは米海軍の対潜哨戒機であるということは御承知のとおりですけれども、二十四時間体制でもって沖繩一帯の海上を哨戒している、こういう哨戒機ですけれども、これについて撤退させるための必要経費として二千万ドル、七十二億円をアメリカ日本側要求してきた、このようにいわれているわけです。これはどうでしょうね。事実関係はどうなっているのですか。私が別に入手した情報によりますと、アメリカ側要求してきた、ほんとう要求してきたのかどうか、この辺をひとつごまかさずに正直に答えていただきたい。
  24. 福田赳夫

    福田国務大臣 率直に申し上げますが、これは、アメリカ要求というよりはむしろ日本要求なんです。P3をのけてくれ、これはわが国要求であります。そうしますと、そういう際には、地位協定からいいますと、わが国がその代替施設をつくるということになっているのです。まだ那覇飛行場は、今日は米国施政権下にあります。ありますが、返還協定発効後におきましては当然そうしなければならぬ、そういうことになる。しかし、発効前ではありますけれども、発効後に準じましてわが国が支払う。そしてその支払いをして、どうかひとつP3は撤去してください、こういう要請をし、これにアメリカ政府が同意した、これが真相でございます。
  25. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 今度は私が外務大臣ことばじりをとるようですけれども、アメリカ側お願いをした、このような意味お話がありましたけれども、そうすると、どいてくれということは、これはあまりどきたくないんだけれどもどいてくれ、こういうことも考えられますね。どいてくれと言われて、そうですか、おっしゃるとおりどきましょう、私も実はきのうからどきたかったんだ、そんなことはないと思います。やはりその裏にはあまりどきたい意思がなくても、そういうんだから、一応それは表面上といいますか、同意せざるを得ないだろうというようないろいろな政治論から、そういう判断を下さざるを得ないというふうになるかもしれません。これは、私はそういうふうに直観的に思ったわけですけれども。  となると、アメリカは実際問題としてこの移転を渋っているんじゃないか、移転そのものを渋っているんじゃないか、このように思うわけですけれども、どうですか。アメリカ側としてはほんとう移転する意思があるのかどうか、それとも、もともとそんなものはさらさらないので、いまここにきて渋っているのかどうか、この辺の事実関係がどうもはっきりしない。こういうわけなんですけれども、外務大臣として何かその辺、アメリカからその後のいきさつなり、正直にここで答えていただいたほうがいいと思うのです。これからずっと私は質問を続けてまいりますけれども、どうでしょうか。
  26. 福田赳夫

    福田国務大臣 当初、交渉過程では、P3の撤去についてはアメリカは消極的な態度を示したわけです。しかし、沖繩本土復帰だ、その中でも那覇空港、これは目玉商口です。それがP3が存在するというままで日本返還をされるということになると、わが国那覇空港民間航空等使用計画に支障がある。そこで、強くP3の撤去要求し、そして完全無欠なものとして那覇空港をお返し願いたい、こういうことを主張したわけなんです。これに対しても、なかなか米政府は応諾をしませんでしたが、われわれは、それではわれわれで代替施設はつくりましょう、ですからひとつ了承せられたい、こういう経過を経衣して、アメリカ政府はP3の撤去を了承し、そのかわり日本代替施設をつくる、こういうことになったわけでありまして、そういうことにきまりました以上は、返還日までには必ずP3は撤去され、完全無欠那覇空港返還が実現されるのだ、こういうふうに思っておるわけでありますが、これは、その協定が締結になりました以後において情勢の変化は全然ございません。
  27. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 これは那覇空港目玉商品ということをはっきりと、やはり外務大臣もいまお口にされたわけですが、目玉といいましても、まあ目玉焼きを言うわけではないですけれども、あまり大きな目玉焼きではない。卵焼きもあれば、オムレツもあるのじゃないか、沖繩には。私はそう思います。  そういうわけで、いまの御答弁からして、それではどのくらいの移転期間——そのまますっかりすんなり受けて私はお聞きするのですが、そのための移転期間はどのぐらい必要なのか。そしてまたどこへ移転するのか。これはもうこの辺の時点ではっきりとわかっておられていいのじゃないですか。
  28. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま鋭意アメリカと話をしておる。そしてアメリカ側嘉手納に移るのか、その他の飛行場に移るのか、それが決定しますと早急に計画ができるわけであります。計画ができれば今日の工事技術、そういうものを考えますとそう時間はかからぬ、返還日にはP3がない状態、これができる。またそれをさせなければならぬ、そういうふうに考えております。
  29. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 嘉手納という例も出てまいりましたが、これは移転先として確かに嘉手納が非常に有力視されているけれども、アメリカ空軍はP3が移ってくるということに対して空港が狭くなって危険である——嘉手納のほうですよ、そういうふうにいっている。これは強く反対しているわけですよ。それで、那覇空港なら、それでは逆にいえば危険であってもかまわないのか、このように正直に言って反論したくなってくる。そんなことになれば、将来さらに民間日本人たちもどんどんあそこへ出入するが、そこでもっていつまでもどかなくて、しかも、自衛隊の飛行機とアメリカのP3と、それからいわゆる日本日本航空、JAL、こういったものが飛びかって、こんなことではニアミスが続出してしまう。このように、それこそこっちが危険を感じるわけですけれども、この辺はどうも先ほどの御答弁によりますと、嘉手納基地アメリカ空軍のそういうような反対意向というものが、外務大臣はまだもう一つおわかりになっておられないのじゃないか、このように思うわけです。  それから、できるだけ早く返還時までには必ず撤去いたしますという確信にあふれた外務大臣の御答弁がありましたけれども、これは、そんな簡単な甘いものではないと私は思いますよ。対潜哨戒機代替施設をつくるだけでも、これは十カ月以上かかるといわれておる。この十カ月以上もかかる——これは特殊ないわゆる電子機器を積載しているわけですね。したがって、そういう関係のものも全部一切を移転するということになるわけで、これは十カ月以上かかる、こういうふうにいわれております。そういった意味で、先ほど外務大臣がおっしゃったのは、きっとこれらの航空設備の建設ですか、これは確かに半年くらいであるいはできるかもしれない。しかしながら、そのものずばりをどこかに移して、もとどおりの同じような機能というものを発揮するためには、やはり十カ月以上かかるとなれば、来年七月——政府がおっしゃっている四月なんというのは問題になりません。期間という点から言えば、とてもじゃないけど間に合わない。それじゃ、アメリカが言っているところの来年の七月と踏んでも、十カ月かかるのですから、これは工事を十月から始めていなければならぬ。いまもう十一月ですよ。こんなことで、やはりこの移転問題について、大臣、非常に申しわけないのですけれども、まだまだ御答弁の中に私は甘さが感じられてならない。ほんとう返還のときに、そのような対潜哨戒機の設備関係は一切間違いなく移転するのかどうか。このことに対して、私は非常にこの時点でまたもう一つ不安が出てくるわけです。  ここでもう一度、先ほどアメリカがどくかどかないかという問題に戻るようですけれども、どうですか、はっきりおっしゃっていただきたいのですが、アメリカとしては、何となく、現時点において、もうちょっと待ってくれないかというようなニュアンス、そういうような表現がはたしてこちらのほうにぶつかってきているのかですね。私が聞いた情報では、先ほど外務大臣の御答弁とは確かに違います。移転先についてアメリカ政府が決定を保留していると言われております。保留しているのです。ですから、私たちはこのことをずっと調査して申し上げているわけなんで、一つ一つやはり慎重に——総理がよくお使いになる、慎重に御答弁いただかないと、これからずうっと質問が続いていきますから、ひとつこれからの質問についてもお答えをいただきたいと思います。どうですか、これはアメリカは渋っているのですか。
  30. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほどるる申し上げましたように、初めはP3がのくということについては消極的な態度だったのです。しかし、もう返還協定の付属表において約束はできたのです。できた今日において、アメリカが渋るというようなことはあり得ないし、またそういうような接触はありません。いま一生懸命になってアメリカは、どこに移すか、またどういう施設をつくるかということを検討している。それで、いま中川さんの御指摘のように、これがおくれますと、返還時期に影響してきますので、私どももあせっているのです。これはアメリカに対しても督促をいたしておる、そういうような状態でありますから、結論といたしましては、返還日までには必ずこれを撤去せしめる、こういうことをはっきりと申し上げさしていただきます。
  31. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 返還時までにははっきりと撤去せしめる、このように御答弁をいただいたわけですけれども、これはあくまでもこっちが、日本側がかってにそういうふうに判断し、決定しているとしか言えません。私は、いろいろほかの情報も聞いておるけれども、一つ一つここで言う必要もないと思いますけれども、要するに、対米折衝を続けておりますということばの中から、私は、それじゃ、P3ならP3を一日も早く撤退してもらわなければ、この返還協定のあれにも反して、返ってくる期日がおくれたらたいへんだという先ほどの御答弁ですね、確かにそのとおりだと思うのですが、その対米折衝とおっしゃった、こっちからそういうふうな要望を出した、それに対して、どういう返事がアメリカから返ってきておるか。続けておる以上は、一回だけやりましたというのじゃない、続けておる以上は、何かそこに往復のことばの交換なり文書の交換なり、何かそういう——こういう大きな問題です。ただ、あまりやっていらっしゃらないということを私は言っちゃいけないけれども、やっていらっしゃらないにかかわらず、もしそういうふうに続けておりますという表現をされている——まあこのように思いたくないけれども、先ほどのようにおっしゃった以上は、何か向こう側の意思表示、いや、それはもうおくれておって申しわけない、大体いつ幾日ぐらいまでには一つの見通しをつけたいとか、こういうものは何か返ってきてなければならないと思いますが、どうでしょうか。外務省として、何かそういう見解を受け取っておりますか。
  32. 福田赳夫

    福田国務大臣 その種の折衝は、文書の往復なんかいたしませんです。これはもうじきじき向こうの人と話し合う、そういうことですから、文書はございません。しかし、いまアメリカ側の反応は、行き先がまだ確定をしないんだ、そこで弱っているんだ、こういうことなんです。しかし、これはもう約束は約束でありまして、返還日までにはわが日本に対しまして、P3の撤去を約束をしておる。この約束を踏んまえて、アメリカ軍も行動しておる、こういうことには間違いはございませんですから、その辺は御安心願いたい、かように存じます。
  33. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それでは、これはもうあんまり続けません。最後にもう一つだけこのことについて……。  そうしますと、政府は、撤去返還までに間に合うということに自信があるんですね。これが最後、この問題について聞いておきたいと思います。ありますね。
  34. 福田赳夫

    福田国務大臣 確信を持って取り組んでおります。
  35. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 確信を持って取り組んでおります——私はあんまりことばじりをとらえたくないのですが、私が聞いているのは、間に合いますねと聞いているのです。取り組むことはもうあたりまえのことなんで、政府は、その返還までにP3がどいていく、そこに何もなくなる、そのことは、ぴちっとその時点に間に合いますねと伺っているわけです。
  36. 福田赳夫

    福田国務大臣 返還日までにP3が撤去されます。これには間違いはございませんです。
  37. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 くどいようでありますけれども、P3が撤去される。飛行機だけどこかへ行ってしまった。あのときP3が撤去されると申しましたといって、あとになって、あのときは施設とは最終的には申し上げませんでした、それでは困るわけですね。どうですか、私がいまお伺いしているのは、間に合うかどうか、全部その施設が完ぺきに撤去されるかどうか、この点を伺っておるわけです。
  38. 福田赳夫

    福田国務大臣 この施設になりますと、それがこわされるというようなことになりますかどうか、あるいはわが国においてそれを引き継いで使用するというようなことがあるかもしれません。いずれにいたしましても、P3用の施設、そういうものはなくなるわけです。それから、P3もいなくなる、こういうふうに御了解願います。
  39. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それでは、次に、もちろんこれに関連していますけれども、進めてまいりたいと思いますが、それでは、私が非常に心配していることは、人間同士のいろいろな交渉ですし、何も私は政府をこういったことでただ責めるだけを快しとしているわけでも何でもない、ほんとう日本の立場に立って、やはりこういう問題についてお互いに取り組んでいかなければならない、そういう立場から申し上げるわけですけれども、間に合わないという最悪の事態、こういうものをひとつ外務大臣、一緒に考えていただきたいのですけれども、間に合わないという場合ですね、ついに返還の日が来た、七月一日なら七月一日が来たけれども、ああ、やっぱりP3のこの施設がどうしてもこの日までに撤去し得なかった、こういうような結果が出たときには、これはどうですか、いわゆる民間とそれから自衛隊と、そうしてまた当然米軍と、この三者が共同で使用するということになるんじゃないかと思いますけれども、これは別に私は何を聞こうといって、そんな魂胆があってお聞きしているのじゃないので、そういうふうな三者の使用という、まあ一時期というんでしょうか、そういうことも考えられますね、どうですか。
  40. 福田赳夫

    福田国務大臣 この飛行場にP3が残って、それをわが国と共同使用するという事態はございませんでございます。
  41. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それでは、いま、P3じゃなくて、どうですか、米軍の一般の爆撃機とか戦闘機とか、普通のそういうP3でない米空軍の飛行機、そういうものがやはり入ることによって三者共同になっていくということ、この点はどうですか。
  42. 福田赳夫

    福田国務大臣 もっぱらわが国において使用するものであります。
  43. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 私は、いま最悪の場合、私はここで、ああ、そうですが、それはまあ一安心いたしましたと申し上げたいところだけれども、私が何べんも聞いているのは、最悪の場合ですよ、最悪の場合にどうなるかということですね。それで、そのくらいのことで、事態を真剣に考えないで、簡単に返ってくるというのは、やはり判断というんでしょうか、判断が私は甘いんじゃないかと思います。  そういうことで、次の質問に移りますけれども、最悪の事態というのは当然考えておかなければならない。ここでこの返還を前にして、そのような楽観的な考えを持っていては、まだいろいろな面で予期しない事態が起きてくるんじゃないか。最悪の事態で三者共同使用しなければならないということは当然予想していかなければならないと私は思います。  こうなりますと、ここでいま伺いたいことは、この返還協定ですね、返還協定のA表の六十六をひとつそこにあったらごらんいただきたいのですが、A表の六十六、これは何と書いてありますか。この六十六は、「那覇空軍・海軍補助施設」こういうふうに書いてありますね。これは何の施設ですか。
  44. 福田赳夫

    福田国務大臣 政府委員からお答え申し上げます。
  45. 吉野文六

    ○吉野政府委員 お答えいたします。  これは那覇空港の境界の外、境界というか大きな意味那覇空港の一部でございますが、空港のうしろのほうにある海軍の住宅地域を主として含んでおります。
  46. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 住宅なら住宅と書いてありますよ。「海軍補助施設——海軍の補助施設ですよ。もう少しはっきりと、このA表六十六は何の施設なのか、もう少し詳しくひとつ答えていただきたい。
  47. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これは主として住宅に充てられておりますが、学校とかその他いろいろのそれに伴う施設がございます。そういうものをさしております。
  48. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 これはわれわれもちゃんと現地に行って見てきているんですがね。ここでどうこう言う前に、ではもう一回答弁の機会を与えたいと思うのですよ。ここで何を言っておるんだというふうに私は言うまい。どうかひとつもう少し詳しく、正直に、この施設が何の施設であるか、私が言う前にひとつ答えていただきたいと思うのですね。
  49. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先生の御質問意味があまりわからないのでございますが、われわれとしては調べてきたつもりでございます。ここは主として住宅、学校その他のいわゆる軍に付属する施設がございますが、直接軍の用に供するようなものはございません。
  50. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それでは六十一番見てください。六十一番、何て書いてありますか。読み上げてください。
  51. 吉野文六

    ○吉野政府委員 「牧港住宅地区」でございます。
  52. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 そのとおりでしょう。「牧港住宅地区」ですよ。それであれば、六十六で住宅、住宅とおっしゃるのであれば、この六十六のところは那覇空軍なら那覇空軍でもいいでしょう。その次に、あるいは海軍なら海軍住宅地域とか、ここで言えば地区ですか、当然同じように出てこなければおかしいのじゃないですかね。もう一回機会を与えたいと思うが、どうですか。
  53. 吉野文六

    ○吉野政府委員 この名称につきましては、いろいろ当時の交渉の最中に、その場所にある特色のある物体をつかまえて書いたような次第でございますが、少なくともこの「那覇空軍・海軍補助施設」というのは住宅を主としております。住宅の中にはもちろん空軍も海軍もおりますが、それから学校とかそういうような施設がありまして、本質的には牧港住宅地区と変わるところはございません。
  54. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それでは、どうも私は、この六十一と六十六がこんなにくっついている、同じリストで。非常に苦しい御答弁をなさっているので、この辺でこんなことをしておったら全然進まないので、ちょっと伺いたいのですが、来年七二年ですね。返還協定の六条二項、これでもって「施設及び区域の外にあるものは、同日に日本国政府移転する。」こういうようなことが書いてありますけれども、この規定に従って、日本国政府移転される財産、これは出ていますけれども、この表の中に出ておるこの財産、一番初めに「那覇空港施設」が載っているわけです。そしてまた当然これはC表にも「那覇空港」が出ております。そういうわけで、私たちが理解しておっても、先ほど来申し上げているようないまの施設は、すなわちA表の六十六の那覇空軍それから海軍、こう出ているわけですけれども、間違いなく軍関係ですよ。こういうものがあるじゃないですか。どうですか。これはどういうことか私もさっぱりわからない。この点を説明をしていただきたいと思います。
  55. 吉野文六

    ○吉野政府委員 那覇空港はそれ自体、現在民間も使っておりますし、復帰後は全部日本民間空港及び自衛隊の使うところになるわけでございますが、それ自体非常に財産的価値がある。たとえば、滑走路の舗装だとか、管制塔とか、いろいろの意味でそれ自体財産的価値がある。したがってわれわれとしては、基地としての面と——それがC表に出ておりますが、それから財産の面と、そういう二つの面からこれを考えている次第でございます。
  56. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 私は財産というようなことを何も聞いていません。私が聞いているのは、いわゆる日本国政府移転される財産、ことばの中にはこういう形で出てくるけれども、この返還されてくる空港施設とC表に出ているこの二つは当然ここに出てきているわけですね。そのいわゆる那覇空港に、先ほど答弁のあったとおり、こういう軍の施設——住宅だって何だって軍関係ですからね。別にそこの機関砲がどこかへ持っていかれたとかいうこと、これは、軍施設がそこにあるということは、これは危険なものじゃございませんのでというような、そんな言いわけはできないと思いますね。明らかに返還されてくるC表の那覇空港の中に、こういうA表の六十六がぴしゃっと入ってきているわけですよ。こんなに詳しく説明しなくとも、当然外務省は、アメリカ局長ですからよくよくおわかりだと思う。この辺のことを私は聞いているわけなんで、これは一体どういうことですかと伺っているわけです。私の質問をはぐらかさないでくださいよ。どういうことですかと聞いているのです。
  57. 吉野文六

    ○吉野政府委員 お答えいたします。  元来米側は、那覇空港地域一体を大きな米軍の基地として持っておったわけでございます。われわれは交渉の結果、飛行場に当たる部分を返してもらったわけでございます。したがって、まだその那覇基地の一部には、すなわち空港の後背地域には、先ほど先生の御指摘されたいわゆる「那覇空軍・海軍補助施設」こういうようなものが残っているわけでございます。したがって、その部分は今後、将来の問題としてあるいは返ってくるかもわかりませんが、当面はわれわれとしては空港及びこれに属する施設、これを返還してもらったわけです。
  58. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 これはやはり御答弁の中でよほど注意されて、ずっと——非常によけいなことかもしれないけれども、答弁されたほうがいいのじゃないかと思いますね。おかしいじゃないですか。那覇空港は返ってくるのだ、いまもその中に含まれておりますけれども、それは将来きっと返るでしょう。こんな返還協定ないですね。アメリカ局長はいつもすばらしい御答弁をされるのだけれども、どうもこれに引っかかっちゃったみたいですね。どうですか、もう一回何か言うことがありますか。
  59. 吉野文六

    ○吉野政府委員 結局もう一度いままでお答えしたことを繰り返すことになりますが、先方は、この交渉当時は那覇空軍基地といいまして、那覇空港及びその後背地一般を含む大きな地域を彼らは基地として使用し、またこれを保持することを主張していたわけでございます。それに対しまして、ともかく空港の部分だけはわれわれぜひとも必要だ、こういう意味でいろいろ交渉した結果、結局空港に当たる部分は返還される、こういうことになったわけであります。
  60. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 空港に当たる部分ということで御説明がありましたけれども、先ほど私がちょっと聞いた空港施設、こういうものも当然入ってきているわけですよね。空港施設として当然入ってきています。「那覇空港」、ぽつっとC表にあれだけ載っているのなら、いまでもほかに問題は進んでいってしまうのですけれども、空港施設、そしてこっちのA表の六十六もやはり施設関係ですからね。そういうことで、これは私は、ここのところは一番問題だと思う。聞いたところによりますと、外務省もこれで一番頭を悩ましておられるということを私ははっきり聞いております。それを、このように何とかうまくこう逃げられれば、いわゆるこの質疑でもってするっといこうかとか、あまりごまかさないほうがいいと思うのですね、この点は。これは何もやり込めたり、こっちが一本取ったとか、そんな問題ではない。やはり私たちは、日本の国の立場に立って、こういう問題が起きてきたときには、はたしてどういうふうにすべきかという、これはやはり考えていかなければならない、答弁をかわすとか、ごまかすとか、そういうことが、別にいままであったとは申しません。そういうことがこれからあっては断じてならないと私は思うのですけれども……。  一般論としてこれから伺っていきましょう。一般論として、このような三者が共同をして、いわゆる民間と自衛隊と、そしてまた米軍が使用して——ちょっと沖繩のことをはずしてください、一般論ですから。こういう状態になった場合ですね、これはどうでしょう。私もよくわからない。地位協定上、何条の何項でやることができるわけですか。
  61. 井川克一

    ○井川政府委員 那覇空港につきましては、先ほど外務大臣お答えいたしましたとおりに、三者が使うということはあり得ないわけでございます。しからば一般論といたしまして、三者が使うというおことばでございますが、いずれにいたしましても、日本アメリカが使うという関係ならば、地位協定の二条四項(a)ないしは二条四項(b)という形が行なわれておるわけでございます。
  62. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 条約局長いままでの議論をどういうふうに聞いておられたのですかね。これは、那覇空港がそういう三者の姿になるわけですよ、これでいけば。だから私は、一般論として条約局長に伺っているので、これは、那覇空港というものは確かに返るでしょう。しかしながら、その空港施設として米軍は、あのいわゆる海軍とか空軍のは残されている、A表の六十六をごらんになっていると思うのですがね。そういった意味で私は、三者がそのように共同使用する場合にはと、こう出てきたわけなので、その観点からひとつもう一度答えていただきたい。
  63. 井川克一

    ○井川政府委員 わかりました。那覇空港という、先ほど吉野局長がるる御説明申し上げておりましたけれども、その中で、いま先生がおっしゃいます、われわれが申しております那覇空港と申しますのは、返還される部分でございます。地位協定二条によりまして提供する部分ではございません。そのほかの部分の、その後背地の部分を二条によりまして提供するわけでございます。二条によりまして提供する部分は、アメリカ施設、区域でございます。そして那覇空港アメリカ施設、区域ではございません。したがいまして、その那覇空港部分においては民間航空場になるわけでございますけれども、自衛隊も入ると聞いておりまするが、その部分は提供する施設、区域ではございませんので、二条の問題は起こらないわけでございます。
  64. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それでは、条約局長そう言って御答弁あったので、私は一応それは尊重するとしましょう。最悪のそういった事態が、いわゆる三者共同使用というようなことが考えられない、その証拠を出せますか、証拠を。
  65. 井川克一

    ○井川政府委員 条約的に申しますと、地に協定二条によりまして提供しないということによって、三者というふうなことが起こらないわけでございます。
  66. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 提供しないと言いましても、A表の六十六にはっきりと——これはもう調印したのでしょう、調印してますね。
  67. 井川克一

    ○井川政府委員 その点につきましては、吉野局長るる御説明申し上げておりますが、C表にございます那覇空港及び返還協定第六条の合意議事録にございます那覇空港は、日本側返還される部分でございます。アメリカに対しまして、施設、区域として提供する部分ではございません。(「全面じゃないじゃないか」と呼ぶ者あり)全面的に、つまり提供しないのでございますから、アメリカ軍とは関係がないわけでございます。
  68. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それでは、ここで先ほどのP3の、いわゆる対潜哨戒機移転問題にちょっと最後にもう一回だけ戻っておきたいのですが、このP3が、ちょっとさっき御説明したように、十カ月くらいかかるわけです、移転するために。技術的に見てもどうしても十カ月かかる。そうすると、もう先月から次の移る場所に対して、工事を始めていなければならない、こういうことですね。さっきの施設の問題、わかりました、一応ここにおきましょう。ですから、P3の対潜哨戒機がどうしても来年七月までに間に合わないという事態というのは、いわゆる施設の工事期間、これから十カ月かかるという期間から考えて、七月一日に撤去できないのではないか、当然これはP3が移転できない場合が考えられるわけですね。この場合どうなりますか。
  69. 井川克一

    ○井川政府委員 私、条約屋でございますので、その建設がどうなるかということはよく存じませんけれども、先ほど外務大臣もおっしゃいましたとおりに、返還日には完全に撤去されて、完全な日本側のものとなって、二条によって提供する地域にならない、こういうふうに外務大臣が仰せられておるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、条約屋でございますので、その後工事がおくれてというふうなことをいま想像して何らの作業をいたしておりません。全部日本施設になる、日本のものになるというつもりでやっております。
  70. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 条約屋さんですから、私はそのように、むしろお伺いしているわけですよ、条約の専門ですからね。ですから、したがって私は伺っておるのですけれども、P3が、私が先ほど外務大臣がおっしゃったこと、あれはあれでもう終わっているわけですからね、そのようにおっしゃった、わかりましたと。しかし、いま仮定として、条約の立場からだから聞いているわけですよ。万が一ということばがある、P3が撤去されなかったという形態、そういうときにははたして条約上どういうふうになるか、だから条約屋さんに聞いているわけですね。どうでしょうかね。(「万が一じゃなくて、万が万だぞ、これは」と呼ぶ者あり)万が万かもわからない。どうですか。
  71. 井川克一

    ○井川政府委員 私、そういう事態を予想して作業をするような命令は全く受けておりません。完全に日本側に返るということでございますので、そこまで考えておりません。
  72. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 いずれにしましても、この工事関係の問題、これはやはり工事屋さん、建築屋さんに聞かなければわからない問題でしょう。  それでは、その次に移転しなければならない場所に建物を建てろ、施設をつくる、そういうことに対して、いつから工事をして、いつまでにそれが完了するとか、そういうことのこまかい見積もりであるとか、そういうものは全くこの段階ではどうなっているのか私わからないけれども、これは条約局長にお伺いするのは無理かと思うのですが、これはどうでしょうね。この点については私は非常に疑問に思う。こんなこと言ってたって、実際にその施設をつくるためには、半年やそこらではできないでしょう。かりに半年くらいでできるとしたって、もうこの時点でいろいろと図面が引かれ、場所が設定され、予算金額が出てこなければならない、そういうような作業がずっと進められていかないで、何で来年の七月の一日に間違いないとか、返るとか、そういうことが断言できるかということですね、裏づけがなくて。こういうことを私は非常に疑問に思うし、また非常に大きな矛盾じゃないか、こう思うのですけれども、ひとつこの点答えていただきたいと思うのですね、そういうこまかいことを。どこまで進んでいるのか。
  73. 福田赳夫

    福田国務大臣 中川さんの御心配、よく私もわかります。実は私もやきもきとしておるのです。そこで、いま米軍に早く移転先の決定をしてもらいたい、移転地域を指定をしてもらいたい、移転計画施設計画をしてもらいたいということを要請しているのですが、まだ肝心かなめの移転先の決定というものが行なわれていない、こういう状況でありますので、よけい私も心あせっておる、こういう状態でありますが、いずれにいたしましても、返還時にはP3は完全に撤去させていただく、こういうことにつきましては、これはもう一点の間違いないということをはっきりと申し上げさせていただきます。
  74. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それでは、この問題はあまり詰めておりましても、次のほうに移れませんので、いまの外務大臣の御答弁、一応それは受け取っておきたいと思います。  しかしながら、最後にやはりこれは条約の立場からも聞いていかなければならないし、私たちもそれだけ心配しているわけですから、万が一、先ほどから申しておりますけれども、事実上それが撤去できないという事態が発生してきた。起きてきた。いまこの時点では、もう私は外務大臣のおっしゃるとおり信じましょう。しかしながら、そのような事態が起きてきてしまったというときには、これは二4(b)なり——二4(b)としましょうか。こういうふうなケースが当然考えられてきますね。これに対して、イエスかノーかでちょっと答えていただきたい。
  75. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういう事態は全然予想しておりませんです。しかし万一、これはほんとうの頭の中の問題として、万一、三者が共同使用というようなことになる場合の法的解釈いかんということになると、先ほど条約局長が御説明したとおりの根拠に基づくことになります。これはあり得ないことでありますが、念のため申し添えたわけであります。
  76. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 そうしますと、官報にもあるように、合衆国軍隊の使用期間中は地位協定の必要な全条項が適用されるとなるわけですから、そのような事態が発生した場合はたいへんな問題になる、こういうことが言えてくると思います。このいわゆる返還協定の中をながめてみて、これはたいへんな問題が発生してくるという、こういうことだけはこの場所ではっきり申し上げておきたいと思います。  それでは議題を変えまして、私、ちょうどいま一時間たちましたけれども、次に、これまた非常に沖繩返還ということに際して、あるいは返還ということだけでなしに、もう戦後の、いわゆる講和前の対米請求権というところから話が始まるわけですが、この請求権についてしばらく御質問をしたいと思います。  対米請求権については、アメリカ政府は、これはもう御承知のとおり平和条約十九条の(a)項において、この規定から沖繩県民のいわゆる講和前の対米請求権というものは日本によって放棄されたのだ、このようにアメリカは言っておりますし、したがって、米国政府が行なったところの講和前のいわゆる補償というものは、これは施政権者として沖繩住民の福利のために行なったところのあくまでも恩恵的なものなんだ、このようにアメリカ政府は見ておるわけでありますけれども、それに対してわが国政府はどうか、日本政府は平和条約十九条(a)項によって、講和前の対米請求、この請求は対米折衝をいまや行ない得ない。しかしながら、沖繩県民の個々の請求権は消滅していないという、そういう態度をとっているわけですね。この件について外務大臣どうですか。そういうようなこの解釈、私がずっと言っていっただけですが、日本政府の解釈として間違いがないかどうか、ちょっとお答えをいただきたいと思います。
  77. 福田赳夫

    福田国務大臣 対米請求権問題、これは種々雑多というか、数えきれないほどの問題があろうと思うのです。その中で、アメリカの法令に基づく根拠を持つもの、そういうものにつきましてはアメリカがこれを補償する、こういうことであります。それから法令の根拠はないけれども、あるいは復元補償漏れの問題、あるいは海没地の問題、そういうものにつきましてアメリカがこれを補償を行なう、こういうことにいたしておるわけであります。  しかし、それだけで全部請求権問題が解決されたとは思わない。そこで、請求権をよく調べてみまして、そしてそれに漏れたものでこれは補償しなければならぬというような問題につきましては、これは国内措置としてこれを片づけたい、こういうふうにいま考えておるわけでありますが、特に協定締結時においてはっきりしておりますのは、講和条約前の人身傷害に対する補償漏れ、この問題があるわけでありまして、これは当然わが国は、政府として国内措置をとらなければならぬというふうに考えまして、いま皆さんにその法案についての御審議をお願いをしている、こういうところでございます。  その他の問題につきましてもかなりいろいろな問題があろうと思う。これは早急に調査をいたしまして、もしこれが補償を要するという性格のものでありますれば、国内措置としてこれを解決をする、そういう基本方針をとっております。
  78. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 私があとでお聞きしようと思った答弁が先に出てしまったのですが、私がさっきお聞きしたのは、この場ではそういうことではないわけです。いわゆる講和前の対米請求について日本政府は対米折衝を行ない得ない、そのことが一つ。それからいわゆる沖繩県民の個々の請求権は消滅はしていない、こういう見解を日本政府が打っておられること自体、これは間違いございませんかと開いているわけです。
  79. 福田赳夫

    福田国務大臣 条約上の解釈にわたる部分は条約局長からお答え申します。
  80. 井川克一

    ○井川政府委員 先生おっしゃいましたとおり、講和前補償につきましては平和条約第十九条によって放棄しておりますという解釈が日本政府の解釈でございます。
  81. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 いや、これはほんとうに時間がもったいないんですよ。何べんも同じことを聞きますが、対米折衝を行ない得ない、これは当然ですよ、こういう十九条があるのですからね。  それから、その次に申し上げたのは、個々の請求権は消滅していないという今日までとってきた日本政府のその解釈は間違いございませんか。これはイエスかノーかだけでいいのですよ。それでなければすぐ入っていけない。時間がほんとうにもったいないですから……。
  82. 井川克一

    ○井川政府委員 請求権放棄の意味でございますけれども、国際法的に申しまして、これは個人が持っている請求権が相手側アメリカ、これは平和条約でございますから、連合国でございますが、相手側がこれを否認しても、この責任を追及する国家として、日本国政府が追及することがない、こういう意味でございます。
  83. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 そうなると、これはずいぶん捨っぱちな、かってに交渉しろと——一人の人がどうやってアメリカ交渉できますか。日本政府としては、国としてはもう放棄してしまった、だけれども個々の請求権が——ここにあるのですよ、愛知外務大臣の御答弁が。その中にはっきり出ている。だから私は聞いているわけです。間違いないですねと聞いてからスタートしているわけなんで、私が意地が悪ければずっといってしまいます。そういうわけで、外務大臣がおっしゃっていることは、前半省略しますけれども、沖繩県民の個々の対米請求権を消滅せしめるものではない、これが同条に関連するところの政府の態度である、はっきりここで言っているわけですね。ですから、そういった意味で聞いたところが、いまの御答弁からすると、それでは、消滅はしないだろうから、かってにアメリカとでも交渉しなさい、それに対してはとやかく言わぬよ。これでは一体沖繩の住民は、住民といってもそういう損害を受けた方々は、どうやって、どこの裁判所に、だれのところへそういうものを持っていったらいいのか。だから、この個々の請求権云々ということは、私はこれはほんとうに重大な表現じゃないかと思うわけです。  そういうわけで、それではまず対米折衝を行ない得ないということは、これはどういう意味ですか。行ない得ないということ、これをまず答えてみてください。
  84. 井川克一

    ○井川政府委員 愛知大臣が申されたことと私が申し上げていることと相違はないと思います。条約と申しますのは国家間の関係でございます。国家間の関係といたしまして、先ほど申し上げましたとおりに、国民の請求権の放棄という意味は、相手側がこれをいかに否認しても、相手側の責任をわが国として追及することができないという意味でございます。これは御存じのとおりに、いわゆる国際法の主体というものが国家ということになっておりますので、そういうところからくる当然の解釈だろうと思うわけでございます。
  85. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それでは、そういう解釈としてなんで、事実からいきましょう。  個々の対米請求権を消滅せしめるものではないということは、これはどういうことかということに移っていきますが、これは法的な根拠は何ですか。愛知さんが、個々の対米請求権を消滅せしめるものではない、このように言っておりますね。この法的な根拠はどういうところですか。もう少し法的に根拠を示してもらいたい。
  86. 井川克一

    ○井川政府委員 条約におきましてこの種の問題が取り上げられますときに、一般的に申し上げまして、まず国家の請求権の問題があると思います。国家の財産が損傷される、この場合に、国家の請求権の放棄となるわけでございます。  さらに国家——これは後ほど申し上げます。  さらに、しからば国民の請求権というものは何であろうか。国民の請求権といいますものは、先生よく御存じのとおりに、国際法上、個人は一般的に国際法上の主体となり得ないわけでございます。したがいまして、この場合におきまする国民の請求権と申しますものは、相手国の国内法上の請求権であるということになるわけでございます。その相手国の国内法上の請求権を、国家間の約束においてどう処理するかというのが問題であるわけでございます。したがいまして、国家といたしましては、一般的に個人の請求権が否認された戦争状態とか占領状態とかでない場合に、その場合、相手国政府の責任を追及することができるわけでございます。しかしながら、この平和条約におきましては、ほとんどすべての平和条約がちょうどそのとおりでございますけれども、その個人の請求権、相手の国内法上の個人の請求権を、かりに相手国の法令上認められていても、それを否認しても、国家間における国家責任の問題は生じない、こういう意味でございます。
  87. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 国家賠償請求事件の判例がここにあるわけですけれども、この判示事項一のところがここに出ておりますが、「平和条約第十九条(a)項は我国に連合国軍隊又ば政府当局が存在していた事実から生じた我国及び我国民の連合国及び連合国民に対するすべての請求権を放棄する趣旨であると解すべきである。何故なれば同条に於ては「連合国及びその国民に対する日本国及びその国民の」すべての請求権を放棄すると規定されて居り、右放棄される権利は所謂国の外交保護権と国民の個々の権利とを包含する事は明だからである。」これは、「個々の権利とを包含する事は明だからである。」この事件は、日本で、占領中にアメリカの兵隊に射撃されて重傷を負った事件ですけれども、結局は放棄されてしまっておる、こういう事例です。それでは、さっき条約局長は、それがどうなろうと相手国を追及することができる、こうおっしゃったのですけれども、これは何かあとで追及してますか。
  88. 井川克一

    ○井川政府委員 私は、相手国を追及することができないのが請求権の放棄の意味である、こう申し上げたつもりでございます。
  89. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 個々の問題についてはそのようにおっしゃったのじゃないですか。個々の問題については相手国に対して追及することができる、このように言われたのじゃないですか。
  90. 井川克一

    ○井川政府委員 申しわけございませんが、私はそのように申し上げたつもりはございません。国民の請求権が、結局、これは国際法から考えてみますと、相手の国内法上のものである、その国内法上かりに認められても、相手国がこれを否認しても、日本政府としては相手国の責任を追及することができない、こういうふうに申し上げたつもりでございます。
  91. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 いずれにいたしましても、なぜこういうことを聞いていくか、いわゆる日本政府の姿勢というものが、個々の対米請求権というものを消滅せしめるものではないという、こういう態度をとった、愛知さんのこの答弁にあったとおりですね。ここに引っかかってしまうわけですよ。ここにあるのは琉球列島米国土地裁判所の裁決書のコピーですけれども、この中にもちゃんとすべての、とはっきり出てきているわけです。個個の、とかなんとか全然出てきていない。これがやはりずらっと出てまして、英語で書かれておりますけれども、この一番のポイントとなるところ、十九条の関係のところ、これはこういうふうになっております。「ザ トリビューナル オールソー テークス ジュディシャル ノーティス ザット オール クレームス アゲーンスト ザ ユナイテッド ステーツ ウア ウェーブド バイアーティクル ナインティーン オブ ザ ピース トリーティー ウイズ ジャパン、エフェクティブ オン トエンティーエイト エープリル ナインティーンフィフティーツー。」こうなっております。いま「オール」ということばが出てきたでしょう。すべてですよ。個々とかなんとか、そんな問題ではない。はっきり出ている。これは全部却下されております。そうじゃないですか。こういうふうな実際の例があるのに、いまだに政府は個々の請求権は生きているんだ、消滅していないんだとか、県民をまどわすようなことをそのように言っては私は断じてならないのじゃないかという立場から、いまここで二、三確認したわけです。  次に進んでまいります。個々の請求権を放棄されたことに対して、では沖繩県民はどのように解釈しているか、この問題について二、三読み上げてみたいと思うのです。「日本は一九四五年以後、ニミッツ布告及び行政分離覚書により、沖繩住民に対する統治権を完全に停止されていて、平知条約締結当時、沖繩住民の請求権については全くあずかり知らぬ立場にあった。」ということです。「かかる地位にある日本国沖繩住民の請求権を放棄する椛限はない。」このようにはっきりと言い切っております。  第二番目が、「平和条約締結当時、沖繩県民は、日本から全く切り離され、米国の直接占領下に」置かれていたということ、ここのところが大半だと思います。すなわち、「平和条約締結についての意思表示をする道を形式的にも実質的にも全く奪われていたのであるから、日本国の請求権放棄は沖繩県民に及び得ないものである。」県民の知らないうちに、意見が反映されずに、勝手に放棄されてしまった、このように叫んでいるわけです。  第三番目、「請求権の放棄とは、敵国と講和するための対価条件であるから、講和する条件として本土国民の請求権を放棄することの妥当性は、あるいは認められるとしても、沖繩を引き続き米国の占領下に置きながら、なおも沖繩県民が、請求権の放棄という犠牲を負わねばならない理由はない。」これが第三番目です。  四番目、これは最後ですけれども「奄美返還協定に、講和前の請求権を放棄する旨の規定があらためて存在」しております。条約局長、この点途中ですけれどもこれは間違いないですね。
  92. 井川克一

    ○井川政府委員 確認規定として奄美協定に入っております。小笠原協定には入っておりませんし、今度の協定にも入っておりません。
  93. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 私は確認協定というのはあとから出てきたような気がしてならない。この平和条約十九条(a)項が奄美住民の米国に対する請求権を放棄していなかったということを物語るのではないか、このように私たちは解釈をするわけです。したがって、当時の奄美住民と同一の法的地位にあったところの沖繩の県民の皆さん方の米国に対する請求権というもの、これも放棄されずに存続しているんだ、このように見なければならないと私は思うのですけれども、おそらくこれを聞いても同じ答弁が返ってくると思います。  要するに、さような、いままで述べたとおりの大きな矛盾が存在しておるんだ。四つ読みました。ずっとこの県民の叫び声をいま読んだわけですけれども、そういうわけで結局は個々の請求権がどうだこうだというようなことでごまかされてしまったのではどうにもならない。そういうわけで、せっかく総理もこうやって御出席されておるわけですから、私は総理にお聞きしたいと思いますけれども、この放棄させられてしまった請求権、これは間違いなく国が補償すべきである、法的な措置をはっきりと講ずるべきである、このように思いますけれども、一度確認していただきたい。総理大臣お願いします。
  94. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほどから、請求権は存続する、こういうふうに受知外務大臣が言っておるというお話ですが、まさに法的にはそういうことになるわけなんです。ただ、わが国が外交交渉権を放棄するということになった結果、実際問題とすると、実体は請求権の放棄、実体的放棄、そういうことにつながってくる、こういうふうに思います。  さあそこで、放棄された請求権は一体どうするのかというのが、いま最後の中川さんのお尋ねでございますが、これはいろいろな請求権があります。これを琉球政府その他の現地の御協力を得まして精細に調査いたしまして、ほんとうにこれは補償を要するというようなものでありますれば、国内的に適正な措置を講ずる、こういう方針であり、これは大体予算措置で片づくというようなものが多いかと思いまするけれども、また、立法を必要とするというものがありますれば、立法をしなければならない、さように考えております。
  95. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それじゃ講和後を主体として、沖繩現地の対米請求を便宜上分けてみますと、一から十番まであるわけですが、講和前の人身損害補償漏れ、あるいは軍用地復元補償、米軍演習等による漁業補償、軍用地の接収に伴う通損補償、軍用地借賃増額請求、軍用地立ち入り制限に伴う入り会い制限による損失補償、あるいは講和後の人身損害に関する補償、つぶれ地補償、滅失補償、そして基地公害に関する補償、この十項目になるというわけです。これは政府の説明であったわけですけれども、協定締結にあたってこういった沖繩県民の対米請求の取り扱いについて、またこれは先ほど総理に実は伺いたかったのは、ああいったことも結局沖繩県民として、ここで総理がどういうふうに言うだろうかと耳を傾けておられると思うのです。そういうわけで、十項目になるこの問題についても、日本政府はどのような基本姿勢で対米交渉を行なわれたのか。これは総理ぜひひとつ答弁願いたいと思うのです。——総理、答えなさいよ。
  96. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど外務大大臣から詳細にお答えをいたしました。もちろん私は、沖繩の方方がずいぶん苦労されたことについては心情的に非常に同情しておるその一人でございます。私は、皆さんに負けないような、心情的には心から御同情申し上げております。しかし、ただいまのような問題になると、これを包括的に直ちに、よし引き受けた、かようには申し上げかねます。したがって、十分調査して、それに適切なる処置をとる、これだけは申し上げておきます。
  97. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 私がいま、どういう基本姿勢で対米交渉に臨んだか、まずどういう——たとえば先ほどもちょっと出てきましたけれども、理由あるものは向こうに請求するとか、それから今度はこの返還協定の中でどういうふうな形で約束していますが。何条でしょうか。非常に基本的なことで恐縮ですけれども、何条にあらわして、要するに対米交渉の結果それが出てきたかということですね、この請求は。
  98. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 条約の問題は条約局長から説明させますが、どういう気持ちで対米折衝をしたか、こう言われたその事柄に、私ぜひ理解していただきたいと思うのです。国民の皆さんにもぜひ理解してもらいたい。われわれはできるだけ対等の気持ちで沖繩交渉返還、祖国復帰、その交渉をいたしますけれども、現実には何といってもさきの戦争によって占領された、こういう現実の事実がございます。そのもとにおいての折衝でございますから、そこらにいわゆる対等でないじゃないか、あるいはやや弱いじゃないか、こういうようなおしかりを受けるのではないか、かように思いますが、私はそういう現実を十分踏まえて、わが国の国益を守る、こういう立場で対米折衝した、その気持ちだけははっきりこの場を通じまして国民の皆さま方に訴えたいと思います。
  99. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 総理がそのようにおっしゃるなら、私のほうも国民の皆さんにこれから申し上げる形で訴えてまいりたい。この返還協定四条一項で放棄したところの請求権、これについては、もちろんこれも現地の方の意見、考え方、これは戦争状態に終止符を打つという、いわゆる平和条約、これとは今度は異なっているわけですよ、四条一項。すなわち木協定は、あくまでも施政権の返還の取りきめにすぎないじゃないか。戦争状態に終止符を打つという意味ならこれはわかるとしても、今回のは、四条一項にあらわれているこれはあくまでも施政権の返還じゃないか。この点はこの前も委員会で議論されておったようですけれども、ここは大事だと思います。この協定の締結にあたって、アメリカのほうが施政権者として当然なすべき補償でありながら、そのままほったらかしておいて、そしてそういったことから生じた沖繩県民の請求権というものをアメリカ日本国に放棄させてしまう、こういうことです。これではあくまでも国際信義上許せない。断じて許せない。総理はよく国際信義、国際信義とおっしゃるけれども、この問題こそ断じて許せないと私は思います。こういった意味で、平和条約締結にあたって、いわゆる広く行なわれているところの請求権の放棄という問題、これは実質的には、国民の財産を戦争処理の賠償に充当するということと同じ性格を持っているわけですから、そういった意味で私はこの施政権返還という問題については断じて違うんだ。  ところが、政府の説明は、平和条約十九条の「日本国」に沖繩は含まれないと解釈することは困難である、あるいはいわゆる日本国民に沖繩県民が含まれないと解釈することも困難である、これはちゃんと出ています。愛知外務大臣答弁に出てきております。したがって、沖繩については平和条約によってそのような処理は済んでいるはずである、こういうことです。沖繩人たちにしてみれば、とんでもない。いわゆる沖繩住民の財産について、いまさら賠償の責任に充てなければならない根拠はどこにもないじゃないか、この返還に際してですよ。そこを総理もよくひとつかみしめて——沖繩人たちは言っております。二十七年四月二十八日までに済むものは済んだじゃないか。にもかかわらず、また二度までもそのような放棄をさせられてしまう、こういうふうに声を大にして叫んでいるわけです。そういうような、対等にアメリカ交渉しました、そこはわかっていただきたいと総理はおっしゃるけれども、実際面にもこのようにあらわれてきておる姿は、やはり問題は現実面からとらえていかなければならないと私は思います。  そういった意味外務大臣に次に伺いたいのですが、日本は本協定の第四条によって、施政権下で生じた沖繩県民の対米請求というものを何の代償もなく放棄する、ここですよ。何の代償もなく放棄する、こういうことでありますけれども、これは最近の国際法上の先例に反しているんじゃないかと私は思いますけれども、この点はどうでしょうか。
  100. 福田赳夫

    福田国務大臣 政府委員から先例についてお答え申し上げます。
  101. 井川克一

    ○井川政府委員 この種の施政権の返還の先例と申しますものがほとんどないわけでございまして、したがいまして、なかなか申し上げにくいわけでございますけれども、非常に似たものを申し上げますならば、非常に古いところで、いわゆる山東懸案解決でありますとか、イギリスと中国の威海衛でありますとか、イタリアと中国の天津租界還付というふうなものについては、請求権放棄の規定がございません。またそれがどうなったかということはわからないわけでございます。  一般的に申しまして、普通の場合におきましてはやや最近のものといたしましては、インドにおけるシャンデルナゴルとか、あるいはポンディシェリをフランスがインドに返したというときには、請求権放棄ということが明確に書いてございませんけれども、いずれにいたしましてもフランスが施政権の行使として行なった行為からくるすべての権利義務を、インド政府が引き継ぐというふうなかっこうになっておりまして、フランス政府の責任は解除されていると思います。
  102. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 先ほど御自分で条約屋さんと表現されて、私、そういう表現はしたくない。しかしながら、それにしてはちょっといまの御答弁は、あれ以上もう出ないだろうなと思って、私はあきらめたんですけれども、要するに国際法上の先例に反しておるといわざるを得ない。ということは、要するに一方的な放棄と——よろしいですか、聞いてください。一方的な放棄、それと補償と両方を定めておるこの条約です。だから、私はその条約はあるかということで、出てくるだろうと思ったんですけれども、御承知のとおりだと思うのですよ。イタリア、ブルガリア、あるいはルーマニア、ハンガリー各平和条約、これは両方きちっと定めております。あるいはまたオーストリア国家条約、ボン条約、こういったものは、いまここで条約局長の口から出てこなければならないと私は思うのですけれども、両方定めているわけですね。ところで、じゃ、日本の各平和条約はどうか、そしてまた奄美はどうか、小笠原はどうかということになっていきますと、これは補償じゃないのです。一方的な放棄だけなんですよ。だから私は、国際法上の先例に反しているんじゃないか、何の代償もなく放棄してしまうということはと、このように申し上げた。  それでは協定の第四条というものは、アメリカの施政期間中、沖繩において生じたところの沖繩県民の対米請求というものを、日本国が放棄した規定であるわけですけれども、沖繩県民の対米請求権というものが、この四条においてどのように処理されるのか、どういう姿で処理されるのか、この点をひとつ並べてみてもらいたいと思います。
  103. 井川克一

    ○井川政府委員 先生の御質問の最初の部分につきまして申し上げさせていただきますならば、私、先ほどあげましたのは、できるだけこの沖繩返還という事態に似たようなものをさがし出して申し上げたつもりでございます。先生のお聞きになりましたのはすべて平和条約だと私思うわけでございます。平和条約にはほとんどあらゆる条約に放棄規定がございます。一方的放棄でございます。その一方的放棄の中で、戦敗国に補償義務を課しているかどうかという点については相違がございます。これは平和条約のことでございますので、ほとんど、もっぱら戦勝国の意思によって、戦敗国に補償義務を課しているかいないかということになるわけでございます。  第二点の、今度の第四条がどういうふうな規定になっているかと申しますと、まず第四条二項によりまして、アメリカの法令及び現地の法令に従って特に認められている請求権はそのままで、未解決のものをそのままアメリカが処理するということになっておりまして、合意議事録にその点がまた詳しく述べられているわけでございます。そしてその後段におきまして、一種のアメリカの行為を日本国内において認めますので、その職員についての規定があるわけでございます。その前に申し上げなければなりませんのは、これは平和条約十九条とは関係ございません。講和前のものは平和条約千九条で放棄されておりますので、先ほどから申し上げておりますのはいわゆる第三条、施政権下における問題でございます。そして、そのような法令で認められているのが二項でございまするが、二項で、法令にないものであっても、四条三項におきましていわゆる講和前補償漏れの原状回復を特にアメリカに認めさせたわけでございます。また海没地の問題についても同様でございます。そして、そのようにして残りましたものを、私どもはこれによりまして法律的にはほんとうに全力を尽くしたつもりでございまするけれども、しかしながら、やはり施政権が返って日本の全面的な領土となるということになりまするならば、ここにおきまして第一項を設けまして、その他のものについては放棄して、これにて日米間の決着をつけるということがどうしても必要だったわけでございます。  それから国内措置につきましては、すでに福田大臣が申されておりますとおりに、また第三次復帰要綱にも出ておりますし、また本国会に提出されておりまする防衛庁関係の法令の中で、第三条におきまして、講和前の人身損害のお見舞いにつきまして、実情調査の上善処するということがうたわれておるわけでございます。
  104. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それではもう時間も詰まっていきますので、次の、いまのに関連していますけれども、ちょっと一つだけ伺います。講和後の人身傷害に関する補償請求というものですが、これは外国人損雷賠償法に基づいて米国政府が支払うという、こういうことですね。
  105. 井川克一

    ○井川政府委員 仰せのとおりでございます。
  106. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 外国人損害賠償法の制定趣旨とその概要について、簡単でいいですからちょっと述べていただけますか。
  107. 井川克一

    ○井川政府委員 いわゆる外国補償請求法、外賠法と普通呼んでおりますけれども、外賠法によりますると、同法は外国にある米国の軍人、軍属、国防省の文官職員を含むそうでございますが、それらの作為、不作為または軍の非戦闘行動に関連して当該外国の住民に生じた死亡、人身傷害及び財産上の損害につき、これを迅速に解決し、もって住民との友好関係を維持することを目的として制定されたものでございまして、米施政下の沖繩におきましても、先ほど申し上げましたとおり、この法律によりまして、不法行為に対する、人身、財産に対する損害賠償が支払われているわけでございます。
  108. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 そうしますと、これはどんな人がそういうものを払ってもらう資格があるかという問題なんですが、沖繩県民であればみんなに適用されるのかどうか、この点はどうですか。
  109. 井川克一

    ○井川政府委員 請求権者でございますね。請求権者は、損害の発生した外国、その地方行政区画またはその住民、法人を含む、ということになっておりまして、「「外国」とは、外国内で合衆国の管轄下にある場所を含む。」ということになっております。それから、この請求権者になり得ない者といたしましては、米国軍人、軍属、それらの家族、外国に住所を有しない米市民というふうになっております。
  110. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 請求権者には当然それは考えられるでしょう。しかしながら、私が伺ったのは、請求権者であればすべてに支払われるのかどうかということですね。請求されれば全部に払ってあげましょう、外賠法というのはそうですか。
  111. 井川克一

    ○井川政府委員 これはすべての法律がそうであろうと思いますけれども、請求があればすべてに支払うというわけではございません。法律の手続に従って、法律の要件に従って支払われるものでございます。
  112. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 外国補償請求法ですね。この中に、これは御承知のように琉球政府の訳の場合にはそうなります。外賠法と同じですけれども、二千七百三十四条、ここで一つのことをいわれているわけですよ。請求者であれば全部に払いますなんということを条約局長がもしもおっしゃると、非常に次が続かないのですがね、請求者であればみんなに米側から支払われるのだということですと。さっきの答弁はよくわかりますよ。あの答弁はわかります。しかしながら全部に支払われるのかどうか、これは非常に大きな問題がここにあるのです。二千七百三十四条、これは続けますけれども、「外国において生ずる考慮する価値のある補償請求を早期に解決することにより友好関係を増進し、維持するために、」云々と、こう書いてあるわけですね。そうですね。そこのところをちょっと確認してください。
  113. 井川克一

    ○井川政府委員 私ども、通常外国人損害賠償法と申しておりますのは、正式には米国連邦法第十号の二千七百三十四節、この二千七百三十四節全体がわれわれのいう外賠法でございます。それから法令の趣旨といたしまして、一番先に、いま先生がおっしゃったものがそう書いてございます。
  114. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それじゃ、友好的である者に対してのみ支払うということがまたその下に書いてあるのです。「合衆国と交戦中の国又はその国と同盟関係にある国の国民にあっては、補償請求委員会又は現地司令官が、請求者が合衆国に対し友好的であると決定した場合」、友好的であると決定した場合、言いかえれば占領政策を批判するような者には支払わない、こういうふうに当然考えなければならないと私は思うのですけれども、これはそういうことですね。
  115. 井川克一

    ○井川政府委員 私はそういう意味ではないと思いますけれども、これはアメリカ法律でございますが、いずれにいたしましてもただいま問題となっておりますのは沖繩との関係でございます。沖繩との関係におきましては、講和後は、すなわち三条施政期間にはいわゆるビートラー書簡というものがございまして、沖繩人にはこれを全面的に適用するという声明がございます。
  116. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 要するに、友好的でない者に対しては、これを見たら、どうしても払ってもらえませんよ。そうなると大きな矛盾がまたもう一つここへ出てきた。総理が言われるように、口先だけの、平和で豊かな沖繩には断じてならないと私は思うのですよ。こういう問題がいろいろある。実際に支払われるものとそれからそうでない場合、歴然とこの法律が出てきてしまう、いやがおうでも友好的でないというふうに判断されてしまったときに。それはそうでしょう、ものすごい勢いで米軍のトラックにはねられて一人の子供を失った親が何で米軍に友好的にできるかということ。やはりいつまでもそのような状態を続けることがどうかということはまた別問題としても、どうしてもこのような占領政策に対しては賛成できない。かわいいわが子を奪われた親にしてみれば、向こうからそういうふうに判断されてもしようがない。それには払われない。こういうような事態が絶対に起こってこないとは、この条文からいったら絶対に言い切れないわけですね。そこで私はこの矛盾を一つ提起したわけです。  こんなことを言ってまいりまして非常に時間が少なくなってきましたけれども、具体例として二、三伺ってみたいと思うのですが、ここに「沖繩における米合衆国軍隊、軍人及び軍属の不法行為に基く賠償事故の主な例」一九六三年二月二十八日から七〇年二月二日、つい最近までですよ。これはずうっと何件か出ております。  一番最初に、国場君という十三歳の少年ですけれども、この少年は米軍のGMCトラックにひき殺されているわけですね。そういった事故があったわけです。これが、総理、ちょっと私参考までに伺いたいんですが、一万二千九百三十八ドル五十二セント、これが国場君というなくなった少年の請求額です。これに対してどの程度の賠低額が——ここに「解決済」と書いてある、リストの中に。どの程度の賠償がなされたとお考えになりますか。大体このくらいだろうとか、総理、一言でいいですから、総理の感覚、総理がどの程度に受け取っておられるか。
  117. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はわかりません。
  118. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 わからないなら、あと二つ聞こうと思ったけれども、同じことが返ってこざるを得ない。これは請求権を議題にして、とにかく沖繩の方々が平和で豊かなとおっしゃっても、何にも実態がわかっておられない。総務長官、そこにちょうど資料を持っておられるようですから、ひとつぜひ答えていただきたいと思います。どうでしょうか。
  119. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私は個々の一々の請求額と、落着あるいは決定した金額個々についてはつまびらかにいたしません。しかし資料その他で調べればわかると思いますが、しかし、先ほど来の外国人損害賠償法の賠償額の限度というのが同法に定めてあります。すなわち、現地限りで処理できる賠償額の最高限度額は一万五千ドルまで、さらに一万五千ドル以上の賠償額は議会の承認が必要である、こうなっておりますので、おそらく現地限りで処理される一万五千ドルのワク内において、いわゆる外国賠償委員会というものが決定をしているであろうと思います。したがって、また別な例でありますけれども、燃える井戸事件等でこの法律を適用されて、一応このワクの中で示されたものについて、なおかつその人は、議会の承認を得る金額であっても、自分は要求を引き下げないといってがんばっておられるという話も承知をいたしておるわけでありますが、現実においては、ただいまの国場少年の話のケースについて具体的につまびらかにいたしておりませんが、このような制限の中で行なわれているであろうことは想像にかたくないところであります。
  120. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それじゃ参考までに、燃える井戸の事件が出ましたので、これはきょうやるつもりは何にもなかったのですが、燃える井戸、これは井戸が燃えていますよ。要するに、くみ上げてそれを道路へばあっとばらまいてマッチをつけたらぼうっといってしまう。沖繩というところはこれを見てほんとうにたいへんだと、持って帰ってきたあとで、この東京の方はおっしゃっていましたけれどもね。これが十五カ所の井戸があるんです。ちょうどいま長官が井戸のことをおっしゃったので言いますけれども、これが請求総額が十二万六千余ドル、これは請求していますね。ところがこれに対してたった一万六千ドルしか払われていない、こういう実態ですね。  国場少年のことに戻りますけれども、一万二千九百三十八ドル五十二セント。これに対して賠償額はたった四分の一ですよ。三千二百三十三ドル。  そしてまた次の問題については、我喜屋良元さんという方です。四十五歳。これはアメリカ兵に刺し殺されているんですね。請求額が十六万九千三百九十七ドル五十三セント。これが賠償額が一万四千二百ドル。これは十分の一以下ですね。  これはあまりあげてもしょうがないが、もう一つだけあげましょう。上原シズさん三十四歳。これは米軍人に絞殺されています。絞め殺されています。これが請求額九千六百七十四ドル八十二セント。これに対してたった三千五百三十ドル。  ずらっとありますが、ここでやめておきますけれども、要するにこのような実態というものについて、総理、私は知りません、こういう御答弁であったということ——これはまあ数字を、総理に何十河セントとか、そんなことを私は何も聞くつもりはありません。しかしながら、総理が、よくわからぬが、しかし請求額に対して実際に賠償されているのが、まだまだ非常に少ないのじゃなかろうかというような、その点に関して何とかしなきゃならぬというような、そういうような答弁が何としてもきょうは返ってきてほしかった。しかしながら、わかりませんとおっしゃってすぐにおすわりになったわけですけれども、いまの死亡事件に関連しまして、これはけがしたほうなんですがね。これもくどいようですけれども、講和前で、先ほどの死亡のほうが百六十六件、傷害のほうが百七十六件、全部で三百四十二件、ずらっと並んでいます。  そして一、二をあげてみますと、ここに、幸地さんというんですね。これは傷害事件ですけれども、昭和二十三年の問題です。車にひかれました。要求額三千四百三十八ドル十八セント。この方かいまだに一この方は「子供が八人で夫婦入れて家族構成は十名、従って子供達の教育も中卒で辛抱して貰い、長男は生活難のために高校進学もさせることが出来ず、直ぐ軍作業にやってその収入で一家を支えて来た。子供に対して相済まないと思っている。」これはもうちゃんと政府に来ているはずです。  それから新垣さんという方、これも傷害。昭和二十四年。暴行です。要求額二千二百九十九ドル四十六セント。これは「傷害をうけてから無収入で生活が苦しく、役所にお願いして、現在も生活保護をうけている。」「家族は六名で子供達がかわいそうである。」「農協より相当の借金をしている。」「後遺症のため、現在でも労働にたえられない。」  栄野川さんという方、これは傷害。昭和二十年。トラックに突き飛ばされた。千四百五十六ドルを請求しておりますが、「その後時々精神発作をおこす。」「頭を打ったため、廃人同様で労働が出来ない。従って家族の世話になっている。」「後遺症で歩行困難である。」「三十五歳になった今日、」——ですからこの人はおそらく二十歳前後でこういう事故にあったのでしょう。いま三十五歳、「結婚も出来ず、子供達とぶらぶらあそぶ位がせきのやまである。」——遊ぶといっても、これは精神発作を起こしたり非常に危険があります。「母親は精神的に重荷を背負っている。」これは三十五歳ですからもう働き盛りですよ。こういう方がおかあさんにそのような心配をかけて、現在まだ何ら解決されていない。  こういう問題がたくさんあるんだということを、ひとつ総理、ぜひともこれはきょうを契機として認識を深めていただきたいと私は思います。なぜこういうことを言うか、総理は何にも先ほど答弁が出てこなかった。このことは私は非常に残念に思うがゆえに、このことをはっきりと要望をいたしておきたいと思います。ですから、くどいようですけれども、総理があの所信表明のときにおっしゃった、この上は沖繩県民の方々のことを思ってという、あの非常に名調子の文がありましたけれども——ここに出ておりますね。「この上は、その御労苦に報いるためにも、一日も早く円滑な復帰を実現し、明るく豊かでそして平和な沖繩県を建設することが、われわれに課せられた使命であると信ずるものであります。」この「使命である」とおっしゃっているけれども、こういった人身傷害に対する、損害に対する補償等について、どのような使命を感じられておるかということを実は私はきょうは聞きたかった。しかしこれは私は御答弁は要りません。要するに、言っていることと、そうして現実に行なわんとしていることがすべて、ずうっときょうこういうふうに運んできた中で、あまりにも矛盾が多いのではないか、このことを痛感せざるを得ないわけであります。  次に、あと二、三お聞きしたいのですが、演習に伴う漁業補償ですね。この演習に伴う漁業補償、これはどういうふうになりますか。条約局長でもいいですが、ひとつ演習に伴う漁業補償について……。
  121. 井川克一

    ○井川政府委員 土地裁判所に提訴されまして、土地裁判所の裁決があるわけでございます。
  122. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 先ほど私が読み上げた英文がありましたけれども、あれがいわゆる土地裁判所で却下されたわけですね。それに対してここに上訴申立書、上訴人のこういう申立書が来ております。却下されてしまった分ですね。これは読谷漁協ですね、読谷の漁業協同組合、四万二千六百九十四ドル十七セント、これが年間の損失額で、この件はいま申し上げたとおり、土地裁判所で却下されて、いま現在国防長官へ上訴中である、このような状態にいま置かれております。これだけじゃないんです。まだまだ審理中のものがたくさん並んでいます。全部読み上げるのも何ですから、数だけ申しますと十八、いまここだけで十八、ずらっと漁業協同組合が並んでおりますけれども、こういったものが結局先ほどの一例に見るように却下されていくのであれば、全部これは、せっかくこうやってがんばっても、却下されるのは明らかにいまからわかっているというように私には思われてならないわけでありますけれども、そういうところから、四の二で処理するとかなんとか言っておられても、実質的に放棄したのと同じじゃないか、私はこのように思います。実際の請求権は放棄されてしまうけれども、その場合、こういった問題について、日本としては全面的にこの法的措置で救済するかどうか。先ほどからこの問題、何度も出てきております。漁業問題についてほんとうに法的措置で救っていくかどうか。この件をひとつお答えいただきたいと思います。
  123. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 講和後におきます漁業補償の請求につきましては先ほど条約局長から御答弁がありましたように、今回の返還協定の中で、土地裁判所に訴願されている分については米軍が処理をするということになるわけでございます。そこで、これは各種の補償についてもそうでありますが、漁業補償につきましては、権利関係そのものの存在の確認が非常にむずかしいということで、米側においてそれを拒否しているという事例が相当あるようでございますので、したがいまして、漁業補償につきまして却下された分につきましては、今後、復帰後の時点におきまして、私どもとしても十分その実態を調査いたしまして、そしてその却下そのものが正当な理由がないというふうなことでありますれば、これはやはり米側に対して何らかのあっせん行為をする必要があるのではなかろうかというふうに考えておるわけでございまして、その辺は、漁業補償に対する米側の解決のしかたというものが、どういうふうになっておるかということについての実態をまず十分把握したい、かように考えておるわけでございます。
  124. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それもいろいろ問題がありますよ。ありますけれども、これはそこで突っ込んでいたら間に合わないので、いまその御答弁として一応ここでは受け取っておきたいと思います。  次に、軍用地の復元補償について伺いたいのですが、日米両国でどのようにこれが合意されたか。わかり切ったようなことを聞くようですけれども、これは次のことに関連しますので、どういう形で合意されたか。
  125. 井川克一

    ○井川政府委員 講和前補償漏れのものにつきましては四条三項でございます。講和後のものにつきましては四条二項でございます。
  126. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 基地の復元補償のことですけれども、久場サイトというのがありますね。この二つの村で、米側が基地の復元補償というものの放棄を要求してきた。ところが、村側がこの要求を受け入れるならば、向こうとしては七一年の十二月三十一日までに返還する、このように説明してきているわけですね。もちろんこれは村のほうでは今後とも強く復元補償を求めるとともに、協定どおり復帰前の実現を求めていく、こういうふうに、これは大ざっぱに説明すればそういうことです。そういう記事がここにあります。このことについてどうでしょうか、実際にどういう調査をされましたか。
  127. 吉野文六

    ○吉野政府委員 そのようなことはわれわれも聞いておりまして、米側に対して照会しましたところ、米側の返答は、これらの久場サイトの一部につきその住民と下相談を行なった。その際、地主側が復元補償を要求しなければ本年末までに返還することができるが、御存じのとおり、その上の地上物件等を土地所有者にはその際は贈与する。しかしながら、復元補償を要求するということであれば、地上物件の処分、復元に要する費用見積もり等について米側としても相当の日がかかる。したがってそう簡単に返せないというようなことを言った様子でございます。しかしながら、御存じのとおり、いずれにせよ久場サイトは返ってまいりますし、したがってその際には、先ほど井川条約局長が説明したとおり、返還協定の第四条第三項に示されているとおり、米側が自発的に補償することになっておりますから、いずれにせよこの問題は日米間でははっきりしております。このような下相談ということは、当然いつでも場合によってはあり得ることでありまして、これをことさらに重大視する必要はないとわれわれは考えております。
  128. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 ことばじりをとらえてたいへん申しわけないのでありますけれども、いつでもあり得るというそういう表現は、やっぱりあまりお使いにならないほうがいいのではないかと思いますよ。これは米国返還協定調印の後にこういうことをどんどんやってくる。こういう実例をあげたごとく、協定に調印したあとにこういうことを要請してきて、十二月三十一日に早目に返してやるぞとか交換条件みたいなことをいって、返還協定後にどんどんそういうことをやるとすればという意味ですが、実際的には返還協定と内容が変わってくるということ、実態が。もしこんなことが可能であれば——せんだって佐藤総理が、こういったいろんな問題に関する再交渉政府としては行ないません、せんというところを大きな声でおっしゃったのですが、こういうことがもし可能ならば、日本政府としてもいま問題になっている、いわゆる新しく琉球政府政府要求してきたような、あるいは二、三日前に同僚議員がやりました海没地の問題とか、いろんな問題が出てきておるわけです。こういった問題について直ちに調査を進めて、少しでも日本側によき条件に近づけるためにも、これは再交渉ができるのではないかということを切り返したいような気持ちになってきます。もしもいま御答弁いただいたように、こういうことはあろうかと思いますというような程度に考えたらとんでもない話だと私は思います。そういった意味で慎重に発言していただかなければ困ると思います。こういうことで米軍がかってに村長さんのところに来て、交換条件みたいなことをいって、もしそういう復元補償を放棄すれば早いところ返してやるぞというような、そういうやり口に対して賛成できない、このように思うわけですけれども、これは一応私の強い意見として申し上げておきたいと思います。  それでは最後に入っていきますが、講和前人身傷害補償あるいは通損補償、つぶれ地補償、入り会い補償等ありますけれども、これについては愛知大臣も、国内施策によって救済することを考えなければならない、このように言われておりますけれども、これらの請求権については国内措置ということで、法的措置、これはもちろんしますね。この点どうでしょうか。
  129. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 御承知のとおりに布令六十号によりまして、米国は人身損害その他各般の請求につきまして補償いたしておるわけでございますが、その中の人身被害の補償につきましては、御承知のとおりに講和前の補償をやっておるわけでございます。しかしながらこれは当時、昭和三十四年ごろでございますか、この補償をやりますにつきましての前提となります各種の調査をいたします場合に、その調査の指導、徹底を欠いておったということもございますし、その後人身被害に対する補償をいたしますにつきましての請求の時期について、ある過去の時点にさかのぼりまして、それまでの間に請求をしたものと、こういうふうな限定が行なわれましたために、一部補償漏れという現象が出ておるわけでございまして、その補償漏れに対しまして、今般の法案におきまして、これに対する見舞い金の支給措置を講じようということで、これによりまして見舞い金を支給することによってこの問題の処理をしたい、かように考えておるわけでございます。
  130. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 総務長官に一つだけお伺いしたいのですが、人身、通損、つぶれ地あるいは入り会い補償等についてどういうような予算措置をしておられるか、概算要求だけでもひとつお答えいただきたいと思います。
  131. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ただいま出ている概算要求は、二億五千九百万ということでございます。
  132. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 これは一つ一つわかりませんか。全体でいまそういうふうにおっしゃったのですが、この人身、通損、つぶれ地、入り会い補償等について、これはぜひここで——全体でそれだけとよくわかりますけれども、これはどういうぐあいになっておりますかね。
  133. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 来年度の概算要求におきまして、各種の補償関係経費につきまして、いろいろ私どもとしても処理をしたいと考えておりますが、先ほどの人身被害に対する補償につきましては、来年度予算要求におきまして約二億六千万程度の概算要求をいたしております。それ以外の各種の中間補償、あるいは農業、漁業の被害補償、こういうものにつきましては、まずその実態の把握が必要でございますので、総体におきまして約二千二百万程度の調査費を組みまして、調査の上ある程度の計画を立てまして計画的にこの処理をしたい、かように考えております。
  134. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 私がいま聞いているのは通損補償とか、いま四つだけたとえば例をあげましたね。これは一つ一つ全部予算措置がちゃんとできていますかということですね。これはどうですか。そういうふうにばあんと一ぺんに答えられてしまうと——一つ一つできていますかということです。ここは大事なところですから。
  135. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 通損補償並びに入り会い補償につきましては、これは琉球政府のほうからもそういう項目についての請求がございますけれども、具体的な請求額が出ておりません。したがいまして、これにつきましてはまず実態の調査をする必要がございます。  それから、先ほど申しましたように、具体的に農業の阻害あるいは漁業の阻害につきましても、これも具体的な請求の状況がございませんので、これにつきましてもやはりまず実態を十分調査するという必要があるわけでございます。  それ以外につきましては、これは主として周辺対策上の問題として、いろんな予算要求いたしてあるところでございます。
  136. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 そうすると、要請があれば、たとえば補正予算とかあるいは予備費を流用してでもやるわけですね。その点、ひとつ確認だけ。
  137. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 沖繩の現地の方々から要求がございますれば、それに基づきまして十分まず実態の把握をいたしまして、その請求が合理的に必要であるというふうに認められれば、私どもとしましては予算措置を講じたい、かように考えておるわけであります。
  138. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それでは、最後に結論だけお聞きして終わりたいと思うのですが、総務長官にお伺いしたいのですが、いままでずっとこういったいろんなことを長々と二時間述べさせていただいたわけですけれども、こういった点を非常に私は心配するわけです。  長官は、第三の琉球処分にならないように大いに努力をするということを常々おっしゃっているわけですけれども、本土とのいわゆる格差というんでしょうか、あるいはもしもそういうことが現実にあるということになれば、憲法十四条のいわゆる法のもとの平等にこれは当然反してきてしまうことですし、そういった意味で、こういう協定でやるやると言っても、なかなかできない面もあろうし、またいろいろな矛盾点も出てくるし、そういうところを非常に私は心配するものですが、国内措置でやれるように担当大臣として特にこれは努力をしていただく、またしていただいてきたとは思いますけれども、これから返還を目ざし、またほんとうにその後の沖繩の平和な島というものを建設するために、ひとつ長官の覚悟のほどを——何回も私はそれは聞いております。しかし、この場でやはりきちっと聞いてきたいと思いますので、結論的にお話しを願いたいと思います。
  139. 山中貞則

    ○山中国務大臣 すべては沖繩日本憲法の庇護のもとになかったためにこのような状態が残っておるわけでありますから、現在の時点でまだ実態も明らかでないもの等も残っておりますこともやむを得ない事態であろうと思いますが、アメリカに対する問題は別として、日本本土政府に対する請求権という法律上のものが存在しようとは思いませんけれども、しかしながら、日本国の責任において、日本国憲法が沖繩に及んでいなかった責任をとって、そうして祖国がそれに対して、法律が必要ならば法律ももちろん準備をしなければなりませんが、本土政府の立場において、責任を持って解決をすべきであると考えておりますので、今後さらに現地の人々の具体的な声、そしてまた調査に伴う遺漏のないように、私も担当大臣として協力をして、防衛施設庁を通じての予算のあり方等について、人ごとと思わない努力をしてまいりたいと存じます。
  140. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それでは最後に、総理大臣に結論をしていただきたいと思いまして、次のことを聞いてみたいと思います。  要するに、戦後二十六年にわたって米国施政権下にあった沖繩県民、これはもう私たちもしょっちゅう口にしていることですけれども、米軍等の存在によってこうむった多岐多様の、ずっといまさっきあげたようなああいった損害ですね、ばく大なものがあるわけですけれども、被害者である沖繩県民にとってみれば、その賠償請求そのものが、裁判上主張し得る権利としては認められてないという現状ですね。恩恵として米国のいわゆる恣意的な裁定による不当に低い補償、こういうことで片づけられてきたというか、なされてきたわけですけれども、ここで総理に伺いたいことは、本協定の四条によるような取り扱いで、また政府が措置しようとしておられるような国内措置で——両方ですよ、四条におけるもの、それからまた国内措置、そういったものでもって沖繩県民のほんとうに納得のいくようなそういう措置といえるかどうか、この点が非常に私は大事だと思います。何とかやりますよとか、何とかがんばりますというのはよくわかりますけれども、ほんとうに現実に沖繩県民の方々が納得のいくような措置といえるかどうかということですね。そういうわけで、これらにまた総理がどのように取り組んでいかれるか、その所感と決意のほどを最後に述べていただきたいと思います。
  141. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 結局、私の答弁も抽象的に終わるだろうと思いますが、しかしこの際は、ただいま御指摘になりましたような占領下あるいはまた施政権下にあって非常な苦難、苦痛をなめている、またたいへん人的にも人権が尊重されてないという非常な不平等な状況下に生活をしてこられたこれらの方々を、あたたかく迎えるということが何よりも私は大事なことじゃないか、かように思っております。したがいまして、ただいま御審議を願っております返還協定、同時にまたそれに関連する各種法案、これをひとつできるだけ早く成立させていただきたいと思うのでございます。そうして、一日も早くあたたかく祖国復帰を実現すること、これが何よりも大事なことではないだろうかと思います。その際に、ただいま言われたような各種の具体的な点について、またそれぞれの具体的な事例について、私どものできるだけの処遇、処遇をすること、これはもう当然のことだろうと思いますので、私は、そういう点であらゆる努力をする、その決意であることをこの際御披露いたします。同時にまた、御審議をいただきます皆さま方にも、どうか沖繩祖国復帰、これが早期に実現するようにこの上ともよろしくお願いしたい、かように思います。
  142. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それでは、いまのあたたかく迎えるというこのおことばを基本にして、いままでの問題点とか矛盾点、あるいはまたほんとうに現地の要望等を体して、この間おっしゃったように、再交渉はいたしませんというように割り切ることなく、何とかここでならぬものかということで、総理が対米のいわゆる再交渉ということをされることを強く要望し、そしてまた沖繩の県民の方々が、ほんとうに帰ってきてよかった、本土復帰してよかった、このように言い切れるような返還を目ざして、総理、ひとつ大いにがんばっていただきたい。このことを要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。(拍手)
  143. 床次徳二

    床次委員長 午後一時二十分、委員会を再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後零時十分休憩      ————◇—————    午後一時二十九分開議
  144. 床次徳二

    床次委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小平忠君。
  145. 小平忠

    ○小平(忠)委員 総理大臣がまだお見えでないようでありますが、時間の都合もありますので、委員長宣告のように質問をいたしたいと思います。総理がお見えになりましたら、直ちに総理を中心に質問をいたしたい事項に切りかえたいと思います。  そこで、長期にわたってたいへん御苦労されてきました山中総務長官にお尋ねいたします。  沖繩本土復帰に伴いまするわが国の多くの法律のいわゆる改廃を必要といたしておりますが、総務長官の手元で現在この法律の改正を要しなければならない案件は幾つありますか。並びにいわゆる関係政令等につきまして、大体大まかに、できましたら各省別にお聞かせいただければ幸いであると思います。
  146. 山中貞則

    ○山中国務大臣 きのう細谷委員からその点で質問を受けましたのですが、きのう答弁いたしましたとおり、特別措置に関する法律あるいは改廃法、こういうもので数多くの法律を扱いますので、その本数は六百一本にのぼります。各省庁ごとの内訳まではちょっと御説明するに、必要ならば事務当局にいたさせますが、きのう緊急に答弁を保留いたしました政令関係は、沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案で百七十二件です。これは個別委任、包括委任を含みます。それから沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律案で九件、これも同じく個別委任、包括委任を含みます。さらに沖繩振興開発特別措置法案の中で五十二あります。  以上でございます。
  147. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいま総務長官御指摘のように、わが国の行政面においてはきわめて重大ないわゆる仕事であります。私は、その中でも今国会に提案されただいま、審議に入っておりまする振興開発計画についてでありますが、まず最初に総務長官にお伺いいたします。  沖繩復帰あと数九月に控えておるのでありまするが、しかし政府の振興開発計画が確定していないことはまことに遺憾であると私は思うのであります。  今回上程されておりまする振興開発特別措置法によりますと、沖繩県の意向を尊重しつつ特別の審議会を設け、それにかけて、しかる後に決定するということになっております。そこでお尋ねいたしますが、振興開発計画はいつをめどにおきめになるお考えか、お伺いいたします。
  148. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは、むしろ現時点において、十カ年計画の内容を昭和四十七年度を初年度として定めてかかることが、むしろいま議論されております新生沖繩県の自治権を侵すおそれがある、すなわち法律に明示されておりますとおり、この開発計画を定めるにあたっては、沖繩県知事に原案の作成提出権を認めております。したがって、復帰後行なわれる現在の行政主席にかわる新知事の選挙において定められた、沖繩の新しい知事の手元において原案が作成をされて提出された後、それを受けて審議会において沖繩側の知事はじめ、議長あるいは市町村長あるいは議長あるいは学識経験者に、沖繩側の意向を数多く反映したメンバーの審議会で十分に検討した上、それを決定すべきが正しい手続であろうと考えます。ただしその際に、来年度予算編成にあたって特に留意しなければならないことは、これが十カ年計画の初年度に置きかえられるわけでありますから、少なくとも現在の琉球政府側と十分の協調連絡をとりながら、新しい予算の方向あるいは規模づけ、その内容の質等の問題等について、十カ年計画の予想さるべき初年度の実体にふさわしいものに仕上げていかなければならないと考える次第でございます。
  149. 小平忠

    ○小平(忠)委員 もとより民主的に、しかも時間をかけてきめるということは最善でありましょう。しかし政府がいま言うような考え方で、はたして、復帰の日をかりに来年四月一日ときめるならば、あとわずかの期間しかないのであります。しかも、すでに労働力の本土への流出がもう始まっております。他方、木上資本による土地の買いあさりなどが行なわれつつある現状です。そこで、労働力の本土への流出状況あるいは今後の見通し、まずこの点についてどのような把握、掌握をされておるか、お伺いいたします。
  150. 山中貞則

    ○山中国務大臣 昭和四十五年度の人口調査、国勢調査沖繩にも実施いたしましたところ、私どもの予想いたしておりましたよりもやや少ない感じの九十四万五千という数字になりました。その裏については、本土への人口の流出というものが明らかに存在しておるものと考えますが、その具体的な数字は、必要ならば事務当局で御説明をさせます。
  151. 小平忠

    ○小平(忠)委員 数字は私のほうでもある程度つかまえておりますから、よろしいです。これは決して軽視のできない問題であります。私はそのような状況から見まして、このりっぱな計画をつくる、さらに労働力の流出とかあるいは土地、木上資本の買い占め、こういうことを前提条件として、いろいろ実行しようと思いましても、計画を立てた、それを実行する段階には大きなハンディキャップができる、こういうようなことになりかねぬかと思うのでありまして、これらはいまから十分心して、政府当局においても慎重な、そして敏速な計画の樹立、これを私は特に要求する次第であります。  次に、今後の沖繩づくりの目標を政府が一日も早く示すことが必要だと考えますがために、私はこの際、その基本的な目標、ビジョンを端的に申し上げまして、この振興計画策定以前に明らかにすべき問題、こういう点から考えまして、われわれはすでに昭和四十四年に豊かな沖繩を建設する、沖繩経済福祉開発の構想を発表いたしております。  その中で、今後の沖繩づくりの基本目標といたしましては、第一番に基地依存経済からの脱却、第二番目は本土並み生活水準の保障、第三番目は過疎化の防止という、三原則を提唱してまいりました。しからば、われわれはすでに昭和四十四年にこのような豊かな沖繩を建設する基本目標を提唱いたしておるのでありますが、この基本的な考え方について政府はいかようにお考えでございますか。
  152. 山中貞則

    ○山中国務大臣 大体いまの基本的な考え方は私たちも同感であります。その過程において、あるいは若干の、基地経済の依存からの脱却度のスピード等において、あるいは現時点において御期待に沿わない点もあるかとは存じますが、しかしながら、基本的な方向はそのような方向から進んでいかなければならないことはもちろんであります。  さらにまた、今後の目標としては、それらのことに伴って起こる問題をどのように処理していくか、すなわち基地依存の経済からの脱却は、そこに失職あるいは失業等の事態も生まれるでありましょうし、それらの人々を本土流出に結びつけるようなことなくして、地元において再雇用され、あるいは新しい職場へ転換ができる、あるいは新しい企業に転換できるというようなことについて、財政あるいは訓練手当その他の諸労働立法によるめんどうを見ることによって最大限に防ぎつつ、そして沖繩のあるべき未来に方向を定めていかなければなりません。  その際において、沖繩においては一次産業の基盤が非常に弱うございますが、これは亜熱帯地方にございますから、キビとパイン、そしてやがては計画された、結びつけられた有機的な畜産、食肉牛というようなものの育成を前提とした、ことに離島の農村づくりというものが考えられていかなければなりませんし、これに努力を惜しんではならないと思います。  さらにいま一つの大きな柱は、やはり沖繩の美しい自然を保っていく、すなわち今後二次産業等を振興して、わりあい豊富な労働力を吸収して、現地でそのまま新しい職場を得るためにも、企業の進出等について積極的でなければなりませんが、かといって、数少ない日本の美しい沖繩県の環境をよごしてはならない、そういうことを考えつつ、今回、十一月に開かれる国際博覧会条約の理事会に、日本において昭和五十年に海洋博覧会を聞きたい、その決定を閣議決定をいたしまして、理事会への折衝を具体的に開始いたしました。これのためには相当大規模な投資と、その後大阪の万博と違った形で、今回の沖繩海洋博に投資されたものは、これが後世長く沖繩の観光立県の柱になり得るように、そういうものに企画を定めていきたい、このように考えておる次第でありますが、そのような自然をどうしても守っていくことを念願としなければなりませんし、またあまりにも中部、南部に密集した、地域の基地経済とも関係があるわけでありますけれども、全島七三%に達する第三次産業の実態というものについても、正常な新しい沖繩県の未来の産業分野に逐次展開していくように努力をしたいと考える次第でございます。
  153. 小平忠

    ○小平(忠)委員 総理がお見えになりましたので、総理にお伺いいたしたいと思います。  沖繩本土復帰は、長年にわたる国民的悲願でありました。この歴史的な課題は、いよいよわれわれ国民の手によって結論を出さなければならないときがまいったのであります。わが党は、いまはなき西村委員長の手によって、沖繩返還については早期、核抜き、完金本土並み返還を打ち出し、これを内外に強く主張してまいったのであります。このことは、一昨日の沖繩返還協定特別委員会において、わが党の曽祢質問に対して佐藤総理より、核抜き本土並みの返還は、なくなられた民社党西村委員長の提唱によるものであり、政府もいろいろ鞭撻され協力を受けたことを総理は率直にお認めになっておられましたが、私は、いまはなき西村委員長も、京葉の陰でさぞかし喜んでおられると思うのであります。そこで、いま国会は、核抜き本土並みということで、沖繩返還の批准を得んとしているのでありますが、その前提として、総理大臣にその基本的姿勢についてお伺いいたしたいのであります。  すなわち、沖繩返還に際しての日米両国の立場は対等である、それは、戦中戦後に主要諸国首脳者によって確立された諸原則及び国連憲章などの国際法によっても、日米両国の立場は対等でなければならないと思うのでありますが、総理大臣いかがでございましょうか。
  154. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 過日も民社党の曽祢君に私がお答えいたしたのでありますが、私が各党党首と会談をし、そうしてアメリカに出かけます際に、特に非常にはっきりと、なき西村委員長は、早期、核抜き本土並み、こういうことを口に言われました。そうして私は非常に鞭撻を受けた。これは心から感謝しておる次第でございます。私ども、別に沖繩復帰を、政権をとっておる党がやるんだ、かようには思いますけれども、しかし、これは何といっても国民的悲願を達成する、たまたま政局を担当しておるから、その立場にあって国民の悲願達成に努力をしている、かように考えておりますので、同じ思いをされる方、これはやはり私は政府を鞭撻いただいたと思います。  しかして、ただいまは本土一億の国民の念願だということを申しましたが、私は、祖国復帰の問題は沖繩県民が一番熱願し、これこそ——悲願ということばはできないときによく使うことばですから、私は、熱願している、かように思いますが、その県民の心と本土国民の心が一本となって、ただいまこれが実現しようとされている、その審議がただいま行なわれておるわけであります。  日米間においていろんな問題が提起されております。一つは、何といいましても日米安保条約というものがある。この安保条約が負い目になっているのかどうか、こういう問題が、いま御指摘になった対等な立場で話ができるかどうか、こういう問題だと思います。私は、いままでも数回アメリカに出かけました。また、前総理である池田総理も、いまやよき対等のパートナーだ、これが日本に与えられた地位だ、こういうことを申しましたが、私はアメリカに参りまして、なるほど日米安保条約というものはある、その意味においては、われわれはいかにも負い目を感じておるようだけれども、いまや負い目は感じておらない、今日の経済成長しておる日本の国力をもってすれば、アメリカもまた日本の協力を心から必要としておる、そういうような考え方にただいまは立っております。おそらく国民の皆さん方も全部同じように負い目を感じないで対等の立場で——ただいまのベトナム出兵等があって、沖繩の駐留についてはいろんな議論があったけれども、いまや祖国に帰ろうとしている、その復帰協定が実現する、調印ができた。そして復帰の暁は、申すまでもないことですが、安保条約の取りきめ、条約そのものが本土並みにこれは適用される、こういうことでございますから、そこらにいわゆる負い目があるわけはございません。われわれ、どこまでも対等の立場でこれは交渉を進めたというふうに確信いたしております。  たいへん長くなりまして失礼いたしました。
  155. 小平忠

    ○小平(忠)委員 これからお伺いする前提として、きわめて重要な問題でありますから、私は伺ったのでありますが、総理は率直に、自由民主党の総裁であると同時に日本国総理大臣、そういう立場においてこのたびの対米折衝も、対等の立場で行なったし、そういう決意であることを御披瀝されましたので、私はその点は、国民とともにあなたのその決意に敬意を表します。  しからば、一九六九年、すなわち一昨年でありますが、佐藤・ニクソン会談の結果取りきめられた、いわゆる日米共同声明を発せられた当時と今日とでは、極東情勢が大きく変化いたしておると思うのであります。すなわち、去る本年七月十五日に、ニクソン訪中声明という新たな事態の発生によって、返還協定の基礎となっておりまする佐藤・ニクソン共同声明の骨格をなすアメリカの極東戦略、いわゆる中国封じ込め戦略の根本的な転換を余儀なくされつつある点であります。この情勢変化について、総理大臣はどのようにお考えになっておられますか、お伺いいたしたいと思います。
  156. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ニクソンの訪中は発表されましたが、まだ訪中はいたしておりません。何かもう訪中したかのように先走った御議論ですが、まだ訪中は実現しておりません。  そこで、訪中されたら一体どういう話をされるだろうか。これは、アジアの緊張緩和に役立つ方向で話が進められるだろう、こういうことはわれわれの心から期待するところであります。そのことは今日も期待として、希望として述べることができるように思います。
  157. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ニクソンが訪中したと私は断定して申し上げたのではなくて、訪中声明、行きますぞという声明を発せられた。まさにこれを頭越し訪中とか、まさに日本外務省は何しておったとか、いろいろ批判はありましたが、現実これらの極東情勢は私は大きく転換していると思う。  そこで、私はこの共同声明との重要な問題点について二、三御指摘申し上げて所見を承りたいのでありますが、この最も重要な沖繩返還協定の土台となっているのが、いわゆる日米共同声明であります。この共同声明が発表された当時、われわれが指摘し、また問題としたように、その国際情勢なかんずく極東情勢の評価について、重大な合意を行なっていることであります。すなわち、周知のごとく、その第四項におきまして、朝鮮半島に依然として緊張状態が存在する、また、韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要である、さらに台湾海峡における平和と安全の維持も日本の安全にとってきわめて重要な要素であるという評価を下しているのであります。つまり、一言にして申し上げまするならば、わが国を取り巻く極東情勢はきわめてシビアであるという評価であります。さらに、ただいま申し上げましたような、去る七月十五日突如として発表されたニクソン・アメリカ大統領の訪中声明であるとか、これに象徴されるように、いまやアメリカの対外政策は歴史的な転換を遂げ、新たな段階を迎えようとしておるのであります。さらに朝鮮半島の話し合いムードや中国の国連参加、台湾の追放など、すでに具体的な事実が次々と起こっておることは周知のとおりであります。このような状態でも、政府はやはり率直にこの事態をお認めにならないのですか。またこれをそしゃくして、対外政策、外交政策を私は転換しなければならないと思うのであります。こういう状態を率直に認めないで、国際情勢の変化に目をつぶり、あるいは過般政府がとった中国問題のような、従来の行きがかりにこだわって、固執しておったのでは、今後世界の大勢についていけない。その結果は、重大な破局に追い込まれると私は思うのであります。私はこの際、総理大臣並びに外務大臣の所見を承りたいと思うのであります。
  158. 福田赳夫

    福田国務大臣 ニクソン訪中、これはたいへんな大きなできごとだと思います。これに私は極東の緊張緩和、大きな期待をかけておる次第でございます。しかし、期待はかけておるけれども、ただいま総理大臣がおっしゃったように、まだ訪中は実現していない。まあムードは出てきておる、こういうふうに言えると思うのでありますけれども、まだこのムードは定着しておらない。したがいまして、極東の緊張の状態がどういうふうに具体的に変わったかというと、まださしたる具体的な変化は示しておらぬ、こういうふうに見ておるんです。しかし、これは今日この時点の問題です。ニクソン訪中等によって、ほんとうに定着した、確固たる極東情勢の変化というものがありますれば、もちろんそれを踏んまえまして、わが国は外交姿勢を控えなければならぬ、そういうふうに考えております。  それから、ちょっといまこれは触れられた問題でありますが、わが国が国連において何か非常に時代おくれなような態度をとったというお話でありますが、私は今日顧みてみまして、あのアメリカとの共同提案、この措置をとらないで、ああいうような国連の事態が起きたら、一体日本は世界の中においてどういう評価を受けただろうということを考えまするときに、私はあの、信義は守り通すんだという態度をとりました日本の態度は、私はたいへんよかった、こういうふうに見ておるのです。私は国際社会のいろんな人の意見も聞いておりまするけれども、この日本のとった態度、これはたいへん向く評価されているということをつけ加えて申し上げさせていただきます。
  159. 小平忠

    ○小平(忠)委員 先般、中国の国連参加をめぐる御承知のような、いわゆるアルバニア決議案が圧倒的な多数でこれが通過して、政府のとった態度が破れ去ったということについて、いま外務大臣が弁明されましたけれども、私はいまこの段階でこの議論をいたそうと思いません。しかしこのことについては、やはり大勢を誤ったという、また、とった処置は間違いであったとする考え方は、現に与党内にも数多くおられる。野党はこぞってこれに反対であった。国民にもそういう意見がある。この現実は、外務大臣、無視してはならないと思うのであります。あなたがおっしゃる、従来の自民党内閣が外交の姿勢として、従来のアメリカやあるいは蒋介石政権に対してとってきたこの信義、これを守ろうという、その気持ちは私はわかるのです。しかし、世界は大きくいま転換し、現に中国が国連の舞台に堂々参加を見た今日においては、謙虚にこのことをやはり反省もし、踏まえて、私は今後の外交問題に対処していただきたいと思うのであります。  次は、沖繩の核撤去について、私はその具体的な処置について伺いたいと思います。  われわれは沖繩の核については、国民の不安を解消するために、政府がまず返還時の核点検、さらに国会における非核決議、これに政府が同意すること、第三番目は核抜きについてアメリカ大統領の声明を得ること、この三点のうちいずれかの措置をとるべきであるということを再三にわたって要求してまいりました。このことに関しましては、一昨日のわが党の曽祢委員質問に対して、総理は、今後外交ルートを通じて明らかにいたしたいということを表明されましたが、これは私は確かに一歩前進であろうと思うのであります。しからば、今後外交ルートを通じて明らかにしていきたいというその中身ですね。  稲田外務大臣にお伺いいたしますが、総理のおっしゃった外交ルートを通じて明らかにしたいというその中身、その方法、いかなる措置をとられるお考えなのか、また大体いつごろをめどにそういうことを進めたいとお考えになっておるのか、率直な御意見を承りたいと思います。
  160. 福田赳夫

    福田国務大臣 小平議員も、核がアメリカにとりまして非常に大事な戦略兵器であるということは御承知だと思います。したがいまして、この核の扱いにつきましては、米政府におきましてはきわめて慎重なかまえでございます。これがどこにあるとかないとか、そういうようなことはこれを明らかにしないというのがたてまえになっておるのでありまして、そういうたてまえから、沖繩の核につきましても、今日なおあるかないかというようなことについて、はっきりしたことは言っていないのです。おらないのでありまするけれども、外形の状況の判断、そういうものからいたしまして、私どもは、これは核兵器があそこにあるに違いない、こういうふうににらんでいるわけであります。さればこそ、私どもはこの核兵器が返還時におきましてはもう日本には存在しない、こういう状態を何とかして確認をいたしたい、こういうふうに考えておるわけでありまして、御承知のように、佐藤総理とニクソン大統領との一昨年の共同声明におきましても、このことがはっきりといたされておるわけであります。それから、それを引用いたしまして、今回の沖繩返還協定第七条におきまして、そのことも明らかにされておる。さらに、先般のアメリカの上院のこの協定の審議の過程におきまして、外交委員会におきましてロジャーズ国務長官、パッカード国防次官、これらが、沖繩返還時におきましては核はありませんということをはっきり言っておりますし、ことに、実にはっきり言っておりますのは、パッカード国防次官は、核が返還時において沖繩に存在しないということを確約いたしますという、強いことばでまで言っておりますので、いまさら私が、これ以上、この核の問題につきまして、これを返還時に存在しないということについて云々する必要は実はないと思うのです。ないとは思いまするけれども、まあ小平さんなんかからいろいろそういう御意見がある。そこで、なお何か考えられることはないかなといって、総理とも相談をいたしておるわけであります。また、その相談に基づきまして米側とも話をしておるのです。おるのですが、いわゆる点検ということにつきましては、これは私、この話し合いました過程を通じましてこれは不可能である、こういうふうに見ておるのでありまするが、その他の事項につきましては、この上ともなお話し合いを詰めてみたい、かように考えております。
  161. 小平忠

    ○小平(忠)委員 アメリカ沖繩返還協定上院外交委員会の聴聞会において、ロジャーズ国務長官がただいま外務大臣がおっしゃったような、返還時に核はない、撤去する、この証言はもうすでに周知のとおりですが、これはアメリカの上院において行なわれた、国内の、アメリカ国民の間の話し合い、いわゆる証言でありまして、日米日本アメリカ両国のそういう具体的な話し合いではないのです。したがって、このことは申し上げるまでもなく、外務大臣も、やはり国民がこれだけ心配しているんだから、何とか国民が安心するように、はっきりとこのことを日米両国の責任者がいわゆる明確な取りきめ、意見交換によって正式な声明なり協定なり、そういうものがかわされることを望んでおるのです。  ただいま外務大臣は、核についてのあるかないかの点検はなかなかめんどうだ、こうおっしゃいましたが、われわれはそれにのみ固執しているものではありません。少なくともアメリカのいわゆる上院におけるロジャーズ国務長官の証言だけでなく、できれば、アメリカの原子力法による規定によりましても、核というものは非常に重く規定づけております。もし核について、これが国の安全、国民に重大な影響ある場合においては、原子力委員会と国防省が合議をしてきめる、意見が一致しないときには、大統領のいわゆる最終の決定に従う、こういうように、核についてはアメリカ自身も、場合によれば大統領の専権事項に近いような扱いをしている。この実態から見まして、私は、できるならば、やはり大統領の声明によって国民の不安を除去するということが非常に必要であろうと思うのであります。いま外務大臣は前向きの努力をする、その御発言がありましたが、それも、いまこの返還協定なり関連法案の国会の審議、国会の通過を望んでおられる、国民も期待をしている、そういうときに、やはりタイミングだと思うのですが、いつごろをめどにその努力をしてみるとお考えでございますか。
  162. 福田赳夫

    福田国務大臣 核のなくなることについての確認についての小平議員の御意見、私は非常に具体的で、建設的だ、こういうふうに受け取るわけであります。三つのことを提案されているのです。大統領声明、あるいは政府間の交換公文、それから核点検。その第三の核点検につきまして、ただいま申し上げましたように、これはもう非常にむずかしいのです。しかし、大統領の声明でありますとか、あるいは両国間の首脳の文書の交換でありますとか、そういうような二つの問題につきましては、これは私は考えてみる余地のある問題であるというふうに考えまして、すでにアメリカ当局にも話し合いを始めておるわけでありまして、これがいつまでに返事があるというようなことについては、相手のあることでありますから、まだここで確言はできません。しかし、返還時におきましては核はなくなるんだ、なくなっておるんだということにつきまして、全国民にはっきりした認識を持ってもらいたい、そう考えまするがゆえに、この問題につきましては鋭意これを取り進めてみたい、そういう決意でございます。
  163. 小平忠

    ○小平(忠)委員 それならばもう一歩進めまして、少なくとも沖繩返還協定が国会の批准を得る前に、それを取りつけられるようなお考えはございませんか。
  164. 福田赳夫

    福田国務大臣 できたらそうしたいなあというような気持ちでおるのでございますが、とにかく核の問題になりますると、核は、アメリカとして一番大事にしておる問題だ、こういうようなことで、扱いも非常に慎重でありまして、はたしてそういうタイミングでいきますかどうか、私も危ぶんでおるわけでございまするけれども、せっかく努力してみたい、かように考えておるわけであります。
  165. 小平忠

    ○小平(忠)委員 われわれが、本協定並びに関連国内法の審議にあたって最も強く指摘いたしておりまする一つであります。外務大臣をはじめ政府としましては、私は、これを本腰を入れて取り組んでいただきたい。  次に、この核に関連いたしまして、非核三原則の決議の問題について総理大臣に伺いたいと思います。  非核三原則は、佐藤総理も、佐藤内閣全体としても、賛成であります。賛成であるのに、それを国会の議決とすることになぜ賛成することができないのか。佐藤内閣は永久に続くとは、これはだれしも、総理自身もお考えになっていないでしょう。したがって、永久不変のものではないのです。今後佐藤内閣がかわって、いずれかの政党がもし政権を取った場合、かりにその内閣が核の保有や持ち込みを認めた場合にどうするのですか。何らの拘束力もないんです。しかし、国会の議決は、内閣がかわっても、国権の最高のいわゆる立法府としての議決は、内閣がかわってもこれはある程度拘束されるのです。そういう意味から、私は、今日の日本の安全、日本の平和のために、佐藤内閣は進んでこの非核三原則の国会議決に賛意を表するべきだ、こう思うのでありますが、いかがでございましょうか。
  166. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 佐藤内閣が非核三原則、これを基本姿勢として堅持しておることは御承知のとおりであります。また、これは佐藤内閣だけではございません。自民党の、党の基本方針でもあります。私は、いずれの内閣がとりましても、幸いなことに、ただいま核を持とうという政党はどこにもないようでございますから、あらためていま国会決議をする必要はないんじゃないか、かように思います。どこかの政党に核を持ちたいという方があれば、これは必要かもわかりませんが、皆さん、みんな核は反対反対と言っておられるんで、これはもう必要ないように思っております。
  167. 小平忠

    ○小平(忠)委員 どうもその意見、総理、通りません。賛成なら、国会で議決するのになぜ反対するのですか。おかしいじゃないですか。ですから私もわからぬし、国民もわかるように答弁してください。
  168. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、もう実ははっきりした議論ですから、いまさらあらためて国会決議を必要としない、かように私は考えております。
  169. 小平忠

    ○小平(忠)委員 その辺が、いわゆる国民が非常に心配もし、佐藤内閣の、すなわち非核三原則に賛成でありながら、これを国会の議決として、日本国民ほんとうに平和とそして完全独立を希求するその答えに沿う道じゃないと私は思うのです。時間の関係上、これ以上押し問答してもいけませんから、次に進みたいと思います。  次は、基地の縮小の問題であります。この具体的なスケジュールについてお伺いいたしたいと思います。  われわれは、最近の国際情勢の変化からいたしましても、また、本土の米軍基地との比較からも、この際沖繩の米軍基地を大幅に整理縮小すべきであると考えるのであります。政府本土並みと主張しておりながら、最も本土並みでないのがこの米軍基地じゃありませんか。部隊の数、基地の内容、駐留部隊の性格、武器の種類、これなどを見るのに、どうして本土並みですか。私は、今後すみやかにアメリカ側と話し合いを進めまして、基地の返還スケジュールを明示すべきである、こう思うのでありますが、いかがでございましょうか。
  170. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま沖繩に存在します基地がどうなるかというスケジュールは、いま御審議を得ておりまする協定、A、B、C表にさしあたり明らかになっておるわけでございますが、しかしこのA、B、C表によりますると、ただいま小平議員の御指摘のような稠密度という問題があるのです。それから、いまは極東情勢は、私は、この二年前と変わっておらぬと、こういうふうに認識しておりまするけれども、これから極東情勢が緩和の方向に行くかもしれない。われわれはそれを大いに期待をいたしておるのです。そういう問題がある。そういうことを考えまするときに、この協定付属表にありまするA、B、C、特にこのAの提供表です。この状態でこれでいいのかというと、私はそうは考えていない。何とかいたしまして、情勢の変化がなくとも、このA表につきましてはこれを整理縮小、これに努力したい、こういうふうに考えておるし、それから、まして情勢が変化いたしました、そういうようなことになりますれば、大幅なこの変化、これがA表に出てくるであろう、こういうふうに考えております。そういうような考え方に立ちまして、ただいま、返還協定付属表であるところのこのA表、B表、C表、これを動かすことはできませんけれども、実際上の問題といたしましてこの基地縮小が促進されるように、いまからすでにその努力を始めておるのです。この間見えましたコナリー財務長官、これにも託しまして、大統領にじきじき申し入れてまいりたいという話もしてあるようなわけでありまして、あらゆる手を尽くしまして、今後とも、実際上の問題といたしましてこの整理縮小には努力していきたい、さように考えておる次第でございます。ただ、そのスケジュールを示せ、こういうお話でございまするけれども、まだそこまでの段階には至っておらないのであります。
  171. 小平忠

    ○小平(忠)委員 外務大臣、いま情勢は変化しつつあるのです。これから変化をするであろうことを予想されるのでなくて、もう変化しつつあるのです。いま大臣は、この協定の審議にあたって、いわゆるA表、B表、C表の改正はちょっとめんどうだとおっしゃったが、いまやらなきゃ、大臣、いつやるのですか。少なくともこの協定日本の国会の批准を得るという、私は、大きな前提条件ともなろうかと思うのです。そして、それは前向きに取り組むと言っておりますが、午前中も公明党の中川委員が、いわゆる基地の目玉商品ともいうべき那覇空港について、相当時間をかけて政府の所信をただしました。私は、この一つの例を取り上げて、那覇空港の場合でも、いわゆる全面近還じゃないのです。那覇空港返還するというけれども、やはりどうもいまの状態では滑走路や管制塔程度の返還をさすのであって、了解覚書のA表、すなわち復帰後も提供する、そのA表です。これは、いわゆる那覇空軍、海軍補助施設とあるように、その面積の大部分が返還されないんです。同時に、過日、ある新聞の報道でも、滑走路なども完全に返還されるかどうかわからぬというようなことを盛んに伝えるわけです。さらに、午前中の中川委員質問でも、P3対潜哨戒機の問題についても非常に哨戒機そのものは、外務大臣返還時には完全に撤去すると言明されましたけれども、さらに施設等の問題等も残っておる。ですから、一つの、これは沖繩の中で目玉商品といわれておる、宣伝しておる、この那覇空港だけの問題を取り上げてもこういう問題が実はあるのです。したがって、私は、もっとこの問題について、政府が積極的にこの基地だけは取り組むべきでなかろうかと思うのであります。
  172. 福田赳夫

    福田国務大臣 那覇空港につきましては、午前中ずいぶんお答え申し上げてあるのでありますが、要するに、那覇空軍基地ですね、その全体の基地の中に背後地といいますか、山地といいますか、丘陵地帯があるんです。それは空港としての用務をなしておらない。空港という部分、空港地帯は返還される、その空港地帯にあるところのP3は撤去される、こういうことを申し上げておるわけでございまして、たとえば、いまも御指摘ありましたが、海軍の施設なんというものまでがこの空軍基地の中にあるわけでありまして、その丘陵地帯のほうはこれは依然米軍の手に残る、こういうことはこれはもう否定はいたしておらないのです。私どもが言っているのは、那覇空港、その空港としての機能がわが国返還されてくるんだ、こういうことでありまして、それから、P3についてもずいぶん御説明申し上げたわけでございますが、なお御疑念があるようでありますが、これは返還時には間違いなく那覇空港から去り行きますから、さように御了解願いたいと存じます。
  173. 小平忠

    ○小平(忠)委員 外務大臣が、いまそのようなやはり一歩前進した基地の縮小、返還についての取り組みの考え方を述べられましたが、実は過日、これは外電による報道ですけれども、去る十一月八日開かれましたアメリカ上院軍事委員会の沖繩返還協定聴聞会で、ウエストモーランド陸軍参謀総長が——この人は前に南ベトナムの米援助軍司令官でございましたが、このウエストモーランド陸軍参謀総長が、米軍部が沖繩基地を無期限に将来とも保有する考えであることを明らかにしている。その中で、沖繩返還によって沖繩米軍基地の機能に柔軟性を失う部分が確かにあるけれども、全体として重大な弱化は来たさないといって、この無期限のいわゆる基地の保有を証言している。こういうことを外電は報じておりますが、この無期限保有の証言と基地の縮小、こういうこととは何か逆行するような感じがするのですが、この点はどのような御認識を持っておられるんですか。
  174. 福田赳夫

    福田国務大臣 軍事委員会のその証言は、これはウエストモーランド大将ですか、その軍人の証言なんです。それで、その点を御配慮される必要があるんじゃないかというふうに思いますが、それでも無期限ということは言っていないんです。私も英語の知識は乏しいですが、インデフィニトリー、こういうふうに言っておりまして、基地は保有する、しかし、その期限はわからない、いつまでというかわからないと、そういう意味のことを言っておるのであります。しかし、まあアメリカの政治全体に及ぶ影響の大きい国務長官は何と言っておりますかといいますると、これは基地は漸次将来縮小されていくべきものであろう、こういうふうに言っておるわけでありまして、いろんな発言がありまするけれども、私どもがアメリカ当局と政府同士で話し合いしておる、これに一番信頼を置いていただきたい、さように存じます。
  175. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいま、軍人の発言だからそれはまああまり気にせぬでもいいじゃないかというようなニュアンスの御答弁でございますけれども、少なくとも上院における責任ある地位の者の証言でございますから、それで、これは明確に、ちょっと簡単ですから申し上げますと、彼はこういうことを言っておるのです。「朝鮮動乱の際、沖繩基地建設に投資したことの賢明さと、東アジア地域の防衛に占める沖繩の戦略的価値は、一九六〇年代に再び立証された。つまり、この基地複合体は米軍の東南アジア作戦にとって死活の貢献をしたのである。」そこで「沖繩に引き続き軍事駐留することは将来も無期限にわたって必要となろう。」私は、やはりこの辺でしっかりしてかからないと、単に沖繩県民が、国民が、本土並みだ本土並みだといって沖繩本土化のような、そういう状態で返還されることに非常に不安を感ずるから、私はあえてこのことを御指摘申し上げたのであります。したがって、どうか、この基地問題については、先ほど申し上げた核同様に——わが党が再三にわたって政府当局に、あるいはわれわれも春日委員長を先頭にいたしまして、いまアメリカの各関係方面に、ふざけるなと、一体いまのような基地の姿で本土並みかということで、われわれ、いわゆる国民外交のような見地に立って野党外交を展開いたしております。ですから、どうか、私は、この協定の批准までに、少なくともこの基地の問題については腹を据えて具体的な折衝をしていただきたい。  次に、私はこれに関連いたしまして、ちょっと重要な点がありますのでお伺いしたいと思うのでありますが、いわゆる海没地の所有権の問題です。今回締結されました返還協定の付属文書の一つに海没地の問題の解決に関する交換公文があるのでございます。これによりますと、アメリカが埋め立てた土地の一部を処分して海没地地主に与えて、もって海没地問題を解決するということが書かれております。  そこでお伺いいたしますが、アメリカ側が「埋め立てた土地で現に保有しているもの」というのは、一体どこにどのぐらいあるのでしょうか、お伺いいたします。
  176. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 沖繩本島にあります米国政府の埋め立て地は、牧港サービスエリアほか六カ所、面積は七十七万三千平方メートルでございす。これを詳細に申し上げますと、牧港補給地区、本部採石場、那覇港湾施設等、キャンプ・コートニー、カルテックス・ブラック・オイル・ターミナル、奥武山公園地区、那覇空港、この七カ所でございます。
  177. 小平忠

    ○小平(忠)委員 その埋め立て地の所有権はどこにあるのですか。
  178. 井川克一

    ○井川政府委員 この問題はなかなかむずかしい問題だと思います。しかしながら、第一次的にアメリカ政府に所有権があると考えるのが普通じゃないかと思います。  しかしながら、この所有権というものが、はたして私どもが普通にいう所有権そのものであるかどうかということにつきましては、なお疑問があるわけでございます。しかも、復帰間近になりまして、その完全なる処分権を持った所有権であるというふうには私どもも考えておりませんし、アメリカ政府もそのように考えていないわけでございます。
  179. 小平忠

    ○小平(忠)委員 何かわからぬですね、その答弁じゃ。そうすると、いまのアメリカが埋め立てた以外に、現にアメリカ側が所有権を捗っておる土地はどのくらいありましょうか。
  180. 井川克一

    ○井川政府委員 埋め立て地以外にアメリカ側が所有権を持っている土地はないと思います。
  181. 小平忠

    ○小平(忠)委員 そうすると——ほんとうにありませんか。埋め立て地以外にアメリカが所有権を持っている土地はありませんか。
  182. 井川克一

    ○井川政府委員 私は、ないと思います。
  183. 小平忠

    ○小平(忠)委員 これはよく調査をして——埋め立て地の問題は、いま条約局員御指摘のような、所有権があるような、ないようなことでは非常に問題があるんです。これは一体何ですか。そういう形で、返還協定の付属文書の海没地の問題に関するいわゆる交換公文は、大きな疑惑を残すのです。そんな、所有権があるんだかないんだかわからぬようなことで、今後どう処理するのです。  同時に大事なことは、アメリカにその所有権があるというならば、いわゆるその根拠です。何によってこれはアメリカに所有権があるんだ。将来これをどうするというのか、それを明確にしてください。
  184. 井川克一

    ○井川政府委員 先生、埋め立て地につきまして疑惑を残すとおっしゃいましたけれども、第六条三項に「アメリカ合衆国政府が琉球諸島及び大東諸島において埋め立てた土地並びに同政府がこれらの諸島において取得したその他の埋立地であって、同政府がこの協定効力発生の日に保有しているものは、同日に日本国政府の財産となる。」明白な規定がございまして、完全に日本政府の財産となりまするから、疑問の余地は起らないと思います。
  185. 小平忠

    ○小平(忠)委員 それでは条約局長、前言の発言は取り消しますか。
  186. 井川克一

    ○井川政府委員 申しわけありません。私の答弁に不適当なところがございましたら、お許しを得て取り消させていただきたいと思いまするけれども、私は先ほど、現在の時点におきまして、先生の御質問が、アメリカ側に所有権があるかどうかという御質問でございましたので、第一次的にアメリカ側に所有権がある、しかしながらその所有権は、完全な所有権というよりも、ことに現時点において処分権まで完全に持っている所有権ではないということを申し上げたつもりでございます。
  187. 小平忠

    ○小平(忠)委員 そんな言いわけをしないで、最終的に言ったように、返還時においては日本の所有となるということが、明確に交換公文に出ているんでしょう、だからそのように答弁されればいいのであって、問題は七十七万平米に及ぶこの海没地の問題ですから、そういう点を明確にしないとかえって疑惑が残るということを申し上げたのです。そこでこの海没地の問題は、これからこの運用を適切にやりませんと、いろいろ利権も伴い、沖繩の健全な開発に支障を来たすと思うので、私は政府当局は最大の配慮を願いたいと思うのであります。   〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕  次に、われわれが当初から最も問題にいたしておりまするVOAの問題についてお伺いいたします。  政府は、さきの予算委員会やあるいは沖繩協特の委員会でわが党の代表の質問にも答えまして、VOAはアメリカ政府機関であることを言明されました。しからば、アメリカ政府機関であるというなら、その法的根拠は何でありますか。特に政府機関であるならば、地位協定は適用しないということになりますね。これらの問題について、私はその法的根拠を承りたいと思います。
  188. 福田赳夫

    福田国務大臣 御説のとおり、VOAはアメリカ政府機関であります。したがって、地位協定の適用はございません。その法的根拠は一体どうなんだということでございまするから、このほうは政府委員から説明させます。
  189. 吉野文六

    ○吉野政府委員 お答えいたします。  VOAはアメリカ大統領直属の機関である米国海外広報庁、USIAの海外放送を担当する部門でありまして、これは法律によりましてたびたび改正され、あるいは修正されましたが、その中で海外広報庁の海外における文化活動を行なっているのがボイス・オブ・アメリカ、すなわちVOAでございます。なお、地位協定がなぜ適用されないか——政府機関であるということは以上のとおりでございます。
  190. 小平忠

    ○小平(忠)委員 VOAがアメリカ政府機関である。その政府機関を、施政権が返還される沖繩に存置しておくという法的根拠を伺っておるのであります。
  191. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これはいまの沖繩返還協定によってこれを存置する、こういうことになるわけであります。
  192. 小平忠

    ○小平(忠)委員 返還協定によって存置します——返還協定によってアメリカの施政権か日本返還されるんです。その際、アメリカ政府の機関を施政権の返還された沖繩に引き続き存置するというのは、どういう法律でそれを残すことになるんですか。これは在外公館と違うんでしょう。
  193. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 御承知のように、電波法では、外国の政府の機関は電波放送の免許が許されないことになっておりますわけでございます。第五条でそういう規定があるわけでございます。ところが三条におきまして、条約に別段の定めがあります場合はこれに従うということになっておりますのが法的根拠でございます。
  194. 小平忠

    ○小平(忠)委員 それでは政府にお伺いしますが、いま日本本土に、在外公館以外にアメリカ政府機関としてどういうものがありますか。
  195. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 ただいまの御質問は、日本アメリカ政府の機関としてどういう放送があるかという御質問でございますか。   〔発言する者あり〕
  196. 吉野文六

    ○吉野政府委員 お答えいたします。  アメリカ政府機関につきましては、USIAの海外部門を扱っておるUSISの支局が、アメリカ文化センターとかアメリカンライブラリーとかそういうような名前で仙台とか福岡とか、場合によってはもう廃止されておるところもあるかと思いますが、各都市にございます。
  197. 小平忠

    ○小平(忠)委員 いま話されたその文化センター、これはアメリカ政府機関ですか。
  198. 吉野文六

    ○吉野政府委員 アメリカ政府機関の派遣出張所というのか、政府機関の一部でございます。
  199. 小平忠

    ○小平(忠)委員 いや、明確におっしゃってください。それはアメリカ政府機関ですか政府機関でありませんか。
  200. 吉野文六

    ○吉野政府委員 法的に申し上げますと、先ほど申し上げましたように、アメリカのUSIAの海外広報センターであるUSISの出先機関として日本の各地にございますが、これらは在外公館長の指揮下にございます。すなわちアメリカ大使の指揮下にございます。
  201. 小平忠

    ○小平(忠)委員 在外公館の指揮下にあって、結局在外公館の系統ということになります。私が尋ねているのは、在外公館以外にアメリカ政府機関がありますかと聞いているのです。
  202. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これは、必ずしもアメリカ政府機関といえないのですが、半分くらい政府機関というようなものとしては、広島にABCC、いわゆる原爆被害委員会といいますか、ちょっと日本語は忘れましたが、ABCCというものがございます。
  203. 小平忠

    ○小平(忠)委員 半分ぐらいアメリカ政府機関があるというのを聞いているのじゃないのです。完全にアメリカ政府機関というものが在外公館以外にあるかということを聞いている。
  204. 井川克一

    ○井川政府委員 吉野局長は、大使館の指揮下にあると申されました。確かにその指揮系統はそのとおりでございます。しかし、各地に散在いたしておりますものは大使館ではございませんので、政府機関の出先である、こういうことになるわけでございます。そのほかに、外国政府日本にありまする政府機関といたしましては、たとえば豪州連邦政府の東京観光事務所、フィリピン政府の大阪通商振興事務所等がございまして、これらは政府機関でございます。
  205. 小平忠

    ○小平(忠)委員 もっと外務省の役人しっかりつかんでおけよ、ほんとうに。  外務大臣総理大臣、御承知のように実は国内にはやはりVOAのごとき政府機関というものはないのです。したがって、沖繩に存置せんとするこのVOAについては、きわめて重要な内容を持っておりますことをあらためて私はここに御指摘申し上げたいと思うのであります。すなわち、このVOAにつきましては、沖繩の施政権が返還された後においても、アメリカの対外向け謀略放送が日本本土からなされるということであります。何が理由で施政権が返還された後においてもアメリカ政府機関を——特にこのような、外向けの放送というものは日本の平和外交、日本の自主独立外交を阻害する最たるものであると私は思うのです。なぜこのようなものを引き続き存濁しなければならないのか、これに対して政府がオーケーを与えた理由が私にはわからないのであります。重ねてお伺いいたします。
  206. 福田赳夫

    福田国務大臣 アメリカ政府は、アメリカ本土に本部を置くVOAという組織を持っておるわけです。そこでこの組織は各地にその出張所というか出店を持っておる、沖繩にもそれを持って今日に至っておるわけなんでありますが、今回の沖繩返還協定交渉にあたりまして、これは各地にもあることでありまするし、何もそう謀略放送的なことをやっておるわけじゃない。客観的なアメリカのニュースの提供、あるいは政策の解説をやっているのだ、こういうことであるからこれを長く沖繩にも保存をしたい、こういう、要請がありまして、わがほうとの間でずいぶんいきさつのあった問題であります。しかし、結局妥協いたしまして五年間とする、そして最初から、二年目になりましたならば、このVOA放送をどうするかということについての協議を行なう、そういうふうな取りきめをいたしたわけであります。万々一の場合におきましては、あるいは五年というのが延びるということがないとも断言はできませんけれども、同町に、この二年後に行なわれる協議によりまして、五年という期間が短縮されるということにもなる、そういうような体制にいま置かれておる。私どもとすれば電波行政というものは統一的に管理をしたい、こういうふうに考えたわけでございます。しかし、これはアメリカとの間に沖繩返還というものをめぐる広範な接触点があったわけであります。その接触点、そのVOA、これは五年存置、二年後に協議という形で妥協をした妥協の産物である、こういうふうに御理解願います。ただし、返還後におきましては、VOAの機能、あなたがいま、このわが国の領土を本拠地として謀略放送が行なわれる、緊張を激化するようなことになっては困る、こういうような御心配でございまするが、その運営につきましては、十分にその事前において、また事後においてアメリカとも協議してやっていく、こういうことにいたしますので、その点は御心配なきようにお願いしたいと思います。
  207. 小平忠

    ○小平(忠)委員 いま外務大臣日本の国内、いま本土におきましても、先ほどアメリカ局長答弁されたように、USIA、USISというような出先機関がある。しかし、これは放送施設を持っているわけじゃないのです。単なる連絡上の人間が配置されているにすぎないのであって、放送施設を持っていないのです。沖繩には非常に感度の高い放送施設を持っているわけです。同時にこのことは、返還後においてはアメリカ側と話をして、そういう謀略放送的な、日本のいわゆる対外信用を失墜するような、そういうことのないような話し合いをするから心配要らぬとおっしゃったが、それは、いまそんなことの取りきめがどこにあるのですか。それはないでしょう。これからそういうふうな努力をしようというのじゃないのですか。
  208. 吉野文六

    ○吉野政府委員 ボイス・オブ・アメリカ沖繩における中継局の継続に関する交換公文というものがございまして、これによりますと、その第六項に、「中継局を通じて中継される番組に関する責任は、アメリカ合衆国政府のみが負う。もっとも、日本国政府は、必要と認めるときはその番組につき自己の見解を表明する権利を留保し、アメリカ合衆国政府は、日本国政府が表明した見解を尊重する。」こういうことになっております。
  209. 小平忠

    ○小平(忠)委員 それは番組の編成でしょう。そんな内容までなかなかタッチできるものじゃありません。先ほど郵政大臣が電波法の改正をすればいいような御説明をされましたが、これは厳密に言うならば、やはり放送法にも関係を持ってくるのです。したがって、単なる、アメリカ日本を信頼して、迷惑はかけないというけれども、そういう内容を持っているものでは断じてありません。  私はこの際総理大臣にお伺いいたしますが、わが国のいま当面の最大の外交課題は中国との国交回復であります。このような重要な外交課題をかかえておりますときに、施政権の返還された沖繩県に、アメリカのこのような、場合によっては謀略放送をしないとも限らない、そのような放送機関、政府機関を存置するということは、日本の自主独立外交を阻害するだけでなく、日中の国交回復を促進する上においても重大な障害となることを考えるときに、私は、すみやかにアメリカとの折衝をして、このVOAはすみやかに撤去するということをこの際強く御指摘申し上げたい。総理の御所見を承りたいと思います。
  210. 福田赳夫

    福田国務大臣 私からかわってお答え申し上げますが、VOAについては、それが運営につきましては、先ほど申し上げましたように十分の配意をいたしまして、各国との間に摩擦が起きないということを期してまいりたい、こういうふうに存じておりますが、いかにいたしましても、これはわが国の放送体系、電波行政の非常に重要な特例になるわけでありますから、一刻も早くその特例措置を回復しなければならない、こういうふうに考えます。二年後から協議が始まるわけでございますから、十分御意見のほどは踏んまえましてこの問題の今後に対処したい、さようにお答え申し上げます。
  211. 小平忠

    ○小平(忠)委員 総理答弁を願えないことは残念であります。  次は、自衛隊の配備についてお伺いいたします。  沖繩における自衛隊の配備につきましては、わが国が独立国としてその主権の一部である自衛権とその具体的裏づけである自衛力を適正な形で行使することは、もとより否定するものではございません。しかしながら、今回の復帰に伴う自衛隊の派遣は、その過大な数からしても、また久保・カーチス協定に見られるような、日本の米軍肩がわりという姿勢からしても、決して好ましいことではないと思うのであります。そこで、政府は、沖繩復帰後、最終的に沖繩に駐とんする自衛隊の総数は約六千八百人と報道されておりますが、これは事実でございますか。
  212. 西村直己

    西村(直)国務大臣 自衛隊の配備につきましていろいろ御心配いただいておるが、この席で私はそれについても、ひとつ地元のいろいろな歴史的な状況、また感情、受け入れ体制、自衛隊に対する認識等も考えて慎重には考えたい、このことはしばしば申し上げておるのであります。  配備の計画を具体的に申せとおっしゃれば詳細に申しますが、大略申しますと、一応考えられておるのは、当初において三千二百名、これは陸海空それぞれに分かれます。最終的に、大体お説のように六千八百程度を考えておるわけであります。  なお、これは時期とかあるいは内容につきましてはいろいろ考えますが、内地と比べて過大であるというふうなお考えにつきましては、昨日も申し上げましたように、沖繩の地域は軍隊の配備がかつて昭和十六年ごろまでは全然なかった、ただ司令部のような形のものだけはあった、こういうことでありますが、大東亜戦争でああいうふうなお気の毒な状態に入りましたので、そういう歴史を持っておることは明らかでございます。
  213. 小平忠

    ○小平(忠)委員 最終的には六千八百。それでこの久保・カーチス協定によりますと、当初復帰日以後約六カ月以内に、いま長官もおっしゃったように、三千二百人からなる部隊を展開するという取りきめをしております。  重ねてお伺いいたしますが、あの狭い沖繩に、今日自衛隊を本土各地に配備しております現状から見て、沖繩だけに当初三千二百、最終的には六千八百人の大部隊を配置するというその必要性、理由を、重ねてお伺いいたしたい。   〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕
  214. 西村直己

    西村(直)国務大臣 本土に戻りますれば、本土は大体国土の守りの対象になる。特に従来は沖繩は他国との接壌地帯ではございませんでした。したがって、国防上もほとんどそういう意味のウエートはなかったのであります。しかし、今日にありますと、国の一つのはずれの地域であります。ちょうど北海道に四個師団という相当なものが駐在いたしております。それから見ますと、最終的に六千八百程度、当初には三千二百ぐらいの配備というものは、陸海空三つを通しますと、必要最小限度の数ではないか。これは基幹的なものであります、基幹部隊であります。それから少しは支援部隊がつかなければならないのであります。よく過大であるというお話がありますが、木上の全体の平均から比べますと、少し密度は高いけれども、しかしそれには、先ほど申しましたように、東北とか北陸とか、あるいは四国のような薄いところを計算していますから、したがって九州あるいは北海道よりは、今回の六千八百をもちましても、人口当たりの密度はむしろ沖繩のほうが低い、こういうふうに考えていただきたい。  それから、いま一つは離島でございますから、急に持ってこようといっても間に合わない。そこで、多少の基幹部隊というものはお認めを願わなければならぬ。ただし、これの配備等にあたってはいろいろな歴史的な事情、県民のお立場、理解をいただく、これは極力努力をしてまいるつもりでございます。
  215. 小平忠

    ○小平(忠)委員 防衛庁長官、それは逆なんです。本土の密度から見まするといわゆる過大な面もあるけれども、しかし離島である、それはいろいろな事情からして決して過大じゃないとおっしゃったが、沖繩県民の感情は、これは昨日の自民党代表の國場議員の質問の中にも出てまいりましたように、与党の立場においても、あるいは全県民の立場において、むしろあの沖繩があの激烈な被害を受けて、そして太平洋戦争の中で最も大きな痛手、犠牲を受けた、さらに終戦、戦後二十六年を経過したこの長い四半世紀にわたる異民族支配という、こういう辛酸をなめた経験から見て、あの沖繩がああいう悲惨な目にあったのは、沖繩日本の軍隊が駐留しておったからなんだという感情が共通なんです。したがって、戦後二十六年たって、いよいよ沖繩の施政権が本土復帰する、こういう事態においては、むしろ自衛隊は来ないでくれというのが沖繩百万県民の率直な感情なんです。そういう点を考えると、防衛庁長官、あなたの考えとは県民の考えは逆なんです。私はそういう配慮が必要であろうと思うのと、さらにもう一点お伺いしたいのは、防衛庁の防衛局長久保卓也君ですね、この防衛局長が、日本の防衛庁を代表してアメリカ合衆国国防省代表者と一国の防衛を左右するような、こういう重要問題を取りきめておるのです。防衛庁の一局長にこのような重大な権限をこれは付与しているのですか。
  216. 西村直己

    西村(直)国務大臣 その前に先ほどのことをちょっと付言をさせていただきます。  自衛隊は百万県民あげて反対しているというふうには私は受け取っておりません。実は先般非常にお気の毒な干ばつもありました。海上自衛隊には千トン運べる給油艦、給水艦がございます。「はまな」という艦艇であります。それを差し上げて、われわれは千トンの水でも真水を毎日提供したらという考えもあった。しかし琉球政府の一部では必ずしもこれを歓迎しないので、御遠慮申し上げました。むしろ県民はこれを望んでおられた。今回配置しますのでも、現在はアメリカの軍隊によって民生協力なり土木工事もやっておりますが、救難、救援等やっておる。それだけは私は自衛隊等がそういう中で働かしてもらうということも県民の一部の感情には沿うんじゃないか。ただし、いまおっしゃいましたような過去のいろいろな歴史、戦後の非常な米軍による一部の苦しみ、こういうものを考えまして、私どもはこの配備については慎重にやりたい、こういう決意でございます。  なお、久保・カーチス協定でございます。これは私どもは本会議でも御説明申し上げましたように、アメリカの駐留しておる軍の中の施設を使う。新しい施設をつくったり、施設を拡充するというような形でありません。しかもいろいろなレーダーサイトというようなものは技術的な問題がたくさんございます。したがって、いわゆる軍と自衛隊の交代なり配置をしますには、技術的ないろいろな打ち合わせをしなければ、ただぽんと行ってぽんとかわるというような簡単なものではないのは小平さんも御存じのとおりでございます。そういうような意味から久保・カーチス協定ができた、そうしてこれはあくまでもそういう意味に私どもは理解をしていただきたい、こう思うのであります。
  217. 小平忠

    ○小平(忠)委員 そういうのでなくて、私伺っているのは、一国の安全を、重要なこういう問題を、日本国を代表して局長がこういう取りきめ、協定をするということは、防衛庁で従来やっているのですか。そういう慣行になっているのですか。
  218. 西村直己

    西村(直)国務大臣 これは防衛庁設置法の中の部隊の配置の権限というものは、防衛庁設置法のいわゆる所管の事務の一部としてやらしておるわけであります。
  219. 小平忠

    ○小平(忠)委員 防衛庁の設置法のどこにありますか、そんなこと。
  220. 西村直己

    西村(直)国務大臣 政府委員からお答えさせます。
  221. 久保卓也

    久保政府委員 防衛庁設置法の中の防衛局の所掌事務の中に部隊の配備ということがございます。  なお、前段の御質問の中で、一国を代表して私がサインをしたということではございません。防衛庁長官がおきめになりました、あるいは政府がおきめになりました部隊の配備計画に従って、具体的な事務的な取りきめだけを防衛局長の所掌事務として米側と結んだということであります。
  222. 小平忠

    ○小平(忠)委員 すればこの協定ですね、この取りきめの内容は、そのような部分的な部隊の配置とか、そういうものではないのですこれは。沖繩だけじゃなく、わが国の平和、わが国の安全を守るため非常に重要な取りきめをしておるのです。それは私は非常に拡大解釈であると思う。ですから防衛庁設置法によるところの部隊の移動とか配備とか、それはけっこうでしょう。それも国を代表して他国と、外国と取りきめをするような場合に、こういうことが慣例としてもしなされておるならば、私はそれは無定見であると思う。大臣いかがですか。
  223. 西村直己

    西村(直)国務大臣 先ほど申し上げましたように、私としては、防衛庁としては部隊の配備というものをきめなければならぬ、その長官の指令に従って技術的な面を久保・カーチスの間で覚書した、こういうふうに考えております。
  224. 小平忠

    ○小平(忠)委員 長官の指示に従って、その指示がやはりある程度重要な、長官の権限を逸脱しないような形においてなされる取りきめ等においては私はよろしいと思うのですけれども、今回この久保・カーチス協定のようなものについては、私はやはり少しく越権、いわゆる逸脱している、無定見である、こう思います。  そこで、防衛庁長官にもう一点お伺いいたしますが、復帰前に自衛隊を百名余り現地に派遣をして、いわゆる駐留させるような考えと聞きましたが、これは事実ですか。
  225. 西村直己

    西村(直)国務大臣 まだそれはきまっておりません。事前にやることはまだ考えておりません。ただ復帰がはっきりきまりまして、国会の御審議がきまって諸準備も済む段階においては、連絡のようなものは多少出さなければいけないのではないかと思いますが、現在まだそればきめておりません。
  226. 小平忠

    ○小平(忠)委員 それでは、復帰前に部隊を派遣するというようなことはない、そうしてただ準備のために連絡要員として派遣をするというようなことだ、このように理解してよろしいですか。
  227. 西村直己

    西村(直)国務大臣 いま連絡を出すこと自作もまだきめてはおりません。事柄は国会で慎重に御審議を願っておる段階であります。しかし、将来協定が行なわれた場合においては、事前に部隊としてこういうものを派遣して、自衛隊として事前にやるということはありません。ただかりに但帰した場合において、復帰についてこれを円滑にやるようなためには、連絡員等の派遣というものはあり得る場合もあるのではないかと考えております。
  228. 小平忠

    ○小平(忠)委員 自衛隊の派遣、自衛隊のいわゆる駐とんにつきましては、沖繩県民の感情は木上のわれわれの感情とは非常に異なっているものがあるので、これら沖繩県民のほんとうに偽らざる率直な意見を尊重して、私は慎重なる態度をとっていただきたい、こう思うのであります。  次は、公用地の暫定使用法案についてお伺いいたします。この法案についてはすでに指摘されておりまするとおり、多くの問題点があるのであります。特に本土の米軍基地については、いわゆる地位協定によって強制収用が六カ月に限られているにもかかわらず、今回の法案ではこれが五年にも及ぶということであります。さらに問題なのは、自衛隊の使用する土地までこれを拡大しているという点であります。そこで、私はこれらの諸点について国民が納得する政府の所信をただしたいと思うのであります。
  229. 西村直己

    西村(直)国務大臣 公用地等暫定使用法案、これにつきましては本会議またこの委員会等においても、趣旨説明において申し上げたのでありますが、内容はすでに御存じのとおり、安保条約上に基づく米軍某地それから自衛隊の使用する基地それからその他の公共用地と申しますか、道路あるいは電気、ガス、こういうものについて、契約をできるだけ進めてまいるわけでありますが、どうしても返還までに御契約できないような場台においては、しばらくの間の期間をもらって、その間に契約を進めていきたい、そういう意味での暫定使用権というものを設定する趣旨で、今回この法案の御審議を瀬っておるのであります。
  230. 小平忠

    ○小平(忠)委員 何で五年という長期の期限をきめたのですか。
  231. 西村直己

    西村(直)国務大臣 内地におきましては講和条約発効後、御存じのとおり九十日、三カ月以内に米軍が撤退したり集約したりする期間がございました。その後さらに六カ月間暫定使用という法律特別措置法をつくって暫定他州を認めたわけであります。ですからちょうど講和条約発効後九カ月日までは暫定使用期間があったわけであります。今回五年である。長いではないか。おっしゃるとおり、そういう面があるかもしれませんが、これは今回の一つの特殊事情を私は御説明しておるのであります。それは、一つは当時は日本国政府のもとにおいてすでに提供されておった部分も相当多いし、国有地も多いし、そこで契約も日本国内において国の世話でお互い同士がやっていくわけでありますから、非常にスムーズにいき得る状態でありました。今回は御存じのように民有地が非常に多くて、沖繩だけで三万八千名の対象の方々がおられる。そうして御存じのとおり、アメリカ施政権下にありますから非常に制約をされておる、こういうような意味から、どうしても契約をお願いすることについては時間がかかる。そしてどうしても契約ができないような場合においての権限取得のいろいろな措置というものを考えて、五年以内という一つのあれで、五年の内容についてはいずれ政令等で対象をきめていくわけであります。
  232. 小平忠

    ○小平(忠)委員 自衛隊の使用する土地まで拡大した理由はどういうわけですか。
  233. 西村直己

    西村(直)国務大臣 自衛隊というのを特殊にお考えになれば、そういう御立論もできるかもしれませんが、国土の守り、それから民生を穴をあけない意味で、御存じのとおり公用地を継続する、要するに引き続いてその国家機能を果たさせていただく。駐留軍のほうは御存じのとおり、安保上の機能というか義務であります。自衛隊公用地等、国土の守りもやはり国家機能の一つとして引き続いて継続してさせていただく、こういうような考え方で私は自衛隊も同じように今回の法律の中へ扱っておるわけであります。
  234. 小平忠

    ○小平(忠)委員 この法案は本委員会にかけられている中で最も重要な意味を持つ法案であります。私は劈頭に全国民が納得のできる政府の所信を明らかにしていただきたいと申し上げたのは、いまあなたの答弁ではとうていこれは納得しないのです。長い時間をかけてここで質疑できないことは残念でありますが、端的に申し上げて、いわゆる沖繩本土復帰の中で、沖繩県民もまた日本国民もこれについては非常に疑問と、そしてこの運用について非常に関心を払っておりまするだけに、端的に申し上げますならばやはり国内法いや憲法、こういうものに、その趣旨に反する、そういう見方もこれは生まれてくるのであります。したがって本件は、いま時間もありませんからあなたが簡潔に答弁されたろうけれども、この本委員会の今後の審議を通じて、ほんとうに折衝過程やいまの沖繩の現実を踏まえて、もっと国民が納得する説明がなければ、今後の運用に重大な支障を来たすと思うのであります。  そこで私はあえて総理大臣に次のことを提案し、お伺いいたしたいと思うのでありますが、今後の沖繩の軍用地使用関係などを明らかに進めていきまするために、政府は未解決用地あるいはつぶれ地などの現状からいたしまして、この際思い切った全島的な地籍調査を実施してはどうかと思うのです。総理大臣、いかがでございましょうか。
  235. 山中貞則

    ○山中国務大臣 すでに昭和三十八年から本土政府の援助で、琉球政府において本土の国土調査法に基づく地籍調査を行なっております。離島等は非常に順調に進んでおりまして、すでに五〇%をこえておりまして、本土平均よりもはるかに高い地籍調査を終わっておりますが、問題は戦場と化した中部、南部等における非常に混合してしまった中において、戦争が終わったあと立ちのかざれたり、あるいは追い立てられたり、あるいはまた一カ所にばらばらに集まってきたり、人の土地であると承知しながら家をつくったりというような地域が、非常に私権の設定の判断が困難であるということで、琉球政府の土地調査庁も非常に苦労しておるわけであります。そこでいま琉球政府と相談をいたしておるわけでありますが、この沖繩の特殊事情にかんがみて、土地調査庁の職員に対する人件費の国の財政援助とともに、その調査に要する事務費、経費等を補助して、そして一番典型的な地区として与那原地区が、これは私どもも合意するところでありますが、琉球側からも与那原地区のもし地籍調査が完了すれば、これは木島全部その方式でいけるというほど一番入り組んでおる状態に置かれておりますので、この与那原地区を一つのパイロットケースとして、ここを全額国が補助をして、そして地籍調査、私権の設定ということをやってもらおうかと思っております。これは最終的には、私権は御承知のとおり司法によらなければ確定をしませんが、しかし、地域の方方が琉球政府の土地調査庁の職員と都瀞単位で相談をしながら進めていく作業の結果は、そのようなことを要しないで、財源措置さえしてあげればうまくいくのではないかと私は考えておりますので、おっしゃるとおり、今後のあらゆる問題の前提として、沖繩における地籍調査は非常に重要でございますから、予算としても非常な重点を置いて、精力的に早くその作業を終了するようにしたいと考えております。
  236. 小平忠

    ○小平(忠)委員 本案の運用並びにこれが解決のためには、ただいま山中長官指摘のように、私はやはりこれを全島的に、未解決地、つぶれ地の問題を明らかにする意味から言いましても、この地籍調査に精力的に取り組んでもらうことが解決の道だと思うのであります。  次は、自由貿易地域についてお伺いしたいのでありますが、今回上程されておりまする振興開発特別措置法案によりますと、自由貿易地域の設定を予定いたしておるのでありますが、これは一般にいわれておる自由貿易地域とは何か言いがたいような感じがいたすのであります。いわゆる為替管理はそのままで、むしろ保税加工地域というような考え方が強く出されるのでありますが、この点政府の見解いかがでございますか。
  237. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは沖繩振興開発特別措置法案の中の第四章、自由貿易地域、ここにおおむね考え方も述べてあるわけでありますが、実情は、御承知のとおり、沖繩には現在自由貿易地域というものが現存いたします。したがって、もし自由貿易地域をいろいろ考えてつくらないということでありますと、いまの自由貿易地域並びにそこで操業している五社というものは、それを廃止する法律によって、何らかの国の措置を必要とする運命に追い込まれるわけであります。  そこでいろいろと考えましたが、沖繩という立地条件の持っておる有利性を、今後計画の上に生かしたい、新生沖繩県の未来図の上に生かしていきたいという願いの一環として、沖繩がやはり日本列島の最南端に位する、しかもまた、相当大きな港湾等の設計等も可能でありますし、それらのことを考えますと、今後日本の原材料をほとんど外国に依存する貿易立国の前提条件の一つの克服地点として沖繩がとらえられることにおいて、私は誤りないのではないかと考えまして、これを換骨奪胎して、新しく来年は調査費をつくって、その結果どのような形で、土地を全額国が埋め立ててただで貸すかとか、いろいろなことを計画しておりますが、後ほどこれは調査を終えて、場所を決定した後に法律で特殊法人をつくってやらせたいということで、ここに書いておりますけれども、これは少しおくれますか、まずその調査にかかりたいと思います。  しかしながら、その前提としては、ただいまお話しのように、完全なプエルトリコあるいは台湾の高雄等に見られる自由貿易地域ともややそのあり方を異にいたします。またその背景も、沖繩の場合には低貸金地域とは決していえない。本土に比べて若干の賃金の差はあるとしても、笠密な余剰労働力ということのほうにむしろ重点を置くべきであろう。  そこでこれらの新しく設定される自由貿易地域というものを法律の上に例証いたしまして、いまの自由貿易地域もそこに移れるようにするとともに、今後それらの地域は、現在の税法上は、ただいま御指摘のとおり、保税地域等の指定等によって行なわれるようにするとともに、その埋め立てられました立地条件のいい地域に、場合によっては自由貿易地域以外の業者も入り込んでいけるような余地も考えていってみたいと思っておりますが、まだ最終的には固まっておりません。しかしながら、これらのものをつくります以上は、これに対して当然諸種の恩典を与えていかなければなりません。すなわち、そこに企業が立地しやすい条件をつくらなければなりませんから、先ほど申しましたとおり、土地の造成その他から始まって、いろいろな便宜的なものを造成していかなければなりませんが、そこに進出した企業については、本土の今日の税法では、海外投資損失準備金というものしかありませんが、その海外投資損失準備金の思想をここに適用いたしまして、自由貿易地域投資損失準備金制度を創設し、それによって取得価格の二分の一を損金に算人するとともに、それを五年据え置き七年で取りくずすという特例を与えることに、さらに税法上も考えておりますので、これらの諸点から、進出したいという企業は、これはあながち日本法人だけに限りませんで、外国の企業でも、そこに来てくれることによって、沖繩人たちに原材料が入って輸出されるための加工賃を含めた労賃収入、付加価値等が、あるいはまた雇用市場への貢献が、そこで高まっていくということをねらいにしておるわけであります。この点は、よほど慎重な計画とさらに細密な検討を続けた後に新しい出発をしなければならぬ、かように考えますが、さしあたりは現在ある自由貿易地域というものがつぶれないで済むという手段の一つとして考えたと同時に、換骨奪胎して、未来への新しい沖繩の像の一つを描くのに、これを足がかりにしていきたいという願いを持っておることをお話し申し上げておきたいと存じます。
  238. 小平忠

    ○小平(忠)委員 どうか中途はんぱなものにならないように、現地において喜ばれるような考え方の上に立って、具体的にいま考えられておりまする線を推進していただきたいと思います。  最後に、時間もありませんが、沖繩における食管制度の適用についてお伺いしますが、この復帰特別措置法によりますと、政府の考え方では、食管制度の適用を当分押えて、その間消費者価格の高騰を押えるために、交付金で穴埋めしようという趣旨だと考えますが、そう理解してよろしゅうございますか。
  239. 山中貞則

    ○山中国務大臣 穴埋めというのは、交付金ですか。(小平(忠)委員「交付金です」と呼ぶ)それば、現在の取り扱いが、農協で取り扱って、そしてあと払いで清算することになっておりますから、その金欲に必要なものを交付金で支給しようという構想であります。
  240. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私は、沖繩に食管法を適用しないという、その政府政府も一応はわからないわけではないのでありますけれども、現実に沖繩のいわゆる主食である米の値段は安いのです。したがって、これを本土の食管法を直ちに適用した場合においては、そういう価格の面で困るから、その差額を交付金で払おうというので、結論からいえば食管法を適用しても同じことなんですよ。私は、むしろ食管法を適用しないで、この食糧のいわゆる需給の混乱、いわゆる価格の変動、これらに対しまして、確たる対処をしないと、これは復帰と同時に本土沖繩の出入りが今度は自由になりますから、その船舶——輸送を通じての食糧のいろいろいざこざができてくると思うのであります。私はこれはまた後日の審議過程においていろいろお尋ねをして、所信をただして、支障のないようにいたしたいと思いますが、むしろ考え方としては、もうあっさり本土並みの食管法を適用して、そして結局その本土でもとっている二重米価制、それをとることならば、いまの食管法の趣旨を生かして、結局問題は、配給面の不都合な面はこれは現実に本土においても是正しているのですから、こういう考え方に立って、この食糧のいわゆる需給の混乱や価格の変動を防止することがいいんでないかとすらも考えておるのであります。したがって、食糧の安定は経済の安定につながります。沖繩本土復帰というこの重大な時限において、いまからこの食糧問題については混乱のないような確固たる方策をもって臨むべきであると私は考えるのであります。  私の質問申し上げたい案件は、さらに各種の建設計画などにつきましてもお尋ねしたい予定でありましたが、時間が参りました。  最後に私は、総理に一点お尋ねいたしまして、質問を終わりたいと思いますが、沖繩県民の長い間の、四半世紀に及ぶ熱願がいまや達成されんとするときに、喜んでわれわれは迎え、沖繩県民が本土復帰するという姿をとるために、やはり今日その中でも大きな課題は核の問題、基地の問題、そして謀略放送とも言わるべきVOAの問題、これらについてさらに政府ほんとうに四つに取り組んで、ほんとうに全国民が喜んで沖繩県民を迎えよう、この歴史的な沖繩のいわゆる本土復帰を実現しよう、これに私は邁進していただきたいと思うのであります。以上、私は数々の御質問を申しましたが、これらの点に対して総理の所見を承りまして、私の質問を終わりたいと思います。
  241. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 一日も早く祖国復帰、これを実現することが、沖繩百万同胞、同時に一億国民の熱願だ、私はかように信じまして、これを皆さま方の協力を得てぜひとも実現したいと思います。その際に、ただいま御指摘になりましたような数々の問題について、われわれが最善を尽くすことはもちろんであります。そうして不安のない、また疑惑の残らない、ほんとうに平和な安全な、日米安全保障条約も本土並みに実施される、そういうような沖繩の実現を期すること、これがわれわれの願いであるということを重ねて申し上げまして、皆さま方の御協力を得たいと思います。よろしくお願いします。
  242. 床次徳二

    床次委員長 次に、武部文君の質疑を許します。
  243. 武部文

    ○武部委員 私は、返還協定、さらには合意された議事録、愛知書簡、さらには交換公文、こういう問題について御質問をいたしますが、重点を二つにしぼって質問をいたしますので、そのように御理解をいただきたいと思います。  最初に極東放送に関する問題についてでありますが、きのうの返還協定特別委員会におきまして、同僚の大出委員より極東放送の存続についてその不当性が追及されました。本問題については、私は別な観点から政府の考え方をただしたいのであります。  佐藤・ニクソン共同市川及び愛知書簡の法的根拠について伺いたいのであります。米国権益の擁護について述べておる共同声明の第九項を受けまして、愛知書簡が出されておるわけでありますが、この極東放送という米国民間放送会社の存続を認める、これは明らかに電波法第五条の精神に違反するのであります。条約でも何でもない愛知書簡で国内法に違反する、そうしたことを約束する、これは政府として越権行為ではないか。同時に、普通に企業というときは、哲利的事業を示すのではないかと思うのでありますが、非営利的法人である財団法人極東放送会社の存続まで約束するということは、これまた私は必要ないことではないか、このように思うのでありますが、この点についての回答をお受けをしたいと思います。
  244. 福田赳夫

    福田国務大臣 極東放送という事業体がありまして、これが沖繩で放送活動をやっておる。今回沖繩日本返還されるわけであります。そうしますと、この極東放送という放送活動ばかりじゃない、米系企業全体につきまして問題が起こるわけでありますが、日本沖繩返還になりましたからといって、その企業がにわかに一日にして断絶状態になる、こういうことでありますると、これらの企業は今日まで沖繩においていろいろな活動もし、その結果沖繩の復興、発展にも貢献してきておる、そういうようなことを考えまするときに、その活動をにわかに存続を遮断をする、こういうことは適当でない、こういうふうに考えまして、それらの米系企業の返還後における存続について愛知外務大臣がマイヤー大使に対しまして書簡を送りまして、わが国の方針を申し伝えたわけでありますが、その手紙の中にこの放送活動に関する問題が提起されておるわけであります。これは、沖繩日本に返ってからは、この企業体がやっておった放送活動は、これを日本の財団法人極東放送というものを予定しまして、その予定された財団法人極東放送が行なうならば、これはひとつ認めよう、こういうふうに申し上げておるわけでありまして、その愛知外務大臣の手紙に基づきまして、これをわが国の国内法に照らしまして、その法的根拠を求めるためにただいま特例措置について御審議をわずらわしておる、これが現況でございます。
  245. 武部文

    ○武部委員 いまの外務大臣答弁は、法的根拠について何らの説明をなされておりません。特別措置法百三十二条の問題を述べておられるだけであります。きのうの問答の中で、明らかにこれは違法である、特定な一つの私企業を書簡に基づいて存続を認める、こういう点は違反ではないか、違法である、こういう質疑が取りかわされました。同時に、その時の答弁では、これは高度な政治的な妥協である、あるいはいろいろいきさつがあった、頭越しにそういう話し合いが済んだ、取りきめられた、こういう話があったのでありまして、ただいまの外務大臣答弁では、この愛知書簡が法的に何の根拠もない、そういう点をあなた自身がお認めになった、私はそのように理解しますが、よろしゅうございますか。
  246. 福田赳夫

    福田国務大臣 法的根拠はただいま御審議をお願いしておる特例法ですね、これにあるわけなんです。それを予定いたしまして手紙を出しておるわけであります。
  247. 武部文

    ○武部委員 そういう本末転倒の考え方は誤りであります。そうだといたしますと、特別措置法第百三十二条第二項の、日本語による放送については財団法人極東放送をして存続させるという予定のように伺ってよろしゅうございますか。
  248. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 愛知外務大臣の書簡は、極東放送会社の英語の放送については、返還協定が成立いたしまして日本沖繩が帰還いたしました後におきまして五カ年継続を認める、日本語の放送については財団法人にいたしまして日本で放送することを認めますというような内容のものだと思うのでございます。  そこで、極東放送会社におきましては、ただいま日本語の放送について財団法人の設立を認めてもらいたいという許可申請が出ております。また、日本語の放送を免許してもらいたいという申請も出ておりますわけでございます。これがもし沖繩政府におきまして、そのような処分ができないままに日本に帰還になるということになりますと、これは日本政府が財団法人につきましては設立を認めなければなりませんし、また、放送については免許を与えなければならないという問題が起こってくるわけでありまして、日本政府に設立につきましても放送についても問題が移ってくるわけでございますが、そうなれば、日本政府で審議をしなければならぬし、審査をしなければならぬということになりますわけでございます。そうなりますとある程度の期間が必要であるという考えを持ちまして、ただいま御指摘の第二項の、日本語の放送については一カ年だけ特別に、これもどうなるかわかりませんから、期間を与えるということになっておりますわけでございます。幸いに、沖繩政府が帰還前に財団法人の設立を認める、また、放送についても免許するということになりますれば、そのまま帰還後日本に引き継がれるわけでございまして、第四十八条でございましたか、これによって財団法人はそのまま認められますし、また、放送については、五十三条でございましたか、これによってそのまま認められるということになりますわけでございます。そうなりますと、いまの御指摘の第二項は不要だとも考えられますけれども、こういう規定を設けておきますと、沖繩政府におきまして帰還前に許可しあるいは免許いたしましても、日本の放送としてスムーズに引き継がれるということになりますわけでございますから、このあとの場合におきましても不要な条文だとは思っていないわけでございます。
  249. 武部文

    ○武部委員 あなたの説明はよくわかりませんが、特別措置法第百三十二条第二項では、現在の極東放送会社の日本語放送については、郵政大臣の免許を受けたものとみなして、復帰後一年間はその放送を続けることができる、こういうことになっておりますね。この問題は、現在まだできていない——きのうお話がありました。できていないところの財団法人極東放送が、復帰後一年以内に日本法人として認可されることをあらかじめ予定をしておる。もしその財団法人極東放送という法人の認可がなされた場合、これに放送局の免許を与えることを前提としておるわけです。  放送局の免許というものは、競願が出てくることは当然予想されるのでございます。それを考えなければならない。競願の場合の取り扱いについては何ら考慮をせずに、財団法人極東放送に免許を与えることをあらかじめきめておる。そういう政府の態度は、現在の電波行政上まことに不当である、私はそのように見ますが、どうですか。
  250. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 ただいま競願についてお尋ねがございましたが、私どもはそういうことは予想いたしておりませんけれども、かりに競願というようなことになりました場合は、財団法人極東放送の申請免許につきましては、愛知外務大臣の書簡の精神によりまして、その方向で検討いたしたい、こういうふうに考えております。
  251. 武部文

    ○武部委員 愛知書簡の精神によって善処する。もっと具体的にひとつお聞かせをいただきたい。競願が出た場合……。
  252. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 愛知外務大臣の書簡の精神につきましては、先刻外務大臣からお答えしたとおりでございまして、外資系企業を、返還になったからといって、にわかに遮断するに忍びない、そういうような精神によってやっておりますわけでございます。
  253. 武部文

    ○武部委員 それは競願を否定するものじゃありませんか。競願というものを頭から否定をしておるのじゃありませんか。どうですか。
  254. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 ただいま極東放送会社の事業といたしまして英語の放送をやっておりますし、日本語の放送もやっておるわけでございますから、その日本語の放送については、財団法人としまして継続して日本でやらせたいというわけなんであります。
  255. 武部文

    ○武部委員 放送局の開設の根本的基準というのがございます。これは「最も公共の福祉に寄与するものが優先するものとする。」こうなっておるのでございます。したがって、内地では一つの民放をめぐって九十幾つも競願が出て大騒ぎになって、政治的に解決をされておるという例がたくさんある。これはもう総理も十分御承知のとおり。そういう場合に、一体、財団法人極東放送という、いまだにできもしないものを最優先的に認めて、もし返還になったならばこれに免許を与えるかのごとき前提をつけておるということについて、私は非常にこれは問題があると思うのです。総理大臣はこれをどう思いますか。
  256. 藤木栄

    ○藤木政府委員 お答え申し上げます。  放送局の免許にあたりましては、先ほど先生がおっしゃいましたように、当然、一つの周波数に対しまして多くの局が申請があった場合、競願処理をするわけでございまして、この極東放送の場合も、もし万一そういう事態が起きますれば、やはり競願処理ということになろうかと思います。
  257. 武部文

    ○武部委員 いまの答弁ならば、やや前進であります。一体今後どういうような競願が出てくるかわからない、そういう状態であるのに、財団法人極東放送を含めて、先ほど申し上げたような放送局の附設の根本的基準、「最も公共の福祉に寄与するもの」、こういうものが判定できない時点であります。できていないわけですから。そのときに、財団法人極東放送にあらかじめ免許を与えるというようなことは、全くこれは邪道であります。ましてや、きのう大出君がいろいろ質問をして、極東放送については、放送の公正という点について大いに疑問がある、これは第七心理作戦と非常に密接な関係を持っておる、そういうような点についていろいろ話がございました。こういうようなときに、財団法人極東放送にあらかじめ免許を約束しておるところの愛知書簡、それを受けた特別措置法第百三十二条第二項、これは、電波法及びそれに基づく先ほどの放送局の開設の根本的基準に照らして大いに疑義があるわけであります。したがって、私は、この愛知書簡というものは、特別措置法第百三十二条ともに撤回すべきものである、このように思いますが、いかがですか。
  258. 福田赳夫

    福田国務大臣 愛知書簡は、この特別措置法百三十二条が成立することを前提として出しておるわけなんでありまして、ぜひともこれを御承認くださるようお願い申し上げます。
  259. 武部文

    ○武部委員 そういう答弁答弁にならぬのであります。少なくとも、この放送局の申請というものは、これは国民の権利として自由なのであります。それを頭で、高度の政治的判断によって、愛知書簡なるものによって結んでおることに問題があるのであります。ましてや、この財団法人極東放送は現実にないのであります。できていないのであります。そういうものを、この書簡によって特別措置法にその条文を規定するということは、全くこれは誤りである、私はそのように思います。したがって、これはあくまでも撤回すべきである、こう思いますが、再度外務大臣答弁をいただきたい。
  260. 福田赳夫

    福田国務大臣 極東放送は、財団法人極東放送に実体的にその事業の大部分を引き継ぐ、こういうことになるわけです。しかし、それについては国内法を要する。そこで特例法をいまお願いをいたしておるわけでありますが、愛知書簡におきましては、日本の法令の手続によってこの免許をいたします、こう申し上げているので、百三十二条についてひとつ御承認お願いしておる、こう申し上げておるわけであります。
  261. 武部文

    ○武部委員 それならば、再度確認をいたしますが、ただいま電波監理局長からの話もありましたが、競願を認める、よろしゅうございますね。
  262. 藤木栄

    ○藤木政府委員 お答え申し上げます。  先ほど競願処理をするということを申し上げたわけでございますが、これは、まだあくまでも仮定の問題でございまして、現在まだどういうことになるかわからない、また、財団法人自体につきましても、現在申請中でございます。そして、先ほど外務大臣がおっしゃいましたように、これは日本国の法令に照らして免許するということになるわけでございますので、私どもとしましては、十分そういった点を検討して処理をするということになると思います。
  263. 武部文

    ○武部委員 回りくどい答弁ではなしに、競願が出れば、当然法律に基づいて処理をする、このように理解してよろしゅうございますね。外務大臣、どうですか。
  264. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 日本の国内法、つまり電波法、放送法を適用するということになっておりますので、そういう法律で定めております競願の場合のルールに従ってやりたいと思っております。
  265. 武部文

    ○武部委員 これは条約ではなく書簡でありますから、当然日本法律に基づいて処理をすべきものである、このように理解をいたします。  続いて、私は、先ほど小平委員からも質問がございましたVOAの問題について、政府の見解をただしたいと思います。  VOAは、アメリカに本部を置く、アメリカ国務省の放送であるという先ほど答弁がございましたが、世界各国にいかなる中継局を持っておるのか、その点はいかがですか。
  266. 福田赳夫

    福田国務大臣 政府委員からお答えいたします。
  267. 吉野文六

    ○吉野政府委員 お答えいたします。  VOAの放送ないしは中継の施設は、西独、フィリピン、セイロン、リベリアその他にございます。(「その他というのはどこだ」と呼ぶ者あり)英国、モロッコ、ギリシア、タイでございます。
  268. 武部文

    ○武部委員 中継局が置かれておる国は、十カ国、十二カ所というふうに理解してよろしゅうございますか。
  269. 吉野文六

    ○吉野政府委員 十カ国、十二カ所でございます。
  270. 武部文

    ○武部委員 先ほど外務大臣は、アメリカに本部があって、何か出張所や出店があるようなお話でございましたが、そんななまやさしいものではないのであります。出張所や出店のような、そういう感覚でVOA問題を取り扱うということに私は大きな疑問を持つのであります。少なくとも一千キロワットにのぼる出力を持っておる、たいへんなこれは中継局なのであります。ただいま十カ国、十二カ所、こういうことをおっしゃったわけでありますが、一体、このVOA放送というのは、どのような目的をもって設立をされ、どのような番組放送をし、どのような内容を放送しておるものと政府は見ておりますか。
  271. 福田赳夫

    福田国務大臣 VOAは、それが各地にあると、いま明らかにされたとおりでありますが、その置かれておる土地の事情事情で多少のニュアンスの違いはありますが、主としてアメリカの情報の周知徹底、また、アメリカ政府の政策の広報、そういうようなことに従事しておる、かように承知しております。
  272. 武部文

    ○武部委員 先ほどの小平委員質問のときには、謀略放送ではない、客観的事実を伝えておる、政策の浸透をしておる。ただいまは、情報の浸透と、こういうことをおっしゃった。それは、現実に放送の内容をお聞きになって、そのように判断をされておるのでありますか。
  273. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは全部聞いているというわけじゃございませんけれども、一部についてはテープを聞いております。
  274. 武部文

    ○武部委員 外務大臣は、このVOAの内容の質問に対して、米政府に照会した結果、軍事活動ではなく、広義の戦略であって、信頼できる、正確で客観的な報道をしておる、こういうふうに、たしか十一月四日だったと思いますが、参議院の予算委員会で述べております。廣瀬大臣は、きわめて穏やかな内容のようだ、こういう答弁でありました。私は沖繩へ参りまして現実にVOAに参ったのであります。そこのデービス所長に会ったときに、所長はわれわれに対して、その放送の内容について次のように述べました。  この放送内容は、主としてニュース、文化放送、音楽、アポロ計画、こういうものの実況放送で、宣伝放送ではないと思っておる。一体放送する目的は何なのか、こういう質問に対して、直接接触できない国の人々に情報を提供するのが目的であって、日本のNHKの海外放送と同じようなものだ、こういう答弁があったのであります。さらに、私どもは、中継局のデービス所長から渡されたVOAのあらましというものを見たのでありますが、これによりますと、沖繩におけるVOAのあらましとして、ソ連及び共産中国の支配下にある人々との間のコミュニケーションのおもな手段として存在するものだ、こういうようなことが書かれたものをもらったのであります。  ここに、沖繩で刊行された、VOAに関する高等弁務官の発行したものがあるわけでありますが、これによりますと、高さ八十一メートルの大きな鉄塔が六つ、大体いまの世界でこのような大きな放送塔はない、そして、これは鉄のカーテンの向こう側に住んでおる世界の人々の三分の一、これは世の中のほんとうのことについて耳をふさがれておる、したがって、彼らを支配しているものにとっては都合のよいことかもしらぬ。しかし、読んだり聞いたりできないのだから、共産諸国の人たちにも世界のニュースやあるいは情報を電波に乗せて知らせることはたいへんに重要な仕事である。なぜなら、共産諸国内の大多数の人々は労働者と農民であって、世界のことを知る方法がない。あっても、政府がそれを統制していて、都合の悪いことは知らさない、こういう内容を書いておるのであります。これはきのう大出君も述べておった、極東放送の内容が発表されておった「守礼の光」という、アメリカ——帰属は高等弁務官に所属する、こういう内容の文書であって、これは第七心理作戦部隊第十五分遣隊で編集、配付されたのであります。九万七千部毎月発行しておる。そして同じくサイミントン報告書によりますと、この「守礼の光」は、明らかに沖繩高等弁務官に帰属をするとなっておるのであります。そこで、私は、このアメリカ広報庁、そして第七心理部隊、これが一体となって、VOA、これを通じて謀略放送をやっておる、こういうことをこの文書の中から明らかにうかがい知ることができるのであります。  そこで、時間の関係で先を急ぎ、内容を説明いたしたいのであります。ただいまも、謀略放送ではないとか、あるいは政策の解説だとか、いろんなことをおっしゃっておる。私は、そうでないという事実を具体的にお示しをいたしたいと思います。  これはわれわれが現地のVOAの所長からもらったテープであります。これは朝鮮語、中国語あるいはロシア語になっておりまして、全部これを翻訳してみました。何も、謀略的な内容があるものを特に選んでわれわれは翻訳したり、持ってきたものではないのであります。これは同日のものであります。これを翻訳をしてみたところが、次のような内容が明らかになってきました。これは、外務大臣、よく聞いていただきたい。あなたのおっしゃっているような内容、あるいはきわめて常識的な内容を持った放送だということにはならぬと思うのであります。  たとえば五月二十八日、これはロシア語の放送であります。この放送は、内容をずっと全般的に最後までこれを読んでおりますと、きわめて巧妙な放送をやっておるのであります。あとでほかの国の協定文にも触れて申し上げたいと思うのでありますが、最初は女の声、順次かわって女と男が交互に放送いたします。「こちらはワシントンVOA放送局です。ラジオをお聞きの親愛なる皆さん、こんにちは」から始まって、ニュースの番組を最初流すのであります。そうして、その中に、まずこのロシア語放送で「モスクワの西側記者が伝えるところによると、半年前に米国に亡命しようとした、リトアニアの船員に対し十年の刑が言い渡された。詳しいことは半時間後にお送りします。」そのあと、当日起きた世界各地のいろんな断片的なニュースが入ってくるのであります。そうして、音楽が入ったり、いろんなダンスのことが入ったりして、再びこの問題が出てくるのであります。  「アメリカは、リガで行なわれた四人のユダヤ人に対する裁判事件に関してソ連を非難した。米国国務省は、同裁判で下された有罪判決の内容は、多くの国々では罪とみなしていないと述べている。同国務省は、反ソ宣伝をしたかどで、四人の被告に対してリガ市で行なわれた裁判は基本的人権を侵すものであると述べた。さらに同省は、ソ連でいまなお続いている秘密裁判のならわしは、アメリカの深く憂えるところであると述べた。」こうして「リガで行なわれた裁判で四人の被告はイスラエルから入手した反ソ資料を流布したかどで有罪となった。被告は一年から三年の禁錮刑を宣告された。」そうしてその次には、先ほど申し上げた「モスクワの西側記者の伝えるところ」といって、「米国に亡命を求めようとしたリトアニアの船員シマス・クジルカは、リトアニア共和国最高裁で、十年の禁錮刑を宣告された。」あと読みません。どのような経過で亡命しようとして、それがアメリカの沿岸警備艇に乗り移ったところが、ソ連の船員が力づくで彼をソ連船に引き戻し、そうして船員に対する同情と沿岸警備艇に対する非難の声があがって、結果的には、アメリカの沿岸警備艇の艦長は他の職に回され、沿岸警備の海軍将官とキャプテンは退職させられた、こういう内容がここで報道されて、またずっとほかのことが出て、またぞろ「モスクワの西側記者の伝えるところによると、」「半年前に米国に亡命をしようとしたリトアニアの船員に対して十年の刑が言い渡された。」三回、このただ一つの放送の中に、ソビエトを非難をする文章が出てくるのであります。これは解説を含めて述べられておるのであります。一体、それならばソビエトの刑法はどういう刑法を制定しておるのか、明らかにこれはソビエトの刑法に従った判決であります、こういう内容になっておるのであります。これは五月二十八日のロシア語放送であります。  さらに、今度は五月三十一日の朝鮮語の放送、これは北朝鮮向けであります。これは「世界のきのうときよう」という番組でありますが、「ソ連が職業的なスパイと暗殺者を訓練して使っているという事実は、全世界によく知られているが、その中でも特に有名なのは、一九六一年西側に亡命し、自分の過去のすべてを告発したボクダンスタンスキーです。」以下、長々と物語式に、このソ連が職業的なスパイと暗殺者をいかに使ったかということが、るる放送されておるのであります。  さらに中国語、これは同じように私どもがもらって帰った五月二十八日の夜の中国語ニュースであります。これも全部翻訳をしてみました。これは明らかに——全部読むわけにいきませんから、こういう内容ということだけであります。「中共が何とかして、アジアの隣国との関係を改善しようとしているとき、北京の宣伝機関は暴力革命に対する支持を重ねて述べている。以下は、VOA時事問題分析員ベイヤーが「北京外交政策の矛盾現象について」の評論であります。」これは評論であります。そうして「北京がアジアの隣国に対してとっている外交政策は、北京の解説者にとっては実に明確であり、論理にかなったものであるかもしれませんが、外部の者には奇怪に感じ、理解しがたいのであります。北京は一方でフィリピン、ビルマ、タイ、マレーシアなどの国国との関係を改善したいと表明しています。このため、宣伝面でもビルマ、タイ及びマレーシア三国内で進められている中共式武装革命運動に対する支持は少なくなってきました。しかし他の一方では、北京の重要な新聞や刊行物は最近論文を発表し、あらためて北京がアジアその他世界各地の政府を転覆させる革命運動を支持すると声明しています。」  こういう論文が解説としてずっと長々と続いておるのであります。たいへん長いものですから、最後まで読み上げることができませんが、しかし、この中で最後に、「中国大陸は依然として非常に貧乏である。だから中国の共産主義者は、ソ連の共産主義者より政治思想をさらに重要視している。」、しかも最後に、要するに「北京が二面外交政策をとる原因が何であろうとも、北京が暴力革命を支持していることのほんとうのねらいが何であるかという、アジア人のさまざまな疑念を減少させることはできない。」  これはただ単なる、外務大臣が育っておるような、客観的事実を伝えたニュースではないのであります。これは明らかに解説であります。そうしてこの放送は、非常に強い、千キロワットの中波で、その指向性は、中国語は北京であります。いま一点は、朝鮮語は同じように指向性は平壌に向けております。中国語はウラジオストクに向けておるのであります。最初読み上げたロシア語は、沿海州を中心とした極東ソ連地区とサハリンにこの放送は及ぶということが、私どもがこの中継局からいただいた資料に歴然といたしておるのであります。そういうような内容を持った放送が毎日続けられておる。そうしてこれには、必ず全般的に、全部の番組を通して一つの目玉番組があるのであります。ここが問題なのであります。これをしも、まことに穏やかな番組で、そうして何らの主観的な放送ではない、客観的な事実をそのまま伝えておるというふうに外務大臣はお思いになりますか。いかがですか。
  275. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、各地にそういうVOAという放送中継局があって、各地に、その地によって多少のニュアンスの違いがある、こういうふうに申し上げておるのです。ですから、沖繩におきましては、特に中国、朝鮮半島、そういうところに対する放送を重要視しておる、そういうようなことになるのだろう、こういうふうに思いますが、私どもがテープを取り寄せてみたところでは、さほど気にとめるようなこともなかった、また、中国からこれに対する反撃、批判、こういうようなものがあったというような話は、そう私ども聞いておりませんのですが、それは、その内容がいまおっしゃるような激しいものでないのじゃないか、こういうような感じがいたすわけであります。  いずれにいたしましても、私が申し上げますのは、いま施政権が米側にある、そういうことで多少の問題のあるところはあるだろうと私も思います。思いますけれども、これが日本返還されまして、返還後におきましては、日本はこの運営につきましては十分に参画し得るわけでありまするから、御安心願いたい、かように申し上げたいのであります。
  276. 武部文

    ○武部委員 私は、いま全部読み上げるわけにいきませんので、ほんの二、三だけ申し上げましたが、いま外務大臣は、自分が聞いておるテープの内容と違うと。おそらく、あなたのごらんになったのはこれだろうと思う。これは私も持っておりますが、この内容はほとんど中が抜かれておるのであります。ほとんど大事なところはないのであります。全部を見なければ、一貫をしてその放送がどのような目的をもってなされているかということは判断できないのであります。ただ単なる最初の項だけ聞いてみたり、あとの項で聞いてみたり、そういうことでは、この放送のねらいというものは知ることができないのであります。われわれはそのように感じておるのであります。  それならば、このVOAの放送がどのような役割りを果たしたかといういま一つの事実を申し上げたいと思います。  ニューヨーク・タイムズが、ベトナム戦争におけるアメリカ国防総省の秘密報告書をすっぱ抜いて、問題になりました。この報告書に掲載された分析及び資料の中に、VOAの役割りが具体的に記載をされておるのであります。六三年、例のゴ・ジン・ジェム政権に対するクーデターが起こったときに、その主役はズオン・バン・ミン中将、そしていま大統領であるグエン・バン・チュー氏は、当時大佐として第五師団長として参画をした。これがはっきりとニューヨーク・タイムズに資料として載っております。八月二十九日、ミン将軍は、アメリカの支持を裏づけるその証拠として彼が望んだのは、ワシントンがゴ・ジン・ジエム政権に対する経済援助を停止することだった。これは資料六十九に明らかに記載をされております。そうして八月三十一日、アメリカ国務省において開かれた首脳会議、ジョンソン副大統領及び各長官、政府首脳、これにCIA代表が参加をし、この資料は七十四、これによると、援助停止についてVOA発表がきわめて重要であったことを認め、米国の援助停止に関するVOAの発表のあと、ゴ・ジン・ジエム一家の追放に大きな希望を持った民衆という、もう一つ新しい要素が生まれたとつけ加えておるのであります。これは明らかにVOA放送がこのゴ・ジン・ジエム政権クーデターの際に大きな役割りを果たして、経済援助をゴ・ジン・ジエム政権に対してはアメリカはしないという放送を次々とやって、そのことによってこのゴ・ジン・ジエム政権転覆のクーデターは成功したと、このように書いておるのであります。  これは明らかにVOAが謀略放送によって大きな役割りを果たしたことを認める、同時に、これにCIAが参加をしておる。このことこそ私はVOA放送の本質だと思うのでありますが、この事実についてどうお考えになりますか。
  277. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういう事実は私は承知いたしておりません。
  278. 吉野文六

    ○吉野政府委員 このニューヨーク・タイムズがすっぱ抜いと称するペンタゴンのいわゆる書類でございますが、これは、その性格はまだはっきりしないのでございますが、いずれにせよ、米国政府としては正式に米国政府内の書類だということは認めておりません。内容は、主としてベトナム戦争につきまして学者や各専門家にいろいろの意見を言わして、これを一種の参考書類として、米国の国防省がファイルしたものでございまして、したがって、中には、個人的なメモだとか、いろいろなものが入っております。いずれにせよ、いままでのところ、アメリタ政府といたしましては、政府の正式な文書、政策をあらわす文書としてはこれは認めておりません。
  279. 武部文

    ○武部委員 このニューヨーク・タイムズの米国務省の秘密報告書の問題は、連邦の裁判所でも問題になって、たいへんな大きな反響を世界に呼び起こしたことは、御承知のとおりであります。その具体的な資料が明確に国民の前に明らかになっています。世界の人民の前に明らかになっておる。これをあなたのほうは否定をされるのですか。
  280. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これが裁判問題にもなりまして、だれがこのような国防省内のいわゆる秘密文書を外に持ち出して発表したかとか、そういうことにつきましては裁判ざたになったことは承知しております。しかしながら、この文書の性格につきましては、先ほど申し上げましたとおり、米国政府としては、これは政策の書類ではないのだ、あくまでも政策をつくるための参考資料として編集したものである。しかしながら、いずれにせよ、いまだ、この中に書いてあることを米国政府が全部真実だということは決して認めておりません。
  281. 武部文

    ○武部委員 私はこのテープを持ってきたり、いろいろなことをしたのは、少なくとも参議院の予算委員会なりあるいは当沖繩特別委員会政府側の答弁を聞いておりますと、全くこのVOAという放送は、NHKの海外放送みたいな、内容はまことに穏やかな、事実を事実として伝えておる、ニュースだけを伝えたりあるいは音楽を伝えたり、そういうような内容を持ったものだという認識の上に政府の皆さんが立っておる、これは明らかに間違いではないかということを、私は具体的にテープをもってその内容を皆さんに訴え、さらには、この現実の問題だけではなしに、かつてベトナムでそういう事実があって、それをニューヨーク・タイムズが全部すっぱ抜いているように、ここに具体的に資料を——だれが出席したかということを全部すっぱ抜いておるのですよ。その中に、VOAがきわめて謀略的な役割りを買って、ゴ・ジン・ジェム政権転覆の大きな役割りを果たしたと評価されておるのですよ。そういう事実を政府側はお認めになるかどうか、知っておられますか、こういうことを言っている。
  282. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は先ほどから、VOAというのは、アメリカのニュースを伝えたりあるいは広報の活動をする、主としてそういうことを申し上げておるわけであります。しかし、これはあそこでどういうことをやっているか、多少宣伝等のこともやっておるであろうということは想像はしております。しかし、私が申し上げたいのは、いま施政権下で、そう文句を言えないのです。問題は、返還後になったらどうなるのだということでありまするけれども、返還後におきましては、これが整然と運営されるように仕組みもできておる、こういうことを申し上げておるのです。
  283. 武部文

    ○武部委員 このVOAの返還問題が公になったときに、電波法をあずかっておる郵政省も反対、ましてや愛知外務大臣も当初反対をしておった。ところが、いつの間にやら、何の抵抗もなしにこの協定第八条の中にそれが出てきた。そうして交換公文の中にそれがうたわれ、こういうかっこうになってきた。一体VOAの本質を知って交渉しておったのかどうか、私はそれが問題だと思うのです。VOAというものが一体いかなる内容を持った放送であるのか、それが一体近隣の諸国に対してどういう影響を与えておるのか、こういうことを一体認識をされておったのか。このVOAの存続の問題についてアメリカから強い要請があったにしても、どういう認識で交渉されたのか、その点がたいへん疑問なのである。したがって、私は具体的な事実をあげて、こういうことを承知の上で交渉されたのかどうか、そういう政府の姿勢が知りたい、そういうことであります。
  284. 福田赳夫

    福田国務大臣 VOAにつきましては、これが扱いに非常に慎重を期したのであります。その慎重なかまえを示した、その交渉に当たりました吉野局長がおりますから、古野局長から当時の状況を説明させます。
  285. 吉野文六

    ○吉野政府委員 VOAにつきましては、われわれも当時交渉の最中にいろいろの資料で性格を調べ、かつ、どの国にどういうような施設があるかというようなことも研究した次第であります。  なお、その過程におきまして、彼らからテープを大きな箱に入れまして十箱ぐらい提供させまして、そしてその中から適当に引き抜きまして、そしてこれらを聴取しまして、いま先生のおっしゃられたような内容もありました。しかしながら、いずれにせよ、これは米国がやっておる放送であるから、ともかくその限りにおいては……(「さっき知らないと言ったじゃないか」と呼ぶ者あり)いずれにせよ、これらの放送内容は、われわれの見解では、あくまでもニュース、ニュース解説のたぐいである、こういうように判断した次第でございます。(発言する者あり)——ニュース解説と申しました。いずれにせよ、このVOA自身は過去十八年間沖繩においてやっておりまして、これを突然やめてくれと言っても、先方はあくまでもがんばってこれを認めなかった。そしてこの問題は、単に沖繩におけるVOAだけの問題ではなくて、まあいわば日本全体の沖繩交渉に対する交渉の一環として処理しなければならない、こういうことでございましたから、したがって、いろいろ交渉した結果、結局五年間は認めざるを得ない、しかしながら、二年後にその将来の活動について協議する、こういうことで妥結をした次第でございます。
  286. 武部文

    ○武部委員 いまお聞きいたしますと、大きな箱に十箱もテープを提供されて、それを翻訳して見たという答弁でございました。それならば、私がたった四つや五つ持って帰ってここで説明したより以上のものが出ているはすであります。なぜならば、このテープ以外の、私はここへまだ傍受したものを持っておるのであります。読み上げませんが、大体似たり寄ったりです。あなたは、ニュースその他とおっしゃるが、この放送の大半を占めるのはニュース解説であります。そうして、VOA時事解説員 分析員なる者が出てきて、西側放送の伝えるところによればとか、あるいはどこどこの有力筋が伝えるところによればとか、そういうまことに抽象的な内容の人がいろんな解説をして、それが放送されておるのです。ですから私は、外務大臣や郵政大臣が言っておるような内容でないということを、この六つか七つの内容をしさいに検討してみても、そういうように承知をしたわけです。ましてや、あなたは十箱にのぼるところの膨大なテープを持っておるということになれば、先ほどの南ベトナムにおけるところのああいう問題もおそらくあるに違いない。そういうような内容について、一体、それでもなお外務省は、この放送が全く穏やかな放送で、そうして何ら謀略的な心理作戦の一翼をになっていない放送だ、たいしたことはない、そのように感じておりますか。
  287. 吉野文六

    ○吉野政府委員 われわれといたしましては、返還後は、いずれにせよ、彼らの番組に対しましてわがほうの意見を述べることができる、こういうことになっておりますから、返還後はそのように取り扱うことにいたしております。   〔発言する者あり〕
  288. 床次徳二

    床次委員長 静粛にお願いいたします。
  289. 武部文

    ○武部委員 私がここで政府の見解を求めておりますのは、VOA返還交渉に対する政府の認識、それに基づく態度、これが問題だというのであります。少なくとも、いままで何人かの先輩、同僚の皆さんが政府にこの問題をただしておるその背景はそこにあるのであります。一体VOAという放送はどのような内容を持った放送なのか、この点について政府質問をすると、さっきから言うように、たいしたことはない、また、わからぬと、こういうことで政府答弁が済んでおるのであります。その結果、政府交渉はしたけれども、完全に向こうの言いなりになって、VOAを五年間認めざるを得ない、こういうことになったでしょう。  したがって、私がいま申し上げておるのは、政府にそれだけの資料があるとするならば、すでに私どもは以前から資料の要求をいたしておるのであります。それに対していまだに資料は全然提出されません。もうすでに正規に資料の提出を求めておるのであります。委員長からただいまの資料の提出をひとつ要求してください。
  290. 床次徳二

    床次委員長 資料の提出につきましては、理事会にはかりまして善処いたしたいと存じます。
  291. 武部文

    ○武部委員 それでは、あとでまたVOAの性格について関係がありますから、さらに質問をいたします。  沖繩に……   〔発言する者あり〕
  292. 床次徳二

    床次委員長 静粛にお願いいたします。
  293. 武部文

    ○武部委員 沖繩に「国連軍の声」という放送がありますが、これはいかなる放送か、御存じでございますか。
  294. 福田赳夫

    福田国務大臣 どうも不規則発言がうるさくて聞き取れなかったのです。もう一度お願い申し上げます。
  295. 武部文

    ○武部委員 沖繩に「国連軍の声」という放送があるはずでありますが、政府はこれを知っておられますか。
  296. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういうことを聞いたことがありますが、詳細は政府委員からお答え申し上げさせます。
  297. 吉野文六

    ○吉野政府委員 この「国連軍の声」は、六月三十日をもって廃止されました。
  298. 武部文

    ○武部委員 ただいま六月三十日をもって廃止をされたということでありますが、それは一体どのような根拠に基づいて御承知になったわけですか。
  299. 吉野文六

    ○吉野政府委員 米側がそのようなことを言明しております。
  300. 武部文

    ○武部委員 それは、アメリカ日本外務省に対してそのように通知をしてきたわけですか。
  301. 吉野文六

    ○吉野政府委員 米側といたしましては、特にこのようなことをわれわれに正式に通告してくる理由はございませんですが、好意的にわれわれに口頭で伝えてまいりました。
  302. 武部文

    ○武部委員 それは、六月三十日をもって「国連軍の声」放送というものを全面的にこれを廃止したのか、それとも中止したのか、その点はいずれですか。
  303. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これは廃止したわけでございます。
  304. 武部文

    ○武部委員 これはVOA放送と関係があるので御質問いたしたわけであります。  私どもの調査によりますと、この「国連軍の声」放送というのは、一九七一年のワールド・ラジオ・テレビジョン・ハンドブックというデンマークの雑誌にその内容が記載されております。これは沖繩の具志川市の平良川というところに送信所がある放送局でありまして、第十四心理作戦大隊第十六中隊、これが「国連軍の声」の放送を担当する隊である。そして、これは大体周波数二つでもって、電力は二十キロワットを二つ、対象放送区域は北朝鮮となっておるのであります。そして、この放送はずっと続けられておったのであります。この放送が六月三十日まで、北朝鮮を対象に続けられておった。その内容について、外務省は御存じでしょうか。
  305. 吉野文六

    ○吉野政府委員 この内容につきましては、われわれは承知しておりません。
  306. 武部文

    ○武部委員 ただいま外務省は廃止ということをおっしゃったわけですが、六月十七日、沖繩返還協定調印の日のソウル放送によりますと、いまおっしゃったように、六月三十日付で、「国連軍の声」放送局は朝鮮における活動を停止する。これは韓国放送施設の放送施肥と能力が拡大しているからである。なお、国連軍放送の活動停止により、VOAは、「国連軍の声」放送局の若干の現地施設を利用し、北朝鮮への番組の中継を行なうとのことです——こういうソウル放送か行なわれておるのを御承知でございますか。
  307. 吉野文六

    ○吉野政府委員 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━   〔発言する者あり〕
  308. 床次徳二

    床次委員長 静粛にお願いいたします。
  309. 吉野文六

    ○吉野政府委員 失礼いたしました。いまの前言は取り消させていただきます。  実は、電報を打ちまして、すでに調査を依頼しております。
  310. 武部文

    ○武部委員 私がこれを申し上げておりますのは、この具志川市の平良川送信所から韓国に向けて放送をし、韓国の放送局がそれを受信して北朝鮮に放送しておるのであります。そういう、沖繩から韓国に向けて放送し、韓国が中継をして北朝鮮、こういうのをとっておるから、これはVOAと関係があると私は考えたから質問しておるのであります。やはりソウル放送は、今後の「国連軍の声」が沖繩本島から韓国へ向けて放送されることについては、六月三十日をもって一応中止する、こういうことになったが、VOAに肩がわりをするという放送があっておるわけですから、これは、今後のVOA放送の取り扱いときわめて重要な関連を持つわけであります。  そこで、この沖繩における施設及び区域に関する了解覚書のA表の三十四に平良川送信所というのがございますが、これはいま外務省がお述べになった、廃止をされた「国連軍の声」の放送局のあるところであります。これがこのA表第三十四にこのまま残っておるということはどういうことなのか疑問に思いますが、いかがでしょうか。
  311. 吉野文六

    ○吉野政府委員 この平良川の基地は、いまわれわれの知っておる限りでは、特に何もやっておらないはずでございますが、中継活動だけはやっております。(発言する者あり)  失礼いたします。前言取り消さしていただきます。中継活動もやっておりません。
  312. 武部文

    ○武部委員 そういたしますと、沖繩における施設及び区域に関する了解覚書の中に「国連軍の声」放送であるところの平良川送信所がこのままA表に残っておる。これの任務は、韓国に向けての国連軍の送信所でありますから、これが中止をした、廃止をしたということになれば、この平良川通信所というものは一体何のためにここへ残るのですか。
  313. 吉野文六

    ○吉野政府委員 この平良川の基地は、いわゆる沖繩の通信基地の一つとして通信活動はしております。
  314. 武部文

    ○武部委員 いまあなたは、平良川送信所は活動を停止した。この平良川通信所というのは、沖繩から韓国に向けて「国連軍の声」を送信しておる唯一の放送局、送信所でありますね。それが全部六月三十日をもって「国連軍の声」の放送は中止になった、廃止になった。それ以後は何をやっておるのですか。
  315. 吉野文六

    ○吉野政府委員 沖繩には、御存じのとおり各地に通信所がございます。そして、それらの通信施設はお互いに連絡しまして、それぞれ軍の関係の通信をしておるわけでございます。その意味の通信はいまでも続けております。しかしながら、先生の御指摘のとおり、「国連軍の声」に関する限りは、もはや中継放送をしておりません。
  316. 武部文

    ○武部委員 そうすると再度お尋ねいたしますが、平良川送信所というのは「国連軍の声」、それだけではなしに他の放送もやっておった、そのようにあなた方は理解をしておるのですか。
  317. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先ほど申し上げましたように、これは通信所の一つでございますから、その意味で軍内部の通信をしております。しかしながら、これは放送ではございません。
  318. 武部文

    ○武部委員 ただいまの回答と私のほうの認識には、いささか食い違いがあるようであります。しかし、これはよくわかりませんから、私どもも調査をしてみなければなりません。  そこで、最初の問題に若干返ります。一つ落としておったわけでありますが、VOAの送信所、受信所、それから本部、これが三つ分かれて沖繩本島にあるようでありますが、この三つの総面積、これはどのくらいでありますか。
  319. 吉野文六

    ○吉野政府委員 いま各機関の総面積は調査中でございますが、奥間にいわゆる発信所、それから万座毛に受信所、それから嘉手納に本部がございます。(「面積は」と呼ぶ者あり)面積につきましては、国頭の奥間の送信所は約十六万四千坪、それから万座毛の受信所は約十四万八千坪、それから本部は嘉手納の基地の中にございますから、これは全体として考えていただきたい、こういうことでございます。
  320. 武部文

    ○武部委員 私どもが現地で聞きました所長からの説明によりますと、三つ合わせて約三十五万坪の地域をこのVOA放送が使用しておるという話でありました。このVOAの本部は、嘉手納空軍基地の中にあるわけであります。一体これは今後どのようになるのでありますか。
  321. 吉野文六

    ○吉野政府委員 このVOAは政府機関でありまして、軍の施設でございませんから、これは当然軍の施設から切り離されまして、普通の一般の開放された地域になるわけでございます。ただし、VOAがおそらく現地の地主と直接に契約しまして、今後も続けることになるだろうと思います。
  322. 武部文

    ○武部委員 私は、先ほどから「国連軍の声」のことについていろいろお聞きをいたしましたが、内容はあまりわかっていないということでありますが、実は、この「国連軍の声」という放送は、アメリカの国会で非常に論議がなされておるのであります。これはサイミントン議事録によりますと、明らかに「国連軍の声は」より反共的で、現在の緊張を緩和するどころか、緊張をさらに増すものであって、まことに遺憾であるという、そういうことが随所にこの議事録の中に出てまいるのであります。そして、明らかにこの内容は、この議事録から判断をいたしますと、北朝鮮の政府がかわらなければ、転覆しなければ朝鮮の緊張というものは緩和できないという、そういう趣旨に基づいて、一日十八時同の放送を毎日連続して沖繩から韓国を経由して、そして、沖繩にある先ほど言った第十五分遣隊がこれをつくって、それを韓国に中継をして、北朝鮮にこれを放送しておった、そういう事実がございます。  そこで、先ほど申し上げるように、これが廃止になったが、一部VOAに肩がわりされるのではないか、こういうことを韓国の放送はいたしておるのであります。そこで、私が問題にしたいのは、この「国連軍の声」というのは、この議事録から見ても、明らかに謀略放送であります。これを認め、あまりにも謀略の度が強いからこれを何とかしなければならぬというのが、このサイミントン議事録の中に随所に出てくる内容なのであります。ところが、このサイミントンの議事録の中に、VOAと「国連軍の声」とは同じものだという証言がなされておるのであります。ということは、いま韓国から北朝鮮に行なわれておる謀略放送とVOAの放送の精神とは軌を一にするということを、くしくもこのサイミントンの議事録の中にはっきりと書かれておるのである。  私どもは、そういうことから考えて、政府の皆さんは知っていなかった、われわれもつい最近まで、これがどのような内容を放送しておるものであるやらなかなか知ることができなかった。しかし、現実にはそれを知ることができたはずであります。それを今日まで何ら内容を知らず、また、私が申し上げるようなそういう認識でVOAの返還について交渉に臨まれたということは、国民としてはまことに遺憾千万だと思うのです。そうして、明らかに安保条約に、地位協定に該当しないこのVOAを、しかもわが国の電波法第五条の精神に違反をしてVOAを認めるという、そういうことは一体許されていいかどうか、私は、この点について、いままでのやりとりの経過を聞きながら総理大臣はどのようにお考えになっておるか、これをお聞きしたいと思います。
  323. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 VOAあるいは「国連軍の声」その他について、いろいろ武部君から資料に基づいてのお話がございました。また、当方からもこれについていろいろ応答いたしております。現状において、とにかく施政権がアメリカにある、そういうもとにおいていろいろ行なわれておること、それをわれわれがつまびらかにしておらないこと、これはどうもやむを得ないと思います。したがいまして、この点はお許しを得たいと思います。  また、今回の返還協定、これを調印をいたしまするに際しましても、VOAは困るということでずいぶん強い抵抗をいたしたことは、もう数度の説明で御了承だと思います。最後になりまして、やむを得ずわれわれは、VOAをしばらくの期間これを存続するということに了承せざるを得なかったと、こういう実情がございます。  しかし、ただいま言われるように、現状においてVOAがこういう活動をしている、ああいう活動をしている、こういうようなものが十分指摘されたのでありますから、返還後においてさようなことが重ねて行なわれないように、われわれのほうにおきましても十分注意するつもりであります。この点については、すでにVOAを存続さす際に十分注意させて、そうして、ただ単なるアメリカの広報活動だ、そうしてこれは穏やかなものだ、こういうような言質もとっておるのでございますから、なおわれわれが今後監視することも容易だ、また強いわれわれの資料に基づいての抗議もできることだと、かように私思いますので、さように御了承いただきたいと思います。
  324. 武部文

    ○武部委員 私は、佐藤内閣がこの返還協定の中で、VOAの取り扱いをめぐって、強い姿勢でアメリカと折衝されたとは考えないのであります。それは、少なくとも内容について御承知でないからであります。また、知ろうという努力が私はなされていなかったと思う。そういう面で、強い姿勢ではなかったと思わざるを得ないのでありますが、しかし、返還後においてはいろいろな方法を講ずるとおっしゃっておる。しかし、それはまた具体的にあとで申し上げますが、非常にできにくいことなのであります。そういうことで私どもは納得できないのであります。それは具体的に申し上げます。  そこで、協定第八条後段に、「二年後に将来の運営について協議に入る。」こういうことになっておりますが、その協議の対象事項は具体的には一体何であるか、これが一点。特に二年ということにしたという意味があるのかどうか、これが第二点。「将来の運営」とあるが、この将来とは五年以後も含まれるのか、この三つについてお伺いをいたしたい。
  325. 井川克一

    ○井川政府委員 「両政府は、この協定効力発生の日から二年後に沖繩島におけるヴォイス・オヴ・アメリカの将来の運営について協議に入る。」御質問の第一点の「将来」は、その日からでございまするから、その大体二年後でございます。なぜ二年後にいたしましたかと申しますると、なるたけ早くどいてもらいたいわけでございまするけれども、いずれにいたしましても、五年間はこれで許可をいたしているわけでございます。そして、もしここでやめるということになりませんで、どこかに移転する、日本国外に移転するということになりますると、そのために建設でありまするとか相当の時日を要します。したがいまして、もう発効いたしましてから二年後にその協議を始めるということにしたわけでございます。そして、最後のこの協議は、二年後以降でございまするから、五年以内も五年よりもこえる部分の協議も入るわけでございます。しかしながら、この協定で認めておりますのは五年間でございます。
  326. 武部文

    ○武部委員 はしなくもあなたが最後に言われましたが、そこが問題なのであります。五年後の扱い方が明確でないのであります。撤去が明文化されておりませんから、そういう意味においては、アメリカが将来にわたってこれを使用したい、こういうことを強く協議事項として持ってきたときには、簡単にこれを撤去できないという、そういうものがこの中からうかがえるのであります。  問題は、この協定の「二年後」あるいは「将来の運営」、「協議に入る」とか、まことに抽象的なのであります。したがって、何か五年前にも返ってくるようなお話があるかと思えば、五年後のこともわからぬ。まことに抽象的であって、扱い方が不明確であります。いま一ぺんひとつ明確に答弁していただきたい。
  327. 井川克一

    ○井川政府委員 協定第八条は、「日本国政府は、アメリカ合衆国政府が、両政府の間に締結される取極に従い、この協定効力発生の日から五年の期間にわたり、沖繩島におけるヴォイス・オヴ・アメリカ中継局の運営を継続することに同意する。」それ以上の同意は全く与えておりません。
  328. 武部文

    ○武部委員 あなたはそういうふうに答弁されても、撤去が明確でない以上、この文章というのはきわめて抽象的であって、相手がこれにつけ込んで強く出てくれば、あなた方はこれに対する防波堤はないのです。そういう点について、協定第八条にいう後段の取り扱い文書というものはまことに不明確である、私は納得できない、この点だけ申し上げておきます。  さらに、それならば協定第八条に関する合意議事録によって「予見されない事情」、こういうことが書いてありますが、「予見されない事情」ということは、たとえば適当な代替地が見つからなかった場合、そういうものもこの中に入っておりますか。
  329. 井川克一

    ○井川政府委員 五年間しか日本は許可しないということは、第八条本文をもって明らかでございます。そして、五年間の期間が切れまして、そこでやめるといえばそれでやめることになるわけでございます。ところが、第八条の合意議事録は、「ヴォイス・オヴ・アメリカ日本国外への移転の場合において」と明記いたしてございます。すなわち、移転の場合に限るわけでございます。  そこでやめてしまえば、五年間でまず終わってしまう。まず第一に移転の場合に限っております。そして、そのあとに「予見されない事情により代替施設が五年の期間内に完成されない」場合には、「完成するまでの間運営を継続する必要性に対し、十分な認識を払う用意がある。」ということばを使っておるわけでございます。したがいまして、協議は二年後に始まるわけでございます。したがいまして、わりに早く始めるということにいたしました。二年後に直ちに協議に入る。そして、それでやめてしまえばそれでよい。ただ、移転される場合には、万一地震でありますとか火事でありますとか——もう四年半でできるところが、そこがまた地震が起こったり火事が起こったりして延びた、そういうようなときには、日本側としても考慮してあげなければならないであろうということを書いてございまして、「予見されない事情」ということに、ただいま御引例になりました土地が買えないというような話は、ことに二年と五年との時間的な間隔をお考えくだされば、とてもそういうものに入らないということは御了承願えると思います。
  330. 武部文

    ○武部委員 いや、そうじゃないのです。適当な代替地が見つからなかった場合のことも想定しなければならぬのでしょう。そういうことがあなた方の話し合いの中にあったはずですよ。適当な代替地が見つからなかった場合には、これは一体この「予見されない事情」という中に入って、五年後も存続の交渉の対象になるのかということを私は聞いておるのですよ。
  331. 井川克一

    ○井川政府委員 先ほども申し上げましたように、これは普通の場合、まず建設する土地をさがします。土地をさがしてから建設にかかるわけでございます。建設に相当な時間がかかるであろうということで、五年間のうち二年たったら始めるというわけでございます。したがいまして、土地があるかないかなどというのは、その二年のあとのきわめて争い時間にわかってくることではなかろうかと思います。そこで、四年半たってから土地がないなどというときには、それはもうできないということはわかっているわけでございますから、とても「予見されない事情」に入るわけがないと思っておりますし、アメリカ側の了解もそのとおりでございます。
  332. 武部文

    ○武部委員 それならば、あなたの答弁は明確であります。あなた方は、代替地があると予想してこの話を進めておる、このように見て差しつかえないと思うのです。ただいまの答弁も、私はそのように受け取りました。  それならば、次に、VOAの継続に関する交換公文、この第一項の施設及び第二項の送信活動の範囲についてお伺いするわけですが、復帰後に存続するVOAの施設は、復帰前と同じものでありますか。
  333. 藤木栄

    ○藤木政府委員 お答え申し上げます。同じものでございます。
  334. 武部文

    ○武部委員 同じものということでありますが、私がいただきました資料によりますと、現在ある中波、短波と、それからヴォイス・オヴ・アメリカ中継局の運営の継続に関する交換公文、この資料の三ページに「短波放送送信機 五キロワットのもの 一台以内」というものがありますが、これはどういうものでありますか。
  335. 藤木栄

    ○藤木政府委員 五キロワットのものは予備として現在持っている、そういうふうに聞いております。
  336. 武部文

    ○武部委員 違うのであります。現在の資料によりますと、中波一波、短波八波、この中には、五キロワットというものは資料の中にはないのであります。今度出てきたこの交換公文の中に新しく「五キロワットのもの 一台以内」という送信機が記載されておる。一体何の目的のためにこれが新しく出てきたのか、それを知りたいのであります。違うじゃありませんか。
  337. 藤木栄

    ○藤木政府委員 現在、短波の放送は三十五キロワット二台、十五キロワット一台、百キロワット一台、四台でやっております。そうしまして、五キロワットというものがありまして、これはあくまでも予備として現在もある、そういうことでございます。
  338. 武部文

    ○武部委員 それならば、提出された資料が誤りであります。この中には全然そういうものが書いてない。したがって、私どもは、この五キロワットの新しい送信機は一体何の目的のために新設されるのかということに疑問を持ったのでありますが、いまあなたの答弁は予備だということであります。予備なら予備として、やはり資料にはそのように記載をされてしかるべきだ、こう思います。  さらに、それならば、これに関連をして、二項の(4)の中に、現在以上のVOAの活動をする場合は、「日本国政府の権限のある当局の承認を受けたうえ、」現在よりも「臨時に放送時間を延長することができる。」という記載がここにありますが、この「権限のある当局」というのは一体どこなのか。この取りきめによるならば、現在のVOAよりももっと活動的な放送ができることをこれで認めておる、いまよりももっと大きな活動ができることを認めておることになるが、そのように理解してよろしいか。どうです。
  339. 藤木栄

    ○藤木政府委員 お答え申し上げます。  ここに書いてございまする「日本国政府の権限のある当局」というのは郵政省と外務省である、そういうふうに思っております。
  340. 武部文

    ○武部委員 後段のこの取りきめは、現在のVOAの活動よりもさらに何か具体的な問題が起きたときには放送時間を延長等して、いまのあなた方が取りきめたものよりももっと大きなVOAの活動ができるようにこれはなっておりますが、そのように理解してよろしいかということです。   〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕
  341. 藤木栄

    ○藤木政府委員 ここに書いてございますように、現在やっている以上にもし何らか必要があるということになりますると、日本国政府承認を得なければならないというわけでございまして、私どもは、少なくとも現在以上のものを許すつもりはございませんけれども、しかし、たとえばこの電波の周波数を変更しなければならぬというようなこともあると思いまして、そういうような条項を入れたわけでございます。  最後のところにあります「臨時に放送時間を延長することができる。」というのは、何らかの突発的な事故が起きまして、たとえばニクソンの演説があるといったようなときには、これはある程度の時間を延長してもいいだろう、そういうつもりでそういった項目をつけ加えたというわけでございます。
  342. 武部文

    ○武部委員 その程度のあなた方の考えならば、了解ができないことはありませんが、少なくともこの中から考えられることは、ニクソンの訪中の問題があって一時間延ばしたとか、そういうようなことには受け取れないのであります。そういう点から見て、現在置かれておる沖繩のVOAの放送時間、そういうものを大幅に延長をして、さらにVOAの活動というものが対中国、対北朝鮮、そういうところに広がっていくという余力をこの協定は残しておるのではないか、このように感じたわけですが、あなたの答弁がそういうことであれば、一応了解しましょう。  この交換公文第四項に、妨害の排除、除去ということがありますが、いままでにどういうような妨害が生じておったのか、そして、これに対してはどういうような措置がとられておったのか、その点はいかがですか。
  343. 藤木栄

    ○藤木政府委員 お答え申し上げます。  この第四項は、いわゆるそこに書いてございます無線局または受信設備、受信設備の中には家庭でテレビを受けるとかあるいはラジオを受信するとか、そういった受信設備も入っているわけでございまして、これがこのVOAの中継局から受ける混信その他の妨害があった場合は除去しなければならぬというわけでございますが、現在のところ、このVOAの電波によりましてテレビの受像が非常に妨害されるということで、アメリカの軍のほうが、テレビの受像機に妨害を受けないように措置をとっている、そういうふうに聞いております。
  344. 武部文

    ○武部委員 これは非常に抽象的であって、具体的なものがないのであります。ところが、私が入手いたしましたVOAと海外中継局を持っておる国との間の交換公文あるいは協定、それを見ますと、今回佐藤内閣が交換公文として取りかわしたもの以上に、非常に強い取りきめをいたしておるのであります。ここにありますのは、アメリカとリベリアとの間の協定、さらにアメリカとフィリピン、アメリカとセイロン、さらに西ドイツとの、このVOAを設置することに基づく協定文の条文でございます。これを見ますと、佐藤内閣が取りかわしました交換公文と非常に違うのであります。  たとえば、いまお話にありました妨害の除去の問題についてきわめて抽象的でありますが、一例をあげれば、アメリカとフィリピンとの間には、協定文書の中にはっきりとそれを書いてある。これは第四条第四項「航空安全及び電波障害に関する法規に服することを条件として、アンテナ構造を含む、ラジオ送信機及び受信機を建設し、又は設置すること。」このようにはっきりと条文に書いてある。これは航空安全及び電波障害に関するフィリピンの法規に服することを前提として、この送信機なり受信機を設置することが認められておるのであります。妨害を除去するためにフィリピンはきちんとした交渉アメリカ政府とやって、この条文の取りかわしをやっている。そういうことがここに全然ない、こういうことについてどう思われましょうか。
  345. 藤木栄

    ○藤木政府委員 お答え申し上げます。  現在、電波妨害の除去に関しまする国内法規というのは国内ではございません。したがいまして、私どもとしましては、こういう条件をはっきり出しまして、こういった場合はできる限りすみやかに除去するための必要な措置をとる、そういうことにいたしたわけでございます。
  346. 武部文

    ○武部委員 少なくともフィリピンは、この妨害の問題についてき然たる態度でアメリカとの交渉をやっておるという証拠が、私はこの交換条文の中から見られると思います。  さらに、第五項に関して、米国政府はVOAまたはその職員に対する請求を公正かつ迅速に解決する責任を負うとあるが、紛争の解決は具体的にどういう方法で行なわれるのか、こういう点についても、この第五項たった三行では、まことに不明確であります。  少なくとも西ドイツは、このVOAの協定を結ぶにあたって、次のようなはっきりした条文でもって協定を結んでおるのであります。それを見ますとこういうことになっておるのであります。アメリカと西ドイツとの協定第六条によりますと、紛争は、まず第一に二国間の直接交渉によるが、三カ月以内に合意に達しない場合には、仲裁に移されることになっておる。この仲裁法廷の裁判官は三人からなり、各政府は一人ずつメンバーを指名し、その指名された二人が第三のメンバーを選ぶことになっておる。そして、一方の政府がメンバーを指名しなかった場合、または二人の裁判官が第三のメンバーについて合意に達することができなかった場合には、仲裁法廷のメンバーの決定は、国際司法裁判所の長にゆだねられることになっておる。  また、フィリピンとの協定でも、第六条において、フィリピン国の関係法令に従って、補償が支払われなければならぬ、このようになっておるのであります。  西ドイツあるいはフィリピンは、はっきりとこういう問題について協定を結んでおるのであります。このように西ドイツやフィリピンが、紛争の解決について協定の中に明確に規定しておるにもかかわらず、わが国の場合はこうした重大な点について何らの規定がない。こういう点は一体どういうことでしょう。これは、少なくとも西ドイツヤやフィリピンが国民の権利を守る、そういう画において十分な配慮がなされておる証拠であります。このフィリピンやあるいは西ドイツの政府の態度に比べて、一体わが国政府がとった態度はどうでしょうか。少なくともアメリカの意向に迎合することのみにきゅうきゅうとして、国民の権利、そういう点で何らの配慮がなされておらぬ。私どもは、この交換公文第五項一つとってみてもそのように言えるのでありますが、この点について政府はどういうお考えをお持ちでしょうか。
  347. 井川克一

    ○井川政府委員 第五項の問題は、このことにつきまして、周辺とかなんとかに問題が生ずるような場合に対する請求の問題でございまするが、これは関係者が直接VOA中継局に対して話し合い、善処方を申し入れまして、それで解決ができるということはもちろんでございまするけれども、責任の所在、解決のあり方などにつき争いが生ずる場合にも中継国——VOAがアメリカの国家機関でございますので、これはどこの国でもそうでございますけれども、わが国の国内裁判に付することができないわけでございます。したがいまして、これは損害賠償につきまして、政府としては、必要に応じていつでも問題を日米間の外交ルートで取り上げまして、米国政府による解決を要求することができるわけでございまして、ここの第五項におきまして、米国政府としては、これらの場合においてみずから生じました国家責任の履行のために、公正かつ迅速な解決をはかることを約束さしているわけでございます。
  348. 武部文

    ○武部委員 そういう説明をされても、いま私が読み上げた西ドイツなりあるいはフィリピンの協定には及びもつかぬことであります。少なくともそういうVOAを置かれておるところのセイロンなりフィリピンなりあるいは西ドイツは、国民の権利なり、あるいは妨害を除去するためにりっぱに協定を結んで、みずからの権利を主張し、それをアメリカに容認をさせておるのであります。これから交換公文の第六項に入るわけでありますが、少なくとも五つの項目を見ても、これはやはりアメリカ側要求に唯々諾々として従って、何らの権利なりあるいは妨害排除の方法等について主張した、そういう点をうかがうことができないのであります。私は残念ながらそう思わざるを得ないのであります。  そこで次、第六項。これは大事な問題であります。これはよく聞いていただかなければならぬ。この第六項は、きわめて重要なことをこの中に取りきめがされておるのであります。  この第六項は、「中継局を通じて中継される番組に関する責任は、アメリカ合衆国政府のみが負う。もっとも、日本国政府は、必要と認めるときはその番組につき自己の見解を表明する権利を留保し、アメリカ合衆国政府は、日本国政府が表明した見解を尊重する。」となっておる。このことについて、外務大臣は次のような答弁をされておるのであります。「調べてみると、他の国を刺激するような放送は、今日でもあまり見受けられないように思うが、同時に、アメリカ当局は、返還後におきましては、放送内容につきましてもわが国に相談をしましょうと、こういうふうにまで言っておる。」こういう答弁を、この議事録の中から私は拝見をいたしました。さらに外務大臣は、「この番組なり放送内容で、どうもこれは日本政府からも見て適当でないと、こういうようなものがありますれば、これは、事前において問題を指摘し、協議をするというふうにもいたしたいと、さように考えております。」こういう答弁を、十一月四日参議院の予算委員会でされておるのであります。  一体この交換公文第六項、「日本国政府は、必要と認めるときはその番組につき自己の見解を表明する権利を留保し」と、こういうことを書かれておるわけでありますが、いま私が引用いたしました外務大臣の二つの問題、返還後におきまして放送内容についてはわが国に相談しましょう——これは、少なくとも相談をしようということは事前のことであります。さらにこのあとの項は、「事前において問題を指摘し、協議をする」同じことをおっしゃっておる。少なくともアメリカ政府がVOAの放送の番組について、事前に日本外務大臣に対して、外務省に対してどのような方法で、何を一体相談をするといって約束しておるのか。私はこれを聞きたいのであります。
  349. 福田赳夫

    福田国務大臣 アメリカ政府が行なうところの放送につきましては、その放送を傍受したいということを考えておるのであります。その傍受に基づきまして、これはこうしてもらいたいというようなことを当方より申し入れる、こういうふうにいたしたいと思うのです。またさらに、運営上いろいろ問題がありますれば、これは適正なる運営が行なわれるように、まあ日米両国のことでありまするから、よく相談をしていきたい、こういう趣旨のことを申し上げておるわけでございますが、この交換公文では「番組」というふうに書いてありますが、ひとり番組に限らず、いろいろこの運営が適正に行なわれるようにという趣旨の相談をいたしたい、こう考えております。  ただ、申し上げておきますが、その文章の前段にありますこのVOA放送の運営の責任は、アメリカがこれは最終的にはとるわけでありまするから、責任者はわが国じゃないのです。ただ、わが国のそういう助言なりあるいはな勧告なり、これに対しましては、アメリカ政府もこれを尊重いたしましょう、こういう意図を表明しておる次第でございます。
  350. 武部文

    ○武部委員 いま外務大臣のおっしゃったことは傍受ということでありますから、これは明らかに放送されたあとであります。  そうすると、事前に相談はないが、一応傍受をしてみて、その内容が、私が最初に申し上げたような内容を持っておったり、いろいろなことがあった、これはけしからぬ、こういうことをされては困るというので、その点については、日本外務省を通じてそういうことについての交渉が行なわれる、行なうことができるというふうに、あなたの御答弁を承ってよろしいのかどうか。
  351. 福田赳夫

    福田国務大臣 さようなことを申し上げているわけであります。
  352. 武部文

    ○武部委員 そういたしますと、この放送番組について日本政府は、いま外務大臣は、最後に、中継局を通じて中継される番組に関する責任は、アメリカ合衆国政府のみが負うとおっしゃった。おっしゃったけれども、現実に日本政府はかくかくの放送をしてもらわなければ困るということをアメリカに言い、アメリカがそれをのんでそのとおり放送した場合には、日本政府はこの条文に、アメリカのみが責任を負うといって、われわれは責任がないのだということになりますか。少なくとも、私は共同責任を負わなければならぬと思うのですが、その点はいかがでしょうか。   〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕
  353. 福田赳夫

    福田国務大臣 そこが大事なところなのであります。つまり、その責任者はあくまでもアメリカである。そのアメリカに対しましてわが国は意見を申し入れる、これが開かれる、非常に欣快でございます。また、意見を尊重いたしましょう、こう言っておるわけであります。しかし、それがどうしても聞かれぬというようなことが万一ありましても、それはアメリカの責任であるということでありますが、しかし、われわれは、わが国の意図がこの放送に反映されるように全力を尽くす。またアメリカは、日本側の意図を尊重いたしましょう、こういうようなことを言っておるので、なかなか含みのある仕組みになっておる、こういうふうに了解をしておるのであります。
  354. 武部文

    ○武部委員 外務大臣は満足しておられるようでありますが、私は、一番最後に言いますが、決してそんなものではないのであります。  さらに廣瀬郵政大臣は、この十一月四日の参議院予算委員会で政府の統一見解を述べておられるわけであります。その政府の統一見解によりますと、「VOA放送の傍受は実施いたします。なお、番組内容の概要についても、あらかじめ入手できるよう交渉いたします。」こういう統一見解を述べておられるのでありますが、傍受のことはまああとにいたしまして、番組内容の概要があらかじめ入手できる、こういうことができますか。
  355. 廣瀬正雄

    ○廣瀬国務大臣 プログラムなどあらかじめ手に入れたいと思っておるわけでございますが、またその他、必要ということであればアメリカと折衝いたしまして、そのような資料も前もって手に入れる。事情の推移を見て手を打とうと、こういうように考えておるわけでございまして、その窓口はもちろん外務省でございます。
  356. 武部文

    ○武部委員 こういうことはほとんど不可能だと私どもは思います。少なくともこの放送の本家はワシントンであります。ワシントンから、ロサンゼルスでありますか、そこを中継をして沖繩に電波が送られて、沖繩から各地にいくわけであります。沖繩は中継のみであります。ですから、中継所長は、自分の番組の内容を知らぬのだということを言うのであります。そういうことを中継所長は言っておりました。したがって、ワシントンで放送される番組を一体日本政府はどこの場所において、いつ、このような番組内容の概要が事前に入手できるでしょうか。私は、そういうことができるならばたいへんなことだと思いますが、一体どういう方法で、いつ入手ができるとお思いなのか。これは外務大臣、ひとつ……。
  357. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これは、わが国としてはあくまでもその内容を知るべく交渉する、こういうことでございますが、先ほど説明がありましたとおり、ボイス・オヴ・アメリカの本部はアメリカにありまして、いわゆるUSIAがやっておるわけでございますから、USIAは実は国務省と同じ建物の中におりまして、両方とも連携をとってやっておるわけでございますから、われわれとしては、在外公館を通じましてこの交渉をやりたいと思っております。
  358. 武部文

    ○武部委員 こういう政府統一見解を示された以上、私どもは、確信があってそのような統一見解を示されたと思うのです。いま、交渉してみなければわからぬというような話でありますが、少なくともこの放送番組の内容が問題になっておるわけであります。したがって、入手できるという確信がおありなのかどうか、それだけひとつお伺いしたい。
  359. 吉野文六

    ○吉野政府委員 現在USIAは特に秘密のものもございませんし、また秘密の機関でもございませんから、われわれに対して、前もって、大体あらかじめの長期的な、どういうような計画で放送するか、こういうようなことを特に隠しだてすることはないと思います。したがって、交渉によりましてそのような一般的な政策なり方針なり、そういうものは入手できると思っております。
  360. 武部文

    ○武部委員 この問題は、少なくともニュース、あるいはそのニュースに基づくニュース解説でありますから、何も一週間も十日も前に番組がつくられて、それを日本政府に領事館を通じたりあるいは大使館を通じて、これこれの内容でございます、それでは日本政府の意見はどうでございましょうか、そんななまぬるいようなことで放送というものはできるわけがないのです。そういうものじゃないのですよ。少なくともきょう特派員から入ってきた報告を全部その日で集約しながら解説員がやっているという、そういう実情だということがちゃんと書いてある。このテープの中にあるのです。そういうことが現実問題としてできないのです。できないようなことを政府統一見解として、われわれは番組の問題についてかくかくのことをするのだからそんな心配は要らぬというようなことをいわれても、われわれは絶対に納得できないのです。そんなことができるはずのものではない、これを私は申し上げておきたい。そういうできないようなことを言って回答しても、これはむだであります。  そこで、最後に、私はいままで申し上げたことについて、先ほど外務大臣のおっしゃったことについて反論をいたしたいのであります。少なくとも、今度のVOAの問題をめぐっていろいろやりとりがございました。私は少なくとも、政府が、内容的に見てVOA放送の内容を知っていなかった、またあるいは知ろうとする努力がなかった、これをたいへん遺憾に思います。少なくともVOAは対共産圏への謀略放送である。これは東南アジアに向けても同様であります。また、あるいは心理作戦の一環をになうものだといっても差しつかえがないと思うのです。それば内容から見て、当然私どもはそう思います。問題は申し上げたようなロシア語のニュース、このリトアニア船員の十年の刑の問題にしても、これは米国の警備艇長は非難をされて退職をされた。そしてその文章の中には、ソ連のリトアニア人に対する不当な厳罰だとして暗に非難をしておるのであります。こういうような点はニュースの域を脱して、明らかにニュース解説と称して、これは心理作戦の一端をになっている内容なのであります。
  361. 床次徳二

    床次委員長 武部君に申し上げますが、約束の時間でありますので、簡潔に一お願いいたします。
  362. 武部文

    ○武部委員 私は、さらに中国との内容の問題についても同様だと思うのです。こういうものが中国あるいは北朝鮮あるいはロシア、そういうことばでもって聞いておるそういう人たちが、これに対して一体どういう考え方を持つだろうか、どういう気持ちを持つだろうか、ここが問題だと思うのです。少なくともそれを聞いておるところの他国の国民が、日本に対してどういうふうに思うか、ここが問題であります。少なくとも、こういう心理作戦を目的とした謀略的な放送をどんどん送り込んでくるアメリカのその放送を、日本が唯唯諾々として返還後も日本に中継基地を置いて、それをわれわれの国に向かってこういう心理作戦なり謀略放送をやってくることば何だという、そういうことを聞く国民が持つのは当然だと思う。そういう面において、少なくとも米中接近の問題や、あるいは南北朝鮮の赤十字の交流や、そういう雪解けのムードの中になぜこういう放送を、日本政府アメリカの圧力に屈して、返還後もなおこの謀略的な放送を残すのか、私はここに問題があると思うのです。  さらに、内容については、この交換公文についてだって、他国の交換公文やあるいは協定に比べて、これは内容的には非常にまずい。決して強い態度で交渉したものとは思えない。したがって、返還協定第八条、さらにこれに基づくところの交換公文あるいは愛知書簡、こういう問題についてのVOA関係は、明らかにこれは誤りであります。したがって私は、率直に申し上げて、これは撤回をする、そういうことを強く総理大臣要求したいと思いますが、最後に総理答弁をいただきたい。
  363. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろ御意見はございます。先ほど私がお答えいたしましたように、とにかく施政権下にあってVOAがどういう活動をしておるか、それを主体にして返還後のVOAのあり方についても同様だ、こういう前提でいろいろお話をしていらっしゃいますから、私どもと実は立場が相当違っております。私は、いろいろな資料まで提供されたのでございますから、返還後において施政権下に返ったら、そういうことのないように十分監督してまいるつもりでございます。
  364. 武部文

    ○武部委員 それでは、これで終わります。
  365. 床次徳二

    床次委員長 東中光雄君。
  366. 東中光雄

    ○東中委員 総理は、施政方針演説の中で、軍用地等の継続使用はこの協定前提となっておるものだ、こういうふうに言われておるわけですが、そういう点でのいわゆる軍用地等の継続使用のための、公共用地等の暫定使用法、これが出されてきておると思うのですが、そういう点で、この法案は非常に重要な根本的な問題を持っておると思うのです。私たちは、この法案につきましては、第一に、米軍が沖繩での軍用地を取り上げたときのやり方がきわめて不当だと思うのです。それをこの法律で事後で合法化していく、そして継続していくようになる。しかも、内容的にいいますと、著しく沖繩県民を差別しているように思います。さらにまた、憲法の各条項に違反をしている。その使用目的において、憲法第九条の戦力不保持に違反しますし、また憲法第十四条の法の前の平等の原則にも違反をしていますし、憲法第二十九条の財産権の保障、あるいは三十一条の適正手続の原理にも違反をしていますし、三十二条の裁判を受ける権利にも違反をしているし、九十五条の投票に付さないという点でもやっぱり憲法違反がある。非常にたぐいまれな悪法だ、こう私は思うわけです。  そこで、軍用地の米軍の取得の経過についてまず総理にお伺いしたいのですが、いま沖繩全島の一四・八%が軍用地になっています。那覇市は三分の一が軍用地であります。また嘉手納村は八八%、読谷村は八〇%、コザ市は六七%が軍用地であります。まさに基地の中に沖繩があるといわれるような状態になっておるわけですが、これを取り上げてきた米軍のやり方ですね、これは当然継続使用していくということが前提だと言われている総理は、その経過、それについて検討され、国民の、沖繩県民の権利を尊重するという立場をとって、これをやられてきたものとお考えになっているかどうか、その点をひとつ総理の所見を明らかにしていただきたい。
  367. 西村直己

    西村(直)国務大臣 米軍が基地を巨大に持っておる。この点につきましては、今回復帰後もできるだけ私もまた政府全体も、この効率的な利用あるいは基地のいわゆる価値等を考えて、今後とも縮小の方向をたどる努力はいたす。当面、米軍の持っておる基地、これが今回復帰後におきましては、さらに暫定使用等の法律を背景に、しかしいつも申し上げているように、できるだけ契約でいきたい。すでに大多数の地主の方々は契約に応じてくださると、こういうふうに考えております。また、米軍の占領下におきましても戦争の経緯は確かにございました。また、一部には必ずしも妥当でない使い方もあったでありましょうが、しかし大多数は、米軍の施政権下におきましても契約によって大部分は行なわれ、一部は布令等による強制収用をされておりますが、そうしてそれに対するそれぞれの対価というものは払われておる、これが現状の私は認識であります。
  368. 東中光雄

    ○東中委員 たとえば読谷村の渡具知という部落があります。この部落の例を見ますと、一九四五年の六月、あの沖繩戦争のときに北部へ疎開しました。そして六月にあの米軍の収容所の中へ入れられてしまったわけであります。戦闘行為が終わってからもずっと入れられて、一年五カ月同収容所へ入れられているわけです。その間に、この渡具知の部落は、住宅はもちろん全部破壊されるし、米軍がかって気まま、ほしい気ままにこれを占領、使用しておる。それに対して対価は払っていません。そうしてやっと一年五カ月たって、四六年の十一月に読谷村までは帰ってこられたけれども、自分の先祖代々の部落へは帰れない。波平に住宅を建ててその地域で生活せざるを得なかった。そうしてさらに十カ月たって、少し近い楚辺というところまで戻ってくることができた。しかし、部落は全部住宅をこわして、また建て直して移住した。そうして畑へ行ってやっと細々と仕事ができる。私有財産は全部一方的に没収されたままなんです。そういう状態が四年二カ月続いているのです。辛うじて五一年の十一月になって渡具知のもとのところへ戻った。ところが、それから一年十カ月たてば、あの朝鮮戦争の関係で米軍は基地拡張、土地取り上げをやり出した。五三年の九月には百五十三戸の部落が全部よそへ移住させられております。三十万坪の農地は全部取られてしまった。こういう形です。そういうものに対する補償は、いま防衛庁長官は補償されたと言われましたが、そんなものはずっとあとになって、講和後になってそういう布令を出しただけのことなんですよ。現実に生活しているその家庭、家も土地も取られて、そのときに補償されなかったらどうして食っていけますか。こういう不当な土地取り上げのやり方がやられてきた。こういうものについて、これは私は平和条約にも違反すると思います。しかし、いまその法律論をやる時間がありませんからやりませんけれども、こういうやり方、不当な土地の取り上げ方、こういうことで軍用地というのは始まったのだ、いま渡具知はトリイ・ステーション、あの極東全域の電波を取ってそうして解説している、いわゆる謀略的な通信奉地の一部に入っている、こういう状態です。これはA表で残されることになって、いる。こういう土地の取り上げ方、これは不当なものだと思うて対処しておられるのか。それはもう当然のことだというこうに思っていらっしゃるのか、これは重要な問題ですから、基本的な考え方です。総理どうお考えになっているか、お聞きしたいのです。
  369. 西村直己

    西村(直)国務大臣 ただいま例にあげられました伊江村あるいは読谷村、楚辺、そういう方面において、そういうような力によるものというものがあったということは、私ども文献でも多少伺ってはおります。ただ、全体に御存じのとおりに、昨日も他の協定委員会等でも議論が出ましたが、講和発効以前は占領軍として、あるいは停戦協定ができるまでの間というものは、一つの戦時国際法の間でいろいろな現象があった。それは確かにお気の毒な面はわれわれはもう心得なければいかぬ。しかし漸次——それらが全部なっているかというと、その後においては、大部分というものは契約でほとんどの地主さんが一応の補償料をもって今日に続いてきておる。それを今日引き継ぐものは引き継ぐ、返すものは返してもらう、こういうようなたてまえになります。過去におきまするいろいろなそういうような不当行為につきましては、今回の返還協定あるいは法令等で認めるものはそれぞれアメリカの処理すべきものだ、また国内法あるいは国内において処理すべきものは処理したい。これがまあ政府の方針で、ございます。
  370. 東中光雄

    ○東中委員 いま私がお聞きしたのは読谷村の渡具知のことです。伊江村のことについて言いますならば、これはもっとひどいですよ。五五年の三月十一日に船で工兵隊が上陸をやっているのですよ。そして完全武装をした兵隊が入ってきて、そこで火までつけて家屋を焼き、農作物を焼いて百五十万坪の土地を取っておるのです。十三戸の家が突然焼かれて取り上げられているのですよ。こんなことが一体許されるのかどうかということです。これがいまあそこの射爆場になって、この間わが党の不破書記局長が申し上げた、あの核爆弾の投下訓練をやっているのがこの基地ですよ。  そしてまた伊佐浜の場合なんかを見ますと、同じ五五年の三月十一日ですが、地区を三つに分けておいて、C地区を接収するといって、実はB地区へ入ってきて、そこを取り上げた。それから七月の十九日未明、午前四時ですよ、ライトを消したブルドーザーとか戦車なんかも出たといわれている。これが出て行って、三十二戸の家があるのに、それを鉄条網で囲んでしまって全部ブルドーザーでつぶしだした。これで追い出された人たちは、行くところがないから小学校へ夏休み中避難しているのですよ。そういう状態なのです。そして夏休みが終わるからといって、ほかのところへ、仮のバラックへ移る。農地は全部取り上げられた。どうもできないからブラジルへ行った人もいます。そうしてブラジルの中でずいぶん苦労しているということを帰ってきた人に私は聞いてきました。こういう、まさに武力によって取り上げた。着剣した銃を突きつける。将棋盤でなぐられて、七十歳のおじいさんがその場で気絶して倒れたという例もある。これは伊佐浜の例です。こういう全く不当な強奪ですね。それをいま防衛庁長官の言われていることでいけば、そういう不当なこともあったけれども、不当だということは認めるけれども、しかし、この法律で合法化していくということになってしまう。収容所へ入れてしまってまず取り上げるというやり方、そして朝鮮戦争に向かっていく中で基地拡張をするといえば、こういう取り方を五三年から五五年にかけてやっています。これが米軍が取り上げてきた土地取り上げの実情です。これをこのまま継続していく、これがどうしても必要なのだという立場で、この法案というのは出されておるわけですけれども、これは総理、こういう不当な土地取り上げ、それに対して、施政権が返還になれば当然返さなければいかぬ、返ってくるものなのですから、それをそのまま引き続いて継続使用させていくというのはどうしても許されぬと思うのですが、総理の考えを聞きたいと思います。
  371. 西村直己

    西村(直)国務大臣 東中委員も御存じのとおりに日米安全保障条約を結んでおります。これに対しては、お立場が違えばこれはまた別論でございますが、われわれとしては国会の御承認をいただいて安全保障条約を結び、そうしてそれに対して米軍に基地を提供しておる。講和前におきましてそういういろいろな事象が一部にあったこと、それに対しましては講和前の補償、いろいろな扱いがあろうと思います。それらに対する法理的な見解は施設庁長官からさらに御説明いたします。
  372. 東中光雄

    ○東中委員 いや、いいです。時間がありませんから施設庁長官、けっこうです。私が申し上げたいのは補償の問題とかいう問題じゃないのですよ。そういう強権的に取り上げて、沖繩県民の心をこれで踏みにじってきたわけですよ。武力でやってきたわけですよ。そういう基地をそのまま継続していく、それははっきり終止符を打つべきだ、当然返さすべきだ、こう思うのですね。その点について総理の考えをお聞きしたい、こう言っているわけです。
  373. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ただいま言われるように、これは武力によるあるいは権力による人権の侵害だから、それをもとに返せ、こういうのが東中君のお説かと思います。私は、ただ、いままで沖繩同胞が苦しい状態に置かれたことに、ほんとうに心から実は同情しております。戦時中、さらにまた戦後、もう戦争が済んだ後においてすら、さようなことか、力による財産——人命とは申しませんが、財産がとられてる、収奪されてる、こういうことを聞くにつけましても、一日も早く実は祖国復帰を実現したい。何よりも祖国復帰を実現して、そうしてただいま言うような外国の施政権下で苦しい思いをしないような、そういう状況をつくることが私どもの責任だと実は思っておるものでございます。ただいま御審議をいただいておるのも、そういう意味合いにおいて私は御審議が願えるのではないかと思います。私は、いままで米軍のやったことそのものを是認して、それでやろうというわけでもございません。私は、当然米軍基地は、今度は日米安保条約のワク内においてのみその施設、区域が使用される、使用できる、また米軍自身の行動も安保条約のワク内においてのみ許される、その他のことをやろうとするならば、これは事前協議の対象になる、こういうことでございますから、その辺を十分御理解をいただきたいと思います。  私は、沖繩同胞が戦時中焦土化する、全島全県を占領されたそのことを考え、同時に、戦争は済んだが、その後においてさらに施政権下という名のもとにずいぶん米軍の力の政治が行なわれた、そういう点に私は心から御同情申し上げて、ほんとうに御苦労でした、こういうことを申し上げたのでございますが、この上は、ただただ一日も早く祖国復帰を実現して、そうしてわれわれがあたたかく沖繩同胞を迎えることではないかと思います。そのあたたかく迎えるという中には、ただいま言われるような軍の施設、そういうものが変化を来たすというか、質的にも変化を来たしますが、量的にもこれが整理統合されなければならないと思っております。  私はそのいうものが右から左にできないことをまことに残念に思いますが、ただいま東中君も御指摘になるようなそういう状態を是認するのではなくて、私どもは一日も早く本来あるべき姿に返す、そこに力を集中しよう。そうして、それぞれの政党によって安保条約をお認めにならない方もあるのですけれども、私は、しかし、沖繩の大多数の方は、本土並みに安保条約をやはり認めていただきたいと思いますし、またサンフランシスコ条約そのものも否定なさる党もございます。ましてやそのサンフランシスコ条約第三条、これは頭からさような権利は認められない、かように言われる方もございますけれども、私はそういうような議論をするよりも、現実の問題として、とにかくあたたかく迎えること、そうしてともどもに問題を解決していくこと、これがわれわれのつとめではないか、かように思っておる次第でございますから、先ほどので大体要を得ておると思いますけれども、私の所見を申し上げてお答えとする次第であります。
  374. 東中光雄

    ○東中委員 不法にあるいは不当に占拠された軍用地、それを継続してやっていくということ、これが今度のいわゆる返還協定前提、基礎になっているということは、沖繩県民が現に苦しみを受けたその軍用地をそのまま続けていくということに結局なる。それを、沖繩県民の意思がそれには反対だというている場合に強制的に取り上げていくのがこの法律なんでしょう。賛成しているというんじゃないんですよ、賛成しないで、いやだといっているのに強制的に取り上げるのがこの法律なんですから、そういう点ではまさに米軍が実力でやったやつを、今度は法律によって合法化していくということになるのであって、私たちは、これは総理言われますけれども、あたたかく迎えるというのじゃなくて、継続していくことになるのじゃないか、こう思うわけであります。特にこの法案について、先ほど申し上げましたように、非常に類例のない法律だと私は思うのです。  それで、防衛庁長官にまず第一聞きたいのですけれども、米軍基地が返還をされて、それを自衛隊が引き続いて基地にするという場合に、返還されたら、たとえば地位協定でもそうでありますけれども、所有者に返さなければならぬということになっているわけです。それを自衛隊が引き続いて使っていくときには土地所有者の同窓が要る。同意がなくても、返還された基地をそのまま取り上げていくという法律はいままであったかどうか、この法案はそうすることを第二条できめているわけですが、いままでそういう法律があったかどうか、その点をお聞きしたい。
  375. 西村直己

    西村(直)国務大臣 必ずしも先例とは私申しませんが、小笠原復帰の場合におきましては、自衛隊を含めまして、もちろん駐留軍に提供する基地を含め、公用地を含め、一括しまして一つの形をとっておるのであります。
  376. 東中光雄

    ○東中委員 小笠原については先例とは言わないと防衛庁長官自身が言っておられるのです。先例にならぬですよ。あそこには人がおらなかったのだし、おらなかったのですよ、あのときは。だから政府はそういう説明をしてきました、私の予算委員会の質問のときでも。やむを得ずそうしたのだ、こう言っていた。しかし、問題は、あれは先例というよりはむしろ沖繩のための布石じゃないですか。そうとしか考えられないですよ。しかし、日本本土日本どこでもそういうことをやったことがない、沖繩県だけです。あるいは小笠原を含めてだけ自衛隊が強制的に一方的に返還された土地を所有者に返さないで取り上げちゃう、こういう法律がこの法律だ、こういわざるを得ないのですが、そうじゃございませんか。
  377. 西村直己

    西村(直)国務大臣 あなたのお立場では、自衛隊そのものをお認めにならぬ立論からスタートをお切りになるから、そういう立論もあるかもしれませんが、私どもは、もちろん小笠原はなるほど小笠原としての理由はあったが、そういう形もとりました。  それからいま一つは、自衛隊というものも国家のいわゆる一つのファンクションと申しますか、国土を守るということもさよう、それから同時に、道路を、国道を提供することも一つの国家のファンクションであります。間接的ではありますが、あるいは水道であるとか電気の供給基地を確保することも一つのファンクションであります。これらの国家の機能をひとつ円滑にさしていただく。しかし、私どもは、いつも申し上げますように、これを原則としてできる限り契約で円滑にお話し合い、いわゆる合意でやっていきたい。そうしてまた、今日の現在の実情というものは、大多数の方々は大体その円滑な合意に達してくださるというふうに私どもは信じておる次第であります。
  378. 東中光雄

    ○東中委員 合意でやることを問題にしているのじゃないんです。この法律は強制をするという法律だからということを言っているのです。確かに国家のファンクションである、私たちはそれば違憲だと思っています。しかし、国家の機関であるけれども、日本の他の都道府県ではどこもやってないことを、沖繩だけでやるということが問題だと言っているのですよ。そのことについては何も言われてない。そこまでをやらなければいけないのは、自衛隊が米軍に肩がわりをする、いわゆるニクソン・ドクトリンの線に基づいて、そして佐藤総理のあの共同声明また久保・カーチス取りきめ、これでアメリカに義務を負っているから、いままでにやったことじゃなくて、本土ではやったことがないのにあえてこの沖繩だけでやってきた、こう言わざるを得ないわけです。  さらにこの法案について、私もう一つ特異なものを申し上げたい。この法律案は、土地所有者に対して何の通知もしない、通知にかわる公示もしない。法律自体の規定で、第二条一項の規定自体によって取り上げちゃう、こういう法律になっています。あとから通知するようになっているわけです。二条の三項は、あとから連絡するようになっているわけです。いつ連絡するのかといったら、土地を取り上げてから後「遅滞なく」と書いてある。もともと法律で「遅滞なく」というのは、うんとゆっくりやっておってよろしいということですよ。「後、何々のあと直ちに」と言うたら、あとでやるけれども急いでやれということですよ。その次には、「すみやかに」というのがあるでしょう。これはもっとゆっくりやってよろしいということですよ。それよりもさらにおそい「遅滞なく」、法律用語として当然です。こういう状態で通知もせぬで土地を取り上げた。こんな例が一体あるか。国家総動員法で土地を取り上げたときもそんなことはやっていない。米軍の土地取り上げの特別措置法、これだってやっていない。アメリカ軍が沖繩でやっているあの布令でさえ一応通告だけはするようになっている。通告と同時に武力行使だ。この法律は通告さえしていないのですよ。こういう前代未聞の法律をなぜここでやったのか、それをお聞きしたい。
  379. 西村直己

    西村(直)国務大臣 後段の手続の問題は施設庁長官からお話を申し上げます。  前段の、なぜこういうふうな法律本土においてはつくるか、小笠原はまあそういう例をやっておりますが、本土においてはやってないじゃないか。しかし、先ほど来、あるいは先般来、私がしばしば申し上げているように、できるならそういう法律はつくりたくない。しかし、御存じのとおりに、講和発効後における日本本土におけるいろいろなものと違うのであります。状況は引き続いて使用さしてもらう、使用さしていくようにする。それには、日本政府がいま介入できないような施政権下にあるという制約が非常にあるというのが一つ。したがって、まあできれば、復帰以前に全部の地主さんと契約ができれば一番いいことですか、おそらくそれは不可能である。復帰以前にアメリカ施政権下でいろいろやることは困難である。その上にまあ数も三万数千名の方々が地主さんとしておられる。その上に海外移住であるとかいうような、あるいは土地におられない方もおられる。そういうことを考えると、契約でいくにしましても、復帰後にもその契約のお話し合いを進めていく中で暫定使用というものをさして、引き継いでいかなければならぬ。基地がそこでもって機能をつぶして、それで空白になっていくというごとの状態は、今日の状況ではこれはできないことでありますから、どうしてもそこにこういうやむを得ない措置が要る。  後段につきましてはひとつ施設庁長官から、手続の問題でありますから説明申し上げます。
  380. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 この法案によりますれば、二条二項によりまして、この法律の施行前に、米側に提供すべき予定のもの等その他につきまして、要するに、一項一号に掲げる土地となるべきものの区域あるいは工作物となるべきものあるいは当該土地、または工作物の使用方法について、法律の施行前に告示いたすわけでございます。なぜこの通知を事前に行なわないかということでございますが、復帰以前の段階、つまり米側施政権下におきます段階におきまして、個人個人に通知をするということができないということで、あらかじめその土地等につきましては告示いたしまして、自分が所有するところの土地所有者あるいは関係人が自分の土地が告示される、つまり米側なら米側に提供されるべき区域内に入るということをあらかじめ十分事前に承知し得るという、そういう意味合いで事前に告示をいたすわけでございますので、そういう点におきまして、手続の補償面において私は欠けるところはない。したがいまして、復帰以前といいますか、法律の施行後におきまして遅滞なくこれは各人に通知をし、あるいは公示をする、こういう手続をとったものでございます。
  381. 東中光雄

    ○東中委員 ほかに前例がない。あの戦時中の国家総動員法による土地取り上げだってこんなことやってなかったんだ。少なくとも通知をやり手続はしているのですよ。あとから通知をするというのは、先にまず取り上げちゃう。こんなものは戦争中でさえなかった、米軍の軍政下でさえなかったということを言っているのですよ。それについて何の説明もしていないじゃないですか。  さらに、この法律のもう一つの特徴は、法律で、二条の一項で取り上げてしまうから異議申し立てもできないじゃないですか、異議申し立ての規定がありますか。
  382. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 この二条二項の事前の告示というものが一つの処分でございますので、これに対する不服の異議申し立て、あるいは抗告訴訟的なものはできるということでございます。
  383. 東中光雄

    ○東中委員 いずれにしましても二項の場合は一般的告示であって、土地所有者に対するあて先が違う、そういう点でいま施設庁が言ったような訴訟ができるかもしれない。私たちは当然もし制定されたらできると考えますけれども、しかし不服の手続を何ら規定していない。問答無用の法律になっているということです。  もっとありますけれども、この三つの点だけを見ても、戦前、戦中、戦後を通じてこんなひどい立法というものはないのですよ。法律で一方的に取り上げておる。通知もしない。自衛隊だけが沖繩に出ていく。これは沖繩県民に対して、沖繩県に対してだけの立法なんですから、沖繩にある軍用地についての立法なんですから、沖繩だけの立法なんです。明らかに本土における各都道府県の国民と区別をしておる。まさに憲法十四条に言う法の前の平等の 則にこれはまっ正面から違反しますよ。こんなひどい立法というものはありはせぬと思うのです。そういう点で憲法違反だ、こう考えるのですが、いかがでしょうか。
  384. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答えを申し上げます。  先ほどは憲法のいろいろな規定をおあげになりまして、これがこの法案は憲法違反であるという断定をなさったわけでありますが、(東中委員「それは質問してないよ」と呼ぶ)いまのお尋ねは十四条だけでございますね。——十四条についてのお尋ねでございますが、確かに沖繩についての問題であるということは、いまその施政権の返還が問題になっているものですから、自然沖繩における問題になることはもう当然の結果でございますが、十四条の関係だけに焦点を当てて申し上げれば、この法律案は、何よりも沖繩の住民を憲法の明文にあるような、「人種、信條、性別、社會的身分又は門地」によって、これは判例にあることばでもありますが、人格の価値が、すべての人間について平等であるという憲法上の理念にそむいて差別しようというものでないということは、これは明らかなことだと思います。  ただ御指摘の点が問題になりますのは、沖繩にある土地等の権利を有する者が、公共の利益のための特別の必要制に基づいてその権利を制限する法律が適用される結果として、確かに他の地域に権利を有する者との相違が出てくることは御指摘のとおりでありますが、この相違は、事柄の性質に即しまして、合理的と考えられる法律の適用の結果によりまして生ずるもの、すなわち、それ自体合理的根拠に基づくものであるとわれわれは考えますので、別に憲法十四条一項に違反するというようなことにはならないと考えております。
  385. 東中光雄

    ○東中委員 いま法制局長官の御答弁を聞いていますと、全く論理的に成り立たぬことを言っておられると思うのです。というのは、事柄の性質上、沖繩に特殊な問題だ、こう言っていますけれども、事柄の性質は、返還された基地を自衛隊が使うということ。これは本土でもやっていることでしょう。強制的にやった例がないのに、沖繩だけやっている、こう言っているのです。本土でやるときは、通知をやり手続をとるのに、沖繩のこの場合だけは通知はあとから、手続さえしていない、これを言っているわけです。もし、これが沖繩県民における差別、十四条違反でないというんだったら、法の前に平等であるというこの原則をこれでもやれるんだと言うんだったら、そうしたらまた別の法律をつくって、北海道は北方で重要だから、ここでの自衛隊の基地取り上げについては、普通の一般の法律と違う法律をつくる、これができることになる。京阪神地域、首都圏地域は重要だから、ほかと違うんだから、だから基地をつくるのにこれはやれる、こういうことになっていくじゃないですか。これが憲法違反でないというようなことをいえば、およそ差別というものはなくなってしまう、この点をはっきりしていただきたい。
  386. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 私の申し上げたことをだいぶ誤解があるようでございますが、東中さんも法律家でいらっしゃいますから、少し中身に入ってお話をしたいと思いますが、いずれにしても、公共の安全を維持し、あるいは公共の危険を避ける、この場合には、公共の利益のため特別の必要があるかどうか、その認識が基本であります。基本でありますが、そういう認識がありまして、しかもその手続を踏むいとまがない。この場合は施政権が返還されて、直ちにその要が出てまいりますので、そういういとまがないときには、通常の手続を省略したり、簡略な手続によるというのはこれはいまの実定法にも例がないわけではございません。これは、特に例としてあげれば、土地収用法上の緊急使用ということもございますし、それから小笠原諸島の復帰に伴うものもその一つの例でございますが、そういうこともあるわけでありまして、沖繩にできれば北海道にできるというような単純なものではない。むろんそれを、何といいますか、一般には非常に飛躍があるように聞こえますが、そういうようなものではない。やはり事柄の性質に即して、つまり公共の必要性ということに即してこの法律案を必要としたという事由が認められるか認められないか。認められるとすれば、あとはそういう必要に応じた法律ができるというのは、これはどうも幾らでも例がございますので、これをもって直ちに十四条違反だという論旨、これは少しお考え直していただきたいと私どもは率直に考えます。
  387. 東中光雄

    ○東中委員 自衛隊の基地を土地所有者の反対にかかわらず強制的に一方的に取り上げるということの緊急性やら必要性やらいうものは、いまあなたが言われているこの一般の法律の緊急性というものと全然性質が違う。この点をまず指摘しておきたい。  もう一つの問題は、この通知さえやらないで土地を取り上げてしまうということは、最高裁判所の大法廷の判例にはっきり違反をしています。昭和三十七年十一月二十八日の大法廷判例があります。これによりますと、国民の財産を国が取り上げるというときには、その「当該所有者に対し、何ら告知、弁解、防禦の機会を与えることなく、その所有権を奪うことは、著しく不合理であって、憲法の容認しないところである」とはっきりいっています。「けだし、憲法二十九条一項は、「財産権は、これを侵してはならない。」と規定し、また同三十一条は、「何人も、法律の定める手績によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」と規定しているが、」「所有物を没収せられる第三者についても、告知、弁護、防禦の機会を与えることが必要」だ。それをやらなければこれは憲法二十九条、三十一条違反である、こういつています。法制局長官は、それは刑事手続の問題だと言われるかもしれぬけれども、そうは言わないのですか。首を振っておられますが、それならばまさに土地を取り上げるについては告知をしなければいかぬ、遅滞なく。あとから通知するんじゃなくて、まず告知をして、それに対して意見を言う機会を与えなければいけない。そしてこそ適正に財産権を少なくとも補償できるんだ、こういうのが趣旨であります。  さらに、これは刑事裁判の関係でありますけれども、松山空港の滑走路拡張のときに、公有水面を埋め立てをするというので知事が告示をした。それに対して漁業権者が漁業権を奪われるということで裁判を起こしました。これに対して裁判所は、はっきりと、漁業権でも現に漁業権を持っている人たちに何の通知も連絡もしないで、一方的告示によって取り上げてしまうというのは、これは憲法三十一条、二十九条違反だといって、この執行停止の裁判をやりました。内閣総理大臣、異議申し立て権がありますけれども、やっておられません。現にそれでストップしました。まさに財産権を取り上げる、強制的に取り上げるというときには、当然相手方の意見を聞かなければいけない。手続は全部そういうふうになっているわけです。河川法だって土地収用法だって、その他あらゆる法律がそうです。そうでない法律は違憲だといって違憲判決が出ているわけですから、この土地強制収用法、これはまさに通知も告知も何にもやっていない。あとからやる。まず取り上げてからやる。補償のことについて裁判がやれても、それは別個の問題であるということは、最高裁の判決も松山の判決についても、あとで救済があってもそれは別の問題だ。はっきり判決に書いています。まっ正面から違反すると思いますが、いかがでしょうか。
  388. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 これはどうもいきなりの御質問でございますが、昭和三十七年の御指摘の判例というのは第三者所有物の没収に関する判例であったと思いますが、あの場合とこの場合——あの判決は私もむろん賛成でございますが、あの場合と全くこれを同視して、同じような理論を展開されるのも、これは私はだいぶ飛躍があるのではないかと考えます。この暫定使用法案は、いろいろ御説明しましたように、沖繩復帰後においても、国などが、従来の公用地等であって引き続き必要であると認めるものについて暫定的にこれを使用しようというものでありますが、所有者等との関係については、従来の使用関係というものがありまして、その範囲を越えるものではないのでありまして、第三者所有物の没収のように、全然、犯罪に関係ある船舶、貨物等だというので、いきなり本人の知らない間にこれを没収してしまうというのと同じ平面でお考えになるのは、私、これまたどうかと考えております。二十九条、三十一条等にもお触れのお話がございましたが、二十九条に関して言えば、詳しい時間をとることは差し控えますが、補償ということもあることでありますし、二十九条三項は、補償によって公共のために用いることを認めていることでもありますし、三十一条については、先ほどもちょっと触れましたが、事態に応じては、先ほどは刑罰に関する手続だからといって逃げるんではないかとおっしゃっておりましたが、確かに刑罰に関する規定でございますが、しかし、行政手続においてもその趣意をくんでやるべきことは当然だと考えておりますが、それは行政手続におけるその場面についてのふさわしい手続、これが必要であることはむろんでありまして、今回の場合については、法律の施行前、これに必要とされるものについてはこの範囲を告示したりあるいは使用方法を告示して一般にこれを知らせる、それから後ではありますけれども、権利者等に一々通知をする。それからまた裁判上争うことも先ほど触れておりますが、これはお疑いを持つほうが私はふしぎだと思うのでありまして、告示についてはその告示を争う方法がむろんございます。
  389. 床次徳二

    床次委員長 東中君に申し上げますが、お約束の時間が経過しておりますので、この質問をもって終わりたいと思いますが、簡潔にお願いします。
  390. 東中光雄

    ○東中委員 もう終わりますが、先ほど申し上げた松山地裁の判決というのは昭和四十三年七月二十三日、これは刑事事件でもなければ、まさに憲法違反ということがまつ正面から出されている判決で、それを法制局が知らないというのは、私はそもそも憲法を守るという点からいってもぐあいが悪いのじゃないか、こう思うのですが、いずれにしましてもこの法案は、私の見解じゃなくて、最高裁の判決、裁判所の判決に告知し、弁解し、意見を述べる機会を与えなければ、それは適正手続、デュー・プロセス・オブ・ローに違反する、憲法三十一条に違反するということをいっておるのだ、そういう法律なんだということをはっきりしていただきたい。  それと同時に、時間がありませんから九十五条違反、あるいは三十二条違反、論議できませんが、こういう問題でありますので、委員長に要請をしたいのですが、こういう類例のない立法で、しかも最高裁の判決ともまっ正面から違反するような立法なんですから、そういう問題について、違憲性について、参考人の調べ、専門家の意見を徴する、こういうことをやっていただきたいということを要請しまして質問を終わりたいと思います。
  391. 床次徳二

    床次委員長 参考人の招致等につきましては、理事会にはかりまして善処いたします。  次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時十二分散会